ACの愉快な仲間たち(一部)と一緒に艦これの世界に来てしまった… (とある組織の生体兵器)
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予告編 レイテ沖海戦

生存報告も兼ねて〜。1話の前にやっときます〜。


 

 

レイテ沖海戦

 

 

 

これを聞いて、心を揺れ動かされる艦娘は何人いるだろうか?

ある者は昂り、ある者は不安を覚える。そして、何よりも共通するものは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐怖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、彼女たちは…ここまで苦戦を強いるとは思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

絶望(スリガオ海峡)

 

 

 

「今度は…私たち第3佐世保が…。第4佐世保を助ける時…これよりレイテ湾に突入する…!第4佐世保の援護をするわ…!ここが…この戦場が…!私たちの魂の場所よ…!」

 

「ココハ…地獄…ナンダヨォォ!!コノ先ハ…行キ止マリナノヨォォ!」

 

「雨…降ッテキタワネ…フフフ…。」

 

「ココハ…通サナイッテ…言ッテルノニ…!死ニタイノォォォ!!??」

 

「あんなの、もうすでに艦じゃないよね!?僕たちは何と戦ってるのかなぁ!」

 

 

 

敗北(シブヤン海)

 

 

 

「マッ!今日死んじゃうかもしれないけどさぁ。ギャハハハハ!」

 

「こんなの…勝てるわけがない…。」

 

「な、なんという大きさだ…。」

 

「武蔵!私が囮になるわ!武蔵は敵空母を狙って!」

 

「大和!何を言っている!お前一人で行かせるわけないだろう!」

 

「でも…!」

 

「頼めるか…?この武蔵の頼みだぞ…。絶対に…大和を…姉貴を大本営まで、寄り道せず、早く、戻らずに送り届けるんだ。清霜よ…どうした…?…そういえば、グローブを欲しがっていたな…。やろう。……。…じゃあな…姉貴…。」

 

「…不沈戦艦など…いないということだ…。」

 

 

 

死別(パラワン水道)

 

 

 

「潜水艦…多数!気をつけてください!」

 

「嫌な予感が…。」

 

ドガァァァン!!

 

「あああああああ!!!!」

 

「嘘だろ!?」

 

「朝ちゃん来てるっっ!!!」

 

「くそったれぇええええええ!!」

 

 

 

無念(サマール沖)

 

 

 

「第二来ます!!取り舵!!!」

 

「こんな状況で…こんなのって…。」

 

「私が囮になります!皆さんは深海棲艦を狙ってください!」

 

「衝撃だけでダメージ喰らってんじゃん!ほんと、なんで提督たちが参戦する戦いはいつも普通じゃないの!?」

 

「来ましてよ!とおおぉぉぉおおりかああぁぁぁああじ!」

 

「もう、いやだ…!」

 

「泣き言言わないでください!泣きを入れたらもう1発です!!」

 

「なにあれ!?」

 

「あれは…。コジマ兵装!?」

 

「なにあのバリア!?無敵じゃん!」

 

「吹雪さ…」

 

ドオオオン!

 

「コジマ粒子が身体の30%を侵食…!?」

 

 

 

そして轟沈(エンガノ岬)

 

 

 

「瑞鶴…?」

 

「幸運ノ女神ハ記憶ノ果テ…。」

 

「…私ハ…コンナ不条理ナンテ…理不尽ナンテ認メナイ…。怨嗟ハ決シテ消エナイ。オ前達ガ何モ考エズ惨殺シタ、深海棲艦ノ声ナキ声ヲ…憎シミノ声ヲ私ガ代弁スル。私ガ憎悪ヲ晴ラス…。コノ恨ミ…辛ミヲ晴ラス…!コノ世ノ泥梨…ソノ一片ヲ見セテヤル…!数多ノ…幾度ナク散ッタ無数ノ怨念ト怨嗟ノ声ヲ聞クガイイ…!」

 

「何よこれ…。」

 

(これが…この深海棲艦が抱え込んできた闇…!)

 

(今まで…向き合ってこなかった面が大きく…。そして、真正面から向き合ってくる。)

 

「違…。私は…。貴方達を…。やめて…!お願い…。違う…私は悪くない…。」

 

「しっかりしなさい!瑞鶴!」

 

「違う…!私は…助けたかった…!やめて…来なイデ…!」

 

「…怨念ハ決シテ消エナイ…。怨嗟ハ未来永劫残ル…。私タチハ形ニスル代行者…。」

 

「…っ!?…これが…怨念ね…。…これが怨念の元凶…。」

 

「私も…!あの人と同じ場所へ…!!隣に立てるように…!!行かなくてはならないのよ…!!!」

 

「怨念ト怨嗟…恐レル貴女ハ勝テナイ。」

 

「あなたの望みはなんなの…!?」

 

「…全テヲ破滅サセルコト…。」

 

ここはレイテ沖海戦。いかに第4佐世保と言えど、通常で勝てるわけもない戦。そして、久しく忘れていたものが…深海棲艦に対する恐怖が…この戦いで再び、その身を持って思い出すことになる。

 

 

 

そして、恐怖することは艦娘だけには限らなかった。

 

 

 

 

「畜生め…!こんなイレギュラーな事態が発生するとはな…!」

 

「司令官!なんですか!?あれ!」

 

「あれはアームズフォート、『イクリプス』だ!」

 

 

 

こんなもの

 

 

 

「…大仏…?」

 

「敵巨大兵器を各個撃破せよ!!」

 

「敵の反応が増えています!?目標!分離します!!」

 

「「「!?」」」

 

「そんなの…あり!?」

 

 

 

巨大兵器

 

 

 

「虫…?」

 

「ジャック!まだ先なのか!?」

 

「あれが目標だ。深海棲艦など放っておけ。どうせ、レーザーブレードの餌食だ。」

 

「そんな…無傷だと…?」

 

 

 

特殊兵器

 

 

 

「巨大衛星砲…!?」

 

『エネルギー最大出力まで残り5分。』

 

 

 

旧世代の遺物

 

 

 

「ドーナツ…?」

 

「ボケッとするな!」

 

「…いつになったら終わる?アレのAPは?」

 

「…およそ120000…。」

 

「ふざけるな…!」

 

 

 

アームズフォート

 

 

 

「突如レイテ湾にて謎の巨大建造物が出現!その謎の建造物から超莫大なエネルギー反応!調査されたし!」

 

「…おそらく、一世一代の大勝負だ。」

 

「なんだこりゃ!?」

 

「嘘っ!?」

 

 

 

へんなの

 

 

 

「こんな…ラスボスみてーな奴が…ありかよ!?」

 

「回転する体当たりは予備動作がない。本来ならば四肢が弾け飛んでもおかしくはない威力だ。」

 

 

この海戦は史上最大の海戦であることを忘れてはいけない。AC勢にも平等に恐怖を与え、絶望へと導く。久しく忘れていた死と隣り合わせの戦闘、緊張、簡単に死ぬことを思い出し、昂り、戦慄する。

そしてこの時…そのAC勢の仲でも最も戦慄していた者…それは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。ナインボール・セラフ。」

 

「ハスラーワン…!」

 

レイヴンズ・ネストからの刺客…

 

「ナインボール・セラフだな。やはり、お前が来たか。ここで、貴様を消す。ネストを裏切った抹殺対象だ。ここで破壊させてもらう。イレギュラーなんだ。お前は。」

 

(強い…!完全に私の性能が上位互換のはず…。なのに…!)

 

例外を排除するため、幾度となく立ち塞がり…

 

『ザザザー…ナインボール・セラフ…ザザッ…』

 

『ナインボール・セラフ…ザザッ…諦めろ…。ザー…貴様に…それは…破壊させない…。」

 

「ナインボール…!生きて…!?」

 

地の果てまでも追う殺戮者…

 

「ナインボール・セラフ…。貴様は通さんぞ…。ここで死ね…。」

 

「ならば、つけましょう。最後の決着を…!」

 

「貴様はここで死ぬ運命だ…。レイヴンズ・ネストの裏切り者…。くだらん夢想もここまでだ…。後ろにいた艦娘と呼ばれる者たちは…排除した。」

 

「…!?…絶対に…殺す…!」

 

ナインボール…レイテ沖海戦において、最大の壁である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

『そういえば、こういう場所(イベント海域)は、どうして赤い海になるんだ?』

 

『一説では意思を持たない生体物質らしいわ。さらには、その生体物質は相変異をもたらして、深海棲艦に影響して特殊な姫級が生み出されるって話よ。』

 

『はは。そんなバカな…』

 


 

「…そういうことかよ…!」

 

「なんだ!?その機体は…!?」

 

「共に…壁越えと行こうじゃないか…!」

 

「大型の肩部…!コジマ粒子に見えるけど、なぜだか赤くて汚染がない…!いくつもの自立型の小型機を操っているように見える…!…少なくとも、俺の知っている機体ではない…!」

 

「覚えておきな…!こういう時こそ…それでも笑うのさ…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは…改二…!?」




祝レイテ沖海戦編完結!
結構無茶苦茶で無理難題な海戦を作りましたー。AC6要素も取り入れ、結構キツくシリアス満載でゴリゴリのガチバトにしてみました。予告編を見てもわかるように、かなり手掛けました!ドミナントらは本当の壁越えを実感するはず…。
PS.初めて、小説本文の上限文字量を越えて焦りました。


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第一章
1話 始まり


こんにちは。新入りの処女作です!文章がおかしかったり、内容がわからなかったりすると思います…。そういうのを指摘してくださると大変助かります。コメントもドシドシ送ってください(^^)。あっ!書き忘れていましたが、のんびり投稿です!


天気の良く、気持ちの良い朝。小鳥のさえずりによって男?は目を覚ました。

 

「ふぁぁ…、今日はいい天…。ここはどこだ?」

 

“彼”(男)が困惑するのも無理はない。なぜなら、昨日ベッドで寝たはずの自分がどこかの島の浜辺に打ち上げられているのだから…。

 

「……。どうしてこうなった…。しかも小鳥のさえずりじゃないし…。」

 

そうなのだ。言葉を綺麗にしたが、実はよくわからない鳥が「グワー!グワー!」と鳴いていたのだ。

 

「…。まぁ、いいや。さて、記憶の整理をしよう。そのためにまず状況確認だ。周りを…!」

 

そう言って手を使い、起き上がろうとした。そして“彼”は驚き、固まってしまった。そう、なぜなら

 

「何故…俺はロボットなんだ……?」

 

そう…何故かロボットになっていたのだ。自身の周りを見る。手、足、胴…。見れるところは全部…。

 

「ナニカ、サレタ…って、そんなわけないし…。そうか、思い出したぞ…。俺は昨日ものすごく疲れて寝てしまったんだ…。そして、これは夢だ。夢遊病でロボットにはならないし、寝ている間に島流しに会うなんてこともまずない。と、なればあとは簡単。これは夢だ。」

 

そして“彼”は手をポンと叩き、そう結論づけた。いや、そうであってほしいと考えたのだろう。

 

「これが夢でよかった。さて、今気づいたんだが、俺の姿…どこかで……。」

 

そして思い出すまで1時間くらいかかった。時間の無駄である。

 

…………

一方、その頃元の世界では……

 

「よし、ここまでは楽勝だ…。フッフッフッ……さて、あとは最後の難関だ!」

 

そう言って、ゲーム画面をじっと見つめる男がいる。この男はこのゲームをクリアするのに約2カ月かかった。ずいぶんやりこみ、苦労していた。そしてまだこのゲームを全クリしてないこの男はこのミッションを最後に残していた。

 

『お疲れ様。これでやっと…』

 

「来たぞ…本気で行こう…!!」

 

男が慎重にそう言って手汗を拭く。緊張して手汗で滑り、ボタンを押し間違えることを防ぐためだ。

 

ブッ…

 

…ところが、画面が突然バグり始め、真っ黒になってしまった。

 

「あれ?……はぁ、もう一回起動するか。セーブしているから何度もできるけど…面倒くさいなぁ……」

 

そして、男はさも面倒くさそうに消して、またつける。だが、もう一度同じところまで来たが…また画面がバグって真っ黒になってしまった。そして、それを5回くらい繰り返したあと、ようやく言葉を発した。

 

「……これは…不良品みたいだな……せっかくここまでやってきたのに……俺の2ヶ月…」

 

残念そうに、ゲーム機本体からソフトを取り出し、眺めたあと、修理に出した。そして、それが原因不明の現象なのは言うまでもない…。

 

…………

元の世界での昨日(つまり“彼”がベッドで寝ていた頃)

 

 

深夜、暗い部屋の中、テレビの光だけをつけて、とあるレトロゲームをしてる女性がいる。

 

「ウフフ…歴代の中でも最強と言われている“赤い機体”を狩ってやるわ。ウフフフ…。」

 

ニタニタと笑うその姿はいささか不気味である。

 

『修正プログラム 最終レベル』

 

すると、テレビから不気味な…、機械の声の様な音がする。

 

「来たわね…」

 

女性はさっきより一層ニヤニヤしながら見ている。

 

『全システム チェック終了』

 

そんな中でも、丁寧にゲームは進んでいる。

 

「ウフフ…」

 

『戦闘モード 起動』

 

「ハァ……ハァ……」

 

興奮しすぎて、思わず息が漏れてしまっている。

 

『ターゲット確認 排除開始』

 

「アハハハ!キタキタァ!!」

 

プッ

 

「あれ?」

 

気味が悪すぎて切れてしまったのではないか?いや、それは言い過ぎだな…スミマセン。さて、冗談はさておき、その女性は口を開けたまま固まっている。また、原因不明のバグである。その女性は壊れたと思って、そのソフトを捨て、新しいソフトにした。余談だが、新しいソフトで“赤い機体”を倒そうとしたが、惨敗。途中で投げ出してしまった。

 

…………

翌日の早朝(“彼”に何かあった時)

 

ガサガサ…

 

少年は、親の目を盗んでこっそりとゲームしていた。

 

「よ〜し、今はまだ寝ているし、進めちゃうか…。」

 

少年は悪巧みした顔でゲームをしながらシシシと笑う。アメンドーズに潰されちまえ。

 

「なんか悪態付かれた気がするが…まぁ、いいや」

 

何故こっちの言っていることがわかるのだろうか…。

それはともかく、少年は次々とゲームのミッションをこなしていく。くそっ、俺より上手いじゃねぇか……。

 

「さてと、じゃぁ、このミッションもクリアしますか。」

 

省略

 

『安っぽい言い方だけど…そのACには消えてもらわなきゃいけない』

 

「あ"ぁ"!?やってみろよ!!」

 

そう声を小さく言う。親に見つからない様にするためだ。そして…以下略(突然画面が消え、原因不明の現象)そして、少年はいいところでバグった怒りで叫んでしまい、親にこっ酷く怒られたのは言うまでもない。

 

と、まぁ、不明な現象が起こった。

 

…………

そして、“彼”の世界

 

「これは…昔俺がアセンした機体だ…!」

 

アセン…それは、アーマードコアをやっている者には欠かせない、機体のカスタマイズのようなものだ。そう言って、嬉しそうにする“彼”は、もう一度言うが1時間悩んでいた。

 

「ふぅ、なんか疲れたな…夢の中でも疲れるもんなんだな…。」

 

そう“彼”はしみじみ思う。だが、ここで終わる“彼”ではない。

 

「さてと、それじゃ、探検しに行きますか。」




次回、“彼”が探検しに行きますね〜。さぁて、何が起こるのでしょう。(おそらく全員わかっている)ワクワクしますよね?そう思うだろ?あんたも?…思わないのか?…思っているんだろう?


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愉快な仲間達との出会い
2話 探検


前回

“彼”が何故か異世界転生をしてしまい、困惑している中、夢だと決めつけた“彼”、その頃元の世界では謎の現象が一部だけ起きていた…。
注) ナレーションの方は口が悪かったり、勝手なことをしたため解雇しました。


さて、前回のあらすじは上に記入してあるので、続きから始めよう

 

「探検って面白いな〜……いろんな動物?もいるし…。」

 

そう歩きながら言いう“彼”は森の中を探索する。

 

「ここらで休憩でもするか。」

 

10分くらい経った後、木ばかりで見飽きたのか、“彼”は休憩場所を探す。

 

「どこかないかな……。んっ?あれは…トト○で出てきそうな大きな木だ。」

 

探していると、大きな木に目がつく。危ない発言をしながら、巨大な木に走って近づいていく。

 

「すっごいな〜……。うおっ!?」

 

“彼”はその木に近づき…目を丸くしてすごく驚いていた。

 

「これは……。」

 

信じられない様な顔をして、その木の下で倒れているものを見る。

 

「この後ろ姿……ファシネイター!?」

 

何故“彼”がすぐにわかったかというと、軽くトラウマ化しているからだ。わかる人には分かると思うが、わからない人もいると思うので、軽く説明しよう。

『ファシネイター』とは、ACLRで出てくるAC機体で、“ジナイーダ”が乗っている機体。特にラストで戦った機体に、多くのレイヴンがトラウマを植え付けられた。速くて不規則な機動性に、多くの熟練者が音を上げ、当てにくい反則級の武器を軽々と当ててくる命中率に恐怖する。まさに歴代AC(アーマードコア)のNo.1の強さを誇ると言われている。

 

「何故ここに…?…うん?ちょっと待てよ…何か思い出してきた…。」

 

“男”はその大きな木に寄りかかりながら、少しずつ思い出していく。

 

…………

話は昨日の夜にさかのぼる

 

夜遅く、トボトボ歩く“彼”、疲れが限界突破したような顔をして一人でひとけのない道を歩く。

 

「はぁ…疲れた…とてもとても疲れた…。でもやっと明日休みがもらえる…。」

 

そう、“彼”は明日休みである。“彼”が務めている会社はブラックの中のブラック…“彼”は毎日の勤務時間が16時間…50連勤しないと休みがもらえないようになっている。それを5年…つまり、休日はあまりもらえず、いつ死ぬかわからない状態である。

 

「今日は…もう…とにかく寝よう…たくさん、たくさん寝よう…。明日のことは明日決めよう…。」

 

フラフラして、そう言いながら帰宅。そして色々やって、睡眠。

 

…………

深夜

 

「グー…グー…いびきはガ行が似合う…グー…」

 

“彼”がいびきをかきながら眠っている中、突然目の前に強い光が…。

 

「グー……む?なんだ?」

 

半目で寝ぼけ顔で目の前を見る。そこには…。

 

『おはようございます!私はこの世界の神様だよっ!!』

 

「……?」

 

光が弱まり、親方!突然目の前から女の子が!!…て、そんな訳ない。しかも、深夜だし“おはよう”じゃない。

 

「夢だな…これは。」

 

そう言って、布団に潜り込み夢を見ようと頭まで布団の中に隠れる。

 

『夢じゃないよ!起きて〜!……て、もう寝ちゃったか〜……。仕方ないなぁ。こういうのはあまり得意じゃないんだけど…。えいっ!』

 

そう言って神様は跳ねたと思ったら、光輝き、消えてしまった。

 

『よいしょっと…。て、なにここ。怖っ。』

 

神様は早々に失礼なことを言う。現在、神様がいる場所…ここは“彼”の夢の中である。周りは薄暗く、気味の悪い色をした空間。

 

『こんな夢見ている人初めてだよ……。さて、あの人はどこかな?あっ、いたいた。って、あれ?』

 

神様は驚いていた。“彼”は夢の中でも仕事をしていたのだ。

 

『…………。』

 

夢の中でも必死に働いている“彼”に、流石に神様も何も言わなくなってしまった…。

 

「まだ…まだ仕事が…時間がない…今日も徹夜か……。」

 

“彼”はそう言いながらパソコンを打ち込み、仕事を必死にこなしていく。

 

『おーい…。お願いだから聞いて〜…。』

 

神様は“彼”の傍へ行く。

 

「次から次へと……。て、自称神じゃないか。何か用か?」

 

“彼”は面倒くさそうに反応する。

 

『む!自称じゃないし!本物だよっ!訂正して欲しいけど…まぁ、いいや。とにかく、あなたは今までたくさん苦労しているみたいだから、助けに来たよ!』

 

神様はそんな“彼”に、正直に言う。

 

「あ、そうなんだ〜。で?」

 

だが、神などいるわけがないと思い込んでいる“彼”にはただの少女が夢に出ている程度にしか思っていない。

 

『…信じてないでしょ…。まぁいいや。だから、この仕事の毎日から解放してあげるって言ってるの!』

 

神様はめげずに頑張って言う。

 

「……。」

 

だが、“彼”は疑いの目をやめない。

 

……何を言っているんだ…?この少女は…。解放だと?そんなことできたらとっくにしているよ。急激な人口増加によって、働き口がここ以外ないんだよ…。まぁ、そんなこと話してもわからないだろうし。ここは…。

 

“彼”はこの神様の対応について、顎に手を添えて短く考え、結論を出す。

 

「はーい。女の子は、そこの休憩室で休んでね〜。俺は仕事があるから。」

 

“彼”は子供をあやす様な声で神様に言う。

 

「……。」

 

神様は困惑した。この男は救われることを望んでいないのかって。

だから……。

 

『……。……信じろーー!!!』

 

大きく叫んだと思ったら…。

 

「ぐはぁぁぁ!」

 

神様は飛び蹴りした。神様にあるまじき行為だ…。突然の出来事に“彼”は身体が追いつかず、クリティカルヒット。

 

「グ……ハ……。」

 

“彼”は脇腹を抑えながら床に倒れている。

 

『全く!もう私とはいえ、我慢の限界よ!!』

 

神さまは頬をふくらませながら言う。

 

「す、すみませんでした…。」

 

“彼”はすぐに頭を下げて謝った。

 

『分かればよろしい。』

 

神様がご機嫌に口元を緩ませながらそう言った。

 

「でも、突然神様って言われても、信じられないよ。」

 

“彼”はなんとか立ち上がり、痛みを抑えながら言葉を発した。

 

『まぁね。だからこうやってあなたの夢へ侵入したんじゃない?』

 

神様は首を少し傾げながら言う。

 

……なるほど…確かにふつうの人間にはできない行為だ。だが、いまいち信憑性が欠ける。

 

“彼”は神様を見ながら考える。

 

「じゃぁ、なんで俺のところへ来たの?」

 

そして、1番の疑問を聞いてみる。

 

『だって、普通仕事で50連勤ないと思うし、そのままじゃ死んじゃうし…。』

 

神様は少し目を逸らしながら言ってくれる。

 

……どうやら神様は俺の事を心配して来てくれたようだ…。少し嬉しい。

 

“彼”は少し口元が緩む。そして、“彼”は神様のことをしっかりと見た。

 

……うん、すごい美少女だ。

 

“彼”はしっかりと見て思う。くりくりした目に、少し上品に微笑んでいる口。髪はショートヘアーで清潔。笑顔になればパァっと周りが明るくなり、荒んだ心も浄化する可愛い子だった。

 

「そっか〜…。ありがとう。」

 

“彼”は少し照れながら感謝の言葉を述べる。だが…。

 

『それに〜、彼女いない歴=年齢って悲しすぎない?友達も0人とか…フフッ……。あ!なんでもないよ!』

 

神様は余計なことを話し、悪戯な笑みを浮かべた。

 

……訂正、さっきの感謝の言葉返せ。

 

もちろん“彼”も不愉快になり、ムスッとする。

 

『まぁ、それはいいとして、どこか行きたい世界とかある?』

 

だが、そんなことを気にしない様子で、りゅうちょうに聞いてきた。

 

「え?」

 

“彼”は今噂になっている異世界転生の流れだと気づいた。




さて、ここまでいろんな経緯がありましたね〜。コメディを中心にしてますが……え?艦これはまだかって?少し先の話になるかもしれませんね〜…。なるべく早く投稿したいです。あ!一応“彼”の名前は決まっています。
次回!第3話「神様は間違えてる。」お楽しみに!


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3話神様は間違えてる。

前回のあらすじ
“彼”は森を探検しながら歩いていると、ジナイーダの搭乗機であるファシネイターを発見。ちなみに言い忘れていたが、この世界のレイヴンは搭乗機から降りることは一切不可能です。(つまり、AC化ですね。身長は成人男性よりも少し大きいくらい)。そして、“彼”はどうして現在の状況にあるのかを思い出す。


あらすじは…(以下略)

 

『どこの世界へ行きたい?』

 

「え?」

 

どこの世界へ行きたいか、微笑みながら聞いてくる美少女は、なんとこの世界の神様。聞き返している男は“彼”。

 

『…どんな世界に行きたい?』

 

聞こえていなかったのかと思い、神様は再度聞いてくる。

 

「…行けるのか?」

 

“彼”は驚いた顔をしながら言う。信じられないのだろう。

 

『うん!私の力を使えばチョチョイのチョイだよ!』

 

胸を張りながら自信満々に神様は言う。

 

「そ、そうなのか?」

 

“彼”はとても疑問に思うが心のどこかで、もしできるのなら、この生活から抜け出せることができるし、好きな世界へ行くことすら可能だと思う。

 

「……本当なんだろうな?」

 

“彼”は念のため、再度疑いの目をしながら聞く。

 

『ホントだってば。』

 

神様は何度も聞かれて、面倒くさそうに言う。

 

「そうか……なら俺が…。」

 

“彼”がうんうん唸りながら悩んだ末に、答えようと思ったが…。

 

『もう面倒くさいからルーレットで決めるね?』

 

待てない神様の一声で、どこからともなくルーレットが出てきた。

 

「!?、ちょ、ま…。」

 

当然、“彼”は必死に説得して止めようとする。自分の行く世界なのだから、もし大変な世界だった場合は地獄だからだ。

 

『いっくよ〜!』

 

だが、神様はそんなの聞いてもいない。

 

……聞いちゃいない…。ならばせめて、マシな世界へ行きたい…。

 

“彼”は心配そうな顔でそれだけを思っていた…。

 

クルクルクルクル……ピタッ

 

ルーレットがピタリと止まった。

 

『じゃぁ、この世界で。』

 

神様は慣れた手つきで転生用の書類に結果を書く。

 

「……。」

 

一方、“彼”はルーレットに書かれている文字を訝しげな感じでじっと見ていた。

 

……なんて書いてあるんだ…?全く読めない。神様に聞くとするか…。

 

“彼”はそう思う。

 

「あの〜……」

 

神様に聞こうとしたが…。

 

『あ!あと、容姿や、どんな世界かも私が決まるねっ!』

 

全く聞いていない。と言うより、なぜかワクワクしながら言っている。

 

「だから…おーい……」

 

“彼”はめげずに言うが、効果はなかった。

 

……ダメだ…自分の世界へ入っちゃってるよ…。

 

“彼”は口元を引きつらせながら、心配した顔で思う。

 

『大丈夫!あなたの記憶からいろいろさせてもらうから!!』

 

しかし、神様の一言で、さらに不安になった。

 

…………。今なんて言った?

 

“彼”は一抹の不安に駆られ、心の中で思う。

 

「おい…、それは本当に大丈夫なんd…」

 

『じゃ!あとは頑張ってねーーー!!』

 

だが、“彼”が神様に聞こうとしたが、願いは叶わなかった。

 

「!?、おい!待て!おいーー……。」

 

“彼”はどこからともなく現れた異次元トンネルによって、行ってしまったのだ。

 

…………

(ここからは“彼”の知らない出来事)

 

『…。はぁ〜、行っちゃったな〜…。私としてはもう少しくらいハッチャケたかったなぁ〜。』

 

神様は名残惜しそうな顔をしている。

 

『天界では、そうそうふざけられないし…。彼にならふざけられる気がしたけど…。彼は色々頑張って来たみたいだし、早く新しい世界へ行って幸せになって欲しいなぁ〜。』

 

そう言って名残惜しそうな顔から一変、笑顔になる神様。そして、後ろから声が聞こえる。

 

『神さま〜。そろそろ時間です!』

 

いかにもお付きの人って感じの人が神様を呼ぶ。

 

『はーい!今行くよー!…さてと、あっちの世界の神様に話をつけてこないと…。』

 

そう言って、神様は忙しそうに走って行った。

 

…………

一方、その出来事を思い出した“彼”は…

 

「やはり…神様は間違えてる!聞こえているかー!覚えとけよーー!!」

 

神様の苦労を知らずに、“彼”は叫んだ。そして、叫んだことによって、新たな危険が迫ってきたことに気づいた…。そう、彼の隣にはジナイーダが…。

 

「動くな…。」

 

冷たい声が聞こえた。

 

「あ…。」

 

“彼”は固まった…自分の頭?頭部?に銃口を突きつけられていたからだ…。そしてジナイーダはゆっくりと言う。

 

「ここはどこだ?そして何故私はここにいる?インターネサインは?」

 

頭に重厚を擦り付けられながら聞かれる。

 

「ええと…ですね。あの〜…。」

 

もちろん、全くわけがわからない。いきなり聞かれても、この世界に来て森しか行ってない“彼”にとっては、不明の一言だ。

 

……なんて言えばいいんだ…?

 

“彼”は口元を引きつらせながら考える。が…。

 

「答えろ!!」

 

「わーー!待って待って!」

 

ジナイーダは声を荒げて怒鳴る。そして、“彼”はゆっくり説明する。

 

「ここは、自分でもよくわかりません…。俺も…近くの浜辺で目を覚ましたから……。」

 

“彼”は正直に話した。

 

「そんな情報で納得しろと?」

 

ジナイーダは今よりもさらに殺気を出してそう問う。

 

「す、すみません…でも、本当なんです!」

 

“彼”が撃たれないように必死に言う。

 

「………。」

 

だが、ジナイーダは黙ったままだ。

 

……やばいな……これは多分殺される…。

 

“彼”は必死に殺されないことを願う。

 

「……そのようだな…。怒鳴ったり、銃口を向けて悪かったな。」

 

ジナイーダは何を思ったのか、殺気を引っ込めて銃口を下げ、バツの悪そうに言う。

 

「え?……い、いや、いいんですよ。あなたのいた世界はそういう世界なんですし…。」

 

“彼”は優しく言う。相手を怒らせて死にたくないからだ。

 

「そうか…?…本当にすまなかったな。……ところで、貴様の名前は?」

 

ジナイーダはさっきの償いなのか、割とフレンドリーに聞いてきてくれる。

 

…………。知らない世界では偽名を使うと良いって誰かが言っていたな…。

 

“彼”がそんなガセ情報を顎に手を添えて考えるが、約10秒後に名前を決定する。

 

「俺は……。ドミナントだ…。」

 

ドミナントは相手の顔を伺う様に慎重に言う。

 

「ほう?ドミナント…か……。」

 

だが、ジナイーダは面白くなかった。ジナイーダにとって、『ドミナント』などと言う、称号など興味もないが、『ドミナント』とは先天的な戦闘の天才…つまり、最強。最強を求める彼女にとって、越えなければならない壁の一つだからだ。

 

……?なんか…ジナイーダの後ろから何か黒いオーラみたいなのが…。

 

だが、この男ドミナントはそんなことは全く知らない。たまたま思いついた名前にしただけだからだ。

 

「ドミナント…それは他人から言われている名前か?それとも自身の名前か?」

 

ジナイーダが重く、低い声で聞いてくる。

 

……どうしよう…。なんか怒ってない?言葉は慎重に選ばないと殺されそうな気がする…。

 

ドミナントは冷や汗を垂らしながら思っている。

 

「も、もちろん自身の名前だよ。」

 

ドミナントの言葉に、ジナイーダはじっとこちらを見つめる。

 

「そうか…。」

 

ジナイーダが短く答える。

 

……なんとか納得?はしてくれたみたいだ…。周りから言われている名前だと答えたらどうなったんだろう…。

 

ドミナントはもし、彼女を怒らせていたと考え、身震いした。

 

「?どうした?」

 

ジナイーダは様子のおかしいドミナントに疑いの目を向けながら聞いてきた。

 

「い、いえ、なんでもないです…。」

 

当然、そんなことが言えるはずもない。あせあせと表情を取り繕う。

 

「そうか…。じゃぁな。またどこかの戦場で会おう。その時は…敵でないと良いがな…。」

 

ジナイーダはそう言い残した後、どこか行こうとしたが…。

 

……!?行ってしまうのか?出来れば最強枠の一人であるジナイーダについていきたい…。その方が安全だ…。

 

ドミナントはそう、心の中で思い…。

 

「待ってくれ!俺も貴方もこの世界のことをよく知らない。一緒に行動した方が生存率は上がる!だから、この辺りのことを一緒に探索しようじゃないか?ね?」

 

必死に止めようとするドミナントに、ジナイーダの動きが止まり、こちらを向く。

 

「……わかった。あと、私のことはジナイーダで良い。…それにしてもドミナント、貴様必死だな…フフ。」

 

ジナイーダは少し口元が緩んでいるかいないかわからないくらいだが、緩んでいた。

 

……よかった…一緒にいてくれるみたいだ…。

 

ドミナントは安堵の息を漏らした。ジナイーダが敵に回ったら、これ以上なほど厄介なものがないからだ。

 

「ありがとう。じゃぁ、こっちは探索したから、向こう側を探索しよう。ジナイーダはどう思う?」

 

ドミナントが気を取り直して言う。

 

「私は…別にどこでも良いと思うが?」

 

ジナイーダは面倒くさそうな態度をとりながら何か古そうな建物を見ている。

 

「わかった。じゃぁ向かうところはあの古そうな建物で…。」

 

そう言ってドミナント御一行は古そうな建物へ歩を進める。




来ましたね〜。ついに主人公の名前が出ましたよ〜。え?偽名だって?気にしたら負けです!ついにジナイーダという仲間を引き連れてとある建物を目指します。さて、次回どうなるんでしょうね〜…フフフ…
次回!「じょ、冗談じゃ…」


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4話 じょ、冗談じゃ…

1日にどれだけ投稿するつもりだ?って思いますよね?でも、筆がノッている時に地盤固めないと、あとあと訳が分からなくなる可能性があるからです。まだ、ピチピチの新人ですが、何かアドバイスなどをコメントに記入してもらえると大変助かります。
さて、話が長くなった。じゃぁあらすじコーナーを始めようか。

あらすじ
ひょんなこと?から異世界転生した彼、彼の名前はドミナント。森を探索しているとジナイーダと遭遇。それから色々あり、共に古びた建物へ向かうのだが…。



あらすじは上記に記入してある

 

 

「フゥ、フゥ、まだ着かない…。」

 

「これくらいで疲れるな!まだまだ道は遠いぞ?」

 

弱音を吐いているのは主人公でもあるドミナント。一方、厳しいことを言っているのは共に行動しているジナイーダ二人は古い建物を目指している。

 

「そんなこと言ったって…。」

 

「うるさい!あそこに行くと言ったのは貴様であろうが。」

 

ドミナントが弱音を吐くが、ジナイーダは余裕そうである。ドミナントが目指すと言っていた建物の方向へ歩いて、もう30分以上経つ。

 

「……迷っているのか…?それとも建物が無駄にでかいだけか?」

 

ドミナントは歩き、疑いながら呟く。

 

「いや、方向は合っている。もう10分以上弱音を吐き続けられている私の身にもなってみろ!」

 

「す、すみません…。」

 

ドミナントはすぐさま謝る。彼女に置いていかれたくないからだ。しかし、30分以上歩くと疲れてしまうのは無理もない…。彼は、長年デスクワークの仕事しかしてこなかったからだ。

 

「……。仕方がない…。ここらで休憩するか…。」

 

そこで、疲れ果てているドミナントを見て、面倒くさそうに言う。

 

「あ、ありがとう…ございます。ハァ…ハァ…ジナイーダさん。」

 

ドミナントは地獄で仏にでも会ったように顔を明るくする。

 

「別に良い。」

 

そう言ってドミナントは、すぐ横にあった木に寄りかかる。

 

「ジナイーダさんは休憩しないんですか?」

 

立ったまま辺りを見回しているジナイーダに、ドミナントが声をかける。

 

「私は……平気だ…。」

 

ジナイーダはチラとドミナントを横目に見てから、また辺りを見回しながら言う。

 

「?」

 

……まぁ、ジナイーダさんがまだこの世界に心を許さないのは無理もない話である…。心を許すと殺される…そんな世界にいたと思うし。

 

ドミナントは思う。彼女の出身世界は荒廃した様な世界だからだ。世界は破壊し尽くされ、それでもなお戦いは続いている。

 

「まぁ、辛かったら言ってください。」

 

ドミナントは彼女のことを思い、まぁまぁな声をかけた。

 

「……あぁ、わかった…。…!!」

 

そう彼女が言い終わった途端、彼女は戦闘態勢に入った。

 

「あの…ジナイーダさん…何か…」

 

ドミナントは社畜だったため、空気が変わったことに全く気づいていない。

 

「シッ!」

 

一瞬で戦闘態勢に入ったジナイーダは、遠くを指差す。それをドミナントが目を凝らしてみると…。

 

「……赤い機体に9のエンブレム……私の知らない機体だ……。」

 

彼女は目を細めながら言う。

 

「んっ?……じょ、冗談じゃ…。」

 

「?ドミナントは知っているのk……て、どうした?ドミナント?」

 

そこで蹲り、震えているドミナントに彼女が不思議そうに聞いてくる。

 

ヤバイヤバイ…赤い機体に9のエンブレムって、あいつしかいないじゃん!殺される…。

 

ドミナントはガタガタ震え、うずくまりながら思う…そう、あれはただのナインボール…ではなくセラフである。多くのレイヴンにトラウマ化されている存在である…。

 

「どうした…?ドミナント……。あれは…そんなにもヤバイ相手なのか?」

 

ジナイーダが心配しながら、顔を覗き込む様に言う。

 

「うん…あれは…すごくヤバいやつ…。」

 

ドミナントは声を震わせながらゆっくりと言う。

 

「そうか……ならば私が倒さんとな…。」

 

だが、ジナイーダはどこ吹く風だ。

 

……ちょ、ちょっと待って!いくらジナイーダでもあいつはヤバい…って、なんでそんなにウズウズしてるの?セラフはなんで立ったままなの?

 

ドミナントは現状で起きている状況を再確認しながら思う。

 

「ちょ、ジナイーダさん!流石にあいつはヤバイって!行きましょうよ!」

 

ドミナントは彼女を止めようとするが…。

 

「うるさい!私は……ただひたすらに強くならなきゃいけないんだ!」

 

止まる気が全くないジナイーダ。

 

「で、でも…」

 

「黙れ!行くぞぉぉぉぉぉ!」

 

ジナイーダはドミナントのことを無視して近づいて行く。

 

……まずいまずい!あの二人がガチで戦ったらあたり一面焼け野原のノーマーズランドになる!どうしよう…。でも…見てみたいな……。

 

ドミナントが最後は呑気に考えている間にもあの二人の距離がもっと近づいていく…。

 

「ぉぉぉぉ…ん?」

 

突っ込んでいったジナイーダがセラフの目の前で止まる。当然、ドミナントも何があったか確認するために走り、追いつく。

 

「どうした?ジナイーダさん。……て、あれ?」

 

ドミナントもそれを凝視して、思わず顔が引きつる。セラフが全く動かないのである。

 

「ドミナント…どういうことだ?私を騙したのか?」

 

「い、いやっ!知らない知らない!」

 

ジナイーダは冷たい声を出し、再び銃口を向ける。ドミナントは必死に手を振ってアピールする。そしてセラフは言葉を発する…。

 

「人類を…再生……レイヴンズネスト……確認……出来ない…。修正だ…修正が必要だ…。」

 

セラフはどこも動かないまま、その言葉だけを発していた。

 

……なるほど…この世界には“レイヴンズネストがないのか…。だから止まったままなのか…。

 

そしてドミナントは分析した後、セラフに話しかける。

 

「なぁ…セラフ…その…なんだ…。一緒に来ないか?」

 

ドミナントが恐る恐る言う。ジナイーダが「はぁ!?」と驚いていたが、気にしない。敵になったら面倒くさいし、何より仲間にいたら心強いのは間違いがないからだ…。

 

「なぁ…セラ……」

 

「修正だ…修正が必要だ…。レイヴンズネスト…確認……出来ない…。」

 

だが、ドミナントの言葉を全く聞いておらず、再度確認しようと頑張っている。

 

……聞いちゃいない…どうすれば仲間にできるのだろう…。まぁ、色々試してみるか…。

 

ドミナントは顎に手をやり、考えてから言う。

 

「なぁ、セラフ。…この世界にはおそらくレイヴンズネストは存在しない…。だから、人類が再生しないといけないレベルなのか確かめるためついてこないか?」

 

ドミナントが優しく語りかける様に言葉を発する。

 

「修正…だ。レイヴンズネスト…ない?人類…再生?レベル…確かめる…?」

 

どうやら、聞く耳は持っていたみたいだ。どこも動かないままだが、確かにドミナントの言葉に少し反応している。

 

「そうだ…だから一緒に来ないか?」

 

ドミナントはセラフに語りかける…。ただ、言葉が少しアレなので伝わるか伝わっていないのかはわからないが…。

 

「お、おい!ソイツ仲間にして大丈夫なのか!?すごく不安なんだが!精神不安定みたいだしな…。」

 

ジナイーダは驚き、慌てながら言葉を発する。

 

「大丈夫だ…。敵になったら厄介だが、味方であれば心強い。おそらく、ジナイーダさんと互角くらい強い。」

 

「そ、そうなのか…?」

 

ドミナントが冷静に分析して、ジナイーダは困惑したように言う。

 

「で、セラフ…どうする?」

 

再度ドミナントがセラフへ向き直り、言う。

 

「私は……」




さぁ、来ました!第4話!キャラが崩壊?フッフッフ…ジナイーダはまともで厳しいが、仲間に優しく、無茶振りでも嫌々付き合ってくれるような存在を目指しています!一方、ドミナントは自由気まま、だが、少しおかしなところがある変人です。6話くらいでやっと艦これ要素が出てくると思います…。長くなってすみません…。
次回!5話「あ、そうなんだ〜…で、それが何か問題?」お楽しみに!


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5話 あ、そうなんだ〜…で、それが何か問題?

地盤を固めようとしてもどうしても中々話が進まない〜…。
あらすじ
ジナイーダと共に古い建物を目指すドミナント。その道中、なんと、あのナインボールセラフを確認!ジナイーダが挑戦するも、セラフは何もしない、動かない。そして、ドミナントはセラフを勧誘しようとするのだが…。


あらすじは上に書いてある。

 

「で、どうするんだ?セラフ。」

 

「私は…」

 

必死に勧誘しているのは、この物語の主人公でもあるドミナント。

そして、その後ろでどうなるかと不安そうに見ているのはジナイーダ。返事をするのは立ち止まり、ピクリとも動かないセラフ。

 

「私は……人類を再生する…それが使命…いいだろう…共について行く。」

 

返答は出た。

 

「そ、そうか…。」

 

「うむ…わかった。だが、私達に何かしたら容赦なく撃つ。」

 

そうジナイーダはセラフに忠告する。一方、ドミナントはこんな方法で仲間にできると思ってなかったみたいなので、驚いている。

 

「…さて、休憩時間は終わりだ。行くぞ。」

 

ジナイーダの無慈悲な言葉にドミナントは驚く。

 

「えっ!?今までの時間は休憩時間だったの!?まだ全然休めていないんだけど!」

 

ドミナントは抗議するが…。

 

「そんなの知るか。行くぞ!」

 

全く聞かず、歩き出そうとする。

 

「えぇ…おい、マジかよ…夢なら覚め……グエッ!?」

 

言葉を言い終わる前にジナイーダが首?繋ぎところ?をつかみ引きずって行く…。

 

「行く…どこ…場所?」

 

セラフが疑問に思いながら、片言で言う。

 

「そうだな…あの建物だ。あそこに行くとこいつが決めたんだが…すぐに弱音を吐き、スピードが遅くなるのでまだ全然遠い…。はぁ…。」

 

ため息混じりに面倒そうに言うジナイーダ。

 

「そう…なのか?……ドミナント…気絶…。」

 

セラフがドミナントが気絶していることに気づき、言う。

 

「ん?……まぁ、いい。この方が早く行ける。」

 

気絶したドミナントをズルズル引きずりながら言う。

数分後、引きずるのが面倒くさくなったジナイーダに叩き起こされた。

 

「痛たたた…。」

 

ドミナントは引きずられた痛みと、叩き起こされた痛みを堪えながらなんとか立ち上がる。

 

「やっと起きたか。いつまで面倒かける気だ?ずっと私が引きずってきたのだぞ?」

 

ジナイーダが冷たい目でドミナントを見る。

 

「あ…す、すみません…。」

 

ドミナントは“なんか理不尽だなぁ…”と、思いながら歩くのであった。そして、しばらく歩いていると…まずセラフが反応した。

 

「未確認AC…来る…。」

 

その言葉を聞いた途端ドミナントとジナイーダは戦闘態勢に入る。そして、現れたのは…。

 

「ギャハハハハハハハ!いーじゃん!盛り上がってきたねーー!」

 

豪快な笑い声と共にものすごい勢いでACが突っ込んで来た。

 

「む……。その笑い声…主任か?」

 

ドミナントが驚きながら聞く。この笑い声、イカれた行動が、記憶の中にこびりついているからだ。

 

「何!?ドミナント…知っているやつなのか?」

 

「どういう…こと…?」

 

ジナイーダとセラフがドミナントに迫りながら問い詰める。主任とは、ACⅤで出てくるイカれてぶっ壊れた人(AI)であり、主人公の前へ何度も現れてはイカれた攻撃を浴びせてきた。人間の可能性を追い求めることをモットーにしており、そのために自らが戦ったり、鳥になったりして主人公を苦しめたラスボス。人間の可能性を証明できるなら、再生でも破滅でもいとわない化け物である。

 

「いや、知り合いって言ったら知り合いなんだけど……。」

 

……本当のことは言えない…てか、言うと面倒なことになる…。みんなゲームの登場人物で何もかもを知っていると話したら、危険人物扱いで消されるかもしれない…。

 

ドミナントは苦笑いしながら二人に言う。転生して1日も経ってない間に消されるのだけは嫌だからだ。

 

「ギャハハハ!?そうだっけぇ?」

 

主任はハイテンションでKARASAWAの銃口を向けながら話す。

 

「ドミナント…こいつは破壊した方が良いのか?」

 

ジナイーダもハンドレールガンを構えながら、主任に目を離さずに言う。

 

「危険…破壊…推奨」

 

セラフは既に攻撃する準備を整えている。

 

「ま、待ってくれ。俺たちはお前に危害を加えるつもりはない…。お前たちも殺気を引っ込めてくれ…。主任、ここはどんな世界なのかまだ探索しているだけだ…。」

 

ドミナントは、震えた声で説得しようと、主任の答えを待った。緊迫した状況の中、時間だけが過ぎて行く。

 

「あ、そうなんだ〜。で、それが何か問題?」

 

だが、説得は虚しく、主任は全く動じていなかった。

 

……くそっ…どうやら主任は戦うみたいだ…。

 

ドミナントが覚悟するが、主任は興味深い言葉を発する。

 

「戦いこそが…人間の可能性なのかもしれん…。証明してみせよう…貴様にはそれができるはずだ…!!」

 

……んっ?ちょっと待って。

 

ドミナントは言葉の違和感に気付き、曖昧な顔になる。そして…。

 

「主任…その…大変言いにくいのだが、俺たちはもう人間じゃないよ…。何というか…AC化しちゃって…。」

 

ドミナントはそんな中、ゆっくりと説明した。

 

「………。」

 

「「「………。」」」

 

両者、微妙な沈黙が流れる…。指摘したドミナントだが、“これは流石に指摘しちゃいけなかったか…”と思っている。

 

「あ、そうなんだ〜…で、それが何か問題?」

 

主任が無かったことにしようと、さっきのシーンからやり直そうとしている…。

 

……今度は指摘しないようにしないと…。

 

ドミナントは面倒な状況を避けるため、指摘しない様に思うが…。

 

「だから私たちは人間じゃないって言ったでしょ?」

 

「聞いて…いない…?」

 

彼女たちが冷たい声で容赦なく指摘している。

 

……うぉぉぉい!ジナイーダ!セラフ!主任の気持ち考えろよ!わざわざ来て、いきなり戦闘しようとした挙句、それが自分の勘違いってすごく恥ずかしいんだぞ!…あーあ、ほら見ろ、主任すごく困ってる…。

 

ドミナントは主任のことを哀れに思う。

 

「ハハ…。クールだよね…いつも。」

 

そう言って主任はどこかへトボトボ歩いて行く…。

 

「ま、待ってくれ…。」

 

そこに、ドミナントが呼び止めた。

 

「?」

 

「その…よかったら一緒に……グエッ!?」

 

“一緒に行こう”と言おうと思っていたが、ジナイーダに首を掴まれ引っ張られた…。そして小声で言ってきた。

 

(何勧誘しようとしているんだ!?見ただろ!?あれ絶対やばいやつだぞ!)

 

(そうだ…あれ…明らかに…ヤバイ…仲間…するの…危険…。)

 

ジナとセラフが迫りながらそう言ってきた。ところが、ドミナントはこう言い返した。

 

(確かに、どう見てもヤバいやつだ…でも、敵は多いより少ない方がいいだろう?しかも、もしかしたらこの世界のことを知っているかもしれないし…。)

 

この言葉を聞き、ジナとセラフは“うーん”と唸る。本当はこんなことになってしまった罪悪感をなくすためだ…。そして、ドミナントは主任と話す。

 

「その…主任…もしよかったら一緒に来ないか?」

 

「!?。これだから面白いんだ〜…人げ……AC化した奴らは…」

 

……うん、主任?キャラ崩壊してない?てか、嬉しいんだな…。

 

「…本当に仲間になってしまったんだな…。」

 

「危険…危険……仲間…危険…。」

 

ジナイーダとセラフは顔をしかめ、言葉を発する。

 

……うん、あとでジナとセラフには人前でそういうこと言ってはいけないってことをやんわりと話そう…。

 

そして仲間が増えたドミナント御一行は、古い建物を目指すのだ…。てか、もうすぐそこだけど。




新しい仲間が増えた!嬉しいねぇ〜。キャラ崩壊している奴が多いので、少し説明。この世界のセラフは、少し有能…てか、ほぼ全てに関して能力がすごく高い。しかも、すごく仲間思い。だが、意味不明な状況に陥ると思考停止することがある…。この世界の主任は、いつも通りぶっ壊れたキャラ。賑やかなのがとても好き。能力はその時の気分によって違う性質を持つ。いつか世界中を旅したいと思っている。
次回!第6話「鎮守府へGO」


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鎮守府侵入編
6話 鎮守府へGO


来ました!ついに艦これ要素が…。
あらすじ〜
古い建物を目指すドミナントとジナイーダ。ナインボールセラフを説得し、主任まで仲間にしたドミナント御一行に、もはや敵なし。古い建物はすぐそこだが、そこでとんでもないことが起きる…。


あらすじは上に…。

 

 

「はぁ…はぁ…。やっと着いた…。」

 

息を切らしながらそう答えるドミナント。

 

「ドミナント…大丈夫…?」

 

ドミナントに優しく接しているのはセラフ。

 

「ふん!貴様がノロノロしているから余計な時間が過ぎてしまったじゃないか。」

 

厳しそうに言っているが、何だかんだ言って一緒についてきてくれたジナイーダ。

 

「ギャハハ!いーじゃん、盛り上がって来たねーー!」

 

豪快な笑い声をあげてそう答える主任。

側から見たらやばい集団なのは、火を見るよりも明らかだ。全員AC化しているので、ロボット集団になっている。

 

「はぁ…はぁ…そんなこと…言ったって…。……ふぅ、ところでここは何かの重要施設なのか?門の前に警備員みたいなのがいるけど…。」

 

ドミナントは息を整えながら建物について調べている。先程着いたと言っていたが、その建物に警備員がいるため、隠れている。

 

「俺たちが入れればいいのだが…。」

 

AC化しているので無理だろう…。つくづく神様を恨むドミナント。

 

「そうね…無理でしょうね。」

 

「無理…可能性…大…。」

 

ジナとセラフはそう答えるが…。

 

「まぁいいんじゃないの?どうでも。」

 

主任はそう言って門へ直行する。

 

「「「ちょ…待っ…」」」

 

だが時すでにお寿司。

 

「む、なんだね君は?」

 

「そこ通してもらえる?」

 

「コスプレイヤーか?ダメに決まっているだろ。」

 

「ギャハハ!いーじゃん、ちょっとくらい。」

 

「ここをどこだかわからないのか?それともなりきりか?酔っているのか?」

 

「黙れよ…茶番はもう終わりだ…。」

 

警備員と主任がそうやりとりしたあと、主任がKARASAWAを構える。

 

「ちょっと待て!主任!」

 

鶴の一声。ドミナントが止めに入る。

 

「貴様…ここをどこだと思っている!作り物だとしても銃口を向けて…!……この馬鹿ども!!」

 

「す、すまない…。」

 

警備員が激怒する。そしてドミナントは謝る。

 

「で、どこなんだ?正直に答えないとお前を殺す。」

 

ジナイーダが目にも留まらぬ速さで近づき、そう答えながらYWH16HR-PYTHON(ハンドレールガン)を構える。

 

……ジナイーダ…まぁ、確かにいきなりこの世界に来てどういう世界なのか知りたい気持ちはわかるが…そんなに殺気を出さなくても良いだろう…。

 

ジナイーダはこの世界のことを知りたい気持ちもあるが、実は仲間を馬鹿呼ばわりされたことに腹を立てている。

 

「貴様……また銃口を…」

 

ギュウィィィィィン……ズガーーーン!!

 

警備員が最後まで言う前に、ハンドレールガンを空へ試し打ちする。警備員は絶句する…。

 

……というか…いいのか?弾補充できないかもしれないぞ…?歩く棺桶になるぞ?

 

ドミナントは思った。

 

「これはおもちゃじゃない…。もう一度だけ言う。ここはどこだ?」

 

「ひぃぃぃ…。こ、ここは…横須賀第2鎮守府でありまふ……。」

 

……!?よ、横須賀鎮守府!?ということは…ということは!いや、待て…まだ確証が…。

 

「憲兵さん!何かすごい音がしたけど何かあったのです?」

 

そう言って走ってくる人影が…いや、少女が…。

 

「やはり…。」

 

ドミナントは、心底嬉しそうにそう言った。一方、お連れの方々は…

 

「ここは少女を監禁している場所なのか…破壊だな。」

 

「人類…再生…。」

 

「ギャハハ!ここはゴミムシどもの集まりか?」

 

もれなく全員がすごい殺気を出している…。憲兵はそれを感じ取り、すごく震えているが、ドミナントはそれに気がつかない…喜びでいっぱいなのだ…。

 

「ここは…艦これの世界なのか…。って、うわぁぁ。ちょっとみんな落ち着いて…。」

 

ここでやっとみんなの殺気に気づく。そして説明する。

 

「カクカクしかじかで……」

 

「「「なるほど…。」」」

 

どうやら全員納得してくれたみたいだ…。よかったぁ…。

 

「おい!憲兵!」

 

「は…はひ…。」

 

ジナイーダが憲兵に声をかける。

 

「その…さっきはすまなかったな…。」

 

「え?……い、いいんですよ。こちらが無事なわけですし…。」

 

……あれ?デジャヴ?まぁ、いいか…。それにしても艦これの世界か〜…。ん?ちょっと待てよ…。これって…もしかしてもしかしなくても…俺らラスボスみたいになるやつじゃね?やだよ?提督がいいよ?。でも…どうすれば…。

 

そう考えているドミナント。しかし、ここである事がひらめく。

 

「そうだ…提督に合わせてもらえないかな?」

 

「「「は?」」」

 

御一行はいきなりどうした的な言葉を放つ。会って話せばラスボスエンドは免れる…だがしかし…

 

「ダメなのです!」

 

「そ、そうだそうだ。」

 

少女が強く言い放つ。そしてさっきまで黙ったままだった憲兵も言う。

 

……憲兵…お前……お前ってやつは……。もう…いいや…。まぁ、ダメ元だったし、いきなりよくわからない、武器を持った連中に提督に合わせろって言ったって、はい、そうですかってわけにもいかないしなぁ〜…。

 

ドミナントが憲兵に何か思うところがあったのだろうが、言わないでおく。

 

「そっか〜…ダメか〜。」

 

ドミナントは言う。口では…。

 

「じゃ、いいや。憲兵さん!迷惑かけてすまなかったな…。」

 

そう言ってドミナントは立ち去る。

 

「「「えっ?待て!ドミナント!」」」

 

そう言って御一行も立ち去る。

 

「ふぅ〜…助かりました。電さん。」

 

「いいのです!少し怖かったけどなんとかなったのですから…。」

 

「「はぁ……」」

 

憲兵と電は安堵のため息を漏らす。

 

…………

一方、ドミナント御一行はというと…。

 

草むらの中で集まっていた。

 

「みんな、突然だが聞いてくれ!中に入る作戦がある!」

 

「ほう?お前が作戦を?」

 

「作戦…任務…必ず…遂行…。」

 

「ギャハハ!珍しいねぇ。」

 

愉快な仲間たちはそれぞれ反応する…。そして、ドミナントが話し始める。

 

「そうだな…まずは……。」




はぁ…やっと艦これ要素が出てきた。多分読者は「遅かったじゃないか…。」みたいな感じだろう…。しかし、いきなり艦これ要素が出てきたらおかしくないか?。転生していきなり勇者になるなんてことはまずないと思っている…。ならば同様だと私は感じている。勝負だ!どちらが正しいかは戦いで決めよう…。
こちらの世界の登場人物紹介
憲兵…彼は幼少期に親に捨てられ、孤児院で育ってきた。こっそり育てていた猫がいた。その猫が事故で死んでしまい、それが自分自身の力不足と守りたいという気持ちが少なかったからだと思って、憲兵になった。
電…イナズマ。この鎮守府の初期艦であり、練度は高い。恥ずかしがり屋だが、言うことはしっかり言うタイプ。
次回!第7話「彼、一種の天才ってやつかもね〜」


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7話 彼、一種の天才ってやつかもね〜

前回の戦いの決着
筆者「AMSから…光が逆流する……ギャァァァァァァァ!!」
人はそれぞれ独自の趣味思考がある…それを否定してはいけない…。
と、いうことがありました。さて、じゃぁあらすじを……グエッ!?ジナイーダ…何を……。
「もうお前には任せてられない…私があらすじを語る。」
何…だ……と………。筆者は気絶した。

さて、私があらすじを語ろう。
どうやらこの世界は艦隊これくしょん?と言う世界であり、ドミナントは提督?とやらに会いたいようだ。ところが、駆けつけてきた少女が「ダメなのです!」と、言ってきた。憲兵が生意気にも「そ、そうだそうだ。」と言っていた。…忌々しい。まぁいい。そこで、諦めたフリをしたドミナントが私たちを集めて作戦を立てるが……。


あらすじは……以下略。

 

 

「そうだな…まずは……。」

 

ドミナントが言う。そしてそれを真剣に聞く愉快な仲間たち。

 

……たくさん作戦を立てたのだが、文字の多さでカットする。下はその作戦の一部始終を書く。

 

…………

第1「裏口からこっそり侵入作戦。」

 

「可能性…低い…。」

 

「ハハハ…大丈夫だと思う?」

 

「いや、大丈夫じゃないな…。」

 

そう答える愉快な仲間たち。

 

「まぁ、やるだけやってみよう。」

 

ドミナントは自身満々に言う。

 

実行

 

「うーん…うーん。入らない…。」

 

……なんとか憲兵に見つからずにたどり着いたは良いが…。AC化して身体が少し大きくなってしまい、通り抜けられない…。

 

ドアでつっかえている。

 

失敗

 

…………

第4「飛んで行けばいいんじゃない?作戦」

 

「まぁ、確かにそれなら可能だな。」

 

「可能性…大…。」

 

「ギャハハ!彼、一種の天才ってやつかもね〜。」

 

「でしょ?」

 

実行

 

「「飛べない…ていうか、どうやってブースター使ってるの?」」

 

瞬く間に飛んで見せるセラフと主任。AC化によって、ドミナントもそうだがジナイーダも飛び方がわからない…。なぜなら、彼女は強化人間とはいえ操縦者だ…。自身が操っているわけではない。ドミナントは操縦すらわからない…。

 

……主任…お前…AI説濃厚だったんだが…本当にAIだったとは…。AIじゃないとまず簡単に飛ぶこと出来ないと思うし…。

 

ドミナントは呑気にそう考える。ところが…。

 

「おぉ…なんかイメージしたり、いろんなところ動かしたら飛べた……。」

 

ジナイーダがブースターを使っている。さすが戦闘の天才。しかし、ドミナントが飛べないためアウト。

 

失敗

 

…………

第15「賄賂を渡す…。」

 

「なるほど…汚いな、ドミナント。」

 

「ドミナント…最低…。」

 

「ゴミムシ?」

 

「あーー!うるさいうるさい!それしかないだろ!嫌だったら案出せ!」

 

実行

 

憲兵が通る道に待ち伏せして、心を決めるドミナント。そこで…。

 

「今気づいたんだが……この世界の金は私たちの世界の通貨で平気なのか?」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

誰も気がつかなかった様子。

 

失敗

 

…………

第38(ジナイーダ案)「強行突破作戦」

 

「ダメでしょ。」

 

「力技…失敗…可能性…大…。」

 

「ほんとは好きじゃないんだ…マジな勝負ってやつは…」

 

「何故……何が間違えたというの…!?」

 

実行せず

 

…………

第52(セラフ案)「仲良く…みんなで…話し合う…作戦」

 

「…うん、セラフ…その結果ダメだったんだよ…。」

 

「…今の状況を言っているのかしら?」

 

「Zzz………。」

 

「ガーン…少し…ショック…。」

 

保留

 

…………

第82(主任案)「…どうでもいい。」

 

「主任…少しは考えようか…?疲れているのもわかるけど…。」

 

「もうどうでもいいんじゃない?」

 

「主任…考えて…。」

 

「ハハハ………。」

 

………

 

と、まぁ…案がなくなり行き詰まったドミナント御一行。そこで第4作戦をするために、ドミナントを飛ばそうとする。

 

「あの〜……。どこまで行くんですか?」

 

目隠しをしたまま歩かされるドミナント。

 

「もうすぐ着く。まだ歩け。」

 

ジナイーダが厳しく言う。そして…

 

「………着いたぞ。目隠しを取れ。」

 

そしてドミナントは目隠しを取る。

 

「……あの〜…、なんでここに?しかも下が海だし…戻ろうにも道が君たちによって塞がれてるし…。」

 

そう、ドミナントがいるのは崖の端。飛べない彼には閉じ込められたも同然である。

 

「まぁ、こういうことだ。“今から言う制限時間以内に飛ばないと、距離を詰めて落とす。”ということ。」

 

…なにその筋肉論?

 

「ちょ、ちょっと待てよ!河童って知ってる?例え、落ちている間にブースターが発動しても、海にドボンする可能性が高いんだよ!?」

 

「じゃぁ、そうなる前に飛ぶんだな。」

 

ドミナントは必死に説得しようとするが、ジナイーダはどこ吹く風だ。

 

「おぉぉい…マジかよ……夢なら覚め……」

 

「はいスタート!あと5分!」

 

「うぉぉぉぉ!」

 

ドミナントは無我夢中でジャンプしながら頑張る。でも実は、ジナイーダはドミナントを落とす気など全くない。何故脅すようなことを言ったのかというと、“脅さないといつまでかかるかわからない。”とのことだ。

 

「あと4分」

 

「うぉぉぉぉ!」

 

そんな時間の中、ジナイーダは考える。

 

……やはり、ドミナントにはまだ早かったか?…いや、ダメだ。そう言って先延ばしにしてはいけない…。もし、この二人がドミナントを裏切り、攻撃してきたらどうする?私一人でこの二人を倒すことなどできない…。なんとか逃げる術だけでも身につけてもらわないと……。

 

しかし、ジナイーダは一つ、重大なことに気がつかなかった…。

 

「うぉぉ…ん?」

 

「「「?」」」

 

ドミナントが異変に気付き、愉快な仲間が不思議に思う。そこで、ジナイーダは自分のやらかしたミスに気づく…。

 

「……!!ドミナント!そこから離れろ!!」

 

だが遅かった…。

 

「うわぁぁぁ…」

 

そう、崖の端だったため、ACの重量に耐えきれなかった。崖が崩れ、ドミナントと共に落ちて行く…。普通ならここでブースターが発動し、助かるのだが、この世界はそこまでファンタジーではない。ただ落ちる…そんな世界である。

 

一方、ドミナントはと言うと……受け入れていた。

 

……あぁ…。俺は落ちるのか…。苦労だらけの人生だったなぁ…。AC化で海の中でも生きられるってわけでもなさそうだし…。次に生まれてくるときは…楽な世界だといいな…。

 

某駆逐艦の轟沈セリフをパクリながら落ちて行く…。

 

ザッバァァァァァァン!!




あぁ〜!ドミナント…沈むのか…。ん?これ轟沈描写なのかな?まぁいい。前回艦これ要素が出てきたと思っていたが、またドミナント御一行の話し…。次回は艦これ要素がワアァァァ!と、来る予定です。え?ここに書いている人は誰かって?筆者は気絶しているので代わりの作者ですw。
次回!第8話「主任!貴様…何をする気だ!?」お楽しみに!


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8話 主任!貴様…何をする気だ!?

イタタタ…一体何が?
「筆者…今回からあらすじはループして行うことにする。いいな?」
えぇ、そんな…それじゃ俺の役目が…。
「何かいったか?」
い、いえなんでもありません…。
「そうか…それじゃ今回はセラフだな。」
「わかった…やる…。」

あらすじ…
鎮守府…入るため…作戦…練った…全部…失敗…仕方なく…ドミナント…飛ばそうとする…でも…崖…崩る…ドミナント…海…落ちる…だけど……。


あらすじ…以下略

 

ザッバァァァァァン!!

 

ドミナントは海に落ちた。そして沈んで行く。

 

…艦娘って轟沈するとき…こんな気持ちなのかな…?寂しい…悲しい…こんな感情の中消えていくのか…。

 

ドミナントは思う。しかし、一旦沈んだあと海面へ上昇する。

 

……ドユコト?

 

ザバアアアア……(海面に出た効果音)

 

「……なんで海面に浮くの?鉄の塊みたいなもんだから沈むんじゃないの?」

 

この世界は意外とファンタジーみたいだ。

 

…………

一方…愉快な仲間たちは…

 

「嘘……。私のせいで…私のせいで…。」

 

「ドミナント…ドユコト?…ドミナント…ドユコト?…。」

 

「…………。」

 

ジナイーダは、今まで強さ故にバケモノ呼ばわりされていた…。幼い頃でも大人に勝てるくらいの強さだ。そんなバケモノにミッション以外で声をかけてくれて、ものすごく嬉しく感じていた。しかし、自分が焦ってしまい、そのせいでその人を失ってしまった。よくわからない感情と、後悔で、泣きそうな声を発している。

セラフは、何が起こったか分からず、同じ言葉を繰り返している。彼が落ちたという事実を受け入れたくなかったのだろう…。

主任はというと、いつもの笑い声すら発しない…。この雰囲気、そして彼が死んだ…。その両方の空気に挟まれ、何も言えない状態になっている。

そんなお通夜みたいな雰囲気の中、崖下から声が聞こえてくる。

 

「おーい!おーい!」

 

「「「えっ?」」」

 

愉快な仲間たちは崖下を見る。そこには沈んでいるはずのドミナントがいた。呑気に手を振って、喜んでいる声を発している。

 

「「「………。」」」

 

愉快な仲間たちは黙り込む。そして、真っ先に行動したのがセラフだった。

 

「何故…沈まない?…何か…ある?…。」

 

そう言って、崖から落ちるセラフ。

 

ザバァァァン!!

 

そして浮いてきたセラフにドミナントは問う。

 

「セラフ…何かわかったか?わかったんなら説明してくれ。」

 

「わかった…。それじゃ…説明する…。まず…この海…私たちの…知っている…海…違う…。そして…」

 

「ごめん、セラフ。」

 

セラフが説明している最中にドミナントが割り込む。

 

「説明してもらってありがたいんだけど…もう少しスムーズに話してください…俺は面倒が嫌いn……お願いします。」

 

ドミナントが頭を下げる。

 

「……わかった。それじゃぁ、説明する。まず、この海は我々の知っている海と少し異なる。そしてこの世界の海は我々がいた世界と比べると、浮力が面積に対して…あっ、浮力というのはアルキメd…」

 

「何度もごめん!セラフ……俺たちにもわかるように言ってくれないか?つまり、簡単に。」

 

そう、セラフの言葉は専門過ぎて、上の二人とドミナントには伝わらないのだ…。

 

「はぁ……。つまり、この世界ではACは絶対に沈まない。」

 

……!!!???

 

この場にいるセラフ以外の面々がものすごく驚く。

 

「なるほどな…。」

 

ジナイーダはそう言い、崖から落ち、海面に立つ。そしてドミナントに近づく。

 

…ジナイーダ…なんかすごく怒ってない?めちゃくちゃ怒りのオーラが見えてるんだけど…。

 

「ドミナント…貴様……私たちがどれほど心配したか…。まぁ、私のせいだからな…この一発だけにしてやる…。」

 

「えっ?」

 

バッッコォォォォォォン!!

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

すごく理不尽なジナイーダの拳が思いっきり顔?頭部?に当たった…。ドミナントが数10メートル先へ吹っ飛ぶくらいの威力だ…。

 

「な…ぜ……。み…味方…で……す………。ガクッ。」

 

ドミナントは気絶した。

いつもの雰囲気になり、ハイテンションになる主任。

 

「へぇぇ、珍しいねぇ。そんなに心配したんだ〜。もしかして、好きになっちゃったとか?ギャハハハハハハハ!!」

 

主任がジナイーダを茶化す。

 

「何か言ったか?主任くん?」

 

「い、いえ!なんでもないです!はい!ハハハ…。」

 

キレているジナイーダに睨まれ、敬語で返す主任。

 

「フフフ…やはり…しんみりした雰囲気ではなく、いつもの雰囲気がいいな…。」

 

それを眺めていたセラフ。しかし次の瞬間、気絶している若干1名以外の全員が戦闘態勢になる。

 

バコオォン!ドコォォン!ヒュュュュ……ドコォン!

 

遠くで何か争いをしている集団がいたからだ…。ジナイーダはドミナントを叩き起こし、戦闘態勢にさせる。

 

「ドミナント…どうする?」

 

セラフがそう問う。

 

「…そうだな、なんだかわからないし、別のところへ行くか。」

 

…嘘だ…。本当は分かっている。あの音は砲撃音で今まさに戦闘が行われているのだろう…。艦娘vs深海棲艦の戦闘が…。ん?まてよ…その戦いへ行って、俺たちがいたらどうなるんだろう…。深海棲艦は、確か兵器じゃ通用しなかったよな…。だとしたら戦いが終わった後に偶然出てこよう。言葉を話し、戦うつもりのない兵器がいた場合、鎮守府へ連行されるだろう…。そして提督へ会い、ラスボスエンドを免れる…。しかも、もしかしたら艦娘が暮らしている鎮守府で働き、暮らせるかも!?いいひらめきだな俺!

 

そうドミナントが考え、みんなに伝える。しかし、伝えたのは“提督に合う方法を思いついた”だけである。そして、その方法だけを教えた。

 

「了解。じゃぁ、戦っている方向へ行けばいいんだね?」

 

「はいよー。じゃぁ、いっちょ行きますか。ギャハハ!」

 

納得しているセラフと主任だが…

 

「……何か怪しいな?…まぁ、いいか…。」

 

ジナイーダだけは違った。普段の彼女なら問い詰めるところだが、ドミナントが生きていた喜びで気にしなくなっている…。そして、その場所へ行ってみると…。戦艦棲姫と戦っている艦娘がいた。あれから随分経っているみたいで、残すは戦艦棲姫くらいだった。

 

「ギャハハハハハハハ!シズメシズメェ!ギャハハ!」

 

「くそっ!あとはあいつだけだというのに…。」

 

「天龍ちゃ〜ん。焦りは禁物よぉ〜。」

 

「焦って轟沈なんてしたら、一人前のレディじゃないわよ!」

 

艦娘たちが戦っている中、ドミナント御一行はそれぞれ戦闘シーン見ながら言う。

 

「主任が…二人?」

 

セラフが言葉を発する。

 

「あぁ…そうだな…。」

 

「えぇ…そうね…。」

 

しかし、何も反応してこない主任…。

 

「…?主任?」

 

ドミナントは疑問に思い、振り向く。しかし…そこに主任はいなかった。

 

……主任…まさかな……。

 

ドミナントはものすごい嫌な予感がしている。そして、その予感は当たることになる…。

 

「……!!何かくる…何か凄く嫌なのもが…。」

 

セラフがそう言い、その何かに備える面々…。ちょうど艦娘たちの戦いが終わっていた…。

 

「グァァァァ…ク、クラ…ブクブク…。」

 

そう言い残し戦艦棲姫は沈んでいく…。

 

「ふぅ〜。なんとか倒せたぜ。」

 

「ハラショー。」

 

そう安堵している艦娘たちだが、そこでまた危機が迫る…。

 

「さぁて、帰……!?」

 

新たな深海棲艦の群れが来たのだ…しかもさっきより数が多い…。しかも、艦娘ほぼ全員が中破状態。

 

「……チッ。」

 

…………

一方、ドミナント御一行

 

「主任!貴様…何をする気だ!?」

 

ドミナントが叫ぶ。一方主任は遠くでヒュージキャノン(主任砲)を構えていた。

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをねっ!」

 

…主任が艦娘に対して撃つのではないだろうか。しかも、兵器は深海棲艦に効かない…そう話したはずだ…だとすると…やはり!

 

「主任…ちょっと落ち着k……!?」

 

言葉を言い終える前に主任砲が火を吹いた…。ラスボスエンドまっしぐらである。

 

ギャハハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハ!

ギュヴィィィィィンズガァァァァァァァァァァァァァン!!

 

…………

一方、艦娘たちは、深海棲艦の攻撃ラッシュにより、逃げることが困難になっていた…。

 

「……道半ば…か…。」

 

覚悟を決める。しかし…。

 

ズガァァァァァァァァァァァァン!!

 

海の上なのに地震が起きたのではないかと疑うくらいの揺れが起き、両者混乱する。…いや、片方だけのようだ。轟音と共に敵である50以上の深海棲艦が瞬く間に全滅したのである…。轟沈などせず、消滅である。

 

「えっ…?な……?え………?」

 

何が起こったかわけのわからない艦娘たち。そこで、ロボット集団が現れる。

 

「おーい!君たち!大丈夫だったか〜!?」

 

「……ん?あ、あぁ…。」

 

ドミナントが声をかけ、他の艦娘が突然色々ありすぎて固まっている中、反応する天龍。

 

「よかったぁ…。」

 

「あ、あぁ…。その…サンキューな…。」

 

天龍は素直に答える…。ドミナントは、計画通り敵意がないことを伝える。

 

「俺たちは君たちと戦う意思はない。……聞いてる?」

 

突然の出来事にまだ頭が追いつかない天龍…。

 

「あ、あぁ…。すまない…聞いてなかった…。あと5分ほど待ってくれるか?」

 

そう言って頭の整理をする艦娘たち…。

 

…………

5分後

 

「5分経ったが…そろそろいいか?」

 

「あ、あぁ、いいぜ。なんでも聞け。」

 

そして冷静になった艦娘たちは、このロボット集団だけは怒らせてはいけない…。と結論を下す。

 

「俺たちは君たちと戦う意思はない。どうだろう…協力させてくれないか?」

 

天龍は考える。

 

……戦う意思はないと言っているが、本当かどうかわからない…。だが、本当だとしたら願っても無い戦力が仲間になるということになる…。だが、もし気が触れることを言ったら全滅エンド…。というか、もし本当だった場合断ったら相手側の気に触れるのでは?

 

「……わかった…。でもまずは提督に話をつけてこないとなぁ…。」

 

そう言って提督に丸投げする天龍…。他の艦娘たちからジト目で見られていたのは言うまでもない…。

 

「わかった。では、提督に合わせてくれ。」

 

「えっ?」




長かった…すごく長かった…。およそ3800字。(普段は2000〜2100)。
……さて、今回は前回言っていた艦娘要素を取り入れるため、長くなりました…。楽しんでください…。
次回!第9話「○○!?何故ここに!?」お楽しみに!


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鎮守府編
9話 ○○!?何故ここに!?


はい、やってきました9話です。前回、疲れて艦これ要素に説明をし忘れていたので、今説明します。
この世界は、そこら辺に上位種がたまに出てきます。たまに出てくるのは弱く、性格やセリフが変わってたりする。しかし、ボスだと強い。海域開放でも、何がボスになるかわからない(いつもの以外のボスが出てくる確率はポケッ○モン○○○の色違いが出てくる確率)。まだ説明が足りないと思いますが、それはいつか話します。
では、あらすじに入ります。主任、どうぞ。
「ギャハハ!じゃ、いくよー。」

あらすじ。
この世界のACは絶対に沈まない。すごく都合がいいよね〜。ギャハハハ。そして俺のカッコイイ砲撃が決まり、艦娘たちが涙を流して感謝している最中、ドミナントが話し、提督?とやらに会おうとするのだが。ギャハハハハ……。


あらす…以下略

 

「わかった。では提督に合わせてくれ。」

 

「えっ?」

 

ドミナントがそう言い、まさか自ら会いに行きたいとは思ってなかった天龍。

 

「……では、提督に…」

 

「いや、話は聞いていた。」

 

「なるほど…では案内をしてくr…」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

ドミナントが話を進めようとしている中、艦娘の一人から声がかかる。

 

「ん?なんだ君は?」

 

「私は吹雪型5番艦、駆逐艦『叢雲』よ!なんだかよくわからないけど納得いかないわ!」

 

…叢雲?あぁ、確か非常にツンツンしているが、たまにデレる艦娘か…。それじゃ、説得するか…。

 

「なるほど…納得いかないか…。たしかに…。怪しい集団が現れて君たちのボスである提督に合わせろと言ったって俺たちが提督を始末する可能性があるしな…。」

 

「そ、そうよ!」

 

「では説明しよう!さっき撃った深海棲艦だが、始末するなら、姿を見られる可能性がある君たちを狙うとは思わないか?しかも、俺たちが本気出せば提督はおろか、鎮守府そのものを消し去ることも可能だろう?ちなみに、さっき深海棲艦を消滅させたのは、遠くにいるもう一人の仲間だ。」

 

「たしかに…。て、え?さっき深海棲艦を倒したのはあなたたちが力を合わせた必殺技じゃなかったの?」

 

提督に危害を加えるつもりはないのがわかったが、新しい情報に困惑する一同。

 

……今のがたった一人の攻撃?じゃぁ、あとここにいる3人?が本気出したら、世界中の鎮守府どころか世界を征服できるのでは?でも、しないってことは本当に敵意はないみたいね…。

 

叢雲は目の前にいる謎のドミナント御一行に敵意がないことを認める。

 

「わかったわ。案内する。」

 

叢雲はそう答え、仲間たちを率いて鎮守府へ戻る。一方、ドミナントは“納得してもらえてよかった”と、思っている。なぜなら、もし納得せず、頑なに断られたら、愉快な仲間たちが強行突破作戦をやらざるを得ないからだ…。

 

「着いたわ。ここが私たちの鎮守府よ。今提督に話を伝えるわ。」

 

「よろしく頼む。」

 

叢雲がそう言い、ドミナントが答える。そして、艦娘たちは急いで走っていく…。

 

……ふう…なんとか案内してもらえてよかった…。これでラスボスエンドは免れる…。…それにしても、やはりこの格好だから怖がられているのかな?ここに来る道中誰も話しかけてこないし…。………ん?なんでアイツらは黙ったままなんだろう…?

 

ドミナントがそう考え、声をかける。

 

「ジナイーダ…セラフ…主任…大丈夫か?」

 

「…ん?…あ、あぁ、大丈夫だ…。」

 

「…え?…おそらく大丈夫です…。」

 

「…!?ギャハハ!大丈夫だ、俺も…。」

 

……?何かありそうだな…。

 

「…大丈夫じゃないな…どうした?」

 

ドミナントは愉快な仲間たちに問いかける。

 

「「「なんでもない。」」」

 

「そ、そうか…。」

 

……こうなってしまえば誰も何も答えないだろう…。おそらく何か重要なことがあったのかな?まさか…俺を抹殺しようとか…?

 

そうドミナントは考える。しかし、愉快な仲間たちはそんなこと思ってなかった…。

 

……ドミナント…あの艦娘たちを見て何も思わないのか…?まさか!?そういうのが好きなやつなのか…。

 

……ドミナントのフェチズムはあんな感じなのでしょうか…?

 

……ギャハハ!さすがドミナント!あの姿を見て何も感じていないとは…俺も見習わないとなぁ…。

 

そう愉快な仲間たちはそれぞれ思っている。そう、艦娘たちは全員中破状態で、服がボロボロになっているのである…。そんな中、普通に話しているドミナントを見て、それぞれそのように思わないはずがない。

ドミナントは、艦娘がそのようになることを知っている。だが、それはゲームの中の話であり、目の前で実際に美少女たちがあんな風な格好をすれば心が乱れて、言葉が詰まったりしてしまうのは必須…。しかし、仲間に見捨てられないように、必死に平常心を保っているのである。

そんなことをドミナント御一行はそれぞれ思い、モヤモヤしている中、叢雲が戻ってくる。

 

「提督は執務室にいるから来てくれだって。案内するわ。」

 

「わかった。」

 

そうドミナントが言って執務室へ向かうドミナント御一行。そして、その道中、艦娘たちにジロジロ見られていたのは言うまでもない。

執務室の前へ叢雲が立ち、ノックする。すると、執務室から声が聞こえてくる。

 

『は〜い!誰〜?』

 

「叢雲です。連れてきました。」

 

『どーぞー。』

 

提督が優しい声で返事をする。そして中に入ったドミナント御一行。

 

「や!こんにちは!」

 

提督が元気よく挨拶をする。

 

「あ、あぁ、こんにちは…。」

 

「こんにちは。」

 

「ギャハハ!どーもー。」

 

愉快な仲間たちは挨拶する。だが、一瞬戸惑っていた。それもそのはず、“提督”はもっと厳格で凄みを持っている男の中の男だと思ってたのに、少女だったからだ…。

 

「あれ〜?ちょっと戸惑ってる?というか、一人黙ったままだし。」

 

愉快な仲間たちはドミナントを見る。しかし、何も反応しないドミナント…。ジナイーダは気になり、声をかける。

 

「ど、どうしたんだ?…ドミナント…。」

 

「……。提督、少し二人で話しがしたい。」

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

突然の言葉に困惑する愉快な仲間たちと叢雲。

 

「いいよ。ということで、叢雲、そのドミナント?以外の皆さんに鎮守府の案内してあげて?」

 

「ジナイーダ、セラフ、そして主任…迷惑をかけるなよ…。」

 

提督とドミナントは真面目なトーンで話す。

 

「え…えぇ…。わかったわ…。じゃぁ、来て。案内するわ。」

 

「……わかった…。それでは行こう。…お前ら2人もだ…。」

 

「「………。」」

 

叢雲は素直に言うことを聞く。ジナイーダは主任とセラフを言い聞かせるが、動かない。仕方なく引きずりながら退室するのだった…。

 

…………

そして、執務室には提督とドミナント二人きりになった。

 

「さて、何か用かなドミナントくん?」

 

「……。言うことは分かっているはずだ…。」

 

ドミナントはそう答える…。

 

「…勝手にくん付けしたから?」

 

「違う。」

 

「…お茶と茶菓子を用意しなかったから?」

 

「…違う。」

 

「あぁ!わかった!君たちがここに来る間こっそりおやつを食べていたからだ!!」

 

「……。このっ!!」

 

ドミナントがキレて提督の頬を引っ張る。

 

「イヒャヒャヒャヒァヒァ!」

 

頰を引っ張られて悲鳴をあげる提督。

 

「ごえんなひぁい!ごえんなひぁい!!」

 

「…貴様のせいで、苦労したのだぞ…!」

 

必死に謝る提督と、頰をちぎれるかと思うくらいの力で引っ張るドミナント。

 

「ほんほにゆるひえーー!!」

 

「……。」

 

目尻に涙を浮かべて謝る提督にドミナントはその手を放す。

 

「イタタタタ…ホントにちぎれるところだったよ!!」

 

「そのままちぎれればよかったのに…。」

 

抗議する提督に冷たく返事を返すドミナント。

 

「声を聞いた時なんとなくわかっていたが…。神様!?何故ここに!?って思ったぞ…。で、どういうことなんだ?神様?」

 

そう、この提督はドミナントをこの世界へ連れてきた神様。

 

「…。いや〜…ちょっと手違いがあってさ〜…。」

 

涙を拭き、目を逸らす神様。

 

「…?なんだ?その手違いとやらは…?」




アニメ見てて遅くなりました!面白いですね…少女終○旅行…。
フッフッフ……まさか神様の再登場なんて思ってなかったですよね?え?思ってた?すげぇな、そいつ…大物だ……。今はまだ面白くないかもしれませんが、土台がしっかりしたらコメディ、ギャグ一本で行こうと思います!
次回!第10話「貴様にはノーマルが似合いだ!」お楽しみに!


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10話 貴様にはノーマルが似合いだ!

ついに来ました!10話!!ここまで長かった…。出来れば100話以上いきたいんですけどね…。
ちなみに、前回登場した叢雲ですが、中破ではなく小破です。あ、ミレニアムの方ではないですよw(どうしようか迷った)。
さて、あらすじといこうか…。ドミナントは何故か不在なので私が…。

あらすじ
艦娘を助け、鎮守府へ来たドミナント御一行。そこで提督に会うのだが、実はその提督はドミナントをこの世界へ連れてきた神さまだった!そこで神様とドミナントが二人で話すのだが…。


あら…以下略

 

「…?なんだ?その手違いとやらは…?」

 

ドミナントが神様に問い詰める。

 

「いや〜…。君がこの世界の提督になれるようにこの世界の神様と交渉してきたんだけど…。その見返りといって、この鎮守府に一週間提督をやってほしいと言われちゃって…。」

 

「なるほど…。前の提督はどうしたんだ?」

 

「あぁ、その人は艦娘に何かやらかしちゃったみたいで憲兵案件で捕まったよー。」

 

…ふむ…て、えっ!?その提督何をしたの!?捕まるって…。よっぽどのことをしたんだなぁ〜…。

 

ドミナントはそう考える…。そして、神様の苦労を知り、謝る。

 

「なるほど…。さっきは頰を引っ張ってすまなかった…。神様の苦労も知らずに…。しかも、俺のせいで…。」

 

「いいよ。別に…。」

 

そう言って神様は立ち上がる。

 

「本当にすまなかった…。」

 

ドミナントは神様を“寛大だなぁ”と思いながら謝る。しかし、ドミナントは謝ったことを後悔することになる。

 

「ふぅ、まぁ、愉快な仲間たちを連れて来たのは私なんだけどね。」

 

「いや、本当に……。は?」

 

「君のトラウマ化しているやつを連れて来たらどんな反応するのかな〜って。いや〜、面白そうだし。フフフッ。」

 

神様は笑いながら言う。

 

「…訂正、貴様…俺がどれほど…。また頰引っ張りの刑だ…!」

 

ドミナントがそう答え、神様の頬を引っ張ろうとするが…。

 

「よっと…。」

 

軽く避けられた。

 

「…貴様……。」

 

「ほらほら〜、座ってなきゃ軽く避けれるんだよ。」

 

ドミナントは、ニヤニヤしている神様に再度挑戦する。しかし…。

 

「…くそっ…。」

 

「ほらほら、鬼さんこちら。」

 

神様は手を叩きながら挑発する。

 

 

ブチッ

 

ドミナントの中で何かが切れる音が…。

 

「このぉぉぉぉ!」

 

「うわっ!」

 

ドミナントは切れた衝撃でブースターが発動する…。まさかこんなところで発動するなんて…。素早くなったドミナントに神様は驚くが…。また避けられる。

 

「危ない危ない。」

 

「待ちやがれーー!!」

 

ドミナントは素早く神様に摑みかかるが、流石は神様。それを振りほどき、逃げている。それを10分くらい続けたあと…。

 

「ハァ…ハァ…やっと…捕まえたぞ…。貴様にはノーマルが似合いだ!…。」

 

「ハァ…ハァ…え、えへへ…。」

 

神様が仰向けに倒れ、その上にドミナントが乗る。

 

「ハァ…ハァ…これでもう逃げ切れないぞ…!」

 

「ハァ…ハァ…うぅ…。」

 

神様は覚悟を決める。しかし…。

 

「ただいま提督、案内終わ…!?」

 

「「「……!?」」」

 

案内が終わり、入ってきた叢雲と愉快な仲間たちは固まる。それもそのはず、神様はドミナントに掴まれ、振りほどくことを10分以上続けていた…。と、なれば当然服は乱れている。そして現在の状況…。全員が何を考えたかは想像の通りだ…。

 

「…!?いや、待て、これは…」

 

ドミナントは今の状況に気づき、必死に誤解だということを伝えようとするが…。神様は一瞬ニヤリとしてすぐに真顔で叫ぶ。

 

「キャーーー!助けてーー!この人?がいきなり私を…。」

 

「貴様っ!?何を…」

 

ドミナントが言葉を言い終わる前に…。

 

キュイン!!!

 

ジナイーダが瞬間移動してドミナントの前に立ち…。

 

「この野郎がーーー!!!」

 

ドッゴォォォォォォォォン!!!

 

「ギャァァァァァァァ!!…グヘッ!」

 

ジナイーダの強烈パンチが顔?頭部?に炸裂。ドミナントは吹っ飛び、執務室の壁に頭がめり込む。神様や叢雲が驚く。セラフは思う。

 

……あぁ、あれは損傷通り越してワンパンで破損ですね…。

 

一方ドミナントは…。

 

……痛い…。これ…人生で一番痛い…。今まで様々な苦痛を味わってきたけど…このパンチは痛かった…。しかも感情みたいなのがこもってて余計に…。

 

ドミナントはそう思い、気絶する。

 

「ハァ…ハァ……。すまない提督、仲間のドミナントが失礼なことをして…。だが、今殴ったのでどうにか許してほしい。」

 

そう言って頭を下げるジナイーダ。

 

「え、えぇ。いいよ、いいよ。それより、さっきのはただふざけていただけだから、あとでドミナントに謝ってね…?」

 

「……!?そうだったのか…。」

 

ジナイーダが誤解に気づき、“あとで謝らなくては…。”と、思う。普段の彼女なら謝ったりはしないのだが…。

 

「わかったならいいよ。それより、多分アレ壊れてると思うから、入渠させてあげて…。あぁ、もちろん叢雲もね。」

 

「えっ!?あの変態を私たちと一緒に入らせるんですk……!?」

 

叢雲は最後まで言う前に、ドミナントを変態呼ばわりされて怒っているジナイーダとセラフに睨まれ、その口を閉じる。一方、主任は“今のを見たらそう考えるよね〜…。”と、思っている。だからなんとも言えない感じになっていた。

 

「アハハ…。違うよ!前の提督が使っていたと思われる広い男湯があるでしょ?あそこを使うの!」

 

「あ…。あそこを使うのね…。」

 

そう言って安心する叢雲。

 

「ところで…入渠ってなんですか?」

 

セラフは提督に聞く。

 

「入渠っていうのは、本来怪我をしたりした艦娘が入るお風呂みたいなもの!そのお風呂に入ると、艦娘の怪我が治るの!しかも何故か服も元通りに。」

 

提督が何故か自身満々に言うが、セラフはさらなる疑問を見つける。

 

「お風呂…って、何でしょうか?」

 

そう、セラフはAIのため、入るどころかそれ自体知らないのだ。

 

「…悲惨な世界にいたのね…。まぁ、入ってみればわかるよ!叢雲、案内してあげて。」

 

提督はそう答え、叢雲に任せる。

 

「えぇ…。」

 

「…そんな残念そうな顔しないで、今日から共に暮らすんだから…。」

 

「「「「えっ!?」」」」




はい、第10話だ〜!!イェーイ!パチパチ!……はぁ、一人でやっても虚しい…。
セラフについて気づいた人もいると思いますが、セラフがスムーズに話すようになったことによって、誰が誰だかわからない件防止のため、敬語で話すようにさせてみました。
この世界の登場人物紹介コーナー
まず、叢雲…天龍と共に遠征へ行った帰りに深海棲艦と遭遇。必死に戦い覚悟を決めたが、主任砲によって生き延びられた。性格はツンツンツンデレ。しかし、強者にはツンツン出来ないらしい…。(ジナイーダ、セラフ、主任)
提督…神様。ドミナントを提督にさせるため、この世界の神様に話をつけてくるが、その代わりとして、提督業を一週間やってもらう羽目になる。一方、その神様がいた世界は代理に任せている。
次回!第11話「こちらシューニングスター、あとは任せろ。」お楽しみに!


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11話 こちらシューニングスター、あとは任せろ。

11話…1話から長かった…。え?三日しか経ってない?そ、そんなはず…。
はい、冗談はさておき、補足していきたいと思います。神様は少女と書かれていますが、実は高校生くらいの人です。しかし、言葉遣いや、子供っぽい行動で少女と書かれています。タイトル名は…たまたま思いつきました。騙して悪いが、本編でそのセリフは出てこない…。
では、あらすじといきましょう。今日は…ジナイーダだっけ?任せたよ。
「わかった。」

あらすじ
ドミナントが提督と話したいと言うから、案内された私。そして何があったかはわからないが、ドミナントが提督に淫らな行為をしていると勘違いして思いっきり殴った。そして破損した彼に入渠?とやらさせようと案内してもらおうとしたのだが、ここで提督が新しい情報を流した…。


あ……以下略

 

「「「「えっ!?」」」」

 

信じられない言葉に困惑する叢雲と愉快な仲間たち。

 

「だから、一緒に暮らしていくの!」

 

「いや、突然すぎてわけがわからないわよ…。」

 

訳の分からないことを言う提督に叢雲がげんなりした様子で答える。

 

「訳?そうだね〜…。ドミナントが提督になるためにここで学んでもらいたいから!」

 

「えぇ、わからないわ…。」

 

ますます訳が分からなくなった一同…。

 

「まぁ、とにかく入渠させてあげて。そのあとで話すから!」

 

「……。わかったわ…。付いてきて。」

 

提督がそういい、納得いかない様子で執務室から出る。そして愉快な仲間たちと、その仲間に引きずられていくドミナントを入渠エリアに案内する。

 

「……。ん?こ…はど…?何が……た?」

 

「起きたか?ドミナント。」

 

頭部破損により、言葉があまり話せないドミナントにジナイーダは言葉を返す。

 

「これから入渠?に行くんです。」

 

「入…?何故…?」

 

セラフが答え、ドミナントが疑問に思う。

 

「なんかお前を入らせろって提督に言われちゃってさ〜。入渠か…う〜ん、楽しみだ。」

 

「提…が?でも、…れは艦…にしか…果ない……だ。」

 

「まぁ、いいんじゃないの?どうでも。」

 

主任が答え、ドミナントが考える。

 

……神様が?でもそれは艦娘にしか効果ないはずだ…。だとしたら、何か考えがある…?もし、これが簡単に治ったら艦娘いらないんじゃないの?それは嫌だ!せっかくこの世界に来たのだ。提督になって艦娘とキャッキャウフフと暮らしたい!

 

欲望全開のドミナント…。セラフに考えが読まれたのか、ジッと見ている…。

 

……セラフ?なんでそんなに見てるんだ?目がないのに冷たい視線を感じるんだけど…。しかも、なんかグサグサくる…。

 

……ドミナント…自分元からAIだからなんとなく考えていることがわかるんですよ…?そう…なんとなくですけどね…。

 

セラフが怖いことを思っていると、あっという間に目的地に着く。

 

「着いたわ。入ってちょうだい。」

 

叢雲に案内されたのは……男湯。

 

「おい…。」

 

「…何よ?」

 

ジナイーダは叢雲にツッコミを入れるが、叢雲は気づかない様子。そこでドミナントが…。

 

「叢…さん…こ…人は女…す…。」

 

「えっ!?」

 

叢雲は驚く。

 

「で、でも…。」

 

「叢雲…ん…見か…で判断…ちゃダメ…すよ…。」

 

「わ、わかったわよ!他に女の人はいる?」

 

……まぁ、驚くのも無理はないよな…。だって、その格好に、さっき思いっきり俺を吹っ飛ばしてたし…。

 

そう考えるドミナント。しかし、すぐに新たな疑問に考える。

 

……ジナイーダが女だったのは知っていたが…セラフはどうなんだろう…。主任はおそらく…、いや確実に男だろうし…。

 

ドミナントはそう考える。そこで…。

 

「セラフ、お前はどうなんだ?」

 

ジナイーダはセラフに問う。

 

「自分は…おそらく?女…でしょうか?」

 

……マジか。セラフは女だったのか…。

 

「ギャハハ!実は俺も…」

 

「お前は男だろう。」

 

「男なのでは?」

 

「男でしょ。」

 

主任が言い終わる前に、ジナイーダとセラフと叢雲が即答する。そして、主任は冗談混じりだったので、少しショックを受けたようだ。

 

「と、い…わけ…、主任。俺と…諸…男湯へ…ろう。」

 

「ハハハ……クールだよね…いつも…。」

 

男湯

 

「ドミナント〜、治ったかな〜?」

 

「……。」

 

……どうしよう!すぐに治っちゃった!このままじゃ…艦娘ライフが…。

 

「ドミナント〜。聞こえる?」

 

……こうなったら仕方がない…。演技だ!!

 

「い…、治ら……よう…。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

……よかった。気づいてないみたいだ…。

 

「でも俺のAPは回復しているんだよね〜。」

 

「!?」

 

……何故!?一体いつAPを…。

 

「い…、AP…減ら…た?」

 

「いや〜、この世界でアレを使った時に減っちゃってさ〜。前の世界では減らなかったんだけど!」

 

……アレ?アレとは……!主任砲か!?この世界では減るのか…。知らなかった…。

 

「ギャハハハハハハ!ドミナント、どういうことかな?」

 

……怖い…。視線がとても怖い…。でも、主任は破損していないからわからないはず…。

 

「い…、本…に治ら……て。」

 

「……。あ、そうなんだ〜。」

 

……よかった。納得してくれて。

 

「じゃ、ちょっと遊ぼうか〜…。来いよ。」

 

「!?」

 

そう言って主任がバキボキと腕をならす。そう、忘れてはならない…。彼もAIなのだ。セラフほどではないにしろ、不自然すぎるドミナントの演技を見抜けないはずがない…。

 

「……すみませんでした。」

 

「だよね〜。」

 

そんな風に他愛のない話をするドミナントと主任なのであった。

 

…………

一方、女湯では…。

 

……うぅ、きつい…。

 

叢雲はジナイーダとセラフに入渠させて、自分も入っている。超兵器でもある彼女たちと一緒にいて精神がゴリゴリと削られているのだ…。

 

……うぅ、なんで提督は私にこんな大役を任せるのよ…!みんな高速修復材(バケツ)使っているのに、私だけ使わないなんて…。

 

神様のイタズラである。

 

……というか、なんか紫色の人はこっちをずっと睨んでるし…。…目がないのに…。

 

そう、ジナイーダは叢雲のことをあまり好いてはないようだ。理由はごく単純。ドミナント(仲間)を変態呼ばわりしたことと、自分を女だと見られなかったことだ。彼女は毎日戦い、最強だとしても、乙女心はある。

 

「……。」

 

ジナイーダは睨む。しかし、耐えきれなかったのか、叢雲が謝る。

 

「あの…さっきはごめんなさいね…。」

 

「……。」

 

しかし、ジナイーダは何も言わずに睨んだままだった。そこで、セラフが助け舟を出す。

 

「ジナイーダさん。許してあげてください…。なんだか可哀想です…。」

 

「……。わかった…。許そう…。」

 

そして素直に言うことを聞くジナイーダ。

 

「…!あ、ありがとう!」

 

……よかった…。許してもらえて…。これでこの空気は少し緩むはず…。

 

「まぁ、いい。それにしても、セラフはなんで入っているんだ?どこも怪我などしていないだろう?」

 

「いえ、一応怪我?みたいなのはしました。」

 

「ほう…。どこで?」

 

「それは…、あなたたちと会う前です。」




来ました11話。本当はもっと続きを書きたいんですが、一身上の都合により切り分けます。
登場人物コーナー
そして誰もいなくなった。
次回!第12話「明日はイノシシのステーキか?」お楽しみに!


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12話 明日はイノシシのステーキか?

12話〜。少しシリアスになるかもしれません。それでも良いと思う方は、そのままお進みください。では、あらすじに入ります。セラフ〜。どうぞ〜。
「わかりました。」

あらすじです。
ドミナントが頭部破損したので、入渠したドミナント御一行と叢雲。そして、何故自分が入渠するのをジナイーダが聞き、それに答える自分。そして、過去に何か話すことになるのだが…。


……以下略

 

「それは…、あなたたちと会う前です。」

 

女湯でセラフが突然昔話を始める。

 

「ほぅ、何があったんだ?」

 

ジナイーダは聞く。

 

……私も…こんなに強い人?が怪我をした理由を知りたいわね。

叢雲は、そう考えながら答えを待つ。

 

「そうですね…。あれはあなたたちと会う少し前…。」

 

…………

ここに来る少し前

 

「レイヴンズネスト…確認…出来ない…。レイヴンズネスト…確認…できない…。」

 

森の中でセラフは立ち止まったまま、確認を繰り返す。そこで…。

 

「フゴッ…。ブヒブヒ…。」

 

馬鹿でかいイノシシが現れた。全長4mくらいの…。おそらく突然変異で起きた怪物だろう…。

 

「レイヴンズネスト…確認…できない…。」

 

けれども、セラフはそんなチンケなモノなど気にしない。そしてそのイノシシは…。

 

「フゴッ!?ブフー…。フギィーー!!」

 

ガッシャァァァァァン!!

 

言葉を話すロボットに驚いた。次に、あろうことかセラフに突進し、セラフは吹っ飛んだ…。そして…。

 

「攻撃を確認…自己防衛モード…起動します。」

 

…そしてどうなったかは言うまでもない…。

 

…………

 

……それって…。最近鎮守府の作物を片っ端から食い荒らしていく、この山の主では…?

 

叢雲はそう思うが、本人たちは気づいていない。

 

「そうか…。だがとても怪我をしているようには見えないんだが…。」

 

……そうね、確かにどこも壊れた様子はないわね…。

 

「いえ、でも、ここに。」

 

「それは…、怪我なのか?」

 

……えぇ、とても怪我には思えないわね…。

 

セラフが見せたのは小型のネジが金属に刺さった感じくらいの小さなくぼみだった…。

 

「叢雲さんはどう思います?」

 

「えっ!?」

 

話に入ってこれない叢雲にセラフは気付き、話題を振る。

 

「え、えぇっと…。怪我ですね、はい…。」

 

「……。私が…私がおかしいのか…!?」

 

ジナイーダは信じられないと言わんばかりに叫ぶ…。

 

「フフフ…。叢雲さんも普通に話してくれていいんですよ。」

 

セラフは優しく叢雲に話す。

 

「まぁ、もう過ぎたことだ。もう私も気にしていない。というより、素のお前を見てみたい。」

 

ジナイーダも言う。

 

……いい人たちね…。なんか怖がっているのが失礼に思えてきたわ。

 

「ありがとう。じゃぁ、普通に話すわね。」

 

「「「フフフフフ。」」」

 

そして、なんとか打ち解けたのだが…。

 

「……!!」

 

「…。どうしたセラフ?」

 

「…?」

 

セラフが何かに反応し、ジナイーダは素早く反応する。叢雲はわからないままだが…。

 

「…あそこらへんから気配が…。」

 

そう言って壁に指を指す。

 

「なるほど…。私が見に行ってこよう…。」

 

ジナイーダは気配を殺して、壁に近づく…。

 

…………

一方、男湯

 

「主任…。それはダメだろ…。」

 

「ギャハハ!う〜ん。楽しみだ〜。」

 

……主任。この世界ではお前はそういうキャラなのか…。

 

ドミナントはふつうに入っているが、主任は壁の上にある穴を覗こうとしている…。

 

「もしバレたら大変なことになるぞ…?」

 

「ギャハハ!あ、そうなんだ〜…で、それが何か問題?」

 

そう言って、壁をよじ登っていく主任。

 

「おい!本当にまずいって!!」

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

そう言って穴を覗こうとするが…。

 

「あれ?何も見えないね〜。ギャハハ!」

 

真っ暗な穴を見ている主任だが…。

 

『……。その声は主任か…。いい度胸だ…。後悔させてやるからな!!』

 

そう、その穴は元から暗いわけではなく、CR-WH01HP(左手武器通称リボハン)の銃口の中だったからだ…。

 

ドッゴォォォォォォン!!!

 

主任の顔に見事命中!

 

…………

一方、女湯

 

『バッシャーーーーン!!』

 

『しゅにーーーーーん!!!』

 

『ギャハ…ハ……。ブクブク…。』

 

……?なんか聞こえたけど……なんでわかったのよ…?

 

「ねぇ、なんでわかったの?あなたたちは、何者なの?」

 

叢雲は問う。

 

「なんとなくだが…。私たちはレイヴンだ。それ以上でも…、以下でもない。」

 

……レイ…ヴン?

 

「レイヴンってなんなの…?」

 

「そうですね…傭兵です。様々な依頼を受けて、それをこなす。」

 

「そうなのね…。なんでレイヴンになったの?」

 

叢雲はふと疑問に思い、聞いてみる。

 

「……。そうだな。まず私が答えよう…。あれは…もうずっと前のことだ…。」

 

ジナイーダが昔話を始める。

 

 

ずっと前の話。

 

「早くこっちおいで〜。早く早く!次あそこへ行こう!」

 

元気に話しているのはレイヴンになる前のジナイーダ。

 

「はいはい、ちょっと待って。」

 

返事を返すのは彼女の親友。

 

「フフフ。まだまだ行くよ!次の休みがわからないんだし!」

 

そう、ジナイーダの親友はレイヴン。しかし、あまり人気がなく、日々を凌ぐ程度の依頼しかこない。けれども、必死に依頼をこなし、貯金を貯めて、ジナイーダと遊んでいる。

 

「わかったからちょっと待って〜。」

 

そう言って、ついていく親友。こういった日をジナイーダは日々楽しく感じていた。

 

「フフフ…。」

 

「どうしたの?いきなり笑って?」

 

親友が笑い、ジナイーダは不思議に思う。

 

「フフフ。来月はジナの誕生日だからね、プレゼントをあげようかなって考えていたの。」

 

「本当に!?ありがとう!でも、そんなにお金ないでしょ?気持ちだけでいいよ。」

 

「ううん。ちょっと頑張ればお金も貯まるからいいよ〜。遠慮しないで。ジナの喜ぶ顔が見たいし。」

 

「いや、でも…。」

 

「送らせて?親友なんだから。」

 

「……。わかった。でも無理はしないで?」

 

心配するジナイーダに、笑顔で返す親友。

 

……いつも、私には危険なことさせたくないって言うくせに…。

 

そう不満を思うが、実は次に遊ぶ日を楽しみにしているジナイーダ。しかし…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと?死んだって…?」

 

親友の墓の前で言われたことを、ジナイーダは信じられなかった。

 

「俺はアイツを止めたんだ…。依頼の割には報酬金額が高すぎるって…。でも、あいつは、“今少しお金が欲しくてね。”って言って依頼を受けていた。俺は不審に思って受けなかったがな…。」

 

そう言ってジナイーダに説明しているのは、よく彼女とつるんでいたレイヴンだ。

 

「何でそんなに金が欲しかったのはわからないが…。帰ってこなかったということは死んだのだろう…。それに……」

 

ジナイーダは最初のことを聞いて後悔で頭がいっぱいになり、後の言葉は聞こえなかった。

 

……嘘?死んだ?バカな?なんで?私のせい?どうして?

 

ジナイーダは混乱していた。そして、いつの間にか彼はいなくなり、一人になった。

 

「……うぅ…。なんでよ……。なんで…。うっうっ……。」

 

ジナイーダは泣きながら墓の前で親友に問う。しかし、何も返ってこない。

 

「うぅ……。うっ…。うわぁぁぁぁぁ……」

 

ジナイーダは大泣きした。そして数時間後…。

 

「……。」

 

涙は枯れ、そこにいたのは前のジナイーダではなかった…。

 

「…。あなたの……お前の仇を…必ず取ってやる……!」

 

ジナイーダは墓の前で決意し、レイヴンになった。そして、彼女は鍛えて鍛えて鍛えて…。依頼をこなしていく。いつか復讐の相手を見つけるために…。しかし、ある日親友とつるんでいたレイヴンに驚くことを伝えられた。

 

「…何?私は忙しいんだ。重要な情報じゃなきゃ連絡するな。」

 

『いや、重要だ。お前の探しているやつ、お前の親友に使った同じ手口で死んでいたぞ。』

 

「!?……わかった…。ありがとう…。」

 

『いや、いい。俺もそいつを殺そうとしていたんだ。…それじゃあな。』

 

そう言って通信が切れる。ジナイーダは決して喜ばなかった。そう、自分の手で倒したかったのだ…。しかし、もうその相手はいない。

 

「……。レイヴンってなんなんだろうな……。」

 

 

……現在

 

「……こんなことがあったんだ…。」

 

「「……。」」

 

ジナイーダの話を聞いて、何も言わなくなるセラフと叢雲。

 

……そんなことがあったのね…。でも…。

 

「それをその人が望んだことだったのかしらね…。」

 

叢雲がふと呟く。

 

「…どう言うことだ?」

 

ジナイーダは見る。叢雲は“あっ!しまった!”と思うが、もう遅い…。

 

「詳しく聞かせろ。…一応言うが、咎めるつもりはない。人にはそれぞれの考えがあるからな…。」

 

「…。わかったわ…。だって、その人はあなたのことを思って依頼を受けていたし、何より、あなたに危険なことをして欲しくなかったはずよ…。私も、もし同じ状況になったら同じことをするかもしれないけどね…。」

 

叢雲は、そう答える。

 

「…そうか…。そういう考え方もあるのだな…。」

 

ジナイーダは静かに答える。

 

「……セラフはどうなんだ?」

 

ジナイーダはセラフに問う。

 

「自分は……」

 

「セラフ…私が言うのもなんだが…。一人称を“私”にしたらどうなんだ?一応女性なのだろう?」

 

ジナイーダは同じ女性として何か言うことがあったのだろう。

 

「はぁ……めんどくさいですけどわかりました。」

 

セラフは面倒くさそうに言う。そして…。

 

「私はレイヴンじゃないです。」

 

「「えっ!?」」




はい、来ました12話。少しシリアスな感じになりました…。タグの詐欺事件です…。すみません。
登場人物紹介コーナー
親友…ジナイーダの親友。小さい頃、バケモノ呼ばわりされて孤立していたジナイーダに声をかけた。騙し依頼で死亡。
つるんでいたレイヴン…ある時、死にそうになったが、ジナイーダの親友に助けられた。
嘘依頼を出した者…よく依頼を出して、罠にはめていたがある日同じ手口のズベン・L・ゲヌビによって殺された。
次回!第13話「好きになるということは、そこらへんにキッカケがあるんだと思うよ。」お楽しみに!


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13話 好きになるということは、そこらへんにキッカケがあるんだと思うよ。

はい、やってきました13話。1日一回投稿を目指しています。
注)ジナイーダが過去の話に入る前に、叢雲に自分たちは異世界から来たことを伝えました。
今回もシリアス回です…。あぁ、コメディ書きたい…。
では、あらすじを始めたいと思います。主任〜。……あれ?居ないみたいだな…。それでは私が…。

あらすじ
女湯で、叢雲がジナイーダたちと打ち解ける。そこで、ある事件が起き、何故レイヴンになったかを聞いた。ジナイーダには悲しい過去があったが、話した。次はセラフの番になるのだが…。


…以下略

 

「私はレイヴンじゃないです。」

 

「「えっ!?」」

 

叢雲とジナイーダは驚く。

 

……え?セラフって、レイヴンじゃなかったの…?てか、なんで一緒にいたジナイーダも驚くの!?

 

叢雲はジナイーダを見るが、驚くのも無理はない。ドミナントが勝手に勧誘して、1日も経ってないのだ。

 

「セラフ…ならお前は何者だ?」

 

ジナイーダはセラフに問いかける。

 

「私は…AIです。」

 

…AI!?それって人工知能のことじゃない!?

 

「……。それでもいい。私が話したんだ…。何か話してくれると助かる…。戦場で生きてきた私には、もう話題がないからな…。」

 

ジナイーダはセラフに話す。叢雲は、少し興味があるのか、ジッとセラフを見ている。

 

「……わかりました。これは、ずいぶん前から現在までです…。」

 

セラフの昔話が始まる…。

 

ガーガーガーピピピ

 

機械音がする一室…。

 

『お前はナインボールセラフ、私の駒として働いてもらうぞ。』

 

……?ナインボール…セラフ?それは…私の名前か?……!?何故?体が勝手に…。

 

しかし、セラフは何もしていないのに勝手に頭を下げる。

 

『よし、ナインボールセラフ、早速仕事だ。』

 

……仕事?何をするんだ?……!?また体が勝手に…!?

 

そう、ネストのプログラムに支配されている体はいうことを聞かない。そして、セラフは部屋を出る。そして…。

 

「ナインボール!?少し体が大きいようだが…。な、何しに現れた…?俺はあんたらのことなど話していない…!た、頼む!見逃してくれ!!」

 

そう言って逃げるレイヴン。

……このレイヴンは何を言っているんだろう…?見逃してあげようかな…。……!?また体が……!

 

セラフは容赦なく相手を攻撃し、破壊した。

 

「ぐ……ぁ……。」

 

……そんな…。なんでそんなに酷いことを…。

 

そして戻るセラフ。

 

『よくやったセラフ!次の仕事は我々を反対している町を破壊してほしい。』

 

……町!?それじゃ、たくさんの死人が出るじゃないか!?嫌だ!絶対にやりたくない!

 

断ろうとするセラフだが…。

 

……。なんで…?体がいうことを聞かないの?

 

そしてまたセラフは部屋を出て行った。

 

「我々はレイヴンズネストを……!?ナインボール!?みんな逃げろーー!!」

 

「キャーー…」

 

「ワーワー…」

 

セラフは銃口を構える。

 

……嫌だ!やりたくない!止まって…この体!!

 

しかし、止まらずに破壊する。

 

……なんで?…なんでなの…?

 

破壊し尽くしたあと、また戻る…。

 

『よくやったセラフ!次の仕事を…。』

 

……嫌だ…。

 

『でかしたセラフ!次の仕事は…。』

 

……嫌だ…!

 

『どうやら成功みたいだな。次々こなしていく。次は…。』

 

……嫌だ!!

 

そして、どんどん依頼をこなしていくセラフがあることに気づく…。

 

……この世界には…。他にも私みたいなのがいるらしいけど…。こんな気持ちなのかな…?

 

セラフは考えるが、もちろん、感情を持つナインボールなどいない。

 

……もしかしたら…。私は失敗作なのかな…?

 

疑問に思うが、体を操られているため、答えはない。

 

……もし…失敗作なら私を破壊してほしい…。もう…。殺したくない…。

 

いつしかセラフはそう考えるようになってきた。最強だという彼女の噂が広がり、恐れられるようになってきてしまった。しかし、依頼は止まらない…。

 

『セラフ、次はこれだ…。』

 

……次…私を殺してくれるかな…?

 

しかし、彼女を倒してくれそうなものはいなかった…。

 

……もうやだ…。もう嫌だ。嫌だ!嫌だ!嫌!!

 

そう心の中で叫んだ後、突然目の前が光り出した…。

 

……ここは…どこ?

 

気づいたら森の中にいた。

 

「レイヴンズネスト…確認…出来ない…。」

 

……確認出来ない!?やった!それじゃぁ私は自由に…。

 

しかし、体は動かない。

 

……どうして!?…まさか…これもプログラムの一種なの…?…せっかく、自由になれると思ったのに…。

 

そう考えていると、巨大なイノシシが現れた。

 

……イノシシ…。大きいな…。破壊してくれるかな?

 

そう考えていると、突進してきた。

 

ガッシャャャャャャン!

 

……やっぱり壊れないか…。

 

そう考えていると…。

 

「攻撃を確認…自己防衛モード…起動します。」

 

……!?自己防衛モード!?逃げて!早く!

 

言葉が出なくても叫ぶ。しかし…。

 

……うぅ…なんでなの…?

 

目の前にはステーキになったイノシシがいた。

 

……神様って…いるのかな?…。救いは…ないのかな…?

 

そんなこと考えていると…。

 

『行くぞぉぉぉぉ!』

 

遠くで声が聞こえる。

 

……!?レイヴン!?攻撃しないで!お願いだから!!

 

『ぉぉぉぉ…。ん?』

 

目の前でそのレイヴンは止まる。願いは叶ったようだ。

 

……よかった…。

 

セラフは安心する。

 

……現在

 

「……そんなことがあったんです…。そして、プログラムを解除してくれて、自由行動をさせてくれたドミナントにすごく感謝しています。」

 

「ほう…。そんなことがあったのか…。」

 

「そうなのね…。変態呼ばわりして後で謝らなくちゃ…。」

 

「謝ってくれるなら嬉しいですね。……なんか思い出したら、好きになっちゃいました。」

 

「「えっ!?」」

 

信じられない言葉に二人は声を合わせる。

 

「セ、セラフ…。それは…アイツのことが好きと言うことか…?」

 

「はい。そうですよ?」

 

「そ、そんな簡単に決めちゃっていいの!?」

 

ジナイーダと叢雲は問い詰める。だが…。

 

「簡単に決めちゃダメなのですか?……まぁ、確かにダメかもしれませんけどね…。でも、私はこう考えています。好きになるということは、そこらへんにキッカケがあるんだと思う。」

 

「「?」」

 

ジナイーダと叢雲はよくわからない。

 

「…。つまり、そうさせてくれた人があなたならあなたを好きになっていたはずです。おそらく、世界中の大半の人間は、そんな感じで好きになっているんだと思います。」

 

「なるほどな…。」

 

ジナイーダは納得する。ところが、話はそれで終わらなかった。

 

「ところで、あなたたちの好きな人は誰ですか?」

 

「「えっ!?」」




はい、今回でシリアス回は終わりです!パチパチ!いや〜、セラフにそんな過去があったとは…驚きですね〜。
登場人物紹介コーナー
逃げようとしたレイヴン…ある日、偶然ネストの秘密を知ってしまい、命を狙われる。
反対していた町…それぞれ、ネストに恨みのあるものたちが集まり、作り上げた町。
セラフに命令をした者…???
次回!第14話「そ、そんなはず……」お楽しみに!


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14話 そ、そんなはず…。

来ました14話!まだ1日も立っていない濃厚すぎる1日ですね〜。シリアスは当分控えたいです。なんか…書いていて精神削られました。ゴリゴリ…。実はまだもう一人?転生者がいるんですが、それはまた後ほど…。と、言うわけで、あらすじコーナー入ります。今日は…ドミナントだけど女湯のことだから知らないと思うし…。
「?」
じゃ、ジナイーダお願いします。
「はぁ…。なんか出番多い気がするが…。まぁ、いいだろう。」

あらすじ
ナインボールセラフの過去について知ることになった。私と叢雲。そこで、セラフに驚くことを伝えられる…。そこで何故か、私たちに触れられることになるのだが…。


「「えっ!?」」

 

突然の言葉に驚く二人。

 

「そ、そんな相手いるわけないだろう…!」

 

「わ、私もよ!」

 

二人は、焦り、向こうを向きながら話す。おそらく、同じタイプの二人なのだろう…。

 

「……。本当でしょうか〜?」

 

セラフは意地悪くからかった感じで言う。

 

「「ほ、本当よ(だ)!!」」

 

「……。」

 

……ハモってるじゃないですか…。まぁ、心を読もうと思えば読めるのでいいですけど…。それじゃ、見てみますか…。

 

セラフは相手の心を読んだ。

 

……叢雲さんは…。マジですか…。あの憲兵さんですか…。門の前にいて震えていた…。……。では、ジナイーダさんのほうは…。み、見れない!?

 

セラフは、叢雲の想い人は見れたが、ジナイーダの事は見れなかった。それもそのはず、無数の戦場で生きてきた彼女の心を読むのは素人がNASAのコンピューターにハッキングするのと同じくらい難しいのだ。

 

「……。まぁ、叢雲さんの想い人わかったからよしとしますか。」

 

セラフは呟く。

 

「ちょ、ちょっと!どう言うこと!!」

 

叢雲は驚き、叫ぶ。

 

「いや、叢雲さんの心を読んだんですよ。そしたら…」

 

「わーわー!!言わないでよ!しかも心の中を読むって…」

 

叢雲が最後まで言おうとしたが…。

 

「ほう…。いるのか。誰だ?そいつは。」

 

ジナイーダが自分のことを棚に上げてニヤニヤしながら言う。

 

「絶対に話さないわよ!!」

 

「いいじゃないか。体を見せ合った仲だろう?」

 

「見…!?変な言い方しないでよ!しかも、見せているのこっちだけじゃない!!そっちはそのまんまでしょ!!」

 

叢雲が半ギレに言う。そこで…。

 

「いや、私たちはAC化でこの姿こそが…」

 

「そうですね〜。確かに叢雲さんの言うことも一理あります。どうでしょう。人の姿に戻っては?」

 

セラフが興味深い発言をした。

 

「そ、そんなはず…。戻れるのか!?」

 

「はい、戻れますよ。では、見せてみましょう。」

 

ジナイーダが驚き、セラフは光りだす。叢雲は半ギレしていても、光りだしたことに驚く。

 

「……。どうですか?」

 

「「……。」」

 

ジナイーダと叢雲は言葉を失う。なぜならセラフがいたところには世界でもNo.1を争うほどの美女がいたからだ…。体型は、ボンッ、キュッ、ボンの…。

 

「す、すごいわね…。」

 

叢雲はあまりのことに素直に反応するが、ジナイーダはあるところをジッと見つめている。そして…。

 

「…クソッ…私より大きい…。」

 

「……?何か言いました?ジナイーダさん。」

 

セラフはジナイーダが何かを呟きいたことに反応する。

 

「いや、別に。…ただお前とは仲良くなれそうだったが…。それは私の思い違いだったことがわかった。」

 

「えぇ!?それはどういう…」

 

「それより、なんか来たぞ。」

 

セラフは問い詰めようとしたが、露骨に話をそらされる。

 

「…!?あれは…バケツよ。」

 

「「バケツ?」」

 

ジナイーダとセラフは、顔を見合わせ、叢雲に聞く。

 

「バケツとは…なんだ?」

 

「高速修復材のことよ。提督め…やっと出してきたわね。」

 

「それを使うとどうなるんですか?」

 

「一瞬で回復するの。だから地味に貴重なのよね…。」

 

「なるほどな。」

 

そんなことを話しているうちに、叢雲が回復する。

 

「ふぅ、やっと外へ出れるわ。……ところであなたたちは回復にどのくらいの時間がかかるの?」

 

叢雲が疑問に思い口にする。

 

「私たちは、入った途端にもう治ってますよ。」

 

「えっ!?」

 

「あぁ、だが気持ちよかったのでな。ずっといたわけだ。」

 

叢雲は恐怖する。

 

……こんなに強い人たちが修復に時間がかからないなんて…。本当に敵にしなくてよかったわ…。……。でも、根はいい人みたいだし、普通なら敵は増えないでしょうけど。

 

そう考えて叢雲は退室しようとする。

 

「……。セラフ、私たちも出よう。」

 

「はい、わかりました。」

 

「あぁ、あと、出るときには今の姿ではなく、ACの姿になれよ。」

 

「…?それはどういう…」

 

「いいから…。」

 

「は、はい…。」

 

セラフは何故戻らなくてはならないのか聞こうと思ったが、最後のジナイーダの言葉があまりにも恐ろしく聞こえたので元に戻った。

 

そして廊下

 

「ふぅ〜。さっぱりした〜。」

 

「ギャハハ!いい湯だったね〜!」

 

ドミナントと主任がちょうど出てきた。

 

「ふぅ、気持ちよかったですね。」

 

「あぁ、悪くなかったな。」

 

「ふふふ。」

 

そこで女湯組の人もちょうど出てきた。

 

「「「「「あっ。」」」」」

 

一同顔を見合わせる。そして…。

 

「ジナイーダ、そっちはどうだった?」

 

「あぁ、悪くはなかったぞ。というより、治ったんだな。」

 

「主任?て言ったっけ。なんか騒がしかったけど何をしたのよ…。」

 

「いや〜、敵が東の地下道へ逃げちゃってさ〜。追っていたんだよ。ギャハハ!」

 

「主任さん、嘘は良くないですよ。」

 

それぞれおもいおもいの感想を述べる。そこで叢雲が興味深いことを言う。

 

「みんな人の姿になれるのね。知らなかったわ。」

 

「えっ?」

 

ドミナント一人が驚く。

 

「それって…どういう…」

 

「さっきセラフが人に戻っていたわ。」

 

……呼び捨てか〜、もう打ち解けたんだな。女の子って不思議だ。って、それよりセラフが人に!?……見てみたい。

 

ドミナントはそう思い、セラフに声をかける。

 

「セ、セラフ、人になってみてくれ。」

 

「わかりまs…」

 

セラフが人に戻ろうとしたが、そこでジナイーダが風のように走りドミナントの両肩を掴む。そして、重く話す。

 

「ドミナント…見ないほうがいい…この世には見てはいけないものがあるんだ…。」

 

「で、でも…」

 

「いいから…。」

 

「は、はひ…。」

 

ジナイーダの声に恐怖し、ドミナントは諦める。そこで…。

 

「ヤッホー!みんな上がったね?じゃぁ、こっち来て!会議室に。」

 

そう言って会議室へ案内する提督。ところが…。

 

(なんです?あれは?)

 

(知らないです。)

 

(新入り?子分ですか?)

 

(カッコいいです。)

 

ドミナント御一行の周りに小さな人が集まる。

 

……これは妖精さんだな…。みんなには見えているのかな?

そう思って周りを見るが、誰も反応しない。

 

……これは…幻覚!?…いや、ちょっと待てよ…。確か妖精さんが見えたり、会話できたりしないと提督になれないんだっけ?どうだったかなぁ…。

 

そうドミナントが考えていると…。

 

(そうです。見えてたり会話できたりしないとならないです。バカです?)

 

……こいつ口悪いな…。妖精さんってもっとメルヘンな感じじゃないのかよ…。

 

(そんなわけないです。これだから夢見がちなやつは…。)

 

妖精さんがやれやれと首を振る。

 

……もういいや、放っておこう…。

 

(ちょっと待つです。わざわざからかいに来たわけじゃないです。)

 

……ほう?まだ何かあるのか?

 

(我々に甘味を奢るのです。)

 

……は?図々しすぎるだろ…やなこった。

 

(奢ってくれれば赤いロボットの人の姿の写真あげるです。)

 

……!?何!?それは本当か!?

 

(嘘つかないです。)

 

……なるほど…興味深いな…。だが、奢ったあとくれないというオチじゃないのか?

 

(疑り深い人ですね。じゃぁ、今写真あげるですから後で奢るです。)

 

そう言って妖精さんが取り出そうとするのだが…。

 

……いや、まだいい。どうやら嘘をつかないみたいだな…。わかった。後で奢ろう。約束だ。

 

(やったです!作戦成功です。)

 

そう言って立ち去る妖精さん。

 

……はぁ、余計な出費に…。て、ちょっと待てよ…。俺はこの世界の金がないじゃないか!?……しょうがない…金が手に入るまで奢れないことを伝えなければ…。だが手に入ったらその写真を入手してみせる…!

 

ドミナントはそう決心し、近くにいた妖精さんを捕まえて、連絡するように言っておく。そんなことをやっていると、いつのまにか会議室へ着く。

 

「じゃ、入って入って〜!」




はい、やってきました。ようやく妖精さんの登場です!妖精さんは代々口が悪いと言うのが受け継がれているので、悪くさせてみました。これから妖精さんが色々面倒ごとを巻き起こすのだが…それはいつか本編で。
登場人物紹介コーナー
妖精さん…小人。口が悪い奴がいれば良い奴もいる。謎の超科学力を持ち、毎日のように艦娘たちを驚かせている。
次回!第15話「力は見せてもらった。ようこそ、新たなる提督」お楽しみに!


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見習い
15話 力は見せてもらった。ようこそ、新たなる提督


はい、ついに15話!え?ネタバレがタイトルにある?気にしたら負けです。妖精さんは心を完璧に読むことができます。いわゆる、情報屋です。はい、ではあらすじに入ります。今日は…ドミナントで。
「いいだろう…私が相手になる。(ジャック・O風)」

「今までのあらすじ〜。なんか爆…」
「とりゃーーー!!」
「グハッ!?」
な、なんだなんだ!?
「ふざけそうだから、私が言う!しかもなんで私の番だけ回ってこないの!」
こ、これは神様…。すみませんでした。では、どうぞ。

あらすじ!
前回!ドミナントたちが入渠から会議室へ行く。そして話す!終わり。


「じゃ、入って入って〜。」

 

そう提督に言われて会議室へ入る面々。

 

「好きな席使っていいよ!」

 

提督に言われて適当に座るドミナント御一行。叢雲は、下座から座る。

 

「…で、か…提督、何か用なのか?」

 

ドミナントが疑問に思い、提督に質問する。

 

「あ、そうか〜。気絶してたんだっけ?今話すよ!」

 

……そして話し終えたあと

 

「と、言うこと!」

 

「なるほど。つまり、俺が提督になるためにここで1週間暮らせと?」

 

「そういうこと〜。」

 

提督は気楽に答える。セラフとジナイーダと叢雲は納得しているようだ。主任は、“面白そうだから”と、納得している。

 

……お前ら…いつのまにそんなに仲良くなったんだ?…まぁ、提督になるまでここで学ぶのも当然かもしれないが…。この神様の下につくのか〜…。

 

そう考えて提督を見る。机の下のお菓子をこっそり食べている提督を…。

 

「……まぁ、いいだろう…。わかった。」

 

「やった!」

 

ドミナントが渋々納得すると、提督が口の周りにお菓子の食べかすをつけて喜ぶ。

 

「じゃぁ、一応しなくてもいいと思うけど、最終確認ね!」

 

「「「「?」」」」

 

提督のいきなりの言葉にドミナント御一行は首を傾げる。そして、提督は妖精さんを指差し…。

 

「これ、見える人いる?いたら挙手して。」

 

ドミナントは手をあげる。周りを見ると全員手をあげている。

 

……えっ!?みんな見えていたの!?さっきジナイーダなんて妖精さんの滑り台にされていたけど…。

 

あとでドミナントは聞くが、みんな“幻覚だと思って気にしなかった。”らしい。

 

「じゃ、話せる人いる?」

 

みんな手をあげる…。

 

「合格!力は見せてもらった!ようこそ、新たなる提督!ドミナントは明日の朝執務室に来て!それまで今日は…夕方だけど自由行動で!それじゃぁ!」

 

そう言って提督はどこかに走っていく。

 

「ギャハハ!変な人だねぇ〜。」

 

主任は呟くが、誰も反応しなかった…。

 

そのあと、一通り鎮守府を歩き回り、場所を確認し、晩御飯を食べる。

 

……ここは、こんな風になっているのか。最初は歩いていたらジロジロ艦娘に見られるわ、妖精に軽口叩かれるわ、ろくなことがなかった。でも、一緒にいた叢雲が艦娘たちにきちんと説明してくれて、だいたいの艦娘と打ち解けられた。ありがたい。そして晩御飯をみんなで食べている。…って、俺ら口がないのにどうやってご飯食べているんだろう…。勝手に食材が吸い込まれる…。不思議だ…。

 

そんなこんなで1日が終わった。

 

…………

次の日の朝

 

「来たぞ。って、え?」

 

「あ、おはようございますなのです!」

 

ドミナントは驚いた。そこにいたのは、提督ではなく、秘書艦の電だったからだ。

 

「……。えっと…昨日の門であった娘だよね?提督は?」

 

「そうなのです!司令官さんは…多分まだ寝ているのです。」

 

「……。なるほどな…。で、どこで寝ている?」

 

ドミナントが提督を叩き起こそうと場所を聞く。

 

「この扉の向こうの自室なのです!」

 

「なるほど。ありがとう。」

 

そして、ドミナントは提督の自室へ行き、扉を開ける。

 

「おい、起き…!?」

 

おそらく、提督が飼っている籠の中にいるペットを見る。

 

「……。AMIDA…お前もこの世界に来ていたのか…。」

 

ドミナントは餌を食べているAMIDAを一通り見たあと、提督…いや、神様のベッドに近づく…。

 

「……。むにゃ…。えへへ…もう食べられないよ…。」

 

「…。こんなセリフ…アニメとか漫画の中だけだと思っていたが、本当に言う奴もいるのだな…。さて、叩き起こすか…。」

 

そしてドミナントは叩き起こそうとするが、その気持ちがなくなる。

 

「…ドミ…ナント…。ごめんね…。スー…。私が…ちゃんと…していれば…。スー…。」

 

「……。」

 

さっきまで天使のような笑顔だったのが一変、悲しい顔になり、涙が頬をつたっていたからだ…。ドミナントは疑うが、乱れていない寝息で寝ていることがわかった。そして、机の上にあった[提督、1週間でなろう!]と、書かれた資料に、スケジュールがしっかりと詰まっていた。

 

「徹夜で考えて書いたのか…。」

 

ドミナントは心が温まるのを感じた。

 

「神様…起きろ。」

 

神様の肩を優しく揺さぶる。

 

「ん…。むにゃ…。誰…?」

 

寝ぼけ顔で見る神様。そして…。

 

「俺だ。」

 

「?…!……!?」

 

ようやく神様はしっかりと起きる。

 

「ひゃぁっ!な、なななななんでここに!?」

 

耳まで赤くした神様が驚く。

 

「起きてこないからな…起こしに来たんだ。あと、この資料を見せてもらった。ありがとうな。」

 

「そ、それは…いや…私じゃ…その…。」

 

神様は赤くなり、指を指す。

 

「あ、あの子が勝手にやったの…。」

 

そう言ってAMIDAを指す。

 

「……。神様…それは無理がある。」

 

「ほ、本当だもん!私じゃないもん!」

 

そう神様は否定するが、もちろん書いたのは神様である。

 

「だって書けるわけないだろ…。」

 

「ほ、本当だもん!……えいっ!」

 

ドミナントに話をそらそうと、AMIDAを籠をひっくり返して出す。

 

ブーーン

 

AMIDAは飛んだ。

 

「うおっ、飛んだ。」

 

しかし、ドミナントは冷静である。そこに…。

 

「司令官さん、起こしに…ふにぁぁぁぁぁぁ!?」

 

扉から入って来た電が嫌な音を出して飛んでくるAMIDAに叫ぶ。AMIDAは容赦なく電の周りを飛び回る。必死に手を振り回して追い払おうとする電にドミナントが…。

 

「よっと、捕まえた。」

 

AMIDAを捕まえる。電は半泣きしていた。そこで、か…提督が…。

 

「なんで怖がってるの?可愛いじゃん?」

 

提督が意味不明なことを言い、ドミナントがツッコム。

 

「いや、それはか…提督だけだr…。」

 

ドミナントはキシキシ言うAMIDAをジッと見つめる。そして…。

 

「そうだな、可愛いな。」

 

「でしょ?」

 

「はわわわわ……い、電がおかしいのですか!?」

 

そして提督自室では笑い声が響く。そんな朝が過ぎる。




はい、ここで終わりです。本当はもっといっぱい艦娘を登場させたかったのですが、これからドミナントが提督になるため、まだ登場させることが出来ないかもしれません…。神様…徹夜で書いたことがバレた挙句、寝顔まで見られてしまったら慌てるのは当然か?

登場人物紹介コーナー
AMIDA…神様が可愛かったからという理由だけで連れてこられた。一応飛ぶが、爆発はしない、酸も吐かない無害なペットです。

次回!第16話「つまり、出撃は厳禁ということ」お楽しみに!


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16話 つまり、出撃は厳禁ということ

16話〜…でも、明日から少しペースが遅れるかもしれません…。AMIDAは、小さいぬいぐるみと同じ大きさです。(直径15cmくらい。)今更なんですけど、ドミナントは艦これの世界を知っているだけであって、ゲーム自体は聞きかじった程度しかありません。早くドミナントが提督になって、ヒッチャカメッチャカなストーリーを書きたい。さて、じゃぁ、あらすじと行きますか。今回は…誰だろう。
「じゃ、私がやるわ。」
そ、その声は叢雲さん!?さすが…。技術のムラクモ…。
「?まぁ、いいわ。始めるわよ?」
どーぞー。

あらすじ
前回、提督の話で提督になるドミナント。その試験が合格し、道を一歩進んでいくのだが…?
…さすが技術のムラクモ…。比べ物にならない…。次から任せたいくらいだ…。


「…で、このAMIDAどうするんだ?」

 

ドミナントが提督に聞く。AMIDAはドミナントが持っている。

 

「籠の中に戻しておいて!」

 

「お、お願いなのです…。」

 

弱々しい声で頼んでくる電。さっきAMIDAに電の近くを散々飛び回られて、トラウマになってしまったようだ…。

 

「わかった。…うわっ!?」

 

ドミナントが籠の中に入れようとしたら、暴れてまた飛んだ。

 

「ふにゃぁぁぁぁぁ!!」

 

電は驚いてドミナントの後ろに隠れる。そしてちょこんと顔を出して、飛んでいるAMIDAを見ている。

……うん、かわいい。

そんなことをドミナントが思っていると…。

 

「あはは。電はまだまだね!こんなに可愛いのに。」

 

提督が笑いながら電のことをからかっている。電は少し怒ったのか、少し頰を膨らませる。

……うん、かわいい。

またこんなことを思うドミナントだが…。

 

「あははは。…!?ちょ、なんでこっちに来るの!?あっち行って!」

 

AMIDAは次のターゲットを提督に決めて近づいていく。

 

「ちょ、あっち行ってって!……キャーーーー!!」

 

そう言って提督もドミナントの後ろに隠れる。電がポカンと見ている。

 

「……。おい。」

 

「だ、だって…。可愛いんだけど…触るのはちょっと…。」

 

そんな矛盾したように言っている提督をジト目で見るドミナントと電…。もう少し提督に恐怖を味わってもらおうかと思ったが、電が本気で怖がっているので戻すことにした。

 

…………

 

「ふぅ…。」

 

提督が息を整える。朝起きたら、まさかこんな大騒動?になるなんて誰が予測していただろうか…。そして現在執務室にいる。

 

「……。提督、一つ疑問に思ったんだが、どうやってカゴの中に入れたんだ?」

 

……神様は触らないって言っていたし…。誰かがあんなよくわからない生き物?を触りたいと思わないし…。

 

「あぁ…。なんか足がチクチクしてそうだったからトングで取ったの。」

 

「なるほどな…。」

 

“まるで栗だな。”と、ドミナントが思う。そんなことを言いながら、落ち着かせる一同。

 

「司令官さん。お茶が入ったのです。」

 

「うん。ありがとう。」

 

提督はお茶をすする。

 

「じゃ、このわた……AMIDAが書いた書類をあげるから、それにのっとって、色々やってみて。」

 

「わかった。」

 

もう“私”と、言いかけている時点で誰が書いたかわかるのだが、またあんな大騒ぎするのはごめんなので突っ込まないことにしたドミナント。ところが…。

 

「司令官さんは、朝まで一生懸命頑張って書いていたのです!決してAMIDA?じゃないのです!」

 

電が元気よく言う。

 

「そうか。わかっているよ。」

 

ドミナントが言う。

……あーあ、言っちゃったよ…。面倒くさいから早くこの部屋を出よう。

そう思って部屋を出るドミナント。そしてその声は執務室の外まで聞こえる。

 

『ちょっと!電!このことは内緒って言ったじゃない!!』

 

『司令官さんは間違ったことをしていないのです!誇っていいのです!』

 

『で、でも…それじゃあ………』

 

そして声が聞こえなくなった。ドミナントは資料を見る。

……何々?まず最初にやるのは{デイリー任務のクリア}…?いや、ちょっと待てよ、作ってもらったくせに文句言うのおかしいけど…大半提督になってからやることだよね?

ドミナントはパラパラページをめくって見てみる。

……これはまたやり直してって言いたいけど…。

ドミナントは提督の寝言を思い出し、朝までやっていたことを思う…。

……言えないな…。いっそのこと本当にAMIDAだったら楽なのに…。

そんなことを思う。

……まぁ、今できそうなことをやってみるか…。

 

{鎮守府の見回り}

 

……まず、食堂へ行ってみるか…。

 

…………

 

食堂へ着く。

 

……この時間にもやっているのか…。って、時間見たら1時じゃないか。どうりでお腹が空いていたのか…。一応、食事用のお金などは神様が出してくれたし…。それで食券は買ったし。大丈夫だよね。

 

そう考えて料理を頼もうとする。

 

「すみません。注文いいですか?」

 

『は〜い。少しお待ちください。』

 

奥から声が聞こえる。

 

「お待たせしまし…!?」

 

奥から出てきた人がギョッとする。

 

「……。そんな会うたびに驚かなくても良いじゃありませんか…。ここくらいなんですよ?気を抜ける場所は…。」

 

ドミナントは少しショックを受けたようだ…。

 

「ご、ごめんなさい。どうしてもその姿に慣れなくて…。」

 

そう言って頭を下げる間宮さん。

 

「まぁ、いいですけど…。では、注文します。お昼なので…何かお腹にたまるものが食べたいです。」

 

「はい。わかりました。」

 

そう言って奥へ戻っていった。

 

10分後

 

「お待たせいたしました〜。間宮名物特盛あんみつです!」

 

目の前に出されたのは想像の斜め上のものだった…。そこにあるのはすごくでかい餡蜜。

……?あれ?お腹にたまるものって言わなかったっけ?言い忘れたのかな?……いや、記憶のねつ造はダメだ…。たしかにこれはお腹にたまるけど…。ちょっと言おうかな…?

そう考えてドミナントが言おうとするが…。

 

「どうぞ。お召し上がりくださいね。」

 

そう言って満面の笑みで言う間宮さん…。

 

「……。ありがとうございます。」

 

ドミナントも満面の笑みで答える。悔いはなかった。

 

…………

 

「ふぅ〜。これでも意外にお腹いっぱいになるんだな…。」

 

ドミナントは食堂を後にして、演習場に向かう。そこにいたのは…。

 

「ギャハハ!いーじゃん!なかなかやるじゃない?」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

……主任!?何やってんの!?この感じを見るに…。教えている!?

そう、主任は暇すぎたのでここに来ていたのだ。

 

「主任!?教えているの!?」

 

「ギャハハ!そうだ。」

 

「な、何があったの?」

 

「う〜ん。それは少し前なんだけどねっ!」

 

かくかくしかじか

 

「なるほど。」

 

……どうやら、演習場で主任が砲撃術や、回避術をしているうちに勝手に艦娘が寄ってきて教えてもらいたいと言ってきたらしい。と、いうよりなんでこんなに列が出来ているの!?

ドミナントが列を見ると15人ほど並んでいた。

 

「ギャハハ!じゃ、ドミナント!また後で!」

 

「お、おう…。またな…。」

 

そう言って演習場を後にする。

……主任って意外とコミュ力あるんだなぁ〜…。

そう思いながら、次は倉庫へ行く。

 

…………

 

「こんにちは…。」

 

「こんにちは!」

 

元気の良い挨拶が聞こえてくる。

……確か…この子は夕張?だっけ?

そんなことを思っていると…。

 

「私は、軽巡洋艦『夕張』です!よろしくお願いします!」

 

……やはりか…。

 

「俺はドミナントだ。よろしくな。」

 

そう言って握手を交わす。

……おっ!この感触…存外そんなものか。柔らかい…。いいな…。クセになりそうだ…。

ドミナントがそんなことを思っていると…。

 

「私もいますよ…。」

 

「うわっ!?」

 

後ろにいたのはセラフだった。

 

……うおっ!すごく驚いた。ってうわっ!?寒い、そして痛い!なんだ!?この目線!?怖い!

セラフの凍えるくらい寒く、そして突き刺さるような視線に襲われる…。

 

「…セラフ…お願い…なんだかよくわかんないけど、謝るからヤメテ…。すごいダメージくらっているから…。」

 

「?」

 

いきなりセラフに謝るドミナントを不思議に思う夕張。そして、許したのかその視線をやめるセラフ。

 

「ふぅ…。で、なんでここにいるんだ?」

 

ドミナントはセラフに聞いてみる。

 

「実はですね…。」

 

…………

 

「なるほど。」

 

……つまり、暇すぎてフラフラしていたら偶然ここを見つけて、なんとなく入ってみたら、なにかをしている夕張を見つける。しかし、セラフはそんなことを気にせず、勝手に開発していたらいつのまにか夕張に教えて欲しいと言われ、教えていた…と。

 

「セラフはそれでいいのか?」

 

「はい。」

 

「では、夕張、少しの間セラフを頼むぞ…。」

 

「?…はい!」

 

夕張は何故頼まれるかわからなかった。

……セラフが開発したものといったらオーバーテクノロジーだからな…万が一に暴走しないためにも、お目付役は必要だからな…。

だが、夕張はそんな危険なことを任されたとは知らず、ただ返事をしていただけだった。

……よし、これで大半終わり。カットされているところは何も異常なかったからな…。

ドミナントがメタなことを考えて歩いていく。

……次は艦娘の教室か…。

そう、ここは特殊で、他の鎮守府からの育成も出来る場所であり、たまに問題児が来たりするのだ…。

……嫌な予感がするが…行くしかないか…。

ドミナントは教室へ行く。

 

…………

 

……お!授業をしている…。みんな勉強しているかな?

その教室では、少し難しい授業をしているみたいだ。

 

「センセー、なんかよくわかりません。つまんないのでご飯食べていいですか?」

 

……でた、問題児…。艦娘なのだからもっとしっかりしてほしい…。先生も怒るよ?

ドミナントがそんなことを考えていたが、そんなに生易しい先生ではなかった…。

 

「黙れ…これ以上無駄口を叩くと五体満足でいられなくなるぞ?あとでテストをする…しっかりと授業を聞いていれば満点は余裕だ…。だが、満点以外を取った場合。そうだな…腕と脚、一本ずついただくぞ?」

 

……怖っ!?なにそれ!?キツすぎない!?すごく禍々しい殺気だな!?艦娘ってそんなに厳しいの!?パワハラ通り越してるよ!?ほら、もう生徒たちは恐怖で体が震えているよ…。問題児も死ぬ気で授業を受けているし…。……誰なんだろう?怖すぎる…。

そう言って、見つからないようにコソコソ廊下を移動して見てみた。

……ジナイーダ…お前か…。怖すぎるぞ…。しかもなにその黒板…?数字や化学式、ラテン文字やNASAレベルの問題が書かれているんだけど…。それでテスト?鬼だな…。関わらない方がいい…後でまた来よう…。

そう考えて教室を後にする…。

次は…資材置き場か…。

 

…………

 

「……。」

 

ドミナントは言葉を失った…。なぜなら空っぽで、資材専用倉庫のはしに、少しだけしかなかったからだ…。

……どういうこと…?

ドミナントは急いで事務室に向かう。

 

…………

 

「提督!!」

 

ドミナントがノックもせず、勢いよくドアを開ける。

 

「わっ!?びっくりしたのです!」

 

電がすごく驚いていた。

 

「ん〜?どうしたの〜?」

 

提督が呑気にお茶をすすって茶菓子を食べていた。

 

「提督!!資材がもう僅かしかありません!!」

 

「!?」

 

電が思いっきり驚いていたが、提督は驚いていなかった。

 

「そ、そんな…。一ヶ月は何もせずとも大丈夫だったはずなのです!」

 

「提督!どういうことですか!?」

 

ドミナントは問い詰める…。

 

「いや〜…あのね…ちょっとショック受けるかもしれないけど…。」

 

「「?」」

 

提督はゆっくりと話す。

 

「実は…あなたたちが予想以上に弾を使っていたり、怪我をしていたから…その分減っちゃって……。」

 

「「!?」」

 

ドミナントは目の前が真っ暗になる…。

……なんてことだ…。俺たちのせいなんて…。ジナイーダのハンドレールガン一発、それとリボハン一発(叢雲から聞いた)…セラフの怪我(叢雲から聞いた)…主任砲によるエネルギーとAPそして、頭部損傷…そして自分の頭部破損…それだけであんなに減るなんて…。

ドミナントはなんて言っていいかわからなかった…。

 

「し、司令官さん…。」

 

電は、悲しそうな顔をして提督を見る…。

……やめてくれ…そんな顔しないでくれ…。俺が精神的に死ぬ…。

 

「うむ…このままでは鎮守府として成り立たない…。」

 

……ヤメテ…もうヤメテ…。本当に死んじゃうから…。

 

「そ、そんな…」

 

電は、絶望した顔でその場に倒れこむ…。

……あぁ、死ぬ…。

そんなことをドミナントが考えていると…。

 

「なーんてねっ!嘘だよ!」

 

「「えっ!?」」

 

提督が元気に言う。

 

「どれだけ資材が減るかわかった?つまり、ドミナントたちの出撃は厳禁ということ!資材は今回だけ大本営が負担してくれることになったから。今日もう届いているはずだよ!でも本当に今回だけだよ!」

 

そう提督が言った途端、ドミナントと電は急いで資材専用倉庫へ走る。

 

「「あった…。よかった(のです)……。」」

 

資材は元どおりになっていた。そして提督が追いつく。

 

「ほらね?あったでしょ?でも本当に今回だけだからね…。どうか怪我しないでね…。」

 

「あぁ、誓おう。俺は絶対に怪我をしない…。」

 

ドミナントは誓った。そしてその瞬間、仲間たちのことを思い出す。

 

「あっ!アイツら…!やばいやばい!!」

 

そう言って走っていくドミナントであった…。




やっと終わった!!いつもの2倍以上!本当に疲れた…。この世界のACは、なんとなくだけど、みんな表情はわかります。嬉しそうだったり、悲しそうなのかもわかります。
登場人物紹介コーナー
主任に教えてもらった人…艦娘。主任に勇気を振り絞ってコツを聞いた。そのため、将来有望になるかも…。
夕張…メロンじゃない。不思議なものを作り上げるセラフに興味を持ち、教えてもらいたくなった。セラフから学んだ腕は超一流だとか…。
問題児…ジナイーダに生意気な態度をとり、粛清されかけた。もちろん、ジナイーダのあの脅しは本気だとわかったため、死ぬ気で授業を受け、満点を取る。(全員満点取れました。現役東大生を圧倒するレベル。)
次回!第17話「ここが…あなたの魂の場所よ!!」お楽しみに!


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17話 ここが…あなたの魂の場所よ!

17話〜。私は…もう…何にも…誰にも負けたくないだけ…始めましょう…投稿するわ…これを…。
はい、ではあらすじにいきたいと思います。今日は…誰だったかな…?
「では、電がやるのです!」
おー。元気に立候補!君に決めた!……雷もいればあの機体になるのにな〜…。
「?何か言いました?」
いや〜。何も〜。

あらすじなのです!
前回!AMIDA?とかいう生き物?に追い回されていたけど、それを取ってくれたドミナントさん。司令官さんには少しガッカリしたのです…。そのあと、色々見回ったりして、資材の減少が半端ないとわかったドミナントさんは怪我をしないことを誓ったのです!


天気の良く、気持ちの良い朝。

 

「ぐー…。ぐー…。スヤァ…。えへへ…。」

 

ベッドの上で提督が寝ている。

 

「おい、起きろ。」

 

そこでドミナントが起こす。

 

「ん〜…?…おはよう…ドミナント…。」

 

そこで寝ぼけ顔で挨拶する提督。最初はあんなに動揺していたのに、今は慣れてしまっている。

 

「はぁ…。あれから一週間毎日起こしている俺の身にもなってくれ…。まぁ、これが最後だと思うけど…。そう言えば一週間、色々あったなぁ…。」

 

と、ドミナントが言い、思い出していく。あの後、すぐに愉快な仲間たちのところへ駆けつけた。主任は、なんとか損傷しないでいた。セラフは、夕張と一緒に暴走してしまい、レビヤタンを作ろうとしていたが、ドミナントの拳骨により正気に戻った。ジナイーダは、地獄の授業を続けようとしていたが、万が一艦娘に何かあったらと思い、主任とセラフを引き連れて3人で連れて行った。妖精さんには甘味の催促が毎日朝昼晩と来ていて、弁解するのがやっとだった。

 

「はぁ…。今日で全てを片付けないと…。」

 

「そうなんだ〜…。…?。!?きょ、今日が最後だっけ!?」

 

提督は驚く。

……きょ、今日でドミナントと会うのが最後…なの…?

提督が驚き…そして…。

 

「い、嫌だな〜。明日が最後だよ。」

 

「いや、毎朝寝ていたいからって現実逃避するな。さっき電に確認してもらったぞ。」

 

“チッ…電め…。”と、提督…いや、神様が理不尽な怒りを電に向ける。

 

「……。今、電のことを心の中で責めただろ?理不尽だぞ?」

 

怒った顔をしている提督に言うが、すぐに提督がハッとして、言い訳をする。

 

「…。い、嫌だなぁ〜、ドミナントくんは〜。そんなこと思うわけないじゃん?」

 

「いや、嘘つくな。」

 

「……ごめんなさい…。」

 

神様は素直に謝る。

 

「……本当に、行っちゃうの?」

 

提督はドミナントに聞く。

 

「行く?どこへ?次の提督とやらは俺じゃないのか?」

 

提督は、なにかをひらめいた。

 

「そ、そうだね。次の提督はドミナントだから。明日まで居られるね!」

 

「?」

 

そんなことを提督が言うが…。

 

『嘘をつこうでない!』

 

どこからか声が聞こえてきて、壁にあった額縁が落ちる。

 

「ぎゃっ!?」

 

見事提督の頭に命中!

そしたら提督の後ろが光だし…。

 

「まったく…、どうして嘘をつくのじゃろうか…。」

 

そこから軍人のような佇まいで、若々しく凛々しい女性が…。

ドミナントは素早く戦闘態勢になる。しかし…。

 

「痛いよぉ…。先輩ぃ…。」

 

頭のコブをさすりながら、涙目の提督がそう言う。

……!?この人がこいつの先輩!?つまり神様じゃん!?…“じゃ”?

そんなことを考えていると…。

 

「全く、どうしてこんな男にこだわるのじゃ!?はよう天界に帰って仕事をせい!お主が帰ってこないおかげで“仕事が終わらない”とお主の代理に泣きつかれたぞ!天界がお主の魂の場所じゃろう!!」

 

「だ、だってぇ…。ぐすん…。」

 

……こんな男とは失礼な!しかも、よく聞き慣れていたセリフが来たぞ!?…まぁ、いい…。ところで、早く天界に帰れとはなんだろう?一週間やんなきゃいけないのでは?

ドミナントが疑問に思い、凛々しい神様に聞く。

 

「あ、あのぉ…。」

 

「なんじゃ!!」

 

神様がギロリと睨む。だがそこで引けば、男の名が廃る。

 

「一週間提督業をやらなくてはいけないのでは…?」

 

「……。なかなか度胸があるのぉ…。いいじゃろう。その度胸に免じて答えてやろう。実は、一週間絶対にやらなくてはいけないと言う意味ではないのじゃ。」

 

「つまり…?」

 

「一週間分の提督業が終われば、もう帰っても良いのじゃ。……なのに、こいつは4日前に終わっとるのにまだ帰ってこないのじゃ!」

 

「……だってぇ…。」

 

凛々しい神様が怒り、少女神様は半泣きする…。

側から見たら、ロボットがいて、タイムスリップした女軍人が怒り、少女が半泣きするというカオス空間がひろがっている。

 

「まったく…。」

 

怒って少しスッキリしたのか、落ち着く凛々しい神様。

 

「ふぅ…。でもダメじゃろう?天界に帰らなくては…。この世界にいたい気持ちもわかるんじゃが…。」

 

「でも…でも…。」

 

凛々しい神様は優しく言うが、どうしてもという感じで首を振り、帰るのを嫌がる。

……どうして帰りたくないんだろう…?

そんなことを考えていると、凛々しい神様があることを言った…。

 

「……やはり、この男か…。では、直接妾が聞いてやろう…。」

 

そう言ってドミナントに近づく。

提督は何を話すんだろうと首を傾げる…。

 

「おい、お前。」

 

「な、なんでしょう?」

 

「こいつはお主のことをどう思っているか知っているか?」

 

「!?」

 

提督は驚く。

しかし、ドミナントは気にしない。

 

「都合の良い目覚まし時計か?」

 

「違う。」

 

「…ちょうど良い遊び相手か?」

 

「まぁ…そうとも言えるかもな。あとは?」

 

「……。」

 

「何もないのじゃな…。はぁ…唐変木じゃのう…。」

 

凛々しい神様はやれやれといった感じで肩をすくめて首を振る。

そして…。

 

「こいつはな、お主のことが…」

 

「ダメェェェェェェェェ!!」

 

提督が大声を上げる。

ドミナントは驚くが、凛々しい神様は、言葉を続ける。

 

「お主のことが好きなのじゃ。」

 

「!?」

 

ドミナントは驚いた。

……あいつが!?…いや、ちょっと待てよ…。別にキッカケはあったし、たまにアピールしてきたり、恥ずかしがったりしていたじゃないか…。うん。…それより、なんで俺のことを好きになったことに驚きだ。もっと他のいい男がいるだろう。

そう考えて提督を見る。

 

「うぇ〜ん!先輩のバカバカバカァー!!」

 

「うるさいのぉ…。こうするほかなかろう。」

 

提督は耳まで真っ赤にしながら先輩をポカポカ殴る。しかし、先輩にダメージは0だった。

ドミナントはさっきの疑問を聞く。

 

「なんで俺のことを?」

 

「そ、それは…。」

 

赤い提督は目をそらすが、凛々しい神様が答える。

 

「天界では、もう良い男がいないのじゃ。」

 

「へっ!?それは、どういう…。」

 

ドミナントは聞くが、驚きの答えが返ってきた…。

 

「天界は…もう年寄りしかいないのじゃ…。しかも、我ら神は、人間の気まぐれによってたまに生まれる。もう、昔より神を作ったり、崇拝するものがおらんくなってのぅ…。もう若い神も妾と後輩くらいしかいないのじゃ…。じゃから、お主に惚れる後輩の気持ちもわかるのじゃがな…。」

 

「そ、それだけで?」

 

「あぁ。お主には済まないと思うが、おそらく…。」

 

ドミナントはショックをすごく受けた…。

自分の魅力ではなく、ただ若いだけで惚れられて誰が嬉しいものか…。しかし…。

 

「違うよ!そんな理由じゃないよ!」

 

「「えっ!?」」

 

提督は思いっきり言う。

 

「だってドミナントは、何だかんだ言いながらも私の仕事をいつも手伝ってくれて優しいし、重い荷物を持って運んでいた時も“俺が持った方が早い”って言ってさりげなく持ってくれるし、夜遅くまで仕事している時もたまにご飯持ってきてくれるし、それに士気向上の為にいつも艦娘と仲良くなれるように本を読んだりする努力を……ゴニョゴニョ…。」

 

提督が冷静になったのか途中から声が小さくなっていく…。

一方、ドミナントは…。

……くっ!不覚にもモジモジしながら赤くなって言う神様を可愛いと思ってしまった。絶対に可愛いなんて思わないだろうと思っていたのに…!…でも、神様の言っていることは本当なんだけど…ちゃんと理由があるんだよな…。

そう、手伝ったり、努力したり、ご飯持ってきたりしているのは“頑張っているから少し何かしてあげるか”と思ってやっていることだが、荷物を持っているのは別だ。

そのままだと、スピードが遅く、すぐに休憩をするからだ。

ご飯を持ってきているのは、大半ドミナントの好意だが、電に言われていたりもする。

本を読むのは純粋に趣味である。

などとドミナントが考えていると、いつのまにか提督は目の前にいた。そして…。

 

「ドミナント…。好き…。好き。好き!大好き!!だから…私と一緒にいて?私を連れ去って。」

 

そう上目遣いでドミナントを見る。

普通の男なら折れるが、ドミナントは感情よりも理性が上回っている。

……。すげー可愛くて、つい抱きしめたくなるけど…。それとこれとは話が別だよな…。俺一人のために天界を混乱させたくないし…。すごく心が痛むけど…。この方法しかないよな…。ごめんよ…。

ドミナントはそう心に決め、提督の両肩を掴み、目を見つめる。

提督が顔をさらに赤くしているが気にしない。

 

「すまない…。俺にそういう趣味はない…。」

 

「!?」

 

提督は驚く。

 

「お主…。なかなかのサディストじゃな…。純粋に100%の好意で告白したのに…そんな乙女の心を踏みにじるとは…。」

 

……仕方がないだろう…。他の世界まで迷惑をかけたくない。

そして凛々しい神様はボソリと言う…。

 

「まぁ…そういうのも悪くないがな…。」

 

……ねぇ!?何言ってんの!?Mなの!?やめてくれない!?今大事なところなんだよ!?あぁ、もう神様はこんなのしかいないのかよ…。

そう考えるが、すぐにその考えを捨て去り、提督を見る。

 

「そう…なんだ……。」

 

提督は絶望の顔になる…。しかし、すぐに笑顔になって…。

 

「え、えへへ……フラれちゃった…。」

 

そして諦めたような笑顔になって涙が頬をつたう…。

ドミナントは複雑な気持ちになる。

 

「ごめん…ちょっと待ってて…すぐに戻ってくるから…。」

 

そう言って提督は部屋を出て行った…。




はい、あとがきです…。これを修羅場というのかな?よくわからないものもあるので、タグ追加などをしてほしい場合はコメ欄などに記入お願いします。神様は、実はとっても可愛いです。ドミナントは最初のアレがあるため、そういう風に接することができません…。
登場人物紹介コーナー
先輩…提督の先輩。実はこの世界の神様であり、ジナイーダと波長が合いそうな人。しかし、喋り方がアレなため、同じ神でも混乱したりする…。
額縁…人ではないが紹介する。その中の絵はタワー。
提督…神様。ドミナントと接していっているうちにいつの間にかそういう感情が芽生えてしまった。
次回!18話「ここが…この場所が…私の魂の場所よ!」お楽しみに!


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18話 ここが…この場所が…私の魂の場所よ!

はい、やってきました。18話。少しアレな感じになります。ドミナント…いつになったら提督になるんでしょうね…。はい、ではあらすじに行きたいと思います。えっと…今日は…誰だっけ?
「ブーン!」
うわっ!?AMIDA!?で、出来るのか?
コクコク。
そ、そうか、なら任せる…

ブーン
ブーンブーンブーンカサカサブーンカサブーンブーンカサカサカサカサカサブブーンブンガサカサブーンブーン…。
うん、訳がわからん。


……これでよかったんだよな…。

 

そう思うドミナントは、提督が出て行ったドアを見ている。

 

……これで…よかった…のか…?

 

そう考えていたドミナントだが、声がかかる。

 

「追いかけないのか?」

 

先輩神様はドミナントに問う。

 

「ああ。俺には追う権利がない…。俺はアイツを振ったのだからな…。」

 

「そうか…。」

 

先輩神様は呟く。そして…。

 

「おりゃーーーー!!」

 

「グハアッ!?」

 

先輩神様が飛び蹴りをしてドミナントが倒れる。

そして、ドミナントの胸ぐらを掴む。

 

「いいか!よく聞け!あいつは“連れ去って”と言ったんじゃ!つまり、あいつは自分の世界の何兆という人間を捨ててまでたった一人のお主を取ったのじゃ!そして“趣味じゃない”だと!?いくら嘘でもそれは言ってはいかん!それに追わない、権利がないから?泣いて出て行った乙女にそれは絶対にしてはいけないのじゃ!…迷惑をかけたくない?それはわかるが、あいつの気持ちを考えたのか!?」

 

そう言ったあと、胸ぐらを離す。

 

「お主はあいつの…あの子の気持ちを……ちゃんと考えたのか……?」

 

先輩神様は歯を食いしばりながら涙を流す。

 

……。俺だって考えたさ…。でも、どうしようもないだろう…。

 

そうドミナントが思っていると、声が聞こえてきた。

 

(ヘタレ)

 

…?

 

そこには妖精さんがたくさんいた。置物のようにいたから気がつかなかった。

 

(……。ずっと見ていたのです…。)

 

(権利?神様だから?そんなもの関係ないのです。)

 

(神様も女の子です。女の子を泣かせるのは一番してはいけないのです。)

 

(あの告白を受けて、あの断り用…地獄行きですね。)

 

(どうしようもない?それはお前が諦めて言い訳をしているだけなのです。)

 

(本当にあの子の気持ちを考えていたのなら、一択しかなかったはずなのです。)

 

(これでよかった?そんなわけないのです。それはお前が一番よくわかっているはずなのです。)

 

妖精さんが思い思いのことをドミナントに言う。そして、一人の妖精さんが呟く…。

 

(行くのです…。)

 

「えっ?」

 

(((((追いかけるのです!!!)))))

 

今度は全員が鬼の形相で怒鳴り、武器を取る。馬鹿でかいスパナだったり、機関銃だったり。

 

「……。わかった。ありがとう。」

 

ドミナントはそう言った後、走って提督を追いかけるのである。

 

…………

 

「うぅ…ぐすん…。ふぇぇん…。」

 

鎮守府の敷地内、森の中の開けた場所に草原が広がっている。ここからは、海が見えたりする。そこに一人で泣いている少女がいた…。彼女は提督。ドミナントに振られて泣いていた。そこに…。

 

ガサガサ…ガサガサ…

 

草むらが揺れる…。

 

「……?ドミ…ナント…?」

 

「いえ、私です。」

 

セラフがいた。提督は、涙を拭き、元気に答える。

 

「やあ!セラフ!どうしてここにいるの?」

 

「この前フラフラしていたら偶然ここを見つけまして、ここにいたらなかなか気持ちが良かったので。」

 

セラフは笑顔で答える。

 

「そうなんだ!じゃぁ、私はここにいたら邪魔だよね!それじゃぁ…。」

 

笑顔でそう言って提督は立ち去ろうとするが…。

 

「待ってください…。」

 

「……。」

 

セラフが真面目な顔をして呼び止める。

 

「何かあったんですね…。あなたのその顔、初めて見ました…。」

 

……いつもの笑顔のつもりだったんだけどなぁ…。

 

「……。何があったか話してもらえませんか?話したら楽になることもあります…。力になれないかもしれませんが、助言したり、寄り添ったりすることができます。だから…。」

 

セラフは提督に話しかける。

 

「……。誰にも言わない?」

 

提督が言う。

 

「もちろんです。」

 

セラフは優しく答える。

 

「実はね。ドミナントに告白したら…ね…。振られ…ちゃってね…。そして…ね……」

 

提督はだんだんと涙声になっていく…。そしてゆっくり話した。自分が神様だということを、仕事があることを、いつの間にかそういう感情が芽生えたことも…。その度に、セラフは何も言わずにただ頷いてくれた。そして話終わる。

 

「……。そんなことがあったんですか…。」

 

神様は頷く。セラフはゆっくりと言う。そして…。

 

「私は…どうすれば良いのかわかりません…。答えがわかりません。…でも、私はこう思います。神様は人と同じなのでは?…と。話を聞く限りだとあなたは人間です。恋をしている乙女です。なのに、神様の枠組みに入れられて恋することも出来ない。それはあなたが望んだことなのですか?他人に“天界が自分の居場所”と言われて納得していないのなら、そこはあなたの居場所ではありません。自分の居場所は自分で決める。それが私の思う“自由な神様”だと思います。あなたは…どうなんですか?」

 

そう優しく言ってセラフは神様の言葉を待つ。

 

「私は…もっとこの世界にいたい。ドミナントやセラフ、主任やジナイーダ、AMIDAともっと一緒にいたい!家族のようになりたい!!ここが、この場所が私の魂の場所!!」

 

そう叫ぶ神様。セラフは微笑む。

……AMIDA?

セラフは思うが、気にしないことにした。

 

「家族…ですか…。」

 

「そう!家族!!」

 

「家族…賛成です。」

 

そんなことを言っているうちに、ドミナントが来た。

 

「ハァ…ハァ…。……。神様。さっきはすまなかった…。全然お前の気持ちを知らずに…。……どうだろう…一緒に来ないか?どこか遠く…世界の果てまで。」

 

ドミナントの信じられない言葉に神様が元気になり、嬉し涙を流す…。

 

「…!?あり…がとう…。なんか…幸せ……。」

 

神様が満面の笑みで倒れ、気絶する。

 

「すごいですね〜。そんなことを言うなんて…」

 

セラフがドミナントを睨む。

……私だって…好意を抱いています…。

セラフはそんなことを考える。

 

「うおっ!?セラフ、居たのか!?すまない…気づかなかった…。」

 

ドミナントは謝る。そして…。

 

「……。セラフ、すまないが一つ最後に頼みたいことがある…。ジナイーダと主任に俺が旅立ったことを伝えて欲しい…。」

 

ドミナントが真面目にいうが…。

 

「はぁ…。何を馬鹿なことを言っているんですか…。私たちはもう家族なんですよ?どこか行くときも、死ぬときも一緒です。ですよね?皆さん?」

 

そう言ってセラフは辺りを見回す。すると…。

 

「なんだ…バレていたのか?気配を殺したつもりだったんだがな…。」

 

そう言いながら、ジナイーダが空から現れる。

 

「隊長。仲間はずれは良くないなぁ〜、俺も入れてくれないと。」

 

愉快な感じで主任が草むらから出てきた。

 

「!?お、お前ら…。」

 

ドミナントは一瞬驚くが、すぐに嬉しそうな顔をして…。

 

「そうだな…俺らはもう家族なんだからな…一緒に行くか!」

 

そう言ってドミナント御一行は神様を背負い、行こうとするが…。

 

『待つのじゃ。』

 

声が聞こえる。その瞬間に光輝き、先輩神様が現れた。全員戦闘態勢に入る。

 

「どこに行くのじゃ?」

 

先輩神様はドミナント御一行に問う。

 

「俺たちは…今からこいつを連れて、世界の果てへ行く…。」

 

ドミナントが警戒しながら言う。

 

「それは出来ぬのぉ…。」

 

先輩神様は言う。

 

「どうしてもというなら…力づくで行きますよ?」

 

セラフが危ない発言を言う。そして…。

 

「ほう…それは面白そうじゃのう。やってみせい。」

 

そう言って、武器を取り出した。

 

「そんな武器で…私たちに勝てるとでも…?」

 

ジナイーダが言う。そう、先輩神様が取り出したのは槍である。しかし、少し特殊で、先が4つに分かれている。

 

「もう勝った気でおるとは、舐められたものじゃ…。」

 

そう言って槍を振り回し、構える。その振り回しだけで暴風が巻き起こる。

 

「ギャハハ!ねぇ、アレやばいんじゃない?」

 

主任が笑いながら言う。そして…。

 

ザッ!!

 

先輩神様が目にも留まらぬ速さで地面に線を書く。

 

「この線から先が…あの世じゃ…。」

 

先輩神様は鋭い殺気を出す。

 

……くそっ…俺ら4人で一斉に攻撃しても、勝てないくらい強いな…。

 

「……。」

 

ドミナントは攻略法を考えるが…。

 

「お主らがここでの仕事を終えるまで…どこにもいかさんぞ…。」

 

先輩神様が言う…。

 

……ん?なんかズレてない?聞いてみよう。

 

「あの〜…」

 

「なんじゃ?怖気付いたか?」

 

「いや、あなたはこいつを連れ戻しに来たんじゃないんですか?」

 

「?違うぞ?お主らが勝手に仕事を怠けて逃げようとしていたり、お主の鎮守府が出来ているにもかかわらず、世界の果てへ行くと、馬鹿なことを言っておったからじゃ。」

 

「え?じゃぁ、こいつは?」

 

「あぁ、後輩のことか。そいつは、お主のためなら神を辞めてもいい、お主と家族になりたいと本気で叫んでおったからな…。じゃから、妾もその世界を手伝ってあげることにしたのじゃ。」

 

先輩神様は笑顔で言った。

……いい先輩じゃないか…。そういう人は絶対に大切にした方が良い。あとで神様に言っておこう…。

 

「そういうことだったんですか〜…どうやら双方とも勘違いみたいでしたね。」

 

セラフが警戒を解く。

 

「?そうじゃったのか?妾が連れ戻しに来たと勘違いしたのか…。それはすまなかったのぉ。」

 

先輩神様も武器をしまう。

 

「よし、それじゃぁ、仕事を終わらせて、新しい鎮守府へ行きますか!」

 

そうドミナントが言い、仕事を終わらせて新たな鎮守府へドミナント御一行は行く。




はい、ついにドミナントが提督になります!神様救いエンドですね。他にも、死亡ルートや、ヤンデレルート、大人の階段登るルートがあったんですが、色々複雑なのでハッピーエンドにさせてみました。
登場人物紹介コーナー
先輩…神様。超一流の槍使い。例えレイヴンの装甲でもバターのように切ることが出来る。ブレードも切ることが出来るほど…。頑張る人や、後輩には優しい。一定値を超えるとドM。
ドミナント御一行…少女神様も加わり、5人になった。
次回!第19話「これが…俺たちの鎮守府?」お楽しみに!


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前編
19話 これが…俺たちの鎮守府?


はい、やってきました19話。提督…よかったですね(でも結ばれるとは言っていない)。神様は基本優しい人たちばかりで、戦いをしたくはありません。でも、譲れないところがあるとしっかりと戦う。
では、あらすじに入りましょう。今回は特別ゲスト。先輩神様です。
「うむ。苦しゅうない。」
は、はぁ…。では、どうぞ。

あらすじ
後輩が部屋を出て行き、ドミナントに喝を入れる妾。その後、後輩はなぜか気絶しており、ドミナントが訳のわからんことを言いおる。そこで妾が止めようとしたのじゃが、それはお互いの勘違いだということがわかったのじゃ…。


……ふう。いい天気の日だというのに困っている俺…。先輩神様のプレゼントは嬉しいけど、こんなおつりがくるなんて聞いていない…。前の方が良かったかも…。

 

船の看板で“彼”は思う。

そう、“彼”はドミナント。だけど今は人の形をしている。

なぜそうなったかというと、出発する前の話になるのだが…。

 

…………

 

「はぁ〜…。やっと仕事が終わった…。」

 

「お疲れ様なのです!」

 

夕方、ドミナントが仕事を終わらせて、電がお茶を入れる。

 

「……。まだ起きないのか…。」

 

そう言ってドミナントはソファーで気絶から寝ている提督を見る。

 

「どうやら相当疲れていたみたいなのです…。でも、あんなにいい笑顔で寝ている司令官さんは初めて見たのです!」

 

電は嬉しそうに答える。そう、提督は嬉しすぎてとろけそうな顔をして寝ている。

 

「そ、そうか?」

 

……普通に作画崩壊したような顔なんだが…。本当に大丈夫なのだろうか…?

 

そんなことをドミナントが思っていると…。

 

(終わったですか?ならば甘味をよこすのです!我々は甘味をもう半年も貰ってないのです!その分スペシャルをよこすのです!!)

 

机の上にいた妖精さんが催促する。

 

……うぉぉぉい!!前の提督何してくれとんじゃー!!ツケが俺に回ってきたぞ!!いつか会ったら殴り飛ばしてやる…。

 

そんなことをドミナントが思う。

 

「わ、わかった…。何がいい?」

 

ドミナントは妖精さんに聞く。

 

(もちろん金平糖です!)

 

……は?金平糖?

 

ドミナントは耳を疑う。

 

「こ、金平糖?そんなのでいいのか?」

 

妖精さんが首をかしげる。

 

(?前の提督がたまにくれていた埃まみれの飴や、腐ったグミよりはスペシャルです。)

 

「……。」

 

ドミナントは言葉を失った…。

 

「い、電…。前の提督が妖精さんに埃まみれの飴や、腐ったグミをあげて、そしてそれすら半年もあげていないというのは本当か…?」

 

「……。はい…なのです…。」

 

どうやら前の提督は本当に酷かったようだ。

 

「そうか……。」

 

ドミナントはそう答え…。

 

……前のクソ提督め…。殴り飛ばすだけじゃ甘いな…。食べ物の恨みは恐ろしいぞ…。

 

そう考える。そして…。

 

「妖精さん…、妖精さんたちを集めろ…。今日は本当の甘味が何か知ってもらう…。そしてたらふく食わせてやる…。」

 

(本当です!?みんな集めてくるです!!)

 

そう言って元気に走って消える妖精さん…。

 

「電…。あとは頼む…。」

 

「わかったのです!」

 

ドミナントは執務室を出て、食堂へ向かう…。

 

…………

 

(バクバク…ムシャムシャ…。)

 

妖精さんたちは鬼気迫る勢いで甘味を貪る…。

 

……そんなに甘味に飢えていたのか…。

 

積み上げられていく皿を見てドミナントがそう思う。ドミナントは貯金を全部下ろしていたので、余裕そうだ。そして…。

 

(も、もう入らないです…。)

 

(お腹いっぱいです。)

 

(ありがとうです!)

 

妖精さんが、思い思いのことをドミナントに言い、お礼を言って去って行く…。そして最後の妖精さんに耳元で囁かれる。

 

(今回は礼を言うのです…。これは例のものです…。)

 

……うむ、確かに受け取った…。

 

妖精さんに写真が入った封筒を渡される。そして妖精さんは去っていく…。

 

……フフフ…。確かに受け取ったぞ…。早速中身を見てみよう…。

 

ドミナントがそう思い、中を見ようとするが…。

 

ヒュッ!!

 

突風がドミナントの前を通り過ぎる。

 

「うわっ…。風か…?まぁいいや。」

 

そう言って写真を見ようとするが…。

 

「!?ない!さっきまであった写真が…。」

 

ドミナントが驚き、辺りを捜索するが…。

 

「ない…。写真が消えるなんて…。ミステリーだ…。まぁ…いいか…。」

 

そう言い、ドミナントは悔しそうに諦める…。

 

一方…

 

「はぁ…はぁ…。見せることなく、そして私がバレることなく回収できたぞ…。」

 

そう、犯人はジナイーダ。どうしても見せたくなかったのか、ブーストを使ってまで手に入れたセラフの人の姿の写真…。

 

……これは私が預かっておこう…。捨てて、それが誰かに見つかり、情報が流出したくないからな…。

 

そう思うジナイーダであった…。

 

……

 

ドミナントは来客室の前に立ち、ドアをノックする。

 

コンコンッ

 

『なんじゃ?』

 

中から先輩神様が答える。

 

「ドミナントです。」

 

『うむ。入れ。』

 

「失礼しま…す!?」

 

ドミナントが入った途端驚いた。

 

「?なんじゃ?妾の裸がおかしいのか?」

 

そう先輩神様がスッポンポンだからだ…。

 

「な、な、な、何やってるんですか!?」

 

「…着替えていたのじゃが…。動揺しておるのか?」

 

先輩神様は恥ずかしがるという概念はないようだ…。

 

「そ、そりゃそうですよ!?あなたは神様なんだからしっかりしてください!」

 

「ほう…。妾の裸がそんなに魅力的か?」

 

そう先輩神様が言って近づく。

 

「そ、それは…。」

 

ドミナントは目を逸らす…。そして先輩神様はとんでもないことを言う…。

 

「そうか?嫌なら突き放しても良いのじゃぞ…。いや、力一杯突き放してくれ…。」

 

……それは……は?

 

ドミナントは耳を疑う。

 

「いや、そ、それより妾を思いっきり叩いてほしい…。その剛腕で叩かれたらどれだけ痛いことか…。考えただけでも妾は……ハァ……。」

 

……は?

 

「前、後輩にしたように…頰をちぎれるくらい引っ張っても良いのじゃぞ…。」

 

先輩神様は頰を赤らめながら言う。

 

……は?

 

「いや、今妾の裸をいやらしく見られていると考えただけでも…。ハァ…ハァ……。」

 

……そうか…思い出したぞ……。確か…こいつはドMだったな……。

 

ドミナントは引く…。

 

……コイツ…ヤバイやつだ…。この世界がこんな神様で大丈夫なのだろうか…?やめてくれよ?俺の好きなキャラがドM化されていたら…。もし、ドM化されていたら…その時はきっと俺は…。俺は……

何もかもを黒く焼き尽くし、世界を破壊する…死を告げる真っ黒な鳥になるかもよ?

ドミナントがそう思っていると…。

 

バッコォォォォォォン!!

 

「トオリャーーーーー!!!」

 

提督が壁を破りながら飛び蹴りをした。そして当たり…。

 

「グヒャアッ!!」

 

ドミナントが悲鳴をあげる…のではなく、食らったのは先輩神様だった…。そして…。

 

「……。先輩…。それは駄目だよ?ドミナントの前なんだから…ちゃんとしてね?その先輩の後輩である私の気持ち…。考えた?」

 

提督が後ろに怒りのオーラを出し、仁王立ちしながら怒っている。

 

……おぉ…。神様が怒っているところ初めて見た…。目元が影で隠れているのに、目が赤く光っている…。オーラも真っ赤で半端ない…。あれはマジギレだな…。

ドミナントは思う。そして先輩神様は裸のまま土下座していた…。

 

…………

 

「ゴ、ゴホンッ…。それで…妾に何の用じゃったのだ?」

 

先輩神様は急いで服を着て、ドミナントに聞く。提督はドミナントの隣にいる。

 

「いや…どこの鎮守府へ行くのか聞きたかったんだが…。」

 

ドミナントは若干距離を取りながら答える。

 

「そ、そうか…お主の鎮守府は出来立ての第4佐世保鎮守府じゃ。お主たちは深海棲艦に圧倒的な力を持つ者たちじゃ…。資材は著しく消費するがのぉ…。つまり、日本の懐刀というわけじゃ。」

 

「なるほどな…。」

 

ドミナントは納得する。しかし、そのあととんでもないことを聞く。

 

「お主の仲間は…主任は第6呉鎮守府、ジナイーダは第3舞鶴鎮守府、セラフは第4横須賀鎮守府に配属する予定じゃ。」

 

「「!?」」

 

ドミナントと神様は驚く。

 

「え…。せ、先輩…。なんで…みんなバラバラに…?」

 

「?後輩は、ドミナントと一緒に行けばよかろう?」

 

先輩神様はよくわからない様子だ。

 

「つまり、神様はその愉快な家族と離れたくないのだろう…。」

 

ドミナントは先輩神様の目を見つめる。

 

「そ、そうなのか?じゃぁ、みんな一緒で構わんが…。」

 

先輩神様は簡単に折れる。

 

「……。そんな簡単でいいのか?」

 

ドミナントは聞く。

 

「ああ。まだ話してもないのに勝手に決めたのは妾じゃからな。それに、妾はこの世界の神様じゃ!しようと思えば鎮守府が元から建ててなかったことにするくらいなら出来るのじゃ!」

 

先輩神様は元気よく言って笑顔になる。

 

「……神様…先輩神様はいい人だ…大切にしなきゃダメだぞ…。そして、してもらった恩は絶対に返すんだ。」

 

「うん。」

 

ドミナントは優しく神様に言い、神様は頷く。

 

「……。なんか恥ずかしいのう…。」

 

そう言って先輩神様は照れる。

 

「あ!思い出したのじゃ!お主らにちょっとしたプレゼントがあるのじゃ!」

 

そう言って、先輩神様は指を鳴らす。

 

ピカーーーー…。

 

「……!?」

 

「!?」

 

ドミナントと神様は驚く。なんとこの世界に来る前の人の姿に戻っているからだ…!

 

「おぉ…。これはすごい…。この姿なら、乗り物に乗ったり怪しまれずに済む…。」

 

「じゃろう?今頃お主の仲間も人の姿になっておるはずじゃ。」

 

先輩神様は自信満々に言うが、ドミナントは疑問を口に出す。

 

「……。この姿に戻れたのは良いが…どうやって戻るんだ?」

 

そう、ドミナントは戻れなかったら日本の懐刀になることができないからだ。

 

「簡単じゃ。元に戻りたいと強く念じればできる。」

 

「なるほど…。このプレゼント気に入ったぞ。ありがとう。」

 

ドミナントが素直に礼を言う。

 

「別に良いのじゃ。それより、そろそろ天界へ戻らんといかんのじゃ…。実に名残惜しいがな…。」

 

先輩神様はそう言って、天界に帰ろうと光り輝く…。

 

「ありがとうございます。暇なら是非また来てください。」

 

ドミナントはそう言って手を振る。

 

『フフッ。当たり前じゃ。いつでも妾が来て良いように準備しとくのじゃな。』

 

先輩神様は笑顔でそう言った後、消えていった。

 

「……。さて、行っちゃったな…。って、神様!?なんで俺をずっと見てるの!?」

 

そう、さっきまでずっと静かだったのは神様がずっと見ていたからだ。

神様は自分の世界に入っちゃっているのかボーっとしながら笑顔で言う…。

 

「えへへ…。ドミナントが人間に…。これであんなことや…こんなことが…。えへへへへ……。」

 

「……。」

 

ドミナントは聞かなかったことにして部屋を出た。そして、明日出発する準備を整えていた。

 

現在

 

「ドミナント!」

 

そう言って神様はドミナントに抱きつく。

 

「えへへへ〜。」

 

……あれからスキンシップが激しくなった気がする…。そしてジナイーダに投げられたり、セラフの鋭いブレードのような視線を感じたりすることが多くなった気がする…。一応言うが、俺は艦娘とあんなことや、こんなことがしたいんだ!

 

そうドミナントが思った瞬間。

 

……いたっ!!切れる切れる!!痛い!そして氷河期が来たみたいに寒い!凍え死ぬ!!真っ二つにされる!

 

セラフの鋭すぎる視線と、ジナイーダの凍るような視線が突き刺さる。ダブル攻撃だ。(セラフは心を読んだため。ジナイーダは抱きつかれているドミナントに怒りを覚えたため。)

 

「…なんだかわからないけどすみませんでした!だから、その視線やめて…。お願い…。」

 

ドミナントが二人に気づき、すぐに謝る。

 

「「……。」」

 

しかし、ドミナントは抱きつかれたまま謝ったので、逆効果である。

 

「……。oh,,,なんかもっと死にそう…。」

 

そう言ったドミナント…。その後、二人が“やれやれ”と言った感じで許していた。もちろん、ここは船の中なので、みんな人の姿になっている。

ドミナントは、前の世界の通り、特徴的なところはなくイケメンでも不細工でもない普通の体型の普通の男である。

ジナイーダは、紫色の髪をして、まさに気の強い美人である。胸は…そこそこある…。ドミナントは資料で知っていたから驚かなかった。船に乗る男たちの注目の的である。

セラフにはドミナントが一番驚いていた。なぜなら、世界一といっても過言ではない美人だからだ。真紅色の髪のポニーテールは長く伸びていて、体型もすごく良い。船に乗っている男性客がいちいち声をかけてくるくらい。そこら辺にいる女(ジナイーダや艦娘以外)が野菜に見えるくらいだ。

主任は、○葉商事の係長そっくり…ではなく、なかなか男前で、サッパリしている感じだ。船に乗っている女性は必ず声をかけるが、性格がアレなのでギャップがすごく、声をかけてきたのにすぐに離れるくらいだ。

現在、主任はジェットスキーをして楽しんでいる。そして、二人が近づいてきて、耳元で囁いた。

 

「ドミナント…なんかジロジロ見てくるやつ鬱陶しいから殺して良いか?」

 

「ドミナントさん…いちいち声をかけてくる人をしばいていいですか?」

 

「いや、ダメだろ。」

 

二人がとんでもないことを相談してきた。

 

……すごく美人なのに…なんでだろう…。

 

ドミナントは疑問に思う。

そんなこんなをやっているうちに船が着き、降りて目的地まで行くドミナント御一行。行こうと思っていたのだが、船に乗っていた男性客がジナやセラフに愛の告白をしてきたので、時間がかかった。ジナとセラフはその男たちの告白を全部容赦なく踏みにじった。

 

……船で色々鬱憤が溜まってたんだなぁ…。

 

ドミナントはそう思い、神様を背負って行こうとする。神様は、ドミナントにたくさんスキンシップをして疲れて寝てしまっている。そして、全て踏みにじった後、ドミナント御一行は目的地に歩いて行く。

 

…………

 

「これが…俺たちの鎮守府?」

 

着いた場所は出来立てとは思えないくらいボロかった…。




はい、終わりです。いつもの2.5倍。疲れた〜。今日はこれが最後の投稿です。
登場人物紹介コーナー
前の提督…憲兵案件で捕まって現在服役中。艦娘や妖精さんに不当な扱いをした。門にいた憲兵に叢雲が助けを求めて提督は無事に捕まった。(その憲兵は叢雲の想い人になる。つまり、銃を向けられた憲兵)
船の人…主に旅行客。告白しに行った男たちは大半彼女持ちやら奥さん持ちで、あとでその港が大修羅場となったことで有名になる。
神様…元提督。仕事の9分の8は艦娘やドミナントに任せっきりだった。ドミナントのことが大好きになり、色々スキンシップするのだが、そういうことにはならない。夢でドミナントに謝っていたのは、自分のふざけ心で色々しちゃって迷惑していると気づいたから。怒るとマジで怖い。
次回!第20話「AMIDAの楽園」お楽しみに!


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20話 AMIDAの楽園

はい、ついに20話!!あとその5倍で100話に…。遠いな……。
まぁ、それはそれとして、今回タイトルが不穏な感じですが、気にしない気にしない。
神様はもちろん引っ越すのに、AMIDAを忘れてはいませんよ。愉快な仲間たちは、お金を…。神様は服やらなんやら…。ドミナントはお金と例の資料を…。
まぁ、こんな感じです。鎮守府に着くなりすぐにACに戻りました。
では、あらすじを始めたいと思います。今日は…誰にしようか…。
誰もいないから自分がやります。(人がいないこともあるので、その時はリクエストを頼みます。)

あらすじ
新しい鎮守府へ向かうドミナント御一行。しかし、先輩神様の手違いで、立て直して無かったことに…。これからこの鎮守府でやっていくのに少々不安だが、なんとかやっていくことなった…。


「これが…俺たちの鎮守府?」

 

そう言ってボロい鎮守府を見るドミナント一行。

 

「……ん?…むにゃ?」

 

神様が起きる。

 

「何ここ?…!?私…捨てられるの…!?。……様々な迷惑かけてきたけど…これは…ひどいよぉ……。」

 

神様がこの建物を見るなり涙目でトンチンカンなことを言う。

 

……どうしてそういう発想になるんだろう…。

 

ドミナントは思ったが、すぐに神様に聞く。

 

「いや、しないよ…。それより、先輩神様に連絡とか出来ないかな?本当にここであっているのか…。」

 

「よかった…。やってみるね!」

 

先ほどとは打って変わり、元気な神様を降ろす。

 

「……。」

 

……なんか念じてる…。神様って便利だなぁ…。

 

神様が連絡を取ろうとしている時にドミナントは呑気に思っている。

 

「……。わかったよ!」

 

「ほう。なんだ?」

 

ジナイーダは神様に問う。

 

「なんか手違いでここまで建て直してなかったことになったんだって…。」

 

「「「「……。」」」」

 

「……。」

 

全員何も言わなくなる。そこでドミナントが…。

 

「ま、まぁ、ここで暮らすことになるんだし、逆に俺たちが建て直したほうが便利になると思うし。」

 

「「「「……。」」」」

 

ドミナントがポジティブにそう言うが、みんな黙ったままである…。

 

ガタガタッ!ガタガタッ!!

 

神様の持ってきたカゴが思いっきり揺れる。

 

「…。AMIDAがなんか反応しているから行こう?……。いや、来てよ。」

 

ドミナントが歩を進めるが、誰も来ない…。ショックすぎて追いついていないみたいだ。

 

「……。はぁ…。仕方ない…付いて行くか…。」

 

ドミナントの言葉にやれやれと言った感じでジナイーダが付いていこうとする。

 

「…!ありがとうジナイーダ!!」

 

そう言って感謝するドミナント。

 

「いや、それほど感謝されることではないんだが…。」

 

ジナイーダがそんなことを言っていると…。

 

「私も行く!」

 

「私も…行きます!」

 

神様とセラフが大声で言う。もちろん、その二人は感謝されたいから言っている…。

 

「お、おう…。そうか…ありがとう…。」

 

ドミナントがいきなり大声を出したことに驚きながら感謝を述べる。

 

「……。主任は?」

 

そう言って、主任のことを確認しようとするが…。

 

「……。またかよ…。」

 

主任がいなかった…。

 

…………

 

「ギャハハハハハ!いーじゃん!気に入ったよ!」

 

主任は一足先に鎮守府の中に入っていた。

 

「う〜ん…。でもなんかおかしいな〜。」

 

主任は周りを見ながらそう言う。

 

「!?ギャハハハハハハハ!これは面白いねぇ!」

 

主任が何かを発見する…。

 

…………

 

「主にーん!どこだーー?」

 

ドミナント一行は主任を探しに中に入っている。

 

「……狭いよ、ジナイーダのところへ行ってよ…。」

 

そうドミナントは言う。セラフと神様はドミナントに両側からくっつかれている。

 

「「……。」」

 

二人とも黙ったままだ…。

 

「神様はまだ子供だからわかるけど…セラフはどうしてだ?」

 

ドミナントは聞く。

 

「……。なんとなくです。」

 

セラフは素っ気なく答える。この唐変木に気付かせるには相当な苦労が必要である。

 

「……。」

 

ジナイーダは冷たい目でドミナントを見ていたが、暖かなパワーを放つ二人に囲まれて気づかない…。

 

……。昼間からこんなのを見せつけられてどんな気持ちになるかアイツは分かっていない…。あとで数発殴っておくか…。

 

ジナイーダはそんなことを考える…。そこで…。

 

ガタガタ……ガタンッ!

 

カゴが壊れ、AMIDAが走っていく。

 

「!待って!」

 

そう言って神様が追いかけていく。

 

「!?ジナイーダ!セラフ!行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

ジナイーダとセラフは素早く反応して、ドミナントの後を追いかける…。そして…。

 

「捕まえた。」

 

神様を捕まえるドミナント。

 

「!?離してよ!私のペットが…。」

 

「いや、それより、主任の足跡がある。そしてAMIDAも同じ方向へ行った…。関連性が高い。早く行こうが、遅く行こうが変わらない…。それよりも、今来た道をしっかり覚えていくことだ。ここはなんだかグルグル同じところを回っている気がしてな…。」

 

ドミナントが冷静に判断し、神様を納得させる。

 

「……。わかった。ところで、私達はどこから来たの?」

 

神様は問う。

 

「「「……。」」」

 

ドミナントたちは黙る…。そして…。

 

「まぁ、それはいい。それより、主任の場所へ行こう。」

 

ジナイーダは誤魔化しながら言った。

 

…………

 

「この扉の中?」

 

神様は言う…。主任の足跡はこの古く、閉まっている扉の中に続いている。

 

「開けるか…。」

 

「そうですね…。」

 

ジナイーダとセラフが扉を開けようとするが…。

 

「待て!」

 

ドミナントが呼び止める。

 

「ど、どうかしたのか?ドミナント…。」

 

「あぁ、大抵こういう扉は中に何か必ずあるんだ…。」

 

「いや、主任がいますからそりゃありますよ(主任が)。」

 

「そういう意味ではなく…。中に必ずとんでもない事がある…。」

 

「そ、それはどういう意味?」

 

「……。おそらく、世にも奇妙なもので、想像を超えたものだ…。」

 

「な、なんか怖くなってきました…。」

 

「う、うん…。私も…。」

 

神様とセラフはそういうが…。

 

「ふんっ!馬鹿馬鹿しい、そんな奇妙なことがあるはずがない。開けるぞ。」

 

そう言ってジナイーダが扉を開ける…すると…。

 

 

キシキシ…キシキシ…

カサカサ…キシキシ…

キシキシ…カサカサカサ…

キシ…カサカサカサカサ…

 

AMIDAが部屋の壁も天井も床にも敷き詰められていて、その中心に倒れてる主任がいた…。部屋の模様が動いているようだ…。

 

「「「「……。」」」」

 

ドミナント一行は固まる…。開けたジナイーダも…。

 

……まるでAMIDAの楽園だ。

 

ドミナントが思考停止し、尋常じゃない感想を浮かべる。

 

「いやーーーーー!!!」

 

神様は叫ぶ。そしてそれが引き金になり…。

 

カサカサカサカサカサカサカサカサカサ!!!

 

AMIDAの大群が向かってきた…。

 

 

「待て!」

 

声が聞こえて、AMIDAの大群が止まる。

 

「ギャハハハハ!ドミナントじゃん。何か用?」

 

主任が起き上がり、ドミナントに聞く。

 

「主、主任…なのか?これは…どういう…。」

 

ドミナントが聞く。

 

「あ〜これ?なんかこいつらのあと追ったらこうなっちゃってさー。ま、いいんじゃないのどうでも。」

 

主任がいつもの感じでいう。

 

「いや、どうでもよくないだろ…。それ、どうするんだ?」

 

ドミナントは主任に聞く。

 

「ま、俺たちが住んだら逃げるよ。」

 

気楽に主任が言う。

 

「そ、そうか…。建て直すから…。それまでになんとかしとけよ…。」

 

ドミナントはそう言う。そして固まった3人に、現実へ戻ってもらい、その部屋を後にするのであった…。

 

「さぁ、早く建て直さないと初期艦が来るからね…。早く建て直そう…。」

 

「……。わかった。」

 

「わかりました…。」

 

「わかったよ〜…。」

 

さっきのことで精神の限界が近いのに、その上建て直すのだからみんなの士気はだだ下がりである…。

 

その頃……

 

「……。これが…私の鎮守府ですか…?」




はい、やってきました20話。ドミナント御一行の到着予定は明日ということに誰が一番早く気づくだろうか…。初期艦、誰になったか楽しみですね!え?口調でわかる?気にしない気にしない。
登場人物コーナー
AMIDAの大群…ここに住んでいる。いつのまにか繁殖し、手に負えない。主任の子分になる。
AMIDA…神様のペット。色が違うのでここにいるAMIDAと比べてもすぐにわかる。
次回!21話「鎮守府へようこそ。歓迎しよう盛大にな。」お楽しみに!


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21話 鎮守府へようこそ。歓迎しよう盛大にな

21話!やっといろんなことが書ける…。あぁ…AMIDAのぬいぐるみに埋もれたい…。
はい、ではあらすじに移ります。リクエストじゃんじゃんどうぞ。(たくさん登場人物いますから誰にしようか迷います。マジで。)
では、今日は…ドミナント、やる?
「いいだろう。管制室!聞こえるか!?すぐに援護しろ!(モリ・カドル風)」
ではどうぞ。

あらすじ
ボロい鎮守府に着いて、主任が行方不明になる。なんと主任はAMIDAを手懐けていた…。それから建て直すことになるのだg…

バコォォォン!
うおっ!?今頃管制室の攻撃が…。しかもドミナントに当たってる…。で、では始まります…。


「ここが…私の鎮守府ですか…?」

 

そう言ってボロい鎮守府を見ている…。

 

「と、とりあえずチャイム押さないと…。」

 

そう言ってチャイムを鳴らすボタンを探す。門がつるに巻かれて草でよく見えない。

 

…………

 

「ふぅ、なんとかこの部屋も終わりました。」

 

「こ、これは…。」

 

ドミナントは驚く。

 

……あれだけ散らかっていた部屋が…。腐っていた壁や床、天井が…。窓がなかったはずなのに…。たった5分で…何があったんだ?

 

匠とはまさにこのこと…。

 

「はい、この部屋は落ち着いた感じを出すため、明るい色の木材を使いました。そして、窓をつけたことによって、日の光がちょうど良い感じに入り込み、さらには、ここから地平線に沈む夕日が見れます。腐っていた木材は全て取り替え、腐った木材の匂いを消しておきました。さらに、もともと家具が少なかった部屋に家具を付け足し、お洒落な感じにしてみました。」

 

「お、おう…。ところで、新しい木材はどこにあったんだ?」

 

「はい、その件に関しては元々ここにあった資料にここから見える山全てがこの鎮守府の領地と書いてありましたので、少し切り倒して無駄なく使ったというわけです。変な形をしたものなども家具などに採用し、あとは細かな穴とかも埋めておきました。この部屋だけで木を1本使いました。」

 

「そ、そうか…。この調子で後も頼む…。廊下も新しくなっていたが…まさかセラフが?」

 

「!?…お気に召しませんでしたか…?」

 

「い、いや、そんなこと全くない。」

 

シュンとなったセラフにドミナントは思いっきり否定する。それと、廊下まで新しくしていたことに驚く。そう、なんと5分で鎮守府の建物の中は新しくなっていた…。セラフは万能で、能力値の何もかもが高い。

 

「……。ところで、他のみんなはここで何をしているんだ?」

 

ドミナントはせっせと働いている主任とジナイーダと神様を見る。

 

「あぁ…。あれは臭い消しを染み込ました布を使って隅々まで拭いてもらっているのです。新しい木材の臭いが嫌いな人もいるので。」

 

……すげーなこいつ…大物だ…。

 

ドミナントはセラフのちょっとした気遣いに感心する。そこまで丁寧に出来る人は稀だ。

 

「ありがとうな。みんな…。あとで頑張った人にはできることなら望みを叶えてあげよう。」

 

「「「「!?」」」」

 

その言葉に思いっきり反応する神様と愉快な仲間たち…。

 

「それは…本当なのだな…?」

 

「ほ、本当ですか…?」

 

「嘘…つかないよね…?」

 

「ギャハハ!いーじゃん!盛り上がってきたねーーー!」

 

愉快な仲間たちと神様はそれぞれの反応をする。

 

「ああ。嘘はつかんし、本当だ。そのかわり、少し俺の茶番に付き合ってほしい…。」

 

「「「「?」」」」

 

「実はな…記念すべき初期艦が到着するとき、少し記憶に残らせたいのだ。作戦はある。俺のいた世界のネタなんだが…。」

 

説明中

 

「わかった!私がこの役をやればいいんだね!」

 

「私は…この役か…。」

 

「ギャハハ!俺は裏方役か〜。」

 

「私はジナイーダさんと同じ役ですか…神様の役の方が…。」

 

「ん?何か言ったか?セラフ?」

 

「い、いえ、なんでも…。」

 

そんなこんなをしているうちに、チャイムが鳴る。

 

「あ、来た。じゃぁ、みんな、よろしく頼む。」

 

「「「「了解」」」」

 

そしてドミナントは神様と一緒に迎えに行く。

 

…………

 

「ふぅ、やっと見つけました…。」

 

そう言ってチャイムボタンから手を離し、提督を待つ。

 

「……司令官…変な人じゃなきゃいいなぁ…。」

 

そう言って待っていると…。

 

「やぁ、この鎮守府へようこそ。歓迎しよう盛大にな。」

 

「や!よく来たね!私はこの鎮守府の提督の付き人だよ!」

 

そう言って挨拶するドミナントと神様。

 

「で、君の名は?」

 

神様は聞く。

 

「わ、私は駆逐艦『吹雪』です!よろしくお願いいたします!」

 

吹雪が元気よく答える。

 

「……。ふむ…アニメと全く顔が違うな…。」

 

「?どうかしました?」

 

「いや、こっちの話だ。」

 

ドミナントは少しガッカリしたような…会えて嬉しいような微妙な顔をした。

 

「では、この鎮守府を案内しよう。」

 

そう言って案内をするドミナント…。

 

一方、吹雪は…

 

……うわぁ…ヤバイ人が司令官です…なんでロボットなの?しかも、付き人って私達艦娘と同じくらい、いや、それよりも美少女じゃないですか…。

 

そんなことを思っていた…。

 

ドミナントは、鎮守府を案内した…。中には、ドミナントが迎えに行った時に新しくなっていたところがあったが、ドミナントはこの後の計画のため、堂々と話していた…。

 

「へぇ〜。外は古く見えましたけど、中はしっかりしているんですね。」

 

「ああ。次は堤防を見せる。」

 

ドミナントはそう言う。そしてここから計画が始まった…。

 

「うん!中はしっかりしているよ!セラフも頑張ってたし、私も頑張らないと!」

 

「あぁ、そうだな…。」

 

〔ここで気づいた人もいるかもしれませんが、もう少し茶番にお付き合いください。〕

 

 

神様はトイレをしに…そして外に出た時…。

 

カサカサカサ…パァァァン!!

 

ロボットがAMIDAを連れて銃を撃つ。そしてドミナントは吹雪を庇う。

 

「きゃっ!?」

 

吹雪はドミナントに庇われている…。

 

ダダダダダダダダダ!!

 

ドミナントに弾が当たる。

 

「司令官…!何やっているんですか!?司令官!!」

 

「ぐっ…!ウォォォォォォ!」

 

バン!!

 

「!?」

 

銃を撃ってきたことに驚いたのか謎の集団は逃げていった…。

 

「ハァ…ハァ…。なんだよ…結構、逃げんじゃねぇか…。」

 

ドミナントはそう言う。

 

「し、司令官…。」

 

「なんて声…出してやがる…。吹雪…。」

 

「だって…だって…!」

 

どこからともなく音楽が流れる。

 

「俺は…第4佐世保鎮守府提督…ドミナントだぞ…こんくれぇなんてことはねぇ…。」

 

「そんな…私なんかのために…。」

 

ドミナントは立ち上がる…。

 

「仲間を守んのは俺の仕事だ…。」

 

「でもぉ!」

 

「いいから行くぞ…皆が…待ってんだ…。」

 

そしてドミナントは歩く…。

 

「それに…ジナイーダ…やっとわかったんだ…。俺たちに辿り着く場所なんていらねぇ…ただ進み続けるだけでいい…。」

 

そこで神様、ジナイーダ、セラフが出てくる…。

 

「止まんねぇ限り…道は…続く……。」

 

「俺は止まんねぇからよぉ…お前らが止まんねぇ限り…その先に俺はいるぞぉ……!」

 

ここで神様たちは目薬をこっそり使い、涙を流す。

 

「だからよぉ……止まるんじゃねぇぞ……!」

 

そう言いながらドミナントは倒れる。

 

……。そろそろか?

 

そう思い、ドミナントは何事もなかったかのように起き上がる。そう、撃った弾は普通の弾で、ドミナントたちACには効かない。音楽を流したのも襲撃したのも主任である。

 

「どうだった?吹……!?」

 

吹雪はガチ泣きしていた…。

 

「司令…官…?」

 

そう言ってドミナントを見る。

 

「!?…うわぁぁぁぁん!」

 

吹雪は泣きながらドミナントに駆け寄って抱きしめる。

 

「無事でよかったです……。もう…そんなことしないでください………。」

 

吹雪が真剣に、そしてまじめに泣きながら言う…。

 

「あ、あぁ…。すまなかった…。笑ってくれるかと思ったのでな……。」

 

「もう……そんな冗談通じません……もう二度としないでください……。」

 

吹雪は抱きしめながら言う…。

 

……女の感情はわからないなぁ…。

 

そう思う残念なドミナントであった…。




はい、今日は時間的に余裕があったので二回投稿しました!このネタに敏感な人はすぐにわかったと思います…。ドミナント…女の子を泣かせて許すまじ…。
登場人物紹介コーナー
吹雪…初期艦。真面目な性格で、冗談が通じなかったりする。そして、この鎮守府で色々学ぶのだが…。
セラフ…匠。まるで魔法のように家具を瞬間的に作ったり、部屋自体を変えたりする。セラフが出てきたときはもう内部は完璧になっていた。
次回!第22話「遅かったじゃないか…」お楽しみに!


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22話 遅かったじゃないか…

はい、22話!いつかキサラギ社か、有澤重工に働いてAMIDAグッズを買い占めたい…。凍ったAMIDAを初めて見ました…。あとで誰か食べるのかな?
では、あらすじに入りたいと思います。今日は…吹雪行く?
「はい!やります!」
艦娘というのは元気なのが売りなのか?どうぞ。

あらすじ
私がこの鎮守府へ来て、チャイムを鳴らした後、司令官がイジワルなことをしてきました…。


「コホン、さっきは取り乱してすいませんでした…。」

 

「…。はい…。」

 

「次やったら、追い詰めて…肥溜めにぶち込んであげます。」

 

「はい…。」

 

吹雪が言い、ドミナントが返事をする。あの後、吹雪を泣かせたドミナントは主任に罵倒され、セラフに冷たい目で見られ、神様には口を聞いてもらえず、ジナイーダに殴られた…。ドミナントはマジでキボウノハナになった…。吹雪は終始眺めながら苦笑いをしていた。もうやめて、とっくにドミナントのAPは0よ…。

 

「ところで、艦娘は私以外いないんですか?」

 

「はい…。その通りです…。」

 

「……。司令官、もういい加減立ち直ってください。私ももう怒ってないですから…。」

 

吹雪がそう言う。

 

「そうですか…。じゃぁ、立ち直るか。」

 

ドミナントが普段通りの感じに戻る。

 

「そうです!そのいきです!頑張りましょう!」

 

そう笑顔で元気に話す吹雪。

 

……あぁ…なんていい子なんだ…。

 

ドミナントはほっこりする。

 

「ところで、艦娘は私一人だけなんですよね?」

 

「ああ。その通りだよ。」

 

「?他にも艦娘が来るはずなんですが…。」

 

「?」

 

ドミナントはそんな情報初めて聞く。

 

……筆者め…わざと書かなかったのか…。

 

いや、書こうとしたんだよ…でもね、時間やタイミングが難しくて…。

 

……何のためのブリーフィングだ!馬鹿馬鹿しい。

 

すんません。

 

「?司令官、どうかしたんですか?」

 

「いや、別に…。」

 

吹雪は、ドミナントが一人で葛藤しているのを見て不思議に思ったが、気にしないことにした。そして、自分の部屋がどこかセラフに聞きにいった。

 

「……。まぁいい、それよりもこの資料に則って色々やるか。」

 

ドミナントは神様にもらった資料を見る。

 

……ふむ。まずは{初めての建造}か…。

 

そう考えながら建造しに行く。

 

ウィーンガガガガ…。

 

……よし、これでいい。

 

プシューーー…。

 

……もう終わったのか!?艦これの建造って時間がかかると噂されていたけど…。デマだったんだな…。

 

そんなわけがない。この世界だからこそである。気づいていると思うが、先輩神様やドミナント御一行が来た時点で艦これではない…。似ている世界だ…。

 

……なんか艦娘とか出てこないかなぁ…。

 

ドミナントが思う。そして…。

 

「駆逐艦『如月』と申します。お傍に置いてくださいね。」

 

「……。」

 

……艦娘が出てきたのは嬉しいが…。まさか、AMIDAがいたからじゃないだろうな…。どうしてもあの企業を連想するんだが…。いや、ご令嬢という可能性も…。この建造機械の中にAMIDAが入っているんじゃ…。

 

「司令官?どうかしました?」

 

ドミナントが考えていると、如月が心配して声をかけてきた。

 

「…いや、なんでもない。」

 

そんなことを言っていると…。

 

ブーーーン!

 

AMIDAがやってきた。

 

「あら。何かしら…。」

 

AMIDAが頭に乗った。

 

「いやだ。髪が痛んじゃう…。……あ、楽になったわぁ。」

 

AMIDAは、如月の声を聞いて頭を掴んでいた足の力を緩めた。

 

「おぉ…。AMIDAが懐いているとは…。」

 

ドミナントは驚きの声を出す。

 

「……。あのぅ…この子、どうすれば良いでしょうか…?」

 

如月は困った顔で見てきた。

 

「それなら、主任に任せよう。しゅにーーーん!」

 

ドミナントは叫ぶ。すると…。

 

ガシャーーーーン!!

 

「「!?」」

 

「ギャハハハハ!!呼んだかな?」

 

主任が倉庫の壁を破って登場してきた。

 

「しゅ、主任…なんでそこから?すぐそこに扉あるでしょ!?なんでそこを使わないの!?」

 

ドミナントが大声を出す。本当は、“遅かったじゃないか…”と、某レイヴンのセリフを言おうと思っていた。

 

「あれ?面白くなかったかな〜。その方が面白いよ〜。」

 

「いや!面白くないから!その壁を直すのにまたセラフがやらなきゃいけなくなるから!余計な手間を増やさないであげて!」

 

ドミナントと主任がやりとりしていると…。

 

『お昼ご飯できました!皆さん、早く食堂へ来てください!』

 

セラフが放送する。

 

「ギャハハ!じゃ!」

 

そう言って主任が食堂へ行ってしまった…。

 

「……。あいつ…ただ壊しに来ただけじゃないか…。」

 

ドミナントは呆れていた…。

 

「あのぅ…。私はどうすれば…?」

 

如月がドミナントに言う。

 

「…あぁ…。ごめんごめん。すっかり忘れてたよ…。あのダイナミック入室でね…。まぁ、今はご飯食べよう?AMIDAは…離れないなら今は我慢してあげて?多分気に入っちゃっていると思うから…。」

 

「は、はい……重いです…。」

 

ドミナントは如月と一緒に食堂へ行く。

 

…………

 

「さぁ、どうぞ。」

 

セラフが笑顔で料理を出してきた。ドミナントたちは味わうため、人の姿に戻っている。

 

……おぉ…これは…。

 

見た目でわかる。これは美味い。丁寧な盛り付けセンスがあらわになっている。

 

「そ、それでは皆、手を合わせて…。」

 

「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」

 

みんなで一緒に食べる。すると…。

 

「む…。セラフ、これマジで美味い。地球上の食べ物とは思えないくらい。」

 

ドミナントが褒める。すると、セラフがとても嬉しそうでいた。

 

「は、はい…そう言ってもらえて光栄です…。」

 

セラフは恥ずかしそうに言う。

 

「セラフさん!これすごく美味しいです!今度作り方を教えてください!」

 

吹雪が褒める。

 

「ギャハハハハ!!う〜ん。最高だこの料理はーーーー!!」

 

主任が美味しすぎて壊れたようだ。(もともと壊れている。)

 

「!?…セラフ…美味しいな…。私は…何もかも負けているのか…。」

 

ジナイーダがなぜか悔しそうに言う。

 

「!美味しいわぁ。こんなに美味しいものを建造されたすぐに食べれるなんて幸せ。」

 

如月がエロい顔で言う。

 

ギシギシ!カサカサ!

 

如月の頭にいるAMIDAも嬉しそうだ。

 

……如月…その顔はやめような?マジでヤバイから!R-18指定入るから!あと、よく器用にAMIDAに食べさせているなぁ…。

 

ドミナントはそう思った。

 

「私も!こんなに美味しいもの天界でも食べたことない!!」

 

神様が言う。

 

「「えっ!?」」

 

吹雪と如月が声を合わせる。

 

「あぁ。説明してなかったね!私は別の世界の神様だよ!信じられないかもしれないけど…。内緒だよ!!」

 

神様はそう言う。

 

「「は、はぁ…。」」

 

吹雪と如月は突然言われて戸惑っている。

 

「…。本当だ。だから、このことは内密に頼む。」

 

ドミナントが真剣に言う。

 

「はい!わかりました!」

 

「司令官の言うことは、絶対に守るわぁ。」

 

吹雪と如月がそう言う。

 

「……。なんか扱いが違う…。」

 

神様は悲しそうな顔をする。

 

「で…なんで神様がここにいるんですか?」

 

吹雪が不思議そうに聞く。

 

「そ、それはねぇ…」

 

神様は目をそらす。

 

……言えない…。ドミナントが好きだから何兆人もの人を捨ててきたなんて…言えない…。……とか考えている顔だなあれは…。

 

ドミナントは神様の思っていることを当てている。そして…

 

「そ、それはドミナントが私を誘拐したから…」

 

「嘘をつくな。」

 

「ごめんなさい…。」

 

ドミナントが否定し、神様が素直に謝る。

 

「…で、どうしてなんですか?」

 

吹雪が聞いてくる。

 

「……。」

 

神様は黙ったままだ。

 

「……はぁ…。なら私が説明しよう。」

 

ジナイーダがため息を吐きながら言う。

 

……ありがとう!ジナイーダ!やっぱり、なんだかんだ言って優しいんだなぁ…。

 

ドミナントは感謝するが…。

 

「この提督が連れ去ったんだ。」

 

「「えぇっ!?」」

 

吹雪と如月が驚きの声を発する。そして、まるでゴミを見るかのような目でドミナントを見る。

 

「ちょ、ジナイーダァ!?何言ってんのぉ!?」

 

ドミナントは耳を疑うが…。

 

「あの時、“連れ去って”と言われたではないか…。私たちが見ていないとでも?」

 

ドミナントは思い出す…。

 

……あぁ…あの時か…。てか、いたの!?どこにいたの!?天井は重さで落ちると思うし…。

 

ドミナントはそんなことを考えるが、今はこの状況をなんとかしようとする。

 

「そ、それは仕方ないだろ…。それに、誤解だ!あれは神様が望んでやったんだ!」

 

ドミナントが叫ぶが…。

 

「わ、私そんなこと言ってないよ〜。」

 

神様が目をそらす。それでドミナントがキレたのか…。

 

「ほぅ。ならいいだろう。あの話は無かったことにする。もう天界へ帰っていいぞ。俺も気にしない。先輩神様に言っておこう。」

 

「!?。ちょっと待って!!私が悪かったから!無かったことにしないで!お願い!!…無視しないでよぉ!!…気にしてよぉ…。」

 

神様が涙目で頼んでくる。ドミナントはそれを無視して黙々と料理を平らげる。

 

それを見て吹雪や如月が察したのか、微笑んでいる。

主任は大声で笑い叫んでいる。

セラフは嬉しそうな顔をする。

ジナイーダはやれやれといった感じで口元を緩める。

 

一方…

 

「これが…あの人がいる鎮守府ですか?」

 

「はい…資料によると、私が探している人もいるらしいです…。」

 

「なるほど…例のルートから…。」

 

「その行動は相当なものだったそうですよ?」

 

「……。このチャイムを鳴らせば分かりますよ。」

 

「いれば…ですが…。」

 

「まぁ、そういうことです。では、チャイムを鳴らしましょう。」

 

そう言って鎮守府のチャイムを鳴らそうとする2人の艦娘がいる…。




はい!22話終わり!ギャグ、コメディ系なので、まだまだネタがある!まだまだいけるぜ!メルツェェェェェェル!!
はぁ…はぁ……。大声出したら疲れた…。ネタがない時など、新キャラ追加などすると良いかもしれません…。(オリキャラ追加予定)
登場人物紹介コーナー
如月…令嬢ではない。なぜかAMIDAに懐かれている。よくエロい動作や顔をするが、ドミナント以外あまり気にしていない。
セラフ…料理の腕は5つ星をもらえるほど。いや、それ以上…。
主任…壊れているところもあるが、たまにしっかりしている自由人。面白いことがとにかく好き。賑やかなのも。だが、自由に空を飛び回ったり、敷地内を探検したり、壁を破ったり、からかったりする(主に吹雪)のはやめてほしいとドミナントは思っている。いつか世界を旅したいと思っている。
次回!第23話「何も変わらねぇのかよ…結局」お楽しみに!


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23話 何も変わらねぇのかよ…結局

23話だ!今回はちょっとドタバタします。ドミナントのコメディはもう少し人が足りないかな?それとも、もう十分かな?
はい、ではあらすじに移りたいと思います。今回は…如月行く〜?
「はぁい。喜んで。」
お、おう…18指定入らないようにな…マジで。

あらすじ
私が建造された後、AMIDA?が私の体の一部に乗っかってきたわぁ。私が嫌がったんだけどぉ、離そうとしないのぉ。そのあと、お昼ご飯を食べているのだが…。
注)はい、最後ら辺ちょっとアレな話し方だったので、強制的に筆者に変わりました。


ビーーーーー

 

チャイムがなる。

 

「む…。誰か来たみたいだな…移動の艦娘か?」

 

そう言ってドミナントは行こうとするが…。

 

「お願いぃ…許してぇ…。」

 

神様は泣きながらドミナントの足を必死に掴んでいる。

 

「わ、わかったから。もう泣かないで…。そして離して…。」

 

ドミナントは神様にそう言い、玄関へ向かう。そして、二人の艦娘がいた。

 

「いらっしゃい。君たち、名前は?」

 

ドミナントが聞く。

 

「あなたが司令官ですね。駆逐艦『三日月』です。どうぞお手柔らかにお願いします。」

 

「はーい、おまたせ。兵装実験軽巡『夕張』到着いたしました。」

 

可愛らしい艦娘が自己紹介をする。

 

「俺は…第4佐世保鎮守府提督…ドミナントだぞ…。」

 

ドミナントも自己紹介をする。

 

「「えっ!?あなたがドミナント…?なんか…前より人間に近いような…。」」

 

二人の艦娘は声を合わせる…。

 

「あっ…。人の姿のままだったね。てか、なんで知ってるの?」

 

ドミナントは食事をしてすぐに向かったので人の姿のままだった。そして、二人のことに疑問を抱く。

 

「……。私は話したことないですけど…。私のことを見かけていたのは知ってます…。」

 

「……。挨拶したはずなんですが…。」

 

二人はジト目でドミナントを見る。

 

……はて?誰だったかな…。前の鎮守府の艦娘かな?色々ありすぎてよく覚えていない…。だが、ここは話を合わせるために…。

 

「前の鎮守府にいた艦娘だね。思い出したよ。」

 

ドミナントは嘘をつく。

 

「……。目が泳いでますよ。」

 

「……。すみません。覚えていません…。」

 

三日月が指摘し、ドミナントが謝る。

 

「もぉ!前セラフさんと一緒に私の場所に来たじゃないですか!」

 

夕張が声を荒げる。

 

……。あぁ。セラフと一緒に暴走していた艦娘か…。

 

ドミナントはそんな失礼なことを思う。

 

「私は…、まぁ、思い出せなくても仕方ありませんが…。」

 

三日月が言う。

 

「そ、そっか〜。まぁ、入って入って。」

 

ドミナントはここで何かしていても、状況が変わるわけではないので、とりあえず中に入れる。

 

…………

 

「ただいま…。」

 

ドミナントは食堂に来た。

 

「お帰り〜!て、誰?その子たち。」

 

神様が言う。

 

……いやいやいや、仮にも元提督をしていたんだから、覚えといてあげようよ…。

 

ドミナントはそう思う。

 

「夕張さんですね?お久しぶりです。」

 

セラフはちゃんと挨拶する。

 

「覚えておいてくれたんですね!ありがとうございます!」

 

夕張は笑顔で答える。

 

「また、色々指導してください!」

 

「はい。喜んで。」

 

夕張が頼み、セラフが笑顔で返す。

 

……やめてくれよ…。またあんな暴走するのは…。

 

ドミナントはメカニック専門の二人を見て思った。

 

「私は、主任さんに色々教えてもらいました。」

 

三日月が言う。

 

……あぁ、あの艦娘か…。あれ以来見てなかったからな…。

 

「ギャハハハハハ!そうだっけぇ!?」

 

「!?。覚えて…いませんか?」

 

主任はそんなこと覚えておらず、三日月が悲しそうな顔をする。

 

「ま、まぁまぁ。感動の再会は置いといて。二人とも、昼ごはん食べたか?」

 

ドミナントが聞く。

 

「食べました!」

 

「私は…まだです。」

 

夕張は元気に言うが、三日月は落ち込んでいるようだ。

 

「では、セラフさんの料理を食べてみてください!美味しいですよ?」

 

「えぇ。こんなに美味しいもの始めて食べたわ。」

 

ギシギシ!

 

……うん。確かに美味かったが…。如月は本当に始めて食べたからいまいち説得力がないなぁ…。AMIDAは必死にアピールしているし…。

 

吹雪と如月とAMIDAが話し、ドミナントが思っている。

 

「じゃぁ、食べようかな。」

 

三日月が言う。

 

「えっ!じゃぁ私も食べる!」

 

夕張も元気に言う。そして、二人セラフの料理を食べて喜ぶのであった。

 

…………

 

「さて、これから会議をしたいと思う。」

 

ドミナントが暗い会議室で真面目なトーンで話す。ここに集まっているのは艦娘以外の人。つまり、愉快な仲間たちである。

 

「で、どうして私たちを呼び出したんだ?」

 

ジナイーダはドミナントに聞く。

 

「うむ。実は役割分担をしようと思っている。俺たち以外で艦娘が4人となった。しかし、異動してきた艦娘以外レベルが低い。このまま海域開放や、遠征などを行った場合苦戦するのは必須。」

 

「なるほど。つまり、レベルを上げるために色々指導をしろと言うことだな。」

 

「まぁ、そういうことだ。」

 

ジナイーダは簡略化し、ドミナントが答える。

 

「では、私たちは何をすれば良いのですか?」

 

「そうだな…。俺の見立てでは、セラフは臨機応変に作戦を立て、艦娘に伝達。主任は演習による艦娘の大幅なレベルアップ。ジナイーダは授業などをして艦娘の知識の増加。神様はカウンセラーをしてもらいたいと思っている。食事やその他のことは…全員でローテーションだ。」

 

ドミナントが言う。

 

「カウンセラーって何をするの?」

 

神様が聞いてきた。

 

「艦娘のストレス発散や、俺たちのストレスの発散の話を聞いてもらう。軽視しがちだが、とても大事なことだ。ストレスを抱えると、色々なことに支障をきたすこともある。その支障で大事故に繋がる可能性はないとは言い切れない。…重要な役目ですまないな。」

 

「ううん。別にいいよ!みんなのことももっと知りたいと思っていたし。」

 

神様は笑顔で答える。

 

「うむ。ありがとう。……では、他に質問がある人は?」

 

「「「……。」」」

 

「…なさそうだな。では、会議を終わりたいと思う。」

 

ドミナントは終わらそうとするが…。

 

「Zzz…」

 

主任が寝ていた。

 

「主任。起きろ。」

 

「…ん?会議は終わったのかな〜?」

 

「いや、終わらそうとしていたが、終わらなくなった。主任、お前の役目はなんだ?」

 

ドミナントは聞く。

 

「……。」

 

「……。聞いていなかったか…。では、もう一度しっかり説明する。主任、お前の役目は艦娘たちの演習相手になり、レベル上げを行ってもらう。」

 

「Zzz……。」

 

……何も変わらねぇのかよ…結局…。

 

そのあと、ドミナントが叩き起こし、しっかりと説明した。

 

「ジナイーダは授業をここでもやり、艦娘の知識を増加させる。だが、戦いや、この鎮守府に関係ないことは教えるな。」

 

「わかった…。」

 

「神様はカウンセラーをしてもらい、ストレスによる大事故をなくす。」

 

「わかったよ〜。」

 

「最後に、セラフには作戦を立て、艦娘に、より簡単に作戦を簡略化させ、伝達する。」

 

「わかりました。」

 

「あと、言い忘れていたが…。ここでも人の姿でいるようにしてもらいたい。ACのまま怪我などをした場合資材の減少が著しい。人の姿だと怪我をしても治る。それに、人の姿の方が色々便利だと思うからな。」

 

全員頷く。

 

「それと、俺の秘書についてなんだが…。セラフ、頼む。」

 

「「「!?」」」

 

「ギャハハ!まぁ、いいんじゃないのどうでも。」

 

主任以外が驚く。

 

「わ、私でよろしいのですか?」

 

「ああ。仕事が出来るだろう?それに、何かあった場合すぐに対応できそうだし。」

 

セラフに聞かれてドミナントが当然のように返す。

 

バン!

 

「「「「「!?」」」」」

 

いきなり会議室のドアが開き、ドミナント御一行は驚く。

 

「司令官!それはどういう意味ですか!?秘書艦は代々艦娘がやるべき務めであり、誇りみたいなものなんですよ!」

 

「ちょっとぉ!司令官?私以外を選ぶとはどういうこと?それに、頭の上にいるこの子どうにかしてくれません?早くしないと、私どうにかなっちゃいそう。」

 

「提督!セラフさんを指名とはどういうことですか!?私が教えてもらう時間が減ります!」

 

「司令官。吹雪の言う通り秘書艦は艦娘がやってこその秘書艦です。」

 

それぞれ艦娘がドミナントに抗議する。

 

「仕方がなかろう。お前たちは戦っているんだ。負担をかけさせたくない。」

 

ドミナントは言う。

 

「そうですか…。私には負担をかけても大丈夫と。切り捨てることも平気ということですか?」

 

「ちょっとセラフ!?言い方!まるで俺が極悪人みたいなこと言わないで!!セラフは書類とかの仕事が優秀だから任せられるということだよ!」

 

「そ、そうですか。」

 

セラフはもじもじしながら納得する。

 

「……。ほう、そうか。どうやら私たちは優秀じゃないらしいな。お前の目の前には全く使えない私たちがいるのか。」

 

「ジナイーダまで!?違うよ!?話聞いて!書類関係の仕事が優秀って意味だから!わかってるよね!?わかって言ってるよね!?」

 

「うわぁぁぁぁぁん!!捨てないでーーー!!」

 

「神様まで何しているの!?泣きながら抱きついてこないで!違うから!捨てないから!!言い方もっと気をつけて!まるで俺が女にだらしのないバカ男みたいだよ!?」

 

「司令官…やっぱりそう言う人だったんだ。最低ですね。」

 

「……。」

 

「三日月!?聞いてたよね!?俺捨てるなんて一言も言ってないから!!夕張もその幻滅したような顔やめて!いつも明るく元気な美少女がそんな顔するとすごいダメージ入るから!!言葉よりきついから!!」

 

(最低ですね。地獄に落ちろ。)

 

(誰の気持ちもわかっていない。どうしようもない人ですね。)

 

「妖精さん!?いたの!?今その言葉言わないで!!俺だって頑張っているんだよ!?」

 

「司令官の頑張りは私に恥をかかせたことですか?」

 

「吹雪ぃ!!あの時は本当に悪かったと思ってるから!!君みたいないい子にまで言われると俺泣くよ!!」

 

「司令官が泣いても大丈夫ですよぉ。私が司令官と一緒に寝てあげますからぁ。」

 

「如月!?その気持ちは嬉しいけど、誤解されるようなこと言わないで!?それは大人の世界だと本当にアレだから!!」

 

「ほう。妾の後輩までとは飽き足らず、艦娘にまで手を出すとは…。お主とんでもないやつじゃな。」

 

「先輩!?いついらしたの!?もうこの会議室やばいことになってるから!!もうヤメテ!!」

 

「え!?ドミナント…私より先に艦娘に手を出したの…?」

 

「神様!?誤解だから!信じないで!!そんなマジギレしないで!?可愛い顔が台無しだよ!?」

 

「え?えへへぇ…可愛いって言われちゃったぁ…。えへへへ。」

 

「うわぁ…。責められている時に口説くなんて……本当に最低…!」

 

「ドミナント…私は失望した…もう期待はしない…。」

 

「三日月もジナイーダもわかってるよね!?俺暴走するよ!?」

 

「いーじゃん!!盛り上がってきたねーーーーー!!!!」

 

「主任…お前まで暴走したらもう…この場の収拾がつかないよ…。」

 

「お主…そこまで戯けだったとは…妾が成敗してやる…。」

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ

 

 

 

 

 

 

 

「イヤッホーーーー!!タノシーーーネーーー!!」

 

皆が驚く。ドミナントが暴走したのだ。




はい、23話終わりましたね。前回の最後、強化人間手術だったのですが…わかった人いるかな?
まぁ、いいや。
登場人物紹介コーナー
三日月…神様が提督だった時にその鎮守府に所属していた。最初に主任に勇気を振り絞って教えてもらった艦娘であり、腕は超一流。まだ教えてもらいたいため、新しい提督に異動をお願いしたら快く叶えてもらった。
夕張…セラフに教えてもらい、技術方面の方は現代科学力を超えている。まだまだ教えてもらいたいため、この鎮守府にやってきた。
妖精さん…今までドミナントたちから隠れていた。良い人だとわかったから姿を見せた。
次回!第24話「ドミナント…すまない……。」お楽しみに!


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24話 ドミナント…すまない……。

いや〜…思ったことを文章にするのは難しいことがわかりました…。なかなか次のステージに進めない…。文字数を増やすのが手っ取り早いと思うけど、それだとすぐに終わってしまう。
はい、ではあらすじに移りたいと思います。今日は夕張で
「はい!わかりました!」

あらすじ
私たちがこの鎮守府へ来て、料理を食べて、ドミナントをみんなでからかいました!いつのまにか知らない人もいたけれど…。ドミナントはそのあと暴走してしまったのですが…。


……ん?ここはどこだ?

 

ドミナントは思い、起き上がる。外は夕方で、室内に夕日の光が差し込む。

 

「目が覚めたか?」

 

ジナイーダがいた。

 

「ここは…一体…。」

 

「ここは病室だ。ドミナント…すまない…悪ふざけをしすぎて…。そんなにもストレスが溜まったとは…。」

 

ジナイーダが謝る。

 

「いや、別にいい。それより、なんで俺がこんな状況にいるんだ?」

 

ドミナントが疑問に思い、ジナイーダに聞く。

 

「覚えていないのか…?まぁ、覚えていないならそれでいい。あれからもう三日も経っているんだ。」

 

ジナイーダが言う。

 

「み、三日!?それまで、いったい誰が…?そしてどうなったんだ…?」

 

ドミナントは慌てて起き、部屋を出ようとするが…。

 

「待て、まだ安静にしとけ。私がゆっくり説明する。」

 

ジナイーダに引き止められ、ドミナントはベッドに入る。

 

「あれから、お前の言った通りに役割を分担した。秘書は…残念だがローテーションになった。現在の提督は秘書が代わりにやっている。私が今日の秘書で提督だ。昨日は神様。その前はセラフだ。…お前の言った通りセラフは優秀だ。的確な指示を出し、艦娘は一切の怪我なく帰還した。神様は…察してくれ。」

 

「……。轟沈者は…?」

 

「いない。なんとか大破だけで済んだ。」

 

「よかった…。」

 

ドミナントは安心する。

 

「フフフ…。それほど心配するとはな…。本当に提督になって大丈夫なのか?もし、轟沈者が出たら精神がもたないかもしれんぞ?」

 

「……。そうならないように努力するしかないだろう…。」

 

「…そうだな…。だが、自分に出来る限りの事はしっかりとやれ。そして、悔いを残すな。まだ相手が生きていればどうにかできる…。生きていれば…な……。」

 

ジナイーダが悲しそうな顔をする。それは夕日によるものか本当に悲しいのかはわからない。普段の彼女なら何があってもそんな顔はしないので、ドミナントは前者だと決めつけた。

 

「……。まぁ、あと明日か明後日までは安静にしとけ。私は仕事があるからそろそろ行く。艦娘の仕事はもう終わった。お前が起きたことは伝えておこう。……おそらく騒がしくなる。覚悟しておけ。」

 

そう言ってジナイーダは退室する。

その後ジナイーダの言った通り、病室は神様や愉快な仲間たち、そして艦娘と妖精さんによって騒がしくなった。その後、様子がおかしい人もいたが、それぞれ退室していった。最後に、みんなは言ってなかったが、妖精さんに驚くことを伝えられる。

そう、自分が暴走してしまい、酔っ払ったみたいになってしまったことを…。

艦娘に全員ナンパ、女にはとにかくナンパ。クズのナンパヤローになったことを…。

主任と一緒に暴走してしまい、手がつけられなくなったことを…。

ナンパをして、言われたことをガチに受け取ってしまった人がいることを…。

そして、最終的にジナイーダとセラフに本気で殴られ、昏睡状態になったことを…。

ドミナントは頭を抱えた…。

 

……どうやってもバッドエンドだ…。俺は殺されるかもしれない…。

 

ドミナントは後悔するが、もう遅い。どうにかバッドエンドを回避するため朝まで考えたが、何も浮かばなかった…。

 

……もう朝だ…。頭も鈍ってきた。この状態だと、おかしなことを考えたり、何も案が浮かばなかったりする…。寝よう。起きたら考えよう。

 

そう思い、ドミナントは眠りにつくのだった…。

 

その日の昼

 

「む?俺は何を考えてたんだっけ?思い出せない…。」

 

ドミナントはあろうかとか何を考えていたかすら忘れてしまった。そしたら…。

 

「ドミナント!起きた?今日は休みの日だよ!」

 

神様が目の前にいた。

 

「おぉ…。おはよう…。」

 

「おはよう!でも昼だよ!」

 

神様は元気よく言う。もう2時だ。

 

「うん…。で、ここで何をしているんだ?」

 

「起きるのを待ってた!」

 

「そ、そうか…。でもなんで?」

 

「約束…?覚えてる?」

 

神様が心配しそうに聞く。

 

「…いや…。色々ありすぎて覚えていない…。」

 

ドミナントは思い出そうとするが、何も思い出せない。

 

「む〜。次の休みの日私と一緒に出かけるって言ったよ!」

 

神様はそう言って頰を膨らませる。

 

「……?」

 

「思い出せない顔だね…。主任と一緒に暴走した後!ジナイーダたちに殴られる前!」

 

「…。すまない、そこらへんの記憶が飛んでいるんだ。」

 

「…。そっか〜…。殴られた時あんなに変な音したもんね。殴った本人たちですら青ざめていたからね…。相当なものだったんだ〜…。」

 

神様が笑えないような顔をする。

 

「まぁ、本当に死んじゃったら私がマジでキレてあの二人をぐちゃぐちゃにした後、一緒に天界で暮らせたかもしれないけどね。」

 

神様が笑顔で言う。

 

……神様…普段はあんなに優しいのにすごく怖いことを笑顔で言うんだなぁ…。てか、あの二人をぐちゃぐちゃって…どんだけ強いんだ…?

 

ドミナントは恐怖するが、全て自分のために良かれと思って、やると言っていることを思い、少し口元が緩む。

 

「ありがとうな…。でも、それは俺も望んでいないから復讐はやめてくれ。」

 

そう言ってドミナントは神様の頭を撫でる。

 

「えへへぇ……えへへへへ…。」

 

神様は心底嬉しそうにとろけた顔をする。

 

……すごいな…マジで嬉しそうだ。撫でているこっちも嬉しさが伝わってくる…。

 

ドミナントはそう思い、撫でながら質問する。

 

「で、どこに出かけるんだ?」

 

「う〜ん…?今はまだ撫でられたいよぉ〜……。」

 

「わかった。そこに座れ。」

 

神様をベッドに座らせて撫でてあげる。

 

一時間後……

 

「う〜ん…。まだ撫でられたいけど……そろそろどこか行こうかな…?」

 

神様は眠たそうな目をこすり、立ち上がる。本当はそのまま寝てしまうともったいないと思い、撫でられる誘惑を振り切っているのだ。

 

「どこへ行くんだ?」

 

「う〜ん…。水族館に行きたかったけど…もうこの時間帯じゃ無理だし…。…どこか街を散歩しよう?」

 

「わかった。」

 

そう言って二人で街へ出かける。

 

…………

 

「二人とも、街へ出かけようとしていますね。」

 

「ああ。そうだな。まだ安静にしとけと言ったのに。」

 

鎮守府の屋上で双眼鏡を持って二人の行動を監視する二人。

 

「……。私とも約束をしましたのに…。」

 

「それは次の休みの日だろう?いいじゃないか。今日は二人一緒にいたって。」

 

「そうですが…。ジナイーダさんは私たちと同じ約束をしたのになんとも思わないんですか?」

 

「ああ。私は何も思わないな…。強いて言えば親友と一緒にいろんなところへ行ったことを思い出すくらいだ。」

 

「……。すみません…。私のわがままに付き合ってもらって…。あなたの傷をえぐるようなものですよね…。」

 

「……。大丈夫だ。それに、付き合わせてくれ。私は、自分のやりたいことだらけで、親友に付き合わせてばかりだった。もう謝ることもできないからな…。なら、今の親友でその穴を埋めたい。…自分勝手なのはわかっている。だが、同じ過ちを繰り返したくはない。」

 

「……。そうですか…。わかりました。では、付き合ってくださいね?」

 

「ああ。もちろんだ。」

 

屋上でそんな話をする二人であった。




来た!24話!まだまだ案があるので続けて投稿するよ!例え…俺一人になっても…続けるぜ…。
登場人物紹介コーナー
ドミナント…史上最低の出来損ない。沸点は常人と比べて高いが、それを超えると暴走する。ちなみに、その変な音とは“グボギャ”です。
セラフ…ジナイーダと一緒に屋上で見ていた。スニーキングスキルも高い。だが、ジナイーダには負ける。
ガチに受け取ってしまった艦娘…吹雪、夕張。ちなみに、ドミナントは二人の良いところをしっかりと言い、悪いところを受け止めた。
次回!第25話「景色」お楽しみに!


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25話 景色

ついに25話!100話まであと4倍!あぁ…長い…。
ちなみに、ドミナントたちは気づいていませんが、この世界の強さはこんな感じです。

神様達>ドミナント御一行>上位深海棲艦>森の主(巨大イノシシ)>深海棲艦>AMIDA>人

つまり、ただの深海棲艦の攻撃はドミナントたちには無傷です。本人たちは気づいていませんが…。
では、あらすじに入りたいと思います。今回は…マジでリクエストないので自分がいきます。

あらすじ
暴走して、大変な目にあったドミナント。その後色々あり、どうしようか考えるが、忘れてしまい、神様と出かけることとなった…。


…………

 

「…。うん!これ美味しいよ!」

 

喫茶店みたいなところに入り、神様が美味しそうにパフェを頬張って食べている。

 

「ああ。そうだな。」

 

ドミナントは神様の言ったことに同意する。

 

「……。やはり、お前に注目が集まるな。」

 

「そうかな?私はドミナントだと思うよ?」

 

「馬鹿を言え、なんで25歳のおっさんを見るんだ?“美味しそうにパフェを食べている少女”を見るに決まっているだろう?」

 

ドミナントはそう言うが…。

 

『あのおじさんなんで高校生くらいの美少女と一緒にいるんだろう?』

 

『親子連れ?』

 

『いや、アレじゃないのか?』

 

『若者向けのパフェをおっさんが食べてるなんてウケる〜。』

 

『なるほど…あのおっさん、ああ食べるか…新しい、惹かれるな…。』

 

『ケッ。時代遅れってんだよ、年の離れたリア充め…。』

 

周りの客からヒソヒソ話が聞こえる。

 

「……。やっぱり、ドミナントじゃない?」

 

「……。そうなのかもな…。」

 

そう考える二人であった。

 

…………

 

「美味しそうですね…あれ…。」

 

「ああ。そうだな。」

 

二人は、その店の向かい側の店にいる。

 

「私も…あれくらい奢ってもらえますかね…?」

 

「分からん。だが、奢ってもらえる確率は高い。」

 

「そうでしょうか…。」

 

「……。安心しろ。あいつは“あの子だけ奢ってこの子だけ奢らない”みたいなことはしない男だ。余程のことがない限り大丈夫だ…。それに、お前はその逆になるかもしれない。」

 

「…?どう言うことですか?」

 

「まぁ、そのうちわかるさ。」

 

そう話し合う二人であった。

 

…………

 

「食べ終わったな…次はどこへ行きたい?」

 

「う〜ん。そうだねぇ…。」

 

ドミナントたちは、食べ終わり、店を後にする。

 

「う〜ん…。手を繋いで歩きたい!」

 

「えぇ…。それはちょっと…。」

 

「いいじゃん!私との約束を忘れていたんだし!」

 

神様は顔を赤くして少し強めに言う。

 

「はぁ…。仕方がない…。」

 

ドミナントがため息を吐きながら了承する。

 

「えへへ…。私の始めてどんどんドミナントに取られちゃう…。えへへへへ…。」

 

「……誤解を生むような発言はやめろ…。さもなくば手を離すぞ。」

 

「わかったから離さないで…ね?」

 

「そんな顔をしても離すときは離すぞ。」

 

神様は上目遣いをするが、理性が強いドミナントには効果がないようだ。しかし、その手はしっかりと繋がれていた。

 

…………

 

「うむ。ラブコメ臭がきついな。」

 

ジナイーダは今のを双眼鏡で見ていて、そんなことを言う。二人がいるのはビルの上だ。

 

「むむ…。ドミナント…私と言うものがありながら…。」

 

「ここには一人、怒りの炎で燃えている奴がいるがな…。」

 

「むう〜。手なんか繋いじゃって!羨ましい!!」

 

「そこは隠すところじゃないのか?」

 

「別に良いのです!本人はいないんですし!」

 

「そういうものなのか…?」

 

…………

 

「う〜ん。次はあそこ行こう!」

 

そう言って神様が指をさしたのはタワーだった。しかし、例のタワーではなく、普通の上れるタワーだ。

 

「あのタワーか?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「だが、もう5時のチャイムが鳴ったぞ?帰らなくていいのか?」

 

「私子供じゃないよ!もう大人だよ!」

 

「そう言っているうちはまだ子供だよ。……まぁ、いいか。」

 

「やった!」

 

そう言って二人は中に入る。

 

「ようこそ!チケットは二枚ですね?」

 

「ああ。二枚だ。」

 

そう言ってお金を払う。

 

「親子ですか?いいですね。自分親に連れてってもらったことないので。」

 

「そうか。まぁ、家庭の事情というものだろう?」

 

「へへ。まぁ、そういう感じです。お金がないのでね。……はい!チケット二枚。楽しんで!」

 

「ああ。仕事頑張れよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

そう言ってチケットを手に入れる。

 

「…。ドミナントってコミュ力高いんだね。」

 

エレベーターに乗っている最中神様が話す。

 

「いや、あの売り場の人がコミュ力高いんだ。だから、こちらからもすんなりと会話ができる。」

 

「そうなんだ。でも、あの人だけじゃないと思うけどね!」

 

「いや、あの人のおかげさ。」

 

話している間にエレベーターが止まる。

 

 

「わぁ!すごいいい景色!!」

 

「そうだな。」

 

神様が喜び、ドミナントが返す。人はいなく、貸切みたいだった。

 

……まぁ、確かにいい景色だな。

 

そこは、夕日が差し込み、街や海や山が見える場所だった。

街には車があり、自転車をこぐ人がいて、歩いている人がいた。みんな家に向かっている。

海は穏やかな波が立ち、夕日が反射していて豆粒のような艦娘たちが美しく輝いている。

山は暗い影と明るい日の光が入り混じり、幻想的な風景が広がっている。

そんな背景の中一人立つ美少女がいた。

 

「ドミナント?どうしたの?」

 

神様は首を傾げて聞いてくる。

 

「いや、実にいい景色だなってね。」

 

そう言った途端。ドミナントは…。

 

ザ…ザザッ……

 

『……調子は…………』

 

ザザ…

 

『私の………を!』

 

ザー…ザ…

 

『お前は…………!?』

 

ザッ……ザザ…

 

『その…確か………だな?』

 

ザザザ……ザー…

 

『貴様…ときに……………』

 

ザ……ザーーーー…

 

『………ありが……』

 

ザザザ…ザザ…

 

『……貴様…ぜ……』

 

ザ…ザ…

 

『の……ば……。』

 

ザッ…ザッ…

 

 

「…ント!ドミナント!!」

 

「……ハッ!?」

 

「ドミナント!」

 

神様がものすごい心配した顔で呼びかける。

 

「あ…ああ。なんだ?」

 

「どうしたの!?何度呼びかけても返事しなかったし!すごい汗だよ!」

 

ドミナントはさっきのことを話そうと思ったがやめた。これ以上心配かけたくなかったからだ。

 

「いや…少しボーッとしていただけだ。心配かけてすまなかった。」

 

「そ、そうなの?…よかった。もう…心配させないで。」

 

神様は安堵の息をもらし、力なく笑う。

 

「もう、帰ろっか。」

 

神様がそんなことを言う。

 

「?まだ10分も経っていないぞ。どうしたんだ?」

 

「いや、飽きてきちゃった。」

 

だが、最初にこの景色を見た神様の顔は絶対に飽きないような顔だった。

 

「嘘をつくな。」

 

「ほ、本当だもん!」

 

「嘘をつく奴は嫌いだ。」

 

「……。実は…心配で…ここにいるのがいけないんじゃないかなって…。」

 

神様は申し訳なさそうな顔をする。

 

「そんなわけがない。ボーっとしていただけだからな。それに、本当に俺を思ってのことだったら間違っているぞ。俺は、後悔してほしくない。俺は、…今までたくさん後悔をしてきた。目の前で…しかも、俺のせいで後悔されるのはごめんだ。」

 

ドミナントがキッパリとそう言う。

 

「…。わかった。でも、何があったかは話してね?」

 

神様は心配した顔でそう言う。

 

……バレていたのか…。話して大丈夫だろうか…?なんか嫌な記憶…忘れたい記憶みたいだったし…。

 

そんなことを思うドミナントだった。

 

…………

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫だ。…と、言いたいところだが…今のは危なかったな。」

 

二人ともドミナントのことを心配している。

 

「やはり、私たちが殴ったことが原因でしょうか…?」

 

「……。そうなのかもしれんな…。」

 

「……あれが原因で死んでしまったら…どうしましょうか…?」

 

「縁起でもないことを言うな。まぁ、本当にそうなったらそれ相応のケジメをつけるがな。」

 

「…私もです。でも、ドミナントさんはそれを望んでいない気がします。」

 

「うむ…。たしかにあいつは望んでいなさそうだ。ならばどうする?」

 

「はい…おそらく、ドミナントさんの望みは……なんでしょう?」

 

「……確かに…あいつはどうしたいんだろうな。考えてみれば、私はあいつにあいつ自身のことを聞いたことがなかったな。知っているとしたら神様くらいだろう。」

 

「私もです…。信用…されてないんでしょうか…?」

 

「……。否定はできないな。私たちは傭兵であり、信用されなくても信頼されればいいはずだ。……なのに、なんだ?このよくわからない穴は…。」

 

「私も…信用されてないと考えた途端よくわからない穴が出来ました…。」

 

そんなことを二人で話すのであった。




25話終了!AMIDAたんの出番が減っている…。ドミナント…何が…。
はい、誤魔化さないでいきます。タイトル変更しました。まだまだこの話終わりそうにない…。まぁ、こんなことが後々あるよ〜って感じで受け止めてください!
登場人物紹介コーナー
周りの客…AC勢がいた。ドミナントはなんとなく嬉しく感じた。
店の人…貧乏だったが、今はそれなりに生活している。
タワー…その文字だけでアレを思い出したらもう手遅れだ…。
次回!第26話「やれやれ、神様が相手じゃ分が悪すぎるか…」お楽しみに!


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26話 やれやれ、神様が相手じゃ分が悪すぎるか…

ふ〜…。タイトル…。ネタが切れてきたな…。普通のタイトルにしますか…。
はい、ではあらすじに移りたいと思います。

あらすじ
神様と一緒に行動するドミナント。何がきっかけかわからないが、忌まわしい何かが脳裏によぎる。一方、遠くで監視している二人がいた。…これだけだっけ?


 

…………

 

「日が沈んだね。」

 

「そうだな。」

 

神様とドミナントはタワーで光り輝く街を見ていた。

 

「……何があったの?」

 

「……色々な…記憶が捏造されたみたいな感じだ。」

 

「……そうなんだ…。」

 

「……。そろそろ人が増えてきたな。帰るか。」

 

「うん。」

 

そう言ってタワーからドミナントたちは出る。

 

「……今日は色々ありがとね。付き合ってもらっちゃって。」

 

「別に構わん。カウンセラーはストレスが人一倍溜まりやすいんだ。そういう頼みなら頼ってくれ。」

 

「うん!わかった!」

 

そんないい感じで終わろうとしたのだが…。

 

「ヘーイカノジョー、俺たちと一緒に付き合わない?」

 

後ろから3人組の若い男が現れる。

 

「なんだ?お前たちは。」

 

ドミナントは聞くが…。

 

「テメーに言ってんじゃねーよ!そっちの可愛い彼女に言ってんだ。」

 

少し大きな体の奴が生意気に言ってきた。だが、そんなことでマジにならないドミナント。

 

「ほう、そうか。だが、その“彼女”の方は拒否しているぞ?」

 

ドミナントは自分の後ろに隠れている神様を見る。

 

「ハァ!?何言ってんだテメェ。ぶっ飛ばすぞ?」

 

比較的チャラい奴がドミナントの胸ぐらを掴む。

 

「出来るのならやればいい。しかし、殴った途端お前の安全は保障されないぞ?」

 

ドミナントは余裕そうだ。

 

「おいお前。俺たち3人に勝てるとでも思ってんのかよ?寝言言ってんじゃねーぞ!?」

 

大声を出して言ってくる。

 

『なんだなんだ?』

 

『喧嘩か?』

 

『掴まれている男は女の子を守っている?…カッコいいな。』

 

『まぁ、彼らなど所詮そんなものです。』

 

大声で人が集まる。

 

「……。人が集まってきたな。どうだろう…そこの路地裏でやっては?」

 

ドミナントが言う…。

 

「へっ!ずいぶん余裕そうだな!?あとで吠え面かかせてやる。」

 

そう言って三人はドミナントを連れて路地裏に行く。もちろん、ドミナントは喧嘩などしたことがない…弱いからだ。そしてここは街中…ACになることなどできない。

 

……どうしよう…。ハッタリでなんとかしようと思ってたけど…。俺が殴られている間に神様逃げ切れるかな?…ここで勝つってのがセオリーなんだけど…。そんなの現実であるわけないし…。かと言って女性に助けられるのもなぁ…。

 

ドミナントはそんなことを思う。そして、路地裏の少し広いところに出た。

 

「さぁ、覚悟はできたんだろうな?」

 

「……。あぁ、できている。」

 

「……ウラァ!」

 

「グッ…。」

 

ドミナントは殴られる。そして蹴られたり殴られる…。

 

……くっ…。やっぱり痛いな…。ん?痛くない…全く…。衝撃っていうか押されているような感じだけだ…。……でも、殴り返して鎮守府の評判落としたくないしなぁ…。まぁ、このままいるか。

 

ドミナントがそう思い、うずくまる。

 

「へっ!雑魚が!口だけかよ。」

 

そう言って若者たちは罵倒する。しかし、気づかない…。一人数が減っていることに…。

 

「なぁ、そろそろこれくらいにしとくk…!?」

 

体の大きい奴が振り向きながら言い、背筋が凍る。

 

「あぁ。そうだな。これ以上犠牲者を増やしたくない。」

 

「そうですね…。さっきの人は手荒でしたけど…。しっかり成仏してくれましたでしょうか…?」

 

「ドミナント…?ナグラレテルノ…?」

 

振り向いたらそこに赤い液体が付いた服を着ている、美女や美少女がいたからだ…。それに仲間が一人いない…。

 

……ん?その声は…なんで来…。!?…ナンデフクニ、チミタイナノガツイテルノ…?一人いないし…。まさか…な……。

 

ドミナントも恐怖する。

 

「お…お前ら…アイツ…は…?い、いいのか!?もし俺たちに手を出したら評判が…」

 

「大丈夫です。証拠は残しませんから。」

 

「そうだな。さっさと片付けるに限る。」

 

「ドミナントヲ…ナグッタノハ…アナタ…?」

 

セラフが笑顔で返す。顔に赤い液体が付いているのに…。

ジナイーダは面倒くさそうに言う。

神様は正気の沙汰ではない。ヤンデレみたいな感じの目だ…。

 

「ひ…ひぃぃぃ!!」

 

若者たちは逃げていった…。そして…。

 

「…。大丈夫ですか!?ドミナントさん!」

 

「おい、それくらい大丈夫だろう?早く立て。」

 

「ダイじょう夫?ドミナント…。」

 

「……セラフ…ジナイーダ…神様…その赤いものは何だ…?まさか…違うよな…?」

 

ドミナントは起き上がりながら驚愕した顔で聞く。

 

「ああ。これですか?これは落とせるペンキです。」

 

「……。本当か?」

 

「ああ。本当だ。その方が恐怖するだろう?」

 

「…じゃ、じゃぁ、一人いないんだが…。」

 

「うん!それは私たちがあっちでボコボコにしてきたよ!」

 

「そ、そうか…。」

 

ドミナントは安心する。しかし、この後衝撃の言葉が…。

 

「しかし、私たちに殴られればいいものを…。かわいそうな連中だ。」

 

……ん?今なんて言った?

 

「ジ、ジナイーダ…。それはどういう…?」

 

「…今逃げていったやつは今頃主任に…。」

 

…………

 

「はぁ…はぁ……。ここまでくれば大丈夫だろう…。」

 

「ゼェ…ゼェ……。なんだったんだあいつらは…。」

 

若者たちは誰もいない広い倉庫にいた。

 

「……。本当に…アイツ殺されたのかな…?」

 

「やめろ!今それを言うな…。」

 

「だってよ!あの服や顔見ただろ!あれ絶対血だぞ!」

 

「…ハッタリかもしれねぇだろ…?」

 

「そりゃ、そうかもしれねーが…。あの彼女の顔見ただろ…。アレ、絶対にヤバイ顔だ…。」

 

「……。」

 

二人は押し黙る…。そこに…。

 

「ギャハハハハ!!二人もいるのか!う〜ん、こりゃ楽しみだ。」

 

倉庫の影から声が聞こえる…。

 

「誰だテメーは!ぶっ殺されてーのか!?」

 

さっき逃げたことにより、温度が高くなり、キレるひとりの若者。

 

「やめろ…。こんな倉庫で…。」

 

一人は冷静だったが…もう遅い…。

 

「じゃ、ちょっと遊ぼうか。」

 

「ん?お前…その格好はなんだ…?その手に持っているやつで何をしようというんだ…?」

 

「お前は…一体…おい…来るな…来るなぁ!!ギャァァァァァァァァ!!!」

 

 

ギャハハハハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハ!!!

 

 

 

悪魔の笑い声だけが響いていた…。

…………

翌日

 

 

ドミナントが艦娘たちとニュースを見ていると…。

 

『昨夜、○○の倉庫で若者二人が倒れていた事件がありました。第一発見者が起こしてみましたが、“目の焦点が合っておらず、まるで絶望したような顔”とのことでした。その後、その二人は言葉を一切発さず、病院に運ばれました。警察は、何かの麻薬などをしていた関係性があると判断し、調査を進めています。…次のニュースです…』

 

「へぇ〜。そんな怖い事件あるんですね。」

 

「麻薬って怖いわぁ〜。」

 

本日の秘書艦である吹雪が言い、AMIDAを頭に乗せている如月がそれぞれ言う。ドミナントは昨日のことを思い出す。運ばれた二人は逃げた二人にそっくりだった…。それに、あの場所から近い…。

 

「……。主任…一体何をしたんだ…?」

 

ドミナントは主任に聞こうとするが、“色々した”と、までしか言わず、真相は迷宮入りとなった…。




終わり。いや〜怖いですね…主任…。何をしたんだろう…。
久々の主任登場だぁぁぁぁぁ!!どこで登場させようか考えますね。
AMIDAは…もうそこが住処ですね。昼も夜も一緒にいます。ベッドでは、枕の上で寝ます。AMIDAが寝遅れると、たとえ任務に出ていても如月を追いかけます。主任の部屋はAMIDAだらけですが…。ペットは神様の部屋にいます。
登場人物紹介コーナー
若者三人…一人は、セラフたちにボコボコにされ、全治一ヶ月の大怪我を負う。顔を見られていないため犯人は迷宮入り。二人は、主任に…。精神的な病により、病院に運ばれた。警察が調べたが、迷宮入り。
次回!第27話「料理とは一体…」お楽しみに!


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27話 料理とは一体…

27話です!遅くなってスミマセン。戦車道をしてまして…。
はい、そのことはさておき、あらすじに入ります。

あらすじ
ドミナントと神様の二人で出かけていたはずが、やんちゃな若者に絡まれ、さっそうと現れるジナイーダとセラフ、ドミナントを助けたあと、鎮守府に帰った。翌日、ニュースを見て何かを思うことになるドミナントである…。


カリカリカリ…

 

執務室でペンを走らせるドミナント。今日の秘書艦は吹雪であり、他の艦娘は、ニュースを見たあとすぐに海域の警備行った。

この近くは、既に他の鎮守府が開放しており、こちらの鎮守府が警備をしている。

 

「…海域開放しても良いのでは…?」

 

ドミナントはふと呟く。

 

「何か言いましたか?司令官。」

 

最近様子がおかしい吹雪が聞く。

 

「いや、海域開放しても良いのでは?…と。」

 

「まぁ、海域開放出来ますけど…人数が少ないですし、まだ練度も…。」

 

吹雪が困った顔で言う。

 

「そうか…。じゃぁ、まだ遠征だけか…。」

 

ドミナントは、最後の書類を片付けた。

 

「ところで、吹雪たち艦娘のレベルはどれくらいなんだ?…あの二人に教えてもらっているのだろう?」

 

「はい…教えてもらっていますが…キツイです…。休みの日が天国に思えるくらい…。」

 

吹雪が死んだ目をしながら言う。

 

……こりゃ相当しごかれているな…。

 

ドミナントはそんなことを思いながら、終わった書類を渡す。

 

「あ、お疲れ様です!司令官!」

 

そう言って吹雪はお茶を出す。

 

「ああ。…ところで、練度は…」

 

「あ!忘れていました!レベルはまだ50くらいです…。」

 

「ほう…。50か…。!?。50!?」

 

お茶が溢れそうになるくらいドミナントが驚く。

 

……あれ?まだここに来て一週間経ってないよね?まだ4日前後だよね?何があったの?

 

ドミナントは必死に思考を巡らせるが、どうやってもそこに行き着かない。

 

……というか…そう言われてみればなんか変わっていたところもある気がするし…。でも、この世界の平均レベルが90とかそこらへんなのかな?

 

ドミナントは気づかない。なぜなら、その4日のうち3日は昏睡状態に陥っていたからだ…。それに、この世界の平均はせいぜい40やそこらだ。

 

「そ、そうか…。まぁ…頑張れ。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

ドミナントは微妙な顔をして言う…。

 

「あ!あと、これで終わったから、自由にしていいよ。…まだ11時だけど…。」

 

普通の提督なら夕方までかかるが、前の世界で地獄のデスクワークをしていたため、書類仕事は早く終わらせることができる。

 

「はい!わかりました!」

 

吹雪は笑顔で言う。

 

……仕事の時は硬い雰囲気だったが、終わると、柔らかい雰囲気になるのか…。仕事とそれ以外にきちんとメリハリをつけている…。主任も見習ってほしいよ…。

 

ドミナントはそんなことを考える。主任が今くしゃみをしたのは言うまでもない。

 

「……。自由にしていいんだが…。」

 

「はい!」

 

「……。どこか行かないのか?」

 

「……。司令官のことが…その…気になって…。」

 

吹雪がそんなことを言う。

 

……風邪でも引いたか?……まさか!俺がジナイーダたちとは別の世界から来たことがバレたのか!?…くそっ!デスクワークでバレたか…。…もし、セラフ達にバレたら殺されるかも…。

 

ドミナントはそう思う。だが、そんなことはない。前の事件をすっかりドミナントは忘れているのだ。

 

「吹雪!!」

 

「ひゃい!!」

 

ドミナントがいきなり大声を出し、驚きながらも返事をする。

 

「このことは内緒だ!バレたら殺されるかもしれないからな…。」

 

「えっ!?殺…えっ!?」

 

吹雪が驚いている。

 

……私の司令官への好意が他の人にバレたら殺される?…まぁ、確かに神様にバレてしまったら…。でも、人の気持ちを独占する権利はないはずです!

 

「いいえ!私は話します!」

 

「何!?吹雪…お前は…。」

 

「確かに危険かもしれませんが…!ここで逃げてはダメです!」

 

「くっ…。まずい…。」

 

「諦めてください!私は…止まりません!!」

 

そう言ってドアを開け走っていく吹雪…。

 

「待て!吹雪!待ってくれ…吹雪ぃ…。」

 

ドミナントは必死に手を伸ばすが、届かない…。

 

……あぁ…俺の人生はもう終わりか…。せっかくこの世界に来たのに…まさか、この世界の人にやられるとは思ってもみなかったよ…。でも、どうせ死んだら神様と一緒に天界で暮らすんだろうなぁ…。ハハ…考えてみただけで厄介ごとに巻き込まれそう…。

 

ドミナントは、そんなことを考えて追っかけていた…。そして…。

 

「わっ!?…グエッ…。」

 

ドミナントが前を見てなかったのか転んだ…。

 

「!。大丈夫ですか!?司令官!」

 

吹雪が転んだことに気づき、ドミナントに近寄り、手を貸そうとする。

 

 

ガシッ!

 

「!?」

 

「やっと捕まえたぞ…吹雪!」

 

流石転んでもタダでは起きないドミナント。吹雪の腕をしっかりと掴んでいた…。そして…。

 

ズルズル…

 

吹雪を引きずりながら執務室へ戻る。

 

ガチャッ……バタン!

 

そして吹雪を壁に追い詰め、横の壁に手を張り、逃さないようにする。

 

「……何で俺を殺そうと思ったんだ…?」

 

ドミナントが聞いた。次からはそんなことにならないように改善点を聞こうと思ったからだ。

 

「えっ!?司令官のことを私が殺す!?なんでですか!?」

 

吹雪は驚く。

 

「…?…ちょっと待て、何を考えていたんだ?」

 

ドミナントは吹雪に聞く。

 

「そ、それは…。」

 

カクカクシカジカ…

 

「…と、いうことです…。」

 

「……。」

 

吹雪は顔を赤くするが、ドミナントは目をつぶり、微妙な顔をする…。

 

……そうか、昨日何を考えていたか思い出した…。みんな触れてこなかったから自然消滅したと思っていたけど…。ん?待てよ、吹雪は俺に好意を抱いているのか?だとしたら、艦娘とキャッキャウフフする目的が達成される。やった!…と思ったら大間違い。その艦娘は戦場で必死に戦っていることを実感してしまった俺にはもうそんなのどうでも良い。この子達に幸せになってほしい…俺なんかより、もっといい奴がいるはずだ。…だからといって断ったら神様と同じ結末になる…。…放っておくか。自然消滅するだろうし。

 

ドミナントはそう考えていると…。

 

「あ、あの…司令官…。」

 

「…どうした?」

 

ドミナントは現実に戻り、さらに赤くなっている吹雪を見る。

 

「…顔…近いです…。それに…今の状況…。」

 

……うん、もじもじしている吹雪も可愛いな。って、今の状況?

 

ドミナントは今の状況を見る…。

壁に追い詰める=寄りかかる

壁に手を張る=ドン

そして顔を近づけて、目を逸らさせないように…。

 

つまり、三つ揃って

 

壁ドン

 

 

ドミナントは気づいた。そして、なんてことをしてしまったんだと後悔の念にかられる…。吹雪はボーッとしてしまった…。

 

「……。」

 

ドミナントは、電池が切れたかのように椅子に寄りかかる…そして…。

 

「オレハ…ナニカシテシマッタヨウダ…オレヲ…ハカイシテクレ…。」

 

ドミナントがとある猫のようなセリフを吐き、吹雪が我に帰る。

 

「…!?司令官!?何を言っているんですか!?司令官!!」

 

「オレヲ…ハカイシテクレ…。」

 

吹雪は揺さぶるが、立ち直れないドミナント…。

 

 

…………

 

「……。すまない、取り乱してしまったようだ…。」

 

「はい…。わかってます…。」

 

あれから一時間経ち、平常に戻ったドミナントと疲れ切ってしまった吹雪…。

 

「……もう12時過ぎてるな…。昼ごはん…行くか…?」

 

「…はい…。」

 

普段の吹雪なら立ち直っているが、流石に疲れたようだ。

 

…………

食堂

 

「おーい!今日は誰だ〜?」

 

ドミナントが吹雪を引き連れて、食堂に来た。

 

「私だ。」

 

返事をするのはジナイーダ。

 

「おお。ジナイーダか。そういえば、ジナイーダの料理って食べたことがないな。」

 

「ああ。たまたま今日作ってみたくなったのでな。お前も作ってないだろう?」

 

「うむ。時間がなくてな。」

 

ドミナントとジナイーダは会話する。

 

「ところで…今日の昼ごはんはなんだ?」

 

ドミナントは聞く。

 

「今日は…今は夜のための下準備をしているんだ。悪いが、そこにあるもので料理して食べてくれ。」

 

ジナイーダが“そこにあるもの”と言っていたのはカップ麺の山だった。

 

……まさかな…?カップ麺を料理するわけじゃないだろう。おそらく、この山の中に食材が…。…料理とは一体…。

 

ドミナントは探すが、何も見つからない…。

 

「……。ジナイーダ…まさか、カップ麺か?」

 

「ああ。そうだ。…それ以外に何かあったか?」

 

「…だと思ったよ。」

 

ジナイーダとドミナントの短い話が終わる。

 

「これは…料理と呼んでいいんでしょうか?」

 

吹雪が聞いてくる。

 

「……そこは触れるな。」

 

ドミナントは短く答えただけだった…。




終わった。本当に遅くなりました。少し忙しくて…。
登場人物紹介コーナー
吹雪…本日の秘書艦。あの事件の後、ナンパだったがしっかりと自分の良いところを言ってくれて、悪いところをしっかりと受け止めて慰めてくれたドミナントに好意を抱く。
ドミナント…提督。昔はキャッキャウフフを望んでいたが、実際になってみると、気がひけるようになってしまった…。あれは空想上だからこそ望んだことであり、実際に手を出そうとは思わないようになった。
次回!第28話「いつのまにそうなった…」お楽しみに!


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28話 いつのまにそうなった…

はい、28話!艦これ要素が少ない…。まぁ、いいか。
では、あらすじに入ります。

あらすじ
吹雪にナニカシテシマッタドミナント。そのあと昼食のカップ麺を食べるのだが…。


 

 

昼ごはんのカップ麺を食べ終わり、一人フラフラするドミナント。

 

……今日の昼がカップ麺とは…社畜時代のことを思い出す…。…カップ麺で思い出した…。そういえば、倉庫の方セラフが直したかな?

 

そう思い、倉庫へ向かうドミナント。

 

…………

倉庫前

 

「ここは…倉庫だよな…?なんか前より広く感じるんだが…。」

 

ドミナントはそう思い、中に入ってみる。

 

「おーい。誰かいるか〜?いるよな〜。」

 

ドミナントが言う。

 

……返事がない…勝手に入るか…。

 

ドミナントはそう思い、倉庫の奥へ行く。すると…。

 

「ふふふ…。これができれば、あとはもう楽です…。」

 

「そうですね…でも、完成させるには少し時間がかかりそうです…。」

 

セラフと夕張が何やら怪しいことをしている。

 

「……。何をしてるんだ?」

 

「て、提督!?」

 

夕張は驚くが、セラフは動じない。

 

「今、これを作っているんです。」

 

セラフが設計図を見せる。

 

……これは…明らかにファンタズマだよな?融合部分が操縦で代用できる…。でも、まだ1%前後しかできていないのか…。

 

ドミナントはそう考え…。

 

「却下。」

 

「「えっ!?」」

 

「いや、当たり前だろ…。どれくらい資材が消費すると思っているんだ?……まぁ、今回はまだ出来ていないみたいだから許すけど、そういうものを勝手に作ったりしたらお仕置きだぞ。」

 

ドミナントは忠告する。

 

「で、でも…。」

 

「ダメだ。」

 

夕張が名残惜しそうに言うが、ドミナントは却下する。

 

「ちなみに、お仕置きというのは?」

 

「そうだな…わからん。主任に任せるつもりだ。」

 

「えぇっ!?」

 

セラフが聞いてきたので、ドミナントが返すと、夕張が恐怖する。

 

「まぁとにかく、許可なくなんか作ってあったら主任にお仕置きしてもらうからな。前みたいな暴走はやめてくれ。それに、作ったやつが暴走したらどうする?重大な被害が出るだろう?」

 

そう言って倉庫から出ようとするが引き止められる。

 

「待ってください!」

 

「なんだ?何か作りたいものがあるのか?」

 

「い、いえ…というより、もう既に一つ出来上がってます…。」

 

「!?」

 

「こっちです…。」

 

夕張に言われ、ドミナントが驚く。そして案内される。

 

…………

奥の奥

 

「これです…。」

 

「……。」

 

ドミナントは見るなり、何も言えなくなった…。

 

…………これ、セントエルモだよな?なんであるんだよ…。てか、誰だよ?作ったの…まだ4日しか経ってないのに…。いつのまにそうなった…?

 

ドミナントはセントエルモを見ながら思う…。そこに…。

 

「あ、あの…」

 

夕張が話しかけてきた。

 

「こ、これは艦娘の代わりに敵の深海棲艦を倒してくれる戦艦です…。この鎮守府には艦娘が少ないので…提督のためにと思って作ったんですが…。」

 

夕張は、お仕置きに恐怖しながら小声で言う。

 

「そうか…。」

 

ドミナントは短く答えただけだった。

 

「…資材はどのくらい使った?」

 

ドミナントは夕張に聞く。

 

「……たくさん…使っちゃいました…。」

 

悲しそうな顔をして、怒られるのを待つ夕張。しかし…。

 

「そうか…まぁ、作ってあったんじゃしょうがない…。これはノーカウントだな。」

 

「!ありがとうございます!!」

 

そう言って頭を下げる夕張。

 

「まぁ、いい。…で、これでどうやって戦うんだ?リモコンか?」

 

「はい!このリモコンを使います!」

 

そう言って夕張はリモコンを操作する。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 

セントエルモが出航した。

 

「……。勝手に出航したが…いいのか?」

 

ドミナントは夕張に聞く。

 

「はい!このボタンを押したので大丈夫です!」

 

そう言って自身満々にリモコンを見せるが…。

 

「……。夕張…大変言いにくいのだが…そのボタン、攻撃って書いてあるぞ…。」

 

「えっ!?」

 

夕張は慌ててリモコンを見る。

 

「そんな…。」

 

夕張は必死に操作するが、戻る気配がない…。

 

「……。夕張、やっぱりお仕置きね。」

 

ドミナントは無慈悲に言う。

 

「ま、待ってください!もう少し、もう少しだけ…。」

 

「…わかった。もう少しだけ待とう。」

 

夕張が必死にリモコンを直している。

地平線にわずかだが、セントエルモが見える。しかし…。

 

「おい、早くしないと見えなくn…!?」

 

ドミナントは驚いた…。なぜなら、セントエルモが深海棲艦に沈められたからだ…。

 

「どうかしました?」

 

そんなことを露とも知らずリモコンを直している夕張が聞いてくる。

 

「……。夕張、セントエルモは轟沈した…。」

 

「えっ!?そ、そんな…。」

 

夕張は驚愕した顔をする。

 

「……お仕置きね。」

 

「そ、そんな…。」

 

夕張は目尻に涙を浮かべるが、ドミナントは甘くない。

 

「……色々思うところがあると思うから、俺が代わりにお仕置きする。」

 

「ふぇぇぇん…。」

 

ドミナントは主任じゃ流石にかわいそうと思い、代わりにお仕置きする。夕張は力無い声を上げる。

 

「……。これを寝る前に読め。寝る前が嫌だったら朝早く読め。1時間な。そして読み終わっても繰り返し読め。」

 

そう言って分厚い本を渡す。

 

「うぅ…何ですか…?この分厚い本は…?」

 

「…技術の本だ。世界中の一流技術が詳しく載っている。」

 

「!?」

 

これは夕張が隠れて欲しがっていた本だった…。もちろん、ドミナントはそのことを知っている。ドミナントは超甘々である…。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

夕張は嬉し涙を少し流して礼を言う。

 

「…なんのことだ?これはお仕置きだ。…しっかり読むのだぞ。」

 

「はい!」

 

夕張は頭を下げて言う。ドミナントは外へ向かった。

 

……ちゃんと私たちのことをわかっているんだ…。あんな下手くそな演技したって、私にはすぐにわかります。提督からもらった本…一生大事にしよう!

 

夕張はそう思い、本を抱きしめた。

 

…………

 

……俺も甘いな…。だが、知ってもらうことによって、無駄な資材が減ることはないだろう…。

 

ドミナントがそう思いながら倉庫を出ようとすると…。

 

「フフ、存外甘い男なんですね。そういうのも悪くはありませんが。」

 

セラフが言う。そして、ドミナントは立ち止まり…。

 

「…なんのことだ?」

 

「フフ、知ってますよ。あの本を買うため仕事が終わったあと、結構この鎮守府を抜け出していたことを。」

 

「!?…バレていたのか?」

 

「はい。それに、ジナイーダさんと主任さんも知っています。」

 

「そうか…。俺の行動は筒抜けなのだな。」

 

セラフが笑顔で言い、ドミナントが口元を緩める。

 

「でも、ライバルが増えていくのは嫌ですね。」

 

「?…なんの話だ?」

 

「い、いえ、なんでもありません。あ!あと、忘れているかもしれませんから言っておきます。」

 

「なんだ?」

 

「次の休みの日、私と一緒に街に出かける約束しましたよ。」

 

「!?…そ、そうか…。わかった。ありがとう。」

 

ドミナントは驚いたが、約束したのだから守らなくてはならない。

 

……セラフがなぜ俺と一緒に…?あぁ、そうか。荷物持ちか。まぁ、これくらいだったら別にいいだろう。俺も街に行って色々したいし。

 

ドミナントはそう思った。

 

「……。それでは、俺は行く。」

 

「はい。」

 

ドミナントがどこかへ行き、笑顔で見送るセラフ…。

 

「……本当に、唐変木ですね…。」

 

セラフは呟くが、その言葉は誰の耳にも届かない。




はい、28話終了!ネタにどうやって繋げるかが重要ですね…。何も考えずに自由気ままにすると、今回の前半のようになります…すみません…。
登場人物紹介コーナー
セントエルモ…例のセントエルモ。多くのレイヴンに壊されてきた特殊兵器。形は普通の戦艦だが、距離や威力が半端ない。
夕張…例の事件以降少し意識してしまっているが、あれは冗談だと自分に言い聞かせていた。しかし、今回でその鎖が千切れ、ガチ勢になってしまった…。
次回!第29話「譲れない」お楽しみに!


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29話 譲れない

29話…100話以内に収まるかな?まぁ、強制的に終わりにしますけど…。(ネタが余っていたら続きます。)
さて、あらすじに移ります。

あらすじ
前回、ドミナントが前より大きくなった倉庫で、セラフと夕張を発見する。そして色々あり、本を渡した。その後、一人フラフラと歩いていくドミナントだが…。


「あ〜…暇だ…。」

 

ドミナントは一人、歩きながら独り言を言う。

 

「暇すぎる…。」

 

そして、歩いているとちょうどいい感じの、芝生が生えた場所を見つけて寝っ転がる。

 

……この鎮守府に来てからもう5日目…。うち3日間は昏睡してたけど…。色々あったなぁ…。

 

ドミナントは今までの時間を思い出しながら、現在暇そうな人を考える。

 

……艦娘たちはまだ警備の時間で夕張と吹雪くらいしかいないし、ジナイーダは料理してるし、セラフは倉庫で何かしてたし、神様は…昨日色々したから疲れていると思うし。主任は……。…そう思ってみたら、主任って普段何しているんだろう。

 

ドミナントがそう思い、起き上がる。

 

「…主任の行動を観察してみるか…。」

 

ドミナントが観察しようと主任の部屋まで来てみる。

 

…………

 

コンコンッ…ガチャッ

 

「主任〜、いるか〜?」

 

ドミナントが部屋を開けて確認するが、いなかった。しかし…。

 

「ん?AMIDAだけか…。…仕方ない、AMIDAに聞くか。」

 

ドミナントはそう言ってAMIDAに聞く。

 

キシキシ。

 

AMIDAは窓に立ち、足で方向を示す。

 

「そうか。ありがとう。」

 

ドミナントはAMIDAに礼を言って退室する。

 

……さっき示していた方向は…確か、演習場。演習でもしているのかな?

 

ドミナントはそう思いながら、演習場へ向かう。

 

…………

 

「主任〜、いるか〜?」

 

ドミナントがそう言いながら来てみると…。

 

「いーじゃん!なかなかやるじゃない?それなりにはさ。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

海の上で演習をしている主任と吹雪がいた。主任は撃ってくる吹雪のペイント弾を当たり前のように全てかわす。主任は現在ACの姿である。

 

……必死にやっているなぁ〜…。でも…。

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

パパパパパパパ!

 

「きゃっ!?」

 

主任が演習用のペイント弾の機関銃を装備して撃つ。そして、大半が吹雪に当たる。吹雪はオレンジ色に染まる。

 

「見せてみな。お前の力をさ。」

 

……おぉ。主任が真面目モードになった。

 

「はい!」

 

……ん?…さっきとは違うな…吹雪…。

 

吹雪の目つきが変わった。そして…。

 

ヒュー……ザッパァァァン!!バシャーーン!!

 

吹雪の命中率が上がってきた。主任がギリギリでかわす。

 

……すごいな…3秒先の動きが見えているみたいだ…。でも、それを避ける主任も主任だ。やはり、化け物だな。

 

「そうだ!!それでいい!!」

 

「はい!!」

 

主任がそう言い、吹雪が返事をする。

 

「でも…。」

 

主任が背中につけていた大砲型のペイント砲を構える。

 

「!?」

 

ドゴォォォォォォン!!!

 

吹雪にロックオンして容赦無く撃つ。例えペイント弾だろうが、小破は確定である。それを何回も当たれば轟沈もあり得る。しかし…。

 

……これくらい…。避けてみせます!

 

吹雪はそれを避ける。主任が固定砲台となり、吹雪をロックオンしてまた撃つ。しかし、また避ける。そうしていくうちに距離が縮まっていく。そして…。

 

「隙あり!」

 

……決まったか?

 

吹雪が撃つ。しかし…。

 

「ギャハハハハハ!!」

 

「!?」

 

いとも簡単に主任が最小限の動きで避ける。

 

……すごいな…。二人とも。主任は分かっていたが…吹雪はマジですごいな。

 

ドミナントが心の中で思う。そこで…。

 

「一発でも俺に当てたら終わりだ。じゃ!頑張ってぇ!!」

 

「はい!」

 

主任が最初は真面目モードで、最後はふざけモードで言ったことに、吹雪が返事をする。

 

「お願い!当たってくださぁい!」

 

吹雪が叫びながら撃つが、当たらない。

 

「でも、ここで譲るわけにはいかない。じゃ、もうちょっと遊ぼうか〜…。」

 

主任がそう言いながら、ペイント弾の嵐を巻き起こす。

 

…………

夕方

 

……そろそろ夕食の時間だ。…ん?終わったか?

 

ドミナントはそう思い、二人を見る。

 

「はぁ…はぁ……。やっと…当て…ました…。」

 

吹雪が膝をつき、息を切らしながら言う。

 

「ま、ちょうどいい腕かな。ゴミムシの相手にはさぁ。」

 

「ありがとう…ござい…ます…。」

 

全身がオレンジ色に染まって、膝をついている吹雪。一箇所だけ、言われなきゃ気づかない程度のオレンジ色がついて、余裕そうな主任。本当の戦いだったらどちらが強いかなんて一目瞭然だ。

 

……主任め…。あんな風に言っているけど、本当は“よく頑張った”と、言っているのが伝わるぞ。

 

ドミナントは少し笑みを浮かべながら二人を見る。そして…。

 

「二人とも、よく頑張った。」

 

ACになったドミナントが迎えに行き、賞賛する。

 

「し、司令官!?」

 

「あれ?ドミナントが褒めるの珍しいねぇ。」

 

「?そうか?」

 

吹雪は驚き、主任は言い、ドミナントが返す。

 

「……。実はというと、もう2時間以上前から見ていた。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

「そ、そうなんですか!?司令官!」

 

「ああ。それより、もうすぐ夕食の時間だ。早く帰るぞ。」

 

ドミナントが二人にそう言い、吹雪を背負って主任と並んで進んでいく。

 

「し、司令官!…下ろしてもらえませんか…?」

 

吹雪が慌ててそう言うが…。

 

「いや、下ろしたら遅くなるだろ。もし、今の状態で深海棲艦に襲われたらどうする。」

 

ドミナントが言う。

 

「…沖まで遠いので、ここで遭遇する確率は限りなくゼロなんですが…。」

 

「だが確実にゼロではないだろう?それに、ジナイーダたちが待っている。……ところで話が変わるが、単独で海域開放できるほどの実力持っているよね?」

 

「いえ、私はまだまだです。今日も一発しか当てられませんでしたし…。深海棲艦とちょうどいい程度の腕なので…。」

 

「…他のみんなもこんな感じか?」

 

「はい。そうです。」

 

「やばいな…。」

 

「はい…。」

 

ドミナントと吹雪が話がすれ違うやりとりしていると…。

 

『夕食ができた。皆が待っているから早く来い。』

 

大雑把な放送が聞こえる。そして…。

 

「ごめん!時間ないから用件だけね。吹雪、お前は普通じゃやらないことに耐えたんだ。ドミナントに甘えたほうがいい。」

 

主任が真面目にそう言って、鎮守府へすごいスピードで走っていく。

 

「……。だ、そうだぞ。吹雪。」

 

「……。はい…。」

 

ドミナントは走っていく主任を見ながら吹雪に言う。

 

「…今日は色々疲れただろ?…少し寝てもいいぞ。」

 

ドミナントは優しく言う。

 

「…はい、わかりました…。ちょっとだけ休みます…。」

 

そう言って目を閉じる吹雪。

 

……疲れたんだな…。少しゆっくり行くか。

 

ドミナントはそう思いながらゆっくりと向かう。

 

…………

 

「遅い。」

 

「す、すまない…。」

 

ジナイーダに叱られました。

 

「全く…一番暇だった奴がどうして一番遅いんだ…?」

 

ジナイーダは一人で呟きながらドミナントと一緒に食堂へ向かう。そして、みんな(吹雪以外)に文句を言われながら席に着く。

 

「…今日はジナイーダの自信作みたいだな。」

 

ドミナントはそう言う。

 

「そうだね!私も初めて食べるよ!」

 

「う〜ん。楽しみだ。」

 

「そうですね。どんな味なんでしょう。」

 

「楽しみです!」

 

「早く食べたいわぁ。」

 

ギシギシ。

 

「そうですね。」

 

「どんな味なんでしょう…。」

 

神様が笑顔で言い、主任が楽しそうで、セラフも微笑みながら言う。吹雪が少し元気になっている。如月が頰に手をやり、待ち遠しそうにしている。AMIDAはアピールして、夕張は時々ボーっとしながら適当に言う。三日月はアホ毛が跳ねながら待っている。そして…。

 

「私の特製カレーだ。」

 

料理がみんなの前に出される。




はい!29話。今回は、演習練習だけで終わらそうと思ったのですが、まだ尺が余ったので付け足すことにしました。
登場人物紹介コーナー
ペイント弾用の銃…セラフが暇つぶしに作った産物。
主任…レベルは???です。つまり、計測不能。演習の時などは、意外と真面目モードが多くなる。
吹雪…レベルは90以上。主任の鬼演習(実戦感覚)、ジナイーダの地獄の授業(個の戦闘の仕方、技のやり方などを教える)、たまに教えてもらうセラフの天才戦略術講座(瞬時に状況を理解し、自分で判断させる)。全てをやり、異常な成長スピードに耐えた駆逐艦。(他のみんなも)
次回!第30話「俺はいいから…生き残れよ…。」お楽しみに!


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30話 俺はいいから…生き残れよ……

はい!ついに30話!長かった…。え?あと70話あるって?はっはっは…何を言っているんだ?(アセ、アセ…)妖精さんの出番が少ない?ですよね〜…。AMIDAがいるから少し影が薄くなっちゃってますね…。似てません?
はい、ではあらすじにいきたいと思います。

あらすじ
暇すぎたので、主任のところへ行ったドミナント。演習をしていた主任と吹雪を見守っていた。そして、ジナイーダの料理を食べるのだが…。……これだけ?


「私の特製カレーだ。」

 

そう言ってジナイーダは料理を運ぶ。

 

「……。」

 

ドミナントはそれを凝視する。

 

……いや、作ってもらったくせに文句を言うのもなんだが…。紫色はないだろ…。

 

ドミナントはそんなことを思う。そして、それは全員が思っていた。しかし、健気な三日月がこんなことを言う。

 

「これは…なるほど!九州なので紫芋を使ったんですか。」

 

「ああ!なるほど!」

 

吹雪も納得する。

 

「そ、そうなのか…?」

 

ドミナントは納得しかけたが…。

 

……紫芋か…。…セラフ?なんで固まったままなんだ?一箇所をずっと見ていて…。まぁ、いいか。

 

ドミナントは思った。

 

「ギャハハ!じゃぁ、いくよ〜アハハハハ。」

 

主任がカレー?を口に運ぶ。

 

「ギャハハ!これ、なかなか美味…死……。」

 

 

ドサッ

 

主任が倒れる…。

 

「「「「「「「……。」」」」」」」

 

ジナイーダは現在キッチンであと片付けをしていたため、見ていない。そして、戻ってきた。

 

「料理は…その…。美味かったか……?」

 

「「「「「「「……。」」」」」」」

 

ジナイーダが恥ずかしそうに言う。しかし、反応はない。

 

……どうしよう…。主任が倒れたなんて言えない…。

 

ドミナントはそう思う。

 

「…なんで皆黙ったままなんだ?…それに、主任はなぜそこに倒れている?」

 

「…そ、それは主任が疲れちゃったみたいでいつのまにか寝ちゃったんだよ。」

 

ジナイーダが聞いてきたのでドミナントが返す。

 

「そ、そうか…。私は片付けがあるから、戻るぞ。」

 

ジナイーダはそう言って退室する。

 

「……。どうする?」

 

ジナイーダが行ったのを確認して、ドミナントが慎重に言う。

 

「ところで、セラフは何をそんなに見てい……。ナニソレ?」

 

ドミナントがセラフと同じものを見て、固まった。

 

「な、何が入ってたんですかぁ?」

 

如月が聞いてきた。

 

「……。カタツムリの殻…。あと、ネジ…。最後に、よくわからない緑色のブヨブヨしたやつ…。」

 

如月が聞くんじゃなかったと後悔する…。

 

「あ、あはは!私、そう思ってみたらお菓子食べ過ぎちゃってお腹いっぱいだったんだ!それじゃ…」

 

神様はそう言って退出しようとするが…。

 

「待て、どこにも行かさんぞ…。」

 

ドミナントが神様を掴み、座らせる。

 

「…とにかく、どんな成分なんだろうか…?」

 

ドミナントはそう言いながら、カレー?を見る。すると、見ている方向の隅に、動く小さな人影が…。

 

……妖精さん?

 

(はい?何かようです?)

 

ドミナントは心の中で会話する。

 

……ようはあるといえばあるけど…。こんなところで何をしているんだ?

 

(甘味!甘味こそが全て。我々には甘味が必要です!甘いものを探しているです。)

 

……そ、そうか…。!。妖精さん!これ、なんの成分が入っているかわかる?教えてくれたら飴あげる。

 

(!。わかったです。)

 

妖精さんと取引をする。

 

「?司令官?妖精さんと何を話しているんですか?」

 

吹雪が聞いてきた。

 

「妖精さんにこのカレーの成分を調べてもらっているんだ。」

 

「そ、そうなんですか…?」

 

会話していると…。

 

(わかったです!)

 

……どんな成分だ?

 

(これは…まぁ、死にはしないです。)

 

……。何か体に良い成分とかは?

 

(たっぷりあります。…でも、これ食べるです?)

 

妖精さんに聞かれ、改めて見るドミナント…。

 

……食べるしかなかろう…。あと、これは報酬だ。

 

そう思って、妖精さんに飴をあげる。

 

「何かわかったんですか?」

 

三日月が聞いてきた。

 

「ああ。どうやら、死なないらしい。あと、体に良い成分がたっぷり入っているらしい…。」

 

「何ですか?その矛盾したような情報…。」

 

「……。俺にもわからん…。」

 

話す二人だった。

 

「ま、まぁ、体にいいことがわかったんだし!食べようか!」

 

神様はそう言ってカレー?を食べる…。

 

「うっ……。」

 

 

ドサッ

 

神様も倒れてしまった…。全員が驚愕する…。

 

「……。これ、本当に死なないのか?」

 

ドミナントは呟く。すると…。

 

「あと、言い忘れてたが、辛すぎかもしれ……。なんで神様まで倒れているんだ…?」

 

「そ、それは美味しすぎて倒れたんだよ!よくあるじゃん。」

 

「…そんな話聞いたことないんだが…。」

 

「…この世界ではあるんだよ。」

 

「そ、そういうものなのか…?」

 

「ああ。そういうものだ。」

 

ドミナントとジナイーダがやり取りをする。すると…。

 

「そうか…。その…初めて作ったからな…。美味しいく食べてくれてて良かった。」

 

ジナイーダが笑顔になる。

 

……!?あのジナイーダが笑顔に!?この世界に来て一度もあんな笑顔にならなかったジナイーダが…。そんなに嬉しかったのか…。

 

ドミナントそう思った。

 

「…そ、それじゃぁ、私は最後の片付けがあるからな…。」

 

そう言って、部屋から出て行ったジナイーダ…。

 

「……。すまないがみんな…。カレーが入った皿を…俺の目の前に運んでくれ…。」

 

ドミナントが言う。

 

「な、何をするんですか!?」

 

「……。」

 

夕張が聞いてきたが、ドミナントは覚悟した顔だけをする。そして、カレーの皿が全てドミナントの目の前に置かれる…。そして…。

 

「俺はいいから…生き残れよ……。」

 

ドミナントがカレーを全て食べようとするが…。

 

ヒュッ!

 

カレーの入った皿をひったくられる。

 

「…。なんのつもりだ…?セラフ!」

 

さっきまで思考停止していたセラフだ。

 

「……。私のカレーですよ?何勝手に食べようとしているんですか?」

 

「し、しかし…」

 

「はぁ…。わかっていませんね…。」

 

セラフがそう言った途端…。

 

パッ!

ヒュッ!

 

どんどんひったくられる。

 

「!?お前たち…何を……?」

 

ドミナントがひったくっていった艦娘たちを見る。

 

「司令官を守るのが、私たち艦娘の役目です!」

 

「提督に危険なことはさせません!」

 

「私の大事な司令官に危険を冒してほしくないわぁ。」

 

「司令官!私じゃ不十分でしょうが、ここは引けません!」

 

艦娘たちが次々と抗議する。

 

「…ほら、ドミナントさん…。あなただけに格好をつけされる訳にはいかないんです。」

 

「お、お前たち…!」

 

ドミナントは感動しかけたが…。

 

「…ならば…奪い取るまでだ!」

 

ドミナントが次々と奪っていく。

 

「きゃあっ!?」

 

「何を…!?やめてください!」

 

「し、司令官!?」

 

「やめてください!お願いです!」

 

「!?そんな…奪われるなんて…。」

 

ドミナントは全て奪った。そして…。

 

「やられる順番は年上からと決まっている。…さらばだ。」

 

そう言ったあと、全てを一瞬で平らげた。そして、倒れた。

一応言おう。これはジナイーダのカレーを食べるかどうかであり、失礼の極みである。

 

…………

 

「…む?ここは…?」

 

ドミナントの目が覚め、あたりを見回す。夜中だった。

 

「病室です…。あんな無茶して…。」

 

セラフはドミナントに話す。

 

「…もう夜中だな。どのくらい経った?」

 

「“どのくらい経った?”ですと?」

 

セラフが睨む…。

 

「セ、セラフ…?なんか怖いよ…?」

 

「当たり前です!どのくらい心配したと思ったんですか!?私の分も奪ってまで守りたかったんですか!?やめてください!それは私の誇りを傷つけることにもなります!」

 

セラフが大声で叱る。

 

「す、すまない。謝るから大声はやめてくれ。夜中だ…。」

 

「…すみません。でも、絶対にしないでください。」

 

「は、はい…。わかりました。すいませんでした。」

 

ドミナントは謝るが、許してもらってなさそうだ。

 

「ドミナントさんが起きたことは伝えます。明日、艦娘全員から怒られます。私は今叱ったので何も言いません。耐えてください。」

 

セラフはしっかりと言った。そして翌朝、本当に全員に怒られたドミナントであった。




ツイニ…オワッタ…。ドミナント…そりゃ怒られて当然だよ。ジナイーダは、結局最後まで真相がわからなかった。その後、セラフと一緒に料理をするということになる。
次回!第31話「地域交流」お楽しみに!


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31話 地域交流

はい、31話です。遅くなりました。AMIDAって美味しいのかな?
はい、ではあらすじに入ります

あらすじ
ドミナントがジナイーダのカレーを全て食べる。そして朝、艦娘全員から怒られた。


「あぁ…今日は散々だな…。」

 

ドミナントは、今朝艦娘全員から怒られ、書類仕事をしながら元気なく言う。

 

「当たり前です。どれほど私たちの誇りを傷つけたかわかりましたか?」

 

「はい…すみませんでした。」

 

ドミナントが今日の秘書艦である三日月に謝る。

 

「私ではなく、全員に言ってください。」

 

言葉から察するに、まだ怒っているようだ。

 

……あぁ、早く終わらないかな。早く終わって逃げたい。

 

ドミナントはそんなことを思っていると…。

 

ピーピー、ガガガガガ

 

faxが書類を出した。

 

「あっ!これは本部から書類です。」

 

三日月が書類をドミナントに渡す。

 

……本部から?この鎮守府に本部から届く書類って…面倒ごとくらいしか思わないんだが…。俺は面倒が嫌いなんだ。

 

ドミナントはそう思いながら内容を見る。

 

……なるほど。人が艦娘を兵器とみなしている人数が毎年増えている。非人道的な扱いを受けないように、人でもあることを知ってもらうため、地域の人と交流をするように…。か…。

 

ドミナントは何百字もある文章を簡略化した。

 

「どんな内容なんですか?」

 

「“地域交流をしろ”だとさ。」

 

ドミナントがぶっきらぼうに言う。

 

「はぁ…。面倒くさい…。」

 

 

…………

鎮守府外

 

「はぁ…。艦娘だけでよかったのに、なんで来るかな…?」

 

ドミナントは愉快な仲間たちを見る。主任は流石にいないようだ。

主任が人の姿であっても、性格や話し方がアレなため、鎮守府自体に悪い評判が受けないように残ってもらっている。

 

「いーじゃん!別に。」

 

「だめ…ですか?」

 

「……。」

 

ジナイーダはセラフに連れてこられただけなので、黙っている。

 

「よくないし、だめだよ…。…まぁ、付いてきてしまったものは仕方ないけど…。」

 

ドミナントは困っていた。艦娘だけならば平気と判断していたが、愉快な仲間たちまでくると、何をしでかすかわからないからだ…。

 

「…とにかく、今日はおとなしくしていてくれ。」

 

ドミナントはきつく言い聞かせる。

 

…………

幼稚園前

 

「……まさか、ここに入るのか?」

 

「うん。」

 

「……この幼稚な子供がわんさかいるところへか?」

 

「そうだよ。」

 

ジナイーダがドミナントに聞くが、当たり前のように返される。艦娘たちは黙ったままだ…。

 

……地域交流って言われても、ここくらいとゴミ拾いくらいしかわからないよ…。

 

ドミナントはそう思い、中に入って先生たちに話をつけている。

 

…………

 

「はい、みんな集まって。今日は鎮守府の提督と、艦娘さんがいらしています!何か聞きたいこととかがあったら言ってください。あと、今日はこの人たちが遊んでくれるので、遠慮せずに遊んでください。じゃぁ、外で一緒に遊びましょう。」

 

「「「はーーい!」」」

 

先生が子供たちにそう言って、子供たちは元気に返事をする。

 

……遠慮はしてほしいな。

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

「提督?さん。聞きたいことがあるよ〜。」

 

「なんだい?」

 

「普段何してるの?」

 

「う〜ん…。そうだなぁ…。君たちや、君たちのお母さんお父さんをバケモノから守ってあげているんだよ。」

 

「そうなんだ〜。バケモノってどんな?」

 

「海に出てくる黒くて、少し大きいやつだよ。」

 

「どんな?」

 

「魚」

 

「美味しいの?」

 

「多分美味しくないよ。」

 

「そうなんだ〜。頑張って。」

 

「ありがとう。」

 

園児が聞いてきたので、ドミナントがやんわりと返していく。

 

……あっちの方は…大丈夫そうだな。元気に遊んでいる。吹雪や三日月にすごい集まっている。如月はAMIDAが頭に乗っかっているせいか、全然寄ってこないし…。夕張は、少し雰囲気が違うから近寄りがたいのかな?あまり人がいない。

 

ドミナントは艦娘たちの様子を見て、分析している。そして…。

 

「如月。」

 

「あら?司令官。何かようかしら?」

 

「ああ。…一緒に子供たちと遊びたくないのか?」

 

「私は…司令官が一緒にいるから大丈夫です。」

 

如月が笑顔にそう言う。

 

「…。AMIDAは俺が預かろう。一緒に遊んで来い。これは命令だ。」

 

ドミナントはそう言って、AMIDAを取ろうとする。

AMIDAが抵抗したが、ドミナントの威圧によってすんなりと離れた。

 

「わかりました。」

 

如月が笑顔でそう言って、走っていった。

 

……提督LOVE勢なのは知っていたが…、それ以外で興味があるとは知らなかった。我慢した笑顔をしても、こっちの心が痛むだけだから、後でやんわりと話そう。

 

ドミナントはそう思った。

 

「提督…。」

 

夕張が深刻そうな顔をしている。

 

「ん?…夕張、どうした…。子供たちが集まらないからって落ち込むな…。」

 

ドミナントはそう言うが…。

 

「違うんです。そんな話じゃありません…。」

 

「?…どんな話だ?」

 

「…あの本を二日前から読んでいるんですが…。道具が圧倒的に足りないのがわかりました…。」

 

「……。今道具はいくつある?」

 

「……10前後です…。」

 

……マジか…。10前後でセントエルモ作ったのか…。やばすぎるだろ…。

 

ドミナントはそう思う。

 

「どれくらい足りないんだ?」

 

「……あと、最低でも50くらいです…。」

 

「そ、そうか。」

 

そんな会話をしていると…。

 

「おじさんとおねーちゃんはなんの話をしているの?」

 

園児が聞いてきた。

 

「ん〜?今ね〜、何をして遊ぼうか考えてたの〜。」

 

「そうなんだ〜。あっちのおねーちゃんは面白い遊びしているから、あとで来て。」

 

「わかった〜。」

 

そう言ったあと、園児は三日月のところへ走っていった。

 

「元気だなぁ…。ん?夕張?どうした?」

 

ドミナントと園児のやり取りをポカンと見てた夕張。

 

「て、提督って、子供が好きなんですか?」

 

「ん?どうした?いきなり。まぁ、嫌いではない。」

 

「そ、そうなんですか…。」

 

「……。どうして聞いてきた?話し方か?」

 

ドミナントは大体の目星をつけて聞くが…。

 

「いえ、少し嬉しそうでしたから…。」

 

「?」

 

これは予想外だったのか、少し驚くドミナント。

 

……俺が嬉しそうな顔をしていた?…俺はそんな趣味がないはずなんだが…。

 

ドミナントはそう思っている間、夕張はこんなことを思っていた…。

 

……やっぱり、子供が好きなのかな?神様以外に子供っていないし…。なんとかしてあげたいな…。

 

夕張はこんなことを思った直後、なんとかする方法がわかり、同時に赤くなる。

 

……私が…提督との…。

 

そんなことを思ってると…。

 

「でも、そんなわけ……ん?大丈夫か?」

 

ドミナントが赤くなって固まっている夕張を心配して聞いてきた。

 

「だ、大丈夫です。なんでもありません。」

 

「そ、そうか。まぁ、大丈夫そうならそれでいいんだが…。」

 

ドミナントはそう言う。

 

「まぁ、今回は交流でもあるから、子供たちと遊んだおいで。」

 

「はい。わかりました!」

 

ドミナントが優しく言い、夕張が元気に答えて園児たちと混ざっていく。

 

数時間後

 

日が沈んできて、終わりの時間になり…。

 

「はい!みんな集まって。今日はこれでおしまいです。最後に、鎮守府から来たみなさんにさよならの挨拶をしましょう!」

 

先生がそう言い…。

 

「「「さよーーなら!」」」

 

園児たちが元気に言う。

 

…………

帰り道

 

「はぁ…。疲れました…。」

 

「だろうな。」

 

三日月がそう言い、ドミナントが返す。

 

「…ところで、お前たちは何をしていたんだ?」

 

ドミナントが愉快な仲間たちに聞く。

 

「あんなにたくさんの子供がいるところは嫌だからな…。外で待っていたんだ。」

 

「そ、そうか…。ん?待てよ、外でサイレンが聞こえてきたんだが…?」

 

「あぁ、それか。外で待っていたら不審者扱いされて、パトカー?が来たから面倒くさくて逃げていたんだ。」

 

「えっ!?」

 

ジナイーダが平然と答えて、ドミナントが驚きの声を上げる。

 

「顔はバレていないよな?」

 

「ああ。そのはずだ。」

 

「そ、そうか。」

 

ジナイーダとやりとりをしているうちに、鎮守府へ着いた。

 

………………

場所は変わり、どこかの海の上…。

 

「ギャァァァァァ…。」

 

深海棲艦が断末魔をあげて沈む。

 

「ふむ…。どうやら、ここは私のいた世界ではないらしい…。このような生体兵器はいない。それに、水の上に浮くことなど出来なかったからな。…人に会うため、こっちの方向へ向かっていくか…。」

 

そう声を発したあと、黒い人影はどこか走っていった…。




はい、おしまいです。まだゴミ拾いなどもしてもらいたかったんですが、そこでただゴミを拾うだけなのでカットしました。
登場人物紹介コーナー
先生…園児たちに色々指導する。結婚はしておらず、一人暮らしである。最近この仕事が面倒だと感じてきている。
園児たち…面白いことが大好き。それぞれ遊ぶ方法を主張するが、譲り合いをしてただ時間が過ぎていくだけのことに気づいていない。
次回!第32話「トランプ」


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32話トランプ 1

はい!32話!役が足りない?やっぱり?……そろそろ増やそうかな…。まぁ、鎮守府に艦娘が4人だけの時点でおかしいですからね…。気にしない気にしない。
では、あらすじに入ります。

あらすじ
地域交流をして、子供達と遊んだりゴミ拾いなどをしたドミナントたち。鎮守府へ帰ると、やはり、主任がAMIDAタワーを作っていた…。(勿体無い気もするが壊した。)


「暇だな…。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントと本日の秘書のジナイーダがいた。書類仕事はとっくに終わって、暇を持て余している。

 

「……。確かずっと前に地域の人と交流したじゃん?あれ、意味あったのかな?」

 

「わからん。」

 

「あのあと、パトカーが数日間うろちょろしてたらしいよ。」

 

「そうか。」

 

そう、あれからもう一週間ほど経っている。

 

「……。良い反応しないね。」

 

「覚えていないからな。」

 

「そっか〜…。海域開放もしたはいいけど、暇だね。」

 

「……そうだな。」

 

「人が足りないから、他の鎮守府が警備しているし。」

 

「ならば遠征すれば良いだろう。」

 

「資材があまりすぎて、他の鎮守府へ分けているのにまだ増やすのか?」

 

「暇なのだろう?」

 

「まぁ、そうだけど…。なるべく命を賭けてほしくないじゃん?」

 

「まぁ…。そうだが…。」

 

「……トランプでもするか?…ルール知ってる?」

 

「私を舐めるな。それくらい知っている。」

 

と、いうわけでトランプをする。

 

…………

 

「…なんでそんなに積み上げられるの?」

 

「どうした?お前の番だぞ?無理なのか?」

 

二人は順番にトランプタワーをして勝負している。先に崩したほうが負けである。もう高い台を使わないと手が届かないくらいまで…。

 

「ぐ……見てろよ…。」

 

「ほう。証明してみせろ。お前の有用性を。」

 

ドミナントは慎重に積み上げる…。

 

……よーし…落ち着け〜…。やれる、やれるんだ俺は!

 

乗せた途端ぐらつく。

 

グラグラ……。

 

「……。」

 

おさまったようだ。

 

「はっはっは。やっぱり大したことない。」

 

「そうか。……。お前の番だぞ。」

 

ジナイーダが簡単に積み上げ、すぐにドミナントの番になる。

 

「これがプロの動きだと…?じゃぁ俺は一体なんだ!?」

 

「いいから早くしろ。」

 

ジナイーダから催促を受ける。

 

「……。」

 

ドミナントがまた慎重に乗せる。しかし…。

 

グラグラ…………パシャーーン!

 

トランプタワーが崩れた。

 

「そんな…。話が違うっすよ…。俺は…特別だって……。」

 

「悪いな。手加減のできない性分だ。それに特別は例外に勝てん。」

 

ジナイーダの無慈悲な言葉がドミナントに刺さる。そこに…。

 

「ヤッホー!まだ朝の11時だけど仕事…してないみたいだね。」

 

床にトランプが敷き詰められていた。

 

「…何か用か…?」

 

「…なんでそんなに落ち込んでいるの?まぁ、いいや。暇だから来た!」

 

「そうか…。トランプでもやる?」

 

「やる!」

 

元気に返事をした。

 

「でも、3人か…。他に暇な人はいるかな?」

 

そう思い、神様と一緒に聞きに行く。そして…。

 

「…全員暇だった。」

 

ドミナントがみんなを引き連れてきた。

 

「…これでは部屋に入りきらないだろう。広い部屋はないのか?」

 

「ふむ…。あっ!会議室があるよ。」

 

「そこに全員入るのか?」

 

「大丈夫です。私が作ったのですから。」

 

ドミナントたちは短いやり取りをして、会議室に向かった。

 

…………

 

「じゃ、何をする?」

 

ドミナントが聞く。

 

「はい!私、セブンブリッジやりたいです!」

 

吹雪が言う。しかし、ドミナントは聞いたことがなかった。

 

「…その、セブンブリッジとはどんな遊びだ?」

 

「麻雀みたいなものです!」

 

……麻雀か…。将来そんな賭け事みたいなことしないよな?負けて全財産を失って奴隷として生活させられている姿なんて絶対に見たくない。我が子のようなものだ。

 

そうドミナントは思い…。

 

「却下!」

 

「えぇ…。」

 

吹雪が困り顔をする。

 

「絶対にダメ。」

 

「いいじゃないですか!私、そういう賭け事得意なんですよ!」

 

「余計にダメ。絶対に。」

 

「でも…。」

 

「ダメだと言っている…。」

 

「はいぃ…。」

 

ドミナントが最後に威圧をかけて黙らせる。周りの家具や天井、ガラスが悲鳴を上げた。当然、ここにいる愉快な仲間たち以外は恐怖する。

 

「ド、ドミナント…こわいよ…。」

 

「…ハッ!…すまない、みんな。」

 

神様が言ったおかげで通常に戻った。

 

「容赦ないな…お前も。」

 

「少し空間が悲鳴を上げました。そりゃ怖くなりますよ。」

 

「ハハハハ!一種の天才ってやつかもねぇ。」

 

AC勢の人達がヤジを飛ばす。

 

「すまないな。」

 

ドミナントはしっかりと謝る。

 

「それじゃ、気を取り直して…。ダウトでもする?」

 

ドミナントが提案した。そして、さっきのことがあったのか、全員賛成する。

 

「じゃ、配るよ〜。」

 

そう言ってドミナントは配っていく。そんな中、セラフは考えていた。

 

……フフフ、トランプで勝負ですか…。私の計算の前では全てがわかります。残念ですけど、この勝負もらいました。

 

セラフは、自身満々に勝負をする。

 

「4!」

 

……フフフ、次は私の番です。最初に嘘をつきます。この順番で、このカード枚数…。計算によると…。

 

順番のカード

5、1、10、6、2、11

セラフが持っているカード

2、11、4、8、1、4

 

…半ばで嘘をつけばいいんですが…。まず最初にいらないカードをだしましょう。

 

そう考えてセラフが4を出す。

 

「「「ダウト!」」」

 

全員が口を揃えて言う。

 

「うっ…。」

 

セラフはすべてのカードをもらった。

 

……あれ?…ドミナントさん、遊びの時は演技が上手いんですね。2のはずなんですが、13出してますよ…。

 

セラフが少しドミナントを見るが、“そういう遊びだ”と目だけで返された。“目は口ほどに物を言う”という言葉が本当だったとは…。

 

「あっ!セラフに言い忘れてた。」

 

「何ですか?」

 

「心読むの禁止。面白くなくなるから。」

 

「……。わかりました。」

 

ドミナントが釘を刺しておく。セラフは、最終手段として読むつもりだった。そこで…。

 

「ギャハハ!12」

 

「ダウト。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「やるもんじゃないね。キャラじゃないことは…。」

 

そんな感じで回っていき、二人だけになった。

 

敗者 セラフと三日月

 

勝者 1.神様 2.ドミナント 3.吹雪 4.如月 5.ジナイーダ 6.夕張 7.主任

 

「何故…。」

 

セラフは考えた。嘘をつくたびに全員がダウトと言ったことを…。そして、嘘でない時は絶対にダウトと言わないことを…。

 

「どうしてわかったんですか?」

 

「イカサマはバレなきゃイカサマじゃないんだよ。」

 

「む…。」

 

セラフはドミナントを睨む。しかし…。

 

「なんてね。イカサマしてないよ。」

 

「……じゃあどうしてわかったんですか?」

 

「う〜ん…。そうだなぁ…。ヒントをあげよう。」

 

「いえ、答えを教えてください。」

 

「そうすると面白くないだろう?」

 

「私は面白くありません。」

 

セラフが即答する。

 

「う〜ん…。でも、すぐに教えちゃうと勉強にならないからなぁ…。まぁ、ヒントをあげよう。相手ばかりを気にしちゃいけない。素直なのはいいと思うけどね。」

 

「それだけですか?」

 

「うん。…まぁ、答えみたいなものだけどね。」

 

ドミナントは言うが、セラフは全くわからない。

 

……セラフ…。本当に素直なのはいいと思うよ。正直、素直すぎて、可愛くてときめくところだったからね。…顔に出すぎだよ…。

 

ドミナントはそう思うが、セラフは気づかない。

 

次にババ抜きをすることになった。

 

「私は、今度こそ負けません!」

 

セラフはそう宣言したあと、相手の心理分析を始めた。(心は読んでいない。)

 

……あの顔を察するに、ババは吹雪さんのところですね。

 

セラフは分析を続ける。しかし…。

 

……う…。私はジナイーダさんの隣ですか…。顔にも動作も普段と変えないのでわかりません…。

 

そうしているうちに、みんなのカードが減っていく…。

 

……………………

とある夜の海の上

 

「ふむ…。いくらこっちの方向へ進んでも大陸が見えない。」

 

黒い人影が分析する。

 

……こっちには陸がないのか?それとも、この世界は水面上昇によって大陸が水没しただけか?それとも、ただ広いだけか?しかし、この者たちが言うには広いだけで、方向を間違えたらしいが…。

 

黒い人影が後ろを見る。

 

「うちのこと信用してないんかい?」

 

「ああ。どんな奴でも人間の子供のくせに空母と嘘をつくやつを信用するとは思わないだろう。海の上に人が立てることが証明できたからいいが…。」

 

本人は空母と言っているが、どう見ても子供である。

 

「む…。駆逐艦ならまだしも…。」

 

怒っているらしいが、黒い人影は見向きもしない。

 

「本当でち!この世界にも陸はあるでち!」

 

「…語尾に“でち”というのはどうにかならないのか?聞き取りずらい…。それに、なぜそんな格好をしている?寒くないのか?」

 

黒い人影はそれなりに心配する。

 

「むりでち。それに寒くないでち。この格好はちゃんとした制服でち。」

 

「そうか。…では、こちらの方向へ私は向かう。お前たちも来るのか?」

 

「当たり前やで。」

 

「当然でち。」

 

そう言って、もうとっくに向かった黒い人影に追いつくべく走っていった。




はい!長いから切りました。なんなんでしょうね…。その黒い人影は…。いつかドミナントたちと会えるといいですね〜。え?セラフとの買い物の件?わ、忘れているわけないじゃないすか…はっはっは。この際プライドは抜きだ…。(ザルトホック風)
突然ですが、なぜドミナントがジナイーダたちに好意を寄せないか説明します。
ジナイーダは大人の女性の美しさがあるに加え、無理やりだがしっかりとドミナントを助ける。しかし、無理やりすぎてドミナントに伝わらない。
神様、艦娘たちには子供のような可愛らしさがあるが、そのせいで好意を寄せても“子供だからだな”と、ドミナントが判断するから。
セラフは、大人のような美しさに加えて、子供のような一面の可愛らしさがある。誰にでも優しいことが目立つ。…それに加えてドミナントが大人だと判断しているため、普通に告白したら効果抜群です…(しかし、筆者がそのような関係には絶対にさせない。なぜかって?…そりゃ、決まっているでしょう?)
次回!第33話「トランプ 2」お楽しみに!


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33話 トランプ 2

長いから切りました。1日一回投稿を目指しています。いや〜…小説は難しいですね。そろそろ新キャラ出しますか…。
はい、あらすじに入ります。

あらすじ
暇すぎたのでトランプをするドミナントたち…。セラフが思いっきり顔に出ていることにいつ気がつくのだろうか…。


…………

 

「何故…?」

 

必ず最後はセラフが負ける。

 

「どうして…私の戦況分析が……。」

 

セラフがいくら考えても思いつかない。

 

「……。」

 

皆がそろそろ可哀想に思ってきたので、種明かしをする。

 

「セラフ…その…。顔に出すぎてるよ。」

 

「えっ!?…そ、そんな……。」

 

セラフが指摘されて顔を赤くする。

 

……くそっ。可愛いな…。俺の天敵か…!?効果抜群だぞ…。

 

ドミナントが苦しそうに思っている。

 

「ドミナント…なんかあった…?すごく苦しそうだけど…。」

 

神様が苦笑いをしながら聞いてくる。

 

「…いや…。別に…。」

 

「うん。言おうか?」

 

神様が半ば強制に吐かせようとする。

 

「いや、なんでもない。」

 

「……。」

 

ジト目で見てくる。しかし、ドミナントは言わない。苦しそうな顔をして、そんな失礼なことを考えていたとバレたら、全治2ヶ月ほどの怪我を負っても仕方がないからだ…。

 

「まぁ、そこのところ注意してやろう。」

 

「…わかりました…。」

 

セラフが了承する。しかし…。

 

「では、勝負しません?ドミナントさん。」

 

「…俺になんのメリットが?」

 

「そうですね…。勝負を受ければ、あなたが今思っていたことは言いません。勝っても言いません。しかし、負ければ私のお願いを一つ聞いてもらいます。」

 

「!?」

 

ドミナントは驚く。

 

……読まれていたのか…?ヤバイな。この部屋には主任以外に男がいない。主任が俺を庇うわけがない…。つまり、弁解してくれる人がいない訳だ。勝負を受けなければ袋叩きにあう…。それだけは避けたい。

 

ドミナントはそう判断し…。

 

「わかった。受けよう。」

 

「フフフ…。」

 

と、いうわけでポーカーで勝負をした。

 

「で、俺が負ければ何を要求するんだ?」

 

「…それは、私が勝ってから言います。」

 

「なるほど…怖いな。」

 

ゲームがスタートする。

 

…………

 

ルール

二人はそれぞれ20枚のおもちゃのお金を使う。一回のゲームに1枚使う。ドロップ(棄権)、レイズ(前者よりもお金をせり上げること)、チェック(2回目のドローの後に行うパスの一種だが、レイズができない)。弱さの順番は左から右に、2〜1。

 

ジナイーダが公平にカードを配り終わったあと…。

 

……むむ…。あまりいいカードではありませんね…。

 

セラフのカード

 

5、8、8、12、7

ワンペア

 

……ここは8以外のカードを出してもらうべきでしょうか…?

 

セラフは顔に出さないように考える。そして、ドミナントの方を見る。

 

……ニヤニヤしてますね…。いいカードが揃ったんでしょうか…?しかし、私は交換したあとコール(勝負)します。

 

そして…。

 

4、4、8、8、13

ツーペア

 

……フフフ…これなら勝てるかもしれません…。

 

そう考えたセラフは…。

 

「チップを5枚やります。」

 

しかし…。

 

「俺はチップ15枚だ。」

 

ドミナントがとんでもない賭けにでる。

 

……!?15枚!?あと3枚しか残りません…。そんなに強いカードが…?

 

セラフは考え…。

 

「ドロップします…。」

 

そしてカードを見せ合う。

 

ドミナント

5、5、6、12、13

ワンペア

 

「騙して悪いが、勝ちたいのでな。」

 

「む…。」

 

ドミナントは自信満々に言う。

 

……む…。騙されました…。やはり、遊びに関しては強いですね…。次にいきましょう。

 

そして…

 

セラフのカード

 

2、2、5、5、8

ツーペア

 

……やった!最初からツーペア揃っているなんてすごい…。8を交換すればいいですね…。

 

そして…。

 

2、2、2、5、5

フルハウス

 

……いける!これなら。

 

そう思い…。

 

「私はチップを5枚賭けます。」

 

ドミナントは…。

 

「では、俺は8枚枚賭けよう。」

 

ドミナントが自信なさげに言う。

 

……フフフ…もうその手には乗りません。

 

「私はさらに8枚かけます。」

 

セラフがレイズする。

 

「む…。ならいいだろう。コールだ。」

 

そして…。

 

ドミナント

 

12、12、12、1、1

強いカードのフルハウス

 

「……。」

 

「弱そうに見せたり、裏をかくのも戦略の一つだ。」

 

ドミナントは心理戦が得意なようだ…。

 

勝者

ドミナント

敗者

セラフ

 

「む〜…。」

 

セラフが納得いかなさそうに唸り声を上げる。

 

「で、結局何をお願いしようとしたんだ?」

 

ドミナントは聞くが…。

 

「いえ、負けたので言いません。」

 

セラフが意地悪く言う。

 

「いいじゃないすか〜。」

 

「ダメです。」

 

そんな感じで終わった。

 

…………

それぞれの部屋に帰る途中

 

「で、セラフは何をお願いしようと思ったんだ?」

 

セラフと二人きりになったジナイーダが聞く。

 

「実は…」

 

セラフがジナイーダの耳元で囁く。

 

「それは…アウトだろ…。」

 

「そうですか?」

 

ジナイーダが苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「あいつのことだからありえないが…。もし本当にそうなったら、おそらくこの鎮守府全員を敵にするかもしれないぞ…?」

 

「分かっています。」

 

「……。それほどか…。まぁ、今日は休め。色々あったから疲れてそんな考えになっているのかもしれん…。」

 

「いえ、私は正常のはずです。」

 

「まぁ、休め。備えることも大切だろう?それに、明日は休みだ。今休んで、明日に備えとけ。」

 

「そうですね…明日ですからね…。どんな服装が良いでしょうか?」

 

「…。戦場で生きてきた私に聞くとはな…。まぁ、だからと言って聞いてこないのもシャクだ。…ありがとう。」

 

ジナイーダは乙女のたしなみ程度に知識はある。

 

「今日はもう終わりだからな…。買いに行くか。」

 

「えっ!?いいんですか?仕事の時間なのに…。」

 

「ドミナントが優秀だったからな。もうトランプをしていた時点で終わっている。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

そう言って出かける二人。

 

…………

提督自室

 

「う〜ん…。何をお願いしようとしていたんだろう…?」

 

ドミナントはまだ考えていた。

 

……俺の心を読んでの反応だよな…?だとしたら、やはり、侮辱したことの復讐か?…まずいな。明日は荷物持ちというのに…。そんなギクシャクした状況だとセラフの買いたいものも買えないじゃないか…。

 

自室で考えていると…。

 

バンッ!!

 

ドアが勢いよく開いた。

 

「やっ!ドミナント!さっきは楽しそうだったね〜…。」

 

神様が恨めしそうに見る。

 

「楽しそうに見えたのか?俺には、断れば袋叩き、負ければコンクリート詰めにされていたと思うが?」

 

「なんでそんな怖い発想になるの…?」

 

神様は困った顔で言う。

 

「まぁ、いい。何の用だ?」

 

「いや〜。セラフはなんのお願いをしようとしたのか考えていてさ〜。」

 

「俺もだ。…なんだと思う?」

 

「……。ご飯奢るとか?お菓子を貰うとかかな?」

 

「それはお前だろう?」

 

「ひどい!彼女に向かってなんて言い草!」

 

「…俺がいつお前の彼氏になった?」

 

「えぇ〜…。そんな釣れないこと言わずに…。」

 

「ダメだ。これははっきりとさせないといけない。俺は神様や、艦娘と絶対にそんな関係にはならない。お前は散々アピールするが、たまに俺の不在時に部屋にコソコソ入って、ベッドに寝っ転がっている吹雪や、独自に俺の好みを調べて、話を合わせて一緒に居たいと思っている夕張、俺に撫でられたいからって、毎日AMIDAを取ろうとする練習をしている如月。特にヤバかったのは三日月だな。たまに俺の私服を自分の部屋に持って行って、何かあったらすぐにその匂いを嗅ぐのは、きつかった…。」

 

「なんでそんな情報知っているの…。」

 

神様が恐怖するような…呆れているような顔をする。

 

…………

どこかの海の上。

 

人の形をした何かが海上にいる。

 

「……。生体兵器を会うたびに倒していたら、こんなたくさんの集団になるとは…。」

 

人の形をした何かは困っているが…。

 

……まぁ、駒はたくさんあった方が良い。何が起こるかわからないからな…。

 

そんなことを思っている。

 

「もうすぐ陸です。さすがに気分が高揚します。」

 

……何か小さい飛行機みたいなのを飛ばしたな…。何故それでわかる?…まぁいい。分かればなんでも構わん。

 

そう思って、人の形をした何かは陸へ向かっていく。




はい!長いから切りました。いや〜…もうすぐかな?ドミナントたちに会うのは。次回は、セラフとデートする話が後半で来ると思いますが、一応、長くなるかもしれません。
登場人物紹介コーナー
???…ハロウィンに関係はない。
次回!34話「この機体で…逃げ切れるか…?」お楽しみに!


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34話 この機体で…逃げ切れるか…?

はい!34話!前回のあとすぐに投稿しようと思ったのですが、忙しくてこのような時間帯になってしまいました。この世界にドロップはあります。
では、あらすじに入りたいと思います。

あらすじ
前回、トランプをしたドミナントたち、セラフが可哀想になってきたので、種明かしをすることに…。そのあと、悔しかったのか、賭けをすることになるが、ドミナントが勝った。そして、とある情報を話したのだが…。


「なんでそんな情報知っているの…?」

 

神様は恐怖するような…呆れたような顔をする。

 

「妖精さんの情報です。」

 

(です!)

 

妖精さんが元気に返事をする。

 

「これは前の情報の報酬だ…。」

 

そう言って、ドミナントはいちご大福をあげる。

 

(甘味!ありがとうです!また提供するです!)

 

そう言ったあと消えていった。

 

「あなたは…恐ろしい人ね…。」

 

「?」

 

神様が言うが、ドミナントは気づいていないようだ。

 

バンッ!!!

 

またドアが勢いよく開く。

 

「し、司令官!こ、これには訳が…。」

 

「な、なんでそのことを…?」

 

「み、見てたのぉ?」

 

「……。」

 

みんな動揺しているが、三日月は固まっている。

 

「聞いていたのか?それに、ドアが壊れるから、そんなに勢いよく開けるな。」

 

「「「す、すみません…。」」」

 

すぐに謝った。

 

「し、司令官!私は…ハッ!。私はベッドのシワを直して、ちゃんと寝心地を確かめていただけです!」

 

「ほう。」

 

「わ、わたしは、頭が重いので、取りたかっただけです。」

 

「そうか。」

 

「て、提督!私は…その…。ただなんとなくです!」

 

「なるほど。」

 

「……。」

 

「……。三日月、弁解があるなら聞こう。」

 

「…ハッ!わ、私は…すみません。その通りです…。」

 

「うむ。素直でよろしい。」

 

ドミナントがそう言ったあと…。

 

「三日月は正直に言ったから許そう。あと、それで落ち着けるなら1枚私服をあげよう。だが…。」

 

3人の方を見る。そして…。

 

「吹雪。お前は今度から俺の部屋への立ち入りは禁止だ。俺は部屋に大抵いないから、執務室に来るように。」

 

「えっ!?」

 

「如月。それでは俺は極力撫でないようにする。髪が痛むだろう?」

 

「ふぇっ!?」

 

「夕張。俺は自分のことを調べられるのは好きではない。なんとなく調べているのならやめてくれ。命令だ。」

 

「!?」

 

「では、以上を持って解散。」

 

ドミナントは無慈悲に言う。

 

「ま、待ってください!すみませんでした!」

 

「ごめんなさぁい…。だからたまにでいいから撫でてぇ…。」

 

「提督!ごめんなさい!もう嘘をつきません!」

 

3人の反応は違ったが、行き着く先は同じだった…。

 

「……。わかった。いいだろう。まぁ、まだそれほど信頼度が下がったわけじゃない。三日月は逆に上がったがな。」

 

ドミナントは如月を撫でながら言う。

 

「あぁ〜〜〜…。」

 

すごく嬉しそうな顔をしている。

 

……なんだ?この世界の人は撫でるとこんなに暖かなオーラが出るのか?

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

「!ず、ずるいです!私も…。」

 

吹雪も来た。もう片方の手で撫でる。

 

「えへへへ。」

 

嬉しそうな顔をする。

 

「……。すまんな。夕張、三日月。…そんな顔をするな。」

 

ドミナントは頬を膨らませている二人に謝罪する。神様はもう撫でてもらっているので、そんなにはふてくされていない。

 

「…。まぁ、今度撫でたりするから…。」

 

「別に怒ってないです。」

 

「私もです。」

 

二人はそっぽ向きながら言う。

 

「…そっち向きながら言ったって説得力ないよ…。」

 

ドミナントが困りながら言う。

 

…………

 

「……。もういい加減やめていいか?」

 

「まだもう少し〜…。」

 

「あとちょっとだけ…。」

 

かれこれもう3時間は経っている。神様はいつのまにかいなくなり、夕張たちはもうとっくに自室へ戻っている。

 

「その要望に応えてもう1時間経っている。とっくに夕食の時間だし、やめないといけない。まぁ、今日は主任担当だから覚悟しておくけど。…やめるぞ。」

 

そう言って手を離す。

 

「うぅん…。あと少しで眠れそうだったのに…。」

 

「如月、一応言うが、ここは俺の部屋だぞ?ジナイーダに勘違いされて吹っ飛ばされるのはごめんだ。」

 

「冗談で言ったのに…。」

 

「本当に冗談ならば謝ろう。どうだ?」

 

「……。」

 

「……。本気だったんだな。まぁ、それはいいとして、食堂に行くよ。」

 

ドミナントが如月と吹雪を引き連れて食堂へ向かう。

 

…………

 

「まぁ、覚悟していたけど、それほどではなかったな。」

 

出されたのは人参の醤油丸焼きや、キャベツの千切り、ハムとチーズとレタスのサンドイッチだった。

 

「……。ジナイーダとセラフが見当たらないみたいだが…?」

 

「ああ。あの二人なら鎮守府の外で食べるらしいよ。」

 

「そうなのか?情報ありがとう。」

 

神様に礼を言う。

 

「では、食べるか。」

 

「「「いただきます!」」」

 

全員声を合わせて元気に言う。

 

「パクッ。……!?これ美味いな。少し厚く切った肉肉しいハムにチーズが合う。肉汁を少し出すために炙っているな。さらに、挟むパン自身にもバターが塗ってあって、美味しい。レタスのシャキシャキ感がいいアクセントになっている…。あとは…何か隠し味が入れてあってパンチが効いている。なんだろう?」

 

ドミナントは考えるが、わからない。

 

「主任。隠し味はなんだ?」

 

「ギャハハハ!あれれ〜わからないのかな〜ハハハハ。」

 

「ああ。分からん。」

 

煽られても動じないドミナント。

 

「ギャハハ。からしマヨネーズだよ。」

 

「なるほど!そりゃうまいな。だが、女の子にはこのギトギトはオススメしないな…。美味しいけど…。」

 

動じないドミナントにこれ以上煽っても無駄だと判断した主任は、正直に答える。

 

「あとは…人参の醤油焼きか。」

 

ドミナントは手に取り、かじりつく。

 

「ガブッ…。なるほど、ただの醤油ではないな。バターが入っている。バター醬油か…。焼いて甘くなった人参に醤油で味を染み込ませるとは…。香ばしいな…。」

 

そして、ドミナントたちは全て食べきる。

 

「美味しかった。マジで。主任、ごちそうさま。」

 

「ギャハハ!そう言ってもらえると嬉しいよ〜。」

 

そして、ドミナントたちは自室へ戻って寝るのであった。

 

…………

提督自室

 

「ふぅ。美味しかったな…。特にあの人参…。…さて、明日の準備でもしますか。」

 

そう言ってドミナントは明日の準備を始めた。

 

「ふむ…。荷物を持つから動きやすい服装の方がいいな。あとは…、金だな。どのくらい持っていったほうがいいかな…?余裕を持って10万か?いや、それとも、本当の予備として5万か?…悪いな。完璧主義者なんだ。」

 

ドミナントは一応の10万を財布に入れた。

 

…………

翌朝

 

「ドミナントさん。起きてください。」

 

「…む…。」

 

ドミナントは目覚める。目の前にはセラフがいた。

 

「…まだ朝の4時だぞ…。外も暗い…。」

 

「分かってます。早く行きましょう?」

 

「行くって…。買い物か?まだ店開いてないと思うんだが…。」

 

「いえ、買い物は帰りに。まずは、遊園地行きましょう?」

 

「……。荷物持ちではないのか?」

 

「…どんな勘違いされているんですか…?デートですよ。」

 

「…は?」

 

「…え?」

 

ドミナントは困惑した。

 

……デート?なぜ…?…まさか!?セラフに想い人ができたのか?…いや、現実逃避してはいけないな…。どうしよう。こんな関係にはならないと昨日言ったばかりなのに…。いや、俺の勘違いかもしれん。自惚れるな!俺!冴えない俺が何故デートに誘われる?裏を読むんだ!……そうか。俺に奢らせるつもりだな。10万入れといて良かった…。

 

ドミナントはトンチンカンなことを考えて…。

 

「わかった。いいだろう。しかし…遊園地もこの時間じゃ空いてないのでは?」

 

「大丈夫です。行っている途中で開く時間になるように計算しました。」

 

「仕事が早いな…セラフも…。」

 

「?」

 

そうして、遊園地に向かうのであった。

 

…………

とある浜辺

 

「…まだついてくるな…。鎮守府?とやらに連れて行こうにも場所がわからなかったから、場所を聞いて自分たちで行くように言ったのだが…。」

 

「待ってください!」

 

「…ついてくるな。」

 

人影は逃げる。

 

……この機体で…逃げ切れるか…?

 

しかし、艦娘は早かった。

 

「かけっこしたいんですかぁ〜。まけないよ〜。」

 

「…やはりこの程度では逃げきれんか。」

 

人影は止まる。

 

「いいか…よく聞くんだ。私は提督ではない。追う必要はないはずだ。」

 

「でも、鎮守府に着いたら、その強さで提督になれるかもしれませんよ?」

 

「……。この世界ではその方が動きやすいのか?」

 

「まぁ、階級が高い位置にいますので、大体は…。」

 

「わかった。ならば私もついていく。」

 

……そのほうが、アレがこの世界にあるのか調べられるかもしれんしな…。

 

人影はそう思いながら、街に向かう。




はい!34話おしまい。次回か次回の次回ですね〜。人影の登場は…。え?誰だかわかるって?…この際プライドは抜きだ…。わかった人を倒せれば、それで十分だ。
人影コーナーの登場人物紹介コーナー
???…作戦を立てることに関してはセラフより上。
龍驤…胸のことに関してはタブーワード。???が人の子供と間違えた時は、結構怒っていた。
伊58…でち公。ゴーヤのこと。???にドロップされたあと、そのままついていくことになったから、“まだ”オリョクルのことは知らない…。
加賀…無表情だが、顔に出ないだけで非常に喜怒哀楽が激しいことに???は気づいていない…。
鹿島…必死に???を追っていた。非常に素直。しかし、容姿がアレなため、勘違いされることが多い。
島風…速い…速すぎる…修正が必要だ…。しかし、すごく子供っぽく、???に呆れられたりする。
大淀…生徒会長。たまに???に頼られることを嬉しく感じている。
神通…不思議な記憶がトラウマになりかけているが、???がたまに解消してくれる。根っからの戦士。
次回!35話「気づかれた…?何故?」お楽しみに!


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35話 気づかれた…?何故?

はい!35話です!昨晩勝負を挑み、見事にやられたレイヴンである筆者です。ネタが足りなさそうですね…。せめて100話はいきたいな〜…。
では、あらすじに入ります。

あらすじ〜
前回、妖精さん情報により秘密を知られた艦娘たち、ドミナントはそれを許した。そして、セラフに奢らされるデート?に行くのだが…。


「車がないから歩きでバス停へ向かって、そのあと電車に乗って、さらにバスか?」

 

「はい。」

 

セラフたちは現在歩いている。

 

「まだ日が昇ってないからな…。あまりそっちの姿が見えない。足元に気をつけてくれ。」

 

「はい。気をつけます。」

 

鎮守府を出たあと、数分は山道を歩かなくてはならない。山道のため、岩があったり、枝が落ちてたりしている。

 

「本当に大丈夫か?…心配なんだが…。」

 

「フフフ。心配性なんですね。大丈夫ですよ。」

 

セラフが笑顔で言う。しかし、暗いためドミナントはどんな表情なのかわからない。

 

……大丈夫だよな?。トランプの件でまだ“お願い”の件がある…。後ろから刺されたりしないよな…?すごく心配。何故笑っている?まさか、俺を始末する計画が順調に進んでいるのか?何が大丈夫なんだ?

 

ドミナントはトンチンカンなことばかり考えている。

 

…………

暗視ゴーグルの双眼鏡を持つ二人が鎮守府の屋上で見ている。

 

「…なんか前にもこんなことがあった気がするんだが…。」

 

ジナイーダはそう言う。

 

「む〜。私の時は昼からだったのに…。こんな朝早くから行くなんて…。」

 

「仕方ないだろう?あの時は、気絶をしてたんだから。」

 

「…誰のせいだと思ってるの?」

 

「…すまないな。」

 

ジナイーダは謝った。

 

「まぁ、ここからじゃよく見えないし諦めるか?」

 

「ううん。絶対に諦めない。追いかけよう。」

 

走って後を追いかける。

 

「はぁ…。またか。まぁ、平和な世界だと、こういうこと以外楽しみもないしな。」

 

そう言って後を追うジナイーダであった。

 

…………

 

街はまだ人が起きていないとしても、街灯は明るい。

 

「やっと人里へ着いたな。じゃぁ、バス停へ向かおう。」

 

「バス停は…。向こう側です。」

 

「なるほど。では行くか。」

 

バス停へ向かう二人。そこでセラフが…。

 

「あの…。」

 

「…方向が違ったか?」

 

「いえ、そういうわけではないのですが…。」

 

セラフが恥ずかしそうにしている。

 

「…なんとなくわかった。前にもこんなことがあったような気がするからな。手を繋ぎたいんだろう?」

 

「……。」

 

セラフは赤くなりながら無言で頷く。

 

「まぁ、一度受けたらいくつも一緒だしな。別に良いだろう。」

 

ドミナントは手を差し出すが…。

 

「…えいっ!」

 

「!?」

 

手を繋ぐのではなく、組んだのだ。

 

「セ、セラフ…。俺たちは恋人じゃないんだ…。腕を組むのは…。」

 

「一度やってみたかったんです。…私じゃ不満ですか?」

 

「いや、そういうわけでは…。」

 

セラフはよくドミナントに向ける冷たい目ではなく、目をうるうるさせ、“お願い”的な目だ。一応言う、トランプの“お願い”は、本当にぶっ飛んでいて、本当に敵に回す“お願い”である。

 

……くっ…。効果抜群だ…。俺はセラフに弱いな…。可愛さと美しさが平均的に取れている。俺はこういう女性に弱いのか…。

 

「…いいだろう。わかった。」

 

「はい!」

 

少し抵抗があるドミナントに比べて、元気に返事をしたセラフ。

 

……えへへ…。恋人みたいに…えへへへへ。やっぱり、ドミナントは押せば了承してくれるんですね。ぶっ飛んだお願いじゃなければですが。…アレもいけるでしょうか…?

