志村転弧【死柄木弔】の妻 (フ瑠ラン)
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1話

チリチリと大きな音をたててアラームがなる。手探りで目覚まし時計を探すけれど中々見つからない。だからといって目を開けるのはなんか癪だし、負けた気がするから目を瞑ったまま探しているとアラームは勝手に止まった。

 

漸く目を開けるとドアップで整った顔が映る。銀色のふわふわとした髪の毛に優しい赤色の瞳。右口元のホクロに右目と左口元には裂けたような傷痕。うん、美しく麗しいな相変わらず!

 

 

「おはよう、相変わらず朝に弱いな」

 

「おはよう!! あんたは相変わらず美しいな!!」

 

 

私の夫、志村(しむら)転弧(てんこ)は先程までなっていた目覚まし時計を持ちながら私に朝の挨拶をして来た。きっとその手に持っているアラームを止めてくれたのは転弧だろう。お礼の意味も兼ねて私は笑顔で返す。

 

転弧と話していると寝起きで機能していなかった鼻が漸く機能し始めた。直ぐにいい匂いを察知してしまう。とてもいい匂いで食欲がそそられる。お腹がだらしもなくなってしまいそうだ。きっと転弧が私の起きる前に作ってくれたのだろう。流石、私の愛する夫、転狐である。転弧はハイスペックで気の利く優しい男だ。朝起きたらご飯は出来てるし、よく周りを見てる。それに頭だっていい。何よりかっこいい。

 

 

「今日から教師なんだろ? こんなに悠長していていいのかよ?」

 

 

リビングに降りてきて、ご飯を食べている途中に転弧が言った。時間は朝の七時三十分。今から慌てて行ったとしても普通に遅刻してしまう。

 

 

「うーん、正式には今日は入試の合格者を決めるだけだからなあ。決定権は私には無いし。だから遅れてもいいと思うよ」

 

「そんなんでいいのか? ヒーロー(・・・・)

 

 

私の職業はヒーローである。ヒーローになった理由は大切な人や家族を護りたいから。力が欲しかったからだ。因みに転弧もヒーロー免許は持っている。活動はしてないけど。

 

 

「まあ、今日は出勤しないかな。面倒だし」

 

「そう言えば弟君受験生だったよな? 何処受験したんだよ?」

 

 

転弧の言葉を聞いて思い出した。そうだ、そう言えばアイツそうじゃん。何処受験するんだろ。正直言って興味ないので何処に受験するかとか全く聞いていない。て言うか、ここ一年は会ってないな。

 

 

「相変わらず仲悪いな。仲良くしろよ」

 

「私は仲良くしてるつもりだよ。アイツの反抗期がウザイだけ。会ったらすぐ個性使ってきやがる」

 

 

少し思い出しただけでイライラとしてくる。思わず舌打ちが出てしまった。

 

 

「その顔、彼とそっくりだ」

 

「あ"ぁん? バカ言ってんじゃないよ!!」

 

 

転弧は「おー、怖い怖い」と苦笑いだ。アイツと似てると言われるのは嫌だ。あんな顔にはなりたくない。切実に。

 

そんなたわいも無い話をしながら朝ごはんを全て食べきった。その後は二人で食器を洗ったりテレビを見たり、ゴロゴロとして時間を潰した。

 

夕方になるとお母さんから電話が掛かってきた。珍しい、お母さんから電話掛けてくるなんて。何時もは仕事中のことも考慮してあっちからは電話は掛けてこないのだ。そんなことを思いながらも電話を取った。

 

 

「もしもし? 母さん、どうしたの?」

 

『もしもし皐己(さつき)? あのね勝己(かつき)雄英(ゆうえい)受かったのよ!!』

 

 

嬉しそうな母さんの声。余っ程嬉しいのだろう。当たり前だ、雄英は名門中の名門校。受かって喜ばない奴はかなりの変わり者だ。

 

しかし、私は母さんのそんな報告を聞いて口をあんぐりと開けた。聞いてないよ母さん。マジかよ、嘘だろ、やめてくれよ。そんな私の姿を見て転弧は声を押し殺しながら腹を抱えて笑っている。おい、押し殺せてないぞこの野郎!!

 

 

「母さん、それは…本当?」

 

『嘘をついてどうするのよッ! もう!!』

 

 

もう私の中では絶望しかなかった。いやね、嬉しい事だよ。雄英って超名門校だし…いや昔私通ってたけど! 首席入学の首席卒業したけど!! まさか、勝己まで雄英に通うとは思わなかったのだ。そもそも雄英受験してたのかよ……。

 

因みに説明させてもらうと、勝己は私の弟だ。爆豪(ばくごう)勝己(かつき)。反抗期真っ盛りの五月蝿い弟。基本、私の顔を見れば個性を顔面にぶっぱしてくるぐらいには頭のイカれた奴だ。通常顔は悪人面、キレた顔は(ヴィラン)顔。顔でヒーローが決まるのならきっと勝己は一生ヒーローには成れないだろうと言うぐらい顔が怖い。その為、浮いた話が一度も出てきたことがない。

 

そんな弟を優しく(叩きのめして)教育指導してあげてる私の名前は爆豪(ばくごう)皐己(さつき)。プロヒーローで、今年から()()()()()()()するのだ。実に嫌だ。きっと私に生徒を選ぶ権利があったのなら問答無用でアイツを落としているに違いない。というか、アイツが雄英受験するって聞いてたら赴任の話は蹴っていた。確実に。

 

 

『よお"イカレババア、元気にくたばってるかァ!? あ"ぁん!?』

 

 

きっと母さんからスマホを取り上げたのだろう。途切れ途切れ母さんの怒声が聞こえてくる。そんな母さんの声も無視して勝己は自信満々に『見事に雄英合格してやったわボケェ!!』と電話なのにお構い無しに叫んでくる。やっぱりアイツの頭はイカれてる。

 

 

「るさいわボケェ!! 少しは黙れねぇのかあ"ぁん!?」

 

『んだとコラァ!!』

 

 

きっと目の前にアイツがいたら掴みかかっていたであろう。スマホに感謝するんだな愚弟よ!!ギリギリとスマホを睨み付けていたらスルッと上から転弧がスマホを取った。

 

 

「あ! 何すんの転弧!!」

 

「勝己合格おめでとう。凄いね」

 

『てめぇに言われても嬉しくないわボケ!! てめぇら二人とも雄英出身だろうがコラ!!』

 

「相変わらず顔は悪人顔だけど悪口のボキャブラリーは少ないんだな」

 

『んだとコラ!! 今すぐこっちに顔見せろや!!』

 

 

『今日こそは勝ってみせるわボケ!!』と叫んでいる愚弟。そんな愚弟の言葉を聞き流し転弧は電話を切ってしまってもいいかとジェスチャーしてくる。大きく頷いてやった。

 

転弧は大きく頷くと勝己がまだ何か言っているにも関わらずブチッと通話を切ってしまう。そして、何事も無かったかのように私にスマホを返した。

 

 

「相変わらず元気が有り余ってるな、勝己は」

 

「風邪引いててもウザイし五月蝿い。きっと一回は死なないと治らないね、アレは」

 

 

にしてもまさかアイツまで雄英に来たかぁ。マジかぁ。やめろよ、諦めろよ!これから毎日アイツに顔を合わせなくちゃならないのかと思うと頭が痛くなる。

 

姉弟仲がいいかと聞かれれば悪いとしか答えられない。顔を見せれば個性を使っての姉弟喧嘩を始める。どっちかが倒れるまでやり続けるから転弧は何時も笑って見てるし母さんは呆れたような目で見てくる。父さんは泣いていた。

 

え? どっちが勝つかって? 私に決まってるだろ。15歳の若僧にプロヒーローが負けるわけないでしょ。何時も瞬殺してやってるわボケ。

 

……というか勝己もそんなに大きくなっていたんだなあ。勝己が雄英かぁ。あの顔でヒーローの卵でしょ? やべ笑えてくる。アイツが目の前にいたら腹抱えて笑ってやるのに。

 

それにしても高校生かぁ。時の流れは早いね。勝己が雄英に行ったなら勝己の友達の出久君は何処に行ったのだろう。あの子、私がヒーローになってからと言うもの自分の事のように嬉しそうにしてくれたからなぁ。正直チェンジして欲しい。勝己よりも出久君の方がいい。あっちの方が愛くるしくて可愛げもあって守りがいもある。

 

