魔銃使いは恋に堕ちた (魔法少女())
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√女神ヘスティア

 広がる青空、窓から見える景色に手を伸ばしつつもぼんやりと外を見上げていると、きゃいきゃいと子供達のはしゃぐ声が聞こえる。ベッドの上から見える窓の外の光景は、雲一つない青空のみで、まるでヘスティア様の瞳の様に澄み渡っていて美しい。

 ぼんやりとそんな事をを思いながら横になっていると、ギィ、と扉のきしむ音が聞こえた。ふと身を起こして扉の方を見れば、アマゾネスの少女がヒューマンの少年と共に部屋を覗き込んでいるのが見えた。

 くすりと笑みをこぼし、手招きをしてあげれば、ぱぁっと花が咲いた様にアマゾネスの少女が扉を開けて駆け込んできて、ベッドに飛び込んでくる。ヒューマンの少年は驚いた表情を浮かべ、慌ててベッドに飛び込んで来たアマゾネスの少女を引きはがそうとし始める。

 

「ダメだよ、迷惑かけちゃ」

「えー、でもミリアが良いって言ったんだよ?」

「言ってないよ」

 

 きゃいきゃいと騒ぐ二人を見て、思わず昔の光景を思い出した。────ベルとアイズさんの子供と、ベルとティオナさんの子供、二人がきゃいきゃい騒ぎあっていたのを、思い出した。すでに彼らは子供の様にきゃっきゃと騒ぐ歳ではないし、孫を持っている年齢なのだが。

 ひとしきり騒いだ二人が大人しくベッドに腰掛け、花の咲く様な笑みを向けてくれた。

 

「ねぇミリアばーちゃん。昔の話を聞かせてよ!」

「うんうん、【最後の英雄(ラスト・ヒーロー)】について聞きたい!」

 

 【最後の英雄(ラスト・ヒーロー)】それはヘスティアファミリアの最初の団長にして、世界を救った英雄の二つ名だ。

 ベル・クラネル、それが世界を救った少年の名前で────俺の家族の名前だ。

 

「ミリアばーちゃんって一緒に世界救ったんでしょ!」

「うん、すっごく強かったって!」

「今も強いでしょ! だってドラゴンを何匹も連れてるんだもん!」

 

 子供特有の話があっちこっちに取っ散らかっていくのを微笑ましく見つつも、彼らの為にベルの雄姿を語ろうと口を開こうとした所で、扉が開かれ、仏頂面のエルフの女性がずかずかと入ってきた。

 

「げっ、リューだっ!」

「ま、まってよリュー! 俺達なにも悪い事はっ」

 

 拳骨二発。それぞれ子供の頭に炸裂し、二人が頭を抱えてうずくまる。

 

「今日は此処に来てはいけないと伝えたはずですが?」

「少しぐらい良いじゃん」「うぅ、ねぇ戻ろうよ」

 

 唇を尖らせて不満そうなアマゾネスの少女に、拳骨一発で心が折れたのか逃げようと少女の手を引く少年。

 少女が強気に立ち上がってエルフの女性を見上げた。それを見たエルフの女性────長寿種故にあまり変化の見られない美しい姿を保ったままのリュー・リオンが無言で拳を握り締める。ギリギリィッと凄まじい音を響かせて血管が浮き出る程に握りしめられた拳。ついに少女も折れたのか小さく悲鳴を零して我先にと逃げ出していってしまった。少年も遅れて少女を追いかけて出て行く。

 ────ヘスティアファミリアの次代を背負う子供達に、いささかやり過ぎではないかとエルフの女性を見上げた。

 

「リューさん、少しやり過ぎでは?」

「いえ、今日はミリアさんにとって大切な日ですので」

 

 大切な日。そう、今日はとても、大切な日だ。

 

「むしろ謝りたいぐらいです。しっかりと見張っていた積りだったのですが」

「子供の行動力を甘く見ちゃダメですよ」

 

 特にティオナさんの子供と、アイズさんの子供、二人が組み合わさるととんでもない事になっていた。毎回、ティオナさんが豪快に笑い飛ばし、アイズさんが苦笑を浮かべ、ベルが割を食っていた。

 

「ですが……」

「私も少し暇をしていたので。むしろ声を聞けて良かったですよ。なんなら、ベルの事を話しても────」

 

 ゴホゴホと盛大に咽り。これ以上言葉を紡げなくなる。込み上げてくる苦しさに寝具を強く握り────リューさんの回復魔法の光が俺を包み込み、ほんの少しだけ楽になり、何とか微笑んで礼を言う。

 

「すいません……」

「……ミリアさん、無理をしない方が良い」

 

 辛そうな表情を浮かべ、此方を見下ろしていたリューさんが、恐る恐るといった様子でベッドに腰掛け、俺の頬に触れた。────気を許した相手しか触れることができない。そんなリューさんとこんな風に触れ合える様になったのは、数年前からだ。

 

「ミリアさん、あと……いえ、なんでもありません。もうすぐヘスティア様が戻りますので、今しばらく」

「リューさん、少し話し相手になって貰っても良いですか?」

「ですが……」

 

 辛そうな表情が消えない。家族(ファミリア)の一員として、リューさんを悲しませたくはない。けれど、どうしようもない事だってある。むしろ、俺はかなり頑張った方だ。

 

「ベルも、アイズさんも、リリも、ヴェルフも……ミコトも、春姫も、皆、先にいってしまって、暇なんですよ」

 

 若干掠れた声。体が重く、上手く力が入らない手で、頬に当てられているリューさんの手を優しくつかんだ。

 骨張って痩せ細った、鶏ガラみたいな手だ────老化という現象によって、逃れ得ぬ(別れ)に近づいた、そんな老婆の手。

 

「貴女と初めて会ったのは、ミア母さんの酒場でしたね。初めて見たときは、失礼ながら小さく愛らしい方だと感じました」

 

 その後、直ぐに愛らしいだけではなく冒険者として持ち得る最低限を持ち合わせる者だと認識を改め。アポロンファミリアとの戦争遊戯に至って、今までの印象はただの誤解だったのだと店の皆で驚かされた。

 その後も、異端児(ゼノス)達との闘いのさ中や、派閥連合による遠征の際のリューさん救出劇。様々な出来事ののち────気が付けばベルが世界を救っていた。

 周囲の者達も、そしてベル本人も『ミリアが居なければできなかった』と口にするが。俺はそうは思わない。きっと、ベルなら俺が居なくても世界を救って見せただろう。

 

「……結局、貴女の自己評価の低さは直りませんでしたか」

「けほっ……それが、私ですから」

 

 皆から常に自己評価が低い。そう言われ続けて何十年。結局、今この瞬間においても、俺は俺の評価を高く付ける事が出来ない。

 

「ヘスティア様も、もっと自己評価を高くしろとあれほど────」

 

 リューさんの言葉が耳に刺さる。年を取ると説教臭くなっていけない。そう呟くとリューさんが目を見開き、悲し気に細めた。

 

「……すいません、悲しませる積りは」

「いえ、お気になさらず。種族差故、仕方ない事です」

 