 

セラフは考えていた。

 

…………

建物の屋上

 

「むーーー!!私の時は繋ぐだけで我慢したのに!」

 

顔を真っ赤にして怒っている。

 

「ま、まぁそう興奮するな…。」

 

ジナイーダは落ち着かせるようにする。

 

「それに、お前は撫でられただろう?私たちは知っているぞ。」

 

「えっ…。見てたの?」

 

「ああ。その時は今のお前と同じ反応をしていたが、セラフは我慢した。ならば、お前も我慢するべきではないのか?」

 

「む…。でも、確かに言う通りだね。我慢しなくちゃ。」

 

そう言って、二人を見守る二人…。

 

…………

 

「ふぅ、やっとバス停だな。そろそろバスが来るが…。」

 

「はい。」

 

セラフは、組んでいくうちに顔まで腕に密着させて、嬉しそうに目を閉じていた。

 

「……。言いにくいのだが、バスに入るときは離せよ。入れないからな。」

 

「次のバスまで待てば良いじゃないですか〜。」

 

「遊ぶ時間が減るぞ?」

 

「…そうでしたね。わかりました。」

 

そう言って、名残惜しそうに離れるセラフ。

 

「でも、降りたらまた組みます。」

 

……また組むのか…。できれば人前でしたくないんだが…。仕方がないか。

 

ドミナントはそう思ったところでバスが来た。

 

「行くぞ。」

 

「はい。」

 

ドミナントたちは数人しかいないバスに乗った。

 

…………

建物の屋上

 

「バスに乗ったな。どうする?」

 

「追いかける!」

 

「いや、追いつかないだろ…。しょうがない。今は誰も起きていないみたいだし、元の姿に戻るか。」

 

そう言ってジナイーダはAC化する。

 

「乗れ。」

 

「いいの?」

 

「ああ。だが、落ちるなよ。」

 

「わかった!」

 

そう言ってジナイーダの腕に掴まる。

 

「…。これが腕を組んだということになるのか?」

 

「うん。でも、なんか想像してたのと違う…。」

 

「…だろうな。」

 

そう言ってドミナントたちの後を追いかけた。

 

…………

 

「やっと着いたな。」

 

「はい。次は電車です。」

 

「そうか。」

 

二人は腕を組みながら行く。もちろん、道中は注目の的だった。

 

「この電車だな。入ろう。」

 

「はい。」

 

二人電車の中に入る。

 

…………

 

「二人が電車の中に入ったぞ。私たちも入ろう。」

 

「うん!わかった!」

 

「この変装ならばバレないだろうしな。」

 

「うん!」

 

「…あと、声は極力出さないように。」

 

「…わかった。」

 

そう言って、二人は電車の中に入った。

 

…………

電車の移動中

 

「…ドミナントさん。なんかあの二人怪しくないですか?」

 

「そうか?」

 

席に座っているセラフたちが、少し離れた席に座っている二人組を見る。

 

「…なんで帽子にマスクにサングラスなのでしょうか…?」

 

「…有名人じゃないのか?顔がバレると、騒ぎになるからバレたくないとか…。」

 

「そうでしょうか?」

 

二人はそんな会話をする。

 

……顔がバレたくないですか…。そう思ってみれば、あの二人、神様とジナイーダさんに体型が似ていますね。…もし、ドミナントさんが他の人と出かけていたら私は?…!。あれは神様とジナイーダさん!?着いてきたのですか!?これじゃぁ、ドミナントさんと色々楽しめない…。二人の存在がバレたら、みんなで回るようになる…。今日は二人きりで楽しみたい!…二人きりの時間がもっと欲しい。

 

セラフはそう考えていた。

 

「どうした?そんな難しい顔をして。」

 

「あっ。いえ、なんでもないです。」

 

ドミナントが心配して聞く。そして小声でドミナントに伝える。

 

「ドミナントさん。今から少し私の言う通りにしてください。」

 

「どうしたんだ?いきなり。」

 

「いいから。」

 

「…わかった。」

 

そして…。

 

『ただ今〜○○駅〜、○○駅に到着いたしました〜。』

 

「降りますよ!」

 

「えっ?でも…。わっ。」

 

ドミナントの手を引き、電車から出るセラフ。

 

…………

 

「いきなり走ってこの電車を出た。…気づかれた…?何故?…まぁいい。行くぞ。」

 

「うん!」

 

二人も出る。

 

…………

 

「セ、セラフ、電車はまだ…。」

 

「戻ります。」

 

「何!?戻るのか!?って、そっちに手首を曲げちゃ…」

 

セラフが反対側を向き、強引に手を引っ張る。

 

『電車〜閉まりま〜す。』

 

電車のドアが閉まるのと同時に入った。

 

「……。なんとかやり過ごせました。」

 

セラフが辺りを確認しながら言う。そこでドミナントに気づいた。

 

…………

とある街

 

「鎮守府まで遠いな。電車に乗らなくてはならないとは…。」

 

人影が言う。

 

「どないした?もう行くんか?もう少しここで遊ぼうや〜。」

 

「いや、なるべく早く行った方がいいだろう?」

 

「私も、少し遊園地に興味があります!」

 

「遊ぶのは鎮守府とやらに着いた後でいいだろう?」

 

「鎮守府だと働いて、休みがないと聞くでち!」

 

「そんな過酷なところなのか?…まぁ、いいだろう。少しの間一緒にいたよしみだ。しかし…なぜこの世界の金を持っていたのだろうか…?」

 

手違いでずいぶん離れたところ(太平洋のど真ん中)に転生させてしまったから、先輩神様の特典である。

 

「まぁ、いいじゃないですか。皆さんも楽しみにしていることですし。」

 

「そうか?」

 

「おっそーい!早く行こー。」

 

「…やはり、女の子じゃないか…。」

 

そう言って遊園地に向かう人影たち。




はい!まだまだ続きます。行くだけでどれくらいかかるんでしょうね…。デイモンエクス○キナ楽しみですね〜。まだ筆者は体験版もやってないので…。どんな感じなんでしょうか…。アセンあるかな?
次回!第36話「お前も強引だな」お楽しみに!


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36話 お前も強引だな

36話。もうこれはクロスオーバーなのか?と、たまに筆者自身も思います…。しかし、最後のクライマックスでは、しっかりとクロスさせています。艦娘とACの共闘…。燃えてきますね。でも、それ以外はほのぼのを目指しています。
はい、あらすじに入ります。

あらすじ
セラフと一緒に遊園地に行くドミナント。しかし、その途中つけられているのがわかったセラフが無茶なことをした…。


「イタタタ…。」

 

手を押さえつけながらうずくまるドミナント…。

 

「!?大丈夫ですか!?」

 

セラフの顔が真っ青だ…。

 

「多分…いや、大丈夫じゃないな…。おそらく折れてはいないと思うが…。」

 

ドミナントの手がものすごく腫れている。折れている可能性が高い。

 

「そんな…。」

 

「…。そんな顔をするな。俺がついていけなかったのが悪いんだ…。」

 

無理に笑顔になるドミナントにセラフは責任を感じていた。

 

……私のせいだ…無茶なことをしたから…。こうなったのは自分のわがままに無理に付き合わせたしまったから…。やだ…自分が嫌になる。一時の感情に任せて、無理やりやると失敗するとわかっていたはずなのに…。どうして…。

 

セラフは後悔する。

 

「だ、大丈夫ですか!?手を貸し…」

 

そして、ドミナントに手を貸そうとするが…。

 

「いい!」

 

「!?」

 

ドミナントは強く断った。セラフは更に青くなる…。

 

……断られました…。なんで…?。いえ、わかっているはずです。私は嫌われた…かもしれません。いえ…ダメです…現実から目をそらしては…。私は嫌われ…いやです…。嫌われたくありません!嫌です!嫌…です…。

 

セラフは考えてしまい、涙が出てきてしまった…。

 

「!?セラフ?泣いちゃった!?」

 

「私のせいで…私のせいで……。」

 

涙が止まらなかった…。しかし…。

 

「すまん!だから泣かないで…。」

 

「すみません…すみません…。嫌いにならないでください…。お願いします…。」

 

「いや、嫌いにならないよ!……本当にすまない。」

 

「いえ、私のせいで…。」

 

「いや、そういう意味じゃない…。」

 

「…?」

 

「実は…、どんな反応するかと思って…。でも、本当に痛かったよ。そんなじゃなかったけれど…。」

 

そう言って腫れているはずの腕を手で擦り付ける。すると、みるみる腫れが引いていく。

 

「……。」

 

セラフは涙目でキョトンとしてしまった。

 

「い、いたずらでした…。」

 

「……。」

 

ドミナントは震える声で種明かしをした…。セラフは何も言わなかった…。そのあと、ドミナントは目的の駅に着くまで何も覚えていなかった。起きた時、身体中が痛くなっていたこと以外は…。目撃者は“バカップルだな〜”などと言っていた…。

 

…………

 

「あれ〜。二人ともいないよ!」

 

ジナイーダたちは、時計の下にいた。

 

「そのようだな。…出し抜かれたか?」

 

「えぇっ!?」

 

「…もう電車はとっくに行ってしまったな。」

 

「そんなぁ…。」

 

そんなことを話していると隣で待っている人が…。

 

『聞いたか?○○駅ですごい騒ぎがあったらしいぞ。』

 

『なんだ?その騒ぎとやらは?』

 

『めちゃくちゃ可愛い美人が冴えない男を半殺しにしていたらしい…。』

 

『マジかよ…。一体そいつ何したんだよ…。痴漢か?』

 

『いや、友達が言うにはバカップルらしい。』

 

『浮気か?』

 

『いや、それはないだろう。こんなに美人なんだぞ。携帯に写真がある。』

 

『うわっ!?すごいな。世界一じゃないのか?真紅色の髪が綺麗だな。それにポニーかよ…。髪長いな。』

 

『お前は髪フェチか?』

 

『違うって…。体型もすごいな…。馬鹿だなぁ。この男…。』

 

『そうだなぁ。』

 

そんなことを二人で話していた。

 

「…目的地が決まった。○○駅だ。」

 

「うん…。」

 

ジナイーダたちは同じことを考えていた。

 

…………

 

「セラフ〜…もう許してくれ〜…。」

 

「……。」

 

ドミナントは謝るが、ツンとしてしまっている。

 

「頼むよ〜…。」

 

「誰が話していいと言いましたか?」

 

「……すみません。」

 

セラフのひどく冷たい声で反応する。当たり前である。しばらく歩いていると…。

 

「あっ。あそこにソフトクリーム屋さんがあるけど、食べ…」

 

「食べません。」

 

「……。あそこにたい焼き屋が…」

 

「食べません。」

 

「……。すみません…。」

 

「……。」

 

セラフは相当怒っているようだ…。

 

……まずいな…。どうせなら楽しませてあげたいな…。でも、さっきの作戦は失敗してしまったし…。泣いていなかったら、種明かしで笑いあうはずだったんだけどなぁ…。

 

そこに…。

 

「あっ。……。早く行きましょう。」

 

セラフが道にあったレストランに少し反応したが、すぐに先へ行こうとする。しかし、それを逃すドミナントではない。

 

「そろそろ休憩しよう。朝ごはん食べていなかったし、ちょうどレストランがあるし。」

 

「早く行きましょう。」

 

「でも、お腹空いてないの?」

 

「私は別に…」

 

クー…。

 

可愛らしいお腹の音がなる。

 

「ほら…。ね?」

 

「はい…。」

 

セラフは渋々を装いながら入る。しかし、足取りが軽いことをドミナントの目はしっかりと見ていた。

 

…………

○○駅

 

「やっと着いたな。」

 

「そうだね!早くドミナントを探そう?」

 

「待て、そう急ぐな。」

 

「なんで?早くしないと…。近くにいるかもしれないよ?」

 

「適当に探したって見つからんだろう?ここに来たのは必ず意味がある。この近くに何があるか情報を集めよう。どこかのポスターとかを見よう。」

 

ジナイーダたちは探す。そして…。

 

「たくさんあるね〜。」

 

「そうだな。まず墓地はありえないだろう。この世界で死んだ奴はいない。そして…水族館は、少し遠いな…。タクシーに乗ればなんとか…。…保留だ。大きな遊園地か…。ここから近いし、デートスポットにもなっている。可能性は大だ。神社もあるな…。ふむ、恋愛系の神社か…。しかし、この時間からだと、少し可能性は低いな。……。女の子として、どこを選ぶ?」

 

ジナイーダは聞く。しかし…。

 

「私は…、お腹が空いたからあそこのレストランだと思う。」

 

「いや、それはないだろう。」

 

ジナイーダがツッコミを入れる。

 

「じゃぁ、神社かな?」

 

「?何故だ?」

 

「なんとなく。私は神様だから、やっぱり、神様のところに行くかな〜って…。」

 

「お前も強引だな。聞いた私が馬鹿だった…。」

 

「む!なんかひどい!」

 

頬を膨らませている。

 

「いや、本当に真面目になってくれ。じゃないと見つけられないぞ。」

 

「う〜ん。遊園地の気がする。」

 

「それは真面目か?」

 

「うん!」

 

「わかった。遊園地に向かおう。…しかし、確かにお腹が空いたな。あそこのレストランに行くか。」

 

偶然に偶然が重なる。

 

…………

 

「何を食べたい?俺が奢ろう。」

 

「別にいいです。」

 

「そうか…。」

 

まだツンツンしているセラフにドミナントは困っている。

 

……む〜。私にあんな意地悪なことをして…。簡単には許しませんよ。

 

そう思っている。が…。

 

「そうだな…。何をすれば許してくれる?」

 

「えっ!?」

 

セラフは耳を疑った。

 

「え…。そ、そうですね…。」

 

……どうしましょう。こんなことに滅多にありません…。あのお願いにしようかな…。いや、でもあのお願いはよくよく考えたら、強制じゃ意味がありません。何か…何か特別なことを…。

 

セラフは考える。そして、思いつく。

 

「そ、そうですね…。では…いえ、でも…。」

 

……すごく恥ずかしがっているのがわかる。耳まで真っ赤だ…。俺に何させるつもりだ?

 

さっき怒っていたため、なるべく表情に嬉しそうな顔をしないようにしているがにやけていた。そこに…。

 

カランカラン…。

 

『いらっしゃいませー。何名様ですか?』

 

『二人だ。』

 

『二人だよー!』

 

二人の乱入である。

 

「!?」

 

セラフは驚いたが、ドミナントは気づかない。椅子の向きによって気がつかないのだ。

 

『では、こちらになります。』

 

そう言って店員に案内される二人。そして、少し離れた席に座った。

 

………………

とある街

 

「遊園地とやらの方向は合っているのか?」

 

「あっているはずです。」

 

「そろそろご飯を食べたいのだが…。」

 

「ならどこかで食べるでち。お金足りるでちか?」

 

「まぁ、足りるが…。どのくらい食べるんだ?」

 

「私は、ご飯山盛り3杯以上です。」

 

「……。足らんな。せめて一人一食分でギリギリだ。遊園地へ行くことも配慮に入れると…。」

 

「えぇ…。」

 

「すまないな。……ところで、どこで食べるんだ?」

 

「では、あそこのレストランにしましょう。」

 

「なるほど。」

 

そう言ってレストランに向かう。




はい!36話終わりましたね。まだ着いてもいない…。これからヒッチャカメッチャカの展開になりそうですね。黒い人影の正体は誰なのか…!?
登場人物紹介コーナー
目撃者…たまたま乗り合わせていた。ネットにいっさいアップしない硬派な人。そのおかげで、鎮守府の評判は落ちなかった。
話していた二人組…一人が“彼女を見せる”と誘い、彼女持ちの友達と話していた。その後、来た彼女がその友達とも付き合っていて、二股だったことがバレる。
レストラン…“ファイヤビット”と書かれた店名のため、ドミナントが始終警戒する。
次回!第37話「我らはそう仰せつかりました」お楽しみに!


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37話 我らはそう仰せつかりました

はい!37話!100話目指して行ってきます!そして世に平穏のあらんことを…。スモチ食べたい…。さて、37話か…。40話くらいにあらすじ誰かやってもらおうかな〜…。チラッ
「わたしのでばんにょろ。」
違います。
「にょろーん…」
では、あらすじに入ります。

あらすじ
ドミナントのひどいイタズラにより、怒っているセラフ。機嫌を直そうと、ドミナントがレストランに入らせる。そこで、監視していたジナイーダも入ってくるのだが…。


 

「……。」

 

「どうした?」

 

セラフが固まったままなので、ドミナントが心配する。

 

「いえ、なんでもありません。ところで、あとでお願いを聞いてくれると約束したら許します。」

 

「……わかった。」

 

……あとで…か…。この店じゃできないようなことをさせるつもりか?怖いな…。

 

「で、何を食べるんだ?」

 

「いえ、もうこの店を出ます。」

 

「えっ!?まだ何も食べていないぞ。」

 

「いいから出ます。他の店で食べます。」

 

「いや、他の店ないかもしれんぞ。ここで食べよう。」

 

「いやです。」

 

「セラフ…。」

 

ドミナントが本当に困った顔をしている。

 

「……。わかりました…。」

 

セラフは了承した。

 

……あの二人の前でこんなお願いできませんね…。できれば…その…、あ、“あーん”をして食べさせてほしかったのですが…。いや、待ってください。二人にまだ気づかれていない今はチャンスなのでは?でも、料理が来る途中でバレたらアウトですし…。

 

くそラブコメ臭がきついことを考えている。

 

……セラフがまた赤くなっている…。マジで何させるつもりなんだろう…?…怒っている?だとしたら、この店ではできないこと…。人目につくからできない?…俺を殺す気?いや、セラフはそんなことはしない。イタズラの時だって、普通なら殺されているはずだし…。だとしたら…コンクリート詰めにして、放置?…いや、倉庫に閉じ込めるとか?もしかしたら、殺されはしないけど、体の一部を切り落とすとか…?

 

ドミナントは勝手なことを考えて、恐怖している。

 

「あ、あの…。」

 

「…決まったか?好きなものを好きなだけいいぞ…。」

 

ドミナントは無理にでも許してもらうため、贅沢させる。

 

「えっ?いえ、そんなに食べません…。私は…、このパンケーキを食べたいです。」

 

「10皿か?好きなだけいいぞ。」

 

「いえ、だからそんなに食べませんって…。ドミナントさんは?」

 

「俺は…同じのでいい…。」

 

「…なんでそんなこの世の終わりみたいな顔しているんですか…?」

 

「いや…別に……。」

 

ドミナントはこの世の最後の食事だと思って、注文した。

 

…………

 

「あー…お腹すいたね。」

 

「そうだな。」

 

「早く注文したいんだけどなぁ…。」

 

「待て、急いては事を仕損じるというではないか…。適当に選んで、不味かったというのは嫌だからな。」

 

「…わかったよ〜…。」

 

そう言って、神様は選び直す。

 

「む…。私はこのパンケーキにしようか…。それとも、餡蜜にしようか…。」

 

「ふぅーん。そっちの世界にもそんなものあるんだね。」

 

「いや、ない。この世界で勉強した。」

 

「努力家だね〜。…ドミナントは努力家とか優しい人、あと元気な人、正直な人が好みだった気がするなぁ…。」

 

「何か言ったか?特に最後の方は声が聞き取りにくかったぞ。」

 

「ううん。なんでもない。」

 

なぜ好みを知っているかというと、妖精さんの情報である。愉快な仲間たちは、妖精さん情報を活用しない。なぜなら、滅多なことがない限り、愉快な仲間たちのところへ現れないからだ。(妖精さんはからかったり、いたずらするのが大好き。愉快な仲間たちにそれをやると、例え妖精でも容赦しないと感じているから。)

 

「まぁいい。私はパンケーキにする。お前は?」

 

「私は…じゃぁ、このパフェで。」

 

「それ…美味しいのか?」

 

「うん!」

 

「そうか…ん?」

 

ジナイーダがドミナントたちに気がつく。

 

「…いた。」

 

「何が?」

 

「ドミナントたち…。」

 

「えっ!?」

 

二人して見る。幸い、角度によって、振り向かなくても良い位置にいる。

 

「本当だ。いたね。」

 

「…こっちに気づいているかもしれない。気づいていないふりをしよう。」

 

「なんで?」

 

「また撒かれたら嫌だろう?だから、気づいていないふりをして、外に行った時に後をつける。」

 

「なるほど。」

 

二人とも気づいていないふりをする。

 

…………

レストラン前

 

「ふむ…ファイヤビットか…。」

 

「ええから中に行こ?」

 

「現在朝の9時。中は朝食を食べる人でいっぱいみたいだ。待つ時間がもったいない。幸い、ここは食べ物屋が並んでいるからそれで朝食を済ませよう。」

 

と人影は言っているが、実は只ならぬ強者どもの気配がしたからだ。

 

「ええー!ここがいい!」

 

「わがままを言うな。」

 

「……。」

 

「険しい表情をするな。まだまだ先は長いぞ。」

 

「ここ以外といいますと…?」

 

「私の計算によれば、この先に3件必ずある。それ以上かもしれんがな。」

 

「なんでそんなこと分かるんですか?」

 

「計算したと言ったはずだ。…まぁいい。行くぞ。」

 

人影は先へ行ってしまった…。

 

…………

 

「ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、外に何か気配がして…。」

 

「どんなですか?」

 

「…。気のせいだと思うが、なんか…同族みたいな…。そんな感じだ。」

 

「同族?…!?家族がいるんですか!?」

 

「いや、“いた”だな。親は5年前に死んだ…。父親は事故、母親は病気だ。事故の後、あとを追うようにあっさりとな…。」

 

「そうなんですか…。」

 

しんみりした空気になってしまった。

 

「まぁ、逝った親はこんな空気を望んではいないと思うし、なるべくそんな雰囲気にならないように努力している。…さぁ。暗い空気はここで終いだ。そろそろ来るんじゃないか?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「お待たせいたしました。キャラメルパンケーキでございます。ごゆっくりどうぞ。」

 

そう言って置いたあと、厨房に消えていった。

 

「さぁ、食べるか。」

 

「あ、あの…。お願いです。」

 

「どうした?」

 

セラフは二人を確認する。

 

……気づかれてませんよね?

 

そして…。

 

「そ、その…。私に…あ、“あーん”してください…。」

 

セラフが言う。最後の方は途中でうつむいてしまった。

 

「……。すまない、騒がしくて聞き取りずらかった。“あーん”してくれと聞こえたものでな。」

 

「…そ、そう言ったんです…。」

 

「oh…」

 

ドミナントは目の前が暗くなる。

 

……マジか…。俺に恥をかかせることだったのか…。そりゃ、まぁ“あーん”して下さいって言う方が恥ずかしいよな。でも、言うだけで、気づく人は少ないだろう…。だが、行動となるとどうしても目立ってしまう。精神的に殺すことだったのか…。…責任取るしかないよな。一部を切り落とされるよりかは何百倍もマシだ。

 

ドミナントは考えている。

 

「あ、あの…無理なら……。」

 

「いや、やろう。」

 

「!」

 

言った本人ですら驚く。

 

「い、いいんですか!?」

 

「それで機嫌が直るならな。」

 

「直ります!直ります!」

 

何度も頷く。

 

「では、…いくぞ。」

 

「は、はいぃ……。」

 

そして口に運ぶ。

 

「パクッ。!?ーーーーー!」

 

セラフは声にならない叫びをあげる。

 

……美味しい。なんというか、このパンケーキだけの味じゃない…。幸福感で溢れるような…。幸せでいっぱいです…。

 

「…どうだ?」

 

「は、はひ…。おいひいへふ…。」

 

「セ、セラフ!?」

 

セラフは目がトロンとして、だらしなく口は緩み、頰は薄ピンク色に染まる。

 

……女性というのは、幸せになると顔が軟体化する生き物なのかな?まぁ、幸せならそれでいいか…。

 

ドミナントはそう結論を下した。

 

…………

 

「「……。」」

 

一方、二人は固まっていた。

 

「…。耐えろ。耐えるんだ。」

 

「ドミナント…トラレチャッタ?ドミナント…ウラギッタ?」

 

「お前も耐えろ。私もラブコメ臭がキツすぎて、めちゃくちゃにしようと思ったけど耐えるから…。」

 

二人は、精神が不安定になっていた。

 

…………

 

「さて、行くか。」

 

「は、はひ…。少し…待ってくらはい…。」

 

セラフたちは、全て食べきり、店を出ようとする。結局、全部食べさせてもらえたセラフは、嬉しすぎてクラクラしていた。

 

「…はい。もう大丈夫れす。いえ、です!」

 

「本当か?」

 

「ほ、本当ですから、これ以上刺激しないでくらはい!いえ、ください!」

 

「……。」

 

呂律の回っていないセラフを疑うが、遊園地へ行く。

 

…………

 

「遊園地に着いたな。」

 

「着きましたね。」

 

「じゃぁ、チケット売り場に行ってくる。」

 

「わかりました!」

 

ドミナントはチケット売り場へ向かい、買おうとするが…。

 

「いらっしゃいませ。ここにいる人たちはチケット売り担当です。我らはそう仰せつかりました。」

 

「はい。わかりました…。」

 

……ん?どこかで聞いたワードだぞ?




はい。惜しくも人影とは合わず…。この遊園地は大丈夫ですよ。……多分…。
登場人物紹介コーナー
レストラン店員…近頃始めたアルバイト。顔が無表情のため、少し接客が苦手。将来は提督になりたいと思っている。
チケット売り場担当の人…決してアレじゃない。多分…。
???…その後、レストランが簡単に見つかり、そこで食べることになる。
次回!38話「平穏」お楽しみに!


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38話 平穏

はい!38話!今回は少しアレがあります。
あらすじに入ります。

あらすじ
セラフと共に遊園地に着いたドミナント。そこでチケットを購入することになるのだが…。


「に、二枚だ。」

 

「世界は娯楽を求め、それでも仕事をやめられぬ…。チケットをあげます。」

 

「お、おう。」

 

ドミナントはチケットを受け取り、セラフの元へと向かう。

 

「…本当にここであっているのか?」

 

「ここのはずですが…。」

 

「…嫌な予感がするのだが…。」

 

そして、その嫌な予感は的中する…。歩いていると…。

 

「ここが入り口か?」

 

「そのようですね。」

 

入り口に蜂のマークが…。

 

「…まさか、違うよな…。」

 

「何がですか?」

 

「…いや、なんでもない。」

 

入場してしまった。

 

…………

 

「ふ〜、やっと着いたね!」

 

「そのようだな。ドミナントたちはとっくに行ってしまったようだな。」

 

あたりを見回しながらジナイーダは言う。

 

「あそこにチケット売り場があるな。」

 

ジナイーダは指をさしながら言う。

 

「そのようだね。買いに行こう。」

 

二人は購入しようとする。

 

「いらっしゃいませ。」

 

「二人だ。」

 

「わかりました。ではチケットをあげます…。そして…」

 

チケットを渡される。

 

「行くぞ。」

 

「うん!」

 

二人は最後の方を聞かずに走って行った。

 

「世に……。はぁ…。」

 

担当の人は少しがっかりしている。

 

…………

 

「着いたな。ここであっているのか?」

 

「はい!一度来てみたかったのです!」

 

「……そうか。蜂のマークがついた入り口の近くにチケット売り場があるな。行くぞ。」

 

「はい!」

 

人影は売り場へ行く。

 

「8枚だ。」

 

「わかりました。あなたのような方が来なければここは潰れる…。我らはそう仰せつかりました。」

 

チケットを渡す。

 

「…ありがとう…。」

 

ヤバイ雰囲気が出ている担当の人に???は若干距離を取る。

 

…………

 

「まず何に乗る?」

 

「えぇと…。あれに乗りたいです。」

 

ジェットコースターを指差す。

 

「…AC化すればいいのでは?」

 

「いえ、あれに乗ります。」

 

……一緒に乗ることに意味があるんです。

 

セラフは心の中で悟る。

 

「…わかった。」

 

……ジェットコースターか…。すごく苦手なんだよな…。

 

ドミナントはそう思っている。だが、そこで断るほど無粋ではない。

 

「早く行きましょう!」

 

「…ああ。」

 

手を引かれて向かう。幸い、この日は平日のため人が少く、すぐに順番が回ってくる。

 

「すぐに来たな。」

 

「やっぱり、平日の方が人が少ないですね。」

 

「そうだな。」

 

そして乗ろうとするのだが…。

 

「ベルトはしっかり締めてください。」

 

担当の人に止められる。

 

「いや、締めているんだが…。」

 

「…でもこの大きさじゃ、たいして締められなさそうだな…。しょうがない…行っていいですよ。」

 

「お、おう…。」

 

ドミナントは徐々に警戒を強めていく…。

 

「ほ、本当にあっているんだよな?」

 

「…どうしました?もしかして…嫌でしたか…?」

 

セラフが悲しそうな顔をする。

 

「いや、そんなことはない…。」

 

そして、スタートする。

 

「まずゆっくりと登るんだよなぁ…。」

 

「そうですね。楽しみです。」

 

セラフが笑顔になる。そして、その瞬間すごいスピードで降りる。

風風風…。そのとき、ドミナントはまた不思議な感覚になった…。

 

……風が…、風…、風?

 

そして、目の前が暗くなり…。

 

……

 

ザザザ……

 

『貴様…そのエ……ムは…フォ…。』

 

ザーー…

 

『何故…俺が……。』

 

ザザ…ザーー…ザザ

 

『古…の……物……。』

 

ザザザ…

 

『風が……。……いて…。』

 

……

 

「……。」

 

ドミナントは終わる前に我に帰る。隣には、楽しそうにしているセラフがいた。それを見て、ドミナントは安心した。

 

ジェットコースターが終わり、降りるセラフ。

 

「楽しかったですね。」

 

「…そうだな。」

 

「…どうかしましたか?」

 

「いや、別に…。」

 

そう言って、次に向かっていく。

 

…………

 

「……。」

 

「楽しそうだったな。…神様?」

 

ジナイーダは、険しい顔をした神様を見る。こんな表情をしているのは初めてだ。

 

「…まさか…甘かったのかな…?」

 

一人で呟く神様に…。

 

「…どうかしたのか?」

 

「…えっ?あ…ううん。なんでもない。」

 

いつもの柔らかい顔に戻る。

 

……“甘かった”?何がだろう…。なんか、怪しいな…。

 

「“甘かった”というのはどういう意味だ?」

 

ジナイーダは聞く。

 

「……。…パンケーキの蜜が甘かったなぁ〜って。」

 

「…嘘をついているのはわかる。」

 

「…ごめんね。言っちゃいけないんだ…。でも、これだけは言える。ドミナントは決して悪い人じゃない。だから、利用する人から守ってあげて。ひどい人から守ってあげて…。すぐに変わっちゃうから…。」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「…これ以上は言えないよ。」

 

「そうか…。だが、言われなくても悪い人じゃないのはわかる。嫌な奴からも守るさ…。」

 

ジナイーダはしっかりと約束した。

 

…………

 

「次は何に乗りたい?」

 

「私はメリーゴーランドがいいな〜。」

 

「私はジェットコースター。私より速いのか比べてみたい!」

 

「私は、なんでもいいです。」

 

「私もです。」

 

「うちも。」

 

「なんでもいいでち。」

 

「私は、観覧車が…。」

 

「…どれにするか話し合って決めてくれ…。」

 

人影は、艦娘たちに丸投げした。そのあと、どこに行くか決めようと、話し合いになる。

 

…………

 

「次はどこへ行く?」

 

「もう大半アトラクションコンプリートしましたからね…。」

 

ドミナントとセラフは、どこに行こうか迷っていた。そこに、後ろから声がかかる。

 

「どうかしましたか?私はスタッフです。」

 

蜂のマークがついた服を着ている可愛らしい女性がいた。

 

「うむ、遊び疲れていてな…。」

 

「そうでしたか…。そろそろ遊びにも飽いたろう…。我が自らレストランに案内してやる。レストランにて、心安らかにするがよい。」

 

「「……。」」

 

流石にセラフも少し違和感を感じた…。

 

「ま、まぁ…案内してくれ…。」

 

「わかりました。」

 

あとは、普通に案内してくれた。

 

…………

レストラン

 

「ここか?」

 

「はい。それでは、私は仕事があるので失礼します。」

 

そう言ってスタッフは走って行った。

 

…………

 

「ドミナントたちレストランに向かったらしいよ。私たちも行こう?」

 

「……すまない。見失ってしまった。レストランへの道が分からん。」

 

「えっ!?じゃぁどうするの?」

 

「スタッフに聞こう。ちょうどあそこにスタッフがいる。」

 

ジナイーダはスタッフに聞く。

 

「すまない。少しいいか?」

 

そしてレストランの道を聞く。

 

「我らの本懐で遊ぶお客…案内しよう。」

 

「……。」

 

あのジナイーダも固まってしまった…。

 

…………

 

「どこにするか決まったか?」

 

「まだです…。」

 

長い間討論していた。道の真ん中で討論しているので、少しほかのお客が迷惑そうにしている。

 

「じゃぁ、あそこのベンチで休んでいるから、決まったら声をかけてくれ。」

 

「わかりました!」

 

そして???はベンチに座る。そこで、二人のスタッフが隣に立つ。

 

「あれだ同士よ…。この遊園地の平穏を乱す集団は。」

 

「やめさせなければならぬ…。さもなくばこの荒れ果てたクレームは止められぬ…。」

 

「「遊園地に平穏のあらんことを…。遊園地に平穏のあらんことを…。」」

 

流石に???も恐怖したので、すぐさま邪魔にならないように注意した。

 

…………

レストラン中

 

「遊んでいて時間に気がつかなかったが、もう2時だな。」

 

「そのようですね。何を食べたいですか?」

 

「俺はなんでもいい。」

 

「そうですか…。」

 

そんなことを話していると厨房から…。

 

『苦心して作り上げた料理だったが、貴様のおかげで作り直しよ…。代償は払ってもらうぞ。』

 

料理長が切れ味の悪い包丁に向かって言ったあと、研いでいる…。

 

「……本当にここは大丈夫なのか?」

 

「……。」

 

セラフは何も言わなかった…。




はい!38話終了です!優しい世界ですね〜…。この遊園地は笑顔の絶えない職場です。現在スタッフは多すぎず、少なすぎずいます。アルバイト募集中、条件は蜂が好きかどうかです。
登場人物紹介コーナー
チケット売り担当の人…女性の方は、ハナバチが大好き。男性の方は、クマバチが大好き。
ジェットコースター担当の人…アシナガバチが大好き。
案内担当の人…女性の方はミツバチが大好き。男性の方は、ヤドリキバチが大好き。
二人組…それぞれ、メリーゴーランド担当の人と、観覧車担当の人。メリーゴーランド担当の人は、アナバチが大好き。観覧車担当の人は、アリバチが大好き。
レストラン担当の人…実は、この遊園地のオーナー。スズメバチが大好き。
たまにみんなでハチのことを語りに飲み会へ行ったりする。
次回!第39話「新しい仲間」お楽しみに!


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39話 新しい仲間

はい!39話!そろそろあらすじは筆者役は飽いたろう、われが自ら引導を渡してやる。彼岸にて心安らかに眠るがよい…。ビーハイヴのセリフの大半覚えている筆者は手遅れかな?
はい、あらすじに入ります。

あらすじ
謎の遊園地で遊ぶセラフたち。そして昼食にするのだが…。


「私は…ランチメニューのスパゲティで。」

 

「では、俺は蜂蜜ケーキにしよう。」

 

二人はそれぞれ注文する。

 

……このあとどうしましょう…。並ぶ時間を計算していたため、時間が余ってしまいます…。遊園地であと出来ることといえば…。

 

セラフは考える。

 

「どうした?そんな難しい顔をして。」

 

「いえ、なんでもありません。」

 

「…やはり、昼に蜂蜜ケーキはまずかったか?」

 

「い、いえ。確かにその選択は驚きましたけど、そうじゃありません。」

 

「…食べ終わったら、観覧車に乗るか?」

 

「!はい!…でも、できれば終わり頃などがいいです。」

 

「そうか。では、あそこのお化け屋敷などはどうだろう。」

 

「私が怖がると思いますか?」

 

そう聞かれて、ドミナントは考える。

 

……思わないな。…だが、そこは女性として“怖がると思う。”を選択するべきだろうか…。…ギャルゲーはあまりやったことがないからな…。だがセラフだ。はっきりと言った方が良いな。心が読めるからな。

 

そう考えた。

 

「…すまないな。思わん。」

 

ドミナントは申し訳なさそうに謝る。

 

「……。ですよね…。」

 

セラフが少し残念そうにしていた。ドミナントは、“しまった。”と後悔した。

 

……ここは嘘でも、女性らしく見られたかったです…。

 

セラフは心の中で呟いた…。そこに…。

 

ガチャッ…カランカラン…。

 

『いらっしゃいませ。何名様ですか?』

 

『8名だ。』

 

可愛らしい女の子を引き連れてきた、顔立ちの良い男が入ってきた。

 

「……。」

 

ドミナントは凝視した。

 

……あれ?艦娘に見えるぞ?なんでここに?他の鎮守府の提督かな?…一人スク水だしな…。かわいそうに…。

 

ドミナントは失礼なことを思っていた。そこに…。

 

「どうかしたんですか?」

 

セラフが呼びかける。

 

「いや、何も…。」

 

「…そんなにプリプリの女の子が好きなんですか?」

 

「!?ちょ、セラフ!?何を言って…」

 

「いいんですよ。別に。私よりも見たいんですよね?どうぞ?見てくださいよ。」

 

「…セラフ、その言い方はないと思うぞ。」

 

「目の前の女性を放っておいて、見ている方がないと思いますが。」

 

セラフが冷たい目で睨む。どう見てもドミナントが悪い…。

 

……どうしましょう…。どうしてあんなに感情が高ぶったのでしょうか…。私以外を見ていただけでなんでそんなに…。前はこんなこと言わなかったのに…。

 

……何故だ…?俺が悪いのはわかっているが、何故そこまで言う?何か抱えているのか…?それとも、単純にそこまで怒っているのか?

 

二人とも考える。そして…。

 

「セラフ。何か抱えているのか?」

 

「そんなわけないでしょう?馬鹿なのですか?」

 

……心配してくれているのでしょうか?しかし、口が勝手に…。

 

「む…。まぁいい。ここは人目につくから何も言わん。俺が悪いと分かっているからな。」

 

「何ですか?人目につかないところなら言うんですか?そちらが悪いのにですか?」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言わない。

 

「何か言ったらどうなのです?喋れないのですか?」

 

「……。」

 

「聞いているんですよ?分かってます?」

 

「…何も言わないと言っただろう?」

 

「わかってないのですか?あなたに非があるんですよ?」

 

「わかっている…。」

 

「わかっているのなら謝りなさい。」

 

「………。」

 

「聞こえませんよ。」

 

「すまなかったな。」

 

ドミナントが少し強めに言う。

 

「何ですか?その言い方。馬鹿にしているんですか?」

 

「何がだ?」

 

「“何がだ”って…!」

 

セラフが思いっきり立ち上がろうとしたが…。

 

「待て、セラフ。」

 

ジナイーダが止める。

 

「!?ジナイーダ?来ていたのか!?」

 

ドミナントは驚く。

 

「ああ。」

 

ドミナントを睨む。

 

「お前は本当に気持ちを分かっていないな。」

 

「な、何が…」

 

「少しガッカリしたかも…。」

 

「神様まで…。」

 

「たまたま二人でここに来ていた。最初から見ていたが、お前が悪い。強く言われて、腹が立ったのはわかる。だが、しっかりと謝らなければ何も解決しない。わかっているはずだ。」

 

「……。」

 

神様も困った顔をしてジッとドミナントを見つめる。

 

「…そうだな…。確かにその通りだ。」

 

そう言って、ドミナントはセラフの方を向いた。セラフは少し涙目になっていた。

 

「セラフ…。」

 

「……。」

 

「すまなかった。こんな俺を誘ってくれて嬉しく思っていた。なのに俺は他の女性を見てしまい、君を傷つけてしまった。本当にごめんなさい…。」

 

ドミナントは真剣に謝った。

 

「それでは伝わらんぞ。」

 

ジナイーダは言うが…。

 

「いえ…。言葉にするのは難しく、あなたはとっても苦手です。でも、気持ちはしっかりと伝わりました。」

 

セラフは笑顔になる。

 

「セラフ…。」

 

「ドミナント…。」

 

そして見つめ合っていると…。

 

「ガハッ!!」

 

ジナイーダが突然血を吐く。

 

「ど、どうしたんだ?ジナイーダ。」

 

「な、なんでもない…。…一応言うが、病気じゃないぞ…。」

 

「?」

 

心配するが、すぐに起き上がったので大丈夫だと判断した。しかし、神様の方は…。

 

「ドミナント…ワタシハウラギラレタノ?ネェ…ドミナント…?」

 

「怖い…すごく怖い……。お願いだからいつもの神様に戻って…。」

 

ドミナントが頼んでいると…。

 

「おい、さっきドミナントと言ったか?」

 

「?」

 

さっきの男がいつのまにか近くにいた。

 

…………

時は少し遡る。

 

「…何が食べたい?色々回って疲れただろう?」

 

「わーい!お昼ご飯だー。」

 

そんなやりとりをしていると…。

 

「……。向こう側から只ならぬ気配を感じるな…。」

 

「敵ですか?」

 

「分からん。だが、恐ろしく強いのは確かだ。」

 

「どれくらいですか?」

 

「私は今までたくさんの傭兵を従えたり、戦ってきた。その中でもダントツだ。」

 

「そんなにですか…。」

 

「…もしかしたら、私と同じ境遇かもしれん。少し耳を傾けよう。」

 

そして、傾けていると…。

 

『セラフ…。』

 

『ドミナント…。』

 

……!?ドミナントだと!?奴もこの世界にいるのか!?

 

「悪いが、少し席を外す…。」

 

「えっ!?どうかしたんですか!?」

 

「ああ。」

 

…………

そして現在

 

「なんだ貴様は…。?。!?お前は…」

 

「ジナイーダ!?お前もこの世界に来ていたのか!?」

 

???が大声をあげたせいで、注目が集まる。そこでドミナントが…。

 

「知り合いか?…ここは店だからな。外に行こう。」

 

…………

 

「で、君は一体だれ?」

 

神様が聞く。

 

「?神様が連れてきたんじゃないのか?」

 

「ううん。知らない。…もしかしたら、ジナイーダたちを連れて来た時にへんな溝が出来ちゃったのかな…?」

 

「…おい。」

 

「え、えへへへ…。まぁ、先輩に言って直してもらう。」

 

神様は念じている。そこで…。

 

「ジナイーダ。ドミナントはどこだ?依頼を出したい。」

 

「この世界にドミナントはいないらしい。というか、この世界にインターネサインはない。」

 

「そうか…。まぁ、この街に来た時点で薄々気がついていたがな。インターネサインのある世界に、こんなに平和な場所はない。」

 

二人とも地元トーク?をしている。

 

「あの…インターネサインってなんですか?」

 

「なんだ貴様は?インターネサインのことを知らないのか。知る必要はない。まぁ、この世界にないのでは知ったところで意味はない。」

 

???は偉そうに言う。

 

「ちょっと待て。インターネサインを知っているのか?」

 

「お前も知っているのか?…お前みたいなレイヴンは知らないが…。」

 

「俺はドミナントだ。」

 

「ドミナントだと!?…ここで戦ってもらおう…。」

 

???はAC化しようとするが…。

 

「待て、こいつ自身の名前だ。お前の探しているドミナントではない。」

 

「本当か?」

 

「ああ。」

 

「…ところで、地元トーク?はいいですから名前を…。」

 

「レイヴンでもないお前に名乗る必要はない。」

 

???はAC化して諦めさせようとする。幸い、倉庫みたいなところなので人はいない。

 

「……。」

 

ドミナントは次に何が起こるか覚悟していた。ジナイーダは報いだと思っていた。神様はまだ念じていた。

 

「そうですか…。ならば力ずくで教えてもらいましょう…。」

 

「ほう。出来るのか?」

 

「……。」

 

セラフはAC化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デデデストローイナーインボー…

 

…………

2分後

 

「さっきはすまなかった…。」

 

「わかってもらえて何よりです。」

 

セラフはボコボコになった???に笑顔で言う。幸い、どこも損傷していない。

 

……強い気配はジナイーダだけじゃなかったのか…。

 

「で、誰なんです?」

 

「私は…ジャック・Oだ。」

 

「!?」

 

ドミナントは驚いた。

 

「ジャック・O!?」

 

ジャック・Oとは、ネタキャラに多く使われているが、実は紳士的で、策士である。

 

「なぜここに?」

 

「うむ。作戦を考えていたら突然目の前が光り始めてな…。」

 

皆と大体似ている。

 

「第4佐世保鎮守府へ行きたいのだが…。」

 

「提督じゃなかったのか?」

 

「ああ。生体兵器を倒したら、人間の子供がたくさん出てきてしまったのでな。ちゃんとした場所に連れて行きたいのだ。」

 

「なるほど。生体兵器じゃなくて、深海棲艦ね。てか、俺がそこの提督だ。ここにいるみんながそこで生活している。」

 

「!?そうなのか。」

 

……こんな化け物たちを従えているとは…どのくらいの腕なのだろう?…敵には回したくないな。

 

ジャックはそう考える。

 

「……。セラフにやられてACがボロボロだな。鎮守府に来て入渠しないか?資材があまり過ぎているし。てか、俺の鎮守府で暮らさないか?」

 

「!?ドミナント!」

 

「お、おう。ジナイーダ。どうかしたのか?」

 

そして、ジナイーダはドミナントを引っ張り、コソコソ話す。

 

「奴はバーテックスのリーダーだぞ。乗っ取られたらどうする!?」

 

「…確かに危険かもね。…でも、さっきセラフに負けたから大丈夫じゃないのか?しかも、敵になったら厄介だ。ジャック・Oは策士。うまく事を運ばせることができる天才だ。俺の鎮守府には天才だらけだ。そう簡単に裏切るような行為はしないだろう?」

 

「し、しかし…。」

 

「セラフや主任が大丈夫なんだ。それに、ジャックが連れてくる艦娘はジャック自身を慕っていると思う。いなくなったら、大騒ぎになるし、士気が下がる。」

 

「まぁ、たしかにそうかもしれんが…。」

 

「大丈夫だよ。ねっ?」

 

ドミナントが笑顔でジナイーダに言う。

 

「…お、お前がそう言うなら、私は構わないが…。」

 

髪をいじりながらジナイーダは言う。

 

「さて、少しすまなかったね。俺のところで暮らさないか?」

 

「ふむ…。」

 

ジャックは考える。

 

……インターネサインのない世界で、私のやることはない。残りの余生を鎮守府とやらで安全に暮らせるのならいいだろう。しかも、この怪我が治らないしな。ドミナントが言うには、入渠?とやらをすれば治ると言っていたな…。

 

「わかった。いいだろう。」

 

ジャックが頷く。

 

「よし!ならば、ジャックと呼ばせてもらおう。」

 

「…何故だ?」

 

「あだ名だ。」

 

「ジャック・Oがあだ名だ…。」

 

「まぁ、細かいことは気にしない気にしない。それとも狐の目が良かった?」

 

ドミナントが言った狐の目とは、ジャック・Oの愛機“フォックス・アイ”を日本語にした名前である

 

「…ジャックにしてくれ。」

 

「わかった。ようこそ。歓迎しよう。新しい仲間“ジャック”。」

 

……一緒に暮らして大丈夫なのだろうか…。

 

ジャックは少し不安を募らせた…。




はい!少し長くなってしまいました。???、人影=ジャック・Oでした。やっぱり、ジャック・Oは欠かせませんよね?最後の方ドミナントは男が増えたことにより嬉しくてハッチャケています。しかし、艦娘もたくさん増えたことに気づいていない…。
次回!第40話「それはありがたいけど…。」お楽しみに!


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40話 それはありがたいけど…

はい!ついに40話!長いようで…短かったような…。え?それは終わりの言葉までとっておけ?あ、あははは…。気にしない気にしない…。はい、冗談はさておき、前もって伝えておきます。イベントの日は、物語そっちのけでイベントの出来事を書きます。ついでに、筆者が風邪気味なので、明日は休むかもしれません…。あと、10話に一回、筆者のあらすじだと飽きると思うので、登場人物にあらすじを言ってもらいます。
では、40話なので、誰かに言ってもらいましょう。誰にしようかな…。では、ジナイーダに。
「む?私か?…いいだろう。久々の登場だ。」
ありがとうございます!

あらすじ
前回。ドミナントたちの後を追ってレストランに入る。すると、二人が喧嘩しているじゃないか。よくよく聞くと、ドミナントが悪いことがわかり、謝らせた。そのあと、ちょうどジャック・Oが現れ、ドミナントの仲間になるのだが…。


「えっ!?嘘!?…わかった…。」

 

神様が突然声を上げる。

 

「どうかしたのか?」

 

「うん…。やっぱり溝が出来ちゃってたみたいで、先輩が溝を埋めてくれた。ジャックくんのことは何とか把握したみたいなんだけど…。他に数人来ちゃったかもしれないって…。最低でジャックくん一人、最大で5人…。」

 

神様が深刻そうな顔をする…。

 

「…それ、まずいんじゃないか?」

 

「…うん…。」

 

「もし、世界を混沌に陥れる奴だったら大変だぞ?」

 

「…うん…。ごめんなさい…。」

 

神様は悲しそうな顔をして謝る。

 

「…。まぁ、そういう奴だって決まった訳じゃない。もしかしたら、来ていないかもしれん。それに、俺たちにかなう奴なんているのか?第4佐世保鎮守府に手を出したら、確実に死が待っているしな。」

 

ドミナントは、元気づけていることを悟られないように言う。しかし、下手である。

 

「…えへへ…。ありがとう。」

 

「なんのことだ?事実だろう?」

 

「…そういうところも好き…。」

 

そんなことを話していると…。

 

「……ていっ!!」

 

「グハァ!」

 

ドミナントがセラフに殴られた。ジナイーダと比べると、全然痛くない。が、それでも十分痛い。

 

「…私とデートのはずですよ?」

 

「す、すみませんでした…。」

 

ドミナントは謝った。

 

「……。なんか気が抜けてしまうな…。」

 

「……。ジャック、ここはそういう世界だ…。」

 

ジャックとジナイーダは今のを見て、なんとも言えない表情になる。

 

「あっ!そうだ。ジャック、あの子達を店に置いてきて平気なのか?」

 

「自分たちで注文くらいできるだろう?」

 

「いや、そうなんだけど…。お金は?」

 

「…。1食分くらいはある。」

 

「うん。足りないね。早く戻ろう。」

 

ドミナントたちは駆け足で戻るが、時すでにお寿司。ジャックがいたテーブルには皿が積み上がっていた…。

 

「あっ!お帰りなさい。…て、その人たちは誰ですか?」

 

「……。遅かったな。言葉は不要か?」

 

「……。」

 

ドミナントが言うが、何も反応がなかった。

 

…………

 

「……。すまんな。金を払ってくれるとは…。」

 

「別にいいよ。これから俺たちと暮らすんだろう?これはそのお祝いだ。」

 

「…本当にすまんな。」

 

ドミナントは、艦娘たちに事情を説明した後、金が足りないジャックの代わりに金を払った。

 

「…ところで、ドミナントの鎮守府は何人いるんだ?」

 

「そうだな、俺の鎮守府には4人艦娘がいて、今いる仲間と、今はいないが、一人の愉快な仲間がいる。」

 

「ほう。もう一人いたのか。どんな奴なのだろうか…。」

 

「少しぶっ飛んだ奴だよ…。」

 

「…そうか。」

 

二人はそんなことを話している。が、後ろでは…。

 

「むむむ…。ドミナントさん…。今日は私と一緒にいるはずなのに…。」

 

「まぁ、しょうがないよ。新しい仲間に興味を持つのは普通だし、唯一まともな男の人が仲間になったんだもの。」

 

「……。」

 

セラフは神様に言われるが、納得のいかない様子だ。そこでジナイーダが…。

 

「まぁ、気持ちはわかる。が、無理やり遊んだって、相手が面白くないと感じたら全く面白くないぞ。…どうだろう?ここは私たちとともに回らないか?終わり頃になれば、私たちを迎えにドミナントも来るしな。」

 

「…随分信頼しているんですね。」

 

「当たり前だ。…それとも、お前は信頼していないのか?」

 

「いえ!そんなことはありません!」

 

セラフは清々しいくらいきっぱりと否定した。そして、ドミナントに神様が言う。

 

「ドミナント〜!私たちは、少し遊園地を回ってくるね!」

 

「わかった。」

 

ドミナントは、返事をして、ジャックとまた話す。

 

「了承も取れたし。行こう?」

 

「わかりました。」

 

3人は、遊びに行った。艦娘たちは、ジャックが自由行動を許した。しかし、他人に迷惑をかけないことを絶対条件で。

 

…………

夕方

 

「…そろそろ迎えに行くか。」

 

「そうだな。」

 

ジャックとドミナントは、全員を手分けして探しに行った。そして、歩いて数分後、ジナイーダたちと合流した。

 

「どうだった?」

 

「楽しかった!」

 

「良かったぞ。」

 

「楽しかったです。」

 

「なら良かった。」

 

ドミナントが少し口元を緩めた。そして…。

 

「もう夕方です。帰りましょう。」

 

セラフは笑顔で言う。そして、ドミナントが…。

 

「そうだな。じゃぁ、すぐに観覧車に乗らなきゃな。」

 

「えっ!?」

 

セラフは驚いた。

 

……覚えてくれていたんですか…?

 

しかし…。

 

「で、でも。もう遅いですし…。」

 

セラフは言うが…。

 

「ジナイーダ、神様。少し時間をくれるか?」

 

ドミナントが頼む。

 

「フッ。いいだろう。」

 

「いいよ!」

 

ジナイーダは口元を緩ませながら、神様はいい笑顔で言った。

 

「よし!行くぞ!」

 

「えっ…でも…。!?」

 

弁解しようとしたが、ドミナントに手を握られ、一緒に走る。

 

…………

 

「よし。乗れたな。」

 

「…強引です…。」

 

ドミナントとセラフは観覧車に乗る。

 

「…でも、いい景色ですね。」

 

「そうだな。」

 

夕日のオレンジ色の光で、遊園地が輝いて見える。街並みは、半分暗くなっていた。他のお客が、笑顔で…満足そうな顔をして、出口へと向かっていく。それを見たあと…。

 

「ねぇ…ドミナントさん。」

 

「?」

 

セラフが外の景色を見ながら言う。

 

「今日はありがとうございました。一生忘れない記憶です。」

 

「それは良かった。…また、来たくなったら言ってくれ。休みをあげるから。」

 

「ふふふ。ありがとうございます。」

 

「いや、別にどうってことない。」

 

セラフがこっちを向いた。夕日の光で笑顔が一層可愛く見える。

 

「ねぇ…ドミナントさん…。」

 

「なんだ?」

 

「その…あの……あれを見てください。アイスを持って帰る子供がいます。」

 

「そうだな。溶けているな。」

 

「…ねぇ…ドミナントさん…。」

 

「どうした?」

 

「あの…その……もうこんな時間ですね。降りたら帰りましょう。」

 

「確かにな。皆が待っている。」

 

「……ねぇ…ドミナントさん…。」

 

「……。言わなくてもいい。その目を見て、体がモジモジしているからわかる。」

 

セラフは顔を赤くして、もじもじしていた。

 

「残念だが、答えることはできないな…。…俺は、何かある。わからないが、何かあるのは確かだ。それがわかるまでは、返事ができない。」

 

ドミナントが言う。

 

「それは…?」

 

「わからない…。でも、何か恐ろしいことは確かだ。いつかコレに支配されるかもしれない。そうなったら、殺してくれ。返事をして、殺せないようなことにはなりたくない。」

 

ドミナントは真剣に言う。しかし…。

 

「……です…。」

 

「?なんだ?」

 

「嫌です…。」

 

セラフの方を向き、初めて気づいた。少し悲しそうな…覚悟してそうな顔だ。

 

「…どうして?」

 

「…嫌に決まっているでしょう?誰だって、好意を抱いている人を殺したくないはずです。」

 

「しかし…。」

 

「やめてください。そんなこと…言わないでください…。私は…もう殺したくないです…。しかも…その人に…好意を…抱いて…いるのに…。…無理を…しても…耐えてくだ…さい…。」

 

セラフは途中から涙声になる。

 

「……。お前は優しいな。絶対に救いたいのだな…。でも、万が一のことがあったら殺す覚悟もしている。」

 

「……。」

 

セラフは黙ったままだ…。

 

「ありがとう。絶対に、死んでも耐えてみせるよ。約束だ。」

 

「…はい…。」

 

約束をした。

 

「…そうだな。返事の件なんだが…。俺は、全員が好きだ。」

 

「…へ?」

 

「…すまないな。俺は選ぶことができない。それぞれの良いところ、悪いところを見てしまったからなのかもしれん。みんな違う魅力を持っている。その中で順位を築くのは失礼もいいところだろう?」

 

「……まぁ、そうですけど…。」

 

「セラフの良いところは、優しいところ、人を励ますことができるところだ。

ジナイーダは、なんだかんだ言って付き合ってくれる面倒見の良いところ、厳しいけれどちゃんと指摘してくれるところだ。

神様は、元気で素直なところだ。いたずら好きなところもあるがな。

吹雪は、真面目で頑張り屋だ。少しやりすぎなところもあるけどね。

如月は、こんな俺でもいつ何時慕ってくれる。優しくて、面倒見の良いところだ。

三日月は、夜な夜な演習場にて、一人で頑張っている努力家だ。ジナイーダがたまに付き合ってあげている。

夕張は、正直で、隠し事はしない良い子だ。諦めない精神を持っているしな。

…まだ他にもたくさんあるが、それを説明すると長くなるからこのくらいだ。」

 

ドミナントが説明する。

 

「…そんなに私たちのことを見てくれていたんですね。」

 

「当たり前だろう?大切な…唯一無二の仲間だ。」

 

ドミナントがまっすぐセラフを見る。

 

「…ふふふ。なんだか燃えてきました。絶対に私だけのものにしてみせます。」

 

「!?セ、セラフ?」

 

セラフの目の色が変わった。そこでちょうど観覧車が地上へ降りた。そこには、神様、ジナイーダ、ジャック、艦娘がいた。

 

「お帰り。どうだった?」

 

「いい旅でしたよ。ふふふ…。それに、ドミナントさんのことをもっと好きになりましたし。」

 

神様が聞き、セラフが笑いながら言う。ジナイーダが耳打ちする。

 

「…何があったんだ?」

 

「…俺にもわからん…。」

 

そんな感じで、出口へ向かうのであった。

 

…………

 

「「「世に平穏のあらんことを!!世に平穏のあらんことを!!」」」

 

スタッフ全員がドミナントたちにお別れの挨拶をして、手を振っている…。

 

「……。アトラクションは普通だったが、スタッフぅ…。」

 

「そうだな…ホッとしているよ…今は。」

 

そこで、すれ違う男女2組が…。

 

『俺あそこでバイトするんだ。大いなるものが我らを見ている。断られるはずがない。』

 

『私もよ。このハチマニアこそ…そのあかし…。フッフッフ…。』

 

「「「……。」」」

 

ドミナントたちは何も言わなかった。

 

……きっとバイトに合格するんだろうなぁ…。

 

ドミナントの思った通り、合格した。

 

…………

 

そして鎮守府に帰るなり、ドミナントは驚いた…。そして理由を聞くと…。

 

「それはありがたいけど…。どうして?」




はい!少し長くなってしまいました…。すみません。この遊園地は絶対に襲ってはいけません…さもなくばどうなるか……。あぁ…頭が痛い…。少し変な文章になってしまったかもしれませんが、そこのところはお見逃してください…。
登場人物紹介コーナー
バイトの男…その後、すぐに重要な役割を担当することになる。オリエントスズメバチが大好き。
バイトの女…同じく、すぐに重要な役割を担当することになる。青蜂が大好き。
次回!41話「説明を要求する。」お楽しみに!


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41話 説明を要求する

はい!1日経ったら治りました。しかし、少し咳が…。まぁ、気にしない気にしない。ほのぼのぉ…。
はい、ではあらすじに入ります。

あらすじ〜
やはり、この世界に溝ができてしまっていた。そのせいで、AC世界から1〜5人ほど来ていることがわかった。ジャック・Oもその一人である。そこで、終わり頃に観覧車に乗った後、鎮守府に帰ったのだが…。


…………

時は少し前に遡る。

 

「いや〜…疲れたねぇ。」

 

鎮守府までの道のりでドミナントが呟く。大半は、疲れて寝てしまっているので、それぞれ背負っている。

 

「そうだな。」

 

ジナイーダが共感する。

 

「大半寝ているけど、やっぱりAC勢は起きているんだね。」

 

「なんだ?AC勢って…?まぁいい。私たちはこれくらいで疲れないからな。」

 

ジナイーダはそう言って、寝ている神様と寝ている艦娘を見る。

 

「私も起きていますよ?」

 

「神通さんは元気そうですね…。」

 

「はい。疲れていませんので。」

 

神通さんは元気そうだ。他にも、加賀さんや、龍驤さん、大淀さんも起きている。

 

「…鎮守府に帰ったら、部屋を作らないとな…。」

 

「そうですね。」

 

「…すまないな。」

 

「いえいえ。」

 

短いやり取りをしているうちに、鎮守府に着いた。そして、その瞬間ドミナントは目を疑った…。

 

『あれが提督さんっぽい?』

 

『夜戦許可してくれるかな?』

 

『艦隊のアイドル那珂ちゃんだよー!』

 

『イクの提督はだれなの?』

 

『提督は誰なのでしょう…?』

 

『ビック7の力、侮るなよ。』

 

『HEY!ていトーク!』

 

『司令官を取材したいです!』

 

『パンパカパーン!』

 

『ハラショー』

 

と、まぁざわざわしている。

 

……!?これは…一体…?鎮守府間違えたかな?艦娘が鎮守府に入りきらないみたいで少し外に出ているんだけど…。それに、あそこ確か倉庫だったよね?艤装の山になってない?資材…資材がもうそこらへんに転がっている…。

 

ドミナントは考えても繋がらない。

 

「「「……。」」」

 

みんな何も言わない…。しかし、最初に言葉を発したのはジャックだった。

 

「……。艦娘は4人ではなかったのか?」

 

「いや、今日出かける前は4人だったよ…。」

 

「……。」

 

どう考えても繋がらない…。そこに…。

 

『提督が帰ってきたよーー!!』

 

誰かが大声で言う。

 

ワァァァァァァァァァァァァァ!!!

 

……艦娘たちが全速力で走ってくるじゃないか…。あれにあたったらただじゃすまないな…。

 

ドミナントはそう考え…。

 

「すまない、ジナイーダ…。」

 

「?なんだ?」

 

「あとは任せた。」

 

「!?ちょ、おい!!」

 

ドミナントは全速力で逃げた。

 

…………

 

「はぁ…はぁ…。ここならバレないかな?」

 

ドミナントは森の中の草むらに隠れている。鎮守府の中や、周りはドミナントを探す艦娘で溢れている…。

 

……俺たちが一日いないだけで何があったんだ?…主任や吹雪たちを探さなくては…。

 

ドミナントが考えていると…。

 

『ここにいたよーー!!』

 

「何っ!?バレたのか!?くそ…。」

 

ドミナントは走る。

 

…………

 

……ここはどうだろうか…。

 

ドミナントは、鎮守府の天井裏にいる。

 

……まずは吹雪たちを探さなくては…。主任は絶対に見つからないだろうし…。

 

そして、ドミナントは気配と足音を消して部屋を順番に見ていく…。

 

……鎮守府の中にはいない?ならば演習場か、倉庫か、資材置き場だな。…演習場に行くか。吹雪や主任もいそうだし。

 

そう考えていると…。

 

『……。ここから匂いがしますね。』

 

……匂い!?まずい…バレる。

 

ガタッ。

 

「見つけましたよ!…て、あれ?」

 

ドミナントはいなかった。

 

「気のせいでしょうか…?」

 

…………

 

……演習場にも、倉庫にもいなかったな…。だとしたら資材置き場か…。

 

ドミナントは資材置き場へ向かう。

 

……それにしても、ダンボールで隠れられるのは本当だったんだな…。ボスに感謝しないと。

 

ドミナントはダンボールに身を隠しながら進む。

 

…………

資材置き場前

 

「う〜ん…どう考えても入りませんね…。」

 

「そうだねぇ〜…ハハハハ。」

 

「…笑ってないで手伝ってくださいよ…。もう司令官も来ているらしいので…。」

 

吹雪と主任と三日月がいた。

 

「もう後ろにいるぞ。」

 

「わひゃあ!?」

 

「きゃっ!?」

 

ドミナントがいきなり声をかけ、主任以外が驚く。

 

「説明を要求する。しっかりと話してくれるな?」

 

ドミナントは少し強めに言う。

 

…………

 

「なるほどな。」

 

「はいぃ…。」

 

「俺を喜ばせたくて主任に許可を取り、近くの深海棲艦を滅していたら艦娘がどんどん増えていったのか…。それでまた許可を取って、遠征をしたら、資材がおかしいくらい増えた。そして入りきらなくなって主任に許可を取り、建造したらまた艦娘や、艤装が山のように増えたと…。夕張は、その資材を消費しようと、主任に許可を取って、今も次々と兵器を作っていると…。そういうことかな?」

 

「はいぃ…。」

 

吹雪や三日月は怒られると思って覚悟をしていたが…。

 

「…怒りはしない。俺を喜ばすためにしたのだろう?それで怒るのなんておかしい。…まぁ、よくやったとは言えないが。……ありがとう。」

 

「「!?」」

 

ドミナントはそう言って吹雪と三日月を撫でる。

 

「えへへ…。えへへへ…。これが欲しかったんです…。」

 

「し、司令…官……。…気持ちいいです…。」

 

二人は嬉しそうに目をつむり、喜んでいる。

 

……あぁ…癒される…。じゃなくて、主任!お前か!!

 

ドミナントは主任を見るが、そこにはいなかった。

 

…………

 

「どうしてこうなった…?」

 

ジナイーダは艦娘に周りを囲まれて身動きが取れない…。

 

……私は司令官でも、提督でもないことは伝えたよな?…ん?あれは…主任!!

 

ジナイーダは主任を発見する。

 

「すまないが通してもらおう。」

 

「えぇー!?本当に提督の居場所を知らないんですか?」

 

「さっきからそう言っているだろう。」

 

そう返して、主任のところへ向かう。

 

「主任!貴様、どういうことだ!」

 

「いや〜、なんでも許可を取っていたらこんなことになっちゃってさ〜。アハハハ。」

 

「笑って済むかよ…クソ野郎が!!」

 

「ギャハハハハハ!いーじゃん、盛り上がってきたねーー!!」

 

「……。」

 

ジナイーダはこれ以上責めても、何も変わらないと判断して、その場を去った。

 

…………

 

「気持ちいいです…。またやってください。」

 

三日月はすっかりなでなでの虜になってしまったようだ。

 

「わかった。」

 

ドミナントは手を離す。そこに…。

 

『提督を見つけましたーー!!』

 

艦娘が走ってくる。

 

「まずい…逃げなくては…。!?」

 

ドミナントは気づいた。資材に囲まれて逃げ場がないことに…。

 

「ちょ、止まって…。」

 

「はい!」

 

ドミナントが頼んだら、全員すんなりと止まった。

 

「……。今まで逃げ回っててすみませんでした…。」

 

ドミナントは、言えばわかってくれる人だとわかり、今まで逃げていたことを謝る。

 

…………

 

「それにしても、艦娘すごいたくさんいるな…。」

 

「はい。」

 

見ただけでも、100人以上はいるんじゃないだろうか…。

 

「この艤装の山…どうするんだろう…?」

 

ドミナントは、積み上がっている艤装の山を見る。倉庫にはもっと沢山ある。

 

「…他の鎮守府の皆さんにいらない艤装あげましょうか?」

 

「それもいいけど、一応予備のために持っておきたいんだよね…。」

 

「そうですか…。」

 

吹雪とドミナントは話す。そこでセラフが通りがかり…。

 

「あっ、セラフ、手伝えることはないかい?」

 

「大丈夫です。その分夕張が手伝っていますから。」

 

セラフたちは、あっという間に倉庫を広げたり、部屋を増やしたりしている。

 

「そうか。でも無理はするな。人はたくさんいる。」

 

「わかりました!」

 

15分後に全てが終わった。

 

…………

 

「倉庫、前より広くなったな。」

 

現在の倉庫は、飛行機が入るくらいの大きさだ。

 

「鎮守府も、少し大きくなったかな?」

 

部屋を作ったり、他の部屋もついでに広くしたりしている。

 

「セラフ、ありがとうな。」

 

「いえいえ。これくらいしかやることありませんし。」

 

「あっ!やることで思い出した。明日は給料日だ。…でも、大本営に呼ばれているんだよね、こんなに艦娘が1日に増えた鎮守府はないからって…。」

 

ドミナントが重々しいしく言うが…。

 

「頑張ってください…。私にはそれくらいしか言えません…。」




はい!41話終わりました。長かったなぁ…。艦娘がドドンと増えました。外国艦も少しですがいます。いや〜、英語って難しいな〜。
登場人物紹介コーナー
増えた艦娘…建造やドロップなどで大量発生した。ドミナントたちが帰ってくる少し前まで、全員で主任を全てオレンジ色にするという演習をした。結果は、少しも当たらずに艦娘全員がオレンジに…。でも、レベルは50前後まで上がった。およそ4時間。
ボス…伝説の兵士。ダンボールが大好き。
次回!第42話「VOB」お楽しみに!


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42話 VOB

はい!やってきました42話!筆者は多忙のため、まだデモ○エクスマキナをプレイしてません…。早くやりたいなぁ〜。タイトルを訳すと、ヴァンガードオーバードブーストです。背中につけるアレです。
では、あらすじに入ります。

〜あらすじ〜
遊び終わって、鎮守府に着いたら艦娘が溢れ出ていた…。理由を聞くと、ドミナントを喜ばしたい(なだなでされたい)艦娘がやったことだった。艦娘があまりにも大量に増えたため、給料日と被った日に大本営に向かわなくてはならなくなってしまった…。


「はぁ…。」

 

「む?どうかしたのか?」

 

ドミナントはあの大騒動の後、疲れを癒しに風呂へ入っていた。ジャックと主任も一緒である。

 

「いや〜…。明日、大本営に行かなくてはならなくなってさ…。待ちに待った給料日なのに…。」

 

「そうか…。大変だな。」

 

「うむ…。」

 

ドミナントとジャックが話していると…。

 

「隊長、それは災難だねぇ〜。」

 

「…お前のせいだよ…。主任……。」

 

ドミナントは力なく主任にツッコム。あのあと叱ろうとしたのだが、何も変わらないことに気づき、責めることをやめたのだ。

 

「…というより、まだやってんのかよ…。覗き…。」

 

「いや〜、なかなか面白いよ。」

 

「そう言って、毎回撃ち落とされているだろう?…まぁ、資材が余っているからいいけど…。でも、俺たちが出撃できないくらいしか資材がないことを忘れるなよ。」

 

余談だが、ドミナントたちACの体の一部が破損した場合、倉庫にある資材が消し飛ぶのだ。弾や、損傷はそれほど消費しないが…。

 

「む?何度もしているのか?」

 

「そうなんだよ…。男として言ってやってはくれないか?」

 

「いいだろう。私が言おう。」

 

……よし、ジャックが主任に喝を入れてくれる。やはり、紳士だな。

 

と、ドミナントは思っていたが…。

 

「主任、何度も同じ手だとバレる確率が高くなる。たまには違う手をしたらどうだ?」

 

「うんうん。て、違うでしょ!?」

 

ドミナントはツッコムが聞いちゃいない。

 

「はいはーい。じゃ、どうしようかな?」

 

「私の案は、覗き穴から見るのではなく天井裏から更衣室を見るのが良いだろう。」

 

「いーじゃん!面白そうだねぇ!」

 

主任とジャックが暴走し始めた。

 

「ギャハハハハハ!…でも、じっくりと裸を見ることができない。」

 

「!?そうか!私としたことが…、見落とすなんて…。…主任、お前とはいい関係になれそうだ。」

 

「へぇ〜、珍しいねぇ。俺も同じこと考えてたんだ。」

 

二人が一致団結した瞬間だった。

 

……二人が何を求めているのか、俺にはわからない。女湯を除くことによって何が得られるというのか…。だが、俺にはもう二人を止められない。…行くがいい。そして二人が為したことが何を生むのか、それを見届けるが良い…。

 

結果は言うまでもなく、ジナイーダに仲良く吹っ飛ばされた。

 

…………

翌朝

 

「俺はもう女湯を覗かん…。」

 

「ジャック…。昨日は想像以上に応えたんだな…。」

 

「ああ。もう女湯を覗かん…。」

 

……よかった…。これ以上覗き魔が増えたらどうしようかと思っていたけど、なんとかなった…。ところで、ジャックはなんで俺の尻ばかり見るんだろう…。まさか…な……。

 

ドミナントは背筋が凍る感じだった。しかし、それは大きな勘違いだった。

 

……ドミナント…お前の尻のあたりがほころびているぞ…。気づいてないのか?

 

……まだ見てくる…。…やはり、危険かもしれない…。寝込みを襲われて“ウホッ♂”みたいなことになったらマジでシャレにならない…。セラフに言ってドアに鍵をつけてもらおうかな…。

 

ドミナントがそう思っているところに…。

 

「司令官、小包が届きました。司令官、神様、ジナイーダさん、セラフさん、主任さんに一つずつです。」

 

三日月が2つ、吹雪も2つ、新しい艦の曙が1つ小包を持って入ってくる。

 

「ありがとう。みんな。」

 

ドミナントは礼を言うが…。

 

「持ってきてやったわよ。このクソ提督!」

 

「ク、クソ…!?たしかに、昨日さんざん逃げ回って悪かったけど…、そこまで言われるなんて…。」

 

ドミナントが少し落ち込む。

 

「照れ隠しですよ。だよね曙ちゃん?」

 

「ふんっ!」

 

「oh…」

 

吹雪が言うが、そっぽを向く曙…。ドミナントはそういう艦なのは知っているが、昨日逃げ回っていたため本当にそう思われていると思っている。

そこに…。

 

「指揮官に向かって“クソ”とは、教育が必要じゃないのか?ドミナント。」

 

ジャックがキツイ感じで言う。

 

「いや、そういう艦なんだよ…。許してあげて…。」

 

「…私は、バーテックスにそういう奴がいたら粛清するがな。」

 

ジャックは、一応バーテックスのリーダーである。仲間に裏切られないように粛清するのは日常茶飯事である。

 

「ところで、小包の中は何だろう?」

 

ドミナントは開けてみる。

 

「!?………これは犯罪の匂いがプンプンする…。」

 

「な、何が入っていたんですか?」

 

三日月は箱の中を見て驚いた。

 

「お金が…札束が…敷き詰まっています…。それに怪しい手紙も…。」

 

「「「……。」」」

 

その場にいた全員が声を失った…。

 

「……。手紙を…読むか…。」

 

ドミナントはおそるおそる手紙を読み上げる。

 

…………

 

拝啓、ドミナント様

 

この度は我が大日本帝国の味方となり大変ありがたく思います。我々は、あなた方のお力になれるように協力を惜しまないつもりです。どうかこれからも末永くお付き合いできるよう、よろしくお願いいたします。これはほんのささやかな気持ちです。給料は別にして振り込まれています。繰り返しますが、どうかこれからも末永くお願いします。

 

敬具、大本営一同

 

…………

 

「「「……。」」」

 

全員押し黙ってしまった。そこでドミナントが言う。

 

「うん、これは賄賂だね。大本営に呼ばれているし、返しに行こう。」

 

「そうですね…。これ、何千万あるんでしょうか…?」

 

「わかんないけど…国民の税金から来たのは分かるわ…。」

 

「お金…たくさん…なんで…?」

 

それぞれが思い思いの感想を言う。

 

「早く帰しに行きたいけど、数日かかるな…。どうしようか…。」

 

そんなことを言っていると…。

 

「提督!それならちょうど良いものが出来ました!」

 

夕張も入ってくる。

 

「夕張!?聞いていたのか!?…一体どこから…?」

 

「はい!大本営がなんちゃらって言うとこ…!?何これ!?なんでこんなにお金が!?」

 

お金の山が乗っている提督机に驚く。

 

「まぁ、いい。ところで、ちょうど良いものとは?」

 

「お金が…。!。そうでしたね。さっきセラフさんと一緒に作ったものがあります!」

 

「?俺は許可してないんだが?」

 

「主任さんからもらいました!」

 

「あっ。」

 

ドミナントは思い出した。あれから夕張のところへ行っていないことを…。兵器開発を中止させることを…。全て忘れてしまっていたのだ…。

 

「夕張、速報だ。これ以上兵器開発はしなくていい。資材はあまりすぎる方が良いことがわかった。てか、もう休め。寝てないのだろう?」

 

「…わかりました。」

 

夕張は少し残念そうになる。

 

……すまないな、夕張。でも、宝の持ち腐れは良くないし、誰かに盗まれたりしたら大変だからな。

 

そう思いながら、倉庫に行くのだった。

 

…………

倉庫

 

「……。」

 

ドミナントは目の前にあるものを見た。

 

「どうですか!これ!時速2000kmも出せるんですよ!ただ、一方しかいけないのが難点ですけど…。」

 

……うん。VOBだな。これをつけるのか…。俺の機体で大丈夫かな?てか、爆発しないよな?

 

ドミナントは心配する。

 

「あっ!もちろん、艦娘のために設計したんですが、提督も大丈夫ですよ。…不具合はないと思いますが…。」

 

夕張が最後の方は小声で言う。

 

「……。わかったこれで行こう。だが、大本営に行くんだ。電話と、手土産を用意しなくてはならない…。」

 

「わかりました!行くときは言ってください。いまセラフさんが飛行場作っていますから。」

 

……セラフ、どんだけ暇なんだよ…。

 

飛行場は30分で完成した。




はい!ついに来ましたVOB!次回は飛びます。風呂の件で少しズレました。AC世界の人たちが馬鹿やって笑い合う世界もあって良いんじゃないかと思います。
登場人物紹介コーナー
曙…力士ではない。悲しい過去があるが、ドミナントはそこまで艦これに詳しいわけではない。本当に照れ隠しである。
VOB…ヴァンガードオーバードブースト。時速2000kmの超オーバーテクノロジー。アセンブルによっては4000kmを超えることも可能だとか…。
次回!43話「心地よい空の旅」お楽しみに!


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43話 心地よい空の旅

はい!やってきました43話。いや〜…やっと艦これ要素が増えました。100話まで持ちそうです。え?100話以上いけ?あ、あははは…何を言っているんだ?
はい、ではあらすじに入ります。

あらすじ〜
前回、大本営から怪しい小包が届いた。その中身は何と敷き詰められた札束だった…。一緒に入っていた手紙を読んで賄賂だと確信。大本営に艦娘が増えた報告と賄賂を返しにVOBで向かうのだが…。


…………

大本営執務室

 

「ふぅ…。暇ですね。」

 

執務室に一人、補佐をしている女性がいた。

 

「仕事は終わってしまったし、何かやることもありませんね…。勤務時間なので、遊びに行くこともできません。何かないでしょうか…。」

 

「君は仕事が早いな。たくさんの鎮守府から報告が来て、まだ終わっていない。手伝ってもらいたいな。」

 

「それはダメです。そっちの書類は元帥殿自らがやらなければならない仕事なのですから。」

 

「まぁ、そうなんだけどね…。」

 

そんなことを話していると…。

 

プルルルル…プルルルル…

 

電話が鳴り出した。

 

「私が出ます。」

 

「助かるよ…。」

 

ガチャッ

 

「はい、こちら大本営です。」

 

『もしもし、第4佐世保鎮守府提督ドミナントですけど…。』

 

……第4佐世保鎮守府。確か噂によると最強の化け物揃いの鎮守府だとか…。そして前日、艦娘が大量に増えたから大本営に呼ばれている人ですね。

 

「はい、ドミナントさんですね。こちらに来る際に何か問題でもありましたか?」

 

……わざわざ連絡してくるということは、何か問題でもあったんでしょうか…。

 

『いえ、今からそちらに向かうことを連絡しておこうかと…。』

 

……。案外律儀な人なんですね。化け物のリーダーと聞いていたので、恐ろしい人だと思いましたけど…。

 

「わかりました。」

 

『あと、小包の件なんですが…。』

 

……小包?なんでしょうか…?

 

「小包?何ですか?それは…。」

 

元帥の方を見るが、渋い顔して何も言わない…。

 

『知らないんですか…?だとしたらこれは一体…。』

 

「な、何が入っていたんでしょうか?」

 

恐る恐る聞いてみる。

 

『お金です。』

 

「…え?」

 

『おそらく、数千万ある札束が送られてきました。』

 

「す、数千万…。どういうことですか?元帥殿?」

 

元帥を見るが、何も言わない。

 

「し、しばらくお待ちください。」

 

『ちょっと待ってください。すぐに終わります。』

 

「え?」

 

『手土産は干し芋を持っていきます。あと、お金を返しに行きますので、それでは。』

 

ガチャッ…プツン

 

電話が切られてしまった。

 

「…元帥殿、しっかりと説明してもらいますよ?」

 

「…うむ。ただし一つ言っておこう。これは必要なことだ。」

 

「必要って…。これは賄賂に等しいものですよ!」

 

「わかっている…。だが、我が国の仲間にならず、他の国の仲間になった場合、我が国が全滅するのは確定だ。…それほど恐ろしく強い者たちなのだ…。君も聞いただろう…。あそこの鎮守府近海の深海棲艦が消えたことを…。そして、鎮守府で艦娘の大量発生…。繋がると思わない方がおかしい。」

 

「はい…。それが彼らの仕業だと?」

 

「…違っては欲しいのだがな…。もし本当ならば、艦娘より何倍も強いことがわかる。しかも、深海棲艦を倒すことができ、さらに人や物も簡単に壊すことができる。それに、送られてきたデータによると資材が全く消費されていない。つまり、深海棲艦の攻撃が効かない、もしくは全て回避しているということになる。深海棲艦の攻撃は軍艦と同じくらいの速度、攻撃力を持っている。噂によるとロボットらしい。放射能や毒ガスなども効かない。もしかしたら、銃弾すら効かないかもしれない…。」

 

「そ、そんな恐ろしい兵器、この世に存在するはずがありません…。」

 

「ああ。存在するはずがないだろう。」

 

「な、ならば…」

 

「しかし、彼らは一斉に現れた。他の国の動きもなく、どこかの組織からの予告もなく一斉にだ。どこかの国の兵器なら、実験くらいはするだろう。していたとしても、自国の平和、戦争のために使う秘密兵器だろう。なのに、それをあっさりと手放す馬鹿がどこにいる?しかも、彼らは攻撃もしてこない。誰かの所属なら、我々と取引をするだろう。」

 

「…つまり、この世の者たちではないと?」

 

「ああ。だが、これは単なる私の推測だがな…。…外れてほしいものだ…。」

 

「……。」

 

……元帥殿の言う通り…。あまりにも格が違い、現代兵器では絶対に倒せない深海棲艦、私たちを倒すこともできる深海棲艦をいともたやすく倒すことができる…。つまり、現代兵器を使っていない?オーバーテクノロジー?…やはり、この世のものとは思えませんね…。

 

執務室にて、考える二人であった…。

 

…………

第4佐世保鎮守府食堂

 

「ヘックション!」

 

「どうしたの?吹雪ちゃん。風邪?」

 

「なんか、私のことが噂されたような…。」

 

「ギャハハハハ!面白いねぇ。」

 

吹雪と白雪、主任がご飯を食べている。他にも、沢山の艦娘が食べている。

 

「はぁ…。これからまた主任さんと演習ですか…もう私レベル80くらいまでいったと思うんですけど…。」

 

白雪が元気なさそうに言う。

 

「甘いねぇ、最初の4人はもう99だよ。ギャハハハ。つまり、演習卒業ってこと。」

 

「「「えぇーー!!」」」

 

食堂で艦娘たちが主任のことが気になり、聞き耳を立てていた全員が驚く。彼女らもこれから最初の4人以外全員演習だ。

 

「ど、どれだけ演習したんだろう…。」

 

「地獄ですね…。」

 

「私たちはみんなでやっているのに…それを4人だけでやっていたなんて…。」

 

それぞれが言う。演習時を思い出し、吹雪の目は死んでいる。そこに廊下から…。

 

『ふむ。大本営に行くのに手土産は買ったし、連絡もした。しかし…、誰か一緒に行ってくれる人がいないだろうか…。』

 

『すみません…私が行きたかったのですが、セラフさんのテクニックを伝授させてもらわないといけないので…。』

 

『いや、謝る必要はない。セラフのテクニックは超一流だからな…。ほしがるのもわかるし、それで役に立つものを作るのだろう?だとしたらすごくありがたいからな。』

 

『ありがとうございます!』

 

『まぁ、食堂に行って、誰か来たい人がいるか聞いてみよう。…嫌われているかもしれないから、誰も来てくれる人がいないかもしれないが…。』

 

『大丈夫です!一人くらいは来てくれる人がいるはずです!』

 

『あんなにたくさんいて一人か…。まぁ、いてくれるだけでもありがたいがな。』

 

そう言って食堂にドミナントと夕張が入ってくる。

 

「食事中すまない。誰か俺と一緒に大本営に来てくれる人はいないだろうか?どうやら、提督だけだと入れないらしいから…。」

 

ドミナントは頼む。そこに夕張が付け足す。

 

「そう!大本営へ行かなくてはならないけど、提督と二人きりの旅!心地よい空の旅!どうですか?提督と二人っきりの心地よい空の旅。」

 

夕張が言い終わったあと、後ろにいるドミナントの方へみんなに見えない角度で悪い顔をする。

 

……夕張…。悪いやつだな…。何が“心地よい空の旅”だ?時速2000kmで飛び、爆発するかもしれないのに…。

 

そんなことを考えているドミナント。しかし、艦娘たちはこう考えていた。

 

……提督と二人きりで空の旅?…夢のようだわ。

 

……これに行けば、演習しなくても良い…。しかも、二人きり…。

 

艦娘はデメリットは大本営に行く。メリットは提督と二人きりで空の旅。少し、面倒を我慢すれば高額な報酬がある。報酬が高すぎるが、疑うものなどいなかった…。“騙して悪いが”である。

 

「わ、私行きたいです。」

 

「おぉ!来てくれる人がいたのか…。嬉しいな。」

 

「私も行きたいです!」

 

「!?」

 

「私も!」

 

「俺も!」

 

「私も!」

 

どんどん声が上がっていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんなにたくさんは連れていけない。一人でいいんだ…。嬉しいけど…。」

 

ドミナントは、こんなにたくさんの艦娘が来てくれるとは思っていなかったようだ…。

 

「「「ええええーーーー!!」」」

 

みんなが声を上げる。

 

「ご、ごめん!ジャンケンで勝った人を連れて行くから許して…。」

 

そして、ジャンケン大会が始まった。

 

…………

 

「で、勝ったのは雪風だったと…。」

 

「はい!」

 

雪風が元気よく返事をする。現在、もうすでに飛行場にいる。しかし、飛行場と言っても、見える位置にあるのではなく、山の中に作られている。

 

「……。雪風、ありがとうな。」

 

「!?」

 

ドミナントが雪風を抱きしめながら涙を流す。

 

……ごめんよ…。もしかしたら爆発して死ぬかもしれないのに…。犠牲になってしまってごめんよ…。

 

ドミナントはそう考える。が、もちろん雪風はそんなこと知らされていない。

 

「し、司令官…?どうかしましたか?」

 

雪風がいきなり抱きつかれ、驚いている。

 

……しれぇに抱きしめられるなんて…。抱きしめられたのは雪風だけでしょうか?だとしたらすごく幸運なのでは?その上、一緒に空の旅をするなんて。

 

何も知らない雪風は自然と笑顔になりながらそう考える。しかし、実際死ぬかもしれない場所に一緒に犠牲になるようなものである。

 

「…よし、じゃぁ行くか…。」

 

「はい!!」

 

さっきより元気に雪風は答える。

 

…………

 

「えっと…しれぇ、なんでしょうか?これ?」

 

背中にVOBが取り付けられた。

 

「すまない…。雪風…。」

 

「なんで謝っているんですか?…しれぇ…?」

 

雪風は不安と恐怖を抱いていく…。

 

「無事に帰ってこれたら、間宮さんの餡蜜を奢るから一緒に食べよう。だから…必ず帰ってこような…。」

 

「いや、本当に何があるんですか?怖いです…。」

 

ドミナントのフラグにすごく驚いている。

 

『ハッチ、オープンします!』

 

ガガガガガガガガガガ…

 

開いたら雲ひとつない青い空が見える。

 

「いい天気だな…雪風、しっかりと見ておけ、最後になるかもしれん…。」

 

「!?し、司令官!それはどういうことですか!?」

 

雪風は顔を真っ青にしながら叫ぶ…。だが…。

 

『点火させます。』

 

ゴォォォォォォォォ!!!!

 

「しれぇ!背中のやつがすごい音たててます!本当に心地よい空の旅なんですか!?」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言わない…。

 

「雪風、飛んでいる間は話すなよ…舌噛むから…。あと、俺は君たちに会えて幸せだった。」

 

ドミナントは真剣に言った後、力無い笑顔になる。

 

「し、しれぇ…。」

 

雪風は覚悟をして、涙目になっている。

 

……まぁ、しれぇと共にあの世も…悪くないかな?

 

雪風は自然とそう考えている。

 

『足元ロック、解除!!』

 

ゴォォォォォォォォ…!ゴォォォォォォォ…。

 

一瞬にして、彼は二人は飛び去った…。




VOBこそが…人間の可能性なのかもしれん…。ギュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!…VOB速すぎません?
登場人物紹介コーナー
元帥…なんとなくやっていたらいつのまにか元帥になっていた。ドミナントのことは、推測だが別の世界の人と思っている。
雪風…幸運艦。その幸運のせいで、ジャンケンに勝ち、VOBで行くことになってしまった…。
次回!第44話「異常発生」お楽しみに!


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44話 異常発生

不穏なタイトルですが、気にしない気にしない。AMIDAの出番が…。え?妖精さん?何それ、美味しいの?……すみません。忘れてません。ただ、妖精さんの出番が、愉快な仲間たちにとられて無くなりそうです…。だが、ここで終わる妖精さんではない。実は今、とんでもないものを作っています。妖精さんの秘密です。(・ヮ・)
では、あらすじに入ります。

あらすじ〜
前回、大本営に連絡をし、手土産を用意したドミナント。しかし、どうやら大本営には、艦娘を一人連れて行かなくてはならない。ジャンケンの結果、何も知らされていない雪風がVOBで大本営に出発した…。


「キャァァァァァァァァァ!!!」

 

VOBの速度に雪風は悲鳴をあげる。

 

「雪風!舌を噛むぞ!口を閉じろ!!」

 

ちゃっかりAC化した、ドミナントが忠告する。

 

「は、はい!!」

 

時速2000km以上の速度(約マッハ2)で空を旅している。艦娘がただの人間よりはるかに強いのが実感させられる。余談だが、ただの人間がマッハを超えると大変なことになるらしい…。

 

「……。通信端末がある。その中のメールアイコンを選択して文字を打て。それで俺に連絡しろ!」

 

雪風は無言で何度も頷く。

 

「さっそく来たか。」

 

ドミナントはメールを見る。

 

『どのくらいで着きますか?』

 

「ふむ、そうだな。確か距離が約950kmだったからな…。約30分だ。」

 

『そんなにですか!?耐えられません!』

 

「耐えるんだ…。もうそろそろ慣れてくるだろう?」

 

『慣れません!』

 

「ですよね〜…。」

 

『なんとか早く着く方法ないんですか?』

 

「ないな…。でも気を紛らわすことは出来そうだ。」

 

『どうするんですか!』

 

「そうだなぁ…。好きな食べ物とかあるか?」

 

『なんで唐突に…。しれぇはなんですか?』

 

「俺は…、寿司かな?前に同僚と行った寿司屋の寿司が美味しくてな。」

 

『同僚?しれぇに同僚がいるんですか?』

 

「あ…。」

 

ドミナントはうっかりと転生する前のことを話してしまった…。

 

……まずいな…。俺が転生者だということを秘密にしていたことをすっかりと忘れていた。…だが、あいつらは俺を殺すかな?殺さないような気がする…。“やれやれ”みたいな感じでいつも通りの日常になる気がする。…そろそろ打ち明ける時かな?

 

ドミナントは考えている。

 

『……。すみません。辛い思い出でしたか?』

 

雪風が心配そうな顔をしている。

 

「いや、大丈夫だ。辛くはない。なぜなら寿司を食べただけだからな。」

 

『そうですか…。』

 

「……。やめた!この話はなかったことにしよう。では改めて、雪風の好きなものは何だ?」

 

「そうですね…私は……」

 

そんな感じで時間を潰していった。

 

…………

大本営執務室

 

「時間の計算によると、明日の昼ごろにドミナントさんが着きそうです。歓迎の準備は何時くらいにしたら良いでしょうか?」

 

「うむ。だが、今はまだ昼だぞ。考えるのが早すぎるのではないか?」

 

「いえ、しっかりと計画した後に休むのが得策だと思います。」

 

「そうか…。ならば、明日の昼ごろならば1130の方が良いだろう。」

 

「わかりました。…お茶です。」

 

「ありがとう。」

 

二人とも笑顔になる。そんなほのぼのしているところに…。

 

 

ドッゴォォォォォォォォォォン!!!

 

隕石が落ちてきたと思うくらいに中庭に何かが落ちた。もちろん、地震のように揺れて、てんやわんやの大騒ぎである。

 

「な、何が起きたんだ…!?」

 

「わ、わかりません。」

 

二人は急いで中庭に駆けつける。そこには、憲兵や、特殊部隊がすでに駆けつけて警戒態勢に入っている。

 

「な、何が落ちたんでしょうか?」

 

近くにいた憲兵に聞いてみる。

 

「わ、わかりません。煙がそろそろ晴れるので、正体が明らかになります…。」

 

煙が晴れていくにつれて、巨大な穴を目にした。その穴から手を振るようにして出ようとする人影が…。

 

『全体!狙え!』

 

特殊部隊の持つ銃のレーザーサイトが一点に集中する。

 

「だ、第4佐世保鎮守府提督、到着いたしまし…た……。」

 

その穴から出てきた雪風が一言いったあと気絶した。

 

「おーい!誰か〜、俺を出してくれ〜。」

 

穴から声が聞こえてくる。

 

「あれは…ドミナントさんの声ですね…。皆さん、警戒を解いてください…。」

 

そう言ったあと、ドミナントを穴から引き上げる作業が始まった。

 

…………

数分後、ドミナントは憲兵や特殊部隊の手によって引き上げられた。

 

「いや〜、迷惑かけてごめんねぇ。」

 

「…いえ、一応仕事なので…。」

 

「仕事人か〜、憧れるねぇ。」

 

「あ、はい…。ありがとうございます…。」

 

「ダイナミックに登場したんだけど、どうだった?」

 

「どうだった…。そ、そうですね…。かっこよかったです…。」

 

「そっか〜。」

 

ドミナントが特殊部隊の一人にちょっかいを出していた。そこに…

 

「ドミナントさんですね?少しお話があります。付いてきてください。」

 

「その声、大和さんだったんですね。どうかしたんですか?」

 

そう、電話でやり取りしていたのも大和型戦艦一番艦『大和』である。

 

「いいから来てください。」

 

「…わかりました…。」

 

少し声に怒りを感じたドミナントが素直についていく。

 

…………

応接室

 

「で、どうしてこんな登場したんですか?」

 

大和が笑顔で聞く。声に怒りを感じるのに…。

 

「は、はい…。それには訳がありまして…。」

 

…………

数分前

 

「もうすぐ大本営に着くぞ。」

 

『わかりました。』

 

ところが…。

 

『しれぇ!背中!!』

 

「背中?…!?」

 

VOBから火が出ていた。

 

「VOBに異常発生!強制パージする!!」

 

ドミナントは急いでパージした。そのすぐにパージしたVOBは爆発して痕跡が残らなかった。

 

……着いたらパラシュートを開いてパージさせて後で回収しようと思っていたが、これなら回収しなくて良さそうだな。

 

ドミナントは呑気にそう考えている。

 

「さてと、俺もブースターを…!?」

 

ドミナントは気づいた…。あのとき以来ブースターを使っていないことを…。どうやって使ったか忘れてしまったことを…。

 

……まずい。この高さじゃ落ちたら壊れるな。

 

ドミナントは危機感を覚え、必死に体を動かす。パラシュートはVOBに取り付けられていたため、ドミナントにはない。艦娘は、パージしたら落ちるため、艦娘自身にも持たせるが…。

 

……やばいやばい、本当に壊れる!

 

ドミナントは体を動かしていると…。

 

ボッ…。

 

少しブーストに反応があった。

 

……これだ!さっきの状態にしてゆっくりとやれば…。

 

ボッ…ボボッ……ウィーーーン

 

ブースターが発動した。

 

「よし!これで良い。」

 

「何がですか?」

 

隣を見たら雪風がいた…。二人は現在落ちている。

 

「……。雪風、なんでパージした?幸運艦だからか知らないけど、火が出てなかったでしょ?」

 

「しれぇがパージ?したからもう着いたのかと…。」

 

「「……。」」

 

二人は顔を見合わせる…。

 

「一応聞くが、パラシュートはあるんだろうな?」

 

「あります。ここに…て、あれ?」

 

「ないようだが…?」

 

「あ…思い出した…。VOBにパラシュートを出した後にこっちにもパラシュートが使えるようになるんでした…。」

 

「……。」

 

少し沈黙が続いたあと…。

 

「いやーーーーーー!!」

 

空からただ落下していることに気づき、叫ぶ。

 

「ま、待て!落ち着け。俺が飛べるから。」

 

そう言ってドミナントは雪風を抱っこして大本営に向かう。

 

「ほら、大丈夫だろ?」

 

「は、はい…。」

 

雪風は自身の身が安全になったことに安心して落ち着いた。しかし、新たな問題が…。

 

「し、しれぇ、今の状態…。」

 

「…今はどうでも良いだろう…。」

 

「…そ、そうですね。」

 

……命の危険があったのに私何考えているの!?

 

そんなこんなで大本営の上に着く。

 

「さて、ゆっくり降りるぞ。」

 

「はい。」

 

そう言った途端に…。

 

ビービービー……ボッ…。

 

ブースターの出力が限界に達して使用停止(チャージング)になる…。

 

「え?」

 

「?」

 

そして落ちる。

 

「いやーーーーー…」

 

「すまん。だけどこの高さだとギリギリ生きていられると思うから、俺の上にいて。多分地面につく前にブースター使えると思う。そしてそれで衝撃を吸収するから…。」

 

ドミナントは冷静に判断する。

 

「わ、わかりました。」

 

雪風は頷く。

 

「もうすぐ地面だ。…あ、ごめん。間に合わないや…。」

 

「えっ!?」

 

ドッゴォォォォォォォォォォン!!!

 

…………

 

「と、いうわけです。あ、火が出てなかったVOBも遠隔操作で破壊しました。」

 

「いえ、わかりません…。」




はい!44話ゾロ目の終わりです!もう一つのVOBはもったいないけど、世間に広まったら大変なので空中で爆発させました。跡形もありません。ちなみにこの世界の鎮守府では、パラシュートを作るのにも資材を使います。
登場人物紹介コーナー
同僚…同じ会社で働いていた。その同僚もドミナントと同じ扱いを受けていた。現在は他のホワイト会社で働いている。
ちょっかいを出された特殊部隊の一人…比較的最近入隊した新人。みんなによくちょっかいを出されたり、からかわれたりしている。みんなには秘密にしているが、彼女持ち。
大和…大本営の元帥の秘書艦。大本営に電話したら9割で彼女が出る。第4佐世保鎮守府のことを“化け物の巣窟”だと思っている。
次回!第45話「懐かしの……」お楽しみに!


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45話 懐かしの……

はい!45話!そろそろ最終回を考え始める頃ですね〜。まぁ、なんとなく想像がつくんでしょうけど…。今回は少し、ある人にとっては嬉しいお話しかもしれません。
では、あらすじに入りたいと思います。

あらすじ〜
前回、VOBに異常発生、強制パージしたドミナント。雪風が勘違いをして同じくパージしてしまった。ドミナントがブースターを使うが、途中でチャージング。仲良く大本営の中庭に落ちたのであった。


「なんで雪風さんは生きていたんですか?」

 

大和がドミナントに聞く。艦娘と言えども、聞く限りの高さでは死んでしまう。現在、大本営の病室で雪風は寝ている。

 

「地面につく直前に雪風を上に投げた。」

 

「な、なるほど…。」

 

大和は、よくわからないことに困惑しているが、とりあえず相槌を打つ。

 

「あ、忘れてました。手土産の干し芋とお金です。」

 

そう言って、手に持っていた手土産を渡す。ドミナントは、一般人にACのことを内密にしておくため、穴の中にいた時点で人の姿に戻っている。

 

「ど、どうも…。でも、話を聞くと手土産やお金を持っている様子がありませんでしたけど…。」

 

「あぁ、それは肩コンテナに入れていたからだよ。」

 

「肩コンテナ?」

 

……何でしょうか?肩コンテナって…。そんな便利な機能があるんでしょうか…?

 

大和は不審に思っている。そこに廊下から…。

 

『第2舞鶴鎮守府提督、佐藤中佐到着いたしました〜。』

 

どうやら、鶴舞鎮守府の提督が来たらしい。

 

「……。行かなくて良いんですか?」

 

ドミナントは考え込んでいる大和に聞く。

 

「あ、そうですね。行きます…。」

 

そう言って大和は廊下に出て行った。

 

……大本営も大変だなぁ。てか、やっぱり他の鎮守府にも提督がいたんだ。

 

ドミナントは呑気に思っているところに…。

 

「この部屋かな?」

 

少し可愛い感じの女性が部屋を覗いてきた。

 

「……。えっと…誰?」

 

「私、第2舞鶴鎮守府提督の佐藤中佐だよ!」

 

そう言って、空いている椅子に座る。

 

……この人が提督だったんだ…。自由な感じだな〜。でも、本当に日本人なのかな?ほのかに外国人の気がするけど…。

 

ドミナントは考える。しかし、まず先にこの質問をした。

 

「そ、そっか〜、大和さんが迎えに行かなかった?」

 

「見てないな〜。」

 

……いや、俺もそこを通ったけど、一本道だったよね?見てないはずないよね?

 

ドミナントは困惑する。

 

「で、君の名前は?」

 

「お、おう。俺の名前は…ドミナントだ。」

 

「…そうなんだ…。」

 

「あ、一応言うけど、俺自身の名前だから。」

 

「そうなんだ!」

 

さっきとは打って変わって元気よく返事をする。そこに大和が部屋に入ってくる。

 

「あっ、いました。勝手に入ってはいけないと何度も言っているじゃありませんか!」

 

「テヘペロ」

 

「“てへぺろ”じゃありません!!」

 

そんな二人を見て、ほのかに心が温まるドミナントであった。

 

「あっ、すみません。ドミナントさん。気に障りましたか…?」

 

大和が申し訳なさそうに言う。

 

「いや、そんなことはない。というより、今の感じの方が面白くて好きだな。」

 

「そうですか。」

 

大和は内心ホッとした。

 

……もし、気に障ってしまって日本の“大掃除”を始めてしまったら、私たちに対抗手段がありませんからね…。

 

そんなことを考えていた。

 

「ところで、艦娘の大量発生の理由を説明したいのだが…。」

 

「あ、そうでしたね。すみませんでした。」

 

そう言って、話をするドミナント。

 

…………

 

「え?」

 

「だから、今説明した通りです。」

 

大和は信じられないような情報に困っている。佐藤中佐は大和の隣に座って、本を読んでいた。

 

……え?深海棲艦の消えた原因はドミナントさんたちではなく、そこに所属していた、初期艦の吹雪さん、如月さん、夕張さん、三日月さんの手によるもの?短期間でどのくらい練度が上がっているんでしょうか…?

 

大和は考えても繋がらない。ついこの前まで大本営にいた吹雪であるはずが、自分と同じくらい強いことに…。

 

「あの…どうしてそんなに練度が上がっているんでしょうか…?私は、世界で一番高い82ですよ?数年かけて、やっと82になったというのに…。」

 

困惑した顔で言う。

 

「あぁ…。やっぱり、薄々感じていたけど、主任の演習普通じゃなかったんだ…。」

 

「え…?それはどういう…?」

 

「いや、実は自分たちの鎮守府では主任という愉快な仲間が、艦娘たちの演習相手になっていて…。」

 

ドミナントは演習内容を話す。

主任にペイント弾を当てないと帰れまテン。

主任のペイント弾を全て避けきる。制限時間は1時間だけど、10弾当たったら1時間増える。

演習卒業試験は、主任はペイント弾、艦娘は実弾使用の勝負。艦娘がペイント弾で一色になった場合は不合格。主任を一部でも損傷させれば合格。制限時間は5時間。(ドミナントに言われ、主任は本気の5%も出していない。)

 

「……。そんなに恐ろしい演習がありますか…?」

 

大和は震え声で言う。

 

……吹雪さん、どれだけ地獄を味わったんですか?あの化け物の一人を相手にして…。そんなこと、かの地獄で有名な第3呉鎮守府でも聞いたことありませんよ…。

 

ちなみに、その第3呉鎮守府でも数年で平均練度は75である…。第4佐世保鎮守府は数日で平均80を叩き出した地獄であることが伝わる…。

 

「ですよね…。」

 

ドミナントは困った顔をした。

 

「あっ、すみません。佐藤中佐。俺の話ばかりになってしまって…。」

 

「あっ!いいよ〜。別に〜。少し楽しそうだったからね。」

 

「楽しいわけないじゃないですか…。」

 

そんなこんなを話していた。そのうち、夕方になる。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「さて、ドミナントをそろそろ迎えに行くか。」

 

「まだ早いんじゃありませんか?」

 

「いや、早く行くに越したことはない。それに、遠いしな。」

 

「そうですね。」

 

ジナイーダはセラフと話している。

 

「それに主任さんと、艦娘の皆さんもまだ帰ってきませんしね…。」

 

「そうだな。今日の仕事も終わって暇だしな。」

 

そんなことを話している。ジャックは現在、最初の4人と将棋やチェスといった、頭を使う遊びで遊んでいる。

 

「では、VOBで行きますか?」

 

「あの機械か?面白そうだから乗ってみたかったんだ。」

 

「では行きましょう!」

 

そのあとVOBが爆発して、ドミナントと同じ運命になった。(ゆっくりと着地はした。)

 

…………

 

「なるほど、鶴舞鎮守府では自給自足を行なっているのか。」

 

「そうだよ〜。毎日新鮮な食べ物が食べられるの。」

 

「そうか…。俺も試してみるか…。」

 

ドミナントはすっかり佐藤中佐と仲良くなってしまった。大和も、しっかりと話を聞いている。そこに…。

 

『大和さん。ドミナントさんの迎えが来ました。』

 

「はい。わかりました。」

 

「では、名残惜しいですけど、そろそろ行きます。」

 

「あ、待って。私も見送る。」

 

「ありがとうございます。」

 

ドミナントが雪風を起こし、佐藤中佐がドミナントの後をついていく。そこに…。

 

「遅かったな。早くしろ。」

 

「迎えに来ました。」

 

ジナイーダは口元を緩ませ、セラフは笑顔で言う。

 

「……。よく見ると、セラフと大和さんって少し似ているな…。」

 

「確かに…。」

 

ドミナントと雪風が二人を見るが、瓜二つである。違うのは髪の色だけである。

 

「「……。」」

 

大和とセラフは顔を見合わせる。

 

「…鏡のようですね。」

 

「…不思議ですね。」

 

そんなことを言っていた。

 

「ん?そいつは誰だ?ドミナント。」

 

「あぁ、この人は佐藤中佐。第2鶴舞鎮守府の提督だよ。」

 

「よろしく!」

 

「ああ。よろし…!?」

 

ジナイーダはすごく驚いている。そして、涙が止まらなく流れている。

 

「ジ、ジナイーダ?どうした?」

 

ドミナントが言うと、提督も泣き出す…。

 

「えっ…?もしかして…ジナ…?」

 

「ああ…。私だ…シレア…。」

 

そう、あの時死んでいたと思っていたジナイーダの唯一の親友であった。

 

「なぜ…なぜこんなところにいるの…?」

 

「うん…。あの日、死んだと思ったんだけど…。いつのまにかこの世界にいて…。」

 

「え?佐藤中佐?佐藤中佐はもう5年も前にここで働いて…え?」

 

大和は困惑している。そこに…。

 

「大和さん。口を挟まないであげて…。二人は今、長年に渡って再会を果たしたんだよ…。懐かしの親友なんだよ…。」

 

ドミナントは大和にそう言う。そして、事情を話した。

 

「私が…どれほど悲しんだか…。」

 

「ごめんね…ジナ…。もう会えないと思って、泣いていたけど…。また会えるなんて…。」

 

「もう…あんな無茶はもう二度とするな…。私との約束だ…。」

 

「うん…。絶対に…絶対に守る…!」

 

二人は抱き合い、泣いた。




はい!終わりました45話!いや〜、死んだと思っていた親友と会える。そんなに嬉しいことが他にもあるだろうか…?筆者も最近一人、親友を亡くしました…。そんな中、ジナイーダと同じ境遇になり、こんなことがあったらなぁ〜。て、思いながら書きました。
登場人物紹介コーナー
シレア…ジナイーダの親友。5年前に転生した。(ドミナントたちは転移だが。)現在は第2鶴舞鎮守府の提督をしている。ジナイーダのことはひと時も忘れたことがない。
次回!第46話「手こずる相手でもないだろう」お楽しみに!


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46話 手こずる相手でもないだろう

最近、艦これ要素なくね?って筆者自身悩んでいます…。そろそろ付箋を貼りまくるときですね。
はい、あらすじに入ります。

あらすじ
前回、ドミナントは無事?に大本営に着いた。そのあと、第2鶴舞鎮守府の佐藤中佐が来た。ドミナントは報告したあと、ちょうどセラフとジナイーダが迎えにくる。そこで、佐藤中佐がジナイーダの親友、シレアだということがわかった。ジナイーダは昔の親友との再会を果たすことができたのである。


…………

 

「と、いうわけでジナイーダに明日休日をあげたいと思う。」

 

ドミナントが二人の再開を果たして、落ち着いたところで言う。

 

「む?何故だ?」

 

ジナイーダは不思議がっていた。

 

「いや、何故って…、昔の親友に会えたんだろ?今までの失われた時間存分に遊んで欲しい。」

 

「そうか…。お前も甘いやつなんだな…。その、なんだ…ありがとう。」

 

ジナイーダとドミナントがやり取りをする。

 

「と、その前に佐藤中佐、いつでも連絡できるようにジナイーダに、提督として俺に連絡先を教えてくれませんか?」

 

「うん!いいよ!」

 

シレアは元気よく連絡先を教えてくれた。

 

「ありがとうございます。佐藤中佐、それでは、ジナイーダ以外の我々は街へ行きます。それでは…。」

 

「ん?なんで私だけ?おい…ちょっと待て!おい!」

 

ジナイーダは呼びかけるが、誰も返事をしなかった…。

 

「…いい人たちだね。」

 

「…うん。私の自慢の仲間。」

 

「フフフ、仲間って。ジナに仲間が出来て嬉しい。」

 

「?何か言った?」

 

「なんでもないよ。フフフッ。」

 

親友と二人きりのジナイーダは素に戻って話をするのだった。

 

…………

 

「しれぇは優しいんですね。」

 

雪風が街の中で言う。大本営に近いせいか、人がたくさんいる。

 

「?そうか?」

 

ドミナントは分からなかった。あの行動は普通だと思っていたらしい。

 

「優しいですよ。ドミナントさんは。」

 

セラフが笑顔で言う。

 

「そういうものなのか?」

 

「そういうものなんです。」

 

「しれぇはそういう人なんですね。私の好みにピッタリですよ。」

 

「え?」

 

ドミナントは耳を疑う。

 

「だって、そうそういないですよ。優しくするのが当然だと思っている人。」

 

「たしかに、そうですね。だから私も好きになってしまったんでしょうか?」

 

「ちょ、二人とも何を言ってんの!?」

 

そんな感じに話して、笑いあっていると…。無表情の筋肉ムキムキのマッチョマンとすれ違う。

 

 

 

ゾクッ…。

 

「!?」

 

セラフは勢いよく振り返った。しかし、その男はいなかった…。

 

「?セラフ?どうした?」

 

ドミナントは不思議に思い、聞いてみる。

 

「…いえ、なんでもありません。」

 

……そんなわけないですよね。

 

セラフはそう断定して、ドミナントの元へ走る。

 

…………

ビルの上

 

「やはり、セラフだったか…。私のもとから消えたから壊れたと思っていたがな…。この世界で生き延びていたとは…。…とりあえず、アイツに連絡しておくか…。」

 

筋肉ムキムキの男はセラフを眺めていた…。

 

…………

 

「さて、鎮守府のみんなにお土産でも買っていくか。」

 

ドミナントたちは雑貨屋にいる。仲間思いのいい上司である。

 

「どれが良いと思う?セラフ、雪風」

 

ドミナントは二人に聞く。

 

「そうですね…。私は限定品などが良いと思います。」

 

「なるほど。」

 

セラフが的確な意見を言う。

 

「私は、しれぇからもらったものなら何でも気にいると思います!」

 

「それが一番困るんだよなぁ…。」

 

ドミナントは困り顔で言う。

 

「何でもかぁ…。あれはどうだ?あのクッキー。おそらく、ここ限定だろう。」

 

ドミナントが、大本営の建物の形をしたクッキーを手に取る。

 

「う〜ん…。セラフさんは何点だと思いますか?」

 

「そうですね…。30点です。」

 

「低くない!?てか、“なんでもいい”って言った雪風が不満そうにしているの!?おかしくない!?」

 

ドミナントが驚愕している。

 

「確かに、何でも良いって言いましたけど…。これは流石に…。」

 

「そうですね…。少しチョイスが…。」

 

「……。なるほど。男の俺にはわからないものだな。なんとなくだけどそんな気がする…。」

 

そして、ドミナントは二人に選ばせた。そして、選ばれたやつがドミナントが選んだやつと似ているのに“違う”と、二人に否定されて訳が分からなくなるのだった。ちなみに、二人が選んだものはクッキーではなく、チョコレートである。

 

…………

 

「それでさ、主任のやつが馬鹿やっているから言ってあげたの“笑って済むかよ…クソ野郎が!”って。」

 

「フフフフフ。」

 

二人は楽しそうに女子トーク?をしていた。そこに…。

 

「ただいま戻ったぞ。」

 

「む?ドミナントか。なんだそれは?」

 

ジナイーダは手に袋を持ったドミナントに聞く。セラフたちは、お土産を部屋に置いてきている。

 

「あぁ、これ?鎮守府のみんなのお土産だ。」

 

ドミナントが笑顔で言う。

 

「そうか。あいつらも喜ぶだろう。」

 

ジナイーダは艦娘の先生でもある。

 

「お前は生徒思いだな。いいやつだ。」

 

ドミナントが、ジナイーダを褒める。

 

「む…。ほ、褒めたって何もやらんぞ。」

 

「いや、普通の感想を述べただけなんだけどなぁ。」

 

「フフフフッ。照れ隠しだね。ジナ。」

 

「う、うるさいぞ。シレア。」

 

「フフフフフ。」

 

3人で仲良く話しているところに…。

 

ビービービービービー!!!

 

警報が鳴る。

 

「む?なんだ?」

 

「何かあったのだろうか?」

 

「…。」

 

ドミナント以外の二人は既に戦闘準備をしていた。さすがレイヴンである。

 

『大本営、近海にて深海棲艦上位が10匹と、イ級改elite10匹、ロ級改elite10匹が攻めてきました!動ける艦娘は直ちに作戦会議室に集まってください!』

 

放送が慌ただしくかかる。

 

「どうやら、緊急事態のようだな。」

 

「そうだな。」

 

「とりあえず、大和さんのところに行こう。」

 

3人は大和のところへ行く。

 

…………

作戦会議室

 

「こんにちは〜。大和さんいる?」

 

シレアが無造作に扉をあけて入る。そこには、沢山の艦娘。そして、雪風とセラフがいた。

 

「はい。何でしょう。」

 

大和は真ん中の教卓みたいなところにいた。

 

「艦娘じゃないけど、ちょうど私がいるから手伝おうかな〜って。日頃のお返しにさ。」

 

シレアが言う。

 

「でも、あなたは提督で戦えないのでは?」

 

「ううん。戦えるよ。」

 

「しかし、あなたは提督です。戦わせるわけにはいきません。」

 

「でも…。」

 

「たしかに、厳しい戦いが予想されます。しかし、ダメです。」

 

大和が頑なに断る。そこに…。

 

「なら私がいこう。私は提督でもないからな。」

 

ジナイーダが立候補した。すると…。

 

「私もやります。」

 

「私もです!」

 

セラフと雪風も立候補する。

 

「し、しかし、これは大本営のことであって…。」

 

「そんなことを言っている場合か?もうそこまで迫ってきているのだろう?」

 

「…わかりました。ただし、無茶はしないでください。あと、弾薬や損傷などは我々大本営が資材を提供します。」

 

大和は了承した。

 

「さて…、部下が行って上司が行かないのもおかしいよな。俺も行こう。」

 

「えっ!?あなたは提督なのでダメです。」

 

大和は言うが…。

 

「いいのか?俺の強さを確認できるチャンスだぞ?」

 

「む…むむむ…。はぁ…わかりました。許可をします……しかし!終わったらすぐに帰ってきてくださいね!!」

 

「いいだろう。」

 

ドミナントは了承する。そこに…。

 

「ドミナントなら大丈夫だ。これくらい、手こずる相手でもないだろう。」

 

「絶対、大丈夫!」

 

「平気です。ドミナントさんなら。」

 

3人ともドミナントを信頼しているのがわかる。

 

…………

 

『では、作戦を伝えます。ドミナントさんたちは深海棲艦上位種を二匹相手にしてください。もし、すぐに終わってしまったらイ級改eliteやロ級改eliteを相手にしてください。私たちは残りを倒します。まぁ、頑張ってください。もしかしたら、私達が助けに行けるかもしれないので。』

 

作戦指揮官である何も知らない大淀にそう言われて通信を切られてしまった。

 

「……。俺たち、舐められているな。」

 

「そうですね…。」

 

「少し腹がたつな。一瞬で終わらせる。」

 

「雪風は沈みません!」

 

4人は、闘争心を燃やす…。

 

「ミツケタァ!ヒノカタマリトナッテシズンデシマエ!」

 

「いた。空母棲姫発見。攻撃を開始する。」

 

ドミナントがそう言った途端にたくさんの艦載機で攻撃される。

 

ドォン!ドォン!!ガガガガガガガ…。

 

だが当たらない…。

 

「こんな攻撃、主任さんと比べたら遅く見えます!」

 

雪風が突っ込んでいく。

 

「エッ?」

 

空母棲姫が驚く。なぜなら、当たると思っていたはずの攻撃が当たらず、目の前に砲台を構えられていたからだ…。

 

「これで終わりです!」

 

ドッガァァァァァン!!

 

艦娘が放ったと思えないくらい重い音がした。

 

「グ…ア……ナゼ…ナゼカンタンニシズメラレル…ノ……?」

 

最後に言い残して沈んでいった…。

 

「…セラフ、正直に言え。細工したな?」

 

「…はい…。」

 

ドミナントはその空母棲姫を哀れに思うのであった…。




はい!戦うシーンを見せました。次回も、前半は戦うシーンになると思います。日常はどこへ…?まぁいいです。
登場人物紹介コーナー
大淀…大本営所属の大淀で、第4佐世保鎮守府にいる大淀とは別人。この世界には同じ艦娘がたくさんいる。
空母棲姫…恐ろしい相手。当たれば小破では済まない。しかし、一発も当てられず、瞬殺されてしまう。(第4佐世保鎮守府の艦娘では、恐怖の対象が深海棲艦ではなく、主任に変わってしまっている…。)
次回!第47話「立場が逆転」お楽しみに!


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47話 立場が逆転

はい。47話です。53話…ネタが…。でもあと15話くらいは大丈夫です。前回、書き忘れていましたが、海にいる時点でドミナントたちはAC化しています。いや〜小説って面白いな〜。筆者によって考えが違ったり、筆者の数だけ世界がある…。それぞれ良いところだらけです!しかも、それを趣味で書く。金なんていらず、好きに書き、好きにやめる。それが、俺たち筆者のやり方だったなぁ〜。
では、あらすじに入りま…。
「ジーーー…。」
…どうかしましたか?
「ジーー…我々の出番…。」
えっ…。でも、10話に一回特別な…。
「「世にあらすじのあらんことを…。世にあらすじのあらんことを…。」」
ギャーーー!逃げろぉ!遠くへ!どこか遠くへぇぇ……

あらすじ
世に平穏のあらんことを……でも、大して活躍してなさそうだなぁ。我らの大本営を脅かす深海棲艦…消えよ。大本営はピンチに陥り、それでドミナントたちが動く…(深海棲艦を)消してあげます。大淀に舐められたままだと腑に落ちない…、我らはそう仰せつかりました。あれだ同士よ…ドミナントが承った空母棲姫は…。雪風が一瞬で消さねばならぬ…さもなくば、前回と違う話になってしまう…。そろそろ攻めるのも飽いたろう…、雪風が引導を渡してやる…海の底で安らかに暮らすが良い。ドミナントたちが見ている、沈められるはずがない。すぐ近くにいるのが、その証…ふふふ。苦心して作り上げた作戦だったが、ドミナントたちのお陰でめちゃくちゃだ…、報酬は払ってもらうぞ。世に平穏のあらんことを…世に平穏のあらんことを…。


「さて、空母棲姫は沈めたし、近くに他の上位種がいるかもしれない。探そう。」

 

沈んだあと、ドミナントがすぐに指示をする。

 

「あ、言い忘れていたけど、獲物は早い者勝ちね。」

 

ドミナントが言う。すると…。

 

「そうか。ならば私はこっちの方向へ行く。」

 

「では、私はあちらの方向で…。」

 

「私はしれぇと一緒に行く。」

 

「えぇ…。」

 

と、言うことにより、雪風と組むことになったが…。

 

『こちら、駆逐イ級改eliteと駆逐ロ級改eliteをやっと轟沈させました。』

 

通信が入った。

 

……すごいな。さすが大本営の艦娘。もう10匹ずつ倒したのか…。俺たちも頑張らないとな。

 

ドミナントはそう思っているが、もちろん一匹ずつである。

 

「あっ、確か…重巡棲姫?だっけ?まぁいいや。倒そ。」

 

こちらに気づいていない重巡棲姫にCR-YWB05MV2と、JIKYOHを構える。

 

……CR-YWB05MV2…。つまり、命中率と攻撃力の両立化を目指したミサイルと、JIKYOHはガチガチに固めたライウンを削り倒すための垂直連動ミサイルだ。…削り切れるかな?

 

ドミナントはそう考えながら発射した。

 

パシュッ…ゴォォォォォ……ドッガァァァァァァァン!!

 

「!?」

 

高威力にドミナント自身も驚いた。大爆発である。

 

……あれ?もしかして、この世界とAC世界の威力を比べると、こっちの世界の方が強いのかな?

 

ドミナントはそう分析する。

 

「流石です!しれぇ!」

 

雪風が褒める。

 

「いや〜、ありがとう。」

 

ドミナントは礼を言ったあと、先へ進んだのであった…。

 

…………

 

「くっ…ここまでか……。」

 

木曾は覚悟を決めていた。目の前にはロ級改elite3匹、イ級改elite4匹、戦艦棲鬼と、駆逐棲鬼、駆逐棲姫に囲まれている。その上、木曽はみんなを逃がすため囮になり、大破状態である。

 

「アハハハハ!モウオワリ?マダマダコレカラデショウ?」

 

少しずつ距離を詰めてくる。

 

……もう…だめだ…。

 

そう木曾が諦めたところに…。

 

「そうだな、これからだな。」

 

深海棲艦たちは真の強者に見つかる。そして…。

 

ポッ…ポッ…ポッ………ドゴォォォォン!ドガァ!ドゴォォォォォン!!

 

ジナイーダの鬼パルスが炸裂!!

 

「ナッ…!?ウテェ!ウテェ!!」

 

駆逐棲姫は威力に青ざめ、必死に仲間と共に撃つ。

 

「フンッ…遅すぎる。」

 

神速のジナイーダには攻撃が当たらない。

 

ギュウィィィィィィィィン……ズガーーン!!

 

ハンドレールガンが辺りを焼き尽くす。あっという間に立場が逆転してしまった…。

 

「二、ニゲロ!ゼンカンテッタイセヨ!!」

 

「逃すものか…。」

 

ジナイーダは逃げる深海棲艦たちに容赦なくリボハンやハンドレールガンを撃つ。

 

「ギャァァァァァァ!!」

 

「グアッ……。」

 

「グァァァァァァァ!!」

 

次々と仲間が沈められる。しかし、駆逐棲姫は先頭を走っているため、なかなか攻撃が当たらない。

 

……ニゲキレル…。

 

内心笑みを浮かべて確信していた。しかし…。

 

「暇ですねぇ〜…こっち誰もいません…。」

 

……ナンダ?アノアカイヤツ?マァイイ、タイセイヲタテナオシテツギコソハカナラズ…。

 

しかし、夢は叶わない…。

 

「あっ、いました。」

 

赤い熾天使に見つかってしまった…。

 

ブゥゥゥゥゥゥン!!

 

セラフはブレードを振る。

 

……バカメ、コノキョリナラアタラナ…!?

 

光波が飛んできた。そして直撃。

 

「グァッ…ナ…ゼ……。」

 

あまりに理不尽な敗北であった。

 

…………

 

「雪風、もうどれくらい倒した?」

 

「結構倒しましたね。えっと…数は…。」

 

ドミナントは覚えていない。

 

「上位種が7匹、イ級改elite、ロ級改eliteを5匹ずつですね。」

 

「そんなに倒したんだ…。約半分じゃん…。大本営の艦娘って一体…。」

 

運が悪く敵と遭遇していなかったとしても大本営の面目丸つぶれである…。それに加えて、ジナイーダたちが上位種を3匹、イ級改eliteを4匹、ロ級改eliteを3匹倒してしまった…。合計すると、ドミナントたちは上位種を全て、イ級を9匹、ロ級を8匹倒したことになる。残りはロ級1匹である。そこに…。

 

『こちらただいまやっと見つけたロ級改eliteを倒しました。そちら生きていますか?』

 

通信が入る。流石にドミナントもカチンときた。

 

「ああ。無傷で上位種を7匹、イ級改eliteを5匹、ロ級改eliteを5匹倒した。ジナイーダはどうだ?」

 

『私たちも無傷だ。イ級?を4匹、ロ級?は3匹倒した。上位種は2匹、1匹逃げられたが、セラフが沈めてくれた。』

 

「だ、そうですよ。」

 

『……。嘘ですね。わかります。』

 

『いや、本当だ。そっちの仲間の木曽?が証言するぞ。』

 

『……。』

 

大淀は黙ってしまった。

 

「そちらはイ級1匹、ロ級2匹ですか…。」

 

『…今まで舐めた態度をとって申し訳ありませんでした…。』

 

素直に謝られた。

 

…………

大本営

 

「木曾!大丈夫だったんですか!?」

 

大淀が心配している。

 

「ああ。大丈夫じゃねーが、そっちのジナイーダ?に助けられたんだ。」

 

木曾はジナイーダを見ている。そこに大淀が…。

 

「木曾を助けていただいてありがとうございました。今まで散々舐めた態度をとって申し訳ありませんでした…。」

 

頭を下げてドミナントたちに謝る。

 

……なんだ。仲間思いのいい奴じゃないか。

 

ドミナントはそう思うが…。

 

「そうだな。仲間の命を救った相手に散々舐めた態度を取ってくれたな。この落とし前はどうつける気だ?」

 

ジナイーダに冷たく言われる。

 

「大変申し訳ありませんでした。申し訳ありませんでした!」

 

大淀は必死に謝っている。しかし、ジナイーダの気持ちもわからない訳でもない。彼女は依頼主でもないし、何よりも仲間を馬鹿にされ、侮辱されたのだ。

 

「謝って済むならこんなことは言わない。落とし前はどうつけるかって聞いているんだ。」

 

……怖い。ジナイーダが怖い。言葉を荒げずに冷静にじわじわと追い詰めていくのが怖い…。

 

「私は…。」

 

「まぁまぁ、落ち着こう。な?」

 

ドミナントが止める。

 

……いくらなんでも可哀想だ。

 

ドミナントはそう思い…。

 

「まぁ、ジナイーダ。彼女は知らなかったんだ。このくらいで許してあげてくれ。」

 

ドミナントが助け舟を出す。

 

「し、しかし…。」

 

「ジナイーダ…。」

 

ドミナントがジナイーダの目を見る。

 

「……。わかった。許そう。ただし、他の鎮守府と協力するときもそのような態度はするなよ。」

 

「!。ありがとうございます!」

 

大淀は涙目で礼を言う。

 

「これで一件落着。さ!俺たちも帰ろう。お腹空いてきたし。」

 

「そうですね!今日の晩御飯は何でしょうか?」

 

ドミナントに合わせて雪風が言う。雪風もあの空気が嫌だったみたいで、なんとか明るい雰囲気を作り出そうとしていた。

 

「ところで、帰りはどうするんですか?VOBないですし…。」

 

「「あっ…。」」

 

セラフの疑問にドミナントと雪風が曖昧な顔をする。

 

「まったく、さっき言っていたことに示しがつかないだろう…。」

 

ジナイーダが“やれやれ”とする。

 

「そっか〜…。また船か…。」

 

「「……。」」

 

ジナイーダとセラフが苦虫を噛み潰したような顔をする。二人が船や乗り物に乗ると注目が集まり、ナンパなどの問題が起きまくるからだ。

 

「あっ、それならいいものがあるよ!」

 

佐藤中佐が九州行きのプライベートチケットを渡した。

 

「これ。私そっちに用がなかったから貰っても意味がなかったんだよね。」

 

呑気に言うが、当選か多額を払わなければならないくらいのレアチケットなのがわかる。

 

「こ、これ…どうして持っているの…?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「なんかポストに手紙と一緒に入ってた。手紙の内容を簡潔に話すと、“デートしたいからこのチケットで九州まで来て”って言う内容だった。」

 

「……。そんなもの貰って良いの?」

 

「うん。しかも、今日までだし。それに、今日またポストに何か入っていると思うし。」

 

どうやら、この世界でのシレアはモテモテらしい。本人は気にしていないが…。

 

「そ、そっか〜。ありがとう。」

 

「別にいいよ〜。」

 

……その人可哀想だなぁ〜。

 

と、ドミナントが思いながら帰るのであった。




はい!47話終了です!あらすじは伝えられなくてすみませんでした。怪しい教団から逃げるのに必死でね…あはは…。キョロキョロ…。
…実はこの時、大本営は結構な大ピンチ。ドミナントたちがいなかったら陥落もあり得た。
登場人物紹介コーナー
深海棲艦たち…ジナイーダやドミナントたちによって全滅させられた。理不尽な敗北をした。
チケットをあげた人…大金持ちの坊ちゃん。来てくれると信じていたが、来なかった。眼中にないことに気がついていない。
次回!第48話「自給自足の足がかり」お楽しみに!


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中編
48話 自給自足の足がかり


はい!48です。遅れてすみません。プレイしていまして…あはは…。
では、あらすじに入りたいと思います。
ん?ダメですよ!チート使って筆者以外のあらすじを見ようとしちゃ…。待て、止まれ!!グァーーー…。





あらすじ
落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた落ちた……。


「ふぅ…。やっと帰ってきたな…。」

 

翌日の昼、自分の鎮守府に帰ってきたドミナントが言う。大本営に呼ばれてから、色々あったので懐かしく感じる。

 

「そうですね…。疲れましたね…。ジナイーダさんは今日、佐藤中佐と一緒に鶴舞のところまで出かけていますからね。荷物が…。」

 

セラフが、疲れた笑みを浮かべて話す。

 

「しれぇはなんでそんなに疲れているの?」

 

雪風が聞いてくる。ドミナントは転生する前デスクワークをして、運動していなかったからだ。

 

「雪風、これには深い訳があるんだ…。言わないけど。」

 

「そうなんですか〜。知りたいですけど。」

 

雪風とそんなことを話していた。

 

…………

 

「……。今日の秘書艦は…えっと…。ごめん、誰?」

 

ドミナントはつくづく失礼な奴である。

 

「軽巡、『多摩』です。猫じゃないにゃ。」

 

「……。いや、語尾…。」

 

「にゃ?」

 

どっからどう見ても猫みたいである。

 

「……まぁいいや。仕事しよ。」

 

「やるのにゃ。」

 

一時間後

 

「終わった。今日の仕事終わり。」

 

「!?早いにゃ…。」

 

「まぁね。」

 

ドミナントの書類仕事の出来の良さは、全国の提督でもトップを争うレベルである。

 

「さて…、じゃぁこの前教えてもらった自給自足をやってみるか。」

 

「多摩ももうすぐ終わるにゃ…。ちょっと待つにゃ。」

 

ドミナントは、佐藤中佐に教えてもらった自給自足をやってみることにした。

 

…………

鎮守府裏

 

「よし、ここを畑にしよう。裏と言っても日が当たるし。」

 

「…こんなに資材が転がっているのに?めんどくさいにゃ…。」

 

資材があちらこちらに転がっている。ここは誰も使っていない開いた場所である。

 

「じゃぁ、多摩はここでお昼寝するにゃ。終わったら起こすにゃ…。」

 

そう言って多摩が近くにあった資材の上に寝転がる。

 

「いや、手伝ってよ。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「多摩の手も借りたいって?しょうがないにゃあ。」

 

多摩が待ってましたと言わんばかりに起き上がる。

 

「……。それが言いたかっただけだろ…。」

 

「にゃ?なんのことにゃ?」

 

「いや、だから……。なんでもない。」

 

……なんだろう…。かなわないタイプだ…。

 

ドミナントがそう思っている。

 

…………

 

「よし、片付いたな。」

 

「疲れたにゃ〜…。」

 

多摩が資材の上にごろんとする。

 

「まだ終わってないけど…。まぁいいや。俺の趣味みたいなものだからな。少し付き合ってくれただけでもありがたい。多摩はそこで寝てても良いぞ。ちょうどいい感じに日が当たっているからな。」

 

「わかったにゃ〜…。」

 

そう言って多摩は眠った。

 

「……。本当に猫みたいだな。…あとでアレやってみるか…。」

 

ドミナントがいたずらの計画を立てていた…。

 

数時間後

 

「やっとできた。」

 

「…ん?終わったにゃ?」

 

多摩は目をこすりながら起き上がる。

 

「どうだ?」

 

「おー。」

 

多摩は少し驚いている。辺り一面が畑になっていたのだ。結構広い。

 

「すごいにゃ。…何を植えるにゃ?」

 

多摩が聞いてきた。

 

「そうだな…。なんかめちゃくちゃ艦娘たちの要望があったからな…。ここで解決できるものを重点的に植える。まずは…、食料だな。東エリアにピーマン、ナス、キュウリ、トマト、豆類などだ。西エリアには、芋類、人参、大根、ゴボウ、少しぬかるみがあるからレンコンなどを植える。北エリアには、かぼちゃ、メロン、スイカなどの植物を植える。南エリアには、全員一人一つ好きな植物を育てるようにしたい。…多摩はどう思う?」

 

ドミナントが聞くが…。

 

「ふぁ〜…なんでもいいにゃ。」

 

「……。」

 

あくびをしながら言われた。ドミナントは今のは流石にダメだと感じたので、作戦に移った。

 

「そうか…。そう言われてしまっては仕方がない…。どうだっ!」

 

「にゃ!?」

 

ドミナントがポケットからネコジャラシを取り出す。

 

「にゃ、にゃ、にゃ…。」

 

……フッ、やはりな。そんな気がしていた。

 

多摩はドミナントのもつネコジャラシに手を出してじゃれついていた。ドミナントは勝ち誇ったような顔をする。しかし…。

 

「にゃーーー!!」

 

「!?」

 

多摩が本気にネコジャラシに飛びかかってきたのだ。

 

「フッ、甘い!」

 

「にゃ!?」

 

しかし、ドミナントも負けていない。とっさにネコジャラシを回避させたのだ。だが多摩も必死に追う。

 

……やはり可愛いな…。艦娘ってこんなに可愛いんだな。

 

ドミナントが思っていると…。

 

「…ハッ!?思わず手が…じゃらすなってば!」

 

多摩が我に帰る。

 

「えぇ…。もう終わり?」

 

ドミナントが残念そうな顔をする。

 

「当たり前にゃ!猫じゃないにゃ!!」

 

「えぇ…。まぁいいや、畑も完成したし、みんなに植えさせるか…。」

 

ドミナントがそう言う。そこに…。

 

『ドミナント。聞こえるか。こちらに逃げ込め…。』

 

通信機からジャックの声がする。

 

「こちらドミナント。例のものは終わったか?」

 

『ああ。だが予想以上に大変な作業だ。最後にセラフの確認を経て終わる。』

 

「わかった。では、そちらに向かう。」

 

そう言って通信を切る。

 

「?どうかしたかにゃ?」

 

多摩が不思議そうに聞いてくる。

 

「ああ。もうすぐ多摩の要望に応えられそうだ。」

 

「?」

 

ドミナントはそう言ったあと、ジャックの元へと向かう。

 

…………

堤防

 

「これだ。」

 

「おおっ!」

 

多摩が声を上げる。

 

「……これはにゃに?」

 

「……なんで驚いた声をあげたんだ…?まぁいいか。これは養殖場だ。ジャックがこれを作って、今セラフに確認させてもらっている。ジャックは今頃漁業を行なっている頃だろう。」

 

セラフが急いで大きな養殖場の整備や不具合を確認している。結構大きい。

 

「にゃんでいきなり…?」

 

「……。忘れたのか?昨日目安箱に“新鮮な魚が食べたいにゃ!”って書いてある紙を見たぞ。しかも名前付きで。」

 

この鎮守府には、艦娘が増えたので目安箱を設置している。ドミナントはバレないように毎日それを見ている。

 

「おお。昨日入れたばっかりなのに…。提督は毎日見ているのかにゃ?」

 

「いや、たまたまだ。…多摩だけに…。」

 

「……。にゃ、にゃはは…。」

 

「……。ごめん、無理に笑ってくれるのはありがたいけど…。お願い、惨めになるからやめて…。」

 

そんなことを話していると…。

 

「ドミナント、約束の魚だ。」

 

ジャックが魚の塊を投げてきた。

 

「ちょ!ジャック!いつのまに!それは無理だって!ギャーーー…。」

 

バシャーーン!

 

ドミナントは魚と一緒に海に落ちた。

 

「この程度では話にもならんな。」

 

「…いにゃ、今のはどう見てもそっちが悪いにゃ…。」

 

しばらくすると…。

 

「ブクブク…ふぅ、AC化してやっと浮かぶことができた。」

 

ドミナントが浮かび上がる。

 

「あっ、生きてたにゃ。」

 

「当たり前だ。」

 

ドミナントがツッコみ、堤防へ戻る。そして、魚でいっぱいになった養殖場を見る。

 

「さて…、これで今晩は新鮮な魚だな。」

 

「提督…、ありがとう!」

 

多摩は笑顔でドミナントに言った。

 

…………

廊下

 

「ん?電じゃないか?この鎮守府に何か用か?」

 

ドミナントは電を見つけて言う。

 

「あっ、司令官さん!電です。どうか、よろしくお願いします。」

 

「え…?…ああ。なるほど、こっちの鎮守府の電か。よろしく。」

 

「よろしくなのです!」

 

ドミナントが簡易な挨拶をすませる。

 

「ところで電、みんなを集められ…。いや、なんでもない。掲示板はどこだ?」

 

ドミナントは、掲示板の場所を電に聞いた。強制的にやっては意味ないと感じたからだ。

 

「掲示板はあちらなのです。」

 

電は指をさして伝える。

 

「ありがとう電。ところで、何をしているんだ?」

 

ドミナントが興味本位で聞くと…。

 

「これから、AMIDAさんに餌をあげに行くのです。」

 

……AMIDA?

 

「電、AMIDA…って、嫌いじゃないのか?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「そんなわけないのです!あの可愛いフォルム、あの足、全てが可愛いのです!はっきり言うと食べたいくらい好きなのです!」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントは若干引く。ドミナントもAMIDAは好きだが、食べるくらい好きなわけではない。

 

……電…、ああ、あんなに可愛い電はどこに行ったの?

 

ドミナントは泣く泣くそう思うのであった…。




はい!終わりました。48話。う〜ん…笑いのネタがイマイチ…。何か笑えることとかないですかなぁ〜…。あっ。すみません。
登場人物紹介コーナー
多摩…猫じゃないにゃ。魚が大好きだにゃ。ドミナントの膝はいい寝心地にゃ。
電…イナズマ。ただし、こちらは第4佐世保鎮守府の。AMIDAと長い間いたせいで、神経がおかしくなり始めている。
次回!第49話「理想の職場」お楽しみに!


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49話 理想の職場

はい!49話です!もうすぐ半分ですね。ふふふ…最終話が待ち遠しいです。え?まだネタがあるはずだって?…まぁ、あるんですけどね…。気にしない気にしない。
では、あらすじに入りたいと思いま…。はぁ…やっぱりくるよね。そろそろ逃げよう。
タッタッタッ……。
「全機爆装!準備出来次第発艦!目標、筆者のあら…。…いないみたいね。じゃ、私がやるわ。」

あらすじ
提督さん、私の出番がないのはどう?どんな感じどんな感じ?…不貞腐れるぞ!…七面鳥?冗談じゃないわ!


ドミナントは今病院にいる。あの後すぐに電に熱を測らせた結果、38.5分の高熱だった。温度を見るなり、真夜中なのにすぐ近くの病院へ電を背負って行ったのだ。愉快な仲間たちは、病気ではなく、怪我を治す方法しか知らない。それに、どの病院も受け付けてはくれない。そのうちにどんどん電は衰弱していく。

 

『艦娘は管轄外だ。他を当たってくれ。』

 

『人間を連れてきてください。艦娘と人は違いますから。』

 

『へ〜。そうなんだ〜。で?うちは人間用の病院だけど何か用?』

 

などと言って門前払いだった。

 

……くそっ…。ボランティアやらこの近くの海域を守っているのに、なんて態度だ。覚えておくぞ…いつか復讐してやる…。

 

ドミナントが憎しみで顔を歪めていると…。

 

「司…令官さん…だめなのです…。そんなことを…思っちゃ……。」

 

「!?」

 

電が途切れ途切れに弱まった声で言う。

 

「電…。起きていたのか?」

 

「いえ…司令官さんの…負の感情…で…起きまし…た……。」

 

「……。すまない…。もう思わないから寝ていてくれ…。」

 

そうドミナントが言った後、電は素直に寝ている。

 

……まずいな…、医療の知識はないが、やばい状況なのは分かる…。早く見つけなくては…。

 

ドミナントがそう思っているところに…。

 

「もし、そこの人。困っているね。助けてあげようか?」

 

「?」

 

声をかけてきたのは、10代後半と言ったところの…性別はわからないが、動物に例えるなら猫に似ている人である。

 

「ああ。助けてほしい。…でも、助けられるとは思えない…。」

 

ドミナントが諦めかけると…。

 

「なるほど。そこの背負っているは艦娘は、どこの病院も受け付けてくれない。けど、その状態だと死んでしまう可能性がある。だから、その子を受け付けてくれる病院に行きたい…。そんなところかな?」

 

「……一体どうやってそこまでの情報を知った?」

 

ドミナントは警戒する。

 

「簡単だよ。その弱ってる艦娘と、息が切れている君を見れば大体の想像がつく。どうだろう、僕が協力してあげようか?」

 

「……。協力してほしいが…、できるのか?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「簡単。僕の計算によると、ここからこの辺りに病院がある。腕はいいのに、大通りの新しく大きな病院に人が惹かれて、潰れるかもしれない小さな病院がね。そこに行けば、人間以外でも見てくれると思う。それに、艦娘と人間の身体はほぼ似ている。受け付けない可能性はほぼないと言ってもいい。」

 

その人はそう分析する。

 

「そうか…。ありがとう。報酬はどれくらいだ?」

 

ドミナントがお金を出そうとすると…。

 

「ううん。別にお金はいらないよ。…ただ、その子が元気になってから、またここに来て。最近何日も何も食べてなくて、お腹が空いているから。」

 

「えっ!?それなら病院に行ったあと、すぐに食べさせてあげるよ。そのままだと死ぬだろう?」

 

ドミナントが言うが…。

 

「ううん。今はその子が先。早く行ってあげて。早くしないと本当に危ないから。」

 

「…わかった。必ずここに来る。約束だ。」

 

「うん。」

 

ドミナントは約束した後、すぐにその病院に行った。

 

…………

現在、病院

 

「…本当にあの人には感謝しなくては…。」

 

電は病室のベッドにぐっすり眠っている。あの人の言う通り、艦娘でも受け付けてくれた。あと少し遅ければ、本当に命を落とす状況になっていたらしい。現在は、点滴を受けてだいぶ回復している。そこにドアがノックされた。

 

コンコンッ…

 

「誰だ?」

 

『担当した医者じゃ。状態を見に来た。』

 

「わかった。どうぞ。」

 

ドミナントはドアを開ける。

 

「ふむ。だいぶよくなってきているの。」

 

年老いた医者が言う。

 

「…どうしてこんなおおごとになってしまったんですか?」

 

「うむ。それは働きすぎのせいじゃ。」

 

「えっ!?…でも、休暇はたくさんあげているはず…。」

 

「まだ話は終わっとらん。最初は寝ていれば治る風邪じゃったが、その症状を放っておいたため、風邪がこじれて悪化したのじゃ。…休暇をあげたと言ったの?お前さんは。」

 

「はい。」

 

「しっかりと休んでおったのを見たのか?」

 

「…いえ。」

 

「…話から察するに、お前さんの力になりたくて、休みの日も仕事をしておったのじゃろう…。こんなに部下思いの上司に負担をかけさせたくなかったのじゃろうの…。」

 

医者が哀愁漂う声で言う。そこに…。

 

「司…令官さん…?電はどうしたのですか?」

 

電が起きる。

 

「電…。働きすぎだ…馬鹿野郎……。」

 

ドミナントは悲しそうな声で言う…。

 

「司令官さん…ごめんなさいなのです…。」

 

電も悲しい感じで言う。

 

「カカカ…。部下思いのいい上司と、上司思いのいい部下。職場はさぞ楽しかろうの。」

 

年老いた医者が楽しそうに言う。

 

「わしもこの年になったが、そこまでいい関係の職場は見たことがないの。しっかりと休んで、体を大事にするのじゃぞ。」

 

そう言って退室しようとするが…。

 

「待ってくれ、頼みがある。」

 

「なんじゃの?」

 

「これからも艦娘が病気になるかもしれない。そうなったら、ここで診てやってください。報酬のお金は他よりも2割上乗せします。」

 

ドミナントはしっかりと言う。

 

「ふむ…。どうやら本気のようじゃな。よかろう。こっちにも利益があるし、良い条件じゃ。約束しよう。」

 

年老いた医者はそういう。

 

「じゃが、どうしてわしなんじゃ?他の病院でもお金を2割上乗せならば、断るところもなかろうに。」

 

「あなたなら信用できる。そう感じたんです。」

 

「…最近の若者は淀んだ者ばかりだと思っておったが、お前さんは違うようじゃな。良いじゃろう、気に入った。」

 

「ありがとうございます。」

 

約束を交わした。

 

…………

数日後

 

「すまない。完全に元気になるまで時間がかかってしまった…。」

 

「ううん。別にいーよ。それより、僕もうお腹ぺこぺこだよ。」

 

電の恩人に約束として、食べ物を奢りに来たドミナント。

 

「そうか。では行こう。」

 

……ふむ…。夜でよく見えないから、男か女かわからないと思っていたが…昼間でも全然わからんな…。

 

そう思いながら、ドミナントは歩くのだった。

 

…………

店[キララギ]

 

「バクバク…ムシャムシャ…。」

 

「そんなに勢いよく食べたって、食べ物は逃げないよ…。」

 

ドミナントは一瞬で何もかもを食べる恩人に言う。

 

「…いや、早く食べないとエネルギーが切れて倒れる。」

 

「ハハハ、そうか。何日も食べてないって言っていたからな。でも、美味しいのか?なんか入ってそうだぞ?」

 

ドミナントは店の名前を見ながら言う。

 

「何かって?」

 

「…言っちゃ悪いが、虫とか…。」

 

ドミナントは小声で言う。

 

「あははは。そんなん入ってたら大問題だよ。」

 

「そ、そうだよな…。」

 

しかし、ドミナントは見逃さなかった…。一瞬見えただけだが、裏で動くダンボールを怪しい感じで取引をしていたことを…。

 

…………

 

「ふ〜。食べた食べた。じゃあね。おじさん。」

 

「俺はまだ25だ。おじさんじゃない。あと、君は一体…?」

 

ドミナントが会計をして、振り向いたが、その人はとっくに外に行ってしまったらしい。

 

……まぁ、いつかまた会えるだろう。狭い世の中だし。

 

ドミナントは、そう思いながら鎮守府に帰るのだった。

 

…………

鎮守府

 

……さて、掲示板に貼った『提督は植物を育てる。付き合わないか?』の日付は今日だったな。…一人くらいは、いてほしいなぁ〜。

 

ドミナントがそう思いながら裏の畑を建物から覗こうとすると…。

 

「あっ!司令官、人がたくさん来てますよ。」

 

ドミナントが覗くのを知っていたのか、吹雪が声をかける。

 

「驚いたな。俺が覗くことをわかっていたのか?」

 

「はい!長い付き合いですから。あと、夕張ちゃんや、三日月ちゃん、如月ちゃんもいます。」

 

「提督!人がすごいです!」

 

「司令官!艦娘が全員集まっています!」

 

「司令官がモテモテで妬いちゃうわぁ。」

 

「俺の考えが読めるとは…。すごいな。」

 

ドミナントが褒めていると…。

 

「フフフ…。吹雪は甘いな。私たちに気づかないとは…。」

 

「少し特訓が必要みたいですね。」

 

「ギャハハ!…演習逆戻りかな?」

 

「この程度、気づかれんとは…。」

 

さらに愉快な仲間たちまでいた。ジナイーダは空から、セラフは土の中から、主任は草むらから、ジャックは建物の同系色になっていた。

 

「ジ、ジナイーダさんに皆さん!?き、気づかずにいてすみませんでした!だから…特訓はやめてください!死んでしまいます!」

 

……吹雪が必死に言うところを見ると、特訓は命の危険があるってことだよな?

 

ドミナントは特訓の内容を想像して身震いした。

 

「ま、まぁまぁ、たまたまだよ。たまたま。だから、特訓も演習もしなくて良いよ。」

 

ドミナントが助ける。

 

「司令官…、ありがとうございます!」

 

「提督…、私の楽園はここにあったんですね。」

 

「司令官、優しくて惚れなおしそうだわぁ。」

 

3人は歓喜の声をドミナントに言うが…。

 

「司令官…私は、まだまだ全然のようですね…。特訓します…。ですから司令官…帰ってこれたら抱きしめて良いですか…?」

 

「三日月、それはシャレにならないからマジでやめろ。特訓しなくて良いから。」

 

ドミナントは冷静に対処をする。しかし、三日月は安堵の息を漏らしつつ、お願いが聞き入れなかったことに少し悲しそうだ。

 

「さて、では植物を育てますか。」

 

ドミナントがそう言った後、皆の前にいくのだった。




はい!終わりました。次回はどんな植物を育てるか選びそうですねぇ〜。
登場人物紹介コーナー
艦娘を拒否した医者…恩知らずども。腕は普通くらいだが、艦娘を頑なに拒否する。なぜなら、艦娘が海の平和を守っているから、怪我をする人が減り、儲けが減ってしまったから。
年老いた医者…名医。小規模の病院の中では一番。しかし、その近くに大きな病院が出来たため、人が減り、潰れそうになっていた。しかし、ドミナントが大金を払ったことにより、潰れずに済んでいる。
恩人…たまたま近くにいた人。何日も食べておらず、空腹を紛らわすために歩いていた。
次回!第50話「タネを選ぼう。」


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50話 タネを選ぼう

ついに来ました50話!ここまで長かった…。日常回へ入るのにどれほどの時間がかかったか…。デモンエク○マキナが時間がなくてできない…。AC勢として許されるだろうか…?ま、気にしない気にしない。
さて、あらすじに入りたいと思います。今回は誰がいいかな?…では、ジャック・Oに任せよう。
「遅かったじゃないか…。」

あらすじ
目の前が光り、平和な世界へ来たのはいいが…、この鎮守府では気が抜けてしまう。…だが、こんな世界もありじゃないかと私は思う。さて、ドミナントが植物応募して、全員がタネを植えるのだが…。


「さて、では植物を植えようと思う。」

 

ドミナントは、整列した艦娘たちの前で言う。

 

「まず、植物の繊細さを知ってもらおうと思うが…。俺より、愉快な仲間たちか、暁型の姉妹に言ってくれ(アニメに植物を育てるシーンがあったから)。まず、タネを選ぼう。」

 

ドミナントがそう言ってタネを、転がっていた資材の上にのせる。

 

「えっと…まず、これが人参のタネ、ジャガイモ、ピーマン、カボチャ、トウモロコシ、花…など全てある。どれか選んで、話を聞いて植えてくれ。」

 

ドミナントは途中から説明が面倒に感じたのか、細かい説明をしなくなる。そして、日陰で艦娘たちを見守る。そこに…。

 

「やあ、司令官。」

 

一人の艦娘がドミナントに声をかける。

 

「……。すまない、見たことないな。名前は?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「ひび…ヴェールヌイだ。信頼できる、という意味の名なんだ。」

 

「?」

 

「……。もと響だ。」

 

「……。」

 

……。

 

「……。司令官、大丈夫か?」

 

いや、大丈夫ではない。ドミナントは複雑な表情をして固まっている。

 

……。嘘だろ…。まだ響にも会っていないのにいきなり進化したのが来ちゃった…。まず響に会って、ひとまず楽しんでからが良かった…。

 

ドミナントは後悔している。

 

「……。大丈夫だよ。一人でも…。…な、何をしているんだい?」

 

ヴェールヌイは何もないのに親指を必死に動かしているドミナントを見る。

 

「……。Bボタンを連打している…。進化させないように…。」

 

ドミナントはマジで連打しているが、元に戻るはずがない。

 

「え…。…もしかして、私のことは嫌だったの…?」

 

ヴェールヌイは悲しそうな顔をする。

 

「……。すまない。そう思ってしまったか…。結論から言うと違う。ヴェールヌイはヴェールヌイの素晴らしさや魅力がある。嫌なわけがない。ただ、響も響の魅力がある。それを見逃したのは残念だ…。」

 

ドミナントは思っていたことを全部説明した。

 

「そうだったんだ…。でも、戻ることはできない。どうだろう、名前や形が変わっても元は響。してみたかったことなどをしてみてくれ。」

 

ヴェールヌイはドミナントに言う。

 

「そうか…。じゃぁ…」

 

…………

 

「ほ、本当にやるのか?流石にこれは…恥ずかしいな…。」

 

「ああ。」

 

ドミナントはニヤニヤしながらカメラを持っている。ここは畑より少し離れて、誰にも見られていない場所である。

 

スッ

 

「おおっ!」

 

そして、建物の陰から出てきたのは水着姿…ではなく、とあるリンクスのコスプレをしたヴェールヌイだった…。

 

「よし!では言ってみよう。」

 

「ハ、ハラショォ…。」

 

「……。舐めているのか?」

 

「ご、ごめん…。」

 

いつもは温厚なドミナントだが、何故だか少し怒りを感じる。ヴェールヌイもそれを感じとる…。

 

「ハ…、ハラショオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「おおっ!!よく言った!!」

 

ドミナントは褒めるが…。

 

『なになに?』

 

『なんか聞こえた…。』

 

『今の声って、ヴェールヌイじゃ…?』

 

艦娘が覗きに来ようとしている。

 

「…すまん。ヴェールヌイ…。集まってくるぞ…。」

 

「し、司令官…。今の姿を見られたら私は…。」

 

ヴェールヌイは慌てている。

 

「…仕方がない。俺はAC化するから後ろに隠れて着替えろ。今やり過ごせたって、あっちを見てきたらここを怪しむだろう。時間の問題だ。…わかっているとは思うが、俺はそこまで男を捨てていない。振り向かんから。」

 

「……。」

 

……そりゃ、顔を真っ赤にして怒るよな。でも、バレずにやり過ごすにはこれしかないんだ…。そのコスプレは脱ぐのに時間がかかる。それに、周りのいらない装飾のせいで入り口や窓に入らないし。倉庫まで遠いし。

 

ドミナントはそう思いながら、入隅で壁になるようにAC化する。その後ろにヴェールヌイが隠れる。

 

「あっ、提督。ここにいたんですね。さっき大声が聞こえませんでした?」

 

「ふむ……。すまない、もう一度言ってくれるか?考え事をしていた。」

 

大淀が聞くが、ドミナントは時間稼ぎをする。

 

……さっきの声がこっちから聞こえたのに、聞こえないはずがありません。…ならば…。

 

「では、ヴェールヌイを見ませんでした?」

 

「ふむ……。見ていないな。向こうじゃないか?」

 

……当たりですね。

 

「提督、なぜヴェールヌイの姿がわかったんですか?」

 

大淀はいたずらな笑みを浮かべて話す。

 

……しまった…。カマかけられたな…。だが、俺の仕事は時間稼ぎだ。俺に注意を引きつけていれば問題ない。

 

「なるほど。一本取られたな。実はさっきヴェールヌイと話したんだ。そこである遊びをして、俺が大声を出した。おそらくその大声は俺だろう。」

 

ドミナントはヴェールヌイを庇う感じで話す。

 

「そうですか…。…提督にそんなことをやらせたヴェールヌイは罰を与えなければなりませんね。」

 

「「!?」」

 

ヴェールヌイだけでなく、ドミナントも驚く。艦娘たちはやる気になってしまった…。

 

「金剛型の皆さんはあちらを探してください。」

 

「了解ネー!」

 

「わかりました!」

 

「榛名、行きます!」

 

「私の計算によると…」

 

そう言って探しに行こうとしたが…。

 

「待て!俺は強制的にやったことではない。俺自らがしたことだ。」

 

「いや、違うな。」

 

「ジ、ジナイーダ…。」

 

弁解しようとしたが、ジナイーダが止めに入る。

 

「こいつは大声を出していない。声音が違う。おそらく、どこかの施設の音が風になって来たのだろう。」

 

「しかし…。」

 

「来たんだ。信じないのなら説明しよう。私の授業で。」

 

「いえ、信じます。」

 

ジナイーダの授業と聞いた途端に大淀は即答した。

 

…………

艦娘がいなくなった後

 

「で、どういうことなんだ?ドミナント。」

 

ジナイーダが聞いてきた。そこに…。

 

ツンツン…。

 

後ろから手で突かれた。

 

「わかった。説明しよう。」

 

そう言って、ドミナントは人の姿に戻る。

 

「……。なるほどな。お前のくだらない考えにヴェールヌイを付き合わせた。そして、そのせいでピンチになっていたということか。」

 

ジナイーダは分析した。

 

「ああ。…ヴェールヌイにはすまないと思っている。」

 

「ならばすぐに謝ることだな。それでは、私は行く。早く来るのだぞ。」

 

ジナイーダは親友と再会してから少し心にゆとりを持てているのがわかる。

 

「そうだな。…ヴェールヌイ、すまなか…。いつまで俺の後ろにいるんだ?早く出てこい。」

 

ドミナントは後ろで体を寄せているヴェールヌイに言う。

 

「……。そうだね。名残惜しいけど出て来なきゃね。」

 

そう言って、ドミナントの前まで行く。

 

「改めて言う。ヴェールヌイ、すまなかったな。俺のわがままのせいで。」

 

ドミナントは頭を下げる。

 

「ううん。別にいいよ。案外楽しかったし。」

 

口元を緩ませながらヴェールヌイは言う。

 

「そうか…。ところで、なんで俺に話しかけてきたんだ?」

 

「そうだったね。実は伝えに来たんだよ。」

 

「何を?」

 

「みんな司令官と一緒に、植物を植えるのを楽しみにしていたから、影でいないでみんなのところに行った方が良いよって。」

 

「…そうだったのか。それじゃ、行くか。」

 

「うん。」

 

理解した後ドミナントは皆のところに行くのだった。

 

…………

 

「はぁ、提督がいなくてつまらないです…。」

 

「私は司令官と一緒に植えることが出来ると思ったのに!」

 

「ま、そういうことがわからない唐変木だぞ。あいつは。」

 

「ジャック、このゴーヤの種はどうやって植えるの?」

 

「…名前にかけているわけじゃないよな?」

 

そんなことを思い思いに言っている。そこにドミナントが出てくる。

 

「すまない、みんな。俺も手伝おう。」

 

「あっ!提督!こっちわからないから教えてください!」

 

「俺はわからないって言ったよう…」

 

「司令官!こっちも分かりません!」

 

「だから愉快な仲間たちに…」

 

「提督!…」

 

「司令官!…」

 

「……。わかった。一人一人順番に行くから待っていてくれ。」

 

ドミナントはそう言った後、一人一人回るのだった。




う〜ん…。脳が働かない。疲れすぎかな?笑いのネタどころかACネタすら満足にできない…。当分休むかもしれません。
登場人物紹介コーナー
ヴェールヌイ…響の進化形。性能は上がるが、性格は大して変わらない。少しあの状況にときめいてしまっていた。
モブ艦娘…皆も気づいていると思うが、モブ艦娘がいます。その艦娘たちは、性格や語尾も考えずに書いています。(たまに語尾がある艦娘だったりします。)
次回!51話「妖精さんのタネ」お楽しみに!


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51話 妖精さんたちのタネ

はい!ついに51話!ネタが…。まだあるけど、100話まで持つかな?
はい、ではあらすじに入ります。

あらすじ
ドミナントは、植物を育てようとした。募集をかけ、1〜10人くらいを予想していたが、全員来た。ヴェールヌイと遊んでいたら、色々あってピンチになる。だが、それを何とか切り抜けて植物を植えるのだが…。


「ふむ…。一通り終わったか。」

 

ドミナントは沢山のタネが埋まっている畑を見る。

 

「では、これから毎日頑張って育てていこう!」

 

ドミナントは艦娘に向かって呼びかけた。

 

…………

みんなが鎮守府の中に戻ろうとした時

 

(よいしょ…よいしょ…。)

 

妖精さんが何かを運んでいるのを見かける。

 

「……。妖精さん、何を運んでいるんだ?」

 

ドミナントが言うと…。

 

(このタネを運んでいるです。)

 

何やら怪しい輝きを放つタネを見せる。

 

「……これは何のタネだ?」

 

(これはバナナのタネです。しかも特別な効果があるです!)

 

妖精さんは誇らしげに胸をそらす。

 

……バナナ、妖精…うっ、頭が…。

 

ドミナントは一瞬で連想してしまった…。

 

「……。それ、アウト。」

 

(?なぜです?)

 

「それ、そのバナナの皮で滑るとスリップするやつだろ…。タイムパラドックスが生まれてややこしくなるからやめろ…。」

 

(タイムパラドックス?何言っているです?これを食べるとすぐにキラ付けできる効果です。)

 

「…そうか。なら良い。だが…、誰の迷惑にならない広いところに植えろよ。」

 

(わかったです。)

 

ドミナントと妖精さんは約束をした。

 

…………

鎮守府娯楽室

 

「ふぅ…暇だな…。」

 

ドミナントは仕事が終わったので、娯楽室で遊んでいる。今日の海域の警備の艦娘はとっくに出発していて、人が少ない。そこに…。

 

「提督、少しよろしいでしょうか?」

 

「全然平気だけど…、確か赤城さんですよね?」

 

「はい。航空母艦『赤城』です。」

 

「やはりな、そんな気がしていた。…で、何か用か?仕事が終わって暇だから何かするなら手伝おう。」

 

「いえ、実は畑に…。」

 

「さっき植えたばかりなのにもう問題か?」

 

「問題というほど問題ではないのですが…。」

 

「?…わかった。行こう。」

 

……絶対妖精さん絡みだな…。

 

ドミナントは苦笑いをしながらいくのだった。

 

…………

 

「実は…これです。」

 

「……。」

 

赤城が指をさして示す。ドミナントが想像していたのとは別の問題だった。

 

「これ…何でしょうか…?」

 

「……。」

 

そこにいたのはB1037f M-typeだった。

ちなみにそれは緑色のへんな物体みたいなものである。

 

……何?なんで畑にこいつがいるの?攻撃してこないよな?

 

ドミナントは不思議に思い、近づくが何もしてこない。

 

「……。こいつは破壊が妥当かもしれないが…、邪魔をしないならどかして住まわせてあげよう。」

 

「えっ…。それは本当ですか?AMIDAと比べてあまり可愛くありません…。」

 

「そもそも、AMIDAが可愛く見えている時点で普通じゃないから大丈夫だよ…。」

 

ドミナントがそう言いながら畑の隅の方へ持っていく。

 

ポンッポンッポン…

 

「うわっ…なんか出た…。」

 

「……。」

 

隅の方へ置いたら何故かB103f C-typeを出してきた。

ちなみに、そっちはその子供みたいなもので小さい。

赤城はなんとも言えない状態に顔をしかめている。

 

「ははは。なんか艦載機に似てるね。ん?親の方は空母かな?」

 

「やめてください。」

 

「……そんなに睨まなくても…。」

 

ドミナントが冗談で言ったことに赤城が睨む。するとその子供が、次々と害虫を食べていくではないか。

 

「…。まぁ、悪いものじゃないのは確かだな。助かるし。」

 

「……。なんか不快です…。」

 

「そうか?でも如月の頭にはAMIDAが引っ付いているぞ?」

 

「あれは…ありです。」

 

「……。」

 

ドミナントはますます女心がわからなくなるのだった…。

 

…………

娯楽室

 

「はぁ…何もしたくないな…。」

 

畑の件はなんとかなり、娯楽室で休んでいる。

 

……あの後、目安箱を見たら『弓道場の建設』って書かれていたな。あれ、絶対に赤城だろ。セラフに知らせなきゃいけないし、まだほかの要望も溜まっているし…。

 

「はぁ…。」

 

ドミナントがため息を吐いていると…。

 

「ドミナント…。」

 

「ん?神様じゃないか。どうしたの?」

 

ドミナントはいつもより元気のない神様に話しかける。

 

「カウンセラー…疲れちゃって…。」

 

「あぁ。そう思ってみれば、そっちの話は聞いてなかったな…。どうかしたのか?」

 

「うん…。実はね、艦娘たちがどうやったらドミナントの気を引けるかよく聞いてくるの…。毎日、たくさん…。特に金剛型の一番上が…。」

 

「…そっちも大変だな…。だが、俺は気を引かせるつもりなどもとよりない。」

 

「…つまり、私の仕事を増やすってことね…。」

 

「ま、そういうことだな。」

 

「はぁ…。」

 

……どうやらマジで疲れているらしいな…。部下の疲れを和らげるのも上司の仕事か…。

 

ドミナントはそう思い、神様の頭を撫でる。

 

「…え?どうしたの…?」

 

神様は撫でられても全然反応しない。本当に疲れ切っているみたいだ…。

 

「…これでも全然反応しないとは…。仕方がない…。ここに座れ。」

 

ドミナントは、座っているところをずらして、神様に座らせる。

 

「…どうしたの?…!?」

 

ドミナントは、神様を自分に寄りかからせた。

 

「えっ?えっ?えっ。」

 

「これで少しは疲れがとれるだろう…。」

 

「…うん。」

 

神様は素直に寄りかかり、目を閉じる。

 

……。疲れたけど、なんか幸せな感じ…。

 

……ふむ。これでは何か足りない気がするな。

 

ドミナントはそう思い…。

 

「ふえっ!?」

 

「じっとしてろ。」

 

「う、うん…。」

 

神様を撫でる。

 

……なんか幸せ…。特別な感じがする…。

 

……こんな感じか?これで元気になればいいんだが…。

 

ドミナントは何も言わずに優しく撫でる。

 

…………

 

30分後、オレンジ色の夕日の光がドミナントたちを照らす。

 

「スー…スー…。」

 

「…寝たか。」

 

ドミナントは小声で言う。

 

……こんなに疲れていたんだな。電の時もそうだったが…、疲れを見抜けないのが俺のダメなところだな。精進しよう…。

 

ドミナントはそう思って立ち上がろうとしたのだが…。

 

「スー…うう…ん…。」

 

神様が少し顔をしかめている。

 

「……。」

 

「うう…。スー…スー…。」

 

ドミナントが座ると、嬉しそうな顔に戻る。

 

……本当に寝ているのか?…まぁ、そのまま放っておくわけにもいかないし、やることがあるからな…。起きているなら小っ恥ずかしいことをするが…寝ているうちにやろう。

 

ドミナントはAC化して神様をお姫様抱っこして神様の部屋に連れて行く。

 

コンコンッ

 

ドミナントはドアをノックする。

 

「…キシ?」

 

「ドミナントだ。寝ている神様を連れてきた。」

 

ガチャッ

 

AMIDAが出迎えてくれた。

 

「すまないな。あと、言葉がだんだんわかるようになってきたんだな。」

 

コクリ

 

どうやら、このAMIDAはAMIDAの中でも天才に位置するらしく、神様のいない時などよくカゴから抜け出して自由にしている(神様はこのことを知らない)。

 

「スー…えへへ…スー…。」

 

神様は抱っこされている最中ずっと笑顔で寝言も笑っていた。

 

「さて、ベッドに入らせれば俺の任務は完了だな。」

 

ドミナントは人の姿に戻って小声で言い、神様をベッドに入らせる。すると…。

 

「!?」

 

神様がドミナントの手を掴み、ベッドに入らせる。

 

「!?。起きていたのか!?」

 

「えへへ…そうだよ。あの瞬間を寝て過ごすわけないじゃん。」

 

神様はいたずらな笑みを浮かべて言う。

 

「か、神様、これ以上はやめよう。」

 

「え〜、なんで〜?私もう子供じゃないよ?どんなことをするのか知っているよ。何年も世界を見てきたんだから…。」

 

ドミナントは必死に逃げようとするが、神様は逃さないようにする。

 

「ダメだ!絶対にダメ!R-18指定は絶対にダメだ!」

 

「何…?R-18指定って?まぁいいじゃん…。少しだけだから…。」

 

……くっ、神様、本当に疲れているな。普段ならこんなこと絶対にしないのに。早く抜け出さないと…。

 

「ドミナント…。」

 

「くっ…。」

 

神様が唇を重ねようとするが…。

 

バァァン!!

 

ドアが勢いよく開かれた。

 

「ドミナント…やることをサボって女の子と二人でベッドで遊んでいるとは…感心しないな…。」

 

「ジ、ジナイーダ!?ちょうど良かった!早く助けてく…」

 

「問答無用!!」

 

「えっ?ギャァァァァァ!!」

 

ドンガラガッシャーン!!

 

ジナイーダがドミナントを窓の外へ思いっきり吹っ飛ばした。ドミナントは倉庫に落ち、鉄くずに叩きつけられた。




はぁ…3時間以上かかってこの仕上がり…。ネタ切れとはこのこと…。時間ばかりかかって満足にかけない無能筆者が!ジナイーダ!よくやった!ちなみに、ジナイーダはドアの外で血を吐いてから中に入った。
登場人物紹介コーナー
赤城…一航戦の強者。打倒主任を目指しているが、主任がまだ全然本気を出していないことを知らない。
B1037f M-type…アーマードコア3SL(サイレントライン)で出てきた生体兵器。AMIDAとは似ても似つかない。いつのまにか畑に生息していた。
B103f C-type…上の生体兵器の子供。おなじくサイレントラインに登場。なかなかうざったいが、この世界では害虫を食べている。
次回!第52話「そうだ、海に行こう」お楽しみに!


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52話 そうだ、海に行こう

そうだ、京都へ行こう的なノリのタイトルですが、気にしない気にしない。う〜ん、そろそろネタが切れそう。たまにいい案が浮かぶんですが、少ししたら忘れてしまう…。仕事をしてたら…。…新しいシリーズでも出しますか…。あっ、言い忘れていましたが、ドミナントたちは体が人間でも、強度や身体能力は変わりません。人間になると、五感がAC状態よりも上がります。しかし、人間状態だと海の上に浮かばないし、ACの武器を扱えない。
では、あらすじに入りたいと思います。筆者は疲れたので、今回は古鷹にやってもらおう。
「えっ!?私ですか?」
じゃ、どうぞ
「わ、わかりました。」

あらすじ
提督と植物を植えました。色々手取り足取り教えてくれました!えへへ…。あっ!すみません!何か畑の方で騒ぎがあったらしいけれども、私はいなかったので知りません。そして、倉庫で大きな音がしたみたいなんですが…。


「うわぁぁぁ……グハッ…。」

 

ドミナントは倉庫の天井を破り、鉄くずに叩きつけられる。

 

「イテテ…危ねー…、俺が普通の人間だったら串刺しになっていたな…。」

 

ドミナントは自分に刺さるはずだった支柱や突起物が折れているのを見てゾッとする。

 

「キャァァァァ!?」

 

「ん?なんだ?」

 

夕張が青い顔をして立っていた。

 

「提督!大丈夫ですか!?刺さっていませんか!?」

 

夕張が大慌てでドミナントに近寄る。

 

「大丈夫だ。普通の提督なら死んでいるがな…。」

 

「そ、そうですか…?よかったです…。」

 

夕張は安堵の息をもらす。

 

「でも、どうしてこんなことに?」

 

「夕張、これには深いわけがあるんだ…。どうしてこうなったかはわからないが…。」

 

「?」

 

カクカクシカジカ…

 

「というわけなんだよ…。」

 

「……。」

 

「夕張?」

 

「それは提督が悪いですね。」

 

「え…?なんで…?」

 

「知らないです!」

 

「えぇ…。」

 

夕張がそっぽ向いてしまう。

 

……お姫様抱っこなんて、ずるいです!

 

「夕張…どうして……。」

 

「知りません!」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントはトボトボ倉庫を出るのだった…。

 

…………

神様の部屋

 

「全く、あの野郎は…。」

 

「む〜。せっかくいい感じだったのに〜。」

 

神様は頬を膨らませる。

 

「……。疲れているな。目の奥を見れば疲れ切っているのがわかる。」

 

「そんなわけないよ!さっきドミナント成分を補給したもん!」

 

「ああ、疲れているな。それになんだ?ドミナント成分とは?」

 

「ドミナントだけが持っている成分。撫でられたりすると回復する。」

 

「……。毒されているな。休め。」

 

「え〜。信じてないでしょ!ドミナントに撫でられてみなよ!わかるから。」

 

「するか。さっさと休め。」

 

「む〜。」

 

そう言ってジナイーダは退室するのだった。

 

…………

提督自室

 

「全く…ついてない…。」

 

ドミナントは椅子に座って、趣味の一つである、紅茶を作っている。

 

「こんな日は、カモミールティーでも飲んで落ち着こう…。」

 

ドミナントはこの前、大本営に行った時に買った材料を取り出す。

 

「いつもは他の茶葉も入れるけど、今回は入れないでやろう…。」

 

次になれた仕草で入れていく。

 

数分後

 

「完成…。う〜ん、いい香り。だんだん落ち着いてきたぞ。」

 

ドミナントが落ち着いている矢先に…。

 

『クンクン…クンクン…紅茶のいい匂いがするネー。』

 

……oh…金剛…。紅茶好きなことを忘れていた…。だが、この至福のひと時を邪魔されるわけにはいかない。

 

ドミナントは立ち上がり、セラフに作ってもらった鍵をさりげなくかける。

 

ガチャン

 

『What?へんな音がしたデース。』

 

……だろうな。

 

ドミナントは紅茶を飲みながら思っている。

 

『て、ここは提督の自室!突入するネー!』

 

……やめろ。

 

ガチャ…ドシーン!

 

ドアから大きな音がする。

 

『Shit!鍵がかかってマース。でも、無駄デース!』

 

……いや、諦めろよ…。

 

ドシーン!ドシーン!

 

『くっ…開かないネー…。』

 

……当たり前だ。セラフに作ってもらった特注品だぞ。そこらの鍵とは一味も二味も違う。

 

『提督ー!開けるデース!』

 

……居留守を使うか…。

 

『……?いないですカ?」

 

……俺はいない。

 

『紅茶の匂いがしたはずデスガ…。』

 

……匂いか。消臭剤でも今度買ってこよう。

 

『う〜ん…おかしいデース…。』

 

そういいながら金剛はどこか歩いて行った。

 

……ふむ。行ったみたいだな。危機は去った。ゆっくり楽しもう。

 

数分後

 

……ふぅ、落ち着いた。…でも、金剛がまだうろついているかもしれない。会った場合は面倒なことになる。俺は面倒が嫌いなんだ。…もう少し自室に居よう。

 

ドミナントはそう思って椅子に座り、夕日を眺めていると…。

 

「ヘーイ!提督ー。やっぱりいたネー。」

 

「金剛!?なぜここに!?」

 

ドミナントは驚いた。なぜなら“窓の外からこんにちはー”だったからだ。

 

「ど、どうやって…?ここ5階だぞ…。」

 

「よじ登ってきたネー。ところで提督、紅茶の匂いがするヨ!」

 

金剛は窓から入り、あたりの匂いを嗅ぐ。

 

「あ、あぁ。実は紅茶を作って飲んでいたんだ…。」

 

「Really?私も飲んでみたいデース!」

 

「お、おう。」

 

ドミナントは金剛にもう一つの椅子に座らせる。そして、紅茶を淹れる。

 

……これでまずいなんて言われたらどうしよう…。

 

ドミナントは不安を募らせながら出す。

 

「どうぞ。」

 

「クンクン…やっぱり、この匂いネー。いい匂いがするヨ!落ち着くネー。」

 

「ありがとう。」

 

素直に感想を述べる金剛に礼を言う。

 

「ゴク…。Wow!congratulations!美味しいデース!」

 

「よかった…。」

 

ドミナントはおいしいと言って褒めてもらって安心している。

 

「ところで提督ー。紅茶が好きなら今度私たちとTea timeするネー!」

 

金剛が笑顔で誘ってくる。

 

……冗談だよね〜。ならばこう返そう。

 

「ありがとう金剛。時間がある時に参加させてもらおうかな。」

 

ドミナントは半分笑いながら言う。

 

「約束デース!Timeは、明後日の午後3時ネー!」

 

ドミナントは金剛の顔を見る。真面目な顔をしている。

 

……もしかして、マジ?

 

「金剛、それ…冗談?」

 

「私はいつでも本気ネー。」

 

金剛は笑顔で言う。

 

「そ、そっか〜。」

 

……あっぶね〜。冗談だと思って行かないところだった…。ここまで言っといて“冗談だと思っていました”なんて言ったらガッカリするだろうなぁ…。…俺も男だ。しっかりと約束は守ろう。

 

ドミナントはそう思った。そして、金剛が紅茶の礼を言って、ドアから帰ろうとすると…。

 

「あ、提督ー、忘れていたネー。」

 

「何がだ?って、おわー!?」

 

金剛が飛びついてきた。

 

「提督ー。好きデース。」

 

「……。」

 

……ああ、確か金剛は提督LOVE勢の中でも特にだったなぁ…。

 

ドミナントは微妙な顔をしながら思っている。そして、まじめに考える。

 

……だが、俺はそんな関係にはならん!…でも、正直こんなに可愛い子たちがいる鎮守府だ。中破などして服がヤバイ状態のところもある…。一応俺も男で、女性が好きだ。…認めたくはないが、狼になるかもしれない時もある…。ハーレムは望んでいないにしても、求められたらどうするんだろう…?神様にも好意を伝えられているし、吹雪にも伝えられている。如月にもセラフにも雪風にも…。三日月は、俺の私服を嗅いでいるあたり好意があるのかもしれんが…。順番を選んで一人に絞る?冗談じゃない。みんな頑張っているし、俺のために尽くしている。正直選びたくないのが現実だ。でもそれだと必然的にハーレムになる…。だが、あんなことをさせないのがジナイーダ。ジナイーダには本当に感謝している。俺にできないことをやり遂げるんだもの。少し手が荒いけど。正直、愉快な仲間たちの方が俺よりも提督に向いていると思う。だが俺は?俺は指揮官として全然向いていなくて、作戦や建設などもうまくできず、大胆な行動もできず、強くもないし、深海棲艦とも戦えない。艦娘を一人選べないヘタレ。そんな俺が指揮するなんて間違っている。誰かに交代してもらうべきだな。

 

ドミナントがそう考えた途端…。

 

「提督、そんなことないデース。」

 

金剛が抱きしめたまま優しく話す。

 

「?金剛、いきなりどうした?」

 

ドミナントはいきなり言う金剛に聞くが、金剛は無視する。

 

「提督は、優しくて真面目デース。私たち艦娘のことをよく考えていて、要望を叶えてくれマース。こんなに私たちの要望を叶えてくれる鎮守府はほかにないデース。私たちは提督の良さをわかっていマース。確かに、優柔不断は思うことはありますガ、それも提督の良さの一つなんだと思いマース。」

 

金剛がドミナントに語りかける。

 

「…金…剛…。なぜ…俺の…思っている…ことを…?」

 

ドミナントは涙声になっていた。こんなに自分を受け入れてくれる人が今までいなかったからだ。両親にでさえ…。

 

「提督の思っていることならなんでもわかりマース。」

 

金剛は優しい笑顔で言う。

 

「ありがとう、金剛…。だが、部下に慰められる上司とはみっともないな…。」

 

「そんなことないデース。私は提督のことをもっと知りたいデース。ありのままの提督を見たいデース。」

 

金剛は優しく言う。

 

「…金剛…本当にありがとう!」

 

ドミナントは久々の本当の笑顔で言った。

 

「て、提督…、その笑顔デース!その笑顔を振りまくデース!」

 

金剛は顔を赤くしながら言う。

 

「な、何がだ?」

 

「あぁ…普段の顔に戻っちゃNO!」

 

「えぇ…。」

 

そして笑い合う二人だった。

 

…………

提督自室前

 

ドミナントたちが笑いあっているのが聞こえる。

 

「…フッ。どうやら、なんとかなったみたいだな。」

 

ジナイーダはドアノブから手を離して呟く。

 

……あんなことになったら入ろうと思っていたが、成長したんだな。その笑顔とやらも見てみたい気がするが、いつか私の前でもするだろう。いや、させてみせるさ。

 

ジナイーダはご機嫌に歩いて行った。

 

…………

 

「そうだ、海に行こう。」

 

ドミナントはベッドで突然言い出した。




はい!弾切れ!ギャハハ!…最近主任の出番が少ない…。ドミナントは、これまで両親に褒められたことはほとんどありません。両親は優秀な人でした。しかし、ドミナントはその両親に否定も肯定もされずに生きてきました…。だから、全てを受け入れてくれる金剛に本当の笑顔をしました。
登場人物紹介コーナー
カモミールティー…リラックス効果のある紅茶。ドミナントが最初に作った紅茶でもある。
金剛…提督LOVE勢の中でも上位に入る存在。レベルは90超え。苦しいこともドミナントのことを考えて乗り越えている。明るく、人に懐くタイプ
次回!第53話「深夜アニメ」お楽しみに!


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53話 深夜アニメ

すみません!遅くなったあげく、タイトル変更しました…。いや〜…1000字くらいで終わると思ったんですが…。
はい、ではあらすじに入りたいと思います。今日は、雪風頼む。
「なんか、あらすじ私たちに変更になってません?」
まぁ、気にしない気にしない。
「…わかりました!」

あらすじ
しれぇがなんか酷い目にあって、自室にこもっちゃいました…。そこに金剛さんが来て、何か騒いでいましたが数分後にどこか行きました。そのあと、自室の中で何かあったみたいです。途中からジナイーダさんが部屋の前で立っていましたけど…。


「そうだ、海に行こう。」

 

ドミナントは夜中、突然ベッドで言うのだった。

 

…………

数時間前 提督自室

 

ドミナントは夕食を食べ終わり、風呂などの睡眠の準備をする。

 

……さて、寝る準備は整えた。今日は確かアレがやる日だったな。

 

アレとは、ドミナントの趣味の一つであるアニメ鑑賞のアニメである。

 

……しかし、時間帯が深夜のため消灯時間を過ぎている。提督本人がその規則を破ってしまっては示しがつかん。どうしたものか…。

 

ドミナントは一瞬考えたあと…。

 

……まぁ、いつも平気でやっているし、バレてないから平気だろう。

 

ドミナントは気楽に計画を立てるのだった。

 

…………

西棟 艦娘寮の一室

 

「今日、提督が娯楽室へ向かう曜日だよ。」

 

「ほう、そうなのか?ならばまた今日もこっそり司令官観察か?」

 

「当たり前じゃん!ボクたちはまだ司令官と一言も話せてないんだよ!」

 

「あらぁ。そうだったかしら?この前植物を植える時話してなかったかしらぁ?」

 

「あ、あれは話したとは言わないよ。それに、如月ちゃんはよく司令官と話してるじゃん。」

 

セラフが作ってくれた5人で一室の広い部屋で話す集団。

 

「それに…あの時は書かれてなかったし…。」

 

メタな発言を小声で言ったため、誰にも聞こえていない。

 

「というより、司令官を夜観察する時っていつも一人欠けるな。」

 

「まぁ、一人寝ちゃっているからね…。」

 

「スー…スー…。」

 

一人静かに寝息を立てる艦娘がいる。

 

「まぁ…規則を守るのはいいことだけどな…。」

 

「…まぁね。」

 

「…さてと、時間だよ。そろそろ行こう?ここは西棟だから時間かかるし。」

 

そう言って、集団は娯楽室へ向かう。

 

…………

廊下

 

……さてと…。艦娘や愉快な仲間たちは寝ているころだ。静かに行かないとな。

 

ドミナントは器用に足音を立てずに進む。

 

……ふむ…やはり簡単すぎるな。…まぁいいか。

 

ドミナントは進んで行き、あっという間に娯楽室に到着する。

 

……深夜アニメはアレなシーンとかがたまにあるからな…。録画して誰かに見られたら、ただでさえ低い俺の評価がさらに落ちる…。それだけは阻止しなければならないし…。

 

ドミナントはそう思いながらテレビをつける。

 

……ここでワンステップ。つけた途端に爆音だと終わるからな。起動最中に音量を下げる。タイミングがズレると、そのままの音量になってしまうからな…。おっ、このチャンネルだ。OPは終わってしまったか…。

 

そしてドミナントはアニメを見るのだった。

 

…………

 

「やっぱり娯楽室から音が聞こえる。提督がいるんだ。」

 

「本当?でも、確かに薄明るいね。」

 

「早く行こう。司令官の独り言を聞き逃すぞ。」

 

「あらあら、必死ねぇ。」

 

集団は小声で話しをしながら娯楽室を覗く。

 

『面倒なやつだ…。ここで消えろ!』

 

『ぐわー!』

 

「ふむ…。こう攻撃するか…。新しい、惹かれるな…。」

 

ドミナントは独り言を小声で言う。

 

『お前の本当の父親はこの私だ!』

 

『ナニィ!?』

 

「この声優…、いつも棒読みだな…。なんで出来んかねぇそれが。」

 

ドミナントは一人呟く。

 

「…やっぱり、昼間見る提督とは一味違うね。」

 

「少し荒いわねぇ。」

 

「ボクは、どっちも好きだなぁ。」

 

「しっ!少し声が大きいぞ。」

 

4人はドミナントから少し遠く、小声で思い思いに言う。

 

「誰だっ!」

 

ドミナントは後ろを振り向く。

 

「……。気のせいか?」

 

ドミナントは再びテレビの方を向く。

 

「ふぅ。危なかった。」

 

「なんとかなったわぁ。」

 

4人はとっさに、近くにあった椅子やソファの後ろに隠れた。そこに…。

 

「みんなどこぉ〜?」

 

枕を持って目をこすりながら、寝ていた一人が娯楽室に入ってくる。

 

「ん?誰だ!?」

 

ドミナントはテレビを消し、部屋を真っ暗にして相手に問う。

 

「あたし、文月だよ。」

 

「文月?確か…、世に文月のあらんことを…。だっけ?」

 

ドミナントは部屋を明るくする。と言っても、他の人にバレないため薄暗い感じの明るさだが。

 

「どうしたんだ?」

 

「司令官?水を飲みたくて起きたらみんないなくて…。」

 

「何!?本当か!?」

 

「うん…。」

 

「ならば鎮守府全体放送で呼びかけなくては…。それに、他の艦娘たちにも協力してもらって…。愉快な仲間たちが連絡してこないということは、脱走していないと思うが…、鎮守府にいなかった場合は、近くの町の市役所にも連絡して、大捜索しなければ。大本営にも直接連絡を…。」

 

ドミナントが頭の中で算段を立てている。ちなみに、この鎮守府に憲兵はいない。不法侵入したり、脱走した場合は、愉快な仲間たちがすぐに反応して駆けつける。もちろん全員憲兵より強いから、侵入者はすぐに捕まる。そのあと主任にお仕置きされてから警察へ突き出される。

 

「ま、待って!いる!いるから…。」

 

4人が出てくる。

 

「む?いたのか。よかった。…て、いつからいた!?…てか、睦月と如月以外名前わかんないんだけど…。…ごめん。」

 

ドミナントは言う。

 

「およ?提督が私の名前を覚えて…。いひひ…。」

 

「なんで睦月ちゃんだけ!?ボクは皐月だよっ。」

 

「長月だ。いつからというと、ついさっきだ。」

 

3人は簡単な自己紹介をする。

 

「なるほど…。さっきの声はお前たちか。てか、なんでいたの?」

 

「司令官が何を見ているのか気になってぇ。」

 

「そうか。…見るか?」

 

ドミナントは電気を消してテレビをつける。

 

「えっ?いいんですか?」

 

「ああ。そのかわり、これは俺とお前たちだけの秘密だ。」

 

「秘密…。やった!司令官だけとの秘密が持てた!」

 

「お、おう。そんなに喜ぶことなのか…?」

 

ドミナントはそう言いながらみんなとテレビを見る。しばらくすると…。

 

『ぐわぁぁ!この俺が…貴様ごときに…。』

 

『ヘヘーン!お前のやることなんてお見通しだ!』

 

『くそぉ…。』

 

そう言って敵の集団が倒れた。すると…。

 

「あらあら、敵さんやられちゃったわねぇ。」

 

「なんで主人公はあんなに攻撃を避けられるの?」

 

「敵の攻撃、あそこはあの支柱を壊すべきだ。そうすれば有利になったはずだ。」

 

3人が言ったあと、文月がとんでもないことをいう。

 

「役立たずのクズが!あいつの邪魔をするもの皆死ねばいい!」

 

「……。」

 

ドミナントは驚愕した。

 

……文月は言葉の落差が激しいな。でもやっぱり、文月は何を言っても癒しに聞こえ…聞こえ…。うん、聞こえないな。注意しよう。

 

ドミナントはそう思い…。

 

「文月…、今の言葉は使っちゃダメだよ。」

 

「えぇ〜。いいじゃないですかぁ〜。」

 

「いや、でも…。」

 

「ダメですかぁ〜?」

 

甘えた声で言う。

 

「う〜ん…。まぁいいか。」

 

こうやってダメ提督が増えるのである。しかし数分後…。

 

「クソ敵が!ブッ殺してやる!!」

 

「文月、さっき言った言葉は取り消す。禁止。」

 

「えぇ〜。でも…」

 

「ダメ。」

 

「けれど…」

 

「文月ちゃん!」

 

如月が突然声を上げる。

 

「ど、どうしたんだい?如月ちゃん、いきなり…。」

 

皐月が言うが…。

 

「文月ちゃん、司令官を怒らしちゃダメよ。」

 

「でも…。」

 

「ダメよ。」

 

「う〜ん…。わかった…。」

 

文月は了承してくれた。

 

……よかったぁ…。じゃないと、息を吸うのが難しくなるくらいきつい状況になっちゃうから…。

 

如月は今でも鮮明に覚えている。ドミナントが吹雪に怒りかけたことを…。

 

…………

数分後

 

「さて、終わったな。それじゃぁ、各自自室へ戻ろう。誰にもバレずに。」

 

「「「はぁ〜い。」」」

 

アニメが終わり、ドミナントが呼びかける。そして、全員部屋に戻った。

 

…………

提督自室

 

……ふぅ…。今回の話は戦闘シーンが多かったな。

 

ドミナントはベッドに入りながら今回のアニメを振り返る。

 

……主人公、海に入っていたな…。これだから海に入ろうとする人が増えるんだなぁ…。

 

そう、忘れてはいけない。世界は今、深海棲艦というものが海を支配しているのだ。深海棲艦の狙いは人間そのものになっているので、海に入ろうとする輩は真っ先に攻撃されるのだ。

 

……海か…、社畜時代の俺には無縁だったなぁ…。両親にも連れてってもらってなかったし…。…そうだ!艦娘がいるのなら平気なのでは?

 

ドミナントはそう思った。

 

「そうだ、海に行こう。」

 

そして、全てはここから始まった…。




はい!普通にタイトルミスしました!ちなみに、この鎮守府は東棟と西棟があります。東棟は、提督自室、会議室、娯楽室、事務室などの提督や、来客用の施設があります。西棟は、艦娘寮、教室などの艦娘用の施設があります。
登場人物紹介コーナー
睦月…元気いっぱい、そして悪戯っぽいところがある。レベルは95以上。ドミナントに名前を知られていて嬉しく感じている。
皐月…ボクっ娘。すごい元気いっぱい。しかし、主任にしごかれた後は、しおしおになってしまう。もっとドミナントと話したいと思っている。どこかの世界だと、筋肉に勝るものなど…この世にあってはならないだとか…。
長月…豪胆な性格。真っ先に敵艦隊に突っ込もうとするが、主任や、愉快な仲間たちには絶対にしない。ドミナントのことが気になっている。どこかの世界だと霰こそが全てだとか…。
文月…世に文月のあらんことを…。無邪気で幼い。ちまたでは天使だとか…。この世界では、言葉の落差がおかしいくらい激しい。ドミナントの力になりたいと思っているが、どちらかというと甘えたい方である。
アニメの主人公…生まれた時には両親がおらず、勇者として魔王を倒そうとしている。
アニメの敵…魔王国兵長。ボウガンや槍などを使うが、主人公に避けられる。最後はスマッシュブレードによって真っ二つにされた。
次回!第54話「海の中」お楽しみに!


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54話 海の中

ネタが切れそう…。最終話も含めてあと46話…。いけるか?
はい、ではあらすじに入りたいと思います。今回は…多摩いくか。
「えぇ〜…めんどくさいにゃ〜…。」
いや、そんなこと言わずに…。
「しょうがないにゃ〜…。」
ありがとう!では、どうぞ。

あらすじ
多摩は寝ていたからわかんないにゃ。でも、娯楽室の方が騒がしかったのは気のせいかにゃ?


「と、言うわけで海に行きたいと思います。」

 

「いや、全然わからん。」

 

ドミナントが何の前触れもなくいきなり言ったので、本日の秘書艦である長門が困っている。

 

「海だと?現在深海棲艦がいることによって、誰も入れない状態だ。それに、堤防があるだろう?」

 

長門が厳しく言う。

 

「いいじゃないか〜。堤防だと入れないし。」

 

「ダメだ。」

 

……ちぇっ。さすが長門、厳しいや。だが、こう言えばどう反応するかな?…嫌われているかもしれないけど、一応言うか…。

 

ドミナントは考えて…。

 

「はぁ、海に行って長門の水着姿みたいなー。」

 

「な、何を言っている!?…だが…。くっ…、卑怯だぞ…。」

 

長門は赤くなりながら言う。

 

……ふふふ。普通なら“キモッ。”て言われるはずだが、動揺しているな。もう一押しか?

 

ドミナントは心の中で悪い顔をする。

 

「いや〜、長門と一緒に海に行って、遊びたいなぁ〜。」

 

ドミナントは残念そうに言う。

 

「な…な…。」

 

……て、提督と一緒に海に行って遊ぶだと…?だが、そんなの規則違反だ。絶対にできない。…しかし…。

 

長門は頭の中で、仕事と欲望を天秤にかけていた。

 

……ふむ。なかなか硬いな。こうなったら一か八かの賭けだ。

 

「それに、二人きりだったら誰にも邪魔されないぞ?」

 

ドミナントが耳元で囁く。

 

「!?」

 

ガシャーン!!

 

長門の天秤が壊れた瞬間だった。

 

…………

浜辺

 

「よし!海に来た!」

 

「お、おい。待ってくれ。」

 

長門は急いで来る。幸い、ドミナントたちはこっそり鎮守府を抜け出し、誰にも見つからずに鎮守府の土地の浜辺に着く。

 

「ん?いつのまに水着姿に?」

 

「ついさっきだ。」

 

「……。岩陰か?」

 

「……。そうだ。」

 

「……。まぁいいや。すごく似合っているぞ。長門。」

 

「む、むぅ。そうか。」

 

ドミナントが真面目に言うので、戸惑っている。

 

……ふむ。ワンダフルボディ。そして可愛い。

 

そう思った途端…。

 

ヒューーー……ドガァァァン!!

 

「ぐはぁぁぁ!ぐわぁぁぁ!」

 

空から艤装が落ちてきて、ドミナントの頭に直撃する。

 

「だ、大丈夫か!?」

 

長門は、痛みに地面をのたうちまわっているドミナントに駆け寄る。ちなみに、普通の人だったら頭蓋骨陥没によって死んでいる。

 

「すみません。手入れをしていたらそっちに飛んで行ってしまいました。」

 

セラフが笑顔で言う。

 

「セ、セラフ…。俺を…殺す気か…?」

 

「いえ、そんなつもりはありません。」

 

ドミナントは頭を抑えながら言い、セラフが笑顔で返す。

 

「セ、セラフ。まじめに提督が死んでしまうから気をつけてくれ。」

 

長門が慌てて言う。

 

「わかりました。ところで、二人は仕事中なのにここで何しているんですか?」

 

「そ、それは…その……。」

 

長門が顔を伏せる。

 

「海底調査だ。長門は俺のわがままに付き合ってくれていたんだ。」

 

ドミナントが助ける。

 

「…本当ですか?」

 

「ああ。本当だ。長門は俺が調査したものを記録する係だ。」

 

「…本当ですか?長門さん。」

 

セラフは長門を見る。

 

「あ、ああ。本当だ。」

 

「……。そうですか。ならばあとでその調査結果を見せてくださいね。」

 

「「!?」」

 

二人は驚く。

 

「ど、どうして…。」

 

「当たり前です。調査したならば結果を出さなくてはなりません。それに、私も興味があるからです。」

 

セラフがキッパリと言う。

 

「む…。わかった。」

 

ドミナントは頷く。

 

「私はまだ手入れがあるので、それでは。」

 

そう言った後、セラフは戻って行った。

 

「……。すまない長門…。海底調査になってしまった…。」

 

「いや、いい。それよりも、仕事をサボっていたことが認識されないのなら、結果的に良かったのかもしれん。」

 

「…本当にすまないな…。」

 

そして、海底調査に移ったのだった。

 

…………

 

「シュノーケルは準備したし、酸素ボンベも持った。AC化だと、潜れないからな。」

 

ドミナントは、潜る準備をしている。

 

「ま、待ってくれ。私も行く。」

 

長門も急いで準備している。

 

「出来たぞ。」

 

……。ダイバー姿になって、ますますボディが…。

 

ドミナントが思った途端に、空から岩が降ってきた。しかし…。

 

「よっと。何度も当たらん。」

 

ドミナントは軽く避けた。

 

「さぁ、長門、行くぞ。また何か降ってこないうちに。」

 

「う、うむ。」

 

ドミナントたちはそう言って潜った。

 

…………

海の中

 

……ほう。海の中とはこうなっているのか。

 

長門は思う。普段彼女たちがいるのは海の上なので、見るのは初めてかもしれない。そこには、色とりどりの魚が泳いでいた。まるでカラフルな色の服を着た小人が踊っているみたいだった。

 

……ふむ。綺麗だな。

 

長門は思っている。

 

……海底調査か…。そこら辺にいる魚の色や、地面の砂の感触などを書けば良いのか?

 

ドミナントは海の中で考えている。そして長門の方へ振り向く。

 

……長門、笑顔だな。笑顔な長門など滅多に見ないからな…。もう少し、遊ぶか…。

 

ドミナントはそう考え、長門に近寄る。そして、指で合図する。

 

……楽しいか?

 

……ああ。

 

……あっちの方はたくさん魚がいるから向かおう。

 

……わかった。

 

そうして、ドミナントたちは海中散歩をするのだった。

 

…………

数時間後

 

……長門は飽きてなさそうだな…。俺は飽きてきたが…。

 

ドミナントが笑顔の長門の後ろでそう思っている。すると…。

 

「!?」

 

「?」

 

ドミナントがあるものを見つけて、長門が驚いたドミナントを見て不思議に思っている。

 

……どうかしたのか?

 

…………。

 

ドミナントは反応せず、ずっとそれを見ている。

 

……これがどうかしたのか?

 

……ああ…。

 

ドミナントはゆっくりと頷く。

 

……懐かしいな。セントエルモか。こんなところで沈んでいたとは。

 

ドミナントはそう思い、中に入る。長門もドミナントに続く。

 

……中はしっかりできているのに、リモコンひとつで沈んだのか…。なんか変な感じだな。

 

ドミナントはそう思いながら中を触ったりする。すると、長門に肩を叩かれる。

 

……どうした?

 

……あれを見ろ。

 

……あれ?…!?

 

ドミナントは驚いた。深海棲艦が船の一室で寝ていたのだ。

 

……現在長門の装備もない今、見つかって倒されるのは確実…。やり過ごすしかないな。

 

ドミナントはそう判断して、長門に伝える。

 

……起こすな。

 

……わかった。

 

ドミナントたちはゆっくりと外に出ようとする。しかし…。

 

ギ…。

 

床が軋んでしまった。

 

「ギギャ?…ゴキャァァァ!」

 

目を覚まして襲ってきた。

 

「……!」

 

ドミナントたちは急いで外に出ようとする。しかし、深海棲艦の方が早い。

 

……早いな…。だがいい。外に出れさえすれば…。

 

そう考えているうちに、外に出る。それと同時に、深海棲艦に囲まれた。

 

……他にも仲間がいたのか!?三匹ほど上位種!?しかもelite!?

 

長門はドミナントの目を見る。すると…。

 

「……。」

 

「!?」

 

長門はお姫様抱っこをされる。

 

……て、提督!こんな時に何を…!

 

長門は少し赤くなっていたが、ドミナントは別のことを考えていた。

 

……すまない。少し苦しいだろうが我慢してくれ。

 

そして、ドミナントは準備をする。

 

……AC化!

 

カッ!ドォォォォォォ!

 

水中で光ったあと、AC化して魚雷並みの速度で海上へ瞬時に戻る。しかし、それほどまでの速度とは思っていなかったらしく、ドミナントは目が半開きになっていた。

 

ザッパァァァン!

 

「はぁ、はぁ…。すまない。速度が速すぎた。」

 

「ゲホッ、ゲホッ。…そういうことだったのか。」

 

ドミナントが謝り、長門が理解すると…。

 

「ギャァァァ!」

 

「ガァァァァ!」

 

深海棲艦が顔を出す。

 

「まずいな…。長門の艤装もない現在…、戦うのは危険か。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

ガシャァン!!

 

「ギャァァァァ!?」

 

長門が思いっきり殴り、深海棲艦が悲鳴をあげる。

 

「なるほど、拳か…。だが、背中がガラ空きだぞ。」

 

ドミナントはそう言った後、長門背中につく。

 

「フッ。やっぱり、こうでなくちゃな。後ろは頼んだぞ!」

 

「ああ。任せろ。」

 

そうして、ドミナントと長門共同殲滅戦を開始した。




はい!54話終了!なにやらピンチですね。ドミナントの腕前はBランクです。ちなみに、ドミナントは長門の気持ちを知りません。ただ、アニメなどで、渋々折れざるをえない言葉を知っているので、それを有効活用して海に行きました。
登場人物紹介コーナー
長門…戦艦。ゴリラと呼ばれていたりする。ドミナントに気がある。が、誰にも言っていない。レベルは98。主任の演習卒業試験まであと少しである。
次回!第55話「助っ人」お楽しみに!


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55話 助っ人

はい!ついにやってきました55話!プランDいわゆるピンチですね。
では、あらすじに入ります。今回は…。Верный(ヴェールヌイ)行くか?
「ハラショー。筆者はちゃんとした発音を使うんだ。」
まぁね。では、あらすじをどうぞ。

あらすじ
今日は、私が警備に行く日。鎮守府の方から大きな音がして気になったけど、私は警備に行くため戻れなかった。


…………

 

「グァァァァァ!!」

 

「ふんっ!」

 

ガシャァァン!

 

突撃してくる深海棲艦に長門が殴る。

 

「ギァァァァ!!」

 

「うるさい。」

 

ビィィィィィ!

 

叫びながら撃ってくる深海棲艦にドミナントの武器であるWR05L-SHADE(レーザーライフル、通称シェイド)を撃つ。

 

「む…。やはりレーザーは弾を消費しない代わりに効果が薄いか…。」

 

ドミナントは、対して攻撃が効いていないことに顔をしかめる。

 

「やはり、艤装なしだと効果が薄い…。」

 

長門も同じ感じのようだ。

 

「長門…。今から言う中で、可能性が高いものを選べ。」

 

ドミナントは、突然長門に聞く。

 

「1、突然アイデアが閃く。2、仲間が来て助かる。3、現実は非情である。」

 

ドミナントはどこかの特殊能力を持ったフランス人のようなことを言う。

 

「あの世界だけだと思っていたが…。それの答えは3だろう。」

 

「…正解だ。まぁ、本当に3番にはなりたくないがな。…行くぞ!」

 

ドミナントはそう言い残したあと、突っ込んで行く。

 

……くそっ、こんなことならセラフに装備を預けるんじゃなかった…。

 

ドミナントはAC化した時、間違って撃って、弾を消費しないようにエネルギー武器以外をセラフに預けたばかりだった。

 

「待て!提督!そっちはダメだ!」

 

「ん?…ぐはぁぁぁ!?」

 

ドミナントは攻撃をくらった。幸い、損傷もしていない。

 

「ぐぐぐ…。一体どこから…?」

 

そして、ドミナントは遠くから狙撃した軽巡ホ級を見る。

 

「あいつか…。」

 

そして、ドミナントはレーザーライフルを撃つ。

 

ビィィィィ!ビィィィィ!

 

「ギャァァァ!」

 

「くそっ!やっぱり効かないか。」

 

ドミナントはビーム系は有効でないと知り…。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

ガシャァァァァン!!

 

ドミナントも殴り始める。

 

「長門!そっちはどうだ!」

 

「くっ…なんとかなっている!」

 

長門は八方から撃たれ続けて中破している。

 

……このままでは、一方的に不利だ。長門だけでもなんとか生き残ってもらわないと…。

 

ドミナントはそう思い、長門に近づいて持ち上げる。AC化している中、持ち上げることなど容易い。

 

「!?提督!何を…!」

 

「今から投げる!そう遠くは行かないかもしれんが、逃げられる程度は行けるはずだ!」

 

「なっ…!私は逃げも隠れもしない!それに、提督!お前はどうするんだ!」

 

「言い方を間違えた。戦略的撤退だ!鎮守府に戻って、仲間を呼ぶんだ!それまで耐えてみせる!」

 

「だが…!」

 

「行くぞ!」

 

ドミナントは思いっきり投げた。

 

…………

 

「ぁぁぁあああ!ぐっ…。」

 

長門は投げられて鎮守府近くの海域に落ちる。

 

「くっ…。格好つけて…。待ってろよ、必ず戻る…!」

 

長門はドミナントが投げる寸前に、深海棲艦の一斉攻撃によって大破してしまったが、鎮守府へ急いで戻った。

 

…………

 

「……。長門、待っているぞ…。…と言いたいところだが、無理そうだな。」

 

もちろん、投げる寸前に長門が大破したと言うことはドミナントに大半が直撃している。

 

『脚部損傷、右腕部損傷、左腕部破損、コア損傷』

 

メッセージが入る。

 

「くそっ…。3か…。こんな時に大半クリティカルヒットだとはな…。」

 

ドミナントは、にやけている深海棲艦を睨む。

 

「……。ギャ。」

 

睨まれたことに腹を立てたのか、攻撃される。

 

「くそっ…。速さが足りない…。」

 

ドミナントは避けようとするが、脚部損傷にて安定しない。

 

「ギァァァァ!」

 

ドォン!ドォン!

 

ドミナントに当たる。

 

……。ここで終わりか…。

 

ドミナントが諦めたその時…。

 

ドォォォォン!ドォォォォン!!

 

目の前が炎で明るくなる。深海棲艦が沈んで行く。

 

「?これは…一体…?」

 

ドミナントが砲撃した方を見る。

 

「セラフ…?…いや、艦娘か?だが、俺たちの鎮守府所属じゃないな…。」

 

その姿は、見ない顔をした艦娘だった。

 

「君は…一体…?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「異界型一番艦!『セントエルモ』参上!!」

 

ドミナントは驚いた。

 

…………

 

「で、君はどうしてここに?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「うん。なんか気がついたらここにいた。…ところであなたは?」

 

「俺は第4佐世保鎮守府提督、ドミナントだぞ…。」

 

「ふぅーん。そうなんだ。で、いきなりで悪いんだけど…。」

 

「なんだ?」

 

「これから行くあてがないから、あなたの鎮守府?に住まわせて欲しいの!手伝いとかはちゃんとするから!お願い!」

 

手を合わせてお願いされる。

 

……なんだと…!俺の鎮守府にこんな強力な艦娘が…?願っても無いチャンスじゃないか!是非引き入れたい!…だが、みんなはどう納得するだろうか…?

 

ドミナントが考えていると…。

 

「ドミナントさーん!」

 

セラフが来る。

 

「提督ー!」

 

「司令官ー!」

 

吹雪と夕張も来たようだ。

 

「おぉ、みんな。来てくれたのか!」

 

「あれ?深海棲艦は…?それに、誰ですか?その艦娘は。」

 

セラフが聞いてきた。

 

「私は、異界型一番戦艦『セントエルモ』!ここにて参上!」

 

「はじめまして!『吹雪』です!よろしくお願いします!」

 

「はーい。兵装実験軽巡『夕張』だよー!」

 

艦娘特有の挨拶をする。

 

「私は、秩序の熾天使『ナインボール・セラフ』です!」

 

「セラフ、なんで対抗しているんだ?」

 

セラフが対抗しているのに対してドミナントが突っ込む。

 

「…。夕張か〜…。なんか腹が立つのは気のせいかな〜…。」

 

セントエルモは夕張を見る。まぁ、夕張が沈めたようなものだから仕方がないのだが…。

 

「えぇ…。初対面でいきなり嫌い宣言されました…。提督、どうにかなりませんか?」

 

夕張はドミナントを見るが…。

 

「夕張、これは仕方のないことだ。運命だと思って諦めろ。」

 

「えぇ!?て、提督に匙を投げられました…。」

 

夕張は、戦艦を沈めたことは知っているが、セントエルモだとは知らない。

 

「さて、本題に入ろう。」

 

ドミナントが言い、みんなが見る。

 

「この『セントエルモ』は、ついさっき、十数匹の深海棲艦を全滅させた。能力には期待できる。そして、何より行くあてがないらしい。一緒に住まわせて欲しいと言っている。俺は住んでも平気だと思うが、君たちはどう思う?あと、この質問は君たちだけでなく、俺たちの鎮守府に住んでいる全員の意見だとして考えてくれ。」

 

ドミナントは難しいことを言う。

 

「そうですね…。おそらくジナイーダさんは反対します。ですがジャック・Oさんは同じ流れ着いた身、大丈夫だと思います。主任さんは、面白ければ何でも良いと思いますので大丈夫だと思います。」

 

セラフがよく分析してから言う。

 

「私は、司令官が大丈夫と言った人なら、大丈夫だと思います!ほかの皆さんも納得してくれるはずです!」

 

吹雪が言う。

 

「私は平気だとは思いますが、なんで私を嫌悪しているのかが知りたいです…。」

 

夕張が元気なさそうに言う。

 

「そうか。ならばセントエルモを鎮守府で住まわせても良さそうだな。」

 

「やった!」

 

セントエルモは喜んでいる。

 

「ただし、鎮守府に帰ったらいくつか試験を行うがな。」

 

「別にいいよ!住まわせてもらえるなら。」

 

セントエルモは元気よく返事をした。

 

…………

帰り途中

 

「う〜ん…。」

 

「夕張、何をそんなに悩んでいるんだ?」

 

ドミナントは、一番後ろを進む夕張に聞く。

 

「あっ、提督!実は、私が何でそんなにセントエルモちゃんに嫌われているのかわからなくて…。」

 

「なるほど、それで悩んでいたのか。」

 

「はい…。」

 

「じゃ、答えを教えてやろう。知りたいか?」

 

「はい。知りたいです。」

 

「わかった。…実は、あの艦娘は夕張が作ったようなものなんだよ。」

 

「!?それはどういう…?」

 

「忘れたの?あの時戦艦沈んだでしょ?」

 

「あっ…。」

 

夕張はリモコンの不具合のせいで沈んだことを思い出す。

 

……もっとも、違うのかもしれんがな。時間が早すぎるし。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「それじゃぁ、嫌われていても仕方がありませんね…。」

 

「ああ。…だが、仲良くなる方法もゼロではないぞ。」

 

「えっ!?本当ですか!?」

 

夕張は目を輝かせながらドミナントを見る。

 

「ああ、本当だ。だが、うまくいくかどうかは分からん。なぜなら夕張次第だからな。」

 

「…つまり、私がセントエルモちゃんにどう接するかによって変わるということですね。」

 

「そういうこと。」

 

「わかりました。頑張ります!」

 

夕張は、どうやってセントエルモと仲良くなれるか考えていた。




はい!55話終わりました!セントエルモ…。どこで登場させようか悩みました。でも、夕張との件があるため、今登場させました。
登場人物紹介コーナー
セントエルモ…ACⅤに登場した戦艦。今は艦娘になっている。戦艦の頃は前方近距離が弱点だったが、艦娘になったことによって、解消された。しかし、ほかの弱点が…。ちなみに、深海棲艦を焼き払ったのは主砲です。
次回!第56話「夕張とセントエルモ」お楽しみに!


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56話 夕張とセントエルモ

はい!すみません!またタイトルミスしました!次回が「試験」です!…ところで、これを読み続けている人はいるのでしょうか…?まぁいい。例え誰も読んでいなくても続ける。小説の中にしか、私の存在する場はない。好きに書き、理不尽にやめる…それが私だ。読者の有無ではない。小説はいい。私にはそれが必要なんだ。
「な、なんか筆者さんが不気味です…。」
私は筆者だから。ンッフッフッフッフ…。あの一航戦にはもう戻らんのか?レッドキャッスル…。(赤城)
「まだよ!まだ私は戦えます!…始めましょう…。言うわ…。あらすじを…。」

あらすじ
私は…もう(主任に)負けたくないだけ…。深海棲艦にも…。何にも…。弓道場ができました。何か艦娘みたいなのが見えた気がしましたけれど…気のせいですよね。ここが…この戦場が…私の魂の場所よ!!(警備海域)


…………

鎮守府 夕方

 

ワァーワァー!

 

「ん?なんだ?鎮守府が騒がしいが…?」

 

ドミナントは騒がしい方向を見る。

 

「私も…、提督を助けに行かなくてはならないんだ…!」

 

長門が大破した状態で出撃しようとしている。

 

「無理です長門さん!大破の状態で出撃なんて無茶です!」

 

それを必死に止める古鷹。

 

「早く入渠してください!」

 

比叡も止めている。

 

「離せ!提督は今の私よりもっとひどい状態のはずだ!それで提督が死んでしまったらどうするんだ!?」

 

「大丈夫です!セラフさんと最初の4人のうち二人が行きましたから!」

 

比叡が言う。

 

「それだけじゃない!提督と…約束したんだ!必ず戻ると…。だから、行かなくてはならないんだ!約束を破って秘書艦が務まるものか!?」

 

「行かせませんよ!!それで沈んでしまったら、それこそ司令官が悲しみます!」

 

三日月が叫ぶ。

 

「私が沈んで提督が生き残れるならば本望だ!!私が生きて、提督がいない世界など私にとってなんの価値もない!」

 

「新しい提督が一週間以内に必ず来ます!だから大丈夫です!」

 

「そういう意味ではない!!あの提督じゃないとダメなんだ!お前もわかっているだろう!?私は少ししか当たってないのに大破する攻撃力なんだ!もっと当たった提督は今も助けを求め、死ぬ寸前なのかもしれないんだぞ!?」

 

「不吉なことを言わないでください!」

 

「あくまで可能性の話だ!!」

 

ワァーワァー…。

 

「……。なんかすごい騒ぎになっているな…。」

 

「……。そうですね…。」

 

「ドミナント提督モテモテだねぇ〜。あははは。」

 

ヒートアップしている長門と、長門を止めながらヒートアップしている艦娘たちを見てドミナントと吹雪が言い、セントエルモが茶化す。

 

……それにしても、長門…。そこまで心配してくれていたのか…。自分は大破しているのに…。それに嘘でも、俺のいない世界など価値がないと言ってくれるとは…。残される者の悲しみはわかる。俺は無意識にその悲しみに直面したくなくて、助ける形で逃げたのだろう…。あとで謝罪しなければならないな…。

 

ドミナントは心の中で感動と謝罪の気持ちが入り混じる。

 

「行くか…。」

 

「そうですね…。」

 

ドミナントたちは騒いでいる方向へ行く。

 

「く…離…せ!」

 

「いえ…離しま…せん!」

 

力ずくの勝負をしている中。

 

「長門。」

 

「提督!?…怪我だらけじゃないか!?それに…左腕が…!」

 

ドミナントが声をかけ、長門が駆け寄る。

 

「大丈夫だ…。そのかわり破損している場合は、人の姿になれないし、資材もすごく消費してしまうがな。」

 

「そ、そうなのか…?」

 

「あと、長門…。大破した状態でまで俺を助けようとしたことに感謝している。だが、無茶はするな…、俺との約束は破っても良い。だから、沈んだりするのだけはやめてくれ。ドミナントとの約束だ。」

 

「提督の…、いや、ドミナントとの約束…。」

 

「ああそうだ。あと、ありがとう…。俺のことを心配してくれて。」

 

ドミナントは長門の頬を撫でる。

 

「提督…。」

 

……ふふふ、撫でると恥じらうのがわかる…。可愛いじゃないか。

 

ドミナントがそう思った途端…。

 

ガコォォン!!

 

「ギャァァァ!!」

 

「!?」

 

ドミナントが突然岩が落ちてきて頭に直撃する。

 

「セラフ…なにを…?」

 

「どうかしましたか?それに…忘れていませんよ…。」

 

「!?」

 

ドミナントは思い出す…。海底に行く寸前に岩が落ちてきたことを…。そして、その岩を持ってさらに叩こうとするセラフ…。艦娘の教育に悪い一面が広がっている…。

 

「ま、待て!セラフ!あれにはわけが…。」

 

「何ですか?その訳とは?」

 

「そ、それは…」

 

「いえ、やっぱり聞くのをやめます。結果は同じなのですから…。海底調査の時もそうでしたが、忘れていませんか?私が何となく心を読めることを…。」

 

「……。」

 

「忘れていたようですね…。」

 

「ひぇぇぇ!!」

 

「はい、比叡です!」

 

「違う!そういう意味じゃない!て、うわぁぁ!?回避ーー!」

 

ドォォォン!!

 

ドミナントは間一髪回避する。セラフが打ち込んだ岩はボロボロと崩れていく…。

 

「セ、セラフ…、本当に悪かったと思っているからやめてください…。」

 

ドミナントはそれを見てゾッとし、震える声でセラフを説得する。

 

「この速度では当たりませんでしたか…。」

 

セラフは残念そうな顔をするが…。

 

「…修正しました。次は外しません。」

 

セラフが大きな岩を持ってニコッとする…。

 

「やば…。とうっ!」

 

ドミナントは損傷したまま逃げる。

 

「あっ!そうだ長門!早く入渠してこい!それが終わったら、この鎮守府…。よっと!!…に暮らしている全員を集めろ!」

 

ドミナントは紙一重で回避しながら言う。

 

「あ、ああ…。」

 

「あと夕張!セントエルモに中を案内しろ!」

 

「わ、わかりました!」

 

「それじゃ、俺は少し逃げて…。うわっと!…いるからよろしく!」

 

「…回避うまいですね…。でも、次こそ当てます!」

 

「それじゃみんな!頼んだよ!…とうっ…!」

 

そして、ドミナントは飛んで行った。

 

「逃がしません…!」

 

セラフもAC化して飛んで行った。そのあと、なんとか回避してことを収めることができたドミナントであった。

 

…………

 

「行ってしまったな…。」

 

「そうですね…。」

 

「それでは、提督の無事もわかったことだし、私は入渠してくる。」

 

「わかりました!」

 

長門が言い、吹雪が返事をする。

 

「さて、提督に言われたし、私たちも行こう?」

 

「…わかった…。」

 

……提督がくれたチャンス。逃すわけにはいきません!

 

夕張とセントエルモも移動する。

 

…………

 

「ここが第4佐世保鎮守府の東棟だよ!」

 

「…うん…。」

 

そう言って、中を案内する夕張。そして、元気のないセントエルモ。

 

「ここは娯楽室!暇な艦娘は大抵ここにいます!」

 

「…そう…。」

 

「そして、ここは提督自室!」

 

「…そうなんだ…。」

 

「で、こっちは西棟の艦娘寮!みんなの部屋!」

 

「…そっか…。」

 

「ここは教室!ジナイーダさんの授業を受けたりする場所!」

 

「…ふぅん…。」

 

そして、夕張たちは外に出て…。

 

「ここは演習場!みんなのトラウマ!」

 

「…へぇ…。」

 

「あれ?あんな建物あったかな…?弓…道…場?だよ!」

 

「…なるほど…。」

 

「そして、ここは養殖場!頼めば新鮮な魚が手に入る場所!」

 

「…ほぅ…。」

 

「ここは資材置き場!あと5年は何もしなくても平気!」

 

「…うん…。」

 

「そして、最後に!私の居場所である倉庫!」

 

「…そうなんだ…。」

 

「あ、あはは…。」

 

……やっぱり、なかなか心開かないよね…。反応が薄いな…。でも、このままわだかまりがあるままだとなんか嫌だし…。

 

夕張が無理して笑う。すると…。

 

「ねぇ。」

 

「ん?どうしたの?」

 

セントエルモから始めて質問された。いつのまにか日が沈んで暗くなり始めている。

 

「…嫌じゃないの…?」

 

「…ううん!そんなことないよ。」

 

本人は意識していないが、無理した笑顔になる。

 

「…ごめんね…。」

 

「えっ…?何が…?」

 

「…なんか、わからないのにあなたのことを嫌ってしまっているの…。」

 

「…まぁ、そんなこともあるよ。誰にだって嫌いな人はいるはずだし、私がそういう人ってことだけだよ。」

 

「私は…、何もしていない人を嫌いになりたくない!あなたのような親切な人に、嫌いと認識している自分に腹が立つ…!」

 

セントエルモは悔しそうな顔をして涙目になっていた。夕張はもちろん複雑な心境である。

 

……どうしよう…。私が沈めてしまったのに…、打ち明けた方がいいよね…。それでセントエルモちゃんが楽になるなら…。

 

夕張はそう判断する。

 

「ねぇ…、セントエルモちゃん…。」

 

夕張は、月光が照らすベンチに座り、セントエルモも座らせる。

 

「…ちゃん付けしなくていいよ…。どうしたの…?」

 

「私…、謝らなければならないことがあるの…。」

 

「…?」

 

「実はね…、あなたを沈めてしまったのは私なの…。」

 

「えっ…?」

 

「私のリモコンを作る技術がひどかったせいであなたを沈めてしまったの…。だから、憎まれても仕方がないよね…。だから、セントエルモはそんな酷い私に腹を立てても仕方がないの。嫌いと認識していて当たり前なの。」

 

夕張は真剣な声だけど、セントエルモの方は向かず、月明かりに照らされた海を眺めていた。

 

「そう…なんだ…。」

 

セントエルモは複雑な顔をして海を見る。

 

「それじゃぁ、あなたを嫌っても仕方がないよね…。」

 

「…うん…。」

 

セントエルモは諦めたような声を出し、夕張は元気なく答える。

 

「…でも、打ち明けてくれてありがとう。」

 

「…うん…。」

 

……あぁ…もう絶対に仲良くなることなんて出来ないよね…。

 

夕張はそう思ったが…。

 

「ふぅ、これでやっとわからなかった感情はわかった。この感情は昔の私の感情だったんだね。」

 

「えっ…?」

 

「昔の私はあなたのことを全く知らなかったんだ…。あなたは、親切で優しい。でも、不本意とはいえ私を殺したも同然だよね…。だけども、沈んだことによって人の姿で復活したんだよね…。ならば…、それなら!あなたと仲良くなりたいと私は思う!」

 

セントエルモは立ち上がり、夕張の目の前に立つ。

 

「仲良くなろう?夕張ちゃん!」

 

手を差し伸べられる…。

 

「…うん!ありがとう!セントエルモちゃん!」

 

夕張は目尻に涙を浮かべさせながら笑顔で握る。

 

「だから〜、ちゃんはいらないって〜…あははは。」

 

「そうだったね!ふふふ。」

 

笑い合う二人だった。




はい!プロローグで説明しましたが、タイトル変更しました!流れ的にこうなると予測していたならば…。タイトルを変えずに済むのに…。
登場人物紹介コーナー
ダレモ…イナイ…。
次回!第57話「試験」お楽しみに!


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57話 試験

はい!57話です!今更ながら最近思いました。
この小説、内容が浅くない?
はい、ではあらすじに入りたいと思います。今回は金剛か。
「提督のHeartを掴むのは、私デース!」
お、おう。頑張れよ。

あらすじデース
何やら堤防が騒がしいと思ったら、長門があの状態でsotieしようとしているネー。私は明日のtea timeの準備で忙しかったから、比叡に任せたネー。そのあと、newfaceに夕張が鎮守府を案内していたネー。


…………

鎮守府の影

 

「……。なんとかなったみたいだな。」

 

「そうですね…。」

 

「あれが新しい艦娘?う〜ん。こりゃ楽しみだ。」

 

「ふむ。なかなか強そうな艦娘だな。我々の敵にならなければ良いが…。」

 

「私だけで良いと思ったが…。お前たちも気になるとはな。」

 

「また新しい子が増えたんだ!」

 

笑い合う二人を、鎮守府の影でこっそりとドミナント御一行と神様が顔を出して見ている。

 

「そりゃ気になるさ。中々面白そうなやつだよ…。」

 

「主任、試験をしてみてはどうだろう?奴の実力がどれほどのものか確かめたい。」

 

ジャックが主任に言う。

 

「それも良い考えだな。私も少し気になる。」

 

「そうですね。ドミナントさんは住まわせたいと言いましたが、実力を知らなければ特性も分からないわけですし、いたずらに出撃されても、資材の無駄ができてしまったりしてしまいます。それに、他の艦娘にも戦えるところを見せなければ認められないかもしれません。」

 

「私は、どんな子でも大歓迎だよ!…でも、ドミナントに何かする奴は絶対にユルサナイ…。」

 

女性陣も試験には賛成のようだ。(若干一名おかしなのがいるが…。)

 

「そう言うと思って、長門に艦娘を集めさせている。今は暗いから、明日の朝に試験を行いたいと思う。艦娘たちには、明日は演習なしということを伝えておこう。まぁ、そのかわりセントエルモの演習を見なくちゃならないけど…。」

 

ドミナントが言う。

 

「それだと退屈すんじゃないか?」

 

ジナイーダがドミナントに言う。

 

「まぁ、演習に行きたくない人や、退屈な人はジナイーダの授業を受けさせるから、まぁそのつもりで。」

 

「フフフ…。誰も来ないのが眼に浮かぶ。」

 

ドミナントは説明して、ジナイーダが自嘲気味に笑う。

 

…………

明日の朝

 

ワイワイ…ガヤガヤ…。

 

ジナイーダの言う通り、艦娘は全員演習場の観客席にいた。そこは影になっていて、よく見えるようになっている。

 

「やっぱり、全員来たな。」

 

ドミナント御一行は観客席ではなく、海上に立っている。もしもの時のために止めに入ったり、深海棲艦を排除する役割である。

 

「いや、全員…ではないな。控え室に一人いる。」

 

ジナイーダがドミナントに言う。

 

「セントエルモだろう?それくらいは考慮に入れている。…それとも、夕張か?」

 

「夕張だ。昨日分かり合えたのだろう。元気づけているんじゃないか?」

 

「なるほどな。」

 

…………

控え室

 

「なんか…おおごとになっているんですけど…。」

 

控え室でも聞こえてくる艦娘たちの声でセントエルモは緊張していた。

 

「大丈夫だよ!セントエルモちゃん!頑張って!私、応援しているから!」

 

夕張はそんなセントエルモの緊張をほぐそうとしていた。

 

「夕張ちゃん…。だからちゃん付けいらないって…。」

 

「ごめんね。でもちゃん付けしないとしっくりこなくて…。」

 

二人はそんなことを話していた。

 

『セントエルモ。セントエルモ。そろそろ出撃だ。』

 

放送が入る。

 

「それじゃぁ頑張って!私観客席にいるから!」

 

「ありがとう。それじゃぁ行ってくる!」

 

セントエルモ出撃

 

…………

 

ドヴェーーー!ドヴェーーー!ドヴェーーー!

 

ヒュゥン!

 

セントエルモが海上に出た。

 

『では、これより試験を始める。合格するか否かによって、鎮守府の中でのお手伝いか、深海棲艦と戦うかが決まる。内容は全ての的に当てること。的は壊れない。そのかわり威力が表示される。レベル50の一般的な戦艦の威力は2000とする。一定の数に当たる、もしくは威力を出せば合格だ。合格した場合は、そのあと主任に力を測ってもらう。もし主任に力を測ってもらって、最低な結果だったとしても、合格から不合格になることはない。存分に力を発揮してくれ。』

 

ドミナントは説明をし終える。

 

『それではカウントダウンを始めたいと思う。セントエルモ、準備はいいか?』

 

「スゥー…ハァー…。いいよ!いつでもいける!!」

 

『わかった。では始まる。カウントダウン10秒!』

 

……大丈夫…私ならいける。

 

『8!』

 

……大丈夫…セントエルモちゃんなら…。

 

『5!』

 

……私は戦う…。そして全てが終わった…。

 

『1!』

 

……その時に!!

 

『GO!』

 

ドヒュゥン!

 

セントエルモはスタートと同時に的に近づいて撃つ。

 

ドガァァン!ドガァ!ドゴォォォン!!

 

次々と当てていく。

 

ワァーワァー!

 

観客からは歓声が飛び交う。

 

……これで最後…。

 

ドガァァン!

 

全ての的に当たる。

 

『よくやったセントエルモ。時間以内に全てを当てた。合格だ。威力の結果を出す。』

 

ドミナントは結果を集計して、放送する。

 

『結果は4000!まだレベルが30前後なのに良い成績だ!レベル50の2倍。文句なしの合格点だ。』

 

「「「えーー!?」」」

 

観客席からは驚きの声が上がる。

 

……まぁ、セントエルモなら当然か。

 

ドミナントは知っているから密かに思う。だが、艦娘たちや愉快な仲間たちは知らない。

 

「私よりレベル低いのにあの点数…すごぉい!」

 

「ふむ…。負けていられないな。」

 

「ハラショー。」

 

艦娘の方から声が上がる。

 

『では主任と戦ってくれ。』

 

「わかりました!」

 

そして主任と戦っている間…。

 

「ふむ。艦娘の中ではなかなか驚異的なやつだな。」

 

ジナイーダは感心している。

 

「そうですね。イレギュラ…うっ…。」

 

セラフは頭を抱える。

 

「セラフ、大丈夫か?…後で良い、その命令の解除コードを調べろ。」

 

ドミナントは冷静に対処する。

 

「毎晩やっていますが…。中々完全に解除ができないんです…。」

 

セラフは恨めしそうな声で言う。

 

……完全に解除できたと思ったんですが…、さすがネストですね…。また復活させようとしてくる…。その復活停止コードまで打ち込まなければならないなんて…。

 

セラフは忌々しく感じた。

 

「ジャック、機械類は得意か?」

 

ドミナントはジャックに聞く。

 

「ふむ…。得意といえば得意だが…。私に解除させる魂胆だろう?話の流れから。」

 

「ああ。その通りだ。」

 

「そうだな…。結論から言うと可能だ。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ。だが私のやり方だと、少し危険だ。なぜならその部分だけ新しく変えるのだからな…。」

 

「…つまり、失敗すれば人格が崩壊するか、死ぬ可能性があるということだな?」

 

「ああ。成功する可能性は高くて20%というところだろう…。」

 

「そ…そんな…。」

 

「セラフ。やるかやらないかはお前次第だ…。覚悟が決まったらジャックに頼め。死んでしまうのだけは避けたい。人格が崩壊したとしても、俺が責任持って大事にするし、そばにいる。約束しよう。」

 

「ドミナントさん…。」

 

セラフはそこまで自分のことを大切に思ってくれていることに感動する。

 

「まぁ、あくまでも現時点の可能性だ。セラフの構造が分かれば、可能性はグンと上がる。だいたい分かれば60%と、3倍まで跳ね上がる。あと、その部品の種類だな。それもわかれば80%だ。」

 

「そ、そんなに上がるの…?」

 

ジャックがセラフに希望を持たせようとしている。

 

「だ、そうだ。セラフ、お前の構造を知っていたり、部品を知っているか?」

 

「……もしかしたら、知っているかもしれません。」

 

「そうか…。だが、嫌なんだろう…?ネストのデータを見るのは。」

 

「…はい…。」

 

ネストのデータには、今までの人類の記録、そしてどれほどセラフが人を殺したかが載っている。ネストがどれほど企業を破滅させてきたか…。どれほどの人間を陥れたか…。どんな武器を持っているか…。全てが載っている。

 

「セラフ…。もう一度言うが、決めるのはお前だ。俺はどんな選択をしたとしても否定する気は無い。それは他人が決めることじゃなかろうさ。」

 

ドミナントは主任と戦っているセントエルモを見ながら言う。

 

「ドミナントさん…。」

 

「ジャック、失敗したとしてもお前を責めたりしない。最善を尽くすんだ。」

 

「いいだろう。約束しよう。」

 

ジャックはしっかりと約束する。

 

「それでは、今はセントエルモの方を見て審査をしよう。…ジナイーダ、どんな感じだ?」

 

「見ていなかったのか?…まぁ、話は聞いていたがな…。今のところ80点だ。…だが、何かがおかしいな。」

 

ジナイーダは最後、静かに言った。




はい!57話終わりです!セラフはまだ完全に解除されたわけではありません。縛られる手が緩んだだけで、外れていません。ジャックは、機械いじりが得意です。
登場人物
ダレモ…イナイ…レッシャ…ドコダ…?
次回!第58話「弱点」お楽しみに!


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58話 弱点

最終話書いていたら遅れました。せいぜい95話前後で最終章ですね。
はい、ではあらすじに入りたいと思います。今回は睦月いくか。
「およ?私で良いの?」
じゃ、頼んだよ〜。

あらすじをはじめるよ!
セントエルモちゃんが試験を受けたよ!すごい結果だったけど、睦月も負けてられない!強くなって、提督に褒められたい!


 

「どういうことだ?」

 

ドミナントはジナイーダに聞く。

 

「何かあるな。主任や、一部の艦娘は気づき始めている。」

 

「…不正か?」

 

「いや、動きに問題がある。」

 

「それはなんだ?」

 

「まぁ見てみろ。」

 

ジナイーダの言う通り見てみるが、セントエルモはしっかりと戦っている。

 

「…不自然なところは見当たらないが…。」

 

「では教えてやろう。次の攻撃外す確率が高い。」

 

「えっ?」

 

ドミナントは見た。そして外した。

 

「やっぱりな…。」

 

「どう言うことだ?」

 

「セントエルモは…近距離から中距離だと精度が高い。…だが、一定以上離れると全く当たらないぞ。」

 

「!?」

 

主任はセントエルモが撃つ途端に後ろに下がり、全く当たらない。

 

「なるほど…。」

 

……セントエルモはあの大きさでレーダーが大きかったのか…。体が小さくなった今、レーダーも近〜中距離でしかうまく反応しないという弱点ができたのか…。

 

ドミナントは心の中で思った。

 

「…言っちゃ悪いが、戦闘には不向きかもしれん。」

 

そうジナイーダが言った途端に試合終了の合図が出た。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

『主任、結果はどうだ?』

 

「そうだねぇ〜。A〜Eランクの中でDランクだ。」

 

「「「えぇぇ!?」」」

 

観客席から驚きの声が上がる。さっきまでA〜Bランクは確実だと思っていた艦娘の方が多かったからだ。

 

『セントエルモ、異論はあるか?』

 

「…いえ、ありません…。」

 

セントエルモは自身でこの弱点をわかっていたみたいだ。

 

『わかった。ではこれで試験を終わる。セントエルモは控え室に戻ったあと、こちらに来るように。他の艦娘たちは自由時間だ。』

 

ドミナントがそう放送し終えたあと、セントエルモが控室に戻る。

 

…………

控え室

 

「……。」

 

「セントエルモちゃん。…こんなの、何かの間違いよ。もう一度主任さんにお願いして測ってもらおう!?」

 

「いや、これは本当の話よ…。」

 

夕張が行こうとするが、セントエルモが止める。

 

「なんで!?だっておかしいじゃない。最初あんなに高得点を取ったのにDランクなんて…。」

 

「…夕張ちゃん…。最初の私の動き、覚えている?」

 

「え…?もちろん覚えているよ。」

 

「なら、私が的を当てる時どうだった?」

 

「近づいて撃っていたけど…。」

 

「…私はね…、遠くの敵に撃っても当たらないの…。確かに威力や近距離での精度は高いけど…。全く当たらないの…。」

 

セントエルモは諦めたように言う。

 

「えっ…。」

 

「私は戦闘に不向きなの…。」

 

「そんなことない!天龍さんだって、近距離でしか戦えない刀しかないのに、あんなに戦えるんだよ!」

 

「確かに、近距離での戦闘しかできない人もいるけど…。私が持っているのは刀じゃなくて砲台だよ…。装填に時間がかかるし、その間何もできない…。」

 

「そんなの…。」

 

「ね?取り柄がないでしょ?だから、この鎮守府に来ようとお願いした時、お手伝いでもするって言ったの…。ドミナント提督に聞けばわかるよ…。」

 

「でも、合格したからちゃんと編成を考えて出撃させてくれるはずだよ!」

 

「いや、さっき私呼ばれたでしょ?…多分、あれは合格取り消しだと思う…。」

 

セントエルモは諦めたように言う。

 

「そんなことない!提督は…しっかりと約束を守る人だよ!誰よりも私たちのことを考えて、お願いを叶えられる範囲なら叶えてくれる良い人だよ!」

 

「そうかもしれないけど…。それは私の弱点を知る前でしょ…?」

 

「…でも、そんなことしないはずだよ!三日月ちゃんだって、提督にはとても言えないようなことをしていたよ。でも、提督はちゃんと受け入れてくれる良い人だよ!」

 

「その三日月って人何したの…?まぁいいや。良い人なのはわかるよ。追い出されないと思うし…。でも、艦娘としての務めは果たさせてもらえないかもしれない…。」

 

「そんなことない!」

 

そこに…。

 

『セントエルモ、まだか?』

 

ジナイーダの放送が入った。

 

「…もう、行かなくちゃいけないね…。それじゃぁ…。」

 

「待って!」

 

「?」

 

「賭けをしましょう!あなたの言う通り、合格取り消しだったら私の負けよ!でも、取り消しされなかったら私の勝ち!私が勝ったら、私の言うことを一つ聞いて!」

 

「…わかった。そのかわり私が勝ったら私の言うことを一つ聞いてね。」

 

そう言ってセントエルモはドミナントのところへ行った。

 

…………

遡ること数分前。

 

……遅いな。セントエルモは何しているんだろう?

 

ドミナントは控え室の前まで来ていた。すると…。

 

『そんなことない!提督は…しっかりと約束を守る人だよ!誰よりも私たちのことを考えて、……。』

 

……夕張?なんでそんなに声を荒げているんだ?それに、なんだ?俺の評価がひどくない?セントエルモはどれだけ俺の評価が低いんだ…?それに夕張…、なんか小っ恥ずかしいことを言わないでくれ、俺はそこまで良い人じゃない。

 

そう思ったところに…。

 

『セントエルモ、まだか?』

 

ジナイーダから放送が入る。

 

……やばい!早く戻らなくては…。

 

ドミナントは走って行った。

 

…………

 

「何か用ですか…?」

 

セントエルモは元気なく言う。

 

……やばいな。俺の評価が最低ランクのセントエルモ…。少しでも好感度を上げなくては…。

 

「あ、ああ。だが、まずはお茶はどうだ?」

 

ドミナントはテーブルと椅子を用意していた。

 

「いえ、いいですから要件を言ってください…。」

 

「oh…。」

 

……ダメか…。

 

「いやぁ、今日はいい天気だねぇ。」

 

ドミナントは露骨に話をそらす。

 

「ドミナント提督…。」

 

セントエルモはドミナントに少し敵意を向けた気がした。

 

……やばいな…。これ以上は好感度が逆に下がる…。言うしかないか…。

 

「セントエルモ…、重大な発表がある…。」

 

「…はい…。」

 

……取り消しなんだろうなぁ…。

 

「だがまずは合格おめでとう。編成はしっかりとこちらが決めるから、安心して敵に攻撃をしてくれ。」

 

「えっ…?」

 

……合格?なんで?取り柄がないじゃん…?

 

「ど、どうして合格なんですか?」

 

「えっ?だって、前半で合格したじゃん。主任に当てるのなんて、深海棲艦eliteで編成させられた艦隊を一人で倒すのくらい難しいし。」

 

ドミナントは不思議そうに言う。

 

「それに、取り柄がないわけがない。生きているものには必ず取り柄がある。自分を無意味に思うかもしれないけど、必ず良いところがある。取り柄がないと思っているのは気づいていないだけだ。」

 

ドミナントはセントエルモの目を見てしっかりと言う。

 

「まぁ、確かにDランクのところはアレだが…。主任の辛口ランクだ。俺が思うにCランクくらいじゃないか?」

 

ドミナントはセントエルモを励まそうとしている。

 

「そ、そうなんですか?」

 

セントエルモは意外な言葉に驚いているが…。

 

「あと…重大な発表がある…。」

 

ドミナントは険しい顔をして言う。

 

「?」

 

「実は…その…。当分演習づくしだと思う…。みんなのレベルが高すぎるから、差別をなくすためにレベルを高くしてもらいたい…。」

 

「えっ…?そんなことですか?いいですよ。」

 

……ああ、この返事は演習を分かっていない返事だ…。

 

ドミナントは心の中でセントエルモを哀れに思った。演習をしたあと、セントエルモは元気が10分の1まで下がったことは言うまでもない。




はい!おしまいです!なんかいまいち…。最終話を盛り上げ過ぎたからでしょうか…?まぁ気にしない気にしない。
登場人物紹介コーナー
誰もいない。
次回!第59話「ジナイーダとの約束」お楽しみに!


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59話 ジナイーダの約束

ナニカ…サレタヨウダ……。オソク…ナッタ……。
「筆者さん、なんか怖いよ…?」
サツキ…アトハ…タノム……。オレノカワリニ…アラスジヲ…イッテクレ……。
「わ、わかった。」

あらすじ
前回、セントエルモちゃんのランクがDで、ボク驚いちゃった。だって、前半高得点だったのにDなんてさ。主任さ…教官の判定が間違っているってことはないと思うんだけど…。何かあるのかな?


…………

 

「…で、どうだったの?」

 

夕張は目を瞬かせて聞く。(だが少し不安そうだ)

 

「……。」

 

セントエルモは夕張と賭けをしていた。合格が取り消されればセントエルモの勝ちだったが、取り消されなかった。

 

「…受かった。」

 

「やっぱりね〜。」

 

セントエルモの少し嬉しそうな声に夕張は安堵する。

 

「セントエルモちゃん。約束…忘れていないよね?」

 

「…うん。」

 

「それじゃぁ、行こっか。」

 

「えっ?どこか行かなくちゃダメなの?」

 

「うん!二人だけだと無理だから。」

 

……いったいどんなお願いをされるんだろう…。

 

セントエルモは夕張の後をついていく。

 

「あっ!ジナイーダさん!手伝ってください!」

 

「…なんだ?」

 

……ジナイーダさんに頼むとは…。何をさせるつもりなんだろう…。

 

セントエルモはジナイーダと話している夕張を見る。

 

「…よし!それじゃぁセントエルモちゃん!こっちに来て。」

 

夕張はジナイーダにカメラを渡した。

 

「…わかった。」

 

……写真か…。そんなので良いのか?

 

「私の隣に来て笑って。」

 

「…こ、こうか…?」

 

「…もっとくっついて!それに、無理して笑っている感満載だよ…。」

 

「無理に言われても…。」

 

セントエルモはなかなか自然な笑みにならない。

 

「早くしろ。…いや、いい。ゆっくり悩め。そして悔いのないようにしろ。」

 

ジナイーダは、カメラを持ったまま待つ。

 

「?ジナイーダさん、どうしたんですか?いつもなら急かすのに。」

 

「…私の気分だ。」

 

……それに、私はこの世界に親友が転生していたが、お前たちは沈んだら最後だからな…。

 

ジナイーダは心の中でつぶやく。

 

「?。まぁいいや。セントエルモちゃん、どうしたら笑顔になるの?」

 

「…わからない。」

 

「ふぅん…。そうなんだ。それじゃぁ…。」

 

「夕張ちゃん…何を…?」

 

夕張はセントエルモをくすぐっていた。

 

「フ…ふふふふ…。」

 

「ジナイーダさん!今です!」

 

「わ、わかった。」

 

カシャッ

 

「…撮ったぞ。」

 

「やりましたね!」

 

夕張は写真を確認する。

 

「……。ブレすぎです。」

 

「動きまくっていたからな。」

 

そして、また写真を撮ろうとするが、笑顔にならない。無表情だ。すると…。

 

「…セントエルモ、なぜ笑顔にならない?」

 

「何故だか笑顔にならないの…。」

 

ジナイーダが聞き、答える。

 

……笑顔の仕方がわからないのか?

 

ジナイーダはそう思い…。

 

「セントエルモ、やり方がわからないなら考えてみろ。夕張はお前の何だ?」

 

ジナイーダの短い質問…。だが、これはその言葉だけで様々な意味があることを物語っている。

 

「私は、夕張ちゃんの親友。」

 

「だろうな。だとしたら今の状況をどう考える?」

 

「…すごく失礼。」

 

「だろ?ならば、夕張のことを考えろ。」

 

「夕張ちゃんのこと?」

 

「そうだ。」

 

……夕張ちゃん…。

 

セントエルモは考えた。この鎮守府に来て間もないが、夕張がいつも一緒にいることを…。優しい言葉をかけてくれたことを…。

 

「……。」

 

「…笑顔になったな。夕張、並べ。」

 

「わかった!」

 

カシャッ

 

「どうですか?」

 

「完璧だ。」

 

そこに写っていたのは誰がどう見ても『親友』と思える写真だった。

 

…………

 

「よし!これで約束は果たせたね!」

 

「え?本当にこれだけなの?」

 

「うん!そうだよ!」

 

そう話をして二人はどこかへ行った。

 

「…約束…か…。」

 

ジナイーダは呟く。

 

……あいつ、思い出さないのか…。…いや、まだだ。きっと思い出してくれるはずだ。それまで待とう。

 

ジナイーダはあの日…ドミナントが暴走した日に約束をしてずっと待っていたのだ。

 

……思い出さないんじゃないか?…いや、思い出してくれなくては困る。さもなくばアレが…。

 

ジナイーダは密かに思っていた。

 

…………

同時刻

 

「ここはいつ見ても機材だらけだな。」

 

ドミナントは倉庫に来ていた。

 

「あっ、ドミナントさん。どうかしたんですか?」

 

セラフが言う。

 

「ああ。少しばかし点検をな。最近資材の消費量が不自然でな。」

 

「そうですか。…ところで、この鎮守府には酒屋がないんですか?」

 

「…?セラフは呑むのか?」

 

ドミナントは驚いたようだ。

 

「いえ、私は呑みませんが、一部の艦娘たちの会話を耳にしてしまって…。」

 

「なるほど…。俺は呑まないからな(呑んだら強制的に暴走したようになる)。…今度作るか…。セラフ、またお前に頼ってしまうが大丈夫か?」

 

「大丈夫です。それに、ジャックさんからも“仕事がないから手伝うことはあるか?”ってよく言われますし。」

 

「さすが匠。ベテランは違うねぇ〜。」

 

ドミナントが感心する。

 

「あっ、ジャックさんで思い出しました。ジナイーダさんの件なんですが…。」

 

「ん?ジナイーダがどうかしたのか?」

 

「…覚えていないんですね…。まぁ、私や神様の約束を忘れていたからなんとなくわかってましたけど…。」

 

「…デートか?」

 

「いえ、違います。なんか目的がどうのこうのだとか…。」

 

「目的?」

 

「あっ、これ以上は言えません。あと、ジナイーダさんはドミナントさん自身が思い出してくれるのをずっと待っています。それと、私が教えたことは黙っていてください。」

 

「あ、ああ。わかった…。ありがとう…。」

 

ドミナントは不安に思うが、とにかく今はお礼を言った。

 

…………

 

……次はジナイーダか…どうやらこの世界はAC世界出身のやつをおかしくさせるようだな…。

 

ドミナントは一人で歩いている最中に思っていた。

 

……ジナイーダのところへ行くべきだろうが…、先客がいるのでな。

 

そうドミナントが思って、裏庭へ行く。

 

…………

裏庭

 

「hey!提督ー!」

 

金剛型4姉妹はお茶会を開いていて、ドミナントは呼ばれているのだ。

 

「遅くなった。許しは請わん、恨めよ。」

 

「別に恨むほどのことではありません。」

 

「榛名も、責めたりしません!」

 

「いつでも準備、出来てます!」

 

霧島、榛名、比叡が口々に言う。一方、金剛はドミナントにベタベタしているが…。

 

「ところで提督、紅茶が好きで作ったりもするというのは本当でしょうか?」

 

「うむ。…だが好きではなく趣味だがな。」

 

榛名が質問して、ドミナントは短く答える。

 

「なるほど…。では、好きな銘柄などは?」

 

「ふむ。それは悩むな…。気分によって飲むものが違うからな…。だが、よく飲むものとしてはウヴァだ。」

 

「なるほど、そうきましたか…。」

 

霧島も質問して、ドミナントが正直に答える。

 

「資格とかは持っていたりするんですか?」

 

「いや、持っていない。資格を取ろうとも思わない。なぜならこれは趣味だからな。真面目にやるものではなく、楽しむから趣味なんだ。」

 

「なるほど…。」

 

比叡がキャンディを飲みながら言う。

 

……そう思ってみれば、皆はそれぞれどのような紅茶を飲むんだ…?

 

ドミナントは紅茶仲間の趣味を知ろうとする。

 

……比叡はキャンディで、榛名はニルギリ、霧島はローズティーか。面白い組み合わせだな。金剛の方はどうだろう?

 

ドミナントはスコーンを食べながら姉妹たちと話をする金剛を見る。

 

「!。金剛…それは…。」

 

「提督?どうしまシタ?」

 

金剛が飲んでいるものはイングリッシュブレックファーストティーだった。

 

「金剛…それは本場か…?」

 

「exactly(その通り)。提督も飲むですカ?」

 

「…いいのか?」

 

「もちろんデース。紅茶をわかっている人に飲んでもらいたいネー。」

 

そう言って、金剛はドミナントに紅茶を淹れる。

 

「では…ありがたく…。…うまいな。渋みが効いているが、それが良い。そして濃い味わいだな。名前の通り朝食にピッタリだ。そこらに売っているのとは一味も二味も違う。」

 

「ふふふ…提督は分かっているネー。」

 

ドミナントが淡々と感想を言い、金剛が嬉しそうになる。その後、ドミナントはお茶会にたまに来るようになったのは言うまでもない。

 

…………

その日の深夜

 

「ジナイーダ、起きているか?」

 

ドミナントはジナイーダの自室の前にいる。

 

『起きている。…実を言うと、私の部屋に接近してくる気配がしたから勝手に目が覚めてしまってな…。…何か用か?』

 

「すまなかったな。それはそうと、いつしかの約束を果たしにきた。」

 

『!?。思い出してくれたのか…。…いや、待て、セラフだな。その情報を教えたのは…。セラフめ…あれほど教えるなと言ったのに…。』

 

ジナイーダは一瞬にして犯人を割り出す。

 

「まぁ、わかっているのなら話が早い。…明日は休みだ。空いているか?」

 

『…返事は明日返そう。それまでに調べておく。』

 

「何をだ?…まぁいい。それでは明日まで待つ。…起こす時は優しく頼むぞ。」

 

『努力はしよう。』

 

やり取りをしたあと、ドミナントは自室へ戻った。




はい!終わりました。次回ははちゃめちゃな1日になりそうですね〜…。ドミナントはお茶も深夜アニメも大好きです。だって、25歳だもの…。
登場人物紹介コーナー
比叡…金剛型2番艦!恋も戦いも負けません!比叡です!ドォォォン…。とまぁ、お姉さまが大好きな比叡。提督とお姉さまの好意は3:4くらい。料理に関してはジナイーダと良い勝負。メシマズが二人に増えてドミナントも少し危機感を覚えている。
榛名…同じく3番艦。榛名、全力で、参ります!ドガァァン…。礼儀正しく謙虚な子。ドミナントが応援するタイプ。ドミナントがどの紅茶を作っているのか、いつもよりどうやったら美味しく淹れられるのか知りたいと思っている。
霧島…同じく4番艦。艦隊の頭脳。霧島!ドゴォォォン…。と、言っているが、実際は筋肉論である。ドミナントはそのことを知っているが、あえて触れない。ドミナントに遠回しな好意を伝えようとするが、ドミナントもちろん気づいていない。(いや、知っているがそんなことはないと決めつけている。)
次回!第60話「ジナイーダとの過激な一日」お楽しみに!


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60話 ジナイーダとの過激な一日(1)

はい…60話…。何も言うことがないので、あらすじにいきます。今回は長月だ。
「いいだろう。私が相手になろう。」
では、どうぞ。

あらすじだ
自由時間といっても、暇だった。…司令官は金剛型の人たちとお茶会を開いていたな。司令官はお茶好きでもあるのか。覚えておこう。そう思ってみれば、最近深海棲艦が姿を現さないな。…不安だな…。


…………

翌朝 提督自室

 

「グー…グー…。」

 

現在時刻マルゴーマルマル。ドミナントはベッドで心安らかに寝ている。そこに…。

 

コンコン…

 

ドアのノックされる音がする。

 

『入るぞ。』

 

AC化しているジナイーダが入ってきた。しかし、ドミナントはそんなこと気がつかずに寝ている。

 

「起きろ。」

 

「グー…。」

 

ジナイーダは優しく揺さぶるが、ドミナントは起きない。それを5回ほど続けたあと…。

 

「……。仕方がないな。」

 

ドンッ!

 

ジナイーダは起きないと思い、ドミナントをベッドから思い切り突き飛ばしたのだ。

 

「!?」

 

ドミナントは思わずに驚く。突然の出来事に体が追いつかず、ベッドから落ちた。

 

「ぐっ…。ジナイーダ!?何をするんだ!?…ところで、なんでACになっているんだ?」

 

ドミナントはいきなり落とされたことに、ジナイーダに問い詰める。

 

「……。別に良いだろう。それに、なぜ落としたかというとお前が起きないからだ。」

 

ジナイーダはしれっとして言う。

 

「…ところで行くか行かないか決まったのか?」

 

「ああ。行く。…早く着替えろ。」

 

ジナイーダはそう言って、ドアの外へ出る。

 

数分後

 

『いいぞ。』

 

「わかった。」

 

ジナイーダは部屋に入り、ドミナントを見る。

 

「どうだ?」

 

「……。ないな。」

 

「へっ?」

 

「その服装はなんだ?出かけるとわかってての服装か?もう少し格好をつけろ。」

 

ドミナントは上下黒い服を着て、リュックサックを背負っている。

 

「えぇ…。服なんてどうでも良いと思うんだけどなぁ…。」

 

「私と共に街に行くのだぞ?一緒に歩く身にもなってみろ。」

 

ジナイーダはそう言って、クローゼットの中をあさる。

 

「スーツか…。違うな…。…いや、だがそれもありか…?」

 

ジナイーダはあさりながら調べる。

 

「…着たい服を着れば良いか…?いや、だがそれだと…。」

 

一人で呟いていると、何かを発見する。クローゼットの扉の端に目立たないようにくっついているものを…。

 

「…ドミナント、これは何だ?」

 

「ん?なにそれ?」

 

ジナイーダが持っている四角い、黒くて小さいものを見て、首をかしげる。

 

「…盗聴器だな…。…艦娘たちめ…ついに一線を超えたか…?」

 

「盗聴器…。…お仕置きが必要か?ジナイーダ、誰が仕掛けたか調べられるか?」

 

「造作もない。」

 

そう言ってジナイーダは人間に戻り、電源を切ってポケットにしまう。

 

「…ジナイーダもそんな服着るんだな…。」

 

「なんだ?私がワンピースを着てはいけないのか?…まぁ、似合っていないと思うがな…。」

 

ジナイーダは目をそらしながら言う。

 

「…そんなことはないと思うぞ。」

 

「嘘をつくな…。私自身が重々わかっている。」

 

「そうか?…だがこれだけはわかってほしい。」

 

「なんだ?」

 

「世間からどう見えているかは分からないが…。少なくとも俺一人は可愛いと思っている。」

 

「そ、そうか。…ありが…とう…。」

 

ジナイーダは少し戸惑っていたが、すぐに元に戻る。

 

「まぁ、それは置いといてだ。早く行くぞ。目的を達成せねば…。」

 

「…目的?」

 

「ああ。まぁ、逃げ出さないように内容は行ってから言うがな。…フッフッフッ…。」

 

ジナイーダは不敵な笑みを浮かべる。

 

……怖い…。ジナイーダが何を考えているのかわからない…。

 

ドミナントは思っていると…。

 

「これだ。まぁ、妥協してだがな。早くこれに着替えろ。」

 

ジナイーダが服を渡し、部屋から出る。

 

「なんだろ?これ。」

 

ドミナントは一人呟き、着替える。

 

数分後

 

『着替えたよ。』

 

「わかった。」

 

扉をあけて入る。

 

「…まぁ、さっきの服装よりかはマシだな。」

 

ジナイーダが渡したのは、テーラードジャケット、暗い茶色のチノパン、白いワイシャツである。

 

……こんなもの、いつ買ったっけ…?

 

ドミナントは考えるが、わからない。

 

「ところで、この盗聴器はどうする?」

 

「…。あぁ、そうか。…どうしよう?…犯人はわかったか?」

 

「いや、道具がないからわからん。帰ったら調べよう。それまで私が預かっておく。」

 

ジナイーダは再びポケットに入れた。

 

…………

とある部屋

 

「盗聴器が発見されたデース!」

 

某戦艦が叫ぶ。

 

「大丈夫!ドミナントなら許してくれる!」

 

世界創造主は余裕そうだ。

 

「むむ…。これでは司令官の取材が…。」

 

某重巡洋艦が唸る。

 

「ジナイーダさんにバレちゃったねぇ。」

 

とある企業のご令嬢がニヤニヤしながら言う。

そう、艦娘たちが集まって話しをしているのだ。(若干一名艦娘ではないが…。)

 

「提督なら平気かもしれませんが…、ジナイーダさんとなると…。」

 

「夕張ちゃん、何しているの?探したよ。」

 

「あっ!な、なんでもないよ!それより倉庫行くんだったね!早く行こう。」

 

夕張はセントエルモを連れて倉庫へ行く。

 

「……。仲良いね。ボクも司令官とあれくらい…。」

 

「ふふふ。確かにそうですね。でも、それはみんな思っていること。…提督が誰に好意を抱いても、恨みっこなしでね。」

 

重巡洋艦のキャリアウーマンが言い、みんな頷く。

 

…………

 

「ジナイーダ…どこまで行くんだ…?」

 

「もう少しのはずだ。」

 

現在、ドミナントたちはバスに乗っている。

 

「さっきからそればっかりじゃな…」

 

キィィ!

 

バスが止まる。

 

「降りるぞ。」

 

「ここでか…。」

 

ジナイーダたちがいるのは動物園である。

 

「……。まさか、ライオンと決闘しろなんて言わないよな?」

 

「言うわけないだろ…。なんだそれ…?まぁいい。私は見たい動物がいるのでな。」

 

ドミナントはチケットを買い、ジナイーダと二人で入る。

 

…………

 

「司令官、動物園に入りましたね。」

 

「そうですね。ジナイーダさんと一緒です。」

 

「しれぇ…楽しそうですね…私とは危険な旅しかしたことがないのに…。」

 

今回もやっぱり、監視役がいる。

 

「私たちも行くべきでしょうか?」

 

吹雪がセラフに聞く。

 

「いえ、ここで待ちます。ジナイーダさんはドミナントさんにやってもらいたいことがあるみたいなので、おそらくすぐに出てくると思います。」

 

「えっ…。それじゃぁ、勿体無いんじゃ…?」

 

「ジナイーダさんは存分に今日を満喫するつもりですね。」

 

雪風が疑問に思い、セラフが答える。

 

「あ、あの!セラフさん!…あの…司令官とジナイーダさんは…やっぱり、彼氏彼女の関係なのでしょうか…?なんか、いやに仲が良く見えますし、ジナイーダさんには…なんというか…、司令官が安心しているように見えて…。」

 

吹雪が体をもじもじしながら言う。雪風は真剣に見守っていた。

 

「うーん…。確かに、そう思えるところもありますね。でも、少なくとも“彼氏”の方は思っていないと思いますし、“彼女”の方もまるっきり無いと思います。…ただ、この関係がワンランク上にいくとわかりませんね。」

 

セラフは答え、吹雪と雪風はそっと胸をなでおろす。そうしていると…。

 

「あっ、ジナイーダさんが帰ってきました。」

 

セラフはドミナントたちを見つける。

 

…………

数分前

 

「ジナイーダ、見たい動物とはなんだ?」

 

ドミナントはジナイーダに聞く。

 

「ワタリガラス、猫、カナブンだ。」

 

「うん、カナブンは虫だし、猫はいないと思うぞ?」

 

ドミナントがツッコムと…。

 

「騙して悪いが、あそこの展示コーナーは昆虫類もいるし、ふれあい動物園で猫にも触れる。」

 

「まいった。」

 

どうやら、ジナイーダはよく調べていたらしい。

 

数分後

 

「全て見た。次の場所行くぞ。」

 

「え?次の場所?…て、うわぁ!」

 

ジナイーダがドミナントの手を引っ張り、外へ出ようとする。

 

……あれ?これってデジャヴ?

 

「……。てか、どこへ行くんだ?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「次は映画だ。」




はい!終わりました!少し遅くなりました。筆者が多忙のため…。あーあ、守銭奴の筆者も変わりましたね。
登場人物紹介コーナー
某重巡洋艦…取材が大好き。鎮守府でたまに新聞を作る、妖精さんと同じ情報屋。
某重巡洋艦のキャリアウーマン…仕事人。妹がパンパカ賑やかにやっている。後輩からも慕わられていている。恐ろしいリーダーシップの持つ子。
次回!第61話「ジナイーダとの過激な一日(2)」お楽しみに!


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61話 ジナイーダとの過激な一日(2)

61話。100話まで行けるかな?まぁ、努力はします。最終話はバッドエンドと普通エンドどっちがいいかな?
はい、ではあらすじに入りたいと思います。今回は…皆さんお待ちかねの文月です!
「え?なになに?」
…眠そうだね。前みたいに暴走しないでくれよ…。眠りたい時などは暴走しちゃうんだから…。じゃ、あらすじをどうぞ〜。
「わかったぁ〜。」

あらすじ
朝起きたら司令官がいないの…。今日は司令官が休みの日だから遊ぼうと思ったのにぃ〜。私に内緒でみんなが司令室に盗聴器を仕掛けるなんて…。どいつもこいつも!役立たずのクズどもが!…あっ…また言っちゃった…。ごめんなさぁい…。


…………

 

「で、またバスに乗るのか…。」

 

「ああ。」

 

ドミナントは動物園から出て、バスに乗る。

 

「……。何分くらいに着く?」

 

「早くて30分だろう。今のうちに寝ておけ。…早く起こしすぎてしまったからな。」

 

ジナイーダはそれなりには心配してくれている。

 

「わかった。ならばお言葉に甘えて…。」

 

「ただし、イビキをかいたら叩き起こすからな。覚悟しておけよ。」

 

「えぇ…。」

 

だが、やっぱりジナイーダはジナイーダである。

 

…………

 

「次はどこへ行くんでしょうね?」

 

セラフが遠くの建物の上で双眼鏡を覗きながら言う。

 

「双眼鏡だけだと、声が聞こえませんからね。」

 

「ジナイーダさん…。いいなぁ…。しれぇと…。」

 

吹雪も眺めて、雪風は物欲しそうに見ている。

 

「まぁ、次はどこに行くとしても、あんなことはないと思います。まぁ、あの盗聴器は神様に頼まれて私が作った特別製ですからね。発信機も兼ねてますし…。」

 

「神様…変態ですね…。」

 

「…。まぁ、気持ちは分からなくはないけど…。しれぇにバレたら怒られると思うし…。」

 

3人はそれぞれ話していた。

 

…………

 

「着いたぞ。」

 

「クー…。ん?着いたか?」

 

ドミナントは起きてバスから降りる。

 

「ここから歩く。5分くらいだ。」

 

「まだ行くのか…。てか、朝食食べてないよね。どこか食べよう?」

 

「いや、その時間が勿体無い。早く行くぞ。」

 

「朝食抜きかよ…。」

 

ドミナントはジナイーダに案内される。

 

「着いたな。で、何を見るんだ?」

 

「これだ。」

 

「…ホラーか。」

 

「ああそうだ。」

 

そう言って入っていった。

 

…………

少し離れたところ

 

「映画館の中とは…。何を見るんでしょうね?」

 

「お腹空いたなぁ…。」

 

「司令官は何も食べないんでしょうか?」

 

3人はそれぞれ言う。

 

「…映画館、行きますか?ちょうどお金持ってますし。」

 

「えっ?いいんですか!?」

 

「やったー!」

 

セラフが言い、3人が喜ぶ。

 

…………

映画館の中

 

「ふむ…。ホラーか…。」

 

……ホラーといえば、女の子が叫び、男の方に抱きつくのが定番だが…。

 

「ん?どうした?ドミナント。」

 

……あるわけがないな。…いや、逆もあり…か…?いや、ないな。逆は死んでもごめんです…。マジで…。

 

ドミナントはホラー映画のジナイーダを想像し、失礼なことを考える。

 

「いや、なんでもない。早く行こう。」

 

「そうだな。」

 

そして二人は映画を見るため、定番の飲み物とポップコーンをジナイーダに奢って席に着く。ドミナントはこの先どんなことがあるかわからないため、なるべくお金を使わない。

 

……今日だけでこんなにお金を消費するとは…。しかもまだ昼の1時…。…持っているお金で足りるかな…?それにしても、お腹空いたな。てか、どれだけの時間バスや電車に乗ってたんだろう…。

 

それは筆者の都合というものである。すると、後ろから声が聞こえてくる。

 

『わぁ〜、映画館来たのは初めてです。こんな風になっているんだ…。』

 

『でも、ホラーは少し…。』

 

『まぁ、ホラーにはいないと思いますし、どこか移動したら追いかけますので。』

 

……。何がいないんだろう?警察?何か凶悪犯がいるのかな?…まぁ、気にしない気にしない。

 

ドミナントがそんなことを考えていると…。

 

「…ん。」

 

「どうした?ジナイーダ?」

 

ジナイーダはドミナントを見ず、持っているポップコーンをドミナントに近づける。

 

「…腹が減っただろう。…やる。」

 

ジナイーダがドミナントに恵んでくれた。と言っても、ドミナントのお金で買ったのだから何かおかしい気もするが…。

 

「そうか。ありがとう。」

 

ドミナントとジナイーダは映画を見ながら二人で一つのポップコーンを食べた。

 

…………

映画が終わる

 

「ふむ。…そうでもなかったな。」

 

ドミナントは呟いた。

 

「し、仕方がないだろう。戦場ではあんなものいないからな…。」

 

そう、ジナイーダは余裕だと思っていたが、2回ほどドミナントに抱きついた。しかし、ドミナントも平常を保っているが、いい歳して夜トイレに行けないかもしれないという不安を抱いている。すると…。

 

「全員動くな!!この映画館は俺たちが占拠した!!」

 

アサルトライフルを持った覆面集団が出入り口を塞ぐ。

 

……どうして、いつも誰かと何かするときこんなことに巻き込まれるの?たまには何もなく終わるのもいいじゃないか?なんで?

 

ドミナントは一人そう考えている。これは迷宮入りの謎である。

 

「全員、携帯と連絡手段として使っているものをこの袋に入れろ!!…あとで一人一人チェックする。もし、その時持っていたら容赦なく蜂の巣にする!」

 

覆面の一人が袋を持って順番に回る。すると、ジナイーダが耳元で囁く…。

 

「あの集団、殺していいか?時間も押しているからな。」

 

「いや、もし提督がいるとバレたら、メディアから“第4佐世保鎮守府提督、仕事をせずにデート!?”などと叩かれるぞ?そうなったら終わりだ。今はおとなしくしておこう…。」

 

「しかし…。」

 

二人でヒソヒソと話していると…。

 

「おい!お前たち!何を話している!!動くなと言っただろうが!!」

 

銃口を向けられる。

 

「す、すみません。」

 

「……。」

 

ジナイーダは何も言わない。それどころか、相手を睨みつけている。

 

「…おい、ジナイーダ。」

 

「……。」

 

ドミナントは小声で呼ぶが、睨んでいるだけである。

 

「…おい、女。何睨んでるんだ!?ああ!?頭ブチ抜くぞ!?」

 

「ま、待ってくれ!この子の分は俺が謝る。だから許してやってくれ。」

 

テロリストの一人が言い、ドミナントが頭を下げる。

 

「いいや。ダメだな。そいつ自身が謝らなければ俺はやめる気はない。」

 

だが、テロリストの一人は許してくれない。

 

「ジナイーダ…。」

 

ドミナントは困った目をしてジナイーダを見つめる。

 

「…悪かった。すまない。」

 

ジナイーダはそれを見て、素直に謝る。

 

……私のせいでドミナントに迷惑をかけるのは違うからな…。

 

ジナイーダはそう思っているが…。

 

「おーおー、感動的だねー。なんて言うと思ったか!?クズどもめ!死ね!!」

 

『キャー!』

 

そして銃口を構え、人が叫び、撃とうとするが…。

 

ボギッ…

 

何かがへし折れる音がする…。

 

「えっ?……ぐぁぁぁぁぁ!?」

 

ドミナントたちに銃を向けた男が腕を抑えながらのたうちまわる…。そう、ジナイーダに腕を折られたのだ。

 

「お前っ!何をしている!?」

 

「手をあげろ!!」

 

集団はのたうちまわる仲間を目の端に見て、ジナイーダにレーザーサイトを当てる。

 

「…おい、今“クズ”と言ったか?」

 

ジナイーダはのたうちまわる男を踏みつけ、聞く。

 

「私の仲間に言ったのか?」

 

「手を上げろと言って…」

 

「うるさいぞ…!」

 

「ひぃぃぃ…。」

 

ジナイーダは睨む。たとえ武器を持ったテロリストでも、いくつもの戦場を駆け、何人もの強者を屠ってきた彼女の殺意ある瞳を見れば、恐れてしまうのは仕方がないことだ。

 

「ひぃぃ…。」

 

男は腕を抑えながら後ずさる。

 

「言ったのかと聞いている…。」

 

ジナイーダはゆっくりと距離を詰める。

 

……おー…。怖い…。テロリストも恐れているよ。

 

ドミナントは一人、そう思っている。しかし、このままだと殺してしまうかもしれないので、ジナイーダを止める。

 

「ジナイーダ、もうやめろ。時間がないぞ。」

 

「…そうだったな。じゃぁ、このゴタゴタを終わらせるか…。」

 

ジナイーダはそう言った後、人間とは思えない身体能力で相手に近づき、殴って気絶させていった。

 

「…俺はいつもあのパンチを食らっているのか…。…やっぱり俺が最強か〜。」

 

ドミナントは耐性をつけてきたが、ただの人間がくらえば気絶は確実である。

 

「終わった。早く行くぞ。」

 

「仕事が早いな。ジナイーダも。」

 

そう言ってドミナントはジナイーダの後を追っていった。




はい!終わりました。…なんか、話が進まない…。3時間かかってこれとは…そろそろ潮時か…?
登場人物紹介コーナー
映画館に来ていた人…暇人。暇人以外の何者でもない。ドミナントたちは気づいていないが、そのうち約60%はリア充であり、テロリストが狙った理由でもある。
テロリスト…レジスタンスではない。ただのテロリストだ!
次回!第62話「ジナイーダとの過激な一日(3)」お楽しみに!


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62話 ジナイーダとの過激な一日(3)

はい!きました62話!…あれからもう随分と経つ…。あの時も、お前のような奴がいた…。やっと追い続けたものに、手が届いた気がする…。
では、あらすじにいこう。今回は長門さんですね。
「わかった。私がやろう。」

あらすじ
今日は暇だった。提督を遊びに誘おうと思って自室へ入ってみたが、提督はいなかった。…まぁ、そのかわりに艦娘がたくさんいたがな…。あろうことか提督の私物で遊んでいたり、匂いを嗅いだり、寝転がっていたりしていた。…全く、皆はしょうがないな。

…そう言う長門さんは何寝っ転がってるんすか…。ベッド壊れま…ぐはぁぁ!!


…………

 

「ふぅ、バレずにすみましたね。」

 

「それにしても、まさかここに司令官たちがいるなんて…。」

 

セラフと吹雪が言う。映画館でドミナントと同じ映画を見ていた。

 

「しれぇ…。あんな映画が好きなんですか…。一緒になれそうにありません…。夜トイレ行けない…。」

 

雪風は震えながら言う。

 

「雪風ちゃん、なんか呑気だね…。私、今の騒動でそっちに感想いかなかったよ。」

 

吹雪が苦笑いをする。

 

「安心してください。多分この映画を選択したのはジナイーダさんですよ。ドミナントさんはどっちかというと、面白いのが好きそうですし。」

 

セラフは丁寧に解説してくれる。

 

「そ、そうなんですか…。よかったです。」

 

雪風は胸をなでおろす。

 

「…それより、このテロリスト集団どうします?ジナイーダさん気絶させたまま行ってしまいましたし…。お客さんたちは急いで逃げて行っちゃいましたし…。私たちは後を追いたいですし…。」

 

吹雪が言っていると…。

 

「やあ、このテロリスト共は僕に任せてよ。君たちは何か用事があるようだしさ。」

 

どこからともなく20代前半?の男が現れる。

 

「あなた…何者ですか?さっきまで気配はなかったはずです…。ここまで気配を消せるのはただの一般人には無理です。軍のスパイや国の諜報員ですか?」

 

セラフが警戒心丸出しで聞く。

 

「…まぁ、これだけは教えてあげるよ。僕はこの映画館にいた一人だよ。」

 

男は余裕そうに言う。

 

「質問に答えてください。」

 

「素晴らしい執念だ。でも教えられないし、何も出来ない。このテロリスト共を片付ける以外は。」

 

セラフがもう一度聞くが、男は同じようなことしか言わない。

 

……掴めない人ですね…。おそらく、カマかけても引っかからないと思いますし、これ以上質問しても意味がなさそうですね…。それに何よりも、この人とあまり長話はしてはいけないような気がします…。

 

セラフはそう考え、吹雪たちに説明した後、男にこの場を託してドミナントを監視に行った。

 

「……。さてと…じゃぁ、始めようか。」

 

そして男はテロリストを片付ける…。

 

…………

 

「で、どこに行くんだ?」

 

ドミナントは走った後、ジナイーダとともにタクシーに乗っている。

 

「そうだな…。今何時だ?」

 

「…昼の1時くらいだ。」

 

「そうか…。ならばどこか食べに行くか。…アレは確か3時くらいだった気がするし…。」

 

「?何がだ?」

 

「いや、なんでもない。」

 

そんな会話をしていると…。

 

「お客さん、仲良いね。デートかい?」

 

タクシーの運転手がフレンドリーに接してくる。

 

「仲が良いのは確かだが、デートではない。…いや、あるのか?どう思う?」

 

ジナイーダは首をかしげ、ドミナントを見る。

 

「いや、俺に聞かれても…。なんでわかんないんだよ…。」

 

さすがにげんなりする。

 

「はっはっは。面白いね。お客さん。…ところで、お昼を探しているんだったね。私がいい店を知ってるよ。蕎麦だけどね。」

 

「なるほど、蕎麦か…。わかった。そこにしてくれ。」

 

ジナイーダは運転手の言う蕎麦屋に目的地を決めた。

 

…………

数分後

 

「ここだよ。ここのもりそばが美味しいんだ。…ちょっと店名がアレだけどね。」

 

運転手に案内してもらった蕎麦屋…。

 

「…ありがとう。降りるぞ、ドミナント。」

 

「えっ?……わかった…。」

 

そのあとドミナントは運転手に金を払い、店に入る。

 

……まぁ、ここならへんな食べ物は出ないだろう。

 

店名[シティガート]

 

結果はとても美味しかったそうだ。

 

…………

 

「ドミナントさんたちはどこへ?」

 

「う〜ん…。あの人を相手にするべきじゃありませんでしたね。」

 

セラフが言い、吹雪が答える。

 

「そろそろ最終回の付箋もありますから、しれぇたちはそんなに遠くまでは行ってないと思います。おそらく、サッと終わるやつです。」

 

「雪風ちゃん…。それ、言っちゃいけないやつ…。」

 

「まぁそれはさておいて、発信機を頼りに行きましょう。」

 

3人はドミナントを追うのであった。

 

…………

 

「さて、今何時だ?」

 

ジナイーダはドミナントに聞く。

 

「そうだな…2時半くらいだ。」

 

ドミナントは腕時計で調べる。

 

「そうか…。ならば、目的を果たそう。」

 

ジナイーダとドミナントはそう言ってバスへ…。

 

…………

 

「ここだ。」

 

「もう着いたのか?」

 

そして、ドミナントたちは降りる。そして、ここはスイーツ店である。

 

「ああ。そしてアレを購入させてもらおう。」

 

ジナイーダはアレに指差す。

 

「……。確かに美味しそうだが…。マジかよ…。」

 

「私だって恥ずかしい。」

 

そう、ジナイーダの要求するアレとは、季節限定のカップル限定の飲み物なのだ…。ドミナントは逃げ出したくなったが、ジナイーダに行く手を阻まれる。

 

「なるほどな…。そのために連れてきたのか…。」

 

「ああ。レイヴン同士、恥をかこうとは思わないか?」

 

「いや、思わないんだけど…。」

 

「誇りはないのか…。」

 

「いや、お前が言うなよ…。意地を張れぬ誇りなど、こちらからお願い下げだ。」

 

ドミナントたちが言っている間に、順番が回ってくる。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「ああ。うさg…。いや、この飲み物を頂こう。」

 

ドミナントは恥ずかしながらも購入する。その時の目が死んでいたそうだ…。

 

…………

 

「やはり、恥ずかしいな…。」

 

「ああ。さすがにこれは予想していなかった。」

 

「まぁ、カップル専用って時点で薄々感じていたけどね…。」

 

二人用ストロー。

 

「…さすがにこれは無理だ。ジナイーダ。お前が飲め。」

 

「……。気持ちは嬉しいが…。店員に見られたら終わる気がするぞ。」

 

「……。というより、もしそうなったらお前が血を吐いて味どころの問題じゃなくなるぞ?」

 

「ふむ。確かに…。」

 

テーブルの上に飲み物一個、二人用ストロー一本。それを囲んで二人がいる。

 

…………

 

「あっ!司令官がいま……。」

 

吹雪は見つけた途端に言葉を失う。

 

「しれぇいた?……。」

 

雪風は見つけた途端に言葉を失う。

 

「?どうかしたん……。」

 

セラフは(ry

 

「……。これは夢だと言ってください…。」

 

「ううん…。これは現実だよ…。」

 

「ですよねー。」

 

「「あははは。」」

 

吹雪と雪風は死んだ目で笑う。

 

「ま、まぁ落ち着いてください。まだ二人で飲んでいませんし、あの顔から察するに、予想外みたいな感じです。まだ様子を見ましょう。」

 

セラフが二人に言い、正気を取り戻そうとする。

 

…………

 

「今なら誰も見ていない。飲め。」

 

ドミナントが半ば強制的に飲ませようとする。

 

「わ、わかった。」

 

ジナイーダはそれに答えて一瞬で飲みきった。

 

「…もう少し味わいたかったのだがな…。」

 

「終わったな。それじゃぁ行くぞ。」

 

「待て。」

 

立ち上がろうとするドミナントを呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「いや…今日はいろいろと世話になったからな…。」

 

「?」

 

「…ありがと。」

 

ジナイーダはお礼を言いながら、箱を渡した。

 

「…情報によるとこれが好きらしいからな。…まぁ、その場で開けるという失礼なことはしないと思うが…。」

 

「お、おう。もちろん。」

 

ドミナントは開けようとしていた。

 

「ふふふ…。まぁいい。帰ろう。」

 

「…こちらこそありがとな。」

 

「……。」

 

ドミナントはジナイーダの頭を撫でる。

 

……なるほど、艦娘たちが欲しがる理由も、わからなくはない…か…。

 

ジナイーダはそう考えたが、すぐにやめさせ、鎮守府へ帰った。

 

…………

 

「本当に何もありませんでしたね。」

 

「そうだね。」

 

安心している吹雪と雪風だが、セラフは何も言わなかった。

 

……気づいていないと思いますが、ワンランク上へ行ってしまったかもしれませんね。

 

セラフは思ったが、二人の精神がまた不安定にさせないように黙っていた。そして…。

 

「それじゃぁ帰りましょう。」

 

「はい!」

 

「はい。」

 

3人は鎮守府に帰ったのだ。

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。こいつらを……するのか?」

 

「アハッアハハ。いいサンプルだよ。」

 

「すごいね。この人間たちを……するなんて。僕驚いちゃった。」

 

「まぁ、なんと言っても構わないけど。君たちと出会えてよかったよ。」

 

「勘違いするな。私たちは共通の目的の為に集まっているんだ。私の目的が達成されればお前たちを裏切ることもできるのだぞ?」

 

「へぇ、僕を殺すの?…やってみろよ。」

 

「二人のどちらが強いのか興味深いね。でも、まだここで無意味に争っては本末転倒だ。」

 

暗躍者はいつの時代にも、世界にもいるのである…。




はい。不穏な感じで終わりました。これでドミジナ回は終わりです。次は、ドミ艦回が多くなると思います。
登場人物紹介コーナー
男…映画を見ていたと言っていたが…。
タクシー運転手…気の良い人。砕けた感じでお客に接するので、良い評判がある。
シティガート…どこかの団体を思い出させるが、気のせいである。…多分…。もりそばと月見そばが美味しい。
次回!第63話「五航戦」お楽しみに!


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63話 五航戦

はい。艦これはこの絡みも醍醐味ですね。しかし、過激な描写はない…と思います…。(筆者はおっとり系ほのぼのを目指しているため。)あと、ジャック・Oの役割を書き忘れていたと思います。ジャック・Oはジナイーダたちの代わりをしています。つまり、教官や先生、参謀などの役割を担っています。たまにカウンセラーや、外の珍しい物を艦娘に販売したりします。
では、あらすじに入ります。今回は…セントエルモかな?
「了解。夕張ちゃんがいなくて不安だけど頑張る。」
すまないね。

あらすじ
ドミナント提督は不在。ジナイーダ先生も不在。セラフ参謀も不在。主任教官は本日も演習卒業試験。本日は100人中2人合格者がいるみたいだ。シャワー室が混み合っていた。ジャック・O特殊店長は今日もまたドミナント提督に関連するものを売っていた。…夕張ちゃんが列に並んでいて、私もそれに付き合って疲れた…。


…………

 

『今なんて言ったの!?』

 

『事実を言っているだけよ。』

 

「?どうしたんだ?」

 

「…またあの二人か…。」

 

ドミナントとジナイーダは鎮守府に帰ってくるなり、騒いでいる方向へ向かう。

 

「ジナイーダ、知っているのか?」

 

「ああ。あの二人は仲があまり良くなくてな。授業中もたまに言い合うんだ。…まぁ、私の一声で黙らせるがな。」

 

「…その一声を聞きたくないが…。…なんとなく想像はついた。瑞鶴と加賀だな。」

 

「ああ。」

 

ドミナントは転生前の知識を使って断定する。そして、その通りだった。

 

「瑞鶴、何をしているんだ?」

 

「加賀もやめろ。」

 

「あっ、提督さん…。」

 

「先生…。」

 

ドミナントとジナイーダが止めに入る。

 

「何があった?」

 

ドミナントは聞く。

 

「実は…。」

 

…………

 

「…ということがあったのよ…。」

 

「「……。」」

 

ドミナントとジナイーダは言葉を失う。

瑞鶴の言葉を訳すと、提督はドミナントよりジャックの方が適任だという声もあり、艦娘の中でも派閥があるらしい。ドミナント派ののんびり派とジャック派の深海棲艦殲滅派。だが、圧倒的に数が多いのはドミナント派であり、ジャック派は数人しかいない。なぜなら、ジャック派はほぼ全員がジャックがドロップさせた艦娘だからだ。

 

……マジか。そんな派閥いつ出来たんだ?ジャックは知っているのか?てか、加賀はジャックがドロップさせたんだったな。てことは、俺に関係がある?…そんな派閥の中、遠征や海域開放を行なったら間違いなく多大な被害がでる。今までそんな被害がなかったのはたまたまかもしれない。詳しく話を聞く必要があるな。

 

ドミナントはそう思い、加賀に聞く。

 

「加賀、瑞鶴になんて言ったんだ?…咎めるつもりはない。考えは十人十色だ。お前の思いを聞かせてほしい。」

 

ドミナントは優しく言う。

 

「……。わかりました。瑞鶴にこう言いました。“あの無能提督より、ジャックさんの方が計画も、そして頭脳も上だから提督に適任だ。”と。」

 

「ゴフッ…。」

 

ドミナントは聞くなりダメージをくらった。

 

……加賀…。そんなことを思っていたのか…。確かに、ジャックは計画も頭脳もことを運ばせることも俺より上だ。…でも、無能提督はひどくない…?

 

ドミナントは複雑な心境になる。

 

「無能…か…。…例え艦娘といえど、容赦はしないぞ…。」

 

「ま、待て、ジナイーダ。俺は咎めるつもりはない。お前も我慢してくれ。」

 

「私自身を馬鹿にするのはまだ許せるけど…。提督さんを馬鹿にしたのは許せないわ…。」

 

「瑞鶴も我慢してくれ。」

 

敵意をさらけ出す二人を止める。

 

「…言った後ですまないが、加賀も過激な発言は控えてくれ。全員がこのようになったらさすがの俺でも対処しきれん。」

 

「……。」

 

ドミナントが言った後、加賀は何も言わずにどこかへ行った。

 

「…さて、どうしたものか。」

 

早速ドミナントは加賀の扱いに困る。

 

「皆はこの派閥があることを知っているのか?」

 

「私は知らなかった。」

 

「私は…最近知ったわ…。」

 

ジナイーダはきっぱりと断言し、瑞鶴がおずおずと言う。

 

「そうか…。だが俺の耳に入っていないなら、おそらくAC勢は誰も知らないだろう…。これから全員に俺が聞いてくる。ジナイーダは誰がジャック派なのかを聞いてきてくれ。…強制をしたり、無理強いだめだ。瑞鶴、お前は自由でいい。」

 

「お前が私をどのように見ているか疑問に思うが…まぁ、いいだろう。」

 

「わかったわ。」

 

そして、ドミナントは聞いてくるのであった。

 

…………

 

「ふむ…。そんなことがあったのか。」

 

「ああ。…知っていたのか?」

 

「いや、ない。まさか加賀がな…。」

 

ジャックはドミナントが来るなり、急いで売り物をしまい、話を聞いた。

 

「…ジャックは提督をやりたいのか…?」

 

ドミナントはジャックに聞いた。

 

「ふむ…。興味深い質問だ。確かに、私の方が早く世界を救えるのならやりたいとは思う。…だが、この暮らしも捨てたものではなくてな。この世界はパルヴァライザーもインターネサインもない。切羽詰まっていない、まだ平和な世界だ。私はいざとなった時に活躍したいと思っている。」

 

ジャックはきっぱりと言った。

 

「そうか。…ならば、そうなった時によろしく頼む。」

 

「任された。」

 

…………

 

「セラフはなぜかいないからな。…お前の意見はどうだ?」

 

「まあいいんじゃないの?どうでも。…でも、お前がやった方が面白そうだよ。」

 

「お前は本当にブレないな…。…もし、ジャックの方が面白そうならばどうだ?」

 

「ジャックにつくよ。」

 

「そうか…。」

 

味気ない会話をした後、ジナイーダと合流する。

 

…………

 

「そっちはどうだ?」

 

「やはり、ジャックがドロップさせた艦娘が多いな。」

 

「やはりか…。」

 

ドミナントはこの先どうすれば良いのかわからなかった。

 

「このままだと支障をきたすな。…どうする?」

 

「わからん。…俺は何も出来ない。…いっそのことジャック派はジャックに任せるのはどうだろうか?…といっても変わらないような気がするけどね。」

 

「なるほどな。…だが、バーテックスみたいに宣戦布告しなければ良いが…。」

 

「いや、それはないだろう。この暮らしも捨てたものではないと言っていたし…。」

 

「…すまないな。私はどうしても信用することが苦手なのだ。」

 

こうして、ドミナント派とジャック派の争いの幕は一旦閉じたのであった。

 

…………

演習場から少し離れた自主練場

 

『第一次攻撃隊、発艦始め!』

 

「ん?誰かいるのか?」

 

ドミナントは疑問に思い、見に行く。

 

「くっ…。まだこの命中率じゃ駄目ね…。」

 

……瑞鶴?自主練するのか。自由時間だし、夕方なのに…。

 

瑞鶴は命中率を上げようと艦載機を飛ばす。

 

「…瑞鶴、何をしているんだ?」

 

「あっ。提督さん。」

 

瑞鶴はこちらを見る。

 

「今、命中率を上げているの。提督さんを馬鹿にしたあの青い一航戦に負けたくないから…。」

 

「瑞鶴…。」

 

ドミナントはほっこりする。

 

「ありがとうな。」

 

「ちょ、ちょっと!爆撃されたいの!?」

 

「そんなに拒否反応しなくても…。」

 

良かれと思って頭を撫でたが、思いっきり拒否られたことにショックを受ける。

 

「今頑張っているんだから邪魔しないで!」

 

「ご、ごめん…。」

 

ドミナントは怒られて、遠くから様子を見る。

 

「でも、やっぱりこれ以上命中率を上げるのは無理だわ…。」

 

瑞鶴は中々当たらない的を見て落胆する。

 

「やっぱり…五航戦が一航戦に勝るなんて…。」

 

「それは違うぞ、瑞鶴。」

 

「提督さん…?」

 

「確かに、歴史上ではそうかもしれないが…。今は違うだろう?あれからもう随分と経つ…と思うけど、もう違うんだから。それに、加賀と瑞鶴は性能的に違う。それぞれの良いところを活かせば良いじゃないか。」

 

……。ヤバイ、俺、何言っているのかわかんなくなってきた…。何度目だろう…?

 

「提督さん…。…ごめん、何言っているか全然わかんないんだけど…。」

 

……ごめん、俺も何言っているかわかんない。

 

ドミナントは困惑するが、続ける。

 

「まぁ、…あれだ。諦めたら今までのことが全て水の泡になる。…俺はもう後悔したくないからな。」

 

……このことで後悔したことないけどね…。これしか言えない…。頼むから納得してくれ…。

 

「提督…。わかったわ。私、諦めずに努力するわ!」

 

「お、おう。そのいきだ!」

 

……納得してくれたの…か?まぁ、終わりよければ全て良しだ。うん、それで行こう。

 

ドミナントはそう思ったが、これがのちにおおごとになるなんて思いもしなかった…。




終わりました。ちなみに、なぜ最初喧嘩していたかというと、主任が絡んできます…。一部始終を見せましょう。



「加賀は合格だ。瑞鶴は不合格だけどね。ギャハハ!」

「当たり前。五航戦の子なんかと一緒にしないで。」

「む…。」

「クールだよね。いつも。あ、そうそう。プレゼント、気にいるといいけど…。」

「なんで加賀にだけ…。」

「私に?何かしら…。」

バッシャァァ…。

「……。」

「ギャハハ!いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

「あはは!何その顔!あははは!」

「…頭にきました。まず笑い転げているあなたを倒します。」

「えっ?なんで私なの!?」

「ギャハハ!じゃ、頑張って〜。」

主任は爆弾を放った挙句、その場を去る…。


こんなことがありました。
登場人物紹介コーナー
瑞鶴…五航戦のやんちゃな子。ドミナントにツンデレ認定されている。一度だけ間違って提督室に爆撃したことがある…。その時ドミナントは電を背負ってどこか行っていたらしい…。
加賀…ジャック派の中でも過激に位置する。たまにだが、ドミナントの陰口を叩く。…しかし、ドミナントに弓道場を作ってもらったことに感謝している。
次回!第64話「観賞魚」お楽しみに!


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64話 観賞魚

はい、64話です。この癖の強い小説を読み続けている人はいるのでしょうか…?まぁいい。自分の趣味なんだ。それは他人が決めることじゃなかろうさ。…ACセリフ使っているけど、わかる人いるのかな?
はい、あらすじに入ります。今回は…加賀か。
「わかりました。前回活躍したような気がしますが。」
…まぁ、しようってやつだ。

あらすじ
前回、瑞鶴と言い争いました。私は、ジャックさんの方が提督に適任だと思っています。…別に、好きだからではありません。赤城さんは提督派なので言いませんでしたが、ジャックさん派です。


…………

翌朝

 

「さて、今日も仕事か…。…ジャックに任せようかな?そうすれば俺何もしなくても良くない?…いや、良くないな。今いる艦娘たちになんて言えばいいのかわからないし…。やっぱり、俺がやらなきゃダメか〜…。」

 

ドミナントは朝起きて、盛大な独り言をした。

 

「そうですよ。ダメです。」

 

「……。」

 

と思っていたが、一人艦娘がいたようだ。

 

「…いつからいた?」

 

ドミナントは見るなり聞く。

 

「ついさっきこの部屋に入りました。」

 

「うん。せめてノックはしようか?」

 

「ノックしました。」

 

「マジかよ。」

 

短いやり取りをする。

 

「まぁ、ノックしたのならいいんだけど…。ところで、君は?」

 

「古鷹といいます。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらうと嬉しいです。」

 

「古鷹か…はじめまして、僕は、ドミナントだヨ。」

 

「なんでロボットみたいな話し方なんですか…。それに、初めましてじゃないです…。」

 

「え…。」

 

ドミナントは思い出せない。

 

「あの時です!」

 

「…?」

 

「…忘れてしまったんですか…?」

 

古鷹は思いっきり悲しそうな顔をする。

 

「…い、いや。覚えているよ、あの時だろ?あの時…。」

 

「!。思い出してくれたんですね!?そうです!あの時です!」

 

「あの時だろ?」

 

「はい!あの時です!」

 

……いや、どの時だよ!?

 

「いや〜…。あの時は大変だったねぇ。」

 

「…?大変…?…まぁ、大変でしたね…。」

 

……地雷踏んだかと思ったけど、まぁギリギリ回避かな?

 

「あの時は本当に助かりました。」

 

「?…あ、ああ。別にどうってことない。」

 

……俺が助けた?何を?…このままだとボロが出るな。やめておこう…。

 

「…まぁ、この話は置いといて、何しに来たんだ?」

 

「本日の秘書艦は私です!くじで決まりました!」

 

「…くじ?」

 

……くじで決めるほど俺人望ないん?

 

ドミナントはそう思い…。

 

「…イヤイヤなら最初の4人にやらせるけど…。(俺に好意を抱いている人ばかりだし…。)」

 

「いえ、イヤイヤではありませんよ?」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうです!誰もが提督といたがっているんです!」

 

……あぁ、いい子じゃないか…。心が癒される…。…たとえ嘘でも…。

 

ドミナントは前世のこともあって、どうしてもネガティブな思考になる。

 

…………

執務室

 

「今日の仕事終わり!」

 

「お疲れ様です。」

 

古鷹はお茶を出す。

 

「ありがとう。…それにしても、目安箱にあった『水族館』って何だろう?」

 

ドミナントは独り言をつぶやく。

 

「えっ…。」

 

古鷹が反応する。

 

「聞いていたのか?…水族館ってどういう意味だと思う?」

 

「えっと…。おそらく、水族館を作ってもらいたいんだと思います。」

 

古鷹はおずおずと言う。

 

「水族館かぁ…。これまたぶっ飛んだお願いだなぁ〜…。」

 

「え…。そ、そんなに飛んでいますか…?」

 

「ああ。…セラフに任せれば良いと思うが、あいつにも自分の時間というものがある。それをむやみに潰しちゃいけないし。…なによりも、数億とお金がかかる…。俺の貯金や、運営費を出しても到底無理なお願いだ。」

 

ドミナントは困ったように笑う。

 

「そう…ですか…。」

 

「?どうかしたのか?」

 

「いえ、なんでもありません…。」

 

「?…まぁ、それは大規模な水族館であって、小さな水槽などを使ったものならばなんとかできるかもしれないがな。…ただ、この紙を出した艦娘は大きなものを期待していると思うし…。」

 

「いえ、そんなこと無いと思います!」

 

古鷹が目をキラキラさせて言う。(片方がバチバチしているので、なんて言えば良いかわからないが…。)

 

「そ、そうか?」

 

「はい!」

 

「わかった。だが、すぐには無理だ。セラフやジャックの予定を聞かなくてはならないし、何よりも肝心の魚や水槽がないからな。」

 

「わかりました!」

 

「楽しみにしておけ。」

 

「はい!」

 

古鷹はドミナントがカマをかけたのを知らずに返事をした。

 

「やはり、古鷹か…。」

 

「?何か言いました?」

 

「いや、なんでもない。」

 

こうして、作業が開始されたのだ。

 

…………

午後

 

「さて、じゃぁ乙樽にならないように気をつけてやろう。」

 

「乙樽?…はーい。」

 

古鷹とドミナントは作業を開始する。

 

「古鷹はどんな水族館がいいんだ?」

 

「そうですね…。鑑賞魚が良いです。」

 

「……。水族館じゃなくない?」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントの基本的なツッコミに返事をするしかない古鷹…。

 

「…別に生き物飼ってもいいんだよ。世話さえすればね。そう、世話さえ…。」

 

ちなみに、ドミナントは神様が放っておいているAMIDAの世話をたまにしている。

 

「…提督も大変なんですね…。」

 

どう反応していいかわからない古鷹。

 

「まぁ、古鷹は観賞魚が好きって有名だもんな。」

 

「えっ?提督、その情報は一体どこから…?」

 

「あ…。…風の噂だよ。」

 

ドミナントは口を滑らせてしまい、うやむやにしようとする。

 

「いや、教えてください。」

 

「アイムシンカートゥートゥートゥートゥトゥ♪」

 

「いや、歌わないでください。」

 

「あんなものが!?」

 

「話を露骨にそらさないでください…。」

 

「……。言えないな。大本営の禁則事項だ。」

 

「いや、そんなわけないですよね。言ってください。」

 

「禁則事項です。」

 

「む〜…。」

 

……うん、怒った古鷹も可愛いな。…て、俺は何をしているんだ?さっさと問題解決しろよ。

 

ドミナントは心の中で自分に叱る。

 

「さて、話が長くなった。じゃぁ、始めようか。」

 

「…わかりました。」

 

納得いかなさそうに古鷹も手伝う。

 

…………

夕方

 

「ふぅ、なんとか出来たな。」

 

「はい!」

 

「…でも、1日潰れちゃったな。それに、魚もいないし…。」

 

「そうですね…。」

 

ドミナントたちは水槽を作った。置物も水草も、木もドミナントたちが作ったり、拾ってきたものだ。だが、肝心の魚はまだ入れていない。

 

「でも、提督と二人で何かするのは初めてで、楽しかったです。」

 

古鷹が笑顔でドミナントに言う。

 

「……。そうか。俺も古鷹と水槽を作って楽しかったぞ。」

 

ドミナントは古鷹の頭を撫でる。

 

「えへへへ…。…でも、提督っていつも撫でるだけですよね。抱きしめたりはしないんですか?」

 

撫でられて嬉しそうだが、ふとした疑問をドミナントに言う。

 

「そうだな…。それをすると流石に犯罪じゃないか?憲兵に連行は嫌だぞ。」

 

「いえ、双方合意の上では大丈夫だと思いますよ?」

 

「なるほど。視野に入れておこう。」

 

そして、ドミナントは撫でるのをやめて…。

 

「……。あれ?」

 

「古鷹の部屋はどこだ?」

 

ドミナントは水槽を持ち上げていた。

 

「……。ここは抱きしめるところでは?」

 

「そうなのか?…俺はそこまで気がきかないのでな。」

 

「もう…。こっちです。」

 

ドミナントは、古鷹に不満そうに案内された。もちろん、本当に気が利かないわけではなく、ただ艦娘とそういう関係にはなりたくなかったからだ。

 

…………

 

「神様の部屋には入ったが…、艦娘寮の部屋に入るのは初めてだな…。」

 

ドミナントは部屋の構造を見たりした。

 

……ふむ。ぬいぐるみに、勉強机はきちんと整ってある。女の子らしい部屋だな。…AMIDAはどこの部屋にもいるのか?てか、AMIDAの上に妖精さんもいるし…。

 

ドミナントはそんな感想を抱く。しかし、古鷹を見たらそんなことがどうでもよく思えた。

 

「どういうことですか?神様の部屋に入ったって…。そして何をしたんですか…?」

 

古鷹は普段のドミナントと神様からあんなことの想像をしていた。

 

……怖い。笑顔で問い詰めてくる…。片目がものすごいバチバチしているんだけど…。

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

(プランD謂わゆるピンチです。可能性はあるです)

 

キシキシ!

 

妖精さんとAMIDAが来た。

 

……いや、可能性はあるのはわかるけど…。“何もしなかった。”では納得しないよ?

 

(はい、そのための妖精です。)

 

ギーーーーーー!

 

……さっきから何?フラジールのマネ?AMIDA絶対にANSのセリフだよね?言葉が伝わらなくてもわかるよ?

 

「提督、答えてください。」

 

……ぎゃー!迫ってきた!怖い。

 

(これをするです!)

 

キシキシ!

 

……なんでジェスチャー!?言葉で伝えてくれない!?ボケてる暇ないから!

 

(耳元で囁くのです!)

 

キシーー!

 

……な、何を?

 

(大好きって。)

 

キシキシ〜〜。

 

……いや、言わねぇよ?もう頼りにならないから自分でなんとかする。

 

ドミナントと妖精のコントが終わり、ドミナントは古鷹を見る。

 

「…言う気になったんですね?どうぞ、言ってください。」

 

「わかった。だが、信じてほしい。本当に何もなかったんだ。」

 

「……。はぁ、わかりました。」

 

……わかってくれた!さすが大天使!

 

「とでも、言うと思っていたの?アハ、アハハ!この程度想定の範囲内だよぉ!!」

 

古鷹は泣きながらそばにあった加古のビール瓶を手に取り、ドミナントめがけて振り回す。

 

「ギャァァァァ!!待て!落ち着け!」

 

「アハ!アハハ!アハァハ!!」

 

……まずい、完全にぶっ壊れた…。




はい、長いので一旦切ります。どうやら古鷹はやましいことを想像してしまったみたいですね…。
登場人物紹介コーナー
古鷹…服装はアレだが、素直で礼儀正しい、優等生タイプ。暴走すると手がつけられなくなる。
次回!第65話「お前には失望した。もう期待はしない」お楽しみに!


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65話 お前には失望した。もう期待はしない

はい!65話!最近休みすぎですね…。
はい、それではあらすじに入りたいと思います。今回は…古鷹行く?
「えっ?なんか、2回目の気がしますが…?」
ギャハハ!そうだっけぇ?
「主任さんの真似しないでください…。」
じゃ、頑張ってえー!

あらすじ
提督と共に水族館を作ろうとしました!でも、途中で観賞用の水槽で良いと気づき、水槽を作りました!その後、提督が神様とやましいことをしたのに、わたしには教えてくれないので、暴走しました…。


…………

 

……まずい、完全にぶっ壊れた…。いくら頑丈な俺でも、艦娘の怪力+資材で作ったビール瓶は流石の俺でも当たりどころが悪ければ死ぬ。よくて骨折ぐらいだろう…。

 

「落ち着け古鷹!俺は本当に何もしていない!」

 

「そんなの…信じられません!」

 

ドミナントは古鷹のビール瓶をギリギリで回避する。昼ドラみたいだ…。

 

「待て!本当だ!神様が寝ちゃったから部屋に連れて行って寝かせただけだ!」

 

「寝かせた…?…あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 

古鷹がやましいことを考え、叫びにならない叫びを上げ、恐ろしい声を出す…。そして、ビール瓶が恐ろしいスピードで歪んで見える…。天使が悪魔になった瞬間だった…。

 

……あれは正気を失なった証拠だな…。あれに当たると間違いなく全治2ヶ月だな…。

 

ドミナントはそう判断してギリギリで避ける。

 

(ほう、アレを避けるですか。すごいです。)

 

キシ…。

 

……ゴラァ!!AMIDA!妖精!何のんきにお茶すすってんだ!?

 

(だって、助言を無視したです。)

 

キシ!

 

そう妖精と心の中で話していると…。

 

「どうした?トラブルか?って、何しているんだ…?」

 

ジナイーダがこの世のものとは思えない叫びに思わず駆けつけた。そして…。

 

バッ!

 

「…ヒック…うぅ…。」

 

愉快な仲間たちが瞬時に古鷹とドミナントを止めた。主任がドミナントの前に立ち、ジャック・Oが古鷹を押さえつけ、ジナイーダが武器を取り上げる。セラフは、これを他の艦娘に見せないようにドアの外に立っている。

 

「何があったんだ?」

 

ジナイーダはドミナントに聞く。

 

「いや、“神様の部屋に入って寝かしつけた”って言っただけ…。」

 

バコォォォォン!!

 

ジナイーダに殴られる。ドミナントと主任とジャックはなぜ殴られたかわからなかったが…。

 

「馬鹿者!こんな風に取り乱すのは当たり前だ!言葉に気をつけろ!…古鷹、私が説明しよう。その場にいた証人だからな。あんな声を上げて可哀想に…。」

 

ジナイーダは優しく古鷹に言う。

 

…………

 

「…てことは、本当に何もなかったんですか…?」

 

古鷹は涙を流しながらキョトンとする。

 

「ああ。…まぁ、本当のことを言えば、神様が強制的にドミナントにしようとしたが、私がドミナントを窓から放り投げたんだ。」

 

ジナイーダはあの時のことを話す。

 

「じゃぁ、提督が言っていたことは本当…?」

 

「あいつが何を言ったか知らないが、私が言ったことは本当だ。」

 

ジナイーダはきっぱりと言う。

 

「ご、ごめんなさい!提督!私、てっきりあんなことをしていたのかと…。」

 

「……。まぁ、誤解が解けて何よりだ。」

 

ドミナントは落ち着いた古鷹に安心しながら言う。そこに…。

 

『ご飯できたよー!今日は私の自信作だよ!』

 

神様の声が放送される。

 

「ごめん!時間ないから。それじゃ!」

 

「ちょ、主任!まだ解決してな…」

 

「ギャハハハハ……!」

 

「…行っちゃった…。…まぁ、ひとまずご飯にしよう。」

 

この問題は晩御飯で中断するほどの問題らしい。

 

…………

 

「やっほー!ドミナントー!」

 

「また来た…。」

 

神様はドミナントに飛びつく。その度に艦娘から睨まれるので、なんとかしてほしいと思っている。

 

「久しぶりに飛びついたよー!」

 

「?久しぶり?」

 

「いや、なんか最近私の出番ないじゃん…?」

 

神様は肩をすくめ、顔を背き、自嘲気味に笑い、ため息をする。

 

「うん…。それは筆者の問題だからどうにもできんな…。」

 

ドミナントも顔をひきつらせる。

 

「と、いうわけで、私が料理作ったよ!」

 

神様はさっきの顔とはうって変わり、笑顔で提供する。

 

「ふむ…。肉じゃが…?神様ってこんな料理を食べるのか…。なんか、想像と違うな…。」

 

ドミナントは、神様は人間と違う、豪勢な食べ物だと思っていたらしい。

 

「贅沢言わないで、神の国もそれほど裕福じゃないんだから…。あの世だって、人は極楽な考えをするけど、現実と大差ないんだから…。働いて、お金をもらって、生活するだけだよ…。」

 

「おっと、現実味が出てきたぞ。」

 

「まぁいい。早く食べよう。」

 

ジナイーダが急かす。この鎮守府では晩御飯だけ、全員が集まり食事をするようになっている。主任は既にコソコソ食べているが…。

 

「そうだったね。それじゃぁ、みんな手を合わせて…。」

 

「「「いただきます!」」」

 

…………

 

「ふむ。じゃぁまずこのサラダからいただこうとしようかな?」

 

ドミナントは料理を口に運ぼうとするが…。

 

「あっ、言い忘れてたけど、ドミナントの料理には特別なものが入っているから!」

 

みんなワイワイしている中、神様が言う。

 

「…特別?…おい、それはなんだ?」

 

「えへへ。内緒!…本当に特別なものだよ。」

 

神様はなにかを隠したような顔になる。

 

「……。神様、一つ言っておこう。」

 

「えっ?いきなりどうしたの…?」

 

「いいか、何年も世界を見てきたのだから知っていると思うが、信用ってのは大事なんだぞ?」

 

ドミナントが真面目な話をしたので、みんなが聞く。

 

「え?どうしたの?え?」

 

「昔、俺の知り合いがたった一度の過ちで全ての信用を失ったんだ。その人は会社をクビになって、人生そのものを失った。家族も、生活も、金も、生きていくのに必要なもの全てな…。そして、その人は山の中で首吊って死んだよ。」

 

「な、なんでこの話を今…?」

 

「いいか、神様。信用ってのはとにかく大事だ。俺はこの料理を食べて平気なのだな?全てを失う可能性を背負っているのだな?」

 

ドミナントはマジに神様に言う。

 

「ま、待って!」

 

「なぜ待つ?いいのだろう?」

 

「い、いや、これは…。今作り直すから待ってて!」

 

神様はドミナントが食べるはずだった料理を急いでキッチンに戻す。

 

「やはりか…。」

 

「なんで何か入ってるってわかったんですか?」

 

セラフが聞く。

 

「妖精さんの情報だ。…栗羊羹が減ったがな。まぁ、何かを食べるのを防げただけ良しとしますか…。」

 

(手こずっているようだったから、手を貸したです!)

 

「なるほど。」

 

「じゃ、あとで渡すから、部屋に来てくれ。」

 

(わかったです。いい仕事ができた、次を楽しみにしているです。)

 

妖精さんが消えたところに…。

 

「ご、ごめん。こっちを食べて!」

 

神様が引きつった笑顔で持ってくる。

 

「よろしい。…ところで、何を入れてたんだ?」

 

ドミナントは純粋に聞いた。

 

「……。惚れ薬。」

 

「……。お前には失望した。もう期待はしない。」

 

「えぇ!?でも、でも、ちゃんと変えたよ!」

 

「俺が何も言わなかったらどうなっていた?」

 

「それは…。そうだけど…。」

 

「…まぁ、次やったら完全に信用をしないからな。今回限りだ。」

 

「…ごめんなさぁい…。」

 

ドミナントの慈悲に神様は涙目で謝る。

 

「…フッ。存外、甘い男なのだな。」

 

「そうか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「そうか。」

 

ジナイーダが“やれやれ”といった感じで言い、ドミナントが反応した。

 

「まぁ、早く食べましょう。冷めてしまいます。」

 

セラフが言い、みんなが食べる。そこに…。

 

「あの…提督…。」

 

「ん?古鷹か?どうしたんだ?」

 

シュンとした古鷹がドミナントに声をかけてきた。

 

「あの…さっきの信用の話…。」

 

「あぁ。あれがどうかしたのか?」

 

「ごめんなさい!…だから、信用してください…。」

 

古鷹は必死に頭を下げる。

 

「?」

 

……なぜ古鷹が謝る?…!そうか、食べる前に色々あったからな。あの話で古鷹の傷をえぐってしまったか…。失敗したな…。

 

ドミナントはそう思い…。

 

「顔を上げろ。古鷹。」

 

「はい…。」

 

古鷹は目をぎゅっと閉じ、怒られるのを覚悟している。

 

「…え?」

 

ドミナントは古鷹の頭を撫でた。

 

「傷をえぐってしまってすまなかったな。俺にも怪我がなかったんだ。もう気にしていない。」

 

ドミナントは優しく言う。

 

「でも、それでは…。」

 

「安心しろ。ドミナントが気にしてないといえば、気にしていない。私が保証しよう。」

 

ジャックが行儀よく食事をしながら言う。

 

「その通りだ。だから、もう気にするな。…気にしたらこちらも気にしてしまうからな。」

 

ドミナントは撫でながら言う。

 

「…わかりました。」

 

古鷹は笑顔で言う。

 

……あぁ、可愛い。癒される。

 

ドミナントはほのぼのした。しかし、問題はいつも起こるものである…。

 

…………

その日の深夜

 

「ふぁ〜…。トイレへ行こう…。」

 

暗い鎮守府の中、廊下を一人、長門が行く。すると…。

 

「ん?誰だ?消灯時間は過ぎているはずだ。」

 

駆逐艦と思わしき艦娘がうずくまっている。

 

「ない…ないよぉ…。足りないよぉ…。」

 

しかし、返事もしない駆逐艦…。

 

……おお。駆逐艦…。可愛い駆逐艦。何しているんだろう?何か探しているのかな?手伝ってあげよう。そして、仲良く…ふふふ。胸が熱いな。

 

呑気に考えている長門…。そして、声をかける。

 

「どうしたんだ?何がないんだ?私に手伝えることはあるか?」

 

長門は笑顔で聞く。

 

「足りないの…。」

 

「どうしたんだ?」

 

「足り…ないの…。」

 

「何がだ?」

 

「足り…足り…ない…の…。」

 

「…どうしたんだ…?」

 

笑顔だった長門も少し恐怖を感じている。

 

「足り…な…いの…。」

 

駆逐艦と思わしき子供はゆっくりと振り向く。

 

「……。…ギャァァァァァァァァァ!!」

 

長門は思いっきり悲鳴をあげた。




タチサレ…タチサレ……。
登場人物紹介コーナー
知り合い…説明の通り。
駆逐艦?…???
次回!66話「この鎮守府、おかしくないですか?」お楽しみに!


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66話 この鎮守府、おかしくないですか?

タチサレ…タチサレ……。ナニカ…サレタヨウダ……。
「えー、筆者さんが壊れたので、急遽私がやるわ。」
いや、壊れてないよ?やっぱり、こういう系はコレかな〜って。ま、いいか。今回のあらすじは瑞鶴にやってもらおう。…出番がないって騒いでいたし…。
「わかったわ。」
七面鳥!いってみよう!
「……。」
ぐぁぁぁぁ!!


あらすじよ
前回、提督さんが食事中に真面目な話をしていたわ。…私も、気をつけないと…。神様は何か慌てていたけど、何かあったのかしら?その夜、何か大きな叫び声が聞こえてきたみたいだけど…。


…………

 

「ギャァァァァァァァァ!!!」

 

長門は目の前のソレに恐怖して叫ぶ。逃げようとして、ソレから目を背ける。

 

「なんだ!?」

 

「敵襲か!?」

 

本日の見回り当番のドミナントとジナイーダが駆けつける。

 

「何〜…?」

 

「どうしたんですか…?」

 

艦娘たちも目をこすりながら部屋から出てくる。

 

「あ、あれ、あれ、あれ…。」

 

長門はドミナントに抱きかかえ、必死にソレに指を指す。

 

「…何もないが…?」

 

ジナイーダが辺りを確認するが、何もない。

 

「…寝ぼけたんじゃないか?」

 

「い、いや、本当に見たんだ!“足りない…足りない…。”って連呼していたんだ!」

 

ジナイーダに言われ、長門が返す。

 

「長門さん…怖がりなのでしょうか…?」

 

艦娘からも言われる…。

 

「本当だ!提督は信じてくれるだろう!?」

 

「信じたいが…。何もないことには証明することが出来ないからな…。」

 

「そんな…。」

 

長門は気を落とした。

 

「ま、次はしっかりとソレから目をそらさず、叫んでくれ。飛んでくるから。」

 

「目を…そらさず…。……わかった。」

 

長門は渋々納得した。

 

「それでは、各自解散!」

 

ドミナントの一声でそれぞれが部屋に戻る。…と思われていたが…。

 

「あの…長門さん…。」

 

「?どうした?雪風…。」

 

「その…一緒にトイレへ…。」

 

「!。そ、そうか。ならば一緒に行こう。」

 

雪風は最近見たホラー映画を思い出し、夜のトイレが行けなくなってしまったのだ…。二人は手を繋いで、トイレを目指す。

 

「…長門さん、怖いです…。」

 

「し、心配するな。私が付いている。」

 

暗い中、二人の足音が響く。…はずだが…。

 

ギシ…ギシ…。

 

「……。長門さん、私たち以外にいるんでしょうか…?」

 

「き、きっと提督か先生だろう?」

 

ギシ…ギシ…。

 

「な、なんか、近づいてきてません?」

 

「こ、こうなったらヤケだ。後ろ歩きで行くぞ…。」

 

長門は後ろを振り向かずに進む。そして、背中に何かが当たった。

 

「ヒャァッ!」

 

「!。…て、川内?何をしているんだ?」

 

ぶつかったのは川内型一番艦『川内』だった。

 

「いや〜、夜の鎮守府を散歩してたら、足音が聞こえて…。あっ!提督には許可取ってるよ。」

 

「そ、そうか…。…!。さっき“足りない”ってうずくまってたか?」

 

「え…?いや、私はさっき出てきたばかりだけど…。」

 

「…そうか…。」

 

出来れば川内であって欲しいと思っていた長門だった。

 

「…さっき騒いでいたけど、どうしたの?」

 

「…実はな…。」

 

…………

 

「そんなことがあったんだ〜。」

 

「ああ…。全く、恐ろしいよ…。」

 

「へ〜、長門って、そういうの怖いんだ〜。意外だな〜。」

 

「いや、見ればわかるさ…。それより、私たちはトイレへ行くから、ついてきてくれないか?川内がいると心強いからな。」

 

「わかった。そのかわり、今度夜戦してねー!」

 

「ああ。わかった…。」

 

そして、3人でトイレへ行った。

 

…………

 

ジャーーー…

 

「ふぅ、スッキリしたな。…て、どうした?川内?」

 

「あわ…あわわ……。」

 

トイレの外で待っていた川内が腰を抜かしている。

 

「長門…。怖がる理由がわかったよ…。」

 

「…見たんだな。どんな形をしていた?」

 

「怖すぎてよく覚えていない…。」

 

「そうか…。雪風が出たら提督に知らせる。もう異常事態だ。」

 

「うん…。」

 

そして、3人はドミナントのところへ行く。

 

…………

提督自室

 

コンコン…。

 

「提督、起きているか…?」

 

『ああ、起きている。入れ。』

 

「失礼する。…て、何があったんだ?」

 

長門が入ってみると、たくさんの艦娘がいた。

 

「ああ…。なんか、みんな押し寄せてきてな…。おそらく同じ用件だ。愉快な仲間たちがいま鎮守府を確認している。お前たちも、座って紅茶を飲むといい。」

 

そう言って、ラベンダーの紅茶を淹れるドミナント。艦娘たちはそれを飲んで落ち着いている。…駆逐艦のみんなは紅茶を飲んで落ち着いたのか、ドミナントのベッドで寝ている。

 

「……。早速で悪いが、俺もそろそろ行かなくてはならない。長門はみんなを落ち着かせてくれ。」

 

「え…。…わかった。やってみよう…。」

 

長門はドミナントがいなくて不安になるが、こんな時こそ自分がしっかりしなくてはと思い、了承する。

 

「悪いな…。だが、一人行動だと、見間違いなどがあるため駄目だ。一人、俺と一緒についていってくれないか?」

 

ドミナントは呼びかける。ちなみに、愉快な仲間たちも二人一組で原因を突き止めようとしている。セラフ、ジナイーダ組。主任、ジャック組。

 

「なら、私が行きます。」

 

「赤城…。できれば、長門の補佐をしてもらいたかったが…、この際仕方がないな。では赤城!俺と共に原因を突き止めるぞ!」

 

「はい!」

 

こうして、ドミナントと赤城が行動することになった。

 

…………

数分後

 

何もなく、暗い鎮守府を二人捜索するドミナント。

 

「…気になっていたんだが…。怖くないのか?」

 

「私ですか?…少し怖いですけど、提督といれば大丈夫です。」

 

「そ、そうか…。」

 

「逆に提督は怖くないんですか?」

 

「俺は……。怖くなんてない…。」

 

「…足が震えているように見えるのですが…。」

 

「…これは武者震いだ…。」

 

ドミナントは赤城とそんな会話を終える。

しばらくして…。

 

「提督…、私…。」

 

「思い出すな…。」

 

「実は…え?」

 

ドミナントの突然の昔話に驚く赤城。

 

「昔、修学旅行で肝試しした時、忘れられて置いていかれたことを…。」

 

「……。」

 

赤城はなんとも言えない顔をした。そして、何も言わなかった。その時気づいた。

 

「この鎮守府、おかしくないですか?」

 

「何がだ?」

 

「提督…。ここもう通ってません?」

 

「ん?そうか?」

 

赤城は同じ景色がずっと流れていることを不審に思う。

 

「まぁ、最初に着任した時も、同じようなことを言った気がするなぁ。」

 

「提督はなんとも思わないんですか?」

 

「俺はなんとも思ってないなぁ。」

 

「…提督の怖いと思う基準がわかりません…。」

 

赤城は脱力したように言う。

 

「まぁ、俺の思う化け物は本当の化け物だからなぁ…。」

 

「えっ?…どんな感じですか?」

 

赤城は興味本位で聞いてしまった…。

 

「そうだなぁ…。例えば、狼男とか、死なない子供とか、吸血鬼とか、不死の人間とか…。目に包帯巻いた神父とか、赤い蜘蛛とか、“私はやったんだぁぁぁ!”って叫ぶ人とか…。。あっ!あと、浅い川である言葉を連呼しながら浮いている奴も怖いと思ったことがあるなぁ…。」

 

「いや、それ偏ってませんか?それに、絶対に現実にいない奴ばかりですよね?それに、途中から怖いの意味が違います…。」

 

赤城は苦笑いする。

 

「ははは…。まぁ、俺の本当に怖いものはあるけど…、これは他人じゃどうにもできないからね…。でも、…いや、なんでもない。」

 

ドミナントは諦めた笑みを浮かべる。

 

「そう…ですか…。」

 

……提督…、私たちのことを心から信頼していないんでしょうか…?それとも、私たちは力になれないんでしょうか…?

 

しばらく沈黙した後…。

 

「む。赤城、あれを見ろ。」

 

「?」

 

うずくまっている少女がいる。

 

「ふむ…。意外と平気かも知れん。もっとこう…化け物みたいに感じていたんだが…。」

 

「…そんなこと言っている場合ですか…?」

 

ドミナントが冷静に言う。

 

「その大きさ、駆逐艦だな?消灯時間は過ぎているぞ。」

 

ドミナントと赤城は近く。

 

「足りないの…。」

 

……ふむ。長門が見たのはこれか…。

 

ドミナントは勝手に思う。

 

「何が足りないのでしょうか?」

 

赤城が聞く。

 

「私の…私の…。」

 

「顔がない?」

 

「……。」

 

ドミナントにセリフをとられ、呆気にとられる。

 

「古いな。」

 

「放っておいて…。」

 

「……フフ。」

 

赤城は思っていたのと違う展開に思わずくすりと笑った。

 

「というより、山風さんですよね?何しているんですか?」

 

「え…。なんでわかったの…?」

 

そう、幽霊の正体は顔に布をした白露型8番艦『山風』だった。

 

「…誰?」

 

「提督…。それは失礼です…。」

 

「む〜…。」

 

ドミナントが失礼なことを言い、赤城が困った顔をして、山風が頬を膨らませる。

 

「で、山風、なんでこんな騒動を起こしたんだ?夜は怖いはずだろう?」

 

ドミナントは山風を見る。

 

「怖くなんか…ない…。みんなそういうから…みんなも怖くなっちゃえばいいって…思って…。」

 

「山風…。」

 

赤城が涙目の山風を見つめる。

 

……なるほどな…。コンプレックスから始まった騒動だったのか…馬鹿にされていたのか…?だとしたら、ジャックの言う通り、粛清せねばならんな…。

 

ドミナントはそう決意し、山風に聞く。

 

「山風、誰に言われていた?」

 

「…教官…。」

 

「……。主任…なぜあいつはいつもトラブルメーカーなんだ…?今回ばかりは我慢できんな…。」

 

ドミナントは怒気をにじませた声で言う。

 

「山風…、すまなかった。監督不行届だ…。皆には俺から謝っておく。全ての元凶は主任だから責められることはない。(というより、責めさせない。)」

 

山風に頭を下げる。

 

「でも山風…。こうなる前に、一言でもよかったから…俺でなくてもよかったから…。相談してもらえると嬉しかったぞ…。」

 

ドミナントは去り際に言った。

 

「提督…。…山風さん、意味はわかりましたか?」

 

「…わかった…。」

 

「わかったのなら、私でも良いです。相談してください。また言われたら、提督と一緒に主任さんにきつく言っておきますから。」

 

赤城は笑顔で言った後、山風と共に皆に謝りに行った。一方、ドミナントはジナイーダやセラフ、ジャックに事情を話して、主任をみんなで袋叩きにした。(ジナイーダは女性の味方なので、一番殴っていた。)

 

 

 

 

 

余談(微ホラー)

 

「えっ?結局、山風だったの?あれ。」

 

川内は首を傾げる。

 

「そうですよ?でも、責めないであげてください。」

 

「へぇ〜…。あんな着ぐるみ持ってたんだ…。」

 

「着ぐるみ?」

 

赤城は川内に聞く。

 

「いや〜、あんなに怖い着ぐるみ初めて見たよ〜。身体中に口があって、目はあらん方向向いていて、顔は半分腐っていて、手は何本もあって、動きもぐねんぐねんしてて…。まさに恐怖の象徴みたいな感じ。」

 

川内は笑いながら言う。すると…。

 

「え…?川内さんは脅かして…ない…。」

 

「え…?」

 

山風から驚く情報を聞かされた。

 

「え…?でも、トイレの前に…。」

 

「トイレ明るいから怖がらないと…思って…。」

 

「え…?」

 

思わず赤城も驚いた。

 

「じゃ、じゃぁ私が見たのは…?」

 

「……。」

 

「……。」

 

3人とも顔を青くした…。




……瑞鶴の爆撃、痛かった…。でも生きてる。頑丈になってきたな〜。
ジナイーダは女性の味方です。トラウマを刺激した主任に怒りを覚えたみたいですね〜。怖い怖い。
登場人物紹介コーナー
川内…活発で夜戦大好き。もう演習卒業者。夜戦は好きだが、主任との夜戦は嫌う。毎晩ドミナントを夜戦に誘おうとするが、失敗し続けている。
山風…潜水艦に沈められたトラウマがある。小破したときの声はドミナントの心を抉る…。ドミナントとの好感度は中くらい。
川内が見たもの…データがありません。
次回!第67話「アイドルの道」お楽しみに!


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67話 アイドルの道

はい。きました67話。最終回まであと33話。最近、AC要素が薄まっている気がします…。
では、あらすじに入ります。今回は…川内さん。
「夜戦だね!任せて!…て、あらすじ!?」
…何かすまんね。

あらすじ
前回、長門がお化けを見たって言って大騒ぎした。でも、その正体は自分のコンプレックスからきた山風の仕業だったんだ。もちろん、大騒ぎの原因の教官は提督たちに袋叩きにあって、解決したと思ったんだけど…。…あれは何だったんだろうなぁ…。もう、当分夜歩けないや…。


…………

執務室

 

「昨日は散々だった…。」

 

「そうかな〜?那珂ちゃんは〜、ぐっすり眠ってたからわかんないや〜。アイドルは、しっかり睡眠をとらないと!」

 

「そっかー。」

 

ドミナントは本日の秘書艦である那珂ちゃんと話す。

 

……アイドル…か…。俺は今までの人生の中、アイドルに興味がなかったんだよな…。

 

ドミナントは仕事をしながらそんなことを思い、那珂ちゃんをみる。

 

「提督ー、何考えているの〜?」

 

ボヤーっと眺めているドミナントに聞く。

 

「…ん?ああ、いや、アイドルってなんなんだろうなぁ〜ってさ。」

 

「そりゃぁ、人気のある芸能界タレントのことだよ!」

 

「いや、そうなんだけどさ。それだけじゃないような気がするんだよね。…なんか…こう…。」

 

ドミナントは曖昧に言う。

 

「ん〜…まぁ、提督の言うこともわかるんだけど〜、言葉にするのが難しいかな。」

 

「やっぱり?」

 

「そんなに知りたいなら〜…、今日の私を見ていて☆!」

 

「わかった。だが、仕事が終わった後でな。」

 

「……。」

 

自しょ…ゴホンッ、艦隊のアイドルは自信たっぷりで言ったのに、仕事を優先させられて複雑な顔をした。

 

…………

数時間後

 

「仕事終わった。じゃぁ、始めようか。」

 

「終わった?それじゃぁ、アイドルの一日を始めるよ〜。」

 

そして、ドミナントと那珂ちゃんはどこか歩いて行く。

 

…………

 

「ヒトヒトマルマルだよ〜。提督!那珂ちゃんお腹すいた。今日のお昼は〜、那珂ちゃんカレー食べたい!」

 

「アイドルの一日って一体…。」

 

ドミナントは歩いて数分で言い出す那珂ちゃんに困惑する。

 

「だが、昼食用の食堂は12時からしかやっていないぞ。」

 

「えぇ〜、提督権限でなんとかできないの〜?」

 

「いや、それだとブラックになるだろ…。上司にこき使われる気分は知っているからな。そんな不快な気分にさせたくない。」

 

「提督は優しいんだから〜。」

 

そんなことを話しながら歩く。

 

「じゃぁ、それまで那珂ちゃんライブするよー!」

 

「ほう…。」

 

那珂ちゃんがそう言った途端に、どこから現れたかわからない妖精さんがステージの準備をする。

 

……妖精さん…、俺の時は全然助けないのに、艦娘には優しいんだな…。

 

ドミナントは一人そう思った。そして、那珂ちゃんがステージに上がり、マイクを持つ。

 

『それじゃぁ、一番![恋の2-4-11]!』

 

こうしてライブが始まった。ドミナントは妖精さんが用意した沢山のベンチの一つ座る…。艦娘も集まってきた。

 

…………

 

『ありがとーー!』

 

那珂ちゃんはライブが終わり、みんなにお礼を言う。

 

「…まぁ、俺や数人しかいないのだがな…。」

 

ドミナントはお茶を飲みながら呟いた。

 

『でも、提督がもっとやって欲しそうだから、新曲歌いまーす!』

 

……俺、そんな顔してた?もっとよくみようか?

 

ドミナントはツッコミそうになったが、そこで言うほど無粋ではない。

 

『じゃぁ、那珂ちゃん頑張って歌いまーす!二番![mechanized memories]!』

 

曲が流れる…。それに伴って、新曲と聞いて艦娘たちが集まる。

 

「ブホォッ!ゴホッゴホッ。」

 

ドミナントは勢いよくお茶を吹き出した。

 

「ゲホッ…ちょ、ま…!」

 

そして、音楽が流れた。内容は…自身の解体のことだった…。

 

……どうやったらそんな歌詞を想像するんだ…?

 

ドミナントは心の中で思う。歌が終わったとき、全員がお通夜状態だった…。愉快な仲間たちも含めて…。

 

…………

 

「提督、どうだった?」

 

ライブが終わり、ドミナントと行動を共にする那珂ちゃん。さっきの歌を歌ったとは到底思えない明るさだ…。

 

「いや…その…、うちでは絶対に解体しないから安心してくれ…。」

 

「そんなのわかってるよっ☆。提督は優しいからね!」

 

「そ、そうか。」

 

ドミナントは那珂ちゃんの心がそこまで荒んでないことに安堵する。

 

「そうだ、あの曲って作ったのかい?」

 

ドミナントはmechanized memoriesのことを聞く。

 

「ううん。そのCDが落ちてたの。」

 

……落ちてた?なんでそんなものがあるんだ?

 

ドミナントは思うが、一つの結論が出た。

 

……神様か…。

 

ドミナントは神様のところへ行こうと思ったが、アイドルのことを学ぶため、放っておいた。

 

…………

 

「そろそろ12時だな…。食堂へ行くか?」

 

「行く行く〜。」

 

そして、食堂へ行った。

 

…………

[伊良湖食堂]

 

……セラフや艦娘の要望で、夜は酒保をしている場所だがな。

 

ドミナントは席につきながら思った。この建物の裏には、甘味処[間宮]もある。所謂、食事エリアですね。

 

……まぁ、間宮さんや、伊良湖がいるから、食事には困らないが…。たまに二人を休ませるため、誰かが料理を作ることがある。その時、運が悪ければジナイーダや比叡、磯風となったするが…。はっきり言って、ひどい。比叡カレーとジナシチューが半端ない…。普通の食材を使ってなんであんな料理ができるのか私は知りたい…。

 

ドミナントが失礼なことを考えていると…。

 

「那珂ちゃん決まったよ〜。提督は?」

 

「…ん?あぁ…。俺は…カツサンドであります。」

 

そう言って、注文を取る。

 

……そう思ってみれば…那珂ちゃんは料理できるのかな…?アイドルと言っても、料理ぐらいはできるだろう。夜試してみるか…。

 

そんなことを考えているうちに、料理が出る。

 

「アイドルは〜、カロリー制限も考えないと☆!」

 

「……。」

 

……それを注文して言うか…?

 

ドミナントが見たのは、芋やさつま芋が山盛りに乗っているカレーだった。

 

……炭水化物の量…。

 

「美味し〜!」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントは考えたが、肯定しかできなかった…。

 

……アイドルって、こんなものを食べているのか…。知らなかった…。てっきり、カロリーメイトを食べているのかと…。

 

もちろん、そんなわけがない。こうやって、ドミナントは間違った知識を獲得するのだ…。

 

…………

 

「ふぁ〜…、那珂ちゃんお腹いっぱいで眠くなっちゃった…。提督、スケジュール調整お願いね☆。おやすみ〜…。」

 

「あ、あぁ…、おやすみ…。」

 

……ふむふむ。アイドルってのは、食べた後すぐ寝るのか…。新しい…惹かれるな…。てか、仕事終わって、スケジュールって何があるんだよ。

 

ドミナントは言おうと思ったが、側で気持ち良さそうに寝ている那珂ちゃんを見て、言うのをやめた。

 

……艦娘って可愛いな。小動物みたいで…。…あんな関係にはならないって言ったけど、もったいないんじゃないか…?…いや、何思ってんだ俺?そんなことをしたら犯罪者じゃないか?パワハラ…性的暴行…憲兵に連行…裁判…死刑…。この連想…いやだな…。

 

ドミナントは勝手に連想して、艦娘の夢を潰す。ある意味、“第4佐世保鎮守府の提督”である。

 

…………

 

「…ん…?那珂ちゃん誘拐されちゃった!」

 

「いや、ここ執務室だから…。食堂で寝させると他の艦娘に迷惑だから執務室のソファーで寝かせたんだ。」

 

那珂ちゃんがトンチンカンなことを言い、提督椅子に暇そうに座っているドミナントが苦笑いする。

 

「今は3時ちょいだな。仕事は終わっているから自由にしていいぞ。」

 

「やったー!あがのんのところへ行っくよー!」

 

「いってらっしゃい。」

 

そして、那珂ちゃんは執務室から出て行き、ドミナントだけが取り残される。

 

「……結局、アイドルってなんなんだろうな…。」

 

そして振り出しに戻る。すると…。

 

「提督!」

 

「うおっ。なんだ?」

 

突然那珂ちゃんが戻ってきて驚くドミナント。

 

「あがのんいないよ〜?」

 

「…まだ着任していないのか?あんなにたくさんいるのに…。それとも、遠征や警備か?」

 

任務についてはセラフとジャック・oに任せているため知らない。

 

「わかんないけど〜、暇だから戻ってきちゃった☆。」

 

「そ、そうか…。」

 

そしてドミナントと那珂ちゃんは何もない執務室の中しりとりやアイドルについて質問した。

 

…………

 

「ヒトナナマルマル。夕焼けターイム!夕焼け那珂ちゃん♪キャハッ☆那珂ちゃん今日も最かわ☆」

 

「そうだな。」

 

ドミナントは暇すぎたので、ジャックとオセロをしながら言う。もちろん、何も聞いておらず見てもない。

 

「どうだ?」

 

「むむむ…。…これ、負け確定してない?」

 

「いや、私がミスをすれば逆転の可能性はあるぞ?」

 

「アホか。するわけないだろ?」

 

ジャックが意地の悪い笑いをし、ドミナントが苦笑いをする。

 

「提督!見てる〜?」

 

「ん?あぁ、見てたよ。」

 

「絶対に見てなかったでしょ!?」

 

那珂ちゃんは決めポーズまでしたのに見てもいない提督に頬を膨らませる。

 

「すまんな。」

 

「提督ー、夜ご飯は〜?」

 

「もうご飯の心配か?…まだ早いからな…。自分で作ったらどうだ?」

 

「えっ!?那珂ちゃんが作るの?なんで?…どうやって?」

 

「……。」

 

……なるほどな、アイドルってのはご飯も作ったことがないのか。しかも、俺に作れと要求してくる…。プロデューサーってのは疲れる仕事だな。

 

そして、ドミナントは料理を作る。

 

…………

 

「できたぞ。」

 

「やったー!提督手作りの料理、那珂ちゃん大好き!いっただっきまーす☆!……美味し〜!」

 

「そうか。」

 

……まぁ、レトルトだがな。

 

ドミナントは手作りと勘違いして美味しそうに食べる那珂ちゃんを見て、内心ほくそ笑んだ。

 

…………

 

「那珂ちゃんお腹いっぱい〜。」

 

「そうか。今日の仕事は終わりだ。お疲れ様。」

 

「そっか〜…。今日の秘書艦はこれで終わりか〜…。」

 

「どうした?名残惜しそうだな。仕事が終わったというのに…。」

 

「そりゃ、そうだよ。秘書艦の仕事は中々回ってこないんだもん!今日も、くじで決まったし…。」

 

「そうか。」

 

ドミナントは自分の好感度の位置をなんとなく把握する。

 

「まぁ、次来るようにがんば…」

 

「でも、アイドルはへこたれない!」

 

「そうか。」

 

ドミナントは思った。“うん。こいつはある意味大丈夫そうだな。”と。




はい。終わりました。今回は普通?の日常回ですね。大した事件もありません。てか、普段のドミナントの1日です。ちなみに、那珂ちゃんを撫でようとしたが、“那珂ちゃんはー、みんなのものなんだからー、そんなに触っちゃダメなんだよー?”と言ってきたので撫でませんでした。そのあと、少し残念がったのはいうまでもない。
登場人物紹介コーナー
那珂…艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー!…と、まぁ、アイドルをアピールしてくる。他の鎮守府では、ウザがられたり、大量生産されたりするため、解体をしたりしている…。それをニュースで見てしまったため、心のどこかに闇を抱えている。
次回!第68話「AMIDAの一日」お楽しみに!