勝己なんか守ってみ? 『んだコラ!! 勝手にでしゃばってくるんじゃねぇ!! 自分の身ぐらい自分で守れるわ!! これで借し作ったとか思ってんじゃねぇぞ!!!』とか言ってきそう。即殴り合いだね。全く守りがいのない男だ。呆れた。

 

 

「勝己のヒーロー姿、全く想像出来ないんだけど」

 

 

私がそう呟けば転弧は「何となく分かるよそれ」と言った。

 

 

「ほら愚弟ってさ、自尊心の塊だし顔も(ヴィラン)顔じゃん。それに個性は爆破と来た。敵を倒して行きながら街も壊して行きそうだし本当性格から何まで(ヴィラン)向きだな」

 

「全部、皐己にも言えると思うけどね、俺は」

 

「はあ!? 何処が!!」

 

 

ちょっとムキになってつくえを勢いよく叩いてしまった。けれど転弧は気にすることなく話を進める。…あんた、懐が広いね。つくづくいい男だよ、転弧。

 

 

「体育祭の時なんか凄かったろう。あれは前代未聞だね」

 

「いやあれは…ちょっとキレちゃったというか……」

 

「きっと勝己も同じ末路を辿ると思うよ」

 

 

むぐぐぐ、と言い返せない。確かにあの体育祭はやばかった。めっちゃ怒られたしなぁ。それに、あの時だけ勝己は大人しくて、尚且つ「姉貴、カッコよかった!! 一位だったな!!」と興奮した様子で周りをうろちょろしてた……ような気がする。私は怒り狂ってて覚えてないけど。

 

そう、どれほどあの頃はなんと言うか…荒れてたのだ。うん。人それぞれそういう歴史はあるってもんだよね。いやはや、懐かしいもんだよ。

 

 

「こらこら、現実逃避しないのー」

 

 

転狐の声でハッとした私。勝己が雄英に来ることがあまりにもショックだったもんで、過去に思いを思わず馳せていたよ。

 

顔を見合わせた私と転弧はひとしきり笑いあった。



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第2話

後書きに設定入れてます。
後、第一話の方で『転弧』を『天狐』と書いていました。間違えです、すみませんでした。


「はい、静かになるまで8秒かかりました」

 

 

そう言ってのそのそと寝袋から出る彼は抹消ヒーロー イレイザーヘッド、本名相澤(あいざわ)消太(しょうた)という。そんなヒーローとしても、年齢としても私より先輩な彼をただただ無の表情で見つめていた。

 

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 

彼はそう言うと私を見る。え、私何求められてるの? 訳わかんない顔をしていたら「早く自己紹介」と言われた。少しイラッと来て彼のド(タマ)をぶち抜きたいと思ったのは内緒だ。

 

 

「副担任のば…志村皐己。あまり世話かかせないでね。問題行動とかしたらド(タマ)ぶち抜いてそこらに捨てるから」

 

 

思わず癖で爆豪と言ってしまいそうになったが、私は結婚しているのだ。もう爆豪ではなく、志村である。危ねぇ危ねぇ。

 

ニコっと愚弟の方を見ながら言うと愚弟こと勝己は肩をワナワナと震えさせ睨め付けてきていた。大体は「なんでテメェがここにいやがる。副担任は何だ!!」みたいな感じだろう。誰が教えてやるか、てめぇはそこで一生くたばってろ。

 

そんな視線の攻防を知ってか知らないのか、相澤は話をサクサクと進め、生徒の皆をグラウンドへと呼び出していた。

 

グラウンドに集めた生徒に相澤はスポーツテストを行うと言った。すると、A組の皆からは非難の声があがる。そりゃそうだわな、気持ちはわかるよ少年少女。でもね、現実は非道なのさ。

 

相澤は勝己にボールを渡すと個性を使用して投げていいと言った。勝己はボールを受け取ると肩慣らしに何回か肩を回しそして指定の位置へとつく。そして――。

 

 

「死ねぇぇえええ!!」

 

 

投げた。皆は死ねという言葉に驚いていた様子だが。こうして始まったスポーツテスト。最終種目に行くまでは順調だったのだが、どうやら相澤は出久君が気になるらしい。そして勝己から出久君への視線が凄い。

 

出久君がボールを投げ、何故か相澤を驚かせるとどうやら勝己の何かに障ったらしい。手から火花を散らしながら「どういうことだ…」と怒りに燃えていた。

 

出久君に向かって殴ろうとしていた為、私が動き出す。相澤さん、愚弟の躾は私がするんで大丈夫です。手ェ出さないでください、そんな意味を込めてチラッと相澤さんを見れば呆れたようなため息が返ってきた。察しのいい人は嫌いじゃないよ。

 

 

「競技にも関係無く個性使用してんじゃねぇぇえええ!!」

 

 

勝己の胸元に一瞬入りこんで、アッパーを喰らわせる。すると勝己…いや、愚弟は「グフォッ!」と汚い効果音と共に後方へと飛んでいった。

 

 

「おら、立ちな。一発でも殴ってみろやクソガキ。睨むだけじゃ何も出来ないよ?」

 

 

そう言って腹を一発蹴ると相澤さんに「やり過ぎだ」と少し怒られた。「うっす」と反省してない声で返せば一発ゲンコツを喰らった。なぜに?

 

この後に除籍の話しだったりなんだったりがあったが、面倒なのでカットといこう。

 

こうして、初日が終わった。

 

 

「で、なんで君はこの前来なかったのかな」

「え? いやほら、どうせ決定権とか無かったから来なくていいかなあーって思って」

「仕事は有るよね、仕事は」

 

 

この前無断欠勤したことにネチネチと怒られる私。いーやん無断欠勤1回ぐらいさ。許してくれよ相澤ぁ。心の中で遊んでいたらそれがバレたのかギロッと睨まれた。前言撤回、察しのいい人は嫌いだ。

 

こうして1日が過ぎ、次の日になった。朝が過ぎ、昼が過ぎ、5時間目。

 

 

「それじゃあ行こうか! 志村少女!!」

「少女と呼ばれる年齢じゃないんスけど」

 

 

「HAHAHAHAHA!」と言って聞かないオールマイトを睨みつけながら1-Aに向かう。私は教科を受け持つのでは無く、オールマイトの手伝いだ。普通の人ならオールマイトの手伝いが出来るなんてすごく喜ぶのだろうけど、私は全然嬉しくない。

 

 

「私が――」

「オールマイト邪魔ですー」

 

 

1-Aのドアの前で一旦息を吐き、勢いよくドアを開けたオールマイトを蹴り倒して私は教室に入る。

 

 

「オールマイトォォォ!?」

 

 

A組の皆の悲痛な声なんて私には聞こえない。さっさと入らないオールマイトがいけないのだ。

 

 

「し、志村少女、少しは私にカッコをつけさせてくれてもいいんじゃないかな!?」

 

 

「初めての授業だし」とコソコソ話しかけて来るオールマイトに「浮かれてんスか」と聞けば「君は…冷たいね」と返答が返ってきた。全く返答になっていない。

 

 

「それにあんたどうせ毎回やるんでしょ。1回ぐらい潰れてもいいじゃないっスか」

「君も毎回着いてくるんだよね? なんかもう決めゼリフ言えないような気がしてきた」

「どーせ皆テレビで聞き飽きてますって。逆に良かったんじゃねーの」

「……段々口調雑になってきたな…」

 

 

相澤さんなら敬語とかそこら辺厳しそうだけど、この人ならまあ大丈夫だろうと思った。現に、少し口調のことは気になるようだが怒る素振りは見受けられない。

 

 

「ていうか。皆見てるけど…いいの?」

 

 

そうオールマイトに教えてあげればオールマイトは肩を少し跳ねさせ慌てて教壇へと向かう。顔に冷や汗を沢山かきながら、生徒達に説明していくオールマイト。私はそれを眺めているだけだ。

 

愚弟の視線がウザイけれど私は大人。フッ、そんなの無視出来んだよ。鼻で少し笑うと愚弟はイラッとしたのだろう。さっきよりも熱い視線が飛んでくる。

 

一通り説明が終わったオールマイトはなんとかγやらβに皆を呼び出していた。因みに場所は分からないのでオールマイトについて行こうと思う。

 

 

「君、雄英出身なんだよね? 場所知らないのかい?」

 

 

