良心的な逸般人ウェスカーの幻想入り (カンダム)
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第一幕 始まり
diary1 神の地で


思い込みでウェスカーになる男のお話。なお、少年時代は波乱万丈だった模様。


 神を目指した男、その男に憧れた男が居た。その男は模倣を繰り返し、何時しかウィルスさえも作り出す。

 彼にとってウィルスは己を試す道具。その完成したウィルス達を一斉に投与し、見事、適合させた。思い込みはここまで来ると体をも変えてしまう物なのだろうか。

 彼は正真正銘、アルバート・ウェスカーに至った。彼の思想どうりに動く、夢見る屍として。

 

「さて、そろそろ顔を見せたらどうだ。私としては無視してもいいぐらいに忙しい。

 用件があるなら直ぐに言い、立ち去れ」

 

 ある遺跡で、ウェスカーがウィルスの実験のために探索していたのだが、彼の後ろにローブで顔を隠した女が笑みを浮かべながら現れた。

 女は笑みを浮かべたままウェスカーに歩み寄り、紙切れを手渡す。

 

「ほう、これは真か?」

 

 女は頷いた。ウェスカーは紙切れを放り投げ、ウィルスが入ったアタッシュケースを持ち、早足で遺跡を去った。

 ウェスカーが去った後、女は紙切れを持ち上げ、読み上げていく。

 

「貴方を神の地へと誘いましょう。場所は、日本の〇×市にある博麗神社へ。お待ちしております」

 

 読み上げた女は紙切れを懐にしまい、また笑みを浮かべて、歩きだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウェスカーは紙切れに書かれた場所に着いた。着いた神社は古めかしく、しかし、どこか神秘的である。

 彼は疲れたのか、賽銭箱の前の階段に腰を掛けた。アタッシュケースを横に置き、待ち続ける。

 

「あら、お早い到着ね。ハロー!」

 

「ッ?!」

 

 しびれを切らす所で、丁度よく目の前の空間が避け、そこから上半身を乗り出すようにして彼を見る女性がそこには居た。

 少しウェスカーは取り乱す。あり得ない光景なのだ、彼からすれば目の前の空間が避けるというものは。彼は目の前の女性をB.O.W.と結論付ける。

 そうでもしないと結論が出ないのだから。

 

「貴様か、私を呼んだのは」

 

「返してくれなんて釣れないわねぇ。あ、呼ばせたのは私よ。……アルバート・ウェスカーさん?」

 

「で?神の地とはなんだ」

 

「貴方を招待しようと思ったのよ、神々すらも住まう地、幻想郷へ。貴方はそこで何でもしていいわ」

 

「ほう、すらもと来たか。ふむ、興味が湧いてきた。乗ってやろう貴様の策略に」

 

「それは光栄ですこと。行くには鳥居から出れば大丈夫ですわ。では、幸運を」

 

 ウェスカーは確信する。この女は胡散臭く、他者を見下し、嘲笑っているようなB.O.W.だと。

 だが、そんなことで止まる彼ではない。アタッシュケースを持ち、鳥居を潜った。

 

 

 

 

 

「これは、先程の神社………いや、綺麗だ」

 

 神社に戻されたのかと思う彼だが、正確には戻されていなかった。目の前の神社は綺麗で、桜が咲き誇っていて、鮮やかだったのだ。

 ウェスカーは困惑したが、生き方は変わる事はない。落ち着きを取り戻したウェスカーはその神社を後にし、道なりに足を動かしていく。

 

 どこを見ても綺麗で、空気が美味しく感じる神の地。その地に感動するウェスカー。そして、この光景がどの様な末路を辿るのか、ウェスカーは思い浮かべる。

 さぞかし綺麗なのだろうな、そう考えた。

 

 ウェスカーは先ず、綺麗だと思った山に向かった。その山は気の鮮やかさが保たれた、現代ではなかなか見れなかった自然豊かな山。

 

 ウェスカーが山に踏み入り、奥地へと進もうかと踏み出したとき、道を遮るように少女が止めにはいる。

 

「止まれ!」

 

「何……?」

 

 彼が最初に驚いたのは、そのけもみみとモフモフのしっぽ。狼か犬のけもみみか、そこは重要ではなく、なぜ理性があるのか。

 ウェスカーは多種多様な実験を繰り返し、目の前の少女の様なB.O.W.を作ったことがあるが、それに理性はなく、ただ体目当てな雌野郎だったのに。対して目の前の少女は?そこにウェスカーは驚いたのだ。

 

「人間、これ以上は立ち入り禁止だ」

 

「…………お前はなぜ理性を持つ」

 

「何だと?」

 

「何故、獣ではない」

 

「貴様ッ、馬鹿にしているのか!!私は生命と理性を持つッ、理性を持たぬ輩なんぞと一緒にするな!」

 

 その反応は当然、ウェスカーの心を刺激した。この少女で自らの力量を図っても問題ないかと思い、アタッシュケースを地面に優しく置き、サングラスを直す。

 

「なら見せてみろ。汝の生命を」

 

「そうか!なら見せてやろう!!」

 

 ウェスカーは右腕から触手を生やし、それを右手を包み込むようにして殴りかかる。一瞬で少女に迫る程の速さなのだが、それを少女は難なくかわす。

 

「おや、手加減し過ぎたか」

 

 少女がいた場所はクレーターが出来上がり、避けていなければ木っ端微塵だっただろう。

 

「貴方、ルールを知らないか?」

 

「ふむ、ルールか。なら、私には適応されない。私はこの世界の人間ではない、神の力はルールに縛られん」

 

「神だと?戯け!」

 

 少女は手に持っていた剣を用いて、ウェスカーに斬りかかる。だがその剣は、触手を纏う右手で防がれ、触手が剣に絡み付いて、次第には手に到達する。その速さは異常。少女の目で捉えられなかった。

 

 ウェスカーは悪魔のような微笑みをし、足から触手を生やして地中に潜らせ、少女の足元から付き出して、足も拘束した。

 左手から触手をまた生やし、勢いよく心臓を抉り取るために引き、付きだす。

 

「はあ!」

 

「っ?!」

 

「椛さん?」

 

 ウェスカーは割り込んできた第三者に止められ、触手を全て閉まって、アタッシュケースを持って下がる。

 何処から来たのだろうか、その割り込んできた第三者は彼に剣を向ける。

 

「逃げて、早く伝えに」

 

「は、はい!」

 

 少女は山奥へ、逃げるように走り込んだ。ウェスカーは逃がすまいと右手から心臓を生やして追跡するが、その触手は斬り伏せられる。

 

「貴様、何者だ」

 

「私は白浪天狗が一人、犬走 椛。貴方は」

 

「私はアルバート・ウェスカーだ」

 

「ではアルバートさん、貴方は何故この山に?返答次第で、私は殺さなくてはなりません」

 

 ウェスカーは仕方ないと肩を落とし、懐から拳銃を取り出す。その取り出した拳銃は改造されており、安全装置の部分が大きく変わっていて、小さくて太い注射器が差し込まれている。

 

 それを躊躇いなく撃ち込まれ、吸い込まれるように首筋へ。その直後に犬走は苦しみだす。

 痒く、疼き、何かを貪りたくなる。記憶が途切れ途切れになって行く。

 

「さて、少し実験に付き合ってもらおう」

 

「な、に………」

 

「生きるか死ぬか、見物だな」

 

 その言葉に犬走は怒りを覚えた。私は生きる、生きてやると体に言い聞かせ、縮まろうとする体に無知を打って言うことを聞かせる。

 すると、今までの痒みが嘘のように止んだ。疼きもなく、喉の乾きも消え、撃ち込まれる前以上の健康さに気が付く。犬走は打ち勝った。

 

「ふむ、まさかこうも早く収穫があったか」

 

「何を撃ったのですか」

 

「ワクチンだ。常人に耐えられない物なのだが、お前は適合した。見事、生きた。と言うわけだな」

 

 ウェスカーは改造された拳銃を仕舞い、サングラスを直す。置くに隠された目が赤く光ることで、恐怖が犬走に駆け巡る。

 得たいの知れないナニか。人間であって人間ではない様な者を退治しているかのような感覚に、犬走は後退りをしてしまう。

 

「そういえば、私がここへと来た理由を明かしていなかったな。一言で言い表すなら、観光」

 

「か、観光?」

 

「そうだ、あまりにも綺麗でな。この山を歩いてみたいと思い来た次第だ。ここは観光客を追い返すような場所かね?

 ならばこの道を引き返し、悪い噂を撒き散らしながら歩いて回ろう」

 

「な!?………仕方がない、着いてこい」

 

「感謝する」

 

 犬走は一種の脅迫を受け、ウェスカーを渋々ながらも案内することにした。見回りの同じ白浪天狗や烏天狗に見つからぬようにある場所を目指す。

 

 案内し、着いた場所は自然の滝が流れ、川が流れる場所。ウェスカーはその自然を見て、感激する。彼が生まれ育った土地では、このように綺麗な河は無かったのだから。当然の反応だった。

 

 彼は思う。このような河が在ったのならば、己の家族を救えた世ではないか。しかし、その思いはかき消される。自分は弱くない、私は死なないという覚悟がかき消したのだ。

 

「これは綺麗だな。犬走よ」

 

「……そうです、は綺麗ですね。ウェスカー、此方です。貴方はこれから合う人に匿ってもらってください。恐らく、私以外の白浪天狗が貴方を探しに来ます」

 

「何故そこまで?」

 

「貴方が力をくれたから。冷静になって考えたんですよ。私は下っぱの下っぱで、よく下に見られていた。

 ですが、貴方が私に撃ち込んだ、得たいの知れないナニかのお陰で、力を得たと確信した。

 久方ぶりに、人間とであって得をしましたね」

 

「………そうか」

 

 その表情に、ウェスカーは過去に自分の、自殺した母親を重ねた。女手一つで支えてくれていた彼の母親は、過度なストレスが原因で自殺したのだ。その母親の顔はみすぼらしく、暖かく、嘆いていた。

 

 弱かった過去。それが目の前の犬走に現れていると感じていって、哀れんでいく。

 

「すまないな、犬走」

 

「その黒いメガネで見えませんが……貴方もそのような顔が出るのですね。まるで、私を哀れむような。

 ええ、哀れむのなら哀れんで下さい。私は力を今さっき身に付けた存在。まだ私は変われていませんので、お好きなように感じてください」

 

「なに、少し昔を思い出しただけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が無数に浮かぶ、奇妙な空間の中で、八雲 紫は能力を使い、ウェスカーの動向を見ていた。

 

「紫様、これからどうなさるので?」

 

 そこへ、紫の式である八雲 藍が茶菓子を白い机に並べながら紫に問いかけた。

 その問いに、笑いながら紫は答える。

 

「足掻いてもらうわよ、私の霊夢のため、悪役になってもらう。場はまだ整ってはいないわ、まだ、まだ。

 追加要素は、そうね。聖杯なんてどうかしら?」

 

 八雲 紫は、また今日も。役を探し続ける。舞台に上がらぬ道化のように。

 

「そうですか」

 

 その答えに藍は溜め息を漏らして、胃を押さえる。今回ばかりは、持ちなさそうと悩みながら。

 

 




気が向いたら次回を投稿。


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diary2 協力者は河の城

気が向いたので投稿。
見てくれてる方がいて嬉しいです。


「ここが、入り口です」

 

「岩の影に作る基地か。それ程の物を隠したいのか、それとも隠れていたいだけか。

 まあ、それにさほど影響はない」

 

 河の影に隠れるようにある岩影に、木の扉が取り付けられている。ようやくたどり着いた協力者になりうる人物に会うべく、ウェスカーは先行してドアを開けた。

 中では様々な物が散らかり、配線がでたらめに伸びていて、とても危ない部屋だ。

 

「誰かいないのか………ん?」

 

 彼はその観察力で、人形の何かが棒立ちしているのに気が付いた。色は解らないが、恐らく光学迷彩の様なものをしているのだろうと察する。

 どうしたものかとウェスカーが頭の中で挨拶のシミュレーションをしていたところに、空気を読まずに犬走が入り込み、その人形に怒鳴る。

 

「河城!姿を見せろ!」

 

「お、おい流石にそれは」

 

「ウヒャイ!?椛?!」

 

 怖がる少女がその怒鳴りに恐れたのか、光学迷彩を解除した。その光景にウェスカーはやれやれと首を横に降って、軽いチョップを椛の頭に当てる。

 

「つっ………何ですか」  

 

「こういうものは然り気無くするのがベストだ。ほれ見ろ、怖がっているではないか。

 協力者になるかもしれないと言うのに」

 

「貴方の姿が怖いのでは?」

 

「どっちも怖いわ!!………はぁ、椛と盟友が来たということは、匿ってほしいんだよね。いいよ、匿わさせてもらうよ。

 椛は早く行ってきな、疑われちまうよ」

 

「ああ」

 

 犬走はドアを閉めてその場を去った。残ったのはウェスカーと、光学迷彩を使用していた少女だけが残った。

 少女は安心したかのように息を吐くと、ちゃぶ台を引っ張り出して、座布団を向かい合うように置いて、座るように促す。

 

 ウェスカーは頭を下げてから座布団の上で正座して、少女の方は座らずに、戸棚を開ける。

 

「お宅はなんでこの山に来たんだい?あ、飲み物は何がいい?」

 

「ここが綺麗だったから来ただけだ。それと、飲み物は珈琲はないか?出来れば角砂糖を一つ」

 

「はいよ」

 

 珈琲がウェスカーの前に置かれ、少女は座布団に座り胡座をかいて、自分で用意したお茶をちびちびと飲んでいる。

 

「君は、何かを研究などをしているのか?部屋に散乱する機類を見る限り、相当な熱の入りようだ。

 それとも、気になるものは片っ端に調べ、興味が薄れたものはこの様に処分する物だろうか」

 

「あー、どちらかと聞かれたら後者さ。調べても、直ぐに解明出来てしまうから……ところで、そのアタッシュケースは何だい?なんだか薬品の匂いが少しするんだ」

 

「………。まあ良いだろう、この中に入っている物はある意味、毒素だ。

 くれぐれも破壊しないように」

 

「な、なんだいこりゃ!」

 

 開かれたアタッシュケースの中には数種類のウィルスと、それぞれの解毒剤が入っている。

 彼が再現したウィルス達、その性能は変わりなく、傘印のお墨付き。

 

「さあ、研究するといい」

 

「ひゃぅほい!!あんがとー!」

 

 少女は一つのウィルスをひったくり、部屋の奥へと走り込んでいった。

 しかし、数分で戻ってくる。

 

「よし、解析は終わったよ……面白いねこれ。これを盟友達が作ったと思うと、鳥肌がたつ。

 いったい何人の人間を犠牲にしたんだ」

 

 口は笑っているが、その目は笑っていなかった。その瞳に写る顔は、とても笑っている。

 先程の空気から一変。

 殺気が漂う、殺伐な空間になってしまって、今にも死人が出そうな勢いになる。

 

「さあな、私はいちいちパンの食べた枚数を数えるほど暇ではない。

 その質問で君の探求が終わるのならば、約束を果たそうではないか。

 君は満たしただろう、次は私だ」

 

「そうさね、何がお望みだい?」

 

「私の仲間になれ」

 

 その言葉に少女は俯き、加温見せないようにして立ち上がった。

 少しの沈黙のあと、顔が上がる。

 

「……ハハッ。

 やーだね、私が叶えるのは人間と優しいやつの願いだけさ。お前のような人間とは言えない薬中野郎の願いなんざ、叶える義理はない!」

 

「なら、強引に行かせてもらう」

 

 ウェスカーは足元から触手を生やして、地中に潜らせ、飛び出させるように触手で攻撃する。

 その攻撃は少女に聞くようで、避けることしかできていない。

 

「おらおら!河城ニトリ様の発明品!

 特と味わうといいさ!」

 

「発明品か。匂いは……ふん。

 重火器だろう?鉛の匂いがするぞ」

 

「ご名答、正解者には素敵な贈り物。

 鉛弾を差し上げまーす!」

 

 少女が指をならすと、天井からガトリング等の重火器が取り付けられた柔軟性の高いアームが飛び出す。

 重火器から無数の弾丸が射出されて、弾がウェスカーを正確に捕らえる。

 

「あー、やり過ぎたかな?

 でもいいよねー、あんな薬を作る奴なんざ馬に蹴られたとにゴミの中に埋もれてりゃいいさ。

 まだまだたま切れしないよぉ!!ハハッハ」

 

「まだ詰めが甘いな」

 

「っ?!」

 

 触手は的確に少女の肩を切り裂かんと動く。その速さは尋常ではなかったが、少女はその場から飛び退く。

 所謂、野生の勘。その勘で避けたのだ。

 

「ふぃー、危ないね。

 しぶといね、まだ撃ち込まれてるのに。平気でしゃべるとかあんたヤバいな。

 ネジでもはずれたかい?」

 

「ネジなんて物は抜け落ちたさ、とっくのとうにな。まだ豆鉄砲を撃ち込むか?

 なら、貴様は馬鹿だな。河城ニトリ」

 

「なんで私の名前を?」

 

「…………自分で言っていただろう」

 

「あ、そっか。

 でも、それを覚えてても意味ないさ。

 ここで死ぬからね!」

 

 他のアームが持つ重火器よりも一周り巨大な重火器が取り付けられたアームがその重火器を構えた。

 その大きさといい、緑の弾といい、それはウェスカーがよく知る武器。RPGだ。

 

「ロケットランチャー……」

 

「んじゃま、裁かれるといい。

 後は閻魔様にお任させするから」

 

 弾は打ち出され、ウェスカーに当たり爆発が起こる。煙が充満し、次第に晴れていく。

 慢心したのか、ニトリはアームを全てしまう。

 

「このウイルスは全部貰うよ。

 死人に口無し、拒否はできないから」

 

 にやけ顔でウイルスが入ったカプセルを取り出し、そのウイルスを掲げる。

 腹を抱えて笑い、何に使おうかと考える。

 

「で?それをどうする」

 

「そら復讐に使う、あの天狗共にこのウイルスを使って実験する。

 あの忌々しい顔付きが消えるんだ」

 

「そんな事に使わないでくれ。

 私のウイルスは狂暴で、冷酷なのだから」

 

「はいは…………え?」

 

 煙が完全に晴れる。

 その煙の先に、上半身がはだけたウェスカーが無傷で立っていた。

 ズボンは穴だらけだが、血の跡が一つもない。まるで、銃弾が聞いていなかったと言っているようだ。

 

 触手がウェスカーの上半身の一部飛び出し、ニトリを拘束してから、カプセルを割らないようにぶん取って元の場所に戻す。

 

「さて、チェックメイトだ」

 

「あははは。

 や、やだなあお兄さん、こんないたいけな少女を殴るきかい?

 止めておくれ……止めてくれ!!」

 

「一発で許してやろう」

 

「ヒッ!!?」

 

 拳がニトリの腹を打つ。

 衝撃が走り、胃液が登り、気分を悪くなっていくニトリ。吐き気のお陰で涙が漏れる。

 

「これで許してやろう。

 本題なのだが」

 

「わ、解った………から。

 ゴメンナサイ……ゴメンナサイ」

 

 触手が引き、ニトリを解放する。

 涙がこぼれ、こんなことしなければと後悔する。後悔しても遅いのに。

 

「協力してもらうぞ、私のために。

 先ずは犬走のクローンだ」

 

「……クローン?」

 

「この仕事は、君の性格にあっている」

 

 ニトリは思う。

 それを先に言ってくれと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でしょうか、文様」

 

「侵入者についてよ。本当に追い返した?」 

 

 山奥に位置する小屋。

 そこで椛は報告した後に、上司である射命丸 文に呼ばれて、言葉攻めにされていた。

 侵入者が居たが追い返した。と報告した椛に、不信感を抱いた文は聞くことにしていたのだ。

 

「はい。この手で」

 

「ふーん、何か隠し事はないの?

 私は聞いてるじゃないの、これは尋問。

 答えてくれない?」

 

「私は追い返しました」

 

「……はあ」

 

 椛は追い返しましたと繰り返すだけで、文はますます疑い、目や挙動に細かく注目しながら話していく。

 一言一言言及していく中で、一瞬だけ目がずれた。汗も少量だが垂れている。

 

「椛──。なぜ目を見ないの?」

 

「っ」

 

「目が少しずれてるのよ、ちゃんと目を見てない。何で汗を流すの。

 言いなさい、侵入者はどうなったのか」

 

「それは。その………」

 

 顔がショボくれ、伏せてしまう椛。流石にかわいそうだと文は思う。

 

「後日に聞きに来ますので」

 

「………」 

 

 文がその小屋から出ていって、残った椛は手を握りしめる。

 怖いのだ、あのウェスカーよりも。

 

「あの人なら、強さをくれたあの人なら。

 私は強くなったんだ、強くなるんだ──」

 

 

 

 

 

「私は、もう虐められなくなるんだ」

 

 

 

 

 




次回も亀さん更新。


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diary3 異変

なんか書いてるうちに、何故お気に入り0人について考えた。そして、

一人称にしました(唐突)

8月25日 加筆や修正をしました
隣の混沌さん、お気に入りありがとうございます!

1話~三話の誤字報告 コミケンさん、ありがとうございます!


 私が来て一週間。あの河城にとりと言う奴に、犬走椛のクローンを作らせた。

 T-ウィルスで肉体を強化し、知能を持たせる。それを行うには、一人では無理だったので、そこだけは私も手伝った。

 イメージ的には,イワン,をベースにした改造だ。服装もイワンをイメージ。

 

 そして私がスキンヘッドにしようとしたら「可愛くなくなったら椛が悲しむよ?」と、にとりに言われてしまったので已む無くそのまま。

 ただ、欠点がある。いや、私からしたら欠点ではなく迷惑と言えるのだが。

 第一声が可笑しいのだ。

 

「ぱ…ぱ」

 

「ッ?!」

 

「アハハハ!!パパだってさ!

 いやー、笑えるね」

 

「まま!」

 

「ヒェッ」

 

 こんなふうに、私を父親として認識し、にとりを母親として認識した。

 しかもベタついてくる。あれか?これがあいつの本心だったりするのか?

 

「だっこー」

 

「あ、ああ。

 ほら」

 

「わーい」

 

 終始真顔だからどう思っているのかが解らん。気味が悪い。解るのは私に甘えたいだとかそんな感じの行動のみ。

 なんだか子育てしている気分だ。私のために生み出したが、私が振り回されているではないか。

 

「どうしたものか」

 

「実戦投入はどうだい?」

 

「まだその段階ではないだろう。まだ知能をつけたばかり、言うなれば喋れる一歳児だ。

 知能が高くないのを実戦投入してみろ、すぐに生き絶えるだろう。それは兵器としてどうかね」

 

「欠陥だね」

 

「だろう」

 

 そう、まだだ。まだなのだ。

 実戦投入するには人間の顔や声を認識し、殺害する意思を持たせなくてはいかん。

 生きたいと思う奴が戦場に立たされたらどうなる、すぐに死ぬか、耐えきれなくなることでの自殺をする。

 

 そう言えば、他の人間に合わせた記憶がない。そろそろ人里になんとか下りて、触れあわせるか?

 いや、それでは怖がられてしまう。人間に溶け込むという一番の理想が崩れる。

 

 なら、誘拐すれば良いのでは?

