ハイスクール/Apocrypha 01 自分探しのテロス・カルマ (グレン×グレン)
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本編

この作品は「マジでFate世界線から転生者が出てきたとしてもこんな感じになる」でなっております。

つまり「サーヴァントを召喚するにしても、その世界の英霊が召喚されるだろう常考」という感じです。

その辺、ご注意ください


 

 

 それは、単純な思い付きだった。

 

 何となく自分探しの旅をして、その結果ナンパができればいいと思っただけの事である。

 

 それも、一人で行く事でカッコつけたいという馬鹿らしい考えだった。

 

 その考えを素直に両親に話せば、貯金がそこそこ貯まっていた事もあって、働いて旅費を何時か返してくれればいいとあっさり承諾された。

 

 悪友二人には殴られたが、自分達も同じ事をすればいいと判断され、比較的あっさりと承諾された。

 

 そして日本の九州辺りをターゲットに、あえて観光地ではなく適当な地方都市を選択する。

 

 これもまた大した理由ではない。自分探しの為の流浪の旅なのだから、観光旅行と同じ感覚だとまずいだろうと判断しただけだった。実にくだらない価値観である。

 

 ……だが、その結果、彼の世界は大きく変わる事になる。

 

 彼の想定外の事態は、それを思いついた事が一種のバタフライエフェクトによるものだった事だった。

 

 一人の少年が、異なる世界より転生する。そもそもの原因は、一柱の偉大なる神の死にある。それらの要素による世界の歪みが、少年にこの決意を抱かせた。

 

 だというのなら、これはきっと運命なのだろう。それこそが、本来より僅かに早く、しかし盛大に少年を大いなる世界のうねりに巻き込む事になる。

 

 その運命に見初められた少年の名は、兵藤一誠。

 

 そして、彼が無作為に選んだ地方都市。その地方都市は九州においては冬が長く、また外国人が比較的多い土地柄だった。

 

 その地方都市、異なる世界ではこの名で呼ばれる。

 

 冬木市、と。

 

 その日、少年は運命に出会う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだよ、これは!!」

 

 目の前で行われる殺し合いに、兵藤一誠は狼狽する。

 

 血しぶきが舞い、女性が一人斬首される。

 

 こんなところに来た理由は、簡単だった。

 

 たまたま美人を見かけて、何となく後ろを追いかけてしまったというスケベ極まりない理由。警察に通報されたら補導されて説教確定である。

 

 だが、その方がマシだったのかもしれない。

 

 それほどまでに、人間が斬首される光景は一誠にとって衝撃的だった。

 

 無理もない。彼は殺し合いとは無縁の、平和な日本の青少年である。

 

 いきなりこんな光景を見せられて、吐いてしまうのも狼狽するのも当然の事だろう。

 

 そして、胃の中のものを全部吐き出した時、一誠は見てしまった。

 

 ……まるでゲームに出てくるモンスターのような、自分を殺そうとする化け物の姿を。

 

 その瞬間、一誠は死を覚悟し―

 

「……せめて、童貞を卒業してから死にたかった」

 

 そう、ぽつりと漏らして気を失いかけて―

 

「危ないです!!」

 

 その瞬間、誰かに抱えあげられてビルの屋上をより高いところから見下ろすという稀有な体験をした。

 

 しかし一誠にその感覚を味わう余裕はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか!? 安全なところまで送ります、だから逃げて―」

 

「お、おっぱい!? 生乳!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―初めて感じるおっぱいが体に当たる感覚を堪能するのに必死だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、聖杯戦争?」

 

「はい。サーヴァントの魂を贄にして願望を叶える儀式にして、それを奪い合う殺し合い。あなたはその戦いに巻き込まれてしまったんです」

 

 アサシンを名乗るその女性は、自身が知りうる情報を「当然の権利」として説明し、そして一誠に逃げるように言う。

 

 だが、一誠はそれに納得できなかった。

 

「あんたはそれでいいのかよ? 願いも叶えられずに、俺を助けた所為で敗退するなんて―」

 

「自業自得です。私はそういう女ですから」

 

 静かに微笑むアサシンは、趣味と実益を兼ねた暗殺を行なうマスターに召喚されたので、そうだと語る。

 

 たった一度の殺しで自信をつけて、適当に聞いたこの儀式に参加し、自分の真名を知る前に死んだ愚かな女。嫌悪の対象ともいえるが、しかし自分も人の事は言えない。

 

 勝手な愚者の思い込みで、周囲にとって悪魔とは言えど、自分に優しくしてくれた男性を殺した。そしてその結果、自分の願いとは真逆の方向に国は進んでしまった。手前勝手な殺人を犯した意味では同類で、故国に大きな影響を与えたという意味では自分の方が悪いと。

 

 そして彼女は自虐的に微笑み。そのまま一誠を逃がす為に、追撃する魔獣達を引き受ける。

 

 だからこそ、一誠は逃げれなかった。

 

 事情は深く知らない。だが、そんな同情されてもいいような事情を、自分を逃がす為に言ってのける彼女が悪い人だとは思えない。

 

 だから、彼は無理やりにでもなんとかしようとする。

 

 とにかくまずは警察に連絡しようとして―

 

「……なるほど、これはまずい」

 

 その光景を、魔獣を使役する少年に見つけられる。

 

「他のサーヴァントとマスターは仕留めたけど、このままだとややこしい事になるね。君、そもそもなんで認識阻害が通じてないんだい?」

 

 興味深げにそう聞く少年は、しかし遠慮なく一誠を殺そうと魔獣を差し向ける。

 

 助けに入るアサシンだが、しかし霊体であり使い魔である彼女は、依り代と力の供給がなければロクに戦えない。そも、彼女は異能によって強引に戦闘を成立させているだけで、本来ならこの場で最も弱い。

 

 当然のごとく魔獣達に追い詰められ、アサシンはそれでも一誠を庇おうとする。

 

 だからこそ、兵藤一誠という少年はアサシンを庇った。

 

「駄目です! あなたではこの魔獣は!!」

 