「まだ若いし覚えてるだろうに」と言うオールマイトに「そんなん覚えてませんよ」と言った。私の学生時代は隣に何時も転弧が居た為、覚えなくて良かったのだ。転弧の後ろついて行けば良かったし。

 

因みに私は雄英出身とあってミッドナイト先生やマイク先生、相澤先生とは顔見知りである。特に相澤先生は学生時代担任を務めていただけあって色々と知っている。

 

私が副担任を務めると知った時のあの嫌そうな顔は忘れない。

 

 

『…お前、本当に教師出来んのか?』

 

 

あのガチな声は忘れない。というか毎朝聞かれる。どれだけ信用ないんだ私。

 

 

「そういや相澤君に聞いたのだけれど弟が居るんだってね。誰だい?」

「多分すぐ分かりますよ」

 

 

「それ相澤君にも言われたよ!」と笑いながら言うオールマイト。同じこと言われたなら聞くなよと思うがそれは声に出さない。

 

 

「愚弟は口で言っても分かるほど大人しい性格してないんで、なんか騒ぎ起こしたら半殺し程度に殴ってやって下さい」

「それ、教育委員会から色々と怒られるヤツだよね……」

「大丈夫っスよ。誰も教育委員会に通報なんてしませんから。する前にしようとしたやつ潰すんで」

「君、本当に教師(ヒーロー)かい?」

 

 

オールマイトの少し不安そうな声が雄英の大きな廊下に響いた。

 

 

 

…余計なお世話じゃボケ!!

 

 

 

 

 





【設定】

【名前】志村(しむら)皐己(さつき)
(旧姓:爆豪(ばくごう)
【担任クラス(副担任)】雄英高校1年A組
【誕生日】10月13日
【年齢】20歳
【身長】168cm
【個性】『爆破』『???』
【好きなもの】夫、家族
【ヒーローネーム】アテリア
【備考】
・爆豪勝己の姉で志村転弧の嫁
・顔は母似で爆豪勝己を女版にしたような感じ
・かなりの天才肌
・爆豪勝己との仲はお世辞にもいいとは言えない
・性格は爆豪勝己より……いいと思われる(多分)
・雄英高校首席入学の首席卒業
・雄英体育祭ではかなりやらかし、色々と世間では有名
・世間では(ヴィラン)系戦闘狂ヒーローと呼ばれてたりする
・珍しい個性2つ持ちで2つ目の個性は転弧しか知らない
・個性は勝己と同じだが、少し違う





【名前】志村(しむら)転弧(てんこ)
【誕生日】4月4日
【年齢】20歳
【身長】175cm
【個性】『崩壊』
【好きなもの】嫁、笑ってる嫁
【備考】
・死柄木弔ではなく志村転弧←ここ重要
・志村皐己の夫
・昔、皐己に拾われた
・雄英高校出身
・ヒーロー免許は持っているがヒーロー活動はしていない
・皐己の2つ目の個性を知っている
・オールフォーワンとは会っていない、普通の一般人←ここ重要





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第3話

設定、皐己の個性を書き変えました。備考も付け足しているので良ければ見てください。
更新遅くなりすみませんでした。


オールマイトにどんな授業をやるのか聞けば2組に別れさせ、ヴィランとヒーローに分けて戦わせると返ってきた。それを聞いた私は適当に「ふーん」と相槌をうった。

 

 

「ふーんって興味なさそうだね…」

「そもそも授業自体興味ないんで」

「はっきりと言うなあ」

 

 

「正直、志村少女相手にクラスの皆で戦わせようかとも思ったんだよ」とオールマイトは言った。私的にはそっちの方が良かった。そのままオールマイトに告げれば、オールマイトは苦笑いをしてポリポリと頬を掻きながら言った。

 

 

「残念ながら相澤君に却下されてね。「貴方は生徒を殺させるつもりですか」と真顔で言われてしまったよ」

「……流石に殺しはしねぇよ。あのおっさん…!」

「相澤君曰く「志村は相手が生徒だろうが弟だろうが幼馴染であろうが手加減をするつもりは一切ありませんよ。『手加減』という文字がアイツの頭にインプットされてないんです。おかげで敵系戦闘狂ヒーローなんてテロップつけられて…教え子だっただけに恥ずかしくて仕方がない」ってね。長々と君の事を言っていたよ」

「手加減ぐらい知っとるわ! 舐めてんのかあのおっさん!!」

 

 

「因みに志村少女は誰かに一度でも手加減したことはあるかい?」オールマイトは私にそう問うてきた。私はオールマイトを睨みつけながら言った。

 

 

「ンなもん無ェに決まってんだろ」

「うん……良くも悪くも素直だね君は。後、言葉使いを直しなさい。それだから敵系なんて言われてしまうんだよ」

 

 

「若いなあ」オールマイトはそう言いながら私の頭を撫でてくる。顔面を爆発させてやろうとするのだが容易く避けられてしまうので、思わず火が着きかけたのは内緒でもなければ口外することでもないどーでもいい話だ。

 

βやらγなんて呼ばれる部屋につき、オールマイトが生徒に説明をする。その際、オールマイトが聖徳太子になりかけたりしたが興味が無いのでカット。愚弟の視線も凄かったが、それも丸々無視してやった。おかげで、イラついたのかあいつの貧乏ゆすりが尋常じゃなかった。正直、うるせーと思ったが喋りかけるのは辞めた。あいつと関わると碌なことにならないからな。

 

 

「へー、こんな組み合わせにするんスか」

「何か問題でもあったかい?」

「いや別に。どの組み合わせも興味無ェなあと思って」

「……君は一体何に興味を持つんだい?」

 

 

そんな話を愚痴愚痴としていたらどうやら試合が始まるらしい。第1回戦は愚弟から始まるという目障りな試合となっている。是非とも出久君に勝ってもらいたいところではあるが、()()勝己に勝つのは無理だろう。

 

別に弟だから贔屓しているとかそんなものでは無い。冷静に考えてだ。確かに、久しぶりにあって気づいたが出久君は成長していた。勿論、背もそうだが、前は全くついていなかった筋肉、そして……個性。昔とは色々と違う。だが、それは所詮付け焼き刃でしかない。見たところ、あの筋肉の付き方は一年ちょっと鍛えたぐらいだろうし。

 

愚弟はなんやかんや言いながらも小さい頃から私の隣で鍛えていたりした。個性だって扱いきれるように、一人で特訓していたところも見たことがある。私にコテンパンに負かされる度に、泣きながら特訓していたところを何回も見てきているわけだ。

 

出久君の一年と愚弟の数年。出久君にいい師匠がついていたとしても、たった一年では殆ど何もしていないと一緒だ。見たところ個性もまだちゃんと扱えていなさそうに見える。

 

 

「……君の弟って爆豪少年かい? 凄く似ているね」

 

 

オールマイトがモニターを見ながら小声で話しかけてきた。「どこが似てんだよ。てめぇの目、節穴なんじゃねえの?」そう蹴りと共に返せば、クリーンヒットした尻を擦りながらオールマイトは「爆豪少年の口の悪さは君譲りなんだねきっと」と言われた。再び、蹴りを入れようとすれば今度はすんなり避けらた。ちっ。

 

 

「これはどっちも負けるな」

「……それはどう言う意味かい?」

 

 

大体私の中で勝敗はついた。もう見なくていいかな、なんて思いながら呟いた独り言はどうやらオールマイトに聞こえていたらしい。聞き返してきた。

 

 

「どう言う意味も何も、力で愚弟は勝ち精神で出久君は勝つ。それだけっス」

「(彼女はこんなナリをしているが頭の回転は早いみたいだね。決断力が凄い。そして圧倒的な自信。流石、()()()()()()をしただけはあるね)」

 

 

『あんな体育祭』。それはオールマイトが雄英の教師につくと決まって相澤に見せられた体育祭のことだった。「これから貴方の同僚になるやつの方がビデオです。これを見れば、あいつの人間性がわかるんで、見といてください」そう言われ渡されたビデオ。それは、中々に強烈で一癖二癖もありそうだと思ったのは仕方の無いこと。体育祭でもそうだったが、彼女は頭の回転が早いらしい。オールマイトは嬉しそうにウンウンと頷く。

 

 

「何ひとりでに笑ってんスか。気持ち悪い」

「んー、もうちょっとオブラートに包んでくれないかな! オジサンに気持ち悪いはちょっと堪える!!」

「注文多いなこのおっさん」

「うん、口に出さないで心の中だけに留めておこう」

「オールマイト!! 志村先生!! 今すぐこの闘い止めた方がいいって!!」

 