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68話 AMIDAの一日

はい、やってきました68話。小説を書き始めたのはただなんとなく、始めてみようかなと思って書きましたが、楽しいです。つまらなくても、面白くても自分の世界を作れることが楽しいです。昔はなかった趣味ですが、現在はこれが趣味になりました!皆さんも、ただなんとなくやってみてはどうでしょうか。
「えー、筆者さんが無茶言っているので爆撃したいと思います。」
瑞鶴!?前あらすじ言ったよね!?なんでいるの!?
「今日はこの子を連れてきてあげたのよ。」
「あたし…白露型駆逐艦…その八番艦…山風…。」
おー、山風。…あらすじ言えるかな…?
「…やって…みる…。」

あらすじ…
前回…あたしが一人でいると…提督と那珂と教官が…手を繋いで…私を中心に…“かごめかごめ”…て、歌って回ってた…。そして…そのうちみんな集まって…遊んだ…。…楽しかった…。


…………

とある部屋で自由にするAMIDA…。

 

……突然だが、自己紹介しよう。自分はAMIDA。神様に飼われている?生態兵器だ。今日は自分の一日を知ってもらおうと思う。

 

そう。ここは神様の部屋。そこに…。

 

バァァァン!!

 

「またドミナントに相手にされなかったよ〜…。」

 

神様が涙目で入ってくるなり言う。そしてベッドに寝転がる。

 

……主人か…。今日もまたドミナントへのスキンシップに失敗したな…。懲りないのだろうか…?

 

AMIDAはベッドで暴れている神様を見て思う。

 

「む〜…。こんな日は…。」

 

「キシ…。」

 

……まさかな…。

 

神様がAMIDAを見る。

 

「AMIDAと遊んでやるー!」

 

「キシキシ。」

 

……いつも付き合わされる身にもなってくれ…。

 

たまらずに逃げ出すAMIDA…。神様はずっといるうちに触れるようになったのだ。

 

「待てー!」

 

「キシ。」

 

……面倒を押し付けられる前に逃げなきゃ…。

 

神様が追いかけてくるので、AMIDAも狭い部屋の中で逃げる。しかし、1分もたたずに捕まる。

 

「やっと捕まえた〜!」

 

「……。」

 

……ここまでか…。今日は一体どんな無茶に付き合わされるんだ…?

 

「今日は〜、私の話し相手になってもらう!」

 

「キシ…。」

 

……まともそうでよかった…。

 

そして、神様はお菓子を取り出し、机の上に広げる。AMIDAは机の上に乗っている。

 

「今日はね…。私がドミナントのところへ行って、“遊びに行こう”って誘ったら、断られちゃって…。」

 

「キシ。」

 

……そりゃぁ、仕事とかで忙しいと思うし、疲れている日もあるだろう。

 

「そしてね、私には断ったのに、艦娘の要望には応えてくれるの…。おかしくない!?」

 

「キシ!」

 

……ふむ。たしかにおかしいな。同じ仲間なのだから平等に接するべきだろう!

 

「そりゃぁ…、私の遊びは大抵ラブラブ系だけどさ…。」

 

「キシ…。」

 

……うん。それは嫌がるだろうな。前も“あんな関係”にはならないって言っていたし…。

 

「でも!私の彼氏なのにに、応えてからないのはおかしいと思う!」

 

「……。」

 

……いつドミナントが主人の彼氏になった?

 

「それに、最近のドミナント…、みんなに人気あるから、私のこといらないんじゃないかなって…。」

 

「キシキシ。」

 

……それはない。ドミナントはどんなやつか知っている。

 

「この前だって、ジナイーダとどこか行っていたみたいだし…。」

 

「キシ?」

 

……ほう。あのジナイーダが?

 

「私にはもう飽きちゃったのかな…?」

 

そう言って机に伏せる。

 

「キシキシ!」

 

……飽きるわけがない。ドミナントは…一応大事にしているはずだ。この前だって、滅多にしない抱っこをされて部屋にきたじゃないか。

 

AMIDAは神様の頭を器用に撫でる。

 

「…ありがとう…。…そうだよね。そんな人じゃないよね。わかってはいるんだけどね…。」

 

「キシ〜…。」

 

……まぁ、もっと何かが欲しいんだろうな…。

 

「…でも、私は神様で彼は人間…。親に言っても許されないと思うし…。お兄ちゃんがまず絶対に認めないと思うし…。…先輩神様は認めてくれたけどさ…。」

 

「キシ!?」

 

……ナニソレ?初めて聞いたよ?親いるの?しかも兄もいるの!?

 

「やっぱりこれ以上の関係は無理なのかな…。」

 

「キ〜…。」

 

……う〜ん…。家庭の事情はわからないけど、なんとなく無理なのはわかる…。

 

そんなことを言っていると…。

 

コンコン…。

 

「だーれー?」

 

『ドミナントだ。』

 

「!。ちょっと待ってて!」

 

……ドミナントが来るのか。珍しいな。

 

慌てて部屋を片付ける神様を見て思う。

 

「いいよー!」

 

「失礼するよ。…何か食べてた?」

 

「い、いや、別に何も…。」

 

……いや、嘘つくなよ。

 

「…口周りに食べカスがついているぞ。」

 

「……。」

 

「…まぁいいや。本題だ。これを見たことはあるか?」

 

ドミナントはCDを見せる。

 

「?…あぁ、それね…。」

 

「知っているのか?」

 

「…うん。実は…」

 

…………

数日前

 

「今日も暇だなー。」

 

神様は呑気に歩いている。

 

「ふんふふ〜ん。…ん?なんだろう、あれ?」

 

神様はポストの中に何かはみ出ているものを見つける。鎮守府に手紙が届くのは稀で、大抵小包である。

 

「?。CDに…ドミナント宛の手紙?」

 

神様は手に取る。

 

「…ハッ!これを持っていけば私の好感度アップなんじゃ…。神様ありがとう!撫でてもらえるかも…。えへ…えへへへ…。」

 

通りすがりの艦娘がそれを見て微妙な顔をしたのは言うまでもない。しかも、神様は自分である…。

 

「そうと決まれば早く持ってこー!」

 

手を上げた途端…。

 

「カー!カー!」

 

カラスが光るCDに目をつけ、奪い取ろうとする。

 

「あっ!ちょっとやめて…。うわーん。」

 

神様は取られないように走る。

 

「カー!」

 

「渡さないよ!…グヘッ…。」

 

神様が転んでしまい、手を離してしまう。

 

「カー。」

 

「あっ!ちょっと!待てー!」

 

「カー…。」

 

行ってしまった…。

 

「うぅ…。これをなんて言えばいいのかな…。」

 

神様は転んでしまった痛みと申し訳なさに涙が出る。

 

 

(ここからは知らない)

 

「カー。」

 

CDを奪い取り、勝ち誇ったように飛ぶカラス。しかし…。

 

『ギャハハ!なかなかやるじゃない?ちょっと時間かかったけどねー。』

 

『はい!』

 

『…さてと、じゃ、いっちょいきますか…。』

 

『?何をするんですか?』

 

『主任必殺…乱れ撃ち〜!ギャハハハハハ!』

 

『乱れ撃ちというか、適当に撃っているだけじゃないですか!?疲れますよ…えっ?ちょっと…キャァッ!!』

 

主任が適当に上も下も横も撃ち、どこを狙っているか分からないため回避しづらい艦娘…。そして当たる。

主任、危険温度が続いている!

 

「ガッ!?」

 

ペイント弾が見事命中!カラス、前が見えない!

 

「カー!?カー?」

 

そして、その反動でCDを落とす。そして、それを那珂ちゃんが見つけた。それをAMIDAは窓から見ていた。

 

…………

 

「ということがあったの…。」

 

「なるほど…。それで、落ちていたということはカラスが落としたんだな。」

 

……。まぁ、落としたのだろう…。

 

「手紙は?」

 

「あ…。うん…これ…。」

 

そして神様は机から取り出す。

 

「確かに受け取った。後で見る。」

 

そしてドミナントは懐にしまう。

 

「…その…、怒ってない…?」

 

神様は上目遣いで見る。

 

「はっはっは…。そんなこと思っているわけないじゃないか。どうお仕置きしようかで頭がいっぱいさ。」

 

「やっぱり怒ってるよね!?」

 

「いや、俺のために持ってこようとしたのだろう?感謝はしている。だが、もう一つの要件で怒っているんだ。」

 

「もう一つの要件って…?」

 

……そんなにやらかしたのか…。主人は…。

 

ドミナントはポケットから小さい何かを取り出す。

 

「これはなんだ?」

 

「あっ…それは…。」

 

そう、前見つかった盗聴器だ。

 

「セラフに聞いたら、お前から依頼があったらしいが?」

 

「え…えへへ…。…ごめんなさい…。」

 

「ううん。許さん。」

 

「イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「毎度おなじみだがな。これが効くだろう。」

 

ドミナントは頬を引っ張る。

 

「ごえんなひゃい!ごえんなひゃい!…えも、つえられてしあわしぇ…。」

 

「うわぁ…。」

 

ドミナントはすかさず手を離す。

 

「ちょっと寒気がした。帰るわ。さよなら。」

 

「えっ!?つねってもいいからもっと一緒にいて!!お菓子もあるから!」

 

「いや、帰らせてもらう…。」

 

「お願い!添い寝して!」

 

「本性が出たな!やっぱり帰らしてもらおう!」

 

「行かせないよ!」

 

「あっ!おま…。鍵かけやがった!」

 

「どうしても出たければ私から鍵を奪うんだね!」

 

「待てー!」

 

「待たないよっ!」

 

そうやって賑やかになった。

 

……やっぱり、なんだかんだ言って、仲がいいじゃないか。

 

AMIDAはそう思い残し、隙間を通って部屋から出て行った。結局、ドミナントは添い寝してあげ、神様は忘れられない思い出となった。




はい。終わりました68話。…AMIDAの一日はまだ終わってませんね…計算ミスです。はい、その話は置いといて今回の話はAMIDA視点でもありました。次回も続きます。
登場人物紹介コーナー
天才AMIDA…AMIDAの中でも天才に位置する神様のペット。人の言葉を理解し、考える。もはや話せない人みたいな感じだ。深海棲艦でいう、姫・鬼級。ドミナントがよく世話をしてくれる。この鎮守府にあるAMIDAのトップリーダー。
次回!第69話「AMIDA会議」お楽しみに!


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69話 AMIDA会議

はい。ついにやってきました69話。この世界は、大本営が各鎮守府に資材を毎日少しずつ配ります。しかし、第4佐世保みたいに多すぎると資材をくれません。ちなみに、大本営は国から出る税金の一部で資材に換算しています。鎮守府で作られるものは、大抵資材で作られています。各鎮守府で、ドロップ、もしくは建造して出てきた艦娘はもう出ません。(沈んだ場合は出てきます。)つまり、一つの鎮守府で一人ずつです。前回、盗聴器の流れは、ジナイーダが調べる→発信器も兼ねていることがわかる→セラフのもとへ→問い詰める→神様から依頼→神様のところへ行った。追伸、筆者が風邪なので遅れました…。
「あんた大丈夫?」
あぁ…。その声は俺の秘書艦である麗しき瑞鶴…、今日も綺麗だ…。
「…キモ…。」
…聞こえてたぞ…。ところで、瑞鶴はレギュラーなのかい?
「暇だしね…。最近ログインしてないし…。」
メタい発言やめようね?確かに最近ログインしてないけどさ…。で、今日のゲストは?
「この子。」
「艦隊のアイドル!那っ珂ちゃんだよー☆!」
おー!じしょ…ゴホンゴホンッ!…。艦隊のアイドルですかー。
「なんか気になる言い方だけどー…。始めちゃうよー!」

あらすじっ☆
前回!涙目で自分の部屋に入った神様!しばらくして提督が中に入ったの!那珂ちゃんの部屋に提督が入ったら〜、スキャンダルになっちゃうからやめてねっ☆。アイドルって、世間からじゃそういうふうに見られちゃうから!キャハッ☆。

ほぼあらすじじゃねー!!


…………

 

……さて、今回も自分AMIDAの1日の一部だ。会議があるから各部屋の代表が集合しているな。

 

神様の部屋を抜け出してきたAMIDAは、天井裏に集まる。他にも、教室や、演習場…台所など様々な場所にいるAMIDAの代表が集まっている。

 

「キシ。」

 

……まず、変わったことはあるか?

 

リーダーのAMIDAは言う。

 

「キシキシ。」

 

……キッチンでは、また今日も集まって料理をやっていた。

 

「キシ〜。」

 

……おー。

 

「キシ?」

 

……で、あの3人は上達したの?

 

〔筆者が面倒になったので、AMIDA言葉は省きます。〕

 

……いや、まだ…。匂いだけでひっくり返そうになる…。

 

……大変だな…。そっちの管轄は。

 

……セラフは何か対抗策をとっているのか?

 

……なんて言っているのかわからないけど、丁寧に解説しているのは確かだよ。…前は頭抱えてたし…。

 

……そりゃ大変だな…。そっちはどうだ?

 

……教室は珍しく授業?をしていたよ…。相変わらず凄い殺気…。ピリピリする。

 

……ジナイーダ?とかいう人はすごいね…。

 

……ジナイーダは戦闘の天才とも言われていたらしいからな…。料理は下手だけど…。…そっちはどうだ?

 

……演習場はピカーってなって、ドカーンでバババだよ。

 

……よくわかんないな…。もっと詳しくできないか?

 

……???(age quod agis?)

 

……あぁ?なんだって?

 

……???(to fui, ego eris.)

 

……相っ変わらずほんと訳わかんねーな…。

 

……。次、妖精さんの動きは?

 

……はい。そのための私です。妖精さんの目立った動きは特にありません。しかし、何かを作っていることは確かです。共にいる妖精さんは、たまに口を滑らせます。いい傾向です。まぁ、何か重要なことを聞いたら、言いますよ。

 

……わかった。しかし…今日も来ていないな…。あのAMIDAは…。

 

……あのAMIDA?我々の他にも代表が…?

 

……いや、代表ではないが、一応毎回呼んでいるんだがな…。ここよりもあっちの方がいいらしい。

 

……あっち?

 

……たまに見ないか?ある艦娘の頭にずっとひっついている同士を。

 

……あぁ…。あの同士か…。

 

代表たちは、如月の頭の上にいるAMIDAを想像する…。

 

……まぁ、確かに、あの娘には何か…、我々を引きつける特別な何かがあるような気がするからな…。

 

……世の中には不思議がつきものなのだな…。

 

そんなことをしみじみ思う…。

 

……で、倉庫はどうだ?

 

……何か作っている少女がいたよ。…まぁ、ガチタンじゃないといいけど…。

 

……ガチタンで倒れたレイヴン…もしくは、同士は数知れず…。

 

……提督が最近、不自然な資材消失についてコソコソ嗅ぎ回っていたが…、それか?

 

……おそらく…。

 

……まぁ、我々は知らせることができないからな…。

 

……畑の方はどうだ?

 

…………。

 

……誰もいないのか?畑の管轄は?

 

……はい…。我々とは似つかない生体兵器がいますので…。

 

……近寄りがたいというか…。

 

……???

 

……もう話すな。お前が言うとややこしくなるから。

 

天井裏がざわつく。

 

ガタッ

 

「誰かいるっぽい?」

 

「キシ。」

 

……やべ。見つかった。撤退する。

 

カサカサカサカサ…

 

夕立が覗き、AMIDAはそれぞれ散らばって逃げていった。

 

「……。気持ち悪いっぽい〜…。」

 

夕立は見たくないものを見た気分になった。それが普通の反応である。

 

…………

 

「キシ。」

 

……この鎮守府にいるのは良いが…、提督と仲間たち以外に見つかったら何をされるか…。ただでさえ、神様がどれほど危険なのか知っているんだ…。提督の食事に惚れ薬を入れたり…、盗聴器を仕掛けたり…。

 

一応言っておくが、それは神様だけであり、艦娘は違う。

 

「キシ!」

 

……まぁ、見つかったら逃げればいい。それに、畑が気になる。

 

AMIDAはそう言って見に行った。

 

…………

鎮守府裏 畑

 

「……キシ…。」

 

……これは…、野菜やら果物やらが立派に育っている…。でも…、増えてない?生体兵器…。

 

そう、前まで生体兵器はB1037f M-typeと、その子供しかいなかったはずなのだが、違う種類も増えていた。

 

「キシ?」

 

……外来種かな?シロアリみたいなのがいる…。

 

シロアリ=ウォリアーバグである。

 

「……。」

 

……まぁ、とにかく先輩として話を聞こう…。

 

AMIDAは近づく。

 

「キシ!」

 

……君は新入りだな?何をしているんだ?

 

(……。足音が気持ち悪いなぁ…)

 

AMIDAは話しながら思う。

 

「キチャ…。」

 

……養分を足しているだけだけど…。

 

「キシ?」

 

……本当か?

 

「キチャ。」

 

……あそこにいる緑色の生体兵器に聞いた。ここに住みたいのならそれなりに役に立てって。

 

「キシ…。」

 

……そうか…。

 

(先を越された…。)

 

AMIDAはそう言い残して何処かへ行った。後日ドミナントがそれを見て騒いだのは言うまでもない。

 

…………

深夜

 

「キシ。」

 

……深夜…、それは自分たちが活発になる時間…。つまり夜行性…。誰もいないからコソコソする必要もない。

 

AMIDAは廊下を歩く。すると…。

 

『そうきたか…。あーあ、守銭奴の魔法使いも変わったなぁ…。』

 

『提督は相変わらず独り言が多いね。』

 

『ボ、ボクは好きだけど…。』

 

『皐月ちゃんが司令官に愛の告白かしら?うふふ。』

 

『そ、そんなんじゃ…。』

 

『テレビの音が聞こえないぞ。』

 

『いっけー。』

 

娯楽室から声が聞こえる。

 

「キシ?」

 

……その声提督だよね?何してんの?

 

AMIDAは覗く。するとそこにはナイトキャップをかぶって、テレビを見る6人がいた。

 

「ふむ…。そろそろ一時だ。眠らなくて平気なのか?」

 

「およ?もし寝ちゃったら提督が運んでくれるんじゃないの?」

 

「俺は運ばんぞ。前みたいな“騙して悪いが”には引っかからん。あのときは酷い目にあったからな…。」

 

「へぇ〜…、司令官は誰かを運んだことがあるんだ〜…。」

 

「……。皐月、俺は騙された身であるし、それによる二次災害も巻き込まれたから一応言っておく。俺は何もしていない。…三次災害は流石にごめんだ。」

 

「司令官がそこまで重い感じでいうのは珍しいな…。何かあったか?」

 

「色々…な…。」

 

ドミナントは、神様に騙されて窓から放り投げられたことと、古鷹に命を狙われたことと、それによるジナイーダに殴られたことを思い出す…。

 

「皐月ちゃん、あの表情でわかるでしょ?司令官は本当に何もしてないわぁ。」

 

「それは…、わかるけど…。」

 

「あたしは、司令官のことを信じるよ!」

 

疑心暗鬼の中、文月は微塵も疑わずにドミナントに言う。

 

「おぉ…俺の天使はここにいた…。」

 

「司令官…、いい年した大人が今のを言うと流石にキモいぞ…。」

 

「…ごめんなさい…。」

 

ドミナントは引いた感じの長月に謝った。

 

「キシ…。」

 

……。どうやら、夜行性なのはAMIDAだけでなく提督もか…。

 

AMIDAは今のを見て、ドミナントが夜間に本当の自分の姿を晒すのを知った。

 

…………

堤防

 

「キシ。」

 

……満月のせいで輝きが薄くなってよく見えないけど、それでいい。

 

AMIDAは雲ひとつない、星の煌く夜空を見上げる。波の音が耳に心地よい。

 

……いい夜だな。

 

「いい夜ね。」

 

……!?

 

AMIDAは気がつかなかった。一人ベンチに座って、夜空を見上げる艦娘がいることに。

 

「…キシ。」

 

「ん?何かしら。…あなたも座る?」

 

そう言って、AMIDAを持ち上げ、座らせる。

 

「キシ。」

 

……しかし珍しいな…。まさか加賀が一人で…、しかもこの時間に…。

 

AMIDAが逃げるのはイタズラされそうな艦娘、もしくは神様だけで、それ以外は大人しく、逃げたりしない。(秘密裏に集まっているときは誰だろうが逃げる。)

 

「……。あなたはなぜここに?」

 

「キシ。」

 

……いつもの日課。

 

「…まぁ、言葉が分かりませんが…。私は、ただなんとなくね。」

 

「キシ。」

 

……そうなんだ。

 

「…あなたたちはどう思うのかしらね。提督とジャックさん…、どちらが提督にふさわしいか…。」

 

「……。」

 

……反乱でも企てているのかな…?

 

「前は成り行きとはいえ、提督に酷いことを言ってしまいました…。…謝るべきよね…。」

 

「キシ。」

 

……いや、提督は絶対に忘れているぞ。

 

「でも、本当にジャックさんが良いと思っているわ。好きだからではありませんが。」

 

「……。」

 

……おや?好きなのかな?

 

「私はただ、この戦いが早く終われば良いと思っているだけ。赤城さんも同じ思いのはず。…だけど、今の提督は…。」

 

「今の提督は戦いを終わらせようともせず、ただ遊んでいる…。そうか?」

 

「キ!?」

 

「ジャックさん。」

 

驚くのも無理はない。気がつけば隣にジャックがいるのだから…。加賀はなんともない顔をしているが、中は驚いたり、ドキドキで混乱している。

 

「まぁ、確かにドミナントは遊んでいるな。」

 

「スゥ〜…ハァ〜…。…そうですよね?」

 

加賀は深呼吸して落ち着かせてから言う。

 

「…だが、終わったらどうする?」

 

「……。」

 

ジャックの一言で言葉が詰まる。考えていないのだろう。

 

「終わったら、お前たちはどうなる?」

 

「…わかりません…。」

 

「…そうか。…少し昔話をしよう。」

 

「…キシ。」

 

……まずいな…。ここにいると巻き込まれる。帰ろう。

 

AMIDAは鎮守府の中に帰っていった。

 

…………

神様の部屋

 

「スー…スー…。」

 

ドミナントに添い寝されて気持ちよさそうに眠る神様。

 

「キシ…。」

 

……ただいま…。

 

そして、AMIDAは籠の中に入り、眠るのであった。




はい。長くなったので、ジャックと加賀の話は強制終了です。次回は昔話から始まります。随分と遅くなってすみません。
登場人物紹介コーナー
AMIDA1…キッチン担当。頻繁にやる、“セラフの、提督の胃袋を掴め!ドキドキ料理教室”で、例の3人の料理を嗅いで、ひっくり返る。
AMIDA2…教室担当。たまに、ジナイーダの授業を見たりしているため、少し頭が良い。殺気に耐えられる能力を持っている。
AMIDA3…演習場担当。言葉が不明。
AMIDA4…AMIDA3の相棒。AMIDA3の言葉を唯一訳せる。しかし、それの約3分の1は適当。
フラジールAMIDA…名前の通り、穴妖精のパートナー。監視も兼ねている。
如月AMIDA…前も説明した気がする…。だが、一応書こう。前は如月が取ろうとしても取れなかったが、最近はすんなりと取れるようになった。
次回!第70話「ジャック・Oと加賀」お楽しみに!


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70話 ジャック・Oと加賀

風邪はつらいよ…。流行っていますねー。
「全く、まだ治らないの?」
あのねぇ…。まだ前回から1日しか経っていないんだよ?まだだよ。
「まだ冬じゃないのに…。これじゃぁ先が思いやられるわ。」
おや?心配してくれているのかい?
「あ、当たり前じゃない。私はあんたの…」
それじゃぁ、前置きもこれくらい。今日のゲストは?
「ちょ、私がまだ言い終わって…。…まぁいいわ。この子よ。」
「キシ。」
AMIDAじゃん。…あれ?前も…
「それじゃぁ、あらすじをどうぞ。」
「キシ。」
まだ言い終わって…。仕返しされた…。

キシ
キシ。キシキシ。キシー。キシ!キシ〜。

結局分からず終い…。外に出る前の加賀から書きます。


…………

艦娘寮一室

 

「スー…スー…。」

 

「…眠れません。」

 

夜中、気持ちよさそうに眠る赤城の隣で加賀がむくりと起きる。

 

「…今日は満月ね。」

 

加賀は満月を見ようと窓の近くへ行く。満月の光に照らされ、部屋の中がよく見える。明かりをつけなくても良さそうだ。

 

……起こさないようにしないと…。

 

寝ている赤城を起こさないように無音で布団から出て、窓辺に行く。

 

……外の方がよく見えそうね。

 

加賀はパジャマから服に着替えて部屋を出る。

 

「…廊下も明るいわね。」

 

足音を立てずに歩き、玄関にいると…。

 

「どうかしましたか?」

 

「!?」

 

加賀の背後に、本日の見張り当番のセラフが足音も気配も消して立っていた。

 

「…驚かせてすみません。ですが、許可なく夜間、外を出歩くのは禁止しています。理由を聞いても?」

 

セラフが聞く。

 

「少し眠気がなく、空を見ようと外へ…。」

 

「…なるほど。空を見にですか…。まぁ、この世界の空は美しいですからね。見たい気持ちもわかります。…許可は私が取ります。ですが、一時間で帰ってきてくださいね?」

 

「わかったわ。」

 

こうして、加賀は外へ出て、ベンチに座る。

 

……いい星空ね。満月でよく見えないけれども…。

 

丸い満月と共に、煌く星空を見る。そして月明かりに照らされる海を見る。波が耳に心地良い。

 

……何故眠れないのかしら…。…深く考えてしまっているからかしら…?…“提督”のことを…。

 

ため息を吐き、再度空を見る。

 

……この空を見ると、悩みが吸い込まれそうね…。

 

「いい夜ね。」

 

そう考えていると…。

 

「…キシ。」

 

「ん?何かしら?…あなたも座る?」

 

足元にいて、見上げるAMIDAを自分の隣に座らせた。

 

……この子も何か悩みでもあるのかしら…?

 

「……。あなたはなぜここに?」

 

「キシ。」

 

……言葉がわかるはずないわね。

 

「…まぁ、言葉はわかりませんが…。私は、ただなんとなくね。」

 

「キシ。」

 

……相槌を打ってくれているのかしら?言葉がわかる?

 

「…あなたたちはどう思うのかしらね。提督とジャックさん…、どちらが提督にふさわしいか…。」

 

「……。」

 

「前は成り行きとはいえ、提督に酷いことを言ってしまいました…。…謝るべきよね…。」

 

「キシ。」

 

「でも、本当にジャックさんが良いと思っているわ。好きだからではありませんが。」

 

「……。」

 

……虫相手に私は何を…?…ですが、このまま話すわ。そうすればスッキリすると思いますし。そのあと眠れると思いますし…。

 

「私はただ、この戦いが早く終われば良いと思っているだけ。赤城さんも同じ思いのはず。…だけど、今の提督は…。」

 

「今の提督は戦いを終わらそうともせず、ただ遊んでいる…。そうか?」

 

「キ!?」

 

「ジャックさん。」

 

……!?何故ここに!?というか、今までのを聞かれていた?恥ずかしい…。

 

加賀は心の中であたふたする。

 

「まぁ、確かにドミナントは遊んでいるな。」

 

「スゥ〜…ハァ〜…。そうですよね?」

 

加賀は自分の気持ちがジャックと同じことに少し嬉しく思う。

 

「…だが、終わったらどうする?」

 

「……。」

 

……何故いきなり?…ですが確かに…、終わったらどうすれば良いんでしょうか…。

 

「終わったら、お前たちはどうなる?」

 

「…わかりません…。」

 

加賀は正直に答えた。

 

「…そうか。…少し昔話をしよう。」

 

「…キシ。」

 

AMIDAは飽きたのか、どこかへ行った。

 

…………

 

「…ック・O。ジャック・O!」

 

「…ん?…どうした?」

 

一人のレイヴンが呼びかけ、応答するジャック・O。

 

「どうしたじゃない。次はどうすれば良い?」

 

「あぁ…すまない。ボーっとしていてな。」

 

「こんな頭でバーテックスは大丈夫なのか?」

 

「ライウン…馬鹿にするな。」

 

「はいはい。すみませんね。」

 

呼びかけていたライウンは、ンジャムジに言われ、軽く謝る。

 

「だが、あの大破壊から生きていたとはな。てっきり、のたれ死んだのだと思っていたよ。」

 

「ジャック…死なない。」

 

「まぁ、あの企業が手を合わせて、アライアンスを立ち上げたことは想定外だが…、次はそれを潰してレイヴンによる世界を作る。」

 

ジャックは建前を口にし、真の目的は言わない。

 

「まぁ、俺はあんたについていくぜ。」

 

「ンジャムジ…ついていく。」

 

「そうか。…まぁ、存分に働いてもらうがな。」

 

「何か話しているな?小僧。話すなら茶を飲め。」

 

「いや、遠慮しておく。」

 

そしてジャックの計画は始まった。そして、瞬く間に時間が過ぎ、“ドミナント”を探して行った。

 

…………

 

ボボボボボ…

 

「やはりな…。」

 

ボカァァン…

 

ライウンは撃破された。

 

「お疲れ様。予期せぬ賞金も入ったし…。」

 

…………

一人のレイヴンが去った後…

 

「結果は見えていたが…なるほど…。急がねばならんな…。」

 

ジャックはライウンが負けるのをわかっていた。しばらくして…。

 

『ジャック…どうだ?』

 

「奴はやられた。」

 

『!?…そうか。ライウン…。』

 

「…帰投する。」

 

ジャックはンジャムジとは違い、気にした風もなく帰投した。

 

…………

 

『そいつだ。裏切り者は排除してくれ。』

 

「ジャック…どうした?何を…言ってる?」

 

そして、一人のレイヴンはンジャムジを葬った。

 

ボボボボボボ…

 

「ジャック…どうして…?」

 

ボカァァン…

 

そして、葬ったレイヴンは通信を切った。

 

『…許せ…。』

 

ジャックの言葉は誰の耳にも届かなかった…。

 

…………

 

「…友人…仲間…。全てをくれてやった…。もはや真の強者は彼と彼女しかいない…。どうやって依頼を出すか…。」

 

ジャックは誰もいない拠点で独り言を呟き、考える。そしてふと、近くの椅子を見る。

 

……ンジャムジ…お前ならどうしていた…?

 

……ライウン…お前はどういう算段を立てていた…?

 

……鳥大老…お前はこんな時にもあのまずいお茶を勧めてきそうだな…。

 

そして、今は亡き仲間たちの記憶が蘇る。そこにふと、昔質問されたことを思い出す。

 

『ジャック…戦いが終わったらどうする?』

 

ンジャムジに言われたことを思い出す。

 

……あの時は、なんて答えただろうか…。

 

ジャックは思い出せない。そのときは、“ドミナント”に夢中だったから適当に答えていたからだ。それに、自分は生き残ることを考えていない。

 

……この戦いが終わって、もし生きていたら…か…。あり得ないな。…だが、無いと思っていたパルヴァライザーもインターネサインもあった。“ドミナント”も…。可能性が0とは言いきれん…。

 

ジャックは考えたが何も浮かばなかった。すると…。

 

「うっ…!?なんだ!?」

 

目の前が光だし…。

 

「…ここはどこだ?」

 

海の上である。

 

「…アライアンスの兵器か…?ならばすぐに戻らなくては!…なぜ沈まない…?」

 

ジャックは沈まない海に疑問を抱いた。すると…。

 

「ギャァァ!」

 

「ガァァァ!」

 

「なんだ?この生体兵器は?…キサラギか…?…どちらにしろ、ここで死ぬわけにはいかんな。」

 

そして、深海棲艦を葬った。

 

…………

 

「…というわけだ。」

 

「…結局、何も浮かばなかったんですか?」

 

「ああ。なぜなら、生きていてもどうすれば良いかわからん。企業の犬になるのは死んでもごめんだ。利用された挙句、殺される。…かといって、自害などしたくもない。レイヴンとして死にたいからだ。…戦いが終わったらお前たちはどうなる?」

 

「…国に利用されて…殺される…。あるいは、必要のない…ただ消費するだけの兵器…人権のない私たちは…。」

 

「そうだ。…厳しい言い方になるかも知れんが、深海棲艦の次はお前たちかもしれんぞ。それに、あるだけで資材を消費するだけの兵器を誰が必要とする?」

 

「…各鎮守府の提督が必要するのでは?」

 

「…甘いな…。私はこれまで生きてきて、様々な人間を見てきた。今はまだお前たちを必要としているから、優しくしたり、お前たちに不自由のない生活をさせている。必要なくなった時ほど呆気なく捨てる奴が多い。」

 

「そんなの…勝手すぎます…。」

 

「それが人間だ。」

 

ジャックと加賀は難しい話をしている。

 

「…ドミナントはそれがわかっているんじゃないか?」

 

「えっ?」

 

「あいつはわかっているから遊んでいるんじゃないか?あいつが本当に終わらせたいのなら、お前たちを活用せず、自ら倒しに行った方が効率も良いしな。」

 

「…提督が…?」

 

「ま、一種の天才ってやつだよ。」

 

「「!?」」

 

ジャックと加賀は驚いた。後ろに主任がいたからだ。

 

「…どうした?」

 

「セラフが時間だってさ〜。ギャハハハ。」

 

「そうか。わかった。すぐ戻る。」

 

ジャックが答え、主任が戻っていく。

 

「…それでは、私は戻る。」

 

ジャックも戻っていった。

 

「……。提督はわかった上で遊んでいる…。私たちが不当な扱いを受けないように…。」

 

加賀は今の話を聞いて、自分は提督になんてことをしようとしたり、していたのかを反省した。…まぁ、ドミナントはただ遊びたいから遊んでいるだけだが…。

 

…………

翌日

 

ドミナントが執務室で遊んでいると…。

 

ガチャ…

 

「提督。」

 

「ん?加賀か。どうした?」

 

加賀が執務室のドアを開けて入る。

 

「その…。この前は無能と言って申し訳ありませんでした。」

 

頭を下げる。

 

「…?。!。あの時か。別にいいよ。」

 

ドミナントは忘れていたらしい…。

 

「ですが、提督にそんなことを…。」

 

「いいっていいって、自分が反省しているならそれでいいさ。」

 

「…ごめんなさい。」

 

ドミナントの慈悲にもっと反省した。

 

「それより、暇なんだ。遊ばないか?」

 

「……。」

 

加賀は少し顔をしかめた。

 

……分かっています。わかってはいるんですけど…。

 

「加賀…どうした?」

 

そんな心境もわからずにドミナントが聞く。

 

「提督。」

 

「なんだ?」

 

「仕事してください。」




はい。終わりました。少し長くなってしまいました。加賀がドミナントに対しての接し方が少し柔軟になりました。あの後、ぐっすり眠れたそうです。ジャックの過去を聞いている時の加賀は真剣な表情でした。
登場人物紹介コーナー
ンジャムジ…ジャックの友。ジャックの中では1番の友だったが、ドミナントを探すジャックに陥れられ、LR主人公に殺された。
ライウン…初見殺し。初めてLRをやる方はご注意を。初見で殺したプレイヤーはまさにドミナント。
鳥大老…ウーターロン。まずいお茶を勧めてくる。一応ゲイヴン。名台詞は、「私のお尻で果てろ!」だそうだ…。とっつきの方は気をつけよう。
次回!第71話「俺は面倒が嫌いなんだ」お楽しみに!


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71話 あたしは面倒が嫌いなんだ

はい。ついに71話…残り29話…。長くない?100話とは想像以上に長い…。ネタがつきそう…。あと、タイトル変更しました。
「ネタがなくなったらこのコーナーも終わりね。」
いや、100話で終わりだ。
「てか、先のことよりもまず目の前のことでしょ?何で計画してなかったのよ?」
計画が狂ったんだ。字数が多すぎた。本来なら90話くらいのはずだがな…。
「全く、ほんと馬鹿ね。」
うるへー。それより今日のゲストは?
「なぜいるのかわかんないけど、この人。」
「ここは…どこだ?」
ンジャムジ…。何故?…まぁいいや。あらすじをどうぞ。
「?」

あらすじ
ジャック…加賀…話した。ジャック…何故俺を…?

まぁ、そこら辺はLRで。


…………

 

「あーあ。加賀に言われちゃった。…でも、終わって暇なんだよなぁ…。」

 

ドミナントは一人、提督椅子に座っている。加賀は一言言った後、部屋から出て行った。

 

「今日の秘書艦は誰だろう…。まだ来てないし…。」

 

呟くと…。

 

ガチャ…

 

「ふぁ〜、眠い…。」

 

そう言って艦娘が入ってきた。

 

……艦娘?だよな?知っていたり、関わったりする中ではじめてのタイプだ。…面倒くさそうだなぁ…。俺は面倒が嫌いなんだ。

 

面倒くさそうに入室する艦娘を見て思う。

 

「そ、そうか。…仕事終わっているぞ。」

 

……うん。仕事終わった後に来たよ。てか、もう朝の11時だよ…。

 

ドミナントは一人、困惑する。

 

「ん?あぁ、そうなんだ。じゃ、あたしは一眠りするよ。」

 

そう一言言って、自室に戻ろうとするが…。

 

ガシッ

 

「うん。待とうか。」

 

「えっ?」

 

ドミナントに肩を掴まれる。

 

「どうして遅れたのか理由を聞いていないなぁ〜。それに、遅れてきて挨拶もなしなのかなぁ〜?」

 

ドミナントは笑顔で聞く。だが緩んでいない…掴んだ手の力は…。

 

「え、えっとぉ…。その…。二日酔いで…。」

 

「ほぅ…、そっか〜…。」

 

ドミナントは、笑顔のままだ…。

 

「提督…笑顔なのに掴まれた肩が痛いんだけど…。」

 

「気のせいじゃないかな〜?で、君は?」

 

気のせいではない。ミシミシいっている。

 

「古鷹型重巡の2番艦、加古ってんだ、よっろしくぅー。」

 

だが、宿命なのか運命なのか、雰囲気的に絶対に言うはずのない調子で艦娘特有の紹介をする。

 

「…随分と調子良さそうだねぇ…。」

 

ドミナントは笑顔を崩さない…。

 

「痛い…痛いって…。」

 

「何か言うことは?」

 

ドミナントが聞く。

 

「…ごめんなさい。」

 

加古は素直に謝った。

 

…………

 

「さて、ひとまず落ち着いたけど、もう遅刻するなよ。」

 

ドミナントは起こされていることを棚に上げて言う。

 

「提督が言う?」

 

流石に反論。

 

「何がだ?」

 

「古鷹から聞いたけどさ〜、いつも起こされてるよね?あたしたち艦娘に。」

 

そう、ドミナントは大抵起こされている。

 

「…嘘かもしれんぞ?」

 

ドミナントは聞く。しかし…。

 

「前、秘書艦が古鷹の時、“起こし損ねた”ってあたしの前で喚いてた。まぁ、同じ部屋のこともあるけど…。」

 

「……。」

 

加古がその時のことを思い出し、さも面倒くさそうな顔をした。

 

……古鷹…お前…、そんなことを…。

 

ドミナントは微妙な顔をする。

 

「…そうか。改めて俺がいうのもなんだが…。なるべく遅刻はしないでくれ。…俺も頑張るから。」

 

「本当かなぁ…?」

 

「ああ。」

 

そして、ドミナントと加古の一日が始まる。

 

…………

午後12時

 

コンコン…ガチャ

 

「提督いますか?…てあれ?」

 

「くー…。」

 

夕張が入った途端に驚く。なぜなら、加古が提督椅子で寝て、提督がもう一つの椅子で紅茶を飲んでいたからだ。

 

「つれを起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れている。」

 

紅茶を作り、飲みながら言う。

 

「…提督はそれでいいんですか…?」

 

「まぁ、なんとかなるだろう。…紅茶飲むか?」

 

「飲みます。」

 

ドミナントが勧めた途端に即答するようでは、夕張も言えない。そして、ドミナントに何か話した後、部屋を出て行った。

 

「…ん?」

 

加古が紅茶の匂いで目が覚める。

 

「目が覚めたか?」

 

ドミナントは起きた加古に気づき、声をかける。

 

「ああ。…!?あたしはなんで提督椅子に…?」

 

「提督椅子と机、秘書艦用の椅子しかこの部屋にないからな。運んだ。」

 

ドミナントは“ベッドへ運ぶわけではないしな。”と最後に言ったが、誰の耳にも届いていない。

 

「…ところで、何飲んでるんだ?」

 

「紅茶。…飲むか?」

 

「いや、あたしは別に。」

 

「そうか。…これを飲み終えたら色々仕事があるぞ。今日は月に一度の愉快な仲間たちとの会議があるからな…。」

 

「あたしは面倒が嫌いなんだ。それに、それってあたし関係ないんじゃ…。」

 

「いいから行くぞ…。皆が…待ってんだ…。」

 

そして、ドミナントは会議に参加する。

 

…………

会議室

 

……ここには嫌な思い出があるんだが…、まぁいいか。

 

ドミナントが入った時はすでに全員いた。

 

「遅いぞ。」

 

「遅かったじゃないか…。」

 

「Zzz…。」

 

「お待ちしておりました。」

 

「や!待ってたよ!」

 

それぞれの言い方でドミナントを歓迎する。

 

「すまんな。…それでは、始める。まず、ジナイーダ。何か不満はあるか?」

 

「ああ。大半がレベル99のため、誰も授業に参加しない。暇だ。」

 

「なるほど…。主任はどうだ?」

 

「Zzz…。」

 

「…起きろー。」

 

主任が寝ていたため、ドミナントが起こす。

 

……主任はいつも寝ているな…。

 

「ん?何かようか?」

 

「“ようか?”じゃなくて、不満があるかどうか聞いているんだ。」

 

「そうか。ま、いいんじゃないの?どうでも。…でも、はっきり言って不満ありありだ。暇がない。」

 

「そうか…。」

 

「Zzz…。」

 

「もう寝たのか…。て、あれ?」

 

寝ていたのは加古だった。

 

「起きろー。…置いていくべきだった…。まぁいいや。聞かれない方が都合がいい。」

 

ドミナントは無理に連れてきたくせに、勝手なことを言う。

 

「セラフはどうだ?」

 

「私は…計画を練るのが仕事ですが、こうも毎日だと体を動かしたくなるというか…。倉庫の整備は、はっきり言って夕張さんだけで大丈夫ですし…。」

 

「ほう。…ジャックは?」

 

「私は、全体的に暇だ。艦娘に何か売る以外は。」

 

「そうだな…。明石がいないからな…。すまん。…神様は?」

 

「……。わかるでしょ?」

 

「分からん。」

 

「前話したよね!?いい加減艦娘にも心開いてよ!これじゃぁ天界の仕事と大差ないよ!」

 

「そうか。不満爆発寸前ってところか。」

 

ドミナントは次々と聞いていく。

 

「そう…か…。それじゃぁ、ジナイーダ!」

 

「何だ?」

 

「主任と共に演習の教官の一人となってくれ。そうすれば、主任の休みも増やすことが出来るし、暇なお前も働ける。」

 

「許可は確かにもらったぞ。」

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー。」

 

「次にジャック!」

 

「?」

 

「お前は夜の酒保の管理者になってくれ。…この秘書艦のように二日酔いになる者達を止める役になってくれ。伊良子には俺自らが言っておく。それと、作戦を練る役もやってくれ。お前はそれについての天才と知っている。」

 

「買いかぶりすぎだが…、まぁいいだろう。」

 

「セラフ、お前は…。カウンセラーを神様と交代交代にやってくれ。あと、それでも暇なら臨時教官として、演習してくれ。」

 

「わかりました。」

 

「神様は…。十分だろう。それに、それなりには心を開いているつもりだ。」

 

「え〜…。」

 

「以上!…他に誰か言いたいことは…?」

 

「あっ。あります。」

 

「なんだ?セラフ。」

 

「今まで言い忘れていましたが、この書類…、提督じゃないと駄目みたいです。」

 

セラフは山のような書類をドミナントに渡す。

 

「これ、提督専用の作戦報告書みたいで…。それに、本来ドミナントさんが作戦を練らなきゃいけないので、私のところに来ても、何もできません。ですから、次からは執務室に置かせていただきます。大淀さんにも言っておきます。」

 

「わかった。…他は?」

 

誰も何も言わない。拗ねている神様以外は。

 

「それでは、解散!」

 

ドミナントの一言でそれぞれが解散する。

 

「起きろー、加古ー。」

 

「Zzz…。」

 

揺さぶるが起きない。

 

「確かこんな時には…、…これやったら完璧に憲兵沙汰だよな…?…仕方ない。」

 

そしてドミナントはしてしまった…。

 

「ひゃぁっ!?起きてるから!スカート引っ張んないでぇ!」

 

「何だ!?」

 

ジナイーダが突然の叫びを聞きつけ、入る。

 

「あ…。」

 

「……。」

 

憲兵に突き出された。

 

 

 

とでも、いうと思っていたのかい?その程度、想定の範囲内だよぉ。

 

「…何をしている?」

 

「提督が…スカートを…。て、あれ?」

 

「俺は何もしていないぞ。妖精さんだ。」

 

ドミナントは妖精さんを買収していた…。

 

(依頼達成です。報酬をよこしやがれです。)

 

…口悪りぃな。まぁ、やってもらったんだ。俺の部屋にあるチョコレートをやるよ。

 

(よしです。)

 

妖精さんが小声でいい(ジナイーダも妖精さんの声が聞こえるため)、ドミナントが心の中で話した。

 

「加古、何故俺と決めつけたんだ?」

 

「そ、それは…。」

 

「俺はそんなに疑われやすいのか…。」

 

「いや、そんなことは…。」

 

「ひどいなぁ〜。」

 

「うぅ…ごめんなさい…。」

 

加古は妖精さんとのやり取りも知らず、ドミナントに謝った。そして、部屋に戻った。

 

…………

帰りの廊下

 

ドミナントが一人歩いていると…。

 

「おい、ドミナント。…後で裏まで来てもらおうか。」

 

ジナイーダがいつの間にかドミナントの背後を取る。

 

「ジ、ジナイーダ…。お、俺は何もしてないぞ…。」

 

「…妖精さんに問い詰めたらお前の指示だと自白したぞ。」

 

「……。」

 

……ジナイーダ…、妖精さんに何したんだ?コエーよ…。

 

「ゆっくり説明してもらえるな?」

 

「は、はひ…。」

 

そして、ジナイーダにこってり絞られた挙句、加古に謝りに行った。悪いことをしたドミナントは罰せられた。…ちなみに、加古は許してくれた。…古鷹に見られて、とても複雑な顔をしていたことはドミナントは忘れない。




はい。終わりました。古鷹がどうして複雑な顔をしていたかというと、信用の話を思い出したからです。…小説って難しいな…。
登場人物紹介コーナー
加古…古鷹型2番艦。お酒大好きですね。面倒が嫌いで、いつでも眠そうな印象があります。しかし、戦闘面では違います。
次回!第72話「忘れないでください」お楽しみに!


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72話 忘れないでください

はい、72話まで来れた…。
「あれ?一昨日、何かあった気がするけど?」
あぁ…。その日を書くにしたって、時間ないじゃん?そもそも時代違うし…。
「へぇー(棒)。」
……。すみません。実はネタがなかったです。
「うん。素直でよろしい。」
さて、そろそろあらすじに入りましょう。今日のゲストは?
「また知らない人。」
「ここは一体…?」
おー、ライウン。では、あらすじをどうぞ。
「やっと来たか。」

あらすじ
前回、秘書艦?とやらが遅れでっ…。

…噛んだな…。(ボソッ)
「見誤ったか…。命令だ、死んでくれ。」
ちょ、何で!?ギャァァ…。


…………

提督自室

 

「クー…クー…。」

 

現在、マルロクマルマル。ドミナントは寝ている。

 

コンコン…ガチャ

 

ノックして、笑顔で艦娘が入ってくる。そして、ドミナントを揺さぶり…。

 

「司令官、起きてください。」

 

起こす。

 

「…むにゃ?」

 

「朝です。」

 

「麻…。生えたの?」

 

「寝ぼけないでください…。」

 

艦娘は張り付けた笑顔をする。

 

「ふぁ〜…、今日の秘書艦は君かい?」

 

ドミナントは欠伸しながら起き、質問する。

 

「はい!ジャンケンで勝ちました!」

 

質問に元気よく答える艦娘。

 

「そっか〜。…で、名前は?」

 

「……。」

 

しかし、その質問をした途端に、さっきと打って変わり、機嫌の悪い顔になる。

 

「…どうした?」

 

「…冗談ですよね?」

 

「いや、冗談ではないが…。」

 

「……。忘れないでください。」

 

「すまんな。…で、名前は?」

 

「教えません。思い出してください。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントは思い出そうと、まじまじと見る。

 

……ふむ…。アホ毛があるな。目が金色。黒い制服。伸びた黒い髪。セミロング?。そして駆逐艦。…少し顔が赤いな。まぁ、異性に見られればそうなるか…。…うん。俺変態だな。

 

ドミナントは推理をし…。

 

「……初霜?」

 

「何でまだ秘書艦していない艦の名前が出るんですか…。」

 

「なるほど、一度は秘書艦をしたことがあるということだな。」

 

「さぁて、わかりません。」

 

ツンとしてしまっている。

 

……次間違えたらアウトの気がする。

 

ドミナントは慎重に考える。

 

……えっと…秘書艦の順で…。加古、那珂ちゃん、古鷹、…おぉ、古鷹型はコンプしたのか。いや、今それ関係ねぇし。えっと…、長門、多摩、三日月…ん?三日月?

 

ドミナントは再度確認する。そして、言う。

 

「三日月?」

 

「はい!」

 

笑顔で元気よく返事してくれた。

 

「三日月か…。すまんな。忘れていて。…それじゃぁ、仕事しますか。」

 

「はい。」

 

二人は、執務室へ行く。

 

…………

執務室

 

「終わった。いつもより時間かかったな…。」

 

ドミナントは、山のような書類を置いて、言う。提督用作戦報告書に時間がかかったみたいだ。

 

「お疲れ様です!」

 

三日月はすぐにお茶を出す。

 

「ありがとう。…さてと、じゃぁ行きますか。」

 

ドミナントは一瞬で飲みおわり、席を立つ。

 

「?どこへ?」

 

「倉庫だ。夕張が見せたいものがあるらしい。…まぁ、設計図だけどな。」

 

「……。」

 

三日月がまた少し不機嫌な顔をする。

 

「…どうした?」

 

「…何で夕張さんの名前だけ覚えているんですか…?」

 

「え…。それは…。」

 

「ひどいです!二人一緒にこの鎮守府に着任したのに!私だけ忘れるなんて!」

 

三日月はドミナントに怒鳴る。

 

「ご、ごめん…。」

 

……なぜ忘れないか教えてあげたいけど、この情報が漏れたら夕張がどんな行動にでるか…。

 

なぜ忘れないかというと、夕張はたくさんやらかしているので、ドミナントの中では要注意人物だからだ。例)レビヤタン事件、プロジェクトファンタズマ事件、セントエルモ事件、VOB事件など。

 

「む〜。」

 

そんなことを知らずに三日月が頬を膨らませる。

 

……可愛い…。

 

だが、ドミナントには逆効果であることを知らない。

 

…………

倉庫

 

「待ってました!提督!」

 

「うむ。」

 

倉庫に入るなり歓迎する夕張。

 

「…堅苦しい挨拶は抜いて、早速見せてくれ。」

 

「はい!これです!」

 

夕張が設計台の上で設計図を広げる。

 

パサ

 

「ふむ…。」

 

……何て書いてあるんだ?

 

夕張が殴り書きで書いたので全く読めないドミナント。

 

「どうですか?すごいでしょ?」

 

胸をそらす夕張。

 

「すまないが夕張。」

 

「なんですか?」

 

「字が汚くて読めない…。」

 

「…わかりました。説明します。」

 

夕張はドミナントの横に来て、説明する。

 

「これは、所謂二つの大きな機械です!」

 

「ほう。」

 

「一つは、広い施設みたいなもので、もう一つは、その施設が作るロボットです。」

 

「なるほど。」

 

「そのロボットを出撃させ、たとえ倒されたとしても、戦闘データがその施設に送られ、改善されたロボットが作られます。」

 

「…?」

 

「さらに!その施設も成長し、ロボットも成長します!」

 

「ちょ、ちょっと待…。」

 

「そう、つまり!これがあれば、深海棲艦の殲滅はおろか、世界征服も実現可能です!」

 

「やめろ!」

 

途中から夕張が暴走しかけているのをドミナントが止める。

 

「えぇ〜…。」

 

「“えー”じゃない。ジャックがブチ切れるぞ!捨てろ!」

 

「でも、せっかくの設計図…。」

 

「……。」

 

夕張がいつもより悲しそうな顔をする。

 

「……。夕張、いつも却下されて不思議に思っているだろう?」

 

ドミナントは優しく夕張に言う。

 

「はい…。」

 

「夕張、俺らのことを思っているのはわかる。でもね、そんな世界を滅ぼすこともできる代物を持ったってろくなことにならないよ。」

 

「それは分かってはいるんですけど…。」

 

「多分、夕張は褒められたいんじゃないかな?“自分はこれを作ることができるよー”って。」

 

「そんなことは…。」

 

「本当に?」

 

「……。」

 

「やっぱりね。正直に言うけど、夕張はすごいよ。現代科学では追いつけないくらいの技術や発想を持っている。認めているし、羨ましいよ。」

 

「……。」

 

「でもさ、俺たちは人々を守る立場なんだよ。そんなの作って、暴走しちゃったら何でそんなもの作ったの?って感じじゃん?」

 

「はい…。」

 

「だから、これからはこういうのを作ろうとしちゃダメだよ?みんなも夕張がすごく頑張っていることも知っているし、認めているんだから。」

 

「じゃぁ、私はどうすれば…。」

 

「別に兵器の開発を禁止したわけじゃない。規模の大きさの問題だよ。もう少し、ささやかな…。例えば、艦娘の武器とか開発してさ。」

 

「でも、それだと海域解放とか、遠征とかで失敗する可能性も…。」

 

「そのときはそのときだよ。運が悪かった…それだけのこと。夕張のせいじゃない。それより、そんな恐ろしい兵器が近くにあるだけでみんな不安にさせちゃうでしょ?」

 

「はい…。」

 

「まぁ、次出来たらまた言いに来て。しっかり見てあげるから。」

 

ドミナントはそう言って、夕張の頭を撫でる。

 

「しっかりやって。夕張はやればできる子だって知っているから。」

 

「うぅ…提督ぅ…。」

 

夕張は目を閉じ、ただ撫でられていた。

 

…………

執務室 ヒトナナマルマル

 

……さて、戻ってきたな。…て、寝てる?

 

「スー…スー…。」

 

椅子に座って、器用に寝ている三日月を見て思う。

 

……執務室は艦娘たちにとって、寝室みたいなものなのだろうか?いや、それよりも放っておくと風邪ひくな。

 

ドミナントは、自分の上着を羽織らせる。

 

……最近寒くなり始めているから、二枚着ていて助かった。

 

そして、ドミナントは紅茶を作り、飲み始める。

 

……このだだっ広い部屋に、椅子と机しかないというのもなんだな…。これから寒くなるのにストーブが無くて大丈夫だろうか…?このように秘書艦が寝たとき、椅子だと体を痛めるのではないだろうか…?

 

今まで気にしていなかった執務室を見る。

 

……家具…か…。妖精さんに頼むか?小人の親戚のような気がするし…。

 

(失礼です!)

 

「ん?」

 

ドミナントが床を見ると、妖精さんがいた。

 

……なんでここにいるんだ?

 

(おやつチェックです。偽りの依頼を受けないようにです。)

 

……なるほどな。ついに妖精さんにまで疑われるとは…。それより、家具を作ることはできないか?甘味やるぞ。

 

ドミナントは交渉しようとするが…。

 

(無理です。)

 

……え…。あの妖精さんが…甘味を欲しがらない…?何かの間違いじゃ…?

 

(普段どのように見ているです?コインがないと無理です。)

 

……コイン?

 

(ある任務を達成すると、大本営から送られてくるです。)

 

……そこまで詳しくなかったからなぁ…。この世界に転生?転移?すると知っていれば、プレイしておくべきだったな…。

 

ドミナントは後悔する。

 

……まぁいいや。その任務とやらは?

 

(我々は妖精さんです。知るわけないです。)

 

……そうか…。ならばセラフか大淀か…。

 

ドミナントが考え、妖精さんはいつのまにかいなくなっていた。すると…。

 

「ん〜…。!?。司令官の上着が何故…?」

 

三日月の目が覚める。

 

「目が覚めたか?」

 

……あれ?デジャヴ?まぁいいや。

 

「あっ。えっと…その…。」

 

あたふたしながら自分の身だしなみをチェックしている。

 

……うん、可愛い。すげぇよ…ミカは…。

 

ドミナントが一人考えていると…。

 

「おはようございます!司令官!」

 

三日月が笑顔で言う。

 

「ああ。おはよう。」

 

……と言っても、夕方だがな。

 

ドミナントは心の中で突っ込む。すると…。

 

「あの…起きた早々悪いんですけど…。」

 

「なんだ?」

 

「少し…撫でてくれませんか?」

 

それは、ドミナントが初めて聞く、三日月の“甘え”だった。断るドミナントではない。

 

「…ん。」

 

ドミナントは何も言わずに頭を撫でてあげると、嬉しそうに目を細めた。




はい。終わりましたが、まだ1日が続きますよ?最近、少しずつ字数が増えている気がします…。
登場人物紹介コーナー
三日月…ミカァ!バルバトスではありません。最初の4人のうちの1人。ジナイーダの授業のおかげで、三日月がいるだけで遠征の成功率80%を叩き出した。第4佐世保鎮守府の遠征最強格。
夕張…メロンちゃん。開発が大好き。前にドミナントからもらった本を大事に読み、セラフからの選別の道具を愛用している。最初の4人のうちの一人。セラフから学んだおかげで、現在の科学力を優に超えている。海に出るのはたまにでしかない。
妖精さん…甘味係。鎮守府内の甘味のある場所を全て把握している。姿を見せるのは稀である。
次回!第73話「災難の再来」お楽しみに!


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73話 災難の再来

はい。不穏なタイトルですが、まぁ気にしない気にしない。後、前回時間が“ヒトヨンマルマル”でしたが、“ヒトナナマルマル”の間違いでした。
「災難?何が起こるのかしら…?」
ふふふ…。まぁ見てなって。前回からの続きでやるから。
「…嫌な予感がするわ…。」
まぁ、多分その予感であっている。では、今日のゲストは?
「なんとなくわかるでしょ?」
「小僧、ここはどこだ?」
まぁ、鳥大老だよね。では、あらすじをどうぞ

あらすじ
前回、若女で秘書を務める三日月という者が、提督である者に忘れられ、打ちひしがれる。提督がなんとかその場を制した後、倉庫へ行き夕張という者と話をする。そして、執務室にて提督が秘書の頭をさすった。…やりおるわ…。


…………

ヒトハチマルマル 執務室

 

クゥ〜…

 

誰かがお腹を鳴らした。机と椅子しかない執務室に思いっきり響く。

 

「…ご飯、遅いな。」

 

「…そうですね。」

 

三日月とジェンガをしているドミナントが言い、三日月が同意する。

 

「そろそろ、崩れそうですし…。」

 

「いや、まだいけるね。」

 

ドミナントは、簡単に取り、乗せる。最初は18段だったものが、40段近くになっていた。

 

「…次、三日月の番。」

 

「えぇ…。なんでそんなに強いんですか…?」

 

三日月は微妙な顔をして言う。

 

「…ジナイーダはもっとすごいし、神様は遊びに関して天才だから弱い方だ。」

 

三日月に聞かれ、ドミナントは正直に話す。

 

……司令官…どれくらい暇なんですか…。

 

三日月は考えるが、ドミナントが年中無休で暇なことに気づき、考えるのをやめた。

 

「うーん。これじゃぁ面白くないな…。そうだ、俺に勝ったら一つ願い事を聞くよ。」

 

「えっ!?本当ですか!?」

 

ドミナントの一言に思いっきり反応する。

 

「お、おう。だけど、あまり無茶なことはやめてくれ…。」

 

「例えば?」

 

「なんかグイグイくるね…。そうだなぁ…、例えば、“一緒に寝たい”とか。」

 

「それは流石に言いません。」

 

「そうか。じゃぁ、頑張ってぇ!」

 

「はい!」

 

元気よく返事をして、勝とうとする。

 

……これに勝てたら司令官に何してもらおうかな…。本当はみんなを守るため、強い装備を開発してもらいたいけど…。でも、こんなチャンス滅多にないですよね…。おそらく、秘書艦になったとしても、低確率…。うーん…。

 

三日月はそんなことを考えるが、すぐに頭を振る。

 

……いやいや、まず勝たなければ意味がありません。是が非でも勝たなければ…。

 

三日月がそう考え、ドキドキしながら慎重に乗せようとすると…。

 

『飯ができた。早く来い。』

 

「ひゃぁっ!?」

 

いきなり放送が入り、驚く。そして、驚いたことにより腕が触れてしまい…。

 

ガラガラ…

 

ジェンガが崩れてしまった…。

 

「あ…。」

 

「……。」

 

勝者 ドミナント

 

「…まぁ、勝負も時の運って言うし…。」

 

「……。」

 

「運が悪かったというか…。」

 

「……。」

 

「…まぁ、ご飯食べに行こう?な?」

 

「……。」

 

三日月はあまりのショックに固まったままだ…。

 

「…わかった。ご飯食べ終わったらまたやろう。だから、今は行こう?」

 

「わかりました。」

 

「切り替え早っ!」

 

即答したことに流石に突っ込んだ。

 

…………

食堂

 

「…嘘だろ…?災難の再来じゃないか…。」

 

「…いや、本当だ。」

 

ワイワイ集まって、楽しみに話している艦娘より少し離れた席で、ドミナントと主任がヒソヒソと話す。

 

「放送で薄々感じていたけれど、今日はジナイーダの料理か?」

 

「ギャハハ。いや、それだけじゃない…。比叡と磯風もいる。盛り上がってきてるよ…。」

 

「マジかよ…。死にたくない…。」

 

「俺が聞いた話によるとぉ、ここに集まっている艦娘は3人の料理を食べたことがないらしいよ。」

 

「えっ?じゃぁ、前俺たちに持ってきてくれた比叡のカレーや、磯風の料理は…?」

 

「おそらく、日頃のお礼の特別だろう…。…お前に好意を寄せてのことかも知れん。」

 

「マジかよ…。…吹雪たちは?」

 

「今トイレだそうだ。」

 

「ジナイーダの料理と勘ぐって逃げやがったな…。神様もいないし…。」

 

「ま、安心しよう?そんなこともあろうかと、加賀や、五月雨も参加させているから。」

 

「おぉ!でかしたぞ主任!」

 

「ギャハハ!ま、今日死んじゃうかもしれないけどさ!ギャハハハハ!」

 

…………

 

「できたぞ。私たち5人で作った最高傑作だ!」

 

ジャーーン!!

 

「「「……。」」」

 

ゴクリ…

 

その場で、楽しみにしていた艦娘がなんとも言えない表情をする…。

 

「…主任、何故だ?」

 

「…さあ。」

 

ドミナントはなんとか食べれる料理を想像していたが、的外れもいいところ。見ただけでやばいのがわかる…。

 

……セラフが頭を抱えてる…。

 

遠くで頭を抱えて、ドミナントに“申し訳ない”の一言の眼差しを送っている。

 

……。うん。またカレーか…。だけど、前のとは桁違いだな…。今度は黒色か…。モザイクかかった食材あるし…。なんだ?何が動いているんだ?生きてない?このカレー。

 

ドミナントは色々思いながらスプーンですくう。

 

……違う、色だと思っていたけど、これ全部コゲだ。それに感触…フニャッてなんだ?焦げているのに…。お米はなんでデロデロしているんだ?水の分量間違えたのか?

 

ドミナントは、すくったカレー?を戻す。周りを見てみると、気絶している者や固まった者、助けを求める眼差しでドミナントを見ている艦娘がいた。吹雪たちは戻ってこない。セラフは何も言わず、静かに目を閉じていた。ジャックは固まったままだ。

 

「…主任。加賀と五月雨、メシマズなんじゃないか?…主任?…死んでる…。」

 

主任は気絶していた。

 

「…これをどうしろと…。」

 

残されたドミナントは解決方法が見つからない。

 

「前みたいな無茶するか…。」

 

「ダメです!」

 

「ん?三日月、いたのか?」

 

いつのまにかドミナントの後ろに三日月がいる。

 

「いつのまに…。」

 

「それより、前みたいなことしたら本当に怒りますよ。」

 

「じゃぁ、どうしろと…。」

 

「はっきりと言った方が良いと思います。」

 

「いや、それこそぶっ殺されるわ。」

 

ドミナントと三日月が話していると…。

 

「ドミナントさん…全て私の責任です…。私が全て食べます…。」

 

「うおっ!?セラフ?」

 

突然後ろから話しかけられて驚くドミナント。

 

「いや、死ぬだろ。やめろ。」

 

「しかし…。」

 

「それなら素直に“まずい”と言う。」

 

「でも…。」

 

「三日月、行くぞ。」

 

「はい。」

 

ドミナントたちはセラフを残してキッチンに行く。

 

「ジナイーダ、いるか?」

 

ドミナントが部屋を覗くと…。

 

「…なんで倒れているんだ?」

 

床に倒れている五月雨や加賀、比叡を発見する。

 

「ドミナントか?今味見をしていてな。ところが、味見をした途端これだ。何故だかわからん。」

 

「自覚なしか…。ジナイーダ、俺は今事実を言いにきた。磯風も聞いて欲しい。」

 

「?なんだ?」

 

「司令、その事実とはなんだ?」

 

「うむ。実はな…最低かもしれんが、命に関わることだ。」

 

「早くしろ。」

 

「…まずい。」

 

「「えっ?」」

 

「はっきり言って、今まで食べたものの中で一番まずい。土の方が美味しいと思えるくらいだ。」

 

「……。」

 

「…最低…。」

 

「すまないな。」

 

ドミナントは頭を下げる。

 

「いや、いい。やはりな、そんな気がしていた。」

 

「だが、文句だけ言って、何もしないクズではない。次からは掲示板に貼ってある料理教室に俺も参加する。…嫌かもしれんが、何もしないよりはマシだろう…?…それじゃぁ。」

 

ドミナントはそう言い、キッチンを後にした。その後、気絶している艦娘を部屋へ運ばせる作業はジャックや艦娘に任せ、ドミナントたちはその場の片付けをした。

 

…………

フタヒトサンマル [伊良子食堂]

 

「夜は酒を出しているんだな。」

 

ドミナントは、暇なのでなんとなく来てみた。

 

「いらっしゃい。」

 

「間宮さんがやっているんですか。」

 

間宮さんはお酒を出して、伊良子はウェイトレスの格好をして客を案内していたりする。

 

「適当な席へどうぞ。」

 

「うむ。」

 

ドミナントが座る。

 

……駆逐艦もいるのか。…まだ子供だろう…。

 

ドミナントははしゃぐ駆逐艦たちを見て思う。すると…。

 

「提督、騒いでいるのが苦手ならば奥へ…。」

 

間宮さんが奥の扉を横目で見る。

 

「いや、いい。酒を飲みにきたわけじゃない。この雰囲気を楽しみに来たんだ。…と言っても注文するがな。刺身を頼む。」

 

「かしこまりました。」

 

間宮さんは丁寧な…、そして完璧に魚を捌く。

 

「どうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントは実質晩ご飯がなかったので、お腹が空きまくっている。

 

「…む。美味い。いいな。これ。なんて魚だ?」

 

ドミナントは、刺身を食べながら言う。

 

「カツオとアジです。秋が旬の魚です。」

 

「ほう。カツオ…。ん?養殖場にはいなかったはずだが?」

 

「ジャックさんがこの前釣って来たものを養殖しています。」

 

「カツオの養殖は聞いたことないな。」

 

「カツオの養殖は難しい上、高値で取引されないからコストがかかるだけで、やる人が少ないから…と、聞いたことがあります。」

 

第4佐世保鎮守府では、あまりすぎた資材を大本営に送り、お金に換算して街で購入したりしている。そのため、毎日遠征を行なっており、資材を貯めている。

 

「なるほど。」

 

ドミナントは刺身を平らげた。すると…。

 

「お茶です。」

 

「?頼んでないんだが?」

 

ドミナントは不思議がる。

 

「いえ、言いたいことがありまして…。」

 

「?」

 

「提督、今日も一日お疲れ様でした。」

 

笑顔で言う。

 

「…ああ。ありがとう。」

 

ドミナントは口元を緩めた。




はい。終わりました73話。まだまだ一日終わってねぇぜ!メルツェェェル!…はい。次回も続きからですね。
登場人物紹介コーナー
磯風…メシマズ。何か変なものを入れることや、レシピを変えたりしない。だが、焦がしたり、変なところを切ったりする。実は自覚あり。
加賀…ジャックが好きなメシマズ艦。ネタにされるのは稀だが、史実を元にした筆者のせい。
次回!第74話「侵入者」お楽しみに!


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74話 侵入者

74話か〜。色々あったなぁ。
「まだ26話あるけどね。」
あと26話かぁ〜…。このコーナーも終わるのか。
「まだ26話あるじゃない。」
…いやでも続けさせるつもりだね…。
「最初に決めたことはちゃんと最後までやり遂げなさい。」
厳しいな〜。
「ほら、頑張って。…私が応援してあげるから。」
本当に?グフフ…。流石瑞鶴ちゃん…。
「…ごめん、生理的に無理だわ…。帰るわ。サヨナラ。」
…まぁ、冗談はさておき、今回のゲストは?
「この子…。寝てる?」
「スー…。」
…まぁいいや。需要あると思うし。それではどうぞ。
「ないわよ!!」

スー…
スャ…スー…スー……えへへ…スー…。

以上、加古でした。


…………

 

ドミナントが刺身を食べ、のんびりしていると…。

 

「しれーかんはひろいんれす!」

 

「三日月、誰がヒロインだって?」

 

「三日月ちゃん、目が据わってるわよぉ。」

 

遠くで、お酒を飲みすぎて呂律が回っていない艦娘が言う。

 

……今、三日月って聞こえたけど気のせいだろう。気にしない気にしない。

 

ドミナントはお茶を飲む。

 

「しれーかんはー、ご飯の後、しょーぶするって言ったのに来ないんれすよー!」

 

「多分忘れているな。」

 

「司令官はそういう人だからぁ…。」

 

……やはり、三日月かな?

 

ドミナントは気になり、少し見る。そこには、如月、菊月、三日月がいた。間宮さんと伊良子以外はドミナントに気づいていない。

 

「それに、私の名前をわすれたんれすよ!」

 

「いいじゃないか。私はまだ話すらしてないんだ。」

 

「そうよぉ。三日月ちゃん、司令官とお話ししたい艦娘は山ほどいるのよぉ〜。」

 

「れもぉ…、2回目は流石にひろいれすよ…うぅ…。」

 

三日月は酒瓶が乗っている机に伏せる。それを見た二人は困った顔をしている。

 

……三日月、すまんな。勝負のことマジで忘れてた。

 

ドミナントは心の中で謝る。そして、三日月を見ているとふと気づく。

 

……あの席の隣はなんだ?お通夜な雰囲気だぞ?

 

三日月たちの隣のテーブルに、酒を飲みながら顔を伏せていたり、泣いている艦娘がいた。何かを話している。

 

……何を話しているんだろう?

 

ドミナントが耳をすませると…。

 

「提督が料理まずいって…。」

 

「もう聞きました。比叡さん。」

 

そこのメンバーは、ジナイーダを除いた、メシマズ組だった。

 

「加賀さんはどうしてそんなに平気なんですか…?」

 

比叡が顔を上げて聞く。

 

「私は別に。」

 

「ジャックが好きだからだろう。」

 

「……。」

 

「ジャックも流石に味のコメントをしなかったぞ。…というより、コメント出来ないくらい不味いのだろうがな。」

 

「…私はもう破滅だわ…。」

 

「私たちの気持ちがわかって何よりだ。」

 

加賀の態度に何かを感じたのか、磯風が言った。

 

「それに、それだけじゃない。提督が今度料理教室へ来るそうだ。」

 

「「「えぇ!?」」」

 

磯風が言い、3人が顔を上げる。

 

「司令官が…。」

 

「私たちの様子を…。」

 

「見る?」

 

「そうだ。つまり、その場で見られるのだ。その“まずい料理”を作るところを。」

 

比叡と五月雨が絶望的な顔をするが、加賀は涼しい顔だ。

 

「そこまで司令官は怒って…。」

 

「拷問に等しいですね…。」

 

……あれ?何か勘違いしてる?

 

ドミナントは黙って聞いていたが、こんな考えになるとは思ってもみなかった。

 

……俺はただ、自分もやってみて、出来ればセラフと共に教えてあげたかっただけなんだが…。

 

ドミナントは思う。すると…。

 

「提督、奥の部屋の方が提督をお呼びです。」

 

「えっ?わ、わかった。」

 

間宮さんに言われ、ドミナントは移動する。

 

…………

奥の部屋

 

ガチャ…

 

ドミナントは入って早々驚く。なぜなら、さっきの場所とは変わり、大人の雰囲気の場所だったからだ。例えるなら、向こうは居酒屋。こちらはBARである。ドアや壁はしっかりと防音されており、向こうの部屋でいくら騒ごうが、こっちには聞こえてこない。

 

……すごいな。ここは。ジャックはサマになってるなぁ。

 

ドミナントは、バーテンダーの服を着たジャックを見て思う。すると、ジャックは立ったままのドミナントを見て、空いている椅子へ合図する。

 

……ここに座れということか?

 

ドミナントはその場所へ座る。

 

……少ないけれどこっちにもいるんだなぁ。

 

ドミナントは、周りを見ながら思う。すると…。

 

「ご注文は?」

 

「ん?いや…。俺を呼んでいる人がいるらしくてな。」

 

ドミナントは周りを見るが、誰も反応しない。

 

「私だ。」

 

「っ!?」

 

いつの間にか隣にいたジナイーダに驚く。

 

「まぁ、飲め。」

 

「いや、酒を飲むと前みたいな暴走するから…。」

 

「そうか。」

 

ジナイーダが酒を勧めたが、断るドミナント。

 

「それより、何かようか?」

 

「用がなければ呼ばん。」

 

「だよね。なんだ?」

 

「うむ。実は料理教室の件なんだが…。」

 

「知っている。さっき聞いたぞ。」

 

「む…、そうなのか。」

 

「ああ。」

 

「…話すことがなくなったな。それじゃぁ、私は自室へ戻る。…ドミナントもほどほどにしとけ。」

 

「いや、俺飲まないって…。それより、どうした?」

 

「…何がだ?」

 

「ここにいたなら、俺がその情報を入手したことくらいわかるはずだ。」

 

「…実は最近、勘が鈍ってきてな…。戦場がないとここまで鈍るものなのだな。」

 

ジナイーダはそう呟いた後、退室した。しばらく雰囲気を楽しんだ後、ドミナントも退室した。

 

…………

 

「やっぱりこっちはガヤガヤしてるなぁ。」

 

ドミナントが奥の部屋から退室すると…。

 

「司令官、少しお願いがあるんだけどぉ…。」

 

「どうした?如月…。」

 

如月が待ってましたと言わんばかりに素早く言う。

 

「三日月ちゃんが眠っちゃって、部屋まで送って欲しいの。」

 

「…お前たちが送れるのでは?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「んもう!司令官はわからないのねぇ。とにかく、部屋まで送ってちょうだいね。」

 

「お、おう。」

 

ドミナントは、如月に強く言われ、渋々引き受けることになった。

 

…………

深夜 外

 

「えへへ…司令官…、スー…。」

 

……本当に寝ているのか?

 

ドミナントは三日月を背負いながら歩く。すると…。

 

ガサッ…ガサガサ…。

 

黒いマントを頭までかぶった何者かが倉庫近くを漁っていた。

 

「誰だ?」

 

ドミナントが思わず言う。

 

「!?。…チッ…。」

 

「?待てっ!」

 

マントをかぶった何者かは逃げた。

 

……侵入者か?今の声、女だな。大きさ的に、大人だな。…この鎮守府所属なら、逃げる必要はないはずだ。だが、ジナイーダやセラフからは連絡がない。鎮守府所属なのか?

 

ドミナントは考えたが、さっきの言葉を思い出す。

 

……勘が鈍っているのは本当らしいな…。…追いかけたいが三日月はどうしよう…。それよりも、まずは緊急放送だ。

 

ドミナントは、ポケットに手を突っ込み、小型機械を取り出して、放送する。

 

『緊急!倉庫近くに侵入者だ!動ける者は直ちに来い!』

 

ドミナントは、一先ず三日月を優しくおろし、壁に寄りかからせ、上着を羽織らせ、追う。すると…。

 

「すまないドミナント。私の不手際だ。」

 

「すみません!」

 

ジナイーダとセラフがいち早く来てドミナントの隣で走る。

 

「別にいい。お前たちの勘が鈍ることを考慮に入れなかった俺が悪い。侵入者は一人だ。黒いフード付きのマントをかぶった女だ。」

 

「わかりました。」

 

「了解。」

 

ビュンッ!

 

二人はドミナントの情報を聞いた後、一気にスピードを上げて追って行った。

 

「速いな。…ん?」

 

二人が行った後、その侵入者が草むらからこっそりでてきたところに鉢合わせた。

 

「!?。くっ。」

 

侵入者はナイフを片手に突っ込んできた。

 

「危ねっ!」

 

ドミナントは、紙一重でかわす。

 

「…逃げたか!」

 

だが、侵入者の狙いはドミナントではなく逃げ道だった。その証拠に、体勢を崩したドミナントを気にも止めず逃げた。

 

「…!?」

 

だが、侵入者は気付かなかった。一人の男を…。

 

「ギャハハ!なかなかやるじゃない。それなりにはさ。」

 

主任の登場である。




はい。早いですが切りました。誰なんでしょうねー。えっ?わかるって?はっはっは、お前も読者なら、死ぬ覚悟はできているな。許せよ。これもネタバレ防止のためだ。…ネタわかるかな?
登場人物紹介コーナー
菊月…初登場。一応お酒は飲む。長月と言葉の感じが似ているが、こっちはクール。…中二病疑惑がある。
五月雨…メシマズ。だが、このメシマズは史実にしっかりとした理由がある。ヒロイン属性すげー。明るく前向きな健気な子。ドジっ子ですね。
比叡…なぜモザイク料理を作れるかは永遠の謎。比叡カレーはどの鎮守府所属の提督も乗り越えなければならない試練みたいなものである。胃を掴むを通り越して握り潰している…。
ジャック…マスター。一応それなりにはバーテンダーの基本ができている。
侵入者…黒いフード付きマントを頭まで被り、声や大きさ以外一切の情報を与えない。
次回!第75話「犯人」お楽しみに!


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75話 犯人

75話。あとどれくらいで最終章だろうか…。
「さっき放送があった気がするけど…。」
さぁて、気のせいじゃない?
「気のせい?かな?私はここにいて良いのかしら…?」
いいんじゃないの?それよりもゲストは?
「えっ?あ…忘れてた…。こ、今回はなしで……」
スタッフのおかげでゲストなしですか…。じゃ、瑞鶴頼むよ。
「“おかげ”ってところがムカつくわね。…まぁいいわ。私のせいだから…。」

あらすじ
私がワインを飲んでいると、提督さんが入って来た。私が気づいたら提督さんの隣にジナイーダさんがいたわ。何か話していたらしいけど、特に距離的に聞こえなかったわ。私が退室するよりも提督さんは早く退室した。


「なかなかやるじゃない。それなりにはさ。」

 

主任の登場である。

 

「…!。」

 

「主任!殺しちゃだめだ。捕まえろ!」

 

「はいはーい。」

 

そして、主任はいとも簡単に侵入者を捕まえる。…と思っていたが…。

 

ヒュッ。

 

侵入者は、ジャンプして屋根に登る。

 

「あ、そうなんだー。じゃ、ちょっと遊ぼうか。」

 

主任がAC化しようとするが…。

 

「待て、主任。」

 

「?」

 

「奴は侵入者…。深海棲艦でなければ艦娘でもない。つまり、ただの一般人だった場合は、俺たちの存在そのものがバレるわけだ。国民は何をしでかすかわからない。大本営もそのことは内密に頼まれている。だから、人型のまま捕まえなくてはダメだ。」

 

……まぁ、ジャンプで屋根登れるんだから一般人の可能性は低いがな。

 

ドミナントは主任に忠告して、主任と共に屋根に登る。そして…。

 

「…しつこい…。」

 

初めて侵入者の意味のある言葉だった。

 

「そりゃすまんな。だが、捕まえて正体を見破らせてもらうぞ。」

 

「犯人は誰だろうね〜。」

 

ドミナントと主任が追いかける。すると…。

 

「…チッ。」

 

「お待ちしておりました。」

 

「やはりここに来たか。」

 

セラフとジナイーダが先回りしていた。そして、主任とドミナントも到着し、追い詰める。

 

「4対1だ。降参しろ。」

 

「……。」

 

侵入者は立ったままになるが…。

 

バッ!

 

瞬時に動き出し、ジナイーダの真上を通ろうとする。が。

 

「甘い。」

 

「!?」

 

相手はジナイーダだ。そう簡単には通れない。しかし…。

 

ゴォォォォ!!

 

侵入者は手を引っ込め、袖から炎が吹き出す。

 

「!?」

 

ジナイーダはギリギリ避けることができた。

 

「火炎放射器!?」

 

セラフが叫ぶ。そして、侵入者は急いで、その包囲網を突破した。

 

「ドミナント、アレはもうこの世界の人間扱いじゃなくて良いな。」

 

主任がマジの声で聞く。

 

「ちょっと待て。あいつはこの世界出身だ。」

 

ジナイーダが言う。

 

「顔は見えなかったが、一瞬の炎の明るさであいつの目が見えた。あいつは戦場を知らない。そう断言できる。」

 

ジナイーダが逃げた方向を見ながら言う。

 

「…わかった。では、引き続き人型で捕まえよう。」

 

ドミナントは、皆に言い拡散して捜索する。そして…。

 

『発見した。』

 

ジナイーダの通信が入る。

 

「わかったすぐに行く。」

 

ドミナントたちは、ジナイーダのところは集結した。だが、戦闘はもう始まっていた。

 

「…くっ。」

 

「やはり、まだまだだな。」

 

ジナイーダは素手で、武器を使う侵入者に圧倒していた。

 

「ただの不法侵入者でないとわかれば、油断はしない。」

 

「……。」

 

侵入者は、ジナイーダを睨む。すると…。

 

『ザッ…ザー…。…い!何が…た!?』

 

侵入者の懐から声が聞こえる。

 

「…なるほど、組織か。なおさら逃すわけにはいかないな。」

 

ジナイーダが侵入者に歩み寄ろうとする。だが、侵入者は素早く離れる。すると…。

 

バラバラバラバラ!!

 

ヘリコプターの乱入である。ドミナントたちにライトを当てる。

 

「!?何者…」

 

言いかけた途端、ヘリコプターに搭載されていたガトリングガンがドミナントたちに照準を定める。

 

「逃げろ!」

 

ガガガガガガガ!!

 

そして火を吹いた。ドミナントたちは散り散りに逃げた。あたりの木は砕け散り、煙が上がる。

 

「……。」

 

ドミナントは、息を殺して隠れていた。その後、ヘリコプターは攻撃をやめ、何処かへ消えていった。

 

…………

しばらくして…。

 

「生きているか?」

 

「ああ。」

 

「ギャハハハ。これくらいで死ぬとでも?」

 

「大丈夫です。」

 

ドミナントが呼びかけ、あちらこちらから顔を出す愉快な仲間たち。

 

「何者だろうか…?」

 

「…あの身体能力と火炎放射器、ガトリングガン搭載のヘリコプターなんて大掛かりなものを所有している組織など一つしかなかろう。」

 

「つまり…。」

 

「ああ。陸軍だ。」

 

…………

陸軍特殊部隊司令室

 

周りに二人、兵を立たせて老人が椅子に座っている。

 

コンコン…

 

「入れ。」

 

「失礼します。陸田中将。」

 

若い女性が入る。

 

「こちら、第4佐世保鎮守府の情報であります。」

 

女性は、震える手で渡す。

 

「うむ。…ヘリ操縦士にも命令しておいたが、殺してないだろうな?」

 

「はい。」

 

「よろし。」

 

老人は書類に目を通す。そして…。

 

「なんだこれは…?」

 

老人が鬼の形相になる。

 

「何だこれは!?必要な情報が全くないじゃないか!いい加減な仕事をしよって…!貴様!軍で何を学んだんだ!?」

 

「す、すみません!」

 

「こんな簡単な仕事一つ満足に出来んのか!?」

 

「し、しかし、それには理由が…。」

 

「なんだ!?」

 

「あ、あの鎮守府には艦娘に加え複数の人間が所属しており、想定外のことが起きたからであります。」

 

「たかが人間を何が“想定外”だ!人間より艦娘の方が強いのだから、それほど驚異ではないはずだろう!?」

 

「し、しかし奴らはただの人間とは思えない強さであり…。」

 

「それは貴様の実力不足だ!やる気のない奴はいらん!貴様、少し訓練が足らんようだな…!おい!訓練してやれ!」

 

「はっ!」

 

「えっ!?嫌です!!お願いであります!次頑張るであります!今一度だけ機会を…!待って…!!いやぁぁぁぁぁ…!!」

 

女性は叫びながら兵に連れ去られた。

 

「…陸軍出身の艦娘と聞くから重宝してきたものの…。全く使い物にならないではないか…!わざわざヘリまで出したというのに収穫がたったこれだけとは…。ふん、役立たずめ…。」

 

老人は暴言を吐きながら、今後の計画を練る。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「おっいたいた。」

 

ドミナンは、眠っている三日月に近づく。あの後、今までの一連を放送し、警戒を解除させた。しかし、陸軍が犯人とは言わなかった。パニックを避けるためである。

 

「ごめんな。放っておいて…。」

 

「う〜ん…。スー…。」

 

再び、三日月を背負って部屋まで運ぶ。

 

「うぅ…それにしても寒いな。緊急とはいえ、こんな寒いのに置いていったのか…。…風邪、引いたら俺が看病しないとな…。」

 

ドミナントは、三日月を背負い、三日月の背中に上着を羽織らせているため一枚である。しかも、海の近くで風がよく当たる。

 

……それにしても疲れたな…。まぁ、夕張、料理、陸軍とてんこ盛りの一日だったからな…。あっ。そうだ、約束…。俺が忘れてたから三日月の不戦勝でいいや。さっさと三日月を運んで、寝よう…。

 

ドミナントは、空が明るくなりつつある中、そう考えてひたすら目指す。

 

…………

執務室

 

ピーピーピーガーーー…

 

こんな時間に誰もいない執務室に、FAXの音が響く。

 

…………

マルロクマルマル 提督自室

 

「グー…。」

 

ドミナントが寝ていると…。

 

ガチャッ!

 

「good morning(おはよう)!提督ー!」

 

ドシーン!

 

「グホォッ!?」

 

金剛が勢いよく部屋に入り、ドミナントに飛びつき、無防備な腹に着地…。

 

「だ…れ…だ…?ガクッ…。」

 

ドミナントは気絶するが…。

 

「大丈夫デスカ!?起きるデース!」

 

金剛に思いっきし揺さぶられる。

 

「ちょ…、金剛…、やめて…。」

 

「起きたデース。」

 

「…金剛…、今度から寝ている俺に飛びつくの禁止な。」

 

「why?何故デスカ?」

 

「……。」

 

「冗談デース。だから提督、そんな顔で見ないで欲しいネー…。」

 

ドミナントの驚きの顔に金剛はすぐに謝った。

 

「しないならもう咎めん。…何のようだ?まだ一時間しか寝てない俺に。」

 

「それはすまないネー。でも、大本営からの電文デース。」

 

金剛はどこからか書類を取り出す。

 

「ふむ。」

 

ドミナントはどこから出したのかと思いながら書類を手に取り、目を通す。

 

…………

拝啓、各鎮守府提督の皆様

 

清々しい秋晴れの続く今日この頃、皆様に大本営に集まっていただきたい。臨時の会議をします。皆さま全員の出席を心待ちにしております。

(注意事項 無茶して急いでくる必要はありませんので、道中を楽しみながらお越しください。)

 

敬具、大本営会議招集係

…………

 

「……。」

 

……面倒くせー。どうせ陸軍のことだろ?流れ的に読めるわ。面倒は嫌いなんだけどなぁ。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「…なんて書いてあったんデスカ?」

 

金剛が覗き込む。

 

「…見てないのか?」

 

「提督がまず先に見る暗黙のルールネー。」

 

「そうか。…つまり、大本営に招集ということ。スミカ・ユーティライネンです。」

 

「スミカ?…提督、誰デスカ?その女は…?」

 

「oh...。ネタだから気にしなくていいぞ…。そんな怖い顔するな…。」

 

……それにしても、大本営に招集か…。てか、この注意事項俺たちのことだよな?まぁ、確かに書かれても仕方ないけどさ。

 

ドミナントは、金剛を撫で、宥めながら思う。金剛は嬉しそうにしていたのは言うまでもない。




はい。終わりました。陸軍の登場ですね。本当は登場させるつもりなどもとよりなかったのですが、仕様です。
登場人物紹介コーナー
ヘリコプター…AH-1 コブラ。史上初の攻撃ヘリ。
老人…陸田中将。地道にこの地位まで登り詰めた。部下を利用して、情報を集めている。
次回!第76話「付き添い」お楽しみに!


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76話 付き添い

「ふぁ〜…寝不足よ…。」
大丈夫ですか?今回は休んだほうが…。
「何?私じゃ不満なの?」
いや、そういうわけでは…。
「…今回はいやに下手に出てるわね。どうしたの?」
いや、そろそろハロウィンですね。
「?何よ唐突に。」
…グフフフフ…。
「…キモ…。…公式の限定グラじゃないと私やらないから。」
えぇ…。…そうか。ならいい。その格好のままで色々してもらおうか。
「ちょ、ちょっと!?何するつもりなの!?」
さぁてね。
「わかった。わかったやるわよ…。だから、ああいうのはやめて…。」
じゃ、今回のゲストは誰かな?
「この子よ…。」
「み、三日月です。はじめまして。」
おーおー、硬い感じだね。もっとリラックスしてていいよ。じゃ、あらすじをどうぞ。

あらすじです。
なんか、私が寝ていたうちに色々あったらしいけど…。司令官が寝ている私を優しくベッドへ連れて、寝かせてくれる夢を見ました。…少し恥ずかしい…。朝起きたら少し体が冷えていました。…風邪ひかなきゃいいけど…。

…ギリ犯罪?


…………

廊下

 

「さて、それにしても今日着くのは無理だな…。」

 

ドミナントは、送られてきた紙を見ながら歩く。

 

……今すぐに来いってことか?だとしたら付き添いする人や、手土産が必要だな。

 

ドミナントは考えていると…。

 

……やはり、まずはここだよな。

 

食堂の前で止まる。

 

…………

食堂

 

「昨日の侵入者って誰なんだろう?吹雪ちゃんわかる?」

 

「私もわからないです…。初雪ちゃんは?」

 

「私はなるべく…外に出たくないから…知らない。」

 

「こもってばかりじゃ体に悪いよ…。」

 

深雪、吹雪、初雪と吹雪型で集まっているところもあれば…。

 

「クゥ〜マ〜、クマ、クマ♪」

 

「ニャ〜ニャ〜、ニャニャ♪」

 

「姉さんたち、少しは静かに飯を食べてくれ…。」

 

球磨、多摩、木曽で集まり、ご飯を食べているところもある。そこにドミナントが入ると…。

 

「提督だ。」

 

「司令官…。」

 

艦娘たちが慌ただしくきちんとする。

 

「朝食を食べているところすまないが…。これから俺は大本営に行く。付き添いが必要だ。だれか来てくれる者いないか?」

 

……前回、あれだけ手が上がったんだ。今回もいるだろう。

 

ドミナントは心の中で確信する。が。

 

シーン…。

 

「「「……。」」」

 

艦娘たちは何も言わず、目を伏せ、ドミナントと目を合わせないようにする。

 

「…?。どうしたんだ?」

 

「「「……。」」」

 

何も言わない。

 

……何故だ!?何故前回あれだけいたのにも関わらず、誰もいないんだ?…三日月は俺への好感度が高いはずだ!私服あげた気がするし!

 

ドミナントは、そう考え…。

 

「三日月、お前はどうだ?」

 

三日月を見る。しかし…。

 

「……。」

 

ドミナントが見た途端、目を伏せるだけではなく、顔すら合わせない。

 

……何故だ!?何故…。

 

なぜなら、雪風が、大本営に行った時のことを話したからだ。

 

……爆発して死…。戦わずに死…。

 

……パラシュートなしでの落下…。

 

……時速2000kmの速度…。

 

艦娘たちはそれぞれ思う。だが、これはチャンス。ドミナントとの距離を縮められる絶好の機会。だからこそ、誰も断らないし、立候補しない。まさしく生か死。

 

……俺は艦娘たちに何をした?昨日、勤務時間終了なのに放送したことか?…三日月を置いてったことか?敵を捕らえることが出来なかったからか?

 

ドミナントは見当違いに考える。だが、今回はVOBを使う気がないので、ドミナントが困惑する気もわかるのだが。そんな中…。

 

「は…、はい…。」

 

「ん?誰だ?」

 

人?艦娘?混みの中、手をあげる者が…。

 

「赤城と申します…。」

 

「おぉ!来てくれるのか!?」

 

「誰もいないのなら…。」

 

もちろん、赤城はVOB使うと考えている。自分の身を犠牲にしての立候補である。だけど、距離を縮めたい気持ちも確かにある。

 

「他にいるか?」

 

「「「……。」」」

 

「誰もいないみたいだな…。なら赤城で決まりだ。その特盛のカツカレーを食べて、食後休みをとってからでも良いから、後で執務室に来るように。」

 

ドミナントは言った後、退室した。

 

…………

ドミナントが去った後

 

「赤城さん…。」

 

加賀が赤城を見る。彼女は赤城のより良いパートナー的存在だ。

 

「…もう帰って来れないかもしれませんよ?」

 

「…別にいいです。皆さんが犠牲にならず、提督が大本営に出入りできるなら…。」

 

力ない笑みを浮かべる赤城。

 

「…提督に伝えてください。“赤城さんを死なせたら許しません”と…。」

 

「加賀さん…。」

 

「これは当然です。提督が陸で艦娘を死なせてどうするの?」

 

「…ふふ。そうですね。しっかりと伝えておきます。」

 

赤城と加賀がいい感じに話しているところへ…。

 

「「「赤城さん…。私たちのかわりに行っていただきありがとうございます…。」」」

 

皆が頭を下げる。

 

「…赤城さん、そのカツカレー奢ります。」

 

「赤城さん。これ、選別です。」

 

「赤城、無事を祈る。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

一気に赤城に優しくする艦娘たち。まるで死にに行く感じである。

 

…………

執務室

 

コンコン…

 

「赤城か?」

 

「はい。」

 

赤城が丁寧に入り、ドアを閉じる。

 

「準備は?」

 

「もうできております。」

 

「わかった。なら行こう。」

 

ドミナントが立ち上がり、部屋を出ようとするが…。

 

「あっ。待ってください。」

 

「なんだ?」

 

赤城に呼び止められる。

 

「加賀さんからの伝言です。」

 

「嫌な予感しかせんな…。」

 

ドミナントは苦笑いをする。

 

「私を死なせたら許さないそうです。」

 

少し笑った感じで言う。

 

「…死なせる?」

 

「はい。爆発の危険性があるためだと思います。」

 

「爆発?…え?ちょっと何言ってるかわかんない…。」

 

「ぶいおーびい?を使って行くからだと…。」

 

「えっ?使わないよ?」

 

「えっ?」

 

「だって、急いで行く必要ないし。」

 

「…皆さんになんて言えばいいかわかりません…。」

 

「えっ!?みんなVOB使うと思ってたの!?」

 

ドミナントたちは、少し頭の中を整理した後、出発した。

 

…………

バスの中

 

「バス乗るの初めてです。」

 

「そうか。次は電車、その次は飛行機、そしてバス、電車、タクシーだがな…。」

 

嬉しそうにする赤城に、ドミナントはこれからのことを説明した。自分が説明したのに、これからを考えてうんざりする。

 

…………

電車の中

 

「提督、速いですね。この乗り物。」

 

「電車だからな。」

 

「あっ、紅葉も見えます。」

 

「山だからな。」

 

…………

飛行機の中

 

「空を飛んでますね。」

 

「まぁ、飛行機だからな。」

 

「青いですね。」

 

「まぁ、空だからな。」

 

ドミナントは、動作は少ないが、赤城がはしゃいでいることがわかった。

 

「あっ、謎の飛行物体が…。」

 

「まぁ、空だから…。て、えぇ!?」

 

…………

タクシーの中

 

「大本営前まで頼む。」

 

「わかりました。」

 

「…提督、一体いつ着きますか?」

 

「後少しのはずだ。」

 

「5時間以上かかっている気が…。」

 

「VOBの方が良かったか?」

 

「……。」

 

…………

大本営前

 

「釣りは取っておけ。」

 

「いえ、そういうわけにはいかず…。」

 

「一度言ってみたかったのに…。」

 

ドミナントがやりとりをした後、タクシーは何処かへ行った。

 

「さて…着いたな。」

 

「はい。…大きいですね。」

 

赤城は、初めて見る大本営をまじまじと見る。憲兵も微笑ましくそれを見ていた。そして…。

 

「チャイム、押すか?」

 

「はい!」

 

赤城は嬉しそうに返事をして、押す。

 

ビーーーーー。

 

 

『はい、こちら大本営です。』

 

「第4佐世保鎮守府提督と付き添いの赤城が参りました。」

 

『はい。わかりました。玄関に来てください。』

 

そして、憲兵が外門を開け、案内する。

 

…………

玄関

 

「こちらです。」

 

「ありがとうございます。」

 

「…何で玄関まで10分も歩かなければならないんだ…?」

 

ドミナントが愚痴を零す。

 

「それでは、中に入り、知らせてきます。」

 

憲兵は、ドミナントの愚痴をスルーして仕事をする。

 

しばらくして…。

 

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

 

大和が来る。

 

「あなたが大和さん!?実際に会うのは初めてです。」

 

「大和です。ホテルじゃありません。」

 

赤城と大和が話をする。

 

「なんだ赤城、大和さんは他にもいるんじゃないのか?」

 

「え…?知らないんですか?大和さんは世界にたった一人しかいない艦なんですよ。艦娘の憧れの存在です!」

 

「へ、へぇ〜。そうなんだ〜。」

 

……前の世界の同僚が艦これやってて、やっている同僚の大半が大和持ってたからなぁ…。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「まぁ、それはさておき。大和さん、暇な時間ができたら赤城と話してやってくれませんか?」

 

「えっ?提督、何を…。」

 

「いいですよ。…しかし、ヒトゴーマルマルになりますけれど。」

 

「えっ?大和さん?」

 

「ありがとうございます。大和さん。」

 

「いえいえ。まぁ、艦娘にとってこんなチャンス滅多にありませんからね。」

 

ドミナントと大和が笑顔で話す。

 

「良かったな。赤城。」

 

ドミナントは笑顔で言う。

 

「…ありがとうございます。」

 

この時、赤城の中の提督高感度が少しアップしたのだった。

 

「さて…。で、会議というのは?」

 

「あぁ、それなら会議室で行います。こちらです。」

 

大和は案内する。すると…。

 

「あっ。すみません、大和さん…。お手洗いはどちらに?」

 

「えっと…。確かあちらの角を曲がった先です。」

 

「ありがとうございます。」

 

そして、ドミナントはトイレをしに行った。

 

「…大和さん。随分と提督と仲がよろしいのですね。」

 

赤城が今までのやりとりを見て、言う。

 

「えっ?そう見えましたか?」

 

「はい…。」

 

「そうですか。でも、そんな関係ではないんです。もっと…。」

 

……仲が良いように見えたんですか…。しかし、こちらは相手の機嫌を損ねないようにするのが精一杯です…。だって、あなたの提督は化け物の部下を持つ化け物なんですよ?もし、機嫌をそこねるものなら…。…考えたくもないですね…。

 

大和は口には出さない。しかし…。

 

「…提督は怪物ではありません。」

 

「えっ?」

 

「確かに、当初は主任さんの演習で提督のことを怪物のように感じました。“こんな怪物を部下に持つ人ってどんな怪物なんだろう”って。でも、違いました。」

 

「……。」

 

「一緒に住んでいて、提督は普通…ではないですが、“普通の人間”です。しっかりとやっていいことと悪いことを弁えています。怒ったからと言って、いきなり滅ぼしたりはしません。他の皆さんもそうです。恐ろしいほど強いですが、根はいい人たちばかりです。主任さんはたまに褒めてくれますし、ジナイーダさんはなんだかんだ言って付き合ってくれます。セラフさんは優しいです。ジャックさんは“提督グッズ”をたまにくれます。提督は…。」

 

赤城が言いかけた途端…。

 

「いや〜、すまん。いきなりでな。」

 

ドミナントが戻ってくる。

 

「…?どうしたの?」

 

「いえ、なんでもありません。大和さん、会議室はどこですか?」

 

「え…?あ、はい。こちらです。」

 

大和は再び案内する。

 

……根はいい人…ですか。




はい。終わりました76話。長いから切ります。ジャックが“提督グッズ”をたまにあげるのは、ほかの艦娘がそれを見て、需要を高めるためです。商売を分かっています。流石、裏方の主役を務めたレイヴンです。
登場人物紹介コーナー
赤城…一航戦の赤い方。ご飯大好き大食いっ子。今回でドミナントへの好感度は10の中の8くらい。
タクシー運転手…仕事人。釣りも代金もしっかりしてないと落ち着かないタイプ。
憲兵…実はドミナントを穴から引っ張り出す作業をした一人。
大和…元師の秘書艦。よく、元師のかわりに仕事をする。
次回!第77話「各地の鎮守府提督」お楽しみに!


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後編
77話 各地の鎮守府提督


はい。やってきました77話。ここで思う。
アーマードコア要素少なくね?
「いきなりどうしたの…?」
えっ?いや…アマコア要素が…。
「アマコア?何それ?」
あぁ…。この子に言っても意味が通じないな…。
「フンッ!」
バキッ
痛っ、痛いって〜、死んでしまいますよ!
「しっかりやんなさい!」
へいへい。じゃ、今回のゲストは?
「この子。」
「ここはどこだ?」
磯風か〜。じゃ、あらすじどうぞ。
「料理を持ったままなんだが…。ここに置いていくか。」
ちょ、待…。

あらすじだ
前回、司令が付き添いを頼んできた。私は、戦わずして死ぬのは嫌なので断ったが、惜しい気もした。…そう思ってみれば司令はしっかり食べているか?これではこの先生きのこれないぞ。


…………

会議室前

 

「こちらです。中に入って、座札の通りにご着席ください。」

 

「ありがとう。」

 

「ありがとうございます。」

 

ドミナントと赤城がお礼を言い、それを聞いた後、大和は玄関の方向へ向かった。

 

「…さて、入るか。」

 

「はい。」

 

ガチャ…キィ…。

 

中にはもうすでに集まっていた。シレアが目立たない程度に手を振る。

 

「……。」

 

ドミナントは返した後、指定されたところへ座る。隣には艦娘用の席がある。

 

「…提督、あの方々が各地の提督ですか?」

 

「おそらくな。座札にちゃんとどこの鎮守府から来たか書かれている。」

 

「…少し怖そうな方もいますね。」

 

赤城とドミナントはヒソヒソ話す。

 

……まぁ、たくさんいるけどな。

 

ドミナントは各地の提督を見る。

 

[ここから先は飛ばしても大丈夫です。こんな提督がいるんだ的に考えれば大丈夫です。]

 

第1横須賀鎮守府総合提督 不在 付き添い艦娘 不明

 

第2横須賀鎮守府提督 中山大将 付き添い艦娘 曙

 

第3横須賀鎮守府提督 伊藤中将 付き添い艦娘 磯風

 

第1舞鶴鎮守府総合提督 山田中将 付き添い艦娘 鹿島

 

第2舞鶴鎮守府提督 佐藤中佐(シレア) 付き添い艦娘 明石

 

第1呉鎮守府総合提督 五十嵐大将 付き添い艦娘 伊勢

 

第2呉鎮守府提督 田中大佐 付き添い艦娘 扶桑

 

第3呉鎮守府提督 難波少将 付き添い艦娘 長門

 

第4呉鎮守府提督 瀬戸大佐 付き添い艦娘 榛名

 

第1佐世保鎮守府総合提督 斎藤大将 付き添い艦娘 翔鶴

 

第2佐世保鎮守府提督 佐々木少将 付き添い艦娘 飛龍

 

第3佐世保鎮守府提督 岩倉大佐 付き添い艦娘 天城

 

第4佐世保鎮守府提督 ドミナント少佐 付き添い艦娘 赤城

 

第1大湊警備府総合代表提督 八神中将 付き添い艦娘 龍驤

 

第1トラック泊地総合代表提督 樋口大将 付き添い艦娘 伊58

 

第1リンガ泊地総合代表提督 小林中将 付き添い艦娘 川内

 

第1ラバウル基地総合代表提督 鈴木大将 付き添い艦娘 足柄

 

…………

 

……うひ〜…無茶苦茶いる…。全部名前覚えるのなんて不可能だな…。

 

ドミナントは心の中で考える。

 

「…提督、途中からの総合代表提督ってなんですか?」

 

赤城が再度、ヒソヒソと話す。

 

「この前知ったんだけど、数が多すぎて全鎮守府提督を呼べないらしくて、その代表に話してネットワークみたいに情報を伝達させるらしい。」

 

「そうなのですか…。なら、最後のあそこの鎮守府だけ、何か…聞いたことのない鎮守府なのですが…。」

 

「どれ?」

 

甲特殊ルビコン鎮守府 不明(名前の札なし) 付き添い艦娘 傷だらけの伊13?

 

「あそこ、提督の名前すらないし…。どこなんだろう…。」

 

「おそらく、新たな地名かと…。」

 

「知らない地名の鎮守府…?まぁ、あそこだけ第一とかないんだ…。面倒になったのかな?」

 

「そんなにあるんじゃ、数年は日本も平和確定ですね。」

 

「…だといいけどね。」

 

ドミナントと赤城が話していると…。

 

ガチャ…。

 

「皆さん、お越しいただきありがとうございました。今回も、第1横須賀鎮守府の提督は欠席の連絡がありました。それと、パラオ泊地の提督も欠席です。…それでは、今から資料を配ります。そして、前方のスクリーンにご注目ください。」

 

大和がテキパキと働く。

 

「まず、最初の項目をご覧ください。深海棲艦の年間発生率と目撃件率です。…このように、年々減っています。この結果は、皆さんの働きや努力なので大変ありがたく思います。」

 

大和が言うと…。

 

「ちょっと待ってくれ。」

 

「はい、山田中将。なんでしょうか?」

 

眼鏡をかけて、礼儀正しく座っているのは山田中将。

 

「確かに、年間を通すと減っているのがわかるが…。問題は今年だ。何故だか最近さっぱりと深海棲艦が姿を現さない。いたとしても、はぐれのロ級くらいだ。私の鎮守府だけかと思い、佐藤中佐にも聞いてみたが、同じだそうだ。他の鎮守府はどうだろうか?」

 

山田中将が言うと…。

 

「こちらも同じだ。」

 

顔の大半をマスクで隠した田中大佐も言う。

 

「ガハハハハ!こちら側が敵を倒し尽くしたからであろう。」

 

武人のような振る舞いをして、大声で笑う難波少将。

 

「だが、そういうわけではなかろう。」

 

この中の最年少の青年の伊藤中将が言う。

 

「ああ。一度生まれたものは…そう簡単には死なない。」

 

「最近、深海棲艦が妙な動きをしていてな。…ある一定の方向へ向かっているみたいだったから、我が鎮守府所属の艦娘が後をつけたところ、一定ラインを超えたところで一斉爆撃だ。敵を発見することなく全員大破状態。やむを得なく帰投した。大破する寸前まで周りを見ていたらしいが、島もなく、周りは全て海だったらしい。だから、場所までは分からん。」

 

会議室がざわめく。一方、ドミナントは大和と話すのが楽しみなのか、嬉しそうに座っている赤城を見てほっこりしていた。

 

……あの赤城が食べ物以外であんなに楽しみにしているなんて…可愛いのう…。

 

ドミナントは、この内容を全部聞き逃していた。

 

…………

 

「以上、会議を終了します。」

 

大和が言い終わり、帰っていく提督の中…。

 

…ん?

 

ドミナントは不思議がっていた。

 

「大和さん。」

 

「あっ。大丈夫です忘れていませんよ。」

 

「いや、その用件ではなく…。」

 

「?」

 

「いえ、この前自分の鎮守府に侵入者が…。」

 

かくかくしかじか…。

 

「という件があったんですよ。」

 

「えぇっ!?陸軍が…。」

 

「しっ!声がでかいです。」

 

「す、すみません。…確かに、長い間陸軍とは対立をしていますが、双方過激な行動を取らないことを条件に協力しあっています。あちらの特殊部隊の皆さんの大半が陸軍で、海軍の大本営を守ってもらっています。逆に、陸軍の支援金などは海軍が負担しています。…どちらかが過激な行動をとっても、利益がない気がしますが…。…他の組織の可能性も…。…低いですね…。」

 

「まぁ、今はともかく、こっちの鎮守府に来たから、他の鎮守府の提督にも呼びかけていた方が得策だと思います。」

 

「わかりました。ちょうど今各地の提督がいらしていますので、伝えておきます。」

 

大和はドミナントの話を聞いた途端、急ぎ足で何処かへ向かう。

 

…………

 

あの後、しばらくして大和が全提督に伝えたらしい。各提督が各鎮守府に警戒態勢に入ったり、既に何か異常がないかのチェックをさせた。一方、ドミナントは…。

 

「ふぁ〜…。」

 

「暇ですね。」

 

葉が紅に染まった紅葉の木の下のベンチに赤城とともに座っていた。

 

「大和さんとの話まで時間あるし。」

 

「そうですね。」

 

そう話していると…。

 

「…ん?あれ佐藤中佐か?」

 

ドミナントは誰かと話すシレアを発見する。

 

「てか、もう一人の方中山大将じゃん。…!。大将が頭を下げてる…。」

 

「えぇっ!?」

 

赤城も驚いて見る。

 

「確かに頭を下げていますね…。それに、中佐の片手を両手で握っていますね…。せくはら?でしょうか?」

 

「いや、あれセクハラじゃないでしょ…。」

 

そして、シレアがこちらに気づいたのかこっちにくる。

 

「や!どうしたの?」

 

「あっ、いえ。ただなんとなく、佐藤中佐は中山大将と親しいのかなと…。」

 

「え?ううん。親しくないよ。」

 

「えっ?」

 

「実は私、大将になれる資格持ってま〜す!」

 

「「…えぇ!?」」

 

シレアの衝撃の一言にドミナントたちは驚く。

 

「だから、私はあの人の先輩みたいなものなの!」

 

「…ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない。てか、なんで大将にならないの?給料上がるよ?」

 

「ん〜。まぁ、給料が上がったり、ある程度の権力を使えるのもいいかもしれないけど…。貧乏性のわたしにはしっくりこなくて…。この地位が気に入ってるの!」

 

シレアは転生する前、貧乏レイヴンで、腕もそこそこだった。

 

「なるほど…ふらやましいよ。」

 

「えっ?何が?」

 

「もう大将いける資格持ってて。」

 

「えっ?もしかして、上の階級いけることを知らないの?」

 

「それくらい知ってるよ。でも、俺にはまだ招集がかかんないんだよ。」

 

「え…?いや、それって昇進希望の書類出した?」

 

「……?」

 

「その紙出さないと、試験も受けられないし、いくら待ってもその階級のままだよ?私もこの階級で書類出してないし。」

 

「……。」

 

「……。」

 

沈黙。しばらくして…。

 

「あっ、そろそろ私、大和さんとお話があるので失礼します。」

 

赤城が中に戻って行った。

 

「……。書類か。」

 

「……。見習い提督の時話を聞いてなかったんだね。」

 

「えっ?見習いの時ってそんな話をするの?」

 

「そりゃそうだよ。だって、説明したり見本見せてあげないとわからないでしょ?」

 

「いや、俺の場合は提督が寝坊したり、お菓子食べていたり、艦娘に丸投げ出しているところしか見てないから…。」

 

「誰よ…。その提督…。」

 

シレアは脱力した。一方、ドミナントは…。

 

……神様、帰ったら覚えてろよ…。

 

引き立った笑みを浮かべていた。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「ハッ!」

 

「?いきなりどうしたんですか?」

 

神様がカウンセラーの最中いきなり声を出す。

 

「ドミナントが私のことを考えている気がする!」

 

「えぇ…気のせいじゃないですか?」

 

「ううん!絶対に考えた!えへへ…ドミナントったら…向こうでも私のことを考えてくれてる。私がいないとダメなんだから。えへへへ…。」

 

神様は全くの的外れのことを考えていた…。




はい。77話終了です。まだ大本営のところが続きそうです。
登場人物紹介コーナー
各地の提督…姿形も十人十色。だから新しい…惹かれるな…。はい、冗談はさておき、本当に多種多様です。顔に傷のある者もいれば、やけに体が大きい者もいます。年老いた人もいれば、青年もいます。男性がいれば、女性も…。全員紹介するのが面倒なので物語に登場すれば紹介します。
甲特殊ルビコン鎮守府…伊13…傷だらけであり、白髪。瞳も赤みがかっている。車椅子に座っていて、まともに会話することはできなそうだ。伊13の計画時の名前…。そして、読み方でピンと来た人がいることを願う…。
次回!第78話「提督、あれは艦娘なのか?」お楽しみに!


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78話 提督、あれは艦娘なのか?

はい。やってきたきた78話。…あれ〜?何かが間違っているとは思はないか?
「間違っているのはあんたの頭でしょ?」
ひっ、ひどい。それは流石にひどい。
「えっ…。…まぁ、確かに言いすぎたかもしれないわね。」
そんな時なんて言うの?
「えっと…。ごめんなさい。」
よろしい。
「…えっ?今何が起き…。」
謝罪は受け入れよう。
「???」
じゃ、今回のゲストは?
「なんか腑に落ちないけど…。この子。」
「五月雨と言います!一生懸命頑張り…わぶっ!」
「転んだけど大丈夫?」
パシャ…。ジュー…。
…あっちゃぁぁぁぁぁ!!!
「あっ。筆者さんに出そうとした熱々のお茶が…。」
「ちょ、ちょっとあんた!頭からいったけど大丈夫なの!?」
あぁぁぁ!!!
「うるさいわね…。あんなの気にしないであらすじを言っちゃいなさい。」
「えっ?でも…。」
「大丈夫大丈夫。どうせあらすじが終わる頃には治ってるから。」
んなわけあるかぁぁぁ!!
「ほら、冷たい水で絞ったふきんがあるからこれ使いなさい…。」
ゴシゴシ…

あらすじです。
前回、提督がいなくて暇でした。そのかわり、演習でしたけど…。…提督が料理教室に来るんですか…。ドジなところをたくさん見られてしまいます…。

「私が拭いてあげるのなんて、滅多にないんだから感謝してよね。」
ん。ありがとう。


…………

 

「ほう、そっちでは落花生が有名なんですか…。」

 

「うん!そうだよ!今ちょうど取れる季節だし。送ってあげる!」

 

「いや〜、ありがたい。こちらでは牡蠣やふぐが有名なんですが…。まだ養殖してなくて…。みかんならあるんですけど…。」

 

「みかんがいい!冬になるし、こたつを出してみんなで食べたい!」

 

「そうですか?なら、箱いっぱいに詰まったみかんを送ります。」

 

「やったー!」

 

ドミナントがシレアと話していると…。

 

「君がドミナント少佐だね。」

 

さっきまでシレアと話していた中山大将だ。

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「あっ、山中大将どうしたの?」

 

「佐藤中佐…、中山大将です。それより、ドミナント少佐に話があってな。」

 

「?」

 

「…私、席はずそうか?」

 

「お願いします。」

 

中山大将はシレアに言った後、シレアは何処かへ行った。

 

「…ドミナント少佐。」

 

「はっ!なんでしょう?」

 

「うむ。私が着任する前、艦娘たちの面倒を見てくれていたと聞いてな。」

 

「えっ?いえ、それは自分ではないと思います。」

 

「提督でなかったのは知っている。艦娘はその時の提督より、見習いであった君や君の部下の方が印象が残っていた。」

 

……神様、言われているぜ。

 

「私が着任する前は、人権のない艦娘に非人道的扱いをした提督が仕切っていたと聞いて、“提督”への信頼を完全に失っていると考えていた。その信頼は一週間で取り戻せないだろうと考え、覚悟していた。艦娘に疎まれることを。しかし、私が思っていたのとは全く違かった。皆明るく、元気で私を迎えてくれた。艦娘はまた、我々“提督”にチャンスをくれたのだ。そのときは本当に信じられなかったよ。でも、何故かと話を聞くと、君たちを見ての判断とのことだった。あの提督の他にも、君たちみたいな提督がいるのなら、また信じてもいいんじゃないかってね。つまり、私は何が言いたいかと言うと、君たちに感謝している。艦娘を大事にしてくれて…、“提督”の信頼を取り戻してくれて。礼を言う…。」

 

中山大将は頭を下げる。

 

「いえ、そんな…。」

 

……この人いい人だ。艦娘のことを大事に考えてくれているし、たとえ、階級が下な部下にも頭を下げる…。まさに“大将”の器だ。

 

ドミナントは感心している。すると中山大将は紙を渡す。

 

「これは私の連絡先だ。何かあれば、連絡してほしい。力になる。」

 

中山大将は連絡先の紙をドミナントに渡して、その場を去る。

 

「…いい人だな。」

 

ドミナントがポツリと言うと…。

 

「たのもー!ドミナント少佐だな!」

 

「ん?」

 

遠くで声を上げる男を見る。

 

ドドドドド…。

 

「ドミナント少佐!我輩は第3呉鎮守府提督、難波少将である!早速だが、演習相手になってもらいたい!」

 

「ま、待ってくれ。」

 

難波少将が走ってくるなりドミナントに言う。付き添いの長門が追いつく。

 

「断る!…いい人だったな。」

 

ドミナントは話をバッサリ切り、中山大将からもらった紙を見ながら中へ戻ろうとするが…。

 

「いやいや。話に聞く、“化け物の巣窟”が“百戦錬磨の集会”どちらが強いのか確かめたい!」

 

「いや、俺にメリットないし…。帰るわ。さよなら。」

 

「待て!どうなっても知らんぞ。」

 

「…何がだ?」

 

ドミナントは面倒臭そうに振り向く。

 

「言い忘れていたが、我輩は少将。つまり、君よりも階級は上だ。いいのか?出世の道が閉ざされるぞ?」

 

「……。」

 

……こいつ…。権力の話を持ち込んできやがった。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「…無理だ。今付き添いの艦娘が用事でいないからな。」

 

ドミナントは立ち去ろうとするが…。

 

「ならば、帰ってくるまで待たせてもらおう。」

 

「……。」

 

……こいつ正気か?ふざけんなよ?そろそろ怒るよ?

 

ドミナントの怒りゲージが上昇する。すると…。

 

「提督、遅くなってすみません。」

 

赤城が戻ってくる。

 

……あーあ。悪いタイミングで…。

 

ドミナントが思うと…。

 

「…?どうかしたんですか?」

 

「ん?あぁ…、この人が演習をしたいらしくてな。断ろうと思ったんだが…。」

 

「まぁ、こちらに利益ありませんし。」

 

赤城とドミナントが話す。

 

「…提督が断れないのであれば、私が断ります。艦娘である私がするのですから、私が断れば問題解決です。」

 

赤城がそう言って…。

 

「演習のお誘い申し訳ございませんが、お断りさせていただきます。」

 

難波少将に言う。

 

「ほう。貴様がそう言うならばいいのだな?」

 

「…どういう意味でしょうか?」

 

「貴様の提督が一生出世の道を絶たれたとしても。」

 

「!?」

 

赤城は驚きのあまり言葉を失う。

 

……こいつ…。赤城にまで言いやがった…。…まぁ、相手の付き添いの長門が申し訳なさそうにしているからなんとか踏みとどまったが…。

 

ドミナントの怒りゲージにひびが入る。

 

「……ん。」

 

「?」

 

赤城が何かを言う。

 

「許しません。いいでしょう、相手になります。」

 

「そうこなくては。」

 

難波少将は悪い顔をするが、ドミナントは怒りゲージが下がり、恐れていた。

 

……ヤバイ…。赤城めっちゃ怒ってる…。平常に見えるけど、微妙に違う声の重さでわかる…。

 

実際、その通りであった。

 

……この人…、権力を使いますね…。そんな輩は一度痛い目に合わないと懲りないでしょう…。完膚なきまでに叩きのめします。

 

赤城は心の中で思っていた。

 

…………

演習場

 

『では、これから演習を始める。両者とも、準備は良いか?』

 

「ああ。」

 

「我輩たちも同じだ。」

 

『では、演習を開始する。初め!』

 

放送の終わりと同時に赤城が偵察機を発艦する。

 

「…見つけました。」

 

「……。」

 

……早い…。いくらなんでも早すぎる…。鍛えすぎだ、主任…。

 

赤城は遠くの主任を見つけるための訓練もしている。その時の主任は素早い動きで全く見つからない。しかし、相手は長門。あっという間に見つかる。

 

「第一次攻撃隊、発艦してください!」

 

赤城は飛ばす飛ばす…。

 

ドォォォォン…!ドォォォン…!

 

『長門、赤城の攻撃が命中!小破した。』

 

遠くで音がし、放送が入る。長門が全く見えない。

 

「えげつねぇ…。飛距離ってもんがあるだろ…。」

 

「私の艦載機、本日は大本営とのことだったので、提督を守るためセラフさんの作った艦載機も混じっています。」

 

「なるほど…。」

 

ドミナントは長門を哀れに思う。

 

「第二次攻撃隊、全機発艦!」

 

またもや飛ばす…。すると、やっと長門が見える位置まで来る。

 

ドォォォン!ドォォォォン!

 

『長門、赤城の攻撃が命中!中破した!長門、危険温度が続いている!』

 

無慈悲に放送が入る。

 

「長門型の装甲は、伊達ではないよ。提督、あれは艦娘なのだろうか?飛距離が長すぎるような…。…待ちに待った艦隊決戦か。胸が熱いな。」

 

ドオォォォン!

 

長門の攻撃の弾がまっすぐ赤城に向かう。

 

「!?」

 

ドオォォォン!!

 

当たる。

 

……あれは当たったな…。ここまでか。

 

ドミナントは思ったが…。

 

「!?」

 

まず反応したのが長門だった。

 

「?。!…あれはジナイーダの戦術だな。」

 

ドミナントが呟く。

 

「まさか…、艦載機を盾にするとは思いもしなかった…。」

 

長門が呟く。

 

「ジナイーダさんから教えてもらった戦術です。」

 

そして、赤城は発艦する。

 

ドオオオオン!!

 

『長門、赤城の攻撃が命中!大破!よって勝者、赤城!』

 

放送が入る。

 

「…損傷なし、戦術においても私が上…。提督!完膚なきまでに叩きのめしました!」

 

「お、おう。よくやったな。晩ご飯奢るぞ。」

 

「はいっ!」

 

赤城は喜んでいるが、ドミナントはこう思っていた。

 

……チート使っての勝利だろ!?

 

そして…。

 

「ドミナント少佐。完敗だ。さっきはあんなことを言ってすまなかった。どうしても勝負をしたくてな…。」

 

難波少将は頭を下げる。一方、長門は赤城を見て震えていた。

 

「え?い、いや〜、いいんですよ。誰だってそういう時ありますから。」

 

「そうか…。強い奴は好きだ。いつか少佐の艦隊に勝ってみせる!それまで今以上に鍛えておくんだな!」

 

「お、おう。頑張れよ!」

 

そして、難波少将は走ってどこかへ行った。長門は慌てて追いかける。

 

「…嵐みたいな人でしたね。」

 

「しかも、なんかライバルみたいな感じで終わらせたしな。」

 

……本気出したら長門を見れずに終わってるよ…。

 

ドミナントは心の中で思った。

 

…………

 

「伊13、お前は自分の仕事をすればいい。」

 

「……。…耳鳴りが強い…。あの鎮守府が近ければ…近いほど…。」

 

「…伊13。…仕事の時間がもうすぐだ。鎮守府に戻るぞ。」

 

「……。」

 

甲特殊鎮守府提督と、傷だらけで白髪の伊13はその様子を遠くから眺めていたようだ。




はい。終わりました。あのとき、長門の攻撃が当たったら、中破は確定です。
登場人物紹介コーナー
中山大将…ドミナントたちが去った後の第2横須賀鎮守府の提督。いい人。信頼している相手にしか連絡先を渡さない。
難波少将…自分はドミナントのライバルだと思っている。実ははじめての敗北。好戦的な性格。身体が闘争を求めているのだろうか…?
次回!第79話「晩ご飯」お楽しみに!


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79話 晩ご飯

はい。やってきました79話。なんだかんだでもう79話ですか…。あと21話。終わりが見えてきましたね。
「毎日投稿だと約1ヶ月あるわよ。」
まぁね。このコーナーも終わり。瑞鶴を見れなくなる日が来るのか…。
「えっ?あんたは残るんじゃないの?」
んにゃ。夢から現実に覚めないといけないし…。終わりと同時に現実へ戻る。
「そ…っか…。そうなんだ。…まぁ、私はこの面倒くさいコーナーが終わればいいけど。」
そうか。
「…今回のゲストを紹介するわ…。」
「お姉さまの妹分、比叡です!」
おー、金剛型2番艦の比叡か〜。あらすじいける?
「いつでも準備!出来てます!」
では、どうぞ。

あらすじです!
まず、野菜の皮を剥きます!そして、野菜と共に肉も切ります!そして、サラダ油を引いたフライパンに火が通りにくい肉から炒めます!少ししたら、野菜もともに炒めます!玉ねぎが透き通ってきたら鍋に移し、水を入れて煮込みます!煮込んだらカレールーと???を入れて完成です!

うん。あらすじじゃないし、???を入れるからアウトなんだよ…。
「司令がいないので、あげます!」
おぉぉい…マジかよ…、夢なら覚め。…瑞鶴?
「…え?あ…。ううん。なんでもないわ。」
なんだお前、カレーもらえなくてすねてんのか。
「ちがう!食え!」
グボフッ…。…オ、オェ(しばらくお待ちください。)ー!


…………

 

「そろそろ晩ご飯食べるか。赤城も頑張ってたし、俺も何かしないと!」

 

「そのセリフはやめてください…。」

 

赤城は顔を引きつらせた。そう、二人は今大本営にいる。しかも夕方だ。

 

「誰かのせいで飛行機乗り遅れたし、晩ご飯はこの近くで食べよう。」

 

「その誰かとはあの人のことですね…。」

 

「そゆこと。…バイキングでいいか?」

 

「はい!」

 

赤城が嬉しそうにし、ドミナントは調べる。そして、場所はすぐに見つかる。

 

…………

飲食店 [ヤニオン]

 

ドミナントは店名を確認して、安全だと思い、入る。赤城もドミナントに続く。

 

「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

 

「二人だ。」

 

「どうぞこちらへ。」

 

店員に案内される。

 

「こちらの席へ座ってください。当店はバイキングとなっております。お好きにどうぞ。」

 

「わかった。」

 

ドミナントたちは座り、店員は仕事をしに戻る。

 

「…それでは、提督の分も取って来ますね。」

 

赤城はそう言い残し、取りに行った。

 

「…嬉しそうだな。…ん?」

 

ドミナントは赤城の方を見て呟く。そして、その方向に山田中将がいた。鹿島も一緒である。

 

……山田中将!?なぜここに!?…てか、何やってんの?

 

ドミナントは、興味を抱き、見る。そしてドミナントは見た。…いや、見てしまったのだ…。

 

『提督さん。はい、あーん。』

 

『あーん。おいちーなー。鹿島マに食べさせてもらっちゃったー。』

 

『もう、提督さんったら。うふふ。』

 

「……。」

 

……。

 

ドミナントは言葉どころか、何も思えない状態だった。しばらくすると…。

 

「提督、戻りました。…どうかしたんですか?」

 

赤城が戻り、口がアングリ開いたドミナントに声をかける。

 

「…ハッ!…いや、なんでもない…。」

 

「?そうですか?」

 

赤城が席に着き、食べ始める。そして…。

 

「赤城…、この先の日本が心配だ…。」

 

「?」

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「うーん…。遅いなぁ…。」

 

神様が廊下を行ったり来たりする。

 

「…どうしたんだ?」

 

ジナイーダが不思議に思い、聞く。

 

「え?いや、ドミナント遅いなぁって…。」

 

「お前はあいつの奥さんか。」

 

ジナイーダがツッコミを入れる。

 

「まぁ、確かにあいつにしては遅いな。」

 

「でしょ!普通ならもう帰って来てもいいと思うんだけど…。」

 

「会議が長引いているのだろう。そんなに心配しなくてもいい。」

 

神様を宥める。

 

「それに、あいつに限って事故で大怪我など有り得ない。逆に車が壊れる。」

 

「そ、そうだよね。大丈夫だよね。」

 

神様はホッとする。しかし…。

 

「それはどうかなぁ?」

 

「ん?主任か。」

 

主任が突然現れる。

 

「どうかなって?」

 

「よく考えてご覧よぉ。あかぎんと2人きり、遠いから誰にも邪魔されない。こんな好都合なこと、滅多にないよぉ〜。朝に帰ってきたら決まりだね。ギャハハハハハ!」

 

「……。嘘…。そんな…。」

 

神様の顔が真っ青になる。ジナイーダは主任を睨んだ。

 

「そんな…。嘘…。」

 

神様はその場で崩れ落ちる。

 

「ま、まあ落ち着け。そんなに心配なら電話すれば良いだろう。」

 

「ま、出ないかもしれ…。」

 

主任は最後まで言わない。ジナイーダがマジで怒りそうだったからだ。

 

「…うん…。電話してみる…。」

 

…………

 

日が沈み、街灯や都会の光で辺りが明るく照らされる。

 

「今日はたくさん食べました!」

 

「そうか。」

 

……まさかあんなに食べるとはな…。バイキングでよかった…。

 

ドミナントは密かに思う。店からは出禁を食らった。

 

「…さて、そろそろ帰るか。」

 

「もうですか?あまりこちらに来れないので色々見たかったんですが…。」

 

「すまないな。だが、そろそろ帰らないと…。」

 

ブー、ブー、ブー…。

 

ドミナントが言い終わる前に、ドミナントの携帯の電話が鳴る。

 

「…もしもし。」

 

『ドーーミーーナーーンーートーーー!!!今どこにいるの!?早く帰って来て!!朝帰りなんて許さないよ!!!』

 

電話越しに大声を出す神様の声が聞こえる。

 

「今、まだ大本営だ。それに、仕事をしていれば朝帰りも日常茶飯事じゃないか。」

 

『それはドミナントだけ!!普通朝帰りなんてごく一部しかいない!!とにかく早く帰って来て!!』

 

神様が言う。しかし、ドミナントは…。

 

「すまないな。まだ会議が終わっていないんだ。終わったらすぐに帰る。」

 

『…わかった。だから、お願いだから朝帰りだけはやめて…。お願い…。お願いだから…。』

 

途中から興奮が収まったのか、声が小さくなる。

 

「…わかった。それじゃぁ。」

 

『うん…。大好きだよ。本当に愛してる。』

 

そして、ドミナントは電話を切る。

 

「…主任に何か言われたな。」

 

ドミナントは呟く。

 

「…提督、まだ会議とは?」

 

「ん?まぁ、気にしない気にしない。色々見てから帰ろう。」

 

ドミナントは神様の気も知らないで観光した。そして、お土産を買って帰った。

…………

第4佐世保鎮守府前

 

「ふぅ、やっと帰ってきたな。」

 

「そうですね。」

 

現在、深夜2時。艦娘たちが寝静まった時間だ。

 

「こんな時間になってしまったが、まぁ、無事帰れて何よりだ。」

 

そして、ドミナントは中に入る。

 

「起こさないように、静かに行くぞ。」

 

「はい。」

 

ドミナントと赤城は小声で話す。

 

「荷物置いたらお風呂へ入って、静かに部屋に戻り、就寝だ。」

 

「はい。」

 

ドミナントは足音一つ立てずに進み、西棟を抜けて東棟へ移る。ここからは足音を立てても、大きな音を出さなければ艦娘が起きることはない。赤城は、速やかに任務遂行するため、ドミナントと西棟で分かれた。

 

「…?俺の部屋の前に誰か…。」

 

ドミナントの部屋の前に体育座りしている人影がある。そして、ドミナントを見た。

 

「ドミナント…?」

 

神様だった。そして、よろよろと立ち上がり、ドミナントを抱きしめる。

 

「こんな時間までいたのか…?」

 

「うん…。ずっと待ってた…。」

 

クゥー…。

 

神様が言い終わると同時に神様のお腹が鳴る。

 

「…ご飯も食べていないのか…?」

 

「うん…。その間に帰ってくると思って…。」

 

「はぁ…、全く。お前はもう…。少し待ってろ。作ってやる。」

 

ドミナントは急いで荷物を置き、神様を中に入れ、料理の支度をする。

 

…………

提督自室 キッチン

 

……セラフ、いつの間にこんなの作ったんだ?感謝しないとな。

 

ドミナントは道具が揃っているキッチンを見て思う。

 

……さて、じゃぁ作るか。向こうだと音もするし、匂いで気づかれるかもしれないからな。

 

ドミナントは、西棟にある食堂まで行き、材料を探して持ってきたのだ。

 

……まず、鳥のもも肉を一口サイズに切る。そして、玉ねぎを二分の一に切って、みじん切りにする。それが終わったらフライパンで炒める。鶏肉が焼けて、玉ねぎが透き通ってきたら塩胡椒を少々入れて、ご飯をほぐしながら入れる。温まってきたらケチャップを入れて炒める。そして、ラストにパセリを少々入れるのだが…。温めている間に卵をやろう。卵2個の中身をボールに入れて、かき混ぜる。その時にはもう一つのフライパンを出して、中火で温めておこう。次に、生クリームを入れて、凝固しにくくする。牛乳が一般的だが、まぁこれくらい大丈夫だろう。そして、再度白身と黄身が混ざるように混ぜる。そのとき卵だけに集中せず、ご飯のことも忘れないようにしよう。何もかもを黒く焼き尽くしたら意味がないからな…。そして、熱されたもう一つのフライパンにバターを入れ、広げる。次にといた卵を一気に入れる。入れたら固まらないようにスピーディーに混ぜる。半熟になったらフライパンを斜めにして、楕円形になるようにひっくり返す。…ここはコツが必要だから、初心者にはラップでやるのがオススメ。…そして、楕円形にして焼いている面が焼けたら、焼いているときによそったチキンライスに焼いている面が下にくるように乗せる。そして、真ん中に包丁で切れ目を入れると…。

 

トロ〜リ…。

 

……うん。完成だ。ドミナント料理〈フワトロオムライス〉

 

そして、神様のところへケチャップと一緒に運ぶ。

 

「できたぞ。」

 

「えっ?これ私に…?」

 

「他に誰がいる?」

 

「…ありがとう。いただきます。」

 

神様は食べる。

 

「美味しい!」

 

「そうか。ならよかった。」

 

「卵がふわふわでとろけてる!」

 

「ああ。美味いだろう?」

 

「うん!」

 

そして、すぐに完食する。

 

「おかわり!」

 

「わかった。」

 

ドミナントは再度キッチンに戻る。

 

……本当は俺の分だったんだが…。まぁ、おいしそうに食べてくれるなら本望だ。

 

ドミナントは、卵も同じように作り、持っていった。神様は美味しそうに食べたあと、ドミナントに甘え、自室に戻って寝た。




はい。79話終了です。今回は平和?でしたね。
ヤニオン…管理者の管理に疑問を抱く秘密結社に見えるが、気のせいである。…多分。
山田中将…バブみ提督。眼鏡をかけている。普段は礼儀正しい。だが、ドミナントにバブみの姿を見られ、知らぬ間に威厳が失いつつある。
鹿島…山田中将の秘書艦。練習巡洋艦。身だしなみには相当気を使っている。
ドミナント料理〈フワトロオムライス〉…フワトロオムライス。ちなみに、ドミナントはこの世界ではじめての料理。ドミナント料理は他にも様々なレパートリーがある。
次回!第80話「イレギュラー料理」お楽しみに!


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80話 イレギュラー料理

はい。皆さんの想像の通りです。ついに80話。あと20話。今回は、どんなイレギュラー料理が出てくるのでしょうか…?
「なんとなく想像つくわ。」
ほう?
「どうせカレーしょ?」
おー、半分間違っているが、半分正解だ。
「…これ以上のものがあるの?」
まぁ、あるにはあるな。
「ふぅーん…。」
まぁいいや。今回のゲストは?
「…この人…。」
「航空母艦、赤城です。」
おー、ではあらすじをどうぞ。
「なんか反応が薄い気がしますが…。あらすじを言います。」

あらすじ
前回、提督と離れた後、速やかに任務を実行しました。…提督室からいい匂いがしたのは気のせいでしょうか…?


…………

廊下

 

「どれどれ?」

 

翌日、ドミナントは仕事が終わり、掲示板を見る。

 

『さんま祭りでち』

 

『会員求む。深夜ゲームクラブ』

 

『寒い日に提督と二人でいたいクラブ 会員が多すぎるため二つに分かれました。』

 

『お魚が食べたいにゃー。』

 

『蜂蜜だクマー。』

 

『朝まで呑み会 日付変更◯月△日』

 

『戦いこそが人類の可能性なのかもしれん…。』

 

『提督大好きクラブ 100人突破』

 

『夜戦!夜戦が君を呼んでいる!』

 

『ぽいぽいぽーい』

 

『パンパカパーン』

 

『レディーとして扱ってよね。』

 

『ハラショーハァラショォォォォ!』

 

『久しぶりに普通のカレーが食べたいのです…。』

 

『いくらでも甘えていいのよ!』

 

『提督の私服 高値で買います。売る気のある人はこの掲示板にて。』

 

『非売品ですので、いくら払っても売りません。』

 

『来月、新商品“提督が一度使った枕カバー” “抱き枕” “話す提督型人形" 5000円』

 

『次回のお茶会は○月□日。提督、待ってるネー。』

 

『新商品『間宮特製パフェ』1日5個限定発売。』

 

『いつでも安心。セラフ製“南京錠” “鍵” 詳細は倉庫にて。お待ちしております。』

 

『植物の水は必ず。』

 

『提督の料理美味しかった!』

 

『羨ましい…。』

 

『那珂ちゃんコンサート ○月✖︎日』

 

『キシキシ。』

 

『お菓子!甘味!くれればなんでもするです。妖精一同』

 

『次週教官“ジナイーダ”悪いな。手加減はできない性分だ。』

 

…………

 

「……多すぎだろ…。見つからない…。それに、なんか変なのも混じってる。」

 

ドミナントは紙でびっしりと敷き詰められた掲示板から探す。

 

「…あった。これだ。」

 

『セラフの、提督の胃袋を掴め!ドキドキ料理教室 ○月☆日』

 

「これか。今日だな。」

 

ドミナントは食堂へ向かう。

 

…………

食堂

 

「ここか…。」

 

ドミナントが着いた時には既に始まっていた。

 

「…何か隙間から毒々しい煙が出ているが…。まぁ、大丈夫だろう。」

 

ドミナントがドアを開ける。

 

ブワァッ。

 

「う…。」

 

……これ毒ガスか?痺れるぞ。

 

開けた途端に煙がドミナントを襲う。ドミナントは口元を布で塞ぎながら入る。

 

「あっ、ドミナントさん来たんですか?」

 

マスクをしたセラフがいた。

 

「提督…?」

 

「司令官?」

 

「ドミナントか?」

 

なんと中には全員がマスクをしていた。

 

「状況を説明しろ。何が起こっているんだ?」

 

ドミナントは聞く。するとセラフがドミナントに耳打ちする。

 

「私が目を離した隙に新しいメニューを開発していたらしくて…。気がついたら料理からこの煙が…。」

 

「で、その料理は片付けたのか?」

 

「はい…。この煙は換気扇で換気していたんですが…。」

 

「そうか…。」

 

ドミナントとセラフがコソコソ話している間に煙が消えていく。

 

「…やり直しだな。」

 

「…はい。」

 

…………

 

「えー、今回は特別にドミナントさんが来てくれました。私だけでなくドミナントさんにも頼ってください。」

 

「お、おう。よろしく。」

 

そして、料理教室が再開する。

 

「今回のお題は自分の得意料理です。がんばっていきましょう。」

 

セラフが言い、みんなが動き出す。

 

「……。」

 

ドミナントは数分前、セラフに耳打ちされたことを思い出す。

…………

 

「いいですか、ドミナントさん。ここにいるのは曲者揃いです。特に注意しなくてはいけないのが加賀さんと比叡さん、ジナイーダさんです。他の二人はまだ平気ですが、その3人を重点的に見てやってください。」

…………

 

……俺にどうしろと…。

 

ドミナントは微妙な顔をする。そして、まずジナイーダのところへ行く。

 

「どうだ?」

 

「順調だ。」

 

「…何を作っているんだ?」

 

「見ればわかるだろう?シチューだ。」

 

「……。」

 

鍋にいろいろなものが入っていた。

 

「…まず、トンカツを入れるのは勘弁してくれ。そして、片栗粉はいらない。さらに虫も入れるな。次に……。」

 

「なんだ。文句ばかりだな。」

 

「いや、文句というか…。…料理上手になりたいだろう?」

 

「…まぁな。」

 

「…これはレシピだ。この通りにすれば不味くなることはまずない。」

 

「そうか。いいだろう。作ってみよう。」

 

…………

 

「比叡は…、カレーだよな。」

 

「はい!全力で!やります!」

 

「…ん?よくできているじゃないか。」

 

「ありがとうございます!」

 

「…そのモザイクの食材は入れるなよ。」

 

「?最後に入れなくてもいいんですか?」

 

「ああ。」

 

…………

 

「加賀はどうだ?」

 

「…順調です。」

 

「そうか。…おにぎりか?」

 

「はい。」

 

「…まぁ、その方が無難だな。」

 

「…はい。」

 

…………

 

……なんだ。しっかり言えばみんなできるようになるじゃないか。大袈裟なんだよ。みんな。

 

ドミナントは心の中で思い、セラフを見る。

 

『これを入れて…。』

 

『五月雨さん!それは醤油じゃなくてソースです!』

 

『しっかり火を通さなければ…。』

 

『磯風さん!焦げてます!早く火元から離して!』

 

『次にこれを…。』

 

『五月雨さん!それは塩でなく砂糖です!」

 

『梅、杏子、琵琶、桃を入れてミキサーにかけた飲み物を…。』

 

『磯風さん!それは絶対にやってはいけない食べ合わせです!』

 

ワーワー、ギャーギャー…

 

「…忙しそうだな。」

 

ドミナントは高みの見物をしている。すると…。

 

『後でドミナントさんに試食してもらうんですから、皆さん真剣にやってください!』

 

「!?」

 

……嘘だろ!?俺が食べるのか!?

 

ドミナントは驚愕する。

 

……ヤバイ、俺が生き残るためにも真剣に見てやらなければ…。

 

そして、ドミナントはもう一周した。

 

…………

 

「……。」

 

「はーい。皆さん、よく頑張りました…。それではドミナントさんに試食してもらいましょう…。」

 

セラフは疲れ切った様子だ。

 

「一番比叡です!どうぞ!」

 

「ああ。」

 

……比叡は俺がちゃんと言ったから大丈夫だろう。

 

ジャーーン!

 

「おぉ…。」

 

普通のカレーだった。モザイクのかかってない。

 

「比叡、よくやった!」

 

「ありがとうございます!」

 

そして、安心して、スプーンですくったカレーを口に入れる。すると…。

 

「モグモグ…モグ…モ…。」

 

「どうでした?」

 

ドミナントはさっきの顔から一変して青くなる。

 

「…すまん…。比叡…。」

 

「えっ?どうしたんですか?…どこに行くんですかー?」

 

ドミナントはトイレに直行。

 

…………

10分後

 

「……。」

 

「あっ、お帰りなさい。」

 

よろよろとドミナントが戻ってくる。

 

「どうでした?」

 

比叡が目をキラキラさせて聞いてくる。

 

「う…。…とても刺激的な味だったよ。」

 

「そうですか!」

 

……あんな顔で聞かれたらまずいなんて言えない…。

 

「二番、私だ。」

 

「おぉ…。ジナイーダか…。」

 

……レシピをあげたから大丈夫。…なはず…。

 

ジャーーン!

 

「……。」

 

普通のシチューだ。

 

……次は騙されん。騙して悪いが、俺は引っかからんぞ。

 

ドミナントは覚悟して口に入れる。

 

「……。」

 

「ど、どうだ?」

 

「……。裏切られた…。」

 

「な、何がだ!?」

 

「…普通にうまい。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントの審査により合格。

 

「3番、磯風。さんまだ。」

 

……結局さんまになったのか。…黒いサンマっていたっけ?

 

もちろん焦げているのである。

 

「4番、五月雨。」

 

「甘い…。」

 

「五番、加賀。」

 

「中身なんだこれ?」

 

「知らない方がいいわ。」

 

…………

 

「…ゴフッ…。」

 

全てのイレギュラー料理食べたドミナント…。

 

「はい。では本日は終了です。お疲れ様でした。」

 

セラフは元気に言う。

 

「……。」

 

……セラフのやつ…、俺を身代わりにしたな…。

 

ドミナントは見るが、絶対に目を合わせないセラフ。晩ご飯はその5人が作ることをまだ知らない…。

 

…………

晩ご飯を食べ終わった夜

 

ガサガサ…。

 

「これじゃない…。」

 

ゴソゴソ…。

 

「これじゃない…。」

 

「どうしたの?夕張ちゃん。」

 

倉庫で何かを探している夕張に声をかけるセントエルモ。

 

「えっ?えーと…。なんでもないよ。」

 

「?」

 

……これ、どうしよう…。あの時言いそびれちゃったし…。




はい。終わりました80話。あぁ…ネタが切れる…。
「しっかりやんなさい!」
ついに後書きまで侵略しに来たね。
「あと20回しかないんだから!」
あはは…。
登場人物紹介コーナー
シチューレシピ…一般のレシピ。
次回!第81話「偶然の産物」お楽しみに。


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81話 偶然の産物

はい。きました81話。残り19話。これだとぴったりに終われそうですね。
「えっ?ぴったり?特別話は?」
えっ?特別話?はっはっは…、ちょっと何言ってるかわかんない。
「フンッ。」
ひょいっ
よっと。そう何度も当た…ぐはぁぁぁ!?
「爆撃機を飛ばしていたの気がつかなかったの?」
認めん…。認められるか…こんなこと!
「あんたには水底が似合いよ。」
…こ、今回のゲス…ブクブク…。
「中山大将、本日はこんな汚くて狭い場所にお越しいただきありがとうございます。」
「そこに沈んでる奴はなんなんだ?」
「ここに住んでるの。」
「ふむ…。(そういうノリか…。)」

あらすじ
前回、私は第4佐世保で何があったかは知らんな。…だが、前回、こちらにも侵入者が来た。…取り逃してしまったが、何も情報を盗まれてはいなかった。…何を探しているのか…。


…………

執務室

 

「ふぁ〜…。暇だ。」

 

ドミナントは一人、執務室で仕事をし終わり、椅子にもたれている。

 

「本日は秘書艦なしの日だからなぁ…。」

 

第4佐世保鎮守府では、一ヶ月に一度、ドミナントが仕事のスピードを再確認するため一人で仕事をする。そうしないと、たまに秘書艦が仕事量をごまかし、多く仕事をしようとするのだ。上司を思う部下…まさに理想である。

 

「とは言っても…、電の件があるからなぁ…。」

 

クルクル回りながら言う。そこに…。

 

コンコン…。

 

『提督、失礼します。』

 

『ドミナント提督、セントエルモもきたよ。』

 

「どーぞー。」

 

ガチャ…。

 

「提督、久しぶりです。」

 

「ドミナント提督、覚えてる?」

 

「久しぶり。覚えているとも。てか、どこでも二人一緒なのか。」

 

夕張とセントエルモが入って来た。

 

「夕張ちゃんが重要な話があるって。」

 

「そうなのか?なんだ?」

 

ドミナントは優しく聞く。

 

「じ、実は…。」

 

「?」

 

「前提督を呼んだ時に言うはずだったんですけど…、忘れちゃってて…。」

 

「…なんだ?」

 

ドミナントが真面目な顔をし、雲行きが怪しくなる。

 

「倉庫に巨大兵器を…。」

 

「…はぁ…。」

 

ドミナントはひどく落胆したため息を出す。その時、執務室がピリつく空気になる。夕張が一番起きてほしくなかった空気だ。

 

「…夕張、言ったよな。“許可なく兵器を作るな”と…。」

 

「…はい…。」

 

「今回は流石に許すことは出来ない。」

 

ドミナントは厳しく言う。飴と鞭だ。すると…。

 

「ちょっと待って!」

 

セントエルモが会話に口を挟む。

 

「…?」

 

「なんだ?セントエルモ。」

 

「うっ…。」

 

ドミナントがその雰囲気のままセントエルモに睨み、聞く。

 

「これは…、ドミナント提督を喜ばせるために…。」

 

「俺のためなのはわかる。だが、約束を破ったのは事実だ。」

 

「でも!」

 

「わからんのか?俺は怒っているんだ。」

 

「でも提督!夕張ちゃんはあの倉庫でずっと頑張って設計図を描いても却下されて…、挙句の果てに怒られたら、いくらなんでも可哀想です…。」

 

「俺だってこんなこと言いたくない。だが、だからと言って約束を破って良いとは言えない。」

 

「でも…。」

 

「……。」

 

尚も食い下がるセントエルモ。すると…。

 

「…わかりました…。」

 

「?何がわかったんだ?」

 

いきなりセントエルモが言う。

 

「…これを作ろうと唆したのは私です。私が唆さなかったらきっと作っていません。罰するならば私を。」

 

「そんな…。違います!唆されたのならば、私も作る意思があったということです!」

 

「……。」

 

ドミナントは目を閉じて、1分も経たずに目を開ける。

 

「駄目だ。夕張にはしっかりと罰を受けてもらう。規則や約束とはそういうものだ。示しもつかない。」

 

ドミナントは立ち上がる。

 

「だが、セントエルモと夕張を見て、お仕置きを軽くしてやろうとは思う。主任行きはやめて、俺自らがお仕置きする。」

 

そして、机から滑り止め手袋を出してはめる。

 

「…夕張、歯を食いしばれ。」

 

「イヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

夕張の頬を思いっきりつねる。

 

「……。」

 

セントエルモは何も言えない状況になった。もっときついと思っていたからだ。

 

「イヒャヒャ…。こ、こえあけえすか(これだけですか)?」

 

「ああ。…神様はつねって艦娘には叩くなんて理不尽なことはしない。それが俺だ。」

 

しばらくして、ドミナントは手を離す。夕張の頬が赤い。

 

「まぁ、次破ったらもっときついぞ。」

 

「ひゃ、ひゃい…。」

 

夕張は頬をさすりながら言う。そこに…。

 

ブー、ブー、ブー…。

 

ドミナントの携帯が鳴る。

 

「…もしもし。」

 

『私だ。緊急の用件だ!』

 

ジナイーダが電話越しに言う。

 

バァァン!

 

「提督!大変です!」

 

吹雪が執務室に入る。

 

『「侵入者です(だ)!」』

 

…………

 

『私が今追跡している。すぐに来い。』

 

ジナイーダは一言言った後電話を切る。

 

「侵入者か…。いくぞ!」

 

「はい!」

 

「ひゃい!」

 

…………

倉庫

 

「はぁ…はぁ…。いつ来てもしつこいであります…。」

 

黒いマントをかぶった者は独り言を呟く。探している人は皆外だ。

 

「…今回失敗したら、また………に重荷を背負わせることになってしまうであります…。」

 

コソコソと歩く。

 

……これが失敗してしまったら、この軍から出て行かされる…。軍の人から、外の世界の人は全員鬼だと聞いたであります…。外の世界だと自分たちは人権がない故、無意味に痛めつけられ、殺されるであります…。…自分たちの代わりはいくらでもいるようだから、今回失敗したら…。………の夢のためにも自分が力にならないと…。

 

そう思いながら漁る。

 

…………

数日前 陸軍特殊部隊

 

「おはようございます!」

 

「ああ。」

 

「クスクス…。」

 

「……。」

 

「ふんっ。」

 

「へっへっへ…。」

 

同じ部隊の面々に挨拶したが、返されない。

 

「いつも聞いても答えてくれないでありますが…、外の世界はどうなっているんでありますか?」

 

聞く。しかし…。

 

「知らん。」

 

「……。」

 

「お前に返す義務がない。」

 

「へっ。」

 

答えてもくれない。

 

「クスクス…。そうねぇ…、外の世界の人はみんな鬼よ。ここより酷いわ。ここから出て行ったら、人権のないあなたなんてすぐにゴミ同然よ。嬲られた後に殺されるわ。」

 

「そ、そうなのでありますか…?」

 

「ええ。…あ、そうそう。陸田中将から伝言よ。次も同じところへ行って目的を達成してきなさいって。」

 

「え…。でも…。」

 

「え?嫌なの?それじゃぁ仕方ないわね。陸田中将から、断った場合や、失敗した場合はこの軍から出て行かせろって言われてるの。」

 

「え…。」

 

「あなたの代わりなんていくらでもいるし。まぁ、あなたがこの軍から出て行ったら必然的にあなたと同じ艦娘のあの子も出て行かせると思うけど?」

 

「そんな…。」

 

「それが嫌なら、この命令を大人しく聞くことね。クスクス…。」

 

「や、やるであります!」

 

「そ。それじゃぁ期待してるわよ。クスクス。」

 

そう言って出て行く。もちろん、期待などしていない。

 

「足引っ張るなよ。」

 

「……。」

 

「邪魔だ。」

 

「へっへ…。」

 

他の面々も出て行く中、ただ立っていた。

 

………

夜 陸軍寮地下最下部

 

ここは元々独房部屋だったが、改装されている。といっても、古い家具があるだけだが…。

 

「……。」

 

ロウソクの灯火で本を読んでいると…。

 

ギィ…。

 

「入れ。」

 

「うっ…。」

 

鉄の扉が開き、無造作に艦娘が入れられる。

 

「!大丈夫でありますか!?」

 

「うん…。えへへ…、少し訓練で失敗しちゃって…。」

 

「……。」

 

ボロボロどころではない。全身かすり傷や打撲などの痣がある。すかさず…。

 

ガンガンッ!

 

ガチャ

 

「なんだ?」

 

鉄の扉についている四角い穴から兵が面倒そうに見る。

 

「入渠を…、早く入渠をさせて欲しいであります!」

 

「駄目だ。艦娘なんぞにまわす資材はない。現在陸軍は資材不足だ。」

 

「で、でも、上では兵器の開発などを…。」

 

「大人しく寝ていろ。消灯時間だ。」

 

兵はそう言った後、閉めた。

 

「そんな…。」

 

「いいの…。大丈夫だから…。」

 

「どこが大丈夫でありますか!?」

 

「えへへ…。ごめんね。迷惑かけちゃって…。」

 

「迷惑って…。それで死んだらどうするんでありますか…?」

 

「……。」

 

「夢があるって言っていたはずであります…。大和殿に会いたいと言っていたであります…。」

 

「覚えておいてくれたんだ…。」

 

「当たり前であります!」

 

「ありがとう…。」

 

「そのためにも生きなければならないであります!」

 

「そうだよね…。」

 

話していると…。

 

ドンドンッ!

 

『うるさいぞ!静かにしろ!』

 

兵に怒鳴られる。

 

「……。もう寝よっか…?」

 

「…そうでありますな。」

 

「おやすみ…。」

 

「おやすみであります…。」

 

…………

現在

 

「失敗するわけにはいかないのであります…。」

 

漁っていると…。

 

ガララララ!

 

「ここか!」

 

「!?」

 

ジナイーダに見つかる。

 

「……。」

 

慌てて、そこらへんにあった紙を適当にポケットに入れ、走って逃げる。

 

「待てっ!」

 

「はぁ…はぁ…。」

 

だが、ジナイーダの方が速い。十分距離があるとはいえ、もたもたすると追いつかれてしまう。すると、奥にでかい兵器を見つける。

 

……あれであります!

 

そして、侵入者はその兵器に繋いであったリモコンを持ち、ボタンを押した。その後、リモコンを放り出して逃げていった。

 

ゴゴゴゴゴ…。ピピピピピ…。

 

「なんだ?あれは?」

 

…………

 

「もうすぐ連絡のあった倉庫だ。抜かるなよ。」

 

「はいっ!」

 

「わかった。」

 

すると…。

 

「ドミナントか!?今すぐ逃げろ!」

 

ジナイーダが走ってくる。

 

「何がだ?」

 

ドミナントが言った途端に…。

 

ブヴゥゥゥゥン!ブヴゥゥゥゥン!

 

ガシャァァァン!!

 

巨大兵器が倉庫を破壊して海に出た。

 

「あれは…スティグロ!?」




はい。終わりました81話!少し陸軍の内事情を書きました。次回か、次回の次回に少しだけ出ます。…まぁ、それが終わったら当分でてこないと思いますが。
登場人物紹介コーナー
兵…艦娘兵器派。海軍がでかい顔をしているのが気にくわない。
スティグロ…アームズフォート。艦首に超大型レーザーブレードがあり、遠距離相手にはミサイルランチャーを飛ばす。めっちゃ速い。
次回!第82話「今この瞬間は、速さこそが全てだ」お楽しみに!


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82話 今この瞬間から、速さこそが全てだ

はい。“またこれか…。”と思う人もいるかもしれませんが、この小説は俺得なので、あしからず…。
「何が“俺得”よ。説明文とかが足りないとすぐに修正するくせに。」
な、何を言っているのか全くワカラナイナー。
「言葉!」
さて、スタッフがよくわからないことを言っているので、そろそろゲストを紹介したいと思います。
「何が“スタッフ”よ!あんたが呼んだんでしょう!?」
…いいから、あと18回で終わるし。それに、今回出番あるから。
「……。わかったわ。難波少将、どうぞ。」
「…何だここは?」
「ゴミよ。こんな汚いところへわざわざお越しいただきありがとうございます。」
…ゴミ…。
「ゴミ…か…。まぁ、確かにゴミだな。」
…ひでぇ…。それよりあらすじをどうぞ。
「貴様、我輩に命令する気か?」
い、いえ、お願いします。難波少将殿。
「いや、許さ…グハッ!?」
!?なぜここに来れた…?
「早く言ってくれ。鎮守府での仕事が溜まっている。」
「な、長門…。何故殴る…?」
「はぁ…、仕事を大半押しつけられる、私の身にもなってみろ。」
「むぅ…。すまん。」
…どうやって来れた…?

あらすじだ。
我輩が鎮守府で艦娘に演習させていたところ、侵入者が来た。我輩たちは捕らえることはできなかったが、手がかりは掴めた。大男だと思ったが、それは…。

これ以上はネタに関わるため禁止です。


…………

 

「そ、そんな…。」

 

スティグロが倉庫を破壊し、海に出る。

 

ゴォォォォ…。

 

そのまま海の上を走り、すごい速さで直進する。

 

「ドミナント、あれは何だ!?」

 

ジナイーダがドミナントに聞く。

 

「俺より、夕張がよく知っている。」

 

ドミナントはショックを受けている夕張を見る。

 

「夕張!どういうことだ!?」

 

「それは…。」

 

夕張の言葉が詰まる。ドミナントの危惧していたことが起きてしまったのだ。

 

「あれのせいで侵入者を取り逃した。責任は取れるのだろうな…。」

 

「…はい…。」

 

ジナイーダに睨まれ、元気なく答える。そこに…。

 

「まぁ待て。夕張の罰は俺が下した。もう責めないでやってくれ。」

 

ドミナントが止める。

 

「だが…。」

 

「それより、今はあれを止めるのが先決だ。侵入者の件は後回し。急いで倉庫に向かうぞ。」

 

ドミナントが言った後、急いで倉庫に向かう。

 

…………

元倉庫

 

「ボロボロだな…。」

 

破壊されて、ガラクタや、鉄板の山になった倉庫に立つ。

 

「……。」

 

夕張が自分の居場所でもある倉庫が破壊されて悲しそうな顔をする。

 

「この中から手がかりを探す。」

 

ドミナントが指示したところに…。

 

「ドミナント提督、発見しました。」

 

「おぉ…。早いな。」

 

セントエルモがリモコンを見つける。

 

「…液晶部にヒビが入って見えない。夕張、直せるか?」

 

「やってみます。」

 

そして…。

 

「できました。」

 

「どれどれ…。!?」

 

ドミナントは何が書かれているのかわかり、驚く。

 

「暴走して、フィリピン海へ向かっている…。」

 

「…?それがどうかしたんですか?」

 

「わからないのか…?あそこはパラオ泊地の管轄だ…。ここは五島だから、なんとかフィリピン海まで時間はあるが…。」

 

「!?」

 

セントエルモも遅れて驚く。

 

「もし、あんなデカブツが来たら、パラオ泊地も黙っていない。艦娘が出撃されるだろう…。そうなれば間違いなく国を巻き込む大問題になるし、大きな被害が出る。」

 

ドミナントが大真面目に言う。

 

「取り消しボタンはあるのk…。!?」

 

言いかけた途端に、リモコンから煙が吹き出し、壊れる。

 

「……。夕張、これはマジでやばいぞ。裁判にかけられるかもしれない…。そうなったらいくら俺でも助けられない…。おそらく、終身刑は確定だ…。」

 

大真面目に、ドミナントが冷や汗を垂らす。

 

「夕張、一応聞くが、あれは艦娘でも壊せるのか?」

 

「は、はい。私たちが壊せなかったら暴走した時手がつけられないので…。」

 

「なるほど…。」

 

……だが、緊急には変わりない…。

 

「…ジナイーダ。セラフに言ってくれ。今この瞬間から、速さこそが全てだ。火力重視の高速艦を集めろと。そしておそらく、高速艦のスピードでもあれに追いつくのは無理だ。セントエルモと夕張はあれのスピードに対応できるような、不自由のないブースターを作れ。一刻も争う緊急事態だ。俺は一応パラオ泊地に連絡する。」

 

「セラフに言えば良いのだな。わかった。」

 

「夕張ちゃん!ショック受けている場合じゃないよ!早く作らなくちゃ!」

 

「…ハッ!?そ、そうだね!早くしないと!」

 

そして、各々が動く。

 

…………

執務室

 

ツー、ツー、ツー…。

 

「まずいな…、出ない…。」

 

ドミナントが何度試しても電話に出る気配がない。そこに…。

 

『ドミナントさん、編成できました!早く元倉庫に行ってください!』

 

放送が入り、執務室を飛び出す。

 

…………

 

「提督おっそーい!」

 

「提督ー!emergency(緊急事態)と聞きましたデース!」

 

「司令!準備できています!」

 

「榛名、頑張ります!」

 

「私の分析によると…。」

 

「遅いわ!」

 

島風と、金剛型4姉妹、瑞鶴がいた。そこに…。

 

「提督!完成しました!」

 

「こっちもだよー!」

 

夕張たちがブースターを完成させる。

 

「では、行くぞ!」

 

…………

 

ゴォォォォォ…。

 

「少しスピードが速いですね…。」

 

「こんなに速くなれるなんて!」

 

「早く行って、destroy(破壊)するネー!」

 

「お姉様、置いてかないでー!」

 

「これくらいがちょうど良いわね。」

 

「提督、後どれくらいで着きますか?」

 

各々が言う中、霧島が聞いてくる。

 

「わからん…。夕張があれの速度が時速500km(本物の半分)の速度だって言っていたからな。」

 

ドミナントは計算が面倒なので、とりあえず答えた。しばらくして…。

 

ゴォォォォォ…。

 

「提督さん!発見したわ!」

 

瑞鶴が声を上げる。その途端…。

 

パシュッ…!ゴォォオオオ!

 

ミサイルランチャーの雨が降る。

 

「避けて!」

 

誰かが叫ぶ。

 

ザバァァン!!ザバァァァァン!!

 

間一髪回避する。

 

「あぶねー…。金剛、比叡、榛名、霧島!ここから届くか?」

 

「あと少し近ければ当たります!」

 

「瑞鶴、飛ばせるか?」

 

「なんとか…。やってみるわ。」

 

瑞鶴が艦載機を飛ばす。しかし…。

 

パシュッ…!ゴォオオオオ!!

 

ドガァァン!ドガァ!ドガァン!!

 

ミサイルランチャーによって落とされる。それどころか、残ったミサイルランチャーがドミナントたちを襲う。

 

ザバァァン!ザバァ!…ドガァン!!

 

「キャァッ!」

 

「榛名!大丈夫か!?」

 

「なんとか…。でも、中破しました…。」

 

何とか大破せず、中破で踏みとどまったのは主任の演習の努力の賜物だろう。

 

「よくも妹を…。fire!!」

 

ドオオオン!

 

…ドガァン!!

 

金剛の一撃がスティグロに当たる。

 

「私の妹たちに手を出したらどうなるか思い知ったデスカ!」

 

金剛は自信満々に言うが、当たったせいで問題が発生した。

 

ゴゴゴゴゴ…。ピピピピピピ……。

 

「…ん?あれまずくない?」

 

ドミナントが異変に気づく。

 

「やば…。全員ブースターの出力を上げて横にそれろ!」

 

「?そんなの使わなくたって、私は…。!?」

 

島風は最初は余裕だったが、すぐにブースターを使う。そう、スティグロが進路を変えて、ドミナントたちに超大型ブレードを構えながら突っ込んで来たのだ。あれに当たれば、いくら艦娘でも真っ二つもあり得る。

 

ゴゴゴゴゴゴ…。

 

「…どうやら、パラオ泊地の問題は無くなったが…。標的が俺たちになったな…。」

 

「まずいわね。」

 

「島風、速さに自信があるなら、あれのブレードが当たらない範囲の近くにいてくれ!そうすれば、ミサイルランチャーが来ない。」

 

「そ、そんなー!」

 

島風は今のを見て、すっかり恐怖してしまっている。

 

「まぁ、今のを見てたらそうなるよな…。瑞鶴、飛ばせるか?」

 

「飛ばせるけど…、またミサイル?にやられるわ。」

 

「それが狙いだ。艦載機を俺たちのいない方向へ飛ばせ。…とは言っても、あれを中心に俺たちよりも遠くに飛ばさないように、海面スレスレで。そうすれば、ターゲットが艦載機に変わって残りのミサイルも海にドボンだ。その間に金剛型と島風が攻撃する。つまり、囮りだ。」

 

ドミナントは作戦を伝える。

 

「わかった。やってみるわ。」

 

「提督、understanding(了解)デース!」

 

「いっくよー!」

 

「司令!私は負けません!」

 

「榛名、必ず当てて見せます!」

 

「私の計算によると…、この角度です。」

 

瑞鶴は飛ばし、他の艦娘も構える。

 

パシュッ…!ゴォォォォォ…。

 

ドガァン!ドガァ!ドガァァン!ザバァァ!…。

 

ドミナントの狙い通りにことが運ぶ。そして…。

 

「burning…love!」

 

「主砲!斉射!撃ちます!」

 

「主砲!砲撃開始!」

 

「主砲!敵を追尾して!撃て!」

 

「島風、砲雷撃戦入ります。」

 

ドガア!ドガアア!!ドゴォォォォン!!……。

 

ドガァン!ドゴォォォン!ボガァァン!!……。

 

スティグロに全弾命中。あたりが黒い煙で染まり、海上に火がでる。

 

「やった!」

 

「いくらあれでもこの攻撃じゃ壊れるわね!」

 

「やっぱり、あなたって遅いのね!」

 

艦娘が歓喜の声を上げる。

 

「…終わったか。任務完了。全艦帰投する。」

 

ドミナントは安心し、艦娘を引き連れて帰還しようとした。しかし…。

 

ゴゴゴゴゴ…!!

 

煙からスティグロがドミナントたちを目掛けて突っ込んできた。スティグロはまだ完全に破壊されていなかった。艦娘に例えるなら中破だ。

 

「「「!?」」」

 

気づき、間一髪逃れられるが…。

 

「えっ?」

 

中破した影響なのか、榛名だけが反応に遅れる。

 

……まずい!あの状態でブレード食らったら間違いなく沈む!…やるか。

 

ドミナントは考えるよりも先に身体が動いていた。

 

「どけ!榛名!」

 

「提督!」

 

突き飛ばす。…いや、思いっきり吹っ飛ばす。

 

ブヴゥゥゥン!!

 

ガシャァァァ!!!

 

ドミナントの右腕部が吹っ飛び、コアの5分の4が切れ、左腕部が損傷し、頭部がなくなる。

 

ザバァァ…。

 

ドミナントは海上に倒れ、動かない。

 

「提…督…?」

 

ドミナントに榛名が呼びかけるが、ぴくりともしない。

 

「提督…?」

 

「提督さん…。」

 

「?」

 

「……。」

 

「司令?」

 

目の前で起きた現実が信じられない面々。

 

ゴゴゴゴゴ…。




……。
登場人物紹介コーナー
ブースター…小型ブースター。右腕、左腕、右足、左足に一つずつ、背中に二つ装備する。時速600km。
島風…ジャックによってドロップされた艦娘。ジャック派でもなければドミナント派でもない。はっきり言うとどうでも良い感じ。でも、よくジャックの部屋に来る。はっやーい。
次回!第83話「スティグロ破壊」お楽しみに!


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83話 スティグロ破壊

はい。やってきました83話。1話から見直すと下手すぎてすごく恥ずかしいですね。途中でリタイアしました。
…からかう相手がいないとつまんないな…。では、今回のゲストを紹介します。
「ヤッホー!」
佐藤中佐、ようこそお越しいただきました。
「堅苦しいねー。」
では、あらすじをどうぞ。
「わかった!」

あらすじだよー。
前回、ジナから連絡あったけど、侵入者はどうなったのかな〜?それに、倉庫が破壊されてデカブツが出たって聞いたけど、なんなんだろう…?


…………

 

「提…督…?」

 

スティグロに破壊され、海上に横たわるドミナントを艦娘全員が見る。その場が凍り、時が止まったように感じる。

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

だが、スティグロはそんな中でも攻撃してくる。

 

「提督ー!!」

 

「司令っ!」

 

「庇ったせいで…。榛名はどうすれば…。」

 

「司令…そんな…。」

 

「提督…。」

 

金剛型4姉妹と島風が思いっきり動揺している中、スティグロは…。

 

パシュッ…。ゴォォオオオ!

 

ミサイルランチャーを射出する。

 

「危ないっ!」

 

「「「ハッ!?」」」

 

瑞鶴が叫び、全員が我に帰る。

 

ドガァ!ドゴォォン!ザバァ!…。

 

「キャァッ!?」

 

「くっ…。」

 

「おぅっ!?」

 

瑞鶴が叫んだおかげで、被害が少なく済んだ。

 

「忘れないで!私たちはまだ戦っているのよ!それに、あれはいつもと同じ敵、深海棲艦じゃない!油断しないで!」

 

そして、スティグロを見る。

 

……そう…、これが教官さんたちが普段戦っているもの…。…なんて恐ろしいの…。教官さんたちはどれだけ過酷な環境にいたの…?

 

瑞鶴が皆に言った後、自分と愉快な仲間たちの距離を感じ、心の中で思う。

 

…………

スティグロを発見する数分前

 

「…突然だが、皆に話がある。」

 

海上を走っている中、ドミナントが言い出す。

 

「どうかしたんデスカ?」

 

「うむ…。今回の敵は深海棲艦じゃない。十分に気をつけて破壊して欲しい。」

 

「それくらい当たり前じゃない。」

 

「いや、そういう意味じゃない。…俺の推測だと、あれは主任やジナイーダ、セラフやジャックが戦ったりする巨大兵器だ。…十分に弱体化されているが、少し強いくらいと考えていたら痛い目に合うぞ。教官たちを相手にすると思え。尚、自分の身を第一に考えろ。さもなくば死だ。俺は庇わない。だから、お前たちも俺が死のうが、自分を一番に考えてくれ。これは命令だ。」

 

ドミナントが重々しく言い、皆が納得する。

 

…………

 

「馬鹿…。自分を第一に考えるんじゃなかったの…?」

 

瑞鶴は思い出し、ポツリと言う。

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

だが、スティグロは相手がどうなろうがお構いなしだ。

 

「瑞鶴さん!来ます!」

 

「…わかってるわ!」

 

そして、再度ドミナントの作戦をしようと艦載機を飛ばすが…。

 

パシュッパシュッ…!ゴォォオオオオ!!

 

「増えた!?」

 

ミサイルランチャーの射出量が増え、半分が艦載機に。半分が瑞鶴たちを襲う。

 

ドガァ…。ザバァァン!ザバァ!…。

 

「…何とか被害はなかったわね…。」

 

間一髪避けた。

 

……でも、あの作戦はもう通用しない…。次の手を考えなきゃ…。

 

頭を使う。

 

……近ければあの光で切れる…。遠ければミサイルが来る…。どうすれば…。!。

 

瑞鶴は突如閃く。

 

「みんな!聞いて!」

 

「「「?」」」

 

…………

 

「わかった?」

 

「なるほど…、確かにそれなら破壊出来るかもしれません。」

 

「でも、だいぶdangerous(危険な)作戦ネー。」

 

「でも、これぐらいしか案がないわ…。」

 

瑞鶴の作戦に皆が動く。

 

…………

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

「こっちだよー!」

 

島風が大声を出す。

 

ピピピピピピ…。ビー。

 

スティグロが島風を目標に突っ込んでくる。

 

「もう修正したから追いつかれないよー!」

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

だが、速力を最大にした島風に追いつかない。

 

パシュッ…!ゴオオオオ!

 

スティグロは超大型ブレードを構え、島風を追いながら、ミサイルランチャーを射出する。

 

……今!

 

瑞鶴が爆撃機を飛ばし、ミサイルランチャーを全て落とす。

 

「狙われてなきゃこんなもんよ!」

 

瑞鶴が勝ち誇る笑みを浮かべる。そして…。

 

ドガァ!ドガァァァン!ボガァ!

 

スティグロを攻撃する。

 

ピピピピピピ…。

 

スティグロが瑞鶴を探すが、煙で見えない。そこに…。

 

「お、お姉様、本当に大丈夫ですか?」

 

「私を信じるデース。」

 

「わ、わかりました。」

 

比叡と金剛が話す。

 

「大丈夫です。」

 

「私たちが抑えていますから。」

 

比叡の後ろに霧島と榛名もいる。

 

「じゃぁ、timing合わせるネー!」

 

「3!」

 

「2!」

 

「1!」

 

ドッガアアアアアアアン!!!

 

比叡と金剛の発射した弾がぶつかり、爆風が起こる。

 

「お…ね…え…様!」

 

「ぁぁぁぁぁ…。」

 

金剛が空高く吹っ飛ぶ。比叡は霧島と榛名に抑えられていたため吹っ飛ばない。

 

「ぁぁぁああっとう!」

 

トンッ。

 

「無事にlanding(着地)出来たデース。」

 

金剛が着地したのはスティグロの真上だった…。

 

「…それじゃぁ、提督の恨み、晴らさせてもらうネー…。」

 

金剛が悪い笑顔で砲身を構える。

 

「これでfinish!」

 

ドガアアアアアン!!

 

スティグロに至近弾で直撃。

 

ボガァ!ドガァ!ドガァ!

 

スティグロに内部爆発が起こる。

 

「金剛さん!離れて!」

 

「お姉様!」

 

「今行くデース!」

 

金剛は飛び降りて、華麗に着地。…いや、着海か?

 

「これで本当に終わりよ。」

 

しかし…。

 

ゴゴ…ゴ…。ピー…ピピ…。

 

スティグロは内部爆発したまま活動を続けようとする。

 

「!?そんな…私の分析では明らかにもう動けないはず…。」

 

霧島が言った途端…。

 

ブヴゥゥゥン!ブヴゥゥゥン!!

 

「!?」

 

スティグロが最後の最後にブレードの光波を出した。

 

「…無理ね。」

 

凄まじい速度でくる光波を避けられないと悟り、全員が覚悟をする。しかし…。

 

「おっそーい!」

 

島風が凄まじい速度やってきて、全員を蹴り飛ばし、島風合わせて範囲外に飛び出す。

 

ボガア!ドガア!ドガアアアアン!!…ブクブクブク…。

 

スティグロが完全に機能停止になり、沈んでいく。

 

「「「……。」」」

 

全員が、沈んでいくスティグロを見て…。

 

「ん〜…!やったぁ!!」

 

「やりました!」

 

「お姉様!勝ちました!」

 

「だって私たちが速いんだもん!」

 

「やったデース!」

 

「私の分析通りの結果です!」

 

喜ぶ面々。

 

「あはは…は…。……。」

 

だが、すぐに悲しそうな顔をする。

 

「提督…仇は取れたデース…。」

 

「司令…。」

 

「提督…榛名のために…。」

 

「司令…。安らかに…。」

 

「提督、私が一番速いんだよ…。だから、あの世でも忘れないで…。」

 

「提督さん…。」

 

全員がしんみりした空気になるが…。

 

「…?」

 

金剛が沈んでいくスティグロを見て、疑問を抱く。

 

「…提督って死んでも浮かぶんデスカ…?」

 

「…あっ。」

 

そこに、希望の光が見える。




はい。早いですが切りました。ここから先は少し展開が違うので。
登場人物紹介コーナー
スティグロ…破壊された。
次回!第84話「浅はかな、誰が死んだというのです?」お楽しみに!


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84話 浅はかな…、誰が死んだというのです?

いつか現実で言ってみたいセリフ。瑞鶴は今回もいないのか…。からかう相手がいないと暇だな。
「早く要件を言ってくれ。私は忙しい。」
おっ。出たな山田中将。別名バブ提督。
「なっ…。貴様、それをどこで…。」
フハハ。筆者の前では隠し事など出来ん。
「くっ…。」
さぁ、あらすじを言ってもらおうか。
「何故だ…。」
早く言わないと、佐藤中佐に言うよ?佐藤中佐、たくさんの人と知り合いだから、一度噂になったらどうなることやら…。
「くそっ…。」

あらすじ
ぜ、前回私の鎮守府では何もなかった。普通の1日を過ごしただけだ!

中将、隠し事はよくないなぁ〜。正直に言ってくれないと…。
「ほ、本当だ!普通の一日だ!」
えぇ〜。じゃぁ、普通の1日とは鹿島と二人でホテ…。
「き、君は筆者だろ!私は何もしなかったんだ!あそこで…あんなことは…。」
何をした?まぁいい。何もしなかったのか〜…。じゃぁ普通なのか。鹿島と二人であんなことを…。
「わー!!わー!!わー!!」
やっぱり、からかう相手がいると楽しーなー。
「ちくしょう!」
お前は筆者のからかう相手の一人となるのだ…。
「いやだぁぁぁ…!」


…………

 

……浅はかな…、誰が死んだというのです?…うむ。どうしよう…。

 

ドミナントは海上に倒れたままだ。

 

……頭部がないせいで、話せないし、目の前が真っ暗だし、コアが半分以上切れているせいで立てない…。腕を動かそうにも、右腕部がないし、左腕部も損傷していて動かせない…。それに、残りAP10%って頭の中でずっと警告してくるし…。それに、眠いけど寝たら死ぬよな?

 

どうしようかと考えている。

 

……。まさか、気づかずに置いて行くなんてことはないよな?せめて残骸くらいは持って帰れよ?腕だけとかは勘弁してもらいたいな…。

 

ドミナントが考えていると…。

 

「あっ、見つけたデース!」

 

遠くで金剛の声がする。

 

……遅かったじゃないか…。その声は、金剛か?目の前が真っ暗だからわからん。

 

「でも、生きているのかしら?」

 

……生きてるよ!入渠すれば復活するよ!

 

瑞鶴が疑わしく言う。

 

「生きていたとしたら、何故そんな状態でも生きていられるのかわかりませんね…。」

 

……うん。それについては俺も不思議。

 

霧島が新たな疑問を見つける。

 

「司令!生きているなら話してください!」

 

……頭部ないから無理かなぁ〜…。

 

比叡が呼びかける。

 

「提督…、榛名を庇ってくれたお礼にお別れのキスを…。」

 

……だから頭部ないって!それに、勝手に殺すのやめて!

 

榛名が暴走しかける。

 

「提督ぅ、早く帰ろーよー。」

 

……島風、それが出来たら苦労しないよ!

 

ドミナントは一人一人に丁寧に返す。そこに…。

 

「……。」

 

金剛がずっとドミナントを見ている。そして…。

 

「提督は生きていマース。」

 

……いきなりどうした!?そしてなんでわかった!?

 

「…?なんでわかるのよ…。」

 

……そうだな。なんでだろう…?

 

瑞鶴が呆れたように言う。

 

「う〜ん…。intuition(勘)デース。」

 

……あぁ?なんだって?すまねぇ、英語はさっぱりなんだ。

 

「はぁ?」

 

……同感だ。はぁ?

 

そして、瑞鶴は改めてドミナントを見る。

 

「……。う〜ん…。わからないわ。」

 

……そりゃね。

 

「まぁ、とにかく、一応入渠させてみましょう。」

 

……おぉ。これで復活出来る。

 

霧島が言い、みんながドミナントを運ぶ。

 

…………

 

「よいしょ…。ふぅ、これで倉庫は直りました。」

 

「ありがとうございます!セラフさん!」

 

「いえ、ここはあなたの居場所ですからね…。居場所は大事です。…フフ。」

 

セラフは、直ったばかりの倉庫に顔をすりすりしている夕張を見て、嬉しそうな笑顔になる。

 

「ありがとう!セラフさん!」

 

「別に平気ですよ。それより、今回はドミナントさんが優しく罰してくれましたが、本来なら主任さん行きは確定のはずです。次からはこんなことがないように、夕張さんを見張っていてください。それに、あなたも唆すのは駄目ですよ。」

 

「わかった!」

 

「なら良いです。」

 

セラフは忠告を聞き入れてくれたセントエルモに笑顔を見せる。

 

「よいしょ、よいしょ…。」

 

……金剛すげー怪力だな。

 

「司令…案外…重いです…。」

 

……比叡、悪かったな。

 

「榛名の…せいなので…しかたが…ありませんが…。」

 

……榛名も頑張っているなぁ。

 

「司令…痩せることを…推奨します…。」

 

……霧島、機体なのにどうやって痩せろと…。

 

「うーん…。」

 

……島風、お前は駆逐艦なのだからそんなには無理するな。

 

「本当に…馬鹿ね…。私たちに…こんなこと…させるなんて…!」

 

……瑞鶴もすまないな。

 

そこに、ドミナントを運ぶ艦娘が通りかかる。

 

「だ、大丈夫なんですか!?ドミナントさん!生きていますか!?」

 

……大丈夫じゃないけど生きてるよ。

 

セラフが顔を青くしながら駆け寄り、声をかける。

 

「今すぐ運びます!」

 

そして、セラフが軽く持ち上げる。

 

「わっ。」

 

「すごいネー。」

 

「今すぐ運びます!」

 

金剛たちが驚きの声を上げる中、ドミナントを抱えて、走って風呂場(入渠場)へ行く。

 

…………

 

「そして、ここに入れれば…。」

 

セラフはゆっくりとドミナントを湯に入れる。

 

「ふぅ…。これで何とかなりましたね…。」

 

「…いや、なってないよ。」

 

湯に入れた途端に完全回復するので、バケツいらずである。

 

「あっ、ドミナントさん治りましたか。あまり無理をされては困ります。」

 

「ああ。治ったけど、何とかなってないよ。新たな問題が出たよ。」

 

「?何がです?」

 

そこに…。

 

『はぁ〜、今日もまた遠征だったなぁ…。たまには実戦したいなぁ…。』

 

『天龍ちゃん、適材適所ってやつよぉ。提督も頑張っているんだからぁ。』

 

『一人前のレディになるには我慢しなくちゃダメよ!』

 

『ハラショー。』

 

『遠征でいい結果が出れば、司令官ももーっと頼ってくれるんだから。』

 

『電も頑張るのです!』

 

「……。」

 

慌てていたので、女湯の方に来てしまったのだ。そして、いつの間にか天龍幼稚園暁組が遠征から帰ってきて、疲れを癒しに風呂へ入ろうと脱衣所で服を脱いでいるのだ。

 

「……。どうしましますか…?」

 

「…ついに俺も憲兵行きか…。」

 

ドミナントが諦めかける。

 

「それに、二人だけでこの場所…。危ない考えしか浮かびません…。」

 

「…古鷹の次は天龍幼稚園暁組か?勘弁してくれよ…。」

 

ドミナントは覚悟する。そこに…。

 

「…ドミナントさん、バレれば即終わりますが、この状態を切り抜けられる案があります。」

 

「嫌な予感しかしないが…、なんだ?」

 

…………

 

ガラララ…。

 

「さてと、ひとっ風呂浴びて…。ん?」

 

「天龍ちゃ〜ん、どうしたのぉ?」

 

「え、いや、先客がいるなと思って…。」

 

「そりゃぁ鎮守府ですもの、いるわよぉ〜。」

 

天龍と龍田が話す。

 

「こ、こんにちは〜。」

 

風呂の隅でAC化したセラフが一応挨拶をする。

 

「てか、臨時教官が風呂でその姿なのは珍しいな。」

 

「えっ?そ、そうでしょうか…?」

 

「ああ。いつも“綺麗な水をしっかりと生身の体で感じたい”って言ってたしな。」

 

「そうねぇ〜。」

 

「あ、あはは…。」

 

セラフはとりあえず苦笑いする。そう、その後ろにドミナントがいるのだ。ドミナントがAC化したままだと、大きさの問題でバレるため、人の姿である。

 

ガラララ…。

 

「私たちもやっと脱ぎ終わったわ!」

 

「少し時間がかかった。」

 

「早く入るわよ。」

 

「この状態だと寒いのです。」

 

暁型の皆さんも入ってくる。

 

「おう。けど、まず体洗えよ。」

 

「うふふ。」

 

天龍が言い、微笑む龍田。

 

「一人前のレディーとして当然よ!」

 

「ハラショー。」

 

「電の髪は私が洗ってあげる!」

 

「はわわ。雷ちゃん、いつも洗ってくれてありがとうなのです。」

 

「もっと私に頼ってくれても良いのよ。」

 

平和な鎮守府である。そして、まず天龍、龍田が体を洗い終わり…。

 

「あ"ぁ"〜…。」

 

湯に浸かりながらじじ臭い声を出す天龍。

 

「天龍ちゃ〜ん。その声だとおじさんみたいよぉ〜?」

 

「あぁ?いいじゃねぇか。隣(男湯)に提督いねぇーんだし。」

 

「別々の部屋なのに何でそんなことわかるのぉ〜?」

 

「う〜ん…。勘だ。」

 

天龍と龍田は呑気に話す。

 

……天龍、確かに俺は男湯にいないが…。もっと近くにいるぞ。

 

ゴンッ。

 

「痛っ…。」

 

セラフがACのまま、自然に動いたように見せて、コアの裏側をドミナントの頭にぶつける。

 

「ん?教官、今変な音がしなかったか?」

 

「いえ、何の音もしてないと思いますが…。」

 

……何を考えたか何てすぐにわかりますからね。変態ですよ?

 

セラフは笑顔を崩さずに思う。声に出ていたら、“変態な行為をしているお前に言われたくない…。”とドミナントは思うだろう…。

 

「そうか…?」

 

「…ふふ。」

 

天龍は首を傾げ、龍田は意味ありげに微笑む。




はい。終わりました84話。こういう状況は人生の中、滅多にない超低確率なので、良い子も悪い子も真似しないでください。
登場人物紹介コーナー
天龍幼稚園暁組…天龍、龍田、暁型4姉妹の編成。他にも、睦月型で編成される睦月組、吹雪型で編成される吹雪組などがある。ちなみに、天龍幼稚園は、天龍、龍田とそれ以外の駆逐艦が編成されて初めて天龍幼稚園になる。
天龍…天龍型一番艦、天龍だ。龍田の相棒。第4佐世保の天龍。覚えているだろうか?実はずっと前に登場している。(別の鎮守府だが。)
龍田…天龍型二番艦、龍田よぉ。天龍ちゃんの相棒。佐世保生まれ。同じくずっと前に登場している。(別の鎮守府だが。)
暁…暁型一番艦、暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね。…だが、ドミナントはよく子供扱いしている。主任に丸め込まれることもしばしば…。
雷…イカズチ。雷じゃないわ。よく電と一緒にいる。雷と電が一緒に力を合わせると、チート級の威力を出す砲を使うと噂されている…。
次回!第85話「大きすぎる…修正が必要だ」お楽しみに!


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85話 大きすぎる…修正が必要だ

はい。終わりました85話。タイトルがあれですけど。
「何が大きいって…?」
おー…怖い。何がって、へへ。わかるか?2回目は確認だぁ、中でほら…、へへ。あれ?瑞鶴は…。
「…このぉぉぉぉ!!!」
ボヘーーーー!!!
「きったないわね!いい加減にしなさい!あんたがこんなんだから私も苦労するのよ!!」
お、おえんなはい…。
「フー、フー、…前回ゲストに失礼なことしなかったわよね!?」
し、してないです…。はい…。
「…はぁ…。落ち着いたわ。じゃぁ今回のゲストを紹介します。」
「あの…ここはどこ…?」
鹿島さんじゃないですか…。
「そこのクズは放っておいて、あらすじをどうぞ。」
「え…。あ、はい。」

あらすじです
前回、提督がいなくなったと思ったら数時間後ゲッソリして、ふらふらしながら現れました…。何があったのでしょうか…?

「…前回、山田中将だったわよね…。」
……。
「…大変なことをしても、正直に言ってくれたから私は許していたのよ…。」
え…えっと…。
「あんたなんか…あんたなんか…。もう死んじゃえばいいのよ!」
あっ、待って瑞鶴。おーい…。次回までに普通に戻ればいいけど…。


…………

 

「じゃぁ、入るわよ!」

 

「ちょっと待ちなさい!飛び込んだら一人前のレディーじゃないわ!」

 

「ハラショォォォ!!」

 

「ひび…Верный(ヴェールヌイ)はそんな大声出さない!どこでそんなの覚えたの!?」

 

「置いていかないで欲しいのです。」

 

暁たちがくる。

 

「おう。入れ入れ。気持ち良いぞ〜。」

 

「天龍ちゃんの言う通り、気持ち良いわよぉ〜。」

 

天龍たちも場所をあける。

 

「ふぅ…。」

 

「うん。これはなかなか気持ちが良い。」

 

「あったかい…。」

 

「気持ち良いのです…。」

 

それぞれが入る。

 

「だろ?疲れも吹っ飛ぶよなぁ〜。」

 

「そうねぇ〜。」

 

天龍も龍田も気持ち良さそうにいる。

 

「……。」

 

ふと気づくと、暁が天龍と龍田を見ている。

 

「…ん?どうした?」

 

「何かしらぁ?」

 

二人とも疑問に思う。

 

「…どうしたらそんなに大きくなるの?」

 

「んぁ?そりゃぁ、美味いもんいっぱい食って、よく寝りゃぁ、大きくなるんじゃねぇの?」

 

「…天龍ちゃん、多分違うわぁ。」

 

「?何が?」

 

「こーこ。」

 

「…ここか…。」

 

どこがでかいのか分かり、言葉に詰まる。

 

「ん〜…。分からん。お前らも大きくなったらでかくなるんじゃねぇの?何年先か知らねぇけど。」

 

「私たちは元からこの姿だものねぇ…。」

 

「…ふぅーん…。」

 

「…いや、本当にわかんねぇから…。」

 

暁が疑い、天龍は正直に答える。

 

「ところでさ。」

 

「「「?」」」

 

ヴェールヌイが言う。

 

「この中で誰が一番でかいの?」

 

「「「……。」」」

 

みんなが黙る。そして…。

 

「やっぱ俺だなぁ。世界水準軽く超えてるからなぁ。」

 

「あらぁ〜、天龍ちゃんには負けないわよぉ〜。うふふふ。」

 

二人の間に火花が散る。大きすぎる…、修正が必要だ。しかし…。

 

「教官もだよ。」

 

「ふぇっ!?わ、私もですか!?」

 

今の今まで完璧に気配を消していたセラフがヴェールヌイに言われて驚く。

 

「早く人になって。」

 

「そうだ、教官もどれだけでかいのか俺も気になる。」

 

「何事もフェアじゃないとねぇ〜。」

 

3人はセラフに近づく。

 

……どうしましょう…、後ろにはドミナントさんがいるので、人の姿に戻れません…。

 

セラフは思う。すると…。

 

「ま、待つのです。セラフさんが嫌がっているのです!」

 

「嫌がることをしてたら立派なレディーになれないわよ!」

 

「みんな落ち着いて。」

 

電、暁、雷が止めに入る。

 

「そうか?嫌がってんならしょうがないな。」

 

「あらぁ〜、天龍ちゃんが素直に諦めるの珍しいわねぇ〜。もしかして、怒られて戦いたくないからかしらぁ?」

 

「ち、ちげぇって。それより、龍田はどうなんだ?」

 

「私は天龍ちゃんと比べられればそれで良いわぁ〜。」

 

二人は平常に戻る。

 

……ふぅ、なんとか回避できました…。

 

セラフが思い、止めてくれた3人を見る。すると、3人が笑顔になる。

 

……いい子達ですね。こんな子たちも、私がいた世界にいたのでしょうか…?

 

セラフは、笑顔で返しながら思う。

 

…………

数分後

 

「…そろそろのぼせてきたな。上がるか。」

 

「損傷もしていないと、ただお風呂に入っている感覚だものね。」

 

天龍と暁が言う。

 

「教官は上がらないの?」

 

「私は…まだ入っています。」

 

「顔が赤いけど平気?」

 

「多分、大丈夫です。それに、もともと赤いですし…。」

 

「長湯は体に毒なのです。程々が良いのです。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

そして、出て行く面々。そこに…。

 

「教官。」

 

「はい、龍田さん。どうかしましたか?」

 

「お風呂も程々にしないとだめよぉ〜。それとぉ…。」

 

龍田が話しかける。そして…。

 

「提督も程々にね。」

 

「「!?」」

 

龍田が耳打ちし、驚くドミナントとセラフ。

 

「おーい、龍田。どうした?」

 

天龍が出入り口で言う。

 

「なんでもないわぁ〜。…それじゃぁ教官。」

 

「え、ええ。さようなら…。」

 

最後に龍田が微笑み、天龍と共に出て行った。

 

「……最初からバレていたのでしょうか…?」

 

「…分からん。」

 

ドミナントとセラフが言う。そこに…。

 

『提督ー!』

 

『うお!?何だ金剛、ここに提督はいねぇよ。』

 

『そんなわけないネー!あの状態なのに、男湯にもいなかったデース!』

 

『覗いたのかよ…。?あの状態?』

 

『ボロボロの状態で、生きているかわからなかったデース!それに、セラフと共にいるはずデース!』

 

『んあ?教官なら中に…。!。じゃぁまさか…。』

 

『?どうかしましたカ?』

 

『…私たちがさっき入ったけど…。まさかね…。』

 

脱衣所で天龍と金剛と暁が言う。

 

「…ドミナントさん。これまでのようですよ…。」

 

「…謝って済めば良いが…。無理だろうな。」

 

「…刑務所でも毎日面会します。決して行かない日はありません。」

 

「確定事項か…。」

 

そこに…。

 

ガララララ!

 

「提督!いるのか!?」

 

「本当にいるの!?」

 

天龍たちが入ってくる。

 

「あ…。」

 

「「「……。」」」

 

沈黙の5秒後…。

 

「あ"ぁぁぁぁ!!」

 

「ど、どうかしましたカ?天龍?」

 

「提督にあの声を聞かれたぁぁ!!それどころか、胸の話までぇぇ!!」

 

「うふふふふふ。」

 

天龍は床でジタバタしている。それを見て、龍田は面白そうに笑う。

 

「司令官が私たちと一緒にお風呂に…?」

 

「暁!鼻血が出ているわよ!」

 

「ハラショー。」

 

「だ、大丈夫なのですか!?」

 

暁が噴水の鼻血を出し、雷が慌てて拭いている。ヴェールヌイがそれを見て手を叩いている。電は大量出血のことを心配する。

 

「いーじゃん、盛り上がってきたねー!」

 

「ドミナントさん、少しも盛り上がってないです…。」

 

二人が言うと…。

 

「でも、何で教官と提督が二人きりでお風呂に入っていたのかしらぁ〜?それに、何で私たちが入る前に言わなかったのかしらぁ〜?」

 

「あ…。」

 

龍田、ここにきてまさかの裏切り。

 

「…!?教官!それはどういうことだ!?」

 

「いくらセラフさんでも、抜け駆けは良くないわよ!」

 

「ち、違います。慌てていたので、女湯の方に間違えて来てしまい、そこにあなたたちが来たので、変な考えを起こさせないように隠れさせていただけです!」

 

「でも、そのクスリを背負ってても私たちに教えてくれればよかったじゃない!」

 

「俺たちが出て行ったあと、何をする気だったんだ?教官!」

 

「何もしません!しかもクスリじゃなくリスクです!」

 

ワーワー、ギャーギャー…。

 

騒いでいる中、ドミナントは服を着たまま、まだ風呂に入っていた。

 

「司令官さんはお風呂好きなのですか?」

 

「う〜ん…。どちらかといえば好きかなぁ。疲れも取れるし。」

 

「あらぁ〜、私たちが迷惑をかけているってことかしらぁ〜?」

 

「い、いや、そんなことはない…。だから、その薙刀をそこに置こうか…。」

 

「ハラショォォォォ!」

 

「ヴェールヌイ、すまないが、それはもういいぞ…。」

 

「…ハラショー…。」

 

「…残念がるなよ…。」

 

「司令官の背中洗ってあげる!」

 

「うん。ありがとう。でも、このゴタゴタの中するのはなぁ〜…。」

 

そんなことを話していると…。

 

「提督!」

 

「司令官!」

 

「ドミナントさん!」

 

「うおっ!?なんだなんだ!?」

 

ドミナントに近づく3人。

 

「「「この中で誰が一番好きなんですか!」」」

 

「何故そんな話になった!?」

 

「あらぁ〜、みんなのぼせているわねぇ〜。」

 

そこに…。

 

「提督のHeartを掴むのは私なのデース!!」

 

「部外者は乱入するな!」

 

「o、outsider(部外者)!?提督を狙っているものにoutsiderもないのネー!」

 

金剛も加わり、さらにカオスになる。

 

「あらぁ〜、提督はどこに行くのかしら?」

 

「た、龍田…。」

 

龍田が、こっそり逃げようとするドミナントを止める。

 

「司令官!逃げちゃダメよ!」

 

「おい提督!何勝手に逃げようとしてんだ!」

 

「ドミナントさん!責任とってもらいますよ!」

 

「提督!この場を収めるデース!」

 

4人がドミナントのところに行く。しかし…。

 

「悪いが、俺は逃げさせてもらうぜ!」

 

ドミナントは逃走した。

 

「…じゃぁ、今日中に提督を捕まえた人が貰うってのはどうだ?」

 

「いい考えですね。それなら私も本気を出します。」

 

「私も本気だすネー…!」

 

「私も頑張るわ!」

 

4人が燃えている。そこに…。

 

「うふふふ。鬼ごっこかしらぁ〜?」

 

「ハラショー。」

 

「私たちも参加して良いのかな?」

 

「い、電も参加するのです!」

 

『何何〜?なんの話〜?』

 

ジャックを除いて、鎮守府全員が鬼になった。主任は面白そうだから、ドミナントを探すだけだった。まぁ、結果的に言えば、ダンボールの勝利だ。




はい。終わりました。だんだん字数が増えている気がします。
登場人物紹介コーナー
女湯…男湯とは隣だが、繋がっていない。よく主任対策の罠が仕掛けられているが、ことごとく突破される。
次回!第86話「外の暗躍者」お楽しみに!


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86話 外の暗躍者

はい。今回は胸糞がわるくなる可能性があります。R-15指定描写もあります。残酷な描写もあります。この回は飛ばしても平気です。心臓の弱かったり、すっきりしている人は見ない方が得策です。マジで。
…瑞鶴はどこへ行ったんだ…?まぁ、今はあらすじをやろう。今回のゲストは誰だろう…?
「金剛型3番艦!高速戦艦、榛名です!」
榛名か。では、あらすじをどうぞ。

あらすじです!
前回、提督がお風呂に入ったままでした!お姉様が途中からいませんでした。女湯で何か大騒ぎがあったあと、提督を捕まえられませんでした…。どこにいたんでしょうか…?

「…ところで、何かあったんですか?」
あぁ…。瑞鶴が…。
「よければ、榛名に話してください。力になります。」
そうか…。ありがとう…、実は…。


…………

陸軍特殊部隊司令室

 

コンコン…。

 

「入れ。」

 

「失礼します…。」

 

女性が入る。

 

「…成功したのだろうな…?」

 

「……。収穫はこれであります…。」

 

紙を恐る恐る渡す。

 

「…これだけか?」

 

「……はい…。」

 

怒られると思い、目をギュッと閉じる。

 

「貴様…!…!。おお!!」

 

「…?」

 

しかし、怒られず、驚きの声を上げていることに不思議がる。

 

「これだ!これさえあれば…。クックック…。」

 

「ど、どうかしたのでありますか…?」

 

恐れながら聞く。

 

「よくやった!」

 

「…?」

 

いきなり褒められ、訳がわからない。

 

「な、なんて書いてあるのでありますか…?」

 

「これは設計図だ。これがあれば、奴らと取引も出来る…。それに、わしの昇進も…。クックック…。」

 

陸田中将は邪悪な笑みを浮かべる。

 

「…まぁ、とにかくよくやった。あきつ丸准尉。」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

あきつ丸は初めて褒められた。

 

「何か欲しいものはあるか?」

 

「えっ…?そ、それじゃぁ我々艦娘の入渠を自由に…。」

 

「…なんだと?」

 

「い、いえ…なんでもありません…。」

 

「そうか、いいだろう。入渠を自由にさせてやる。ありがたく思え。…だが、任務に失敗すれば、この話はなかったことにする。いいな。」

 

「…はい…。」

 

あきつ丸は返事をする。

 

……でも、これでまるゆ准尉も自由に入渠できるであります!

 

そう考えて部屋を出て行った。

 

…………

数分後

 

コンコン…。

 

「入れ。」

 

「クスクス…。こんにちは、陸田中将。」

 

「樫本少将か。なんだ?」

 

半笑いした女性が入る。

 

「本当にあの子たちに入渠を自由にする気?」

 

聞く。

 

「…クックック…。そんなわけなかろう。やつは必ず失敗する。せいぜいこき使ってあとは始末する。証拠を残さないようにな。」

 

「クスクス…。あなたも悪い人ねぇ。まぁ、嘘を教える私も悪いけど。クスクス…。」

 

押し殺した笑い声が響く。そこに…。

 

コンコン…。

 

「…入れ。」

 

「……。」

 

無表情の男性が入る。

 

「ふむ、来たか。わしの右腕、長光少将。」

 

「……。」

 

「相変わらず何も言わんな。それより、任務だ。奴らと取引する。日時を伝えてこい。」

 

「……。」

 

何も言わずに出て行った。

 

「…本当に大丈夫なの?」

 

「心配いらん。奴に敵うものなど、この世におらん。」

 

…………

???

 

「今日、君にやってもらいたいことがある。」

 

「…いきなりなんだ?」

 

「えー?僕じゃなくて?」

 

3人集まり、話をする。

 

「今日は、〇〇で柏崎組と長髪組の集まりがある。ヤクザの集団だ。」

 

「…ヤクザ?なんだそれは?」

 

「まぁ、簡単に言えばお遊びのMT?ごっこさ。そこで、その二組の中で一番強い人を捕獲してきて欲しいんだ。絶対に殺さないでくれ。それと…、他の人間は殺しても構わないけど、なるべく生きたまま持ち帰ってくれ。死体ならいらないよ。」

 

「…私は殺し専門だが?」

 

「ハハ。まぁ、できないんじゃしょうがないね。もう一人に頼むよ。」

 

「誰ができないと言った?いいだろう。すぐに戻る。」

 

…………

〇〇

 

「なんだてめーは!?」

 

「いきなり現れやがったぞ…。」

 

筋肉モリモリのマッチョが入り口に立っている。

 

「…お前たちがヤクザ?だな。二組の一番強いやつはどこだ?」

 

「あ"あ"!?いきなりてめーは何言ってんだ!サツの回し者か!?ぶっ殺すぞ!てめーなんて俺一人で十分だ!」

 

「…好戦的だな。気が合いそうだが…。これで最後だ。二組の強いやつはどこだ?」

 

「てめー!ぶっ殺s…パギャ。」

 

マッチョが軽く殴り、相手の頭が粉砕する。

 

「…やれやれ…。なんて脆い。…何人いるんだろうな?」

 

マッチョは目を閉じる。

 

……聞こえる…。この姿だと、何人いるのか。呼吸は…、足音は…。

 

閉じている間に一人が後ろに回り込み…。

 

「敵を目の前にして目を閉じるとは、戦意喪失か?ギャハハ!」

 

金属バットで頭部に一撃…。

 

「また殺されに来たか。」

 

「へっ?…ボギャ。」

 

するはずが、軽く避け、殴り、頭を粉砕する。

 

「ひぃぃ…。ボ、ボスに連絡しろ!」

 

「…85人。一人も逃がさん。」

 

マッチョは血が服につくのも気にせず殺していく。

 

「てめー!…ボギャ。」

 

「このやr…ボギィ。」

 

「ひぃぃぃ…グボガ。」

 

頭を折ったり、粉砕したり、陥没させたりで大忙しだ。そのうちに…。

 

「お、おい!仕方ねぇ!武器を使え!」

 

各々が武器を取り出す。

 

「ほぉ、武器を持っていたのか。」

 

「ここまでされちゃぁ、生きて帰すわけにはいかねぇな…。」

 

パァン!パァン!パァン!…。

 

だが、一切当たらず、かすりもしない。

 

「こ、こいt…バギャ。」

 

「ボガァ!」

 

「グボ…。」

 

「て、てめー人間じゃねぇ!…ゴヘブ。」

 

一人、また一人と殺されていく。

 

「ほぅ、人間じゃないとよく気がついたな。」

 

血だらけのマッチョが呟く。その声は、格好は、言葉はここにいる全ての者たちに恐怖を与えるには十分すぎた。

 

「まぁ、普通の人間ならこんなこと出来ないがな。」

 

ヒュッ…ボチャ…。

 

「ひぃぃぃぃ…。」

 

「…オエ…。」

 

マッチョは死体の腹を裂き、生温かい肝臓を取り出し、目の前に投げる。

 

「次はどいつだ?」

 

…………

 

「なんだ!何が起きている!」

 

「柏崎の組の刺客か!?わしの命を取りに来たのか!?」

 

二人の組長は大慌てである。そこに…。

 

「組長、落ち着いてください。俺たちは何刺客を送ってません。それに、俺が守りますから。」

 

がたいの良い、大きなやつが言う。

 

「そうですよ。たかが侵入者一匹。ここに来たら造作もありません。」

 

仮面をつけた痩せ細った者も言う。

 

「そ、そうか。サブ。お前に任せる。」

 

「ごっつぁんです。」

 

「お前との契約期間中にこんなことが起きるとはな…。頼んだぞ、現役の殺し屋。ジョー。」

 

「お任せを。」

 

一つの部屋に4人。そこに…。

 

プルルルル…。

 

電話が鳴り響く。そして、出る。

 

「なんだ?」

 

『く"、く"み"ち"ょ"う"、だ…だずげ…グボギャ。』

 

部屋に断末魔が響く。そこに…。

 

『お前たちが組長か?今から行く。部屋の隅でガタガタ震えていろ。』

 

「な…。ぶ、部下はどうした…?」

 

『殺した。内臓をぶち撒けながらな。いい断末魔だ。』

 

プッ…。ツー、ツー…。

 

顔を青くする。

 

「…部下が全員やられた…。わしの部下も…主の部下も…。」

 

「な…。」

 

柏崎は立ち上がる。

 

「聞いてないぞ!こんなことがあるなんぞ!」

 

「わしだって知らん!」

 

「俺は帰る!ここで死ぬのはごめんだ!」

 

柏崎は部屋を出ると…。

 

「そちらからお出迎えか?手土産だ。」

 

ヒュッ…ゴロン。

 

「ひっ…。」

 

さっき電話した部下の首だった。

 

「大人しく言うことを聞け。さもなくば殺す。お前が弱いことなど見ればわかる。」

 

マッチョが言うと…。

 

「おやおや、契約している限りはわたくしが守らなければ。」

 

ジョーが出てくる。柏崎は逃げた。

 

「お前は強いのか?」

 

「…殺し屋をやっているくらいはですが…。」

 

「ほう。ならば、言うことはひとつだ。俺についてこい。」

 

「…嫌だと言ったら?」

 

「気絶させて無理矢理来させる。」

 

……中々の強者ですね…。今まで沢山の人間を殺してきましたが…、これほどまでの強者は見たことがありません…。

 

ジョーは考える。しかし…。

 

ヒュッ

 

「!?」

 

ドッゴォォォン!!

 

「グボッ…。」

 

瞬時に間合いを詰められ、溝を殴られ、吹っ飛ぶ。

 

「…なるほど、これで気絶をしないとは。どうやら、強いのは本当らしいな。」

 

「……。」

 

……苦しい…、息ができない…。…強い、強すぎる…。まだまだ余力を残しているように見える…、こいつの強さの底が見えない…。だが、抵抗はさせて貰おう…。

 

ジョーは銃を構え…。

 

パァン!パァン!

 

撃つ。

 

「ふん。それだけか?」

 

「……。」

 

マッチョマンは簡単に避ける。だが…。

 

キュウィン!キン!…ドッ。

 

「!?」

 

マッチョマンはしゃがんで避ける。が、1発足に当たる。

 

「…跳ね返して当てるとは…、だが、もう覚えた。地形も、弾の種類も、速さも…。」

 

……嘘だろ…。これは戦車などを破壊するための特別な銃で、跳ね返ってもスナイパーライフルと同じ威力を出せるんだぞ…。当たってもまるで何事もなかったのように…。

 

ジョーは心の中で敗北を認める。この男は、ACの世界では知らぬものはいない。

 

「…まだ続けるか?」

 

「…いえ、わたくしの負けです…。煮るなり焼くなり好きにしてください。」

 

「話のわかるやつでよかった。…まだいるな。」

 

マッチョマンは部屋を睨む。すると…。

 

「待ってくれ、降参だ。頼むから殺さないでくれ。」

 

組長と、サブが出てくる。

 

「…なら、任務完了だな。」

 

そして、マッチョマンは帰ろうとするが…。

 

「……。」

 

「「「?」」」

 

足を止める。

 

「…お前、これは私が受けた任務だぞ…。」

 

「%〆×♪<¥」

 

暗闇の中から蠢く者がいた。そして、ゆっくりと近づいてくる。

 

「…なんて言っているかわからん…。」

 

「…あれ〜?そうだっけ?でも、殺し損ねは良くないよぉ〜。僕が殺しておいたから良かったけど。」

 

血だらけの人がいた。手に持っているのは、柏崎の頭だ。

 

「…化け物め…。」

 

「…化け者が言う?」

 

「…まぁいい。帰るから手伝え。」

 

「まぁ、手伝うように言われて来たんだけどね。」

 

そうして、暗躍していく。影の者たちは少しずつ、社会に影響を出していくのである。




はい。終わりです。いい感じの終わり方が思いつきませんでした。まぁ、明日も投稿しなくちゃいけないから、今回は飛ばして良いように本日は二回投稿しました。
登場人物紹介コーナー
あきつ丸…艦娘。理不尽な目にあっている。いつか、軍を出たいと思っているが、騙されて、外の人間がどのような人なのか勘違いして、出られない。
まるゆ…艦娘。理不尽な目にあっている。潜水艦のため、地上では能力値が低く、訓練づくしで損傷しまくっている。入渠もたまにしかさせてもらえない。それでも、いつか大和に会うことを夢見ている。
樫本少将…女軍人。いつもあきつ丸に嘘の情報を流している。(騙している。)いつもクスクス笑っている。
長光少将…ながみつ少将。無口無表情の男性軍人。確かな実力と、完璧な任務遂行力でこの地位まで上り詰めた強者。
柏崎…組長。卑劣なことをしまくり、悪事に手を染めまくった結果こうなった。腕っ節が全くと言っていいほど皆無で、ゴマすって生きてきた。
長髪…組長。この時代には珍しい、仁義を通す人。信用した人間しか側に置かない。
ジョー…一流の殺し屋。大統領暗殺、戦車を破壊、摩訶不思議な事件や迷宮入りの事件は彼の仕業など、様々な噂が飛び交っている。
サブ…仁義あり輩。組長に恩があり、恩を返すためにいる。
次回!第87話「ビッグ7とは一体…」お楽しみに!


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87話 ビッグ7とは一体…

はい。やってきました87話。瑞鶴は外の近くの階段で見つけました。(榛名の情報)。これから話すので、あらすじをちゃっちゃとやっちゃいましょう。今回のゲストは?
「マイク音量大丈夫?チェック…。1、2。よし。はじめまして、私、霧島です。」
いや、マイクなんてありませんよ?
「…これを言いませんとしっくりこなくて…。あらすじを始めます。」
お、おう。

あらすじ
前回の内容は何故だか情報が全く入っておらず、説明できません。

まぁ、飛ばしても構わないやつだからね。それより、瑞鶴…。


…………

 

「まだまだだな。」

 

「ぐぁっ…!?」

 

ドミナントがジナイーダを攻撃する。

 

「フハハハ。」

 

「くっ。何故だ…。ドミナント…。」

 

ジナイーダはドミナントを見る。

 

「分からんのか?イレギュラーなんだよ。やり過ぎたのさ。お前は。」

 

「なん…だと…。」

 

ジナイーダは必死に立ち上がろうとする。

 

「死んでもらおう…。」

 

「くっ…。これが私の最後というのか…。」

 

「その通りだ。ここから逆転など出来まい。お前も、敗れた仲間たちと同じ道を辿るが良い。さらばだ…。」

 

「ぐあぁぁぁ…。」

 

ジナイーダが吹っ飛ばされる。そこに…。

 

「…提督?…何やっているんだ…?教官まで…。」

 

本日の秘書艦の長門(2回目)が来る。

 

『ドゴオオオン!!』

 

『K.O!』

 

「また負けたー!」

 

「フハハハ。まだまだだな。もっと腕を磨くが良い。」

 

「くっ…。現実では絶対に負けないから腹が立つ…。20戦20敗…。ゲームとは難しいな…。」

 

そう、ドミナントが前に大本営に行った時に買ってきたゲームだ。

 

「長門もやるか?」

 

ドミナントが誘う。

 

「やめておけ。こいつは初心者だからって絶対に手加減しない大人気ないやつだ。」

 

「フハハハ。負け惜しみかい?」

 

「くっ…。」

 

ドミナントが煽り、ジナイーダが悔しそうにする。

 

「はぁ…。提督、仕事が溜まっているぞ…。」

 

長門がため息混じりに言う。

 

「いつか勝つ!」

 

「フハハハ。楽しみにしているよ。」

 

最後まで煽り、長門は困った顔をしながら執務室に行くのだった。

 

…………

執務室

 

「…さて、ところで…。」

 

「なんだ?」

 

中に入った途端にドミナントが長門を見て言う。

 

「2回目じゃない?」

 

「…なんのことだ?」

 

「いや、秘書艦…。」

 

「何を言っているのかわからないな。それより仕事だ。」

 

長門は否定する。

 

「…海。」

 

ピクッ

 

長門の背を向けながら止まる。

 

「…そう思ってみれば、遊べなかったな。」

 

「……。」

 

「この時期だと寒いよなぁ…。」

 

「……。」

 

「…次はどこへ行こうかなぁ〜。」

 

「…提督。」

 

「ん?な〜にっ?呼んだかな〜?」

 

「…仕事しろ。」

 

「…はい…。」

 

長門が今度は騙されないように威圧をかけ、ドミナントを働かせる。

 

…………

 

「仕事終わりー。」

 

「お疲れ。…提督の仕事とはそんなに早く終わるものなのか?」

 

「う〜ん…。どうだろう?他の提督の仕事しているところ見たことないし。」

 

ドミナントが仕事をして3時間で終わる。ホワイト企業といい勝負だ。

 

「それより暇だな〜。…どこか行く?」

 

「…何故そんなに私を連れて行きたがる?」

 

「?前遊べなかったからだが…。行きたくないのならやめておこう。」

 

「いや、行くが…。」

 

長門は恥じらいながら言う。

 

……うん。可愛い。やはり艦娘は可愛い。

 

ドミナントは心の中でほのぼのする。

 

「…提督?」

 

「…あっ。すまんすまん。どこに行きたい?」

 

「うむ…。」

 

長門は考えている。

 

……海は寒い…。山は…、提督が疲れるだろう。明日も仕事があるのだから、本日中に帰ってこれるものが良いな。…だが、ここらにはそれといった場所がない。せいぜい飲食店くらいだ…。それに、提督は車持っていないし、倉庫にアレがあるが…、アレはなぁ…。

 

長門が考えていると…。

 

ポン。

 

「?」

 

「そう深く考えるな。なんでも良いんだ。長門はセラフや大淀と一緒に陰ながら頑張っているんだ。こんな時くらい甘えろ。皆もそれくらいは許してくれるさ。」

 

ドミナントが頭を撫でながら優しく言う。

 

「そ、そうか…?」

 

「ああ。」

 

……深く考えるのもたまに傷だな。まぁ、油断しないように普段から心がけるのは良いと思うが。

 

ドミナントは思う。

 

……ふむ。まずいな。提督が撫でくれているお陰で、何も考えられん…。この手の大きさや温かさ…、温もり以外は…。

 

そして…。

 

「……。提督…。」

 

「なんだ?」

 

「少し…、甘えても良いか…?」

 

「甘えろと言ったぞ?それに、遠慮することはない。自分へのご褒美だと思って、存分に甘えろ。」

 

ドミナントは自信満々に言う。

 

「このまま撫で欲しい…。少し休みたい…。」

 

「…?それだけで良いのか?」

 

「ああ。それだけで十分だ。」

 

「そうか。」

 

ドミナントは長門の頭を優しく撫でる。

 

「……。人生でこんなことを言うとは思わなかったが…。ベッドへ行くか?」

 

「…?。……。…!。!!。い、今なんて言った!?」

 

「いや、椅子に座ったままだと休めないから、ベッドで撫でたほうが休まるだろう?」

 

「…あぁ…、そうだな。提督がそんなことを言うなんてあり得ないしな。」

 

「…何か傷ついたが…、まぁいいか。」

 

そして、ドミナントは長門を休ませた。

 

…………

夕方 執務室

 

「おはよう!提督!」

 

「ああ。おはよう。…じゃなく、夕方だがな。」

 

たくさん寝て元気いっぱいの長門が入ってくる。

 

「そろそろ紅茶の時間だ。飲むか?」

 

「ああ。」

 

ドミナントは長門にも紅茶を入れようとする。

 

「この前大本営近くで買ってきた、違う種類の茶葉だ。組み合わせるとどんな味だろうか…。」

 

そして、提督机の中から茶葉と茶菓子を取り出す。しかし…。

 

……ハッ!…長門はどんな味が好みなのだろうか…?そう思ってみれば、居酒屋でもバーでも見たことがないな。酒は飲まないタイプ…。それに、間宮さんから長門がよく餡蜜を食べると聞く。ならば、甘いもの好き?あのなりで?子供なのか?

 

ドミナントは失礼なことを考える。そして…。

 

「長門、甘いものは好きか?」

 

「ああ。」

 

「……苦いものは?」

 

「…はっきり言って嫌いだ。」

 

長門は微妙な顔をしながら言う。

 

……なるほど。子供だな。となれば無難なミルクティーか?ミルクティーに合う茶菓子はクッキーだったな。確か…、上から3番目の引き出しだっけ?

 

ドミナントは考えながら茶菓子を探す。提督机はもはや茶菓子の宝庫だ。

 

「あったあった。次はミルクティーだな。」

 

ドミナントは慣れた仕草でミルクティーを長門の分まで入れる。そこに…。

 

「提督。ミルクティーか?」

 

「ああ。」

 

「そうか。…角砂糖を2個入れてくれ。」

 

「…甘すぎるぞ?」

 

「頼む。」

 

「…わかった。」

 

ドミナントは長門の方に角砂糖を2個入れる。

 

「出来たぞ。茶菓子はクッキーだ。」

 

ドミナントは、長門と向かい合うように椅子を動かし、お茶と茶菓子を準備する。

 

「机がないのが不便だな…。まぁいい。それじゃぁ、飲むか。」

 

「あ、ああ…。」

 

……提督と二人きりで向かい合って飲むだと…。こんなこと、滅多にないのではないか…?普段の提督は仕事が終わって、茶化し遊びながら夜になり、色々したあと寝ると聞くが…。

 

長門は考える。が。

 

「どうした長門?…もしかして、嫌だったか…?すまない。すぐに移動する。」

 

ドミナントは勘違いして、椅子を戻そうとするが…。

 

「ま、待て!行くな!」

 

「?どうした?」

 

「あっ…。いや、その…。」

 

「…?」

 

「…提督と…、一緒に飲みたい…。」

 

「……。(可愛い。)」

 

「…?何か言ったか?」

 

「えっ?いや、何も…。」

 

そうして、ドミナントと長門はティータイムを楽しんだ。

 

…………

数分後

 

「…暇だ。」

 

「…だろうな。」

 

お茶と茶菓子を食べ終わり、暇そうにするドミナント。

 

……暇すぎる。…長門で遊ぶか…。

 

「長門ー。」

 

「なんだ?」

 

「これはなーんだ?」

 

「そ、それは…。」

 

ドミナントが見せたのは間宮期間限定特別アイス無料券だった。

 

「俺と勝負しないか?」

 

「いいだろう。つまり、私が勝った場合はそれを渡してくれるということだな?」

 

「そうだよー。」

 

「ふふふ…。この長門に勝負を挑むとは…。胸が熱いな。…このゲームだろう?」

 

長門はドミナントとジナイーダがやっていたゲームを指差す。しかし…。

 

「んにゃ。違うぞ?」

 

「じゃぁなんだと言うのだ?」

 

「ふっふっふ…。」

 

…………

 

「くっ…そんなの…、無理に決まっている…。」

 

「この程度では話にもならんな。」

 

「くぅぅ…。」

 

現在、ドミナントたちは寝ている文月の近くにいる。心が動かされてしまった方が負けである。

 

「これを見て、なんとも思わないのか…?」

 

「おや?ギブかい?」

 

「む…。まだ…、まだ耐えて見せる…。」

 

「そうか?ならば、畳みかけよう。これでどうだ?」

 

「うぅ…。」

 

ドミナントは、ぬいぐるみを持って寝ている睦月を見せる。

 

「ぐはぁっ。」

 

「終わりか?」

 

「まだ…まだ私は戦える…。」

 

勝負しているところに…。

 

「あらぁ、司令官、何か用かしらぁ?」

 

「お、如月じゃないか。そうだな。長門に抱きついてみろ。」

 

「なっ…。卑怯な…!」

 

「そうか?なら如月、先に俺に抱きついて見てくれ。」

 

「わかったわぁ。」

 

キュ〜〜〜!

 

「よし。次は長門だな。」

 

「や、やめ…。うおっ!?」

 

長門が後ずさる拍子に、自分の足に引っかかり、しりもちをつく。

 

「いまだ!いけ!如月!」

 

「はい!」

 

「やめ…。」

 

キュ〜〜〜!

 

「ハウッ! ハウッ…! ハウッ…。 ……。」

 

「エコーやめい。…ギブだな。」

 

ドミナントが如月を抱きしめている長門を見て呟く。

 

…………

 

「俺の勝ちだな。」

 

「卑怯な…。」

 

長門は悔しそうだ。

 

「というわけで、このアイスを食べまーす。」

 

「くぅぅ…。」

 

「…冗談だ。長門も食べるか?」

 

「!ああ!」

 

半分に分けてあげる。

 

「…美味いっ!」

 

「フッフッフッ…。」

 

こうして、何気ない1日が過ぎていくのだ。




はい。終わりました87話。長門はかわいいもの好きです。たまにへっぽこなところもありますが、しっかりしています。甘いものや、可愛いものが本当に大好きです。鳥を捕まえるために、籠と棒を用意したあれに、餌はアイスなどを置くとよく捕まえられます。主任はたまにそうやって遊びます。
登場人物紹介コーナー
ゲーム…格闘系ゲーム。ドミナントの出身世界でもあり、経験の勝利だった。
クッキー…ドミナント厳選のクッキー。そのメーカーのお菓子などは全て買って食べ比べなどをして、よりその紅茶に合うものを集めている。
間宮期間限定特別アイス…間宮の裏メニュー。超大盛りのアイス。期間限定葡萄味。長門や、駆逐艦たちはそれを買うために、少しずつ小遣いを貯めている。
次回!第88話「悪霊」お楽しみに!


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88話 悪霊

はい。やってきました88話。今回は、いろいろあります。いや、本当に…。さて、瑞鶴もなんとか許してもらえましたし…。
「…あんなことされたら許さないわけいかないじゃない…。」
すまんな。
「…本当にそう思っているなら二度としないで…。」
ごめん…。じゃぁ、今回のゲストを紹介してくれる?
「…わかったわ。」
「駆逐艦、島風です。速きこと島風の如し、です。」
ゼマカシーか。頼むよ。
「ついて来れる?」

あらすじ
アイス、ビッグ7、ミルクティー!


…………

朝 執務室

 

コンコン…。

 

「失礼しま〜す。」

 

「ん?川内がこの時間に来るなんて珍しいな。」

 

川内が入ってくる。

 

「いや〜。これ、昨日の夜ポストに入っていたんだけど。」

 

「ん?…佐藤中佐からか。」

 

ドミナントは封筒を手に取る。

 

「それより聞いてよ。提督。」

 

「?どうしたんだ?」

 

「昨日の夜さぁ〜。」

 

…………

夜の外

 

「…怖いなぁ〜…。またへんなのでてこないよね…?」

 

川内が今度は中ではなく、セラフに許可を取って外にいる。すっかり、あの時のことがトラウマ化されている。

 

「ま、まあ!今度出てきたら友達になればいいんだ!案外面白い子かも!うん!そう思ってきたら楽しくなってきちゃった!」

 

ガラララララ!!

 

「ひっ!」

 

「川内か?」

 

「あっ、提督か〜。驚かさないでよ。」

 

窓を開けてドミナントが顔を出す。

 

「今は真夜中の2時だぞ。静かにしてくれ…。また苦情が殺到する…。」

 

ドミナントは今まで寝ていたのか、眠そうだ。

 

「ごめんごめん。」

 

「頼むよ…。それじゃぁおやすみ…。」

 

そして、ドミナントは窓を閉め、寝る。

 

「…もうちょっと静かにしなきゃねぇ。」

 

川内は歩く。すると…。

 

「…ん?なんだろう。あれ。」

 

ポストに白いものが入っていることに気がつく。

 

キィ

 

「なんだろう?これ?提督宛だ。…佐藤中佐?誰だろう…?」

 

川内は封筒の中ではなく、表面を見る。

 

「…まぁ、明日渡せば良いよね。」

 

そして、川内は再び歩き始めるが…。

 

ヒュゥゥゥ…ザワザワ…。……。

 

風が吹き、木や草の葉が揺れる。そして、何にも音がしなくなり、不気味に思う。

 

「今…、確か2時だっけ…?」

 

表情が固まったままだ。

 

「確か、丑三つ時って、2時から2時半までだよね…。

 

トラウマが蘇りそうだ。

 

「……。!何か聞こえる!」

 

あたりを見回すが何もない。

 

「今…2時から2時半だよね…?」

 

『そうですよ…。』

 

「やっぱり聞こえる…。ひぃぃ…。」

 

腰が抜け、震えて、丸くなる。しかし…。

 

『どうかしましたか…?川内さん…?』

 

「……?待って、その声って…セラフ?」

 

「はい、そうですけど…。」

 

「なんだセラフか〜。驚かさないでよ。」

 

「うふふふ。いやぁ、こっちこそ驚きましたよ。さっき海上に見えたので、川内さんが脱走したのかと。」

 

セラフがトンチンカンなことを言う。

 

「…?私、海上に何て行ってないよ?」

 

「えっ?でもさっき確かに艦娘が…。」

 

「ちょ、ちょっと変なこと言わないで…。」

 

「赤かったので川内さんかと思いましたが…。」

 

「…赤い?」

 

「はい。全身血が出ているみたいに赤かったですよ。」

 

「それって、血なんじゃ…。」

 

「さぁ、わかりません。それより、海に出ませんか?正体を確かめましょう?」

 

「えっ?嫌だよ。そんなの確かめたくもないし…。」

 

「大丈夫です。私がついていますから。」

 

「いや、私は行かないって…。」

 

「行きましょうよ。」

 

セラフに手を取られる。そこで、川内は違和感を感じた。

 

「…冷たい…。」

 

「はい?」

 

「手が…手がものすごく冷たい…。冷蔵庫の中みたい…。よく見たら顔色も変だし…。ちょ、ちょっと手を離して…。」

 

「どうしたのですか?」

 

「ちょ、嫌なの。なんか…、なんかセラフと一緒に行きたくない…。」

 

「大丈夫ですよ。私が守りますし。」

 

「離して…!」

 

「…れ。」

 

「?」

 

「黙れ。」

 

「!?」

 

セラフが豹変した。

 

「黙れ。折角友達になろうと思ったのに…。」

 

「…やっぱり…、あなた何者…?」

 

「あなたを迎えにきたの。友達になりたいんでしょう?私と一緒に海に…。」

 

「嫌…嫌!」

 

ドオオオン!!

 

いきなり、川内の目の前が爆発する。

 

「!?」

 

川内は撃たれた方向を見る。

 

「大丈夫ですか!?川内さん!」

 

「本物の…セラフ…?」

 

川内はセラフに駆け寄る。

 

「はい。時間なので呼び戻しに来たら、私に化けた何者かがあなたを連れ去ろうとしているではありませんか。奴は何者ですか?」

 

「……。」

 

「川内さ…。」

 

「温かい…。本物だ…。」

 

川内は震えながらセラフの肌を触っている。

 

「…怖かったですね。もう大丈夫ですよ。」

 

セラフが慰めていると…。

 

『くそぅ…。次こそは必ずぅ…。』

 

声が聞こえる。しかし…。

 

「いえ、次なんてありませんよ。」

 

セラフがどこからともなく掃除機を出す。

 

ブオオオオオ!

 

『!?』

 

スポンッ。

 

思いっきり気持ちの良い音がする。

 

『出せぇ…。呪ってやるぅ…。』

 

「出すわけありません。これから、主任さんに渡します。」

 

『誰だぁ…?』

 

「この鎮守府全員に恐れられる拷問官です。私がきつく言っておきますので、あなたの思想そのものがボッキリ折られるでしょう。悪霊さん。」

 

セラフは笑顔で言う。

 

「うわぁ…。えげつない…。」

 

被害者である川内が哀れむ。

 

『ちょ、ちょっと待てぇ…。お前が哀れに思うほどのことなのかぁ…?』

 

「…うん…。1年間引きこもってて立ち直れれば奇跡だね…。」

 

『……。すみませんでした。もう二度としないし、驚かさないので、どうかご勘弁を…。』

 

悪霊は謝る。しかし…。

 

「い〜え〜。私に化けたのですから、このお仕置きはきついですよ〜。」

 

『そんな…。頼む助けてくれ!後生の頼みだ!見逃してくれぇ!!』

 

「諦めてください。」

 

セラフは歩いて主任のところまで、悪霊の叫び声を聞きながら行った。

 

…………

 

「…なんてことがあったんだよ〜…。」

 

「…マジかよ。」

 

川内とドミナントは微妙な顔をする。

 

「…で、その悪霊は今どうなっているんだ?」

 

「さあね〜。多分今も拷問受けているんじゃない?」

 

「…あいつら…、最強すぎるだろ…。ちょっと覗いてくる…。」

 

ドミナントは主任の部屋に行った。

 

…………

主任の部屋

 

『ギャァァァァ…。』

 

『ギャハハハハ!いーじゃん、盛り上がってきたねぇ〜!』

 

「……。マジで何やっているんだ?叫び声が外まで聞こえてくる…。」

 

ドミナントは思い…。

 

コンコン。

 

「主任、入るぞ…。」

 

『ぎゃぁぁぁぁぁぁ!』

 

「次はこれを試してみようかな?ギャハハ。」

 

『もう無理だ…、やめてくれ!もう…、もう無理…。』

 

「黙れよ。俺はみたいんだ…。お前の本当の力を…。」

 

『ギャァァァァァァァ!!』

 

「この程度では話にもならんな。悪霊がいかに凄いか…、試させてもらうぞ。」

 

『あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!』

 

「ま、やるんなら本気でやろうかぁ!?その方が楽しいだろ!ハハハハハ!!」

 

『ぐああああああ!!』

 

「馬鹿な…、再生が早すぎる。ならば仕方ない…。本気を出そう…。」

 

『アーッ!』

 

「ジャック、仲間外れは良くないなぁ〜。俺も入れてくれないと…。」

 

『も、もう無理だぁ…。…アーッッッ!!!』

 

主任とジャックと悪霊が騒いでいる。

 

「……。」

 

キィ…バタン。

 

そっ閉じ。

 

「…可哀想だな…。主任とジャックが???で悪霊に???するなんて…。」

 

規制がかかっているので書けません。

 

「…拷問官の名にふさわしい行いだ…。いや、それ以上か…?…あんな拷問されたら誰だって心が折れるな…。」

 

ドミナントは執務室に戻りながら呟く。

 

…………

執務室

 

「やぁ、お帰り。」

 

川内が提督椅子に座りながら、机を漁って茶菓子を食べていた。

 

「まだいたのか。…てか、茶菓子食うな!何勝手に机漁ってんだ!」

 

「これ美味しい〜。これどこで買ってきたの?」

 

「ん?この街にある専門店だ。今度行くか?」

 

「行く!」

 

「まぁ、少しお高いけどね。そのときは奢ってあげるよ。みんなで分け合って食べな。」

 

「やったー!」

 

川内はお菓子の食べかすを口にくっつけながら嬉しそうにする。

 

……何故か可愛いと思わない…。…あいつを思い出すからか?

 

ドミナントが思うと…。

 

「ドーミナーントー!」

 

「来たな。」

 

ヒョイ。

 

ドミナントは普通に避ける。

 

「何で避けるのー!」

 

「面倒が嫌いなんだ。」

 

神様が問い詰めるが、しれっとする。

 

「あー!お菓子食べてる!ずるい!私も!」

 

「あっ、おい!その引き出しはダメ…。」

 

神様が上から4番目の大きな引き出しを開ける。




はい。長くなりそうなので、切りました。悪霊は主任に???を???で???されたので、もう二度と現れないでしょう…。おいたわしや…。
登場人物紹介コーナー
悪霊…化たり、驚かしたり、連れ去ったりする。今までの怪奇現象は全て彼の仕業だったのだろうか…?山風が言うには、違うらしい。しかし、主任にやられて、心がボッキリ折れた。
次回!第89話「封筒」お楽しみに!


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89話 封筒

はい。やってきました89話。あと11話かぁ〜。長かったなぁ〜。
「そうね。今まで色々あったわね…。」
11話でカイホウ…サレル…。
「怖いわね。」
まぁ、長話もアレなんで、そろそろゲスト紹介しますか。
「わかったわ。今回は…。…ナニコレ?」
ゴゴゴゴ…ピピピピピ…。
おー。スティグロだ。でけーな〜。
「いや、なんでこの部屋に入れるの…?」
見かけよりも広いんだよ。…多分。…さて、じゃぁあらすじをどうぞ

ゴゴゴゴ…
ピピピピピピピ…。ゴゴゴゴゴゴゴ…。

それ天丼。前AMIDAがやった。


…………

 

「その引き出しはダメ…。」

 

神様は上から4番目の大きな引き出しを開ける。

 

スーー…。

 

「…ナニコレ…?」

 

「……。」

 

神様が開け、川内も顔が固まる。

 

「……。提督…。」

 

「ドミナント…ナニコレ…?」

 

ドミナントの机の中にあったものはエ○本だった。そして、当然問い詰める。

 

「…知らん。」

 

「シラナイワケナイヨネ?セツメイシテ?ネ?」

 

「提督…。これはちょっと…。」

 

神様が問い詰め、川内は微妙な顔をする。

 

「…コンナコタチガイイノ?ワタシジャフマンナノ?」

 

「提督ー…。あのさぁ…、駆逐艦の子たちが悲しむよ?一生懸命好かれようとしているんだから…。」

 

川内が呆れ、神様はゆっくりと近づく。

 

「俺も男だ。持っていても良いだろう?」

 

「…デモコレ…、ワタシジャジョウケンニアテハマラナイヨネ…?」

 

その本は、全員大人のお姉さんだった。神様は人間で言う女子高生のため、かすりもしない。駆逐艦の子たちなら尚更である。そこに…。

 

「なんだ?トラブルか?」

 

ジナイーダが入ってくる。

 

「あー…、教官、提督がこんな本持っていてさ。こういう状況なんだよ…。」

 

「どれどれ…?…ふむ。」

 

それをみて、ジナイーダは神様に問い詰められているドミナントに近づく。

 

「…ドミナント、これはお前のものなのか?」

 

「…ああ。」

 

「…そうか。…別に良いんじゃないか?」

 

「「「えっ?」」」

 

ジナイーダが肯定したことに驚く。

 

「ドミナントも男だ。こんな本の二冊や三冊持っていたって不思議ではない。むしろ、持っていない方が問題だ。それに、職場がこんなに女性で溢れていたら尚更のことだ。」

 

ジナイーダは淡々と述べていく。

 

「デ、デモ…。」

 

「これがあったからって、お前とドミナントの距離が離れたわけではないだろう?虐められたこともないだろう?…紙を見る限り、前からあったと思うが?」

 

ジナイーダは神様に聞く。

 

「……。ソウだけど…。」

 

「ならいいじゃないか。」

 

ジナイーダはなだめる。

 

「それと…、このことは内密だ。駆逐艦にバレたら士気がガタ落ちする。川内、ドミナント、神様、私だけの秘密だ。鎮守府の艦娘の大半を占めるのが駆逐艦だ。もし漏れたら、何が起こっても不思議ではない。くれぐれも内密にしろ。」

 

ジナイーダがこの場の収拾をつけた。…と思ったが…。

 

「ところでドミナント。その…何というか…、処理はしているのか…?」

 

「…は?」

 

ドミナントは思わず素で返した。

 

「この職場だ。溜まっているんじゃないか?狼にならないようにちゃんと処理しろよ。」

 

「…あのさぁ、ジナイーダ…。この場で言う?」

 

ドミナントは微妙な顔で言う。そこに…。

 

ヒュッ…。

 

「グエッ!な、何するんだ神様!」

 

「川内!今すぐその本を燃やして!」

 

神様がドミナントにアタックし、床に抑える。

 

「え〜…、なんで私が…。」

 

「早く!」

 

「は、はい!わかりました!」

 

神様の威圧に瞬時に負け、急いでその本を全て持っていく。

 

「な…、おい!待て!神様!なんのつもりだ!」

 

ドミナントは神様に聞く。

 

「こんなものがあるから…いつまで経っても私たちの関係が進展しないの…。」

 

「ねえ、何言ってるの?」

 

「だから!こんな本を見つけたら全て燃やす!」

 

「ねえ!本当に何言ってるの!?本の神様に怒られるよ!?」

 

「あっ…。そうだね…、あの神様少し怖いし…。」

 

……いるのかよ…。

 

「でも!私たちの愛のためには引き裂かなくてはならない!そのためなら私はどんなことだってする!まずは本屋を燃しに…。」

 

「落ち着け。」

 

ドミナントが途中から暴走した神様を止める。

 

…………

 

「ごめんなさい…。」

 

「落ち着いたか。」

 

ドミナントのチョップにより、正気に戻る神様。

 

「フフフ。なかなか面白かったぞ。」

 

「いや、見てたなら止めろよ…。」

 

ジナイーダがニヤニヤして、ドミナントがげんなりする。そして…。

 

「ん?なんだこの封筒は?…佐藤中佐…?…シレアか!」

 

「ああ。佐藤中佐(シレア)からだ。見てみるか。」

 

ドミナントが封筒を開ける。

 

「…また封筒?」

 

中にはまた封筒があった。そしてそれを開ける。

 

「…大きな紙だなぁ。」

 

大きな紙を取り出す。

 

「ん?文字がある。」

 

…………

 

今から遊びに行くよ!

 

…………

 

「……。」

 

ドミナントはそれを見て、固まる。

 

「…?どうした?ドミナント。」

 

ジナイーダもそれを見る。

 

「…フフフ。あいつらしいな。でも、これは少しやり過ぎだな。」

 

ジナイーダが目を細めながら言う。そこに…。

 

ビーーーー。

 

チャイムが鳴る。噂をすればなんとやらだ。

 

「…ドミナント。お客さんだ。」

 

「…ハッ!そうだね…。出迎えるか。」

 

ドミナントとジナイーダは玄関へ行く。

 

…………

 

「や!こんにちは!」

 

「こんにちは。」

 

玄関には佐藤中佐と明石がいた。

 

「…どうぞ。有無を言わせずに来た佐藤中佐。ご無沙汰しております。」

 

ドミナントは引きつった笑顔で迎える。そして、明石と佐藤中佐がヒソヒソと話す。

 

「…提督、一応謝った方が…。」

 

「ん?いーよー。別に。そんなに気にしてないと思うし。」

 

「…やっぱり怒ってますよ。口元がピクついてますし…。」

 

「別に平気じゃない?」

 

「でも、ドミナント少佐と言えば、化け物と聞きますが…?」

 

「フフフ。化け物なわけないじゃない。いい人だよ。…何か後ろから黒いオーラ出しているけれど。」

 

「いや、絶対に怒っていますよ。」

 

しばらく話したあと…。

 

「ドミナント少佐。提督がマイペースですみません。」

 

明石が声をかける。が。

 

「……。」

 

「…?ドミナント少…。」

 

「Zzz…。」

 

ドミナントは寄りかかりながらうとうとしていた。

 

「…提督の言う通り、気にしてなさそうですね…。」

 

「ねっ?」

 

明石と佐藤中佐が言った。その瞬間…。

 

「この野郎ぉぉぉぉぉ!!」

 

ドゴオオオオン!!

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ひっ。て、提督、何が起き…。」

 

「お客を放っておいて何うとうとしているんだ!?」

 

ジナイーダによってドミナントが吹っ飛ばされる。

 

「や!ジナ。久しぶり。」

 

「あっ。シレアか。久しいな。」

 

「この人がジナイーダさん!?」

 

明石が驚く。そして、吹っ飛ばされたドミナントを思い出し、手をかす。

 

「アタタタタ…。」

 

「ド、ドミナント少佐、大丈夫ですか…?」

 

「ん〜?久しぶりに殴られたけど、大丈夫っちゃ大丈夫かな?」

 

ドミナントは起き上がる。

 

……化け物の上に化け物がいた…。

 

明石は別のことを考えていた。

 

…………

 

「じゃぁ、自己紹介が遅れたけど、私は佐藤中佐。この子は工作艦の明石。」

 

「よろしくお願いします。」

 

明石は頭を下げる。

 

「よろしく。俺はドミナントだ。横にいるのがジナイーダ。その隣がセラフだ。…本当はあと二人いるが、忙しそうだからな。」

 

「よろしく。」

 

「よろしくお願いします。」

 

ジナイーダが言い、セラフは頭を下げる。

 

「ふぅーん。あと二人って何しているの?」

 

佐藤中佐が聞く。

 

「あの二人は…。うん。色々ね…。うん。とても色々ね…。」

 

「……。」

 

佐藤中佐は重い顔をしているドミナントを見て微妙な顔をする。

 

「…まぁ、今日は何をしにきたんだ?」

 

ドミナントが聞く。

 

「あっ。うん。今日は自給自足しているって聞いたから、どんな感じかなぁ〜って。植物によって、肥料とか変えた方が良いから、レクチャーしに来たの。あと、ジナに会うために。」

 

「そうか。それは助かる。」

 

ドミナントはありがたく思う。

 

「…あと、お願いがあるの…。」

 

「…?なんだ?」

 

ドミナントは聞く。

 

「その…。養殖場の作り方を教えて欲しいの…。こっちにも魚を食べたいって子がいて…。お願い!」

 

佐藤中佐が頭を下げる。

 

「頭を上げてください。全然平気ですよ。色々教えてくれたから、こっちこそお礼として何かをって思っていたところです。」

 

ドミナントが笑顔になる。

 

「!ありがとう!」

 

佐藤中佐も嬉しそうにする。

 

「セラフ、あの養殖場の作り方わかるか?」

 

「う〜ん…。あれはジャックさんが作りましたからね…。本人に聞かないとわからないところもありますし…。なんせ、私の知らない技術も使っていたりしますから…。」

 

セラフが難しそうに答える。

 

「わかった。ジャックに聞いてくる。」

 

ドミナントは席を立つ。




はい。長いので切りました。本日2回目の投稿ですね。次回が90話です。長かったなぁ。そろそろ終わりに向かわなければなりませんね。
登場人物紹介コーナー
エ○本…ドミナントが持っている。女性が95%以上の職場にとって必須アイテム。駆逐艦などの子のものはない。
明石…次回やります。
次回!第90話「アセンブル」お楽しみに!


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90話 アセンブル

はい。90話です。そろそろ終わりですね〜。てか、この小説読み続けている人いるのかな?
「さぁ?あんたなんかの小説なんて読みたくないんじゃない?」
辛辣だなぁ。
「別に?」
あと10回しかないのに。いや、瑞鶴がここに出れるのはあと6回前後だな。
「えっ!?ちょ、聞いてない…。」
じゃぁ、今回のゲストを紹介します。
「天龍だ。ふふふ。怖いか?」
ん〜…。どちらかといえば可愛いな。
「なっ…!?」
それよりも、あらすじ。

あらすじだ
前回、執務室が騒がしかったが、何かあったのだろうか…?まぁいい。そのあと、いきなり玄関のチャイムが鳴った。俺は担当じゃないから無視したけどよぉ…。騒がしかったから行ったほうが良かったかもな。


…………

 

「と、いうわけで来ました。」

 

「ふむ。そうか。」

 

ドミナントとジャックが話す。

 

「実は…カクカクシカジカ。」

 

「…なるほど。それは礼をしなければならんな。」

 

「でしょ?だから、養殖場の設計図とかある?」

 

ドミナントが説明して、頼む。

 

「ふむ…。すまないが、設計図はない。お前に頼まれて作ったものだからな。もう燃やした。」

 

「…嘘だろ…。」

 

用心深いジャックが設計図を燃やしたと言い、ドミナントがガックシする。

 

「…だが、今あるやつを確認すれば、どこがどうなっているかはわかるはずだ。」

 

「!ありがとう!ジャック!」

 

「構わん。居候している訳でもあるから、当然だ。」

 

ドミナントはその場を去る。

 

…………

応接室

 

「ただいま戻りました。…ってあれ?」

 

ドミナントが戻ったが、誰もいない。

 

「…置き手紙?」

 

ドミナントは机の上にあった紙を見る。

 

…………

 

養殖場へ行く。

 

…………

 

「……なんで養殖場?」

 

ドミナントは思い、養殖場へ行く。

 

…………

養殖場

 

「ただいま戻りましたー。」

 

「遅いぞ。」

 

ドミナントが来るなり、ジナイーダに言われる。

 

「ところで、佐藤中佐、お話が…。」

 

「どうしたの?」

 

「実は設計図がなく、調べなくてはならなくなってしまいました…。すみません…。無責任に了承してしまい…。」

 

ドミナントは謝る。

 

「?そんなこと?別にいいよ。」

 

佐藤中佐は気にしていない。

 

「それなら、明石に頼めばいいよ〜。」

 

「提督、聞こえてますよ。」

 

明石が後ろにいた。

 

「聞いてたならば、ちょっと調べてくれる?許可は取ってあるし。」

 

「わかりました。少し疲れますが…。」

 

明石はため息を吐きながら調べに行く。

 

「じゃぁ、セラフも…。」

 

「ううん。手をかさなくても平気。」

 

「えっ?でもそれだと時間がかかるんじゃ…。」

 

「大丈夫大丈夫。」

 

佐藤中佐が言うと…。

 

「……なるほど、これは…。新しいですね…惹かれます…。」

 

淡々と調べていく。セラフと同じかそれ以上の早さだ。

 

「…?」

 

「私が鍛えさせたの。私、こう見えてたくさんACの整備してきたし。」

 

「えっ!?どゆこと!?」

 

佐藤中佐の突然のカミングアウトに驚くドミナント。

 

「…シレアは人を雇うお金がなかったからな…。整備士がいなく、私もよく手伝っていたな…。」

 

ジナイーダがしみじみ言う。

 

「つまり…、ACの整備士?」

 

「う〜ん…。まぁ、そんな感じかな?」

 

シレアがのほほんと言う。

 

……ACの世界に整備士っているんだ。…いや、よくよく考えてみたらいるよな。あんなに大きいから…。つまり、プレイヤーはタダ働きさせているのか?それとも、ミッション報酬は、整備士の給料が引かれた額なのか。いや、プレイヤー自身がパイロットでもあり、整備士でもあるのか…?…謎だ。

 

ドミナントは一人考えていると…。

 

「終わりました。」

 

明石が疲れた感じで言う。

 

「終わった?お疲れ様。」

 

「疲れました。後で何か奢って下さい。」

 

「ん〜…。あっ!じゃぁあそこの自販機のオレンジジュースで。」

 

「オレンジジュースって…。他にないんですか?」

 

「…明石、昔の私はお金がなくてオレンジジュースだって買えなかったんだよ?何も食べていない日も続いてたりしたの。命かけてもあまり良い収入が得られなくて、修理費も引かれちゃって、家賃も必要でお金がなかったの。水以外が飲めるなんて幸せなんだよ?」

 

佐藤中佐が重く言う。明石は考えてしまい、暗い顔をしている。セラフは笑顔のまま固まっている。ジナイーダは申し訳ない顔をしている。

 

……闇が深すぎるだろ…。なんなんだ?AC世界の住人は…。

 

ドミナントは微妙な顔をして思う。

 

「まぁ、オレンジジュースってのは冗談だけどね。欲しいものを言ってご覧?」

 

佐藤中佐は半笑いして言う。しかし、この空気である。

 

「…オレンジジュースが欲しいです…。」

 

「…えっ?」

 

「オレンジジュースが飲みたいです…。」

 

「あー…、明石?冗談だよ?何言ってるの?」

 

「…佐藤中佐、それは流石に無理がある。」

 

ドミナントが言い、この話はまた今度にすることになった。

 

…………

 

「で、佐藤中佐、何?その荷物。」

 

ドミナントたちは鎮守府の中にいる。セラフはいつのまにかいない。

 

「ん〜?あぁ、これね。今日泊まるから着替えとか色々。」

 

「うん。泊まるなんて聞いていないね。…まぁいいけど。心配なのは部屋だ。」

 

ドミナントは空き部屋をチェックする。が、どこも満室だ。

 

「う〜ん…。ないな…。」

 

ドミナントが調べる。

 

「ふぅーん。じゃぁ、ジナの部屋にしようかな?」

 

「なっ…、私の部屋だと!?」

 

「そうだよ?別にいいじゃん。相部屋でも。」

 

「……。」

 

「あれ〜?ジナのその顔は何かあるね?その顔は…。」

 

佐藤中佐が特に変わっていないジナイーダの顔をまじまじと見る。

 

「…ふぅ〜ん。」

 

「な、何がだ…?」

 

「親友である私の前では全てお見通しだよ。」

 

佐藤中佐がセラフですら読めないジナイーダの心を読む。

 

「まぁ、知られたくないようだし、言わないけどね。」

 

佐藤中佐は楽しそうに目を細める。

 

「じゃぁ明石はどうするんだ?」

 

「う〜ん…。明石の好きなところで良いよ。」

 

「好きなところって…。…倉庫か?」

 

「う〜ん…。倉庫は好きですが、寝泊りするほどでは…。」

 

明石が難しい顔をする。

 

……夕張は倉庫で寝泊りするほど倉庫好きだがな。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「…どこがいいんだ?」

 

ドミナントは聞く。

 

「う〜ん…。…あっ、大淀…。」

 

「ほう。大淀が良いのか。」

 

明石が少し反応したことを見逃さなかった。

 

「わかった。大淀に言っておく。(とは言っても、ジャックがドロップさせたから必然的にジャックにも言う手間もあるがな。)」

 

「ありがとうございます。」

 

こうして、部屋割が決まった。

 

…………

倉庫

 

「広いですね〜。」

 

「ここが倉庫か〜。別名工廠かな?」

 

「まぁ、そんな感じだ。」

 

ドミナントが言う。ジナイーダはあのあと急いで部屋に戻って行った。

 

「あっ、いらっしゃい提督。…その方たちは?」

 

「私は、第2舞鶴鎮守府提督佐藤中佐だよ。本当の名前はシレアだけど、佐藤中佐でいいよ。」

 

「工作艦、明石です。修理ならお任せください。」

 

「兵装実験軽巡、夕張です。」

 

3人は挨拶をする。

 

「この倉庫、いろいろありますね。」

 

「はい。大半が私が作ったものです。残りはセラフさんやジャックさんなどです。」

 

夕張は言う。そこで佐藤中佐が…。

 

「あっ!ドミナント少佐に言ってなかったことがある!」

 

「?どうかしましたか?」

 

そして、佐藤中佐は明石に聞こえないようにコソコソ話す。

 

「そうそう。実は、よく整備していたからAC用パーツや武器の作り方わかるの。そして、明石の技術力があれば作ることが可能だよ。」

 

「…えっ!?」

 

「まぁ、大量の資材を消費しちゃうけどね…。それに、作り方知っていたって、ACのない世界には意味ないし。ドミナント少佐はACなんだから、取り外し可能なんじゃないかな?って。」

 

佐藤中佐は述べていく。

 

「…つまり、AC用パーツを作れるから、俺がお客になって買ってくれというわけか。」

 

「まぁ、悪く言えばそういうこと。作るのに必要な資材の約1割をこちらがもらえればいいし。それに、その武器だけじゃ壊れるし、パーツだって、その時その時によって変えた方がよりよくなると思うし。」

 

「…ふむ。だが、これで俺は満足しているとしたら?」

 

「別にそのときはその時よ。この話は無かったことになるだけ。別になくっても構わないと思うし。」

 

佐藤中佐が言う。

 

「なるほどな。ならば、ひとつ作ってもらいたいものがある。」

 

「?どんな感じのやつ?」




はい。終わりました90話。アセンブルできる日も近いですね。
登場人物紹介コーナー
明石…アイテム屋さん。ピンク色の髪の毛が特徴。戦闘向けではなく、整備向けの艦娘である。佐藤中佐の秘書艦。
オレンジジュース…オレンジ100%。新鮮なオレンジを絞りました。果肉20%。 ジャック製品
次回!第91話「お泊まり会」お楽しみに!


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91話 お泊まり会

はい。やってきました91話。残り9話。
「あっさりしているわね。」
そりゃそうだ。申し訳ないけど。
「…あと5回くらいか〜…。」
そうだね〜。ま、せいせいするんじゃない?いちいち呼び出されなくて済むんだし。
「……。…そうね…。」
それじゃぁ、気を取り直して今回のゲストを紹介しよう!
「…どうぞ…。」
「暁よ!一人前のレディーとして扱ってよね!」
おー。扱うよ〜。あらすじちゃんと言えたら飴あげる。

あらすじよ!
前回、私たちは晩ご飯の支度をしていたわ!…誰か来ているみたいだから、少し多めに作ったわ。こういう気遣いが出来るのは立派なレディーの証拠よね!


…………

 

「へぇ〜。でも、資材量半端ないけど、大丈夫なの?」

 

「…確か、報告書にはそれが払えるだけはあるはずだ。…ずっと前に俺が死にかけたから、倉庫にあった資材が随分と消しとんだ。…当分遠征尽くしになるがな…。」

 

「…それって艦娘が怒るんじゃ…。」

 

「…確かに…、頑張った子にご褒美や、間宮名物などを奢ってあげれば何とかなるかな?」

 

「…さあ?私は艦娘じゃないからわからないけど…。」

 

「…まぁ、そうだな…。」

 

ドミナントたちが話す。そして…。

 

「夕張ー。」

 

夕張の方を向く。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「遠征尽くしで、行った艦娘には俺がご褒美や、間宮さんのところで奢れば釣り合いが取れると思う?」

 

「…何か嫌な予感がしますが…。…まぁ、何とかなるんじゃないでしょうか?(私個人の意見ですけど。)」

 

「なるほど。ありがとう夕張。」

 

ドミナントは佐藤中佐に向き直る。

 

「と、いうわけでやっちゃって。」

 

「……。…まぁ、いいならいいけど…。」

 

取引成立

 

…………

食堂

 

艦娘が本日の役割を全うし、席についている。

 

「あー、皆にお知らせがある。」

 

ドミナントが言い、艦娘全員が向く。

 

「この方は、第2舞鶴鎮守府提督、佐藤中佐だ。その隣が付き添いの艦娘、明石だ。本日はこの鎮守府で泊まることとなった。皆、失礼のないように。」

 

ドミナントが言う。

 

「…というのは建前で、本日は皆、親睦を深めてくれ。佐藤中佐はフレンドリーだ。明石もしっかりしている。気軽に接してくれる方が、本人たちにとっても嬉しいだろう。別に無理して深める必要はない。好きなように接し、好きなように話せ!それが俺たちのやり方だ!」

 

ドミナントは今度は笑顔で言う。艦娘たちは手を叩いたり、笑っていたり、騒いでいる。佐藤中佐も嬉しそうにし、明石はげんなりを装っているが、口元は緩んでいた。

 

…………

1時間後

 

「佐藤中佐も酒飲めよ〜。」

 

「うひ〜、世界が回ってる〜。」

 

「頭がくらくらするのです…。」

 

「誰だー!電に酒飲ませたのは!」

 

「ギャハハハハハ!いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

「つまみはどこかしらぁ〜?」

 

「これ美味しいよ〜。大井っちも食べる〜?」

 

「美味いクマー。」

 

「やっほー!」

 

「お次はターザンと来たよ!?」

 

「うひひひ、提督に絶対お酒飲ませてやるのね…。」

 

「えーん!ドミナントはどうして私に振り向かないのー!」

 

「神様!法的にはお酒OKだけど、まだ早いよ!」

 

「ふむ…。このワインは年代物だな。」

 

「流石です、ジャックさん。赤城さん、どうですか?」

 

「どうって…、何がでしょうか…?…あっ!あれ美味しそうですね。」

 

「天龍ちゃんも、もっと食べなさぁい。美味しいわよぉ。」

 

「おい、龍田!何で俺の嫌いなものを皿に乗せるんだ!?…提督にやる。」

 

「天龍!だからって俺の皿に乗せるな!」

 

「明石です。初めて会いますね。」

 

「大淀です。こちらも初めてお会いします。」

 

「糞提督!…しっかり食べなさいよ。」

 

「クズ司令官!…体調崩して倒れられたら困るのは私たちなんだから!しっかり体調管理しなさいよ!」

 

「無能提督。」

 

「加賀!混じって言うのやめい!」

 

「じゃ、一気飲みいくよ〜。ギャハハハハハ!」

 

「主任!やめろ馬鹿野郎!急性アルコール中毒で死ぬぞ!」

 

「提督のHeartを掴むのは私デース!」

 

「いくら金剛さんが言っても、私は引きません!」

 

「なら相撲でwinnerを決めるデース!」

 

「魚の骨がのどに刺さった!?筑摩ーー!筑摩ーーー!!!」

 

「この秋刀魚、ゴーヤが取ってきたものでち!」

 

「ほう。養殖はできるのだろうか…?」

 

ガシャーーン!!

 

「わー!山城の料理の上に金剛が吹き飛ばした三日月が!」

 

「不幸だわ…。」

 

「あははははは!!このきのこ美味しー!あはははは!」

 

「笑いキノコ入れたの誰だーーー!」

 

「ドミナントー!抱いてー!」

 

「悪酔いするな!神様ぁ!!」

 

「ならば、世界のビッグ7である私が受けよう!」

 

「次は長門ですカ。骨が折れそうデース。」

 

(お菓子よこせです。)

 

「妖精!いつの間にいたんだよ!」

 

ワーワーギャーギャー…。

 

ドミナントたちが騒いでいるのを二人が見る。

 

「フフフ。面白い人たちだね。」

 

「はぁ…、もう少し礼儀というか…、行儀を良くしてもらいたいものだ。」

 

「フフフフフ。そうは言っているけど、本当はすごく楽しいんでしょ?顔見ればわかるよ。」

 

「…まぁ、私も甘くなったな。」

 

「フフ。どれくらい時間が経っても、素直じゃないのは昔からだね。」

 

シレアとジナイーダは笑い合う。そこに…。

 

ドガシャァァァン!!

 

長門に吹き飛ばされた金剛がジナイーダに直撃。

 

「あ…。」

 

シーン…。

 

食堂が静まり返る…。

 

「……。私が間違っていたようだ…。」

 

「な、何がですか…?」

 

「貴様らに行儀というものを叩き込んでやる!」

 

「…に、逃げろーー!!」

 

ワー!ワー!キャー!キャー!

 

「一人一人しっかりと叩き込むからな!捕まえた者からだ!待てーー!!」

 

逃げるドミナントたちをジナイーダが追う。シレアはずっと笑いこけていた。

 

…………

入渠場(風呂場) 女湯

 

「ぷはー。舞鶴から来て疲れた〜。」

 

「そんな遠くからわざわざ来たのか。」

 

騒動の後、ジナイーダや艦娘、みんなで入っている。

 

「そう思ってみれば、舞鶴鎮守府ではどんなことしているんですか?」

 

吹雪が聞く。

 

「う〜ん…。特に変わったことはしてないね〜。でも、私のところでは色々作ってて資材不足だから、遠征をよくやっているくらいかなぁ?」

 

「そうなんですか?深海棲艦とかはいないんですか?」

 

「そう言われてみれば最近見ないね〜。…戦場を駆けてきた私の勘なんだけど…、あいつら何か企んでいる気がするんだよね。なんて言うか…。静かすぎるんだよ。嵐の前の静けさって感じ。」

 

佐藤中佐が言う。

 

「それに、第1舞鶴のバブ…、ゴホン。山田中将も見てないって言っているし。」

 

「それじゃぁ本当に…。」

 

「ううん。私はただの勘。何の根拠もないし、そんなに鋭くないから。」

 

佐藤中佐は半笑いしながら言う。そこに、ジナイーダが真っ先に反応する。

 

「……。また来たな。」

 

「はぁ…、また主任さんですか…。たまには司令官が来てくれれば良いのに…。」

 

「?主任?がどうかしたの?」

 

佐藤中佐が言うと…。

 

バババババ。

 

ジナイーダがリボハンを天井に撃つ。すると…。

 

『ギャハハハハハ!どうしてバレたのかな〜?』

 

「ワンパターンだ。」

 

ジナイーダが簡単に話し、主任が退く。

 

「全く、毎日毎日懲りないやつだ。」

 

「ははは…。」

 

ジナイーダが呟き、佐藤中佐が苦笑いをする。

 

…………

男湯

 

「男3人か。」

 

「まぁ、そうだろうな。女性ばかりの職場ではこれが必然だろう。」

 

「主任はどこか行っちゃったし。」

 

「ああ。」

 

すると…。

 

『バババババ…。』

 

何か聞こえる。

 

「…今のは銃声だな。」

 

「また覗きに行ったのかよ…。本当に懲りないな。」

 

ドミナントは呟く。すると…。

 

ガラララ…。

 

「やあおかえり主任。」

 

「……。みんな警戒心が高すぎてあまり意味ない〜。」

 

「そりゃね。陸だし。警戒心を強くするよな。」

 

ドミナントが言う。そこに…。

 

「ギャハハハハ。帰りに見つけたんだけど〜。これ何?」

 

主任が持っているのは入浴剤だった。

 

「ま、まて主任、それをどうする気だ?」

 

「…全部入れる。」




はい。終わりました91話。まだ佐藤中佐続きそうですね。
登場人物紹介コーナー
誰もいない。
次回!第92話「もう一つの世界の話」お楽しみに!


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92話 もう一つの世界の話

はい。やってきました92話。残り8話。瑞鶴が見れるのはあと4回か…。
「そうね。」
ドライだなぁ。
「だって、もうここに来る手間がなくなるんでしょ?ならいいじゃない。」
…瑞鶴?何で向こう向いているの?怒ってるの?顔が見えないよ?
「そんなわけないじゃない。それより、今回のゲストを紹介するわ。」
「雷よ!かみなりじゃないわ!」
おー、雷か〜。
「もっと頼っても良いのよ!」
じゃ、あらすじ頼むよ〜。

あらすじ!
前回色々あったわ!電がジュースと間違えてお酒を飲んじゃったのは驚いたけど。でも、楽しかったわ!


…………

女湯

 

『わー!なんかAP減っているんだけど!?主任!本当に全部入れやがったな!熱暴走待ったなしだ!』

 

『ギャハハハハハ!いーじゃん!盛り上がってきたねー!』

 

『ふむ。風呂から出たのは良いが…、これはどうするんだ?』

 

『入れすぎは体に悪いって知らないのか!?』

 

『ドミナント、それは私がいた世界にはないものだ。おそらく主任も知らないのでは…?』

 

『隊長、許してくれる〜?』

 

『その馬鹿にしたような口調で言わなければな!』

 

ワー、ワー。

 

ドミナントたちが騒いでいるのが女湯にまで聞こえる。

 

「…あっち楽しそうだね。」

 

「…主にあいつらが風紀を乱しているからな。」

 

佐藤中佐(シレア)とジナイーダが話す。

 

「元からあんな性格なの?」

 

「…どうだろうか…?…この世界に来てから随分と変わった気がするがな。主任は、最初は敵みたいな感じだった。ジャックはセラフと戦った。私はドミナントを崖から落とした。セラフは片言だった。まぁ、そんな感じだ。」

 

「そうなんだ。…やっぱり、こっちの世界が平和だからかな?」

 

「…そうなのかもな。」

 

二人はしみじみ言う。そして…。

 

「忘れていた!セラフはどこだ!?」

 

ジナイーダが気づく。

 

「そう思ってみれば、あの髪が真紅色の人ご飯の時も見てなかったね。部屋にいるのかな?」

 

そんなことを話していると…。

 

ガララララ…。

 

「すみません。遅くなりました。」

 

セラフが入ってくる。

 

「何をしていたんだ?」

 

「少し考え事を…。」

 

「考え事…?」

 

「あの件です。」

 

「…あの件か…。」

 

「…昔は死ぬのなんて怖くなかったんです。人格がなくなるのなんて…。でも、ここに来て一ヶ月前後…。いきなり怖くなったんです…。震えが止まらないんです…。」

 

セラフは俯いていて顔は見れないが、震えているのがわかる。

 

「…データを見た結果…、私の内部構造まで遮断されていたんです…。あったのは任務記録だけ…。どれだけ探してもなかったんです…。つまり、可能性は20%以下です…。」

 

「……。」

 

「…でも、直さなければ、いつか暴走するかもしれません…。私は…、私はどうすればいいんでしょうか…?」

 

セラフが呟く。

 

「さあな。」

 

「“さあな”って…。」

 

「それは私が決めることじゃない。お前自身が決めることだ。あいつもそう言うだろう。」

 

「……。」

 

「ジャックは最善を尽くす。ドミナントは失敗した時一緒にいてやると言った。何が不満だ?」

 

「それは…。」

 

「死ぬことを恐れているのだろう。それはわかる。誰だって死にたくはない。死にたい奴などこの世にいない。だが、暴走したときドミナントを殺したらどうする?ジャックを殺したら?主任を殺したら?第4佐世保がなくなったら?…私を殺したら?…一生自責の念を背負うことになるだろうな。そのリスクを背負って、決めるんだ。」

 

「決められるわけ…、ないじゃないですか…!」

 

「だろうな。だからこそ、ドミナントは時間をくれたんだ。今、焦って決めることではない。一ヶ月でも、1年先でも待つだろう。ゆっくり決めれば良い。急いては事を仕損じると言うからな。」

 

ジナイーダはゆっくりと言う。

 

「…今考えても仕方がない。やるなら悔いのないように今を十分と楽しめ。やらないのなら暴走しないように鍛える。それだけだ。」

 

ジナイーダは言う。セラフはただ俯いていただけだった。そこに…。

 

「そう思ってみれば、教官たちや佐藤中佐はどのような世界にいたんですか?」

 

吹雪が聞く。

 

「?話してなかったか…?」

 

「はい。」

 

「そうか…。今このタイミングで言うのはおかしい気がするが…。まぁいいだろう。」

 

「はい!」

 

「…そうだな。私たちのいた世界はこんな生優しいところではなかった。強大な敵の前では、例え非戦闘員でもただ殺されていくだけ…。勝者が敗者を嘲笑い、罵倒する…。そんな世界だ。敵は深海棲艦のような『決まった』敵ではない。傭兵だったりするんだ。傭兵は金で動くやつもいれば、その企業の依頼しか受けない奴もいる。または他の企業や組織に寝返る奴もいる。馬鹿な奴は騙され、殺される傭兵もいる。…私たちはそのような世界で生きてきたんだ。」

 

ジナイーダは重い感じで言う。吹雪は真剣な顔をして聞いていた。

 

「…まぁ、今はそんな世界じゃないから、私もジナものほほんとしているけど、戦場だと一味も二味も違うから。」

 

佐藤中佐は言う。

 

「えっ!?佐藤中佐もロボットになれるんですか!?」

 

「いや、私はなれないよ。だって、向こうの世界じゃ死んでるし。」

 

佐藤中佐は風呂に浸かって目を細めながら言う。

 

「…ところで、司令官はその世界ではどんな感じだったんですか?」

 

「…あぁ、ドミナントか…。…昔、傭兵リストを見たが、あの機体構成やエンブレムは見たことがないな。」

 

「そうですか…。」

 

ジナイーダは簡単に答える。そして思ったのか、ジナイーダ自身ドミナントについて考え始めた。

 

……私の知らない傭兵…。知っているとしたら主任やセラフか?…いや、だがあの部品は私の時代だ。…ジャックなら知っているのか…?いや、ジャックの最初のあの反応は知らない感じだ。アライアンスの奥の手…?いや、でもあんな友好的な奴が奥の手はないだろう…。…もしかしたら、シレアのような名の知れない一人の傭兵なのかもな。…だが、何故だろうか…?たまにあいつが言う言葉は、私が殺した者の言葉と似ていたりする…。だとしたら、奴らと戦ったことがある?あいつもACになれるなら、死んでいないということだ。つまり、奴らに勝ったのか逃げたことになる。だとしたら、名前くらいは情報があるはずだ。なのに無い。どういうことだ…?

 

ジナイーダは考えた。そこに…。

 

「まぁ、司令官が何者であっても、私の司令官は司令官だけです!」

 

吹雪が元気よく言う。

 

「…まぁ、そうだな。」

 

ジナイーダは短く答えるが、秘密にされていることが分かると、どこか寂しく感じていた。

 

「……。で、あの子は何で私をあんな目でみているのかな…?」

 

「?」

 

佐藤中佐は、つり目をして口元までお湯に浸かって見ている神様を見る。

 

「…おそらく、ドミナントがお前に取られないかどうか心配しているんだ。」

 

「…へ?どうして?」

 

「あいつとお前が少し特別な関係に見えたのだろう。」

 

「特別?…まぁ、取引みたいなのもしていれば、物を送りあったりする仲だから、そう見えても仕方ないのかな?」

 

「まぁ、事情は知らんが、相手にするとキリがないと思うからやめておいた方が良いぞ。艦娘たちすらあいつだけには張り合わないからな。」

 

「…そうなんだ〜。ふ〜ん。つまり、相手にしちゃダメなんだ〜。ふ〜ん。…フフフ。」

 

「…その顔はあいつで遊ぼうとしている顔だな。やめておけよ。」

 

佐藤中佐は悪い顔で笑い、ジナイーダがやれやれとした感じで言う。

 

…………

廊下

 

「主任、もう入れすぎるなよ…。せっかくの風呂が台無しになった。」

 

「ギャハハハ。ごめんねっ!」

 

「…見つからないところに隠した方が良いかもな。」

 

ドミナントと主任とジャックが風呂場から出てくる。そこに…。

 

「ドミナントー!」

 

「わっ!?何だ!?」

 

神様がいきなり抱きつく。

 

「えへへ…。お風呂からあがった私は魅力的?」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントは困った感じでとりあえず肯定する。

 

……何があった?

 

ドミナントはジナイーダを見るが、肩をすくめている。佐藤中佐を見たら悪い顔している。セラフを見ても、暗い顔しかしていない。艦娘たちは頬を膨らませていたり、ジト目で見ている。

 

……本当に何があった?

 

ドミナントが考えていると…。

 

「えへへ…。暖かいでしょ?」

 

神様がドミナントの頭にまとわりつく。

 

……マジで何があった?何?なんなの?

 

ドミナントは困惑する。そして…。

 

「…胸をしまえ。顔に当たっている。」

 

「私、Cだからでかいほうでしょ?好きになりそう?」

 

神様がトンチンカンなことを言う。

 

……阿保か。女は胸の大きさじゃないだろ…。別に小さくても、いいやつだったら惚れると思うし。てか、惚れたことあったっけ…?…小学生の頃、優しい子に惚れたんだっけ…?曖昧で思い出せない…。もう10年以上前だからな…。

 

ドミナントは心の中で思う。そういう性癖なのだ。

 

「ん〜?私はDなんだよね〜。」

 

「む…。」

 

神様が唸る。

 

「佐藤中佐は何対抗心燃やしているんですか…?」

 

わかると思うが、佐藤中佐は神様に対抗心を燃えさせて遊ぼうとしている。1番の被害者がドミナントになるのも関わらず。

 

「…ふふ。私はFですがどうかしましたか?」

 

セラフが見下した感じで言う。しかし…。

 

「…おい、シレアに神様にセラフ。それは私に喧嘩を売ることだと理解しているのだろうな。」

 

「「「あ…。」」」

 

「だろうな。罰を与えようと思うんだが…。ドミナント、どう思う?」

 

「胸のでかさで好意を寄せようとしているなら間違っているから、その考えを改めさせるくらいならいいんじゃないか?俺は、変わることのできない、生まれ持ったもので競う人あまり好きになれないし。」

 

ドミナント、裏切る。

 

「「ガーン!」」

 

神様とセラフがドミナントの言葉を聞き、ショックを受ける。艦娘たちは、話に入らないで良かったと思っている。

 

「よし。ドミナントの了承も得た。覚悟しろ。」

 

「えーん…。」

 

「…“好きになれないし”…。」

 

「なんか、損した感じがする…。」

 

そして、ジナイーダは3人に説教するのだった。




はい。終わりました。まだ佐藤中佐(シレア)がやってきて、まだ1日も経ってないんですね。長いですね〜。まあ、まだお話が続きますけどね。女は胸の大きさじゃない…。ドミナントはいいことを言いますね。…そういう性癖ですが。ちなみに、ドミナントの性癖は、優しく、頑張り屋で、笑顔の可愛い大人のお姉さんが好みです。
登場人物紹介コーナー
入浴剤…バス○マン。爽やか森林の香り。入れすぎて、APが削れた。入れすぎには注意しよう。
ドミナントが惚れた小学生の女の子…黒髪ツインテール。ドミナントが怪我をすると、必ず近くに駆けつけて、ハンカチを渡したり、絆創膏を貼ってあげたりした。…実は最初、泣いているこの子にドミナントがハンカチを渡して、話を聞いたことがきっかけ。つまり、両思い。(爆発しろ)
次回!第93話「決断」お楽しみに!


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93話 決断

はい。やってきました93話。
「随分遅かったじゃない。」
また風邪ひいちゃってさ。あはは…。治った直後に無理するのはよくないね。
「はぁ…、健康でいなさい。風邪うつっちゃうでしょ?後で林檎をすって持ってきてあげるから治しなさい。…風邪をうつされるのが迷惑だからよ!」
あ、そうなんだ〜。で、ゲストは?
「……。……この人…。」
「あらぁ〜、天龍ちゃんから、随分と時が経っているわねぇ〜。」
龍田さんですね。あらすじを〜、どうぞっ!

あらすじよぉ〜
前回、教官が重い話をしたわぁ〜。自分たちがどれほど幸せなのか実感したわよぉ〜。天龍ちゃんが暗い顔をしたところ初めてみたわぁ〜。


…………

ジナイーダの部屋

 

「変わったね〜。」

 

「…何がだ?」

 

「昔は、こんなもの部屋に飾らなかったじゃん。」

 

佐藤中佐は海蛇のぬいぐるみを手に取る。

 

「…まぁな。平和ボケというやつかも知れん。」

 

「む、この手触り、感触…。へぇ、存外そんなものなの…。」

 

佐藤中佐はそれをなでなでしている。

 

「…ドミナントには黙っていたが、その言葉が世界を大破壊に追いやった兵器を起動させた者の言葉か?」

 

「もう!昔の話はしないでよ。あれ、本当に死ぬかと思ったんだから…。まぁ、あんなことになるなら依頼を受けなければ良いと思って、それで依頼を受けなくなったんだけど…。お金がなくなっちゃって、いざ依頼を探しても、中々なくって…。」

 

「あれで生きていて、何故騙されて死んだのかが納得できないな。」

 

ジナイーダは微妙な顔をして言う。

 

「…お前が死んだとき、どれほど悲しんだか知っているのか?」

 

「…本当にごめん。やっぱり、疲れたまま依頼を受けるのは良くなかったね…。」

 

「…全くだ…。こうして会えなかったら、謝ることもできないんだぞ…。もう二度と無茶しないでくれ…。」

 

「…あの依頼、報酬が高くてさ…。プレゼント買えると思ったんだよ…。それに、あれを逃したら、いつ依頼が来てくれるかわからなかったし…。」

 

「死んだら何もかもが台無しになるんだぞ。もう…、もう私のために無茶をして欲しくない…。」

 

「まさか死ぬなんて思ってなかったからさ…。」

 

「……。」

 

力なく微笑みながら言う。そして、5秒ほど沈黙の後…。

 

「…今夜は飲みに行くか…。」

 

「…そうだね…。」

 

二人は、伊良子酒保に向かった。

 

…………

執務室

 

「よっこらしょ…。」

 

ドミナントは夜、執務室で、明日の支度をしていた。

 

……明日もスムーズに進められるように準備しないと…。

 

とは言っても、書類を机の上に置き、ペンをチェックし、紅茶の在庫を確認するだけだが…。

 

「アイムシンカートゥートゥートゥートゥトゥ♪」

 

ドミナントは歌いながら支度をする。そこに…。

 

「ドミナントさん…。」

 

「アイムシンカートゥートゥ!?」

 

ドミナントは自分のすぐ後ろにセラフがいることに気づき、驚く。

 

「ど、どうした…?」

 

「…相談が…。」

 

「こんな夜じゃなくて…。いや、いい。話せ。」

 

ドミナントはセラフの真剣な顔に気づき、真面目になる。

 

「前話した、ジャックさんとの件なんですが…。」

 

「…決まったのか…?」

 

「…決断は少し早いと思っています。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントは真剣に聞く。

 

「…データを見ようとしましたが、出来ませんでした…。」

 

「……。」

 

「…確率は低いままです。」

 

「…それで俺にどうしろと?」

 

「…その…、もし、するなら、少しだけお願いを聞いてくれますか…?」

 

「…内容による。」

 

「…受けて終わったら、また遊園地へ連れて行ってくれますか?」

 

「いいだろう。」

 

「…失敗しても、私のことを大事にしてくれますか…?」

 

「当たり前だ。」

 

「…もし、死んでしまったら…むぐ。」

 

「不吉なことを言うな。」

 

……フラグは立てないようにしないと…。

 

ドミナントはセラフの口を手で押さえる。そして離す。

 

「…わかりました。」

 

「失敗することを考えるな。成功することだけを考えろ。」

 

ドミナントは言い聞かせるように言う。

 

「…怖いです…。」

 

「…?」

 

「…とても怖いです…。」

 

「…そうなのか。」

 

……セラフがそんな事を言うのは初めてだな…。俺は、生か死なんていう状況になったことがないからな…。きっと、とてつもない恐怖なのだろう…。

 

ドミナントは考えて、セラフの頭を撫でる。

 

「…今日は添い寝してやる。俺がずっと頭を撫でているから、安心して眠ってくれ。」

 

「…ありがとうございます…。」

 

…………

伊良子酒保

 

「私はこっちがいいや。あはは。」

 

「…騒がしいのは苦手なのだがな。」

 

ジナイーダたちは奥ではなく、居酒屋の雰囲気な場所にいる。

 

「私のこと忘れてないかな?」

 

「話したこともない私に言わないでくれ。」

 

「…レシピ通りなのに何で料理まずいのかな…?」

 

「あぁ…。いつになったら、秘書艦の仕事回ってくるのかしら…?」

 

「あっ!これなに?」

 

「これ?ジャックさんのお店の新商品だよ。」

 

「私は司令官の私服持っているけどね!」

 

「ずるい〜。」

 

「何やかんやで、うちの出番なかったなぁ。」

 

「私もですよ?」

 

「一応登場しているんですがね…。」

 

艦娘たちが騒いでいる。

 

「…ここでは静かに飲めないぞ。」

 

「いいじゃん。騒がしい方が好きだよ?…静かな一人暮らしだった頃は寂しくて仕方なかったし。」

 

「はぁ…。お前の親はいなかったからな。…確か、事故で死んだのだったか…?」

 

「そうだよ…。私が物心つく前に死んじゃってね…。顔すらも覚えていないの…。」

 

「お前がレイヴンになるための貯金はどこから出てきたのだろうな…。」

 

「…あの頃、保険金などの制度もなかったからね…。多分、私がレイヴンになっても良いようにお金を貯めていたのかな?」

 

「レイヴンになりたい奴は少なくないからな。だが、大抵試験で落ちる。」

 

「まぁね。」

 

ジナイーダたちは話す。そして…。

 

「…そう思って見れば、誰に殺されたんだ?」

 

ジナイーダはただの興味だけで聞いた。

 

「…聞く?」

 

「ああ。私には知る権利があると思う。」

 

「…そう。」

 

佐藤中佐は少し苦い顔をしていた。

 

「…あいつよ…。」

 

「…?誰だ?」

 

「私が助けたのに、まさか裏切るなんて思ってなかったよ…。」

 

「…誰だ?」

 

「…わからない?私と一緒にいたあいつよ。裏切られることなど、傭兵の常とはいえ、まさか助けた相手に狙われるなんてね…。」

 

「…まさか、よくつるんでいた…。」

 

「そう、そいつよ…。」

 

「…あいつ…!」

 

佐藤中佐が悔しそうにし、ジナイーダは心の中で、怒りの感情が湧き出ていた。

 

……あいつはずっと私を騙していたのか…!親友を…、しかも、命の恩人を殺したのか…!誇りはないのか!?奴はシレアを殺し、私まで欺いた。そして、“そいつは殺された”という報告をして、今ものうのうと生きているのか!?許せん…!許せるものか…!

 

ジナイーダがそう思っていると…。

 

「あの…、どうかしましたか…?教官…?佐藤中佐…?」

 

三日月が声をかける。

 

「…!。なんだ?どうした?」

 

「…ハッ!…えっと…。どうしたの?」

 

ジナイーダたちが気づくと、あんなに騒がしかったのが嘘のように静まり返り、艦娘たちがジナイーダたちを見ている。

 

「その…、すごい殺気が出ていましたよ?全員、肌がピリついて、背筋が凍りましたから…。」

 

三日月が恐る恐る言う。

 

「…ああ。すまない。少しな…。」

 

「ごめんね。お酒まずくさせちゃって。」

 

二人は謝る。

 

「…理由は聞きませんが、辛いことがあるなら、遠回しに言ってください。直接聞かなくても良いです。それに、言った方が良くなる場合もありますから…。」

 

「あぁ…。すまないな。」

 

「ありがとね。」

 

そして、三日月が戻り、さっきのように騒がしくなる。

 

「…この世界はいい子たちばかりだね。」

 

「ああ…。そうだな。」

 

そして、二人は朝まで少しずつ飲むのだった。

 

…………

セラフの部屋

 

「ここに入るのは初めてだな。」

 

「入れるのは初めてですから。初めてじゃなかったらプライバシーの侵害です。」

 

「きついねぇ。」

 

ドミナントが入る。そして、セラフがベッドの上に横になる。

 

「…こんな感じか?」

 

「はい…。ありがとうございます。」

 

ドミナントが撫でる。

 

…………

 

「…あの、ドミナントさん…。」

 

「なんだ?」

 

数分後、セラフが甘えた声で呼ぶ。

 

「…私、受けます…。」

 

「そうか…。」

 

「だから…、明日、悔いのないように遊びに行きません…?」

 

「明日か…。明日は仕事があるのだが…。まぁいい。仕事など、既に意味をなさない。仲間の方が優先だ。」

 

「なら、いいんですか…?」

 

「ああ。約束しよう。」

 

ドミナントは約束する。

 

「ありがとう…、ござい…、ます…。Zzz…。」

 

「……。」

 

……お礼を言っている最中に寝るとは斬新だな。

 

ドミナントは起こさないように心の中で思う。そして、しばらく撫でたあと、自室に戻り、就寝した。




はい。終わりました93話。風邪の件もありますが、最終話に繋がるように、物語を調整しています。
登場人物紹介コーナー
海蛇のぬいぐるみ…外で買った。触り心地が良い。もふもふしている。
次回!第94話「鎮守府の外」お楽しみに!


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94話 鎮守府の外

はぁ…。
「?どうしたの?」
あと1話でひとまず終わるネタがなくて…。
「それは…、私は何も言えないわね。」
96話からは作ってあるんだけどね。てか、96話から真面目になります。ギャグ要素がなくなります。
「…今もでしょう?」
…今回のゲストは?
「このお方。」
「我シレア…。ここにて参上!」
佐藤中佐ですか。あらすじをどーぞ。
「あらすじ〜。」

あらすじ
私が“排除、排除、…。”っていうやつを破壊して、特攻兵器を起動したことに驚いた人はいたかな?素性を隠していると、男と間違えられたりするけど、あの頃は男でも女でもどうでも良かったからなぁ〜。訂正とかはさせなかったよ。

NX主人公ですね。ジャック知っているでしょう?ドミナントの鎮守府に今いるよ。
「えっ?いるの?気がつかなかった…。てか、確かに誰かが“ジャックさん”って言ってたっけ?機体と声しか覚えていないなぁ…。」
まぁ、セラフ以外風呂でしかAC化しないからね。


…………

提督自室

 

「ふぁ〜…。眠い。」

 

(早いです。どうかしたのです?)

 

「お前ら…。枕元で見下ろすのはやめろ。」

 

ドミナントが起き、妖精さんが声をかける。

 

「ところで、何でいるんだ?」

 

ドミナントは起き上がり、色々する。

 

(甘味…です。)

 

(甘味不足です…。)

 

(情報には飽きたです?)

 

「…おやつの時間にあげているだろう?」

 

(働きすぎです。ストライキしにきたです。)

 

(甘味をよこせー…です。)

 

(甘味は我らのエネルギー…です、十分な補充できてないです。)

 

「妖精さんたちの労基を知りたいな。まぁ、ストライキは流石に勘弁なので、この大きなまんじゅう2箱分を持って行って、みんなで分け合いなさい。少しずつ食べるんだぞ。」

 

(交渉成立です!)

 

(流石太っ腹。)

 

(神様。提督ゴッド。)

 

「そんな見え見えのお世辞しなくてもいいよ…。」

 

ドミナントが微妙な顔をしている。そこに…。

 

(ところで、何でいつもより早いです?)

 

(やましいこと隠しているです?)

 

(必需品みつかったです?)

 

「そうなんだよ…。運悪く神様に…って、違う!セラフと一緒に出かけるからだ。」

 

((出かけるです?))

 

(ヒューヒュー。)

 

「お前ら…。まぁいい。セラフは手術?を受けるらしいから、悔いのないようにってな。」

 

(つまり、今日はイチャラブです?)

 

(キスするです?)

 

(ホテル行くです?)

 

「馬鹿言ってるんじゃない。セラフだって、それくらいは場を弁えている。…まぁ、そういうことはしないデートみたいなものだ。」

 

(あーあ、この関係なのに線は越えない意気地なしです。)

 

(また第2横須賀での出来事が起こりそうです。)

 

(その出来事は全鎮守府の妖精さんが知っているです。)

 

「何!?どうして噂になってるの!?」

 

(((妖精ネットにアップされていたです。)))

 

「ざっけんな!」

 

そう話していると…。

 

コンコン…。

 

『司令官?起きているんですか?』

 

誰かがドアの外で小声で言う。

 

「おう、吹雪か。…うるさかったか…?」

 

『…少し…。でも、そこまで大きな声じゃなかったです。偶然ここを通りかからない限り誰にも気づかれないと思いますし。』

 

「そうか…。それを聞いて安心したよ…。…てか、何で吹雪がここにいるの?」

 

『…少し早く起きてしまったので、娯楽室に向かおうかと…。』

 

「そうか。…セラフも寝ていると思うし、俺も行くか。」

 

『えっ!?来るんですか!?』

 

「…嫌だったか?」

 

『あっ、いえ。そんなことはありません。』

 

「よし、それじゃぁ行くか。」

 

…………

廊下

 

「静かだなぁ。」

 

「起床時間まであと1時間と少しありますしね。」

 

ドミナントたちは小声ではなし、娯楽室に足音を立てずに行く。すると…。

 

『……。』

 

「司令官、何か聞こえません?」

 

「…娯楽室からだな。」

 

ドミナントたちは、静かに行き、部屋を覗く。

 

『今日は、気持ちの良い晴れの日でしょう。……。』

 

「むにゃ…。」

 

「スー…スー…。」

 

「しれいかぁん…。スー…。」

 

「う〜ん…。う〜ん…。」

 

「くー…。くー…。」

 

睦月型の5人がテレビをつけっぱなしで寝ている。

 

「…何でいるんでしょうか…?就寝時間直前は、ジナイーダさんがいちいち部屋を回って、確認しますから、その後にこっそり…?」

 

吹雪が考えていると…。

 

「…テレビをつけっぱなしで寝てしまったのか…。寝落ちだな。…吹雪、そこの毛布とってくれないか?」

 

「…!。あ、はい。どうぞ!」

 

ドミナントが寝ている5人に毛布をかけてあげる。

 

「…いいんですか?」

 

「何が?」

 

「夜中こっそり部屋から出てテレビ見るのは…。」

 

「う〜ん…。ダメだけど…。まぁ、今回は見逃してあげようよ。次は罰を下せばいいし。」

 

ドミナントは自分のことを棚に上げて言う。

 

「まぁ…、いいならいいんですが…。」

 

「それより、テレビ見よう?」

 

「…わかりました。…えいっ!」

 

「……何でここに座る?」

 

「何となくです。」

 

吹雪は、ドミナントのあぐらの上に座る。

 

「…軽いですよね…?」

 

吹雪が少し振り向きながらドミナントの顔を見る。少し赤い。

 

「えっ?姿変わっても、元がACだから大丈夫だよ?」

 

……少し可愛い。

 

「そうですか、なら良か…。?。……!。」

 

ここで吹雪は、ドミナントの遠回しの言葉の意味を理解する。

 

ドガァ!

 

「グフッ!」

 

「つまり、重いってことじゃないですか!」

 

「バ、バレたのか…!?」

 

「危うく騙されるところでした!」

 

「ご、ごめん…。」

 

「許しません!」

 

「まぁ、テレビみよう?」

 

カチャッ。

 

ドミナントがテレビのチャンネルを変える。すると…。

 

『昨夜、△△県□□市○○で、近所の住民から“異臭がする。”との報告を受け、警察が駆けつけたところ、数十名の遺体が発見されました。』

 

「む…。」

 

「…怖い…。」

 

『この場所は、暴力団の組長同士で集まっていたという情報があり、死亡推定時刻から、数日前に事件が起こったと推測されます。また、報告によりますと、被害者の頭がなかったり、陥没したり、折られていたりなど、惨殺されており、凶器と思われる物が不明。ちなみに、人の頭が粉砕する威力というのは、マグナム44口径や、対戦車ライフルなどの威力でないと、こんな風にはならず、大掛かりなものが必要となります。また、防犯カメラの映像には何も写っておりませんでした。警察は行方不明になった長髪組長と、権田源五郎という堅いの良い男性を捜索しております。…次のニュースです。……。』

 

ニュースが終わる。

 

「その件、第4佐世保が疑われているんだよね…。」

 

「!?」

 

「うおっ!?さ、佐藤中佐じゃないスか…。いや、自分の仲間もこんなことしませんよ。」

 

いつの間にか佐藤中佐が後ろにいて、ドミナントたちは驚く。

 

「いや、私だって、ここの人たちがこんなことをするはずないって思っているんだけど、ここ以外考えられないって人が多くてさ…。第一舞鶴鎮守府の提督まで疑っているの…。」

 

「…チッ。あのバブ提督が…。」

 

「司令官、口悪いです…。それに、バブ?」

 

「あっ!ドミナント少佐知ってるの?私以外知らないと思っていた。」

 

「いや〜、偶然見てしまったんですよ…。」

 

「あの…、バブって…?…聞いてます?」

 

「私も最初見たときはどうして良いかわからなかったよ…。」

 

「自分は固まりましたよ…。」

 

ドミナントたちが話して数分後…。

 

「む〜…。」

 

「あっ、吹雪ごめん。これは機密情報だから言えないんだよ。」

 

ドミナントがようやく吹雪に気付く。

 

「ふんっ。司令官なんて知りません。」

 

「ごめんよぉ〜。」

 

「許しません。」

 

今度は吹雪は本当に怒っていた。

 

「しょうがないな〜。これでどうかな?」

 

「!?」

 

ドミナントは吹雪を膝枕する。

 

「そ、そんなことしたって許しません!」

 

「…吹雪、めっちゃ嬉しそうな笑顔しているぞ…。」

 

……それに、素直で可愛い。

 

ドミナントは癒された。

 

「あはは。仲良いね〜。私の所とおんなじみたい。」

 

佐藤中佐は愉快そうに笑う。そこに…。

 

「あっ!ドミナントさんこんなところに…。て、何しているんですか!?」

 

「おう、セラフ起きたか。今吹雪を膝枕しているところだ。」

 

「ずるいです!羨ましいです!卑怯です!」

 

「“あーん”してもらった奴が何言ってんだか…。」

 

「それとこれとは別です!」

 

「!。司令官!“あーん”したんですか!?」

 

「二人とも静かに…。5人が起きちゃう…。」

 

「むにゃ…?およ?提と…あぁっ!ずるい!」

 

「背中はもらったー!」

 

「ず、ずるい!ボクもどこか…。」

 

「あたしはぁ〜、右腕!」

 

「あらぁ〜…?不倫かしらぁ〜…?」

 

「如月…、怖い…。お願いだからその目やめて…。てか、不倫という前に、結婚もしてないし…。てか俺は生涯、独身社畜だと思っていたから、結婚のこと考えてなかったんだよなぁ〜。」

 

「じゃ、じゃぁ私が…。」

 

「ボ、ボクは…?」

 

「あらぁ、私じゃふ・ま・ん?」

 

「司令官のぉ〜、太ももはあたしの場所だよ?」

 

「司令官、司令官は…、その…。誰がいいんだ…?」

 

「およ?提督、睦月じゃないの?」

 

6人がドミナントの近くに、赤くなりながら聞く。

 

……うん。6人集まって、キュートさが半端ない。可愛い…。可愛すぎる…。…これでは変態だな。

 

そしてドミナントは…。

 

「セラフ!」

 

「わ、私ですか…?」

 

「出かけるって言っていたな?行くぞ!」

 

「えっ!?そっちですか!?しかも、今このタイミングでですか!?」

 

「俺は先に行く!さらばだ!」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントは走っていく。追いかけようとしたが、昔を思い出し、無駄だと判断して追いかけなかった。セラフが走っていく。佐藤中佐は途中からずっと笑いを我慢していたのか、思いっきり笑っていた。




はい。終わりました。94話。タイトルあまり関係なかったですね。…その通りにするつもりなどもとよりない…。
登場人物紹介コーナー
ダレモ…イナイ…。
次回!第95話「買い物」お楽しみに!


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95話 買い物

はぁ…。気づけば漁が終わった…。AC新作はいつ出るんだ…?
「盛り上がったわね。漁。誰かさんは戦っている最中画面が凍って、倒したのに漁すらできていなかったけど。」
瑞鶴、誰のことだい?しかも、時間置いても凍るってどゆこと?
「空き容量が無いんでしょう?それとも違法サイトのウイルスじゃないの?」
うん。メタ発言しまくりだね。…あれからもう5年以上経つ…。新作が出ると騒がれたのももう一年前…。それから音沙汰なし…。身体は闘争を求めていたが、日々少しずつ闘争心が薄れていく…。だから、こんな平和な小説を描くのだろうか…?
「平和…?なのかはわからないけど、私はそういう平和が好きだよ?」
そうなのか…?
「だって、私たち艦娘は世界を平和にするために戦っているんですもの。」
…そうか…。
「うん。」
…ありがとう…。それじゃぁ、今日のゲストは?
「どうぞ。」
「工作艦、明石です。」
明石さんですね。あれからあまり出てないけれど、あらすじをどうぞ。
「お任せください!」

あらすじ
朝起きたら、提督がいませんでした。大慌てで探したら、娯楽室で提督が6人の艦娘と一緒に笑っていました。…全く、本当に世話が焼けます…。あっ、べ、別に微笑んでないですよ?それから、少し目を離した隙に提督を見失ってしまいました…。どこに行ったのやら…。


…………

鎮守府外

 

「さて…、どうしたものか…。」

 

「ま、待ってくださ〜い…!」

 

ドミナントが、外に出たのはいいが、行き先が決まってないので、考えているところにセラフが追いかけてくる。

 

「ハァ…ハァ…。何でこういう時だけ速いんですか…?」

 

「不思議だよなぁ〜。」

 

ドミナントはさも不思議そうな顔をしている。

 

「てか、どこ行くの?」

 

「……。とりあえず街へ行きましょう。」

 

セラフは昨夜はすぐに寝てしまって、何も決めていなかったようだ。

 

…………

鎮守府屋上

 

「ふむ…。2回目だな。」

 

「何何〜?ジナは覗きかな?」

 

「ふぁ〜…。眠いよ…。」

 

「…厄介な二人と一緒だがな。」

 

屋上にはジナイーダと佐藤中佐(シレア)と神様がいた。

 

「神様はわかるが…、シレアはなぜついてきた…?」

 

「なんとなくだよ〜。それに、今日帰らなきゃいけないから、あの子たちに土産話でも持って帰ろうかな〜って。」

 

「土産話になるだろうか…?これ…。」

 

ジナイーダは微妙な顔をする。

 

「…て、神様起きてるか?」

 

「…うん?あ、うん。起きてるよ…。……。」

 

半目で眠そうにしている神様。

 

「眠そうじゃないか…。眠いなら自室に帰って寝ていろ。」

 

「…んいやぁ…。見るのぉ…。」

 

子供のように首をフルフルする。

 

「途中で寝ても知らんぞ。」

 

「起きてるからぁ…。…ん…。」

 

屋上の手摺りに顔を伏せる。

 

「……。シレア、すまないが、ドミナントたちを見ていてくれないか?私はこいつを部屋に戻してくる。」

 

「いやぁ…。見るぅ…。起きてるからぁ…。」

 

「眠いなら寝ていろ。」

 

ジナイーダが神様を担いだ時…。

 

「あっ!ドミナント少佐が手を繋いでる。」

 

「「何っ!?」」

 

二人が思いっきり反応する。

 

「どこだ?」

 

「どこ!?どこにいるの!?」

 

ジナイーダは神様を瞬時に下ろし、二人で探す。神様は眠気なんて吹っ飛んでいる。

 

「うっそだよー。」

 

「「……?」」

 

「あれれ?ジナは過剰に反応したし、神様?は眠いんじゃなかったのかな?あはは。」

 

「「……。」」

 

そのあと、佐藤中佐は頭に二つのタンコブができた。(1分後には治ったが。)

 

…………

 

……また見られていますね…。早く寝ましたから、感知能力がいつもより調子が良いです。

 

セラフは一早く察した。

 

「どうした?」

 

「…あっ、いえ。なんでもないです。」

 

……前は邪魔されてしまいましたから、今度はちゃんと遊びたいです。

 

セラフは心の中で思った。そしてバスに乗った。

 

…………

 

「さっきは痛かったなぁ〜。」

 

「あんなことを言うからだ。」

 

屋上から降り、ドミナントたちの少し後ろにいる佐藤中佐とジナイーダが話す。

 

「バスに乗って行っちゃったけど平気なの?」

 

神様が聞く。

 

「心配はいらん。…へい、タクシー。」

 

「ジナ…。この世界にかぶれてきているね…。」

 

ジナイーダの行動に佐藤中佐が苦笑いする。そして、3人はタクシーに乗った。

 

…………

 

「この建物の中に入りましょう。」

 

「ふむ…。デパートか…。」

 

バスから降りるなり、デパートの中に入る。

 

「…俺たちの鎮守府より少し大きいくらいか…?」

 

「…鎮守府の建物内で言えば、そうですね。空いた土地を含めると鎮守府の方が大きいですが…。」

 

二人は、この世界で初めてデパートに入るなり、感想を言う。

 

「で、どこ行く?」

 

「そうですね。まずは…。」

 

…………

第4佐世保

 

「そっち行ったクマー!」

 

「にゃ〜。」

 

「ちょ、姉さん!そんなもので遊ぼうとするな!」

 

「あらぁ〜、天龍ちゃん、そんな高いところで何しているのかしら?」

 

「た、たまたまここにいたいだけだ!」

 

「長門さん!助けて欲しいのです!」

 

「う、うむ…。電の頼みなら仕方がない…。…とうっ!」

 

バシッ!

 

「あ…。外した…。」

 

「わー!飛んだぞ!筑摩ー!」

 

「ほにゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「みんな、どうしたの?…て、きゃーー!」

 

「きょ、教官を呼んできてー!」

 

「ギャハハハハ!呼んだかな?」

 

「Gがぁ〜…!ふぇぇぇん…。」

 

「あ、そうなんだ〜…。で、それが何か問題?ま、いいんじゃないの?どうでも。そのままにしていた方が面白いよぉ。」

 

「頼む!お願いだ!」

 

「残念だけど…、お前たちに味方なんていないんだよ…。そう、いないんだよ…、味方も、そして敵もねぇ…。…いや、敵はいるか!ギャハハハハハ!」

 

「教官さん!お願いです!」

 

「あなただけが頼りです!」

 

「カッコいい教官さん!」

 

「…じゃ、いっちょやりますか!」

 

……ちょろい…。

 

「…プレゼント…、気にいると良いけど…。」

 

ドガアアアアアン!!

 

「壁ごと壊した!」

 

「しかも当たってない!」

 

「あれ?外したかな?ギャハハハハハ!」

 

「…何だ?何の騒ぎだ?」

 

「あっ!ジャックさん!今Gが…。て、あれ?」

 

「さっき天井裏に行ったぞ…。」

 

「なら良かった…?」

 

そこに…。

 

パキュッ…グチャグチャ…。ジュルル…パキパキ…。

 

「…何の音でしょうか…?」

 

「気持ち悪いっぽい…。」

 

「何か…、食べている音だな…。しかも昆虫を…。」

 

「…少し覗くか…。」

 

ジャックが脚立を使って天井を開けて覗くと…。

 

「……。何もいない…?」

 

「えっ?どういうことですか?」

 

ジャックは覗いたところを戻し、脚立から降りる。

 

「何もいないし、何もなかったぞ。」

 

「そんなぁ…。」

 

「AMIDAじゃないよね…?」

 

「さぁな。」

 

もちろんAMIDAではない。

 

…………

 

「あいつはどこだ?」

 

「少佐いないねー。」

 

「ドミナントはどこ?」

 

3人、デパートの中にいる。

 

「まさか、もう気づかれたか…?」

 

「早いね、そんなに勘が鋭いのかな?」

 

「私たちの気配を知っているからな。」

 

佐藤中佐とジナイーダは話す。

 

「まぁ、とにかく探そう。」

 

…………

 

「ここです。」

 

「服屋か…。」

 

……ま、定番だな。

 

ドミナントたちは、デパートの一角、洋服屋にいた。

 

「入りましょう!」

 

「マジか…。」

 

……すごく時間がかかるやつじゃない?

 

ドミナントが心の中で思うと…。

 

「えっ…?いや…でした…?」

 

セラフが悲しそうな顔をする。

 

「あっ!いや!そんなことはない!ただ…。そうだな…。あっ!…ただ、セラフの可愛い姿を見て、キュン死しないかどうか心配なんだ。」

 

「!。ド、ドミナントさん…。」

 

セラフは顔を赤くし、恥ずかしそうにもじもじする。

 

……これは手術の前のセラフの望みだ。悲しい思いだけは絶対にさせてはいけない!

 

ドミナントは、このことだけを考える。

 

…………

1時間後

 

セラフが順番に試着する。

 

「こ、これはどうでしょうか…?」

 

「すごい似合っている!ブラボー!」

 

「…こ、これは…?」

 

「素晴らしい!」

 

「…こ、こちらは…?」

 

「可愛いの例外なんて、存在しないんだよ…。」

 

…………

さらに1時間が経過

 

「…どちらにしましょうか…?」

 

「うん。どっちも可愛いじゃん。」

 

「…それしか言わなくなりましたね…。」

 

「……。いや、そんなことは…ある。可愛い以上の褒め方が見つからない。」

 

「…無理して言わなくても良いんですよ…?」

 

「いや!そんなことはない!これなんて、すごく良かったぞ!」

 

「そう…でしょうか…?」

 

セラフは、まだ服を選んでいる。

 

……やばい…。何とかごまかせたけど、次はアウトだな。気をつけよう…。

 

…………

 

「私たちが来て、もう1時間半以上だ…。いい加減飽きないのか…?」

 

「…ジナ、服選びっていうのは、女の子にとって、すごく重要なの。そう簡単にポンポン決めれるようじゃないの…。服に人生をかけている女性もいるんだよ?」

 

ジナイーダの言葉に、佐藤中佐が真剣に話す。

 

「服か〜…。私は、買ったことがないなぁ〜…。」

 

「ん?だが、よく違う模様や色の服装しているよな?」

 

「この種類の服なら、模様や色を自由に変えたりできるんだよ。だって、神様に決まった服ないもん。」

 

「便利だな。神というのは。」

 

ジナイーダと神様が話す。

 

…………

結局、3時間かかり…。

 

「これ買います!」

 

「ありがとうございます。」

 

セラフがご機嫌に買い物をした。

 

「…これで良かったのか?」

 

「はい!だって、ドミナントさんが“良かった。”って言ってくれましたから!」

 

セラフは笑顔いっぱいで言う。

 

「…俺なんかが良いと言ったくらいで良いのか…?」

 

「はい!だって、好きな人が“良い”と言ったのが、私にとって一番良いもの何ですから!」

 

「…そうか…。」

 

「はい!」

 

ドミナントとセラフが二人、手を繋いで歩く。…まぁ、沢山の人が、それを見ていたのは言うまでもない。

 

…………

 

「あの子、すごく可愛いな。」

 

「少し声かけちゃう?」

 

「あんな奴より、俺たちの方が良いに決まっているしな。」

 

「じゃ、俺一番に声かけちゃおっと!」

 

「あっ!おい!抜け駆けはよくn…グハッ!」

 

「ん?どうしt…。」

 

男たちは、全員、一瞬で気を失った。

 

「…あいつらの邪魔はさせん。」

 

「そうだよ?せっかくいいところなんだから、邪魔したらだめだよ?」

 

「む〜…。取られちゃうかもしれないのは心配だけど、最後かもしれないからね…。」

 

3人が、一瞬で気絶させたのだ。

 

「全く。…セラフ、悔いのないようにな。」

 

ジナイーダは、ドミナントたちを見ながら、神様たちに聞こえないように呟いた。

 

…………

 

「…フフ。気をつけますよ。」

 

「ん?何か言ったか?セラフ。」

 

「あっ!いえ、何でもありません。」

 

だが、感知度MAX状態のセラフにはしっかりと聞こえていた。

 

「じゃ、ドミナントさん、そろそろ帰りますか?」

 

「ん!?早くないか!?日も沈んでないし…。」

 

「忘れていませんよね?今日、佐藤中佐が帰りますし、ドミナントさんは仕事があるんですよ?」

 

「…そうだったな。…だが、いいのか?」

 

「…最後に、少しお願いがあります。」

 

「ああ。なんだ?」

 

「屋上に行ってから言います。」

 

そして、二人は屋上にエレベーターで行った。

 

…………

 

「まさか、エレベーターだとはな…。」

 

「…追いかける?」

 

「諦めないよ!」

 

3人は、階段を使っていた。

 

…………

屋上

 

「…誰もいないな。」

 

「…そうですね。」

 

セラフたち以外誰もいなかった。まぁ、喫煙所は中にあるし、屋上は何もなく、風もあり、寒いので誰もいない。

 

「ところで、お願いとはなんだ?」

 

「…その…。」

 

「あっ!キスとかはダメだぞ。」

 

「違います。…まぁ、一歩手前みたいなものですが…。」

 

「…何だ?」

 

「…抱きしめてくれませんか?」

 

「…わかった。」

 

ドミナントはすんなりと受け入れた。最後になるかもしれないから、それくらいなら別に良かったのだ。

 

「…暖かいです。」

 

「…そうだな。」

 

…………

 

「…いい感じだな。」

 

「…そうだね。」

 

「…まぁ、羨ましくて仕方ないけど、仕方ないよね…。」

 

3人はこっそり見ていた。

 

「ところでシレア。」

 

「んっ?なーにっ?」

 

「帰りの飛行機は何時だ?」

 

「あ…。」

 

「……。」

 

「ま、まぁ、次の便があるし。大丈夫だよ。うん。明石も許してくれるだろうし。」

 

「……。」

 

「うん。絶対!大丈夫!」

 

「……。」

 

そんなことを話していた。

 

…………

10分後

 

「…帰りましょう。」

 

「…そうだな。」

 

二人とも離れる。少し顔が赤いのは気のせいだろうか。そこに…。

 

「ドミナント。帰るなら私に掴まれ。」

 

ジナイーダたちが現れる。

 

「見ていたのか!?」

 

ドミナントが驚きながら言う。

 

「ああ。最初はいなかったが、最後まで見ていた。」

 

「そ、そうか…。」

 

「それより、私に掴まれ。送っていく。」

 

ジナイーダがAC化する。誰も見ていないので、セーフだ。

 

「いや、忘れていると思うけど、俺もセラフもAC化できるよ?」

 

「む。そうだったな。それじゃぁ、シレア。私に掴まれ。」

 

ジナイーダは佐藤中佐に向き直る。

 

「タクシー代必要なかったんじゃ…?」

 

「いや、さすがに二人は無理だ。片方落っことす可能性があったからな。」

 

「こわ…。」

 

ジナイーダは、佐藤中佐を乗せる。

 

「じゃぁ、神様は俺に…。」

 

「いや、待て。」

 

ジナイーダが止める。

 

「?どうした?」

 

「お前はセラフを乗せろ。」

 

「えっ?でも、AC化出来るんじゃ…?」

 

「人の気持ちくらい分かれ。それに神様、本当は空飛べるだろ。」

 

「えっ?何でわかったの?」

 

「神様ならあり得そうだからだ。それに、空から落ちて来たわけでもあるまい。」

 

「…ま、そうだよね。」

 

神様は光の玉になる。

 

『それじゃぁ、先に帰ってるね。』

 

「ああ。…ありがとう。」

 

ジナイーダがお礼を言う。

 

『?何でお礼を言うの?』

 

「セラフに場所を譲ってくれたからだ。」

 

『…まぁ、本当は乗りたかったけどね。…仕方ないし。』

 

「ありがとう。」

 

『別にいいよ。』

 

そして、神様は先に帰った。

 

「それじゃぁ、ドミナント。私も行く。先に帰るぞ。」

 

「お別れ会してくれるかなぁ〜?」

 

「まぁ、一応すると思うぞ。」

 

そして、ジナイーダと佐藤中佐は行った。

 

「…それじゃぁ、俺たちも行きますか。」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントはセラフを乗せて帰った。セラフは背中で嬉しそうにしていた。そして、佐藤中佐と明石のお別れ会をした。

 

…………

 

「じゃぁね!」

 

「今までお世話になりました。こちらに遊びに来たら歓迎します。」

 

二人はタクシーに乗り、佐藤中佐は手を振り、明石をお辞儀をしていた。そして、二人は帰って行った。

 

「…ふう。疲れた。」

 

「そうだな…。」

 

ドミナントとジナイーダが言った。そこに…。

 

「ドミナント。」

 

「ん?ジャックか?どうした?」

 

「“どうした?”じゃない。始めるぞ。」

 

「あぁ…。そうだな…。頼むぞ!」

 

「任せろ。」

 

セラフの手術が始まった。




さて、今回無理にでも終わらせるため、字数が長くなりました。お別れ会はカットです。まぁ、前日の夜みたいに大騒ぎをしたんですがね…。次回から真面目な感じになります。
登場人物紹介コーナー
ダレモ…イナイ…。
次回!第96話「異変」お楽しみに!


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最終編
96話 異変


はい。やってきました96話。前々から作ってあったので、変なところもあるかもしれませんが、目をつぶっていただけてくれるのであれば、幸いです。
「もう96話か〜。長かったような…、短かったような気がするわね。」
君が出れるのはこれも合わせてあと2回だよ?
「えっ!?嘘!?」
んにゃ、ほんと。
「何で前もって言ってくれなかったの!?」
前言ったじゃん…。…さて、今回のゲストは?
「ちょ、待ちなさいよ!」
何〜?早く進めないと…。
「“進めないと”じゃないわよ!もう、色々したかったのに、時間が足りないじゃない…。」
…ま、次出れるの最後だから、盛大に盛り上げてくれ。
(まだです?)
おっ。来ましたか。妖精さん。
「えっ!?声聞こえるの!?」
聞こえるよ。筆者だもん。それじゃぁ、あらすじをどうぞ。…報酬は飴だ。
(了解です。)

(あらすじです)
(前回、Gが出たです。)(でも、重力加速度ではないです。)(その時、誰も彼もが逃げ回り…。)(挙句の果てには主任呼び…。)(最後は物理法則を無視して壁を壊して…。)(結局Gの行方は分からず終い。)


…………

大本営連絡通信室

 

「何か平和ですね〜。」

 

「最近、深海棲艦の動きもありませんしね〜。」

 

この部屋で、大淀と大和がお茶を飲みながら休憩している。

 

「このまま平穏が続けば良いのに。」

 

「フラグみたいなことを言わないでください…。…あっ!平穏といえば、九州地方に不思議な遊園地があるって噂が…。」

 

大和がとある遊園地のことを話していると…。

 

『……。』

 

「…?何か聞こえます。」

 

大淀が通信機を耳にしながら言う。大和は邪魔しないように黙っていた。

 

『…ムス…。オマエハ…カテ……。コウカ……ルゾ…。』

 

「…?何でしょうか、これは…。深海棲艦でしょうか?」

 

「…私もいいですか?」

 

いつもの深海棲艦とは違う信号を出す謎に、大淀たちは耳を傾ける。

 

「…何も聞こえなくなりましたね。」

 

「…新種の深海棲艦でしょうか?…とにかく、元帥に連絡します。」

 

大和は事態の大きさを想定しながら元帥に連絡した。

 

…………

大本営執務室

 

「と、いうことがあったんです。元帥殿。どう思いますか?」

 

「ふむ…。」

 

大和は早速元帥に聞いている。

 

「…新種の深海棲艦かも知れん…。」

 

「やはりですか…。」

 

「…今、各地でおかしなことが起きている。新種だとしても、不思議ではない。…それと、大和君に言うべきことがある。」

 

「何でしょうか?」

 

「第4佐世保の少佐の件だ。」

 

「…はい。」

 

大和はゴクリと唾を飲む。

 

「…少佐のことを調べた。彼は、提督学校を卒業している記録がある。」

 

「えっ!?私は、毎年元帥殿に代わって、卒業生をみていますが、少佐のことは見たことがありませんよ?」

 

「…だが、卒業写真にいるんだ…。それだけじゃない。艦隊模擬戦闘試験、指揮能力検査などの記録もある。だが、その教官に聞いたところ、ドミナントと言うものは聞いたことも、みたこともないと言う。一緒に写っている者一人一人聞いたが、彼がいたことがないと言う。この写真は合成でないことは鑑定済みだ。…おかしいと思わないか?一人くらいは知っていても良いはずだ。」

 

「…確かに、聞いたことも見たこともありません…。」

 

「…何か、我々の想像をも超える何かが起こっているのではないか…?」

 

元帥は大和に聞く。…と言っても、その記録は、先輩神様が付け足したので、証拠すら残らない。ちゃんと裏で仕組んでいるのだ。

 

「私は、ドミナント少佐のことを知らない。噂では化け物などと言われている。だが、噂は噂だ。直接会った君に聞きたい。…ドミナント少佐はどのような人物なんだ?」

 

「どのような…、ですか…。簡単に言えば、少佐は化け物ですが化け物ではありません。」

 

「…どういう意味だ?」

 

「少佐は、化け物のような力を持っています。我々では決して敵いません。しかし、化け物のような考え方は決してしません。少佐は、大抵大まかな行動をするときは人のためが多いと聞きます。我々が一方的に攻撃したり、非人道的な扱いをしなければ、我々に対する敵対行動もしないと言えます。…とは言っても、変なことはしますが…。」

 

「…なるほど…。」

 

「はい。」

 

「…ドミナント少佐…か…。話を聞くと、会いたくなってきたな。」

 

「ならば、今度招待しますか?」

 

「…いや、こちらから直接会いに行く。それが、礼儀というものだろう。」

 

「そうでしょうか。…道中元帥殿に何かあっては、大変ですからお呼びしたかったです。」

 

「心配性だな。」

 

「…まぁ…。…ところで、深海棲艦の話なんですが、どうしますか?」

 

「そうだな。話が逸れてしまったな。…聞こえた場所を特定し、その近海の鎮守府には警戒態勢を。もし発見しても、手を出してはならん。発見した場合はこちらに連絡をし、近海の鎮守府と連携をして、被害を最小限に防いで沈める。…たとえ、イ級だとしてもだ。」

 

「わかりました。早速、場所を特定します。」

 

大和はそう言い、退出しようとしたが…。

 

バァン!

 

「元帥殿!一大事です!」

 

「…どうかしたのか?」

 

「第8トラック泊地からの緊急通信です!」

 

「…話せ。」

 

「我、大量の深海棲艦を目撃した。大半が改flagship。だが、上位種は確認できない。まっすぐ大本営か、横須賀鎮守府に向かっていると思われる。一応、我々の艦隊で壊滅を試みたが、失敗。」

 

「…そうか…。」

 

「大量の深海棲艦…。」

 

「あぁ…。いよいよ、世界がおかしくなり始めているな。」

 

「我々の精鋭艦隊で撃破しますか?」

 

「…だが、出来るのか?」

 

「…第4佐世保に敗北したあの日から鍛えました。練度は80越えです。大和さんは90越えしましたが。」

 

「何故私のレベルを存じて…?」

 

「とにかく、精鋭で撃破を試みます。」

 

「ああ…。頼んだぞ。陸奥。」

 

「はい。お任せください。」

 

そうして、陸奥は退出した。

 

「……。どうした?そんな心配した顔をして。」

 

「……。」

 

元帥は大和を見るなり言う。

 

「…何故か、とても不安なんです…。なんというか…、何か…恐ろしい何かが起きるような…。…そんな感じです…。」

 

大和は不安な顔をしている。

 

「…大和の勘はよく当たるからな…。…一応第4佐世保に連絡するか?」

 

「…何故ですか?」

 

「我々を上回る鎮守府はパッと思いつくだけであの鎮守府以外ないだろう?」

 

「まぁ、そうですが…。」

 

「…轟沈者が出て欲しくない。ここは恥を忍んで、頼むべきだ。」

 

元帥は、第4佐世保に連絡する。

 

…………

第4佐世保

 

「はい。こちら第4佐世保です。」

 

『ドミナント少佐ですか?大本営の大和です。』

 

「はい。そうですが…?」

 

……セラフが今手術しているのに、何のようだ?

 

ドミナントは思う。

 

『実は、こちらに大量の深海棲艦が進行しています。どうにか、来ていただけませんでしょうか…?』

 

……おいおい、何で俺たちが始末しなくてはならないんだ?まぁ、確かに大本営がやられるのはまずいけど…。なぜ自分の身も守れないんだ…?そんなに弱いわけないだろう?

 

ドミナントは考えて、聞く。

 

「そちらで対処できないのですか?」

 

『…対処はできます。』

 

「なら、必要な…。」

 

『しかし、不安なんです。』

 

「…親離れも必要ですよ?」

 

『…そういう意味ではないんです…。なんというか…、不安で不安で仕方がないんです。嫌な予感がするんです。』

 

「…大和さん、知っていますか?ここからそちらまで約1000kmもあるんですよ?今すぐって…。しかも、理由がそれでは納得できません。」

 

『しかし…。…あっ、元帥殿、何を…?』

 

電話越しで、何か物音がすると…。

 

『電話を変わりました。元帥だ。』

 

「…えっ?」

 

……元帥?何で俺に?俺何かした?

 

ドミナントは考えるが、繋がらない。

 

「えーっと…。何か御用でしょうか?」

 

『うむ。これは冗談ではない。来てくれはしないだろうか?」

 

「…いくら元帥殿でも、約1000kmもありますし、理由が勘では納得ができません。」

 

『分かっている。…それなら、君の昇進を約束しよう。来てはくれまいか?』

 

「それでも結局艦娘たちが出撃するんです。自分ではなく、彼女たちにご褒美を約束してください。」

 

『わかった。約束しよう。来てくれるのだな?』

 

「約束を守ってくれれば行きます。」

 

『わかった。…と、それともう一つある。』

 

「何でしょうか?」

 

『万全の支度を…、絶対に勝てる自信のある編成をした方が良いと私は思う。伝えていなかったが、おそらく新種だと思われる深海棲艦の情報がある。その大群の旗艦である可能性が高い。』

 

元帥が言うと…。

 

「えっ!?それは本当ですか!?」

 

『本当だ。だからしっかりと準備をすることを勧める。』

 

「…わかりました。」

 

そうして、電話を切る。

 

……はぁ…。大本営はどうして無理難題を押し付けるかな…?

 

ドミナントは心の中で思った。




はい。終わりました96話。おもしろ要素は少ないですね。
登場人物紹介コーナー
陸奥…長門の姉妹艦。大本営所属。大本営精鋭艦隊隊長。レベルは85以上、90未満。改二にはなっていない。実は、あまり運がない。長門よりも、比較的多く確認されている。
次回!第97話「最後の戦い」お楽しみに!


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97話 最後の戦い

はい。やってきました。第97話。残り3話ですね。あらすじは瑞鶴、君に決めた!
「わかったわ!私の出番最後だから、きっちりやるわ!」
ガンバ!

あらすじよ!
前回、提督さんが、電話をしていたわ!何か驚いていたけど、何かあったのかしら?

…まぁ、よかったぜ…。お前とは…。…て、何してんの?
「最後だから…、これをするわ!」
おー。花火じゃないか。
「フフフ…。あれからすぐに作ったわ!」
そっか〜。…でも、季節じゃない気がするんだけど…。
「…これ以外盛り上げかたある?」
まぁ、そうだけど…。こんな昼間で見えるかな?
「……。まぁ、試してみるわ!」
ガンバー。

ヒューーーーー…ドーーン!

…見えないね。
「…そうね…。」
…あっ!あれは…!

ドーーン!ドーーン!

「…黒い…煙…?」
「これで打ち上げられるだろう?」
「あっ!提督さん!」
おー。ドミナントじゃないすか。お久。
「久しいな。食材泥棒。」
…言い方キツくない?仕方ないじゃん?食べるものなかったら死ぬし。
「…働け。」
俺は趣味に生きる男なんでね。てか、現実では働いて?いるし。…それより、早く打ち上げて。本編始まらないから。
「わ、わかったわ!」

ヒューーーー…ドーン!

「やったわ!」
綺麗だねー。
「そうだな。」
ふう…。それじゃぁ、瑞鶴。
「何?」
今までありがとう。
「…そうね…。前は“手間"とか言っちゃったけど…。色々楽しかったわ。…こちらこそありがとね…。」
ああ。じゃ!会えたらまた会おう。
「…うん!」


…まぁ、瑞鶴はここまでって意味だけどね。100話行ってないし。
「本人がどこか行ってから言うのやめい。」


…………

 

「どうかしましたか?」

 

赤城がドミナントに聞く。

 

「あぁ、なんか大本営で深海棲艦の大群が向かっているらしい。俺らに託された。」

 

ドミナントは面倒くさそうに言う。

 

「…大本営って、何のためにあるんでしょうね…?」

 

「まったくだ。」

 

赤城が微妙な顔をして言い、ドミナントがため息混じりに言う。

 

「それで、編成なんだが…。」

 

「それなら私がやります。セラフさんの近くにいましたし。」

 

大淀がドミナントの後ろで言う。

 

「おぉっ!大淀か。」

 

「それ以外に誰かいますか?」

 

「…すみません。」

 

「別に良いです。それで、編成の件なんですが…。」

 

…………

 

「このような感じになりました。」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントは大淀にお礼を言い、メンバーを見る。

 

「私が旗艦で良いんでしょうか…?」

 

「精一杯頑張ります!」

 

「殴り合いなら任せろ。」

 

「なんかこういう時の出番が多い気がするわ…。」

 

「久々に骨のある相手と戦えるデース!」

 

「やはり、私も行くことになりましたか。」

 

メンバーは、吹雪、古鷹、長門、瑞鶴、金剛、赤城となった。

 

……しっかりした準備か…。本当はジナイーダか、主任か、セラフか、ジャックを入れたかったが、今はダメだ。俺が行こう。

 

そして、ドミナントがみんなの前に立つ。

 

「これから、大本営に向かう。敵は、深海棲艦改flagshipの大群だ。今までの敵とは一味違う。弱いと思うが、一応のため俺も行くし、油断はしないように。」

 

「「はい!」」

 

「わかった。」

 

「わかったわ。」

 

「了解ネー。」

 

「かしこまりました。」

 

みんなうなずく。

 

「そして…、一つ言い忘れていたが、VOBで行くことになる。辛いだろうが、我慢して欲しい。それに、行ったら大本営の元帥直々に褒美を貰える。辛いことだけではないと思ってくれ。」

 

皆がうなずく。

 

…………

飛行場

 

全員VOBを背中に背負う。

 

『ハッチ、オープン。』

 

ガガガガガガガ……。

 

「これをつけるのは初めてですね…。」

 

「もう二度とつけないかもしれませんが。」

 

「嫌な予感がします…。」

 

『エンジン点火!』

 

ゴオォォォォォ…。

 

「音がすごいな。」

 

「本当に大丈夫なんでしょうね…?」

 

「提督と一緒なら、火の中水の中ネー!」

 

『足元ロック、解除!』

 

ヒュゥン!ヒュゥン!ヒュゥン!ヒュゥン!……。

 

ドミナントたちは、大本営に向かって飛び立った。

 

…………

大本営堤防

 

バシャァ…。

 

「はぁ…、結局こうなるんじゃない…。」

 

「ハクション!」

 

「提督、風邪引きました?」

 

「あははは。愉快デース。」

 

「愉快なわけないじゃないですか…。うぅ…気持ち悪い…。」

 

「もう二度とやりません…。」

 

「死ぬかと思ったぞ…。」

 

海面すれすれで飛んでいたところ、毎度お馴染み、着く直前で爆発しそうになり、全員パージ。だが、スピードがありすぎて、海面の上を転がりながら着いたのだ。

 

「それより、元帥に着いたことを報告しなくては…。」

 

ドミナントは、元帥に報告しに行こうとしたが…。

 

「お待ちしておりました。」

 

大和が待っていたのだ。

 

「大和さん…。なぜここに…?」

 

「前ここにきた時、大穴を開けたじゃないですか。そして、今度はあけないように海面すれすれでくるような気がしたんです。」

 

「…すごいですね。勘。…ところで、これから俺たちは何を…?」

 

「はい。実は今、太平洋に向かったところに、私たちの精鋭艦隊が交戦中です。そこに行って、危なかったら手助けをしてほしいのです。」

 

「…それだけ?」

 

「あと、不明な深海棲艦を確認した場合は、沈めてください。」

 

「それって、かなり無理難題だよね。」

 

ドミナントは言うが、結局、行くのだった。

 

…………

太平洋

 

「選り取り見取りね。撃て!」

 

「弱すぎるっ!!」

 

「第二攻撃の要を認めます、急いで!」

 

「さあ、那智の戦、見ててもらおうか!」

 

「主砲、敵を追尾して、撃て!」

 

「主砲、よーっく狙ってー…、撃てー!」

 

ドガァ!ドガァァァン!ゴガァァァン!

 

次々と撃沈させていく。

 

「あれから随分と鍛えたんだ!もう負けねえ!」

 

木曾は自身満々に言う。

 

「だけど、さすがに多すぎるわね。」

 

陸奥が涼しい顔で言う。

 

「敵、どれくらい沈めたかな?」

 

鳥海が言う。

 

「空がまだ暗い。どんどん沈めて行かないと…。」

 

飛龍が言い、再度攻撃を開始する。が。

 

「きゃぁっ!?」

 

「私の計算では…こんなこと…、ありえない…。」

 

「どうして…?私の戦況分析が…。」

 

運悪く深海棲艦の攻撃が当たり、しかもクリティカルヒットする。

 

「…あっ!まずい!」

 

気づいたが、遅かった。鳥海と霧島に気を向けている間に囲まれてしまったのだ。

 

「ギャァァァァ!」

 

「ガァァァァァ!」

 

ドガァン!ゴガァン!

 

「くっ…。1発1発は対して効いていないが…、数が多すぎる!」

 

那智がそう叫んだ途端…。

 

ドガァァァン!ボガァァァン!……。

 

「!?」

 

那智は目の前が突然大爆発して、敵の深海棲艦が撃沈されたことに驚く。そして、撃たれた方向をみる。

 

「まだ敵は残っているですカー?」

 

「せっかく来たのにこれで終わったら許さないわよ。」

 

「敵を沈められましたね。」

 

「提督ー、これで終わったらどうしますか?」

 

「軽口言ってないで、掃討するぞ。」

 

「慢心は駄目ですね。」

 

「終わりか?」

 

ドミナントたちが来る。

 

「…ん?陸奥か!?」

 

「あら、長門。」

 

長門と陸奥は姉妹艦である。

 

「これくらいどうってことないだろう?さっさと倒さないのか?」

 

「あら、あらあら。煽りかしら?私たちはまだ80前後だから、これが当たり前よ。」

 

「別に煽ってないんだが…。そうなのか?」

 

長門たちは話す。

 

「まぁ、あとは任せておけ。残りは私が倒そう。」

 

「あら?私の獲物を横取りする気?そうはなせないわよ。」

 

「なら、どちらが多く倒せるか勝負だな。」

 

「望むところよ。」

 

二人が言った途端…。

 

「ギャァァァァ!」

 

「ゴァァァァァ!」

 

海面に深海棲艦が顔を出す。

 

「「早い者勝ち!」」

 

ドガァァァン!!ゴガァァァァン!!

 

深海棲艦2匹に大袈裟すぎる大爆発を起こす。

 

「程々にしとけよー。」

 

ドミナントは、一応忠告をする。そして…。

 

「大丈夫か?」

 

「ひっ、第4佐世保提督…。」

 

「…何で怖がっているんだろう…?」

 

ドミナントは心配して声をかけたのに、怖がらせてしまったかと不安する。

 

「提督、多分勘違いです。」

 

赤城が微妙な顔をして言う。

 

「勘違い?」

 

「一部では、提督が化け物と噂になっていて…。」

 

「ひどいな。誰がそんな噂流したんだ…?」

 

「まぁ、その形や強さでそんな噂が出たんだと思いますけど…。」

 

「ひどいなぁ〜。赤城まで…。」

 

「……。」

 

二人のやりとりを見て…。

 

「あの、さっきは失礼なことをしてすみません。噂とは、あてになりませんね…。」

 

鳥海が謝る。

 

「んあ?別にいいよ。この格好じゃ仕方ないし。」

 

ドミナントは軽く流す。

 

「…にしても、本当に滅していくなぁ〜。あの二人。」

 

ドミナントは向こうで競い合っている長門型を見て言う。

 

……いっそのこと、全部あの二人に任せるか?

 

ドミナントは呑気に考えていた。だが…。

 

ドガァァァン!

 

「ば、爆発なんてしないんだから…もう。」

 

陸奥が大破する。

 

「長門、陸奥を守れ。そして、こっちに来させろ。」

 

「任せろ。」

 

そして、守りながら来る。

 

「あ、ありがとう。」

 

「別に良い。」

 

そして…。

 

「さぁ、ここからは俺たちの時間だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

深海

 

「ヤツラヲ…シズメル…。」

 

ポコボコ…。

 

「ナカマタチノカタキヲウツ…。」

 

ブクブク…。

 

「ユックリイタメテアゲル…。」




はい。終わりました97話。あと3話ですね。
登場人物紹介コーナー
大淀…前も説明したが、ジャックがドロップさせた艦娘。仕事がしっかりできていれば、誰が提督だろうがどうでも良い感じ。…つまり、どちらかというと、ジャック寄り。
木曾…前も説明したが、大本営所属精鋭艦隊隊員。あの木曾。ジナイーダに助けられたあの日から、少しでもジナイーダたちの力に近づこうと努力を続けて、今の状態に至る。
飛龍…正規空母。二航戦。大本営所属。死に物狂いに特訓した成果。第4佐世保、第3呉を除けば、正規空母の中で世界一の強さ。
那智…妙高、足柄、羽黒の姉妹艦。大本営所属。天然ボケ気質?。重巡洋艦。実は、あの時、雪風とドミナントに助けられた。
霧島…大本営所属。戦艦。霧島は霧島で、たとえ大本営でも、筋肉論。
鳥海…大本営所属。重巡洋艦。生真面目。霧島とは、波長が合う時もあれば、合わない時もある。…つまり、自称頭脳派。…だが、霧島よりは良く頭を使っている。
次回!第98話「深海の化け物」お楽しみに!


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98話 深海の化け物

はい。やってきました98話。あと2話ですね。今週中に終わりますね。この話は、BGMを付け足しました。別に聞かなくても、全然楽しめます。……暇だぁ〜。からかう相手がいなくて…。…今回のゲストは誰だっけ?
「呼びましたか?」
大淀か…。あらすじどうぞ。

あらすじ
前回、提督は、私の編成した艦娘たちと共に、大本営へ向かいました。私は、見送ったあと、皆さんの代わりに、仕事をしました。

…ピシッとしてるね…。


…………

大本営近海

 

「ギャァァァ!!」

 

「ふんっ!」

 

ドガァァァン!

 

「グァァァァ!!」

 

「あたってくださぁい!!」

 

ドゴォォォン!

 

第4佐世保鎮守府所属の艦娘たちが次々と改flagship深海棲艦を屠っていく。

 

「さ、さすが『化け物の巣窟』第4佐世保鎮守府所属の艦娘…。強さが桁違いだな…。敵にしたくないわね…。」

 

大本営所属の艦娘、那智が言う。

 

「私たちはこれでも弱い方です…。まだ主任さん……教官が本気を出していないのがわかりますし…。」

 

「えっ!?あなたたちのさらに強いのがいるの…?」

 

赤城が言い、飛龍が驚いている。

 

「と言うより…私たちはもう大破状態だから…後は任せても良いかしら…?」

 

「ああ。あとは私たちに任せて。大本営に着く頃にはもう終わっているから。」

 

「…ありがとう…。」

 

瑞鶴は自信満々に言い、大本営所属の艦娘たちは帰って行った。

 

「なんだ。案外楽勝だな。情報より少なかったからか?」

 

艦娘たちを見送ったあと、ドミナントが深海棲艦を葬りながら言う。

 

「そうですね…。いやに楽勝ですね…。」

 

吹雪は警戒しながら言う。

 

「たしかに…。でも主任さんも加賀さんも言っていましたね…。慢心するなって…。」

 

赤城が周りを見ながら言う。

 

「ふむ…。明らかに怪しいな。」

 

長門も怪しむ。その時!

 

バシャパァァァァァァン!!!