 

「にとり、どうすれば安全に誘拐ができる」

 

「ぶっちゃけたねー、でも出ることは許されないよ。結構、疑ってる天狗が多いから。

 なんなら、私が取ってこよう」

 

 大丈夫なのだろうか。

 

 にとりは出ていき、私と椛のクローンの二人きりとなる。クローンはボーッとしているかと思えば、私にベタついて、顔をすり寄せる。

 

 どうしろと言うんだ。

 とりあえず頭を撫でると、嬉しいのか口が少し笑う。それに、頬が少し赤くなった。

 感情がやっと面に出たか。

 

「お前は、どうしたい」

 

「パパといっょに……ひところす」

 

「Oh…」

 

 なんということでしょう、何故か人を殺したがってるではありませんか。と思ったが少し待て。

 私とにとりが言っていた言葉を理解せずに言っている可能性がある。

 

「人を殺すとは何か解るか」

 

「殺生」

 

 やけに呂律が良くなった。

 にとりは何を最初に覚えさせたんだ。

 

 こんなことしてる私が言えることではないが、あいつにはまだ居てやってほしいものだな。

 できるだけ、こいつの側に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先日、私の神社に依頼する人里の人間が来た。博麗の

巫女にしか頼めないだのなんだの言っていたっけか。

 なんでも、人里で行方不明者が続出していて、困り果てているらしい。

 

「はあ、動くしかないのね」

 

「そうよ?霊夢」

 

「紫……」

 

 茶をすすって考え込んでいるところで、紫がスキマから身を乗り出すようにして現れる。

 紫が動くほどの異変なのかしら?

 

「あんたも動くの?」

 

「私は動かないわよ、こんなこと久し振りに起こったんだから。

 注意しとくけど、この異変はいずれ大きくなってしまう。だから、早めに解決しなさいな」

 

「それってどういう……はあ、逃げたか」

 

 いつの間にか逃げていた。あの言いようだと、紫が引き起こしたんじゃないでしょうね。

 さ、早めに解決しないと。

 

 紫の話が本当だったら面倒だし。

 何より、私の勘が冴え始めてきた事が何よりもの証拠。さっさとかたずけて、紫を絞めないと気分がすまないわ。

 

「ほう、君が博麗の巫女か」

 

「誰っ?!」

 

 気を油断していたところに、感じたこともない異様なものが背後に立っていた。

 黒い影のような人形。

 こいつ、神格持ちかしら。変に体が重いわね。だとしたら、何のようで?

 

「何、慌てるな。少し手助けをしてやろうと思ってな、その方が舞台は整う。

 この異変はいずれ大きくなるのではない、あの大賢者は愚者で道化で半端者。故に、君に嘘をついた。

 聖杯はこの幻想郷に根を植え付けた。守る術は消え失せ、来てはならぬものが流れ着く。

 幻想は、はたして幻想なのか」

 

「だから何よ」

 

「もう話は終わりだ、行くといい」

 

 こうして、私はその異変解決に乗り出した。あの変な奴は消えるわ、あの言葉が気になるわでこんがらがる。

 

 今は考えることではないのかもしれない、今は異変解決のために頭を使いましょう。

 

 人里に降りて、見廻る。

 

 確かに人が元々少ないのだけれども、より少ない。術式がないか探してみたがそのような物は見受けることができなかった。

 

 誘拐の線、これは大いにあり得る。

 

 殺された線。血の臭いがしない。

 

 家出の線、有り得なくはないが、大抵は外が怖くて戻ってくるか、家出の前に仲直りする。

 それに、家出となれば教師である上白沢慧音が黙ってないため、この線は薄すぎる。

 

「ん?霊夢か、すまないな」

 

「問題ないわ、今回は異変よ。今のところ解ってるのは血がないしで、家出にしては不可思議ってところ。

 慧音は何か掴んだの?」

 

 慧音に話しかけられて、今の進展を言った。そして、慧音は何も掴んでいないと首を横に振る。

 

「霊夢以上は進展していない。不審者を見掛ける者が一人は居ると思っていたのだが、誰も不審な人物を見ていないみたいなんだ……しかしだな。

 別の物が見つかった」

 

「え?」

 

「死体だ」

 

 異変とは関係ない死体ですって?

 同時に異変か、そう見えないだけで、繋がっているのか。今回の異変は一筋縄では行かないわね。

 

「消えていたのではなく、死体ね。

 消えた人数分はあったの?なら解決なんだけど。いえ、その顔を見るに、完全に別件のようね」

 

「ああ、死体は人数分は無かったが、死んだ人の日記に気になる事が書いてあったんだ。

 読んでみてくれ」

 

「…………」

 

 差し出された日記はボロボロで、表紙にでかでかと外の世界の別の国で使われる言葉が書いてある。

 中を読んでいくと、だんだん気分が悪くなってくる。この日記の持ち主は………何者?

 

「それを大雑把にすれば、体が痒くなって行き、人を食べたいと思い始めた。でも、人は食べたくないので、自殺した。と言うことだ」

 

「何かに侵されているような感じね、何の術かは解らないけど、理性が失われていってるのは……。

 見るだけで痛々しさがあるわ」

 

「霊夢でも何の術かは解らないか。……霊夢は聞いたことあるだろう?

 外の世界の病」

 

「病?何の」

 

「数年前、外の世界から来た男が居ただろう。彼が言っていた病に、完璧に酷似している。

 恐らく、それを持ち込んだ人間が来たかもしれん。大賢者もあの時言っていたじゃないか、その病は人の手で伝わってきたと」

 

「あー、レオンだったかしら。

 そう言われてみれば、そんなこと言ってたわ。そしたら、外の世界に精通している奴に聞くのが正解ね」

 

「いいのか?」

 

「ここで駄々をこねるよりかはマシよ。

 慧音は行方不明者をお願い、私は聞きに行ってくるわ。くれぐれも無理しないでね」

 

「承知した。霊夢も無理するなよ」

 

 私は飛んで、山の頂上付近を目指す。妖怪の山、その山にはある神社があって、商売敵なのだが。

 今は手を取り合うしかなさそうなのよね、今回ばかりは結構掛かるわよ。

 

 まったく、早く解決したいって言うのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エフッエフッエフッ。私はそう笑いが溢れそうになるが押さえ込む。

 何をかくそうこの東風谷 早苗、なんか知らないがFateシリーズで登場する令呪が発現したのです!

 

「早苗、本当にやるのか?」

 

「ええ!!見てくださいってば!」 

 

「大丈夫かなー」

 

「 素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

  降り立つ風に壁を。

  四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

  閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する。

 

 

 

  ーーーー告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

  誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者。

  我は常世総ての悪を敷く者。

  汝三大の言霊を纏う七天。

  抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!」

 

 詠唱が終わると、予め書いておいた見よう見まねの魔方陣的なやつが火花を散らし、召喚される。

 

 やったぜ。

 

「サーヴァント、アーチャー。

 ここに現界した。君が、マスターかね?」

 

「き………」

 

「どうかしたか」

 

「来た!マッマが来た!」

 

「マッマ!?」

 

 これで私に怖いもの無しですよ!まさに鬼に金棒、ガンダムにニュータイプ!

 ハハハハ!!!これで霊夢さんに勝てる!

 

「神奈子、これいいの?あれ抑止の奴だけど」

 

「いいんじゃないのか諏訪子。

 そのぐらいの事が起こるのは百も承知って奴だろう、抑止が動くほどの何か。見せてもらおう」

 

「あ、でもあれ別の抑止じゃない?」

 

「……まさか、まだ此方の抑止は寝てるのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい感じねー」

 

「あの、紫様。まだ何かされるおつもりで?」

 

「面白いし」

 

「………」

 

 やはり、私の相棒は終始、医薬であった。

 そろそろ胃に穴が開きそうだ

 

 

 




亀投稿は相変わらずで。

 ここ最近見てくれる人がいてモチベーションがくっと上がったりして、た作品を見て下がってます。
 頑張らなくては(;`・ω・)


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diary4 黒幕はだいたいAPP18

タイトル通りな内容。

あと、前回の黒い人。クトゥルー神話知ってる人ならすぐに解るかも?


 さーて、娘と化した椛のクローン。長いからイワンでと呼んでいるのだが。そのイワンをあやしていたら

 

「ぱぱ、にーと?」

 

と言われたので心苦しい。出れないとはいえ実質的にはニートだとは解っていたが、義娘に言われると本格的に考えてしまう。

 何か変装できる物が欲しい。

 

「変装さえできればなあ」

 

「あるよ」

 

「へ?まさか……」

 

「はい」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」

 

 イワンに手渡された物は、私がよく知るS.T.A.R.S.時代に着ていた衣服だった。

 まさか、にとりか。

 

 確かに細部まで語ったさ、語ったんだが。なぜ語った事だけでここまで再現する?

 これ完璧再現とかいうレベルじゃないぞ、そのものにしか見えない。更に拳銃。

 あいつそこまで頭いいなら私は動かなくて良いのでは?しかしだ、ニートはやだ。

 

「さて、着替えたし行くか!」

 

「どこにいくのー」

 

「一緒に山頂付近へ!」

 

「おー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というノリでイワンと一緒にこそこそしながら山頂付近まで歩いて、石の階段があり、また神社かと愚痴りながら着いたのですが。

 

「殺っちゃえアーチャーカー!!」

 

「退きなさいっ!褐色!」

 

「くっ、魔力を回せ!マスター!」

 

 なんかドンパチしてるんだが。赤い外套の褐色肌の男と、赤い脇を出した巫女が戦っている。

 その戦いの余波なのか、境内が傷だらけで、度々小石が風で舞う。何で境内で争っているんだこいつら。

 

 ……私も言えないか、椛のときに入り口付近でやっちゃったし。資格ないよね、うん。

 

「あー、帰ろうか」

 

「うん、こんな物騒なじんじゃやだ」

 

「ちょっと待ったを掛けていいか。

 私は守矢 諏訪子って言うんだが、お参り一回ぐらいはしていかない?」

 

 帰ろうとイワンの手を握って、降りようとしたところで呼び止められる。

 振り替えると、幼女がいた。呼び止めてきたのは大きな目玉が付いた防止を被る幼女。なんだその目玉、コスプレか何か?

 

 でもここの住人はコスプレではないしな。

 

「こんな危険な場所で参拝させるとは、気が狂ったか、童女。私に、私達に義務はない。

 決定権があるのみ、なので帰らせてもらう」

 

「………えい!」

 

「何を………?」

 

 幼女が私に手を向け、何かをした。何をしたかは解らないが、とてつもなく不愉快で、不安な感情に成る。

 私に、何をしたというんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

──ガリャッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 思考に浸るか浸らないかの所で、音をたてながら石垣が此方に飛んでくる。

 その石垣達は割れていて、尚且つ鋭い。

 

 私は、咄嗟に、イワンを庇う。

 

「っ!」

 

「あははは!!今やったのは祟りさ。

 私はミシャクジとも呼べる神でね、面白そうだから祟らせてもらった。

 あ~、でもワタシは違う。ねえ、君なら感じるだろう、お久しぶり」

 

「この感覚ーー。

 また貴様か………貴様か!!」

 

 またこいつなのか、またこいつのせいで幕を閉じるのか。幸い、野望を託せる人物は三人いる。

 混沌、百貌の神めッ。次は私が贄とでも言うのか、レオンの次は私か…。

 

「君との会話は細工して、君の娘代わりに届いてないよ。存分に叫ぶといいだろう。

 あと、この会話が聞こえないということはつまり、君の可愛そうな妹は彼等を憎むだろうさ。

 面白くない?」

 

「この悪神めが……」

 

 体の肩や腹、それに心臓までもに瓦礫が刺さり、膝をついてしまう。さらに、今の会話は一瞬、それが奴の細工だ。

 言葉を折り畳んだのだろう、毎度の事ながら、規格外の事をしでかす…。

 

 刺さったところから血が溢れ、手に力は入ることは無く、自分のサングラスを直すことができずに、ずり落ちる。

 いつもこんな感じだったな。レオン達やラクーンシティの時も居やがった。

 

 ある時は誰かの友人、またある時は市長のマイケル・ウォーレン。よく騙されていたな。

 

 出来るならばレオンに殺して欲しかったが、叶わぬ願いかもしれん。死にはしないが、体が持たない。

 笑い声と鳴き声が聞こえる。

 何も見えない。

 寒い。

 何だか、眠くなってきた。

 

「ぱぱ?どうしたの?かえろうよ、かえろうよ。また遊ぼうよ、おはなししてよ。

 こたえてよ。ねえ、ぱぱ」

 

「………イワン……パパはな、眠いんだ」

 

「なんで?」

 

「少しの間、寝させては………くれないか」

 

 にとり、すまんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パパが死んだの?嘘だ、絶対に嘘だ。死なないはずなのに、脈もないし、息もしてない。

 なんで?なんで?理解不能、理解不能…。何が要因、何が危険、何が殺した。

 

「なんでころしたの……」

 

 彼奴等だ、そうに違いない。

 

《殺したのはそいつらだよ僕》

 

「ころしたのはあいつら」

 

《クククッ、そうさ、さあ。

 僕達シャドウを認めて?そうすれば、叶う》

 

「またおしえて」

 

《共に行こう》

 

「ボク」

 

《我は汝、汝は我。我は影、神成る汝。

 影は真成り、真は影奉仕。

 影は汝、汝は影。心の海より出でし我が名はーー》

 

「マガツイザナギ……」

 

 僕からもう一人のボクが出てきてくれた。これなら、目の前の彼奴らを殺せる。

 けど、その前に……この境内に罪はない、だから彼等を僕とボクの世界に引きずり込もうよ。

 

「マガツイザナギ、引きずり込め」

 

《我が神名、その名の下に神託を。

 黄泉より呪いを承る。

 左翼に罪を、右翼に我が身の罰を。

 和国に翳されし 想い/穢れ は果てぬ。

 嘘は呪詛、石は閉ざされた。

 世は噂よ真なり。願いは、聞き届けた》

 

「おいでよ、ボクの世界へ」

 

己の影に向き合え(Shadow=world)

 

 

 

 

世界は上塗りされ、影の世界となる。

 

 

 

 

「私は……何ということをっ。

 戦いは一時中断だ、先ずはあの少女を」

 

 何なのだろうか、体が締め付けられる。

 今のは、私のせいだ。私がーー、

 

 心が苦しい、謝らなければならないといけないのに、逆に涙が出てしまう。

 人を殺す原因に成るなんて…。

 

「今の瓦礫は私達が戦ったことで起こった物だけれども……干渉されたわ。

 ねえ、諏訪子」

 

「おや、気付いたか。今代の博麗の巫女は勘が鋭いらしいとは聞いていたが、一瞬とは。

 ククッ」

 

 諏訪湖子様は何故か子供らしい笑顔をしている、でも、果てしない悪意を感じるのはなんで?

 あれは、本当に諏訪子様?

 

「同考えてもあんたしか居ないわよ、もしかしてあんたはこの異変の首謀者だったりするのかしら。

 邪神、答えなさい」

 

「やだなあ、私はワタシさ」 

 

 霊夢さんと諏訪子様が話し合っている。暗い、寒い、悲しい。私が認識するのは罪なのだろう。

 人を殺す神様なんて、どうかしてるよね。

 

「シネ」

 

 声と一緒に、赤い大男が迫り来る。大男が持つ得物に雷が走り、それを振りかざした。

 けれど、それをアーチャーが目の前まで来てくれて、あの頃よく見た花弁で守ってくれた。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

「アーチャー…」

 

「やっとそう呼んでくれたか。有り難いが、今はそれどころではない、良く聞くんだ。

 今、目の前にいるのは恐らく、イザナギ。この日本の地の神その物。私でも、これが限界だ。

 君が説得するんだ。私が時間を稼ぐ」

 

「でも……私に資格はないです、原因なのですから。私のせいなんです、私が調子に乗っていなかったら。

 …アーチャーさん、私も戦わせてください」

 

「説得できないから戦う、か。幻想郷には話を聞かない奴が多いと君から聞いたが、君こそ話を聞かないな。

 不味くなったら逃げろ」

 

 やるしかない、そう思った。

 

『何故、妾が手を差し伸べる。妾は神、下郎の願いを叶えさせるのか。

 人は吾が源、源は祖を称える食事よ。』

 

 声が聞こえて、上を向く。そしたら、鳥居に、私に似た私が座っていた。

 私のようで、私ではない。そんな感じ。

 

『妾は汝、お前は人を見下している』

 

「私は見下してはいません」

 

『ほうほう、では、妾は汝か?』

 

「違います、貴女は……」

 

『妾は汝だ、間違っているか?』

 

「間違っています!貴女は私ではありまん!」

 

 大きい声で叫ぶ。その姿に、何を思ったのか私に似た奴は嗤いだした。

 黒いオーラを纏って、何がおかしい。

 

 私は間違っていない。

 

「貴女に構ってはいられません!

 早く去りなさい!」

 

『フフフハッ。

 いいわ、いいわね!!我は影、真なる我』

 

 

 

 

 

『命を捧げよ、下郎』

 

 

 

 

─────

───

 

「これが貴様が言う余興か」

 

「気に入って頂けましたでしょうか、イザナミ様。

 まだ続きますので、お楽しみください」

 

「そこだやれ!我の端末!

 もっと苦しめろい!」

 

「お前は黙ってろ」

 

「何だとフィレモン!」

 

「やるか混沌!!」

 

「貴殿方、お静かに」

 

「「……へい」」

 

 

 

 

「あの人は一体何を…うっ」

 

 ああ、胃薬が恋しい。もう胃薬と結婚すりゅ。もうそろそろ私の胃にも穴が空きそうである。

 

 とりあえず、ウェスカーとか言う外来人。死んでないんだから、早く起き上がって紫様を殴り飛ばしてくれ。

 ヴッ、頭痛してきた。

 

 




と言うわけで、ウェスカーさんはスタンです。 

TRPG風に解りやすくすると

諏訪子? クリティカル

ウェスカー ファンブル

イワン アイデア成功

となっております。
これも全部、紫って奴の仕業なんだ。
でも、提案したのは混沌の模様。

なぜイザナミが居たのかはまたいつか。
因みにマガツイザナギの詠唱はオリジナルです


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diary5 眠ったら

前回のウェスカーさんはスタンしてたので今回から行動できます。ファンブルは怖い。

あとで気がつきましたが。ヴェノムさん、お気に入り登録ありがとうございます!



 私はどのぐらい寝ていたのだろうか。まだ目の前が見えず、体が動かせないが、音は聞こえる。

 金属がぶつかり合い、地面が抉れるような。

 

 もしや、イワンが戦っている?そこまで戦闘能力はないはずだ。せいぜい、武装した人間を倒せるレベル。戦うことが出来なかったイワンに何ができる。

 

『あー、あー。マイクテストでモシモーシ、這い寄る混沌で諏訪子の見た目をした端末だよー。

 ドリームランドヘようこそ、歓迎しよう。そうは言っても、君は認識できない訳なんだが』

 

 こいつ、直接脳内に?!……あれ、いつも通りではないか。ヒヤヒヤさせおってからに。

 何の用だ、そろそろ私は起きるぞ。

 

『まった』

 

 またない。どうせ精神だけ連れてったりだとか、精神を破壊するとか。

 お前ならやる、だから絶対に待たん。

 

『いや、本当にまってよ。今起きてもいいけど、現状把握をしておくれ。

 私が知っていることを話してやる』

 

 なぜそこまでする。混沌である貴様が救世主気取りか、片腹痛いわ。

 救世主になるんだったら生まれ変われ。

 

『んーそれは無理な話だ。と、世間話はここで終わりにしようや。今、君の娘がイザナギを降霊させた。

 そして、ワタシの思い通りに動いた。のは良かったんだけど、ストッパーってさ。君しかいないじゃん?』

 

 だろうな。一番側に居たのはこの私だ。恐らく、にとりか私以外の話は通じないだろう。 

 ・・・。お前今、イザナギを降霊って言ったよな?ちょっと待て、そんな機能は無いぞ。

 

『シャドウと言う奴がその機能を与えたのさ。それに、そのお陰でもっとめんどくさい物が出来上がった。

 これで話はおしまい。行ってこい』

 

 良くわからんが、体が言うことを効くようになった。体を起き上がらせ、その惨状を見る。

 悲惨としか言いようがない。あの血を思わせる特効服をきた番長のような大男。その男が、イワンの指示にしたがいながら、戦っていた。

 

 今いるここも多少違う。赤く、霧が濃い。見えにくいが、見えないと言うわけではない。

 良し、早く止めるか。

 

 うーむ、発狂でもしているのか?出鱈目な指示のお陰で、大男の動きが荒い。

 

「さて、止めてやろう。

 イワンに☆肉☆体☆言☆語☆だ」

 

「コロスコロス!!」

 

「マジカル☆」

 

 私はある友人に、武術を習おうと言われ、習得したことがある。その友人は協会の人で、実力不足だったのでどうやって身を守るのかと悩んでいたらしい。

 そして、私もノリで習得した。これこそ!!

 

「八極拳☆」

 

「へぶっ?!」

 

 私の八極拳が効いたのか、大男の動きが止まり、イワンは倒れずに私をガン見してくる。ふっ、ちょっと恥ずかしくなるじゃないか。

 あ、サングラス掛けないと……。よし。

 

「目が覚めたか」

 

「ぱぱ!!」

 

 イワンは体が軽いとでも言うように高く跳び、私の胸に突っ込んでくる。このダイブをかわしたらイワンが怪我をしてしまうので、ちゃんと抱き締めるように受け止める。

 赤い大男も止まり、どこか優しい目付きになっているような気がする。

 

「生きてたの?」

 

「ああ、言っただろう。少し寝ると」

 

 我が娘は暴走していたのだろう、まあ私のために起こってくれたことは嬉しいと思うのは当たり前だ。

 ……次はあの異形だな。

 

 

 

『捧げよ、その命を』

 

 

 

 その姿は、白い素肌で、神にも見える。だが、あんな物は神ではない。神とは呼ぶことはできない。

 死の概念が無いものが命をねだるな。それをねだるのが人間だ。傲慢ではない、それこそ神なのだ。

 

 曰く、神は死を知らず

 

 曰く、願いを聞き届けるのは神の使命

 

 なので私は認めない、絶対にな。

 

「そのような神は、要らん」

 

 過去に、私は願ったことがあった。死んだ親を知りもせずに、強欲に欲したのだ。

 が。今の神は違かった、今では何も見向きもせずにしらを切る。あの転生者とは何だ?ただの駒を動かす貴様らは神ではない。

 

「だから、だからこそだ」

 

 体内にある全ウイルスを活性化させる。真の神と言うのは、己の為では力を降るわないんだ。

 私がここに来た理由。それが神の妥当、縛られたモノの解放、それこそ万人に認められなかった使命。

 

 誰も救わない。救ったとしても誰も感謝をしないから。ならば、私が救う者となろう。

 

「死ぬといい!!己に穢れし神よ!」

 

『ガっ………貴様』

 

「神は貴様ではない。万人の願いは、貴様を否定したのだ。消えろ、願いの霧へ」

 

 手から触手を高速で生やして、貫いた。そこから流れ込んでくる想い、己が死を知る気持ち。

 成る程、貴様も、そうか。

 

「安心しろ、その願いは、私が叶えさせよう。

 喜べ、君の願いは。叶えられる」

 

『そう………ありがとう』

 

「ではな」

 

 触手を戻した。神だった死体が空から落ち、それが地面に触れたとたん、世界が晴れる。

 あの境内へと戻っていて、快晴。

 

 大男も消え、イワンがすり寄ってきた。

 

「いい子だ、イワン」

 

「てっ!!いい感じに終わらすな!!」

 

 あ、ダメ?

 

 

 

 

 

 

 

 その後、説明しろだとか言われたが、私はなにも知らないので説明はできないと返してやって、話が続いた。

 全員の自己紹介も終わり、以外と意気投合している。してるのはイワンと私以外だがな。

 

「そうそう、早苗って外の世界から来たから、ウイルスとか知ってたわよね。あの外来人の時」

 

「はい!憧れの人に出会えて多少発狂していました!…が、なんでそんなことを聞くんですか?