 

オールマイトが無駄に絡んできて、それに付き合っていれば、生徒達がガヤガヤと騒ぎ始める。どうやら中々酷い闘いをしているらしい。

オールマイトも焦り、中断させようとしたが私が止めた。

 

 

「志村先生何で!? 危ないですよ!!」

 

 

名前は覚えていない。誰かが言った。私はその生徒を見ることなく、モニターも見ることなく、この部屋の出口に向かいながら言った。

 

 

「止める前に決着はつく。だから大丈夫だ」

 

 

見るだけなんて暇なことやってられるか。この場はオールマイトに任せて私は職員室でぐったりとサボろうと思う。

そんな私を見てオールマイトは呟いた。「相澤君に怒られても知らないぞ」と。

 

職員室に戻ろうと思ったが、相澤先生の姿が見えたので職員室に戻ることはやめて、今は誰もいない1-Aの教室に行くとこにした。

 

教室は私が使っていた頃と何も変わっちゃいなかった。だから、私が昔転弧と書いた落書きだって残っていた。

 

『絶対ェてっぺん取る』

『皐己が怪我しませんように』

上が私。下が転弧だ。卒業する前に二人でコソッと書いていたものはまだ残っていて、とても懐かしく思う。確か、転弧がこんなの書いて私がキレたんだったけか。「ンなもんするか! ナメんなや!!」みたいな感じで。壁に傷つけて書いているので、書き直すことも出来なくて、その後の私は何となく機嫌が悪かったような気がする。そこまでちゃんと覚えていないので、定かではない。

 

 

過去に浸っていれば、チャイムがなった。どうやら授業が終わったらしい。ずっと同じ体制で居たためか、身体が凝っていたので少し伸ばしてから私は職員室へと向かった。結局、途中授業を見に来ていた相澤先生に私がサボっていたことが見つかり、こってりと絞られるのは数分後の話である。



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第4話

「うわ、なんだよこれ…」

 

 

時刻は朝5時。昨日のサボりが完全に鬼という名の相澤先生にバレていた私は、こんな早朝から小学生と間違われるような反省文を書かされる羽目となっていた。

 

ただでさえ、慣れない早起きで機嫌が悪いというのに門に、群がるこのマスコミは一体何だ。一歩、足を踏み出せば、耳ざといマスコミ達は一斉に私の方を向く。グリンと一斉に顔を此方に向けてくるのは一種のホラーに見える。

 

 

「あれは!! 敵系戦闘狂ヒーロー、アテリア!!報道陣(わたしたち)の前には滅多に顔を見せてくれないアテリアが真逆、雄英の教師をしていたとは!! これはとっておきのスクープだぞ!」

「アテリア! 私のことを覚えていますか!? あの文化祭終了後、会いに行った私です!! 今でもあの文化祭は噂として受け継がれていますが、どう思いますか!?」

「言動、行動全てがヴィランと似通っていると言われていますが、御本人はどう思っていらっしゃるのでしょう!?」

 

 

グイグイとワラワラと私に群がってくる報道陣は凄くウザったくて、めんどくさい。そして暑苦しかった。

 

 

「だあああ!! うるせぇ!! いっぺん、まとめて死ねや!!」

 

 

掌を思いっきり爆発させようとしたが、個性が上手く発動出来なかった。視線を感じ、咄嗟に後ろを向けば、眠たそうに頭を掻いている相澤先生の姿が見える。

 

 

「ヒーローが何を言ってる」

 

 

相澤先生の目は私を思いっきり映していて、個性が使えないのは相澤先生のせいだと気づいた。私はちっと思いっきり舌打ちをすると「退けや! 邪魔だボケ!!」と吠えるように言った。それにびびった報道陣はサササと私の目の前から退く。鼠色のコンクリートがこれ程恋しく思ったことはきっと無いだろう。

さっきまで撮られていたカメラを器用に壊しながら雄英に入る。

 

 

「次、業務妨害なんかしてみろ。カメラだけじゃ済まねぇぞ?」

 

 

ニヤリ笑えば女性陣から少しの歓声があがる。ガッと相澤先生に頭を殴られ、引き摺る形でこの場を去った。

 

 

「朝からお前は元気だね」

「そうでもないっス。この朝が苦痛でしかないっス。布団が恋しいんで帰っていいっスか」

「帰っていいならこんな朝早くから呼び出さない。ほら、早くやれ」

 

 

そう言って相澤先生は寝袋に包まって寝る体勢へと入る。ずるいあの親父。私も暖かい布団で寝たい。今日は食べられなかった転弧の美味しい朝ごはんが食べたい。ケッと悪態をつきながら、コンビニで買ってきたメロンパンを人齧りする。

机の上に束ねられた原稿用紙はそう簡単に消えそうにない。

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

「あれ? 相澤せんせー、今日は志村先生居ないんですかー?」

 

 

辺りを見渡しても、志村の姿は見えないので代表して芦戸が挙手をして相澤に聞いた。相澤は鋭い眼光で明後日の方を見て言った。

 

 

「デスクで爆睡してたからな。少し罰を与えている」

「「(一体なんの罰を与えたんだ相澤先生)」」

 

 

クラスの皆が心を通わせていると、爆豪が小さな声で呟いた。

 

 

「ざまぁねぇな」

 

 

それはとっても嬉しそうな声で、怒ってばっかりの爆豪のイメージを覆すにはちょうどいいものだった。爆豪の隣の席の耳郎がチラッと横を見れば、案の定爆豪は嬉しそうに微笑んでいた。

しかし、その微笑みは嬉しいと言うよりもどちらかといえば──。

 

 

「すっごい人相悪いけどどうかした?」

 

 

ヴィランが悪巧みしているような顔だ。黙って何もしていなければ、いい顔な筈なのに何とも損な男だなあと耳郎は思う。

 

 

「トイレ我慢してんのか?」

 

 

茶化すように瀬呂も入ってきた。爆豪は顔に血管を浮かばせ「ンなわけあるか」と言った。

 

 

「そこ、話す余裕があるなんて凄いな」

 

 

ギロッと相澤に睨まれ三人はまるで、おもちゃの電池が抜かれたようにぴたっと止まった。三人が喋るのをやめたのを確認し、相澤は言った。

 

 

「急ではあるが、君らに今日は学級委員長を決めてもらう」

「「(学校ぽいの来た!!)」」

 

 

またもやクラスの皆が心を通わせた瞬間だった。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

学級委員長かあ、と思う。私達の代は転弧が学級委員長をしていた。何気に優男だったところが気に入ったところだったらしい。

 

相澤先生が学級委員長を決めると言っていたので、少し過去に思いを馳せていた。なんとも懐かしい。たった5年前のことの筈なのに、こんなにも懐かしく思ってしまう私は相当精神的に歳をとったらしい。

 

気がつけばお昼の時間になっていた。いつもなら転弧が作ってくれたお弁当があるのだが、今日は転弧が起きる前に家を出てきたから何も無い。食堂に行くしかないな、あばよくば愚弟にでも奢らせるか、そう考えをまとめて職員室を出ればなんか凄いことになっていた。

 

チリリリと警報がなり、セキュリティがなんだとかアナウンスが流れる。そのせいでパニクった生徒達が波のように押し寄せて来たのだ。

 

ゴンゴンと肘で押され、ガッと思いっきり足を踏まれる。やられっぱなしは性にあわない。イライラメーターが頂点に達し、噴火した私は叫んだ。

 

 

「てめぇらそれでも雄英の生徒か!! いい加減にしろや!! 少しはその少ない頭で考えろ!!」

 

 

波となって押し寄せてきた生徒達が止まった。私はめいいっぱい、腕を伸ばし、少量の爆破を手で起こした。

 

 

「誰も侵入はしてねぇ! マスコミだ! マスコミの何が怖い? 何を恐れる? 状況判断もまともに出来ねぇ奴らがヒーローだなんだと語ってんじゃねぇよ!!」

 

 

窓から外を見てみればマスコミの対応におわれていたマイク先生と相澤先生の姿が見えた。どうやら、朝のマスコミが無理やり門を突破して入ってきたらしい。

 

職員室周辺の生徒達は止まったが、食堂辺りの生徒達には聞こえていなかったらしく、そっちの方からグイグイと押されているようだ。食堂の方に行こうにも生徒達が邪魔で身動きが出来ねぇ。「暑苦しくて仕方ねぇな」とこの状況を面倒に思いながら呟いた。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