「女の人に庇ってもらって、このまま逃げるなんてできるかよ!!」

 

 このままでは一誠は死ぬ。

 

 それは認められない。納得できない。

 

 アサシンは、自分の愚かさの所為でまた罪なき人々が死ぬ事が納得できなかった。

 

 だからこそ、願った。

 

 神でもいい、悪魔でもいい。聖杯でなくてもいい。だからお願いだ、この願いだけは叶えてくれ。

 

 どうか、この少年が助かる為の力を―

 

 むろん、神は願いを叶えない。世の人々が思うほど、神は全てを見通せるわけではない。

 

 そして悪魔も願いを叶えない。それも悪魔の願いは契約に則る。契約を結べない状況では、とても難しい。

 

 そして聖杯も無理だ。この段階ではサーヴァントが聖杯で願いを叶える事はできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『面白い、まさかこんな形で俺を目覚めさせるとは思わなかったぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、力になってくれる龍は、兵藤一誠の中にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠より放たれるオーラと共に、契約はなされる。

 

『よく分からんが、とりあえずこれで契約は成立したようだな。これでお前はその女の主だ、相棒』

 

「え、え、俺の左腕ぇええええええ!?」

 

「え、ど、どういう事ですか、これは!?」

 

 突如、一誠の左腕に赤い籠手が形成される。

 

 状況を一誠もアサシンも理解できない。訳が全く分からない。

 

 だが、その光景を見て少年だけは状況を把握した。

 

神器(セイクリッド・ギア)!? なるほど、高位の封印系ゆえにその存在が無自覚に認識阻害を突破したのか」

 

 ふむふむと納得した少年は、そのまま魔獣達を差し向ける。

 

 その光景に慌てる一誠とアサシンだが、しかし籠手からは安心させるように声が響いた。

 

『安心しろ、相棒にアサシン。既に今の倍加時間で撃破できる。ほら相棒、腕を前に出して力を放つイメージをしろ』

 

 そうした。

 

 腕からビームっぽいのが出て、廃工場ごと魔獣達を吹き飛ばした。

 

 もはや言葉もない。一周回って冷静になり始めた。

 

 特撮ドラマレベルの超人バトルものかと思ったら、インフレ少年漫画バトルのような世界だったと知って冷静になれるわけがないだろう。

 

 そして、その光景を見て少年は笑う。

 

 面白そうに、しかし同時に、狂気的に。

 

 そして新たな魔獣を呼び出し、その上に跨ると少年は飛び上がった。

 

「面白い! 今から三十分後にサーヴァントを君達に差し向けるよ。撃破出来たら見逃してあげるし、聖杯も使わせてあげるね」

 

 そう告げる少年は、一誠を見る。

 

 厳密には、一誠の籠手を見る。

 

 そして、面白そうに告げた。

 

「初めまして、赤い方の二天龍。目覚めたとたんに今代を殺すかもしれないけど、そこはごめんね」

 

 その挑発的な言葉に、赤い籠手からは不敵な声が漏れる。

 

『面白い。今代の魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の担い手は中々不可思議な使い手のようだ』

 

 そして、二人―と言ってもいいかどうか―は何か通じ合うと、そのまま離れる。

 

「す、すいません。一蓮托生になってしまいました……」

 

「いや、その前に状況を説明し直して欲しいんだけど……?」

 

 最悪の展開になったと謝りたおすアサシンと、もう状況にまったくついていけてない一誠を置いてけぼりにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリテンの赤き龍と白き龍。赤龍帝と白龍皇と呼ばれる、二天龍。

 

 その一角である赤龍帝ドライグを宿す、13種類存在する聖書の神が作り上げた神すら殺す力、神滅具(ロンギヌス)

 

 神器と呼ばれる聖書の神が人に与えた異能の中でも、究極と称されるその異能を宿した者の一人が、兵藤一誠だった。

 

 そして、その赤龍帝の籠手より上位と呼ばれる四つの上位神滅具。

 

 その一角。イメージに則って魔獣を想像し、そして思い通りに使役する魔獣創造。

 

 その力を持つ者が、あの少年だった。

 

 その説明をした、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に宿るドライグの説明を聞いて、一誠はそれに賭けるしかないと確信する。

 

 そして、アサシンも覚悟を決め、自分の来歴を説明する。

 

「私の真名はシャルロット・コルデー。暗殺の天使と称された、愚かな女です」

 

 シャルロット・コルデー。それはフランス革命期において、穏健派の革命推進派に属していた一人の女性。

 

 既に政治的権威を失っていた過激派ジャン・ポール・マラーを、素人にも関わらず圧倒的なスピード暗殺であっさり成功させた存在。その結果、新たな指導者になっていたマクシミリアン・ロベスピエールによって上手く利用されて恐怖政治が加速するという結果に終わった、皮肉な暗殺を成し遂げた女性。

 

 アサシンが願うのは、たった一つの事だった。

 

「とても浅ましい事なんです。犠牲者の鎮魂でも、過去のやり直しでもない。……私は、間違えない人生を今度こそ生きたかった」

 

 そう自重するアサシンに、一誠は手を握って告げる。

 

「……よく分かんないし、俺とか色々失敗だからけだからそんな事できるかどうかも分からない。だけど、俺、約束するよ」

 

 一誠は、一つだけ分かっている事がある。

 

 それは、アサシンは自分の願いを投げ捨ててでも一誠を助けようとしてくれた事だ。

 

 そんな優しい彼女を放っておく事など、一誠にはできない。

 

 だから、兵藤一誠は約束する。その為に全力を出す事を心から誓う。

 

「俺を助けた事は間違ってなかったって、そう思われるような生き方をして見せる」

 

 その言葉に合わせるかのように、最後のサーヴァントが現れる。

 

 そして、魔獣をスピーカー代わりにして、少年がその名を告げる。

 

『彼のクラスはバーサーカー。真名はジョゼフ・ギヨタン。……この聖杯戦争は僕が勝つ為の出来レースなのさ』

 

 少年は告げる。この聖杯戦争はこの街で行われた「フランス革命展」に運び込まれたギロチンを触媒に、フランス革命の人物をマスターの側面を追加触媒として召喚する儀式であった事を。