 てっきり、酒を出せーと言われるかと」

 

「酒よりも酔い潰れる話よ。人里で、異変が二つ起こったの。一つは、行方不明者の増加。

 二つ目は、ウイルスに感染したかもしれない人が出てきた。酔いそうでしょ?」

 

「酔うどころかノックダウンじゃないですか。だから私のところに来たんですね。

 でも、私は特効薬なんていう物は持ってはいませんよ、レオンさんと私の現代は違うんですから」

 

「あ!!」

 

「その様子だと忘れてたみたいだねえ、博麗の巫女。とりあえず、私等も協力するよ。

 なあ諏訪子」

 

「ケロケロ……そうだ、君も参加してくれよ」

 

「私か?」

 

 この端末、あろうことか私に矛を向けやがった。流石は畜生野郎と呼ばれるだけはある。

 博麗の巫女が言っていた異変、もしかすると、片方はにとりの仕業やも知れないな。

 感染したウイルスとかは存じ上げないがね、私はここに来てからは一度も散布させてはいないぞ。

 

 ふむ、同行する価値はありそうだ。誰がウイルスを散布させたのか、そのウイルスが何なのか気になる。

 

「解った、同行しよう」

 

「…………ァァァアア!!」

 

「?」

 

「どうしたんだ早苗」

 

「アルバート・ウェスカー?!」

 

 何?何故私の名前を知っているんだ。私の名を教えたのはいかにも苛められていそうな、でも可愛かった白浪天狗と、夫婦仲の河童。それにイワン、・・・。

 

 たしか会話の中にレオンの名前が上がっていたな。彼奴も来ていた、ほう。うむ、即ち。

 言いふらしたなあの野郎。

 

「確かにそうだが、何故私の名を?」

 

「いや、首謀者でしょ!私知ってますもん、貴方がした悪行の数々を!」

 

 悪行?何だと、無能な権力者にウイルスを撃ち込んで奴隷を解放するのが、悪行だと?!

 レオンとの飲み会も悪行だと言うのか!

 

 まあ、犯罪すれすれだけれども。どちらかと言えば、感謝されまくる程の事はしてるんだぞ。

 ここに来る前は、行方不明となった遺跡探索者を探してたんだぞおい。

 

「何をバカなことを。私は君の事は知らん、どうやってしった?それに、私は悪行は働いていない」

 

「やった人は皆そういうんですよ!」

 

「………ウェスカー、耳を貸してくれ」

 

 アーチャーに耳を貸し、あることを言われる。その内容は、東風谷 早苗を叩きのめす。ただそれだけ。

 現実を知ってほしいとの事。

 

「むう、ならば一戦しようじゃないか」

 

「ええ、悪即成敗です!」

 

 おん?さては、人の話を聞かないタイプだな。それで叩きのめすのか。

 なに、オーバーキルしても構わんのだろう?

 

 

 

 

─────

───

 

「あれ、我の端末が言うこと聞かない。…あ、惚れてる!?何でえ?!」

 

「あれだ、神を目指したから。狂ってるから。そんなところではないのか?

 私も彼のような者は見たことがない。そうあれと育て上げられた彼だからこそなのだろう」

 

「ぬ、ぬう……。たっちゃんみたいになりやがってからに。我は認めんぞ!!」

 

「ハッハハハハッ!」

 

 紫様とイザナミ様が蒔いた種を鑑賞しに行って、ニャルラトホテプ様とフィレモン様とになってしまった。

 一番の胃を痛めさせる原因が紫様だが、この方々も胃を痛めさせる原因である。

 

「あ、あのイザナギは凄かったよね」

 

「我は反則だと思う。あんなの勝てるわけねえだろお?!影達を従えてるとかなに考えてんだ!

 しかも世界を上塗りしたよ、固有結界で。ここの抑止力は死んでるのか?」

 

「いや、寝ているらしい。

 昔に動きすぎたんだとか」

 

「はー!抑止力使えねー!」

 

 あのウェスカーという男に掛けてみよう。原因の方々を殴り伏せさせてほしい。

 神に成るというのなら、神でも殺してみなさい。そうするなら、私は認めましょう。

 

 だからその、助けてほしい。胃薬をください、死んでしまいます。

 

「今度は聖杯戦争させてみよっかな」

 

「突っ込まんぞ」

 

 

 

 

 




ニャルとフィレモンは意気投合?している模様。でも実際はいがみ合ってる。

そしてそろそろ藍の胃がヤブァイ、ウェスカーさんはそんな事は知らないので悪即成敗する悪を成敗する。
因みに端末の諏訪子は「何かあった?」みたいな態度で普通に座ってる。
惚れてる理由は性格とか過去とか。

あれ、一番の被害者は今のところ藍では…。


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diary6 暴君

あと出しじゃん拳ですが、これって物語になってるか微妙なところ。
文才がほしい

隣の混沌さんお気に入り登録ありがとうございます!

9/7(土)多少の修正加筆をしました


 妖怪の山の麓に置かれた小屋、そこに白浪天狗である犬走 椛。その椛に平伏す鴉天狗の姿があった。

 事の始まりは、1つの報告。その報告が余りにも怪しかったからと、何羽もの鴉天狗が探っていた。

 

 そこで、一人の鴉天狗が独断で侵入し、拘束しようとしたのだが、案の定返り討ち。

 力を手にした椛には叶わなかったのだ。

 

「私はもう弱くはない。聞け!!同胞よ!

 我等は力がある!もう弱くはない!今までの屈辱、ここで晴らそうではないか!

 反逆は、自由の意思。拒むことはない!」

 

 歓声が響き、椛を称える声が止まない。白浪天狗は下っぱであり、弱かったから下った。

 だが、それは以前までの話。

 

「反逆の時だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は単独で行動する。お前たちはその力を地道に把握し、長い鼻をへし折れ」

 

 演説し、私の力を見せつけた。そして、仲間の協力の下、私達白浪天狗は、ウイルスに適合するという特異体質だと解った。

 皆それぞれにウイルスを克服。ただし、一人1つまで。二つ克服しようとした者が使用し、体が耐えきれずに死滅したからだ。

 

「考えている暇はないな」

 

 私はすぐさまにとりの基地に向かう。他の同胞に力の把握をしてほしいと説明して、少しの足止めはできた。

 河沿いにある扉、その扉は前とは違い、鉄を素材としている。あの男がやったのか?

 

 その扉は近付くと、赤く平べったい光線が向けられた。光線は私を焼くことはなく、消えた。

 同時に扉が障子のように自動で開く。

 

 多少奇妙だが、入るしかない。入った先は、今までは生活感が溢れるような部屋だったが、一気に様変わりしている。

 

 近未来、とでも言えばいいのだろうか。だが、所々に幼児の玩具が散乱していたり、生活しているなと感じる物がちらほらとあって、住んでいると実感した。

 

 一直線のように部屋は広くなり、奥にまだ続いている。何かの薬品、外の世界にあると言う拳銃。

 一番奥に着くと、扉があってまだまだ進めそうだ。その扉の取っ手を使って開けた。

 

「何だ、これは?」

 

 その部屋に、筒上の物体の中に、大人びた白浪天狗が保管されていた。

 右胸側から心臓が剥き出しで脈をうつように鼓動し、左肩は畏敬の腕になっていて、これは、美しい。そう感じる。

 

「何だろうか、素晴らしいな。

 美しいとも言える、完璧に近い産物」

 

 つい高揚して、その筒に触れた。そのとき、中に居た白浪天狗の目が開き、左手でガラスを割り壊す。

 突き出された左腕は私の腹を貫いており、赤くて熱い物が大量に吹き出す。

 

「ぐっ……」

 

 痛みと眠気が襲い、私は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 細かく汗が飛び、拳が早苗の腹を捉え、足を踏み込ませ、めり込ませる。

 衝撃が走り、風が吹き荒れ、早苗は膝をついた。私の勝利となるのだが、触手で動きを封じて殴ったら勝ったとしか言えない。

 

 凄く呆気なく倒れた早苗をアーチャーが神社まで連れていった。

 たしか、あの端末と神奈子は神だと言っていたが、巫女が倒れても笑うだけ。端末の方は解るが、お前はそれでいいのか、加奈子。

 

「ハハハ!!悪即成敗とか言ってたが、逆に成敗されてやんの!

 面白いわこりゃ!」

 

「キャハハハ!面白ーい!

 あ、ウェスカーは面白くなーい」

 

「喧嘩売ってるか?」

 

 地味に小バカにしてくる端末。端末のくせに自我が強いし、頭がバカにする才能に変わっている。こんなのてに終えないんだが。 

 

「すみませーん!」

 

「…パパ、あれ天狗。しかも鴉」

 

「ほう、あれが鴉天狗か」

 

「おや、外来人ですね。私は文々新聞を発行する清く正しい射命丸 文と言いまして。

 と、言うのを忘れるところでした。二柱様方に報告したいことがあるのですが、宜しいですか。

 それと霊夢さんも」

 

 物々しい空気になる。射命丸と名乗る鴉天狗は端末と神奈子にそれぞれ二枚の写真を渡す。

 その写真が気になり、私も見たいと覗く。

 

 覗いて見た写真。そこに写っていたのは、紛れもないクローンだった。異形として形を持つこの人形はタイラントと呼び、様々な改造を施し、保管していた筈では。

 誰かがあの部屋に侵入して起動させた、かもしれない。これは気が抜けくなった。

 

 何もインプットを施してない、ただの暴君。誰彼構わず殺し尽くして、死ぬまで止めないだろう。

 

「あら、なんなのこれ。文、これ何?」

 

「霊夢さんでも知らないんですか。……諏訪子様と神奈子様も知らないご様子。

 この女性の形をした異形は一見、見たところは白浪天狗の様な種族なのですが、明らかに違う部分が多い。

 と言うことでやって来た次第なのですが、三人は知らずとも…………貴方は知っていますよね?」

 

「ッ」

 

 動揺を見られたか、この鴉は現実のように頭がいいようだ。そこまで頭が良いとは、侮ることができない。

 ここは疑われるよりも、ちゃんと話した方が良さげのようだ。この状況で疑われたら、四人相手することになる。それだけは面倒なので避けたい。

 

「知っている」

 

「おやおやおや、ではお話。ご教授させて貰うとしましょうか、さあ3・2・1!」

 

「……」 

 

 ここでウィルスを持ち出したら不味いな、ここはこの怪物が戦ったところを見たとか、誤魔化すか。

 嘘を突く相手が頭が回るようだが、これしかないだろう。怪しまれたら終わり、ここをしっかり返さねば、色々と支障が出る。

 

 多少は汗が垂れてしまうが、やるしかない。

 

「何、少し戦ったことのある奴でな。そいつはタイラントと言い、名前の通り、暴君。銃弾は効かないぞ。

 少しは怯むが、それを物ともせずに近づいてくる。倒すなら、ちゃんとした装備が必要だ」

 

「はあ、ならば我々で対処しても大丈夫でしょう。我々は拳銃よりも強く気高いですから。

 ではこれで!」

 

 今回は私のせいだな、この仕事を片付けるとしよう。それはいいのだ、だが誰が起動させた?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たく硬い感触と、暖かい流れた血の温度で、目が覚める。どうやら私は寝ていたようだ。

 どうやらこの強化された体は死ぬことがなく、代わりに眠ってしまうようだ。

 

 立ち上がってその惨状を観察した。筒は割れ、液体が足跡のように落ちている。

 それ以外は変わらない、あの白浪天狗は液体を見る限り、山に出たのだろう。

 

「あれは、倒せるのか?」

 

 白浪天狗の異形、その爪は軽々と私の腹を貫き、瀕死にさせた。前の私なら死んでいただろう。

 私に力があるとはいえ、あの異形を倒すことは難しいらしい。いずれにせよ、計画の邪魔だ。

 

 我々、白浪天狗が地位を獲得するためにも、あの異形は潰すべき。

 

「ん?この資料は」

 

 観察していたなか、重ねられた資料が目に写った。それにはあの異形の材料。弱点について記されている。

 捲っていき、ある文が私の好奇心を擽った。白浪天狗はそれぞれウイルスを1つしか適合させることしか出来ないのに対し、1パーセントの確率で何でも適合する者が居ると。

 

 何体も調べた結果だと書き残され、そこで終わっている。何体も、つまり、実験していたようだ。

 まさか白浪天狗を拐っていた?

 

「なら、私も……。いや、止めておこう」

 

 資料の最後には、それをしてはならないと記載されている。あろうことか、精神が崩れるらしい。

 その実験で使われた白浪天狗は廃棄処分。使うだけ使っておいて処分か。

 

 河童も、倒す必要が出てきたな。

 

「帰るか、ここに居ても仕方がない」

 

「何処に帰るんだい?」

 

「誰だ!!」

 

 咄嗟に、手に持つ剣を話し掛けてきた人物に、振り向きながら向けた。

 振り向いた先に居たのは、白衣を着た河童。

 にとりだ。そう安心して剣を下ろす。

 

「にとりか、驚かせるな」

 

「驚かすつもりはないんだけど、いいや。ここで椛に朗報だ、悪い情報といい情報だ。聞くか?

 どちらからでも構わない、結果は変わらないからね」

 

「なら、良い方から」

 

「げこくじょうおめでとう!」

 

「っ……悪い方は」

 

「仲間が死ぬにはあなたも死なないと」

 

「何?」

 

 

 

 

ーーニチャッ

 

 

 

 

「頭をもがれてね」

 

 何かに捕まれ、私の顔は引っこ抜かれた。いたい、すごくいたい。

 こいつは、裏切ったのか。この河童は。

 

「君は生まれ変わるのさ。

 新しい私と彼の子供としてね?」

 

 河童は笑う、許さない。絶対に、許すわけがない。こいつらは、やっぱり。

 死んでくれ。

 

 

─────

───

 

「仮面ライダーシンじゃん」

 

「これは我でも引くわ、流石にここまでしない」

 

 何で私はスプラッタを見せられているのでしょうか。心が壊れそうです。

 胃が今日もキリキリしますよ。

 

 

 

 

 

 

 




次回もおそらく亀更新。

もっと闇鍋にしてみたい(ゲス顔)


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diary7 わらしべ

今回はウェスカー達はおやすみで、人里のターン。

 評価をつけてくださった方の名前が見れないのってバグなんですかね(*´・ω・)
付けてくださった方、ありがとうございます!

9/7(土)にこの小説の題名を変更しました。あれですよ、題名で中身が見えないから目に止まらないんだろうなと。

それとコッコさん、お気に入り登録ありがとうございます!


 霊夢が飛び去ったあと、私はあの家をもう一度調べるべく、早足で向かった。

 最初に発見さたときの死体状態は良いとは呼べる程の物ではなかった。肌は荒れ、目は白く、赤いできもののようなものがあったりと不気味なもの。

 

 疫病持ちかも知れないので、火葬してから式を執り行ってもらっている。

 早く、死んでしまった人のためにも解決させなくてはならない。もしかしたら、異変に巻き込まれた人なのかも知れないから。

 

 

 

 

 

 

 

 色々と調べていたが、奇妙な点が浮かび上がってきていた。

 友人とも言える妹紅に頼み、部屋の捜索していたら、あるはずがないものが多数見付かったのだ。

 

「で、この日記だよねえ。何で二つもあるんだか、しかも新しく見つかった方は読めないし。

 たしか、英語だったよね」

 

「ああ。私は少し齧った程度しか読めないが、重要なことが書かれているのには変わりない。

 研究、襲われた、もうこの世界は終わり。どれもこれも……。絶望……それがキーワードか」

 

「きーわーど?あー、鍵ってやつね。にしても家主は外の世界の物を良くこんなに集められたわ。

 酒に置き物、あと…本。まるで外から来ましたと言っているような物があるだなんてね。

 お、これって拳銃ってやつ?」

 

 拳銃が何故、人里に住んでいた家主が持っていたんだ?拳銃なんて、河童か外からしか入手する道ぐらいに絞られる。力を持たない人間が妖怪の山に入って、尚且つ河童に出会えるものなのか。

 

 遺書はなく、遺書の様なものしか残されていなかったのはどう言うことなのか。日記はいつ死ぬかわからないと書かれている部分がある。

 

 

 

〢家主の日記 P17

〇月◇日

 ■■博士に何かを投与された。その薬品は液体状で、緑色。気色悪さがあり、逃げようとしたが白と黒の熊が体を押さえつけられ、回避できなかった。こんなの、いつ死ぬか解らない俺達にとっての罰だ。

 生きることに退屈した俺達への罰なのだろう、畜生。この日、特別な食事が出されると言われて上機嫌だったのに。

 

 でもそのお皿に乗った食べ物は美味しかった。他の皆が俺が食べていたものを見て、心配してくれていたのはなんでだろう。

 

 俺は何を書いてるんだ、あの飯は旨くて綺麗な赤色をしてたじゃないか、肉と同じだ。皆が心配するわけないよな。

 

 

 

 

〢〇月▷日 P18

 体が痒くなってきた。ここ最きん、腹がいようにへったり、皆のしせんがキツイ。

 おれはなにかしただろうか、何もしていないのに。そう言えば、めの前が良くみえない

 

 俺は死ぬのだろうか?

 

 おれはしなないしぬわけない。だって■■博せが言ってから俺は死なないって。

 

 さらに言えばしぬことは絶望てきでごほう美じゃないか怖がる必ようなんてない

 

 

 

 

 このように文が、液体を投与された時期から経つにつれて可笑しくなっている。絶望、その言葉が何回も書かれ、明確に嬉しいと書かれるときが同じく何回も。

 絶望的状況でこんなにも書きながらも嬉しい、そんなのは壊れた機械よりも、壊れた時計よりも、直すことができない壊れかた。誰が何のために?

 

 他の皆とは?他の皆は何者?

 

 塗り潰された博士は誰か?

 

 まだまだこの部屋を調べるしかかなさそうだ。この部屋は一般的で変わった節は無いが、壁には海外の物が掛けられている。

 この日記にでは、この掛けられた物をとても大切にしていた。

 

 心優しいと、ここの家主の噂は絶えなかったと言うのに。死体となって会うことになるとは。

 

「やっぱ英語は解んないなあ……。読めないところが多いしさ、稗田阿求に聞くのはどうかしら」

 

「一理ある。さっそく行くとしよう」

 

 私達は日記を二つ持ち、稗田家に出向いた。阿求とはよく知る仲で、寺子屋の資料を読ませてもらったり、教科書を執筆してもらうなど世話になっている。

 

 使用人に案内され、案内された部屋で阿求はまた巻物に文字を書き進めていた。数分時間が空いた頃に阿求は筆を置き、体の向きを此方に向けてくれた。

 

「すみません、なかなか切りのいい場所まで行かなかったものでしたから。それで、今回はどの様な用件でこられたのですか?

 様子的には、とても行き詰まっているようですが。いえいえ、私が協力するのは無論。

 何なりと」

 

「では阿求、この英語の日記なのだが」

 

 二つの日記の英語のほうを阿求に手渡す。その内容を読み進めていく阿求は頷きながら捲っていく、途中で一旦止まり、また読みはじめて、最後まで読みきった。

 

「これ、日記は日記なのですが、論文を途中から入れてますね。最初は英語の日記、前半が少し埋まった頃からすり変わっていますよ。

 文字の踊りも違うので、拾った誰かの日記に書いておいたのでしょう」

 

「論文か」

 

「論文ね、私はそう言うの解らないから。少しぐらいでいいから説明してくれないかしら」

 

「構いません、この論文は頭がイッた野郎が書いたのでしょう。人類を進化させて神になる、大まかに説明するとそうなります。

 手法も正に悪鬼、なんと生物兵器を使い人を進化させると書いてあるのです。

 その生物兵器の名前は様々に書かれていますが、聞き覚えがあるのが一つ。

 その名は、T-ウィルス。一時この里を恐怖させた病気ですよ」

 

「なんだと?それは本当なのか?」

 

 前の異変、そのときこの里に、屍兵のようなものを差し向けられた経歴がある。その屍兵を産み出すために使われていたのが、T-ウィルス。

 その頃にやって来ていた外来人、レオンによってその異変は解決された。

 

 解決されたが、続いていたとでも言いたいのか。また人里が、危機に晒されるのか。いや、それは許されない。

 今度こそ、すぐにでも黒幕を暴いてやる。

 

「ぶっ飛んでるわね。たしかそのウイルスは腐った死体みたいに変貌させて、尚且つ知能までも人以下に変化しちゃう代物よね。

 そんな物で進化しても、退化してるのと大差無いじゃない」 

 

「それでも侮れません。もう火葬は済ませましたか?」

 

「ああ、何かの疫病かと思ってな。

 だがあの病だとは思ってもみなかった」

 

「解りました。ではこの日記を全て日本語にしてみますので、聞き込みなどをしてみてはいかがでしょうか」

 

「聞き込み?」

 

「この日記の持ち主が何時もはどんな人物か、行方不明だった時期はあったのか。

 能力を持っていた可能性も捨てきれないので、調べて損は無いと」

 

「そうか、何から何まですまない」

 

「これは仕事のような物です、生きている中の刺激と言うものはいつ感じても変わらない。

 ですから、こう、刺激はいつ経っても新鮮なもので面白いのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?聞きに来たって訳ですかい、確かにあの人は特殊な人だったりしますけどね」

 

「特殊な人?私みたいな?」

 

「それとは違います。

 正確には、いつの間にか物を持っていました。それについて聞くと、見つけた。と」

 

「見つけた……」

 

「へい。またあるときは、貰ったと。

 色々な方法で物をいつの間にか持っとるんですよ、わらしべ長者もビックリですわ」

 

 今は阿求に従って、近くの団子屋に足を運び、団子を食べながら店主に聞くことにした。

 団子屋の店主は死んだあの家主と仲が良かったらしく、足を運ぶ頻度が高かったと言う。

 

「石を持っていたと思ったら、少し出ていって戻ってきたら片手に異国の物を持ってました。

 それで何だかんだ持ち帰ってるみたいなんですが、亡くなるとは思ってなかんたんで、驚きましたわ。

 良く足を運んでくれて、常連でした。悲しいですよ、常連さんが居なくなるのは」

 

「………」

 

 団子を食べ終わり、妹紅と共に後にした。今回の異変は一筋縄でとける訳がない。

 近付いている、それはたしかだ。

 

「妹紅、次に行こう」

 

「おう」

 

 

 

 

 




 設定は膨れるのに話の構成のお陰で全然進まないのが難点。さっと読めるのがいいんですよね、自分的には。
 次回もまったりと。

 プロローグって要りますかね、一話で帰る人が多いみたいなので(*´・ω・)
 一応ちまちまやっていきます(;`・ω・)


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diary8 類は友を呼ぶ、結果は言うまでなく

ウェスカーさん視点。無理矢理な場面が多々あるので悲しいところ(*´・ω・)


 鴉天狗と言ったか、何人で対処するのかは知らないが、危険すぎる。T-002と酷似するが、その身体能力は優にC型を越える早さを持つ。謂わば早さに重点を置いたT-002の改造型。通称T-002αと言う。

 

「私は対処しに行かせてもらう、では我々はこれで。イワン、早急に装備を整えるぞ」

 

「ん……」

 

「あ!お待ちやがれください!」

 

「早苗、ステイ」

 

 早足で神社を後にした。後ろから待てだとか色々な罵声が飛び交っていたが、無視した方がいいとイワンに首を横に降られた。

 

 ここに来るために通った道を辿り、にとりの家、兼研究基地へと帰る。

 用意するものは色々とあるのだが、拳銃は確定。RPGもだ、あれがあればスタンはとれるだろう。

 

 河辺に置かれた岩影の扉の前に立ち、赤外線認証で中へと入った。帰ってきたと実感できる場所なのだが、不可解な点が見受けられるな。

 滴ったかのような血が数滴延びている。花のように飛び散った血液もあり、悲惨であったことを物語っている。

 

 形から思いっきりやられた事が解ってしまう他、この血がほんとりと暖かいと解ってしまう。

 まだ血は、固まってはいない。要するに、血溜まりだ。

 

「この血……」

 

「イワン、解るのか?」

 

 その言葉に返答するように、イワンは片膝をつけて腰を下げ、そのまだ暖かいそれに人差し指で触れて口へと運んだ。

 

「オリジナルです」

 

「……襲われたのか。暴君だろうな、犯行をすることができるのはここに入れる設定をされた者に限られる。

 にとりはまだ帰ってきていないらしいが…………調べてみるか。

 イワン、検査室でその血液を調べ、記憶を読み取れ。機類は何れでもいいから使え」

 

「………準備は」

 

「私が行う。イワンには悪いが、留守番してもらう。にとりが来たら出掛けたと伝えてくれ」

 

「それなら、これ」

 

「これは?」

 

「インカム……新型。耳に」

 

「そうか」

 

 イワンには検査室に行かせ、私は扉を通った人物の学歴を調べる。ここ最近通った人物は何人だ?