 ヒューマン、獣人、アマゾネス、小人族。この四つの種族は寿命が近い。けれど、エルフだけは長寿種として、他の四種族とは違う時間を生きている。

 ────そして、神は時の流れの影響を受けない。

 

「リューさん、頼みが……」

「なんですか?」

「私が居なくなった後、ヘスティア様の事を、お願いします」

 

 リューさんの表情がくしゃりと歪み、優しく頭を撫でられる。

 

「貴女はいつもそうだ。ヘスティア様ヘスティア様と、女神の事ばかり心配している」

 

 そう、死が近くなった今、俺はずっと後悔し、ヘスティア様の事を案じていた。

 

 ────俺は結局、誰とも結ばれる事なかった。

 

 処女神に仕える眷属として。俺は男性とも女性とも関係は持たず、貞操を守り続けたのだ。ヘスティア様の眷属として、ふさわしい在り方だと思ったから。

 

「貴女はもっと自分を大切にするべきだ」

「あはは、もう耳にタコが出来るぐらいに聞いたせりふですね」

 

 何度言われても、何度言葉にされても、何度お願いされても。それだけは変えられなかった。変える事が出来なかった俺の悪い癖。自分より家族かを優先し、自分の身を切ってでも家族の為に尽くしてしまう。

 そんな俺だからこそ、最後に名付けられた二つ名は【親愛(ファミリア)】だったのだろう。

 相も変わらず、説教臭いリューさんとの会話を楽しんでいると、ドタドタと騒がしい足音が聞こえた。会話が止まり、二人で扉を見つめていると、大きな音を立てて扉が開かれる。

 

「ごめんっ、遅くなったっ」

 

 出会ってから百年以上が経ってるというのに、長寿種であるリューさんですら多少の変化があるというのに、扉を開けて入ってきた女神様の姿は昔と、出会ったあの瞬間と変わりない。あるとするならば、髪飾りのごちゃごちゃ具合が増えた事ぐらいだろうか?

 

「いやー悪いね。神々(ばかども)が煩くてさぁ」

「……では、私はここで失礼しますね」

 

 気を利かせたリューさんがさっと出て行くのを見送り。ヘスティア様と二人きりになった。

 肩で息をしていたヘスティア様がゆっくりと呼吸を整え、此方に歩み寄ってくる。微弱な神威を感じ取り、安心感が全身を包み込む。

 

「おかえりなさい、ヘスティア様」

「ただいま、ミリア君」

 

 いつものやり取り。何十年も続けてきた、挨拶の言葉────そして、きっと最期の挨拶だ。

 

「今日は新しい子が産まれたんだ、ロキの所と話し合って所属先を決める事になってるけど、絶対にボクの眷属にしてみせるよ!」

「ダンジョンで新たな異端児(ゼノス)の子が見つかってね、どうにも昔に君と会った事があるらしい子が転生して生まれてきたみたいだよ。君の事を覚えてたんだ」

「ガネーシャがまたホームを魔改造したみたいでね、眷属の子達が嘆いてたよ」

 

 次々に語られるヘスティア様の言葉に頷きながら、ベッドに腰掛けてきたヘスティア様の手に自身の手を重ねた。

 

「それでね、ミアハが────」

「ヘスティア様、多分……もうすぐです」

 

 ああ、わかる。判ってしまう。もうすぐ、お別れの時間がやってくるのだと。

 リリが、ヴェルフが、ミコトが、春姫が────ベルが死んだ時。俺は泣いた、誰か一人が欠ける度、涙が枯れるのではないかという程に泣き。そして次の誰かが欠けたとき、枯れた筈の涙が際限なく溢れてきた。

 そして、置いて行かれ続けた俺は────今度は置いていく側になってしまった。

 

「ミリア君……」

「ヘスティア様、愛してます」

 

 愛してる。これまでずっと、そしてこれからもずっと、愛してます。この世界に来て、ベルに手を引かれ、初めて出会った、素敵な女神様。貴女以外の眷属になんて考えようが無いほどに、貴女をお慕いしています。

 ぎゅっと、出来る限り力強くヘスティア様を抱きしめた。

 ────年老いて痩せ細った小人族の抱擁。ヘスティア様が身を震わせ、抱き返してくれる。

 

「ミリア君、後悔はあるかい」

「いっぱい、数え切れないぐらいあります」

「……そっか」

「一番後悔してるのは────子供を産まなかった事です」

 

 貞操を、処女を貫き続け、神ヘスティアへの信仰心を示した。ヘスティア様に仕え、ヘスティア様の為にと、貞操を守り続けた。その結果、俺には子供が一人もいない。

 ベルはたくさんの伴侶を得て『ハーレム』を作った後、たくさんの子供を遺した。最初は、兎みたいに精力旺盛だなぁなんて呑気に考えていたけれど、あれはベルなりにヘスティア様の為を思っての行動だったのだろう。

 

 ────自分の死後、残った我が子達にヘスティア様を任せる為に。

 

「一人ぐらい、適当に子供を産んでおくべきでしたか」

「でも、ミリア君はそういうの嫌いだろう?」

 

 ヘスティア様の言う通りだ。子供に、(じぶん)のやって欲しい事を強要はしたくない。それもあるし、そもそもそのことに気付いたのも、子供が産むには年老いてからだった。

 

「……ヘスティア様、すいません」

「何だい?」

「もう……限界みたいです」

 

 意識が薄れ始める。抱き締めていたはずなのに、いつの間にか腕の力が抜けて抱き締められる形になっていた。

 神の恩恵によって、普通の人よりも多少は寿命が延びた所で、限界がやってくる。その限界、それが今日だ。今まさに、この瞬間にも俺の命の灯が掻き消えそうになる。

 意識は薄れ、体から力が抜けていく。別れたくない、もっとずっと一緒に居たい────けれどそれは許されない。

 

「ミリア君、君は少し旅に出るだけさ」

「……はい」

「四百年か、五百年か、君は新たな命としてこの下界に降り立つ」

「……はい」

「大丈夫さ、ボクら神々は永遠の命だぜ? キミがもう一度地上に帰ってくるまで、()()()()待つだけさ」

「…………わかりました」

「だからさ、君はそんなに気負わなくて良い。ボクは待ってる、だから」

「……………………ヘスティア様」

「なんだい? ミリア君」

「…………かならず……かえって、きますね」

「…………ッッッ!」

「いってきます」

 

 

 

 

 

 開け放たれた窓から見える青空。緩やかに流れ込んでくる風の音を感じながら。

 女神ヘスティアは愛おしい眷属(こども)の旅立ちを見送った。




 最期まで貞操を貫き、処女神への愛と忠誠を誓って旅立った。そんな感じですね。


 本編のとある感想に触発されて1時間半で書き上げました。
 妄想がはかどったんじゃぁ……あ、本編の更新はちゃんと頑張るんで許して()