 

 そして一部のマスターはそれを逆手にとって予備の触媒を用意して比較的戦闘技術の有りそうなサーヴァントの召喚を試みた事を。

 

 それら全てを開催者ゆえに予測できていた少年は、更に裏をかいてギロチンそのものを宝具という

サーヴァントの固有能力で使用できるだろう、ギヨタンの召喚に踏み切った事を。

 

「彼の願いは自分の殺戮を代償に、召喚された国の死刑廃止を行なう事。ゆえに彼は止まらないんだよ」

 

 そして振るわれる断罪の刃。

 

 斬首もしくは落下による断絶の形で振るわれるその刃は、罪を持つ者に対して攻撃力がまし、更には「処刑」で終わったサーヴァントに対する必殺性を発揮する。

 

 故にこそ、覗きの常習犯である一誠にも多少は効果が増大化し、更にはギロチンで斬首されたシャルロットにとっては天敵。

 

 その圧倒的な相性さで追い詰められる一誠とシャルロット。

 

 こうなればとシャルロットは、マスター権限である令呪で相打ち狙いの特効をするように願うが、一誠はそれだけは認めない。

 

「誰が何と言おうとしてたまるかよ!! 俺は、シャルロットを助けるって誓ったんだ!!」

 

 そして圧倒的に不利な相手に、一誠は立ち向かう。

 

 斬撃の軌道が比較的単調なのを利用し、何とか善戦する一誠だが、しかしそれでもサーヴァントとの力の差は揺るがない。

 

 その光景を見て、断罪の概念でボロボロのシャルロットは思う。

 

 心から願う。

 

「お願いだから、私に彼を助ける力をください、神様……っ」

 

 繰り返すが、神はこの窮地を助けない。

 

 そも、シャルロットが願う神には、もはや人を助ける事などできはしない。

 

 だが、シャルロットに宿る神が残した力が、その願いに応えた。

 

 ついに体力が追い付かなくなり、斬首の一撃をしのぎ切れない一誠に彼女そのものが宿る。

 

 その瞬間、兵藤一誠の全身が、赤い鎧に包まれた。

 

『……この土壇場で至るのか!?』

 

『え、これは……いったい?』

 

「こ、今度は何なんだよ、ドライグ!?」

 

 その光景を理解できるがゆえに驚愕する少年。

 

 自分が一誠と一つになった事に驚愕するシャルロット。

 

 そして、もう状況に追いつくどころか三周ぐらい追い抜かれている一誠。

 

 そんな中、ドライグはあまりの事態に大笑いをしでかした。

 

『おいおいマジかよ。シャルロットお前、こんな隠し玉をもってやがったのか!!』

 

 その力の正体を、ドライグは簡潔にだが告げる。

 

『こいつは神滅具だ。それも、この土壇場で禁手に至りやがった!!』

 

 その神滅具の名は、究極の羯磨(テロス・カルマ)

 

 あり得ない可能性を引き寄せる、十三番目の神滅具にして、最も忌み嫌われる神滅具。

 

 シャルロット・コルデーという一般市民に、前代未聞の大暗殺を成功させた陰の立役者。

 

 彼女が無自覚ゆえに彼女自身理解してなかった力は、しかしそれゆえに彼女の思いによって真価を発揮する。

 

 それこそが神器の究極系。一段上の真価を行う、禁手(バランス・ブレイカー)

 

 兵藤一誠を助けたいという願いが生み出したその力は、兵藤一誠の力である赤龍帝の籠手の強制進化。

 

 赤龍帝の籠手の中に歴代所有者の残留思念が存在することを利用し、それを触媒にかつて発現した赤龍帝の可能性を具現化する。それは亜種として発現した具現化をする事もある。そして、禁手になった可能性も具現化する。ゆえに、亜種禁手すら具現化する。

 

 その禁手の名は、天使の羯磨に導かれし赤龍帝(テロス・アズライグ)

 

『いいか相棒。今のお前には二つの神滅具の力がある。それだけあるんだ、負ける事なんて許されないぞ?』

 

「上等だドライグ!! 俺は、シャルロットを守る!!」

 

『お願いします、マスター。……私があなたを助けた事を、正しかったと信じさせてください』

 

 そのシャルロットの言葉に、一誠は一つだけお願いをする。

 

「俺のことはイッセーって呼んでくれよ。俺の親しい人は大抵みんな、そう呼ぶんだ」

 

『はい、イッセー……っ』

 

 そして、赤き龍の鎧を身に纏った兵藤一誠……否、イッセーはバーサーカーを見据える。

 

「あんたがどんな思いで戦ってるのかは分からない。だけど、この聖杯戦争はシャルロットに譲ってもらう!!」

 

 そして、最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その決着を理解した少年は、静かに聖杯を諦めると、空を見上げる。

 

 この世界に記憶と力を持ったまま転生し、更には絶大な力を手にした。

 

 そしてその力を疎まれて流浪したが、そんな者達が集まって大きな勢力へと変わっていく。

 

 そして、自分はそれを利用して願望成就を目論んだ。

 

 すなわち、今度こそ成り上がる事。

 

 英雄のように歴史に名を遺す。それも、大半の英雄のような悲惨な末路ではなく、大往生を迎えてやるのだと。

 

 だが、どうやらそれはそう簡単にはいかないのだと、痛感する。

 

「疎ましいね。だけど、二度目のチャンスをそう簡単には逃さないよ」

 

 一つ目は自分が作り上げた亜種聖杯の本丸。そして、二度目はこの転生そのもの。

 

 一度目は失敗した。だが、二度目はそうはいかない。

 

 その為に十三回の亜種聖杯戦争での勝利をなした。そして願いを叶える算段は整えた。

 

 それ以外の十八回の失敗をばねに、彼は世界の覇権を手にするのだと、心に決めている。

 

「まずは曹操(リーダー)に報告かな? 今代の赤龍帝を発見したってね」

 