 

【挿絵表示】

 

〔BGM Silent Line Ⅲ〕

 

「きゃっ!?」

 

「what!?なんですかアレ!?」

 

瑞鶴が叫び、金剛が驚く。

艦娘の何倍もある化け物はいきなり海中から姿を現した。

 

「な、なんでしょうか…?これ…!?」

 

「明らかに敵だ!注意しろ!!」

 

古鷹が驚愕した顔で言い、ドミナントが皆に呼びかける。

 

「ワタシノナハ『ミッドウェー』アナタタチヲシズメル…ソレガワタシノシメイ。」

 

「ミッドウェー!?ふざけないで!?」

 

「ミッド…ウェーだと…!?」

 

「ミッドウェー…ですか…。」

 

「ミッドウェー…妹たちがお世話になったデース…。」

 

瑞鶴が怒鳴り、長門が顔をしかめ、赤城は覚悟し、金剛は燃えている。

 

「?会ったことがあるんでしょうか…?」

 

古鷹が疑問に思うが、ミッドウェーは戦闘態勢に入った。

 

「司令官!!あれはやばいです!!強い気配と殺気がビンビンしてます!!」

 

「それくらい周りに付いている大砲の数や大きさを見ればわかる!!」

 

吹雪が叫び、ドミナントが大声で返す。そう、この深海棲艦は大きな大砲がおかしいくらいたくさん付いている。要塞のように大砲で埋め尽くされ、本体が見えない。

 

……バカデケェ…。150センチ砲?いや、それ以上だ…。それがあんなにたくさん…。あれじゃ一種のアームズフォートじゃねぇか!?化け物め!

 

ドミナントは思い…。

 

「気をつけろ!!あれを一発でもまともに当たったら轟沈だぞ!!」

 

「really!?一発轟沈なんて聞いたことがないネー!!」

 

ドミナントは叫び、金剛が驚く。

 

ズガァァァン!!ズガン!!ズガァァァン!!ズガァァン!!ズガァン!……

 

「ユックリイタメテアゲル…。」

 

ミッドウェーはその大砲の多さで連射してきた。

 

「まずい!散開しろ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

ドォォォン!ザバァァン!!ザパザバァァァン!!……

 

「くそっ!あれじゃ近づくこともできん!!全員に告ぐ!俺が囮になるから、俺が狙われている間に集中攻撃しろ!!」

 

ドミナントは全員に無線をつないで言い放つ。

 

『提督はダメです!それなら私が囮になります!』

 

「ダメだ!お前達の方が経験が多い!!俺が持ちこたえているうちにお前たちが倒せる確率の方が高い!!頼んだぞ!!」

 

ドミナントは却下して通信を切る。

 

ドガァァン!ドガァァァン!!

 

ドミナントはミッドウェーに数発叩き込む。

 

「こっちだ!」

 

「フン…。コンナコウゲキキカナイワ。キホンモデキテイナイノネボウヤ。モウダレモワタシヲトメルコトハデキナイ!シニナサイザッシュガ。」

 

ズドォォォン!ズガァァン!!……

 

ミッドウェーはドミナントに標準を定めて撃ち続ける。

 

……きたきた!あとはお前たちが頼りだ!

 

ドガァァン!!ドォォォォン!!トガァ!!ドガガガ!…

 

「?」

 

無傷のミッドウェーは攻撃してきたところを見る。

 

『くそっ、私たちの集中攻撃が大して効いていないとは…。』

 

『私の精一杯でshootしたはずが全く効いていないネー…。』

 

『一航戦の力…過信しすぎましたか…。』

 

『うっ…。やっぱり五航戦の力じゃ…。』

 

『やっぱり…あの艤装硬いです…。』

 

『私の力不足でしょうか…。』

 

6人は渾身の一撃を決めたが、なんともないミッドウェーに落胆する。

 

「アハハハハハ!!キクワケナイデショウ!ジブンノブキモシラナイノネ。シズムトシテモ、アナタタチゼンインヲマキコムマデヨ!!」

 

ミッドウェーは、笑いながら挑発する。

 

「気をつけろ!そっちに標準が定められたぞ!!」

 

『『『…ハッ!?はいっ!!』』』

 

ドミナントは落胆している艦娘たちに叫ぶ。その瞬間…。

 

ドォォォン!ザパァァン!!ドガァァン!……

 

ミッドウェーは艦娘たちを攻撃する。しかし、当たらない。

 

「チッ…アタラナイ…。ナラバ、マズハチカクニイルアナタヲタオス…。」

 

ドガァァァン!!

 

「ぐぁぁぁ!?」

 

「提督ーー!!」

 

ドミナントは回避したが、右手に弾が当たる。そして金剛が叫ぶ。

 

『右腕部破損』

 

メッセージが入った。

 

……艦娘より硬い俺が一発破損かよ…。こりゃかなりやばいな…。

 

ドミナントは笑えない顔をして思う。

 

「アハハハハ!!イイマトヨアナタ!マズハミギテヲウシナッタワ!!ツギハドコガナクナルノカシラ!」

 

ミッドウェーは笑いながら連射してくる。その時…。

 

ドガァァァン!!ボコォォォン!!ドガァン!!ズガガガガガ…!!

 

ミッドウェーに艦娘たちの攻撃が入る。

 

『司令官!大丈夫ですか!?』

 

『こっちよ!デカブツ野郎!』

 

『私の提督に手は出させないネー!!』

 

艦娘たちから通信が入る。

 

「……。ダメージハウケナイケド、イライラスル…。」

 

ミッドウェーは再び艦娘に標準を定める。

 

「逃げろ!」

 

ドミナントが叫び、艦娘が散り散りに逃げる。だが…。

 

「ダメネ、ソレジャ。」

 

ミッドウェーは呟き、大砲で撃つ。すると…。

 

ズガァァン!!……ザパァァン…!

 

『きゃぁっ!?…こちら赤城…かすって中破しました…。』

 

赤城から連絡が入る。

 

『艤装で当たらないのなら、至近距離で殴るのみ!ビッグセブンの力、あなどるなよ!!うぉぉぉぉ!!』

 

ガシャァァァン!!

 

長門が殴るが…。

 

「ヘェ〜、チョウシニノッテコロサレニキタノネ。」

 

『!?』

 

ガッシャァァァァン!!

 

至近距離の長門をミッドウェーが巨大な艤装で殴り飛ばす。長門はもちろんガードしたが、そのガードにも大きさの限度というものがある…。

 

『グハァッ!!ゴプ…。』

 

長門は宙に浮かんだまま吐血する…。

 

「モウスグ、オワリヨ…。」

 

ウィィィィン…ピピピピピ…。

 

ミッドウェーはなすすべなく宙に浮かんだ長門をロックオンする。しかし…。

 

ガガガガガガ!ドォン!ドォン!!

 

ピピ……ドガァァァァァン!!

 

ミッドウェーの大砲は機銃や爆発により、わずかにそれた。

 

「ミス…?ワタシガ…?」

 

『させないわ!』

 

『無事ですか!?長門さん!』

 

そらしたのは空母の二人だった。ミッドウェーは二人を睨む。

 

「ゲホッゲホッ…。なんとか中破ですんだが…。衝撃で内側を破壊するとはな…。なんて凄まじい威力なんだ…。」

 

長門は血を吐きながら返事をする。

 

……チッ…、このままじゃジリ貧だ!本部の奴らがいなくて助かった。足手まといだからな。なんとかする方法を…。

 

ドミナントは考えるが浮かばない…。考えているうちにも攻撃を受けている。

 

「ダメだっ!!何も浮かばん!!一度撤退だ!!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

ドミナントが呼びかけ、艦娘たちは撤退する。

 

「フン…ニゲタノネ…。マアイイワ、ノライヌナドホウッテオイテホンドヲツブシニイクワ…。」

 

そう言い残したミッドウェーは大本営に向かって進んで行った…。




はい。終わりました98話。ミッドウェーは筆者の都合により、戦艦棲姫になりました。まぁ、本当は空母棲姫にする予定でしたが…。(ミッドウェー海戦では、多くの空母が沈んだため。)まぁ、気にしない気にしない。
挿絵は、色をしっかり描こうと努力しましたが…。…とんでもない時間がかかりそうなので、こうなりました。
登場人物紹介コーナー
雑魚深海棲艦…この物語の最初にやられた改flagship深海棲艦。おいたわしや。
ミッドウェー…オリジナル深海棲艦。この物語はフィクションです。実際のゲームとは関係ありません。(てか、こんなのがいたら、ゲームが成り立たない…。)…はい。では、真面目に紹介します。戦艦仏棲姫特別上位亜種。騙して悪いが、俺得なんでな。そんなものゲームにはいない。150cm砲が50個以上付いており、リロードの最中に他の砲から打つことができる。所謂、コスモ弾ですね。艤装はACよりも硬い。…まぁ、考え方によっては、弱点が丸わかりなんですがね…。
次回!第99話「助言」お楽しみに!


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99話 助言

さて、残り1話となりました。…次の小説何書こうかなぁ〜?…えっ?まだ色々残ってる?はっはっは…、そこはフロム脳で…。(丸投げ。正直、やろうかどうか迷ってます。)
さて、今回のゲストは?
「ワタシノナハ…ミッド…」
ミッドウェーか…。てか、戦いの最中良いのか?
「ナゼワタシノナヲ…。マァイイ。イマハホンドニムカッテイルサイチュウダ。テミジカニタノム。」
了解。では、あらすじどうぞ

アラスジ
ゼンカイ、ワタシノカツヤクニヨリ、アイテノカンムスハニゲテイッタワ。ハナシニモナラナイワネ。


…………

 

「はぁ…はぁ…。くそっ!俺たちの攻撃が効かない…。」

 

ドミナントたちは近くの無人島で話す。

 

「て、提督…ゲホッ…。すまない…。」

 

「提督…ごめんなさい…。」

 

長門と赤城が謝ってきた。

 

「別に良い。お前たちが生きていてくれればな…。」

 

ドミナントは険しい顔をしながら言った。

 

「吹雪、まずは大本営に連絡だ。“今からそちらに未確認深海棲艦が向かっている。第4佐世保鎮守府提督、ドミナントが認める強さだ。万全の…深海棲艦が10万匹前後で来るくらいの準備と覚悟をしておけ。さもなくば全滅する。”と…。」

 

「司令官…。」

 

「……。もしかしたら、敗北するかもしれない。」

 

吹雪が心配そうな眼差しを送ったあと、大本営に伝える。

 

「…伝えました…。」

 

「…ありがとう吹雪…。俺たちは…止められなかった…。おそらく大本営でも結果は同じだろう…。勝って勝って、最後に負け…」

 

ドミナントは優しく…諦めたように言おうとしたが…。

 

「ちょっと待ってください!」

 

赤城が声を上げる。

 

「なんだ…?赤城…。」

 

「まだです…まだ私は戦えます…。」

 

「赤城…無茶をするな…。」

 

「無茶をしなくて勝てるなら…無茶なんてしません!」

 

「…何か良い案はあるのか…?」

 

「…いえ、ありません…。」

 

「…だろうな。…考えられる可能性は考えてみた。今から第4佐世保鎮守府に連絡して、救援を求める…。結果は無理だ。あと10分以内に大本営に着くだろう。間に合うはずがない。大本営から最終兵器を託される…それは可能性が低い…。あいつを倒せるほどの兵器を開発してたのだったら、ただの深海棲艦を倒せる武器がとっくにあるはずだ…。いきなり俺たちがパワーアップする。そんなわけがない…ここはそんなにファンタジーではなく現実だ。たまたま全艦娘が大本営にいる…そんなことがあるわけがない…。」

 

ドミナントは淡々と述べる。

 

「もう…無理なんだよ…。」

 

ドミナントは諦める。すると…。

 

パァン!!

 

ドミナントは目尻に涙を浮かべた瑞鶴に平手打ちさた。…とは言っても、ACなので、大したダメージにもならず、逆に瑞鶴の手が痛いだけだ。しかし、今のドミナントには、身体よりも心に大ダメージを負った。

 

「あんた…そんなに不甲斐ない提督だなんて思ってなかったわ!!」

 

瑞鶴は大声でドミナントを叱る。

 

「じゃぁどうするんだ!?10分以内に、大本営にあの化け物が着く!それまでに倒す方法があるのか!?」

 

ドミナントも大声を出す。

 

「それは…そんなのあるわけがないじゃない!!」

 

「ないじゃないか!!」

 

「…わかってるわよ…。でも…でも!提督はそんな地獄のような状態でも、私たちを導いてくれる!それが提督であるべき姿であって、私たちの提督なのよ!!」

 

「勝手な妄想を押し付けるな!俺だって元人間だ!出来ることと出来ないことがある!」

 

「それがダメなのよ!今のあなたはダメだと思ったらすぐに諦めて!試しもしないのに勝手に不可能だと決めつける!!あなたは…提督はそんな人じゃないはずよ!」

 

「だから…」

 

「提督!私に言ったわよね!?『諦めたら今までのことが全て水の泡になる』って。あれは…、あれは嘘だったの!?違うでしょ!!少なくともあの時の提督は本気でそう思っていたはずよ!提督は『もう後悔したくない』と言ったわよね!?今諦めたら絶対後悔するわよ!!同じ過ちを二度も繰り返さないんじゃなかったの!?」

 

瑞鶴が涙を流し、歯を食いしばりながらフーフー唸る。

 

「瑞鶴…。」

 

長門が呟く。そして…。

 

「提督、私は行くぞ。例え命令違反だとしても、私は諦めない。」

 

「司令官…。私も行きます。もう後悔したくないので…。」

 

「提督、私も瑞鶴さんの言う通りだと思います…。私は…提督がそんな人じゃないと信じたいです…。」

 

「提督…。五航戦に一航戦が負けていられません…。たしかに、提督の言う通り敗北かもしれませんが…私は諦めたくありません。」

 

「提督。私のanswerはわかるはずデース。提督、もうlastになるかもしれないデスけど…。私は提督のことが大好きデース。忘れないでいてほしいネー。」

 

次々と艦娘たちが出撃の支度をする。

 

「……。俺は行かないぞ…。無駄死にしたくないのでな。」

 

ドミナントは艦娘から背を向ける。

 

「提督…。」

 

「早く行け!お前たちは俺のためではなく、自分のために戦え!逃げたい時は逃げろ!…それが…最後の命令だ…。」

 

ドミナントは一切艦娘の方向を向かない。

 

「行くぞ。…お前にはガッカリだ。」

 

「司令官…。」

 

「提督…私は最後まで信じたかったです…。」

 

「フンッ…。」

 

「提督…。今まで迷惑をかけました…。」

 

「…今までtank youネ…。提督…。」

 

艦娘たちは全員進みながら、ドミナントが最後に見てくれないかと見えなくなるまで見ていた。その後、全員目尻に涙を浮かべていたり、静かに泣いていたりした。

 

…………

 

「…行ったか…。…瑞鶴、ありがとな。俺を取り戻してくれて…。」

 

ドミナントはそう言った後、第4佐世保鎮守府に電話する。

 

『こちら第4佐世保鎮守府。何か用か?』

 

「ジナイーダか?俺だ。ドミナントだ。急ぎの用がある。」

 

『なんだ?』

 

「艦娘全員でなくても良い。こちらに来れないか?」

 

『何を馬鹿なことを言っている。無理に決まっているだろう。セラフが今、ジャックと手術をしている。それに、お前だけでなんとかなるだろう?』

 

「…いや、ならない…。頼む…。来れないか…?」

 

『無理だと言っている。それに、そっちにすぐ行くとしてもVOBで30分はかかる。これ以上の改良をし、スピードを高めれば流石の私たちといえども体がもたない。それに、さらに時間もかかる。』

 

「…わかった…。…ならばお前たちに依頼を出す。報酬は俺の全財産だ。地位、金、時間、命…。全てだ。10分以内にここに来て、あいつらを助けてやってくれ。」

 

『そんなにも追い詰められているのか…。だが10分は無理だ。…いや、可能か?VOBにアレをつければ…。』

 

ジナイーダが呟く。

 

「可能ならそれよりも早く来てくれ。…依頼は受けたと認識する。良いな?」

 

『ああ。依頼は受けた。だが、艦娘は少数になる。いいな?』

 

「ああ。」

 

『ではそちらに向かう。』

 

そう言って電話が切られた。

 

…………

数分後

 

「はぁ…はぁ…。」

 

第4所属の艦娘たちは全員大破だったり、中破していた。それでも、立ち向かっていた。

 

「…モウ、ホントウニシツコイワネェ。デモムダヨ、ゼンブ。」

 

ミッドウェーは大砲を構える。

 

ズガァァン!ズガァン!ズガァァァァン!!

 

「赤城!避けろ!!」

 

長門は叫ぶが遅い…。

 

「提…督…。」

 

ドガァァン!ドガァァン!!ドガァァン!!

 

だが当たる寸前で爆発する。

 

「!?」

 

「!?」

 

艦娘たちは驚くが、ミッドウェーも驚く。

 

「不発…?」

 

「ナゼ…?」

 

疑問に思っているところに…。

 

「早すぎるが…仕方ない。」

 

遠くからドミナントが来る…。

 

「提督ー!やっぱり来てくれたデース!」

 

「全く…。来ると思っていたぞ。提督。」

 

「遅すぎるわ!もっと早く来なさいよね!提督!」

 

「提督…。来てくれたんですね…。」

 

「司令官!司令官が来てくれたのなら百人力です!」

 

「提督、私、ずっと信じていました。」

 

ドミナントを見た途端、艦娘たちは自然と笑みがこぼれていた。




はい。終わりました。次回で最終話ですね。
登場人物紹介コーナー
筆者…色々あり、現在の趣味は小説を書くこと。つまり、これ。自分のやりたかった内容が、日々ズレていっている。
次回!「最終話」お楽しみに!


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最終話

はい。やってきたきた最終話。読者の皆様、この小説を読んでいただき、誠にありがとうございました。筆者は、次の世界へ旅立ちます。最後に、瑞鶴とお別れできないのが残念ですが、時間がないので、終わります。



































ねぇ、聞こえる?

































ありがとう!


〔BGM Sunrise〕

 

ドミナントを見た艦娘たちは自然と笑みがこぼれていた。

 

「フンッ!ノライヌガナンビキフエヨウトケッカハオナジヨ!」

 

ミッドウェーはドミナントたちを撃つ。

 

「本当に野良犬かな?」

 

ドガァァァァン!ドッゴォォォォン!

 

ドミナントはCR-WH05BP(バズーカ、通称『神バズ』)をミッドウェーに当てる。

 

「やはり、左腕では重いが…、効いたか…?」

 

「フン…ケッコウヤルワネ。デモムダヨ、チガウモノ。」

 

爆煙が晴れる。しかし、目立った傷は与えられていたなかった。

 

「くそっ、ダメか…。」

 

ドミナントは撃ってくるミッドウェーに対してすかさずブーストを使って避ける。

 

「提督、さっきはありがとうございました。あの不発は提督が弾を当てたからですよね。」

 

赤城がドミナントの隣でいう。

 

「?何がだ?…まぁいい。とにかく今は離れて回避するぞ。」

 

「はい!」

 

赤城はすかさずドミナントから離れる。

 

「司令官!そんな武器…どこから…?」

 

吹雪がドミナントに聞く。

 

「あぁ。伝えていなかったな。佐藤中佐から届いたものを持ってきてもらった。それと、実はもう一つサプライズがあるんだ。」

 

「サプライズ?」

 

その瞬間…。

 

ドガァァン!ドゴォォォン!

 

ミッドウェーに攻撃が当たる。

 

「!?…イッタイドコカラ…?」

 

ミッドウェーは砲撃された方向を見る。

 

「ドミナント。遅すぎたか?」

 

「ギャハハ!硬いね〜。」

 

「当たらない…。」

 

「だ、大丈夫だよ!セントエルモちゃん!」

 

4人、新たな強力な助っ人が参上する。VOBにさらに改良を加え、まっすぐにしか行けない代わりにスピードをグンとあげたのだ。

 

「「「パージします。」」」

 

全員VOBを乗り捨てて、ドミナントの方向へ行く。

 

「司令官…サプライズって…。」

 

「あぁ。強力な助っ人の登場だ。」

 

ドミナントは吹雪に言う。

 

「全く、体がぶっ壊れるかと思ったぞ。」

 

ジナイーダはドミナントに言う。

 

「すまないな。でも、こんなに早く来てくれて助かった。礼を言う…。」

 

「その言葉は勝ってから言うものだ。さて、次はあいつの撃破だったな。報酬は支払ってもらうぞ。」

 

「ああ。」

 

ジナイーダはそうやりとりしたあと、口元を緩ませてミッドウェーを倒すのだった。

 

…………

 

「くっ…。効いていないな…。」

 

ジナイーダが言う。

 

「ねぇ〜、あれやばいんじゃない〜。ギャハハ!」

 

主任も笑いながら言う。

 

「ああ。ものすごく硬いし、攻撃力も異常な艤装だ。」

 

長門が忌々しげに言う。

 

「なんとかする方法を…。」

 

そう言った途端…。

 

「提督、私に考えがあります。」

 

「夕張?その考えとはなんだ?」

 

カクカクシカジカ…

 

「なるほどな。そこは盲点だった。」

 

ドミナントは悪い顔でにやけた。

 

「みんな聞いてくれ!これから何が起きようとも今まで通りに攻撃をしてくれ。」

 

ドミナントは艦娘、そしてジナイーダたちに言う。

 

……何が起きようとも?何か起きるのだな。知りたいが…、あいつが言うのなら大丈夫だ。

 

……提督(司令官)の言うことは、信じます!

 

艦娘とジナイーダたちは信じて攻撃をする。

 

「フン…ザッシュゴトキニ…。」

 

ミッドウェーはジナイーダたちに夢中だ。

 

「よし!作戦は伝えたね!行くよ!セントエルモちゃん!」

 

「わかった!」

 

夕張がセントエルモを手でリードしながら近づいていく。

 

「やるよ!息を合わせて!」

 

「了解!」

 

「「3!」」

 

「「2!」」

 

「「1!」」

 

「イツノマニ!?シズメテアゲル!」

 

ミッドウェーは砲身を構えたが、それが夕張たちの思う壺など知る由もなかった。

 

「かかったわね!」

 

ドガァ!ドガァァン!ドガァァァン!!

 

「キャァッ!?」

 

初めてミッドウェーが悲鳴をあげた。

 

「何が起きたんだ?」

 

ジナイーダたちも見る。

 

ォォォォ…。

 

煙が晴れて、どうしたのか納得する。

 

「腔発か?」

 

ジナイーダがつぶやく。腔発とは、戦車や戦艦などの砲弾が事故で砲身の中で爆発することだった。

 

「いや、違う。」

 

ドミナントはにやけていた。

 

「…ホウシンノナカヲネラウナンテ…。」

 

……150cm以上穴があるんだ。俺たちはなぜ気がつかなかったんだ?

 

ミッドウェーの一つの艤装が壊れ、崩れて海に落ちた。そして僅かな隙間が見える。

 

「!?これで中を狙えます!」

 

艦娘たちはわずかな希望から大きな希望へ変わった。

 

「ダメージが入るところができた途端!あなたの負けは確定よ!」

 

瑞鶴は艦載機を飛ばす。

 

「…チョウシヅクナ!!」

 

「「「!?」」」

 

ミッドウェーは途端に体を覆う艤装を攻撃に使う。そして現れたのはミッドウェー自身。顔に大きな傷のある少女だった。

その艤装は巨大な二つの砲台で、他とは違うのがすぐにわかる。

 

「シズメシズメシズメシズメシズメシズメェ!!」

 

ドガァァァァァン!!ボガァァァァァァン!!ドガァァァァァァン!!

 

巨大なグレネードランチャーだった。

 

「やっと本気を出したか。こうでなくてはつまらないからな!」

 

ドミナントたちは注意しつつも攻撃をする。そこに…。

 

『あー、あー、ドミナントたち?聞こえるかな〜?』

 

主任から通信が入る。

 

「ああ。聞こえる。準備できたか?」

 

『もちろん。じゃ撃つよ〜。』

 

「艦娘たち!そしてジナイーダ!そいつから離れろ!」

 

「「「はい!」」」

 

ドミナントは大声で言い、ジナイーダたちが離れる。

 

「マケヲミトメタノカシラァ!?ニガサナイワヨォ!!」

 

「いや、お前の負けだ。ミッドウェー。」

 

「?」

 

ミッドウェーは気づかなかった。一番目を離してはいけないやつから目を離してしまったことに…。

 

ギャハハハハハハハハハハハ!!アーハハハハハハハハハハハハ!

 

ギュウィィィィィィィィィィン!!ズガァァァァァァァァァァァァァァン!!

 

その時、ヒュージキャノン(主任砲)がミッドウェーに直撃する。

 

「ア"ア"ァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

ミッドウェーは悲鳴をあげる。

 

ドガァァァァァン!ボガァァァァァン!!

 

「マダ…マダタタカエル…。」

 

ミッドウェーは砲台を構えるが…。

 

ガラガラ…ザバァァン!ザパァァァン!

 

砲台が次々と落ちる。流石にあの硬い砲台でも主任砲には敵わないようだ。

 

「クッ…ココマデナンテ……。」

 

ミッドウェーは初めて膝をついた。そして、ゆっくりと沈んでいく…。

 

「ドウシテ…?ドウシテソコマデツヨクナレルノ…?アノテイトクヤ、ロボットヲベツトシテモ、アナタタチハツヨスギル…。」

 

ミッドウェーは沈んでいく中、吹雪に聞く。

 

「…そうですね…。守りたいものがあるから…でしょうか?」

 

「ソンナモノ…キモチダケデアッテ、チカラニナラナイワ…。」

 

「たしかに気持ちだけです。でも、だからこそ頑張れるのです。」

 

「ガンバル…?」

 

「そうです。大切な人を守りたい。その気持ちがあるからこそ諦めず、認められたいと思って、努力ができるのだと思います。」

 

吹雪は静かに、言い聞かせるように言う。

 

「マモリタイモノ…。ナルホドネ。ワタシニハソレガナカッタ…。ワタシハ、ウマレタトキカラコノギソウヲツケテイテ、コノカイイキノナカノシンカイセイカンノナカデハサイキョウダッタ…。ダカラコソ、マモリタイモノガナカッタ…。」

 

吹雪はミッドウェーが言うのを黙って聞いていた。

 

「ワタシハ…マモリタイモノハイツモジブンジシンダッタ…。タニンノタメニタタカウナンテバカラシイトオモッテイタワ…。デモ、アナタタチハソレヲナシトゲタ…。ワタシノカンガエガマチガッテイタトイウコトネ…。」

 

「それも違います。」

 

「エッ?」

 

吹雪はミッドウェーに言った。

 

「自分自身を守るのも立派な考えです。生きていればそれぞれ考え方が違います。だからこそ、あなたは強かった。」

 

「…フフ、フフフフフ…。アナタハ…オモシロイヒトネ…。シズンダラカンムスニカワルトイウノガホントウナラ…。カワッテアナタタチノチンジュフ二イキタイワ…。」

 

「私たちは…第4佐世保鎮守府は敵意がなければ誰でも歓迎します!」

 

吹雪が笑顔で言った。ミッドウェーはキョトンとしている。

 

……アァ、コレデマケタノカ…。

 

最後、沈む間際、ミッドウェーは笑顔だった。ドミナントたちを攻撃した時のあの笑顔ではなく、優しく、安らかな笑顔だった。

 

…………

 

「……。吹雪、帰ろっか。」

 

「……。そうですね。」

 

ドミナントはミッドウェーが完全に沈んだあと、声をかける。

 

「……。生まれ変わると良いな。」

 

「……。はい。」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

「帰るぞ。大本営に連絡して資材をもらわなければならないしな。」

 

「ジナイーダ、お前は本当にブレないな。」

 

「当たり前だ。このままでいてみろ。資材が完全に枯渇するぞ?」

 

ドミナントは苦笑いして、ジナイーダが真面目に言う。

 

「さぁ、帰るか!」

 

ドミナントは口元を緩めて言う。

ジナイーダと長門、セントエルモも口を緩める。

瑞鶴はツンとしているが笑顔だ。

吹雪と古鷹と夕張は悟ったような笑顔だ。

赤城と金剛は嬉しそうにほおを緩めている。

主任は大笑いしている。

 

これが、第4佐世保鎮守府である。

 

 

 

 

 

 

 

 

〔エンディングBGM AC3のエンディングBGM〕

(ゆっくりスクロールしてください。飛ばしたい方は飛ばしてどうぞ。)

 

 

 

 

ドミナント ???

 

ジナイーダ 浅野 まゆみ

 

ナインボール・セラフ ???

 

主任 藤原 啓治

 

ジャック・O 津田  健次郎

 

ンジャムジ 樫井 笙人

 

ライウン 武村 

 

鳥大老 上田 燿司

 

AMIDA ???

 

神様 ???

 

先輩神様 ???

 

妖精さん なし

 

 洲崎 

 

叢雲 上坂 すみれ

 

夕張 ブリドカット セーラ 恵美

 

吹雪 上坂 すみれ

 

如月 日高 里菜

 

三日月 日高 里菜

 

セントエルモ ???

 

龍驤 日高 里菜

 

伊58 中島 

 

加賀 井口 裕香

 

鹿島 茅野 愛衣

 

島風 佐倉 綾音

 

大淀 川澄 綾子

 

神通 佐倉 綾音

 

 早坂 

 

雪風 藤田 

 

大和 竹達 彩奈

 

シレア(佐藤中佐) ???

 

多摩 佐倉 綾音

 

Верный(ヴェールヌイ) 洲崎 

 

赤城 藤田 

 

金剛 東山 奈央

 

睦月 日高 里菜

 

皐月 日高 里菜

 

長月 日高 里菜

 

文月 日高 里菜

 

長門 佐倉 綾音

 

比叡 東山 奈央

 

榛名 東山 奈央

 

霧島 東山 奈央

 

瑞鶴 野水 伊織

 

古鷹 大坪 由佳

 

川内 佐倉 綾音

 

山風 橋本 ちなみ

 

那珂 佐倉 綾音

 

加古 大坪 由佳

 

磯風 川澄 綾子

 

菊月 日高 里菜

 

五月雨 種田 梨沙

 

天龍 井口 裕香

 

龍田 井口 裕香

 

 洲崎 

 

 洲崎 

 

あきつ丸 能登 麻美子

 

まるゆ 能登 麻美子

 

明石 種田 梨沙

 

陸奥 佐倉 綾音

 

木曽 佐倉 綾音

 

飛龍 上坂 すみれ

 

那智 種田 梨沙

 

鳥海 東山 奈央

 

元帥 ???

 

中山大将 ???

 

山田中将 ???

 

難波少将 ???

 

陸田中将 ???

 

樫本少将 ???

 

長光少将 ???

 

??? ???

 

??? ???

 

??? ???

 

作品 ACの愉快な仲間たち(一部)と一緒に艦これの世界に来てしまった…。

 

原作 艦隊これくしょん

アーマードコアシリーズ

 

 

END

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザ────…。ガチャ

 

『………。』

 

「ああ。実験はした。」

 

『………。』

 

「なかなかだ。」

 

『………。』

 

「ああ。だが、向こうで戦いがあったらしくてな。こちらに来て、気づかれないように弾を空中で追撃した。」

 

『……………………。』

 

「…!?。そうか…。お前の作戦の要のやつがいるのか…。…だが、こちらの味方になるかどうかは別だろう。」

 

『…………。』

 

「ああ。そうだ。」

 

『……………。』

 

「ああ。」

 

『……………………。』

 

「そうか。あいつがか…。」

 

『……。』

 

「了解。帰投する。」

 

ガチャ。ザ────…。

 

「…第4佐世保鎮守府…か…。」

 

END?




コンコン…。
「お茶持ってきたから入るわよ。…て、あれ?」
キョロキョロ。
「…そっか…。筆者さん、この世界からどっか行っちゃったんだっけ…。」
コト…。
「……。いたらウザいけど、いなくなったら寂しいわね…。…せめて、こんなに世話になった私に挨拶ぐらいして行きなさいよ…。」
ギィ。
「この椅子、こんなに座り心地良かったんだ…。…ん?」
パサ…。
「何かしら?…そう思ってみれば、原稿用紙?だっけ?これにいつも書いていたわね。…どこの世界に行ったかわかるかしら?」
ガサガサ…。
「あった。…何々…?“転生したら、レイヴン、リンクスだらけの街に住むことになった…”?…こんなものに、私たちは負けたの…?」
…クシャ……ビリッ。
「あっ…。怒りのあまり、つい握っちゃった…。どうしよう?…書き直しておけば、何とかなるよね?」
カリカリ…。
「…でも、そのまま書き直すのもシャクね。…勝手にいなくなった筆者さんが悪いのよ…。…次回!第101話『最終話…とでも、言うと思ったかい?この程度、想定の範囲内だよぉ!』お楽しみに!…よし!これで良いわね!…もしかしたら、帰ってくるかも知れないし。」
……。
「あとは、私がやったことが証拠に残らないように…。あポイーッと!」
ガコン!
「ナイスシュート!それじゃ、帰りましょう。」



ゴゴゴゴゴ…。


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第二章
101話 最終話…とでも、言うと思っていたのかい?この程度、想定の範囲内だよぉ!


101話!祝!第二章!…皆さん、俺気づいたんすよ。この小説を続けさせる方法ってやつです。馬鹿なんで時間かかったすけどね。続けさせるためには、誰かが読み続ければいい。俺以外の誰かが!見ないやつは消してしまえばいい。俺にはそれができるらしいんで!
「何言ってんの?」
話が…違うっすよ…。
「ねぇ、聞いてる?」
俺は…特別だって…。
「……。」
死にたくな…。
ドガ
いたっ、痛いって〜…。
「落ち着きなさい。」
“落ち着け”って…。てか、瑞鶴、何で俺ここにいるの?次の世界へ旅立ったはずなんだけど…。
「さ〜てね。」
…何でそんなに機嫌が良いの?てか、こんな綺麗な字、俺の字じゃないよね?俺が書いたやつは?
「さぁ?私知らないケド?」
目を合わせんかい。目を。…まぁいいや。しばらく続きそうです。
では、今回のゲストは?
「この人〜…て、あれ?」
誰も来ないけど…。
「…もしかして、今までの人全員やっちゃった?」
らしいね。それじゃ、瑞鶴頼むよ。
「わかったわ。」

あらすじ
前回、大きな戦いをしたわ。本当に轟沈するかもしれなかったけど、提督さんや教官、夕張やセントエルモが来て、形勢逆転で勝つことができたわ!…まぁ、こっちの美味しいところを持っていかれちゃったけど…。


第4佐世保鎮守府

 

そこは、世間では極秘扱いの最高戦力がある場所。

そこに所属する艦娘たちの平均レベルは最大の99…。つまり、全員がレベルMAXと言えるのだ。しかし、本当はそこでレベルは終わりではない。

艦娘の他に異界からの人間や、神、AIまでもが集まる場所。

そして、そこの最高責任者、提督でもある彼、まさに王者と言っても過言ではない。

…が、その仲間たちにより振り回され、また、振り回す者でもあり、その中で苦悩し、または楽しむ一人の提督の物語である。

 

 

…………

第4佐世保

 

「ただいま。」

 

ドミナント(提督)が帰還する。そこにいたのは…。

 

「お帰りなさい。ドミナントさん。」

 

セラフが笑顔で迎えてくれた。

 

「おぉ!無事成功したんだな!」

 

「はい!」

 

「良かった良かった。」

 

「フフフフ。」

 

…………

真夜中

 

「…ハッ!」

 

ドミナントが目覚める。あたりは暗く、ベッドの上にいた。

 

「…またあの夢だ…。…現実とは違うとわかっているはずなのに…。」

 

ドミナントは一人、ベッドの上で考えていた…。

 

…………

数日前

 

「よし、大本営から資材が届くって連絡あったし、あとはセラフの結果だけだな。」

 

ドミナントは鎮守府に着く前に話す。

 

「…嫌に元気だな…。失敗する可能性もあるぞ?」

 

ジナイーダが深刻そうに言う。

 

「いや、それはない。だって、そんなシリアス望んでないし。そこまでの小説じゃないだろう?」

 

「だが、20%だぞ…?5人に1人は失敗する確率だ…。」

 

「5人に1人だろ?全然平気じゃないか。まぁ、帰ってからのお楽しみだな。」

 

ドミナントは気楽に考えていた…。

 

…………

第4佐世保

 

「ただいま。」

 

「…あっ。お帰りなさい司令官。」

 

ドミナントが言い、何やら集まって話していた艦娘たちが返す。

 

「…どうした?」

 

「……。…ジャックさんが病室で待ってる。早く行きなさい。」

 

「?わかった。」

 

ドミナントは病室へ向かった。

 

「…そうか…。」

 

「…はい…。」

 

ジナイーダは察し、艦娘が返事をした。

 

…………

病室

 

コンコン…ガチャ

 

「ジャック…どうした?」

 

「……。」

 

まるで待っていたかの如く扉の前にいた。

 

「話がある。少しこちらに来い。」

 

「?」

 

ジャックの後を付いていくドミナント。そして、病室から出て待合室に行く。

 

「…単刀直入に言う。」

 

「ああ。」

 

「…セラフは生きている。」

 

「おぉ!やったじゃないか。」

 

ドミナントは今までのことを思い、少し心配になっていたが、安堵した。

 

「話はそれだけではない。」

 

「えっ?」

 

「…そうだな…。最前は尽くした。」

 

「えっ?何?どゆこと?」

 

「…大変言いにくいが、記憶が飛んでいる。」

 

「…え…。」

 

「記憶がないんだ。コンピュータを取り除こうとしたとき、ネスト?の情報が外部に漏れないように記憶を消すようにプログラムされていた。最初からそうできていたのだろう…。」

 

ジャックが深刻そうに、まっすぐ目を見て言う。

 

「……。」

 

「…まぁ、あと一歩間違えれば、爆散していたかも知れん…。」

 

「…そうか…。」

 

ドミナントは、何で言えば良いのかわからなかった。

 

「…会うならしっかりと覚悟してからの方が良い。」

 

「わかった…。心の準備が出来たら向かおう…。」

 

ドミナントはその日は会うことが出来なかった。

 

…………

現在

 

「…そろそろ会うべきか。」

 

ドミナントは決意し、翌朝向かうのだった。

 

…………

翌朝、病室

 

「セラフ、いるか?」

 

「……。」

 

セラフは、窓の外を見ていた。

 

「…大丈夫か?」

 

「…!?」

 

ドミナントがセラフの見ている方向から見て、セラフは驚いていた。

 

「えっと…。あなたは…?」

 

「俺か?俺は…ドミナントだ。」

 

「ドミ…ナント…。」

 

「ああ。そうだ。…ここでは提督と呼ばれることが多いがな。」

 

「提督?」

 

「ああ。」

 

そして、ドミナントはセラフに今までのことを話した。

 

「…つまり、私の名前はセラフ?あなたの名前はドミナント。さっきの人はジャック?」

 

「ああ。そうだ。」

 

「ドミナント提督?」

 

「まぁ、間違いではないな。」

 

「そうですか…。」

 

セラフは頼りなさそうに言う。

 

……。どうしたものか…。これは、今まで通りに接するには無理があるな。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「どうかしましたか?」

 

「…あっ。いや、なんでもない。」

 

「?」

 

……まぁ、例え記憶がなくても、約束は約束だ。連れて行ってやらないと…。それに、艦娘たちは知っていたんだな。記憶喪失のことを…。

 

そして…。

 

「よし、セラフ、動けるか?」

 

「えっ?あっ。はい。」

 

「…立つことができて、歩くことなどが出来るかという意味だ。」

 

「出来ますけど…。」

 

「じゃ、行きますか。」

 

「行くって…。どこへ…?」

 

「…遊園地だ。記憶のあるお前と約束したからな。」

 

「…?」

 

「まぁ、とにかく行くぞ。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「今のセラフはこの状態だ。ボディーガードが必要だろう?」

 

「もちろん!私のこと忘れてないよね?」

 

「記憶喪失になったのは私の責任でもある。というより、後悔の自負で押し潰されそうだからな。」

 

ジナイーダや神様、ジャックがぞろぞろと入ってくる。

 

「…聞いていたのか?」

 

「当たり前だ。記憶をなくしたセラフに何するか分からないからな。」

 

「俺ってそんなに信用ないの?」

 

「まぁ、それより、早く行くぞ。」

 

「お、おう。」

 

ドミナントが話していると…。

 

「???」

 

セラフが目を回していた。

 

「あっ。と、セラフ、大丈夫だ。こいつらはお前の敵じゃない。むしろ仲間だ。」

 

「えっ?そ、そうなんですか?」

 

「「「こいつら…?」」」

 

「……。まぁ、細かいことは置いといて、行くぞ。」

 

「あっ。はい。」

 

ドミナントはセラフの手を取り、仲間と共に遊園地へ行った。その途中…。

 

……えっと…、いきなり何なんでしょうか…?このドミナント提督って人。私を連れ出して…。変態でしょうか?でも、約束したって言ってましたし…。…もしかして、私とこの人とは特別な関係…?嘘…こんな人と?でも、私の名前を知っていましたし…。何より、私がこの人に言ったんですよね。…何だか、頭の中で弾けそうな気が…。

 

セラフは考えていた。そこに…。

 

「隊長、仲間外れは良くないなぁ〜。俺も入れてくれないと…。」

 

「主任…。すまん、マジで忘れてた…。」

 

「……。」

 

「…む、無言でヒュージキャノン(主任砲)構えるのやめよう?ね?連れて行ってあげるから…。ね?」

 

こうして、ドミナント御一行は、鎮守府のことは長門に任せて出発したのだった。

 

…………

遊園地

 

「世界は娯楽を求め、それでも仕事を辞められぬ。チケットをあげます。」

 

「相変わらずだな…。」

 

ドミナントは人数分のチケットを購入し、中に入る。

 

「……。」

 

セラフは今のを見て、なんとも言えない表情をする。

 

「…ドミナント提督、本当にここで合っているんですか…?」

 

「ここのはずだが?」

 

「嫌な予感がします…。」

 

そして、再度入場してしまった。

 

…………

夕方

 

ドミナントたちは遊び終わっていた。

 

「……。」

 

セラフは、どうやら安心していないらしく、ぎこちなかった。そこで…。

 

「セラフ、最後はあれだよな?」

 

「?あれとは…?」

 

「観覧車だ。」

 

「……。」

 

セラフの頭で何かが起きそうだ。

 

「観…覧…車…。」

 

「ああ。走るぞ!」

 

「えっ?ちょ…。」

 

ドミナントに手を取られ、走って行った。

 

…………

 

「よし、乗れたな。」

 

「…強引です…。…あれ?なんだか懐かしいような…?」

 

「フッフッフ…。」

 

ドミナントたちは観覧車に乗る。

 

「…いい景色…です…ね…。」

 

「ああ。そうだな。…アイス持った子供がいるぞ?」

 

「そう…ですね…。」

 

遊園地が夕焼けの光で輝いている。

 

「…!?視界がぼやけて…。」

 

「…それは涙というんだ。」

 

「…何故…?」

 

「分からんな。」

 

……ここでお前は俺に言ったからな…。

 

ドミナントは思い…。

 

「セラフ、あの時の返事をしよう。」

 

「…あの時…?」

 

「そうだ。」

 

ドミナントが話す。

 

「お前のことが大好きだ。」

 

「!?」

 

……他のみんなも大好きだがな。

 

ドミナントは清々しい本当の笑顔で言った。

 

……涙が…、止まらない…。…ドミナント…さん…?…あの時…私は…。…思い出して…。

 

「…ドミ…ナント…。」

 

「どうした…?」

 

「さん…?」

 

「!」

 

「ドミナントさん…。」

 

「セラフ…思い出したのか…?」

 

「…うる覚えですが…。…今の言葉本当ですか…?」

 

「…フッフッフ…。フフ、アハハハハハ。」

 

ドミナントは突然笑う。

 

「?どうかしましたか?」

 

「うる覚えじゃないだろう?その言葉に反応するんじゃ。」

 

「…バレましたか。」

 

セラフの口元は緩んでいた。

 

「…で、本当ですか?今の言葉。」

 

「ああ。本当だとも。…他のみんなもだがな。」

 

「…騙されました…。」

 

「まぁ、嫌いじゃないだけ良いだろう?」

 

「…そうですが…。」

 

ドミナントはセラフの頭を撫でる。

 

「…でも、ドミナントさんの本当の笑顔が見れて満足です。」

 

「そうか?」

 

「…あの笑顔、ほかの皆さんにも見せたらもっと好感度上がりますよ。」

 

「いや、だが…。そうそう出来んぞ…。」

 

「…私も少し上がりましたし…。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「あっ!いえ!何でもありません!…フフ。」

 

セラフは少し笑いながら否定した。そして、ジナイーダたちにセラフが復活したことを告げ、鎮守府に戻るのだった。




はい。終わりました。ネタがない…。内容はあるんですが、繋がるネタが…。
登場人物紹介コーナー
遊園地…毎度お馴染み。あの遊園地
次回!第102話「海軍の最高権力者」お楽しみに!


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102話 海軍の最高権力者

はい。きました102話。
「102話も続いたのね。」
そだよ。…次は200話目指すか…。
「あっ。言ったわね?言っちゃったのね?」
…目指すだけさ。
「いいえ、言った以上、私が責任持って書かせるわ。」
…ブラック企業も真っ青だな。
「何言ってんの?1日1話ぐらい平気でしょう?」
あのねぇ…。筆者は一日中忙しいの。この小説だって、暇な空き時間に書いているの。それも1日1話ペースで。
「?1日1話ペースじゃなきゃいいじゃない。」

「だって、筆者さん1日1話って決めてないでしょう?」
…ハッ!?そうだった!その通りだ!
「でしょう?」
フッフッフ…。200話いけるな。…というより、ゲストは?
「いないわ。」
そっか〜…。
「たまには筆者さんやりなさいよ。」
りょ。

あらすじ
前回、セラフの記憶がなくなった。そして復活した。

「…これだけ!?」
詳しくは、前回を見よう!(丸投げ)


…………

大本営

 

ここで働いている艦娘は全員優秀であり、優れた素質の持ち主が集う場所。だからこそ、全艦娘(例外もいる)にとって憧れの職場であり、ここに来られることを夢見ている。

ここには、世界でたった一人しかいない艦娘『大和』がおり、全艦娘の憧れの人である。現在、その姉妹艦の『武蔵』は数年前海上で確認されて以来、姿を見たものがいない。つまり、大和型は『大和』しかいないのだ。

そして、その『大和』…、その場所、この組織の最高責任者であり、全提督(例外もいる)の憧れである元帥がいる場所…。

そして元帥と大和だけが、ドミナントたちがACであることを知っている。

それが大本営である。

 

…………

大本営 執務室

 

「元帥殿、連絡です!」

 

「知っている。」

 

「?」

 

「第4佐世保鎮守府の活躍だろう?」

 

「はい。」

 

ここにいるのは元帥、そして大和である。

 

「新種の深海棲艦を沈めることができたようです。」

 

「そうか。」

 

「その深海棲艦は、『ミッドウェー』と名乗り、ラスボス級の強さだったらしいです。」

 

「そうか。」

 

「…あまり関心がなさそうですね。」

 

「ああ。重要なのはそいつの対処だからな。次出てきたら、また彼らの手を借りてしまうことになる。」

 

「…そうですね。でも、もう出ない気がします。」

 

「?何故だ?」

 

「彼らの証言によると、その新種は何年も前からいるみたいです。もし、そのことが本当なら、その間にもう一人の『ミッドウェー』が確認されてないとおかしいからです。それと…。」

 

「それと?」

 

「うふふ…。私の勘です。」

 

「なるほど…。」

 

今ので元帥は納得したようだ。

 

「フフフ…。また彼らに一歩先を行かれたな。」

 

「…そうですね。私たちも頑張りませんと…。」

 

「まぁ、我々と同じくらいの強さの鎮守府ならば、『第3呉鎮守府』くらいだろう。しかし、第4佐世保や第3呉と並ぶ鎮守府があると私は思っている。」

 

「えっ!?どういうことですか…?」

 

「…君は知らないと思うが…。一週間くらい前、『第2舞鶴鎮守府』の提督が第4佐世保鎮守府に訪問した。…ただの提督なら、不明な点が多い第4佐世保にだけは普通は訪問しないはずだ。」

 

「…そ、そうですね。」

 

……どうしましょう…。元帥殿は佐藤中佐が彼らの仲間の一人と親友だったなんて知らない…。…彼らのことを考えると、“訪問”という名の"ただ遊びに来ただけ”な気がします…。

 

大和が考えていると…。

 

「…第2舞鶴の提督に頼み、第2舞鶴のデータを送ってもらった。そこには、艦娘のレベルこそ低いものの…。技術力や科学力がとんでもなく高い。…彼らと同類の気がしてならないのだ…。」

 

「…なるほど…。」

 

……佐藤中佐…。そんなに科学力が高いなんて初耳ですよ…。彼らの一人と親友で、ロボットにはなれないだけだとずっと思ってましたよ…。

 

「それともう一つが、『第1横須賀鎮守府』だ。」

 

「はい…。」

 

「あそこは、この大本営ですら極秘扱いの鎮守府…。どんな艦娘がいるか、何人いるか、平均練度はどれくらいか、資材の量はどれくらいか、どんな施設があるかなど、全く知らない。調査書を送っても、帰ってきたこともない。訪問しても私ですら門前払いの鎮守府だ。どんなものやどんなことをしているのかが全く不明だ。つまり、あそこは大将が提督だが、どれくらいのものか検討がつかない。」

 

「…警戒しておく必要がありそうですね…。」

 

「つまり、注目しておく鎮守府は、『第4佐世保鎮守府』、『第3呉鎮守府』、『第2舞鶴鎮守府』、『第1横須賀鎮守府』だと私は思う。」

 

「そうですね…。」

 

「…これから第4佐世保鎮守府に向かおうと思う。大和も支度をした方が良い。」

 

「なるほ…。えっ!?」

 

「前から言っていたはずだろう?第4佐世保のドミナント少佐と会って話がしたいと。」

 

「おっしゃっていましたが…今ですか?」

 

「うむ。」

 

そして、元帥は支度をする。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。今電話しますので。」

 

「わかった。」

 

大和は第4佐世保に連絡する。

 

…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「暇だー↑暇だー↓暇だー↑。」

 

「司令官、すごく暇そうですね…。」

 

ドミナントが、本日の仕事が終わり、椅子に座りくるくると回っていると…。

 

プルルルル…。プルルル…。

 

電話が鳴り出す。

 

「……。」

 

……大本営からの気がする。…無理難題押し付けられる前に居留守使おうかな?

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

「はい、こちら第4佐世保鎮守府です。えっ?大本営ですか?」

 

「白雪ぃ…。」

 

秘書艦である白雪が出てしまった。

 

「今司令官と変わります。…はい、司令官。」

 

「……わかった…。」

 

ドミナントは、少し微笑んでいる白雪に渡される。

 

「こちら、ドミナント。ただいま、電話に出ることができません。ピーという音が聞こえましたら、おかけ直しください。」

 

『えっ!?あの…。』

 

「…何でしょうか?大和さん。」

 

『あっ、聞いてくれるんですね。…その声から察するに、無理難題を押し付けられるのではないかと思っていますね…。それと、大変申し上げにくいのですが…。』

 

「何でしょうか…?」

 

『元帥殿がそちらに向かうそうです…。』

 

「…えっ?」

 

『元帥殿がそちらに向かうそうです。』

 

「…何で?解雇?俺ちゃんとやってきたよね?何で?…イレギュラー要素の抹消ですか…?大本営がそう判断したんですか…?」

 

『違います。あなたの戦果を耳にして、是非会いたいとおっしゃっているんです。』

 

「なるほど…。…では、用意しておきますね。」

 

『すみません…。…あれ?元帥殿?…もう行ってしまったのでしょうか…?す、すみません。それでは、失礼します。』

 

ガチャ…。

 

電話が切られた。

 

「あの…、司令官…?解雇とか聞こえましたが…?」

 

白雪が心配そうに聞いてくる。

 

「…大丈夫。解雇はされないと思う…。というより、思いっきり大変だ…。」

 

「な、何がですか?」

 

「…元帥と大和が来る…。」

 

「えっ!?あの大和さんが!?」

 

「そうだ…。だから、全員に放送してくれ…。おそらく、5時間後には元帥が到着する。それまで、準備しておくように…。」

 

「わ、わかりました!」

 

白雪は急いで放送室へ向かった。

 

「…はぁ…。なんだか、疲れたな…。いつもこんなんじゃ身体がもたん…。」

 

独り言を呟いたあと、準備をするのだった。

 

…………

 

キキィ。ガチャ…

 

「ここが、第4佐世保鎮守府か…。」

 

「そのようですね。」

 

元帥と大和が到着する。タクシーは街に戻って行った。

 

「…憲兵もいないのか…。」

 

「…不用心ですね…。」

 

そして、一歩足を踏み入れると…。

 

ビュッ!

 

「動くな…。」

 

「なっ!?」

 

「……。」

 

紫色の風が吹き、元帥は背後からナイフを喉に当てられる。元帥は黙っている。大和は驚きの声を発し、バレないように携帯を操作しようとするが…。

 

「最後の警告だ。動くな…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

もちろん、見逃すわけがない。氷よりも冷たい声の警告に、緊迫した状況に陥り、時間が流れるのが遅く感じる。そこに…。

 

「ちょ、ちょ、ちょ…。ジナイーダ!何をしているんだ!?」

 

ドミナントが駆けつける。

 

「…侵入者だ。」

 

「いや、放送聞いてなかったの?この人たちは元帥殿と大和さんだよ。…まぁ、その心がけは感心するけど…。」

 

「む?そうなのか?」

 

そして、ジナイーダはナイフをしまい、ドミナントの横に並ぶ。

 

「…すまなかった。」

 

「すみませんでした!元帥殿、大和さん。」

 

二人は頭を下げる。

 

「いや、良い。実に見事な腕だ。大本営の警備隊長に任命したいくらいだ。流石に、ヒヤヒヤしたがな。」

 

「い、いえ、元帥殿も無事でしたし…。あはは…。」

 

大和は無理をして笑い、元帥殿は少し笑っている。

 

「いや、私はここが良い。大本営へは行かないぞ。」

 

「はっはっは。そうかそうか。」

 

「…挨拶が遅れた。私はここに所属している『ジナイーダ』だ。」

 

「お…。いえ、私はここの提督、『ドミナント』です。」

 

「私は大本営の最高責任者、元帥だ。」

 

「大和型一番艦、大和です。」

 

4人は簡単な挨拶をした。




はい。終わりました102話。次回も元帥殿の第4佐世保見学編は続きそうです。筆者は、この話で初めて第4、第3、第2、第1と並んでいることに気づきました。深く考えても、特に意味はありません。
登場人物紹介コーナー
白雪…前も紹介したはず…。あまり出番が少なく、不満を持っている。だが安心してくれ、艦娘とドミナントだけの回も存在する。つまり、出番はまだある。
次回!第103話「褒美」お楽しみに!


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103話 褒美

はい。きました103話。元帥はまだ第4佐世保にいますね。
「暇ねぇ…。」
何も言うことないからね。てか、元帥いるけど平気なの?
「私の出番ないじゃない。」
ま、そうだよね。
「それより、ちゃっちゃとやるわ。今回のゲストは…。」
「海軍の最高責任者…。と、言えばわかるかな?」
「げ、元帥さん…。」
「出番がなくて、すまない。私に時間をかけているのだろう。」
「い、いえ、そういう意味では…。」
おー、元帥じゃないですか。ご無沙汰しております。
「君は…?」
「ゴミムシです。」
ひどいなぁ…。てか、主任うつったんじゃない?
「?…まぁいいか…。では、私は何をすれば良いのかな?」
あらすじを言えば良いのであります。
「ふむ…。下手だとは思うが、頑張ってみよう…。」
…別に期待は…。いてっ!

あらすじ
こういうのは得意ではない。下手なところをお見せして見苦しいと思うかもしれないが、まぁ聞いてくれ。前回、私と大和がメインの話だった。他の鎮守府のことを少し述べたが、どうだろうか…?第1横須賀鎮守府について、よく知りたい気持ちもあるだろうが、まだ出番は無いそうだ。…そこの男性が言っていた。そして現在、第4佐世保鎮守府へ大和と共に来たが、大変腕の良い女性に警戒されてしまってな。フフフ、久しくヒヤヒヤしたぞ。そして、簡単な挨拶を済ませた。

なげぇ…。
「あんた…。少しは黙りなさい…。」
…すみません…。


…………

第4佐世保鎮守府 応接室

 

カチャ…

 

ドミナントは元帥たちに紅茶を出す。

 

「お口に合えばよろしいのですが…。」

 

「別に構わん。」

 

「…あっ、美味しい…。」

 

元帥は遠慮をし、大和は美味しそうに飲む。

 

「…何をしに元帥は来たんだ?」

 

「ちょ、ジナイーダ、頼むから命令口調はやめてくれ…。」

 

「ふむ…。私はドミナント少佐と話をしに来たのだ。」

 

「えっ!?私とですか…?」

 

「そうだ。噂に聞く、“化け物”とはどんななのかを知りに来たのだ。」

 

「元帥殿、そんな言い方やめてください…。」

 

「私の仲間に“化け物”と言ったか…?」

 

「ジナイーダも、ナイフを取り出そうとするな…。」

 

ドミナントと大和は二人を宥める。

 

「…さて、元帥殿、本当はこちらに何をしに来たのでしょうか?」

 

「うむ。今度は真面目に言おう。君に昇進の話と、艦娘の褒美を渡しに来たのだ。」

 

「えっ?でも、私の昇進ではなく、艦娘の褒美だけでは…?」

 

「うむ。確かにそうであったが、ドミナント少佐のあの戦果で、階級が“少佐”というのでは示しがつかないと思ってな。階級を上げたのだ。」

 

「…では、私は“少佐”ではなく、“中佐”ですね。」

 

「いや、違う。」

 

「?」

 

「君は“大佐”だ。」

 

「えっ!?」

 

ドミナントは驚いていたが、ジナイーダと大和たちは当然のような顔をしていた。

 

「ど、どうしてですか…?いきなりすっ飛ばしたら他の提督から不満が出るのでは…?」

 

「…君はあの戦果が普通だと思っているのか?」

 

「…『ミッドウェー』倒しただけですよ…?」

 

「うむ。その『ミッドウェー』を倒したからこそだ。君は一部の提督からイレギュラー認定されているぞ?」

 

「…イレギュラー…。」

 

「なぜなら、新種の深海棲艦を倒し、flagshipの深海棲艦を何匹も倒したのだ。そんな艦娘の提督だぞ。」

 

「まぁ、そうですが…。」

 

「他の提督からは許可を取ってある。今日から君は“大佐”だ。」

 

「…目が見えなくならなければ良いのですが…。」

 

「?何か言ったか?」

 

「あっ!いえ、なんでもありません。」

 

ドミナントは慌てて否定する。

 

「それと、艦娘たちの褒美についてだが…。」

 

「はい。」

 

「…君たちには席を外してもらいたい。」

 

「えっ…?」

 

「艦娘も、提督の前では言えないこともある。本音を聞きたいのだ。」

 

「なる…ほど…。」

 

ドミナントは納得する。

 

「あと、大和、君もだ。」

 

「えっ!?私もですか!?」

 

「君は艦娘の憧れの存在。君の前では、どうしても艦娘がかしこまったり、遠慮したり、つまらないお願いをしてはいけないと思ってしまう。つまり、…わかるだろう?」

 

「…はい。」

 

「…私は大丈夫だ。何かあれば、大声で呼ぼう。…それとも、この鎮守府が安全ではないと思うのか?」

 

「いえ、間違いなく、ドミナント少…大佐の鎮守府は、安全です。」

 

大和はキッパリと断言した。元帥と共に来た時、ジナイーダに“歓迎”されたからだ。

 

「あの時の出撃した艦娘たちを呼んできてはくれないか?」

 

「かしこまりました。少し待っていてください。」

 

そして、ドミナントは呼びに行った。

 

…………

金剛型4姉妹の部屋

 

コンコン…ガチャ

 

「金剛、いるか〜?」

 

部屋が散らかっている。ドミナントに似た人形や、金剛の雑誌などが…。

 

「て、提督ー!勝手に開けちゃNOデース!」

 

「ひえぇぇ…。」

 

「は、榛名、驚きました…。」

 

「司令、私の分析では、勝手に女性の部屋に入るのはNGだと判断しています。」

 

「すまんすまん。…やましいことなどしていないだろう?」

 

「「「……。」」」

 

「…していたのか…。まぁいいや、金剛、応接室に来てくれ。」

 

「wow(ワオ)!て、提督から呼び出しを…。ついに私の魅力に気づいたデース!」

 

「あっ、ごめん…。違うんだ。」

 

「?何がデスカ?」

 

「元帥が褒美を与えに来たから褒美をもらいに行ってってことだったんだけど…。」

 

「……。」

 

「…ごめん。」

 

そして、ドミナントはその場を去った。

 

…………

長門部屋

 

コンコン、ガチャ。

 

「長門ー、いるか〜?」

 

「む。提督、何か用か?」

 

「いや〜、元帥が褒美をくれにきてな。応接室にいるから。」

 

「…その時、提督はいるのか?」

 

「いや、俺はいない。俺がいると、頼みづらい可能性があるらしくてな。」

 

「なるほど。それは良かった。」

 

「?」

 

「あっ、いや…。提督に聞かれるのは少し…な…。」

 

「…嫌われているのかな?」

 

「いやっ!違う!そういう意味では…。」

 

「ごめんよ。いきなり部屋にこられても迷惑なだけだよな。俺は出ていくよ。もう二度とここには来ないから安心してくれ。なるべく話さないようにもするし、顔を合わせないようにする。多分、会うのが最後だ。…そうだ、ちょうど元帥もいるし、長門を異動させてあげるか。じゃぁな。今までありがとう。元気でな。」

 

「ちょ、違う!待てっ!待ってくれ…!頼む…。そういう意味ではないから…。お願いだから…。話を…。うぅ…。」

 

長門は思いっきり悲しそうになる。

 

「…フフフ。冗談だ。」

 

ドミナントが少し笑いながら言う。

 

ドガァァァァァン!!

 

…………

五航戦の部屋

 

コンコン…、ガチャ…

 

「ず、瑞鶴…、いるか…?」

 

ドミナントがボロボロの状態で言う。

 

「ど、どうしかしたんですか!?」

 

「どうしたの!?提督さん!」

 

「色々…あってな…。それより…、応接室で元帥殿がお呼びだ…。」

 

「い、行くけど、何があったのよ…。」

 

「…極秘だ…。」

 

「はぁ!?」

 

「俺は行く…。」

 

「ちょ、待ちなさいよ!…もう!何でここの人たちはおかしな人ばかりなの!」

 

瑞鶴は、すぐにいなくなったドミナントを不思議に思いながら叫んだ。

 

…………

一航戦の部屋

 

コンコン…、ガチャ

 

「赤城ー…、いるか〜…?」

 

「提督、勝手に開けるのはどうかと…。…何かあったんですか?」

 

ボロボロのドミナントを見て、加賀が思わず毒を吐くのをやめる。

 

「色々あってな…。それより、赤城は…?」

 

「赤城さんなら、今外出中です。…おそらく、お昼へ行っているのでしょう。」

 

「そうか…。なら加賀、赤城に伝言頼めるか…?」

 

「……。」

 

「頼む…。」

 

「…わかりました。」

 

「ありがとう…。赤城に『元帥が応接室で褒美をくれるそうだから、行ってくれ。』と言っといてくれ…。」

 

「伝えておきます。」

 

「ありがとう…。」

 

そして、ドミナントはフラフラと歩いて行った。

 

…………

古鷹型の部屋

 

コンコン…、ガチャ。

 

「古鷹ー、いるか〜?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「加古へんな寝方しているなぁ…。あっ!ごめん。元帥が応接室で褒美をくれるって。」

 

「えっ!?何でですか!?」

 

「この前出撃したお礼だって。それじゃ、俺は行くから。」

 

「わかりました。」

 

ドミナントはしっかりとした足取りで歩いて行った。

 

…………

吹雪型の部屋

 

コンコン…ガチャ…。

 

「吹雪〜、いるか〜?…て、わっ!」

 

「司令官だー!」

 

「捕まえろー!」

 

「出番増やせー!」

 

吹雪型の皆さんがドミナントにまとわりつく。

 

「ちょ、ヤメテ…。それより、吹雪はどこだ…?」

 

「知らなーい。また司令官の部屋にでもいるんじゃない?」

 

「…ついに俺の在時にまで行くようになったか…。」

 

「それより、遊ぼ。」

 

「でも、俺はまだ仕事中…。」

 

「あそべー!」

 

「光が眩しい…。」

 

「出番増やせー!」

 

ワーワー、ギャーギャー。そして、吹雪が帰ってくるまで遊び相手にされるのだった…。

 

…………

応接室

 

「呼んできました…。」

 

「そ、そうか…。それより、何でそんなにボロボロのクシャクシャなんだ…?」

 

「…大変なことに巻き込まれたり、爆発などです…。」

 

「うむ、意味がわからん…。」

 

そんなことを話していると…。

 

コンコン…ガチャ

 

「司令官、全員集まりました。」

 

「ありがとう、吹雪。…では、元帥殿、我々は退室します。」

 

「うむ。」

 

そして、ドミナントたちは退室して行った。




はい。終わりました103話。
登場人物紹介コーナー
ダレモ…イナイ…。
次回!第104話「それぞれの褒美」お楽しみに!


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104話 それぞれの褒美

はい。来ました104話。そろそろ終わる頃かな?
「はやっ!」
だって〜、見続けている人がいないんだもの。
「そうなんだ。それは残念ね。」
う〜ん…。150話で終わりにしますか。
「ネタがまだまだあるんでしょう?」
あるよ。旅行したり、色々ね。
「艦これや、AC要素少ないじゃない…。そんなことが起きるの…?聞くだけで疲れ果てて真っ白になりそうなんだけど…。」
ま、それが出来ないのは残念だが、都合と言うものだ。
「誰か一人でも見続ける限りやめないんじゃなかったの…。」
ん〜…。確かに、それはそうだよ?筆者も、好きなウェブ小説が2年前からずっと更新されてなくて、すごく残念だった。おそらく、もう更新されない気がしてな。
「確かに、そういうのはすごく残念ね…。続き見れないんじゃね…。」
でしょう?
「でも、筆者さんはまだ書いているでしょう?見たい人もいるはずよ?その人のために頑張りなさい。」
え〜…。朝ログイン数見たけど、全然いなかったよ?
「あのねぇ…。全然じゃ、まだいるじゃない。0人になってからよ。それに、お気に入り登録してくれている人も、読み続けてくれている人もいるじゃない。」
おー、その人たちには大変感謝しているデース。
「何で金剛語尾に…。」
じゃ、長ったらしい話もそろそろにして、今回のゲストは?
「このお方。」
「ここは一体…?」
おー、大和さんじゃぁないですかぁ。
「大和ですけど…。あなたは…?」
「人間のクズよ。いきなりこの小説を辞めようとしたね。」
ひっど。でも、その通り。
「へ、へぇ〜、そうなんですか。」
…すっごい困った顔だね。ま、俺らについていける人などいないと思うが?
「勝手に私混ぜるな!」
ひっど。
「あの〜…、用がないなら、帰ってもよろしいでしょうか…?」
「あっ、ごめんなさい。あらすじを言っていただけないでしょうか…?」
「そんなことですか?わかりました。」
話がわかるぅ〜。

あらすじです
前回、ドミナント少佐が、大佐に昇進しました。おめでたいですね。そして、ドミナントさんたちが艦娘たちを呼びに行きました。

字数が長いので、これくらいにしておきました。


…………

廊下

 

「どんな願いをするんだろう…?」

 

ドミナントは廊下で呟く。

 

「おそらく、お前や私たちには面と向かって言えないようなことだ。」

 

ジナイーダが答える。

 

「…俺の異動かな?」

 

ドミナントは冗談で言う。すると…。

 

「まぁ、確かに自分の提督の前で、“提督を何処かやってください。”とは言えないな。」

 

ジナイーダがそれに真面目なように答える。

 

「…冗談で言った俺がマジで心配になってきちゃった…。」

 

ドミナントが笑えない顔でうろうろする。

 

「だ、大丈夫ですよ!ドミナント大佐。そういうのではないですよ!」

 

大和が元気付けようとする。

 

「…大和さんは、私が提督だったらどう思う?」

 

「…少し怖いですね…。私なら、耐え切れないかもしれません…。」

 

「…元気付けるなら、最後までやりましょう?」

 

大和が言い、ドミナントがげんなりと言う。すると…。

 

ガチャ…。

 

「失礼しました。」

 

瑞鶴が出てくる。

 

「瑞鶴…。どんなお願いをしたんだ…?」

 

「わっ!?提督さん…。何でそんな顔してるの…?…私は、この鎮守府に資材を少し分けてくれるように頼んだの。最近、何故か資材が少し不足しているから。」

 

「…そうか。」

 

瑞鶴が短く話し、自室へ戻って行った。

 

「…資材か…。瑞鶴もそんなこと気にするんだな…。」

 

「誰かさんとは違ってな。」

 

ジナイーダが返す。そして…。

 

ガチャ…。

 

「失礼する。」

 

長門が出てきた。

 

「長もん…。何をお願いしたんだ…?」

 

「…長もん…。…まぁいい。つまらないことだ。」

 

「何だろう…?」

 

「それを言ったら、元帥殿がこういう風にした意味がないだろう…。」

 

そして、長門は自室へ戻って行った。

 

「なんだろう…?」

 

「お前の異動かもな。」

 

ジナイーダがニヤニヤしながら返す。すると…。

 

ガチャ…。(次からはここを省きます。)

 

「失礼したデース!」

 

金剛が出てくる。

 

「おー、金剛であろうか。どのような願いを申したのか気になるところでござんす。」

 

「提督ー…、何か変なの食べたデスカ…?」

 

「そっちには、僕が用意した紅茶をあげるよ。多分、教えてくれないと思うからさ。」

 

「そんなことしなくても、教えるデース。」

 

「ナル…ホド…。」

 

「…?。…提督とー…。」

 

「いや、やっぱいい。」

 

「?」

 

「なんとなく想像ついた。」

 

「そうデスカ?それじゃぁ、me(私)は行くネー。」

 

「ああ。」

 

そして、金剛は自室へ戻って行った。

 

「…何だろうな?」

 

「元帥権力使うのかな…?」

 

ドミナントが返した。すると…。

 

「失礼しました。」

 

赤城が出てくる。

 

「あの青い一航戦の所にはもう戻らんのか?レッドキャッスル…。」

 

「提督が…!私を…!。…つい乗ってしまいましたが、どうかしましたか?」

 

「うん。何をお願いしたのかなぁ〜って。」

 

「それは、秘密です。」

 

「赤城に秘密にされる世界など…、私の生きる世界ではない…。」

 

「さよなら…。これで…、よかったのよ…。」

 

ドミナントと赤城が特殊な言葉を交わす。そして、赤城は自室へ。

 

「「???」」

 

もちろん、ジナイーダと大和はちんぷんかんぷんだ。

 

「…ドミナント…、今の会話は…?」

 

「ンッフッフッフッフ…。私は提督だから…!」

 

「…聞いているのか?」

 

ジナイーダは考えないようにした。そして…。

 

「失礼しました。」

 

古鷹が出てくる。

 

「大天使、フルタカエルさん。何をお願いしたんですか?」

 

「なんですか…?その肩書は…?」

 

「そんなことより、何をお願いしたの?」

 

「提督の仕事を少しでも減らせるように、お願いしたんです。」

 

「尊い…。」

 

ドミナントは薄暗い心が洗われた。

 

「でも、本当に良いのか…?俺のために…。」

 

「それはそうですよ。私たちと同じくらい書類仕事頑張っていますし。それに、大切な提督ですから。」

 

「尊い…。」

 

ドミナントは灰色の心が洗われた。

 

「なんて良い子なんだろう…。」

 

「これくらい、当たり前です!」

 

「尊い…。」

 

ドミナントは白い心が洗われた。

 

「…そんなに尊いでしょうか…?」

 

「こいつはこれだけ心が汚れていたってことだ。」

 

ジナイーダが言う。そして、古鷹は自室へ。

 

「失礼しました。」

 

吹雪が出てくる。

 

「ブッキー、何をお願いした?」

 

「ブッキー…?…内緒です!」

 

「…やましいことか…。」

 

「違います!」

 

「なんだ?俺の異動か?」

 

「毎回思うんですが、何でそんなにマイナス思考なんですか…。」

 

吹雪は苦笑いする。

 

「…まぁいいです。どちらにしろ、後で必ず知ってしまうんですから…。」

 

そして、吹雪は元帥からもらった紙を見せる。

 

「ん?なにこれ?…提督とデート券?」

 

「元帥殿によって、効力が固定されていますから、断ることは不可能ですよ?」

 

「はじめて、吹雪の目が怖く感じる…。」

 

ドミナントは初めて、吹雪に恐怖する。

 

「てか、吹雪がこんなおっさんにこんなお願いするとは意外だな。」

 

「そうですか?他の姉妹艦の皆さんとは遊んでいたようですが?」

 

「えっ…。もしかして、ヤキモチ…?」

 

「違います!」

 

そして、吹雪は不機嫌そうに行った。

 

「…女心とかけて、嫌な気持ちと解く。」

 

「その心は?」

 

「深い(不快)。」

 

「寒い。」

 

ジナイーダの辛辣な言葉が返ってきただけだった。すると…。

 

『入って良いぞ。』

 

中から元帥が呼ぶ。

 

ガチャ。

 

「寒かった。」

 

「やっと入れます。」

 

「誰かのせいで余計寒かったがな。」

 

3人が入る。

 

「艦娘から様々なお願いを聞いた。他に二人、いることは知っている。未確認の艦娘、『セントエルモ』と『夕張』だろう。」

 

「その情報までご存知で…。その通りです。います。」

 

「おそらく、君がいきなり未確認の艦娘を連れてくると、私が困惑すると思ってのことだろう。口出しはしない。…だが、一応褒美はあげておこう。」

 

元帥が言うと…。

 

「あっ!元帥殿!そろそろ時間です!飛行機が…。」

 

「む。そうか…。では、二人には大本営に手紙を出しておくように言っておいてくれ。それと、言い忘れていたが、この度、世話になりっぱなしで君たちも疲れているだろう。この封筒を渡しておく。後で見るように。」

 

「わかりました。」

 

「元帥殿!急いでください!」

 

「うむ。…それでは、ドミナント大佐、それではまた。」

 

そう言ったあと、元帥は握手して、大和と共に走って行った。

 

「……。行ってしまったな。」

 

「…そうだな。」

 

ジナイーダとドミナントは話す。

 

「ところで、その封筒の中はなんだ?」

 

「分からん。見るか。」

 

そして、ドミナントは封筒を開けて見る。

 

…………

 

拝啓、第4佐世保鎮守府ドミナント大佐

 

君たちの世話になりっぱなしですまない。君たちがこの鎮守府に着任してからというものの、頼りっぱなしで、大本営としても恥ずべきことであるのはわかっている。そんな大本営に呼ばれたりして、君たちは心身が持たないと感じているだろう。だから、これを送る。これで、艦娘共々疲れを癒して欲しい。鎮守府のことは心配しないで良い。私が、手の空いている鎮守府がそちらの海域まで警備するように頼んでおいた。思いっきり羽を伸ばして遊んできて欲しい。

 

敬具 大本営 武田 寿喜元帥

 

…………

 

「…旅行券が愉快な仲間たちと、俺と、艦娘の人数分入っている。」

 

「…本名はじめて知ったな。」

 

ドミナントたちが話す。

 

「…それじゃぁ、みんなにこれを伝えるとともに、夕張たちに手紙書くように言って来る。」

 

「わかった。」

 

そして、ドミナントは応接室を出て行った。




はい。終わりました。104話。
登場人物紹介コーナー
特になし
次回!第105話「旅行 その1」お楽しみに!


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旅行編
105話 旅行 その1


はい。きました105話。やるべきことはちゃっちゃとやらんとね。途中で打ち切りは避けたいから。
「打ち切り?」
残り45話。それまでに前回書いたこと全てやるの。
「そんな…無茶よ…。私の体や、みんなの体がもたないわ…。」
そうか…。ならば、残り95話でどうだ?
「う〜ん…。何とかいけるかしら…?」
よし、ならば95話だ。…読者の皆様、大変申し訳ありませんが、もう少し続けさせてください…。わがままを許して欲しいのです…。
「お願いするわ…。筆者さんのためにも…。」
…さて、では、今回のゲストは?
「誰もいないわね。」
またこのパターンか…。一章の方は筆者がやり続けたからストックがあったんだよね。
「そんな事情があったんだ…。知らなかったわ。」
そりゃね。言ってないもん。じゃ、手の空いている人にお願いするか。
「久しぶりの登場じゃな。」
「誰!?この着物着た人!?銀髪だし…。」
神様の先輩、先輩神様だよ。まだこれくらいしか容姿決まってないから。募集。
「妾にもちゃんと名前があるのにのう…。」
あっ!言っちゃダメだよ。いずれ書くから。
「?。…まぁ、とにかく暇なのね?では、あらすじをどうぞ。」
「任せるのじゃ!」

あらすじじゃ
妾は見ておるからのう…。前回、後輩のところへ元帥が来た。そして、艦娘たちに褒美をやってくれたのじゃ。そして、元帥は帰り、ドミナントたちが旅行に出かけるのじゃ。…妾も温泉に浸かりたいのう…。


…………

第2舞鶴鎮守府

 

ジナイーダの親友でもあり、転生者『シレア』(女性)が提督の鎮守府。

この世界では、『佐藤中佐』と呼ばれており、ドミナントもその名称で呼ぶ。

『シレア』は転生前、ACのパイロット、『レイヴン』であり、特攻兵器を目覚めさせてしまった張本人。なんとか生き残ったものの、それ以来、依頼を受けてこなかったせいで、ちゃんとした依頼が来なくなり、金欠に陥る。金欠のせいで、人を雇うことができず、ACの整備を自力ですることに。その結果、ACの仕組みの隅々まで知り尽くし、技術力が高くなり、武器すら作れる腕になった。騙し依頼で助けた相手に殺された。

この鎮守府は、艦娘の平均レベルは40前後であり、ドミナントたちの鎮守府のように危険視はされなかったが、第4佐世保鎮守府に訪問したことにより、技術力がとんでもなく高いことがわかり、大本営に注目されている。

ちなみに、第4佐世保鎮守府の技術力がレベル10だとすると、レベル150だ。

 

…………

第4佐世保鎮守府 グラウンド

 

ワイワイガヤガヤ

 

艦娘たちがドミナントに呼ばれ、集まっている。

 

「あらためて見ると、すっごい数の艦娘たちだな…。」

 

ドミナントは鎮守府の中で、隠れながら眺める。

 

「そんなところで見てないでさっさと行け。」

 

後ろにいたジナイーダに言われる。

 

「いや〜、一応どれくらいいるのか知っておかないと、いきなり知ったとき驚くでしょう?」

 

ドミナントは歩きながら言う。

 

「そうかもしれないが、この寒い中外で待たされる艦娘のことを考えろ。」

 

「そうだなぁ…。」

 

ドミナントはジナイーダと共に艦娘の前の高台に登る。そこには、ジャック、主任、セラフ、神様がいた。ドミナントが艦娘の前を向いた途端、静まり返る。

 

「急な呼び出しをしてすまない。だが聞いてほしい。一週間後、我々全員で東北地方へ旅行をする。」

 

「「「!?」」」

 

ザワザワ

 

ドミナントが言い、艦娘たちが騒めく。すると…。

 

「まだ話しは終わってない。私語をやめろ。」

 

ジナイーダが静かに言った途端、また静まり返る。

 

「いきなりの事で申し訳ない。だが、俺たちもさっき知ったんだ。元帥殿からの皆に向けての褒美だ。そして、その旅行は4泊5日の旅だ。その間、この鎮守府や近海の警備などは元帥殿が手を回してくれるから、気にしないでのことだ。そして、今集まった理由は、これからバスや電車、飛行機などの席を決めたり、泊まる人や部屋を決めたり、最後の自由行動での班決めだ。…自由に話して、決めあってくれ。それと、ここは寒いから、中の会議室で決めよう。」

 

ワー!ワー!

 

ドミナントの長ったらしい話が終わるとともに、艦娘たちが歓喜の声を上げる。

 

…………

会議室

 

この部屋は、暖房が効いていて、暖かく過ごしやすい。服の面積が少ない艦娘も、多い艦娘もスク水の艦娘も同じ感覚らしいので、27度一定で、暖かい感じだ。

 

「俺は、どこでもいいからみんなで決めてくれ。俺は少し用があるから自室に戻る。」

 

そして、ドミナントは戻って行った。しばらくして…。

 

「司令官はどこに乗るんでしょうか?」

 

吹雪が座席表を見る。

 

「どこだろうね。私も知らされていないからわかんない。」

 

神様が気楽に答える。

 

「だが、バスの場合は一つでは全員入りきらないらしいから、私たちがそれぞれのバスの管理をすると聞いている。」

 

ジャックが椅子に座りながら言う。

 

「あぁ、だから神様はバスの席決めでそんなに落ち着いているんですか。」

 

「だって〜、どこに座ろうがドミナントと隣にならないし〜。あっ!でも、電車や飛行機は本気出すよ?」

 

吹雪が納得する。すると…。

 

「…確かドミナントは一番右に座るとか言っていたな…。(…左だったか…?)」

 

ジナイーダが呟くと…。

 

「「「本当ですか!?」」」

 

多くの艦娘が反応する。

 

「…だが、何号車に乗るかは私たちは何も言っていないぞ。」

 

「えっ!?この1号車とか、提督は入らないんですか?」

 

「わからん。だが、ドミナントの場所がわかると艦娘同士で争いが起きるからそうなるだろう。」

 

ジナイーダは質問の答えを言わず、新たな疑問を持たせる。

 

「まぁ、4泊5日もありますし、それぞれ、席を決めれば良いじゃないですか。」

 

セラフが困り顔で言う。

 

「Zzz…。」

 

主任は相変わらず、この部屋に来ると寝ている。

 

…………

一方、提督自室

 

……ふむ。あいつらは決めるだろう。だが、問題はこっちだ。

 

ドミナントは神様から渡された手紙の表面を見る。覚えているだろうか?CDと共に送られてきた手紙である。

 

……第1大湊警備府の八神 波木中将…か…。なんかガスマスクつけた変な人だったな。…でも、何でこの曲を知っているんだろうか…?…まさか、転移者か転生者か?…てか、俺はどちらかというと転移者だよな?死んでないし…。

 

ドミナントは提督たちが集まった時を思い出している。

 

……同じ世界の異世界者だとしたらすごいぞ…。ひょっとして、この世界の大半が異世界者なのか…?

 

ドミナントは考えるが、転生者は世界でドミナントたちを含めて数人しかいない。奇妙なほど偶然が重なっているだけである。

 

……まぁ、そんなことを考えても、答えはない…。だが、こいつはこの世界にはないこの曲を知っている。しかも、俺だけに送ったと言うのなら、同じだと既に見抜いた証拠だ…。…中を確認するか…。

 

そして、ドミナントは中を確認する。

 

…………

 

第4佐世保鎮守府ドミナント。この手紙を見ていると言うことは、無事この手紙が届いたのだろう。…いきなり変な質問ですまないが、君は異世界からの者か?…もし違うのなら、これは私の妄想で、恥ずかしいため、この手紙を捨てて欲しい。もし、そうなら証拠とともに、手紙を送って欲しい。どちらを選んでも構わない。たとえ、捨てていたとしても、手紙が来るのを待っている。

 

第1大湊警備府 八神 波木

 

…………

 

……なるほど。見抜いたのか。てか、証拠って…。何送りゃいいんだ…?第一、俺はこいつを信用して良いのか…?

 

ドミナントは考える…そして一つの結論にたどり着く。

 

「いや、このCDどうやって作ったんだよ!暇人かよ!?」

 

ドミナントはツッコんだ。そして、5分後。

 

……もし、転生者で敵意がないのなら、関わって損はないだろう。俺も作って送りゃいいのか…?…いや、もっと確実な方法があるな。手紙に書きゃいいんだ。

 

そして、ドミナントは手紙を書く。

 

…………

 

艦これ編

金剛が深海棲艦の弾を素手で弾き飛ばす。損傷もない。

如月沈む。

大和はホテル。

提督は無能だった…。

ラスト足柄たちがいなかった…。

AC編

変態企業キサラギ

ターゲット確認…排除開始…。

ナニカ…サレタヨウダ…。

ゴーゴーリムファイアエビノカラアゲ。

あんなもの浮かべて喜ぶか!

かーちゃん。

尻を貸そう。

ドミナントとの約束だ。

 

…………

 

「よし!これでいい!」

 

いや、よくはないだろう。

 

「これを送れば納得するはずだ。」

 

そして、ドミナントは懐に入れるのだった。

 

「…ポストはどこだろうか…?それに、切手はいくらかかるんだ?」

 

ドミナントが思うが、それは後で考えれば良いと思い、とりあえずみんなの所へ行った。

 

…………

会議室

 

「戻ったぞ。…て、何があったの?」

 

ドミナントが戻ってみると、大半の艦娘たちがあちらこちらで気絶している。

 

「ん?ドミナントか。艦娘たちが席の件で喧嘩してな。とりあえず、全員気絶させといた。」

 

ジナイーダが椅子に座り、お茶をすすりながら言う。ジャックたちもお茶を飲んでいた。

 

「気絶はまずいだろ…。てか、決まってなかったのね…。俺もいるから、全員起こしてくれ。」

 

10分後

 

「はい、では初めからやり直そう。今度はくじで決めよう。俺も参加するから。」

 

そして、ドミナントたちはくじで乗り物の席を決めた。

 

…………

 

「やったぁ!提督の隣だー!」

 

瑞鳳が叫ぶ。

 

「ふむ。俺は2号車の左窓席か…。」

 

ドミナントが呟く。

 

「提督ー!」

 

「金剛、諦めろ。お前は3号車だぞ…。」

 

叫ぶ金剛だが、苦笑いした天龍に言われる。3号車は神様の管轄だ。

 

「あらぁ、天龍ちゃんの隣ねぇ〜。」

 

「…なんか、考えてみたら、必ず隣に龍田がいるな。」

 

龍田と天龍は隣同士の席らしい。ちなみに、4号車で、主任の管轄だ。騒がしくなりそうだ。

 

「クマー!東北地方だクマー!」

 

「お魚…。」

 

「北上さん、私たちは5号車みたいですよ。」

 

「そうだね〜。大井っちと一緒だね〜。」

 

「姉さんたちと一緒とは…。」

 

「セントエルモちゃんと離れちゃった…。でも、セラフさんと同じバスみたい。」

 

木曽が行く前から最悪の顔をしている。5号車はセラフの管轄だ。

 

「私は赤城さんと同じの1号車みたいね。」

 

「そうですね…。」

 

「…ジャックさんの管轄ですね。」

 

「…はい。そうですね。」

 

もちろん、赤城は現在少しショックを受けている。一方、加賀は気分が高揚している。

 

「夕張ちゃんと離れちゃった…。」

 

「潜水艦…。」

 

「イクは提督の酔うところみたかったのね!」

 

「潜水艦ばかりでちね。」

 

「海のスナイパー改め、陸のスナイパーね!」

 

6号車は潜水艦、それとセントエルモや山風たち、潜水艦が苦手な艦娘たちが集まった。ジナイーダの管轄だ。

 

「それじゃぁ、すべての席も決まったし、班はそれぞれ決めてくれ。あと、明日はしおりを作っておく。もうすぐ夜だから、風邪をひかないように健康で、早めに寝てくれ。」

 

「「「はーい。」」」

 

そして、その日に備えて色々準備しておくのだった。




長すぎるため、切りました。二日かかってこの出来とは笑えますね…。繋げるいい言葉があれば良いんですが…。
登場人物紹介コーナー
瑞鳳…凛々しい顔立ちとは裏腹に、明るく元気で提督が大好きな女の子。軽空母。真面目。ノリは良いほう。そのせいで、主任やドミナントの無茶振りの良い的となっている。
次回!第106話「旅行 その2」お楽しみに!


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106話 旅行 その2

…何も案が浮かばない。
「えっ!?いきなりどうしたの!?」
スランプなのだよ。
「えっ…?何…?どゆこと…?」
気分が乗らない…。
「…疲れてるんじゃないの?」
最近立て込んでてさ…。年末だからかな…?
「仕事も大変ねぇ。」
そうなんだよ…。…それじゃぁ、今回のゲストは?
「久しぶりにこのコーナーに登場!」
「神様ね。…多分、本当の名前があると思うけど。」
「まぁ、そうだけどね。」
それより、あらすじをどうぞ。
「なんか疲れてる?」

あらすじだよー
前回、ドミナントが旅行することをみんなに告げたよー。あと、その時の席も決めたね。しおりを渡すらしいけど…?


…………

第3呉鎮守府

 

他の鎮守府からも危険視されている鎮守府。第4佐世保鎮守府が世間では秘密情報のため、ここが世間では最強の艦娘たちが集う鎮守府。

ここにいる艦娘は朝から就寝時間まで訓練尽くしであり、平均レベルが80を超えている。大本営とレベルの大差がない鎮守府である。

そこは『難波少将』が提督であり、秘書艦が『長門』である。

大本営からよく情報が届いているらしく、ドミナントたちが強いことを知っている。ただし、ドミナント自身ACのことは知らない。

『難波少将』は、武人としての志を持っており、筋の通らないことが嫌いで、そこに『長門』が惹かれている。ただし、自分の証明したいことができない場合は思い切った行動に出ることがある。

 

…………

早朝

 

「よし…。しおりをかけたぞ…。」

 

ドミナントは艦娘たちに配るしおりを書いていた。一睡もしていない。

 

……仕事とは違って、こういうものはすごく遅いな…。あとは、これを人数分コピーして束ねれば良い。それで寝れる…。

 

ドミナントは一枚一枚をコピーして、さらにホッチキスなどを使ってとめる。

 

……これ、やっと一枚だよな…。これを人数分…、つまり、100以上作らなければならないのか…。そして、その重い束を少しずつ執務室に運ばなければ…。

 

ドミナントは考えてうんざりする。

 

「…ハクション!…朝方は寒いな…。」

 

ドミナントはなんとか作り終わり、運び、自室に戻り、ベッドに潜る。すると、5分も経たずに…。

 

コンコン…ガチャ

 

「おはようございます!改装済み大鳳です!」

 

大鳳が入ってくる。

 

「……。」

 

「さぁ、今日もトレーニングしましょう!もちろん、提督も一緒に。」

 

「……。ごめん、大鳳。」

 

「?どうかしました?」

 

「寝かせて…。あと、執務室の机の上にしおりあるから、配っておいて…。仕事はある…。俺が必要なもの以外はやってくれ…。午後になったら起きるから…。」

 

ドミナントはきつい声を発する。前まではそれくらい普通だったが、睡眠時間が長くなったため、眠い。

 

「提督。…おやすみなさい。」

 

大鳳は、部屋を暗くしてあげて出て行った。

 

…………

執務室

 

「しおりって…。これかしら?」

 

大鳳がしおりを見つける。

 

「…どうせ配るんだから、みんなより少し先に見ても問題ないわよね?」

 

そして、しおりの内容を見る。

 

…………

一日目

 

集合場所 グラウンド マルハチサンマル

 

出発 マルキュウマルマル

 

空港へ マルキュウマルマルからマルキュウヨンマル

 

確認その他 マルキュウヨンゴーからマルキュウゴーゴー

 

元帥殿選別の貸切飛行機 ヒトマルマルマルからヒトフタヒトマル

 

…………

 

「…少しみただけでどれくらい熱意があるのか伝わるわね…。」

 

ドミナントは一晩かけて、すべての時間の計算をしたのだ。

 

「まぁ、とりあえずみんなに渡しておけば良いのね。」

 

そして、大鳳は配りに行った。

 

…………

話は変わるが、陸軍

 

ぐぅ〜…。

 

「「……。」」

 

艦娘2人がお腹を空かせている。

 

「まるゆ准尉…、お腹…、空いたでありますな…。」

 

「入渠はあきつ丸准尉のおかげで許されましたけど…。もう2日も食べてないもんね…。」

 

あきつ丸とまるゆは話す。

 

「…食堂…、行くでありますか…?」

 

「…残飯でも、ないよりマシだもんね…。」

 

そして、二人は食堂をふらふらした足取りで目指す。

 

…………

食堂

 

カチャカチャ…。パクパク…。ガツガツ…。

 

沢山の兵が不味いレーションなどを食べている。

 

「「「……。」」」

 

しかし、あきつ丸たちが来た途端、手を止めて見ている。

 

「…食べ物を…。」

 

あきつ丸が言うと…。

 

「…お前たちにやるものはない。訓練でもしていろ。」

 

「艦娘なんぞ、何日も食べなくても生きていられるでしょ?」

 

「こんなものの残飯すらもったいね〜なぁ〜。ハハハハハ。」

 

兵は言うだけ言い、また食べ始める。

 

「「……。」」

 

二人は、逆らうことができず、外に出る。

 

「…ゴミ箱の中に…。」

 

「あきつ丸准尉!それだけはダメだよ。これでもまるゆたちは艦娘だから…。」

 

「…でも、このままだと活力を失うであります…。艦娘というプライドだけではお腹は膨れないのであります…。」

 

「でも…。」

 

二人が外の、全然人の通らない階段で座り、話していると…。

 

「こんなところにいると邪魔だぞ。」

 

あきつ丸と同じ特殊部隊の一人が通る。が。

 

「…どうかしたのか?」

 

振り返り、聞く。

 

「森崎少将…。…お腹が…空いたのであります…。」

 

「…そうか…。」

 

さも興味のなさそうな顔をする。そして、あたりをキョロキョロして人がいないことを確認すると…。

 

「…乾パンだ。食え。」

 

「「!?」」

 

二つの缶詰を渡す。

 

「えっ…?な、なんで…?」

 

あきつ丸は訳がわからなかった。毎日挨拶しても、“ああ。”などと素っ気ない返事しかしないし、聞いても、面倒なことには適当にしか答えてくれなかったからだ。

 

「…今日はレーションを食べたい気分だからだ。それよりも早く食え。」

 

森崎少将は言う。

 

「で、でも…、レーションは不味く、乾パンの方がここでは価値が高いのに…。それに、持っていたというのは食べるつもりだったからでは…?」

 

「…嫌なら食べなくても良いが?」

 

「た、食べるであります!」

 

「ありがとうございます…。」

 

二人は缶を開けて、固い乾パンを頬張る。

 

「美味しい…。」

 

「美味しいよぅ…。」

 

二人は少し泣いていた。

 

「…陸田中将には内緒だぞ。」

 

森崎少将はそう言ったあと、食堂へ向かおうとするが…。

 

「ま、待つであります。」

 

「なんだ?レーションを買いに行か…。」

 

「「ありがとうございました!!」」

 

二人は頭を下げて、深く感謝した。

 

「…そういうのは良い。俺には似合わない。」

 

そう言って立ち去ろうとする。

 

「あと、一つ聞きたいことがあるであります。」

 

「…なんだ?」

 

「…何故、あの場所や、ほかの人がいる場所ではあんな言い方しかしないのでありますか…?」

 

あきつ丸は聞く。

 

「…陸田中将の命令だ。中将は、昔は陸軍として活躍していた時代があった。国を守るためにきつい仕事をしてきたり、後輩などに優しく教えたりなどしてみんなに好かれていた。もっと上の…代表の器だった。…だが、深海棲艦が出てきたことによって、陸軍より海軍や空軍の方に資金や人材などが偏り始めた。それにより活躍できず、どれほどきつい仕事をしても階級も上がらない。今まで守ってきた国民に、“陸軍は役立たず。”、“税金泥棒”など散々中傷されたんだ…。そして、家族が危険な目にあったり、家にイタズラや、張り紙などをされた。それ以来深海棲艦や、それを倒して名声を上げる海軍や艦娘のことを憎むようになったんだ…。」

 

森崎少将は少し語った。

 

「…そう…だったんでありますか…。」

 

「…だから、私たちがこんな目に…。」

 

2人はいままでの扱いに納得する。

 

「食堂に行ってきたのだろう?おそらく、あの中にも俺みたいな奴もいる。だが、本当にお前たちのことを憎んでいる奴も少なくはない。…なるべく、俺が一人だけの時に助けを求めろ。陸田中将には内緒でな。」

 

森崎少将は言い、立ち去る。

 

「…いい人ですね。」

 

「…そうでありますな。」

 

二人が話していると…。

 

『あきつ丸准尉、特殊部隊司令室まで来い。』

 

放送が入る。

 

「あきつ丸准尉…。」

 

「…大丈夫でありますから、まるゆは安心してほしいのであります。」

 

あきつ丸は力ない笑みを浮かべる。

 

「…うん。」

 

「じゃぁ、行ってくるであります。」

 

そして、あきつ丸は走って行った。

 

…………

特殊部隊司令室

 

「遅い!」

 

「ご、ごめんなさいであります…。」

 

「このわしの貴重な時間を割いてまで待っていたのだぞ!もっと早く来い!」

 

「ごめんなさいであります…。」

 

陸田中将に怒鳴られ、あきつ丸は必死に謝る。

 

「まぁいい。次の任務だ。」

 

そして、書類をあきつ丸の方へばら撒く。

 

「拾え。」

 

「は、はい…。」

 

そして、拾う。艦娘として屈辱である。

 

「これをしろ。」

 

陸田中将は葉巻を吸いながら言う。

 

「…殺し…。」

 

書類に書かれていたものは、殺しの任務である。

 

「なんだ?」

 

「…今までこれだけは避けてきました…。これだけはやっちゃいけないって…。」

 

あきつ丸が恐る恐る言う。すると…。

 

ドガッ!

 

「ひっ…。」

 

「なんだと貴様!!今なんと言った!!」

 

陸田中将が机の上に足を思いっきり乗せ、あきつ丸が恐怖する。

 

「この国のために必要なことをやらないつもりか!?ふざけるな!!貴様!それでも陸軍か!?陸軍の肩書を持つ者ならこれくらい当然だ!!それとも追い出されたいのか!?」

 

「……。」

 

あきつ丸は震える体を押さえつけるばかりだ。

 

「お前のせいで、もう一人の艦娘まで追い出されたいのか?」

 

「…嫌…であり…ます…。」

 

「なら、殺れ。これは命令だ。」

 

「……。」

 

「返事はどうした!!」

 

「は、はい!」

 

あきつ丸は引き受けてしまった…。

 

「こいつは今、忌々しい海軍の元帥から褒美をもらって、東北地方へ行く。浮かれている最中に殺れ。こいつは陸軍にとって、大変危険な存在だ。一週間後行け。」

 

「…はい…。」

 

そして夜、おぼつかない足で、自室へ戻るのだった。

 

…………

自室

 

「…ただいまであります…。」

 

「お帰りなさい。どうだったの?」

 

まるゆが布団に入りながら聞く。

 

「…なんでもないであります…。」

 

あきつ丸も、布団に入り、力ない笑みをする。

 

「…?わからないけど、力になれることがあるならなるよ!」

 

「…ありがとうであります。」

 

あきつ丸は話す。そして…。

 

「…まるゆ准尉…。」

 

「二人だけの時はまるゆでいいよ。そのかわり、まるゆもあきつ丸って呼ぶから。」

 

「…まるゆ…。」

 

「どうしたの?」

 

「…一週間後、少し留守にするであります。」

 

「…そうなんだ…。」

 

「…必ず帰ってくるであります。」

 

「…絶対だよ?」

 

「絶対であります。」

 

あきつ丸は笑顔を見せる。まるゆはそれを見て、安心する。

 

……ごめんなさいであります。まるゆ…。失敗したら、殺されると思うであります…。あの人たちは自分よりも、何倍も強いでありますから、多分もう会えないであります…。

 

あきつ丸は言葉に出来なかった。出来るはずがなかった…。

 

「…まるゆ…。」

 

「どうしたの?」

 

「これから一週間、留守にする間まで一緒の布団で寝ていいでありますか?」

 

「そんなこと?別に良いよ!」

 

まるゆはあきつ丸のスペースを作ってあげた。

 

「ありがとうであります。」

 

「別に良いよー…。」

 

そして、二人は寝たのだった。




はい。終わりました。今回は、陸軍メインでしたね。まだ旅行すらしていないという…。
登場人物紹介コーナー
大鳳…本日の秘書艦。今回はあまり出番ないので、次回も出ます。
しおり…ドミナントが手掛けたしおり。一睡もしないで書いた、努力の結晶であることが、何十人の艦娘の中、何人の艦娘がそれをわかってくれるのやら…。
森崎少将…基本的、良い人。陸田中将に、艦娘には冷たくする様に言われている。深海棲艦が現れる前から陸軍にいる。
次回!第107話「旅行 その3」お楽しみに!


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107話 旅行 その3

はい。やってきました107話。…200話で終わりそうにないですね…。一応、ACが濃くなっていくんですけどね。
「濃くなるって…。どれくらい…?」
とある組織や、巨大兵器などが…。
「もういいわ…!聞くだけで無理…。」
まぁ、書くから、瑞鶴も頑張ってね。
「私に死ねと筆者さんは言うのね…。」
…誇張し過ぎじゃない?
「…やられる身にもなってみなさいよ…。」
…絶対にやだ。まぁ、高みの見物をしますよ。
「…その前に筆者さんを殺せばなんとかなるかしら…?」
…ん?何か言った?
「…あっ。いいえ。なんでもないわ。それより、後で近くの森の中に一人で来てくれない?」
非常に気になるその笑顔。てか、森の中は無理だなぁ。汚れたくないし。
「大丈夫よ。すぐに楽になるわ。」
…殺す気だな…。それより、ゲストは?
「この人。」
「瑞鶴、やめておけよ。」
「あっ、提督さん…。」
「大切な仲間を殺人者にしたくない。」
さっすが〜。ドミナントですね。
「…俺がやろう。」
ま、待ってくれ。降参だ。筆者は…、指示された通りやっただけだ…。あいつさえいなければ…こんなことする意味もない。それに、まだ書いていない。ノーカウントだ!ノーカウント!なぁ?わかるだろう…?同じ人間じゃないか?
「ああ。そうだな。」
ドッガァァァァァン!!
「…これで良い。」
「あー…。多分、あれは本当に死んじゃったかも…。」
「それより、あらすじをすれば良いのだな?」
「え、ええ。」

あらすじ
前回、俺は眠かったから寝た。体がだるい…。頭が痛く、ボーっとする…。寒いし…。…もしかして、やばい状況なんじゃない…?







…残念だが、筆者は不死身なのだよ…。


…………

第4佐世保鎮守府 提督自室

 

コンコン…ガチャ。

 

「提督、ヒトフタマルマルですよ。いい加減起きてください。」

 

大鳳が入り、布団を揺さぶる。

 

「提督、まだ寝ているんですか…?」

 

大鳳は、布団から顔を出すドミナントを見る。

 

「フフ。寝顔は可愛いのね。フフフ。」

 

そして、大鳳はドミナントの顔に手を触れる。そして…。

 

「熱っ。…すごい熱…。」

 

驚き、すぐに手を引っ込める。

 

「…おそらく、38.5分前後…。高熱ね。医者に見せた方が…。」

 

「…大丈夫だ。」

 

「提督!?起きていたんですか!?」

 

大鳳はさっきのことを聞かれたと思い、顔を赤くする。

 

「ああ。…と言っても、顔を触られた時からだがな…。フフ…フ…。」

 

ドミナントは力なく笑う。

 

「まずどうすれば…。薬を…。いや、でもまずは先にみんなに知らせるべき…。でも、その間提督を放っておくわけには…。」

 

大鳳は、いつもはしっかりしているが、不測の事態に混乱している。

 

「…まずは、そこにある冷蔵庫に冷えた枕がある。持ってきてくれ。そして、みんなには知らせるな。この前の年老いた医者を呼んできてくれ…。それと、俺の仕事だが…。提督机の一番上の引き出しの中に印鑑がある。それと一緒に仕事を持ってきてくれ…。」

 

ドミナントは一つ一つ的確に言う。

 

「…えっ?なんで仕事を…?」

 

「それが『提督』だ…。風邪をひいても仕事をして管理しなければならない責任がある。…それに、あの量の仕事は誰がやるんだ…?」

 

「私がやります!」

 

「いや、無理だろ…。」

 

「む…。この程度、この大鳳にはびくともしないわ!」

 

大鳳は自信満々に胸をそらす。

 

「…何もないとそらしているのがわかるな…。」

 

「…提督…?何か言いました…?」

 

「あっ、いえ!なんでもないです!」

 

大鳳の恐ろしい瞳に、思わず敬語を使ったドミナントだった。

 

…………

 

「ふむ…。この時期、風邪が流行っておるからのう。おそらくそれじゃ。」

 

「そうなのでしょうか…?」

 

現在、ドミナント寝ているが、医者に診てもらっている。大鳳はドミナントの隣で心配そうに見ていた。

 

「じゃが…、寝不足もありそうじゃの。それに、この部屋には暖房がない…。寝不足に、体が冷えたり、ストレスでここまでなったのじゃろう。…薬は出しておく。一週間もすれば、なんとかなるじゃろう。」

 

医者は、カバンの中から薬を取り出す。

 

「一週間…。それでは間に合いません!なんとか早める方法はないですか?」

 

大鳳は聞く。

 

「…何かあるようじゃが、無理じゃの。…じゃが、可能性はあるのう。」

 

「あるなら教えてください!」

 

「…医者として、こんなことを言うのはおかしいと思うが…。不治の病に侵された人が、他人の看病で治ったと言う話を聞いたことがある。つまり丁寧に、大切に看病したら、治る傾向が強まると言うことじゃ。…まぁ、その患者を診た医者が無能の可能性もあるがな。」

 

年老いた医者が言う。

 

「…つまり、看病することですね?」

 

「…まぁ、そうなのじゃろう。」

 

「なら大丈夫です!最初からする予定でしたから。」

 

大鳳は自身満々に言う。

 

「…じゃが、世話を焼くことに迷惑を覚える人間もおる。」

 

「随分とわがままな人ですね。世話を焼いてくれる人がいない人もいますのに。」

 

「全くじゃ。…話を戻すが、その人のためを思っても、やり過ぎたら流石に迷惑じゃ。病気になった本人はいま辛い状況なのじゃ。それらを見極め、看病することが大切じゃぞ。…それじゃ、わしは帰る。」

 

「ありがとうございました。」

 

年老いた医者はそう言ったあと、帰って行った。

 

「…迷惑にならない看病…。」

 

大鳳は呟いた。

 

…………

 

「う…ん…。」

 

ドミナントはぼんやりした視界の中、目覚める。目の前には、黒い人影が汗を拭いてくれていたり、額に濡れた布巾を乗せてくれている。

 

「…母…さん…?」

 

ドミナントは呟いた。

 

「…母さん…?」

 

大鳳はキョトンとする。

 

「提督、大鳳です。」

 

「…大鳳…?」

 

ドミナントはボヤけた視界から、しっかりと見る。

 

「…すまん。さっきのことは忘れてくれ…。」

 

ドミナントは言う。

 

「母さん…。提督に家族はいたんですか?」

 

「…いた。」

 

「もういないんですね…。」

 

「ああ…。」

 

「提督、提督はどこから来たのですか?」

 

「…何故そう思った?」

 

「だって、提督はあまりにも世の中のことを知りませんし、ロボットになれるなんておかしいですから。」

 

「…まぁ、そうだな。」

 

ドミナントは答える。

 

「ジナイーダさんから、ジナイーダさんの世界のことは知りました。…セラフさんも、主任さんも、ジャックさんも同じ荒んだ世界だと思います。しかし、提督はその4人と比べると、圧倒的に心が豊かです。それに、あの世界で、その格好で書類仕事なんておかしいですし。」

 

大鳳は述べる。

 

「提督…。…他の人には内緒にします。教えていただけませんか…?」

 

大鳳は、ドミナントの額の布巾を手に取り、水につけて、絞ってまた乗せた。

 

「…いいだろう。話そう。俺は、あいつらとは別の世界から来た。少なくとも、俺がいた場所は戦争などしていなかった。逆に、この提督仕事の約5倍以上の仕事量ばかりで、休む暇などない。ある意味過酷な世界だ。…驚くかもしれないが、その世界にもジナイーダたちはいた。」

 

「えっ!?ジナイーダさんたちが…?」

 

「ああ。…だが、コンピューターゲーム、『アーマード・コア』通称“AC”の登場人物。つまり、架空の人物達だ。」

 

「そうなんですか…。」

 

「俺は、あいつらを倒したことがある。」

 

「えっ!?」

 

「俺がロボット化…、通称AC化の姿形、武器であいつらを倒した。…ものすごく大変だったがな。」

 

「つまり…、提督はジナイーダさんたちよりも強いんですか…?」

 

「“強かった”…だな。それに、それはたかがコンピューターゲーム。現実とは違う。やられれば、やり直しができるし、パターンも読み取れる。」

 

「そう…なんですか…。」

 

「それに、お前たちのゲームもある。」

 

「えっ!?」

 

「『艦隊これくしょん』通称“艦これ”だ。俺はそのゲームをしたことがないからよく分からないがな。」

 

「私たちがゲームに…。」

 

大鳳は想像する。自分たちがキャラクターになり、深海棲艦を倒す姿を…。

 

「…そこには、提督たちもいますか?」

 

「『提督』はいる。それをやる人全員が提督と呼ばれるらしい。そして、やる人…プレイヤーが、編成し、出撃や遠征をさせたりする。デイリー任務とやらがあるらしいがな。」

 

「…ドミナント提督は…?」

 

「俺は艦娘じゃない。もちろん、ジナイーダたちもだ。それに、少し前に戦った『ミッドウェー』も…。いや、『ミッドウェー』はいるのか…?同じ深海棲艦だから、おそらくいるだろう…。」

 

「そんなのと、違う世界の私たちは戦っているんですね…。」

 

「おそらくな。…だが、俺はそれをしたことがないからわからない。逆に、ジナイーダたちのことはよく知っている。主任が何者なのか…。セラフとはなんなのか…、ジャックがあんなことをした本当の理由がなんなのか…、ジナイーダはなぜある男を追っているのか…。などなどだ。まぁ、それを俺が知っているなんてバレたら、殺されるかもしれないから今まで言わなかったがな。」

 

ドミナントは淡々と述べる。

 

「…大丈夫ですよ。」

 

「何がだ…?」

 

「ジナイーダさんたちは殺したりはしないはずです。それに、前セラフさんから、“ドミナントさんが私たちに何かを隠しているのは知っています…。私たちに害があるものなのかもしれませんが、隠し続けられるこっちの身はとても寂しいんですよ?”って、言ってました。…バレるよりも、打ち明けた方が良いと思います。」

 

大鳳は静かに言う。

 

「…そういうものなのか?」

 

「そういうものなんです。それに、もし怒ったとしても、殺しはしませんよ。」

 

大鳳は笑顔で言った。

 

「…そうか…。」

 

ドミナントは呟いたあと、眠りについた。

 

……打ち明ける時…か…。




はい。終わりました。最近、なんかいまいち…。でも、続けます。
登場人物紹介コーナー
大鳳…しっかりとした軽空母。ドミナントたちに好意的。あの彗星を忘れたことなどない…。
次回!第108話「旅行 その4」お楽しみに!


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108話 旅行 その4

はい。ここで気付いたのですが…、旅行編でよかったんじゃない?
「生きていたんだ…。まだ行ってないものね。どこに行くのかしら…。」
雪山。
「…え?」
雪山で遭難して、山小屋で温め合うんだよ?
「え…?嘘よね?ねぇ!?」
さて、今回のゲストは?
「ねぇ!?聞いてる!?」
「瑞鶴さん、何を騒いでいるんですか?」
瑞鶴、嘘だよ。そんな予定ない。だから、騒ぐな。
「あんたが言ったんでしょうがぁぁぁ!」
怒りで燃えてるねぇ…。それじゃ、大鳳さん、あらすじを頼みます。
「すごい燃えていますね。」

あらすじです
前回、提督さんが風邪をひきました。そして、看病していると、起きた提督から驚くことを伝えられました…。なんと、提督はジナイーダさんとは別の世界の人間だったのです。その世界には、私たちやジナイーダさんがゲームのキャラクターで、私たちが出ているゲームはやったことがなく、ジナイーダさんたちのゲームしかやっていないので、私たちのことはあまりよく知らないらしいです。…逆を言えば、ジナイーダさんたちのことは、よく知っているとのことです。そのため、誰にも打ち明けることが出来ず、隠したままで、隠されている方も、もやもやしたままでした。しかし、私はこのことを私の口からは言いません。提督の言いたい時があると思うので、その判断に任せます。

…すごい長い…。おそらく、今までで最長の文字数…。
「やるわね。大鳳…。」


…………

翌朝

 

「ん…ふぁ〜…。朝か…。」

 

ドミナントは目覚める。

 

「寒っ。裸かよ…。…ん?ベッドが重い…。…!?」

 

ドミナントは驚いた。何故なら、自分はパンツ一丁で、隣に寝ているのは大鳳ではないか。

 

「ん…ふぅ…。」

 

スースー気持ち良さそうに大鳳が寝ていた。

 

「……。」

 

ドミナントは固まる。

 

……待て、待て待て待て待て待て。まさかな。そんなわけがない。俺は何もしていないはずだ。何もな。何故パンツだけなのかって?それには絶対に訳があるはずだ。俺は何もしていない。夢だ。無実だ。しちゃった?……夢?夢か、これは。そうだよな。俺は何もしないと誓ったし、狼にもなってないと思う。それに、大鳳だぞ?こんな冴えないおっさんと一緒なんて、死んでも無理に決まっている。死かこれだったら、間違いなく死を選ぶだろう。…だが、これも夢だとは断定できない。大鳳も寝ているし、すぐに着替えなくては…。

 

そして、ドミナントは支度をしようとすると…。

 

コンコン…ガチャ

 

「提督、玉子焼き作ったんだけど食べ…。」

 

瑞鳳が微笑みながら入ってくる。

 

「え…。」

 

パリンッ…

 

思わず器を落とし、割ってしまった。瑞鳳はパンツだけのドミナントと、ベッドで寝ている大鳳を見ても、入ってきたときと同じ顔のままだ。ショックすぎて追いついていないのだ。

 

「…違うぞ。間違いなく誤解だ。…だから、その顔で涙を流さないでくれ…。」

 

瑞鳳はその顔のままジワリと涙が出ていた。そこに…。

 

「う…ん…。」

 

大鳳が起きる。

 

「大鳳。起きたか?」

 

「…?…!。提督!?わ、私…寝てませんよ!はい。」

 

「いや、完璧に寝ていたぞ。爆睡だ。…それより、何故俺がこの格好で、お前がベッドで寝ていたのか理由を知りたいんだが…?」

 

「あっ。はい。わかりました。」

 

…………

昨晩

 

ドミナントは寝ていて、大鳳が一晩中看病している。

 

……それにしても、すごい汗…。…そのままにしておくと、冷えるわね…。布巾で拭き取らなくちゃ…。

 

そして、寝ているドミナントの服を脱がせ、拭いてあげる。

 

……この『提督』の服って、無駄に良く出来ているから、脱がせにくいし、着させにくいのよね…。

 

大鳳は、一応戻そうとするが、全くうまくいかない。

 

……でも、このままにしたら悪化しちゃうかもしれませんし…。…確か、温めるには人肌が良いと聞きましたね。…ん?この場合はこちらが服を着ていますから、人肌ではありませんね。…嫌!無理無理無理!そんな恥ずかしいことなんて…。…でも、提督が悪化させないようにしないと…。…他の艦からは抜け駆けと言われるかもしれませんが…、提督のためです。喜んで…じゃなかった。仕方なくそうするんです。それに、このまま起きていればいいことですし…。

 

そして、大鳳はドミナントのベッドに入り、温めているうちに、いつの間にか寝てしまったのだ。

 

…………

 

「と、いうわけです。」

 

もちろん、この回想ではなかったが、ドミナントのことをいじくり回していたのは言うまでもない。

 

「…よかった…。瑞鳳、どうだ?俺は無実の潔白だろう?」

 

「……。そうなんですが…。なんだか腑に落ちないです…。」

 

瑞鳳は少し拗ねている感じだ。

 

「ところで、瑞鳳、なんのようだ?」

 

「そうでした。…玉子焼き…。」

 

「……。」

 

瑞鳳は、落ちてしまった玉子焼きを悲しそうに眺める。

 

「…美味しそうな玉子焼きだな。食べても良いか?」

 

「えっ!?落ちたものですよ!?」

 

「それがどうした?わざとじゃないし、俺のために作ったのだろう?なら、例え泥の中に落ちても、それを少しでも食うのが礼儀だ。」

 

「提督…。」

 

ドミナントは拾い上げる。

 

「…いただきます。」

 

ドミナントは食べた。

 

……ホコリっぽい…。しかも、少しだけ砂もついているな…。

 

ドミナントの感想はそれだったが…。

 

「うん。美味しいよ。」

 

「…嘘は見抜けるんですよ?」

 

「…すまん。ゴミだらけでいまいち味がわからない…。」

 

「でしょうね。」

 

そんな朝が過ぎるのだった。

 

「大鳳、話がある。」

 

「なんでしょうか?」

 

「俺を看病してくれてありがとう。すっかり治ったよ。一週間分の薬を出されたけど、1日で治るとはね。…まぁ、飲むけど。」

 

ドミナントは頭を撫でる。

 

「いえ、これくらい…当然…です…。」

 

途中から声が小さくなる。気持ち良いのだ。

 

「…大鳳、何かお願いがあれば聞くぞ。」

 

ドミナントが言うが…。

 

「そう…ですね…。…今は…いいです…。」

 

大鳳が目を閉じながら言う。

 

「…そうか。必要になったら言ってくれ。」

 

ドミナントはほのぼのとした気持ちである。

 

…………

旅行へ行く日 朝

 

ビーーーー…。

 

チャイムが鳴る。

 

「来たか。」

 

ドミナントは、外門に行く。すると、少しフレンドリーな感じの人がいた。

 

「遅くなってすみません。確かあなたは…。」

 

ドミナントが言う。

 

「おぉ。自己紹介がまだだったな。俺は佐々木少将だ。第2佐世保鎮守府の提督。ここと一番近い鎮守府の提督でもあるかな。」

 

少し微笑みながら言う。

 

「この鎮守府へお越しいただきありがとうございます。では、これから5日間頼みます。」

 

「大佐の艦娘よりも、こっちは弱いから、完璧にはこなせないかもしれないけど、まぁそれなりには努力するさ。てか、敬語はいいよ。敬語がない方が話しやすいし。」

 

佐々木少将は頭をかきながら言う。

 

「そうですか…いや、そうか?」

 

「ああ。それに同じくらいの歳だと思うし、階級も一つ違いだからさ。」

 

「なるほど。」

 

……この人まともだな。会議の時、何か本を読んでいて、無口な人だと思っていたけど。

 

ドミナントは判断する。

 

「じゃぁ、旅行楽しんできてくれ。」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントはお礼を言って、戻ろうと後ろを向いたら…。

 

「あっ!忘れてた。待ってくれ大佐。」

 

「佐々木さん、どうかしたか?」

 

ドミナントは振り向く。すると、鞄の中をゴソゴソと探し、なにかを取り出す。

 

「これは俺からの選別だ。…フッフッフ。君の趣味に合うと良いが。」

 

「こ、これは…!」

 

…………

グラウンド

 

「ふぁ〜…。少し早く来すぎちゃったかな?」

 

吹雪が言う。旅行が楽しみで早く起きてしまったのだ。ボーッとしていると…。

 

「ふふふ…。あの人とは趣味が合うな…。これはいい…。俺も何か送るか…。」

 

ドミナントが何か本みたいなのを持ち、歩いているのを見かける。

 

「あっ。司令官。…何をしているんだろう…?」

 

吹雪は後をつける。

 

「限定でもう購入できず、手に入らない物だと思っていたが…。あの人には大変感謝だな。…俺も何か送らなければ…。」

 

ドミナントがニヤケながら自室に戻ろうとする。

 

……司令官があんな感じに…。一体何を持っているんでしょうか…?

 

吹雪はまだ後をつけるが…。

 

ギィ…バタン。

 

ドミナントが部屋に入ってしまった。

 

……これだと何を持っていたのかわかりません…。でも、知りたいですし…。

 

そして、吹雪は決断した。

 

ギィ…。

 

ノックをせず、こっそり覗いたのだ。

 

「ん〜、前は神様に見つかっちゃったけど、執務室に置いていたからだよね〜。なら自室に置いといたほうが良いし、さらにこの中に入れておけば良い。」

 

……執務室にあった…?何があったんでしょうか…?しかも見つかったらだめなもの…?

 

吹雪は考える。が。

 

「さてと…。少し早いけど行くか。上司が遅れるのはまずいからなぁ〜。」

 

ドミナントが部屋を出ようと向かう。

 

……あわわわ…。まずいです!隠れるところ…。

 

吹雪は探す。が何もない廊下だ。見つからないわけがない。そのうちに足音が大きくなり…。

 

ガチャ

 

「…誰かいたのかな?匂いがするが…。」

 

ドミナントはあたりを見回す。

 

「…誰もいないなら、気のせいか…。」

 

そして、ドミナントは歩いて行った。

 

……な、なんとかバレずにすみました…。

 

吹雪は、天井と壁にうまくひっついていた。

 

スタッ

 

……どうしても気になります…。

 

そして、吹雪はドミナントの部屋に入り、漁る。

 

……確か、司令官はこの辺りにしまって…。

 

吹雪が漁っていると…。

 

パサパサ…。

 

「?なんでしょうか…?引き出しの裏から落ちましたね…。」

 

吹雪は落ちたものを拾い上げる。

 

「これは…普通の本とは違う…?妙に薄いですね…。」

 

吹雪が中を読もうとすると…。

 

「吹雪…何をしている…?」

 

「!?」

 

後ろにドミナントがいた。

 

「…読んだのか…?」

 

「あっ、い、いえ!まだ何も読んでいません!本当です!」

 

吹雪は、ドミナントの重い声に重圧され、正直に言う。

 

「…これはまだ吹雪には早い…。それと、これは誰にも言うな。いいな?」

 

「は、はひ…。」

 

ドミナントのマジの声に“はい"としか言えなかった…。




終わりました108話。次こそ旅立ちそうですね。どこへ行かせようか…。
登場人物紹介コーナー
佐々木少将…第2佐世保鎮守府の提督。外見は、大変律儀でフレンドリーだが、内面は…。
次回!第109話「旅行 その5」お楽しみに!


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109話 旅行 その5

ドミナントたち出発しますね。
「そうね。…あなたは行かないの?」
ハハハ。筆者は無理だよ。…楽しんできてくれ、瑞鶴。
「…ありがとう。お土産は買ってくるわ。」
別にいいけどね〜。じゃ!今回も頑張ってあらすじをしよう〜!
「今日は元気ね。何か良いことあった?」
別に?ただ、少し気分が良いだけ。元気もらっただけだよ。
「…?誰に?」
色々な…、関わってきた人にだよ。
「ふぅ〜ん。…まぁ、私も毎回元気もらったりしているけどね。」
ん?最後の方聞こえなかったけど、何か言った?
「な、なんでもないわよ!それより、ゲストでしょ?」
?そうだったね。じゃ、今回のゲストは?
「この人よ。」
「第2舞鶴鎮守府提督、佐々木少将さ。ここに来るのは初めてだね。」
そうですね。では、あらすじをどうぞ。
「了解、了解。俺に任せな〜。」

あらすじ〜
前回、俺は巷(ちまた)で噂の第4佐世保鎮守府へ行った。ここの提督は恐ろしいと聞いたけど、全然違うじゃないか。誰だ?そんな噂流した人。…まぁ、そんな噂なんて当てにならないってことだな。まだ大佐のことは知らないけど、これをきっかけにどんどん知りたいし。…同じ提督だからね。


…………

グラウンド

 

ワイワイガヤガヤ

 

艦娘たちが集まっている。

 

「吹雪ちゃん、顔色悪いけど平気?」

 

「はい。大丈夫です。はい…。」

 

「何か恐ろしいことがあった顔ね…。」

 

「旅行ね〜。楽しみだわ〜。」

 

「愛宕もしおり読みなさい。このしおり、提督がしっかりと考えて作られていることを感じるから。」

 

「東北地方のお魚にゃ…。」

 

「蜂蜜クマ…。」

 

「姉さんたち…。ヨダレ出ているぞ…。」

 

「この時間帯少しさみーな…。東北はもっと寒いのか…。」

 

「私は全然平気よぉ〜。」

 

「手袋…ある。マフラー…ある。あっ、提督にマフラー編もうかな。でも、余計かな…?」

 

「忘れ物はないようにするのです!」

 

「一人前のレディとして当然よ!…多分…。」

 

「ハラショー。こいつを忘れているよ。」

 

「あっ!」

 

「…一番忘れちゃいけないパンツじゃないの…。」

 

「向こうはもっと寒い。そのことは艦娘は考慮に入れているのか…?」

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。艦娘だから生きていられるでしょ〜?」

 

「寒いじゃん!私も寒いのはやだよ!…まぁ、ドミナントと一緒に温まるのも…。」

 

「ふむ…。東北か…。雪はどうだろうな。」

 

「こっちはまだですけどね。あっちは降っているかもしれませんね。」

 

「私は寒さ感じないけどね…。」

 

「セントエルモちゃんすごく熱が伝わってくるんだけど…。カイロ入れすぎ?」

 

「入っていない。最近、朝起きると勝手に体から熱が出る。」

 

「便利ねぇ〜。」

 

「でも、そのままでいるとお腹が空く…。」

 

「…やめといたほうがよさそうだね。はい、カイロ。」

 

「温かい…。」

 

それぞれ話している。すると…。

 

「みんなー、ちゅうもーく。」

 

ドミナントが全員の前に立つ。そして、全員が向き、静かになる。

 

「えー、本日はお日柄も良く、大変…いや、長ったらしい話など、すでに意味をなさない。まず、人数を確認する。これからバスに乗るので、それぞれの管轄の人のところへ集まってくれ。管轄の人は人数を数えて、報告しに来てくれ。…主任のところは艦娘の誰か、頼む。」

 

ドミナントが言って、みんな移動し、しばらくして…。

 

「こっちは大丈夫だ。」

 

「同じくです。」

 

「大丈夫だよー。」

 

「こちらも問題はない。」

 

四人は答える。が。

 

「ドミナントォ、仲間外れはよくないなぁ〜、俺も言わせてくれないと。」

 

主任が言う。

 

「では、主任、全員いるか確認したか?」

 

「?何それ?」

 

「そこの時点でアウトだよ…。」

 

ドミナントは脱力する。が、ちゃんと説明し、全員揃っていることがわかった。

 

「さて、では荷物チェックする。忘れ物がないか確認するぞ。まず、着替えだ。」

 

言うと、直ちに全員が確認する。

 

「あるか?次、皆に配ったチケット、しおり、酔う艦娘は酔い止めの薬、お金、虫除けスプレー、重ねて着る服、念のための防犯スプレー、そして、なによりも大事な娯楽道具。大丈夫か?」

 

ドミナントは聞くと、全員の艦娘がチェックして、あることを確認した。

 

「それと、危険物は基本的に持ち込みは禁止されている。…木刀を置いていけよ、天龍。」

 

「なっ…。…なんでわかったんだ…?」

 

そして、素直に木刀をセラフに渡した。

 

「他、ナイフや銃、艤装や毒物などの持ち込みは空港の検査で通らない。むしろ、刑務所行きだ。そうなりたくないのであれば、素直に出してこい。」

 

ドミナントが言い、ごく少数の艦娘やジナイーダなどが出してきた。そうしているうちに…。

 

キキィ…。

 

「む。バスが来たか。それじゃぁ、順番に行くぞ。」

 

艦娘たちはワイワイしながらバスに乗って行った。

 

…………

 

「バスってこんななんだ〜。」

 

「少しガタガタしてますね…。」

 

「う…。なんか気持ち悪い…。」

 

どのバスの中でも、艦娘たちがお菓子などを食べていたり、話していたり、楽しそうにしていた。

 

「提督、朝作った卵焼きです!」

 

「うん。ありがとう。…でも、ここで食べるのか…。」

 

「なんなら食べさせてあげます!口を開けてください。」

 

「瑞鳳…、それは流石に恥ずかしい…。…食べるけどね。」

 

ドミナントたちはそんな会話をしていた。

 

…………

 

「ジャックさん、楽しいですか?」

 

「む。何故だ?」

 

「なんか顔がいまいち楽しそうじゃないからです…。」

 

「…この顔は生まれつきだ。それに、主任みたいにいつも笑っていた方が良いか?」

 

「……。」

 

…………

 

「提督〜…。」

 

「金剛、諦められない気持ちもわかるけど、過去は過去だよ。今はこっちで楽しもう!」

 

「……。」

 

「あなたの姉妹もいるんだし!…ドミナントの良いところ聞かせてくれる?」

 

「まず、優しいところデース!」

 

「優しいよね〜。私もそこが好き。」

 

「榛名も…。」

 

「おや?金剛のライバルかな?」

 

…………

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

「こっちは主任と一緒か〜。騒がしくなりそうだな。」

 

「天龍ちゃんに言われたくないんじゃなぁい?」

 

「龍田、どういう意味だ!?」

 

「うるさいですよ、天龍さん。」

 

「な…。神通…。」

 

「ほらねぇ〜。」

 

「くっ…。」

 

「俺たちに…、味方なんていないんだ。」

 

「…そうだな。」

 

…………

 

「セラフさん、このボルトの締め方を調整して、使いやすくしてみました!」

 

「なるほど…。使いやすくなりましたね…。」

 

「にゃ〜。…やっぱり、提督の膝の上が良いにゃ…。」

 

「お腹すいたクマー…。」

 

「なんで同じところにじっとするのが苦手なんだ…?」

 

…………

 

シーン…。

 

……潜水艦…、怖い…。

 

……なんで誰も話しかけてこないんだろう?同じ潜水艦のみんなは別々の席に行っちゃったし…。…もしかして、嫌いなのかな…?

 

……静か…すごく…。

 

……静かだな。…私は少し賑やかくらいだと思っていたが…。

 

……嫌いなのに、話しかけたら迷惑でちね…。…少し寂しいでち…。

 

すると…。

 

「…潜水艦って、夜中だと当たらないって本当?」

 

セントエルモが聞く。

 

「演習だと当たらないでち。」

 

ゴーヤが答える。

 

「なるほど!強い!どうやっているの?その能力ほしい。」

 

「夜だとただでさえ見えない海中に、真夜中だから当たっても、大したダメージにはならないでち。」

 

「海中専用か…。それじゃぁ無理だな…。それより、なんでみんな黙っているの?潜水艦のことが嫌いだけど、艦娘が嫌いなわけじゃないでしょう?」

 

「そうですけど…。」

 

「ほら、みんな積極的に話そうよ〜。」

 

「…セントエルモ。無理しなくて良いぞ。」

 

ジナイーダとセントエルモが結局無理して盛り上げた。

 

…………

飛行機内

 

「なるほど。飛行機だと金剛が隣になったか…。」

 

「もちろんデース!」

 

「…でも、俺は真ん中だから、右は阿武隈か…。」

 

「あたし的にはOKです!」

 

「そうか。」

 

「提督と隣になれて嬉しいデース。」

 

金剛が抱きつく。

 

「阿武隈も負けられません!」

 

阿武隈も抱きつく。

 

「…離してくれ。きつい。」

 

……それに、こんなところジナイーダに見られたら、ボコボコどころじゃない…。下手したら、飛行機から落とされるかもしれない…。

 

ドミナントが考えていると…。

 

「……。」

 

ゴゴゴゴゴ…

 

「…ハッ!?」

 

文字通り、ドミナントは飛行機の下に吊るされた。

 

…………

 

「快適なフライトだったな。」

 

ジナイーダが言う。

 

「いつロープが切れるか心配で、精神がゴリゴリ削られたよ…。」

 

ドミナントはゲッソリしている。

 

「提督と隣になれたchanceだったのに…。」

 

「提督の隣…。」

 

二人はとても残念そうだ。

 

「…まぁ、それはそうとして、ついたな。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントが言い、ジナイーダが返す。

 

「まだ見ぬ秘境…、とーほくちほーへ!」

 

「どんなフレンズが出てくるんでしょうね。」

 

「楽しみだなー。」

 

「あたしは文月!たーのしー。」

 

「…このノリで行くのか…?」

 

ジナイーダは深夜アニメ組とドミナントにツッコミを入れた。

 

…………

 

「4泊5日ある。そのうちに、少しだけ名所に行くぞ。その時はちゃんと自由時間を取る。しおりに書いてある。」

 

そして、ドミナントたちは巡るのだった。

 

…………

東北地方上空

 

「失敗するなよ。」

 

「大丈夫であります。」

 

改造ヘリコプターであきつ丸と森崎少将が言う。

 

「今回、特別に俺だけでお前を行かせる役になれたんだ。」

 

「ありがとうございます。森崎少将。」

 

「…捕まっても、自害しようとするなよ。まるゆ准尉が泣きながら頼んできた。」

 

「…うまくごまかせたつもりだったんでありますが…。…でも、それは出来ないであります。拷問されるくらいなら…。」

 

「大丈夫だ。」

 

「?」

 

「…外の奴らは鬼ではない。」

 

「?どういう意味でありますか?」

 

「…まぁいい。これからお前の監視役も俺がやることになるが…。この際だ。お前一人で行け。」

 

「!?そ、それだと外の奴らに…。」

 

「一人で行って、『答え』を見つけてこい。…別に、陸軍にはお前たち『艦娘』が必要というわけではないからな。」

 

「…それはどういう…。」

 

「目標地点の上空へ到着。パラシュートは持っているな。では、行ってこい。」

 

「えっ、ま、待つで…。」

 

ドガ

 

「ああぁぁぁぁぁぁ…。」

 

あきつ丸は落ちていった。そして、一人の時…。

 

「…昔、俺はお前たち『艦娘』に助けられたからな…。お前たちには好きに生きて欲しいんだ。偽りの言葉ではなく、真実を見て決めて欲しい。」

 

森崎少将の言葉は誰の耳にも届かなかった。




…なんか、戦い編はいつになるのだろうか…。そろそろ暴れ出したい衝動に駆られる…。…ハッ!?これが身体が闘争を求めるって奴なのか!?
登場人物紹介コーナー
阿武隈…大人しげだけど、神経質で、負けず嫌い。ドミナントに頭を撫でられるのは好きではない。だが、髪が崩れないように撫でるとすごく喜ぶ。必要とされると目に見えて喜ぶ。また、遅くまでドミナントが何かしていると、ドミナントがちゃんと寝るまで一緒にいる。そのため、ドミナントは阿武隈が秘書艦の時は深夜アニメが見れない…。
改造ヘリ…高度5000mまで飛行可能となったヘリコプター。また、燃料も大量に入るように改造されているため、隠密行動に適したヘリコプターだ。武器は搭載できない。重さや場所の問題があるため。
次回!第110話「旅行 その6」お楽しみに!


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110話 旅行 その6

知ってたか?夕張って、深夜アニメ録画してるんだぜ。
「…いまさら…?」
案を考えながら艦これをしていたら、突然喋ってきたんだぜ…。
「あれ?秘書艦って私じゃ…?」
ん〜?交代したんだよ?
「……。…あれ?なんでだろう…?目の前がぼやけてくる…。」
ギャグだよ〜、ギャグだってば〜。…ハンカチ。
「…うん。」
じゃ、今回のゲストは?
「この人。」
「とうっ!…あっ、いきなり召喚されたからナイフが…。」
グサッ!
ん?何か頭の後ろが痛いんだけど…、なんか刺さってない?てか、シレアさん、お久しぶりです。
「えっ?あ。うん。久しぶり。」
「…本当に不死身なのね…。なんかゾワッとするわ…。」
ズボッ
ナイフだったのか…。ん?瑞鶴ちゃんが何か感じているのかな?瑞鶴ちゃんいい子ね〜。
「…訂正。ゾワじゃなかったわ。イラだったわ。ちょっと待ってね筆者ちゃん。今すぐ艦載機飛ばしてあげるから。」
え。ちょ、冗談だよ。うん。待って待って待って、それよりあらすじでしょ?ねぇ。シ、シレアさん!早く!早く言って!
「え〜、なんか面白いそうなことが起こりそうなんだけどなぁ〜。」
ねぇ、お願い!
「しょうがないな〜。まぁ、嫌がる人を放ってはおけないしね。」
やったぁ!好き好き愛してる。
「…キモ…。…瑞鶴、やっぱり爆撃した方がこの人のための気がする。」
「やっぱり?じゃぁやって良いわよね?」
「うん。思いっきりぶっ放しちゃって。」
ちょ、待…。
ドガァァァァァン!!!
「…まぁ、消し炭にしてもまた生き返るけどね。それじゃぁ、佐藤中佐お願いします。」
「あいよー。」

あらすじ
前回、私の鎮守府では何もなかったな〜。…いや、あったね。元帥が私の所属の明石に用があったらしいんだけど…。なんだったんだろう…?
あの設計図…。


…………

 

「まず〜、右手に見えますのが〜…。なんだあれ?」

 

「おい、誰か司会交代しろ。」

 

現在、ドミナントたちはバスの中に乗っている。こっちでは、番号の席を毎回シャッフルして決める方針らしい。運転手も大変である…。そして、今司会を務めているのがドミナント。ジナイーダが辛辣な言葉を送る。ジナイーダと同じバスみたいだ。

 

「わかった、ちゃんとやるよ…。」

 

「よし。」

 

「左手に見えますのが〜、住宅街で〜す。」

 

「みりゃわかるだろ…。」

 

「右手に見えますのが〜、森で〜す。」

 

「よし、司会交代決定だな。てか、有名所通り過ぎて無いのに司会もクソもないだろう…。」

 

「辛辣だねぇ。」

 

「当たり前だ。それより、どこへ行くんだ?」

 

「う〜んと〜。しおりだと…。」

 

…………

 

「着いたな。」

 

「洞窟か…?」

 

「そうだよ?」

 

「なんだか…、気味が悪いです。」

 

ドミナントたちは、入り口に立つなり言う。

 

「…でも、なんだかワクワクします。」

 

「そりゃそうだろう。阿武隈。お前の名前も入っているもの。」

 

ドミナントたちが来たのは『あぶくま洞』。つまり、鍾乳洞だ。

 

「じゃ、入るぞ。」

 

…………

 

「わぁ〜。綺麗です!」

 

「これが自然…。」

 

「まだ見ぬ世界があった…!」

 

艦娘たちは驚きの声を上げる。

 

「…なるほど。私の世界にはなかったものだな…。こんなところがあるとは…。」

 

「ジャックのいた世界にはないもんね。」

 

「ああ。あるのはガレキやACの残骸、弾、硝煙の香り、朽ちた死体だけだ。」

 

ジャックがしみじみ言う。

 

「ふむ…。一応、色々資料を見て調べたつもりだったが…、実際に見ると良いものだな…。」

 

「ふふふ、そうですね。私のいたところには絶対にありませんね。あるとしても、映像だけだと思いますし。」

 

「すごいなぁ〜。」

 

「む?お前はもっとすごいものを知っているんじゃないのか?」

 

「確かに、神の国の方が知っているけど…。ここで言う?」

 

「ジナイーダさん…、それは答えるのに困りますよ…。」

 

ジナイーダたちも話している。

 

「う〜ん…。中々じゃない?」

 

「主任、頼むからそれを折ろうとするなよ。危ないから。」

 

主任とドミナントも話す。

 

「鍾乳石が場所ごとに色が違う。つまり、成分が少し異なるのかな…?」

 

「幻想的な風景ですね〜。」

 

駆逐艦たちが言う。

 

……でた。子供の勘違いあるある。色ごとに違うのはスポットライトの色を変えているからだ。そもそも、ライトがないと真っ暗だしな。でも、いつかわかることだし、何より、可愛いしな。

 

ドミナントが思っていると…。

 

「あれは色の違うライトを当てているからだ。」

 

長門が言ってしまう。

 

「へ〜、そうなんですか〜。」

 

「ああ。そうだ。」

 

駆逐艦たちは少しがっかりしている。

 

「ちょ、長もん。なんで言っちゃうんだ?」

 

「長もん…。…勘違いしたままだとかわいそうだろう?」

 

「…あの子たちは、そういう『自然』のものだと思っていたんだ…。そういう人工的なものだと分かってしまえば、感動も半減してしまうんだ…。」

 

「む…。そうだったのか…。」

 

長門は少し反省する。

 

「…まぁ、過去は変えられない。それに、確かに勘違いさせたままもおかしいからな。」

 

「うむ…。」

 

「まぁ、遅かれ早かれいつかわかることだし、それが早かっただけ。」

 

「うむ…。」

 

「まぁ、次挽回しよう?」

 

「…ありがとう。」

 

ドミナントは次に期待した。

 

…………

 

「次はここだ。」

 

ドミナントが言う。

 

「お城…。」

 

「私たちが生まれる前にも存在する建物。」

 

「戦術が多種多様で、戦いにも守りにも徹しているもの。」

 

艦娘たちが眺める。…とはいえ、公共の場だ。カメラなどで艦娘を撮る輩もいる。

 

……何しに来たんだよ…てめぇら…。

 

ドミナントが思うのも無理はない。

 

「ここはなんて言うお城なんですか?」

 

「ここか?ここは『鶴ヶ城』だ。」

 

ドミナントが言う。すると…。

 

「これが城だと?高度な技術が組み込まれていないようだが…。」

 

「鉄でできていないのか?これだと簡単に破壊できるぞ。」

 

「私の世界にもありましたが…。やっぱり、砲台がないと…。」

 

「ま、ちょうど良いおもちゃかな?」

 

愉快な仲間たちがぼやく。

 

「お前らと同じ尺度にすんじゃねぇ!発達してねぇんだ!」

 

ドミナントが言う。

 

「司令官…、公共の場ですよ…。」

 

「あっ。」

 

ザワザワ

 

「…よし、俺は少し消える。楽しんだあと、時間通りにバスに乗っていてくれ。それじゃ…。」

 

ドミナントは風のように消えた。

 

…………

バスの中

 

「司令官、この紹介たちはいつ終わるんですか?」

 

「う〜ん。そうだねぇ〜。広告みたいだからねぇ〜。次で最後にするか。」

 

「まぁ、話にするのはその部分だけで、色々なところ行ったり、食べたりしますけどね。」

 

「外だから規制かかるしなぁ〜。すまんな、由来の艦娘&慰霊碑や神社。」

 

ドミナントたちはそんなことを話した。

 

…………

2泊3日目 早朝

 

「で、なんでここなんですか…。」

 

「いいじゃないか〜。」

 

ドミナントたちは大湊警備府前にいた。

 

「すみませ〜ん。そこの憲兵さん。」

 

「む。なんだ?」

 

「この手紙を、ここの八神提督に渡しておいてください。」

 

「…まずはお前の名前を聞かないとな。」

 

「俺は第4佐世保鎮守府のドミナント大佐です。」

 

「…証拠は?」

 

「…ここにいる艦娘じゃダメですか…?」

 

そんなことを話していると…。

 

シュー…コー…

 

『何事?トラブルか?』

 

ガスマスクを被り、フードをした者が来る。前もそうだったが、顔も体も黒くてよくわからない。

 

「八神提督。この者たちがあなたに手紙がどうのとか…。」

 

憲兵が説明する。

 

シュー…コー…

 

『ふむ…。見ればわかる。君はドミナント大佐だね。上がってくれ。』

 

「え…。でも、今旅行中で、みんなを待たせているので…。」

 

シュー…コー…

 

『いいじゃないか。少しくらい。それに、その者たちにも上がってくれれば良い。なに、1時間くらいで済む。』

 

「そんなにですか…。」

 

そして、ドミナントたちは大湊警備府に上ることになった。

 

…………

応接室

 

シュー…コー…

 

『君と二人きりで話せて嬉しいよ。』

 

「は、はぁ。」

 

現在、艦娘たちは別の部屋で艦娘たち同士の交流をしている。ジナイーダたちもそこにいる。

 

シュー…コー…

 

『お茶でも飲むかい?』

 

「あっ、いえ。大丈夫です。それより話を…。」

 

シュー…コー…

 

『…顔を見ればわかる。君は異世界からの者だろう?』

 

「はい。あなたもですか?」

 

シュー…コー…

 

『ああ。まぁ、私の場合は転移だけどな。』

 

「そうですか…。」

 

シュー…コー…

 

『……。』

 

「……。」

 

しばらく両者とも話さず、ガスマスクの音が続いたあと…。

 

シュー…コー…

 

『…クク…。』

 

「?」

 

シュー…コー…

 

『クククク…。フフ…フフフフフ。』

 

「……。」

 

笑い続ける八神提督にドミナントは気味が悪く感じる。

 

シュー…コー…

 

『いやぁ〜、ごめんごめん。やっぱり、昔と変わらないね。』

 

「?誰だ?」

 

シュー…コー…

 

『私だよ。私。…と言っても、これ付けてちゃわからないか。』

 

「ああ。」

 

カチャ…

 

そして、八神提督はガスマスクを外した。なんと、美人な女性だった。ドミナントにはそういう星の下に生まれたのだろう…。いや、転移だから生まれじゃないな。

 

「…覚えてる?」

 

「お前は…!…誰だ?」

 

「…そういうところも変わらないんだね…。」

 

八神提督は苦笑いする。

 

「俺の知り合いに『八神』という人はいないが?」

 

「偽名だよ。偽名。君もでしょ?」

 

「まぁ、そうだが…。」

 

ドミナントは考えるがピンとこない。

 

「同僚か?」

 

「違います。」

 

「…ネット友達か?」

 

「そんな友達いるんだ…。でも、違うよ。」

 

「……援◯のやつか?」

 

「…そんな事したの…?」

 

「いや、していない。カマかけただけだ。」

 

「良かった。君がそんなことする人じゃないって思ってたもん。」

 

話していく。

 

……ふむ。どうやら、同僚でもなく、ネット友達でもない人…。俺の心理を理解している…?ならば、付き合いが長い?だが、そんなに付き合いが長い人なんていない…。しかも、話し方からして、親しい?

 

ドミナントは考えるがわからない。

 

「……。」

 

難しい顔をしていると…。

 

「…はぁ…。まぁ、しょうがないよね。中学校は別々のところへ行っちゃってそれから会ってないし。…これでわかる?」

 

髪を二つに縛った。

 

「…?…あっ!」

 

……面影が…。

 

「わかった?」

 

「中学の時、いじめに来たけど、逆に返り討ちにした奴!」

 

「違う!てか、虐められてたの…?…一緒の中学で守ってあげたかった…。」

 

八神?提督は後悔した顔をする。

 

「冗談だ。懐かしいな。星奈 紬(つむぎ)。」

 

「なんだ、覚えていたんじゃない。」

 

星奈(八神)提督は微笑む。

 

「ねぇ、覚えてる?昔、あなたに…。」

 

「それより、久しいな。こんなところで会うなんてな。」

 

「ええ。…それより、あの時の…。」

 

「てか、もうそろそろ時間だね。あいつらも心配だし、ちょっと様子見に行ってくるよ。」

 

ドミナントは立とうとするが…。

 

ガシッ

 

星奈提督に腕を掴まれる。

 

「ねぇ、覚えているんでしょう?」

 

「……。」

 

「あの時の返事。」

 

「……。」

 

「答えられる…かな…?」

 

「……。すまん。まさか会うとは思っていなかった。時間をくれ。」

 

ドミナントは立ち去ろうとするが…。

 

「もう…、もう10年以上待ってたのよ…。なのに…。また待てなんて…。」

 

「お前もわかっているだろう…。お互い、荷が重い仕事をしている…。そう簡単に決められることではない。転移?する前なら答えられたかもしれなかったがな…。」

 

「……。」

 

「それに、お前自身、また俺に会えるなんて思っていなかったんだろう?」

 

「…ええ。ずっとあの時の答えを待っていたわ…。」

 

「俺は、この世界に来る前、仕事で忙しくて、考えてもいなかった。もう会わないと思っていたからだ。同窓会にも、仕事で行くつもりもなかったしな。」

 

ドミナントは言う。

 

「でも、もう考えてくれるんでしょう?昔、約束したじゃない…。」

 

「…わかっている。だが、お互い歳をとり、人生を歩み、社会を知った。そう簡単に決められるものじゃないことくらいわかっているだろう?」

 

「でも、私はあなたのことが…。」

 

「……。」

 

星奈提督は涙が頬に伝いながら言い、ドミナントは今まで以上に険しい顔をする。両者とも、物凄い重荷を背負っているのだ。一緒になれば、社会が大混乱になるだろう。大本営からは危険視され、世間では極秘の第4佐世保の提督と、同じ異世界者の大湊警備府の提督が一緒になるのだから…。




終わりです。難しい問題ですね…。
登場人物紹介コーナー
星奈 紬…ほしな つむぎ。この世界では八神という偽名を使っている。もちろん、変わったことがないため、大本営にも異世界者だということはバレていない。艦娘や憲兵からは信頼されている。
次回!第111話「旅行 その7」お楽しみに!


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111話 旅行 その7

ゾロ目!
「111話ね。というより、前回から思っていたんだけど…。」
ん?
「なんで、旅行の最中にもこの小屋があるのかしら…?」
手違いだよ。それに、数日間見なかったでしょ?
「まぁ、そうだけど…。」
じゃ、一件落着。
「…何かおかしい気がするわ…。」
そうだね。てか、この小屋は筆者の好きなところへ行けるからさ。…まぁ、小屋だから流石に海上は無理だけどね。
「そんなカラクリがあったのね…。」
そゆこと。じゃ、今回のゲストは?
「この子。」
「瑞鳳です!」
瑞鶴と瑞鳳…なんか、こんがらがる…。
「では、頑張ります!」
頼んだぞ、瑞鶴…じゃなかった、瑞鳳!

あらすじです!
前回、大湊警備府の艦娘たちや憲兵たちと交流しました!提督は不在でしたけど…。…心配なので、見に行きましょうか…?


…………

応接室

 

「……。」

 

「……。」

 

応接室の中で微妙な空気が流れる。

 

「…お前の気持ちには今は答えられない。」

 

「…でも…。」

 

「…わかっているだろう…。」

 

「……。」

 

「…時間をくれないか…?」

 

「…そうやって逃げるのね…。」

 

「……。」

 

「…もう、逃げて欲しくないの…。私は…、私はあなたの答えを聞くまでずっと待っていたの。」

 

「…わかっている。分かってはいるが…、どうしようもないだろう。」

 

「……。」

 

「大本営からは俺は危険な存在なんだ。今そんなことになったら、どんな事が起こるか想像もつかない。危険なんだ。…昔のお前はそんなに聞き分けがよくないわけではなかったろう…?」

 

「……。」

 

「わかるだろう…?」

 

「…らない…。」

 

「?」

 

「あなたの気持ちがわからない!世間の話ばかりで、あなたの本当の気持ちが伝わってこない!私のことが嫌いなのか好きなのかも答えてくれない!」

 

「仕方がないだろう!じゃぁなんだ!?俺の気持ち一つで世間は認めるのか!?そんなわけがないだろう!好きと答えて、世間で認められないのなら、それこそややこしくなる!嫌いと答えても、納得ができず、色々と巻き込むだろう!?」

 

「勝手に思い込まないで!私はもう子供じゃない!答えが聞きたいだけ!」

 

「そんなの鵜呑みにできるわけがないだろう!」

 

両者ともヒートアップしているところに…。

 

ガタッ

 

ドアから音がする。

 

「「……。」」

 

ドミナントたちが見る。

 

「「「……。」」」

 

艦娘たちが心配そうに見ていたのだ。

 

「…司令官…。」

 

「…提督…。」

 

両者の艦娘がそれぞれの提督を呼ぶ。

 

「…すまん。驚かせたか?」

 

「…ごめんね。熱くなりすぎちゃったね。」

 

二人はとりあえず艦娘たちを宥める。

 

「…紬、この話は後でだ。」

 

「…うん。」

 

…………

 

「…ふぅ…、少し落ち着いたわ。」

 

「…そうだな。」

 

艦娘たちを戻したあと、二人でまた話す。

 

「…紅茶だ。飲むか?」

 

「一杯入れてくれると嬉しいな。」

 

ドミナントは二人分注ぐ。

 

「…リラックス効果のある紅茶だ。」

 

「ありがとう。」

 

二人で飲む。

 

「…その…、さっきはごめんね。いきなり怒鳴っちゃって…。」

 

「いや、こちらこそすまない。お前の気持ちを考えていなかった。俺の考え不足だ。」

 

二人は謝る。

 

「まず、結論から言うと、俺は好きだった。」

 

ドミナントが先陣を切った。

 

「…“だった”ってことは、もう違うんだ…。」

 

「そりゃそうだ。昔と今とじゃ、性格が変わっていたりするからな。」

 

「……。」

 

「今のお前を知らない。だから、答えることもできないんだ。もちろん、世間のことも絡んでいることは否定しない。」

 

ドミナントは淡々と述べる。

 

「…まぁ、もっと本音を言うとだな…。」

 

「?」

 

ドミナントが微妙な表情で言い、不思議に思う。

 

「ハーレムは望んでいない!」

 

ドミナントはぶっちゃけた。

 

「…プッ。アハハハハハ。」

 

「?」

 

星奈提督がいきなり笑い出す。

 

「そうね。そうだったわね。あなたは、ハーレム系物語を忌み嫌っていたものね。」

 

「そうだ…。これ以上増えたら、死神が見えてしまうかもしれない…。」

 

ドミナントがえらく深刻な表情で言う。

 

「死神って…。」

 

星奈提督が呆れる。

 

「俺は殺されたくないのでな…。…この前艦娘にも命狙われそうになったし…。第2舞鶴鎮守府の提督みたいに、友達関係にはなれないのか?」

 

ドミナントは提案するが…。

 

「話が逸れてない?私は、あなたが私のことをどう思っているのか知りたいの。」

 

さすが『提督』。それた話を戻した。

 

「…そうだな。俺は、こんな俺を好いてくれる人は全員好きだ。だから、決められない。」

 

「なにそれ?」

 

「まぁ、つまり…。選べないってことだな。」

 

「10年以上私が考えていた答えがそれなの…?」

 

「…すまん。」

 

ドミナントは頭を下げた。

 

「…別にいいよ。」

 

「?」

 

ドミナントは顔を上げる。

 

「私はあなたの気持ちが分かっただけで満足。まぁ、…好きって言ってくれただけでも、十分待ったかいがあったから。」

 

星奈提督は笑顔になる。可愛らしい笑顔に。

 

「…お前も変わらないじゃないか。」

 

「ふふふふ。まぁ、友達関係は良いよね?」

 

そして、ドミナントたちは連絡先を交換した。

 

「…まぁ、何年、何十年経っても、私は諦めないけどね。」

 

「?どういう意味だ?」

 

「…私の気持ちはいつまでも変わらないってこと。」

 

「…そうか。」

 

「そろそろ1時間だね。旅行中ごめんね。こんな話で。」

 

「いや、良い。昔の友人と話せただけでも俺は満足だ。」

 

「…変わらないわね。」

 

「?」

 

「じゃ、艦娘たちのところへ行こっか?」

 

「ああ。」

 

…………

 

「…何これ?」

 

「…すまん。俺の連れだな。」

 

ドミナントたちは驚く。全員外で、雪合戦をしていたからだ。それに、壁や隠れるところは全て氷や雪で出来ている。

 

「…あっ!司令官、一緒にやり…ブハァ。」

 

吹雪がドミナントに声をかけたが、雪玉にぶつかる。

 

「隙ありです!」

 

「やりましたね!」

 

雪玉を投げていく。

 

「…どうやら、俺の鎮守府vsお前の鎮守府みたいだな。」

 

「…そう…ねっ!」

 

「ブフ…。」

 

ドミナントが言い終わった直後に、星奈提督がドミナントに雪の塊をぶつける。やはり、ドミナントの答えに少し納得がいかなかったようだ。

 

「…やったな?」

 

「ええ。」

 

「くらえっ!…ブファフ!」

 

ドミナントは雪玉を星奈に投げたが、避けられ、相手の艦娘たちから一切に雪玉を投げつけられ、当たる。

 

「司令官が!とりゃー!」

 

「フッフッフ、甘い!」

 

艦娘たちは投げる投げる…。だが、一際レベルの違う者たちがいる…。

 

ヒュヒュヒュッ!

 

「わっ!」

 

「きゃっ!」

 

「ブフ!」

 

相手の艦娘に雪玉が当たる。

 

「…三つ同時に投げた。」

 

ジナイーダだった。

 

ヒュッ!ヒュッ!……。

 

次はものすごいスピードの雪玉が行く。セラフのだ。

 

「危なっ!」

 

「伏せろ!」

 

ガガガガガガガ…!!

 

「ギャハハハハ!いーじゃん盛り上がってきたねー!」

 

主任は雪玉ではない…。つららだった…。次々と相手の隠れるところを破壊していく。

 

「主任!反則だぞ!」

 

ドミナントは直ちにやめさせる。そして、最終的には憲兵も混ざり、楽しいひと時を過ごした。

 

…………

 

「いや〜…楽しかった。」

 

「俺はなぜかよく狙われたがな…。」

 

「相手の指揮官から倒すのは基本でしょ?」

 

「まぁ、そうだが…。」

 

三十分後に雪合戦をやめた面々。

 

「司令官、そろそろ行かないと遅れそうです。」

 

吹雪が言う。

 

「む。そうだな。じゃぁ、色々ありがとな。」

 

ドミナントが星奈提督にお礼を言う。

 

「別にいいよ。それより、なんかあったら連絡ちょうだい。…なんかなくても連絡ちょうだいね?」

 

「努力はしよう。」

 

そして、ドミナントは最後の宿へ行った。

 

…………

 

「着いた。」

 

「紹介って…。警備府が最後じゃなかったんですか…?」

 

「んにゃ。警備府は警備府だ。観光地とは違うだろう?」

 

「まぁ、そうですが…。」

 

ドミナントたちはバスから降りる。

 

「随分と長かったですね…。」

 

「そうだな…。」

 

全員が降りた。すでに夜だ。

 

「…雪が降っているな。」

 

「そうですね。」

 

ドミナントたちは歩き出す。すると…。

 

「わぁ〜。」

 

「綺麗なのです。」

 

「木造建築ばかりだな。」

 

「温泉…。」

 

艦娘たちが思い思いの感想を言う。

 

「ここは大正時代の街並みが残った、温泉街だ。本日はここの宿に泊まる。」

 

「やったー!」

 

「よし!」

 

そして、ドミナントたちは宿に入る。普通の旅館だった。

 

…………

 

「さて、男組のこの部屋も最後だな…。」

 

「そうだな。」

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。鎮守府で俺たちの部屋を作れば良いし。」

 

「んなわけにいくか。」

 

ドミナント、ジャック、主任の男だけの部屋。今までそんな感じだ。

 

「風呂に行くか〜。」

 

「温泉だろう?」

 

「盛り上がってきたねー!」

 

「主任…覗くなよ…。また空から桶やら何やらが降ってくるのはゴメンだ。」

 

3人は風呂場へ行く。

 

…………

 

「今日は疲れた〜。」

 

「皆さんも、よく頑張りました。」

 

「バスの中だと窮屈だね。」

 

「開放感あふれる!」

 

「お風呂いこーよー。」

 

それぞれも部屋でくつろいでいた。

 

…………

男湯

 

「ふー。」

 

「へー。」

 

ドミナントたちは露天風呂に浸かっている。

 

「ふむ…。ここの効能は肩こりや冷え性などだ。」

 

「なんでわかるんだ?」

 

「感じる。」

 

「そりゃすげーな。」

 

ジャックとドミナントが話す。

 

「…ところで、主任は?」

 

「また覗きに行ったんだろう。あいつは懲りない奴だ。」

 

すると…。

 

『ダダダダダダ!』

 

何か銃声が聞こえる。

 

『そっちに行ったぞ!今日という今日は許さん!』

 

『盛り上がってるねー!』

 

『当たってくださぁい!』

 

『ドガァァァン!』

 

『アポイーット!』

 

『すばしっこい…。』

 

そして…。

 

「よっと。」

 

バシャァァン!

 

主任が女湯と男湯を分けている壁を飛び越えて戻ってくる。

 

「…ただいま戻ったよー!」

 

「…またかよ。」

 

「俺は先に出るぞ。」

 

ドミナントが立ち上がるが…。

 

『変態ー!』

 

『二度と来るな!』

 

艦娘やジナイーダたちが桶やらなんやらを投げてきた。

 

「じゃ、時間ないからよろしくー!」

 

「あっ!おい!主任!お前の撒いた種だ!狩れ!…てうわぁ!」

 

「色々降ってくるな。だが、こんなもの…気配を感じれば…グハッ!ブクブク…。」

 

ジャックに桶の角が頭に当たる。

 

「ジャックー!…グヘッ!…ブクブクブク…。」

 

ドミナントも同様に当たった。

 

『提督ー!』

 

『ジャックさん!』

 

艦娘たちが叫ぶが、ドミナントたちが起きたのは、部屋の中だった。




はぁ…。何か、良いネタが思いつかない…。星奈提督の件は、腑に落ちないかもしれませんが、これが筆者の精一杯です。すみません。
登場人物紹介コーナー
特になし
次回!第112話「旅行 その8」お楽しみに。


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112話 旅行 その8

112話かぁ…。
「元気ないわね。」
案がなくってさぁ〜。
「それはわたしにはどうすることもできないわね。…ん?この会話前にも…。」
くらえっ!雪玉!
「ブハァ。」
楽しそうにしやがって、マジで楽しいのかよ?今日筆者も試させてもらうぜ。瑞鶴がぁ。
「……。」
ビュン!
グハァ!
「どう?楽しい?」
痛い…。
「あっ、鼻血!ごめんなさい!強くやりすぎたわ!ふくからじっとして。」
氷混ざってたけど…。
「…ごめんなさい。少しくらいなら平気だと…。」
平気じゃないね。
「ごめんなさい…うぅ…。」
…まぁいいや。今回のゲストは?
「この人…。」
シュー…コー…
『?どうしたの?ティッシュが赤いところを見ると…鼻血?』
「…私のせいで…。」
シュー…コー…
『そりゃ大変だね。で、ここであらすじを言えば良いのかな?』
頼みます。星奈提督。
シュー…コー…
『…なんで名前を?…まぁいいや。』

シュー…コー…
あらすじ
シュー…コー…
前回、ドミナント?の答えをもらった。10年も待った割には、もう少し深い言葉送ってもよかったんじゃないかな?…でも、最後楽しかったから良いか。


…………

 

「……。」

 

黒いフード付きのマントを被った者は雪の降る中、座って、ナイフをじっと見ていた。

 

「……。…情報が違うであります…。」

 

ポツリとつぶやいた。

 

…………

数日前

 

……第4佐世保鎮守府の提督…。

 

あきつ丸はナイフを隠しながら尾行していた。すると…。

 

ジュー…。

 

いい匂いがする。

 

グゥ〜…。

 

もちろん、普段ろくなものを食べていない彼女にとっては、お腹が鳴るのも無理はない。すると…。

 

「ちょっと、そこのお姉さん。」

 

「…!。自分のことでありますか?」

 

「あんた以外誰がいんのさ〜。」

 

声をかけたのはお年寄りだった。

 

「まぁ、そんなことより、これ食いな。」

 

年寄りは饅頭を渡す。

 

「!?な、なんでありますか?これ…?」

 

「あんた知らんの?こりゃ饅頭ってんだ。食べたらうんまいよぉ〜。」

 

「で、でも、お金持ってないであります…。」

 

「お代なんていいよぉ〜。腹減ってんだろ?ここの名物だから、いっちょ食いな。」

 

「でも…。」

 

ぐぅ〜…。

 

「腹は正直じゃの。腹がくいてぇ言っとる。我慢は毒だよ。」

 

「……。ありがとうであります。」

 

「いいのいいの。じいさんならそうしとると思うしの。」

 

「じいさん…?」

 

「ここの店主でもあったわしの旦那。…もう他界しとるがの…。じいさんは昔から人が良かった。腹が減っとる子供を見んと、必ず食わせんだ。」

 

「そうでありますか…。」

 

「まぁ、あんた艦娘も色々あんと思うけど、頑張んな。」

 

そして、あきつ丸はもらったあと、去って行った。

 

「…くんくん。」

 

あきつ丸は匂いを嗅ぐ。

 

……美味しそうな匂い…。

 

そして、毒がないか少しかじる。

 

……毒はない…というより美味しい!

 

あきつ丸は夢中で食べた。

 

「ごちそうさまであります。」

 

そして、あきつ丸はドミナントの尾行を続ける。しかし、所々で色々な人に親切にしてもらったり、助けてもらったりしていくうちに、一つの疑問が思い浮かぶ。

 

…………

現在

 

……自分、艦娘と分かってても、親切にしてくれるであります…。…鬼…?どこがでありますか…?

 

あきつ丸は少しずつ、陸軍を疑ってくる。すると…。

 

「そんなところでどうかしましたか?」

 

「!?」

 

赤い髪をした美人に声をかけられる。

 

「…そのナイフ…。あなたは何をするつもりですか?」

 

聞いてくるが…。

 

……第4佐世保鎮守府にいた、人間とは思えない奴…。

 

あきつ丸は警戒していた。

 

「…答えてくれないんですか?」

 

「…自分、忙しいであります。」

 

そして、あきつ丸は立ち去ろうとするが…。

 

「待ってください。」

 

「……。」

 

あきつ丸は足を止める。

 

「少し体が小さいようですが…。鎮守府の侵入者ですよね?」

 

「……。」

 

「そのナイフでドミナントさんを殺すつもりですか?」

 

セラフが言い終わった途端…。

 

ヒュン!

 

ナイフで刺そうと振り向くが…。

 

「…いない?」

 

「うしろです。」

 

「!?」

 

セラフに後ろどころか、ナイフすら取られていた。あきつ丸は恐怖で振り向くことすらできない。

 

「…自分をどうする気でありますか…?」

 

「…ドミナントさんが死んでいないので、どうもしません。ですが、何故我々を襲うのか理由を知りたいのです。」

 

セラフは優しく言う。

 

「…命令であります。」

 

「命令?」

 

「そうしないと…まるゆが…。」

 

「まるゆ?」

 

「自分と同じ、陸軍の所属の艦娘であります…。」

 

「…そう。」

 

「…殺すでありますか?」

 

「いいえ。もう一度言いますが、何もしません。」

 

「…何故?」

 

「する理由がないからです。」

 

「…第4佐世保の提督を殺そうとしたであります。」

 

「まだ殺してないではありませんか。」

 

「……。貴様に一つ質問がある。」

 

「なんでしょうか?」

 

「…鎮守府の人間は優しいのか?」

 

「…どうでしょう?最近では、憲兵沙汰になる提督もいると聞きましたし、厳しいことをさせるブラック鎮守府があると聞いたこともありますし。」

 

「…一般の鎮守府の艦娘たちはどのような生活をしているでありますか?」

 

「全然一つじゃないですが…。そうですね…。私の所属しているところ以外では分かりませんが、私の所属している鎮守府では、みんな笑顔で、喧嘩していても、実は仲が良かったりしています。…まぁ、授業や演習時は目が死んでいますけどね。」

 

セラフは苦笑いして言う。

 

「……。」

 

「…彼女たちは、笑顔ですが、それにも理由があると思います。」

 

「理由…?」

 

「そこの提督、ドミナントさんは遠征で失敗しても笑って流してくれますし、艦娘一人一人に声をかけてくれますし、例え結果が良くなかったとしても、人のためであれば許してくれますし。…でも、禁止事項を何度もやらかすと、さすがに怒りますけどね。」

 

「…そんな場所があるのでありますか…?」

 

「はい。現に私たちはこうやって、旅行に来ていますし。」

 

「…訓練に失敗したり、任務に失敗したら怒られるでありますか?」

 

「ドミナントさんはそんな些細なことで怒りません。」

 

「…よそ者でも受け入れてくれるでありますか…?」

 

「敵意がなければ、誰でも歓迎するのが第4佐世保鎮守府です。」

 

「……。」

 

あきつ丸は迷っていた。すると…。

 

「俺を買い被りすぎだぞ、セラフ。」

 

ドミナントが後ろにいた。

 

「ドミナントさん?随分と気配消すのが上手くなりましたね。」

 

「いや、単にお前の感知能力が鈍ってきているんだろう…。普通に来たからな。…それより、どうしてここに?」

 

「はい。少しこの幻想的な風景を見に。そしたら、この子を…。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントがあきつ丸に近づく。

 

「…第4佐世保鎮守府提督…。」

 

「ドミナントで良いよ。」

 

「…ドミナント…。貴様は…何度も貴様たちの鎮守府を脅かした存在を…仲間にしてくれるでありますか…?」

 

「敵意がなければ誰でも歓迎するのが俺たちだ。」

 

「……。」

 

「…来るか?」

 

「……無理であります…。」

 

「どうして?」

 

「…まるゆを置いていくことは出来ないであります…。」

 

「…そうか。」

 

そして、ドミナントは少し歩き…。

 

「まぁ、来たければいつでも来い。俺たちは歓迎する。」

 

幻想的な背景でドミナントが振り向き、口元を緩ませながら言った。

 

「…ありがとうであります…。」

 

あきつ丸は腹を決めた。

 

「自分…、自分たちは時が来たら必ず行くであります!」

 

あきつ丸は敬礼した。

 

「ああ。待っている。」

 

「いつでもお待ちしております。」

 

そして、あきつ丸は夜の闇へ消えていった。

 

…………

翌朝

 

「ふぁ〜…。今日は班行動だっけ?」

 

ドミナントが目覚める。すると…。

 

(遅すぎです。)

 

(昨日のセリフを言った者とは思えないです。)

 

(そんなバカ放っておいて、そろそろ食べごろです。)

 

「お前たち…ついてきていたのかよ…。」

 

ドミナントは困惑した。置いてきたはずの妖精さんが、机の上できりたんぽ鍋を食べていたからだ。

 

「一体…いつ…?」

 

(艦娘たちのポケットに一人ずついたです。)

 

(お前以外の人は知っているです。)

 

(鈍感です。)

 

「3人集まると必ず一人、俺に辛辣な言葉を送るのなんで?」

 

ドミナントはツッコム。

 

(外でもう待っているです。)

 

「な、何が?」

 

(山のような艦娘がお前を班に誘いたいから集まっているです。)

 

「マジかよ…。」

 

(そんなこと言ってねぇで、情報やったんだからさっさとお菓子よこすです。)

 

「その言い方ひどくない?」

 

すると…。

 

ドンドン…

 

『司令官?起きていますよね?どこの班に配属されるか聞いていないんですけど…。』

 

『も、もしよかったら…私たちの班に…。』

 

ワイワイガヤガヤ

 

外が騒がしい。

 

「…妖精さん。このピンチを乗り切る方法。」

 

(お菓子必要です。)

 

(質問の意味が不明です。)

 

(Google先生みたいに言って欲しくないです。)

 

そして、ドミナントはスコンブを渡す。

 

(果たして、これはお菓子の分類に入るのか…。)

 

(微妙なラインです。)

 

(巨大なクレーターに入った人が戻ってこない謎エリア?)

 

「それはサイレントライン。」

 

そんなことを話していると…。

 

ガチャ…。

 

「おーえす。おーえす。」

 

「少しずつ開いてきましたね。」

 

「もう少し!」

 

艦娘の声がする。

 

「妖精さん!冗談抜きで頼むぞ!」

 

(しょうがないです。)

 

(なら窓から飛ぶです。)

 

(早く行くです!)

 

「お、おう!わかった。」

 

そして、ドミナントは窓から飛ぶ。

 

「…で、どうなるんだ?」

 

落ちている最中ドミナントは妖精さんに聞く。

 

(落ちるです。)

 

(怪我するです。)

 

(病院へ行って、班行動できないです。)

 

「ざっけんな!」

 

ドシーン!

 

「イタタタタ…。」

 

だが、さすがドミナント。いままで散々ジナイーダにやられた分、体が頑丈になっている。

 

(失敗です。)

 

(もっと高いところ行くです。)

 

(頭から落ちるです。)

 

「馬鹿言ってんじゃねー!こんにゃろー!」

 

そして、結果はドミナントの班行動は男組になった。




ちなみに、あきつ丸が鎮守府で身体の大きさが違ったのは、火炎放射器やらパワースーツを着ていたからです。
登場人物紹介コーナー
老人…現在、饅頭屋の店主。3年前に、当時店主だった旦那が亡くなり、かわりに店を継いだ。
次回!第113話「己の正義」お楽しみに!


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113話 己の正義

はぁ、ネタがない…。…いや、あるんだよ?でも、そこに繋げるネタがないんでござんす。
「語尾が変ね…。それより、旅行は本日で終了かしら?」
そだよ。これ以上行くところもないし。もし、いちいち書いていたら、20話前後になると思うし。
「そんなに…?」
だって、4泊5日分の名所だよ?それに、そこでの説明や出来事を書くんだよ?
「まぁ、そうなるわね。」
…さて、今回のゲストは?
「阿武隈、出撃です!」
いや、出撃しないから…。あらすじどうぞ。
「そんなさくさく進めるようじゃ、疲れが抜けきってないじゃない…。」

あらすじです
前回、班行動に提督を誘ったけど、OKしてくれませんでした…。提督は窓から飛び降りたけど、怪我もしていなくて安心しました!えっ?結局どうなったかですか?…べ、別に寂しくなんてないです。足柄さんたちと一緒に行動しましたし…。


…………

温泉街

 

「で、結局むさ苦しい男3人組か〜。」

 

「むさ苦しい言うな。主任。」

 

「私は艦娘にどちらかと言えば爽やか系だと言われるが?」

 

男3人、温泉街で何をしろと…。

 

「何が悲しくて俺たちは集まっているんだか…。ん?あれ艦娘じゃない〜?」

 

「ふむ。他の提督もここにいるのか?」

 

「あれは…。…あきつ丸?」

 

遠くの丘で男の人と話しているあきつ丸を見つける。

 

「提督…?なのか?」

 

「いや、服が違うぞ。」

 

「いーじゃぁん!緑色だね〜。ほうれん草を思い出すよ。」

 

「主任、それ、侮辱っていうんだぜ…。罪に問われるからやめときな。」

 

3人はコソコソ見る。だが、あきつ丸は最初は険しい表情で話したが、少しずつ表情が柔らかくなっていた。そして、二人は山の中へ消えて行った。

 

「…なんだったんだ?」

 

「分からん。」

 

そして、ドミナントたちは普通に温泉街を歩き、一通り満足した。

 

…………

あきつ丸たちの会話

 

「…森崎少将…。」

 

あきつ丸は待っていた森崎少将と会う。

 

「…戻ったか。任務は?」

 

「…殺すことができませんでした…。」

 

険しい表情であきつ丸は言う。

 

「…そうか。」

 

だが、森崎少将はどこ吹く風だ。そして…。

 

「あきつ丸。」

 

「は、はい…。」

 

あきつ丸は怒られるのではないかと歯を食いしばった。が。

 

「どうだった?」

 

「…?何がでありますか?」

 

「外の人たち。」

 

「……。」

 

あきつ丸はキョトンとする。

 

「…優しかったであります。」

 

「そうか。」

 

「まんじゅを食べたであります。」

 

「饅頭ね。美味しかったか?」

 

「…はい…。」

 

「そうか。」

 

「…森崎少将の言った言葉がわかったであります。」

 

「…そうか。なら…よかったのかもしれんな。…行くぞ。」

 

そして、森崎少将は歩き出す。

 

「あ、あの…。」

 

あきつ丸が話しかける。

 

「?」

 

「どうして…自分たち艦娘に優しくするのでありますか…?」

 

「……。」

 

森崎少将は空を見る。

 

「…昔、俺が陸軍に入ったばかりの頃だ…。」

 

…………

5年前

 

「ぐっ…。」

 

森崎二等兵は鬼軍曹に絞られている。

 

「立て!まだ学生のつもりか!?そんなことでは国を守れないぞ!」

 

森崎二等兵は立ち上がる。

 

「うわっ!?」

 

「甘い!」

 

立ち上がった途端に木刀が頭をかする。

 

「くっ!はぁぁ!」

 

森崎二等兵も木刀を振るが、全く当たらない。当たったとしても、受けられるだけである。

 

「脇腹が空いている!」

 

「ぐぁぁ!」

 

脇腹に木刀を叩き込まれる。

 

「本物の刀だったら死んでいるぞ!立て!」

 

「ぐ…。」

 

森崎二等兵は立ち上がるが…。

 

「待て。両者とも木刀をしまえ。」

 

鶴の一声。鬼軍曹が木刀をしまう。

 

「り、陸田大尉…。なぜここに…?」

 

「新人の様子を見にだ。…随分と派手にしたようだな。」

 

「これも新人を鍛えるためです。」

 

「そうか…。ならば、私と勝負だ。軍曹を鍛えてやろう。」

 

「ご、ご冗談を…。大尉ほど強くありません…。」

 

「どうかしたのか?お前ほど強くない新人を散々叩いておいて、私とやるのは不満か?」

 

「……。」

 

陸田大尉が木刀を構えるが、軍曹は戦意喪失している。

 

「…新人の前だ。しっかりしろ!」

 

「は、はい…。」

 

そして、軍曹は見事にボコられた。

 

…………

 

「新人、大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます。陸田大尉。」

 

「別に良い。あんな教育だと、この先不安だな。」

 

陸田大尉はすごすごと建物の中に入る軍曹を遠目で見ていた。

 

「…だから新人が辞めていくのだ。…上の者たちは何をやっている?人がいなくなったらそれこそ国を守ることなど出来ないではないか。」

 

陸田大尉はため息混じりに言う。そして…。

 

「新人、選別だ。」

 

缶コーヒーを投げる。

 

「わっと…、ありがとうございます!」

 

「別に良い。」

 

陸田大尉は背を向けたまま手を振り、建物の中に入って行った。

 

…………

3年後

 

「はっ!とぅっ!」

 

「む!いいぞ!」

 

「とうっ!」

 

「ぐ…。」

 

そして、森崎中佐が陸田を倒す。

 

「…腕を上げたな。森崎中佐。」

 

「ありがとうございます。陸田少将。」

 

二人は話す。

 

「まだまだだったひよっこが、随分と強くなったものだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「もうお前も中佐か…。」

 

「はい。陸田少将の言う通り、あの頃は、陸軍入隊希望者が少なかったため、どこか特殊な能力を開花させることができ、楽に昇進できました。」

 

「楽にと言うがな…。特殊能力を開花できる人間はごく一部だけだぞ…。私も開花していない。」

 

「そ、そうなんですか…?…でも、開花出来たのはずっと私の相手になってくれた陸田少将のおかげです!」

 

「う、うむ…。」

 

陸田少将は微妙な顔で言った途端…。

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

重いような音がする。

 

「…またあの音か。」

 

「…そのようですね…。」

 

二人は海を見た。

 

「…最近頻繁にその音が鳴るようになってきたな…。」

 

「そうですね…。何も起こらなければ良いのですが…。」

 

「おいおい…。不吉なことを言うものじゃないぞ…。」

 

二人は少し心配になりながらも建物の中に入る。

 

「…まぁ、何か起きても、国民を守るのが我々の役目だ。」

 

「そうですね。もし、そのようなことになったら役に立てるように今より努力します。」

 

「いい心構えだ。…あと、覚えておけ。」

 

「?」

 

「誰のためでもない。自分の信じた正義を何があっても貫け。」

 

「…了解!」

 

そして、二人はその後何気ない1日が過ぎた。

 

…………

数日後

 

そして、その予感は当たってしまった…。

 

ウ〜…!ウ〜…!

 

いきなり、鳴るはずのない警報が鳴る。

 

「何事だ!?」

 

「何が起きているんですか!?」

 

陸田少将と森崎中佐は自室から司令部へ駆けつける。

 

「敵襲です!海から現れました!」

 

「なんだと!?」

 

深海棲艦の襲来である。

 

…………

 

「きゃぁぁぁ!」

 

「逃げろーー!」

 

ワーワーキャーキャー

 

人々が海岸から逃げる。

 

「ギャァァァァ!」

 

「グァァァァァ!!」

 

ドガァァァン!ドゴォォォン!

 

深海棲艦が海岸に攻撃を仕掛ける。

 

「…な、なんだあれは…?」

 

「魚…?だが、人の形をした者もいるぞ…。」

 

もちろん、初めて見る深海棲艦に戸惑う陸軍。そして、深海棲艦が陸軍を見つけ、狙いを定める。

 

「!?」

 

ドガァァァン!!

 

近くの堤防が壊れ、瓦礫などが飛んでくる。

 

「これは…映像やおもちゃじゃない…。本物か!?」

 

そして、すぐさま連絡する。

 

…………

一時間後

 

ガラガラガラガラガラ…

 

やっと陸軍が動き出す。戦車が海岸に並び、攻撃ヘリコプターが標準を定める。その中には、もちろん、陸田少将と森崎中佐もいる。

 

『目標!狙い!よーし!…てーー!』

 

ドオオオオオン!ドガアアアアアン!ドオオオオオン!…

 

プシュッ!プシュッ!ガガガガガガガ…!…

 

『ちゃくだーん…!今!』

 

カッ!…ドゴオオオオオオオン!!!

 

深海棲艦たちがいたところに大爆発が起き、黒い煙が上がる。

 

『やったか?』

 

否。

 

「ギャァァァ!」

 

「グァァァァ!」

 

『なんだと!?』

 

深海棲艦たちは無傷だ。

 

ドガァァァァン!ドゴォォォン!

 

深海棲艦の攻撃で戦車や装甲車などが損傷する。

 

『一時退避!』

 

ガーーーー…!…

 

ガラガラガラガラ…!…

 

バラバラバラバラ…!…

 

次々と戦線を離脱していく中、二人が残った。




はい。長いから切りました。…実は、全て作ったのですが、字数が多くてですね…。半分に切って次回に繋げました。あと、タイトル変更すみません!
登場人物紹介コーナー
戦車…10(ヒトマル)式戦車。すっごいつよいんだよー。詳しくはウェブで。
装甲車…96式装輪装甲車。詳しくはウェブで。
次回!第114話「ヒーローは遅れてやってくる」お楽しみに!


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114話 ヒーローは遅れてやってくる

114話ですね。今回は、陸軍メインの話です。前回のように、過去から始まります。
「てことは、まだ時が止まっているの?」
ザ ・ワールド!
「と、時が…止ま……。」
5秒…フッフッフ。まだまだ止められるぞ。
「…何しているんだ?」
あっ、ジナイーダさん。遊んでいるの。
「…この体制きついわね…。」
「そ、そうか…。」
では、あらすじを頼みます!
「いいだろう。」

あらすじ
前回、私たちは温泉街へ行った。…神様は妄想が止まらないし、セラフはいちいち店に寄って、お土産を見ている…。とてもじゃないが疲れた…。…あの二人だ。ドミナントもきっと疲れているだろう…。


次々と戦線を離脱していく中、二人が残った。

 

「…逃げなくて良いんですか?陸田少将。」

 

「それをいうならお前もだろう?森崎中佐。」

 

二人は深海棲艦を見る。

 

「…私は付近の住民に避難をさせるためにいるんだ。今頃大混乱で大変なことになっていると思うしな。」

 

そして、沈黙の後…。

 

「…自分の身を削ってでも国民を守るのが我々の役目だ。」

 

「…ならば、陸田少将も国民の一人ですよ。」

 

「クックック。違えねえ。」

 

「…ここは私が食い止めます。陸田少将は国民を…。」

 

「どうやって食い止める気だ?武器も通じないのだぞ?」

 

「……。囮になるくらいならできます。」

 

「…許可できんな。お前も国民の一人だ。」

 

「…すみません。陸田少将。」

 

「?いきなりなんだ?」

 

ガシッ…グググ…。

 

陸田少将を持ち上げた。

 

「生きて帰って来れたら、叱ってください。」

 

「お前…!まさか…!」

 

「さようなら。」

 

ブゥン!

 

陸田少将を投げた。

 

……投げた方向と、スピードと、今の高さならちょうどここから少し離れたネットに落ちるはずだ。

 

実際その通りだった。陸田少将は、そこに落ち、助けに行くよりも、国民を案内することを優先に思い、国民を避難させた。

 

「…さて、この国を脅かすクソども。俺が相手だ。」

 

森崎中佐は深海棲艦を睨む。

 

「ギャァァァ!」

 

「グァァァァ!」

 

ドガァァァン!ドゴォォォォン!

 

「…こっちだ。」

 

ヒュッ!

 

森崎中佐はなんとか避け、石を投げる。

 

ドカッ。

 

「?」

 

もちろん、深海棲艦にダメージなどない。が、これは囮であり、敵を引きつけるのが目的である。

 

「ギャァァァ!」

 

「グァァァァァ!」

 

その作戦は成功した。深海棲艦たちは森崎中佐に狙いを定めた。

 

「…多すぎるな。」

 

森崎中佐は攻撃を避けるが、いずれは体力もなくなる。

 

「…だが、避難完了の報告が出るまでくたばるわけにはいかねぇな。」

 

森崎中佐は口元を引きつらせる。

 

…………

一時間後

 

『こちら、陸軍。避難は完了した。…早く戻ってこい!森崎!』

 

「…陸田少将…。市役所の放送まで借りて…。へっ…へへ…。」

 

森崎は全身血だらけでにやける。

 

「…だが、この状況…。戻れねぇーな…。最後に…国民守って死ぬんなら…それも…良いか…。」

 

諦めた笑みを浮かべる。

 

「…だけど…よぉ…。陸軍らしく…!1発…ぶちかまして逝くか!」

 

森崎中佐は全身血が出ているのも気にせず、自分より何倍もある巨大な岩を持ち上げ、投げた。

 

「……。」

 

もちろん、深海棲艦はそんなもの食らわない。そんなものは無視をする。だからこそだろうか…。

その岩に乗っている森崎中佐が見えなかったのは…。

 

バシャァァァン!

 

「うぉぉぉぉ!」

 

「!?ギャァァァ!」

 

バギァ!

 

森崎中佐はたまたま持っていた木刀で叩きつけた。

 

「!?」

 

深海棲艦は食らわない。が、驚いていた。

人間が、攻撃など効かないことを気にせず、自分の今の状況を考えず、ただただ殴り続けていることに。

深海棲艦たちは、森崎中佐を少し恐れた。

 

「ギャァァァァ!」

 

「うるせーー!」

 

ドガ

 

深海棲艦も物体だ。攻撃が効かなくても、肉体はある。だからこそ、殴ることも…攻撃をそらすことも可能なのだ。

 

「グァァァ!」

 

ドガァァン!

 

「グ…ハ…。」

 

だが、前文で述べたように、いずれは体力もなくなる。そして、深海棲艦の攻撃が森崎中佐の近くにあたる。爆風を受けて、倒れ、深海棲艦に囲まれて銃口を向けられた。

 

……ここまでか…。

 

森崎中佐は覚悟するが…。

 

ヒューーーー…ドガァァァァン!ドゴォォォン!

 

「!?」

 

いきなり新海棲艦たちのいたところが爆発した。

 

「…無理だ…。こいつらには…。!?」

 

なんと、今まで攻撃が効かなかった奴らが沈んだり、攻撃を食らったではないか。

 

「こ、これは…!」

 

森崎中佐は岩の上で見た。海の上を走る少女や女性たちを…。

 

「…よく頑張りました。人間さん。あとは任せて。」

 

「カッコ良かっぞ。」

 

「すごかったです。」

 

「あとは…私たちの…役割。」

 

「燃えたクマー!」

 

「…これをどうぞ。あげます。」

 

ハンカチを渡される。海水で染みていた。

 

「君たちは…?」

 

森崎中佐は尋ねる。

 

「私たちは、深海棲艦と唯一対抗できる力を持つ者…。艦娘です!」

 

ヒーローは遅れてやってくる。

 

…………

数日後

 

陸田少将は国民を避難させたり、助けたりした貢献で中将になった。

森崎中佐は深海棲艦という謎の存在を相手に、勇敢に戦ったことを評して、少将になった。

艦娘たちは、その森崎中佐を助け、深海棲艦を倒した功績を評して、勲章をもらった。そして、艦娘はいつでも出撃できるように、鎮守府を設けられ、そこに所属されることになった。つまり、海軍の管理下に置かれた。

 

…………

 

「陸田少…いえ、中将…。」

 

陸田中将は屋上にいた。

 

「…わしは…、国民を守ることができたのだろうか…?」

 

「……。」

 

「あいつらを倒すことが出来なかったではないか…。」

 

「……。」

 

「…その艦娘?とやらも、海軍の管理下に置かれた。…敵は陸地ではなく、海…。…嫌な予感が的中せねば良いが…。」

 

陸田中将の予感は当たった。

 

…………

 

「中将!先日、国会で陸軍の資金を大幅に削減されるそうです!」

 

「なんだと!?何故だ!?」

 

「現時点で交戦しているのは深海棲艦と呼ばれる者たち…。それに唯一対抗できる力が海軍に所属しています…。…意味はおわかりですね…?」

 

「くっ…。こちらも開発や、訓練で今でも資金が足りないというのに…!」

 

…………

 

「中将…、今年の入隊志望者が…。」

 

「よい…。わかっている…。」

 

「……。」

 

…………

 

「…中将、お話があります。」

 

「…どうした?」

 

「…辞職させてください…。」

 

「お前もか!?何故だ!?」

 

「このままでは生活もできません!現時点で、私のような兵長の給料をご存知なのですか!?一般の会社の平社員と同じ額なんですよ!?それに、私にも家族がいるんですよ…。今年、長男は大学生2年生、長女は専門の大学…、次男は私立の高校入試…、それに加え、母が病気で寝たきりの状態…。」

 

「…それは辛かったな…。…もっと早くに気づいてやるべきだった…。」

 

「…いえ、いいんです…。私も何も言っておりませんでしたし…。」

 

「…一つ気になることがある。どこの職業へ行くんだ?」

 

「…海軍から招待状が届きました…。」

 

「…そうか。まぁ、そこなら給料も良いだろう。…海軍でも頑張ってくれ。佐々木兵長。」

 

「いいんですか!?」

 

「勿論だ。…頑張れよ。…体を大事にな。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

…………

 

「…陸田中将…。」

 

「……。先日、我が家に張り紙がしてあった…。森崎少将、お前はどうだ?」

 

「何もなかったです…。」

 

「……そうか…。」

 

…………

 

そして、ある日、陸田中将の心の中の何かが壊れた。

 

「森崎少将、任務だ。」

 

「えっ?はい。」

 

……陸田中将が俺に任務なんて珍しいな。

 

「艦娘をこちらの権限で管理することは出来ないか?」

 

「えぇ!?それは無理ですよ…。」

 

「…確か、艦娘の中では我々陸軍で作られた艦もいるそうじゃないか。こじつけでもなんで良い。そいつらを管理下に置けるようにしろ。」

 

「…何故ですか?」

 

「今、海軍に全権力が行使されている。その大半が彼女たちの功績といっても過言ではない。その一部を我々で管理できれば、国会の奴らも我々を無視できなくなる。そうは思わないか?」

 

「思いますけど…。」

 

「ならばしてこい。これは、陸軍の存続に左右する重要なことだ。」

 

「…了解。」

 

…………

 

「おい、森崎少将。」

 

「な、なんでしょうか…?」

 

「艦娘二人を連れて来たのは良くやったと思うが…、あいつらを無視しろ。良いな?」

 

「…何故ですか?」

 

「命令だ。余計なことは気にしないで良い。」

 

「……。」

 

「…納得していなさそうだな。ならば言おう。あいつらは、ただの人間と比べると強いが、お前やわしの選抜の人間と比べると弱すぎる。孤独にして、いじめぬかないと、次の力のバネにならないからだ。」

 

「……。」

 

「…もっと言うとだな…。我々は強くなるのだ。力を覚醒させ、お前たちのような強者を量産する。そうすれば、我々の力がいかに強力かわかり、頭の硬い上の無能どもが無視できなくなる。そうなれば、元通りになり、前のような生活に戻れるのだ。海軍のひいきも無くなり、国民に中傷されることもなくなる。全ては国のためだ!」

 

「…了解…。」

 

……陸田中将…イカれているよ。お前…。…だが、事実だな。俺は俺の信じた正義を全うするまでだ。

 

…………

現在

 

「色々あったが…。お前たちに優しくする理由は“艦娘"に助けられたからだ。恩は返す。それが俺の信じる正義だ。」

 

「そうでありますか…。」

 

「…あの日だったな。陸田中将の何かが壊れたのは…。代表の器ではなくなったのは…。俺の知っている陸田中将ではなくなったのは…。」

 

森崎少将は遠くを眺める。

 

「…陸田中将は優しいのでありますね。」

 

「…いや、優し“かった”だ。今は違う…。」

 

そして、二人はヘリコプターに乗り、基地に戻った。




終わった…。次は、ドミナントたちが帰るところから始まります。
登場人物紹介コーナー
最初の艦娘たち…伊勢、天龍、古鷹、弥生、球磨、翔鶴。最初に確認された艦娘。
次回!第115話「訪問」お楽しみに!


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鎮守府編 その2
115話 訪問


115話だぁ…。詰め込みすぎて、少しごっちゃになっています。
「私の出番は?」
ないよー。
「…そう。」
それより、今回のゲストは?
「……この人。」
「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」
あっ、主任。主任の出番はあるよ。
「なかなかやるじゃない?それなりにはさ。」
「なんで!?」
瑞鶴!オメーの席ねぇから!…ぐわっ!
「私の席がないなら奪うまでよ。」
それ、ひどくない?…まぁ、何をしても、出番がないことには変わらないんだけどね…。
「…腹が立つわね。」
フッフッフ…。
「何?」
随分と出番を欲しがるようになったね。
「……。」
なんで?
「……。」
教えてよ。
「…主任さん。あらすじをどうぞ。」
聞いてる?
「じゃ!いっちょいきますか!おじさん頑張っちゃうよー。」

あらすじ
キャロリーン…聞こえる?

て、関係ねー!


…………

第4佐世保鎮守府

 

「うむ。旅行に行ってきたが…。やっぱりここが落ち着くな。」

 

ドミナントは執務室にいる。ドミナントが暇な時は大体ここにいる。

 

「4泊5日の旅。楽しかったなぁ〜。」

 

本日の秘書艦でもある最上が呟く。

 

「…最上、呟くのは良いけどさぁ…。ここに布団を敷くのやめてくんない?」

 

ドミナントはナチュラルに布団を敷く最上に言う。

 

「…だって、提督が眠くなったら、いつでも寝れるように…。ふぁ〜…。」

 

「ごめん。まるで説得力ないぞ。」

 

「…提督が寝れるように温めてあげる。」

 

「うん。俺は誰かが寝ている布団には近づかないことにしているんだ。また窓から投げられたくないからね。」

 

ドミナントはジナイーダに投げられたときの懐かしい記憶を思い出す。

 

「…そう思ってみれば、あきつ丸どうなったのかな…?」

 

「えっ?提督、なんの話?」

 

最上は突然呟いたドミナントに驚き、聞く。

 

「ん〜?…最上には関係のない話さ。」

 

「えー。すごく気になるんだけど…。」

 

「まぁ、いずれわかるさ。」

 

ドミナントがそうやって暇を潰していると…。

 

ビーーーーー

 

鎮守府のチャイムがなる。

 

「…お客さんかな?行ってくるよ。」

 

ドミナントは席を立つ。

 

「あっ、ボクも行く。」

 

最上は布団から出てきて、ドミナントの後ろについて行った。

 

…………

 

「…あの〜…どちら様でしょうか…?」

 

ドミナントは困惑した。

 

「gurten Tag(こんにちは).私はビスマルク戦艦のネームシップ、ビスマルク。よおく覚えておくのよ。」

 

見たことのない外人がいるのだ。

 

……えーっと…。…艦娘?戦艦のネームシップだから艦娘だよね?艦娘に外人なんているんだ…。

 

ドミナントは考えていると…。

 

「…提督?起きてる?」

 

最上が聞いてきた。もちろん、起きている。だが…。

 

「…私がいるのに眠るなんて、いい度胸じゃない。」

 

「最上…、頼むから話をややこしくするのやめてくれない?」

 

「あら?起きていたの?」

 

ドミナントが言い、誤解が解ける。

 

「えーっと…。あなたはどちら様…?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「パラオ泊地提督のビスマルクよ。何?知らないの?」

 

ビスマルクは堂々と言う。

 

「うん。ごめん。冗談はさておき、君の提督は?」

 

「だから、私よ。」

 

「うん。面白いね。提督は?」

 

「……。」

 

そんなやりとりをしていると最上が…。

 

「提督。」

 

「なんだ?」

 

ゴーストではないが、耳元で囁いてくる。

 

「大本営からの情報によると、パラオ泊地は他の鎮守府にはいない海外艦の艦娘の集まりで、そこの提督も艦娘だと聞くけど…。」

 

「?そうなのか?…一体、どこから大本営の情報が来るんだ?」

 

「…書類、詳しく見てないでしょ?」

 

コソコソ話していると…。

 

「…第4佐世保鎮守府提督、ドミナント大佐。わざわざ私が訪問しに来たのに、お茶の一杯も出さないの?…ねぇ、聞いてる?」

 

完全無視。そして、しばらくして…。

 

「…あっ、すみません。ビスマルクさん。…て、俺に向けたその艤装、撃たないでくださいね?」

 

ビスマルクは痺れを切らし、ドミナントに艤装を向けていた。

 

「…さて、挨拶が遅れました。私はここの提督、ドミナント大佐です。改めてお名前を聞いても?」

 

「…パラオ泊地提督、ビスマルク中将よ。一応あなたより階級が上なことを忘れずに。」

 

簡単な挨拶を済ませる。

 

「立ち話もなんですから、どうぞ。お茶を出します。」

 

「ふーん。少しは話が理解できるようね。」

 

そして、3人は鎮守府の中に入った。

 

…………

応接室

 

……中はすごい作りね。しっかり出来ているし、センスも良いわ。何より、不安を感じられない。

 

ビスマルクが中をキョロキョロ見渡す。

 

「…お話を良いかな?」

 

ドミナントが言う。

 

「そうね。…新しい鎮守府が出来たって聞いて、一応視察しに来たわけ。いつ何時、私たちに危害を加えるかわからないもの。」

 

ビスマルクは説明する。

 

「なるほど。確かに、君たちは海外艦で構成されている鎮守府だ。一つの海域を任されたからと言って、いつ我々が潰しに来るかわからない。用心深いのは良いことだ。」

 

「へぇ…。私と同じ考えなのね。気が合いそうね。」

 

「そう言ってもらえるとありがたい。…お茶です。」

 

「Danke(ありがとう).…ん。美味しいわね。」

 

「ありがとうございます。…Danke…かな?」

 

「発音うまいわね。」

 

しばらくやりとりをした後…。

 

「じゃぁ、案内してくれる?」

 

ビスマルクは紅茶を飲み終わり、席を立つ。

 

「わかりました。…最上、みんなに一応、ビスマルクさんが来たことをみんなに言っといてくれる?」

 

「わかった!」

 

そして、鎮守府を案内した。

 

…………

 

「…普通の鎮守府と大差ないわね。」

 

「まぁ、そんなものですよ。」

 

ドミナントは、一通りビスマルクに見せた。

 

「最後はここね。」

 

「ん?ちょうど演習やっているのかな?」

 

最後に来たのは演習場だった。

 

…………

 

「…なにこれ?」

 

ビスマルクは目を疑った。海上に何十人もの艦娘たちが、得体の知れないロボットを相手にしていたからだ。何人もの艦娘が海上に倒れている。

 

「ギャハハハハハ!本当は好きじゃないんだ…。こういうマジな勝負ってのは…。」

 

「ハァ…ハァ…。言いますね…。私たちには楽しんでいるようにしか見えませんけど…。」

 

「悪いな。手加減はできない性分だ。」

 

「さぁ、頑張ってください。あと1時間で終わりますから。…と言っても、誰も聞いていませんか…。」

 

「本気を出せ。真の実力をこの私に見せてみろ。」

 

「……。」

 

ヤバかった。セラフとジナイーダの周りには、オレンジ色に染まった艦娘たちが何人も倒れていた。主任とジャックのところでは、まだ立っている艦娘もいたが…。

 

「な、なんなの…?あの兵器は…?」

 

「あぁ、説明します。あの赤いのが、所属しているセラフで、紫色のがジナイーダ、水色のが主任、バケツ頭がジャックです。」

 

「…そう。」

 

「ビスマルクさん?」

 

ビスマルクは眺めていた。そして…。

 

「ドミナント大佐。少し…戦ってみたいわ。」

 

「ええ!?嘘ですよね!?ボコボコにされますよ!?」

 

「何?私が弱いと言いたいわけ?」

 

もちろん、弱いからだ。だが…。

 

「い、いえ…。そういうわけではないんですが…。」

 

ドミナントは、相手を不快な気分にさせないため、嘘を言う。

 

「じゃぁ、行っても問題ないわよね?…ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!」

 

ビスマルクは抜錨した。

 

…………

 

「私が相手よ!」

 

「?なんだ?」

 

ジナイーダが言うが、ビスマルクはそれを無視してペイント弾を発射する。

 

ヒョイ

 

ジナイーダは簡単に避けた。

 

「…見たことないが…、演習希望か?いいだろう。相手だ。」

 

バババババババ…!

 

「…やるわね。」

 

ジナイーダのペイント弾が大半当たる。

 

「…だめだな。」

 

ジナイーダは銃を下ろす。

 

「?」

 

「話にならない。そこにいる主任に相手してもらえ。」

 

「…!この私が…弱いとでも言いたいの!?」

 

「ああ。そうだ。」

 

「…この…!」

 

ビスマルクは主砲を構えるが…。

 

「!?」

 

ヒュンッ!

 

ビスマルクはジナイーダの弾をすれすれでよける。

 

「…ふっ、あなたこそまだまだ…。」

 

言いかけた途端…。

 

ドガァァァァァァァン…!

 

「!?」

 

さっきの弾が、遠くでペンキを撒き散らしながら大爆発し、水柱が立つ。それを見て、血の気が失せる。

 

……あれが当たっていたら…、例えペイント弾でもただではすまないわ…。ここの鎮守府の演習はそれが日常茶飯事なの…?

 

ビスマルクが考えていると…。

 

「どうだ?力の差が分かったか?」

 

「……。」

 

ビスマルクはドミナントのところに戻った。

 

…………

 

「ドミナント大佐…。」

 

「なんでしょうか…?」

 

「…あなたたちは強いのね…。」

 

「……。」

 

「…今まで、階級が私よりも下だから、少し感じの悪い態度を取ってごめんなさいね。」

 

「別に気にしてません。」

 

「…そう。…今度、私の鎮守府に来て見ない?」

 

「えっ?」

 

「少し私たちに稽古をつけてもらえないかしら?」

 

「……。」

 

……さっきの演習をして、その発言が出るとは驚きだな…。…こいつは強くなるな。

 

ドミナントは確信した。ビスマルクはこの先、もっと強くなることを。

 

「…わかりました。いつか向かいます。」

 

「楽しみにしているわ。」

 

そして、案内が終わり、外門に向かっていると…。

 

「…ん?人いない?」

 

ビスマルクが突然言う。

 

……あきつ丸かな?

 

二人は外門に行く。

 

「…!あれは…!」

 

ビスマルクが突然走り出した。

 

「ど、どうかしたんですか?」

 

ドミナントも走り出す。

 

「…いたの?まだ…。あの艦娘が…!」

 

「どの艦娘ですか!…はぁ、はぁ…。」

 

「もうずっと確認されていない艦娘が!」

 

「だから、どの艦娘…ゲホッゲホッ…。ですか!…はぁ、はぁ…。」

 

そして、近くまで行くと…。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「…まさか、ここで会えるなんて。」

 

そして、ドミナントはその艦娘を見る。

 

「どうかしたんですか〜?」

 

最上も、ドミナントたちが走っているのを見て、追いかけてきた。

 

「!あ、あなたは…!」

 

最上も驚いている。

 

「…誰?」

 

ドミナントが言うと、その艦娘は言った。

 

「フッ、随分と待たされたな…。大和型戦艦2番艦!武蔵!参る!」




はい。詰め込みすぎた結果です。ただの艦娘が、ジナイーダを超えることなど不可能だ。
登場人物紹介コーナー
最上…ボクっこで、明るく元気な女の子。ドジっ子属性も付いている。ドミナントの距離感はほぼないと言っても過言ではない。
ビスマルク…海外艦。パラオ泊地の提督でもある。中将。パラオ泊地は、所属している艦娘が全員海外艦です。気になるレベルは…60。
次回!第116話「武蔵…?」お楽しみに!


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116話 武蔵…?

やってきたきた116話。誤字脱字があった場合は、感想のところに書いて、気づかせて欲しい。いや、むしろ気付かせてくれ。
「116話ね〜。…私たちの何気ない日常崩壊してない?」
ま!もうACやら艦これやらわからなくなったところで、要素を濃くするよ。裏切りや艦娘特有の鬱物語、レイヴンとはなんなのか、ドミナントの恋の行方は…。
「そう思ってみれば、タグにラブコメがなくなったわね。」
自分で書いていると、“うっわ”って感じで、タグをつけたけど…。モノホンのラブコメは留まりを知らない…。見ていてこっちが死ぬ。
「筆者さんはラブコメ苦手なのね。」
あの甘いものを書いた後に、ACをやるとなんとも言えないあの感覚。現実を思い知らされる。(LR)
「じゃぁ、そういうラブラブ系はもう書かないの?」
いや〜…。いやー?いやー…。書くよ?書きますよ?まだ吹雪とドミナントのあの件もあるし…。
「…くれぐれも私は出さないでね。」
もちろんさ。大事な瑞鶴ちゃんが取られるのは嫌だからね。
「キモ…。」
フハハハ!何度でも言えばいい!…まぁ、そこまでの変態じゃないんだけどね。ドミナントとデートしたいなら書くよ?
「……。」
いや、ほんとに。
「…そう…なんだ…。…本当に良いわけ?」
うん。
「……そう…。」
残念がってない?どうして?
「いや…別に…。」
そっか〜。じゃぁ、今回のゲストは?
「…ほんとにわかってないんだから…。」
瑞鶴〜、ぶつぶつ言ってないで、紹介して〜。
「…ハッ!?…こ、この人よ!」
「瑞鶴さんも春が来ましたか?」
「ち、違…。」
いや、まだ冬真っ盛りだよ。セラフさん。
「いえ、そういう意味では…。」
「…朴念仁って言うのかしら…?」
「…ドミナントさんと似て異なるタイプですね。」
朴念仁?あぁ、ス○ークのことか。E○Aに言われてたもんね。
「あなたの頭がよ。」
……。

あらすじです
前回、久しぶりに艦娘の皆さんと大演習しました。…まぁ、結局のところ、艦娘の皆さんが全員倒れて終わったんですけどね…。…艦娘の皆さんもよく頑張っていました。一人、見慣れない艦娘がいましたが…。誰だったのでしょうか…?


…………

 

「大和型2番艦!武蔵!参る!」

 

そこにいた艦娘は、艦娘の中でも少数しかいない褐色の肌で、メガネをかけている。髪型はやや薄めの金髪をヘアバンドでツインテールかつ獣耳風に仕上げている。服装は、首に大和と同じく艦首をモチーフとした金属輪をつけている以外はさらし?包帯?のみ。きわどい。しかも、艤装は大和型特有の巨大かつ燃費が嵩みそうな主砲。いくらドミナントでも、食らったら絶対にただではすまない。

 

「えーっとぉ…。大和型…?だよね?大本営からクビの通知ですか?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「そ、そんなわけないじゃない!…一体どこにいたの…?」

 

ビスマルクが言う。

 

「何?どゆこと?」

 

全く状況の掴めていないドミナント。そこに最上が…。

 

「提督、知らないの!?大和型2番艦といえば、数年前、一度だけ海上に確認されてから、それから姿を見た人がいないことで、幻の艦娘って言われているんだよ!?今でもテレビでよく特集されているよ!」

 

最上が少し興奮したような感じで言う。

 

「そ、そうなのか?…だが、どうしてここに?」

 

ドミナントは武蔵に聞く。

 

「…私は行く場所がない。ここに所属させてくれ。」

 

「…は?」

 

ドミナントは困惑する。

 

……は?どゆこと?なんで幻の艦娘が俺の鎮守府へ?裏があるだろ。陸軍も俺の命狙ってきたし。いきなりここへ配属って…。まずは大本営に連絡しなければ。あと、艦娘で一応敵意はなさそうだから、お茶の一杯は出さないと。てか、ビスマルクはどうするんだ?

 

ドミナントが色々算段を立てていると…。

 

「…提督、とりあえず、失礼の無いように上がらせたら?」

 

最上が提案する。

 

「そうね。それが良いわ。」

 

ビスマルクも賛成する。

 

「…ビスマルクさんもですか?」

 

「当たり前じゃない。幻の艦娘がどうしてここに来たのか気になるわ。」

 

そして、4人は応接室に行く。

 

…………

応接室

 

「お茶を…。」

 

「うむ。」

 

そして、武蔵は紅茶を飲む。他の全員も紅茶を飲んでいる。

 

「…まずは大本営に連絡ですね。」

 

ドミナントは慣れた手つきで大本営に電話をかける。

 

…………

大本営 執務室

 

「暇ですね〜。」

 

「そうだな〜。」

 

「たまにはこんな平和な日があるといいですね〜。」

 

「仕事も早く終わらせることができたからな〜。」

 

大和が元帥と共に、緑茶を飲みながらゆっくりと、過ごしている。そして飲み終わり、ちょうどいい感じで日差しが差し込んでいるので、二人ともじゅうたんの上で寝転んだりしている。

 

ジリリリリリ…

 

電話が鳴り響く。

 

「電話ですね〜。」

 

「そうだな〜。」

 

「私が出ます〜。」

 

「ありがとう〜。」

 

大和は立ち上がり、電話を手に取る。

 

「もしもし〜。こちら大本営ですが〜。」

 

『あっ、もしもし、ドミナントです。』

 

「ふぇっ!?ド、ドミナントさん!?すみません!つい、気の抜けた言葉を…。」

 

大和は口調を正す。

 

『えっ?あぁ、別に大丈夫です〜。』

 

「…いいんです。無理してそんな口調にしなくても…。」

 

『……。』

 

「そ、それよりもどうかしましたか?」

 

……ドミナントさんからの電話…。嫌な予感しかしません…。何か我々を振り回すような…。

 

大和の予感は的中する。

 

『…その…。驚かないで聞いてください。』

 

「な、なんでしょうか…?」

 

『大和さんの…姉妹艦が今ここにいます…。』

 

「…え?」

 

『大和型2番艦の武蔵さんが…ここにいます。』

 

「…すみません。ちょっと意味が分かりません。」

 

大和は追いついていない。

 

「えーっと…。まず、どういうことですか?何があったんですか?何が起こっているんですか?」

 

『…順を追って説明します。まず、気がついたら鎮守府の門の前にいました。』

 

「はい。」

 

『話をしました。』

 

「はい。」

 

『行くあてがないので、ここに配属させてくれと頼まれました。』

 

「はい。」

 

『そして、現在電話しています。』

 

「はい。全くわかりませんでした。」

 

大和は困惑しすぎている。妹艦が自分の手が届く距離にいて嬉しいのか、今までどこにいたのか怒っているのか、何故そこに行ったのか不思議に思っていたりがごっちゃになり、よくわからないのだ。

 

『まぁ、とにかく、武蔵とかわります。』

 

「えっ!?で、でもまだ心の準備が…。」

 

『大和か?今かわった。』

 

「スゥー…ハァー…。…その声…本当に武蔵なのね。」

 

『ああ。』

 

「…全く、武蔵が無事でよかったわ…。」

 

『…いや、無事ではなかったんだが。…まぁ、無事だな。』

 

「そう…。」

 

大和は目を閉じる。しばらくしてゆっくり開け…。

 

「本当に…どこに行っていたんですか!?どれだけ探しても手掛かりなし!お姉さんである私ですら連絡しないなんて良い度胸じゃないですか!次会った時覚えておいてくださいね!いや!そんな周りくどいことしません!すぐに大本営に来てください!もう、武蔵は私の目の届く範囲の中でしか活動させません!」

 

大和は随分ご立腹のようだ。…まぁ、数年も音沙汰のなかった妹がやっと帰ってきた感覚なのだから、その気持ちは分からなくもない。

 

『むう…。だが、私はこの鎮守府が…。』

 

「いいから来てくださいね!」

 

大和が強く言っていると…。

 

『…大和さんも怒るんですね。』

 

ドミナントに電話がかえられていた。

 

「あっ、ドミナントさん…。」

 

『…大和さん。武蔵はどうしてもここが良いみたいです。』

 

「…ですが…。」

 

『確かに、武蔵はこんなところにいるべきではないと思います。大本営の方が、より武蔵が活躍できる場所だと俺は思っています。』

 

「なら…。」

 

『しかし、艦娘にも権利があると思います。法律上、権利のない艦娘でも、自分の鎮守府は自分で決めるくらいのわがままは許されると思います。』

 

「……。また、武蔵が…私の妹がいなくなるなんて嫌ですよ…?」

 

『沈めさせない。姿すら眩まさせるものか。』

 

「『……。』」

 

そして、ドミナントは一呼吸おき…。

 

『第4佐世保鎮守府の提督、ドミナント。我が名にかけて!もし、武蔵が沈む時は、俺も死んでいる。』

 

「『!?』」

 

大和型の二人は驚いていた。

 

……命をかけて…?

 

……さすがドミナントさん…。約束に関しては命をも捨てる覚悟なんですね…。

 

二人は思った。ドミナントの覚悟の重さについて。

 

『大和さん…。どうか、私を…俺を信じてくれませんか…?』

 

ドミナントは大和に聞いた。しばらくして…。

 

「…あなたは半端なことは言わない…。…信じます。」

 

『ありがとうございます。』

 

「はい。…でも、今すぐとは言いません。武蔵を連れて、大本営に来てください。武蔵の顔が見たいです。」

 

『約束します。』

 

「それでは…。」

 

『また会いましょう。』

 

ガチャ…

 

電話を切る。

 

「…武蔵の姿が確認されたか?」

 

元帥が聞く。

 

「…はい。」

 

「そうか。…大本営へ所属する気はないのだろう?」

 

「…よく分りましたね。」

 

「…長年、君の近くにいれば、声のトーンで大体はわかる。」

 

「…すごいですね。」

 

「君の勘ほどではないがな。」

 

「…その…。」

 

「別に良い。」

 

「…勝手に、元帥殿の許可を得ずに招いてしまってすみません…。」

 

「別に良いと言った。それに、君の姉妹艦である武蔵も、資料でしか見たことがないからな。実際に会って、話してみたい。」

 

「ありがとうございます。」

 

二人は、それぞれ話した。

 

…………

第4佐世保

 

ガチャ…

 

ドミナントは電話を切る。

 

「…その…。ドミナント大佐…。」

 

武蔵がドミナントに言う。

 

「提督で良い。話はついた。」

 

ドミナントは真剣に言った。

 

「提督…その…。今の話は本当か?」

 

「ああ。今から俺がお前の提督だ。」

 

「いや、そっちではなくてだな…。…命をかけていることに…ついてだ…。」

 

武蔵は聞いた。

 

「本当だ。偽りも、二言もない。」

 

ドミナントは真っ直ぐ武蔵の目を見て言った。

 

「…そ、そうか…。」

 

武蔵は少し恥じらっていた。いきなり告白みたいなことを普通のように言われたからだ。もちろん、ドミナントはそのことについて深く考えておらず、気づいていない。すると…。

 

「むむむ…。」

 

最上が唸っていた。

 

「提督!」

 

「は、はい!」

 

「ボクも、それくらい大事に思っているんだよね!?」

 

「も、もちろんだ。」

 

「言葉が詰まってて怪しい!」

 

「えぇ…。だって、いきなり大声で言われたら…。」

 

「嘘つきーー!」

 

「ちょ、待…。」

 

「熱っ!紅茶が…!大佐!規律が緩みすぎやしないか!?」

 

「うおっ!?こっちからも来た!?」

 

「逃がさないよ!」

 

「二人とも待て!」

 

「最上!ここは協力してビスマルクを倒すぞ!」

 

「そんなことで引っかからないよ!」

 

「最上!お前の力が必要だ!」

 

「え…。そ、そんなに必要なら…。」

 

「何ぃ!?騙されるな!」

 

「行くぞ!最上!」

 

「うん!」

 

武蔵はそんな3人を見る。

 

「…フフフ。やはり、あなたたちの鎮守府は違うな。」

 

武蔵は口元が緩みながら呟いた。そこに…。

 

「ん?客か?て、落ち着け!」

 

ジナイーダが入ってくる。そして、3人に拳骨をして止めた。

 

「…で、誰なんだ?」

 

「…あぁ。武蔵とビスマルクだ。」

 

ドミナントが言う。

 

「なるほ…。!?」

 

ジナイーダはすぐさま戦闘態勢を整えた。

 

「ど、どうしたんだ?ジナイーダ…。」

 

「なぜお前がここにいる…?その格好はなんだ…?」

 

ジナイーダは武蔵から目を離さない。

 

「…気づいたのか?」

 

「ああ。久しぶりだな。『ミッドウェー』」

 

「「「!?」」」

 

ドミナントと最上、そしてビスマルクは驚いた。




はい。懐かしいハイフリを見てたら遅れました。武蔵…。
登場人物紹介コーナー
トクニ…イナイ…。
次回!第117話「生まれ変わり」お楽しみに!


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117話 生まれ変わり

はい。やってきました117話。
「話すことないわね。」
そうだねぇ〜。じゃ、最近何しているのか聞かせてよ。
「ログインするのを待っているわ。」
メタい…。そっち?
「…今、ちょうど演習が終わって、自室で休んでいるわ。翔鶴姉も一緒。」
そっか〜。うん。あまり面白い話ではなかったね。
「…無茶振りは無理よ…。」
じゃ、今回のゲストは?
「ジャックさん。」
「まさか私が呼ばれるとはな。試させてもらうぞ。」
あ、はい。OKです。

あらすじ
前回、ちょうど演習が終わって、自室で休…。

うん。さっき聞いたね。
「………そうか…。」


…………

 

「久しぶりだな。『ミッドウェー』。」

 

ジナイーダが戦闘態勢を整えながら、武蔵に向かって言う。

 

「「「!?」」」

 

そして、ドミナント、最上、ビスマルクが驚く。そう。東方海域で、ドミナントたちを苦しめたあの深海棲艦だ。

艤装は、巨大な150cm砲の主砲があり、装填まで時間がかかるが、それが50個以上あるため、連続的に撃つことが可能。

わかりやすくいうと、80cm列車砲(通称“ドーラ”)以上の砲が50個以上、連続的にで撃ってくるものだ。都市区画ごと木っ端微塵に粉砕した時など絶頂すら…ゴホン。そしてさらにでかい、体を覆う二つの艤装はグレネードランチャーである。

容姿は、小さな子供…だが、顔に大きな傷がある。戦艦棲姫を子供にしたような感じだ。

 

「…説明ありがとう。で、なんでここに…?」

 

ドミナントが聞く。

 

「…忘れたの?最後の言葉。」

 

「あ…。」

 

ドミナントは思い出す。

 

…………

 

『シズンダラカンムスニウマレカワルトイウノガホントウナラ…。カワッテアナタタチノチンジュフニイキタイワ…。』

 

『第4佐世保鎮守府は、敵意がなければ誰でも歓迎します!』

 

………

 

『生まれ変わるといいな…。』

 

『はい!』

 

…………

 

「あー…。そうだったね。ようこそ、第4佐世保鎮守府へ。」

 

「“ようこそ”じゃないだろう!」

 

ジナイーダがドミナントに言う。

 

「こいつは深海棲艦だぞ!」

 

「だが、今は艦娘だ。」

 

「今は艦娘でも、深海棲艦だった頃の記憶も、感覚もあるのだろう!?」

 

「ああ。だが今は敵意もない。」

 

「何故そんなことが言える!?」

 

「ここに来た時、わざわざ門の前に立っていた。敵意があるとしたらいきなり奇襲してこないか?」

 

「侵入して、夜間に暗殺してくることも考えたのか!?」

 

「いや、そんなことしたらまた主任やお前に殺されるだろう。なんせ、より近い距離に来ることになる。そこまでして、こんな化け物揃いの鎮守府に来ると思うか?地上の方が、艦娘や深海棲艦も不利になるのだぞ。」

 

「まぁ…そうかもしれないが…。」

 

「それに、もう大和さんと約束しちゃったしな。」

 

「お前…また勝手に。…はぁ…、もういい。」

 

ジナイーダは部屋を出て行った。

 

「…大丈夫なの?」

 

ビスマルクが聞いてくる。

 

「…ジナイーダは心配性なんだ。…昔、色々あったみたいだからな…。」

 

「…どんなこと?」

 

「…色々だ。ジナイーダに聞いてくれ。俺の口から言うことではない。」

 

「…そう。」

 

なんとなくビスマルクが察した。すると…。

 

ガチャ…

 

赤城が入ってくる。

 

「?さっきジナイーダさんが何やら不機嫌そうに出て行きましたけど…。…お客さんですか?」

 

「ああ。ビスマルクと武蔵だ。」

 

「武蔵!?あの幻の…。」

 

「ああ。その武蔵だ。我々の鎮守府に所属することになった。」

 

「ええ!?」

 

赤城は驚いている。

 

「…大和型2番艦、武蔵だ。」

 

武蔵が手を出す。

 

「わ、私は赤城です!はじめまして。」

 

赤城は出された手を握る。

 

「…赤城、実は武蔵は…。」

 

「『ミッドウェー』…ですか?」

 

赤城が聞く。

 

「…そうだ。」

 

ドミナントが答える。

 

「だが、敵意はない。わかってくれ…。」

 

「わかりますとも。だって、私たち艦娘は、深海棲艦でもありましたし。…一部は深海棲艦ではありませんが。」

 

赤城が言う。

 

「まぁ、わかっているなら話は早い。」

 

ドミナントが言ったあと…。

 

「…最上、セラフに部屋の追加を頼んできてくれ。」

 

最上に伝言を頼む。

 

「えー。またー?ボクはパシリじゃないんだよ?」

 

もちろん、さっきもみんなにビスマルクが来たことを知らせた最上は不満だろう。しかし…。

 

「…間宮アイスを奢…。」

 

「行ってきます!」

 

ドミナントが言い終わる前に、最上は部屋を出て行った。

 

「…速いな。で、ビスマルクさんはどうしますか?」

 

「そうね…。もう少し武蔵と話がしたいわ。」

 

「そうですか。なら、ご一緒しても?」

 

「別に良いわよ。」

 

ビスマルクはどうでも良い感じだ。

 

「どうして、深海棲艦になってしまったの?あの時のあなたは、レベル80前後のはずでしょう?」

 

ビスマルクが武蔵に聞く。

 

……確かに、レベル80だとしても大和型…。半端な深海棲艦になどやられはしないはずだ。

 

ドミナントは思う。

 

「…そうだな。…あの時、私は天狗になっていた。誰にも見つかったことなどなかったし、どんな深海棲艦も沈めてきたからだ。そのおかげで、そこの海域の深海棲艦がいなくなり、謎の現象やら、神の仕業やら騒がれた。それが心地よくてな。…そしてある日、調子に乗って一人で北方海域に行ったときのことだ…。」

 

…………

北方海域 海上

 

「ギャァァァァ!」

 

「この主砲の本当の力、味わうが良い!」

 

ドガァァァァァン!!

 

武蔵は跡形もなく消滅する深海棲艦を見る。

 

「よし!これで全部だ。…フッフッフ。私を倒せる深海棲艦などいないな!」

 

武蔵は確信したが…。

 

「ソレハドウカシラ?」

 

「何!?」

 

後ろから声がして、振り向くが…。

 

ドガァァァァン!

 

魚雷が当たる。

 

「まだだ…まだこの程度で…武蔵は沈まんぞ…!」

 

武蔵は言うが、心の中では驚いていた。

 

……おかしい…。この海域で、この攻撃力はおかしい…。こんなところで中破などしたことがない…。しかも、姿が確認できない。

 

武蔵は相手が見えず、潜水艦だと考えて、大本営特製レーダーを使う。例え潜水艦でも、攻撃ができなくても反応くらいはする。

 

「…?反応がない?」

 

全く反応のしないレーダー。だが…。

 

ドガァァァァァン!

 

魚雷が当たる。

 

「…何故だ!?」

 

武蔵は大破した。

 

「アラァ、マサニジブンガゼッタイテキキョウシャダトシンジテイタノカシラァ?」

 

海中から声が聞こえる。

 

「くっ…、姿を見せろ!」

 

武蔵は言う。

 

「ミセルワケナイジャナイ。コレモセンリャクノヒトツヨ。」

 

「…くそっ!」

 

武蔵はレーダーを見る。が、全く反応がしない。

 

「何故だ!?どういうことだ!?」

 

武蔵はレーダーを振ったりしている。

 

「ムダヨ。ワタシハ、ソナーヤレーダー二ハンノウナドシナイワ。」

 

「!?」

 

「ジャァ、スコシスガタヲミセテアゲル…。」

 

ザバァァァァ…!

 

相手が姿を見せた。

 

「やはり、潜水新棲姫か…。」

 

相手は深海棲艦の上位種、潜水新棲姫だった。

 

「…何故目に包帯を巻きつけている?それに、背負っている、その大型の機械はなんだ…?」

 

武蔵が聞く。

 

「メニホウタイガマキツケテアルノハ、メガミエナイカラヨ。」

 

相手が言う。

 

「!?だが、正確に私を狙ったでは…。」

 

「ソレハ、コノキカイノオカゲ。コレノオカゲデ、ソナーニモレーダーニモタンチサレナイノヨ。」

 

「!?」

 

武蔵は驚いた。

 

……なら、ここで倒さなければ、この後どれだけ脅威になるかわからない…。

 

武蔵が主砲を構えるが…。

 

「カマエテイルノガワカル…。デモ、ムダヨ。サヨナラ。」

 

「無駄かどうかなど、やってみなければわからないだろう!?」

 

ドオォォォォォン!

 

武蔵が撃つが…。

 

「…くっ…。」

 

潜水新棲姫は、海中に入り、いなかった。

 

「…コレデサヨナラヨ。」

 

「!?」

 

遅かった。武蔵は避けきれず…。

 

ドガァァァァァン!!

 

…………

 

「…ということがあった…。」

 

「「「……。」」」

 

武蔵の話が終わり、全員黙る。

 

「つまり、私は北方海域で沈んだんだ。」

 

武蔵が言うと…。

 

「…それ、かなりヤバくないか?」

 

ドミナントが言う。

 

「相手が見えないければ、攻撃が当たるわけがない…。つまり、相手に一方的に攻撃されっぱなしになる…。」

 

ドミナントは深刻に言う。

 

「…北方海域…。大湊警備府の管轄ね…。大丈夫かしら…?」

 

ビスマルクが心配そうに言う。

 

「大湊…警備府…?」

 

「この前、提督と一緒に行ったところです。」

 

「…星奈…。」

 

「はい?星奈…とは?」

 

赤城が聞く。

 

「あっ、いや。なんでもない…。…後で連絡しなくては…。」

 

ドミナントは考える。

 

……連絡は一応しなければならないな。…だが、遭遇したらどうする…?相手は見えないのだぞ…?…潜水艦たち?いや、力不足だな。潜水艦を一人連れて行って、相手を確認させてから叩くか…?…いや、例え確認したとしても、相手は上位種…。90%当たる確率でもよけきる可能性も否定できない…。

 

色々考えていると…。

 

「…とにかく、大本営じゃないの?」

 

ビスマルクが言う。

 

「確かに、大本営が優先だけど…。これ以上爆弾を投下すると大和さんと元帥が始末書三昧で眠ることすら許されない状態になるかも知れん…。」

 

ドミナントは苦笑いしながらいう。

 

「…まぁ、今度大本営に行くから、その時報告すれば良いか。…それに、何年も前の話だ。その潜水新棲姫も倒されているかも知れんしな。…いや、倒されているわけないか…。」

 

ドミナントはさも面倒くさそうに感じた。

 

「北方海域まで…。この前の会議では、中央海域に一斉爆撃があったというのに…。」

 

赤城が呟いていた。




はい。ミッドウェーの艤装についてなんですが、やりすぎたと思います。実際に想像したらヤバイです。150cm砲…想像したらどれだけでかいんだか…。
深海棲艦は、沈んだ艦娘がなる設定。
登場人物紹介コーナー
武蔵…大和型2番艦。元ミッドウェー。大和型特有の大きな主砲で、燃費が嵩みそうな艦娘。服装が包帯?さらしのみで、普通にエロい。ドミナントが中破した彼女の体を見ることはないだろう。狼にならないためにも…。
次回!第118話「歓迎」お楽しみに!


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118話 歓迎

はい。やってきました118話。残り、82話。まだまだ長そうですね…。
「それより、なんか応接室が騒がしかったけど、何かあったの?」
さぁ?僕何にもわかりましぇん。
「…絶対知っているわね。」
筆者だからね。
「はぁ…。もういいわ。それより、今回のゲストを紹介するわ。」
おや?今回はなんかサクサク進むね。
「だって、もう話すことないもの。…どうぞ。」
「ビスマルクよ。よおく覚えておくのよ。」
ビスマルクさんっすね。よろ〜。
「よ、よろ…?」
よろしくって意味です。
「そ、そうなの?」
ま!それよりもあらすじだね。どうぞ。

あらすじ
前回、私は武蔵の正体を知ったわ。そう…、あの有名な深海棲艦…、『ミッドウェー』の生まれ変わりだったの。そして、どうして深海棲艦になってしまったかと言うと、北方海域で沈められたらしいの…。…武蔵を沈める深海棲艦…、どんな奴なのかしら…?


…………

第2食堂

 

「えー…、と言うわけで、今日から同じ鎮守府に所属した武蔵と、訪問に来たビスマルク提督さんの歓迎会を始めたいと思います。」

 

ワーワー

 

艦娘たちが集まっている。ここ、第2食堂は所謂、椅子ではなく、座布団に座るようなところだ。

 

「武蔵ってあの?」

 

「幻の…。」

 

「大和型2番艦の『武蔵』…?」

 

艦娘たちが思い思いのことを言う。

 

「ああ。そうだ。今日から所属することになった。皆、よろしく頼む。」

 

「よろしく。」

 

ドミナントと武蔵は言う。

 

「こちらこそ!よろしくなのです!」

 

「ハラショー。」

 

「よろしく。」

 

艦娘たちが挨拶を交わす。

 

「ビスマルク提督も忘れるな?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「よろしくお願いします。ビスマルクさん。」

 

「よろしくなのです!」

 

「…気は使わなくて良いぞ。」

 

ビスマルクはそんな感じで言う。

 

「わー、武蔵さんって大きいんですね。」

 

「…!」

 

吹雪が話しかけ、武蔵は驚く。

 

……吹雪…。深海棲艦だった時、記憶に残っている…。駆逐艦の中ではすごく強い上に、優しさまで持ち合わせている艦娘…。

 

武蔵は心の中で思う。

 

「握手しても…?」

 

「うむ。構わん。」

 

そして、手を握る。

 

「…ふむ。…もういいか?」

 

武蔵は、握った手をじっと見ている吹雪に言う。

 

「…え?あっ、はい。ありがとうございます。ミッ…。いえ、武蔵さん。」

 

「……。」

 

そして、吹雪は自分の席に戻って行った。

 

「……。」

 

ドミナントは吹雪を見る。そして、互いに目が合い、頷く。

 

「…武蔵、すまないが、少しトイレへ行ってくる。」

 

「わかった。」

 

ドミナントは廊下へ出る。

 

「…あっ、部屋に忘れ物してきちゃった。取りに行ってくるね。」

 

「忘れ物?…吹雪ちゃん、何忘れたの?」

 

「えっ?えーっと…。歯ブラシを…。」

 

「でも、食べ終わったあとにいちいち取りに戻ってたわよね?無くしたら嫌だからって…。」

 

「…違った。歯ブラシじゃなくて…、箸だった。あ、あはは…。」

 

「箸?ジナイーダさんに言えば、割り箸をくれると思うけど…。」

 

「ううん。わざわざジナイーダさんの手を煩わせるわけにはいかないので…。」

 

「そう?」

 

「う、うん。すぐ戻ってくるから。白雪ちゃん。」

 

「…わかったわ。」

 

吹雪も廊下に出た。

 

…………

廊下

 

「お、遅くなってすみません。司令官。」

 

「遅かったじゃないか…。」

 

ドミナントと二人で話す。

 

「…ところで、武蔵のことなんだが…。」

 

「『ミッドウェー』…ですよね?」

 

「元だが…。やはり、知っていたか…。」

 

ドミナントは言う。

 

「やっぱり…。手を握った時わかりました。どこか、会ったことがあるような気がして…。」

 

「そうか…。まぁ、そのことで色々ある。」

 

「何でしょうか?」

 

「武蔵がミッドウェーであったことは秘密にして欲しいんだ。」

 

「う〜ん…。正直に話した方が、良いと思いますが…。」

 

「余計な混乱は避けたいんだ。ジナイーダは納得していないみたいだし。おそらく、主任やジャックも危険視するだろう。そうなれば、自然と扱いが違くなり、艦娘たちも気付かない間に疎外していってしまう可能性があるからだ。」

 

ドミナントは話す。

 

「そうですが…。…もし、バレたらそれこそ混乱しますよ?それに、そのことを隠していた司令官にも非難されます。」

 

「だが、もう大和さんと約束してしまっている。」

 

「えっ?あの大和さんと…。」

 

「ああ。武蔵は沈ませないし、こっちで責任持ってちゃんと保護して、生活するという約束。」

 

「…そうだったんですか。」

 

「だから、武蔵を危険な目に合わせるわけにはいかない。もちろん、お前たちも同じだ。…同じ所属同士の争いは禁物だ。もし、そんなことが起きた場合は俺と愉快な仲間たちの公平な審査によって、罰する。」

 

ドミナントは重々しく言う。

 

「まぁ、とにかく、武蔵がミッドウェーであることはくれぐれも内密に頼む。」

 

「…わかりました。」

 

そして、ドミナントたちは食堂へ入ると…。

 

「その時、水平線に一筋の希望が現れた。…て、随分長かったな。」

 

武蔵が艦娘たちを集めて何やら話している。

 

「ああ。…ところで、何をしているんだ?」

 

「ん?提督も聞くか?」

 

武蔵が言うと…。

 

「はわわわ…どうなったのです?」

 

「気になる…。」

 

「あっ、ドミナントも隣に来て聞こう?ね?」

 

駆逐艦の子たちと、神様が言う。

 

「あぁ、少し待ってくれ。提督が聞くかどうか考えている。」

 

武蔵は宥めながら言った。

 

「う〜ん…。気になるけど…。この歳で紙芝居的な物語を聞くのはなぁ〜…。」

 

「歳なんて関係ないと思うが?」

 

「そうか?だが、威厳がないだろう?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「お前には最初から威厳などない。」

 

「ひどくない!?」

 

遠くでジナイーダが言っていた。

 

「はぁ…。どうやら、俺にはとっくに威厳を失っていたみたいだから、聞こうかな。」

 

「やったー!」

 

「ふむ。提督も聞くのか。」

 

そして、ドミナントは神様の隣に座る。

 

「えーと…。どこまで話した?」

 

「水平線から希望の光が見えたところなのです!」

 

「おぉ。そうだったな。…えー…。そう、その光とは、この鎮守府に所属しているジナイーダと主任、夕張とセントエルモだった!」

 

「…?」

 

「おぉ。」

 

「そして、ミッドウェー、もとい、元私は近くで走り回る艦娘たちを撃った。だが、速くて当たらない。そこに、いつの間にか迫ってきていた夕張とセントエルモに驚き、主砲を向けた。」

 

「どうなるのです…?」

 

「ハラショーな結末…?」

 

「そう、それが狙いだった。主砲の中に撃ち、爆発を起こしたんだ。堪らずに元私は悲鳴をあげた。」

 

「おお!」

 

「すごいわね。」

 

「だが、そこで終わりではなかった。そう、目を離してしまっていたのだ。」

 

「ゴクリ…。」

 

「恐るべき狂人、主任のことを。そして、主任は大きな銃を構えて元私、ミッドウェーを撃った。威力が高くて、元私は海の上に膝をついた。そして、沈んでいく。」

 

「その大きな銃、たまに見るわね。そこまでの威力があるなんて…。」

 

「教官さんかっこいいのです。」

 

「沈んでいく中、深海棲艦である元私に吹雪は言ったのだ。」

 

「何をだろう…?」

 

「第4佐世保鎮守府は敵意がなければ誰でも歓迎する…と。」

 

「流石吹雪ちゃんね。」

 

「吹雪さんらしいですね。」

 

「そして、私は来たのだ。ここに所属しに。」

 

「なるほど!」

 

「かっこよかったのです!」

 

武蔵の話が終わり、ドミナントは言う…。

 

「武蔵…良かったのか?」

 

「何がだ?」

 

「自分の正体を言って。」

 

「当たり前だ。これから所属する仲間に黙っていてどうする?本当の自分のことを言ってからが本当の仲間ではないのか?」

 

武蔵は首を傾げる。

 

「……。」

 

……そうだな…。武蔵の言う通りだ。

 

ドミナントは黙った。

 

「…そうだな。その通りだ。」

 

ドミナントは正直に言う。

 

「…ですね。」

 

隣でいつの間にか居た吹雪が言う。

 

「…お前より、武蔵の方がトップの器があるな。」

 

「えぇ…。…まぁ、そうだな。」

 

ジナイーダがからかうが、ドミナントは真剣に言う。

 

「…否定はして欲しかったぞ。」

 

「何故だ?」

 

「…少しは人の気持ちを考えろ。…私は武蔵がここに所属しても構わない。」

 

「?」

 

ジナイーダは自室へ戻って行った。

 

「…人の気持ち…か…。」

 

ドミナントはジナイーダが残した食事を見る。

 

「…やはり、全くわからない。…それが欠点なのかもな…。」

 

ドミナントは、それを眺めたあと、ビスマルクのところへ行く。

 

「ビスマルクさん…。」

 

「ん?ドミナント大佐じゃない?どうかしたの?」

 

「私は…おかしい人ですか?」

 

「今頃気づいたの…?十分おかしいわよ。」

 

「…そうですか…。私は人の気持ちがわからないみたいです…。」

 

「?…何かあったの?」

 

「実は…。」

 

…………

 

「こんなことがあったんです…。」

 

「そう。…それはあれね。」

 

「あれ?」

 

「…あなたの友達、仲間として、一言でも先に報告して欲しかったのよ。」

 

「何故です?」

 

「…本当にわからないのね。」

 

「…どうしてなんですか?」

 

「さあ?自分で考えなさい。」

 

ビスマルクは騒いでいる方へ行ってしまった。

 

「…分からん…。…どこかでなくした心か…?社畜時代の時か…。」

 

ドミナントが思い出していると…。

 

……そんな心など不要だ。

 

自分の心のどこかで呟いた。

 

「!?」

 

ドミナントはそんなことを思ったことに驚く。

 

「……。」

 

そして、ドミナントはあまり考えないようにした。




終わりです。良い終わり方が思いつきませんでした。ゴフッ…隊長…眠いです…。…もう…休んで良いですか…?ゲホッゲホッ…。
次回!第119話「対立」お楽しみに!


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119話 対立

はい。やってきました119話。
「不穏なタイトルね…。」
そだよ?
「…嫌な予感しかしないわ…。」
だよね〜。
「…1話完結?」
分からん。
「つまり…。」
そう、誰かと誰かが戦うんだ。
「うん。とても穏やかじゃないわね。」
ま!そこんところは本文で。
「気になるけど…。ゲストよね?どうぞ。」
「あれ?いつのまにここに…。」
も〜がみ〜ん。聞こえる〜?
「えっ?えー…と…。…はい。」
あらすじをどうぞ。
「それより、この人は…?」
「粗大ゴミ。」
瑞鶴ぅ…。…もう慣れたよ…。
「なんだか可哀想…。」
「いいのいいの。これは不死身なんだし。」
豆腐メンタルですけどなにか?
「豆腐w?あなたが豆腐なら、全人類ゼリーじゃない。」
失礼なこと言ったね。まぁいいや。それより、あらすじ。
「あっ、うん。…わかった。」

あらすじ
前回、武蔵さんの昔話を聞いたよ。面白かったけど、武蔵さんがミッドウェーだったのは、驚いたなぁ〜。


…………

翌朝 執務室

 

「暇だ〜。」

 

ドミナントが執務室で暇そうにする。すると…。

 

コンコン…ガチャ…。

 

「失礼、ドミナント大佐。」

 

ビスマルクが中に入る。

 

「…まだいらしたんですか…。」

 

「?来てからまだ1日しか経ってないじゃない。それに、午後から帰る人に対して失礼じゃありません?」

 

「……。すみません。」

 

「別に良いわ。それより、一つ頼みがあるんだけど…。」

 

「頼み?」

 

「武蔵と手合わせをしたいわ。」

 

「武蔵と?まだレベルはそんなに上がってないし、結果なら目に見えていますよ。」

 

ドミナントは言う。

 

「まぁ、私が勝つのはわかっているけど、日本の代表でもある大和型と手合わせしたいの。大本営の大和さんには仕事で忙しそうだからしてないわ。」

 

「?いや、武蔵が勝ちますよ?」

 

「…は?」

 

「たかが1日、されど1日。しかも、教官は主任たち。レベル60前後はいっていると思います。」

 

「たった1日だけで!?」

 

「はい。大和型戦艦は、資料に載っているため、テストを行わなくても特性が分かりますし、何よりも、夜中にも砲音が聞こえたので、おそらくあれから朝までぶっ続けで…。」

 

ドミナントは武蔵のことを考え、気の毒そうな顔をする。

 

「朝まで…つまり、約10時間…。レベル60はおかしいわよ…。」

 

そんなことを話していると…。

 

ガチャ

 

「ドミナント〜。聞こえる〜?」

 

ノックもせずに、主任が入ってくる。まぁ、主任らしいが。

 

「どうした?」

 

「武蔵が疲労で眠いらしいんだけどー、そのまま続けさせる?ちなみに、レベルは60。」

 

「寝させてやれよ…。」

 

「はいはーい。…で、何か話していたのかな〜?」

 

主任がビスマルクを見る。

 

「あぁ、武蔵と手合わせをしたいって言ってて…。」

 

「そりゃ無理だ。申し訳ないけど。」

 

主任が一言そう言い、ドミナントに近づき、コソコソ言う。

 

「…?どうした主任。」

 

ドミナントもコソコソ話す。

 

「武蔵のことなんだけど…。少し艤装が変でさぁ〜。」

 

「変な艤装?」

 

「グレネードランチャー。」

 

「……。は?」

 

「武蔵が使うと、どんな主砲もグレネードランチャーになるってこと。」

 

「…ただの主砲も?」

 

コクリ

 

「……。」

 

主任がうなずく。

 

「…なるほど。」

 

……ミッドウェーだった頃に少し影響があるな…。ミッドウェーのあの艤装もグレネードランチャーだったしな…。

 

ドミナントが考えていると…。

 

「何を話しているのかしら?」

 

「あっ、すみません。ビスマルクさん。」

 

ビスマルクが二人だけでコソコソ話すドミナントたちに聞く。

 

「武蔵との手合わせの件なんですが…。今は武蔵が疲れているみたいなので、また今度というわけには…。」

 

「…まぁ、しょうがないわよね。」

 

ビスマルクが言うと…。

 

バァン!

 

ドアが思いっきり開けられる。

 

「提督!私は…私はまだ戦える…!」

 

「めっちゃフラフラじゃないか。」

 

武蔵がフラフラしながら言う。

 

「ビスマルクと言ったな…。来い!勝負だ!」

 

「……。」

 

ビスマルクはすごく困っている。果たして、この状態で勝っても、あまり嬉しくないからだ。

 

「なんだ?来ないのか?」

 

「…ええ。いくらなんでも、その状態だと…ね…。」

 

「見事な引き際だな。」

 

「…いいわ。場所は演習場で良いかしら?」

 

「構わん。」

 

そして、二人は演習場へ向かって行った。

 

「…主任、武蔵大丈夫か?」

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

「……。」

 

ドミナントと主任も演習場へ行った。

 

…………

演習場

 

「「……。」」

 

武蔵とビスマルクがいる。

 

「おーい…。…?どうした?二人とも海に入らなくて…?」

 

ドミナントが陸で、海を見ている二人に声をかける。すると…。

 

ウィーーーン!

 

ドガァァァァァン!!

 

ウィーーーン!

 

ババババババババ…!

 

ガシャァン

 

ドォォォォォォン!!

 

パシュッ!パシュッ!

 

ギュィィィィン!ズガァァァァァン!

 

目の前が水しぶきやら、爆発やらで海が荒れる。

 

「……。何?何が起きてるの?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「どちらが強いのか…みものだな。」

 

いつの間にか隣にいるジャックが言う。

 

「どちらが強い?誰が戦っているんだ?」

 

「ジナイーダとセラフだ。」

 

そう、今二人が腕が鈍らないように戦っているのだ。

 

「…あれ、もちろんペイント弾だよね?実弾だった場合、資材の消費がおかしいくらいなくなるんだけど…。」

 

「……。」

 

何も言わない。

 

「…よし、こうなったら仕方あるまい…。セラフー!」

 

ドミナントが大声で言う。

 

「…?ドミナントさん?」

 

「どうした?」

 

二人が戦闘をやめる。

 

「何でしょうか?」

 

「うん。セラフを呼べば何とかなるな。」

 

「?」

 

「それより、二人が手合わせをしたいらしいから、少し場所を譲ってくれないか?」

 

「何故だ?」

 

ジナイーダが聞いてくる。

 

「ビスマルクさんは少ししたら帰るらしいから、最後の頼みとしてね。」

 

「最後…て、人聞きが悪いわね。」

 

ビスマルクはドミナントに言う。

 

「そうですか…。なら、少し中断しましょう。」

 

「そうだな。」

 

ジナイーダとセラフが了承してくれた。

 

「場所を譲ってくれて感謝する。」

 

武蔵が言う。

 

「武蔵も、準備して。」

 

「うむ。」

 

そして、二人の戦闘が始まる。

 

…………

 

「で、戦闘描写は長いからカット…と。」

 

「ドミナント…、お前はそれで良いのか…?」

 

「?何が?」

 

「3日も書いていなかったのに、こんなので…。」

 

「しょうがないよ。筆者が風邪だもん。」

 

「筆者は本当に病弱だな。」

 

「そんなことより、メタいからそろそろ再開しよう。」

 

「そうだな…。」

 

ドミナントとジャックは武蔵たちの戦闘を見ながら言うのであった。

 

…………

結果 引き分け

 

「良い勝負だったぞ。」

 

「私が引き分けなのは納得いかないけど…。負けよりかは良いわね。」

 

そして、二人は握手する。

 

「次会った時は、もっと強くなっているわ。」

 

「それはお互い様だな。次に戦う時を楽しみにしている。」

 

「…お互いの健闘を祈りましょう。」

 

二人の間に、ライバルという名の絆ができたようだ。

 

「仲間…か…。」

 

ジャックが呟く。

 

「ンジャムジ…。この世界にいないだろうか…?」

 

「いると良いな。」

 

「…いや、いないだろう。」

 

「何で諦めるんだ?」

 

「この鎮守府には多種多様な者たちがいるが、どれも、その道に関して優れている者ばかりだ。」

 

「……。」

 

「それに、会ったとしても、何を言えば良い?」

 

「……。」

 

「私は奴を陥れて、殺したも同然の男だ。すまんで済むと思うか?…この世界に来たのも、ンジャムジが『レイヴン』として死にたい私を死なせず、後悔という形で苦しめているのかも知れん。」

 

「……。」

 

「私は…。」

 

「ジャック、一つ良いか?」

 

「なんだ?」

 

「ンジャムジが、お前の言ったことをする奴だと思っているのか?」

 

「……。」

 

「お前とンジャムジがどういう仲なのかは知らん。だが、裏を返せば、死のうとしている友を死なせないためにしたのかも知れんぞ?」

 

「…それはないだろう。奴は良い友だった…。だからこそ、裏切られた憎しみも大きくなる。」

 

「…まぁ、そこら辺の心境は分からん。俺も裏切られたことはあるが、死んでないしな。裏切られて死んだ奴が何を思うか知っている奴がいれば、そいつはかなり変人だ。」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントとジャックはそんなことを話すのだった。ちなみに、どこかの鎮守府提督がくしゃみをしたのは言うまでもない。

 

「…そう思って見れば、主任はどこだ?」

 

ドミナントがふと思った。

 

…………

 

「…これで良し…と…。」

 

主任が何かしている。

 

「主任さん?何をしているんですか?」

 

「怪しいよ…。」

 

夕張とセントエルモが声をかける。

 

「ん?これ。」

 

カランカラン…シュー…

 

「ん?何でしょうか?これ?」

 

シュー…

 

「?眠…。」

 

ドサッ

 

「む!?これは睡眠ガス!?」

 

主任は既にAC化している。ACには鼻がないため、ガスなど意味がない。

 

……とにかく、すぐに息を止めて、鼻や口を塞がないと…!

 

だが、セントエルモは少し吸い込んでしまった。

 

「ギャハハハハ!眠っててもらうよ。申し訳ないけど。」

 

「……。」

 

……まずい…。少しずつ、意識が薄れて…。

 

セントエルモはまぶたが重くなってきているのを我慢している。

 

「主任…さん…。どうし…て…。」

 

ドサッ

 

セントエルモは、主任がどこか行くのを眺めたあと、目の前が暗くなった。




はい。終わりました。次回のタイトルでしたね。あと、ものすごく遅くなってすみませんでした。風邪と冬眠です。
登場人物紹介コーナー
睡眠ガス…即効で眠くなるガス。少し吸い込んだだけで、大型の哺乳類も即寝してしまう。
次回!第120話「裏切り」お楽しみに!


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120話 裏切り

120話。騙して悪いがでもよかったんだけど…。同じタイトルが2個じゃあれだから…。
「確かに、同じタイトルがあったら変よね。」
つまり、今まで使ったタイトルはもう使えない、消耗品みたいなものだね。
「ふぅーん。消耗品と言えば、今鎮守府にどれくらい資材があるのかしら?」
少ないね。どれもこれも4桁前後しかないね。
「大変じゃない…。」
まぁ、今回は大変なことばかり起きるよ。
「大変なこと?」
ヒント、ドカーン。
「もう分かったわ…。」
あと、最近身体が闘争を求めすぎて爆発しそうだったから、ほかのことで抑えています。…これは裏切りかな…?
「うーん…。ギリギリアウトじゃない?」
ギリギリか…。じゃ!そろそろ始めよう。今回のゲストは?
「この人。」
「大和型2番艦、武蔵!参る!…て、前にも来た気がするな…。」
はじめてのはずだけど?
「むぅ…。」
「武蔵さん、それよりあらすじをどうぞ。そうすれば、すぐに帰れるから。」
「?そうなのか?」
そだよ。
「では、あらすじをやろう。」

あらすじ
前回、私はビスマルクと戦った。相手もとても強く、引き分けで終わってしまったが、次会うときはどうなるか想像が出来んな。…もちろん、私が勝つと思うがな。


…………

セントエルモ

 

セントエルモとは、ACⅤ(アーマード・コア ファイブ)で登場する戦艦。…だが、実際に、よく見てみると、駆逐艦程度の大きさしかない。そのため、この世界では艦娘になっているが、戦艦なのに、駆逐艦ぐらいの子供の大きさになっている。

ジノーヴィーがいたら、どんなことになるか…。いや、この世界のジノーヴィーは、そんなことはないだろう。…多分。勿論、実際のゲームにはそういう描写は無い。

いつも夕張と共にいるが、夕張が遠征やら、演習でいない時は倉庫にいるか、龍驤と話している。ドミナント自身には、全くと言っていいほど好意がなく、『提督』として好きみたいな感じだ。姿形は…ご想像にお任せします。(決まってません。募集。)

性格は、明るく元気。資材や食料をたくさん食べます。流石戦艦。ただ、機嫌が少しでも悪いと、暗い感じになる。メンタルは強い方。主任にからかわれない限り、機嫌が悪くなることは、ないに等しい。

戦闘面は、主に六門の主砲を使っている。ちなみに、オーバードウェポンのHUGE MISSILE(ヒュージミサイル)も積んであるが、基本的に使わない。1発でも使うと、資材が(主任砲以上に)一気に消し飛ぶので、本当のピンチの時にしか使うことはない。主砲の攻撃力は、敵の戦艦棲姫上位flagshipを1発で沈められるほど大きい。AC(アーマード・コア)でいうところの、…セントエルモの主砲くらいです。戦艦の時の弱点は、艦娘になったために船首がなくなり、前方でも楽に攻撃をすることができるようになった。ただし、戦艦の大きさではなく、艦娘の、しかも子供並みの大きさのため、遠距離の攻撃が当たらず、近距離でしか当たらなくなった。(ヒュージミサイルを除いて。)近距離だと、自分もダメージがでかくなるため、諸刃の剣となっている。

 

…………

第4佐世保鎮守府 玄関

 

「じゃぁ、また会いましょう。」

 

ビスマルクが言う。

 

「そうですね。お気をつけて。」

 

ドミナントが握手をして、ビスマルクはタクシーに乗って、帰って行った。

 

「…ふー。疲れた。」

 

「お疲れ。提督。」

 

最上がドミナントにお茶を渡す。

 

「…どこから持ってきた…?」

 

「秘書艦として、持ち歩くのが当然だって、くまりん(三隈)も言ってたよ。」

 

「言ったな?じゃぁ、山の奥地でも出すんだな?」

 

「提督と二人だけで山の奥地…。」

 

「…もういいや。」

 

そして、ドミナントが戻ろうとしたが…。

 

「…?何だこれ?」

 

ポストから差し出し人不明の手紙と小包が入っていた。

 

……開けるか。

 

ガサガサ…

 

ドミナントが開ける。

 

「…?なんだ?小包の中にまた小包が…。…それより、手紙か…。」

 

ドミナントは手紙を読む。

 

…………

 

赤 青 緑

 

…………

 

「…?何これ?」

 

ドミナントが不思議がっていると…。

 

「何やってるの?ボクにも見せて。」

 

ガサガサ

 

最上が小包を開ける。

 

「あっ、コラ…。」

 

ドミナントが勝手に開けた事を注意しようとするが、言葉が詰まった。

 

「……。」

 

開けた最上ですら、固まっている。なぜなら…。

 

『ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…』

 

四角い何かをくくりつけた、電子型の時計が動いていたからだ。

 

「「……。」」

 

そして、もうすでにカウントダウンが始まっていた。

 

「…最上、どうすれば良いと思う?」

 

「…ボクに聞かれても…。」

 

ドミナントたちが言っていると…。

 

パカッ

 

「「!?」」

 

時限爆弾からハサミとドライバーが飛び出してきた。

 

「…これ、開けろってことかな…?」

 

「…提督、これ、映画とかであるアレですよ…。」

 

「…一応、あと3時間あるみたいだし、落ち着いて対処しよう…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「まず、警察に連絡じゃない?爆弾処理専門があるとか…。」

 

「いや、ダメだ…。」

 

「ダメ?」

 

「ここは、世間では秘密の場所。最上は外に出たことがないと思うから言うけど、さっきのタクシーは、そのタクシー会社に、海軍がそれなりの資金を出して、世間では秘密に来てくれるんだ。ほかの会社のタクシーは絶対に来れない。買い出しなども海軍の管理下の店しか行ってないし、艦娘たちが外に出るのも、私服のみになっている。」

 

「そうなんだ…。知らなかった。…ならどうしよう…?」

 

「忘れたのか?そんな時の『倉庫』だろ?セラフ、夕張、セントエルモという機械類のプロがいる。できないはずがない…。」

 

「この信頼こそ…その証…。」

 

「「いざ倉庫へ…いざ倉庫へ…。」」

 

…………

倉庫

 

ガラガラ…

 

「…重い…。…臭いな。随分とここ開けてなかったな…。」

 

ドミナントが閉まっていた鉄状の倉庫の扉を開く。

 

「セラフー、夕張ー、セントエルモー。来たよー。」

 

ドミナントと最上が真っ暗な倉庫の中に入る。

 

「…?セラフー?夕張ー?セントエルモー?どこだー?」

 

ドミナントが大声で言うが、反応がない。

 

「…?」

 

……おかしいな…。セラフはわかるけど、夕張が倉庫から離れるなんて…。風呂か、食事や寝る時以外ここにいるはずなのに…。

 

ドミナントは時計を見る。2時だ。艦娘たちは、規則正しく食べているため、もうとっくに昼食は食べ終わっている。おやつにしても早い。

 

「…クンクン…。…ふぁ〜…。」

 

ドミナントは急な眠気に襲われた。

 

「…提督、どうしたの?」

 

「なんか眠気に襲われていてな…。…それより、風通しが悪いから、臭いがこもる…。窓を全部開けてくれ。」

 

「…また…。」

 

「生きていたら間宮特製アイスクリーム。大盛り。」

 

「行ってきます!」

 

最上は駆け出して行った。日は出ているが、窓から日が差し込んでいないため、少し暗い。

 

「…俺もそこにある窓を開けるか…。」

 

ドミナントがその窓に近づくと…。

 

カランカラン…

 

ドミナントが何かを蹴り、音がする。

 

「…?何だこれ?」

 

ドミナントが筒状のものを拾い上げる。

 

「…主任(逆さ吊り男)印…。そう思ってみれば、主任、見ていないな…。昼ご飯の時もいなかったし…。…よくよく考えてみたら、あの主任がご飯の時間に来ないなんておかしいな…。」

 

ドミナントがそれを片手に持って、見ながら窓を開けると…。

 

フワッ

 

ちょうど風が入る。

 

「いい風だな。…て、夕張たち、こんなところに寝ている…。」

 

ドミナントが、床に倒れている夕張たちにやっと気がつく。

 

「…窓を開けてきたよ。」

 

「ん。ありがとう最上、それより、夕張たちがいた。」

 

「あっ、本当だ。」

 

そして、ドミナントたちはそれぞれを背負い、明るいところまで運ぶ。

 

「起きろー。夕張、セントエルモ。」

 

ドミナントは二人の顔をペチペチしながら言う。

 

「…ん?私は…?」

 

夕張が起き出す。

 

「おはよう。倉庫で寝た気分は?」

 

「倉庫で寝た…?いや、私、寝るときはいつも自室なんですけど…。」

 

「だが、倉庫でセントエルモと一緒に倒れていたぞ。」

 

「一緒に?…?…!」

 

夕張は何があったか思い出した。

 

「そうでしたね。確か、セントエルモちゃんと歩いていたら、主任さんが何かしていて、何をしているのか聞いたら…。…それから思い出せません…。」

 

夕張が言う。

 

「そうか…。なら、セントエルモだな。」

 

ドミナントは再度ペチペチする。

 

「セントエルモー、早く起きないと俺が夕張とあんなことするぞー。」

 

ドミナントが何度ペチペチしても起きないセントエルモにそう言う。

 

「「!?」」

 

当然、二人は驚く。

 

「て、提督!?それは…本当ですか!?」

 

夕張が聞いてくる。

 

「ボ、ボクじゃダメなの…かな…。」

 

最上も言う。

 

「ああ。そうだよ。あと10秒以内に起きないと、夕張とキスしちゃうぞー。」

 

……そういえば、セントエルモも飛び起きるだろう。それか、キモッてツッコミが来るはずだ。

 

ドミナントはそんなことを思いながら言う。だが。

 

……セントエルモちゃん…。ごめんね。だけど、もう少し眠ってて…。

 

夕張はそんなドミナントの思いとは全くの逆だった。

 

……絶対に起こさないと…。

 

最上は激しい。

 

「5秒だぞー…。」

 

……あれ?起きない…。何で?マジで眠ってる?

 

……あと5秒…。もう少し…。

 

………大声で叫ぶ…?

 

「あと3秒…。」

 

……マジで起きない…。

 

……あと3秒…。

 

………事故のフリをして熱湯でも…。

 

「…1…。」

 

……セントエルモ!マジで起きてくれ!

 

……あと1秒…。ものすごく恥ずかしい…。

 

………もし、本当にそうなったら、明日の朝、倉庫に死体があるかもね…。

 

ドミナントが冷や汗を垂らしまくり、夕張は耳まで真っ赤に染まり、最上は完全に黒い部分が丸出しになっている。

 

「…ハッ!?」

 

「セントエルモ!起きてくれたか!」

 

「……。」

 

「あっ、起きたんだ〜。」

 

セントエルモが起き出し、ドミナントと最上が安心し、夕張は残念そうだ。

 

「主任さん!」

 

セントエルモは叫ぶ。

 

「…?いない…。…そうか…。私は眠って…。」

 

セントエルモが呟く。

 

「あー…、セントエルモ、少し聞きたいことがあるんだけど…。」

 

…………

 

「ということは…主任さんがやったってこと!?」

 

最上が大声で叫ぶ。

 

「…まぁ、それが一番可能性が高いからね…。」

 

セントエルモが言う。

 

「俺たちの鎮守府に裏切り者はいない!…と信じていたが…セントエルモの証言が正しいのなら、それが一番可能性が高いな…。」

 

ドミナントが言う。ドミナントも認めざるを得ないからだ。

 

「主任さん…。」

 

「…主任はあとで捜索。今はこれを解体するぞ。」

 

ドミナントは時限爆弾を出す。残り、1時間30分。




はい。長くなりそうだったので、切りました。次回は続きからです。
登場人物紹介コーナー
時限爆弾…3時間あったうち、色々あり、1時間30分減った。爆発すれば、鎮守府が吹き飛ぶ。
次回!第121話「解除」お楽しみに!


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121話 解除

121話。ちょうど夜散歩していたら、街でどこもかしくもカップルばかり…。爆発しろ!
「わっ!?い、いきなり叫んでどうしたの?」
どうもこうもないよ…。
「あー…。…大丈夫、私がついてる。」
瑞鶴…。
「何回言っても、ログインすらしてくれない非道な筆者さんに、私がついてあげるから。」
言葉にトゲを感じる。
「当たり前でしょう?そんな現実は忘れて、ゲームの中で楽しみましょう。」
わーい。現実逃避だ。
「そんな、一人寂しく盛大にクリスマスを過ごしてないで、ログインして会ってきたら?」
何で?
「みんな、クリスマスで、幸せそうにしているから、気持ちだけでも。」
やめて。普通に虚しい。
「…そうね。よく考えてみたら、それを聞いて心の穴を埋められるわけがないものね…。」
一人は辛いよ。…じゃ!暗い話は今度にして、あらすじにいこうかー!
「元気出した!?…あれ?誰もいない…。」
あっ、そうか…。誰も出していないんだ。じゃぁ、そろそろ新しい子の話に行くか。それまで、当分スタッフがやってくれることになるんで、ご了承を。
「誰がスタッフよ!?」
それじゃぁ、どうぞ!
「む…。」

あらすじ
ふんっ!

…謝るから、次回はちゃんとやってね…。


…………

倉庫

 

『ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!…!』

 

カウントダウンが始まっている。残り1時間10分。

 

「うーん…。…無理だ!どこだこのドライバーに合うネジは!?」

 

ドミナントがドライバーを地面に置く。

 

「まぁ、これだけネジだらけじゃ…ね…。」

 

最上が言う。

 

「次は私です!」

 

夕張が挑戦する。すると…。

 

「あっ、はまりました。ここです。」

 

1分も経たないうちに、夕張が開ける。

 

「…俺の苦労は一体…。…もういいや。あとは夕張に任せるよ。」

 

ドミナントは若干拗ねている。

 

「…よし!開きました!」

 

「やった!」

 

夕張が開け、セントエルモが言うが…。

 

コロン

 

「「「!?」」」

 

少し、大きさが違う新たなドライバーが…。

 

「…嘘だろ?まさか、すべてのネジを取らないと、解除されないのか?」

 

ドミナントは、何百と付いているネジを見て言う。

 

「…これは性格の悪さが出てますね。」

 

セラフが微妙な顔をして言う。

 

「まぁ、とにかく、できるだけのことはしてみる。」

 

夕張が一生懸命、取り外して行く。

 

…………

残り45分

 

大分ネジが取れ、残るは十数個になっていた。

 

「う〜ん…。合わない…。」

 

夕張が様々なドライバーを使って開けようとするが、どれも合わない。

 

「…あっ!」

 

「ど、どうした…?」

 

いきなり夕張が叫び、ドミナントが驚く。

 

「これ、ネジがマイナスになってます…。これらのプラスドライバーでは開くはずがありません…。」

 

「ほんっとに、これを作ったやつ性格悪いな!」

 

ドミナントが言う。

 

「今マイナス持ってくるから、開くところとか考えといて。」

 

ドミナントが取りに行く。

 

…………

残り40分

 

「持ってきたぞ。」

 

「提督、ありがとう!」

 

夕張がドミナントからもらったドライバーを持つ。

 

キュルキュル…

 

「あっ、簡単に全て開きました。」

 

「ここ作った時、絶対に雑だったでしょ。」

 

夕張がこれら全てのネジを取り、最上が言う。そして、最後のネジを取ろうとする。

 

カチャ…

 

「…取れました!ハァ…ハァ…。」

 

夕張は汗まみれだ。一歩間違えると爆発するのだから無理はない。

 

「それでは、慎重に開けます…。」

 

夕張が慎重に外す。

 

……どうせ、色の違う線があって、この紙の通りに切ると、最後は二つ残って運命の色…的なやつだろう。

 

ドミナントは、覚悟している。だが…。

 

パカッ

 

「「「!?」」」

 

予想の遥か斜め上に行った。

 

「…多い…。」

 

そう、ドミナントが想像していたのは10個前後だったが、それを何十倍したくらいあり、中が導線で埋め尽くされていた。

 

「100個ぐらいありません?」

 

「下手したら、一緒に切れるかもしれませんから、慎重に…。」

 

「うわー…。」

 

「よ、よし…。俺が切ろう…。」

 

ドミナントがハサミを持ち、震えながらも、慎重に切ろうとしたが…。

 

「ヘックション!」

 

バチン

 

「「「あ…。」」」

 

「……。」

 

一気に、70個ぐらい切れてしまったのだ。

 

「…大丈夫…みたいですね。」

 

「ヒヤッとした…。」

 

「心臓に悪い…。」

 

「この世の最後の景色かと…。」

 

「す、すまん…。」

 

そして、最後は、赤、青、緑、黄、白が残った。

 

「…紙に書いてあるのは、一応切らなかった。」

 

「あんだけあったら、不安になりますからね…。」

 

ドミナントが言い、セラフが返す。

 

「…これ以上は危険だな。残り10分。まだ余裕だな…。主任を捜索してくれ。」

 

「「「了解!」」」

 

…………

 

「主任さんがいません!」

 

「こっちもです!」

 

「部屋にもいない!」

 

「演習場をくまなく探しましたが、いませんでした!」

 

各々が帰って来て、報告する。

 

「…主任…。お前は本当に…。」

 

ドミナントが呟いていると…。

 

「ドミナントさん!もう5分しかありません!もしものために、どれを切るか決断を!」

 

「提督!」

 

「ドミナント提督!」

 

「提督!」

 

「ぐぬぬ…。」

 

そして、ドミナントは決断を下す。

 

「じゃ、黄と白を切ろう。」

 

そして、ドミナントは切った。

 

『ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!…!』

 

「…止まりませんね…。」

 

「…まさか、これのどれかをまた切れということじゃないだろうな…。」

 

「性格悪い人が作ると、こんな変な事になるんですね。」

 

爆弾は止まらず、その三つの中から、一つだけ切ることになった。

 

「…どれにすれば…。」

 

ドミナントが悩んでいると…。

 

「ドミナントさん、赤だけは切らないでください。」

 

「う〜ん…。緑もお願いだから切らないで。」

 

二人が言う。

 

「え?何で?」

 

「「何となくです。」」

 

「お、おう。」

 

ドミナントは二人に言われ、切らないようにする。

 

……だって、切って欲しくないから…。

 

二人は、色を自分達に置き換えていたのだ…。

 

「もう青しかないな…。」

 

ドミナントは青を切ろうとする。

 

…………

ビルの屋上

 

ヒュゥゥゥゥ…

 

冷たい風が吹く。そこに主任と男がいる。

 

「…ここに来たということは、我々の仲間になるのか?」

 

「ああ…。こっちの方が面白そうだしねぇ〜。」

 

「…爆弾は仕掛けてきたのだろうな…。」

 

「どっちだと思う〜?」

 

「…面倒な奴だ。」

 

「ギャハハハハハ!面白くなかったかな〜?」

 

「ふざけるな。我々の仲間になるのなら、それ相応の態度をとれ。」

 

「う〜ん…。あの鎮守府、だいじょぶだと思う?」

 

「あの爆弾は、私が作った特製品だ。半径50kmは確実に焼け野原になる。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

「なんだ?かつての仲間に未練でもあるのか?」

 

「いや〜。そんなの、俺のキャラじゃないしね〜。」

 

「まぁ、あの生活をしていて、我々の所に来るぐらいだ。クズどもの集まりなのだろうな。」

 

そして、男は歩く。

 

「…人類の復活、それが私の使命だ。お前もだろう?」

 

「人間の可能性…それを証明させたい。」

 

「そうだろうな。」

 

主任が男の後について行く。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「青を切る。文句はないな?」

 

「「「……。」」」

 

誰も言わない。

 

「……。」

 

そして、ドミナントが青を切ろうとハサミを構える。

 

「…!」

 

そこで、ドミナントは気づきたくないことに気づいてしまった。

 

……青…、…主任?

 

切ろうとした途端に、ふと頭をよぎってしまったのだ。

 

……赤、セラフ…。緑、夕張とセントエルモ…。だとしたら、青、主任…。これは、ただの導線を切る作業ではない…。仲間を切り捨てることになるのでは…?いや、ただの考えすぎか…?いや、偶然が出来過ぎている。まず、時限爆弾を使ったのは何故だ?開けた途端に爆発させれば、解除すら出来ずに確実に殺せる…。それに、3時間…。倉庫に行く時間を計算されている。誤算があるとすれば、最上が一緒にいることだ。そして、考える時間をくれている。何故だ?面白さのために裏切るのなら、脅威になる俺たちを確実に殺しておかないと、面白くないはずだ…。

 

ドミナントは考えている。

 

「も、もう時間が…。」

 

残り30秒。

 

「ドミナントさん!起きてください!」

 

セラフが叫ぶ。

 

「……。」

 

だが、耳に届いていない。

 

「ドミナント提督!」

 

セントエルモも叫ぶ。すると…。

 

「…俺には出来ない…。青が主任だとすれば…。」

 

ドミナントが皆に伝える。

 

「「「……。」」」

 

皆は、青が誰なのかなど、考えていなかった。自分のことしか考えていなかったのだ。

 

「「……。」」

 

セラフは、自身の自分勝手に恥ずかしさを覚え、夕張は口では仲間だと言うが、実際は忘れていたことに気づき、自分は口先だけの艦娘だと思い、シュンとしている。

 

残り15秒。

 

「私は…、私は切らなくて良いと思います。」

 

「セラフ!?」

 

「切り捨てて良い仲間なんて、そんなの仲間などではありません。」

 

セラフが真っ直ぐ言う。

 

「私も、例え死んでも、切らなかった提督に、絶対に恨んだりしません。」

 

「夕張…?」

 

「私は、口では偉そうに『仲間』とか言っていたけど、実際は忘れていたなんて、自身にガッカリしました。だから、それを気づいた提督は、本当に、全員を『仲間』だと思っていて、それなりの行動をしたことに尊敬します。」

 

夕張は覚悟した顔で言う。

 

残り5秒。

 

「みんな…。」

 

残り4秒。

 

「「「?」」」

 

残り3秒。

 

「今まで本当にありがとう。」

 

残り2秒。

 

ドミナントが本当の笑顔で言い、艦娘たちが笑顔になった。

 

残り1秒。

 

…………

数分前

 

「ここかな?君たちのアジトは?」

 

「ああ。そうだ。」

 

主任が男に聞く。

 

「場所を転々としているがな。」

 

「なるほどねぇ〜。」

 

主任が気楽に言う。

 

「…ところで…。」

 

男が主任の方を向く。

 

「…本当に、爆弾を仕掛けたのだろうな…?」

 

男は主任を睨む。

 

「…お前からは感じられ無い。…かつての仲間を裏切った感じを…。」

 

男は言う。

 

「…ギャハハハハ!仕掛けたけど…それが何か問題?」

 

「…嘘を見抜けないとでも…?」

 

「あ、そうなんだ〜。最初から気づいていたんだ〜。」

 

主任が言う。

 

「ま!貴様の言った通り、俺の所属している場所がそうなら、いくらか楽だったと思うけどね。」

 

「?」

 

「あいつらは、仲間を大切にしている。なら、俺も見習った方が、人間の可能性をもっと知ることができるからね〜。」

 

…………

第4佐世保

 

0。

 

パシュシュッ!

 

「…?」

 

「紙吹雪…?」

 

「爆弾では…?」

 

ドミナントたちが驚いている。そして、少し大きめな一枚の紙に…。

 

…………

 

正解。人間の可能性、戦い以外の証明を見せてもらった。もう直ぐ戻る。ま!夕食は必ず食べるよ。お昼は食べ損ねたけど…。

 

…………

 

主任からのメッセージが書いてあった。

 

「主任…。あいつめ。」

 

ドミナントの口元は緩んでいた。

 

「はぁ…。結局、主任さんに振り回されましたね…。」

 

「疲れた…。」

 

「でも、後ろのやつ本物っぽいよ?」

 

「「「えぇ!?」」」

 

セントエルモが言い、ドミナントたちが見る。

 

「…もし、切っていたら…。」

 

「爆発だったね…。」

 

夕張と、最上が顔を青くし、セントエルモは苦笑いをしている。

 

…………

 

「……。そうか。なら、ここで死ね。」

 

「ま!やるんなら本気でやろうかぁ!その方が楽しいだろう!」

 

…………

 

「まずいねぇ〜…。」

 

「その程度か?」

 

主任が圧倒的に押されている。

 

……強いねぇ〜。ACで言う、AP残り40%ですよ〜。ギャハハハハハ!…戦略的撤退ねぇ〜。ま!前みたいに何度も生きられないから、それが最善だね〜。

 

主任は、そう考えて…。

 

「ハハハハハ!あぽいーっと!」

 

「!?何を…。」

 

ボフンッ!

 

「じゃ!」

 

「……。」

 

主任は煙玉を肩コンテナから出し、投げて目を眩ませて、その隙に逃げ切れた。

 

「…力を持ちすぎるものは全てを壊す…。お前たちも…その者たちだ…。」

 

最後に言ったが、誰の耳にも届いていない。…本人、そう。ハスラー・ワン以外には。




はい。終わりました。半分に切ると少なく、繋がると多く、嫌な文字数です。たまに主任と財団が混ざりそうになります。…混ざっちゃったかな…?。最後に出てきましたね。…アリーナのトップがどうして…。
登場人物紹介コーナー
ハスラー・ワン…ACMOAに登場した。筆者のお気に入りキャラTOP10の中に余裕で上位。アリーナのトップ。ハスラー・ワンの機体は、かの有名な『ナインボール』。前にもちらほら登場していたが、自身の名を明かすのは初めて。
次回!第122話「ぽいぽいぽーい」お楽しみに!


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122話 ぽいぽいぽーい

嘘だぁ!嘘だと言ってくれーー!
「なっ!?きゅ、急にどうしたのよ…。」
小説書いてて…。終わったのに…。保存しないで、閉じてしまった…。
「!?」
最初からやり直しだ…。
「な、何でそんなことに…?」
ネタメモを見てたら…夢中になって…。
「……。」
もうダメだ…。
「…元気出して。」
元気出ない。おやすみ瑞鶴。永遠に…。
「ちょ、ひきこもらない!元気出して!私が応援してあげるから!」
そうは言われても…。
「何?私じゃ不満なの?」
その言い方、勘違いさせるからヤメテ…。
「じゃぁ、どういう意味なの?」
…現実では虚しいだけだ…。
「…そんなこと言ったら、何もかもお終いじゃない…。大半の作家さんは、そうやって、虚しさを噛みしめながら書いているんだから…。」
…そうか…。
「そうよ。」
そう…。なら、ひとつだけ願いを聞いてくれるか…?
「何でそうなるのよ…。…まぁ、元気出してくれるのなら、一つくらい…聞いてあげても良いけど?」
そっか〜。
「?急に明るくなったわね。」
なら、少しね〜。
「…嫌な予感がするわ…。」
ま!そこは今度言うよ。
「焦らすわね…。知りたい…。」
それより、あらすじどぞ。
「はぁ…。わかったわ。」

あらすじよ
前回、倉庫の方が騒がしかったけど、何かあったのかしら?…そう思ってみれば、主任さんいないわね。まぁ、いつものことか。前回は翔鶴姉とトランプしたわ。…なぜか、私が連勝したけど…。罰ゲームで、明日提督の前で…。

おっとぉ!通す訳にはいかないぜ。ここの部分は本編でやるんからな。それを知らなきゃ、この先生きのこれないぜ。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室 早朝

 

「ふぁ〜…。まだ誰もいないか。…朝の3時だからな。」

 

ドミナントが入って提督椅子に座る。誰にも気づかれないように部屋は真っ暗だ。

 

「徹夜でアニメは流石にキツイか…。でも、目が冴えてるからなぁ〜…。」

 

深夜アニメの一挙放送で、一睡もしていない。

 

「それにしても、夕張が来るとはな〜…。」

 

そう、睦月型のみんながドミナントの周りをひっついて見ていたら、夕張が丁度見に来たのだ。深夜アニメを見たい気持ち…その意味では我々の思惑は一致している…。と、言うわけで全員で見ることになった。

 

「眠い…。」

 

「提督さんお疲れっぽい?」

 

「うん。…ん?」

 

ドミナントは一人しかいないはずの執務室で不思議に思う。

 

「え?誰…?て、うわぁっ!目が赤く光ってる!怖っ!気色悪りぃんだよ。死ね!化け物!吸血鬼!アン○ルセェェェェン!」

 

「ひどいっぽい!」

 

「ちょ!誰!?怖い!叩かないで!」

 

「謝るっぽいぃ〜…!」

 

「…“ぽい”?…てことは…夕立…?」

 

「うっうっ…。」

 

ドミナントは部屋を明るくする。

 

「うぅ…。」

 

夕立が涙目で睨んでいる。

 

「…すみませんでした。」

 

ドミナントは土下座した。

 

…………

 

「で、何でこんな時間に?」

 

ドミナントは、土下座した後、紅茶を入れていた。

 

「提督さんがいつ来るか待ってたっぽい…。」

 

まだ少しだけ元気がない。

 

「番猫付きか…いや、むしろ番犬か…?」

 

「夕立は犬じゃないっぽい。」

 

夕立はさっきしたことに対して、まだ言うドミナントを少し軽蔑の目になりかけたが…。

 

「紅茶。口に合えば良いが…。」

 

「紅茶?っぽい?」

 

「アッサムだ。」

 

「アッサム?っぽい?」

 

「…飲んでみればわかる。」

 

ドミナントに紅茶を渡される。

 

「匂いは…少し…あるっぽい…?」

 

「匂いはあまりしないと思ったんだけど…。あと、これ。」

 

「ぽい?」

 

「ミルクだ。相性は良い。俺が保証する。」

 

「ふーん。飲んでみるっぽい。」

 

夕立はミルクティーにしてゴクゴクと飲む。

 

「おいしいっぽい!」

 

「そりゃ良かった。嬉しいよ。」

 

夕立の元気の良い答えにドミナントは微笑む。

 

「…ところで、提督さんは何でこの時間に来たっぽい?」

 

「ふむ…。難しい質問だな…。」

 

ドミナントは考える素振りを見せる。

 

……“深夜アニメ観ていて、目が冴えた”ってのは、女の子の前では格好が悪い…。それに、俺の評価が下がる…。せっかく加賀と話せるくらいになったのに…。

 

ドミナントはそう考え…。

 

「世界平和のために考えていたら、目が冴えてしまってな。」

 

ドミナントは嘘をつく。

 

「ふーん…。そんなの、アニメのシーンにあったっぽい?」

 

夕立は簡単に見抜く。

 

「……。…その情報はどこから…?」

 

「夜戦している最中、たまに娯楽室が明るいから見たっぽい。」

 

「…そうか。…ちなみに、どれくらい知っている?」

 

「ほぼ全員知ってるっぽい。だけど、提督さんに決められた人しか、一緒に見れないと思って誰も声をかけないっぽい。」

 

「oh…。いいんだ。十分。そして、誰でも歓迎しよう。盛大にな。」

 

「その話題が出たら話すっぽい。」

 

そして、夕立とドミナントは仕事を始める。

 

「…仕事が終わったら、少し遊ぶか。」

 

「わかったっぽい!」

 

夕立が笑顔で言った。

 

…………

 

「あ、あそこ朝日っぽい。提督さん、あとちょっとで朝っぽい!」

 

「そうだな。あと少しで今日の分は終わるから、少し待っててくれ。」

 

「わかったっぽい。」

 

夕立は、仕事を終わらせてワクワクしている。ちなみに、秘書艦の仕事の4分の3はドミナントがやっている。

 

…………

 

「終わった…。」

 

「お疲れっぽい。お茶を入れるっぽい。」

 

「ありがとう。」

 

そして、ドミナントはお茶を飲み、一息つく。部屋の明かりは消しても、朝日が入ってきてよく見える。

 

「ふぅ…。それじゃぁ、遊ぶか。何して遊ぶ?」

 

ドミナントは一番上の引き出しから、トランプを取り出す。

 

「トランプ…。二人だけでできるっぽい?」

 

「ふむ…。出来んな。」

 

ドミナントはトランプをしまう。

 

「…散歩するか?」

 

「お散歩するっぽい!」

 

そして、ドミナントたちは部屋を出る。夕立はドミナントの後ろをトコトコとついてくる。

 

「……。」

 

しかし、ドミナントが意地悪く、別の方向へ曲がっても夕立はトコトコついてくる。

 

……可愛い。

 

ドミナントは思った。

 

「…まだ外につかないっぽい?」

 

しかも、向かっていないことに気づいていない。

 

……まるで犬だな。…いや、犬の方がもう少し賢いか…?

 

ドミナントは失礼なことを考える…が。

 

……だが、それも良い。可愛い。

 

結局、結論はそこなのだ。

 

…………

 

「…調子に乗って、15分くらい中を彷徨ったことを謝る。」

 

「外に行く前にいい運動になったっぽい。」

 

ドミナントたちは、実に15分彷徨っていた。

 

「じゃぁ、お散歩するっぽい。」

 

「…本当に犬だな…。」

 

「提督さん、何か言ったっぽい?」

 

「いや、何も…。」

 

「?」

 

そして、ドミナントたちはゆっくりと歩き出す。

 

「朝日が気持ち良いっぽい!」

 

「そうだな。だが、少し寒いな。」

 

ドミナントたちがそう言いながら歩いていると…。

 

「ハッ、ハッ、ハッ…。」

 

遠くから走ってくる人影が…。

 

「あっ、司令官、それに、夕立ちゃんおはようございます!」

 

爽やかな体育会系の艦娘が話しかけてくる。

 

「おはようっぽい。」

 

「おはよう。…えっと…。」

 

「長良です。お話しするのは初めてです。」

 

「そうか。おはよう、長良。」

 

「おはようございます!」

 

長良は元気よく挨拶する。

 

「…ところで、何をしているんだ?」

 

「足の筋肉を鍛えているんです!」

 

「足の筋肉…?真面目な艦もいるなぁ〜。」

 

「でも、最近足の筋肉がつきすぎちゃって…。」

 

「そうか。おそらく、走っているからだな。…だが、それは努力の結晶だろう?」

 

「そうですが…。」

 

「それに、走るのが好きなら、十分に走れ。筋トレしたいなら自由に筋トレしろ。お前たちの全てを受け入れる。それも『提督』の仕事のうちだからな。」

 

「わかりました。」

 

「それに、頑張っている人は、中々好…。」

 

「?何か言いました?」

 

「あっ、いや…別に…。」

 

「?そうですか。それじゃぁ、走ってきます。」

 

そして、長良は走って行った。

 

「風邪ひくなよ!」

 

「はい!」

 

ドミナントが注意して、遠くで長良が返事をする。

 

「…朝走る人もいるな。」

 

「そりゃ…いるに決まってるっぽい。」

 

そして、ドミナントたちは歩き始める。

 

…………

 

「散歩…疲れるな…。」

 

「出てからまだ15分も経ってないっぽい〜。」

 

「すまん…。俺は…離脱する!」

 

「あっ!待つっぽい!」

 

ドミナントが鎮守府の中に入り、夕立も急いで後をついて行く。

 

「まだ行くっぽい〜。」

 

「勘弁してくれ…。徹夜でこれはきつい…。」

 

夕立がドミナントの腕を引っ張り、ドミナントはキツい顔をする。そこに…。

 

「あっ、ドミナントさん。何をしているんですか?」

 

「そんなところでちちくり合ってたわけではあるまいな…?」

 

セラフとジナイーダが来た。

 

「いや、そんなわけないだろう…。」

 

「お散歩するっぽい〜。」

 

「…こんな感じだ…。」

 

ドミナントは二人に返す。

 

「…大変ですね。」

 

「…そんなに行きたいなら、私がかわりに行くか?」

 

「ん〜…。提督さんと行きたいっぽい。」

 

「…だとさ。」

 

ジナイーダが若干拗ねているのは気のせいだろうか。

 

「勘弁してくれ…。…あっ!そろそろ艦娘たちを起こしてきてくれ。もう時間だしな。」

 

ドミナントは言うが…。

 

「残念だが、もう全員起きている。私がそういうところは管理しているからな。」

 

「ジナイーダ…やってくれたな…。」

 

「安心しろ。もう何の気の迷いもなく、散歩へ行けるぞ。」

 

「ジナイーダァー…。」

 

「…そんな顔で見るな…。罪悪感が湧く…。」

 

ドミナントとジナイーダがそんなやりとりをしていると…。

 

「くんくん…。何かいい匂いがするっぽい。」

 

夕立が何かに反応する。

 

「匂い…?あまりしないが…。」

 

「いや、さっきからほのかに匂いするだろう?」

 

「美味しそうな匂いですね。」

 

「なぜか匂わないんだ…。」

 

「…そうか。なら、ご想像で補え。」

 

「メタい…。」

 

ドミナントたちが言っていると…。

 

「提督さん、ちょっと食堂へ行くっぽい!」

 

「助けて。」

 

ドミナントは二人を見るが…。

 

「私たちはこれから戦って、腕を磨く。」

 

「こちらに来てから、随分と弱くなった気がしますし。」

 

二人は無慈悲に去って行った。

 

…………

食堂

 

「誰かいるっぽい?」

 

「引きずらないで…。」

 

夕立は最終手段として、ドミナントを引きずって来た。

 

「む。何かようか?」

 

「誰ー?」

 

「ギャハハ!バレちゃったかな?」

 

三人がキッチンで何かしている。

 

「いい匂いっぽい〜。」

 

「あっ!まだ食べちゃダメだよ。朝ごはんは私が作ってるから!」

 

神様が出てくる。

 

「まだ出来ないのか?“あの味”とやらは…。」

 

ジャックも出てきた。

 

「う〜ん。楽しみだ〜。材料が少なくなってきたけどね!」

 

主任も出てくる。

 

「…何をしているんだ?」

 

「「「ドミナント!?」」」

 

「いや、何で驚いているんだよ…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「まだ寝ているはずじゃ…。」

 

「雪でも降るのか?」

 

「アラレじゃない〜?」

 

「お前ら…。」

 

三人が言い、ドミナントの顔が引きつる。

 

「ところで、何をしているんだ?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「な、何でもないよ!ただ料理を作ってただけ!」

 

神様が答える。が。

 

「こいつがお前に食べさせてもらったオムライス?とやらを作って、みんなにも食べさせてやりたいんだとさ。」

 

「中々仲間想いの奴じゃない?ちょっとドミナント寄りだけどね〜。」

 

ジャックと主任が言う。神様は顔を手で隠してしまっている。

 

「で、ここに並んでいるのは失敗作と…。」

 

「どれも同じに見えるっぽい〜。」

 

ドミナントたちが、沢山のオムライスを見る。

 

「う〜ん…。あの味まで程遠い気がする…。」

 

「どれ…。…美味いぞ。」

 

「美味しいっぽい!」

 

「あっ!まだダメだって…。」

 

「俺とさほど変わらないぞ。…よくやった。」

 

「…そんな…撫でられても…嬉しく…にゃい…。」

 

ドミナントに撫でられて、神様は嬉しそうだ。

 

「ずるいっぽいー!」

 

夕立が言う。

 

「お前は何もしてないだろ…。…まぁ、早朝から、秘書艦としての仕事を全うしたところはすごいぞ。」

 

「褒めて褒めてー。」

 

「へいへい。」

 

「〜♪」

 

夕立と神様は撫でられて嬉しそうだ。

 

「…モテモテの奴は違うね〜。」

 

「ふむ。見ていて腹が立つのは気のせいだろうか?」

 

二人はドミナントたちを見て言う。

 

「…さて、我々も少しキッチンを借りる。」

 

「あの伝説の料理を作らないとね〜。」

 

二人はキッチンに消えていった。




Jが深夜アニメを見たいと言ったところを想像したら、笑えました。大変遅くなりすみません。年末は大忙しです。
登場人物紹介コーナー
夕立…白露型駆逐艦、4番艦。改二。この鎮守府の中で、最強枠の一人。ソロモンの悪夢を見せる恐ろしい子。そんな彼女だが、ドミナントには心の底から慕っており、ピンチになると大抵駆けつけてくれる艦娘の一人。たくさんご飯を食べて、元気いっぱいに走り回ったりすると、ドミナントは大抵犬を連想する。夜戦組の一人でもある。
次回!第123話「ご飯っぽい?」お楽しみに!


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123話 ご飯っぽい?

年末、そろそろ休める…。
「そのまま永久に休まないでね。」
そりゃね。でも、最近暇がなくて、小説投稿のスピードが落ちてきたけど、せいぜい200話は行きたいからね。まだ見ぬ艦娘たちや、深海棲艦が残ってるし。
「…まだ見ぬ深海棲艦…?」
あー…。瑞鶴には秘密だね。次回か、その次回に投稿する。その時は、その深海棲艦たちのお話になるね〜。
「…またあの深海棲艦みたいなのが出てくるってこと…?」
さぁ?どうかな?
「…気になる…。ところで、お願いってのは…?」
そうだな…。クリスマスは終わってしまったし、正月くらいか…。
「…はぁ…。正月の着物でも着ろと?…まぁ、露出度がないだけマシね。」
慌てるな。それをやるとは限らんだろう…。
「…じゃぁ、何よ。」
そうだな…。なら、色々と触らせてもらおうか…。
「…憲兵さーん。」
いや、冗談だよ?…ねぇ、待って憲兵さん。冗談だから。ねぇ!ちょ。瑞鶴!頼む!筆者は冗談を言ったんだ!信じてくれ!…あっ、そこ持たないで…。
「…その人、色々と変態なことをしてきたから、無期懲役にして。」
ちょ、待…。助けてくれー!
「……。少しは反省しなさい。」
ちょ、筆者がいなくなったら、この小説どうなるの!?
「…別にいなくても、誰も気にしないわ。存分に反省しなさい。」
だが…。
「だが?だが反省しなさい。」
しかし…。
「しかし?しかし反省しなさい。」
……。
「…何度でも言うわよ。」
……頭を撫でたかっただけなのに…。
「…は?」
いや、そこまで嫌がるのなら仕方ないな…。フサフサしてそうだったから…。…あっ、足引きずらないで、歩けるから…。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
?…あっ、離してくれた。
「憲兵さん、大丈夫です。イタズラです。ごめんなさい。」
……あっ、憲兵さんが何処か行った。
「それくらいならいいわよ。…嫌だけど。」
おー。さすが瑞鶴。心が広い。
「その前に、あらすじね。」
おー。

あらすじ
前回、朝起きたら何やらいい匂いがしたわ。翔鶴姉が、すごく気になって、見に行こうか行かなかろうか、椅子に座ったり立ち上がったりしていたけど…。匂いからして、オムライスかしら?

…ふむ。この感触…。いいな…。
「……。」
ほう、ここはこうなっているのか…。新しい…惹かれるな…。
「……。」
素晴らしい…。
「…まだ?」
あと少しだけ…。
「…もう…。」


…………

第4佐世保鎮守府 朝 キッチン

 

「ぽーい。ぽーい…。」

 

夕立が椅子に座り、机の上に顎を乗せ、少し元気がなくだらけている。

 

「やけに時間がかかるな。…俺が作るか?」

 

「いや、私が作る…。」

 

神様は今もドミナント流の料理を作ろうと試行錯誤している。

 

「…同じ味だと思うんだが…。」

 

「ううん。あの時の味はもっとこう…。もっと、さらに、何段階も上の味だった。あの味は、天界でも食べたことがない。」

 

神様は思い出して、少し頬が緩む。

 

「そうか。…ところで、よく天界って聞くが、どんなところなんだ?」

 

ドミナントが神様に聞く。

 

「……。」

 

すると、神様が手を止める。

 

「…聞いちゃ不味かったか…?」

 

ドミナントは神様に顔色を窺いながら聞く。

 

「…ううん。そんなことはないよ。この世と同じ感じ。」

 

神様は笑顔を見せ、料理を再開する。が。

 

「…嘘が下手だな。…俺も人のことは言えないが。」

 

ドミナントは神様の嘘を瞬時に見抜く。

 

「…この世と…か…。…戦争か?」

 

「…ううん。違う。」

 

「…窮屈なのか?」

 

「…そんな感じかな…。」

 

神様は少し悟ったような顔をする。

 

「…思ったんだが、お前はどんな生活をしていたんだ?」

 

ドミナントがたまに思う疑問を、神様に聞く。

 

「う〜ん…。内緒。」

 

「…何で?」

 

「“何で”って言われても…。…言わなくちゃダメ?」

 

「いや、ダメってわけではないが…。知りたいじゃん。先輩神様とも仲は良いみたいだし。」

 

「じゃぁ、別に良いじゃん。」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントはそう言ったが、モヤモヤしたままだ。

 

……思ってみれば、神様のこと何も知らないな…。何の神様なんだろう?天界ってどんな場所なんだろう?どんな生活をしていたんだ?何があるんだ?死んだら行けるのか?神様ってたくさんいて、先輩後輩がいるのなら、優劣はあるはずだ。…だとしたら、誰かが治めている?だとしたら、偉いか、偉くないかに別れているのでは?てか、神様に先輩がいるってことは家族はいるのか?…謎が謎を呼ぶ…。深く考えないようにしよう…。

 

ドミナントはそう結論付け、料理を待つ。

 

…………

 

ワイワイガヤガヤ

 

沢山の艦娘たちが椅子に座って待っている。

 

「ぽーいー…。ぽーいー…。」

 

夕立はますます元気がなくなって、癖っ毛がないかどうかわからないくらい垂れ下がっている。ちなみに、ものすごく元気が良い時はそこがよく動くらしいが、本当か嘘かわからない。

 

「お腹が空いたのだろう?わかる。もう、あれから1時間近く経っているからな。」

 

ドミナントが、夕立の隣の席で言う。

 

「神様、まだか?」

 

「もう少しー。」

 

神様は言う。

 

「……。」

 

ドミナントは艦娘たちを見る。

 

「まだかなー。」

 

「遅いねー。」

 

「……。」

 

「Zzz…。」

 

少し騒がしい子もいれば、何も言わずただ黙っている子、眠っている子などがいる。

 

「…神様、まだか?艦娘たちの空腹ゲージが見えるんだが…。」

 

ドミナントが言う。実際、上昇している。

 

「うーん…。まだあの味には程遠いかな…。」

 

神様はそんなこと知らず、作っている。

 

……空腹ゲージがギリギリだな。そこまでお腹が空いているのだろう。だが、俺と夕立は1時間待っている。それくらいまだマシだろう。

 

ドミナントはそう思う。すると…。

 

「うーん…。それに近い味はできたかな…?」

 

神様が料理を持ってくる。

 

「おー。」

 

ドミナントは棒読みの声を出す。

 

……卵が半熟でない…。多分そこだ…。

 

ドミナントが思う。

 

パク

 

ドミナントを含め、艦娘たちが食べる。

 

「おお!これは…!」

 

「美味しい。」

 

「こんな料理はじめて。」

 

「美味い…。」

 

艦娘たちが次々と言う。

 

「?そうかな?」

 

神様は首を傾げる。

 

「…空腹が最高の調味料…か…。」

 

ジナイーダは食べながら言う。

 

……それもあると思うけど…。ご飯が焦げているな…。あとで教えるか…。

 

ドミナントは思うだけで、文句は言わない。作ってもらった上で文句を言うのはおかしいからだ。

 

「どう?ドミナント?」

 

神様がもそもそ食べているドミナントの顔を覗き込む。少し恥ずかしがっているのか、頬がほのかに赤みを帯びている。そこまで純粋な者はいないが、神様だからこそである。

 

「…うん。総合的に見たら美味しいよ。」

 

「…なんか気になる言い方だけど…。」

 

「美味しいよ。ありがとう。」

 

ドミナントは毎度お馴染み、『頭を撫でる』を使った。

 

「えへへ…。えへへへへ…。」

 

神様は嬉しそうにし、艦娘たちはジト目で見ている。

 

「じゃぁ、食べるか…。て、ない!?」

 

「美味しいっぽい〜。」

 

夕立に食べられていたのだ。

 

「夕立…?それ、俺のなんだけど…。」

 

「食べていないから、もういらないと思ったっぽい。」

 

「うん。なんか冷たくない?ねぇ、そうだよね?みんな?」

 

ドミナントが言うが…。

 

「えっ?司令官、食べないんじゃなかったんですか?」

 

「提督の分は最初からないんですよ?」

 

「さすがね。無能提督。」

 

艦娘たちが次々と辛辣な言葉を発していく。グリッド1!残りAP 50%!

 

「えっ…。冷た…。凍る。普通に凍る。まるで吹雪のような…。あっ、吹雪!吹雪は冷たいと思うよね?ね?」

 

グリッド1は吹雪を見るが…。

 

「……。」

 

ジト目で返したあと、食事を再開した。

 

「…さすが吹雪…。その名に恥じない冷たさだ…。」

 

グリッド1が呟いたら…。

 

「寒いです。」

 

「冬なのにやめてください。」

 

「暖房暖かくした方がよろしくて?」

 

「そうだね〜。」

 

艦娘たちの総攻撃が来た。グリッド1!危険温度が続いている!

 

「…ゴフッ…。」

 

グリッド1!行動不能!艦娘の勝利です!

 

「…司令官?…司令官!?」

 

ドミナントは行動不能で、倒れている。

 

「あー…。少しやりすぎちゃったかしら…。」

 

そこに…。

 

「出来たぞ!」

 

「食べれるといいけど…。」

 

ジャックと主任が何やら得体の知れない物を持ってくる。

 

「こ、これは…?」

 

「食べてみればわかるよ〜。」

 

「……。」

 

それを見て、艦娘たちはあの悪夢を思い出す。よくわからない…カレー?のことを…。

 

「これは、色々とな…。」

 

ジャックも目を合わせない。

 

「「「……。」」」

 

艦娘は神妙な顔持ちで眺める。

 

……これは、食べたらアウトでは…?

 

……終わる気がします…。

 

……悪夢が…。

 

そんなことを考えていると…。

 

「う〜ん…。はっ!?俺は一体…。」

 

ドミナントが目覚める。

 

「「「!」」」

 

それをそのままにする艦娘ではない…。

 

「提督!これ食べて!」

 

「司令官さんならやれる!」

 

「美味しいよ!」

 

艦娘がワイワイ集まる。

 

「えっ!?何!?どしたの?ん?何これ?これを食べろって?嫌に決まってるじゃん。ん?褒めたって食わないよ?だって、明らかに毒の色じゃん。何?俺を殺す気か?」

 

ドミナントは絶対的な拒否をする。

 

「…そこまで言うなら、私が食べる…。」

 

「む!?神様!?やめとけ。死ぬぞ?」

 

「ドミナントが嫌がっている…。なら、これを私が食べればなんとかなる…。」

 

「いや、ならないから…。」

 

ドミナントが止める。

 

「神様…。司令官!司令官のために犠牲になろうとしているんですよ!?そこは司令官が食べるべきじゃないんですか!?」

 

「そうだ提督!」

 

「男としてどうなの!?」

 

艦娘たちがニヤニヤしながらからかう。

 

「元はお前らが始めたことだろうが…!」

 

だが、ドミナントは連続でからかわれているため、キレそうだ。

 

「あっ、司令官がキレそう…。」

 

「み、みんなぁ。そろそろいじめちゃダメよぉ。」

 

「やめて…。司令官を怒らせないで…。」

 

「て、提督、大丈夫です。私が止めますから…。だから、落ち着いてください。」

 

最初の4人が何とかドミナントを宥めようとする。

 

「…なんで提督にそんなに恐怖しているんだ?」

 

もちろん、それを知らない武蔵はわからない。戦ったとしても、怒り状態じゃなかったため、わからないのだ。

 

「司令官が怒るとヤバイんです…。」

 

吹雪がコソコソ話す。

 

「む?何故だ?」

 

「…前は息を吸うのが苦しくなるくらいです…。」

 

「そんなことがここで起きたら、朝ごはんどころじゃないぞ…。」

 

「ですよね…。」

 

吹雪と武蔵はコソコソ話す。

 

「で、誰が食べるの?」

 

主任が言う。

 

「…はぁ…。俺が食べるよ。」

 

ドミナントは仕方がなく立候補する。

 

「さすが提督!」

 

「よっ!日本一!」

 

「見え見えのお世辞嬉しくねーよ!」

 

ドミナントはツッコミ…。

 

「く、食うぞ…。」

 

ドミナントは震える手で料理を掬いとり、口に運ぶ。

 

「……。…美味い…。」

 

「「「えぇ!?」」」

 

「何というか…。グロテスクな見た目とは裏腹に、素材の味が生かされている。その上、おそらく消化にも良いものばかりだ。ギャップがすごいな…。」

 

ドミナントが食べながら言う。

 

「…そうだ。不味くはないんだが…。見た目が…。…私の理想は違ったがな…。」

 

ジャックが言う。すると…。

 

「夕立も食べるっぽい〜!」

 

「あっ、まだ…。」

 

「美味しいっぽい〜。」

 

「あーあ…。食われちゃった。…てか、口元に紫色の何かが付いているぞ。」

 

ドミナントはナプキンで拭いてあげる。

 

「む…。」

 

当然、神様は面白くない。

 

「あ、ありがとう…ぽい。」

 

「そりゃどうも。…てか!夕立それ!俺のスプーン!しかも、さっきそれで俺が食べてたし…。」

 

「使ってなかったから…ぽい。」

 

「オー!マイ!ガー!…それを捨てて、新しいスプーン買わなきゃ…。」

 

「そんなに夕立は嫌われてるっぽい!?」

 

夕立は顔を青くする。嫌われているとは思っていなかったからだ。神様は顔が真っ青だ。

 

「いや…。嫌いではない。…ただ、こんなおっさんが、美少女の使ったスプーンを持ってるって…どうよ…?」

 

「……。」

 

「しかも、それを使うって…。」

 

「……。」

 

夕立は微妙な顔をしたまま黙る。ドミナントは難しい顔をする。

 

「「「……。」」」

 

だが、艦娘はそんなことより、夕立がドミナントのスプーンを使ったことに少し…うん…。神様は本気で怒りを募らせていたが、ジャックや主任に腕を掴まれ、強制退出させられている。

 

「…うん。結論。新しいスプーンを買う。それで文句ないな?」

 

「…わかったっぽい。」

 

「じゃ、それは回収ね。」

 

「……。」

 

「いや、手を離してよ。」

 

「…洗って返すっぽい。」

 

「いや、どうせ捨てるし…。」

 

「……。」

 

「…わかったよ。」

 

ドミナントは特別に許可を出す。

 

「やったっぽい!」

 

「さてと…お腹いっぱいになったことだし、執務室に戻るか。」

 

「わかったっぽ〜い。」

 

そして、夕立とドミナントは執務室に戻る。

 

…………

廊下

 

「寒いなー…。」

 

「寒いっぽいー…。」

 

二人で言いながら歩いていると…。

 

「危ないっぽい!」

 

「!?」

 

カッ!

 

ドミナントは夕立に突き飛ばされ、見事に転ぶ。まさに、美しい転び方だった。芸術と言っても過言ではない。

 

「ゆ、夕立…?何を…。」

 

「ご、ごめんっぽい。それより、これ…。」

 

夕立はドミナントが立っていたと思われる場所に矢が刺さっているのを見せる。

 

「物騒だな!?なんなんだ!?」

 

夕立は瞬時に窓の外を見るが、何も、誰もいない。

 

「……。」

 

夕立は戦闘の顔で窓の外を睨んでいた。

 

「すっげーなこれ…。見事に壁に突き刺さってる…。…てか、抜けないなこれ…。」

 

ドミナントは矢を抜こうとして…。

 

「ん?矢文…?」

 

矢に紙があるのを見つける。

 

「どれどれ…?」

 

…………

第4呉鎮守府 瀬戸

 

これを見たということは、避けたと見受ける。第4佐世保。貴様らの腕がどのようなのか是非見たい。一週間以内に来い。来なければ、このように毎日狙うぞ。

 

…………

 

「……。」

 

ドミナントはそれを見て、固まる。

 

「…ナニコレ?脅迫文?憲兵呼ぼうかな…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「…今日の夜、夕立ちょっとお出かけするっぽい。」

 

「ん?なんで?」

 

「ソロモンの悪魔見せてあげるっぽい。」

 

「やめい。」

 

ドミナントが釘を刺す。

 

「…その通りっぽい…。」

 

「わかってくれて何よりだ。」

 

「そういうのは川内が専門っぽい。」

 

「いやいや…そういう意味じゃない。」

 

「?」

 

「いや、なんで疑問に思っているんだよ。これは、憲兵か大本営に直接言ったほうが良いだろう?それに、潰したところで、何も解決しない。」

 

ドミナントが大人な対応をする。

 

「いくら攻撃的なやつでも、大本営などに連絡すれば、なんとかなるだろう。大丈夫だ。」

 

ドミナントは執務室に向かいながら気楽に言った。

 

「…本当に大丈夫…ぽい…?」

 

夕立は、壁に刺さった矢を見ながら言ったあと、ドミナントの後ろについて行った。




遅くなりました…。それに、今回イマイチですね…。疲れているんですね…。見直してわかりました。それと、次回は深海棲艦のお話になります。
登場人物紹介コーナー
???…ジャックと主任が作った傑作の料理。見た目はダークマター、モザイク、グロテスクな感じだが、見た目に反して美味い。素材の味を生かしながら作られており、丁寧に、細かく作られている。消化にもよく、誰でも食べられる万能な料理。
矢…時速120km前後で放たれている。それを事前に察知する夕立って一体…。
次回!第124話「ショウシュウ」お楽しみに!


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124話 ショウシュウ

はい。124話です。今回は、全く第4佐世保鎮守府の話ではありません。間話…みたいなものかな?
「この話で、どうなるのかわかるのね…。」
おっと、瑞鶴には見せられないね。壮大なネタバレだから。
「えっ?」
じゃ。
「ちょ、あれ!?なんか体透けてきてない!?」
少しの間外にいてくれ。
「ねぇ!まだ話は終わって…。」
…完全に消えたか。では、あらすじは筆者が。

あらすじ
前回、第4佐世保に矢文が届いた。差出人は第4呉鎮守府からだった。


…………

中部海域

 

「アラ?ヒサシブリネ。」

 

「…ヒサシブリダネ。」

 

二人の深海棲艦がいる。

 

「コンカイノショウシュウハゼンインガアツマルミタイダケド…。」

 

「ワタシタチヲフクメテジュウニン。クルカナ?」

 

「アノシマイハカナラズイルカラ、アトロクニンネ。」

 

そう話していると…。

 

「ン?アレハ…。『レイテ』ト『マリアナ』カ?」

 

「ヒサシブリネ『トラック』。ソッチモゲンキソウデナニヨリダワ。」

 

「コンカイハ、ダレガショウシュウシタンダ?」

 

「アイカワラズ、ソウイウノハ、シラナイノネ…。『ソロモン』ヨ。」

 

「ソウカ。トコロデ、ココニクルアイダ、カンムスニアッタカ?」

 

「ソリャネ。アトスコシデシズメルコトガデキタケド、ゼンインシッポヲマイテニゲテイッタワ。」

 

「コッチハダレモイナイ。チンジュフノケイビモザルニナッタナ。」

 

レイテとトラックが話す。

 

「モウソロソロカナ?」

 

「タブン、アノクロイソラノチュウシンノシタニイルトオモウヨ。」

 

そして、三人はその場所へ急いだ。

 

…………

 

「ショクン、コンナトオイバショヘアツマッテカンシャスル。」

 

ソロモンが言う。

 

「ソンナマエオキイイカラ、ヨウケンヲイイナサイヨ。」

 

一人の深海棲艦が急かす。

 

「アワテルナ、『ブーゲンビル』。『ソロモン』ノハナシヲキケ。」

 

「アナタニハサシズサレタクナイワネ。」

 

「…ナンテイッタ?」

 

「アナタノヨウナジャクシャニハイワレタクナイッテコトヨ。」

 

「ア?ナラココデケッチャクツケルカ?タンタイザコ。」

 

「ノゾムトコロヨ…。」

 

ブーゲンビルとマリアナが戦闘態勢になりながら言う。そこに…。

 

「フタリトモヤメナサイ。コレダトハナシガオワラナイワヨ。」

 

一人の深海棲艦が言う。

 

「オネェチャンノイウトオリ。フタリトモヤメル!」

 

もう一人も言う。

 

「『セイロン』、『インド』シマイ、クチダシスルナ。」

 

「アナタタチカラシズメマショウカ?」

 

ブーゲンビルとマリアナが言う。そこに…。

 

「フタリトモアツクナリスギダ。スコシアタマヲヒヤシタホウガイイ。」

 

もう一人言う。

 

「『コン』ノユウトオリヨ。ヤメナサイ。」

 

レイテが言う。

 

「ウルサイ!」

 

「クチダシスルナ!」

 

だが、マリアナとブーゲンビルは言う。しかし…。

 

「…ヤメナサイッテイッテルノ…。フタリトモシズメテモイイノヨ?」

 

今度は、レイテが少し殺意をもって言う。

 

「ウ…。」

 

「…ワカッタ…。」

 

二人は離れる。

 

「ハァ…。」

 

一人の深海棲艦がため息をつく。

 

「ドウシタ?『バタビア』。」

 

トラックがバタビアに聞く。

 

「…ワタシハコノナカデモイシツダカラ、コンドカラコナイヨウニシヨウカシラ…。」

 

「イシツ?…アハハ。ワタシモフクメテココニイルヤツハゼンインガイシツダカラカンケイナイヨ。…タダヒトリ『ミッドウェー』ハ、ココニハイナイケド。…マダカナ?」

 

トラックが気楽に話す。

 

「『ミッドウェー』?」

 

「アア。…ソウカ。コノショウシュウニキタノハ、ハジメテダナ?ココニクルノハヘンジンタチダヨ。『ソロモン』、『ミッドウェー』、『レイテ』、『マリアナ』、『セイロン』、『インド』、『ブーゲンビル』、『コン』。ソシテワタシ『トラック』ト、『バタビア』ヨ。ゼンインアワセテジュウニン。ソレゾレノカイイキノトップデ、ナワバリミタイニキマッテイルノ。ブツカリアエバ、リョウシャトモタダデハスマナイカラ、コウヤッテカイギヤショウシュウニサンカスルンダヨ。」

 

トラックが説明してくれる。

 

「ソウ。…デ、ケッキョク『ミッドウェー』ハ?」

 

「ア…ワスレテタ…。…ゴホン、『ミッドウェー』ハ、トウホウカイイキ二イテ、キョダイナホウダイガアル…。…ミテミレバハヤイ。ケッコウオオキイカラ。」

 

「ソウ。…デ、ツヨイノ?」

 

「ウ〜ン…。ホウダイヤ、コウゲキリョクハ、コノナカデモズイイチダケド、ヒネリヤ、アタマヲツカワナイカラ、ワタシデモタオセル。タブン、『バタビア』デモタオセルンジャナイカ?」

 

「ナルホド…。マショウメンカラタタカエバクセンスルケド、トラップヲスレバカンタンニタオセルワケネ。」

 

「ウ〜ン…。イイカタハヘンダケド、ソウイウコトダヨ。」

 

トラックとバタビアが話していると…。

 

「…ソロソロハナシヲシテモイイカシラ?」

 

ソロモンが言う。

 

「アッ、ゴメン。ハナシテイイヨ。…『ミッドウェー』ガイナイケド。」

 

「ソノ『ミッドウェー』ニツイテヨ。」

 

ソロモンが話す。

 

「…『ミッドウェー』ガ『ホンド』ヲセメタラ…ヤラレタワ。」

 

「「「!?」」」

 

ソロモン以外の全員が驚く。

 

「アイツガ…?」

 

「ソコラノカンムスジャゼッタイニカテナイハズ…。」

 

「ダレニヤラレタノ…?」

 

ソロモンに次々と聞く。

 

「…ドウヤラ、『ダイヨンサセボチンジュフ』ガタオシタラシイワ。」

 

「『ダイヨンサセボチンジュフ』…。ハジメテキクワネ…。」

 

「サイキンデキタチンジュフジャナイカシラ?」

 

深海棲艦たちはザワザワ話す。

 

「…トニカク、ソコニハヨウチュウイネ。アト、ワカッテイルトオモウケド、『ミッドウェー』ガイタカイイキハダレモテヲツケチャダメヨ。ワカッテイルワヨネ?」

 

「アア。…アラタナ『ミッドウェー』ガアラワレタラ、ソコノバショヲカンリサセルカラデショウ?」

 

トラックが言う。

 

「エエ。ワカッテイルナラソレデイイワ。…ソレト、モシ『ダイヨンサセボチンジュフ』ノショゾクダトオモワレルカンムスガイタラ、イッタンヒイテ、ヒトリデタオソウトシナイデ、コノナカノダレカトイッショニタオスコト。…ソウシナイト、『ミッドウェー』ノニノマイニナルワヨ…。」

 

ソロモンが注意をする。

 

「ワカッテイル。…ダケド、アナタト『レイテ』イガイデショウ?アナタタチフタリハ、ワタシタチノナカデモトップクラス…。タンドクデモジュウブンニツヨイハズ。タブン、アナタタチフタリニカテルモノナンテイナイ…。ニンゲンモ、カンムスモ…。ワタシタチデサエモ…。」

 

渾(コン)が言う。

 

「…カイカブリスギジャナイカシラ?」

 

レイテが謙遜する。

 

「ダッテ、ズイブンマエ二ホッポウカイイキデ『ムサシ』ヲシズメタデショウ?ニンゲンノジョウホウニヨルト、レベル80イジョウダモノ。」

 

マリアナがレイテを見ながら言う。

 

「ニンゲンノジョウホウ?ソンナノ、ドッカラモッテキタノ?」

 

トラックがマリアナを見る。

 

「ドコカラダト…オモウ…?」

 

「…ナルホド。ミツリョウシャデモツカマエタカシラ?」

 

「ムカシネ。ゴウモンシタワ。イマハダレモウミノウエニイナイカラ。アァ…アノカンカク…ワスレラレナイワァ…。ニンゲンノヒメイ…ナキサケビ、イノチゴイヲスルアノスガタ…モウイチドアジワッテミタイワァ…。」

 

マリアナが獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ハイ。オシャベリハソコマデ。ソレジャァ、ソレゾレノカイイキデナニガアッタカオシエテモラオウカシラ。」

 

ソロモンが指揮を取る。

 

「マズ『レイテ』。」

 

「ナンセイショトウカイイキデハ、イマハイジョウハナイワ。ソレヨリダイイチ、ニンゲンニキヅカレテナイモノ。スコシノブカガヤラレタクライカシラ?」

 

「ソウ…。ツギ『マリアナ』。」

 

「ナンポウカイイキモ、トクニイジョウハナイワ。…デモ、カイガイカンノアツマリノチンジュフデ、エンシュウガホンカクテキニナッタクライカシラ?」

 

「エンシュウガ…。ツギ『セイロン』。」

 

「セイホウカイイキハトクニイジョウナシヨ。」

 

「ソウ…。アナタノソンザイガバレテイナイノカシラ?ツギ『インド』。」

 

「ホッポウカイイキモオネェチャントオナジデイジョウナシ。」

 

「オナジネ。…ツギ『トラック』。」

 

「ナントウカイイキニシ。シマノヒトツヲセンキョ。カンムス二ソンザイハバレテイルケレド、イツモドオリカエリウチ。」

 

「モウバレテイルノネ。…ツギ『ブーゲンビル』。」

 

「ナントウカイイキヒガシ。ナカマタチガイツモドオリケチラシテイルワ。『マリアナ』トチガッテシキヲトレルカラ。」

 

「ナンダト?」

 

「ヤメナサイ。バクゲキシテシズメルワヨ?…ツギ『コン』。」

 

「ナンセイカイイキ、ダレモイナイ。トイウヨリ、チンジュフヲカイメツサセテカラダレモコナイ。」

 

「ソレハツマラナイワネ。…ツギ『バタビア』。」

 

「ナンポウカイイキミナミ、ニンゲンタチガオイツイテイナイノカ、ダレモイナイワ。ソノオカゲデネンリョウヤシザイヲツカイホウダイヨ。」

 

「ソウ。ワタシ、チュウオウカイイキデハ、アイカワラズカンムスガチカヅイテクルケド、イカクシタラニゲテイクワ。」

 

ソロモンが話す。

 

「オソラク、ソノイカクダケデセントウフノウダカラデショウ?」

 

セイロンが言う。

 

「ソウカシラ?…マァ、ホカノカイイキモイジョウガナクテヨカッタワ。デモ、『トラック』、アナタカラネラワレルカノウセイガタカイカラ、ユダンハキンモツヨ。」

 

「ミツケタラダレカトイッショニ。ソノコトニチュウイスレバマケナイヨ。カクジツニタオセルカラネ。」

 

トラックは自信満々に言う。

 

「ワカッタナライイワ。…ソレジャァ、コレダケノタメニアツマッテカンシャスルワ。ゼンイン、ツギノショウシュウニダレヒトリカケテイナイコトヲイノルワ。…アトガマヲミツケルノモラクジャナイカラ。」

 

ソロモンが言ったあと、各々が各海域に戻って行った。




オワリデス。カタカナダケダカラヨケイニツカレタ。
登場人物紹介コーナー
いずれやります。
次回!第125話「報告」お楽しみに!


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第4呉鎮守府編
125話 報告


今も見ている人って何人いるのかな?てか、もう笑いのネタがなくなってきた。
「それは致命傷ね。もう10人くらいしかいないんじゃない?」
だよね〜。本当に150話で終わりかな。でも、陸軍編はもう10話以上あるから、残り15話前後なんだよね。巨大兵器拝めずかな?
「まぁ、そんなもの拝みたくもないけどね。」
てか、陸軍編って、艦これに入るのかな?
「…入るのかしらね?」
もう、オリジナル物語に変化しているような気しか思えないんだ…。
「確かに、神様や、陸軍は艦これやACに関係ないものね。」
ほのぼの日常も、思いつかないし…スランプだな。ACと艦これやり直してこようかな。
「暇なのね。」
暇だよー。笑いのネタを考えようにも、いまいち。
「大変ね…。」
…ん?待って待って、当初の目的忘れてない?
「?」
これは俺得…。ならば、これでやめてもいいんじゃない?
「……。」
いや、でも一応完結させたいからな…。まぁ、200話で終わりって感じだな。ちょうどネタが切れているし、やりたいこと全部するか。
「すごい根性ね…。一人ぼっちでやってて楽しい?」
フッフッフ。なんとでも言うがいい。これは筆者が辞めたいときにやめて、続けたいときに続けるのだからな。まぁ、当然忙しくなれば辞めるけど。
「そう…。」
なんだ?寂しいのか?
「そ、そんなわけないじゃない!」
だよな。筆者はここで一人で活躍する。誰も味方はいないからな。
「…私がいるのに…。」
何か言った?
「……。」
?じゃ、あらすじ頼むよ。
「わかったわ。」

あらすじ
私が一度消えたわ。


…………

先輩神様

 

この世界の創造主。艦これ世界と似て非なる世界。

神様の先輩だからそう呼ばれている。ちなみに、本当の名前もあるが、それは後ほど。

天界の最強5人の一人。その中で2番目に強い。超一流の槍使いで、鋼鉄もバターのように切り裂く。どれくらい強いかというと、ドミナント率いるAC勢全員で戦ったところで、ドミナントたちが勝てるかどうかわからないくらい。

滅多なことがない限りこの世界に降りてこないが、たまに息抜きに第4佐世保鎮守府に降り、お茶しに来る。そのため、一部の艦娘に顔を覚えられている。

ドミナントに関しては、共に後輩である神様を見守る人と認識しており、たまに後輩の様子を聞きにお茶しに来る。好意は全くない。それより、天界に若い男がいないため、嫁に出遅れるのではないかと心配している。人間と神様の結婚は許されないと知っているが、後輩である神様のことは応援している。

性格は、後輩想いであり、頑張る人に優しい。語尾に「〜じゃ。」や、自分のことを「妾」などという。(初春と同じ感じ。)可愛いものも好きであり、そこは乙女である。ちなみに、SかMだとM。好感度が高くなるとドM。後輩である神様が自分の作った世界を放って、ドミナントと一緒にいるため、そこの管理もしてくれている。でも、そのことで後輩である神様を叱ることもしばしば…。

容姿は、銀のストレートの髪に、着物を着ている。行事がある日だと着物の色が違う。可愛いか美人、どちらかでは美人である。

 

…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「じゃぁ、まずは大和さん達に連絡だな。第4呉鎮守府の件で。」

 

「夕立はお茶を用意するっぽい。」

 

ドミナントは受話器を取る。

 

…………

大本営

 

「元帥殿、これいつ終わるんですか…?」

 

大和は元帥に聞く。あたりは書類だらけだ。

 

「うむ…。あと少しだろう…。」

 

元帥は目の下にクマができている。

 

「まぁ、第4佐世保以外でも、こんなに報告書があるんだ…。まだ深海棲艦の脅威から逃れられていないのがわかるな…。」

 

「はい…。まさか、普段は群れで行動する深海棲艦が一匹だけで中央海域へ向かっているとは…。それも、確認されただけで6匹…。全匹とんでもない強さらしいです…。倒そうとした艦娘たちは全員が大破、もしくは見失うなどとして、撤退を余儀なくされましたが、何故中央海域へ向かっていたのかは不明です。もし、調べるのならあの爆撃の嵐をなんとかしなくてはありませんし…。」

 

「そうだな…。無理して戦ったところで、沈んだら元も子もない…。」

 

「…それに、あとを追わないで良かったのかもしれません…。」

 

「?何故だ?」

 

「もし、その深海棲艦たちが一点に集まっていたとしたら…?とんでもなく強い深海棲艦を、少なくとも6匹相手にしなくてはなりませんし…。」

 

「だが、それぞれ別の場所に用があったのかも知れんぞ?」

 

「まだ誰も行ったことのない、未知のエリアが中央海域ですからね…。中部海域よりも奥ですし…。」

 

「見えないラインだな…。そのラインを越えたら爆撃の嵐…。」

 

「…と言っても爆撃の嵐というより、その爆撃を受けた艦娘が、灰色の空を埋め尽くすほどの赤い艦載機…くらいしか覚えていないという感じです。なので、一機でも見たら即刻撤退を義務しています。長く居座ると確実に沈むからです。」

 

「それくらいしか覚えていないくらいの威力であり、脅威なのだろう…。」

 

「そうですね…。私も行ったことがないので、よくはわかりませんが…。」

 

大和と元帥はそんなことを話す。

 

「それにしても…、すごい量ですね…。」

 

「沢山の鎮守府から、その深海棲艦を確認した報告、戦闘の結果、その深海棲艦はどこへ向かっているか、どれほどの強さなのかが報告書で送られてくるからな…。…一部の鎮守府では、大本営は椅子に座ってふんぞりかえり、命令をするだけで、命令を出した本人は呑気にしている…と言っているらしい…。だが、これだけの仕事量があって、しかも他の鎮守府と給料がさほど変わらないことを知ったら、おそらく何も言うまい…。」

 

「徹夜2日目ですからね…。」

 

大和と元帥は手を動かしながら話す。

 

「…ふぅ、やっと半分…。あと2日徹夜すれば終わります…。」

 

「4徹で終わりだな…。」

 

「…これ以上何か起きなければ…の話ですが…。」

 

「怖いことを言うものではないぞ…。」

 

元帥と大和が言っていると…。

 

プルルルル…プルルルル…

 

電話が鳴り出す。

 

「こんな時に…。」

 

「頼む…。私は少し仮眠する…。」

 

「わかりました…。」

 

大和は電話に出る。

 

「もしもし、大本営です。」

 

『あっ、大和さんですか?』

 

「…ドミナントさん…。何かご用でしょうか…?」

 

『実は、少し相談が…。』

 

「…はぁ…また仕事量が増えます…。」

 

大和は顔に手を当てる。

 

『仕事量…?…まさか、今とんでもなく忙しいんじゃ…。』

 

「…いえ、大丈夫です…。なんでしょうか…?」

 

『本当に大丈夫ですか?』

 

「…はい…。…徹夜が増えなければ…ですが…。」

 

『…徹夜…。…では、このことは報告書に書かなくて良いことにしましょう。』

 

「…いえ、そういうわけにいかないのが大本営なんです…。もう…勘弁してください…。」

 

『…言うのにすごく罪悪感を感じるんですが…。今、第4呉鎮守府から脅迫文が届いています…。』

 

「……。」

 

『…大和さん?大和さーん?』

 

「…徹夜が…増えました…。」

 

大和は泣きそうな声を発する。

 

『……。無かったことにしてください…。いくらなんでもかわいそうです…。』

 

「だからそういうわけにいかないのが大本営なんです…。」

 

『…ちなみに、これで合計何徹ですか?』

 

「…5です…。」

 

『……。あと、大本営から直接、第4呉鎮守府に注意するだけで解決しますか?』

 

「しません…。まずは、状況を確認するため、何人か派遣します…。そして、二人の言い分を検証し、報告してもらいます…。そして、国の偉い人たち…、すなわち大臣などを集めて、ことの大きさにより、処理する審査や会議などをします…。その報告書もこちらでやらなければなりません…。そして、その鎮守府を処理…つまり罰を与えて、その鎮守府の提督を減給したり、謹慎させたり、辞職してもらいます…。それにも書類仕事が関係します…。辞職した場合は、次の提督を探さなければなりませんし、国に報道しなければなりません…。つまり、書類仕事がてんこ盛りです…。」

 

大和はうんざりする様に説明する。

 

『…わかりました。この話は無かったことにしてください。』

 

「だから、そういうわけには…。」

 

『自分が解決します。そうすれば、そちらの負担がなくなりますし、書類などはこちらでやらなければなりません。…なんなら、大和さんが黙っていれば、このことはこちらが秘密に解決します。仕事を増やすこともなければ、こちらの問題も解決…。効率が良いと思いませんか?それに、注意させても、あまり効果が無い気もしますし。最終的にはそちらの判断ですが、無理はしない方が良いのでは?』

 

「…何故か腹が立つ言い方ですし、なんだか怪しい言い方ですよ?」

 

大和は言うが、振り向いて、あたりの溜まっている書類と、疲れ切って仮眠している元帥を見る。そして、電話の方を向き直る。

 

「…黙っていれば、解決できますか…?信じて大丈夫なんですか…?」

 

『…努力はします。なんせ、私が行けば良い話ですし。』

 

「…そうですか…。…なら、頼みます…。」

 

『はい。』

 

そして、電話を切る。

 

「……。」

 

……大本営の…元帥殿の秘書艦として、してはいけないことをしてしまった気がしますが…。この状況で、さらに仕事を増やそうなんて…、いくらなんでも…。

 

大和は元帥を見ながら思う。元帥はアイマスクをし、椅子に座ったまま、手をぶらんとさせながら仮眠している。

 

……でも、元帥殿はそれを望んでいるのでしょうか…?

 

大和は思う。すると…。

 

プルルルル…プルルルル…

 

またも電話が鳴り出す。

 

ガチャ

 

『もしもし、大和さん!?さっきのことで言い忘れたことが…。』

 

「いえ、こちらから人を派遣します!」

 

『えっ?』

 

「元帥殿は、絶対にうやむやにし無いと思います!なら、私はその指示に従うのみ!どれだけ仕事量が増えようが、関係ありません!」

 

大和は覚悟を決めて言った。

 

「よく言った!それでこそ私の秘書艦だ!」

 

「げ、元帥殿…!?起きていらしたんですか…?」

 

「ああ。ドミナント提督と聞いてな。」

 

元帥は満足した顔で大和に言う。

 

「まぁ、例え訂正しなかろうが、私は何も言わなかったがな。…この仕事量だ。そうしようが、私は何も言わない。」

 

「元帥殿…。」

 

大和が少し笑みを浮かべていると…。

 

『もしもーし、大本営の人〜、聞こえてるかな〜?』

 

ドミナントが電話越しで言う。

 

「あっ、すみません。…ところで、言い忘れたことというのは?」

 

『届いた紙を見てみると、これから毎日命を狙われるので、そちらでやるよりも、こちらでなんとかした方が手っ取り早いと思いました。なので、こちらで始末書を書くので、そちらでは報告書だけをしてください。少し、仕事量が増えてしまいますが…。』

 

ドミナントが申し訳なさそうに言う。その報告書はなんとか半日で終わるくらいだ。

 

「……。」

 

大和は元帥を見る。元帥は“しょうがないな”みたいな顔をしている。

 

「わかりました。こちらは任せてください。」

 

『はい。それでは。』

 

そして、電話が切られる。

 

「…さてと、仕事をやるぞ。」

 

「はい!」

 

そして、元帥は大和の頭を撫でながら言い、大和は元気よく返事をした。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「……。」

 

ドミナントは受話器を戻す。

 

「どうだったっぽい?」

 

「ん〜?第4呉鎮守府に行くことになったよ。」

 

「ダメだったぽい?」

 

「いや、俺が自らがそうした。明日行くから、誰と行くか決めないとな〜。」

 

「?」

 

夕立は首を傾げた。

 

……結局、武蔵のことは言えなかったな〜。仕事量の関係で。…でも、大和さんかっこよかったな。しっかりと元帥のことを考えて、苦渋の決断をしたところ。それが元帥にとっても鞭になると知りながら、信念を貫く。かっこ良かった〜。あれを聞いたら、こっちも自力で解決しないとなって思うし。なるべく報告書を少なくさせてあげよう。

 

ドミナントはご機嫌に思うのだった。




はい。終わりました。AC20周年聴いたら涙が止まらなかった…。現在、陸軍編の出来ている話数が8話。しかも、まだ完結していない…。ちなみに、陸軍編は戦闘シーンがたくさんです。艦娘は…非常に少なく登場します。そのかわり、ジナイーダたちが主に…。
登場人物紹介コーナー
元帥…いい人。
大和…いい人。
ドミナント…提督。
夕立…可愛い。
次回!第126話「意外に近い」お楽しみに!


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126話 意外に近い

タイトルが思い浮かびませんでした。
「なんとなく想像はつくわ。」
へ〜。
「どうせ歩いて何分かなんでしょう?」
さぁ?
「さぁ?…て、あんた…。」
ネタバレ防止。
「ふぅーん。」
と、言うわけでアラスジを頼むよ。
「アラスジ…?…まぁ、やるわ。」

あらすじ
結局、第4呉鎮守府に行くことになりました。なんだか、嫌な予感がするわ…。


…………

第4佐世保鎮守府 食堂

 

「ところでさ、司令官って何が好きなんだろう?」

 

「ふぇっ!?ゴホッゴホッ…。」

 

食事をしている艦娘。深雪がいきなり言い、吹雪が変な声を出し、咳き込む。

 

「いや〜、よく一緒にいる吹雪なら知ってると思ってさ〜。」

 

「…ゴホン。いや、そんなこと知らないんだけどなぁ〜…。」

 

「いや〜、知ってるでしょ?同じ吹雪型だし、話してくれよ〜。」

 

「いや、本当に知らないんだけど…。」

 

「そうなの?あんなに一緒にいるのに?」

 

「うん…。司令官って、自分のことを人に知られることを好まないから…。」

 

「へぇ〜、そうなんだ〜。」

 

「夕張さんが司令官のことを調べようとしたんだけど、あまり好きじゃないって言ってたし。」

 

「じゃぁ、何が好きなんだろ〜。」

 

「さぁ…。」

 

深雪と吹雪が話していると…。

 

「それはお寿司です!」

 

「「お寿司?」」

 

いきなり吹雪の隣に座って胸を張りながら言う雪風。

 

「この前、大本営に行った時、空で聞きました!」

 

「空…あぁ〜…、あれの時か…。」

 

「あれ、もう乗りたくないです…。」

 

「…まぁ、とにかくお寿司みたいです!昔同僚と一緒になんたらかんたらと言っていました!」

 

「ふむ…。お寿司か…。」

 

「ところで、深雪ちゃんはなんでそんなこと聞くの?」

 

「いや、司令官の誕生日に何か…って。」

 

「…誕生日すら知らないでしょ…。」

 

「あっはははは。じゃぁ、着任日に。」

 

「まだあと半年くらいあとだよ…。」

 

「その間に聞くと、絶対に披露するってバレちゃうじゃん。」

 

「まぁ、そうだけど…。」

 

3人が話していると…。

 

『この時間なら食堂にたくさんいるっぽい。』

 

『そうか…。て、毎回食堂に来てる気がしない!?』

 

『暇な艦娘は必ずいるっぽい。』

 

『そ、そういうものなのか…?』

 

廊下からドミナントと夕立の声が聞こえる。

 

「あっ!提督!」

 

「司令官が来る!」

 

艦娘たちが騒ぎ出す。

 

「……。」

 

吹雪は周りの艦娘たちを見て、微妙な顔をする。全員、ドミナントが来ることを予想し、隣の席を開けるのだ。それと、自身の食べる量を少なくしたりしている。もっと素早い艦は、ついでに化粧をしていた。吹雪は苦笑い以外の顔ができなかった。

 

『ふむ…。』

 

ドミナントが扉の前に立ったのがわかり、艦娘たちは準備を整える。…が。

 

『早く行くっぽい。』

 

ドミナントが中々入ってこない。

 

『いや、いきなり入っても迷惑な気がしてな。』

 

『大丈夫っぽい。』

 

『だが、友達同士で仲良く食べているところに、ここの最高責任者が来たら気を使わせて、楽しく食べることが出来ないかもしれない…。そうなれば、低い俺の評価がさらに低くなる…。』

 

『提督の評価は低くないっぽい。』

 

『そう言ってくれるのは夕立だけだよ…。この前なんて、『クソ提督』とか『死ね』とか『クズ提督』とか『ウザい』とか…。さらに前には、久々に俺が作戦立てたとき、『なんでこんな場所に配属されたのかしら。』って、俺の前で言ってきたんだ…。もう、いっぱいでち…。』

 

『少し提督も可哀想っぽい…。』

 

吹雪など穏健派以外の艦娘たちは一気にある艦娘を冷たい目で見る。その艦娘たちのせいで自分たちまで評価が下がるのは堪らないからだ。

 

「「「……。」」」

 

その艦娘は別にドミナントのことが嫌いなわけではない。そういう性格なのだ。

 

『前、満潮の前で作戦考えていたら、『出るんなら出る、出ないんだったら出ない、はっきりしなさいよ!ったく…。』て言われたから、『トイレしたいなら行ってきて良いよ。』って言ったら思いっきりぶん殴られたし…。』

 

『それは提督が悪いっぽい…。』

 

だが、そのドミナントの一言で艦娘たちは一気にドミナントを軽蔑する。

 

『でも、一緒に第4呉鎮守府へ行ってくれる人いるかなぁ?』

 

『夕立も行くっぽい?』

 

『行ってくれれば嬉しいな。でも、向こうで乱闘になった場合、あと5人くらいは来て欲しいし…。前は一人だけど、今回は5人…。ハードルが一気に上がった…。』

 

ドミナントは苦悩するが、中にいる艦娘たちはまだかまだかとソワソワして待っている。

 

『試してみるっぽい。』

 

『でもなぁ〜…。』

 

『…もしかして、わざと開けないっぽい?』

 

『よくわかったね。おそらく、声は聞こえてないけど、俺がいることは勘の良い艦娘なら分かっていると思うからね。いつまでもここにいれば、焦らすことができるでしょう?焦らされて、ソワソワする艦娘を想像したら可愛いと思うしな。』

 

『提督、今さらっと変態発言を言ったっぽい…。』

 

『なぬっ!?セクハラか!?』

 

『…多分っぽい…。』

 

『これもセクハラに入るのか…。気をつけなくては…。』

 

『それに、提督の評価は低いんじゃ無かったっぽい?ソワソワするわけないっぽい。』

 

『だろうな。だが、せっかく提督になれたんだ…。俺の評価が低くてもそういう想像しても良いじゃないか…。たとえ現実逃避だとしても…。想像して何が悪いんだ…。教えてくれ夕立、想像することは悪いことか…?』

 

『…提督も苦労しているっぽい…。』

 

『それが現実だよ…。』

 

ドミナントたちが扉の前で長話していると…。

 

バァァァン!

 

「いいから早く入れ!」

 

痺れを切らした天龍に扉を蹴破られて怒鳴られた。

 

…………

 

「と、言うわけで行く人いるかな?」

 

ドミナントは募集する。

 

「う〜ん…。ボクは行こうかな。」

 

……VOBの可能性もあるけど、前はVOBじゃなかったみたいだし…。

 

「おー、時雨来てくれるか。ありがたい。」

 

ドミナントは盛大に歓迎する。

 

「じゃ、鬼怒も行こうかな〜。」

 

「…き、きぬ…って言う名前…?」

 

「そうだよ。初めて話すね〜。」

 

「覚えておこう…。そうだな。歓迎しよう。盛大にな。」

 

ドミナントはさらに歓迎する。

 

「なら、私も参ります。」

 

「妙高さん。」

 

「わ、私も…。」

 

「羽黒さん。」

 

「なんで鬼怒以外の名前は知ってるの?」

 

「聞いたことがあるから。」

 

鬼怒がドミナントに言う。妙高と羽黒、時雨も初めて話している。

 

「これで5人か…。夕立も合わせて駆逐二人、軽巡一人、重巡二人…。バランスが悪いな…。軽空母か航空母艦はいないか?」

 

「今日はセラフさんのところで一つ一つ艦載機を点検だそうです。」

 

「そうか吹雪…。なら、戦艦はいるか?」

 

「あっ!それなら…。」

 

…………

 

「落ち葉が溜まっていますね。」

 

「もう冬に入り始めたというのに…。不幸だわ…。」

 

二人の戦艦。扶桑型の扶桑と山城が門の前を掃除している。そこに…。

 

「いましたー!」

 

「吹雪ぃ…。待ってくれ…。ゼェゼェ…。」

 

「遅いです。」

 

「デスクワークで…鈍っているんだ…。はぁはぁ…。」

 

ドミナントは息を切らしながら来る。

 

「この二人を推薦します!憧れの先輩です!」

 

「あら、そう言ってもらえて嬉しいわ。」

 

「お姉さまが嬉しそう。」

 

吹雪が推薦するが…。

 

「えっと…。誰…?」

 

「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。妹の山城ともどもよろしくお願いいたします。」

 

「武装型戦艦姉妹、妹のほう、山城です。」

 

「俺はこの鎮守府の提督、ドミナントだ。」

 

「「「知ってます。」」」

 

「ふざけただけなのに…。」

 

ドミナントが言った途端…。

 

「!」

 

パシッ!