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√ベル・クラネル

『魔銃使いは迷宮を駆ける』の『第一三二話』の後からの分岐となります。
それまでの話を読んでいない場合、話の意味が分からない可能性がある為注意。


 賑わいを通り越して喧騒と化した大広間。我が派閥には不相応に豪奢絢爛な会場。

 絶望的な戦力差であったアポロンとの戦争遊戯(ウォーゲーム)にて奇跡的な勝利を得たヘスティアの勝利を祝う為に開かれた祝勝会。

 勝利したにも関わらずまともに賠償金を得る事も出来ず、本来ならばこの豪華な会場施設を借り受けるどころか満足のいく飲食物すら用意するのが難しい程に資金難状態であった。しかし、ヘスティアファミリアに代わりロキファミリアが会場施設の借用や飲食物等にかかる費用の全額負担を申し出てくれたのだ。

 おかげ様で、身分不相応にも思える豪奢絢爛な(パーティー)を開くに至る訳である。

 

 そんな(パーティ)は開始直後は激しく喜びを表現するかのように酒に食事に手を伸ばし、武勇伝として戦争遊戯(ウォーゲーム)での活躍を語らい、それを褒め称える喝采があがっていた会場も、ある程度時間が経てば落ち着きを取り戻り始める。

 と言うよりは一部の酒飲み達が酔い潰れて静かになりはじめた、と言うべきか。

 酔い潰れた功労者達が隅っこに纏めて並べられ、何処から持ってきたのか毛布を掛けられて寝ている。

 ヴェルフが椿さんに潰されたらしく、真っ赤な顔でうんうん唸りながら女神ヘファイストスに膝枕されていた。多分記憶が飛んでるだろうし、後から教えたら後悔しそうなやつだ。リリルカの方はそんなヴェルフに呆れた視線を向けているが、彼女もそれなりに飲んだのか目が据わっている気がする。

 ベルの方は未だにアイズさんとティオナさんに挟まれてベートさんに絡まれていた。ベート・ローガ、ロキファミリアの第一級冒険者の彼は────前に酒場で見たときレベルに出来上がっていた。

 

「何度言えばわかるんだ(ベル)、テメェは愚直に突撃し過ぎだって教えてやっただろうが!」

「ごっごめんなさい!」

「あ~あ、ベート酔ってるよこれ」

「あ? これぐらいで酔う訳ねェだろ」

 

 ぐいっと麦酒(エール)を一気飲みし、酒臭い吐息をベルにぶつけている。酔い潰れる気配はないが、流石に何度も同じ話題を繰り返し始めてる辺り、相当出来上がってるに違いない。

 アイズさんの方は果実汁(ジュース)を片手に迷惑そうにベートさんを睨んでいるみたいだが。

 

 俺の方はぐるりと会場を一周してお礼回りを終え、フィンからこの(パーティ)の目的を聞いてからは安心して楽しませてもらった。物寂しさを感じつつも、終わりを迎えつつある会場をもう一度眺める。

 一足先にディアンケヒトファミリアの面々は帰って行ってもう会場には居ない。『再生薬を早く完成させねば。ミアハの所では無理だろうしなぁ』等とミアハファミリアを煽るだけ煽っていったみたいだし。

 ロキファミリアの面々は幹部達はベートさんと、意外な事にティオネさん以外は酔っていない。というかティオネさんはなぜ酔い潰れているので? そしてドワーフのガレスさんがあまり酔っていないのも疑問を覚える要因だ。

 首を傾げつつも会場中央でロキと話し合ってるヘスティア様の元へ向かおうとすると、ベルに声をかけられた。

 

「ミリア、ようやく見つけた。姿が見えなかったから何処か行っちゃったのかなって思ってたんだ」

「ん? ずっと会場をうろついてたのよ。ベルの方は、ほら……【凶狼(ヴァナルガンド)】さんに絡まれてたし?」

 

 もし俺が近づいたら、きっと俺も存分に絡まれていたであろう。それを見越してベルを生贄に捧げた形だ。ごめんね。

 

「あはは……それよりも、もうお終いかな」

 

 寂寥感が混じりだした会場。普段なら派閥の枠を超えてこのような交流は成されない事だろう。今回はヘスティアファミリアの出した『再生薬』と言う、どの派閥も喉から手が出るほどに欲するだけの代物があった。

 そして、それを取引する為にはヘスティアファミリア存続が最低条件であり、戦争遊戯(ウォーゲーム)の敗北はつまり、その『再生薬』を失う事を意味していた。

 故に、各々の派閥は俺達ヘスティアファミリアが契約をすることでこのように協力関係を築き上げて同じ会場で他派閥の勝利を祝う(パーティ)に参加しているのだ。

 

 今後、このように集まる事はないだろう。『神の宴』で神々が交流する事はあれど、俺達眷属達は神々の友好関係次第で敵対したり対立したりする。

 

 特に────ロキファミリア。

 

 俺達の主神、ヘスティア様と仲が悪い事で有名である神ロキが主神を務める派閥。派閥同士の区切りをつける事になるだろう。それでも俺達に貸しを作る為に友好的には接してくれるが、深くは繋がり合えない。微妙な溝が生じるのは致し方の無い事である。

 

 

 

 終わりに近づく(パーティ)を見て、寂寥感を滲ませて彼女が笑っていた。

 戦争遊戯(ウォーゲーム)の準備期間、そしてそのさ中には全く見せなかった、柔らかな笑み。

 開催直後から別れ、今までロキファミリアの第一級冒険者に絡まれていた僕も、ようやく肩から力を抜いた。

 小人族(パルゥム)の中でもとりわけ小柄な少女だ。あの戦いに向けて様々な方面から勝利を目指して動き続けた、功労者。そして、僕が守りたいと思った女の子。

 

「ヘスティア様の所へ行きましょう」

「うん」

 

 足取り軽く神様の元へ向かうミリアの後を追う様に歩んでいくと、ロキファミリアの団長である【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナや神ロキ、ロキファミリアの中枢人物達が並んでいる姿が見えた。

 

「ヘスティア様」

「ん? ああ二人とも、どうだった? 楽しめたかい?」

「はい、十二分に楽しませていただきました。神ロキもありがとうございます」

 

 まるでどこぞのお貴族様の令嬢を思わせる、洗練されたミリアの動きに一瞬見惚れてしまってから、慌てて僕も頭を下げた。

 今回の(パーティ)開催の為にかなりのお金(ヴァリス)を使ってもらったのだ。本来なら勝利した僕たちヘスティアファミリアが出すべき所であったのに。

 

「気にせんでええでー。ええもん見せてもろたしな」

「ああ、むしろあれだけの戦争遊戯(たたかい)、柄にもなく興奮してしまう程だったんだ」

 

 彼の第一級冒険者。オラリオ二大派閥を率いる団長からかけられた言葉に、嬉しさが込み上げてくる。ベートさんに悪かった点を散々指摘された後で少し凹んでいたというのもあるかもしれないけれど、優しい笑みで見上げてくる威風堂々としたフィンさんの言葉に照れてしまった。

 頬を掻いて誤魔化していると、フィンさんの視線が僕と、ミリアと、そして神様を捉えた。

 

「さて、役者は揃ったかな」

「……? 何かあるんですかね」

 

 ミリアが首を傾げて質問を飛ばすと、フィンさんは厳かに胸を張って、僕を見上げて声を上げた。

 