 その少年、転生者レオナルドは、自分達のリーダーである曹操の名を名乗る少年に送る土産話を書きながら、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、歴代最優の赤龍帝と、歴代最狂の魔獣使いによる聖杯戦争。

 

 異世界にて行われる、史上最悪の聖杯戦争の、ちっぽけな前哨戦だった。




半日ぐらいたったら、設定を書きます。

この作品は続編を書くこともありますが、基本的にダイジェストでお送りするので、ご了承ください。









こんな感じで短編書いてますが、ネタを活動報告で募集しているので、アンチ・ヘイトにならないアイディアがあるけどかけそうになかったらプレゼントフォーミー


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設定

今回における各種設定をここで書くことにします。


 

◇兵藤一誠

 

 本作でも主人公な、将来的におっぱいドラゴンと呼ばれる男。

 

 レオナルドの異世界転生のバタフライエフェクトで、風が吹いたから桶屋を儲けさせんとばかりに一人でナンパ旅を敢行。盛大に聖杯戦争に巻き込まれる。

 

 ちなみに、現政権に気づかれるとややこしい事になるという事で結構秘匿には気を使っていたのだが、赤龍帝の力が認識阻害の魔術を弾いてしまったのが要因。ほんと、ドラゴンの力はトラブルを引き込んでくるぜぇ

 

 持ち前の誠実さと男気でシャルロットの心を掴み、聖杯戦争を勝利。それで「モテたい」という願望を叶えればいいものの、シャルロットに全部提供するという気前のいい真似を天然でやってのけたりしているが、それに関してはあえて飛ばしました。

 

 なお、禁手化したとはいえど、それはシャルロットの禁手によるあらゆるブーストがかかってのものである為、イッセー自身は厳密には禁手には至っていない。ましてや身体能力も原作開始前の人間のそれである為、この調子で原作本編に突入しても、コカビエル辺りで自力の差で押し切られる程度の戦闘が限界。とはいえ必要だと思った努力は惜しまないのがイッセーなので、戦いが日常になりかねない状況下になったのなら、むしろ原作以上に大化けする可能性が桁違いになっている。

 

 

◇シャルロット・コルデー

【CLASS】アサシン

【属性】中立・悪

【ステータス】

 筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運EX 宝具A++

【クラス別スキル】

 気配遮断:D

 自身の気配を消すスキル。隠密行動に適しているが、彼女の暗殺はある意味で真正面からである為、ぶっちゃけるとそこまで高くない

【保有スキル】

 カーンの処女:A

 その容姿と、処刑の際にも動揺を見せなかった姿からくるスキル。魅了とカリスマのスキルの複合スキルと化している。

 

 単独行動:C

 完全独断で暗殺を行った事から手にしたスキル。

 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。

 ランクCならば、マスターを失っても一日は現界可能。

 

【宝具】

 暗殺の天使(エンジュ・カルマ)

 対人宝具 ランクA+ レンジ:1~10 最大補足:1人

 本来ありえない事を一挙に成功させてしまったその天運と、その根幹になってはいるが、自覚していなかった彼女の持つ異能が融合劣化したもの。

 あらゆる幸運判定に凄まじい補正を与える事で、アサシンは実戦経験が全くないサーヴァントでありながら、下位の戦闘系サーヴァント相手なら防戦できる程度の戦闘を行う事が可能。また、相手を暗殺するという過程に集中すれば更に効果は倍増するのだが、アサシン自身が暗殺の結果が全く望まない方向に進んでしまった事を後悔している為、自発的にその運用をしたがらない。

 そして、この力の本質はそんなものではなく―

 

 天使の羯磨に導かれし赤龍帝(テロス・アズライグ)

 対人宝具 ランクA++ レンジ:1~10 最大補足:1人

 暗殺の天使の本質である、神滅具、究極の羯磨。その亜種禁手。兵藤一誠を救う力を願ったこの霊基のシャルロットのみが具現化できる、唯一無二の亜種禁手。

 

 能力は赤龍帝の籠手の可能性操作。歴代赤龍帝の怨念が込められている赤龍帝のある意味でのデメリットを逆手に取り、その怨念が至った赤龍帝の籠手の可能性を強制的に具現化。結果として兵藤一誠は禁手に至れる段階でないにも関わらず、疑似的に禁手を発動する事ができる。

 

 制御に関してもドライグがシャルロットの支援を介して行う事でより効率よく運用可能。三位一体の制御により、今までの赤龍帝をはるかに超える籠手の使いやすさを発揮する。

 

【詳細】

 召喚されて早々にマスターを殺されて敗北を覚悟したが、巻き込まれた一般人まで死なせる事はできず慌てて助け出した、この世界のイッセーの相棒となる女性。

 

 自分がやった行動が結果的に更に過激派の活発化を進めてしまった事がトラウマであり、自分に自信がないところがある。また聖杯にかける願いも「今度こそ失敗しない人生を送りたい」というものであり、犠牲者の鎮魂でも過去のやり直しでもない我欲まみれの願いを強く願っている事もネガティブな感情になっている理由。

 

 なので自分が酷い目に遭う事は当然だとすら考えていたが、イッセーが「俺を助ける為に自分の嫌なところすらしゃべれるような人が悪人なわけがない」として根性を見せた事もあり、ドライグも覚醒して契約を結び、聖杯戦争最終決戦にもつれ込む事になる。

 

 一度決めると最後まで突き進んでしまう困ったちゃんだが、それで失敗している為それなりに制御ができる。割と本気で常識人な為、イッセーや周りの奇行にツッコミを入れる、胃の痛い毎日がほぼ確実に約束されるだろうちょっと不憫な女性。っていうか、戸籍どうすればいいんだろう?

 

 

 

◇赤龍帝ドライグ

 

 本作における知恵袋ポジション。

 

 前代未聞のパワーアップ方法を遂げたイッセーとシャルロットを面白がっており、この時点で相性は良好。

 

 しかし彼はたわわなおっぱいをすぐ近くに置く事になるおっぱいドラゴンという地獄の環境が成立した事をまだ理解していないのであった。……合掌!!