 パソコンからコードを伸ばし、接続し、学歴が記録されているシステムを観覧する。

 

 私を含め、通ったのは三人か。犬走 椛の名前はあった、私の名前もある。しかし、もう一人の名前が解らない。

 暴君かと思ったが、肝心の暴君は他の方法で抜け出したらしく、通った形跡がない。あるのは三人の跡と、私達が出掛けたとき、にとりが出たときだ。

 

 何回もにとりの方は過去に何回も出入りしているが、今日の学歴では出ていった記録しかない。

 

「抜け道か?」

 

 抜け道、その発想が頭に浮かぶ。あり得る話だが、何処に造ると言うのだ……にとりの部屋?

 可能性は否定できない。足跡を調べるしかないようだ。

 

「赤外線のペンは…あった。これで調べられるだろう。当たってはほしくないが」

 

 もしも、侵入者が居たときのために造り置きしていた赤外線ペンを、散らばる物を退かして手に入れる。

 ペンを使って照らしていくと、足跡がくっきりと見えた。この足跡、いや、まだ確定した訳ではない。

 

「イワンにこれも頼んでおくか」

 

 RPGを細長い入れ物に入れて、私は犬走椛の記憶遺伝子を元に作り出した地図を懐に入れ、検査室で血液を調べているイワンに、調べるよう伝えた。

 早く、一刻も早く止めなければ被害は出る。拡大もする。

 

 河に出て、山の奥まで進んでいく。地図とあの写真の位置を可能な限り合わせる。写真に写っていた地面は舗装されていた所から、僧侶達に使わせる道だと思える。その近くには白浪天狗が宿泊する小屋があるようだ。

 

「小屋の付近に居座っていそうだな。何処まで行ったのかは解らないが、危険極まりないのは変わりない」

 

『パパ……あの靴跡は、ママの』

 

「何だと?」

 

 耳につけているインカムから通信が入り、イワンから伝えられた。靴跡はにとりの物で、記憶を読み取ったところ、何かに頭を引っこ抜かれたらしい。

 にとりは裏切っていたのか。まあ、仮初めだったから何時かは来ると思っていたがな。

 

 イワンにはまだ待機してもらうことにする。にとりが来たら、警戒するようにとも伝えた。

 

「助けてくれえええ!!」

 

「っ?!」

 

 丁度、通信が終わった瞬間に悲鳴が上がった。この悲鳴は、男か?

 

「くそ、くそくそ!!やだ、やだやだやだ!!死にたくない、死にたくない!!」

 

「……」

 

「がっ」

 

 悲鳴と音を頼りに着いた頃には、別の鴉天狗の首が飛んでいた。右腕、脇腹が抉り取られ、横たわってしまった。間に合わなかったか。

 T-002αが気付く前にRPGを取り出して、即座に撃ち込む。吸い込まれるように入った弾は音をたてながら、風と火が吹き荒れた。

 

 悲鳴は聞こえず、鳥が逃げるが如く羽ばたいた音がその場を支配する。その支配する音は、即座に切り替わった。

 

 1本では止まらない、それが暴君。ダメージは与えられたから、後はチマチマと削るだけ。

 弾は無制限ではない、確実に心臓を狙わなければ。

 

「グゥアアアアッア!!」

 

「来い!」

 

 まず一発を発砲。心臓に当たる。仰け反る様子はないのだが、少し歩く歩幅が短くなった。効くことは効く、まさか自分で戦闘データを取るはめになるとは。

 

「ヴッ!!」

 

 跳躍するように接近してくるT-002αだが、足に力を入れて駆けてすれ違うようにする。

 そして振り向きざまにもう一発、弾丸は心臓に捩じ込んでいく。しっかりと着弾したことで、仰け反ったので、最初のRPGが余程効いたようだ。

 

 次に造るときは爆発に耐えるような設計でT-002を再製造しなければ。それが完成したらT-103のようにコートを着させてみようか。

 それならT-103をα型で作ればいい。となるとサンプルだとか、色々と手に入れなければなるまい。

 

「お前は、意識はあるのか」

 

「ヴぁ……………とう……さ……」

 

 ある模様。そしたら手なずけられないだろうか、ゆっくりと一歩一歩距離を積める。

 武器をしまい、確実に踏んでいくように。端から見れば不審者間違いなしだろうが、今はこれしかない。

 

 殺さないで入手することが出来るのならば、様々な実験を長期間で行えるのだ。手なずけて損はない。

 

「お父…………さ……ん」

 

「お前は、どうしたい」

 

「着いて………いきた………い」

 

 頭を撫で、落ち着けさせることに成功。堕ちたな。確信的な犯行に近いが、これで面倒後とが避けた上に、予想外の回収が完了した。正に一石二鳥のよう……であってそうではないが。

 

「帰るか?」

 

「(^_^ゞ」

 

「身ぶり手振り?」

 

「( *・ω・)ノ」

 

「そうか」

 

「(;`・ω・)」

 

「いや、そのままで大丈夫だ」

 

「(*´ω`*)」

 

 会話方法が特殊だが支障はない、え?うん。知り合いがいる?

 

「( ´_ゝ`)」

 

 知り合いってなんだよ……、しかも時間的に殺してるなかで見つけたって事だな。どうやって……。

 お父さん心配です。

 

「その子は何処に?」

 

「( ゚∀゚)ノ」

 

「そっちか」

 

 指した方向には草むらがあり、ガサガサとずっと揺れている。少し間が空いて、それが顔を出した。

 ワニ、爬虫類。そうとしか言いようがない。これは何だ?T-002αとただの爬虫類が仲良くなるとは思えないのだが。

 

「ようくそったれの人間……じゃあないな。嬢ちゃん、こいつが探し相手か?」

 

「(^_^)v」

 

「喋れるのか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうすればいいんだ……。なぜ収容違反したと言うのに、何処へ消えた。

 監視カメラは全てショートして使い物にならんし、まさかあの博士、何かやったか」

 

 SCP財団日本支部、そこでは毎度のことながら収容違反が起こったのだが、今回は多少どころか全然違う違反の仕方だ。

 消えるってなんだ、カメラが全ショートってなんだ。くそっ、一時的に預かっていたあの爬虫類が逃げ出してしまうなんて。

 

「博士!何者かが侵入しています」

 

「は!?ちょ、ブライト博士を退避させろ!あの人が何をしでかすか解らん!」

 

「もうしでかしました……、その侵入者に、抱きついて……ぐふぅ」

 

「大変!入りたての職員が死んじゃった!」

 

「「「「「「この人でなし!!」」」」」」

 

 あの博士は何をしてるんだ、あろうことか抱きつくなど。頭がカチ割られたような痛みがががが。

 と、兎に角緊急要請を……、駄目だ!!あの博士のお陰で呼べないんだった!他の収容違反を対処していたんだ!

 

「ヤッホー☆連れてきちゃった☆」

 

「どうもー?妖怪でーす」

 

「ブライトぉぉぉおおお!!f〇ck!!」

 

「どうも、イザナミ()です」

 

「ヴッ」

 

「「「「博士が死んだ!この人でなし!」」」」

 

 クソッタレガ………早くどうにかしなければ。あの不死身の爬虫類だけは。SCP-682だけは。

 永遠に呪われちまえ……ブライトぉおぉ。

 いっそのことあの首飾り(SCP-963)はぶっ壊れてくれないかな。

 

 

 




SCP入れちゃった☆でもワニしか入れたくなかったけど平行して入れていきます。
鍋はもっと紫にしなきゃ。

そしてあの二人は小説中でも言われましたが、ブライト博士が抱きついています。無論、猿ですが。
でも悪気は十割しかないとかあるとか。
因みに不死身だから出したかった。椛タイラントとほのぼのしているのを書きたかったんや。

SCP財団日本支部
http://scp-jp.wikidot.com/

登場したSCP

SCP-963 - 不死の首飾り -
執筆者:AdminBright
http://ja.scp-wiki.net/scp-963

SCP-682 - 不死身の爬虫類 -
執筆者:Dr Gears
http://ja.scp-wiki.net/scp-682


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diary9 鴉再来 同時刻、彼等も再来

天枷 鎖月さん、お気に入り登録ありがとうございます。そしてまた見えない一人の方も、ありがとうございます。
早くこのバグ治らないかな(*´・ω・)

あと、SCPを投下したとたん見る人が増えて驚きました。SCPはやっぱり人気、自分も好き。
闇鍋に投下したい作品があればコメントしてくださっても構いません、ストーリーに合えば出します。

コメントは正直、批判でもいいです。コメント事態励ましだと感じるので。気軽に何なりと( ´・∀・`)


 爬虫類としか見えないトカゲ。彼が言うには、財団なる団体に管理され、不死身の爬虫類(SCP-682)と呼ばれていたらしい。

 T-002αと不死身の爬虫類(SCP-682)が出会ったのは、たまたまだったらしい。T-002αが私を探すために歩き回っていたとき、鴉天狗が集団で現れ、殺戮していた途中で出会った。

 運命とでも言うかのような。そんな出会いは何かが引き寄せたように奇妙と言える。

 

 あの端末がやりそうな事だな。

 

「そんで、襲ってくる奴ら片っ端にしばいていたらこっち側から声が聞こえたから来たって所だ。

 暇だし、なついてやってもいいぜ?ただし、腹へったから何か食べさせろ」

 

 食べ物か。すぐに用意できるのは……私の手しかない、これで満足してくれるのだろうか。

 手袋を両手から外し、左手を右手で引き抜き、差し出す。その光景に驚いたのか、後退る。

 

 怖いのか?

 

「えぇ……お前さんあの博士より狂ってるな。人間ではないと感じたのはこのためか。こんなにあっさりともぎ取るお前は、俺と同じように不死身なのか?」 

 

「頭以外は何回も無くすのでね、頭部から下は全て複製と言っても過言ではない。殺されかける毎日を送っていたから、何回も再生に近い複製を行っている。

 毒物を飲まされたり、心臓に槍が刺さったり、ゴリラのタックルくらって全間接が外れたり。

 まあ、色々だ」

 

「………良く原型が残ってる。俺だったら耐えられないぞ、そんな職場」

 

「(^o^;)」

 

「心配するな、私は脳が無事な限り死なない」

 

 昔からの縁のお陰で現在に至る。死なない程度=頭以外を吹き飛ばすとか言う暴挙を何回もされている、手を千切るぐらい造作もない。

 そうして私の右手をトカゲは丸のみにする。少し青ざめていること以外は気にする事がない様子。

 

「旨いな……、よし決めた。旦那に着いてくぜ、さっきの右手は旨いし、力がついたと錯覚するほどの栄養素入り。それが毎日食えるんだから、逃すわけがないぜ」

 

「これで成立した、これから宜しく頼むぞ」

 

「(*´ω`*)」

 

 使ったRPGをしまって、あの五人に報告するため、またあの神社に向かおうとした。

 

 

 

「待ちなさい!」

 

 

 

 が、上空からの突風で足止めされる。

 木葉が飛び、砂ぼこりが膝まで巻き上がり、風の音が耳を打ち付けた。

 次第に弱まっていき、下駄の音を鳴らしながら、見覚えのある鴉天狗が片手に団扇を持ち、口を隠しながら立ちはだかった。

 

「やはり繋がっていましたね、しかも仲間が二体……二匹?いえ、それは関係ありませんでした。

 人間、我等が領域を踏みにじったこと、懺悔をしながら悔やむがいい!」

 

「何言ってんだ、あの鴉は。懺悔も何も仕掛けたのはそっちだぜ。

 あー、食い殺してえ」

 

 その言葉に、鴉天狗は無視するかの如く戦闘体制に入る。この天狗、まさか言葉を理解していない?

 ふむ、これが人の話を聞かないと言う奴か。話を聞かないのなら、一度気絶させる。

 させないと死ぬ現場に居たからな、そう言うのは、手慣れているんだ。

 

「手荒な真似をしてしまうが、それは自業自得と考えたまえ。T-002α、そしてトカゲ君は手出しをすることは禁じさせてもらう。

 逸話を聞かぬ鴉よ、赤黒く染めてくれる」

 

「強気ですね……、ですが貴方は私には勝てない。勝てるはずが無い、勝てる確率が出ているならば0。

 この地に墓を作れないほど、粉微塵にさしてあげましょう。我等を見くびらないことだ」

 

 風が鴉天狗に竜巻を思わせる形で集まりだす。風は土を切り裂き、土が一つ一つの粒となって竜巻型の風に乗り出す。

 

「小耳に挟んだこと、少し試したいですね。貴方が本当に不死身なのかどうか、頭を吹き飛ばしたらどんなしに様を晒してくれるのか。

 死になさい」

 

 土は弾丸のように、斜め上から射出されるが、それだけでは私が死ぬことは、無に等しい。

 しかし、面倒に変わりはない。

 T-002αとは違う愛用の銃、サムライエッジを使い、木の枝を撃ち抜き、跳躍して左手に逆手で持つ。

 足裏で木を蹴り抜くことで、速さを増しながら飛び近付くように特攻。

 

 枝を素早く投げ入れるが、風を纏う鴉はそれを軽々と避ける。そうだ、それを待っていた。

 狙いを澄まし、着地寸前に足を撃ち抜くことに成功した。

 

「~っ!まさか着地を狙われたとは。馬鹿では無さそうですね。しかも、何か仕込んでいますね」

 

「そうだ、一般的には毒と呼ばれる。ただの副産物を、無駄使いしたくて持ち歩いているものでな。

 その足にはもう回っているだろう。

 使い物にならん足で、どう対処する」

 

「飛ぶだけですよ!」

 

 纏っている風が解け、羽を使い鴉は空を飛ぶ。黒い羽根が数枚溢れて辺りに落ちる。

 飛んで有利だと鴉は思っているのだろう、なら0だ。有利だと思い込んだか?なら、その自信、粉々に打ち砕いてやろう。

 

「観念なさい、部外者」 

 

「後方注意だ」

 

「?」

 

 軽々と私の身体能力で空を飛ぶ鴉の後ろに回り込み、羽の付け根を掴み、足を曲げ背中に向け、蹴り落とした。

 

 

──ブチャッ

 

 

 痛々しい音が鳴り、簡単に羽は、取れた。

 

「落ちろ」

 

「ッ?!ァアガ?!」

 

 赤黒く、血色がとても良い血が私に少量降りかかる。鴉は落ち、宣言通り赤黒く染めてやった。

 私の体も重力で押し戻されるが、何か起きるのでもなく普通に地上に着く。

 

「私は、ある者の記憶を読み取った。そして、貴様はその者以上の断罪が下る。

 精々、足掻いてみろ」

 

 右腕腕を変化させ、口を除かせる触手の花にする。涎が垂れたれて、今にも鴉を食い殺さんと殺気だつ。

 彼女は、言わば私の娘に近い。彼女の救済を今、しようではないか。罪有るものは、断罪されるのだ。

 

 

 

 

 まず足を食らう。

 

「ァ……ア゛」

 

 

 

 

 胴を食らう。

 

「…………た……す」

 

 

 

 全て、食らった。

 

「おい、死んだのか?」

 

「生きてはいる。食らったように見えるが、私が取り込んだにすぎん。報告が済み次第吐き出し、作り替える」

 

「正に悪魔的神の所業、俺の施設なら収容されてるぜ。旦那は、危険だ………だから気に入っちまう」

 

「恐れ入る。T-002α、今からいく場所に現存する生物は殺すな。時期が来れば………、殺すだろう。今のところは安全だ、敵対行動を多発すれば……解るな?」

 

「(^_^ゞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウェスカーが消息不明だと?」

 

「ええ、どうも日本に行ったきり戻ってこないらしいの。手懸かりは、それだけ。

 私達が集められたのはそう言うことよクリス」

 

「人員は」

 

「雇われ含めて三名」

 

 この話が舞い込んできたのは、俺達がまだ飯を食っていた頃だった。集まって話を聞いてみれば、あのウェスカーが消息不明だと言う。

 冗談かと思ったが、日本と言われ、半場納得してしまう。日本ではB.O.W.が暴れてはいなく、平和なのだが。心霊現象、神隠しが多発するようにリアルもなにも有りはしない。

 別世界とも言える日本で、消息を絶つ。日本で消息が絶たれるのは日常茶飯事の神隠しのせい、そう俺は考えたのだ。

 

 人員は俺クリス・レッドフィールドと、ジル・バレンタイン。そして、雇われを含め三名。

 

「それで、雇われ?はいったい誰だ」

 

「俺のことか?レッドフィールド」

 

「……お前は」

 

「雇われのレオン・S・ケネディ。この俺にお任せあれってね、あー。因みに雇われと言っても、個人枠で雇われてる」

 

「そうか、また宜しく頼む」

 

「おうともさ。確かジャパンだったよな?安心してくれ、日本語は完璧だ。

 ………なんでそんな目を向けるんだ?」

 

「遊びにいくつもりですか?

 我々は任務で日本に行く、だからそう言う遊ぶ感情は……」

 

「じゃあそのガイドブックは?」

 

「あ」

 

 片手で握りしめる日本観光完全ガイドブックに、レオンは指摘を入れ、ジルは言われて初めて気付いたのか後ろにてを回して隠す。俯いて、私だってといい始める。

 

「ぐ、い、いいでしょ?別に……。ウェスカーなら死なないから気楽でいいのよ……、人としてどうかと思うけど。

 とりあえず準備は済ませてあるわ、早く向かいましょう。また面倒な事にならなければいいけど」

 

「もしかすると、もう仕出かしてるかもしれない。俺も気合いをいれないとな」 

 

 俺達はその後日、日本へと出発した。危なげなく着いた日本は、ある意味魔境に近かった。

 時々すれ違う怪異。喋る猫やら鳥やらが居たり、半透明の何かが此方を凝視してきたり。

 散々だ。

 

「ここが例の神社か?」

 

「ええ、間違いないわね。それにしても、手入れがされた形跡が見当たらないわ。

 誰も居ないのかしら」

 

「あれだろ?こう言うのは隠し扉みたいな。

 開けゴマ!なんつって」

 

 その言葉に答えるように、君の悪い物が現れる。恥をリボンで結んだ入り口にも見えるそれは、先が無数の目で見えない。

 

「本当に出ちまった………」

 

「行くしかない。行くぞ」

 

「えっ?!」

 

「そうね」

 

「あっ……しょうがないな、俺も逝くか」

 

 その先で見た光景は、美しい。その一言に限られる程の良き物だった。

 花が咲き、それが一面に広がる花畑。

 

「こりゃ………とんでもないな」

 

「これだけの量、何年掛けたのか。色も明るく、尚且つ生き生きと育っている」

 

「中々お目にかからない場所よね」

 

 

 

 

 

 

「あら、お客さん?」

 

 




この三人を登場させたかった。そして出せて大満足。因みに文は死んでおりません。生きてます。
取り込まれて自我をもって、尚且つ精神崩壊まっしぐらなため戦闘不能。

嫌いなわけではないです、むしろ好きです。ですが後々のためにこうしました。
ウェスカーの踏み台になったとも言う。

今後はこんな展開は減ると思いますので(^o^;)

天神小さん 倉助さん 櫛八木 乃渡莉さん
 お気に入り登録ありがとうございます!


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diary10 支配、出会う、異変の続き

見てくれる人がいて並みでが手始めるようになった私です。Fate要素が薄かったので足していきます。

十話からこんな加速していいのかなあ( ´-ω-)


 少しの間に起こった出来事を嘘を交えながら伝えた。反応は様々で、特に面白かったのは古風谷早苗だ。

 私の実質的なペットの爬虫類に腰を抜かし、アーチャーにしがみついて足を震わせて泣き出す。

 

 中々に楽しかったが、私はやることがあるため今度は普通に帰った。

 

「イワン、家族が増える………あの靴跡はにとりの物だったのか?その情報に間違いはないか?」

 

「ない……」

 

「そうか」

 

「旦那、俺は適当に寝とくぜ。流石にあの量を食べて、後に歩いたから疲れた。

 なんかあったら起こしてくれ」 

 

「解った」

 

 T-002αにも自由にしていいと伝え場を後に、検査室へと入り、鴉天狗を手術台の上に吐き出す。

 逃げられても困るので、直ぐに両手両足を固定させて逃げれないようにした。

 

「交渉の時間だな。おい、起きろ」

 

 肩を強く叩き、起こした。目を覚ました鴉は体を跳ねる位に驚いた。

 顔がだんだん私を睨みだし、殺気が向けられる。どこか痛いところがあるのか?

 

 利用する前に支障が出るのは困るのだが。

 

「貴方は……なぜ生かした」

 

「罪は裁かれることはない、貴様のような人材にとって、死ぬことは罪を懺悔するための場所だろう。

 それで鴉天狗、罪を認めるか?」

 

「…………ええ。貴方に取り込まれたとき、貴方の過去と、見てきたものを見た。確かに、私が間違っている。だがどうしようと、過ちは治らない。

 いっそのこと殺してくれた方が楽だった」

 

「ならば、償うか。償うのなら、私の元へと来い。そうすれば償いとして、新たな人生を歩める」

 

「なら、なる」

 

「いい子だ」

 

 成功だ。大分精神が磨り減ったようで、虚ろな目をしながら答えてくれた。鴉は私の過去を見たと言っていたので、当たり前の反応なのである。

 正直、私でも過去を振り返りたくない物だ。

 

 鴉天狗、射命丸 文だったか。彼女にはハンクのように優秀な存在なってもらう。射命丸の肉体は私が取り込んだ中で、私の力を生き写しした。

 彼女の肉体は、私と同じような状態だ。体は食べたのだから、新しく私が作る。その方法で生きているように見えているだけ。

 だから、生きているとは違う。私より極端に劣化しているだろうが、身体脳力が上がったゾンビ兵。

 

 操り人形。それが正しい名所だろうな。

 

 簡単に言えば、彼女の体は私の細胞で作り出した体に移し変えられた。たったそれだけ。

 それに、精神がやられてるから支配しやすい。

 

「ククッ……」

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

「なあ、妙な匂いしないか?鉄臭いと言うか……これじゃまるで戻ったみたいだ」

 

「まさか………、ジル、レオン。構えておけ、もしかすると、奴等が居るかもしれん」

 

「はあ、もう懲り懲りなのに」

 

 指示をだし、構えさせる。この匂いは、嗅ぎ慣れた血の匂いだ。

 ゆっくりと花畑を花を踏まないように進んで、臭いの元を探る。そのとき、景色が変わった。

 

「これは………今までのは幻術の様なものだったのか?まるで、今までと同じだ」

 

「おいおい、流石の俺でも嫌になるぞ」

 

「子供の死体が散乱していたなんて……、体半分食べられたようにえぐられているのも有るわよ」

 

「説明は止めてくれ、くそっゾンビよりひでぇ」

 

 血が花に覆い被さり、赤く濡れ。そこかしこに子供の死体が置かれている。まるで、ここだけ別世界として区切られているようだ。

 空気も違う。鉄の味が混じっている。

 

「………クリス、もしかしたらこの死体、ウィルスに感染してるかも。傷口のところが膨れ上がってる」

 

「なんのウィルスだ?」

 

「多分、T-Abyssね。この肌を見るだけであの事を思い出すわ。取り合えず、長時間ここに留まってると空気感染するかもしれないから来た道を戻りましょう」

 

「俺も賛成、こんなところ長時間居たくない」

 

「そうだな。ここがどういう場所なのか把握できてもいない。撤退しか無さそうだ」

 

 三人満場一致で、来た道を戻った。一定の場所で、綺麗な花畑に見え始めたので、あれは半径が決まっているらしい。此方から干渉しない限り、何も起きないようだ。

 ここが幻なのか、彼方が幻なのか、よく解らない。しかし、まさかウィルスが有るとは思っても見なかった。

 

「解毒剤すらない今、噛まれたりされたら終わりだ。もしゾンビ達が出ても、無闇に先行しないでくれ」

 

「ええ、解ったわ」

 

「了解、犬死にはごめんだ」

 

 奴等が現れることは無く、戻ってきた。これからどうするか、と三人で考える。のだが、意見が出るはずもない。

 考えられるのはせめて、ここがどこか。それは心当たりはある。確信はないが、あの空は見覚えがある。

 

 幻想郷……なのだろう。昔、一度来たことがある。この事は今ままでだと相手にもされない嘘話と片付けられるから、誰にも言ってはいなかった。

 今なら言っても信憑性はあるし、手懸かりかもしれない。話すべきだ。

 

「聞いてくれ、俺はもしかしたら、ここに来ているかもしれない」

 

「ここにか?」

 

「ここ……と言うよりかは、土地だな。幻想郷、忘れ去られた存在が集まる不思議な地だ」

 

「今なら信じられるわね、それが本当なら、誰かが忘れたウィルスが流れ込んだかもしれない。

 それかウィルスを持ったB.O.W.」

 

「信じられねえが、信じるしかないな………感覚的にだが、ここは普通じゃない。

 あと、人が住んでるところは無いのか?」

 

「無論。だが、ここからどう行くかは解らない。舗装された道がある筈だ、探すぞ」

 

「あら、お困り?」

 

「誰だ!」

 

 レオンが拳銃を声の方に向ける。

 

 誰も気が付かなかった。いつの間にか、緑女の女性が傘を指しながら笑いかけてくる。レオンが拳銃を向けても可笑しくはない、こんなにも黒く、深淵のような者に恐怖をしても。

 相手は手を出してこない。協力的なのか?