「僕たちロキファミリアから提案がある」

 

 彼の堂々とした佇まいに気圧されかけ、今この瞬間がどういう場なのか理解して慌てて背筋を伸ばす。

 派閥の名を出した、それも率いる団長が。横に控える様に立つ神ロキがニヤニヤしながら成り行きを見守り、副団長であるハイエルフのリヴェリア様も静かにしている。

 これは、派閥同士の会談だ。

 

「僕たちロキファミリアは、キミ達ヘスティアファミリアと同盟を結びたいと考えている」

 

 ────派閥同士の、同盟。

 オラリオにおいて二大派閥と称されるほどに大きく、規模も戦力も桁違いなロキファミリアからの同盟提案。

 余りの事態に言葉を詰まらせていると、フィンはゆっくりとした動作でミリアに片手を差し出した。

 

「ロキファミリア団長であるこの僕【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナと、そちらの派閥の副団長である【魔銃使い】ミリア・ノースリスの婚約を以て、この同盟の(あかし)としたい」

「え、えええええええええええええええええええええっ!?」

 

 ────ミリアが、求婚されている。

 いや、それ自体は前にもミリアがさらりと語っていた気はする。けれど、こうやって目の前で真剣な表情でフィンさんが言い放った事で、あれが冗談ではなかったと理解させられた。

 

「ヘスティアファミリア団長、ベル・クラネル。そして女神ヘスティア、損の無い話だと思う」 

 

 子供の様な容姿にも関わらず、纏う雰囲気は大人の風格。そんな彼が放った言葉に強い衝撃を受けて言葉を失う僕に、フィンさんは畳みかける様に続けた。

 

「ヘスティアファミリアには失礼かもしれないが、キミ達は今、とてつもなく不均衡(アンバランス)だ」

 

 『再生薬』と言うオラリオの常識を塗り替える新薬。それを生み出す事が出来る素材を得られる飛竜。

 そしてミリアが持ち得る異質なスキル。魂そのものから形を変え、無数の可能性(ステイタス)を取り換えて利用するという、類を見ない希少(レア)な人物。

 彼女が持ち得る常識を塗り替える超遠距離砲撃。

 ヘスティアファミリアは大きくなった。今までの極小派閥ではない、一端の中堅派閥にまで急成長した。その上で、だ。

で、だ。

 ────ヘスティアファミリアは、不均衡(アンバランス)だ。

 持ち得る利益を生み出す眷属(ミリア)と言う一個人に偏り切った、その戦力、資金力。彼女一人で護れる範囲もたかが知れており、はっきり言えば、ミリアが居なければ回らない。だというのに彼女を守るだけの力が、圧倒的に不足している。彼女の自衛能力を超えた戦力をぶつけられた時、それが派閥の破滅に繋がる。

 故に、此処で二大派閥として力も規模も兼ね備えたロキファミリアと同盟を結ぶ証として、最重要人物であるミリアを守る為にも、婚姻と言う形をとりたい。

 

「どうだろうか?」

 

 損の無い話。と言う言葉に嘘は無かった。

 むしろ、今の現状からこれから先に訪れるであろう苦難に対して力不足である僕たちを、手助けしてくれるのだろう。それは、間違いない。

 あの、アポロンファミリアの襲撃。血溜まりに沈む彼女の姿が一瞬脳裏に浮かんだ。

 ────僕の、力不足が招いたあの事態。

 もう一度、同じことが起きるかもしれない。それは、戦争遊戯の準備期間中にも伝えられた事だった。

 

「無論、無理強いはしない。断って貰っても構わない」

 

 これまで通り、困っている事があれば手を貸そう。貸し、と言う形になるのは止むを得ない事であはる。

 ────今すぐ答えを出せ、なんていう積りは無い。話し合う必要もあるだろう。

 ────とはいえ僕にも時間がある訳じゃない、後片付けが終わるまでに返事を聞かせて欲しい。

 ミリアの立ち位置、その重要性。狙われるのはほぼ間違いなくて、それを第一級冒険者に守ってもらえる。それの意味が分からない程、僕は馬鹿ではなかった。

 ミリアの為になる事なのは、間違いなくて────もし、ミリアがこの求婚を受けたとしたら……僕は、どうするのだろうか。

 

 

 

「私個人としては、ですが。受けても良いかなとは思ってますね」

 

 ミリアの口から告げられた言葉に息が詰まった。

 片付けが始まった会場の片隅、僕、神様、そしてミリアにリリの四人で輪になって先ほどの話題を上げれば、彼女は真っ先にそう発言した。

 

「……良いのかい、ミリア君?」

「【勇者(ブレイバー)】様からの、求婚ですか……ミリア様なら不思議ではないですね」

 

 神様とリリの言葉を聞きながら、そわそわと落ち着かない身をなんとか誤魔化そうとミリアに声をかける。

 

「で、でも、ほら……あの……」

「どうしたのベル、落ち着きないけど? 大丈夫?」

 

 不相応じゃないかな。なんてしょうもない言葉を呟きそうになって、思い返してみればとても良くお似合いな二人だと背筋が凍り付いた。

 その持ち得る才能に、僕だって何度も救われてきたじゃないか。

 特殊な魔法に、特殊なスキル。そして『再生薬』や飛竜を調教(テイム)している事。そしてその種族。

 同種族の中でもとりわけ小柄な彼女は、片目が赤くなっているけれど柔らかな金髪に碧眼の美少女だ。フィン・ディムナも同様に黄金色の髪に碧眼。僕の様な少年では叶いっこない様な大人の風格を、二人とも持っている。

 落ち着きを払ったミリアの声に、出口の失われた袋小路に囚われような感覚に陥る。

 

「…………」

 

 血溜まりに沈む姿が脳裏を過る。

 フィン・ディムナなら、第一級冒険者ならあんな惨劇を華麗に回避していくことだろう。

 いつも、彼女が傍に居て、共に冒険を続けてきた。そのさ中に何度も、何度も彼女に救われて────僕は、ミリアに見合う事が出来ているのだろうか。

 ただがむしゃらに強くなろうとはしてきた。けれどそれを遥かに超えて行ってミリアは高い所に居る様に思えた。

 

「んー、ミリア君。悪いんだけど喉が渇いたから水を貰ってきてくれないかい?」

「わかりました。ちょっと行ってきますね」

 

 軽い足取りで────求婚された本人でありながら、全く気にしていない様な彼女が歩いていく。それを見送っていると、ぽんっと神様が僕の胸に手を当ててきた。

 

「ベル君、キミはもしかして、自分よりも彼が守る方が良いとでも思ってるんじゃないかい?」

「えっと……僕は、その」

 

 神様の指摘通りだった。

 あの血溜まりに沈んだミリアと言う、忘れる事の出来ない光景を彼なら回避できるんだと、僕はそう考えてしまった。

 彼女の重要性、そこから導き出される未来予想図には、やはり数多の苦難が待ち構えている。たったLv.3、第二級冒険者になっただけの僕では、守り切れない敵すら現れるかもしれない。