 

 

 

 

 ◇本来のシャルロットのマスター

 

 暗殺者デビューを終えたばかりの異形側の新米で、調子ぶっこいてそのままこの話に乗って参戦。

 

 結果として「一回しか暗殺をしていない」という立場が触媒となってシャルロットが呼ばれたが、まさにそのタイミングで他のサーヴァントの襲撃を受け、真っ先に退場する。

 

 

 

 

 

 

 

◇ジョゼフ・ギヨタン

【CLASS】バーサーカー

【属性】秩序:狂

【ステータス】

 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具C++

【クラス別スキル】

 狂化:B

 全ステータスをワンランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。本来ならここまで高くはならないのだが、マスターが意図的な仕込みをしているためこの高ランク。

【保有スキル】

 医術:A

 当時現役の医者であり、心霊療法を科学的に調べることを政府に命じられるほどの見識がある。

 なお、このスキルのランクはサーヴァントの生きていた当時のレベルで判断される。

 

 無辜の怪物:B

 ギロチンの父。

 誤解から生まれたイメージによって、過去やありかたを捻じ曲げられた怪物の名。

 能力・姿が変貌してしまう上に、このスキルは外せない。

 

 処刑人:C

 無辜の怪物スキルによって保有。悪とみなされたサーヴァントに対する攻撃力が上昇する。

 

【宝具】

 平等たれ、死の断罪を否定するために(ボワ・ド・ジュスティス)

 ランクC++ 対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:1人

 ギロチンの採用を提唱し、ギロチンの名の由来となってしまった事に由来する宝具。ギロチンの刃を虚空から召喚する。

 基本的にギロチンは高所からの落下させる事しかできず、ある程度加速させる事はできるがそれだけ。しかし相手が「罪人」であれば、斬首の為に軌道を変更する事も可能であり、結果的に悪人だらけの参加者になるように調整された亜種聖杯戦争では猛威を振るった。なにせちょっとした性犯罪程度のイッセーですら苦戦したのだから。

 加えてこのギロチンは「悪人を処刑する」概念の具現化である為、「処刑」で終わったサーヴァントに対しては絶大な攻撃力を発揮する。それゆえにシャルロットと合一化したイッセーには、赤龍帝の鎧越しにすら大きなダメージを与えられるが、神滅具二つがかりの圧倒的性能差を押し切るには足りなかった。

 

【詳細】

 この話における強敵ポジション。本質的に弱いサーヴァントを狂化させてブーストさせるという、本来のバーサーカーの運用に則っている。

 

 理性そのものは高ランクの狂化によってほぼ吹き飛んでいるが、聖杯にかける願いは「この自分の殺戮を最後に、その国の死刑制度廃止の動きを高める事」。その強い意志と狂化が組み合わさって、ステータス以上の戦闘能力を発揮できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇レオナルド

 

 本作のイレギュラー最大の要因。

 

 型月世界、それも外典世界線からの出身。なんていうか態々詳しく説明する機会が本編でないので言っちゃうけど、ユグドミレニア出身の錬金術師。

 家系が参加した時期ならばムジークよりも圧倒的に早く、それゆえに大聖杯の調査なども行う事になっている。本来完成には程遠いちゃちな願望機としてしか使えない亜種聖杯がまともに運用できているのは、この経験とこの世界の技術の組み合わせが原因。

 

 ルーラーが召喚されないように、もし召喚されたらすぐにでも聖杯戦争から手を抜く為に色々な方法をとっており、今回の聖杯戦争では「同一触媒による聖杯戦争」のテストも兼ねていた。

 

 ちなみにこの時点で禍の団に所属しており、地方都市の担当官は買収済み。この後即座に逃亡を手助けしている。



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エピローグ

はい、ちょっとした蛇足です。


 

 前哨戦という名のすべてが終わり、そして聖杯は具現化した。

 

 そして、勝者は願いを叶える。

 

 謎の少年は本当に聖杯を素直に渡してくれたらしい。実際に願いを叶えるができて、万々歳と言ってもいいだろう。

 

 とはいえ、イッセーは疑問に思うところもある。

 

 その疑問を、シャルロットに素直に聞いてみるのはイッセーの美徳でもあった。

 

「なあ、シャルロット。……ほんとにこんな願いでいいのか?」

 

「はい。冷静に考えると、絶対に間違えない人生なんて普通は無理ですし、それならこっちの方がいいかと思いまして」

 

 シャルロットが願ったのは、「赤龍帝の籠手とリンクする形での、自身の単独行動スキルの圧倒的強化」

 

 単独行動スキルは、マスターが死んでも現界を維持する為のスキルだが、これによってマスターの魔力消費を抑える事もできる。

 

 それをA++ランクにまで高めたシャルロットは、イッセーが生きている限りは戦闘でも行わない限り半永久的に活動できるだろう。

 

 とはいえ、シャルロットの願いは元々「間違えない人生を送りたい」だった。

 

 それが変わったのは、きっと……。

 

「それに、私はあなたをもっと見ていたいですから」

 

「俺なんかを? そんなに大した奴じゃないぜ、俺は」

 

『相棒。今代の赤龍帝が情けない事を言わないでくれ』

 

 シャルロットに対する返答にドライグは呆れるが、しかし実際その通りだろう。

 

 この聖杯戦争を生き残れたのは、ひとえにシャルロットとドライグの力のおかげである。

 

 だから、そこまで言われるほどの事はしていない。少なくとも、今の兵藤一誠はそこまで言われるほどの存在ではないはずだ。

 

 だがしかし、シャルロットはおかしそうに笑うと、満面の笑顔をイッセーに向ける。

 

「そういうところが見ていたいんです。それに、約束してくれたじゃないですか?」

 

「……あー………」

 

 その言葉でイッセーは思い出した。

 

―俺を助けた事は間違ってなかったって、そう思われるような生き方をして見せる―

 

 そんな事を言ってしまっていた。約束してしまっていた。

 

 つまり、これはそれが本当か見届けるという意味合いのあるのだろう。責任重大である。

 

「の、覗きをやめるところから頑張るよ!!」

 

「……そんな事してたんですか?」

 