「おい爆豪」

「相澤先生。今は『爆豪』じゃなくて『志村』っス」

 

 

昔の癖が抜けていないのか未だに爆豪呼びしてくる相澤先生に訂正をいれば綺麗に無視をされた。おい、少しは直す努力しろよ。いや、別に良いんだけどさ。

 

ずいっと手提げを見せられ、なんだと思っていれば「志村からだ」とぶっきらぼうに相澤先生は言った。

 

 

「マスコミに紛れてどさくさに渡してきた。飯食ってなかったら渡してくださいだとよ。どうせ食べてないだろ」

「た、助かった…!!」

 

 

相澤先生が私に渡してきたのは、転弧お手製のお弁当だった。弁当箱を開けてみれば、色鮮やかな食材が綺麗に並べられている。腹が減りすぎて思わずヨダレが出てきてしまいそうだ。流石に出さないけど。

 

あの後に食堂に行く気がしなくて昼を抜こうかどうか考えていたところに、真逆の救世主が現れた。アイツは、ホントに出来た夫だよ。転弧と結婚して良かった。ガチめに。

 

転弧の作る料理はやはり、美味しかった。

何時もの3倍以上、美味しく感じた。

 

 

「4時間かけてまだ半分しか終わってないのか。残業してでも終わらせろよ」

 

 

 

私の小学生並みの反省文(やる気無し)を見て相澤先生はサラッと言った。千枚を超える反省文をそう簡単にかけるはずがないだろう。途中から何かの物語を書き始めているのだが、ちょろっとしか見ていない相澤先生はどうやら気づかなかったらしい。

 

つーか上げて落とすなよな。マジキツいって。



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第5話

反省文(途中から物語風)は校長からは好評を受け、相澤先生からはお叱りの言葉と不評を受け、オールマイトからは苦笑いを貰った。結局、あの後残業して帰った私は偉いと思う。て言うか、普通の人は今どき反省文なんて書かせないと思う。いや、遠回しに相澤先生が普通の人じゃないとか言ってるわけじゃない。

 

結局、1-Aの学級委員長は飯田というパッとしないメガネに決まったらしい。興味が無いのですぐに忘れてしまうと思うが。

 

今現在、1-Aの生徒と共に私はバスの中で揺れている。席は真逆の相澤先生の隣だ。苦痛ではないが、嬉しくもない。勿論の事ながら、相澤先生との会話はなく、テンションの上がっている生徒達の会話を盗み聞きするぐらしかやることが無い。

 

 

「そう言やよォ。前々から思ってたんだけどさ」

 

 

赤髪のつんつん頭、名前は確か切島が思い出したように言った。

 

 

「志村先生と爆豪ってなんか似てね?」

 

 

プツンと何が切れる音が2つした。その音に気づいたのは2人に縁がある出久だけで、他の生徒達は気づいていない。逆に「似てる似てる」と盛り上がっていた。

バスの中はザワザワしていると言うのに、相澤先生は私の横ですぅすぅと寝息をたて静かに寝ていた。

 

 

「なんか喋り方って言うの? 似てるんだよな」

「そうそう!! キレた時なんか特にね!!」

「顔も似てるよねぇ」

「2人とも黙っとけば美人なんだけどな」

「お? これは意外と志村先生の隠し子説出てきたんじゃね?」

「いや、それはねーだろ。例えそうだと仮定して、爆豪産んだ時、志村先生幾つだ──」

 

 

切島は最後までセリフを言えなかった。何故なら、爆豪が思いっきり切島の顔面を爆発させたからだ。爆豪に顔面を掴まれた瞬間、反射で硬化していたからそこまでダメージは無かったものの、痛いものは痛い。

 

 

「何すんだよ爆ご──」

「誰がこいつの隠し子説だ!! 巫山戯たことぬかすのも大概にしろ!!」

「私の腹から産まれた奴がこいつだって!? 有り得ないね!! 絶対に有り得ない。生理的に無理だわ!!」

「あん? こっちだって願い下げたわ!! くそババア!!」

「そのくそババアに1度も勝ててない奴はどこのどいつだよ! 威勢だけじゃ何も出来ねぇんだよ!!」

「つーか、危ないから志村先生も爆豪も座れって!」

 

 

バチバチと爆豪と皐己の間で火花が飛び散る。止めようとするが止まることはなく、逆に火に油を注いでいっているように感じてくる。

 

 

「お、おい緑谷! なんでこんな喧嘩になったか、分かるか…?」

 

 

爆豪の幼馴染だとどこかで出久が言っているのを覚えていた切島は、思わず出久に助けを求めた。出久も出久で「…大体は……予想がつくかな」と小さく頷く。

 

 

「かっちゃんと皐己さんは……姉弟なんだよ」

「「え、ええぇぇぇ!?」」

 

 

バスの中で1-Aの生徒のこだまが響き渡った。

 

 

「確かに、志村先生は私達と歳が近く思えるもの。姉弟でも可笑しくないわ」

「で、でもよ…苗字が違うだろ?」

 

 

「真逆、複雑な家庭だったり…」と誰かが小声で言った。出久は「全然違うよ。普通に皐己さんは結婚してるんだ」と軽々しく生徒達にとっては爆弾発言をする。

 

 

「「え、ええぇぇぇ!?」」

 

 

2度目の叫び声がバスの中にこだまする。

 

 

「マジでか!? 結婚してたんか!?」

 

 

「何か意外……」や「爆豪と同じで志村先生もクソを下水で煮込んだような性格してんのに結婚って出来るもんなんだな」「う、羨ましい!! 俺もあのボッキュンボンとあんなことやこんなこと…ぐへへへ!!」「峰田サイテー」等々色々な感想が飛び出てくる。

 

 

「「おいコラ上鳴ィ!!」」

 

 

その中でも私と愚弟に標的にされたのは上鳴だった。「クソを下水で煮込んだような性格」が癪に触ったから名前を呼べばあの愚弟も同じタイミングで上鳴の名前を呼びやがった。私と愚弟はお互いを指さしながら言う。

 

 

「「こいつと一緒にすんなや!!」」

「「ちっ、真似すんな!!」」

「おいコラてめぇ、マジでいい加減にしろよ? ホントに殺すからな…調子乗んのもいい加減にしとけ」

「あ"ぁ? 今度こそ俺様が勝つ。これはもう決定事項なんだよ。てめぇ如きか覆すことなんて不可能だ」

 

 

座る気が無い私と愚弟は、互いに互いの胸ぐらを掴み、罵倒し始める。一気に上鳴からターゲットを変えた私達は思いっきり個性を使おうと発動するが、上手く発動できない。

 

 

「いい加減にするのはお前ら2人だよ」

 

 

怒りを含んだ声で言われた。勿論、言ったのは我らが1-Aを担任している相澤先生である。

 

 

「君ら本当にヒーローの卵とヒーロー? 普通バスの中でそんな派手な個性使わないでしょ」

 

 

ガンガンと私と愚弟の頭に相澤の鉄拳が落ちた。たんこぶが何個も積み重なっていく。凄く途轍もなく尋常ではなく痛かった。

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

「緑谷ちゃん、緑谷ちゃん」

「ど、どうしたの? つ、梅雨ちゃん」

 

 

僕の横に座っていた梅雨ちゃんが僕の肩をちょんちょんと叩いた。

 

 

「あの二人は昔からあんなに仲が悪かったの?」

 

 

現在進行形で相澤先生に怒られている二人に梅雨ちゃんは視線を移し言った。どうやら梅雨ちゃんから見るとあの二人は凄く仲が悪いように見えるらしい。……確かに、昔と比べると凄く悪くなったような気がする。顔を合わせる度に喧嘩なんてしていなかったし。

 

 

「小さい頃はすっごく仲が良かったんだよ。仲が悪くなったのは……多分だけど、皐己さんが雄英に進学して、体育祭が終わった頃だと思う」

 

 

 

確か僕とかっちゃんが小学4年生の時だったと思う。あの時のかっちゃんは、雄英に進学した皐己さんのことを凄く誇りに思ってた。色んな人達に自慢したりして、凄く楽しそうだった。

 

雄英の体育祭が近づくにつれて、ソワソワし始めて。かっちゃんのお母さんも僕のお母さんと話してる時に「楽しみにし過ぎて落ち着きがない」って困ったように話してたのも記憶にこびりついている。