 第一級冒険者が本気で、彼女を狙ったとして────僕では時間稼ぎすら出来ずに倒されるに違いない。

 だとするなら、都市有数の第一級冒険者の集まりであるロキファミリアと同盟を結ぶのは間違っていないと思う。

 僕なんかよりずっと格好良くて、強くて────ミリアに見合うだけの風格を持った彼なら。彼女を確実に守れる。

 …………僕なんかが、口出ししてもしょうがないのだと。

 

「言っておくけど…………ボクはミリア君が同盟を受ける気なら、止めないぜ?」 

 

 僕の考えを見透かした様に神様は言った。

 神ロキと仲の悪い神様なら、もしかしたら断るかもしれない。そして神様が断るなら、ミリアは迷わずそれに従うだろう。そんな風に縋る様に考えていた僕を咎めるように。

 

「もしかしたら手強い恋敵(ライバル)を増やすかもだけど……うーん」

 

 呆然とする僕が小さく呟かれた神様の言葉を聞き逃していると、神様は顔を上げた。

 

「ベル君、キミはこのままミリア君が行ってしまっても良いのかい?」

「ぼ、僕は……」

「キミはさ、もっと我儘になるべきだよ」

 

 僕の心の中を見通す様な青みががかった瞳に微笑まれ、立ち尽くしていた僕は。

 次の瞬間、拳を握り締めていた。

 

「ヘスティア様、水貰ってきましたよ……っと、ベルはどうしたんです? 返事は決めました?」

「ありがとうミリア君、ほらベル君、返事が決まったのなら行こうじゃないか」

 

 僕は────。

 

 

 

 既にテーブルの上の料理や汚れた食器等は片付けられ、モップを手に床に飛び散った酒や食べカスを片付ける団員の姿が見て取れるのみ。

 片付けも大詰めと言う段に至って、ようやくベルが返事を決めたらしい。

 俺個人の意見としては、やはり同盟を受けるのが安定であろう。フィンとの婚姻というのはまあ、悪い話と言う程でも無いし、フィンの事を嫌っている訳でもないので即承諾してもよかったのだが。

 ベルが何か悩まし気にしていたのが少し気になるぐらいか。俺は婚姻自体に拒否感はないんだがね。

 

「ベル・クラネル。返事を聞かせてもらおうか」

「はい……この同盟、お断りさせてください」

 

 ……うぉ? え? 断るの? 割と良い感じの条件だと思うんだが。

 何か不満事項があった?

 

「理由を聞かせて貰っても?」

 

 真剣な表情でベルが此方を見回し、覚悟を決めた様に口元を引き結んでフィンに向き直った。

 

「確かに、この同盟を結んだほうが良いっていうのはわかるんです」

 

 同盟そのものには肯定の言葉を放つベル。けれども何か不満があってその同盟を蹴るらしい。

 何処に不満があるのだろうか。第一級冒険者が多数所属する規模の大きな派閥、隷属ではなく同盟と言う時点で対等に扱ってもらえるというのは破格に等しい。

 フィンの目的も達成できつつ、ヘスティアファミリアの安全も約束される。良いこと尽くめではないか?

 まあ、あえてデメリットを上げるとするならば……そうだな。

 ロキファミリアとの同盟となる訳だから、変な行動を起こせばロキファミリアの方の看板にも瑕が付きかねない。故に派閥方針はやはりロキファミリアに合わせなくてはいけないし、ロキファミリアが敵対している派閥からヘスティアファミリアも狙われる事になるだろう。けれど戦力的にも返り討ちにできるだろうし……。

 何が不満なんだろうかね。

 

「でも────僕が守りたいんです」

 

 はて?

 

「守りたい、そう考えるなら僕たちの手を取るべきだと思うけれど」

「違うんです。僕が、僕の手で守りたいんです」

 

 戦争遊戯に向けて、ベルが胸に抱いた数多くの複雑な想い。

 その中でも、とりわけ、大きく、強い願いは────守りたい、その願いだった。

 

「たしかに、ロキファミリアと同盟を組めば、守ってもらえる……僕じゃなくて、第一級冒険者の皆さんに」

 

 ────でも違うんだ。僕は、誰かに守ってもらうんじゃない。

 ────自分で、守りたいから強くなりたいって思ったんだ。

 

「今の僕は、まだ弱い。第一級冒険者が襲ってくれば、きっと時間稼ぎも出来ない」

 

 ────それでも、僕は僕の手で守りたい。ファミリアを、皆を────家族(ミリア)を守りたい。

 

「今は、まだ弱い。でも、いつか強くなる。皆を守り切れるぐらい、どんな悪意からも、守れるぐらいに強くなる!」

 

 いつの間にか、フィンに向けられていた言葉は、俺に向けられていた。

 深紅(ルベライト)の色の奥、決意を秘めたベルの瞳が真っ直ぐに俺を見据えている。

 

「約束する。僕は強くなる、強くなって────キミを守る。キミを守り切れるぐらいに強くなる!」

 

 だから、僕たちと一緒に居て欲しい。そう、力強く宣言された。

 

 

 

 ぼんやりとバルコニーの座椅子に座ったまま、片付けが進められている会場に視線を向ける。

 火照った頬に当たる夜風が心地よく────火照りの原因が酒精(アルコール)ではない別の何かなのに気付いて、思わず頬を揉む様に手でぐにぐにと誤魔化す。

 

 ────キミを守る。

 

 その言葉が何度も頭の中を反響して、込み上げてくる嬉しさと、顔が熱くなる様な、未知の感覚におかされて早鐘を打つ心臓。気が付けば冷静さを欠いていく自身を理解しつつも、なんとか平常心を保とうと頬をぐにぐにと揉んで────ベルの声が響いて心臓が一際大きく跳ねた。

 

「ミリア、ここに居たんだ」

「ベ、ベルじゃない。どうしたの?」

 

 座ったまま微笑みかけ────ちゃんと微笑みの表情になっているだろうか。顔が熱く、ベルの顔を上手く見れない。早鐘を打っていた心臓が更に加速し、体が熱を持って体温が上がった気がする。

 

「ううん、その……さっきはごめん。その……勝手に同盟を蹴っちゃって」

「え、ああー……問題ないわ。その分、その……貴方が守ってくれるんでしょ?」

 

 冗談めかして呟こうとしたのに、思わず視線を背けてしまった。

 普段なら、いや、多分先ほどの出来事以前なら悪戯っぽく笑いながら冗談を零せたはずなのに────心拍数は無駄に、激しく上昇しては精神を揺さぶる。顔が発火したみたいに熱くなり、冷静さを保てない。

 今の自分の状態を冷静に分析するならば────端的に行って『恋に堕ちた』状態だろう。

 気まずい沈黙が下りたのに気付き、何か言葉をかけようと口を開く。

 

「そ、その……座ったら?」

 

 なんで、こんな時にそんな妙な台詞が出てくるのだろうか。自分が言った台詞に妙に冷静に突っ込みをいれつつ、恋に堕ちるとこんな風に冷静さを欠いてしまうのだな、と他人事の様に思いながらも全力でそれを隠そうとする。正直、上手くいってる気がしないが。

 

「え、ああ、うん」

 

 三人並んで座っても余裕のある長椅子。端っこに座っている俺に対し、ベルは拳一つ分を空けて、俺の隣に腰掛けた────近い、いや普段の距離だ。

 近い、とても近く感じる。それはきっと、俺の心境の変化によるものだ。ベルの方は、普段通りの距離感で接してきているだけだ。前までは気にならなかったそれが、今はとても気になる。

 

「ごめんね、弱くて」

「────え?」

 

 よわ、弱い? 誰が? 俺が?