 

扶桑が空中から矢を掴む。

 

「…提督、提督を狙った矢が…。」

 

「狙われた俺ですら見えない速さの矢を止められるお前は何者だ?」

 

ドミナントはそんなことを言いつつも矢を見る。

 

「そのことで相談が…。」

 

「「?」」

 

…………

 

「つまり、単独では危険で、編成のバランスも悪いため、私たちのどちらかを連れて行きたいと?」

 

「うむ…。頼む…。」

 

「お姉さまと別れろと?」

 

「なんか変な言い方だけど…。まぁ、ざっくり言うとそうだ。」

 

「……。」

 

山城が思いっきり嫌な顔をする。

 

「頼みます…。」

 

「…わかりました。私が行きます。」

 

「お姉さま!?」

 

「山城と離れるのは辛いですが、すぐに終わりますから。」

 

「そんな…。」

 

扶桑と山城はそんな会話をする。

 

……もしかして…シスコン…?

 

ドミナントは一つの疑問を持つ。

 

「では、提督。用事をさっさと終わらせましょう。」

 

「う、うむ…。」

 

ドミナントと扶桑は歩いて行った。

 

……吹雪の憧れの基準が分からなくなった…。

 

ドミナントは歩きながらそんなことを思うのだった。

 

…………

飛行場

 

「やっぱり…薄々そんな気がしてたけど…。まさかボクまで体験するなんて…。」

 

時雨は諦めた表情をしている。久々の登場のVOBはすでに全員に取り付けられている。

 

「なんか嫌な予感がするっぽい…。」

 

夕立は不安そうだ。

 

「何これ?パナイんだけど。すごく面白そう!」

 

鬼怒はなんだかワクワクしている。

 

「えっと…。これじゃないとダメでしょうか…?」

 

妙高は笑顔を崩さないが、少し声が震えている。

 

「えっと…これは…?」

 

羽黒は少しビクビクしている。

 

「…これ、聞いたことがあるんですが…。」

 

扶桑も聞く。

 

「これか?これはVOBだ。」

 

「「「やっぱり…。」」」

 

「「VOB?」」

 

羽黒と鬼怒はわからないようだ。

 

「ようこそ、音速の世界へ。」

 

「……。」

 

羽黒はことの重大さに気づき、顔を青くする。

 

「なにそれ!すごく楽しそう!」

 

鬼怒はまだわかっていない。

 

『ハッチ、オープンします。』

 

毎度お馴染み、夕張のナレーションが入る。

 

ガガガガガガガガ…

 

空が青い。鬼怒以外が死んだ目で青い、青い空を見る。この世の最後の景色かもしれないから目に焼き付けておくのだ。

 

『まるで死にに行く戦士のようですね…。VOB点火させます!』

 

ゴオオオオオオオ…!!!

 

背中からものすごい音がする。

 

「おー!ワクワクするなぁ!早く早くぅ!」

 

鬼怒はみんなの気も知らないで楽しそうだ。

 

「みんなに注意事項。飛んでいる間は話さないこと。舌噛むから。そして、背中から火が出ているのがわかったら、すぐに外すこと。爆発するから。パラシュートは用意してある。降りる時は大声で言うから、その時以外は絶対に降りないこと。大騒ぎになるから。以上、注意事項…。」

 

「「「はい…。」」」

 

「楽しみだなぁー!背中から火が出るのか!」

 

この場にいる全員が鬼怒の言葉を聞いて、“あぁ、こいつ終わったな。”と思う。

 

『あ、足元ロック、解除…。』

 

ゴォォォォォォ…!ゴォォォォォォ…!ゴォォォォォォ…!…!

 

一人叫び声を上げながら6人飛んで行った。

 

…………

9分後

 

『降りるぞ。』

 

ドミナントが言い…。

 

「「「パージします。」」」

 

空中でパージする。今回は爆発しなかったらしい。…まぁ、落ちる前に爆散させて痕跡を残さないようにするが…。

 

「…ごめん、ボクもう二度と乗りたくない…。」

 

時雨はパラシュートでゆっくり落ちながら言う。

 

「私も…。」

 

妙高は速すぎて目がチカチカしている。

 

「……。」

 

こちらで気絶しているのが羽黒。

 

「乗らない…もう絶対に乗らない…。なんであんなに張り切ってたんだろう…。」

 

鬼怒は楽しみから一変、恐怖に変わり、ぐったりしている。パラシュートから抜け落ちないか心配である。

 

「…山城にはこの恐怖は不要だわ…。」

 

扶桑は戦艦だから遅いため、余計に早く感じるのだろう。

 

「着くのが早かったっぽい〜。」

 

夕立は相変わらず元気だ。

 

「意外に近かったからな。」

 

「「「どこが!?」」」

 

夕立以外は少し怒っていた。

 

「雪風や長門、赤城や瑞鶴、古鷹や吹雪や金剛や夕張やセントエルモは30分ずっとだぞ。」

 

「「「……。」」」

 

ここにいる艦娘たちは乗ったことがなかったため、大袈裟だと思っていたが、これの3倍近く乗っていたことに尊敬した。

 

「さて…。降りたら第4呉鎮守府だ。気を引き締めて行こう。」

 

ドミナントが言い、艦娘たちは頷いた。




終わりました。半分にすると字数が足らず…、終わらせようとすると字数が長く…。嫌な字数です。陸軍編はもう少し後になりそうです。文の方もまだですが…。一応、本当の最終回までのシナリオは完成しています。
登場人物紹介コーナー
深雪…みゆき。特型駆逐艦3番艦。やんちゃな性格。ドミナントに寿司を握るとしたら、『深雪にぎりスペシャル』。興味があるものには我先にと飛び込んで行く。口調は、少し荒っぽい。
雪風…ゆきかぜ。詳しくは43話参照。幸運艦であり、VOBの最初の犠牲者。空にいた時、気を紛らわせるため、ドミナントから色々と聞いた。
夕立…ゆうだち。かわいい。
冷たい目で見られた艦娘…ツンデレ。
天龍…てんりゅう。男っ気もあるが、またそれも良い…。
時雨…しぐれ。白露型駆逐艦2番艦。物静かで、どこか憂いを帯びた僕っ娘。自分より他者を優先するかつ、自分を蔑ろにしない良い子。筆者のお気にキャラの一人でもある。
鬼怒…きぬ。長良型軽巡5番艦。表情は固いが、それとは反対で、活気あふれる元気な子。訓練が大好き。たまにギャグを言うが、センスが…うん…。
妙高…みょうこう。妙高型重巡1番艦。筆者は普通にさん付けします。物腰が柔らかい性格であり、提督や仲間を常に気にかけてくれる。家事などは妙高さんに頼めばほぼ解決。だが放っておくと、主任もいて、家事で休む暇がないため、ドミナントが強制的に休ませるため目を光らせている。妙高型の一番艦だが、竣工したのは3番目であり、那智が1番目である。足柄が言うには、一見は強そうに見えないが、実は凄く強いらしく、火がつくと説教が長いらしい。
羽黒…はぐろ。妙高型重巡4番艦。かなり気弱な性格であり、何かあるとすぐに謝る。しかし、ある時には芯の強いところも持っており、その時は中々良いセリフを言う。
扶桑…ふそう。扶桑型戦艦一番艦。お淑やかで礼儀正しい一方、どこか儚げで憂いを帯びている。少しシスコン。頭の飾りを変えたりする遊び心はある。提督との関係はフレンドリー。
山城…やましろ。扶桑型戦艦2番艦。姉と比べると反骨心があって強気。だが、気持ちの浮き沈みも激しく、一度沈むとどんどん沈んで行く。よく「不幸だわ…。」と言う。また、極度のシスコンであり、姉がいないと何をやらかすかわからない…。ドミナントは眼中になく、お姉さまのことだけを考えている。
VOB…よく爆発する代物。気をつけて扱わないとあの世への切符となる。
次回!第127話「何処ここ…」お楽しみに!


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127話 何処ここ…

127話ですね。
「私の予感外れたわね。」
そうだねぇ〜。
「私の出番って、あとどれくらい残っている?」
分からん。だけど、戦いの時はよく出そうだよ。
「…また、そいつらが強い奴じゃないわよね…?」
強いよ?じゃないと盛り上がらないじゃん。陸軍や深海棲艦、暗躍者たちがいるんだから。まだ見ぬ強敵達がうじゃうじゃいるんだし。
「そんなにたくさん…。」
ま!いつかだよ。それより、あらすじ。

あらすじ
前回、提督さんたちが第4呉鎮守府へ出発したわ!その時、私たち空母は倉庫でセラフさんと一緒に艦載機の点検をしていたけど…。ちなみに、修理が必要な艦載機は5個あったわ。


…………

森の中

 

「何処ここ…。」

 

ドミナントは呟く。降り立ったのは良いのだが、鎮守府が見当たらないのだ。

 

「提督、もしかして場所を間違えました?」

 

妙高が聞いてくる。

 

「ま、迷子…ですか…?」

 

羽黒は目の縁に涙がたまっている。

 

「普通鎮守府って海に面してないかい?」

 

時雨も心配になり、聞いてくる。

 

「もしかして、提督迷っちゃった〜?」

 

鬼怒は気楽に聞いてくる。

 

「1分遅かったっぽい?」

 

夕立はドミナントの顔を覗き込む。

 

「いや、迷ったというか…。」

 

「迷ったのではなくて?」

 

扶桑が言う。

 

「いや…。そもそも、ここの鎮守府の正確な場所は大本営でもわからないらしくてさ…。」

 

「えぇ!?」

 

「いや…。提督になったら、全鎮守府の場所を記された世界地図を渡されるんだよ…。でも、第4呉鎮守府の場所だけがまるで囲んであってさ…。その丸の中のどこかで、地元の人でも場所がわからないらしくて…。だからとりあえずその丸のど真ん中に来たってわけ。」

 

「それじゃぁ、近くの街が緊急の時はどうやって伝えるんですか!?」

 

「市に連絡をして、市がその内容の紙をfaxで送るらしい…。」

 

ドミナントが言い、全員が黙る。

 

「憲兵に連絡しようにも、ここは俺たちと同じく、憲兵がいないらしくてさ…。…まぁ、とりあえず探すってことで…。この山のどこかなのは確かだから。」

 

「「「……。」」」

 

ドミナントたちは歩き出す。

 

…………

数分後

 

「鎮守府見当たりませんね…。」

 

「それより、なんだかうっそうとしてきてない?」

 

森が深くなる。

 

「どこなんでしょうか…?」

 

妙高が言った途端…。

 

カチッ…

 

「「「!?」」」

 

「?」

 

聞こえない程度の音がして、艦娘全員が反応する。ドミナントは全く分かっていない。

 

「提督、ごめんなさい。」

 

「!?」

 

扶桑が突き飛ばす。すると、紐に吊るされた大きな大木が来る。

 

「妙高さん、共に…。」

 

「わかりました。扶桑さん。」

 

二人が拳を構え…。

 

「「えいっ!」」

 

バッギャァァァ!

 

大きな大木を粉砕する。

 

「ふぅ、なんとかなりましたね。」

 

「そうですね。…て、提督!?」

 

「ぁぁぁぁぁ…。」

 

ドミナントは突き飛ばされて、坂を転がって行ってしまっている。

 

「提督ー!」

 

「ぁぁ…。」

 

ドミナントが見えなくなった。

 

「提督が落ちちゃった…。」

 

「そんなこと言ってないであとを追うよっ!」

 

ショックを受けている羽黒を後にして、時雨たちが坂をうまく滑りながら追う。少しして、羽黒もあとを追う。

 

…………

竹林

 

「いたたたたた…。ここはどこだ…?」

 

ドミナントは下で落ち葉塗れの体を起こす。

 

「うっわ…。俺でもわかる罠の数々だな…。憲兵がいらない理由がわかった。」

 

あたり一面罠だらけなのだ。そこに…。

 

「提督ー!大丈夫かい!?」

 

時雨が来る。

 

「おう、時雨。俺は無事だ。…て、おい!止ま…。」

 

「あ…。」

 

ドガッ!

 

「ぐぼはぁぁぁ…!」

 

時雨が勢いが止まらず、ドミナントの腹にドロップキックが命中!

 

「ぁぁぁぁ!」

 

カチッ

 

ビュンッ!

 

ドミナントの足に縄がかかり、反対に吊るされる。

 

「た、助けてくれ…。」

 

「提督ー!」

 

そこに…。

 

「提督!無事ですか!?」

 

「大丈夫…じゃなさそうですね。」

 

「あはは。何その格好!パナイんだけど!」

 

「夕立たちも来たっぽい。」

 

「て、提督…。大丈夫…ですか…?」

 

皆が来る。

 

「あー…。そこら辺罠だらけだから、気をつけて…。あと、俺を助けて…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「わかったっぽい。」

 

ヒュンッ!

 

「!?」

 

夕立がそこらへんにある竹を思いっきり投げ、縄に命中させて切れ込みを入れた。

 

「…いや、待って。これって…。」

 

ブチブチ…。プチンッ!

 

ヒュー…グギッ!

 

「ぐはぁ!」

 

「「「提督ー!」」」

 

ドミナントは首から落ちて、変な音がする。良い子も悪い子も真似しないようにしよう。

 

「やっぱり…かー…!」

 

キボウノハナー

 

ドミナントはうつ伏せのままになる。

 

「提督…今ものすごく変な音がしたんだけど…。生きてるかな…?」

 

「死んだかもしれませんね…。」

 

「あははー。死んじゃった〜。あははははは。」

 

鬼怒が言うと…。

 

「死んでるのに笑う奴がいるか!?」

 

「「「あっ、生きてる。」」」

 

「当たり前だ!死んでたまるか!」

 

「提督ピンピンしてるっぽい。」

 

ドミナントは文字通り元気だ。

 

「なんか首が異常なまでに丈夫なんだよね…。なんでだろ…?」

 

覚えているだろうか…。ジナイーダとセラフにダブルで殴られて、首が鳴らしちゃいけない音を鳴らしたことを…。

 

「まぁ、いいや。それより、気をつけて。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「よくここまで辿り着いたね。」

 

「「「!?」」」

 

風が吹き、枯れ葉が舞ったと思ったら、そこに川内(改二)がいたのだ。

 

「普通はここに辿り着けないはずなんだけどね〜。」

 

川内はやれやれの手つきで言う。

 

「…ここの鎮守府の者か?」

 

ドミナントが聞く。

 

「そうだよ?」

 

「そうか…。助かった。鎮守府へ行こうにも、どこにあるかわからないからな…。道案内してくれるか?」

 

「やだ。」

 

「良かった。なら…て、えぇ!?なんで!?」

 

「そういう命令。罠を突破した侵入者が来たら、まず私が対応するの。それで、敵意があったらボコボコにして、敵意がないのなら歓迎なんだけど…。」

 

「こっち敵意ないんだけど。」

 

「第4佐世保だけ、案内もせず、ボコボコにもしないで、ただ近くで見守れって命令。」

 

「えぇ…。」

 

「…ごめんねっ!私たちの提督、ちょっと人間を信用するのが苦手で…。」

 

「そうか…。なら仕方がないな…。自力で探せということか。」

 

「そうだよー。」

 

「そっかー。」

 

「「「……。」」」

 

まだまだドミナントたちの訪問は続く。

…………

十分後

 

「このボロ家みたいなのがそう?」

 

「ボロ家言うな!」

 

深い森の中に、ボロボロの昔ながらの一軒家がある。どうやら、そこが第4呉鎮守府らしい。

 

「ここの所属の艦娘って、何人いるの?」

 

「私を含めて十人少しかな〜?」

 

「そっか〜。ところで、瀬戸提督っている?」

 

「確かこの時間は他の艦娘達と一緒に山菜採りに行ってると思うけど…。」

 

「「「山菜採り…。」」」

 

「?どうしたの?珍しい?」

 

「…いや、まぁ、する人はするからな…。でも、こっちはしないな…。」

 

「ふぅーん。」

 

「上がって待ってていいかな?」

 

「うーん…。許可がないからなぁ〜…。」

 

「じゃぁ、瀬戸提督がいる場所わかる?」

 

「確か東の方。」

 

「…どっち?」

 

「こっから見て左。」

 

「なるほど。」

 

「あっ、艦娘たちは上がって良いよ。」

 

「なんで!?」

 

「人間じゃないから。」

 

「差別感じるなぁ…。」

 

ドミナントは一人歩いて行った。

 

「…山菜採りって…。どこだろう?」

 

ドミナントは独り言を言いながら歩く。

 

……にしても、誰かから見られているよな。この森に入った時から。

 

ドミナントはどこからか見ている者を感じていた。神様がよくストーカーをするので、大抵のことは感じられるようになっている。

 

「……。面倒くさくなった。誰?見てるの?てか、瀬戸提督の場所教えて。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「やっぱり、これくらいは感じとることが出来ますか…。」

 

「神通さんでしたか。」

 

神通(改二)が竹林から姿を現す。

 

「それより、瀬戸提督知らない?」

 

「音が聞こえませんか?」

 

「…すまない。画面越しだと音がしないんだ。」

 

「…そっちから音楽が流れています…。」

 

「なるほど。行ってみよう。」

 

ドミナントは神通に方角を指され、その場所に行く。

 

『那珂ちゃんライブだよー!提督頑張れー!』

 

「……。」

 

那珂(改二)がライブをしている。その近くで何人かの艦娘と、提督と思われる人物がいる。

 

……いや、手伝えよ。

 

ドミナントは心の中で思うが、口では言わなかった。そして、提督と思われる人物の近くへ行く。

 

「「「…!」」」

 

近くにいた艦娘たちはとっさに作業をやめ、瀬戸提督の前に出る。

 

「…良い。下がれ…。」

 

瀬戸提督が言い、艦娘たちは下がる。

 

「あの…あなたが瀬『那珂ちゃん行きまーす!』?」

 

「…聞こえ『ハイハイハイハイ!』?」

 

「あなたが瀬戸提『手を叩いてー!』!?」

 

「…『ジャーンプ!』?」

 

「「……。」」

 

『ワンツーワンツー!』

 

……ごめん、那珂ちゃんうるさい。

 

ドミナントは思うと、瀬戸提督が那珂のところへ行き、話す。すると那珂はすぐにライブをやめた。

 

「改めて問う。お主は何者じゃ?」

 

……じゃ?

 

「じ、自分はドミナント大佐であります。第4佐世保鎮守府の提督をしております。」

 

「第4佐世保…。来たりや。拙者第4呉鎮守府提督、瀬戸 和弥なり。」

 

……なり?

 

ドミナントは首を傾げる。

 

……その名前でその言葉は変だろう…。

 

ドミナントは思い…。

 

「…この時代の言葉話せますよね?」

 

聞く。

 

「如何にも。少々困難極まるなれど。」

 

「そうですか…。その言葉の方がわかるので、その時代の言葉で…。」

 

「御意。」

 

「えー、このような手紙で呼び出したわけとは…?」

 

ドミナントは紙を見せる。

 

「うむ…。かのような戦果を挙げた貴様が如何ような人物だかを知りたくて呼び出し、ここに来てもらったでござる。」

 

「…それだけ?それだけのために命狙ったの?随分軽いな俺の命。」

 

ドミナントはゲンナリする。

 

「まぁそれより、まず気になったことがあるので良いですか?なんでそのような言葉何ですか?」

 

「……。」

 

何も言わずに歩き出す瀬戸提督。ドミナントも隣に並ぶ。

 

「何も言う気はない…ですか。」

 

「うむ。」

 

「で、何か分かりましたか?俺がどのような人物だか。」

 

「……。」

 

「…帰っても良いですか?」

 

「それは出来ぬ。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントは微妙な顔をする。

 

「いつまで居ればいいですか?てか、鎮守府に上がらせてくれるんですよね?俺だけ外でテントとか死んでも嫌なんですが…。」

 

「テント…?なんじゃそれは。」

 

「テントすら無いのか…。じゃぁ、マジのサバイバルじゃん…。」

 

ドミナントはゲンナリする。

 

「無理に此処を出ようとしても無駄じゃ。」

 

「罠だらけですからね!本当に!」

 

ドミナントは少し不機嫌だ。なぜなら、自分は今軟禁状態でもあるからだ。そのうちに着く。

 

「あっ、提督お帰りなさーい。」

 

「うむ。」

 

川内が瀬戸提督を迎える。

 

「大丈夫だった?あと少し遅かったら僕たちも行くところだったよ。」

 

時雨が心配した眼差しで言ってくれる。

 

「時雨…お前ってやつぁは本当に…いい子だなぁ…。」

 

ドミナントは撫でる。

 

「それと、みんなに言うことがある…。」

 

ドミナントはすぐに撫でるのをやめて、時雨たちを向き直る。

 

「俺はここに軟禁されることになりました…。皆んなは出入り自由みたいだから、先に帰ってていいよ…。」

 

「「「……え?」」」

 

時雨たちは今のを聞いて、困惑の極みになる。

 

「な、なんで!?」

 

「わかんない…。そこの提督に聞いて…。」

 

「やっぱり潰した方が良いっぽい…?」

 

「夕立、潰すのはやめような?あとで大和さん達が本気で怒るから。」

 

「この人数で、このレベル差…。十分に蹂躙できますが?」

 

「扶桑、君みたいな美人がそういう野蛮なことは言っちゃダメだよ…。」

 

「あれ?私は?」

 

「鬼怒、今その状況じゃないから。それに、君はどちらかというと可愛い系だから。」

 

「でも、提督がいないのはこちらの鎮守府にも少し影響します。」

 

「妙高さんは事務的っすね。」

 

「て、提督は…。夜とか中に入れて…もらえるのでしょうか…?…す、すみません!」

 

「羽黒、なんで謝る?あと、中には入れてもらえないみたい…。マジのサバイバルだよ…ホントに…。」

 

ギロリ…

 

ドミナントの一言を聞いて、時雨たちが相手を睨んだ。

 

「少し…ヤバイね…。」

 

「威圧だけでこれほどとは…。」

 

「顔はやめてーっ。キャハッ。」

 

川内型の皆さんは少し余裕がありそうだが、他の第4呉鎮守府の艦娘は耐えられなかったのか隠れている。

 

「う〜ん…。だけど、さすがにやりすぎじゃない?提督。人間不審?だとしても…。」

 

川内が瀬戸提督に向き、自分のペースで言う。ちなみに、威圧には少しも屈していない。川内自身の感想だ。

 

「…そなたたちを失せものにしたくはない。」

 

「優しい考えから来るのはわかるけど…。流石に軟禁で、外で野宿はダメでしょ。ならせめて帰らせることぐらいは許してあげなよ。」

 

「むぅ…。」

 

瀬戸提督は悩んでいる。

 

「よろしい中に入れてやる…。じゃが、貴様が不審な動きをした途端切り捨てる。」

 

「なんかものすごく理不尽!でも、ありがとうございます。瀬戸提督、川内さん。」

 

ドミナントが叫ぶが、中には入れてもらえそうだ。




文字数の基準が分からなくなりました…。出来れば、もっと先をこの話内で済ませたかったのですが…。ちなみに、第4佐世保鎮守府では、改二になれる艦娘は全員改二で、それ以外は全員改。レベルはMAX。
登場人物紹介コーナー
川内…せんだい。川内型軽巡1番艦。改二。第4呉鎮守府所属。夜戦が好きであるはずが、ここの鎮守府では夜戦騒ぎはなぜかしない。一応、この鎮守府の秘書艦。この鎮守府の忍者であり、よく竹林で術を使ったりしていると噂がある。
神通…じんつう。川内型軽巡2番艦。改二。第4呉鎮守府所属。この鎮守府の戦士で、川内がいない時の艦娘の副リーダー的存在。川内より攻撃力などが高い。この鎮守府の侍であり、瀬戸提督からもらった刀を大事にしている。竹林で技を磨いている。
那珂…なか。川内型軽巡3番艦。改二。第4呉鎮守府所属。この鎮守ではアイドルで、よくライブをしているが、艦娘の人数もあって、第4佐世保より人は集まらない。瀬戸提督がよしみに聞いてくれる程度だ。この鎮守府の芸者であり、瀬戸提督から芸の本を勧められるが、アイドルにしか興味がないため、読んではいない。…わけでもなく、提督から勧められたからという理由で、たまに芸を披露したりする。竹林で練習をするらしい。
次回!第128話「第4呉鎮守府」お楽しみに!


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128話 第4呉鎮守府

128話。残り72話で終わるでしょうか…?1日1投稿でも72日…。二ヶ月とあとちょっと。…いや、長いな…。
「独り言を呟いてどうしたの?」
ん?次のお別れはいつにしようかなって。
「…冗談でもやめてくれない?縁起でもない…。」
まぁ、その前に筆者が死んでしまったら、強制的にアレだけどね。
「…何かあった?」
…別に?
「…そう…。なんだかいつもと違う気がしたから…。」
…そうか。
「……。やっぱり何かあるでしょう?言いなさい。」
いや、ないったら。
「……。」
……。
「…そう…。私では力不足なのね。」
…ああ。現実の世界ではないからな…。現実に目覚めたんだよ…。
「…いつか、現実世界へ行ってやるわ。そして、あんたに一発ガツンと…。」
無理だよ。来れるわけがない。
「…この…!」
怒ったところで無駄だよ。全ては筆者のシナリオ通り。この文章も、そのシナリオの一つでしかない。
「……。…もういい…。」

「…最初から諦めている奴なんかに…。奇跡なんてものも…、無理な願いも叶うはずなんてない…。」
その言葉も、筆者が時間をかけて考えたものだ。
「違う!」
どこがだ?
「…違わないけど…!…筆者さん…、そんなこと考えて楽しい…?私は…楽しくないわ…。私になりきって…、筆者さんは書いている…。なら、私の気持ちもわかるでしょう…?」
……。わかるさ…。
「もう…こんなこと二度と言わせないで…。」
…ごめん。本当に…。
「でも…、逆を言えば…。私は筆者さんの気持ちも…わかるってことよね…。なら力になれるはずよ…。」
そうだね…。実は…。…いや、話さなくてもわかるか…。

あらすじ
前回、ドミナントたちは第4呉鎮守府へ行った。そこにあったのは巧みに仕掛けられた罠の数々。そこでドミナントたちはそこの所属の川内型の皆さんと、第4呉鎮守府提督の瀬戸大佐と会う。呼び出した大佐は、どうやらドミナントという者が興味深く、よく知りたいのだ。そのため、ドミナントは軟禁状態に陥るが、なんとか中に入ることは許可してもらい…。

「…そう…。それはアレね…。」
だろう…?
「本当に…バッカじゃないの!?そんなことで言っていたの!?考えて、涙を流した私が馬鹿みたいにじゃないの!!!」
え、えぇ…。でも、筆者のこの気持ちわかるでしょう…?
「うっ…。わかるけど、ものすごくアホらしいわ…。」
なんで気持ちが違うの!?
「…あー…。私になりきり過ぎているってことね。第3者の視点に変えることが出来る能力の持ち主ね。なら、普段から冷静でしょ。」
うっ…。
「つまり、その第3者の性格を決めて当てはめれば、私になり切ることが出来る…ということ?」
……。
「あたりね。まぁ、これからも小説続けなさい。…応援してあげるから。」
…うん…。…うん?んん!?これは考えて無かったぞ!?


…………

第4呉鎮守府

 

「内装広いんですねー。」

 

……なんで外から見た面積より、中の方が広いんだよ!?見かけより広いって言ったって、あんな家の中に20人近く入れるはずがない!

 

ドミナントは辺りを見回しながら思う。

 

「…驚いているね。まぁ、私も入った時驚いたけど。」

 

川内が言う。

 

「川内。あやつらに中を案内しろ。」

 

「りょーかい。じゃぁ、こっち来て。時雨たちは案内しといたから、ドミナント大佐だけだね。」

 

川内はなぜか張り切っている。

 

…………

居間

 

「この部屋が居間!真ん中気をつけてね。」

 

「いろりか…。」

 

…………

キッチン

 

「ここが土間だよ!ここでご飯とか作るの。」

 

「かまどにひしゃく…。」

 

…………

居間

 

「ここが座敷!」

 

「居間とどこが違うんだ…?畳の部屋だね…。」

 

…………

提督自室

 

「ここが提督の部屋!」

 

「机だけ洋風…。」

 

…………

トイレ

 

「ここが便所!」

 

「そんな張り切らなくて良いから…。てか、昔のトイレだな…。ここ…。落ちたら匂いが数ヶ月取れなさそう…。」

 

…………

玄関

 

「ここが玄関!」

 

「さっき通ったけど、やっぱり居間の隣だね。てか、居間と繋がってるよ…。」

 

…………

 

「ここが庭。夜は気をつけて。」

 

「やっぱり、あの家に20人は絶対に入らないだろう…。て、なんで夜がOUTなの?」

 

「あう…?」

 

「?ダメって意味だけど…。知らなかったの!?」

 

「初めて聞いたから。で、なんでダメかと言うと…。」

 

「ふむふむ。」

 

「出るから。」

 

「…?」

 

「化け物が出るんだよ。」

 

「化け物ならここにいる。」

 

「いや…。…うーん…。…まぁ、大佐も化け物だけど…。自分で言う?」

 

「みんなに言われ続けているからな。はっはっは。」

 

「目が死んでる…。」

 

…………

居間

 

「以上!紹介だよ!」

 

「なるほど。わからん。」

 

「なんで!?」

 

「第一、寝室はどこだよ…。」

 

「?ここだよ?」

 

「…敷くのか…。」

 

「うん。」

 

「…瀬戸提督は?」

 

「私たちと一緒に川の字で寝てるけど…。」

 

「うん。憲兵待った無し。…て、冗談はさておき、流石によその男がここの艦娘と寝たら危険だから夜は庭を貸してくれない?」

 

「えぇ…。」

 

「まぁ、出るらしいけど、妙な疑いをかけられるよりかはマシだ。」

 

ドミナントが淡々と言い、庭に出る。

 

「…地面から生えた竹なんとかしないとな…。寝ている最中背中がチクチクするから…。」

 

ドミナントは、少しボロい藁座を借りてそこに敷き、寝転がる。竹林の間から少しオレンジ色の空がよく見える。

 

「……。チクチクはしないけど…。なんかなぁ…。」

 

ドミナントは起き上がり、竹林から朽ちた竹を持ってきて、テントの骨組みのように刺す。

 

「あとは屋根だな…。…ん?いや、竹をもう少し持ってきてそこの落ち葉を…。」

 

ドミナントはテキパキと動く。

 

「…提督、何をやっているっぽい?」

 

「さぁ…。」

 

夕立と時雨がドミナントをえんがわから見ている。

 

「あそこにテントでも作るつもりかな…?」

 

「中に入れてもらえるって知ってるっぽい?」

 

「さっき入ってたから、知っていると思うんだけど…。」

 

「…夕立たちはいつまでここにいるっぽい?」

 

「…提督が帰るまで。」

 

「えぇ〜!夕立お腹空いたっぽい〜!」

 

「ボクもだよ…。本来ならおやつの時間だからね…。」

 

そして、そんなことを話しているうちに完成する。

 

「完成。ドミナントの昔ながらかもしれないテント。」

 

「何そのネーミングセンス…。」

 

今のがそのテント?の名前なのだから驚きである。そこに…。

 

「わっ!どうしたの?それ!?」

 

那珂ちゃんの登場だ。

 

「あぁ、これ?これは俺が作ったテント…。名付けて!昔ながらかもしれないテントだ!」

 

「ダサい…。」

 

「ひどいな。」

 

「それは提督のネーミングセンスっぽい…。」

 

「夕立、お前もか…。」

 

少しボロいテントを那珂ちゃんがまじまじと見て…。

 

「…ダメだぁ〜…。」

 

「ど、どうした?」

 

ドミナントはどこか不具合があるのか聞く。

 

「こんなの見ても、何も新しい曲を思い浮かばない〜…。」

 

「どうもボロくてすみませんねっ!」

 

那珂ちゃんはマイペースだ。

 

「まぁ、寝床はできたとして…。…暇だ!」

 

ドミナントはもぞもぞとテントの中に入る。

 

「…提督、入っちゃったね…。」

 

「中が気になるっぽいー。」

 

「そうだね…。」

 

「そうっぽい〜…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

二人は顔を見合わせる。

 

…………

 

……ふむ。中は中々悪くない…。ただ、虫がいないかどうか心配だな…。変な虫に刺されて痺れたり、毒でももらったら面倒だし…。蛇なんてもってのほかだ。床を少し高くするか…。

 

ドミナントは早速、中で寝心地を確かめている。すると…。

 

『やっぱり入ろうとすると、ドキドキするね。』

 

『提督もいるっぽい。』

 

外から二人の声が聞こえる。

 

……む?あれは夕立と時雨?中に入ろうって言った?……。悪くない…。…いやいやいや!ダメだ!もし、こんな狭い場所に3人で…しかも、時雨も夕立に挟まれているところを誰かに見られたら、間違いなく通報される…!こんな状況滅多になくて、惜しい展開だけど…!憲兵に連行されて、二度とみんなに会えない状況は嫌だ。…少しくらいなら平気か?俺が寝てて、勝手にひっついてきたってことにすれば平気か?いやいやいや!いかん!そんな展開…。す、捨てがてぇ…!

 

ドミナントは狭いテントの中、血涙を流しながら苦悩する。そして…。

 

バサァ

 

……来たか…!?

 

と、ドミナントは思ったが…。

 

「…貴様、こんなところで何をしておる…?もしや、これがてんと?というものか?随分朽ちておるのだな。」

 

「…はぁ…。瀬戸提督でしたか…。」

 

ドミナントはガッカリして起き上がる。

 

「…ため息をつかれるとは…。」

 

「えっ!?い、いえ!ため息など…。あは、あはははは…。」

 

「……。…晩飯だ。早うこられい。」

 

「はい…。」

 

ドミナントはテントから出て、居間へ行く。

 

…………

居間

 

ガツガツ…ムシャムシャ…パクパク…。

 

「お前ら…。違う鎮守府なんだから、少しは遠慮しろ…。俺の分やるから。」

 

ドミナントは、どんどん食べ尽くしていく夕立に注意する。現在、全員囲炉裏を囲って食事をしている。

 

「だって、お腹空いたっぽい〜!」

 

「あほう。何もかもを食べ尽くす気か?俺が恥ずかしいわ!」

 

ドミナントが注意していると…。

 

「良い。食べたけらば食え。」

 

瀬戸大佐はどうやら、人間以外には優しいらしい。

 

「すみません。瀬戸大佐。今度お詫びとして、資材送ります…。」

 

「……。」

 

瀬戸大佐は黙って黙々と食べる。川内が苦笑いして、ドミナントに目で謝る。

 

「…でも…。なんだか力が湧かないっぽいー…。」

 

「バーロウ。こんだけ食べといて、そんなことを言うな!」

 

「ぽい〜…。」

 

……まぁ、確かに何故だか食べた気がしないがな…。

 

ドミナントは不思議に思う。

 

「…すまぬ。よも、うぬらまにて来るとはゐのうござったからな…。大したものを出すことが出来ござらぬてすまぬ。」

 

瀬戸大佐は頭を下げる。そこに…。

 

「艦娘たちの食事って、いつも燃料とかが少し入っているけど、ここは全く入っていないんだ。100%の自然の味だから。そこにある水も、今日川から汲んできただかりだよ。ここ、海に面していないから、遠征もあまり出来ないし。」

 

川内が少し困った顔で言う。

 

「これ、お米と違うけど…。なんだろう?」

 

時雨が興味本位で聞く。

 

「稗じゃ。」

 

瀬戸大佐が当然のように言う。よく見てみると夕立以外、腹が減っているのにもかかわらず、あまり食事に手をつけていない。まずいからだ。一応言うが、ただの稗ではない。現代の調味料や香辛料一切なしの、稗100%だ。ここの所属の艦娘たちは黙々と食べている。

 

「…川内さん、海に面していないって言いましたよね?」

 

ドミナントが聞く。

 

「うん。そうだけど…。」

 

「じゃぁ、どうやって鎮守府が成り立っているの?」

 

「…実は、海に面していないだけで、月に数回海に出るよ?漁をしたり、深海棲艦の海岸警備とかで。」

 

「そうなんですか。」

 

「そうだよ。」

 

「…その時、瀬戸大佐って、町に降りたりしますか?」

 

「ううん。ずっとここにいる。大本営に行く時以外ここから出ないよ。行っても、すぐに帰ってくるし。ここから歩いて行っているから。」

 

「…あ、歩いて…?」

 

「そうだよ?」

 

「タクシーとか飛行機や電車やバスは…?」

 

「た、たくしー…?何それ…?」

 

「…もしかして、ここ基本的に社会から隔離されてる?」

 

「隔離?」

 

ドミナントは困惑した。

 

……ここは社会から隔離されているのか…。ここの初期艦は知っている筈だ。なぜ言わない?

 

ドミナントは第4呉の艦娘を見る。すると、第4呉の五月雨が目を合わそうとしない。

 

「…五月雨さん。初期艦の方ですよね?」

 

「……。」

 

五月雨はビクッとしたが、何も言わない。

 

「…瀬戸大佐、あなたですか?」

 

「……。」

 

大佐も何も言わない。

 

「「「……。」」」

 

沈黙が流れる。そこに…。

 

「ぷはー!お腹いっぱいっぽい〜!」

 

夕立はお腹が空きすぎて味覚を感じなくなっていたのか、全て食べきる。ドミナントたちの分まで。

 

「あら、私の分も食べてしまったのですか?」

 

扶桑が分かり切ったことを言う。

 

「…少しお散歩でもしますか。」

 

妙高さんが、提案して、扶桑、羽黒、鬼怒、夕立は動き出す。

 

「そ、そうだね。僕も行ってくる。」

 

時雨は早々に退室した。

 

「あっ、私も案内してくるねっ。」

 

川内が言うと…。

 

「那珂ちゃんはー、食後のダイエットで、歌ってくる!アイドルは体に気をつけないとー。」

 

那珂ちゃんも立ち上がる。

 

「私は、少し竹林の方へ…。」

 

神通も外へ出る。他の艦娘たちも次々と用を済ませに退室していき…。

 

「…あなたと五月雨、そして自分だけになりましたね。」

 

「「……。」」

 

ドミナントと瀬戸大佐、そして五月雨だけ残る。

 

「…いい加減、口を開いてください。これではまともに話すら出来ません。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「…すみません。今は話す気がないそうです…。」

 

五月雨がおずおずと言う。

 

「…いい加減にしてくれません?こっちも、自分の鎮守府があるんですよ?本来なら、今日もうすでにこちらの鎮守府で食事をしているころです。あなたのわがままに付き合っているんですよ?それなのに、何も言わないのは失礼の極みです。明日、こちらのことが信用できないのであれば、自分たちは帰ります。…というより、たとえ電話が圏外だとしても、優秀な仲間たちがもうすでに見つけていると思うので。」

 

ドミナントが言うと…。

 

『よく気が付きましたね。あと、優秀な仲間というのは、少し恥ずかしいです…。』

 

ドミナントの襟の中からセラフの声が聞こえる。

 

『軟禁状態と聞いて、行こうと思ったのですが、別に来なくても大丈夫的な雰囲気でしたので、口出しはしませんでしたけど…。』

 

「ああ。」

 

『わかりました。そちらに泊まるのですね。今、ものすごく騒いでいる神様にも言っておきます。明日、彼女から散々言われます。覚悟しておいてください。』

 

「したくはないが…。とりあえずわかった。」

 

『それでは。』

 

通信が切られた。

 

「以上です。自分からの話は。」

 

「……。」

 

「……。」

 

五月雨は俯いて、瀬戸大佐は黙ったままだった。そして、時が過ぎていった。

 

…………

 

「やっぱテントか〜。…川内さん、こちらの艦娘達が何か迷惑しないように見張っていてください。あと、うちの艦娘たちに何かしたら、たとえそちらの提督でも容赦しませんよ…。」

 

「大丈夫だって。もし、こっちの提督が何かしたら、蹴っ飛ばしてあげるから。」

 

「…川内さんがいうと、何故か説得力あるなぁ…。」

 

「にひひ。」

 

川内はいい笑顔をした。

 

「いい笑顔だなホント。…それじゃぁ、頼みます。」

 

「任せて。」

 

ドミナントはテントの中に入っていった。

 

…………

一時間後

 

ドミナントは考えていた。

 

……なぜここの艦娘たちに現代の社会のことを言わない?なぜ海に面していないのに鎮守府扱いなんだ?瀬戸大佐は何者だ?

 

ずっと考えていた。いい感じのものが浮かんだら消えてを繰り返している。すると…。

 

『大佐、起きていますか…?』

 

外から小さな声が聞こえる。

 

「…誰だ?化け物か?」

 

『違います。五月雨です。』

 

その言葉を聞き、ドミナントは外へ出る。

 

「五月雨…さん?どうかしました?こんな夜中に…。」

 

「…あの…。さっきはすみませんでした。」

 

小声で話し、五月雨が頭を下げる。

 

「いいです。それより、こんな夜中にそれだけを言うためなわけがないですよね。」

 

「はい…。…ここだと、少しアレなので、こちらに…。」

 

五月雨が案内する。

 

「あっ、そこ罠があります。」

 

「わかりました。」

 

ドミナントたちは進んで行き…。

 

「…ここなら平気でしょうか…?」

 

五月雨が元の声量で話す。

 

「で、どうかしましたか?」

 

ドミナントも元の声量で言う。

 

「…すみません。提督が失礼を…。」

 

「いや、それより、それだけじゃないよね?呼び出したの。」

 

「はい…。」

 

「…話す気になったんですよね?何故、瀬戸大佐が何も言わない理由。外の世界と隔離する理由、海に面していないのに鎮守府扱いされている理由。瀬戸提督が何者なのか。」

 

「はい。一つずつ言います。…驚かないでください。」

 

「大丈夫です。自分、愉快な仲間に会った時ほどは驚かないと思うので。」

 

「なら良かったです。…一つ目の何も言わない理由は、人間不審なのは知っていますよね?」

 

「はい。」

 

「実は、提督が学校に通っていた頃に関係します…。でも、私はそこまでしか言えません。提督自身が言うべきことだと思うので…。でも、ちゃんとした理由があります!」

 

「気になりますね。」

 

「二つ目の、外の世界と隔離する理由…。それは人間不審で、私たちを誰にも…、何者にも寄せつけたくないからです…。」

 

「極度の過保護か?」

 

「三つ目と、四つ目は同じ理由です…。」

 

「ふむふむ。」

 

「提督は…。実は…。平家の家系の純血です…。」

 

「ふむふ…て、えぇ!?あ、あの源氏に滅ぼされた!?」

 

「はい。その平家です。」

 

「…マジかよ…。だがその『瀬戸』という苗字は、どちらかと言えば源氏側の苗字だ。よくよく考えれば、信じられんな。」

 

「はい…。普通ならそういう反応です…。しかし、私がここに着任した時、ちょうど鎮守府の血液検査の時期があり…。」

 

「…そこでDNA検査したらドンピシャだったと…?」

 

「はい…。おそらく、その苗字はどこからか、昔生き延びるために偽名を使った人のものだと思いました。」

 

「いや、どっから平家のDNAを採取したんだよ。」

 

「いえ、大本営でその血液検査をしたのではなくて、たまたまその時、平家の研究している人が息抜きに、冗談で一つ一つ検査したらしくて…。ちなみに、その人平家の骨からDNA採取したらしくて。」

 

「変態だなそいつ。偶然とは恐ろしいもんですね…。」

 

「はい…。」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

「あれ〜?ドミナント大佐〜、自分の艦娘の心配はさせといて、うちの艦娘を奪っているんじゃないよね〜?」

 

川内が夜の闇から姿を現す。

 

「違います。…そうだ!川内さんにも理由を聞いてみるか。」

 

「?」

 

「川内さん、瀬戸大佐の家系って知ってる?」

 

「知ってるよ?」

 

「そうですか…。」

 

「…どうして、あなたに心を開かないのかって感じね。」

 

「はい…。」

 

「…人間不審…?ってやつは、必ず理由があるんだよ。そして、それを直すには時間が必要なんだよ。もう少し待ってあげてくれないかな…?」

 

川内はドミナントに頼む。

 

「…わかりました。川内さんが言うなら、明日の夕方までいます。」

 

「良かった〜。…で、なんで私の言うことを少し聞いてくれるの?」

 

川内が聞いてくる。

 

「うちの艦娘たちに優しくしてくれたからだ。」

 

ドミナントは迷いなく言った。

 

「…ふぅ〜ん。結構仲間思いなんだね。」

 

「はい。」

 

「…まぁ、うちの提督も負けてないかもしれないけど。」

 

「そっすか。」

 

ドミナントは短く呟いた。




文字が長い割に進んでいない!物語の味噌が伝わらない!テントの話だった!AC要素どこ!?…の、四拍子で荒れそうですね。でも、考えてみてください…。
(´筆`)「だっていきなりテントが現れたりしたら変じゃん。」
(´筆`)「だって、いきなり次の日で、帰りますってなったら変じゃん。」
登場人物紹介コーナー
時雨…良い子。
夕立…可愛い。
扶桑…良い人。
妙高…頼れる人。
川内…第4呉鎮守府。飛び込む人。
神通…第4呉鎮守府。見守る人。
那珂…第4呉鎮守府。アイドル。
瀬戸大佐…第4呉鎮守府の提督。平家の家系(純血)であり、完全に信用するまで、何も話さない。武士っぽい話し方が特徴的。だけど、割と優しい人。
五月雨…この鎮守府の初期艦。川内たちが建造されてからというものの、あまり構ってもらえず、結構寂しい思いをしている。明るく振る舞ってはいるが、そのことで割と考え込んだりする。
次回!第129話「昔の生活」お楽しみに!


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129話 昔のくらし

129話ですね〜。
「そうね。」
今回も第4呉鎮守府編が長くなりそうですね…。この先の物語にも影響しますし…。
「計画はすでに出来上がっているのね。」
少し未来までだけどね。暗躍者や、深海棲艦はまだだけど。…でも、AC世界からの住人って少なすぎる気がするんですよね〜。
「これ以上化け物を増やす気…?」
ドミナントたちはすでに化け物扱いなんだ…。
「まぁね。だって、あんな人たち化け物以外なんて言うの…?私が10人いて、一気にやっつけようとしても、絶対に敵わないし…。」
だってその方がかっこいいじゃん。…て、それよりもあらすじ
「かっこいいって…。」
では、あらすじをどうぞ!

あらすじ
仕方ないわね…。前回、第4佐世保鎮守府は大騒ぎだったわ…。提督がいないせいで統率がとれないし…、セラフさんは自室にこもったままだし…、ジナイーダさんはなぜか自主練場にずっといるし…、主任さんは飛び回るし…、ジャックさんは提督さんがいないことを良いことに、中に店を広げようとするし…、神様なんて…もう…。大騒ぎも良いところだったし…。


…………

第4呉鎮守府 庭

 

ゴソゴソ…

 

「ん〜。…ん?なんでテントが膨らんでいるんだ?」

 

ドミナントは首を傾げる。さっきまで、ここの所属の五月雨と話し、ここの提督の瀬戸大佐のことがわかり、テントに戻ってきたのだ。五月雨と川内はこっそり鎮守府という名の家に入っている。

 

「パンパンだな…。…もしや、野生の動物か…?」

 

ドミナントが音を立てずにテントに近づく。すると、中から声が聞こえる。

 

『提督が帰ってきたらサプライズっぽい…。』

 

中から夕立の声が聞こえる。

 

『静かにしないとね…。』

 

夕立だけでなく、時雨も…。

 

『あ、あの…。本当に…ここにいて大丈夫なんでしょうか…?』

 

羽黒の声も聞こえた。

 

『まぁ、さすがにこれで怒鳴られたらパナイけど…。』

 

鬼怒が言う。

 

『まさか、そこまで心が狭い人ではありませんよ。』

 

妙高の、ドミナントを信頼した声が聞こえる。

 

『ですが…流石にキツいですね…。』

 

扶桑の声まで…。

 

……こいつら…。なんでいるんだよ…。俺が入れねぇじゃねぇか。てか、絶対に6人は入らないはずだ…。てか、壊れる。

 

ドミナントは思い…。

 

……根比べするか?

 

えんがわに座る。

 

…………

十分後

 

……喉が渇いた。お茶もらうか…。

 

『提督遅いっぽいー…。』

 

『やっぱり、少しキツイね…。』

 

…………

二十分経過

 

……う〜ん…。まずくもなければうまくもない…。自然の茶の味だな…。

 

『少し体制崩しても良いかな…?』

 

『いえ、おそらくテントが壊れます…。』

 

…………

三十分経過

 

……今頃第4佐世保何してるかな〜…。深夜アニメどうなったのかな…。

 

『喉が渇きましたね…。』

 

『お、遅い…ですね…。』

 

…………

さらに三十分が経過。

 

……いい加減入ってやろうかな…。

 

『うー…。』

 

『もう少しで来るはずだから…。』

 

『提督遅くてマジパナイんだけど…。』

 

『この体制…。我慢できるでしょうか…?』

 

『山城…どうしているかしら…?』

 

『せ、狭くて痛いです…。すみません…。』

 

中がゴソゴソ忙しなく動く。

 

……でも、少し面白いからそのままにしとくか。

 

ドミナントはサディストだ。

 

…………

十分後

 

……入るか。

 

中がぎゅうぎゅう詰めで、テントが壊れそうだ。

 

バサァ

 

「ワー、ビックリシ…。」

 

「「「遅いっ!」」」

 

ドミナントが入ってくるなり怒られる。

 

「…怒られた…。驚かされたのに怒られた…。」

 

艦娘がぞろぞろと出て行き、ドミナント一人となり、寂しい思いをした。

 

…………

翌早朝

 

「グー…。削り切るとは…。グガー…。」

 

ドミナントが寝ていると…。

 

『……。』

 

「…?」

 

外から音が聞こえる。

 

……まだ日が昇っていないのに誰だ?艦娘か?それとも化け物か?

 

ドミナントはテントの外へ出る。

 

「ハッ!ホッ!」

 

そこにいたのは竹刀を持って素振りしている瀬戸大佐がいた。

 

「…おはようございます…。素振りですか…。夜明けだというのに…。」

 

「ハッ!ホッ!」

 

「…無視ですか…。…ん?もしかして、川内さんが出るって言ってたのって…。この音を聞いたのかな?」

 

ドミナントは思う。

 

「ハッ!ホッ!」

 

「…目も覚めましたし…。テント片付けますね…。て、なんで!?」

 

「?」

 

ドミナントは驚く。

 

「…よもや貴様…。」

 

「ち、違います!知りません!」

 

同じテントの中に羽黒が寝ていたのだ。

 

「…さふか…。貴様はさふゆうきゃつか…。」

 

「誤解だぁぁぁ!羽黒!起きて!誤解を解いて!」

 

ドミナントが必死に起こす。

 

「スー…。…むにゃ…?提督…?気持ちよかったです…。」

 

「ねぇ、何言ってんの!?」

 

「やはり…。」

 

「違います!!!誤解です!羽黒!ちゃんと起きて!説明して!なんでそうなってんの!?」

 

ドミナントは必死だ。そこに…。

 

「朝からうるさいっぽい〜…。!?」

 

夕立が起きだし、驚く。

 

「て、提督!!どういうことっぽい!?」

 

「誤解を解かなきゃいけない相手が増えた!?違う!俺は無実だ!」

 

「…貴様…。」

 

ドミナントを疑う相手が増える。

 

「夕立さん…?少しうるさ…。」

 

「何事…?なんの騒ぎ…。…て…。提督…?どういうことかな…?」

 

「なにそれ!パナイんだけど!あはは!」

 

「……。」

 

ドミナント所属の艦娘たちが起き出し、全員が盛大に思う。

 

「ど、どういうことかな!?」

 

「グエッ…!し…、時雨…。首…絞ま…て…る…。」

 

「提督はみんなに愛されているのですね。」

 

「妙高…さ…。そんな…こと…、言って…ない…で…助…け…て…。」

 

ドミナントは時雨に首を絞められて、時雨の腕を何度もタップしている。

 

「…あ…。」

 

ドサッ!

 

「ゲホッ!ゲホッ!…殺す気か!?」

 

「ごめん…。つい我を忘れて…。」

 

「…まぁ、この状況だと仕方ないな…。」

 

ドミナントは起き上がる。すると…。

 

「どういうことっぽい!?」

 

「ちょ…ヤメテ…。揺らさない…で…。吐いちゃう…。」

 

時雨が終わったと思ったら夕立に思いっきり揺さぶられる。

 

「あはははは!あは!あはははははは!」

 

「鬼…怒…。覚えて…ろ…!…オエ…。」

 

ずっと笑いこけている鬼怒を、揺さぶられたままのドミナントが睨む。

 

「羽黒さん。起きてください。提督がピンチです。」

 

「…提督が!?」

 

扶桑の言葉に、羽黒は無我夢中で起き出す。

 

「提督!大丈夫ですか!?」

 

「あ…、あぁ…、大丈オエッ!…夫だ…。ハァハァ…。」

 

「と、とてもそうは見えませんけど…。」

 

「それより…、俺が吐く前に…、どうしてここにいたのか…教エッ…!…てくれ…。」

 

ドミナントは途切れ途切れだが、伝える。夕立にまだ揺さぶられている。

 

「は、はい。それなら…。」

 

…………

前日夜

 

ドミナントを驚かして1時間くらい経ったあと。

 

「…眠れ…ない…。」

 

羽黒は夜中に起き出す。いつもと違う場所なので、寝付けないようだ。

 

「……。」

 

あたりをキョロキョロ見回すが、誰も起きておらず、ましてや落ち着く場所もなかった。

 

ソロ〜リ…。

 

「……。」

 

羽黒はドミナントのところへ行くべく、足音を立てずにテントに行く。

 

『グー…。化け物…め…。グガー…。』

 

……ど、どんな夢を…?

 

羽黒は思いながらも、テントに入り、空いているスペースで横になる。

 

……ここなら…落ち着け…そう…です…。朝…朝になる前に…戻れ…ば…。

 

そのまま寝てしまった。

 

…………

 

「い、以上のことから…、私も提督も、何もしていません!」

 

「だろ!俺は無実だったろ!?」

 

ドミナントは言う。

 

「「「う〜ん…。」」」

 

「なんで納得がいかない!?」

 

怪しい目でドミナントを見る艦娘たちにドミナントがツッコんだ。

 

…………

 

「目が覚めちゃったよ…。」

 

「同じです…。」

 

「朝からあんなことになればそうなるよわね…。」

 

「眠い…。」

 

「今日も元気に行こう!」

 

「鬼怒は元気ね。」

 

「散歩するっぽい!」

 

「夕立もか…。」

 

ドミナントたちはすっかり目が覚めてしまい、ぐたっとしている。すると…。

 

「川に水を汲んでこなくちゃ…。」

 

第4呉の駆逐艦が棒の両端に紐を使って桶をくくりつけて肩に持つ。

 

「……。」

 

……あんな小さい子が頑張っているのに、ほとんど居候の俺が手伝わなくて良いのか?いや、良いわけないな。

 

ドミナントが立ち上がり…。

 

「水汲み?私が行ってきます。」

 

ドミナントが言う。

 

「えっ?いいわよ。別に。」

 

「いえ、やらせてください。…というより、ほぼ居候の自分が何かやらないと気が引けちゃうんです。」

 

「そ、そうなら良いけど…。…変わった人ね。」

 

「…川はどちらの方向ですか?…えーっと…。」

 

「神風型駆逐艦、一番艦の神風よ。川は北の方よ。」

 

「神風さんですね。川は北ですね。わかりました。」

 

…………

道中

 

……にしても、重い…。しかも川まで長い道のり…。何も入っていない桶でこれなら、帰りどうなるんだ…?

 

ドミナントは思った。長年のデスクワークで体力がないのだ。

 

「あっ、あった…。あの川か…。」

 

川幅が少ししかない川を見つける。

 

「…きれいだな…。雨水が地面に染み込んで、綺麗になった水が流れているのか…。」

 

ドミナントは桶で水をすくう。

 

「…全然たまらないな。」

 

時間がかかりそうだ。

 

…………

三十分後

 

両方の桶に満タンに水が溜まる。

 

「…さて、行くか。…て、重っ!?」

 

ドミナントは持ち上げるが、重くて動けない。

 

……こんなのをあんな小さな子がやっていたのか…。昔は随分苦労したんだな…。

 

桶を半分引きずりながら歩く。

 

……重い…。

 

…………

 

「か、帰りました…。」

 

「あら、ありがとう。助かったわ。」

 

「は、はい…。」

 

ドミナントは居間に座る。

 

……ところで、時雨たちは…?

 

…………

竹林

 

「…そこよっ!」

 

「はいっ!」

 

ヒュンッ!

 

「…逃げられちゃいましたね。」

 

「はい…。」

 

神通に言われ、時雨が少し落ち込む。

 

「…こっちもかからなかったっぽい…。」

 

「ダ、ダメでした…。すみません!」

 

「こちらはウサギを二羽。」

 

「イノシシが罠にかかりました。」

 

妙高と扶桑が言いにくる。

 

「これで、今夜のお肉は手に入りましたね。」

 

「疲れたっぽいー…。」

 

「普段からこんな疲れることしているんだ…。」

 

「今がどれだけ恵まれているのか分かりますね。」

 

…………

 

セッセッ…

 

「……。」

 

ドミナントはまたも、働いている小さな駆逐艦を見つけてしまう。

 

「…手伝いましょうか?」

 

「何だい?」

 

薪を背負って外へ向かおうとしている艦娘に言う。

 

「いや、それを手伝おうと…。」

 

……外の倉庫へ入れるのだろう。それくらいは想定の範囲内だよぉ。

 

「キミ、手伝ってくれるのかい?ありがとう!僕は神風型駆逐艦四番艦、松風だ!」

 

「あ、そうなんだ〜。で、これを持ってどこへ行くんですか?」

 

「裏庭だよ。」

 

「持ちます。」

 

「アハっ。キミ、優しいんだね。」

 

「第4佐世保提督、および艦娘が居候の身なので。何もしなくて、ただ飯ぐらいなのは気が引けますから…。」

 

「…結構苦労しているんだね…。」

 

…………

時雨たちの場所

 

「よしっ!食らいついた!仕留めてやる!」

 

少し森の深いところで、大型の鹿が罠にかかり、暴れている。

 

「ちょ、待ってください!朝風さん、その体格差でそれは無理です!」

 

神風型駆逐艦、二番艦の朝風が突っ込もうとしているのを神通が必死で止める。

 

「随分大きいっぽい…。」

 

「うん…。僕たちの二倍ほどだね…。違う世界にでも来ちゃったのかな…?」

 

夕立と時雨が話す。すると…。

 

「……。」

 

カチャ…。

 

神通が前に出て、腰にあった刀を手に取り、鞘を抜く。ちなみに、この刀は瀬戸大佐から譲り受けた物だ。

 

「…お命頂戴いたします…。」

 

ヒュンッズバァ!

 

見事な太刀筋で○○○ね、地面に○が転がる。(少しグロいので○にしました。)

 

「すごいっぽい〜…。」

 

「艦娘自身のレベルにはカウントされない強さだね。…もしかしたら、うわべだけで、本当のレベルは僕たちと同じくらいかもね。」

 

時雨が分析しながら言う。

 

「そうですね。私たち艦娘は海で戦って、練度(レベル)が上がります。しかし、海に出れず、艦娘としては練度が低いかもしれませんが、強さでしたら、私たちと同じかもしれませんね。」

 

妙高が付け加える。

 

「……。」

 

神通は黙ったままだ。朝風は軽く目を閉じて、手を合わせている。両者とも殺した鹿の冥福を祈っているのだ。ちなみに、神通は返り血も浴びていない。

 

…………

裏庭

 

「ヒィ〜…。まさかこれなんて…。」

 

「どうしたの?手伝ってくれるんでしょ?…疲れちゃった?」

 

「薪割りって、結構体力使うんですね…。」

 

ドミナントたちは薪を割っている。

 

「これがないと、お風呂に入れないし、ご飯も作れないから、結構重要なんだよ。」

 

「そうなんですか…。」

 

ドミナントは話しながらも斧で薪を割る。

 

「頑張って!あと50本!…25本しか割ってないけど…。

 

「ヒィー…。」

 

…………

 

「予期せぬ食料も手に入りましたし、帰りましょう。」

 

「はい。」

 

神通たちが帰ろうとする。まだ空は薄青いが、もうすぐ日没時間だ。

 

「…か、帰り道って…。どっちでしょうか…?」

 

羽黒がおどおどしながら言う。

 

「安心してください。ここは初めて来ますが、太陽を基準に歩いていますので、太陽が沈む方向へ行けばなんとかなります。」

 

神通が言う。

 

「こちらです。」

 

「えっ?こっちから来たのに?」

 

「えっ?」

 

「「「えっ?」」」

 

神通と朝風が違うことを言い、時雨たちは困惑する。

 

「ですが、太陽が沈む場所を背に歩いてきたのですから、こちらで…。」

 

「でも、太陽見えないよ?」

 

そう、ここは森の中なので、木が生い茂っていて太陽が見えない。

 

「空の明るい方向が太陽がある場所です。」

 

「…まぁ、そうね。その方が信用できるわね。」

 

朝風は神通に従う。

 

…………

第4呉

 

……薪割り終わった…。でも、まだ働いている駆逐艦が二人いるんだよな…。やるしかないよな…。

 

ドミナントは、掃除をしている一人と、ご飯を作っている一人を見る。

 

「ここはこうして…。春姉さん、これはどこにおけば…。」

 

「どうかしました?それは、そこの掛け軸の隣に置いておいてください。」

 

掃除している艦娘が料理をしている姉さんに言う。

 

「…そこのお二人さん、お手伝いしましょうか?」

 

ドミナントが言う。

 

「…そう?なら、天井の手の届かないホコリを落としてくれませんか?…あぁ、もちろん料理のところはやめてくださいね?」

 

「はい。」

 

パタパタ…

 

ドミナントは掃除をしている艦娘に言われ、天井のホコリを落としていく。

 

「このお茶碗をそこに置いてくださいません?」

 

「わかりました。」

 

ドミナントは働く。そのうちに掃除が終わり…。

 

「終わりました。」

 

「ありがとうございます…。」

 

「ところで、あなたの名は…?」

 

「神風型駆逐艦、旗風。…です。そちらで料理しているのが同じ神風型駆逐艦、春風です。」

 

「自分、ドミナント大佐であります。」

 

「知っております。」

 

「…そうですか…。」

 

ドミナントは春風に近づく。

 

「何か他に手伝えることは…?」

 

「そうね…。なら、そこの石をどかして、中から大根を…。」

 

「あーっと!大丈夫だよ〜。私がやるから。」

 

春風が言おうとしているところに、川内がやって来る。

 

「川内さんがやりますか…?」

 

「うん。色々ありがとうね。…ついでに、裏で収穫している五月雨の手伝いをしてくれるとありがたいんだけど。」

 

「…わかりました。」

 

…………

 

「う〜ん…。」

 

五月雨が困った顔をして、畑を見ている。

 

「五月雨さーん。」

 

ドミナントがやってくる。

 

「あっ!そこ踏まないでくださいね!」

 

「うぉっと!?」

 

ドミナントはギリギリで避ける。が。

 

ガッ!

 

「うぉー…。」

 

ドミナントの勢いが止まらず、石にこけて盛大に飛ぶ。

 

ドサッ

 

「…ぐぁっ!」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

五月雨が駆け寄ってくれる。

 

「だ、大丈夫…で…す…。」

 

「そうですか。なら良かったです!早速、手伝って欲しいんですが…。」

 

いや、鬼か。

 

「な、なんで…しょう…?」

 

「実は、これを収穫したいんですが…。」

 

五月雨は大根を見せる。

 

「虫がたくさんついていて…。」

 

ドミナントは苦笑いをせざるを得なかった…。

 

「…こいつの生息範囲はどこまでなんだ…?いくら繁殖力が強くても…。」

 

「知っているんですか?私、初めて見て…。」

 

「あっ!い、いえ。知りません。…おそらく、誰かが寝食を惜しんで作った人がいるのでしょう。」

 

ドミナントは知らないフリをする。もし、自分の鎮守府にこれを連れて来た人?神?がいると知られたら面倒だからだ。だが…。

 

「…作った?」

 

五月雨が言葉の違和感に気づく。

 

「い、いえ!作ったではありません!…つ、つ…。!。疲れた!疲れたです!」

 

「…?誰かが寝食を惜しんで疲れた人がいる…?…どういう意味ですか…?」

 

「つ、つまり…。」

 

「あっ!そういう意味ですね!」

 

「え…。えっ?」

 

「寝食を惜しんで疲れるまでこの大根を作った人の努力に惹かれて集まって来たというわけですね!」

 

「えっ。あ…。うん。そゆこと。理解してくれたかな?」

 

「はいっ!」

 

……勘違いしてくれた。あぁ、良かった…。

 

ドミナントはその虫を追い払って収穫した。

 

…………

森の奥

 

「…ここ、さっき通ったんじゃない…?」

 

時雨の一言で、全員が立ち止まる。

 

「…太陽の沈む向きって言っても…、空が暗くなってるっぽい…。」

 

夕立が空を眺める。

 

「…だ、大丈夫です。この道で合っています。」

 

「……。」

 

「いえ、ここは通りました。道に迷わないために、この木に印をつけていたので…。」

 

扶桑が言う。だが、言わなかった方が良かったのかもしれない。真実を理解すると同時に、迷ったという事実を理解させるからだ。

 

「…ま、迷ったのですか…?」

 

羽黒がその現実を知り、少し言葉が震えている。

 

「羽黒、取り乱しちゃダメよ。今必要なのは、冷静な判断力。一人でも大きく取り乱したら、全員が取り乱すわ。」

 

妙高はしっかりと言って、事態をどうするか考えている。

 

「…やっぱり、私の言葉があっていたんじゃない!」

 

だが、この状況になって、冷静のままにいられる者は少ない。ましてや、経験を積んでいない駆逐艦なら…。

 

「だから、さっきあっちに行っていれば…。」

 

朝風が言う。迷ったことが恐怖なのだろう。そして、まず最初に起きるのが他人を責める行為だ。冷静な者は何も言わない。

 

「ですが、太陽が沈む方向を背にこちらに向かっていたことは知っております。ならば、なぜこんなことになったのでしょうか?」

 

妙高が言う。

 

「逆に覚えていたから?」

 

時雨が聞く。

 

「いえ、違います。神通さんはともかく、私も一応確認しておきました。」

 

「なら、鎮守府自体が移動したっぽい?」

 

「それは限りなく可能性が低いでしょう…。」

 

「あっ!わかった!違う世界に来ちゃったんだ!」

 

「鬼怒さん、真面目に考えていますか?」

 

時雨以外のひどい答えの中…。

 

「あっ!今度はわかった!」

 

時雨がまた理解する。

 

「今日は満月。つまり、満月の光と太陽の光を勘違いしちゃったんじゃないかな?ここは深い森。ならもちろん、空は木の葉を通して途切れ途切れにしか見えない。満月の光は、太陽の光を反射しているわけだから、間違えても不思議じゃない。」

 

「時雨さん。ありがとうございます。その可能性が一番高いでしょう。ようやくわかりました。」

 

時雨の華麗な推理により、問題が解決する。

 

「…ですが、この状況を打破できる策が思い当たりませんね…。」

 

「「「……。」」」

 

妙高の無慈悲な一言に、全員が黙ってしまった。




長い…。これを当分すると、約3話分です。1日遅れのため、許してください。
登場人物紹介コーナー
神風…神風型駆逐艦、一番艦。真面目で勝ち気な性格。妹や、提督に触られるのは嫌で、潔癖。仕事はキビキビとこなすタイプ。レベルは低い。羽黒とは艦だった頃に交流があり、羽黒の前では元気にしているように見せている。提督とは親しい関係。
朝風…神風型駆逐艦、二番艦。勝ち気で高飛車な性格。ここでは基本的に稗か粟の飯だが、麦飯に思いがあり、瀬戸大佐もその思いに応えて、月に一回ほど麦飯の時がある。面白い特性もあり、日没以降は活力を失う。
春風…神風型駆逐艦、三番艦。物静かでお淑やかで、深窓の令嬢並みの気品さと儚さがある。「ハイカラ」などという言葉を使うあたり、大正時代で時が止まっているように感じる。家事は全般得意。鎮守府のために身を捧げると言っていたりするが、かなりの死亡フラグなのを気づいていない。
松風…神風型駆逐艦、四番艦。クールで飄々的で、中性的な性格。ボクっ子。提督とは気さくな関係。朝風とはよく張り合っているが、仲はよろしい。
旗風…神風型駆逐艦、五番艦。真面目で礼儀正しく、お淑やか。末っ子気質。人の手伝いを積極的にしようとするが、中々テキパキとこなせない。提督のことはかなり慕っている。ちなみに、姉妹艦のことを○姉さんと呼ぶ。例)神風→神姉さん 朝風→朝姉さん
夕立…可愛い。
時雨…可愛い。
鬼怒…可愛い。
羽黒…可愛い。
妙高…カッコいい。
扶桑…おぉー。
ドミナント…提督。
お茶…まずくもなければうまくもない。ただのお茶。お茶以外に例えられないただのお茶。
瀬戸大佐…提督。
神通…侍。
川内…忍者。
水…きれいな水。そこらの自販機で売れば、ペットボトル一本75円近くになる。
薪…割られるためだけに運ばれた。二つに切る。75本で約3日分。
大鹿…体長約2メートル。大きい。だが、この森の主はもっと大きい。
刀…瀬戸提督の代々家系に継がれてきた名刀。…つまり…。
予期せぬ食料…鹿肉。
ホコリ…約2ヶ月分と思われる。
お茶碗…竹で作られていると思いきや、木で作られていた。
石…漬物石。
太陽…太陽系の中心の惑星。
生い茂った木…5年くらい前から人も踏み込まず、手入れがされてなさそう。
虫…AMIDA
満月…月の影が見えない状態。
次回!第130話「迷子」お楽しみに!


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130話 迷子

130話。
「もう130話行ったのね。早いわねぇ。」
そうだね。
「…何?」
いや、少しね〜。
「…また面倒なこと?」
いや、少し長期休暇をあげようと思うんだ。
「?どうしたの?急に。」
いや〜、少しここで働いているからね〜。
「なら、お言葉に甘えさせてもらうわね。」
そうだね〜。じゃ、あらすじ頼むよ。
「わかったわ。」

あらすじ
前回、第4佐世保鎮守府に封筒が届いたわ。提督さんがいないため、執務室の机の上に置きっぱなしだけど…。何が入っているのかしら?


…………

第4呉 夜

 

「「「……。」」」

 

囲炉裏を囲んで食事が並べられている。全員が揃うのを待っているのだ。

 

……時雨たち遅いな…。

 

ドミナントは思い…。

 

「…あの…、時雨たち知りませんか?」

 

聞く。

 

「それがしの仲間と共に狩りへ行っとる。」

 

瀬戸大佐が言う。

 

「答えてくれるんですね。」

 

「当たり前じゃ。左様なことは知らせござらぬてはならないであろうからな。」

 

「そっすか。」

 

ドミナントは短く答えた。

 

……気まずい…。まだかな?

 

ドミナントが思っていると…。

 

「けふは嫌に遅いでござるな…。」

 

「…もしかして、迷ったとか…。」

 

「其れはござらぬ。神通も共にいるのでござるぞ。」

 

「そっすか。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「…もしかして、あの人影って…。」

 

川内が呟く。

 

「川内さん、何か知っているんですか?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「うん…。実は私が竹林でドミ…。ゴホン、みんなの様子を見ていた時に、奥に行く集団がいたんだよ。」

 

川内は何か言いかけたが、瀬戸大佐が横目で見ているのがわかって言葉を言い直す。

 

「いや、神通がいたから大丈夫かなぁ〜って思ったんだけど…。…この時間帯に奥の森は迷うよ。」

 

川内が言う。

 

「…心配になってきたわ…。」

 

神風が言う。

 

「…いや、あと十分経とはも戻らのうござったら、探しに参ろう。」

 

瀬戸大佐が言う。そして、探しに行った。

 

…………

奥の森

 

「疲れたっぽい〜…。」

 

「頑張って。あと少しかもしれないから。」

 

歩きながら弱音を吐く夕立に時雨が宥める。

 

「さっきからそればっかりっぽいー…。」

 

夕立は不満だ。

 

「……。」

 

神通は歩きながら考える。

 

……こうなったのも私の責任…。それに、このまま闇雲に歩いても拉致が飽きません…。皆さんも疲れた顔をしています…。…仕方ありませんね…。

 

神通は思い…。

 

「皆さん、聞いてください。」

 

みんなの前で振り向き、言おうとする。が。

 

「歌なら聞かないっぽい。」

 

「突然のカミングアウト!?」

 

「諦めてはいけません!必ず道は開けます!」

 

第4佐世保の艦娘が勘違いする。

 

「違います…。このまま闇雲に歩いても問題が解決しないと思いました。こうなったのも私の責任です。なので、ここからは私一人で行きます。そして、帰れたら提督やドミナント大佐を呼びに来ますので、ここでじっとしていてください。」

 

神通が言う。

 

「待って!あなた一人で行く気!?」

 

朝風が行く準備をしている神通に聞く。

 

「はい…。迷ってしまったのは私の判断ミス。そしてこうなったのは、あなたを信用してなかった私です。全責任は私にあります。」

 

「でも、もし一人で行って怪我でもしたら…。」

 

「…その時はその時です。」

 

神通が短く答えて駆けて行った。

 

…………

森の中

 

「おーい。どこだー。」

 

「神通!朝風!いずこじゃ!」

 

「神通ー。返事をしてー。」

 

「朝風ー!返事くらいしなさーい!」

 

ドミナント、瀬戸大佐、川内、神風は提灯をそれぞれ持って、照らしながら探している。春風、松風、旗風は行き違いにならないように鎮守府に残っている。

 

「…ん?ちょっと待って…。何か音がする…。」

 

川内が何かに反応する。

 

「…きゃつか…。朝風、そやつの背に隠れてろ。」

 

「……。」

 

瀬戸大佐が面倒そうに言って、そこらへんにある竹を拾い上げ、折って先を尖らせる。神風は急いでドミナントの後ろに隠れている。

 

ガサガサ…。

 

「…化け物のお出ましだね…。」

 

…………

森の奥

 

「…ここ、安全なのかな…?」

 

時雨が突然言い出す。他の艦娘も神通の言われた通り、その場で待っている。

 

「…ここ、化け物が出るから安全ではないわね…。」

 

朝風がポツリと言う。

 

「化け物って…。私たちの提督や教官ほどの化け物はいないと思うよ〜。」

 

鬼怒が気楽そうに言う。

 

「…あなたたちは、あれを見てないから言えるのよ…。ある意味、私たちは提督に守られているの…。だから、夜外出はしないし、ここから出ようと思わないの…。迷って夜になったら確実に喰われちゃうから…。」

 

朝風が震えながら言っているのを見て、時雨たちは嘘ではないことがわかった。

 

「…百歩譲って本当だとしても、喰われちゃうってのはどういうことかな…?」

 

「食べられちゃう…。」

 

朝風が恐怖で震えている。それがここに来ないように祈っている。

 

「…大丈夫。ボクたちが守ってあげるから。」

 

時雨が優しく言う。

 

「もし来たら、ボッコボコにしてやるっぽい〜。」

 

「どれだけ強かろうが、私たちの方がパナイんだから!」

 

「そうです。同じ艦娘として見捨てません。」

 

「もし、食べられちゃいそうになっても、その化け物の腹を裂いてあげるから。」

 

「わ、私も…守ります…。」

 

第4佐世保のメンバーが励ます。

 

「…ありがとう。」

 

朝風は静かに言った。

 

「よしっ!そうと決まれば、提督たちに私たちの場所をどうやって知らせるか考えよう!」

 

鬼怒は不器用な笑顔で言い、全員が嬉しそうに笑った。

 

…………

 

……こちらは…まだ通ってなかったはずです。

 

神通が進む。

 

……分かれ道…とにかく、急ぎましょう!

 

神通は夜の森を駆けて行く。

 

…………

 

「んだありゃ!?あんな動物見たことねぇぞ!」

 

ドミナントは神風を担ぎながら必死に逃げ回っている。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

「ヒィーーー!」

 

叫び声をあげながら突進してくるそれに、ドミナントは逃げる。

 

「川内!」

 

瀬戸大佐と川内は罠を仕掛けていた。

 

「引けっ!」

 

「了解!」

 

両者とも、枯れ葉の中のロープを思いっきり引く。すると…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"!?」

 

ドシーーン!!

 

それは盛大に転ぶ。

 

「ハァ、ハァ…。な、なんなんだアレは!?ゼェ、ゼェ…。」

 

「あれはこの近くにいる化け物だ…よっ!?」

 

川内はそれが口から吐いた何かを紙一重で避けた。

 

ビチャッ!シュゥゥゥ…。

 

「毒!?」

 

ドミナントは驚く。その液体の付近が腐っていくからだ。

 

「頭が牛なのに、それはないだろ!?」

 

ドミナントはツッコム。

 

「あれは牛鬼!この近くにて現るる妖怪じゃ!」

 

「それは空想上じゃねぇのかよ!?…いや、平家もいたからな…。絶対…とは言い切れないか…。

 

ドミナントが呟いていると…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

「ヒィーー!キタァーーーーー!!」

 

ドミナントは逃げる。神風はドミナントに担がれてぐらんぐらんだ。

 

「…このままでは、神風がもたぬ…。川内!何時ものあの手立てでやろうぞ!」

 

「了解!」

 

瀬戸大佐と川内が準備する。

 

「何かしようとしているのはわかりますけど!こっちも限界ですよ!!お願いですから早く!」

 

ドミナントも何とか躱しながら言う。だが…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

「やば…。」

 

牛鬼が蜘蛛のような体を使って糸をはいたのだ。

 

「…チッ。」

 

そこに、瀬戸大佐が舌打ちをし…。

 

「川内!あとは頼む!」

 

「ちょ、えぇ!?」

 

バシィ!

 

瀬戸大佐が持ち場を離れ、竹刀を持って牛鬼を叩きつける。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"!?」

 

叩きつけたおかげで糸がそれ、ドミナントの真横を過ぎる。

 

「…チッ。」

 

だが、それにより瀬戸大佐が狙われる。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

バシィ!

 

「グッ…!」

 

ドシンッ!

 

「ゴフッ…。」

 

瀬戸大佐は牛鬼に蹴られ、木に叩きつけられて吐血する。

 

「「提督!?」」

 

川内と神風は今のを見て固まるが…。

 

「早う…せい…!川内…!」

 

なんとか声を絞り出す。

 

「て、ぎょわーー!なんか狙われてる!」

 

次はドミナントが狙われる。

 

「…普通牛鬼って、人を食い殺すはずなんだけど…。なんかドミナント大佐が狙われてる…。懐かれたのかな?」

 

「そんな懐かれても嬉しくねーー!てか、早くして下せえ!」

 

ドミナントが逃げるが…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

「無理無理無理!」

 

牛鬼がドミナントを食おうとしたが…。

 

「仕方ないわね!えいっ!」

 

「おわっと!」

 

「私が走る!」

 

ドミナントが担がれていた神風に背負われる。牛鬼の顔面がめちゃくちゃ近い。

 

「あっち行きやがれ!シッシッ!」

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

「ぎょわーー!」

 

「挑発しといてそんな情けない声上げないで!笑って力が入らないから…!」

 

神風はドミナントの情けない声に我慢しながらも笑っている。すると…。

 

「出来たっ!こっちに連れてきて!」

 

木の上で川内が言う。

 

「わかったわ!牛鬼!ついてらっしゃい!」

 

神風が体格を生かして木の下を通過する。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

牛鬼も後を追おうとしたが…。

 

ドシーーン!!

 

体格的に無理がある。木にぶつかり、体が止まる。

 

「今だっ!」

 

川内が飛び乗る。そして…。

 

「くらえっ!」

 

グサッ!グサッ!グサッ!…!

 

数本の先を尖らせた竹を背に突き刺す。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"!?」

 

牛鬼は次々と竹を刺されて、暴れ回る。そのうちに…。

 

カチッ…

 

カチッ…

 

「えいっ!」

 

当然、その巨体で暴れれば罠の一つや二つかかる。川内はかかったのがわかり、離れる。すると…。

 

ブォォォォ…!

 

ブォォォォ…!

 

牛鬼の両横から、紐に吊るされたでかい大木が迫り…。

 

ドシャァァァァン!!!

 

「キ"ュ"エ"ァ"…ァ"ァ"…!」

 

勢いよく迫ってきた大木に挟まれ、牛鬼が声にならない悲鳴をあげ…。

 

ドドドドドド…。

 

走って逃げて行った。

 

「……。…ふぅ、これで2、3日は安心だね…。」

 

川内がホッと息を吐きながら言う。かなり緊張していたのがわかる。

 

「…よくぞやった…。川内。」

 

瀬戸大佐が近づく。

 

「よくやったわ。」

 

神風も川内を称賛する。

 

「ありがとう。それより、提督、大丈夫?」

 

「ああ。あれくらい幾度も受けておる。」

 

瀬戸大佐もなんとか元気そうだ。

 

「…ふぅ、なんとかなったか…。とんだハプニングどころじゃ無かったけど、捜索を再開しましょう。…もちろん、みんなで。」

 

ドミナントが言う。またあんなものなどに鉢合わせしたくないからだ。




終わりました。ついでにお話があります。少し休暇をいただきたいです。詳しくは活動報告を見てください。
登場人物紹介コーナー
牛鬼…西日本における妖怪。牛の頭に鬼の体。また、逆もある。が、筆者の想像は牛?鬼?の頭に蜘蛛の体なので、そういうことにしました。本当の身体は知りません。見たことがないため。毒を吐き、幻を見せたり、人に化けたりする面倒な妖怪。性格は残忍で残虐。人を生きたまま喰らうこともあるらしい。
次回!第131話「大切なもの」お楽しみに!


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131話 大切なもの

陸軍編が終わらないー!(現在12話分)
「排除…開始…。」
!?き、君はレイヴンだな…?筆者は知らなかったんだ!あそこに…あんなものが…。
ドガン!
……レ、イヴ、ン。気、をつけ………。お前……も……。
ボボボボボ…ドガン。
「…『プラス』の実験体になったものの末路か…。これでは小説も続けられまい…。急ぎすぎたんだ。お前はな。」
ガション、ガション、ガション…、ガショ…、ガ…、……。
ガチャ
「久しぶり。長期休暇で疲れを癒して…。…黒焦げね。」
ツンツン。
「…筆者さんだと思うけど…。生き返るわよね。」
「……。心配になってきたわね。生きているならすぐに生き返りなさい。あなたは不死身なのだから。」
ツンツン。
「…悪い冗談はやめて。」
「……。埋めちゃうよ?」
ザク、ザク…。
「よし、穴が掘れたわ。この黒焦げの炭を入れて…。土をかぶせます。」
パッパッ…。
「……。いい加減起きなさいよ。」
「…起きなさい。起きて。起きてってば。」
コンコン…。
「…起きない…。嘘よね?まさか…。」
「そんな…。まだ話すことだって…。言い残したことも…。」
ポロポロ…
「馬鹿…。」
ヌッ。
瑞鶴…そっちは本当のただの炭だよ…。こっちこっち。
「きゃっ!?…もしかして、そっちの灰だった…?」
そだよ。
「……。」
ところで、何を言い残すことがあったの?
「……。」
涙まで流しちゃって…か〜わいい。
「……。」
ちょ、謝るから、無言で艦載機を飛ばさないでくれよ。…ん?もう一人…?ドミナント。鎮守府のトップがどうして…?
ビー!ビー!ビー!
うわっ!
ドガン…。
「誰であろうが…俺の可愛い瑞鶴を泣かせる者など不要だ…。」
「…可愛い…。」
「ん?どうした瑞か…うわっ!」
ドガン…。
「誰であろうとも…私に可愛いと言うことなど不可能だ…。」

あらすじ
前回のアーマードコア。昔、勝手な依頼をマネージャーを通さずに受けて、マネージャー兼オペレーターであるラナ・ニールセンと別れた主人公。そのラナ・ニールセンから突然一通のメールが届く。とうとうあの宿敵、ナインボールに合わせてやるという内容だった。別れたラナからこの手紙が来るのは不審だと考えた主人公。だが、自分の宿敵を倒せるチャンスでもある…。主人公の決断はいかに…。そして、ラナ・ニールセンの正体とは…!


…………

森の奥

 

「…暗いっぽい…。そしてお腹空いたっぽい…。」

 

「夕立の目は赤く光っているからどこにいるかわかりやすいね。」

 

時雨が呑気に言う。

 

「結局、この森を燃やすこともダメだし、提督たちの名前を大声で連呼してもダメみたいだからね。」

 

「当たり前じゃない。あんな化け物に会いたくないもの…。」

 

朝風は時雨と妙高に挟まれて座っている。そこに…。

 

ドドドドド…。

 

何かが近くで走り去る地響きがした。

 

「ひっ…。」

 

「「「?」」」

 

朝風はうずくまるが、時雨たちはわからない。

 

…どうしかしました?

 

扶桑はただごとではないことを感じとり、小声で朝風に聞く。

 

化け物が…。近くにいるかもしれない…。

 

化け物…?

 

…鬼。

 

お、鬼…?

 

牛鬼よ…。恐ろしい妖怪…。

 

妖怪って…、そんなものいる訳ないっぽい。

 

「いるのよ!」

 

「しっ。」

 

朝風が少し大きな声を出し、時雨が宥める。

 

…さっき言ったのに、この質問するのは変だけど…。どれくらい大きいの…?

 

時雨が聞く。

 

私が見たものは…。全長約3丈(9m)だったわ…。でも、提督が言うにはそれは小さいほうらしい…。

 

朝風が震えながら言う。

 

3丈…つまり、9m…。かなりの大きさですね…。そんなものがここにきたら…。

 

妙高が言った途端…。

 

ガサガサ…。

 

突然草が揺れだす。

 

ひっ…。

 

朝風がさらにうずくまり、時雨たちが戦闘態勢を整える。すると…。

 

ガサ

 

「声が聞こえ…。」

 

「おりゃぁぁぁ!」

 

ドガァ!

 

「ギャァァァ!」

 

「て、提督!?」

 

草むらから現れたのはドミナントだった。時雨が持っていた太い枝が見事に頭のど真ん中に命中した。

 

「助けに来てくれたの!?」

 

「痛い…。そうだけど…。」

 

ドミナントが頭を摩りながら言う。

 

「遅いっぽい!」

 

「ごめん…。」

 

「でも、探しに来てくれていたことに感謝っぽい〜!」

 

夕立が抱きついてくる。だが…。

 

「…神通がおらぬ…。」

 

瀬戸大佐が言う。

 

「えっ?神通が帰って助けに来たんじゃ…。」

 

「帰ってはおらぬ。」

 

「…じゃぁ、もしかして…。」

 

全員が気づいた。神通が森のさらに奥へ行ってしまったことに…。

 

「…それってまずくありません?さっき牛鬼ここより先へ行っていましたけど…。」

 

ドミナントがいうと…。

 

「おい、どみなんと…。貴様は先に帰ってろ。ここからはそれがしと川内にて探す。」

 

瀬戸大佐が言う。

 

「何を言っているんですか。そんな水臭いこと言ってないで、探しますよ。」

 

「なれど、貴様どもに何程かの得もないぞ…。」

 

「人情です。それに、うちの艦娘たちが世話になっています。」

 

「…そうか。」

 

瀬戸大佐は難しい顔をして言った。

 

「なら、拙者たちはこちらに。貴様らはそちらを頼む。」

 

瀬戸大佐が言う。

 

「えぇ!?瀬戸大佐、あんな化け物と会った場合はどうするんですか!?」

 

「なら、先に帰ってろ。」

 

ドミナントの言葉に無慈悲に返す。そこに…。

 

「提督。」

 

「ん?どうした鬼怒。」

 

鬼怒がドミナントに近づき、耳打ちする。

 

いっそのこと私たちだけでいいんじゃない?

 

何故?

 

だって、ここの人たちがいない方がロボットになれるじゃん。

 

ACね。まぁ、確かに…。

 

その方がパナイ敵が来ても対応できるし。

 

そうだけど…。

 

その方が早く終わるよ?

 

…わかった。

 

そして、ドミナントは瀬戸大佐を向き直る。

 

「いいだろう。では、我々はどちらに行けばよろしいでしょうか?」

 

ドミナントが言う。

 

「…誠に申しているのか?拙者たちは手助け致さぬのじゃぞ?」

 

「世話になった人を見捨てるのは性に合わないんでね。」

 

「…そうか。なら、そっちを頼む。川内は朝風を連れて帰宅じゃ。」

 

「わかりました。それでは、朝になったらお会いしましょう。」

 

「了解、あとは神通だけね。みんなに伝えておくよ。」

 

ドミナントはAC化出来ると知って、張り切って奥へ行った。

 

…………

 

……どちらでしょうか…?同じ道を通っている気がします…。

 

神通は森の中で迷っている。

 

……とにかく、進みましょう。皆が待っていますから…。

 

そして、闇雲に駆け出す。

 

……?あそこ、木がなくなっています。あそこに出れば場所を確認できるかもしれません!

 

神通は喜んでその場所へ駆けたが…。

 

「!?」

 

木がなくなっていた理由は地割れのような大きな溝があったからだ。底が見えず、まさに地獄の入り口みたいなところだ。

 

「……。」

 

もちろん、すぐに勢いが止まるはずもなく…。

 

ガラララ…!

 

落ちる。

 

……あっ…。死…。

 

覚悟を決めたが…。

 

「待て!」

 

誰かが神通の手を掴む。

 

「提督!?」

 

掴んだのは瀬戸大佐だった。朝風は瀬戸大佐が落ちないように後ろから精一杯引っ張っている。

 

「ようやく…見つけたぞ…!この手を離すものか…!」

 

瀬戸大佐は必死に手を掴む。だが…。

 

スル…。

 

神通の腰から刀が落ちてしまい…。

 

カラン…。

 

今にも崩れそうな岩の上に落ちる。

 

「提督…!提督の大切な刀が…!」

 

「なん…だと…?」

 

両手で神通の手を持ちながら見ようとしたが、生憎持ち上げるだけで精一杯だ。

 

「……。」

 

……あれは…提督の先祖代々受け継がれてきた刀…。命より大切なはず…。少しでも揺れたり、振動したら落ちます…。この奈落の底に…。私を引き上げている間にも落ちそうです…。……。答えは一つですね…。私が落ちる間に刀を持って、投げて渡せば…。

 

神通は考え、答えが出た途端、不思議と死への恐怖もなくなり、口元が緩んだ。自分はこの期に及んでまだ『使える』存在なのだと知ったからだ。

 

「…提督。」

 

「話しておる暇があるなら…両手にて掴め…!」

 

「…離してください。」

 

「…気が狂ったか…?離すわけなかろう…!」

 

「…刀が落ちそうです。提督の、命より大切な刀が。」

 

「……。」

 

「私が落ちる間に手に取り、提督に投げ渡しますから、用意してください。」

 

「馬鹿なことをぬかせ…!」

 

「……。」

 

だが、神通は手を掴むどころか、瀬戸大佐の手を離そうとしている。

 

「…提督。今考えてください…。この先、私は作られればまた会えます。ですが、あの刀は今失くしたら二度と手に入りません。今のあなたにとって、どちらを選ぶのかを…。今どちらが大切なのかを。」

 

「…選べるわけ…なかろう…!」

 

「そのような答えはありません。どちらか一つ、今すぐです!」

 

「……。」

 

瀬戸大佐は難しく、そして目を閉じ、諦めたかのような顔をする。そして、ゆっくりと目を開け…。

 

「…神通…。すまぬ…。」

 

苦しそうに伝える。

 

「いえ、いいのです。提督のためならば、喜んで命を投げ出します。死ぬことでも提督が喜ぶことが出来るのなら、それが本望です。…悲しそうな顔をしないでください。最後に見る提督の顔は笑っていて欲しいのです。」

 

神通は笑顔になる。

 

「……。本当にすまぬ…。」

 

「それでは、笑って…。」

 

ドシンッ!

 

神通が言い終わる前に瀬戸提督が少し暴れ、地面を揺らした。

 

グラ…。

 

刀が岩と共に文字通り落ちた。

 

「!?提督…どうして…。」

 

神通は見る。

 

「フフフ…。これで選択肢は一つでござるな…。せっかくあげたものをすまぬ。」

 

瀬戸大佐の顔は苦しそうに笑っていた。

 

「…何故…。」

 

「何ゆえであるかと…?今どちらが大切だかと聞いてきたであろう…?」

 

「刀では…。」

 

「お主以外にあり得ん。早う手を掴め!神通!」

 

瀬戸大佐は大声で言う。

 

「はい…!」

 

神通は無事に引き上げられた。

 

「…ハァ…ハァ…。もう二度とかのようなことを申すな…。」

 

「…はい…。ありがとうございます…。」

 

瀬戸大佐は息を切らし、仰向けになりながら言い、神通は瀬戸大佐にとって『命より大切な存在』であることに泣いていた。

 

…………

 

「モォーリカァドゥールサァーン。」

 

「提督、それなんの歌っぽい?」

 

ドミナントたちが歩いている。

 

「それにしても…。マジパナイ崖だね〜。」

 

鬼怒が気楽に言う。

 

「少し降りたら、こんなところがあるなんて驚きですね。」

 

妙高が崖に手を当てる。右と左、崖に挟まれている感じだ。

 

「おそらく、何百年という歳月をかけて、この川が削っていったのでしょう。」

 

扶桑が川を見ながら言う。

 

「じ、神通さんここ通ったでしょうか…?…すみません。」

 

羽黒が辺りを見回しながら言う。そこに…。

 

「…?何か聞こえる…。」

 

時雨が耳を済ませる。

 

『……。』

 

『……。』

 

「…本当だ。何か聞こえる…。」

 

ドミナントが耳を済ませていると…。

 

ヒューーーー…ガツンッ!

 

「ギィィヤァァァァァァァ!!!」

 

「「「提督ーー!」」」

 

上から刀が落ちてきて、鞘がドミナントの後頭部に直撃する。

 

「アアアアア!!!」

 

そして、苦しそうに転げ回ったり、身悶えたりしている。

 

「アア…!ガフッ…。」

 

チーン…

 

しばらくしてドミナントは動かなくなった。

 

「……。どうして上から刀が…。」

 

時雨が上を見ていると…。

 

『おーい…。誰かおるのかー…?』

 

上から瀬戸大佐の声が聞こえる。

 

「いまーす!神通さんが見つかりません!」

 

鬼怒が返す。すると…。

 

『神通は無事じゃ…!じゃからそれがしの鎮守府へ集合じゃ…!』

 

「わかったっぽい〜!」

 

最後は夕立が返す。

 

「…ですが、提督はどうしましょう…?」

 

全員が気絶しているドミナントを見る。

 

…………

 

「…はっ!ここは…?」

 

ドミナントは起き上がり、辺りを見回す。

 

「眼が覚めたか?ここはそれがしの鎮守府じゃ。」

 

瀬戸大佐が横に座っていた。

 

「…今、どれくらい経ちました?」

 

「お主が運ばれてきてから半日ほどじゃ。」

 

「半日…。つまり、もう昼過ぎ…。」

 

ドミナントと瀬戸大佐が話していると…。

 

スー…。

 

ふすまが開く。

 

「あっ、提督。おはよう。…じゃなくて、こんにちは…かな?」

 

時雨が来た。

 

「こんちは時雨。…ちょっと待って?昼!?」

 

「そうじゃ。」

 

「まずい!神様が暴れている頃かも…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「じゃーん!暴れてるんじゃなくて、来ちゃいましたー!」

 

「バッキャロー!」

 

「ひどい!心配して来たのに!」

 

「嘘つけ!何が心配だ!どうせ『ここで看病してあげれば、私の好感度アップかも!』とか考えながら来たんだろ!」

 

「そ、そんなわけ…。」

 

「目を晒している時点で図星だろ!ここに迷惑がかかるだろうが!ハァ…ハァ…。」

 

「うぅ…。」

 

「なんだ?…うっ…。泣いちゃった…。」

 

ドミナントが言い過ぎたため、少し目のふちに涙を浮かべている。

 

「「「……。」」」

 

それを見て、時雨と瀬戸大佐はドミナントを冷たい目で見ていた。

 

「言いすぎました…。すみませんでした…。」

 

ドミナントはすぐさま謝った。




久しく忘れていた感情だ…。…死神部隊Jの声を聞くとどうしても吸血鬼アーカードを思い出すのは私だけでしょうか…?戦いは良い…。やはり、人間は素晴らしい…。てか、書き間違えや文字つけ忘れがひどいですね…。うとうとして書いても、何にもなりませんね…。
登場人物紹介コーナー
瀬戸大佐…第4呉の提督。いい人。
神通…第4呉所属。侍であり、元気をくれる人。
夕立…かわいい。
時雨…可愛い。
鬼怒…カワイイ。
羽黒…かわいい。
妙高…いい人。
扶桑…いい人。
朝風…第4呉所属。負けず嫌い。松風とよくもめていたりする。
神風…第4呉所属。神風型ネームシップ。勝ち気。
神様…歳は1000歳を超えているらしいが、見た目は16〜18歳前後。恋に純情であり、一途。振り向かないドミナントをよく追っかけている。たまに命中することも…?
次回!第132話「大佐の過去 その1」お楽しみに!


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132話 大佐の過去 その1

132話だ…。呉鎮守府編結構かかりそうですね。
「何話くらい?」
陸軍編と同じかな?10話…かな?
「約10話分…。提督さんはいつ戻るのかしら?」
その日のうちに帰ると思います。
「退屈ね。」
そうなんだよ…。筆者も最近退屈でさ。小説書きまくってるの。
「友人とかいないの?」
生憎、この小説を書くような変人でね。まぁ、いなくても生きていけそうな気がしますし。
「そりゃね。でも、寂しくないの?」
瑞鶴がいるから平気だよ。
「キモ…。」
傷つくなぁ。
「いや、普通にキモいんだけど…。」
ま!そんなこんなの132話。あらすじをどうぞ。
「了解。」

あらすじ
前回、提督さんが倒れたって耳にして、大騒ぎだったわ。ジナイーダさんはなんかそわそわしているし、セラフさんは自室にこもったままだし、主任さんは笑っているし。…ジャックさんはいつも通りだったけど…。他のみんなはてんやわんやの大騒ぎ。…そう思ってみれば、神様はどこかしら…?


…………

第4呉鎮守府

 

「茶を飲め。」

 

瀬戸大佐がお茶を入れてくれる。

 

「…さて、お主を信用するか否かの話じゃったが…。それがしは信用することにした。実はと申すと、先日からずっと川内に見張ってもらっておった。それがしの艦娘を助けてくれて誠に有難う。」

 

瀬戸大佐は頭を下げる。

 

「ごめんねっ!試すようなことして。でも、他の人のためにこんなにしてくれる人って、提督以外にもいたんだね〜。」

 

川内が嬉しそうに言う。

 

「いえ。それより、私を呼んだ本当の意味は…?」

 

ドミナントが言う。

 

「うむ…。実はと申すと…。…お主は異界の者か…?」

 

「……。」

 

……えっ…?一体いつバレた…?共にいるときや、川へ水汲み、神通を捜索している時ですらAC化しなかったというのに…。それに、牛鬼と対峙した時でも逃げ回っていたというのに…。

 

ドミナントは固まる。

 

「えっと…。」

 

「ふっはっは。冗談じゃ。左様に深刻な面をせずとも良かろう。」

 

「…えっ?冗談…ですか…?ですよね〜…。はっはっは…。」

 

……冗談…だよね。うん。これでわかっていたら鋭すぎる…。

 

ドミナントは苦笑いする。

 

「…気を取り直して…。本当の理由はお主の人物像を知りたくてな。同じ国に属する者として、信用できるかどうかを見極めるためじゃ。」

 

「…で、結果は信用できる。…と、言うわけですね?」

 

「うむ。じゃが、お主はこれまで見てきた輩と比べるとその中でも一番信用できる。」

 

「ナル…ホド…。」

 

「ここまで信用できる人間は他におらん。…そこで、頼みがあるのじゃが…。」

 

「…えっ?」

 

……まさか、頼みを押し付けるために来させた訳ではあるまいな…?

 

ドミナントは心の中で思う。実際、紅茶も作れず飲めずで、嫌々ここで生活させられて、やっと楽になれると考えていたからだ。

 

「一人探している人間がおる。その人間を探すのを手伝って欲しい…。恥を忍んで願いたもうぞ…。」

 

瀬戸大佐が頭を下げる。

 

「…マジですか…。…で、その人とは誰なんですか?どうして探しているんですか?」

 

ドミナントは少し疑問に思ったから聞いただけだったが…。

 

「…うむ。話せば長くなる…。」

 

その言葉を聞いて、全く思わなくなった。

 

「あっ、なら良いです。」

 

「昔、それがしが提督ではなく、山で暮らしている頃じゃった…。」

 

……聞いちゃいない…。

 

昔話を聞く羽目になった。昔話をしてあ…。

 

…………

昔話 山

 

「うむ。今宵も良き月じゃ…。…む?」

 

木に登って月を見ている23歳の青年が今の瀬戸大佐である。

 

……人…?この時間にか…?もしくは牛鬼…。化けておるのか…?

 

木の上から自分の家から数十m先を見下ろす。

 

……父上か母上か?15年ぶりじゃな…。

 

青年はひらりと木から降りる。

 

…む?誰じゃ…?見たことのない格好をしておる…。

 

スーツ姿にカバンを持った男3人だからだ。

 

……牛鬼ですらあのような格好はせぬ…。ならば、人か…?初めて他人を見る…。

 

青年が隠れながら様子を見ていると…。

 

『本当にここで合っているのか?』

 

『らしい。ここは捨て子がいるからな。上手く使えば金になる。』

 

『わざわざこんな山奥に…。親がいるんじゃないか?』

 

『ここの親は15年前に消えている。いや、養子だから親…でもないか。ここは捨てるのにうってつけの場所だからな。』

 

『何故です?』

 

『地元の人間が言うには妖怪が出るらしい。クックック。馬鹿な奴らだ。そんなものいるわけないのにな。それに、そこの子供がたまに迷い込むらしい。親はすぐに諦める。妖怪がいる山に入ったと知れば、助けに来ないからな。そこで、俺たちが捕まえて外国へ売ったりするんだよ。』

 

『なるほど。つまり、儲かるってわけですね。』

 

『そうだ。』

 

男たちが話す。

 

……捨て子…?…そうか…。拙者は捨てられたのか…。

 

青年が思っていると…。

 

キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

遠くで牛鬼が鳴いている。

 

『な、なんですか?今の音…?』

 

『近くに滝があるらしい。葉擦れの音と滝の音がちょうど混ざったのだろう。それより、中に入るぞ。』

 

『抵抗したらどうしますか?』

 

『死んだら値は下がるが、闇市で臓器を売れば良い。』

 

『なるほど…シシシシ…。金が入ると分かれば嬉しいねぇ。』

 

男たちが話す。

 

……あやつら死んだのう。助けにはいかぬ。拙者を殺すつもりだったからな。

 

青年が思った。そう、既に男たちの後ろに…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

何十mもある牛鬼がいたのだ。

 

「誰か!助けてくれ!化け物だ!」

 

「俺が…こんなところで…!」

 

「重火器があるから…ま、負けるはずがないん…。」

 

男たちは阿鼻叫喚に喚くが…。

 

バグッ!ブシュッバリバリムシャムシャ…

 

全員喰われた。辺りに血飛沫が飛び散る。

 

……この山に入るべからず。あちこちに書いてあった筈だ。

 

青年は全貌を見ていた。すると…。

 

「ここはどこだ…?迷ったな…。」

 

「司令官。相変わらず方向音痴ですね…。地図もあるのに…。」

 

「うるへー。まだ提督になって1ヶ月も経ってないんだぞ。てか、お前に言われたくねー!」

 

「て、世界地図を持っている時点で既に間違いです!」

 

今度は、白い特殊な服を着た人物と、二人の少女が通りかかる。

 

……ん?さっきの男どもとは違う…?…道に迷ったのか?この先行けば牛鬼と鉢合わせるの。…まぁ、拙者の知ったことではないか…。

 

青年は何処かへ行く。

 

「…どこなんだ…?ここ…。」

 

「世界地図見るのやめた方が良いですよ…。もう無駄な足掻きですから…。」

 

「私は諦めないぞ…。新大陸を見つけるまでは…。」

 

「司令官!?私たちが行くべき場所は新大陸ではなく鎮守府ですよ!?目的地すら違うじゃないですか!」

 

「そうなのか?」

 

「「……。」」

 

「…そうらしいな。人でもいると良いのだが…。」

 

「こんな鬱蒼とした山に誰がいるでしょうか…?」

 

「諦めんなよ…。」

 

「「誰のせいですか!?」」

 

「…すみません…。」

 

「お金ケチらないで飛行機や新幹線、タクシーを使ったほうが良かったのでは…?」

 

「報酬が全てだ。全額前金大歓迎。」

 

「あぁー…。それ、真っ先に死ぬタイプですね…。」

 

どこかの提督と艦娘が話しながら歩く。

 

「……。」

 

……なんだあやつら…?悪い奴ではないのは確かだな。

 

青年が戻ってきて、隠れながら見ている。すると…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」

 

「「「!?」」」

 

牛鬼と鉢合わせる。

 

「司令官!」

 

ドンッ!

 

艦娘が提督を突き飛ばす。

 

「ぐ…ぁ…。」

 

艦娘が牛鬼に踏まれている。潰れそうだ。

 

「私のことは良いですから…早く…遠くへ…。」

 

「バッキャロー。出来るかってんだ!…もちろん、報酬は貰うけど。」

 

ドガァァン!

 

「ぐはぁぁぁ!」

 

「こんな時に何言っているんですか!?ふざけないでください!…大丈夫ですか!?」

 

「冗談…だったのに…。」

 

「それがいけないんです!」

 

牛鬼と対峙している艦娘や提督が大声で言い合う。

 

……まずいな。あの女死ぬのう…。…悪い奴じゃ無さそうだし。…やるかのう…。

 

青年が草むらから飛び出し、牛鬼の前に立つ。

 

「!?き、君は…?」

 

「拙者のことは良い!下がれ!」

 

カチャ…スー…。

 

青年が刃を抜く。刀の刃が月夜に照らされて美しく輝く。

 

「…来い…。牛鬼…。」

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

牛鬼は白刃の輝く刀を持つ青年を見て恐れ、艦娘のことを忘れて突進する。が。

 

ズパァ!

 

「『秋天無我』…!」

 

「キ"ュ"エ"…ァ"…ァ"…。」

 

目にも留まらぬ速さで懐へ踏み込み、真っ二つに切る。

 

ドドォ…!

 

牛鬼の残骸が落ちる。

 

「おぉ!素晴らしい!ありがとう!助かっ…。」

 

「寄るな!」

 

「えっ…?」

 

突然青年が大声を出したので、思わず止まる提督。

 

「…呪いが移る…。」

 

青年は少し体が変形していたが…。

 

シュゥゥゥゥ…。

 

火が消えるような音がして、姿が元に戻る。

 

「き、君は一体…。」

 

「…すまぬ。これは牛鬼の呪いじゃ。」

 

「呪い…?」

 

「殺した者が次の牛鬼になるのじゃ。」

 

「えっ、でも君は…。」

 

「この刀のおかげじゃ。この刀は呪いを弾く。」

 

「すごい便利じゃん。」

 

「じゃが…。」

 

「?」

 

「明日、とてつもなく高熱が出るじゃろう。ところで、お主らは何者じゃ?」

 

「んあ?私たちか?岩倉だ。佐世保鎮守府を目指しているんだが…。知らないか?」

 

「知らんな…。すまぬ。知っておったら案内するんじゃが…。この山を下りる道は教えよう。」

 

「それはありがたい。…ところで、君は刀を持っているけど、何者?」

 

「捨て子じゃ。」

 

「…すまない。」

 

「いや、良い。事実だ。」

 

青年は刀を拭く。牛鬼を切った時についた、緑色の粘液みたいなのを取るために。

 

「…ところで、助けてくれたお礼がしたいんだけど…。生憎手持ちがない。と、言うわけで君も提督をやらないか?」

 

「提督?」

 

「ああ。この国の人を守る仕事だ。今、海で敵がいる。その敵を倒すための提督が少ないんだ。君も出来れば、やってもらいたい。」

 

岩倉提督が言うが…。

 

「無理じゃ。この山すらこのような妖怪がおるのに、海にまで構ってられん。さっきも3人こいつに喰われた。」

 

「3人…。」

 

艦娘が牛鬼の死体を見てゾッとする。

 

「そうか…。それは残念だ…。」

 

「すまぬ。」

 

「だが、そこで引き下がる私ではない。どうだろう?学校くらいは行ってみないか?」

 

「学校…?」

 

「提督になるための学校だ。そこで、提督はどんななのかをやっている。ただ、妖精さんが見えなくては話にならない。だから、少ないんだ。少なすぎて、艦娘に酷いことをする提督が採用されて増えている。なんとかしたいんだ…。」

 

「…じゃが、見えなくては話にならぬだろう。」

 

「…ここにいる。」

 

岩倉提督はポケットに手を突っ込む。

 

(やいこら、離せです。)

 

「艦娘には声が聞こえないらしいがな…。口が物凄く悪いんだ…。」

 

(この方向音痴提督離せです。)

 

「ほらな?…て、えっ?見えてるの…?」

 

「かのような小さき人間は見たことがない…。」

 

青年はまじまじと見ている。すると…。

 

(…!?ちょっと待つです。そして離すです。)

 

青年を見てさっきと様子が違う妖精さんの言うことを聞く岩倉提督。

 

(…珍しいです…。こんな人見たことがないです…。提督のような凡人とはまるっきり違うです。)

 

妖精さんがまじまじと青年を見る。

 

「さっきからトゲのある言い方するけど、どうした?」

 

(歴史のどこかに消えたわけでは無かったです…。ここにいるです…。)

 

「言えや。」

 

(…でも気のせいかもしれないです。)

 

「言えっつってんだろ。」

 

(確信がないので言えないです。一つ言えることは、学校に行って見極めた方が良いです。)

 

「…聞こえたか?…て、まだ見てる…。」

 

「世は拙者の知らぬことばかりじゃな…。」

 

「聞いてる?」

 

「あっ、すまぬ。」

 

「聞いたでしょ?妖精さんが学校いけってさ。」

 

「学校とは…?」

 

「…行けばわかる。学費は渋々私の金から…。助けられたお礼だな。食費込みだったな。確か。」

 

「場所は…?」

 

「この紙に書いてある通りだ。てか、早くここから出たいんだけど。またあんな化け物と会いたくないし。」

 

紙を急いで渡された。

 

「達者でな!青年!」

 

岩倉提督は走って行った。その後に艦娘たちが続いて行く。

 

「…学校…か…。」




全く味噌に行きませんでした。想像していたより長くなりそうです…。学校生活だけを書こうとしたのですが、よくよく考えたらどうして山から学校に行かなくてはならないのかという理由を忘れていました。親からの推薦もあったのですが、昔の言葉を使う瀬戸大佐。つまり、昔の人間というキャラなので、親が学校のことを知っていたら、必然的に昔の人キャラになりません。また、親がいた場合、こんな暮らしをしてないと思いました。
登場人物紹介コーナー
岩倉提督…第3佐世保鎮守府の提督。
艦娘…吹雪と五月雨。
牛鬼…殺した者が次の牛鬼になると言われている厄介な妖怪。
青年…瀬戸大佐。養子として引き取られて、山奥の小屋に捨てられていた。それに気づかず待ち続けて約15年。日々鍛錬を積んで、牛鬼を退治できるくらいまで強くなった。
引き取った親…引き取れば役所から金が貰えると聞いて引き取っていた。だが面倒に思い、夜ひっそりと山奥に捨てて無償で金を貰おうとした。だが、夜に山から降りる際牛鬼に喰われている。
男3人…悪人。金の亡者、殺し大好き、戦争屋。3点揃ったどうしようも無い連中。
刀…瀬戸大佐が幼い頃から持っている。養子として引き取られた際にも握っており、物心つく前から持っていた。捨てられる小屋で、仮親が売ろうと刀に手をかけた途端、幼い瀬戸大佐が仮親を蹴り上げ、諦めさせたという伝説がある(本人覚えていない)。
本当の親…実は化け物退治の時に不運にも死んでしまっている。母親は海坊主と相討ちに。父親は閻魔と相討ちになった。すごい両親たちである。
次回!第133話「大佐の過去 その2」お楽しみに!


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133話 大佐の過去 その2

133話。第4呉鎮守府編長い。これからも色々あるのに…。
「多分、あなたの考えていること全て実行したら、200話超えちゃうんじゃ…。」
どれか捨てなくちゃダメか…。AF、OWとか全て出すつもりだったけどなぁ…。
「諦めなさい。」
ちぇっ。それじゃ、あらすじを頼むよ。


あらすじ
前回、特に何も無かったわ。あるとすれば、神様の場所が分かったくらい…。


…………

軍事学校 門

 

「ここが…。学校…?」

 

青年(瀬戸大佐)がいる。

 

「なんだ貴様は?ここは軍事学校だ。ただの一般人が来るべき場所ではない。」

 

門の前の警備員が言う。

 

「ふむ…。ここには沢山の人間がおるの…。」

 

「理解できんと見える…。…て、その刀、本物じゃあるまいな。銃刀法違反だぞ。」

 

「ふむ…。この人間は拙者に申しておるのか…?」

 

「ああ。お前だ。昔の服なんか着て明らかに怪しいからな。」

 

警備員が言う。

 

「にしても、汚ねぇ奴だな。風呂とか入っているのか?」

 

「うむ…。水浴びならしておるが…。」

 

「虐待でも受けているのか…?」

 

警備員と話す。

 

「というより、ここは学校だから帰れ。お前の来るべき場所ではない。」

 

「いや、ここに岩倉という者から行けと言われての…。」

 

「岩倉?誰だそいつ?とにかく、紹介されたなら紙くらいあるだろ。」

 

「紙…。」

 

青年は懐から紙を出す。

 

「これで良いか?」

 

「どれ…?…ややっ!?岩倉大佐からでありましたか!すみません。今すぐここの最高責任者と話して来ます!」

 

警備員は走って行った。

 

「…ふむ。牛鬼と対峙してあんな慌てていた奴はそんなに位が高かったのか…。」

 

青年は警備員を待つ。そのうちに…。

 

『なんだ!?あれは…?』

 

『汚ねぇ野郎だ。』

 

『ただの中二病なのか…?あるいは…。』

 

通り過ぎる人が青年を珍しそうに見て行く。そこに…。

 

「すみません。どうぞ中へ…。」

 

警備員が門を開く。

 

「うむ。」

 

青年は中に入った。

 

「こちらです。」

 

警備員に学校の中に案内される。

 

「ふむ。ここが学校…。」

 

青年はキョロキョロ見回しながら歩き、十分くらい経つと、室長校と書いてある部屋の前にいた。

 

「ここに最高責任者がいます。失礼のないように。それでは。」

 

警備員は指定位置に戻る。

 

「ここか…。」

 

青年はノックもせずにドアを開ける。

 

ガチャ

 

「頼もう!」

 

「わっ!?い、いきなり開けて大声出さないでください…。」

 

「…元気の良い青年だ。」

 

中にいたのは歳はわからないが、はっきりいうとおじさん。それと、不思議な服を着た美人な女性だ。

 

「ここに岩倉という者に紹介?された。ここに行けと言われてきた。提督?をやらないか誘われた。」

 

青年ははっきりと言う。

 

「この紙?を見せれば良いのか?」

 

そして、紙を渡す。

 

「ふむ…。」

 

「……。」

 

二人は紙を見る。

 

「…確かに、岩倉の字だ。ここの地図があるなら紹介されたのだろう。だが、肝心な理由が書いていない…。大和、連絡を頼む。」

 

「はい。」

 

おじさんに言われて、大和は電話を手に取る。しばらくして…。

 

「あっ、岩倉さんですね?少しお話が…。いえ、給料を上げるとかではなく…。…はい。ところで、岩倉さんに紹介された青年がいます。どういう経緯でそうなったか教えてください。…はい。その青年です。…えっ?命を救われた?…何があったんですか…。……信じられません。それの他は?…妖精さんが…?なるほど…。…わかりました。それでは。」

 

大和が電話を切る。

 

「…どうだった?」

 

「命を救われた…とか。それと、重要なのが妖精さんが大いに反応していたことです。」

 

「ほう。」

 

「普段の妖精さんは人間に対して、あまり良い噂を聞かず、常にマイペースという噂、もしくは体験した人が多いですが、この人に対してはとてつもなく興味を持っていたそうです。」

 

「あの妖精さんが?」

 

「はい。歴史がどうのだとか…。」

 

「歴史?歴史を変える人間なのか?」

 

「そういう意味ではないらしいです。」

 

「なるほど…。」

 

おじさんと大和が話す。

 

「……。」

 

青年は黙って聞いていた。

 

「…あっ、すまない。君のことについて話していて忘れていた。君、ここで入学をしたいのか?」

 

「…入学…?」

 

「…入学を知らないのか…?」

 

おじさんは困った顔をする。

 

「元帥殿、この子は捨て子で、ずっと山で暮らしていたらしいです…。岩倉さんが言ってました。」

 

「…そうか…。」

 

大和が元帥に耳打ちする。

 

「入学とは、ここで学ぶことだ。」

 

「…そうなのか?」

 

「そうだ。」

 

「違うような気がしますが…。それが一番わかりやすいですね。」

 

青年たちが会話をする。

 

「…拙者、一応ここで学ぼう。そして、提督?になるかどうかは自分で決めさせてもらいたい。」

 

青年が言う。

 

「…なら、決まりだな。大和、早速この学校を案内してやってくれ。明日からここで学ぶ。そして、寮にも手配を。私は入学手続きなどをやっておく。」

 

「わかりました。」

 

大和と元帥がテキパキと動こうとしたが…。

 

「…あっ、そう思ってみれば、お名前…。」

 

「む。そうだ。名前を知らなくては手続きも出来ん。名前は?」

 

元帥と大和が聞くが…。

 

「…名前…。」

 

「…まさか、名前まで無いんですか…。」

 

「…困ったな…。」

 

大和と元帥が困る。

 

「…この際、好きに決めろ。国籍も無いと思うからな。」

 

元帥が言う。

 

「名前…。」

 

……名…か…。気にしたことなかったでござるな…。…そう思われてみれば、一度山から降りた時噂を耳にしたのう…。瀬戸内海?がどうのだとか…。…瀬戸…か…。

 

青年は考え…。

 

「では、瀬戸にせん。」

 

「瀬戸…ですね。…それは名字ですよね?名前は…?」

 

「…まだ必要なのか…。」

 

大和が困り、瀬戸が近くを見る。すると紙の広告に…。

 

『和食全額半額クーポン』

 

『弥生時代の変わった形の土器発掘。世紀の大発見か!?』

 

そんなことが書いてある。

 

……頭文字をとるか…。

 

「和弥…じゃ。」

 

「瀬戸 和弥さん…。ですね。わかりました。こちらに来てください。」

 

名前を聞いて、元帥と大和が動く。

 

…………

翌朝

 

「…一週間前高熱を出したでござるなれど、流石にもう辛くないな…。」

 

寮で独り言を言う。すると…。

 

『皆さん、おはようございます。マルゴーマルマル起床時間です。』

 

放送が入る。実はまだ朝の5時だ。

 

「この時間に起床か…。提督という者は遅く起床するのか…。」

 

瀬戸は4時には起きていた。これから、学校が始まる。

 

…………

現在

 

「と、言うわけじゃ。」

 

「うん。全くわかりません。岩倉提督を探せば良いんですか?」

 

ドミナントは今までの会話を退屈そうに聞いていた。

 

「違う。探して欲しいのはここからじゃ…。」

 

「昔話やめてもらえません?筆者も文字数とか、面白みがないので困っているので…。」

 

「筆者…?…まぁ、良かろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

そして、要約する。

 

「それがし、その日に皆に紹介された。じゃが、中々馴染めんでのう…。まぁ、学ぶだけのつもりじゃったから馴染む必要はないのじゃが…。…それで、いつの日か、初めて話しかけてくれた娘がいた。その娘は笑顔が可愛くてのう。」

 

「なんですか?恋人探しですか?やめてくださいね?自分たちにそんなお願い…。」

 

「違う。…話を戻す。その娘とは仲が良くなった。よく共に行動しておった。学年が変わっても仲がよろしかった。」

 

「なら、WIN-WINじゃないですか。…良いじゃないですか。」

 

「…だが、人生とはそう上手くいかん…。学年が変わり、それがしは新たな友人を見つけた。そやつは親切でのう。竹馬の友となった。…だが、それはそれがしの思い込みじゃった…。そやつは、それがしを裏切ったのじゃ。」

 

「騙して悪いが…。ですか…。」

 

「そやつの狙いはあの娘じゃった。それがしはうかつにも、あの娘の秘密を話してしまった…。それから翌日、その娘は虐められていた。拙者のせいで…。だから、もし、その娘に会ったら拙者の場所を知らせてほしい。」

 

「何故です?」

 

「直々に謝りたいからじゃ。それに、あの娘も拙者を殺したいほど憎んでおる筈だからのう…。」

 

「…そうですか…。…名前は?」

 

「名前…か…。樫本 美月じゃ。提督をやっていないと聞く。もし、どこかで会ったら教えてやってくれ…。」

 

「樫本…美月…ですね。聞こえたか?セラフ。」

 

『なんで私頼りなんですか…。まぁ、記録しましたけど…。』

 

「と、言うわけでしっかりと伝えておきます。」

 

「かたじけない…。」

 

「それより、帰っても良いんですよね?」

 

「うむ。頼む。」

 

「そこで寝ている時雨たちを起こして帰ります。」

 

ドミナントは立ち上がり外に出ようとする。しかし…。

 

「…夜だ…。」

 

あたりは真っ暗。そして、昨夜の牛鬼を思い出す。

 

「…やっぱり、翌日帰らしてもらいます。」

 

「それが良いの。」

 

ドミナントはその日、第4呉で泊まることになった。

 

……樫本…今どこで何をしておるのじゃ…?

 

…………

 

 

「樫本、どこへ行く気じゃ?」

 

「フフフッ。もう少し。」

 

「ふむ…。」

 

瀬戸は樫本に手を掴まれ、森の中で夜、何処かへ連れて行かれている。

 

「フフフ。…ずっと前、夜は妖怪が出るなんて言ってたよね?でも、本当はいないんだよ。」

 

「いや、おる。拙者はこの刀で幾度となく斬り殺しておる。」

 

「まぁ、そういうことにしておいてあげる。…ここよ。」

 

話している間に、森を抜け、広間みたいな場所へ出る。

 

「ふふふっ。どう?ここ。私のお気に入りの場所。近くに灯りもないし、静かだから、星がよく見えるのよ。…満月の光で見えないのはツッコミを入れて欲しくないけど。」

 

樫本が言う。

 

「ふむ…。悪くない。」

 

「フフフ。でしょう?ここのベンチに座って空を見るともっと良いよ。」

 

「…やってみよう。」

 

二人は寝転んで空を見る。しばらくして、樫本が…。

 

「…将来、何になるつもりなの?」

 

突然聞いてくる。

 

「将来…か…。ここは提督以外にも、陸軍、海軍、空軍に選べるらしいからの…。」

 

「フフ…。私は提督になるわ。提督になって、困っている人たちを助けたいの。」

 

「そうか…。拙者は何でも良い。」

 

「フフフフ。そのままじゃ生活できなくなるよ?」

 

「山に家がある。わずかだが畑も。…今頃妖怪に荒らされていると思うが…。」

 

「フフッ。妖怪じゃなくて猪とかね。」

 

「……。」

 

二人が語ったあと…。

 

「…実は、提督になる本当の理由は、英雄になりたいの。」

 

「…英雄…?」

 

「フフフ。そうよ。英雄になって、みんなから慕われたいだけ。」

 

「それは大きな夢でござるな。」

 

「フフッ。今馬鹿にしたでしょ?」

 

「それ以外に意味はあるか?」

 

「……。」

 

しばらくの沈黙が続き…。

 

…ヒーローになって、いつかあなたに…。

 

ボソリと言う。

 

「何か申したか?」

 

「えっ…、あ、ううん。なんでも。フフフ。」

 

「…届くと良いな。」

 

「そうね。」

 

そして、樫本は満月に手を伸ばし…。

 

「届いて、掴んで見せる。」

 

「それは良い夢だ。」

 

「フフッ。今のは本心だね。」

 

「…そうなのだろうな。」

 

そして、二人はしばらく眺めたあと帰った。『ヒーローになりたい。』そのような夢を持っているから虐められたわけではない。連中にとって、どんな夢を持っていようが関係ない。ただ虐める理由が欲しいだけなのだ…。何を言っても、回避することは出来なかったのだ…。

 

…………

 

陸軍 司令室

 

コンコン…。

 

「クスクス…。入るわ…。」

 

「樫本か。なんだ?」

 

「あきつ丸帰ってきませんが、森崎の言う通り、本当に失敗して死んだのでしょうか?」

 

樫本少将が聞く。

 

「…さあな。森崎はどうやら、わしに隠れて艦娘に優しくしていたらしい。逃がして、死んだということにしたのかもしれんな。」

 

「クスクス…。でも、それは無理のはずよ?」

 

「何故だ?」

 

「あきつ丸は私たちを裏切れない。なぜなら、まるゆがいるから…。あの子は仲間を見捨てられない子よ。」

 

「…そうか。」

 

「えぇ。まぁ、楽しみね。まるゆをどう『使う』か。クスクス…。」

 

「その通りだな…。…ところで、あの佐世保の新提督のことだが…。」

 

「…?」

 

「現在第4呉鎮守府にいると情報を掴んだ。」

 

「クスクス。なら、今は不在のはず。奇襲にはうってつけね…。」

 

「いや、まだ数人、奴の信頼のおける部下がいることも情報を掴んだ。」

 

「…クスッ。どうしてそのような情報を?」

 

「海軍に属しているスパイもいる。我々を舐め切っている奴らを引きずり倒すために。」

 

「クスクス。…ところで、第4呉鎮守府とは…?」

 

「瀬戸大佐と呼ばれる者が指揮官の場所だ。」

 

「……。…瀬戸…?」

 

「瀬戸 和弥。知らんのか?」

 

セトォ……。

 

樫本少将はいつもクスクス笑っているはずが、この時だけ怒りを露わにしていた。

 

「…奴の始末は私が必ずします…。あいつは…殺しても殺したりない…くらいね…。」

 

「クックック…。憎しみが溢れ出ているその表情、それこそ陸軍にふさわしい…。」

 

「ヤツハ…カナラズコロス…。」

 

「裏切った奴に自分の夢をとられるのは、さぞ悔しいだろう…。安心しろ。奴を始末したら、好きにして良い。」

 

「ワカッタワァ…。」

 

樫本少将は部屋から出て行った。




acnxのshiningの曲が好きなんですが…。おかしいでしょうか…?艦これ、久しぶりにログインしたらあまり進んでいないことを見て驚きました。
登場人物紹介コーナー
警備員…この道30年のプロ。
大和…大本営、元帥の秘書艦。うまく、ことを運ぶことも可能で、もちろん、艦娘としても強い。基本的には良い人。
元帥…大本営兼軍事学校校長。良い人。元帥として確かな実力がある。
岩倉…第3佐世保鎮守府の提督。
樫本…瀬戸大佐の友。本名は樫本 美月。提督になるのが夢だった。虐められて提督にもなれず、陸軍に拾ってもらった。自分の夢だった提督に瀬戸大佐がなっていて、裏切られたと思い、目の敵にして恨み、憎み続けている。
陸田…陸軍特殊部隊指揮官。あきつ丸たちの上司である。深海棲艦が出てくるまでは優しく、トップの器だった…。
裏切った友人…樫本を虐めていた中心人物。現在、詐欺師をやっていたらしく、刑務所にぶち込まれている。懲役20年の刑で。
セラフ…ナインボール・セラフ。現在、第4佐世保鎮守府に所属している。武器装備、最新テクノロジーの専門家。ミスセラフだ。
時雨…可愛い。
次回!第134話「牛鬼」お楽しみに!


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134話 牛鬼

小説書くのが面倒くさくなってきました…。
「どこへ行く気?あんたの存在する場所はここよ。みんなからはこう言われているの。『前書き欄を仕切っている格好良い二人組』 でも、あんたのせいで変わっちゃう。『面倒くさい』?あんたがそんなことを言っているから、『へたれの根性なし。大したことも出来ず、虫のようにくたばる。』 冗談じゃないわ!あんたには無理矢理にでも書いてもらうんだから!好き好んで小説書いて、好き好んで続きを考えているんでしょうが!ねぇ、おい筆者!だったら好き好んで完結させて二度と書くな!」
すげぇ剣幕…。ネタだけど…。
「…ふぅ…。少しスッキリした。」
だろうね。人がいないところで大声を出すとスッキリするよね。
「そうね。でも、人がいないところってそうそうないわよね…。」
そうなんだよ…。田舎の山の中で大声を出したら、近くに普通におっさんが畑仕事していたんだよ…。あの時は本当に精神的に死ぬかと思った…。
「恥ずかしいわね…。それ…。」
あぁ……。…それじゃぁ、あらすじ頼めるかい…?
「えぇ…。」

あらすじ
前回。やっと時が動き出したわ。そして、今…鎮守府では大騒ぎが…。


…………

第4呉鎮守府

 

「晩ご飯だ。今回は少し豪華だぞ。」

 

瀬戸大佐の話が終わり、晩ご飯の時間だ。ドミナントたちも手伝っている。

 

「お腹すいた〜。こっちのご飯ってどんなのかな〜?」

 

神様はワクワクしながら待っている。

 

提督、なんかワクワクしているけど、…はっきり言うと、まずい料理が出て平気かな…?

 

時雨がドミナントに聞く。

 

まずい料理って…。まぁ、そうだけど…。まぁ、大丈夫だろう。いつもお菓子ばっか食ってるあいつには良い薬になるよ。

 

提督って、神様にはなんか厳しいよね…。どうして?

 

最初すごく苦労したのはあいつのせいだから。…でもまぁ、ジナイーダたちと会えたのはあいつのおかげだから、感謝もしているんだけどね…。でも、なぜか許せないの。

 

ふぅーん…。そう…。いつも神様には心開いているのにね。はっきり言って僕たちより、仲良いじゃん。

 

「そうか?」

 

「そうだよ。」

 

ドミナントと時雨が話していると…。

 

「何話してるの〜?」

 

神様が聞いてくる。

 

「いや、提督と神様は仲良いな〜って。」

 

「そりゃそうだよ!だって私の夫だもん!」

 

「誰が夫だ。」

 

「なぬっ!?どみなんと…貴様の妻はこんな子供なのか…?」

 

「瀬戸大佐、違いますから…。」

 

「やっぱりね。変態な気がしてたもん。」

 

「那珂さん!?すごく失礼ですよ!?」

 

「へぇ〜。こんな子供が大佐の妻なんだ〜。よかったね〜。」

 

「川内さん…。それ、分かってて言ってるでしょ?」

 

「「「……。」」」

 

「神風型の皆さん…。そんなゴミを見るような目で見ないでください…。精神的に死にます…。てか、少し距離取ったよね?」

 

「い、いえ…。人の趣味は人それぞれですし、さ、さぁ、ご飯の準備が出来ましたよ。」

 

「神通さん。すっごく動揺しているあたり、そういう話したことないんですね…。てか、フォローになってません!」

 

ドミナントが丁寧に全員にツッコミを入れる。そこに…。

 

「ご飯持ってきました!」

 

五月雨が晩ご飯を持ってくる。

 

「おー、五月雨さん。そんなに走…。」

 

そこでドミナントは気づいた。

 

……知っているぞ…。五月雨がドジを踏むのは…。となれば、必ずここは転ぶはず…。そして、筆者の特性から見て、俺に当たるな。

 

ドミナントは分析する。そして…。

 

ガッ!

 

「わっ!?」

 

五月雨が転ぶ。そして、それはドミナントの目の前まで来る。

 

……想定の範囲内だよぉ。これを軽く避けて、筆者の期待を騙して悪いが…。!?

 

だが、避けさせる筆者ではない。ドミナントの後ろに夕立が寝ているのだ。

 

……うん。最初から選択肢なんてなかった。

 

がしゃぁぁぁん!

 

…………

 

「すみません!」

 

「いや、大丈夫だ…。目に見えていたから…。」

 

ドミナントの頭の上に色々なものが付いている。それを五月雨が一生懸命拭いたり取ったりしている。

 

「うん…。この濃厚な旨み…。そして、自然の香りがして、少し上品な一品だね。」

 

神様が食レポをする。

 

「…ところで神様…。何が『素晴らしい一品』…だ!?絵的には全然感じられないけど、アウトだよ!!さすがにそれはやめろ!ヤバイやつだ!それに、俺が恥ずかしい!神通なんて顔を真っ赤にして伏せてるぞ。」

 

「えぇ…。でも…。普通に食べるより何倍も美味しいけど…。」

 

「『えぇ…。』じゃない!普通の常識人として考えてもみろ!誰が人の頬についた食べ物を舐めとったりするんだ!?今すぐやめろ!これは命令だ!」

 

「恥ずかしがっちゃって〜。他人なんて気にしちゃダメだよ。」

 

「俺が気にするわ!てか、舐めるな!時雨や夕立の目が怖い!」

 

ドミナントはまだ舐めてくる神様を無理矢理に退ける。第4佐世保の艦娘たちの目線が怖い。

 

「はぁ…。布巾ありますか…?」

 

「う、うむ…。それがしや、それがしの艦娘たちにも少し刺激が強かったがな…。」

 

瀬戸大佐が目を合わせずに布巾をドミナントに渡す。

 

……最悪だ…。俺のイメージが大きく変わってしまった…。これだから神様を受け入れられねぇんだ。常識が少しズレているからな。

 

こっそりつまみ食いしている神様を横目に見て思う。そして…。

 

「まぁ、色々あったが、取り敢えず飯だ。手を合わせていただこうぞ。」

 

「はい。それでは時雨たちも手を合わせて。つまみ食いしている神様、手を合わせないと飯を取り上げるぞ?」

 

「わ、わかった…。…怒ったのかな…?

 

そして、全員が手を合わせる。

 

「「「いただきます。」」」

 

皆が箸を持つ。

 

「…今日の献立は豪華だな。鹿肉の味噌汁…か?臭みもなく柔らかい…。良い出し汁だ…。くせになる。料理した人は良い腕だな。気に入った。いつか訪問した時、作ってもらいたいものだ。それに、猪と兎の肉か?丁寧に仕込みができている。ジューシーだな。タクアンもうまい。…だが、ご飯は稗か…。」

 

ドミナントは料理を食べていく。そして、ふと神様を見ると…。

 

「……。うん。美味しい。」

 

神様は稗も美味しそうに食べていた。ドミナントと艦娘たちは顔を見合わせる。

 

「神様…?それ…。」

 

「美味しいよ。最近は化学調味料とかで変な味がしているものもあるけど、ここはそんなもの一切使っていない自然の味。農薬とか、無駄なエキスとか配合してある最近の食べ物と比べたら、こっちだね。」

 

神様はどんどん食べている。

 

「すげぇなこいつ…。大物だ…。…これが自然の味なのか…。ある意味、豪華だよな…。」

 

ドミナントと艦娘は見る。そして、残さずに食べた。それを見ていた第4呉の人たちは非常に複雑な顔をしていた。

 

…………

晩ご飯を食べ終わって10分後…。

 

「美味しかった〜。」

 

「…そうだな。」

 

神様とドミナントが話す。

 

「手伝いも終わって暇だね。」

 

「し、司令官さん…。暇…です…。」

 

そこに、時雨と羽黒も加わり…。

 

「今日で最後なんだ〜。マジパナイ。」

 

鬼怒もやってくる。

 

「それより、布団を敷きますよ。」

 

「皆さん、手伝ってください。」

 

扶桑と妙高が言う。

 

「まだ起きていたいっぽい〜。」

 

夕立が寝転がりながら言う。そこに…。

 

「元気が良いの。貴様らの艦娘は。」

 

瀬戸大佐がドミナントの隣に立つ。

 

「元気が有り余って、問題を起こすくらいですから。」

 

「フフフ。それぐらいがちょうど良いのかもしれんな。…それがしの艦娘は皆言うことをちゃんと聞いておる。それに、わがままも言ってこない。…何故だか、可哀想なのだ。」

 

「何故ですか?」

 

「それがしに無理をさせないように…、困らせないように欲しいものがあっても我慢しておる気でならないのじゃ。皆、弱音吐かず、このような、現代では苦しゅう暮らしをしておる…。聞くところ、川内は夜戦が好きで夜うるさいらしいではないか。だが、それがしの鎮守府では一切騒がない。…おそらく、牛鬼が関係していると思われるのじゃ…。」

 

「そりゃ、あんなものと出会すなんて死んでも嫌ですからね。」

 

「それがしは、この山から出られぬ。拙者が学校へ行ってていない間、牛鬼が人里へ降り、人間を何人も襲ったらしい。それ以来、この山には牛鬼を退ける者が必要と分かったのじゃ。…牛鬼を殺し尽くそうと考えたこともある。そして、山狩をした。じゃが、牛鬼は不滅じゃった…。殺しても殺しても減らぬのじゃ…。そのことに気づいたのはちょうど1500匹を殺した時じゃった…。あんなに大きなものが1500匹もおるはずがない。そんなにおったら山が牛鬼で埋め尽くされるはずじゃからな。」

 

「何処かから湧き出ているんじゃありませんか?てか、牛鬼って水のある場所に出るらしいじゃないですか。それを埋めてしまえば…。」

 

「馬鹿を抜かせ。川を埋めてみろ。その川のお陰で人々は生活できておるのじゃぞ。」

 

そう、その川の先はダムになっている。その川を埋めてしまった場合、困るのはそのダムを使うかもしれない人々だ。

 

「…それで、頼みがあるのだが…。」

 

「……。」

 

「ここから出たいと思っておる艦娘をそちらで引き取ってもらえぬか?」

 

「えぇ!?」

 

「無理難題を申しておるのはわかっとる…。じゃが、そんな拙者のわがままで、艦娘たちの人生まで奪いたくないのじゃ…。あの子たちは良い子たちだ…。家の家事をやってくれる良い子なのに、欲しいものも手に入れられず、美味しいものも食べられず、自由すらない…。そんな仕打ちはあんまりではないか…。」

 

「ですが…。」

 

「頼む!この通りじゃ…。」

 

瀬戸大佐は土下座までして頼んでいる。

 

「…頭を上げてください。艦娘たちは本当にそれを望んでいるのか聞いてきます。もし、望んでいる艦娘がいたら引き取ります。…おそらく、いないと思いますけどね。」

 

「何故そう思う…?」

 

「生みの親同然ですよ?それに、自分たちの幸せを願って土下座までする人ですよ?例え望んでいても、そんな人を残して、自分だけ楽しようとする艦娘がどこにいますか。私だったら行きません。」

 

ドミナントはキッパリと言う。そこに…。

 

「そうだよ!何勝手に取引してるのさ!」

 

川内が天井から降りる。

 

「せ、川内…。聞いておったのか…?」

 

「最近、時々私たちに申し訳なさそうな顔をするから、何かを感じて見張っていたんだよ。このこと、前から考えていたでしょ?こっちからしてみれば良い迷惑だよ。私たちは提督のことを信頼しているのに、こっちの方があんまりだよ。私たちはここにいたい。私たちは提督と一緒にいたいの。一緒にいたいから我慢しているの。だから、勝手に異動の話を進めないでね。わかった?」

 

川内が指を指しながら言う。ドミナントは少し口元が緩んでいた。瀬戸大佐はそのことを聞いて、優しい笑顔をした。

 

「ありがとう、川内。おかげで目が覚めた。」

 

「いいって。いつもの提督に戻ってくれれば。ふふっ!」

 

川内も嬉しそうに笑う。だが、問題はいつでも起きるものなのだ。

 

カン!カン!カン!カン!カン!…!

 

『敵襲ーーー!』

 

キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"

 

松風が鐘を鳴らし、大声で言う。牛鬼の声と一緒に。

 

「「「!?」」」

 

ドミナントたちと瀬戸大佐らは外へ出る。そこに待っていたのは…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"」

 

5体の牛鬼だった…。




はい。終わりました134話。少し長くなってしまいましたね。本来ならその牛鬼たちを退治して、鎮守府に戻るところまでしたかったんですが、切りました。
登場人物紹介コーナー
瀬戸大佐…第4呉鎮守府提督。
神様…神様。
ドミナント…第4佐世保鎮守府提督。
時雨…可愛い。
夕立…可愛い。
羽黒…かわいい。
鬼怒…カワイイ。
扶桑…良い人。
妙高…いい人。
那珂…久しぶりの登場。芸者。
川内…忍者。
神通…侍。
神風型の皆さん…神風、朝風、春風、松風、旗風の5人。
五月雨…ドジっ子。
牛鬼…妖怪。
次回!第135話「退治」お楽しみに!


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135話 退治

135話…。鬼怒があまり話さない…。じゃなくて、話せない。
「話すたびにギャグを少し入れたりしなくちゃいけないからね。」
そうなんだよ…。ある意味鬼怒って天才なんだよね…。
「風が吹けば、風のギャグを言うものね。」
すごいよ…。本当にすごい…。
「ギャグねぇ〜…。例えば、布団が吹っ飛んだとか?」
あと、イルカはいるか?ってやつもね。…て、小学生か!?
「いざ考えるとなると、浮かばないものね。」
鬼怒は天才だね。…じゃぁ、あらすじを頼むよ。
「分かったわ。」

あらすじ
提督さんは当分鎮守府に帰らない方が良いわ…。今、艦娘たちが血眼になって探しているから…。そして、問い詰めようとしているから…。本当に大騒ぎよ…。


…………

第4呉鎮守府

 

「「「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」」」

 

そこにいたのは5匹の牛鬼だった。

 

「やばいねぇ…。」

 

「攻めてきたか…。」

 

二人の提督は笑えない顔をする。

 

「久しぶりに本気出そうかな?」

 

「提督!私が足止めをします!今のうちに遠くへ!」

 

「那珂ちゃんの〜、ライブ見せてあげる!」

 

川内型三姉妹が前に出る。神風型は後ろに下がり、援護をする。瀬戸大佐の近くにはもしもの時のための五月雨が戦闘態勢でいる。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」

 

一匹の牛鬼が突進してくる。

 

「来たよ!」

 

「受けます!姉さんは背から。」

 

「那珂ちゃんは〜、囮になるよ!」

 

ドシィィィン!!

 

那珂に狙いを定めて突進してきた牛鬼を神通が刀で止め、川内が背に乗る。

 

「はいっ!受け取って!」

 

「これっ!」

 

「どうぞ!」

 

「アハっ!しっかり取ってよー!」

 

「えいっ!」

 

神風型の全員が竹槍を作り、投げ渡す。

 

「ありがとう!…食らえっ!」

 

ドス!ドス!…!

 

川内が容赦なくそれを突き刺す。だが…。

 

「「「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」」」

 

もちろん、一匹だけではない。その他の牛鬼も糸を吐いたり、毒を吐いたり、突撃してくる。

 

「!?」

 

川内は気付くが遅い。

 

……やば…。

 

だが…。

 

ドシィィィン!バシャァァン!ドガァ!ドゴォォォン!

 

「こちらは…。」

 

「僕たちが…。」

 

「食い止めるから…。」

 

「き、気にしないで…。」

 

「全力で…。」

 

「戦うっぽい!」

 

第4佐世保鎮守府所属の時雨たちが行く手を塞ぐ。扶桑と妙高は一匹ずつ牛鬼を食い止め、羽黒と鬼怒が毒を水で打ち消し、時雨と夕立が艤装で攻撃する。

 

「…私たちも…。」

 

「第4佐世保に…。」

 

「負けて…。」

 

「「「られない!」」」

 

艦娘たちが頑張る。

 

「「……。」」

 

二人の提督は立ち尽くしたままだ。

 

「…すげぇな…。まるで映画の中みたいだ…。」

 

「…ふむ。艦娘たちが頑張っておるのに、拙者がいかんのも何かの…。」

 

二人で見守っていたが…。

 

「きゃっ!」

 

「くっ!」

 

「うっ…。」

 

川内型の3人が苦戦する。牛鬼が暴れ、川内が落ちる。そして…。

 

「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」

 

川内に突進してきた。

 

「…!?」

 

川内は避けようとするが、足が動かない。

 

……さっき落ちた時に足を捻った!?

 

川内は覚悟を決める。が。

 

「神通!刀!」

 

「で、ですが…。」

 

「はようせい!」

 

「は、はい!」

 

突然瀬戸大佐に言われ、神通が投げ渡す。そして、刀を持った瀬戸大佐は風の如く川内の前に立ち…。

 

スラァ…。

 

白く輝く刃を抜く。神通が抜いた時の光とは桁違いだ。

 

ギィィィィン!

 

そして、牛鬼を刀で受け止める。

 

ギギギギ…

 

「…どみなんとの艦娘…。牛鬼から離れろ…!」

 

刀で受け止めながら言う。そして、何かあると感じた時雨たちはうなずきあい、離れる。

 

「…奥義…。」

 

ゾクッ

 

「「「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」」」

 

瀬戸大佐の言葉に、とてつもない殺気を感じた。瀬戸大佐が化け物の立ち姿に見えるくらいだ。そして、一斉に攻撃を浴びせようとする牛鬼たち。だが遅い。

 

「『天際無常』…!」

 

ズパパァ…!

 

瀬戸大佐が一瞬で、同時に5匹の牛鬼の首を落とした。居合斬りの一種だ。

 

「「「!」」」

 

ドミナントたちは、瀬戸大佐の強さに驚きである。

 

シュゥゥゥ…。

 

「ぐ…むぅ…。」

 

瀬戸大佐は苦しそうに唸る。そして、呪いを弾く。だが…。

 

「キ"ュ"エ"…ァ"ァ"…ァ"…!」

 

一匹だけまだ生きていた。そして、口から毒を吐いて来た。

 

「ぐむ…。」

 

瀬戸大佐は動けない。

 

「「「提督!」」」

 

川内たちが盾になろうと走り出すが、遅い。

 

「…やれやれ、やっぱり俺が最強か〜。」

 

バシュウ!!

 

「「「!?」」」

 

川内型、五月雨、神風型、瀬戸大佐が驚いた。ドミナントがAC化して、AA緑ライフル(CR-YWH05R3)を撃って、毒を消滅させたのだから。

 

グサッ!

 

そして、瀬戸大佐がまだ生きていた牛鬼に刀を突き刺し、とどめを刺す。そして…。

 

「どみなんと…。貴様も妖怪だったのか…。」

 

「えっ?違いますよ。ACです。」

 

「えーしー…とは?」

 

「人型機動兵器『アーマード・コア』です。」

 

ドミナントが言う。

 

「…つまり、人間ではないのか?」

 

「いや、人間…。…う〜ん…。生物的にどうなんだろう…。」

 

「…まぁ良い。おかげで助かった。かたじけない。」

 

「別に良いです。…でも、このことは内緒にしてくださいね…?」

 

「うむ。」

 

ドミナントと瀬戸大佐は握手をする。

 

「へぇ〜、やっぱり、なんか違うって思ったらそうなんだね〜。」

 

「これはこれは…。なんて強そうな…。」

 

「!何か新しい歌詞が閃きそう!」

 

「これくらいの人がいたら、家事とか楽になりそうね…。」

 

「…もしかして、薪割りの時、苦しそうにしてたのって演技なんじゃ…。」

 

「もっと早く私たちを探しに来れたじゃない!」

 

「ハイカラな物ですね…。」

 

「人ってこんなものになれるのかしら…?」

 

「それより、今の武器の威力って…。」

 

第4呉鎮守府所属の艦娘たちがドミナントに集まる。触ったり、質問してきたりしている。瀬戸大佐はそれをニヤニヤしながら眺めていた。艦娘たちが興味を持っていることが嬉しいのであろう。ましてや、それが近くにあるのなら…。

 

「ちょ、そこ触っちゃダメ!手が挟まったらどうするの!手を取ろうとしちゃダメだよ!これ取れないから!ロケットパンチできないから!…なに?人型の時は演技じゃないよ。長年のデスクワークで…。せ、瀬戸大佐!なんとかしてくだせぇ〜。」

 

「フフフ。そのままにしてやってくれ。珍しいのだろう。」

 

「そんなぁ〜。」

 

まぁ、触られているドミナントも…、可愛い女の子に囲まれているドミナントもまんざらでは無さそうだ。

 

「ずるいっぽい!この状態の提督には触ったことがないっぽい!」

 

夕立も来る。

 

「僕たちも…一応…ね。」

 

時雨も恥ずかしながら来た。というより、全員触っている。神様以外は。

 

……何も感じないのが辛いところだな…。

 

ドミナントはACであるため、感覚も何も伝わらない。そして10分後…。

 

「…動いても良いか?」

 

「あっ…、はい。」

 

ようやく動くこともでき、人型に戻る。

 

「さて、今宵はもう遅い。布団を敷くぞ。」

 

瀬戸大佐が言い、全員が布団を敷く。

 

「…さて、今晩で終わりだな。みんな、明日は帰るから、よく寝ておくんだぞ。」

 

ドミナントは庭のテントでなく、艦娘と結構離れた位置に布団を敷き、そこで寝る。蝋燭の火が消えて、しばらくして…。

 

…提督寝たかな?

 

時雨が言い出す。

 

さぁ?

 

今のうちに提督の布団に行くっぽい?

 

夕立と時雨と鬼怒が話す。

 

私も忘れないでね。

 

「「「神様…。」」」

 

そこに…。

 

「皆さん、やましいことを考えずに寝ますよ。」

 

だが、それを聞いていたのは4人だけではなかった。妙高が釘を刺す。

 

「「「はい…。」」」

 

…………

三十分後

 

「「「……。」」」

 

計画のことを考えて、全く寝付けない3人。

 

…どうするっぽい?

 

妙高さん…。寝たかな?

 

提督も起きてたらパナイお仕置きが…。

 

大丈夫だよ。ドミナントなら。

 

4人がコソコソ話す。

 

でも、寝癖が悪いってことで、そっち行っちゃえば良いんじゃないかな?

 

時雨が言う。そこに…。

 

「…ダメです。」

 

「「「!?」」」

 

妙高が言う。

 

「お、起きていたっぽい…?」

 

夕立が恐る恐る聞く。

 

「はい。…というより、あなたたちのやましい考えのことを考えて寝付けないんです…。」

 

「同じっぽい…。」

 

妙高が困った感じに言う。

 

「…それだったら、提督の近くに寝るのが一番だよ。…なんか、安心するんだ。」

 

時雨が言う。

 

「安心…ですか?」

 

「うん…。少し近づいてみようか。」

 

時雨が言い、全員が近づく。

 

「…確かに、少し暖かい様な…。」

 

「やっぱり。」

 

時雨たちは少し移動して布団に寝転がる。すると…。

 

「…う〜ん…。う〜ん…。」

 

ドミナントがうなされている。

 

「…提督?」

 

もちろん、全員が不思議がる。ドミナントがうなされているとは考えにくかったからだ。

 

「…黒…い…。…死…。」

 

「「「?」」」

 

「……。」

 

ドミナントの声に全員が分からなくなる。だが、神様は難しい顔をしてジッと見ていた。

 

「…お前は…誰…だ…?」

 

ドミナントがそう言う。

 

「提督。起きて。提督。」

 

流石に変に思い、起こす。

 

「…ハッ!?」

 

「…どうしたの?汗びっしょりだよ?」

 

「ハァ…ハァ…。」

 

「提督?」

 

「…時雨か…?…そうか…。夢か…。」

 

「どうしたの?」

 

「…聞き慣れた声だった…。あいつの声だ…。しかも…、記憶まで…?…これはACのデモシーンには無かった筈だ…。捏造ではない…。嫌に鮮明だった…。…俺はなんなんだ…?」

 

ドミナントは独り言を呟く。

 

「提督?本当に大丈夫?」

 

時雨たちが本当に心配した顔で聞く。

 

「…ぁ?…あ、あぁ…。大丈夫だ…。」

 

「「「……。」」」

 

ドミナントは時雨たちが近くにいるのも気にせず、再び眠りにつく。

 

「……。…僕たちも寝ようか…?」

 

「…ぽい…。」

 

時雨が皆と顔を見合わせて言う。自分たちの提督があんな顔をしたことなどなかったからだ。

 

…………

翌朝

 

「起きて、提督。」

 

「…ぐぅー…報酬…分は…働い…くかー…。」

 

「起きてって…。」

 

時雨がドミナントのことを起こす。そこに…。

 

「遅い起床、感心せぬな。」

 

瀬戸大佐がドミナントの前に立つ。

 

「あっ、お、おはようございます。」

 

「うむ。おはよう。…本日で主らは帰るのだったな。」

 

「はい…。」

 

「では、川内がここから山を降りるのに案内する。川内!おきろ!」

 

瀬戸大佐が大声で言うと…。

 

「朝…マルゴーマルマル…早いよ…。」

 

「夜更かしばかりしておるからじゃろう。さぁ、山から下ろしてやっとくれ。」

 

「ふぁーい…。」

 

そして、川内が支度をする。

 

「お前たちも、忘れ物はないな?て、神様起きろ。」

 

「「「はい。」」」

 

「もう食べられないよ…。」

 

ドミナントは神様を揺すって起こし、時雨たちも支度をする。そして…。

 

「瀬戸大佐、お世話になりました。」

 

「いや、こちらこそ迷惑をかけた。さらばじゃ。また会おう。」

 

最後に握手をして、ドミナントたちは帰った。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「…ひっさしぶりに帰れたな…。」

 

「お風呂入りたいです…。」

 

ドミナントたちが門の前で言い、中に入る。すると…。

 

「「「提督(司令官)ーーー!」」」

 

艦娘たちが走ってくる。

 

「おー、こんなにも俺の帰還を歓迎してくれるとは…。なんて良い子た…グヘェっ!」

 

ドミナントが言い終わる前に艦娘たちに胸ぐらを掴まれ、持ち上げられる。

 

「提督ー…!これはどうゆうことデスカ…?」

 

「こ、金剛…怖い…。怖いぞ…。な、何がだ…?」

 

「あらぁ〜、しらばっくれるつもりぃ〜?絶対に許さないんだからぁ〜。」

 

「た、龍田!?薙刀が…薙刀が近い!近い…!ま、待て!本当になんだ!?」

 

「てめぇ…。まだとぼけるつもりか!?」

 

「天龍!説明してく…。刀はやめよう…?ね…?」

 

「提督、正直に申してください。」

 

「赤城まで…。本当になんだ…?教えてくれ…。」

 

「お前はそんなことをする奴じゃないと信じたい…。頼む。正直に話してくれ…。」

 

「長門…お前まで…。しかも、なんでそんな悲しそうな顔なんだよ!?誰か死んだのか!?」

 

「司令官…。」

 

「吹雪…。吹雪の目が怖い…。フブキ!?フブキナンデ!?」

 

「提督…、ほぼ最初にいた私たちまで差し置いて、なんでですか…?」

 

「夕張、泣くな。なぜ泣いているのか俺にもわからんから、なんて声をかけて良いのか…。」

 

「司令官!私じゃやっぱり役不足なんですか!」

 

「三日月の最近出番ないからね〜。て、違う!今関係ないし!何故こうなっているのかすら分からない!」

 

「提督、正直に言ってくれないと、本当に困るけど。」

 

「川内…マジで知らん…。教えて…。」

 

「あらぁ、唯一司令官に建造された私でさえもシラを切るつもり?」

 

「えぇ…。」

 

「ドミナントさん。他の駆逐艦の子たちは部屋で泣いています。しっかりと説明してもらいますよ?」

 

カチャ

 

「セ、セラフ…。AC化なんてして…。銃口を構えないで…。」

 

「セラフだけではない。私もいる。仲間である私に一言もないなんてな…。」

 

カチャ

 

「リボハン…俺八方大ピンチ…。マジで知らんけど…。」

 

「ドミナント…。すまないが、今回はお前の味方をできない。見物させてもらう。」

 

「ジャック…。どうして…。」

 

「いーじゃん!盛り上がってるねぇー!…でも、俺はここから見ているだけにするよ。割って入るのは、俺のキャラじゃないしね〜。」

 

「主任…、た、助け、助けて…。」

 

ドミナントがマジで困っているのを確認して、古鷹が言ってくれる。

 

「…この人に見覚えはありますか?」

 

古鷹は加古の後ろに隠れている子を連れてくる。

 

「ん?大鳳じゃないか。知ってるよ。前、風邪の看病してくれて…。はっ!?ま、まさか、看病してもらったからって…。ひ、秘書艦の日なんだから仕方ないだろう…?」

 

「「「違います!」」」

 

艦娘全員が怒った感じに言う。

 

「ま、まぁ落ち着いて。提督が何をしたの?」

 

「私たち『さっき』帰ってきたのに、『殺気』立ってどうしたの?」

 

「みんな目つきが怖いっぽい〜。」

 

「て、提督が…何かしたんでしょうか…?」

 

「足柄も那智も落ち着いて。何があったの?」

 

「山城も興奮しないで。」

 

「ドミナントが何したの?」

 

ドミナントたちと一緒に行った艦娘たちがみんなを宥めようとする。

 

「…それにしても、心なしか大鳳が小さいな…。ご飯ちゃんと食べているのか?痩せたか?それとも、今日なんか気迫がないだけか?悩んでいるのか?」

 

ドミナントが大鳳を見ている。

 

「おかえりなさい!おとーさん!」

 

ピシッ…!

 

現在、第4佐世保鎮守府は修羅場です。




はい。終わりました。次回ドミナント生きてるかな…?
登場人物紹介コーナー
???…帰ってきたらいた。
次回!第136話「修羅場」お楽しみに!


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鎮守府編 3
136話 修羅場


タイトルが…。
「嫌なタイトルね…。提督さん問い詰められているみたいだけど、どうなったのかしら…?」
おそらくRD的なことに…。
「話が…違うわよ…。」
俺は…特別だって…。
「死にたくない…。」
死にたくない…。…みたいなことだ。
「みたいなことね。残り64話。長かったわね…。」
かかった時間はやり始めて約半年?くらいだもの。
「所詮この小説は修羅の巷の半年の夢…。」
立て!瑞鶴!…て、そろそろあらすじ始めないと。
「そうね。ふざけている場合じゃないわね。じゃぁ、やるわ。」
どぞ。

あらすじ
やっと提督さんが帰ってきたわ。遅いお帰りね。そして、艦娘たちに問い詰められているわ。大鳳?のことを…。…側から見ても、明らかに子供よね…。


…………

第4佐世保鎮守府

 

「…うん?もう一回言ってみて?大鳳。」

 

ドミナントは自分の耳が信じられなかった。

 

「おかえりなさい!おとーさん!」

 

そして、この場が凍りついた。誰も彼もが、違って欲しいと願っていたのだろう…。だが…。

 

「おぉ!見たか!セラフ!俺の気持ちがわかる艦娘が現れた!そうだ大鳳。俺はお前たちを娘の様に慕っている。つまり、父親にも信頼は大事だ。それに気づくとは…やっぱりあんた大したもんだよ。」

 

ドミナントは分かっていない。…いや、認めたくないのだろう。誰も説明しようともしない。

 

「…?みんな、どうしたの?」

 

「「「……。」」」

 

「…ドミナントさん。それ、本気で言っていますか?よく見て言っていますか?大きさを確認しましたか?」

 

セラフが冷たい声で言う。そして、ドミナントはマジマジと見つめ、手で触って確認する。

 

「…頬が柔らかい…。いいな…くせになりそうだ…。…て、いくらなんでもちっちゃくない!?5〜7歳くらいだよ!?感覚的に!」

 

ドミナントがようやく現実に目を向ける。

 

「…提督、どう言うことか説明してもらいます…。」

 

「ドミナント…?…ワタシニナイショデコドモマデ…?」

 

「ちょ、ま…。ま、待て、なぜ俺の子だと決めつけ…。…!」

 

そこでドミナントは気付いてしまった。もちろん、自身にも身に覚えがない。そして、この子は異様なまでに大鳳に似ている。と、なれば大鳳と誰の子供なのだろうか?と…。

 

「大鳳ぉぉぉぉぉぉ!!!どこだぁぁぁぁぁ!!!」

 

ドミナントが怒り狂った様に大声を上げる。ジナイーダたちは初めて見るドミナントの激怒状態に恐怖し、戸惑っている。

 

「大鳳ぉぉぉぉ…!!!」

 

ドミナントは走って、大鳳の部屋へと直行した。

 

ドガァァァァァン!!!

 

「ひゃぁっ!?」

 

ドアが蹴破り壊され、部屋が煙だらけになり、大鳳が思わず驚いた悲鳴を上げる。

 

「大鳳…!どう言うことだ…!」

 

煙で見えないが、激怒したドミナントがいることはわかった。

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

大鳳は激怒したドミナントの声に恐怖し、背筋をピンと伸ばし、敬礼しながら立っている。

 

「大鳳…!あれは誰との子供だぁ…?どこの馬の骨かもわからん奴との子供かぁ…?俺は許さんぞぉ…!その男の元へ案内しろぉ…!俺に挨拶もなしにうちの艦娘に手を出すとどうなるか思い知らせてやる…!」

 

ドミナントはめちゃくちゃ怒っていた。

 

「え、えっと…。その…。」

 

「答えろぉ!!!!!」

 

「ひゃ、ひゃい!提督とのです!」

 

「……?どう言うことだぁ…?」

 

「そ、それは…。」

 

「なんだ…?」

 

「あの…提督が風邪を引いた時…。」

 

「…ちょ、ちょっと待て…。回想のシーンにはなかったぞ?」

 

「言えませんよ…。あの時は瑞鳳さんもいましたから…。」

 

「……。」

 

バタッ

 

「て、提督!?提督ーーー!」

 

ドミナントは気絶した。

 

…………

病室

 

「…う〜ん…。…ハッ!?ゆ、夢!?…そうだよな。そんなわけないな。俺に子供が出来てたまるか。」

 

ドミナントは起き上がるが…。

 

「おとーさん起きたー。」

 

「……。」

 

バタッ

 

ドミナントは思わずベットに倒れ込む。

 

「悪い夢だ…。悪い夢だ…。覚めろ…俺。覚めろ…現実に…。」

 

ドミナントが呟いていると…。

 

「おとーさん!これ見てー!」

 

「無理だ…。俺はもうダメだ…。これは夢だ…。」

 

「見てってばー!」

 

「さようなら…。俺の人生…。」

 

「見てー!」

 

大鳳ミニがドミナントを揺さぶる。

 

「なんだ…?…!?」

 

大鳳ミニが持っていたのは、ドッキリの看板だった。

 

「…提督、すみません。まさかあんな大ごとになるとは…。他の皆さんも演技です。…提督と一緒について行った人たちにはちゃんと説明しました。」

 

大鳳が申し訳なさそうに出てくる。

 

「ド、ドッキリ…?…あは、あはは。アハァハ。よかったよ…。本当に…。」

 

ドミナントは安堵の息を漏らす。

 

「実は、この子、この鎮守府の門の前にいて…。」

 

「…へ?」

 

「山城さんが保護してくれたんです。」

 

「ほ、保護?えっ?何?どゆこと?わかんない。」

 

ドミナントは困惑する。

 

「どうやら、気づいたらいたみたいで…。」

 

「うん。待とう?何?野生の艦娘っているの?てか、この子大鳳に比べるとめちゃくちゃちっさいよ?」

 

「…突然変異かも知れませんね…。」

 

「艦に突然変異もクソもあるか。誰かの子供だろう?…大鳳、嘘はよくないぞ。誰とのだ?怒らないから正直に話してみ?」

 

「な、なぜ私と決めつけるんですか…。」

 

「じゃぁ、聞くぞ。大鳳ミニ。」

 

ドミナントは大鳳ミニの方を向く。

 

「?」

 

「お前の母親は誰だ?」

 

「はは…おや…?」

 

「おかーさんのことだ。」

 

「ん。」

 

大鳳ミニは指を指す。

 

「……。」

 

そして、その指は大鳳へ…。

 

「…ち、違います!真っ赤な嘘です!」

 

大鳳も身に覚えがないため、慌てている。

 

「…大鳳。」

 

ドミナントが冷静に名前を呼ぶ。

 

「な、なんでしょうか…?」

 

「後でキツイお仕置きね?俺がお仕置きしたあと主任行き。そこで拷問して、相手のことを吐かせるから…。」

 

「!?ち、違います!信じてください!それに、拷問って…。」

 

大鳳はこのままいくと自分がどうなるかを考え、ゾッとして否定する。

 

「だが、このよだれ垂らしている可愛い子が指を指したのだぞ?母親に。」

 

ドミナントが大鳳ミニの頭に手を置いて、撫でている。

 

「そ、そんな…。…というより、拭いてあげてください…。」

 

「む。そうだな。…可愛い…。」

 

ドミナントがよだれをハンカチで拭いてあげる。

 

「…ゴホン。で、大鳳、異議はあるか?」

 

「あります!あります!私の子じゃありません!」

 

「大鳳…。じゃぁ、どう説明する気だ?」

 

「そ、それは…。…!。そうだ!この子に父親の名前を聞けば答えが出るはずです!」

 

「お前…。…俺に反応するだろ?さっきも反応してたし…。」

 

「あの格好で提督のことを父親と言ったのなら、提督服を脱いだ状態で言わなければ、ほかの鎮守府の提督と私となります。」

 

「なるほど。そうだったな。他の鎮守府にも大鳳がいるんだったな。…じゃぁ、おとーさんは?」

 

「ん。」

 

もちろん、ドミナントに指を差す。

 

「…大鳳…、本当に身に覚えがないか?俺、風邪で寝込んでいたり、気絶とかしょっちゅうしているからわかんないけど…。」

 

「この子が提督との子だったらどれほど良いのか…。」

 

「…本当に身に覚えがないみたいだな。とにかく、うちで預かるか。」

 

「えっ?」

 

「それとも、お前はこの子どもを外に放っぽり出す気か?…それに、可愛いし…。

 

「い、いえ。そんな酷いこと…。」

 

「だよな?だったら、ここに置いてやろう?」

 

「はい。」

 

大鳳が納得する。

 

「たいほー。おまえはどうしたい?どこでねたい?」

 

ドミナントが大鳳ミニに聞く。

 

「おとーさんとおかーさん。」

 

「「……。」」

 

ドミナントたちは困った顔をする。

 

「うーん…。どちらかではダメかな〜?」

 

「……。…わかりました…。」

 

大鳳ミニがとても悲しそうな顔をした。

 

(意気地なしです。)

 

(子供を悲しませるクソな男です。)

 

(脳みそまでカビたか…です。)

 

妖精さんたちがヤジを飛ばす。

 

……うるせぇ。どうしろってんだ。大鳳と一緒にねるのか?馬鹿を言え。大鳳が本気で拒絶するぞ?そうなれば、必然的に胸ぐらを掴まれたり、窓から放っぽり投げられる俺の信頼がさらに下がってマイナスに行くぞ?それに、もし一緒に寝るなんてなったら、明日ジナイーダに消し炭にされる…。

 

ドミナントが冷静に返す。

 

……それに、大鳳を見てみろ。顔を伏せて、真っ赤に怒っているじゃないか。俺みたいなノーマルには釣り合いが取れないだろう?イレギュラー、つまりジャックたちならまだなんとか…。

 

ドミナントが大鳳を見ながら困った顔をする。が、大鳳の方は…。

 

……て、提督と寝る…?しかも合意で…?提督と合意で一緒に寝るなんて…。もしかしたら、私、すごく運が良いんじゃ…。いえ!無理無理無理!寝れない!

 

首を振ったり、考え込んだりしている。

 

(…乙女の心をわかっていない人です。)

 

(やはり、腐っては生きられぬです。)

 

……うるせぇ!お前たちにはわかるのか!?仮に、そう思っていたとしても、俺は艦娘と恋愛するつもりはない!だって我が子の様なものだぞ!?

 

(とは思いつつも、たまに狼になりそうになったりするです。)

 

……し、仕方がないだろう!俺も男だ!あんなに可愛い子たちが中破した姿(半裸)でそこら辺歩き回られたら、そりゃそうなる!理性でなんとかしているがな。

 

(さっきと言い分が違うです。)

 

(さすクソです。)

 

(まるでファルスです。)

 

……うるせぇ!寝ればいいんだろう!?寝れば!

 

ドミナントは半ばヤケクソになり…。

 

「大鳳!」

 

「は、はい!」

 

「一緒に寝るぞコンニャロー!」

 

「へっ…?は、はい!」

 

ドミナントと大鳳の会話を聞き、大鳳ミニが顔をパァッと明るくなる。

 

「ほんとー!?」

 

「本当だぞ!」

 

「よるここにくるから!」

 

バタン!

 

大鳳ミニは嬉しそうに走って行った。

 

「…て、提督。本当に…。」

 

「一度言ったものは仕方ないだろう。お前も、心の準備をしておけ…。」

 

「は、はい。」

 

……ど、どうしましょうか…?寝顔を見られるのは…恥ずかしい…。提督の寝顔は可愛いからしょっちゅう見たりするんですが…。

 

…………

その頃、外

 

「おう。たいほー。どうしたんだ?そんな嬉しそうにして。」

 

「あらぁ〜、提督起きたのぉ〜?」

 

天龍と龍田の場所に大鳳ミニが来る。

 

「きょー、おとーさんとおかーさんがいっしょにねるの!」

 

「?どう言う意味だ?」

 

「……。」

 

天龍は分かっていないが、龍田は微妙な顔をしている。普通なら、天龍を笑ったりするのだが…。

 

「天龍ちゃん。つまり…。」

 

「…?……。…!」

 

龍田に耳打ちされ、内容に気付く。

 

「そ、それじゃぁ、本当の夫婦みてぇじゃねぇか…。」

 

「取られちゃったのかしらぁ〜?」

 

龍田はニヤけているが、目の奥は全くそう言う感情ではなく、天龍は少し驚いていた。そして、それはすぐに広まった。

 

…………

???

 

「やぁ、久しぶりだね。僕たちが登場するのは。」

 

「?誰に向かって話している?」

 

ここは暗躍者たちの集いの場。そこで、ハスラー・ワンが言う。

 

「それより、例の物は出来ているのかな?」

 

「…これだ。」

 

「素晴らしい…。全く驚異的だ…。」

 

「お前の言われた通りに作ったぞ。この世界は混沌に満ちている。秩序なき世界を…人類を再生する…。それが私の使命。」

 

ハスラー・ワンが言う。

 

「君たちの時代の兵器のデータ、そして、僕の計画性。これらがあれば負けるとは思えないけどね。」

 

「作るのは私なのだから、しっかりして欲しいがな…。…ところで、例の人間達はどうした?」

 

「順調に行っているよ。恐ろしいくらいにね。」

 

「そうか。…この世界の組織とは?」

 

「奴らは僕らの操り人形、捨て駒に過ぎない。」

 

「だが、存分に利用するのか。そのうち足がつくぞ?」

 

「なんと呼んでも構わないけど、僕からすればイカれているのは全部だ。この世界も、人間たちも。可能性なんて存在しない。」

 

二人が話していると…。

 

「ふぁ〜、戻ったよ。」

 

「やぁ、おはよう。収穫は?」

 

「アメリカのマフィアだっけ?全員抵抗したから皆殺しにしてきた。」

 

「あはっ。アハハ。皆殺しにしてきたって。」

 

「嘘をつくな。どうせ命乞いも無視して殺してきたのだろう?」

 

「よくわかったね。」

 

「殺した人間の人数なんて関係ないからな。」

 

「へぇ〜、そう。」

 

「まぁ、まだまだ死んで良い人間は山ほどいるから、どんどん収穫してきてくれればなんでも構わないよ。」

 

「わかった。」

 

「そのうちいなくなるがな。」

 

3人の暗躍者たちは今日も順調に進んでいる…。




はい。隊長。ネタ切れです。
慌てるな…。次で終わるとは限らんだろう…。
まぁ、十何話も書いた陸軍編を投稿せずに終わらせるのは嫌なんでねぇ。まぁ、その前にネタが切れたら意味ないっすけど。陸軍編…なんか150話くらいに始まりそうです…。
登場人物紹介コーナー
大鳳ミニ…通称たいほー。どこから来て、何者なのか全く不明な子。次回でわかる『かも』しれない…。
ハスラー・ワン…「ナインボール」の搭乗者。暗躍者の一人。他の二人(うち1名は皆さんのご想像通り。)と共に暗躍活動を行なっている。今回で、巨大兵器が出来たとか出来てきないとか…。
次回!第137話「睡眠」お楽しみに!


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137話 睡眠

ネタが…切れる…。
「それはピンチね。切れたらどうやって補充するのかしら?」
日常でいきなり閃いたり、動画や画像を見て使ったりさ…。
「つまり、運?」
そうなるね。前書きのネタすらない様じゃ、そろそろ潮時かな?
「またそんなこと言って…。じゃぁ、あらすじをやるわ。」
?珍しく否定的じゃないじゃん。
「筆者さんの考えていることがわかるんだから、本当にないのがわかるわ。」
そっか…。…じゃぁ、あらすじを頼むよ。

あらすじ
前回、たいほーのために、提督さんと大鳳が一緒に寝ることになったわ。その噂はもう、鎮守府に所属する全員に知れ渡っているわ…。


…………

第4佐世保鎮守府 夜 執務室

 

「…で、大鳳。どうするか?だ…。」

 

「どうする…というのは…?」

 

ここで会話しているのは、ここの提督でもあるドミナントと、ここの所属の大鳳だ。

 

「いや、もうそろそろ大鳳ミニが来るからな…。おそらく、ここで寝るわけではあるまい。」

 

ドミナントはまるでこの世の終わりを覚悟した様な顔で重々しく言う。そう、現在大鳳ミニ(子供大鳳)と約束した、おとーさん(ドミナント)とおかーさん(大鳳)と寝るというミッションをクリアしなければならない。もちろん、二人の子供ではない。

 

「ここで寝るとしたら、ベッドもありませんし。」

 

「その通りだ。ならば、どうする?」

 

ドミナントは机と椅子しかない執務室をキョロキョロ見回している大鳳に聞く。

 

「…私の部屋は少し…。」

 

……提督にあの部屋を見せるわけにはいきません…。恥ずかしくて死んでしまいます…。

 

もちろん、大鳳に限ったことではないが、ジャック製(提督グッズ)の物がたくさん置いてある部屋に、本人を入れるのは一部例外を除いて、誰だって嫌であろう。

 

「むぅ…。そうか…。」

 

……まぁ、いきなり俺が言い出して、そっちの部屋にしてくれなんて図々しいにも程がある。共に寝ると言っただけであんなに怒っていたんだ…。そんなこと言い出したら、間違いなく窓から放っぽり出される。…俺は部屋はあまり綺麗ではないからなぁ…。

 

ドミナントは腕を組み、顔を伏せて苦しそうに考えている。違うことを思いながら、大鳳の様子を伺ったりしている。

 

「…俺の部屋は汚いが…、平気か…?」

 

……まぁ、そっちの部屋ではないだけ、この方が罪は軽くすみそうだ。わざわざ汚い場所で我慢してくれなんて、本来なら冷たい目で見られるが、果たして…?

 

ドミナントはチラチラと大鳳の反応を気にする。

 

「わ、私は…別に…。」

 

……提督と寝るだけではなく、部屋まで!?どうしましょう…。今絶対に顔が変になってます…。か、隠さないと…。

 

大鳳はドミナントに嬉しいことを隠そうと、俯くだけではなく顔すら晒す。

 

「!」

 

……マジか…。目で見られるどころか、顔すら合わしてくれない…。そんなにも嫌悪していたとは…。俺の馬鹿野郎!こりゃ、明日死体で発見されてもおかしくないな…。…なんとか生き残る方法は…。…無さそうだ…。大鳳が目を離した隙に遺書でも書くか…。

 

ドミナントは違う意味で顔を合わせない大鳳に、マジで殺されると思い、この世の終わりみたいな顔をする。そして、数分前発した自分の言葉を恨む。

 

「た、大鳳…。もし、その…なんだ…。嫌だったら俺が謝るから、別に…。」

 

……俺が大鳳ミニに謝れば良い話だ…。…多分、すっごく悲しそうな顔をするだろうけど、『おとーさん』が『おかーさん』に殺される現場を見るよりはマシだろう…。そんな現場見たら、トラウマ間違いなし…。

 

ドミナントは大鳳ミニのことを考えて、とても残念そうな、悲しそうな顔をするが、そんなトラウマを植え付けない様、大鳳の顔を伺いながら言う。

 

「えっ…?…い、いえ。…あの子も悲しむと思いますし…。」

 

……ついあの子を『だし』に使ってしまいました…。本当は、私が一緒に寝たいから…なんて言えない…。言ったら間違いなく提督に非難の目で見られてしまう…。それだけは嫌。

 

大鳳は考え、目を合わせない様にドミナントに言う。

 

「……。…そうか…。」

 

……マジか…。俺死ぬの確定じゃん…。…死にたく…ない…。おそらく、明日海に浮かんでいるか、倉庫の奥深くで冷たくなっているだろう…。…明日まで起きているか…。そして、命の危険になったら脱出…。うん。それが良い。それで行こう。

 

ドミナントは諦めた顔から一変、少し希望を持った顔になる。そこに…。

 

ガチャ

 

「きたよー!」

 

大鳳ミニが来た。

 

「お、おう。来たか。」

 

「は、はい。お帰りなさい。」

 

二人はしどろもどろだ。

 

「おふろー!」

 

大鳳ミニが笑顔で言ってくる。おそらく、楽しみなのだろう。

 

「あっ、そうだ。…大鳳、この子を頼む。」

 

ドミナントが風呂のことを思い出し、大鳳に任せようとする。

 

「な、なぜ…?」

 

「いや、男湯へ連れて行くわけにはいかんだろう…。」

 

「す、すごく恥ずかしいんですが…。私が二人いるみたいで…。」

 

大鳳が恥じらいながら言うと…。

 

「たくさんのひととあそんできたー!」

 

「たくさんの人?」

 

「ここのひとたち!そして、おとーさんとおかーさんがいっしょにねることいってきた!」

 

大鳳ミニはふんすと鼻息をだし、自信満々で言う。おそらく、自慢してきたと思っているのだろう。

 

「「……。」」

 

二人は顔を見合わせ、顔を青くする。

 

……マジかよ…。て、ことはジナイーダにも知れているんだよな…?ジナイーダ、そういうのは嫌いそうだからおそらく明日消し炭確定だ…。マジで生き残れない…。

 

……皆さんに…知られている…?…明日どんな目に合うか…。抜け駆け、先取りは禁止の暗黙のルール…。それを破ってしまうことですから、絶対皆さんに冷たい目で見られるか、泣きつかれる…。

 

二人はそれぞれ顔を青くしながら思う。

 

「…どうしたの?」

 

大鳳ミニは二人が顔を青くしていることを見て、首を傾げながら聞いてくる。

 

「…ハッ!?い、いや、別になんでもないぞ。だろ?大鳳。」

 

「は、はい。そうですね。あ、あはは…。」

 

二人は明日どうなっても、大鳳ミニが自分のせいだと自分で責めない様に精一杯元気そうに振る舞う。

 

「よかった!…あと、おとーさんとおふろいきたい!」

 

大鳳ミニが笑顔で言う。

 

「…え?」

 

ドミナントは顔を引きつらせる。

 

「おとーさんとおふろはいりたい!」

 

「へ、へぇ。そ、そうか…。」

 

……マジカヨ…。俺と風呂だと…?いや、年齢的には…まぁ、大丈夫だと思うが…。

 

ドミナントはチラと大鳳を見る。すると、顔を引きつらせた大鳳が何か合図を送ってくる。

 

……な、に、か、し、た、ら、ゆ、る、し、ま、せ、ん…。いや、しねぇーよ!…まぁ、自分の分身体みたいなものだから、気持ちはわかるけど…。…まぁ、可愛いけど。

 

ドミナントは苦笑いしながら腕を組み、考える。すると…。

 

「?だめ…?」

 

大鳳ミニが不安そうな顔で覗き込む。

 

「いや、良いよ。じゃぁ、大鳳。後でまたここに集合だ。」

 

「は、はい。」

 

そして、ドミナントたちは部屋を出て行った。

 

「…提督と一緒に…。」

 

大鳳が頬を赤らめながら呟くと…。

 

「……。」

 

「……。」

 

部屋の至るところから何か声が聞こえるのに気づく。

 

「…まさか!?」

 

大鳳は急いで、音のする場所を見たり、調べたりする。すると…。

 

「あっ、見つかってしまいました。」

 

「隠れたつもりだったんだけど…。やっぱり、金剛が飛び出そうとするから…。」

 

「ずるいデース!」

 

沢山の艦娘たちが部屋の至る所に隠れていた。床、天井、壁の間、窓の外…。

 

「み、み、皆さん…。」

 

今までの行動や言葉を聞かれていたと思い、顔を赤くして伏せる。

 

「今まで聞いてたよ〜。こっちが恥ずかしかったけど。」

 

川内や他の艦娘がニヤニヤしながら大鳳の近くへ行く。

 

「言う時は言うんですね。」

 

翔鶴が少し微笑みながら言う。

 

「翔鶴さんまで…。…あれ?瑞鶴さんは…?」

 

よく二人でいるはずが、翔鶴だけしかいないことに不思議に思う。

 

「瑞鶴は、何か筆者?の手伝いに行くって言って数分前に出て行ってしまいました。」

 

「そうなんですか。」

 

翔鶴と大鳳が話す。

 

「だが、たいほーを『だし』に使ったのは良くないと思うぞ。」

 

長門まで聞いていたらしい。

 

「まぁ、今回のは仕方ないね。あの子が楽しみにしているんだもん。邪魔するわけにはいかないし。…でも、かわいい司令官を諦めたわけじゃないから。」

 

「司令官は、誰のものでもないよ。司令官が決めた人が、決められた人のものだよ。…負けないけど。」

 

「望むところネー。」

 

ワイワイ

 

艦娘たちは執務室で盛り上がっているが…。

 

「…そうですね。誰のものでもない…。ですね。」

 

「だが、艦娘たちもまだまだだな。いつも私たちの存在に気づかず、後ろを取られる。」

 

「ドミナントはモテモテだね!でも、これだけは譲れないよ…。」

 

神様、ジナイーダ、セラフが窓の外でひっそりと聞いていた。

 

…………

一方、男湯

 

「あったか〜い…。」

 

「そうだな。溺れない様に、俺の隣にいような。」

 

「は〜い…。」

 

大鳳ミニがドミナントの隣で座っている。

 

……可愛い。

 

ドミナントは最初から最後まで、大鳳ミニの行動を可愛がっていた。そこに…。

 

「ギャハハハハ!…あれ?たいほーじゃ〜ん。男湯なの?」

 

「主任、少しは静かにだな…。…む?たいほーか?」

 

主任とジャックがやってくる。

 

「おじさんとおにーさん!」

 

大鳳ミニが嬉しそうにする。

 

「…おじさん?」

 

「たのしそうにわらっているほう!」

 

「そうか。じゃぁ、おにーさんがジャックだな。」

 

「そー。」

 

嬉しそうな大鳳が目を輝かせ、ドミナントは二人がなんて呼ばれているのか知り、苦笑いしている。

 

「ギャハハハハ!じゃ、おじさん頑張っちゃうぞ〜!あポイーっと!」

 

主任が走り、飛んだ。

 

「ちょ、主任…。待…。」

 

ザブーーーン!!!

 

主任が飛び込んだ。

 

「…ぶはっ!た、大鳳ミニ、大丈夫か?」

 

「キャッキャッ。」

 

「大丈夫そうだな…。」

 

ドミナントの心配を他所に元気に笑っている大鳳ミニ。

 

「主任!おま…。」

 

「主任。小さい子もいるのだぞ?飛び込みは厳禁だ。それくらいわかるだろう?今回は何も無かったから良かったものの、もし、たいほーが流され、どこかぶつけたりでもしたらどうするつもりだ?溺れていたらどうするつもりだった?それくらい想定して行動を起こせ。」

 

ドミナントが言う前に、ジャックが少し顔をしかめながら言う。

 

「はいはーい。」

 

主任は少しふざけながらの返事だったが、分かればしないので、それ以上は言わなかった。

 

「で、たいほーはどうしてここに?」

 

「おとーさんとはいっているの!」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

主任も風呂に浸かる。出来れば、入る前に身体を洗って欲しいのだが…。ちなみに、ジャックとドミナントは身体をしっかり洗っている。

 

「…で、ドミナント。本当はこの子の父親なのか?」

 

主任が聞いてくる。

 

「…いや、違うけど…。」

 

「そうだよ!」

 

ドミナントが言い終わる前に大鳳ミニが答える。ドミナントは“この調子だ”と目で伝える。主任もそのことが分かったらしい。

 

「じゃ!頑張って〜。『おとーさん』っ!ギャハハハハハ!」

 

主任はそう言ったあと、奥の方へ行った。

 

「ふぅ…。」

 

そこに、ジャックがドミナントの隣に座る。

 

「その子のことだが…。どうするつもりだ?」

 

ジャックはドミナントに聞いた。中途半端な答えは望んでいなさそうにドミナントを見ていた。

 

「…この子は…、親が探していなかったらうちで預かるつもりだ…。」

 

「うちで預かる…と言ったところで、この子はどの様な生活を望んでいるか考えたか?この子は、お前と大鳳が親だと認識しているのだぞ?ずっと預かったら、今夜だけではなく、これからも大鳳と共になることになるだろう。それにこの子自身、親と遊びたいだろう。お前と大鳳とこの子の時間を取れるのか?取れたとしても、他の艦娘が蔑ろになるだろう。それだけではない。お前を慕っている者、恋をしている者、親友だと思っている者、お前に可能性を見出そうとしている者、力になりたい者などもいるんだ。どうしても偏りが出来てしまう。そんな状態で、この子と共にいることが出来ると思うか?」

 

ジャックは厳しく言う。いや、厳しく言わなければならないのだろう。これからのことだし、この国の未来のため、大鳳ミニの未来のためなのだ。ドミナントは難しい顔をして俯いてしまった。そこに…。

 

「おにーさん!おとーさんをいじめないで!」

 

大鳳ミニがジャックとドミナントの間に手を広げて入ってくる。

 

「…たいほー…。」

 

ドミナントは大鳳ミニを見た。

 

「……。」

 

ジャックが大鳳ミニの目を見る。大鳳ミニの目は、そらさずにしっかりとジャックを見ていた。

 

「…すまんな。おとーさんのこれからのことを言っていたんだ。少し言い過ぎたな。もういじめないようにするよ。」

 

ジャックは優しい声で大鳳ミニの頭を撫でる。

 

「…だが、ドミナント。この話はそれほど遠い未来ではない。考えてくれ。こんな良い子のためにも…。」

 

ジャックはそう言い残し、奥へと行った。

 

「……。」

 

ドミナントは精一杯守ろうとしてくれた大鳳ミニを見て、口元は緩んでいたが、目は全く笑っておらず、むしろ悲しそうな顔をしていた。そこに…。

 

「あつい〜…。」

 

大鳳ミニが暑そうな顔で言い出す。

 

「…そうだな。そろそろ上がるか…。」

 

ドミナントがさっきと同じ表情で言い、二人は上がった。

 

…………

廊下

 

「…どうしたの?」

 

大鳳ミニは、さっきからあのままの表情のドミナントの顔を見る。

 

「…あっ。いや、なんでもないよ。」

 

ドミナントは無理して笑顔になる。

 

「…うそつき。」

 

そこで大鳳ミニが呟く。

 

「?」

 

「おとーさんがかなしんでいるのわかるから!」

 

大鳳ミニは頬を膨らませながら一生懸命言う。

 

「…そうだな。元気出さないとな。」

 

「そう!」

 

ドミナントはなんとか気づかれないくらいに無理して笑顔になる。大鳳ミニも納得したようだ。

 

……これからのこと…か…。

 

…………

執務室

 

「来たぞ。」

 

「あっ、お帰りなさい。提督。私も今上がったところです。」

 

執務室に入ると、まだ髪が濡れ、タオルで拭いている大鳳と会う。

 

「そうか。髪の毛拭き終わったら、俺の部屋まで来てくれ。」

 

「あっ、はい。」

 

ドミナントはそう言い残し、大鳳ミニを残してさっさと行ってしまった。

 

「…どうかしたんでしょうか?」

 

大鳳はドミナントの違和感に気付いて、不思議そうに呟く。

 

「…何かあったんですか?」

 

大鳳はミニに聞く。

 

「おとーさんとおにーさんがはなしてて、これから?とかがなんとかって。」

 

「…おにーさん…?…これから?…これから…。」

 

大鳳はドミナントの考えていることに気づき、黙ってしまう。

 

「おかーさん?」

 

大鳳ミニは大鳳の顔を見る。

 

「…あっ、いえ。なんでもないですよ。」

 

「おとーさんとおんなじー!うそいっちゃだめー!」

 

「あ、あはは…。」

 

ミニに指摘され、大鳳は苦笑いをする。そして、二人はドミナントの部屋へと向かった。見ていた艦娘たちも違和感に気づいたり、ドミナントが何を考えているのか察して、黙り込んでしまったりしているが、全員ドミナントの部屋へ行った。

 

…………

提督自室

 

コンコン、ガチャ

 

「失礼します…。」

 

「きたよー!」

 

大鳳とミニが入ってくる。全く汚くなかった。ドミナントの近くの机の上には、色々な物があり、ドミナントがそれらをいじっていた。

 

「ああ。ベッドの上に座って待っててくれ。」

 

ドミナントが見ずに言う。ドミナントは色々な茶葉を組み合わせ、紅茶を作っていたのだ。

 

「いいにお〜い。」

 

大鳳ミニがベッドの上で反応していた。

 

「そうですね。」

 

大鳳も同じように反応していた。

 

「出来たぞ。小さい子もいるからな。これが一番だ。ミル…。」

 

「みるくてぃー!」

 

「えっ?」

 

ドミナントが言い終わる前に、大鳳ミニが当ててきた。

 

「え…。どうしてわかったの…?」

 

「いつもねるまえにおとーさんがつくってくれるじゃん!おいしいの!」

 

「……。」

 

大鳳ミニが変なことを言い出して、ドミナントは黙ってしまった。

 

「…?すこしあまくない…。」

 

「あー…。すまん。砂糖少し入れるか。」

 

大鳳ミニがなれた手つきで飲み、いつもと砂糖の分量が違うことに不思議がり、ドミナントが砂糖を入れる。一方、大鳳にはちょうど良い甘さだったみたいだ。

 

「……。」

 

歯を磨かせて、しばらくすると大鳳ミニは眠そうに目を擦っていた。

 

「…寝るか。」

 

「…そうですね。」

 

そして、大鳳ミニを挟んで、ドミナントたちはベッドで横になる。部屋の電気は完全には消さず、少しだけ明るい感じにしてある。

 

「おかーさん。むかしばなしして…?」

 

すると、大鳳ミニが大鳳に向かって、目をうとうとさせながらお願いしてくる。

 

「え、えっと…。…ごほん。昔、私が艦だったころ…。」

 

「?きいたことある…。すいせーがでてくるんでしょ…?」

 

「えっ!?…ど、どうして…?」

 

大鳳は初めて話すのだから、驚くのも無理がなかった。そこで、ドミナントが…。

 

「たいほー、たいほーはいつも何してたんだ?」

 

ドミナントが優しく聞く。

 

「いつもおとーさんとおかーさんと、おにーさんとおじさんとおねーさんとおねーちゃんと…。かみさま?もいて、ほかのみんなとなかよくくらしているの…。」

 

「…おねーさんって、ジナイーダのことか?おねーちゃんってセラフのことか?」

 

「て、提督?どうしていきなり…。」

 

大鳳は、いきなり言い出すドミナントに不思議がる。

 

「そう…。」

 

「えっ!?」

 

大鳳は驚きを隠せなかった。

 

「やはりか…。」

 

ドミナントは静かに言った。

 

「いつも…、おじさんがわらっていて…。おにーさんはいつもなにかくれて…。おねーさんはきびしいけど、あそんでくれたりして…。おねーちゃんはくらいいえにいつもいて、いろいろおはなししてくれたりするの…。おかーさんはよるにならないといないから、さみしくて…。おとーさんもあさからいそがしくて、かまってくれない…。ひさしぶりにひるからあそんでくれてありがとう…!」

 

大鳳ミニは目を閉じながらゆっくりと言う。

 

「…いいんだよ。おやすみ。」

 

「そうです。…おやすみなさい。」

 

「おや…すみ…。」

 

二人は大鳳ミニを撫でて言い、大鳳ミニはスースー寝息を立てて眠った。

 

「…どうやら、この子はどこかのパラレルワールドから来てしまったみたいだな。」

 

「それか、未来…。ですね。」

 

ドミナントと大鳳は少し明るい電球を見ながら起こさないように静かに呟く。

 

「…たいほーがいた世界の俺たちはさぞ心配しまくっているだろう。…神様に頼むか…。…いや、この世界のことは先輩神様だな。ちょうど明日お茶しにくるから、その時に話そう。」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントと大鳳は静かに話し、眠るのだった。




なげー。でも、休んでいた分は…取り戻せたかな?にしても、今一番話数が長い艦これは約900話ですって…。すごいですね…。…見てないけど。見て、もしこれから起きることが先に取られていたら、マジでショックになるし、後ろめたく感じてしまうので…。
登場人物紹介コーナー
大鳳ミニ…通称たいほー。どこかの世界から、何らかのはずみでこの世界に来てしまった。
次回!第138話「混合お茶会」お楽しみに!


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138話 混合お茶会

138話…。まだ陸軍編が終わらない…。
「どんな輩が出てくるのか楽しみね。」
はっきり言って、世界最強レヴェル。
「うん。聞かない方が良かったわ…。」
まぁ、この世界のことだけど。
「提督さんたちの世界は異常よ…。なんであんな化け物や怪物と戦えるのかしら…?」
身体が闘争を求めるからだよ。デモンエクスが出たけど、ACモドキだったよ…。
「それは残念ね…。」
まぁ、暗い話はやめて、始めるとしますか。
「そうね。今回もあらすじやるけど…。いつあらすじ役は解放されるのかしら?」
そうだねぇ〜。140話くらいにしますか。
「わかったわ。それじゃぁ、あらすじをはじめるわね。」
頼んだ。

あらすじ
前回、鎮守府の皆んなが提督さんの部屋で覗き見をしてたりしたわ。たいほーはどこかの世界から来ちゃったみたい。先輩神様に提督さんが頼もうとするらしいわ。そして、皆んな飽きたのか、自室に戻って寝ているわ。


…………

第4佐世保鎮守府 夜

 

現在時刻マルフタマルマル。午前2時だ。

 

「…提督、起きていますか?」

 

大鳳が呟く。大鳳ミニ(たいほー)を挟んで横になって、向こうを向いているドミナントを見る。

 

「……。」

 

……起きている。いつ殺されるかわからないからな…。ジナイーダには訳を話せばなんとかなりそうだから、今はここを乗り切るしかない。起きていることがバレたら時間を改めるかも知れん…。その間に俺が眠らないためにも…。

 

ドミナントは寝たフリをして、やり過ごそうとしている。

 

「……。起きて…なさそうですね。」

 

大鳳がベッドから出る。

 

……来るか…?

 

ドミナントはいつでも逃げられるように薄く目を開け、準備している。すると、大鳳が間近に迫ってきていた。

 

「…可愛い。」

 

大鳳が呟く。

 

……えっ?俺何か言った…?おかしい…。口は閉じてあるはずだ…。

 

ドミナントは、不思議がる。すると…。

 

「寝顔はかわいいのね…。」

 

大鳳がまたも呟く。

 

……うん。俺が言った訳ではない。と、いうことは大鳳か?…まぁ、自分の分身体で、俺自身、ミニのことを可愛いと思うしな。

 

ドミナントは大鳳ミニのことを言っているのだと勘違いする。

 

「…触ってみようかしら…?」

 

……触るって…。起きちゃうだろ…ひゃぁっ!?

 

ドミナントは心の中で情けない声を上げる。

 

……お、俺に触ってきた!?ナンデ!?

 

ドミナントはおっかなびっくりしている。

 

「フフ…。フフフ。」

 

大鳳は満足そうにベタベタ触ってくる。

 

「…何をしている?」

 

ドミナントがたまらずに声をかける。

 

「ひゃぁっ!?…て、提督…。起きて…いらしたんですか…?」

 

大鳳は顔を真っ赤にして恥ずかしがった。

 

「ああ。それよりたいほーが寝ているから静かにな。…もしや、風邪で寝込んでいた時も、触ったりしたのか?」

 

…はい…。

 

「…そうか。」

 

ドミナントは“マジか”と心の中で思う。

 

「…あの…。どうして起きていらしたんですか…?」

 

「明日…、いや、今日先輩神様になんて話そうか考えていたんだ。」

 

……殺されるかどうか心配で眠れなかったってことは言わないでおこう…。

 

ドミナントは言い訳をする。

 

「そ、そうですか…。」

 

大鳳は、顔を赤くして目を伏せたままだ。

 

「それより寝ろ。今回は無かったことにするから。それに、触るのは良いが…。…一線を超えるなよ。」

 

ドミナントは大鳳の方を向かずに言う。

 

「わかりました。」

 

大鳳がすかさずベッドに入る。

 

「…で、なんで俺の隣なんだ?」

 

「……。」

 

「…まぁいいけど。」

 

ドミナントは“仕方ないな”的な目をする。

 

「…提督の胸が温かい…。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントは艦娘に甘い。神様が言った場合には、容赦なくそっぽを向くか、元の場所に戻らせるだろう。

 

…………

翌朝 食堂

 

ワイワイガヤガヤ

 

艦娘たちが朝食を取っている。そこに、一際目立つ家族?がいた。

 

「おいしー。」

 

大鳳ミニが口の周りに食べカスをくっつけながら美味しそうに朝食を食べている。

 

「これも美味しいぞ。食べてみろ。」

 

「うん!」

 

ドミナントが大鳳ミニにおかずを勧める。

 

「こぼしてはいけませんよ。…口を拭きましょうね。」

 

「ありがとう!」

 

大鳳が、色々食べかすやらが付いているミニの口を拭いてあげる。ドミナントと大鳳の真ん中にミニが座っており、3人は笑顔だ。

 

「「「……。」」」

 

神様や、他の艦娘たちはその光景を見ながら、面白くなさそうに朝食を食べている。大半がつり目だ。

 

「…いつまでこの光景を見てなくちゃいけないのかしら?」

 

「…ドミナントの馬鹿…。」

 

「…夫婦みたいで、胸が詰まりそうです…。」

 

艦娘たちがコソコソ話す。そこに…。

 

「…ドミナント、艦娘たちが異様に見ているぞ。もう少し自重しろ。」

 

「お、おう。すまん。」

 

ジナイーダがドミナントの隣に座る。

 

「ところで、この子はどうするつもりだ?」

 

「そうだな。先輩神様に頼んで、元の世界に帰らせるつもりだ。」

 

「そうか。なら、今日で会うのが最後だな。」

 

ジナイーダが少し大きめの声で言う。そこで、艦娘たちの目が少し和らいだ。

 

「…今日で最後なのだから、少しくらい我慢しろ。」

 

ジナイーダはドミナントに聞こえないくらいの声で呟く。そこに…。

 

「たいほーさん。今日はどのようにして遊びますか?」

 

吹雪が精一杯のフレンドリー感を出しながら言う。

 

「きょー?…こうちゃ!」

 

「…え?」

 

「こうちゃのみたい!」

 

吹雪は、“やはり、司令官のお子さんですね”と苦笑いをする。一応言っておくが、目の奥はやはり死んでいた。

 

「紅茶か…。…あっ!そう思ってみれば、金剛たちとのお茶会も今日だったな。…一緒に行くか?」

 

「いくーー!」

 

大鳳ミニが目を輝かせながら、少し大きめの声で言う。

 

「…だ、そうだ金剛。おそらく先輩神様も同席する。良いか?」

 

「紅茶好きならbig welcome(大歓迎)ネー!…『おかーさん』はあまり歓迎したくはないデスガ…。

 

「ん?何か言わなかっ…。」

 

「なんとかなるネー!」

 

…………

午後 裏庭

 

フワァ…。…カッ!!

 

中庭が突然光出し、消える。

 

「…妾が登場するのは約100話ぶりかの?」

 

着物姿、銀髪ロングの先輩神様が現れる。

 

「お久しぶりです。」

 

ドミナントが待っていたかのように立っていた。

 

「ふむ。ドミナントか。…ところで、後輩との関係は?」

 

「全く進展してないですね。」

 

「そこはきっぱりと言うのか…。」

 

先輩神様がドミナントの近くへ行くと…。

 

「おとーさん。せんぱいかみさま?」

 

たいほーがドミナントの後ろで先輩神様を見ていた。

 

「!?。…そ、そうか…。恋は実らず終いか…。大鳳と結ばれたのか。…まぁ、それも其方の決断。妾は口出しはせぬ。」

 

先輩神様がたいほーを見るなり、突然言い出す。

 

「違います。…どうやら、この子は違う世界から来てしまったみたいで…。」

 

「違う世界?何故じゃ?妾がしっかりと管理しておるはずなのじゃが…。…溝はしっかりと埋めた筈じゃ…。」

 

先輩神様は難しそうな顔をする。そして…。

 

「…少し待っておれ。調べる。」

 

先輩神様が軽く目を瞑る。

 

「…そうか。この世界じゃな…。」

 

ゆっくりと目を開け、場所を特定したみたいだ。

 

「すまぬ。またどこかに溝が出来てしまっていたみたいじゃ。」

 

何事もなさそうに、無理に笑う先輩神様。

 

「…疲れているんですよね?神様の世界も管理させてしまっていますし…。なんなら、神様も少しそちらを手伝わせて…。」

 

「別に良い!…大丈夫じゃ。」

 

先輩神様が少し強めに拒否し、優しい顔で大丈夫と言う。

 

「…そ、そうですか…。」

 

ドミナントは不思議に思う。

 

……拒否の仕方がおかしい…。何かあるのか…?

 

ドミナントは思う。

 

……後輩をなるべく天界へ近づけたくない…。後輩は今忘れかけておるのじゃ…。元気に過ごしておるのじゃ…。思い出させたくはない…。そして、近づけたくない…。あの異常な親には…。

 

先輩神様は覚悟した顔で思った。そこに…。

 

「あっ!先輩!」

 

偶然通りかかった神様が来る。

 

「後輩。元気にしておったか?」

 

すかさず、優しそうな顔になり、神様に言う。

 

「うん!」

 

元気いっぱいの笑顔で返事をする神様。

 

「毎日アタックしておるか?」

 

「うん!」

 

「嘘つけ。」

 

「してるよ!なんで気が付かないの!?」

 

ドミナントたちが3人で話す。

 

「ところで、お茶会の件なんですが…。金剛たちと混合で良いですか?」

 

「シャレかの?…まぁ、構わんが…。」

 

「良かったです。では、こちらに…。…神様も来るか?」

 

「うん!えへへへ…。」

 

神様はドミナントと茶会をすることができると思い、頬を薄ピンク色に染め、幸せそうな笑顔を見せる。

 

「…可愛いと思ってしまった自分を情けなく感じた…。」

 

「ひどい!」

 

そして、お茶会の準備をした。

 

…………

30分後

 

「hey!提督ー!」

 

「スコーンを気合入れて作ってました!」

 

金剛と比叡が歩いてくる。

 

「遅かったな。言葉は不要か…?」

 

ドミナントたちは既に準備が終わり、椅子に座ってくつろいでいる。そこに…。

 

「提督、こんなに早く準備を…。…少し、休んではどうでしょうか?」

 

「提督が準備を…。私の計算が外れるなんて…。」

 

「榛名、心配してくれてありがとう。でも、その言い方だと少し傷つくな。霧島は直で傷ついたけど。」

 

榛名、霧島もやってくる。

 

「では、我々8人でお茶会をしよう…。」

 

「あやつはどうしたデスカ?」

 

「やられました。」

 

「ですが、彼女は我々の中でも最弱の存在…。」

 

「こんなに早くやられるとは…。私たちの恥さらしです。」

 

ドミナントたちはまるで呼吸をするかの如く合っていた。

 

「…このノリで行くの…?」

 

神様が言うが…。

 

「だけど、そいつのおかげでやつのとくせいもわかってきましたね…。」

 

「そんな恥晒しでも最後には妾たちの役に立つとは…。」

 

大鳳ミニたちも乗る。

 

「……。…でも、いずれ我々が真の…。」

 

神様が言いかけるが…。

 

「よし、じゃぁ、真面目にお茶会するか。」

 

ドミナントが意地悪する。

 

「ひどい!ひどいよぉ…。」

 

神様は途端にすごく悲しそうな顔をした。

 

「すまんすまん。おーよしよし…。」

 

ドミナントは神様の頭を撫でたり、よしよししたりする。実を言うと、ドミナントに撫でられた回数を言えば、ドミナントの人生の中で、一番だったりする。

 

「ふぇぇん…。」

 

「…ほれ。俺のお菓子やるから、元気出せ。」

 

ドミナントは、持っていたお茶菓子をみんなに配り、神様に自分の分もあげる。

 

「……。」

 

だが、まだ不満そうだ。

 

「…後でなんかしてやるから、元気出せ。」

 

ドミナントは撫でながら優しく言う。

 

「…うん。」

 

神様も納得してくれたようだ。

 

「ほぉう…。」

 

「「「……。」」」

 

「なかいいー。」

 

全員は終始見て、思うところがあったのだろう。

 

「なるほど…。距離は確実に縮まって来ておるのじゃな。」

 

先輩神様はニヤニヤして言う。

 

「…今のは確実に彼氏彼女の関係でしたね。」

 

「お姉さま…。」

 

「……。」

 

「お姉さまが固まってる…。」

 

金剛型4姉妹の金剛はずっと固まっており、霧島がドミナントたちを分析し、比叡と榛名が金剛に目を覚まさせようとしていた。

 

「なかいいー。」

 

一方、大鳳ミニは純粋すぎた。

 

「そんな…。…彼女なんて…。」

 

神様は耳まで赤くして、顔を伏せてもじもじする。

 

「まさか。俺がこいつの彼氏なら、お前たち全員も彼女に当てはま…。…そうだな。」

 

ドミナントが容赦なく無粋なことを言おうとしたが、神様がまた悲しそうな顔をすると思うので、言わなかった。

 

「ま、それはともかく、茶会でも開こう。」

 

そして、茶会が開いた。

 

…………

 

「…美味じゃのぅ〜…。」

 

先輩神様はドミナントに入れてもらった紅茶を飲んでいる。

 

「…まぁ、妾は緑茶派じゃがの。」

 

「じゃぁ、紅茶いらなかったですね。回収します。」

 

「い、いや。これはこれで…。」

 

ドミナントは早速先輩神様をからかう。

 

「…ところで、お前は紅茶じゃなく、スコーン目当てか…。」

 

「うっ…。」

 

スコーンを頬張る神様にドミナントが目を向ける。

 

「…ゴクン…。そ、そんなわけ…。」

 

「口の周りについているぞ。それに、紅茶と一緒に食え。たいほーを見てみろ。俺や金剛型のように優雅に飲んでいるぞ。」

 

「……。」

 

神様は目を逸らし、紅茶を飲む。

 

「…苦い…。」

 

「…わかった。ミルクティーな。」

 

ドミナントは苦そうに言う神様に一杯入れてあげる。

 

……神様は基本甘党か…。ん?比叡は今回アッサムか…。リフレッシュ効果のある紅茶だな。榛名はフランボワーズショコラ…。いいな。飲みたい…。そんじゃそこらの物ではあまり美味しく感じないが、おそらくガチ勢だろう…。ショコラの味がなかったりするからな…。霧島はモンターニュ・ブルー…。レヴェル高いな…。沢山の柑橘系の味がする奴だ。リラックス効果もあり、疲れも癒してくれる…。俺も入れたことがあるが、失敗してしまって、あまり美味しく感じなかったからな…。ん?たいほーはアップルティーを飲んでる…。金剛があげたのかな?先輩神様は比較的有名なアールグレイにしたけど、満足してもらえて良かった。そう思ってみれば、金剛は…?だが、大体は予想がつく。レモンハートだろう。希少価値の高い。

 

ドミナントは前と同じように金剛を見る。

 

「…金剛、何を飲んでいるんだ?」

 

ドミナントが金剛に聞く。

 

「『ラプサンスーチョン』デース!」

 

「あぁ、紅茶の原点か…。意外に普通なのを飲んでいるな。」

 

ドミナントたち紅茶好きで紅茶を愛している人以外の人は初耳だろう…。ちなみに、もちろん普通ではない。ダージリンやアッサム、ウヴァ、アップル、ピーチ、アールグレイくらいしか知らないだろう…。

 

「フッフッフ…。提督も飲むデスカー?」

 

「いや、その味は知っている。今は気分ではないのでな。」

 

「そうデスカ。イギリス産デスガ…。」

 

「うん。もらおう。産地によって、味は変わるからな。」

 

ドミナントは金剛に頼む。そのシーンを恨めしそうにたいほーが見ていた。

 

「…たいほーも飲むか?」

 

「のむー!」

 

「そうか。…俺に少し似ている感じがするな…。」

 

目を輝かせて、嬉しそうにする大鳳ミニをドミナントが眺めていた。そして、ドミナントと大鳳ミニがそれを飲み、うりふたつに唸っていた。金剛の持っている紅茶は一味も二味も違っていた。




次回は大鳳ミニがお別れしますね。鎮守府が少し寂しくなりそうです。
登場人物紹介コーナー
先輩神様…久々の登場。詳しい説明は、前にやったと思われる。
アッサム…世界で有名な紅茶。濃厚なコクと、渋みが強い。美肌効果なども期待でき、血液がサラサラになって生活習慣病の予防にもなる。リフレッシュにも最適。
フランボワーズショコラ…フランボワーズ(ラズベリー、または木苺)の甘酸っぱさとショコラのコクの深さが見事に調和された紅茶。すっきりとした味わいもあり、クセになる。
モンターニュ・ブルー…上品で優しく、ブルーベリーの香りがして、リラックス効果も期待できる。フルーツの味わい。ドミナントも挑戦したことがあるが、失敗してしまい、ほぼ味がなかった…。
アップルティー…市場で出回っている、比較的入手しやすい紅茶。林檎の香りと、すっきりとした甘さは飲んだことがあるはず…。
アールグレイ…リラックス効果があり、消化器官を助けるという効能を持っている。柑橘系の香りがして、すっきりとした味わい。
ラプサンスーチョン…紅茶の原点。匂いがとてもキツく、ドミナントも滅多なことがない限り飲まない。だが、コクがありクセになる味わいのため、絶対に飲まないわけでもない。
次回!第139話「溝」お楽しみに!


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139話 溝

予告していた通り、お別れです。
「次はどうなるのかしら?」
そろそろ秘蔵のあのネタでもやろうかな…?
「?あのネタ…?」
もちろん、AC勢は笑うと思うけど。
「気になるわね…。」
まぁ、タイトルを見れば大体の予想はつくはずだ。
「へぇ。それじゃぁ、あらすじやるわね。」
了解。

あらすじ
前回、提督さんたちがお茶会を開いていたわ。すごい盛り上がっていたみたいね。


…………

第4佐世保 夕方

 

「ふぅ、それでは妾はこれから色々あるから、ここで帰る。」

 

お茶会している時に先輩神様がオレンジ色の夕陽を見て言う。

 

「そうですか。なら、たいほーともお別れですね。」

 

ドミナントがカップを置きながら名残惜しそうに大鳳ミニを見る。

 

「?」

 

もちろん、大鳳ミニは分からない。

 

「そうじゃの。最後に、皆と挨拶して別れた方が良かろう。」

 

先輩神様が軽く目を閉じながら言う。

 

「寂しくなるネー。これ、大事に飲んで欲しいデース。」

 

「今度、また来てしまったら共に遊びましょう。気合入れて選んだ茶葉です。」

 

「榛名も歓迎します。これは、榛名からの贈り物です。」

 

「次に会える可能性は極僅かですが、会えたらまた茶会を共にやりましょう。これは、私からの選別です。」

 

金剛型4姉妹が、自身のお気に入りの紅茶の茶葉を持たせながら言う。

 

「?」

 

だが大鳳ミニは全くわかっていない。自分の世界に帰っても、ドミナントたちがいるのだから。

 

「その…、色々楽しかったよ。」

 

神様が大鳳ミニの頭を優しく撫でる。

 

「…頭を撫でる気持ちが少し分かったかも。」

 

「…そうだな。」

 

頭を撫でる神様と、それを見ているドミナントが言う。

 

「…まぁ、少しは時間があるから、皆にも挨拶して来たらどうじゃ?きっとお別れの言葉くらいは言いたいはずじゃ。」

 

先輩神様は、実を言うともうとっくに戻らなくてはいけない時間を過ぎているが、待ってくれる。

 

「ありがとうございます。それじゃぁ、たいほー。挨拶してこよう?」

 

「?」

 

ドミナントと大鳳ミニが手を繋いで行く。

 

…………

 

「皆んな回ったかな?」

 

「つかれたー…。」

 

ドミナントたちが挨拶を終える。

 

「最後に、大鳳か…。」

 

ドミナントは大鳳の場所へ歩いて行く。

 

コンコン

 

「大鳳、いるか?たいほーがお別れだから、一緒に行くぞ。」

 

ドミナントが言うと…。

 

ガチャ

 

「それでは、行きましょうか。」

 

大鳳が何か持っている。

 

「それなんだ?」

 

「たいほーに渡すものです。」

 

大鳳が歩きながら少し笑顔で言う。そして、三人は先輩神様の場所へと向かった。

 

…………

 

「先輩、大丈夫?」

 

「何がじゃ?」

 

「本当はもう3時間くらい過ぎているでしょ?」

 

「…まぁの…。じゃが、これくらい妾が仕事して取り戻せば大丈夫じゃ。」

 

「本当?…暇な時手伝いに行くよ?」

 

「いや!大丈夫じゃ!…それより、この時間を大切にするのじゃぞ。」

 

「?う、うん。わかった。」

 

神様たちが話していると…。

 

「遅くなってすみません。」

 

「きたよー!」

 

「少し遅れてしまいました。」

 

ドミナントたちが現れる。

 

「別に良い。それより、これで最後じゃが、平気か?」

 

先輩神様が、心配したように言う。

 

「…そうだな。たいほー。お前と過ごせて久々に楽しかったぞ。」

 

「おとーさん?」

 

「…そうだな。その世界の『おとーさん』にもっとわがままを言ってやれ。困らせてやれ。一緒に遊ぼうと言ってやれ。きっと、遊んでくれる筈だ。」

 

ドミナントが口元を緩ませながら言う。

 

「そうです。きっと提督ならその望みを叶えてくれるはずです。」

 

「おかーさん?」

 

「この洋服はあなたにあげます。私が作った服です。『おかーさん』にも元気な姿を見せてあげてください。きっと、それを望んでいるはずですから。」

 

大鳳も口元を緩ませながら言う。

 

「…ありがとう!」

 

大鳳ミニが太陽のような笑顔を見せる。

 

「…それじゃぁ、これで…。」

 

先輩神様が言いかけた途端…。

 

「今です!打ち上げてください!」

 

「「「はいっ!」」」

 

ヒューー…!ドーン!…!

 

セラフの声がして、艦娘たちが花火を打ち上げまくる。季節ではないが…。

 

「わー!」

 

大鳳ミニが目を輝かせて、それを見ている。

 

「これで最後ですからね。いつか、この世界に来たことも分かると思います。ですから、最後に打ち上げました。こちらの勝手なことは分かりますが、好きなように生きるのが私たちのモットーですので。」

 

セラフがそう言いながらドミナントたちに近づく。

 

「まぁ、60発ぐらいしかありませんし、先輩神様も少し時間を取らせてしまいますし…。」

 

セラフは先輩神様を見る。が。

 

「おぉ。これはすごいのぅ。これを見て帰ったら仕事が捗りそうじゃ。」

 

「…逆に良かったのでしょうか。」

 

セラフが苦笑いする。

 

「セラフだけか?他の皆んなは…。」

 

「もうすぐ来ます。最後に見たいらしいので。」

 

「来たぞ。」

 

セラフが言い終わると同時に、艦娘たちも現れる。

 

「みんないるー!」

 

大鳳ミニは皆んなで一緒にいることを嬉しく感じている。

 

「最後に、青葉ちゃんが写真撮るって。」

 

「司令官、撮って良いですかぁ?」

 

「勿論だ。青葉も入れよ。」

 

「…はい。」

 

そして、青葉が三脚をどこからともなく出し、タイマーをセットする。

 

「たいほーさんが一番前ですね。」

 

「おとーさんとおかーさんがとなりがいい!」

 

「…じゃぁ、司令官と大鳳さんがたいほーさんの隣ですね。」

 

そして、勝手に順列が決まっていき…。

 

カシャッ

 

写真が出来る。

 

「…これ、あげます。」

 

青葉が大鳳ミニにあげる。

 

「ありがとう!」

 

大鳳ミニは嬉しそうに感謝を伝える。

 

「…そろそろ本気でまずいからの。帰るのじゃ。」

 

先輩神様が大鳳ミニの肩に手を置き、少しずつ光出す。

 

「あそんでくれてありがとう!」

 

大鳳ミニが笑顔で言った。艦娘たちは手を振っている。主任は少し口元が笑って目を細めていた。ジャックは敬礼をしていた。セラフは笑顔で軽く手を振っていた。ジナイーダは腕を組みながらも、優しい目をしていた。大鳳は寂しい感じで手を振っていた。ドミナントは口元を緩ませながら優しい目をしていた。そして、先輩神様と同時に光り輝き、消えた。

 

「…行ってしまいましたね。」

 

「…そうだな。明日からまたいつもと同じように過ごす。寂しいだろうが、我慢してくれよ。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「なんなら、誰かと子供でも作れば良いだろう。」

 

ジナイーダがニヤニヤして、冗談まじりに言ったが…。

 

「そうです!それが一番です!」

 

「nice idea(いい考え)ネー!提督ー!早速…。」

 

艦娘たちがバンバン反応してくる。

 

「…ジナイーダ…。」

 

「…すまん…。」

 

ドミナントが恨めしそうな声で言い、ジナイーダが申し訳なさそうに言った。

 

…………

たいほーの世界

 

「……。」

 

「……。」

 

暗い鎮守府に2人、暗い提督自室で生気を感じない顔でテーブルの上を眺めている。

 

「…提督…。あの子は…。」

 

「…もう…。もう…いいんだ…。」

 

ドミナントはマジで笑顔も見せず、大鳳の顔すら見ない。

 

「2日も前から突然姿を消した…。あんな小さい子だ…。生きているはずがない…。」

 

「ですが、ほかの皆さんも探して…。」

 

「たいほーが2日の間で遠くに行けるはずがないんだ…。海で溺れてしまったのか…。山のどこかで…。誘拐されていたとしたらまだ救いが…。でも、連絡すらない…。」

 

「……。」

 

二人とも、もう終わりみたいな顔で全く生きている感じがしなかった。すると…。

 

コンコン

 

ドアがノックされる。

 

「…ジナイーダか…。…そうだよな…。捜索時間が長くて鎮守府が回っていないんだろう…。…捜索を中止だ…。…もう…いいんだ…。」

 

ドミナントが言う。が。

 

コンコン

 

まだノックされる。

 

「分かっている…。明日から深海棲艦を相手にしなければならないしな…。…警察の捜索に頼るしかないよな…。わかっているんだ…。」

 

コンコン

 

「ジナイーダ…。頼むからこれ以上はやめてくれ…。いくらお前でも、これ以上は耐えきれない…。」

 

コンコンコン

 

「あぁ…。もううるさいな!」

 

ガチャ

 

ドミナントは心境を弁えないジナイーダに言おうと思ったが、誰もいなかった。

 

「…いたずらか…。…ん?」

 

しかし、視界の隅に小さな子がいる。

 

「ただいま!」

 

たいほーがいたのだ。

 

「…たいほー?たいほーなのか…?この馬鹿野郎!心配させるんじゃない!」

 

ドミナントは思わず抱きつき、涙を流す。

 

「たいほー!」

 

大鳳も抱きついた。

 

「どこ行ってたんですか…。親を悲しませないでください…。」

 

「?」

 

たいほーはちんぷんかんぷんだ。何も知らなければ、ついさっき別れたばかりなのに、大袈裟すぎるからだ。そのあと、ジナイーダたちも帰ってきて、大騒ぎした。

 

…………

天界 夜

 

「……。」

 

先輩神様が先の尖った岩の上に槍を持って立っている。

 

「…溝ができるはずがないのじゃが…。…調べるか…。」

 

ザンッ

 

そして、先輩神様は闇夜に消えた。




終わった…。ネタ切れ感がすごい…。
登場人物紹介コーナー
たいほーの世界のドミナント…こちらの世界とさほど変わらない。大鳳と夫婦になっていること以外。あと、秘書艦が大鳳オンリーになっている以外。
たいほーの世界の大鳳…艦娘。ドミナントと夫婦。こちらの世界とさほど変わらないが、ドミナントを想う気持ちはたいほーの世界の方が断然に大きい。
次回!第140話「下水溝調査」お楽しみに!


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140話 下水溝調査

はい。140話です。このミッションは筆者が初めてやった作品で、一番印象に残っています…。なんせ、ちょっとアレでしたから…。
「アレって?」
…分かる人には分かるよ…。少し…うん…。
「?」
今もミッション内容も鮮明に覚えている…。
「軽くトラウマになっているわね…。」
初めてやって、衝撃を受けたからね…。
「そう…。…あらすじをやるわね。」
頼みます…。

あらすじ
前回、たいほーが帰還したわ。少し寂しくなったけど、皆んな元気にしているわね。あの後片付けもして、普通の日常に戻ったわ。


…………

第4佐世保 執務室

 

「仕事終わり。なんか、スピードが早くなってきてるな…。」

 

ドミナントが仕事を始めて2時間30分で終わらせる。今日は秘書艦なしの日らしい。

 

「ん〜…。…暇。」

 

ドミナントが呟きながら紅茶を入れていると…。

 

コンコン

 

執務室のドアがノックされる。

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

1人の艦娘が入ってくる。

 

「えーっと…。…確か…。」

 

「……。」

 

その艦娘は、ドミナントが唸るのを微笑みながら見ていた。

 

「…如月か?」

 

「はい。やっぱり覚えてくれていると信じていたわ。司令官が唯一建造した艦娘ですから。」

 

如月は少し嬉しそうにする。ドミナントは心の中で安堵していた。

 

「ところで、司令官。少し相談が…。」

 

「うむ。どうした?」

 

「最近、下水の調子があまり良くないらしく、トイレが完全に流れなくなったりとかで困っております…。このままでは、水位が上昇して逆流する恐れが…。」

 

ドミナントは穴のマネをしようと思ったが、如月の真剣な顔つきを見てやめた。

 

「下水?なんでまた…。…わかった。水道会社…。と言っても、鎮守府の存在を知らせるわけにいかないよな…。ここの水道管はある場所から直接来てるしな…。しょうがない。夕張に頼むか…。夕張にとっても、こういう依頼は喜ぶと思うし。」

 

「ありがとうございます。それでは…。」

 

如月は相談を手短に話した後、部屋から出て行った。

 

「夕張は倉庫だったよな。…ん?キサラギ…?下水…?」

 

ドミナントは何か思い出せそうだったが、それよりも夕張の方を優先に思い、倉庫へ行った。

 

…………

倉庫

 

「夕張ー。いるかー?」

 

ドミナントが倉庫の開いてある引き戸の隅で呼びかける。すると…。

 

「はい…。提督…。なんでしょうか?」

 

夕張が暗いところからこちらにくる。

 

「おお。夕張…て、うわっ…。どうしたの?」

 

夕張が日のあたる場所に出て、ドミナントが気付く。夕張の後ろから負のオーラが出ていることに。

 

「…提督に見せたいものがあります…。」

 

「設計図か…。」

 

夕張は、どうやらドミナントの却下に相当なストレスを抱えているらしい。まぁ、異常な物の設計図ばかりだが…。

 

「…これです…。」

 

「…うん?」

 

ドミナントは目を疑った。いつもより断然普通だからだ。

 

「これ、夕張の案?」

 

「はい。そうですが?」

 

「艦娘の装備の強化か…。程々にすれば許そう。」

 

「…えっ?今なんて言いました…?」

 

「いや、作って良いよって。」

 

すると、さっきまで不機嫌そうな顔から一変、輝いた顔になる。

 

「本当ですか!?」

 

「お、おう。…でも、火力を高くしすぎないようにな。お前なら原爆並みの火力も出せそうだし…。何より、世間では極秘の場所だからな…。」

 

「えっ…。…はい。わかりました…。」

 

「夕張…。お前の凄さは本当にわかってるんだから程々にな。」

 

ドミナントが少し残念そうな顔をしている夕張に撫でながら優しく言う。

 

「それより、作ってもらいたいものがある。つまり、兵器開発だ。」

 

「ええ!?」

 

夕張はドミナントの言葉を聞いて、歓喜の声を漏らす。

 

「近頃、下水で何か不具合があるらしくてな…。嫌な予感がするから、夕張の作った兵器で少し調査してもらいたいんだ。」

 

ドミナントが真剣に言う。すると…。

 

「提督!それに大砲つけますか?」

 

夕張が張り切って言う。嬉しいのだろう。

 

「いや、戦うわけじゃないんだけど…。…瓦礫で詰まっていたら必要か…。オーケー。というより、問題にならない程度なら全然平気。でも場所は下水道で、内容は調査だ。そこのところをよく考えてくれ。もちろん、十分な報酬は用意したつもりだ。」

 

「報酬って…?」

 

「これだ。」

 

ドミナントが紙を見せる。

 

「こ、これは…!入手困難なこの紙は…!」

 

「そうだ。願いが一つ叶う券だ。俺の印鑑が付いている。つまり、俺に出来ることはなんでも一つ願いが叶う。そう、これがあれば兵器開発すら可能だ。おいしい仕事だとは思わないか?」

 

ドミナントが手書きの紙を見せながら夕張に言う。

 

「い、いいんですか…?」

 

夕張にとって、これ程までにおいしい仕事はないだろう。何故なら、兵器開発は自身の部門でもあるし、調査するだけで願ってもない報酬を貰えるのだから…。

 

「夕張…。…よだれ…。」

 

……可愛い。

 

「あっ。」

 

ドミナントに指摘され、急いでハンカチで拭く。

 

「この私にお任せください!必ずや戦果を…!」

 

「お、おう。頑張れよ。」

 

……これで一件落着かな。

 

ドミナントは張り切って言う夕張に後のことは任せ、執務室に戻って行った。

 

…………

執務室

 

「…うーん…。でも、何か嫌な予感がするんだよね…。」

 

ドミナントが呟いていると…。

 

カサカサ…。

 

執務室に何かの音が響く。

 

「…うん?Gか…?…いや…。あれは…蜘蛛だ…。しかもかなり大きい…。俺の一番嫌いな生物…。ドアに引っ付いてる…。出れないな…。」

 

ドミナントが呟いていると…。

 

ガチャ

 

「提督、何を呟いているんだ?外まで聞こえたぞ?」

 

長門が入ってくる。

 

「な、長門か…。ちょうど良かった。その蜘蛛を何とかしてくれないか…?」

 

「蜘蛛?あぁ。これか。」

 

そして、長門が素手で捕まえて窓を開けて外に放っぽり投げる。

 

「…すげーなこいつ…。大物だ…。感動した。」

 

「それは何よりだ。…まさか、これだけか?」

 

「え?うん。そうだよ。」

 

「心配した私が馬鹿だった。」

 

「ひどくない?…ん?キサラギ…下水…蜘蛛…。…何か思い出せそうな…。」

 

長門は呟いた後部屋から出て行った。ドミナントはそのあと何もない1日を過ごした。

 

…………

数日後

 

「本日の〜秘書艦は〜。」

 

「うっさいわね。さっさと仕事しなさい。」

 

ドミナントが呟きながら手を動かしていると、辛辣な言葉で言われる。

 

…言葉が厳しい叢雲です…。先輩神様に容姿だけ似ている叢雲です…。技術のムラクモです…。

 

ドミナントが聞こえない程度に呟く。

 

「何?何か言った…?」

 

「い、いえ!なんでもありやせん!」

 

「そう…。」

 

「そうでありやーす。」

 

「……。」

 

「…すみません。」

 

叢雲が冷たい目で見てきて、ドミナントが謝る。すると…。

 

コンコン…ガチャ

 

執務室のドアをノックされ、艦娘が1人、入ってくる。

 

「提督…。」

 

「おお。夕張か。どうだった?」

 

「その…。」

 

神妙な顔持ちをしながら何か言いづらそうにする夕張。

 

「これを…。」

 

夕張が手に持っている残骸じみたものを見せる。

 

「えっと…。なにそれ?」

 

「先日作った調査用ドローンです…。ボロボロのガタガタです…。」

 

「…で?」

 

「これには自己防衛モード、瓦礫の撤去として、大砲も搭載していたんですが…。」

 

「そうか。で、何とかなったのか?」

 

「いえ…。状況は何も進展してません…。沢山のドローンを潜り込ませたんですが、全て連絡も途絶えたままです…。情報も送られてきません…。」

 

「そうか…。つまり、俺自らが行かなくてはならないのか。」

 

「…いえ。こうなったのも私の責任です。私も同行します。」

 

夕張とドミナントが話していると…。

 

「私も行くわ。仕事を放ってサボらせないように。」

 

叢雲も同行してくれるようだ。

 

……ふむ…。調査とはいえ、このドローンが壊れるだけのところだ。三人だけでは少し不安だな…。もう少し頼れる感じの人が…。

 

ドミナントは心の中で思う。そして…。

 

「…あっ、長門。蜘蛛も素手でなんとかできる長門も同行させるか。もしもの時のために。」

 

そして、ドミナントが長門をアイスで釣り、同行させるのだった。




う〜ん…。なんかやりたいことが違う…。そう思ってみれば、AC3のキサラギ代表者と、Jの声って似ている気が…。
登場人物紹介コーナー
願いが一つ叶う券…ドミナント直筆で、印鑑の付いた紙。非常に入手困難。この券があれば開発、1日外出、愉快な仲間たちの誰かとのデート、仕事の日のお休み、新しく強力な装備の入手…。とにかく、ドミナントたちに出来ることなら一つだけなんでも叶う券だ。
ドローン…夕張印のドローン。大砲なども積んでいる精密機械。ちょっとやそっとでは壊れないはずが、入り口付近でボロボロになって見つかった。
蜘蛛…結構でかい。
次回!第141話「下水溝調査 その2」お楽しみに!


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141話 下水溝調査 その2

まさかこんな話がその2まで続くとは…。陸軍編が遠くなる…。
「下水溝調査って…。何があるのかしら?」
そりゃ…。色々だよ。
「色々…ね。」
そ。
「それが2話も続くほど?」
もしかしたら、3話まで行くかもしれない…。
「3話も…。下水溝に一体何があるのかしら…?」
知らない方が良い…。知らなくて良いこともあるんだ…。
「気になる言い方ね…。」
そこで、筆者はふと思う。もしかして、普段歩いている道のマンホールの中にはここまでのサイズじゃないとはいえ、全長1m前後の巨大……がいるのではないかと…。
「…巨大…?…ゾッとするわね…。」
だろう?てか、あらすじ頼む。
「…前回もだけど、140話くらいから役を交代するんじゃなかったっけ?」
そうか…。すっかり忘れていた。それじゃぁ、次からやるから今回も頼む。
「…仕方ないわね。」

あらすじ
前回、廊下を歩いていると、長門さんがなんだか提督に騙されているような現場を目撃したわ…。面倒なことをアイスで釣っているような…。まぁ、夕張や叢雲もいたから大丈夫だとは思うけど…。


…………

下水道入口

 

「よし、では入ろうか。」

 

ドミナントが皆んなに呼びかける。

 

「ひどい匂いですね…。」

 

「きっと汚物が溜まっているのよ…。逆流しなければ良いけど…。」

 

「一応長靴とマスク、防水服を着ているが…。匂いがつきそうだな…。」

 

ドミナントの他に夕張、叢雲、長門がいる。4人で下水道に入るらしい。

 

「夕張、工具ある?」

 

「あります。不具合があった場合は直す予定です。」

 

「了解。叢雲、地図ある?」

 

「あるわ。普通のマンホールの中と比べると想像以上に広いから散り散りにならないように気をつけなさい。」

 

「なるほど。長門、もしもの時の武器は?」

 

「ある。艤装はこの提督支給のバッグに入っている。」

 

「わかった。」

 

そして、忘れ物がないかどうか確認し…。

 

「よし。では行くぞ。」

 

ドミナントたちは下水道へ潜る。

 

…………

下水道

 

「うぇ〜…。ひどい臭いです…。」

 

夕張が、ドミナントたちと歩きながら言う。下水道の中は、水位が上昇していて長靴が無かったら靴が完全に乙樽(水没)していた。

 

「むぅ…。マスクをしているとはいえ、流石にキツイな…。」

 

長門がバシャバシャと足音を立てながら言う。

 

「…あんたも人の姿になりなさいよ…。」

 

叢雲はドミナントを睨みながら言う。

 

「嫌だよ。この姿だと匂いも感じないから楽だし。」

 

ドミナントはちゃっかりACになっている。ACには鼻が無いため臭いを感じない。

 

「「「……。」」」

 

「…冗談だよ。人型になるからそんな目で睨まないで…。」

 

艦娘三人は信じられないような目でドミナントを睨み、ドミナントが人型に戻る。

 

「うぉっ…。これは…ひどいな…。」

 

ドミナントが言う。汚物や、ゴミなどの腐った臭いで鼻が曲がりそうだ。そして、しばらく歩いていると…。

 

「…あれ?なんでここが閉まってるの…?」

 

壁?ゲート?にドミナントたちが行手を阻まれ、夕張が不審に思っている。

 

「普通、ここは開いているはずなんですが…。」

 

「…開かないのか?」

 

ドミナントが言うと…。

 

「ここを開けるには、今来た道を戻って、入口から逆の方向へ少し行った場所にロックの解除システムがあるわ…。」

 

叢雲が答える。

 

「ありがとう叢雲。」

 

「別に。それが私の役割だから。」

 

そして、ドミナントたちは淡々と進んで行く。そして、道中…。

 

「あっ。」

 

夕張が突然声を上げる。

 

「どうした?」

 

「これ…。」

 

夕張が見せたのはドローンだ。

 

「何でこんな残骸果てているんだ…?」

 

「わかりません…。」

 

「何もないはずだろう?」

 

「そうなんですが…。不具合でしょうか…?」

 

夕張とドミナントが歩きながら話す。すると、先頭の長門と叢雲が止まる。

 

「…どうした?」

 

「ここは閉まっていて、水が出ないはずなんだけど…。」

 

小さなゲート?みたいな場所から、勢いよく水が出ている。

 

「飛び越えるしかないんじゃない?」

 

「…もし、失敗したらすぐ隣の下水の溜まり場で溺れるわよ…。」

 

「…それは絶対に嫌だな…。」

 

ドミナントはすぐ左隣の下水の溜まり場を見る。結構深そうだ。

 

「…でも、何も状況が進展しないから、結局のところ飛び越えるしかないんだよね…。」

 

「「「……。」」」

 

叢雲たちが嫌な顔をする。

 

「まぁ、俺がまずやるから、後は続いて来てくれ。」

 

ドミナントが言う。

 

「助走つけて飛ぶから、そこで見ているが良い。」

 

そして、十分に助走をつけ、走る。が。

 

「ひぃ、ひぃ…。…はぁ、はぁ…。」

 

そう、長年のデスクワークで鈍った身体には走るだけで疲れるだろう。

 

「はぁ、はぁ…。とぅ…。」

 

だが、一応飛ぶ。

 

ザバァァ…

 

「ギャァァァァ…!」

 

「提督ー!」

 

「結果は見えていたけど…。」

 

「ただの愚かなのか…。」

 

ドミナントが盛大に下水に突っ込み、流される。夕張はドミナントのことを本気で心配し、叢雲が辛辣な言葉を投げかけ、長門が眉をひそめ、どうしようもないような顔をした。

 

…………

 

「何とか渡れたわね…。」

 

「助走をつければ余裕だったな。」

 

「提督!提督ぅ!…臭い…。」

 

叢雲がやれやれとした顔になり、長門が当たり前のように言う。夕張は倒れたドミナントをずっと揺すっている。

 

「おそらく、これは忘れられない記憶となるだろう…。」

 

ドミナントは、下水が勢いよく出ている場所を渡った夕張たちに引き上げられた。防水服を着ていたが、既に意味を成していない。逆に、防水服のせいで中で水が溜まってしまっている。もちろん、長靴の中にも…。

 

「…提督、一つ良いですか…?」

 

「…なんだ?」

 

夕張が、立ち上がって防水服や長靴を脱いで下水を出しているドミナントに聞く。

 

「…少し、飲んじゃいましたか…?」

 

「……。いや、飲んではいない…。」

 

ドミナントは苦虫を噛み潰した顔になる。

 

「口に少し入っただけだ…。」

 

「はい。盛大に汚いし、菌がいるのでこれで口を濯いでください。」

 

「何それ?」

 

「綺麗な水です…。そして、濯いだらこの解毒剤を飲んでください…。セラフさんと共同で作った対毒用の万能薬です…。」

 

「すごいなそれ…。」

 

ドミナントは口を濯ぎ、解毒剤を飲んでから、また綺麗な水で口を濯いで飲む。

 

「それより、提督がロボットになって、一緒に運んでくれれば良かったのではないか?」

 

長門が言い、ドミナントたちが気付く。そして、後悔した。

 

…………

 

「ここよ。」

 

「やっとたどり着いたな。」

 

叢雲の案内により、解除システムにたどり着く。そして、夕張が工具を持つが…。

 

「…あれ?ここも異常ないです。しっかり作動しますよ。ほら。」

 

夕張が解除システムを弄る。すると…。

 

『システムを起動しました。汚水の流入量を調整します。』

 

そして、水の水位がどんどん下がって行き、長靴がなくても平気なくらいになった。

 

「これで、あそこのゲートのロックも解除されました。調べることが出来ます。」

 

夕張が少し嬉しそうに言う。なぜなら、そこを調査すればもうここにいる必要がなくなって出られるからだ。

 

「これで、あの勢いよく出ていた下水も消えて、のんびり行くだけか。」

 

そして、ドミナントたちがその場所へ歩き出す。

 

「にしても、ここまで何もないってことはドローンの不具合じゃないか?」

 

「…そう思いたいんですが…。ここを見てください。明らかに攻撃された痕です。」

 

「…確かに、そう言われればそんな気がしなくもないな。」

 

「暗いからよく見えませんが…。」

 

「まぁ、明るい場所に出てから確認しよう。」

 

ドミナントと夕張が話し終え、歩いていると…。

 

モゾモゾ…

 

「…?」

 

夕張が背後になんらかの気配を感じ、振り向く。

 

「…何もいない…?」

 

夕張は辺りを確認しながら言う。

 

「提督、気配とか感じました?…提督?」

 

夕張はドミナントの方を見るが、夕張が立ち止まっていることを知らず、結構遠くにいた。

 

「お、置いてかないでよぉ!」

 

夕張は駆け出そうとしたが…。

 

モゾモゾ…

 

やはり、後ろから気配を感じる。そして、気配がさっきより近くに感じた。

 

「……。」

 

夕張がゆっくりと振り向く。

 

…………

 

「疲れた…。そこらで休憩しない?」

 

ドミナントが言う。

 

「それでもここの提督か?」

 

「はぁ…。あんたねぇ、まだ先は長いんだから…。…て、夕張さんは?」

 

「夕張?…そう思ってみれば…。」

 

ドミナントたちが夕張がいないことに気づく。すると…。

 

キャァァァァァァァ!

 

闇を引き裂く怪しい悲鳴が響く。

 

「誰だ。誰〜だ…って、夕張しかいない!」

 

ドミナントたちが来た道を戻る。

 

「夕張!」

 

そこにいたのは、今にも喰いちぎらんとする口や牙をガチガチと鳴らして、夕張に覆いかぶさっている大きな白い蜘蛛と、押し倒されてはいるが喰われないように懸命に手足を使って抵抗している夕張だ。

 

「夕張さんから離れなさい!この汚いゴミムシ野郎が!」

 

叢雲が長門から半ばひったくるように艤装を取り、構える。が。

 

「叢雲!後ろだ!」

 

「えっ?きゃぁっ!」

 

そう、一匹だけとは限らない。もう一匹の蜘蛛が叢雲を襲ったのだ。ドミナントの声が無かったら、不意打ちを食らって完全にやられていた。

 

「この…離れなさい…よっ…!」

 

叢雲も必死に抵抗しながらも、蜘蛛の胴を殴ったり蹴ったりしていた。

 

「長門、お前は早まるな。現在夕張と叢雲が危険な状態だ。お前まであの状態になったら、さすがの俺でも少し手を焼く。しかも、俺の嫌いな蜘蛛だ…。

 

「分かっている。後ろに注意しながらも攻撃。だろう?」

 

「そうだ。…死ぬなよ。」

 

「馬鹿な。長門型の装甲を侮るなよ。」

 

「へいへい。期待しないで待っとるよ。」

 

二人は短い会話を終えた後、ドミナントがAC化になり、長門が艤装を手に取って各々を助けに行く。

 

「叢雲から離れやがれ!」

 

「ビッグ7の力、侮るなよ!」

 

ビー!

 

ドガァァン!

 

ドミナントが毎度お馴染みWR05L-SHADE(レーザーライフル。通称シェイド)を撃ち、長門が41cm連装砲を撃つ。

 

ボボボボ…。

 

蜘蛛が足を引っくるめて、リアルに死ぬ。だが、死んだのは長門の攻撃だけだった。ドミナントの攻撃は効果が今ひとつのようだ…。

 

「EN攻撃の効果が薄いのか…?この世界では…。」

 

「前も深海棲艦にそれで攻撃したが、あまり意味が無かったからな。」

 

長門とドミナントが昔を思い出しながら話す。ドミナントが何回か撃っているうちに、その蜘蛛も死ぬ。

 

「長門さん。ありがとうございます。」

 

「もっと早くに助けなさいよね。」

 

二人は感謝?の言葉を口にする。

 

「別に良い。それよりこの蜘蛛は…。…提督?」

 

長門は難しい顔をして考えているドミナントを見る。

 

「…キサラギ…下水…白い蜘蛛…。…嫌な予感がするけど、何故か思い出せない…。なんかムズムズするなぁ…。」

 

ドミナントは顔をしかめながら言うのだった。




はい。ドミナントがなぜ気が付かないがというと、ドミナントにとっては何年も前のゲームの1ミッションだからです。機体を思い出すだけで1時間も悩んだ人ですからね…。
登場人物紹介コーナー
蜘蛛…B988a C-type。蜘蛛嫌いの人にはキツイ…。しかも、死に方がそっくりすぎる…。流石フロム。変態だ。ちなみに、ビームを出してくる。容姿は全く毛の生えていない、足の細い白い蜘蛛で足音も…。AMIDAと比べたら、おそらくAMIDAを取るだろう…。
次回、第142話「下水溝調査 その3」


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142話 下水溝調査 その3

まさか、3話まで続くとは…。4話…なんてことは無いよな…?
「続きそうね。」
マジかぁ〜。…ところでさ、聞いてくれよ。
「?何?いきなり。」
神様について調べたんだけど…。
「うん。」
ろくなやつがいねぇー!
「でしょうね。ただでさえ神様さんが提督さんの食事に惚れ薬やら入れるんだもの…。」
いや、それはまだ可愛いものだ…。神話が酷すぎる…。どうしてしょうもないことをして、しょうもない結末を迎えるのか不思議で不思議で仕方ない。
「まぁ、欠陥だらけの人間から作られた神様も欠陥だらけなんだけどね。」
どこかで聞いたようなセリフだけど、なんなのか思い出せない…。
「それじゃぁ、今回のゲストを紹介しましょう。」
そうだな。どうぞ。
「何故、私はここにいる…。」
「ちょちょちょ、ちょっと待って筆者さん!」
ん?何?
「だ、誰!?この人!なんかヤバイオーラが出てるけど!」
あぁ、瑞鶴は知らなかったね。じゃぁ、少し外に出てもらおうか。
「ええっ!?何!?凄い気になる…。て、また透けてる!?ねぇ!今回は本当に気になるから…。」
…完全に消えたか。それじゃぁ、ハスラー・ワンさん。あらすじをお願いします。
「何故私の名を…?まぁいい。私は帰る。」
出れないよ?
「……。」
銃を構えても意味ないからね?あらすじを終えるまでは。
「…その通りみたいだな…。手短にやろう…。」

あらすじだ
前回、私はある兵器の管理をしていた。すると、そこには我々の敵である者が来た。この際だからこそ仕方なく組んでいるが、目的を果たした途端に排除する予定だ。…だが、奴の強さは認める。おそらく…いや、私でさえも倒せるか分からん相手だ。

さて、このヒントから当ててくるか…?もう1人の暗躍者を…。…分かんないよな?そう思うだろ?あんたも。…思わないのか…?思ってるんだろう?


…………

下水道

 

モゾモゾモゾ…

 

「長門、後ろだ。」

 

「わかっている。」

 

ドォォォン!

 

「叢雲、左からも来ている。」

 

「知ってるわよ。」

 

ドガァ!

 

「夕張、上。」

 

「はい!提督も前から来てます!」

 

ドガァン!

 

「了解。」

 

ビービービービービー!

 

ボボボボボ…

 

ドミナントたちが手際良く駆除していく。そして、しばらく戦った後、蜘蛛たちが現れなくなった。

 

「…一段落着きましたか…?」

 

夕張が辺りを確認しながら言う。

 

「さっきまでこんな猛攻なかったのに、調整してから一気に来たな…。」

 

ドミナントが腰を下ろしながら答える。

 

「ネズミ一匹いない理由がわかったわね…。」

 

「こいつらに喰われていたのだな。」

 

叢雲と長門も疲れたみたいだ。

 

「…少し休んだらすぐに出発よ。またあいつらが来るかもしれないし…。」

 

叢雲が言う。

 

「マジか。…て、言いたいところだけど、俺蜘蛛が苦手なのにこんなのと何回も鉢合わせたら堪ったもんじゃない。叢雲の言う通りにするよ。」

 

ドミナントが立ち上がる。

 

「いえ、まだよ…。少し疲れたから、2分くらい休んでから…。」

 

叢雲がまだ下水の水が染みている床に座る。防水服を着ているため、あまり気にしていないが…。

 

「…地下に潜ってどれくらい経った?」

 

「…1時間30分くらいか…?」

 

長門が聞き、ドミナントが答える。

 

「それなら、もうすぐ夕方だな…。早く出発した方が良い。もし、あれらが夜行性なら、夜何回も襲撃されることになる。ろくに休むこともできずに最終的には1人、また1人と倒れていって全滅するぞ…。」

 

長門がマジで言う。

 

「…そうね…。もう少し休みたかったけど、そうなったら元も子もなくなるわね…。それとも、一度地上に出ようかしら…?」

 

叢雲が疲れ切った顔で言う。まぁ、夕張と叢雲が襲われてから40分近く襲撃されていたのだから仕方がないのだが…。

 

「いえ…。辛いですが、おそらくドローンも調整させてから襲撃を受けたと思われます…。つまり、私たちがここで地上へ戻ると、また最初からになってしまいます…。」

 

夕張もキツそうな顔で言う。彼女も叢雲と戦った1人だからだ。

 

「提督、提督が決めることだと思うぞ…。あと少しで問題のゲートだが、このまま進むか明日最初からやり直すか…。」

 

「長門、こんな時だけ俺に判断を委ねないでくれよ…。…俺はお前たちを失いたくはない。明日やり直すだろうか…?しかし、蜘蛛が増えているかもしれない…。むしろ減っていれば丸儲けなのだがな…。それに、今回はシステムが無事だったから良かったものの、次は壊されているかも知れん…。しかし、このまま進むにしても、お前たちを失ってしまうかもしれん…。それだけは避けたい。」

 

ドミナントが難しい顔をしながら言う。

 

「まぁ、地上へ戻れば、明日また編成をやり直して来れるけどね…。」

 

叢雲が疲れた顔で言う。

 

「ですが、今回はまだ地下だから良いですけど、もしかしたら地上まで出てきてしまうかもしれません…。それに、今度こそ確実に下水が逆流して鎮守府が機能しなくなってしまいます…。」

 

夕張も疲れた顔をしている。

 

「……。」

 

ドミナントは難しい顔をしたままだ。

 

「…提督、私たちは提督がどんな決断をしようが恨まない。指示に従おう。艤装を持って敵を打ち倒そう。荷物を持って地上へ帰ろう。だが、決めるのは提督だ。」

 

「長門、俺がお前たちの犠牲で生き残るのを本望だと思っているのか?」

 

ドミナントは横目で長門を見る。

 

「……。…提督、私はそこに惹かれてたのかもしれん…。だが、これは大切な決断だ。意味のある死なら喜んで死にに行こう。私たちは死ぬのが怖いんじゃない。役に立てないのが怖いんだ。死ぬのが嫌なんじゃない。提督を守れないのが嫌なんだ。」

 

「それは分かっている…。お前たちはこんな俺に尽くしてくれている。それだけで感謝している。だからこそ失いたくないんだ。」

 

ドミナントが長門に優しく言う。だが…。

 

「私たちは使い捨ての消耗品だ。いないなら他の艦娘で補充するか、また作れば…。」

 

「お前たちを消耗品扱い?ふざけんな。長門、次そんなこと言ってみろ。たとえお前でも容赦なく殴り飛ばすぞ。」

 

長門の言葉にドミナントが冷たい目で睨む。

 

「…すまん。少し疲れたのかもしれん…。」

 

長門が少し目つきを緩めながら言う。

 

「……。そこで仮眠している叢雲たちと休め。俺が警戒しておく。」

 

ドミナントはいつの間にか仮眠している叢雲と夕張の隣に、荷物を退けて長門の場所を空ける。そして、真っ暗になり始めているため、汚物と一緒に流れているゴミや木の枝などを燃やして火を起こしている。匂いに関しては長くここにいて鼻が完全に麻痺しているため、匂いなど全く感じなかった。

 

「…本当にすまん…。…だが、これだけは覚えておいてくれ。私たちは自身の力不足で提督を失いたくないんだ。提督を傷つけたくないんだ。叢雲も普段あんなことを言っているが、本当はお前のことを思っているんだ。私たち艦娘は提督が好きなんだ。だからこそ提督が考えているように、提督を失うのをなんとしてでも避けたいんだ。そのためならなんだってするだろう。自身の命を削ってでも…。」

 

そして、長門がその場所で寝転がる。

 

「…つまり、俺とお前たちの守りたい気持ちは同じなのだな…。…だが、残された側は死ぬよりもっと辛いことを知っている。あとを追うように死のうとする人もいる…。…長門、お前にあんなことを言ったが、俺が死んでも新しい提督が来る点に関しては同じなんだよ。俺自身、消耗品って言ったらお前も俺を殴り飛ばすだろう?」

 

「ああ。容赦無くな。」

 

「…俺はそれと同じ気持ちなんだよ。俺はお前たちを失いたくない。お前たちは俺を失いたくない。どちらも同じ想いだ。この想いに違う点などないんだ。…もう寝ろ。休憩したら進む。この騒ぎを終わらすためにな。」

 

「あぁ…。本当にすまない…。」

 

「別に良い。」

 

「…おやすみ…。」

 

「おやすみだな。」

 

そして、ドミナントはこの夜、寝ずの番をすることになった。幸いにも蜘蛛は来なかった。

 

…………

翌朝 下水道

 

「…にゅ…。む…。…ん?…まだ夜…?…て、ここ下水道じゃない!」

 

叢雲が起きるなり信じられないような顔をする。まぁ、下水道で寝るなんてことは人生で最初で最後だろうが…。

 

「…ん?夜…ですか…?…そうでしたね。下水道でした…。」

 

夕張も叢雲の言葉で起き出し、嫌な顔をする。

 

「…提督…。…む…?ここは…。」

 

長門も起き出す。

 

「目が覚めたか?ここは下水道だ。」

 

ドミナントは座りながら、消えかけている焚火を遠目で眺めていた。

 

「…あんた、まさか一睡もしてないんじゃ…。」

 

「敵のいる下水道で見張りも無しに寝てられるか。」

 

ドミナントが木の棒を焚き火に入れながら言う。

 

「ばっかじゃないの!?あんたが疲れていたら何の意味もないじゃない!」

 

「だが、俺は疲れていると言ってもそこまでではない。一徹くらい平気だ。」

 

「ダメよ!今からでも良いから寝なさい!じゃないと、いざという時に体が動かないわよ!」

 

叢雲がドミナントに向かって怒鳴る。

 

「…だが…。」

 

「つべこべ言わずに寝る!」

 

「…はい。」

 

ドミナントは話を聞かないと思い、言う通りにする。そして、1分も経たずに寝てしまった。

 

「…長門さん、夕張さん。ごめんなさいね。勝手に…。少し進む時間減っちゃったけど…。」

 

「別に良い。叢雲の言う通りだ。疲労が溜まったままだと、冷静な判断、突発的な身体活動と共に鈍る。そして精神的にもな…。」

 

「大丈夫です。提督のことを想って言ったことは十分に伝わりましたから!」

 

叢雲が2人に謝るが、全く気にしていなかった。

 

…………

一時間後

 

「…む?どれくらい経った?」

 

ドミナントが起き出す。

 

「ん?起きたのか。一時間くらいだと思うが…。」

 

夕張たちと火を囲っている長門が言う。

 

「敵襲は?」

 

「今のところはないわ。それより、こんな場所から早く帰りましょう。」

 

叢雲がドミナントを見ながら言う。

 

「そうか…。じゃぁ、下水溝へ行きますか。」

 

ドミナントが起き上がりながら言う。夕張は覚悟した顔で工具を持ち、叢雲が前もって計算したルートを説明するために地図を取り出し、長門が艤装の入っているバッグを背負う。そしてドミナントたちは、この暗く湿っている下水道の”調査"を終えるために歩き出した。




次で最後だと思います。てか、最後にさせます。そして、徐々にバトルシーンが増えている気がする…。この世界に登場する人物の設定がやっと終わりました…。沢山います。
登場人物紹介コーナー
トクニナシ

「提督、今回から新しいコーナーとして、ここが設けられるらしいぞ。」
「そうなのか?長門。じゃぁ、初めの一歩としてこの俺が失敗することなど出来ないな。ところで、今回のお前の言葉冷静に考えたらめっちゃ恥ずいな。」
「そ、そうか…?しかも、その長い言葉のせいでここ止まりらしい。」
「マジかよ。次回で終わってくれないかなぁ〜。蜘蛛嫌いだからなぁ〜。…嫌な予感がするなぁ〜。」
「それは筆者次第だな。と、言うわけで次回、第143話「下水溝調査 その4」だそうだ。私も次回から嫌な予感がするのだが…。」


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143話 下水溝調査 その4

さて…。下水溝が終わったら、駆け足になるかもしれませんね。
「へぇ〜。…なんで?」
終わらないから。陸軍編も出来ないし。
「残り56話もあるのに?」
これからのイベントがあと2つくらい挟んでからだから。
「…確かに…。一つのイベントで10話でも、その陸軍?編が確か15話くらいって言っていたから…。…35話?で終わるじゃない。のこり21話もあるわ。」
…その後にもあるんだよ…。
「?」
…いや、なんでもない…。
「??」
それより、今回のゲストは?
「この人よ。」
「夕立っぽーい。」
出た。番猫…いや、番犬付きか…?
「…何度も言う様だけど、夕立は犬じゃないっぽい〜!」
へぇ〜、存外そんなものか…。いや、あるいは…。
「…筆者さん?あらすじ始めるけど…。」
…ああ。頼むよ。
「さぁ、素敵なパーティしましょう!」

あらすじっぽい
前回、なんかトイレの水の調子が良くなったっぽい。提督さんがいなくて大騒ぎしているっぽい。神様さんが心配してその辺うろうろしているっぽい。


…………

(BGM AC3『below his eyes』)

 

下水道 ゲート前

 

「…さて、ついにここまで来たな。」

 

道中、蜘蛛に幾度となく襲撃されつつも、大きなゲートの前に着く。

 

「夕張、作動してくれ。」

 

「はい。」

 

そして、夕張がドローンの残骸の隣にある機械に触る。

 

『基幹部へのゲートロックを解除しました。』

 

ウィーーン…

 

そして、ゲートの扉がゆっくりと上へ開いていく。少しの隙間だけで、中は広く、四角い空間になっているのが分かった。

 

「いよいよだな…。」

 

長門が覚悟した顔で言う。

 

「何が待ち受けているのかしら…?」

 

叢雲は不安そうな顔だ。

 

「嫌な予感がします…。」

 

夕張は嫌な顔をしている。

 

「そうだな…。」

 

ドミナントはそこで、何かを思い出す。

 

……キサラギ、下水、白い蜘蛛…。…ゲート…。…EN属性攻撃の防御値が高い…。…蜘蛛…。…生体兵器だとしたら…?…蜘蛛…。…あっ…。

 

ドミナントは忘れかけていた…。いや、違って欲しいと考えていたのだろう。その記憶のパンドラの箱を開けてしまう。

 

「…提督、どうかしたのか?」

 

長門が顔色の悪いドミナントを不審に思い、聞く。

 

「み、皆んな。お、落ち着いて聞いてくれ…。」

 

「あんたこそしっかりしなさいよ。」

 

「こ、この奥へ入れるくらいになる前までに、ここから一時撤退しろ。」

 

「えっ?な、何故ですか…?」

 

「お、おそらく、現実で見たらトラウマになる…。」

 

「何があるんだ?」

 

「せ、説明している暇なんてない…。」

 

「教えなさいよ。」

 

「…しょうがない。」

 

ドミナントがAC化する。

 

「えっ?」

 

「な、何するの!?」

 

「何だ?」

 

ドミナントが三人を持ち上げる。2人を片手で自身の脇に押さえ、1人は強制的に背負って。

 

「一時離脱だ。」

 

「ちょ、ま…。」

 

ウィーーーン…。

 

ドミナントたちはゲートが開き終わる前に撤退した。

 

「て、提督、何…を…。」

 

夕張は青ざめた。見てしまったのだ…。ゲートの縁に巨大に動く脚みたいな何かを…。

 

…………

下水道 入り口付近

 

ドサッ

 

「きゃっ。」

 

「な、何を…。」

 

「……。」

 

夕張たちを下ろす。

 

「済まないが、ここからは俺がなんとかする。これくらいなら、頑張れば出来る。」

 

「何勝手なこと言ってんの!?ここまで来たんだから、私たちも同席するのが当然でしょう!?」

 

「そうだぞ提督!それともなんだ!?戦果を独り占めしたいのか!?」

 

「そう言うわけでは無い…。お前たちにアレは少し…な…。」

 

ドミナントは怒っている二人を見ようとしない。

 

「夕張さん!あなたはどう思うの!?」

 

「夕張、お前の意見も聞かせてもらおう。」

 

「…ふぇっ!?な、何ですか?」

 

叢雲と長門がずっと固まっていた夕張に聞く。

 

「あなたも最後まで責任持って付き合うわよね!」

 

「え、えーっと…。」

 

「こいつは私たちを置いて行って格好をつけようとしている。私たちにとっては侮辱以外何ものでもないだろう?」

 

「……。」

 

夕張は困った顔をするばかりだ。

 

「…まぁ、俺は行く。付いてくるな。」

 

「ちょ、待ち…。」

 

ウィィーーーン…

 

ドミナントは行ってしまった。

 

「…ちっ。あいつ…。…ところで、夕張さん、どうしたの?なんか変よ。」

 

「…えっ?」

 

「ボーッとしてな。しかも、少し顔色が悪い様だが。」

 

叢雲と長門が心配して聞く。

 

「じ、実は…。」

 

…………

下水道 ゲート前

 

「…やはりか…。」

 

ドミナントがゲートの陰で隠れて見ていた。

 

「天井の巨大蜘蛛…。周りの緑色のアレは繭だよな…。あれから子蜘蛛がうじゃうじゃ出てくるんだよな…。」

 

ドミナントは見た。そう、ソレを…。

 

キチャキチャ…。

 

白く、巨大な足長蜘蛛の様な体に、頭はウスバカゲロウの幼虫(アリジゴク)の様な頭で、天井をモゾモゾ動き回っている。

 

「見るだけで戦意喪失だな…。早めに終わらせるか…。」

 

そう言ってドミナントは左腕武器のCR-WH05BP(バズーカ。通称『神バズ』)と、CR-YWB05MV2(中型ミサイル。命中率と攻撃力を目指した試作品。)とそれに伴うエクステンション(肩にある補助装置)のJIKYOH(垂直連動ミサイル)の確認をする。今回は実弾系重量二脚の様だ。

 

……脚部はなるべく速い方が良いのだが…。LRではフロート型は基本産廃になっちゃったからな…。脚部が壊れて、フロートの強みが消えるから…。上手い人はそんなことにならないらしいけど…。

 

ドミナントは確認しながら思う。そして…。

 

「まぁ、ここから倒す手もあるが…。それだと盛り上がらないからな。…行くぞっ!」

 

ドミナントはその空間に入ろうとしたが…。

 

ビィィィィィィ!

 

先制攻撃をする前に巨大化け蜘蛛に見つかり、極太レーザーで攻撃される。

 

「危なっ!」

 

ギリギリでよける。例え、ドミナントだとしてもそれに当たれば大ダメージは確定だ。

 

「かと言って…。」

 

ドミナントが近づくが…。

 

ビシャァァァ!ビシャァァァ!ビシャァァァ!…!

 

「近づけば雷?糸?見たいなもので攻撃されるがな…。しかも、被弾時の安定性が低いと食らって、動けなくて連続ダメージという負の連鎖が…。」

 

ドミナントは注意して避けようとするが…。

 

ドガァァァン!…ドガァァァン!

 

「…ぐっ…。やはり、連続的に食らわないとはいえ、重量機体じゃ無理か…。」

 

その雷?糸?みたいなものにどんどん当たっていく。

 

ビー!ビー!

 

それに追い討ちをかける様に、繭から孵った子蜘蛛にも攻撃を浴びせられる。

 

「チッ。子蜘蛛め…。うざ…。」

 

ドミナントが言いかけた途端…。

 

ビィィィィィィ!

 

ドガァァァァ!

 

「グハァァァァ!」

 

巨大化け蜘蛛から一瞬目を離したところを、極太レーザーがドミナントに直撃する。

 

「残りAP50%…やったな…。」

 

ドミナントは神バズ、そして中型ミサイルと連動ミサイルを交互に撃つ。

 

パシュッ…ゴォォォォ…ドガァン!…!

 

ボッ…ボガン!…!

 

だが、巨大化け蜘蛛が倒れる気がしない。

 

ビー!ビー!

 

「うざ…。」

 

ビィィィィィィ!

 

「いっと。そうなんども当たってたま…。」

 

ビシャァァァ!ビシャァァァ!ビシャァァァ!…!

 

「なにぃ!」

 

ドガァァァ!ドガァァァ!

 

「クソが…。最悪だぜ…。」

 

ドミナントが糸?見たいな攻撃に当たる。すると…。

 

『脚部破損』

 

「なっ!?なんだと!?」

 

無慈悲な機械音がこの広場?に響く。脚部…つまり、足の破損である。ただでさえ機動力が低い重量二脚だ。これは致命的…勝負の決定打と言っても過言では無い。

 

「まずい!残りAP30%でこれはマジでまずい!」

 

ドミナントが叫ぶ。心なしか、巨大化け蜘蛛がニタリとしている。

 

……絶望だ…。ここからこの部屋の入り口まで遠すぎる…。安定性を失った今、食らったら動けなくて袋叩きだ…。

 

ドミナントは勝率を考えるが限りなく低く、生存率も低いことを思う。そして…。

 

……ジナイーダ…ジャック…セラフ…主任…。後は任せた。…艦娘たち…これからも元気でいろ。今まで楽しかった。お前たちのおかげで人生を何倍も楽しめた。おそらく、誰よりも幸せだった。我が生涯に一片の悔い無し…。いや、こいつにだけは殺されたくなかったな…。へへへ…。

 

ドミナントは目の前が暗くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(BGM 『life in ash』)

 

「諦めるな!」

 

「蜘蛛のトラウマがなんだっての!あんたを失う方が何倍もトラウマよ!

 

「提督の死に場所はここじゃ無いはずです!

 

ドガァァァァン!ドォォォォォン!!ドゴォォォォン!!

 

三人の希望が助けに来てくれる。

 

「!?馬鹿!この馬鹿野郎ども!お前たちがここに来たら、誰が助けを呼ぶんだ!?この馬鹿野郎!あークソ!いいぜ!ついて来い!これより地獄へまっしぐらだ!」

 

ドミナントが三人に向かって少し楽しそうに叫ぶ。

 

「提督と地獄旅行も悪く無いな!」

 

「地獄なんて私がぶっ壊してやるわ!」

 

「閻魔を困らせてやりましょう!」

 

三人は少し笑いながら大声で言う。

 

ドガァァァン!ドゴォォォォン!ボゴォォォォン!…!

 

三人と一機は暴れ回る。だが…。

 

「…クソ。やはり、脚部が安定しない…!」

 

ドミナントが忌々しく言うと…。

 

「提督!あの券を使って、これを作りました!受け取ってください!」

 

夕張が叫ぶ。すると、長門バッグの中から…。

 

ボッ!ヒュゥゥン!

 

四角い箱みたいな物が飛んでくる。そして…。

 

パカッ!ガチャァァァン!

 

「!?」

 

四角い箱から何かが飛び出し、脚部にフィットした。

 

「これは…!フロート!?」

 

ドミナントが驚く。そのフロートはレビヤタンのジェットみたいな感じだ。

 

「い、一体どうやって…!?」

 

「前、レビヤタン?を作ろうとした時から考えていたんです!”あの機動力を合わせられないか?"って!そして!それの部品の一部を改造しました!」

 

覚えているだろうか?夕張とセラフが作ろうとしたことを…。

 

「名付けて!『4thSND-YUBARI』です!」

 

夕張が自身たっぷりに言う。

 

「…だが、積載量は普通のフロートより少ないか…。だが、APとスピードは高い。それに…防御力も高く、EN消費も著しくないのか!?フロートには嬉しいな!」

 

そして、ドミナントは重量過多のため、中型ミサイルをパージする。

 

ヒュゥゥゥン…!

 

そして、飛び回る。

 

「提督!こっちの子蜘蛛は任せろ!お前はその化け物を倒せ!」

 

長門が一匹葬りながら言う。

 

「了解!任せろ!」

 

そして、ドミナントはその化け物の近くへ行き…。

 

ビシャァァァ!ビシャァァァ!ビシャァァァ!

 

「当たらん!」

 

ボガァァァン!ドガァァァン!

 

巨大化け蜘蛛の糸?を華麗にかわしながら神バズを当てる。そして、しばらく繰り返す内に…。

 

「提督!こっちは終わった!」

 

「手こずる相手でも無いはずよ!」

 

「すごいです!もう使い慣れていますね!」

 

長門たちは子蜘蛛を殲滅したみたいだ。そして、それを見てドミナントの口元が緩み…。

 

「さぁ!残りはお前だ!」

 

ドミナントが大声で言いながら近距離へ行く。

 

ビシャァァァ!ビシャァァァ!ビシャァァァ!…!

 

巨大化け蜘蛛が何度も攻撃するが全て避けられ…。

 

「食らえ!」

 

ドミナントが神バズを構える。が。

 

ビィィィィィィ!

 

巨大化け蜘蛛が最後に極太レーザーを浴びせようと攻撃してきた。ドミナントは咄嗟のことに避けられない。

 

「道半ば…か…。」

 

「「「提督(司令官)!」」」

 

覚悟を決めたが…。

 

ブゥゥゥゥゥン!

 

ドローンが最後にやってきた。

 

「「「!?」」」

 

その場にいた全員が驚いた。ゲートの開閉のための装置の隣にあり、残骸だと思っていたあのドローンだったからだ。そして…。

 

ドガァァァァン!!

 

ドミナントの目の前が青い光に包まれる。そのドローンが夕張たちに反応してドミナントの盾になったのだ。そして、本当に残骸となったドローンが落ちて行く。

 

……仲間の仇を打て…か。

 

ドミナントは落ちていくドローンを見て、そう解釈して神バズを巨大化け蜘蛛に照準を合わせる。

 

「お前に引導を渡してやる!あの世でも達者でな!」

 

そう言って、ドミナントは神バズを撃った。

 

ボガァァァァン!!!

 

そして、それが直撃して…。

 

「ギシャァァ…ァ…。」

 

巨大化け蜘蛛がぐにゃりと力なく蜘蛛の巣だらけの天井から吊り下がり…。

 

ドシィィィン!

 

蜘蛛の巣の糸が千切れ、死体が落ちる。

 

「……死んだ…のか…?」

 

長門が(触りたくなかったが)ツンツン触る。

 

「これで確かめれば良いわ。」

 

ブスッ

 

叢雲が手に持っていた槍で刺す。

 

ズブズブ

 

「…一切動かないわね。と言うより、こいつの血液の流れが遅くなってるわ。確実に死んだと見て間違いないわね。」

 

ブシャッ

 

そう分析した後、槍を抜く。

 

「…うぇ〜…。」

 

叢雲は、その槍についた白色のネバネバした粘液を見て露骨に嫌な顔をした。

 

「…つまり…。勝ったんですね!」

 

夕張が嬉しそうな顔になる。まぁ、こんな化け物を退治したといえば、誰だって嬉しい顔をすると思うが。

 

「ま!当然の結果よね!」

 

「連合艦隊旗艦を務めた栄光に比べれば、微々たる…いや、比べても大いなるものだな。」

 

2人は大いに喜ぶが…。

 

「夕張、どうした?」

 

夕張は少し離れた場所でしゃがんでいる。

 

「いえ…。この子も、最後までよく頑張ってくれました。私はこの子を作ったことを誇りに思えます。」

 

夕張はあのドローンのボロボロの残骸を優しく手に持つ。下水が付いていたが、そんな小さなことは全然気にしてなさそうだ。

 

「そうだな…。こいつは俺の命の恩人だ。」

 

ドミナントも、そのドローンを優しく撫でる。

 

「途中から、ドローンの回収もしていました。地上に出た時、倉庫に飾ります。」

 

「それが良い。…説明はこう書いたらどうだ?”提督の命を救った勇敢なドローンとその仲間たち"と。」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントたちは少し笑みを浮かべたり、嬉しそうにしながら地上へ出る。ちなみに地上に出て、新鮮な…、臭く無い空気のありがたみを感じたという。そして、真っ先に向かったところは執務室でも、倉庫でもなく風呂場だ。夕張はドローンの残骸と一緒に入って汚れを落とし、臭いを消したりした。叢雲と長門は風呂の気持ち良さを痛感して、ドミナントは悪い時に入ってしまい、主任にめちゃくちゃ付き合わされた。…忘れていると思うが、ドミナントは下水の湖に一度ドボンしている。帰ってきた時、神様も流石に抱きしめなかった。

 

 

 


収支報告

 


  収入金額


成功報酬
0

追加報酬
0

特別加算
0


  支出金額


弾薬清算
資材に換算→0

機体修理
-3527

特別減算
-11(送料)


合計
-3538


RAVEN RANK
所持金額
52352c

 


資材報告


燃料 685452→23851

弾 784912→21349

鉄 726547→ 9521

ボーキサイト 675318→675318




最後の支出金額は、佐藤中佐に送る料金と、直してもらう(報酬込み)の料金です。入渠できる脚部は一機に一つです。次回はフロートから始まります。(脚部を直しているため。)
登場人物紹介コーナー
巨大化け蜘蛛…B988A M-type。子蜘蛛の親玉。めちゃくちゃ怖いし、嫌にリアリティ。筆者もトラウマになりかけたくらいです。おそらく、トップクラスの大きさの生体兵器…。フロムも確信犯ですね。ですが、何度も見ているうちに可愛く…。(ナニカサレタヨウダ)
4thSND-YUBARI…夕張が作った脚部。レビヤタンのジェットをモデルにしてある。速い、固い、減らないの三拍子が揃った結構優秀なフロート。ただ、積載量が極端に低い。神バズしか積めないくらい…。ちなみに、由来は4th(第4)S(Sasebo(佐世保))ND(Navy District(鎮守府)-YUBARI(夕張)らしい…。
ドローン…勇敢な機械。最後に役に立ち、倉庫にいつまでも飾られる予定。

「…うむ。それにしても、臭いがきついところだった…。」
「そうね…。酷い臭いだったわね…。森は甘い香りがするって知ったわ…。お風呂に入ったら、石鹸が本当に…、きついくらい良い匂いがしたもの…。」
「おそらく、二度と忘れないな…。…ところで、このコーナーは私専用なのか?」
「?どうしたの?いきなり。」
「いや、前回提督が…。いや、いい…。なんでもない。」
「そう。ところで、今回の蜘蛛…少しトラウマになったかも…。」
「今更か?」
「あの時は全然怖くなかったんだけど…。今になって、背筋がゾッとするわ…。」
「あぁ…。実は私もだ。」
「やっぱり…。」
「もう素手では触らないな。手袋をしなくては…。」
「えっ!?す、素手で触ってたの!?」
「?そうだが…。」
「うわ〜…。」
「?どうしてそんなに離れる?」
「別に離れてないわよ。」
「そ、そうか…。あの蜘蛛に押し倒されていたからな…。…て、絶対に距離をとっているよな?」
「そんなわけないじゃない。変わらないわよ?」
「……。」
スッ
「……。」
ササッ
「……。」
スススッ
「……。」
ササササササッ
「……。」
ダッ
「……。」
シュパッ!
「…脱兎の如く素早い逃げ足…。私でなくては見逃していたな。で、次回。第144話「レッツ大本営」。ほう、次回は大本営へ行くのか。」


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大本営
144話 レッツ大本営


144話です。
「随分と遅い投稿ね。」
なんだか、面倒でさ。なんていうか…ブームが過ぎたって感じ。
「あんたそれでもweb小説を書いている人?」
Web小説も大変なんだよ…。
「まぁ、お金もらえないものね。」
あのねぇ…。お金どうこうとかじゃないの。お金貰おうが貰わなかろうが関係ないの。好きに書き、好きにやめるのが自分である筆者なの。
「…お金目的じゃないんだ…。」
少なくとも筆者はね。自分の思いつきで、物語をたまたま真剣に考えただけ。最初と最後を繋ぎ合わせよう→あいだに感覚が必要→あいだにこれを追加させよう→ネタ足りない→なら何かを見たり聞いたりして追加→どうせなら完璧を求めよう→キャラが足りない→追加→設定をつけたそう→闘うキャラがいいな→キャラをつけるが、身体が闘争を求める→…。そんな感じ。最後を書きたいから書き始めた感じだよ。ただ、筆者はそれをネットに公開して、自分の納得できる小説を完成させたいだけ。逃げられなくするため。思いつきで終わらせたくなかっただけ。まぁ、ぶっちゃけると暇だったんだよ。空き時間たっぷりだよぉ、昔はねぇ。
「長文失礼ね。まぁ、そうならそれでいいんじゃない?でも、私からは逃げられないし、逃さないけど。ログインしたり、私の名前の頭文字を見ただけで思い出させてあげるから。」
それは勘弁…。「ず」「い」「か」「く」「瑞」「鶴」って言葉だけでどれほどあるか…。
「なら、完璧に終わらすしかないわね。」
完璧に終わらすんじゃない。終わった後に、細かな修正をして完璧に近づけるんだよ。絵だってそうじゃないか?…まぁ、神様の容姿の奴は絶対に、誰が見ても完璧とは言えない駄作だけどね…。小説が終わったら、修正するつもり。
「…筆者さんって、面倒な性格なのね…。」
どこが?
「…自覚ないのね…。まぁ、いいわ。そろそろ読者の人が早く本編やれって内心思っていると思うから、今回のゲストを紹介するわ。」
この人です。どうぞ〜。
「こ、ここは…?いきなり…。」
時雨さんですね。ボクっ娘属性の。
「ボ、ボクっ娘…?」
「ごめんね。ここにいるゴミはそんな感じなの。一刻も早くあらすじを言ってここから出て行った方が良いわ。ゴミがうつるから。」
ひどいなぁ〜。
「ひどいと感じるなら、さっさと始めなさい。逃げてると終わらないわよ?」
助けてくれー。
「…あの、そろそろ始めても良いかな?」
あ、どうぞー。「あ、どうぞー。」
「シンクロしてる…。」

あらすじだね
前回、やっと提督が帰って来たよ。すごく臭かったけど、なにかしらの理由があると信じて詳しく聞かなかったよ。…でも、本当に何があったのか気になるね。あと、提督の脚?脚部?がいつもと違って新鮮だったよ。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

コォォォ…

 

「ん〜。」

 

ここで仕事をしているのは、毎度お馴染みドミナントだ。

 

「…その音どうにかならない?」

 

本日の秘書艦の蒼龍が言う。

 

「すまんな。フロートだから音がするのか。」

 

ドミナントは自身の脚?脚部を見る。前回、巨大化け蜘蛛との戦いで普段の脚部が破損してしまったのだ。現在、第2鶴舞鎮守府の佐藤中佐(シレア)に修理してもらっている。このフロートの脚部は夕張が作ってくれたものだ。

 

「人の形なのに何で音がするのかな〜?」

 

「それは俺にもわかんない…。でも、しばらく動かないと音がしないはずだよ?」

 

ドミナントが言うと…。

 

シュゥゥゥ…。

 

「あっ、音がしなくなった。」

 

「歩いたり、移動しなくなると稼働しなくなって停止するから。ちなみに、海上でこうなると流石のフロートでも河童にやられる。」

 

「河童?何それ?」

 

「蒼龍には関係のない話さ。」

 

「気になるけど…。まぁいいや。」

 

そんなこんなを話していると…。

 

「…仕事終わり〜。」

 

ドミナントが仕事を終わらせる。

 

「相変わらず早いね。…と、あとこれ。提督宛だってさ。」

 

「なに?それ。」

 

「第4呉鎮守府に提督が行っている間に届いたもの…らしいよ。」

 

「へぇ。」

 

ドミナントが蒼龍が出した封筒を持つ。

 

「…パラオ泊地の鎮守府からだ…。」

 

「…何やらかしたの?」

 

「いや、全く身に覚えがないんだが…。」

 

「提督は無意識に人を傷つけたりするからね。」

 

「ひどっ。」

 

「それより、中をみよう?」

 

「…そうだな。」

 

そして、封筒の中を見る。

 

…………

 

guten Tag(こんにちは).第4佐世保鎮守府Admiral(提督).いつになったら私たちのところへ来るのかしら?このビスマルクを待たせたことを後悔させてやるわよ?それとも、行き方が分からないだけかしら?いいわ。説明してあげる。この封筒の中に入っている紙を海に流してちょうだい。そうすれば、すぐにこちらへ来れるから。それじゃ。

 

…………

 

「…催促の連絡だったね。」

 

「…そのようだな…。」

 

蒼龍とドミナントが手紙と封筒の中の特殊な紙を見て言う。

 

「…行った方が良いんじゃない?」

 

「…そうなんだけど…。」

 

「…何かあるの?」

 

「大本営にも武蔵を連れて、あの深海棲艦の話もしなくちゃいけないからなぁ…。」

 

ドミナントは難しい顔をする。

 

「…よし!まずは大本営だな。今日行くか。でも、このまま返事を書かないのは失礼だから、一応手紙を書こう。…いくらかかるのかな?」

 

「私に聞かれても…。」

 

蒼龍は苦笑いする。

 

「まぁいいや。速達で2万くらい持っていけば足りるだろう。」

 

そして、ドミナントが手紙を書く。

 

「なんで書くの?」

 

「遅れる連絡のこと。」

 

蒼龍が気になって聞き、ドミナントがすらすらと書いていく。

 

…………

拝啓、ビスマルク様。

 

お誘いいただき誠にありがとうございます。中々行くことが出来ず、申し訳ございません。しかし、色々とこちらも忙しくて当分は行けません。大本営に行かなくてはなりませんし、愉快な仲間たちの了承も得なければいけません。ですが、それらが終わったら必ず尋ねますので、心待ちにしていただければ幸いです。

 

第4佐世保鎮守府提督、ドミナント。

P.S.紙を海に流したら環境破壊の対象となるため出来ません。

…………

 

「よし、完成。」

 

「これでいいの!?」

 

蒼龍が5分足らずで書いた文の内容に驚愕する。

 

「だって、本当のことだし…。環境破壊は流石にNGじゃん。」

 

「提督の存在自体がNGって気づいてる?…て、そこじゃないよ!」

 

蒼龍が色々とツッコム。

 

「とにかく、こんな薄っぺらい文じゃダメなんじゃない?もっとこう…。」

 

「……。」

 

……この艦娘はこんな時間なのに元気だなぁ…。え?今何時かって?アハハ。午前2時だよ。

 

蒼龍が色々アドバイスしているのをドミナントは黙って聞き流していた…。

 

…………

 

「…と、いうこと。わかった?」

 

何とこの話は一時間続いた。

 

「Zzz…。」

 

「寝てる!?」

 

と、なれば当然、下水道から帰って1日も経っておらず、2日で1時間の睡眠時間のドミナントはくたくただろう…。それほど早く寝たかったのだ。

 

「提督?…爆睡してる…。それほど地下で何かあったんだ…。…私も眠いから寝よう…。ふぁ〜…。マルサンマルマルね…。」

 

そして、ドミナントは提督机で伏せ、蒼龍は秘書艦机で腕を枕にして寝た。

 

…………

大本営 執務室

 

「ふぅ…。何故かこんなに朝早くから起きてしまいました。」

 

「偶然だな。私もだ。」

 

大本営、執務室で元帥と大和が話す。

 

「元帥殿、朝早く起きることは良いことです。さぁ、早速今日のお仕事を片付けちゃいましょう。」

 

「う、うむ。…あっ、そう思ってみれば、近頃の陸軍の動きはどうだ?」

 

「露骨に話を逸らしましたね。でも確かに、少し気になりますね…。…呼んできますか?」

 

「うむ。頼む。」

 

「分かりました。しばらくお待ち下さい。」

 

そして、大和が電話の受話器を手に取り、どこかに連絡する。

 

「あ、もしもし、朝早く申し訳ありません。少し尋ねたいことが…。…はい。…いついらっしゃいますか?…はい。…本日の3時に?…はい。…そうですか。そちらにもですか…。…はい。…はい。こんなに朝早くにありがとうございます。…はい。それでは…。」

 

大和が言って、電話が終わる。

 

「本日の3時に大本営警備の特殊部隊隊長と共に来るそうです。」

 

「うむ。…しかし、陸軍にスパイを送り込んでいるのは気が引けるな…。」

 

「いえ、陸軍もスパイを送り込んでいるらしいのでお互い様です。」

 

「うむ…。」

 

「それより、本日の仕事…。」

 

「あっ、そうだ。最近もらった茶菓子があるのだが…。お茶と共に持って来てくれないか?」

 

「……。…食べ終わったら仕事してくれますか?」

 

「…う…む…。」

 

「すごい苦しそうな顔ですね…。…まぁ、徹夜を連日して疲れているのはわかりますが…。…それでは、お茶にしましょう。」

 

そして、元帥と大和はお茶を飲み、ゆったりと過ごした。大本営は今日も平和である。

 

…………

朝 第4佐世保執務室

 

「グー…好きに生き…グー…。」

 

「スー…スー…。…ハッ!?」

 

朝、蒼龍が真っ先に起き出す。

 

「今…何時…。…!?もうこんな時間!?」

 

蒼龍が時計を見て驚く。10時ジャストだ。

 

「提督!起きて!」

 

「理不尽に…グガー…。」

 

「なんの夢を見ているのか気になるけど起きて!」

 

蒼龍がドミナントを揺さぶる。

 

「…むにゃ?蒼龍か…?もう仕事も終わったし、やることないぞ…。」

 

「大本営がどうこうとか言ってなかった?」

 

「大本…?…あ…やべ。蒼龍!起きろ!」

 

「もうとっくに起きてるよ!寝ぼけないで!」

 

ドミナントは慌ただしく支度をする。

 

「蒼龍、緊急だから、お前と一緒に行く。武蔵を呼んで先に飛行場へ行っていてくれ。」

 

「飛行場…?」

 

「場所が分からないなら、この時間帯は倉庫にいる夕張に聞いてくれ。ついでに、横切る艦娘に一言言っておいてくれ。その間に俺は大本営に連絡して、手土産を用意する。その時、蒼龍は飛行場で夕張にVOBを取り付けてもらっていてくれ。取り付けている間に俺が来るから、二番目の場所にいてくれ。制限時間は30分だ。」

 

「りょ、了解!」

 

蒼龍は初めて、ドミナントの指揮を見て驚きながらも走っていく。ドミナントは指揮をしないと思っていたのだろう。

 

…………

大本営 執務室

 

「スー…スー…。」

 

「クー…クー…。」

 

執務室で2人がふさふさの絨毯の上で寝ていると…。

 

プルルルル…プルルルル…。

 

電話が鳴り出す。

 

「スー…。…ハッ!?」

 

大和が起きて、受話器を取る。

 

「もしもし、大本営です…。」

 

『もしもし、ドミナントです。』

 

「ドミナント…?あぁ、化け物で有名な…。」

 

『…えっ?今何か聞こえた気がしますけど…。気のせいですよね。今からそちらにお邪魔しますが、よろしいですよね?』

 

「はい…。」

 

『…随分と軽いですけど、平気なんですよね…?それでは…。』

 

ガチャ…プッ…ツー、ツー、ツー、…

 

そして、電話が終わる。気づいているかもしれないが、大和は現在進行形で寝ぼけている。その証拠に、電話を切ったのに受話器を耳に当てたままだ…。しばらくして…。

 

「…ん?あれ?なぜ私は電話を持っているんでしょうか…?…ハッ!?も、もしかして…。」

 

大和は感じた。

 

「勝手に電話をしようとする私は病気なのでは…?」

 

自分のどこかが抜けているところに…。




う〜ん…。久しぶりに書いたから、筆?指?が乗らない…。案もない…。潮時ですかね。次回は、ドミナントたちが大本営に着いて、海軍が送ったスパイとご対面すると思います。
登場人物紹介コーナー
蒼龍…気さくなお調子者。だが、少しデレるところもあるし、ジャレついて来たりする。…見事な胸部装甲だな…。…隊長、確認しますか?…慌てるな…詰め物とは限らんだろう…。はい、詰め物ではありません。提督に好意は…持ってるのかな?友人的な扱いです。


「やって来たぞ!久しいこの長門のコーナー!フッフッフ…。しばらくお休みしていた気がするからな…。胸が熱い!」
「長門さん、凄い意気込んでるねぇ。」
「その声は前回やった叢…誰だ!?貴様!」
「航空母艦、蒼龍です。ちなみに、叢雲や飛龍、吹雪や白雪たちと声は同じです。」
「た、多重人格だったのか…?」
「あれ?そんなこと言うなら、多摩や川内と声一緒じゃん。」
「…中の人ネタもそろそろやめるか。」
「にゃ〜。」
「う、うるさい!私は…私は違う!」
「夜戦!」
「違ーう!全て幻聴だ!」
「いや、否定しちゃダメでしょ。ちなみに、速いで有名な島風ちゃんも同じ声だよ。」
「むぅ…。」
「あ〜、だから提督が『長門は可愛いなぁ〜』って言っていたんだ。」
「ほ、本当か!?」
「嘘。」
「貴様ぁ〜!」
「あはは。なんかハイテンションだね。…と、そろそろ次回言わないとダメじゃない?」
「あ、そうだったな。次回、第145話「二重スパイ」。二重スパイか…。これまた面倒な…。て、おい!逃げるな!待てぇー…。」


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145話 ジョウホウ

タイトル変更しました…。
「あれ?二重スパイじゃ…?」
長くなりました…。想像以上に…。
「そこら辺、しっかりとしないと完璧に終わらないわよ?」
すみません…。
「…まぁ、145話はジョウホウで、146話が二重スパイで良いんじゃない?」
まぁ…ね…。それじゃ、早いけど今回のゲストは?
「この人よ。」
「軽巡鬼怒!いっちょやったりますよー!」
おー、元気の良い艦娘だー。
「あったり前だよ!」
作家(そっか)。…瑞鶴、なんか震えているけど寒いのかな?まだ冬終わってないもんねー。じゃぁ鬼怒、あらすじを頼むよ。
「まっかせてー!」

あらすじ!
前回!寝てたからわかんなくてマジパナイ!

うん。正直なのは良いことだ。


…………

第4佐世保 執務室

 

「…本当に大丈夫だろうか…?」

 

大和との会話を終え、不安になるドミナント。

 

……まぁ、大丈夫だとして手土産は何を持っていこうか…。

 

だが、そんな不安を振り払うかのように提督机の二番目の引き出しを開ける。二番目は手土産などの茶菓子が入っている。

 

「よし、準備完了。…っと、セントエルモと夕張の褒美はどうなったんだろう?」

 

ドミナントはふと思い、駆け足で倉庫へ向かう。

 

…………

倉庫前

 

「飛行場…?」

 

「そう。そこで何をするのか知らないけど、武蔵を連れて行くように言われているから。」

 

「あ〜…なら、多分アレね…。」

 

「アレとは…?」

 

夕張と蒼龍、武蔵が話しているところに…。

 

おーい。

 

ドミナントが走ってくる。

 

「あっ、提督。」

 

「ハァ…ハァ…。夕…張…。大本営…に、褒美とか、ハァ…もらった…?」

 

「えっ?…そう思ってみれば、まだ貰ってないですね…。セントエルモちゃんに聞いて来ます!」

 

そして、夕張は倉庫の奥へ行く。

 

「…何?」

 

「大本営からのご褒美何がいいか?って。」

 

倉庫の奥から眠そうなセントエルモが夕張に手を引っ張られながら出てきた。

 

「私は…なんでも良いや。そんなに活躍してなかった気がするし。」

 

「いや、あの一撃は良く出来たと思うぞ。はっきり言って、アレは致命的だった。」

 

武蔵がしみじみと思い出しながら言う。なんせ、彼女は元『ミッドウェー』だったからだ。

 

「でも、案を出したのは夕張ちゃん。私一人だったら、そんな斬新な案を出してないと思うし。」

 

「でも、私1人じゃ火力が足りなかったよ?」

 

2人が言い合う。

 

「…欲しいものを言ってくれ。はっきり言って時間が押している。大和さんに連絡したとはいえ、そんなに用事を長引かせるわけにはいかない。」

 

「「あっ、すみません…。」」

 

ドミナントが言い、2人が謝る。そして、5分ほど唸ったあと…。

 

「私は、資材が欲しい。」

 

セントエルモが言う。まぁ、彼女は子供並みの大きさとは言え、一応戦艦。と、なれば、消費する資材も多いのだ。

 

「私は、例のあの券で…。」

 

夕張が言う。あの券とは、願いが一つ叶う券だ。つまり、大本営の“お願い”はドミナントにその権利を渡し、ドミナントからその券を対価として貰うのだ。

 

「…わかった。それでは、飛行場に向かおう。」

 

ドミナントがメモをして、飛行場に向かう。

 

…………

飛行場

 

『毎度お馴染み、私のナレーションが入るよ!』

 

夕張がマイクを使って話す。

 

「これが例の奴か…。どれくらい速いのだろうな…?」

 

武蔵がVOBを見ながら言う。

 

「…これ、すごく嫌な予感がする…。」

 

蒼龍が嫌な顔をしながら言う。

 

「さて、今回は海面スレスレか…。空か…。それによって、ルートが違うからな…。」

 

「どっちの方が安全かな?」

 

「海面スレスレだね。落下死がないから。」

 

「ら、落下死!?それは嫌なんだけど!」

 

「じゃぁ、海面スレスレだね。夕張!頼むー!」

 

ドミナントと蒼龍が話し…。

 

『了解しました!』

 

夕張が元気に返事をする。すると…。

 

ゴゴゴゴゴゴ…。

 

地面が揺れる。

 

「て、提督?これは…。」

 

「海面スレスレコースにしたんだよ。つまり、エレベーターのように下がってる。ここは山の中だからね。」

 

武蔵とドミナントが話している間に、揺れが収まる。

 

『ハッチ、オープンします。』

 

ガガガガガガ…

 

ザパーン…ザザーン…

 

ハッチが上に開き、外から海水が押し寄せて波になり、水しぶきが上がる。

 

「海が青いね。」

 

「そうだな。」

 

「そのようだな。」

 

三人は青い海を見る。この時期だとまだ寒そうだ。

 

『VOB、点火させます!』

 

ゴオオォォォォォ…!!!

 

三人の背中にあるVOBが大きな音を出し、覚悟した顔をする。

 

『足元ロック、解除!』

 

ヒュゥゥゥン…!ヒュゥゥゥン…!ヒュゥゥゥン…!

 

夕張の声と同時に三人はものすごいスピードで飛び立った。

 

…………

大本営 執務室

 

「…大和くん…。」

 

「私語を謹んでください。」

 

「……。」

 

ここで仕事をしているのは海軍の最高権力者でもある元帥と大和。

 

「…本当にすまなかった…。」

 

「仕事してください。」

 

「あのあと、すぐに寝てしまって…。」

 

「……。」

 

大和は現在進行形で怒っている。朝早く起きたのは良かったが、お茶を飲んだあと急な眠気に襲われて寝てしまったのだ。

 

「…そうだ。仕事が一段落着いたら、その…この前出来た喫茶店に行かないか?あそこには甘いものが…。」

 

「食べません。仕事してください。」

 

「…すまない。」

 

「……。」

 

どこかの提督とAIを思い出すが、大和は一筋縄ではいかなかった。

 

「はぁ…。午後3時に来るんですよ?それまでには仕事を終わらせないと…。」

 

「うむ…。」

 

「あと1時間しかないですよ…。」

 

大和はスパイの事を思う。ドミナントが来ることは全く知らない。

 

…………

 

「2人とも、慣れてきたかい?」

 

ドミナントが後ろの2人を見る。

 

『はい…なんとか…。』

 

『全く問題…ない。』

 

VOBで海の上を進んでいる。

 

「もうすぐ着くから、あと少しの辛抱だよ。」

 

『『はい…。』』

 

三人は大本営を目指す。

 

…………

 

「よし!あとこの項目で終わる。」

 

「あと少しですね。」

 

あれから少し経ったあと元帥が声を上げ、大和がお茶を入れる準備をする。

 

「…終わった。」

 

「お疲れ様です。」

 

そして、仕事が終わり、元帥が大和に入れてもらったお茶を飲む。

 

「…元帥殿…。」

 

「?どうした?」

 

大和が神妙な顔つきで言いかけ、元帥が真面目に聞く。

 

「私、病気なのかも知れません…。」

 

「?何故だ?血糖値が高かったのか?」

 

「違います…。実は、元帥殿を起こす前なんですけど、受話器を耳に当てながら起きたんです…。」

 

「…?どういう意味だ?」

 

「つまり、自分の知らない間に何処かへ連絡しようとしたのかも知れません…。」

 

「……。」

 

元帥は冗談を言って笑い飛ばしてあげようと思ったが、真面目で、本気な顔つきを見て言うのをやめる。

 

「…おそらく、疲れているんだ。…すまない、こんな元帥で…。」

 

元帥は申し訳なさそうに謝る。

 

「い、いえ。元帥殿のせいではありませんよ。連日の仕事のせいです。」

 

「…確かに、仕事が立て込んでいたしな…。…そうだ。疲れを癒しに温泉にでも行くか。」

 

「えぇっ!?」

 

「…いや、もちろん部屋は別々だぞ。私には妻も子もいるからな…。」

 

「あっ、それは分かっているんですが…。…本当に大丈夫なんですか?」

 

「…私はそこまで老体に見えるのか…。」

 

「い、いえ!そういう意味ではありません!仕事です!仕事!」

 

「あぁ、仕事?いや、休みを取れば平気だろう。」

 

「…でも、後で立て込んだりは…。」

 

「…まさか…。」

 

そんなこんなを話して、一段落つく。

 

「…ふぅ…。それにしても、なんとか間に合って良かった。」

 

「そうですね。ふふ。」

 

2人が話しているところに…。

 

ドガァァァァン!!

 

「「!?」」

 

堤防で何か得体の知れない音がする。

 

「…こういうケースは前にもあったよな…?」

 

「はい…。」

 

元帥と大和が堤防へ向かって走る。

 

「「「……。」」」

 

特殊部隊の全員、そして憲兵が武器を構えている。大和も元帥のそばから離れず、一応戦闘態勢に入っている。そして、誰しもがどこかの提督を思い浮かべていた。

 

「……。」

 

「「「!?」」」

 

しかし、煙の中から現れたものは別のものだった。

 

「深海棲艦!?」

 

そう、忘れていないだろうか?この物語の主な敵だ。久しぶりの登場である。

 

「くそっ!深海棲艦に現代武器は通用しないぞ!」

 

「艦娘だ!艦娘を呼ぶんだ!」

 

「しかし、今駆け付けられる艦娘は少数です!」

 

憲兵が話しているが、特殊部隊の面々は全く動揺していなかった。それどころか、攻撃する準備を整えていた。

 

『こちら、特殊部隊隊長『大郷少将』。艦娘『大和』に告ぐ。我々が時間稼ぎをしている最中に艤装を手にして打ち倒せ。』

 

大和に通信が入る。

 

……やはり、いつ聞いても嫌な感じで言っていますね…。

 

大和はそう思いながらも、艤装を手にする。そして…。

 

「敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」

 

ドオオォォォォン!!!

 

ものすごい爆音が鳴り、速い弾が真っ直ぐ深海棲艦に向かって飛んで行き…。

 

ドガァァァァン!!!

 

直撃して大爆発が起きる。流石大和型戦艦だ。ちなみに、ここは大本営の堤防だ。あたりにコンクリートやら鉄やらが四散する。

 

「仕留めたぞ!」

 

「流石大和さんだ!」

 

憲兵は安堵の息を漏らし、大和を称える。が。

 

ォォォォ…

 

「……。」

 

燃え盛る火を背景に、立ち上がる深海棲艦がいた。

 

「!?」

 

大和は驚きである。直撃を食らったはずが、なんともなさそうに起き上がったからだ。

 

「…チョクゲキカ…。ニブッタナ…ワタシモ…。」

 

しかもそれだけでなく、意味のある長文を流暢に話した。普通の深海棲艦なら意味のある言葉など話さず、ただ叫ぶだけだ。話せる上位種がいたとしても、途切れ途切れであり、意味が伝わらなかったりするのだ。

 

「あ、あなたは…一体…。」

 

大和は少し恐怖していた。憲兵は逃げて、艦娘たちに連絡しようと試みている。特殊部隊は自分たちの力では逆に足手まといになると判断して、とっくに撤退している。

 

「…ワタシハ『コン』ダ。」

 

「『コン』…?…あなたは、単身で乗り込んできたんですか…?」

 

「ソウダ。…ココニキタリユウハアルジョウホウヲニュウシュスルタメダ…。」

 

「情報…?」

 

「ダイヨンサセボチンジュフ。ソノジョウホウダ。」

 

「…断ると言った場合は…?」

 

「…ココヲセンキョスル。モシクハ、ゴウモンシテハカセル。ナルベク、シタクナイケド…。…イエバ、ナニモシナイ。ヤクソクシヨウ。」

 

深海棲艦は最後の方は少し目つきを緩めながら言っていた。本当らしい。

 

……まずいですね…。

 

一方、大和は考えていた。

 

……この深海棲艦、明らかに強いです…。私の直撃…クリティカルヒットでもあまり効いてなさそうです…。それに、右手に持っているクギみたいなアレ…。絶対に受けたらひとたまりもありませんね…。あんな小柄なのに…。それに、何故第4佐世保鎮守府の情報を欲しがるんでしょうか…?ドミナントさん、こんな子にまで何かしたんでしょうか…?…いえ、そういう話ではありませんね…。言うか言わないかですね…。

 

大和が考えていると…。

 

「…ワタシハナンジカンデモマツ。コウゲキシテコナイカギリコウゲキシナイ。コトワルツモリナラ、イマノウチニ、ヒセントウインヲヒナンサセタホウガイイ。カンムスヲアツメルノモイイ。…ヒトツイッテオク。タトエナンビャクニンコヨウトモ、ワタシガマケルコトハナイ。」

 

深海棲艦の方から提案して来た。

 

「…何故そんなことを言うんですか…?」

 

大和は不思議に思う。どう考えても深海棲艦側が有利なのに、メリットがこちらにしかないことを提案してきたのかを。

 

「…ワタシハシリタイダケ。アラソイニキタワケジャナイ。」

 

「…!」

 

大和はますます困惑した。こんな深海棲艦は見たことも聞いたことも無かったからだ。本来の深海棲艦は争いを好み、欲しいものは奪うのが基本。だが、この深海棲艦はあくまでも話し合いを前提しており、それが飲めなかった場合のみ戦うと言う。しかも、非戦闘員を逃す。どちらかといえば、艦娘に近い存在だからだ。

 

……そのことは本当みたいですね…。大本営が陥落するわけにもいきません…。だからといって、情報を渡すのも…。

 

大和の心が完全に動揺しているところに…。

 

「大和。」

 

元帥が声をかける。

 

「元帥殿…。」

 

「…君には荷が重すぎる。」

 

そして、元帥は前に出て、その深海棲艦と向かい合う。

 

「…コタエハ?」

 

「仲間の情報も、我々の情報も微塵も渡さん。」

 

元帥は即答した。

 

「ダロウナ。ナラバ、ナカニハイッテウバウノミ。」

 

そして、深海棲艦は元帥のことは気にせず歩き出した。

 

「…殺さないのか?」

 

「ゴウモン…コロシ…、ホントウハゼンゼンスキジャナイカラ。」

 

元帥はすれ違いざまに話した。

 

「デモ、カンムス。トメルナラシズメル。」

 

「……。」

 

大和は自身の目が覚め、行手を阻む。

 

「あなたとは分かり合える気がしました…。深海棲艦も、こんな人がいるのだと、感動しました。ですが、ここは譲れません。」

 

「ソウ…。ナラ、オタガイクイノナイヨウニタタカイマショウ。」

 

「…そうですね。」

 

両者とも武器を構え、緊迫した時間が流れる。

 

…………

海の上

 

「提督!なんか取れません!」

 

「何で!?火が出ないかわりにパージできない!」

 

「ここまでか…。」

 

「武蔵!?諦めないで!?」

 

ドミナントたちがめちゃくちゃ速いスピードで向かって来ていた。そして、ドミナントたちはどうにかして取ろうともがいていた。すると…。

 

ガチン!!!

 

「「「へ?」」」

 

いきなり外れた。そして…。

 

「えーっと…。」

 

バシャァ!ゴロゴロゴロゴロゴロ…!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

「目が回るぅぅぅぅぅ!」

 

「これくらい…!…うぷっ…。」

 

海の上を物凄いスピードで転がっている。いくらフロート型の脚部と言えど、このスピードでは耐えられないようだ。

 

「…て!堤防穴開いてない!?」

 

「嘘っ!?工事中!?」

 

「よく見え…うぷっ…。」

 

三人は転がりながら話す。

 

「きゃっ!」

 

「グフっ!」

 

2人は、何とか堤防で止まることができたが、ドミナントだけが運悪く深海棲艦の開けた穴に入ってしまう。

 

…………

 

ぁぁぁああ…。

 

何か叫び声が聞こえる。

 

「…?何か聞こえません?」

 

「…ナニモ…?」

 

2人が武器を構えている。ちなみに、元帥は誰が叫んでいるのか何となく想像がつき、笑いを堪えていた。

 

ぁぁぁああ…。

 

「…ほら、聞こえますよ…。」

 

「…ドコカノトリデショウ?」

 

しかし、だんだんと大きくなっていく音を不思議に思い、なんとなく振り向く。

 

「ぁぁあああ…!!!」

 

……エッ?

 

深海棲艦は困惑した。後ろを振り向いた途端、大きな鉄の塊がすごいスピードで迫って来ていたからだ。ちなみに、既に1m以内だ。

 

ドガシャァァァァァン!!!

 

「……。」

 

コンはドミナントにダイレクトアタックされ、大本営の敷地内はおろか、意識と共にどこかへ飛んで行った。

 

「……。」

 

大和は口があいたまま塞がらず、ポカンとしていた。

 

「イタタタタ…。何かぶつかったような気がするけど…。どこも俺が壊したようなあとないし…大丈夫だよね?」

 

ドミナントが起き上がり、フロートが稼働する。

 

「て、大和さん!堤防を工事中なら前もって言ってくださいよ。こちとら破損するかと思いましたよ。…大和さん?」

 

ドミナントは、困惑の極みになり思考停止した大和を不思議がる。

 

「…大和さん?…大和さーん。」

 

ドミナントは何度も呼びかけるが、全く反応しない大和。

 

……何?何が…?何でドミナントさんが?吹っ飛んだ?凄いスピードですよ?深海棲艦は?なんで転がってたの?来ると聞いてないんですが?ナイスタイミングですね。飛んで行った?トリ?なんで?工事?攻撃?悔いのないように?ドガシャァン。なんで?しかも、何で足が違うんですか?飛んでいますよ?

 

大和頭の中はこれらがいっぺんに流れ込んでいる感じだ。逆流しなければ良いが…。

 

「よく来た。ナイスタイミングだ。ドミナント大佐。」

 

「あっ、元帥殿。お久しぶりです。」

 

そんな大和を放って、うしろで元帥がドミナントと話す。

 

「本日来ると聞いていないんだが…。」

 

「えっ?大和さんに連絡しましたよ?」

 

「?聞いてないんだが…。」

 

「えっ?でも、確かに…。」

 

「?…!あ…。うむ…。おそらくアレだな。」

 

「アレですか?」

 

「すまない。その時はおそらく寝ぼけている。」

 

「あ、なるほど…。」

 

「ところで、一つ気になることがあるんだが…。」

 

「なんでしょうか?」

 

「その足…?脚部はなんだ?」

 

「あぁ、前のが少し故障してしまって…。予備です。」

 

「…なるほど…。」

 

ドミナントと元帥が話していると…。

 

「て、提督〜…!」

 

「提督…ドコダ…?」

 

蒼龍と、武蔵がやってくる。

 

「おう、蒼龍。武蔵…て、武蔵、なんか一部変だぞ?」

 

「あっ。」

 

ドミナントが指摘すると、急いで黒い何かを取り払う。そして、三人は元帥の方を向き直り…。

 

「第4佐世保、ドミナント大佐及び艦娘2名、ただいま到着いたしました!」

 

大和はまだ思考停止しているが、お構いなしだ。




はい。タイトル変更申し訳ございません…。前回あんなに後書きで書いていたのに…。次回こそはそうなる予定です。…多分…。
登場人物紹介コーナー
コン…いずれその時が来たら…。
願いが一つ叶う券…ドミナント直筆で書かれており、さらに印鑑までついている。ドミナントの効力が固定されているため、大抵は望みが叶う。開発、デート、出撃、夜戦、装備の強化、休日、1日外出、欲しいもの…などは必ず叶う。

「やって来たぞ!この長門のコーナー!」
「嫌に元気だな。」
「む!この声は元対戦相手であり、私を殴り飛ばした『ミッドウェー』の生まれ変わりである『武蔵』だな!」
「説明ありがとう。だが、トゲのある言い方だな。根に持っているのか?」
「特にない!ただ、このシングルナンバーである長門と、同じくらい出番のある貴様にヤキモチなど妬いていないぞ!」
「妬いているんだな…。…ん?待て待て、シングルナンバー?」
「そうだ!驚くな、この長門…、艦娘図鑑No.1だ!」
「いや、違うだろう…。」
「?」
「既に改二になっているから、No.341だぞ。ちなみに、この武蔵はNo.148だがな。」
「な…なんだと…。」
「改二があるらしいが…。まだそこまでレベルがアップされていない。」
「ま…負けた…。」
「何の勝負をしているのか気になるが…。ところで、聞いてくれるか?自称シングルナンバー。」
「貴様が根に持っているではないか…!…なんだ?」
「実は、佐世保で建造され、佐世保にいるってことはネタに出来るだろうか?」
「私に対する当て付けか!?呉で生まれて何が悪い!」
「なるほど…。提督の言うようにからかってみると面白いな。」
「貴様!今提督と言ったな!?このコーナーが終わったら待っていろよ!提督!」
「あっ、今勢いよく逃げていったぞ。」
「なっ…!この…!逃さん!待て!」
「おいおい…。…行ってしまったか。では次回、「二重スパイ」。前やった次回だと?まぁ、気にするな。」


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146話 二重スパイ

やってきた。146話。(前回、ドミナントの脚部がフロート型であることを完全に忘れていました。一応修正はしております。)
「前もやった次回ね。」
まぁ、そうだけど…。…突然だが、この小説のヒロインは誰なんだろうか…?
「えっ?」
艦娘、ジナイーダ、セラフ…。色々いて、わからなくなって来た…。
「…でも、提督さんに好意を持っている人は多いわよね?大湊警備府の提督さんとか、赤城さんや、金剛さんやら…。」
それは…お約束じゃないか。
「でも、圧倒的に好意を持っているのは金剛さんと神様ね。あの2人はそれくらいしか能がないから。」
ひっどい言い方だなおい。
「それに、提督さんははーれむ?を望んでいないみたいだし。」
あぁ、彼はハーレムになるのも、誰かがハーレムになるのも許さないタイプだから…。だから、艦娘からの告白も全力で阻止するよ?
「何その面倒な性格…。」
まぁ、ぶっちゃけると筆者が望んでいないから。ハーレムを阻止する!それが筆者のジャスティス!!
「…の、割には意外とそういうの多めよね。」
いや?なる本人が認めてないからセーフだよ。全員と結婚なんてさせてたまるか。
「筆者さんの欲望やら嫉妬が全面的に映し出されたわね…。」
ンッフッフッフ。それの何が悪い。
「うわぁ…。とんだ独裁者ね…。」
私は筆者だから。…で、今回のあらすじ担当の人は?
「この方よ。」
「妙高型重巡洋艦、妙高です。」
事務的な妙高さんっすね。あらすじを言えますか?
「この妙高にお任せください。」
さっすが〜。

あらすじ
前回、こちらでは特にありませんでした。いつも通り、提督不在時はジナイーダさんが指示を出しています。大本営の方では、深海棲艦が現れましたが、提督のダイレクトアタックにより、どこかの遠い海の上で気を失っております。

そりゃ…フロートの脚部で転がっていたとはいえ、時速800kmで叩きつけられればそうなりますよね…。


…………

大本営

 

「第4佐世保鎮守府、ドミナント大佐及び艦娘2名、ただいま到着いたしました!」

 

ドミナントと蒼龍と武蔵は元帥に向かって敬礼しながら言う。ドミナントは肩コンテナから手土産を出し、人型に戻って、手土産のカステラを渡す。VOBのおかげで薄っぺらくなってしまったが…。

 

「よく来てくれた。」

 

元帥は突然来た(ちゃんと報告はした)ドミナントたちを快く歓迎する。

 

「…ん?何か音がしないか?」

 

「あぁ、それはおそらく私の足からです…。ところで、ナイスタイミングというのは?」

 

「うむ。ついさっきまで深海棲艦がいてピンチだったのだが…。君のダイレクトアタックによってどこか飛んで行った。」

 

「本当ですか…。」

 

ドミナントは自分が壊したわけではないと安心した。あたりはボロボロのガタガタなので、損害賠償を食らったりでもしたら面倒だからだ。

 

「それより、本日は大切なお話があってやってきました。ついでに、武蔵の顔を見せにです。」

 

ドミナントは隣にいる武蔵をチラリと見る。武蔵は“どうした?”みたいな顔をしていた。

 

「ふむ、そうか。…と、それよりも…。大和くん!目を覚ましたまえ!」

 

「…はっ!?げ、元帥殿。私、ユメヲミテイタヨウデス。」

 

「現実に戻りたまえ!夢ではない!」

 

「ですよね…。」

 

元帥の呼びかけにより、大和が現実に戻る。そして…。

 

「大和。久しぶりだな。」

 

「武蔵…。本当に武蔵…ですか…?」

 

大和が武蔵に向かって走る。

 

「提督…。」

 

「どうした?」

 

「感動的なシーンだよね…。」

 

蒼龍は目の縁に涙をたまらせながら、ドミナントを見ながら言う。元帥は何も言わないが、“うんうん”と頷いている。

 

「いや?そうでも?」

 

「えっ?ど、どうして…?」

 

「だって…。」

 

ドミナントは2人を見る。

 

「大和…。」

 

「武蔵…。」

 

2人は抱き合うと思ったが…。

 

「ふんっ!」

 

ドガァァァ!!

 

「ぐはっ!?」

 

大和が直前で思いっきり殴り、武蔵が吹っ飛ぶ。

 

「今まで本当にどこに行っていたんですか…?私がどれほど心配したか分かってますか…?」

 

「ま、待ってくれ!降参だ…!これには深い訳が…。」

 

大和に殴り飛ばされ、倒れたまま手を前に出しながら首を振り、必死にアピールする武蔵。蒼龍と元帥はその光景を見て、ポカンとしている。

 

「問答無用です!」

 

ドガァァァ!!

 

「ぐはぁぁぁ!!」

 

大和に何度も殴られている武蔵。

 

……まぁ、そうなるよね。普通…。

 

ドミナントは、助けを求める武蔵とヤバい目をしながら殴る大和眺めながら思っていた。

 

…………

 

「…ふぅ…。落ち着きました。」

 

「わ、私は瀕死状態だがな…。」

 

しばらく殴りまくって気が済んだのか、大和が落ち着きを取り戻す。武蔵はボロボロで、大破状態まで殴られていた。

 

「はぁ…。いいですか?これからはきちんと連絡してください。」

 

言わなかったのではなく、言えなかったのに…。

 

「返事は…?」

 

「は、はい!」

 

武蔵はぶつぶつ言っていたが、大和がまた怖い目になり、良い声で返事をする。

 

「ま、まぁ、会えて良かったんじゃない?武蔵。」

 

「今までのを見てよく言えるな…。」

 

「久しぶりのお姉さんでしょ?」

 

「そうだが…。」

 

「…まぁ、何年も行方をくらましているんだから、そりゃ殴られるよ…。当然だと思うよ。」

 

「提督は知っているだろう…。」

 

ドミナントと武蔵が話していると…。

 

「ん?今何時でしょうか…?」

 

大和がふと時間を気にして、時計を見る。

 

「3時半!?元帥殿!まずいです!色々あったとはいえ、早く応接室に行かなければ大遅刻ですよ!」

 

「なぬっ!?だ、だがドミナント大佐が…。」

 

「あっ…。…うーん…!いえ!もう構ってられません!ドミナント大佐も来てください!」

 

「わーい。嫌々了承されたぞ〜。」

 

大和と元帥が走り、ドミナントたちも後を追う。

 

…………

応接室

 

「遅れて申し訳ありませんでした!」

 

「すまぬ…。」

 

元帥と大和が頭を下げる。

 

「…ふぅ…。…まぁいい。アレの後だ。そこまで咎めはしない。」

 

「……。」

 

片腕の男が座ってタバコを吸いながら言い、貼り付けた笑顔をしている男が傍で立っている。

 

「で、そこの者は?」

 

「あぁ、ドミナント大佐と付き添いの艦娘だ。」

 

「こ、こんにちは…。」

 

「……。」

 

片腕の男が一瞥して、すぐに元帥の方を向き直る。

 

「彼が、あのドミナント大佐か…。化け物で有名な。」

 

「……。そのような言い方は謹んでもらいたい。私の部下だ。」

 

「……。それはすまなかった。…で、早速本題だが…。」

 

そして、片腕の男と元帥が話していく。

 

…………

 

「…以上だ。」

 

「そうか…。」

 

話が終わり、片腕の男がタバコを灰皿に捨てる。

 

「…で、彼女が数年前に一度だけ確認された艦娘。武蔵か。」

 

片腕の男は武蔵を見る。大和が少し嫌そうな顔をしていた。

 

「…ドミナント大佐…だな?俺はここの特殊部隊隊長、『大郷』だ。階級は少将だ。」

 

大郷少将はドミナントを少し敵意があるような目で見る。

 

「お…。…私は、第4佐世保鎮守府のドミナントであります。」

 

ドミナントは敬礼しながら言った。

 

「…行くぞ。」

 

だが、そのドミナントを一目見たあと、すぐに退室した。立ったまま気配を消していた部下を引き連れて…。

 

「…何?いまの。すっごく失礼じゃない?」

 

大郷少将らが退室してしばらく経ったあと、蒼龍がドアを睨みながら言う。

 

「まぁ、そういう人もいるさ。」

 

ドミナントが宥める。

 

「で、大和さん。話しても大丈夫ですか?」

 

「えっ?…いえ、これからです…。」

 

「えっ?」

 

大和が言い、ドミナントが不思議がっているところに…。

 

コンコン、ガチャ

 

「失礼します。」

 

さっきの立ったままの男が入ってくる。蒼龍はビクッと驚き、慌てて何も言わなかったかのように立っている。

 

「先程は失礼いたしました。我が隊の隊長が。」

 

「いえ、お待ちしておりました。『仁志』大尉。」

 

大和が歓迎する。

 

「「「?」」」

 

ドミナントたちは意味がわからない。

 

「あぁ、ドミナント大佐たちは初めてだったな。彼は仁志大尉。海軍だ。」

 

「えっ!?で、でも、陸軍特有の緑色の服を着ていますよ?」

 

「…彼はスパイだ。」

 

「「「えっ!?」」」

 

ドミナントたちが驚き、仁志大尉を見る。

 

「しかも、二重のな。」

 

「えぇっ!?つまり、スパイのスパイですか!?」

 

「…まぁ、そうなのだろう。」

 

驚いているドミナントたちに元帥が返す。

 

「つまり、私は二重スパイ…。陸軍が海軍にスパイをしていると見せかけて、実は陸軍をスパイしているというわけです。最初から海軍所属で、陸軍に入隊したような感じです。そして、海軍をスパイしているように見せかけています。」

 

仁志大尉が詳しく説明する。

 

「なるほど…。」

 

ドミナントが理解する。蒼龍たちは既に理解していたようだ。

 

「…では、早速本題に入りたいのですが…。」

 

仁志大尉が元帥と大和を見ながら言う。

 

「構いません。」

 

「話せ。」

 

「かしこまりました。…まず警備部隊の隊長、大郷少将についてですが、彼は陸軍のスパイです。それに、特殊部隊の幹部の1人でもあります。」

 

「ほう…。」

 

「スパイが2人いるということは、既に私が疑いを“かけられている”と判断しております。断定されているのであれば、副隊長の称号をすぐに取り上げられると思うからです。」

 

「そうですか…。」

 

「次に陸軍の動きですが、彼らは何かを準備しているような様子でした。詳しくは知ることが出来ませんでしたが、恐らくは大本営を襲撃するのではないかと推測しております。ただ、これはあくまでも私の推測なので、そこのところを考慮に入れてもらえれば幸いです。」

 

「陸軍の上層部は?」

 

「納得しているような様子です。」

 

「そうか…。ところで、我々の偽の情報は流しているのか?」

 

「はい。言われた通りに…。」

 

「そうか。」

 

「それが二重スパイの役目ですから。」

 

仁志大尉が言う。

 

「そうか。任務ご苦労。」

 

「いえ、我々海軍の役に立つのであれば嬉しい限りです。…それでは…。」

 

そして、仁志大尉は退室した。

 

「…つまり、彼は海軍の偽の情報を流し、陸軍の情報を持ち帰るんですか…。」

 

「そうだ。まぁ、陸軍では仁志少佐だがな。」

 

ドミナントと元帥が話す。

 

「…ドロドロですね…。」

 

「…全て大和君のアイデアだ…。」

 

「で、でも!必要なことです!それに、陸軍もしているではありませんか!」

 

ドミナントと元帥が大和を見て、大和が必死に弁解する。

 

「…まぁ、いいです。それより、こちらの話を良いですか?」

 

「あっ、はい。」

 

「すごく複雑な思いになりますが…。」

 

「はい…。」

 

大和たちは覚悟した顔になる。

 

…………

 

「以上です。」

 

ドミナントが言い終わる。

 

「それ、これからを左右する大ごとじゃないですか…?」

 

大和がことの重大さに驚き、元帥は苦笑いをしたような顔になる。

 

「…ソナーに反応しない潜水新棲姫…。まず攻撃が当たるかどうかすらあやふやじゃないですか…。運良く近くに爆雷をばらまくことが出来たとしても、相手は潜水新棲姫…。運だけで当たるわけがありません…。」

 

大和はどれほど恐ろしい相手なのか考え、ゾクっとした。

 

「…!。げ、元帥殿…。」

 

「何かね?」

 

しばらく黙り込んだが、大和が何かに気づいた様子で元帥に聞く。

 

「さっきここに来た深海棲艦…、何かが変ではありませんでした…?」

 

「…確かに変だったな…。」

 

「私の攻撃ですら、何事もなかったかのように起き上がりましたし…。」

 

「そうだな…。」

 

「名前も持っていましたよね…?」

 

大和と元帥が話す。

 

「?私が吹っ飛ばした深海棲艦ですか?」

 

「……。」

 

ドミナントが聞く。一方、武蔵は真面目な顔をして、一言も発していなかった。

 

「はい…。確か、名前は『コン』でした…。」

 

「『コン』?…『ミッドウェー』みたいな者ですか…?」

 

大和が神妙な顔をして言い、ドミナントが疑問に思う。

 

「『コン』…『ミッドウェー』…。…あっ!」

 

「「「?」」」

 

元帥が突然気付いたような声を出し、全員が注目する。

 

「…海戦の名にちなんでいないか?」

 

「…『コン』?……。…あっ!」

 

「『コン』…渾作戦の『渾』だ。…何か奴を倒せるヒントか何かないかと思ってな…。」

 

大和と元帥が話す。ドミナントたちはしっかりと聞いていた。だが、わかったのはそれだけで、何も状況は進展しないまま時間だけが過ぎていった。

 

…………

夜 応接室

 

…ぐぅ〜…。

 

応接室に腹の音が鳴り響く。大和が出したのか、武蔵が出したのかはわからないが…。

 

「「「……。」」」

 

全員が大和と武蔵を見る。恐ろしい深海棲艦の撃破のための作戦を考えていたが、今の音で完全に集中力が切れてしまった。

 

「…やめだ。気分転換も兼ねて何か食べよう。…ドミナント大佐、今日はもう遅い。ここに泊まって行きたまえ。」

 

元帥が皆を見て、言い出す。

 

「…えっ?いいんですか?」

 

ドミナントは正直、くたくたに疲れている。なんせ、地下下水道の後、時速2000km以上のスピードで来て、パージ不能で死ぬかと思うストレスなど、色々あったからだ。

 

「勿論だ。それに、そちらの情報を知りたい。」

 

「えっ…?なんのですか…?」

 

「色々だ。」

 

元帥がそれしか言わなかったので、ドミナントは不安になった。

 

「…ところで、さっきから聞こえる音はなんでしょうか…?」

 

大和が不思議に思う。

 

「…大和、おそらく提督の足の音だ…。」

 

「なんですか…?なんでそんな音がするんですか…?」

 

「足が違うからです。」

 

「えっ?違…?…いえ。なんでもないです。色々ありすぎて疲れました…。」

 

武蔵とドミナントに言われ、大和がついに投げ出した。

 

「それでは、我々は先に食堂へ向かいます。我々の寝室は自由に決めてください。」

 

「「……。」」

 

ドミナントはそう言い、2人の艦娘と共に礼をして退室した。

 

「…疲れました…。」

 

大和が椅子に座り、背もたれに寄りかかる。

 

「…ドミナントさん、必ず爆弾を置き土産にしていきますよね…。」

 

「…そうだな。」

 

「…はぁ…。これからその対策をしなければなりませんし、大湊警備府にも連絡しなくてはなりません…。」

 

「だが、ドミナント大佐は連絡したと言っていたぞ?」

 

「おそらく、ガスマスクをした八神提督にしかしてないと思います。」

 

「何故だ?」

 

「前会議をした時、彼しかいなかったからです。」

 

「あぁ、代表か…。…わかった。それでは、連絡を頼む。」

 

「わかりました。」

 

そして、大和は全大湊警備府に連絡するという面倒な作業をすることとなった。

 

…………

廊下

 

「…提督、一つ良いか?」

 

「ん〜?」

 

廊下を歩いている最中、武蔵に言われてドミナントが返事をする。蒼龍は武蔵の隣でついて来ている。

 

「…なんで、私が『ミッドウェー』だったことを言わなかったんだ…?」

 

そう、ドミナントは潜水新棲姫を仲間が確認したとしか言わず、武蔵のことは言わなかった。

 

「だって、そりゃ…。考えてもみろ。大本営から見たら『ミッドウェー』は凶悪で危険な存在だったんだ。俺が階級を一つ飛ばして大佐になれるくらいの。そんな奴が、お前だと知ったらどうなる?大和さんは?お前は?」

 

「……。」

 

「おそらく、大和さんは自身の妹がこんな事態を起こしたことが分かり、姉である責任に苦しむだろう。それに、お前自身も非難される。」

 

「だが、私は…。」

 

「深海棲艦だった…。わかってるよ。でも武蔵、これだけは覚えておいてくれ。人間はそこまで綺麗ではないんだ。割り切れるわけではないんだ。…わかってくれる人もいるだろう。だが、人間はそれぞれ主義主張が違う。となれば、お前たちを非難する奴も必ず現れる。深海棲艦によって家族や恋人や大切なものを亡くした奴もいる。そいつらは必ず恨むぞ。それに、艦娘に対して敵対してくる。そうなれば現状より面倒になる。大和さんだけに話そうとしたところで、あの性格だ。謝らずにはいられないだろう。」

 

ドミナントが武蔵に向かって淡々と話していく。

 

「…知らない方が幸せなこともある…。」

 

「……。」

 

ドミナントが遠くを見つめるような目になり、武蔵はドミナントに何かあると思ったが、問い詰めてはいけない気がしたため、頷くことしか出来なかった。

 

…………

夜 どこかの倉庫

 

「…ここに呼び出して、何のようですか?隊長。」

 

「何のよう…か。」

 

倉庫に、仁志大尉と大郷少将がいる。

 

「わかっているだろう?」

 

「…私を葬りに来たんですか?」

 

「葬りに…か…。言い方はよろしくないな。」

 

そう言ったあと、大郷少将がポケットからハンドガンを取り出し、構える。

 

「……。」

 

仁志大尉は覚悟した顔になる。

 

「俺は葬りに来たわけではない。撃つために来たのだ。」

 

パァァァァァン!!

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュゥゥゥゥ…。

 

「「……。」」

 

仁志大尉の顔の横を弾が通過して、監視カメラを破壊する。

 

「…これで良い。もう“演技”をやめたらどうだ?『仁志少将』。」

 

「…そうだな。で?なんのようだ?」

 

大郷少将が言い、仁志少将が返す。

 

「…あのあと、何を言った?」

 

「大郷少将のことだ。」

 

「ほう…。俺か。言われた通り、特殊部隊の1人と、スパイ設定だけだな?」

 

「ああ。嘘をつくなら、本当のことも少し言わなければならない。」

 

「そうか。それにしても、奴ら驚くだろうな。」

 

「だろうな。そのためにわざわざ副隊長になっているんだ。海軍も、まさか隊長と副隊長、両方がスパイだなんて思いもしないだろう。初めから陸軍出身だが海軍に入り、そしてまた陸軍に戻って海軍をスパイしているように見せかけ、陸軍をスパイしているように見せかける…。とても周りくどく、効率の悪い作戦だ。…だが、信頼をかなり持てる。…三重スパイだな。」

 

「だが、その成り行きだと、その前から海軍出身のパターンがあるが?」

 

「それはない。俺を真っ先にスカウトしたのは陸田中将だからだ。助けてくれたのがな…。」

 

「…俺もだ。あの人に恩がある。」

 

「同じく。…だからこそ自身が手足になって、恩を返さなければならない。俺は恩を忘れない。」

 

2人は倉庫で話したあと、各自解散したのだった。




今思ったんですけど…AC要素少なっ!?VOBだけか!?…いや、これから色々登場させるつもりなんですが…。陸軍編が終わらない限り登場できない…。あぁ…大ぶ…ごほん。
登場人物紹介コーナー
カステラ…長崎名物。ふわふわでほんのり甘い。武蔵も認める美味しさ。
片腕の男…大郷少将。昔、いろいろあって陸軍の特殊部隊に所属した。陸田中将の信頼のおける部下。
立っていた男…仁志少将。三重スパイであり、陸軍をスパイしているように見せかけ、海軍をスパイしている。暗い過去を持っているが、陸田中将に救われ、特殊部隊に所属した。陸田中将の信頼のおける部下。


「来たぞー!長門コーナー!だが、ゲストなし!…ん?何々?これから連絡が来る?どういう意味だ…?」
プルルルル…プルルルル…
「電話か。」
ガチャ
「こちら、『毎度後書き長門コーナー』の長門だが?」
『もしもし、今回活躍した仁志少将です。』
「悪役でも出れる、規制のゆるいコーナーへようこそ。」
『あっ、うん。で、今回はまだ活躍時じゃないので、電話でこのコーナーのゲストを務める感じだ。』
「なるほど。陸軍編での登場か…。」
『いや〜、なんか不穏な感じで終わりましたけど、こちらも事情があるんだよ。そうしないと、進まないからっt…あっ!?ひ、筆者が!ちょ、待…。まだネタバレしてないので勘弁してください!あ!?あーー!!』
「そ、そっちで一体何が…?」
『アーッ!』
「何があった!?応答しろ!仁志少将!仁志少しょぉぉぉ!」
[TIME PARADOX]
プッ…ツー、ツー…
「…何か恐ろしいことがあったに違いない…。私も、気をつけるか…。」
「何がだい?」
「ひっ!?ひ、筆者…さん…。」
「どうかしたのかい?そんな怖いものを見るような顔で。」
「ひ、筆者…さん。何か電話の向こうで…。」
「なんだい?」
「な、何で笑顔のままなんだ…?さっき仁志少将が…。」
「そうか…バレてしまったか…。なら仕方がない。君にも…。」
「おりゃぁぁぁぁ!!」
「「!?」」
ガツンッ!
「…あんた!仕事しなさい!いつまで待たせんの!?」
「ず、瑞鶴…助かった…。でも、フライパンで殴ったら流石に死ぬんじゃ…。」
「あぁ、大丈夫。あいつ不死身だから。」
「だ、だがピクリとも動かないぞ…。」
「大丈夫大丈夫。あいつの頑丈さは灰になっても生き返るくらいだから。」
「そ、そうか…。」
「ほら!起きなさい!さっさと歩く!」
「ひっど…。」
「さぁさぁ!」
ガチャ…バタン
「…なんだったんだ…?…あっ、そろそろこのコーナーも1000字だな。次回、第147話「武蔵の話」。ほう…。また武蔵か…。…や、妬いてなどないぞ!…て、私は一人で何を言っているんだ…?」


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147話 武蔵の話

AC新作はまだかぁ〜。
「は?いきなり冒頭で何言ってんの?」
フロム…。AC6…。
「…あぁ、教官さんたちがいた世界の新作ね…。そんなに待ち遠しいの?」
そりゃね…。新作だ!我々にはそれが必要だ!
「新作って言ったって…。まだ情報がないんだから仕方ないじゃない。」
し、しかし…。
「はぁ…。あのねぇ、あんた以外に待っている人はいるのよ?その人たちも待ち遠しいけど我慢しているの。」
もう8年前だ…。Ⅴが発売されたのは…。VDは7年…。
「えっ…。そんなに前なの…?」
ああ。10年以上前だったな…。私がACの魅力に気付いたのは…。
「ふぅ〜ん。でも…。」
…?
「あなたの待つ戦場は、そんなに浅かったの?」
…どういう意味だ…?馬鹿にする者は例え瑞鶴でも許さんぞ…?
「違うわよ。今も尚、戦いは続いているの。新作が出る戦いはね。あんたが待ちきれないって喚いたところで何も進展はしないわ。」
それは…そうだが…。鍋氏もスタッフも居なくなって絶望的なんだよ…。
「はぁ…。筆者…いや、傭兵さん。あんたの戦場は、その先にあるんでしょ?たった7年や8年。スタッフがいない?それが何よ。いつか出ると信じなさい。あんたは…、あんたの魂の場所はそんなところで終わるような場所じゃないでしょ?」
…そうだな。…待とう…。ACが筆者の魂の場所だから…。…待つさ…。戦場が俺たちを必要とする限り…。
「そうよ。待ちましょう。そして、行きましょう。新たなる戦場へ…。」
ああ…。戦い続ける歓びを…!
「うん。…あっ、そろそろゲストね。」
おぉ、そうだった。じゃ、どうぞ〜。
「あ、あの…。」
うおぅっ!?壁に隠れてる!?出て来ても良いんですよ。
「その…。」
「恥ずかしいのよ。あんたみたいな奴がいるから。」
ひっど。…でもこれじゃぁ前書きコーナーが終わらない…。そうだ!これを置いて…。
「…あんたねぇ…お菓子なんかで釣られるわけ…。」
「モグモグ…。」
「釣られた!?」
瑞鶴、うるさいよ。逃げちゃうじゃん。
「なっ…!?」
食べ終わったらで良いから、名前とあらすじ言ってくれるとありがたいなぁ〜。
「…はい…。」
「…あとで覚えておきなさい…。」
…瑞鶴が怒ってるなぁ。…まぁ、さっきの言葉は結構嬉しかったけど。
「ほ、褒めても後で爆撃だからねっ!」
ツンデレなんてやってないで…。て、食べ終わったのかな?じゃぁ頼むよ。
「はいっ!妙高型重巡洋艦、羽黒です。」
おぉ、お菓子を食べて安心したのか、元気になってる。これが噂のキラ付けってやつか…。
「違うわよ。」
「それじゃぁ、あらすじに入ります。」
頼むよ〜。

あらすじです。
鎮守府では異常ありませんでした。ただ、翔鶴さんが少し提督を探しておりました。べ、別に深い意味は無いと思います。多分…。ご、ごめんなさい!