『そこは我慢してやれアサシン。ドラゴンというのは異性にどん欲な奴が多いのさ』

 

 呆れられてしまった。

 

 だが、いつまでもこんな事をしている余裕はない。

 

 そろそろ現実逃避も終わりにする頃合いだろう。

 

 そいて、シャルロットとイッセーは視線を前に向ける。

 

 ……先ほど、シャルロットの願いは聖杯のリソースを九割使ったと説明した。

 

 裏を返せば、それは残り一割は聖杯のリソースが残っているという事である。

 

 そして、イッセーはそれで願いを叶える事にした。

 

 最初はハーレム作りたい! という即物的かつ直情的な願いにする予定だった。

 

 だが、あんな事をシャルロットに言った手前、聖杯の力で女性を洗脳するような真似はできないというブレーキが働いたのだろう。

 

 その願いは無意識に封印し、ある意味で重要な事を叶える事にする。

 

 そう、それは―

 

「借りた金を返したいから、金銀財宝ください」

 

 ―これまた即物的ではあるが、親に借りた金を返すという真っ当な願いでもある。

 

 これ自体は何の問題もない。むしろ褒められてしかるべき事だろうし、ある意味で善良な願いでもある。ある意味欲がないと言ってもいいだろう。

 

 だがしかし、願いを叶えてもらう相手が悪かった。

 

 聖杯戦争によって完成する聖杯とは、本来の世界でなら万能の願望機とすら称されるほどの物である。

 

 その気になれば歴史の解釈替えぐらいは可能とするそれは、やりようによっては数十億人を呪う大災害を生み出す事も可能。とある世界線で汚染された時など、完成に王手がかかると判断されて世界が防衛機構を働かせたほどである。

 

 今回の聖杯はそれほどの規模ではない。加えて、神々が普通に存在するこの世界では本来の大聖杯でもそれほどの悪夢を生み出すには出力が足りないだろう。

 

 だが、それでも桁違いの力を秘めた魔法のランプなのである。

 

 その一割、なめてかかってはいけなかった。

 

「これ、持って帰れないよなぁ」

 

「多すぎますよねぇ」

 

 二人して途方に暮れるほどの金銀財宝……というより、宝石の原石や鉱石類。

 

 まず間違いなく数百億は届くだろう、圧倒的な財宝の数々だった。

 

「聖杯、なめてたなぁ……」

 

『どうする相棒?』

 

 ドライグの言葉に、イッセーは心から思った。

 

 ……どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大量の鉱石類が発見された廃工場は、まるで何者かによる兵器の使用と思しき戦闘の後すら発見されているとのことです。ですが、その破壊の痕跡に不相応な程静かだったとのことで、警察は「何らかのガスがまかれて周辺住民の聴覚に異常が発生した可能性」すら考慮に入れて捜査を―』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とんでもない事になったな、イッセー」

 

 父、五郎にそんな事を言われて、イッセーは項垂れる。

 

 仕方ないので持って帰れるだけ持って帰ってそのまま放置という雑な対応で済ませたのだが、あの後発見されたらしい。

 

 しかも廃工場はサーヴァントや魔獣との戦闘でかなり破壊されており、その影響もあって大騒ぎである。

 

 自分ではどうしようもないから結局こうなるに決まっているのだが、しかし大騒ぎであった。

 

「ど、どうしたらいいんだろうか……」

 

「本当にどうするのよ。いえ、ニュースもそうだけれど、これ、換金する方法が分からないわ」

 

 母親の困り顔の悩み事ももっともだ。

 

 冷静に考えればその通りだ。

 

 宝石の原石なんて、どこでお金に換えればいいか分からない。というより、「どこでこんなものを手に入れたのか」などと言われれば返答できない。

 

 聖杯。願望機としての力は強いのだが、どうも願いのかなえ方がおおざっぱである。

 

 せめてその辺りのサポートが欲しかった。いきなり巻き込まれた一般人に、その辺りの機微をどうにかする事などできるわけがない。シャルロットも元は一般人なので、その辺りがおろそかだった。

 

「申し訳ありません。ご子息を巻き込んだばかりかあんな大ごとまで起こしてしまうなんて……」

 

 シャルロットも思わず頭を下げるが、しかしイッセーの両親はそこには意識を向けてなかったらしい。

 

 逆に慌てて両手を向けながら、シャルロットを落ち着かせる。

 

「落ち着いてくださいシャルロットさん。むしろ息子を助けていただいて感謝してるぐらいなんですから」

 

「そうよねぇ。シャルロットさんがいなければ、イッセー死んでたんだもの」

 

『確かにな。それに相棒が巻き込まれたのはあの魔獣創造の使い手の処置が雑だった所為だ。シャルロットが謝る事はないだろう』

 

 ドライグまでフォローに回る中、しかしシャルロットの表情は暗い。

 

 シャルロットはこれまでの経験から、まだ事態が終わってないことに気づきかけていた。

 

 だからこそだ。自分の取った行動は、下手をすると更に事態を悪化させるだけではないのだろうかとすら思ってしまう。

 

「ですが、冷静に考えるとこうも思うんです。……神滅具(ロンギヌス)の保有者を、聖杯戦争を引き起こしたあの少年はこのまま何もしないで済ますのだろうか……と」

 

 その言葉にイッセー達ははっとする。

 

 イッセーの持つ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)やシャルロットの持つ究極の羯磨(テロス・カルマ)

 

 その上をいく、上位神滅具。その一角に到達する、魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)

 

 その少年に目を付けられたことが、兵藤一誠の存在に何か暗い影響を与えるのかもしれないのではないか。

 

 加えていえば彼はいまだにアサシン(自分)のマスターである。その特異性は非常に大きい。

 

 このままでは、何か大きなうねりに巻き込まれるのではないかと不安になり―

 

『いや、どっちにしても巻き込まれるから気にしても無駄だろう』

 

 ―ドライグのその言葉で、一気に空気の方向性が大きく変わった。

 

 おい、どういう事だ。

 