 思わず逸らしていた視線をベルの方に向けてしまった。すぐ隣、手を伸ばせば届く距離に、ベルが居た。心臓が跳ね上がり、顔が熱くなる────絶対に顔が赤くなってる。

 

「ヒュアキントスから、キミを守れなくて……」

「あ、その……気にしなくていいわ。むしろ、肩は大丈夫? あの時、撃っちゃったけど」

「全然平気だよ、むしろごめん。僕がもっと強ければ」

 

 それは、違う。あれは仕方の無かった事だ、なんて口にはできなかった。

 ベルは、空を見上げていた。満天の星空を見据え、深紅(ルベライト)の瞳に力強い意志を宿した、若干の幼さの残る少年の表情が其処に有った。

 見慣れた筈の、少年のその顔に心臓は早鐘を打ち、爆発してしまいそうな程に暴れ回る。

 

「ミリア、僕強くなるから。絶対に────キミを守れるぐらいに」

 

 星空から俺の方に視線を戻す。真正面から視線が交じり合い────力強い宣言に、心臓が爆発したかと勘違いするぐらいに跳ねる。誤魔化しが効かない程に、林檎みたいに真っ赤になっているであろう顔で、なんとか微笑みを浮かべた。

 

「うん、ありがと」

 

 どこか頼りなさげだった雰囲気を持つ、小動物を思わせる線の細い少年だった彼。それが嘘みたいに、力強い笑みを浮かべた彼に、心から惹かれていく。

 

 いつも、守る事ばかり考えていた。あの人を守りたくて、悪に身を染め、自ら堕ち続けたあの日々。

 死に物狂いで仲間の身を案じ、行動をしてきたオラリオでの日々。

 いつも、いつも守りたいとしか考えてなかった────守られる、なんて微塵も考えた事は無かった。

 いや、守るとか守られるとか、打算的に第一級冒険者に守られるのは良いだろう、なんて考えた事はある。けれど、打算も何も含まれていない────そんな純粋な想いからの行動は、初めてだった。

 心臓が跳ね────思わず、本当に思わずだ。俺は行動に出ていた。

 

「ねぇ、ベル。『月が綺麗ですね』って知ってる?」

「何それ?」

 

 そっか。知らないのか。うん、それなら────。

 

「ちょっと耳貸して?」

 

 不思議そうな表情を浮かべて耳を寄せてくる少年の頬に、軽くキスをしてから身を離して立ち上がる。

 

「え?」

「ふふっ、ねぇベル、貴方は本当に────いえ、なんでもないわ」

 

 反応が本当に初々しくて可愛いわね、と言いかけてやめる。ベルもこう見えて男の子だ、可愛いと褒められたくはないだろう。

 

「ミ、ミリア、今、そのっ」

 

 何をされたのか分からずに慌てふためく彼に微笑みかけ、天を示して口を開く。

 

貴方の事を愛しています(月が綺麗ですね)

 

 きっと、意味は通じないだろう。けれど今はそれでいい。

 恋敵(ライバル)は数多い。まさかヘスティア様と奪い合う関係になるなんて想像していなかったし、あの【剣姫】もその一人だとは。

 ああ、けれど────この胸が熱く燃え上がる様な感覚は、嫌いじゃない。

 

「────え?」

 

 意味のわからない事を言った俺に困惑の表情を浮かべる少年に、とびっきりの笑顔を向けておいた。




 原作主人公すげぇ……あの攻略難易度激高のミリアちゃんを堕としたぞ(震え声)

 今まで『守る事』しか考えてなかった子に、『キミを守りたい』と言う台詞。
 『守る対象』であった彼が、確かに『守ってくれる相手』だと思える程に、共に苦難を乗り越えて、遂にって感じ。

 ヘスティア様は恋敵(ライバル)が増えるのわかっててベル君の背を押してますな。


 というか恋愛ってこんなんで良いんかね?

 次は『√フィン・ディムナ』ですかね。


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√フィン・ディムナ

 終わりに近づいた勝利を祝う(パーティー)の会場。煌びやかな場に合わない神妙な雰囲気が漂う、ヘスティアファミリアとロキファミリアの対面した空間。

 ロキファミリアから放たれた同盟の提案。

 都市(オラリオ)の二大派閥の一つとして数えられる派閥から、此度の戦争遊戯(たたかい)にて中堅に至ったとはいえまだまだ小さな派閥に対して放たれたそれは、十二分に頷くに足る提案であった。

 隷属でも、配下となるでも、庇護下に入るでもない。対等な関係としての同盟提案。挙げられる問題としては、派閥の主神たる神ロキとヘスティア様の友好関係。そして規模の差からどうしてもロキ派閥の行動方針に従わなくてはならない点。

 後は────俺がフィンに嫁ぐことになる事、ぐらいか。

 

「さて、答えを聞かせて貰えるだろうか」

 

 ヴェルフは酔い潰れていてとてもではないが話し合いに参加できなかったこともあり、他派閥からの増援組は改宗(コンバージョン)後、一年は他派閥へ改宗(コンバージョン)出来ないという神々の定めた規則(ルール)によって一年のみの所属であるがゆえに参加を見送った。

 結果として主神のヘスティア様、団長のベル、副団長の俺、団員のリリルカの四人での話し合いとなった訳だが。特に反対意見が出る訳でも無く、俺の意思に委ねられることになった。その答えを、今ここで口にしなくてはならない。

 

 後ろに並ぶヘスティア様、ベル、リリルカの三人。その更に後ろに増援として所属している一年限定所属の改宗(コンバージョン)組。

 正面には胸を張って団長としての威厳を振り撒くフィン・ディムナ。その左後ろで見守る主神ロキ。二人の左右を固めるリヴェリア・リヨス・アールヴとガレス・ランドロック。そしてティオネ・ヒリュテを抜いた幹部の者達。

 第一級冒険者全員の視線が俺に集まっているのを意識しつつ、フィンの前に歩み出る。

 彼の妻となる。という事に思うところが無いかというと、少し不安はあるが────此処に居ない女戦士(アマゾネス)とか。

 それを除けば、ヘスティアファミリア────家族(みんな)を守るのに最高の条件を出してくれている。

 受けない理由は、無い。

 

「【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ。そちらの派閥であるロキファミリアの同盟提案。我々ヘスティアファミリアはお受けいたします」

 

 ピンと張っていた空気を震わせる俺の声。それを受けたフィンの表情が和らぎ、安堵の吐息を吐いた。

 彼は静かに歩み寄ってきて、目の前で跪いて忠誠を誓う騎士の様な厳かな雰囲気を纏いながら、言葉を放つ。

 