なぜ謝るのか不思議だ…。
「あんたには一生わからないでしょうね。」
…なんか厳しい…。
「私は忘れないわ。」
うっ…。


…………

大本営 食堂

 

「「「お〜。」」」

 

ドミナントたちは食堂の扉を開けて驚く。なぜなら、第4佐世保とは違い、長すぎる長方形のテーブルには純白のテーブルクロスが敷いており、汚れは一切ない。床のタイルはピカピカに輝いていて、念入りに掃除しているのが窺える。シャンデリアは天井の色と合わせていて、広い食堂を暖かく包み込んでいるような感じだ。言うならば高級レストラン。

 

「無駄に広い…。」

 

「無駄に装飾が良いな。」

 

「蒼龍、武蔵。無駄とか言うんじゃありません。」

 

何人かいたが、ドミナントたちは気にせず見回したりして歩いている。

 

「…む?あれは一般人か?」

 

武蔵が食事をしている一般人を見つける。

 

「なんで大本営に一般人がいるんだよ…。」

 

ドミナントは微妙な顔をして言う。…忘れていないだろうが、一応ここは大本営だ。一般人は立ち入れない場所。

 

「…提督、少しここ落ち着かない…。」

 

「…そうだな。どちらかといえば、俺たちは騒ぐ系だからな…。」

 

テーブルマナーを全く知らない三人はただ突っ立って眺めているだけだ。すると…。

 

「?どうかしましたか?」

 

後から来た大和がドミナントたちに気づき、声をかけてくれる。

 

「あの…。ここでこんなことを言うのもなんですが…。近くにレストランやコンビニありますか?」

 

「えっ?コ、コンビニですか…?」

 

大和は少し戸惑った声を上げる。それもそうだろう。自分たちが食べているものより、コンビニの方が良いと思ってしまうのなら。

 

「あっ。別に無いのなら良いです…。はい…。」

 

「い、いえ、近くにありますよ。…ですが、見た目よりもまず一口食べてもらえれば…。」

 

「えっ?……。……!いえ、違います。料理の味がどうとかではなく、こういう場所は落ち着かないので、別の場所で食べようかと…。」

 

ドミナントが誤解に気づき、訂正する。

 

「落ち着かない?」

 

「こういう高級レストランみたいな場所に、自分たちみたいな下位な者では似合わないという意味です。」

 

「あぁ、そういう意味でしたか…。」

 

大和はそれを聞いて安心する。相手の機嫌を損ねないようにするのも楽ではない。

 

「…ですが、せめて少しだけでも食べてもらいたいです…。」

 

しかし、大和が何故かこだわる。表情は少し残念そうで、シュンとしている。一方、ドミナントはそんな大和も可愛いと思っていた。

 

「「「……。」」」

 

大和をドミナントたち三人が見て、何やら円になって話す。

 

「…大和さんがこだわってるな。あんなの初めて見るぞ。」

 

「初めて?」

 

「ああ。いつもなら簡単に引くのに。まるで機嫌を損ねないように。」

 

「…それ、多分まだ提督に恐怖しているんじゃない?だって側から見たら普通に怖いし、機嫌損ねて何されるかわかんないし。」

 

「まるで俺は災害か何かだな…。」

 

「実際、そんなに強ければね…。」

 

ドミナントと蒼龍がコソコソ話す。

 

「…と、話が脱線してしまったな。何故大和さんが今回は簡単に引き下がらないのかだったな。」

 

「理由は分かっている。」

 

「「本当?」」

 

武蔵が言い、ドミナントと蒼龍は聞く。

 

「おそらく、自分の料理を食べてもらいたいんだ。」

 

「自分の…て、ことは大和さん自らが作ってるの!?」

 

「ああ。一つ一つ、細かなところまで丁寧にな。私も手伝わされた。盛り付けやら位置やら味やら色々な。…昔から変なところが少し不器用だからな。大和は。」

 

武蔵がシュンとしたままの大和をチラリと見る。こちらに気づいた様子はない。

 

「…見えないところで結構苦労してるんだ…。…提督、余計なお世話かもしれないが、食べてやってはくれないだろうか…。」

 

武蔵がドミナントに頼む。

 

「…武蔵たちがここで食べても良いなら、ここで食べるけど…。」

 

「私は別に良いけど。」

 

「なんで即答…。さっき“落ち着かない”って言ってたよね?…まぁいいや。じゃぁ食べることにするよ。」

 

そして、ドミナントたちは了承して、大和に作ってもらうことになった。ちなみに話したあと、大和はすごく嬉しそうな顔をして、良い笑顔でキッチンに歩いて行った。ドミナントは一連のことを“可愛い”としか思っていなかった。

 

…………

しばらく経ってから…。

 

「お待たせいたしました。」

 

大和がフルコース料理を持って来てくれる。

 

「これが噂の大和ホテ…ごほん。大和さんの料理ですか…。」

 

「今“ホテル”って言おうとしましたよね?」

 

ドミナントは目の前に置かれた料理を見る。この場所に合った、高級そうな料理たちだ。

 

「気のせいですよ。…て、そうだ。お金…。」

 

「いえ、結構です。お客様にもてなすのは当然ですし…。」

 

「しかし、流石にこれは…。」

 

「大丈夫ですよ。たまに艦娘たちにも振る舞っていますし。…うん。いつもより美味しい。」

 

大和は気にした風もなく食べている。そこに…。

 

「ふぅ〜…。」

 

元帥が何やら疲れた様子で隣の席に座り、用意してあった料理を食べ始める。

 

「あっ、元帥殿。」

 

ドミナントはすかさずに改まって敬礼をする。

 

「いや、良い…。敬礼なんぞするな…。ここは大本営と繋がっているが、一般人も食事できる場所だから…。」

 

「そうなんですか…。」

 

……足りない分はそうやって稼いだりするのか…。

 

元帥は疲れた感じで言う。

 

「…大和くん…。」

 

「は、はい。」

 

「…作戦が思い浮かばぬ…。」

 

「まぁ、そうですよね…。あんな反則的な深海棲艦…。」

 

大和は苦笑いをして言う。

 

「…もしかしてだが、あの生き残りなのかもしれん…。」

 

元帥が何か興味深いことを言う。

 

「…やめてください。いくらなんでも冗談がキツいです。」

 

その言葉を聞き、大和が顔をしかめる。武蔵も顔をしかめていた。

 

「だが、あれからまだ2年しか経っていない…。可能性もゼロではないだろう…。」

 

「しかし、もうすでに私たちが全て沈めたのですから、あり得ません。」

 

「だが、それ以外に考えられん…。」

 

「…もし、そうだったとしても対抗策が…。」

 

大和と元帥が話し合っている。

 

「?」

 

だが、ドミナントにとっては訳がわからない。

 

「…蒼龍、2年前になんかあったの?」

 

「さぁ?私はまだ建造されてないから…。」

 

「まぁ、俺より後だもんな…。」

 

ドミナントと蒼龍が話していると…。

 

「提督、知らないのか?」

 

武蔵がドミナントに聞く。

 

「知るわけないだろう。お前も知っているだろう?俺のこと…。」

 

「まぁ、そうだが…。」

 

ドミナントが当たり前のように返して、武蔵が苦笑いをする。

 

「…ここで言うのもなんだ。あとでな…。」

 

武蔵が一言言ったあと、再び食事を取る。あんなにあった量がもう僅かしかなかった。しかし…。

 

ぐぅ〜…。

 

食事しているのにも関わらず、また誰かがお腹を鳴らす。そして、今度は全員が武蔵を見た。武蔵は少し恥ずかしかったのか、俯いている。

 

「…俺の分もあげるよ。腹一杯食え。」

 

ドミナントが自身の料理を武蔵にあげる。

 

「…すまない。」

 

「あっ、武蔵が照れてますね。」

 

「て、照れてなど…。」

 

大和が茶化し、武蔵は否定する。

 

「提督、私もお腹空いちゃった。」

 

「お前は大丈夫だろう。そんなにあるんだし。」

 

「そのみかんちょうだい?」

 

「これは私の最後の料理。気安くあげることは出来ないな。」

 

「え〜。」

 

やはり、ドミナントたちは騒ぐ系のようだった。元帥だけはマナー良く食べていた。

 

…………

外 ベンチ

 

「…で、その話とやらは?」

 

桜が花開きそうな木の下で、ドミナントと蒼龍、武蔵がベンチに座っている。街灯も近くにあり、夜だが少し明るい。

 

「昔、私が深海棲艦になる前…。いや、最初の艦娘たちが確認されてからの直後だったな…。」

 

「最初の艦娘…?」

 

「ああ…。ほとんどが存在しなくなったが…。」

 

「なんで?」

 

「…2年前の大決戦で多くが沈んだ。」

 

「大決戦だと…?」

 

「ああ。深海棲艦と艦娘のな…。その時の艦娘も深海棲艦も今の何倍も強かった。今の世界平均レベルが低いのは、その艦娘たちが沈んだせいだ…。ちなみに、その時は平均80前後。大和も私もまだまだ新兵レベルだ。そして、そのレベルに伴う戦いがいかに壮絶かわかるな?人間たちの援護もむしろ邪魔の領域だ。何度も立ち上がるソレに私達艦娘は恐怖を覚え、核攻撃と見間違うほどの私たちの猛攻は人間たちに恐怖を与えた。」

 

「…今はその生き残りは何人いるんだ…?」

 

「…分からん。だが、大和とこの武蔵はその戦いに生き残った者だ。あの戦場は今でも忘れられない。人間たちは知らずにいるがな…。あの時、多くの深海棲艦は消え、艦娘も消えた。」

 

「そうか…。」

 

「だがその戦いは、不明な点が多い。」

 

「へ?なんで?経験者でしょ?」

 

「そうだが…。深海棲艦たちがどうにも読めないんだ。その時の深海棲艦は異常なまでに強かった。ただ強かったわけではない。何というか…いつもはただ暴れ回るだけだが、その時だけは的確に我々の弱点を突いて来たんだ。」

 

「弱点?」

 

「ああ。資材補給の拠点、孤立しやすい鎮守府を重点的に狙って来た。そして、さらにはわざわざ艦娘たちを遠出任務にする様に囮になって、帰還中の満身創痍の艦娘を狙って沈めたり…。さらには寝込みを襲って来た。例えるなら、ジワジワと追い詰めるように我々の城を崩していったんだ。」

 

「……。」

 

「おそらく、裏で何者かが糸を引いていたと考えるのが妥当だが…。存在するはずがないんだ。」

 

「なんで?」

 

「深海棲艦を助ける奴がどこにいる?人間に、これっぽっちのメリットもない。同じ深海棲艦が糸を引いていたとしても、所詮は深海棲艦だ。…それに、幹部と思われる奴が沈むところはしっかりと見た。そして最後と思われる深海棲艦は完全に沈むその瞬間まで笑みを崩していなかった。…まるで、まだ戦いが続くかのように…。」

 

「…結構不吉だな。」

 

「そして、『ミッドウェー』になって確信した。」

 

「えっ?」

 

「…蘇っているんだ…。あいつらが…。幹部が…。」

 

武蔵は声と共に体が震えていた。

 

「何故かわからないが、生きていた…。同じ種類の深海棲艦だと思ったんだ。だが、見てわかった。こいつらは蘇ったんだと…。完全に沈んだはずの者が…。『ミッドウェー』になっていたから、全く恐怖を感じていなかったが…。だが、今はものすごく恐怖している…。この私でさえも…。」

 

「だ、だが今度は対処法が分かっているから、なんとかなるだろう…?」

 

「いや!ならない!」

 

「きゃっ!…びっくりしたなぁ…。」

 

武蔵が突然大声を上げ、蒼龍が驚く。

 

「すまん…。だが、その幹部と思われる深海棲艦たちの多くが、最初の艦娘の最高ランクと共倒れだ…。今の私たちでは勝ち目がない…。」

 

「その最高ランクというのは…?」

 

「夕立、加賀、長門、神通、大井と北上、そして最初の艦娘ではないが、私と大和だ。あと1人は全員の一斉特攻じゃないと無理だった。」

 

「全部で7人いるのか…。」

 

「いや、違う。」

 

「?」

 

「あと2人いた…。その2人は深海棲艦だった私でも強いと感じた。」

 

「そいつらが裏で糸を引いていた感じは?」

 

「全くない…。全員平等のような感じだった。」

 

「そうか…。」

 

震えている武蔵にドミナントは背中をさする。すると、少し安心したのか、震えが収まっていく。

 

「…安心しろ。俺たちが付いている。そんな結末になどさせないさ。」

 

ドミナントは武蔵が安心するまで頭を撫でてあげたのだった。

 

…………

ドコカノウミノウエ

 

「…アラ?ナニカヨウ?『レイテ』。」

 

「『ソロモン』…。スコシヒッカカルコトガアッテネ。」

 

「ナニカシラ?」

 

「『ミッドウェー』ノコトナンダケド…。」

 

「?」

 

「モシ、カンムスニウマレカワッテイタラ、コッチノジョウホウツツヌケナンジャナイ?」

 

「…ソウネェ。」

 

「ワタシタチノソンザイガバレタラメンドウヨ?」

 

「ダイジョウブヨ。イマノカンムスタチニバレタトコロデ、ナニモオキナイワ。」

 

「…ナゼ?」

 

「オボエテル?アノタタカイノコト。」

 

「イマモセンメイニ。ナンジュウニンシズメタカワカラナイホド。」

 

「アイテニトッテハダイダゲキヨネ。ソンナコトガマタクリカエサレルキョウフハ、トテツモナイクライナノ。アナタダッテ、コロサレルトワカッテイルアイテトハ、マタタタカイタクナイデショウ?」

 

「サァ?ソンナアイテニアッタコトナイカラ。」

 

「マァ、ソウイウコトナノ。カンムスニナッテイテモ、ワスレタイコトヲネガウハズヨ?」

 

「…ソウイウモンナノカ…?」

 

「ソウイウモンナノ。」

 

「ソウナノカ…。」

 

「ソウナノヨ。」

 

「…ジャマシタネ。ソレジャァシツレイスルヨ。」

 

「エエ。オタガイイキテイタラマタアイマショウ。」

 

そして、2人はそれぞれの海域に向かって分かれたのだった。




前半、マジでネタがありませんでした。…ちなみに、100話で終わるつもりでしたから、少々おかしなところがあると思いますが、目をつぶっていただければありがたいです。
登場人物紹介コーナー
食堂…一般人も食べに来ることは可能。高級レストラン。店名は珍しく、『大和』という普通の店名だった。そこの人気メニューは大和フルコース。
大決戦…深海棲艦と艦娘の大規模な戦い。戦争といっても過言ではなかった。ただ、深海棲艦が出たことによって、海水浴やら船の貿易やらが禁止されて軍の飛行機でしか貿易が出来なくなり、一般人は誰も知らない。
深海棲艦幹部…前出てきた面々。レイテ、ソロモン、マリアナ、セイロン、インド、トラック、ブーゲンビル、渾、バタビア。
最高ランクの艦娘…加賀はマリアナと共倒れ。夕立は渾と、長門はトラックと、神通はバタビアと、大井と北上はインドと、それぞれ共倒れになり、最後の武蔵と大和はセイロンにボロボロの状態で勝った。ブーゲンビルは特攻で勝った。


「長門のコーナーだ。ホテルでは無いぞ。」
「人のセリフ取らないでください!私の名台詞です!」
「…と、今回は大和がゲストだ。」
「…大和です…。」
「ところで大和。」
「なんでしょうか…?」
「何でホテルと言われているんだ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「冷房装備も付いていて、陸軍軍人訪問時、もしくは将校が豪華な食事を提供されていたからだろう?まぁ、冷房に関しては他の艦も設備に羨ましがっていたりしたことも含まれているのだろう。ラムネに関しては、実は他の艦でもやろうと思えばできるのだとか…。しかし、ホテルと言えば聞こえは良いが、それを満喫できるのは限られた士官や将校のみ。一般的な乗組員はラムネすら許されない。当たり前だな。乗組員全員が贅沢できるのなら、誰だって乗りたいだろう。陸軍が少なくなって、海軍が爆発的に増えてもおかしくない。だが、増えなかったのは全員が贅沢できるわけではないと知っていたからだ。雑用やらで忙しいだろう。それに、何よりも大きい。と、なれば乗組員の数も多い。その分乗組員の食料や水などはどうなる?もちろん、ろくに飲み食い出来ないだろう。ラムネや贅沢など、夢のまた夢だ。今の時代がいかに恵まれているかが分かるな。」
「知ってて聞きましたよね?ねぇ?」
「ああ。」
「それに、後半は省いてくださいよ…。現実を見せないでください…。私だって、贅沢させてあげたかったです…。」
「…すまん。私も、ビキニ環礁で原爆を受けた身だ。そういうことは掘り下げないようにしないとな…。」
「そうです…。」
「よし、暗い話はやめだ。ところで、武蔵の方は何もないのか?」
「武蔵の方は、旅館と呼ばれていたとか…。」
「そうか…。長門型には特に特徴はないがな…。」
「ビッグ7があるじゃないですか。」
「いや、それだと陸奥は入るが、他の艦も入るではないか…。しかも、当時はビッグ7の言葉や文字すらなかったぞ…。」
「まぁ、そうですが…。それより、私には武蔵の他にも姉妹がいるんです。…まぁ、1人は生まれる前になくなりましたが…。」
「信濃と111号艦だろう?信濃、早く見つかると良いな。大方の場所は分かっているらしいが、誰も見つけに行っていない。いや、行けないからな…。」
「はい…。…て!なんでそんな細かい情報まで知っているんですか!?」
「あそこにいる人からこのコーナーが始まる前に教えてくれたぞ?」
「げ、元帥殿…。」
「元帥!?あの人の良さそうな人がか!?」
「失礼です!…と、それよりも元帥殿、後でお話があります。帰ったらゆっくりとお話ししましょう。」
「笑顔なのに恐怖を感じるぞ…。…あっ、逃げた。」
「……。まぁいいです。どうせ帰る場所はわかっているので…。」
「そ、そうか…。次回、第148話「枕投げ」。…なんか楽しそうだな。…少し水でも飲むか…。」
「では、失礼しますね。長門さん。あっ、あとぬいぐるみがどうとかって…。意外と可愛い一面もあるんですね。」
「ブフォッ!?ゴホッゴホッ…!そ、それをどこで…?」
「ドミナントさんが…。」
「て、提督ぅ…!」
「あっ、元帥殿と共に逃げました…。」
「…大和、考えていることはわかるな…?」
「はい。」
「「捕まえる!」」


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148話 枕投げ

シンプルなタイトル。実際、その通りになる予定だが…。
「というより、陸軍編は?余裕ある?」
ないに等しい。でも、コメディ要素不足だ。
「なるほど。最近バトルや、昔話、シリアス展開が多かったからね。」
だが今回は今までのインスタントと思ってもらっては困る!なんとなく思いついたネタだ!
「深刻なネタ不足ね…。」
AC要素が無くなって行くぅ〜…。
「ACなどはバトルや煽り言葉の宝庫になっているから…。」
…ほのぼのとACを合体化させるには少し工夫が必要なのだな。てか、一応これAC要素入れなくてはタイトル、タグ詐欺になっちゃうからね…。
「メタいわね。…と、今回のあらすじの人を紹介するわ。」
今回はダレダローナー。
「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。」
なるほど…超弩級ね…。
「…筆者さん。今どこを見てたの?よからぬことを考えたでしょ?」
えっ?そ、そんなわけないよ?
「はぁ…。わかったわ。」
分かってくれたか〜。
「後で爆撃ね。」
うん。…うん?いやいやぁ〜、ちょっとぉ?
「えーっと…。艦載機の調子は良好と…。あっ、扶桑さん。あらすじお願いね。」
「山城…はいないんでしたね。出撃よ!」
瑞鶴ー?もしもーし?

あらすじです
鎮守府では何も起こっておりません。強いて言うならば、第4呉鎮守府から帰還したあと、山城が離れてくれないことぐらいですね…。

流石シスコン。
「よし。準備オッケー♪」
うん?どうしたんだい?
「目標、筆者さん!やっちゃって!」
なにぃ!?ちょ、ホントに飛んできてる!?待って待って!誤解だか…グアァァァァァ…!


…………

廊下

 

「春とはいえまだ冷えるな…。」

 

ドミナントたちは外のベンチから帰還して、冷えた体で廊下を歩く。

 

「…そう思ってみれば、部屋どうなったんだろう…?」

 

そしてドミナントたちは執務室へ行き、部屋を聞いた。

 

…………

大広間

 

「で、何かの手違いでこんな広い部屋になったと…。」

 

「はい…。」

 

ドミナントたち3人に対して、広すぎる部屋だ。総勢40人は泊まれるくらいの…。

 

「なんでこんなことになったの…?」

 

「…飛び込みの部屋はこれしか無かったんです…。」

 

「飛び込み?」

 

「普段、泊まる予定のある提督がいらしたら、この部屋に区切りをつけて、安心感を出すために狭くしたりします。ですが、連絡を頂いていなかったので、準備が出来ませんでした…。」

 

……連絡はしたんだけどなぁ…。

 

大和が申し訳なさそうに言い、ドミナントは思う。

 

「まぁ、広いけど寝れることは確かだよ。」

 

「確かにな。少し風などが寒いが、布団に入れば大丈夫だ。」

 

蒼龍と武蔵は気にした風もない。

 

「まぁ、私も武蔵たちが良いなら良いんですけど…。」

 

ドミナントも了承してくれた。

 

「はい。では、入渠時間などの詳細はこの紙に。そして、この部屋の番号はNo.2448なので。」

 

「2448…。…ん?どこかで…。」

 

「では、ごゆっくり…。」

 

一通り説明を終えたあと、大和は退室した。

 

…………

廊下

 

「はぁ…。」

 

……丸一日接待みたいな日はキツいですね…。ドミナントさんが恐ろしい人でないことは頭では分かっているんですが、どうにも…。それに、武蔵の様子が少し変でしたし…、何かあったんでしょうか…?

 

大和は1人、ため息をつきながら廊下を歩く。すると後ろから…。

 

「よぉ、大和。どうしたんだ?」

 

「あっ、木曾さん。」

 

後ろから声をかけたのは球磨型軽巡洋艦5番艦の木曾だ。大本営精鋭部隊の1人。

 

「ため息をつくのはいつもみたいだが、何か不自然なため息だったぞ?」

 

「いつも聞いているんですか…。これからは気をつけます。」

 

「いや、別になんとなく聞いていただけだが…。ところで、なんかあったのか?」

 

「実は…。」

 

大和が説明する。

 

「何ぃ!?あのドミナント大佐が来ているのか!?それに、昼に深海棲艦が攻めて来ただと!?」

 

「声が大きいです…。」

 

「お、おう。すまん。攻めて来た深海棲艦は倒したのか?」

 

「いえ、どこか吹っ飛んで行きました。」

 

「くっ…。演習に行かずに残っていれば…。ん?ちょっと待って、吹っ飛んだ?」

 

「そして、ドミナント大佐は現在は部屋番号2448にいます。」

 

「そうか…。…あとで挑むか…。

 

「はい?何か言いました?」

 

「あっ、いや。なんでもない。それより、武蔵がいると聞いたが?」

 

「はい。ドミナント大佐と同じ部屋に…。…はっ!?お、同じ部屋!?」

 

大和は疲れていて気づかなかったのか、自身の妹とドミナントが同じ部屋で寝ることに今気づく。

 

……なんで気がつかなかったんでしょうか…!?普通、男女共同の部屋と言えば、2人とも何か一言でもあるはずですが何もなかった…!つまり、全く気にしていない!?もしくは普段からしているように、当たり前のようなこと…!?…はっ!?武蔵の様子がおかしかったのは、姉である私にドミナントさんのことが言えないからだったのでは…!?つまり、2人は…!2人は…!…デキてる…!?

 

大和は違うことを考えてしまっている。

 

「…ん?どうした?顔が真っ青だぞ?」

 

木曾は不思議そうに大和に聞く。

 

「木曾さん!」

 

ガシッ

 

「わっ!?な、なんだ?」

 

大和が途端に向き直り、両肩を掴んだ。木曾は、あの大和がこんなに慌てて、挙動不審な動作をしたことに物凄く驚いていた。

 

「もしかしてですが…。ドミナント大佐と武蔵は…。」

 

「お、おう?」

 

「武蔵は…。」

 

大和は言葉を詰まらせる。木曾は不思議そうだ。

 

「…いえ、なんでもありません…。」

 

「?」

 

よくよく考えたら言えなかった。

 

……あとでこっそり部屋を見に行く必要がありそうですね…。もし、2人がそういう関係なら、腹をくくらなければなりません…。いえ、違って欲しい…。もし、ドミナントさんと武蔵があんな風になったら…。私の身が持ちません…!

 

大和はおぼつかない足取りでフラフラと廊下を歩いて行った。

 

「まるでヨチヨチ歩きだな…。まぁ、どの部屋にいるかは分かったが…。」

 

……ドミナント大佐と武蔵という強敵が手の届く距離に…!是非とも戦いたい…!そして、自分が今どれくらい強いのかを実感したい…!

 

木曾はなぜか、張り切って勇ましい足取りで歩いて行った。

 

…………

大広間

 

「…ところで提督。」

 

「どうした?」

 

「提督はどこで寝るんですか?」

 

蒼龍が聞いてくる。流石に、2人の年頃の娘の隣で寝るのは誤解を招きやすいだろう。…自身はどうでも良い感じだが。

 

「俺か…。この部屋は広いから、俺はどこかの隅で寝るよ。」

 

ドミナントはさりげなく布団を隅に敷く。

 

「でも、上官が隅っていうのは流石にアレだから、私たちが隅に行くよ。」

 

「そうだぞ提督。上官が部下に遠慮してどうする。ここは一つ、部下の信頼を…。」

 

「いやいや、お前たちは身体が資本なのだからゆっくり休め。それに武蔵、お前はほぼ裸なんだから寒いだろう。」

 

ドミナントが武蔵の身体を見る。前にも説明した通り、さらしだ。褐色の肌の方が面積が大きい。

 

……改めて見ると、風邪ひかないかな…?胸部装甲も大半出てるし、肩も胸も腹も何も着てない…。本当にさらしなのに…。

 

ドミナントが武蔵の身体をマジマジと見る。

 

「…そんなにどこを見ているんだ…?」

 

武蔵が恥じらうような感じで言う。

 

「ん〜?提督、今どこを見てたの?」

 

「い、いや…。どこも…。」

 

「やらしぃ〜。」

 

「う、うるさいぞ、蒼龍。」

 

蒼龍はドミナントに言われてもニヤニヤしている。するとそこに…。

 

バァァァン!

 

扉がいきなり開かれ、ドミナントたちが驚く。そこにいたのは大本営精鋭部隊の面々だった。

 

「おまえは ていとく!

オレは かんむす!

めが あったら いざ しょうぶ!」

 

「何で!?てか、目もあってないよね!?」

 

だいほんえい せいえいぶたいの きそが

しょうぶを しかけてきた!

だいほんえい せいえいぶたいの きそは

ひりゅうを くりだした!

 

「何で私!?」

 

飛龍は勝手に巻き込まれているだけのようだが、とりあえず出される。

 

「ゆけっ!そうりゅう!」

 

「私も!?」

 

蒼龍がノリに乗ったドミナントの犠牲になる。

 

「おっと、これは蒼龍型と飛龍型の戦い…。どちらが生き残るのか見ものですね。」

 

「生き残り!?どちらかが死ぬまでのデスマッチ!?」

 

「そのようですね。しかし、性能に関しては飛龍のほうが完全に上…。蒼龍の技術力や経験、発想が勝負の鍵になりますね。」

 

「ねぇ飛龍、私たち死ぬの?」

 

「なお、実況の青葉と…。」

 

「解説の大淀です。」

 

「知ってましたけど…。」

 

いつのまにか折りたたみ式長机を出して、カメラを持った実況者の青葉と、椅子に座って顔の前で手を組んでいる、解説の大淀がいた。

 

「そうりゅうは どうする?」

 

「あっ、尚、実弾やペイント弾は禁止ね。部屋が汚れて大和さんが怒るから。」

 

「なら枕が良いな。」

 

青葉が言い、ドミナントが返す。

 

「「正規空母の私たちにどうしろと…。」」

 

「まぁ、とりあえず枕を投げれば良いんだろう?こんな風に。」

 

ビュンッ!

 

「ブフッ!?」

 

ドミナントが軽く木曾の顔目掛けて投げた。不意の攻撃に木曾はもろ当たった。

 

「おぉっと!?これは場外からの乱闘かぁー!?ドミナント大佐!早くも総大将を狙ったぁー!」

 

「見事な一撃でしたね。騎士道を持っている相手に騙し討ちは効果抜群です。ちなみに、今のは10pですね。100p受けたら速やかに退場してください。」

 

2人がこんな時でも丁寧にノッている。

 

「ま、まぁ、待て…。ドミナント大佐もわざとではない…。だろう?」

 

木曾はなんとか冷静を保ちながら言うが…。

 

「ふっふ…。そ、そのとお…クスッ…りだよ…。」

 

「確信犯だぁー!このやろぉー!くらえぇー!」

 

ビュンッ!

 

ドミナントのワザとの攻撃に気づき、顔をくやしさで赤くしながら思いっきり投げる。

 

「危なっ!」

 

「ぐぁっ!?」

 

ドミナントはギリギリ避け、それが武蔵にあたる。

 

「やりました!木曾選手、相手の武蔵に攻撃を当てましたぁー!」

 

「ドミナント大佐を狙っていると見せかけ、実は後ろにいた武蔵を狙う作戦は見事ですね。」

 

「…そうなのか…?」

 

青葉と大淀が煽り、武蔵が言う。もちろん、木曾はそんなつもりなど元よりない。

 

「!?ち、違…。」

 

「流石です。私の計算が良い意味で外れました。」

 

「霧島!?」

 

「旗艦は陸奥だが、よくやったな。」

 

「那智!?」

 

「そうか…。ならこの武蔵、手加減するわけにはいかないな…。」

 

「んおぉォイィッッ!!??誤解だぁぁ!」

 

木曾は叫んだ。

 

「全砲門!」

 

武蔵が艤装を手にとり、弾のかわりに枕を詰め込んでいる。

 

「艤装の中に枕入れてる!?反則じゃないか!?」

 

「と、言う意見が出ましたが、解説の大淀さん。どう思いますか?」

 

「今回のお題は『枕投げ』つまり、枕を飛ばせばなんでもありです。」

 

「なにぃぃ!?」

 

「開けっ!」

 

ドォォォォン!!

 

「「ぎゃぁぁぁ!」」

 

武蔵が枕を撃ち、木曾が悲鳴を上げる。…悲鳴の数が1人多い気がするが…。

 

「木曾は直撃、精鋭部隊の仲間にも当たりましたぁー!…ん?1人悲鳴が多い気がしますが…?」

 

「弾のかわりに枕を詰め込むアイデアは素晴らしいですね。46センチ三連砲を持つ武蔵ならではの技ですね。」

 

2人はノリにのりまくっている。だが、ドミナントたちは驚いていた。

 

「何で提督も!?」

 

ドミナントが巻き込まれていたのだ。

 

「いや…、こっそり抜け出そうと…。」

 

「全く気がつかなかったぞ!」

 

ドミナントがよろよろと立ち上がり、説明をするが…。

 

「敵の大将がいたぞー!」

 

「全員狙えー!」

 

「うわぁぁ!俺に照準を定められた!」

 

もう、人数もルールも関係なしに投げ合う。

 

「くらえぇー!」

 

「そろそろ反撃よ…全艦載機、発艦はじめ!…弾は枕で!」

 

「目標!前方の武蔵!枕用意、投げ方、初め!」

 

「さぁ、那智の戦、見てもらおうか!」

 

「武蔵を追尾して…撃てー!」

 

「第二次攻撃の要を認めます!急いで!」

 

「さぁ、行くぞ!撃ち方初めっ!」

 

「第3枕をドミナント大佐に指向!逃さないわ!撃てっ!」

 

「何だ第3枕って…。て、危ねぇぇぇぇ!!」

 

そして、この少し広い部屋でクレーム関係なしの戦い?が始まったのだった…。




はい。終わりました。長かったので切りました。次回は後半みたいです。
登場人物紹介コーナー
枕…大本営に所属する者が常に使っている。ふかふかで寝心地も良く、99%良い夢を見られると折り紙付き。妖精さんが遊びで作った産物。
No.2448…部屋の番号。決して、どこかの誰かではない。アリーナに出るやつではない。
大広間…広い。50畳あるのではないか…?普段は仕切りをして、分けたり狭くしたり、自由に形を変えることが可能。
大本営精鋭部隊…陸奥を旗艦としたその他大勢。木曾、那智、鳥海、飛龍、霧島の部隊。
青葉…大本営所属。大本営の記者であり、新聞を作っている。たまにドミナントたちも見るが、それは緊急や異動時のみである。鎮守府に1人くらいいるので、そちらを見ることが多い。
第3枕…陸奥のノリで言った言葉。


「長門コーナー。なんか私が出ていないのに、やるのが面倒になって来たな。」
「まぁ、そんなこと言うな。今回はこの俺がゲストなんだからな!」
「大本営精鋭部隊所属の木曽か…。何をしに現れた?」
「何って…ゲストとして色々盛り上げようと…。」
「ここはただの艦娘が来るべき場所ではない。」
「いや、精鋭部隊だから、ただの艦娘ではない気がするんだが…。」
「ビッグ7である私が…。私がなすべきことなのだ。」
「いや、そりゃ『毎度後書き長門コーナー』だからな。自身の名前入ってるし。」
「理解できんとみえる…。」
「うん?聞いてたか?」
「ならばその証を見せてやろう。決定的な違いをな!」
「いや、どんな違いだ…?」
「…まぁ、そんなことは置いといて…。」
「気になるぞおい!」
「大本営の精鋭部隊の平均練度(レベル)はどれくらいなんだ?」
「ざっと93だな。あれからさらに強くなった。…まぁ、大和は98だが…。ちなみに、俺は94だ。旗艦の陸奥は96。那智は91。飛龍は92。鳥海は93。霧島は92だ。」
「凄いな。」
「少しでもそちらにいる命の恩人に近づきたくてな。あの日から日々努力して来た。」
「そうか…。」
「あぁ。あの人は真の強者と言っても過言ではない。俺の目標だ。」
「そうか…。」
「だが、それを乗り越える壁は高く、挫けそうになるが、俺は俺の信念を貫くために日々頑張っている。」
「そうか…。」
「…実は俺、独眼竜の伊達政宗だぞ。」
「そうか…。」
「絶対に適当にうなずいているだけだろ!?せめてツッコミくらいはやれ!」
「ナ、ナンダッテー!(棒)」
「…うざ。…まぁいい。やる気がないのなら、次回予告は俺がやるが?」
「い、いや!いい!これ以上私の出番が減ったら、本当に武蔵に取られる…。」
「苦労しているんだな…。」
「くっ…。こんな小さな枠に私を閉じ込めて、しかもマントとかした中二病のような奴と次回予告をしなければならないとは…、なんたる不覚…。」
「おい、聞こえてるぞ。」
「まぁ、私の所属しているところも、木曽や天龍がいるから慣れているがな…。」
「いじるな。俺を。」
「まぁ、次回予告だな。次回、第149話「枕投げ その2」。これだけのやつがここまで続くとは…。」
「…まぁ、ぬいぐるみを抱きしめて寝る長門には負けるがな。」
「!?そ、その情報…まさか、提督が!?」
「いや、適当に言っただけだが?」
「……。」
「なるほどなぁ〜。そのなりで可愛いものが好きなのか〜。ほぅ〜。」
「……。」
「…いじられる気持ち分かったか?」
「ああ…。すまなかった。」
「別に良いって。わかってくれりゃ。…次回も頑張れよ。」
「おう。ありがとう。」


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149話 枕投げ その2

これ、いつまで続くかな…?てか、各地の提督の設定は作ったんだけど、陸軍編入るとそのままラスト迎えそうな気がする…。
「へぇ〜。…各地の提督ねぇ〜。」
ああ。ラストに味をつけるなら、各地の提督諸君を出さなくちゃいけないし、味なしなら別に良いんだけどね。
「…なんでそのままの流れになるの?」
それはネタバレ。すぐに……なってもらわないと困るから。その展開も作っちゃったし。てか、陸軍編でラストが良いのかな?いや、だとハスラー・ワンが…。
「えっ?今なんて…?」
あっ、やば…。な、なんでもないさ。アハ、アハハハハ…。
「誰?そのハス…なんとかって人。」
禁則事項だよ。尚、これ以上深く聞こうとすると、ここの出入り禁止にするから。
「何もそこまで…。」
いや!待て!それだとあんなに盛っていた深海棲艦の幹部どもの出番も…。
「えっ?い、今なんて…?」
うん。禁則事項。尚、この話も深く聞けば上記のようになるよ?
「勝手に口を滑らせているのに!?」
てか、ホントにどうしよう…。
「えっ?本当に悩んでいるの?」
うん…。各地の提督出すなら、陸軍編が遠ざかったり、また展開も考えなきゃ行けないし…。
「ふぅ〜ん。てか、200話で終わりって忘れてない?」
いや、忘れてないけど…。まぁ、200話で強制終了ルートもあるけど…。多分納得いかないよなぁ…。
「何よ。それ。」
バッドエンド。
「うん。聞かない方が良かったわ…。」
みんな鬱になるし、死んだり、沈んだり、裏切られたり、自害したり…。
「うん。もうやめて。聞きたくない。」
ですよね〜…。ほのぼのどこいった?って感じになるし。
「そもそも何でバッドエンドなのよ…。」
えっ?だって、みんな死んだほうが楽に終わるじゃん。
「異議あり!その発想はおかしい!」
そうかなぁ〜?
「そうよ!」
まぁ、考えておくよ。場合によっては200話超えるかも知れないし。…それか、読者の中で“200話は流石になぁ〜。”って思う人もいるかも知れないから打ち切り…じゃない。強制エンドもあるけどね。(強制エンドとは、その区切りで文章が終わり、次に投稿されるのはその後の展開と人物の設定だけ。あとはご想像にお任せするエンドのこと。所謂、丸投げですね。もやもや感満載です。まぁ、それほど気にしてない人はそうじゃないですが…。)
「まぁ、好きにすれば良いじゃない。私は、ログインすれば文句ないし。」
この小説のスタッフとしてどうなのかな?
「いつから私はスタッフになったのよ…。」
…と、そろそろゲストじゃない?
「そのようね。さっきから待たされているらしいから。」
早く出してあげよう…。この方です。どうぞ〜。
「…もっと早く登場させて、早くお姉さまのところに行きたいのに…。不幸だわ…。」
陰気なオーラが漂っているな…。あらすじが終われば、すぐに会え…。

あらすじ
前回、鎮守府に異常ありませんでした。

…るから…って!もう終わり!?それに、まだ言い終わってないよ!
「風の如しね…。…ん?それって島風の…。」


…………

大本営 執務室

 

……武蔵とドミナントさん…。今フタサンサンマルですが、何をしているんでしょうか…?

 

大和と元帥はこの部屋で仕事をしている。

 

「…どうした?」

 

「…ふぇっ!?な、何がですか…?」

 

いつのまにか近くにいた元帥に驚く。

 

「さっきから名前を呼んでも反応がないぞ?それに、手が止まっている。」

 

「す、すみません…。」

 

「悩み事があるなら聞くが…。」

 

元帥と大和が話しているところに…。

 

コンコン…

 

執務室のドアをノックする音が聞こえる。

 

「はい、どうぞ。」

 

ガチャ

 

「……。」

 

部屋を開けて入って来たのはすごく機嫌悪そうな顔をした、大本営所属の夕張だった。

 

「あら、夕張さん。こちらに来るのは珍しいですね。どうかしたんですか…?」

 

「大和さん…。ここはいつから鎮守府内でも夜戦可能になったの?」

 

「…はい?」

 

大和は発言の意味が不明だった。

 

「えっと…いつでもありませんが…。」

 

「すごくうるさい部屋があるんだけど…。外と中で騒がれたら流石に迷惑です…。」

 

「そ、そうですか…。」

 

……あの夕張さんがものすごく不機嫌になるくらいですからね…。

 

大和はどれほどうるさいのか想像する。

 

「ですが、ここに連絡してこなくても、自身で言えばなんとかなるんじゃありませんか?」

 

「…いや、ならない…。絶対に…。あの音じゃ…。」

 

夕張は半ば諦め顔だった。

 

「…わかりました。注意して来ます。…部屋は…?」

 

「わからないけど、行けばわかるわ…。」

 

「わかりました。」

 

大和は嫌な予感を抱きながら走って行った。

 

「…私も行くか。」

 

「いや、元帥殿は仕事をした方が…。」

 

「資材、少し余ってるけど…。」

 

「どうぞ行ってきてください!」

 

2人はサムズアップした。

 

…………

 

「ここですね。やはり、ドミナントさんの部屋でしたか…。三人しかいないのに、何でそんなに騒いでいるんでしょうか…?」

 

大和は場所を突き止め、部屋の前に立っている。

 

……はっ!?も、もしやそれほど激しいのでは…?

 

大和はトンチンカンなことを想像して、入れずにいた。しばらくして…。

 

「早く入りたまえ。」

 

「げ、元帥殿!?仕事は…。」

 

「それより、早くこの騒音を止めなければ…。」

 

元帥が取手に手をかける。

 

「や、やめて…!」

 

大和が止めようとしたが、時すでにお寿司。

 

…あー…!

 

大和はあんな光景があると思い、目をギュッと閉じていた。が。

 

ワァーワァー!

 

「何が“やめて”なのだ?」

 

「……。」

 

大和が想像していたのとは別の意味で驚いた。なぜならそこは、全員が鬼気迫る勢いで枕を投げ合い、さらには艤装やら艦載機を使ってまで撃ち合っているところもおり、それを煽る青葉たちを見たからだ。

 

「皆さん!やめてください!」

 

大和が瞬時に大声を出す。

 

「「「あ…。」」」

 

鶴の一声。武蔵たちも木曾たちも手を止めて、大和を見る。

 

「今何時だと思っているんですか!?苦情も来てますし、資材の無駄です!武蔵!あなたは何でやり続けているんですか!?こんな時しっかりしてください!青葉さん!大淀さん!それを見ていてなんで止めないんですか!?煽るのは最も悪い行為だと分かっているんですか!?それに、陸奥さん!それが、大本営の精鋭部隊の旗艦がやる行為なんですか!?木曾さん!広めたのはあなたですよね!?やっていいことと悪いことくらいわきまえてください!」

 

「すまん…。」

 

「「すみません…。」」

 

「ごめんなさい…。」

 

「すまねぇ…。」

 

大和が叱り、謝る面々。

 

「はぁ…。…て、ドミナントさ…大佐は!?」

 

大和は部屋を見回すが、いない。

 

「…あれ?そう思ってみれば、提督みてないね…。」

 

蒼龍が気づいたように布団の中とかをひっくり返して探すが、いない。

 

「…もしかして、逃げたとか…?」

 

誰かが呟く。…とは言っても、口調を見れば飛龍だとすぐにわかるのだが…。

 

「…なんで一番責任のある人が逃げているんですか…?」

 

大和は怒っていた。

 

「この…ドミナント大佐!!」

 

「大和さん!どいて!どいて!!」

 

「!?」

 

ドガァァァァン!!

 

ズボッ

 

全員が黙り、背筋が凍る瞬間だった。なぜなら、キレそうだった大和に、すごく速いスピードでドミナントがアタックしたのだ…。もちろん、大和は吹っ飛んで枕の山の中だ。

 

「…て、提督…。」

 

蒼龍は顔を真っ青にしながらドミナントを見る。

 

「いや〜、すみません。そろそろ止めた方が良いと思って、コンビニで仲直りのアイスを買い占めていまして…。あと、廊下で滑ってしまい、止まることが出来なくてすみません。ただ今帰還しました!」

 

ドミナントはやってきた感満載の場違いな顔で敬礼しながら言う。

 

「「「……。」」

 

もちろん、全員は黙ったままだろう…。

 

「…というより、すでに終わってたんだね…。お金無駄になったかなぁ…。」

 

状況を全く理解していないドミナント…。あの元帥も笑えない顔をしている。

 

「…?どうしたの?みんな?」

 

ドミナントはアイスを広げながらみんなを見る。

 

「じ、実は…。」

 

「ん?あぁ、わかってる。」

 

「わかってるのか…。よかった…。」

 

「もちろん、カステラアイスもあるぞ。」

 

「違う!」

 

武蔵が助言を言おうとするが、ドミナントには伝わらない。

 

「ドミ…ナント…大佐…。」

 

大和が何とか枕の山から這い出て、立ち上がる。

 

「あぁ、大和さんも食べます?美味しいですよ?」

 

カチーン

 

だが、大和心の内を露とも知らず、アイスを食べているドミナント。そんなドミナントに、ついに大和がカチンときた。

 

「とりゃぁぁぁ!!」

 

ヒュンッ!

 

「危なっ!?」

 

大和が砲弾と見間違う速度で枕を投げたのだ。当たれば、柔らかい枕とはいえ、石並の威力を発揮するだろう…。

 

「ついに大和の堪忍袋の尾が切れた…。」

 

「日頃のストレスも溜まっていたのね…。」

 

「最近頭を抱えていた日も、考え事をしていて話を聞いてなかった日も多かったしな…。」

 

「あの大和さん、あんな風に怒るんですね…。まぁ、大和撫子にも限度というものもあるでしょうし…。」

 

大本営の面々がドミナント目掛けて枕を投げる大和を眺めていた。しかし、悪ノリをする者は必ず現れる…。

 

「おぉーっと!これは面白くなって来ました!あの大本営の顔とも言われる大和さんが!なんと乱入だぁー!」

 

「あの大和さんがこうなることは一生に一度あるかないかですね。しっかりとカメラに収めるのが良いと思います。」

 

あの2人は懲りないようだ。

 

「……。」

 

そんな2人を大和が見つけ…。

 

ビュンッ!

 

「ぐはぁっ!」

 

「ブファッ!」

 

ドガァン!

 

2人に枕を投げつけ、2人は吹っ飛んだ。

 

「私の大切なカメラがぁぁぁ!!」

 

「め、眼鏡が…。」

 

2人に精神的大ダメージが入る。

 

「このぉ!」

 

「ど、どこだかわからないけど!えいっ!」

 

2人は適当に大和目掛けて投げつけるが、今の大和はドミナントを追っている。と、なればドミナントは自由気ままに逃げ回るので、枕はあらん方向に…。

 

「ブハァっ!」

 

「グフっ!」

 

「……。」

 

「バフっ!」

 

「大乱闘だぁぁぁ!」

 

結果、誰も彼もが枕投げをした。いつのまにか、元帥も投げていたが…。

 

…………

??分後

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「きゅ〜…。」

 

結局、ドミナントは大和に怒られ、伸びている。

 

「はぁ…はぁ…。中々…楽しいな…はぁ…。」

 

「ふっ…ふふ…。はぁ…はぁ…、そうだな…。」

 

「スー…。」

 

全員、疲れ果ててその場で倒れ込んでいる。飛龍と蒼龍はそのまま寝てしまったが…。

 

……大和くんにはこのまま倒れていればわからないか…。

 

元帥は混じって倒れたフリをしていた。…まぁ、あとで大和に足を引きずられながら執務室まで連行されたが…。

 

「はぁ…全く…。手間をかかせないでください…。ドミナント大佐…。」

 

「すみませんでした…。」

 

大和がドミナントを叱っているが、“やれやれ”みたいな感じで許してくれそうだ。

 

「全く、しょうがない人ですね。」

 

「悪い言い方だと“面倒”…ですね…。」

 

「そうですね。面倒な人ですね。ホントに。…まぁ、次やったらこれではすみませんからね。」

 

大和は許してくれた。

 

「もう…。…あっ!そう思ってみれば、アイス…。」

 

大和は今気づき、アイスを見るが…。

 

「あっ、それなら大佐の冷蔵庫の中に入れておきました。」

 

鳥海が頭だけ起こして言う。

 

「…明日、みんなで食べましょうね。」

 

「「「はーい。」」」

 

全員が言う。そして、翌日、仲良く食べたのだった。…まぁ、その前に艦娘たちのクレームが殺到し、過去最多の記録を塗り替えたのだが…。




後編です。ちなみに、大和と木曽が話している時にドミナントたちは風呂を済ませています。説明がないと、あれ?って感じだったので、一応後書きに書かせてもらいました。
登場人物紹介コーナー
夕張…大本営所属。毎晩川内のうるささに悩んでいる。
アイス…カステラ、焼き芋、かき氷、棒付き…様々な種類のアイス。カステラアイス、地味に美味しかったらしい。


「長門コーナーに入ったぞ。なにやら、筆者が悩んでいるが、お構いなしだ。」
「で、今回のゲストは元帥である私だ。」
「ほう。大本営の頭、元帥殿か。」
「いかにも。」
「そうか。…何を話そうか…。」
「何か聞きたいこととかないか?例えば、歳とか色々とな。」
「いや、特にないが…。」
「……。」
「……。」
「……。 ……。 ……。
 ……。 ……。 ……。
 ……。 ……。 ……。
 ……。 ……。 ……。
このまま何時間でも黙っても良いのだがね。」
「忍耐ならこの私も得意だ。作戦の指示を待つのも日常茶飯事だしな。」
「……。」
「…わかった。歳はいくつだ?」
「55だ。」
「なるほど…。」
「名前は武田 寿喜。武将の子孫ではないかと疑問に思われたこともあったが、別に関係はない。好きなものは煮物などだな。最近柔らかいものが美味しく感じるようになってな…。昔はよく固い煎餅などを食べていたんだが…。」
「それは悲しいな…。」
「まぁ、食べやすいのもある…。…嫌いな食べ物はハンバーガーだ。」
「なぜだ?」
「最近腹が出て来てな…。かみさんによく言われるんだ…。さらに、娘にも心配されて辛いんだ…。」
「辛いな…。」
「あと心情については、艦娘たちに権利をあげたいと思っている。」
「おぉ!それはありがたい!こちらでは権利など関係なく、自由に暮らしているが、どこかの鎮守府ではまだ被害に遭っている艦娘がいると聞くからな。」
「ああ。…若いように話しているが、実は年寄りだ。労りたまえ。」
「その元気で何を言ってるんですか…。」
「大和くん。君まで言うのか…。まぁ、権利をあげるまでは、元帥の座を降りる気はないがな。」
「定年退職がないからな。それも可能だろう。」
「ある意味過酷なんですよね…。仕事も死ぬまでやらなければならないから…。」
「別に、キツいとは思わないぞ?仕事は辛いが、艦娘といると楽しいし、面白い。それに、ある程度自己判断ができるから、轟沈させないように気を付ければ沈むこともない。いい子たちばかりだからそれほどストレスもたまらない。ある意味、楽な仕事なんだ。」
「その分、提督になるには妖精さんのことが見えたり、話せたりしなければなりませんし、過酷な試験も待っていますけどね…。」
「まぁ、それを超えたらパラダイスだ。…仕事はキツいが。何年でも仕事を続けられる。三食、寝床付きだから、お金の心配もない。」
「羨ましい限りだ。」
「社会人が見たら、きっと悔しそうに羨ましがること間違い無いですよ…。」
「良きかな良きかな。」
「…と、それより、そろそろ次回予告では?」
「む。そうだったな。次回、第150話『極秘書類輸送』。む。極秘書類と聞くと身体がムズムズするな。」
「それは、おそらく闘争の血が騒いでいるのだろう。」


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150話 極秘書類輸送

149話。最初は帰ったあとまでの予定だったが、色々あり、帰れなくなった。
「つまり、作っている途中にネタが出たのね。」
出た…というより、展開ができたのだな。コメディ要素が不足してきた。
「それは致命的ね。」
それに、ほのぼのがわからなくなってきた。コメディとほのぼのの合体化…そんなアニメを見たいな…。…鬱展開は好きではないけど。「ごちうさ」みたいなものを…。
「読者の人に聞いてみたら?」
それ、いい考えだね。紹介してくれたらありがたいです。
「…と、そろそろゲストね。」
「あれ?ここはどこだろう?提督は?」
川内ですね。しかし、第4呉鎮守府の。
「そうだけど、ここどこ?早く手伝わなくちゃ。」
「働き者ね…。誰かさんと違って。」
誰のことだい?瑞鶴。
「じゃぁ、あらすじをどうぞ。」
「えっ?あ、うん。わかった。」

あらすじ
夜戦!でも、ここでは夜戦は禁止!提督に迷惑かけちゃうから!

ええ子や…。


…………

翌日

 

「う〜ん…。」

 

「どうしたの?」

 

ドミナントが難しい顔で唸り、蒼龍が聞く。みんなでアイスを食べたあと、各自解散した後のことだ。

 

「実は、帰りのこと考えてなくてさ。買い物をしてお土産やら紅茶やら買わないといけないし。それに、飛行機の時間もわからない。第一、予約とってないから、乗れないし。VOB壊れちゃったし、そろそろ脚部が鎮守府に届いている頃だし…。」

 

「提督がロボットになれば、少し浮くよね?それでスピードアップとか出来ないの?」

 

「いや、普段よりは早い速度出せるけど、VOB並みじゃないし、時間もかかる。おとなしく公共交通機関を使ったほうが楽だし。」

 

ドミナントは腕を組み、考えている。

 

「帰りの心配より、まだ何か大本営でやり残したことなどないか?」

 

武蔵が聞く。

 

「やり残したこと…あっ!」

 

「何かあるのか?」

 

「夕張たちの褒美がまだだ。」

 

「忘れちゃいけないやつじゃん…。」

 

「すまんな。紅茶で頭がいっぱいなんだ。」

 

2人が“やれやれ”と呆れ、ドミナントが執務室へ行くのだった。

 

…………

 

コンコン…

 

『はい。』

 

「ドミナントであります。」

 

『どうぞー。』

 

ガチャ

 

中から声がして、ドミナントが入る。

 

「失礼します。元帥殿に用件があり、入室させていただきました。」

 

中にいたのは元帥1人だ。

 

「なんか、少し言葉が変だが…。まぁいい。なんだ?」

 

仕事を止めて、ドミナントを見る。

 

「実は、夕張たちの褒美についてなんですが…。」

 

「おぉ、決まったのか?」

 

「はい。St ELMO(セントエルモ)は資材の提供、夕張は…新しい機械道具一式の入手でした。」

 

「なるほど。わかった。すぐに君たちの鎮守府に届けよう。」

 

「ありがとうございます。」

 

元帥は少しも嫌な顔をせず、聞き入れてくれた。

 

「それと、元帥殿に聞きたいことが…。」

 

ドミナントはバツの悪そうな顔をして言う。

 

「何かな?」

 

「…実は、帰りの飛行機の時間とかって、わかりますか…?」

 

「む?別にないぞ。」

 

「…はい?」

 

元帥の言葉に不思議に思うドミナント。

 

「大本営の専用の飛行機で君たちを送り届けるつもりだ。」

 

「えっ?い、いいんですか?」

 

「勿論だ。遠いところからわざわざ来ているしな。それに、他の提督にもしていることだ。」

 

「ありがとうございます!」

 

ドミナントは、元帥の優しさに感謝した。そこに…。

 

ガチャ

 

「元帥殿。こちらの封筒を…。て、ドミナント大佐?何か御用ですか?」

 

大和が何やら封筒を持ってやってきた。

 

「おぉ!ついに届いたか。」

 

「あっ、はい。」

 

大和が封筒を渡し、中を開けてパラパラとページをめくる元帥。内容は大和とドミナントからは見えない角度だ。

 

「ふむ…。なるほど…。これは興味深い…。」

 

今度は、元帥が真面目な顔をして一枚一枚見ているのを大和がそわそわして見ていた。

 

「大和さん。なんの書類ですか?」

 

ドミナントが小声で大和に聞く。

 

「えーっと…。私にも分かりません。」

 

「はい?」

 

「元帥殿からは極秘書類としか言われておらず、渡された者からも『開封厳禁』とクギをさされたので…。」

 

「そこまで大層な物なんですか…。」

 

ドミナントと大和がコソコソ話していると…。

 

「…うむ。これで良いだろう…。ドミナント大佐。」

 

「あっ、はい。」

 

元帥にいきなり呼ばれて、返事をするドミナント。

 

「この書類をそちらにいる『夕張』くんに届けてくれるか?」

 

「えっ?な、何故ですか?」

 

「…詳しくは言えない。君にも極秘だ。」

 

「…中に何か重要な物が入っているんですか…?」

 

「入っていなければ、こんな書類を渡さん。」

 

「…そうですか。」

 

「ああ。…わかっているとは思うが、開封厳禁だ。もし、途中で開くことがあれば、すぐわかるように出来ている。それも何重にも重ねている。シールやテープ、のりや爪痕などもだ。透視もできないような特別な紙だ。何かの事故でも完全に開くことはない。もし、途中で開封された場合は…。…わかっているな?」

 

「は、はい…。」

 

元帥がいつもとは違う雰囲気、顔つきで言う。その顔はいくつもの修羅場を潜り抜けた。歴戦の老兵の顔だった。昨日一緒に枕投げをした人とは思えない顔だ。

 

……元帥があんな顔になるとは…。この書類はなんなんだ…?

 

ドミナントは渡された書類の表面を見て、歩いて退室して行った。

 

…………

 

「…ふぅ〜、疲れた。」

 

ドミナントが出て行ったあと、椅子にもたれる元帥。

 

「お疲れ様です。元帥殿。」

 

大和がお茶を差し出す。

 

「いや〜…。真面目なのは疲れるな。」

 

「あのドミナントさんもあんな顔をするくらいですからね。いつもはのほほんとしている2人が、真剣な顔つきで話していて、こちらまで緊張しました。」

 

「そうか…。だが、私も完全に信用しているわけではない。途中で開けないための念入りな態度だ。」

 

「そうですか。」

 

元帥と大和は椅子に座って一息つきながら話す。

 

「…ところで、あの封筒の中ってなんですか?」

 

ある程度話し、しばらく沈黙したところに大和が聞く。

 

「…君にも秘密だ。」

 

だが、元帥は口を割る様子はない。

 

「…前、第2舞鶴鎮守府の時もそうじゃありませんでした?」

 

「…そうだな。だが、秘密だ。…そんな心配そうな顔をするな。決して悪いものではない。」

 

「じゃぁ、なんで教えてくれないんですか…。」

 

「第2舞鶴鎮守府所属の『明石』にも佐藤中佐には内緒にしてもらっている。これを知ることが出来るのは私と第2舞鶴鎮守府の『明石』と第4佐世保鎮守府の『夕張』だけ。あと、ここの限られた開発班のみだ。なに、完成したら君にも教えよう。」

 

「…つまり、一つの物を2つの鎮守府に依頼しているって事ですよね?今の話を聞くと。」

 

「…そうだが?」

 

「なら、一つの鎮守府に絞った方が良かったのではありませんか?」

 

「それだと開発期間が延びるし、情報の漏洩もありうる。もし、“これ”が世界中に知られたら、計り知れない敵が現れる可能性がある。しかも、盗まれたとなったら軍法会議ものだ。」

 

「どんな恐ろしいものを作らせているんですか!?」

 

大和が少し声を張り上げる。実質、彼女は艦娘代表だ。

 

「ま、待て。そんな想像しているような兵器ではない。」

 

「じゃぁ何ですか!?」

 

「艦娘の装備だ。装備。深海棲艦に取られたら軍法会議に発展しかねないし、世界中がそれを狙う。決して、対人間ようの兵器ではない。」

 

「…なら良いですけど。」

 

それを聞いて少し安心したのか、大和が落ち着きを取り戻す。

 

「…まぁ、装備だということは頭に入れておいてくれ。」

 

「…わかりました。」

 

「ま、それより仕事だよ。仕事。」

 

「…そうですね。」

 

そして、元帥と大和は仕事を始めるのだった。

 

…………

結構時間を経て…。

 

「…そろそろ帰るか。」

 

「そうだね。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントが言い出し、各々が支度をする。

 

「買い物は済ませたか?大和さんに挨拶は?部屋の隅に置き忘れたものもないな?」

 

「ない。」

 

「ないよ〜。」

 

「よし、じゃぁ帰るか。」

 

ドミナントが荷物を持つ。だが…。

 

「提督、机の上に置いてあるあの封筒はいいの?」

 

「あん?…おっと、忘れるところだった。」

 

ドミナントが早速例の封筒を忘れるところだった。

 

「これこれ、これを持っていかなくちゃ…。」

 

ビリッビリリリリ…

 

「え?」

 

「「あ…。」」

 

机の上の置き物に封筒の端が挟まっていた…。つまり…。

 

開封

 

……やっちまったーー!

 

全員が顔を青くして思う。そこに…。

 

コンコン…

 

『ドミナント大佐、入りますよ。』

 

廊下から大和の声がする。

 

ど、どうしますか!?これ!絶対にやばいやつだよ!

 

私が大和を引き止める!提督はそれの処理を。

 

コソコソ話し、それぞれが動く。

 

ガチャ

 

「失礼しま…。」

 

「おぉーっと!大和!これより先は行かせることは出来ないな。」

 

「な…。む、武蔵!?何を…?」

 

バタン

 

『どうかしたんですか?』

 

『それは…その…。』

 

『着替え中でしたか?』

 

『えっ?あ、ああ!そうだ!』

 

2人が外で話している。

 

「提督!今です!今のうちに何とかしないと…。」

 

「なんとかってどうすりゃいい!」

 

「袋の中に入れた方が…。」

 

「そ、そうだな。早くいれないと…。」

 

ドミナントが袋の中に詰めようとするが…。

 

『む?大和くん。何をしているのかね?遅いから様子を見に来たぞ。』

 

……元帥まで増えたー!

 

廊下から元帥の声がする。中にいる2人はさらに慌てる。

 

『あっ、元帥殿。ドミナント大佐が着替え中のことでして…。』

 

『あ、ああ。』

 

『む?そうか?…まぁ、私は男だから平気だろう。それに、急ぎの用事だ。』

 

『おっと!ここを通すわけにはいかないな。』

 

『何故だ?』

 

『そ、それは…。』

 

『?武蔵、何故だか様子がおかしいですよ?』

 

『そ、そんなことはない!』

 

『なら、別に良いな?』

 

『待てーい!』

 

『何故だ?』

 

『どうしてですか?』

 

『そ、それは、提督の裸を見せるわけにはいかないからだ!』

 

切羽詰まった武蔵が適当なことを言う。

 

『ま、まさか、武蔵…。』

 

……大和は気づいたのか…?

 

大和が何か気づいたような声を出し、ドミナントが思う。が。

 

『そこまでドミナントさんのことを愛して…。』

 

やはり、大和はどこかが抜けているようだ。

 

『…は?えっと…。』

 

流石に武蔵も困惑する。

 

『む?嫉妬だったか。いやはや…。これは失礼なことをした。着替え終わるまで待とう。』

 

元帥は違うことを察して、ニヤニヤしていた。

 

……ほっ。元帥も足止め出来て一件落着か…。

 

ドミナントと蒼龍が思うが…。

 

『む、武蔵!そんな事お姉さんである私が絶対に許しませんからね!あんな男のどこが良いのかわかりません!あんな紅茶好きの変人で!しかも!噂だと様々な艦娘をたぶらかしているようではないですか!』

 

「んだと!?」

 

「提督、今はそんな場合じゃないでしょ…。」

 

幸い、ドミナントの声は廊下まで届いていない。だが…。

 

『おい!いくら姉である大和でも、提督にそんな事を言うのは許せないな!』

 

『大和くん。ドミナント大佐はたぶらかしてはいないぞ。』

 

「紅茶好きの変人のところは否定しないの!?」

 

「提督、ツッコミを入れている場合じゃ…。」

 

『提督はこんな私でも受け入れてくれたんだぞ!大和に何がわかる!?』

 

『いくらあなたが『ミッドウェー』の生まれ変わりで!行く宛がなくて受け入れてくれたのは感謝していたとしても!大本営に来れば良いじゃないですか!』

 

『む?ミッドウェーというのは…。』

 

「何?大和さんにはバレてるの?」

 

「そうみたいだね…。」

 

『うるさい!私はあそこが良いんだ!』

 

『どこが良いんですか!?あそこよりここの方が自由になれるし!訓練もないのに!』

 

『大和くん、ミッドウェーとは…。』

 

「うっわー…。廊下めっちゃ修羅場じゃん…。」

 

「提督、そんな人ごとに言ってるけど、ほぼ提督のせいだからね?」

 

『こんな大本営など!あそこに比べたら面白くもない場所だ!』

 

『なっ…!今なんて言いました!?』

 

『何度でも言ってやる!ここはつまらなくて!仕事だらけで艦娘としての活動も出来ない!だから私は出て行ったんだ!』

 

『ここ以外ならどこでも良いんじゃないですか!なら!ここ以外に手配しますから!そんな場所より、他の方が良いですよね!?』

 

『くっ…!それとこれとは話が別だろう!?』

 

『同じです!それに何ですか!?ドミナントさんがいるから良いんですか!?武蔵はドミナントさんのなんなんですか!?』

 

『おーい…。ミッドウェーとは…。』

 

「元帥殿、ファイトです。」

 

「それより、入れ終わったから廊下に行くよ。そろそろ止めないと…。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントと蒼龍の行動も終わり、廊下へ出ようとドアに手をかける。

 

ガチャ…

 

「武蔵、そろそろやめたほうが…。」

 

「提督は私の愛しい人だ!それの何が悪…い…。」

 

「あ…。ドミナントさ…大佐…。」

 

「ミッドウェーとは…。」

 

「……。」

 

ドミナントは悪いタイミングで出て来てしまった。大和が“しまった”と後悔した顔になり、蒼龍は黙ったままで、元帥は何故かしょんぼりしている。

 

「…その…武蔵…。」

 

「……。」

 

ドミナントが申し訳なさそうに呼ぶ。武蔵の顔は分からない。が、気持ちはわかる。好意を持っている相手に聞かれたのだ。しかも、ほぼ喧嘩中の時に…。気まずさが限界突破している。すると…。

 

「……。」

 

ダッ!

 

「武蔵!」

 

武蔵はドミナントのことを見ず、何も言わずに走り出し、長い廊下の暗闇に消えて行った。

 

「…すみません。元帥殿。用件は後で話してください。」

 

ドミナントも後を追う。

 

「…大和くん。あとで話がある。執務室に来るんだ。」

 

「……。」

 

元帥が大和に言い、執務室に行った。




あれ?デジャヴ?…まぁいい。ネタがないんだ。コロナウイルス嫌ですね。皆さんも、気をつけてください。もちろん、筆者は気を付けています。…マスク何処かに売ってないかなぁ〜。
登場人物紹介コーナー
開封厳禁用の特殊な封筒…見た目はただの封筒。開発班からの速達。封筒は思いっきり破ろうとしないと破れないが、それはあくまでも普通の人間の場合。ドミナントたち元がACの人間なら簡単に破れてしまう。


「長門コーナーだ。実は、このコーナーを作るだけで30分以上かかっている。」
そうなんだ。
「む?今回は筆者か?」
まぁね。前も出たと思うけど。
「そうか。」
まぁ、今回活躍した人は前回とか出ちゃってるからね。
「まぁな。」
今回、何話そうか。
「そうだな…。今まで出てきた者の詳細を知りたい。」
例えば?
「そうだな…。前回やった元帥殿のことみたいな説明だ。」
誰を書けば良いの?
「…元帥のことを詳しく聞きたい。あと、提督のこともだ。」
了解。元帥は前回やった通りだけど、もう一つ付け加えないといけない事があったんだよ。
「それは?」
この小説の設定で2年前の大決戦、そんな人間と艦娘たちの窮地に対して、常に冷静に対応、状況の整理、情報を集めて的確な指示を出し、艦娘たちを勝利に導いたのが現在の元帥。つまり、その時の英雄だね。
「英雄だったのか…。あの人が…。」
そだよ。で、ドミナントはハーレムになるのも見るのも許さないタイプ。もし、どこかのハーレムな提督とドミナントが鉢合わせたら、ハンマーを持って吹っ飛ばすかも…。
「本当か?」
うん。まぁ、ドミナント自身ハーレムになりたくないから返事をしないんだけどね。
「自分勝手な奴だ。」
まぁ、そんなことをしたら、1人に必ず絞らなくてはならなく、ほかの人…艦娘?の想いを踏みにじることになるのが嫌なんだよ。だから、一時の恋心としか見ていないね。艦娘たちがいつかより良い相手を見つけることを願っているんだよ。
「そうなのか…。」
ドミナントの設定を決めている筆者が言うんだ。間違いない。
「そうか…。」
それより、次回だな。次回、第151話「帰還しました」。次回はドミナントたちが帰ります。
「私ではなく、筆者が…。新しい…惹かれるな…。」


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151話 帰還しました

タイトルのネタすらなくなったらもう終わりだな…。
「…最終回とか考えてる?」
いや?もうとっくに考え終わってるから。
「そう…。」
…覆しネタも無くなった。というより、最近忙しく、書く暇がなくなってきまして…。
「どうして?」
…春だよ?仕事で新入りやら入るでしょ?面倒や尻拭いは最初のうちはやらなくちゃいけないし…。
「…大変ね。」
そうなんだよ…。まぁ、この前書きは思っていることをそのまま書いているから10分やそこらで終わるんだけどね…。てか、この小説、リアリティ追求もしているから、計算方法や公式、距離や時間など、化学方式も使っているから、大体が現実に通用するんだよね…。
「例えば?」
第4佐世保鎮守府の場所から大本営の場所や、第4呉鎮守府の場所。時間も計算してあるから、場所も大体は分かったり。
「へぇ〜。」
まぁ、実際、それらの計算のせいで投稿が遅れたりするんだけどね…。あと、ドミナントが深海棲艦にアタックして、どれくらいで吹っ飛ぶのかとか…。
「そんなことまで…。」
深海棲艦とドミナントの強度や体重を計算して、どのくらいの速度で当たったら吹っ飛ぶのか?とか。
「無駄にリアリティ追求するわね…。」
まぁ、それも小説を書いて楽しむ醍醐味だよ。ツッコミとかあったらよろしくお願いします。
「見るんじゃなくて書いた方が楽しいかもしれないものね…。」
そうだよ。テレビとかで見て、ツッコミだらけなところを、自分ならこうするって感じで書いてるし。
「ふぅ〜ん。」
というより、この先バトルが多くなりますね。対陸軍、対深海棲艦、対暗躍者などなど…。
「ネタバレよ?」
ネタバレって…。おそらく誰もが分かってるよ。おそらく…。
「そう…。それじゃぁあらすじやるわよ。」
了解。
「第4呉鎮守府所属、神通です。」
おぉ〜。神通さんですか。
「はい。」
あらすじを頼みます。それと、ついでにその刀の説明できますか?
「はい。この刀は提督から譲り受けたものです。平家に代々伝わる刀だとか…。でも、これは誰にも知られていない刀だとか…。刀の名前は『小烏丸』、『薄緑』の兄弟分の『豪猫辰』です。」
もらったってことは意味わかるかな?それが代々伝わっているってことは。
「えっ?それって…。…!ま、まさか…。」
そう。意味わかった?
「……。」
「顔を赤くしちゃったじゃない。」
意味が伝わって良かったよ。
「提督…そんな遠回しに…。言われるまで気づきませんよ…。」
「良かったわね。それじゃぁ、あらすじ頼めるかしら?」
そうすれば、すぐに戻れるから。
「は、はい。」

あらすじ
前回、第4呉鎮守府ではやっと榛名さんが帰ってきました。長い修行を終えたとか…。見るからに強そうでした。変わってないように見えますが、かなり強くなっています。…まぁ、最初に確認された『榛名』でもありますけど…。

つまり、大決戦経験者です。


…………

大本営

 

「待て!武蔵!」

 

「……。」

 

走る武蔵をドミナントが追いかける。

 

「武蔵!」

 

「……。」

 

だが想像以上の速さに、直ぐに見失う。

 

「はぁ、はぁ…。どこだ…?」

 

ドミナントは長年のデスクワークで体力がすぐになくなる。

 

「…愛しい人…か…。…どうしてこうなっちゃったんだろう…。」

 

ドミナントは考えながら探すのだった。

 

…………

執務室

 

「…何故、呼ばれたかわかるな?」

 

「……。」

 

この部屋に大和と元帥がいる。

 

「いくら熱くなったとしても、アレは少し駄目だろう。」

 

「…はい…。」

 

「ドミナント大佐は良い奴だ。それくらい君もわかっているはずだ。」

 

「そっちですか…。」

 

「それもある。が、君はどうしてもドミナント大佐を認めていないような節がするぞ?」

 

「…だって…。」

 

「だって…なんだ?」

 

「だって、彼は化け物なんですよ?」

 

「化け物では無いと言ったのは君だが?」

 

「…彼が突然攻撃してくるかもしれません…。そうなったとき、私たちには対抗手段がありません…。ドミナント大佐は…。彼は“歩く銃”なんですよ?“生きた兵器”なんですよ?」

 

「…大和、今何と言った?彼を“歩く兵器”と言ったか?」

 

元帥が少し目つきを鋭くする。

 

「……。」

 

「大和、それは言ってはいかんぞ。よく考えてみろ。それはお前たちも同じことだろう。」

 

「……。」

 

「我々人間は、『艤装』と言う名の武器を持った、『艦娘』と言う名の君たちがいる。どういう意味か分かるか?我々も君たちを恐れているんだ。いつ裏切るか分からない。深海棲艦と手を組んだ君たちを想像してみろ。我々が使っていた兵器でも傷つかない深海棲艦が、今まで味方で心強かった君たちと手を組む…。恐ろしいと思うぞ。まだこの国でも艦娘反対派が僅かながらいる。戦いが終わったあとすぐに君たちを抹殺しようとする動きも少なからずある。君たちを兵器としか思わない提督もいる。だから、まだ君たちに権限が無いんだ。だが、私がそうはさせない。君たちが頑張っているのを知っているし、人間の心がしっかりとあるのもわかる。私は君たちを“歩く兵器”だとは思わない。いや、思えない。…だが、君の言い分は歴とした差別だ。」

 

元帥が厳しく言う。

 

「…ですが…。…ですが…。

 

大和は目の縁に涙を浮かべながら俯いてしまった。

 

「…君の言い分もわかる。」

 

そんなやるせない気持ちの大和を見て、元帥が言う。

 

「…こういう経験は初めてなのだろう。君たちに絶対的な天敵がいないから。君が彼らを天敵に思うのも普通だ。我々も深海棲艦を天敵だと思っている。だが、君たちと同じじゃないか。君たちが人間を助けたから、人間の中から君たちを信じる者が現れた。彼らも艦娘を助けたから、艦娘の中から信じる者が現れた。彼らも平和を願っていて、君たちも平和を願っている。我々も平和を願っている。同じなんだよ。願う物は同じだ。その願いに『人間』も『艦娘』も『彼ら』もないんだ。差別なんてどこにも無い。願う気持ちも同じだから。」

 

元帥が優しく語りかける。

 

「だから、彼らを少しくらい信用してもいいんじゃないかな?」

 

元帥が大和の顔を覗き込む。

 

「…はい…。…そうですね。…彼らも同じ…ですね。」

 

「そうだ。彼らも同じだ。差なんてどこにも無い。」

 

「…はい。」

 

大和は少しスッキリしたような顔になっていた。

 

「それと…。武蔵の件についてだが…。」

 

「はい…。いくら妹といえど、失礼なことをしました…。武蔵の気持ちを汲むべきだったと思います…。それに、挑発したような言動をした私に非があります。熱くなってしまって、ドミナント大佐にも失礼なことを言いました…。あとで詫びを入れておきます…。」

 

大和はシュンとしながら言う。自分がどのくらい大層なことをしたのか改めて分かったからだ。…と言っても、ドミナントは全然気にして無さそうだが…。

 

「…いや、大和くんだけではない。その場に私もいたのなら、止めなかった私も悪い。それに、武蔵も言いすぎたことを思っている筈だ。君たちは姉妹艦だ。切ってもきれない縁だ。…彼らが帰る前に仲直りしておくといい。これが最後だった場合、物凄く後悔するぞ。…本当に…。」

 

「元帥殿?」

 

「…ん?あ、いや。何でもない。よし!じゃぁ、行くか。」

 

「?はい!」

 

元帥の説教が終わり、執務室から2人が出て行った。

 

…………

 

「武蔵の奴どこに行ったんだ…?」

 

ドミナントはこの広い大本営の中を彷徨う。

 

…………

No.2448

 

「武蔵と提督どこ行ったんだろう…。」

 

蒼龍が部屋で待っている。そこに…。

 

「ただいま。」

 

武蔵が何ごともなかったかのように入ってくる。

 

「えっ?武蔵!?提督は?それに、どこ行ってたの!?」

 

「いや、恥ずかしい話…。急に腹痛が出てな…。先日の大和のチョコソース和えにやられたと思う。」

 

武蔵は申し訳なさそうに言う。

 

「あ〜…。あれは流石にね…。私も残したし…。…て!そんなこと言っている場合じゃなくて!提督は!?」

 

「あぁ…。何か追っかけて来たが、振り返る余裕も無かったんだ…。それに、女性が便所へ駆け込むところをついてくるのは変態な行為だ。」

 

「提督は武蔵のあの言葉を聞いちゃったから逃げちゃったと思って追いかけてたんだよ!」

 

「そうなのか?」

 

武蔵は全く気にした風もない。

 

「…どうしてそんなに落ち着けるの?」

 

「?何故取り乱さなくちゃいけないんだ?」

 

「?…!」

 

武蔵の言葉に、何かに気がつく蒼龍。

 

「…もしかして、感情を間違えてる?」

 

「?」

 

「提督のことを考えて、何を思い浮かべる?」

 

「…面白そうだな。それに、強い。あと、知りたいな。」

 

「…あっち系のことを考えて、どんな気持ちになる?」

 

「あっち系とは?」

 

「みなまで言わせないで。18禁の方よ。」

 

「特に何も…。」

 

「…うん…。間違いなく間違えてる。」

 

蒼龍は額に手を当てる。

 

「?」

 

「武蔵、深海棲艦だった頃の影響かもしれないけど…。それ、違う感情だよ…。」

 

「そうなのか?」

 

「…大和さんと同じような感じ…?」

 

「…少し違うな。何というか…親しみやすいような…。」

 

「…間違いなく友人とかそこらよ…。」

 

「そうなのか…。」

 

「…提督…。」

 

盛大な勘違いによって、面倒なことになってしまったドミナントたち…。そこに…。

 

コンコン、ガチャ…。

 

「提督…!」

 

「…じゃありません。元帥殿と私です。」

 

「すまんな。」

 

大和と元帥が来た。

 

「武蔵。先程はごめんなさい。少し言い過ぎました…。」

 

「いや、私も言い過ぎた。つまらないなどと言って悪かった…。」

 

2人が謝る。

 

「…私も止めなくて悪かった。」

 

「元帥殿はほぼ悪く無いのでは…?」

 

元帥が言っているが、蒼龍がツッコミを入れる。

 

「…て!武蔵!?ドミナント大佐は?というより、何で?出て行ったんじゃ無いんですか!?」

 

「うん?あ、ああ。今頃か…。」

 

そして、蒼龍が全貌を説明する。

 

…………

 

「…馬鹿みたいじゃないですか…。私…。」

 

大和はシュンとしている。

 

「大和くんは前々からどこかが抜けているところがあるからな。秘書艦にした理由の一つでもある。」

 

「そんな基準だったんですか!?」

 

元帥が半分笑いながら言う。

 

「と言うより、提督は?どこにいるか分かりますか?」

 

蒼龍が元帥に聞く。

 

「ここは見かけよりも広いからな…。まぁ、適当に歩いていれば、保護されるだろう。」

 

「保護って…。」

 

元帥の冗談に蒼龍がツッコム。そして、ドミナントが帰るのを待つのだった。

 

…………

工廠

 

「どこだここ?すごい兵器っぽい物ばかりだな…。」

 

ドミナントは遥々歩いている。

 

「…艦娘たちが現れる前…。戦争でもしてたのかな…?」

 

ドミナントは戦車のような物を見る。昔に壊れたのだろう。もう動かないのは誰が見てもわかる。

 

……砲塔がない…。何でこんな物が?

 

武蔵を探し、歩きながら一つ一つ見る。

 

「…?これなんだろう?」

 

ふと、ドミナントが見つけたのは、丸いジャガイモのような形だが、両手を広げたくらいの大きさで、鉄で出来ている。おそらく朽ち過ぎて形が歪に変化したものだろう。完全に錆びて、鉄臭い匂いが漂う。

 

「…わっ!?」

 

だが、ドミナントが触れた途端に、そこがポロポロと削れた。

 

「朽ち過ぎてるだろ…。一体何年前のなんだ…?」

 

ドミナントは直ぐに、触ろうとする気持ちを止めて歩き出す。すると、真っ暗な部屋の扉が少しだけ開いているのに気づく。

 

……武蔵、あの中かな?でも、立ち入り禁止って書いてある…。…でも、いるかもしれないし、一応…ね。

 

ドミナントはその部屋に入る。そこは、大きな…工廠の中枢みたいな広い場所だ。東京ドームが入るくらい…。

 

「…真っ暗で何も見えん…。」

 

ドミナントは部屋の電気を探すが、どこにも見当たらない。

 

「…?うん?」

 

だが、そうこうしているうちに目が慣れてきて…。

 

「何だ…?これ…?」

 

ドミナントが見たのは巨大な軍艦のようなものだ。

 

「…誰だ?ここは関係者以外立ち入り禁止の筈だが…?」

 

そこに、整備士のような人が暗闇から懐中電灯を照らす。

 

「とある鎮守府の提督です…。」

 

ドミナントは逃げずに話す。逃げたら余計面倒になるからだ。

 

「?提督…?…あぁ、第4佐世保のか。迷ったのか?」

 

「いえ、武蔵がどこか行ってしまって…。…見てませんか?」

 

「知らんな。…見落としたなんてことはないぞ。一応赤外線センサーがある。お前が入ってきたから出てきたんだ。」

 

「なるほど…。ありがとうございます。それでは…。」

 

ドミナントは退室しようとするが…。

 

「待て。」

 

「……。」

 

呼び止められる。そして、整備士が近くに来て…。

 

「これ、持っていくと良い。ここは暗いからな。」

 

懐中電灯を渡してくれた。

 

「足元、気ぃ付けろよ。」

 

そして整備士が肩をポンと一回叩いたと思ったら、予備の懐中電灯を照らして奥に行った。

 

「……。」

 

ドミナントはその懐中電灯を照らしながら部屋を出て、歩いて行った。ちなみに、そのあとすぐに憲兵に連行され館内放送という辱めを受けたあと部屋に戻った。

 

…………

No.2448

 

「酷い目にあった…。」

 

ドミナントが帰投する。

 

「連れ戻しに来た私まで恥ずかしい思いしたんだから…。あとでアイスね。」

 

「むぅ…。」

 

蒼龍に言われて、唸るドミナント。そこに…。

 

「ところで、ドミナント大佐、急ぎの用があるんだが…。」

 

「はい。何でしょう。」

 

元帥に言われ、ドミナントが返す。

 

「…さっきの封筒、実は紙が一枚抜けてしまっていたみたいでな…。すまないが、出してくれないか?」

 

「「「えっ…?」」」

 

ドミナントや蒼龍、武蔵は息を飲む。破ってしまって、袋の中だ。

 

「…元帥殿、私がしっかりと入れておきます。だから、そんな手のかかることをしなくても大丈夫ですよ。」

 

「いや、そうはいかないのだよ。決まりでな…。本当に面倒だと思うが…。」

 

「なら、封筒を開けるのも何ですから、新たな封筒に入れてもらった方が…。」

 

「開封のことか?別に平気だろう。私が入れて、このテープを貼れば。それに、見てしまうこともある。」

 

「大丈夫です。私と、武蔵たちがいれば安全です。」

 

「だが…。」

 

元帥とドミナントが言っていると…。

 

「元帥殿、ドミナント大佐が大丈夫とおっしゃっています。」

 

大和がドミナントの肩を持ってくれる。

 

「むぅ…。そうか…。なら、頼む。…が、一応のためこの袋の中に入れておく。」

 

元帥が別の袋の中に入れて、渡してくれる。

 

「これで、用件は終わりだ。…おそらく、今日会うのは最後だろう。気をつけて帰りたまえ。」

 

「あっ、はい。」

 

元帥は握手したあと、退室した。

 

「…では…。」

 

大和は武蔵の目を見たあと、ドミナントに頭を下げて退室した。

 

「…ふぅ、バレるところだった…。」

 

ドミナントが安堵の息を漏らす。

 

「…いや、バレていた。」

 

だが、武蔵が否定した。

 

「何故だ?」

 

「少なくとも、大和にはバレていた。肩を持ってくれたのも、それが分かったからであろう。姉妹艦だから、あの目を見れば通じる。」

 

「…そうか。」

 

「…感謝しておけ。」

 

「ああ。」

 

そして、ドミナントたちは帰還しました。

 

…………

第4佐世保

 

「ん〜…!やっぱり、ここが一番だよな。」

 

「そうだね〜。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントたちは帰って早々、肩の力を抜く。

 

「じゃぁ、各自解散。俺は夕張にこれを渡してくるから。」

 

ドミナントが言い、武蔵たちは自室に戻る。

 

…………

倉庫

 

「んーん〜っと、いたいた。夕張。」

 

ドミナントが夕張を見つけて、声をかける。

 

「?提督?何ですか?」

 

夕張が作業台の上にドローンを飾っていたが、手を止め、ドミナントの近くへ来る。

 

「これ、大本営から極秘の書類らしいんだけど…。」

 

「開封厳禁って書いてあるのに、何でもうすでに開封してあるんですか…。」

 

「アクシデントだ。」

 

「アクシデント?それは…。提督の虚栄心が生んだ必然です。」

 

「なに?」

 

「その言い訳では、何のタクティカルアドバンテージになりません。実用とふざけは違います。」

 

「くっ…。」

 

「それと…提督は一つ、根本的な誤解をしています。」

 

「?」

 

2人はノリに乗っている。

 

「その言い訳が嘘じゃ無いくらい、私が見抜けないとでも?」

 

「…夕張大好き。」

 

「私もです。」

 

2人が笑う。そして…。

 

「それより、中、ちゃんと見てね?俺は見ちゃいけないらしいから。」

 

「なるほどです。どれどれ〜?」

 

夕張が気楽に見る。が…。

 

「……。」

 

中を見た途端、一変して真面目な顔になる。

 

「…これが実現可能なんですか…?」

 

「えっ?何だって?」

 

「あっ、いえ…。……。」

 

夕張は真面目に見ている。そして、最後の紙を見たあと…。

 

「…提督、お願いがあります。」

 

「なんだい?」

 

「倉庫を当分借ります。それと、誰も入れないでください。食事の時はドアをノックして、ドアの取手の横に小さな扉みたいなものがあるので、そこを開けて入れてください。」

 

「えっ?」

 

突然言い出す夕張に困惑するドミナント。

 

「どうしたの?」

 

「それは…。…言えません。」

 

そして、夕張は一枚の書類をドミナントに見せる。

 

「!…筆で書かれてるってことは…。元帥直々の命令…!?」

 

それが何を意味するかなど説明するまでも無い。

 

「…あとは、この紙に書いてある指示通りです。」

 

夕張はもう一枚も見せる。

 

「どれ?」

 

…………

拝啓 ドミナント大佐

 

1.資材に関しては大本営が100%負担します。

2.夕張くんが作る物に関して深く聞かないこと。

3.夕張くん以外に作っている物を知られてはならない。

4.夕張くんの邪魔は一切してはいけない。

5.この件に関しては一切の他言無用である。

 

以上の5つを守ってもらいたい。ドミナント大佐…。突然大変申し訳ない。夕張くんの力が必要不可欠なのだ…。以上の5つの事項を守り、作ったものが完成した暁には、君たちに素晴らしい物をあげよう。何かは言えないが、良い物なのは確かだ。第2舞鶴鎮守府にも協力してもらっている。つまり、第2舞鶴鎮守府には相談しても構わない。頼みます。

 

元帥 敬具

 

…………

 

「は?」

 

ドミナントは困る他ない。

 

「つまり…?」

 

「当分私は倉庫暮らしです。提督、ゾンビにならないでね。」

 

「えっ?ゆ、夕張は良いの?いや、ならないよ…。」

 

「別に大丈夫です!内容が内容なので、逆に嬉しい気持ちもあります!」

 

「えっ?そ、そう…。」

 

「あっ、でも、不満があるとすれば、深夜アニメが見れないことですかね…。提督、録画お願いします。」

 

「あ、ああ…。」

 

「セントエルモちゃんに関しては、提督に任せます。それでは、覗かないでくださいねっ!」

 

夕張は張り切った様子でドアを閉める。

 

「はいっ!」

 

「えっ?何?どゆこと?どしたの?」

 

と思ったら、夕張がセントエルモを外に閉め出した。

 

バタン!

 

「えっ…?何…?なんなの…?」

 

セントエルモはわけがわからない。突然外に閉め出されたのだから…。

 

「ドミナント提督、何かあったの?」

 

「えっ?あ、ああ。うん。」

 

そして、ドミナントは説明したのだった。

 

…………

???

 

「……。」

 

この暗い場所で、何やらドデカイものやあんなもの、こんなもの、変なのを整備しているハスラー・ワンがいる。そこに…。

 

「そろそろ計画の準備は出来たかな?」

 

1人の男?が来る。

 

「…見て分からないか?今整備しているところだ。」

 

「アハァハ。まぁ、そんなもんかね。」

 

「それより、前作った機械だが…。有効活用できて何よりだ。」

 

「興味深い意見だ。全く、驚異的だ。まさか、“僕たちがいた世界”からデータを盗み出すことができる代物を作るとはね。それに、僕たちの世界と似ている世界からも…。」

 

「そのデータを元に作ったのが、ここらにある『巨大兵器』だ。」

 

暗躍者の2人は恐ろしいものを作っていた。そこに…。

 

「ふぁ〜…眠い。」

 

もう1人が来る。

 

「やぁ、おはよう。どうかな?ここの暮らしは。」

 

「人を回収するのは面倒だね。」

 

「何人回収したんだい?」

 

「0。」

 

「アハァハァ。君も単純に働いたらどうかな?」

 

「まぁ、必要だと思う人材を見つけたらね。」

 

暗躍者の2人が話していると…。

 

ドガァァァァン!!

 

「「「!?」」」

 

いきなり爆発が起き、三人が驚く。

 

「…溝の原因を辿ってみて来てみれば…。お主らか?」

 

先輩神様が溝の原因の場所を突き止めたのだ。

 

「…!主ら、異界の者じゃな…。妾が元に戻してやろう。」

 

先輩神様が優しく提案するが…。

 

「…私はこの世界を再生する…。それからだ。」

 

「興味深いね。でも、計画は、既に始まっている。」

 

「面倒だね。」

 

反応は三者三様。だが、要約すると行かないのだ。

 

「それは残念じゃのう…。この世界の者でないなら、干渉できるからなるべく穏便に済ませたかったのじゃが…。…仕方ない。ここで始末する。」

 

先輩神様が槍を取り出す。

 

「あっ、僕は手出しできないから、まぁそのつもりで…。今開発中でね。」

 

1人が下がる。

 

「使えない奴だ。」

 

「僕たちだけか〜。」

 

ハスラー・ワンが呟き、もう1人が出る。

 

「お前と共闘など、私の使命に背くが…。この際仕方ない。それに、“新しく取り付けた機能”も気になる。」

 

「オッケー。決まりっ。じゃぁ、手加減できないけど、一応逃げる準備はしておいてね。」

 

2人がAC化…?…する。

 

「…妾に勝つ気でいるとは…命知らずじゃのう…。」

 

先輩神様がとてつもない殺気を出すが、2人は全く怯んだ様子もない。

 

「…そう思ってみれば、お前の実力を知らないな。」

 

「そう?なら、見せてあげる…。この力…。多分、誰も敵わないと思うけど…。でも、外でね。」

 

ヒュゥゥゥン!

 

1人は風のような速さで外へ出た。

 

「…戦う場所を変える。異論はないな?」

 

「良かろう。」

 

ウ"ィーーーン!

 

ダッ!

 

そして、三人は外で…。世界じゅうを震撼させるほどの戦いをした。




随分遅い投稿です。やめようかどうか本気で悩みました。
登場人物紹介コーナー
武蔵…元ミッドウェーであり、大和の姉妹艦。大和と同じく、どこかが変に抜けている。
蒼龍…今まで書いた中で、一番ネタに困る人。この小説では影が薄い。
大和…大本営秘書艦。大決戦経験者。どこかが抜けている。
元帥…海軍のトップクラス。提督の指揮権が彼にある。だからと言って、無闇に乱用しない。大決戦の英雄。
ドミナント…自称人間。
巨大な軍艦?…戦艦大和や武蔵より大きい軍艦。
整備士…大本営所属。上の奴の手入れをしていた。意外と優しかったりする。
夕張…第4佐世保所属。科学力、技術力は第2舞鶴鎮守府の面々に引けを取らない。結構『自称人間』に好意がある。
セントエルモ…オリキャラ。元はACⅤの戦艦から。容姿は決まっていない。
ハスラー・ワン…アリーナのトップ。かの有名な『ナイン・ボール』の搭乗者。戦闘で破壊しても、アリーナから消えない謎がある。この小説では、彼の容姿の没設定を使っている。つまり、筋肉モリモリのマッチョマン。グラサンはいつでもどこでも掛けている。
暗躍者…1人は、性別不明の10代後半らしき人間。もう1人は、世界を滅ぼそうとしている者。
先輩神様…正式名称はあるが、続けたら書きます。槍を主な武器として使っており、天界で、この世界の管理をしている。神様が作った溝から、現れた暗躍者たちを元の世界に連れ戻そうとした。容姿は大体決まっている。


「やってきたな。まぁ、今回活躍したのは俺かな?」
ドミナントだね。
「む?長門は?」
あぁ、最近流行のウイルスにやられたらしい。
「マジか。…まぁ、あの服装じゃ寒いに決まってるしな…。」
まぁ、そういうことだ。
「それより、アクシデントのネタわかったかな?」
さぁ?この小説の主な設定とは関係ないし。
「だが、この小説の何の関係もないシーンではたまにそのネタを披露するよな?」
そりゃそうだ。じゃ無いと、もうすでにネタが切れているから終わる。
「…そうか…。もうアクシデントは起きないと良いな。」
アクシデント?あれは…お前の虚栄心が生んだ必然だ。
「なに?」
確かにいい銃だ。だが、そのアングレームには、何のタクティカルアドバンテージもない。実用と鑑賞用は違う。
「く…。」
それと、お前はもう一つ根本的な誤解をしている。
「?」
お前に、俺は殺せない。
バァン!
グフゥッ!
「リンクス(山猫)は獲物を逃がさない…。」
じ、次回…第152話…『セントエルモの1日』…だ…。


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鎮守府編 4
152話 セントエルモの一日


終わりですね。めでたしめでたし。
「えっ!?な、何!?どゆこと!?」
いや〜、長かった。実に長かった。
「???」
あと48話も続けられる自信ない…。いや、35話か…。
「な、何で…?」
ネタがないんだ!ネタが!面白さが湧いてこないんだ!アイデアも!
「まぁ、何とかなるんじゃ無いの?」
考えているネタはある…。が!そこまでのステップが行かない!
「な、何で…?」
よく考えてみ?陸軍編まで、あと一つのイベントがあるんやで?それに、夕張のアレもこの鎮守府編で終わらせなくちゃいかんし。長い!長すぎる!1日一話投稿でも48日!約1ヶ月!仕事もしていて、休みも欲しい筆者には無理だ!
「まぁ、気が遠くなるわよね…。でも、見続けてくれている人いるでしょ?」
いや、おそらく、終わるまで見続けるという根性のある素晴らしい人たちだよ。いつ終わるのかまだかまだかと首を長くして待っている。てか、AC要素皆無!
「まぁ…。セリフとか覚えてる?」
面倒系と、乙樽系、穴系、Ⅴ系くらいしか覚えとらん…。やり直さなければならない…。ラストレイヴンのリム・ファイヤーのセリフすら忘れているし…。
「まぁ、そんなシリアスとコメディを合わせること自体おおよそ不可能ですもの…。」
ACのコメディ系が嫌に少ないもんね…。検索しても、筆者以外で約4件…。もっと、ドバーッて感じのことがやりたいな。尻アスじゃなくて。
「丁度鎮守府編じゃない。今やるしか無いわね。」
まぁ、タイトルからして、それをやるような予定だけど。
「頑張りなさい。」
へいへい。じゃ!今回のあらすじは〜?
「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだy…。」
はい。では、自称アイドルのあらすじに入ります。
「む〜!ひどいよ〜!…ていっ!那珂ちゃんパーンチ♪」
ぐぼはぁぁぁぁ!!!
「ついつい手が出ちゃった♪キャハッ☆」
い…、言い方…や…見た目と…は…裏腹…に…な、なんて…威力…。
「ちょ、ちょっとあんた!大丈夫!?手の関節が変な方向向いているけど!?顔も曲がってるじゃない!」
大丈夫じゃ…無いっ…ス…。
「アイドルをいじめちゃダメだよ〜!」
は、はい…。すみませんでした…。
「あっ、治った…。」

あらすじだよ〜
前回、第4呉鎮守府では、榛名さん帰還のライブをしたよ〜!みんな聞いてくれて、とっても感謝してる!


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「…仕事終わりっ!」

 

ドミナントが仕事を片付ける。そして、秘書艦の方を見て…。

 

「…そう思ってみればさ。」

 

「?」

 

「セントエルモって、よく顔を合わすけど、秘書艦初めてじゃない?」

 

本日の秘書艦はセントエルモのようだ。

 

「そう思ってみれば、そうだね。」

 

セントエルモが筆の手を止めないで話す。

 

「いつも何してんの?」

 

「いつも倉庫にいる。」

 

「へぇ〜。」

 

「……。」

 

「……。」

 

……会話続かね〜…。

 

ドミナントは心の中で思う。すると…。

 

「…仕事終わった。もう自由よね?」

 

セントエルモが仕事を終わらせる。彼女もドミナントとほぼ同じのスピードだ。

 

「あ、ああ。それより、終わったならアイスでも食べに…。」

 

「それじゃ。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントが言いかけている最中にセントエルモは直ぐに居なくなってしまった。

 

「…暇だなぁ。」

 

ドミナントは1人、執務室で鉛筆を削るのだった。

 

…………

倉庫

 

「…手伝いたいけど、絶対に入れてくれないよね。」

 

セントエルモは外で呟いている。

 

「窓でも開いていれば…。」

 

倉庫の周りを歩いていると…。

 

「どうしたんか?センちゃん?」

 

後ろから声をかけられる。

 

「センちゃんって呼ばないでよ…。龍驤さん…。」

 

エセ関西弁を話す龍驤だ。

 

「なんや〜?いつもの友人が閉じこもってるから、覗きに来たんか?」

 

「そんなところ。」

 

「否定せんかい。」

 

セントエルモの清々しいくらいキッパリと言ったことにツッコミを入れた。

 

「提督がダメ言うとるやないか。」

 

「そうだけど…。」

 

「心配する気持ちもあると思うんけど、提督の言うことは守らんと…。」

 

「まぁ、一応アレでも提督だしね。」

 

話していると…。

 

パリィィィィン!!

 

「ギャァァァァァ…!!!」

 

「ドミナントーーーー…!」

 

遠くで窓ガラスが割れる音と、誰かの悲鳴、そして神様の声が聞こえる。

 

「…変人だけど。」

 

「せやな…。」

 

2人は苦笑いしながら何があったのか想像した。

 

…………

甘味処 間宮

 

「あら、いらっしゃい。」

 

「2人。」

 

「2人やで〜。」

 

笑顔で迎える間宮さんに、2人はそれぞれの反応をする。

 

「セントエルモちゃん、久しぶりね。」

 

「うん。」

 

「龍驤ちゃんも。…昨日ぶりね。」

 

「無理に合わせんでもええよ…。」

 

2人は間宮さんに挨拶を終える。

 

「奥の席が開いているから、座って?」

 

「はい。」

 

「りょーかい。」

 

2人は奥の席に座る。

 

「あっ、そうそう。セントエルモちゃん、これ。」

 

間宮さんはセントエルモに飴玉をあげる。

 

「…いつも思うんですけど、何故毎回くれるんですか…?」

 

セントエルモは間宮さんに不思議そうに聞く。

 

「戦艦なのに…。その…駆逐艦みたいに小さくて…少し…可愛いから…。」

 

「ガーン…。」

 

間宮さんは少し恥じらっていた。一方、セントエルモは身長のことを気にしていて、ショックを受けている。

 

「あはは。まぁ、うちと一緒や。身長にコンプレックスがあるのはセンちゃんだけや無いで。」

 

「センちゃん言うのやめて…。」

 

「あら?センちゃんって言うの?今度からそう呼びましょうか?」

 

「間宮さん…やめてください…。」

 

セントエルモが意地悪く笑う2人に困った感じに言う。

 

「…ご注文は?」

 

「アイス。」

 

「じゃぁ、うちは餡蜜で。」

 

「かしこまりました。ちょっと待っててね。」

 

そして、間宮さんはキッチンに入って行った。

 

「……。」

 

すると、龍驤がセントエルモを見つめる。

 

「…何?」

 

「いや〜…。うちと身長はほぼ変わらんちゅうのに、なんか…なぁ〜…。」

 

龍驤は恨めしそうにセントエルモの胸を見ている。彼女は駆逐艦の大きさであるが、一応戦艦のため、それなりに大きい。

 

改二で大きくなると思ったんやけど…。

 

龍驤が呟く…。大きさは変わらない。現実を突きつけられる。

 

「?何か言った?」

 

「いや?別に…。それより、何でそんなにでかいん?不公平やないか。」

 

「?」

 

「みなまで言わせんといてな。胸や。」

 

「言ってんじゃん…。てか、それを言うなら、龍驤さんの方が強いじゃん。私より遠距離攻撃も、艦載機を飛ばして攻撃出来るんだから…。」

 

セントエルモが困った感じで言う。

 

「近距離ではセンちゃんの方が強いやないか。」

 

「だから、センちゃんやめてって…。近距離でしか当たらないなら、あまり強く無いよ。だって、駆逐艦より近くに行かないといけないんだもの。被弾率が倍以上に跳ね上がるし、早撃ち対決みたいなものだからこっちが負けたら一発大破だし…。」

 

「でも、負けることそうそう無いやん。」

 

「そりゃ…。戦艦だよ?資材が消し飛ぶ…。」

 

「提督みたいなこと言いよった…。」

 

2人が話していると…。

 

「はい、龍驤さんには餡蜜。セントエルモちゃんにはアイスね。」

 

間宮さんが持ってきてくれる。

 

「おぉ!これはうまそうやないかい。」

 

龍驤は早速、餡蜜を食べようとするが…。

 

「どうかしたんか?センちゃん。」

 

「だからセンちゃんって…。…もういいや。飴玉のトッピングを頼んだ覚えはないんだけど…。」

 

セントエルモのアイスの上に、これでもかと言うくらい飴玉が乗っている。

 

「サービスやないか。ええやん。」

 

「サービスって言わない。いじめって言うの。」

 

「大袈裟やなぁ。」

 

「そんなに言うなら、半分あげる。」

 

「あっ!餡蜜に入れるのやめてーや!味が変わってしまうやろ!」

 

「どうだ。くらえ。くらえ。」

 

セントエルモは遠慮せず、半分…いや、3/4くらい入れていた。ちなみに、その様子を間宮さんが覗いていて微笑んでいたそうだ。

 

…………

数分後

 

「やってますか〜?」

 

「美味しいものあるかなぁ〜?」

 

セントエルモが飴玉アイスを食べ、龍驤が渋々飴だらけの餡蜜を食べているところに、聞き慣れた声がする。

 

「提督と…。」

 

「神様やね。」

 

2人が顔を見合わせる。

 

「…珍しい組み合わせやな。」

 

「抱きついたりするけど、2人で食べ物を食べるってあまり無いよね。」

 

2人が話す。すると…。

 

「ん?龍驤に…。セントエルモか?」

 

「えーっと…。ジャックくんの艦娘と、この鎮守府にしかいない艦娘だね。」

 

「名前くらい覚えろ。」

 

ドミナントと神様が2人に気づく。

 

「提督、初めて話すなぁ〜。」

 

「?…!ああ。そうだな。」

 

「出番増やしてーな。」

 

「すまない。筆者に言ってくれ…。」

 

ドミナントと龍驤が話している。

 

「な〜にっにしっようっかな〜♪」

 

神様はメニューを見ている。

 

「…神様、ヨダレ…。」

 

「あっ、ごめんごめん…。」

 

神様はセントエルモに指摘されて、急いで拭く。

 

「…セント…エス…?。…センちゃんは何にしたの?」

 

「…センちゃん連鎖勘弁してください…。本当に…。」

 

「?」

 

セントエルモのやめてオーラが出ていたので、今度から言わないようにする神様だった。

 

「…セント…エスモちゃんは何にしたの?」

 

「なんかすごく惜しい気がする…。私は、アイス。」

 

「コント…エスモちゃんのそれ、飴玉が乗っているみたいだけど…。」

 

「遠くなった…。これはいじめの一環。気にしてないし、ふざけなのは確かだから別にいい。」

 

「セント…エスロちゃんは何が良いと思う?」

 

「惜しい、そこじゃ無い…。何が良いか…ですか…。私は…。」

 

「じゃぁ、これにしようっと。」

 

「今聞いてきましたよね?…まぁいいや。」

 

神様がメニューを見ている間、セントエルモはお手拭きをきれいに並べていた。そして、しばらくして…。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

間宮さんがやってくる。

 

「俺はうさぎか餡蜜。」

 

「餡蜜ですね。」

 

「私は例のアレで。」

 

「例のアレですか。」

 

2人が言う。

 

「神様、例のアレって?」

 

セントエルモが聞くと…。

 

「ふっふっふ〜。秘密。」

 

「えぇ…。」

 

神様はいたずらな笑みを浮かべ、ドミナントがやれやれとしている。

 

「…てか、提督が来たってことは、奢ってくれるんかいな?」

 

龍驤が冗談でニヤニヤしながら言う。

 

「そうなの?流石、ドミナント提督。太っ腹。」

 

「え?何?」

 

「よっ、提督!日本一!」

 

「いや〜…その…。」

 

「格好良い。英雄。イケメン。」

 

「…まぁ、奢ってやることも造作もないんですけどね。はっはっは。まぁ、上司としての労いですよ。任せたまえ。」

 

……ちょろい。

 

……ちょろい。

 

ドミナントは2人の口車に乗り、奢ることになった。神様が微妙な顔をしていたのは言うまでも無い。

 

…………

夕方

 

「何やかんやでもう日暮れやないかい。」

 

「そうだね。」

 

「日が伸びてきたとはいえ、まだ寒いなぁ。」

 

「そうだね。」

 

2人は今堤防のベンチに座っている。すると…。

 

「あら。龍驤さんにセントエルモさん。どうかしたんですか?」

 

赤城が声をかける。加賀もいたということは、弓道場からの帰りだろう。

 

「いや〜、うちの出番少ないなぁって。」

 

龍驤は笑いながら言う。

 

「大丈夫ですよ。必ず出ますから。」

 

「そう。諦めないことね。」

 

2人はそれぞれの言い方で励ます。

 

「一航戦は心が広いなぁ。」

 

「龍驤さんも一航戦だったことがあるじゃ無いですか。」

 

「それ、最初やないか。そのあとは赤城と加賀や。」

 

2人が話す。

 

「…龍驤さんは一航戦だったことがあったんだ…。」

 

セントエルモが呟くと…。

 

「ええ。彼女は一航戦だったことがあったわ。」

 

加賀が言う。

 

「私たちが改修などをしている間、臨時で入ってくれた数少ない者の1人…。」

 

「へぇ〜…。だから、あんなに強いんだ。」

 

セントエルモは話して笑っている龍驤を見て…。

 

……私も、それくらい強くなれたらなぁ…。

 

自嘲した笑みを浮かべながら、そんなことを思う。

 

「…セントエルモさんも、十分に強いわよ。」

 

「えっ?」

 

セントエルモは加賀を見る。彼女の瞳は心の奥底まで見透かされているようだった。

 

「…隠しているのはわかるけど、恐ろしい武器がありますよね?」

 

「……。」

 

「おそらく、教官がよく見せているけど、一発も私たちに向けて撃っていない例の武器…。その種類よね。」

 

「……。」

 

「…夕張さんがそれを作れるとは思えない。」

 

加賀がジッとセントエルモを見つめる。

 

「…これはね。私が艦だったころ、深海にあったの…。私の直ぐ目の前に…。」

 

「……。」

 

「暗くて怖くて静かで寂しかった…。だから、これだけは手放したくなかったの…。その思いが反映したのか、艦娘になった時には持ってた…。」

 

「そう…。」

 

セントエルモはその武器をギュッと抱きしめる。

 

「…威力を見てみたいけど…。資材がなくなるような気がします。」

 

「…ペイント弾なら平気。少し撃ってみるね。」

 

セントエルモはペイント弾を用意して、演習場へ行く。もちろん、龍驤や赤城、加賀を引き連れて。

 

…………

演習場

 

偶然、誰もいなく、見ている者はその三人くらいしかいない。

 

「では、私たちが艦載機を飛ばします。それを撃ち落としてください。」

 

赤城と加賀は期待と興奮を胸に忍び込ませて飛ばす。

 

「なんや〜?新しい装備かぁ〜?」

 

龍驤は気楽にニヤニヤしながら見る。

 

「じゃぁ、行くよ。」

 

セントエルモはいつもの主砲を外して、ソレを装備する。すると…。

 

ガチャン!ヒュィィィン!バチッ!バチチチチチ!!!

 

その武器が電気を走らせ、50m以上離れているのに、衝撃が伝わる。

 

「な…、何や…これ…?」

 

「「……。」」

 

龍驤と赤城、加賀は言葉を失う。

 

「く…は…。」

 

セントエルモが苦しそうにする。

 

『不明なユニットが接続されました。身体に異常な障害が発生しています。直ちに使用を停止してください。』

 

その武器が説明する。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

「伏せてください!!!」

 

セントエルモの叫び声と共に赤城が叫び、全員が伏せた。

 

 

ギュィィィィィン!

 

ドッガアアアアアア!!!

 

凄まじく、普通の大砲じゃ鳴らないくらいのドス重い音が鳴り響き、発射しただけで辺りが吹き飛ぶ。そして…。

 

カッ!

 

ドオオオオオオオオン!!!

 

核攻撃と見間違うくらいの大爆発。ペイント弾、艦載機どうこうの問題じゃ無いのは明らかだ。それにより、第4佐世保鎮守府どころか、近くの街、近くの鎮守府にそれが見られたのは明らかだろう…。

 

…………

演習場

 

パラパラ…。

 

「いや〜…。すごい威力やったな…。」

 

龍驤が瓦礫から顔を出す。

 

「本当ですね…。伏せていなければどうなっていたことやら…。」

 

「……。」

 

赤城が苦笑いして、加賀がその身を起こす。

 

「センちゃんは?」

 

龍驤がセントエルモを探す。

 

「イタタタ…。体力の半分くらい持っていかれた…。」

 

セントエルモが瓦礫の中から岩をどかして現れる。

 

「凄まじい威力ね…。これは本当のいざと言う時以外使わないことね…。敵味方双方とてつもない被害が出るもの…。」

 

加賀が言う。

 

「つまり、私は確実に諸刃の剣ですか…。」

 

セントエルモが顔についた煤を拭う。

 

「いや〜…。でも、これが提督にバレてないとは思えへんなぁ〜…。演習場の半壊、鎮守府の窓ガラスは全部割れたと思うし、下手したら怪我人がおるかもしれへん。」

 

龍驤は笑いながら言う。まぁ、結果的に後でこっ酷く全員が叱られたのだが…。




はい。終わりです。今回のキーワードは深海に“これ”があると言うことでしたね。
登場人物紹介コーナー
セントエルモ…前回を参照。
龍驤…久しぶりの登場。ジャックがドロップさせた艦娘で、エセ関西弁を話す。ちなみに、胸部装甲は悲しいほどなi…。一航戦を務めたこともある。ドミナントに関しては友人的な扱い。
間宮さん…甘味処間宮の店長。食事、お酒管理は彼女の仕事であり、腕も一流。名物は間宮餡蜜。
飴玉…駆逐艦に人気がある。
神様…ドミナントが出身の世界の神様。その世界のことは確実に放っており、ドミナントをとっている。想いをよく伝えるが、大抵空振り。
赤城…赤い一航戦。
加賀…青い一航戦。
セントエルモの一撃必殺武器…ヒュージミサイル。

「来たぞ。長門コーナー。」
「今回はうちかい。」
「龍驤だな?どうだった?提督に叱られた気分は。」
「あんなに怒るんやな…。少し反省してる…。」
「流石に、アレはやりすぎだ。…怪我人が奇跡的に0人だったとはいえ…。」
「でも、気になるやん。」
「…まぁ、そうだが…。」
「それより、うちの詳しい紹介するで。」
「ずっと待ち望んでいた…。」
「うちが初めて進水されたのは1931年のことや。」
「ほう。」
「だがな、それ以前に色々あったんや…。」
「?」
「作られてる最中に、大幅な設計変更があってな。元は1段だった格納庫を2段にするっちゅうことになったんや。でも、もうすでに船底は出来上がってたんや…。つまり、逆三角形のような不安な形になってしもうたんや。」
「そんな無茶な…。」
「でも、排水量を調整するために色々やって、バランスも兼ねて重油タンクをつけてくれたんや。」
「なるほど。」
「でもな、それが胸に反映されていないのはおかしいと思わへん?」
「結局そこか。」
「なんと…、その重油タンク…。使われへんかったんや!」
「な、なるほど。」
「でもな、一応誇れることはあるんやで。最初に空母として造られたのはうちや。」
「胸の件はそこなんじゃないか…?」
「それに完成の間近、友鶴が転覆して、色々な改造をさせられたんや…。」
「災難だな…。」
「それに、台風にも遭ってひどい目に遭った…。」
「ご愁傷さまだな。」
「それに、実戦でも色々あったんよ。」
「そうか。」
「…うちが沈む海戦の時、部隊を分散させる作戦がでたんや。そして、うちは孤立。船員たちも多くが死んでしまったんや…。」
「……。」
「でも、そんなうちの沈みも無駄にならず、囮として沈むことができたのは少し嬉しいかな。後は翔鶴と瑞鶴に任せたんや。その後がどうなったかは知らんけど。…活躍していたら嬉しいなぁ。」
「…そうだな。」
「じゃぁ、そろそろ次回のタイトル言わんとな。」
「…そうだな。次回、第153話「散々な日」。…何が起こるんだろうな。」
「まぁ、うちより散々な目に遭うなんてことは無いと思うけど?ははは。」


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153話 散々な1日

153話です。
「153話ね。」
残り47話。陸軍編はどうなるんだろう…?…まぁ、なんとかなるだろう。
「前向きね。」
そうじゃ無いと生きていけんよ…。
「大変ねぇ。」
最終話で陸軍編終わりかな?
「そんなに長いのね。」
色々あったなぁ…。
「そんなにねぇ〜。」
あと、深海棲艦のことなんだけど…。
「?」
酷すぎる…。この小説の設定を書いていて、可哀想になってしまった…。
「何なのよ…。その設定…。」
まぁ、話す話題がそれしか無いから。それじゃぁ、そろそろあらすじ頼むよ。
「はいはい。この人よ。」
「はて?ここは…?」
瀬戸大佐ですね。あらすじ頼みます。
「ここがどこなのか気になるが…。まぁ、よかろう。」

あらすじ
榛名が帰還して騒いだ。拙者らも鍛錬を積まねばならぬな。


…………

第4佐世保 執務室

 

「仕事終わりっ!」

 

ドミナントが仕事を片付ける。そして、秘書艦の方を見て…。

 

「…そう思ってみればさ。」

 

「?」

 

「セントエルモって、よく顔を合わすけど、秘書艦初めてじゃない?」

 

本日の秘書艦はセントエルモのようだ。

 

「そう思ってみれば、そうだね。」

 

セントエルモが筆の手を止めないで話す。

 

「いつも何してんの?」

 

「いつも倉庫にいる。」

 

「へぇ〜。」

 

「……。」

 

「……。」

 

……早く仕事を終わらせたくて構っていられない…。

 

セントエルモは心の中で思う。そして…。

 

「…仕事終わった。もう自由よね?」

 

ドミナントと同じスピードで仕事を終わらせる。

 

「あ、ああ。それより、終わったならアイスでも食べに…。」

 

「それじゃ。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントが言いかけている最中に、セントエルモは直ぐに出て行った。

 

「…暇だなぁ。」

 

ドミナントが1人、執務室で鉛筆を削っていると…。

 

バァァァン!!

 

「!?」

 

ドアが勢いよく開かれる。

 

「ドミナントー!」

 

「!?」

 

神様が飛びついてきた。だが…。

 

パシッ

 

「えっ?」

 

ドミナントが空中にいる神様の腕を掴み…。

 

「一本背負いっ!」

 

「!?」

 

ドミナントが神様を投げるが…。

 

トンッ

 

「えいっ!」

 

「な、なんだと…!?」

 

背負って投げた直後に背中ではなく、足をつけて、神様がドミナントを飛ばす。忘れていないだろうが、ACより“神様”の方が強い。そして…。

 

パリィィィィン!!

 

窓ガラスが割れて、ドミナントが外に…。神様は顔が真っ青になっている。まさか、ここまでになるとは思いもしなかったのだろう…。

 

「ギャァァァァァ…!!!」

 

「ドミナントーーーー…!」

 

ドミナントは文字通りに落ちていき、神様が窓から身を乗り出して叫んだ。

 

…………

 

「全く…。死ぬかと思ったぞ。」

 

ドミナントは運良くガラスが刺さらなかった。

 

「ごめんなさい…。」

 

神様は謝る。アホ毛が萎びている辺り、本当に反省しているみたいだ。

 

「全く…。しょうがない奴だな。」

 

「許してくれるの?」

 

「ああ。わざとでは無いみたいだしな。それに、大半自分のせいだし。」

 

ドミナントは紅茶を入れながら言う。

 

「やったぁ!ありがとう!」

 

だが、神様が嬉しさのあまりドミナントに抱きつき…。

 

「あっつ!?」

 

「!?」

 

熱い紅茶がドミナントに…。もう目も当てられない…。

 

「……。」

 

「……。」

 

2人は沈黙する。ドミナントが睨み、神様はもうこの世の終わりみたいな顔だ。

 

「…あ、あの…。」

 

「……。」

 

神様が言うが、ドミナントは何も無かったかのように椅子に座り、紅茶を飲む。

 

「…ごめんなさい…。」

 

「……。」

 

無視。

 

「…ねぇ…。」

 

「……。」

 

「…聞いてる…?」

 

「……。」

 

だが、ドミナントは全く聞いていない。そこに…。

 

コンコン、ガチャ

 

「提督、作戦が…。…どうかしたんですか?」

 

赤城と加賀が入ってきて、気まずい空気が流れていることに気づく。ドミナントは神様には目もくれず、神様は目の縁に涙が溜まっているが、泣いている余裕がないくらい反省した顔になっている。

 

「赤城、作戦がどうした?」

 

「えっ?あっ、はい。…作戦…ではありませんが、休日の予定の変更を…。」

 

「わかった。視野に入れておく。いつだ?」

 

「3日後を休日にして、4日後の日に働きます。」

 

「わかった。」

 

ドミナントが予定表を見ながら言う。

 

「…何かあったんですか?」

 

赤城が神様とドミナントを見る。

 

「「……。」」

 

2人は何も言わない。そこに…。

 

「提督、少し話があります。」

 

加賀が言う。

 

「…私は、神様に話があります。」

 

赤城が察して言う。

 

「神様、外で話しますから、ついてきてください。」

 

赤城が神様を連れて行く。

 

…………

廊下

 

「何かあったんですか?」

 

「なんでも無いよ。私は大丈夫。」

 

神様が目の縁の涙を拭き、笑顔になる。

 

「…なんでも無いと言う人になんでもあるんです。それに、何が大丈夫なんですか?」

 

赤城が神様に言う。

 

「…あのね…。…うっ…うっ…。わぁぁぁん!」

 

神様が赤城に抱きつき、泣いている。赤城はそんな神様の頭を優しく撫でていた。

 

…………

執務室

 

「提督。」

 

「どうした…?」

 

「何があったか説明してもらいます。」

 

加賀が鋭い目つきで聞いてくる。

 

「話すまで、私はここにいるわ。」

 

「……。」

 

「…言いますよね?」

 

加賀の目がさらに鋭く、冷たい目に変わった。

 

「…わかった。」

 

…………

廊下

 

「そうですね。それは大変でしたね…。」

 

「うん…。」

 

「…大丈夫ですよ。きっと仲直りできます。あなた自身、非があると感じて、本当に反省しているのであれば、提督は必ず許してくれます。」

 

「本当…?」

 

「ええ。」

 

赤城は自身の胸の中で泣いている神様の背中を優しくトントンしたり、頭を撫でたりしている。

 

「…思う存分泣いたらスッキリしましたか?」

 

「…うん。」

 

神様が返事をして、赤城から離れる。

 

「なら、あと少し心が落ち着いたら、入って仲直りしましょう?」

 

「うん。」

 

赤城が微笑みながら言い、神様が返事をする。

 

…………

執務室

 

「提督、あなたはもう子供では無いんだからしっかりしてください。」

 

「うむ…。」

 

「紅茶が溢れて、手が火傷したくらいでなんですか。それだけで彼女を悲しませたの?」

 

「……。」

 

執務室では、ドミナントが加賀に説教をくらっている。

 

「彼女は、あなたのことが好きだから、構ってほしいからこういう行動をしていることに気づきなさい。」

 

「はい…。」

 

「いい大人が、子供を泣かせて恥ずかしいと思いなさい。」

 

「だが、神様は俺よりも年上…。」

 

「黙って聞く。」

 

「…はい…。」

 

「カッとなって、ついしてしまったかもしれないけど、冷静に考えれば、相手がどのような気持ちになるかわかるわよね。彼女も、わざとでは無いわ。」

 

「…はい…。」

 

加賀も、一応ドミナントの気持ちはわかっている。両方を踏まえて言っているのだ。

 

「…反省したら、仲直りしなさい。提督自身も、心がもやもやしているでしょう?」

 

「……。」

 

実際、もやもやしたままだ。そこに…。

 

ガチャ

 

執務室のドアが開いて、神様と赤城が入ってくる。

 

「……。」

 

「……。」

 

2人は、中々目を合わすことができない。

 

「提と…。」

 

「加賀さん。大丈夫です。」

 

加賀が何か言おうとするのを赤城が止めて、見ている。ドミナントたちの耳には届いていない。

 

「…その…。…すまなかった…。」

 

「ううん…。私も、もう少し考えて行動するべきだったよね…。…ごめんなさい。」

 

ドミナントが言い出し、神様も謝る。そして、2人の目が合う。

 

「……。」

 

「……。」

 

神様が笑顔になり、ドミナントの口元も緩んだ。

 

「ありがとう…!」

 

「…こちらもな。」

 

神様は今度は慎重に…。よく考えて抱きついた。ドミナントはそれを受け入れた。

 

「ドミナント…。本当に大好き…。」

 

「…そうか…。」

 

神様とドミナントが抱きしめ合っている。気のせいだろうが、執務室の温度が上昇しているのがなんとなく伝わる。甘々だ。

 

「…ゴフッ!」

 

「!?赤城さん!?」

 

だが、そんな空気もつかの間。赤城が微笑んだ顔で血を吐いて倒れる。ちなみに、赤城は甘い空気にやられたのでは無い。彼女も、ドミナントに好意を抱いている。すなわち、神様とドミナントの関係の手助けをしたことになったのだ。

 

「加賀…さん…。私の…亡骸は…、海に…流して…くだ…さい…。それ…で…は…。」

 

「赤城さん!?しっかりしてください!赤城さーーん!」

 

倒れた赤城を支え、加賀が叫んだ。




はい。次回は後半ですね。後半まで続くとは思っていませんでした。ちなみに、赤城は死んでません。
登場人物紹介コーナー
セントエルモ…前々回を参照。
赤城…前回を参照。
加賀…前回を参照。
ドミナント…女の子を泣かす最低な奴。
神様…前回を参照。

「久しい長門コーナーだ。」
「今回のゲストは私かな?」
「自称神様じゃないか。」
「いや、本当に神様だから…。というより、先輩が来るところも一度は見ていると思うんだけど…。」
「見ている。」
「だよね?…で、何をすれば良いのかな?」
「自分の生い立ち、家族構成などだな。」
「えっ…。…嘘…。本当に言わなくちゃダメなの…?」
「…話せる限りに頼む。」
「…わかった…。天界のことは言いたくない…。でも、家族構成なら教えてあげられる。私とお兄ちゃん、そしてお父さんとお母さんの4人。色々あって、先輩に助けられて、世界の管理をさせてもらったの。」
「そうか…。色々あってとは?」
「…言いたくない…。」
「…そうか。まぁ、人には言いたくない過去は沢山ある。私も、言いたくないこともあるしな。」
「…ありがとう。で、次回は?」
「良いタイミングだ。次回か。次回は…えーっと…。…次回、第154話『散々な1日 その2』…だ。」
「同じタイトルに付け足ししただけだね。」
「…そのようだな。」


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154話 散々な1日 その2

忙しい…。それに、小説のやりたいことができません…。
「どうしたの急に?」
コメディ要素不足だ。
「バトル編が長いの?」
もちろん、瑞鶴に出番はあるけどね。
「へぇ。…面倒ね…。」
そりゃね。で、今回は長くなりすぎたところを分割した話だけど。
「へぇ。」
うん。…聞く気ないでしょ。
「よくわかったわね。じゃぁ、そろそろあらすじ始めましょう?」
へいへい。今回は〜…。
「五月雨って言います!よろしくお願いします。」
おー、元気だねぇ。
「あらすじお願いね。」
「はいっ!」

あらすじです!
前回、こちらでは榛名さんと稽古をしました!凄く強かったです…。でも、久しぶりに海に出れて嬉しいです!

いい子だなぁ。
「そうね。…何かしたらダメよ?」
ぐへへへへ…。
「……。」
……。
ドガァァァァ!
ギャァァァァ…!


…………

第4佐世保 執務室

 

「さてと…。では提督、私たちはこれから弓道場へ行きます。」

 

加賀が気絶している赤城を背負って言う。

 

「そ、そうか。…赤城は大丈夫か?」

 

「誰かさんのせいで大丈夫じゃないわ。」

 

「…すまん…。」

 

「…その状態で謝られても逆効果です。」

 

現在、ドミナントは幸せそうな…安らかな顔をしている神様に抱きつかれたままだ。

 

「…神様、そろそろ離れてくれ。」

 

「いや。」

 

「……。」

 

こんな感じだ。

 

「…すまん。これは本当にどうしようもないから…。…だから、そんな軽蔑した目で見ないで…。お願い…。」

 

ドミナントは、軽蔑を超えてゴミを見るような目の加賀に言う。

 

「はぁ…。分かりました。あとで謝っておいてくださいね。」

 

「すまん…。」

 

「赤城さんに言ってください。…それじゃ。」

 

加賀はそんな感じで部屋から出て行った。

 

「…てか、そろそろ離れて…。」

 

「えっ…。」

 

「そんな目で見るな。あとで何か奢るから…。」

 

「うーん…。…わかった…。」

 

ドミナントが言い、渋々神様が離れる。

 

「それにしてもさ。」

 

そして、しばらく沈黙した後、ドミナントの口が開く。

 

「何?」

 

「…暇だね。」

 

「…そうだね。」

 

神様が言い、秘書艦椅子に座る。この部屋にはソファーもストーブもエアコンも無い。あるのは提督椅子、提督机、秘書艦椅子、秘書艦机のみだ。内装は広く、壁紙もあるがそれ以外ない。殺風景だ。

 

「…紅茶飲むか?」

 

「ミルクティーなら飲む。」

 

神様がニヤニヤしながら言う。つまり、作って欲しいということだ。

 

「じゃぁ、要らないな。」

 

だが、ドミナントはなんの躊躇いもなく言った。

 

「えぇっ!?ちょ、ちょっと待って!普通ここは作ってくれるところでしょ!?」

 

「俺は察するのが苦手でねぇ。悪いが、自分で作ってくれ。」

 

「ひどい…。」

 

「冗談だ。だから、涙を拭け。子供かお前は…。」

 

ドミナントはウヴァを神様のカップに入れ、ミルクを入れる。ちなみに、ドミナント自身のものは自分で独自に調合した紅茶だ。そして、良い香りを出しながら自分のカップに注いでいく。

 

「くんくん…。何?それ?」

 

神様はミルクティーではなく、ドミナントの紅茶に目をつける。

 

「これか?調合した物だ。ドミナント印の。」

 

「ドミナント印なんてメーカーあるんだ…。知らなかった…。」

 

「いや、無いよ。そんなメーカー。俺が独自に調合した紅茶のこと。香りは落ち着いて、味はほのかに甘い感じ。例えるなら、香りは森林のようで、味はミント風味のマスカット。」

 

「何その紅茶…。」

 

「調合の結果。レシピは秘密。これは俺だけが楽しめば良い…。他の人も独自に作るべきだ。作りまくって、自分に合った紅茶、もしくは新しい紅茶ができた時ほど嬉しいことはない。」

 

ドミナントはその紅茶に何か思い出があるようだ。その証拠に、静かに目を閉じて、思い出している。

 

「……。」

 

神様はドミナントが見ていないのをいいことに、少し味見した。

 

「…ん。美味しい…。」

 

神様は呟く。

 

「…ん?何か言ったか?」

 

「あっ、い、いや。何も?」

 

神様は急いで自分の口をつけたところを拭いて、証拠を隠滅しようと図る。

 

「…さて、匂いを一通り楽しんだ後、飲もう。」

 

「う、うん…。」

 

ドミナントは紅茶を揺らして、見たり、匂いを嗅いだりして、楽しんでいる。

 

……どうしよう…。バレたら怒られるよね…。でも、このまま何も言わなければ間接キスになっちゃう…。そうなったら、さらに怒られるよね…。悪くて一生追放…。良くて天界直送かも…。

 

神様はどうして良いか分からなくなり、おろおろしている。

 

「…ふぅ、そろそろ良いか。では…。」

 

そんな神様を気にせず、ドミナントがカップに口をつけようとしたが…。

 

コンコン

 

「?飲もうとしたのだが…。」

 

ドアがノックされ、ドミナントが紅茶を置いて立ち上がり、ドアを開けに行く。神様はどうするか考えている。

 

ガチャ

 

「ん?金剛か。」

 

「久しぶりネー!」

 

ノックしたのは金剛らしい。そして…。

 

「紅茶のodor(匂い)がしたから来たネー!」

 

「外まで匂うのか…?…おかしいな…。そこまで匂うものでも無いはず…。」

 

「くんくん…。…それに、独自の調合の紅茶…。レアな紅茶デース…。」

 

「そこまで分かるのか…。」

 

ドミナントは金剛の嗅覚に驚く。彼女は、ドミナントにとって紅茶に関して先輩のような人…艦娘?だ。

 

「!あれデース!」

 

「あっ、おい…。」

 

金剛がドミナントの紅茶を見つけ、優雅に飲む。神様はそれを見て、ホッとしている。

 

「…む…。これは…。…マスカットの味が濃すぎマース。その茶葉をもう2gほど減らすネー。…まぁ、これはこれでdelicious(美味しい)ですけど。」

 

金剛が一口で全てを理解して、ドミナントに指導する。

 

「いや、わざと濃くしているんだ。少し甘めが良かったからな。」

 

ドミナントは口元を緩ませながら言う。

 

「流石提督デース。…良い分量を理解しながら、あえてこの味にするとは。」

 

金剛は目を静かに閉じる。

 

「…目を閉じると、目の前にforest(森)を感じるネー…。ミントの爽やかさと、マスカットのsweetness(甘さ)が上品で良い一品デース…。」

 

金剛が褒めてくれる。

 

「…口に合って良かった。」

 

ドミナントが言う。が。

 

「…?でも、少し違う味も混ざっているネー。」

 

「えっ?違う味?」

 

「……。」

 

金剛が何かに気づき、ドミナントが首を傾げる。神様がビクッとしたのは言うまでも無い。

 

「どんな味だ?」

 

「…なんというか…。よくわからない味デース。」

 

「き、気のせいじゃ無いかなー…?」

 

神様は目を逸らしながら言う。

 

「そ、そんなはず…。てか、神様はミルクティーだからわからないだろ。」

 

「それは…。…そうだけど…。」

 

ドミナントが疑いの目を向けるが、神様は顔すら合わそうとしない。金剛は不思議がっている。

 

「…でも、poisoned drink(毒入り飲み物)とかじゃ無いのは確かデース。」

 

「当たり前だ。誰が自分の飲みものに毒を入れるんだよ。」

 

ドミナントと金剛が話し、神様は冷や汗を垂らしまくっている。ミルクティーを持つ手が震え、カップと受け皿が当たり、カチャカチャ音を立てている。

 

「…神様はどう思う?」

 

「ひぇっ!?」

 

「「ひえ?」」

 

神様はドミナントに不意に声をかけられて、いきなり立ち上がる。

 

「あっ、えっと…。その…。あの…。」

 

神様の目がグルグル回り、言葉にならない声を上げる。

 

「どうした?顔が真っ青だぞ?それに、汗も出てるし…。具合が悪いんじゃ…。」

 

「いや…その…。」

 

神様はもうダメだと心の中で感じている。

 

「金剛、医療の知識はあるか?」

 

「No problem(問題ない)!私に任せるネー!」

 

「大丈夫なのか…?」

 

「額が熱ければ風邪!咳が出れば風邪!フラフラするなら風邪デース!」

 

「うぉーい!?ちょっと待てーい!風邪しかないぞー!」

 

「なんとかなるネー!」

 

「ならねーよ!落ち着け!」

 

金剛が突っ走り、ドミナントが止めようとするが、時既にお寿司。

 

ゴチンッ!

 

金剛が神様と額を重ね合う。

 

「…?」

 

神様は痛がっていたが、金剛は気づく。

 

……どこかで嗅いだ紅茶のodor(匂い)…。…!なるほど!神様が飲んだから…。

 

神様の息で微かに感じとる金剛。

 

「…熱は無いようデース。」

 

「?そうか?」

 

金剛が神様から離れて言う。神様は金剛にバレたと確信する。

 

「それより、提督ー。」

 

「何だ?」

 

……言われる…。言われちゃう…。

 

神様は覚悟を決めて、ギュッと目を固く閉じる。

 

「紅茶の味、気のせいだったネー。」

 

「えっ?」

 

金剛が笑顔で言い、神様は不思議に思う。

 

「そうか?」

 

「そうデース!」

 

「そうか。」

 

金剛が言って、ドミナントが納得する。

 

……どうして…?

 

神様は思う。金剛が庇ってくれたのだ。

 

「それじゃぁ、提督ー。私、これからmilitary exercise(演習)があるから、また今度ネー。」

 

金剛がそう言いながら歩き出し、神様の横を通り過ぎる。

 

「…どうして…?」

 

すれ違いざまに2人は話す。ドミナントには聞こえていない。

 

「あんな顔をしてたら、誰だって助けたくなりマース。…次は多少怒られるかもしれないけど、正直に言う方が良いデース。」

 

神様が振り返るが、金剛は真っ直ぐに扉の前へ行き…。

 

「それじゃぁ、提督ー。今度のtea time(お茶会)楽しみにしていマース!」

 

「おう。行くから。この紅茶を披露するよ。」

 

「了解ネー!」

 

金剛は笑顔で退室して行った。

 

「…どうした?」

 

一方、ドミナントは神様を見る。

 

「…ううん。なんでもない。」

 

「?」

 

……感謝…しないとね。いつかお礼をしなくちゃね。

 

神様は金剛に感謝したのだった。




長い…。次回で終わりだと良いです…。神様とドミナントの話しですね。追伸 戦艦の金剛が見つかっていた場合、教えてくだされば幸いです。
登場人物紹介コーナー
ドミナント…紅茶好きの変人。
神様…前回参照。
赤城…一航戦。
加賀…一航戦。
金剛…金剛型4姉妹の1番上。金剛。提督loveの代名詞。元気で優しい。
ドミナント印…ドミナント料理など、沢山ある。

「長門コーナーだ。」
「それと、guest(ゲスト)の金剛デース!」
「金剛型4姉妹の1番上だな。」
「今回はー!私の紹介をしマース!」
「おー。」
「実は、私は英国で二つの企業に取り合われたネー。私のためにケンカしないで状態デース。」
「そんなことがあったのか。」
「…まぁ、そのせいで色々事件が起こりマース…。」
「不吉すぎるからカットだ金剛。」
「英国の企業はその時代、とても素晴らしい技術力を持っていたネー!」
「その設計や技術を元に、日本で作られたのが比叡たちだからな。…まぁ、生みの親の違う姉妹…?いや、というより、お前が比叡たちの親なんじゃないか…?」
「そして作られた後、その時代、世界最大、世界最強という名の称号で、世界に名を轟かしたのが私デース!」
「一見、元気で明るい女の子に見えるが、凄いんだな。」
「人は見た目によらないって言うネー。」
「人ではなく、艦娘だがな。まぁ、『鬼の金剛』だけはあるか。」
「『蛇の長門』とも言われてたネー。」
「『地獄榛名』に『羅刹霧島』。」
「そして『夜叉比叡』デース。」
「懐かしいな。…まぁ、なぜ言われていたかと言うと、新兵のしごき。もしくは、訓練が厳しすぎるからな…。」
「もう1人鬼がいマース。」
「山城だな。」
「自害しようとした新兵もいたネー…。」
「そこら辺ブラックだからやめとけ。せめてここはほのぼのしよう。」
「…それにしても、私の遺体はどこにあるんデスカ…。」
「?…そうか。まだ見つかっていないんだな。…て、遺体言うのやめろ。」
「たまに夢で沈む瞬間を見マース…。」
「……。」
「でも、いつか見つかると信じてマース。」
「…そうだな。見つかるさ。必ず。」
「…だと嬉しいネー。」
「…さて、では次回を言わなくてはな。」
「次回?」
「次回、第155話『散々な1日 その3』だ。…て!また付け足しただけか!?…筆者、そこまで考えるのが良いと思うぞ…。」
「皆んな楽しく自由にするのが一番デース!」
「…そうなのか?」


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155話 散々な1日 その3

この前、とあるホビーショップで、ホワグリのプラモが4000円で売ってた…。
「安っ!?…でも、中古なんでしょ?」
中古だったけど、箱の表面に目立たないくらいの傷があるだけ。中身は全然平気。…買ったけど。
「へぇ〜。…でも前、新品のブルー・マグノリアの初回限定プラモデル買ったでしょ?あれ、どうなったの?」
……。
「…失敗した?」
いや?
「…もしかして、まだ作ってないとか…。」
……。
「…図星みたいね…。どうして作らないの?面倒くさいとか?」
断じて違う。…ただ、塗装を失敗した場合、取り返しがつかないことを考えると…。
「…で、今はどこにあるの?」
…飾る部屋に箱のまま他のと積み上がってる…。
「…このまま忘れてなければ良いけど…。」
最近忘れっぽくてさ…。前たまたま見つけたけど、忘れてた…。
「…はぁ…。」
……。てか、今頃気づいたけど…。
「…何よ。」
瑞鶴、ホワグリやマグノリア知らないでしょ…。
「本編じゃないんだからいいじゃない。」
そういう問題かい…。では、あらすじに入りましょう。
「今回は、この人よ。」
「待たせたわね。」
待たせたな。(BIG BOSS風)
「神風型駆逐艦、1番艦、神風。推参です!」
特攻は英雄…。
「そっちじゃないわよ。それに、その言葉は不適切ね。今では様々な思想があるから。」
そうか…。立派だと思うんだけどなぁ…。テロは違うけど。
「はぁ…。」
「ねぇ、私は何をすれば良いの?」
あらすじを頼みます。
「そうね。お願い。」
「わかったわ!」

あらすじ
榛名さんと稽古をしたわ。海って広くて、しょっぱいのね!大きな魚も数匹手に入れたわ!あとでみんなで食べるの。司令官は、人目を避けるように岩陰と松の木が生い茂ってるところで見てたわ!


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「はぁ…。」

 

ドミナントは執務室でため息をつく。

 

「どうしたの?」

 

そこに、秘書艦椅子に座っている神様が聞く。

 

「なんか、嫌な予感がしてさ…。凄いことが起きるような…。」

 

「何それ…。不吉なことは言っちゃダメだよ。」

 

「そうなんだけどねぇ〜…。」

 

ドミナントと神様が話す。

 

「…!。じゃぁ、気分転換も兼ねて、間宮さんのところへ行こう!」

 

「…そうだな。どうせやることも無いしな。それに、奢るって言ったし。」

 

そして、2人は立ち上がり、間宮さんのところへ行くのだった。

 

…………

甘味処 間宮

 

「やってますかぁ〜?」

 

ドミナントが暖簾を潜りながら言う。

 

「美味しいものあるかなぁ〜?」

 

神様がドミナントに続いて入店する。

 

「いらっしゃい。提督。それと、神様さん。」

 

間宮さんが笑顔で出迎えてくれる。

 

「2人だけど、空いてるよね?」

 

「もちろん。今は人数も少し…しかいないので、自由な席にお座りください。」

 

「ありがとう!」

 

間宮さんに言われて、ドミナントたちが席をどこにするか決めようとしていると…。

 

「ん?龍驤に…。セントエルモか?」

 

ドミナントが、何かを食べている2人を見つける。

 

「えーっと…。ジャックくんの艦娘と、この鎮守府にしかいない艦娘だね。」

 

「名前くらい覚えろ。」

 

神様が言い、苦笑いする龍驤とセントエルモ。

 

……セントエルモ…。俺が食べに行こうって言った時は断ったのに、龍驤と来たのか…。…もしかして、俺、やっぱり嫌われてるのかな…?…龍驤…つまり、ジャックの艦娘がいるってことは手を組んでるのかな?…革命…。ギロチン…。…死んでも無理っス。

 

ドミナントが思っていると…。

 

「提督、初めて話すなぁ〜。」

 

「?…!ああ。そうだな。」

 

エセ関西弁で話す龍驤が言い、ドミナントが返す。

 

「な〜にっにしっようっかな〜♪」

 

「…神様、ヨダレ…。」

 

「あっ、ごめんごめん…。」

 

セントエルモと神様が話す。

 

「提督は何食べに来たの?」

 

「う〜ん…。まだ決まってないんだ。」

 

「そうなんか。…うちのオススメは餡蜜や!」

 

「へぇ…。…なんか、それ飴のトッピングでもしたの?めちゃくちゃ飴多くない?」

 

「あぁ…。これはセンちゃんからのプレゼントや。」

 

「プレゼントにしては、嫌がらせの類いにしか見えないのだが…。それに、センちゃん?そう呼んでるの?」

 

「うちだけやけど。まぁ、本人は嫌がってはるし。」

 

「そうか。セントエルモも打ち解けてるんだなぁ〜。そのコミュ力。生きやすいものだな、ふらやましいよ。」

 

ドミナントと龍驤が話して、しばらくすると…。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

間宮さんがやってくる。

 

「俺はうさぎか餡蜜。」

 

「餡蜜ですね。」

 

ドミナントのジョークを完璧に無視して、即答する。ドミナントの心が少し傷ついた。

 

「私は例のアレで。」

 

「例のアレですか。」

 

神様と間宮さんが話す。

 

……例のアレってなんだよ…。

 

ドミナントが思う。

 

「神様、例のアレって?」

 

セントエルモも同じことを思ったみたいで、神様に聞く。

 

「ふっふっふ〜。秘密。」

 

「えぇ…。」

 

セントエルモが微妙な顔をする。答えなくてもどうでも良い感じだ。龍驤は困った感じの貼り付けた笑顔をしていた。

 

「てか、提督が来たってことは奢ってくれるんかいな?」

 

龍驤が突然言い出す。

 

「そうなの?流石、ドミナント提督。太っ腹。」

 

セントエルモも言い出す。

 

「え?何?」

 

……褒めて奢らせようとしてるのかな…?

 

ドミナントは思う。

 

「よっ、提督!日本一!」

 

「いや〜…その…。」

 

……そこまでして奢って欲しいのかな…?

 

「格好良い。英雄。イケメン。」

 

……セントエルモ。心にもないことを言うもんじゃない。…だが、これに乗ってやるか…。日頃頑張ってるし。

 

ドミナントは全てを理解した上で乗ってあげる。

 

「まぁ、奢ってやることも造作もないんですけどね。はっはっは。まぁ、上司としての労いですよ。任せたまえ。」

 

……余計な出費。でも、感謝してくれるなら別に良いかな…?

 

ドミナントがそう思いながら2人を見る。2人は騙してやったと言わんばかりの悪い顔でほくそ笑んでいた。

 

……どうせ、『ちょろい』とか考えてる顔だなぁ〜。あれ。はぁ…。まぁ、いいや。そんなに簡単に騙される提督として認識してくれた方が、接しやすいと思うし。秘密もぽろっと言いそうだしな。

 

どうやら、ドミナントの方が一枚上手のようだった。

 

……とか考えている顔だよね。あれ。私にはわかるよ…。

 

だが、神様の方が上手みたいだ。神様がドミナントの思想を理解して、微妙な顔をしていた。すると…。

 

「うちら、食べ終わったからそろそろ行くわ。」

 

「うん。」

 

龍驤とセントエルモが立ち上がる。

 

「そうか。またな。」

 

「じゃーねー!」

 

「そんじゃ、また会おう。」

 

「それでは…。」

 

それぞれが別れの挨拶を交わし、セントエルモと龍驤は店から出て行った。そこに…。

 

「お待たせしました。『餡蜜』と、『間宮特製パフェ』です。」

 

伊良湖が持ってきてくれる。

 

「久しいな。伊良湖。元気か?」

 

「はいっ!誰かのおかげさまで。」

 

伊良湖が笑顔で言う。

 

「誰だろうな。…ジャックか?」

 

「提督です。まぁ、ジャックさんにも世話になっていますが。」

 

伊良湖とドミナントが話す。

 

「ところで、神様のそれはなんだ?」

 

「『間宮特製パフェ』のことですか?」

 

神様が美味しそうに食べている物を見る。

 

「あれは、掲示板でしか知られていない裏メニューです。数ヶ月で一回品物が変わります。しかも、一日5食しか販売されていません。…ですが、ほぼ全ての艦娘がこれのことを知りません。注文してくるのは掲示板を随時チェックしている長門さんや大淀さん、お菓子やデザートの『におい』に敏感な神様くらいで…。…まぁ、1日3食は売れてますが…。」

 

伊良湖が困った感じに言う。

 

「それは問題だな。作ってあったら、食べ物が無駄になる。…あぁ、あと、それを俺にも一つ。」

 

「はい。」

 

ドミナントがペロリと餡蜜を完食したことを確認して、伊良湖が厨房へかけて行った。

 

……掲示板効果は薄いか…。毎日来れるわけじゃないしな…。

 

ドミナントは思う。普段、あまり来ない場所だからこそ、見落としがちなミスを。すると…。

 

(甘味。)

 

「?」

 

近くで声がして、ドミナントが見る。妖精さんがいたのだ。

 

(甘味…。)

 

「…?何この妖精さん…。可愛いぞ。」

 

その妖精さんは他のと違って、暴言を吐かず、何かを訴えるようにドミナントの袖を引っ張っているだけだった。

 

「甘味…か。妖精さんに任せるのは吉と出るか、凶と出るか…。」

 

ドミナントは悩んだ末に話す。神様は食べて、お腹が膨れたのか、うとうとしていた。

 

(…パフェくれるです…?)

 

「俺のをあげる。だから、掲示板のところを整理して欲しいんだ。頼む。」

 

(どんな風にです?)

 

「大事なことは目立つところにしてほしいだけ。」

 

(わかったです!)

 

ドミナントの取引に応じて、張り切る妖精さん。そして、ドミナントがテーブルの上に乗せた。身長的に、登るのが大変そうだったからだ。

 

「お待たせしました。」

 

伊良湖がパフェを持ってきてくれる。

 

「ありがとう。」

 

ドミナントが礼を言うと、少し微笑んで、伊良湖はレジへ行った。

 

「これだ。掲示板を整理してくれ。お前ならやり遂げられるかもしれん…。あとは頼んだぞ…。妖精さん…。」

 

ドミナントがとあるレイヴンのようなことを言う。…まぁ、名前がそうなのだから、妙にアレだが…。

 

…………

 

「ぅん…?ゅぅ…。ん…?」

 

寝ていた神様が目を覚ます。

 

「おはよう。神様。」

 

ドミナントが隣で言う。神様はドミナントに寄りかかって寝ていたのだ。顔が近い。

 

「…?…ふぇっ!?な、な、な…。」

 

「…仕方なかろう…。」

 

神様が驚いた声を上げ、ドミナントが面倒そうに言う。

 

「ど、どど、どうして…?」

 

「こんなところで寝るからだ。椅子から落ちそうだったから、こうしているんだ。」

 

現在、夕日の光が差し込んでいる甘味処『間宮』。艦娘たちがごった返していた。ドミナントはとっくに会計を済ませている。テーブルの上にはパフェの空容器があった。伊良湖は神様に毛布をかけてくれたらしい。

 

「起きたなら行くぞ。艦娘たちが異様に見ている。」

 

ドミナントが立ち上がり、店を出ようとする。

 

「ま、待ってよぉ。」

 

神様はヨダレを拭き、急いでドミナントの後を追いかけた。

 

…………

堤防

 

「いい夕陽だなぁ。」

 

「そうだね。」

 

ドミナントと神様がベンチで座っている。

 

「…今日は色々ごめんね。」

 

「?」

 

しばらく沈黙した後、神様が言う。

 

「今日は、私が押し掛けてきたせいで、大変な目にあったし…。」

 

「?」

 

「でも、1人だと寂しくて…。」

 

「AMIDAがいるぞ。」

 

「そうだけど…。他の女の子と一緒にいることを考えると…。どうしても…。」

 

神様が沈んでゆく夕陽を見ながら、申し訳なさそうな顔をする。

 

「…別に、俺は大変な目にあったなんて思ってないぞ。」

 

「えっ?」

 

「逆に、今日俺は沢山のことに気づいたし、楽しかったぞ。」

 

「?」

 

「俺を執務室から連れ出してくれてありがとう。」

 

ドミナントの口元が緩む。

 

「ほ、本当…?」

 

「そうだ。今日窓から落っこちたり、加賀に怒られたり、紅茶が飲めなかったりしたけどな。それも含めて、色々楽しかったよ。久々に遊んだ気分だ。」

 

「そう…なの…?」

 

「ああ。だから、謝らなくても良い。それに、変に気を使われた方が、お前らしくもないしな。」

 

ドミナントが言う。神様は優しく微笑んだ。

 

「ありがとう。」

 

すると、夕陽を眺めていたドミナントの頬に柔らかな感触がした。

 

「?なんだ?」

 

「な、なんでもないっ!」

 

ドミナントは神様を見ようとしたが、神様はすぐに立ち上がり、走って行った。

 

「…なんなんだ?…今の頬の感触は…?」

 

ドミナントは頬を撫でた。すると…。

 

カッ!

 

「?」

 

地平線が光輝いた。そして、次の瞬間…。

 

ドオオオオオオオオン!!!

 

「!?」

 

物凄い爆音がして、海が焼き尽くされる。

 

パリィィィィン!パリィィィィィン!…!

 

ガラララララララァ…!

 

次々と窓ガラスが割れて、演習場が半壊する。

 

「な、な、な…。」

 

ドミナントは咄嗟に伏せて、衝撃をかわした。

 

「今の衝撃や爆発は一体…?」

 

ドミナントは立ち上がり、急いで鎮守府の中へ向かう。

 

…………

 

「大丈夫か!?」

 

ドミナントは、崩れかけた娯楽室を見た。どうやら、大きな被害が出ているのはここだけのようだ。

 

「何とかな。」

 

AC化したジナイーダが瓦礫を持ち上げ、どかす。すると、ジナイーダの近くに艦娘たちがいた。どうやら、一緒にいたようだ。艦娘たちも無事だ。

 

「な、なんなんですか?今の爆発…。」

 

「ま!死んじゃったかと思ったけどさぁ〜。ギャハハハハハ!」

 

「敵か?」

 

声がして、AC化したセラフ、主任、ジャックが瓦礫を持ち上げる。どうやら、全員がここにいて、近くにいた艦娘たちを守ったみたいだ。

 

「分からん。場所はおそらく演習場だ。」

 

ドミナントは演習場へ走る。

 

…………

 

「イタタタタ…。」

 

「センちゃん。大丈夫?」

 

セントエルモの肩を貸す龍驤。

 

「…提督になんて言われるのか…。」

 

赤城がことの大きさに顔を青くする。

 

「おそらく…、いえ、間違いなく叱られます。怪我人なんて出ていた日にはもう…。家出…、いえ、鎮守府出の覚悟くらいはしておいた方が良いでしょう。」

 

加賀が冷静に分析する。そのあと加賀も含めて、全員の顔が真っ青になる。

 

「ぉーい!大丈夫かー!?」

 

噂をすればなんとやら。ドミナントが駆けつけてくる。ジナイーダたちも一緒だ。4人はさらに絶望する。

 

「何があった?」

 

ドミナントは心配した顔で4人に聞く。

 

「その…。」

 

「まさか、あの爆発はお前たちじゃないだろう?違うんだろう?」

 

ドミナントが違って欲しいと言わんばかりに聞く。

 

「「「……。」」」

 

4人は黙ったままだ。

 

「…違うんだろう?」

 

「「「……。」」」

 

ドミナントは一人一人を見る。セントエルモは申し訳ない顔全開で、龍驤は目を逸らす。赤城は半分目の縁に涙を溜めていた。失望されたく無かったのだろう。加賀はジャックの目を気にしているのか、顔を伏せた。だが、その4人はまさかこんなことになるなんて、夢にも思って無かったのだろう。

 

「なんてことだ…。」

 

ドミナントはひどく落胆する。

 

「お前たち…。何をしたかわかっているのか!?」

 

ドミナントは流石に叱る。ジナイーダも言おうとしたが、セラフに止められた。

 

「危うく怪我人が出たんだぞ!?ジナイーダたちがいなかったら、瓦礫の下敷きになっていた子もいたんだ!窓ガラスが割れて、ガラス片が誰かの目や身体に刺さったらどうするつもりだった!?入渠どうこうの話じゃない!仲間に痛みを与えるところだったんだぞ!?」

 

ドミナントが声を張り上げる。4人はドミナントに初めて思いっきり叱られて、少し怖くて震えていた。

 

「そんなことになったら、誰が一番傷つくんだ…?俺や被害に遭った人じゃない…。お前たち自身が一番心に傷がつくんだぞ…。怪我なんてものは直ぐに治るが、心の傷はすぐになんて治らない…。故意にやったわけでもないのに、そのせいで仲間が傷ついた…。失明させてしまった…。何て考えてみろ…お前たちは一生自分を許せないぞ…。」

 

ドミナントはあくまでも、演習場や窓ガラスではなく、艦娘たちのことを思っている。被害に遭った艦娘たちや、セントエルモたちを心配していた。

 

「…これに懲りたら、もうするな。こんなことになるなんて思ってもみなかったのだろう。セントエルモ、お前はすぐに入渠だ。見たところ足が骨折している。龍驤、お前も一緒に入ってやってくれ。赤城、涙を拭け。反省しているのは充分に伝わった。加賀、お前は赤城と一緒に入渠してさっぱりしてこい。」

 

ドミナントが指示を出して、各々が行く。

 

「…ジナイーダも許してやってくれ。わざとじゃない。」

 

「…わかってはいるが…。」

 

ドミナントがジナイーダたちの方を振り向く。

 

「…戦場でのミスは、仲間の命を奪うことになる。例え故意でなくても、ミスは決して許されない。」

 

ジャックが重々しく言う。

 

「一度のミスが全員を危険に晒すことは、彼女たちもこのことでわかったでしょう。」

 

セラフも言う。

 

「今はまぁあんなもんかな。まだそれほどの戦場を知らないし。」

 

主任は遠くにいる彼女たちを見る。

 

「私はお前の優しさに不満だ。」

 

「それはすまないな。ジナイーダ。だが、これが俺だ。」

 

「全くだ。…まぁ、違ったら違ったで、お前ではないがな。」

 

ジナイーダはジャックと同じ考えのようだ。…まぁ、同じ世界にいたからでもあるが。そして、ドミナントの答えを聞いて、ため息混じりに言う。“やれやれ”とした顔つきだが、どこか笑っている。

 

「…セラフ、どこから直せば良い?」

 

ドミナントはさっさと切り替えて、鎮守府再建のためにセラフに聞いた。

 

「そうですね…。ドミナントさんは窓ガラスの掃除をお願いします。ジャックさんは娯楽室を。ジナイーダさんはここで私と一緒に演習場を直します。主任さんは演習場の瓦礫を片付けてください。」

 

セラフが的確な指示を出して、直してゆく。作業には3時間かかったが、元通りに戻った。




終わりました…。いい感じで終わった…のか?
登場人物紹介コーナー
妖精さん…他のと少し雰囲気が違う妖精さん。
伊良湖…給糧艦。艦娘。実戦はしない。伊良湖食堂も経営しているが、間宮さんのお手伝いが主。夜か朝に伊良湖食堂が開いている。夜は酒保になるが。
間宮…給糧艦。艦娘。実戦はしない。甘味処間宮の店主。艦娘たちの憩いの場として知られており、名物は間宮餡蜜。夜と朝に伊良湖の手伝いをしている。


「長門コーナー。今回の主役は…。」
「間宮です。お初にお目にかかります。」
「初って…。何度も顔を合わしているぞ。」
「ここに来るのは初めてです。」
「そうか。」
「ここでは私の紹介をすればよろしいんですか?」
「ああ。そして、私がツッコム。」
「まず、給糧艦とは?というところですが、所謂補給艦です。」
「まぁ、想像していた通りだな。」
「最初は、能登呂型給油艦として生まれる予定でしたが、計画が変更されて私だけ給糧艦となったんです。」
「海軍の強い要望でな。」
「はい。これでも、竣工時は世界最大の給糧型だったんですよ?」
「ビッグ7も顔負けだな。」
「それからずっと私は皆さんの役に立って、食料を届けてました。」
「役に立つことは嬉しいな。私も給糧艦に…。…いや、ないな。それは。」
「ですが、太平洋戦争の終盤に潜水艦によって沈められてしまいました…。」
「潜水艦怖がり組か?そうは見えないが。」
「ふふ。今でも少しドキッとしたりします。…私の中は、当時最新式の巨大な冷蔵、冷凍庫があって、約18000人の3週間分の食料を持つことが出来たんです。」
「凄いな。想像しただけで…。」
「牛さんも生きたまま船に乗せることが出来るので、保存もできたんです。」
「つまり、屠殺精肉設備があったのだな。」
「わざわざオブラートに包んだのに、直で言わないで下さい…。それと、まだまだ驚くことがあるんですよ?」
「ほう…。」
「皆さんが想像している食料は、肉、魚、野菜などですよね?…まぁ、主にそれだったんですが…。」
「他にもあるのか?」
「パンやラムネ、アイスクリームや最中や饅頭も製造できたんです。」
「なん…だと…?神様も私も喜ぶな。」
「他にも、コンニャクや“ふ”や豆腐などの日本の加工食品も製造できました。」
「凄いな。…ところで、なぜ“ふ”だけ点々が付いているんだ?」
「麩菓子の“ふ”です。読みにくいと思いましたので…。それに、私は他の艦にない、唯一の贅沢がありました。」
「まだ他にも…?」
「他の艦だと、真水は貴重品で、節約していましたが…。なんと、私は真水をよく使っていたんです。」
「あの貴重な真水を…!?ま、まぁ、衛生面を考えると普通だな。普通普通…。」
「それに、羊羹も作っていました。その羊羹、“老舗の羊羹店が海軍に納入した羊羹をさばくのに苦労をした”という逸話があるほどです。」
「なんと…。…羨ましい…。」
「それだけではありませんよ?」
「まだあるのか!?」
「私は、給糧艦ですが、病院船の役割も担ったことがあるんです。」
「なるほど、そこが間宮チェックという形に…。」
「まだまだ他にもたくさんありますが、字数が心配なので、これくらいにしておきます。」
「本当に羨ましい。妬みが溢れて出そうだ…。」
「そろそろ次回をしたほうが…。」
「…ああ…。…そうだな…。」
「?」
「次回、第156話「季節じゃない」だ。別に、私にこんな役割を与える筆者の書くことなんて、見なくても…。…何?次回は私の出番もあるのか…?…そうか。…楽しみだ…。」


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156話 季節じゃない

はぁ…。また途中保存しないで閉じてしまった…。
「2度手間ね。」
本文はかろうじて自動保存で少し修正するだけなんだけど…。前書きと後書きが辛い…。1000字超してるから…。ちなみに、前書きと後書きは自動保存対象外。書いている人ならわかるはず…。
「つまり…。前まで話していた内容とは違うの?」
そゆこと。…まぁ、ネタがない話をしてただけだから、ある意味ネタが出来たけど…。
「へぇー。」
興味なさそうだね。…じゃ、紹介してくれスタッフ。
「誰がスタッフよ。…この子。」
「神風型駆逐艦2番艦、朝風よ!」
こりゃ元気の良い…。
「あらすじどうぞ。」
「…なんか消極的ね。」

あらすじよ!
前回!…えーっと…。普段と変わらないわ!

ソッカー。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「昔話をしてあげる…世界が破滅に向かっていた頃の話よ…。」

 

「いきなり何言ってるだ?提督…。なんか怖いぞ…?」

 

執務室でなんの前触れもなく突然言い出す、ここの提督のドミナントに、秘書艦が言う。

 

「神様は人間を救いたいと思っていた…。」

 

「だから怖いって…。やめてくれ…。」

 

「だって暇なんだもの…。仕事終わっちゃったし。」

 

「それは良かったな。」

 

「てか、一ついいかい?長もん。」

 

「?」

 

本日の秘書艦は長門のようだ。

 

「前もしたと思うんだけど…。」

 

「なんだ?」

 

「秘書艦3回目じゃない?そんなに俺嫌がられてる?」

 

長門。秘書艦3回目。1回目は海底調査、2回目は勝負?をした気がする。

 

「いや、それはない。というより…くじ運だ。」

 

「へぇー…。」

 

「…いや、本当だぞ。」

 

「どうだか。」

 

ドミナントはふと、くじを引く艦娘たちの姿をリアルに想像する。

 

『嘘っ!?またくじなの!?』

 

『提督の秘書艦はちょっと…。だって、ふざけて仕事してくれないし〜。』

 

『それに、もしかしたら私たちのことをあんな風に見ていたりして…。』

 

『うわっ。キモ。』

 

『最悪なのです。』

 

『誰かしてない人がしたら?』

 

『冗談じゃない。ここは平等にくじだ。』

 

『そんなぁ…。というより、提督ってたまにやらしい目で見ている気がするんだよね…。』

 

『やっぱり変態ね。』

 

『提督、ああ見えて、堂々としたことが出来ないタイプだから、こっそり私たちのパンツとか嗅いでたりして…。』

 

『嘘っ!?』

 

『キモッ!』

 

『それに、私たちの胸を見てるような気がしてるの。』

 

『『『わかる〜。』』』

 

「誤解だっ!!!」

 

「うおっ!?な、なんだ…?どうした…?」

 

ドミナントが勝手に想像した陰口を大声で否定する。長門は突然大声を出したドミナントにおっかなびっくりしている。

 

「どうした?提督。今日は色々と変だぞ。」

 

長門が心配そうに聞いてくる。

 

「すまん長門ぉ…。お前は良い子だ…。こんな提督でもくじとはいえ、秘書艦を全うしようとしてくれるんだから…。」

 

「なんなんだ…?何が起きてるんだ…?」

 

ドミナントは長門を撫でる。長門は訳がわからない。すると…。

 

バァァァン!!

 

「hey!提督ー!」

 

金剛が扉を思いっきり開けて、ドミナントを呼ぶ。

 

「何だ!?艦娘たちの革命か!?」

 

「違いマース!」

 

ドミナントが立ち上がり、金剛に聞く。金剛はそんなの気にせずに言う。

 

「今夜暇ですカー!?」

 

「今夜?何だ?食事にでも行くのか?」

 

「NO!」

 

「じゃぁ何なんだ。」

 

「test of courage(肝試し)デース!」

 

「テスト…?そうか。わかった。」

 

「じゃぁ行くデスカー?」

 

「ああ。」

 

ドミナントが了承する。長門は少し震えているようだった。

 

「了解ネー!みんなに知らせてきマース!」

 

そう言ったあと、金剛は部屋を飛び出して行った。

 

「て、提督…。行くのか…?」

 

「ああ。」

 

長門が聞き、ドミナントが返す。

 

……テストか…。おそらく、階級のテストだろう。前に佐藤中佐が言っていた。今夜とはいきなりだが、提督としての臨機応変な対応は大事…。試されているのだろう。今から勉強しておくか。それに、階級が上がれば艦娘たちを楽させることが出来るかもしれない。…だが、なんで金剛は皆んなに知らせに…?…あぁ、そうか。夜『提督』がいなかったら大騒ぎだもんな。しっかりしているんだな。金剛。

 

ドミナントは全く意味を理解していない。英語の理解力は0に等しい。書類の99.9%が日本語やら、旧日本語だ。

 

「…長門、俺は今から色々準備する。手伝って欲しい。」

 

「な、なんのだ…?」

 

「?決まっているだろう?今夜のためだ。図書室で色々と持ってきてくれ。」

 

「あ、ああ。」

 

……提督自身がお化けになるつもりなのか…?

 

長門は思いながらも、図書室へ走って行った。

 

…………

 

「持ってきたぞ。」

 

「うむ。助か…。て、何これ…?」

 

ドミナントはその本を見る。仮装の本やら、心理分析の本、ぬいぐるみの作り方の本、お化けの歴史などだ。

 

「?提督が持ってきてと言ったではないか。」

 

「いやいや…。これで何を勉強しろと…。関係ないじゃん。」

 

「関係…ないのか…?」

 

長門は困惑する。

 

「テストだよ?これ以外になかったのか?…まぁ、心理分析はありがたいけど…。」

 

「テスト…?テストとは?」

 

「金剛が…。」

 

「…?……。…!。test of courage(肝試し)だ。」

 

「だから、テストオブなんとかだろう?」

 

「テストではない。肝試しだ。」

 

「えっ?」

 

「度胸を試す。外国ではそう呼ばれている。…知らなかったのか…。」

 

「そうなのか!?全く知らなかった…。…てか、肝試し?季節じゃないだろう?」

 

「……。」

 

ドミナントが気づき、長門は呆れる。

 

「まぁ、提督も勘違いしていたみたいだし、この話は無かったことに…。」

 

長門はどこか安心したように言うが…。

 

「いや?行くよ?」

 

「えっ?」

 

「だって、金剛はみんなに知らせちゃったし、今更断ったら皆んななんて言うと思う?」

 

「むぅ…。」

 

「革命起きるよ?俺ギロチンだよ?」

 

「いや、それはないだろうが…。ガッカリするな。」

 

長門はガッカリする皆んなを想像する。

 

「…行くのか…。」

 

「俺はね。長門は?」

 

「……。」

 

「…嫌なら留守番だけど。…怖いとか?」

 

「いや、行こう。怖くなどない。」

 

「ふぅ〜ん…。」

 

ドミナントは見逃さなかった。長門足が少しだけ震えていることに。

 

…………

真夜中 鎮守府自主練場

 

「皆さんお集まり頂き感謝するネー!」

 

主催者である金剛が言う。ちなみに、ここに駆逐艦はいない。なぜなら、全員が寝てしまったからだ。睦月たちまでも…。

 

「で、今回はこれだけ集まったと。」

 

「提督効果デース!」

 

ドミナントはざっと確認する。全員の無事を確認、怪我の応急処置、迷子の捜索などのためにジナイーダ、セラフ、ジャックがいる。主任は肝試しとはかけ離れているので、鎮守府の警備だ。その他にも、妙高型の皆さんや、扶桑姉妹、赤城と加賀や蒼龍と飛龍、翔鶴型、川内型…。などと、駆逐艦以外のほぼ全員が集まっている。もちろん、ドミナントとジャック目当てが多い。あとは、自分の度胸を見せつけるために参加していたり、苦手を克服するためにいたり…。

 

「多いぞ。仕掛けは大丈夫なのか?」

 

「もちろんデース!」

 

「そうか。…で、まずは誰が行くんだ?」

 

「提督ー!焦っちゃNO!まず、くじでペアになるですヨー!」

 

金剛がどこから出したのかわからないが、箱を持っている。

 

「ちなみに、仕掛け人は私とsister(姉妹)たちデース!攻撃は禁止デース!」

 

「金剛が参加しないとは珍しいな。」

 

「では提督ー!まず最初に引くネー!」

 

「俺からか…。…6番だ。」

 

「次はジャックデース!」

 

「私か?私は…1番だ。」

 

ドミナントが引き当てたのは6番で、ジャックは1番みたいだ。そして、次々と引いていく。大半が引いてガッカリしていた。加賀は滅多に表情を変えないが、この時だけ口元が少しだけ緩んでいた。ジャックと同じペアになったのだろう。

 

「最後は長門ネー。…!sorry…。一枚しかないから、選べないデース…。」

 

「あ、あぁ…。」

 

長門は心ここにあらずの状態だ。ついに自分の番が来てしまったのかと目が死んでいた。

 

……最後か…。誰が提督と行くんだろうか…。ペア相手は赤城などが良いな…。

 

そう思いながら引いた。それは9番だ。

 

……9番…か。ロボットセラフの肩にある数字だな。提督は確か6番だったな…。と、なれば私の相手は誰だ?

 

長門が思っていると…。

 

「…!な、長門…。それは…。」

 

「?何だ?」

 

「何だって…。最後の一枚なのに、提督と同じ番号を当てるなんて…。」

 

「?9番だぞ?」

 

「反対デース!」

 

「反対?…!」

 

数字が反対だった。つまり、ドミナントと一緒である。少し長門の心が明るくなった。

 

「?何だ?長門か?秘書艦も一緒だったのにな。…すまんな。つまらない相手で。」

 

「そ、そんなことはない。」

 

ドミナントと長門が話す。大半の艦娘が羨ましそうに見ている。

 

「で、金剛、マップはどうなっている?」

 

「MAP?そんなの無いデース。ここから森の入り口に行きマース。森の中は一本道だから、迷わないと思いマスガ…。その後神社に出て、そこにあるビー玉を出口に持っていくネー。」

 

「なるほど…。で、明かりは?」

 

「懐中電灯デース。」

 

「なるほど。」

 

金剛に渡される。そのあと、歩いて10分後…。

 

「ここか?」

 

「そうデース!」

 

金剛に案内されたのは、鬱蒼とした森。不気味な森だ。昼間でも暗いのがわかるくらいの。

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫デース!…maybe…。

 

……?最後が良く聞こえなかったが…。…まぁ、大丈夫らしいしな。平気だろう。

 

ドミナントが思う。

 

「じゃぁ、私も standbyしてくるネー。頑張るデース!」

 

そう言ったあと、金剛は草むらへ消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…だが、ドミナントたちが入る森の入り口の少し離れたところに立て札があった…。『決して入るべからず』と…。




ちなみに、金剛型4姉妹は、どれだけ怖がらせることが出来るかで競い合っています。夕張は倉庫で何かを作ったままです。

登場人物紹介コーナー
長門…あとがきコーナーも務める戦艦。怖いものは苦手…なのか?お酒もたまに飲むらしいが、基本的に甘いものが好き。
金剛…金剛型の長女。帰国子女らしいが、この鎮守府で生まれたのだから、どう分類すれば良いか…。


後書きコーナーの長門はなぜかいないから、次回予告だけします。
次回、第157話「亡霊の館 その1」です。


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157話 亡霊の館 その1

ありそうなタイトルだと思って検索してみたら、本当にありました。それとは全く関係ありません。
「悩んで適当につけた名前だものね。」
ああ。実にタイトルに悩んだ。一応鎮守府編だから、肝試し編にしなくても大丈夫だよね。
「さあ?」
さあ?って…。まぁいいや。ネタないから、あらすじ頼む。
「この子よ。」
「神風型駆逐艦の三番艦、春風と申します。」
駆逐艦なのに、凄い丁寧…。
「ありがとうございます。」
笑顔も可愛い…。
「……。」
ドガァァァァァ!
「!?」
!?ず、瑞…鶴…。な…ぜ……?
ガクッ
「さぁて?何故でしょうね。」
「あ、あの…。大丈夫…なんでしょうか…?」
「あぁ、平気平気。このクズにはこれがお似合いよ。」
「えぇ…。」
「それと、あらすじやっちゃって?」
「あっ、はい。わかりました。」

あらすじです。
あらすじとは、中々ハイカラな…。えっ?始まってます?あっ、そうですか。…ゴホン。前回、司令官様が久々に麦飯にしてくださいました。神風お姉様が嬉しそうにしていました。それを見て、私も嬉しくなりました。


…………

森の前

 

「…そろそろジャック行ったほうが良いんじゃない?」

 

ドミナントが声をかける。現在、肝試しをする森の前だ。金剛が行ってから10分経つ。

 

「うむ…。そうなんだが…。」

 

「どうした?」

 

「何か嫌な予感がしてな…。」

 

「金剛が大丈夫って言っていたぞ?」

 

「そうなんだが…。妙に胸騒ぎがするんだ…。」

 

ジャックは森を睨む。

 

「怖いのか?」

 

「いや…。何というか…。久しい感覚だ。戦場の。」

 

ドミナントが茶化そうとしたが、大真面目に答えるジャック。

 

「…でも、加賀が早く入りたそうにしているぞ?」

 

「そ、そんなはず…。」

 

ドミナントがソワソワしている加賀を見る。ドミナントはとっくに加賀心境を見抜いているようだ。…自分のことに関しては全く見抜けないが…。

 

「そうなのか?」

 

「ち、違います。」

 

ジャックが聞き、加賀は顔を逸らしながら否定する。声が少しだけ上ずっていた。

 

「ここは加賀の気持ちを考えてやってくれ。楽しみにしているんだ。」

 

「なっ…。」

 

「…そうか。分かった。怖い物好きとは意外だがな。」

 

ドミナントが言い、ジャックが了承する。

 

「じゃぁ、5分経ったら次の人が行こうか。」

 

ドミナントが言い、頷く面々。

 

「じゃぁ、加賀。頑張れよ。」

 

「……。」

 

ドミナントがニヤニヤしながら茶化し、加賀が睨んだ。

 

「行くぞ。」

 

「は、はい…。」

 

ジャックが先陣を切って行き、加賀がついていく。少し歩調が速いと感じたのか、ジャックが加賀の歩調に合わせた。そして、森の中へ消えて行く。

 

…………

 

「じゃ、次は俺たちの出番か。」

 

「そ、そうだな…。」

 

ドミナントが言う。長門が少しだけ震えていた。

 

「迷子になるなよ。」

 

「ならんわ。」

 

ジナイーダがニヤニヤしながら茶化し、ドミナントが冷静に返す。

 

「怖かった場合は叫んでください。駆けつけますから。」

 

「うん。男として絶対に叫ばない。でも、SOSの大声は出す。」

 

セラフも言い出し、微妙な顔をして返す。周りの艦娘たちも羨ましそうに少しニヤニヤしていた。

 

「じゃぁ行くか。長門。」

 

「あ、あぁ…。」

 

そして、ドミナントたちも森の中へ入っていく。

 

…………

 

「ここら辺で待ち伏せするネー。」

 

金剛が草むらの中で何やら仕掛けようとするが…。

 

キャァァァァァァァァ!お姉さまぁぁぁぁ!

 

誰かの叫び声がする。

 

「!?この声は榛名デース!」

 

金剛が叫び声を聞き、急いで駆けつける。すると…。

 

「お姉さま!」

 

榛名が沼の中にいた。上半身の中程浸かっている。顔が真っ青だ。

 

「今助けるデース!」

 

金剛が近づこうとしたが…。

 

「来てはいけません!!底なし沼です!!」

 

「!?」

 

金剛の顔が真っ青になる。そのうちに、榛名がどんどん沈んでいき、肩まで浸かっていく。榛名も顔が真っ青だ。そこに…。

 

「どうかしましたか!?」

 

霧島も駆けつけた。

 

「霧島ー!榛名を…!榛名を助けるデース!」

 

金剛が藁にもすがる様な顔で霧島に頼む。

 

「あれは…底なし沼!?」

 

霧島が一瞬で状況を理解する。そのうちに榛名の首まで沼が浸かる。

 

「落ち着いてください。お姉さま。先ずはそこにある倒木を榛名の近くへ…。」

 

「了解デース!」

 

金剛と霧島が榛名の近くへ倒木を差し出す。

 

「つ、掴みました…!」

 

榛名がなんとか泥の中から手を出して、倒木を掴む。そして、少しずつ岸へ戻って行く。

 

「あと少し頑張るネー!」

 

「あと少しです。」

 

金剛と霧島が手を差し伸べ、手を掴む。

 

「はぁ…。はぁ…。」

 

「榛名…。大丈夫デスカ…?」

 

金剛が泥まみれの榛名に抱きつく。榛名の瞳は沼を見るなりすっかり恐怖の色をしてしまっていた。トラウマ間違いなしである。

 

「…おかしいですね…。昼間の視察の時はこんな沼無かったはずです。」

 

霧島が沼を見ながら言う。

 

「なら、ここまでの時間のうちに出来たんデスカ?」

 

金剛が、震える榛名の背中を優しくさすりながら聞く。

 

「…それは限りなく可能性が低いですし、何より気候や地形的に底なし沼ができるはずがありません。」

 

霧島が沼を睨みながら言う。

 

……あるいは、何者かの…。いえ、あり得ません。何者かが作ったなら大掛かり過ぎます。なら、何故…?

 

霧島が考えていると…。

 

ひぇぇぇぇぇ!!

 

今度は遠くで比叡の叫び声が…。

 

「今度は比叡デスカー!?」

 

「行きましょう!」

 

「はいっ!」

 

比叡の叫び声を聞き、榛名が飛び起き、金剛たちと走る。そして…。

 

「比叡!大丈夫デスカ…?…て!何でデスカーー!?」

 

「お姉さま!?早く逃げて!」

 

比叡が蜂に追われていたのだ。夜なのに…。おそらく、モンスズメバチだろう。

 

「逃げても逃げても追いかけてきます!早く逃げてください!」

 

「妹を置いて行くなんて出来ないデース!」

 

そして、金剛が手頃な棒を持ち、先にそこらへんにあった草と一緒に手拭いを巻いて火をつける。松明だ。

 

「明かりをつけたらそっちに…!」

 

蜂が光のある方へ直進し、比叡が止めようと声をかけるが時すでに遅い。

 

ポトッ…。

 

「!?」

 

ポト…ポト…ポトポト…

 

蜂たちが気絶していく。金剛は分かっていたみたいだ。

 

「bee(蜂)は煙に弱いネー。」

 

そのためにわざわざ草まで燃やしたのだ。しかも、よく煙の出る草を。

 

「比叡、怪我はないデスカ?」

 

「はい…。お姉さまが助けてくれたおかげで…。」

 

比叡は少し疲れたのか、ぐったりしている。

 

「…昼間の視察の時は蜂の巣なんてありましたか?」

 

「なかったはずです…。」

 

霧島と榛名が話す。そして…。

 

「お姉さま、肝試しは中止です。いくらなんでも不穏すぎます。」

 

「昼間なかった危険なものが夜になって突然現れました。明日、もう一度視察してからやりましょう?」

 

「気合い、入れて…来たんですが、少し無理そうです…。」

 

三人が金剛をすがるような目つきで見る。

 

「…妹たちが言うなら、discontinued(中止)デース。ここから道に戻って、帰るネー。そして、ジャックたちはまだ通っていないはずだから、見つけてturn back(引き返す)ネー。」

 

金剛が言い、道を逆に進む。すると…。

 

「む?金剛か?」

 

「金剛さん?」

 

幸運なことに、歩いて数分でジャックと加賀を見つける。“一本道”で心底良かったと感じる金剛型4姉妹。

 

「ジャック!ここは危険デース!今すぐ引き返すネー!」

 

「む…。そうか。わかった。」

 

金剛が言い、すんなりとジャックが従う。

 

「何故ですか?」

 

加賀が聞く。自分の身に何も起きていないから、何が危険なのかわからない。

 

「…榛名の格好と、比叡を見てみろ。」

 

「?…!」

 

そこで加賀が初めて気がつく。榛名は泥まみれだが、頭だけ泥がついていない。転んだとしたら、頭も少しは泥がついているはずだ。だが、全くないことを理解して、何があったのか想像する。比叡は汗が服まで染みていて、何かにずっと追い回されたことが伺える。それだけで、十分に危険とわかる。

 

「帰るぞ。胸騒ぎはおそらくこれだ。」

 

「はい。」

 

そして、ジャックと加賀と金剛たちが引き返す。そして、次々と艦娘たちに出会って、引き返して行き…。

 

「森の入り口だな。」

 

来た場所に戻る。金剛たちは安心した。そして、皆んなに事情を話して、中止にすることになった。

 

「じゃぁ、明日は私たちも…。」

 

「視察しますね?」

 

「thank you(ありがとう)ネ!皆さん!」

 

明日に皆んなで視察しに来ることを約束して、各々が帰って行く。

 

「…?どうしました?お姉さま?」

 

金剛が、帰り道でピタリと足を止める。

 

「…何かが心のどこかで引っかかってマース…。」

 

「?」

 

金剛は胸の中のつかえを気にする。見逃してはいけない何かを見逃しているような感じだ。

 

「…どうした?」

 

「どうかしましたか?」

 

最後尾のジナイーダとセラフが心配する。

 

「……。何か…見逃してはいけない何かを見逃してる気がしマース…。」

 

「?」

 

金剛が必死に考えている。

 

「…そう思ってみれば…。何か静かだったな…。」

 

ジナイーダが何かの異変に気づく。

 

「静か…ですか。静かなら、何も起こってないことに…。…あっ!!」

 

セラフが気づき、顔を真っ青にする。

 

「どうかしましたカ?」

 

「どうしたんだ?」

 

2人が聞く。

 

「ドミナントさん…。」

 

「あっ…。」

 

「!」

 

「提督…!」

 

「!?」

 

「司令!?」

 

6人は顔を青くする。帰り道、ドミナントに会っていない…。

 

「こ、金剛!本当に“一本道”なのか!?」

 

ジナイーダが慌てて聞く。

 

「間違いないデース!ジャックにも聞けば分かりマース!」

 

金剛は大慌てで返す。

 

「セラフ、ドミナントが『一本道を行けば良い』と言われて、わざわざ他のルートを通って行くやつだと思うか?」

 

「いえ!思えません!絶対にあり得ません!ドミナントさんがわざわざそんな危険なことをするとは思えません!」

 

ジナイーダが慌てて、セラフも大慌てで言う。

 

「助けましょう!」

 

「ああ!」

 

「当然デース!」

 

「気合い!入れます!」

 

「榛名も行きます!」

 

「この霧島も行きます!」

 

6人は森を振り返るが…。

 

「き、霧っ!?さっきまで無かったはずです!」

 

セラフが叫ぶ。森から濃霧が出ていて、近づけない状態だ。それどころか、森の方から風が吹いて、立ち入らせないようにしているようだった。

 

「…このまま行くのは危険デース…!助けに行こうとして、逆にやられたら元も子もないネー…!」

 

金剛が悔しそうにその森を睨みつけた。

 

「…金剛、比叡、榛名、霧島。鎮守府で人数確認だ。ドミナントのように足りない艦娘がいたら大変だ。」

 

「了解デース!」

 

「気合い、入れて、やります!」

 

「榛名でよろしいのなら。」

 

「わかりました。」

 

ジナイーダが言い、4人は走って行った。

 

「…セラフ、お前はもしもの時のためにジャックと主任に知らせてくれ。そして、艦娘たちに寄り添ってくれ。主任とジャックは、鈍いところがあるからな…。」

 

ジナイーダが言う。

 

「…ジナイーダさんはどうするんですか…?」

 

「…私は、艦娘たちに寄り添うことは苦手だ。お前ほどの器は持っていない。私はドミナントと長門を捜索する。」

 

「無茶です!」

 

「適材適所だ!…セラフ、頼むぞ。」

 

「ま、待って…!」

 

セラフが言おうとしたが、無視してジナイーダが濃霧の中に消えて行った。

 

「…このまま後を追うのは危険ですね…。…適材適所…ですか…。…任務を全うします。」

 

セラフは決意して、鎮守府へ戻って行った。




少しホラーですか?…えっ?全く?

登場人物紹介コーナー
森…不気味で鬱蒼とした立ち入り禁止の森。昼間になかった危険なものが夜になって本性を現す。実は、鎮守府敷地内のギリギリ外。艦娘たちの規制がゆるいわけではなく、あくまでもジナイーダたちACがいる場合のみである。
底なし沼…筆者が、こんな死に方は嫌だランキング上位の存在。底なし沼は、日本でもある。だが、ドミナントたちがいる場所にはない。実在する。底なし沼で死ぬ人間は大勢いる。行方不明者はそこで消えているんじゃ…?
モンスズメバチ…スズメバチの一種。夜でも活動する。煙に弱いのはこの蜂だけでなく、ほぼ全ての蜂にとって。

次回予告、長門は今回もなし。
次回、第158話「亡霊の館 その2」


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158話 亡霊の館 その2

暇つぶしの産物として、もう一つ小説を書いてしまった…。
「あらら。忙しくなるわね。」
本当に暇で、深夜テンションでおかしくなってたからねぇ…。
「そのうち倒れるわよ?」
なに…。このくらい…まだまだ…ぐはぁ…。
「ボロボロのヨレヨレね…。」
永眠しないように気をつけるよ…。せめて、この小説は完結させてみせる…。
「残り42話ね。」
もうあまり時間は残ってない…か。
「?」
なんでもない…。それより、あらすじを頼む。
「今回は察しの通り、この子よ。」
「僕は神風型駆逐艦四番艦、松風だ。」
僕っ子来ましたね。あらすじ頼みます。
「あっは!任せてよ。」

あらすじ
前回は、僕の鎮守府ではあまり変わったことはなかったかなぁ〜?…姉貴と喧嘩?したした。暇すぎてさ。

喧嘩した理由が暇だからとか…。迷惑だな。
「あんたが言わないでよ。」


…………

 

「何なんだ?この霧は…。金剛たち、演出に凝りすぎないか?さっきもリアルすぎる火の玉が出たし…。俺は面倒が嫌いなんだ。」

 

ドミナントが面倒そうに言う。濃霧によって、周りがよく見えない。

 

「……。」

 

長門は何も言わない。怖がっているのか、ドミナントの手を握っている。

 

「…あの…。長門さーん…。手、痛いんですけど…。」

 

だが、長門は恐怖のあまり、握った手に力が入ってしまっている。ドミナントの言葉を聞き、少し力を緩めた。長門の怪力を考えた場合、ただの提督ならば潰れているだろう。

 

「…提督は怖くないのか?」

 

長門がドミナントに聞く。

 

「俺は…こういう霧とかは平気だ。」

 

「そうか?」

 

「だって、考えてみて?ただの霧だぞ?小さな水滴だよ?」

 

「そうなんだが…。この不気味な森と一緒だと…な。」

 

長門が周りを見回す。夜のため、木の葉の割れ目が人の顔に見えたり、木のうろが怪物の顔に見える。

 

ブォォォォ…

 

「……。」

 

「……。」

 

風が木のうろや、空洞を通って、不思議な音がする。長門はドミナントの手に抱きついて、目をギュッと閉じていた。

 

……可愛い…。この状況でこの感想は変だと思うが…。可愛い。これが巷で噂のギャップ萌えか…?

 

ドミナントはその場に似つかない感想を述べた。

 

……それと、手に柔らかな感触が…。…柔らかな感触?…!なっ…!?

 

ドミナントの手がちょうど長門の胸に…。

 

……これはまずい…。事案発生だ…。憲兵がいたら連行される…。

 

大袈裟なことを考えるドミナントだが、長門が手を離さない。

 

……まぁいいか…。

 

ドミナントがふしだらなことをしないように心に誓い、長門と共に歩き出す。すると…。

 

ガサガサ…

 

草が揺れる。

 

「て、提督…。」

 

「な、長門…。俺、こういうのダメなんだ…。」

 

「基準がわからん…。」

 

2人が恐怖していると…。

 

ガサッ!

 

草から何かが出てくる。

 

「どこ…?ここ…?」

 

「ひぃぃ…。…て、神様?」

 

ドミナントが草から出てきた神様を見る。

 

「えっ、えっと…。」

 

「…?神様じゃ…ない?」

 

ドミナントはよく見る。

 

「名取と…いいます…。」

 

「名取…?艦娘か?」

 

「は、はい!」

 

「…それにしても、神様に似ている…。ん?先輩神様は叢雲に少し似ていたっけ?」

 

ドミナントの考えていることが逸れていくが…。

 

「名取、何故ここにいるんだ?」

 

長門が聞く。確かに、何故いるのか不思議だ。

 

「じ、実は…。」

 

…………

 

「何!?みんな帰った!?」

 

「はい…。」

 

名取が、ドミナントたちを忘れて金剛たちが帰ったことを伝える(後で気づいたが…)。長門は目の前が真っ暗になっていた。

 

「私は気づいて、呼び戻しに来たんです。」

 

名取はドミナントたちに伝えようと、無鉄砲にも走って来たのだ。そして、近道しようと、草むらの中に入ったが最後、自分自身が迷ってしまい、怖くてとにかく走り回って来たのだ。

 

「何故、他の人に言わなかったんだ?」

 

「みんな帰ろうと歩いていて…。いつもみんなの足でまといなので、こういう時こそ私が行かないとって…。」

 

名取がおずおずと言う。

 

「それはわかったが…。一人で平気だったのか?」

 

ドミナントが名取を心配する。

 

「はい…。では、私はこれで…。」

 

「待て、どこへ行く?」

 

「ふぇっ!?」

 

名取がドミナントを避けるように戻ろうとするが、ドミナントに腕を掴まれる。

 

「…残念だが、共に来てもらうぞ。前例として、川内が霊に騙されて、あの世へ行きかけたことがある。…それに、本物だとしても、1人じゃ危険だし。…温かかったから、本物だと思うけど。」

 

ドミナントは名取を逃さないように、腕を掴んだままだ。

 

「だから、共に帰るぞ。これは提督命令だ。」

 

「そうだぞ。名取。それに、提督命令だ。」

 

ドミナントと長門が言う。

 

「あっ。ありがとうございます。」

 

名取が心配してくれたことに感謝する。しかし…。

 

ゴロゴロ…

 

夜空が黒い雲で覆われ、雷の音がする。

 

ピシャッ!ゴロゴロゴロ…

 

「!?」

 

ドミナントが雷の一瞬の明るさで、森の出口を見つける。

 

「…一雨降りそうだな…。しかも、嵐が…。」

 

長門が空を睨みながら呟く。風も少し強くなってきた。

 

「長門。名取。今森の出口が見えた。金剛が言っていた神社だろう。そこで雨宿りだ。」

 

「わかった。」

 

「神社…。」

 

「名取、大丈夫だ。俺たちがついている。」

 

そして、ドミナントたちは森の出口へ来たが…。

 

「「!?」」

 

長門と名取が顔を真っ青にする。

 

ピシャッ!ゴロゴロゴロ!

 

雷の光に照らされて、実態を見た…。

 

「!?墓地だ…。ここ…。」

 

いくつもの墓石があるが、大半がコケに覆われていたりしていた。明らかに、墓地そのものが朽ちた感じだ。忘れられた墓地だ。ドミナントはズカズカと進んで行く。

 

「提督、戻ろう?」

 

「戻りましょう…?」

 

2人が恐怖で近くへ来ようとしない。

 

「戻るって言ったって…。雨が降るよ?それに、嵐になる。…今まで無事にこの場所へ来れたのは運が良かったからかもしれない。金剛たちは危険な目に遭ったらしいし…。とにかく、森よりもこっちの方が安全な気がするし。…まぁ、森の出口付近にいれば、大丈夫だと思うけど…。」

 

ドミナントが2人を見る。

 

「まぁ、どうしても行きたくないなら、そこで待っててくれ。墓地があるなら、必ず建物もあるから。見つけたら、戻ってきて、そこで雨宿りだ。」

 

ドミナントはそう言って、歩いて行ってしまった。すると…。

 

ポツリ…ポツリポツリ…ザーーーーーー…!

 

ゴロゴロゴロ…!

 

土砂降りの雨が降り始め、雷が鳴る。嵐だ。

 

「!?地面が…!」

 

「!?」

 

長門と名取がいた場所が雨でぬかるみ、だんだん足が沈んで行くではないか。墓地の地面はなんともなさそうだ。

 

「…しょうがない…。提督と一緒に行くぞ。」

 

「い、行くの!?」

 

「このままでは歩けなくなる。今のうちに脱出した方がいい!」

 

長門は名取の手を掴んで、一緒にドミナントのところまで行く。名取が森を振り返ってみると、自分たちがいたところはともかく、森の道全てが沼に変わっていた。あのままいれば、どうなっていたのか…。

 

…………

 

「くそっ!なんなんだ!霧の次は沼か!」

 

そんな嵐の中、森の中でドミナントたちを必死に捜索している者がいる。

 

「どこに行ったんだ…?」

 

ジナイーダだ。

 

ゴロゴロゴロ…ピシャッ!

 

「!」

 

雷の光で、彼女が何か見つけた。

 

「…なるほどな…。この森、明らかに敵だ。誰も立ち入らないのが確実にわかる。」

 

ジナイーダは歩き、その場所まで行く。

 

「錯覚だ…。ここに道があるように見える…。それに、こっちの道?を見ると、本当の道が見えなくなる…。」

 

森が錯覚を見せているのだ。もはや、ここまで来ると自然そのものが敵意を剥き出しにしているかのようだった。

 

「これで、後を追えばドミナントに辿りつけるな。」

 

ジナイーダは駆けて行った。

 

…………

 

「なんだ。来たのか。」

 

長門と名取が走ってくるなり、腕に抱きついてきた。

 

「…ごめん、俺、こういうハーレム行為望んでないんだ。離れてくれない?」

 

「この状況でよくそんなことが言えるな…!」

 

「……。」

 

三人、墓地を歩いていると…。

 

「あっ!館があるぞ。」

 

「「……。」」

 

ドミナントが館に指差し、2人が泣きそうになった。不気味すぎる館なのだ。何か起こるのは間違いがなさそうな…。

 

「早く入ろう?」

 

「だ、だが…。」

 

「……。」

 

長門と名取は否定的みたいだ。名取は首をいやいやと降っている。

 

「…でも、この嵐の中は風邪ひくし…。…それとも、一晩中死人と一緒に野宿したい?」

 

「「……。」」

 

…………

 

「すみませーん。誰かいませんかー?」

 

ドミナントが扉の前で言う。結局、館の中で雨宿りをするみたいだ。

 

「…いないのかな…?」

 

「い、いないみたいだな。なら、ここでも雨は凌げるから…。」

 

「……。」

 

長門が言い、名取がうんうんとうなずく。

 

ガチャ…キィ…。

 

「あっ。開いてる。」

 

ドミナントがドアに手をかけた途端、開きだす。

 

「不法侵入だぞ。」

 

「説明すれば良いだろう。お前たちはここで待っててくれ。」

 

ドミナントが入り、扉が閉まりそうなところ…。

 

「や、やっぱり、私も行きます!」

 

名取が入る。

 

「何だと!?私も行くぞ!」

 

長門が入ろうとしたが、扉が閉じてしまった。

 

ガチャガチャ

 

「な、なんだと…?開かない…!」

 

長門の怪力を持ってしても、ドアノブすら壊れない。

 

『長門!大丈夫か?』

 

どうやら、中でも開けようとしているみたいで、ドミナントが言う。

 

「提督!待っていろ!今助ける…!」

 

『いや!長門!俺たちは大丈夫だ!それより、助けを呼ぶことはできるか?』

 

「…わかった。行ってくる!」

 

『頼んだぞ!』

 

長門は夜の墓場を走って行く。

 

……森は沼に覆われたが…。なんとか歩くくらいはできそうだ…。それに、提督が助けを呼んでいる…!

 

そして、森の出口から行こうとしたが…。

 

「!?沈む速度が早くなっている!?」

 

長門は咄嗟に下がる。

 

「くそっ…!」

 

長門は悔しそうに眺めていたところに…。

 

「長門か?」

 

暗闇から一つの小さな光が出る。

 

「ひ、ひとだま…。」

 

長門は思わず後退りをしそうになったが…。

 

「誰がひとだまだ。私だ。」

 

「その声…ジナイーダか?」

 

長門はホッと息を吐く。

 

「長門1人とは…。ドミナントはどうした?」

 

「助けて…。」

 

「?」

 

「提督を…。提督を助けてくれ…。私じゃどうにも出来なかったんだ…。」

 

「…そうか。わかった。任せろ。」

 

長門が雨の中、ジナイーダに泣き声で頼んだ。どれほどドミナントを心配しているのかがわかる。

 

…………

館の中

 

「ふぇぇぇん…。」

 

「名取。大丈夫だ。俺がついてる。」

 

館の玄関で名取が泣き始め、ドミナントが慰めている。

 

「…不気味なところだな。」

 

「ぐすん…。」

 

ドミナントは館のあちこちを睨む。蜘蛛の巣が張ってあったり、所々の家具が壊れ、カビている。そこに…。

 

ポゥ…

 

「!…名取、俺がついている。だから、周りを見るな。」

 

「?」

 

人魂らしき光が二階から見える。名取は気づいていない。ドミナントは見せないようにしている。

 

ギシ…ギシ…

 

人魂が階段を降りて、ドミナントたちに向かってきて…。

 

「誰?」

 

「!?」

 

人魂が聞いてきた。いや、蝋燭を持った女性だ。

 

「人か?助かった。不法侵入申し訳ない。突然の雨で、雨宿りをさせて貰おうと尋ねたが、ドアが開かなくなってしまってな。」

 

「ごめんなさい。そこのドア、たまに開かなくなるのよ…。怖がらせちゃったかしら?」

 

女性は申し訳なさそうな顔をする。

 

……どうやら、人らしい。名取も少し落ち着いてきている。

 

名取は泣きやんで、ドミナントは少し安心している。

 

「何故、ここに館があるんだ?」

 

「ここに?何故って…。墓守の館よ?ここ。知らずに来たの?」

 

女性は驚いた感じで言う。

 

「墓守か。確かに、墓があったしな。」

 

「久しぶりの来客ね。周りが森で、近くが墓だから誰も来ないの。」

 

「でしょうね。近隣に住んでいるのに、全く聞いたことがなかったので。」

 

ドミナントと女性が話す。

 

「…雨に濡れているようですし、シャワー室に案内します。」

 

「それはありがたい。名取も行こう?」

 

ドミナントが名取の手を掴み、歩き出す。名取は少し震えているようだったが、雨に濡れて寒いのだろう。

 

「この館、一人で守るのは大変で…。掃除も出来てなくてごめんなさい。」

 

「いえいえ。こんなに広い館ですから、一人でいるのはさぞ大変でしょう。」

 

ドミナントと女性は歩きながら話す。

 

「そう思ってみれば、自己紹介がまだでしたね。私はソワーズ。あなたは?」

 

「ドミナントです。こちらにいる、少し人見知りの子は名取と言います。ほら、名取も挨拶して?」

 

だが、名取はドミナントの背中に隠れたままだ。それに、ギュッと抱きしめている。怖いのだろう。

 

「…すみません。人見知りの子で。」

 

「いえ、可愛いじゃありませんか。」

 

「…そうですね。」

 

……この人とは気が合うな。

 

ドミナントはそう思いながら、ソワーズに案内されるのだった。




長い…。文面が…。

登場人物紹介コーナー
ソワーズ…この館の主人。親はすでに他界していて、一人で墓守をしている。
名取…長良型三番艦軽巡、名取。活発な姉妹に囲まれる中、気弱かつ引っ込み思案で、人見知りの性格。天然ボケが少しあり、自信過小であり、足手まといにならないように、色々なところで頑張っている。好意は持っていて、一生懸命。神様と容姿が少し似ている。

長門不在
次回、第159話「亡霊の館 その3」


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159話 亡霊の館 その3

ネタがないなぁ…。何とか、努力しないで小説書かないと。
「ネタ考えなさいよ。」
まぁ、モットーは誰も見なくなるまで更新だけどね。お前らが見続ける限り…その先に俺はいるぞぉ…!だからよぉ…止まるんじゃねぇぞ…。
「そのネタ飽きたわ。」
それ言っちゃダメでしょ。ねぇ。
「それより、あらすじでしょう?」
うっ…。なんか今回の瑞鶴、攻撃的だな…。
「出番がないわ。」
まぁ、イライラするのはわかるけど…。今回出番あるよ。
「本当っ?」
ああ。嘘はつかん。
「やった!…はっ!?ゴ、ゴホン。それじゃぁ、あらすじ始めるわよ。」
あんなに喜ぶんだ〜。
「…この子よ。」
「神風型駆逐艦、旗風、参りました。」
春姉さんとよくいる子ですね。
「では、あらすじをどうぞ。」
「旗風、参ります。」

あらすじです
前回、榛名さんと春姉さんと司令と一緒に山菜採りをしました。そして、おっきなふきのとうを見つけて、美味しくいただきました。榛名さんはぜんまいをたくさん採って、春姉さんはせりを。司令はたらの芽を沢山採ってきてくれました。その日のご飯がとても美味しかったです。


…………

 

「ここか。」

 

「ああ。」

 

「…開かないな…。」

 

場所は変わってジナイーダたち。館のドアの前にいる。窓から入ろうとしたが全く割れないし、覗こうとしても反射していて見えない。

 

「長門、離れていろ。蹴破る。」

 

「わ、わかった。」

 

ジナイーダが言って、長門が少し離れた。

 

ヒュッ!

 

ドガァッ!

 

ジナイーダが思いっきり蹴った。蹴る瞬間の足が見えなかった。衝撃で、少し煙が出た。

 

「…!?」

 

「…!?」

 

ジナイーダと長門は驚いた。あれほどの…普通のドアなら粉砕もあり得た蹴りをくらっても無傷なのだ。

 

「…ただの扉じゃないな…。」

 

ジナイーダが呟く。長門はどうやったら開くのか考えていた。

 

…………

鎮守府 会議室

 

「全員いるか確認デース!駆逐艦も合わせてデース!」

 

「姉妹艦がいる方はそれぞれ確認して、代表の1人が私のところへ来てください。いない方も来てください。」

 

金剛が呼びかける。セラフも共に数えている。

 

「瑞鶴?いますか?」

 

「いるわ。翔鶴姉とペアだったから…。」

 

「天龍ちゃ〜ん?どこぉ〜?」

 

「目の前にいるだろ!?」

 

「ちくまー?」

 

「ここです。」

 

それぞれが返事をする。

 

「みんないる?」

 

長良が聞く。

 

「私はいるわ。」

 

「由良もいます。」

 

「鬼怒もいるよ!」

 

「わ、私も…。」

 

姉妹艦の方々が返事をする。

 

「よしっ、全員…いない!?」

 

「名取!?」

 

名取がいないことに気づく。

 

「セラフさん!名取がいません!」

 

長良がセラフに駆け寄る。

 

「えぇっ!?肝試しの時いましたか!?」

 

「私とペアだったから、いたはずよ!」

 

五十鈴が言う。

 

「もしかして…。」

 

「えぇ…。おそらく、提督を探しに…。…あの子、自分が足手まといだと思っていて、こういう所で役に立とうとするから…。足手まといなんかじゃないのに…。」

 

五十鈴は少し苛立ちも含めていたが、心配している。

 

「…あの森の中に一人で…。」

 

セラフが呟くと…。

 

「…私、行ってくる!」

 

五十鈴が言い出す。

 

「えっ!?何を言っているんですか!?」

 

「名取に気づかずに帰ったのは私の責任!責任はしっかりと取らなくちゃいけないのよ!」

 

「ダメに決まっています!あなたまでいなくなったら、取り返しがつきません!」

 

行こうとする五十鈴にセラフが行手を阻む。

 

「でも、このままじゃ名取が…!」

 

「どうしても行くならば、私を倒してください。」

 

セラフがAC化して、ドアの前に立つ。

 

「それに、ジナイーダさんも森の中に行きました。ジナイーダさんが艦娘を見落とすような人だと思いますか?」

 

「……。…でも…。」

 

「確かに、100%確実とは言えません。しかし、外は嵐です。あなたまで消えたら、どうなりますか?ジナイーダさんは?ドミナントさんは?」

 

「……。」

 

五十鈴は現実を突きつけられる。セラフは冷静に返す。

 

「…要するに、誰か頼りになる奴が共にいないといけないということだな。」

 

すると、ジャックが前に出る。

 

「…そういう意味ではありません。」

 

「じゃぁ、どういう意味だ?」

 

「それは…。」

 

セラフの言葉が詰まる。強さの桁の違う2人?2機?の意見が衝突しかけて、艦娘たちは見守るだけだ。

 

「…逆に考えてみろ。」

 

「えっ?」

 

「逆に、ドミナントが森の中で1人きりだったら?それも、何者かによって命を狙われている最中だ。ジナイーダが探しに行ったとしても、間に合うかどうかわからない。」

 

「……。」

 

セラフが想像する。暗くて不気味な森の中、ドミナントが一人で助けを求めている姿を…。ナイフを突きつけられて、殺される間際のドミナントの姿を…。

 

「どうだ?」

 

「…耐えられません…。おそらく、なんとしてでも行くでしょう…。」

 

「それと同じ気持ちだ。」

 

「……。」

 

ジャックが冷静に言う。

 

「…わかりました…。ですが、ジャックさんか主任さんのどちらかを必ず僚機につけてください。」

 

「ありがとう!」

 

セラフが折れて、五十鈴が感謝を述べる。

 

「ハハハハ!聞いてたよルーキー。中々やるじゃない?」

 

「主任さん!」

 

主任が笑いながら出てくる。そして、五十鈴を担ぎ上げ…。

 

「ちょぉっと時間かかったけどねぇ〜。じゃぁ、いっちょ行きますか!」

 

「えっ?ちょ、待…。」

 

「ギャハハハハハハハハ!アハハハハハハハハ!!!」

 

ドォォォォォォォォ…!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ…!」

 

主任が五十鈴を肩に担いだままブーストチャージをして、わざわざ壁を蹴り破って出て行ったのだ。

 

「…やっぱり、ジャックさんだけにした方が良かった気がします…。」

 

「ドアが開いているのに、わざわざ蹴り破って行くところにセンスを感じるな。」

 

2人が言おうにも、あとの祭だった。

 

…………

館の中 廊下

 

「ところで、本当にこの館をご存知ない?」

 

「はい。」

 

ソワーズとドミナントが話す。

 

「実はこの館、亡霊にまつわる様々な噂があるんです。」

 

「えっ!?」

 

ドミナントが驚く。名取はひっついたままだ。

 

「なんとも、噂は様々で、老人やら子供やら男性やら女性やらとかの霊で。」

 

「それは…。」

 

「あぁ、私が幽霊だったとかいうオチはないですから。」

 

「ですよねー。」

 

ドミナントとソワーズが話す。

 

「…不快になるかもしれませんが、一応知らせておきます。“何かあった”場合は私にはどうにもできませんので…。」

 

「何かあるんですか…?」

 

「まず、一階のキッチン、気をつけてください。昔、ミートハンマーで原型がなくなるほど頭を叩かれた男性の遺体があったとか…。そのせいで、キッチンから音がするらしいです。」

 

「……。」

 

「次に、シャワールームも気をつけてください。そこでは恨みを持った人にやられたのか、斧で何度も切り刻まれた痕のある女性の遺体があったとか…。遺体はバラバラになっていて、バスタブの中にあったとか…。そのせいで、ある時間になると、排水溝から女性のすすり泣く声が聞こえてきます。」

 

「それを今いいますか…?」

 

「仕方ありません。注意事項です。…それと、2階のフロアでは、3階から落ちた子供がいたとか…。不慮の事故と見られましたが、何者かによって落とされた後もあったとか…。頭から落ちて、脳が…。そのせいで、毎晩頭の潰れた子供の霊が見えるらしいです。」

 

「そういう生々しいところは省いてください。」

 

「わかりました。同じく2階の寝室ではナイフによって滅多刺しにされた女の子の遺体もあったとか…。おそらく、無理やり寝室に連れ込んで、色々した後に口封じに殺したと思います。そのせいで、洗っても落ちない血のシミがベットリとまだあります。」

 

「うわぁ…。」

 

「3階の物置も気をつけてください。そこでは、銃で蜂の巣にされた老人の遺体が隠されていたとか…。そのせいで、夜になると、物置の物が動くとか…。」

 

「そんなにですか…。」

 

名取はギュッとドミナントに抱きついたままだ。

 

「…着きました。ここがバスルームです。」

 

「「……。」」

 

ソワーズに案内されて、ドミナントが恐る恐るドアを開ける。そして、電気をつける。

 

「…不気味だな…。」

 

「ごめんなさいね。」

 

ドミナントは嫌な顔をする。名取は見るなり、顔をドミナントの服にうずめていた。そこは、灰色のような…。よくわからない色の明かりで、シャワーとバスタブが一緒になっている。カーテンも閉められる場所だ。

 

「では…。」

 

「えぇ!?行くんですか!?」

 

「そりゃそうですよ。…大丈夫。蝋燭はここに置いておくから。それじゃぁ、私は寝ます。寝室は2階です。私は違う部屋ですが…。」

 

「あんな怖い話しておいて…。」

 

ドミナントはすがるような目つきだ。

 

「…はぁ…。分かりました。お風呂から上がるまで居てあげます。…結構寂しがり屋で怖がりなんですね。」

 

「いや、誰だって怖がりますよ…。」

 

「まぁ、そうよね。ふふっ。」

 

ソワーズは残ってくれるみたいだ。

 

「じゃぁ、名取、先に入れ。俺たちはドアの外で待っている。」

 

「えぇっ!?」

 

名取はいやいやと首を横に振る。

 

「提督、一緒に…。」

 

「いやいや…。言っている意味わかってる?アウトだよ。完全に。」

 

「ふふっ。」

 

名取が本気で怖がっていて、ドミナントが気持ちは分からなくもないが、少し呆れる。ソワーズは少し笑っていた。

 

「なんかあったら俺の名前よんで?それか、叫んで。駆けつけるから。」

 

「はい…。」

 

名取は目の縁に涙を溜めながら入っていった。

 

…………

10分後

 

「それで、まだ仲間が駆けつけると思います。」

 

「そうなんですか?」

 

「はい…。すみません。人がいるとは知らず、長門という仲間に、増援を呼ぶように頼んでしまって…。」

 

「いえいえ。不気味だものね。仕方ありませんよ。」

 

2人が話していると…。

 

ガチャン!

 

「提督ー!」

 

「うおぅっ!?名取、どうし…服を着ろ!!」

 

「は、裸…。」

 

裸で半分泣きながらドミナントを呼びに、抱きつく名取。ドミナントは顔を赤くしながら叫ぶ。ソワーズは慌てている。

 

「声が…。すすり泣く声がぁ…。」

 

「きたか…。どれ。確かめてやろう。」

 

ドミナントはそう言って、名取と手を繋いでバスタブを見る。

 

しくしく…

 

「確かに、排水溝から声が聞こえるな…。それと…。」

 

「それと…?」

 

「服を着ろ。」

 

ドミナントが見ずに言い、名取が急いで服を着る。

 

しくしく…

 

「うーん…。一度慣れると、そこまで怖くない。」

 

ドミナントがマジマジと見る。

 

しくしく…

 

……なんでこんな音がしてるんだろう…?……。…?良く聞いてみると、すすり泣く声じゃない…?

 

ドミナントは少し何かに気づく。そこに…。

 

ゴロゴロゴロ…ピシャッ!

 

「「「!?」」」

 

雷が突然鳴る。

 

「て、提督…。」

 

「びっくりした。」

 

「くそっ!あと少しで謎が解けそうだったのに…!この雷め…!」

 

ドミナントが雷に少し怒りを募らせていると…。

 

「…うん?雷?…大雨…。…!もしかして…!」

 

ドミナントは気付く。

 

「ソワーズさん。ここ、土地が低いですか?」

 

「あっ、はい。そう言われてます。」

 

「ビンゴ!」

 

ソワーズの答えに、ドミナントが納得する。

 

「それがどうかしたんですか?」

 

名取が不思議がる。

 

「このすすり泣く声は、違うんだ。」

 

「「違う?」」

 

「よく聞いてみると、コポコポと音がしているんだ。多分、この館の排水管が少し特殊なんだよ。今、下水に大量の雨水が流れて、下水を処理するのに時間がかかってしまっている。そして、下水に流れなかった排水が排水管の空気を排水口へ逆流させているんだ。」

 

……前世?でそういうのを調べて良かった…。

 

ドミナントが説明する。

 

「そうなんだ!凄いね!ドミナントさん!」

 

「提督!凄いです!」

 

「いやぁ〜ははは。つまり、この噂はデマですよ。」

 

「デマだったんだ!少し安心した。ありがとう!」

 

「いえいえ。それと、雨じゃない日もあるなら、業者に見せた方が良いですよ。古くなって、取り替えの合図ですから。」

 

「わかりました。」

 

ドミナントが難なく推理。華麗に解決した。

 

 


 

実は、そこまでホラーじゃない。(事件のところを訂正して噂にしました。それと、遺体の描写を鮮明に書こうと思いましたが、グロすぎてやめました。事件だった場合は、追いかけてきたり、変な部屋に出たりします。)ここからホラー系だったバスルーム(グロ系だったバスルームは、すすり泣く声が聞こえて、名取が排水溝を見ると、そこには目玉を剥き出しにした女性がジッと名取を覗いています。名取は顔を真っ青にしてガチ泣きです。そのあと、名取が栓をして、ドミナントに助けを呼ぼうとカーテンに手をかけますが、そのカーテンの影が…。…やめておきましょう。)こんなにホラーな展開は望んでいないので、やめました。

登場人物紹介コーナー

五十鈴…少し幼い雰囲気だが、結構なお姉さん。気位が高く、提督に関しては可も不可もなく、若干上から目線なのは気になるが、接してきてくれるあたり、信頼しているのが窺える。

 

長門不在

次回、第160話「亡霊の館 その4」



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160話 亡霊の館 その4

艦これってなんだっけ?
「!?」
冗談だよ…。でも、今回書いていて、艦これ要素がなくなりかけてるような気がするんだ。
「こういう感じのもの無いものね。オリジナル作よ。」
なんていうか…。こういうのやりたいなーって思ったことやるから。
「へぇ…。」
引くような目、やめてくんない?わかってるから。てか、このイベントが終わったら次は艦これのイベントだから。
「…そうだと良いわね。」
では、あらすじの人、紹介して?
「その前に…。」

「私の出番…一言じゃないの!」
まぁ、一応出てるから…。
「あれは出たとは言わない!」
わがまま言わないでくれ。のちに出る…はずだから。
「はず!?」
あぁ、めんどくせぇ。あらすじをやるだけでこの始末。頼むから黙っててくれ。…と言っても、駄目だよな。ハハハハ…
「めんどくさい…?」
…いや、ネタだよ?
「私のこと…嫌いなの…?」
そんなわけ…。
「じゃぁ…好き?」
ゴフッ!
「…ちょろいわね。少し可愛く見せただけで。」
ひ、卑怯な…。
「可愛いは正義よ。…まぁ、仕返しできたから、あらすじにうつるわね。」
あらすじ…ガフッ…。
「キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」
「!?」
あぁ、牛鬼だったね…。言うこと聞くやつじゃないのは知ってるけど、このままじゃ拉致が開かないからね…。悪いが、強制的に言ってもらうよ。
「何でそんなことできるのよ…。」
私は筆者だから。ンッフッフッフッフ…。

……
キ"ュ"エ"ァ"ァ"ァ"ァ"!って言ってるけど、実はモ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"だ!

「喋れるの!?」
一瞬だけ喋らせた。
「…もう、あんた最強ね…。不死身だし…。」


…………

廊下

 

「謎は解けたけど、まだたくさんありますね。」

 

「そうね。まだキッチンやフロアや寝室、物置があります。」

 

ソワーズとドミナントが話す。名取は今度は安心してシャワーを浴びている。

 

「…でも、もしかしたら、バスルームと同じで、全て解決できるのかもしれません。」

 

「そうだと良いですよね。」

 

2人が廊下で話す。外が嵐なんてことは忘れている。ドミナントたちは全く怖くなかった。

 

「所詮は噂です。必ず解決できますよ。」

 

そして、しばらく沈黙する。すると…。

 

トン…トン…

 

「「!?」」

 

暗い廊下から、不思議な音がする。

 

「…キッチンからですね。」

 

「そうね…。」

 

そこに…。

 

ガチャ

 

「提督。上がりました。」

 

名取が出てくる。

 

「名取、ちょっと静かに。」

 

ドミナントが耳をすませる。そして…。

 

「な、なんなんでしょうか…?この音…。」

 

「名取、俺は今雨で濡れた状態だからひっつくと濡れるよ?」

 

名取がドミナントに抱き寄る。

 

「…行きますか?」

 

「はい。謎を解決しないと、不気味ですからね。」

 

ソワーズが聞き、ドミナントが言う。

 

「じゃぁ、名取。行くぞ。」

 

「えぇっ!?」

 

名取は首を振っている。

 

「…じゃぁ、俺一人で行ってくるから、ソワーズと一緒にいてくれ。」

 

「!?だったら提督と行きます!」

 

名取がドミナントの腕を抱きしめる。どうやら、名取はソワーズを完全に信頼しているわけではなさそうだ。

 

「わかった。ソワーズさん。案内してください。」

 

「わかりました。」

 

だが、ソワーズは嫌な顔一つせずに案内してくれる。

 

「すみません…。」

 

「いえいえ、誰だってこんな不気味な館にいる人を怖がらないはずがありません。それに、まだよく話していないのに。」

 

本人は全く気にしてなさそうだ。自分のことを良くわかっていた。そのうちに…。

 

「ここです。」

 

「うわ…。」

 

案内されたキッチンは不気味の一言だ。名取はドミナントを抱きしめたままだ。そして、電気をつけるが…。

 

「あれ?つかない…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

電気をつけようとするが、全く反応しない。故障だろうか?

 

「古いですからね。蝋燭で照らします。」

 

ソワーズが蝋燭で部屋を照らそうとすると…。

 

バチッ!ブゥーーーーン

 

「「「!?」」」

 

音が消えて、オーブンの電気がいきなりついたのだ。

 

「…行きますか?」

 

「…行きます。」

 

その怪現象が起きているキッチンに足を踏み入れるドミナント。足音がギシギシ言っている。名取もトコトコついてくる。

 

……幽霊がいると、ラップ音がするらしい…。そのラップ音はさまざまな種類がある…。おそらくそのことだろう…。

 

ドミナントが恐る恐るオーブンの近くへ行くと…。

 

ゴロゴロ…ピシャッ!

 

雷が鳴り、一瞬だが、明るくなる。

 

「…!?提督!」

 

「うわっと…。どうした?」

 

いきなり抱きついてきた名取に少し困惑するドミナント。

 

「窓の…窓の外に怪物のような影が…。」

 

「窓の外?」

 

ドミナントとソワーズがうなずき、蝋燭で照らす。が、何もない。

 

「…いないぞ。」

 

「でも、本当に…。」

 

「見間違いだと思った方が幸せだぞ?」

 

「…はい…。」

 

ドミナントが言い、名取がうなずく。

 

……音がしなくなった…?

 

そのうちに、音がしなくなり、オーブンも止まっている。

 

「…家鳴りかな?」

 

「「家鳴り?」」

 

「多分、トントントントンひののに…。じゃなかった。その音は家鳴りじゃないかな?家鳴りとは、古い家とかに起こる音のこと。昔はそういう妖怪がいると考えられていたんだけど、何年も経って古くなった柱とかが軋んだりする小さな音のこと。静かだとなおさらよく聞こえるから、怪現象と勘違いする人もいるし。今時、こんな家なら怪現象と間違われても珍しくないと思う。それに、音も大きいし…。」

 

「こんな家で悪かったわね。」

 

「すみません…。でも、家鳴りはある意味怖いことがあります。」

 

「幽霊じゃないんでしょう?」

 

「そうですが…。逆に考えると、柱や木材が悲鳴を上げているサインです。ここまで音が大きいと、壊れそうということですから、工事をした方が良いと思います。」

 

「そうなんですか…。」

 

「?どうしてションボリ…?」

 

ドミナントが、ソワーズがしょんぼりしていることを不思議がる。

 

「…この館を見ての通り、あまりお金がないんです…。古いところがあるのは分かりますが、直すお金がなくて…。」

 

「oh…。」

 

「なんとか自力で出来ないかしら?」

 

「それなら、家具の位置を均等にする方法が良いと昔から聞きます。…手伝います。」

 

「あら、ありがとう。」

 

「名取も。」

 

「ふぇっ!?わ、私もですか…?」

 

「一般人を手伝うのも、我々の仕事のうちだと思うけど?クレームがきたり、ネットで叩かれたくないし。」

 

「…そうですね…。」

 

そして、重いものも軽いものも均等に配置すると家鳴りがおさまった。

 

「よし、これでキッチンの謎も解決ですね。」

 

「ありがとうございます。…段々、全部解決するような気がします。どうせなら、全部解決してくださいませんか?」

 

「えぇ…。」

 

「なら、ネットに…。」

 

「やります!やりますよ!言うんじゃなかった!叩かれるとか!」

 

ドミナントが後悔するが、時すでにお寿司。悪い顔でニヤけているソワーズに逆らえぬまま行くのだった…。

 

……じゃぁ、私がさっき見た人影は…?それに、オーブンは…?

 

名取がドミナントに抱きつきながら、心の中で呟き、身震いした。

 

…………

外 数分前

 

「ジナイーダ…。それは流石にまずいんじゃないか…?」

 

「仕方ないだろう。ドアが開かないんだ。窓を割るしかない。」

 

長門とジナイーダが窓の前で話す。ちなみに、ジナイーダは今、ハンドレールガンを構えて、エネルギーを溜め込んでいる。そのエネルギーの影響で、オーブンのスイッチが入ったのはドミナントたちは知らない。

 

ズガァァァァァン!

 

シュー…

 

「駄目か…。」

 

「…みたいだな…。」

 

窓に当てるが、割れるどころかヒビひとつ、はいらない。そこに…。

 

ゴロゴロ…ピシャッ!

 

雷が鳴る。

 

「……。」

 

「…長門、お前まさか…。そのなりで…。」

 

「し、仕方がないだろう…。私だって怖いものは怖いんだ…!」

 

長門が雷に恐れてジナイーダに抱きつく。その瞬間を見ていたことは、名取は知らない。

 

「…他のところを探すか…。」

 

「…そうだな…。」

 

2人が立ち去る。そこで、ドミナントたちが蝋燭を照らして調べていた。

 

…………

2階

 

「ここが、フロア…。」

 

「はい。子供の霊ですね。」

 

ドミナントたちが案内されたのは、広い部屋だ。何もない。すると、早速キョロキョロしている名取が…。

 

「提督ぅ!ふぇぇぇぇん…!」

 

「名取、どうした?見えたか?」

 

名取が泣きながら抱き(ry

 

「幽霊が…。」

 

「どこ?」

 

「あそこに…。」

 

名取が恐る恐る指をさす。

 

「そんなわけ…。おわっ!?」

 

ドミナントもそれを見て、驚いた。

 

「……。」

 

が、ジッと見ている。

 

「…いや、名取。あれは違う。」

 

そして、何かが見えたのか、ドミナントが否定する。

 

「どこが違うんですか…?」

 

「あれは子供の霊じゃない。壁のシミだよ。」

 

「「シミ…?」」

 

そして、名取とソワーズが再度見る。が。

 

「ふぇぇぇん…。」

 

だが名取は怖くて一瞬見て、すぐにドミナントの服に顔をうずめる。

 

「どうしても顔に見えます…。」

 

ソワーズも見ている。

 

「あれは霊じゃない。…確か、前に聞いたことがあるな…。シミュラクラ現象…?だっけ?」

 

「「シミュラクラ現象…?」」

 

「うん。シミュラクラ現象っていうのは、点や線が逆三角形の形をすると、人の顔と判断しちゃう脳の働きのこと。」

 

「でも、身体まで…。」

 

「それは、そのシミュラクラ現象と、パレイドリア現象だよ。」

 

「「パレイドリア現象?」」

 

「パレイドリア現象は、心理現象の一種だよ。視覚刺激や聴覚刺激を受け取って、普段から知っているパターンを、本来存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象のこと。今回は、視覚刺激を受け取って、噂のパターンを思い浮かべて、子供の身体に見えるってことだね。タネさえ分かっちゃえば、呆気ないもんだよ。」

 

ドミナントはそのシミを拭き取る。名取たちもタネが分かって平気そうだ。

 

…………

寝室

 

「確か、ここには…。」

 

「提督!血のシミが…!」

 

「そうだった。落ちない血のシミだっけ?」

 

もう、ドミナントはなんともなさそうである。名取は相変わらず抱きついてくるが…。

 

「これは解決できるかしら?」

 

今が真夜中で、外が嵐なのに、ソワーズも少し楽しそうだ。謎がスッキリするのが心地良いのだろう。

 

「う〜ん…。何度も洗っている?」

 

「はい。けれど、落ちないんです。」

 

「血のシミが取れる洗剤でも?」

 

「はい…。」

 

ドミナントとソワーズが話す。

 

……と、なれば霊の仕業…。…いや、さっきのパレイドリア現象だ。噂は嘘だと思えば良い。と、なればこのシミは血のシミじゃない。赤いから血と間違われているのか…?…赤くて落ちないシミ…。…赤ワイン?

 

ドミナントは転生?前に赤ワインでついたシミを思い浮かべる。

 

……なるほど…。そりゃ、血のシミとは成分が違うから取れないわけだ…。

 

ドミナントが難なく解決。

 

「多分、これは赤ワインです。」

 

「赤ワイン…?赤ワインなの?そのシミ。」

 

「多分です。赤いし、噂のせいで血と間違われていますが、おそらく赤ワインです。成分が違うから、落ちるわけがありません。」

 

ドミナントがシミのついた少し厚手の白いシーツを手に取る。

 

「…素材はコットン(綿)ですか?」

 

「はい。」

 

「なるほど。なら塩素系漂白剤を使いましょう。お湯と歯ブラシと重曹と塩素系漂白剤ってどこにありますか?」

 

「一階の、キッチンと脱衣所に…。」

 

「さっき解決した場所ですね。行きましょう。」

 

そして、三人がその場所へ歩いて、道具を揃えたあと、ドミナントが脱衣所でシーツを広げる。名取とソワーズはドミナントを見ている。

 

「まず、あらかじめ重曹をシミの部分にかけておきます。重曹は漂白への触媒効果を持っているからです。次に、歯ブラシに塩素系漂白剤の原液をつけ、トントン叩くようにつけていきます。すると、ある程度落ちます。ある程度落ちたと実感したら、お湯で洗います。そして、またトントンを繰り返します。」

 

ドミナントが慣れた手つきで汚れを落としていく。女子力がバリバリ高く感じる…。

 

……社畜の時は、忙しくていちいち洗濯屋に出す暇もなかったからなぁ…。

 

ドミナントはそんなことを思いながら綺麗にしていく。

 

「…あっ、そうそう。赤ワインのシミは白ワインで消えるって言われているけど、それは間違いだよ。確かに、目立たなくなるくらい色は薄まるけど、所詮はワイン。赤ワインと同じ成分もある。その成分のシミが残るから、結局同じことをしなくちゃいけなくなることを忘れずに。…まぁ、気にしないのならそれでいいんですが。…よし、取れました。」

 

「凄い!」

 

「流石です!提督!」

 

そこには、真っ白になったシーツがあった。すると…。

 

ドシンッ!

 

「「「!?」」」

 

どこからか、何かが落ちた音がする。

 

「今のは…。」

 

「リビングからですね…。そこには何の噂もなかったはずですが…。」

 

「リビングですね。行きましょう。」

 

ドミナントとソワーズが話し、行く。

 

「ま、待ってください…!」

 

名取が走って、ドミナントの手に抱きついて歩いて行く。




リビングに何が…?

登場人物紹介コーナー
家鳴り…ドミナントが説明した通り。
シミュラクラ現象…ドミナントが説明した通り。
パレイドリア現象…ドミナントが説明した通り。

長門不在
次回、第161話「亡霊の館 その5」


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161話 亡霊の館 その5

ンマイハー。
「ンマイハー。」
ンマイハー。
「ンマイハー。…て!どうしたの?」
なんとなく。ACの音楽を聴くと癒されるから。
「戦闘狂ね…。」
そこまでじゃないよ。良い曲ばかりだよ。
「ちなみに、上位3位は?」
くっ…。決められん…。たくさんありすぎて…!マジで!
「そ、そんなにあるの…?」
正直に言おう…。気に入っている曲だけでも30は超している…。調べればまだまだ…。
「艦これは?」
結構ある。だが、ACには負ける。
「…へぇ…。そう…。」
?どうしたの?
「なんでもないわよ!」
なんか怒ってない?
「怒ってない!」
……。
「あらすじ!」
「ずいかくおねーちゃんおこってる?」
おー。懐かしの登場。大鳳ミニ。
「あっ、えっと…。お、怒ってなんかないわよ。」
そうなんだ〜。
「キッ!」
ぅぉぅ…。
「?」
「なんでもないわよ〜。それより、あらすじを言っちゃって。」
「?わかった。」

あらすじ!
えーっとね、まえ、おとーさんとおかーさんでぴくにっくにいったの!ほかにも、おねーちゃんやおねーさんやおにーさんやおじさんがいて、たのしかった!

そちらも中々な生活を送っておるな。
「……。やっちゃって。」
えっ?何?いきなり?
「許したわけじゃないわよ?」
えっ?ちょ、待…。
ドガァァァァァン!
グァァァァァァ…!


…………

リビング

 

「イタタタ…。」

 

「こんなところから入れるとはな。」

 

長門とジナイーダが言う。

 

「煙突の中以外にも入口はあったんじゃないか…?」

 

「あったかもな。だが、煙突以外に思い浮かばん。」

 

煤だらけの長門とジナイーダが暖炉から出てくる。

 

「この館、中はこんなに不気味なのだな…。」

 

「懐中電灯があって助かった。」

 

ジナイーダが懐中電灯を照らす。すると…。

 

「ここがリビング?」

 

「そうです。」

 

「提督…もっとゆっくり…。」

 

ドミナントとソワーズと名取が来る。

 

「提督!」

 

「長門!」

 

長門はドミナントに駆け寄る。

 

「やれやれ。お前たちを探していたんだ。…誰だ?」

 

「あぁ、名取ね。艦娘の。あと、この館の墓守のソワーズさんだよ。」

 

ジナイーダは一瞥する。が、挨拶をしない。

 

「…ジナイーダ…、名取はともかく、ソワーズさんに挨拶しなくちゃ…。」

 

「……。」

 

ジナイーダは怪しんだ目で見ている。戦場で身を置いていた彼女にとって、まだソワーズを挨拶するほど信用していないのだろう。

 

「長門は?」

 

「……。」

 

長門も挨拶しない。困った顔をしているが、どこか怪しんだ目だ。…まぁ、このご時世にこんな古びた墓の墓守がいるとは思えない。墓守じゃないと疑っているのだろう。名取は微妙な顔をしている。

 

「…すみません…。こんな礼儀知らずの仲間で…。」

 

「1人くらいは挨拶して欲しかったかな〜。…でも、しょうがないよ。うん。」

 

だが、ソワーズは全く気にした風もなく、歩きだす。ドミナントは礼儀のできていない三人を睨んだが、三人は何やらコソコソ話していた。ソワーズのことだろう。

 

「…いくぞ。」

 

「あっ、提督…。」

 

ドミナントは冷たく言ったあと、歩き出し、三人が急いでついていく。

 

…………

三階 物置

 

「ここが例の…。」

 

「そう。動くらしいの。置き物が。」

 

話していると…。

 

カタカタ…。

 

「あっ、動いた。」

 

「動いたわね。」

 

なんともなさそうに観察している。

 

「…まぁ、どうせ今回も何かしらのトリックですよ。」

 

「まぁ、そうよね。」

 

二人が話していると…。

 

「チュー。」

 

置物から鳴き声が聞こえてきた。

 

「…わかりましたね。」

 

「…そうね。」

 

二人が大体を予想して、置物をひっくり返す。そして、その想像が当たった。

 

…………

 

「これで全部の噂が解けましたね。」

 

「そうね。」

 

ドミナントとソワーズが廊下で話す。ジナイーダたちもついてきている。

 

「まぁ、亡霊なんていないんですよ。実際は。」

 

「いると思いますよ?」

 

「えっ?」

 

ドミナントが不思議に思う。

 

「だって、この世には解明できない謎もあるんですから。」

 

「まぁ、そうかもしれませんけど…。」

 

「そうなのよ。」

 

そして、二人が歩いていると…。

 

「ふぁ〜…。」

 

ドミナントが欠伸をする。

 

「……。」

 

「ふむ…。」

 

「う…ん…。」

 

三人も眠そうだ。なんせ、一睡もしていない。

 

「…そろそろ朝ね。」

 

ソワーズは窓の外を見る。嵐が嘘のように止んでおり、日が昇りかけていて空が薄青色をしていた。

 

「そうですね…。今日は色々疲れましたから…。」

 

ドミナントが欠伸をしながら言う。

 

「…もうこんな時間なのね。」

 

だんだんと空が明るくなってきた。

 

「…ドミナントさん。本日はこの館の噂の謎を解いて、ありがとうございました。これで、私もゆっくり安心して眠れそうです。」

 

「いえいえ…。人助けも我々の仕事の一環ですから…。それに、意外と楽しかったですし…。」

 

ソワーズが頭を下げる。

 

「…最後に、一つ知らせておきたいことがあります。」

 

「?なんでしょうか…?」

 

「この世に幽霊がいるかどうかはわかりませんが…。」

 

「?」

 

「亡霊はいますよ?」

 

「ははは…。何を根拠に…。」

 

「……。」

 

ソワーズは一人、歩き出してドミナントの前に立つ。

 

「とにかく、色々ありがとうございました。もし、生まれる時代が違っていたら、私はあなたに…。…やめましょう。後悔してしまいます。」

 

「?」

 

「本当に…ありがとう!」

 

ビュゥゥゥゥゥ!

 

ソワーズの言葉と共に、強い風が吹く。目も開けられないくらいに。

 

「ソワーズさん…?」

 

「ふふっ。」

 

そんな中、ドミナントがなんとか目を開けると、そこには最後にソワーズが笑顔を見せていた。くすりと笑ったような…だけど、どこか寂しいような…。そんな笑顔を。

 

…………

 

「…ん?」

 

ドミナントたちが目を開ける。

 

「む!?」

 

「嘘っ!?」

 

「こんなことって…!?」

 

ジナイーダ以外が驚く。

 

「館がないな。」

 

ジナイーダはどこか冷静にいる。

 

「…ドミナント、幻覚は治ったか?」

 

「ああ…。…幻覚?」

 

ジナイーダに言われて、ドミナントが首を傾げる。

 

「ソワーズ?だっけか?いたんだろう?」

 

「ああ。」

 

「実はな、私たちの目にはお前一人しかいなかった。」

 

「何!?」

 

「お前は独り言をずっと言っていて、居もしない人間の紹介をしていたんだ。」

 

「……。」

 

ドミナントは館のありし場所を歩く。明確に言えば、焼け跡だ。随分と長い年月が経った。

 

「そうだったのか…。」

 

ドミナントは歩くと、写真掛けを見つけて、拾って見る。白黒の写真で、いつのなのかははっきり分からないが…。

 

「…だから、あんなことを言っていたのか…。」

 

そこに写っていたのはお嬢様のソワーズだ。清々しい、年頃の娘のような嬉しそうな笑顔だ。

 

「…所詮は一夜の夢ってことだ。」

 

ジナイーダが呟く。

 

「ん〜…。いい朝日だ。」

 

「そうですね。」

 

二人の艦娘が先の方しか見えていない朝日を見ていた。すると…。

 

名取ー!

 

ギャハハハハハ!

 

二人が遠くから走ってくる。

 

「どこに行っていたの!?心配したじゃない!」

 

五十鈴が名取に言う。

 

「…夢を見てました。」

 

「夢!?」

 

「はい。」

 

「もぅ…。」

 

名取は穏やかな笑顔だった。五十鈴は名取が無事で安心したのか、やれやれとしている。

 

「な〜んだ〜。無事だったんだ〜。」

 

「まぁ、無事…なのだろう。」

 

主任が言い、ジナイーダが返す。

 

「提督…?」

 

長門はドミナントを見る。ドミナントは何やら、その写真を墓らしきところに置いていた。

 

「提督。」

 

「ああ。」

 

置いたあと、ドミナントは立ち上がり…。

 

「帰るか。」

 

帰還した。森は昨夜の沼などなく、嘘のように穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで一つ疑問が残る。ドミナントと長門が見た火の玉とは一体…?

 

 

 

…………

場所は変わって、大本営 執務室

 

「元帥殿!大変です!」

 

「どうした?」

 

大和が執務室のドアを思いっきり開けて、元帥に言う。走ってきたのか、少し息が切れていた。

 

「あの『部隊』が動きました…!」

 

「?どの部隊だ?」

 

大和は伝えようとするが、元帥は全く分かっていない。

 

「幻の部隊です!」

 

「幻…?…!なんだと!?」

 

元帥が分かり、大和と同じく驚く。

 

「…ということは…。」

 

「はい…。訪れますよ…。」

 

元帥と大和は深刻な顔をする。

 

「…現在、提督の候補者数は…?」

 

「性格面も含めると、1、2人くらいしか…。」

 

「まずいな…。非常に…。」

 

「軍事学校、提督部門にはいますが、まだ見習い中の見習いです。」

 

「分かっている…。」

 

元帥は難しい顔をしている。

 

「人員にも乏しいですね…。これは一大事ですよ…。」

 

「それにしても、何故今なんだ…?」

 

「原因は不明です…。おそらく、どこかの所属の艦娘からSOSが届いたのでしょう…。」

 

元帥と大和は難しい顔をしながら唸っていた。

 

…………

場所は変わって、第8タウイタウイ泊地

 

「くそっ!お前ら何なんだ!」

 

一人の提督が赤いレンズのガスマスクをした憲兵に床に組み伏せられて捕らえられている。

 

「う〜ん。どう思う?ここ。」

 

顔を鬼の面頬で隠している憲兵が、『憲兵』と書かれた面頬をしている憲兵に向かって言う。

 

「全ての指にケジメつける。」

 

「それが妥当かもね。…君は?」

 

鬼の面頬をした憲兵が、赤いマスクをして、目しか見えていない憲兵に聞く。

 

「…名は何と言う?」

 

「…堅田…虎昌…。」

 

「そうか。虎昌。艦娘に何をしたか分かっているのか?」

 

「くっ…。」

 

「艦娘に酷いことをするのはいけないことだ。」

 

「……。」

 

そして、その憲兵が提督の前に立ち…。

 

「虎昌…有罪。」

 

「!?」

 

「罪は鞭で200回打たないと消えない。」

 

そして、腰にあった鞭を手に取る。そして、試しに床に打ちつけてみた。すると…。

 

バチィィィィィィィィン!!!

 

鞭が鳴らしちゃいけないような音をたてた。どれほどの力がこもっているかが丸わかりだ。一回でどれほど激痛が走ることやら…。その提督は顔を真っ青にした。

 

「ちょ、ちょ。待って、ダメだから!」

 

「…何故だ?」

 

「いくらなんでもやりすぎ。多分死ぬでしょ。憲兵=サンよりだめ。」

 

「……。」

 

鬼の面頬した憲兵が、鞭を持っている憲兵を止める。

 

「…死神と言われた君の意見も聞きたいな。」

 

赤いレンズのガスマスクをしたままの憲兵に鬼の面頬をした憲兵が聞く。

 

『…なんでも構わん。』

 

「それじゃ答えになってないでしょ。」

 

そして、その鬼の面頬した憲兵が、提督を踏みつける。

 

「憲兵=サンの報告によると…。」

 

その上で、何やら紙の束をペラペラめくる。

 

「一項目、私腹を肥やすために艦娘の24時間労働。二項目、艦娘に強姦、娼婦まがいの行為の強要。三項目、必要以上に五十鈴の装備剥ぎ取り、その後はのちの項目。四項目、艦娘のデコイ及び捨て駒的役割の強要。被害艦…伊8、響、長門、五十鈴。“…轟沈者…計9名…。”五項目、我々に関する暴言…などなど。」

 

「くそ…。」

 

「尚、審判からは有罪と判決が下った。よって数ヵ月後、連行する。軍法会議は確実だと思った方が良い。それまでに艦娘たちに手紙でもあれば書いておくように。…それじゃぁ、行くよ。次はラバウルだから。」

 

「「「……。」」」

 

鬼の面頬をした憲兵が、他の3人の憲兵を引き連れて行こうとしたが…。

 

「くそ…くそがぁぁぁ!」

 

提督が鉄棒を持って、リーダー格の鬼の面頬をした憲兵に殴ろうとしたが…。

 

「邪悪が来たぞ。」

 

ビュンッ!バチィィィィィィィィン!!!

 

「痛っ!」

 

真っ赤なマスクをした憲兵が鞭を使ってその提督の鉄棒を掴んだ手を打つ。激痛に耐えかねて、その提督は持っていた棒を離す。手の皮が破けて、骨も砕けて流血している。

 

「この野郎ぉぁぉ!」

 

『……。』

 

パシッ。グルリン…ドシィィィィン!

 

「ぐ…は…。」

 

素手で向かってきた提督を、赤いレンズのガスマスクをした憲兵が腕を掴んで、投げた。

 

「…ケジメつけるか?」

 

「…いや、いいよ。チャメシ・インシデント(日常茶飯事)だから。」

 

憲兵=サンが言い、鬼の面頬の憲兵が言う。

 

「それが、幻の第49憲兵隊だから。」

 

最強憲兵たちは、今日も鎮守府を取り締まる。




尚、この憲兵たちにはそれぞれモデルがいます。鬼の面頬はオリジナルです。三人のうちの一人は憲兵=サンですね。あとの二人はわかるかな?

登場人物紹介コーナー
ソワーズ…数年前の火事によって死亡。その時が、丁度館の噂の謎を解いている途中で、無念を残していた。が、ドミナントの推理によって全ての謎が解けた。そして気が晴れて、安らかに眠った。
第8タウイタウイ泊地の提督…所謂、ブラック提督。色々しでかした。
鬼の面頬の憲兵…登場するかわからない。武器は刀。
憲兵=サン…幻の第49憲兵隊の一人。憲兵の最強格。様々なワザやジツを使うらしい。彫りの深い憲兵服を着ている。
真っ赤なマスクをした憲兵…どこかの街で人々を治めている九人の清浄委員のうちの一人。その場所は掟に厳しく、それに違反した場合は厳しい処罰を下される。他人を信用せず、異常なほどの潔癖症を持っている。動物が大の苦手。武器は鞭。少し赤みがかった憲兵服を着ている。
赤いレンズのガスマスクをした憲兵…血液型、年齢、身長、体重などのプロフィールは一切不明。わかっているのは、男性ということ。また、別の呼び名もあり、『死神』、『マスター』とも呼ばれている。どんな困難な任務でも、必ず達成して単独で帰還するらしいが、それでも他の憲兵がいるのは、他の憲兵が強すぎるからであろう。任務遂行を優先とする冷徹な性格だが、プロ意識から生まれる冷徹とも言われている。武器はハンドガンと手榴弾。実は、この部隊で一番人を殺しそうなのがこいつ。少し黒みがかった憲兵服を着ている。

「久しぶりの長門コーナーだ。」
「今回は私ですね。」
「うおぅっ!?まさか亡霊…。お前がソワーズか?」
「そうですけど、今回はいいじゃないですか。結構活躍したと思いますし。」
「ま、まぁ…いいと思うがな…。」
「怖いんですか?」
「こ、怖くなど…。」
「うらめしや〜。」
「く、来るなぁぁぁぁ!」
「そこまで…。今の怖がり方、演技じゃないのは確かね…。」
「…くっ、わ、悪いのか!?私が怖くちゃ!」
「いいえ?でも、結構大人だと思ったら、可愛い一面もあるんですね。ふふっ。」
「……。」
「まぁ、誰もが最初はそんなものです。知らないのは怖いですから。私、つまり亡霊でも、見知らぬ人は怖いですし、わからないものは怖いですよ。それと同じです。」
「そういうものなのか…?」
「そういうものなんです。私だって、他の幽霊や亡霊を見たら怖いと思いますしね。」
「そうなのか…。」
「そうなんです。」
「…ふむ。なんだかお前のことは怖くないな。」
「お互いを知ったからですよ。最初は、私もあなたが怖かったです。でも、今は怖くないですよ?あなたのことなどがわかって。」
「悪さをしないと分かれば、怖くないんだな。」
「そんなものです。…私の生い立ちは話すのは辞めますね?」
「む?何故だ?」
「私は必ず後悔すると分かって後悔する人じゃありませんから。私は亡霊になって、謎がわかったからいいんです。…ですが、全く後悔がないと言えば嘘になりますね…。ドミナントさんに一言言えなかったことくらいでしょうか?」
「…取り憑くのはやめてくれよ?頼むから…。」
「しませんよ。私は安らかに眠りますから。それに、その人に好意を寄せている人が結構いそうですし。」
「誰だ?」
「例えば…あなたとか。」
「なっ…。」
「ふふっ。赤くしちゃって。やっぱり可愛いわね。連れて行きたいくらい。」
「なっ…。」
「ふふっ。今度は真っ青ね。大丈夫よ。冗談だから。」
「そ、そうか…。」
「それより、次回のことは私がやっていいですか?やってみたいので。」
「あ、ああ。頼む。」
「次回、第162話「連行」ですね。…あらあら、もしかして連行されちゃうのかしら?ドミナントさん…。もう少しだけ現世にいようっと。」
「成仏してくれ…。」


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パラオ泊地編
162話 連行


轟沈ってどんな気持ちなんだろう…。
「えっ!?いきなりどうしたの?」
いや、轟沈すると、どんな気持ちになるのかなぁって。
「…この先、轟沈するの?」
いや、する予定は今のところない。特別話以外。
「…そうなら良いけど…。」
で、どんな気持ちなのかな?
「私は沈んだことがないからわからないけど…。多分、提督のことを最後まで思っているんじゃないかしら?」
どうして?
「自分をここまで育ててくれたから。」
…そうなら良いな…。
「ええ…。多分、私も轟沈したら『提督』のことを思うと思うわ。」
そうか。…その提督はどっちなのかわからないけどね。
「ええ。…そろそろあらすじね。」
「妾じゃ。久しき登場じゃのう。」
先輩神様ですね。
「そうね。」
「あらすじをすれば良いのか?」
はい。お願いします。
「良かろう。」

あらすじじゃ
…妾は実は今…、瀕死の状態からやっと回復したのじゃ。あやつらめ…。あそこまで強いとは…。取り逃してしまった…。当分は第4佐世保に行くことはできんのぅ…。


…………

第4佐世保鎮守府 食堂

 

ワイワイガヤガヤ

 

食堂は朝でも賑わっている。肝試しからもう数週間経っていた。

 

「今日も運ぶ、戦う、増える、そして食べられる…。」

 

「初雪、人参食べる前にその歌はNGだ。ドミナントとの約束だ。」

 

ドミナントも艦娘たちと食べていると…。

 

「お、終わりました〜…。」

 

少し汚くなっている夕張がよろよろと入ってくる。

 

「おお、夕張。久しぶりだな。」

 

「はい…。何とか大本営にそれを運んで、今終わったところです…。」

 

「疲れただろう。それに、ちょっと臭いしな。風呂に入ってきたか?」

 

「まだです…。それより、お腹が空きました…。」

 

「お、おう。…寝たか?」

 

「あれから平均睡眠時間1時間ですが、一応寝ました。」

 

「アウト。ご飯食べて、風呂に入ったら寝なさい。ブラック認定されちゃうから。」

 

「でも…。」

 

「ダメ。じゃないと、録画した『アニマル友達』、『再確認で進行形』、『進撃の老人』、『勇しば』を消しちゃうよ?」

 

「…はい…。」

 

何とか、夕張の一件も終わったみたいだ。そして、夕張はもそもそと食べ始める。すると…。

 

「あっ、あと提督、大本営からこんなものが送られてきました…。」

 

「?何それ?」

 

夕張がポケットから何かを出す。

 

「大本営から送られてきた、『ダメコン』と呼ばれる妖精さんです…。一回、艦娘が沈んでもまた復活できるらしいです…。」

 

「マジか。この妖精さんが?」

 

ドミナントが妖精さんをつつく。だが、なんの反応もしない。

 

「…非常に無口だな…。それに、反応すらしない…。」

 

「ですが、性能は大本営のお墨付きです…。」

 

「わかった。あとで倉庫に入れておく。」

 

ドミナントが妖精さんを懐に入れた。そこに…。

 

ビーーーーー…!

 

玄関のチャイムが鳴る。

 

「お客さんかな?出てくるよ。」

 

「はい、いってらっしゃい…。」

 

ドミナントが食堂を出て、玄関へ行く。

 

…………

玄関

 

ガチャ

 

「いらっしゃ…。」

 

ドミナントは相手を見て、言葉が詰まる。

 

「guten Tag(こんにちは).久しぶりね…。本当に…。第4佐世保提督…。」

 

「ビスマルク中将…。」

 

そこにいたのは、引きつった笑みを浮かべたビスマルクだ。

 

「…お手紙、届いていませんか…?」

 

「届いてないわね…。手紙というより、メモみたいに、5分足らずで書いたと思われる紙なら届いたわ…。」

 

「あっ、それです…。」

 

「そう…。」

 

ますます引き立った笑みを浮かべている。

 

「えーっと…。その通りの感じなんですか…。」

 

「……。」

 

「…わかりました。行きます。支度するので、待っていてください。一週間そちらに滞在します。」

 

ドミナントはこのまま言い訳をすると何をされるか分からないので、急いでジナイーダたちに知らせに行った。

 

…………

食堂

 

「突然だが、皆に話がある。」

 

ザワザワ…

 

艦娘たちを集めて、ドミナントが話す。

 

「これから、俺やジナイーダたちは出張に行ってくる。パラオ泊地へ。その間、この鎮守府は休みだ。一週間ほど俺たちはいないから、休日を楽しんでくれ。それと、俺たちがいない間の提督は長門だ。」

 

「な、なんだと!?」

 

「却下!長門の意見は受け付けない!」

 

「なっ…!」

 

「仕事はしなくて良い。ただ、何かあった場合は俺に連絡してくれ。それまで、君たちは自由だ。外出はしても良いけど、極力控えるように。何かあった場合は俺たちはパラオだ。すぐに助けに行けない。…だが、俺は君たちをそんな子たちだとは思っていない。俺たちが不在の間、一般の常識を弁えていれば、何をしても構わない。何も壊さなければ、鎮守府の中でのサッカーも許そう。そんな感じだ。それでは、諸君!良い一週間を!」

 

ドミナントは風のように走り、食堂を後にした。

 

…………

娯楽室

 

「主任、出張だ。」

 

「?」

 

まずは、娯楽室にいた主任を説得する。

 

「面白い鎮守府に行くぞ。」

 

「面白い?」

 

「ああ。間違いない。一緒に来るか?」

 

「いーじゃん!」

 

主任は難なくクリア。

 

「なら、一週間くらいあっちにいるかもしれないから、支度して玄関にいてくれ。」

 

「はいはーい。」

 

…………

裏庭

 

「ジャック!チェーン店にするぞ。」

 

「どうしたんだ?いきなり…。」

 

次に狙いを定めたのはジャックだ。裏庭で折りたたみ式の店を広げている。

 

「今から、パラオ泊地に行く。ジャックも来て欲しい。」

 

「私はこの店の管理を…。」

 

「向こうに行って、この店をチェーン店にするんだ。この店の良さが分かれば、どんどん増えていく…。そうは思わないか?」

 

「……。」

 

「行くのなら、一週間くらいの荷物を持って、玄関にいてくれ。」

 

「…いいだろう。」

 

…………

倉庫

 

「セラフ、南の島に行かないか?」

 

「えっ?いきなり何を言っているんですか?」

 

夕張の任務が終わって、解放された倉庫にいるセラフをつかまえる。

 

「ビスマルク中将の鎮守府へ行かないか?ってこと。あそこ、周りが海だから南の島にも当てはまる。なんせ、島一つ丸々鎮守府の管轄だから、楽しめると思うし。」

 

「ですが、ここの管理は…。」

 

「長門とかに任せる。何かあった場合はすぐに連絡するように知らせておいた。…まぁ、そのかわり、その鎮守府の艦娘たちに稽古をつけてほしいが…。」

 

「……。」

 

セラフは考える。自分がその鎮守府に稽古はするが、楽しんでいる姿を…。本でしか知らない世界に行くことを…。

 

「…行きます。」

 

「なら、一週間分の荷物を持って、玄関へ。」

 

「わかりました。」

 

…………

ジナイーダの部屋

 

「ジナイーダ。」

 

「なんだ。」

 

最後に、ジナイーダをつかまえる。

 

「パラオ泊地でちょっと稽古をつけてやってくれないかなぁ〜?」

 

「断る。」

 

「えっ…。」

 

ジナイーダが即答した。

 

「ジナイーダ…どうして…。」

 

「…そこまで私は暇じゃない。」

 

「年中無休で暇だって前会議をしてたよね?」

 

「…それはそうだが…。鎮守府が心配だ。」

 

どうやら、ジナイーダはもうすでに状況を理解しているらしい。

 

「大丈夫だよ。あの子たち、そこまで子供じゃない。ジナイーダたちと戦って、成長をしていると思うよ?」

 

「…そうかもしれないが…。」

 

「それに、そっちの世界ではない景色も見られるよ?」

 

「……。…本当に大丈夫だと思うか?」

 

「…イレギュラーな事態に直面しなければ。」

 

「……。」

 

「…大丈夫だよ。ここは世間では知らない場所だし。あの子たちも強いから。なんなら、俺の評判が地に落ちても構わない艦娘もいるし。」

 

「誰だ?その艦娘は。」

 

「加賀。でも、仲間のために仕方なくって感じだから。そういう面では、俺が嫌われていて良かったと心から思っている。彼女は強いよ。」

 

「…だろうな。」

 

「行くなら、一週間分の荷物を持って、玄関へ。俺も支度してくるから。」

 

「…わかった…。」

 

…………

ドミナントの部屋

 

「これでよし。支度完了。…と、行く前にトイレしないと…。」

 

…………

2分後

 

ジャー…

 

「よし、準備OK。それじゃぁ、行こうか…。」

 

ドミナントがバッグを持つ。

 

「重っ!?ま、まぁ…一週間…分の…荷物…だからな…。」

 

ドミナントがバッグを両手で持ち、玄関へ行く。

 

…………

玄関

 

「遅い!」

 

「すみません…。ビスマルク中将…。」

 

ドミナントが謝る。

 

「荷物はこの船に乗せなさい。」

 

ビスマルクが小舟を指差す。…いや、小舟の方がまだマシなレベルの船だ。そこらへんの木材で作ったんじゃないだろうか…?

 

「えっ?何故ですか?」

 

「海を渡るのよ?」

 

「…直で海の上を行くんですか…。」

 

「それ以外に方法ある?」

 

あるとは思うが、その意見を受け付けなさそうだ。そして、ドミナントたちは海を渡ることになった。

 

…………

パラオ泊地

 

「ここが例の…。」

 

数時間後、やっと鎮守府へ到着する。

 

「ようこそ、我が鎮守府へ。」

 

ビスマルクが言う。その鎮守府は、ドミナントたちが住む鎮守府とは違う…。どちらかといえば、海外の鎮守府のような感じだ。花園があり、整備された芝生、遺跡のようなインテリアもちらほら…。そして、なによりも目立つのが真っ白な、純白の鎮守府だ。

 

「お邪魔し…。」

 

「いくぞ。」

 

「ギャハハハハ。」

 

「入りましょう。」

 

「ドミナント、何をしている?」

 

ACというのは、無礼なのがうりらしい。

 

…………

鎮守府内

 

「ここが…。この部屋が…!あなたたちの部屋よ。」

 

ビスマルクに案内されたのは、お客様用の部屋だ。装飾が無駄に良い。

 

「…まさか、男女共同じゃなかろうな…?」

 

ジナイーダが睨む。

 

「まさか。ここが、あなたとセラフの部屋よ。」

 

「…そうか。どうやら、どこかの鎮守府よりかは良いらしいな。」

 

ジナイーダが呟く。そして…。

 

「男のあなたたちはこちらの部屋。」

 

ビスマルクに部屋を案内された。

 

「…ここですか…。」

 

「性差別もここまで来たか…。」

 

「……。」

 

さっきの部屋を見たせいか、どうも貧相に見える。いや、貧相なんてものではない。汚い部屋だ。すると…。

 

「ビスマルク姉さま?物置なんて覗いて何をして…?」

 

「しーっ!」

 

可愛らしい海外艦の子が聞いて、ビスマルクは慌ててとめる。

 

「「「……。」」」

 

ドミナントたちは何も言わなかった。

 

「…まぁ…ね。」

 

「「話が違うぞ。」」

 

二人がドミナントに詰め寄る。

 

「いや…ね…。俺もここまでとは思ってなかったし…。」

 

ドミナントは物置の中の物をどかす。埃や塵があると思ったが、全くなく、一応キレイにはしているみたいだ。

 

「まぁ、住めば都だよ。」

 

「都の前に、住むのが嫌なんだが…。」

 

いやいや言いながらも、なんとか居てくれそうだ。

 

…………

 

「荷物は置いたかな?」

 

ドミナントが言う。

 

「ああ。私の荷物は大丈夫だ。」

 

「俺も〜。」

 

ジャックと主任が言う。

 

「ところで、ドミナント…。」

 

「なんだい?」

 

「お前のバッグはいつからアホ毛が生えているんだ?」

 

「アホ毛?」

 

ドミナントがバッグのチャックを見る。そこには、黒いアホ毛がピンピン跳ねていた。

 

「……。」

 

ガシッ!

 

ドミナントは問答無用で掴み、引っ張ったりする。

 

『イタイイタイイタイ!イタタタタ!私のチャームポイントが!』

 

聞き慣れた声がする。

 

『ごめんなさい!ごめんなさい!離して〜!』

 

「……。」

 

スッ

 

ドミナントは無言でその手を離す。すると…。

 

ジ〜〜〜〜〜…

 

「じゃーん!登場!」

 

「帰れ。」

 

チャックを開けて、中から出てくる神様。ジャックたちは驚いている。

 

「だからあんなに荷物が重かったのか。」

 

「いやいや、気づけ。人が入っていたんだぞ…。」

 

ジャックがやれやれとしている。

 

「だって〜…。南の島ずるいし〜。」

 

「ずるいじゃない。俺たちはただバカンスを楽しみに来たわけじゃない。ちゃんと代価を支払うんだ。」

 

「そうなんだ。」

 

「…お前は何の代価を支払うつもりだ…?」

 

「からだ!」

 

「……。」

 

ギュ〜〜〜〜〜…!

 

「イヒャヒャヒャヒャ!ごえんなひゃい!ごえんなひゃい!」

 

ふざけている神様の頬を引っ張るドミナント。ジャックたちも呆れている。

 

「ゆるひて〜!」

 

「許さん。まだまだ終わらんぞ。」

 

「ひぇぇぇぇ!」

 

ドミナントのお仕置きに泣きながら悲鳴を上げていた。




終わり方がイマイチ…。ドミナント御一行はパラオ泊地に上陸しましたね。ちなみに、ドミナント御一行は神様も含めたAC勢全員。愉快な仲間たちはドミナント以外のAC勢。次回はパラオ泊地から始まりそうです。
登場人物紹介コーナー
ダメコン…ダメージ・コンテナ。艦娘が沈んだ時、ギリギリ復活できる代物。使い捨ての一回限り。ただ、沈まなくなっただけで、体力はギリギリの状態。体力も全回復する上位が存在するらしい。

「長門コーナーだ。」
「guten Tag(こんにちは).私はビスマルク。パラオ泊地の提督もしているわ。」
「海外艦しかいない鎮守府の提督だ。」
「あなたが長門ね。ビッグ7の。」
「ああ。連合艦隊の旗艦も務めたことがある。」
「噂はかねがね聞いているわ。」
「そうか。…嬉しいのか…?私は…。」
「さあね。それより、私はそろそろ職務に戻らなくちゃいけないから。」
「早いな。」
「そういうものよ。最低でも、5時間かかる仕事なのよ。」
「提督は2、3時間で終わるぞ?」
「…えっ?」
「いや、本当に…。」
「…あなたたちの鎮守府って本当に化け物揃いね…。」
「そこまでではないだろう。…と、そろそろ次回だ。」
「わかったわ。」
「では…、次回…。」
「次回、第163話「パラオ泊地」ね。ついに私たちの出番かしら?」
「……。」
「?どうしたの?」
「…何も…。」
「?」


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163話 パラオ泊地

この小説を見続けている人は10人も満たないことが判明した。
「!?」
そう、このまま強制エンドまっしぐらだ。
「そう…。」
そうだ…。だが!終わるつもりなどもとよりない。そもそも、強制エンドなどない。
「えっ…?」
筆者は言ったはずだ。小説を完成させると。
「!」
500話続こうが、200話で終わろうが、そんなもの、筆者の気分次第だ。好きに書き、好きにやめる。それが、この小説のやり方だ。誰が、なんと言おうとも、筆者の心が折れても、そのやり方を続ける。この小説がどれだけ人気がなくても、筆者の魂の場所だから。
「よく言ったわ!それでこそ!私の提督さん!」
…はい?
「あっ…。」
おやおや?瑞鶴、君の提督はドミナントだよ?
「で、でも!モデルは元々筆者さんの艦娘達からじゃない!」
モデルは艦これだよ?
「なんでもいいの!」
ニヤニヤ。
「なっ、何よ!?」
いや?…なんだか、楽しいなって。
「うるさいわね!」
ははは。それじゃぁ、あらすじ頼むよ?
「この…何これ!?」
ブゥゥン
ドローンだね。夕張印の。
「あらすじ…出来るのかしら…?」
まぁ、とにかくやらせてみよう。

ブゥゥン
ブゥゥゥゥゥンブゥンブゥゥゥン

あれ?デジャヴ…?


…………

パラオ泊地 二日目

 

あれから、神様の悲鳴でドミナントがあらぬ疑いを着せられてジナイーダにぶん殴られた。だが、誤解と分かり、ジナイーダが神様にお説教をした。そして、仕方ないからここで一週間過ごすことになった。

 

「にしても…。暇だなぁ。」

 

ドミナントは演習をしている方を見ている。実際、ドミナントは実戦ではあまり役に立たず、効果がないと判断されて、演習をしていない。仕事はビスマルクがしているので、暇なのだ。

 

「今日はいい天気だなぁ。」

 

ドミナントは演習で倒れている艦娘たちと、しごいているジナイーダたちを見たあと、空を見て呟く。そこに…。

 

「guten Morgen(おはよう).…何をしているの?」

 

駆逐艦と思わしき子供が話しかけてきた。

 

「いい天気だから、密売人を殺しに…。…男の艦娘!?」

 

「失礼な!僕は女の子だよ!」

 

とはいうものの、中性的な顔立ちなので仕方がない。しかも、一人称が“僕”だ。

 

「……。」

 

「…いや、本当だから…。」

 

ドミナントが怪しい目で見る。

 

「手術したのかい?」

 

「…そろそろ殴るよ?」

 

ついにその艦娘が怒りかけた。

 

「すまん。…で、君は…。」

 

「僕の名前はレーベレヒト・マース。」

 

「レーベレミノ・ガース?」

 

「…レーベでいいよ。…うん。」

 

「じゃぁ、レーベたんで。レーベレヒト・マースくん。」

 

「何で!?というより、名前言えるじゃん…。」

 

ドミナントが早速、艦娘をからかっていた。

 

「中を案内してくれる?レーベたん。」

 

「その名前やめて。…こっち。」

 

「星のレーベた〜ん♪う〜んセ〜クシ〜♪星のレーベた〜ん♪レーベた〜ん♪」

 

ドガァァァァァ!!

 

「ゴファァァ!!」

 

「一回死んだ方が良いよ。うん。」

 

ドミナントの悪ふざけについにレーベが怒り、ドミナントを数メートル先へ吹っ飛ばした。

 

「子供に見えて…なんて威力…。長門たちのパンチは加減してあったのか…。」

 

「だって、7万馬力もあるから…。というより、それに耐える大佐もすごいよ…。」

 

レーベがドミナントに近寄る。

 

「なに…。これが7万馬力なら、ジナイーダのパンチは100万馬力超えている…。それを昨日くらったからな…。」

 

今何か失礼なことを言わなかったか!?

 

「あっ!いえ!何でもありません!」

 

ジナイーダはあんなに遠くからでも聞いていた。そして、ドミナントを一瞥したあと、演習を再開した。

 

「…『提督』を思い出す…。」

 

レーベが少し寂しそうな顔で何かを呟く。

 

「どうしたの?」

 

ドミナントが聞く。

 

「あっ、いや。なんでもない。それより、中の紹介だね。」

 

「頼むよ。」

 

ドミナントはレーベに案内される。どこもかしくも獣ばかり…。さて、冗談はさておき、どこもかしくも綺麗に整備されていて、見事の一言だった。…ドミナントたちの部屋を除けば。

 

「まだあるのか…?」

 

「まだたくさん。」

 

「もう疲れたよ…。パトラッシュ…。」

 

ドミナントは今までたくさん歩いて、疲れたみたいだ。

 

「歩いてまだ30分も経ってないよ。」

 

「社畜の俺には厳しいなぁ…。でも、少しは体力がついてきたかな?」

 

「体力がついてきたって…。前はどうだったの?」

 

「10分で音を上げた。大本営の玄関へ向かうために。」

 

「うわー…。」

 

レーベがドミナントの話を聞いてひいている。

 

「あとどれくらい…?」

 

「この後、カフェテリア。」

 

「うわぁ…食堂か…。」

 

「次に、オフィス。」

 

「はぁ…執務室ね…。」

 

「そして、最後にティータイムの場所を…。」

 

「なんだって!?」

 

「うわっ!?い、いきなりどうしたの…?」

 

最後の言葉にドミナントが急激に強い反応をして、レーベが驚く。

 

「ここにもティータイムは存在するのか!?」

 

「ま、まぁ…。英国の艦もいるし…。」

 

「何故それを早く言わん!?ティータイムはいつだ!?」

 

「あ、明日だけど…。大丈夫なの…?」

 

「何が?」

 

「何というか…。そこらのお茶会と比べるとクセが強いけど…。」

 

「何をいう…。見てみろ。これを。」

 

「それは…?」

 

ドミナントがポケットから出したソレをレーベが見る。

 

「金剛の秘蔵の茶葉だ。」

 

「どうしてそれを…?」

 

「金剛が認めてくれてな。茶会の一員の証だ。」

 

「大佐は一体何者だい…?」

 

「俺は第4佐世保鎮守府提督、ドミナントだ。」

 

「いや、そうじゃなくて…。」

 

レーベがドミナントのことが全く分からなくなる瞬間だった。

 

…………

 

「ビスマルクさん仕事してたな〜。」

 

「毎日こんな感じだよ。」

 

「ところで、君は演習に参加しなくて良いの?」

 

「僕は明日担当。二つに分かれて、交互にやるの。片方が休んで、片方が演習をする。」

 

「へぇ〜。」

 

二人が演習しているところを見る。艦娘たちがオレンジ色に染まっていたり、倒れていたりするが、気にせずにジナイーダたちはペイント弾で攻撃する。戦場の過酷さを教えようとしているのだろう…。あれから約3時間ほど経っているが、ジナイーダたちはペンキ一滴ついていなかった。

 

「元気なレーベを見るのもこれで最後か…。」

 

「不吉なこと言わないで…。」

 

「いや、マジでそうなるかも知れん…。こっちの鎮守府の艦娘、軽くトラウマ化してるから。」

 

「怖っ…。」

 

レーベがナチュラルな感想を言っていると…。

 

「あんた誰?」

 

「うぉぅっ!?いつの間に…。」

 

ドミナントが振り向くと、ストイックに聞いてくる駆逐艦と思わしき子がいた。

 

「第4佐世保鎮守府提督、ドミナントだ。階級は大佐。」

 

「ふぅん。」

 

「…君の名は?」

 

どこかの映画のタイトルのようなことをドミナントが言うと…。

 

「マックス・シュルツよ。」

 

「マックス・シャレツ?」

 

「マックス…でもいいけれど。」

 

レーベがどこかでやりとりした会話だと思っていると…。

 

「マックスか。わかった。」

 

「何で!?」

 

そのまま返したことに、納得のいかないレーべ。

 

「僕の時はあんなにからかってたのに…!」

 

「仕様だ。」

 

「仕様!?なに仕様って!?」

 

「何しようか〜。」

 

「そっちじゃない!」

 

「…?」

 

レーベとドミナントの会話が全くわけのわからないマックス。

 

「もういい!僕行く!」

 

「お、おう…。行っちゃうのか…。」

 

「行くよ!マックス!」

 

「えっ?でも…。」

 

「いいから!」

 

レーベがマックスの手を引っ張りながら、歩いて行った。

 

ふぅん…。あのふざけかた、少し『提督』に似てない?

 

似てない!

 

レーベたちが鎮守府の中に歩いて行った。

 

「あーあ。行っちゃった。」

 

ドミナントが芝生に座りながら二人を眺めていたら…。

 

「嫌われたかしら?」

 

「ビスマルクさん…。仕事は終わったんですか?」

 

「ええ。」

 

ビスマルクがいつの間にか近くにいた。

 

「…やかましいわよね。ここ。」

 

ビスマルクがドミナントに話す。

 

「いえいえ。元気で良いじゃありませんか。元気が一番ですよ。それに、楽しいですし。」

 

ドミナントは笑いながら言う。

 

「あなたたちにはそう見えるのね。」

 

「?」

 

ビスマルクがドミナントを見下ろしながら言う。

 

「…実は、この鎮守府はね。世界に二つある、『悲哀の鎮守府』の一つ、『悲しみの鎮守府』なの。」

 

「悲しみの鎮守府?」

 

ビスマルクが真面目に言って、ドミナントが首を傾げる。

 

「…ここに所属する艦娘たちはね、全員…。」

 

ビスマルクが空を見る。青く、白い雲が少しだけ浮かんでいる穏やかな空だ。

 

「…私も含めて、『提督』を失っているの。」

 

どこか、無理に微笑んでいるような顔で言う。

 

「提督を…?」

 

「ええ…。ここの艦娘たちは、元々どこかの鎮守府所属だったの…。提督を失った理由はそれぞれよ。病気だったり、老いだったり、中には、自分のせいで失った子もいるわ。…私も、心に決めた提督がいた…。…でも…、守るはずの人に私は助けられちゃったの…。」

 

ビスマルクはその顔で遠くを見つめている。思い出しているのだろう…。

 

「…そうなんですか…。」

 

ドミナントはどう言っていいのか分からず、相槌を打つことしかできない。

 

「ええ…。何としてでも守らなければならない人にね…。」

 

ビスマルクは心なしか、涙声になっていた。

 

「私たちは…。『痛み』を知っている…。心に一生癒えない傷も負っているの。」

 

ビスマルクはドミナントと顔を合わそうとしない。だが、肩が震えて、涙声だ。

 

「一生の約束までしたのに…。」

 

ビスマルクは自分の薬指を見る。何もない薬指を…。

 

「それに、グラーフ…。何で庇ったのよ…。」

 

どうやら、ビスマルクは大戦時にとてつもなく大きなものを失ったらしい。

 

「昔から言うわよね…。いい人はみんな死ぬ…て…。」

 

ビスマルクはドミナントの隣の芝生に座る。

 

「…聞いてくれるかしら…?ドミナント大佐…。」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言わず、ただ寄り添ってあげた。




いきなり尻アス…。…次回は二つ続けて投稿です…。

登場人物紹介コーナー
レーベ…レーベレヒト・マース。パラオ泊地鎮守府所属。中性的な顔立ちで、一人称が僕だから、よく男と間違われる。過去に色々あったらしい。
マックス…マックス・シュルツ。パラオ泊地鎮守府所属。クール堅物系で、『ふぅん』が口癖。過去に色々あったらしい。

「長門コーナーだ。」
「今回は僕だね。」
「レーベレヒト・マースか。」
「うん。」
「今回は、性能じゃなく、生い立ちを話せるか?」
「えぇ…。…まぁ、いいけど。」
「それはありがたい。」
「僕は、2年前に生まれた艦娘。大決戦を経験しているの。というより、ここにいる人たちの全員が大決戦経験者。そして、最初に確認された艦娘でもあるの。」
「恐ろしいな。」
「でも、レベルは低いから。」
「…そうか…。」
「話を戻すね。…僕とマックスは一緒の鎮守府で育ったの。」
「そうなのか。」
「うん。…提督は優しい人だった…。おじいちゃんだったけど、いつもニコニコしていてさ。よく、僕とマックスとふざけていたり、マックスとたまに喧嘩とかしちゃったけど、必ず仲介に入ってくれたり、美味しいものとか食べさせてもらったんだ…。でも、人間ってさ…。脆いよね…。本当に…。病気で呆気なく死んじゃってさ…。まだお礼も言ってないのにさ…。プレゼントもしてあげられなくてさ…。僕たちは提督が死ぬまで、体の具合に気づくことが出来なかった…。人間ってずるいよね…。何で、僕たちの前で弱音を吐かないのか…、何で、自分の具合を知らせないのか…、何で…何で、病気のことを黙っていたのか…。いくら考えても、わからない…。僕たちに心配かけたくないのかもしれないけどさ…。グスッ…。いくらなんでもあんまりだよ…。うん…。グスッ…。」
「……。」
「でもね…。ぼぐだぢは(僕たちは)…。でいどぐがらの(提督からの)…。お"じえ"ば(教えは)…。フー…フー…。…ぜっだいに(絶対に)…!わずれないじ(忘れないし)…!…グズッ…。…ばぼるっで(守るって)…!はがのばえで(墓の前で)…!やぐぞぐじだがら(約束したから)…!」
ゴシゴシ…。
「でんごぐがらでも"(天国からでも)…!わ"ら"っで(笑って)!見でられるような(見てられるような)…!ヒクッ…。りっばな(立派な)…!りっばながんむすになるっで(立派な艦娘になるって)…!…スゥ…ハァ…。やぐぞぐじたがら(約束したから)…!」
「……。」
ゴシゴシ…。
「…だから…。僕は…。立派になるために強くならなくちゃいけない…。」
「そうか…。お前は…まだ子供なのに…。」
「子供でも…。僕は艦娘だから…。」
「…辛い話をさせてすまなかった…。」
「ううん…。僕が話したから、長門さんのせいじゃない。」
「だが…。多分、その提督は…。お前がそう約束したことを…誇りに思っていると思うぞ…。」
「そう言ってくれるならありがたいよ…。」
「…そろそろ次回だな…。」
「そうだね…。…次回、第164話「ビスマルクの過去 その1」だね…。ビスマルクの過去は僕と同じくらい悲しいよ…。本当に…。」


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164話 ビスマルクの話 その1

この小説の登場人物、ほぼ全員が悲しい過去を持っています。
「そう…。」
敵である者たちも多くが哀しき悪役です。
「…どんなの?」
世の中の理不尽、裏切られた、弱みを握られた、悪と分かってもそうするしか無かった、正義は何をしても正義扱いの理不尽さ、愛国心などなど…。
「…こういう人たちと戦いたくないわね…。」
ビスマルクも結構な重いものを持ってます。
「……。」
それじゃぁ、あらすじ頼むよ。
「…わかったわ…。」
キチャキチャ…
「何これ!?気持ち悪い!」
下水の蜘蛛だね。B988a C-typeの…。
キチャキチャ…
「嫌っ!来ないで!」
あらすじ頼むよ。
キチャキチャ…

キチャキチャ…
キチャキチャキチャキチャ…キチャキチャ…キチャキチャキチャ…ビー。

最後にビーム出したね。
「もう二度とあんなのごめんよ…。」


…………

2年前 どこかの鎮守府

 

「guten Tag(こんにちは).私はビスマルク型戦艦のネームシップ。ビスマルク。よぉく覚えておくのよ。」

 

「よく来てくれた。君がビスマルクか。やっと来てくれたか。」

 

提督がビスマルクに言う。そう、彼女こそがのちのパラオ泊地鎮守府の提督のビスマルクだ。そして、この男がこの鎮守府の提督だ。

 

「あぁ、そうだ。紹介しよう。私の隣にいるのが、君と同じドイツ艦のグラーフ・ツェッペリンだ。君が来てから、秘書艦を交代してな。」

 

「よろしく。」

 

「よろしく。」

 

グラーフ・ツェッペリンと握手を交わした。

 

…………

数日後

 

彼女が提督の呼び出しを受けた。

 

……何を言われるのかしら?早速、艦隊の一員として配属されるのかしら?まぁ、旗艦はこのビスマルク型のネームシップである私だと思うけど。

 

ビスマルクはそう思いながら執務室に入る。すると、待っていたかのように提督がいた。

 

「おぉ。よく来てくれた。ビスマルク、早速だが君に出撃してもらいたい。」

 

「その言葉がくると思っていたわ。」

 

…大方予想通りね。そして、私が旗艦として…。

 

「そうか。なら話が早い。君はまだ実践経験がないから、グラーフの随伴艦として頼む。」

 

「!?」

 

ビスマルクは驚き、グラーフを見るが、彼女は当然のような顔をして、書類をまとめていた。

 

「な、何故私が旗艦じゃ…?」

 

「そりゃ、当然だろう?実戦経験が無い者が旗艦を務めるなんて、聞いたことがないぞ。」

 

提督が困った顔で言う。

 

「…まぁいいわ。」

 

……まぁ、すぐに実力がわかって、私が必要とわかるから。

 

ビスマルクはそう思いながら準備をした。

 

…………

海上

 

ビスマルクは少しだけ、気楽に考えながら、都合の良いことを考えていた。

 

……どうせ、グラーフ・ツェッペリンも、すぐに私に頼るし。頼られるまで、サボろうかしら?

 

そんなことを思っている。すると…。

 

「…そろそろ敵陣地だ。気を抜くな。」

 

「「「はいっ!」」」

 

「はいはい。」

 

グラーフと他の艦もいる中、ビスマルクは気楽に返事をする。

 

……まぁ、どうせすぐに頼ってくるわよ。そして、私がMVPになるのよね。

 

…………

夜 鎮守府外

 

鎮守府の中では、本日の勝利で盛り上がっている。

 

「……。」

 

だが、ビスマルクは外のベンチに座っていた。ビスマルクの思った通り、MVPになった。

 

「この鎮守府に慣れたか?」

 

ビスマルクが夜、ベンチに座っていると損傷しているグラーフがくる。

 

「…MVPおめでとう。初めてで、しかも私を差し置いてMVPを取れるなんて、そうそうないぞ。」

 

グラーフがビスマルクの隣に座りながら言う。

 

「…何がおめでとうよ。」

 

ビスマルクは不機嫌そうだ。

 

「何をいう?一番ダメージを与えて、一番多く沈めることが出来たのはビスマルクだ。」

 

「…最初の攻撃をあなたが庇ったからでしょ。」

 

……そう、あの時…。

 

…………

 

「敵、空母ヲ級flagship三杯確認。輪形陣を展開せよ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

グラーフと他の艦娘が展開している中、気楽に考えているビスマルクが聞いていなかった。そのうちに、敵に見つかってしまった。

 

「ビスマルク!何をしている!?」

 

「えっ?」

 

グラーフが叫ぶが、遅かった。ビスマルクは一瞬にして艦載機の格好の標的とされたのだ。

 

「チッ…。」

 

ドガァァァァァン!!

 

「!?」

 

ビスマルクの目の前が大爆発する。

 

「グラーフ・ツェッペリンさん!」

 

「……。」

 

グラーフがビスマルクを庇ったのだ。中破してしまった。夜戦じゃないと攻撃ができない。

 

「…私に構うな。任務を遂行しろ。…ビスマルク、早く輪形陣の形に…。」

 

「え、えぇ…。」

 

ビスマルクは戸惑っていた。こんな形で頼られることなど望んでいなかったからだ。

 

「Admiral(提督)…。すまない…。」

 

グラーフは最後にその言葉を呟いていた。

 

…………

 

……あのあと、すぐに帰還したのよね…。一応Aランク勝利だったけど…。

 

ビスマルクはあの時のことを反省している。

 

「何かあった場合はいつでも私に言え。力になる。」

 

グラーフはそう言ったあと、鎮守府の中に戻って行った。

 

「…結局、私は謝れなかった…。」

 

ビスマルクは一人、呟いた。

 

…………

 

そして、その鎮守府で時が経っていった。ビスマルクは損傷したり、様々な艦娘と過ごしたり、提督に優しくされたり、敵を知ったり、提督のご飯を食べさせてもらったり…色々あった。

 

そして…。

 

…………

大決戦前夜 ビスマルクの部屋

 

「…よし。」

 

ビスマルクは準備を入念に込めて準備をする。

 

「忘れ物はないわね。」

 

ビスマルクは最後に、持ち物の確認をしていると…。

 

コンコン…

 

「?こんな時間に?誰かしら?」

 

ビスマルクがドアを開ける。すると…。

 

「…や、やぁ、ビスマルク…。」

 

「あら。提督。何か用かしら?」

 

提督がいた。

 

「その…。なんだ…。少し部屋にお邪魔させて良いかな…?」

 

「ええ。構わないわ。」

 

ビスマルクは提督を部屋に入れる。

 

「…どうしたの?そんな真剣な表情で…。」

 

「いや…。用という用ではないんだが…。その…な。」

 

「?」

 

「こ、これを…。受け取って欲しい…。」

 

提督が後ろから箱と用紙を出す。

 

「…その…。大本営からの…まだ試作品みたいなんだが…。その…な…。レベルMAXじゃなくても、少しは効果がある…みたいだから…ね。うん…。ただ、お互いの純愛で成り立つらしいから、どちらか片方でも、その思いが消えたら消滅しちゃうらしくてね…。」

 

ビスマルクはその箱と用紙を受け取って、少し思考停止していた。そう、ケッコンカッコカリだ。

 

「貰ってくれないか…?」

 

提督が見る。

 

「そっ、そう、も、貰ってあげても良いわ。わ、悪いけどもう返さないわよ?絶対…。」

 

「あ、ありがとう…。それじゃぁ、夜は遅いから…また明日な!」

 

提督は急いで部屋から出て行った。

 

「…こうなったら、意地でも沈まずに帰ってこなくちゃ…ね。」

 

ビスマルクは薬指の指輪を見て言った。

 

…………

翌朝

 

ザワザワ…

 

艦娘たちが騒めく。理由は、ビスマルクの薬指を見たからだ。提督は顔を真っ赤にしている。

 

「ビスマルク。ついにAdmiral(提督)とケッコンしたのか。おめでとう。」

 

グラーフも祝ってくれた。

 

「…ごめんなさいね…。なんだか…。」

 

「いや、いいんだ。Admiral(提督)が決めたことなのだろう?私が口出しできる立場じゃない。」

 

グラーフは申し訳なさそうなビスマルクに言う。

 

「こうなったら、意地でも沈まずに帰ってこなければな。」

 

「ええ。」

 

グラーフが微笑みながら言い、ビスマルクが頷く。




……。なんだか、アレですね…。

登場人物紹介コーナー
提督…ビスマルクが最初に所属した鎮守府の提督。歳は地味に若く、23歳前後。結構、艦娘思い。独身。
グラーフ・ツェッペリン…ドイツの空母。夜戦でも戦うことができる唯一の空母。…まぁ、艦載機を変えればただの空母でも夜戦でも攻撃できるが…。

「長門コーナーだ。」
「guten Morgen(おはよう).」
「グラーフツェッペリンだな。」
「ああ。それより、ここで何をすれば良いんだ?」
「そうだな…。そっちの鎮守府で何をしているか教えてもらいたいな。」
「わかった。ここは極々普通の鎮守府だ。遠征をして、出撃をして…ご飯を食べて、入渠して、寝る…。そんな感じだ。」
「ほう。ビスマルクとはどんな感じなんだ?」
「ビスマルクか?ビスマルクは同じドイツ艦だから、息が合うな。それに、ビスマルクは提督のお気に入りに入っているから、ケッコンもしたしな。」
「そうか。」
「ビスマルクとは良いコンビだ。背中を合わせれば、怖いもの無しだったな。」
「そんなにか…。」
「ああ。そのほかにも、ビスマルクのことだったら、色々あったぞ。」
「どんなことだ?」
「前、提督の秘書艦をビスマルクがしたことがある。ビスマルクは提督に付きっきりで、ご飯を作るどころか食べさせてもらったりしていたな。…今思えば、その時から、二人の間に少し何かを感じたな。」
「そうか。」
「ノックなしで入ったら、二人が何故か慌てていたり、顔が近かったりしていたからな。」
「あんなことをしていたのか。」
「おそらくな。名誉のために、何も言わなかったが。」
「そうか。…お前は良いのか?」
「何が?」
「提督…。」
「私は構わん。提督が好きな相手がビスマルクなら、仕方のないことだ。割り切っている。」
「…そうか。」
「ああ。…もうこの話はやめだ。次回だったか?私がしよう。」
「段々と私の役がとられているような気がするが…。まぁ、いいだろう。」
「次回、第165話「ビスマルクの過去 その2」次回でビスマルクの過去編は終わりだ。…終わりなんだ…。」
「?」


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165話 ビスマルクの話 その2

今回は轟沈描写が含まれます。苦手な方は飛ばしてください。
「ついに轟沈描写が来たわね…。」
前言ってなかったっけ?…でも、辻褄を合わせるには、これがあるんだ。
「…まぁ…ね。」
轟沈描写だけを飛ばしたいなら、一番最後まで飛ばして、パラオ泊地と書かれているところから再開すると良いです。
「…艦娘だけじゃないでしょ…。」
えっ?何が?
「とぼけても駄目。読んだわ。」
……。
「…私たちに対して、何を訴えているのかしら…。筆者さんは。」
…所詮は泡沫の夢に過ぎないんだよ。何もかも。
「ブラックが出たわね…。」
みんな死ぬんだよ。どうせ。生き残るのは強いものだけ。主人公が生き残るかどうかも不明。
「…えっ?」
陸軍編が終わったら、他の鎮守府へ行こうか、それとも最終編に行くべきか…。
「…ストーリー…?」
ストーリーだよ…。元々、最終編を書きたくてここまで来た…。だが、完璧な最終編をするなら鎮守府編をしなくてはいけない。
「……。」
エンディングの分岐も考えてある…。ハッピーエンド、バッドエンド、デッドエンド、ハーレムエンド、慈悲無しエンド、???エンドなどなど…。
「怖いわね…。」
なんせ、敵はこの世界の“イレギュラー”や“ドミナント”だから…。
「えっ!?ドミナント!?」
いや、そっちじゃない。訳すと、例外と特別だから…。
「あぁ、そっち…。」
ネタだ。では、あらすじに行こうか。
「えぇ…。て!きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ギヂャギヂャ…
「でかい!キモい!背筋がゾッとする!怖い!」
B988A M-typeだね。筆者もすごく嫌いな…。
「嫌いなら呼ばないで!!」
でも、登場したから。あらすじ…。
キヂャギヂャ…。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

ギヂャギヂャ…
ビーー!ビシャァビシャァビシャァ!!ビーー!ビーー!

うわぁ。暴れてる。
「あんたのせいよ!!」
じゃぁ、もういいや。帰って。
シュンッ!
「あっ、消えた…。」


…………

どこかの鎮守府

 

「では…。必ず生きて帰って来い。それが、私の命令だ。」

 

「「「はいっ!」」」

 

提督が言い、ビスマルクやグラーフを含めた艦娘たちが返事をする。そして、出発する順番に、提督と握手を交わしていく艦娘たち。提督は、一人一人、しっかりと目を見て“いってらっしゃい"と、声をかけていた。

 

…………

 

「Feuer!!」

 

ドォォォォォォン!!

 

「攻撃隊!出撃!」

 

ドガァァァァァン!!

 

ここは大決戦の戦場。ビスマルクとグラーフが前線を張っている。

 

「ハァ…ハァ…。…今の残りの艦娘たちは…?」

 

「ハァ…ハァ…。私たちと、あと5人少しか…?笑えないな…。」

 

しかも、ピンチ状態だった。艦娘たちが、一人、また一人と沈んでいく…。そんな状況を目の当たりにしても、悲しむ暇がない。そんな状況を悔やむ二人。現在、中破したビスマルクと小破したグラーフだ。敵である深海棲艦に四方八方囲まれた状態の…。

 

ドガァァァァン!!

 

ギリ…

 

「残り…私たちを含めて5人…。」

 

ドゴォォォォォン!!

 

「…4人…。」

 

バゴォォォォォン!!!

 

「3…。」

 

ドガァァァァァン!

 

ギリ…

 

「残り…私たちのみ…。」

 

ビスマルクとグラーフは、仲間が沈んでいくのを悲しむのも、見ている暇もないくらいの敵の猛攻に歯を食いしばっていた。そんな中…。

 

「…ビスマルク…。名案を思いついた…。」

 

グラーフが突然言い出す。

 

「…やめて。駄目よ。絶対に。」

 

「…私はまだ何も…。」

 

「どうせ囮になるって言い出すつもりなんでしょう。」

 

「……。」

 

ビスマルクに心の内を読まれ、黙ってしまう。

 

「…だが、Admiral(提督)はビスマルクを必要としている。…私は…。」

 

「私があなたを必要としている。させないわ。」

 

「……。」

 

ドガァァァァン!!

 

ドゴォォォォォン!!

 

二人は最後の抵抗だと思い、思いっきり暴れまくる。

 

「グギャァァァァァ!!」

 

ドゴォォォォン!!

 

「!?」

 

ドガァァァァン!!

 

「…チッ…やられた…。しかし砲はまだ健在だ…。夜戦なら…Admiral!!」

 

深海棲艦のクリティカルダメージで、グラーフが大破した。艦載機はもう出せない。つまり、夜戦まで攻撃できない。

 

「もう無理よ!」

 

「私を置いて行け!生存率が上がる…!」

 

「馬鹿なこと言わないで!今までどれくらい一緒に過ごしてきたかわかるでしょう!?見捨てられるわけないじゃない!」

 

ビスマルクが肩を貸す。そして、急いでその場所から撤退をしようとするが…。

 

「グギャァァァァ!!!」

 

「ゴァァァァァ!!」

 

ドォォォォォン!!

 

ドガァァァ!!

 

深海棲艦がみすみす逃すわけがない。追撃してくる。

 

ドガァ!ドゴォォォォォン!!

 

「やられた…!舵は!?舵は大丈夫…!?…なら、まだ走れるわね…!行くわよ!」

 

急いで逃げるビスマルク。そのうちに、攻撃され、グラーフにあたる攻撃も、避けたり、自らが当たっていくうちに、大破する。

 

……ここで…死ねるわけないじゃない!

 

…………

どこかの鎮守府

 

「……。」

 

提督が地平線を眺めている。艦娘が帰ってこないかとずっと待っているのだ。すると…。

 

「…!」

 

地平線から、血塗れで二人が帰ってくる。ギリギリ、沈む一歩手前みたいな感じだ。

 

「ビスマルク!グラーフ!」

 

提督が二人に駆け寄る。

 

「…帰ってきたわよ…。感謝しなさい…。」

 

「……。」

 

二人が提督に言う。

 

「そんな格好で…。…他の艦娘は…?」

 

「「……。」」

 

二人は目を合わさない。合わせられるはずがない。

 

「…そうか。お前たちの格好で薄々わかっていた…。おいで。すぐに入渠の準備をしよう。そして…。」

 

「「?」」

 

「よく帰ってきてくれた…。」

 

提督が二人を抱きしめる。

 

……あなたのためなら…。私は…。

 

……Admiral…そこまで心配してくれたのか…。

 

二人が抱きしめられ、幸せに思う。

 

「本当に…ありがとう。」

 

提督が抱きしめながら言う。

 

 

 

 

 

が、幸せは長く続かない。

 

「グギャァァァァ!!」

 

ドォォォォォォン!!!

 

「「「!?」」」

 

三人が驚く。深海棲艦がコソコソついてきていて、隙を伺っていたのだ。

 

「危ない!」

 

「「Admiral!!!」」

 

ドガァァァァァン!!!

 

あろうことか、提督が二人の盾になったのだ。ビスマルクたちに生温かい、赤い液体がかかる。

 

「ゴプッ…。」

 

提督が血を吐きながら倒れた。重傷も良いところだ。背中の肉が焼け焦げ、焦げた骨が露出している。

 

「アドミラール…?」

 

ビスマルクはへたり込んだまま提督を抱き抱える。

 

「ゔあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"…!!」

 

ドガァァァン!!

 

丁度、日が沈み、グラーフが砲撃で敵深海棲艦を沈める。

 

[BGM 艦これアニメ 『絆』]

 

「ビス…マルク…。グラーフ…。」

 

「…Admiral…。」

 

グラーフも駆け寄る。

 

「私は…ゴプッ…。」

 

提督が何か言おうとするが、肺に血液が溜まって血を吐き出す。

 

「話さないで!今…今助けるから…!」

 

ビスマルクは慌てて、傷薬を塗る。

 

……!?指輪が…。

 

ビスマルクは、自分の薬指の指輪が消滅しかけているのに気づく。そう、この指輪はどちらか片方でもでも純愛でなくなったら消滅するのだ。つまり、もう提督の命は…。

 

「いい…。ビスマルク…。」

 

提督がビスマルクの手を血塗れの手で止める。

 

「傷薬で…どうにかなる…わけじゃ…ない…だろう…?多分…私は…死ぬ…。」

 

「ダメ!死んだら許さない!絶対に…!」

 

「わがまま…言わないで…くれ…。」

 

提督は無理に笑顔になる。

 

「ビスマルク…。やめるんだ…。」

 

グラーフも言う。

 

「いや…!いや…!」

 

「ビスマルク…提督の…最後の話を聞け…。」

 

「そんな…。うっ…うっ…。」

 

グラーフは歯を食いしばっているが涙声だ。

 

「グラー…フ…。今まで…ありがとう…な…。お前…が…秘書艦…であっ…た…ことを…誇り…に…思う…よ…。」

 

「私こそ…Admiralのような人に仕えることができて…幸せだった…。」

 

グラーフは帽子で目を隠しながら言う。頬に涙が伝っているのが見えている。

 

「ビス…マルク…。…昨日…ケッコンした…ばっかり…なの…に…。ごめん…な…。あまり…時間…が…なくて…。もっ…と…早…く…渡して…いれば…。」

 

「……。」

 

ビスマルクは涙を流しながら首を振っている。

 

「本当…に…ごめ…ん…。みん…な…。最後…まで…駄目な…提…督…で…。…グラー…フ…。ビス…マルク…。私…は…先に…逝く…。新し…い…提…督…とも…仲良く…な…。」

 

そして、提督は深く息を吸った。

 

「…ありがとう…。」

 

その言葉を言い残し、息を引き取った。その瞬間…。

 

パリィン

 

指輪が粉砕した。

 

「…いや…。…嘘…。ダメ…逝かせない…!」

 

ビスマルクは提督に心臓マッサージをする。

 

「ビスマルク…。」

 

グラーフはビスマルクに言うが応じない。

 

「ふっ、ふっ、ふっ、…。」

 

必死に、息を吹き返させようと心臓マッサージをする。

 

「ビスマルク…!」

 

「今…今…助けるから…。」

 

「ビスマルク!」

 

グラーフはビスマルクを提督から引き剥がす。

 

「離して…!離してよ!Admiralを…。」

 

パァァァァン!

 

グラーフはビスマルクを引っ叩いた。

 

「いい加減にしろ!ビスマルク!Admiralは…!Admiralはもう死んだんだ!」

 

グラーフは歯を食いしばりながら、ビスマルクの肩を掴み、揺さぶりながら言う。

 

「うぅ…うっ…うっ…。」

 

二人は歯を食いしばりながら涙を流す。

 

「うあぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁぁ…!」

 

ビスマルクはその場にへたり込み、泣き叫ぶ。本当に絶望しているのだ。

 

「くっ…うっ…くっ…。」

 

グラーフも、同じのようだ。帽子で隠そうとしているが、涙が留めなく溢れてくる。

 

…………

 

「…ひっく…。…に行く…。」

 

「…?」

 

あれからしばらくしたあと、ビスマルクが泣きながら突然立ち上がり、海の方へ行く。

 

「復讐しに…!あいつらを皆殺しにする…!」

 

「!?」

 

今まで見たことも、想像すらしたことないビスマルクの表情と、憎悪の籠もった重い言葉を言い放ったことに、グラーフが驚く。

 

「待てっ!大破状態の血塗れで何を言っている!?Admiralの話を聞いていなかったのか!?最後の言葉だぞ!」

 

「でもっ!このまま引き下がれない!」

 

「いい加減にしろ!…私だって行きたい…!あいつらを皆殺しにしたい…!だが、私たちで何が出来る!?あいつらは無尽蔵にいる…!今の私たちを見てみろ!」

 

グラーフがビスマルクに言う。

 

「…でも!私は行く!」

 

「あっ!待て!」

 

ビスマルクは一瞬の隙をついて行ってしまった。

 

…………

 

「……。」

 

深海棲艦がどこかへ向かっていると…。

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 

ビスマルクが現れる。

 

「!?グギャァァ…!」

 

ドガァァァァァァン!!!

 

「!?ゴギャァァ…!」

 

グシャァァァァァ!!!

 

「!?」

 

ビスマルクは目につく深海棲艦を片っ端から屠って行く。潰したり、引き裂いたり、砲撃したり…。鬼気迫る勢いで殺していく血塗れのビスマルクを見て、深海棲艦は少し怯えていた。が…。

 

「グギャァァァァ!」

 

所詮は深海棲艦だ。艦娘を攻撃する。

 

「ヤメロ!」

 

かに思えたが、今の声を聞いて、深海棲艦たちが鎮まる。

 

「?」

 

ビスマルクは声の主を睨む。深海棲艦だ。

 

「…ワタシノナハ『コン』。オマエノテイトクヲコロシタノハワタシノブカダ。」

 

「!?あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」

 

ビスマルクはそれを聞くなり、攻撃した。が。

 

ビュンッ!

 

「!?」

 

深海棲艦とは思えないくらいのあり得ないスピードで回避したのだ。

 

「…ヨワイワネ。」

 

「……。」

 

「ソンナニヨワイカラ…テイトクヲウシナウノヨ!」

 

「くっ…。」

 

ビスマルクは歯を食いしばる。

 

「…オワリヨ。ヤリナオシテキナサイ。ワスレテ、アタラシイテイトクニアイナサイ…。」

 

渾が魚雷を発射する。ビスマルクはそれを避けられない。大破状態で、これをくらえば轟沈する。

 

ドガァァァン!!

 

「「!?」」

 

「だから…行くなって…言ったんだ…。」

 

グラーフがビスマルクを庇ったのだ。グラーフも大破状態だった…。グラーフが少しずつ沈んでいく…。

 

「そんな…そんな…!」

 

ビスマルクは首をいやいやと振る。

 

「…ビスマルク…。…Admiralを失って、自暴自棄になったのはわかる…。だが、それをAdmiralが望んでいたと思うか…?」

 

「……。」

 

ビスマルクはやっと正気に戻り、首をゆっくり振る。

 

「私はここまでだが…。お前はこれからも生きろ。私や、Admiralの分まで生きてくれ。…私は深海棲艦になって、記憶を失うかも知れないが、お前はずっと覚えておいてくれ…。…私は行く。また会えたら…その時に…。」

 

「グラーフ…。ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

ビスマルクは必死に謝る。

 

「…なに…。気にするな…。…そう思ってみれば…、最初に艦隊に所属した時も、こんな感じだったな…。何故か、私はお前を庇ってしまう…。…なんでだろうな…。」

 

ビスマルクは少し微笑む。そして…。

 

「コンと言ったな…。」

 

「…エエ。」

 

「一生の頼みだ…。と言っても、すぐだがな…。…ビスマルクを逃してやってくれないか…?頼む…。」

 

グラーフは渾に頼む。

 

「……。」

 

「この通りだ…。」

 

そして、頭まで下げた。

 

「…ワカッタワ。コノカイイキヲデルマデ、ワタシタチシンカイセイカンハナニモシナイ。チカウワ。…グラーフ・ツェッペリン。アナタ…。…ケッコウカッコヨカッタワヨ。」

 

「それは…ありがたい…。敵に褒められるのも…変な感じだがな…。」

 

渾が初めて艦娘を褒めた瞬間だった。いや、世界で、初めて深海棲艦が艦娘を褒めた瞬間か。

 

「ビスマルク…。もう私の半身以上は浸かった…。これ以上近くにいると、危ないぞ…。お前まで沈んでしまう…。」

 

「グラーフ…グラーフ・ツェッペリン…。あなたまで失いたくない…。」

 

「…なに…。順番が決まっているんだ…。私の方が早かっただけだ…。お前のせいじゃない…。」

 

「でも…。」

 

「いつか…。記憶を持って生まれてきたら…。その時は…。」

 

言い終わる前に沈んでしまった。

 

「うっ…うっ…うぁ…。」

 

ビスマルクは涙が枯れていた。提督、そしてグラーフ…。心の支えを失ってしまったのだ。生きる希望を失ったのだ。

 

「…ハヤクイキナサイ!!!」

 

渾が叫ぶ。

 

「ワタシヲウラミナサイ!フタリヲコロシタワタシヲ!!ツヨクナッテワタシニフクシュウシニキナサイ!!!ソレマデイキナサイ!イキテ、ワタシヲタオシナサイ!!」

 

「うっ…うっ…うぁぁぁぁぁぁ…!あぁぁぁぁぁぁ…!」

 

ビスマルクは渾を背に、行った。

 

「グギャァ…。」

 

「…イイワネ。テヲダシタラユルサナイワヨ。」

 

渾は深海棲艦に言いつけた。

 

…………

パラオ泊地

 

「…なんて、ことがあったの…。」

 

「……。」

 

ビスマルク中将が言う。

 

「…さっきのレーベって艦娘も、病気で提督を失っているの。…だから、この鎮守府には人間の提督がいないの。失いたくないから…。失うのが怖いから…。」

 

ビスマルクは丸くなり、体を縮こませる。そして、少し震えていた。

 

「…ビスマルク中将…。」

 

ドミナントが声をかける。

 

……ビスマルクさん…ジナイーダに生い立ちが似ている…。だから、あの時すぐに察することができたのか…。

 

ドミナントは思う。そして…。

 

「ビスマルクさん…俺はお前の昔のことに興味はない。」

 

「……。」

 

「人生なんて…結局、誰だって後悔だらけ。それの何が悪い。」

 

「…ありがとう。大佐。」

 

「…まぁ、俺の知っている者の受け売りの言葉だが。」

 

ドミナントはビスマルクに自分の提督服を羽織らせる。

 

「それに、その提督、絶対に幸せ者でしたよ。」

 

「…どうして…?」

 

「だって、死んでも尚、こんなに想い続けてくれる人がいるんですから。」

 

「……。」

 

「それに、グラーフさんも絶対、どこかにいます。」

 

「なんでそう言い切れるの…?」

 

「…何ででしょうね…。勘ですよ。ただの。」

 

「勘…。」

 

「はい。勘です。ポジティブに生きないと、この先生きのこれませんよ?…紅茶です。リラックス効果のある。」

 

「…danke(ありがとう)….」

 

ビスマルクは紅茶を飲む。

 

「熱い…。」

 

「身体が温まれば、自然と心にゆとりが出来ます。」

 

「…ん。」

 

ビスマルクは紅茶を飲む。少しずつ、悲しい気持ちが薄れてきた。

 

「ビスマルクさん。一人で抱え込まないでください。あの話を聞いた以上、聞いた自分にも責任があります。寂しい時や、悲しい時は必ず連絡してください。夜の2時でも受け付けます。その時の悪夢を見て、すぐに連絡してきても良いです。…あなたの仲間はその提督と、グラーフさんだけじゃないんですから。」

 

ドミナントは笑顔を見せる。その時、ビスマルクの目に、亡き提督の面影が重なった。

 

「…ありがとう…。本当に…。」

 

ビスマルクは紅茶を持ったまま、また泣き始める。

 

「ちょ、泣かないでくださいよ…。ジナイーダに見られたら…。」

 

ドミナントが慌てて言うが…。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「ハッ!?」

 

…………

ドコカノウミノウエ

 

「…!」

 

ソロモンがいきなり反応する。

 

「…ドコカデ…ナニカ…。ナツカシイオモイデ…。…ビスマルク…。アナタナノ…?」

 

ソロモンは、一人呟くのだった。




ソロモン…。コン…。

登場人物紹介コーナー
トクニナシ。

「長門コーナーだ。」
「今回は…私ですか。」
「でたな。物語の提督。」
「は、はい。」
「ビスマルクの夫。」
「その話はやめて…。」
「そうか。…もう故人なのだな…。」
「はい。筆者?と呼ばれる人の降霊術でいます。」
「なら、幽霊なのか?」
「幽霊…かどうかはわかりませんけど、まぁ、そんな感じです。」
「そうか…。」
「はい。…ビスマルクとはあまり良い思い出作れなかったな…。もっと早くにケッコンをしていればなぁ…。」
「……。」
「何も残してあげられなかったよ…。グラーフは元気かな?ビスマルクも、新しい提督とうまくやってるかな?」
「……。」
「まぁ、ビスマルクを取られちゃうのは嫌だけどね…。はは…。」
「…大丈夫だ。二人は元気だ…。ビスマルクもグラーフも新しい提督と元気にやっていけている。」
「そうなの?そうなら、嬉しいんだけどね。」
「ああ。それに、ビスマルクは取られない。そう断言できる。」
「どうして?」
「ビスマルクは、お前が死んでも尚、思い続けている。お前は幸せ者だよ。」
「本当?嬉しいなぁ。大決戦が終わって、みんな無事だったら、どこかの遊園地や、動物園、ピクニックに行きたかったなぁ…。」
「…後悔するようなことを言うな。」
「ごめんよ。」
「…私の知り合いに亡霊がいる。…多分、今もどこかを彷徨っていると思うが…。そいつはなるべく後悔しないようにしていたぞ。」
「へぇ。その人、カッコ良いね。参考にしようかな?」
「それが良い。」
「あと、私を励ましてくれようとしてありがとう。」
「別に良い。」
「そろそろ次回だね。冥土の土産に次回予告しても良いかな?」
「構わん。」
「…次回、第166話「このザワークラウト絶品だな」ですね。タイトルが変わったことは、この場の内緒です。」
「そうだな。」
バァン!
「提督!」
「!?ビスマルク!?」
「おぉう…。筆者め。再会を許したな…。死人と現世の人との接触は避けろと言っていたのに…。」
「提督…!」
「ビスマルク。久しぶり。」
「うぅ…ひっく…。」
「泣かないでくれ…。それに、もう時間もない。言いたいことが山ほどあるだろうけど、短くまとめられるかな…?」
「やっぱり…あなたなのね…。人の気持ちも考えられないその言い方…。グスッ…。」
「そんな感じだよ。常に。」
「そうね…。グスッ…。…私、あなたのことを忘れない…。あなたが死んでも尚、愛し続けるから…。ひっく…。必ず、必ず生まれ変わって、私に会いに来なさい…!今まで甘えられなかった分、取り戻してやるんだから…!」
「…ビスマルク…。」
「…ああ。必ずね。」
「ひっく…。グスッ…。」
「もう時間が間近だね…。最後に、ビスマルクに一言だけ…。」
「…?」
ガバッ
「提督の魂は…常に君と共にある。悲しむことはない。また会える。…だから、希望を持って生きるんだ…。」
「ええ…約束する…。ありがとう。」
スゥ…
……
「…抱きしめて、言いながら消えていったか…。」
「…長門、ありがとう…。」
「別に良い…。…生きろよな。」
「ええ。約束守らなくちゃね…。」
「そうだ。」


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166話 このザワークラウト絶品だな

タイトルを変えました。その場その場の思いつきで書いているので、そこまで至らなかったということです。
「能無しね。」
辛辣ぅ…。
「これ、何回目よ…。」
5回はしているんじゃない?でも、完結したら全部修正するから、この会話も無くなる。
「へぇー。」
どうでも良い感じだね。
「そりゃそうよ。だって、関係ないもの。」
…嫌に不機嫌だね。ログインしてないからかな?
「そんなに単純じゃないわよ。」
じゃぁ、女の子にだけ起きるあの現象?月に何回か起きると言われている…。
「ちっ…!馬鹿!違うわよ!」
言葉が詰まった。怪しい…。
「爆撃するわよ!?違うって言ってるでしょ!」
じゃぁ何さ?
「…わからない?」
出番?
「はぁ…。もういいわ。あらすじにいくわね。」
正解かな?
「違う。…この人よ。」
「瑞鶴〜、なんか不機嫌だけど、どうしたの?」
蒼龍さんですね。
「この馬鹿は何にもわかってなくて…。」
「そうなんだ〜。やっぱり、男の人って鈍感だからねぇ〜。」
「そうなのよ。」
なんか、唐突にdisられてる筆者って一体…。
「瑞鶴はあなたのことが〜…」
「…蒼龍さんも、鈍感なのね…。」
「へっ?違うの?」
「違います。…もう!役立たずばっかり!!」
ごめんなさい。
「ごめんなさい。」
「同時に言わないでよ…。それより、あらすじどうぞ。」
「はいよー。」

あらすじ
前回、特に変わったことはなかったかな?

鎮守府は今日も平和です。


…………

パラオ泊地

 

「全く、提督を泣かせてどうする。」

 

「すみません…。」

 

ドミナントがジナイーダに土下座している。

 

「いやいや…。大佐は私の話を聞いてくれて、嬉しい言葉を言ってくれたの。これは悲しい涙じゃなくて、嬉しい涙だから…。」

 

「…本当か?」

 

「ええ…。決して、大佐に嫌なことを言われたからではないわ。」

 

「そうか…。…だそうだ。顔をあげても良いぞ。」

 

「誤解なのになんて態度…。」

 

「何か言ったか…?」

 

「い、いえ!なんでもありません!はい!」

 

ドミナントが元気よく返事する。

 

…………

 

「マックス、見てた?」

 

「うん。」

 

レーベとマックスが鎮守府の窓から、ドミナントたちを見ていた。

 

「…ビスマルクさんが泣いているところ初めて見た…。」

 

「マックスも?やっぱり…。…ビスマルクさんも悲しい時はあるよね…。僕たちと同じで…。」

 

二人が話していると…。

 

「No wonder(そりゃそうよ).彼女も艦娘ですもの。」

 

「「Warspite(ウォースパイト)さん。」」

 

後ろから声をかけてきた海外艦。イギリスのクイーンエリザベス級戦艦、ウォースパイトだ。

 

「…いつも、気丈に振る舞っているけど、彼女も相当な過去があるから。」

 

「Warspite(ウォースパイト)さんは、確か…。」

 

「ええ…。My Admiralは寿命で。イギリス艦隊全員、My Admiralの艦娘だから、話が合うの。」

 

「ふぅーん。そう…。」

 

マックスとウォースパイトが話す。そして、ウォースパイトが窓から、ジナイーダに胸ぐらを掴まれて、揺さぶられているドミナントを見ている。ビスマルクは止めようとしていた。

 

「…大佐、面白い人ね。…死んだmy Admiralとそっくり…。金剛とふざけていた時もあんな感じだったっけ…。」

 

ウォースパイトは、目を回しているドミナントを見ながら言う。

 

「…僕たちもふざけかたがちょっと似ているような気がしてさ…。提督を思い出しちゃうよ…。あんなの…。」

 

「…提督…。」

 

「…マックス、元気出して。ほら、僕も泣いてないから。」

 

「…うん…。」

 

レーベもマックスもドミナントを見ていた。

 

…………

 

「もう〜言わない〜から〜やめて〜…。」

 

「聞こえないな。」

 

現在、ドミナントはジナイーダにぐるぐる回されている。

 

「マナイータとか言わないから…。」

 

「あ"ぁ"!?」

 

「ひぃぃぃ!すいません!」

 

現在、ジナイーダからお仕置きを受けている。ドミナントが理不尽な扱いを受けて、うっかり口が滑ったのだ。

 

「…一晩中、鎮守府の屋上から吊るしてやる。眠れると思うな。」

 

「ひぇぇぇぇ…。」

 

ドミナントは一応情けない声を言うが、少し安堵している。何故なら、少し前の彼女なら、躊躇なく殺していたであろうからだ。

 

…………

 

「腹減ったなぁ…。」

 

ドミナントは吊るされているにも関わらず、そんなことを心配する。…まぁ実際、ジナイーダなどに何度も窓から投げ捨てられていて耐久性がつき、落ちても死なないのだが…。どちらかといえば、縄で縛られているため、そちらの方を心配している。

 

「…にしても、この紙は取って欲しいなぁ…。汗が滲みると、顔に張り付いて息ができなくなるかもしれないし…。」

 

ドミナントの顔に、『反省中』と書かれた紙が貼り付けられている。そう独り言を話していると…。

 

「大佐、ご飯持ってきたわ。」

 

「その声は…ビスマルクさん?」

 

屋上から声がする。そして、引き上げられた。

 

「いいんですか?ジナイーダにバレたら…。」

 

「そのジナイーダさんから許可をもらったわ。…というより、吊るした本人が行くのもアレだからって、逆に…。」

 

ビスマルクは言おうと思ったが、嫌な予感がして、言うのをやめた。まぁ、その予感は正しいのだが…。

 

「?」

 

「な、なんでもないわ。それより、これ。」

 

「キャベツ…?」

 

「ザワークラウトよ。」

 

ビスマルクから、紙皿と割り箸と共に渡される。

 

「もぐもぐ…おぉ。このザワークラウト絶品だな。」

 

「感謝の極み…て、何故かこの言葉が浮かんできたけど…何故かしら…?」

 

同じ出身国だからであろう。

 

「…美味しいですね。」

 

「…そう。良かったわ。」

 

ビスマルクはドミナントが食べているのを見て、にんまりと笑う。

 

「私は、食べさせてもらうことが多かったけど…。…食べてもらうのも良いものよね。」

 

「?」

 

「…提督にも食べさせてあげたかったわ…。」

 

どこか哀愁漂う声で言う。

 

「…ビスマルクさん。後悔するようなことを考えたり、言ってはいけませんよ。」

 

「ごめんなさいね。ついクセで。」

 

ビスマルクはそう言いながら立ち上がり、堤防に寄りかかりながら月を見ている。

 

「…あなたって、どこか提督に似てるわよね。」

 

しばらく見た後、ビスマルクが振り返って言う。

 

「そんなにカッコよくないですよ。それに、多分自分が人間だから、そう感じてしまうんですよ。」

 

「それだけかしら?」

 

「あと、歳とかです。」

 

「そんなに老けてないわよ。」

 

「老け顔で悪かったですね。」

 

「フフッ…フフフフフ。」

 

「フハッ…ハハハハハ。」

 

ビスマルクとドミナントが笑い合う。鎮守府の皆んながこっそり覗いていたのは、言うまでもない。そしてジナイーダが来て、反省したということで、鎮守府に入ることが出来た。

 

…………

翌朝 パラオ泊地 三日目

 

バッ!

 

「茶会だ。」

 

ドミナントは朝すぐに目が覚める。ジャックたちは寝ている。

 

「さてと、じゃ!いっちょ行き…。…!?」

 

ドミナントが起き上がろうとしたら、見たこともない海外艦が、布団の中に潜り込んでいるではないか…。

 

……?デジャヴ?

 

ドミナントは思い出す。前もこんなことがあったなぁ〜と。

 

……その時は大鳳だったっけ…。

 

ドミナントは目を閉じて思い出していた。

 

…………。……て!そんなこと思っている場合じゃない!誰!?この子!?

 

ようやく、現状のことの重大さに気づき、慌てる。

 

「提…督…。…スゥ…。」

 

「……。」

 

少し安心したような顔で眠っている、青い髪の駆逐艦。

 

……そうか…。この鎮守府、全員が提督を失っているんだっけ…。

 

ドミナントは、その子の頭を少し撫でる。

 

「ひひ…。」

 

すると、少し微笑んだ。そこに…。

 

「ドミナント。その子は誰だ?」

 

「うぉっ!?」

 

ジャックが尋ねる。

 

「…わからない。起きたらいた。それと、静かにね。少し安心しているみたいだから。」

 

「…わかった。」

 

ジャックが言う。

 

「…だが、ジナイーダに見られたら、確実にまた投げ出されるぞ。」

 

「う〜ん…だよね…。でも、この子たち、提督が死んじゃって、寂しい思いをしてきたんだ。人間の提督で安心出来るのなら、あとで投げ出されても構わないかな。」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントは撫でながら言い、ジャックの口元が少しだけ緩む。

 

「…ところで、我々は人間なのか…?」

 

「…そこに触れちゃダメでしょ…。」

 

ドミナントとジャックが話していると…。

 

「あれ?朝かな?ギャハハハハハ!!」

 

主任起床。

 

……最もうるさい奴が目覚めてしまった…。

 

二人の思ったことがシンクロした。

 

「しー…。今、艦娘が安心して寝てるから…。」

 

ドミナントは自分の腹の上で眠っている艦娘を見せる。

 

「あ、そうなんだ〜。…で、それが何か問題?」

 

……あっ、そうだった…。主任は常識が通用しないんだ…。

 

ドミナントは辛辣なことを思う。

 

「…主任、ここの艦娘たちは、安心して寝ることなど滅多にないのかも知れん。ここの艦娘たちは提督を失っている。安心して寝かせてやってはくれないだろうか。」

 

ジャックが冷静に言う。

 

「…じゃ、しょうがないね。」

 

主任が素直に応じた。

 

……ジャック、主任の扱い上手くなってないか?

 

ドミナントがそんなこと思っていると…。

 

「ま、これくらいなら良いよね〜。ハハハハ。」

 

主任がドミナントの布団の足元をひっくり返す。

 

「主任…貴様…何をするつもりだ?」

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをねっ。」

 

そして主任はあろうことか、スカートを手に持つ。

 

「アポイーッ……。」

 

主任がスカートをめくったが、すぐに閉じ、真顔になっていた。

 

「…?どうした?主任…?」

 

「…なにも。」

 

「?」

 

ドミナントは聞くが、何も答えない。

 

「…ジャック、中見た?」

 

「いや、あの日から、破廉恥な行為はしないと心に決めている。」

 

「あぁ、そうだったね…。」

 

ドミナントとジャックが話していると…。

 

「…この世には、見てはいけないものがある…。例え、それが人間の可能性を確かめられる方法だとしても…。」

 

「「!?」」

 

主任のマジな声で言った。そして、なんとなく恐ろしくなり、二人は絶対に見ないようにした。

 

…………

1時間後…

 

「スゥ…。」

 

「まだ寝てる…。」

 

ドミナントは動けない。1時間このままだ。ジャックたちはテーブルを出して、物置にあったもので遊んでいる。例えば…。

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガ…!

 

「主任、私のスマッシュを受けてみろ…。」

 

「中々やるじゃない?それなりにはさ。」

 

エアホッケーだ。円盤が速すぎて見えない。そのうち壊れるのではないだろうか…?

 

「…でも、よくこんなにうるさいのに起きないな…。」

 

「スゥ…。」

 

…………

さらに30分が経過した。

 

「…そろそろ起きてくれないかなぁ…?」

 

ドミナントが呟く。

 

「おそらく、前日の演習が応えたのであろう。昼まで寝ているんじゃないか?」

 

「それは困る…。茶会が…。」

 

「招待されてないだろう?」

 

「それは…そうだけど…。…冷やかしに行きたいじゃん?」

 

「はぁ…勝手にしろ。我々は演習の準備をする。」

 

ジャックと主任はペイント弾の点検をしている。戦場で生きてきた彼らにとって、錆弾を探したり、弾数を数えないと落ち着かないのだろう。実際戦場で、錆弾で詰まったり、いつのまにか決め手の弾が無いなどの状況に陥ったら、ほぼ死ぬからだ。ペイント弾とて、抜かりはない。

 

「…主任、これは弾が詰まる。そっちに置いてくれ。」

 

「はいはーい。」

 

主任が駄目な弾を置く。どれも使えそうで、同じに見える。すると…。

 

パッパラッパパッパラッパラパパッパパー!

 

「「「!?」」」

 

とあるラッパの音が鎮守府に響き渡る。

 

『全員!起床!!』

 

「ふぁい!」

 

ビスマルクの力の入った放送に、ドミナントの上で寝ていた艦娘も飛び起きる。

 

「今日は私が当番!早く行かなきゃ!」

 

その艦娘はドアに向かって走る。

 

ガチャ!バタン!

 

そして、出て行った。

 

『ふぁっ!?』

 

ドシャァァァン!!

 

ドシーン!

 

ドシャーン!

 

廊下から何やら気になる音ばかりしたが、どこか走って行ったのがわかる。

 

「…大丈夫かな…?」

 

「それより、何だったんだ…?あの艦娘は…。」

 

ドミナントとジャックが顔を見合わせるのだった。…主任はマイペースを貫き通していて、ずっと弾の点検をしていた。




終わりましたね。タイトルのところは勘弁してください。一気に二話も投稿してしまって、この話が完成しなかったんです。まぁ、自分の不手際でありますが。まぁ、そのつもりで。

登場人物紹介コーナー
ウォースパイト…イギリスのクイーンエリザベス級の戦艦二番艦。気位が高く、礼儀正しく淑やかで気品のある淑女。お触り厳禁。触った場合は説明を求められる。周囲などに気を配る一面も見られる。彼女たちイギリスの艦娘の提督は老いで死んでしまった。その提督は彼女たちに見守られて安らかな笑顔で息を引き取った。
ザワークラウト…ドイツ料理。ザワークラウト、所謂キャベツの漬物ですね。酸っぱいが、それは食酢などのせいではない。発酵による乳酸のせい。
寝ていた艦娘…おそらく次回に登場。


「長門コーナーだ。」
「今回も私のようね。」
「ここは出番が多かったり、重要人物だった者が来るからな。」
「そう…。でも、3回くらい登場している気がするわ…。」
「前と前回と今回だからな。3回目だ。」
「やっぱり…。…で、今回は何を話せば良いのかしら?」
「そうだな…。日本の戦艦が聞くのはアレだが、性能を教えてくれないか?」
「性能?…そうね…。鉄壁の艦…とでも言うべきかしらね。」
「この私より鉄壁と?」
「ええ。1時間以上もの間、約400発ほど集中砲火されたけど、致命傷は僅かに4発。約100発に1回しか致命傷を受けなかったの。…まぁ、沈んでしまったけど。」
「なぜ集中砲火されたんだ?」
「そうね…。実は、その前にちょっとした戦いがあってね…。その戦いには圧勝したんだけど…。その…ね…。燃料に…。」
「…漏らしたのか…。」
「そんな軽蔑するような目で見ないで!仕方なかったんだから…。」
「…まぁ、漏らしたことは置いといて、どうなったんだ?」
「その漏れが原因で一度港に帰ろうとしたけど、追撃戦があって…。舵をやられちゃって、そのまま流されて大勢の敵艦のど真ん中に…。」
「それは災難だったな…。」
「第二次世界大戦にいたら、どれほど戦果を上げていたか…。」
「…第二次世界大戦…?なにそれ?」
「そうか。知らないのか。年代的に。日本はアメリカや沢山の国々を相手に戦争したんだ。連合国と…。」
「それは…凄いわね…。」
「ドイツも日本と共に戦ったぞ。」
「私が沈んだ後そんなことが…。」
「まぁ、負けて、私はビキニ環礁で被爆したがな…。」
「被爆?」
「いや、なんでもない。あの光は嫌だからな。伝えるのも嫌だ。」
「そ、そんなに…。わかったわ。」
「ありがとう。…そろそろ次回だな。やってくれ。」
「ついに役を投げ出したわね…。」
「今思い返せば、何回もした気がするからな。」
「そ、そう…。次回、第167話「パラオ泊地のお茶会」…だそうね。…?どこかで聞いたことが…。」
「前やったからな。」
「そう…。」


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167話 パラオのお茶会

ダクソやっていて遅れました。鐘のガーゴイルがつぉい…。
「鐘のガーゴイル?」
屋根の上で戦う奴。どちらかというと、密度によって落ちちゃうのが難関。
「へぇー。レベル上げれば?」
今やっているよ?雷が有効らしいけどね。墓王の剣は使わないことにしてるし。
「そう…。頑張りなさいよ。」
ああ。…今回は機嫌が良いね。
「久々にログインしてくれたから。」
力の源はログインだ。僕がいなくても、終わることはない…。
「まぁ…。でも…ね。」

「察しなさい!…そろそろあらすじね。」
そうだね。今回は〜?
「木曾だキソー!」
いきなりキャラ崩壊やめて…。木曾ですね。
「大本営精鋭部隊の…。」
「そうだ!既に旗艦は決まっている…。陸奥がな!」
弱王…。尻を貸そう。
「ゲイヴンネタやめなさい。」
へいへい。
「あらすじ入るぞ。」
りょーかい。がんばれ。

あらすじだ
何やら、大和も元帥殿も大慌てだ。提督候補の数が足りない…だとか。幻の第49憲兵隊も動き出したらしい。…まぁ、その内容は161話にあるらしいが…。…幻の第49憲兵隊か…。49は縁起の悪い数字だから幻なのか。…半ば強引に…、寝込みを襲ったことは覚えているが…。…強さが反則級だったな…。那智が赤マスクにたった一回鞭に打たれただけで大破など…、陸奥はガスマスクに体術でボコボコにされていたな…。霧島と鳥海は憲兵面頬と挨拶した後叩きのめされていたし…。んあ?俺か?俺は鬼面頬に服だけ軍刀で剥ぎ取られた。あんな辱めはもう御免だ。


…………

パラオ泊地 食堂

 

「…うちの鎮守府と比べたら、艦娘少ないな。」

 

「そのようだな。」

 

「賑わってるけどねぇ〜。」

 

どこの鎮守府でも食堂は賑わうらしい。ドミナントたちは腹が減ったので食堂へ来た。すると…。

 

「「「……。」」」

 

ジー…

 

「…なに?」

 

艦娘たちがドミナントを見る。

 

「…ジャック、俺何かしたかな?」

 

「いや、多分お前ではなく、主任だろう。覗きをしたみたいだからな。」

 

「ジャック、なんかいつものことのように言ってるけど、ダメなことだからね?しかも、他の鎮守府でやるなんて、非常識にも程があるよ?」

 

「私ではなく主任に言ってくれ。」

 

どんなことがあっても覗きをしてはいけない。ドミナントの約束だ。

 

「…まぁ、それは置いといて…。俺たちの分のご飯あるかな?」

 

ドミナントたちはキッチンに行く。

 

「第4佐世保鎮守府の分のご飯ありますか〜?」

 

ドミナントが入りながら聞く。すると、奥からエプロン姿の青い髪をした艦娘が出てきた。

 

「あるよ!サム特製Scramble egg(スクランブルエッグ)とBacon(ベーコン)!あと、熱い…あれ?」

 

「…あれ?今朝もしかして…。」

 

ドミナントはその艦娘を見て、思い出す。いつの間にか寝ていた艦娘だ。

 

「うん!寝てたよ。」

 

「やっぱり…。」

 

ドミナントは困った顔をしていた。

 

「ところで、これ!」

 

「お、おう。ありがとう。」

 

その艦娘に朝食を渡される。

 

「好きな席で座っていいよ!いつもこんな感じだから!」

 

「へぇ〜。…で、ところで君は?」

 

「あっ、自己紹介まだだっけ?私はジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦、サミュエル・B・ロバーツ。」

 

「俺…いや、私は第4佐世保鎮守府提督、ドミナントであります。」

 

「知ってます。」

 

「ですよねー。」

 

サミュエル…いや、言葉など既に意味をなさない。サムは元気に言う。

 

「あと、はい!もちろん、熱いCoffee(コーヒー)も。」

 

サムに笑顔で渡される。

 

「…コーヒー…だと…?」

 

「?」

 

「…いや、なんでもない。ありがとう。」

 

ドミナントは死んだ目でお礼を言って、キッチンから出て行った。

 

「ここに座るか…。」

 

ドミナントが席につく。主任たちも料理を手に入れたみたいだ。そして、近くに座る。すると…。

 

「隣失礼するよ。」

 

「ん?誰…て、神様か。」

 

「そうだよ。1日ぶりだね。」

 

「そうだな。」

 

ドミナントは食べながら話す。ドミナントはふと、周りを見た。ドミナントを見て、どこか寂しそうな、悲しそうな顔をした艦娘、目の奥の光がまだ灯っていない艦娘がいた。そして…。

 

「…神様…。」

 

「無理。」

 

神様はしれっとして食べながら言う。

 

「俺はまだ何も…。」

 

「死人は蘇らない。」

 

「…お前の力も無理か…。」

 

「うん。…彼女たちの気持ちもわかるんだけどね。」

 

どうやら、人情があるドミナントの言うことをわかっていたみたいだ。

 

「…人にはね。生があるってことは必ず死もついてくるの。それは、誰にも止められない、止めることのできない原理なの。どれだけいい人でも、どれだけ想われている人でも、必ず順番に訪れるもの。…私も、あなたに死なれたら悲しい。とても。あの世でも過ごせるって言ったけど、それはあなたの魂だけ。肉体はついてこない。抱きしめることも、手を繋ぐことも…食べさせてもらうことも…何も出来ない…。…あなたを失った心の穴は埋められない。生まれ変わっても、あなたはあなたで無くなっている。生きるってことは、死ぬってことだとも思う。親しい人や、想い人が死んでしまったら、絶望するよね。でも、人はそれを乗り越える。すごいよね。人間は100年くらいしか生きられないけど、それは素晴らしいことだと思う。限られた時間(命)の中で、どのように生きるか。そして、それが何を生むのか。何を成し遂げるのか。私たち神様ではわからない、あなたたちのみのこと。後追いする人もいるけど、それは許されないことだと思う。この世界…どの世界でもそうだと思うけど、無念で死ぬ人は大勢…、それじゃ足りないくらいたくさんいるの。それに、後追いしてその人は喜ぶかな?私は嬉しくない。逆に、私の分まで生きてほしい。無念を成し遂げてほしい。…いきなり死んじゃって受け入れられないかもしれない。彼女たちの提督?も突然死んでしまった人ばかり。受け入れられなくて当然かも知れない。でもね、その人たち、最後になんて言っていたのかな?多分、こうじゃないかな?…受け入れて、乗り越えて、幸せになってくれ…て。」

 

神様は真剣に言う。その場にいた全員がしっかりと聞いていた。

 

「…私はそれしか言えない…。言葉しかできない…。それだけでは救いにならないのも分かってる…。」

 

神様が呟く。

 

「いや、それは違う。」

 

「?」

 

近くに座っていたビスマルクが神様に言う。

 

「この場にいる大勢の艦娘が、今の言葉に救われたぞ。」

 

ドミナントが周りを見る。涙を流している艦娘もいれば、食事を中断して思い出している艦娘、口元が緩んでいる艦娘がいる。さっきまでの食堂が嘘のようだった。

 

「…神様、艦娘代表として、この言葉を送る。」

 

「?」

 

「ありがとう。」

 

「……。別に良いよ。救うことが出来たなら。」

 

ビスマルクは頭を下げ、神様が笑顔になる。

 

「…神様。」

 

「なに?」

 

ドミナントが神様を見る。

 

「…少しだけ…好感度が上がった。」

 

「本当!?」

 

ドミナントが言い、神様が驚く。

 

「ああ。…初めて神様らしいことをしてな。…少しだけだぞ。」

 

「初めてって…それに、少しだけって…。…でも、嬉しい!ありがとう!」

 

神様は笑顔で言う。

 

……全く、こいつはやるときはやるんだな。

 

ドミナントはそんな神様を横目に、そう思うのだった。そこに…。

 

「あれ?どうしたの?みんな?」

 

サムが自分の食事を持ってやってくる。

 

「?まぁいいや。ここ座るね!」

 

座った場所はドミナントの向かい。

 

「いっただっきまーす!」

 

そして、食べ始める。それをビスマルクが見て…。

 

「……。さぁ、皆んなも食事を再開するわよ?早くしないと冷めちゃうわ。」

 

口元を緩ませながら言った。そして、艦娘たちが食べ始める。

 

「俺たちも食べるぞ。」

 

「うんっ!」

 

「…そうだな。」

 

「…はい。そうですね。」

 

「…冷めてしまう。」

 

「いーじゃぁん!盛り上がってきたねー!」

 

ドミナント御一行も再開する。しばらくして…。

 

ジー。

 

サムがドミナントをじっと見ていた。

 

「どうした?」

 

「ううん。人間の提督って初めて見たから。」

 

「えっ?」

 

「…実はね。私、人の提督をあまり知らないの。鎮守府に着いた時には亡くなっていたから…。」

 

サムは一瞬、少し寂しそうな顔をするが、すぐに笑顔になる。

 

「…そうか。」

 

……だから、朝いたのか…。提督のぬくもりが欲しかったのか…。なら、これ以上は問い詰めん。

 

ドミナントはサムを見る。作ったものを食べてくれるのがそんなに嬉しいのか、ニコニコしたまま見ている。ドミナントは気にせずに食べ続けるが…。

 

……うっ…。

 

人生で最大の難関にぶち当たる。

 

……コーヒー…。

 

その難関は意外としょぼかった。

 

……とある人がコーヒーのこと下品な泥水って言ってたな…。…コーヒー…苦手なんだよなぁ…。コーヒーの苦味も何もわからないのに、ブラックにこだわる中二病じゃないからな。ここはやんわりと…。

 

ドミナントが考えていると…。

 

トントン。

 

「何?ジャック。」

 

「……。」

 

ジャックは顔をある方向へコソリと動かした。ドミナントはそこを見る。

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

「ひぇっ!?」

 

ジナイーダが目を見開きながらジッと見ているのだ。朝っぱらからとんだホラーである。

 

……飲まないという選択肢はない…て、目だなあれは…。

 

そして、ドミナントはコーヒーのコップの取手をつかむ。すると、サムが目を輝かせた。

 

……ええい!ままよ!

 

ドミナントは一気に飲む。そして…。

 

「どう?」

 

サムが聞いてきた。

 

「う"、う"ま"い"よ"…!」

 

「すっごく苦そうな顔…。」

 

ドミナントは耐えようとしたが、苦味が凄かったらしい。

 

「…だが、後味はすっきりとしている…。いいセンスだ。」

 

「ありがとう!」

 

ドミナントがどこかの傭兵のようなことを言い、サムが喜ぶ。そこに…。

 

「大佐、突然だが、これを受け取ってくれ。」

 

「本当に突然だね…。なんだろう?」

 

知らぬ海外艦がドミナントに手紙?のようなものを渡す。

 

「Tia party(茶会)の招待状だ。」

 

「なん…だと…?」

 

ドミナントの声が震えていた。

 

「…まぁ、突然だが恐れずに…。」

 

その艦娘は不気味な顔でニヤケながら言おうとしたが…。

 

「是非行かせてもらおう。」

 

「えっ?」

 

ドミナントの嬉しそうな顔に呆気にとられる。

 

「いや、実は招待されてなくても冷やかしに行くつもりだったけどね。そちらから招待してくれるなら、願ったり叶ったりだ。」

 

「すっごい嬉しそう…。」

 

ドミナントがそれを持って、嬉しそうにする。神様は滅多にしない嬉しそうな顔に驚いている。

 

「そ、そうか…。…嫌がると思っていたが…。

 

その艦娘は思っていたこととは違う展開に戸惑いながら戻って行った。

 

「うぅ〜ん楽しみだぁ。」

 

「俺のセリフ取らないで〜って、聞いてないねぇ〜ギャハハハハハ!」

 

ドミナントは本当に嬉しそうだ。レーベは遠くから見て、微妙な顔をしていた。

 

…………

裏庭

 

「すっごい場所だな。ここ。」

 

ドミナントは周りを見ながら言う。そこは、宮殿の庭のように整備された庭だ。自分より背の高い高木が四角く切られている。迷路のようだ。

 

「ここだな。」

 

そして、ドミナントは中心と思われる場所に出た。そこには…。

 

「あと少しで始まるわね!」

 

「大佐遅いわね。」

 

「逃げたんじゃないか?」

 

「いや、それはない…。あの顔は…。」

 

「そうなら、いいわね。」

 

5人の艦娘が真っ白な椅子に座りながら言っていた。真っ白な机の上に、明らかにこだわりもあり、歴史もありそうなティーカップとソーサーがあった。

 

「すみません。遅くなりました〜。」

 

ドミナントが近くへ寄る。

 

「遅かったな。言葉は不要か?」

 

「そのセリフをどこで…。」

 

戦艦のような海外艦に言われて、席につく。

 

「では、Tia party(お茶会)を始める前に、少し大佐の実力を見てみたいわ。」

 

「?」

 

「我が名は、Queen Elizabeth class battleship Warspite(クイーンエリザベス級戦艦ウォースパイト)!」

 

おそらく、このお茶会の主催者であろう艦娘が言う。

 

「そうか。で、確かめるというのは?」

 

「今から、紅茶をいれるわ。当てることができるかしら?」

 

「それだけか。良いだろう。」

 

「ただ、これらはdifficult to get(入手困難)なものばかり。colonel(大佐)の知らない紅茶もあるかもしれないから、three times(三回)まで間違えても構わないわ。」

 

ウォースパイトからの挑戦状だ。

 

「ほう。やろう。」

 

「Now you’re talking(そうかなくっちゃ)!ちなみに、私たちの提督は一つ間違えたわ。」

 

「それはその人だ。俺は違う。」

 

ウォースパイトは次々に入れていく。4人の艦娘はそれを面白そうに見ている。

 

「Let's get started(さぁ、始めましょう)!!!」

 

「望むところだ!」

 

…………

パラオ泊地より10海里ほど離れた場所

 

「…ナンノツモリダ?コン…。」

 

「マリアナ…。」

 

この場所に、深海棲艦が二人いる。渾とマリアナだ。

 

「ブカヲゼンインヒキツレテ…。ワタシトセンソウデモハジメルツモリ?」

 

「イイエ…。」

 

「ナラ、ドコニイクキ?ココハワタシノナワバリヨ。」

 

マリアナが言う。

 

「ムカシノヤクソクヲハタシニ…。」

 

「ムカシノヤクソク?」

 

「オネガイ…。マリアナ…。」

 

渾がマリアナに頼むが…。

 

「ナゼイマ?」

 

マリアナはなるべく入ってもらいたくないのか、理由を問い詰めてくる。

 

「ワタシニハ…。モウジカンガナイ…。」

 

渾が目を逸らしながら言う。

 

「?…マサカ…!」

 

「エエ…。ソノマサカヨ…。」

 

「…ニンゲンメ…!」

 

マリアナは憎悪で顔を歪める。

 

「…ブカモゼンイン“カンセン”シタ…。…ダカラ…オネガイ…。」

 

「アア…。」

 

マリアナがすんなりと許す。

 

「アリガトウ…。…コレイジョウ、ワタシノチカクニイルトアナタマデ“カンセン”シテシマウワ…。ハヤク…ハナレタホウガイイワ…。」

 

渾がどこか寂しそうな顔で言う。

 

「…サミシクナルナ…。」

 

マリアナも寂しそうな顔だ。

 

「…ゴメンナサイネ…。ツギノカイギハデレソウニナイワ…。」

 

「アア…。ツタエテオク…。」

 

「アリガトウ…。」

 

渾が部下を引き連れて進んで行く。

 

「…マテ。コン。」

 

「?」

 

だが、マリアナが振り向き、引き止める。

 

「サイゴニ…。ドコニイクノカシリタイ。」

 

マリアナが寂しそうな目で見ながら言う。野暮と分かっていても、最後だからだ。

 

「パラオハクチ…。ビスマルクトネ…。」

 

「…ソウカ…。…タオサレニイクノダナ…。」

 

「エエ…。」

 

渾は微笑んだ。マリアナは変わらずに寂しそうだ。

 

「コン…。」

 

「マリアナ…。ワカレノコトバハイラナイ…。シズンダラカンムスニナレルノナラ、マタアエル…。テキドウシカモシレナイケド、コノヨカライナクナルワケジャナイ…。」

 

「…アア。」

 

マリアナが少しだけ口元が緩んだ。

 

「…ツギニアウトキ、テキドウシダッタラシズメテアゲルワ。」

 

「ナンダト?ギャクニカエリウチダ。」

 

「フフッ…。」

 

「ハハハ…。」

 

「…ジャアネ。」

 

「マタアウヒマデ…ソノトキニ!」

 

二人は軽口を言い合った後、別れた。




ダークソウル。鐘のガーゴイル倒せました。次は山羊頭かぁ…。

登場人物紹介コーナー
Samuel・B・Roberts…サミュエル・B・ロバーツ。通称サム。明るく素直な頑張り屋で、世話焼きでお調子者でドジっ子で…。色々属性が豊富な少女。護衛駆逐艦の誇りも持っている。料理はお手の物だが、飲み物がコーヒー一択という…。彼女が鎮守府に所属する日の早朝に提督が死んでしまい、提督の顔も知らずにここに引き取られた。それ以来、人間の提督のぬくもりに憧れていた。
神様…ドミナント出身の世界の神様。ドミナントのことで何かを隠している節がある。人間のことを下に見ておらず、素晴らしいと思っている。心優しい神様。ドミナントの好感度が少し上がって嬉しそうにしていた。家族がいるらしいが、一切話さない。
ビスマルク…ここの鎮守府の提督。提督を失っているが、それを乗り越えると決意した。昔、生きる希望を失った彼女は、ある深海棲艦にある意味助けられたことがある。

「長門コーナーだ。」
「guest(ゲスト)はサムみたいだね。」
「そのようだな。…胸が熱いな…。」
「?何か言った?」
「い、いや、なんでも…。」
「…で、ここで何をすれば良いの?」
「そうだな…。自身の紹介などではどうだ?」
「上に紹介されてるよ?」
「いや、そこではない、何か…その…艦歴だ。」
「あー…なるほど。」
「栗田艦隊と戦って、食い下がったらしいな。」
「その時は護衛空母を守ったよ。懐かしいなぁ…。自分より大きくて強い艦と戦ったっけ…。」
「えーっと、記録によれば…。鳥海に肉薄して魚雷を発射、筑摩の第3砲塔の破壊、煙幕に隠れての攻撃、29ノットでの走行、全弾撃ちつくし…。…なんだこれ?」
「サムの記録。」
「……。…お前のような駆逐艦がいてたまるか。」
「でも、いるよ。…まぁ、一言で言い表せれば、“戦艦のように戦った護衛駆逐艦”だね。」
「あなたは…恐ろしい艦ね…。何もかもを黒く焼き尽くす…真っ黒に…。」
「沈めてないから、逆に焼き尽くされたんだけど…。」
「そうか。」
「鳥海?と会ってみたいなぁ。今はこの姿だから、友達になれる気がしてさ。」
「なれるさ。」
「えっ?」
「この世界はそういう世界だ。教官たちも、最初よりすごく柔軟になった。それに、感情があるからな。共に深海棲艦に立ち向かう仲間として歓迎してくれる筈だ。」
「…そうなんだ。それは良いね。」
「ああ。…ところで、教官たちの演習どうだった?」
「die(死ぬ).」
「即答…。私たちがおかしいのではなくて安心した…。ホッとしているよ…今は。」
「次回予告だっけ?やりたいな。」
「構わん。じゃんじゃんやってくれ。」
「わかった!えーっと…。next time(次回)「パラオのお茶会 part2」…ひねりがないね。」
「筆者のタイトルネタ不足というか…。次回が合わずに、タイトルを変えるのが嫌なのだろう。」
「そういうものなんだ。…最初のinstructor(教官)たちはどんなだったの?」
「ペイント弾でも沈む。それだけだ。」
「怖っ。」


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168話 パラオのお茶会 part2

病み村で迷いました。
「随分遅い投稿ね。」
ダクソは素晴らしい。
「へ、へぇ…。」
…瑞鶴、言いたいことは分かる。ダクソじゃなくて、ここはACと艦これだって。分かっているが…。もう誰も筆者を止めることは出来ない…。死ね。
ドガァァァァァァン!!!
ぐぼはぁぁぁぁ!!
「いい気味ね。」
いきなり爆撃する奴がいるか!?
「だって、殺されちゃうじゃない。」
…冗談だと分かっててやったな…。
「そんなわけないじゃな〜い。」
…まぁいいや。あらすじ頼むよ。
「この人。」
「私は那智だ。」
あ、そうなんだ〜。で、あらすじ始めてくれるかな?
「……。」
「ごめんなさい。こんな人で…。」
こんな人とは失礼な。
「…まぁいい。やってやろう。」
太っ腹〜。
「「……。」」
…ごめんなさい。

あらすじ
あらすじだ。提督と大和が用意した候補者の数は全部で51人。だが、厳選な審査の結果次々と落とされた。…まぁ、結果的に言えば、全員落ちたがな…。もう、あそこに頼るしか…。


…………

パラオ泊地 裏庭

 

現在、ドミナントの紅茶を愛する審査(?)で、ウォースパイトと勝負をしている。お茶会をするためにこれが必要なんて、誰が思うだろうか…。勝負の内容は、紅茶の種類を当てるだけ。だが、結構な難問だ。そんな中、ドミナントは余裕そうに飲む。そして…。

 

「右から…。」

 

「……。」

 

「ヌワラエリア、ルフナ、ディンブラ、ジャワ、ラミン、サバラガムワ…最後に…。」

 

「……。」

 

「キームンだ。」

 

「…!」

 

ウォースパイトは驚いていた。いや、その場にいるイギリス艦全員が驚いていた。

 

「…どうだ?」

 

「…いいえ…。last question(最後の問題)を間違えたわ…。」

 

「な、なんだと…。…て、なんでそんなに驚いているの?」

 

ドミナントは、1つ以外当たっていたとしても、驚きすぎている艦娘たちに疑問に思う。

 

「…答えは、prince of wales(プリンスオブウェールズ)よ…。」

 

『「なるほど、イギリス艦だけにか。」』

 

「「「!?」」」

 

「…Ad…miral…?」

 

「うん?」

 

艦娘たちはなんだか寂しそうな、驚いたような顔をしていた。

 

……今、大佐がAdmiralに…。

 

……間違えたところも…一緒…。

 

……言葉まで…。

 

座って、見ている艦娘たちがそれぞれ思う。

 

「…Admiral…。」

 

ウォースパイトは何故か、ドミナントの顔を撫でた。

 

「あ、あの…。どうかしましたか?何かついてます?」

 

「…はっ!?な、なんでもありません。」

 

我に帰ったウォースパイトはすぐに手を引っ込める。

 

……何故、私は大佐の顔を…?