 

「そうカッカしないでくださる?私、これでも強いわよ?そんな豆鉄砲では勝てませんわ」

 

「その反応、妖怪だな。レオン、下ろせ」

 

「ジャパニーズ妖怪?わお、始めて見た」

 

「妖怪………なの?」

 

「そうです。私の名前は風見幽香。幽香とお呼びくださる?

 里に行く次いでに、途方にくれている貴方方を誘おうと思ったのよ」

 

 助けてくれるようだ。俺達は怪しみながらも着いていくことにした。嫌な予感の知らせは止まない。

 風見幽香は何者か、妖怪は妖怪。それで終わりなのに終わらない。裏がある、それは勘でしかない。

 

 警戒は解くことが出来ないな。

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 最近、私の屋敷に博士がやって来て、戦力提供をしてくれている。私は望んでいないけど、彼方は善意。今の壊れた彼女を断れば、何があるのか。想像したくない。

 ペット達は無事。されど危険、いつかは排除しないといけない。彼女は危険だ。

 

「失礼します」

 

「どうしたの、お燐」

 

「それが………あの博士、やらかしました」

 

「やらかしたとは?」

 

「収容違反を促すだけではあきたらず、外の世界に干渉を続けています。裏には賢者が」

 

「とんでもないバックね、警戒だけにしておきなさい。今、反乱されたらたまったものではないわ。

 彼女を殺せる者が来るまで、耐えるしかない」

 

 この幻想郷には来ている。彼はもう導かれている。始まっている。

 前の異変の第2幕、主人公さん、早く気付きなさいな。貴方は、救いたいのでしょう?

 

「お燐……貴方は逃げなさい。貴方だけでも、彼をここへ案内するのです。例え、私が居なくても」

 

「え?」

 

「私は始末されるでしょう、あのウィルスはそこまで進化してしまった。

 人を選別するまでになってしまった。あの狂った博士は、私を殺せる」

 

「……………解り………ました」

 

「行きなさい、遅れる前に。

 それと、一つ。緑巫女の所に居る褐色の男に伝えなさい。

 聖杯は、起動している」

 

「では…………すみません」

 

 お燐は言い残し、扉を開けて、ゆっくりと出てから扉を閉めた。お燐は泣いていた。泣かせたくはなかったけども、お燐は死んじゃいけない。

 

「こいし、どうせ見てるんでしょう。

 貴方にお願いしたいです、地下にある脳観測式疑似召喚機を使いなさい。

 あの転生者は、ここで使えます。彼の脳から私の能力を付与した機械で、物語の人物をコピーする。

 主人公の助けを、カルデアの希望を……。ここを、我々の亜種特異点とするのです」

 

 本来現れる筈のない人物を呼び足し、歴史を少し弄れば希望は来る。

 世界は、救われなければならない。この世界を除いたとき、結末を私は見た。滅亡の世界。

 

 未来は未来。今から変えればいい。滅亡と絶望、悪意が振り撒かれた世界なんて、私は認めない。

 認めてなるものですか。滑稽ですね、作られたレールが神となろうとした者に壊されようとしているのですから。世界を作った神様は、きっと生命を。

 

 殺すのでしょう(愛す)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「解ったよ、お姉ちゃん。

 行こキャスター」

 

「ええ、マスター。

 いやはや、この私が現界して異世界から人物のコピーを呼び出せるようになるとは。何が起こるか解りませんねぇ、幻想郷は。

 彼にもである……、私はいいマスターに出会えましたよ。この悪魔(ワタシ)は」

 

 

 




転生者はただの一般転生者で、速攻で捕まって実験台にされて、装置に組み込まれた哀れな子です。所謂モブ。

最後のキャスター、悪魔の一言で解るかも?幻想郷は何でもありですからね。
例えこの世全ての悪すらも受け入れそうな勢い。

うちの幻想郷、おかしいかな(;`・ω・)




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diary11 月夜

今回はウェスカー単身。そして今回から型月要素が増えてくる。

型月一本で異変ができてしまうから控えなければ…。


 夜になり、私は少しだけ煙草を吸いたくなり、外に出歩いた。皆は疲れていたのか自然と寝てくれた。

 引き込んだ射命丸から情報を聞きだし、地理も覚えた。現状の幻想郷さえも。

 

 妖怪の山のことも教えてもらった。現在、白狼天狗達が重症を負い、一部を除いて活動ができないらしい。

 しかも、重症の筈なのに、生きているのだと言う。下半身が無かろうとも、体の八割が無かろうとも。

 その現象はあろうことか、B.O.W.に似ている。もしかすると、あのにとりが仕出かした事なのだろう。

 できるのは私か、彼奴ぐらいだ。

 

「スゥ………フゥ。

 今日はやけに霧が濃いな、月もより近くに見えてしまうほどくっきりと浮き出ている。

 何かの予兆か?」

 

 霧、それ事態はごく最近現れた物だ。射命丸が吐いていたのだが、この霧は私が妖怪の山に来てからだと言う。私にはこの切りに関して何も知らない。

 にとりめ、何を仕出かすつもりだ。

 

「どうやら、お困りのようだ。

 今日はいい夜だね、人間」

 

「誰だ?」

 

 足音をたてながら、一人の薄暗そうな男が歩いてくる。肌は青白く、伸ばした黒い髪を掻き上げ、その瞳を輝かせた。

 何だこの男は、なんと言うか。影が薄そうな人外っぽい男。どこか胡散臭い。

 

「貴様は?」

 

「ちっ……人間じゃないか……。あーいや、こちらの話だ。俺は殺すのが趣味に近いんだ、彼奴にも言われてるしな。

 始めようか、人外どうしで」

 

 男は殺意を露にさらけ出す。

 捕食者か、激しい思い込みか。完全に私を見下して、侮っている。慢心だと私は思うが、相手はそれが普通のように振る舞っているので、いつもそうだったのだろう。

 この男は、何人も殺している。そんな匂いを漂わせている。

 

 月明かりが増した気がした。霧は私達を中心として微妙に薄くなる。どうやら、戦わなければならないらしい。

 意思を持つように霧がそう言っていると、解ってしまう。戦いは、必然的に起きた出来事のようだ。

 

「そうか、その敵対行動。公開するなよ」

 

「はっ。どうかな?」

 

「貴様は勘違いをしている。君は喰らう側だと思っているようだが、それは───」

 

 まだ半分も吸っていない煙草を男に頬り投げ、懐に入り込んで顎から腹へと叩き込み、吹き飛ばす。

 

「──この私だ」

 

「面白いな……ああ!!面白い!!」

 

 男も私に程遠いが、力強く地がずいて私の心臓を貫いた。ほう、いまのはガードしていても貫通していたな。これは気を抜けん。

 

 心臓を貫かれた、その追い討ちとして心臓が潰される。その光景に男は舌で唇をなめて頬を赤らめさせる。その顔は正に、変態。

 

 流石の私でも引くわ。

 

「ハハハッ!!何がこの私だ(キリッ)だ。

 てめえの舞台演説は終わりかぁ?終わりなら口からドブガエルみてぇな声だして死にな!

 ゆっくりと抜いてやる………あ、喋れねえか!ほーら、イーチ、ニー……」

 

「フッ」

 

 油断しているところ悪いが、私は生きている。心臓を別の場所から再生させ、まだ動かせる両腕で血に濡れた男の腕を掴む。

 

 なかなかに硬い。一見ただのパッとしない男だったがれっきとした人外だったようだ。

 

「サっん?生きているだと!?

 くそっ!抜けねえ!!その汚ねえ手を離せ!」

 

「どうした?笑え、ピエロのようにな」

 

「ぐっあ、貴様ぁ!!モブの癖に!」

 

「モブ?すまないが私はそんな名前ではない」

 

 驚愕、その中に囚われていながらも男は指していない腕を振り上げ、私の顔を殴る。

 拍子に刺さった腕が抜けそうになったので、掴む腕を捻り、もぎ取ってやった。

 

 血が回転しながら吹き荒れ、ブチブチ音が鳴った。その痛みからか、男は苦痛の声をあげる。後退り、五歩めで止まり、声をあげる

 

「あぁアアアウアッ!!」

 

「どれ、味見してみるか。旨いのか?不味いのか?何れにせよ食べることに変わりわない。

 言っただろう、私は喰う側だ」

 

「なん……だと?!ぐっ………きぃさま!!」

 

 驚き、目玉が飛び出る幻覚が見えるほど驚く男だが、私はそれに構わずかぶり付く。

 頭に細胞の旨味が流れ込み、濃厚な鉄の味が口いっぱいに広がる。正直旨い。

 しかも、おまけで身体能力が向上した感覚がする。おまけが本体のようだ。

 

 一口だけで満足したので、腕は適当に頬り投げた。落ちた先は河、綺麗に放物線を描き着水し、赤く汚く染め上げる。

 

「恵まれた食材だ、百点満点中百点だ。ただ……0点になるだろう、なぜか?

 それは、貴様が私の至福の時を奪ったからだ」

 

「ぐげぇ!!??ああぁぁぁ……」

 

 私は右腕から触手を素早く生やして貫いた。男の声は遠退くように小さくなって行き、霧に包まれ消えていた。逃げたように見えたが、手応えはあった。

 応急処置をしても数日、なにもしなければ数分で絶命するだろう。

 

「舞台………か。奴はどこから来たのやら」

 

 私は至福の時間を堪能することにした。やさき、煙草を口に加えようとした瞬間、煙草を短剣が通過し真っ二つにされる。またか。

 

 今度来たのは修道服を着た黒髪ショートカットの女性が、霧の中から現れた。右手には巨大な銃器を、左手には短剣を三本。

 連戦させる気か、この霧は。

 

「死徒を追っていたら、新たな死徒とで会う。まるで黒光のアレのように、一匹居たら何匹も湧き出すは笑えませんね。

 死徒はさっさと地底の牢獄に囚われていなさい、答えは聞きません」

 

 私を使途と呼んだかこの女は。奴の細胞を取り込んだことが原因だろうか。まあ、たしかに身体能力が向上し、視力聴覚が鋭く研がれた剣のように凄まじく調子が良いのだ。

 

「使途と言われる物は知らん、聖職者よ。

 そもそも使途の意味は金銭の使い道……だった筈だ、それを追えるのか?」

 

「……まさか己を理解しない死徒が蔓延るとは、となれば理解するための知能が無い青二才。

 今ここで、生えた芽は潰しておきましょう」

 

「っ!」

 

 三本の短剣が、私の心臓と頭に向かって投擲される。これは避ける、避けることが女の思惑でも構わない。

 いつも弾丸を避けるように私は避ける。

 

 身体能力が向上したからか、何時もより調子がよ良すぎる。一歩踏み出せば女の後ろまで行けるレベル。

 加減しなくては私が知りたいことが聞き出せないため、必然的に手加減するようになっていしまう。

 

「はあ、今回は面倒です。

 帰ったらカレーにしましょう、具在は………スーパーで買えばいいですね」

 

「カレー……聖職者?はて、聞いたことがある」

 

 カレーを食べる、聖職者。私は聞き覚えがあった、今思い出した。たしか、聖堂協会に所属しているカレー好きのヤバい奴が死んだと。

 

 転生でもしたのか。聖堂協会ならやりかねない所業のため疑わしい。

 

「貴様、聖堂協会の者か」

 

「……そうですね、答える義理はありませんがすぐに消える新参ものには優しくしましょう。

 私はシエル、埋葬機関所属。

 では、さらばです」

 

「野蛮だな」

 

 巨大な機銃、それを構えるシエルと名乗った聖職者。形状から、恐らくパイルバンカー。

 弾丸が数発撃ち出されると同時に短剣も投げられ、絶対に殺す意思が見える。

 

 しかし私に当たる事はなく、余裕で避けきれる。右、左、テンポよくムカつくほど、それはもう綺麗に。

 

「ええい、ちょこざいな!!」

 

「どうした(笑)」

 

「うぎぎぎぎい!」

 

 挑発に乗ってくれたので、油断している内に近付いて横から顎に向かって蹴りあげる。しかしそれは避けられてしまった。

 更に、避けたと言うのに弾丸を一発だけ発砲。その玉は私の足を撃ち抜けた。

 

 シエルは発砲による威力が殺せないために、少しだけ後ろに押されるのだが、サマーソルトをして立て直した。とんぼ返りで立て直しすって何だ。

 

 人間の芸当ではない、あれだけの大きさを誇る銃器があるというのに。

 

「燃え尽きろ!!」

 

「っ?!」

 

 地面に突き刺さっていた短剣が燃え盛った。その炎は舞い踊り、私めがけてあらゆる方向から襲い掛かる。

 その手数の多さに、流石の私も厳しい。

 

 飛び下がり、普通の拳銃を取り出して炎を産み出し続ける短剣を弾丸で壊していく。

 発生源である短剣は駆除できたが、炎は残ったまま。炎には物理的な攻撃は効かない。

 

 そのため、私は河から水を掬い上げて水をかけて消した。初歩的な、冷静的行動。

 その水は私を覆い隠すほどではないが、少しの目そらしはできる。水に視線が被った瞬間に、斜め右に動き、真横から発砲。

 

 弾丸は銃器に防がれた。流石にそこまで甘くはないらしい、カレー聖職者の名は伊達ではないか。

 

 

「まちなさああああいい!!」

 

 

「ぬ?」

 

「な?!」

 

 突如、大声をあげながら私とシエルの間に、金髪の女が割ってはいる。

 

「アーパー吸血鬼!邪魔すんな!」

 

「それには従えられないわね、救難信号を受けて来てみればこれよ。

 地球が悲しむし、もう夜明けよ?さっさと霧に戻りなさい」

 

「………そうですか。

 では、良い舞台休憩を」

 

 吸血鬼と呼ばれた女の言葉に納得したシエルは霧に消え、霧もだんだん晴れてくる。

 この女、何者だ?

 

「何者だ、女」

 

「私?うーん、何て言ったらいいのかなあ。

 あの子の名前を使ってもいいけど、それじゃあ物足りないし。そう、そうね。

 私の事はファンタズムーンと呼びなさい!」

 




今回の流れ



影薄い人〈人間じゃねえなら死ねや

ウェスカー〈ガブっ!旨いけどタバコ吸うの妨害したから死ねや



シエル〈死徒はさっさと消えろい!

ウェスカー〈タバコ吸うの邪魔するな



ファンタズムーン〈夜明けぜよ!

シエル〈グッバイ

ウェスカー〈なにこれ


みたいな感じです。以外と纏めると凄い短縮出るなこの話。実は最後のところは凄い悩みました。

当初の予定では出てくるのは朱い月でしたし、もっと戦わせて消耗させるつもりですた。

恐らく後々にはブラッドボーンも入れる予定。月に獣と朱い月が居てもいいじゃない。
俺はそう思う。あれ、そしたら幻想郷、大丈夫か?なんにせよ、今後も色々なキャラを出します。

風呂敷は気にしない方向で。最後は決まっていますので。


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第二幕 朱月幻想戦域 幻想郷
diary12 第ニ幕


やっと書き終わって安心して、投稿です。
設定を厳守しながら書いてると色々と説明しないといけないし、キャラに言わせたりしなきゃいけない。
でもやり過ぎると説明だけになるぅ。

と言うわけで、今回は説明回です。多少本家様との設定がずれてるかもしれません。特に型月。


「へー、ここが貴方のお家?

 スッゴく未来チックね」

 

「あまり騒がないでくれ、連れが寝ているんだ」

 

「OKOK、お!これ薬品よね!何だか悪の研究所感あっていいわ!」

 

「………」

 

 私はあの後、ファンタズムーンと呼べ等と強要してくる女に「貴方に着いていかせて?チキチキ!隣の御飯!」と話も聞かずに着いてきた。

 何故彼女が入れているか、それについて。それは何故か、機械が関知しなかった。

 入った方法はいたって簡単、私にくっつきながら入るだけ。

 

 関知しなかった、それはまだ誤認か何かの不調だと思うところ。

 それ以外はどうか?誰かが侵入した学歴はない、通れば確実に、誰であろうと記録されるのに。

 ここまで来れば怪しい。機械の不調だと思えない。偶然がこうも重なれば、怪しむのは普通だろう。

 

「さて、座って話そうではないか」

 

「私も言わなくちゃいけないことがあるしね、了承するわ。あ、飲み物ない?」 

 

「………来い、移動する」

 

「はーい」

 

 飲み物が飲みたいらしく、話し合いもかねるので応接間に向かい、適当に座らせる。ここの応接間は真ん中に白く長い机。

 それを挟むように黒いソファーが設置されていて、お茶等が置かれた黒い台があるだけだ。

 

 しかも防音完備、これでこの話は外に漏れない。

 

「茶だ。それで、何者だ」

 

「いやだから、ファンタズムーンって言ってるじゃないの。あ、それよりも伝えたい事があるのよ」

 

「……伝えたい事?」

 

 何者かは答えない。どういう者かを伏せる、そこに彼女のどんな存在が隠されているのか。解るのはファンタズムーンのみ。

 

 そこはそう割りきるとして、伝えたいこととは何だろうか。

 有益な情報ならば良いのだが。

 

「あの霧や、貴方がとるべき処置についてよ。まさか無意識にしてるなんて言わないわよね?」

 

「?」

 

 はて、私は何かをしているか?認知する範囲では、彼女に何もしていないし、私はそう言われるぐらいのことをしでかした覚えはない。

 私が解りやすいように顎に手を置くと、ファンタズムーンは目を点にする。そこまで驚く事を、私がしているのか?

 

「魔力よ魔力!!少しは抑えさいよ!

 ……げ、その反応だと本当に自覚してないのね。教えてあげるからちゃんと聞くこと!」

 

「え、あ、ああ」

 

 顔を勢いよく近付かせながら念を押してくる。魔力か、それはよくある魔法だとかに使う概念だ。

 それを私が抑えなければならない程に放出……、もとい持っているのだろう。

 

 ファンタズムーンはそれを関知してやって来た、かもしれん。何故、私にそんな魔力が?

 

 可能性として、あの霧から現れた男を食べてから身体能力が向上していたが、それが引き金となり、溢れた。なんて物が上げられる。

 それ以外は心当たりが無い。

 

「多分、貴方が彼を喰らったことで地球が誤認しているのでしょうけれど、貴方は今、正真正銘の死徒ニ十七祖の番外位に刻まれている。

 地球って以外とガバカバ判定なのよねー、そこが助かるところではあるのだけれど」

 

「まて、まてまて」

 

「ん?何かしら」

 

 地球が誤認?死徒ニ十七祖?番外位?解らん単語で頭の中が混乱している。食ったことを知っているだと?うや、それよりもだ。

 

 地球が誤認、地球が意思を持っている?

 死徒ニ十七祖、解らん。

 番外位、同じく解らん。

 

「質問は構わないかね」

 

「ええ、どうぞどうぞ」

 

「ではまず、地球は意思を持っているのか?」

 

「そこからかー。地球の意思って言うのは星の抑止力、ガイアとアラヤの事よ。

 抑止力って言うのは、安全装置と思ってもらって構わないわ」

 

「死徒ニ十七祖とは」

 

「それも知らないのね。死徒ニ十七祖はぶっちゃければ強い吸血する奴らの集まり、貴方が食べた男はミハイル・ロア・バルダムヨォンと名乗っててその異端さのあまり番外位として見られている、無論同族からも」

 

「その位に私が居ると?」

 

「そうよ。普通に食べるだけだとそうやって誤認なんか起きないでしょうけど、貴方は取り込んだ。

 ミハイル・ロア・バルダムヨォンを肉体に媒介し、定形させながらも、その者ではない。皮を被った上にまた皮を被ったって訳。

 でも普通の媒介とは違い、根を張らず、一個のエネルギーとなって調合。晴れて化け物が少し混じったキメラ擬きよ」

 

「皮の上からまた被ったか。面倒な状態になったものだが、その魔力についてはどうなんだ。

 魔力については私は生まれてこのかた、あの影薄い男を摂取するまで気付かなかった」

 

「やーっと本題ね」

 

 本題に入り、私にファンタズムーンは色々と教えてくれた。回路のON、OFFに扱い方。魔術。

 さて、謎は解けた。

 

 つまり私は狙われ放題の吸血できてウィルス持った一般人なのだな!