 

普段、僕をいじめて来てたかっちゃんが体育祭の時は優しくて、かっちゃんのお母さんが「雄英の体育祭良ければ一緒に見ない?」って僕に言ってきた時も反論しなかった。

 

かっちゃんのお母さんの誘いを断ることも出来なくて、僕もかっちゃん家で体育祭を見たけど、テレビから張り付いて離れないかっちゃんは普段のかっちゃんとは全く違った。DVDに移す準備も万端で「永久保存だ!」と楽しそうに話している姿は年相応だった。

 

 

「てことはよ、爆豪ん家に行けば志村先生の体育祭が見れるってことかよ?」

「え? た、多分あると思うよ?」

 

 

「んじゃ今度、爆豪ん家押しかけてみっか!」と楽しそうに切島君は言った。す、凄いな。僕には絶対出来ないよ…。

 

 

「緑谷、今度爆豪ん家教えてくれよ! どうせなら一緒に行こうぜ!!」

「む、無理無理無理!! 絶対無理! 行くなら一人でお願い!!」

 

 

首を必死に横に振って断れば切島君は少し引いたような顔をして「そこまで嫌がることかよ…」と言った。かっちゃん家に押しかけるなんて、命がいくつあっても足りない。僕はまだ死にたくないんだよ。

 

 

「つーか、なんでその体育祭で仲が悪くなるんだよ」

「かっちゃんはね、その体育祭を見て皐己さんを更に尊敬して、かっこいいかっこいいって連呼してたんだけど…体育祭から帰ってきた皐己さんは、凄く不機嫌でね。かっちゃんのかっこいいって言葉で何かがキレちゃったみたいで……」

 

 

そこからは凄い喧嘩になった。最後はかっちゃんのお母さんが事態を収拾してくれたんだけど、ボコボコにした皐己さんもボコボコにされたかっちゃんも、凄い不機嫌で。で、その後、皐己さんは()()喧嘩を初めて。

なんというか、兎に角荒れてた。

 

1位、凄いと思うんだけどなあ…。

 

なんで皐己さんはあんなに荒れてたんだろう。今でも僕はよく分からない。



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第6話

言うのが遅くなってしまいましたが、作者は原作を持っていません。アニメをちょくちょく見ながらこの話を書いているので、基本アニメ沿いとなります。


あの説教の後、何故か私だけ反省文(1500枚)を言い渡された私は不貞腐れながら、スペースヒーロー13号の話を適当に聞き流していた。

 

くどいし、長い。ウザイ、帰りたい。私の居る意味あるか、なんて悶々と考えながら突っ立っていること何分たったことか。漸く13号の話が終わった。

 

 

「以上、ご清聴ありがとうございました」

 

 

13号がそう言ってお辞儀をすれば、生徒は「素敵〜」やらなんやと言って拍手をし始める。合理的な相澤先生がそれをずっと放っておくことも無く、U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)の中に入ろうとした時だった。

 

ヴィランが襲ってきた。

 

その気配にいち早く感ずいたのは私と相澤先生で、相澤先生は素早く、生徒達に的確な指示を出す。

 

 

「ひとかたまりになって動くな! ……13号、生徒を守れ!」

「……なんだありゃ…?」

 

 

漸く生徒達もヴィランの存在に気づいたらしい。しかし、まだヴィランだと認識出来ていないのか「入試の時みたいにもう始まってるパターン?」なんて呟いている。

それにしても薄気味悪い。なんだあの黒いモヤは。そんな黒いモヤの中からは大量のヴィランが、ぞろぞろと出てきていた。

 

 

「…あれはヴィランだ!」

 

 

相澤先生のことの一言で漸く生徒達も気づいたらしい。まだヒーローの卵とはいえ、気づくのが遅すぎる。

 

 

「13号、避難開始。学校に電話しろ。センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の奴が妨害している可能性がある。上鳴! お前も個性で連絡しろ」

 

 

相澤先生の指示に上鳴は「うっす」と気の抜けた返事をした。その指示を聞いて出久が「先生!」と相澤先生に話しかける。

 

 

「先生達は2人で戦うつもりですか!? あの数じゃいくら2人でも……」

 

 

出久の言い方にカチンときた。その言い方じゃまるで、2人では勝てない、無謀だと言っているように聞こえる。

 

 

「バカか。舐めんな。例えイレイザーが居なくても一人で殺しまくってやるわ」

「勝手に俺を消すな」

「出久。お前は、愚弟の次に私を見てきた筈だろ。今までのお前は私の一体何を見てきた。私はあんな数だけの奴らにやられるタマしてねぇんだよ」

 

 

例え2人で殺れなくとも、倒せない相手でも殺らなくてはならない。せめて、生徒達が逃げる時間を確保しなくてはならない。それは教師の仕事であり、ヒーローの仕事でもあるからだ。

 

 

「……13号、任せた」

 

 

相澤先生の言葉に13号は頷いた。

それを見て私と相澤先生は、ヴィランのいる方へと飛び出す。私達が突っ込んでくる所を見てヴィランはブツブツと何かを言い始めた。

 

 

「2人で正面に突っ込んで来るとは──」

 

 

全てを言い終わる前に私と相澤先生で片付けていく。ヴィランの戯言に付き合ってる暇はねぇからな。相澤先生がヴィランの個性を消し、私が爆破してぶっ殺す。

 

ここで私の個性の説明をちょいとしよう。

私の個性は【爆破】。愚弟と同じようで()()()()()()。ニトロのような汗から着火させ、爆発を起こすことは愚弟とまるっきり同じだ。着火させた後が少しだけ違うのだ。

爆発の威力だけで言えばきっと愚弟の方が強いだろう。まだ、流石に負けてはいないと思うが、個性の訓練をしていけばきっと愚弟の方が威力は強くなっていく。そこは断言出来た。

違うところと言えば、私が爆破させた物が()()()ということだろうか。爆破の威力が少し弱い代わりに溶ける。芦戸のように溶かすことに特化した訳では無い。が、溶ける。物は勿論の事、人だって溶かすことが出来る。だからこそ、人に使えば凄いことになる。良くて重症、悪くて死といったところか。

 

 

「加減はしてやる。が、あんまりアテにすんなよ。私は加減が苦手なんだ──!!」

 

 

目の前のヴィランが「ひぃ!!」と小さな悲鳴を漏らした。

私と相澤先生が雑魚と戦っていると、避難を開始しようとしていた13号達の前にヴィランが現れる。あれは…薄気味悪い黒いモヤか。

 

 

「(しまった! 一瞬の瞬きの隙に1番厄介そうな奴を!!)」

「イレイザー!!」

「わかっている!!」

 

 

生徒達の場所へ戻ろうとするが、雑魚が邪魔をして戻れない。

 

 

「ちぃ!! 雑魚が出しゃばってんじゃねぇ!! さっさとくたばれや!!」

 

 

13号達の方をずっと気にかけていれるわけでもなく。着々と雑魚を倒していくが、中々消えない。横目で相澤先生の方を見てみれば、相澤先生は早くもボスっぽい奴と戦闘に入っていた。ズリぃなくそ!!

 

 

 

「あはは!! どうもどうも!!」

 

 

ピエロのは仮面をつけたそいつは黒いモヤよりも薄気味悪く、不気味だった。高揚しているのか、声のトーンは高く、まるで友達と遊んでいるかのような声で、傍から聞けば楽しそうな声に聞こえる。

 

 

「弱い! 弱いねぇイレイザー!! 君の髪が下がる瞬間が瞬きをしている瞬間なんだろう!!」

 

 

そう言って、相澤先生の肘をぐっとピエロは握ると、ボロボロと相澤先生の肘が崩れていく。

 

 

「もう既にイレイザー、君にマーキングは済ませてあるよ! 後は消すだけだね!!」

 

 

「あはは! あははは!!」と楽しそうに笑う姿は壊れたおもちゃに見える。

 

 

「でもね、でもねヒーロー!! 残念ながら本命はボクじゃないんだよ!!」

 

 

私がある程度、雑魚を消し、相澤先生の援護に向かおうとすれば、相澤先生の後ろに脳を丸出しした気持ち悪い奴が立っていることに気づく。

ゾクリと身の毛がよだつ。アイツは何かやばい気がした。あのピエロ単体でも十分にやばい。しかし、更に相澤先生の後ろに居るやつはもっとやばいような気がした。私の野生の勘と女の勘がそう告げていた。