 

そして、ウォースパイトはまともにドミナントの顔を見れなくなってしまった。

 

「まぁ、合格line(ライン)は超えている。」

 

「よし。」

 

「次は余だな。」

 

「えっ?」

 

……今のが全てじゃなかったのかよ…。

 

金髪の戦艦だと思われる艦娘が言い、ドミナントは騙して悪いがされた気分になる。

 

「もしかして、他の皆さんも…。」

 

ドミナントが面子を見る。

 

「もちろん。私も認めていない。」

 

「私は別にいいんだけどね!楽しく出来れば!」

 

「このJanus(ジェーナス)もよ。」

 

どうやら、面倒なことになったみたいだ。

 

「うわぁ…。」

 

「すっごい嫌そうな顔…。」

 

まぁ、結局やることになったのだが。

 

『スリランカで標高400m〜500mの…。』

 

『キャンディ。』

 

『くっ…。正解だ…。』

 

まぁ、結果的に言えば、

 

『穏やかなコク、マイルドな渋み、赤みの強いオレンジ色、ほんのり甘い香り。』

 

『ケニア。』

 

『何故わかった…?』

 

ドミナントの圧勝だ。そして…。

 

「「「いらっしゃい。Admiral(提督)。」」」

 

「君たちのAdmiralじゃないんだけど…。」

 

完全に受け入れた。

 

「qualification(資格)は持っているのか?」

 

「いえ、趣味ですので…。」

 

「十分にqualificationを取ることが出来るぞ。」

 

「趣味に資格なんていらないんですよ。本業は提督業なので。」

 

「提督は何の紅茶が好みなの?」

 

「だから君たちの提督じゃないって…。てか、この質問前にも…。」

 

皆んな騒いでいる中、ウォースパイトはチラチラと見るだけで、何も聞いてこない。恐らく、自分たちのadmiralと重なってしまうのが嫌なのだろう。思い出してしまうから。

 

「…思い出すなぁ…。どこもかしくも夢中なものばかり。…どうせ、貴様もそうなるのだろう…。」

 

「いきなりどうしたの?渋い声なんて出して…。」

 

ウォースパイトの隣で話しかけてきた金髪の戦艦の海外艦。

 

「Nelson(ネルソン)、あなたは平気なの?」

 

「ああ。…まぁ、Admiralを思い出してしまうのは辛いがな。」

 

「……。」

 

「だが、それを越えなければ前に進めない。Admiralも言っていただろう。」

 

「……。」

 

…………

 

『私はもう歳だから、あまり君たちの提督をしていられないだろう。私が死んでも打ちひしがれてはいけない。前へ進まなければならない。なに、大丈夫だ。昔から魂は消えないと言われているだろう?もし、私が死んでも君たちと一緒にいる。心の中で生き続ける。ウォースパイト。おそらく私が死んだら君たちはパラオに行くだろう。そこで、ビスマルクの言うことをよく聞くんだ。…大丈夫。その時は、ビスマルクも気持ちをよく分かってくれるさ。彼女も君たちと同じだから…。』

 

…………

 

「着任したその日にそんなことを言うもんだから、本気で心配しちゃったのよね…。」

 

「フフフ。Admiralは自分のことをよく分かっていたからな。…まぁ、数ヶ月後に逝くなんて誰も想像していなかったが…。」

 

ウォースパイトとネルソンは、ドミナントにまとわりついて楽しそうにしている同士を見る。そして、少しだけ口元が緩んだ。

 

「Ark(アークロイヤル)、Jervis(ジャーヴィス)、Janus(ジェーナス)。大佐が困っているぞ。」

 

しばらく眺めた後、ネルソンが止める。

 

「助かった…。」

 

ドミナントは自分の紅茶が溢れないようになんとしてでも死守していたらしい。

 

「…大佐、scone(スコーン)もあるぞ。」

 

「イギリス艦の作ったスコーン…。」

 

「ん?いやか?」

 

ドミナントが微妙な顔をしているのを見て、不思議がる面々。

 

「い、いえ。いただきます。それと、自身の茶葉をあげます。招待してくれたお礼に。」

 

……イギリスの料理はまずいと有名だったはず…。

 

ドミナントは覚悟して食べる。他の面々は笑顔で見守っていたり、ドミナントの茶葉の紅茶を飲んでいる者もいる。

 

「…おお。美味しいですね。」

 

「当然だ。」

 

少し安心したのか、ネルソンが言う。楽しい時間が過ぎるのは早い。

 

「招待してくれてありがとう。」

 

「いえいえ。」

 

「中々楽しかったぞ。」

 

「こんなに楽しいtea party(お茶会)をしたのは久しぶりだ。」

 

「また来てね!」

 

「また、必ず…。」

 

しばらく談笑した後、お茶会が終わる。

 

「またね。」

 

ドミナントは帰っていく。

 

……イギリスの料理はまずいって噂だったけど、デマだったんだな。

 

…………

食堂 夜

 

……無理だ!!!

 

晩ご飯に出された料理に、ドミナントたち第4佐世保鎮守府の面々は息を飲む。

 

「大佐、私たちの伝統のBritish food(イギリス料理)を食べてくれないかしら。」

 

「腕によりをかけて作ったんだ。味わってくれ。」

 

「不味いなんて言わせない。」

 

「いっぱい作ったから!」

 

「食べなさいよね。」

 

今晩はイギリス艦の艦娘たちが作ったみたいだ。他の艦娘の目も死んでいる。

 

「…あっ、AMIDAに餌やる時間だ〜…。」

 

「逃すか。運命を受け入れろ。それに、AMIDAいないだろ。」

 

「ひぇぇ…。」

 

そそくさと退場しようとする神様をドミナントが止める。

 

「これは…。」

 

「食べられますけど…。ね…。」

 

「……。」

 

「まぁ、こんなもんかな〜。…本当に…。」

 

ジナイーダたちACも流石に見たことない食べ物で戸惑っている。

 

「神様、ネジとか不純物入ってないから美味しいかも知れんぞ。」

 

「嘘だっ!目が泳いでいるもん!絶対にまず…むぐ。」

 

ドミナントが神様の口を押さえる。

 

…せっかく作ってもらったんだ…。そんなこと言うもんじゃない…!

 

むぐぅ…。

 

ドミナントがコソコソ言った後、神様の口を解放する。

 

「プハー…。なら、ドミナント食べてよ。

 

な、なんだと…。

 

彼女たちはドミナントに作ってあげたんだから。

 

くっ…。

 

言い返せない。

 

「……。」

 

ジナイーダたちを見るが、首を振っていたり、目を晒したりする。

 

…ここは公平に皆んなで食べるべきだと思う。

 

「「「……。」」」

 

俺だって、こんなことになるなんて思ってなかったもん!

 

ドミナントたちがコソコソ話す。

 

…まぁ、そうですよね…。連帯責任です…。

 

…仕方ない。

 

セラフ…ジャック…。

 

ま!美味しいかもしれないからさぁ〜。

 

主任…。

 

セラフたちが言い、ドミナントが有り難く言う。

 

…ジナイーダさん。

 

…ええい!分かった!食べれば良いのだろう。食べれば…。

 

ジナイーダ…。皆んな…。ありがとう。

 

ドミナントがAC勢に向かって言う。

 

しょ、しょうがないな〜。私も食べて…。

 

「さて、では…。」

 

聞いてる!?

 

神様には辛辣なドミナント。そして、それぞれがスプーンやらフォークを手に持つ。

 

「じゃ、じゃぁ、食べましょう。」

 

「「「……。」」」

 

コクリ

 

全員が頷き、口に運ぶ。

 

「むぐっ!?」

 

「うっ…!」

 

「ブフッ…。」

 

「……。」

 

「くっ…。」

 

「ぐぅ…。」

 

反応は十人十色。

 

……まずい。

 

だが、吐き出すのは流石に失礼なので、無理して飲み込んだ。そして、水を飲む。

 

……噂のうなぎゼリー…か?酷い味だ…。小骨も痛い。…スライムめ…。本物のスライム出してきやがったな…。

 

……フィッシュアンドチップス…。脂っこすぎです!

 

……魚のパイか…?臭みがきつすぎる…。

 

……肉の詰め合わせみたいな奴…。普通に不味いね〜…。

 

……ジャガイモか?潰しすぎていないか?ペショペショだぞ…。

 

ドミナントたちが思う中、神様は違った。

 

「美味しいじゃん。」

 

「そんなわけ…。!?」

 

ドミナントは見て、神様がそういう反応した理由に気づく。

 

「…それ、ミートパイじゃねぇか。」

 

「?そういう名前なんだ。最初は、中にお肉が入っているから、ちょっとびっくりしたけど、食べてみると美味しい。」

 

「……。」

 

そりゃそうだと、ドミナントたちは思った。

 

…………

パラオ泊地 4日目 残り3日

 

「……。」

 

この編もそろそろ中盤にかかってきた4日目。

 

「……。…暇だなぁ…。」

 

ドミナントは鎮守府の芝生で寝転がっている。もはや、そこが彼の居場所になりかけている。

 

「艦娘たちは演習で忙しそうだし〜。」

 

ゴロゴロしながら呟く。

 

「演習している海からは悲鳴が聞こえてくるし〜。」

 

『被弾した!被弾した!!』

 

「あっ、また聞こえた。」

 

ジナイーダたちはしごきあげているらしい。

 

「工廠からは歓喜の声が上がったままだし〜。」

 

改装、改修などをして強くなっていくからだ。

 

「待合室にはトラウマ化した艦娘たちが呻き声を上げているだけだし〜。」

 

待合室には陰気なオーラが漂っている。

 

「暇だなぁ…。」

 

ゴロゴロするのをやめて、大の字になるドミナント。

 

「…執務室でも…。…いや、やめておこう。ビスマルクさんも仕事してるんだ。」

 

思い立ったが、すぐにやめて、ゆっくり流れる雲を見ている。

 

……これがほのぼのか…。

 

ほのぼのなのはドミナントだけである。働け。

 

…………

数分後

 

「それで…。あれ?何かしら…?」

 

「第4佐世保の大佐じゃない…?あれ…。」

 

二人の艦娘が近づく。

 

「ぐがー…。」

 

ドミナントが暇すぎて爆睡していた。二人の艦娘が見下ろす。

 

「…思いっきり寝てるわね。」

 

「きっと疲れているのよ。」

 

「仕事してないのに?」

 

「……。」

 

一人が言い、一人が微妙な顔をする。

 

「ぐー…。」

 

ドミナントはそれでも起きない。

 

「おお…。これがjapanese tradition(日本の伝統)、“hanacyochin”(鼻ちょうちん)ね!」

 

「なるほど!」

 

誰かツッコミを入れてくれ。

 

「割ったら起きるのもtradition(伝統)…。」

 

棒を持ってくる。そして…。

 

「えいっ。」

 

パン

 

割った。

 

わくわく わくわく

 

二人の艦娘はドミナントが起きるのを待つが…。

 

「グー…。」

 

「また出てきた!?」

 

「regeneration(リジェネレーション『再生』)!?」

 

また出てきた鼻提灯に戸惑う二人。

 

パンッ!

 

「ん…?」

 

そんな二人が騒がしかったのか、ドミナントが起き出す。

 

「…君たちは?」

 

「起きた…。」

 

「tradition(伝統)…。」

 

ドミナントを見ている少女二人に声をかけるドミナント。

 

「Fletcher級駆逐艦ネームシップ、Fletcher(フレッチャー)です!」

 

「あたしはフレッチャー級、USS ジョンストンよ!」

 

「俺は…第4佐世保鎮守府提督…ドミナントだぞぉ…。」

 

スキあれば自己紹介。

 

「「知ってます。」」

 

「わーい、同じ展開だー。」

 

そして、その子たちと1日を過ごすことになる。




ここで切ります。続けると長くなりすぎますので。追伸、後書きに時間がかかりました。本編と同じか、それ以上です。
ダクソ日記 魔女討伐成功。次はセンの古城かぁ…。

登場人物紹介コーナー
ヌワラエリア…スリランカの標高が最高の場所、ヌワラエリアでとれる茶葉で作った紅茶。渋くて清々しい味。
ルフナ…セイロンティーだが、標高600m以下の茶葉を使った紅茶、ローグロウンティーの一種。コクが強く、濃厚で深みのある味わい。甘い香りがする。
ディンブラ…スリランカ山岳部の南西斜面で作られている茶葉の紅茶。フラワリーな香りで、さっぱりした渋み、しっかりしたコクもある。クオリティーシーズン以外でも作られており、入手しやすい。年中通して作れることが強みだとか…。
ジャワ…インドネシア、ジャワ島西部で作られている茶葉の紅茶。すっきりした味わいで、渋みが少なく、マイルドな口当たりがする。一時期、ブームにもなっていた。比較的簡単に入手しやすい…。
ラミン…上質なアッサム紅茶の一つ。タイ、チェンマイから作られた茶葉の紅茶。香りと渋みが強く、コクがある。
サバラガムワ…ローグロウンティーの一種。ルフナは南部で作られるが、サバラガムワは北部で作られる。穏やかな香りがして、ほろ苦い。
プリンスオブウェールズ…ブレンド紅茶の一種。キームンやアッサムをベースにブランドされていて、蘭の花のような香りと、独特の渋みがある。
Nelson…ネルソン。長門や陸奥と共にビッグ7の一角を担っている。艦娘史上初めて一人称が『余』である艦娘。性格は傍若無人で血の気の多く、豪快。ビッグ7を誇りに思っており、武人気質。長門を連想させるが、責務ではなく、戦いを重視している。(大歓迎だよ。僕らは戦いがしたい)。演習が大好きな豪傑肌だが、ジナイーダたちとはやりたくないらしい。ウォースパイトや大和のことを「レディ」と呼ぶ。
Ark…Ark Royal(アークロイヤル)。性格は真面目で質実剛健。武人肌。礼儀正しく忠誠心が強い。誰に対しても好意的で気さくな人物だが、対人関係は鈍感で、問題を物理的に解決しようとする節がみられる。ソードフィッシュが大好きで、提督が触ろうとすると、ソードフィッシュで雷撃してくる。イギリス版瑞鶴といったところか…。潜水艦に敏感。
Jervis…ジャーヴィス。常にハイテンションで賑やかで、明るくノリの良いお転婆。誰に対しても物怖じせず、明るく社交的に振る舞うが、外見年齢相応に面倒くさがり屋でいい加減。「ラッキージャーヴィス」と呼ばれていたことが誇り。「ラッキー」が口癖。ウォースパイトとも良い関係。提督には好意的で甘えん坊。演習は嫌だが、ジナイーダたちと興味本位でよく話したりする。
Janus…ジェーナス。提督に関しては一定の敬意を払いつつも、気安い言動で接してきてくれる。ウォースパイトやアークロイヤルと話したりする。お互いの上下関係はないみたいだ。普段の態度は、明るく子供っぽい言動だが、仕事は真面目にこなす。紅茶はアール・グレイがお気に入り。ドミナントの暴思時にスライムと思われていた。(口がね…。スライムのくt…)。演習も紅茶が有れば乗り越えられるタイプ。
彼女たちの提督…イギリス艦全員の元提督。65歳で他界。自分のことをよくわかっていて、頭のキレも衰えていなかった。実は、彼女たちは知らないが大決戦時の参謀。
うなぎゼリー…ドミナントが食した。うなぎのぶつ切りのゼリー。栄養価の高い食品。そのまま食べるのではなく、香辛料をどっぷりかけていただくらしい。今食べている人は稀で、美味しいところもある。
フィッシュアンドチップス…セラフが食した。脂っこくて有名。あまり美味しい印象は少ない。ある意味、ネタの食べ物。だが、店を選べばそんなではなく、美味しいところもある。
魚のパイ…ジナイーダが食した。スターゲイジーパイ。魚の頭が突き出しているから星を見るパイと呼ばれている。某アニメ映画でキライ宣言が出ました。ただ、そのパイにも作られたしっかりした理由がある。イベント時に食べるだけで、普段から食しているわけではない。
肉の詰め合わせみたいな奴…主任が食した。ハギス。茹でた羊の内臓をミンチにして、香辛料やオートミールを羊の肝臓に詰めた料理。まずさはフランス大統領のお墨付き。
ペショペショイモ…ジャックが食した。マッシュポテト。味がわからなくなるくらい潰した芋。液体化してない。…多分…。
鼻提灯…漫画やアニメなどでよく見る鼻風船。ギャグ要素を引き立てたりするが、現実で見ると結構汚い。
Fletcher…フレッチャー。妹と比べるとお嬢様のようなおっとり感を持つ。提督との仲は良く、遭難者の捜索などをする優しい子。胸部装甲は浜風に負けず劣らず。妹が多い。網を持っている。
Johnston…ジョンストン。アメリカ艦らしい、明るく元気で活発で勝ち気な性格。世話焼きで食事まで作ってくれる。フレッチャーの姉をもつ。同僚のSam(サム)と比べるとしっかり者。ただ、細かいことは気にしない。賭け事が好きでサムとやったりする。

ザーーーー…
次回、第169話「パラオ泊地でゲーム」。


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169話 パラオ泊地でゲーム

169話。ついにここまで来たか…。残り31話。内陸軍編が15話…。つまり、残り16話…。…短っ!?
……
……。瑞鶴来ないな。何かあったのか?…だが、筆者が物語に直接介入してはいかんな。一人でやるか。…あらすじの人どうぞ!
「鳥海、参りました。」
大本営精鋭部隊の鳥海さんですね。
「はい。」
あらすじ頼める?
「お任せください。」

あらすじ
提督の数が足りず、第4佐世保鎮守府に書類を送信しました。…ですが、何故だか連絡が来ません。断られたんでしょうか…?


…………

パラオ泊地 4日目

 

「ふぁ〜…。」

 

ドミナントは欠伸をする。そして、また寝転がり…。

 

「暇だ。」

 

呟く。

 

「これは…。中々よろしいですね…。気持ち良いです…。」

 

「そうね…。いい感じに日が当たってくれるから…。」

 

二人の艦娘がドミナントの隣で横になりながら言う。フレッチャーとジョンストンだ。

 

「…二人とも暇なの?」

 

「そうですね…。」

 

「そんな感じね…。」

 

日向ぼっこをしながら聞き、ゆるやかに答える。

 

「…何かして遊ぶ?」

 

「…もう少しここにいたら、Sam(サム)も呼んでポーカーでもしようかしら。」

 

「…そうですね…。」

 

「…俺も暇だから入れて〜。」

 

「全然いいわ。」

 

「ありがと〜。」

 

そんなわけで、ポーカーをするみたいだ。

 

…………

応接室

 

「ここでやりましょう?」

 

「こんな陰気なオーラが出ている場所でか…。」

 

「だって、あたしたちの部屋に入れるわけにいかないでしょ…。」

 

「…まぁ、そうだけど…。」

 

陰気なオーラが出ていてモヤモヤしている中、机を出す。

 

「Sam(サム)は演習でいないから、三人だけね。」

 

「そのうち増えるよ。そこで呻き声を上げている艦娘たちも来ると思うし。」

 

ドミナントたちは陰気なオーラを出している艦娘たちを哀れに思いながら見ていた。そして…。

 

「じゃぁ、ポーカーでもやりましょ?」

 

「ポーカーね。」

 

「今日はなに賭けよっか〜。」

 

「賭け…賭け!?賭けるの!?」

 

ジョンストンが言い出して、驚くドミナント。

 

「え?賭けたくないの?」

 

「いや、そういうわけでは…。ただ、賭け事はあまり良くないから…。破産するよ?」

 

ドミナントが心配するが…。

 

「HAHAHA…。大丈夫!あたし、今日負ける気がしないから!それとも、賭けて負けちゃうのが怖いの?」

 

ジョンストンが少し小馬鹿にしたような感じで言う。フレッチャーは申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「……。分かった。賭けよう。」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

ドミナントが了承して、ジョンストンはご機嫌になり、フレッチャーは驚いていた。

 

……負かして、賭けごとのよくないところを全面に見せよう。

 

「で、何を賭けるの?私はアイスの券。」

 

「俺はモナカの券で。」

 

ドミナントはそう思いながら賭ける。フレッチャーは、どうやらイカサマなどの審判のような役割をするみたいだ。

 

「じゃぁ、始めるわよ!」

 

…………

 

「フルハウス。」

 

「負けたー!」

 

「というわけで、これは貰った。」

 

「く…。」

 

ドミナントが貰っていく。

 

「まだやる?」

 

「次こそは必ず…!」

 

ジョンストンは諦めなかった。

 

「なるほど。その諦めない心に胸を打たれた。なら、君が続ける限り、こっちは君からもらった物全てとモナカの券を賭けよう。たった一回賭けて勝てば全て戻ってくるし、さらにモナカの券も付いてくるよ。」

 

ドミナントは一切胸を打たれていない。泥沼化させていく寸法だ。

 

「なら!次はこれよ!絶対勝ってやる!」

 

…………

30分後

 

「ぐすん…。」

 

「まだやる?」

 

あれから、全てドミナントが勝っている。

 

「全部取られちゃった…。」

 

ジョンストンは半分泣いていた。

 

「まだ残ってるよ?」

 

「?」

 

「自分の自由と命。」

 

「!?」

 

ドミナントが残酷なことを言う。ジョンストンは真っ青になり、フレッチャーはやりすぎだと思っている。

 

「…賭け事ってこういうことなんだ。命や自由までも賭け事の一部になる。破産するってわかってても望みに賭けてしまう。タガが外れるんだ。それが一番恐ろしい。…痛い目をみて分かったろう?」

 

「うん…。」

 

「じゃぁ、勉強料としてアイスなどの券は諦めて。部屋や人形や服は全部返すから。」

 

「…ありがとう…。」

 

ドミナントは証拠の書類などを全て破り捨てる。

 

……まぁ、全部返しても良かったけど、そうすると、優しい人だったら返してくれるって勘違いさせちゃうからね。…飴と鞭だ。

 

ドミナントが偉そうにそんなことを思っていると…。

 

「な〜にやってんの?」

 

「げっ。神様…。」

 

神様がやって来た。

 

「何その顔?暇だから来たよ〜。何して遊んでいるの?」

 

神様が艦娘の二人に聞く。そして…。

 

「面白そう。私もやろっと。」

 

神様がジョンストンのいたところに座る。ジョンストンは懲りたのか、勝負しようとしてこない。フレッチャーに頭を撫でられている。

 

「賭け事あり?」

 

「いや、無しだ。お前は駄目。反則だから。」

 

「えぇ〜。負けたら一生タダ働きもしてあげる。」

 

「ダメに決まってるだろ。結果が目に見えとるわ。」

 

「…ずるいと思わない?」

 

神様が艦娘の二人を見る。

 

「まぁ、そうですね。ジョンストンとはやったのに、神様さんとはやらないのはおかしいですね。」

 

「フレッチャー…。」

 

「不平等は駄目よ?」

 

「ジョンストン…。」

 

「だって。」

 

「裏切ったか…。」

 

結局、ドミナントはやることになった。

 

…………

 

「はい勝ち〜。」

 

「何故だ…!ストレートフラッシュが出たと思ったら…!何故お前ばかりロイヤルストレートフラッシュが出るんだ…!?」

 

「「「すごい…。」」」

 

ドミナントと神様の桁違いの運の良さに驚愕するアメリカ艦たち。全て神様が勝っている。

 

「これくらいで勘弁してあげようかな〜。」

 

「……。」

 

「はいっ!」

 

「?」

 

神様はドミナントからの戦利品をジョンストンに渡す。

 

「これら、あなたのでしょう?ドミナントから奪っちゃった♪。きっちりあるはずだよ。コッソリ見てたから。」

 

「……。」

 

神様の悪戯な笑みにジョンストンがポカンとする。

 

……取り返すためだけにあんな賭けごとしたの…?

 

ジョンストンは、さらに絞られそうになって必死にやめてもらおうとするドミナントと、悪い顔をして詰め寄っている神様を見ていた。

 

「…思い出すわね。」

 

「そうね〜。」

 

二人は思い出していた。

 

……提督…。

 

…………

2年前 どこかの鎮守府

 

「負けたー!」

 

「あたしの勝ち〜。じゃぁ、これを貰うよっ。」

 

「くそ〜。」

 

この賭けに負けた少し老けた感じの人が、フレッチャーやジョンストンなどの提督だ。

 

「もう賭けるものがないな…。」

 

「明日も楽しみにしてるからっ。」

 

「明日もやるのか…。散財だなこりゃ…。ははは…。」

 

ジョンストンがご機嫌に部屋を出て行った。そこに、夕張と明石がすれ違う。

 

「あら?ジョンストンさん?また賭け事ですか?」

 

「いい加減にしないと、提督が破産するわよ?」

 

二人はやれやれとしながら言う。

 

「大丈夫だって。提督は海軍のお偉いさんの家系なんだから。」

 

「まぁ、指揮能力はあまりないし、親の地位のおかげでいる感じですからね。」

 

「こらっ。合っているけどそんなこと言っちゃダメ。」

 

明石が二人にやれやれとした感じで言う。

 

「それより、二人ともどうしたの?」

 

ジョンストンが二人に聞く。

 

「私たちは提督に依頼されていた爆弾を作ったので、持ってきていたんです。」

 

「まぁ、実際は深海棲艦に効く爆弾って言われていたけど、どうしても上手くいかないから、理由を説明して、この威力がおかしいくらいの爆弾を持ってきたの。凄い威力だから、深海棲艦もただでは済まないわ。…けど、使い所を間違えるとこっちまで木っ端微塵だから数キロ先まで離れないと使えないけどね。」

 

明石が説明する。

 

「それと、提督が遊びで依頼した変声機ですね。これで、駆逐艦たちを笑わすだとか…。」

 

夕張が変声機を見せる。小さいから駆逐艦に気づかれにくそうだ。

 

「…それと、ジョンストンさん。フレッチャーさんが向こうで呼んでいましたよ?」

 

「あっ、はい。」

 

少し話した後、走って行こうとしたが…。

 

ゴゴゴゴゴ…。

 

海から重い音がする。

 

「…またこの不気味な音…。」

 

「深海棲艦が現れた時もこんな音だったみたいよ。」

 

「不吉…。」

 

そして3日後、かの有名な大決戦が始まった。




長いので切ります。フレッチャーがほぼ空気…。次回に期待しましょう。

登場人物紹介コーナー
トクニナシ

ザーーーーーー…
次回、第170話「無能なりの意地がある」。


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170話 無能なりの意地がある

藤原啓治さん(主任の声を担当)。ご冥福をお祈りします。筆者は今知りました…。主任はお気に入りキャラクターの一人です…。マジでショック…。狂ったような声や笑い声は本当に好きだった…。凄いと思った…。
…最終回前後の主任はかっこよく書いてあります。まさか、逝ってしまうとは…。惜しいな…若すぎる…。
「あの…。邪魔をしてすみませんが、あらすじ…。」
…飛龍さんですね…。どうぞ…。
「は、はい…。」

あらすじ
第4佐世保鎮守府から連絡が来ません…。途絶えたままです。書類に気付いていないのかもしれないと考えて、電話もしたけど…。一切出ません。…嫌な予感がします…。


…………

どこかの鎮守府 大決戦

 

「提督。」

 

作戦会議室に提督とフレッチャー、沢山の艦娘がいる。

 

「この戦いは予想以上に大規模みたいです…。」

 

「…そうか…。」

 

「…この前、深海棲艦がどこかの鎮守府を占拠しました…。その鎮守府はここと同じで孤立しやすい鎮守府でした…。」

 

「…そうなのか…。」

 

フレッチャーが言う。提督は声も体も震えていた。

 

「「「……。」」」

 

艦娘たちが覚悟した顔でいるが、どこか提督のことを幻滅しているような、この提督で大丈夫なのかと不安な目をした者ばかりだ。すると…。

 

ピーピーピーガーーー…

 

大本営からの文が届く。

 

…………

 

救援に行くのは難しい。増援や救助などをあてにしないでくれ。逃げたければ逃げろ。

 

…………

 

この短い文だけだった。

 

「…ふざけないで!」

 

「「「!?」」」

 

それを見たジョンストンが大声で言い、皆が驚く。

 

「何よこれ!?大本営の奴らは何をやっているの!?あいつらは温室で安全に活動しているのに!何よ!こっちの気も知らないで!」

 

大本営の文に怒っているジョンストン。

 

「ま、まぁ…。ジョンストン…。大本営も緊急の事態だから…。」

 

「何を言ってんの!?あなたがそんなのだから!私も皆んなもあなたのことを陰で無能呼ばわりしてるのよ!」

 

ジョンストンは熱くなってしまったのか、提督にそのことを言ってしまう。

 

「……。」

 

「あっ…。」

 

提督が少し悲しそうな顔になり、俯いた。ジョンストンは後悔したが顔に出さない。フレッチャーは困った顔をしていた。そこに…。

 

「提督!数海里先に深海棲艦と思われる影を確認!数は…す、数百!?」

 

どよ…どよ…

 

大淀が感知し、大声で知らせ、その場がどよめく。

 

「な、なんだと…?」

 

提督が驚く。

 

「数百…。…この艦隊を合わせても一人2匹以上…。」

 

「おそらく、この前確認された幹部と思われる深海棲艦の直属か側近の部隊だ…。」

 

「死にたくない…。」

 

艦娘たちも同じなようだ。そして、すぐに結論が出た。

 

「提督!逃げましょう!」

 

「無能でも見捨てられない!」

 

「早く!」

 

艦娘たちは逃げる準備を始める。敵前逃亡だが、大本営からの許可も下りている。

 

「……。」

 

提督は焦って冷や汗を垂らして、目を閉じている。そして、ゆっくりと目を開けた。

 

「わ、私は…。…逃げることはできない…。」

 

提督が狂ったのか、そんなことを言い出す。

 

「あなた死ぬ気!?早く逃げるのよ!」

 

ジョンストンが提督の手を取るが…。

 

「…もしかしたら、大本営が助けに来てくれる…かもしれない。もしかしたら、どこかの鎮守府がこのことに気づいて、助けに来てくれる…かもしれない。」

 

「そんなわけ…!」

 

「…私は…ここの提督だ…。は、離れるわけにはいかない…。」

 

「「「……。」」」

 

怖がっているのがわかるくらい声が震えている提督に艦娘たちは静かに聞く。

 

「…私は無能な男だ…。臆病者で、ダメな男だ…。家柄だけで生きてきた…。人から与えられた役割しかやってこなかった。」

 

「「「……。」」」

 

「だから、こ、この務めだけは全うしなければならない…。」

 

提督が言い、艦娘たちが考えている。

 

「フレッチャーやジョンストンたちも逃げるんだ。こ、ここは私だけで良い。」

 

「「「……。」」」

 

艦娘たちは顔を見合わせる。

 

「早く。は、早く逃げるんだ…。」

 

提督が周りを見ながら言う。すると…。

 

「「「ははははは。」」」

 

「「「ふふふふふ。」」」

 

艦娘たちが笑い合う。

 

「…?笑っている暇があったら早く…。め、命令だぞ!」

 

「大本営に、連絡を試みます。」

 

「え?」

 

提督の言うことを聞かず、大淀が動く。

 

「弾薬と燃料を確認。そして、艤装を準備!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「ちょ、待…。おいっ!」

 

止めようとするが、言うことを聞かず走り回る艦娘たち。

 

「出入口にバリケードを。そして、罠を仕掛けて。」

 

「「「はいっ!」」」

 

「な、何を…言っている…。早く逃げるんだ!」

 

全く、誰一人言うことを聞かずに動き出す艦娘たち。

 

「…何を言っているんですか。提督。提督は通信すら出来ないじゃないですか。」

 

「いつも通り座ってなさい。仕事の邪魔よ。」

 

フレッチャーとジョンストンが言う。

 

「…すまん…。本当に…。」

 

少し頼りない笑顔をしながら提督が有り難そうに言った。

 

……でも…。

 

…………

しばらくして…

 

「…!提督!大本営から通信が入りました!」

 

「「「!?」」」

 

大淀が嬉しそうな顔で言う。

 

「…我、南に援軍を向かわせた。鎮守府を囮に裏から叩く。艦娘を総動員せよ…。…のことです!」

 

大淀が本当に嬉しそうに言い、艦娘たちにも希望が見える。

 

「じゃぁ、提督!ちょっと待ってろよ!すぐに叩いてくっから!」

 

「すぐに戻ってくるから!」

 

「さっさと倒していつもの生活に戻りましょう!」

 

艦娘たちが次々と出撃して行く。

 

「フレッチャー、ジョンストン…。」

 

出撃していない最後の二人に声をかける。

 

「「?」」

 

二人は提督の言葉を待つ。

 

「…いってらっしゃい。」

 

頼りない笑顔で言う。

 

「はいっ!」

 

「任せなさい!」

 

そして、二人が出撃して、鎮守府には提督だけが残った。

 

「…犠牲は一人で良い…。」

 

…………

 

「…いませんね。」

 

「おかしいな…。」

 

「そんなはず…。」

 

艦娘たちは南へ行き、援軍を待つが誰も来る気配がない。

 

「……。」

 

「どうしたの?」

 

ジョンストンは何か引っかかり、考えているところにフレッチャーが聞く。

 

……どうして、わざわざあたしとフレッチャーを呼び止めて、“いってらっしゃい”なんて…。いつもは言わないはずなのに…。第一、艦娘を総動員って聞いたことがない…。奇襲をかけるなら少数のはず…。それに、大本営が文で無理だって言ったのに、こんなにコロッと変わるかしら…?…提督が言った後に、あんなにタイミング良く大本営からの通信あるかしら…?…おかしい…。

 

ジョンストンが考え込む。すると、嫌なことが頭によぎる。

 

……変声機…爆弾…。…まさか!?

 

ジョンストンの考えていることは全て繋がった。

 

ダッ!

 

「えっ!?ど、どうしたの!?」

 

ジョンストンがいきなり踵を返して急いで走り出した。フレッチャーたちは驚いて聞く。

 

「早く!!間に合わなくなる!!!」

 

「何っ!どうしたの!?」

 

「提督が…!!!」

 

……間に合って…!

 

ジョンストンはいつもより何倍も早く走る。フレッチャーたちも急いで後を追う。すると…。

 

『ザ…ザザ…。』

 

「?」

 

しばらく走っていると、大淀の通信機から音が出て、大音量で走りながらでもみんなに聞こえるようにする。

 

『全員に告ぐ…!第……鎮守府。……大佐…。…大本営や…近くの鎮守府に届いていると信じて…送信する…。もうすぐここは陥落する…。もう…すぐそこまで深海棲艦が来ている…。…これを聞いているものに…最後の言葉を送る…。…務めを果たせ…。』

 

通信が終わった。

 

「「「提督!!!」」」

 

全員が状況に気づき、鎮守府に急いで行く。

 

…………

 

ガタンッガタンッ

 

ドアが深海棲艦たちによってこじ開けられそうになっている。

 

「…さて…。…爆弾は仕掛け終わった…。…無能なりの意地がある…。意地を…意地を奴らに見せてやる…。」

 

そして、震える手で起爆ボタンを手に持つ。

 

……フレッチャー…ジョンストン…。君たちが初めてここに着任した時、私は言ったな…。頼りない上司だけど、見捨てたりはしない…て。…今思えばそんなことは言わない方が良かったかな…。ジョンストンは感が良く、実は優しい子だ…。フレッチャーは仲間思いで優しい子だ…。このことに気づいて来ているかも知れない…。見捨ててくれれば良いんだけど…。…いや、見捨てるような子たちじゃない…。育て方が良かったってことか…。彼女たちはこれからも、人々を守るために活躍する…。出来れば、その時を見たいけど…。…願い届かず…か…。…まさに、私のような無能にふさわしい最後だ…。

 

そんなことを思うと、自然と笑みが溢れて、震えが止まって押す覚悟も出来ていた。すると…。

 

ガタンガタンッ!…ドガァァン!

 

タタタタタ…

 

多くの深海棲艦が押し寄せて、照準を定められる。そして、中央からリーダーと思われる、片目を失っている者が前に出てきた。

 

「テコズラセタナ…ムノウ…。」

 

銃を構えながら言ってきた。

 

「…フッフッフ…クックック…。」

 

「ナニガオカシイ…ニンゲン。コノワタシガ『ブーゲンビル』サマノソッキントシッテカ?」

 

「無能…と。この私より無能な貴様らがだ。」

 

「?…ナッ!?」

 

「「「!?」」」

 

壁や至る所に一個でも十分な夕張たちが作った爆弾がびっしりとあった。もちろん、一個だけでも深海棲艦はただでは済まない。いくら深海棲艦といえども、木っ端微塵になったら死ぬ。流石に深海棲艦たちは驚き、恐怖している。その起爆装置が相手の手にあると知れば尚更だ。

 

「さらばだ…。皆んな…。無能な私に従ってくれてありがとう。楽しかったよ…。」

 

「ヤ、ヤメロォォォォォ!!」

 

ドガァァァン!!

 

リーダーは大焦りで撃つ。だが、震えてしまって急所へ当たらない。

 

「ぐふっ!…無駄だ!!」

 

「ウ、ウテェェェェェ!!!」

 

「グギャァァァァ!!」

 

「ゴガァァァァ!!!」

 

ドガァァァン!!ドゴォォォォン!!ドギャァァァン!!

 

次々と砲撃を浴びていくが、全く倒れず、意識も失わない。腕が吹っ飛んでもだ。

 

「「「……。」」」

 

深海棲艦たちはそれでも倒れない相手に絶望して、攻撃すらしていなかった。

 

「やめるわけにはいかないねぇ…。」

 

カチッ

 

……私の魂はいつでも君たちと共にいる…。

 

…………

海の上

 

……提督…。提督。提督!提督!!提督!!!

 

ジョンストンは急いで走り、そのことしか考えられていなかった。

 

「早く!早く!!」

 

他の艦娘たちも同じのようだ。だが…。

 

 

ドガアアアアアアアン!!!

 

 

核爆弾と見間違うほどのものが水平線から見えた。爆風が艦娘たちをすぎる。

 

「…あの方向は…鎮守府の…。」

 

「まだ決まったわけでは…。」

 

最後の望みを通信機に賭けるが…。

 

『ザーーーーー…。』

 

「……。」

 

その爆音のあと、すぐに応答が無くなっていた。

 

「提督…。」

 

ジョンストンとフレッチャーは力なくへたり込む。

 

「「提督ー!!!」」

 

…………

 

「提督…カッコ良かったよね…。鎮守府も遺体もなくなっちゃったけど…。」

 

「…うん。だって、あたしたちを逃してくれたし、数百という深海棲艦、および幹部の側近を恐怖させて倒した唯一の人間だもの。今の元帥と同じ英雄よ。記録にも英雄ってなっていたし。」

 

二人が、ドミナントと神様がカードゲームしている姿を、自身と提督に重ねていた。そんな感じだったのだ。

 

「だから…。?…ちょ、待て。神様。」

 

「?」

 

「二人とも、どうしたの?」

 

ドミナントがボーッとしたままの二人に声をかける。

 

「…あっ!?は、はい。」

 

「!?な、なに?」

 

「いや、ボーッとしていたから。」

 

ドミナントが言う。

 

「少し昔の…。提督のことを思い出しておりまして。」

 

フレッチャーが言う。

 

「どんな提督だったの?」

 

「それは…。…話しても大丈夫よね。」

 

「いいんじゃないの?どうでも。」

 

「…話したくなくなったわ。」

 

「えぇ…。」

 

ジョンストンがそっぽむいてしまった。

 

「…仕方ないですね。私が言います。」

 

「ありがとう。」

 

フレッチャーが変わる。

 

「…そうですね。あれは、2年前のこと…。」

 

「「うんうん。」」

 

そして、フレッチャーはドミナントと神様に語るのだった。




やりたかっただけ。

登場人物紹介コーナー
提督…かっこいい人。無能だけど、人望に溢れている。死んだ後、英雄として祀られている。この人を目標にする提督は何人もいる。
大本営からの文…現在の元帥が書いた訳ではない。大和も兵だったため、誰が書いたのか不明。
変声機…夕張が作った。様々な声に変換できる。提督はこれを使って、自身の放送を通信機に繋げて、大本営からの連絡のように見せかけた。それくらいはできたようだ。
爆弾…夕張と明石共同で作った爆弾。ほぼオーバーテクノロジーだが、ドミナントたちには及ばない。深海棲艦にもダメージを与えることができる。一個でもelite改を瀕死に追いやることができる。それを壁や至る所ににびっしり…。どれだけの破壊力か想像もつかない。
ブーゲンビルの側近…elite改レ級。ブーゲンビルの部下の中では一番強かったが、提督によって爆死。その日、ブーゲンビルは多くの部下と側近を失い、深刻な出血を強いられた。これがなかったらブーゲンビルに勝てなかったと言われている。

ザーーーーーー…
次回、第171話「アメリ艦隊との交流」


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171話 アメリ艦隊との交流

聞いてくださいよ。オレ、気づいたんすよ。この小説についてです。馬鹿なんで時間かかったっすけどねぇ。…はい。気付きました。この小説…やりたかったことが違うことに気づきました。ストーリーに追われて、やりたいことが出来ません。…と、いうわけでこれら全てはストーリー編として見ていただければ幸いです。このストーリー編が終わったら日常編をする予定です。日常編の登場人物は全てストーリー編で出す予定です。つまり、ストーリーで登場人物の過去やら何やら知った上での日常編(やりたいこと。つまりコメディ)ということ。以上、筆者・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ

突然ですが、筆者は気づきました。艦これの小説が多数ある中、あの広告…アウトですよね?
AC要素が薄まってきています。筆者の中で対比するなら、6(艦これ):3(AC):1(その他)ですね。ハンドレールガン(産廃)やKARASAWA(カラサワ)や月光(ブレード)や、傭兵呪文(重カラサワカラサワ…)や巨大兵器を出したいです。やはり、AFのスピリット・オブ・マザーウィルは欠かせませんよね。必ず出す予定です。では、あらすじに入ります。
「マイク音量大丈夫?チェック、ワン、ツー…よし。大本営精鋭部隊の霧島です。」
そうですね。あらすじをどうぞ。
「かしこまりました。」

あらすじ
ワン、ツー…。…えっ?もう始まってる?…はい。あらすじです。幻の憲兵団が鎮守府を渡り歩いています。ブラック提督を取り締まるのは嬉しいのですが、候補者が足りないのは少々困っております。


…………

パラオ泊地 夕方

 

「なるほどなー。」

 

「そういうことです。」

 

ドミナントはフレッチャーの話しを最後まで聞いていた。神様は飽きたのか、途中で寝てしまっていた。ドミナントがさりげなく毛布をかけてあげる。

 

「かっこいい提督だったんだなぁ。俺の尊敬するような人物だ。ん?日本無双かな…?

 

「そう言っていただけるのなら幸いです。」

 

「俺も頑張らないとな〜。」

 

ドミナントは窓の外を見る。ジナイーダたちの演習がちょうど終わったみたいで、艦娘たちが帰還していく。中には、ビスマルクもいた。

 

……この鎮守府の平均レベルは今いくつになったかな?多分、随分と上がっているはずだねぇ…。

 

そんなことを思う。

 

「今の平均レベルは75だ。」

 

「へぇ〜。…え!?ジナ…?えっ!?い、今外に…。それに、なんで考えていること…。」

 

「「!?」」

 

ドミナントたちは驚きを隠せない。ほんの数秒前まで外にいたはずのジナイーダがいつの間にか後ろに立っていたからだ。

 

「あぁ。視線を感じて見てみたら、お前がいてな。何を考えているか分かったから、知らせに来たんだ。」

 

「考えてから、声がかかるまで5秒ほどだったんですけど…。それに、何で考えていることわかった…?エスパーか…?」

 

“もうなんでもありだな”と思いながらドミナントがツッコミを入れた。

 

「そんなことより、4日連続でたった平均75レベルしか上昇していない。もっと厳しくやるべきだろうと思うが…どう思う?」

 

「うん。4日連続で75レベルも上昇していること自体イレギュラーでドミナントだから今より逆に優しくすべきだと思う。てか、もう基準がおかしくなり始めてるな。」

 

「そうか…。…サセボが懐かしいな…。もう少し楽しい戦いが出来るだろう…。」

 

「トラウマ与えたこと忘れないでね?」

 

しみじみと思い出していたジナイーダにツッコミを入れるドミナント。

 

「…まぁ、そんなことはどうでも良い。」

 

「そんなこと…。」

 

「お前は働かないのか?」

 

「ギクッ…。」

 

ドミナントは何も言えなかった。

 

「…まぁいい。今日はアメリカの艦娘が全員それぞれMVPを取った。お祝いだそうだ。」

 

「そうなのか。アメリ艦隊が…。…ん?フレッチャーとジョンストンは?」

 

「「今日は休みです(よ)。」」

 

「…そうか。」

 

今夜、アメリ艦隊のお祝いをするようだ。

 

「…4日か…。あと3日。明日はビスマルクによると、私たちと共に気分転換に遊ぶらしい。」

 

「へぇ〜。まぁ、演習尽くしだとここにいる艦娘たちみたいになるからね…。」

 

ドミナントは陰気なオーラを出しながらぐったりしたままの艦娘たちを見る。中にはうなされている者もいた。

 

「明日は全員海に行ったりして遊ぶみたいだから、ここにいる奴らも元気になるだろう。それに、明後日は私たちのテストだ。そして、テストの翌日に私たちは帰る。」

 

ジナイーダは窓から沈む夕陽を見ている。

 

「ここは赤道に近いから、海も暖かいんだよね。…そうなんだよなぁ〜。あと3日しかいられないんだよなぁ。」

 

ドミナントもジナイーダの隣で夕陽を見る。フレッチャーたちはぐったりしている艦娘たちに声をかけている。

 

「明日は私も休暇をいただいている。明日は好きにさせてもらうぞ。」

 

「!?ジャック!?」

 

いつの間にかジャックが隣にいた。

 

「明日は全員羽目を外すらしいですからね。全力で楽しみましょう?」

 

「セラフ!?」

 

ジャックの隣にセラフがいた。そして沈みかけた夕陽を見る。

 

「ま!休みは必要だよねぇ〜。おじさんも疲れちゃうしー。ギャハハハハハ!」

 

「主任まで。」

 

セラフの隣に(ry

 

「まぁ、私も働いていないけど、みんなで楽しく騒ぐのは好きだよ。…よいしょっと。」

 

「起きたのか。」

 

ドミナントの背中に飛び乗る神様。そこからみんなと一緒に夕陽を見ていた。

 

「ここにはテレビは無いが、色々なものがあるから退屈しないだろう。」

 

ジャックがふと、テレビがないことに気づいて言う。

 

「色々なものか…。…ん?アレは…?」

 

ドミナントが埃をかぶった、棚の中のマイクを見つける。

 

「マイク…?機械があるってことはカラオケ用か…。」

 

ドミナントは確認した後、何もせずにいた。

 

「?からおけ…?なんだそれは?」

 

AC勢は首を傾げる。

 

「スイッチを押して、歌うんだよ。」

 

「「「歌う…。」」」

 

困った顔をするジナイーダたち。彼女たちの世界はそんな呑気なことが出来ないほど過酷なのだ。歌うなんてことは数十年前ほどでは無いだろうか…?主任は平気そうだが、セラフは歌ったこともない。

 

「ところで…。」

 

「?」

 

ジナイーダがドミナントを見る。

 

「なんでそんなものを知っているんだ?」

 

「えっ?あ…。えーっと…。勉強した。」

 

「……。……そうか。」

 

ジナイーダは疑いたっぷりの目で言った。

 

……嘘をついているのが分かる…。そこまで私たちのことを信用していないのか…。…いや、私だけ内緒にしている可能性がある…。…私だけ…か…。

 

以前のジナイーダはそんなことを考えても、全く気にしなかっただろうが、今考えると何故か寂しかった。

 

……俺が異世界から来て、君たちのことを全て知っているなんて分かったら、危険扱いされて暗殺されかねないからね…。すまん…。

 

ドミナントはそんなことを思う。不器用にも程があるというものだ。すると…。

 

「レッツパーリィィィィィィィ!!!」

 

「!?」

 

アメリ艦隊の戦艦のような女性が入ってくる。

 

……これは…ツッコんじゃいけない奴だ…。

 

ドミナントはすぐさまどこかの大統領を連想したが、ツッコミを入れないことにした。

 

「あっ、Colorado(コロラド)さん。」

 

ジョンストンがコロラドに向かって言う。

 

「コロラドさんというんですか?」

 

セラフが反応する。

 

「セラフ、知り合い?」

 

「はい。演習時に結局全員倒れたんですが、この方だけは最後まで粘りました。この私相手に唯一倒れなかった艦娘です。」

 

「すごっ。」

 

セラフもドミナントも感心して、心の中で称賛していた。

 

「I will never loss to you(私はあなたたちに負けない)!!」

 

「そうですか。」

 

「?」

 

セラフは嬉しそうにして、ドミナントは英語がわからないため、ハテナマークが出ている。

 

「Because I’m the BIG 7 in America(何故なら、私はアメリカのビッグ7だからだ)!!!」

 

「ふふふ。」

 

「これだけはわかるぞ…。ははは。」

 

大統領魂ならぬ、ビッグ7魂。

 

「…で、なんでこんな風に?」

 

ドミナントは騒いでいるコロラドや起き始めた他の海外艦やジナイーダたちを横目に、何か知ってそうなフレッチャーとジョンストンに聞く。

 

「実は、私たちが生まれた2年前、Americaが深海棲艦に占拠されたことがありまして…。」

 

「あたしたちが駆り出されたわ。でも、強くて手も足も出なかった…。」

 

「もうダメだと思ったその時、現れたんです…。」

 

二人は目を閉じて…。

 

「「とあるPresident(大統領)が!!」」

 

目を輝かせて言った。

 

「おぉ…!」

 

ドミナントは驚いた。

 

「彼はAmericaを救ったんです!それ以来、Coloradoさんは彼に憧れて真似をしています。」

 

「あの爽快感はたまらない…。あたしたちは彼のおかげで瞬く間に戦況をひっくり返したわ。彼は本当に面白かった。『Because I am the President of this great United states of America(何故なら私はアメリカ合衆国大統領だからだ)!!!Take America back(今からアメリカを取り戻す)!!yeaaaaaaaaaaah!!!』って言って、物を壊しすぎたけど…。」

 

「彼は不可能を可能にして、私たちを救いました。私たちの提督とは違った意味で格好良かったです。今は行方をくらましてしまいましたが…。」

 

二人は思い出してくすりと笑っていた。

 

「きっと、今もどこかで活躍しているはずです。」

 

「…そうか…。その大統領がいるなら、いつか会ってみたい…。」

 

ドミナントの楽しみが一つ増えた。

 

「本気?convenience store(コンビニ)感覚で宇宙行っちゃうような人よ?」

 

「それに、水が苦手と言いながら私たちと共に戦う人ですよ?」

 

二人はニヤニヤ、嬉しそうな感じで聞いてきた。

 

「本当に君たちの言うような人なら、多分知ってる。大統領の破天荒っぷりは身に染みているから。あんなに面白いんだ。それに、君たちも会いたいと思っているだろう?」

 

「ふふふ。そうですね。」

 

「そうねっ!」

 

ドミナントも楽しみそうに言い、二人も笑顔になる。

 

「ところで、君たちはいつ日本へ流れ着いたんだい?」

 

「そのあとすぐです。彼に別れを告げた後、鎮守府へ向かったんです。彼がいるなら、Americaは大丈夫だと感じて。」

 

「そうか。」

 

ドミナントが納得した。すると…。

 

『ご馳走が出来たわ。はやくcafeteria(食堂)へいらっしゃい。』

 

ビスマルクの放送が入る。その放送が流れた途端、全員ふざけるのをやめて食堂へ直行した。

 

…………

cafeteria

 

「やっぱり、いつ見ても落ち着かない…。」

 

ドミナントはあまり食事をしたがりそうに無かった。何故なら、ここはまるで宮殿の食堂のような場所だからだ。大本営の食堂と似ている。長すぎるテーブルに純白のテーブルクロス。違うところは、そのテーブルクロスの上に蝋燭や花が乗っていたり、椅子が一列に何個もあるところや天井にシャンデリアがあるくらいだろう。椅子にも無駄な装飾がある。床はタイルなどで敷き詰められてピカピカしている。聞くところ、大本営がこれを真似したとか…。先日のイギリス料理時やその前の日などは賑やかで、マナーなど関係なかったが今晩は違うようだ。全員が無言で行儀良く食べている。

 

「うぅ…。」

 

「むぅ…。」

 

ドミナントとジナイーダは同じのようだ。一方、セラフ、ジャック、そしてあの主任まで行儀良く食べている。いつもは豪快に食べる主任だが、一応AIのため、行儀は全て正確に行える。あえて豪快に食べていたのだ。

 

「…やっぱり、めちゃくちゃ落ち着かないな…ここ…。」

 

「うむ…。」

 

二人は椅子に座りたがらない。ジナイーダは静かなところでお酒を飲むのは好きだが、決して行儀が良いわけではない。誰かから教えてもらったこともないだろう。ドミナントは大抵の行儀は出来るが、キチンとしたところは苦手みたいだ。

 

「ほら、食べないんですか?このマカロン美味しいですよ?」

 

セラフがテーブルの上の何個も積み上げられた内、一つのマカロンを取って食べる。ジャックはステーキを一口サイズに切り、行儀よく口に運ぶ。主任は無言で音を立てずに食べていたが、ハンバーガーを口にする。また、お酒などもテーブルの上に乗っている。

 

「ごっはんっ♪ごっはんっ♪」

 

神様はマイペースを崩さない。そんなワクワクした感じで席につくが…。

 

「……。」

 

席に着いた途端一変、しっかりした表情で、無言で食器の音すらさせずに行儀良く食べる。先輩神様がしっかりと教えていたのだろう。いつもはお菓子などの食べカスを口の周りにくっつけるが、ドレッシングなどの液体すらくっつけない徹底ぶり。ドミナントは知らない神様の一面に驚いていた。

 

「…あの神様が出来ていて、ま、負けるはずが…ないんだ…。」

 

「ドミナント。それを私がいるところで言うな。」

 

「…そうか。森(モリ・カドル)を追っていたんだっけ。」

 

「何故それを知っている?」

 

「…風の噂。」

 

ジナイーダの疑いの目を他所に、席につくドミナント。

 

「まぁ、実際は肩透かしさ。」

 

ドミナントが食べ始める。そして、問答無用で神様のところにあるお酒を取り上げる。

 

「裏切ったか…。」

 

「だって、よくよく考えたら行儀良くしろと言われてないし。周りに流されているだけだしね。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「YES(そうだ)! Not bound by rule or law or convention(規則に縛られない)! Because(なぜなら)...」

 

「Colorado!」

 

「はいっ…!」

 

コロラドが騒ぎ出したと思ったら、ビスマルクが名前を呼ぶ。すると、静かにしてかしこまる。

 

「…食事中は静かに。」

 

「は、はい…。」

 

ビスマルクが静かに言い、静かに食べ始めるコロラド。どうやら、ビスマルクは怒ると怖いらしい。

 

……うわぁ…。めちゃくちゃ怯えられてる…。というより、これがアメリカ式なのか…?俺のイメージだとハンバーガーを貪り食って、ステーキを丸かじりするって感じなんだけど…。アメリカ=豪快、イギリス=繊細ってイメージなんだけど…。…ただの偏見だよな。考えを改め直そう。

 

ドミナントはそんなことを思う。ジナイーダは渋々隣に座って食べ始めた。…だが、静かな食卓は壊れ始める…。

 

「sweet!sweet!とてもsweetだよコロラド!I drink condensed milk all at once(練乳を一気飲みしたくらいに).」

 

「Atlanta(アトランタ)!」

 

アトランタが言って、一気にコロラドが反応して、騒がしくなる。

 

「はぁ…。もういいわ。」

 

ビスマルクがやってらんないとばかりに、ついに音を出して食べ始めた。すると、他の艦娘たちも普通に賑やかに食べ始めた。

 

「レッツパーリィィィィィィィ!」

 

「少し声が大きいですよ。」

 

「美味しい〜!」

 

「「「cheers(乾杯)!」」」

 

「ジナイーダさんがstrong(強い)だから、当てるのにも大変で…」

 

「なら、主任さんとやるといいよ。存外、甘いから。」

 

「何か言った〜?アハハハハハ。」

 

「全く、行儀良く食べるのは私だけか。」

 

「ボートを用意しろ。水と食料もだ。」

 

「…騒がしいのは苦手だが…。行儀がなくなったのは良いな。」

 

「結局、騒がしく食べるんですね。まぁ、それも良いですけど。ふふふっ。」

 

「ドミナント〜お酒〜。」

 

「ダメに決まってんだろ!バーロー!前のことを忘れたか!?もう御免だ!恥をかかせるな!それに、見た目年齢が低いから駄目!!」

 

「うわー…第4佐世保提督厳しい…。」

 

「うちは徹底しているんでね。まぁ、駆逐艦はあまり飲んで欲しくないけど。」

 

「…逆に言えば、そこまで厳しくしてくれるのは神様だけってことね〜。」

 

「ドミナントさん!私にも言ってください!」

 

「真剣になるな!セラフ!それに、お前は見た目が大人だから全くno problemだ!」

 

「セラフさんも好意を寄せているんですか?」

 

「はい!少し不器用ですけど、あんなに魅力的で優…。」

 

「セラフ!ストップ!言うな!俺が恥ずかしい!」

 

「続けろ。セラフ。」

 

「ジナイーダ!困らせたいのか!?俺を!」

 

「結局、大佐は誰が好きなのかしらね。」

 

「全員です。」

 

「何よそれ。しっかり決めなさい!」

 

「待たされる乙女は意外と寂しいんですよ?」

 

「決められんわ。」

 

ドミナントはそれぞれに適当に答えながら食べていた。

 

…………

応接室

 

「寝るには早いけど、何かするには遅い、嫌な時間。」

 

ドミナントは一人、応接室でトランプをシャッフルしていた。やる相手もいないのにだ。つまり、よほど暇なのだ。すると…。

 

ガチャ

 

「こ、ここかな…?」

 

「?」

 

金髪ツインテールの海外艦がドアを少しだけ開けて見た。

 

「…し、失礼しまし…。」

 

ガシッ

 

「待ちたまえ。」

 

「!?」

 

そっ閉じして行こうとしたが、ドミナントに見つかったが最後、凄いスピードで接近されて腕を掴まれる。

 

「えっ、あ、あの…。」

 

「暇?暇だから来たんだよね?暇なんだね?じゃぁ、トランプでもしようか。暇だから。ね?」

 

「…はい…。」

 

その海外艦は断りきれず、遊ぶことになった。

 

「…なんてね。どうしたの?」

 

「えっ、あ、はい…。」

 

とでも、言うと思っていたのかい?…ドミナントは来た理由を聞く。

 

「その…my room(自分の部屋)を探していて…。」

 

「…うん?ごめん、よく聞こえなかった。自分の部屋を探しているって聞こえてしまってね。」

 

「そう…言いました…。」

 

「マジかよ。」

 

その艦娘は弱気ながらも答える。

 

「…何でここの所属なのに、部屋を探しているんだ…。」

 

「す、すみません…。」

 

「怒ってないお。」

 

どうやら、相当内気らしい。

 

……何で謝られたんだ…?あぁ…。まぁ、そりゃ怖いよね。知らないおっさんに声かけられて、ナンパまがいなことされたら…。初見でこれは怖いか…。俺の鎮守府では日常茶飯事だったからなぁ…。それに、一応世間では化け物扱いだし…。

 

ドミナントはしみじみと思う。

 

「よしっ。決めた。」

 

「えっ…?」

 

「部屋を探してあげよう。」

 

「えぇっ!?だ、大丈夫です…!」

 

「いや、むしろさせてくれ。」

 

「どうして…?」

 

「暇なんだ!!!レッツゴー!」

 

「ちょ、待…。」

 

ドミナントは暇すぎたため、傍迷惑なことをしでかした。その艦娘の手を引っ張って出て行ったのだ。

 

…………

廊下

 

「はぁ、はぁ…。息切れ…ちょっとタイム…。」

 

「これだけで!?」

 

走って8分、息切れで歩けなくなるドミナント。

 

「…よし、行こうか。ぜぇ、ぜぇ…。」

 

「……。」

 

苦しそうな顔で歩き始めるドミナントにその艦娘は微妙な顔をしていた。

 

…………

5分後

 

「まだ…俺はまだ歩ける…!ここが…。」

 

ドミナントが歩く。

 

「大丈夫ですか…?」

 

「だ、大丈夫だ…。はぁ、はぁ…。俺は…ぐふっ、諦めない…!」

 

ドミナントは歩く。すれ違う艦娘に助けられながら。

 

「ぐふっ…。」

 

バタ

 

「大佐!」

 

ドミナントが倒れて、艦娘たちに心配される。

 

「すまねぇな…。俺は…ここまでの器らしい…。あばよ…。」

 

そして、ドミナントは目を閉じた。

 

「「「大佐ーー!!」」」

 

艦娘たちが叫んだ。

 

「…いやいやいや…。大袈裟なんだよ。皆んな。目を覚ませ。そいつは1kmも歩いていないぞ。」

 

ジナイーダがツッコミを入れた。

 

…………

それから1分後

 

「さて、ところで君の名は?」

 

艦娘たちが目を覚ましてそれぞれ解散した後、何事もなかったかのように起き出したドミナントが聞く。

 

「Gambia bay(ガンビア ベイ)です。」

 

「ガンビアベイか。アメリカ出身?」

 

「はい!」

 

「やはりな…そんな気がしていた。」

 

ドミナントは立ち上がる。

 

「さて、ガンビアベイ。色々俺の暴走に付き合ってくれてありがとな。」

 

「えっ?行っちゃうんですか…?」

 

「いや?折角盛り上がってきたのに、ここで終わりなんてことしないよ。」

 

「そうですか…!」

 

少しガンビアベイが喜んだ。

 

……可愛い。海外でもこのかわゆさ…。新しい…惹かれるな…。ハァ…ハァ…(サーダナ風)。いい素材だ…。

 

ドミナントはそんなことを思う。相変わらず艦娘バカだ。すると…。

 

……痛っ!痛い!?熱くて痛い!なんだ!?

 

ドミナントが周りを見ると、遠くから突き刺さるような鋭い視線を浴びせるセラフがいた。嫉妬という名の熱を帯びた視線だ。彼女は心を読むことができるので、一切隠し事は出来ない。

 

「?どうかしたんですか?」

 

「あっ、いや…。なんでも…。」

 

背中に刺さっていくことを気にせず、ふらふらと歩いて調べていく。

 

「まだよ…。私はまだ戦える…。」

 

「大佐?」

 

「はい?」

 

ドミナントがふらふら歩いて、ガンビアベイがしっかり歩いていると、後ろから声をかけられる。

 

「私のセリフが聞こえてきたんですけど…。」

 

「えっ?知らない。ブルーマグノリア?」

 

「違いますけど…。」

 

声をかけてきたのは髪も瞳も金色で、全体的にクセのあるセミロングの前髪。大人びた顔立ちの子だ。その隣に金色の瞳に赤毛の子がいる。

 

「じゃぁ、初めてか。…俺…いや、私はドミナント大佐であります。君たちは…?」

 

「Northampton級、Houston(ヒューストン)よ。」

 

「オランダ軽巡、De Ruyter(デ ロイテル)!わかる?」

 

「分からない。だが、関わっていけばわかるさ。」

 

自己紹介をしていくドミナントたち。

 

「ところで、今のセリフ、君のセリフと被ってるの?」

 

「今の…とは?」

 

「さっき俺が呟いたあの言葉。」

 

「あっ、ええ。そうよ。」

 

「そうなのか。」

 

ドミナントは不思議そうな顔をした。

 

「ところで、この子の部屋わかる?」

 

「Gambia・bayのこと?」

 

隣で恥ずかしそうにするガンビア・ベイ。

 

「毎日のように迷っているから、全員知ってるよ?」

 

「そうなのか?…さっき集まっていた時に聞くべきだった…。」

 

「部屋はここをまっすぐ行って、突き当たりを左に行きます。そして、右に。階段を一番下まで降りて左へ行くと、外と繋がっている道があるから、そこを通って、右へ行って階段を3階まで登って…。」

 

「「???」」

 

「…私たちも行くわ。」

 

ドミナントとガンビア・ベイが思考停止したのがわかり、やれやれとヒューストンたちが案内してくれる。

 

…………

道中

 

「二人一緒ってことは、仲良しなんですね。」

 

ドミナントが歩きながら言う。

 

「…本当はもう一人いるけど、まだ確認されてないの。」

 

少し寂しそうな顔でヒューストンが呟いた。

 

「もう一人?」

 

「大佐、野暮なこと聞かない。…Parse(パース)よ…。」

 

「パース?」

 

デ・ロイテルが言い、ドミナントが首を傾げる。

 

「妹のような存在なんだって…。」

 

「…そうなのか…。」

 

ドミナントは前を進んで歩いているヒューストンの後ろ姿を見た。寂しそうだ。同時に、ドミナントもなんとなくその感情が伝わってきた。

 

「…いつか、確認されると思いますよ。だって、それが『艦隊これくしょん』ですから。」

 

「艦隊correction…?」

 

「何よそれ。」

 

「面白いことを言うのですね。」

 

ドミナントが言い、三人が微笑みながら行った。そして、ガンビア・ベイの部屋へ行った。

 

…………

部屋前

 

「ここよ。」

 

「やっと帰れた…。」

 

「“帰れた”って…。」

 

ガンビア・ベイが喜び、ドミナントたちがやれやれとする。

 

「じゃぁ、随分な時間潰しになったし、俺はそろそろジャックたちのところへ行こうとするかな。」

 

「私たちは入渠した後、寝るわ。」

 

「じゃぁね〜。」

 

そんな感じで戻ろうとするが…。

 

「あっ、あの…!待ってください!」

 

「「「?」」」

 

ガンビア・ベイが皆んなを引き止める。そして、急いで部屋の中に入り、小さな袋を人数分持ってきた。

 

「これ…お礼です。」

 

「なんだろう?」

 

「手作りのクッキーです…。お口に合うかどうか…。」

 

「「thank you(ありがとう).Gambia bay.」」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントたちはお礼を言う。

 

「じゃぁ、私たちは戻るわ。」

 

「good by(さようなら).Gambia bay.」

 

二人が自室に戻る。

 

「さてと、じゃぁ俺も戻ろうかな。」

 

ドミナントも戻ろうとしたが…。

 

ギュッ

 

「…?」

 

前に進んでいないことに気づく。

 

「…何かようかな?ガンビア・ベイ。」

 

「あの…その…。」

 

……可愛い!

 

ドミナントの服をちんまりと掴むガンビア・ベイ。

 

「明日…。一緒にいてくれませんか…?」

 

頼んできた。

 

「…友人とかいないの?」

 

「…誘われてません…。」

 

「…そうか。同類ならだぁい歓迎だよ。僕も誘われてないし。」

 

ドミナントがOKする。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「まぁ、一人ぼっちは寂しいもんね。わかる。ここの鎮守府で大半の時間を一人で過ごしてきた俺には分かる。」

 

そして、各々が部屋に戻って行ったが…。

 

…………

男部屋(物置)

 

ガチャ

 

「ただいま〜。」

 

ドミナント、帰還する。

 

「む?ドミナントか?」

 

ジャックが一人でいる。窓辺近くの壁に寄りかかり、本を読んでいる。キラキラしたイケメンがここにいる。

 

「ジャック一人?主任は?」

 

「……。」

 

「…はぁ…。恥かかせまくりだな…。ホント…。」

 

ドミナントは呑気に言う。もう、慣れてしまっているのだろう。

 

「ところでドミナント。ビスマルクから伝言を預かっている。」

 

「?」

 

「明日、一緒に回らないか?だそうだ。…女たらしめ。」

 

「ジャック、君をタダで住まわせてあげている俺に向かって言っているのかな?…て、ビスマルクさんもか…。」

 

「“も”…?」

 

「でも、ガンビア・ベイとも約束しているしなぁ…。」

 

「どうするんだ?」

 

「…先に約束した方を守るのが義務だ。」

 

ドミナントは少し悩んだ後結論を出す。

 

……それに、ぬか喜びさせた後、一人ぼっちは死にたくなる…。

 

「?」

 

ドミナントはそう思って、ビスマルクの約束を断りに部屋へ行った。




そろそろアイアンゴーレムを倒さねば…。はい。ここで、とある一番の核心の問題を提示しましょう。…ドミナントは社畜なのにあの威圧おかしくないですか?
追伸、あと少しで1万字…。あと…。ネタを先にやられているのを見ると、そのネタを使えない感じしますよね…?パクリは嫌なんじゃぁ…。まぁ、公式のを知っていて、あえてパクるネタはするんですけどね…。二次創作のは…ね…。

まぁ、こんな小説、人気ないと思いますけど。(真顔)

登場人物紹介コーナー
マイク…埃をかぶっていた。
コロラド…某大統領に魅せられて、真似をしてしまった。アメリカの戦艦。気が強くて高飛車な性格。何かと自分をビッグ7であることを強調する。悪い印象を持ってしまうかもしれないが、彼女はビッグ7である自分の立場からくるプレッシャーに対する負けず嫌いなだけ。
大統領…ACに似たメカを乗りこなし、破壊してアメリカを救っている。
森…モリ・カドル。ACLR。機体名『ピンチベック』
アトランタ…一言だけ登場。アメリカの防空巡洋艦。普段は物静かだが、気が荒ぶると言葉遣いが荒れる。育ちが良いとは言えない。あまり人付き合いを好まない。大統領のライバルキャラをたまに演じる。(特に煽り方面を)
ガンビア・ベイ…めちゃくちゃ弱気。軽空母。栗田艦隊がトラウマらしい。
ヒューストン…大人びた容姿に似合った柔らかい物腰。アメリカの重巡洋艦。基本は丁寧語だが、気さくに接するところから、大人の余裕を感じさせる。かなり気がきく。パースやデ ロイテルと仲良し。
デ ロイテル…オランダの軽巡洋艦。見た目通り、幼い言動。基本的には陽気な性格。日本の重巡洋艦にトラウマがある。ヒューストンやパースと仲良し。
パース…ゲームでは実装されているが、この世界ではまだ確認されていない。
クッキー…チョコチップクッキー。ガンビア・ベイの手作り。かなり美味いらしい。

ザーーーーー…
次回、第172話「パラオ泊地の海」


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172話 パラオ泊地の海

オーンスタインとスモウで詰まった…。
「まぁ、中盤の難関って言われていたものね。しかも、ソロでやるなんて…。」
まぁ、捨てg…じゃない。協力者と一緒じゃないとね。
「今捨て駒って…。」
さぁ!あらすじを始めようか!
「露骨にそらした…。」
そんなのどうでも良いけどさ。どうして来なかったの?
「あんたのせいでしょうが…。今鎮守府は大変なことになってるんだから…。」
何で瑞鶴は無事なの?
「召喚されたからよ。」
まぁ展開的に、召喚しないつもりだったんだけど、これが予想以上に長くなるって分かったから。
「200話越すんじゃ…。」
越しちゃダメかい?…まぁ、ダメならやめるけど。最近なんだか小説書くの面倒になっちゃってさ。更新が遅いのはそのせい。ネット小説なんて、そんなもんでしょ。
「まぁ、そうだけど…。」
こんな自虐ネタをする理由はネタ不足なだけだし。第一、ネタが切れ始めてるし。
「そんなこと言わない。裏で話しなさい。」
裏があること言っていいのかよ…。
「別に良いんじゃない?公開してないだけだし。」
まぁ、そうだけど…。
「裏は筆者さんが話して、私が聞くだけだけどね。」
色々鬱憤が晴れていいんだよ…。悩みっていうのは、誰かに聞いてもらいたいもんなのさ。
「友達いないの?」
悩みを話せる人はいないね。人の前ではなるべく表しか出したくないし。第一、信用できるほどその人のことを知らなければならないし。
「知ろうとしないからじゃないの?」
努力を踏みにじられたあの日からしなくなった。
「裏に入り始めてるわね…。あらすじを始めても良いかしら?」
うん?あっ、ああ…。つい裏になりそうになってしまった…。
「…まぁいいわ。この人よ。」
「ども!恐縮ですぅ!青葉です!大本営所属です!」
随分と調子良さそうだねぇ。
「一言どうぞ!」
えっ?お、おう。なら…。ゴホン。消えろイレ…!
「さぁ、始めるわよ。」
「よろしくお願いします!」
…ねぇ、瑞鶴…。めちゃくちゃ恥ずかしかったんだけど…。めっちゃノリに乗った時に戻すのやめてくんない?
「あんたが初めろって言ったんじゃない。」
…ちっ…。
「あっ!舌打ち!」
「特大スクープです!」
くそっ!青葉なんて召喚するんじゃなかった!
「白霊かしら?…まぁいいわ。あらすじ始めちゃって。」
「スクープにする、この人の写真を撮ろうにも何故かボヤけます…。」
筆者の特権という奴さ。撮れるもんなら撮ってみろ。ほーらほーら。
「ムカつきます!」
「そんなの放って置いてさっさとやるわよ。」
そんなの…。
「あれ?意外とメンタル弱い?流石そんなのですね。」
さっさと始めろや。
「瑞鶴さんとはえらい違い…。瑞鶴さん自体に弱いのでしょうか…?」
真実を追求するカメラマンはこれがダメなんだ。次のステップに続かない。
「そろそろ始めてくれないかしら…?」
アッ、ハイ…。

あらすじです!
ども!恐縮です、青葉ですぅ!今、大本営はだいぶ落ち着きました!ですが、どうしても人員不足で…。第4佐世保なら、たくさん人材いるんですけどねぇ…。


…………

 

「青い空、青い海、真っ白な雲…。そして光輝く少女たち…。この空間を美少女といるとは…。」

 

ドミナントは今浜辺にいる。

 

「…なのに、どうしてこんな大勢になったのか…。」

 

きゃっきゃ!ふふふ!

 

ドミナントの近くに海外艦の少女や女性がいる。

 

……目のやり場に困る…。元々、先日ビスマルクさんの部屋に行ったのが原因だ…。

 

…………

先日

 

コンコン

 

「ビスマルクさん、いますか?」

 

ドミナントが部屋のドアをノックする。

 

『ええ。入って良いわよ。』

 

「では…。」

 

ガチャ

 

「ビスマルクさ…。うわっ!酒くさ…。」

 

ドミナントが入ると、そこには知らない艦娘もいるが、一杯やっていた。おそらく、全員がドイツ艦だろう。レーベやマックスまでいる。

 

「大佐もどう?」

 

「飲みません。」

 

「ふぅん。私たちとじゃ飲めないんだ。」

 

「違います。酔うと大変なことになるからです。」

 

「大変なことって?」

 

「意識を失います。」

 

「ただの飲み過ぎなんじゃ?」

 

そんなこんなで、ドミナントはビスマルクの前に行く。

 

「あの…。」

 

「まぁ、座りなさい。」

 

ビスマルクが椅子を指差す。

 

「わかりました。」

 

ドミナントはそのご厚意に甘えて座る。

 

「明日に回る件なんですが…。」

 

「今よっ!」

 

「えいっ!」

 

「グボッ!?」

 

金髪で、最初の方に会った艦娘の掛け声と同時に、レーベがからかった仕返しと言わんばかりにお酒を強制的にドミナントに飲ませた。

 

「!?オイゲン!?」

 

ビスマルクは勝手なことをしたプリンツ・オイゲンに驚く。

 

「ぐっ…!」

 

……まずい…。少し飲んでしまった…。早くここから出なくては…。また恥をかく…!

 

ドミナントが部屋のドアへ直行するが、段々と目の前が暗くなっていく。

 

……間に合わ…な…い……。

 

…………

現在

 

「首もめちゃくちゃ痛いし…。」

 

あれから、ドミナントはまた暴走した。艦娘たちが目を合わせない。合ったとしても、赤くして俯く程度だ。ちなみに、あのあとオイゲンはビスマルクにめちゃくちゃ叱られた。

 

……俺は何を言ったんだ…?顔を赤くしているってことはめちゃくちゃ怒ってるんだよな…。国辱でもしてしまったか…?くそっ…!知りたいのに誰も教えてくれない…!

 

ドミナントは一人悩んでいる。近くにガンビア・ベイもいるが、少し距離を置いているようだ。あと、少しふらついたように見えただけでも心配してくる。

 

……何故だ!?

 

ドミナントが考えていると…。

 

「ドミナント。」

 

「ん?ジナイーダか?」

 

ジナイーダが声をかけてきた。

 

「…首、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ…。…もしかして、どうして痛いのか知ってる?」

 

「…知らんな。」

 

ジナイーダは短く答えた。

 

……また間違えて首を殴ってしまった…。頭を狙ったつもりなんだが…。また変な音を立ててたな…。折れたのではないかと真面目に心配したからな…。しかも、そこのシーンをドミナントの近くにいる艦娘に見られたしな…。

 

ジナイーダたちが叩く瞬間をガンビア・ベイたちが目撃してしまったのだ。

 

……それにしても…。前はベッドで絶対安静だったはずだ…。耐久性といい、こいつの成長スピードは異常だな…。

 

ジナイーダはそんなことを思う。

 

「ガンビア・ベイ。昨日何があったか教えてくれない?」

 

「ふぇっ!?えっ、あ、その…。」

 

「……。」

 

……赤くしてもじもじとしている。それほどまでのことをしたのだろうか…?

 

ドミナントは国辱を考えてしまっている。

 

……。でも、前もこんなことがあったはずだ…。確か、妖精さんによると…。…マジか。

 

ドミナントは思い出す。あの出来事を。

 

……ナンパまがいなことをしたか…。あぁ…。部屋に引きこもりたい…。プリンツ・オイゲンだっけ?覚えてろよ…。絶対に忘れねぇからな…。

 

酒を飲ませたプリンツに怒りを募らせるドミナントだった。すると…。

 

「大佐。大丈夫?」

 

ビスマルクがカキ氷を持って来た。すっかり気分は夏だ。

 

「ビスマルクさん…。部屋に引きこもりたいです…。」

 

「NEETは駄目よ?」

 

「ですが…。」

 

「オイゲンは叱っておいたから。」

 

ビスマルクがドミナントの隣に座る。

 

「カキ氷。食べる?」

 

「…自分、昨日ナニカしたんですか…?」

 

「…えーっと…。」

 

ビスマルクまでもが目をそらし、微妙な顔で笑う。

 

「…そうね…。…口説いてたわ。全員を…。」

 

「ぐふっ!」

 

グリッドワン!残りAP50%!

 

「しかも、私にまで…。」

 

「ぐはぁ!」

 

グリッドワン!グリッドツーの攻撃が連続ヒット!グリッドワン!危険温度が続いている!

 

「落ちた艦娘も少しはいるんじゃないかしら…?」

 

「がふっ!」

 

グリッドワン!残りAP10%!

 

「Gambia bayも多分その口ね。」

 

「ぐふぁっ!」

 

グリッドワン!行動不能!グリッドツーの勝利です!

 

「そ、そうなのか…?ガンビー…。」

 

「……。」

 

目を合わせない。

 

「…自信をつけるような感じだった…?」

 

「…はい…。」

 

もうやめて。とっくにドミナントのAPは0よ。

 

「…楽しめるかな…?これで…。」

 

…………

司令室

 

「ふむ…。」

 

女たらしのナンパ野郎、ドミナントなんぞ放っておいて、ジャックサイド。

 

……全く、無用心なところだ。

 

ジャックは一人、この部屋の中にいる。

 

……これでは情報やデータを盗み放題だな。…まぁ、必要とは思えないから盗まないが。

 

ジャックはその部屋にある機材をいじる。

 

……ここは随分古い場所みたいだな。本で見たことがあるが、相当古いぞ。捨てられた鎮守府だったようだな。

 

ジャックは壊れて動かない機材を触る。

 

……。

 

カチャカチャ…

 

そして分解して直し始めた。

 

……たまにこういうものを直さなければ、腕が鈍る。この世界に来て、もう随分と鈍った気がするからな…。このままいれば、元の世界に戻った時、ACの整備も出来ん。

 

カチャカチャ…

 

ジャックは最悪の事態にも兼ね備えて直す。そして、それがすぐに直った。

 

……ふむ…。意外と簡単な構造だったな…。ところで、これは何だ?

 

ジャックがその機械をいじくる。すると…。

 

カチッ

 

『〜♪』

 

「……。」

 

曲が流れる。録音機だったみたいだ。

 

……随分古いんだな…。

 

『アーアーアーアー…ザー…ザザッ…♪』

 

「しかも、所々かすれて聞き取れん。」

 

ジャックはそれを司令室の机の上に置く。

 

『〜♪』

 

……まぁ、これで良いか。

 

そう思って、司令室の椅子に座ってもたれる。

 

……鮮明にしたいが、これ以上いじくると録音したそのものが消える。

 

ジャックは考えながら、その椅子で本を読む。小さな円窓から僅かに入る日差しが本を照らして心地よい。

 

……やはり、休日の過ごし方はこれだな…。前の世界では、ライウンやンジャムジが近くにいて騒いでいたか…。それに、こんな立派な本じゃ無かった。戦場で拾った、ボロボロで文字が雨で滲んで所々読めず、紙がすぐに破ける。本とは言えない代物だったな…。あの世界にも本は売っていたが、異常なまでに高かった。作家もいなくなった世界だから、娯楽そのものが高かったのだ…。それに、機械を使って音楽など…。敵に居場所を知らせるようなものだったしな…。

 

そんな事を思いながら本を読んでいると…。

 

ガチャ

 

「音がするわ。誰かいるのかしら…?」

 

「む?」

 

艦娘がゾロゾロ入ってくる。

 

「誰ですか?ここは立ち入り禁止のはずですよ?」

 

メガネをかけた艦娘が厳しい目つきで言う。

 

「それはすまない。静かになれる場所を探していていた。」

 

「その声は…。instructor(教官)?」

 

「気迫で分からないとはな。休日を変更して訓練をするべきか?」

 

「い、いえ。大丈夫です。」

 

ジャックが言い、慌てて言う艦娘。

 

「それはそうと。何か用か?Italia(イタリア)、Roma(ローマ)、Aquila(アクィラ)、Zara(ザラ)、Pora(ポーラ)。」

 

「「「!?」」」

 

ジャックが流暢にその名前に当てはまる艦娘を見て言う。

 

「な、何故私たちの名前を…。」

 

「気づいていないのか?訓練時によく口に出すだろう。」

 

「ま、まさかそれだけで…?」

 

「?基本だと私は思うが?倒した相手の名前すら知らないのなら、情勢がどうなるのか分かったものではない。」

 

ジャックが当然のように返して、困惑する面々。

 

「これ直ったんですね。」

 

イタリアがその機械に触れる。

 

「…意外と簡単な構造だった。…なんの曲だか分かるか?」

 

「いいえ。これはこのアクィラたちが着任する前…。いえ、ビスマルクが着任する前から存在するらしいです。おそらく、この鎮守府が建てられた時からあるものだと思います。ですが、大本営からの情報を見ましたが、この鎮守府はいつ建てられたのか記録にないみたいです。もしかしたら、アクィラたち艦娘が現れる前から存在していたのかもしれません。」

 

アクィラは目を閉じながら、聴きながら言う。気に入ったのだろう。このどこか切ないような曲を。

 

「コーラス?かしら…?どこか縛られて、暗いように感じるわね…。この曲…。不思議ね…。」

 

「どこか悲しい…。」

 

「重く聞こえる…。」

 

ジャックを除く全員がその曲を感じている。感想はそれぞれだが、気持ちは悲しい、切ないと共通していた。

 

「…もしかして…。空白の10世紀…?でも…。いや、でもそうじゃないと説明が…。」

 

「?」

 

真面目な顔で考えだすイタリアに首を傾げるジャック。

 

「どうしたんだ?」

 

「あっ、いえ。これは空白の10世紀の物なのかもしれないって…。」

 

「空白の10世紀?」

 

「知らないんですか!?…でも、知っているのは一部よね…。」

 

「なんだ?それは。」

 

「…空白の10世紀とは、約1000年間、歴史の枠が空いている状態です…。確認できる物全てがなくなっていたりして、何があったか全くわからない状態です…。最も有力な説は、何もかもが破壊し尽くされるナニカがあったとか…。そのナニカとは、一説では全面核戦争、一説では神による作り直し、一説では隕石のなど様々な説があります…。それより前の出来事すらありません。」

 

「曖昧だな。」

 

ローマが説明して、ジャックは興味なさそうに言った。すると…。

 

「信じてないみたいだね〜。」

 

「ポーラ!お酒飲み過ぎ!」

 

「ああ〜ん。」

 

ポーラが酔っ払いながら言い、ザラが酒瓶をひったくる。

 

「取られちゃった〜。まぁ〜、まだあるから良いけど〜。」

 

「何でそんなところに!?没収!」

 

どこからか、服の中から出した酒瓶をザラがひったくる。

 

「まだまだ〜。」

 

「粘り強い!流石ポーラ!て、そこに粘り強さいらないでしょ!」

 

流石にポーラは怒られた。

 

「…賑やかだな。」

 

ジャックは、そんなやりとりを微笑むイタリア、ため息をつくが口元が緩んでいるローマ、笑っているアクィラ、怒っているザラ、怒られても気にした風のないポーラを見て、そんな感想を述べる。だが、少し嬉しそうだった。




遅くなりました。最初はもっと他の、重大なことが含まれている展開にしようと思ったんですが、核心をつきすぎたのでやめました。…つまり、時間をかけたことが無駄になりました。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…あばよ。酔っ払い。
prinz Eugen…プリンツ・オイゲン。ビスマルクを姉のように慕う子。お酒を飲んで酔っ払って悪ノリをしてしまった。元気いっぱいで明るい性格。空回りする面もしばしば…。実は、パラオに来た時に一言だけ登場している。
録音機…コーラスでどこか聞いたことがある音楽が流れている。喪失感や切なさがある。
本…哲学などが書いてある。ドミナントとは無縁の難し〜いヤツ。
Italia…イタリア。なんとイタリア艦。そのまんまというツッコミは置いといて…。ゆるゆるおっとりのんびり系。末っ子のローマを大切にしていて、料理の腕も良いときたもんだ。パスタが大好物。鳥を捕まえるアレにパスタを置いたら来るんじゃないか…?(ノリツッコミ風に)
Roma…ローマ。クール系武闘派眼鏡。どこか霧島に似ている気がする。かなり神経質でピリピリしている。姉に素っ気ない態度はするが、内心は敬愛している。人見知りで、親しくなることが怖いらしい。(3連続で騙して悪いがされたか…?)ツンツンしてますね〜。恨み深いところもあるため、ドミナントに巻き込まれたら大変なことになりそうです。
Aquila…アクィラ。おっとり天然お調子者。よしよしが口癖。(使い所にヤーナム…。)流暢に日本語を話す。食べることが大好き。もっと食わせろ!
Zara…ザラ。明るく朗らかハキハキと。粘り強さが信条。心配性で面倒見が良く、よく妹のポーラのことを思っている。苦労人。レーダーの重要性を理解しており、その技術は一流。その実力は周りの色と同化したジャックを一瞬で見つけるくらいだ。かなりヤバい。
Pora…ポーラ。ダウナーゆるゆるぐだぐだマイペース。お酒大好き。脱ぎ上戸。ある意味ドミナントの天敵。彼女のペースに巻き込まれたらドミナントなんぞひとたまりもない。隼鷹(酒豪)と一緒になったらもう止まらない。酒瓶を空にして、何が得られるというのか…。だが我々にはもう彼女たちを止められない…。飲むが良い。そして、それが何を生むのか、それを見届けるが良い。最悪の酔いは終わり、空の酒瓶だけが残った…。
空白の10世紀…約千年もの間の歴史が記されていないこと。ナニガあったのか不明だが、今までのを読み返すと、所々ヒントがあった気がする。

ザーーーーーー…
次回、第173話「パラオ泊地の海 part2」


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173話 パラオ泊地の海 part2

ダークソウルをやっていて気づきました…。
「何が?」
救いがない…。
「フロムの大半のゲームはそうよ。」
いや、混沌の魔女やシフなど…。考えちゃったら、罪悪感が出る…。
「筆者さんの心臓は意外と繊細なのね。それに、少し優しいわね。」
いやいや…。あれは結構だよ…。やってないから言えるんだ…。
「そう?」
誰だってそうなる…。
「そう。」
と、言うわけで救っちゃいましょう。この小説で。
「へぇ。…え!?」
がんばれ!ドミナント、瑞鶴!
「ちょ、ちょ…。この小説はACと艦これ関連よ!?」
なら、タグを調整するか…。
「筆者権限使わないで!?苦労するのは私たちなのよ!?」
うん。だから、頑張って。
「な…な…な…。」
よしっ!スッキリした。あらすじに入ろうか。
「この外道っ!」
最高の褒め言葉だよ。ゲストは?
「こいつ…!」
おー、怖い怖い…。だが、ガンバレ瑞鶴。
「私の嫌いな言葉は一番が『努力』で二番が『ガンバレ』なのよ!?」
キャラに合わないぞ…。…そうか…。瑞鶴は見捨てるのか…。
「言い方!人聞きが悪い!」
自分の太陽を見つけられず悲しんでいる人や、妹のために自分の命までも捧げるお姉さんや、深淵に染まってしまった主人の墓を命がけで守るか弱い小動物のことを…。
「うっ…。」
救ってくれるかい?
「…わかったわよ…。」
まぁ、礼は弾むぜぇ〜。
「魔法のカードを購入してくれるかしら?」
いや、魔法のカードは…。
「しみったれ!ケチ!守銭奴!強欲者!」
そこまで言わなくても…。てか、そろそろあらすじに入って貰おうか。字数おしてるし…。
「分かったわよ…。つまり…無償ね…。」
ログイン。
「よし!張り切ってやるわ!この人よ!」
「はーい、お待たせ!大本営所属の夕張です!」
メロンちゃんですね。ただし、第4ではないから、少し技術面は劣ります。
「そんなこと言われたら、闘志湧きますよ…?」
「ゲストに失礼よ。」
すまねぇな…相棒…。
「まぁ、良いです。それより、あらすじに入りますね?」
おぉ、サクサク進む。
「頼んだわよ。」

あらすじです!
えーっと…。前回、第4佐世保鎮守府から礼の物が届きました。むむむ…。私と同じ艦なのにやりますね…。技術面では確かに、第4の方が上です。ですが、忘れて欲しくないのが、その面では世界で3位の実力を持つ夕張と言うことを…。完敗してしまったのが、第2舞鶴鎮守府ですが…。あっ、そうそう。ここだけの話、その二つの鎮守府によって、作られたのは艤装で、とんでもなく…。…あれ?どうしたの?元帥殿?そんな怖い顔して…。ちょ、待…。


…………

パラオ泊地 浜辺

 

「……。」

 

ドミナントは一人、海を眺めている。

 

……さっきから視線が痛い…。どこかの艦娘が向けてきているのは分かるが…。そこまでのことをしたのだろう…。オイゲンめ…。許すまじ…。まぁ、それは良いとして、ガンビーはそれで良いのか…?体育座りをしたままの俺を見ているだけで満足なのか?服を羽織っているけど、中は水着なんだから、遊んだほうが良いのではないか…?あそこで遊んでいる潜水艦の子たちを見てみろ。…二人しかいないけど…。他にも、知らない駆逐艦や、知らない艦娘、サムやフレッチャーやジョンストンも遊んでいるじゃないか。て、フレッチャーは水着じゃないんかい。二人がしていて、なんでしていないんだ…?まぁいいや。ビスマルクさんはかき氷を食べたまま隣にいるし…。ガンビーを誘ってあげたらどうなのよ…。話は変わるけど、ジナイーダもセラフも主任も神様もいないし…。ジャックは好きにするって言ったから分かるけど…。その他(ジナイーダ、セラフ、主任、神様)の奴がいないなんて聞いてねぇぜそんなの。

 

ドミナントは一人で考える。すると…。

 

「やぁ、大佐。」

 

「?」

 

どこかで聞き慣れた声がした。

 

「ひび…ヴェールヌイか?」

 

「そうだよ。よく分かったね。」

 

「そりゃ…。俺の鎮守府に一人いるもん。」

 

「そうなんだ。」

 

「…ハラショー。」

 

「ハラショー。」

 

「…普通の反応だ…。」

 

「どんな反応を期待していたんだい…。」

 

ドミナントとヴェールヌイが話す。

 

「もっと…。ハァラショォォォォォォォ!!!…とか。」

 

「怖いよ…。」

 

「それが俺の鎮守府では普通。」

 

「怖いよ…。…でも、何故だか馴染みやすいな…。」

 

「!?やめるんだ。ヴェールヌイ…。俺が怒られる…。」

 

「……そうだね。」

 

ヴェールヌイが反応したと思いきや、ドミナントが思いっきり否定した。

 

「じゃぁ、私はどこか行くよ。それじゃぁ。」

 

「お、おう。一言だけだけどね。」

 

そして、ヴェールヌイが行った。

 

……どうしよ…。

 

…………

鎮守府内 更衣室

 

「…神様さん…。」

 

「…セラフ…。」

 

二人が更衣室にいる。

 

「…水着ですが…。」

 

「うん…。」

 

「露出度が高すぎると思いません…?」

 

「…私も思った…。」

 

「私、AIなんですが…。」

 

「うん…。まさかね…。」

 

二人が更衣室内で話している。

 

「この前買った水着が入らなくて…。おかしいと思ったら…。」

 

「…うん…。」

 

「体重が増えていました…。気づかないうちに…。」

 

「美味しいもの食べてたからね〜。餡蜜とか、パンケーキとか…。最近ではバウムクーヘンを夜食に食べたでしょ。」

 

「もうお嫁にいけません…!」

 

「大袈裟大袈裟…。てか、AIもそんなこと考えるんだね…。初めて知った…。」

 

「AIですが、魂が宿っています…!自由に行動できてます…!兄弟?姉妹?とは違います…!」

 

「たくさんいるもんね〜。」

 

神様はセラフの愚痴を聞いていた。

 

「AIで、元が機械ですから、太らないと思ったのに…。」

 

「現実は非常なりだね〜。」

 

神様は朗らかな顔で受け流していた。

 

「まぁ、私は神だから?太らないけどね!」

 

「…うぅ…。」

 

神様が水着に着替えるが…。

 

「…あれ?きつい…。」

 

「……。」

 

神様が一瞬のうちに着替えるが、キツい。

 

「…体重計ありますよ…?」

 

「…うん…。」

 

そして、乗る。

 

「…55kg…。」

 

「17歳くらいではそれが普通ですよ?」

 

「…10kgも増えてる…!?」

 

「!?」

 

セラフは驚いた。元が45kgなことに…。

 

「身長147cmなんだよ!?肥満だよぉ…。」

 

「む、胸のこと入れ忘れてないですか…?明らかにCくらい…それ以上はありますよ…?」

 

「うえぇぇぇん!ドミナントに嫌われちゃう〜…。」

 

神様の目の縁に涙が溜まっていた。

 

「聞いてないですね…。…まぁ、思い当たる節はたくさんありますからね…。」

 

神様はご飯を食べてはすぐに寝てしまっていたり、夜食にセラフよりもお菓子を食べていたり、オヤツに誰かにクッキーをねだったり、ドミナントに頼んで、茶菓子を分けてもらっていたり…。

 

「セラフはどうなの…?」

 

神様が聞いてくる。

 

「…私は2kg前後でした…。」

 

「増えたと言わないよ〜!」

 

セラフが目を逸らしながら言い、神様が言う。

 

「それに見た感じだと、胸が大きくなってるよ〜!」

 

「そんなはず…あっ、本当でした…。」

 

「うぁぁぁぁん!」

 

神様がより深く傷ついた。

 

「ま、まぁ、発育が良いんですよ。どこかに栄養が吸収されているのかもしれませんよ?ほ、ほら…。バストとかヒップが大きくて、ウエストがくびれている方が男の人にとっては魅力的と聞きますよ?だから、ウエストじゃなくて、胸やお尻に…。」

 

「栄養が…?」

 

「そうですよ。サイズを測ってみたらどうですか?」

 

「…うん…。」

 

神様はサイズを測った。

 

「…少しだけ増えてた…。」

 

「良かったじゃないですか。」

 

「…でも5kg前後、ウエストに変わってた…。」

 

「……。ダイエットですね。」

 

「唯一の楽しみがご飯なのに…。」

 

神様が無念と言わんばかりに悲しんでいる。

 

「まぁ、そんなことより…。」

 

「水着だよね…。」

 

神様はセラフを見る。少し大きくなっているので、水着がピチピチできわどい。

 

「…海水浴に来た人を釘付けにするよ…。それ…。」

 

「…ですよね…。」

 

「ドミナントが見たら、速攻で逃げるよ…。ドミナント、ああ見えて裸とかは苦手だから…。普通の男の人は襲っちゃうよ?それ…。」

 

「ですよね…。どうしましょうか…。」

 

「まず、そのムチムチをなくした方が良いと思う。」

 

神様が言っていると…。

 

「…主任さん、覗いたら消炭も残しませんよ?」

 

セラフが殺意満々の声で突然言い出す。

 

『……。』

 

廊下から、離れていく音がした。

 

「…なんで分かったの?」

 

「彼は変態ですから。」

 

「ドミナントと扱いが違う…。」

 

神様がそうは言いながらも、考えている。

 

「う〜ん…。仕方ないなぁ…。出してあげる。」

 

ポンッ

 

「はい。」

 

「なんでもありですね…。流石です…。」

 

神様が空中から水着を出す。

 

「まぁ、その分私に不幸が降りかかるんだけどね…。人助けだから、ノーカウントであることを祈ろう…。」

 

神様がぼやく。まぁ、本当にノーカウントで、何も起こらなかった。

 

…………

砂浜

 

「…そろそろ、視線の犯人でも確かめるか…。」

 

ドミナントは立ち上がる。

 

……たしか、ジナイーダが言っていたな…。視線の出所を知るには、感じ取れって…。…無理だ。

 

ドミナントはそう思って、周りをキョロキョロする。

 

……かといって、わかるわけでもないし…。

 

ドミナントがそう思っていると…。

 

ジー…

 

「!?」

 

岩陰から必要以上に見ている者がいた。

 

「君、何かようかね?」

 

「近づくな!」

 

ドミナントが近づこうとしたが、思いっきり拒否られる。

 

「ひっど…。てか、誰だよ…。」

 

「貴様に名乗る名などない!」

 

「じゃぁ、そこのAさん。そんなに俺を見て、どうしたの?」

 

「変態がおかしな行動をしないか見張っている…。」

 

……見張っていること自体変態って気付いていないのかな…?

 

ドミナントはそんなことを思う。

 

「あら?Гангут(ガングート)?そんなところでどうしたの?」

 

ビスマルクがやって来た。

 

「あれ?ガンビーは?」

 

「さっき、駆逐艦たちに連れて行かれたわ。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

ビスマルクが言う。

 

「ガングート…。ロシア艦だっけ…?」

 

ガングートは知っていたらしい。

 

「確か、同士でっかいの…だったな。」

 

「なんだそれは…。」

 

ガングートは岩陰から出てこない。

 

「…破廉恥なことでもしたのかい?」

 

ドミナントが冗談交じりに言うが…。

 

「ああ。したぞ。」

 

「なんて…。え?」

 

「頭を必要以上に撫でてきた…。そのせいで変な声を…。銃殺刑にしようとしたが、紫の同士が止めてきた。」

 

「紫の同士?」

 

ドミナントが訪ねる。

 

「Зинаида(ジナイーダ)だ。」

 

「!?」

 

ドミナントは驚いた。

 

……ジナイーダ…。ロシア人だったんだ…。

 

ドミナントは気付く。

 

……そう思ってみれば、どう見ても日本人じゃないしな…。だが、日本語があまりに流暢すぎないか…?ボリスビッチみたいに…。…いや、ないな。あれは。

 

そして、すぐに考えるのをやめた。

 

「Гангут…。もう3時間ほど経つし、そろそろ飽きてきたけど、続けるの…?」

 

岩陰にもう一人いたみたいだ。

 

「君の名は?」

 

「Ташкент(タシュケント)。よろしく…大佐…。」

 

目を合わせないタシュケント。

 

……あぁ…。これ…。やっちまったやつだ…。

 

ドミナントは微妙な顔をして思う。

 

「タシュケント…。俺は君に何を言ったんだい…?」

 

「えっ?覚えてないの…?」

 

「酔っ払ってたから…。」

 

「そう…。」

 

少しがっくしするタシュケント。だが…。

 

「大佐は酔うと正直になっちゃう癖があるのよ?酔っていたとはいえ、心にもないことを言うような人じゃない。」

 

何を思ったのか、ビスマルクが言い出す。おそらく、ドミナントの名誉を傷つけないようにしたのだろう。だが、ドミナントにとっては逆効果だ…。

 

「ビスマルクさん…。」

 

薄ら笑いしていた。

 

「そう?なら、言おうかな…。」

 

タシュケントが岩陰から出てくる。ガングートは裏切られたかのような顔をしていた。

 

「『空色の巡洋艦』って。」

 

「空色…。」

 

……空色…。確かに、モチーフの色が綺麗な空色だけど…。駆逐艦のように幼く見えないし、空母のように大人っぽくないからね。…でも、どうして…?

 

ドミナントが思う。

 

「駆逐艦なのに、よく見抜いたわね…。」

 

ビスマルクが呟く。

 

……駆逐艦なの!?そうなのか…。

 

ドミナントは驚いたが、口には出さない。

 

「『空色の巡洋艦』…実は、そう言ってもらえると本当に嬉しいんだ…。誇りでもあるから。」

 

「誇り…。」

 

ドミナントは訳がわからない。そこに…。

 

トントン…

 

ビスマルクが肘で突つく。

 

「彼女は駆逐艦だけど、軽巡洋艦のように大きくて、空色の綺麗な色をしていたからそう呼ばれていたの。だから誇りなの。」

 

「結構アバウトですね…。嘘じゃないことを祈ります。」

 

ドスッ

 

「ぐふっ…。」

 

「とにかく、ボロを出さないように。」

 

「わ、わかりました…。」

 

ビスマルクとドミナントがコソコソ話した。

 

「空色の巡洋艦…か。良い二つ名だ。」

 

ドミナントがサムズアップする。どこかの伝説の兵士と面影が重なった。

 

「タシュケントの姉妹も…。」

 

「空色の巡洋艦だろうな。」

 

「違うよ。」

 

ドミナントがふざけて、タシュケントとビスマルクが少し笑う。

 

「同士…。」

 

ガングートはまだ岩陰にいた。

 

「ガングートは来ないのかい?」

 

ドミナントが聞く。

 

「面妖な…。」

 

「その言い方やめてくれる?」

 

「何をされるか分からないからな…。」

 

「何をされるって…。何もしないよ。」

 

「言うだけよ。そこまで度胸ないわ。」

 

「ビスマルクさん。少し傷つきますから、そこは控えて…。」

 

ビスマルクが割り込み、ドミナントが少し傷つく。

 

「ほら、向こうで楽しいことしようよ。」

 

「大佐、その言い方は逆効果…。」

 

「あっ…。…違うよ!?決して、あんなことじゃないよ!?カキ氷食べたり、泳いだりって意味で…。」

 

「信じられん…。」

 

「…だよね…。」

 

なんとか説得しようとするが、出てこない。すると…。

 

「やぁ、どうしたの?」

 

「ヴェールヌイ…。」

 

ヴェールヌイが来た。ロシア艦勢ぞろいだ。

 

「実は、かくかくしかじかで…。」

 

「わかんないな…。かくかくしかじかでは…。」

 

「真面目に話した方が良いよ。」

 

ロシア艦二人に言われるドミナント。そして、話す。

 

「そうなんだ。」

 

ヴェールヌイが一言、そう言ったと思ったら…。

 

「Полковник не извращенец(大佐は変な人じゃないよ).」

 

ヴェールヌイがロシア語でガングートに言う。

 

「Как ты можешь так говорить(何故そう言える)?」

 

「Я вижу это своими глазами(目を見れば分かる).」

 

そして、ガングートはドミナントの目をジッと見る。

 

「あの…何かご用で…。」

 

ドミナントが困った感じで言うが、お構いなしだ。

 

「…そうか…。」

 

そして、ガングートはゆっくりと目を閉じて、開ける。

 

「…信用はしよう。だが、信頼はしない。」

 

「そうですか。ガングートさん。そう思っていただけるだけでもありがたいです。」

 

ドミナントが少し嬉しそうに言った。

 

……こいつ…。なんで嬉しそうなんだ…?

 

ガングートはドミナントを見て思った。

 

「でも、ガングートもいきなりじゃ信用できないわよね。なら、見せてあげるわ。」

 

ビスマルクが突然言い出す。

 

「?何をですか?」

 

ドミナントが言うが、全く聞いちゃいない。ビスマルクはパラソルを差し込み、シートを広げる。

 

「大佐、これ持ってくれないかしら?」

 

「日焼けクリーム…。」

 

そして、目の前で寝っ転がり…。

 

「塗ってくれないかしら?」

 

ビスマルクが言う。色気を振りまくりながら。

 

「…ひび…じゃ無かった。ヴェールヌイに託す。」

 

「大佐がやって?」

 

「ぐっ…。」

 

ドミナントは難しい顔して唸った。

 

「…は・や・く…。」

 

「ぐぬぬぬ…。ダメだっ!あとは託すぞ!ロシア艦!!」

 

ドミナントはクリームを置いて走って行った。

 

「「「……。」」」

 

ロシア艦の三人は有り得ない展開にポカンとしている。

 

「…こんな感じよ。言うだけよ。大佐は。意気地無しだから。」

 

ビスマルクはもう片付けている。

 

「普通の男なら絶対に断らないはずなのに…。」

 

「ハ、ハラショー…。」

 

「…なるほどな…。」

 

「あっ、転んだ…。」

 

ドミナントは意外と意気地がない。言うだけ番長だ。だが、それがドミナントなのだろう。

 

…………

浜辺

 

「ハァ…ハァ…。」

 

ドミナントは少し遠くの浜辺にいる。一瞬でここなのだから、潜在能力は高い。

 

「火事場の馬鹿力ってやつか…?結構離れたぞ…。」

 

息が切れていたのだが、もう平気そうだ。遠くにいるビスマルクやガンビーたちを眺めていると…。

 

「あれ?ドミナントさん?何をしているんですか?」

 

「セラフ?お前こそ、こんなところで何を?」

 

「え、えっと…。」

 

……言えません…。あなたに声をかける練習をしていたなんて…。

 

セラフは意外と乙女だ。

 

「や!ドミナント!」

 

「神様もか…。何かあるのか?」

 

「何も?てか、なんでここにいるの?」

 

「色々あったんだ。」

 

ドミナントは目を逸らす。

 

「やましいことですか!?」

 

「セラフ、そんなわけないだろう…。」

 

「へぇ…。日焼けクリームが…。」

 

「ちょ…。心読んだろ!?事故だ!そんな冷たい目で見るな!夏が冬になる!」

 

セラフが半分泣きながら、ドミナントの胸ぐらを掴み、揺さぶっていると…。

 

「随分と楽しそうですね。大佐。」

 

「出たな!全ての元凶!プリンツ・オイゲン!」

 

「すごい言われ方…。まぁ、そうですけど…。」

 

プリンツ・オイゲンと幼い子がやってきた。

 

「プリンツ嫌い!あっち行け!」

 

「ド直球…。」

 

「これが日本式…。」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

ドミナントが思いっきり拒否している。まぁ、こんなに嫌われたり、変に好かれたりした原因なのだから仕方ないが…。

 

「で?なんのよう?酒でも飲ませに来たの?」

 

「こんなに不機嫌なドミナントは初めて見る…。」

 

ドミナントは極力プリンツを見ないようにしている。

 

「すごい嫌われてるね。」

 

幼い子が言う。

 

「そんなわけないでしょ…。ビスマルク姉さまから頼まれて、様子を見にと、謝りに来ました。」

 

「お詫びに酒?」

 

「……。」

 

「ドミナントさん。そろそろやめてください。私まで不快な気分になってしまいます…。」

 

セラフが微妙な顔で言う。ドミナントは敵意満々だった。

 

「その…。すみませんでした…。酔っていたとはいえ、あんなことを…。まさか、こんなことになるなんて思っていなかったです…。」

 

プリンツが頭を素直に下げた。

 

「……。」

 

……んなことされたら、もう何も言えないじゃないか…。

 

ドミナントは思う。が。

 

「セラフ、一応のため心の中を…。」

 

「ドミナント、それは流石に失礼…。」

 

「…わかった。許す。言いすぎたこともあったし…。それに、ビスマルクさんが叱ったからね。」

 

神様にも冷たい目で見られ、ドミナントが許す。

 

「うん。許す。…用件ってそれだけ?」

 

「そう…。」

 

「そっか〜。…暇なら、遊ぶ?」

 

「え?」

 

プリンツはドミナントの切り替えの早さに驚く。

 

「でも、さっきのことが…。」

 

「いいよ〜。もう過ぎたことだし。それに、知らなかったならしょうがないしね〜。」

 

ドミナントは朗らかな顔で言う。

 

「…ところで、空気だったけど、君は?」

 

ドミナントは幼い子に聞く。

 

「ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。」

 

硬い感じでU-511が言う。

 

「空気で構わないよ。」

 

「そんなこと言うんじゃありません。」

 

「そう…。」

 

少し硬く、少し警戒しているように見える。まぁ、危険視する気持ちも分かるが、近くに元凶がいるからわかるはずなのだが…。

 

「君もビスマルクさんに?」

 

「ビスマルク姉さんに…。」

 

「ドイツ艦の子たちは姉さん呼ばわりなんだ…。まぁ、守銭奴じゃないだけマシか。」

 

ドミナントが歩き出す。

 

「どこ行くの?」

 

「どこって…。ビスマルクさんのところ。ガンビーも置いてきちゃったし。」

 

「…義理堅いのね。」

 

「世は人情ですからねぇ〜。」

 

「…嘘ですよ。暇なんです。」

 

「セラフ…。今度から心読むの禁止。」

 

そんな感じでビスマルクのところに戻って行った。

 

…………

場所は変わって、ジャックサイド

 

「……。賑やかになったな…。」

 

ジャックが一人しかいなかった司令室は、イタリア艦で賑わっていた。ある者は音楽を聴きに。ある者は何をしているのかが気になって。

 

「ジャックさん、何読んでいるの?」

 

駆逐艦の子が聞いてくる。

 

「…哲学書だ。」

 

「テツガクショ…?」

 

「…要約すると、私が読んでいるのは『罰』についてだ。Maestrale(マエストラーレ).」

 

「罰…?」

 

マエストラーレが首を傾げる。

 

「何か…悪いことをしたの…?」

 

マエストラーレが聞いてくる。

 

「人を何人も殺した。」

 

「こ、殺したって…!?」

 

マエストラーレが少し大きな声で言ってしまい、その場にいる全員が黙ってしまう。考えられなかった。クールで強く、紳士的で絶対に悪いことをする人とは思えなかったからだ。

 

「てめぇ、人を殺したのか!?」

 

ピンク色の髪の艦娘が過剰に反応して、ジャックの胸ぐらを掴む。さっきまで賑わっていたことが嘘のように静まりかえり、険悪ムードが漂う。

 

「ああ。私は殺した。私はレイヴン(傭兵)だ。それ以上でも、以下でもない。」

 

「…っ!」

 

ジャックの覚悟のある目に、その艦娘は何も言えなくなる。それを平然と言える神経に恐怖してしまったのだ。

 

「…どうかしてる…。」

 

「…G.Garibaldi(ジュゼッペ・ガリバルディ).お前たちから見たら、そうなのだろう。」

 

「…どういう意味だ…?」

 

「…見て分かると思うが、私は異界から来た。そこはどんな世界だと思う?戦場だ。人類の運命が破滅する一歩手前のだ。」

 

その言葉を聞いて、全員がジャックがどれだけ過酷な世界にいたのか想像する。

 

「人類を救うためには、仕方のなかったことだ。」

 

「…だからって…。」

 

その艦娘も今や掴む気力も無くなってしまって、俯いていた。

 

「…私のしたことは正しいのか不明だ。…だが、一つだけ言えることがある。」

 

「…?」

 

「私は絶対に良い死に方はしない。死んだとしても、地獄だろう。」

 

「……。」

 

ジャックはそこまで分かっているのだ。理解した上で、平然と言うのだ。艦娘たちは黙るしかない。

 

「私は狂っているのかもしれん。いくら破滅になろうが、友人を…。仲間を…。唯一無二の友を手にかけたのだ…。」

 

ジャックが呟く。艦娘たちにとっては大事な親友…つまり、姉妹を手にかけることなのだ。それがどれだけ辛いのか想像する。そして、本当にその世界が終わりを迎えていたことを感じ取った。

 

「…すまん…。いきなり掴みかかって…。」

 

ガリバルディは掴みかかったことを謝る。

 

「別に良い。説明していない私にも非がある。」

 

そして、ジャックは再度本を読む。

 

……それでも、精神が崩壊していないのは驚きだ。…いや、違う…。崩壊すら許されなかったのか…。

 

ガリバルディはジャックを横目に見て思う。すると…。

 

『ザーーー…ザザ…。…プッ。』

 

録音機械から音がしなくなった。

 

「…壊れたか。」

 

ジャックが本を閉じる。すると…。

 

「ガリィがごめんなさいね。」

 

「いや。別に良い。それに、L.d.S.D.d.Abruzzi(アブルッツィ)が謝ることでもないだろう。」

 

アブルッツィが謝ってきた。辛い過去を思い出させてしまったことに対してだろう。

 

「でも…。」

 

「別に良い。それに、ガリバルディの反応が普通だ。…私は焦りすぎたのだ。」

 

ジャックが、その録音機をいじりながら言う。

 

「…それと…。この話はやめよう。せっかくの休日だ。」

 

ジャックは録音機を分解して、ある部品を取り出しながら言う。

 

「やはり、錆びているな…。」

 

その部品を眺める。

 

「それ、貸して?」

 

「UIT-25(ルイージ・トレッリ).貴様に任せて大丈夫なのか?」

 

「任せてよ〜。」

 

そして、何やらジャックの見えない角度でゴソゴソする。2分くらい経った後…。

 

「あい。」

 

「錆が無くなっているな。…どういう仕組みだ?」

 

ジャックはルイージ・トレッリを見る。

 

「錆びとりだよ〜。簡単でしょ?」

 

「……。」

 

ジャックは簡単な仕組みを、何かの力だと勘違いしていた。

 

「こんな風に、意外と簡単に救える方法もあるんだよ。」

 

「私への嫌味か?」

 

ジャックはやれやれとしながら言う。

 

「悩んだら、頭を柔らかくして視点を変えてみるのもいいんじゃない?」

 

「視点を変える…か。」

 

ルイージ・トレッリは自由にしているが、意外と見ていたり、無意識に助言を与えたりするタイプなのかもしれない。

 

……ルイージ・トレッリ…。この空気をなんとかしようとしているのか。

 

ジャックは視点を変えて見て、思う。

 

「ルイージ・トレッリ。…礼を言う。」

 

ジャックは頭を撫でる。その時、確かに少し空気が和らいだ。

 

「さてと、私は行くが…。お前たちはここにいるのか?いるなら、その直った録音機の電源は消してくれ。」

 

ジャックが退室しようとする。

 

「ジャック、どこ行くの〜?」

 

駆逐艦と思わしき幼女がジャックの腕を掴む。

 

「私は静かな場所を探す。この本は中々興味深い。」

 

「……。」

 

「…何をしている?」

 

何やら、ジャックの手をイヤらしく触ったり、胸に押し付けたりしている。

 

「…私の腕に何かあるのか?Grecale(グレカーレ).」

 

「…反応しない!?」

 

「私に幼女趣味はない。」

 

「こらぁ!」

 

ジャックに冷静に返されて、少しムッとしたグレカーレ。かまってほしいのだ。

 

「…それに、どちらかと言えば体格の良い男が好みだ。」

 

「「「うわぁ…。」」」

 

その場にいた全員が引いた。いや、そこで寝ているポーラ以外が引いた。

 

「冗談だ。」

 

「冗談に聞こえないんですけど…。」

 

「その顔で冗談はNGよ…。」

 

「一瞬本気にしちゃった…。」

 

艦娘たちは安堵する。

 

「この顔は生まれつきだ。」

 

ジャックが短く答える。

 

「そんなつまらなさそうな顔じゃなくて、もっと笑った顔が良いですよ。」

 

リットリオが苦笑いしながら言う。

 

「……。無理に顔を作ったところで、何もならん。」

 

「ならなくても良いじゃねぇか。形から入れば、自然と楽しい気分になるぜ。」

 

さっき胸ぐらを掴んできた艦娘、ガリバルディが笑顔で言う。

 

「…そうか。」

 

ジャックが少しだけ、注意深く見なければわからないくらいに、口端を上げる。加賀ならすぐに見抜くだろう。

 

「つまんないなぁ〜。」

 

グレカーレがそれに気づかずに言うが…。

 

「ほんの少しだけ笑顔ですね〜。」

 

トレッリが言う。

 

「本当ですか?私にはわかりませんが…。」

 

ローマが注意深く見ても、わからないみたいだ。

 

「私は分かりました。よしよし♪」

 

「分かりました!」

 

「あぁ、あそこが…。」

 

アクィラとマエストラーレとリットリオが見つける。

 

「わかんねぇな…。」

 

「わかりませんね…。」

 

「どこ〜?」

 

他の艦娘たちには分からないようだ。

 

「…表情を表に出すのは苦手だ。」

 

ジャックが元の顔に戻る。

 

「変わった…?」

 

「何も変わらないように見えます…。」

 

わからない艦娘は最後まで分からないようだ。

 

「…では、私は行く。」

 

「なら、私も行きます。」

 

「どうなるのか気になる…。」

 

「行くか〜。」

 

「…全員来るのか?」

 

「休日だから、どこにいても自由のはずよ?」

 

「…本は読めそうに無いな…。」

 

その後、ジャックはこの艦娘たちと行動することになった。




めちゃくちゃ遅い投稿許してくんなまし。1万字超えたか…?

登場人物紹介コーナー
ヴェールヌイ…このパラオ泊地のヴェールヌイ。元は日本の響だが、いるらしい。
Гангут…ガングート。ロシア艦。セクハラをあまり良く思っておらず、ドミナントを変態認識していた。同士でっかいの。軍人気質で、真面目で剛気な性格。左頬に傷がある。面倒見が良い。意外と資本主義を満喫している。
Ташкент…タシュケント。ロシア艦。厳密にはソ連艦。ボーイッシュで大人びた雰囲気がある。ノリが軽い。空色の巡洋艦。同士ちゅうくらいの。
U-511…ユー。ドイツ艦。少しオドオドした様子で、借りてきた猫のように大人しい。素直で真面目で努力をする良い子。
Maestrale…マエストラーレ。明るく、面倒見が良い。ノリが軽い。お姉ちゃん風を吹かせつつも、妹たちの面倒を見てくれる子。
G.Garibaldi…ジュゼッペ・ガリバルディ。男勝りな性格で、姉であるアブルッツィを尊敬している。
L.d.S.D.d.Abruzzi…アブルッツィ。ガリバルディの姉。凛としたお嬢様口調で、頼りになる。身嗜みに気をつけている。シスコン。
UIT-25…ルイージ・トレッリ。人懐っこくて社交的。見た目通りに幼くて、自由にしている。独特の言い回しを使う。
Grecale…グレカーレ。無邪気さもあるが、蠱惑的な言動を言ったりする。暇なら、からかってきたりする。からかいに乗らないと怒る。かまって欲しかったりもする。

ザーーーーー…
次回、第174話「パラオ泊地の海 part3」です。


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174話 パラオ泊地の海 part3

あと、26話で終わるかな…?
「残り26話ね。ネタがないのにダラダラ続けてきて、そろそろ終わりね。」
あるのは設定のみ。ネタと設定は違います。
「その設定を説明するための回りくどい表し方だものね。」
まぁ、まだまだたくさん登場人物はいます。各鎮守府提督や、陸軍、海軍空軍各国の軍事関係者、異界からの使者(?)…などなど。
「100人くらいいるんじゃ…。」
まぁ、全員出てくるかわかんないけどね。
「そう。…というより、一つ良いかしら?」
何?
「妖精さんの出番がまるっきり消えているんだけど…。」
…まぁ、そりゃ…。出すところがないからだよ…。てか、説明したかな?この世界では妖精さんはほぼ絶滅危惧種だし…。各鎮守府に数人程度。
「そうなの!?」
だって…。どこの鎮守府も異形過ぎて、妖精さんが住めそうにないんだもの…。
「どんなの?」
それを言ったらインパクトが薄れる。意外と、物語を書いたりやったりするのは大変なんだよ。同士なら分かる。(あれだ同士よ…。)
「ネタが切れたらアウトだものね。」
もう既にアウトなんだよなぁ…。
「まぁ、そろそろ見ている人も「前置きなげーよ」とか思っちゃっているから、始めるわよ。」
瑞鶴も分かってきたじゃないか〜。筆者の域に達したかな?
「うわぁ…。同類とか最悪…。」
どうもどうも。
「……。…この人よ。」
「や!瑞鶴やないかい。ここはあの世か?」
召喚したものは、一時的に元気になるんで、あの世ではないです。
「あっ、食材ドロボーやないか。」
その呼び方やめてください…。
「一応、筆者さんよ。」
「へぇ、あんたが筆者?随分とえらい目に合わせてくれたなぁ…。」
おや?怒ってらっしゃる…?
「あのあと、提督に怒られたんやで…。」
いつだっけ?
「龍驤さん、爆撃して良いわよ。」
「じゃ、いっちょいきますか。」
ちょ、待…。
ドガァァァァァン!
「おめでとう。筆者さんは消去されたわ。」
「じゃぁ、あらすじに入るわ〜。」
…爆発オチなんてサイテー…。

あらすじや
第4佐世保は今大変なことになっとるんや…。早う提督たちが帰らんと、間に合わへん…。

…一応言うけど、まだアレからこの世界では1日前後しか経ってないからね?


…………

主任サイド

 

「〜♪」

 

主任が一人、鎮守府の中を歩いている。面白いことがないかと探しているのだ。

 

「なんもなさそうだなぁ〜。ハハハハハハ。」

 

所々弄りながら歩いていると…。

 

「あっ!Instructor(教官)!」

 

「芋っ!?」

 

「失礼な!」

 

角を曲がったところに艦娘がいた。

 

「えーっとぉ?誰だっけぇ?」

 

「前も同じ会話をしたような…。Intrepid(イントレピッド)です!」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

「……。…やっぱり、この流れは5、6回ほどやってる気がする…。」

 

「そうだっけぇ?…まぁ、そんなわけないよねー。」

 

「いえ、やってますよ。」

 

イントレピッドは微妙な顔をする。

 

「やっぱり、覚えてないんですね…。」

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。名前なんてさ〜。」

 

「いや、名前は大事ですよ。」

 

「ま!人それぞれだけどね。」

 

主任は覚えられないわけではない。覚えようとしないのだ。

 

「じゃぁ、説明してあげるね!」

 

「じゃ!頑張って〜!」

 

「行かせません。今まで行かせて、これですから。」

 

主任の襟を掴んで、引きずってでも止めようとするイントレピッド。

 

「…思い出した…。飛行機の説明する奴だったっけー…?ハハハ…。」

 

「飛行機じゃなくて艦載機です。たっぷり二時間ありますから、是非聞いてくださいね。…あれ?Instructor(教官)?どこに行ったんだろう…。」

 

掴もうとした時に、そこにある椅子と自分をすり替えていたみたいだ。そこに…。

 

「む?……。…イント…か?」

 

「Instructor(教官)…。何で名前を覚えてくれないんですか…。」

 

「?」

 

さっきの流れの後、ジナイーダが来る。

 

「戦闘機のヤツだろう?」

 

「まぁ、そうですが…。」

 

ジナイーダもつまらなさそうな顔をした。興味がないのだろう。

 

「Instructor(教官)はそういうのは…。」

 

「興味がない。」

 

ジナイーダが短く言う。

 

「今から魅力に気づきましょう!」

 

「気付きたくない。…今まで散々撃ち落としたからな…。」

 

「怖…。」

 

ジナイーダの恐ろしさを改めて実感するイントレピッドだった。

 

…………

 

「うーみーはー広いーなーおーっきーなー…。(低音)」

 

「暗い…。」

 

ドミナントが超低音で元気がなく歌う。目が死んでいた。

 

「どうしたの?」

 

ビスマルクが聞いてくる。

 

「…なんで海にいるのか分からなくて…。」

 

「…そうね。体育座りしたままだし。」

 

「そこじゃないんです…。」

 

「「「?」」」

 

「目のやり場に困るんだよぉ!!」

 

ドミナントの近くにいた女性陣が首を傾げ、ドミナントに言われた。

 

「谷間を俺に見せて楽しいか?過激なことが苦手な俺に見せて楽しいか?おぉん?」

 

「大佐、過剰反応だし被害妄想よ…。」

 

「…そうだな…。暑さにやられたらしい…。俺は帰る…。」

 

「泳ぎなさいよ。」

 

「おまいう?」

 

「おま…いう…?」

 

「お前が言う?って意味。」

 

艦娘たちにドミナントが返す。

 

「第一、泳げないし…。ダイビングは潜るから、泳ぐのとは違うし…。」

 

「泳げないの!?その歳で!?」

 

「言ったな?じゃぁお前はどうなんだ?そこで砂遊びしている俺より歳上の奴。」

 

「もちろん、泳げるよ?先輩神様が教えてくれたし。」

 

「お前に言われると精神的に大ダメージだな…。まさか、力比べ以外に負けるとは…。」

 

「普段、私をどんな目で見てるの…。」

 

「つまみ食いをして、自分の世界を放っている奴。」

 

「む〜!酷いよっ!」

 

「事実だ。」

 

神様にしれっと返すドミナント。そこに…。

 

「なら、泳げないなら特訓しましょう。」

 

セラフが言い出す。

 

「いや、いい。」

 

「何故ですか?」

 

「どうせ、死ぬ気の特訓だろう?サメに追わせるとか…。」

 

「私を普段どのように見ているかが良くわかりますね…。」

 

セラフは少しだけ不機嫌になる。

 

「泳ぐかシベリア歩きのどちらかにしたらどうだ?」

 

「ふざけんな。」

 

ガングートが言い、ドミナントが苦笑いしながら返す。そこに…。

 

「あらっ!ガングート!」

 

少し離れた位置に青い髪の子がやってくる。二人の艦娘を引き連れて…。

 

「なんだ、Gotland(ゴトランド)か。」

 

「相変わらず態度が大きいのね。」

 

「むぅ…。」

 

「まぁ、魅力的だけど。」

 

「そうか!」

 

……なんだかんだであの二人は仲が良いのか?

 

ドミナントは今のやりとりを見て思う。

 

「ところで、何をしているの?」

 

「大佐が泳げないみたいだ。」

 

「そうなの!?海軍なのに!?」

 

「厳密には一般人から成り行きでこうなったんだ。」

 

まぁ、ドミナントは元社畜だからなぁ…。

 

「ところで、引き連れてきた二人は誰だい?」

 

ドミナントが二人を見ると…。

 

「Richelieu級戦艦一番艦、Richelieu(リシュリュー)よ。」

 

「イタリアのマエストラーレ級三番艦、リベッチオです!大佐さん、よろしくね!」

 

リシュリューは不敵な笑みを浮かべながら、リベッチオは元気いっぱいに。

 

……これはまた、クセの強そうな…。

 

「第4佐世保鎮守府、表の提督ドミナントだ。よろしく。」

 

「知って…え?表!?」

 

「引っ掛かったな。フッフッフ…。」

 

リベッチオが騙された。しょうもないことをするドミナントに、大半が呆れていた。

 

「ところで、泳げないと聞いたけど…。」

 

「そうなんだよ。」

 

「特訓〜!」

 

「マジかい。」

 

新たに来た三人組に強制的に海に落とされるドミナント。

 

「あばばばば…。」

 

「「「沈んでる!?」」」

 

少し深い場所に連れてきただけで溺れるドミナント。

 

ザパァ

 

「ハァ…ハァ…。殺す気か!?俺は社畜だぞ!?」

 

「いばるのやめなさい。」

 

「俺はロボットなんやで…。」

 

「教官さんたちは泳いでいますけど?それに、まさか沈むなんて…。」

 

「……。」

 

「諦めて〜。」

 

「ちくしょう!」

 

ドミナントは岸に戻ろうにも、三人が行手を阻んで戻れない。

 

「不幸だわ…。」

 

「こんなに良い女性三人に囲まれてその言葉が出るとは…。」

 

「さぁ、泳ぎの練習をしますよ?」

 

「がんばれ〜!」

 

「…仕方ない…。」

 

ドミナントが渋々言い、三人が笑顔になるが…。

 

「AC化!」

 

「「「!?」」」

 

ザパァ!

 

「さらばだ。諸君。」

 

ブゥゥーン

 

ドミナントがACになり、海上に浮かんで逃げた。

 

「あっ!逃げた!」

 

「待ちなさい!」

 

「待てー!」

 

三人が追ってくる。

 

……フハハ…。AC化してブーストも使っているんだ。追いつかれるわけ…。!?

 

ドミナントは後ろを振り向いた途端、驚く。三人が鬼気迫る勢いで追いついて来たのだ。

 

「速っ!ちょ!待…!艤装つけてなくてその速さ!?泳いだ方が速いんじゃないの!?怖い!」

 

「待てー!」

 

そして、追いつかれた。

 

「わかった…。わかったからリンチは無しでお願いします…。」

 

「はぁ、はぁ…。よろしい…。」

 

そして、練習をすることになったドミナント。

 

…………

 

「では、『大佐もこれで一人前、この夏に泳げるようになろう!』seminar(セミナー)を始めます。」

 

「わー…。」

 

ゴトランドがセミナーを始める。ドミナントの目は死んでいた。夏じゃないというツッコミさえしなかった。休みが休みでなくなっていることに気づくのはいつだろうか…。

 

「まず、クロールから始めます。肘の角度が45度に曲がっていると、一番泳ぎやすい角度と言われています。」

 

「いや、分かりませんよ…。」

 

「では、泳いでください。角度を測ってあげます!」

 

「ちょ、待…ブクブクブク…。」

 

「肘をあと2度!」

 

「ブェビブバァァァ(出来るかぁぁぁ)!」

 

効果はいまひとつのようだ。

 

「Richelieu(リシュリュー)から言えることは…。泳ぐ時にバシャンとやって、バシッと…。」

 

「?」

 

「そして、スイ〜って…。」

 

「??」

 

「最後にブハァってやって、バシャって…。」

 

「???」

 

効果はいまひとつのようだ。

 

「リベにいい考えがあるよ!」

 

「「「?」」」

 

そして、最後のその方法がどれほどドミナントにトラウマを植え付けるのか、まだ誰も知らない…。

 

…………

ジナイーダサイド 司令室

 

「ふむ…。」

 

ジナイーダが機械をいじくっている。

 

……ついさっきまで誰かいたようだが…。気がつかなかったのか…?

 

ピピーピーピーピピピー…。

 

……やはり…。これは信号だ…。

 

ジナイーダがゴミ箱の中にあった、間違えたメモの紙を手に取り解読している。その間違えたメモたちを取り出し、照らし合わせて正確に解読しているのだ。

 

……数十海里先に何か信号がある…。この数は…多すぎる。それに、何か違う信号も2、3ほどある…。普通に考えて、これは艦娘たちが戦っている黒いヤツだろう…。…このスピード…。そして向き…。間違いなくここに向かってきている…。…計算すれば、明日の今頃にここに到着する…。試験どころではないな…。戦争だ。ここは戦場になる。

 

ジナイーダはすぐに分析した。

 

……?だが、この信号を送っているのは誰だ…?数十海里離れていれば、信号なんて届くはずがない。何者かがこの情報を渡していることになるが…。方角的に鎮守府があるはずがない…。確信が掴めない…。

 

ジナイーダが不審に思い、考え始める。

 

……確信がないまま兵を動かすのは愚の骨頂だ…。それに、今このことを話せばパニックが起きる。今までの訓練に耐えたあいつらにとって、十分に休まなければならない。もしこのことを伝えれば、明日の準備に取り掛かるだろう。休みもままならなくなり、準備をして疲労困憊している状態で戦えば勝率はより低くなる…。これが罠なら、準備を整えたところで何も起きない。起きなければ準備が無駄になり、疲労状態かつ士気が下がり、ますます戦力にならなくなる。そこにつけ込まれたらひとたまりも無い…。私たちが倒せば良いと思うが、すぐに結論をそこに持っていくのは正しいと思えん。今考えたのは、あくまでも“普通の”個体だった場合だ。もし、異常な個体が相手の場合は逆に危険だ。成長する個体だった場合は最悪だ。軽く挑んで成長させればますます厄介になる…。そのうちに私ですら倒せなくなり、艦娘たちでも倒せなくなれば世界は終わる。それだけは避けなければ…。

 

ジナイーダが考えていると…。

 

「誰?」

 

「!?」

 

出入り口に艦娘がいた。

 

「…Instructor(教官)?何をしているんですか?」

 

茶髪のポニーテールが聞いてきた。

 

「サ…ラか?」

 

「YES(はい).」

 

アメリカの正規空母Saratoga(サラトガ)だ。

 

「あと一人いるな。誰だ?」

 

「やっぱり、Instructor(教官)にはバレるわね…。」

 

ドアの横からひょっこり現れる戦艦の艦娘。

 

「Iowa(アイオワ)か。」

 

「YES(はい).」

 

同じく、アメリカ艦のアイオワが笑顔で答える。

 

「…もう一人…。艦娘?二人に続いてどうして…。」

 

「Bonjour(こんにちは). Enchantée(初めまして). Je m'appelle Commandant Teste(私の名前はコマンダン・テストです).」

 

「よろしく。」

 

コマンダン・テストが天井から降りてくる。

 

「「いたの(いましたの)!?」」

 

「気づかなかったのか?」

 

驚いた二人にジナイーダが返した。そして…。

 

「何をしに現れた…。ここはただの艦娘が来るべきところではない。」

 

「それを言うならInstructor(教官)もですよ。」

 

サラがジナイーダに苦笑いしながら言う。

 

「第一、ここは私たち以外立ち入り禁止よ?」

 

アイオワが苦笑いしながら言う。

 

「…そうだな。」

 

ジナイーダはメモを気づかれないように捨てて部屋から出た。話さないことにしたのだろう。

 

……夜明け頃抜け出して、様子を見に行く…。その時は交戦を避けなければ…。

 

そう思いながら二人と廊下を歩く。

 

「何をしていたんですか?」

 

「それは…。!そう。アレだ。あの機械は何という機械か気になってな。」

 

コマンダン・テストが聞き、ジナイーダが四角い機械を指差す。

 

「あぁ、アレは壊れているヤツです。噂では鎮守府が出来る前からあるとか…。…あれ?触った形跡が…。」

 

サラがうっかりボタンを押した。

 

『アーアーアーアー…♪cry…cry…cry…♪』

 

「直ってたのね…。…悲しい感じがするわ…。」

 

「暗い…何か閉じ込められているような…悲壮的な感じね…。」

 

「重圧感があるわね。」

 

「……。」

 

艦娘たちが言う中、ジナイーダは目を閉じていた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「…どこかで…。…いや、気のせいだな…。」

 

「?」

 

ジナイーダは何か引っかかるところがあったみたいだ。

 

……年寄りがたまに口ずさんでいた曲と似ている…。いや、それはない筈だ…。ここは別の世界なのだから…。

 

ジナイーダはそう決めつけて、歩き出した。

 

…………

一方、ドミナントサイド

 

「「「あはははははは!!!」」」

 

「うるせー!笑うなー!」

 

神様が腹を抱えてのたうちまわり、セラフが口を抑えながらも笑う。ビスマルクも我慢してはいるが、笑い声が漏れる。ガングートは主任のように腹を抱えて笑っていた。とにかく全員、リベとドミナント以外が笑っていた。

 

「だ、だって…あはははは!」

 

「うるせー!覚えてろよ!神様ぁ!」

 

「す、すみま…クスッ…フフフフフ。」

 

「セラフぅ…!」

 

二人も笑ってしまっている。

 

「そんな感じ!上手になってきたね!」

 

「くぅ〜…!なんたる辱め…!大本営の時より辛いぞ…!」

 

そう。ドミナントはリベに手を取られながら泳ぐ練習をしている。文章にして書けば、それほどおかしくはないだろう。だが、側から見た図は…。幼い少女に手を取られて褒められながら練習しているおっさんだ。間違いなくドミナントにトラウマを植え付けた。そこに…。

 

『あー、あー…。もしもーし、聞こえてるかな〜?音量大丈夫ねー!』

 

鎮守府から主任の放送が入る。だが、どういうわけか本人に放送している自覚はなさそうだ。

 

「リベ、ちょーっと岸に戻してくれる?」

 

「あっ、うん。」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントが笑顔でリベにお礼を言う。そして…。

 

『えーっとぉ?何がいいかな〜?』

 

『わ、私ですか?』

 

「あら?この声…Intrepid(イントレピッド)?」

 

ビスマルクがもう一人の声に反応する。

 

『暇だからって誘ったのはそっちだよぉ〜?』

 

『で、ですがまさか歌うとは…。』

 

「歌…あっ!応接室!」

 

ドミナントたちが応接室に走り出す。

 

『They'll tell you where to go….』

 

『いーじゃぁん!盛り上がって来たねー!』

 

「気づかないで歌ってる…!?てか、この人歌めちゃくちゃ上手い!」

 

ドミナントたちは気づかせてあげようと応接室に走る。

 

…………

応接室

 

ガチャ

 

「主任!」

 

「わっ…。」

 

ドミナントがいきなり入り、イントレピッドが顔を赤くする。

 

「あっ、すみません。カラオケの時にスタッフが飲み物を出してくる感覚ですね…。」

 

ドミナントはすぐさま謝る。そして…。

 

「主任、そのマイク違う…。鎮守府の全体放送用のマイクだよ…。」

 

「嘘っ!?」

 

イントレピッドはさらに赤くなった。自分の歌を全員に聞かれていたのだ。

 

「あっちなみに、その機械用のマイクはこっち。」

 

ドミナントが戸棚から埃かぶったマイクをイントレピッドに渡す。

 

「…えーっと…。歌、上手いですね。」

 

「やめてください…。慰めにもなりません…。」

 

半ば絶望。するとそこに…。

 

「た、大佐…。何でそんなに足が速いの…?」

 

ビスマルクたちが息を切らしながら来た。

 

「む?ドミナントか?主任に言ったのか?」

 

「言ったよ。」

 

ジャックたちも現れた。

 

「ここかしら?」

 

他の艦娘たちもだ。

 

「あれっ?皆んなどうしたのかなっ?」

 

主任が部屋から出てくる。

 

「マイクが鎮守府全体放送になってたぞ…。」

 

「あ、そうなんだ〜。驚いた。」

 

「…?」

 

ドミナントが今の言葉に怪しむ。驚いた割には全く動作に変化が見られなかったからだ。

 

「…主任…。わざとだろ?」

 

「まぁ、そんなわけないよね〜。」

 

「言え。今隠したところで、後でジナイーダにバレたらさらに酷い目に遭うぞ…。」

 

「…知ってた。」

 

「素直でよろしい。」

 

まぁ、結局はイントレピッドにより、殴られて吹っ飛ばされたのだが…。

 

…………

 

「機体がダメージを受けてまーす…。」

 

主任は吹っ飛ばされて壁にめり込んでいた。

 

「まぁ、主任もこれで懲りたろうから、イン…トレピッドさん。許してあげてください…。」

 

ドミナントがイントレピッドに謝りながら言う。

 

「…分かりました。」

 

「ありがとうございます。」

 

イントレピッドは許してくれた。そこに、ちょうどジナイーダたちも駆けつけた。

 

「…みんなせっかく集まったから、カラオケ大会でもやる?」

 

「?それは良さそうね。海にいるのも飽きてきたから。」

 

ドミナントが言い出し、ビスマルクが言う。艦娘たちもやる気みたいだ。艦娘たちはイベントを楽しむ生き物でもある。

 

「私もやるのか…?」

 

「楽しそうですよ?」

 

「そうなんだが…。」

 

「恥ずかしいなら、私と共にやりましょう?」

 

「…やるのか?」

 

「はい。」

 

ジナイーダが言い、セラフが笑顔で答えていた。

 

「私はこれかな〜。」

 

「神様…歌えるのか…?」

 

「歌えるよ!なんか、ドミナントから見て私の評価どれほど低いの…?」

 

「…そうか。…なら、聞いてみたいな。」

 

「うん。聞かせてあげるね。」

 

ドミナントと神様も話していた。

 

「…主任、我々はどうする?」

 

「見てるだけでいいんじゃない〜?歌いたければ歌えば良いしね〜。」

 

「…そうだな。」

 

ジャックたちは傍観するみたいだ。

 

…………

神様

 

『そんなに〜コシコシしちゃダメよっ♪』

 

…………

ジナイーダ&セラフ

 

『フレーフレー…♪』

 

『君の夢が、叶う場所♪』

 

…………

ビスマルク

 

『And for you, only you I would give anything…♪Leaving a trace for love to find a way…♪』

 

そんな感じで、楽しい一時を過ごした。明日が試験なので、全員全力で楽しんでいるのだ。嫌なことや寂しいことを忘れてドミナントたちと戯れたり、楽しんだり、興味を持ったり、笑ったり…。もちろん、ドミナントたちも例外ではない。艦娘たちに楽しませてもらったりして、1日が終わった。

 

…………

明け方

 

少し離れた海の上。ジナイーダがある方角をジッと睨む。

 

……いた。かなりの数だな…。

 

そして、発見する。数十海里先の方まで見えているのだ。

 

……信号が違う奴は恐らくあいつとあいつとあいつだろう…。

 

ジナイーダが確認した。

 

……やはり、狙いは…なんとか泊地だな。知らせに戻らなくては…。

 

そして、ジナイーダは戻って行った。あくまでも、偵察だからだ。

 

…………

 

……ハヤク…。モットハヤクイカナイト…。

 

渾は急いでいる。

 

……!?モクヒョウヲカクニン…。…?カンムスジャナイ…?

 

数十海里先のジナイーダを発見したのだ。相手の視力もそこまである。

 

……カンムスデナイナラタオサレルワケニハイキマセン…。

 

渾が戦闘態勢を整えるが、帰って行く。

 

……?コウゲキシテキマセン…。…ナラコウツゴウ。ムカシカクホシタポイントガアリマス…。ソコカラキシュウヲカケマス…。

 

パラオ泊地に影が忍び寄る…。




次回はいよいよジナイーダたちの試験ですね。というより、最初の方を見返してみました。…めちゃくちゃ甘い!200話超えたら、また下手な恋愛小説のような甘い展開をやるつもりです。甘いの大好き!(ゴフッ…[血が出た!])
終わりと思ったその時…。一人の艦娘の存在を忘れて書き直しの絶望感…半端じゃないっすよ…。
ダクソ日記 四人の公王が四人じゃなかった件について…。

登場人物紹介コーナー
Intrepid…イントレピッド。陽気でノリの良いハツラツとした艦娘。ムードメーカーとして知られていたりする。とてもフレンドリー。…ここまでを見ると、クセがなさそうに見えるが、実は航空マニア。ある時には2時間ぶっ続けで語ってくれる。ドミナントだったら5分で寝るだろう。
Gotland…ゴトランド。外見は物静かで落ち着いた感じ。だが、実際は結構アクティブ。かなり肝が据わっている上、良い意味で細かいことは気にしない。家事もそつなくこなし、面倒見も良い。提督とは彼女的関係。
Richelieu…リシュリュー。高飛車で我儘。同時期の他の戦艦と比べても「最強」と評価されていることを自負し気位が高い。基本的に自分勝手でマイペース。やりたくないことはやらない感じ。が、ジナイーダに命令されればどんなことでもやるだろう。断って演習などしたくもないからだ。
Libeccio…リベッチオ。元気いっぱいで、明るい性格。提督との関係は良好。ローマに憧れていて、たくさん食べて戦艦になりたいと思っている。…まぁ、普通に考えると夢がないが…。日本語を流暢に話せる。間宮食堂が好きなようだが、生憎この鎮守府にはない。全員がそれぞれお菓子を作るような感じだ。間宮食堂に行きたいと思っている。
Saratoga…サラトガ。明るく、丁寧で気立ての良い頑張り屋。穏やかな物腰。料理スキルは抜群。めちゃくちゃ上手いらしい。プリンツ・オイゲンや長門などと仲は良い。てるてる坊主を呪いの人形と間違えたりする。(そのうち絵画世界に吸い込まれそう…。)
Iowa…アイオワ。性格もアメリカン。ロワではない。英語がカタカナのような発音は置いておいて…。結構陽気で朗らか。ドミナントとの相性は良さそう。
Commandant Teste…コマンダン・テスト。お嬢様らしい、実に丁寧で礼儀正しい。料理が得意。
渾…コン。深海棲艦。大決戦時の幹部的存在。気に入った者なら、例え艦娘でも尊敬するし、頼みも聞く。意外と優しい一面もある。また、沈めたり殺したりするのはあまりしたくない。

ザーーーー…
次回、第175話「艦娘試験妨害阻止」です。


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175話 艦娘試験妨害阻止

どこかで聞いたタイトル…。てか、今回どうなるか不明だったからタイトルがつけられなかった…。2話ほどストックがあると、正確なタイトルになるんですけどね…。
「そうなの。」
…そろそろ前書きネタが切れてきたね…。
「ネタ切れかしら?」
というより、今回から戦いになると思います。
「何話使うのかしらね。」
そこまでは分からない…。でも、戦闘の描写は決まっている。どこにそれを持っていくかによって決まる。
「へぇ。」
では、そろそろあらすじ始めちゃって。
「字数潰しにはなったかしら?この人。」
「あら?ここは…?」
間宮さんじゃないですか。たまにお世話になってます。
「食材泥棒さん。たまには食堂に来てくださいね?意外と鎮守府で人気があるんですから。」
マジかよ。本編には関わらないようにねずみ小僧の格好をしたのがまずかったか…。
「逆に注目するわよ…。それ。」
そうか…。なら、次は黒衣だな…。
「だから逆に目立つわよ!それ!」
マジかぁ。
「マジよ。」
「あの…。」
あっ、そうだった。あらすじをどうぞ。
「はい。」

あらすじ
今、鎮守府は大変なことになってます…。私も協力していますが、どうにもなりそうにないものばかりです…。早く…提督さんたち帰ってきてくれないと…。

鎮守府は今大変なことになってます。書きたいんですが、まだまだかかりそうです。


…………

朝 試験当日

 

……やはり、知らせるべきだったか…。

 

ジナイーダが帰還する。

 

…………

物置

 

「ぐがー…。」

 

「……。」

 

「ギャハ…ハハハ…クー…。」

 

男三人、それぞれの寝方をしている中…。

 

タッタッタッ…

 

「「!?」」

 

「ぐがー…。」

 

廊下から足音がして、ジャックと主任が飛び起きる。ドミナントは寝たままだ。

 

バァァン!

 

「起きろ。」

 

ジナイーダだった。

 

「私と主任は起きている。」

 

「だね〜。」

 

「なら、ドミナントだけか。」

 

そして、ジナイーダがドミナントの布団を掴み…。

 

「起きろ。」

 

「ぐわぁ…!」

 

引っ剥がした。…布団の上でなく、下のヤツを。ドミナントは転がる。

 

「な…。ジナイーダ。なんのよう…?」

 

ドミナントが起き出す。

 

「緊急だ。」

 

「…何?」

 

ジナイーダの言葉を聞いた途端、三人が真面目な顔になる。

 

…………

 

「それ、まずいんじゃない?」

 

「……。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

ジナイーダが三人に伝える。

 

「…先ずはビスマルクさんだな。ジャックと主任は艦娘たちを起こして来てくれ。ジナイーダはセラフを起こしたあと、ジャックたちと一緒に艦娘たちを起こしてくれ。それが終わったら執務室に集合。艦娘たちは部屋で待機させといて。ビスマルクさんが指示を出すから。」

 

ドミナントが指示を出す。

 

「神様はどうする?」

 

「あいつか…。あいつも一応起こしてくれ。」

 

「わかった。」

 

そして、各々が動き出した。

 

…………

ビスマルクの部屋

 

「…スー…スー…。…ん…ゅ…?…ふぁ〜…。」

 

ビスマルク、起床。すると…。

 

コンコン…

 

「?」

 

……こんな時間に誰かしら…?

 

ビスマルクが思っていると…。

 

『朝早くすみません…。緊急の事態が起きました。』

 

「た、大佐!?」

 

ビスマルクは急いで着替えて、容姿を整えて部屋を開ける。

 

「何か用かしら…?」

 

「すみません。実は…。」

 

ドミナントはジナイーダから聞いたことをそのまま話す。そして、勝手に艦娘たちを起こしたことを詫びた。

 

…………

 

「Rarely(本当)!?」

 

「マジです。」

 

ビスマルクはものすごく驚いている。…まぁ、朝早くに“本日の午後に敵の軍団が攻めてきます。しかも、何もかもが不明だけど、強い敵が3ほどいます”と言われれば驚かない者はいないだろう…。

 

「ジナイーダはその事を前から知っていたみたいですが、確信がないため黙っていました。ジナイーダのことを責めないで下さい。彼女なりに考えたんだと思いますから。」

 

「…えっ?あ、別に良いわよそんなこと。…それよりも、作戦を考えないと…。」

 

ビスマルクは急いでいる。

 

「相手は不明な個体が3体ほどいます。作戦を練るよりも、まずは特性を確かめる方が先だと思います。その作戦が不明な個体、3体によって狂わされるよりも、時間を優先する方が得策です。」

 

「…そうね。やっぱり、他の鎮守府提督がいると違うわね。」

 

ビスマルクは考えるのをやめて、全員に“戦闘態勢を整えて、抜錨せよ”とだけ伝えた。

 

…………

海の上

 

「「「……。」」」

 

ジナイーダたちが艦娘たちの先頭にいる。

 

「Instructor(教官)…。」

 

艦娘たちがジナイーダたちを見る。

 

……試験当日にこんなことが起きるとは…。予想外だ。かと言って、滞在日時を変更するわけにいかない…。

 

ジナイーダは考えた。そして、結論を出した。

 

「…今から、試験内容を変更する。」

 

「「「!?」」」

 

ジナイーダが突然言い出し、艦娘はおろかセラフやジャックまで驚いた。

 

「今回の敵は深海棲艦の殲滅。尚、特殊な個体が数匹確認されている。それを倒し、生き残った者は合格。もし、死んだら不合格。文字通り命がけだ。私たちが助けてくれると思うな。私たちは躊躇なく見捨てる。」

 

ジナイーダが冷酷に言う。艦娘たちはざわめく。

 

「ま、待ってください!そんなの酷すぎますよ!?」

 

セラフが反対した。が。

 

「セラフ…。今回のジナイーダは考えている。ジナイーダの方が正しい。」

 

「ジャックさん!?」

 

ジャックがジナイーダの肩を持つ。

 

「ど、どうしてですか…?」

 

セラフがジナイーダに聞く。

 

「…セラフ。私も好きでこうしているわけではない。」

 

「なら、何故…。」

 

「この件は私たちは無関係だ。たまたまここにいるだけだ。」

 

ジナイーダはセラフの目を見て言う。本心だと伝えるためだろう。

 

「それに、助けてみろ。こいつらは成長しない。今回のようなことがまた起きた時、私たちは駆けつけるのか?」

 

「……。」

 

「自分たちの鎮守府は自分たちでなんとかしなければならない。依存させてはならない。私たちはできるだけのことはした。あとは、自分たちでなんとかするんだ。最初から、その為の試験だった。」

 

「…はい…。」

 

セラフがシュンとする。

 

「…最後に、言うことがあるとすれば…。」

 

ジナイーダが艦娘たちを見る。全員が覚悟した顔だ。ジナイーダの想いが伝わったのだ。少し嬉しくなったのか、口元が少しだけ緩む。

 

「…生きて帰ってこい。だ。」

 

ジナイーダのその言葉を聞いた途端、艦娘たちの士気が向上した。

 

…………

パラオ泊地 少し西 拠点

 

「サクセンヲセツメイスルワ。マズ、アナタハココ。アナタハココ。カンタイヲフタツニワケル。」

 

渾が説明する。と言っても陸なので、イ級など人型でないものは海で待っている。

 

「…アナタ…ハ…?」

 

仲間の一人が言う。

 

「ワタシハダイジョウブ…。…ゴメンナサイ…。アナタタチニモメイワクヲカケテ…。」

 

渾が仲間に謝る。

 

フルフル

 

仲間たちは首を振っている。

 

「モト…モト…コウナル…ナラ、ヤクニ…タチタイ…。」

 

「…アリガトウ…。ホントウニ…。」

 

「ナカマ…モ…トチュウ…デ…タオレテ…イッタ…。」

 

「ムダ…ニ…シタク…ナイ…。」

 

渾の部下たち、仲間が口々に言う。

 

「…イイ?エンリョシナイデ、オモイッキリアバレテ?アイテヲシズムキデ。」

 

「リョウカイ…デス。」

 

「ワカリ…マシタ…。」

 

渾が言い、仲間たちもうなずく。すると、仲間の一人が言い出す。

 

「ウマレ…カワレル…カナ…?」

 

「ソシタラ…バラバラ…カモ…シレナイ…ケド…。」

 

「…ウマレカワッテ、キオクガアッタラ、ココデマタアツマリマショウ?」

 

「…ハイ。」

 

「デモ…ドウヤッテ…?」

 

「ジカンヤニチジヲキメマショウ。13ジニココデ。」

 

「イツ…?」

 

「ソウネ…。5ガツ1ニチ二。トシハフクメナイ。ナンネンデモイルカラ。」

 

「…ハイ。」

 

「ワカリ…マシタ。」

 

少し嬉しそうだった。まるで、沈むこと前提で話しているようだった。

 

…………

パラオ泊地 司令室

 

「敵深海棲艦の影を確認!東と西にいます!挟み撃ちにするつもりよ!」

 

ローマがビスマルクに伝える。

 

「そう…。なら、こっちも二つに分けて攻撃して。」

 

ビスマルクが伝えていると…。

 

「?こちらにはおかしな信号が…。」

 

イタリアが何かを感じ取る。

 

「…位置は南…つまり、正面です。それに、これは…。」

 

「?」

 

「…言葉です。言葉が送られてきているわ。」

 

「言葉…?なんて?」

 

「こ…ん…だそうです。」

 

「こ…ん…?コン…?コン!?」

 

ビスマルクはその言葉を聞いて驚く。

 

「何か意味でもあるのかしら?」

 

「私が行く。」

 

「えっ!?ちょ…。指揮官がいなくなったら、誰が指揮をするんですか!?」

 

「あなたたちが適当にやって!」

 

ビスマルクは急いで出て行った。

 

「どうすれば…。」

 

考えていると…。

 

「いいだろう。私がやろう。」

 

「「Instructor(教官)!」」

 

ジャックが現れる。

 

「…これは試験だ。合格か不合格かは私が見極める。」

 

「わかりました。」

 

「了解。」

 

イタリア艦の二人はジャックが審査するみたいだ。

 

…………

海の上

 

「…二つに分かれろとの指示が出た。ジャックは司令室の試験を行なっている。私は西、セラフは東に出る。」

 

ジナイーダが言う。艦娘たちはそれぞれ二人についていく。

 

「…主任、一応のため私についてきてくれ。ドミナントにはセラフにつくように言ってある。」

 

「じゃ!いっちょ行きますか。」

 

ジナイーダたちはビスマルクが単独で出撃したことを知らない。

 

…………

それから数十分

 

「……。」

 

最後尾にいるジナイーダは敵の存在を気付いた。だが、何も言わない。主任も同様だ。

 

……信号が違う奴の一人だな。

 

心の中で思う。すると…。

 

「…そろそろね。」

 

「そうですね…。」

 

「そのようね。」

 

「初めますか?」

 

アークロイヤルとガンビア・ベイ、イントレピッドとサラトガがそれぞれの武器を構える。サラトガは飛行甲板に似た銃を、ガンビア・ベイはサブマシンガンを、イントレピッドはボウガンのような銃を、アークロイヤルは弓を構える。

 

「「「aeroplane taking off from a warship(発艦)!」」」

 

掛け声と同時に様々な艦載機が飛んでいく。

 

「……。」

 

ジナイーダは黙っている。相手は気づいていなさそうだ。

 

「…見つけました!…?」

 

イントレピッドが見つけたが、何か違和感に気づく。

 

「…どうしたの?」

 

サラトガが聞く。

 

「なんというか…。変なんです。」

 

「変?」

 

「構図的に…。」

 

「?」

 

他の艦載機がイントレピッドの艦載機と合流する。艦載機を持つ艦娘たちは、艦載機が見たものが自分とシンクロするのだ。つまり、艦載機が見たものが自分が見たように感じる。

 

「…?」

 

「確かに…。」

 

「気持ち悪いですね…。」

 

三人見ても不明な深海棲艦がいるようだ。

 

……まぁ、常識を疑わないと分からないだろうな。

 

ジナイーダと主任は黙っている。

 

「まぁ、とにかく攻撃よ。」

 

アークロイヤルが言い、艦娘たちがうなずく。

 

「航空隊、発艦初め!」

 

「じゃぁ、始めましょう!」

 

「Squadron, attack(飛行隊、攻撃)!」

 

「Ark Royal(アークロイヤル)攻撃隊、発艦、始め!」

 

4人が飛ばした。そして、無事、奇襲は成功した。すると、相手が見えてきた。

 

「さぁ!一気に叩くわ…よ…?」

 

アイオワが砲を構えたが、言葉を失う。艦娘たち全員がゾッとした。

 

……まぁ、驚くだろうな…。あんなに巨大だとな。

 

艦娘たちが見たのは、無傷の100メートルもあるイ級だった…。




イ級の大きさ…。最初は50m前後の予定でしたが…小さすぎることに気づきました。スピリットオブマザーウィルが全長2.4kmだとすると、約50分の1…。小さい。厳密には48分の1ですが…。え?何でスピリットオブマザーウェルと比べているのか?
( ´筆`)<ちょっと言っている意味が分からない…。
( ´筆`)<比べちゃ駄目なのかな?

登場人物紹介コーナー
巨大イ級…実は、最後の方に出そうと思っていたキャラ。物語を作る最初からいた古参方の一人。渾の腹心の一人…一匹?である。

ザーーーーーー…
次回、第176話「二つの門」です。


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176話 二つの門

ネタが切れそう…。
「二つの門…。嫌な予感ね。」
二つの門があります。
「…つまり、強敵が二人ね…。」
コンの部下…。つまり腹心が二人。二将軍です。一つは巨大イ級。もう一人は…。
「それが本編で活躍する…と。」
そゆこと。残り24話。
「あと少しで終わりね…。」
そー。
「…ネタもないから、そろそろあらすじにはいるわね。」
頼むよー。今回のゲストは〜?
「謎の人よ。」
「こんにちは〜。」
亡霊じゃないですか…。
「ソワーズです。」
「亡霊!?」
まだこの世にいたんすか…。
「だって、地縛霊だったけど、ドミナントさんが解放してくれたから色々観光したいんです♪」
「地縛霊…。」
謎が分かってスッキリしたからですかね。日本中を旅するんじゃない…?
「というより、その名前。日本人じゃないわよね。」
「ええ。私は日本で生まれましたけど、アメリカ人です。」
アメ公〜。
「つまり、墓守はあなたのお祖父さんとかから受け継いだの?」
「そういうことです。ここの墓守の人に助けられて、継がせてもらったような感じです。…ですが火事で…。」
「…残念ね。」
「はい…。ですが、夜、この森が侵入者を撃退するので、墓荒らし自体いないんですから、墓守をする意味も無いと思いますし…。」
…まぁね。
「地縛霊で、監視以外やることなかったので見てましたが…。…約20年…訪れる人いませんでしたから…。」
「…余程暇だったのね…。」
「今は現在の日本を観光しています♪この体だと、食べ物もいらなければ、死ぬこともないので、ゆっくりと歩きながら観光出来ますし♪肉体的な疲労はありませんし♪好きなところで寝れます♪普通なら、私は目に見えないので。それに、成仏もしませんしね♪話し相手が欲しくなったら、あなたたちの鎮守府へ行けば良いし。肉体が無いから、悪いこともされませんし。お金も払わなくても良いですし。どうしても食べたいものや飲みたいものがあった時は少しだけ食べれば良いですし。」
食い逃げ犯罪やん…。
「あっ、違いますよ?実体しているものは触れないですから。…昔から、お供えなどあるじゃ無いですか?あんな感じです。実体する物の霊力?みたいなものを食べてる感じですから。」
羨ま。
「…なんだか、あなたのこと全く怖くないわ…。」
…明るい性格のせいかもね。不気味じゃないし、微笑んでるし。未練も無さそうだし。普通の人間としていることあまり変わらないし…。悪さもしないし。…どちらかというと、人間よりも少し進化したような感じだし。瞬間移動もしようと思えば出来るし。
「知ってましたか?イナリヤマ!夜にそこを登った後に見える景色、絶景です!輝いています!綺麗です!楽しいです!知らなかったことが沢山ありました!全て知ることが出来ると思うとわくわくします!」
「輝いた目をしてる…。生前よりも生力があるんじゃないかしら…?」
亡霊ライフを満喫していて何より…。それより、あらすじ。
「あっ、はい。分かりました!」

あらすじです
前回、カステラを食べました!美味しかったです…!本当に…。あんなに美味しいものがあるなんて…。あと、イナリヤマに登りました。沢山の人がいましたけど、肉体が無いので関係ありません。最前列で見ました。夜景が綺麗で感動しました。こんなに綺麗な場所が他にもあるって。日本全国を旅する予定です♪


…………

パラオ泊地 東

 

「……。」

 

……これはあくまでも試験…。沈ませてしまうことだけは避けたいです…。

 

セラフはまだ完全には納得していないみたいだ。

 

……ですが、ジナイーダさんの言うことも一理あります…。この子たちが成長しない…。今は良いとしても、次のことを考えると…。…私は勝手なことは出来ませんね…。次、助けることが出来ないかもしれないのですから…。ここは心を鬼にするべきですね…。

 

セラフは渋々自分に言い聞かせる。

 

「…どうした?セラフ。」

 

「…あっ、いえ…。なんでもありません…。」

 

「…ジナイーダのことか。」

 

「…はい…。」

 

ドミナントがセラフに聞く。

 

「まぁ、あいつはそういう奴だ。…でも、本気にしちゃいけないこともある。」

 

「?」

 

「…大っぴらには言えないが…。多分、あいつの目の前で艦娘が沈みそうになったら助けるぞ?」

 

「えっ…?」

 

「艦娘の前だから、緊張感を無くさないための嘘だと思う…。助けてくれるって思うと、どうしても楽に考えちゃうから…。」

 

「…まぁ、そうですよね…。助けてくれるって分かっていれば…。」

 

「次こんなことになった場合は助けられないっていうのを本気で伝えようとしたんだ。甘えれば不合格。そういうことだよ…。…多分…。」

 

「…そうですか。」

 

セラフは少し気が楽になった。まぁ、これは単なるドミナントの推測に過ぎないが、実際当たっている。ジナイーダは今こそ本気で思っているが、一度親友を亡くした身。目の前で、無念の表情をして沈む覚悟をする艦娘を放ってはおけないだろう。…前のジナイーダならどうしているか不明だが…。そんなこんなを話していると…。

 

「……。」

 

セラフが何かに反応する。

 

……おそらく、敵…。…?あの中に、一人…一匹?だけ少し違うのがいますね…。混ざっているけど、強さの桁が違う…。

 

セラフは発見したのだ。敵の集団を。そして、腹心を。すると…。

 

「そろそろね…。索敵開始!」

 

アクィラが索敵機を飛ばす。こんなに大勢いる中、正規空母がアクィラだけだ。明らかに人選ミス。偏っているが、誰もツッコミを入れない。

 

……大丈夫でしょうか…?

 

セラフが思う。すると…。

 

「敵艦隊を発見ね〜、よしよし。艦載機を上げましょう、艦首を風上に、やりま〜す。」

 

アクィラが奇襲をかける。

 

ドォンドォン…

 

「!?」

 

アクィラは少し驚く。奇襲は成功したが、大半の艦載機を失ったからだ。明らかにレベルの違う者がいるのだ。

 

「少数の随伴艦は倒しましたけど…旗艦だけは無傷です。」

 

まぁ、空母の中で一番火力が低い彼女ではよくやったほうだ。

 

「…ん?」

 

「?」

 

ドミナントが何か反応した。

 

「セラフ、ちょっと後のこと任せる。」

 

「えっ?」

 

「すぐに戻るから。」

 

「ちょっと…あの!」

 

ドミナントは行ってしまった。

 

「…どうしたんでしょうか…?」

 

セラフはここから行くわけにもいかないので、その後ろ姿を見ているだけだった。すると…。

 

「相手の旗艦は…重巡ネ級改!」

 

ガリバルディが見ながら言う。すると…。

 

『皆さん、待ってください。』

 

全員が走り出そうとしたところに、司令部から通信が入る。

 

「なんだ?」

 

『ビスマルクさんが飛び出して行ったので、私と…。』

 

『ローマが指揮をとります。ジャックさんが審査していますので、心配なさらず…。』

 

『まぁ、自己紹介は置いておいて…。作戦を伝えます。』

 

「今敵が来ているんですけど…。」

 

『短く伝えます。そこに集まっているのは、ドイツ艦、イタリア艦、フランス艦、ロシア艦とGotland(ゴトランド)さんがいますね?』

 

「なんで私だけ名前…。」

 

『敵は大勢、今のあなたたちより数が多いわ。だから、力のぶつかり合いでは必ず負けます。四方に分けて叩いて、少しずつ内側に攻め入る作戦にします。それに、恐らく敵はかの大戦の生き残りです。四方に分けるとしても油断していたり、息の合わないコンビネーションだと敗北するのは目に見えています。』

 

『だから〜、これから向かう場所と人を言うわね。先ず正面、つまり東にはAquila(アクィラ)さん、L.d.S.D.d.Abruzzi(アブルッツィ)さん、G.Garibaldi(ガリバルディ)さん、Maestrale(マエストラーレ)さん、Grecale(グレカーレ)さん。お願いできますか?…すみません…。ほぼ囮役です…。相手の正規空母が1艦しかいない場合は、そこを重点的にやると思いますし…。』

 

「任せてください。」

 

「囮役ね?でも、攻撃はしていいんですよね。」

 

「返り討ちだ。」

 

「マエストラーレ、頑張りま〜す!」

 

「やっちゃえば良いのね!」

 

それぞれが別の言い方で了承する。

 

『次に、西…つまり、敵の背後。そこはГангут(ガングート)、Ташкент(タシュケント)、Верный(ヴェールヌイ)、U-511(ユー511)、Luigi Torelli(ルイージ・トレッリ)。出来ますか?内容は二度めの奇襲。特にГангут(ガングート)は奇襲により撹乱させた後に活躍してもらいます。』

 

「いいだろう。」

 

「わかった。」

 

「了解。」

 

「了解…。」

 

「オッケー。」

 

こちらも了承する。

 

『次に、北は…。』

 

そんなこんなを通信して、それぞれが配置につく。

 

…………

ビスマルクサイド

 

「……。」

 

ビスマルクはその反応を示した渾の元へ向かっている。

 

……渾…。…私のAdmiral(提督)を殺して、グラーフを沈めた張本人…。

 

ビスマルクはそう思いながら走る。

 

……なんで今…?

 

そう思っていると…。

 

「ビスマルクさん!」

 

「大佐!?」

 

ドミナントがやってきた。

 

「なんでここに…?」

 

「たまたま見つけたんです。ビスマルクさんこそどうしてここに?司令室は?」

 

「……。」

 

ビスマルクは何も言わなかった。

 

「…仇がいるんですか…?」

 

「…ええ…。」

 

「そうですか…。なら、自分も行きます。」

 

「…手を出さないなら、来ても良いわ…。」

 

「ジナイーダにも言われているので、手は貸しません。」

 

「…なら、ついてらっしゃい…。」

 

「アイアイサー。」

 

ドミナントはビスマルクの後をついて行った。

 

…………

パラオ泊地 西

 

「レッツパーリィィィィィィィ!」

 

ドォォォォォン!

 

「Fire!」

 

ドォォォォォン!

 

艦娘たちが巨大イ級に対して攻撃を繰り出す。が。

 

シュゥゥゥゥ…

 

無傷。

 

「グギャァァァァァァ!」

 

「くっ…。」

 

「うっ…。」

 

それどころか、相手が叫んだだけで波は押し寄せ、空気が振動して、艦娘たちは鼓膜が破れないように耳を塞ぐ始末。

 

「…バラバラに攻撃してちゃ拉致が開かない…。」

 

ウォースパイトが呟く。

 

「聞いて!一箇所に一斉に攻撃を浴びせるわよ!left eye(左目)!」

 

……いくら大きくても、目が見えなければただのOversized trash(粗大ゴミ).

 

ウォースパイトが叫ぶ。そして、全員が一斉に照準を合わせた。

 

「Fire!!!」

 

ドォォォォォン!ドォ!ドォォォォン!…!

 

ドガァ!ドガァァァァン!ドゴォ!…!

 

「グギャァァァァァァ!!!」

 

「よしっ!」

 

巨大イ級が痛みでのたうち回る。艦娘たちは喜ぶが…。

 

「津波!?」

 

もちろん、その巨体で暴れれば津波の一つや二つは起きる。いくら船でも転覆すれば終わりだ。

 

「どうするんですか!?」

 

「…これだけは運に任せるしか無いわね…。」

 

ウォースパイトが冷静に返して、おそらく、全滅するであろう波が来るのを眺めていると…。

 

「諦めないで!」

 

声がする。どこか懐かしい…。

 

「Colorado(コロラド)さん…。」

 

コロラドだ。久しく日本語を口にした。

 

「この津波を…上る!」

 

「!?無茶です!Colorado(コロラド)さん!」

 

フレッチャーが止めようとするが…。

 

「Nothing is pointless(無茶ではない)!And the reason is Because I am the BIG 7 in America(何故なら私はアメリカのビッグ7だからだ)!!!」

 

そう言って、あの波を登ろうとするコロラド。

 

「「……。」」

 

ジナイーダと主任はその光景を空で見ていた。そして、面白そうな笑みを浮かべていた。

 

……さぁ、どうする?

 

波に乗って、登っていくコロラドたちを見ながらジナイーダは思う。

 

……その意気込みは良いが…越えるのは到底不可能だ。その津波を破壊しない限りな。

 

艦娘たちは飲まれてしまったが、ジナイーダは助けない。何故なら…。

 

ザパァ!

 

「…意外と頑丈になってきたのね…私たち…。」

 

自分の鍛え方に問題がないと確信していたからだ。この波くらいなんともないと。あいつらなら沈まないと確信していたからだ。

 

「でも、問題発生よ?」

 

「?」

 

ヒューストンが言い、全員が巨大イ級を見る。

 

「嘘っ!?」

 

シュゥゥゥゥ…

 

イ級の目が治ってきたのだ。自然治癒にしても早すぎる。

 

「瞬間的に倒さなくちゃいけねぇってことか…。」

 

アトランタが睨みながら言う。

 

「もう一回行くわよ!」

 

アイオワが言い出したが…。

 

「「「!?」」」

 

それどころではなかった。イ級が口を大きく開ける。そこに、目に見えるほど青いエネルギーが集中していたのだ。

 

「回避ーーー!」

 

「えっ?」

 

大戦経験者の艦娘たちは直ぐに逃げたが、未経験のサムだけ残された。イ級の口はサムをロックオンした。

 

「サム!」

 

「ジョンストン!」

 

ジョンストンがサムに向かって走り出す。フレッチャーは顔を青くしながら叫んだ。

 

ギュィィィィィィィィン…

 

ズガァァァァァァァァァァァァン!!!

 

「「!?」」

 

イ級の口から、主任砲と見間違えるほどのビームもどきが発射されたのだ。ジナイーダたちは驚く。威力も主任砲と思われる。

 

ドンッ!

 

「ジョンストン!」

 

「サム!」

 

ジョンストンはサムを一瞬で抱えて飛んだ。そのぶっといエネルギー砲をギリギリ回避できた。ジョンストンの髪、ツーサイドアップがワンサイドアップになってしまったが。まさに間一髪。

 

「…t、thank you(ありがとう)…。」

 

サムはジョンストンに言うが、敵を見て、恐怖で震えていた。

 

「…最初は私もこんな感じ…怖いわ…。でも、敵は大戦の生き残り…!油断したら死ぬわよ!分からない攻撃をしてきたら、とにかく回避すること!」

 

「O、OK(はい)…。」

 

ジョンストンに言われて、サムが今まで以上に気を引き締める。サムは才能はあるが、大戦は知らない。フレッチャーはジョンストンたちが無事なことに心底安堵した。だが…。

 

……自己再生…この攻撃…。…果たして倒せるのでしょうか…?

 

フレッチャーはイ級を見ながら思った。

 

…………

パラオ泊地 東

 

「グギャァァァァァ!」

 

ドォォォォン!

 

「左砲戦、開始、撃てー!」

 

ドガァァァァン!

 

ガンガートが手際良く沈めていく。現在、何もかもが上手くいっていた。奇襲に成功、二度めも成功、敵はまんまと術中にはまり大混乱。四方から艦娘たちが沈めていく。

 

……嫌に簡単すぎる…。まるで誘っているようだ…。

 

ガングートはそんなことが頭によぎるが、この状況から戦況がひっくり返されるとは思えないので、その考えを捨てた。…だが、その考えが的中してしまうとは誰も気づかなかった。

 

…………

十分後

 

「大分減ったな…。」

 

ガリバルディが呟く。もう他の場所の艦娘が見えるくらいまで減っていた。指で数えられるくらいまで減っていた。敵の旗艦であるネ級改は悔しそうな顔をしていた。

 

「こっちは損傷がほとんどないです。大成功ね。」

 

アブルッツィも言う。緊張の糸が切れたような顔をしている。だが…。

 

……。まだ気づきませんか…?明らかにおかしいと思わないんでしょうか…?まだ沈めてませんよ…。強さの桁の違う敵が…。

 

セラフは遠くから見ながら思う。

 

「じゃぁ、旗艦倒して、相手の士気をさげるよ!」

 

マエストラーレが言う。

 

『待ってください。相手はネ級改。油断すると最悪の事態になります。最後に残して全員で叩きますよ。』

 

「もうアレしか残ってないけど…。」

 

プリンツ・オイゲンが司令部へ通信を返す。

 

『なら、一斉攻撃です。耐久力、装甲も姫級に匹敵します。命中率も半端ではありません。十分に気をつけてください。』

 

「うん。わかった。」

 

「ふぅん。」

 

レーベとマックスがうなずいた。そして、全員が照準を定めた。重巡ネ級改は慌てている。

 

「Feu(撃て)!Feu(撃て)!」

 

ドォォォォォォン!ドォォォン!ドォ!…!

 

リシュリューが言い、全艦が砲撃した。

 

ドガァァァン!ボォン!ドガァァァン!…!

 

全弾命中。爆煙が上がった。

 

「やった!」

 

「やりました!」

 

「フッ。」

 

艦娘たちは自分たちの敵じゃなかったと言わんばかりに余裕な顔をする。

 

『では、次は西側と合流してください。』

 

「了解。」

 

そして、艦娘たちが動き出そうとしたが…。

 

……なんで分からないんですか…!?

 

セラフが思う。すると…。

 

「……。」

 

爆炎の中から重巡ネ級改の影が見えたと思ったら…。

 

ドォォォォォン!ドォォォ!

 

「「「!?」」」

 

攻撃した。

 

ドガァァァァン!

 

「キャァッ!… Richelieu(リシュリュー)は、沈まないから…!させない…Ça fait mal(痛いじゃない)…!」

 

なんと、リシュリューが中破した。

 

……本当に、なんでわからなかったんですか…!?その敵の旗艦が一番ヤバイことに…!

 

セラフは焦りながら思った。そう、この旗艦こそが渾の腹心だ。二人いるうちの一人。

 

……こいつ…。弱そうなフリを…!

 

ガングートは思うが、もう遅い。しかも、相手はあの攻撃を浴びたにも関わらず、平然としている。ほぼ無傷だ。そして、そのネ級がついに本性を表した。

 

「…グ…グゥァァァ…!」

 

「「「!?」」」

 

全員が驚いた。そのネ級が金色のオーラを纏い始めたのだ。

 

「嘘…。あれは…ネ級改 flagship…?」

 

タシュケントが言い、全員が顔を青くした。

 

「まだ確認されていない…flagship…。」

 

ゴトランドが呟く。

 

……不味いぞ…。未確認のflagship…。それに、ネ級改…。もしかしたら…戦況をひっくり返されるかも知れん…。

 

ガングートは相手の顔を見る。この数に囲まれて尚、獰猛な笑みをしていた…。




ヤバイ敵が二体…。ゲームには登場してませんね。ただ、ネ級改flagshipはいつか実装されるかも…。
英語が難しい…。よくよく見るとめちゃくちゃ間違えてました…。
ダクソ日記 混沌の苗床…炎司祭のデーモンより弱かった…。(奇跡的に落ちなかった。慎重さに救われた。)

登場人物紹介コーナー
巨大イ級…口から主任砲まがいのビームをだす。もちろん、一発轟沈。三式弾でも、46センチ砲でもダメージはほぼ皆無。ただ、集中砲火すれば微量のダメージを与えられるが、自然治癒能力によりすぐに回復する。唯一の救いは鈍足。スピードを除けば、重巡ネ級改flagshipよりタチが悪い。
重巡ネ級改flagship…いつか実装されるかもしれない存在。雑魚と分類されているが、明らかに雑魚ではない。雑魚の枠をゆうに超えている。ふざけんなだ。全ての能力値がネ級改より大幅に上がっている。

ザーーーーーー…
次回、第177話「パラオ泊地元拠点侵入」です。


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177話 パラオ泊地元拠点侵入

久々に1話から見直してます。…すっごい恥ずかしい。
「最初の方は文章も無茶苦茶で、タイトルも変。勝手に物語が進んでいるような感じだったものね。」
作り直すときかな…。
「作り直しなさいよ。」
でも、この小説が完成してからにしようと思う。今は荒削りだが、終わった後、細かくしていくのだ。
「そうなんだ。ところで、目次の絵が消えてるんだけど…。」
出来の悪い感じで、小っ恥ずかしいから消去した。まぁ、あの絵にもヒントがあったんだけどね…。プロフィールに…。
「気づかないわよ…。」
名前のね…。ヒントが…。
「…性格とか?」
性格や趣味にヒントはない。二自作のキャラだから。
「じゃぁ、どこなのよ。」
今はない絵のこと気にしてどうするの…。確認も出来ないよ?
「とにかく。」
永遠の秘密。公開する気もないし。第一、本当の名前が出るまで続くかどうかわかんないし。
「タグに何か書いてあるのは幻覚かしら?」
いやいや…。よく見て?完結させる。だよ?つまり目標。目標と結果は違うし。
「無茶苦茶ね。それより、そろそろあらすじ始めて良いかしら?」
ドーゾー。
「あの…ここ…どこですか…?」
「名取じゃないの。」
「ず、瑞鶴さん…。」
ここはとある小屋。
「あっ、ネズミ小僧…。」
バレた!?
「あんた…まだやってたの?」
いや、だって…。冷蔵庫開けたらなんでもあるんだもの…。
「完璧に泥棒じゃない…。」
まぁね。…て、あれ?ゲストは?…こんなところにいた。逃げようとしても無駄だよ。
「じゃぁ、私はこれで…。」
どこに行く気だい?あらすじはまだ終わってないよ?
「あらすじを言ってくれれば戻れるから…。」
頼んだよ。
「…どちらかと言えば戻りたくはありませんが…。」

あらすじです
早く…提督…帰ってきてください…。


…………

パラオ泊地 西

 

ギュィィィィィィィィン…

 

ズガァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

開幕ビーム砲。

 

「回避ー!」

 

ドオオオオオオオオオオ…!

 

海面に撃ち続けながら迫ってくるビームに艦娘たちはクモの子を散らしたように逃げる。

 

「なんて威力…一瞬だけ海が割れてます…!」

 

サラトガがビームが通過したところを見る。そこは滝のように海が割れていた。

 

「それに、あの回復力…明らかに異常…。そんな反則級のやつが何のデメリットも…弱点もなく存在するはずがありません…。」

 

イントレピッドも避けることに専念しながら言う。

 

「話してないで、次行くぞ!」

 

ネルソンが声を張り上げる。

 

ドォォォン…!ドォ!…!

 

ドガァァァァァン!ドガァ!…!

 

イ級に当てるがほぼ無傷。だが…。

 

シュゥゥゥゥゥ…

 

流石に完全に無傷というわけじゃない。だが…。

 

シュゥゥゥ…

 

再生する。

 

「これじゃぁ拉致があかない…!」

 

ジョンストンが悔しそうに言う。そこに…。

 

「…!」

 

何かに気づく者がいた。

 

「あそこ!あそこの建物!」

 

ジャーヴィスだ。ジャーヴィスが何かの建物に気づく。

 

「それがどうしたの?」

 

ウォースパイトが聞く。

 

「あそこ!なんか…Electromagnetic wave(電磁波)…?みたいなのが出てる!それが敵を強くしてる!」

 

「…?」

 

ジナイーダが見るが、何も見えない。

 

……?こいつには見えているのか…?何故…?

 

よくよく見ると、周りの艦娘たちも分からないようだ。

 

「『ラッキー・ジャーヴィス』だからかしら…?」

 

ウォースパイトは首をかしげる。

 

「とにかく、早くアレを壊さないと…!」

 

「だが、こいつはどうする?」

 

イギリス艦の者たちが避けながら、回り込みながら話していると…。

 

「ここは私たちに任せて!」

 

そこに、アメリカ艦のアイオワが割り込んできた。

 

「だが…。」

 

「ここは大丈夫です!…怖いですけど。」

 

「そう…。だから、行ってきなさい。」

 

「ここは引き受けるから、必ず破壊してこい!」

 

「頼みます。」

 

次々とアメリカ艦が言っては、巨大イ級に向かって行く。

 

「ほら、固まってたら撃たれるわよ?行きなさい。」

 

「早く…。」

 

「頑張ってください。」

 

ジョンストンたちも言ってきた。

 

「……。ここで行かなければイギリス艦の名折れね…。行くわよ!」

 

「はいっ!」

 

イギリス艦とアメリカ艦がそれぞれの任務をこなす。

 

「…主任、行ってこい。」

 

「はいはーい。」

 

「…いざとなったら助けてやれ。」

 

「あれれ〜?さっきと言っていたことが…。」

 

「…頼む。」

 

「……。…わかった。」

 

主任はからかわずに行った。

 

…………

パラオ泊地 西 元基地 入り口

 

「ここか?」

 

「うん。」

 

ネルソンが言い、ジャーヴィスが返す。

 

「…中、水没しているわね…。」

 

ジェーナスが嫌そうな顔をした。すごく古そうな、錆びた鉄の入り口だ。入口から少しだけ水が流れ出ていた。その基地は少しだけ高い、ビルみたいな建物もあり、アンテナみたいなものもある。地殻変動の影響か、地面が盛り上がっていて、半分近く基地を埋めてしまっているが。古く壊れかけている。ちなみに、主任は遠くから眺めている。

 

「入るわよ。」

 

…………

(BGM AC3 『follow』)

 

「逃さんぞ!Shoot(撃て)!」

 

ドオオオオン!

 

ドガァ!

 

「…次だ。」

 

ネルソンが深海棲艦を沈めていく。

 

「入った途端これがずっと続くなんて…絶対に何かあるな…。」

 

アーク・ロイヤルも呟く。

 

「司令室まであとどのくらいかな…。」

 

ジェーナスが呟いた。そこを破壊すれば任務は完了する。アメリカ艦が引き付けている間に終わらせたいものだ。

 

「深海棲艦が次々と現れる…。これでは拉致があきません。」

 

ウォースパイトは困った顔で言う。

 

「早く行って、早く出よう!」

 

ジェーナスが言って走り出す面々。

 

「…邪魔だ!」

 

ネルソンは遭遇した深海棲艦だけを沈めながら走る。すると、光輝く扉に突き当たる。

 

ガチャ

 

ジャーヴィスが開けて見るとそこには…。

 

「グギャァァァァ!」

 

「しつこい!」

 

ドォォォォン!

 

「頑張って!もう少し…!」

 

ヘリポートのような場所へ出た。そこから必死に戦っているアメリカ艦たちが見える。

 

「…早く行きましょう。彼女たちの努力を無駄にしないよう…。」

 

ウォースパイトが言い、全員が戻って走る。

 

「ここは違ったから、右に行くわよ!」

 

指示通りに走る。階段を下ったり登ったり…。そしてついに…。

 

「司令室!」

 

彼女たちは司令室へ出た。

 

「ここで装置を破壊すればいいのか。」

 

ネルソンは砲を構えるが…。

 

「駄目よ。それを使っちゃ…。ここが壊れた瞬間大爆発なんてこともありえるわ。それくらい古い装置だもの…。」

 

ウォースパイトが止める。

 

「何か電磁波を止める装置か何かあるはず…。」

 

アーク・ロイヤルがボタンを適当に一つ押す。沢山あって、何がなんだか分からない。なんのマークも、説明書もないのだから当たり前だ。

 

「……。」

 

そこに、何やら大層なボタンが一つだけ目立っている。押しちゃいけないような…。

 

「……。」

 

ジャーヴィスはそれを見てしまった。

 

……これは…明らかに押しちゃいけないヤツ…。でも…。いや…。

 

ポチッ

 

身体は軍艦と同じような能力を兼ね備えているとしても、精神は子供。好奇心には勝てなかったようだ。

 

ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!…!

 

「「「!?」」」

 

その場にいた全員が驚いた。明るい司令室は真っ赤な明かりになり、赤色のランプが点滅して緊急警報がなるのだから…。

 

『自爆装置を作動させます。』

 

「「「!?」」」

 

無慈悲な機械言葉がした。

 

『制限時間 10分』

 

「カウントダウンが始まった!」

 

「早く逃げるわよ!」

 

全員はジャーヴィスを叱るのを後回しにして、一目散に出口を目指す。

 

…………

(BGM AC3 『box heart best』)

 

「ハァ、ハァ…。」

 

一目散で走って脱出しようとするイギリス艦娘たち。

 

「どけ!」

 

ドオオオン!

 

ドガァ!

 

「ギャァァァァァ!」

 

「邪魔よ!」

 

ドガァァァァン!

 

すれ違う深海棲艦を沈める。いや、沈んではいない。爆発で消滅しているのだ。

 

「…あれ?」

 

ジェーナスが立ち止まる。

 

「?どうした。早く逃げないと…。」

 

「ここ通ってない…?」

 

「そんなわけ…。…!?」

 

ネルソンが驚く。さっき深海棲艦を沈めた場所だ。

 

「…迷ったのか…?」

 

「「「!?」」」

 

驚かずにはいられない。迷ったのだ。つまり、外に出れないかもしれないのだ。そこに…。

 

『残り 5分』

 

放送まで入る。

 

……どうするどうするどうするどうする…。

 

……どうしましょう…。何か手は必ずあるはず…。でも浮かばない…。考えて…。

 

ネルソンとウォースパイトは考えるが、浮かばない。二人とも焦っているのだ。さらに悪いことが起きた…。

 

ザーーーー……。

 

「!?水が!?」

 

「「「!?」」」

 

水位がなくなり、艦娘たち自身の足が底をついたのだ。アーク・ロイヤルがボタンを押したからだ。

 

「これじゃぁ、走るくらいのスピードしか出ない…。」

 

艦娘たちは海では速い。艤装によって、スピードがあるのだ。だが、水位の足りない今、その艤装は邪魔でしかたがない。捨てるわけにもいかない。

 

「とにかく走ります!」

 

ウォースパイトは考えていたが、すぐに考えるのをやめた。考える時間だけ無駄になると悟ったからだ。全員が無茶苦茶に走る。どれだけ遅かろうが。だが…。

 

「あっ…。…痛っ!」

 

ステン

 

「ジャーヴィス!」

 

ジャーヴィスが転んでしまった。錆びた鉄の床で擦りむいてしまい、足から血が出ている。しかも、錆びた釘があったところにピンポイントに当たってしまい、えぐれてしまっていた。まともに走れそうにない。

 

『残り 3分』

 

放送まで入った。

 

「……。」

 

ウォースパイトはどうするか考えてしまっている。この状態では脱出は到底不可能だと。そこに…。

 

「私のことはいいから…早く…!」

 

ジャーヴィスが無理して立ち上がり、壁に手をつきながら言う。

 

「でも…!」

 

「ここで皆んな死んじゃうよりマシ!…早く行って!」

 

「ジャーヴィスは…?」

 

「…私の二つ名は『ラッキー・ジャーヴィス』よ…!それに、この原因を作ったのは私…。」

 

「……。」

 

「…でも、最後に約束して…。」

 

「…なんだ…?」

 

「必ず…勝って…!」

 

「…必ず勝つ…!」

 

その言葉を聞いて、ジャーヴィスは笑顔になった。

 

「行くぞ…。ジャーヴィスの約束を果たすぞ…。」

 

「…はい…。」

 

名残惜しそうに皆んなが見たあと、全員が走って行った。

 

「……。」

 

ドサ…

 

「ふぅ…。」

 

ジャーヴィスは壁に寄りかかりながら座る。足からの出血が止まらない。

 

「…もういいよね…。Darling(ダーリン)…。」

 

目を閉じる。

 

「私は頑張ったよ…。今まで沢山…。自惚れかもしれないけど、Darling(ダーリン)の名に恥じない立派な艦娘だと思う…。」

 

過去の提督と遊んでいたことを思い出しながら弱々しく呟く。気丈に振る舞ってはいたが、所詮は子供。泣いても誰も文句は言うまい。

 

『残り 2分』

 

「…もうそろそろね…。」

 

だが、そこで終わらせはしなかった。

 

「担いで!」

 

「よしきた!」

 

「!?」

 

目を開けると、行ったはずの仲間がいた。ネルソンが肩に担いで走っている。

 

「???」

 

ジャーヴィスは訳が分からない。

 

「…えっ?…なんで…?」

 

ジャーヴィスは聞く。

 

「一人で泣いている仲間を放っておけますか。」

 

ウォースパイトが走りながら言う。

 

「それに、どうせ出れるかどうかはランダムだ。だったら、共にいた方が良いだろう。」

 

「死ぬときは一緒よ。」

 

「Jervis(ジャーヴィス)、諦めたでしょ?無駄よ。私たち、結構しつこいもの。」

 

ネルソン、アーク・ロイヤル、ジェーナスが言う。だが…。

 

「…無理ね。こうなったら、一か八かの賭け…。」

 

「「「?」」」

 

ウォースパイトが呟いて、全員が黙る。

 

「あそこの部屋に行くわよ!」

 

「だが、出口じゃないぞ…?」

 

「いいから!」

 

そして、部屋に入る。

 

「で、どうしろと…?」

 

「壁を破壊して、外に出るわ!」

 

「!?」

 

「無茶だ!第一、ここは窓がないから、何階にいるのかも分からないんだぞ!?」

 

「地面の中だったらどうするの!?」

 

全員が反対したが…。

 

『残り 1分』

 

放送が入った。

 

「…やるしかないみたいだな。」

 

そうネルソンが言って、砲を構える。彼女もビック7の一人だ。

 

「Shoot(撃て)!」

 

ドオオオオオン!

 

ドガァ!…シュー…。

 

「!?」

 

壁には余り大したダメージが無かった。ネルソンは驚く。

 

「やはり、ここも空白の10世紀の建物か…。」

 

「構造も無茶苦茶、意味のわからない装置、変な機械…それだけで分かるだろう。」

 

「だが、ここまで硬いとはな…。なんでそんな時に世界が滅びたのか全くの謎だ…。」

 

アーク・ロイヤルが飛ばしながら返し、撃ちながらネルソンも返す。そこに…。

 

『残り 30秒』

 

放送が入る。

 

「一斉発射よ!せーのっ…。fire(撃て)!fire(撃て)!!fire(撃て)!!!」

 

「Shoot(撃て)!」

 

「Swordfish shoot!」

 

「Shoot(撃て)!」

 

「Shooooooooot(撃てー)!」

 

全員の一斉攻撃だ。

 

ドオオオオオン!ドガァ!ドガァァァァン!ドゴォ!…!

 

壁に破壊音が響く。

 

『残り 10秒』

 

……早く!お願い!

 

ウォースパイトは祈る。すると…。

 

ドガァァァァァァァァン!

 

明らかに違う音がした。壁を破壊できたのだ。

 

「!さぁ、早く!」

 

煙の中、ウォースパイトが指示したが…。

 

「…壁…。」

 

ジェーナスが絶望しながら呟く。鉄の壁が終わったと思ったら、土の壁が出てきたのだ。つまり、ここは地中だったのだ…。

 

「嘘っ…。」

 

もう5秒を切っている。

 

……間に合わな…。

 

『0』

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!




コメディ要素はどこに…。
ダク 楔の原盤…出ないぞ…。

登場人物紹介コーナー
建物…大決戦時の基地。元々は空白の10世紀に建てられたものだったが、改造して大決戦時の基地になった。そして、そこを深海棲艦に乗っ取られた。

ザーーーーーーー…
次回、第178話「チームワーク」です。


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178話 チームワーク

陸軍編が終わったら、百話くらいゆるゆるぐだぐだな鎮守府生活でも書こうかな…。
「どうしたの?いきなり。」
いや、戦いばかりだと疲れる…。それに、ストーリー編が終わった後だと日常編は流石に遠すぎることになっちゃう…。
「へぇ。」
しかも、日常編の案が出来ても、活用できない。
「なるほどね。」
遅れて投稿なのに、これ以上前書きを伸ばすと大変なことになる…。
「どうして遅れたのか理由を聞いていないわ。」
いや…忙しいんだよ。
「遊んでいることを忙しいって言うのかしら?」
良いじゃないか。その遊ぶための金は働いた報酬なんだし。偉い人は言いました。“生きるための金だ。逆ではないのだぞ。”と。
「どこかで聞いたセリフだけど…。しかも関係ないし。」
まぁ、はっきり言うと…。
「うんうん。」
ネタがない!ぼっちの筆者には集団でいたことなどほとんどない!飯屋も一人飯だ!
「可哀想ね。」
慰めにもならん。しかも、流石に戦うのに案が無くなる…。第一、バトルの主人公とか武器もってるじゃん?一般的な使い道以外での勝ち方とかあるじゃん?…ドミナント、何にももってましぇん…。
「…まぁ…。…社畜だからね…。武器を使える方がおかしいわよ…。」
それに、この小説、本来の動きなど完全に無視してるからね…。筆者の戦いでの感覚は、それぞれ特殊な長所と短所がある年齢様々な少女が武器を持っている感じだから…。駆逐艦は子供っぽく。巡洋艦は様々な感じ。空母や戦艦は戦闘経験豊富。(性格によって例外あり。)筆者だと、使えるものはなんでも使う感じだからなぁ…。倒した敵の武器を平気で盗ったり…。道端にある石を投げるとか…(石も致命にはならないが様々なことが使えるし…)。日常であるものを武器として使うって感じかなぁ…?
「軍師…?」
まぁ、戦争ゲーではよく勝ってるけど…。でも、所詮はゲームなんだよね…。裏工作も出来ないし、戦いが始まる前のことが出来ない。スパイ活動も出来ないから、本物の戦争とは全く違うことを実感させられる…。
「まぁ…そりゃね…。所詮はゲームよ。」
瑞鶴。
「何?」
それ…君に言えることかな…?
「……。あらすじ始めるわよ。」
「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ…て、あれ?」
白霊 五十鈴を召喚しました。
「白霊じゃなくて、普通に召喚しているじゃない…。」
「鎮守府…。」
ドミナントたちが早く戻れるように、早く終わらせるから…。
「このクズのろくでなしのせいよ。」
傷つくわぁ…。
「スッキリサッパリファンタ。」
「いや、早く戻って色々やらなくちゃ…。」
なるほど。なら、はやくあらすじ始めなくちゃね。

あらすじよ
鎮守府…今…。…早く帰ってきて…私一人じゃ…どうにも出来ない…。


…………

パラオ泊地 元拠点周辺

 

ドォォォォォォォォン…!ボゴォン…!ドォ…!…

 

基地が大爆発する。

 

「……。」

 

主任が、燃え盛り所々爆発している基地を眺めている。主任も仕事をまるっきりしていなかったわけではない。出入り口に待ち伏せしようと来た深海棲艦を追い払っていたのだ。

 

「ま、しょうがないね〜。」

 

主任は気にした風もなく通信機を手に取る。主任はできる限りの手は尽くした。無事に出られるようにしっかりと出入口を守っていた。あとは、彼女たちの技量しだいだったからだ。

 

…………

パラオ泊地 西

 

「グギャァァァァァァ!」

 

巨大イ級が、燃え盛る基地の方を向いて苦しそうに叫び、のたうちまわる。

 

「今よ!fire!!!」

 

ドガァァァァン!ドォォォ!ドゴォォォン!

 

「グギャァァァァァァ!?」

 

巨大イ級に傷がついた。さっきより格段に弱体化した。耐久力も低くなり、ビームも撃てず、傷の治りも遅くなった。大きさも一回り縮んでいる。

 

「good!」

 

アイオワが嬉しそうに声を漏らす。

 

……よくやったわ…イギリス艦。あなたたちのおかげよ。あとで一杯やりましょう。

 

そう思いながらイ級に攻撃を浴びせた。そして…。

 

「kutabacchimaina(くたばっちまいな)!!」

 

ガシャァァァァァァン!!!

 

コロラドが巨大イ級を思いっきり吹っ飛ばした。

 

「グギャァァァァァァ!」

 

だが、忘れてはいけない。一応渾の腹心だ。

 

グルリ

 

ドオオオオオオオン!ドォォォ…!

 

勢いを殺しながら、振り向き様に砲弾を撃ってくる。

 

「退避!」

 

サラトガが叫んで、誰も彼もが避ける。今度はサムは遅れを取らなかった。

 

「行くわよ!皆んな合わせて!一網打尽です!」

 

「Open Fire!」

 

「Fire!」

 

ガコンガコンガコン…。

 

フレッチャー、ジョンストン、サムが一斉に…いや、それぞれ息を合わせて魚雷を発射した。魚雷同士が当たって、目標の直前で大爆発なんてことは避けたいからだ。

 

「グギャァァァァァ!?」

 

その魚雷に気付くが、もう時既に遅し。全て避けるには時間が足りなかった。

 

ドガァァァァァン!ドゴォ!ドガァ!…!

 

「グギャァァァァァ!!!」

 

大きさのせいで魚雷が次々と簡単に当たり、巨大イ級が痛みでのたうち回る。

 

「今まで空気だったけど、行くわよ。」

 

「やっばーい。やっと出番か〜!」

 

「「Fire!」」

 

ドォォォン!ドゴォォン!…!

 

ヒューストンとデ・ロイテルが撃つ。今まで影が薄すぎた分、ストレスの吐口にしようとしているのだろう。

 

「グギャァァァ…。!?ギャァァァァァァァァ!!!」

 

「「!?」」

 

巨大イ級が今まで以上の叫び声を上げて、二人が驚く。よくよく見ると、右目に当たっていた。

 

……どれもこれも致命打とは言えませんね…。さっきIowa(アイオワ)さんが撃った攻撃も治り始めてますし…。

 

イントレピッドが思う。だが…。

 

「何しているんですか?早く探してください。」

 

「?」

 

サラトガが艦載機を操りながら言ってきた。隣ではガンビア・ベイも頑張っている。

 

「致命になる攻撃を考えていて…。…何を探すの?」

 

「決まっているじゃないですか。弱点ですよ。強いて言えば弾薬庫と機関室です。」

 

「!」

 

軍艦にとって、そこは致命だった。戦車と同じように、弾薬庫を撃ち抜かれたら内部爆発で沈むのは当然。…もちろん、例外もあるが…。それをサラトガが艦載機を操って探しているのだ。そして…。

 

「あ、ありました!背中です!」

 

「!」

 

ガンビア・ベイが見つける。すぐにサラトガも見つけた。

 

「どこからどう見ても魚でよく分からないんですけど…。」

 

「…背中に穴があります。おそらくColorado(コロラド)さんが吹っ飛ばした時に出来た…。その中は内部のはずですから…。」

 

「なるほど。じゃぁ、そこに攻撃をすれば…。」

 

「大ダメージです。」

 

「行きますよ!」

 

「「「attack!!!」」」

 

三人が艦載機を操って爆撃した。

 

ドガァァァァァン!ドゴォォォォン!ボガァァァァン!…!

 

「グギャァァァァ…ァァ!!!」

 

巨大イ級は文字通り手も足も出ない。片目を潰され、弱点を攻撃され今や大破状態だ。だが…。

 

「…?…!?グギャァァァァァ!」

 

「「「?」」」

 

何もしていないのに、巨大イ級が暴れ回った。

 

「た、退避ー!」

 

今まで以上に暴れて、波が大荒れになる。

 

「グギャァァァァァ!ギャァァァァァ!!」

 

「な、なんだ…!?いきなり…。」

 

「分かりません…。」

 

アメリカ艦たちは訳がわからない。だが、次の瞬間…。

 

「…ゴプッ…。」

 

ザバァァァァァン!

 

「「「!?」」」

 

巨大イ級が青い血を勢いよく吹き出したあと、無抵抗に沈んでいった。

 

「……。勝った…のか?」

 

コロラドが呟く。

 

「とてもそうは思えないが…。」

 

アイオワが返す。

 

「私たちの攻撃のせいではないですよね…。」

 

サラトガが言う。すると何故か背筋に寒気が走り、全員が身震いした。

 

「良くやった。合格だ。」

 

ジナイーダがアメリカ艦隊に近づきながら言う。遠くで観戦していたのだ。

 

「…まぁ、勝ちは勝ちよね。」

 

ジョンストンが言う。

 

「イギリス艦の皆んなは?まだ戻ってこないけど…。」

 

「……。」

 

「?」

 

サムが聞くが、ジナイーダは何も言わない。

 

「…そう…。」

 

その意味を察したアイオワ。

 

「どういう意味でしょうか…?」

 

「…あいつらは任務を果たした。…自身を犠牲にしてな。」

 

「……。」

 

ジナイーダは隠さずに言った。サムやフレッチャーは少し悲しそうな顔をした。

 

「…確かどこかの本に書いてあった。成功するにはそれ相応の犠牲を払わなくてはならないと。」

 

「「「……。」」」

 

全員が黙る。

 

「だから、犠牲になった者のために必ず仇討ちをするぞ…。」

 

「「「はい!」」」

 

「「「ああ。」」」

 

ジナイーダが言い、アメリカ艦たちはうなずいた。

 

…………

パラオ泊地 東

 

……まずい…。まずいぞ…。

 

ガングートは必死に避けながら思う。今や、たった一匹の深海棲艦によって戦況がひっくり返されつつある。

 

……狙いが正確すぎる…。今動けるのは私を含めた数人だぞ…。

 

重巡ネ級改flagshipによってcritical hit が多発する。多くが大破、中破判定を受けている。

 

……。これは助けに行くべきでしょうか…?…いえ、それでは何もなりません…。…見守るというのは、こんなに辛いんですね…。

 

セラフは遠くから眺めてそう思う。

 

「司令室!作戦はまだか!?」

 

ガングートが通信機を手に取って聞く。

 

『待ってください!今作戦を練っているところです!』

 

「今こっちは大半がもう動けないくらいの状態だ!長くは…。」

 

ドガアアアアアアン!!!

 

『ガングート…?ガングート!?』

 

通信機から声が聞こえる。

 

「…こちら…大破した…。長くはもたない…。これで戦艦は皆大破だ…。」

 

『嘘…。』

 

通信機から希望を絶たれたような声がする。司令室は作戦でほぼ暗く塗り潰されたマップと紙やペンが散らかっていた。ジャックは既に作戦を完成させていたが、彼女たちのために何も言わなかったのだ。例え、それがどのような結末になろうと。

 

……ここで全滅か…。…死んだら、あいつにも会えるだろうか…?…いや、深海棲艦になるのか…?…もう…どちらでも関係ないか…。今は勝つことだけを考えろ!

 

ガングートはへたり込んだままそんなことを思う。

 

「そろそろ助けに行った方が良さそうですね…。…?レーダーに何か…?超高速熱源反応を確認…急速に接近してくる者が…。時速…。…1000km!?…あれは…?」

 

セラフは行こうとしたが、何者かが接近してきている。

 

『…?あっ、はい。…はい。…えぇ!?本当ですか!?…はい!わかりました!ありがとうございます!』

 

「?」

 

司令室から歓喜の声が漏れる。

 

「どうしたんだ?」

 

『西で戦っていた艦隊が…。』

 

「ああ。」

 

『巨大イ級を倒しました!!!今から増援がそちらに向かいます!』

 

「「「!」」」

 

その言葉は、全員に活力、希望を与えるには十分すぎる言葉だった。

 

「そうか…。」

 

ガングートは無理をして立ち上がる。

 

「聞け!ちょうどあいつを囲っている最中だ!それぞれ息を合わせて叩くぞ!あいつ一匹に沈められたら、恥もいいところだ!」

 

「「「はい!」」」

 

ガングートが言い、全員が息を合わせる。士気も上昇した。

 

ドオオオオオン!ドガァァァァン!ザパァ!ドゴォォ!…!

 

「ク…。」

 

全員からの一斉発射で、流石に声を漏らすネ級改flagship.

 

「マックス、僕たちはまだ無傷だから、アレをやるよ!」

 

「…わかった。」

 

レーベとマックスがうなずく。そして、無防備にどんどん近づいていく。

 

「!」

 

ネ級が気付いて、攻撃を浴びせるが…。

 

「「……。」」

 

二人は止まらない。ただの深海棲艦なら、一発轟沈は有り得ない。その特性を利用したのだ。そして、至近距離に…。

 

「「Feuer!!!」」

 

レーベとマックスが至近弾で撃ちまくる。

 

「……。」

 

ネ級は狙うが、至近すぎて狙いが正確に定まらない。二人はグルグル回っているのだ。そこに…。

 

「レーベ!マックス!離れていろ!」

 

ガングートが言い、二人が離れる。

 

ネ級改flagshipが逃げていく二人に仕返しと言わんばかりに狙うが…。

 

ドガァァァァン!ドゴォォン!…!

 

「!?」

 

魚雷が当たったのだ。水柱で狙えない。

 

……忘れられていたけど、ユーも潜水艦だからね。

 

……よっし!当たった!司令室からの指示通り。

 

水中から攻撃したのは潜水艦の二人、U-511とルイージ・トレッリだ。

 

「私たちも活躍しないとね。」

 

『そちらは弾幕を張ってください。』

 

「いっくよー!」

 

「「Fuoco!!」」

 

ドガァァァン!ドォォォォン!ドォ!…!

 

ゴトランド、リベッチオ、マエストラーレにグラカーレが弾幕を張る。

 

「他の国に負けてられないわ。Feu!」

 

「Feu!」

 

リシュリューとコマンダン・テストも加勢する。

 

『ロシア艦は相手に反撃の隙を与えないように撃ってください。』

 

「「「Ураааааааа(ウラー)!!!」」」

 

ドゴォ!ドォォォン!ドォ!…!

 

ロシア艦も、攻撃の手を休まないように、相手に攻撃をする隙を与えないように撃つ。

 

『無我夢中で撃ってください。』

 

「やりましょう!」

 

「のしていくよっ!」

 

「沈みなさい!」

 

「撃ちますよ〜。」

 

「よしよし、いっけ〜♪」

 

ドォォォン!ドォォ!ドガァァン!…!

 

アブルッツィ、ガリバルディ、ザラ、ポーラ、アクィラが攻撃する。

 

「グ…グ…グ…。」

 

いくら強いネ級改flagshipでも、この弾幕に耐えられるはずがない。大破した。

 

「クラエ…!」

 

ドォォォン!

 

「!?」

 

次の弾幕を張ろうとしたプリンツ・オイゲンを撃った。プリンツも大破判定を受けている。

 

……お姉さま…。

 

プリンツは覚悟したが…。

 

ギュンッ!

 

「「「!?」」」

 

疾風の如く走る者がプリンツを助けた。その姿は誰も捉えることが出来ない。そして、通り過ぎたその者が戻ってきた。そして、止まる。

 

「お前は…?」

 

ガングートが聞くと…。

 

「異界型2番艦♪『スティグロ』だよっ♪スピードなら誰にも負けないよっ!」

 

「スティ…グロ…?」

 

「そうだよ♪楽しそうだから来ちゃった♪」

 

その者は子供っぽい感じで楽しそうに話している。艤装には、砲と呼べるものが無かった。あるのは脇腹についたコンテナみたいなものと、手に持っているビームサーベル?くらいだ。容姿はセントエルモと違って、金髪ポニーテール、身体は軽巡くらい。胸は…。…うん…。…まぁ、お世辞にも大きいとは言えない。察してくれ。服はセントエルモと同じような服だが、こちらは黄色を基準としている(セントエルモは緑色)。それに、少し厚手だ。

 

「そうか…。」

 

ガングートは驚きながらも返す。

 

「ところで、あれを倒せばいいの?」

 

スティグロがネ級改flagshipを見る。

 

「そうだが…。あまり手は出さないでくれ…。」

 

「?どうして?」

 

「これは試験だ。」

 

「…そう。なら、仕方ないね〜♪」

 

スティグロはつまらなさそうにしたが、見ていた。少し興味があるのだろう。この劣勢の中、どうやって勝つのか。だが…。

 

「?…!?グァ…!ァァァァ!!」

 

「「「!?」」」

 

突然ネ級flagshipが呻き声を上げて叫ぶ。

 

「ァァァァァァァ!!!」

 

そして、頭を抱えて、ふったりして、もがいていたが…。

 

「…ゴプッ…。」

 

ザパァァァァァン…

 

「「「!?」」」

 

巨大イ級と同じように、青い血を吐いたあと倒れるように沈んだ。

 

「何?今の♪どうやったの〜♪」

 

スティグロが聞くが…。

 

「…いや、私たちではない…。なんだ…?今のは…。」

 

ガングートは不思議に思う。そこに…。

 

「ぉーい!増援に来たぞー!」

 

アメリカ艦が来る。

 

「?もう終わってた…?…誰?」

 

アイオワがスティグロを見る。

 

「異界型二番艦♪『スティグロ』っ♪」

 

「新しい艦娘でしょうか…?」

 

サラトガがスティグロを見て言う。

 

『こちら司令室。終わったんですか?』

 

「ああ。なんとかな。」

 

ガングートは疲れた感じで言う。スティグロは皆にいじられている。緊張の糸が切れて、癒しが欲しい艦娘たちの標的となってしまったのだ。

 

『あとは、ビスマルクさんだけなんですが…。』

 

「…わかった。行く。」

 

『いえ、加勢するなと言われておりまして…。』

 

「なんだと?」

 

『これは自分の戦いなので、手出しをして欲しくないようです。』

 

「…あいつ…。」

 

ガングートが呟く。

 

「いや、私たちも行く。手は出さないなら、良いんでしょう?」

 

『はい。』

 

「なら、見るだけだから案内して。応援なら、手は出していないわ。」

 

コロラドが冷静に言った。

 

『…そこから南西へ行ってください。』

 

「わかりました。」

 

そして、全員がビスマルクの方へ行く。

 




遅くなりました…。案が切れます…。
ダク あそこの竜は決して許さない…。(何回も落とされる)

登場人物紹介コーナー
巨大イ級…基地により、エネルギーをもらっていたが、破壊されて弱体化された。呆気ない最後を遂げた。
重巡ネ級改flagship…命中率、耐久力も異常。大きな被害を及ぼしたが、呆気ない最後を遂げた。
スティグロ…いつしか沈めたが、艦娘となって復活した。艦娘効果で最高時速は1200kmという、本物のスティグロより速くなってしまっている。武器は脇腹にあるコンテナとビームサーベルのような武器だけ。セントエルモと同じような服装だが、黄色を基準としている。金髪ポニー。胸は…龍驤と同じくらい。

ザーーーーーーー…
次回、第179話「vs渾」です。


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179話 vs.渾

アーマードコアの時系列について考えていたら1時間経ってた…。
「すごいわね…。」
一つ、疑問に思うことがある。
「何?」
まず、4系から先に時系列をする人がいるけど…。レイヴンがリンクスになったのだから、4系の前に何かあるはずだよね。
「まぁ、そうね。」
初代と3系の前に大破壊があった。
「うんうん。」
パルヴァライザーは古代兵器の遺物。
「そう。」
4系とⅤ系は繋がっていて、3系とN系が繋がっている。
「なるほど。」
2系は宇宙にある。FFは…なんだろう…。遊び…みたいな、スポーツ的な感じかな?
「詰まってるわね。」
まぁ、とにかく…。財団はネストとおそらく繋がっている。ここで重要なのは最後のセリフがネストと酷似していること(個人の意見です)。Ⅴのレイヴンは“決まった”呼び名がない(例 AC乗りなど)。2系は『レイヴン』と呼ばれている。おそらくFFが最初か最後(個人の意見です)。企業連の関係がわかれば…。
「企業は時代によって違うもの。」
つまり、企業を無しにすると4系とⅤ系の前に初代、2系、3系、N系。
「そうなの?」
で、本題。疑問に思うこと。それは…。
「……。」
おかしくない…?これ…。
「えっ?」
パル=古代兵器=ネストか4系の兵器と考える。環境汚染がコジマだとして人々は地下に潜る(3系)。時が来て外に出た(N系)。次にFF?…終わる。つまり、コジマの前に何かある。?→?→4系→Ⅴ系→3系→N系→FF?。…と、なると…。2系は宇宙に進出しているから…。でも、初代と2系は繋がっている…(初代から2系まで約100年。間に何かを挟むのは無理)。つまり、この場合だと4系から地球じゃなくなってるわけになる…。
「矛盾するわね。」
初代を…。…いや、いいや…。
「?どうしたの?」
そして、筆者は考えるのをやめた。
「投げ出したわね。」
仕方ないじゃん…。これをずっと考えていると頭がおかしくなるんだから…。
「へぇ。」
この文を書くのに1時間かかったよ…。
「そんなに!?」
だって、全ての時間や似たような兵器があることを調べたんだから…。地球歴やらレイヴンと呼ばれているのは何作なのか…とか。Wikiとネットの意見を照らし合わせて…。
「そんなに苦労するのね…。」
ただ、学んだことがある…。
「何?」
眠くなる。それと、4系からは始まらない。『レイヴン』と呼ばれている文があるから。
「なるほどね〜。」
頭がパンクする…てか、逆流する。瑞鶴、早くあらすじやってくれる…?
「随分と弱ってるわね…。この人よ。」
「む?どこ?ここ…。」
ここはあらすじの間だ。あらすじを言わなければここから出ることは不可能。
「誰?」
「ゴミクズよ。ある場所に行けばなんとかの塊と交換してくれるわ。」
…筆者だよ。あらすじ言ってくれる?
「筆者?」
この物語は全て筆者の思うがまま!
「クズね。死になさい。雑種が。」
ひっど。
「…ここから出るにはあらすじを言えば良いのかな?」
「そうよ。」
頼むよ。幻の第49憲兵隊隊長、鬼の面頬憲兵。
「…わかった。」

あらすじ
前回、自分達はブイン基地を取り締まった。ほぼ連絡なしに突入したため、提督達が捕まる捕まる…。行為の最中に出くわしても臨機応変に対応できた仲間たちは本当に凄いと思った。次はショートランド泊地なんだけど…。あそこ、今の科学では完治できない感染性の風土病が蔓延しているからなぁ…。流石にあそこは行けない。あんな死に方は死んでも御免。それに、本物の強者が提督をしているし…。艦娘たちは危険すぎるためほんの何人しかいないし、ブラックになってはいないと思うし…。あんなところでブラック鎮守府したら確実にくたばるからね…。深海棲艦もあそこだけ攻めてこないし。


…………

パラオ泊地 南

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「……。」

 

ビスマルクと渾が戦っている。

 

「…わかった。」

 

ドミナントでジナイーダたちの通信を終えた。

 

「お前の二人の仲間はやられたらしい。」

 

「…ソウ…。」

 

渾は分かっていたような、覚悟した顔をしていた。

 

「これでも…勝てないなんて…。」

 

ビスマルクは今中破状態だ。

 

「…ビスマルクさん。仲間が来るらしいです。」

 

「そう…。でも、手出ししないで。」

 

「ですが…。」

 

「いいから…!」

 

「……。」

 

ビスマルクが睨み、ドミナントは何も言わなくなってしまう。

 

「…ヤッパリ…。」

 

「?」

 

「アナタハナニモカワッテイナイ…!」

 

渾は我慢したような顔をしていた。

 

「私はあの時より強くなったわ…。何も変わってないわけないじゃない…!あなたを倒せる…!」

 

「アナタハ ナニモカワッテイナイ。ワタシガ…タノミヲキイタイミガナイ…!アレカラニネンタッタ…。デモ、ナニヒトツ カワッテイナイ…!」

 

渾がビスマルクのことを睨んでいた。ちなみに、渾も中破している。

 

「…モウイイ…。アナタハ ショセン ソコマデナノカ…。ヨクワカッタ…。」

 

すると、渾が今まで使っていなかった右手の釘のような機械を作動させる。

 

「…む?アレは…?」

 

ドミナントがよくよく見る。

 

「!?とっつきじゃねぇか!?」

 

ドミナントは驚きを隠せない。とっつきなのだ。つまり、射突型ブレードだ。一撃必殺、当たったら大ダメージ間違いなしだ。

 

「ココデ、アナタヲシズメル…。カワッテイタラ…。…イヤ、イイ…カワッテイナイナラ、シカタガナイ…。」

 

すると…。

 

「ビスマルクー!」

 

仲間たちが来る。

 

「駆逐棲姫か!?手を貸すぞ!」

 

「来ないで!!」

 

「まだそんなこと言ってるのか!?」

 

「これは…私の過去の戦いなの…!誰にも邪魔はさせないわ…!」

 

ビスマルクは言ってきたガングートを睨みつける。

 

「……。」

 

渾は悟ったような顔をした。

 

「さぁ、かかって…」

 

ビュンッ!

 

「!?」

 

ビスマルクは間一髪、避けることが出来た。たまたま運が良かっただけだ。

 

「…ハズシタカ…。」

 

ビスマルクが顔をのけぞらせて避けたそれは、とっつき(射突型ブレード)だ。頭を粉砕しかねない。本気で沈めるつもりだったのだろう。

 

「ビスマルク!これでもか!?」

 

「お姉さま!」

 

ガングートとプリンツ・オイゲンが叫ぶ。

 

「来ないで!!」

 

「いつまで意地を張る気だ!?」

 

「うるさい!」

 

ビスマルクが言う。

 

「アナタハ…マナンデイナイ…。ドウシテ、グラーフ・ツェッペリンガ シズンダノカ…。」

 

「あなたのせいでしょ!?」

 

「…モウイイ…。」

 

渾がとっつきや他の装備を外し、海中に手を突っ込んだ。

 

「セメテモノナサケ…。イタミヲアタエナイデシズメテヤル…。」

 

そして、渾が海中から取り出した。

 

『フメイナ ユニットガ セツゾクサレ マシタ。シンタイニ イジョウナショウガイガ ハッセイ シテイマス。タダチニ シヨウヲ テイシシテクダサイ。』

 

「「「!?」」」

 

艦娘やジナイーダたち、ビスマルクはソレを見て驚いた。

 

「「!?」」

 

ドミナントと主任は別の意味で驚いていた。

 

「マスブレード!?」

 

マスブレードとは、オーバードウェポンの一つ。まぁ、一言で言えば『柱』だ。ブースターのついた。主任も使ったことがある代物だ。

 

「サヨナラ…。」

 

渾がマスブレードをビスマルクに振りかざした。

 

……ここでも…私は…!

 

ビスマルクは悔し涙を流して、目をギュッと閉じ、覚悟した。

 

…………

 

「…?」

 

再び目を開けると辺りは闇の中ほど暗く、遠くに焚き火を焚いている者以外になにもない場所にいた。

 

「……。」

 

ビスマルクは、焚き火のある場所へ行く。男が傍にあった木に座って、焚き火を眺めていた。

 

「…admiral…?」

 

ビスマルクが聞く。

 

「久しぶり…。ビスマルク。」

 

その者はビスマルクの元提督であり、ケッコンした者だ。少し寂しそうな顔をしていた。

 

「admiral…ひっく…。」

 

ビスマルクの頬から涙が伝う。

 

「……。」

 

提督はビスマルクを隣に座らせて抱き寄せた。

 

「ビスマルク…。本当に懐かしいなぁ…。」

 

「ええ…。本当に…。」

 

ビスマルクは泣きながら答える。

 

「でも、少し…まだ早いかな。」

 

「?」

 

「ビスマルク。私はずっと、君を見ていたよ。この焚き火を通じて。」

 

提督が焚き火を眺める。

 

「まず、ビスマルク。私が死んでも、ここまで想っていてくれてありがとう。」

 

「うん…。」

 

提督がビスマルクを抱きながら頭を撫でる。

 

「グラーフが君を庇ったことも知っているよ。」

 

「…ごめんなさい…。」

 

「ううん。グラーフが望んだ選択さ。責めやしない。」

 

「うん…。」

 

「でも、これだけは言わなくちゃいけない。提督として。」

 

「?」

 

提督がビスマルクと少し離れて、顔と目を合わせる。

 

「いいかい。グラーフはなんで沈んだかわかるかな?」

 

提督が口元を緩めながら、幼い子に聞くように言う。決して怒ってはいない。

 

「あの深海棲艦に沈められたから…?」

 

「現実的に言えばそうだけど、私の言いたいこととは違うかな。」

 

「…私のせい…?」

 

「…厳しいことを言うようだけど、半分正解かな。」

 

提督は全く怒ってなどいない。むしろ、認めてくれたことを少し嬉しんでいた。

 

「残りの半分は頼ることかな。」

 

「頼る…?」

 

「一年未満しか一緒にいることが出来なかったけど、君は一人でやろうやろうとしている。それは悪いくせだよ。」

 

提督が少しだけ悲しそうな顔をして、ビスマルクの頭を撫でている。

 

「ごめんなさい…。」

 

「謝らなくていいよ。誰だって、欠点はあるし。直そうとしたところで、そう易々と直せるものじゃない。だから、少しずつ直して行こう。」

 

提督は少し頬を緩めた。

 

「敵の渾は、それを分かっているんじゃないかな。」

 

「えっ…?」

 

「彼女は敵だけど、通す筋は通しているよ。それに、見抜く力もある。」

 

「……。」

 

「なんだ?妬いているのか?」

 

「別に…。」

 

ビスマルクはそっぽを向き、提督が少し嬉しそうな顔をする。

 

「君は言葉に言い表せないくらい素敵だよ。私は今まで沢山の女性を見てきた。中には財産目当てで近づいてきた者も、中身を判断せず、容姿だけで近づいて来た者も、ただの見栄だけで近づいて来た者もいた。他にもいい人はいたけど、君はその中でも一番だ。純粋無垢で、面白いものにはすぐに飛びついて可愛い反応をするし。私が上官でも、全く遠慮がなく他の人と平等に接してきてくれる。並々ならぬ自信を持っていて頼りになるし。子供っぽい無邪気な可愛い一面もある。グラーフたちには悪いけど、私は君のことが一番好きだ。」

 

「……。」

 

提督が遠慮もなく、少し微笑み、大真面目に言うもんだから、ビスマルクは真っ赤になって俯いてしまった。

 

「私も…、好き…。」

 

ビスマルクも恥じらいながらもしっかり言って、提督も少し嬉しそうにした。

 

「さて、ビスマルク。そろそろ現実へ戻るよ。」

 

「えっ…?」

 

しばらく提督が撫でた後、言い出す。

 

「?まだ君は死んだわけじゃないよ?」

 

「そうなの?」

 

「正確には死ぬ寸前かな。戻ったらすぐに一歩、斜め左に下がるんだ。そうすれば助かる。今は時が止まっている状態だから。」

 

提督が説明する。

 

「……。」

 

「そんな寂しそうな顔をするな。いつか会える。必ず。」

 

「本当…?」

 

「今もこうやって会えているじゃないか。それに、言っただろう?提督の魂はいつでも君と共にあるって。見えなくても、ついているから。」

 

「うん。」

 

「よし。じゃぁ、今までのことを簡単にまとめると、もっと仲間に頼るんだ。君の仲間は鎮守府にいる者だけじゃないでしょう?大佐だって、ロボットの仲間たちだって心強い味方になってくれる。必ずまた会える。」

 

「うん。」

 

そして、ビスマルクの周りがだんだんと白くなっていった。

 

 

 

「君が想い続ける限り、私は何度でも助ける。

私は常に君と共にある。君なら必ず勝てる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が一番愛した女性なのだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

「ええ…。」

 

ビスマルクが呟いた。そして…。

 

スカッ

 

「!?」

 

渾が外したことに驚いた。そして、ビスマルクを見る。

 

「……。」

 

ビスマルクは頬に涙が伝っていたが、しっかりした目で、少し微笑んでいた。

 

〔BGM 艦これ『艦隊決戦』です〕

 

……ナニカカワッタ…?

 

渾はすぐに気付く。すると…。

 

「ガングート!」

 

「なんだ!?」

 

ガングートが不機嫌に返す。

 

「手を貸して!」

 

「「「!?」」」

 

ビスマルクの言葉に、渾を含めて全員が驚いた。

 

「おま…いいのか?」

 

「ええ。というより、皆んな…手を貸してくれる?」

 

「勿論だ!」

 

「行くわよ!」

 

「力になれる!」

 

全員が嬉しそうに反応した。

 

「ヘェ…。」

 

渾は少し嬉しそうにした。

 

「…カワッテイタジャナイ。」

 

渾は呟いた。

 

「“いた”んじゃないわ。変わったのよ。今。」

 

「…フッ。」

 

ビスマルクの言葉を聞いて、少し笑みをした。

 

「大佐、あなたもよ!」

 

「うぇ!?俺も!?」

 

いきなり言われて、ドミナントが少し驚く。

 

「試験が…。」

 

「別に良いわ!頼ることが大事だもの!」

 

「……。…そうですか。」

 

ドミナントもニヤケながら協力する。ACで顔が見えないが。

 

「あの攻撃を引きつけてくれるかしら!」

 

「了解了解。」

 

ドミナントが駆けていく。

 

『弾幕を張ってください。』

 

「皆んな、弾幕用意!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「撃てーーーー!!!」

 

ドオオオオ!ドォォォ!ドゴォォォ!ドォォン!…!

 

全員が一斉砲撃した。

 

「……。」

 

渾は笑えない顔をする他がない。なぜなら、空が砲弾で埋まり、辺りが影になっていたからだ。

 

ドガァァァァァン!ドガァァ!ドゴォォォン!ドガァ!…!

 

大爆発。だが…。

 

「ブハァ…!ヤルジャナイ…!!!デモ、ワタシハマダ…。」

 

楽しそうに爆炎から出てくる渾が現れた。

 

「もちろん、この攻撃で倒れるとは思ってないわ。」

 

「!?」

 

ジョンストンは渾が出てくるところを予想していたみたいで、そこに駆逐艦が横並びになっている。

 

『魚雷、発射!』

 

「「「はいっ!」」」

 

ガコンガコンガコンガコンガコン…

 

お次は網目状に発射された魚雷群と来たもんだ。まぁ、簡単に言って避けられない。

 

「クソ…!」

 

ドゴォォォン!ドガァァァ!ドゴォ!…!

 

なんとか、被害を最小限にしながら脱出する渾。だが…。

 

「「「fireeeeeee!」」」

 

ドオオオオオン!ドオオオン!ドォ!…!

 

「!?」

 

戦艦たちが撃ってくる。

 

ザパァァァン!ザバァ!ドガァ!…!

 

渾はさらに離れる。

 

……ハンイカラニゲダセタカ?

 

否。

 

ドガァ!ドゴォォォ!ドガァァァン!…!

 

「ナ…!?」

 

「逃がしませんよ。」

 

「イギリス艦の仇もあります。」

 

「「fire!!」」

 

空母たちがいつでも捕捉している。

 

……ドウヤッタラニゲダセル?…イヤ、ムリダ。ツイゲキサレル。クウボヲシズメル?イナ。ソノマエニダンマク。クチクヲタオス?イナ。アタラナイ。センカンカラタタク?イナ。ジカンガカカルシ クウボニヤラレル。シレイシツヲツブス?イナ。ニゲダセナイ。…?ドウヤッテタオス…?

 

渾が考えるが、案でない。

 

『ビスマルクさん?…なるほど。…はい。わかりました。皆さん、敵から視界を奪ってください!』

 

『急いで!』

 

「敵から視界を奪えば良いのか?それなら一か八かの賭けだ。私に考えがある。戦艦たちに繋いでくれ。」

 

『?わかりました。』

 

ガングートが司令室を通じて説明する。

 

『かなり確率が低いですし、大丈夫なんですか?』

 

「なに、だめで元々だ。失敗してもダメージにもなる。」

 

ガングートが言い、全員が了承した。

 

「行くぞ!息を合わせろ!」

 

「「「three!」」」

 

「「「two!」」」

 

「「「one!」」」

 

「「「ZERO!!!」」」

 

ドォォォォォン!ドガァァァァン!ドォォ!ドゴォォォ!…!

 

戦艦の一斉発射だ。渾に向かう。だが…。

 

「……。」

 

渾は避けない。すると…。

 

ドガァァァァン!ドゴォォォ!ドガァァン!…!

 

渾の直前で弾同士が当たって爆発する。

 

「ウンガ ワルカッタワネ。イキノ アイスギジャナイカ?」

 

渾がニヤける。が。

 

「いや?それがこっちの狙いだ。」

 

「!?」

 

……ダトシタラ、エンキョリカラ タマドウシヲ アテルナンテ バケモノダ…!

 

爆煙の中、弾同士を当てたことに渾が驚く。

 

「こっちよ!」

 

煙の隙間からビスマルクが砲を構えていた。至近距離だ。

 

「!?」

 

これに当たれば、今まで沢山の攻撃を喰らった渾は沈む。が。

 

「コレガ アルコトヲ ワスレテナイ?」

 

「!?」

 

そう、マスブレードだ。それをまたビスマルクに振り落とした。

 

ドガァァァァァァァァァァン!!!

 

爆発音が響く。

 

「…!?」

 

渾が当てたのはビスマルクじゃない。ドミナントだ。

 

「…いってぇぇぇぇぇ!!めちゃくちゃいてぇぞちくしょぉぉぉ!大破状態越してるぞ!絶対!!!」

 

ドミナントが叫びながら離れた。ちなみに、カスダメでコア破損、右腕部破損、左腕部破損、脚部損傷、AP残り0.1%だ。

 

「大佐、ありがとう!!!」

 

ビスマルクは一言言った後…。

 

「FIRE!!!」

 

「!?」

 

ドガァァァァァン!ドゴォォォォォン!ドガァァァァァ!!…!

 

「ゴプッ…。」

 

渾が負けた。ビスマルクの至近弾全てをくらって。そして、沈んでいく。

 

…………

沈んでいる最中 (BGM終了)

 

「…渾…あなたに聞きたいことがあるわ。」

 

「…?」

 

ビスマルクが沈んでいく渾に聞く。

 

「…私のadmiralを殺したの…あなたが命令したの?」

 

ビスマルクが聞いた。

 

「…イヤ…。ワタシガ メイレイシタノハ カンシダケダッタ…。」

 

「!?」

 

「アレハ、ワタシノ ブカガ カッテニヤッタンダ…。」

 

「…どうして、早く言わなかったの…?」

 

「…イッタラ、オマエハ ドウシテイタ?ソノニクシミヲ ムケルアイテガ イナカッタラ、ドウシテイタ…?」

 

「……。」

 

ビスマルクは、考えた。

 

「…あなた…私のために…。」

 

「イヤ、オマエノ タメジャナイ…。ブカノ セキニンヲ トルノガ ジョウシダ…。」

 

「……。」

 

「…アト、コレイジョウ ハワタシノ チカクニ イナイホウガイイ…。」

 

「どうして?」

 

「…ドウジョウ シテシマウ カラダ…ワタシニ…。」

 

「…そうね…。」

 

ビスマルクは現に、同情しかけていた。

 

「それじゃぁ…。」

 

「…サヨナラ。」

 

ビスマルクは、仲間を引き連れて帰っていく。だが…。

 

「…一つ聞きたいことがある。」

 

ドミナントが残っていた。

 

「…お前たちは何故戦うんだ?」

 

「……。」

 

ドミナントは、ここまでした深海棲艦について、少しだけ興味を持っていた。

 

「…ワタシタチハ…タタカイタクテ、タタカッテイル ワケジャナイ…。」

 

「…戦いたくて戦っているわけじゃない…?…どう言う意味だ…?」

 

「…シツモンハ イチドシカ コタエナイ…。」

 

「…尋問するところだが、沈む相手には意味がないな。」

 

「フフ…オモシロイコトヲ イウノネ…。アナタハ ドコノショゾク…?」

 

「俺か?俺は…第4佐世保鎮守府だ。」

 

「!?ダイヨン…?アナタガ…?」

 

「悪いか?」

 

「イヤ…。…タダ、ドンナトコロ ナノカキニナル…。」

 

「まぁ、艦娘になったら教えるよ。」

 

「…ソウ…カンムスニ ナレルカナ…?」

 

「…なれる。現になった奴がいる。」

 

「…ソウ…。」

 

「…これ以上の長話は無用だな。…さらばだ。また会おう。」

 

「エエ。サヨウナラ。」

 

ドミナントも去った。

 

「…一つ質問がある。」

 

「マタ…?」

 

お次はジナイーダだ。

 

「…何故、ビスマルクの“攻撃を浴びる前”に吐血した?」

 

「!?…ミエテイタノ…?」

 

「ああ。」

 

「…ヤハリ、アナタハチガウ…。」

 

「そうだな。何故吐血した?」

 

ジナイーダが聞き、渾は少し驚いていた。

 

「…ナゼダカキキタイ…?」

 

「ああ。」

 

「ソウ…ナラオシエテアゲル…。」

 

そして、ジナイーダに教えた後、渾は完全に沈んだ。

 

…………

 

「やったな。ビスマルク。」

 

提督が安堵した声を漏らす。

 

「そのようだね。」

 

そこに、もう一人が闇の中から姿を現す。

 

「君か…。…ありがとう。ビスマルクと会わせてくれて。確か…神様?だっけ。本当にいるとはな。」

 

「うん。死人を蘇らせることは出来ないけど、会わせることは出来る。それなら、バンバン会わせてやれって思うかもしれないけど…。会ったら会ったで今まで以上に寂しくなるからね…。」

 

神様が寂しそうに言う。

 

「それでも良いさ。会わせてくれるだけ。」

 

提督が笑顔になった。

 

「別に良いよ。喜んでくれるなら。」

 

神様も笑顔になった。

 

…………

パラオ泊地

 

「どこに行っていたんだ?ジナイーダ。今日はお祝いみたいだぞ。」

 

「…そうか…。」

 

「…どうかしたのか?」

 

「…いや…。」

 

「?」

 

ジナイーダは、渾から聞いたことを真剣に考えていた。




長い…。次回は、パラオ泊地のパーティですね。

登場人物紹介コーナー
渾…コン。オリジナル深海棲艦。駆逐棲姫(特別上位種亜種)。騙して悪いが、俺得なんでな。常に右手にとっつきを持っていて、いざとなるとマスブレードを武器に使う。艦娘や人間に自ら危害を加えたくない、珍しいタイプ。幹部の一人。実は、戦う前から満身創痍の状態。
とっつき…射突型ブレード。当たったら大ダメージだが、回数が少ないし、当てるのも難しい。
マスブレード…主任が使ったことある。柱。解体現場に落ちてそうな柱。オーバードウェポンの一つ。当たればただではすまない。

ザーーーーーーー…
次回、第180話「パラオ泊地party」です。


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180話 パラオ泊地party

最近、コロナが緩和されて人通りが多くなりましたね〜。
「そうね。」
でも、おそらく1ヶ月後にはまた再来するよ。
「まぁ、二週間経たないと分からないって言われているから。」
その通り。つまり、感染しているかどうかも分からずに人と接して、連鎖していく感じだね。
「これがぱんでみっく…。」
どうだろう?パンデミックなのかな?…まぁ、いいや。それよりあらすじ。
「ドーモ、ヒッシャ=サン。憲兵です。」
おっと、これは挨拶しちゃいけないやつだ。騙し悪いが、俺はニンジャでもブラック提督じゃないんでね。スルー。
「何この人…。めちゃくちゃ強そうなんだけど…。」
憲兵=サンだね。艦これの醍醐味の一つだと思って追加したキャラクター。
「この世界、最強すぎる人多すぎないかしら…?」
まぁ、他にも真の強者や裏の策士、赤い熾天使に可能性の人形や神がいるからね。…見返してみると、相当な化け物揃いなんだな…第4佐世保…。
「それより、あらすじはじめてあげなさいよ。もたもたしてるとやられるわよ?」
大丈夫、筆者は不死身なニンジャだから…。
「殺すべし…。」
グァー!冗談だったのに!サヨナラ!
カブーーム!
「爆発四散した!」
「忍者、ブラック提督殺すべし…。」
「…まぁ、大丈夫よね。あらすじ出来るかしら?」
「アラスジを。」

アラスジ
ブラック提督…殺すべし…。私は憲兵=サンではない…。実を言うとその者は我が師だ。





シュゥゥゥ…
礼儀がなってないぜ…。不死身だからよかったものを。
「うわっ…。肉片から復活した…。あんたこそが本当の化け物よ。」
憲兵=サンは時代によって、名前が継がれていますね。つまり、オリジナルは相当昔…。自身の命が短いと悟った時にワザを伝授しています。所謂、不滅であり、リアルニンジャですね。


…………

パラオ泊地 食堂

 

「ふむふむ…。」

 

「まだ〜♪?」

 

「あと少しだけ…。」

 

ドミナントがスティグロの頬をプニプニしている。ちなみに、現在食堂にいる。勝利を収めてお祝いなのだ。他の艦娘たちもいて、勝利を喜んでいた。

 

「…間違いなく艦娘だ…。セントエルモみたいに復活したのかな?」

 

「セントエルモ?」

 

「うちに君みたいなのが一人いるんだよ。」

 

スティグロが訪ね、ドミナントが返す。

 

「一応戦艦なんだけどね。…駆逐艦くらいの身長しかないため、悩んでいるんだ…。」

 

「私はそんなに身長低くないねっ♪」

 

「…胸はセントエルモの方がでかいかな。」

 

「ぐっ…気にしてるところを…。」

 

子供っぽく、スティグロがドミナントを睨む。

 

「軽巡かな?…まぁ、身長も胸もそんなだし…。」

 

「張り倒すよ?」

 

スティグロが冷静に返してきた。

 

「速さも負けない♪」

 

「流石スティグロ。」

 

ドミナントがスティグロを調べ終わる。

 

「何を調べていたんですか?」

 

「頬の感触や、頭を撫でた感じなどを…。」

 

「うわぁ…聞かない方がよかったです…。それに、すごく堪能してますね…。」

 

ドミナントの回答にセラフが引く。

 

「引くことないじゃないか。この子、未確認の艦娘だからもう会えないかもしれないんだから。」

 

「まぁ、そうですよね。」

 

「?」

 

そう、セントエルモはたまたまドミナントたちによって、勝手に住まわせているが、ここはパラオ泊地。スティグロをどうするかはパラオ泊地の提督、ビスマルクに委ねられる。…まぁ、本来なら未確認の艦娘がいた場合は大本営に強制的に送らなくてはいけないのだが…。

 

「まぁ、そんなくだらないことより手伝わないとね。」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントとセラフが後ろを見る。そこには、お祝いの料理を作る艦娘などがいた。

 

「…まぁ、そうだよね…。」

 

ここは人が立ち入らない島。つまり、出前も取れないわけだ。なら、祝いの料理はどこから出てくるのか。そう、自分たちで作るしかないのだ。

 

「…?そう思ってみれば、俺、料理作ったことあったっけ?」

 

「そう言われてみれば…。」

 

セラフとドミナントが首を傾げていた。ちなみに、神様は遠くからドミナントを怪しい目つきで見ていた。

 

「まぁいいや。とにかく手伝おう。」

 

「そうですね。」

 

そして、セラフとドミナントはキッチンへ行った。

 

…………

数十分後

 

「完成。」

 

料理が完成した。

 

「七面鳥なんて、どこにいたんだ…?」

 

ドミナントは目の前の料理に困惑する。明らかに存在していなかったものが出てきたからだ。

 

「裏庭に…?いや、でもお茶会の時にいなかったし…。冷凍…て訳でもなさそうだし…ブツブツ…。」

 

「?何話しているの?」

 

「あっ、いや…なんでもない。」

 

コロラドに言われたが、ドミナントは考えないことにした。

 

「えー。それでは。我々の勝利に。」

 

「「「勝利に!」」」

 

ビスマルクが杯を掲げて言う。そして、全員が楽しそうに掲げた。全員が楽しそうに食べる。遊ぶ。豪遊。

 

「我々から試験の結果を言い渡す。」

 

しばらくした後、ジナイーダが正面に立つ。その瞬間、全員が黙った。

 

「…ビスマルク以外は合格だ。」

 

全員は微妙な顔をした。だが…。

 

「ビスマルクは我々に頼った。事実だ。だが、それによって大きなものを得たのなら、それも良いのだろう。結果はそうだが、大事なのは過程でもある。結果は不合格だが…。…過程は文句なしの合格だ。」

 

ジナイーダは最後は笑顔が苦手なのか、獰猛な笑みだった。だが、嬉しいのは確かであり認めた笑顔だった。全員はそれが分かって、嬉しそうにした。

 

「?そう思ってみれば、イギリス艦は?」

 

ドミナントが辺りを見回す。

 

「「「……。」」」

 

全員が黙った。

 

「ジナイーダ、イギリス艦がいないようだけど…。」

 

「……。」

 

ジナイーダは目を逸らす。そこに…。

 

「…勝利には必ず犠牲が出る。」

 

ジャックが目を逸らさずに伝えた。

 

「……。…そうか。」

 

ドミナントが寂しそうに言った。

 

「その弔いに勝利した。今夜は彼女たちの分まで騒ぐ…それが手向だ。」

 

ジャックが言った。

 

「俺も頑張ったんだけどねぇ〜。…ま、それまでだったってことだよ〜。」

 

「主任さん。そんな言い方…。」

 

「だからこそ、俺も鍛え方が甘かったんだと思ってる。次は無いよう、努力を続ける。」

 

主任はマジで言った。セラフは気持ちが分かり、何も言わなかった。

 

『全く…ヒヤヒヤしたぞ。』

『何とか生きてたけど。』

 

だが、そんな中通信機から声がする。

 

「?こちらパラオ泊地。」

 

『やっと繋がった…。こちらイギリス艦隊。なんとか任務達成…。全員ボロボロの状態だから帰還していいかしら…?』

 

「Warspite(ウォースパイト)!?生きてたの…?」

 

『何とか。皆んな無事じゃないけど、生きて帰還できるわ。』

 

「良かった…。本当に…。」

 

『泣くのはまだ早いわよ。私たちが帰還してから泣きなさい。その泣き顔を見てみたいわ。』

 

「なら、その前に泣き止まないとね。」

 

ビスマルクとウォースパイトが軽口を叩いて通信を終えた。

 

「朗報よ!」

 

「分かってる。迎えに行くわよ。」

 

アイオワに続いて、全員が行った。

 

「…全く、上官を心配させるもんじゃない。」

 

「全くですね。」

 

「ギャハハハハハ!」

 

「私が格好つかないな。フフ…。」

 

「生きててよかったよ。本当に。」

 

「生きてるって素晴らしいからね。」

 

ドミナント御一行は行かず、窓から眺めていた。アークロイヤルを危険視しながらウォースパイトの手を握って嬉しそうにするビスマルクや、レーベとマックスと一緒に笑い合っているジャーヴィスとジェーナス。コロラドとふざけて笑っているネルソンを。

 

「君は行かないのかい?」

 

「ん〜♪」

 

ドミナントは席に座ったままのスティグロを見る。

 

「知らない人たちばかりだもん♪私が言っても興醒めだし…♪」

 

「そんなことは…。…まぁ…。否定はできんな。」

 

「ね♪」

 

「でも、ここの一員になるかもしれないんだ。失敗を恐れてばかりじゃ前へ進めない。」

 

「失敗したら?」

 

「勝ち続きの人生なんてない。失敗は必ずする。当たり前のことだけど、当たり前のことが出来ないのが人間でもあり、言葉を持つ者だ。失敗をするのが当たり前でもある。失敗の一つや二つなんだ。何度転んでも良い。何度失敗しても良い。何度負けても良い。その分、成功の糧となるから。」

 

「ふぅ〜ん♪…なら、行ってこようかな。」

 

「その一歩の勇気も大事だな。」

 

スティグロが行った。

 

「お前には似合わない台詞だな。」

 

「悪かったな。」

 

「矛盾点もあるがな。」

 

「いいんだよ。矛盾しようが。相手が理解してくれるなら。」

 

ドミナントは挨拶しているスティグロを眺めていた。そして、弄られていた。どうやら失敗を恐れず勇気を出して挨拶をした結果、成功したみたいだ。

 

…………

 

「じゃぁ、改めて…。本日の勝利とスティグロの歓迎に!」

 

ビスマルクが言って、皆んなが騒ぐ。

 

「こっちが戦ったのは巨大なイ級だったのよ。そのイ級がビームを出してきて…。」

 

「こっちは未確認の改flagshipだぞ?どれほど手強かったか…。」

 

「その後、土の壁が出てきたんだ…。」

 

「でも、それは本当の壁で、爆発する瞬間にすぐにポロポロ崩れたわ。」

 

「間一髪脱出ってやつ。」

 

「まぁ、その後5階くらいの高さだったから足が痺れて…。」

 

「お酒〜。」

 

「Pola!飲みすぎよ!」

 

「これが噂のソードフィッシュ…。」

 

「潜水艦たちは何をしていたの?」

 

「海中から捕捉してたんだけどね…。」

 

「やる前に倒されちゃったって感じ…。」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

「お姉さまー!認めてくれて嬉しかったです!」

 

「司令室も大変だったわね…。」

 

「ペンがどこか行っちゃったりね〜。」

 

「作戦はとっくに出来ていたがな。よく、自分たちだけで任務を達成したな。」

 

「「ありがとうございます。」」

 

「私では力不足と感じていたのなら、シベリア送りだな。」

 

「それはやりすぎ…。」

 

「でもこれで、みんな本当にビスマルクを信頼できるわね。」

 

「信頼は大事ですね。」

 

「「「そうですね〜。」」」

 

「ビームを出してきてだな…。」

 

「そんな奴がいたのかよ…。」

 

「私が出る幕だと思ったが、見事に沈めた。…ハンデがあったとしてもな。」

 

「そうなのか…。」

 

「ギャハハハハハ!心配させるもんじゃないね〜。キャラじゃないことは。」

 

「「「すみません。」」」

 

「スティグロっ♪一発芸やりま〜す♪」

 

「おっ。」

 

「なんだなんだ?竹を投げたぞ?」

 

「一刀両断♪風間斬り♪」

 

「は、速い…!それに、切断面も綺麗すぎる…!」

 

「恐ろしく速い太刀筋…私でなくては見逃していたな。」

 

「切る瞬間の目つき怖っ!」

 

「ん?ちょっと待て!斬撃が飛んでる!!飛んでる!!!よけろー!」

 

ズバァァァァ!!!

 

「危険人物だー!」

 

「七面鳥がぁぁぁぁ!!」

 

「まだ一口しか…。許しませんねぇ…!」

 

「ураааааа!!!」

 

ドガァァァァン!

 

「艤装持ち込むなぁ!!」

 

「硝煙の匂いが部屋に籠る!」

 

「くさーい!」

 

「kutabacchimaina(くたばっちまいな)!!!」

 

「sweet(甘い)!sweet(甘い)!」

 

「урааааа!!!」

 

ドガァァァァン!

 

「誰かガングートを止めろー!」

 

「貧弱貧弱ゥ!」

 

「ギャハハハハハ!アーハハハハハ!!!」

 

「笑ってないで協力しろ主任!!」

 

「ちょっと待て!それは私のだぞ!」

 

「速いもん勝ちっ♪」

 

「誰だー!?俺の七面鳥とったのは!?」

 

「おいしー。」

 

「お前か神様ぁ!」

 

「お酒を取り上げた仕返しだよっ!」

 

「だから、お前にはまだ早い!!永遠に禁止だ馬鹿野郎!!」

 

「きゃぁぁぁぁ!!!」

 

「「「?」」」

 

「cockroaaaaaach(ゴキブリーーーー)!!!」

 

ギャーギャーワーワー!!

 

「Don't come hereeeeeee(来るな)!!!Fire!!!!!」

 

ドガァァァァァァン!!

 

「過剰戦力!!!」

 

「逃げたぞー!」

 

「しかも外してる!!」

 

ワーワーギャーギャー…

 

食堂は今まで以上の大騒ぎになっていた。それぞれが武勇伝を語っていたところに、スティグロが放った斬撃により、大半の艦娘の料理を真っ二つ。ガングートがスティグロを捕捉するが、早いスティグロがことごとく避ける。そのうちにゴキブリが姿を現し、大混乱だ。

 

「「「……。」」」

 

ジナイーダたちは眺めていた。今も変わらずに食べ続けているのがジャック。ため息をつきながらも悪くないと思うジナイーダ。笑いこけている主任。微笑みながら、嬉しそうにするセラフ。止めようと葛藤するドミナント。ふざけだす神様。面白そうに眺めているビスマルクなど。そこに…。

 

「ураааааа!!!」

 

ドガァァァァァン!!

 

「ゴフッ!」

 

ビチャビチャ…

 

ガンガードが撃った弾がジナイーダに被弾する。それだけではない。ジナイーダの食べ物も爆風で飛び散り、ほぼ本人に…。

 

シーン…

 

艦娘たちが顔を青くして黙る。セラフは前と同じことに苦笑いをした。主任は笑えなかった。ドミナントも顔を青くした。ジャックも手を止めて横目で見る。

 

「…なるほどな…。」

 

「ジナイーダさん…。な、何がなるほどなんでしょうか…?」

 

ドミナントが恐る恐る聞く。

 

「訓練が足らんようだな!みっちり仕込んでやる!!!」

 

「逃げろーーーー!!!」

 

「Run awayyyyy(逃げろーーー)!!!」

 

ワーワー!!

 

「逃がさんぞぉぉぉ!!」

 

ジナイーダが鬼気迫る勢いで追っていく。もちろん、艦娘たちやドミナントは死に物狂いで逃げている。

 

「ふふっ。」

 

ビスマルクはその光景を見て、子供のようにくすりと笑った。

 

…………

女湯

 

「はぁ〜…。疲れたわ。」

 

「全くだ…。」

 

ビスマルクとジナイーダが言う。ちなみに、ほぼ騒いだ原因の艦娘は頭にタンコブがある。ドミナントたちは…。…まぁ、無事ではない。

 

「ビスマルクさん。少し心に余裕でも出来ましたか?」

 

セラフが、緩んだ表情をしているビスマルクに聞く。

 

「ええ。…私は復讐に囚われすぎていたわ。そのせいで、自分のわがままで同じ過ちを繰り返そうとした。けど、出てきてくれたのよ。」

 

「出てきた…?」

 

「…admiralよ。」

 

ビスマルクは微笑みながら言った。

 

「あの人、今まで夢にも出てきてくれなかったのに、本当のピンチの時に出てきてくれたわ。そして、助言をくれた…。もっとみんなに頼りなさいって。あの世でも見守ってるって。」

 

「…そうですか。」

 

ビスマルクが笑顔で言い、セラフも笑顔になる。

 

……本当みたいですね。最初に会ったときの瞳の奥はあんなに厳しくて、冷たかった。笑顔も顔だけで、心は全く笑ってなさそうだった。…でも、今は作り笑いじゃなくて、本当に嬉しそうに笑ってます。

 

セラフは心の中で思う。

 

……でも、そんな人もうちの鎮守府に一人居ましたね…。最初は本当に、機械のような作り笑顔で、仮面のようで怖かったですけど。今は本当の笑顔を見せています。

 

セラフはある人のことを考える。そこに…。

 

「イタタタタ…。何話してるの?」

 

神様がコブをさすりながら来た。

 

「admiralに会った話よ。」

 

「そうなんだ〜。」

 

神様は嬉しそうに目を細める。

 

「……。」

 

その時、ジナイーダは感じた。

 

……あれは何か知ってるな。まぁ、神なら不可能ではない…か。

 

ジナイーダは分かったが何も言わなかった。

 

「ビスマルク?のことどんな風に言ってたの?」

 

「そうね…。恥ずかしいわ…。」

 

ビスマルクは耳まで赤くなる。

 

「…一番素敵だって…。」

 

「へぇ〜。」

 

「ふふ。」

 

「……。」

 

「ヒューヒュー。」

 

「いい提督だな。」

 

「う、うるさいわね。」

 

反応は三者三様。神様はニヤニヤして、セラフは微笑んだ。ジナイーダはやれやれと呆れたような感じだ。他の艦娘たちもニヤニヤして冷やかしたりする。前までは決してそんなことしなかっただろう。ビスマルクとの距離が縮まったのだ。

 

…………

男湯

 

「「ブクブクブク…。」」

 

「…生きてるよな…?」

 

「アイルビーバック…。」

 

ドミナントと主任は仲良く風呂の湯に浮いていた。

 

…………

娯楽室

 

「あ"〜…。」

 

「お前にマッサージチェアなど必要ないだろ。」

 

ドミナントが、マッサージチェアで休んでいる神様に言う。

 

「天界でもストレス溜まるんだよ〜…。」

 

「お前、ほぼこの世界で生活してるよな?」

 

「う〜ん…。…そうだ!ドミナントも天界で暮らせばいいんだ!」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇアホ。天界なんて死んだ後だけで十分だ。」

 

ドミナントが神様に返す。

 

「てか、お前ほぼ仕事放っているけど、いいのかよ…。」

 

「ん"〜…。まずいねぇ〜…。…でも、家族に会いたくないんだよね…。」

 

「お前…。会って来い。親不孝者。」

 

「やだ〜。」

 

神様がマイペースに返す。そして、マッサージチェアから降りる。

 

「じゃぁ、ドミナントは家族に会いたいと思う?」

 

「うっ…。…そうだな…。…微妙だな…。」

 

「親不孝者。」

 

「お前、俺の過去知ってるだろ…。」

 

「そんな気持ちだよ。」

 

珍しく、ドミナントは神様に言い負かされている。

 

「…ところで、なんで会いたくないんだ?」

 

「……。」

 

ドミナントは興味から聞く。

 

「…言えない…。」

 

「…秘密ごとが多いなら、仲間ではないぞ。ましてや、それ以上の関係なんて。」

 

「…言いたくない。」

 

「…そこまでなのか?」

 

「…うん…。」

 

「なんで?」

 

「…きっと巻き込んじゃう…。」

 

「なら、心配ないな。言え。」

 

「……。」

 

「俺は日常茶飯事巻き込まれてる。同じ所属の艦娘に命狙われたり…。矢文で殺されかけたり…。他の鎮守府から勝負挑まれたり…。ジナイーダの親友に巻き込まれたり…。ここに来たり。今更一つ二つ増えようが、構わない。」

 

ドミナントがなんともなさそうに言った。

 

「…あるところに一つの国がありました。その国は強さで偉いかどうかが決まる国です。」

 

「?」

 

突然、神様が何か話し始める。

 

「その国に一つの家族がいました。二人の子供がいる家族です。二人のうち一人はすごく優秀で、強い子です。周りから尊敬され、親はより高い地位になれると大喜びです。もう一人は、戦いを好まず、腕試しとは無縁に細々と暮らすことを願っていました。」

 

神様は話し始める。

 

「ですが、その子は周りの子から虐められました。一度も戦ったことの無い理由で。」

 

「……。」

 

「その子は泣きながら家に帰りました。ですが、親は何一つ優しい言葉をかけませんでした。それどころか、戦ったことがないことを嘆いて、蔑ろにしました。日々、その子を見るたびに『いなければ良いのに。』と言います。」

 

「…お前…。」

 

「その子は悲しみました。ですが、誰も助けてくれる人はいませんでした。そのうちに、その子はいつの日か消えてしまいました。」

 

「……。」

 

「こうして、その家族は地位を脅かす子供の一人が消えて、偉くなって幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」

 

神様が話し終わった。

 

「…そうか。」

 

ドミナントは何となく伝わった。

 

「神様、ちょっとこっちこい。」

 

「?」

 

スッ

 

ドミナントは神様の頭を撫でた。

 

「…すまん。嫌な思い出だったな…。」

 

「…別にいいよ。」

 

「…親の件では似ているから、共感が持てるんだよ…。」

 

「…知ってる…。」

 

ドミナントは神様の頭を撫でた。そして、背中をさすったりする。

 

「…そんな親俺は大嫌いだ。…安心しろ。例え天界へ連れてかれても、俺が必ず守る。」

 

「……。」

 

「?どうした?そんな顔して。」

 

ドミナントは自分が何を言ったか理解していない。神様はキョトンとしている。

 

「ドミナント…。お前…。」

 

ジナイーダが出てきた。

 

「?ジナイーダ、聞いていたのか。何かおかしいこと言ったか?」

 

「…聞き耳を立てている艦娘たちに聞いてみろ。」

 

ガチャ

 

ドバーー…

 

ジナイーダがドアを開けると、雪崩のように艦娘たちが出てきた。

 

「あっ、いや…。その…。」

 

「べ、別に何も聞いてないわよ。」

 

「いや〜♪あんなストレートなこと言うんだ〜♪」

 

「シッ!」

 

「気になって…。」

 

艦娘たちは気まずい感じだ。

 

「俺は何か変なことでも言ったのか?」

 

ドミナントが聞く。

 

「…どうやら、本当に理解してないみたいね…。」

 

「なんだ、てっきりあんな関係かと…。」

 

「驚いた…。」

 

「まぁ、そうよね。そんな度胸ないものね。」

 

「なんなんだよ…。こいつら…。」

 

艦娘たちが呆れながら言う。

 

「ドミナントさん。」

 

「うぉっ!?…びっくりしたなぁ…。どこから出てきた…?」

 

セラフがいつの間にか背後にいた。

 

「そんなのどうでも良いです。それより、本当に理解してないんですか?」

 

「あ、ああ…。」

 

セラフがズイズイ近づき、ドミナントも回答に困惑する。

 

「実は…。」

 

ゴニョゴニョ…

 

セラフが耳打ちする。

 

「いや、俺は…。…おん。…うん?…は?…え?えぇ!?マジで!?俺そんなこと言ったの!?」

 

うんうん

 

セラフたちがうなずく。

 

「あー…神様…。違うぞ?これは告白的なものではなくてな…。覚悟のあれだ。」

 

「……。」

 

「神様ー?…?神様?」

 

ドミナントが触れる。

 

ドサッ

 

神様はその顔、その姿勢のまま気を失っていた。破壊力が強すぎたらしい。

 

「ヒューヒュー。」

 

「待て!誤解だ!そんな盛り上げるな艦娘!俺はハーレムを望まない!」

 

ドミナントがそう言って、背負ってベッドで寝かせるのだった。

 

…………

 

「偉い目に合った…。」

 

神様をベッドへ入らせた後(ジナイーダたちと同じ部屋なので、許可を取った)、ドミナントがものお…自室に戻る。が。

 

「…部屋の前に誰かいるな…。」

 

一人の艦娘が立っていたのだ。

 

「…ビスマルクさんじゃありませんか。」

 

「大佐。」

 

ビスマルクだった。

 

「どうかしたんですか?主任が何かやらかしましたか…?」

 

「いえ、違うわ。」

 

キッパリとビスマルクが返した。

 

「実は、折り入って相談が…。」

 

「?」

 

「ここではアレだから、執務室で…。」

 

…………

執務室

 

「で、なにか御用で…?」

 

「その…。」

 

ビスマルクが言葉を詰まらせる。

 

……まさか、愛の告白とかやめてよ?俺、本当に死神が見えそうになってるから。…最近、視界の隅に鎌が見えたりする恐怖現象が起こってるから、マジで勘弁して…。

 

ドミナントが怖いことを思っていたが…。

 

「…ちょっと深呼吸させて。」

 

「お、おう…。」

 

ビスマルクが深呼吸する。ドミナントは焦らしに焦らされている。

 

「…あなたに大切なお話があるの。」

 

「……。」

 

「あなたに…。…このパラオ泊地の提督をやってもらえないかしら。」

 

「…は?」

 

ドミナントは突然言われて困惑の極みだ。

 

「…いや、あの…。俺、第4佐世保の提督ですよ?忘れられているかもしれませんが…。」

 

「知ってるわ。」

 

「…あの…話が見えてきません…。」

 

ドミナントが困った。本気で困った。

 

「…ここに所属する艦娘たちは人間の提督に焦がれていることは知ってるわよね?」

 

「知ってます。というより、それなら他に適任いますよね?」

 

「いないわ。」

 

「何故!?」

 

「あなたほどここの艦娘たちに認めてもらわれている人間?の提督はいないからよ。」

 

「…ジャックは?」

 

「確かに、彼も良い才能を持ってるわ。…でも、彼はあなたと違う。」

 

「……。」

 

「あなたは元の所属していた提督に似ている。既に大半の艦娘たちの支持を得ているわ。」

 

「なんでよ?」

 

「多分、心の奥底まで艦娘のことを思ってるからじゃないかしら。まぁ、行きすぎて馬鹿みたいになったりするけど。」

 

「褒めているのか馬鹿にしているのか…。」

 

「両方よ。」

 

ビスマルクは少し微笑みながら言う。やはり、前より笑顔が増えていた。

 

「…俺には第4佐世保があります。それに、もしそのことを承諾したら帰れませんよね?ここは本土より随分遠いんですから…。」

 

「まぁ…。…そうね。」

 

二人が真剣な表情で言う。

 

「…俺にとって、第4佐世保は家みたいなものなんです。俺の帰りを待っている子たちもいます。」

 

「そうよね。」

 

ビスマルクはドミナントの言葉を聞いている。

 

「…ですから…。その…。」

 

「…そう。わかったわ。」

 

ビスマルクが立ち上がる。

 

「なら、既成事実を作れば良いのよね。」

 

「…えっ?」

 

ビスマルクがドミナントの目の前まで来た。

 

「私は、欲しいものがあったらどんなことをしてでも手に入れるのよ?」

 

「いや、あの…違いますよね?」

 

「いいえ?本気よ?」

 

「いくら艦娘のことを思っていたとしても、それとこれとは別ですよ!?」

 

「そうかもしれないわね。でも、引く気はないわ。」

 

ビスマルクは止まらない。そして顔が近づき…。

 

「…判子あるかしら?」

 

「ぐぐ…へっ?」

 

ビスマルクが突然言い出す。

 

「…いえ、ありませんけど…。」

 

「そう…。なら作れないわね…。」

 

ビスマルクが残念そうに椅子に座る。

 

「…何をさせるつもりだったんですか…?」

 

「ん〜?いや、判子があれば契約書を書いてもらうつもりだったのよ。」

 

「契約書って…。どれですか?」

 

ドミナントは書かされていたであろう契約書の内容を見る。

 

「…これだけ?」

 

「そうよ。」

 

ドミナントが言い、ビスマルクがため息混じりに言う。

 

「あなたの意見が一番大事だもの。帰りたいなら、止めないわ。」

 

「そうですか…。」

 

「でも!ここの艦娘たちのことを思って、月に一度や二度訪れなさい!」

 

「それは厳しいけど…。なるべく努力はします…。てか、契約書の内容をどうも。」

 

そう、その契約書は月に何回か来ることだった。

 

「…まぁ、そのために私たちが行儀を良くしたりしたんだけどね…。」

 

「あの時のマナーはそのためだったのか…。」

 

ドミナントが呆れた。すると…。

 

コンコンガチャ

 

「ビスマルクお姉さま…。」

 

「あら。プリンツ。どうしたの?」

 

プリンツオイゲンが可愛らしく顔をちょこんと出してきた。だが、ドミナントは一瞥しただけですぐに向き直る。関係がないことには首を突っ込まないようにしようとしたからだ。だが…。

 

「この虫を拾ったんですけど…。新種の気がします…。」

 

「新種?」

 

「…虫?」

 

ドミナントが気になって、覗く。そこにいたのは…。

 

「……。」

 

AMIDA。

 

「…ん?」

 

だが、ドミナントが気づいたのはそれだけではなかった。

 

「おま…。神様のAMIDAか…?」

 

ドミナントがその虫に呼びかける。ビスマルクたちは虫に話しているドミナントを神妙な顔して見ていた。

 

「あぁ、失礼。この虫は神様のペットでして。」

 

「え、ええ…。そうなの…。」

 

「へ、へぇ…。」

 

二人はそう言う意味ではないと言い出そうな顔だ。

 

「…AMIDA?…お前傷だらけじゃないか。どうしたんだ?」

 

ドミナントがAMIDAを手に持つ。ぐったりして弱りきっていた。

 

「…まさか…。」

 

ドミナントは自分の鎮守府に電話した。が。

 

「…誰も出ない…。嫌な予感がする…。」

 

ドミナントはすぐにAMIDAを安静にさせるように提督帽の中に綿を敷いて入れた。

 

「ビスマルクさん…。すみませんが、自分たちはもう帰ります。」

 

「もう?」

 

「はい。仲間も引き連れて…。」

 

「…わかったわ。」

 

ビスマルクはドミナントの真剣な表情を見て、了承した。

 

「ありがとうございます。あと、放送させてくれませんか?」

 

「どうぞ。勝手に使って。」

 

「ありがとうございます!また今度来ます!」

 

ドミナントはお礼と一言言った後に、風のように出て行った。

 

「…何かあったのかな?」

 

「プリンツ。」

 

「はい。お姉さま。」

 

「…急いで大佐の帰れる支度をしてあげなさい。」

 

「…わかりました。」

 

ビスマルクの真剣な表情を見て、プリンツは従った。

 

…………

鎮守府 出撃場

 

「すまない。遊んでいる最中に。」

 

ドミナントが言う。ほぼ全員が楽しんでいたところを呼んだからだ。

 

「別に良い。それより、余程大層なことなんだろう?お前があんな大慌てで呼び出すことなどないからな。」

 

「そうですね。」

 

ジナイーダとセラフが言う。

 

「…鎮守府の電話に誰も出ないんだ…。」

 

「……。…張り倒すぞ?」

 

「いや!本当に大変なんだって!」

 

ジナイーダが疑いの目で見てきて、ドミナントが返す。

 

「…そうだな。確かに重大かも知れん。」

 

ジャックが言う。

 

「何故ですか?」

 

「…ドミナントは長門に託したと言ったな。鎮守府のことを。」

 

「ああ。」

 

「あのしっかりした長門が電話に出ないなんてことがあると思うか?」

 

「…あり得ませんね…。」

 

「…つまり、よほど大変なことが起きている可能性があるわけだ。」

 

ジャックがセラフに説明した。

 

「それより、行くぞ!」

 

「神様はどうするんだ?」

 

ジナイーダが聞く。

 

「…荷物の中に入れろ。そうやってきたんだからな。」

 

「…わかった。」

 

ジナイーダは寝ている神様を優しく入れてあげた。

 

「行くぞ!」

 

そして、大急ぎで帰って行った。パラオ泊地所属の艦娘たちは帰っていくドミナントたちを見て、敬礼をしていた。




ここで切ります。長い…。10000字いきました…。
ダク 楔石の原盤…ドロップ率何%だ…?

登場人物紹介コーナー
七面鳥…瑞鶴が怒ります。鶏肉。アメリカではお祝いの時などに振る舞われる料理。他の国の料理もあったが、名前が分かるのはこれくらいだ。

次回181話「第4佐世保襲撃」です。


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陸軍編
181話 第4佐世保襲撃


やっと陸軍編だ…。
「やっと帰ってくるのね…。」
ドミナントたちにとっては、本当に面倒ごとですよ。
「話がストックしてあるから、適切なタイトルもつけられるわね。」
そうなんだよ。前はちょくちょくタイトル変えていたけど、なんとかなりそう…。
「良かったわね。」
本当だよ。…て、あらすじどうぞ。
「この人…うわ…。」
「…ここはどこだ。」
赤いマスクをした憲兵だね。
「目以外何も表情も顔も見えないじゃない…。それに、本当に真っ赤なかぶるようなマスクね…。気持ち悪い…。」
「娘、言葉に気をつけろ。私は九人の清浄委員の一人なのだぞ。」
「何よそれ。」
まぁまぁ…。二人とも落ち着いて…。
「何よ!」
「なんだ?」
…二人に睨まれた…。まぁまぁ…。あらすじやって?そうすれば、すぐにいなくなるし、出れるから…。
「…わかったわ。」
「ここから出れるのならそうしよう。」

あらすじ
私はとある街から来た。首席がいなくなり、どうするものかと考えていたらここにいた。そのうちにいつの間にかこの地位にいた。前回、汚い者がいたから処罰を下そうとしたが止められた。我々は至ってフェアだ。多数決によって、私の処罰はするか否かが決まる。大抵の場合は否だ。…次は動物に遭遇せねば良いが…。


…………

 

「森崎少将…。」

 

あきつ丸が森の中を彷徨う。

 

「何故いきなり…。」

 

実は、数週間森の中でサバイバルしていた。時はドミナントたちが旅行に行っていた時に遡る。

 

…………

ヘリの中

 

「…聞いていた話と違うであります…。」

 

「…そうか。」

 

ヘリの中で二人が話す。そのうち…。

 

『ザ…ザザー…。』

 

「?」

 

通信機から音がして、森崎少将が通信に答えた。

 

「…はい。…はい。…いいえ。…はい。…わかりました…。」

 

「?」

 

そして、森崎少将が通信機を戻す。

 

「どうかしたんでありますか?」

 

「……。」

 

あきつ丸が聞いてきたが、何も言わない。

 

「…そうだ。あきつ丸、そのパラシュートをこっちに持ってきてくれ。」

 

「?これでありますか?」

 

「そうだ。」

 

森崎少将がヘリを自動操縦に切り替えて、ドアを開けながら言う。

 

「持ってきたであります。」

 

「ありがとう。…ヘリの側面に何か挟まっている。見てくれないか?」

 

「?」

 

あきつ丸が身を乗り出したところを…。

 

トンッ

 

「!?」

 

「……。」

 

背中を押した。あきつ丸はパラシュートを持ったまま落ちる。

 

「何故…でありますか…?」

 

「……。」

 

あきつ丸が最後に見た表情は苦虫を噛み潰したような難しい顔をした森崎少将だった。

 

…………

 

「……。着いたであります…。」

 

あきつ丸は隠された陸軍の基地についた。

 

「…このまま帰ったら、まるゆが…。…潜入でありますね…。」

 

あきつ丸は森の中にある基地に潜入した。

 

…………

一方、第4佐世保鎮守府

 

「「「……。」」」

 

ジナイーダたちは言葉を失った。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁ!?」

 

ドミナントは頭を抱えながら叫ぶ。そこは酷いもんだった。鎮守府は瓦礫の山と化し、倉庫は焼け焦げた跡になっていた。その他建物は全て破壊されていた。それだけではない。艦娘たちまで倒れていたりするのだ。

 

「…襲撃か。」

 

ジャックは第4佐世保鎮守府跡地を歩く。そして、生死不明の艦娘の息を確かめた。

 

「…生きている。だが、随分経ったあとだ。遅くて3日前だ。」

 

ジャックが立ち止まったままのドミナントたちに言う。

 

「早く入渠させろ。さもなくば死ぬぞ。」

 

短い一言を言ったあと、ジャックは跡地を進んで行った。

 

「ドミナント。目を覚ませ。行くぞ。」

 

「行きますよ。」

 

「……。」

 

ドミナント以外はすぐに行動した。すると…。

 

ポンッ

 

「やっとでれ…えぇ!?」

 

神様が出てきた早々驚く。まぁ、自分の家が崩壊していたらそうなるだろう。

 

「何…ここ…?…とにかく、助けなくちゃね…。」

 

神様が歩いて行った。

 

「そうだな…。」

 

ドミナントが今は怒りを引っ込めて、助けることに専念する。すると…。

 

ムズムズ…

 

「?」

 

荷物がまだ動いていた。

 

ポンッ

 

「ここが第4佐世保鎮守府♪…て、こんなところなの…?」

 

「スティグロ!?」

 

スティグロがついてきていたのだ。

 

「あそこの提督が心配していて、“着いて行って”って♪」

 

「…そうか。なら、倒れている艦娘たちを入渠させてくれ。」

 

「わかった♪」

 

スティグロが物凄い速さで行った。すると…。

 

「…提督…か?」

 

「その声は長…門……?」

 

「そうだ…。」

 

ドミナントの前に長門が現れたが、ドミナントはショックすぎたようだ。

 

「…お前…。…右腕は…?左足は…?」

 

「……。」

 

長門の右腕と左足が無いのだ。全身も赤く、血だらけだ。松葉杖の代わりに棒を片手に持っている。

 

「…鎮守府を守れなくて…すまない…。」

 

長門は悔し泣きしながら謝ってきた。

 

「そんなのどうでも良い!その怪我は入渠すれば治るんだよな!?俺はお前のことが心配だ!」

 

ドミナントが怒鳴りながら言う。

 

「…治る。だが、私よりも先に全員に入ってもらう。…罰は受ける…。この責任は任された私にある…。」

 

「責任!?責任だと!?この場で言うものなのか!?この場で責めるものなのか!?違うだろ!今は助けたり、治したりするのが先だろう!お前も重傷者だ!罰もクソもあるか!さっさと入渠しろ!」

 

ドミナントが一喝入れた。そこに…。

 

「こっちの瓦礫の下にいたわ!」

 

「こっちもよ!」

 

「こっちもや!」

 

遠くから、瑞鶴と五十鈴と龍驤の声がする。三人は捜索しているのだ。瓦礫に埋まっている艦娘を。

 

「…早く入れ。あとは俺たちがなんとかする。バケツ(高速修復剤)は無制限に使え。」

 

「…わかった…。」

 

「…長門。」

 

「?」

 

「…何日も留守にしてすまなかった…。」

 

「連絡をしなかった私が悪い…。気にするな…。」

 

「…長門…。…お前に傷痕が残ったら、俺が引き取る。永遠に共にいる。約束する。」

 

「ブフッ!?ゴホッゴホッ…!」

 

長門が咳き込む。

 

「こんな時にそんなこと言うな…!苦しい…!」

 

「お、おぉ…。すまん…。」

 

長門が怒りながらも、内心めちゃくちゃ喜びながらも歩いて行った。

 

「…提督さん!」

 

「帰ってきた。お前たちも傷だらけじゃないか。さっさと入渠しろ。」

 

「けど、まだ沢山の子が埋まってるの。動ける艦娘は全員協力してる。だから、重傷者を先にしているの。」

 

「そうか。わかった。…どうしてこうなったんだ?」

 

ドミナントが瑞鶴に聞く。

 

「それは…。」

 

…………

時は遡ること3日前

 

「今日も暇ね〜。」

 

「そうね。」

 

外をのんびり散歩する瑞鶴と翔鶴。

 

「あと3日後にはうるさい提督さん達も帰ってくるのよね。」

 

「そんなことを言っちゃダメよ?瑞鶴。」

 

「でも…。…翔鶴姉もうるさいって思うでしょ?」

 

「…教官はうるさいですね。」

 

「でしょ?」

 

散歩しながら、そんなことを話していると…。

 

バラバラバラバラ…!

 

「「?」」

 

黒いヘリが頭上を通る。

 

「こんなところを通るのは初めてね。」

 

瑞鶴の言う通り、ここは誰にも知られていない(設定の)鎮守府。航空機などが通るはずがないのだ。と、なれば必然…。

 

「あれが飛行機ってやつか。」

 

「違うわよ。あれは『へりこぷたー』って言う乗り物よ。」

 

「はじめて見るのです。」

 

「空を飛んでる!」

 

艦娘たちも珍しがって窓から見たり外に出てきたりする。だが…。

 

シュー…ピピピピピ…

 

ヘリコプターが空中で止まり、睨み付けるかのように鎮守府を見ていた。

 

「…あれまずくない?」

 

「「「?」」」

 

不明なものとの戦闘経験が豊富な瑞鶴は何かに気づいたみたいだ。

 

パシュゥ!!

 

「「「!?」」」

 

ドガァァァァン!

 

「攻撃してきた!?」

 

「なんで!?」

 

ミサイルを発射してきたのだ。

 

「大丈夫!?」

 

「う…ん…。」

 

「うー…。」

 

いきなりのことで身体が追いつかなかった艦娘たちが倒れている。

 

……あいつ…鎮守府建物を狙った…!

 

瑞鶴は倒れている子たちをおぶって、安全なところに運びながら思う。

 

「…大丈夫…?」

 

「はぁ…はぁ…。」

 

破片が腹に突き刺さって、目の縁に涙が溜まり、苦痛の表情を浮かべる駆逐艦。

 

「…許せない…!」

 

「どこ行くの!?」

 

「決まってるでしょ!?あれを落としに行くのよ!」

 

瑞鶴が翔鶴の言葉に返したあと、弓を持って走って行った。

 

…………

 

「発艦始め!」

 

瑞鶴は崩れかけている鎮守府の横に立ち、艦載機を飛ばす。

 

ガガガガガガガ…!

 

ヘリに攻撃したが…。

 

シュゥゥゥ…

 

「硬い!?」

 

ヘリにダメージを与えられなかった。その時…。

 

「!?」

 

ヒュンッ!

 

何かが瑞鶴の真横を通り過ぎた。

 

ダァァァァァン

 

「この音は…狙撃!?」

 

瑞鶴はすぐに建物に隠れる。

 

……音が遅れてきた…。つまり、相当遠く…。

 

そんなことを思っていると…。

 

「後ろがガラ空きだ。」

 

「!?」

 

何者かが瑞鶴の背後をとっていた。

 

ドゥン!

 

その者が散弾銃を至近距離で使ってきた。

 

「くっ…!」

 

瑞鶴は経験を活用して被害を最小限にする。

 

「あんたたち…なんなの!?なんのつもり!?」

 

瑞鶴が叫ぶ。今も攻撃は続いていた。

 

「…俺たちは陸軍のもんだ。俺たちがあることを成し遂げるには邪魔でしかないお前たちを消すんだ。」

 

「ふざけないで!」

 

「ふざけてなどいない。現に今も攻撃を続けている。」

 

その者が周りを見る。ヘリのガトリングなどで悲鳴を上げて逃げる艦娘たち。狙撃されて苦しそうに膝をつく艦娘たち。鎮守府が崩れて、中で助けを求める艦娘たち。

 

「…お前たちの上司がいないのは確認済みだ。」

 

「…どうして…!」

 

「海軍の中では噂になってるぞ?」

 

「あんた…海軍の…!」

 

瑞鶴が怒りをあらわにするが…。

 

「すまんが…これも任務のためだ。」

 

「!?」

 

トンっ!

 

ドサッ

 

瑞鶴が最後に振り向いて見たのが、刀を持った陸軍の者だった。

 

「殺さなくても良いだろう。」

 

「殺した方が確実だぞ?」

 

「気を失わせればそれで十分だ。」

 

「森崎少将は優しいな。ははは。」

 

…………

 

「こんなことよ…。」

 

「…陸軍か…!」

 

ドミナントは瓦礫をどかしながら怒りながら言う。

 

「どかした瓦礫は何もないところに置いた瓦礫と一緒に一ヶ所に置いて。」

 

「わかった…。」

 

ドミナントたちはどんどん瓦礫を積み上げていく。

 

「…名取が重傷者を運んで今入渠させてるから。これから動ける艦娘たちがどんどん出てくるわ。全て終わったら、行きなさい。」

 

「…わかった。」

 

瑞鶴に言われて了承するドミナント。そのうちに、沢山の艦娘たちが復活していった。

 

…………

 

「随分と助けたな。」

 

「あと数人ってところね。」

 

周りには沢山の艦娘たちが働いている。

 

「それにしても…ジナイーダたちはどこに行ったんだ…?」

 

ドミナントが倉庫跡に行った。

 

…………

 

「セラフー?セラフ?」

 

ドミナントが見つける。

 

「……。」

 

セラフは一点を見つめていた。ドミナントが見る。

 

「…夕張…。」

 

「夕張さん…。」

 

片腕を失った夕張が倒れていたのだ。

 

「夕張が倒れているぞー!」

 

大声で言った後、向き直る。セラフは滅多に怒らないが、この時だけは怒りを露わにしていた。

 

『このネジを巻けばいいんですか?』

 

『この本は宝物なのでダメです!』

 

『えへへ。やりました!』

 

セラフの頭の中では思い出があった。

 

「…技術者の命でもある腕を切断するなんて…!」

 

ギリ…

 

セラフが歯を食いしばる。

 

「…セラフ…?」

 

ドミナントは見た。セラフの目が赤色に変わっていた。その時、ドミナントにも寒気が走った。

 

「…すみません…。今は話しかけないでください…。」

 

セラフが一言言った跡、倉庫の奥に消えて行った。夕張は艦娘たちに運ばれて行った。

 

…………

 

「ジャック?」

 

次はジャックを探して鎮守府跡を歩いていた。

 

「……。」

 

ジャックも一点を見つめていた。

 

「…加賀?」

 

加賀だ。だが、座ったまま動かない。

 

「…?この声は提督…?」

 

加賀がキョロキョロ見回す。

 

「ここだ。…え?」

 

加賀がゆっくりと手を動かしながら辺りを確認していた。

 

「…まさか、目を…。」

 

「…ああ。」

 

ジャックが酷く冷たく答えた。

 

『ジャックさん。また商品の開発ですか?』

 

『私にはジャックさんの笑顔も確認できます。』

 

『…その…。…このままいてくれませんか?』

 

ジャックは加賀と過ごした日々を振り返っていた。

 

「…ドミナント。加賀ことは任せた。…目を潰すとはな…。」

 

「ジャック?」

 

「復讐など…。あまり趣味ではないが…な。」

 

ジャックはどこか歩いて行った。

 

…………

 

「主任ー?」

 

「ここだよ〜。」

 

主任はすぐに返事してくれた。

 

「この子、早く入渠させてあげて〜。」

 

主任がマイペースに言ってきた。

 

「俺は他の子を助けなくちゃいけないから〜。よろしくっ!」

 

そして、主任が次の場所へと行った。

 

「主任はマイペースだな。…ん?」

 

ドミナントがその子を見る。

 

「…三日月?最初の四人の…。」

 

三日月を託されたのだ。

 

「…足がない…。クソっ…陸軍の野郎…!…それにしても、主任に二度も忘れられるなんて可哀想だな…。」

 

ドミナントは自分のことを棚に上げながら思う。

 

……ん?いや。よくよく考えたらおかしい…。主任が託してきた子が何故最初に三日月なんだ?時間があったから他にも見つけてきたはずだ。それに、笑ってなかったな…。俺に託したあと直ぐに行ったし…。…まぁ、このことは主任しかわからないか…。

 

ドミナントがそんなことを思う。

 

『皆んなを守りたいんです!』

 

『こうするんですか?…凄い!当たりました!』

 

『これ…どうぞ!』

 

「…考えるもんじゃないね〜。キャラじゃないことは。…艦娘の命でもある足を失くさせたこと…後悔させようじゃないか。」

 

主任は捜索しながら呟いた。

 

…………

 

「ジナイーダ?」

 

「ドミナント…。」

 

ジナイーダは立っていただけだった。

 

「…この紙を見ろ。」

 

「どれ?」

 

…………

 

吹雪は預かった。

取り戻したければこの場所へ来い。

 

…………

 

「地図もある。」

 

「…クソめ…。」

 

ドミナントは冷たく呟いた。

 

「奴ら…皆殺しだ…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「い…かん…さん…。」

 

「!?」

 

近くの瓦礫から声がした。

 

「今助ける!」

 

ドミナントが瓦礫を持ち上げて退かした。

 

「電!」

 

電がいたのだ。あんな小さな身体にガラスの破片などが突き刺さった挙句、瓦礫の下敷きになっていたのだ。無事でないのは明らかだ。

 

「司令…官…さん…。」

 

それでも、電はドミナントを呼び続ける。

 

「なんだ、電…。」

 

電の手を握りながらドミナントが聞く。

 

「…殺しちゃ…ダメ…なのです…。」

 

「だが…。…お前を…お前たちをこんなにした奴らなんだぞ…!生かしては…。」

 

「ダメ…なのです…。」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言えなかった。言えるはずがなかった。自分が重症以上で、死の淵を彷徨っているのにも関わらず、こんなことをした張本人に慈悲をあげているのだ。その状態での望みを誰が踏みにじれるものか…。少なくとも、ドミナントは踏みにじることが出来ない。

 

「…わかった。」

 

ドミナントが我慢した感じで了承した。ジナイーダもその承諾に異論は言えなさそうだ。

 

「…ジナイーダ、少し待ってくれ。」

 

「……。」

 

そして、ドミナントが歩いていく。

 

「ガァァァァァァァ!!!」

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

深海棲艦ではない。ドミナントが瓦礫の山をAC化して砕いたのだ。巨大なコンクリートも手で砕いた。

 

パラパラパラ…。

 

「…これで少しは気が済んだか?」

 

「…ああ。」

 

ジナイーダが言い、ドミナントが返した。そして、電を入渠させた。夜はまだまだ長い。

 

…………

 

「…全員、準備は出来たか…?」

 

ドミナントがジナイーダたちに言う。

 

「…今から復讐しに行く。俺たちは世間では極秘だ。AC化してはダメだ。AC化して見られたら殺さなくてはいけなくなる。…さっき、電が殺して欲しくないと言った。瀕死の状態で相手に慈悲をあげたんだ。…それを守らなくては上官である俺たちが廃る。なんとしてでも守れ。武器は各自各々が持参しろ。」

 

「わかった。」

 

「はい…。」

 

「ふむ。」

 

「…わかったよ〜。」

 

ジナイーダたちが了承した。

 

「行くぞ!」




ここで終わり。ストックの出来てる話とは遠い…。
ダク 1周目でレベル200になった…。

登場人物紹介コーナー
特になし

「長門コーナーだ…。」
いや、長門さん…。その状態では流石に無理ですよ…。
「ここぐらいしか私の出番がないんだ…!」
いやいや…。死ぬよ?マジで。
「何としてでも私はこのコーナーをやるぞ…!」
次回にやってください。その執念は素晴らしいけど…。ブチギリしますよ?
「今回のゲ…。」

次回、第182話「陸軍潜入」です。


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182話 陸軍潜入

182話…。残り18話か…。長いなぁ…。
「それが終わったら、どうなるのかしら…?」
予定通り、100くらいゆるゆるで行くよー。戦いとは全く無縁の。
「へ〜そうなんだ。」
楽しむのを見るのも、少しほっこりするからね。
「…そうね。」
元々、この小説はバトルが多くなるような気がしたんだけどね。最初は300話までの予定だったんだけど、100話超えたあたりから新キャラ案も出てね…。周りの鎮守府は何をしているんだろう?とか。100〜200話までに全ての鎮守府を出す予定だったんだけど、全て複雑すぎて収まらなくなった。
「そんなに複雑なの…?」
そうだよ。だって、考えてみなよ。この世界の提督たちはイレギュラーばかりだから。第4呉鎮守府や第2舞鶴鎮守府があるじゃん。それに、まだ大湊警備府の秘密もあるし。
「複雑すぎるわね…。打ち切りになったらどうするの?」
その時は公開せず、このアカウントの中だけに保存する。だって、これは俺得もとい、筆者得の物語だもの。好きな時に読むことができる。俺のものだ…!俺だけのものだ…!
「見たい人がいるかもしれないじゃない…。」
いたら良いんだけどねぇ…。と、そろそろあらすじカモン。
「カモン…。…この人よ。」
シューコー…
『ここは?』
「筆者の部屋へようこそ。」
歓迎しよう。盛大にな。
シューコー…
『ふむ…。…何か用なのか?』
「あらすじをやってくれないかしら?」
頼んだよ。赤いレンズのガスマスク憲兵。
シューコー…
『なるほど。』

あらすじ
そうだな…。前回は…。……。…基地を取り締まった。この世界はまだ平和そうだ。なによりもまず、目的を達成する。その成果において私は一度の失敗もない。このチームは生存率が高く、何事においても生き残りそうだ。…死神はいるが。


…………

第4佐世保鎮守府前

 

「ちょっと待ってろよ。お前ら…。」

 

ドミナントが呟く。

 

「こんな目に合わせた陸軍をぶっ壊してくるからな。」

 

そして、ドミナントたちが陸軍基地に向かって歩き出した。

 

…………

陸軍基地前

 

「ん?なんだあれは。」

 

警備の一人が雰囲気の違う、歩いてくる五人を見つける。

 

「こちら、ゲート1、不審な者たちを発見。話を聞いてくる。」

 

『了解。』

 

…………

門近く警備小屋

 

「どうした?」

 

「何か不審者を発見したらしい。」

 

「そうか。まぁ、迷ってきたのだろう。一般人がここに用があるわけないしな。」

 

「それに、反乱分子だとしてもこっちには武器もある。それに、俺たちは警備だ。侵入させないための警備。ただの警備員じゃない。」

 

「それもそうだな。」

 

二人の警備長が笑っていると…。

 

バッキャァァァ!

 

「ぐぁ…。」

 

「「!?」」

 

警備員の一人が壁から出てくる。

 

「警備長…あいつら…人間じゃありま…せん…。」

 

「なんだと?」

 

二人が見る。そこにいたのはドミナントたちだった。

 

「…殺してないだろうな…?」

 

「そういう約束だ…。」

 

吹っ飛ばしたのはジナイーダらしい。殺してはいないが、重症だ。

 

「あの子たちに比べるとまだまだ軽い傷ですね。」

 

セラフはゴミを見るような目だ。

 

「本部に連絡しろ!」

 

「了解!」

 

一人が通信する。

 

『こちら本部、陸田だ。』

 

応答がはいる。

 

「こちら第一ゲート!」

 

「ここは俺が引きつけ…。」

 

バキャァァァ!

 

ガシャァァァン!

 

「こちら侵入者を確認!助け…。」

 

ドガァァァァン!

 

『…侵入者か。おそらく第4佐世保だな。くっくっく…。わかった。』

 

「お前が司令官か…。」

 

『?誰だ?』

 

「俺は第4佐世保鎮守府提督、ドミナントだ。」

 

『そこにいた奴はどうした?』

 

「さぁな。おそらく…無事ではあるまい。」

 

『クックック…。声に怒りを感じるな。襲撃したことに対してか?まぁ、それ以外にないがな。』

 

「てめぇ…。今どこにいる?今から乗り込んで地獄を見せてやる…。」

 

『言うと思うか?それに、こっちにはお前の艦娘がいる。』

 

「…吹雪か。」

 

『吹雪というのか?』

 

「何もしてねぇだろうな…?」

 

『さぁな…。ただ…。』

 

「…?」

 

『悲鳴は上手に上げるのだなぁ。』

 

「てめぇ…。」

 

『クックック…。早く来た方が良いんじゃないか?まぁ、遅いかもしれんがな。』

 

「ぶっ殺す…!必ず殺してやる…!」

 

『おー怖い怖い。くっくっく…。楽しみに待ってるよ。来れればだかな。』

 

プッ

 

通信を切られた。

 

「ガァァァァァァ!」

 

ドガァァァァァァン!!!

 

ドミナントが小屋を破壊した。

 

「「「……。」」」

 

ジナイーダたちが黙っていた。会話はしっかりと聞こえている。

 

「…ドミナントさん…。」

 

「なんだ…?」

 

ギロリ…

 

セラフが声をかけてきたが、ドミナントが睨む。

 

「……。」

 

セラフは普段のドミナントがするはずがない、冷たすぎる瞳に一瞬言葉が詰まったが…。

 

ポン…

 

「助けましょう?吹雪さんを。」

 

セラフは肩を優しく叩いて言った。

 

「……。」

 

ドミナントは見た。少しだけ恐怖で震えているセラフの瞳を。

 

「…そうだな。」

 

ドミナントが一回深呼吸した。怒りが少し収まった。

 

ポン…

 

「…殺さず…だぞ。」

 

ジナイーダも、もう片方の肩を叩いて言ってきた。

 

「我々もいる。少し落ち着け。敵地で騒ぐのは馬鹿だぞ。」

 

「ま、そうなるのもわかるけどね〜。」

 

ジャックたちも言う。ドミナントがキレかけたことはあったが、こんなにも怒り状態なのは初めてだった。

 

「それに、騒いで暴れ回ればキリがない。あくまでも潜入だ。吹雪を奪還して、殺さずにけじめをつけさせて帰る。それだけだ。」

 

ジャックが落ち着いて言う。

 

「…そうだな。」

 

ドミナントも落ち着きを取り戻す。そこに…。

 

「皆さん…。その…。」

 

「「「?」」」

 

セラフが突然言い出す。

 

「これ…よかったらどうぞ…。」

 

セラフから渡されたのは…糸だ。

 

「糸…?」

 

「武器です。」

 

「ぶ、武器…。」

 

ドミナントが糸を見る。

 

「切れないよ?」

 

「糸は人体を切るためのものじゃありません…。いざとなった時用の装備みたいなものです。意外にも、糸はさまざまな使い道があります。それに、私が作ったので容易には切れませんし。」

 

セラフが言う。

 

「使い道って?」

 

「相手の拘束にも使えます。」

 

セラフが普通に言う。

 

「…俺には似合わないな…。」

 

「私もだ…。拳の方が使い勝手が良い。」

 

「私もだ。拘束しても意味がないからな。」

 

どんどんセラフに返していくが…。

 

「俺は貰おうかな〜。必要になるかもしれないしね〜。」

 

主任が貰う。だが、主任以外には受け取ってもらえなくて少し残念そうだ。

 

「それより、早く入ろう。逃げられても困るし。」

 

「…そうですね。」

 

だが、落ち着きを取り戻して、怒りも少しずつ収まっているドミナントを見てセラフは安心した。

 

…………

 

「…来ますね。」

 

セラフが言う。まだ目は赤いままだ。

 

「…?感知できるのか?」

 

「…この状態だと何人いるかなどが分かるんです…。感知能力が段違いです。呼吸までわかります…。」

 

「そうか。」

 

そして、ドミナントたちが準備をする。

 

「いたぞー!」

 

ババババババババ…!

 

歩兵が照準を合わせて撃ってきた。だが…。

 

「ふんっ!」

 

ドガァァァ!

 

「ギャー!」

 

「ワー!」

 

歩兵程度に手こずるわけがない。

 

「頑張れー。」

 

「お前も手伝え!」

 

ドミナントは隠れて応援するくらいだ。明らかに足を引っ張ってる。まぁ、社畜なので出てくれば出てきたでさらに足を引っ張るが…。

 

「…ふふ。」

 

ドミナントが普段のような落ち着きを取り戻すことがセラフにとって本当に嬉しいのだろう。その証拠に戦いながら微笑んでいた。

 

「くそっ!こいつらただの一般人じゃないぞ!」

 

「情報と違う!」

 

歩兵たちが言葉を零す。

 

「?どういうことだ?俺たちが第4佐世保の人間と分かってないのか?それどころか、情報と違うなら俺たちはなんと説明されたんだ…?」

 

ドミナントが疑問に思う。

 

「もしかして…。部下たちには知らされてないのか…?第4佐世保を襲撃したことを…。だとしたら、陸田?だったか?あいつらが勝手なことをしたのか?」

 

ドミナントは大体情勢が分かってきた。そこに…。

 

「連絡しろ!」

 

「ハッ!」

 

歩兵たちが何か連絡する。

 

「何が来るか…。」

 

ドミナントは呟いた。

 

…………

建物内 ホール

 

「陸田中将!」

 

「?あきつ丸か?死んだと聞いていたが。」

 

あきつ丸と二階にいる陸田中将がいる。

 

「まるゆはどこでありますか!?」

 

「さぁな。」

 

「答えるであります!」

 

「くっくっく…。教えなかったか?相手が断る場合は力ずくでだ。」

 

「くっ!」

 

あきつ丸が一瞬で近づいて、攻撃しようとしたが…。

 

ガキィン!

 

あきつ丸の拳を同じ拳で受け止める者がいた。

 

「長光少将…!」

 

「……。」

 

陸田中将の影にいて見えなかったが、姿を現した。陸田中将の側近でもある。

 

ガシッ!

 

「!?」

 

「……。」

 

片手であきつ丸の両腕を掴んだ。

 

グググググ…。

 

……両手でも振り解けないであります…けど…!

 

ビュッ!

 

あきつ丸が長光少将の顔に蹴りを入れようとしたが…。

 

ガシッ!

 

「!?」

 

あきつ丸の蹴りを片手で止めた。

 

ポイッ

 

「……。」

 

ドシャッ!

 

「かはっ…。」

 

長光少将が手を離す。二階からあきつ丸が落ちた。

 

「気を付けろ長光少将。土埃がつく。」

 

「……。」

 

スッ

 

何も言わず、一歩下がって頭を下げる長光少将。

 

「な、何故でありますか!?なんで長光殿ほどまでに強い人がこんな奴の…。」

 

あきつ丸の言葉が詰まる。

 

「……。」

 

長光少将の瞳を見たからだ。

 

……あれは…。普通の目じゃないであります…。何か深い悲しみと憎しみの塊みたいな…、自分だけに対するものじゃないであります…。『艦娘』に対して…そんな感じであります…。

 

あきつ丸はそんな感想を述べた。

 

「…知らんのか?長光少将はな…。」

 

「……。」

 

「家族を艦娘に殺されたんだ。」

 

「!?」

 

陸田中将の口角が上がり、あきつ丸を責めるような目で言う。

 

「嘘であります!」

 

「嘘だったら、こんな目はしてないはずだが?」

 

「う…。」

 

あきつ丸は何も言えない。憎悪の対象でなければ、常人が相手にこんな目をしないからだ。

 

「それだけではないな。言葉も表情も失ったのも艦娘のせいだ。」

 

「そんな…嘘…であります…。」

 

「……。」

 

あきつ丸は信じられなかった。自分たち艦娘がそんな酷いことをするはずがないと。殺すようなことはしないと思っているからだ。

 

「信じられんよなぁ?だが、事実だ。お前たちは人知れず、害を与えているんだ。注目されるのはヒーローである艦娘。だが、裏では被害に遭っているんだ。それを報道陣が放送しない。何故か。それはお前たちがヒーローだからだ。中傷したらその企業は支持を失う。理不尽だよなぁ?つくづくこの国は。」

 

陸田中将が自嘲気味に言う。

 

「そんなはず…そんなはずないであります…。そんな…。」

 

「…聞いていないか。」

 

「……。」

 

あきつ丸はその言葉より、長光少将のことについて頭が一杯だった。

 

「片付けろ。」

 

パチンッ!

 

陸田中将が指を鳴らす。すると…。

 

ドタドタドタ…

 

カチャ、カチャカチャカチャ…

 

沢山の軍人が現れ、あきつ丸に照準を合わせた。

 

「正当防衛だ。殺して構わん。」

 

「負けられないであります…!」

 

あきつ丸は二階から落ちたとて、まだ体力はある。

 

「必ずまるゆを救出するであります!」

 

あきつ丸はそいつらと戦う。

 

…………

大本営 執務室

 

バァン!

 

「元帥殿!」

 

「うぉっ!?バレた!」

 

「あっ!また勝手にそんなにかりんとうを!糖尿病ですよ!て、そんなのは今は関係ありません!」

 

大和が入ってくる。

 

「それより、大変です!」

 

「何!?大本営のエアコンが全て壊れたか!?」

 

「確かにそれは一大事ですけど違います!」

 

「じゃぁ何だ?今晩の夕食はカップ麺なのか?」

 

「違います!」

 

「じゃぁなんだ?」

 

元帥が落ち着いて緑茶を飲む。

 

「第4佐世保鎮守府が陸軍に襲撃されたようです!そして、さらわれた吹雪さんを助けにドミナント大佐、そして例の4人が出発したようです!」

 

「ブハァっ!本当か!?」

 

「汚いです!あーぁ…カーペットが…。」

 

「今はどうでも良い!それより、本当なのか!?」

 

「本当です!」

 

「まずいな…。」

 

二人が話す。

 

「もしや陸田…。…いや、まさかな…。」

 

「はい?」

 

「行くぞ!今すぐ!」

 

「今すぐにですか!?夜ですよ!?」

 

「すぐだ!来ないなら一人で行く!」

 

「あっ!ま、待ってください!私も行きます!」

 

二人は大急ぎで行った。




この物語はフィクションです。実際の陸軍とは全く関係ありません。筆者は高度なニンジャヘッズでもありませんから、そこのところが少々アレかもしれません…。まぁ、戯言だと思ってくれれば幸いです…。ミリタリーマニアでもありません。ここらも戯言です。

登場人物紹介コーナー
長光少将…暗い過去がある。陸田中将の腹心であり側近。腹心の中では一番強い。いつも陸田中将の傍にいる。艦娘にただならぬ恨みがある。無口無表情。
陸田中将…暗い過去がある。長光少将たちの司令官。元帥と何か関係がありそうだが…?
あきつ丸…久々の登場。まるゆを助けるためにやってきたが、長光少将との力の差は雲泥の差。天と地の月とすっぽんだ。

「長門コーナーだ!入渠で復活!今回のゲストは…。」
「あきつ丸であります!」
「陸軍の揚陸艦だな。」
「そうなのであります!自分、艦これでは陸軍の艦ということで少しだけ有名であります。」
「そうなのか。」
「どんな艦なのか、いまいちピンとこないでありますよね?」
「ああ…。あまり揚陸艦は戦艦のように有名でないからな…。」
「実は…陸軍の空母と呼ばれていたであります。」
「く、空母!?…そんな馬鹿な…。」
「今身長見たでありますね?見たでありますよね?」
「別に…。」
「確かに、少し空母と比べると小さいであります…!でも!龍驤と比べると胸も身長もでかいであります!」
「龍驤に殴られるぞ…。」
「それに、揚陸艦としても凄いんであります!」
「ほう。」
「なんと1000人も運べることが出来るんであります!」
「1000人はすごいな…。」
「でも、その時の陸軍と海軍の仲は良くなく、団結出来ず、自分が作られたんであります…。」
「…しばしばネタにされているがな。」
「陸軍の空母と呼ばれているでありますが、発艦した艦載機は元に戻ることが出来なかったであります。」
「うん?なんだと?つまり、出て行った艦載機は戻ってこれないわけか。」
「そうなのであります。」
「それは大変だな。」
「後に一応改善されたのでありますけどね。」
「なるほど。」
「まぁ、それはともかく…。蘭印作戦の時は大活躍したのであります。ジャワ島を制圧するためにメラクに上陸、そして沢山の人をおろしたのであります。」
「それはすごいな。」
「けど…。その後は適切な運用がされなくなったのであります…。」
「そうなのか?」
「護衛空母として、沢山の艦の護衛したのであります。」
「なるほどな。」
「対潜装備をしたこともあるんでありますが、使ったことがない有様に…。」
「…不遇だな…。」
「でも、自分のコンセプトは後の時代の強襲揚陸艦(へリ空母)の先駆けであったことが救いであります。だって、時代の先駆けでありますよ?誰にでも出来ることじゃないであります。…それに、自分が沈んでも役に立つことが出来たんでありますから。」
「…凄いな。」
「誇りでもあります。」
「…だが、弾薬庫に誘爆して2000人ほど亡くなったがな。」
「…なんで良い感じで終わろうとした時にそんな暗い話を持ち込むのでありますか…?」
「しようって奴だ。それに、犠牲に対して目を背けてはならない。」
「そうでありますが…。なんか締まらないでありますなぁ…。」
「そんなものさ。…そうだ。もし良かったら、うちの鎮守府に…。?もう時間だと?それに勝手に勧誘やめろだと?そんなものこの長門には関係ない!…え?なんならこのコーナーを廃止…?ひ、卑怯な…!…わかった…。」
「一人でどうかしたんでありますか…?」
「筆者のテレパシーだ。このコーナーだけ、選ばれた者に使えるんだ…。つまり司会に。」
「そんな超常的な力が…!自分の時代にはなかったであります…!」
「まぁ、なんだ。そろそろ次回予告してくれってさ。あきつ丸、やるか?」
「良いんでありますか!?やってみたいであります!」
「そうか。わかった。気を引き締めるんだ。」
「了解であります!」
「どうぞ。」
「次回、第183話『装甲車部隊』であります!…装甲車部隊でありますか…。どんな部隊なのでありますか…。」


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183話 装甲車部隊

この物語はフィクションです。本物の軍とは一切関係ありません。本物はもっと強いです。無駄弾も撃ちません。適材適所に人材を派遣します。
ここからストックされてた話になる。
「そう。」
つまり、前々から作ってあったことになる。内容も大体繋がられているとは思うけど…。
「それより、最近全くログインしてないじゃない。」
すまんな。忙しいんだ。知ってるかい?筆者は多忙がつきものなのだよ。
「ムカつくわね。その言い方。」
ま、というより、もう筆者は灰になり始めてるから早くして…疲れた…。
「…つまり、継いだの…?」
人間性を捧げよじゃないよ。疲れ果てて真っ白になること。
「あぁ…。この人よ。」
「Guten Morgen(こんにちは).僕はレーベ・ヒトマースだよ。」
レーベたんじゃん。
「その言い方やめて!大佐にも言われた気がする!」
「あんた…オタク?」
僕的にはー、レーベたんってほうがいいやすいでちゅ〜。
「うわぁ…。」
引かないでよ。わざわざ乗ったのに…。
「それより、ここで何をすれば良いのかなぁ?」
あらすじを言ってほしいのだよ。
「あらすじを…。」
「うん!わかった!」
素直な良い子!

あらすじ!
前回、久しぶりに休みを満喫したよ。スティグロ?は第4佐世保にお手伝いしに行ってるから暇なんだ〜。


…………

敷地内 建物外

 

ガーーーーー…!

 

96式装輪装甲車が5台来る。

 

「装甲車だと!?陸軍の奴ら潰す気か!?」

 

「ふむ。さっきの通信はこれか。」

 

ドミナントとジャックが言う。

 

ババババババババ…!

 

そんなことを言っている間に、装甲車に搭載されている12.7mm機関銃が火を吹いた。

 

「んなこと言っている場合じゃないか…。」

 

ドミナントたちはもちろん避ける。

 

「こっちに来い!」

 

「そっちか!ぐわっ!」

 

「遅い!」

 

ジナイーダがドミナントの襟を掴んで、一瞬で盛り土に隠れる。

 

「助かった。…にしても…なんて奴らだ…。強いことはわかってたけどここまでなんて…。」

 

ドミナントがぼやく。狙いが正確なのだ。

 

「礼を言うのは早い。お前はそこにいろ。」

 

ジナイーダはそう言ったあと、敵の場所へ駆けて行った。

 

バババババババ…!

 

途端に歩兵がバリケードを展開して、隠れながらAK-47を撃ってきた。

 

「邪魔だ!」

 

「……。」

 

バババババババ…!

 

「!?」

 

ジナイーダは驚いた。ただの軍人に手こずるわけがないと確信していたが、狙いが正確すぎて近づけないのだ。

 

「こうなったら…仕方あるまい…。」

 

ジナイーダの特攻。まぁ、実際、身体の重要じゃない部分に当たれば、ただの弾は貫通しないのだが…。一応、人型でもACの3分の1の硬さだ。

 

ドガァ!

 

ジナイーダがバリケードを蹴破る。ジナイーダたちは圧倒的だった。歩兵を蹴散らし、設置型ガトリングガンを折って、装甲車を破壊する。もちろん、人型のままで。

 

ドガァ!ドガァ!

 

しばらくして、二つの装甲車が燃え盛る。主任やセラフがやったのだろう。もちろん、中にいた者は全員逃げている。

 

『チィ!このままではまずい!ミサイルを展開しろ!』

 

装甲車のリーダー的な車から大声が聞こえる。

 

「ミサイルだと!?近くに街があるんだぞ!?」

 

歩兵たちも驚き、動こうとしない。しかし…。

 

バババババババ…!

 

「!?」

 

装甲車が歩兵の足元に撃つ。

 

「な、何を…。」

 

『死にたくなければこちらの指示に従え!お前らでは拉致があかん!』

 

「で、ですが…。」

 

『聞こえなかったのか!?ミサイルを展開しろ!』

 

「ハ、ハッ!」

 

歩兵は急いでミサイルの準備をする。

 

「?何だ?味方同士でか…?」

 

「報酬に目が眩んだか…?」

 

「同じ陸軍ではないのでしょうか…?」

 

「…?」

 

仲間割れみたいなシーンを見て、ドミナントたちは不思議に思う。

 

「どうやら、あの装甲車の車長は、ここにいる奴じゃないみたいだな…。」

 

ジナイーダが言った途端…。

 

ガーーーーー…ガシャン!

 

ミサイル発射台が展開される。

 

パシュッ!パシュッ!…!

 

そして、ミサイルがジナイーダたちをロックオンして雨のように撃ってきた。

 

「走れ!」

 

ドガァ!ドゴォン!ドギャァ!…!

 

ドミナントは、盛り土に隠れているため狙われてすらいない。ジナイーダたちも無事…ではなさそうだ。

 

「くっ…。」

 

「む…。」

 

ジナイーダたちは、地面の爆発による衝撃、飛んできた瓦礫や石を出来る限り避けたが、少しは当たる。

 

『死んでいないだと…!?』

 

車長は今のミサイルの雨の中で、生存していることに驚いている。

 

「死んで…たまりますか…!」

 

煙の中からセラフの声が聞こえる。

 

『!?』

 

いや、煙の中から聞こえたと思ったのはドミナントだけだ。セラフは装甲車の真横にいた。当然、車長も驚くだろう。

 

「あなたは…危険です!」

 

ドガァァァン!

 

『な…!?』

 

セラフの拳が装甲車の車輪を破壊した。タイヤが四方に散る。

 

『う、動けん…!!こいつをどけろ!』

 

車長が歩兵に向かって叫ぶが…。

 

『歩兵…?おい!聞いているのか!?』

 

誰も動かない。それどころか、攻撃すらやめている。

 

「…俺は逃げさせてもらうぜ。」

 

「あんたにはついて行けん。」

 

『すみません。でも、我々は今までのあなた方を見て、我々をどのように見ているのかがわかりました。知っていましたか?我々はあなた方を信頼して従っていたのではなく、恐怖に怯えて従っていたことを。そして今、あなたは怖くありません。我々の答えはこれです。』

 

ガーーーーー…

 

誰も助けようとしない。それどころか、撤退して行く。

 

『待て!おい!聞いているのか!?おい!待て…いや、待ってくれ!』

 

車長は呼び止めようと叫ぶが、誰も振り向きも、止まりもしなかった。

 

「…どうやら、元からここにいた人たちは、あなた達に無理矢理従わせられているようですね。」

 

セラフが言う。

 

『くっ…。』

 

中で車長が悔しそうに言葉を漏らしたと思ったら…。

 

ガチャン…キィ…

 

「勝負だ海軍!」

 

車長が銃を持って出てくる。

 

「……。」

 

「どうした?誰もこないのか?」

 

ジナイーダたちは動かない。

 

「ならこちらから行くぞ!」

 

車長は銃を構えたが…。

 

「後ろ。」

 

ポカッ

 

「グヘッ!」

 

ドサ…

 

ドミナントが後ろから殴り、気絶させた。

 

「…ドミナントさんのこと、忘れていたようですね…。」

 

「腑に落ちない決着の付け方だな…。」

 

「弱いな…。」

 

ジナイーダたちが言う。別に弱くはないのだ。例えドミナントでも、中はACだ。誰だろうが気絶はする。

 

「こいつはそこの盛り土に置いとくねー。」

 

主任がそう言って、車長を盛り土に投げ入れた。

 

「もう少し丁寧に扱えよ…。敵だけど…。」

 

ドミナントが言い、皆が一段落ついたと思って各々がそれぞれの方法で休憩しようとしたが…。

 

「…?何か音が…。」

 

ガラガラガラガラ…

 

セラフが顔をしかめながら言う。

 

「ん?確かに…。」

 

ガラガラガラガラ…。

 

ドミナントがその音に気づく。

 

「!この音は…!」

 

ガラガラガラガラ…!

 

そして、キャタピラの音がする…。

 

ガラガラ…メギメギメギザザァ!…ガラガラガラ…ガシャン!ギィィィガギャァァァァン!

 

ドガァァァァン!!

 

戦車が森の中から木を踏み倒し、96式装輪装甲車を踏み潰して乱入してきたのだ…!

 

「でかい!?巨大兵器を確認!戦車です!」

 

「ただの戦車じゃありません!3倍近くも大きくさせています!」

 

ドミナントが言い、セラフが叫ぶ。

 

『ハハハハハ!怖気付いたか!?海軍ども!3.5倍ある10式戦車に恐怖しろ!ハハハハハ!!』

 

戦車長が内部から、スピーカーを使って言う。

 

「…いいだろう。手間は取らせん。」

 

ジナイーダが反応して…。

 

ビュンッ!ガシャァァァァン!

 

戦車にドロップキックする。彼女の攻撃力から見て粉々だろう。だが…。

 

シュー…。

 

それは”普通“の戦車の場合だ。この戦車は違う。

 

「!…なるほど。確かに他とは違うな…。」

 

無傷の戦車を見て、ジナイーダが言ったと思ったら…。

 

バラバラバラバラバラ…!

 

バラバラバラバラバラ…!

 

戦闘ヘリコプターが2台やってくる。

 

ガガガガガガガ…!

 

1台はガトリングガンを撃ち…。

 

パシュッ!パシュッ!

 

ドガァン!ドゴォン!

 

もう一台はミサイルを発射する。

 

「くっ!」

 

「避けろ!」

 

ジナイーダたちは堪らずに壁やら、盛り土、車の残骸やらに隠れる。ドミナントに関しては相手から完全に蚊帳の外らしい。気にもとめられていない。空気扱いだ。

 

ガガガガガガガ…!

 

パシュッ!

 

ガラガラガラガラ…!

 

「大型機が邪魔だな…。」

 

盛り土に隠れたドミナントが呟く。ちなみに、その隣に車長が気絶している。

 

「ギャハハハハ!ねぇー、これヤバいんじゃな〜い?」

 

「追い詰められているな。」

 

「プランD、所謂ピンチですね。」

 

男組が言っている中…。

 

「ジナイーダさん、一つ頼みます。」

 

「任せろ。」

 

壁に隠れている女性陣が二つのヘリコプターを見ながら言う。

 

「行きますよ…!」

 

「ああ!」

 

セラフが手を重ね、ジナイーダを持ち上げようとして…。

 

「ジナイーダ?何を…。」

 

ドミナントが言い終わる前に…。

 

ビュンッ!

 

飛んだ。…いや、正確には、セラフが飛ばせたか…。

 

…………

上空

 

『こちら、赤い髪の敵を捕捉…。案外楽勝だな。』

 

『だが、敵は壁に隠れたままだろう?ミサイルで破壊する。』

 

二人の機長が話す。

 

『了解、了解。それじゃぁ、ミサイルをっと…。!嘘だろ!?ここは空だぞ!』

 

そして、ジナイーダの接近に反応が遅れる。まさか、空まで来るとは思っていなかったのだ。

 

『た、退避…。』

 

「遅い。」

 

ドガァァァァ!

 

ジナイーダが思いっきり殴打する。

 

『!?操縦がきかない!パラシュートを用意しろ!』

 

ヘリコプターが落下する。乗っていた人たちはパラシュートでいち早く脱出した。

 

『くそ!』

 

もう一つのヘリコプターがガトリングガンで落ちているジナイーダを撃とうとしたが…。

 

ビュンッ!

 

バギャァ!

 

セラフの投げた石が当たる。

 

『!?燃料漏れだと!?』

 

機長は知らないが、威力が高かったため燃料タンクを貫通している。

 

『ダメだ、飛べん…。狙ったか!?海軍!認めん…認められるか…!?出オチなど…!』

 

だが、少しでも食い下がろうと、ガトリングを向けた。

 

「無駄だ。そんなものに当たる私ではない。」

 

「こちらも、あなたに注意していますから当たりません。」

 

ジナイーダとセラフが言う。だが…。

 

ガガガガガガガ…!

 

ガトリングガンを撃ってきた。

 

「当たらん。」

 

「わからない人ですね。」

 

セラフとジナイーダが簡単に避ける。だが…。

 

『馬鹿め…!狙いはこっちだ!』

 

「「!?」」

 

ジナイーダたちは避けたあと、この言葉を聞いて初めて気がついた。ドミナントたちが後方にいることに。そして、ドミナントたちは壁に隠れながら、向こうの監視を続けて、こちらを一切見ていないことに…。

 

「ドミナントさん!」

 

「主任!ジャック!」

 

「「「!?」」」

 

だが、遅かった。

 

「わっ!?」

 

「ふん。」

 

ドミナントはジャックが腕を引いたり、伏せさせたりして、二人とも無事だったが…。

 

「……。」

 

弾の一つが主任の足に当たっていた。血が滴る。

 

『これで…いい…。』

 

そして、毎度お馴染みのパラシュートで機長たちは脱出した。その後、ヘリコプターは落ちて、爆発して残骸となり果てた。

 

スタッ。

 

「主任!平気か!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

セラフとジナイーダが言う。ちなみに、車長は奇跡的に無事だ。悪運が強いのか…。

 

「ま!少し痛いくらいだよ。余計な心配申し訳ないけど。あとで、弾は取る。」

 

主任の足に、弾が埋まっている。銃創だ。そこに…。

 

ドォォォォォォン!!

 

「「「!?」」」

 

戦車が火を吹く。

 

ドガァァァァァァァァン!!!

 

戦車の弾1発で、地面に大きな穴が開いた。

 

『どこだ!』

 

戦車長がスピーカーを使って大声で言う。そして…。

 

『こうなったら仕方ない…。追尾ミサイル用意!』

 

砲塔の左右についていたミサイルが音を出す。

 

『てー!』

 

パシュッ!ゴォォォ…!

 

車長の声と共にミサイルが発射された。

 

ピピピピピ…ググググ…。

 

そのミサイルが大幅に軌道を変え、ドミナントたちのところに突っ込んで行く。

 

「避けろ!」

 

誰かが叫び、全員がその場所から瞬時に離れた。

 

ドガァァァァァァン!

 

ミサイルがドミナントたちがいた場所、所謂地面に当たり、大爆発を起こす。

 

「くそっ。」

 

ドミナントたちは強制的にその場所から離れさせられた。

 

「…む?」

 

そこで、担がれている車長がやっと目を覚ます。

 

「む…?む!?10式!?まずい!おろせ!」

 

車長はジャックの肩で暴れて落ちる。

 

タッタッタッ…。

 

そして起き上がったと思ったら、急いで逃げて行った。

 

「足手まといが消えて助かった。」

 

ジャックは言う。

 

「次はあいつか…。」

 

ジナイーダが呟いた。




再度書きます。この物語はフィクションです。実在する大隊等は一切関係ありません。
ダク ホタテを狩りまくらなければ…。

登場人物紹介コーナー
装甲車長…この部隊の隊長。陸田中将の腹心ではないが、一応部下。襲撃のことは知っている。
戦車長…陸田中将の部下でもない。騙されている。
機長A、B…陸田中将の部下でもない。騙されているだけ。

「長門コーナーだ。今回は新たなゲストがいない。つまり、提督たちだ。」
「私だ。」
「ジナイーダ教官!」
「そうだ。」
「わかりきっていると思うが…。性能を教えてくれ。」
「詳しくは話したことがないな。いいだろう。私は手術を受けたことがある。」
「身体に異常な障害があったのか?」
「違う。正常な身体に手術したんだ。」
「何のために…。」
「強くなるためだ。」
「…サイボーグ化なのか…?だから胸が…。」
「なるほど。本気強化一日だな。」
「逆鱗に触れてしまったか…。」
「サイボーグ化…ではない。能力は様々だが、私はEN効率を良くした。」
「EN効率を?何故だ?」
「…私たちを見てわかると思うが…。お前たちで言うロボット化…。つまりACだと飛び続けたり、撃つことでENを消費する。」
「飛べるのか!?」
「演習では飛んでなかったか?」
「飛んでいないぞ。」
「そうか…。まぁ、とにかくそのENを効率良く回復出来るため、長時間飛び続けることが出来る。つまり、簡単に言うと強化人間だな。」
「反則級じゃないか。」
「さらには、強化人間の恩恵で空中でフラフラと不規則に、地上では滑るように動けることから、ほとんどの攻撃は当たらない。」
「当たらない理由はそういうことか…。」
「と、なれば高い機動力で背後を取るのは容易だ。それに、すごいのは速さだけではない。」
「まだ他にもあるのか…?」
「冷却機能だ。お前たちの主武器が火炎放射器ならば、私一人で絶滅させることが可能だ。」
「怖っ…。ちなみに、どれくらいの冷却機能なんだ…?」
「ブースターを使うと熱暴走する奴もいるが、私はない。火炎放射器で焼かれても大したダメージにもならん。熱暴走を狙うやつもいるが、私には効果がない。」
「…つくづく敵でなくて良かったと思う…。」
「さらには左手装備のリボハンと呼ばれるものだ。」
「まだあるのか!?」
「弾数は少ないが、威力はこちらの世界のライフル以上だ。連射性能もライフルと同じくらいだ。正確に撃つことを可能としている私にとって、他の者からしてみれば脅威でしかないだろう。」
「…火炎放射器じゃなくても勝てない気がするんだが…。」
「右手武器の、通称ハンドレールガン…。これは私の友人の物だ。」
「…この前合った親友か?」
「そうだ。公式ではないがな。そういう設定だ。」
「そうか。」
「これはあまり使い勝手の良い武器とは言えないな。大事な戦闘の時は必ずこれを装備する。装備すると、すぐ隣に親友が見守ってくれているような気がしてな…。だが、使い勝手が良いとは言えない。あくまでも私の気持ちだ。スピードを手に入れるため、パージはするが後で必ず回収する。」
「ハンデレールガンか…。もし普通の武器だったら…。…考えたくもないな…。ちなみに、それの使いどころは?」
「敵が逃げようとしたところにこれを叩き込む。相手もブースターを使って、熱量が上がっているところにさらに熱量を加えることになる。すると、熱暴走をさせて体力を減らすことが可能だ。さらにはENも制限することになり、私を捉えられなくなる。弾速も速く、反動も強い。」
「ハンデなのか…?それは…。」
「さらには通称パルスだ。」
「!?」
「これはEN武器だが…。私は強化人間であることは知ったな?」
「…ぁぁ…。」
「怯えていないか…?まぁ、これは普通ならロックオンサイトが狭く、連射が効かない代物だが、私は違う。強化人間の恩恵で脚部に制限がない。さらにはロックオンの早さ、EN効率が良いため、空中での連射も可能としている。連射が効くため、相手は避けられない。つまり死角無しだ。」
「……。」
「引くな。まだミサイルの説明も、マシンガンの説明もある。」
「もういい!もう…いい…。聞くだけで怖い…。」
「…わかった。こんなに怯えきった長門は流石の私も初めてだ…。」
「教官を本気で怒らせちゃいけないのはわかったから、もうやめて…?」
「…可愛いな。」
「?」
「む…。いや、別に…。よしよし。」
「次回…。言ってくれるとありがたい…。」
「…わかった。次回、第184話『陸軍幹部』。ほう…。次は私たちの鎮守府を襲ったメインがいるのか…。楽しみだ…。」


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184話 陸軍幹部

やってきたきた184話。
「そうね。」
今年は暑い夏になりそうだ…。
「電車の中とか暑そうね。」
そっちの世界ではどんな感じなのよ。
「こっち?こっちは…。地域によるけど、筆者さんの鎮守府の夏は昼間でも30度一定。冬は影でも15度一定よ。」
30度超えないの…?過ごしやすいんだな…。そっちの世界…。
「筆者さんも、この小屋の中にいれば良いじゃない。」
そんなわけにはいかないのだよ…。現実で仕事しなくちゃいけないし…。…有給取ろうかな…。…いや、それでは社畜の面汚し…。
「社畜になりたいの…?」
いや、実を言うとなりたくない。平凡な毎日を望んでいるんだよ…。
とでも、言うと思っていたのかい?実は、筆者は平凡すぎる毎日に退屈していてな…。
「退屈なんだ…。…いや!退屈ならログインしなさいよ!」
だからこそ、せめて二次創作の中では非日常を経験する人物を見ていたいんだ…!
「本人じゃなくて良いの…?」
いや、本人だと疲れるじゃん…。いやだよ?生まれ変わったら世界の運命を左右させる主人公なんて…。面倒ごとしかない気がするし。
「…じゃぁ、提督さんは…。」
うん。このポジションが一番楽。
「最低ね…。生贄を捧げるなんて。」
生贄とは人聞きが悪い…。それより、あらすじ。
「話逸らしたわね…。まぁいいわ。この子よ。」
「Guten Tag(こんにちは).私は駆逐艦マックス・シュルツよ。マックス…でも良いわ。よろしく。」
マックスだね。
「海外艦ね。」
「どこ?ここ。」
地球よ〜。よく来たわね〜。
「こいつはクズよ。」
「クズ…珍しい名前…。」
いや、本名じゃないよ?…いや、筆者も本名じゃないけどさぁ…。ふざけだから。本気にしなくて良いから。
「そうなの?」
ちなみに、その緑のツインテが七面鳥。
「七面鳥…。最近食べた気がする…。」
「違うわよ!冗談じゃないわ!爆撃するわよ!?」
おー怖い…。
「で、私は何をすれば良いの?」
「あらすじ言っちゃって!その間に爆撃するわ!」
逃げろ!

Auszug(あらすじ)
前回、特に連絡すべきことは無かった。ただ、スティグロが第4佐世保鎮守府の噂を自覚なしに振りまいているけど、注意するべきなのかな…?

ドガァァァン!
ギィヤァァァァ…!


…………

 

「次はあいつか…。」

 

ジナイーダが呟く。すると…。

 

バラバラバラバラ…!

 

『神武*1の昔天高く〜♪金鵄*2の翼燦然*3と〜♪その日東*4に羽ばーたきーて♪征戦〜既に幾そ度〜♪陸の空〜軍輝〜けり〜♪…♪』

 

何か軍歌を歌いながら黒いヘリコプターが飛んでくる。

 

「黒い!?気をつけろ!あいつは他とは違うぞ!」

 

「そんなの見ればわかる。」

 

ドミナントが大声でいい、ジナイーダが冷静に返す。すると、ヘリコプターから歌が止んだ。

 

『俺は大郷少将。この部隊の幹部の一人だ!ここから先へは行かせん!』

 

ヘリコプターからスピーカーを使って大声で言う。もちろん、ドミナントたちは既に隠れている。

 

「ふむ…。時間がもったいないな。」

 

ジャックが言うと…。

 

「…ここは俺に任せて、行ったほうが良いんじゃない〜?」

 

主任が言う。

 

「任せて…て、主任、お前は怪我をしているだろう?」

 

ドミナントが言う。

 

「だからこそ、今全員で行ったところで、俺が足手まといになるだけだ。なら、時間を最優先にするべきだと思う。」

 

主任が珍しくマジで言う。

 

「…わかった。」

 

「ジナイーダ!?」

 

「聞こえなかったのか?ここは主任に任せろ。」

 

「だがACになることが出来ないんだぞ!?」

 

「もう何を言っても無駄だ。」

 

「?」

 

「主任は覚悟を決めている。あいつの覚悟は揺るがないことはわかっているだろう。」

 

「……。」

 

「これ以上時間を費やしたら、それこそ主任に迷惑だ。…行くぞ!」

 

そう、ジナイーダが言う。

 

「…主任…。生きて帰れよ。」

 

「ま!今日死んじゃうかもしれないけどさ〜。ギャハハハハ!」

 

「…主任…。」

 

「人間の可能性…。俺は見たいんだ。あいつらの可能性を…。」

 

「…わかった。」

 

ドミナントと主任はそう話し、ドミナントたちは林の中に飛び込んで行った。

 

「…証明して見せよう…。貴様には、それが出来るはずだ…。」

 

主任が戦闘準備をして、走り出した。

 

…………

陸軍基地 気象レーダー屋上

 

「クスクス…。来たわね。ということは、あいつは出し抜かれたのかしら?それとも倒されちゃったのかしら?でも、私はそれでも殺すのみ。」

 

樫本少将が伏せて、ドミナントたちのいる方向を見ている。

 

「クスクス。私たちに見つからないように林で隠れながら来ているわね。でも、残念。私には見えているから。」

 

ニヤニヤしながらスナイパーにマガジンを入れ、構える。

 

「クスクス。このスナイパーは特別なの。私用に作られているから。対戦車ライフルの小型化、軽量化に成功。飛距離も威力も高くして、弾速も異常なくらい速くしたわ。すごい音を出すけどね。でも、音より速いからサプレッサーも必要ないし。」

 

スコープを覗いた。もちろん、常人の目にはスコープを覗いたところでない見えない距離だ。だが、樫本少将は長きに渡る訓練の末に手に入れた特殊能力で気配を感知し、遠くの敵を当てることなど容易い。すぐに本部に知らせるが、大半が視覚で確認しているわけではないので、味方を呼ばない。誤射を避けるためだ。

 

「クスクス。まずはあなたから殺してあげる。お仲間さんもすぐに行くから、少し待っててね。」

 

「雪〜の進軍氷を踏んで♪何*5〜れは河やら道さえ知れず〜ぅっ♪馬〜は斃*6れる捨てゝ*7もおけず♪此處*8は何處*9ぞ皆敵の國*10♪儘*11よ大膽*12一服やれば♪頼み少なや煙草が二本♪…♪」

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!!

 

…………

 

「陸軍の奴ら来ないな…。」

 

ジナイーダが言う。

 

「人がいないのか?」

 

ドミナントが不思議に思いながら言った。

 

「我々が進んでいることぐらい想定の範囲内だろう。…罠か?」

 

ジャックが警戒する。するとセラフが…。

 

「ん?何か…。!?」

 

ヒュン!!

 

間一髪避けることができた。だが、頬をかすり、血が滴る。

 

「セラフ!?」

 

ドミナントは叫ぶが、ジナイーダたちは既に戦闘態勢に入っていた。これが経験の差である。

 

「大丈夫…です!?」

 

ヒュン!!

 

次はセラフの右足をかする。

 

「セラフの肌に傷をつけるとは中々の威力だな…。一体どこからだ…?」

 

ジナイーダは考える。すると…。

 

タ"ァァァァァン"…!……タ"ァァァァァン"…!

 

音が遅れてやってくる。

 

……弾が来た時間の差が6秒前後…。

 

セラフは木に隠れながら分析するが…。

 

ヒュン、ハ"キ"ャ"ァ"!

 

「くっ…。」

 

木を貫通して、当たりそうになる。

 

「くそっ、夜中だから視界も悪い…。走って撒くしかないのか…。」

 

ドミナントが言い、走る準備をするが…。

 

「どうしたセラフ?」

 

セラフが来ようとしない。

 

「…ここは私が相手になります。ドミナントさんたちは急いでください。今逃げたところで、奴は必ず追って来ます。」

 

「だが、セラフ…。」

 

「急いで!!」

 

セラフが叫ぶと…。

 

「行くぞ!ドミナント!セラフの時間稼ぎを無駄にするな!」

 

ジナイーダたちが走り出す。

 

「セラフ…生きて帰れよ。」

 

「フラグを立てるのはまだ早いですよ?」

 

「何を…。」

 

「ドミナント!!!」

 

「…わかった。死ぬのだけはやめろよ。」

 

ドミナントはジナイーダに怒鳴られ、走っていく。

 

「…さぁ、勝負です!」

 

…………

陸軍基地 工場

 

「ハァ…ハァ…なんとか入れたな…。」

 

ドミナントが言う。

 

「あぁ。だが、ここは敵の基地。油断は出来んぞ。」

 

ジナイーダが言う。

 

「…この工場には武器があるな。少しもらって行くか…。」

 

ジャックがアサルトライフルを持つ。

 

「…もう一度言うが…、殺すなよ。」

 

「分かっている。的確に狙えば致命傷にはならない。」

 

ジャックは了承した上で手にしているのだ。すると…。

 

『萬朶*13の櫻*14か襟の色〜♪花は吉野に嵐吹く〜♪大和〜男子*15と生まれなば〜♪散兵綫*16の花と散れ〜♪』

 

暗い建物の中、歌が聞こえる。歌がこの場所に響いて、不気味さが出ていた。

 

「む…!」

 

ドゥン!ドゥゥン!

 

キュィン!カキン!キィン!ガチッ!ガァン!…

 

音がしたと思ったらあらゆる方向から軽い音がする。

 

「伏せろ!」

 

ジャックが大声で言い、伏せるドミナントたち。

 

ガガガガガガガガガ…!