 

「とりあえず寝ましょうか!」

 

「む?」

 

「そいやー!!」

 

「ふっ」

 

 飛び込んできたファンタズムーンをかわす。さっさとイワン達に混ざるか。

 その先に歯を磨かねば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー私が君を助けよう

 

 

 

 

 

 夢なのだろう、私はその夢を。私の過去を見つめ、佇んでいる。

 あの方に拾われ、あの方の計画に気付き、自殺のために投与したウィルスが偶々にも適合。

 

 あのとき神奈子話した昔の話、実は嘘が混じっていた。だんだんと慣らせるわけがない、解っていなければできない行動をするか。

 私の過去は、人には語れない。嘘を交えて、真実からそらさねばならない。

 

「おやおやおや?久しぶりだなぁウェスカー」

 

「貴様もな、混沌」

 

 本来の姿と言い張りながら使われた姿の状態で、混沌は闇から這い出てきた。

 銀髪の女性の皮を被った混沌ニャルラトホテプ。いつもいつも、こいつの掌の上だった。

 

「おいおいー、そんな湿気た顔すんなよな。ここ最近になってワタシが動いてんのに、なんでんな顔すんだ。

 何時もどーり、私を殺しに来いよなぁ?」

 

「っ……、私が今求めるのは一つの命。神になること。もう別のは求めていない」

 

「APP18のおにゃのこの体は?」

 

「殺すぞ?」

 

「うへぇ、まだ維持張ってるのん?さっさと抱いてくれりゃあこっちもこっちで嬉しいんだが。

 もしかしてヤッた?」

 

「メリットがない。お前を抱くのも、他の女を抱くのも。私には消えた欲であり、愛すものがいなければそのような反応はない」

 

 煽る混沌の馬鹿馬鹿しい話を答えながらも、夢は続く。夢の私はアンブレラに命令され、館に向かっている最中だ。

 あんな命令、聞かなければ良かったと思うときがある。それほどこれは単純のようで、単純ではないからくりである。

 

 裏にはアンブレラ、そのまた裏には。という風に思惑と思惑が重なった事件。

 それがあの館の出来事。

 

「あ、君死んだ」

 

「ぐぅ……何も返せん」

 

「ハハハハ!!ハーっげっほげほッヒーっは!」

 

「お前なあ…」

 

 場面は変わらず進み、夢の私が目覚めたところで目の前が黒に包まれる。どうやらここで一旦、区切られたようだ。

 私の夢は何時もそうだ、どこかで区切られる。なにかが隠すように、次の幕が上がるまで始まらない。

 

「もう終わりかぁ、もーちょっとで面白くなるってのによお。

 良いもの見れたから良いけど。そうそう、君は聖杯戦争に参加する権利があるが、どうだ?」

 

「聖杯戦争?」

 

 聖杯か。聖杯……それはイエス・キリストがゴルゴダの丘で磔刑に処せられた際、足元から滴る血を受けた杯と言われている。

 聖遺物なのだが、それに戦争を付け加えるとは。名前からするに聖杯を奪い合ったりとかするのだろう。

 

「そう、名前から解るだろうが、聖杯を巡る戦争だ。英霊に祭り上げられた人物を魔術師達が、その英霊を使い魔サーヴァントとして呼び出して戦争する。

 サーヴァントは一人一人が強力でねぇ、戦闘機一機分と設定されてたようなしないような。

 まあ強い!とても強い!」

 

「奪い合い、どうなる」

 

「願いが叶う。残りの一組に」

 

「願いはない、私はそろそろ起きさせてもらう」

 

「気が向いたらでいい。でも拒否権なんてあると思ってるのん?私の性格上、無いぜ?」

 

 その声はを終わりに、私の意識は覚醒し始める。目に部屋の明かりが当たり、意識は完全に目覚めた。

 あの混沌め、無理矢理にでも参加させたいようだ。奴の運命からは逃げられない。

 

「ぬ、この記憶は。そこまでするか」

 

 何故か聖杯戦争についての記憶がある。そうとう参加してもらいたいらしいな。

 混沌がここまで根回しするのは初めてやもしれん。

 

「起きたー?」

 

「おい、何故帰っていない」

 

 ファンタズムーンは普通にドアを開けて入ってきた。思い返してみれば、帰らせてなかったか。

 

「帰れって言われてないしー、私がいないと貴方は狙われ放題よ。

 なんたって、私はアルターエゴなのだからー!」

 

「アルターエゴ?」

 

「うん」

 

「は?!」

 

 アルターエゴ、サーヴァントのクラスの一つ。こいつはサーヴァントだったようだ。

 今になってみてみれば、たしかにサーヴァント。エクストラクラスの奴がこんなのだったとは。

 

 もう一側面であり、別人格がそのクラスに当てはまる。となると、こいつも誰かの一側面。

 口調がどこかはっちゃけているのはそのせいか、あるいは本体もはっちゃけたいるのか。

 

「いやー、ご飯はなにかなー。ふんふんふーん♪」

 

 ご機嫌に鼻唄を奏でているが、貴様に渡す飯はないと口には出さず、心のなかで愚痴る。

 サーヴァントは契約者がいれば食べなくてすむだろう。そういいかけた。

 

「ふー……ん、え?契約しろって?別に構わないけどあんた達的にどうなの?

 別にオッケー?ならいいか」

 

 唐突にファンタズムーンは独り言を言い出す。まるで誰かと会話しているように見える。

 誰と話しているのか、思い当たるのは地球しかない。抑止力のガイアとアラヤ、何を話しているのかは単語からして、サーヴァントとしての契約か?

 

「どうした、突然」

 

「そうねー、私。貴方のサーヴァントね、ことになったから、ガイアとアラヤに言われて。

 彼奴等、その方がいいんだってさ」 

 

「そこは予想通りだな。

 して理由は?」

 

「そこは知らないわよ、私に聞かれても。

 半裸になって背中向けて?刻むから」

 

「刻む?」

 

「抑止力直々の令呪を。仲裁役になってほしいんでしょう。

 じゃなきゃこんな事を仕出かさない」

 

 従わない理由はないので、言われた通りにする。背中に、指に触られている感触と熱さが走る。

 背中から欠陥のような赤い令呪が這いだし、顔にまではいかず、首下で止まった。

 

 混沌から送られた知識の中に、令呪は増えるほど歪になるとある。まさにこの令呪は、複数だ。

 数は30、そして別格の令呪が胸の中心に幾何学模様で存在している。

 

「この胸の令呪はなんだ?」

 

「特別な令呪ですって。使ったら死ぬけど」

 

 使ったら死ぬとかピーキーだな。

 

 服を着て、私はイワンの寝室前に向かう。後ろからはアヒルの子のようにファンタズムーンが着いてくる。

 

「今日も1日、頑張るか」

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

「はあーあ、退屈になったなーッと。

 今度は聖杯戦争ねぇ?ワタシは何を考えてるんだか。人類を危機にさらすような事をして、玩具がなくなるじゃあないか!

 楽しくないっての!」

 

 喫茶店の一角で、私はワタシを嫌いながら珈琲を口に流し込む。

 この店は異形でも入れてくれるから、景気が良いのかなあ?ま、飲み物が旨いからいっか。

 

「相席よろしいですか?」

 

「ん、OK」

 

 猫みたいな生物の店員から相席を頼まれ、普通に許可したら、目の前に相席する人物が座る。

 んー、この見た目は……。名前どんなのだったかな?えーっと、あれー?

 

「久方ぶりだ、百貌よ」

 

「あ!ゼルレッチ!」

 

「ふふっ、随分と丸くなったではないか?神と祭り上げられ、その、側面を持ち、人を嘲笑うお前が」

 

「いってくれるね。用件は?」

 

「この世界は、理解しがたい。昨日からこの地球に溶け込むようなあり方で存在し出した彼等、どう思う」

 

「楽しそう」

 

「はあ、何時もそうだなお前は。

 隔離された幻想の地に干渉し、現実に落とし込もうとするやからが居る。

 今の幻想は、贋作が転がる盤上と化した。この喫茶店のような、我々のような別の世界から溶け込んだように、その贋作で、やからが再現しようとしている」

 

人類への愛(ビースト)も動いてるらしいじゃないか?花の魔術師も、人類の希望(カルデア)も。

 人類の希望(カルデア)が気付くのは手遅れになった後だろうがね!はははっ!面白くなるよぉ?」

 

 期待しよう、人類に。我等を楽しませる玩具達、大地に生まれし癌達よ。

 聖杯戦争が始まる。

 

 だから、面白く、醜さを観させてくれ。

 

「第ニ幕の始まりかな」

 

「ほう、それはそれで楽しそうだ。

 店員、珈琲を貰おう!」

 

 サブタイトルはどうしよ。聖杯を巡る戦いだし、色々と絡む予定だし。

 探しに来たクリス君はワタシの端末が案内してたからいいか。出番は今後、削ろうかな?

 

 そうしよう、主人公はウェスカーだし。主人公に感情移入……ウェスカーに感情移入できる人は数少ないだろうね。

 でも止めれないし。

 

 そうだそうだ、シンプルにしよう。特異点に似せた名前にしよう。

 

「第ニ幕のタイトルは───」

 

「おお、もう決まったのか?」

 

 

 

 

 

 

「──朱月幻想戦域 幻想郷ってね?」

 

 

 

 




一番苦労したのゼルレッチ出すかどうかで、すごく悩みどころでした。
そして最近伸びが悪い。やっぱSCP回をもうけてみようかな?と思ったり。

多重クロスオーバーとなると、やりたいことが多すぎて困りますね。

次回は不定期です


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diary13 天狗よ哀れなり

今回をちょっと駆け足です。
しかもオリジナル技とかの説明がが盛られているため、余り進展はしていないかもしれません。


近衛連隊隊長さん、いかさまさん、manaitaさん
お気に入り登録ありがとうございます!


 夢を見た後、夢見心地が悪かったと思いながら、装備と何時もの黒い服装に整えてイワン達を起こす。

 朝食は直ぐに作り、途中でやって来たファンタズムーンにも餌をやった。

 

「ファンタズムーン以外遊んでていいから、お留守番だ」

 

「え?私は?」  

 

「お前には仕事がある」

 

「えええええ!!ぶーぶー!」

 

「働かざる者食うべからず、だがお前はさ気に食べた。

 これは強制的に働かねばな」

 

 じたばたするファンタズムーンの首もとを掴み、引き摺りながら外へと出る。

 仕事とは、文に関してだ。

 

 文を率いれた訳だが、天狗から引き抜いた訳ではない。

 だから許可を取りに行くのだ、その護衛兼壁役としてファンタズムーンに仕事としてやってもらう。

 

「お前の仕事は護衛だ」

 

「あのねえ、マスターは強すぎるし、令呪が沢山あるのよ?護衛なんか要らないでしょ。

 さ、私は戻るわよー」

 

「待て」

 

「フギッ?!」

 

 戻ろうとしたファンタズムーンの襟を引く。

 目がばってんになっているが気にしてはならない、仕事から逃げているのだから。

 お前はサーヴァントだ、卑怯とは言うまいな。

 

 嵌めたのは私だが引っ掛かったのはこいつなので、私は悪くない、悪いけど悪くない。

 

「私の言葉を思い出せ、さもなくば閉め出されたいか?

 それとも灰になるか、首を置いていくか?」

 

「あ、いえ。

 やらせていただきます」

 

「よろしい」

 

 殺気をちらつかせながらお話ししたら納得してくれたようだ。

 先ず、私はファンタズムーンに護衛役として霊体化して着いてくるように言い聞かせる。

 

「いいか、霊体化して着いてくるんだ」

 

「はぁ、やるしかないのよねー」

 

 最初に行うのは天狗に見つかること。

 騒ぎを起こせば一発なのだが、そんなことをすれば即牢獄送りだろう。

 

 だが、案内役を連れてれば、少しは捕縛の可能性が低くなる。 

 更に、案内役が目上だったら?

 

 私は早速、守矢神社へと歩き出す。

 あの三人で特に面白そうだと言ってきて着いてきそうな奴、古風谷 早苗と守矢 諏訪子のどちらかを連れてくつもりだ。

 しかし、ここで問題が発生する。

 混沌の端末である諏訪子はてをかさない、彼奴は蚊帳の外で糸を引くタイプ。

 

 一方、古風谷 早苗にはサーヴァントが居るために、戦闘になりかねない。

 性格はまだ解ってはいないが、面倒なのは嫌でも解る。

 彼女はどこか常識を欠損しているのが見受けられた。

 普通ならそんなことは思わない、思ってしまったのはつまり、そう言うことだ。

 

「ご苦労様だ、ウェスカー。

 ここまでの階段と隠密行動は辛かっただろう」

 

 階段を上がり終わり、一息つくとサーヴァントが箒を片手に話しかけてくる。

 掃除をしている最中だったようで、掃ききれていない落ち葉が風に押され、転がっていく。

 

「そうだな。

 用事があって来た、外套。

 古風谷 早苗はどこだ?」

 

「隠すならば努力をしろ」

 

「……ほう?」

 

「お前のそばにいる護衛はなんだ、私の知る限り、それは貴様が持ってはならない物。

 参加するとなれば、先に正攻法で殺す」

 

 親の仇だとでも言うように、睨み付けられる。

 その顔は、覚悟を決めた顔だった。

 

 そのような顔をされる覚えなんぞない。

 八つ当たりにしか見えん、面倒だ。

 

「私は親の仇ではないぞ?」

 

「言うなれば、死した生ける者達への花手向け、ここで脱落しろ。

 お前を何故、抑止力が放るのかは知らないが、偽りの正義で貴様を葬ろう……投影、開始っ!」

 

 2つの剣を青い光と共に呼び出された、あの魔力とできかたからして投影魔術か?

 先に私はファンタズムーンに手を出すなと念話をした上で、右足を踏み込み、迫り来る双剣を右手と左手でそれぞれ叩き割る。

 

 これには驚くようで、一瞬の好きができた。

 

「『定』っっっ!!」

 

「っ?!」

 

 私の魔力をのせた拳『定』は少し当たった程度で、苦虫を噛んだような顔をしながら交代され、ちゃんとは当たらなかった。

 擦り傷程度の威力だったようで、見るからに冷や汗をかいているのが確認できた。

 

 『定』は聖杯の知識から作った即席に近いの技。

 あの夜で戦ったシエルの追尾してくる炎を思い出して作った技だ。

 触れることで魔力が強く痕跡を残るようにし、接触を止めても糸のように魔力を伸ばし、痕跡を強く残す。

 ここで炎の魔術を使えば、魔力の痕跡を上書きに近い辿りを行い、炎はそこに飛ぶ。

 

 欠点は伸ばした痕跡こ箇所からしか飛ばない、シエルはこれとは別の、似ている魔術を使っていた。

 何れはああして見たいものだ。

 

「ここだ、燃えろ」

 

「追尾かっ!」

 

 対処の行動をとるのを確認したら、地面を風の魔術で包んだ掌を叩きつける。

 するとどうだろうか、落ち葉が浮いた。

 

「これは、どうだ?」

 

 その浮いた落ち葉に炎が引火する。

 

 『定』の能力は先程の説明だけでは足りない、この技はその後が強みなのだから。

 対象者からは、魔力が散布される。

 それが強み。

 

 その撒き散らされた魔力は私の指定した通りにしか働かず、応用が効く。

 これにより、魔力で浮かせた葉との連鎖で、いっそうと魔力に乗った炎は広がる。

 

 別に対象者自信の魔力が散布されるのではない、関知しにくくした私の魔力が散布されているのだ。

 『定』は簡潔にすればただ相手に魔力を微量に纏わせるだけ、後は後付けに近い。

 

 強く痕跡が残り、実際は微量で関知されにくい。

 これこそ私に許された魔術、『隠蔽』。

 気付いたのは主に、混沌からの贈り物のせいだった、嫌なことに。

 

 あの混沌は聖杯戦争の知識では飽きたらずに、私の魔術回路を開き、それを当たり前だと刷り込ませていた。

 実は戦うまで解らなかったのは言えない。

 戦うときに開いたからな、自動らしい。

 

 痛みは無論、微々たる物だがあった。

 

 閑話休題。

 

 あの混沌が呼び覚ました私の魔術師としての才。

 余りにも迷惑で、ありがたい。

 後で拳骨だ、与えるときは言えと何度も言っているだろうに。

 

「だめ押しだ、『固』っ!」

 

 『固』はその名の通り、固めることを主とした技だが

中身は全く違う。

 広がる未来を隠蔽し、収束する未来へと固め、必ずそのまだ見えぬ未来に到達せるのだ。

 

 今回の『固』は炎に使い、その結果、炎は過程をすっ飛ばし、ひとつの槍となって襲う。

 

「独自の魔術か。

 仕方があるまい、マスター!!」

 

「結界!!」

 

 その炎が当たる直前、そこで結界が張られ、炎によって割られた。

 どこから現れたのか、結界を張った張本人は古風谷 早苗、この神社の巫女でアーチャーのマスターだ。

 

「ふぃー、奇跡は万能ですが疲れますね!

 しかも結界は一か八かだったのですが、成功してよかったです」

 

「待てマスター、絶対ではなかったか?!」

 

「言ったような言ってないような……、それはそうと今は目の前の的に専念でげそよ!

 真っ黒にしたるかんね!その服みてえにな!」

 

 奇跡は万能ではないが、二対一は分が悪い。

 致し方ない、こちらもサーヴァントで対応しながら押していくとする。

 

「大口を叩くじゃないか、アーチャーのマスター。

 出番だ、我が下僕」

 

「下僕言わないで」

 

 不満を言いながらも、アルターエゴであるファンタズムーンは霊体化を解き、姿を表す。

 念話を使いファンタズムーンに、「クラス名を言うと不味いから下僕にした」と、伝える。

 その返答は念話で返答はされず、半目で返された。

 

 仕方がないんだぞ、我慢しろと威圧して向き直る。

 

「そのサーヴァントって……、不味いですよエmアーチャーさん」

 

「いい間違えるな、マスター。

 不味いとは?」

 

「あれは………、理不尽の擬人化です!」

 

「理不尽の擬人化ね、いいわねそれ。

 マスター、理不尽に行っくわよ!!」

 

「奇跡は万能ではないことを思い知れ、理不尽は奇跡に勝ると知れ。

 『固』!!」

 

 体に魔力を微量に流し出し、空気中に触れさせ、触れた一部の空気を操った。

 手をつきだし、古風谷とアーチャーを鋭く槍に形状が変わった空気が襲い掛かる。

 

 それに合わせ、ファンタズムーンは100tと書かれたハンマーを取り出して、空気に乗る。

 逃げようとする二人を地中から触手で捕り押さえる。

 

「合体技ぁぁああ!『受け継がれた物(ツッコミ)』!!」

 

 逆にツッコミたくなる技名だが、この速度で当たれば肉片になるのは確実。

 勝ったな。

 

「魔力を回せ、マスター!」

 

「おいさー!!ユー、やっちゃいな!」

 

「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』」

 

 その時、花弁が覆った。

 盾として現れたそれは、綺麗なものだった。

 そう使うには惜しいほど、桜に似ていた。

 

 あれは美しい、無性に見入ってしまう。

 

 いや、今は戦いだ。

 

「盾なんかぶっ潰したらぁあああーーー!!」

 

 勢いよく叩きつけられたハンマーの加速は止まらず、空気の槍も止まらない。

 一枚が割れ、また一枚。

 

 あと2つになるほどの威力を見せつけるもなお、止まることを知らない。

 

「なっ、何て馬鹿力だっ!?

 押されている……ただのハンマーに。

 ぬ、よく見ればこのハンマー、宝具かっ!」

 

「100tハンマーの宝具とかどこの町のハンターですか、出鱈目にも程があるってんですよ。

 障壁、展・開!!」

 

 花弁の盾を支えるように星形の障壁が出現し、強度が増したように見えた。

 ここは動揺を誘うとしよう。 

 

 念話をファンタズムーンに繋げ、動揺を誘うためにする事を話、それを始める。

 

「邪魔ならば、全てを押し通す。

 月に仇なす人間よ」

 

「なにその詠唱、私もやろ!

 すぅ……祖の名の下、地球に命ずる。

 我等は問う、人間に」

 

「森羅に背き万象を軽視した、愚かに楯突き抗う者よ。

 我は人の外に弾かれし獣」

 

「我は幻想に集う星」

 

「今こそーー」

 

「救いーー」

 

「「ーーーーなんちゃって☆」」

 

「「?!」」

 

「気が緩んだぞ!!今だ!」

 

「OK!マスターに乗って正解だったわ!

 いっけぇぇええーーー!!!」

 

 動揺した瞬間に、ファンタズムーンのハンマーがひびを盾に入れて障壁ごと吹き飛ばし、触手がそれと同時に千切れ飛ぶ。

 これぐらいで動揺するのなら、今後も少しだけ使ってみてみるか。

 

「キャっ?!」

 

「マスター!!」

 

 吹き飛ばされた古風谷をアーチャーは俗に言うお姫様だっこの形で抱え、勢いを殺しながら地面に踏みとどまった。

 英霊はどこまでもタフらしい。

 

 この状況、今なら用件を飲み込むだろうか。

 

「今なら話せるだろうか?」

 

「何?」

 

「私は

 

 

──居たぞお!!者共出あえい!出あえい!!

 

 

見つかったか」

 

 空を見上げれば、そこには鴉のような羽をもつ男女、見るだけでも20名。

 鴉天狗は鼻が良いようだ。

 

「不味いわね、今の騒ぎで見付かったわね。

 どうするのよマスター」

 

「隠蔽はそこまで気が利かない、強行突破だ。

 已む無しになれば宝具を使え」

 

「りよーかい!」

 

 一匹の年を取った老天狗が空から落ち、境内に舞い降りた。 

 堀が深い顔に怒りを表にだし、殺気を纏いながら今にも襲いそうな気迫で見据えた。

 

「見つけたぞぉ、下等なる人間よ!

 我等、愛しの文ちゃんを返せぇえ!!

 そして文もみさせるため白狼天狗もだ!!」

 

 何故だか、文が混乱せずに、直ぐ軍門に下った理由が解った気がした。

 こいつら、変態だ。

 

 筋金入りの変態だ。

 

「文ちゃんコール!!」

 

「「「「「「「「「「文ちゃーん!」」」」」」」」」」

 

「別部隊!せーの!!」

 

「「「「「「「「「「文ちゃーん!」」」」」」」」」」

 

 なんだこいつら。

 

「文には優しく接するか」

 

「私も賛成、これはドン引きよ」

 

 なんだか目の前の天狗が全て悪いように見えてきて、殴り飛ばしたくなる衝動を押さえる。

 話ぐらいは聞く筈………だ。

 

「今、呼び捨てにしたかぁ!?

 だから下等なのだ!

 あの白狼天狗と同じようにしつやる!!」

 

「…………何だと?」

 

 何と言った、この害獣は。

 あの白狼天狗と同じように、だと?

 

 あぁ、あぁ、あぁ。

 

 椛の、血の記憶にあったなぁ、虐められていた記憶が。

 こいつらならば、殺しても構わないか。

 

「がぁっ?」

 

「汚い口を閉じろ」

 

「あらー、スイッチ入ったわね」

 

 手から生やした触手で五月蝿い鴉の首を切り飛ばす。

 もう我慢できん、種を根絶さしてやる。

 

 椛は、イワンは、私がいつの間にか親として愛していた存在だ。

 それだけ思い入れがあるのだ。

 イワンの親と言える椛を虐めたその先、どうなるか思い知るがいい。

 

「首を出せ、貴様等を全員。

 晒し首にしてやろう」

 

 コートと上着を脱ぎ、それをファンタズムーンに持たせる。

 背中から鴉の巨大な羽を作り、体内のウィルスを活性化させ、怪物としての私になった。

 

 体は触手で構成されることで体積が増え、肩は膨れ上がって目玉が覗き、顔を触手に包まれ、髑髏を思わせる形をとる。

 胸には口のようなものが形成、長い舌がちらつく。

 

「死をくれてやる、だから首を出せぃ!!