 

 

「イレイザー!!」

 

 

私が動くよりも先に、脳丸出し(ピエロは脳無と呼んでいた)が動いた。一瞬にして相澤先生は捕まり、地面に叩き潰され、腕を折られた。

 

 

「んにゃろ!!」

 

 

私は脳無に突っ込んで爆破を起こす。が、脳無はビクともすることなく私の手首を掴み、相澤先生の時と同じように地面に叩きつけた。

 

 

「んぐっ!!」

 

 

BOOM!! BOOM!! と爆破させるが、脳無は私を全く相手にしようとはしない。小枝を折るかのように、私の全身の骨を折っていく。

 

 

「〜〜っ!!」

「大丈夫か! 爆豪!!」

「〜っ!! 大丈夫に決まっとるわアホ!! 私よりも自分の心配しろ!! つーか爆豪じゃねぇって何回言わせれば気が済むんだ!!」

 

 

全身に痛みが駆け回る。正直、大声を出すだけで傷が痛む。

 

 

「死柄木」

 

 

ピエロの横に黒いモヤが現れた。見たところワープ系の個性らしい。

 

 

「な〜に? 黒霧。今、面白い所だから邪魔しないで欲しいんだけど」

「……13号は行動不能に出来ました。しかし、散らし損ねた生徒がいまして……」

 

 

黒霧という奴の報告を聞き、死柄木と呼ばれたピエロは先程とは違う、真反対の低い声で「はあ?」と言った。

 

 

「黒霧、君がワープゲートじゃなかったら殺してたよ。あーあ。ゲームオーバーだ。あーあ、あーあ。………帰ろっか」

 

 

今、こいつは確実に「帰ろっか」と言った。あいつらの呟きを聞いていれば、この場にはオールマイトを殺しに来たらしい。しかし、オールマイトを殺すどころか、一目も見ることなく帰ると。そんなことをしていれば、ヒーロー達の警戒態勢が強くなる一方で、ヴィラン側からしてみればいい事なんてひとつも無い筈だ。一体、一体、あいつらは何がしたい。

 

 

「でも、タダで帰る訳にも行かないし、ねぇ…。どうせなら、平和の象徴の教師をへし折って帰ろうか!」

 

 

そう言って、ピエロは走り出した。ピエロが向かった先には、出久、蛙、ブドウがいた。

蛙の子がピエロに触られそうになる。ついさっき、あのピエロが触った瞬間、相澤先生の肘が崩れた。もしあいつが転弧と同じような個性を持っていたとしたなら、あの子はやばい。

 

しかし、ピエロは蛙の子に触れる寸前でやめた。

 

 

「本当にかっこいいねぇ。ここまで来ると惚れ惚れしちゃうよ、イレイザー…」

 

 

相澤先生は脳無に押さえつけられているにも関わらず、ぐっと頭を上にあげ、ピエロの個性を消していた。

脳無は一体しかいない。一体で私と相澤先生を拘束していた。しかし、今、脳無は相澤先生に気を取られている。そうなると私の方の拘束は緩むわけで──。

 

全身に電気が走ったかのように痛む。当たり前だ、骨を折られているんだから。痛いに決まっている。でも、それでも、私は教師であり、ヒーローだ。

 

 

「ヒーロー舐めんなよくそピエロがぁぁぁ!!!」

 

 

咄嗟に脳無の拘束から抜け出し、出久達を助けるべく、ピエロの方へ一歩、踏み出した。BOOM!!と音を立て、私の掌から爆発が起こる。その爆発を推進力に変えて、ピエロの方へ突っ込んで行く。

 

 

「派手に爆破して溶けて死ねやボケぇぇ!!」

 

 

右手から大きなBOOM!!と音がなる。ピエロに上手く当たった筈だ。その後、私がいるというのに、出久まで突っ込んできてSMASH(?)を撃つ。出久の風圧で私は飛ばされた。

 

 

「上手くいったか!?」

 

 

私と出久のツーコンボ。上手く行けば無惨な死体を見せびらかせ、死んでいる筈だ。煙でよく見えなかったものが段々と晴れていく。ピエロが立っていた場所には、さっきまで私を拘束していた脳無がいて、ピエロが受けるはずの攻撃は脳無が全て肩代わりしたという状況を直ぐに私は理解した。

 

 

「効いて…ない!?」

「マジかよ。かすり傷ひとつついてねぇぞこのバケモノめ」

 

 

易々と私達の攻撃を受けきった脳無は、バケモノとしか言いようが無かった。深手は負っているものの、今出せる最大火力をぶっぱなした私。勿論、出久だってそうだろう。なのに、なのになんだあいつは。攻撃を受けたことにも気づいていないかのようにして、立ってるじゃねぇか。正直、勝ち目がないと思ってしまった。

 

そして、一瞬にして脳無に腕を掴まれた出久、それを助けようと舌を伸ばす蛙、ビクビクと怯えるブドウ。気が緩んだ隙に乗じて、蛙とブドウを殺そうと手を伸ばすピエロ。私はブドウと蛙を助けようと、痛む足を無理して動かし、痛む腕を気にすることなく必死に伸ばした。

 

その時だった。バン!!と大きな物音がする。ピエロはその物音が気になったのか、物音がした方向──USJの入口を見た。

 

 

入口は煙で覆われていて見えない。しかし、暫くするとその煙も無くなっていき、よく見えるようになる。カツカツと足音がする。そして聞こえたのは──。

 

 

「もう大丈夫。私が来た…!!」

「……オールマイト!!」

 

 

ブドウが叫んだ。蛙は涙ぐんだ声で「けろぉ」と呟く。そして出久は「オール……マイト」と神妙な声でオールマイトの名を呼んだ。

 

 

「待ってたよヒーロー。……社会のゴミめ」

 

 

ピエロはオールマイトを見てそう呟いた。

オールマイトは、残っていた雑魚を一掃し、血だらけになって倒れていた相澤先生を助けた。そしていつの間にか私も出久も蛙もブドウも、オールマイトに助けられていた。

 

 

「皆、入口へ!! 相澤君が意識がない!! 早く!!」

 

 

助けられた安心感だろうか。自分の中で張り詰めていたものがプツンと途切れる。一気にさっき以上の痛みが全身に襲いかかって来て、意識が途切れた。

気がつけば、闇の中だ──。




【名前】 死柄木(?)
【性別】 ???
【個性】 ???
【容姿】
ストレートな銀髪を腰まで伸ばし、ピエロの仮面をつけている。服装も、白を基調とした道化師の格好。身長は高いが、それはヒール付きのブーツを履いているからでもある。
【備考】
・表情は見えないが、喜怒哀楽はわかりやすい。
・ヴィランということもあって、人を殺すことに躊躇はない。
・全てが謎に包まれている──。


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第7話

誤字報告、感想、色々とありがとうございます
とても励みになっております

なんか色々とオリジナルです(アニメで探すのが面倒になった)


「あ、あの!! 先生達は…大丈夫なんですか…?」

 

 

ちらほらと軽傷ではあるが、怪我をしている者が沢山いたので、まとめて1-Aの生徒を病院に連れてきた塚内は、教師(ヒーロー)を心配する生徒の声に優しく微笑みかけた。

 

 

「大丈夫。イレイザーも13号も命に別状はない」

「し、志村先生は──…」

「志村? ああ、アテリアのことか。アテリアは──」

 

 

塚内はそう言って振り向く。この先の廊下に何かあるのだろうか。塚内の行動に理解出来なかった生徒達は先の廊下を凝視した。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

小さい声だが、話し声が聞こえる…ような気がする。

暗くて分からないが、誰かがいる…ような気がする。

 

 

「なあ、オールマイト。この事件のおかげで、相澤先生は反省文のことを綺麗さっぱり忘れてくれてると思うか?」

「うーん。どうだろうか。相澤君のことだから、そういうのはきっちりと覚えているんじゃないかな?」

「うっし。……消すか」

「ちょ、ちょちょちょ!! 志村少女! 一体君はその右手に持っている金槌で何をするつもりだい!?」

「「志村先生、めっちゃ元気!?」」

 

 

奥から見えた人影はオールマイトと皐己だった。皐己は右手に何故か金槌を持っていて、オールマイトがそれを取り上げようとしている。

 

そんなオールマイトとあーだこうだと争っている皐己を見てA組の生徒は叫んぶのだが、2人が生徒達に気づく様子はない。

 