「ロキファミリア団長、フィン・ディムナよりヘスティアファミリア副団長ミリア・ノースリスへ婚姻を申し込む」

 

 一連の動作に一瞬見惚れ、差し出された手に自身の手を重ねて、返事を口にする。

 

「お受けいたします」

 

 此処に同盟と、婚姻は成り立った。

 それを証明するのは互いの派閥の主神たち。そして各々の派閥の仲間達。

 酒が入っているのか若干赤い頬をしたフィンに見上げられ、小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 会場の片付けが進むのをバルコニーの長椅子に腰掛け、眺める。

 周囲に人は居ない。少し考え事をしたいと人払いをして、一人にして貰ったのだ。

 前世の時点で性別に対する考え方が少し、いやかなり希薄だった覚えはある。けれど女性の裸体に対して人並みに性的な興奮を持つ程度には、男性的であったはずだ。記憶の中で女性と性交をしている場面を思い浮かべ────大半が演技の上で、仕方なくと言った嫌々女性を抱いていた事を思い出した。

 かといって、男性に抱かれる、という姿はどうにも想像がつかない。そも、この身に成ってからの日々は余りにも波乱万丈ともいえる日々で────性別について考える機会はあまりなかった様に思う。

 普段、ベルからの照れた反応等から、一応この身は女性であるという考えは頭の片隅にはある。だからといって男性を異性と認識するには少し時間がかかりそうな気もするが。

 同盟の提案を受け、フィンのお嫁さんとなったのだが……はてさて、夫婦生活とやらは上手くいくのだろうか。派閥の団長として大忙しな彼を支える、という意味では今までベルを支えてきたのを変わりないかもしれないのだが。規模が全く違うし、勝手も違うだろう。

 ヘスティアファミリアとの同盟もあるし、定期的にヘスティア様の元へ顔を出して。フィンとの生活となる訳だ。

 不満があるか。と言えばそうでもない。そも、男性に嫁ぐことに対して忌避感があるなら断るに決まっている。

 グルグルと浮かぶしょうもない悩みを梱包材をぷちぷち潰す様に処理していると、バルコニーの入口からフィンが声をかけてきた。

 

「やあ、考え事かい?」

「【勇者(ブレイバー)】ですか」

 

 少し戸惑った彼は、室内とバルコニーの境界を踏み越えて近づいてきながら微笑んだ。

 

「これからはフィン、と呼び捨てにしてくれ────婚約者同士なんだからね」

 

 彼の言葉に、その通りだなと頷いて呼び直す。

 

「ですね。改めてよろしく、フィン」

「あ、ああこちらこそ、よろしく」

 

 ほんの一瞬、フィンが言葉を詰まらせた様な気がするが。あの派閥の長を務める団長がそんな風に言葉を詰まらせる印象が似合わず、気のせいかと首を傾げる。それを見たフィンが長椅子の端に立って口を開いた。

 

「ここに座っても?」

「……? ええ、どうぞ」

 

 何処か遠慮がちに、三人掛けの長椅子の端に座る俺に対し、反対側の端に腰掛けたフィン。婚約者同士であるのなら一人分────小人族で言うと二人分近い距離────を空けて座るのはおかしいのではないだろうか。

 疑問を覚えて端に座ったフィンをちらりと見てみると、彼は空を見上げながら呟く様に声をかけてきた。

 

「邪魔だったかな」

「え?」

「いや、仲間から離れて一人でいたからね。もしかしたら邪魔をしてしまったかなと思ってね」

 

 それを気にするのは、少し遅いのではないのだろうか。そんな疑問が浮かび────フィンの頬に若干朱がさしているのが見て取れた。酒に酔っているらしい。

 

「いえ、別に邪魔だとは思っていないですよ。それよりも少し話したいなとは思ってましたし丁度いいかなと」

「……僕と話したい事、かい?」

 

 意外そうな表情を浮かべ此方を見たフィンに対し、俺の方から距離を詰め、間に拳一つ分開けて座り直した。

 

「隣失礼するわね」

「どうぞ」

 

 柔らかく落ち着いた笑みを浮かべたフィンに、違和感を覚える。若干、声が震えてる様な気がしてまじまじと隣に腰掛ける人物を観察していると、彼は小さく小首を傾げた。

 

「それで、話したい事って?」

「そうですねぇ。私ってあまり女性らしくない。と思うんですよ」

 

 しいて言うなれば、羞恥心があまりないとでも言えば良いだろうか。例えばの話、全裸で街中を徘徊する事に対して羞恥を感じるよりは、周囲との差異を気にしてしまう。とでもいえば良いのか。

 裸を見られるよりは、異物として見られるかもしれないという部分に恐怖を感じる。

 そういった細々とした小さな差異。異物感。

 食欲、睡眠欲、性欲。三大欲求とも呼べるこの三つが上手く機能していないのもそうだし。並べ立てていくと俺はだいぶ異質な人間という事になってしまう。

 前世の頃からほんのりと自覚はしていた。周囲の友人と呼べる男友達が成人向けのグラビア雑誌なんかを持ち寄って、この胸エロいよなと話しているのを聞いて、指し示された雑誌に映る女性を見てもあまりそういった欲求が浮かんでこない事とか。彼女との初めての行為の際、向こうから雰囲気を作った二人きりの部屋であからさまに誘ってきてるな、と空気を読んで彼女との行為を行ったとか。

 一つ一つは大したこと無い事かもしれないが、どうにも性別に関しての考え方が歪んでる。

 

「普段から女性っぽい振る舞いはしてる積りなんですけどね」

 

 しかし、中身としてはそうではない。

 今この場において、婚約者となった異性────フィンを異性として見るのに違和感はあるが────を隣にしても。どうにも実感がわかない。裸体を鏡の前に晒して、己の身が女性であると認識はしている。けれど、心までそうかというと、どうだろうか?

 

「変な話を聞かせて悪いですね。どうにも、こういうのには慣れてなくて」

 

 空を見上げれば、満天の星空に月が浮かんでいた。

 真ん丸、ではないけれど星空の海を行く月がほんの少しだけ羨ましい。気楽な一人旅、地上から見守られ、何処へと行くのだろう。

 

「一つ、聞かせて貰っても良いだろうか」

 

 神妙な声色で此方に問いかけてきたフィン。

 月の光に柔らかく輝く黄金色の髪が揺れる。

 固く引き結ばれた口と、赤らんだ頬。思い悩む様に身を揺らし、彼は口を開いた。

 

「キミは、僕の事が嫌いだったりしないだろうか」

 

 彼の質問を受け、ふと自身の発言を振り返る。

 婚姻を受け入れておきながら、それに思い悩む様な発言。それは、彼に対してだいぶ失礼な発言であったのではないだろうか。そう思ったところで、首を横に振る。

 

「いえ、貴方の事が嫌いな訳ではありません。むしろ好意を抱いていると断じても良いぐらいには、良く思っていますよ」

 