 これは刑罰でもなく、懲罰でもない。

 死刑だ」




首を出せぃ!!は、TEPPENでの声優繋がり。

今回ってオリジナル要素のお陰で文の構成が可笑しかったり、可笑しくなかったり。

次回も不定期かもしれないし、或いは亀。

コメントほすぃ……。


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diary14 三つ集る。魔術師が求めた杯、黒に満ちて。

天神小さん M27IARさん お気に入り登録ありがとう御座います。
10/11 メランドールさん お気に入り登録ありがとう御座います。




「して……、動いたのはあの阿呆共だけか。

 奴等の行動は許される事はない、今はあの二柱であられるあの方達に任せる」

 

「それは良いのですか、天魔様。我々からあの鴉天狗が引き抜かれたのです、どうか我等も……」

 

 天魔、今の儂はそう呼ばれていた。

 

 妖怪の山を納めるものとして二柱を受け入れ、いつもの厄介ごとが終わった。

 その数ヶ月経った頃、また幾度かの異変が起きた。

 

 最初に起こったのは白狼天狗の反乱。

 妖怪である者が持つ物か怪しく、奇妙な力をつけ、みまだ正体がわからぬ人物をリーダーとして攻め立てた。

 しかし、次の異変が問題であり、白狼天狗を虐殺される事になった。

 

 反乱した者は虐殺されたにも関わらず、生きていたりと、不死性を全員が持ち合わせているのに、それでも敵わなかった化け物が生まれたのだ。

 それと同時刻、犬走 椛の消息が掴めなくなり、調査しているうちに生まれた化け物は消えていた。

 

 それから射命丸 文がある一人の男を追っていたところ、喰われたらしい。

 文字通りの事が起こったようだが、河童が作った生命を探知する事ができる装置なる物で、生きていることは確認できたのだ。

 つまり、拐われた挙げ句の果てに、帰らずにいるところからして帰る意思はない。

 

 あの女はそう易々と捕まるような女ではない、もし捕まってもすぐ逃げ出すような奴だ。

 

 どう考えても、射命丸が帰ってこないのはあの一件が関係している。

 

「ならん、そもそも視えていたことだ。

 罪人が居る限り、な」

 

「白狼天狗へのパワハラ、それに関係性が…」

 

「然り、それ以外も含めれば、奴等は打ち首だっただろう。慈悲を与えてもなお止めないのだから、愚かな行為を行う、怒りを買う」

 

「なるほど……」

 

「それか、あの者に任せる。

 門番が逃した人間に……、そうだな、借を作るのも良いかもしれん。

 姫海堂よ」

 

「承知いたしました。アサシン、行くわよ」

 

「御意」

 

 これからこの山はどうなるのやら。

 久しくあの方に聞いてみるとするか。

 

 あ、立川のあの方々に手土産は何にするかの。新しく守矢が作った菓子があったか。ヒソウテンソクチョコ、だったか。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 私がアサシンを召喚したのは、ただの偶然だった。一つの念写した写真から、外の世界の魔方陣を知り、欲に負けてその魔方陣を書いてしまったのが始まりだった。

 

「我が名はハサン、ハサン・サッバーハ。アサシンとして現界しました。私は貴方の影となり、貴方に従いましょう」

 

「え、ええ?」

 

 召喚されたハサンさんに私は驚き、尻餅をついてしまう。体が後ろに動いてしまうその瞬間に、ハサンさんは私を支えていてくれた。

 

「驚くとは……聖杯戦争を知り得ていないのですか?」

 

「聖杯、戦争?」

 

「まずは座りましょう、解りやすくお話いたします。私も今になって気づきましたが、今回はイレギュラーです。先ずはどこから話せば良いのやら」

 

 ハサンさんがゆっくりと私をベッドの上に座らせてくれて、話始めた。

 

「聖杯戦争とは、願望機である聖杯を巡り、六人の魔術師達と、それぞれの魔術師に英霊を使い魔として呼びたされたサーヴァントで争う戦争。

 サーヴァントは種類がありまして、セイバー、アーチャー、ランサー、キャスター、ライダー、バーサーカー、アサシンの七つのクラスが御座います。

 私はアサシン。気配を消すことに長けており、暗殺を主としています」

 

 聖杯戦争、その事実に私は信じきれていなく、ただそんなものがあるのかと思うことしか出来なかった。

 殺し合い、否定を直ぐにしたい。私は戦いたくない、貴方をまぐれで呼び出してしまったんだと。

 

 言おう、言わなければ、戦争に巻き込まれてしまう。

 

「私は……、私は参加しないわよ。御免ね、そんな殺し合いなんてー」

 

「ふむ?となると、私を呼び出したのは偶然ですか。私はそうそうと縁で呼べないのですが。何か私に関係するものが置いてあったのですか?それか、武器などは」

 

「えー?うーん、繋がりとは言えないけど、暗殺といえば、元々私は暗部に属していたわ。あんな仕事は懲り懲りなのよ、それが殺し合いをしたくない理由に直結するしー……」

 

 私は元々は鴉天狗達のみで結成された諜報課、暗部とも呼ばれていた。

 諜報課は暗殺も行う特殊な課であるために、私達天狗は基本的に暗部と読んでいるのだ。

 

 私が扱う能力、『念写をする程度の能力』。それを大天狗の野郎に目をつけられ、そこに送られてしまった。

 以降、私は暗殺と情報収集を主とする生活を送る。光のない暗闇以外なにもない世界で生きて、何故生きているのかが解らなかった。

 

 その時、私は新聞と言うのを人間社会で知り、私自身で大天狗に申告し、願った。

 その願いは届いたのか、私は晴れて暗殺をせずに、死ぬことを見ないですむようになった。

 

 自分を元気付けるために、口調も変えて、表裏を無くすように努力をしたり、楽しい人生になった。

 

「暗部となると、本当に偶然のようですな。魔術師……いえ、天狗殿」

 

「はたて」

 

「?」

 

「はたてって呼びなさいよー。呼び捨て以外は許さないからねー」

 

「ええ、でははたて。食生活はちゃんとしていますか?今から何か食べましょう、顔が少し窶れていますよ」

 

「え、ほんと?」

 

「本当です」

 

 その日から私の専用執事のようにハサンは働いてくれた。曰く、「困っている人は見捨てられない、はたてなら尚更です」と優しく言ってくれた。

 私は救われたような気がした。

 

「ねえー、もし私が参戦したらどうなってたの?」

 

「恐らくですが、二人は確実でしょうね」

 

 参加しなくて良かったと、この日は安心した。

 それからハサンに介護されつつも新聞を作っていると、念写に妙なものが写り混んだ。

 

「何?これ。式神?しかも真正面で」

 

「どうかなされたので?」

 

「こんなのが写り混んでたのよー、これって一般的な紙で折られた式神の依り代なんだけど、何時もなら写りにくいのよねー。真正面から写るのも、同じように写りにくい代物。

 これも偶然ってやつかなー」

 

〈いえ、偶然ではない。必然と言われる人為的な物だ。今回はこの様な手を使い、貴女に知らせを届けさせてもらった。

 妖怪賢者の式神とでも伝えれば解るな?唯一戦うことを放棄したお前に告げる。聖杯は汚染されてる、鏡写しの汚物。

 他の知識はくれてやる、ここは分岐点だ。頼むぞ、姫海堂はたて〉

 

「えー……。いっつ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫。問題ないわ」

 

 それは、何回も繰り広げられた聖杯戦争の記憶。第一次、第二次、この世全ての悪がくべられた第三次、一市分規模の災害を起こした第四次、聖杯が破壊された第五次。

 ここで理解する。今、使われている聖杯はただ鏡に写っただけではなく、性質すらも同じなのだと。戦い、一戦でも勝利か敗北でもしたのならば、聖杯は力を増すのだと。

 

「ね、ハサン。敵対されないためにはどうすればいいのかな?私には解らないの」

 

「ふむ、ならば逆に気配を消さずに堂々と話し合いをすればよろしいのでは?長所をわざわざ潰す者に、私ならば口を利きますね」

 

「それー!決定!」

 

 聖杯に巻き込まれた私は、何れ戦うのだろう。戦うのは何時かは解らないが、その時まで、ハサンといっしょに平和な道を歩みたいと考えた。

──────

───

 時は戻り、私達は天魔様の命により騒ぎの目である守矢神社に向かっている。何時も何時も、山での騒ぎは大抵、守矢神社しかないのだ

 

「はあーあ、嫌になるわー」

 

「ですな、もし私以外のサーヴァントに出くわしたさいには、遮断せず姿を表したままでよろしいので?」

 

「そらそうよ。あと次いでで聖杯の件についても話さなきゃねー」

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■ー!!」

 

「ひっ?!ぁあが」

 

「ぐゃあ?!」

 

 私は怒りに任せ、首を胴体から外す作業を進める。

 鬱陶しく、弱々しい。

 

 何て脆いんだ、何て愚かなんだ。

 

「助けっ!?」

 

「ァッ?!」

 

 どす黒い感情が渦巻いて、全てを殺したいと思い至ってしまう。

 黒は鮮やかで、綺麗で、儚い。

 

 力に溺れていく、とても汚らわしい。

 一時の夢に感じる、とても美しい。

 

「かなり不味いことになっておりますな、金髪のサーヴァント殿」

 

「もしかして……あれが例の?」

 

「でしょうな、はたて」

 

「■■……何者だ、奴等の同胞か」

 

 一陣の風をまといながら、黒いローブに身を包む髑髏と、女の鴉天狗が空から降ってきた。

 ……この女、椛の……。

 

 椛の血の記憶、それに刻まれた名は幾らでもあったが、深く刻まれた名は限られていた。

 その中で最も深い名、それがこの女。

 

 深ければ深いほど姿ははっきりと浮かび、深くなければ姿形は浮かばない。

 止めに来てくれたのか、哀れだろう、この私は。

 

 最も哀れなのは転がる天狗達なのだが、弱者を踏み潰す強者はそれ以上に弱者。

 お陰で落ち着いた。

 そのお陰で力が抜けていき、体は元に戻った。

 

「来てくれたことに礼を言おう、お陰で冷静になれた。見たところアサシンのマスターか。私はアルバート・ウェスカー、そこに居る金髪のサーヴァントのマスターだ」

 

「だーかーら、私のことはファンタズムーンとーー」

 

「どうでもいい」

 

「はぁあ?!いい?この名前は偉大な偉大な魔法少女の名前なのよ!

 それをどうでもいいとか、あんたねぇ!」

 

「魔法少女?魔法熟女の間違いでは?」

 

「誰が年取ってるだ?!!」

 

「お前」

 

「があああ!!」

 

 私が煽った末に怒り狂うファンタズムーンからコートを引ったくるように掴み取り、上半裸のまま着る。

 裸コートは久し振りだ、前にしたときはレオンに八つ当たりぎみで体を粉々にされたときだったか。

 

 彼奴、酒を飲むとショットガン片手にタックルかましてくるからいい迷惑なんだよな。

 思い出してみたら、散々な日々だった。そう実感する。

 

「ところで、何でアサシンのサーヴァントが気配を遮断していないの?

 アサシンは暗殺専門でしょ?」

 

「ふむ、やはりそう思われますか。私は最初、マスターのために戦うことを思ったものですが、はたてからは戦わないと言われましてな。私としても、今回は願いを叶えるつもりはない。

 敵対意思を見せないよう、こうして表にしているのです」

 

「なら戦わない?バッカ言ってるんじゃないわよ、最後には戦うことになるのよ?

 戦うことからは逃げられないわよ」

 

「ううん、逃げることになるかもしれないよ、金髪のサーヴァントちゃん。新聞を作ってたんだけど、その情報収集していた過程で、面白いことがわかったの。この聖杯戦争の核を担う聖杯、手に入れられないのよー」

 

「何?どういう事だ?」

 

「聖杯はね、汚染されてるの。あの聖杯はある世界を鏡のように写し出した汚物。

 最初、この話をあの賢者の式神から聞かされたときは何の事かさっぱりだったけど、今なら解る。この聖杯戦争はただの余興よ、布石とも言うわね」

 

「布石か……。賢者の式神とは大層なビックネームだな、その式神が言ったことが本当ならば、我々はどうする?

 戦争を放棄するか、戦うか。私はどうせなら放棄しよう、聖杯に求めるものはない。まして汚染された物に願いなど、そこまでの願望は持ち合わせていない」

 

 聖杯の汚染、これで私が戦う必要はなく、逆に力を会わせる可能性が出てきた。

 もし力を会わせて汚染を何とかすれば、願いを叶えられるようになるだろう。しかし、鏡写しなのならばこちらの聖杯をどうにかしても、本体が変わるのではないので、結局は終戦。

 

 考え込んでいるその時、マスターである東風谷 早苗を抱えながらアーチャーが話に入り込む。

 

「少し、その話を詳しく聞かしてくれないだろうか、鴉天狗。何、アーチャーとして、サーヴァントとして聞かなければならないだろうからね。

 頼む」

 

「ほう、何処かでお会いしたかのような御仁ですな。詳しくは知りませぬ。知っているのは我がマスターであるはたて忠仁り。

 話す場を設けるのが得策なのですが、そちらとしてはどう致しますか?」

 

「少し待て、神社の主神に話してみよう」

 

 アーチャーは言い残し、マスターを抱えながら神社の方へと歩き出す。

 アサシンを従えるマスターが戦闘を好まないとは、面白いこともあるのだな。気になる、この女が。私が興味を持つのはこれで何度目か?まだ手で数えられる程でしかないだろう。

 

 アーチャーはどこか深刻そうにしていたが、私自身、聖杯の汚染、その事実には驚きはしない。聖杯にはサーヴァントがくべられるがために、リスクはあるのだから。生涯、聖を背負った人物なら何もなく。生涯、悪を背負う者ならばそれに染まる。

 聖杯とは白、紛う方なき白書。白は白に染まり、白は黒に浸される。この原理は人間でも言えること。

 

 ここまで考えれば、聖杯にも興味が湧くと言うもの。どういう仕組みか回答を得たいものだ。

 

「改めて、貴方の名前は?私は、姫海堂はたて。こっちはアサシン」

 

「私のことはハサン。そうお呼びください。戦争に参加しない身に、真名は有るようで無い物なのです」

 

「ではこちらも改めて、私の名はアルバート・ウェスカーだ」

 

「私のことはファンタズムーンと呼びなさい、姫海堂さん?」

 

 改める必要性は感じなかったが、やっておいた方が信用はされやすくなるのでその提案に乗った。

 姫海堂の目には私がどう見えているか、また問答無用で襲われるのは勘弁だ。警戒しなくてはならない。

 

 そして、聖杯の汚染されたことを言伝てした賢者の式神。賢者、特別な存在。姫海堂の言い方ではそのような感じであった。

 該当するものは記憶に残って…いや、候補は居たな。八雲 紫、特別と言えるのは奴しか居ない。

 あの胡散臭さに妙な空間に作用する能力、何かを隠しているような気はしていたが。これは全て奴の掌の上で動かされた盤上だった、なんて事だったら笑えない。

 

 他のまだ知らない存在が賢者の可能性はある。決め付けは基本するものではない、かもしれない程度にしておくとしよう。

 もし聞ける機会があるのならば、聞くのがいい。そうしよう。

 

 

 




今回ははたての事についてが多く、相変わらず主人公に見えないウェスカーさん。

お留守番の皆は玩具で遊んだりしています。

え?天魔が何故、立川に行くかって?あのお二方に助言を求めるためです。外の世界は結構なハチャメチャですので……、何時かは外の世界編をしたいものです。

次回も5000字程度になるので、サクサクと見れなくなっていくかもです。

家のウェスカーさんって死にそうになってるの一回位なんですよね、もっと苦しめなきゃ()
キャラも出さなきゃ()

特にペルソナ。練れば練るほど色が変わって、爆発寸前のようにしないと登場するのがムズィ。
見てくださっている方々のために頑張らねば。

10/13 クラスの人数を修正しました。入れられてなかったの凄くハズい。


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diary15 血底

今回も長め、でも大体は場面転換のせい。



蝶々さん お気に入り登録ありがとうございます。


 私が起こした屑共の殺戮の一件は一先ず終わり、死体は黒子の格好をした鴉天狗に回収され、私と姫海堂の二人と、アホと紳士的の二サーヴァントと一緒に神社へと案内された。

 

 今の時間は午後、お茶の時間。二人のサーヴァントとそのマスター、それに合わせ東風谷 早苗、二柱で卓袱台を囲いながら茶を飲んでいた。

 

 行われているのは、茶会と言う名目の情報交換である。私からは犬走 椛が行方不明になり、それには河童が関与している事、姫海堂からは今回の聖杯戦争に使われた聖杯は汚染されており、使い物にならない事。

 特に重要なのは聖杯の汚染だと捉えられている。私としてはさっさとあの糞河童を凝らしめたいところではあるが、行方が辿れていないのでその場所へと着けない。今は情報収集をしながら、平行に進めるしかない。

 

「ああ、それと私は他の用事がある」

 

「用事ねー……、何なのそれ」

 

「あ、そうだったわね。すっかり忘れてたわ」

 

「用事ですか。何か他に事件がおありで?」

 

「単刀直入に言わせてもらう、この山のトップに合わせろ。山のトップは二柱ではないのだろう?

 私は会談がしたいのだよ」

 

「おや、私達がこの山を仕切ってないと解ったねぇ。そのトップっての名前は明確に解るかい?

 まあ天魔と言うんだがな、初めて会ったとき、第一人称から、これが頭か…なんて感じだったさ。

 歳を重ねてシワが深い老人で、間近で見ないと理解しがたいだろうが、結構な威圧感を出せていたぞ」

 

「天魔に会いたいなら、そうね。何かの縁だし、私が案内しても構わないわ」

 

「本当か?」

 

「用事はそれだけでしょ?なら、さっさと行くわよ。天魔は気紛れって相場が決まってるから。

 早くいかないと、またふらふらとどっかに行っちゃうし」

 

「なら、その言葉に甘やかしてもらう」 

 

 予想とは外れたが、案内役が安全に決まったのは嬉しく思う。正直、ちゃんと案内する者が居ないと、半分心配していた。彼女が居なかったら私はどこに案内されていたのか。

 このような巡り合わせ、やはり神に頼むのは良くないらしい。私の知る神ってよくよく思い返してみれば、自由だったな。うん、神に案内させるのは廃止だ。

 

「さ、立ち上がって……。?」

 

「どうかした」

 

「あんた、顔色が悪くない?」

 

 

 

ーーねえ、死にましょう?

 

 

 

「っ?!」

 

 幻聴か、耳元から女性と男性の声が混ざった不気味な声が囁いてくる。体が冷たい、鷲掴みされたように心臓が止まった。何だ?何が起きている。

 まだ生きている脳で考えるが、思い付くのは1つの仮説。世間一般で言う、取り憑かれるといわれる物だ。

 

 

 

ーー眠りなさい、もう疲れたでしょう?

 

 

 

 打開策を取らねば、そろそろ危うい。私でもこの謎の力に耐えきれないらしく、目蓋が閉じそうになっている。体に憑いているのなら、体を破裂させれば良いのだが……。

 

 体ではなく、魂である。

 私があの館で仮死状態になったときに手にした能力、『血の記憶』のお陰で判別できた。

 

 取り憑かれているのだ、この私は。

 

 さあ怨霊よ。出ていけ、この魂は私の物だ。貴様のような怨霊にくれてやるほど、老いてはいない。立ち去れ。私は数々の魂の欠片を喰らった身、貴様は理解しているだろう。私は、貴様すらも喰えることを。

 

 

 

ーーそう、でも主に会いなさいな。貴方が愛した者に関係があるわよ?

 

 

 

 主。となると、この怨霊は使い魔に近しいものか。これを従わせている人物、邪魔した罪はあるが、貴方が愛した者だと言うのが気になる。

 

 私の体は意思に反するように動き出す。主導権は私ではなく怨霊にあるようだ。

 

「ちょっとー、どこ行くのよ?」

 

「すまないな……。説明は詳しそうな諏訪子に聞いてくれ」

 

 動かされ、着いたのは神社前。そこには深紅の髪を三つ編みにしていて、ゴスロリに似た物を着用した女が怨霊とみられる髑髏を一体だけ側に浮かせていた。

 その姿を視認し、確認した時、体から髑髏の怨霊が飛び出し、女の横に居座った。

 

 ふむ、体は戻ったか。

 

「怨霊を使い、無理矢理に連れてくるのは感心できんな。少しは話し合いをしたらどうだ。

 用件は?」

 

「いやー、あたいはお燐って言うんだけど、貴方に着いてきてほしいの。さとり様のために」

 

 さとり様、それがあの女の上司だろう。こうして連れてくるのだから、断ったらまた面倒なことをしてくるだろう。無理にでも連れていく者を無下にすれば、そうするのだ。大抵は。

 

 念話を使い、私がするはずだったことをファンタズムーンに一方的に言い告けておく。返ってきた言葉はOKの一言。言っておいてあれだが、大丈夫か心配だ。願うとしよう。

 

「さ、着いてきな」

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 

「来るわね……こいし、バーサーカーを館の門番として配置なさい。キャスターは待機」

 

「はーい♪」

 

 居るのか解らない妹に指示を出しておく。今、私は動けない。だから妹に託すしかない。

 忌々しくも河童のお陰で此方は繁盛して、その代わりに私は動かないことを強制されている。

 

 私達は表向き、侵入してきた者を対処する形として人員を割く。だが、本当は力量を試すためであり、新しく召喚されたバーサーカーを試すためである。

 その方がどちらの力量計れるし、フェイクニュースで河童に興味を持たせないで一石二鳥なのだ。

 もし、バーサーカーが引いて、ここに来れば、そこで本題をはなそう。負ければ、それまでの力しか持たない者だとし、諦める。

 

 力無くして、あの河童を懲らしめることはできない。だから、力を見極める必要性が出てくる。

 

「ねぇ、キャスター」

 

「何でしょうか?」

 

 隣に、霊体化を解いたキャスターが此方を伺う。

 

「あの装置を本格的に起動させる前に、先ずは試しましょう。英霊を呼びなさい、言うことを聞かなくても構わないわよ。

 でも、邪魔する奴にしなさい。出来るだけ場を乱すサーヴァントに」

 

「了解です。私とあの脳を使えば多少は言うことを聞来ますので、ご安心ください。

 簡略起動──古より紡ぐ統べて(オール・オールド・オーバー)

 

 言葉が言い終えられると、霧が部屋に充満し、それは人の形に整えられる。人数は二人。

 一人は桃色の髪に、白色のマントを羽織る女性のような男性。二人目は牛の鉄仮面を被る巨漢。

 

「頼みました」

 

「はーい♪」

 

「うう。わか、た」

 

 二人はこの部屋から出ていった。あの二人、気が合うとは思えないのですが……まあ引っ掻き回すのに関しては良い方でしょうね。

 鉄仮面の子を使えば、迷路は容易く出来上がる。難所として配置してみましょうか。

 

「キャスター、牛の子を入り口付近に配置し、宝具を使いなさい。そこで一度試すわ」

 

「解りました」

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 

 そこは巨大な穴がある土地だった。その穴の近くに建てられた看板には、落ちては危険!と大きく書かれている。

 

「ここから先はあんたから行くことね。あたいは後ろから着いていくから、どんどん進んで構わないよ」

 

「……、最後までは案内しないつもりか。何処まで進めば良いんだ?」

 

「それは人目みればわかるさ!」

 

 怪しい、が。ここに手がかりがある。

 

 今の最終目標が下に広がっているのならば、落ちることを躊躇わない。

 意を決し、私はその穴に足を踏み入れる。風が下から吹いているかのように荒れて、私を拒んでいるかのようだ。

 

 暗闇が広がり──何かに着地した。

 

「ここは……石造りの一本道か、人目見ても解らんように作られているぞ。む、着いては来ていないのか」

 

 罠に嵌めた?そうのなら、直ぐに殺しに来れば終わるだろう。これから始まる可能性があるため警戒するにこしたことはない。

 ここは先が暗く、一本道だ。進む以外に選択肢は存在していないらしい。

 上を見上げれば、固そうな天井が目に入った。空は無理か。

 

「進まず、迷い困り果てることになるよりかは、先に進むか」

 

 壁に手を起きながら一歩、また一歩とトラップを警戒しながら歩いていく。

 すると案の定、闇から飛び出してきた。トラップとは言いがたいが、飛び出してきたのは怪物。

 

「グルルラルゥ」

 

 獅子のような体を持ち、尻尾は蛇。キメラ、それに当てはまるのは正にそれだった。

 体からは紫の煙が溢れ出ており、目が赤く光輝く。どう見ても強そうだ。

 

「小手調べだ。こいっ!!」

 

「グルウウアアアァァアァァア!!」

 

 咆哮と同時に鋭い爪が振りかざされようとしていた。距離は僅か数センチ、普通の人間ならば死に至っていただろう。

 顔を傾けることでずらし、連続するように体を回転させるように浮かし上げ、頭が地面に向かいあった体制になったら右足でキメラの顔面を力強く蹴る。蹴った右足を引っ込め、左足で追い討ちをかける。

 それでキメラは回転し、尻尾が降られた。

 

 降られた蛇を掴み、綱引きのように引っ張り、壁にぶつける。

 

「ギャアァアンッ!!」

 

「静にしろっ!」

 

 止めに、心臓がある部部に触手を一時的に解放して突き刺し、キメラは絶命した。

 

「キャウウゥ……ゥ」

 

「こんな奴が束になって襲いかかってきたのならば、もっと手荒くしなくては」

 

 それにしても、このような怪物は居るのだが、肝心の案内役のような人物や、人影一つも見えない。

 灯りは点いているが、人は居ないということか。

 

「ふむ、灯りが灯っているのに先が予測できない。まさか、魔術等の類いなのだろうか」

 

 手を地面に触れさせ、感覚を鋭くさせ、探知する。私の体の一部でもある血も多少巡らせ、全体の構造をあらいざらい調べていく。

 巡り終えた血は私の下に戻り、経験した地形を書き記していく。

 

「これは、宝具っ?!」

 

 調べれば直ぐにわかることだった。この通路は宝具だった。道は魔力によって形成された擬似的な世界。

 塗り替えのように覆い被さった、私では再現が難題な物だ。

 こうしてはいられん。相手の訳のわからない宝具で足止めをくらっている場合ではないのだ。手荒な方法をとらせてもらう。サーヴァントならば、尚更だ。

 この宝具を私が模倣する。

 

 今まで喰らってきた魂の欠片、その一部を生け贄に、魔力を増幅。私一人分の魔力とツギハギの魔力で耐えれるか不明だが、早くに突破する方法はこれしかない。

 さらに令呪を五本の魔力に、これで行ける筈だ。

 

〈私を使え。〉

 

 お前は……誰だ?