 そんな感じの視線が、赤龍帝の籠手に―厳密にいえばそれに魂を封じられているドライグに―向けられる。

 

『俺を宿した奴なんてたいてい強大な力の持ち主に関わっていくもんだ。少なくとも、白いのが宿っている歴代白龍皇に因縁付けられる可能性は覚悟したほうがいいだろう』

 

 残酷すぎる現実だった。

 

「ちょっと冗談きついんだけどドライグ!? 俺、別に伝説のドラゴンと喧嘩したりとかする気ないんだけど!?」

 

『スマンが相棒、殺し合いだ』

 

 更に最悪である。

 

 二天龍の力の強さをその身で知っているイッセーとシャルロットは顔を蒼くさせる。

 

 なにせ、廃工場での戦闘はまだ序の口なのだ。砲撃は一発しか出していないし、バーサーカーとの戦闘も短時間で終わった。

 

 良くも悪くもあの聖杯戦争の特殊性を生かした反則手段だったからだろう。バーサーカーそのものの戦闘能力はそこまで高くない。対罪人特化型のサーヴァントゆえに、軽犯罪程度しか犯していないイッセーだからこそ押し切れた。

 

 そんなレベルじゃないだろう二天龍同士の激突。冗談抜きで被害の規模の桁が違うだろう。

 

『ま、普通に戦えばこの街が吹き飛ぶな。まあ現代でそんな事をすれば三大勢力や五大宗家に叩き潰されるから、流石に場所を選ばせてくれるとは思うが』

 

「……疫病神じゃねえか、てめえ!!」

 

 渾身のツッコミがイッセーから飛び出た。

 

『そう悪い事ばかりじゃないさ。ドラゴンは強敵を引き寄せもするが、富や異性も引き寄せる。上手く生き残れば人生バラ色だぞ?』

 

「でもドライグさん。たぶんその生き方上手く生き残れないんじゃないのかい?」

 

 父親の息子を思うツッコミが届くが、しかしイッセーには届かなかった。

 

 具体的には、ドライグの言葉を聞いた時点で頭が真っ白になっていた。

 

 息を吸う。

 

 そして、吐く。

 

 そして先ほどのドライグの言葉をかみ砕く。

 

 富や異性も引き寄せる。つまり、金も女も寄ってくる。

 

 つまり、ハーレムが作れる。それもブルジョアじみた。

 

「……ドライグさん。先ほどの言葉、マジですか?」

 

『何で敬語だ。まあ、実際大抵の歴代は異性には困らん生活を送っていたな』

 

 その瞬間、イッセーは飛び上がった。

 

「ハーレム王に、俺はなる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……はぁ」」」

 

 頭痛を感じて三人ほど頭を抱えるぐらい、イッセーは凄く単純な結論に思い至っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして春休みが終わるまでの間、イッセーは毎日スポーツジムに通ってトレーニングを行う事となる。

 

 そして二年生の始業式、イッセーは後輩に因縁を付けられるのだがそれはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの廃工場騒ぎで、究極の羯磨の反応が検出された!?」

 

『ああ。そして最悪な事に、同様の反応が駒王町で観測された。不可思議な事に大まかな居場所しか分からないので、君には調査を頼みたい』

 

「了解しました。……あの男、舐めた真似をしやがって……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうするんだい、曹操(リーダー)

 

「ああ、俺達の聖杯戦争の前に赤龍帝が発見されるとはね。これは面白い事になってきたよ」

 

「相も変わらずバトルジャンキーな事で。僕を巻き込まないでほしいんだけど」

 

「おいおい、英雄派はそういう組織だろぅ? 今更じゃないか」

 

「まあ、確かにそうなんだけどねぇ。ただ最近は色々と更に極端な方向に行ってる節があるし、ちょっと不安だよ」

 

「おいおい、誰の所為だと思ってるんだい、レオナルド」

 

「はいはい。相性のいい奴を選んだ僕の所為ですよー。……で? 例の赤龍帝の場所は分かったけど、ちょっかいかけるのかい?」

 

「ああ。英雄の末裔にいて、新たな英雄になる男としては彼には興味がある。特に君の主催した出来レースの聖杯戦争を神器に目覚めた直後に乗り越えたんだ。これはもう、何かを持っているとしか思えない」

 

「まあ、僕も因縁がつきそうだとは思ってるけどね。……それで? 世界全土を巻き込んだ戦いは何時引き起こすんだい?」

 

「それがシャルバ達は機会をうかがっている段階でね。あいつら数が多いうえに歴史があるだろ? だからうるさいんだよ」

 

「ぼくら英雄派は人数は小さいからねぇ。ま、ゲオルグも含めれば神滅具が三つもあるから質なら負けてないけど」

 

「歴史だけの連中には負けられないさ。なにせ俺達は未来を創るんだからね」

 

「了解了解。ま、勝ち組を目指すなら歴史に名を遺すぐらいしないとね。頑張るよ」

 

「その意気だ。ま、俺達も彼らに出会うまではまだまだ子供だったから、そういう意味では本当に感謝してるさ」

 

「で、誰を送り込むんだい? 君に忠誠心ありまくりのコンラ君とか?」

 

「いや、彼女が名乗りを上げたよ。……スカウトできないか試すんだとさ」

 

「………まぁた悪い癖が出たよ、あのバカ弟子は、もう」




これで今度こそテロス・カルマ編は終了です。

次に書くとするなら、新しくくわえる形になるでしょうね。

ハイスクール/Apocryphaはそれぞれの章でダイジェスト風味の話を数話書く感じの短編連作になると思います。なんでかて? ……D×Dのアンチの割合を減らしたいからです。それに一つのページに大量に入れたら短編にならないじゃないですか。


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あとがき

作品全体についてのあとがきです。一度やってみたかった……。


 ハイどうも。グレンでございます。

 

 割と高評価(現段階において評価9が四つ)をいただいたこの作品でございますが、その辺についての裏話を書いてみようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この作品、実は八割がた即興で書いてみたものです。

 

 実は前からクロスオーバー作品を書くにつれて「世界観が違うのだから、その世界のものが来た時に何らかの補正を入れるのがいいのではないか」といった感想はあったりします。