 繰り返すが、彼に対して嫌悪感は全く抱いていない。それこそ、最初の出会いは最悪の形ではあったが、今となっては笑い話として笑い飛ばせてしまえる程度の出来事だ。

 彼の志す『小人族の復興』は、もし手を貸せるなら俺だって協力は惜しまない事を誓える。

 

「そう、か……」

 

 小さく吐息を零し、彼はぱっと立ち上がった。

 突然の行動にどうしたのかと首を傾げると、フィンは軽く深呼吸をしながら俺の正面に回り込んで、片膝を突いて此方を見上げてきた。

 

「ミリア、僕は君が好きだ」

 

 真っ直ぐ、目を一切逸らす事も無く告げられた告白の言葉。酒精によるものか赤らんだ頬と、揺れる瞳。けれどその奥には力強い意志が見て取れる。嘘や演技の含まれていない、真っ直ぐな言葉だった。

 それに対し、肩から力を抜いて微笑んだ。

 

「私も、貴方が好きですよ」

 

 少なくとも、返事としては間違っていない。そのはずなのだが────フィンの瞳に、悲し気な色が宿る。

 深く、重苦しい溜息を零した彼が立ち上がった。

 

「やはり、と言うべきかな」

「えっと、どうしたので?」

 

 何か、気に食わない事でもあっただろうか。少なくとも百点満点な返事は出来たはずだと自分の返事に自己採点しつつもダメだった点を探してみるが、いまいちよくわからない。

 こちらを見下ろしたフィンが、肩を竦め────俺の手を取った。

 

「行動で示さないと、どうにもダメみたいだ」

「え?」

 

 半ば強引に引っ張られて立ち上がり、俺はフィンの腕の中に納まっていた。

 ドクドクと激しく音色を奏でる鼓動の音を感じ取りながら、フィンの腕の中で目を白黒させる。

 

「もう一度、言わせて貰うよ。僕はキミが好きだ」

 

 大きく鼓動が跳ねて乱れ────気付いた。今大きく響くこの激しく早鐘を打つ鼓動は、俺のモノではない。

 俺の心臓は、平常心である事を示す様に一定の旋律(リズム)で脈動を続けている。では、この早鐘を打つ心臓は誰のものなのか。

 

「何度でも、僕は言わせてもらう。キミが好きだ」

 

 耳元で囁かれる告白の言葉。その度に、聞こえる鼓動は激しさを増し────ようやく気付いた。

 フィンからは、酒の臭いがしない。今日の(パーティ)のさ中、彼が口にしていたのは果実汁(ジュース)だったはずで────全ての行動を見ていた訳ではないのでわからないが、彼は酒を口にしていないのではないだろうか。

 

「僕は」

「フィン、少し放して貰っても────」

「嫌だ」

 

 胸に抱かれる様に、フィンに力強く抱きしめられる。息苦しさは感じないが、フィンの顔を見る事が出来ない。

 腕の中から見える僅かな景色と、早鐘を打つ鼓動の音色。突然の出来事に戸惑っていると、フィンは小さく呟いた。

 

「【勇者(ブレイバー)】という二つ名は、僕が自分からロキに頼んで付けて貰ったんだ」

 

 知っている。それは過去に聞いた話だ。

 自ら逃げ道を塞ぎ、女神(フィアナ)にとって代わる旗頭へと自信を押し上げたソレ。

 

「僕は一族の再興を何としてでも成し遂げたい」

 

 知っている。それを語るフィンの真っ直ぐな力強い意志は、とても美しいモノだったから。

 

「これから生まれてくる同胞たちの為にも、僕は止まれない」

 

 彼が、どれほどその悲願に身を賭しているのかを、俺は知っている。

 

「人並みの幸せというものに関心は無かった。いや、持たない様にしていた」

 

 フィンの胸に抱かれたまま、彼の胸の奥から響く激しい鼓動を聞きながら、独白に耳を傾ける。

 

「関心を持ってしまったら、ここまで歩んできた道を全てが無駄になってしまう」

 

 肩を掴まれ、真正面から向き合う。

 美しい碧眼が湖面の如き光を宿し、俺を真正面から見つめていた。

 その奥に宿された、固く、崇高な、一族への献身の意思。見惚れる程に美しい、その力強い意志。

 己の全てを賭して挑む生き様。それは自身の全てを捨てる事に等しく、孤独な茨道だ。

 

「繰り返そう、僕はキミが好きだ」

 

 もし、共に歩める仲間が居たら。

 もし、この茨道を行く己を支えてくれる者が居たら。

 もし、それが心の底から愛せると誓える者だったら。

 ────どれほど幸せな事だろうか。

 

「能力や、技能。そういったモノだけを見て、キミを選んだ訳じゃない」

 

 ────とてもではないが、敵うはずもない難敵に立ち向かう為に全てを賭すキミに見惚れた。

 もし、願いが叶うならば。キミと共に歩みたい。キミに支えて欲しい。

 

(こころざし)(なか)ばで果てる積りは無い。けれど────」

 

 キミと一緒になら、その茨道を乗り越えていける。

 

「何度でも、僕は口にしよう。────キミが好きだ」

 

 力強く告げられたその言葉に、彼の語る生き様に、心打たれた。

 ただの打算ではない。心の底から惚れた人に、共に歩んで欲しい。それは、とても身勝手な考えだと思う。

 其処に俺の意思が、無い。けれど────真っ直ぐに告げられたその想いは、俺を動かすのには十二分に過ぎた。

 

「フィン、()()()()()()()って知ってますか?」

 

 知るはずもない言葉だろう。それに、この言葉を告げるべきは男性側であって、女性側である俺ではない。

 

「キミのためなら死ねる。とでも返せば良いのかな?」

 

 少し、言葉が違うが。なんとなく意味は同じだろうか。

 俺の知る知識では日本のとある文豪が英語の『I love you』を訳した際に『月が綺麗ですね』と訳せと言ったのが始まりだとか。返す台詞の定番は『死んでもいいわ』だとか。

 神々が伝えたのだろうか。疑問はあるが、意味が通じているのなら構わないか。

 

「むしろ、僕が言うべき台詞だと思うけれどね」

 

 肩にかかっていた手が俺を離れ、フィンが再度俺の前に片膝を突き、あたかも誓いを告げる騎士の様な、厳かな雰囲気を纏った彼が、俺を見上げてくる。

 美しい湖面を思わせる碧眼が真っ直ぐに俺の姿を映し、彼は口を開いた。

 

君を愛している(月が綺麗ですね)

 

 笑みが零れ落ちそうになりながらも、彼の手に自らの手を重ねる。

 少し、自覚が足りなかったみたいだ。フィンが抱く想いがどれほどのモノなのか、ようやくわかった。

 己の心臓が早鐘を打っているのを自覚しながらも、言葉を告げる。 

 

貴方を愛しています(死んでもいいわ)




 依頼の、品……あれ、なんか違う? いや絶対違うなこれ。

 恋愛って事で告白の場面をロマンティックに書こうとしたけど、やっぱ私じゃ無理だ。
 色々と申し訳ない……。

 皆が浮かべる『恋愛』っていうのは男女がいちゃいちゃする奴なんだろうなぁ……そんなん書いてたら砂糖吐いて死にそう(白目)


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