 

〈覚えてろよ!!?私はミハイル・ロア・バルダムヨォンだ!私を食ったろうが!!〉

 

 ああ、また取り憑かれたのかと思った。で、お前の意志が残っているのは誤算だった。

 今から消すから待っていろ。

 

〈待て待て待て。私はお前に力を貸しに来たんだよ、お前が今から固有結界を使おうとしてるからな。

 固有結界は、言ってしまてば世界の浸食だ。この地で使ってもあまり抑止は反応しないようだが、お前の実力だと失敗する。だから、使え〉

 

 ふむ、具体的には?

 

〈詠唱だ、詠唱を行え。その間に私の固有結界をお前の体内に仕込んでやる。

 私はお前に喰われ、実質お前が私だからこれができ、体のスペックも良いからできる。呑み込むのならば、失敗はさせないぞ?〉

 

 一理ある。詠唱を使い集中する必要は大いにあり、バックアップはありがたい。その隙に攻撃されるだろうが、負けるよりかはマシだ。

 その策、乗らせてもらう。

 

「我が魔術、ここで見せよう!!名も顔も解らぬ敵よっ。見るがいい!!貴様のこの世界は隠蔽されるっ!!

 我が魂は数多の力に蝕まれる──」

 

 見えない先からぞろぞろと群れをなし、幾万の怪物が押し寄せる。

 

〈オーバーロード!!〉

 

 ミハイルの固有結界が発動され、体から過剰に魔力が供給されていく。

 体全体に、迸る。これなら、確実だ。

 

「花は枯れ、死が咲き誇り──

 

 死は育まれ、生は断たれる──

 

 世界隠蔽、展開

 

 

  『始まりの館(バイオ・クロニクル)』  」 

 

 襲い来る怪物達はぐにゃりと形が朧気になり、通路は泥のように垂れ落ち、私の心に上書きされた。まあ正しくは、私の世界に隠蔽された。

 心の心象風景、そこは私が始まった館。ラクーンシティで起こったバイオハザードの一端。

 

 心象風景の能力、それはバイオハザードを模した物である。展開すると理解したのだ、これは私その物の世界だと。

 私のウィルスの副産物や、研究により生まれたB.O.W.をこの場所ならば無尽蔵に呼び出し、糧とする。

 口がたくさんあり、それがそれぞれ襲いかかると思えば良い。

 

「やはりサーヴァントだったか……。風貌からはバーサーカーとお見受けするが?」

 

「ヴヴヴア」

 

 私の位置は玄関ホールの階段側、バーサーカーらしきサーヴァントは玄関側に居る。バーサーカーはこの景色に戸惑っているのか、辺りを首を振って見ている。

 確認し終える前に、仕込みはしておこう。ここは本来ならば私がボスとして配置され、招待された方は館を探索するようだが、今回は例外で、初っぱなから私対招待されたサーヴァント。直ぐに仕込まなければ、この世界の力は発揮されずに終わってしまうだろう。

 手始めに、鴉達を群れで襲わせる。

 

「う、?!と、り!?」

 

 次に足が早い犬で足を喰わせる。ここでは、全てが無力、喰われるしかないのだ。

 

「う、ヴアアア、アァァアア!」

 

 流石はサーヴァント、なかなか足の肉は千切れない。犬っころ達は歯応えのある玩具で遊ぶように噛むのをやめない。それにはサーヴァントと言えども激痛が走っているようで、振りほどこうと力任せに大きく体を震わせたり、足を動かそうとした。

 ほどけることはない、もうここに来た時点で、脱落するのだから。

 

「仕上げだ」

 

「あ"あ"、あ"あ"あ"!!!っ!」

 

「タイラント」

 

「ヴァアアアッ!」

 

 ホールの床が崩れ、そこからT-002が這い上がってきた。右手の巨大な爪がバーサーカーの腹を突く。血があらゆる方向に吹き出して、白い巨体にまだ暖かい血が赤く染める。

 手は引き抜かれ、更に血の勢いは増す。

 

「あ…………う」

 

 人間の心臓と同じように存在する霊核が貫かれたらしく、呟きながら煌めくように消え、霧となった。

 霧…。あの夜と同じ物か?

 

 何にせよ、敵を倒したので世界は元に戻した。先程の道ではない何処か、薄暗い場所になっている。

 力を貸してくれた彼奴は……、居るな。

 

〈少し疲れた。心象風景なら私も解除したぞ、あれは疲れるからなあ、例外中の例外だし。結構な負担が掛かった、余り力を出すなよ、その負担で倒れられたら私が困る〉

 

 そうか。お前がそこまで言うのならば、そうさせてもらう事にする。

 

 事が終わったので、ここが何処か把握するとしよう。どうやら、入り口のような所で、橋が掛けられている。彼処から入れば良いのだろう。

 

「貴方、何者?」

 

「私は案内されたのだが」

 

 橋を渡ろうとすると、金髪で緑色の眼をした女性が橋の脇で、手刷りに寄りかかりながら私に訪ね来た。

 今までのことを言うのではなく、ただ案内されたと伝えると、顎したに手を置いて、考える仕草をしてから口を開く。

 

「なら、貴方があの男ね。通りなさい、この先は貴方達が通るべきではない所。

 ようこそ、旧地獄へ」

 

 地獄か、私とは無縁だと思える場所に縁ができるとは。先に急ごうと、橋を渡った。

 先へ進むと、店が並び、光輝く古き良き町並みが広がっていた。

 通る者は鬼と呼称されていそうな者であり、本当に地獄なのだと感じ取れる。鬼達は私を珍しそうにちらりと見たり、じっと見つめてきたり。私はパンダか?

 奥に見えるのは大きな館、彼処がゴールだ。確かに、見つけやすい。

 

 始めにすることは情報からだ。

 

「あんさん、人間が……人間?ま、まあ、地底に何用だい?ここに居ると酒に呑まれて帰れなくなる。早めに帰ることをお勧めする」

 

 一回だけ酒屋に入り、情報を提供してもらうことにした。そこの店主は私が人間ではないことを見抜いたが、そこには触れずに忠告した。

 

 私は出された焼酎を一口飲む。この酒は度数が高い、だから呑まれるなか。人間だったら直ぐに、誰であろうと酔う位だ。

 

「悪いな、私はあの館に行かなくてはならない。だが忠告は素直に受け止めよう」

 

「待て、あの館に行くのか?」

 

「そうだが?」

 

「だったら帰った方が身のためさ。あ、帰るんならこの子を連れて帰ってくれねぇか?酒に呑まれてよ」

 

「こいつは……」

 

 気付かなかったが、横に酔い潰れたピンク髪のサーヴァントが居た。会いすぎだ、同盟でも結んでいるのか。

 武器を持たないので、どのサーヴァントかは判別ができない。

 

「んにゅー?あ、お兄さん鬼じゃないね~。もしかして地上からきたの~?だったらーこの僕、アストルフォが案内してあげるぅ~」

 

「そ、そうか」

 

 アストルフォと名乗り上げた。異様に酒臭く、鼻を摘ままなければならない。

 

「お腹へったーなんか食べた~い♪」

 

「なら、これを食べな」

 

「これは?」

 

 そう出されたのは二杯のラーメン。

 

「クラゲのラーメンさ。外の世界の深海から取れた一級品。食えばたちまち旨味が広まり、力が付く。

 金はいらねぇ、食ってきな。あそこに行くからには、食べとかないとな」

 

「すまない……では、いただきます」

 

「いっただきまーす♪」

 

「じゃあ私は後ろに行ってくるよ。客が来たら言っておいてくれ」

 

 そう言い残して、店主は奥へと消えていった。それにしても、このラーメンは上手いな。

 今までの食事が豚の餌に感じるぞ。

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

 

「おい、あれを食べさせてよかったのか?あれは我々の世界から持ってきた飯だ」

 

「いい。彼には力を付けてもらわねばならない。話しただろう、この世界の枠組みを守るために。いずれは、神をも喰らう存在にってもらわなければ、世界は終わると。

 なに、私はそのために来たも同然。あの食材をくれても、それは必然なのだ」

 

「世界が終わるって言うが、八王のことか?」

 

「違うな、あれはそれで収まらない。八王を越えて、神を越え、GODを超える。それは死の概念」

 

「………私が追い求めるものよりもか」

 

 男は店主としての顔を脱ぎ捨て、本来の性格に戻る。その姿にシェフはにやけた。

 

「死を喰えるようにしたいのだ。彼はそこまで行ける、そこを踏み潰す。彼は喰う事ができる。

 現に、彼は死徒を食べた。知っているだろうに。なあ、三虎」

 

「知っているさ。あの胡散臭い女から聞いている。ならば、私も手出しせざるを得ない。先を見ればわかることだ………アカシア」

 

 二人の男は、この世界にやって来ていた。 

 

 ある男を、利用するために。

 

「所で、トリコ達はどこに行った?」

 

「覚妖怪に頼み込みに行ったさ、GODを食べるためにな。まあ無理だろうが。あれをここで出せば、ここをたいらげる」

 

「食われるのはごめんだ、仕事が残っているしな。GODは呼び出すのではなく、探すのが一番だと言うのに」

 

「そこは譲らないか」

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

「誰……?」

 

「俺は……、太陽の子!!仮面ライダー!!ブラッ!アーッエーックス!!」

 

「太陽……!私と、同じ!!」

 

 一方その頃、地底の最奥にて、最強のライダーが召喚された。そして連鎖するように、別の場所でセイバーが召喚される。

 

「我が名はシャドームーン。貴様がマスターか」

 

「ええ。私はヤマメ、話してる暇は無いわよ?だって、直ぐに戦うんですもの。クスッ」

 

「そうか」

 

 本来の、全てのサーヴァントは召喚された。

 

「ここが、幻想郷……」

 

 そして、裁定者も幻想郷に誘われた。聖杯戦争は、これから始まるのだ。バーサーカーと言うイレギュラーを抱えながら。

 

「来いっ来いっ来い、強き者よ!!エフッエフッエフッエフッ!!」

 

「バーサーカー、黙ってて」

 

「ぐ……」

 

 

 




好きだよ?嫌いではないよ?(呼び出された方のバーサーカー)

無理ある回なのかもしれませんが、私的にこれが精一杯…。早くそれぞれの要素を強めてかないと()

次回はバトル尽くしの予定!


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diary16 肉と肉

やっと終わりましたよ!ギリギリだよね、うん。多分、そうきっと。
今回はバトル多めにしようかと思ったら多めじゃなくなってました。原因はネタに走ったことかな……




 ラーメンを間食し、アストルフォに連れられて先に見える館に向かっていた。因みに、アストルフォ曰く、あの館は池霊殿と名がついているらしい。

 案内役をかって出たアストルフォは、私が館に向かうことを伝えると、館の名前を言って先頭に立ち、進むことになった。と言うのがアストルフォから聞いた経歴だ。

 

「やいやいやい!!何だあんたらわぁよ!!俺達ゃ赤鬼のゴンザレスで名が通ってんだい!肩にぶつかってただですむと思うなよ!!」

 

「わ、わりぃわりぃ。すまねぇって…、なんか奢るからさ。金は勿論こっち持ちだ」

 

「そんなんで静まると思っとんのかワレェ!!今からてめえの頭を砕く!そんでもって、ジワジワと殴り殺してくれるわ!!」

 

 半分まで歩いたか、そのような位で道の真ん中で争う二人が、道を塞ぐまでに騒ぎ立てているのが見えてきた。このままでは進めず、これを解決せねば目的地に着くことはない。喧嘩とは時間が経てば解決はするが、私は急いでいるので、屋根からいこうとする。

 

「屋根から行くぞ、…っ!。何処に……」

 

 建物の屋根に飛び乗ろうとアストルフォを掴もうとしのに、そこにアストルフォは居なかった。すると喧嘩していた鬼の方でアストルフォが割り込む声がした。

 

「ねー!ねー!鬼のおにーさん達!」

 

「あん?」

 

「なっ」

 

 何て事を。彼奴が居なくては池霊殿の主に直接聞くことが難しくなる。ああいう所は「アポイントはお持ちですか?」とか聞いてくるんだ。今すぐにアストルフォを無理矢理にでも連れていくために私は近づいた。

 

「おいアストル──」

 

「こういうのはストリートファイトとかいいんじゃない?そうすれば気は晴れるさ!僕が言うんだから間違いない!」

 

「──遅かったか。おい、そんなことをされては困る。私を案内してくれるのではないのか?」

 

「ストリートファイト……、そ れ だ !!」

 

「はぁ?」

 

「やるか!」

 

「ふっ」

 

「えぇ……」

 

 何故か決まってしまったストリートファイト形式で行われる喧嘩の鎮火。それは鎮火ではなく発火だ。炎に大量の水、でもその水はオイルだ。その表現のように発展しすぎているので私ではどうしようもない。

 盛り上がり、回りにはギャラリーが集まり出す。私がとっさに下がったのにも関わらず、特等席かのような位置にしか行けなかった。どこまで来るのが早いのだ、そんなに見世物に興味があるのか。

 

「ショウリュウケ!」

 

「残念だったな。私は北斗神拳伝承者だ。その連続ショウリュウは予測済みだ」

 

 

 

 

「らんうどわん!ファイト!」

 

──ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ ゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケン!

                 

 

 

 

「ぐああ?!ぐああ?!ぐああ?!」

 

「K.O.!!ウィーントキィ」

 

「くっ、貴様鬼ではないな?!」

 

「今更か、肩に当たったときに気付くべきだったな。そうだ、私は鬼ではない。ただの変装していた。そして私は病人だ。だから直せるだろう人を探しにこの池に足を踏み入れた」

 

「お前のような病人が居るか!!」

 

 なんだ、何だこれは?

 

 あの鬼、変装だったのか?気が付けなかった。あと、あの動きはいったい……?何だ?何なのだ?

 この一戦、どう見てもマトモではないのに誰もが、それを当たり前かのようにツッコまない。私が可笑しいのか?まともなのは私だけか?

 だが、これで一騒動終わった。これで何もなく案内してくれることだろう。

 

「なあ!そこの刺青の男!」

 

 刺青?私か。ふむ、他人から見ればこの令呪は刺青に見えてしまう。呼ばれた方向を見ると、一本の長い角を持った女性が、酒で満たされた大きい盃を持って獲物を見つけたかのような顔をしていた。

 あ、これ逃げられないわ。

 

「強そうだな、殺ってくかい?」

 

「断る。これから用事があってな」

 

「へぇー、ふんっっ」

 

「!?」

 

 女は私が断ると、足を踏み込む。踏み込むことで押し上げられた地面の弾丸が放たれた。野蛮、その一言に限る。

 

〈今回は固有結界を使えない、短期決戦で仕留めた方がいい。それと、以前のように隠蔽は使うな。

 自分が持つ属性を使え。お前なら色々と使える。お前は規格外だよ、アベレージ・ワン。起源が知りたくなってくる〉

 

 アベレージ・ワン、たしかにそうだが……使い勝手が悪くなるが背に腹は代えられん。

 私はその弾を魔術を使い、空気で殴り付けて粉砕する。

 

「今のは見たことないね」

 

「だろうな、これは私のオリジナルだ。威力は申し分ないぞ」

 

「いいねぇ!!これならどうだい!」

 

 こんどは大きい虹色の弾が三発。見たこともない攻撃だ。中心には隙間が空いていて、わざとらしい。何が来てもおかしくはない、油断だけはしてはならん。

 わざと開けているのなら、それに乗ってやる。後悔しろよ、それが油断だ。

 

「はあっ!!」

 

 弾丸を避けるのと同じ動作で真ん中を潜り抜け、心臓に向けて手を開いた状態で突き出す。当たった場所は心臓の位置ではなく、一つの拳。

 次に繰り出されるのは片足、頭を狙ってるからか、大降り。大降りではある、その速さは大降りではない。これが鬼…。人間との骨格は変わらないようだから間接を外すか。同じではなかったら、新しく技をやるだけだ。

 

「しぇあ!!」

 

「つうっ!」

 

 手を肘を軸として半時計回りに回し、間接部分に手刀を当てる。どうやら上手く外れてくれたようで、鬼の女は直ぐに足を引かせた。

 引かせたら直ぐに足に手を置いて、間接を直す。その隙は逃すわけにはいかない。

 回し蹴りを仕掛けた。吸い込まれるように足は当たりそうになる瞬間、私に向かって何者かが槍を持ちながら走りこんできた。

 

「はいそこまで!『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』」

 

「ぬお?!」

 

「チッ……アストルフォ、邪魔しないでくれ。楽しかったのによお。あー、やめだやめ」

 

 アストルフォの握る槍は私の足を掠め、触れた私は転倒した。これがアストルフォの宝具、足止め系統の物のようだ。体は痺れたように動けず、一、二分は動けるまでに時間を要する。触れてから体が傾いていた、となると触れると転倒させるのが能力か。

 止めたのは、その結果までは良しとしよう。何故止めたのかが理解できない。理由はあるのかと思ってしまうが、理由は流石にあるよな?

 

「止めたのは何故だ?」

 

「気まぐれに近いかな。うーんでも、早くいかないと痺れを切らす人がいるからねー。うん、理由はそれにしよう。

 それと、勇儀が能力でやりあおうとしてたから」

 

「ありゃりゃ、気付いてないと予想してたけど外れたか。使おうとはしたさ、壊すことはしない。生きてもらわないと、楽しみが減るからな。

 いきなりふっかけて悪かった、私は星熊勇儀。あんたは?」

 

「私はアルバート・ウェスカー。悪いのは貴女だが、私は間接を一度外した。一応、話し掛けなかった私に非はあると感じている。お互い様、それで水に長そうではないか?」

 

「ほー、そう言われんのは始めてだ。嘘も虚言もついてないから、素で思ってるんだな。

 んじゃあまた会ったら死合をしよう、それで決着を……な」

 

「いいだろう、約束だ。さあアストルフォ、先を急ごう。また絡まれるのは御免被りたい」

 

 約束を交わし、アストルフォを先頭として先を急ぐ。町は活気に溢れるばかりで変わることはない。進めば進むほど活気は膨れている。

 溢れに溢れた町、そこを抜けると、先程の光景が嘘だったかのように静まり返っていた。

 酒の臭いと、話し声は聞こえる。もしや、池霊殿に近づくほど人が少ないのか。

 

〈ジゴクノダントウダイ!!

 

「今のは……、うっ!?」

 

「お、桶!?てことは……」

 

 今度は頭上から桶がダイレクトに投下される掛け声、落とされたそれがクリティカルにヒットした。難聴ではないのだから聞き間違いではない。上に居るのか?

 頭を摩りながら除きこむと、上には天然の広がる天井だけが見えるばかりで、見当たらない。

 

「ウェスカー、そこの桶」

 

「ん?この桶がどうした?」

 

 言われて、アストルフォが指を指した先にあったのは引っくり返った桶。これが落ちてきたのか、とその桶を持ち上げようとする。 

 

「ほう、今ので生きていたか」

 

「は」

 

「また会ったねー、キスメ!今は悪魔超人 桶鬼火として挨拶したほうがいい?」

 

「いや。構わん」

 

 桶を取ろうとしたら筋肉質の身体が生えた。な、何をいってるのか解らないと思うが、私も何を見せられているのかさっぱりだ。また変なのが来た、そうとしか考えられん。

 

「キスメとは仮の姿、我が名は悪魔超人 桶鬼火!!見知らぬものが通れば落ちろと命令されていてな、いやーすまないすまない」

 

「お、おう」

 

 悪魔超人とか聞いたことない。

 するとそこで。

 

「何をしている」

 

 不意に、声がした。そこには角がついた覆面の鉄仮面を被った銀色の男が佇んでいた。

 ああ、考えるのめんどくさくなってきたぞ。

 

「し、師匠!」

 

「お。ショーグン!」

 

「そろそろ時間だ。キン肉マン達を待たせている、早くしろ」

 

「では!」

 

 筋肉質の二人は空へと残像を出しながら飛び出していった。地底は人外魔境のようだ。いちいち考えてる暇が無いほどの、常識を打ち壊すぐらいの。

 深く考えたら敗けなのかと……、心が俺かける。いや、私は常識を持っている。持っているのだ。けしてあのような常識外れの人外とは違う。

 

「今度こそ、何もなく行くぞ」

 

「無理だと思うよ?」

 

「?」

 

「この先は色々と頭が可笑しい人が居るからね。何事もなく行くとかムリムリ。

 僕でもムリだったし、あれは台風。でも台風とは言えず、目である。ぶっちゃけるとただの厄災の台風。歩いてたら宝具が飛んでくる」

 

「宝具が飛んでくる?バカな、サーヴァントが多数居るような言いぐさではないか。ありえるか」

 

「そのまさか、だね。幻想種は普通にいるし、何でもあり。悪魔とか天使とか堕天使とか居るよ。神様も歩いてたりする。

 色んな物が集まったような場所だ。旧地獄の人達は普通に通るけど、それは力を持った人だけらしいけど、そもそも寄り付かないって聞いた」

 

 そんなところ通るしかない状況なんだが?私は手懸かりを逃す気はない。以前変わりなく。

 

「皆が皆、いかない方がいいと言っていたのはこのためか。行くしかないだろう?用事はその先にある。ならば、行かねばならない」

 

「知らないよ?僕ができるのは相手を転ばせたりとか、そんなところだし……あ!!」

 

 アストルフォは思い出したように顔をあげた。こちらを見て、いいよね?みたいな顔をしてきた。

 策が浮かんだのか、そう思いたい。

 

「どうした、その顔からして策があるようだが?」

 

「飛んでっちゃえばいいんだ!来て、『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』!」

 

 宝具の発動。その名から察する通りの存在に、アストルフォは股がっている。上半身が鷲で、下半身が馬の生物。なんだか、こんなことに使うの?と抗議したそうな顔をして居らっしゃる。

 

「行くよぉ!!」

 

「ちよちょちょっ!?」

 

 手を引かれ、私は空に浮かんでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

▷ ◁

 ▲

 

 

 

 

 

 

「Dr.ロマニ!一瞬ですが反応がありました!新たな聖杯です!……観測されました!」

 

「ぶっ!ま、またかい!?

 何回目だろ?まあいいさ、彼女に伝えてる前に、やることを済ませよう。各員、何時も通りに!」

 

 別の世界、人理が滅却され残された者達、彼等は聖杯探索を行っていた最中、毎月恒例と言える亜種の特異点を発見した。

 その特異点は点滅するように現れたり、消えたり。繰り返す度に不安感を煽らせる物であった。

 

 そして今回、その特異点は明るみとなる。

 

「……これ、もしかして。魔法の領域になるかもしれないな、行けるか怪しいぞ。

 何とかして行けるよう此方で出来る範囲で調整しとかないと。あ、君!その書類は後にしておいて!やっとくから!」

 

「はい!」

 

 カルデアは、また大忙しのようだ。そのDr.ロマニと呼ばれた者の横でコーヒーを片手にそれを眺める人物が、飲むのをやめ、切羽詰まった表情でその解析されていく特異点の性質を確認した。

 

「こんなの、本当にあるのかい?幻想その物だなんて、そんなのは……そんなことは。幻想その物が一つの世界として成立している?一つの世界の中にある別の隔離された世界?

 日本に、何があったんだい……。歴史に、何が……これも人理が滅却されたから起きた現象?」

 

「今はそれどころじゃないよ、ダ・ヴィンチちゃん。この特異点、聖杯が───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──七つある」

 

 

 

  

 

 




やっとカルデアが来るよ!
そして、キスメさんは悪魔超人へと進化していました。姿はちゃんと切り替えられる設定なのでご安心を。可愛い姿は残っております。
また作品が増えた……、そろそろ止めとかないと畳めなくなるわ。
途中にて、北斗の拳からトキが登場、でもac性能。どうあがいても今日キャラ。
最後に、カルデアのマスターは女の子。サーヴァントはマシュ以外は未定。


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