 

 そうでもしないと各作品でパワーバランスが違うのですり合わせができない……というのもありますね。実際自分の初完結作品であるケイオスワールドはそういう手腕を取りました。

 

 ですが、世界観すら違うクロスオーバー作品を書くのなら、これ実はマジで重要ではないかと思うのですよ。

 

 具体的な例を挙げますと、最近本社が倒産して色々大変なLightの代名詞である「神座万象シリーズ」と「Fateシリーズ」をクロスオーバーするとしましょう。

 

 戦闘機など歯牙にもかけない圧倒的アドバンテージを保有している黒円卓ならサーヴァントなど一蹴できるというイメージが強そうですし、実際にそのまま戦わせたらそうなるのは客観的に見れるなら間違いないと思いますが、その実この両作品の設定をすり合わせてクロスオーバーをち密にすると、そう簡単にはいかなくなります。

 

 その設定が魂です。

 

 神座万象シリーズは魂の質が戦闘能力に大きなアドバンテージを与えるのですが、確か準最強の三騎士で最強の白騎士が、数で換算すると魂十数万人分だったはずです。

 

 で、ここで重要なのがサーヴァントの魂は質においてシャレにならない事。

 

 サーヴァント最強の英雄王ギルガメッシュが、通常の英霊の約三倍でかつ数十万人との事です。

 

 数十万人と形容するのなら、最低でも二十万、普通に考えればそれ以上。ですが、通常のサーヴァントの数が人間二十万人分を超える数だというのならギルガメッシュが数十万人と形容するのもあれなので、とりあえずギルガメッシュは二十万以上四十万未満と過程し、そこから逆算すると、平均的なサーヴァントは十数万から数万人の魂に匹敵する質だと推測できます。

 

 そしてもう一つの特性である「渇望」も重要ですが、これに関してはサーヴァントには宝具が存在する事を考えると、ランク次第では対抗可能でしょう。

 

 つまり、徹底的に設定単位でクロスオーバーをする場合、少なくとも黒円卓平団員と平均的なサーヴァントは奥の手込みでもそこそこいい勝負ができる計算になります。ギルガメッシュやそれに対抗できるクラスの大英雄なら、三騎士とまでならやりようはあるでしょう。

 

 そういう徹底的なクロスオーバーは普通に考えれば困難極まりないですので、そこまで徹底しろとは言わないです。

 

 まあ、少しぐらいは設定単位でクロスオーバーする事を考えて考慮しろとは思いますけどね。某アンチ作品とか強引に「A世界の可能性の一つがB世界」という事にして、全く違うエクスカリバーの能力を「片方がバッタモン」という事にするマネやってますし。流石に見るのやめたよあれは。

 

 ……失礼、話が脱線しました。

 

 とにかく、そういうことでクロスオーバーを設定単位で考量する場合、思いついたのが「D×DとFateシリーズのクロスオーバー」における「英霊召喚」です。

 

 両作品を詳しく知っている方ならご存じだとは思いますが、両作品は変則的な形で過去の偉人が登場します。D×Dは転生悪魔としての登場がちょくちょくあり、Fateはもちろんの如くですが、偉人バトルです。

 

 なので、もしこの二作品を設定単位でクロスオーバーさせた場合、余程の事がない限り「転生悪魔としてFateの人物が出る」か「サーヴァントとしてD×D世界の偉人が英霊として召喚される」になるわけです。

 

 それを思いついてから、これをネタにした作品を書く事を考慮しておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とはいえ、その設定を調整しているのはこの作品ではございません。

 

 元々それとは別に設定を練っておりまして、まあゆっくりとですが今でも進んでおります。

 

 ですが、同時に自分の最近の悩みである「D×Dのアンチ多すぎ問題」の対策として「たくさん短編書いて薄めよう!」作戦が中々筆が進まず遅々として進まない事もありました。

 

 それにFateの方を見れば分かりますが、オリジナルサーヴァント主体の作品は中々人が来ないのが特徴でもあります。

 

 もし書いても来ないかもしれない。感想が一つもつかないかもしれない。それは感想欲しくて書いている側面もある自分としては長続きが絶対にしないだろうなぁ。最初から長続きしないと分かっていて書くのは不義理だなぁ……。

 

 そこでふと思いついたのです。

 

 

「じゃあ、短編で試してみよう!!」と。

 

 

 そこで以前から思いついていた「D×Dの偉人で神滅具もっていそうなの誰だろう」という発想から思いついたタイムリーネタである「シャルロット・コルデーって究極の羯磨とか持ってそう」案を軸に、「正義の柱を触媒にした亜種聖杯戦争」を思いつき、そこから「ボス格として罪人特攻のサーヴァント召喚」ときて、そしてそれらの説得力ある作品を書く為の題材として「転生者のレオナルド」が誕生し、この作品となりました。

 

 結果的に短編でありながらお気に入りが結構集まり、更には評価も9が4もつくというレベルの展開です。中々良い出来だと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しいて言うなら、感想の平均数はもうちょっと欲しかったけどね!!(涙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこれからですが、結構筆が進んでいるので、この連作短編を何作か書こうと思っております。

 

 原作の時間軸に突入する次からは別の作品として投稿します。アンチ・ヘイトを薄める都合もありますし、短編作品が話数数十あるのも、それはそれでなんか読み難い気がするので。

 

 現在は敵サーヴァントの設定辺りを製作中です。元々作る予定だった作品は「D×D原作の敵は結局聖書の教えがらみが中心だった」という点を踏まえて、他の神話体系をメインに引き出す予定ですが、この作品は逆に神器保有者や聖書の教え関連の勢力図から引き出そうかと思っております。

 

 戦闘に関しても原作がだいぶ進んでいるのを良い事に、あんなキャラを出したりこんなキャラを出したりしたいと思っていますので、その辺お楽しみにしてくれると嬉しいです!!

 




活動報告でとあるアンチ・ヘイト創作についてのご相談があります。できればご一読の上その作品を既読の方はアドバイスを頂けると嬉しいです。


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