「ここは病院だから静かにしようね」と塚内が生徒達にやんわり注意したが、生徒達にも勿論、オールマイト達にも聞こえてはいなかった。

 

 

「あの人、確か全身複雑骨折の筈だよな?」

「両手足、折れてる人が松葉杖なんて使えるのかよ?」

「人間? あの人、本当に人間なん?」

「つーか、まじ元気だな」

「何食ったらあんなに回復力上がんだよ爆豪」

「知るか。喋りかけるんじゃねぇ」

「あの大きな谷間で癒されたいぃぃぃぃ!!」

「峰田、お前は1回、志村先生に殺されてこい」

 

 

ギャーギャーと騒ぐ2人の先生を見て嬉しそうに生徒は話し始める。あまりの回復力に恐怖を覚えるが、何がともあれ元気なことが1番だ。

 

 

「良かったな爆豪。志村先生、元気そうじゃん」

「あ"? 別に心配しとらんわ」

 

 

「けっ」と舌打ちをしたかと思えば、何処かへと歩き始める爆豪。行き先も告げずに行くので、慌てて切島が爆豪の後を追う。

 

 

「おい爆豪待てよ!」

「あ"ん!? ついてくんなや!!」

 

 

切島から逃げるようにスタスタと歩く足を早める爆豪。しかし、切島は逃がす気がないのかニコニコとした笑顔で爆豪の隣を着いてこようとする。こいつ、諦める気ねぇな、爆豪は頭が悪い人間では無いので一瞬にして理解した。ダルそうに足を緩め速度を落としていく。

 

 

「爆豪、お前、意外と優しいやつだろ?」

「はあ? きめぇこと言ってんじゃねぇ。気色悪ぃ」

「その言葉遣いと悪人面をどうにかした方がいいぜ!」

「殺されてぇか!?」

 

 

爆豪の掌の上で火花が飛び散る。それを見ても切島は臆することなく「本当のことだぜ?」なんて言って笑った。

 

正直言って爆豪は拍子抜けした。「けっ」とまた舌打ちをひとつ漏らす。

 

爆豪が来た場所はトイレでもなく勿論、皐己の病室でもなく、通話が出来る通話可能区域だった。椅子が置いてあるにも関わらず、爆豪は座ることなく携帯を懐から取り出し、電源を入れる。

 

 

「(意外とそーいうとこ守ってんだな爆豪って)」

 

 

切島は椅子に座り爆豪の様子を静かに観察していた。爆豪が嫌だと言えばやめるが、爆豪はどうやら気にしていない様子なので観察を続ける。

 

爆豪は携帯の電源を入れると、電話帳を開いた。下に画面をスクロールしていき、「クソ転弧」と書いてある場所をタップする。

 

 

「(電話すんのか。俺、離れた方がいいな)」

「…急に気ぃにきかせんじゃねぇ。別にそこいていいわ」

「お、おう」

 

 

爆豪がいいなら…。切島は大人しく先程座っていた椅子に座り直した。爆豪の方はどうやら連絡か繋がったらしく、喋り始める。

 

 

「あ"? …んなくだらねぇ用事でてめぇなんかに掛けるわきゃねーだろ。あのアホだ。ああ、どーせ連絡行ってねぇだろうと思ってよ。……おう。ヴィランにな。ああ。医者の話じゃ全身複雑骨折らしいぜ。あん? アイツがピンピンしてっからだろーが。普通に歩き回っとるわ! 迎え? んなもん要らねーだろ。一人で帰れらせろや! おう、おう。絶対ぇ嫌だ。知るか。 あ"あ"!? ……死ね!!」

 

 

ブツッ!と豪快に通話を切った爆豪。ちゃっかり聞き耳を立てていた切島は「さっぱり分からねぇ…」と呟いた。どんな内容なのか全くもって理解できない。分かることと言えば、爆豪が切る少し前も通話相手は喋っていたことだ。普通にぶつ切りしていたが、怒られないのだろうか。

そんな切島の心配も他所に、爆豪がまた動き出す。それを見た切島は慌てて追いかけた。

 

 

「なあなあ。さっきの相手誰なんだ?」

「…あのアホの保護者だ」

「アホ? 志村先生の事か?」

 

 

切島が爆豪に問いかければ爆豪は否定をしない。ということは間違ってないのだろう。

 

 

「保護者って……あー!! 噂の婚約者か!! もしかして迎え来んのか!?」

「来ねーよ。家近いから一人で帰らせるわ」

「…やっぱり入院はしねぇんだな。……回復力パネェ…」

 

 

切島の言葉に爆豪は否定もしなければ、肯定もしなかった。可愛くない奴だ。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「君ね。限度があるだろう?」

 

 

私、爆豪皐己は顔なじみの医者に愚痴愚痴と怒られていた。

 

 

「私は職業柄、君の()()()()()()を知っているが、あんなにも分かりやすく個性を使う馬鹿が何処にいる」

「ここにいんだよ」

 

 

不貞腐れた様子で私が言えば、目の前の医者は眉間をつまみながら「君ねぇ…」とため息をついた。馴染みの医者だ。こいつが頭を抱える姿なんてとうに見飽きているので、天井のシミでも数えようかと上をむく。

 

「話は終わってないよ。君の話を聞かないところも、本当に変わらないね」

「そりゃ私だからな。変わらんよ」

「最近は来ることが少ないと思ってれば、こうやって急に押しかけてきて……」

 

 

別に好きで押しかけてきている訳では無い。これも全て、私の未熟さと街で暴れたりするヴィランが悪い。

 

 

「しかし、最近はヴィラン系ヒーローだの戦闘狂ヒーローだなんてあだ名をつけられてないし、テレビでも見なくなったからすっかり公正したのかと思えば、全然変わってないねぇ」

「人はそう簡単に変わらねぇ」

「少しは変わる努力をしたらどうだい?」

 

 

「例えば、調子に乗って直ぐ個性を使ってしまうところとかね」と医者は言った。

 

 

「それは一体()()()の個性を言ってる?」

「どっちもだよ」

 

 

私は珍しい個性らしい二つ持ちだ。二つ目の個性を知っているのは仕事柄、知る必要性があった目の前の医者と雄英の校長、リカバリーガール、そして私が心を許している転弧の四人だ。

 

 

「君の二つ目の個性はそう易々と公言していい個性ではないんだ。ちゃんと、制御しながら使わないと」

 

 

「んなこたぁ分かってる」そう気だるげに言えば「本当に分かってるんだろうか」と心配げな声が聞こえてくる。

 

 

「てめぇ、私が何年この個性と共にしてきたと思ってる。言われなくても分かっとるわ」

「君は頭はいいけど、性格面というか人間性が馬鹿だからねぇ。何かと心配なんだ。高校の時とは違って転弧君がいつも傍にいるわけではないんだし」

「……てめぇ、ぶち殺してやろうか」

「君だと本当にやりかねないから怖いね」

 

 

そう医者は全く恐怖心を持っていない顔でケラケラと笑った。つくづく私を馬鹿にしてきやがる。

 

 

「張り切るのもいいが、張り切りすぎるのはいけないよ」

 

 

そう言って私の頭を撫でてきたので思いっきり爆発してやった。そのヘラヘラ顔、私の爆破で少しは矯正してるといいな。

 

 

「…君ねぇ。相澤君の時と言い、やっぱり馬鹿だろう」

 

 

反省文から逃れようと、相澤先生の頭をかち割って記憶ごと飛ばしてやろうかと思ったのだが、オールマイトと生徒、そして目の前にいる医者に止められて未遂に終わった。因みに、みんなが寝静まった頃にまたここにやってこようかと思っている。

 

 

「相澤君の所だけ、警備でもつけておこうか」

 

 

ちっ。伊達に医者やってねぇな。心を読む個性なんて持ってねぇ筈なのに、私の心読みやがった。

 

 

「君は実に分かりやすいね。顔に出る」

「いっぺん死ね」

「君がいっぺん死んで、その足りない頭を治してきなさい」

 

 

医者の言うことじゃない。警察にでも出してやろうか。いや、それは私が困るから無理だな。

 

 

「普通、ヒーローが医者の顔を爆破しないからね? 僕が回復系の個性を持ってたからいいものの、持ってなかったら今頃溶けて凄いことになってるよ」

「それまで計算してのことだ。私は天才だからな」

「天災の間違いだろう? 知ってるよ。身に持って知ってる」

「……死ね!!」



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