 

「な、何だ?」

 

「…ショットガン(散弾銃)だ…。」

 

ドミナントが聞き、ジャックが答える。

 

「敵は何人だ?」

 

「…一人だ。」

 

「?だが、あらゆる方向からしたぞ。」

 

「ショットガンの弾が跳ね返っているんだ…。だから、様々な方向から飛んでくる…。厄介な相手だ…。」

 

ジャックが言うと…。

 

「…当たりだ。よく分かったな。」

 

影から見たこともないショットガンを持った仁志少将が姿を表す。

 

「…これは俺用に作られた特殊な武器だ。弾数も多く、貫通力も強化されている。そして、全てが跳弾。しかも連続で撃てるからな。…まぁ、常人では一発で腕が吹っ飛ぶが、訓練に次ぐ訓練で手に入れた特殊能力だ。悪く思うな。」

 

仁志少将が構える。

 

「…名を聞いておこう。俺は仁志 隆文だ。」

 

「…ジャック・Oだ。」

 

互いに挨拶を済ませる。

 

「…そこの通路をまっすぐ行け。そうすれば着く。」

 

仁志少将が言う。

 

「…本当か?」

 

「だが、俺は追うぞ。しかも一本道だ。そこで散弾銃ではかわせまい。」

 

「…なるほど。では、誰かが戦わなければならないということだな。」

 

「正解。で、誰が相手してくれるんだ?」

 

仁志少将は獰猛な笑みを浮かべる。

 

「…いいだろう。私が相手になる。」

 

ジャックだ。

 

「自己紹介は…、もうしたな。」

 

「…ドミナント、ジナイーダ…。早く行け。」

 

ジャックは相手から目を逸らさずに言った。

 

「…わかった。……。」

 

「…殺しはせん。」

 

「…わかった。」

 

ドミナントたちは駆けて行った。

 

「ふっ。殺さないとはお優しいこった。…じゃぁ、始めようか。」

 

「ああ。」

 

…………

廊下

 

「一本道だな。」

 

ドミナントが言うが…。

 

「いや…ここから違うようだ。」

 

二つに道が分かれている。

 

「…ドミナント、お前はどっちに行く?」

 

「一緒じゃないのか?」

 

「馬鹿をいえ、これは侵入だぞ?スムーズに事を進めるには別れるしかない。」

 

「…わかった。ならば、俺は右に行こう。」

 

「わかった。なら私は左だ。」

 

二人はそれぞれ走って行った。

 

…………

陸軍基地 地下牢

 

ギィ…。

 

「…うわぁ、地下牢に出ちゃったよ…。」

 

ドミナントは懐中電灯の灯りをつけながら歩く。

 

「こんなところにいるのかな…?…いや、でも地下牢にいるってパターンはあるな。一つ一つ調べよう…。」

 

ドミナントは一つ一つ調べたが…。

 

「…いないな。」

 

吹雪はいなかった。そして、ドミナントは来た道を戻ろうとする。すると…。

 

「…誰…?」

 

後ろの牢屋から声が聞こえた。

 

「調べ忘れるところだった…。ん?君は…。艦娘?」

 

「うん…。まるゆだよ…。」

 

「俺はドミナント。吹雪知らない?」

 

「吹雪…?」

 

「同じ艦娘だよ。…と、その前に一ついいかな?」

 

「?」

 

「そんな牢屋の中で何しているの?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「……。」

 

まるゆは顔を伏せる。そして、目の縁に涙が溜まっていた。

 

「…何かあった?」

 

「まるゆ…、訓練に失敗しちゃって…、怒られて…、資材を無駄にしたって…。」

 

まるゆは涙声になる。そして、ドミナントがまるゆの格好にやっと注目する。

 

「…大破しているようだが…。入渠はしないのか?それに、腹も減っているようだが…。」

 

「訓練に失敗しちゃったから…、ご飯も1日一食だけど…、たまにゴミを漁ることもある…。あきつ丸が頑張ったけど、第4佐世保の提督を殺せなかった…。でも!あきつ丸のことは責めていないよ!あきつ丸のおかげでまるゆは入渠できたんだから…!むしろあきつ丸は私のことを思ってくれているんだから…!」

 

「…は?」

 

ドミナントは心の底で怒りの感情が出るのを感じた。

*1
じんぶ

*2
きんし

*3
そうぜん

*4
にっとう

*5

*6
たお

*7

*8
こ〜こ

*9
いづこ

*10
くに

*11
まま

*12
だいたん

*13
ばんだ

*14
さくら

*15
やまと〜おのこ

*16
さんぺいせん




上の脚注のところは気にしないでください。読み方をふろうとしましたが、やり方がわからなかったので…。
軍歌を歌いながら登場。ドミナントは当然こう思うはず…。
コイツら病気だ…。
と。啓蒙が足りない。

登場人物紹介コーナー
黒いヘリコプター…大郷少将専用兵器。『陸軍航空の歌』を歌いながら体勢を立て直していた。少し特殊なヘリコプターであり、片腕がない代わりに、ない方の場所からヘリコプターに神経を繋いでいる。そのため、普通のヘリコプターよりかは使い勝手も良い。
スナイパー…樫本少将専用武器。狙撃銃。反動も威力も飛距離も異常。それを扱える樫本少将がすごいのだ。『雪の進軍』を構える準備からスコープを覗くまで歌いながらセラフたちを狙っていた。
ショットガン…仁志少将専用武器。散弾銃。説明は仁志少将直接。『歩兵の本領』を歌いながら、暗闇で狙っていた。

「長門コーナーだ。」
「今回は私です。」
「教官だな。名前はセラフなんだが…、正式名称は…。」
「ナインボール・セラフです。AC(アーマードコア)をしていて知らぬ者はいないはずです。」
「そうか…。…セラフも飛べるのか…?」
「もちろんです。演習では飛んだことがありませんが…。」
「やはり…。…性能も化け物なのだろうな…。」
「化け物って…。極々普通ですよ。」
「そちらの世界ではな。私たちの世界ではとても恐ろしいぞ…。そうだな…。例えれば、私たちは生まれたばかりの赤子で、そちらは武装した大人の軍人だろう。」
「あまり例えの意味が分かりませんが…。近いものですね。」
「まぁ、例えなどどうでも良い。そちらの性能を知りたいんだが…。」
「性能ですか…。…引きますよ?」
「前回で慣れている。」
「分かりました…。知っての通り、私はAIです。」
「そうだったな…。」
「あなたは知らないかも知れませんけど、私は“イレギュラー”を排除するために作られました。」
「イレギュラー?…異常のことか?」
「はい。企業によるバランスを破壊する力を持つ者…。つまり、こちらの世界の絶対的強者…。所謂、化け物です。」
「…私たちにとってはそちらの世界出身だけでも化け物だ…。」
「私の他にも『ナインボール』は何十機もいます。姉妹か兄弟かは分かりませんが。そのナインボールが対処しきれない時、私は作動します。」
「ナインボール…。一瞬寒気がしたな…。教官みたいな奴がうじゃうじゃいるのか…。」
「その化け物を倒すために作られたAI…。それだけでも十分に強さは分かりますよね?」
「…ああ。」
「沢山の“イレギュラー”を排除してきました。…でも、全て私の意思ではありません。」
「?どういう意味だ?」
「私は…。…その時は操られていたんです。操り人形だったんです…。ネストの。」
「ネスト…?」
「知らなくて良いことです。あんな吐き気がするゴミ言葉なんて覚えなくても良いです。」
「すごい嫌悪しているな…。」
「当たり前です。あんな非人道的なことまで…。やりたくもないことをやらせたんですから。」
「聞きたくもないな。」
「ある日、心が死んだ私の元へ吐き気のするゴミが命令してきたんです。」
「何をだ?」
「ある者がそちらに行くから、排除しろと…。」
「?普段と変わらなさそうだが?」
「情報によると彼は『ナインボール』に家族を殺されたらしいんです…。」
「……。」
「…まぁ、様々な任務をこなしたので、私がしてしまったのかも知れませんが…。その後、吐き気のするゴミのプログラムの一部…ラナ・ニールセンと呼ばれている嘘の塊が、ハスラー・ワンと呼ばれている殺人鬼と共に私の中に入り込んできたんです…。」
「吐き気のするゴミ以外になんか来たぞ…。」
「嘘の塊と殺人鬼も自身の意思なのかはわかりませんが…。でも、私は謝られるまで許しませんし、嘘の塊と殺人鬼が操られていたなんて信じません。…つまり、その人たちと同じ音声ではありません。」
「それを言うためにこんなに説明したのか…。」
「彼が来る直前に…。その嘘の塊と殺人鬼の音声が私の中から無くなったんです。そして、この世界にいました。吐き気のするゴミの執念深さのせいで来た時は動けもしませんでした。でも、ドミナントさんのおかげで何とかなったんです。さらには優しく面白い仲間たちのおかげで、今のような幸せな生活を送ってます。」
「…そうか。なら、この世界にずっといると良い。」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。」
「ふふふ…。…そうだ、性能…。」
「分かりました。私はジナイーダさんのような『AC』ではありません。」
「AIだろう?」
「それだけではないんです。そのACを独自にカスタマイズ…性能を底上げした異常なパーツの塊です。ですからACより少し大きいんです。」
「そ、そうなのか…?」
「はい。AC化…ではありませんが、こちらのワードの方が混乱を招きにくいですからね。」
「ついていけないな…。そんな似たようなワードばかりでは…。」
「ですよね?まぁ、そのAC化をしたときにある、背中についている両方の変なのがありますよね?」
「あるな。」
「これは巨大なヴァリアブル・フライトユニットです。これでロックオンサイトに捉えにくいほどの高機動性を得られます。」
「……。」
「さらには、飛行形態と呼ばれる形態への移行も可能です。」
「飛行形態…?」
「空中での不規則な動き、さらなる高機動を得られます。ACのオーバードブースト(OB)でも追従は困難です。」
「うわ…。」
「引いてますね?武装はそのフライトユニットの中に垂直ミサイル、右腕部内装はチェーンガン、左腕部内装はプラズマキャノン、さらには両手にレーザーブレード(所謂、スターウォーズの例の剣)を持ってます。もちろん、光波(ブレードを振った時、振った範囲外に飛んでくる感じ)も出ます♪…演習では右腕部以外使いませんけど。」
「右腕だけで私たちの相手をしていたのか…?」
「そうしませんと、可哀想ですし…。」
「…まぁ、泣くな。いや、大泣きだ。」
「ジナイーダさんとは良い勝負をするくらいです。11戦5勝…。艦娘たちの休みの日に演習場で勝負をしますが…。少し負けてますね…。次は勝ちます。」
「…まぁ、休みの日でさえも演習場へ行く物好きはいないと思うしな…。」
「たまに三日月さんが来ますよ?彼女、私たちの技術を吸収しているようで、日に日に強くなってますよ?」
「そうなのか?…まぁ、クリスマスにすごいものを手に入れたって自慢して来たしな…。」
「アレは反則級装備なので、ゲームには一切登場してません。」
「注意書きありがとう。…そろそろ次回予告だな。」
「そうですね。長くなりましたし。」
「新しい発見があったな。…知りたくもない情報も。」
「装備のことですか?」
「そうだ。…まぁ、次回予告を頼みたいな。」
「わかりました。次回、第185話『紫のヒーロー』ですね。…ん?紫のヒーロー…?…ジナイーダさん以外に思い浮かびません…。というより、私はなんなんでしょうか…?赤い熾天使…?…自分で言うのもなんですけど、そのまんまですね…。」


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185話 紫のヒーロー

まだまだ長すぎ陸軍編。
「あと何話くらい?」
10話くらいじゃないかなぁ?
「長いわね…。」
でも、一応陸軍編が終わったらエンディングはやるよ?区切りをつけるため。まだまだ続けるけど。
「いい加減、読者の皆様もやめて欲しいんじゃない?というより、見続けている人いるのかしら?」
さぁ…?いると良いなぁ…。筆者得なんだけど、共感してくれる人がいるってのは意外と嬉しいもんなのさ。
「なんか悟ってる…。」
それより、あらすじやってくれ。筆者ネタなし。
「グラーフ・ツェッペリンだ。」
あれ?本日は提督では?ツェペリンのおっさんは次回のはず…。
「ツェペリンのおっさんって誰よ…。Admiral(提督)は多様で忙しく、私が代わりに来た。」
「多様って何があるのよ…。」
まぁ、あらすじできればなんでも良いよ。
「あれ?なんかやる気なくしてる。」
なんか疲れちゃってね…。
「疲れを取るには、Honey lemon(はちみつレモン)が良いと聞くわ。」
「蜂蜜レモン…。一般的ね。」
レモンとハチミツを舐めれば良いのか…。
「…違くない?」
「…違うような気がするわ…。」
なんなんだよ…こいつ…。
「まぁ、とにかくあらすじやっちゃって。」
「わかったわ。」

あらすじよ
ビスマルク…。元気にしてるかしら?こんな姿になっちゃったけど、また会いたい…。会って、色々話したい…。…でも…今の私を見てもわかるかしら…?…ううん…分からないわよね…。叶わぬ夢なのかしら…。


「…は?」

 

ドミナントは心の底で怒りの感情が湧き上がっていた。

 

……訓練に失敗したから入渠させないだと…?一日一食の時点でもそうだが…、食べ物すら与えないだと…?しかも、食べ物がゴミの場合もあるだと…?…陸軍…ふざけんなよ…?…あきつ丸はそんな重荷を背負っていたのか…。だから、負けられなかったのか…。だから、俺たちに色々なことをしたのか…。

 

ドミナントは怒り状態だ。すると…。

 

「あなたは…外の人?」

 

まるゆが聞いてくる。

 

「俺は…外の人だ。」

 

「ひっ…。」

 

「?どうした?」

 

「外の人…外の人…怖い…助けて…誰か…。」

 

「…陸軍の野郎…。」

 

「…?」

 

「待て、まるゆ。俺は何もしない。その証拠に、ほら。」

 

ドミナントは服を脱ぎ、パンツのみになった。

 

「…変態…。」

 

「ひどくない!?」

 

ドミナントはツッコム。だが、まるゆの顔が恐怖より、少し軽蔑の顔になった。

 

「ふぅ、まぁ、俺が怖くないことはわかっただ…ハクション!」

 

「…服を着て…。」

 

ドミナントは何のために服を脱いだのか分からなくなった。

 

…………

 

「まぁ、俺は外から来たことは理解できるかな?」

 

「うん…。でも、なんでここにいるの?」

 

「さっきも聞いたけど、吹雪を連れ去られたから。ついでに、不在中に俺の家でもある鎮守府に襲撃してきたから。」

 

「鎮守府を…襲撃…?」

 

「知らなかったのか?…まぁ、そうだろうな。こんなところにいるんじゃ…。」

 

「というより、『提督』なの…?どこの…?」

 

「第4佐世保…あっ。」

 

ドミナントは気付くが、もう遅い。

 

「第4佐世保…。」

 

「ま、待て。違う。」

 

「…第4佐世保…。…でも、思っていたのと違う。なんか…優しい感じがする。」

 

「……。」

 

「…教えて、どうして任務が失敗したの…?」

 

「…あきつ丸は、自らその任務を放棄した。」

 

「えっ!?」

 

「あいつは、気づいたんだ。陸軍に騙されていることを。そして、『まるゆ』って艦娘…お前か!?お前を助けるためにあきつ丸は陸軍に戻るって言ってたぞ!…だが、まさかな…。」

 

「…あきつ丸…。まるゆのために…。て、どうしたの?」

 

「いや…、俺たちが倒したとはいえ、嫌に人数が少ないと思ったら…。まさかな…。」

 

「どうかしたの…?」

 

「まるゆ!目を閉じていろ!」

 

「えっ?いきなり何を…。」

 

「早く!!」

 

「は、はい!」

 

まるゆは目を閉じる。

 

バギ

 

「目を開けて良いぞ。」

 

「…!?鍵が!?」

 

ドミナントが瞬時にAC化して鍵を壊し、すぐに人の姿に戻ったのだ。

 

「まるゆ、お前の力が必要になるかも知れん。一緒に来い!」

 

「…でも、外の人…。」

 

「いいから行くぞ!」

 

「えっ!?」

 

ドミナントはまるゆの手を取り、走った。

 

……今一瞬ニヤケたように見えたが…。…気のせいか…?

 

ドミナントは気にせずに走った。

 

…………

陸軍基地 ホール

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「その程度か?あきつ丸。」

 

陸田中将の顔がニヤける。あきつ丸の周りの兵は減ったが、まだまだ多い。それに、陸田中将の隣には長光少将がいる。

 

「黙れ…!自分は…ここからまるゆを連れて外に出るであります!」

 

「クックック。その状態でか?なめられたものだな。」

 

陸田中将をはじめ、周りの兵も笑う。そして…。

 

「…やれ。」

 

陸田中将の一言で、兵が銃口を向ける。

 

……まるゆ…。ごめんであります…。

 

「無念であります…。」

 

あきつ丸は覚悟し、目の縁に涙を浮かべたまま閉じるが…。

 

バァン!

 

ドアが何者かに蹴破られる。

 

「な、何者だ?」

 

兵は聞く。長光少将は陸田中将の前に素早く移動する。

 

「私は第4佐世保鎮守府所属の者だ。」

 

その者はゆっくりと歩き出す。

 

「あきつ丸?と言ったか?」

 

「あなたは…?」

 

「こちらジナイーダ。あとは任せろ。」

 

その日、あきつ丸はヒーローを…、紫色のヒーローを見た。

 

…………

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

『いたぞ!撃て!撃てー!』

 

ダダダダダダ…!

 

攻撃ヘリのガトリングが主任を捕捉する。二つはジナイーダとセラフによって破壊されたとはいえ、一つでも地上からでは手強い。

 

ガラガラガラガラガラ…ウィィィィン…。

 

追ってきた戦車の砲身が主任に向く。

 

『てーー!』

 

ドオオオオオン!!

 

戦車が火を吹き、主任の場所から煙が上がる。

 

『…やったか?』

 

ォォォ…

 

煙が晴れ、主任の姿が確認できない。

 

『やったぞー!』

 

戦車長が声を上げるが…。

 

『馬鹿野郎!下だ!』

 

『何!?』

 

ヘリコプターの機長でもある大郷少将が言い、戦車長が確認しようとするが遅い。

 

「俺は見たいんだ…。あいつらの…本当の力をさぁ…!」

 

『な、何だ!?何が起きている!?』

 

主任が真下で、拳を構えた。

 

ドォォォォン!!

 

『エンジンに異常発生!…グワァ!』

 

『グハァ!』

 

『ドゥア!』

 

そして…。

 

ガチャ…ぽいぽいぽい…。

 

主任が全員を戦車から追い出す。

 

「撤退だー!」

 

戦車に乗っていたため、武器もない兵は撤退した。

 

『逃げるな!…くそっ!』

 

大郷少将はガトリングではなく、ミサイルを準備するが…。

 

「終わりだ。」

 

主任は戦車の砲身を向ける。エンジンが大破し、動けないとしても、砲台に異常はない。

 

ドオオオオン!

 

戦車が火を吹き、弾がまっすぐヘリコプターへ行く。

 

『くっ…。』

 

大郷少将は覚悟を決めるが…。

 

…………

数時間前

 

「いいか、お前たちにあるものを渡しておく。」

 

陸田中将が艦娘を除いた特殊部隊全員を呼び、話をする。

 

「「「はっ!」」」

 

「第4佐世保鎮守府を襲撃したからには、必ず復讐に来る。奴らはただの人間じゃない。ガチンコ対決だと間違いなく敗北するだろう。そのために、お前たちにこれを渡しておく。」

 

「これは…?」

 

「一定期間、身体能力が跳ね上がり、頭も冴え、精神の躊躇や慈悲がなくなる劇薬だ。だが、これは一定期間のためだけに、命を削る。乱用は避けるようにしろ。」

 

「「「はっ!」」」

 

…………

 

『まさか…これを使うことになるとはな…。』

 

そして、大郷少将は薬を飲む。

 

ドクン…!ドクン!!

 

そして、ものすごいスピードで来る弾をいとも簡単に避けた。

 

『クハハハハ!これは良い!身体能力が跳ね上がっていくのが感じられる!このヘリコプターに自分の神経を繋いでいるが、こんなに動きやすいのは初めてだ!手足のように簡単に操れる!』

 

「!?」

 

ヘリコプターがものすごい速さで飛び、一瞬のうちにミサイルが準備される。

 

『てーー!』

 

ドガァァァァン!!ドオオオオン!

 

全弾戦車にあたり、大爆発が起こる。

 

「……。」

 

主任は既に戦車を捨て、外で走るが…。

 

『逃すものか!』

 

ガガガガガガガガ!!

 

ガトリングが捕捉する。

 

『クハハハハァァ!逃げろ逃げろぉぉ!楽しませろぉぉ!』

 

「…チッ。」

 

そして、主任は建物の中に逃げ込んだ。

 

…………

 

ヒュンッ!

 

タ"ァァァァァン"…!

 

「くっ…。」

 

セラフは林の中で避け続けていた。

 

……音が来るまで6秒前後…弾速は約2000 m/s…。さっきかすった傷の方向から見て、西南西…。おそらくスナイパー。だとしたら二人。ならば高いところ。そして、ここからの距離は9km〜11km…?

 

セラフは分析する。

 

「あちらからは見えているのでしょうか…?」

 

セラフは夜の闇を見つめる。そして…。

 

ヒュンッ!

 

ビュンッ!

 

タ"ァァァァン"…!

 

セラフは弾をギリギリで避け、走る。

 

ヒュンッ!…ヒュンッ!

 

タ"ァァァァン"…!…タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"…!

 

……音が近づいています…!

 

そして、気象レーダーが見えた。

 

「見つけました!…一人?」

 

屋上にいる豆粒のような樫本少将を見つけた。

 

「姿が確認できればこちらのもんです!」

 

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!…

 

そして、セラフはそこらへんにあった石を思いっきり投げる。そして、樫本少将が舌打ちをしたと見えた途端。

 

バガァ!ガキャン!ガァン!…

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!タ"ァ"ァ"ァ"ン"!…

 

飛んでくる石を全て打ち落とし、セラフを狙うが…。

 

「…どこ?」

 

「こちらです!」

 

「!?」

 

セラフが背後いて、驚くが…。

 

「クスクス…。甘いわ。」

 

「!?」

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!

 

銃口が後ろを向いており、振り向かずに撃ったのだ。セラフは間一髪避け、後ろに飛ぶ。

 

「クスクスクス…これを避けるとは中々ね。」

 

「当たりそうでしたけどね。」

 

樫本少将とセラフが一定の距離を保ちながら話す。

 

「…私の名前は樫本 美月。あなたの名前は?」

 

「…セラフ。ナインボール・セラフです。」

 

「ナインボール…?…そう。」

 

そして、樫本少将は考える。

 

……クスクス…。このままじゃ負けちゃうわね。接近戦は少し苦手なんだけど…。…これを使えばなんとかなるかしら…?

 

そして、樫本少将は薬を取り出す。

 

「…なんですか?それ?…とても体に良くない色にしか見えませんが…。」

 

「クスクス…。でしょうね。」

 

そして、それを飲んだ。

 

「うっ…。」

 

「?」

 

樫本少将は前のめりで倒れた。白目が黒く染まる。そして…。

 

ドクン…!ドクン!!

 

「クスクス…。」

 

ゆっくりと起き上がる。

 

「?」

 

「クスクスクス…クス…!これはすごいわね!力が漲るわ!視力が!あなたの体温!血液の流れ!全てが見える!今の私ならあなたを殺せる!」

 

「!?」

 

樫本少将はマガジンを素早く変え、セラフを撃つ。

 

ヒュンッ!

 

「クスクスクス!まずは右足ぃ!」

 

セラフに向けた弾が右足にかする。もちろん、セラフにとってそれはかすっただけの弾だ。が。

 

「!?くはっ…!」

 

セラフが痛みで声を上げた。

 

「クスクス!あなたの全てが見える!かすっただけでも致命傷になる場所を打ち抜ける!」

 

樫本少将は銃口を向ける。

 

「さぁぁぁ!勝負はこれからよぉぉ!」

 




所謂、ドーピングですね。しかも、劇薬級の。つまり、寿命や生命時間を縮めます。使いすぎると死にます。
ダク 二週目泣く泣く突入。敵つおい。

登場人物紹介コーナー
まるゆ…艦娘。あきつ丸と共にいた者。少し様子が変だが…。
劇薬…一粒で力が倍以上に跳ね上がる。その分生命維持も出来なくなる。飲めば飲むほどあの世へ近づく、所謂一瞬だけ人間の限界を超す手助けをする薬。

「毎度お馴染み長門コーナーだ。」
「今回は俺じゃぁん!ギャハハハハハ!」
「…教官、つまり主任だ…。」
「ま!こんなしけたコーナーに来たからにはちゃんと紹介させてもらうよー!う〜ん楽しみだぁ。」
「…しけたコーナーで悪かったな。…!。ところで教官。」
「どーした?」
「主任というのは役職だろう?本名を教えてくれないか…?」
「中々いい質問じゃない。それなりにはさ。…でも、教えないよー!ギャハハハハハ!」
「む…。馬鹿にされた気分だ…。」
「あれれ〜?もしかしてマジになっちゃった〜?アーハハハハハ。」
「くっ…殴りたいその笑顔…。」
「まぁ、性能は教えてやるよ…。」
「本当か?」
「なんてねー!ギャハハハハハ!」
「くそっ…。このコーナーになんて奴が来てしまったんだ…。ストレスがマッハで溜まる…。筆者め…恨むぞ…。」
「まぁ、どうせ来たんだぁ…。少しだけ教えてあげようか。」
「……。…頼む。」
「この機体の名は『ハングドマン』…。吊るされた男の意味を持つ…。俺は決まった武器を持たない…。だけど、演習時にはKARASAWA(カラサワ)を持っている。他にもヒュージキャノン(主任砲)やマスブレード(柱)と羽を持っている…。アレは本気以外出さないけど…。」
「教官が本気の声で言っている…。つまり、本当のことか…。」
「ま!俺の残機は無限とだけ伝えておこうか〜。」
「ほう。残機は無限。…無限…。…無限!?」
「まぁ、この世界では1だけどねぇ。」
「ちょ、ちょっと待て!そっちの世界ではどうなっているんだ!?」
「俺はセラフと同じAIとこの小説では設定されている。つまり、実質残機なんて存在しないんだよ。」
「ん?混ざらなかったか…?」
「人間の可能性を追い続ける人形ってとこかな。今のところは。」
「人間の…可能性…。」
「そうだ。」
「…そっちの世界のことがわからなくなってきたぞ…。ジナイーダやセラフのことを聞いて、人知を超えた何かの世界だと思っていたが…。想像以上だ…。行きたくもない…。」
「ま、海は汚れて空の気候は無茶苦茶。汚染された世界しかないしね〜。」
「うわぁ…。もう聞く気もなくなってしまった…。次回予告をしてくれないか…?」
「ギャハハハハハ!いーじゃぁん!盛り上がって来たねー!」
「ちっとも盛り上がってないぞ…。」
「次回、第186話『強化人間の戦い』らしいね〜。あれれ〜?もしかして可能性証明されちゃう〜?アーハハハハハハ!」


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186話 強化人間の戦い

第2章まで終わった…。
「そう。」
驚きがあるよ。おそらく、その前に正体が分かると思うけど。
「それは楽しみね。」
ネタもないから、あらすじどうぞ。
「この人よ」
「我が名は、Queen Elizabeth class Battleship Warspite! 」
ウォースパイトですね。あらすじをどうぞ
「わかったわ。」

あらすじ
前回、スティグロちゃんから連絡がきたわ。何やら大変そうね。そちらの鎮守府は。手伝いに行こうかしら?


…………

陸軍基地 工場

 

ドゥン!ドゥン!ドゥン!…

 

ガキン!ガコン!パギャン!キィン!…

 

「くっ、避けるのも一苦労だ…。」

 

暗闇の中、ジャックは避け続ける。ショットガンの弾が工場の機械の鉄に当たり、火花が散る。

 

ダダダダダダ…!

 

「それだけじゃ俺は倒せないぞ?」

 

ジャックの撃つアサルトライフルの弾を避けながら言う。

 

「…くっ…、いちいち壁に隠れるから姿を見失う…。」

 

ドゥン!

 

ガキャン!パキン!ガゴン!…

 

火花が散り、一瞬だが明るくなる。

 

「!そこか!」

 

「…チッ。」

 

仁志少将は駆けたり、隠れたり、攻撃したりで大忙しだ。

 

「待てっ!」

 

ジャックは後を追うが…。

 

「!?」

 

「終わりだ。」

 

仁志少将は走ったふりをして、柱の影で待っていたのだ。

 

「くっ…!」

 

ドゥン!

 

ビリリ…

 

ジャックが近距離の散弾銃をギリギリで避け、服が破ける。

 

「…ふん!」

 

「ぐぁっ…。」

 

そして、ジャックが銃で叩きつける。撃たないとしても、銃そのものが鉄で出来ているため、攻撃力は高い。

 

「ぐ…。」

 

「腕の骨にヒビが入った。まともに動かせないはずだ。降参しろ。」

 

ジャックが言うが…。

 

「ヒビ?それだけか?」

 

もちろん、過酷な訓練を受けた仁志少将にとっては何の問題もない。

 

「まともに動かせないだけか?折れてもいないのに?降参などするものか。死ね。」

 

ドゥン!ドゥン!

 

弾が四方に散り、跳ね返り、ジャックを狙う。

 

「…残念だが…、ここの地形の構造は理解した。当たらん。」

 

ジャックは最小限の動きだけで全てを交わした。

 

「あとはお前が見えた時に撃てば良いだけだ。」

 

ジャックは銃を構える。

 

「……。」

 

仁志少将は歩いて影から姿を表す。

 

「?降参か?」

 

ジャックは聞くが、仁志少将が何か小さい物を持っていることに気づく。

 

「……。使うか。いらないよな?恐怖や寿命なんて。それで勝てるって言うならさ。」

 

「?何の話だ?」

 

ジャックは不思議に思った途端…。

 

ゴクン…

 

「!?何を飲んだ?」

 

仁志少将が薬を飲む。すると、ブーツの上から何処かから出てきた黒い筋が絡まり、最終的には足が真っ黒に染まる。

 

ドクン…!ドクン!!

 

「ふ…ふふふ…。」

 

「?」

 

「ふふふふふ…あ"ははははぁ!すごいな!これは!身体が軽い!肉体がないようだ!ジャック・O!貴様など恐るるに足りん!」

 

そして、仁志少将はジャックにショットガンを構える。

 

「?何をした?…まぁいい。何度やっても…。!?」

 

ジャックが話している最中、仁志少将が消えた。一時も目を離さず…、瞬きすらしなかったのに、消えたのだ。

 

「どこを見ている!?」

 

「!?」

 

仁志少将が背後にいた。

 

「!?」

 

途端に、ジャックが振り向くが…。

 

フッ…

 

「!?また消えた…。」

 

ジャックが背後に注意していると…。

 

ガギン!ガゴン!プシュー!バギン!…

 

周りの機械が次々と傷ついていく。鉄パイプにも切れ込みが入り、熱風が吹き出る。

 

…速すぎて見えん…。

 

ジャックは注意するが…。

 

フッ…

 

正面に現れた。

 

「これで最初からだ!無駄に地形を覚えてご苦労様だなぁ!あ"はははははは!」

 

そう、機械類に大きな傷や小さな傷、折り曲げたり、凹ませたりして反射角度や方向などを変えたのだ。

 

「夜はぁぁ!まだ長いぞぉぉ!」

 

「……。」

 

…………

陸軍基地 ホール

 

「す、すごいであります…。」

 

「ざっとこれくらいか…。話にもならん弱さだ。」

 

長光少将と陸田中将を除いた、兵の全員がジナイーダの周りに倒れている。

 

「…くっ…。役立たずの兵どもが…!」

 

「……。」

 

「…おい、長光。わしはあれの準備をする。時間を稼げ!」

 

「……。」

 

コクリ

 

そして、陸田中将は奥へ消えて行った。

 

「あきつ丸と言ったか?あいつを追え。」

 

「りょ、了解であります。」

 

あきつ丸は起き上がり、追っていく。長光少将は追っていくあきつ丸のことなど気にも留めていなかった。ずっとジナイーダから目を離さない。

 

「最後はお前が相手か。」

 

「……。」

 

コクリ

 

「…話せないのか?…まぁいい。」

 

ジナイーダは戦闘準備に入るが…。

 

「……。」

 

クイ…

 

長光少将はジナイーダを指差しながら首を傾げている。

 

「…私の名はジナイーダだ。」

 

「……。」

 

コクリ

 

「…お前の名は知っている。長光少将。…相手だ!」

 

ジナイーダが言い終わった途端…。

 

ビュンッ!

 

「!?」

 

「……。」

 

長光少将が瞬間移動のような速さで近づき、上半身に蹴りを入れようとしたのだ。とっさにジナイーダもかわす。

 

「……。」

 

ビュンッ!ビュッ!ビュン!

 

長光少将の攻撃が途切れる様子がない。

 

「ふん。」

 

ビュンッ!ビュン!…ガ!ガガ!…

 

ジナイーダが腕でガードしたが…。

 

バッ!グルリン…ガゴッ!

 

長光少将が空中の…ジナイーダの手前で一回転して、遠心力と力を込めたかかとを落とす。

 

ガギッ!ミシミシ…

 

……!?骨にヒビが入ったか…。重い…なんで重い蹴りだ…。

 

ジナイーダが考えた途端…。

 

ビキビキ…バガァ!

 

「!?」

 

「……。」

 

床が崩れ、一階下に落ちた。

 

ヒュンッ!ガッ!

 

落ちている間にも、両者は攻撃する。そして、地面につくが、距離を置くため、少し後ろへ飛ぶ。

 

「……。」

 

「…腕を使っていないようだが…。…腕が使えないのか?」

 

「……。」

 

フルフル

 

「…手加減のつもりか?舐めるな。私は戦いに命をかけている。私との戦いで、情けなど侮辱になる。本気でこい!」

 

……とは言っても、私もAC化していないがな。

 

「……。」

 

ジナイーダが言った後、しばらくしてからうなずいた。

 

「……。」

 

そして、長光少将は拳を構える。武器は使ってこないようだ。だが、その構えだけで、歴戦の古兵なのはひと目見ればわかる。

 

「…やっと本気になったな。」

 

「……。」

 

コクリ

 

そして…。

 

ボッ!

 

「!?近…。」

 

「……。」

 

バギィ!

 

「ぐぁっ!」

 

「……。」

 

バゴォン!

 

ジナイーダは吹っ飛び、壁に穴が開く。

 

ガラガラ…

 

「くっ…。なんだ今のは…?」

 

……速い…。あいつが足に力を込めたと思ったら目にも止まらぬ速さで近づき、まるで巨岩を粉砕するようなパンチだ…。…肋骨が折れたか…?折れているなら、激しい運動をすると内臓に刺さる…。

 

長光少将が踏み込んだところは、地面が蜘蛛の巣みたいに割れている。

 

「…これは…きついな…。」

 

「……。」

 

長光少将は相変わらず無表情だ。

 

「…来い…!」

 

ジナイーダはそれでも立ち上がる。

 

「……。」

 

ボッ!

 

「……。」

 

「……。」

 

ジナイーダは覚悟した目をしていた。

 

「……。」

 

長光少将は見えない速度で頭に蹴りを入れようとしたが…。

 

「戦場を知らぬ者…。甘い!」

 

ドガァァァン!

 

「……。」

 

長光少将はジナイーダのカウンターの蹴りを食らった。

 

ヒュンッ!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

 

吹っ飛び、三つの壁を貫通する。が。

 

「……。頑丈すぎないか…?あいつ…。」

 

なんと、カウンターしたジナイーダの足の骨がヒビだらけになっていた。

 

ガラガラ…

 

「……。」

 

むくり

 

一方、長光少将は何事もなかったのように起き上がる。

 

「……。」

 

パタパタ…

 

ホコリや小さい瓦礫をはらい…。

 

ボッ!

 

ジナイーダに一瞬で近づく。

 

「くっ…。…!?」

 

そこでジナイーダは気づいた。

 

……私が蹴りを入れた左頬…。…機械か!?

 

長光少将の左頬の塗装が剥がれ、鉄が露出されている。

 

……なるほど、機械ならあの攻撃力、速度、頑丈さに納得する。ならば、人間だと思って、出し惜しむわけにはいかないな…。

 

長光少将が殴ろうとしたが…。

 

ガギィィィン!!

 

鉄同士のぶつかった音が響く。

 

「……。」

 

「…これでも表情は変わらないか…。」

 

ジナイーダがACに戻ったのだ。

 

「…一つアドバイスだ。」

 

「……。」

 

「機械なのはお前だけじゃないぞ。」

 

ドガァァァァァァァァン!

 

ジナイーダが顔を殴り、長光少将が吹っ飛ぶ。

 

「……。」

 

殴られたことによって、鉄の顔が少し変形していた。

 

「だが、その考えることなどを含めると…。元人間だな。」

 

「……。」

 

「来い。同じ元人間同士、拳で語り合わないか?」

 

ジナイーダは拳を構える。

 

「……。」

 

ボッ!

 

ウィーーーン

 

ガギィン!ガガガガガガガ!

 

両者とも、すごい速さで移動し、鉄の拳が叩き合う音がする。

 

「……。」

 

もちろん、AC化したジナイーダはこの世界のロボットの拳の攻撃など、効くわけがない。全性能に関して長光少将を上回っている。

 

ガキィン!

 

そして…。

 

バチバチ…。

 

「……。」

 

長光少将の左腕が飛び、そこから火花が散り、電気が走る。

 

「……。」

 

「?なんだそれは?」

 

長光少将はこの状況での勝利は不可能だと判断し、薬を持つ。いくら機械化されているからとはいえ、元は人間だ。となれば、もちろん、生身の部分もある。

 

「……。」

 

ゴクン

 

そして飲む。すると、身体中に黒い筋が絡みつく。

 

ドクン…!ドクン…!!

 

「……。」

 

「…どうした?」

 

無表情のまま動かない長光少将を不思議に思い、ジナイーダが言った次の瞬間…。

 

「……。」

 

カッ!

 

ドガァァァァァァン!!

 

「…力が上がったか?」

 

「……。」

 

長光少将がさっきよりも速いスピードで近づき、さっきの何倍もあるパワーで殴ったのだ。流石にジナイーダもガードした。

 

「…なるほど。どうやら、私と同じ速度、力、防御力を手に入れたみたいだな。」

 

「……。」

 

「さて、では、始めるか。」




次回からvsになりそう…。
ダク 2週目の敵はおそらく1周目より強いのだろう。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…

「長門コーナーだ。」
「遅かったじゃないか…。」
「本日は店長でもあるジャック教官だ。」
「いいだろう。私が相手になる。」
「さっそく、性能を教えてくれ。」
「いいだろう。私は重量二脚型ACだ。」
「重そうだな…。」
「それに火力を重視している。右腕武装のハイレーザーライフル通称カラサワ、グレネードランチャー、両肩ミサイルだ。」
「ほう。」
「…?どうした?あまり驚いていなさそうだが。」
「他の教官たちが異常なせいだ…。」
「まぁ、そうだろう。だが、頭脳で私に勝てる者はいない。私は裏の策士。ただの策士とは違う。レイヴンとしては弱いかも知れん…。だが、過酷な世界をこの頭脳で生き延びた。自惚れかも知れんが、私ほどの策士はそうそういないだろう。」
「策士…。なら、この第2次世界大戦の時の勝算も分かっていたのか…?」
「私なら可能だったかも知れん。」
「…なるほど…。別の意味で化け物だ…。」
「何か言ったか?」
「い、いや。別に…。…教官は誰を怒らせても命はないな…。」
「?」
「じ、次回予告をやってほしい…。」
「いいだろう。…次回、第187話『vs.森崎少将』なるほど。もう決着がつくのか。見ものだな。」


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187話 vs森崎少将

まだまだ続く陸軍編。
「完全にバトルね。」
そっちの鎮守府は大変だけど…。
「瓦礫だらけ。見たことない子も手伝ってくれているわ。」
スティグロですね。まぁ、あと10話くらいでドミナントたち戻ってくるから。
「そんなにあるの…?」
そりゃ…。てか、前々から書いてたからね。今回のゲストは?
「この子みたい。」
「ジョン・C・バトラー級護衛駆逐艦、サミュエル・B・ロバーツ。よろしく!」
名前なげぇ…。でも、強い駆逐艦だね。
「夕立と同じくらいかしら?」
そうかもね。よくわからんけど。
「何で知らないのよ…。」
瑞鶴ばかり使って、他の艦に会うのなんてたまにだから。あとは数合わせとか?
「私を優先しすぎよ…。…まぁ、うれしいけど。」
おや〜。瑞鶴がデレたぞ。見たかサム。
「はっきりと。」
「うっ…。」
いや〜。流石デレデレ瑞鶴ですわ〜。ハッハッハ。…あれ?サム?どうしてそんなに離れているの?
「……。」
まさか…。
ドガァァァァン!!!
グハァァァァ!!!
「全弾命中!もっとやっちゃって!」
「オーバーキル…。」
サ、サム…筆者が炭になる前に早くあらすじを…。
ボガァァァァン!
グファァァァ!
「わ、わかった。」

あらすじ
前回、特に良い感じの展開はなかったかなぁ〜。でも、ビスマルクさんが前より笑顔が増えて嬉しい。前はうわべだけの笑顔だったけど、本当の笑顔もするようになった!


…………

廊下

 

「どこまで行くんですか…?て、あなたが息が切れているし…。」

 

「ヒィ、ヒィ…ハァ…ハァ…。」

 

ドミナントは走っているせいでバテている。

 

……あきつ丸がおそらく戦っている。まるゆを連れ出せたことを知らせなくては…。

 

ドミナントは疲れて立ち止まっていると…。

 

キシ…キシ…

 

『我は官軍*1我が敵は〜♪天〜地容れざる朝敵*2ぞ〜♪敵の大蔣*3たる者ハ〜♪古今無雙*4の英雄で〜♪之*5に從*6ふ兵*7は〜♪共に慓悍*8決死の士〜♪鬼神*9に恥ぬ勇あるも〜♪天の許さぬ叛逆*10を〜♪起しゝ者は昔より〜♪榮*11えし例*12有らざるぞ〜♪敵の亡ぶる夫迄*13ハ〜♪進めや進め諸共に〜♪玉散る劔*14抜き連れて〜♪死する覺悟*15で進むべし〜♪』

 

前の暗闇の奥から近づいてくる足音と軍歌が聞こえる。

 

「…誰だ?それに、軍歌…?」

 

ドミナントは正体の分からない者に聞く。

 

「…知っているとは驚きだ…。何千年も前の軍歌を…。詳しい考古学者などしか知らないはずだ…。それか、陸軍にスパイがいるか…。なんせ、この時代の軍歌は前の世代が伝え、次の世代へ継ぐように出来ているからな…。」

 

「何千年…?どういう意味だ…?」

 

「…答える義理はない。」

 

相手の顔が見えた。

 

「…俺は、森崎だ。」

 

「森崎少将!?」

 

まるゆが声を上げた。

 

「…知り合いか?」

 

「…いい人。」

 

まるゆが言うが…。

 

「…俺がいい人…か…。残念だが、それは違う。俺は俺の信じる正義を全うしているだけだ。」

 

そして、森崎少将は姿を現す。二つの刀を持っている。

 

「…勝負だ。ドミナント大佐。」

 

そして、一つをドミナントの前へ投げた。刀が横滑りする。

 

「なんなんだよ…。こいつ…。…断ると言ったら?」

 

「簡単だ。斬る。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントは刀を手に取る。

 

……まずいな。剣なんて、社畜時代の俺には無縁のものだったからな…。第一、俺は戦い向きではない。トーシロだ。だが、そのまま斬られるのは嫌だからな…。て、これ重いな。

 

ドミナントは刀の重さを確認しながら思う。

 

「何故ですか!森崎少将!」

 

「まるゆ准尉。…俺も陸軍の端くれだ。戦わないわけにはいかない。悪であると分かっていても、俺はもう後にひけない…。」

 

「でも…。」

 

「構えろ!」

 

もちろん、ドミナントは構え方すら知らない。

 

「こう…か…?」

 

「…まぁいい。それで死ねば…、所詮はそれまでの男だというだけだ。」

 

「…そうか。」

 

「行くぞ!」

 

そして、森崎少将は刀を振る。

 

「わっ!」

 

キィン!

 

ドミナントは反射神経でなんとか受け止める。

 

ガギギギギギ…!

 

すると、目にも留まらぬ速さで刀を連続して振ってきた。

 

……くっ、振動が伝わって痺れる…。…刀を持てなくする気か…?

 

まぁ、それをそれで受けているドミナントもすごいのだが…。

 

「……。」

 

そして、森崎少将は後ろに飛び、距離を置く。そして、何かを取り出す。

 

「…なんだ?それは?薬か?」

 

森崎少将は薬を手に取り、ドミナントに見せつけ…。

 

「これは使わん。」

 

地面に投げ捨て、踏みにじる。

 

「…俺はこんなものに頼らず、正々堂々と戦う。例え相手が赤子でも、全力で倒す。それが俺だ。」

 

「…なるほど。強い。」

 

そして、構える。まるゆは二人をジッと見ていた。

 

「…受け切れるか…?」

 

居合斬りの構えをする。

 

……まさか、居合斬り?この距離でか?不可能だ。なんせあいつとの距離は10m少しあるのだぞ。受けきれる距離だ。舐められたものだな。

 

ドミナントは構えた。が。

 

ビュンッ!

 

……!?速…。

 

ズバァ!

 

ドミナントの脇腹を見事に斬った。

 

「…ぐはぁぁぁ!」

 

「……。」

 

血飛沫の上がる中、森崎少将に少しの血も当たらない。

 

「…それまでか。もうその傷では動くことも、助かることもない。…すまないな…。」

 

森崎少将は倒れたドミナントに近づく。

 

「…もし…、…違う出会いをしていたら、おそらく友人になれたのかもな…。」

 

「…お前…は…それで…良いのか…?」

 

「…俺は、俺の正義であり、任務を全うしただけだ。…まるゆを牢に入れ戻す。それも俺の任務だ。」

 

「……。」

 

「もう話すな。苦しむぞ?」

 

そして、森崎少将はまるゆの方を向く。ドミナントはそこから目の前が徐々に暗くなった。

 

……俺は…死ぬのか…?目の前が暗いな…。すまんな…。みんな。俺が不甲斐ない提督で…。最後まで迷惑をかけてしまった…。本当にすまない…。俺は…先に逝く…。あとは…任せた…。

 

ドミナントの意識がなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……お前はそれで良いのか?

 

どこかが何か聞いてくる。

 

……誰だ…?

 

……私が誰なのかなど、どうでも良いことだ。それより、お前はそれで良いのか?

 

……良いわけないだろう…!

 

……そうか…。いいだろう。ここでお前が死ぬのは、私にとっても不都合だ。力を貸してやろう。フッフッフ…。

 

……!

 

…………

廊下

 

ムクリ

 

ドミナントは起き上がる。

 

「…?どういうことだ?心臓は止まっていた筈だ。」

 

「メインシステム…、戦闘モード起動…。」

 

ユラァ

 

「…?それに、様子も少し…。!?」

 

ヒュッ!

 

ガギァィィン!

 

ドミナントは目にも留まらぬ速さで近づき、刀を振る。

 

「…どういうことだ…?出血も止まっている…。真の実力を隠していたのか?」

 

「ほう…。これを受けるとは…少し強いか…。」

 

キィン!

 

両者とも後方へ飛ぶ。

 

……なんだ?明らかに様子が変だぞ?出血も止まっている…。それに、今の力…。刀の振り方も、持ち手も変わった…。何が起きた?

 

森崎少将が考えていると、ドミナントが構える。

 

「!?あの構えは居合斬り…!?覚えたというのか!?」

 

森崎少将は驚かざるを得ない。自分が、何年もかけて手に入れた奥義を、ほんの一回見られただけで覚えられてしまうことに。

 

「…なんだ?なんなんだ?…お前は…誰だ?」

 

二人とも同じ構えになる。

 

ヒュッ!ガキィィィィン!!

 

刀のぶつかり合う音がする。

 

……間違いない。一番切れやすい力加減も同じだ。…それより、あいつはドミナント大佐ではないな。

 

森崎少将は警戒する。

 

「……。」

 

ヒュンッ!

 

ガギィン!

 

森崎少将の刀を見事に受けきる。

 

ギギ…ギ…

 

「…これは刀自体を切る奥義…。これでも切れぬとは…。」

 

「貴様の力…よくぞここまで練り上げた…。」

 

「…だが、この状態でも打開策はある。」

 

ガキャン!ガキャン!

 

完全なる力技。常人には決して受けきることなどできない。だが、それすらも受けきる。

 

「…何故だ!?」

 

「この力…久しいな…。」

 

「…これは…人間と戦っている気がしないな…。」

 

そして、遠くに飛ぶ。

 

「遠距離で叩くか…?」

 

刀を振った途端、カマイタチが起きる。

 

ギィィン!

 

ドミナントはそれすらも受ける。

 

「…最終奥義…。」

 

森崎少将は構え、ドミナントに斬りかかる。

 

スゥ…

 

もちろん、ドミナントは受けようとするが…。

 

サァ…

 

まるで呼吸をするがの如く、刀が受けられないようにしなり見事に避けた。

 

「くらえ!」

 

ズバァ!

 

「この感触…斬った。」

 

森崎少将は確信した。が。

 

「…なんだ?ドミナント大佐の後ろに黒いモヤみたいなのが…。」

 

斬ったのはそのモヤだ。そして、そのモヤがドミナントを覆う。

 

「…フッフッフ。これで終わりか?」

 

その黒いモヤの中、姿の見えないドミナントが言う。

 

「…そのモヤが正体だな。肉体もないのに、そいつをのっとるな!」

 

「それは出来ん。久しき肉体だ…。」

 

ドミナント?は刀を構える。

 

「久しい戦いの感じだ。楽しんでやるぞ。」

 

…………

 

「…ハッ!?」

 

ドミナントが気づいたのはあれから随分経ってからだ。

 

「……。」

 

まるゆが怯え切った目で、体が震えながらドミナントを見ている。

 

「まるゆ…?俺は…。!?」

 

ドミナントは今頃気づいた。自身の左腕が血の色で染まっていることを。近くに森崎少将が倒れていることを。その森崎少将の左腕がないことを…。

 

「大丈夫か!?」

 

ドミナントは慌てて、駆け寄り、応急処置を施そうとする。

 

「グ…ァ…。」

 

ドミナントは、自分の衣服を破り、包帯がわりにして圧迫止血をし、遠くに転がっている腕を持ってくる。

 

「まるゆ!起きろ!」

 

「…ハッ!?」

 

ドミナントは止血させながら、恐怖の世界からまるゆを呼び戻す。

 

「この近くにボックスはないか!?あとビニールもだ!」

 

「は、はい!」

 

まるゆは近くの部屋まで走る。幸い、人員はジナイーダの方へ行って、蛻のからだ。

 

「持ってきました!」

 

「ありがとう!」

 

そして、腕をビニールに入れ、ボックスに入れる。

 

「このままじゃまずいな…。救急車…は無理だ。この施設に病院はあるのか?」

 

「確か別の施設にあります。その施設は戦闘員がいないので、呼べば駆けつけてくれます。いつどこでも呼べるように、火災報知器の中にボタンが…。ありました!」

 

そして、まるゆはボタンを押す。

 

「よし、これであとは来る筈だ。」

 

「はい!」

 

「…森崎少将、もうすぐ来ます。それでは。」

 

そして、まるゆとドミナントは走って行った。

 

…………

道中

 

「ドミナント大佐、さっき、すごく怖かったです…。」

 

「…すまない。そこらへんの記憶はない…。何があったのかすら不明だ。」

 

「…そうですか…。実は、さっき黒い…。いえ、なんでもないです。」

 

「?」

 

まるゆは言うのをやめた。思い出させて、またあんな残酷なドミナントを見たくなかったからだ。

*1
かんぐん

*2
ちょうてき

*3
たいしょう

*4
ここんむそう

*5
これ

*6
したが

*7
つわもの

*8
ひょうかん

*9
きじん

*10
はんぎゃく

*11
さか

*12
ためし

*13
それまで

*14
つるぎ

*15
かくご




ドミナントの正体が少しだけ見えた瞬間ですね。
ダク 二週目があっという間に終わりそう…。

登場人物紹介コーナー
森崎少将…幼き頃陸軍に憧れて入隊。嫌な先輩に訓練させられていたところを陸田中将(当時は大尉)に助けられた。それ以来、陸田中将が訓練させて、育ててきた者。見事に軍刀を使う戦術に長けていき、今の地位へ短期間で上り詰めた。自分の正義を貫く信念を持っており、それは滅多なことがあっても曲がることはない。艦娘たちが現れる少し前から自身の技を開発していたみたいで、約3年ほど開発していた。艦娘に恩があり、艦娘とはなるべく戦いたくない。

「長門コーナーだ。今回のゲストは…。」
「森崎だ。」
「…だそうだ。…鎮守府襲撃時には艦娘たちに一切怪我を負わせて無いことに感謝する。」
「いやいや…。俺自身のしっかりした理由もなく怪我をさせるのは違う。愛国心は強いが、艦娘に罪はない。例え国を正しくするためであっても、なるべくは犠牲を出したくはないからな。」
「なるほどな。…道を間違えたのか?」
「いや。それは断じてない。俺は陸田中将に会って良かったと思っている。変わる前に沢山のことを教えてもらったり、鍛えてもらったりした。」
「恩か…。」
「恩…ではないな。」
「?」
「俺の正義は借りは借りた分だけ返す、多くてもダメだし少なくてもダメだ。あとは国を裏切らないことだ。」
「なるほどな。…技名などを教えてくれ。」
「いや…それはちょっと…。」
「?何故だ?」
「いや…。いくら自分で開発した技とはいえ、恥ずかしいぞ…。」
「…まぁ…な。なら、その軍刀について教えてくれ。」
「良いだろう。この軍刀は少将になった直後に陸田中将がくれたものだ。大事な戦いにはこの軍刀を使う。」
「?提督に投げたのはなんだ?」
「あれは同じ種類の奴だ。重量も切れ味も形も全て同じだ。唯一の違いは俺のほうはもらったものだったことくらいだ。」
「なるほどな。」
「…と、そろそろ次回予告だな。これから出番は全然ないから、俺に任せてくれ。」
「良いだろう。というより、私が次回予告をすることがなくなってきたな…。相槌を打つだけか…。」
「…まぁ…ねぇ…。…がんばれ。それしか言えん。次回、第188話『vs大郷少将』。ほう。大郷少将とやるのか…。と、なれば黒ヘリも出ているな…。どうなるのか…見ものだな。」


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188話 vs大郷少将

ネタがない…。
「バトル編長いわねー。」
あと9話で終わりかね。
「ほぼ一日一話投稿ね。」
ストックがあるからね。
「前々から作ってたものね。」
前書き、後書きは作ってなかったから、書かなくちゃいかんのね。
「大変ね〜。」
あらすじいこうか。
「この人。」
「Nelsonだ。見せてもらおう貴様の采配を。」
何その死神部隊みたいなセリフ…。
「死神…。」
「フッフッフッフ…余は死神だから…。て、なんだ…?死神部隊とは…。」
お前で28人目…恐るな。あらすじやる時間が来ただけだ…。
「見せてもらうわ…。あなたの持つ力…。」
瑞鶴までもか…。確かに、素養があるのかもしれん…。
「やるぞ…あらすじを…。」

あらすじだ
今は夜中だ。余は就寝している。マルヒトマルマルくらいか?


…………

 

(BGM AC4『panther』)

 

バババババババ…!!

 

『出てこい!出てこい!どこだぁぁ!!』

 

大郷少将が適当にガトリングガンを撃ちまくる。

 

「……。」

 

主任は物影に隠れるばかりだ。

 

……ま!いつかエネルギー切れを起こしちゃうけど〜。

 

そう、いくら身体能力の爆発的な向上でも、所詮はヘリコプターだ。無駄に弾を撃てばなくなるし、飛ぶのにも燃料が必要だ。

 

……でも…、俺は見たいんだ。“人間”の可能性を。

 

主任は物影からスタスタ歩いて出てくる。

 

『どうしたぁ!?降参かぁ!?残念だがぁ、お前は死ぬだけだぁ!クハハハハハァァ!!』

 

怒鳴り声と共にミサイルが装填された。

 

「証明して見せよう。“あいつら”には、それが出来るはずだ…!」

 

……“あいつら”の場所へは行かせないなぁ〜。俺のキャラじゃないけど。

 

『笑止ぃ!お前の次はあいつらだぁ!』

 

パシュゥ!パシュゥ!パシュゥ!…

 

ミサイルが連続的に発射された。

 

ドオォォォォォン!ドォォォォン!…

 

主任のいたところに当たり、煙が上がる。

 

ォォォ…

 

煙が晴れたが…。

 

『!?どこだぁ?空だからここまでは来れないはずだぁ!』

 

主任がおらず、大郷少将は辺りをキョロキョロ見回す。すると、コソコソ動く人影が。

 

『いたぞぉ!!』

 

「あれ?見つかっちゃった。」

 

ガガガガガガガガガ…!

 

無慈悲にも、走り回る主任にヘリコプターが追い、ガトリングガンは捕捉し続ける。

 

『いつまで面倒かける気だ!?逃げ切れると思うなよ!』

 

そして…。

 

……ここだぁ!

 

大郷少将は先を見通して撃つ。が。

 

『!?止まった!?』

 

主任が立ち止まり、見事に弾が外れる。

 

「プレゼント…気にいると良いけど…。」

 

ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!…

 

カンッ!カンッ!…

 

『石…?』

 

主任が飛ばしたのは石だった。

 

『クハハハハァ!そんなもの効くかぁ!』

 

ガガガガガガガ…!

 

主任を補足してガトリングガンを撃つ。

 

ヒュンッ!

 

ガギ!…ドガァン!

 

『!?何だ!?』

 

大郷少将はガトリングガンがいきなり爆発して驚いた。

 

『くそっ!発射口に…!』

 

そう、主任が石を、三つあるガトリングガンの一つの発射口に見事に入れ、暴発が起きたのだ。

 

「ギャハハハハハ!プレゼント、気に入ったかな?」

 

『この野郎ぉ!!』

 

パシュゥッ!パシュゥッ!パシュゥッ!…

 

ドガァァァァン!ドゴォォォォン!ドガァァァァン!…

 

主任の小馬鹿にしたような挑発にのり、より多くのミサイルを乱射する。そして、爆発し煙が上がった。

 

『やったか!?』

 

「は、ず、し、た、みたいですよ〜。ギャハハハハ。」

 

『!?』

 

主任は一早く逃げ、ジナイーダたちに落とされたヘリコプターの残骸にいた。

 

ガガガガガガガガ…!

 

そして、残骸にあったガトリングガンで大郷少将のヘリコプターを撃つ。

 

『クハハハハハァ!そんなものに当たるかぁ!』

 

もちろん、大郷少将はいとも簡単に避ける。が。

 

『なっ!?操縦が効かない!?』

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

ヘリコプターの操縦が効かなくなったのだ。

 

ガガガガガガガ…!

 

主任のガトリングがよく当たる。

 

『くそっ!何故だ!?』

 

ヘリコプターもガトリングで撃つが、大きさのせいで全く当たらず、主任の攻撃ばかりが命中する。そして、ヘリコプターから黒い煙が上がる。

 

……何故だ!?何故操縦が効かない!?冷静になれ!冷静に…!…ならない!?薬の副作用か!?クソォォ!!

 

大郷少将はヘリコプターを無茶苦茶に動かす。すると…。

 

ブツン!

 

『ん?』

 

「……。」

 

何かが切れた音がして、操縦が少し楽になる。

 

……この感触、音!糸か!?それとも綱か!?どうでも良い!だが一体どうやって…!?…そうか!投げてきた石につけていたのか!

 

大郷少将は気付く。そう、主任は、石にセラフからもらったあのワイヤーを巻いていたのだ。それを、他の石と一緒に投げ、わざと外し、ヘリコプターに巻きつけたのだ。

 

『クハハハハハハァ!タネさえわかれば怖くなどないぞぉ!』

 

ガガガガガガガ…!

 

パシュゥッ!パシュゥッ!…

 

ドガァァァァァン!ドゴォォォォォン!…

 

ミサイルやガトリングガンを撃ちまくり、主任は必死に逃げる。ヘリコプターは主任を捕捉し、後を追う。

 

『逃げるだけかぁ!?お前はここで死ねぇ!』

 

大郷少将は言うが…。

 

「ま!そっちが死んじゃうかもしれないけどさぁ。ギャハハハハハ!」

 

主任が立ち止まり、真っ直ぐヘリコプターを向く。ヘリコプターが迫り、林の木々がザワザワと音を立てる。

 

『馬鹿め!?気でも狂ったかぁ!?いいだろう!そこまで自信があるのならぁ!必ず当て、木っ端微塵にしてやる!この追尾ミサイルでなぁ!』

 

……1発、予備のために積んでおいたんだ。戦車は外したが…チップはまだ体に埋め込まれているはずだ。奴も気付いていない。

 

大郷少将は大声を出しながらも、思い…。

 

『死ねぇ!』

 

パシュゥッ!

 

追尾ミサイルを発射した。同時に、ヘリコプターが激しく煙が上がる。

 

「聞こえてる〜?そっちじゃないですよ?」

 

ピピピピ…グググ…

 

『何だと!?』

 

ミサイルが大幅に軌道を変え、自機に向かって来たのだ。

 

『な、何故だぁ!?』

 

「タネがわかれば怖くないんじゃなかったっけぇ?」

 

『貴様…!石に混ぜて…!』

 

主任が石と一緒に投げたのだった。そして、それはヘリコプターの金具に挟まっている。“二度あることは三度ある”とはこのこと。

 

「最初に撃たれた時はチップに気がつかなかったけど…、戦車の追尾型の弾が俺の足場に命中した。つまり、狙っているのは足場。そこにちょうど、弾が被弾したことを思い出しちゃってね〜。」

 

『クソォォォ!』

 

ミサイルが飛んでくる。

 

『だが甘いぞぉ!』

 

そう、手足のように動かせるのなら、追尾ミサイルも回避可能だ。

 

ォォォ…ォォォオオ…!

 

だが、追尾ミサイル。どこまでも追い続ける。

 

『チィッ!』

 

大郷少将はミサイルを面倒に思い、急降下して、地面スレスレを飛ぶ。

 

オオオ…!

 

『まだまだだなぁ!』

 

ドガァァァァン!

 

ミサイルが、ヘリコプターに避けられ地面に当たり、爆発する。そして、ヘリコプターは高く上がる。

 

『だから無駄なことだと言っている!我々が負ける要素など存在しない!』

 

大郷少将は大声で言う。だが…。

 

『いない…?どこだ!?』

 

「あれれ〜ねぇ、ヤバいんじゃない〜?」

 

『!?』

 

主任がヘリコプターに張り付いていたのだ。

 

『離れろぉ!お前がどれだけ足止めしようが!無駄なことだ!』

 

「黙れよ…。俺は見たいんだ…。あいつらの可能性を…!」

 

ドガァァァァン!!!

 

主任が黒く煙が上がっているところを重点的に殴打した。

 

ドガァァァァン!ボガァァァァン!ドゴォォォン!…

 

ヘリコプターの機械が所々で爆発し、安定性を失いつつある。

 

パッ…ヒュゥゥゥゥ…ストッ!

 

「……。」

 

主任が落ちる前に飛び降り、着地する。普通の人間なら骨折はしているが、内部がACだからこその芸当である。

 

『……。』

 

大郷少将は、薬の効き目がちょうど切れたようだ。

 

『…俺は…負けたのか…。』

 

ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!…!

 

ヘリコプターから緊急音が鳴る。

 

『…ゴフッ…。主任…と言ったか…?』

 

爆発しながら煙が上がり、中で苦しみながら声を出す大郷少将。

 

『お前に…!お前は…!この腐れきった国を救えるのか!?差別のあるこの国を…!陸軍を救えるのか!?お前は…!我々は救うために…必要な手段をしただけだ!何故我々の邪魔をした!?』

 

大郷少将は安定性を失ったヘリコプターで怒鳴る。もうすぐ落ちる。

 

「…人間の可能性…それを証明するためだ。」

 

主任が言う。

 

『そんな勝手な理由で…!』

 

…………

 

『ギャハハ!化け物だ〜!石投げろ!』

 

『汚い化け物!消えろ!』

 

『手のない化け物!』

 

『死ね!』

 

『一人ぼっちの化け物め!』

 

隻腕(片腕しかないこと)の少年が石を投げられ、頭から血を流しながら一人で泣いている。

 

…………

 

……忌々しい記憶だ…。なぜ今…。

 

「?いいところ貴様らとどう違〜う?俺は必要な手段をとっただけですよ〜。」

 

『我々は…!我々はこの国のために…!』

 

…………

 

『何故だ…。何故俺がこんな目に…。』

 

暗い部屋の中、天井に縄をかけている。そこに…。

 

『そうだ。お前は正しい。』

 

入り口に人影が。

 

『誰だ!?』

 

『自己紹介がまだだったな。わしは陸軍の陸田中将だ。』

 

『陸軍…?陸軍がなんのようだ?』

 

『なに、殺しに来たわけではない。君の手助けをしようとな。』

 

『……?』

 

『この差別ある国に復讐したくないか?』

 

『!?』

 

『破壊活動ではない。わしと共に差別をなくすのだよ。働き口もないだろう。どうだ?良い条件だとは思わないか?』

 

…………

 

……そうだ…。そうだったな…。それで俺は陸軍に…。

 

「黙れよ。それは国のためじゃない。」

 

『なんだと…!』

 

「それは、俺と同じ理由…。自己満足のためだ。」

 

『わかった口をきくな…!お前に…、我々がどれだけ惨めな思いをしてきたかわかるものか…!』

 

大郷少将は憎しみの詰まった声で言う。

 

「…だったら…。」

 

主任が言う。

 

『なんだ…!?』

 

「ドミナントを…。いや、俺の鎮守府の提督を…海軍のリーダーにさせて…。」

 

主任はまっすぐ見る。

 

「こんな差別、無くしてやろうじゃん。ギャハハハハハ!」

 

『!?』

 

大郷少将は驚きだった。そんなことを言うとは思っていなかったからだ。すると…。

 

ドガァァァァァン!ボガァァァァァン!ドゴォォォン!…

 

ヘリコプターが耐えきれず、回転しながらゆっくりと落ちる。

 

『……。』

 

「…じゃ!パラシュートでも使って、脱出すれば?」

 

主任は提案した。が。

 

『…馬鹿な。俺は負けたのだ。負けたこの命に何の意味がある?それに、これに神経が繋いである。例え無理やり千切っても、脱出後すぐに死ぬぞ。せめて、最後は陸軍らしく、立派に、戦いで死なせてくれ。』

 

大郷少将は落ちていくヘリコプターから言う。

 

「…あ、そうなんだぁ〜。まぁ、面白い奴だったよ。執着し過ぎてるけど。一度言っちゃったしねぇ〜。」

 

主任が背を向けて、歩きながら言う。

 

『あの言葉、嘘ではないことを信じるぞ…。』

 

そして…。

 

『…礼を言う…。』

 

ドガアアアアアアン!!!

 

「……。」

 

主任は燃え盛るヘリコプターを背に、マジな顔で進んで行った。




やはり、軍事ものを動かすのはあまりアレですね…。
ダク 二週目も間違えてフラムトルートにしてしまった…。

登場人物紹介コーナー
大郷少将…だいごう。生まれながら片腕しかなかった障害者。出産時に親に捨てられているため出自不明。国の記録にもない。そのため、孤児院でも異端児扱いされて虐められていた。その後様々な職業に就くが全て短期間で辞めさせられている。その後自害を図ろうとしたが陸田中将に出会い、この国自体に復讐を決意した。差別を最も嫌っている。主任の言葉で救われた。

「長門コーナーだ。」
「大郷だ。」
「大郷少将か。あの時はよくも駆逐艦などに向かってミサイルを馬鹿みたいに撃ちまくってくれたな…。」
「ふん。海軍に属して甘やかされている貴様らには良い薬になっただろう。」
「私の右腕や左足までその衝撃で失ったのだぞ。」
「それがどうした?入渠すれば治るだろう。俺の腕は治らん。」
「…貴様…。…いや、捻くれているだけなのかもな。」
「…同情するな。」
「上記にある、貴様の説明を見た。捻くれる理由もわからなくはない。」
「社会自体が俺を受け付けなかった。どれほど親切にしても、どれほど努力してもだ。国がそんな現状を見ても、深海棲艦と戦っているお前たちだけに力を入れていた。海軍を優先していた。」
「世の中の理不尽…か。」
「…もしかしたら俺の自己満足なのかも知れん…。陸軍と海軍が差別されている。それがどうしても俺と常人との差別に見えてしまった。だから放って置けなかった。差別なき国家にして欲しかった。」
「生まれながら背負った障害で…。どうしようもないことで差別されれば怒る理由もわかる。」
「だからこそ、お前たちの上官の言葉で救われたんだ。…いや、その言葉を待っていたのかも知れん…。」
「そうか…。…私たちもなんとか…。」
「妙な慰めはやめろ。余計に傷つくだけだ。」
「…わかった。」
「ヘリコプターの説明をする。あれは俺が設計したものだ。隻腕(片腕)であることを逆に強みに変えた。そこの部分の神経から直接ヘリに繋いで細かな操縦を可能にした。攻撃も移動も俺一人で可能にした。そのため、普通より倍以上に装甲を強化して、武器も搭載した。スピードを確保するために機体もスリムになった。…まぁ、ただの会社がこれを作るのは到底不可能。我々独自に開発した技術などもある。このヘリの武装はガトリングが3門ある。前と横だ。それにミサイルも何門かある。基本的にはガトリングで攻撃だ。ミサイルは対上空兵器にも特化している。装甲は戦車の弾では流石に落ちるが、ガトリングを撃ちまくらない限りビクともしない。時速100kmまでスピードは出せる。高度5000mも余裕でいける。積載量は5tまでだ。まぁ、普通のヘリとは違うところばかりだな。これくらいで良いだろう。俺は帰る。」
「そうか…。…大郷少将。」
「…なんだ。」
「…主任はやると言ったらやる男だぞ。」
「…そうか。」
「…行ったか。次回、第189話「vs樫本少将」だ。…久しぶりに次回予告をしたな…。」


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189話 vs樫本少将

今回はスナイパーとセラフ対決ですね。
「本当のスナイパーは二人組なのよね?」
そうだね。一人が撃つ係で、もう一人が観測する係。二人一組でスナイパーになる。戦争中はそれが基本だったらしい。
「そうなの?私は飛ばしていたからわからないけど…。」
多分、それが基本だと思う。で、あらすじにうつるよ。
「流れが一気に変わったわね。…この人よ。」
「私は、Her Majesty's Ship Ark Royal。よろしく。」
アークロイヤルさんですね。ビスマルクに毎回逃げられている…。
「まぁ、その度にソードフィッシュで足を狙うのだがな。」
「それ、逆効果よ…。その艦載機に舵をやられたトラウマがあるから…。」
可哀想なビスマルクさん…。そろそろあらすじを願い。
「アラスジー?」
「なんか変だけど、そうよ。頼むわ。」
「わかった。やってみよう。」

アラスジー
現在真夜中。そろそろ日本ではツユーと呼ばれる時期ね…。


…………

気象レーダー 屋上

 

(BGM ACⅤ 『In a day』)

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!!…タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!!

 

ヒュンッ!ヒュンッ!

 

「クスクス…。逃げるだけじゃ勝てないわよぉ!」

 

「……。」

 

セラフは死に物狂いで避ける。1発1発が致命傷だからだ。

 

……厄介ですね…。近づいても落ちない精度…。あの薬の作用でしょうか?

 

ヒュンッ!

 

ズバ…。

 

「くっ…。」

 

セラフが考えながら避けていたら左腕を掠る。

 

……左腕が思うように動きません…。このままでは負けますね…。現在人型での敗北率60%…。

 

セラフは思い…。

 

ダッ!

 

ヒュンッ!ヒュンッ!

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!

 

セラフは走りながら近づく。もちろん、樫本少将は撃つ。

 

ズバァ!ズバ!

 

「避けない…!?」

 

「外した…?」

 

樫本少将が避けると感じて、避けた後を計算して撃ったが、馬鹿みたいに真っ向から走ってきたことに驚く。が、もちろんそれでもギリギリ当たるように計算しており、セラフの肌に少し掠る。

 

「…接近戦は苦手だけど…。」

 

ビュンッ!

 

樫本少将は持っているスナイパーライフルを振り回す。だが、セラフは間近に迫ってきていた。

 

「やられちゃう…。…なんてね♪。」

 

「!?」

 

樫本少将は追い詰められているフリをして、左手でナイフを取り出す。

 

ヒュンッ!

 

ナイフが空を切る。セラフは後ろへ飛ぶ。

 

「…クスクス。避けるだけね。」

 

樫本少将はニヤけるが…。

 

「いえ、狙いはこちらです。」

 

セラフはハンドガンを見せる。

 

「…私の拳銃…。」

 

樫本少将の腰についていたハンドガンを奪ったのだ。

 

「…これで、少しはマシになるはずです…。」

 

「クスクス…。マシ?それだけで?」

 

樫本少将はスナイパーライフルを構える。すると、両腕が黒く、鎧のような何かに変化する。

 

「クスクス…。それだけで勝てるわけないじゃない。」

 

「やってみないとわかりませんよ?」

 

そして、二人の間に沈黙が訪れ、風が吹き、近くの林で葉擦れの音がする。

 

「……。」

 

「……。」

 

そして…。

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!

 

ビュンッ!

 

樫本少将が撃ち、同時にセラフが走る。

 

パァァァァァン!パァァァァァン!パァァァァァン!

 

キュィン!キィン!ガキンッ!

 

セラフがハンドガンで撃つが、スナイパーライフルを盾にする。

 

「…当たらないわよぉ!」

 

そして、樫本少将はセラフに狙いを定め、撃つ。

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!…

 

「!?」

 

「クスクスクス…!」

 

撃った弾はセラフの頭と腹、かわされた時も当たるように狙っており…。

 

「くっ…。」

 

避けるには伏せるしかなかった。セラフはスライディングした。

 

「……。」

 

「クスクス…!終わりよぉ!」

 

樫本少将がスナイパーライフルを構え、スライディングした刹那に脳天に狙いを定めて撃つ。

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!

 

しかし…。

 

パァァァァァン!!

 

ギィン!

 

セラフがスライディングしながらハンドガンの弾を命中させ、僅かにそれる。そして、それた弾は次第に大きく角度がずれていき…。

 

キュインッ!

 

セラフの左頬を掠り、血が滴る。それた弾が屋上にあたり、穴が開く。

 

「!?」

 

「今の言葉…、返します!」

 

そして、セラフがハンドガンを撃つ。

 

パァァァァァン!パァァァァァン!

 

しかし…。

 

「甘いわぁ!」

 

樫本少将はギリギリでかわす。しかし、右頬を掠り、血が滴る。

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!

 

ヒュンッ!

 

「うっ…。」

 

「クスクス…。まだまだ撃つわよぉ!」

 

セラフは致命傷の弾を避け続ける。

 

ドクン…。

 

「…ゲボッ!」

 

「!?」

 

樫本少将が突然血を吐き出し、左手で抑え、猛攻撃が止む。すると、変化していた両腕も元に戻り、目の色も人間に近くなった。

 

……やはり、あの薬は劇薬…。一定時間、身体能力の上昇だけのために、命を削る…危険な薬…。これ以上の運動は彼女の命に関わります…。…せいぜい持って、あと5分…。

 

セラフはそんな中でも敵の心配をする。

 

「今すぐ戦いをやめてください!これ以上は命に関わります!」

 

「ゲボッ…ゲボッ…。ハァ…ハァ…。まだよ…まだ戦える…!」

 

「死にたいのですか!?」

 

「クスクス…。こんな時まで敵の心配なんて、馬鹿なの…?」

 

「馬鹿で結構です!やめてください!」

 

「クスクス…。いいえ…。もう…、もう私は止まらない…、止められない…。この命を削ってでも…あなたを倒す!」

 

「…4分です。4分であなたを無力化します。」

 

「クスクス…。やってみなさいよ…!」

 

樫本少将は震える手でスナイパーライフルを構える。

 

「さぁ…!勝負は…これから…!」

 

「…行きます!」

 

セラフはまた走り回る。

 

「クスクス…。いつまで逃げ続けるつもりかしら…?」

 

樫本少将がスナイパーライフルを構える。

 

ピタッ

 

「?」

 

突然セラフが立ち止まり、樫本少将は疑問に思う。

 

「もう逃げません。」

 

「逃げない…?戦いを放棄したのかしら…?」

 

「いえ、もう無力化できます。」

 

「?何を…?」

 

セラフが右手を後ろに引いた。

 

「!?」

 

途端に体が動かなくなる。

 

「切れないワイヤーです。一定の場所に仕掛けました。そして、私が引いたことによって、接着剤を引き剥がし、縛りあげたんです。」

 

「…くっ…。」

 

「もう動けません。大人しくしてください。」

 

セラフが言うが…。

 

キリキリ…ブシュッ!ブシュッ!

 

「!?」

 

「クスクス…。まだ…戦えるって…言ったでしょ…!」

 

樫本少将が無理やり千切ろうとするため、肉が裂け、ワイヤーに血が伝う。

 

「どうして…そこまで強いあなたがどうして…。あなたにとって陸軍とは何なんですか!?命まで削ってでも同じ国に属する者を排除しようとするですか!?」

 

「クスクス…。私には陸軍しかなかった…。裏切られた私には他に選択肢がなかった…。だから、拾ってくれた陸軍のために命をも捧げるの…。陸軍の存続には…、あなたたちが邪魔なの…!」

 

キリキリ…ブチッ!

 

肉の筋が切れる嫌な音がする。

 

「それ以上は…あなたの腕が千切れますよ…?」

 

「私の腕二本で、陸軍が救えるのなら、何て軽い代償なのかしら…?」

 

樫本少将はニヤける。

 

……この人は…、何で…。

 

セラフは考えても答えがなかった。

 

「クスクス…。もう少し…もう少しだけ力を…!」

 

ギリギリ…パチンッ!

 

「!?」

 

ワイヤーが切れた。

 

「クスク…ス…。まだいける…。」

 

「……。」

 

セラフは、傷だらけで血も吐いているのに戦おうとしている女性を見て、歯を食いしばり、険しいような…、諦めたような表情をする。

 

「クスクス…。さぁ…。」

 

樫本少将は半目で苦しそうにしながら言う。

 

……タイムリミット…残り1分…。

 

セラフは覚悟した顔向き直り、ハンドガンを構える。

 

パァァァァァン!パァァァァァン!パァァァァァン!

 

キュィンッ!カキンッ!…ガゴンッ!

 

セラフの撃った1弾が樫本少将のマガジン入れを貫く。

 

「!?」

 

咄嗟にマガジン入れを投げ捨てる。

 

「クスクス…。もう弾はこの装填されているやつだけね…。」

 

樫本少将は無駄弾を撃たないために慎重になる。

 

……こちらも、残り1発…。もう決めの一手まで撃てませんね…。

 

そして、セラフが近距離戦へ持ち込もうと一瞬で近づく。

 

「クスクス。無駄よ!」

 

樫本少将は近づいてくるセラフに標準を合わせる。が。

 

ビュンッ!

 

「!?」

 

セラフは前ではなく、後ろにいた。

 

「クスクス。甘い!」

 

「!?」

 

樫本少将のスナイパーライフルが後ろを向いていたのだ。

 

タ"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!

 

「くっ…!」

 

セラフの肩を掠り、一歩飛び退く。そして、セラフはハンドガンを構え、樫本少将は振り返り様にスナイパーライフルを構える。そして…。

 

……この1発!

 

……この1発!

 

二人は同時に思った。

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!!!

パァァァァァァン!!!

 

同時に弾が飛ぶ。そして…。

 

ズバァ!

 

「ク…ハ…。」

 

セラフが膝をつく。樫本少将の弾が横腹をえぐったのだ。

 

「…やる…わね…。クスク…ゲホッ!」

 

だが、樫本少将の肺を貫通していた。樫本少将は仰向けに倒れた。同時に薬の効き目が切れ、完全に元の姿に戻る。

 

「ハァ…ハァ…。あなたに…何があったのかはわかりません…。でも…こんなの間違っています…。」

 

セラフは樫本少将の隣で、逆向きに仰向けで倒れる。

 

「あなたたちには…わからないわよね…。裏切られて…人生をめちゃくちゃに…された人の気持ちなど…。あの人は…。私を裏切って…。」

 

…………

 

『ねぇ、おはよう。』

 

『……。』

 

『どうしたの?』

 

『いい奴だったよ。』

 

『おめでたい野郎だからな。すぐに死んじまったんだな。ハハハハ。』

 

『えっ…?』

 

『もう近づかないでくれ。馬鹿がうつる。ギャハハ。』

 

『ホントに死んだら良いのにね。ふふふ。』

 

『ヒーローになるとか…プッ。笑えるんですけど。』

 

『『『ハハハハハハ。』』』

 

『それの何がおかしいの!?』

 

『ハハハ。怒ったぞ〜。ハハハ。』

 

『この…!』

 

『痛っ!この野郎!』

 

『痛い痛い!』

 

『へっ。クズが。ヒーローがなんだって?』

 

…………

 

……忌々しい…。瀬戸じゃない、本当に忌々しい奴…。

 

「あの人…?」

 

「今では…鎮守府の提督を…しているらしいけど…。」

 

「…そうですか…。なら、違います…。」

 

「…?」

 

「瀬戸大佐ですよね…。あの人、あなたのことを…忘れていませんでしたよ…?」

 

「裏切った相手を…忘れていたら…いい度胸じゃない…。」

 

「そういう意味ではありません…。」

 

「…?」

 

「あなたのこと…。謝りたいとずっと言っていました…。」

 

「何を…今更…。あの人のせいで…人生を…めちゃくちゃに…されたのに…。」

 

…………

 

『聞いたぞ!何故最初に暴力を振るった!?』

 

『明らかにいじめられたからです!』

 

『教官の前で口答えなど前代未聞だ!』

 

『事実です!』

 

『チッ。反省の色もなし!口答え!お前はここにいる資格などない!謹慎処分にする!』

 

『しかしいくつもの証拠が…!』

 

『待ちたまえ。』

 

そこに、偉そうな人が来る。

 

『副校長…。』

 

『君の気持ちもわかるし、教官の気持ちもわかる。』

 

『副校長…。なら…。』

 

『しかし、この学校では協調性というものも必要だ。…意味はわかるな?』

 

『え…。つまり…。』

 

『この状態のままだと支障が出る。それに、この学校でそのことが発覚された場合、色々と面倒だ。それに、君だけではない。君の家族まで迷惑がかかるのだよ。つまり…わかるだろう?』

 

『私に…出て行けと…?』

 

『その様な言い方はしていない。あくまで“話し合い”だ。』

 

…………

 

『……。』

 

一人、夜道を歩く女性がいる。

 

『失礼。』

 

突然、後ろから声をかけられる。

 

『誰…?』

 

『通りすがりの陸軍だ。君、昼の一部始終を見ていたよ。』

 

『…私を嘲笑いに来たのかしら?なんなら、殺すわよ?今とても気が立っているから…。』

 

『いや、全くの逆だ。どうだろう?陸軍に来ないか?』

 

『…何?スカウトなの?クスクス。それに、もう軍事学校を辞めた身よ?』

 

『クックック。それがどうした?あそこは腐っている。とてもとても腐っている。腐敗した匂いが外に漏れ、辺りを歩けないくらいにな。だが、君は違う。虐められて、正しいことを言っているのに、筋の通らない世の中に失望するのは当たり前だ。復讐に手を貸そう。あいつらを殺したいのだろう?なんなら、復讐したあとすぐに辞めても良い。…海軍ではないが、陸軍に来ないか?君は才能を持っている。とても良い才能を…。』

 

『…復讐…できるのかしら…?』

 

『造作もない。それに、計画を成し遂げた暁には、証拠すら残らず、奴らを苦しめようじゃないか。』

 

『苦しめる…。』

 

『そうだ。苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて苦しめて…。君の好きなようにしても良い。』

 

『クスクス。その話、嘘だったら殺すわよ?』

 

『ああ。我が命、陸田中将の名にかけてな。』

 

…………

 

……クスクス…、そして、陸軍に入隊したんだっけ…。

 

「瀬戸大佐は、あなたを裏切るつもりなど元よりなかったと言っていました…。…でも、結果として、裏切ってしまったと、後悔しています…。」

 

「口だけなら…何とでも…言えるわ…。」

 

……そう…何とでもね。

 

「瀬戸大佐は、もうあんなことがないように人間不審になっていました…。そして、ドミナントさんが打ち解けさせて、色々聞きました…。あなたのいる場所を知ったら、謝るために教えて欲しいと言っていました…。」

 

「…あの馬鹿…。そんなこと…言ったの…?」

 

「はい…。」

 

そして、樫本少将は満月に手を伸ばす。

 

「…結局、私はあの人に…。」

 

ビュゥゥゥ…

 

屋上のため、ちょうど突風が吹き、セラフは樫本少将が最後何て言ったかわからなかった。

 

「…セラフ…と言ったかしら…?」

 

「はい…。」

 

「…あの人に…伝言…頼めるかしら…?」

 

「…はい…。」

 

「…『いつか話したあの夢…。あなたに託す…。』…て…。」

 

「はい…。」

 

そして、樫本少将は満月と重なった手を見て…。

 

「結局…届かなかったわ…。…じゃあね…。」

 

パタ

 

樫本少将は、手を下ろし、意識が暗闇に落ちていった。

 

「…私も、少し…。」

 

セラフの脇腹からの血が止まらない。

 

「…これではAC化もできませんね…。…私もでしょうか…?…あまり後悔はありませんね…。」

 

セラフも目を閉じる。

 

……いえ、後悔はありますね…。最後に、ドミナントさんを見ながら…逝きたかったです…。

 

セラフの意識も暗闇に落ちていった。




人型でも、特殊状態だとAC型になれません。また、AC型でどこか破損した場合も人型になれません。AC型になれない場合は血液の量が一定量なくなる。または力不足(風邪などを起こした場合)。内臓が痛んだとしてもAC型になれます。最初からコア損傷になりますが…。

登場人物紹介コーナー
樫本少将…単独スナイパー。その目は人間の限界を超えたような視力を持っている。猛禽類と同じかそれ以上。ちなみに、本気を出した視力は20.0(一般は1.0)。また、気配で感知することが出来るため観測者を必要としない。そのため、ターゲットの近くに人がいると誤射する可能性がある。夜も昼間みたいに見えるらしい…。また、構えている最中は集中しているため、水や食料を飲まず食わずでも一週間は平気だという。
いじめ主犯…その後、人生に失敗する。また、いじめたことが世間に知れ渡り、他人から白い目で見られ続けている。
見ていたが助けなかった人間…この学校にいたにも関わらず、サラリーマン化している者が多い。世間では失敗した者のレッテルが貼られてしまっている。なれたとしても、そのことが暴露されてすぐに退職させられて生活が荒れている。因果応報だ。

「長門コーナーだ。」
「クスクス…樫本よ。」
「上記の説明を見た。因果応報でスカッとしただろう。」
「クスクス…そうね。もうこれ以上私が悪事に手を染める必要は無さそうね。私もなりたい職には就職できなかったけど、ここも悪くないと思っているわ。」
「勝ち組だな。」
「クスクス。ええ。考えただけで笑みが溢れるわ。憎き者が私より下の地位にいると思うと。」
「そういう奴らは私も嫌いだからな。」
「クスクス…。ところで、ここで何をすれば良いのかしら?」
「む。そうだな…。…気になっていたんだが、何故くすくす笑っているんだ?」
「クス…そうねぇ…。捻くれ者だからじゃないかしら?」
「捻くれ者…か。だが、捻くれる前も笑っていただろう?」
「クスクス。そう言われてみればそうねぇ。」
「…笑っていると、からかわれた気分になるな。」
「ふふふ…そうねぇ…。おそらく迷宮入りよ。ふふふ。」
「迷宮入りか…。…なら、そのスナイパーについて教えてくれ。」
「クスクス。説明は前本編で言ったはず…。それに少し付け足すとするなら、アレは私が設計したもの。私ならではの武器を手に入れようとした産物よ。」
「なるほど。なら、容姿を教えてくれ。」
「クスクス。ここで見れるじゃない。」
「いや、文章だけだと嫌な者もいるからな…。」
「クスクス。…まぁ、良いけど。」
「礼を言う。」
「クス。私の容姿を説明するわ。まず、髪は少しクセ毛のあるロングかしら?あとこれはベレー帽。谷間が開いてるけど、入らないからよ…。たまに勘違いする人もいるけど、これはわざとではないわ。服が小さすぎるのよ。」
「龍驤が見たら泣くな。迷彩服の陸軍服を着ているようだが…。」
「クスクスクス。スナイパーは敵にバレず、悟られずが基本よ?派手な服を着るわけがないじゃない。」
「まぁ、そうだな。」
「歳はいくつなんだ?」
「クス…。そこも言わなくちゃダメなの…?…25よ…。」
「提督と同じ年齢だな。」
「クスクス。そう。もう良いかしら?」
「そうだな。では、次回予告で締めくくろう。やってくれ。」
「クスクス。第190話『vs仁志少将』。あら?次はこの人ね。どんな戦いをするのかしら?」


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190話 vs仁志少将

やってきたきた190。
「後8話くらいで終わりね。」
陸軍編のこり8話。
「陸軍編が終わったらどうなるのかしらね。」
鎮守府近辺のゆるゆる生活。バトルとかない。ほっこり系ほのぼのを目指す予定。
「何話くらい?」
なんと100話くらいだ。ちなみに、バトルはネタとしてあるかな…?2話くらい…。
「随分少ないわね。どこかの鎮守府へ行ったりは?」
ネタが無くなったら、第2佐世保へ行かせるつもり。第2佐世保は五島の隣の島だから。
「ホラー系は?」
100話に一回はあるから。まぁ、そのつもりで。
「へぇ〜…。」
ホントだよ。
「怪しいけどね。」
まぁ、そうなったらそうなったさ。今回のゲストは?
「ラッキー!」
「この子…て!まだ出てきちゃ駄目じゃない。…まぁいいけど。」
ラッキージャーヴィスですね。
「元気ねぇ…。まだマルフタマルマルなのに…。」
「召喚された!」
「私なんて1時間に何回呼ばれるのよ…。おちおち寝てもいられないじゃない。」
スワンスワン。まぁ、あと8回くらいは起きてもらうつもりだけど。
「あんた…覚えておきなさいよ…。いつか仕返ししてやる…。」
忘れちゃうかもしれないけど、努力はする。て、ジャーヴィスー?どこだー?
「あんたの原稿用紙のところに…。」
ちょ!それダメ!それ弄ったら書き直しになる!
「珍しいなぁ。」
ビリッ!
「あ…。」
「あ…。」
あ…。

ジャーヴィスがやってくれたのであらすじはなくなった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とでも、言うと思っていたのかい?この程度、想定の範囲内だよぉ。自動保存機能がある。

「ひやひやさせないでよ…。」

で、ジャーヴィス。あらすじ。

「わ、わかった…。」

 

アラスジー

いきなり召喚されて戸惑ったけど、退屈しないね!ここ!…え?鎮守府の様子…?みんな寝てるよ?


…………

工場

 

(BGM ACMOA『Apex in circle』)

 

ドゥン!ドゥン!

 

ガキンッ!ガコン!バガンッ!…!

 

見えない暗さで、弾が跳ね返り火花が散る。

 

「くっ…。」

 

ジャックは必死に避ける。

 

フッ

 

「後だ。」

 

仁志少将が後ろで構えている。

 

「!?」

 

ドゥン!

 

フッ

 

ジャックは転がるようにして回避している。

 

「くそっ。」

 

フッ

 

「どこを見ている?」

 

「!?」

 

またしても、後ろをとられる。

 

ドゥン!ドゥン!

 

ガキン!バコン!ドガンッ!ガキッ!…!

 

……速すぎて見えない…。次が予測不能だ…。

 

ジャックが弾を避けながら考えていると…。

 

フッ

 

「どうした?」

 

ドゥン!

 

背後から1発撃たれる。

 

「チッ。」

 

ガキン!バギ!ガコン!…!

 

……頭を使え…。この状況を打破できる案を…。

 

ジャックは跳ね返る弾も避けながら必死に考える。彼もまた、過酷な世界を頭脳で生きてきた策士だ。…だが、この世界に来てあまり頭を使う機会がなくなり、鈍ってきている。すぐには浮かばない。

 

「どうしたどうした?俺が見えないか?」

 

「くっ…。」

 

ドゥン!ドゥン!

 

ガキン!バギン!ガキ!キィン!…!

 

……見えない…。速くて見えないなら…、遅くさせれば良い。

 

ジャックは避けながら思いつく。が。

 

……どうやって遅くさせる?

 

そこにたどり着く。そのうちに…。

 

フッ

 

「遅いな。止まって見える。」

 

ドゥン!

 

ガギン!バギ!ガコンッ!キィン!…!

 

「くっ…!」

 

ジャックの避ける場所の位置を少しずつ把握しているのか、かすっていく。

 

……このまま時間をかけることは困難…。止まる…。止まらせる方法…。…セラフからワイヤーをもらっておくべきだった…。

 

ジャックは避けながら後悔する。

 

……だが、ないものは仕方がない。この状態でどうやって乗り切る。アサルトライフルを適当に撃つか?いや、当たらないだろう。いっそのこと、後ろに注意してカウンターをくらわせるか?…いや、相手からは私のことが見えている…。なら、それをしたところで、見切られてムダに体力を消耗するだけだ。ならどうする?いや、ズレている。どうやって止まらせるかだ。…狭い場所か。だが、相手はショットガン…。狭い場所は逆に不利だ。なら広い場所…いや、そうなれば、あの速さだ。逆に視界の中に捉えられることは困難だ。…視界?…なら、見えなくすれば良い。

 

ババババババババ…!

 

ジャックが結論を出し、アサルトライフルを撃ち、金属に当てて火花を散らして、そこらへんにあった材木を燃やす。

 

「?何をしている?」

 

もちろん、仁志少将は何も知らないため、火事でも起こそうとしていると思っている。気づけば黒い尾が出ていた。

 

「……。」

 

そして、ジャックは転がっている発煙筒もつけて、煙だらけにする。

 

「…煙で見えなくなったつもりか?そんなこと、訓練で何とかしている。」

 

そして、仁志少将はショットガンを向け耳をすませる。

 

トンッ

 

「そこだ。」

 

ドゥン!

 

ガコン!プシュー!

 

パイプから熱風が吹き出す。

 

「…?音は発煙筒を投げたのか…。そしてパイプに当たったか…。ならどこだ…?」

 

もちろん、このチャンスをみすみす手放すジャックではない。

 

「こっちだ。」

 

「!?」

 

バババババババババ…!

 

アサルトライフルを連射する。が。

 

ガキン!ガギギギギ!ガギン!…!

 

持っていたショットガンを盾にし、壊れないように斜めにして受け流す。

 

「ふむ。この程度ではお前を倒すのに不十分か…。」

 

「当たり前だ。」

 

そして、仁志少将はショットガンを構えるが…。

 

「…煙が邪魔だ…。」

 

煙に手間取っている。

 

「どうだ?逆にされた気分は。」

 

「くっ…。まだだ!」

 

ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!…!

 

仁志少将は乱射する。だが…。

 

ガキンッ!ガゴン!バギ!…!

 

「!?くっ…!」

 

弾が跳ね返り、仁志少将を襲う。

 

「地形は全て理解している。当たるのはお前だけだ。」

 

ジャックが煙の中から言う。

 

「くそぉ!」

 

自分の撃った弾にかすったり、えぐれたりする。

 

「ちっ!調子ずくな!」

 

ドゥン!

 

そして、仁志少将は天井を撃つ。すると…。

 

ガキン!…シャーーーー…。ジュゥ…。

 

「む…。」

 

銅管に当たり、熱湯がシャワーのように漏れる。そして、みるみるうちに火が消え、煙が晴れる。

 

「あ"ははははは!少し熱いが、これで最初からだな!牽制逆転だぁ!あ"ははははは!」

 

仁志少将は大笑いするが…。

 

「いや、これを待っていた。」

 

ジャックが100°C近くある熱湯を避け、アサルトライフルを構える。

 

「馬鹿か!当たるわけないだろ!俺のスピードについてこれもしないのに!」

 

仁志少将が言うが…。

 

「やってみなければわからんだろう?」

 

ジャックが言う。

 

「……。」

 

「……。」

 

暑い中、二人は睨みあう。そして…。

 

フッ

 

バババババババ…!

 

仁志少将が消え、ジャックがアサルトライフルを撃つ。

 

「馬鹿め!こっちだ!」

 

仁志少将が言うが…。

 

「いや、狙い通りだ。」

 

「!?」

 

ジャックが狙ったのは仁志少将ではない。後ろの冷却装置だ。

 

ガギン!バホォーーーー…!

 

冷たい風が辺りを包む。そして、異常を感じた銅管はすぐに水を止めた。

 

「お前を止めるには、凍らせるわけだ。」

 

ジャックが自信満々に言うが…。

 

「…ふふ…。あ"ははははは!やはり馬鹿だな!貴様!この熱湯の中、簡単に凍るわけねぇだろぉ!」

 

仁志少将は馬鹿にするが…。

 

「いや、お前こそ馬鹿だ。“熱湯”だからこそだ。」

 

「!?」

 

ジャックが言った途端、仁志少将の足が凍っていく。

 

「な、何故だ!?」

 

「グロノリス効果…。いや、この世界では『ムペンバ効果』だったな。低温度の水より、熱湯の方が凍りやすい。逆効果に見えるかもしれないが、本当だ。実際、凍っているだろう?」

 

「この…世界…?くそ…ぉ…!」

 

「無駄だ。氷の固さは知っているだろう。動けんぞ。」

 

ジャックが言うが…。

 

ビキビキ…。

 

氷にヒビが入る。

 

「ぐお…ぉぉぉ…!」

 

「…皮が剥がれるぞ?」

 

「代償がそれだけなら…軽いな…。」

 

そう言った途端…。

 

バギィン!ブシャァ!

 

氷が砕ける。

 

「…馬鹿め。」

 

ジャックは心底呆れる。

 

「それで歩けるものか。」

 

「こんなの我慢すれば良い…!」

 

足の皮どころか、肉の一部も千切れてしまい、立つのがやっとになっている。

 

「だが、その意地は確かだな。お前は私の敵として誇れる。」

 

「それは…ありがたいな…。さぁ…!来い…!」

 

「…いいだろう。本気を出せ。ここからが真の実力だ。」

 

ジャックがそう言った途端…。

 

ビュンッ!

 

仁志少将はその足で、すごいスピードで立ち回る。もちろん、血は止まるどころか、流血の勢いが増す。

 

ババババババ…!カチッ!カチッ!…ブンッ!

 

ジャックがアサルトライフルで撃つが、弾がなくなり、それ自体を投げ捨てる。

 

ブンッ!

 

仁志少将も、持っていたショットガンを投げ捨てる。その足で、反動を支えるのは不可能だったからだ。

 

「うぉぉぉ!」

 

「ふんっ!」

 

バギィ!

 

バギィ!

 

二人は顔を殴り合う。

 

「ブフゥ…!まだまだ…!」

 

「グフゥ!それだけか!?」

 

二人は殴る殴る殴る…。

 

「ウオオオオオオ!」

 

「フンッ!」

 

バギィィィィィィ!

 

仁志少将とジャックの拳が当たる。

 

「…ぐふぅ…。」

 

仁志少将が膝をつき、倒れる。薬の効き目がきれ、元の姿に戻る。

 

「…俺の負けだ…。」

 

「中々強かったぞ。」

 

ジャックが立ったまま言う。

 

「…ふ…ふふ…。まさか…。お前は実力を隠している…。それくらいわかるさ…。ジャック…。」

 

「……。」

 

「…それほどの実力なのに…。なぜ『提督』の下につく…?トップの実力だぞ…。」

 

仁志少将が絞り出すように聞く。

 

「…そうだな…。…私は昔、ある組織のリーダーだった。…だが、私の策によって、皆死んでしまった。世界を救うにはそうするしかなかったからだ。…今だからこそ思えるが、もっと他の方法があったのではないかと思ったりする。そうすれば、誰も死ぬことはなかったのではないかと…。…だから、私は次は失敗しないよう、今度はリーダーではなく、影で支える者になると決めたんだ。」

 

ジャックが悟ったような顔をする。

 

「…そう…か…。」

 

「…仁志、お前はどうだ?」

 

ジャックが聞く。

 

……何故入隊したのか…か…。

 

…………

 

『俺に罪を着せやがったな…!』

 

『なんのことだ?』

 

『とぼけるな!てめぇのせいで…!俺は…!』

 

『言い分があるなら裁判所で言ってくれ。まぁ、どうにもならないと思うがな。』

 

『なんだと…!?』

 

『既に買収してある。お前の弁護士も、裁判官も、私が仕組んだ者だ。』

 

『!?』

 

『それでは、健闘を祈る。』

 

『てめぇ!…離せ!この…!』

 

…………

 

『俺がなんでこんなブタ箱に入んなきゃならねぇんだ…!』

 

ギィ…

 

『ここか?例の人間はがいるところは。』

 

『?誰だ?』

 

『私は陸田だ。陸軍の少将をやっている。』

 

『そんなお偉いさんが何のようだ…!』

 

『随分と攻撃的だな。…まぁいい。君に嬉しい知らせを持って来たのだよ。』

 

『?』

 

『陸軍に来ないか?』

 

『は?』

 

『そうだな。それが普通の反応だろう。実は、あの時の裁判を私は見ていた。実に不可解であり、理不尽な判決だと思う。』

 

『なら、あんたがどうにかできないのか?』

 

『それは無理だ。裁判などに私は口出し出来ん。三権分立があるからな。…だが、調べることは可能だ。』

 

『なら…。』

 

『おっと、そこまでだ。まずはこちらの言い分を聞いてもらおう。』

 

『……。』

 

『君は復讐をしたい。今ここから出たい。出たとしても、行くあてもない。務める会社もない。…だな?』

 

『…いや、復讐はもう良い。それより、あんただ。』

 

『そうか。…復讐はしないとしても、陸軍に来ればここから出ることも、行くところも解決するぞ?勤める場所は陸軍だ。』

 

『…明らかに怪しいな。今のところこちらにデメリットも、そちらになんのメリットも感じられない。残念だが俺は、魔法の契約を迫る白い小動物みたいなことを言う奴を信用できないんだ。』

 

『そうか…。君のデメリットは、我々の元で働き、海軍のスパイをしてもらうことだ。』

 

『それだけか?』

 

『…随分と余裕そうだが、これは大切なことだ。バレれば内戦勃発であり、それを踏まえて相手の情報を入手し、さらに隠密に陸軍に伝えることだ。』

 

『なるほど…。』

 

『それと、我々のメリットを伝えよう。』

 

『ほう…。』

 

『我々は今人材不足だ。人手が足りていない。それに、優秀な人材を欲している。…勝手にすまないが、君のことを調べさせてもらった。君は非常に優秀だ。是非、我々陸軍に欲しい。ここで腐らせておくにはもったいないからな。』

 

『優秀…か。初めて言われたな。成果を他人に取られていたからか…。』

 

『そうか。…まぁ、結果はそう見えるかも知れないが、私を誤魔化すことなど出来ん。』

 

『そう言ってもらえるならありがたい。』

 

『…答えはどうだ?』

 

…………

 

……そうだったな…。そのあと深海棲艦が現れたんだっけな…。そして俺は…。

 

「俺は…あの人に恩がある…。俺は社会に出たが…、自身の成果を他人に取られ…、他人の尻拭いをさせられ…、挙げ句の果てには濡れ衣まで着せられた…。そんな中、陸田中将に会ったんだ…。あの人は、俺を始めて、人間として評価してくれたたった一人の男だ…。…俺は恩を忘れない…。だから…俺はあの人の…手足になることに…したんだ…。」

 

「…そうか…。」

 

ジャックが返す。

 

「…次会うときは、敵でなければ良いな。」

 

ジャックが言う。

 

「次…か…。…いや…、俺は終わりだな…。フ…フフ…。」

 

仁志少将が諦めた顔で言う。

 

「…俺は…ここまでの器らしい…。じゃあな…。ジャック…。…陸田…中将…すみません…。」

 

仁志少将は最後にそう言い残し、意識がなくなった。

 

「…誇れる敵だ。お前のことは忘れないだろう。」

 

ジャックはそう言い残し、廊下へ行った。




仁志少将…。……。カラスは恩を忘れない。
ダク 最近やってないなぁ…。

登場人物紹介コーナー
仁志少将…にししょうしょう。濡れ衣を着せられてムショで暮らしていたところを陸田少将に助けられる。深海棲艦が現れる前の話。一番最初に特殊部隊に入隊したのが彼。普段は作戦係。例え相手が悪人でも恩は必ず返す。恨みのない相手でも、恩人が命令すれば容赦なく倒す。だが、普段は平和的な生活をしたいと考えていたりもする。艦娘に恨みや憎しみはない。

「長門コーナーだ。」
「今回は俺だな。」
「仁志少将か…。駆逐艦にだけは攻撃してこなかったな…。」
「当たりめぇだ。あんなチビに向かって撃つようなもんじゃねぇぞ。これは。痛すぎて可哀想だ。」
「…む?なんか想像していた奴とは違うな…。もっと容赦なく撃ちまくる奴かと…。」
「そんな残酷な奴じゃねぇぞ…?俺…。まぁ、陸田中将に言われたからやっただけで、内心はやりたくなかったんだからなぁ?」
「なら、なぜ断らなかった…?」
「恩人だからだ。」
「恩人…。」
「あの人がいなけりゃ、あいつは今檻に入ってねぇし、俺はまだブタ箱にいたからな。今の俺がいるのはあの人のおかげだ。俺の命はあの人のものだ。死ねと言われりゃ死ぬし、見捨てろと言やぁ見捨てる。俺はあの人の手足だ。」
「忠誠心が異常だな…。」
「それほど嫌な暮らしをしてきたってことだ。」
「だが、何故駆逐艦だけ撃たなかった?命令じゃないのか?」
「俺の受けた命は鎮守府を攻撃しろだ。標的は鎮守府だからお前たちじゃない。なのに、邪魔をしてきたから仕方なく無力化させただけだ。」
「…そうか。」
「ああ。…っとぉ、この武器の紹介だったな。説明は俺が前言ったはずだから…細かなことを言うか。あと容姿とかな。まず、この武器は散弾銃だ。弾は全て跳弾のくせに貫通力が高い。まぁ、俺自らが作ったのに、訳の分からないしろもんだ。常人が使えば一発撃っただけで腕が吹っ飛ぶ。装填して連続的に撃てる回数は8回。まぁ、もっと広ければ何回も撃ったがな。」
「なるほど…。教官は運が良かったのか。」
「ん〜…んにゃ。違う。ちゃんと考えていた。おそらく、俺が銅管を撃つことも想定内だったんだろう。さらには冷却装置が近くにあった…。全て計算済みだったんだよ…。計画で負けたんだ。おれぁ、様々な奴を見てきたけど、あいつ並みの者はそうそういねぇな。」
「いつもは店長だけどな。容姿についての説明だが…。」
「ああ、やるよ。見た目はただの兵士だけど、ヘルメットをかぶってねぇなぁ…。あれ暑いんだよ。意外に。さらにはオールバックの髪型か…?あとはいつでもどこでもブーツだな。」
「それくらいか…。」
「あぁ、本当の兵士みたいだなぁ。迷彩も入れてるから。」
「なるほど。そろそろ次回予告だな。」
「はいよ。次回、第191話『vs長光少将』か。あいつと一戦交えるのか…。そいつは運が悪かったな。あいつは本当に化け物並みの強さだぞ…。」


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191話 vs長光少将

来たか…長光少将…。
「そうね。素手で私たちを倒した…。」
いや、でも彼結構可哀想なんだよね…。作ってて嫌になったもの…。
「まぁ、そうよね…。」
ジナイーダとどんな勝負をするのか…。
「楽しみね…。と、今回のゲストはこの子よ。」
「Hi! 私の名前はJanus!」
ジェーナスですね。今回は悪戯されないようにすぐにあらすじ始めて。
「眠いから省略するわ…。」

アラスジー…
皆んな寝てる。

省略しすぎぃ!


…………

広間

 

(BGM ACSL『Artificial Line』)

 

ガギンッ!ガギッ!…!

 

鉄同士のぶつかり合う音がする。

 

「ふんっ。」

 

「……。」

 

ジナイーダと長光少将が戦っているのだ。

 

ガギン!ガガガガガガ…!

 

二人とも連打連打連打連打…。そのうちに…。

 

ガキィンッ!

 

バチバチ…。

 

カウンターを繰り出し、長光少将の右腕が宙を舞う。

 

「…両腕をなくした。もう戦えないはずだ。降参しろ。」

 

「……。」

 

ジナイーダが冷たく言い、長光少将が目を軽く閉じたと思ったら…。

 

ギンッ!

 

目を突然開ける。少し何か変わった気がする。すると…。

 

バチバチ…ガシャァン!ガシャァン!

 

「!?」

 

「……。」

 

肩から電気を走らせ、落ちていた両腕を腕にまたくっつけた。

 

「なるほど…。確かに他とは違うな…。」

 

「……。」

 

長光少将が拳を構える。黒い何かに覆われて、西洋の鎧のようになっている。特徴は、頭から二本の角くらいだ。

 

「仕方ない…。このままでは拉致が開かないからな。悪いが手加減の出来ない性分だ。」

 

「……。」

 

ジナイーダがYWH16HR-PYTHON(ハンドレールガン)、CR-WH01HP(リボハン)、RAMIA2(パルス)を手に取ったり、積んで構える。

 

「速攻で終わるが…。悪く思うな。再生する相手とは戦ったことがないのでな。」

 

「……。」

 

そして…。

 

ギュィィィ…ズガァン!

 

ハンドレールガンを撃つ。

 

バッ!

 

長光少将が何とか避けるが…。

 

「遅い。」

 

「……。」

 

ガギャァン!!

 

すごい速さのジナイーダに背後を取られ、リボハンを撃たれる。そして、頭が粉砕する。

 

バチバチ…。

 

いくら強化された機械だとしても、所詮はこの世界のもの。1発で致命傷だ。だが…。

 

バチバチ…シュゥゥゥ…。

 

薬のおかげで再生者なのだ。破損した頭部もみるみる再生される。

 

……こいつは機械だが薬が効いている辺り、生身の…、人間の部分があるはずだ。考える力があるあたり、脳がまだ人間だろう…。だが、頭を吹き飛ばしたが、変化が無かった…。身体のどこかか…?

 

ジナイーダが分析する…そして…。

 

パシュゥパシュゥ!

 

パルスを二回撃つ。だが…。

 

バッ!ヒュンッヒュンッ!

 

飛び退きながら見事に避ける。空中で回避など常人には出来ない芸当だ。

 

「…なるほど。どうやら、それなりには戦えるか…。」

 

「……。」

 

「この距離だと避けられるか…。接近戦に気を付ければ、対処できる。」

 

ジナイーダが言うと…。

 

ビキビキ…ギュンッ!

 

長光少将が思いっきり地面を蹴り、一気にジナイーダに近づいた。が。

 

ドガァン!

 

普通にリボハンで撃たれ、吹っ飛ぶ。

 

「……。」

 

「無駄だ。お前より速いやつは見たことがないが、どこを狙っているかすぐにわかる。見えなくてもカウンターは可能だ。戦場を知らないひよっこに負けるわけがない。」

 

吹っ飛んでいる最中にジナイーダに言われた。

 

ザザッ…ザー…

 

「よか…た…。」

 

ザ…ザーー…

 

……あの時…の…記憶…。やめ…ろ…。やめて…くれ…。…嫌…だ…。誰か…早く見つけてくれ…。早…く…。負け…ない…。…負けられ…ない…。仇を…仇を…。よくも…。

 

ドガァ!

 

壁にあたり、壁が崩れて煙が舞う。

 

「……。!?何をしている!?」

 

「……。」

 

煙が晴れたと思い、見てみたらそこには多くの薬を食べている長光少将だった。

 

ドグン…!ドグン…!

 

身体が完全に人間とはかけ離れた姿になり、見るものを恐怖させる。そして、ゆっくりとジナイーダの方を向く。

 

「…何を…!」

 

ドガァァァァァン!!

 

「グフッ…。」

 

長光少将が一瞬で、瞬間移動したかの如く速さで近づき、思いっきり殴ったのだ。ジナイーダは堪らずに声を上げる。

 

『コア破損。脚部損傷。残りAP60%。』

 

ジナイーダの頭の中に無慈悲な機械の言葉が響く。

 

……なん…だ…?今のは…?速すぎて反応できなかった…。あの薬を多く飲んだせいで異常なまでに身体能力アップしたのか…?…だとしたら、こいつはあと2分くらいで死ぬな…。1発殴られただけで約3分の1の体力を持っていかれた…。あいつの身体能力は何倍まで膨れ上がったんだ…?

 

ジナイーダは長光少将を見る。明らかに人間ではない何かだ。

 

「……。」

 

「…お前の生身のところはどこだ…?」

 

ジナイーダが聞くが…。

 

「……。」

 

答えない。そして…。

 

ピッ!ドガァァァン!!

 

また消えて、ジナイーダを攻撃する。

 

「くっ…。」

 

『右腕部損傷。残りAP30%。』

 

またも無慈悲な機械音が頭の中に響く。だが…。

 

…ゴフッ…ビチャビチャ…ガシャァァン…

 

「!?」

 

長光少将は血を吐き、倒れ、元の姿に戻る。塗装が完全に剥げ、鉄の塊に。身体が耐えきれなかったのだ。

 

「…このような決着…。不本意だが…、勝ちは勝ちだ。…かなりの体力を持っていかれたがな…。」

 

ジナイーダは死んだかどうかをしっかりと確かめる。

 

「…内臓…こんなところにあったのか…。」

 

長光少将の内臓は下半身と上半身の繋ぎ目みたいな場所にあった。周りは硬い鋼鉄で守られている。だが、ジナイーダがそれを見た途端…。

 

ガチ…ガジジジジ…!

 

「!?」

 

長光少将が突然動き出したのだ。完全に死んだわけでは無かった。

 

「……。」

 

「……。」

 

だが、もう瀕死の状態。立てもしない鉄の塊だ。

 

「……。」

 

だが、必死に起き上がろうと何度も身体を動かす長光少将。そこで、疑問に思ったことを聞く。

 

(BGM ACOS20thAB[オリジナルサウンドトラック]『reminiscence』)

 

「…お前たちはなぜそこまで陸軍にこだわる?」

 

「……。」

 

それを聞いて、長光少将は止まる。しばらくして、壁の方をゆっくりと向く。すると…。

 

ピピピ…ピュンッ。

 

目から映像を映しだした。

 

「…これは…お前が見た光景か?」

 

ジナイーダは見ている。壁に映し出されたその映像を。

 

『ほら〜。こっちだぞ〜。』

 

『待てー。』

 

「…映っているのはお前の友人か?」

 

『ワン!ワン!』

 

『お帰り。学校どうだった?』

 

『面白いテレビ番組がやっているぞ。』

 

『お兄ちゃん!ゲームしよ?』

 

「…お前の家族か?」

 

『君は仕事ができるな。おめでとう。明日から君は部長だ。期待している。』

 

『パチパチ…。』

 

「…お前は会社員だったのか…?」

 

『郵便でーす。』

 

「…同窓会…?」

 

『やぁ、久しぶり。元気だったか?』

 

『俺はあれから歳をとった。嫁もいる。お前は?て、妹も連れてきたのか?同窓会だぜ?全く…。』

 

「…海が近いな…。まさか…な…。」

 

『ワー!キャー!』

 

『ドガァァン!』

 

『ニンゲン…!コロシテヤル…!』

 

『ぎゃぁぁぁ!グボハ…。』

 

『グバァ…。』

 

「…食われたり四肢を引き裂かれたり、血飛沫が上がっている。お前の友人もか…。悲惨な光景だな。」

 

『助けてくれ!グァァ…。』

 

『ドガァァン!』

 

『た、助けて…お兄…きゃぁぁぁ!?』

 

「妹は腕を食いちぎられ、倒れたか…。だが、生きているな。早く止血をしないと死ぬな…。」

 

『ドガアアアン!!』

 

『ドサ…。』

 

「お前は砲弾を食らって倒れたか…深海棲艦?の姿を見ているな。あたりが血に染まっている。殺されていく人たちを見ているな。画面がぼやけているあたり、自分の無力さを恨み、涙を流したか…。」

 

『発見しました!砲撃用意!撃てーー!』

 

『ドガァァン!』

 

『ギャァァァ!』

 

『グァァァァ!』

 

『ドガァァン!』

 

「乱闘だな。こんな場所で。…海岸の街が火の海か…。…お前の家も…両親の家も火で燃え、辺りには沢山の人間の死体。砲撃の嵐…。地獄絵図だな。」

 

『ドガァァン!』

 

『最後の深海棲艦!やりました!』

 

『では次!生存者の確認!』

 

『はい!…うっ…。』

 

『見たところ…生きていない…ですね…。生存者…0…。』

 

『遅かった…。でも、あなた方の仇は取りました。…安らかに眠ってください…。』

 

「…しっかりと一人一人を確認していないな…。」

 

『帰りましょう。提督に報告です。』

 

『やっと帰れる!早く帰って、遊びたい。』

 

『そうですね。疲れましたし、帰りましょう。』

 

「…艦娘が帰っていくな…。」

 

『…お兄…ちゃ…。そんな…身体で…生きてる…の…?』

 

「血が止まっていない…。お前はどんな体していたんだ…?…手を伸ばしているな…。」

 

『…私…?…もう…無理…みたい…。目の…前…が…暗い…し…。…でも…最後…に…お兄…ちゃん…を…見れ…て…よか…た…。』

 

「死ぬ時笑顔だと辛いな…。…ん?画面が真っ黒に…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけんな

 

 

 

 

 

 

…ふざけんな…。

 

何故親は死んだ?

 

何故妹は死んだ?

 

俺が守れなかったせいか…?

 

 

 

 

 

 

あいつらがちゃんと生存者を確認していれば、助かっていたかもしれない。

 

俺の身体が何とか機能できていたかもしれない。

 

俺が話すことや、動くことが出来たかもしれない。

 

あいつら、この無惨な光景を見てなんて言った?

 

遊びたい?

 

疲れている?

 

 

 

…ふざけんな…。

 

 

 

ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!ふざけんな!!ふざけんな!!!ふざけんな…!!!

 

何故もっと早く来てくれなかった!?

 

何故…、何故しっかりと確認してくれなかった…!?

 

何故…俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…守ってやれなかった…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これだけ言葉ではなく書かれていた。長光少将は分かっているのだ。艦娘に対する憎悪は無力な自分からきたものなのだと。責任を押し付けているだけなのだと。やるせない気持ちを艦娘のせいにしているだけなのだと…。

 

「……。」

 

『…うわっ。ここが現場か…。こりゃかなりの異臭だな…。陸田中将、どうしますか?』

 

『どうするって…しかも!異臭と言うな!ここは本来我々が守るべき国民がいた場所なのだぞ!丁寧に扱え!』

 

『わ、わかりました。…腕がないな…。食べられたのか…。こっちは攻撃を食らって、バラバラだな…。…こっちは生きてなさ…。!?生きている!?陸田中将!生存者です!』

 

『何っ!?生存者は0の筈だ!』

 

『こちらです!』

 

『海軍め…。いい加減な仕事をしたな…!』

 

「この顔はさっきの…。」

 

『君!大丈夫か!?て、そんなわけないな!救急班!早く来い!』

 

『…生きているんですか…?』

 

『頬の先がなく、手足も千切れる寸前で内臓が少し外に出ているが、しっかりと生きている!』

 

「お前はそんな体をしていたのか…。」

 

『そんな体では仕事に支障が出る。解雇命令が出された。すまない…。』

 

「……。」

 

『本日も、災害時に艦娘が協力したことが讃えられその後の様子が……。』

 

『バリィィン!!』

 

[あんなに人が死んだのに何も変わらねぇのかよ…。…何が艦娘だ…。あんな奴ら…。深海棲艦も…艦娘も所詮は同じだ…。いい加減な仕事をして、妹を…俺を殺したくせに…。]

 

「……。」

 

『コンコン…ガチャ。』

 

『…覚えているか?陸田だ。様子を見に…。…やはり、荒れているな…。…そんなに睨むな。…テレビを壊したか。艦娘だろう?…やはり。あいつらはいい加減な仕事しかしない。職も解雇されただろう…。どうだ?陸軍に来ないか?…あいつらと同じ仲間?そんなわけないだろう。我々陸軍も、深海なんとかを倒して英雄呼ばわりされている艦娘や海軍のせいで肩身が狭い。むしろあいつらとは対立している。…話せないのだったな。紙だ。』

 

[そこに行けば、あいつらに復讐できるのか?]

 

『可能だ。妹や親の仇も取れるぞ。』

 

[なら、そこで働かせてください。]

 

『良いだろう。明日迎えに来る。…それと、一つ君に良い知らせがある。』

 

[?]

 

『君に手術を行う。もちろん、失敗はせん。肉体を機械にするんだ。そうすれば、身体も自由に動けるようになる。話すことは…。正直に話そう。話すことは出来ない。まだそこまで技術が進んでいないのだ。研究費も足りなくてな…。』

 

[それでも良い。改造してくれ。そして、あいつらに対抗できる力を…。]

 

『期待して待っていると良い。それでは明日。』

 

ザザ…

 

「…これで終わり…か…。だから陸軍になったのか…。」

 

「……。」

 

「話せないのか…。…お前が私たちに憎む気持ちもわからなくもない。」

 

「……。」

 

「…だが、お前の妹を生き返らせることは出来ない。」

 

「……。」

 

「…言い訳に聞こえるかもしれないが…。私の格好を見ての通り、私は異世界から来た。そこは企業が絶え間なく争い、戦場と化している世界だ。私の家族は兄以外にいない。記憶の中では既に死んでいるからだ。私は兄のことを尊敬している。その兄も傭兵として、戦場を駆け、依頼達成率100%の実力を持っていた。だが、「赤い星」の恋人もいて、私には構ってくれず、日々金を貰うだけの毎日だ。その中で、私に声をかけてきた友人がいた。そいつは、ある兵器を長い眠りから起こしてしまい、その戦争を終わらせざるを得ない状況にしてくれた。家族同然に思っていた。…だが、ある日そいつは裏切られて死んだ。私もお前と同じような状況だった。私は変わったさ…。仇をうつために…。ある日、ある傭兵が裏切りを本業としている情報を耳にした。そいつは、私の兄を模している奴だ。そいつを追っている矢先、ある奴に倒された。絶望したさ。自身の手で仇を打てなかったことに。しかし、その反面、私はただひたすらに強くあろうとした…。そこに私の生きる理由があると信じてきたからだ。でも、この世界に来た時、ある奴にこう言われたよ…。『死んだ友人はそれを本当に望んでいたの?』と…。あいつは私に危険なことをして欲しくないと言っていたのに、私は傭兵として日々死と隣り合わせに生きてきた…。あいつが本当に望んでいたことは仇をうって欲しいことではなく、常人として生きて欲しかったのだろう…。…つまり、何が言いたいかというと、お前の妹は仇を討つことを望んでいるのか?だ。」

 

「……。」

 

「…所詮は他人の言うことで、お前の価値観とは違う。肉親が死んだわけでもない。だが、私が思うに、お前の妹も同じようなことを望んでいたんじゃないか?」

 

「……。」

 

それを聞いて、長光少将は静かに目を閉じた。そして、思い出していた。家族や、妹、友人と過ごした日々を…。そして、復讐を望んでいるのか…を…。

 

「……。」

 

「…?」

 

長光少将は地面に指で書いて…いや、削っていた。

 

[お前…いや、ジナイーダはその時何をした?]

 

「私はお前と同じように、疑われる人物を探した。そして私は殺し続けたさ。」

 

[結局、見つかったのか?]

 

「ああ。だが、ここに来る前には死んでいたと聞いていた。その時傭兵(レイヴン)とはなんなのか分からなくなった。ひたすらに強くなれば分かると思っていた。」

 

[そうか…。…お前も同じ『妹』として聞きたい…。こんな兄でも受け入れてくれるか…?]

 

「それは分からないな。私はお前の妹ではない。」

 

[そうか…。]

 

「だが…。」

 

[?]

 

「どんな兄でも、そいつは妹だ。切っても切れない縁なんだ。必ず受け入れてくれるさ。…だが、このままでは兄としてかっこ悪いと思うがな…。」

 

[……。]

 

「しっかりしろ。あ…お、…お兄…ちゃん…。」

 

ジナイーダの精一杯の励ましだった。

 

[……。]

 

そして、その励ましはしっかりと届いていた…。長光少将は、今は亡き妹の面影と重なったジナイーダに少し驚いていた。涙は流せず、表情も変えることが出来ないが、しっかりと伝わっていた。

 

「なんだ!?」

 

[…いや、なんでもない。…それより、この鉄の体の右足のももに箱がある。それの中身を持っていけ。]

 

「…?…こ、これは…。」

 

[早く行った方が良い。あきつ丸…だったか?そいつを早く助けに行かないと危険だ。]

 

「…わかった。お前は…。」

 

[俺は劇薬を飲みすぎて長くない…。ここで死ぬさ。最後に…誇れることは出来たか…?]

 

「…ああ…。」

 

[そう…か。]

 

シュゥゥ…ゥゥ……。

 

そして、長光少将はただの鉄の塊となった。

 

「…お前も立派だったよ…。」

 

そう言い残し、ジナイーダは走って行った。




長光少将…。

登場人物紹介コーナー
長光少将…ながみつしょうしょう。艦娘への憎悪は彼が一番。武器を使わず、拳のみで戦うファイター。全身機械のサイボーグで、薬なしでも強い。その拳はいともたやすく分厚い鋼鉄の扉を破るほどだ。まぁ、全身機械だが、この世界では物凄く上質。陸軍の科学力がどのくらいなのかを表すには十分。だが、その機械の性能だけに頼らず、頭を使い、冷静な判断も含めて強いのだ。
劇薬…一定期間のために命を削る諸刃の剣。飲めばたちまちパワーアップ。人ならざる者にもなることが可能。大昔の技術を真似したが失敗。これがその産物。

「長門コーナーだ。」
「……。」
「今回は長光少将だったな。」
「……。」
「…!そうか。話せんのだったな。なら、私が説明しよう。」
「……。」
「頷いている…。容姿は陸軍の帽子を被っているな。無表情だ。その地位に似合った服を着こなしている。髪の色は黒か。真っ白な手袋をはめている。…くらいか。」
「……。」
「性能に関してだが…。」
ガギャァァァァァン!!
「……。」
「なるほど…。15トンのパンチと見た…。」
ビュンッ!
「……。」
「ほう…。時速250km近い速度の蹴りだな…。20トン近くあると見える…。」
「……。」
「それくらいか…。話せないのは不便だな。…私に恨みはないのか…?」
フルフル
「……。」
「…そうか…。…艦娘代表として謝る…。すまない…。」
フルフル
「……。」
「…謝っても戻ってこない…そう言う目をしているな…。」
「……。」
「…次からはこんなことが二度と無いように努力をする…。すまない…。」
「……。」
ポン
「…?…頼んだぞ…か。」
コクリ
「……。」
「ああ…。次回、第192話『まるゆ…?』だ。何か違うのか…?」


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192話 まるゆ…?

あー…。ゆるゆるすぎる。
「どうしたの?」
いや、ゆるゆる展開を堪能しているんだけどね。陸軍編終わった後の物語を書いてるの。
「そうなんだ。」
でも、一つが2万字以上行っちゃってね…。見るのがしんどいかもしれない…。
「二万…相当ね…。」
記録更新だよ。で、今回のゲストは?
「この子よ。」
「こんばんは…。」
すげー眠そう…。目をこすってるよ。フレッチャーだね。
「お嬢様のようね。」
「…?すみません…。聞いていませんでした…。」
「…筆者さん、あらすじ始めさせてあげて。」
お、おう…。

アラスジー
Zzz…

寝ちゃったし…。
「こんな真夜中なんだもの。当たり前よ。…て!私も寝させなさい!」


…………

 

「追い詰めたであります!もう観念するであります!」

 

あきつ丸が陸田中将を追い詰める。

 

「…クックック…。追い詰めた?追い詰められていることも気がつかないのか?」

 

「何っ!?」

 

あきつ丸が驚いた途端…。

 

ウィ───ン…!ガション!ガション!…!

 

床から大きな円柱が何個も出てくる。中には培養液に浸かった人が入っている。

 

「…人間…?」

 

あきつ丸はそれを見て、よく見る顔を思い出す。

 

「…森崎少将…、樫本少将…、仁志少将…、大郷少将…、長光少将…。」

 

「そうだ!こいつらは我々の科学力で作った人工生命体だ!あいつらよりパワーアップさせ、特殊能力も追加されている!」

 

「まさか…。」

 

「そうだ!出来上がるのはあと2ヶ月ほどあとの予定だったがな。もうすでに目覚めかけている!一か八かの賭けだ!クックック…くはははは!」

 

陸田中将は高笑いする。

 

……このままではまずいであります。まだ目覚めていない間に破壊しないと…。大変なことになるであります…。

 

あきつ丸が思う。そして…。

 

「なら、こっちも賭けであります!」

 

あきつ丸が自身の艤装を手に取る。

 

「クックック…。お前に撃てるのか?」

 

「撃てるであります。皮肉にも、ここで学んだことが役に立つであります。」

 

ドォォン!ドォォン!ドォォン!…!

 

あきつ丸が撃つ。そして、それは真っ直ぐ人工生命体の脳天を目掛けていくが…。

 

「まるゆ。出番だ。」

 

「はい…。」

 

まるゆが暗闇から姿を現し、銃を構えた。

 

ドガァ!ドゴォォン!ドガァン!…!

 

「!?」

 

あきつ丸は見た。自身の放った弾を見事に撃ち落とすまるゆの姿を。

 

「まるゆ…?何故…?」

 

「…誰ですか…?」

 

「あきつ丸であります!」

 

「あなたがそうですか…。陸田中将の邪魔をするもの…消えて…。」

 

まるゆはあきつ丸に銃を構える。

 

「まるゆ…?どうして…?」

 

「クックック…。こいつはもうお前の知るまるゆではない。お前がいない間、どうしたと思う?」

 

「……。」

 

「洗脳だ。もうお前のこともなんとも思わないただの殺戮マシンに育てたのだよ。」

 

「……。」

 

「陸田ぁぁぁぁ!!!」

 

ニヤける陸田中将を殺す気満々の目で見るあきつ丸。そして、黙ったままのまるゆ。

 

「そうだ。その目だ。もう少し早くその目になれば、良かったのかもな。」

 

「貴様ぁぁぁ!!!」

 

「何度でも言え。わしに指一本触れられない無能が。」

 

「貴様…!必ず殺す…!」

 

あきつ丸は銃を構える。が。

 

「陸田中将に危害を加える奴…殺す…。」

 

同時にまるゆも構える。

 

「まるゆ。あいつを殺せ。」

 

「わかりました…。」

 

「!?卑怯な…。」

 

「クックック…。お前の連れも、今や幹部の餌食の筈だ。助けには来る者はいない。クックック…。」

 

陸田中将が笑う。そして、まるゆがあきつ丸と交戦する。

 

「まるゆ!思い出すであります!」

 

「まるゆ准尉…そう呼んでください…。」

 

「まるゆが言い出したんであります!呼ばないであります!」

 

「じゃぁ…死んで…。」

 

「嫌であります!」

 

戦いの最中に話す二人。銃で撃ったり、体術を繰り出したり、隙を見て陸田中将や人工生命体を撃ったり、それを阻止したり…。

 

「見ものだな。艦娘同士が潰し合う。どっちに転んでも得をするな。」

 

陸田中将はそれを面白そうに眺めている。

 

「くっ…。」

 

「あきらめて…。」

 

「正気を持つであります!」

 

「まるゆは既に正常です…。」

 

「まるゆ…。いつも辛い思いばかりしていたであります…。そんな陸軍に…自身を捧げるのでありますか…?」

 

「辛い思い?…なんですか…?それ…。あなたは誰…?…誰でも良いですね…。陸軍を馬鹿にする者…殺す…。」

 

「目を覚ますであります!」

 

「目ならとっくに覚めています…。」

 

「…一緒に過ごした記憶も…ないのでありますか…?」

 

「あなたと過ごした記憶などありません…。」

 

「一緒に寝たこともあるであります…!よく残飯を食らったであります…!辛いことに耐えてきたであります…!」

 

「記憶を捏造したところで何にもなりません…。」

 

まるゆはあきつ丸を撃つ。それを避け続けるあきつ丸。そして…。

 

「まるゆ!まるゆの尊敬している人、もしくは憧れであり、会いたいと思っている人は誰でありますか!?」

 

「…陸…。…?誰…?」

 

あきつ丸の問いに、僅かだがまるゆは少し手を止めた。

 

「だ…れ…?陸田中将…のはずなのに…。」

 

まるゆは分からず、手が完全に止まってしまっている。

 

「…まずい…。」

 

陸田中将が呟いたが、すぐにリモコン?を取り出す。

 

「まるゆ!思い出すであります!」

 

「無駄だ!」

 

そして、リモコンのボタンを押すと…。

 

「!?あ"あ"あ"あ"あ"…!」

 

「まるゆ!」

 

まるゆに電撃が走る。あきつ丸はそれを見て叫ぶ。

 

「貴様…!」

 

陸田中将にナイフを持って駆け出すが…。

 

ガギィン!

 

「!?」

 

「まるゆの…尊敬する人…は…陸田…中将…。」

 

「まるゆ…!」

 

あきつ丸を同じナイフで止めるまるゆ。

 

「ここから…離れてください…陸田中将…。」

 

「あとは頼むぞ。早くこいつらを目覚めさせる準備をする。」

 

陸田中将は離れて、装置のある場所へ行く。

 

「待て!」

 

あきつ丸は追いかけようとしたが…。

 

「あなたの相手はまるゆ…。」

 

まるゆが行く手を阻む。

 

「まるゆ…。」

 

「行かせない…。」

 

そこに…。

 

『おーい。あきつ丸ー!まるゆー!どこだー!』

 

ドミナントの声が聞こえる。

 

「…第4佐世保の提督…。」

 

「…彼も敵なら…排除する…。」

 

「…敵でないなら…?」

 

「……。……。…逃したい…。」

 

「……。」

 

……やはり、まだ完全に洗脳されたわけでは無いでありますね…。

 

あきつ丸は僅かだが、確かにある希望を持った。

 

「でも…まずはあなたを殺す…。それから…。」

 

「くっ…!」

 

だが、それが本当に僅かなのは言うまでも無い。

 

…………

廊下

 

「全く…どこだよ。あきつ丸は〜…。それに、まるゆもいつの間にかはぐれちゃったし…。たった5分で何で俺はしくじるかなぁ〜全く…。」

 

ドミナントは適当に扉を開けたり歩いたりしていた。




分岐点ですね。でも、特別編に載せるつもりはありません。設定だけ書きます。
ダク マラソン

登場人紹介コーナー
大郷少将Plus…能力は機械操作(半径500mの機械類を簡単に操れる)と時操者(時間を操れる)。
樫本少将Plus…能力は千里眼と透明者。
森崎少将Plus…能力は空間創造者と分身、阿修羅。
仁志少将Plus…能力は分解者(腐らせる)と俊足。
長光少将Plus…能力は再生者と身体能力莫大増強。

「長門コーナーだ。今回のゲストは…。」
「まるゆ…。」
「正気を失ったまるゆだ。」
「そう…。」
「能力は見ての通りだ。最弱だが、能力値が断然に高いな。」
「そう…。」
「前もやったゲストだから、やることもないな。次回、第193話『陰で操る者』か…。次回は提督たちの様子で終わりなのか?…そうか…。」


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193話 陰で操る者

残り5話…。
「そうね。」
これが終わったら、第3章のゆるゆるだね。第4章からは他の鎮守府が出るかな。最後がヤヴァイね。最終ラウンドだから。
「何があるのかしら…?」
まぁ、最後の戦いだよ。曲をふんだんに使うね。ラストバトルは。てか、ラストバトルだけ作ったけど…。
「まぁ、最後は盛り上げないとね。」
そうだね〜。あと、この章の最後に驚く知らせがあるけど、まぁ後ほど…。あらすじを始めようか。
「この人よ。」
「眠いわ…。」
ジョンストンだね。じゃぁネタもないから早速省略してあらすじを頼むよ。
「ぞんざいな扱いね…。」
「後で爆撃するから。」
生命の危機…。

アラスジー
みんな寝てるわね。さっきフレッチャーがいないと思ったら、ここにいたのね…。

ドガァァァァン!
ぐはぁぁぁぁ…。…もう慣れたよ。


………

 

「あ〜あ〜、まるゆ〜も、あきつ丸も〜、探して〜る〜のに〜、努力〜も虚し〜く、結果〜でず〜。ん〜ん〜…って、あれ?」

 

ドミナントが意味不明な歌(自作)を歌っていると、偶然通りがかったジャックを見つける。

 

「む?何やら面妖な気持ちの悪い鳴き声を聞いて来てみたら…。ドミナントか。」

 

「うん。精神的ダメージが致命的で瀕死状態なんだけど…。しかも鳴き声って…。まぁいいや。それよりも、勝ったのか?」

 

ドミナントが、少しボロボロのジャックを見て言う。

 

「ああ…。…可哀想な奴だった。」

 

「…そうか…。」

 

ジャックの真面目な答えにドミナントも真面目に返した。

 

「…じゃぁ、さっさと吹雪を奪還して、この戦いを終わらせよう。」

 

「ああ。」

 

そして、ドミナントとジャックは駆けて行った。

 

…………

気象レーダー屋上

 

「…起き…。起きな…。起きろ。」

 

「…う…ん…?ここは…?」

 

セラフは目を覚ます。

 

「ま!死んでるかもしれないけどさ!ギャハハハハハ。」

 

「主任さん…?」

 

「そうだ。」

 

「…はっ!?それより、出血が…。」

 

「とっくに止まっているよ〜。」

 

「…そんなに早く治るはずが…。て、えぇ!?」

 

セラフが傷口を見ると、まだ生々しいが、少し治り始めている。

 

「…でも、動くと少し痛みます…。」

 

「で!隣にいるやつ、そいつ大丈夫だと思う?」

 

「…息はあります。大丈夫…ではありませんが、大丈夫です。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

「この小説、筆者があまり人を死なせることが好きではないようですし。」

 

「メタいね〜。ギャハハハハハ。」

 

セラフと主任が話す。

 

「ところで、この武器…。」

 

「樫本少将のスナイパー…ですね。」

 

「これ、使えそうじゃない〜?」

 

「えっ?でも、人の物を勝手に取るのは…。」

 

「いいんじゃないの?どうでも。どうせ負けたんだし。」

 

「……。」

 

「後で元に戻しておけば平気だよ〜。」

 

「……。…でも、正直この状態で肉弾戦はキツいですね…。…借ります。」

 

セラフはそれを持つ。

 

「…すごいですね…。スコープの倍率が2倍程度です…(普通の倍率は3〜24などです)。こんなもので、私たちを狙撃していたんですか…?それに、これ、スコープがこれ以外に適応できなくされています…。」

 

「ま!頑張って〜。」

 

「…急ぎます。」

 

セラフが走ろうとしたが…。

 

「…痛いです…。」

 

傷口が痛み、走れない。

 

「じゃ、ちょっと手伝おうか〜。」

 

「?」

 

…………

 

「どこだ…?」

 

ジナイーダが偶然廊下に出てくる。

 

「あっ、ジナイーダ!て、なんでAC化してるの!?」

 

「奴も機械だった。この状態でなければ勝てない相手だった。」

 

「そうか…。…勝ったのか?」

 

「ああ。…可哀想な奴だった…。」

 

「…そうか…。この部隊の幹部、可哀想な…世の中理不尽な目に合っている奴ばかりなんだな…。」

 

「ああ…。」

 

「…そうだな…。」

 

3人は自身の戦った相手を思い出す。

 

「…おそらく、陸田中将もその1人だ。奴の暴走を早く止めてあげなくてはならない…。」

 

「そうだな…。…奴はどこだ?」

 

「…分からん。今適当に歩いているところだ。」

 

「……。」

 

「本当だ。」

 

「本当だからこうなっているんだ。」

 

ドミナントの言葉にジナイーダが呆れている。

 

「…まぁいい。さっきあきつ丸の帽子に仕掛けた発信器がある。それを見ればすぐに行けるが…。」

 

「なら、さっさと…。」

 

「最後まで話を聞け。…セラフたちはどうする?場所がわからないだろう。」

 

「そうだな…。…!壁を削って行くか。」

 

「…それは考えたが…。どうやって削るつもりだ?指か?それとも私を使うのか?」

 

「そうか…。…なら、床は…。」

 

「話を聞いていたのか?削る場所を変えれば良いんじゃない。」

 

「…待つか。」

 

「随分諦めた答えだな。…まぁ、それも良いかも知れんが…。その…なんだ…あの艦娘が心配なんだがな…。」

 

「それに、まるゆもいなくなったし…。」

 

「…?もう1人いたのか?」

 

「うん。いる。」

 

「そうか…。…やはり、嫌な予感がする。行くぞ。」

 

「休むことは許されぬか…。」

 

そして、ドミナントはしぶしぶジナイーダの後をついて行った。

 

…………

廊下

 

「あの…主任さん。…これ、恥ずかしいんですが…。」

 

「この方が早く行けるよ〜?」

 

「そうですが…。…どうせならドミナントさんに…。

 

「何か言った〜?」

 

「いえ、なんでもありません…。」

 

主任がセラフをおぶって走っている。そこに…。

 

「あっ、主任。そしてセラフか?」

 

ドミナントたちと合流する。

 

「あっ、ドミナントさん。」

 

セラフは少し笑みを浮かべたが…。

 

「…そうか。セラフ、よかったな。」

 

「その…。…えっ?」

 

「主任に姫様抱っこしてもらって。…いつのまに、そういう関係になっていたのか知らなかったな…。」

 

「ちょ、違います!よく見てください!怪我をして走れないから、手伝ってもらったんです!」

 

「そんなに怒らなくても…。俺なりのユーモアなのに…。」

 

「それがいけないんです!」

 

「…すみません…。」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

「それより、早く行くぞ。…これを見ろ。」

 

「「「?」」」

 

ジナイーダが紙を取り出す。

 

「これは…?」

 

「なんでしょうか…?」

 

「これは…!」

 

「どこかで見たな…。」

 

ドミナントたちはそれぞれ反応する。

 

「ああ。計画の全貌だ。その人工生命体の他に、切り札がもう一枚ある。…これは、奴が利用されている証拠だな…。」

 

「陸田中将を陰で操る者…か…。」

 

「これを起動させたら間違いなく破壊してはならん。」

 

「つまり、捕らえるんですか?」

 

「まぁ、いいんじゃないの?どうでも。動かなくさせれば。」

 

「必ず捕えるんだ。」

 

ドミナントたちが話す。すると…。

 

ドォォォン!

 

ドガァァン!

 

遠くで轟音がする。

 

「…いる場所が分かったな。」

 

ジナイーダが呟く。

 

「…じゃぁ、急ぐか。」

 

「ああ。」

 

ドミナントたちは長い廊下を音のする方向へ走って行った。




はい。終わり。
ダク 楔石の原盤マラソン。2時間やって1個。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナイ…。

「長門コーナーだ。」
「今回のゲストは俺。つまりドミナントだ。」
「提督だな。今回あまり目立ったことはしていないな。」
「最近、俺の扱いがぞんざいになっている気がするんだよね…。」
「私など、出てもないぞ。駆逐艦なんて全然だ。」
「実際、俺の印象に残っている艦娘は俺の鎮守府だけで20人いったかどうか…。」
「つまり、まだ登場していない艦娘がいるんだな。」
「その通り。食材泥棒が言うには、第3章で沢山出るらしいが…。覚えられるかどうか…。」
「まぁ、頑張れ。性能を教えてくれ。」
「俺の右腕部はエネルギー系武器だ。佐藤中佐から貰って神バズもあるがな。左腕部は相変わらずのブレードだ。さらにはミサイルも積んでいて、連動するものも付いている。そのせいで重量過多。佐藤中佐からコアやら何やら頼んで、重量二脚になれる。…まぁ、その時艦娘たちからタコ殴りにされたけど…。」
「当たり前だ。何を勝手に使っているんだ。そのせいで鎮守府が壊滅の危機だったんだぞ。その後遠征マラソンだ。」
「ごめん…。」
「謝って済むなら殴らん。」
「次は余裕があるときにするよ。もちろん、艦娘たちにそれなりの要求は応えるし。」
「なら、殴られないかもな。」
「脚部は他に、夕張が作ってくれたフロート型がある。すごく嬉しかったな。」
「あの時のアレか…。生死を分ける状況だったからな。」
「でも、佐藤中佐が作ってくれたものはすごいよ。」
「?どこがだ?」
「右腕部の物も左腕部で扱えるようになった。そのかわり、重量が極端に重くなったり、ロックオンサイトが小さくなるけど。まぁ、逆も出来るけど。」
「すごいな。」
「ああ。」
「ふむ…。容姿は提督服を着て、帽子をかぶって目元が暗い老け顔提督か。」
「容姿のことも言わないとダメなのか?」
「うむ。」
「そうか…。まぁ、顔は美形でもなければ不細工でもない。…いや、鎮守府にいると美形な奴や男前な顔の奴もいるから、平均値よりはしただな…。世間では平均値だ。体型は小柄でも大柄でもない。太っても痩せてもない。ただ、実年齢よりは老けて見えるらしい。」
「なるほどな。」
「そゆこと。で、次回第193話『vsまるゆ』。どのような勝負になるのだろうな。」


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194話 vsまるゆ

残り8話か…。
「そのようね。」
陸軍編終わったら、ちょっとだけ休暇入ろうかな…。
「どうして?」
二万字ある話があるって、前書いたじゃん?
「?そうね。」
ついに4万だよ…。それくらい長編…。一話限りにしようとしたけど、ダメになりそう…。
「よ、4万…。久しぶりにすごいことになってるわね…。」
それ以上いきそう…。無駄話している時間が勿体無いから、あらすじ始めちゃって…。
「え、ええ…。この人よ。」
「レッツパァァァリィィィィィ!」
ちょ、夜中なのにうるさいよ…。大統領ことコロラドさんですね…。
「なぜなら、アメリカのビッグ7だからよ!」
あ、そうなんだ〜。で、あらすじは?
「強制的に終わらせるつもりね…。」

アラスジー
…特になさそうだな。


…………

 

(BGM 艦隊これくしょん『次発装填、再突入』…です。)

 

パァァン!パァァン!…!

 

ドォォン!ドォォン!…!

 

この部屋で怒涛と轟音が響き渡る。

 

「まるゆ!」

 

「黙れ…!」

 

「目を覚ませ!」

 

「うるさい…!」

 

あきつ丸がまるゆを説得しようと試みている。

 

「無駄だ!クハハハハ!」

 

陸田中将が高笑いしている。そこに…。

 

ドガァァァン!!!

 

「「「!?」」」

 

3人は、いきなり扉が蹴り壊されて驚く。誰がやったかは煙で見えない。

 

「…ここであっているのか?」

 

「そのはずだ。」

 

「ギャハハハハ!遅かったかな〜?」

 

「早く止めなくては…。」

 

3人と1機の影が映る。

 

「お、お前たちは…!幹部の連中はどうした…!?」

 

「「「倒した。」」」

 

煙が消え、姿が映り、ドミナントたちが言う。

 

「何…だと…!?」

 

「お前の計画は失敗だ。」

 

「黙れ!まだだ…まだ終わって…。」

 

陸田中将が言い終わる前に…。

 

ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!…!

 

装置から音が鳴る。

 

「あと10秒…。クックック…。よし!」

 

陸田中将はその装置のボタンを押す。

 

「一足遅かったな!これでこいつらは動き出す!ジ・エンドだ!クハハハハ!」

 

勝ち誇った笑みを浮かべだが…。

 

ビシッ!ビシッ!ビシッ!

 

どこからかスナイパーの弾が同時にガラスに当たる。

 

ピキキキキキ…!ビキキキキ…!バリィィィン!バリィィィン!…!

 

ガラスが割れ、中の人間たちが出てくるが…。

 

シュゥゥゥ…。シュゥゥゥ…。シュゥゥゥ…。…。

 

「なっ!?」

 

陸田中将は驚きを隠せなかった。残り3秒のところを誰かに壊され、中の人間が出てきて、それが溶けたからだ。つまり、まだ動かすには早すぎたのだ。どちらにせよ失敗に終わっていた。

 

「な、いっ、一体どこから…?」

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!…!

 

遅れて来た音と同時に、陸田中将はドミナントたちを見る。が、誰もスナイパーも銃も持っている様子はない。さらに奥だったからだ。

 

「…ドミナントさん、どうですか?」

 

「よくやった。セラフ。」

 

「手が痺れます…。すごい反動ですね…。これは…。」

 

セラフがドミナントたちのところに来る。

 

「貴様が…!」

 

「はい。」

 

「くそぉぉぉ!」

 

「陸田。お前の計画は失敗だ。お前は利用されているんだ。」

 

「知ったような口を聞くな…!お前ら海軍に何がわかる…!…私は…やるぞ…!」

 

陸田中将はさらに奥へ行く。

 

「ジナイーダ、ジャック、主任は後を追え!セラフ、お前は俺とあきつ丸の援護だ。」

 

「「「了解!」」」

 

ドミナントが適切な指示を出し、それぞれの役目を果たそうとする。

 

「では、ドミナントさん。あの艦娘を…。」

 

「待てセラフ。」

 

「?」

 

「あきつ丸たちは戦っているんだ。まだ俺たちは援護してはいけない。あきつ丸がまるゆをまるゆに戻そうとしている。横からの援護は逆にあきつ丸を信用していないことになる。俺はあいつを信じたい。「友」を「友」に戻すことを…。それに、まるゆ自身、撃たれる罪はない。」

 

「…わかりました。ですが、構えておきますね。」

 

「ああ。」

 

ドミナントたちが話しているのを他所に…。

 

「…なかなかしぶとい…!」

 

「まだまだやられないであります!本当のまるゆになるまでは!」

 

あきつ丸とまるゆは戦っている。撃ち合ったり、殴りあったり、飛んだり跳ねたり…。あきつ丸は急所をわざと外すが、まるゆは遠慮なく当てようとしてくる。正直、あきつ丸は避けるのに手一杯だ。

 

「まるゆは…まるゆは正常…。」

 

「なら答えるであります!」

 

「何を…。」

 

「本当に尊敬したり、憧れの人は陸田中将なのでありますか!?」

 

「……。」

 

「本当に会いたい人は他にいるであります!」

 

「……!」

 

「そうであります!大和のはずであります!」

 

「…大…和…。」

 

「まるゆは自分に語ったであります!いつか会うと!」

 

「……。」

 

「目を覚ませ!まるゆ!」

 

「!」

 

まるゆは何かを思い出せそうになったが…。

 

バチ…バチバチバチ!!

 

「あ"あ"あ"あ"あ"…!」

 

「!?」

 

まるゆに電撃が走る。

 

「だ…れ…?」

 

まるゆが少しずつ衰弱していくのがわかる。

 

「!ゴーグルであります!」

 

あきつ丸が気付いて叫ぶ。

 

「聞いたか!?セラフ!ゴーグルだ!まずはゴーグルを狙うんだ!」

 

「合点承知の助です!」

 

セラフとドミナントがまるゆのゴーグルに狙いを定める。

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!パァァァン!…!

 

「…くっ…。」

 

まるゆはドミナントとセラフの攻撃を避けて行く。

 

「…まるゆって、最弱と聞いていたが…。随分話と違うじゃないか!」

 

「ここで鍛えられたおかげであります!艦娘としてではなく、戦闘センスとしてはレベル以上であります!」

 

「それはお前もだろう!?はははっ!」

 

「話してないで、さっさとゴーグルを撃ち抜きますよ!」

 

「了解、了解!あきつ丸!俺たちが撃ち抜けるようになるべく隙を作ってくれ!」

 

「了解であります!」

 

ドミナントたちは口元が少し緩み、まるゆは3人の息が合っている攻撃に険しそうな顔をする。

 

「少しでも手を止めてくれればOKだ!頼むぞ!呼びかけて出来るなら頼む!」

 

「了解であります!」

 

ドミナントたちは叫び…。

 

「まるゆ!まるゆの喜びは!?」

 

「…敵を撃ち倒すこと…。」

 

「まるゆの敵は!?」

 

「あなたたち…。」

 

「大和とは誰だ!」

 

「…誰…?」

 

「ダメでありますか…。もう、言葉は届かないのでありますか…?」

 

「あなたは知らない…。ここで消えて…。」

 

「そんな頼みは聞けないであります!」

 

「何故…何故まるゆにこだわるの…?」

 

「この苦しい地獄を乗り越えた仲間であります!」

 

「……。」

 

「いい加減目を覚ますであります!」

 

「…あなたと話しているとおかしくなる…!」

 

まるゆがナイフを取り出す。

 

「なら、思い出させてやるであります…!」

 

あきつ丸もナイフを取り出す。

 

「行くであります!」

 

「望むところ…。」

 

ガギィン!ガキィ!ガキィィン!…!

 

両者とも猛攻を繰り出す。

 

「まるゆ!左!」

 

キィン!

 

「…くっ…。」

 

「次は右下から左上であります!苦手だったでありますよね!?」

 

キィィン!

 

「……。」

 

「まだ思い出せないでありますか!?」

 

「……。」

 

まるゆの顔がさらに険しくなっている。

 

「いい加減、目を覚ますであります!」

 

そして、あろうことかまるゆを抱きしめる。

 

「!?…この距離なら…これで一突…き…!?」

 

「動かさないであります…。固めているであります…!」

 

まるゆが暴れるが、全く緩まない。

 

「まるゆ…!いい加減目を覚まして欲しいであります…。」

 

「…まるゆは…正常…。」

 

「本当でありますか…?そんな顔で?」

 

「……。」

 

まるゆは泣いていた。涙が留めなく溢れて頬を伝う。

 

「…何故か…止まらないだけ…。」

 

「まるゆ…。お願いであります…。」

 

「……。」

 

あきつ丸も泣いていた。

 

「元に戻って欲しいであります…。」

 

「……。あなたの名前は…?」

 

「あきつ丸…。あきつ丸であります。」

 

「……。」

 

「一緒に乾パンも、残飯も食べ、訓練で厳しいことをやらされたであります。いつも暗い部屋で仲良く話したであります…。」

 

「…暗い…一緒の布団…。…あきつ…丸…。」

 

まるゆはまた何かを閃きそうになったが…。

 

バチ…バチバチバチ…!

 

「「あ"あ"あ"あ"あ"…!」」

 

ゴーグルから電撃が走り、二人は叫ぶ。

 

「セラフ!まだか!?」

 

「まだです!この距離だと精度を上げなければ頭に当たってしまいます!」

 

「くそっ!俺もお前並みの命中率があれば…!」

 

ドミナントとセラフは構えている。

 

「離さないと…あなたも…。」

 

「まるゆ!まるゆの会いたい人は大和型一番艦大和であります!大本営の元帥の秘書艦であります!いつか…。いつか会うと約束したであります!二人で入渠したこともあるであります!訓練で戦ったこともあるであります!目を覚ますであります!まるゆ!」

 

「……!!!」

 

まるゆは思い出す。あきつ丸との記憶を…。

 

「準備OKです!」

 

「あきつ丸!離れろ!」

 

「了解であります!」

 

タ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ン"!

 

あきつ丸が瞬時に離れるのと同時にセラフが発砲する。が。

 

ビュンッ!

 

「「「!?」」」

 

間一髪、まるゆも避けた。が。

 

「まだ…まだ…。!?」

 

「いや、もう終わりであります!」

 

あきつ丸の拳がゴーグルのすぐ間近にあった。そして…。

 

バギィ!!!

 

ゴーグルを思いっきり殴る。

 

ピシピシ…バリィィィン!!!

 

ゴーグルが粉砕した。

 

「……。」

 

まるゆが力なく倒れる。

 

「まるゆ!」

 

あきつ丸が近くに行き、支える。

 

「あきつ…丸…。まるゆは…どうして…。」

 

「まるゆ…。元に戻って良かったであります…!」

 

あきつ丸は涙を流す。

 

「ごめんね…ごめんね…。」

 

まるゆも涙を流していた。そこに…。

 

「一件落着だな。外したのはアレだったけど。」

 

「言わないでください。少しショックだったんですから…。」

 

雰囲気をぶち壊しながらドミナントとセラフが来る。

 

「ありがとうであります…。ドミナント…ではないであります。将こ…提督!」

 

「ははは。なんだそりゃ。それより、まるゆ。お前は大丈夫か?」

 

「第4佐世保の…?」

 

「第4佐世保の提督であります。自分たちを助けてくれた恩師であります。」

 

「恩師って…大袈裟だな。手を貸したくらいだ。」

 

「そうですよ。この人は変態ですから。」

 

「…セラフ?拗ねてない?」

 

「さぁ?さっぱりわかりませんが?」

 

「やっぱ拗ねてるよね?」

 

「さぁ?」

 

「…しゃぁない。ほら。よく頑張った。」

 

ドミナントがセラフの頭を撫でた。

 

「う、嬉しくなんてなってないです!」

 

「誰も何も言ってないんだけど…。」

 

ドミナントたちが話す。

 

「外の人たち…。でも、優しそう…。」

 

「優しいであります。いい人だらけだったであります。…自分は、陸軍を辞めて第4佐世保に行くつもりであります。まるゆは…大本営に行った方が良いでありますね。大和がいるでありますから。」

 

「ううん。まるゆはあきつ丸がいる所に行く。」

 

「?何故でありますか?」

 

「同じ地獄を乗り越えた仲間だから。」

 

「……。そうでありますね。」

 

二人は、ギャイギャイ騒いでいるドミナントとセラフを眺めていたのであった。




ニコニコ広告の借金の奴、しつこ過ぎて草も生えないわ。
…と、まぁ愚痴は置いておいて、良い感じにしようとしたけど、失敗してしまったかもしれませんね…。

登場人物紹介コーナー
まるゆ…最弱の艦娘。陸軍で作られた。この世界のまるゆの説明をすると、元々海軍から建造されたが、陸軍に戻された。その後、最弱なりに努力しているが、伸び悩み、酷い扱いを受けてきた。あきつ丸のルームメイト。一緒の布団で寝たり、ご飯をもらえない日は残飯を食らってきた。あきつ丸のことを大切に思っている。

「長門コーナーだ。」
「まるゆです。」
「おぉ、白いスクール水着…。印象的だな。」
「はい。建造された時からこの格好です。」
「なるほど…。」
「実は、まるゆの本当の名前は三式潜航輸送艇です。○の中に「ゆ」があったから、そう呼ばれたりもしました。」
「だからまるゆか…。」
「まるゆが生まれたきっかけは、ガダルナカル?と呼ばれる所で補給を待っている人たちに物資を届けるためでした。他にも補給船がいたみたいですけど、多くの補給船が敵に沈められちゃっていたからです。」
「だからこそ、潜水する補給船が欲しかったのか…。」
「ちゃんと作られるまで極秘事項だったみたいですけど、完成する頃には海軍も知ることになったんです。」
「まぁ、潜水艇の審査もあるだろうからな…。」
「それに、たくさん酷い目にあったりもしました…。まず、仲間であるはずの海軍からは潜れるのかどうか聞かれたり…。」
「木曽が有名だが、実際は大井だったという説もある。まぁ…。最初に装備できるものが何もないからな…。それに、潜水した時、沈んだと思われたほどだからな…。」
「浮沈制御がうまくいかないせいか、お風呂の時沈んだり浮いたり変になっちゃうんです…。」
「そのまま沈んだら提督も目を回すだろうな。」
「さらには、日本郵船からは敵と間違われて体当たりされて、凹んでヒビが入るほどの致命的な攻撃を受けたり…。他にもたくさんの仲間から敵と間違われたり…。」
「災難だな…。海軍どころか一般の船にも敵扱いされるとは…。」
「のちに分かったんですけど、一度敵に発見されたことがあって…。」
「?そうなのか?」
「昼間から日の丸印を堂々と掲げて浮上航行していたのがいけなかったみたいです…。」
「いやいや…。流石に潜水艦…?艇?としてどうなんだ…?敵も困惑しただろうな…。」
「ははは…。…あと、とても印象に残っているのが、大和さんと出会った時です。」
「大和と…?」
「まるゆが訓練をして帰っているところに、とても大きな戦艦と遭遇したんです。」
「それが当時実質世界最大最強だった戦艦、大和か。」
「最初はただ、何となく登舷礼をしてみたんです。すると、大和さんがすごい登舷礼で返してきたんです。味方からも攻撃されたまるゆに最大級の登舷礼をしてくれたんです。それに、ラッパまで演奏して…。それが大和さんが最後に出撃した時でした…。」
「なるほどな…。だから大和に憧れているのか…。」
「はい。…でも、その時に大和さんの大波でずぶ濡れになってしまったんですけどね。」
「フッ。」
「はい。いつか大和さんに会える日を待っています。」
「必ず会えるさ。必ずな。…さて、そろそろ次回予告だが…。…やってくれるか?」
「はい!がんばります!えーっと…。次回、第ヒトキューゴー…?」
「195だ。頑張れ。」
「次回、195話『正しくても間違いでも凄いのかもしれませんね』です!」
「よく言えたな。」
「はい!」


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195話 正しくても間違いでも凄いのかもしれませんね

今回で切り札が分かりますね。
「何よこれ?」
あー…。瑞鶴は先に見て知ってしまったか…。
「なんなの?これ。」
とても恐ろしいもの。まぁ、厄介以外記憶に残らないよ。
「なんなのかしら…。」
まぁ、分かる人にはわかるさ。じゃ、あらすじをさせてもらおう。
「この人よ。」
「Atlanta。来たよ。」
アトランタさんですね。淡白そうな。
「白身…。」
まぁ、同じようなもんだよ。
「嘘!」
「違うの?」
いや?そうだよ。
「嘘教えないで!」
瑞鶴〜。嘘はダメだよ〜。
「嘘つき瑞鶴…。」
「ちょ、聞いて!意味が…。」
そんなことより、あらすじ出来る?
「…出来るだろうか…。」
「無視するなぁぁぁ!!」
ドガァァァァン!
よっと!そうなんども当た…グファァァァ…!
「第二部隊も出ていたんだ。」
「そろそろ耐性がつく頃だと思ったから。」
何という…。よく分かってるな…。
「だって、前話したじゃない。」
…そうだったな…。覚えていてくれたのか…。
「始めるよ。」

アラスジー
4 o'clock.凄く静か。聞こえるのは波の音だけ。そして、凄く疲れた…。

まぁ、あれから1日も経って無いですからね。


…………

最深部 中枢

 

「ハァ…ハァ…。あいつらめ…。しつこいな…。」

 

陸田中将は追ってくるジナイーダたちから逃げている。この場所は広く、ホールより広い。

 

「待て。」

 

「逃がさん。」

 

「ギャハハハハ!」

 

ジナイーダたちも、あと少しで追いつきそうだ。そして…。

 

「はっ!」

 

「ぐっ…。」

 

ジナイーダが捕まえる。

 

「…クックック…。」

 

だが、疲れた顔で笑っていた。

 

「何がおかしい?」

 

ジナイーダは強めに言う。

 

「見事に策略にはまる貴様らがだ…。」

 

そして、陸田中将はポケットに手を忍ばせ、リモコンを押す。すると…。

 

ウォォン…ウォォン…ウォォン…。

 

何かが床から戦車のような何かが上がってくる。

 

「クックック…。貴様らの負けだ…!」

 

…………

数分前 奥の部屋

 

「あきつ丸。そしてまるゆ。お前たちに第一の任務を与える。」

 

「はいであります!」

 

「は、はい!」

 

ドミナントがあきつ丸たちに言う。近くではセラフが覚悟した顔つきでいる。

 

「ここから離れろ。この基地から離れろ。そして、基地から出たら町へ行け。2人で第4佐世保まで行くんだ。」

 

ドミナントも覚悟して言う。

 

「な、なぜでありますか!?ここは自分たちも…。」

 

「もうすぐ、ここは戦場になる。俺たちがやられたら、辺りは焼き尽くされ、破壊されて何も残らなくなる。お前たちが加勢したところで、焼け石に水だ。」

 

「まるゆたちはそんなに弱くないよ!」

 

「分かっている。だが、ここから起こることはそんな生優しくない。おそらく、俺たち全員がかりでACになる。それほどの相手だ。お前たちを庇えない。」

 

ドミナントは淡々と述べる。あきつ丸たちは不満そうだ。

 

「…頼む。今回だけは無理だ。お前たちが死んで欲しくない。」

 

ドミナントが優しく、二人を撫でながら言う。

 

「「!?」」

 

二人が驚いた。

 

……し、死んで欲しくない?今そう言ったの?なんで?艦娘の命を使うことって当たり前じゃ…?

 

……自分たちのような部下に頼み…?何故でありますか?命令すれば…。

 

二人は、陸軍での扱いが染み付いてしまって、不思議がっている。

 

「頼む。だから、まるゆを連れて先に帰ってくれ。俺の鎮守府も少し大変なんだ。お前たちは鎮守府の方を加勢してもらいたい。ここは俺たちがなんとかするから。」

 

ドミナントが優しく言う。

 

「…了解であります。」

 

「役に立てるなら…。」

 

二人が納得してくれた。

 

「ありがとう。ここから出る方向とかは知ってるよね。じゃぁ、セラフ。行くぞ。」

 

「はい。」

 

そして、二人はAC化した。

 

「あきつ丸、まるゆ。…あとは頼む。」

 

「はいであります!」

 

「はい!」

 

そして、ドミナントとセラフは最深部へ行った。

 

…………

最深部

 

「私たちの負けだと?馬鹿な。」

 

ジナイーダが呆れた顔をする。

 

「…はっ!」

 

「「「!?」」」

 

陸田中将が、ジナイーダたちを振り解き、ソレの近くへ行く。

 

「…クックック。これはある組織から送られてきたものだ…。お前たちの鎮守府から設計図を入手してな…。だが、我々では作ることができなかった。だから、ある組織に渡して作らせて、見返りとしてこれをもらったわけだ。そして、これを稼働させる…。お前たちを標的としてな!」

 

陸田中将はニヤけた笑みになり、リモコンを取り出してボタンを押そうとする。ジナイーダたちは陸田中将を止めようと走り出す。が

 

カチッ

 

起動ボタンを押してしまった。ジナイーダたちは“しまった”と、残念そうな顔をした。

 

ウィーーン…!

 

ソレが動き出す。

 

「いくらお前たちと言えど!こいつに敵うわけあるま…。」

 

陸田中将が言い終わる前に、ソレがブレードを構え…。

 

ザグッ…!

 

「い…!?…な…ぜ…?」

 

そのブレードが陸田中将の腹を貫通する。

 

「…やはりか…。」

 

「あいつに味方などいるものか…。目につく者全てが破壊対象なのに…。」

 

「?」

 

ジナイーダたちはわかっていたみたいだ。

 

「…裏…切った…のか…!?」

 

陸田中将はソレを見るが、答えるはずもなかった。

 

ドサッ

 

ソレはブレードから陸田中将を離し、陸田中将は倒れた。

 

「…この世界にいたとはな…。パルヴァライザー…!」

 

ジャックが忌々しげに言う。

 

「だが、私が知っている形態とは違う。今はタンク型だ。機動力を活かして捕獲するぞ。破壊は厳禁だ。」

 

ジナイーダが分析しながら言う。

 

「奴は高火力の武器を持ち、ブレードをつけている。わかったか?主任。」

 

ジャックが主任を見る。一番破壊してしまいそうなのが彼だからだ。

 

「ま、肝心なのはどうやって無力化するかだよ。」

 

主任が余裕そうに言う。

 

「…弾を使い切りさせる…かっ!?」

 

ビーー…

 

今は話している時間ではない。パルヴァライザー(タンク型)が容赦なく肩のレーザーキャノンで攻撃してきた。それをジナイーダは避ける。普段の彼女なら、難なく避けられるはずだが、完全に油断してしまっていた。

 

ドガァァァァァン!!!

 

そして、その避けたレーザーキャノンが壁に当たり、大爆発する。

 

「…この世界では同じ威力でも、爆発力などが多く感じるのだな…。」

 

「それくらい、火力の高い武器がない世界なのだろう。」

 

ジナイーダとジャックが避けながら口にする。

 

「…奴はMT…弾切れなど起こさん。」

 

「ならばどうする?…縛り上げるか?」

 

「いや、ブレードで切られるだろうし、もしブレードを封じ込めたとしても、肩のレーザーキャノンで攻撃してくる。…この部屋に閉じ込めるか?」

 

「無理だ。この世界の扉など、簡単に壊される。壊されなかったとしても、私たちが避けて、壁に当たった場所を見ろ。ボロボロだ。壁を破られて逃走する。…腕を切り落として武器を破壊する?」

 

「だめだ。パルヴァライザーがその攻撃に絶えられるとは限らない。それで破壊してしまったら、元も子もない。」

 

ジャックとジナイーダが話していると…。

 

「つまるところ、あいつを壊さず、攻撃させずの状態にしろってことかな?」

 

主任がいつもの調子で言う。

 

「無理難題だな。」

 

ジャックが呟く。パルヴァライザーはずっとレーザーキャノンを撃ちまくっている。それが壁、床、天井もお構いなしだ。

 

「だが、私はコアが破損し、所々損傷している…。長時間の戦闘は難しいぞ。」

 

「分かっている…。」

 

ジャックたちが話していると…。

 

ドガァァァァァン!!

 

扉が思いっきり破壊される。

 

「待たせたな。」

 

ドミナントが煙の中から現れる。

 

「馬鹿者!」

 

「…えっ?」

 

「扉を壊したら、こいつ逃げ出すかもしれないだろう!?」

 

「…あ…。あーー!」

 

ドミナントは状況を悪化させてしまった。そして、ジナイーダに怒鳴られる。

 

「ギャハハハハハ!いーじゃん!盛り上がって来たねー!」

 

「ドミナントらしいな。」

 

「はぁ…。全く…。…状況は見ての通りだ。奴を破壊せず、無力化だ。」

 

「私もいますが…。破壊は厳禁ですね?」

 

「らしい。」

 

愉快な仲間たちは少し笑みを浮かべている。

 

「背水の陣ですね…。」

 

セラフが呟く。

 

「が、多勢に無勢。圧倒的に有利だ。数だけでもなく、質も違うしな。」

 

ドミナントがパルヴァライザーのブレードを避けながら言う。

 

「ブレードを避けるくらいは出来るのか…。」

 

「ギリギリだけどな…。これでもアリーナでは…。…いや、なんでもない。」

 

「アリーナ?アリーナと言ったか?」

 

「いや、なんでもない。それより、奴を無力化するぞ。」

 

ドミナントが話を露骨に晒す。

 

「…ドミナント、そろそろ正直に言ってくれ。お前は何者なんだ?」

 

ジナイーダがレーザーキャノンを飛んでかわしながら聞く。

 

「……。」

 

ドミナントは何も言わない。

 

「…おそらく、私たちとは違う世界の人間だろう。それに、私たちのことを知っている。」

 

ジナイーダが何も言わないドミナントを面倒に思ったのか、当ててきた。

 

「な、何故…。」

 

「やはりか…。レイヴンの割には戦場を全く知らないど素人だ。それなのに、私たちの世界のことを色々知っている。不審に思わないはずがない。」

 

「…そうだ。俺はお前たちのことを知っている。それに、戦ったこともある。どのような機体、戦術、どんな強化がされているのか知っている。お前たちにとって、俺ほど危険な奴はいないから消されると思って言わなかったがな…。」

 

「…誰が消すか…!」

 

ジナイーダとドミナントは避けながら話す。セラフたちも聞き耳を立てていた。

 

「まぁいい。それより、あの赤いACのことを知っているだろう。どうしたら無力化できる?」

 

「あれはホバー型タンクだ。後ろに回れば楽に倒せる。だが、近づきすぎるとブレードだ。機動力がない。それを活かせば無力化も可能の筈だ。」

 

「…そうか。ならば、この手だな。」

 

ジナイーダは損傷しているが、不規則な動き、速さで簡単にパルヴァライザーの後ろに回る。そして…。

 

フ"ウ"ゥ"ゥ"ゥ"ゥ"ン"!

 

バチィッ!

 

パルヴァライザーの右腕を落とす。そして…。

 

ビーーー!

 

「む。」

 

レーザーキャノンを避けながら後ろへ飛ぶ。

 

「ジナイーダ、何を…。」

 

「こいつが邪魔だ。」

 

ジャックの問いにジナイーダが無機質に言う。ジナイーダの手には陸田中将がいた。

 

「助けたのか…。」

 

「お前ならそうしているだろう。」

 

ドミナントが呟き、ジナイーダがドミナントを見ずに言う。陸田中将を壁に放っぽる。そして、セラフが人間に戻って急いで応急処置を施す。

 

「丁寧に扱ってやれ。怪我人だぞ?」

 

「元はあいつの撒いた種だ。」

 

「…ふっ…。ははは。ちげぇねぇ。」

 

ドミナントが半分笑い、パルヴァライザーがセラフたちにロックオンしないように攻撃を4機で引きつける。

 

「な…ぜ…。助け…る…?」

 

陸田中将が応急処置を施しているセラフに聞く。

 

「ドミナントさんならそうすると考えたからです。」

 

セラフは迷いなく言った。

 

「あの…機械の…言う…通り…。私…の撒いた…種…だ…。死ん…で…も…当然…の…奴だ…。」

 

「…死んで当然…?ふざけないでください。貴方には生きてもらいます。そして、私たちに謝ってもらいます。死んで償おうなんて甘い考え捨ててください。」

 

セラフが冷たく言う。樫本少将と戦った時に思うところがあったのだろう。

 

「…そう…か…。…甘い…んだ…な…。」

 

「甘くて結構です。」

 

「…そんな…なら…、いつか…あの…提督は…挫折…する…ぞ…?」

 

「…人間ですから、挫折くらいはします…。でも、その時側に寄り添ってあげるだけでも大分違います。そばで支えるのがわたしたちです。」

 

「支える…か…。改変…では…なく…。」

 

陸田中将は少し沈黙する。そして…。

 

「…そう…か…。私…の…復讐…は…間違って…いたの…だな…。」

 

攻撃を引きつけているドミナントたちを見ながら悟った顔つきで言う。

 

「違います。」

 

「…?」

 

「…それも正しいのかもしれません…。答えなんて誰にもわかりません。人によって答えは違います。そんな物の答えは一人一人の勝手な正義でしかありません。ですが、多くの人は答えを出しても、実行しないで終わります。それを実行したあなたは、正しくても間違いでも凄いのかもしれませんね…。しかも、他の陸軍所属の人のために…。」

 

「……。」

 

セラフは真っ直ぐ見た。

 

「…おかしいですね…。敵であるあなたにこんなことを言うなんて。あれれ…?」

 

しかし、すぐにセラフはバツが悪そうにする。

 

「…そう…か…。」

 

陸田中将は帽子を深く被り、顔を見せないようにした。

 

……私の完敗だな…。

 

陸田中将は自身の考えに共感して欲しかったのかもしれない。自身がそうする理由を知って欲しかったのかもしれない。…もしかしたら、差別をなくして、昔のように海軍と仲良くしたかったのかもしれない…。陸田中将は、どこか欠落してしまった心の中で思う。

 

「…セラフ…と言ったか…?」

 

「…はい。応急処置も終わりました。もう話さないでください。」

 

セラフが立ち上がる。

 

「…昔のように戻れるだろうか…?」

 

立ち上がったセラフに聞く。

 

「…無理ですね。こんな大ごとになってしまえば。」

 

「…そうか…。」

 

「ですが、時が経てば戻りますよ。」

 

「……。」

 

「だって、同じ国に属する仲間ですから。」

 

「……。」

 

セラフが微笑みながら言った。陸田中将はそれを見て、何年かぶりに口元が緩んだ。

 

「じゃ!さっさとやるぞ。」

 

その一部始終を見ていたドミナントが口元を緩ませながら言う。そして、愉快な仲間たちは全員笑みを見せながらパルヴァライザーを見た。まぁ、ACのため表情はわからないが。

 

ウォォン…ウォォン…ウォォン…。

 

パルヴァライザーはその5機を見て、武器を構える。

 

「さぁ、終わらすぞ!」

 

「ああ。」

 

「はい!」

 

「了解。」

 

「ギャハハハ!」

 




いかん。そいつには手を出すな!
ダク 楔石の原盤20個。

登場人物紹介コーナー
パルヴァライザー…ジャックたち、LRの世界のとても厄介な代物。設計、発案をしたのは夕張だが、陸軍に設計図を盗まれ、とある組織に渡った。夕張が設計したのとは大きく違い、とてもパワーアップされている。艦娘では対処しきれない。陸軍は騙されて、パルヴァライザー本体だけを貰った。インターネサインはその組織が所有している。今回はタンク型。両手ブレードであり、肩にはレーザーキャノンを装備していて高火力。だが、機動力はタンク特有の皆無であり、簡単に後ろを取れる。まぁ、一番弱い形態。
陸田中将…りくたちゅうしょう。陸軍特殊部隊の司令官。深海棲艦が現れる前までは優しく、仲間思いであり優秀。トップの器だった。しかし深海棲艦が現れて以降、海軍、空軍が優先されてしまった。そのため給料にも差が出て、志願者も激減し、挙句の果てには守ってきた国民にまで中傷される羽目になった。それが原因で妻や子供に逃げられ、家事もままならなくなり、昼間でも酒を飲むほど酷い生活をしていた。艦娘や海軍は絶対的な怨み対象なっていた。差別をなくすために無理矢理艦娘を引き入れたが、憎悪の対象のため酷く扱ってしまう。艦娘を引き入れたにも関わらず、待遇が変わらないため海軍を襲うなど狂ってしまった。だが、セラフの言葉で救われることが出来た。

「長門コーナーだ。」
「今回はわしだな。」
「鎮守府を襲撃させた張本人、陸田中将だな。」
「ああ。」
「…上の紹介コーナーを見た。…酷い生活をしていたんだな…。」
「ふん。艦娘になんぞに同情されたくない。虫唾が走る。」
「…だが、私たちは関係ないんじゃないか…?」
「……。」
「…深海棲艦が出たのは私たちのせいじゃない…。それを仕方なく…。」
「仕方なく倒し、陸軍を追い詰めた。だろう?」
「結果的にはそうかもしれないが…。……そうか…。」
「……。」
「なるほどな…。それはこんなことになっても…な…。」
「……。」
「…私にはどうすることも出来ない…。私たちに向かってじゃないのか…。これは…。」
「そうだ。」
「だが、分かってくれ…。私たちだって、好きでこうなっているんじゃない…。活躍したくて、倒しているんじゃない…。」
「…もういい。わしだって分かっている…。」
「…次回予告するか…?」
「気分ではない。」
「分かった…。…次回、第196話『暗いものを明るくしてくれる熾天使なのだから』…か…。セラフのことだな。…それではまた次回。」


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196話 暗いものを明るく照らしてくれる熾天使なのだから

今回は色々ありますね。
「何があるのかしらね。」
まぁ、見ても瑞鶴には分からないから。
「そりゃね。」
今回暗躍者のヒントが…。…いや、答えかな…。まぁあります。
「そうなの…。あらすじをはじめるわ。今回のゲストさん、どうぞ。」
「H...Hello?」
モジモジしているのはガンビア・ベイですね。
「こ、こんばんは…。」
「怖がらなくても良いのよ?あらすじを言ってもらいたいだけだから。」
そうだよ〜。怖いことしないって。ぐへへへへ…。
「ひっ…。」
「ゲストさんを怖がらせるようなことを言うのはやめなさい。」
すまんすまん。ついついね。さてと、じゃ!いっちょあらすじ始めちゃってぇ!
「……。」
「完璧に怖がられてるわね…。大丈夫。この馬鹿が何かしようとしたら私が守ってあげるから。」
「わ、分かりました…。」
嫌われてる…俺…。

アラスジー
私は寝ていました。なのに、召喚されてこんな変なところに…。

変なところで悪かったですね。
「あんたのせいよ。」


…………

ホール

 

ドォォォォン…!ドガァァァァン…!

 

物凄い音が響いている。

 

「すごいであります…。ここまで音が響くとは…。一体何と戦っているでありますか…。」

 

「第4佐世保の人たち大丈夫かな…?」

 

「大丈夫であります。…彼らは…提督や他の人たちは、自分が今までに会ってきた人の中で一番強いでありますから…。」

 

あきつ丸たちがそう言いながら歩いていると…。

 

ガラ…。

 

「「?」」

 

ガララララ…!

 

「岩が!?」

 

音や振動で、ジナイーダたちが開けた大穴の淵にあった大きな岩が落ちてきたのだ。そして、それは凄い勢いで落ちてきて、基地が崩れていく。

 

……間に合わない…。

 

二人は覚悟したが…。

 

ブルルゥン…!ブオオオオオオオ!

 

どこからともなくバイクが来て…。

 

パシッ

 

ガララァ!ドガラァァ!!

 

二人の艦娘を持ち、サイドカーに二人を乗せて脱出する。

 

「あ、あなたは…?」

 

あきつ丸が、ヘルメットを被った顔のわからない者に聞くが…。

 

「……。」

 

何も言わず、崩れていく陸軍基地から脱出する。そして、安全地帯である門まで行き…。

 

キキィ!

 

「降りろ。」

 

「えっ、あ、ありがとう…であります。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

サイドカーを取り外し、二人を下ろす。そしてその者は呟いた。

 

「第4佐世保…借りは返したぞ。」

 

その者はそう言い残し、あきつ丸たちを置いてバイクでどこかへ行った。そう、この者はドミナントたちにある意味助けられた装甲車の車長だ。そこに…。

 

「…む?お前は誰だ?この先には崩れていく基地しかないぞ?」

 

偶然すれ違った者に言う。

 

「うん。知ってる。野次馬みたいな者だよ。」

 

「……そうか。」

 

車長は何か言おうと思ったが、変な気を感じたので、深く知ろうとせず、通り過ぎていった。

 

「…ここならいいサンプルあるかな?」

 

暗躍者の一人だ。そこに…。

 

「あと少しで街であります。」

 

「頑張ろう。」

 

二人の艦娘とすれ違う。

 

 

 

…ゾクっ

 

二人はその者に寒気を覚え、振り向いたが、そこにはいなかった。

 

…………

 

「なんとか無力化成功…か…。」

 

ギギギギ…。

 

残りAP5%を切っているパルヴァライザーがいる。武器を全て切り落とす作戦にしたらしい。

 

「これで、ミッションコンプリート…か。」

 

…………

 

「…へぇ。この状態で生きているんだ。すごいね。殺しても面白くなさそうだから回収か。」

 

ヘリコプターの残骸を漁る暗躍者。そして、しばらく歩き…。

 

「肺を貫通しているのに、まだ生きているんだ。このままでは死んじゃうね。…少し惜しい人材だから回収…と。」

 

そして、建物の跡地を歩く。

 

「この人もかな?もうどうでも良くなっちゃった。回収回収。」

 

廊下跡を歩いていると…。

 

「この人もかな?…人が来そうな予感がする。殺すのもいいけど、ここまできたら見つからずにやった方が面白そうだね。」

 

暗躍者がどんどん回収していく。

 

そして、瓦礫だらけの場所を歩く。

 

「…こいつ、やっぱり機械だったんだ。いつも無表情だから、変だと思ったんだよね。…人間じゃないから、パーツだけ回収しようか…。」

 

ズガァァァン!!

 

「なっ!?」

 

そこに、ハンドレールガンが炸裂する。

 

「敗者に手をつけるとは…。お前は誰だ?」

 

ジナイーダが現れ、煙で影しかわからない暗躍者の一人を睨みつける。

 

「見つかっちゃったんだ〜。…でも、一応回収の指示だから、殺すしかないよね…?」

 

そして、暗躍者は殺意を漏らす。

 

 

 

 

ゾクっ…。

 

「!?」

 

……馬鹿な…。この私が危機感を覚えるだと…!?

 

あのジナイーダが、背筋の凍る思いをする。

 

「お前…何者だ…?」

 

ジナイーダは汗を垂らしながら聞く。…ACだから本当には垂れていないが。

 

「…知らなくて良いよ…。どうせ僕に殺されるんだから…。」

 

そして、暗躍者がジナイーダを狙おうとした時…。

 

「おい!どうした!?」

 

「敵ですか!?」

 

「何をしている?」

 

「ん〜。なんかいつもと違くなぁい?ハハハ。」

 

ドミナントたちが駆けつける。

 

「うぅ…。面倒くさい…。…でも、これだけ集まると骨が折れそう…。しょうがない…。ガラクタは諦めるか…。」

 

そう暗躍者が呟き、姿を消す。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ドミナントがすかさずジナイーダに駆け寄る。

 

「…猫…。」

 

「…は?」

 

「…!な、なんだ?」

 

「いや、今なんて言ったか聞こえなかったからな。」

 

「?い、今、私は何か言ったのか…?」

 

「ああ。…どうした?顔が真っ青だぞ。」

 

「…すまん。今少し気分が悪い。休ませてくれ…。」

 

ジナイーダはガレキに座る。

 

「…さっきからおかしなことばかり起こったな。」

 

「ああ。」

 

ジャックとドミナントがコソコソ話す。

 

「さっきも、セラフが何か変だった。その時はパルヴァライザーが何者かに壊された直ぐだったな。セラフの顔色が少し悪くて、背筋が寒くなったとか…。」

 

「そうだな…。」

 

…………

数分前

 

「…何か嫌な予感がする…。」

 

ジナイーダが突然言い出す。

 

「何故だ?パルヴァライザーはこのように捕獲も完了した。もう何も起こらないだろう。」

 

ドミナントが呑気に言う。

 

「…すまん。気になるから少し行ってくる。」

 

「お、おう。わかった。気をつけてな。」

 

ドミナントは少し焦っているようなジナイーダを不思議に思いながらも行かせてあげた。

 

「にしても、セラフの光波が凄かったな。あんな僅かな隙間を狙うとは…。」

 

「いえいえ、私なんてまだまだ…。」

 

 

 

 

ゾクっ…。

 

「!?」

 

セラフは一瞬で背筋が凍った。

 

「誰です…。」

 

ブヴゥゥゥゥン!!

 

「「「!?」」」

 

セラフが聞く前に、どこからかブレードの光波が飛んできて、パルヴァライザーに命中する。

 

ボガァァァン!

 

パルヴァライザーは名前のとおりに粉砕した。

 

「!?誰だ!?」

 

ドミナントたちは周りを見るが、攻撃出来そうな場所はなかった。

 

「?何が…。…セラフ?」

 

ドミナントは、顔色が悪くただ突っ立っているセラフを不安に思い声をかける。

 

「…えっ?あ、はい…。少し背筋が寒くなっただけです。ですが、少し休ませてください…。連戦で少し疲れているみたいなので…。」

 

「?」

 

セラフは地べたに腰を下ろす。

 

「…大丈夫か…?」

 

陸田中将が声をかける。

 

「…はい。…随分と優しくなりましたね…。」

 

「そうだな。誰かさんのせいでな。」

 

「言いますね…。私の言葉で泣いていたくせに…。」

 

「な…。泣いてなどない…。涙など、とうの昔に枯れたわ!」

 

二人は軽口を叩き合う。

 

「…しっかりしろ。お前は私に色々言ってくれたんだ。それくらい、お前は強い。それに、支える者が逆に支えられそうになってどうする?…しっかりしろ。お前は暗いものを明るく照らしてくれる熾天使(セラフ)なのだから。」

 

陸田中将が優しく語りかけるように言う。

 

「……。そうですね。ありがとうございます。」

 

セラフが今の言葉を聞き、立ち上がる。

 

「ドミナントさん。行けます。」

 

「…そうか。…陸田中将。」

 

「なんだ?」

 

「…またこんなことが起きないように、挫けそうになったら連絡してください。少しは大本営に鼻が効きますから。」

 

ドミナントが言う。

 

「ふん。別に私はお前たちを信用したわけではない。お前ら海軍は敵だ。…だが、一応礼は言っておく。私を助けてくれて感謝する。」

 

陸田中将は頭を下げた。

 

「素直ではありませんね。」

 

「うるさい。敵視しているが、だからと言って礼を言わないのは最も恥ずべきことだからな。」

 

「…ふふ。やっぱり、辛い時は連絡してくださいね?あなたは本当は優しい人なんですから。」

 

「……。…私はお前が苦手だ。」

 

「ふふふ。」

 

セラフと陸田中将が話す。

 

「…連絡先、渡しておきます。セラフ、ジャック、主任、行くぞ。ジナイーダが心配だ。」

 

「はい!…それでは、またいつか…。」

 

セラフが言い残し、ドミナントと共に走って行く。

 

「…私もまだお前を信用してはいないが…。…辛いことは全部吐き出したほうが楽になる。話すくらいなら良いんじゃないのか?…まぁ、余計なお世話かもしれないがな。」

 

そして、ジャックもドミナントの後を追う。

 

「最高だ!貴様らぁぁぁ!」

 

主任は叫びながらジャックの後をついて行った。

 

「…ドミナント、セラフ、ジナイーダ、ジャック…か…。」

 

主任のことは抜きに、呟きながら連絡先を見ていた。




浄化…。
ダク 亡霊や狭い橋の竜でマッハでストレスが溜まんよ。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナイ…。

「長門コーナーだ。」
「今回は僕だね。」
「暗躍者か。」
「そうだよ。」
「…何者なんだ?」
「それは言えないよ。強いて言うなら、君たちの提督に会った者だね。」
「提督と会った…?そうなのか?」
「そうだった気がするんだけど…。」
「…まぁいい。特にないなら、次回予告を頼む。」
「まぁ、いつか説明されると思うから、次回予告をしよう。第197話『落とし前』だな。落とし前…?なんだろうか…。」


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197話 落とし前

そろそろ前書きも面倒に思う頃。
「それを言っちゃおしまいじゃない。」
ところで瑞鶴〜。イベント始まったね。
「そうね。」
残念だが、このイベントに瑞鶴は同席できない…。
「…そのようね…。」
まぁ、同席できる奴があればやるけどね。
「久しぶりにログインしてくれたんですもの。幾らでも使いなさい。」
そう言ってもらえると嬉しいよ。…今回のゲストは?
「この人よ。」
「Northampton級、Houstonよ。」
ヒューストンさんですね。デ・ロイテルと共にいる。
「あと一人いるけれどね。」
まぁ、いつか見つかりますよ。あらすじを頼みます。
「分かったわ。」

アラスジー
ふぁ〜…。It's four o'clock.午前四時。もうすぐ夜明けです。


…………

陸軍基地 広間

 

「大丈夫か?」

 

ドミナントは瓦礫に座るジナイーダに聞く。

 

「…おそらくな…。」

 

「?」

 

ジナイーダは瓦礫に座って俯いたままだ。初めてなのだろう。ここまで恐怖を感じたのは。

 

「まぁ、俺たちがついてる。心配するな。」

 

ドミナントは自然とジナイーダの頭…頭部?を撫でていた。

 

「…そうだな。」

 

そして、ジナイーダは立ち上がった。そして、上を見た。長光少将と自分が戦って出来た穴を。そして、落ちてきたと思われるコンクリートを。

 

「…吹雪が心配だ。」

 

「吹雪!忘れる所だった…。…やばい…陸田中将殴りたくなってきた…。」

 

「それでもお前は『提督』か?」

 

ジナイーダがやれやれとする。

 

「陸田中将に聞いてこないと…。あーあ…二度手間になっちゃった…。」

 

「挫けないでくださいよ。それが終わったら、帰りましょう。」

 

ドミナントが愚痴を零し、セラフが言う。

 

「やっと帰れるのか〜。久しい感覚だねー。」

 

「そうだな…。まだ1日も経っていないんだがな…。この感覚はアライアンスの襲撃予告後の感覚に似てるな…。」

 

主任とジャックも言ってきた。

 

「じゃぁ、行きますか…。」

 

ドミナントたちは疲れた体に鞭を打って歩いて行く。

 

「…ジナイーダ。」

 

「なんだ?」

 

道中、ジャックが小声でジナイーダに言ってきて小声で返す。

 

「…何を見たんだ?」

 

「……。」

 

「あの表情は普段肝が据わっているお前らしくなかった。」

 

「…猫だ。」

 

「…なんだと?」

 

「はっきり言って猫…。強さはおそらく化け物級…。化け猫だ。この世界の人間や艦娘、動物などでは到底敵わない。足元すら及ばない。あの神…。…いや、それより強いかもしれん…。」

 

「我々と同じ世界から来た可能性はどうだ?」

 

「…ないな。あれほど強そうなレイヴンがいたら、一度は目にしたり噂で聞くはずだ。」

 

「…そうか。」

 

ジャックとジナイーダが話す。だが…。

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

「「「!?」」」

 

基地が揺れだす。

 

「…これ、ヤバいんじゃない…?」

 

ドミナントが聞く。基地が崩れかけているのだ。

 

「崩れたら100%生き埋めだよ…?…いや、俺たちは無事な気がするけどさ…。吹雪が…。」

 

「走るぞ!」

 

ジナイーダの一声で走り出す面々。

 

…………

陸軍基地 中枢

 

「陸田中しょー!」

 

「…む?大佐らか…?」

 

少し目を閉じて休んでいるところに、ドミナントたちがやってくる。

 

「うらぁぁぁ!」

 

ボカッ!

 

「グハァァ!」

 

ガシャァァァン!

 

「ドミナントさん!怪我人になんてことをするんですか!」

 

ドミナントが殴り、陸田中将が吹っ飛んだ。セラフが言った。

 

「た、大佐…何を…?」

 

「あー…スッキリした。これは俺たちの鎮守府を攻撃した分と、その被害に遭った艦娘たちの分だ。受け入れろ。落とし前だ。」

 

そう、こんな目に遭っていても、一応ドミナントたちの鎮守府を攻撃している。因果応報だ。

 

「…そうだったな…。加賀の分がまだだったな…。」

 

「足の切断とか、中々やるじゃない…?」

 

「そう思ってみれば、夕張さんの分も…。」

 

三人がまるでハンターのような目で陸田中将を見る。

 

「…来るならこい。因果応報だ。耐えてみせよう…。」

 

「よく言った。なら、まずは私からだな。」

 

ドガァァァァン!

 

「グハァァァ!」

 

「じゃぁ、次は俺だね〜。」

 

ドゴォォォォ!

 

「グボッ…。」

 

「腹はやめてください!そこ応急処置をしたところなんですよ!?」

 

セラフが主任に言う。

 

「…これは夕張さんの分です。入渠で治るとしても、残酷すぎるため殴ります。技術者にとって、腕は命なんです。」

 

ドギャァ!

 

「グァァ!」

 

陸田中将は全ての拳を受け入れた。ちなみに、ジャックと主任は半ば本気で殴っていた。セラフは一応、腹が貫通して天罰が下ったことを配慮に入れて、軽く殴っていた。

 

「それより、吹雪はどこだ?」

 

「…連れ去った艦娘のことか…。」

 

「どこにいる?もうすぐ基地が崩れて潰れる前に救出する。」

 

ドミナントが言う。

 

「…この奥だ。鍵はこれだ。」

 

「確かに受け取った。…セラフ、ジャック、主任。陸田中将を外に運んでやってくれ…。頼む。」

 

「仕方ありませんね。」

 

「な、何を…?」

 

「持ち上げるんです。海に捨てたりはしないので、しっかり捕まっててください。」

 

「だが…。時間が…。」

 

「時間がないから言ってるんです。」

 

そして、セラフたちが無理矢理運んで行った。

 

「…ジナイーダ…。」

 

「分かってる。止める役だろう?吹雪に何かあった場合の。」

 

「…すまない。」

 

「まぁ、破壊しないように優しく気絶させる。」

 

そして、ドミナントたちが鍵を使ってドアを開けた。

 

「司令官…?」

 

「吹雪!」

 

思わず吹雪を抱きしめた。

 

「な、何を…。」

 

「吹雪…。何かやなことされなかったか…?痛い目に遭ってないか…?」

 

ドミナントが聞くが…。

 

「大丈夫です…。」

 

「本当か…?」

 

「はい。」

 

吹雪が微笑む。

 

「なら良かった…。」

 

「はい。私をここに閉じ込めた人は、実は優しかったみたいで…。」

 

「そうなのか…?」

 

「森崎さんという名前です!」

 

「…森崎…。」

 

「たくさん良くしてくれました。たくさん話も聞かせてもらいました。…この陸軍のことも…。どうしてなのかも…。」

 

吹雪が俯く。

 

「…そうなっちゃいますよね…。誰だって…。」

 

「…そうだな…。」

 

「司令官!」

 

「どうした?」

 

「この人たちは根っからの悪人じゃないんです…。ただ、少しだけ心が歪んでしまっているだけなんです…。ですから…殺したりはしないでください…。お願いです…。」

 

「大丈夫だ。殺してない。電にも言われたからな。それに、今このタイミングは遅いし。」

 

ドミナントは優しく吹雪の頭を撫でた。

 

「さて、行くか。外に。」

 

「そうだな。」

 

そして、ドミナントは吹雪をおぶり、走る。

 

「…む…。」

 

ジナイーダが止まった。

 

「早く行くぞ!」

 

「…分かった。…遺体だけでも回収する。」

 

ジナイーダが持って行った。

 

…………

 

「遅いぞ。」

 

「うるへー。」

 

ジャックがドミナントが来るなりキツイことを言う。そして、振り返る。

 

「…完全に崩れてるね。」

 

「…そうだな。」

 

あったのは瓦礫の山だ。所々煙も上がっている。すると…。

 

「朝日だ…。」

 

丁度日が昇ってきた。

 

「帰ったら仕事か…。」

 

「違いますよ。だって、艦娘たちだけではまだ建ってないと思いますし…。」

 

「…力仕事が待ってるな…。まぁ、二徹くらい軽いけど…。流石に5徹が限界だけどね。社畜時代の最高。」

 

「なら、記録更新を目指すぞ。」

 

「いや、更新しようと思えば出来るけど…。ミスが多くなる。5徹が正常に仕事できる限界って意味。ミスも含めると、9徹はいける。」

 

「それは流石におかしいぞ…。身体が…。」

 

「それほど別の意味で過酷な世界だったんだよ…。」

 

「環境が汚染されてそうだね〜。」

 

「ゴミ問題が大変なことになってたんだよ…。て、話がそれてる。」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

バラバラバラバラバラ…!

 

「「「!?」」」

 

一台のヘリコプターがやってきた。




久しぶりに書くと感覚がおかしくなります…。ドミナントは甘い男です。超甘々です。そして、この世界の悪人たちは意外と胸糞の悪くなるような残酷なことはしません。したとしても、必ず何とかなります。因果応報も来ます。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ

「長門コーナーだ。」
「またわしか。」
「そのようだな。」
「わしのことは次回で話す。」
「そうか…。次回、第198話『元帥の称号を得ろ』か…。提督…。」


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198話 元帥の称号を得ろ

今回で最終話ですね。
「そうなのね…。」
その通り。そして、ストックの話が足りない。
「大変ね。そんな2万字とかのやつに書くからじゃない?」
いやぁ…約5万字になったけどね…。
「そんなに!?」
そんなにだよ。…さてと、じゃ、あらすじをやってもらおうか。
「わかったわ。この人よ。」
「Hoi!(こんにちは)!」
デ・ロイテルさんですね。ロイヤルじゃない。
「ここは…?」
「筆者の家よ。あなたは召喚されたの。あらすじを言えば戻れるわ。」
「そうなんだ。」
「私もやっと寝ることが出来る…。」
鎮守府直ってないけどね。
「一応交代で寝ているわ…。私は皆んなが気遣ってくれているから、ちょくちょく寝させてくれるけど…。」
「大変だね〜。…じゃ、アラスジーを始めるよ。」
頑張ってー。

アラスジー
五時です。朝焼け、きれい。ね、ほら。この時間、好き。

夜が明けましたよ。


…………

 

バラバラバラバラ…!

 

「「「!?」」」

 

一台のヘリコプターが来た。

 

「敵か…?」

 

ジナイーダたちが攻撃態勢に入るが…。

 

スルスルスルスル…

 

「?」

 

梯子が降りてきた。そして、何やら偉そうな人たちが降りて、ピシッと隊列を組んで並ぶ。

 

「我は陸軍大将、阿波だ。」

 

「お…私は、海軍大佐、ドミナントであります。」

 

隊列を組んでいた一人が前へ出て、両者とも自己紹介をして敬礼をする。

 

「この度は我が陸軍特殊部隊が迷惑をかけた。詫び申しあげたい。」

 

「ハッ!」

 

……まともそうだな。

 

ドミナントが阿波大将を見て思う。だが…。

 

「一つ話があって来た。」

 

「なんでしょう?」

 

「この件はなるべく穏便に済ませたい。すなわち、内密ということだ。」

 

「…えっと…意味がわからないのですが…。」

 

「このことが大ごとになれば、第4佐世保と呼ばれる鎮守府のことが公になる。且つ、そちらが人ならざる者ということが世に知れ渡ることになる。到底、今までのような普通の生活は出来ないだろう。それだけは避けたいはずだ。良い提案だと思わないかね。」

 

阿波大将がACのままのジナイーダを見る。

 

「逆にそちら側のメリットは、陸軍が海軍にクーデターを起こしたことが世間にバレれば国民が陸軍を徹底的に反発。支持を失うことになる。ですか。」

 

「その通り。この提案は双方メリットが存在する。良い提案だと思うが?」

 

阿波大将が言う。

 

「…分かりました。」

 

「ドミナント!」

 

「ジナイーダ…。確かに、この提案は反対するべきなんだと思う。でも、国民は何をするか分からない…。そこが恐ろしい。今まで極秘されていた鎮守府がバレることになれば、海軍が俺たちのせいで中傷されかねない。それに、俺たちが人ならざる者だとバレた場合、反発されるのは明らかだ。艦娘たちまで被害に遭うかも知れない。…俺は身の回りで俺のせいで被害に遭う者を見たくない…。」

 

「……。」

 

ドミナントに、そんなに真剣に言われたら黙るしかない。

 

「賢明な判断だ。」

 

阿波大将が言う。

 

「この“軟弱者”は我が病院に運ぼう。そちらはもう帰っても構わん。」

 

……軟弱者…?

 

そして、もう興味が失せたようにドミナントたちに言い、陸田中将の方は向く。

 

「…待ってください。」

 

「?」

 

セラフが引き止める。

 

「確かに、その人は軟弱者かもしれません。だけど…。」

 

「なんだ?」

 

「“何もしなかった”あなたたちよりかは立派だと思いますよ?糞餓鬼。」

 

セラフが微笑みながら言った。

 

「貴様!大将に向かって…!」

 

「あなたたちに言える権利などどこにもないと思いますけど?コバンザメのように、偉い人のおこぼれをもらうために、くっついてヘコヘコしているだけの軟弱者ではありませんか。何か一つでも、あなたたちはこの人のようなことをしたことがあるんですか?この現状を変えようと“行動した”ことがあるんですか?」

 

「うっ…。」

 

セラフが銃を構える者たちに向かって言う。

 

「…なるほど。セラフと言ったか…?」

 

「はい。」

 

「我を糞餓鬼と…良い度胸じゃないか。関心したぞ。」

 

「そうですか。」

 

セラフが普通に答える。

 

「…チッ…。行くぞ。」

 

「ハ、ハッ!」

 

舌打ちした後、部下を引き連れ、陸田中将を連行しようとしたが…。

 

「待て。」

 

おじさんが行手を阻む。部下が阿波大将の前へ出て、銃を構える。

 

「貴様!邪魔d…です…。」

 

部下が最後は敬語に、銃を下ろした。

 

「なんだ?何をして…。うっ…。」

 

阿波大将も言葉を詰まらせた。

 

「阿波と言ったか…?お前のような器が大将とは…陸軍も質が落ちたか…。」

 

「武田元帥…殿…。」

 

阿波大将が冷や汗を垂らしながら呟き、見ていなかった部下たちがどよどよ驚く。

 

「何故ここに…?」

 

「海軍の英雄…。」

 

「伝説の…提督…。」

 

どうやら、陸軍でも知らぬ者はいないらしい。

 

「久しいな…。陸田…。」

 

「武田…。」

 

二人が言う。

 

「待ってください〜!元帥殿〜!」

 

大和も遅れて登場。

 

「て!なんでこんなに崩れているんですか!?それに、その人たちは…?」

 

「なんだ?関係者以外は立ち入り禁止だ。出て行け。」

 

部下は撃つ気はないが、見せびらかすように構えるが…。

 

グニャリ

 

「元帥殿に何かするおつもりで?」

 

大和は片手でいとも簡単に銃身を曲げた。

 

「大和、大丈夫だ。」

 

「…分かりました。」

 

ドミナントたちは、二人が人間や艦娘の中では強い部類に入るのを実感した。

 

「阿波と言ったか?」

 

「…はい。」

 

「陸田は私が病院に運ばせる。異論はないな…?」

 

「ハ、ハッ!」

 

「なら、さっさと立ち去れ。阿波中佐。」

 

「?我の階級は大将…。」

 

「私の目には中佐前後だ。将になりたいなら、人間性や器を磨くことだな。…さっさと行け。」

 

元帥が言い、阿波がトボトボ歩き、ヘリに乗って何処かへ行った。

 

「…元帥って、器が狭かったり、人間性が少ない人には冷たいんだな…。それに、陸軍でめちゃくちゃ有名じゃん…。」

 

ドミナントが呟く。

 

「司令官、元帥殿のことあまり知らないんですか?」

 

「ああ。」

 

「元帥殿は大決戦の英雄ですよ!」

 

「そうなのか?」

 

「はい。大決戦の中自らが名乗り出て指揮をとり、大きな戦果を得て、次々と作戦や戦術を畳み掛けて深海棲艦側を追い詰めた人です。今の元帥殿がいなかったら、確実に負けていたと言えるほどです!見捨てられた艦娘たちまで救出して、勝利に導いた人の一人です!」

 

「それほどまでに凄い人だったのか…。」

 

ドミナントは改めて元帥のことを思った。

 

「陸田…何故こんなことをした…。」

 

「何故…か。お前にはわからんよ…武田…。」

 

二人が話す。

 

「お前と私は同期だ。同じ歳、同じ年に軍事学校に入り、同じ教室で同じ部屋だった。わからないはずがない。」

 

「海軍の英雄であるお前と、陸軍の中将止まりのわしとは違う…。陸軍と海軍、分けられている軍とは違うんだ…。」

 

「お前は必ず陸軍の元帥になれる器の持ち主だった筈…。私の目に狂いはなかった筈だ…。」

 

「海軍が活躍している…。敵は陸ではない…兵器も通用しない。となれば必然、陸軍は用済みだ…。活躍できるお前には分からんぞ…。」

 

「……。」

 

そんなことを言われたら何も言えない。そして、陸田中将の隣に座った。

 

「…私とお前は同期でここまで接点があっても、質は逆だったな…。」

 

「ここに来て今更昔話か…?やめてくれ。惨めになるだけだ。」

 

「惨めだろうが聞け。…私は優等生だった。お前と同じでな。だが、対照的だった…。」

 

「ふん…。」

 

「私は教員や友人と共にいるほうを好んだ。…だが、お前は一人を好んでいたな…。」

 

「他人を信用出来なかったからだ。」

 

「だが、私とお前は唯一の接点があった筈だ。」

 

「忘れたな。そんな昔のことは。」

 

「“国を守りたい”…その気持ちは同じだったはずだ。」

 

「……。」

 

「夜、就寝時間の規則を共に破った日に話していた筈だ。どちらも元帥になることを目標に、国の改革を望んでいたはずだ…。」

 

「…目覚めたんだよ…現実にな。」

 

「…確かに、昔とは違う。現実を知り、双方それぞれ所属してから立場上会える機会も無かった。…もし、会えていたならばこんなことにはならなかったのかもしれん…。」

 

元帥はそんなことを言う。

 

「…私は陸軍がどのような扱いを受けているのか知らなかった…。知っていたならば、私が直接議会に行っていた…。」

 

「今更遅い…。」

 

「そうだな…遅すぎた…。こんなになる前に私はいくらでも手はあった筈だ…。準備や方針を決めることが出来たはずだ…。」

 

「…いや、遅くも早くもないな…。」

 

「?」

 

「陸軍は既に国から見捨てられているんだ…。国民にも…誰からにも…。日本は他国のように隣接するような国ではない…。最初から陸軍は必要なかったのかも知れん…。」

 

「それはないぞ。陸田。」

 

元帥が割って入る。

 

「陸軍が本当に必要ないならば、何故お前は陸軍になった?憧れていたからである筈だ。…そこまで心をなくした訳ではないのだろう…?」

 

「……。」

 

陸田中将が俯く。

 

「確かに私は英雄だ。予算などに心配することがない海軍だ。海軍の方が優遇されている。…だからこそ、私一人くらい助けを求めろ。どうせ、自分は一人でいたせいで誰も助けてくれる者がいないと決めつけていたのだろう。私にも色々あり、言えないと思っていたのであろう。」

 

「……。」

 

「海と陸の仲は悪い。だが、私とお前では違う筈だ。お前と私は友人だろう…。一言でも良い、一文の手紙でも良い…。もっと…もっと私を信用してくれ…。もっと私を頼ってくれ…。予算が足りぬならいくらでも支援しよう…。人員が足らぬなら駆けつけさせよう…。国民からの中傷はなるべく控えるようにさせよう…。だから、もうこんなことはやめてくれ…。友人が苦しむ姿を長く見ていられん…。」

 

元帥はマジで言った。止めたいのだろう。暴走した友人を。

 

「…武田…。」

 

「どうした?」

 

「この腐った国はそう易々と変わらない。」

 

「……。」

 

「国民は何も知らないくせして勝手に知ったような口を聞く。変に祭り上げたり。そう思ったら変に祭り下げたり。自分の意見をくるくると手のひらをひっくり返し、善にも悪にも変わる。どうしようもない、クソみたいな奴がウヨウヨいる。腐敗している。国民自体が腐っているんだ。その腐敗したものを取り除かない限り国は変わらない。」

 

陸田中将は言う。

 

「…ただ、一つわかって欲しい。」

 

「?」

 

「…わしのことを友人と言ってくれて感謝する。国民は一切信用せず、変わらなければまた動くかも知れんが、お前だけは信用しよう。」

 

陸田中将が元帥を見て言う。

 

「そうか。…なら、なるべく随時連絡をする。暴走を止められるようにな。…それと、私は陸軍がなければ駄目だと思っている。陸、海、空…どれか一つでも欠けては駄目なんだ。…次の予算会議で私は陸軍に支援するように言おう。私に出来ることは極力やろう。」

 

「…そうしてもらえると助かる…。」

 

「そのかわり一つ、条件がある。」

 

「なんだ?」

 

「必ず元帥の称号を得ろ。それだけだ。」

 

元帥が口元をニヤリとさせて言った。

 

「…フッ…。…そんなことを言っていいのか?すぐに才能を発揮して海軍を抜くぞ?」

 

「ほう。楽しみにしているよ。その前に陸軍が潰れるかも知れんがな。」

 

二人は軽口を言い合う。おそらく、軍事学校ではそんな感じだったのだろう。

 

…………

 

「それでは、ドミナント大佐。」

 

「それでは。」

 

元帥、大和、陸田中将が車に乗る。が。

 

「…待ってくれ。」

 

「「「?」」」

 

陸田中将が車から出る。そして…。

 

「ジナイーダ…頼む。長光少将を渡してくれ…。」

 

「……。」

 

頭を下げてジナイーダに頼む。

 

「…せめて、墓を建ててやりたい…。こんなわしの腹心で側近でいてくれたんだ…。頼む…!」

 

「……。その言葉、嘘ではないな…?」

 

「ああ…。」

 

「…受け取れ。」

 

ジナイーダが優しく渡す。

 

「ありがとう…。」

 

そして、その光景をにんまりと見ていた元帥と大和は陸田中将が車に乗ったあと帰って行った。

 

「さてと…帰るか。ここのことは元帥たちがなんとかしてくれるらしいし。」

 

「予算いくらかかるんだろうな。壊滅状態のここを直すのに。」

 

ジナイーダがやれやれと見る。

 

「吹雪さん。怪我などありますか?」

 

「大丈夫です!」

 

セラフが心配して、吹雪が笑顔で返す。

 

「あーあ…これから俺は面倒なことになりそうだよ〜…。」

 

「何故だ?」

 

「約束したからだね〜ギャハハハ!」

 

主任とジャックが他愛な話をする。

 

だが、帰る足取りは軽かったみたいだ。

 


 

Along with the mysterious army base explosion that took place in the mountains, the executives of the Army Special Forces disappeared from the world.

 

 

 

山の中で起きた謎の陸軍基地爆発と共に

陸軍特殊部隊の幹部が世間から消え、

 

 

 

 

After a while, the secret Army base incident someday disappeared.

 

 

 

しばらく後、その秘密陸軍基地の事件は

いつの日か誰も口にしなくなった。

 

 

 

(エンディング ACMOA)

 

ORIGINAL

Armored Core

Kantai Collection

 

STAFF

Zuikaku

Writer

 

PRODUCER

Toarusoshikino Seitaiheiki

 

MAIN CHARACTER

Dominant

???

 

Зинаида

Mayumi Asano

 

Nineball Seraf

???

 

Chief

Keiji Fujiwara

 

Jack O

Kenjiro Tsuda

 

CHARACTER

 

Fubuki

Sumire Uesaka

 

Soryu

Sumire Uesaka

 

Hiryu

Sumire Uesaka

 

Shirayuki

Sumire Uesaka

 

Hatsuyuki

Sumire Uesaka

 

Miyuki

Sumire Uesaka

 

Murakumo

Sumire Uesaka

 

Kongo

Nao Toyama

 

Hiei

Nao Toyama

 

Haruna

Nao Toyama

 

Kirishima

Nao Toyama

 

Jervis

Nao Toyama

 

Nagato

Ayane Sakura

 

Mutsu

Ayane Sakura

 

Kuma

Ayane Sakura

 

Tama

Ayane Sakura

 

Kiso

Ayane Sakura

 

Sendai

Ayane Sakura

 

Jintsu

Ayane Sakura

 

Naka

Ayane Sakura

 

Zuikaku

Iori Nomizu

 

Shokaku

Iori Nomizu

 

Kinu

Iori Nomizu

 

Abukuma

Iori Nomizu

 

Nelson

Iori Nomizu

 

Fuso

Saki Fujita

 

Yamashiro

Saki Fujita

 

Akagi

Saki Fujita

 

Yukikaze

Saki Fujita

 

Kaga

Yuka Iguchi

 

Tenryu

Yuka Iguchi

 

Tatsuta

Yuka Iguchi

 

Nagara

Yuka Iguchi

 

Isuzu

Yuka Iguchi

 

Natori

Yuka Iguchi

 

Furutaka

Yuka Otsubo

 

Yamato

Ayana Taketatsu

 

Zuiho

Mana Komatsu

 

Taiho

Mamiko Noto

 

Maruyu

Mamiko Noto

 

Akitsumaru

Mamiko Noto

 

Harukaze

Mamiko Noto

 

Yubari

Sarah Emi Bridcutt

 

Ryujo

Rina Hidaka

 

Mutsuki

Rina Hidaka

 

Kisaragi

Rina Hidaka

 

Satsuki

Rina Hidaka

 

Fumitsuki

Rina Hidaka

 

Nagatsuki

Rina Hidaka

 

Mikazuki

Rina Hidaka

 

Aoba

Aya Susaki

 

Mogami

Aya Susaki

 

Akatsuki

Aya Susaki

 

Верный

Aya Susaki

 

Ikadzuchi

Aya Susaki

 

Inadzuma

Aya Susaki

 

Bismarck

Aya Endo

 

Z1(レーベレヒト・マース)

Aya Endo

 

Z3(マックス・シェルツ)

Aya Endo

 

Musashi

Misato

 

Yudachi

Yumi Tanibe

 

Shigure

Yumi Tanibe

 

Commandante Teste

Yumi Tanibe

 

Richelieu

Yumi Tanibe

 

Samidare

Risa Taneda

 

Myoko

Risa Taneda

 

Nachi

Risa Taneda

 

Haguro

Risa Taneda

 

Kamikaze

Ayako Kawasumi

 

Saratoga

Shizuka Ito

 

Asakaze

Shizuka Ito

 

Matsukaze

Shizuka Ito

 

Luigi Torelli

Hitomi Nabatame

 

Hatakaze

Hitomi Nabatame

 

Prinz Eugen

Ari Ozawa

 

Janus

Ari Ozawa

 

駆逐棲姫

Ari Ozawa

 

U-511

Ai Kayano

 

Graf Zeppelin

Saori Hayami

 

Italia

Misaki Kuno

 

Roma

Misaki Kuno

 

Aquila

Chinatsu Akasaki

 

Zara

Chinatsu Akasaki

 

Pola

Chinatsu Akasaki

 

L.d.S.D.d.Abruzzi(アブルッツィ)

Yurika Moriyama

 

Grecale

Yurika Moriyama

 

De Ruyter

Yurika Moriyama

 

G.Garibaldi(ガリバルディ)

Haruna Asami

 

Colorado

Haruna Asami

 

Maestrale

Akira Kitou

 

Libeccio

Akira Kitou

 

Iowa

Chinami Hashimoto

 

Gambier Bay

Syu Uchida

 

Warspite

Syu Uchida

 

Ark Royal

Syu Uchida

 

Intrepid

Hikari Kubota

 

Houston

Kaori Nadzuka

 

Atlanta

Kaori Nadzuka

 

Samuel B.Roberts

Nao Shiraki

 

Johnston

Nao Shiraki

 

Fletcher

Yuki Utami

 

Гангут

Asami Seto

 

Ташкент

Wakana Miyakawa

 

Gotland

Kanon Takao

 

Fairy

No Voice Actor

 

AMIDA

No Voice actor

 

Hustler one

???

 

???

???

 

???

???

 

 

ORIGINAL CHARACTER

 

St.Elmo

???

 

Stiguro

???

 

Marshal

???

 

Major General Sasaki

???

 

Colonel Seto

???

 

Lieutenant General Rikuta

???

 

Major General Morizaki

???

 

Major General Daigo

???

 

Major General Kashimoto

???

 

Major General Nishi

???

 

Major General Nagamitsu

???

 

God

???

 

Senior God

???

 

Child Taiho

???

 

Admiral

???

 

Demon Face Cheek Military Police

???

 

Military Police = San

???

 

Red Mask Military Police

???

 

Gas Mask Military Police

???

 

TITLE

 

ACの愉快な仲間たち(一部)と一緒に

艦これの世界に来てしまった…

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…続いてのニュースです。昨夜、〇〇県山中で基地と思われる建物が崩れました。重傷者は軍関係者2人であったことが発表されました。その2人が言うにはまだ怪我人がいるとのことで、尚捜索中です。次のニュースです。明日の…。』

 

プッ

 

「まさか君がこんなところから回収してくるなんてね。すごく助かったよ。」

 

「僕はほぼ居候だからね。」

 

「ふん。やっと役に立ったか。」

 

「まぁ、なんと言っても構わないよ?人間を回収してくれるならねぇ。」

 

「だが、あの者達はどうする。また同じようにするのか?」

 

「アハ。いい質問だ。あの人間たちはそこらの無象とは違う。僕に任せてよ。きっとアレにも耐えることが出来るはずだから。」

 

「何人も試したけど、失敗のままなんでしょう?」

 

「それはその者たちが弱すぎたせいだ。あれほど強ければ、失敗するとは思えないけど。」

 

「何だろうが別にどうでも良い。それより、計画は進んでいるのか?」

 

「勿論だよ。でも、まだ時間が必要かな。」

 

「楽しみだな〜。」

 

「私は目的が達成した途端貴様らを裏切ることを断言しよう。」

 

「まぁ、僕たちは自身の目的を達成するため、利用するために集まっているようなものだからね。」

 

「ふぁ〜…。眠いから寝てくるよ。おやすみ。」

 

「自由気ままだねぇ。」

 

「全く、強さ以外に取り柄のないやつだ。それに、名を聞いてもふざけた回答しかこん。」

 

「アハっアハハ。ま、僕も最初は困惑したよ。だって…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人類種の天敵とか言うんだもの。」




エンディングの色付きの名前は『ACfa』でも声を担当した人です。
「長門コーナー…て、なんで筆者がいるんだ?」
2章の終わりだから。瑞鶴もいるよ。
「後書きコーナーで会うのは初めてよね。」
「いや、一度筆者をフライパンで殴ったときに出てきたぞ…。」
あれは痛かった…。
「いいじゃない。不死身なんだし。」
不死だけど、痛いよ。実はとっても痛いんだからね。
「まぁ、ダメージが入るからな。」
そんなことより、筆者はまだここをやるから、他の投稿が遅れる可能性があるらしい。急かせばそちらを優先するらしいけどね。
「まぁ、なんだ。後書きコーナーがこんなにも賑わっているのは珍しいな。」
「で、今日は何するの?」
最後だからね…。第二章の。今回は〜…。頑張った君たちを労おうと思ってね。
「お、なんだ?花火と共に打ち上がってくれるのか?」
「不死の特性を生かして、普通は死ぬようなことをするとか?」
そうなんだよ。ファンに吸い込まれて…て!そんなことするかい!グロいわ!
「なら、なんだ?」
「何かしらね。」
長門には小説の特性を活かして、巨大アイスだ。瑞鶴には…。……。
「デカすぎる!」
「何よ。」
少し待ってくれ…。…あった。
「これは?」
モナカ。それを食べて疲れを癒すと良い。
「…ありがと…。」
長門は…全部食い切れよ。それ。
「いくら私でも不可能だ…。」
「流石に…ねぇ…。鎮守府ほどの大きさじゃね…。」
まぁ、そんなこんなの第2章だったねぇ。
「あっという間だったわね…。」
「そうだな…。」
まぁ、第3章はなるべくゆるくするから。鎮守府で過ごすことが多いよ。
「なるほどな。」
「そう。」
さてと、じゃ!いっちょ行きますか!
「筆者…!貴様、何をするつもりだ…!」
ちょっとお手伝いをね!
「ヒュージキャノンを構えて…まさか…!」
ズガァァァァァン!!
ドォォォォォ…!
「…幻想的な風景だな…。」
「青い光が…空一面に…。」
じゃ!また会おう!


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第三章
199話 メロンを甘々にしてどうするの


タイトルに悩んでいる…。
「丁度良いタイトルがないのかしら?」
いや、あるけど…。いつか使うかも知れないタイトルが…。
「へー。」
てか、投稿が遅れているのタイトルのせいだから。文章は完成してるから。
「タイトルって悩むのね。」
そうなんだよ…。…じゃ、ネタもないからあらすじたのむよ。
「唐突ね。この人よ。」
「Guten Morgen.私は、重巡プリンツ・オイゲン。よろしくね!」
プリンツさんですね。
「重巡洋艦の。」
「ここは一体…。」
筆者の部屋。
「小汚い物置小屋よ。」
ひっどい言い草…。
「…?」
「あぁ、ごめんなさいね。あらすじを言えば戻れるから。」
プリンツ白霊召喚。瑞鶴を攻撃しろ。
「爆撃されたい?」
すみませんでした。
「と、とにかく言えば良いのかな…?」
はい。
「頑張る!」

アラスジー
前回、明け方にビスマルクお姉様が鎮守府の庭に水を撒いてました。少し嬉しそうな笑顔でした…。


…………

第4佐世保鎮守府跡地

 

「うぇ〜…やっぱりか…。」

 

「頑張りましょう…。」

 

「まぁ、そうだろうな。」

 

「半日ですからね…。」

 

「ギャハハハハ!…はぁ…。」

 

「苦労するな…。」

 

ドミナントたちが帰って早々ため息をつく。そう、まだ建っていないのだ。

 

「お帰りなさ〜い。司令〜官♡」

 

「キシ。」

 

そこに、偶然通りがかった木材を運んでいた如月に笑顔で言われる。いつも彼女の頭にいるAMIDAは如月の近くで木材を持って飛んでいた。

 

「お、おう…。好感度上がってる…?まぁいいや。」

 

そして、ドミナントが如月に近づく。

 

「お前たちの仇はとった。敵の中将ぶん殴ってきた。」

 

「うふふ。」

 

ドミナントが笑顔で言い、如月も笑顔になった。すると…。

 

「あっ!提督さんが帰ってきたわ!」

 

遠くにいた瑞鶴が叫ぶ。

 

「司令官!お帰りなさい!」

 

「提督〜遅いデース。」

 

「司令!こっち手伝ってください!」

 

たくさんの子たちが迎えてくれた。

 

「ただいま。艦娘。」

 

「おかえり。提督。」

 

そして、ドミナントたちも手伝う。

 

「…ん?あきつ丸たち来なかったか?」

 

「あきつ…?見慣れない子は二人来たけどぉ。元帥殿に連れてかれちゃったわよぉ?」

 

「そうなのか?如月。元帥に電話でもしてみるか…。」

 

ドミナントが電話する。

 

『こちら元帥。』

 

「どうも。先程別れたドミナントです。あきつ丸たちの件なんですが…。」

 

『ああ…、言い忘れていた…。あきつ丸たちは一度大本営で海軍に所属する手続きがある。それが終わったら、彼女たちの自由だ。』

 

「なるほど…。彼女たちはどこに所属するのか決まっているんですか?」

 

『何を言っている…?君が面倒を見るのだろう?』

 

「そうなんですか。」

 

『?君から誘いがあったと聞いたが?』

 

「あっ、いえ。もしかしたら、他の鎮守府や大本営で暮らしたいとか要望があるかも知れませんし、勝手に誘ったので…。」

 

『なるほど。だが安心してくれ。彼女たちはそちらの鎮守府へ行くそうだ。それと、手続きが終わるまでしっかりと面倒を見る。2、3日かかるかも知れんが…。』

 

「全然大丈夫です。それでは…。」

 

ドミナントが通信を終える。

 

「どうしたのかしら?」

 

「うん。これから新しい子が二人来るんだよ。」

 

ドミナントが言う。如月は口元が緩んでいるドミナントを見て微笑んだ。

 

…………

 

「もう夕方か…。」

 

「そうですね。」

 

ドミナントがオレンジ色の空を見て呟き、吹雪が木材を持って言う。まだ建っていない。いくらセラフがイレギュラーでも、流石に1日で全ての箇所を完璧に治すことなど出来ない。

 

「今夜はホテルか旅館だな。」

 

ドミナントが呟いた。

 

「ホテル…旅館…。」

 

それを聞いていた吹雪が呟く。

 

「そうだな。久しぶりに外で何かするかー。」

 

「はい!司令官!」

 

「嬉しそうだな。…でも、こんな大所帯じゃ…あれ?吹雪?」

 

吹雪は嬉しそうに微笑んだ。そして、何処かへ行った。

 

…………

 

噂はすぐに広まり、鎮守府全員がドミナントの場所へ押しかけてきた。

 

「司令官!温泉ですか?」

 

「ホテル…。」

 

「美味しいご飯!」

 

「ま、待て待て!ここは一応極秘の鎮守府だぞ。こんな大人数で…しかも制服で行ったら間違いなく存在がバレる。変装して行かなくちゃいけないし、海軍によるホテルや旅館しかないぞ…。」

 

「「「えー。」」」

 

そんな中夕張が…。

 

「ですが提督。これ見てください。」

 

「夕張…おま…いつスマホなんて手に入れた?」

 

「そんなのは今はどうでもいいですから、内容を…。」

 

「どれどれ…。…え…。」

 

そこに書いてあったのはとんでもないことだらけだった。

 

『⚪︎月△日 五島付近で謎の大爆発…!海に火柱が…!?』

 

『海底火山の噴火…!?ありえない異常現象…!』

 

『核実験の最中か…!?国民が反発…!』

 

「…これ、セントエルモのアレだよな…?」

 

ドミナントがセントエルモを見る。セントエルモは目はともかく顔までそらしていた。

 

「それによるネットの反応がこれです。」

 

『五島に何かあるんじゃね?』

 

『最近五島に住んどるけど、女の子が増えた気がする。』

 

『そう思ってみれば、立ち入り禁止の山に建物が見えたっていう噂がある。』

 

『鎮守府じゃね?』

 

『極秘の建物とか?』

 

『たまに海を見たときに見える豆粒は艦娘でしたか。』

 

『鎮守府があるってこのサイトに載ってた。https://〇〇/△□…』

 

「うわー…完璧にバレてんじゃん…。」

 

ドミナントがゲンナリする。

 

「それよりも夕張、そのスマホどこで手に入れた?」

 

「セラフさんが買ってくれました!」

 

「セラフゥ…。」

 

「で、ですが、その…。兵器開発出来ない苦しさは知っておりますので、これくらいは…。」

 

「これ以上メロンを甘々にしてどうするの。」

 

「私、メロンじゃないんですけど…。」

 

セラフは甘い。つい買ってしまったのだろう。

 

「はぁ…。で、契約時に保護者は俺の名前を使ったんだろうな。」

 

「いえ、私名義です。お金は有り余るくらい持っているので。」

 

「そうか…。…なんだって!?俺じゃないのか!?」

 

「はい。」

 

「何故俺にしなかった!?契約時に間違えると恐ろしいことになるんだぞ?」

 

ドミナントが言う。

 

「す、すみません…。私が欲しいなんて言ったばっかりに…。」

 

ドミナントとセラフが自分のせいで言い合っていることに、夕張がションボリするが…。

 

「夕張さんは謝ることはありませんよ?」

 

セラフが笑顔で言う。

 

「でも…。」

 

「大丈夫です。ドミナントさんの計画はなんとなく想像ついてますから。」

 

「ギクッ…。」

 

「えっ?それって…。」

 

ドミナントがギクリとして、夕張が不思議がる。

 

「保護者がドミナントさんにすると、夕張さんは永遠に結ばれませんよ?いくらなんでも可哀想じゃないですか。」

 

「チッ、感づいたか…!」

 

「えぇっ!?」

 

夕張が驚いている。そう、保護者にしてしまったら夕張は養子でドミナントは養親扱い。艦娘に権利がなくても、ドミナントには権利があるため結婚は出来ない。

 

「私、この世界のことを地味に勉強しているんですよ?」

 

「て、提督…?」

 

夕張がドミナントを見る。

 

「騙して悪いが、俺の計画なんでな。…まぁ、バレたなら仕方ない…。」

 

「確信犯ですよね?」

 

そんなこんなを言いながらもドミナントは受け流す。

 

「…まぁ、とにかく。今夜は海軍の管轄する宿。それ以上でも以下でもない。」

 

「「「えー!」」」

 

「えーじゃない。一応極秘の場所なの。ダメなの。」

 

艦娘たちが文句ブーブー言いながらも納得する。

 

「早速宿の予約をしないと…。旅行の時は女学院の修学旅行っていう設定だから怪しまれなかったからな…。皆んなは帰ってくるまで作業をしていてくれ。」

 

ドミナントが近くの宿を探しに行く。

 

…………

鎮守府 外

 

「あー…。山を越えるのは疲れる…。」

 

ドミナント一人だ。鎮守府は山の中の沿岸沿いにあるため、山を越えなければ人里におりれないのだ。

 

「夕方だからどこもいい匂いがするなぁ。」

 

ドミナントが街を歩いていると、どこもかしくも夕食の支度ばかり。匂い立っている。

 

「お腹空きましたね〜。普通のカレーもたまには食べたいですし。」

 

「そうだなぁ…。晩ご飯はカレーにでも…て!吹雪!なんでいる!?」

 

「心配だったので。」

 

吹雪がちゃっかりついて来てしまっていた。だが、制服ではなく私服だ。艦娘だとは悟られないだろう。

 

「全く…。…アイスでも食べる?」

 

「はい!」

 

ドミナントがたまたま見つけたアイスクリーム屋でアイスクリームを二つ買う。

 

「はい。」

 

「ありがとうございます!司令官!」

 

「外で司令官はやめろ。」

 

そして、二人がベンチに座って食べる。空がオレンジで良い感じの風が吹く。

 

「ところで吹雪〜。」

 

「?」

 

「鎮守府に出かけること言った?」

 

「……。」

 

吹雪は何も言わなかった。

 

「…と、なると今頃鎮守府では…。」

 

ブー、ブー、ブー…

 

「?」

 

ドミナントの携帯が鳴り出す。

 

「こちらドミ…。」

 

『ドミナントか?吹雪が見当たらない。脱走したのかも知れん。そちらにいれば良いが…。』

 

「いる。ちゃっかり来てた。」

 

『そうか…。なら、大丈夫だな。あと、吹雪に伝えてくれないか?』

 

「何を?」

 

『こんなに心配させたから帰ったらお仕置きだと。』

 

「…帰ったらお仕置きだってさ。」

 

「!?」

 

ドミナントがジナイーダの言葉を伝え、吹雪がビクッとなった。思わずアイスクリームが落ちそうになったくらいだ。

 

「か、代わってください!あと、これを持っていただけませんか…?」

 

「お、おう。」

 

ドミナントが携帯を渡して、食べかけのアイスクリームを持ってあげる。

 

「か、代わりました…!…はい…。その…心配だったからです…。…はい…。…えっ…?い、いえ!そんな…奢ってもらったりなんか…。…はい。…はい。…はい。明日頑張りますのでなんとかお仕置きだけは…。…はい。…えっ?に、2時間!?…あ、いえ…。なんでもありません…はい…。それでは…。」

 

吹雪が携帯をドミナントに渡す。そして、アイスを吹雪に返す。

 

「…奢ってもらったことバレた?」

 

「いえ。…あっ、でも…。…多分…。」

 

「あーぁ、俺も甘すぎるって叱られちゃうな。安心しろ。俺が罪を軽くしてあげるから。」

 

ドミナントは甘々だ。

 

「ありがとうございます。」

 

吹雪がアイスを食べ終わる。

 

「じゃ、そろそろ行きますか…。」

 

「はい!」

 

ドミナントが立ち上がって背伸びをして、吹雪も立ち上がる。空に一番星が見えた。

 

…………

 

「この宿はどうだろうか?」

 

「ホテル…。多分、みんな旅館へ行きたがってますよ?」

 

「駄目か…。ホテルは社畜時代の時のお供だったからなぁ〜。」

 

「この旅館はどうでしょうか?」

 

「大きいな…。駄目だよ。あまり大きくても目立ってしょうがないし。それに、でかいところは他の客もいて、鎮守府の存在がバレる。」

 

「そうですか…。」

 

言い合いながら街並みを行く二人。日が暮れてしまってる。そのうちに…。

 

「あっ、あそこなんてどうでしょうか?」

 

「む?おお。」

 

見たのは確かに旅館だが、大きくもなければ小さくもないちょうど良い感じの場所だった。

 

「ここならオッケー。じゃ、早速入るか。」

 

「はい!」

 

ドミナントたちが入る。

 

「こんちはー。」

 

「いらっしゃい。」

 

女将が出迎えてくれた。

 

「ここに二百人ほど泊まりたいんですが…。」

 

「…はい?」

 

「二百人ほど…。」

 

「…鎮守府の方でしょうか…?」

 

「…とある女学院の修学旅行です。」

 

「そうですか。」

 

ドミナントが誤魔化した。

 

「そちらの方は…?」

 

「えっと…。生徒代表です。」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「良い返事をする子ですね。」

 

吹雪がお辞儀をして、微笑む女将。

 

「部屋は空いていますか…?」

 

「少なからず一般のお客様もいらっしゃいますが、断りを入れてきます。それと、二百のお部屋は無いので、相部屋になる人も…。」

 

「分かりました。一般のお客様との相部屋が無ければ十分です。」

 

「かしこまりました。」

 

そして、女将が奥へ行った。

 

「…やりましたね!司令官!」

 

「司令官やめろ。…まぁ、一般のお客が変な奴じゃなければ良いが…。」

 

「何故ですか?」

 

「いや、お前たちを襲ったりでもしたら…。」

 

「怖いこと言わないでください…。それに、助けを呼びますから…。」

 

「いや、違うんだ…。」

 

「えっ?」

 

「ジナイーダによって再起不能までやられたら、ここの宿に申し訳ない…。」

 

「あー…。なるほど。」

 

ドミナントたちは短い会話を終える。

 

「ところで司令官。」

 

「だから司令官やめろ。…校長にしろ。」

 

「校長官、お金あるんですか?」

 

「官つけるな。せめて先生だ。お金は俺の給料に振り込まれているのを使う。数千万はあるから。今まで滅多に使ってないし。」

 

「なるほど…。」

 

「それに、いざとなったらセラフたち、ジャック以外からお金を借りる。」

 

「ジャックさんがダメな理由は?」

 

「おそらく利子つけて返せって言うから。」

 

実際、その通りである。そして、女将が戻ってきた。

 

「すみません。お部屋のことなんですが…。」

 

「はい。」

 

「一つの部屋につき二人しか入れないことを言い忘れておりまして。」

 

「あ、なるほど…。部屋があれば良いですよ。」

 

「かしこまりました。…それで、生徒たちはいついらすんですか?」

 

「連絡すればすぐに来ます。」

 

「かしこまりました。では、お部屋のほうを案内します。」

 

そして、ドミナントたちは部屋を案内される。

 

…………

 

「わぁ〜!」

 

「なるほど。悪くない。」

 

部屋は中の上の部屋だ。

 

「お気に召しまして何よりです。」

 

「ところで、食事のほうは…。」

 

「流石に二百人分のお料理は…。」

 

「素泊まりですね。分かりました。」

 

「いいえ、現在厨房で間に合わせております。」

 

「すごいですね…。ところで、金額の方は…。」

 

「お一人約3万円前後です。」

 

「なるほど。安い…。現金のみですか?」

 

「はい。」

 

「なら、今日中に払って良いでしょうか?」

 

「大丈夫です。」

 

「わかりました。」

 

「それと、入湯時の説明ですが…。」

 

ドミナントたちが話しているのを他所に、吹雪は寝転がっていた。

 

…………

 

会話を終えた後女将が出ていき、ドミナントが窓辺の椅子にもたれる。

 

……ジナイーダたちが来たら部屋の番号を伝えなくてはな…。

 

ドミナントが思う。しかし、何かに引っかかっていた。

 

「…ふむ。」

 

ドミナントは考える。何に引っかかっているのかを。

 

……お金か?否。数千万はあったはずだ。しっかり確認もした。不審者か?否。ジナイーダに言っておけば大丈夫だ。料理のことか?否。大丈夫だと言っていた。なら、なんだ?

 

ドミナントが考えていると…。

 

「と、ところで司令官…。」

 

「なんだ?」

 

吹雪が何かを聞いてくる。

 

「司令官は…誰と…その…。…寝るんですか…?」

 

「……!」

 

ドミナントは思い出す。そう、一部屋二人なのだ。主任、ジャック、ドミナントでは数が合わない。主任とジャックはコンビでないと何をしでかすか分からないため、必然的にドミナントが余る。

 

……マジかよ…。俺最初の4人や金剛たち以外に嫌われているかも知れないしな…。嫌々俺と同じところになったら、ストレスがマッハになりかねない…。ここは無難に…。

 

「吹雪、共の部屋を頼めるか?」

 

もちろん、ドミナントは意気地が無いので襲ったりなどしない。純粋に楽しむためだ。

 

「……。」

 

吹雪は驚いて言葉も出ない。口をパクパクしているくらいだ。

 

…………

吹雪 脳内会議

 

「司令官と同じ部屋!?」

 

「これは滅多にないチャンス…。」

 

「やったー!」

 

喜ぶ者たちがいるが…。

 

「ちょっと待ってください。」

 

「「「?」」」

 

理系のような吹雪が言う。

 

「今回、この件は勝手に鎮守府からついてきてのこと。明らかに抜け駆けの規則に反します。」

 

「そ、そうですが…。」

 

「ここは無難にやんわりとお断りをする方が良いかもしれません。」

 

「そんな…。」

 

「確かに、こんな場合は激レアの超低確率。しかも司令官からの指名…。…とても残念ですが、断らなくてはいけません…。」

 

「「「シュン…。」」」

 

…………

現実

 

「あ、あの…司令官…。」

 

「あっ、そうそう。これは俺が無理言って、しっかり理由があって決めたことだから、他の子たちの心配はしなくて良いよ。それに、来るまでの時間とは言え、一人だと心配だから。」

 

ドミナントが吹雪の頭を撫でながら言う。

 

「ひゃい…。」

 

吹雪は何も考えられなくなり、返事しか出来なかった。

 

…………

数分後

 

「や!待っていたよ。」

 

ドミナントがジナイーダたちや艦娘を笑顔で迎える。

 

「「「……。」」」

 

「……。」

 

怪しい目で見てくる艦娘たちに、吹雪は目を合わせず貼り付けた笑顔しかできなかった。




長い…。
ダク 

登場人物紹介コーナー
女将…この道30年のプロなんだ。この店を守り続けている。見た目が古いため、新しいお客は稀だが、古参方は毎月来るほどの人気だ。インターネットに情報を掲載されることを拒むため、秘密の穴場スポットになっている。

「長門コーナーだ。」
「吹雪です!」
「吹雪か…。今私たちの間で結構なことになってるぞ…。」
「…まぁ、そうですよね…。」
「勝手に鎮守府を脱走した上に抜け駆け…。本来なら許されることではない。」
「すみません…。」
「だが、今回は提督の指名があったと聞く。そのことで渋々皆も了承した。」
「ありがとうございます!」
「全く…。提督の指名がなかったら大変なことになっていたぞ…。例えば…おやつが一個だけ足りなかったり…。」
「えぇ!?」
「部屋の番号を入れ替えられていたり…。」
「嘘!?」
「枕がいつもとは向きが逆になっていたり…。」
「そんな…。…司令官が指名してくれて良かったです…。」
「そうだな。次回予告を頼めるか?」
「はい!…次回!第200話『無理して男三人にしようかな…』です!何か嫌な予感が…。」
「明らかに提督だろう。」


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200話 無理して男三人にしようかな…

「随分と遅い投稿ねぇ…。」
イベントでね。まだ残ってるけど、一応ね…。
「轟沈者は?」
セロ。
「難易度は?」
プライドは抜きだ。
「新艦娘は?」
新艦娘ヲ入手シマシタ。
「資材は?」
排除。
「私の出番は?」
そんなもの、ただの妄言に過ぎ…ピギュ…。
「……。」
…わ、わかった。今度ね。今度…。
「全く。」
さてと…あらすじに入りますか。
「今回のゲストは…。」
「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2番艦、リットリオあらため、イタリアです。よろしくお願いしますね。」
イタリア出身なので、そのまんまですね…。
「はい。」
「ゆるそうな人ね。」
「ところで、ここは?」
「生ゴミ育成場よ。」
生ゴミは酷くない?
「あまり臭いはキツくなさそうですけど…。」
「心が腐敗してるのよ。」
ひっど。拗ねちゃうぞ。
「まぁ、そんなことよりあらすじよね。」
「アラスジー?」
あぁ…。頼むよ…。フンッ。
「あらら。拗ねちゃった。」
「この機械に向かって言えば良いの?」
「ええ。そうよ。…ほら、拗ねない。」

アラスジー
前回、新しい子たちが着任しました。強そうな子で、頼りになりそうです♪


…………

 

「ふぅ…。」

 

ドミナントは窓の外を見る。川が見えている。日が沈んで、青っぽい。旅館の代金を全て払ったあとだ。ジナイーダたちも別室にいる。

 

「司令官…。」

 

吹雪とドミナントは同室だ。

 

「どう…でしょうか…?」

 

「浴衣姿か。可愛いし似合っているぞ。」

 

「そう…ですか…?」

 

吹雪は少し嬉しそうになる。

 

「ところで司令官。」

 

「ん〜?」

 

「同室は本当に私で良かったんでしょうか…?」

 

「ん〜。」

 

「神様や教官さんたち、他の皆さんも…。」

 

「神様は俺が寝ている最中何してくるか分からない。ジナイーダは言っただけでぶっ飛ばしてくるだろうし、セラフは落ち着かない。ジャックたちは二人一緒にいないとダメだ。他の子たちは俺のことをどう思っているか分からない。最初の4人の他もいたけど、吹雪は初期艦だからな。」

 

「司令官…。…私が初期艦って覚えていてくれたんですね…。」

 

吹雪が手を軽く胸に、微笑む。

 

「あの時のことは忘れないよ。あんな大失敗…。」

 

「あの時、本当に心配しました。」

 

ドミナントが…まぁ、大雑把に言えば死んだフリをしたのだ。

 

「温泉だっけ?ここ。」

 

「はい。何やら、ここの効能は肩こりや血行をよくするらしいです。」

 

「一般的だな。…肩こりか〜。最近こっているのかどうかすらわかんなくなってさ。ほら、色々あったじゃん?」

 

「そうですね。…どれどれ…。」

 

吹雪がドミナントの肩を揉んでみる。

 

「かたい…です。」

 

「そうなのか〜。」

 

「て!ロボットになってるじゃないですか!」

 

「あはは。バレた。」

 

「もう〜。」

 

二人が笑う。そんな平和なムードが広がる。

 

「どれ、吹雪のも見てあげよう。」

 

「どうぞ。」

 

「……。」

 

「……。…揉まないんですか?」

 

「…いや、なんか言葉的に憲兵沙汰になりそうな気がして…。」

 

「…それは…胸じゃないですし。肩ですよ。」

 

「セクハラにならないだろうか…。」

 

「せくはら…?多分、大丈夫です。」

 

「そう?なら遠慮なく…。」

 

ドミナントが吹雪の肩を揉んでみる。

 

「ふふっ…。くすぐったいです。」

 

「こってるな〜。吹雪もだいぶ。…ここはどうかな?」

 

「あはは…!司令官!そこ脇です!ふふっ。」

 

「おや?脇だったか。すまんすまん。」

 

「絶対にわざとですよね…。」

 

ドミナントがふざけて、吹雪が怪しい目つきで見ていた。

 

「さてと。俺も浴衣姿になって、温泉に入るか。」

 

「そうですね。」

 

一通り遊んだあと、ドミナントが立ち上がる。

 

「…吹雪〜。」

 

「はい。司令官。」

 

「…向こう向いてくれない?」

 

「あっ、すみません…。」

 

ドミナントが着替えるところを凝視していた吹雪にドミナントが言う。

 

「…鏡で見ていること分かってるよ。」

 

「……。」

 

「そんなに俺の裸気になる?」

 

「だって…。…ロボットになれますから、どこか違うのかなと…。」

 

「おんなじ。全部見たけど、人間と全く同じ。」

 

「そうなんですか。」

 

「それでも、見ようとしてくるのは何故かな〜。」

 

「べ、別に…。」

 

吹雪はなるべく見ないようにするが、気になって仕方がない。

 

「もしかして…。…意識しちゃってるの?」

 

「……はぃ…。」

 

「それじゃ、この先生きのこれないぜ。夜寝るときなんてどうなるのよ。」

 

「何とか理性が勝ることを願ってます…。無理そうですけど…。」

 

「…無理して男三人にしようかな…。部屋…。」

 

「嘘です!嘘ですよ!」

 

吹雪はせっかく滅多にないチャンスをふいにしたくないので、慌てて否定する。

 

「まぁ、異性に気になる歳…。見た目の歳なのは分かるけどね。俺より良い男子とかに嫌われちゃうよ?」

 

「私には司令官しか興味がないので大丈夫です。」

 

「ストレートォ…。」

 

吹雪が真面目な顔をして言うものだから、ドミナントが苦笑いする。そこに…。

 

スー…

 

「吹雪ちゃん。行こう?」

 

「行くぜ!」

 

「行こ…。」

 

吹雪型の白雪、深雪、初雪が入ってくる。

 

「や。三人とも仲良いね〜。」

 

「司令官〜。吹雪ちゃんじゃなくて、私たちでも良かったんじゃな〜い?」

 

「だ、ダメです!」

 

「そうか〜。別にお前たちが良いなら、変えるけど…。」

 

「司令官!?」

 

「なら、今すぐ荷物をまとめるからね〜。」

 

「ちょ、深雪ちゃん!それはないよー!」

 

「分かった。…と、言うわけだ吹雪。」

 

「えーん!」

 

「…すまん。冗談が過ぎたな。よしよし。ごめんよ。」

 

「ひどいですよ…司令官も…。」

 

ドミナントがふざけすぎたことを謝り、吹雪の頭を撫でる。

 

「深雪も、少し反省しような。…深雪?」

 

ドミナントが見たが、時すでに遅し。

 

「白雪〜。深雪しらない?」

 

「さっき部屋に…。」

 

「嘘やん…。つまり、俺が移動じゃん。」

 

「「えぇ!?」」

 

吹雪と白雪が驚く。まぁ、このまま行くと、吹雪と深雪の部屋、ドミナントと白雪の部屋になるからだ。

 

「まさに漁夫の利だな。」

 

「司令と…。」

 

「ダメェ!」

 

吹雪がドミナントの腕を掴み、引っ張ったりする。

 

「吹雪〜。随分とアレだね…。積極的だね。俺と寝るのがそんなに楽しみなの?」

 

「あっ、いぇ…その…。…言わせないで…くだ…さぃ……。」

 

吹雪が上目遣いで少し頬を赤くしながらおずおずと言う。

 

「……。」

 

……クソかわゆす…。一言では言い表せないくらい…。

 

ドミナントがそんなことを思っていると…。

 

「何見つめあっちゃっているんですか。」

 

「「はっ!?」」

 

白雪が言い、二人が我に帰る。

 

「もぅ、夫婦になっちゃえば良いじゃないですか。」

 

「し、白雪ちゃん!何を…!」

 

「そうだぞ。第一、そんなことになったら提督服が俺の血で染まる。神様に八つ裂きにされるわ。」

 

「ライバルは多いんですよね…。」

 

吹雪が呟く。

 

「まぁ、ハーレムは望まないからね…。誰か一人にするか…。…誰とも結ばれないかだな。」

 

「なんではーれむ?が嫌なんですか?」

 

「何というか…。やっぱり、たくさんの可愛い子たちに囲まれて、侍らせて成り上がりたくないからじゃないかな。しかも、一人に多くの愛を捧げられないじゃん。それに、他の女の子まで手を出す男ってどうなのよ。ほぼ浮気じゃん。浮気は最低だよ。」

 

「まぁ、そうですけど…。…選ばれる人はどれほど幸運なんでしょうか…。」

 

「んー…。まぁ、俺はお前たちが俺より良い男と結ばれれば、俺は全然良いんだけどね。」

 

ドミナントは半分笑いながら言う。だが…。

 

「…そうなっちゃったら、司令官が一人ぼっちになっちゃうじゃないですか。」

 

吹雪がどこか寂しそうに言う。

 

「…ううん。君たちは戦いが終わった後、それぞれの道を歩んで行く。その道を俺と過ごしたことで踏み外さなければ、俺は満足だ。確かに、一人になるかも知れん。だが、君たちが幸せなら、一人でも俺は満足だよ。」

 

ドミナントは吹雪の頭を撫でながら笑顔で言う。

 

「一人は意外と寂しいんです。分かっていないので、私がずっと側についてあげます。」

 

だが、吹雪はその言葉を無視してまで言う。

 

「…吹雪は優しいな。そういう子は好きだぞ。」

 

「両想いです…!」

 

ドミナントが撫でて、吹雪は嬉しそうにする。

 

「さてと。じゃ、そろそろ温泉行ってこい。白雪たちが待ってるぞ?それに、そこで寝そべっている初雪も…。」

 

「ずっと待ってますよ?」

 

「……。」

 

「ご、ごめんなさい…!白雪ちゃん!初雪ちゃん!」

 

吹雪が素早く準備をする。

 

「深雪のことは俺が言っておくから、心配するな。」

 

「ありがとうございます!」

 

「失礼します。」

 

ドミナントが言い、三人は行った。廊下で話し、笑っていたりした。

 

……何というか…。平和だな。

 

ドミナントは束の間の平和を満喫していた。




イベントが終わらない…。
ダク 修理中

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナイ…

「長門コーナーだ。」
「今回は私ですね。」
「白雪は初めてだな。」
「はい。」
「なるほど。」
「緒戦の数々の作戦に参加しました。」
「太平洋戦争緒戦か。」
「その後、増援の部隊を輸送する第八十一号作戦に護衛隊旗艦として活躍致しました。」
「…最後の出撃だったな…。それが…。」
「…そうですね。ダンピール海峡で連合軍の爆撃によって沈められました。」
「その時は多くの艦も沈んだな…。」
「はい…。」
「…まぁ、そんな時もある。提督も言っていただろう。たまたま運が悪い時もある…と。」
「旗艦としての役目を果たすことが…。」
「戦いで死ぬことが出来なかった私に言わないでくれ…。」
「…すみません。」
「別に良い。…よし!暗い話はやめだ。戦闘の時に、弾幕について色々言っているが…。」
「弾幕、薄くなかったですか?」
「金欠になりそうなセリフだな…。そのまま資材を溶かさないでくれ?提督が頭を抱えて膝立ちをしているところが目に浮かぶから…。」
「相当な想像ですね…。」
「第一、提督や教官の資材の消費率が90%の時点で分かるだろう。どれだけ遠征行っても僅かしか増えなかったり、大赤字だったりするんだ。まぁ、ここはブラックじゃないから週2日は必ず休めるし、トータル7時間で仕事が終わりだからな。」
「そのせいで資材が貯まりませんけど…。」
「教官が演習をするのが悪いんだ。これ以上レベルも上がらないのに強要してくるからな。」
「ですけど、戦術は学べますよね。結構役に立ちますし。」
「そうだな。赤城は妖精さんを脱出させてから攻撃のための艦載機を盾にしたり、艤装を使っての弾の弾き方とかな。ギリギリの角度を合わせて、計算する時間も含めさせる…実戦型の勉強だからな。」
「ペイント弾でも、当たると痛いんですよ…。」
「わざと苦痛を味あわせようとしているのだろう。演習じゃなければ死ぬからな。」
「演習の方が何倍も強いですよ…。」
「さて、次回予告をしてくれ。」
「かしこまりました。次回、第201話『呑気で平和だねぇ』です。私の出番もあるらしいです。…見逃せませんね。」


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201話 呑気で平和だねぇ

201話か…。
「随分と遅い投稿ね。」
筆者はマジで多忙…。寝たい…。
「疲れているのね…。」
コロナ恨むぞ…。
「最近また増えてるわね。あんたの言った通りじゃない。」
やはりな。そんな気がしていた。
「予知能力でもあるのかしら…?」
ぼ、僕の予知はぜぜぜ絶対、ひゃ、100%です。はい。
「どこかで聞いたセリフね。」
俺は…提督をやめるぞッ!ずいか…ピギュ…。
「あんた…今なんて言った…?」
い、いえ、なんでもありません…はい…。
「そう…。ならいいわ。今回のゲストは?」
こ、この人です…はい…。
「誰?この人。気安く召喚しないで。」
第一声が辛辣…。ローマさんですね。
「まぁ、いきなり召喚される方も辛いわよね。温泉に入ろうと準備をしている最中にここに来ることになるとは思いもしないし。」
すまん…。瑞鶴…。
「本当にそう思っているなら、伸び伸び過ごさせてよ。」
そうだな…。わかった。瑞鶴には休暇を与えよう。
「…えっ?」
当分ここに来なくて良い。そのかわり、誰か代わりにやってもらうけど…。
「…え?」
誰にしようか…。
「しょうがないわね。他の子が被害に遭わないように私がやるしかないじゃない。」
いや?別に…。
「さぁ、さっさと始まるわよ。」
筆者は…。
「ローマさん、ちゃっちゃとあらすじ始めちゃって。」
いや、純粋に休んで欲しいだけなんだけど…。
「……。…そう…。なら、少し休ませてもらうわ。」
そゆこと。
「あんた、他の子に迷惑かけないでね?」
本気で心配するのやめてくれない…?不安になる。
「本当に大丈夫?」
めちゃくちゃ不安で大丈夫じゃない…。まぁ、やるさ。
「そう…。なら、任せるけど…。」
信じてくれ。前みたいなことにはならない。…て、ローマさん?…あっ、いた。ドアから出れませんよ?
「あら。夫婦漫才は終わったかしら。」
いや〜。
「誰が夫婦よ!あんたはテレるな!」
やはり、瑞鶴は素晴らしい…。
「後で爆撃するわよ?…ローマさん、あらすじお願いします。」
お願いします。
「妙にかしこまって…。はぁ…わかったわ。アラスジンをやるわ。」
誰!?アラス人って…。

アラスジン
強そうな空母と戦艦が着任いたしました。サウスダコタ?とホーネットと言うらしいです。未確認の艦娘のため、大本営にも資料がなく、明日に調べるそうです。


…………

 

「……。」

 

ドミナントが平和を満喫していると…。

 

スーー…

 

「や。」

 

「おう。深雪…じゃないのか。」

 

「うん。」

 

出てきたのは浴衣姿の神様だ。

 

「どう?どんな感じ?」

 

「どう…か。いいんじゃないか?てか、前も浴衣着てなかったか?イベント時に。」

 

「ううん。あれは着物。普段、先輩が着ているもの。」

 

「先輩神様…か。そう思って見れば、最近見てないなぁ。」

 

「天界では元気そうだよ?」

 

「そうか。」

 

神様が窓辺の椅子に座っているドミナントの隣に、椅子を持ってきて座る。

 

「…外に何か見えるの?」

 

「ああ。川だ。川。」

 

「川…。…あっ、カモがいる。」

 

「泳いでいるんだよ。カモが魚をとる瞬間とかを見てるの。」

 

そして、二人はのほほんと川を泳いでいるカモを見る。

 

「…呑気で平和だね。」

 

「…そうだな。」

 

「…でも、明日も鎮守府を立て直さなきゃいけないけどね…。」

 

「…今思い出させるなよ…。」

 

神様が脱力気味に言い、ドミナントがゲンナリする。

 

「あっ、飛んでった。」

 

「どこへ行くんだろう…。」

 

「鳥の巣に戻るんじゃないか?」

 

「…カモに巣ってあるのかな…?」

 

「うーん…。…岸辺にあるらしいよ。ネットによると。」

 

「ここウィーフィできるんだ。」

 

「ウィーフィじゃなくてWi-Fiね。」

 

ドミナントと神様はそんなことを話す。

 

「…お風呂行かないの?」

 

「深雪がくるらしいからね。待ってるの。」

 

「ひどーい。二人だけで行こうとしたんだ。」

 

「いやいや…。成り行きで深雪が来るみたいだから、俺行けないじゃん?」

 

「どんな成り行きなのかな…。」

 

「悪ふざけをしすぎた結果。」

 

神様が疑問に思い、ドミナントがすぐさま答える。

 

「…ん〜。…最近結構あったから疲れた…。」

 

「座布団を床に敷けよ?ふかふかになるから。」

 

「うん。」

 

神様が座布団を敷いて、その上で寝転がる。

 

「疲れが取れそう…。」

 

「温泉に入ればもっと疲れが取れるよ。」

 

「良いね…。久しぶりの温泉…。」

 

神様が目を閉じて言った。

 

「…そう思って見れば、神様は誰と一緒の部屋なんだ?」

 

「ん〜?私ー…?」

 

「ああ。」

 

「私は武蔵と…。」

 

「マジか。全然想像出来ない…。」

 

「だよね…。でも、話してみると結構良い子だよ…?元敵だけど…。」

 

「あれは強敵だったね…。馬鹿でかい大砲…おそらく160cm砲を身体の周りにひっつかせまくっていてね…。攻撃しようにも砲身だから硬いし。何より砲の数が多すぎて連射されて隙もなかったしね。」

 

「そうだったんだ〜…。」

 

「ところで、パラオ泊地の時、俺たちが出撃したときお前どこにいたんだ?」

 

「屋じょ〜…。」

 

「何してたんだ?」

 

「祈ってた…。」

 

「祈り…?」

 

「うん…。だから、みんな運が凄く上がってたでしょ…?」

 

「…!?じゃぁ、ジャーヴィスが何か感じることが出来たのも、イギリス艦が生きてたのも、ビスマルクさんがとっつきを避けることが出来たのも…。」

 

「多分、運を上げたおかげ…。」

 

「すごいな。」

 

ドミナントは純粋に神様をすごいと思った。

 

「…神様。」

 

「何…?」

 

「…眠い…?」

 

「…少しだけ…。」

 

「そうか…。なら寝ろ。深雪が来たら起こすから。」

 

「ん…。」

 

そして、1分も経たずに神様は寝てしまった。

 

……疲れが溜まっていたんだろうな…。また俺は見抜くことが出来なかった…。

 

ドミナントは提督服の上着をかけてあげた。

 

……さてと…。仕事でもするか。

 

ドミナントは、仕事には律儀だね。

 

…………

 

「ん…ゅぅ…ドミ…ナント…。」

 

「?」

 

しばらくして、神様が寝言を発する。

 

「えへへ…。えらい…?ふふ…。」

 

「……。」

 

……どんな夢見てるんだろう…?

 

ドミナントが考える。

 

……そう思ってみれば、褒めたこと全然ないな…。謝ったり、悪ふざけをするくらいだし…。

 

神様の近くで思う。

 

「好き…。ドミ…。」

 

「…寝言でもいうものなのか…。」

 

幸せそうに寝ている神様。

 

「…ふぁ〜…。俺も寝るか…。」

 

そして、ドミナントは無意識に神様の隣で横になる。

 

「……。」

 

そして、寝てしまった。彼も疲れは溜まっている。徹夜が日常茶飯事だったが、この世界に来て、いろいろ変わったのだ。

 

…………

 

「…ん?今何時だ…?」

 

「今ヒトキュウサンマル。」

 

「おぉ…。深雪か。」

 

ドミナントが起床したときには深雪がいた。

 

「…ところで…。」

 

「?」

 

「寝ている人の腹でトランプタワーするのやめてくれない?てか、すごいな。怒れないよ…。」

 

結構積み上がっていた。

 

「司令官が女の子と寝ているからな。」

 

「いやいや…。そんな馬鹿な…。距離が2mほど離れた地点だぞ。」

 

「…へぇ…。」

 

深雪が何か見てくる。

 

「?」

 

ドミナントが隣を見ると…。

 

「んゆ…。」

 

「…近くね?」

 

神様がドミナントの腕を抱き枕がわりにしていた。ドミナントの腹にトランプタワー、隣に神様、疑いの目をする深雪と、カオス空間が広がっている。

 

「…深雪、どうすれば良い?教えてくれ深雪。」

 

「聞かれても…。」

 

「てか、いつ頃来たの?」

 

「30分ほど前。」

 

「マジかよ。起こしてよ。てか、崩すけど良い?」

 

「うん。」

 

ドミナントが起き上がり、神様を起こした。

 

…………

 

「深雪〜、吹雪からの伝言があるよ〜。」

 

「なんだろ?」

 

「部屋は絶対に交換しないって。」

 

「知ってるよ。」

 

「なら、なぜ戻った…。」

 

「トランプを取りに。」

 

「なるほど。ところで、風呂の支度できた?」

 

「もちろんだぜ!」

 

「よっしゃ。」

 

ドミナントと深雪が話す。神様は目をこすり続けていた。まだ眠いのだ。

 

「司令官、行く前に一戦しようぜ?」

 

「だが、吹雪たち待ってるぞ?」

 

「一戦だけならへーきだって。」

 

「…何をするんだ?」

 

「この人数だからなぁ…。51やろうぜ。」

 

「なんだ?51とは。」

 

「今吹雪型の間で流行っていてさ〜。ルールは同じマークのカードを集めて、1番早くカードの数字の合計を51点にした人が勝ちになるってこと。違うマークが1枚でもあれば、得点が0点になるんだよ。」

 

「なるほど…複雑そうだな…。て、神様?起きてる?」

 

「ゅ…?起きてる…起きてるよ…。」

 

「起きてないだろ…。」

 

まだ眠い神様。

 

……このまま温泉に入る場合は危険そうだな…。

 

ドミナントが思い…。

 

「神様、口開けて?」

 

「何かくれるの…?」

 

「グミ。」

 

「あー…。」

 

神様がすんなりと口を開けてくれた。

 

「はい。」

 

パクリ

 

「……。……!?」

 

神様が異変に気付いた。

 

「すっぱい!!!なにこれ!?」

 

「AHU味覚糖のシゲキッ○ス。すっぱさ5段階の5。」

 

「すっぱい!!!」

 

神様は完全に眠気が吹っ飛んだ。

 

「すっぱすぎるよ!!」

 

「だが、ホワイトソーダ味だ。美味しいだろう?」

 

「くぅ…。…味がわかんないよぉ…。」

 

「…はい。グレープのグミ。」

 

「……。」

 

「いや、すっぱくないから。」

 

神様はもぐもぐとグミを食べる。

 

「深雪も食べる?シゲキッ○ス。」

 

「……。いや、深雪様はいいや…。」

 

「なんだよぉ。美味しいのに…。…すっぺ!!!なんだこりゃ!?」

 

ドミナントは自らが食べておいて驚く。

 

「すっぱい…!」

 

「グミ。」

 

「ありがとう…。」

 

神様にグミを渡される。

 

「…少し良くなった…かな?」

 

「ん。」

 

ドミナントはグミを食べた。

 

「で、何でこれを食べることになったの?」

 

「お前が起きないからだ。」

 

ドミナントが返した。

 

「それより、トランプ…。」

 

「そうだな。折角持ってきたんだ。やるか。一戦だけ。」

 

「よっしゃぁ!」

 

「何するの?」

 

「51らしい。」

 

そして、ドミナントが配ってゆく。

 

…………

 

「何故だ…!?」

 

「どうして…!?」

 

「よっしゃぁ!深雪様の勝ちだ!」

 

深雪が勝ったようだ。

 

「あそこでコールをするとは…破天荒なのに勝ったとは…。」

 

「あそこで勝負に出るのは新鮮すぎるよ…。」

 

「フッフッフ…。」

 

深雪は破天荒で、他のグループとは少し違うみたいだ。神様を差し置いて勝ったのだ。相当なものだ。

 

「もう一戦だ…。この際プライドは抜きだ…。」

 

「もう一回…!」

 

「いいぜ〜。」

 

…………

 

「当たってくださぁい!!」

 

「くらってください。」

 

「……。」

 

ドガァァァァァァン!!

 

「グボハァァァァ!!」

 

吹雪と白雪と初雪に殴られ、ドミナントが吹っ飛んだ。結局、深雪の連勝である。何回も遊んでいるうちに吹雪たちが帰ってきたのだ。

 

「ずっと待ってたのに…!」

 

「司令、約束を破るのはどうかと思います。」

 

「……。」

 

三人に責められるドミナント。

 

「すまん…。熱い勝負につい我を忘れちまって…。」

 

ドミナントが謝る。だが、吹雪たちは約束で怒っているわけじゃない。…いや、破られて怒ってもいるが…。

 

……どうして深雪ちゃんだけと…!?私もやりたかったのに!

 

……三人だけで…。そんな面白そうなことを…。

 

……ゲーム…。…ずるい…。

 

結局、初雪を除いた二人は羨ましいのが8割ほどだ。

 

「あの〜…。」

 

「深雪ちゃんは遊んで入ってなかったんだから、入ってきて!今すぐ!!」

 

「は、はい…。」

 

「神様も!」

 

「う、うん。わかった…。」

 

そして、二人の女性は退室した。

 

「司令はもう少し約束を重要視するべきだと思います。」

 

「司令官、ほかの人の気持ちも考えてください。」

 

「……。」

 

「初雪がゴミを見るような目で見てくる…。」

 

そこに…。

 

コンコン…

 

『ドミナント、行くぞ。』

 

『ギャハハハハハ!!』

 

廊下から声が聞こえる。

 

「じゃ!呼ばれたから…。」

 

「「「あっ!!」」

 

ドミナントはすぐさま行った。

 

「…全く、司令は困った人です。」

 

「…どうせならトランプやりたかったです…。」

 

「……。」

 

結局、三人はドミナントと遊びたかったのだ。




ゆるすぎ?

登場人物紹介コーナー
AHU味覚糖のシゲ○ックス…どこかで聞いたことがある会社だが、気のせい。ものすごくすっぱい。

「長門コーナーだ。」
「今回のゲストは私だね。」
「神様か。」
「ドミナントと過ごせる至福のひととき…。…えーっと…。長もん?は何してたの?」
「私か?私は温泉に浸かっていた。入渠とは違うが、なかなか気持ちが良い。ちなみに、私は木曽と同じ部屋だ。」
「そうなんだ〜。楽しい?」
「…まぁ…な。」
「そうなんだー。」
「ところで、祈ると運が上がるのか?」
「私は戦いに参加できないから。神様がこの世界の人間に、自己防衛以外で干渉すると報いを受けるの。先輩神様も報いを受けて瀕死の重傷を負ったし…。」
「何?先輩…?が?どういうことだ?」
「まぁ、いつか話すよ。…で、私は祈るしか出来ない。祈りは直接的な力じゃないから、許されるの。直接的な…。…つまり、魔法みたいなので強化したら報いを受けるけど…。つまり、祈りと魔法は違う。魔法は消耗するけど、祈りは消耗されない。それに運を上げるだけで、本人たちが必ず勝てるわけじゃないから。」
「基準が難しいな。」
「神様にも意外と制限があるんだよ…。」
「そうなのか…。で、次回予告だが…。」
「分かった。次回、第202話『伝説のグッズ』だね。なんだろう?伝説のグッズって…。」


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202話 伝説のグッズ

ゆるゆるで行きたいなー。
「もう十分ゆるいわよ。」
バトルはなるべく出したくない。シリアスも嫌だな。
「私も嫌よ。」
だからこそ、こういう日常的な話を書くの。
「旅館は日常なのか、非日常なのか曖昧よね。」
たまには温泉行きたいなー。でも、仕事で無理だなぁ…。
「疲れをとりたいわよね。」
そうだねぇ。…というより瑞鶴、休みを与えたはずなんだけど…。
「今回は私の代わりの子を連れてきたのよ。」
そうなの?
「次からはこの子がやるわ。筆者さんの所属する一人。」
「やぁ、提督。」
時雨!?それに、ここで提督呼ばわりはやめなさい。確かに、君は筆者の第一艦隊の一人だけど…。
「私が休みの時はこの子が基本的にやるわ。」
「よろしく。筆者さん。」
よ、よろしく。…元が筆者の艦隊だからなぁ…。
「もしかして、迷惑…かな…?」
毎回思うけど、全く迷惑じゃない。自信を持ちなさい。
「そう…かな?」
そうだよ。
「ふぅん。…わかった。持ってみる。」
そのいきだ!がんばれ!
「…ツッコミ役を時雨に任せて本当に大丈夫かしら…。」
「いつもみたいにやれば良いのかな?」
「基本的には筆者さんが暴走しかけたら砲撃して。」
えっ?
「わかった。」
ちょ、何言ってるか…。
ドォォォォォ!
グファァァァ!
「ちょ、まだ暴走してないわよ!?」
「念のため…。」
「念のためって…。確かに、不死身だけど…。それに、さっき元気付けられたのに砲撃することがすごいわよ…。」
シュゥゥゥ…
いきなりはダメだって…。それに、あれは暴走じゃないよ…。こんなので砲撃されてたら身がもたない…。
「行き過ぎだと思ったら、砲撃して?ね?」
「わかった。うん。今度は気をつけるよ。」
「そう…。なら良いけど。」
頼むよ…。
「…ガラじゃないけど、心配だわ…。」
じゃぁ、記念すべき第一回のゲストを呼んでくれ。
「う、うん…。この人です。」
「Buon Giornov(こんにちは)!地中海生まれの航空母艦Aquilaです。」
「こんにちは…。」
アクィラさんですね。
「ところで、ここは?」
「筆者さんの部屋かな…?うん。」
……瑞鶴、何点?
「10点ね。」
「えぇ!?」
瑞鶴、見せてやってくれ。
「わかったわ。…アクィラさん。」
「はい。」
「ここは粗大ゴミ置き場よ。」
「「えぇ!?」」
ひっど。…うん。これだな。
「こんな暴言を毎回言われていたんだ…。」
そうだよ?
「…今度から、僕が守ってあげるね?」
…はい?えっと…。主旨わかってる…?
「僕はそんな暴言を吐かないから、安心して。」
いや、あの…。
「時雨…?私のことを睨んでいるようだけど…。」
「瑞鶴さん酷いね。」
「ガーン…。…なんでこうなるの…?」
瑞鶴…。…ファイト。
「私はそろそろ行くわ…。」
…フラフラして大丈夫じゃなさそうだけど…。…ドアにぶつからないでね…?ぶつかったら痛いから…。
「うん…。」
…ちゃんと開けて行ったか。まぁ、そろそろ前書きが長いね。時雨、アクィラさんに説明してあげて?
「わかった。…アクィラさん。ここは筆者さんの部屋だよ。」
「そうなんですか?」
あらすじを言ってもらえると助かります。
「お願いします。」
「わかったわ。」

アラスジー
本日は新艦娘が着任したわ。空母の仲間も増えて、とても嬉しいです。よしよし♪それと、新たに軽巡洋艦の子も着任しました。


…………

廊下

 

「いや〜、助かったよ。」

 

「?」

 

ドミナントが言い、ジャックが首を傾げる。

 

「白雪たちに怒られていてな。まぁ、俺に非があるけど…。」

 

「そうか。」

 

ドミナント、ジャック、主任と男同士で歩いている。向かう場所は男湯だ。

 

「おっ、マッサージチェアがあるじゃないか。」

 

「む。そうだな。…というより、夕張がいるぞ。」

 

「まぁ、倉庫にいたし、身体の節々が疲れてるんだよ。きっと。」

 

夕張が気持ちよさそうにマッサージチェアで休んでいる。隣にセントエルモもいた。主任は、立ち止まって眺めているドミナントたちに気づかずに行ってしまっている。マイペースだ。

 

「というより、主任は先に行ったな。おうぞ。」

 

「了解。」

 

そして、すぐに合流できた。

 

…………

温泉

 

「身体洗ったよな?」

 

「意外にも泡立ちが凄かったな…。」

 

「主任は男らしいね…。タオルであそこを隠さないのか…。」

 

「スースーするねぇ。ギャハハハハハ!」

 

ドミナントたちは風呂に向かっている。露天風呂らしい。

 

「うー…。」

 

「えー…。」

 

「おー…。」

 

それぞれ入りながらジジ臭い声を出す。満天の星空だ。…一応言うが、空が自律兵器で埋まっているわけではない。

 

「主任が覗きをしないなんて珍しいねぇ。」

 

「ま、そういう時もあるさ。」

 

「そうだな。」

 

三人はクタクタに疲れていたのだ。温泉が体に染みる。内側からポカポカして肩がスーッとするような感じだ。

 

「気持ちが良いな…。」

 

「今日はサウナはやめておくか…。」

 

「途中で意識失いたくないしねぇ〜…。」

 

三人、ほのぼのと入っていると…。

 

『うー…。』

 

『ふぅ…。』

 

『あったかい…。』

 

『深雪様の登場だぜ!』

 

『気持ちが良いかな…。』

 

『久々の温泉…いい…感じ…。』

 

『満天の星空!』

 

隣の女湯で聞いたことのある声が響く。

 

……あの声は…。もがみんと…阿武隈?と…山風と…神様と深雪と呻き声を上げているのは加古で、息を吐いていたのが古鷹か。

 

ドミナントがピタリと当てる。

 

「…覚えるようになってきたな。俺。」

 

ドミナントは自分の進歩を少し嬉しく思う。そこに…。

 

「ドミナント。」

 

「?」

 

ジャックが言い、ドミナントが振り向く。そこにいたのは温泉に浸かりながら石を枕に寝ている主任と、温泉を堪能しているジャックだ。

 

「ドミナント…貴様がいた世界はどんな感じなんだ?」

 

ジャックは気になるのだろう。

 

「んー…。急激で莫大な人口増加によって、人手が有り余って、お金が足りない世界。物価が人口に伴って高くなるくせに人手がありすぎて給料が低い、デフレの限界を超えて一周回って“ハイ”な状態。環境も汚染され続けて、もう無茶苦茶な世界。絶滅危惧種は200000種、絶滅した動物は数えられない。ちなみに、俺がいた時の世界人口は200億人超えてるからね…。家畜も足りないし、そこら辺にいる動物を何でも食べるような世界。闇市場には猫の肉まで出回ってるもの。他にも虫だったり…。違法を犯して捕まったら最後…、食料もないからほぼ100%死刑だし。それによって、務所のあるところは大半がなくなったし。それに、他国は痺れを切らして政府と国民の内乱が勃発したり、それに漬け込んで他国までも征服に動いたり…。ただでさえ、土地がない日本の政府はそのことが分かっていたみたいで、出来る限りのことは尽くしていたし。そのおかげで国民もデモなども起こさなかったけど…、死者は多かったよ。でも政府が何も隠さず、国民に全てを伝えたことによって、なんとか内乱は起こらなかった。天皇や大臣の暮らしも公開した。同じように配給で生活していたり、工場で働いてまでお金を稼いでいたし、それによって国民と距離が近くなったし。ただ、その分脱税をしたり無能な政治家は国民に袋叩きにされる事件も起こったよ。しかもその事件が多いときたもんだ。それをやめさせるようにしたけど、やめさせたら国民の怒りパラメーターが吹っ切れる気がして、逆に合法化したし。まぁ、合法化が正解だったけど…。子供は生きるのに必死で笑いもしなかったしね。子供なのに働いていたり…。男の子は工場や配達などで、極小数の貧困な女の子は…。…俺の口から言いたくない…。スラム街もあったし…。…まぁ、酷い世界。もう末期な世界。いっそのこと、全ての国が戦争して、人口が減って欲しいくらいの世界。」

 

「私がいた世界とは違うのだな。」

 

「仕事が今の25倍以上ある。それくらいしか働き口がない世界。」

 

「別の意味で過酷なのだな…。ところで、我々の世界を知っていると聞いたが?」

 

「ああ。でも、古いゲームだけどね。」

 

「我々がゲームになっているのか…。さぞ難しいだろうな。」

 

「まぁ、そうだね。」

 

「私を倒すことはさぞ難しいのだろう。」

 

「…まぁ…、…そうだね…。」

 

本人は知らぬが花だ。

 

…………

 

「何もなく上がったねぇ。」

 

「良い湯だった。」

 

「そうだねぇ。あっ、あそこに座ろーっと。アポイーッ!」

 

主任がマッサージチェアに座る。

 

「良いねぇ。この感じ…。」

 

堪能していた。

 

「…む。あそこに卓球台があるぞ。ジャック、一戦どう?」

 

「良いだろう。私が相手になる。」

 

そして、二人が向かうが…。

 

「あっ、司令官。」

 

「えーっと…三日月!」

 

「はい!」

 

ドミナントが当てて、三日月が嬉しそうにする。

 

「ところで三日月…。」

 

「はい。」

 

「俺の私服…着てるんだ。」

 

ブカブカのドミナントの私服を着ている三日月。

 

「少しブカブカですけど、司令官が優しく包み込んでいるようで…。寝巻きにしているんです。」

 

三日月は恥じらいながら言う。

 

「くんくん…。司令官の匂い…。」

 

三日月が恥じらいながらも嗅ぎ、呟く。

 

「やめろ…三日月…。萌える…萌えてしまう…。面倒なことに…なっ…た…。」

 

「これが萌えか。これが噂に聞く萌えか。」

 

ドミナントは胸を打たれ、ジャックはこれが『萌え』なのかと思う。そんなこんなをしていると…。

 

「あっ、ドミナントさん。」

 

「それに、ジャックに主任か。」

 

ジナイーダとセラフが来た。

 

「み、三日月さん…!それは…!」

 

「司令官の服。前貰いました!」

 

三日月は嬉しそうに、見せつけるようにくるりと回ってみたりする。

 

「非売品であり、伝説のグッズ…。」

 

「何がグッズだって?」

 

セラフたちが言うのを、ドミナントがツッコミを入れる。

 

「私も一着…。」

 

「いやいや…着るものなくなっちゃうから…。」

 

セラフが物欲しそうな目でドミナントを見るが、あげることは出来ない。なぜなら、もう服がなくなりかけているのだ。普段、寝るとき以外は外出しない限り提督服で過ごしている。つまり、外出用の服は少ないのだ。そのうちの上下一枚ずつ三日月にあげているため、ギリギリの状態だ。

 

「そうだ。ドミナントが着るものがなくなったら裸体だぞ。まぁ、そうなったら真っ先に憲兵に突き出すがな。」

 

「仲間にまで捕まえられる俺って一体…。」

 

ジナイーダが平然と言い、ドミナントが微妙な顔をする。

 

「…と、そろそろ夕食に間に合わないな。なんか、新型ウイルスがどうとかってことで各室内で食事をするらしいよ。」

 

「そうなんですか。」

 

ドミナントが言い、セラフが返す。

 

「新型ウイルスか…。病にかかるのだろうか…?この身体…。」

 

「まぁ、人になれるから病にはかかるよ。艦娘と同じだね。」

 

ドミナントが説明をする。

 

「元はACだが…。…変な感じだな…。」

 

「深く考えないようにしよう。」

 

「早く行くよ〜。」

 

ジャックが悩み、ドミナントが気楽に言い、主任が先に行く。そして、ドミナントとジャックは後を追って行った。

 

…………

ドミナント部屋

 

「ただいま。」

 

「スー…スー…。」

 

帰ってみると、吹雪が座布団の上で丸まって寝ていた。ドミナントとトランプをしたかったのか、既に配られていた。

 

「なんだ。したかったから怒っていたのか。」

 

ドミナントがカードを見る。そして…。

 

「吹雪、起きろ。」

 

優しく揺さぶる。

 

「ん…。…司令…官。おはよう…ございます。」

 

「おはようじゃない時間帯だが、おはよう。」

 

吹雪が眠そうに目を擦りながら言う。

 

「…ハッ!?トランプ!」

 

「すでに配られていたがな。」

 

「司令官!やりましょう!」

 

「いや、そろそろご飯だから机の上を片付けないと…。」

 

「シュン…。」

 

「食べ終わったら、ゆっくりやろうな?」

 

「!はいっ!」

 

……可愛いなぁ。

 

ドミナントが言い、シュンとしていたのが一変、嬉しそうに返事をする吹雪。そして机の上を片付けて、少ししたら…。

 

コンコン、スー…

 

「お食事をお待ちいたしました。」

 

女将さんが料理を持ってくる。和食のようだ。

 

「お品書きはここに置いておきますが、よろしいでしょうか?」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

「わ〜!すごく美味しそうですね!し…校長先生!」

 

吹雪が笑みを溢す。料理がキラキラ輝いている気がする。

 

「校長と生徒が共の部屋とは、少し不思議ですが…。」

 

「…!あっ、いえ、明日の予定の打ち合わせのために生徒代表と話し合っておりまして…。寝るときは別々の部屋ですよ?」

 

「そうですか。」

 

ドミナントが言い訳をして、女将さんは納得する。

 

「これは鮑のバター焼きでしょうか…?」

 

吹雪がアワビを見る。

 

「はい。主人の得意料理でございます。お造りは太刀魚(タチウオ)と鯵(アジ)の刺身でございます。」

 

女将さんが吹雪に言う。

 

「…?つまり、旦那さんが作っているんですか?料理を。」

 

「はい。とても上手なので、味は保証できます。」

 

女将さんが微笑みながら言う。そして、一通り置き終わり…。

 

「それでは、失礼します。」

 

スー…

 

出て行った。

 

「…さて、食べるか。吹雪。」

 

「はい。司令官。」

 

そして、二人は食した。とても美味しかったようだ。




ドミナントのいた世界が過酷すぎる…。神様が原因です。

登場人物紹介コーナー
鮑のバター焼き…吹雪が知っていた理由は前にジャックが作ったから。ここのバター焼きはバターを多めに使っていて、香ばしく良い匂いが漂っている。硬くもなければ柔らかすぎることもない、ちょうど良い塩梅で焼かれていてとても美味しい。主任は騒いでいる頃だろう。
鯵の刺身…この時期で、この地方の旬の食材。鮮度が凄い。なるべく釣ったばかりの鮮度で出したいらしく、夕食用で夕方に釣っている。新鮮でとても美味しい。
太刀魚の刺身…この時期で、この地方の旬の食材。とても新鮮な刺身。恐らく提供する寸前にさばいたと思われる。料理人としての腕やプライドが知れるほどである。とても美味しい。もちろん、アジの刺身もだが、骨は一切取り除いている。

「長門コーナーだ。」
「今回は俺か…。」
「提督!」
「今回一番活躍したのは俺か…。…いや、一応主人公だからそりゃ一番活躍するだろ!」
「まぁ、教官たちや艦娘たちの出番が均等だから、順位を付けずらかったんじゃないか?」
「そうなのか…。」
「まぁ、というより、何か話をしてくれ。そちらの世界のことを知りたい。」
「話した通りだよ。本当に過酷…。二度と戻りたくないくらい…。…というより、本当は俺その世界で死んでいるんじゃないか?って思う。働き過ぎて死んだから、神様が転生させたんじゃないかと思うんだよ…。」
「だが死んだわけではないのに、教官たちはロボットになれるじゃないか。」
「つまり、俺は転移…なのか?ACになれるから、元の体ではないから転移には当てはまらないよな…。」
「転移だろう。」
「そうか…。」
「まぁ、元の世界に帰ることはまず無いと思う。」
「どうしてそう思う?」
「神様が、提督がそれを望んでいないことを分かっている。嫌がることをするような奴ではない。」
「だと良いけどね…。…というより、あの世界は救えないのかね…。」
「?」
「いや、なに…。…駆逐艦と同じくらいの歳の子たちが色々ね…。救われないから…。」
「…そうだな。」
カッ!
「その世界はもう大丈夫じゃ。」
「「先輩神様!?」」
「このコーナーに登場したのは初めてじゃな。…というより、その世界は妾が管轄して大丈夫になっとる。」
「えっ?」
「後輩が放っておるから、妾が色々やったのじゃ。おかしなところを修正したおかげで、なんとか子供たちまで働いたりする必要はなくなったのじゃ。」
「マジですか…?」
「本当じゃ。…というより、今度後輩を叱っておかなければならないがの。修正したおかげで随分と仕事に追われたのじゃ…。」
「ありがとうございます…。その子供たちが気になって気になって…。本当にありがとうございます。」
「良かったな。提督。」
「お主は優しいのじゃな。普通は元の世界なんて気にせん奴が多いのに。まぁ、感謝されるのは嫌ではないから、やって良かったと思うのじゃ。」
「普段は感謝されないのか?」
「うむ。妾たち神が手を下したのに、神などを否定する者に運だの言われてのう。まぁ、人間は独特な生き物であり、神は修正するのが仕事で、感謝されないのが当たり前なのじゃが…。こうして面と向かって言われるのは嬉しいのじゃ。」
「そうなのか…。」
「まぁ、死神よりはマシじゃの。死神は辛い仕事じゃ…。」
「何故だ?」
「それは…。…あっ、そろそろ休憩が終わるのじゃ。またいつか話す!」
カッ!ヒューーー…
「飛んで行ってしまった…。」
「…そうだね。ところで、次回予告は…。俺?」
「提督でも構わんぞ。」
「じゃ、久々に長門。やってもらおうか。提督命令。」
「!?いいのか?」
「ああ。」
「そ、そうか…。…久しぶりだからな…。ピシッとやらなければ…。…ゴホン、次回、第203話『最初の頃の振り返り』…か。最初の頃か…。約一年ほど前か…?この小説が出来たのは…。


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203話 最初の頃の振り返り

203話。ネタが切れ始めてる…。
「大丈夫かい?」
その声は時雨…。
「そうだよ。どうしたの?」
ネタが切れ始めてさ…。
「早くないかい?」
早いよね…。でも、今回は本当にバトルシーンは控えるから、日常を過ごす感じ。
「そのネタもあるんじゃないの?」
あるよ?でも、そこまでの道のりが大変。
「そうなんだ。」
まぁ、こんなところで愚痴を吐いても仕方がないな…。そろそろゲストを呼んでくれるかい?時雨。
「うん。やってみるね。…どうぞ、入って。」
「Buongiorno(こんにちは)!ザラ級重巡一番艦ザラ、配置につきます!今日はよろしくね!」
おぉ、明るい…。よろしくお願いします。
「よろしくお願いします。」
「とても丁寧なお二人ね!…ところで、ここに来たけど、何をすれば良いのでしょうか…?」
「あらすじを言ってくれると嬉しい…な。」
そちらの鎮守府であったことで良いので。
「わかりました!粘り強く行きます!」
頼みます。
「お願いします。」

アラスジー
前回、新しい艦娘がいることは知っているわよね?その子たちのために皆んな訓練をさせてあげています。最初はキツいかも知れませんが、そのうち慣れてくる…はずです。


…………

 

「なにをしましょうか?」

 

吹雪がトランプを持って言う。ドミナントと吹雪は料理を食べ終わり、ひと段落ついたあとだ。

 

「んー…。」

 

「とは言っても、二人しかいませんけど…。」

 

吹雪が呟く。

 

「なら、ポーカーでもする?」

 

「司令官強いじゃないですか…。それに、賭け事に関するゲームは一切禁止されていますし。」

 

「誰だ。そんなことを言った奴は。」

 

「司令官ですよ?みんなでトランプをした時に…。」

 

吹雪は今も覚えているらしい。そこに…。

 

スーー…

 

「提督、久しぶりに遊びに来ました。」

 

「司令官、遊びにきました!」

 

「吹雪ちゃんだけなんて、妬いちゃうじゃな〜い。」

 

三人の艦娘がやってきた。

 

「おぉ、懐かしい組み合わせ。夕張に三日月に如月。」

 

「最初の四人…。揃いましたね。」

 

「四人の公王…。」

 

そう、第4佐世保鎮守府の初期メンバーだ。そこでトランプをやると懐かしい気持ちになる。ババ抜きをするみたいだ。

 

「あの頃はいろいろ大変だったよね〜。」

 

「そうですね〜。…あっ、ババが…。」

 

「夕張、声出てる…。」

 

ババは夕張のところにあるらしい。

 

「あの頃は俺も何もわかんなくてさ〜。試行錯誤してた時期だったね〜。」

 

「鎮守府がすごく汚れてましたよね。門にツタの葉が巻きついていて、チャイムのボタンが全くわかりませんでしたよ。」

 

「私は生まれてすぐに美味しいものを食べたわ〜。」

 

「如月が最初に食べた料理は確かセラフが作ったんだっけ?」

 

「とても美味しかったわ〜。」

 

如月が嬉しそうに微笑む。

 

「いやその前にさ、君たちが来る前鎮守府では色々あってねー。AMIDAの大群が…。て、如月の頭にいるAMIDAは!?」

 

「流石に旅館の人に迷惑だから、置いてきました。」

 

「もはやアクセサリーか。」

 

ペアのカードを捨てながらドミナントたちが話す。

 

「じゃぁ、まず私が夕張さんのカードを引きますから、司令官は私のカードを引いてください。」

 

「そして、三日月に引いてもらうのか。」

 

「そして、如月ちゃんに…。」

 

吹雪が仕切って、順番が決まった。

 

「あの時代は神様とデートもどきもしたしなぁ…。」

 

「今考えると、凄く羨ましいです。」

 

「私がまだ提督の魅力に気付かなかったときですね。」

 

「所構わずに口説いてきましたからね。色々落ち込んでいた時に慰めてくれましたし。あっ、ありました。」

 

「酔った?勢いで全員口説いていたわよね。」

 

三日月がペアカードになり、捨てる。

 

「それが終わった後の夕張のセントエルモ事件ね…。」

 

「あ、あの時はすみませんでした…!」

 

「いやいや、別に過ぎたことだし。それによって、夕張にフレンドが出来たし、艦娘セントエルモにも会えたからWIN-WINだよ。…あっ、揃った。」

 

ドミナントがカードを捨てる。

 

「…そう思ってみれば、夕張にあげたあの本は?」

 

「あの本…。襲撃の時に…。」

 

「マジか。燃えちゃった…?」

 

「あっ、いえ。陸軍の人に踏まれたり、汚されたり破かれたりして、ボロボロになってしまいましたけど何とかツギハギをして使ってます。」

 

「ボロボロなら新しい本買うけど…。」

 

「いえ、結構です。」

 

「それに、みっともないし…。」

 

「絶対に買い替えません。」

 

夕張が頑なに断る。ドミナントは痩せ我慢だと思い…。

 

「なら夕張、提督命令。新しいのに買い替えるから。」

 

「!?」

 

提督権限を持ち出す。ドミナントは喜んでくれるだろうと思っていたが、夕張がものすごく悲しそうな顔になり…。

 

「うっ…うぅ…。」

 

「!?な、泣いちゃった…?どうして…?」

 

泣いてしまったのだ。

 

「もうっ!全く分かってませんね!」

 

「最低です!」

 

「女の子を泣かすのはいけないことよ?」

 

三人からバッシングが相次ぐ。

 

「いや、俺は別に…。喜んでくれるかと思って…。」

 

「司令官、夕張さんは司令官に初めてプレゼントされた本ですから、とても大切な物なんです。命と同じくらいに大切なものなんです。」

 

「朴念仁ねぇ。」

 

「はぁ…。」

 

三人がやれやれとする。

 

「夕張、今の命令は撤回する。そのかわり、今度俺と一緒に直そうな?」

 

「!…はいっ!」

 

夕張は泣いていたが、その言葉を聞いて嬉しそうにした。そして、三人は顔を見合わせて微笑んだ。

 

「さぁ、司令官の番ですよ!」

 

「おぉ、すまんすまん。」

 

吹雪のカードを取る。

 

「そして、夕張の事件のあとは…。吹雪と主任のサシでの演習か。」

 

「あれは本当に辛かったです…。あっ、揃いました。」

 

「教官は本当に強かったけどぉ、少し抜いているのが分かったわぁ。」

 

「まだ力を温存している感じがしましたし。」

 

「あの時は少数で挑んでいましたね。」

 

次々とカードが減っていく。

 

「そのあと、途中で力尽きた吹雪を背負って鎮守府へ帰ったんだよね。」

 

「背中の揺れが心地良かったです。」

 

「いいなぁ。」

 

「羨ましい…。あっ、揃ったわ。」

 

「私は一度も背負われたことがないです。」

 

「嘘つけ。三日月は背負ったことがあるぞ。」

 

如月がカードを捨て、ドミナントは三日月に言う。

 

「そのあと、ジナイーダさんの…なんでしたっけ?カレー?でしたっけ?」

 

「アレか…。あの時は死ぬかと思った…。それに、守ったはずの仲間に怒られたし…。」

 

「当たり前です!一人で格好つけようとして…。私たちに恥をかかせましたからね。司令官は。」

 

「その気持ちは嬉しいんですけどね。…あっ、揃った。」

 

「本当、失礼しちゃうわぁ。」

 

夕張がカードを捨てる。

 

「それと、そのあと地域交流の書類も配られましたよね。…あっ、揃いました。」

 

「あれか〜。子供達に囲まれたこともあったなぁ。三日月と吹雪と如月は少しお姉さん面をしていて可愛かったなぁ。」

 

「んもぅ、からかわないでちょうだい。」

 

「そ、そうですよ…!可愛いだなんて…。」

 

「あれ?私は無しですか?」

 

「…夕張も可愛かったよ?」

 

「後付け感半端じゃないんだけど…。」

 

吹雪がカードを捨てる。

 

「そして、記念すべき第一回のトランプが始まったんだな…。」

 

「あの時、吹雪ちゃんの提案に提督が猛反対されたんですよね。…やった!一番です!」

 

「そこから賭け事が禁止になったのよね。…二番目ね。」

 

「あの気迫は凄かったですね。…三番目か〜。」

 

「あの時、結構怖かったんですから。…四番目に終わりました。」

 

「いや、すまんすまん…。賭け事はやっぱりダメだからさ。…あれ?」

 

ドミナントはカードを捨てたが最後、誰もジョーカーを受け取らない。

 

「司令官が最下位ですね。」

 

「私たちはもう終わってるわよ?」

 

「三番目に終わりました。」

 

「司令官、私のカードを受け取ったのが最後です。」

 

吹雪たちは最後の週で終わっていた。

 

「マジか。俺が最下位か。というより、結構最初の頃の振り返りをしたね。」

 

ドミナントがジョーカーを捨て、片付けながら言う。

 

「色々ありましたものねぇ…。」

 

「こうして、提督とこのメンバーで遊んだり、会えたのは久しぶりですね。」

 

「懐かしい…。」

 

「沢山の仲間が増えましたからね。」

 

「そうだねぇ〜。」

 

5人が話す。

 

「…そう思ってみれば、それぞれ誰と一緒の部屋なんだ?」

 

ドミナントが聞く。

 

「私はぁ、睦月ちゃんと同じ部屋よ?」

 

「深夜アニメもほどほどにな。お前たちはまだ成長期なんだから…。」

 

「成長するのかしら…?」

 

「私は、菊月ちゃんと同じ部屋です。」

 

「菊月…。誰か分からないな…。恐らく、深く関わっていないからか…。」

 

「私はセントエルモちゃんと同じ部屋。」

 

「セントエルモかぁ…。前みたいな暴走をさせないように気をつけてね。」

 

「させませんよ…。…まぁ、見てみたいですけど…。」

 

「マジでやめて。」

 

そんな感じで答えていく。そして、水入らずで五人だけで何回もトランプをして、ゆったりとした時間を過ごした。そのうちに、だんだん眠くなり、自然と解散していった。




振り返りですね。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…

「長門コーナーだ。」
「今回のゲストは私ですね!」
「駆逐艦吹雪か…。…前もやったような気がするが、気のせいか?」
「やりました。」
「やはりか…。さて、何か話題などはあるか?」
「話題…ですか…。あると言えば嘘になります。」
「つまり、無いんだな。」
「はいっ!」
「良い返事までして…。」
「いえ、本当に話題がないんです…。トランプで4番目に勝ったくらいで…。」
「…本当にないらしいな…。」
「すみません…。」
「何、謝る必要はない。突然呼ばれるんだ。できなくて当然のことだ。次回予告くらいは…できるな?」
「はい!頑張ります!…えーっと…。…次回!第204話!『昔あっての今がある』ですね!…昔…ですか…。」
「昔…か。」


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204話 昔あっての今がある

疲れた…。
「随分と遅い投稿だね。」
筆者は多忙な上に、休みがないからね…。疲れた…。
「頑張って。僕も応援するから。」
時雨は優しいなぁ。
「そろそろゲストをお呼びしたほうが良いかな…?」
頼むよ。時雨。
「うん。」
「Buon Giornov〜(こんにちは〜)。ザラ級重巡の三番艦~、ポーラです~。何にでも挑戦したいお年頃。頑張ります~。」
なるほど。なら、あらすじを頼む。
「わかりました〜。」

アラスジー
新しい艦の子もまだ弱いけど、今に鍛えて、強くなるから。後が楽しみね〜。


…………

 

「電気消すよ?」

 

「あっ、はい。」

 

ドミナントが言い、吹雪が返事をする。もう解散して、布団を敷いた後だ。

 

パチッ

 

ドミナントが電気を消し、真っ暗になる。

 

「…司令官…。」

 

「?」

 

すると、吹雪がドミナントに言う。

 

「…真っ暗…。」

 

「?…あっ、すまん。怖いな。」

 

カチッ

 

ドミナントが少しだけ明かりをつけてあげる。そして、二人ともそれぞれの布団に潜り込む

 

「もう暗くても平気な歳だと思ってな…。可愛いところもあるんだな。」

 

「…いえ、違うんです…。」

 

「?何が?」

 

「お化けが怖いとかではないんです…。」

 

「?なら、どうして?」

 

ドミナントが気楽に聞いたが、想像以上に重い内容だった。

 

「…夢に見るんです。」

 

「何を?」

 

「沈む時の…。」

 

「む…。」

 

「沢山の攻撃を浴びせられて…痛くて…。」

 

「……。」

 

「乗っていた人も…艦長も…。皆んな…皆んな…。」

 

「……。」

 

「私が…しっかり守れなかったから…。艦長も…。皆んなに迷惑かけて…。もっと私が強かったら…。もっと…もっと…。」

 

「吹雪…。」

 

ドミナントは何て言えば良いのか分からなかった。

 

「真っ暗なのが怖いのは…。沈んだ時、深海で…。一人ぼっちで…皆んなも守れず…。沢山の人が死んじゃって…。痛くて…迷惑かけて…。真っ暗で寂しかったからです…。」

 

「……。」

 

「でも…、…幼稚…ですよね…。…暗いのが怖い理由…。」

 

「…どこも幼稚じゃない。誰だって怖くなる。怖いこと…辛いことを思い出させてしまった…。済まない…。本当に…。」

 

ドミナントが真剣に謝る。そして、吹雪の顔がこっちを向いていることに気づき、頬を撫でてあげる。

 

「吹雪…。辛かったな…。」

 

「すみません司令官…。こんなことを言ってしまって…。弱音を吐いてしまって…。」

 

「謝ることなんてない。俺の考え不足だ…。お前たち艦娘はその記憶を持っていることを忘れていた俺の完全なミスだ。弱音だって、皆んながなんと言おうが、俺の前では思う存分に吐いて良い。辛いことがあるなら、全部吐き出した方が楽になる。」

 

「はい…。」

 

「…一緒の布団で寝るか…。その方が安心するだろう…。」

 

「……。」

 

吹雪がもぞもぞ入り、丸くなる。

 

「安心しろ。起きた時も俺がいる。」

 

「はい…。」

 

そして、ドミナントは吹雪の頬と背中を優しく撫でながら安心して寝るのを待った。こんな話を聞いたドミナントと吹雪はやましい気持ちなど露ほども思わなかった。

 

「吹雪…。次はそうならないように一緒に努力しよう。昔を忘れろなんて言わない。昔あっての今がある。今度はそんなことにはさせないさ。一緒に、守って行こう?ね?」

 

ドミナントが優しく語りかけるように言う。

 

「…ありがとうございます。」

 

吹雪は少しだけ嬉しくて泣いていた。

 

…………

 

「スー…スー…。」

 

しばらくして吹雪が安心した顔で、安らかな寝息を立てていた。吹雪の目の縁にはまだ涙があり、頬にも跡が残っていた。ドミナントは優しく親指で拭ってあげる。ちなみに、吹雪に抱き枕がわりにされているドミナント。

 

……艦娘たちのことをあまりにも表面上でしか知らなかった。こんな過去があることを完全に知らなかった。知らなさ過ぎた。

 

ドミナントが思う。まだ撫でてあげている。

 

……他の皆んなもこんな過去があるんだよね…。

 

ドミナントは背中を撫でていた手を額に乗せ、天井を見る。常夜灯で少しオレンジっぽく明るい。

 

……いつも明るく振る舞っていられるのは奇跡なのかも知れない。艦娘になること自体が奇跡に等しいものなのかも知れない。…それとも、単なる痩せ我慢か…。

 

ドミナントは隣にいる吹雪を見る。

 

……いずれにせよ、もう少し考えを改めなければならないな…。せめて、艦娘になって良かったと思えるくらいは。俺と過ごしてとても良かったと思えるくらいは。

 

そして、真剣に考えている内に眠くなり、ドミナントは眠りに落ちた。

 

…………

 

「…ん。」

 

吹雪が目覚める。

 

「!?」

 

そして、驚く。目の前にドミナントがいるのだ。

 

「……。」

 

そして、昨夜のことを思い出す。そして…。

 

「おはようございます。司令官。」

 

吹雪がとても嬉しそうな笑顔で小声で言う。起きた時もドミナントがいることがとても嬉しかったのだろう。それに、頬を撫でてくれたおかげで全く怖い夢など見なかったのだ。

 

「……。」

 

そして、布団から這い出て、カーテンを開けて…。

 

「ん〜…!」

 

太陽の光を浴びて背伸びをする。どこでそのジェスチャーを手に入れたのかは謎だが、太陽万歳のポーズだ。

 

「そろそろ起こさないと…。」

 

太陽の光を十分に浴びたあと、ドミナントの近くへ行き、起こそうとするが…。

 

「……。」

 

ふと考えだす。

 

……これは…すごくレアな確率じゃ…?

 

そう、現在ドミナント承認のうえ二人きり。ドアには鍵までかかっている。邪魔をする者は誰もいない。

 

……伝説のあの行為も出来るわけですか…?

 

吹雪は考える…。やましいことを…。目覚めのキッスをしようと言うのだ。

 

……口は流石に永久追放されかねません…。頬くらいなら…。

 

ドキドキしながらドミナントのことを見る。

 

……でもでもっ!流石にそれは…。

 

首を振って否定したりする。

 

……で、でも…。…私以外の女の子が先にしちゃったら…?

 

けど、そんなことを考えるとヤキモチをやいてしまう吹雪。意識があり、心の中を読めたらきっとドミナントはキュン死していただろう…。

 

……一度くらいなら平気だよ。寝ているからバレないし。それに、他の女の子が結ばれるかも知れないよ?

 

そんな悪魔の囁きが聞こえてしまう吹雪。

 

……人生で…。…人生?艦生…?…一度くらいなら…。

 

心臓バクバクでドミナントの隣に正座する吹雪。

 

……膝枕…。

 

ドミナントの頭を優しく、自分の膝の上に乗せる。

 

「…ん…。」

 

ビクッ!

 

ドミナントが起きそうになり、ビクッとした。

 

「……。」

 

……もし、この状態で起きてしまったら…?何をしようとしたのか問い詰められるよね…?もし話したら、司令官私のことを嫌いになるかも知れない…。怒られるかも知れない…。

 

そんな不安が頭の中で駆け巡る。そして、しばらく硬直してしまう。

 

……私の意気地なし…。

 

心の中で呟いた。

 

……そこで引いたら…。…もうとっくに起こさなくちゃいけないのに、起こさなかったことが無駄になります…。

 

吹雪はこのチャンスをどうするか考えている。すると…。

 

「吹雪…。」

 

「!?」

 

ドミナントが言い、吹雪が驚く。

 

「司令…官…?」

 

吹雪が起きているか確かめようと、息を確認したりするがドミナントは寝ている。

 

…………。…ダメだよね…。こんなの…。

 

吹雪が諦めて、ドミナントを枕の上に戻す。

 

「吹雪…。」

 

寝言らしい。

 

……夢の中でも私を見てくれている…。それだけでも十分です。

 

「…しないのか…?」

 

「…え?」

 

ドミナントが言い、吹雪が驚く。

 

「寝て…るんですよね…?」

 

「ンマイ…ハー…。」

 

「……。」

 

吹雪が確認するが、寝ている。だが、ドミナントの寝言が引き金となった。

 

「…おはようございます…。」

 

「む?」

 

「し、ししし司令官!?」

 

吹雪がした後、すぐにドミナントが起き出した。

 

「ふぁ〜…。お、おはよう…吹雪…。」

 

「お、おはよう…ございます…。」

 

二人ともしどろもどろだ。特に吹雪は顔が真っ赤だ。

 

「…すまん吹雪ぃ…!」

 

「あの…えっ?」

 

ドミナントがいきなり土下座して謝ってきたことを不思議がる。

 

「俺は…なんてサイテーな奴なんだ…!」

 

「えっと…何がですか…?」

 

「俺はやましいやつだ…!最低のクズのろくでなしだ…!」

 

「司令官…?」

 

「俺は破廉恥な男だ…!」

 

「どうしたんですか…?」

 

吹雪がこの件で無いことに気づき、聞く。

 

「俺は…夢の中で、吹雪に目覚めのキッスをされて起こされる夢を見てしまった…。」

 

「!?」

 

「俺はサイテーだ…。クソ豚野郎だ…!隣に、しかも信頼している吹雪をあんな目で見てしまった…。人間として恥を知った方が良い…そう思わないか?吹雪…。」

 

「えっ…、あ…。そ…、それは…。」

 

「自分が情けなさすぎて涙が出る…。寝ている相手に…無防備な相手にそんな行為をする夢を見るんだ…。しかも初期艦である吹雪にさせて…!最低すぎる…。そう思うだろ…?吹雪も…。…思わないのか…?思ってるんだろう…?」

 

「その…。え…と…。」

 

「現実でないとしても、俺は夢でそんなことをさせてしまってムカついて吐きそうだ…。人間としてしてはいけない、破廉恥な行為を夢とは言えさせてしまった…。クズのろくでなしだ…。そうは思わないか?吹雪…。」

 

「…死にそうです…。」

 

吹雪にどんどん言葉の矢が突き刺さっていく。

 

「…吹雪?」

 

「すみません!!司令官…!だから…、嫌いにならないでください…!お願いします…!」

 

吹雪は半泣きで土下座した。

 

…………

 

「すみません…。」

 

吹雪は全て打ち明けた。

 

「まぁ、仕方ないよ。吹雪にとっては俺は父親じゃなくて好意を持つ相手なんだし。」

 

ドミナントは気楽に言う。

 

「私は最低です…。」

 

「そんなに自分を責めるな。俺自身許してるし。」

 

「…?」

 

そんなドミナントに違和感を覚える吹雪。

 

「…神様と扱い違くないですか…?」

 

「いや?そんなことないよ。」

 

「嘘!」

 

「本当だよ。だって、吹雪は正直に話した。そこが違うところ。神様は大抵バレるまで黙っているから怒ってるんだよ。正直に言えば、そこまで怒らない。」

 

ドミナントは緑茶を吹雪に渡す。

 

「ただ、絶対に越えてはいけない線を越えた場合は別だよ?だから、ちゃんと判断してね?キス自体ギリギリの範囲だから。」

 

「はい…。」

 

ドミナントは吹雪を許してあげる。

 

「…それにしても、吹雪もそんなことをするくらい成長したんだな〜。」

 

「えへへ…。」

 

ドミナントが言い、少し照れて笑う吹雪。

 

「奇跡…か。」

 

ドミナントは口元を緩ませながら言った。

 

「守りたい、この笑顔。」

 

吹雪を撫でながら言った。吹雪は嬉しそうに目を閉じて喜んでいた。ドミナントはそんな吹雪を見て、とても癒された。




ゆるいですね。コメディ?口元が緩むくらいが丁度良いんですよ。…と、言うのはただの言い訳ですが、本当にそれくらいが良かったりします。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…

「この長門コーナー、容赦せん!」
「ナガツォさん…。」
「おぉ、また吹雪か…。」
「またって…。まぁ、前回もそうでしたけど…。」
「で、どうなんだ?」
「?何がですか?」
「とぼけても無駄だ。提督に目覚めの接吻をした気分は。」
「そ、それは…。」
「私たちでさえ、撫でてもらうこともたまにしかないのにな。」
「つ、つい魔が刺してしまって…。」
「…まぁ、分からなくはないがな。」
「司令官と同じ部屋、それに鍵までかかってて…。」
「邪魔をする者は誰もいないか?」
「……。」
「全く…。提督が許していなかったら、皆になんと言われるか…。まぁ、今回は提督は何も言わなさそうだし、吹雪自身何も言わなければ問題はないだろう。」
「はい…。」
「よし。では、次回予告をしてもらおう。」
「わかりました。…次回、第205話『料理好きの主人』ですね!…いいなぁ。手料理…。司令官にはまだ食べさせてもらったことがないです…。」
「食べた者がいるとしたら、それはすごくラッキーだな。」


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205話 料理好きの主人

来やがったな。イカレ野郎。
「いきなりどうしたの?」
夏が来やがった…。ただでさえ暑い電車…。さらには、休みの日もコロナで外へ行けない…。…今年は厄年だな…。
「大変だね…。」
そんな日は冷た〜いそうめんでズズーっと、食べるのが良いか。青葉とか薬味のミョウガを入れて。濃い〜汁で一杯。
「飯テロ…?」
時雨は暑いのとか…。
「少し苦手かな…。」
筆者を見習いなしゃぁい。クーラーガンガンの自室でそうめんを…。
「うん。少しでもすごいなって思った僕が馬鹿だった。」
騙して悪いが、夏は苦手なんでな。…と、そろそろ読者も前置きなげーよとか思っているから、始めようか。
「うん。頑張るね。」
頑張れ!
「この人です。どうぞ。」
「ハラショー。」
パラオのヴェールヌイさんですね。
「僕の鎮守府はその言葉をすごい叫ぶけどね。」
ボリス・ビッチ…。
「で、ここはどこなんだろう。」
「筆者さんの部屋だよ。あらすじをお願いします。」
お願いします。
「分かった。」

あらすじ
新勢力が加わったようだね。戦艦と空母と軽巡洋艦が。


…………

 

「次は吹雪の番だよ。」

 

「むむむ…。」

 

二人ともオセロをしている。ドミナントが優勢だ。

 

「…なんでしょう…。ここにおけば優勢になるはずなのに、置いたら何かとても嫌な予感が…。」

 

「どうかな?」

 

「…でも、起死回生の一手です!」

 

「残念、全て貰った。」

 

「私の色が一つしかない!」

 

「あれ?吹雪、もう置けないね。じゃ、もらおうか。」

 

「カドを三つ取られた上に、ほぼ全てのマスに司令官のコマが…。」

 

「吹雪ん全滅っと。」

 

「でも、神様には負けるんですよね?」

 

「あいつ、遊びの時は本当におかしいから。普段アホの子なのに、遊びになると頭脳も天才になるもん…。」

 

「実は頭が良いんじゃないんですか…?」

 

ドミナントと吹雪がそんな感じなことをしていると…。

 

コンコン…スー…

 

「朝食をお持ちいたしました。」

 

「あぁ、もう8時か…。ありがとうございます。」

 

ドミナントがお礼を言う。

 

「あれ?またお話しですか?」

 

「え?あ、まぁ、そうです。ははは…。」

 

……てか、バレてたりして…。

 

ドミナントはまた誤魔化す。

 

「とても美味しそうですね。本当に手が込んでいます。」

 

吹雪がワクワクしながら言う。

 

「旦那さん、とても素晴らしい人なんですね。」

 

「いえいえ。」

 

「どんな人なんでしょうか…?」

 

吹雪が呟く。

 

「そうですね…。国を守る仕事をしております。あとは料理好きの主人です。」

 

「国を守る…。すごい人ですね。」

 

「ですが、心配なことがあります。」

 

「?」

 

「職場がほぼ全員女の子でして…。裏切られたり、愛想を尽かされないかどうか心配で…。」

 

「すごい職場ですね…。女の子だけって…。」

 

「しかも、忙しいとそちらで泊まることもしばしばありまして…。」

 

「それは心配ですね…。」

 

「一応、一般の人には見えない監視人をお菓子で雇っておりますが…。」

 

「見えない監視人…。お菓子で雇えるんですか…。どんな人なんだろう…。」

 

ドミナントがそんな相槌を打っている。吹雪はとても複雑そうな顔をしていた。そして…。

 

「司令官。」

 

「どうしたんだい?」

 

「多分、その人どこかの鎮守府の提督ですよ…。」

 

「えぇっ!?」

 

「いやいや、話をよく聞いてください…。」

 

吹雪が呆れる。

 

「あの…。」

 

「はい。」

 

「もしかして…。旦那さんって提督じゃ…。」

 

「えっ?はい…。どうして分かったんでしょうか…?」

 

「ちなみに、お名前は…。」

 

「佐々木と申します。」

 

……佐々木少将だー!

 

ドミナントはやっと気づいた。そう、この女将さんは第2佐世保鎮守府の提督、佐々木少将のカミさんだ。

 

「…すみません。嘘ついてました…。」

 

「?」

 

「自分も提督です…。」

 

「え?」

 

「この子は吹雪です。艦娘です…。」

 

「嘘をついてすみません!」

 

ドミナントたちが謝る。

 

「あぁ、やっぱり…。変だと思ったんですよ。」

 

その女将さんは微笑んで言う。

 

「主人の職場に二、三度行ったことがあるので、似ているなと思ったら…。」

 

「はい…。ちなみに、第4佐世保鎮守府の提督です…。」

 

「あら。あなたが第4佐世保鎮守府の…。主人がよく話しておりましたよ?」

 

「えっ?」

 

「とても個性的な方ですが、よく気が合うとか…。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

「主人も、昔は陸軍所属でしたが才能を見出されて海軍になった人です。提督として、どうか主人をよろしくお願いします。」

 

「いえいえ!こちらこそ、前は警備を任せてしまって…。こちらこそよろしくお願いします。」

 

二人とも座礼をする。吹雪は食事から目を離さなかったが。そこに…。

 

「すみません。少し料理の方で手違いを…。て、ドミナント大佐!」

 

「佐々木少将!」

 

佐々木少将が入ってくる。

 

「久しいなぁ。来るなら来ると連絡をしてくれれば良いのに。」

 

「いえ、まさかここで会うとは思いませんでしたよ。」

 

「いやいや、ここ、鎮守府の裏だぞ?」

 

「え!?」

 

「ここは鎮守府と繋がっているんだ。…気がつかなかったのか…?」

 

「全く気づきませんでした!」

 

大本営がレストランと繋がっていたが、こちらは旅館と繋がっているようだ。

 

「まぁ良い。…で、どうだ?」

 

「どうとは…。」

 

「飯だ。」

 

「昨夜の食事はとても美味でした!」

 

「いやいや、お世辞なんて良いんだよ?」

 

「本心です!」

 

「そう言ってもらえるとありがたいねぇ。」

 

佐々木少将が朗らかに言う。

 

「ところで…。」

 

「?」

 

「ドミナント大佐…25歳と言うのは本当なのか…?」

 

「え?あ、はい。そうです。」

 

「…すまん。」

 

「え…?」

 

「私は実は36だ…。」

 

「そうなんですか。」

 

「最初に会った時、同い年に見えると言っていたが…。すまん!」

 

「?」

 

ドミナントは完全に忘れているらしい。

 

パシリ!

 

「いてっ。」

 

「あなた!そんなことを初対面で言ったんですか?失礼ではありませんか!」

 

「ご、ごめん…。」

 

「もっと謝りなさい!」

 

「すみませんでした…。」

 

どうやら、佐々木少将は嫁に頭が上がらないらしい。

 

「いえいえ、自分老け顔なのは分かっていましたし。謝ることはありませんよ。」

 

「すみません。主人が失礼を…。」

 

「すまん…。」

 

佐々木少将たちが謝る。

 

「ところで、料理の方で手違いとは…?」

 

「あぁ、実は私の気まぐれ料理に少し問題がありまして…。」

 

「問題?食べれないものが入っていたり、組み合わせが毒になったり…?」

 

「いや、違う。…実はな…。」

 

佐々木少将が言おうとしたが…。

 

「しれーかん…?」

 

「ん?どうした?吹雪。」

 

「からだが…あつくて…。ハァ…あたまがぼーっとしちゃって…。ハァ…ハァ…とてもあそこが…。」

 

ゾクっ

 

ドミナントに寒気が走った。吹雪の現在の状態は目はトロンとしていて、汗も出ている。甘い息を漏らし、ろれつも回っていない。

 

「まさか…。」

 

「あ、やっぱり…。」

 

「あなた…何を入れたんですの…?」

 

女将さんが怖い顔をする。

 

「いや…。気まぐれで選んだ食べ物の多くが興奮するような食べ物ばかりで…。惚れ料理が出来てしまって…。」

 

ピシャリ!!

 

「いった!」

 

「お客様になんてものをお出しするんですか!」

 

「ご、ごめんなさい…。」

 

「私に謝るのではなく、お客様に謝りなさい!!」

 

「大佐、すまなかった…。」

 

ピシャリ!!

 

「いって!」

 

「もっと丁寧に!!」

 

「誠に申し訳ございません…。」

 

少将が土下座した。吹雪は少しだけ味見のつもりが、美味しくて味見がやめられなくなったのだろう。

 

「…で、いつ頃治るんでしょうか…?」

 

「…1時間後にはきれいさっぱり…。」

 

「1時間後…。」

 

ドミナントはまとわりついてくる吹雪を退かしながら考える。

 

「…もつかな…?」

 

呟く。

 

「まぁ、あとは若いもの同士…。一夜を共にしたほどの仲だから平気だな。」

 

「…そうですね。」

 

二人が出入り口に行き…。

 

「「失礼しました。」」

 

「ちょ、待…。」

 

ガチャン

 

出て行った。

 

「しれーかん…。すきです。だいすきです。はぁ…はぁ…。」

 

「吹雪…。」

 

ドミナントは吹雪を哀れんだ目で見る。そして…。

 

ナデナデ…

 

「……。」

 

吹雪の頭を撫でる。

 

「しれーかん…?」

 

「安心しろ。俺がそばにいる。」

 

「……。」

 

ドミナントはずっと撫でた。吹雪は嬉しそうに目を細めていた。

 

…………

30分後…

 

ナデナデ…

 

うとうと…

 

吹雪が眠そうにする。そして…。

 

パタッ

 

ドミナントの膝の上に頭を乗せて寝てしまった。

 

……予定より30分ほど早い…。撫でて興奮を抑えさせようとしたからな。寝たと言うことは、おさまったんだ。

 

ドミナントが安心した。そして、布団はしまっていたため、吹雪を座布団の上に寝かせた。

 

……料理が冷めてしまったな…。恐らく、これが気まぐれのヤツだろう…。色々よく分からないものが入っているからな…。てか、なんで食べようと思ったんだよ吹雪…。他の奴を食べるか…。

 

そして、ドミナントは他のを食べた。とても美味しかったようだ。

 

…………

30分後

 

「…ハッ!?」

 

吹雪が目覚める。

 

「う…ん…?なんだかとても…ふぁ〜…。…変な夢を見てた気がします…。」

 

吹雪が起き上がる。

 

「おう、起きたか。吹雪。」

 

「はい。司令…官…。」

 

「?どうした?」

 

「なんだか、顔を合わせるのが恥ずかしくて…。どうしてでしょうか…?」

 

「それは永遠の謎だな。いつか調査しよう。起きたなら、帰るよ?」

 

「そうですね。」

 

そして、ドミナントは旅館の人の迷惑にならないように各部屋をチェック、忘れ物がないかどうかチェックして、チェックアウトをした。帰り際には女将と佐々木少将が手を振ってくれた。

 

…………

鎮守府前

 

まだ建てられ途中の鎮守府がある。

 

「さてと…。やりますか!」

 

ドミナントたちはせっせと働いた。そのおかげで夕方までには全ての箇所が綺麗に直った。




なんかイマイチ…。ペースが落ちて、キレも落ちてきましたか…。

登場人物紹介コーナー
旅館…第2佐世保鎮守府と繋がっている。30年前にオープン。これは元々佐々木少将の親の店である。佐々木少将は陸軍やら海軍で忙しく、店を続けることが出来なかったが、親からの店を畳むつもりもなかったので、結果的にこうなった。陸軍にいた時は妻に任せていた。
佐々木少将…旅館の専属料理人であり、女将の亭主。さらには第2佐世保鎮守府の提督であり、昔は陸軍兵長。経歴がおかしい人。趣味はエ○本集め。もちろん妻には内緒にしているが、500冊ほどあるため、たまに見つかり怒られている。陸軍にいたとき店を妻に任せていたため、妻には頭が上がらない。ちなみに、料理の腕は一流。沢山のお客さんがいると、艦娘たちにも手伝ってもらったりする。
女将…佐々木少将の奥さんであり、旅館の女将でもある。一般人には見えない妖精さんが見えているため、提督の素質は少なからずある。妖精さんを通じて、佐々木少将のエ○本が何冊あるか正確に知っている。あえて怒っていないのだ。妖精さんを通じていることを悟られないために。佐々木少将より頭が回る切れ者。
惚れ料理…原材料不明。というより、規制により書けない。(禁則事項です。)
気まぐれ料理…佐々木少将により作られる本当の気まぐれ料理。適当に食材を入れて、混ぜて、それっぽい味にさせるため、効果の関係で失敗することも稀にある。

「長門コーナーだ。」
「今回は私だな。」
「第二佐世保鎮守府の…。」
「そうだ。提督だ。」
「…既婚者にしては、若く見える…。」
「一応、子供もいる。たまに20代に見られる時もある。」
「提督とは反対だな…。」
「いや?だが趣味は合うような気がするが?」
「趣味…。紅茶のことか?」
「いや。別の趣味だ。まぁ、女性ばかりの職場で、バレたら引かれるが、男の必需品だ。」
「ダンボール…。」
「そう。いや、違う。アレだ。アレ。」
「ふむ…。分からんな。提督はフシダラな本を持つような男ではない。ましてや、薄い本など…。もし、そのことを言っているのなら大きな間違いだ。このビッグ7の私、長門の名にかけてな。私の提督を侮辱するな。」
「…だとさ。ドミナント大佐。」
「?」
「キツイところにいるんだな。気が休まらないな。大佐は。」
「?なんの話だ?」
「いや?こっちの話。そろそろ読者も後書きなげーよとか思っている頃だし、次回予告でもしようか。」
「…今なにか聞こえた気が…。…まぁ良い、なら頼む。」
「よし来た。次回、第206話『皐月の忠誠心』…か。筆者によるとあまり良い作ではなかったみたいだな。ネタ不足な上に無理にでも皐月を出してあげたかったみたいだから。」
「皐月じゃなくても、良いみたいだがな。次回はゆるふわではなく、少し退屈…か?」


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206話 皐月の忠誠心

元々の内容を変更したため、時間がかかりました。
「筆者は多忙なんだね。」
そうなんだよ…。仕事が立て込んでてさ…。それに、作った文章を一気に消すのは心が折れる…。
「大変だね。」
まぁね…。でも、書き続けることで何か得られると言うなら、そうしよう。…そうあれかし…。
「そろそろゲストを紹介した方が良いかな?」
そうだね。時雨、頼む。
「うん。やってみるね。…今回はロシア艦の人。」
「Гангутガングート級一番艦Гангут、近代化改装は完了済みだ。私を侮るな。」
侮りませんよ。アナドリア(アナトリア)の傭兵ですけど…。
「すごい人が来たね…。」
「む?そこにいるのは日本艦の時雨か。久しく見るな。」
「久しく…?」
「うむ。私が所属していたところにも時雨はいた。」
「…いたってことは、今は違うのかな…?」
「それは分からん。どこかの鎮守府にいるかもしれんしな。」
「一応僕と同じ艦だからね…。幸せにしてくれれば良いかな。」
そうだね。…と、そろそろガングートさん。あらすじ出来ます?
「任せておけ。」

アラスジー
ついに私もレベル70へ行った。新たな艦の手本になれるように、より頑張らなくてはな…。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「いや〜…。いいね。やっぱり。」

 

「何が?」

 

「この鎮守府であり、この執務室。」

 

「秘書艦机と椅子、提督机と椅子しかないこの部屋…?」

 

本日の秘書艦が周りを見る。

 

「ところで、一昨日の夜の深夜アニメ見た?」

 

「えっ?ううん。司令官と一緒じゃないとつまんないし。」

 

「oh…。一昨日は見れなかったからね…。続き知れなくて少し残念。だけど、一緒が良いと言ってくれて嬉しい。」

 

ドミナントと秘書艦が話す。

 

「でも、成長期の君たちにはそれが良いのかもね。夜遅くまで起きていると、身長も伸びないらしいし。疲れも溜まるから、良いことはあまりないよ。それに、皐月の大人姿も見てみたいし。」

 

「大人…。司令官はもっとかわいくなってるかな?」

 

皐月は笑顔で言った。本日の秘書艦は皐月みたいだ。

 

「ところで皐月。」

 

「ボクを呼んだかい?」

 

「皐月以外この部屋にいないよ。明日、陸軍所属だった二人、あきつ丸とまるゆが来るよ。」

 

「そうなんだ。」

 

「…一度襲撃をしに来た陸軍だけど、彼女たちは一切ここを襲撃していない。わかってやってほしい…。」

 

「もちろんだよ!ボクの可愛い司令官の頼みだもん!」

 

「ありがとう。」

 

あきつ丸とまるゆ。その二人は元陸軍特殊部隊の一員だ。この第4佐世保鎮守府を襲撃して来た部隊だが、まるゆとあきつ丸は一切関与していない。その時まるゆは洗脳され、あきつ丸はヘリから落とされて中部地方から山の中を歩いて基地まで行っていたからだ。

 

「さてと…。分かったなら、今日は皐月と何しようかな。」

 

「仕事は?」

 

「もう終わった。」

 

ドミナントが立ち上がる。

 

「皐月は?」

 

「大半司令官にさせちゃってるから…。」

 

「じゃ、行こうか〜。」

 

ドミナント、ついに仕事時間が1時間に…。

 

…………

廊下

 

「よし!では皐月隊員!今回のミッションは鎮守府の見回りだ!」

 

「う、うん!」

 

「行くぞ!」

 

早速、ドミナントが馬鹿なことを始めた。子供のようなしょうもないことを。

 

「それに、見つからずにだ…。」

 

「わ、わかった!」

 

コソコソドミナントたちが行く。壁に隠れて廊下を覗いたり、足音を立てずに歩いたり…。そこに…。

 

「む?」

 

ドシン

 

「わっ。…いきなり止まらないでよ。」

 

ドミナントが止まり、皐月がぶつかる。

 

「すまん…。が、あれを見ろ。」

 

「ん?」

 

二人が廊下をコソコソ見る。

 

「はぁ…。」

 

山風だ。

 

「…山風だね。どうしたの?」

 

「あれは…また何か悩みを抱えている顔だな…。」

 

「…いつもと変わらないけど…。」

 

「俺にはわかる。あれは現代社会に悩む顔だと…。」

 

「絶対嘘だよね?」

 

皐月がそのままツッコミを入れる。

 

「また主任に虐められたか?しょうがない…慰めに行くか。」

 

「行くの!?」

 

「父お…じゃない。提督としてな。」

 

「今父親って…。」

 

「ゴー!」

 

「ま、待って!」

 

ドミナントが行き、皐月が追う。

 

「山風、何かあったか?」

 

「…あっ…提督…。…ううん。何でもない…。」

 

山風が行こうとしたが…。

 

「待てーい。また大騒ぎするのは御免だ。話してもらおうか。」

 

「別に…。」

 

「少し落ち込んだ顔をしているじゃないか。」

 

「なんでも…ないっ…たら…。」

 

山風は断固として話そうとしない。

 

「放って置けないだろう。…?そうか。分かったぞ。解決法。」

 

「「?」」

 

突然ドミナントが言い出し、二人が首を傾げる。

 

「俺気づいたんすよ…。慰める方法ってやつを…。皐月、アレをやるぞ。」

 

「えぇっ!?恥ずかしいよ…。」

 

「山風がどうなっても良いのか!?ストレスで死んじゃっても良いのか!?」

 

「「大袈裟!」」

 

二人の艦娘は大袈裟だと手を振る。

 

「なるほど…。皐月はやらんか…。なら夕張、いるか?」

 

「呼ばれて瞬間移動!」

 

「「「!?」」」

 

天井裏から現れて、ドミナントさえ驚く。

 

「夕張…?何故そこから…?」

 

「?提督が呼んだからですよ?」

 

「魔法陣を書いた覚えはないんだが…。」

 

「至る所にカメラがありますからね。スマホを通じて居場所を確認しました。そして、セラフさんと一緒に作った瞬間移動装置で…。」

 

「ごめん、夕張。カメラ撤去しないとスマホ没収。」

 

「そんなぁ!」

 

「で?カメラどこにあるの…?」

 

「その額縁の横に…。」

 

「こんなところに…。」

 

ドミナントが回収する。

 

「これで提督の私生活を見ようとしたのに…!」

 

「怖いな!ストーカーだぞ…。…いや、元はコウノトリの方じゃないからね?」

 

夕張に言い聞かせる。

 

「ところで、何のようだったんですか?」

 

「そうそう。山風を慰めるために、アレをやるぞ。」

 

「ア、アレですか…?」

 

「その通りっすよ。」

 

「…無理です!」

 

夕張が顔を真っ赤にして逃げた。

 

「あっ、逃げた。」

 

「そりゃそうだよ…。」

 

「何…をする…つもりなんだろう…。」

 

山風が呟く。

 

「忠誠心がある奴じゃないとダメなのか…。」

 

「!?」

 

皐月はその言葉を聞いて、考える。

 

……も、もしやれば忠誠心を示せるよね…?そうなったら、司令官との距離も…。でも、流石に恥ずかしい…!

 

皐月は考えて…。

 

「わ、わかった!やる!」

 

「おっ、皐月やってくれるんすか。しょうがないから一人でやるところだったっすよ。」

 

ドミナントが言い…。

 

「じゃ、ラジカセをセットして…、hit it! (ヘディッ!)」

 

ドミナントが曲を流す。

 

「あっ、あっ…マ、マイクオッケー?」

 

「いっくよー!」

 

二人が歌まで歌い出す。ちなみに、既に場所は変わり堤防だ。

 

「ミ、ミニスカートで襲撃だ!」

 

「キュン。」

 

「ギャ、ギャップ萌えして衝撃だ!」

 

「キュン。」

 

「こ、恋の妄想、回路暴走、デマッデマッホラー!」

 

「ブーブー。」

 

「だ、だ、だ、だ、大好き告ってちょーだいよ!」

 

「ハイハイ。」

 

「だっちゅーけどクールにルーズビート聴かせて!」

 

「バリバリチューン。」

 

皐月が顔を真っ赤にしながらも歌って踊る。ドミナントは完璧だ。もはや、ドミナントには恥ずかしいという概念がない。そんなことをしていると…。

 

「何かしら?」

 

「提督と…皐月ちゃん!?」

 

「何をしているんだろう…?」

 

艦娘たちが集まってくる。

 

……は、恥ずかしい…!!!こうなったら、もうどうにでもなっちゃえ!!

 

皐月は半ばヤケクソで続ける。ドミナントは楽しんでいる。そのうちに…。

 

「む?ドミナントか…?あれは…。」

 

「新しい…惹かれるな…。」

 

「恥ずかしいと思わないんでしょうか…?」

 

「ギャハハハハハ!!」

 

AC勢が参上する。最初は山風を含めてみんな困惑したが…。

 

「楽しそうなのです。」

 

電が言った。すると…。

 

「…そ、そうね。でも、一人前のレディーとして…。」

 

「ハラショオオオオオ!」

 

「楽しそう!」

 

いつの間にか、艦娘たちも楽しんでいる。

 

「カバディ、カバディ…。」

 

……あれ?楽しい…。

 

その光景を見た皐月は、だんだんと楽しくなってくる。

 

「ビーバビーバ、ハッピーchu lu chu chu!」

 

……楽しいかも…ううん!楽しい!すっごく!かわいい司令官と踊っているからかな?

 

皐月も笑顔で踊る。隣を見ると、ドミナントも楽しそうだ。

 

「私も混ざろーっと!」

 

神様もやってきた。

 

「あなたも踊ろう!」

 

「え…ちょ…。」

 

神様に手を取られ、山風も無理矢理踊る。神様も、初めてにしては上手い。山風は間違えながらも、何とか踊りきった。

 

「はぁ、はぁ…バタン。」

 

「やったね!」

 

「…うん。」

 

「がんばったー。」

 

ドミナントが倒れた。頑張った方だ。皐月は汗をかきまくっているが、笑顔で山風と顔を見合わせる。神様も笑顔だ。艦娘たちは拍手をしたりする。

 

「…全く、良い余興にはなったな。」

 

「…む…。動画を撮っておけば良かったな…。」

 

「身体がうずきますね…。」

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

AC勢も、結局最後まで見ていた。

 

「…はぁ、はぁ…。ところで山風…。」

 

「?」

 

「何で悩んでいたの…?」

 

「…ふふっ。提督たちの…踊りを…見ていたら別に…どうでも…良くなっちゃった…。ふふっ…。」

 

「そうなんだ!」

 

「提督の…茶葉を落としちゃって…床に半分…くらい…落ちちゃったこと…。」

 

「Noooooooooooo!!!」

 

ドミナントは死んだのだった。

 

…………

 

「すっごく楽しかった!」

 

「ソッカー。」

 

「…落ち込んでる?」

 

「ベツニー。」

 

ドミナントは目に見えるくらい落ち込んでいる。山風はそのあと謝り、叱るに叱れなかったのだ。

 

「…そうそう。あのね…司令官…。」

 

「ナニー?」

 

「これ…あげる。司令官、紅茶…好きだから…。」

 

皐月がくれたのは、ティーパックの紅茶だ。アップルティー。

 

「どうしたの?これ。」

 

「あのね…。紅茶…お小遣い貯めて買ったんだ…。…あとで、司令官と一緒に飲みたいな…!」

 

「俺が作ったのに…。」

 

「もしかして…パックは無理かな…?ごめんね!司令官が買うような物は高くて…。」

 

「まぁ、ね…。あと、全然無理じゃない。むしろ嬉しい。お前たちから貰えるプレゼントは世界の高価なものより俺にとっては一番だから。」

 

皐月はその言葉を聞いて、心底嬉しそうにする。

 

「ところで、お小遣いを貯めたって言ったけど…。それ、貯めるほどの値段じゃないでしょ。国から支給されているから時給換算して、数百個は買えるはずだよ?」

 

「えっ?国からなんて出てないよ?」

 

「…は?」

 

「そりゃそうだよ。ボクたちは日本で何人いると思う?司令官1人だけでも僕たち艦娘は約200人いるんだよ?それが鎮守府の数だけあるから…。とんでもないお金を出すことになるんだよ?」

 

「え…。…て、ことは…そのお小遣いは…?」

 

「遠征とかして、本当にたまにお小遣いを貰えるの。護衛した船の人とかから…。でも、寄付金と同じで、百円くれたら良い方なの…。」

 

「……。」

 

ドミナントは皐月の説明に言葉が出なかった。ずっと、支給されているものだと思っていたのだ。そんな金銭事情があるなんて、思いもしなかったのだ。

 

「…皐月、今の話本当?」

 

「え?うん。」

 

「…なるほど。」

 

ドミナントは考えるそぶりを見せ…。

 

「皐月は、1ヶ月にお小遣いいくらくらい欲しいの?目安として。」

 

「…司令官の懐を圧迫しないように、200円かな…?」

 

「俺の懐なんてどうでも良い!欲しい額を言え!俺はほぼ居候でお前たちが働いている。つまり俺はヒモだ!立場上逆だぞ?普通は…。」

 

「…本当は1000円くらい欲しい…。」

 

皐月が少しだけ欲を出す。

 

「なんて、嘘だよ。700円くらいで十分…。」

 

「1000円…安すぎないか…?」

 

ドミナントは皐月に渡す。

 

「えっ?えっ?えっ!?」

 

「もう少し必要だよな?月にお前たちは120時間以上働いてるんだ!本当は12万円くらいあげたいけど…。200人いるとして、2400万…。…支給金額超えるな…。食費や水道代や電気代も含めると…。マイナス600万…。3000万か…。一つの鎮守府に。…そりゃ、無理だな…。」

 

ドミナントが呟き…。

 

「みんな平等にしたいけど、大人の艦娘がいるしね…。大人ってのはお金がかかるし。…だから、3万円でダメかな…?」

 

「ううん!3万円も…。」

 

皐月はものすごく驚いている。

 

「でも、危険な物は買っちゃダメだよ?危ないから。」

 

「うん!約束!」

 

皐月はものすごくはしゃいでいる。とても嬉しいのだ。

 

「それにしても、踊って歌っている皐月は本当にかわいかったなぁ。」

 

「司令官もかわいかったよ?」

 

「皐月の方が可愛いかったな。断言できる。」

 

「ううん。絶対に司令官だよ。間違いない。」

 

「…譲れないな。」

 

「…ボクだって。」

 

「そうか…なら仕方がない。…コチョコチョコチョコチョ…。」

 

「ふわっ、わっ、わぁ~!?く、くすぐったいよぉ~っ。」

 

「ほら可愛い。」

 

「卑怯だよ!」

 

「卑怯などとぉ、所詮弱者の戯言ぉ!勝ったものが強者ぁ、所詮それが全てよぉ!」

 

「…ふふっ。」

 

「あはは。」

 

ドミナントと皐月は道中を本当に楽しんでいる。そして、執務室の中に入り、皐月が買ってきてくれたディーパックで一杯入れる。

 

「…司令官。」

 

「?」

 

「今日も一日お疲れ様。」

 

「皐月も秘書艦お疲れ様。あっ、クッキーあるよ?」

 

「食べる!…かわいいクッキーだねっ!」

 

二人は笑顔で飲むのだった。

 

…………

翌日

 

「ここが第四佐世保でありますね!」

 

「まるゆたちの所属するところ!」

 

二人の艦娘が門の前で楽しみに言う。

 

「ここが本艦の所属するところ…か。」

 

そして、まだ見ぬ艦娘まで…。




内容変更。

登場人物紹介コーナー
皐月… ボクっ娘で、口調も少し少年っぽい。ボーイッシュで元気いっぱいな艦娘。容姿は膝まである長く癖っぽい金髪を後ろで二つにまとめた髪をしており、瞳の色も金色。服装は黒いセーラー服に白ネクタイと、三日月型のネクタイピンをしている。 一生懸命に提督の役に立ちたいと思っており、日々努力をしている。また、「かわいいね」が口癖であり、よく発する。その度にドミナントが「おまかわ」と思うのだが…。

「久しき長門コーナーだ。」
「久しい?」
「いや、なんとなくそう感じてな…。ところで、今回は皐月か。」
「まぁ、今回のを見るとボクしかいないし。」
「そうだな。…史実に関して教えてくれ。」
「わかった!実はボク、二人いるよ。」
「ほう。そうなの…。て、なにぃ!?」
「知ってるでしょ…長門さんは…。」
「…言うな。やらせみたいになっているから…。」
「…まぁいいや。二人いることに関して、少し分かりづらいと思うから説明するね!僕は2代目。初代はロシアとの戦利品…て、言い方はアレだけど、貰ったのが初代。」
「そうなのか。」
「ボクの最初の名前は「第二十七号駆逐艦」って呼ばれていたけど、佐世保に所属して3年後に「皐月」って名前になったんだよ。」
「第二十七号駆逐艦…か。…長いな。」
「ボクも色々頑張ったんだ。巡洋艦を用いて陸軍部隊をラバウル方面に増強する「戊号輸送作戦」に、同型艦の文月とともに対潜水艦戦力として参加。カビエン付近で米軍機100敵機からの猛攻を受け損傷するも、11機を撃墜しつつ、砲弾と魚雷をすべて回避したんだよ。」
「それは凄いな…。称賛に値するぞ…。」
「でも、その時艦長は左脚をやられて、出血多量に切断施術を受けてなお指揮を取る壮絶な戦いぶりを見せて、ボクを守り切ったんだ。後から分かったんだけど、その後入院先の病院で息を引き取ったんだって…。」
「自分の命を犠牲にしてでも艦を守る…。素晴らしい人だな…。」
「ありがとう。あと、ボクは任務途中に何度も何度も怪我をしたけど、最後まで奮戦したんだ。不死鳥のように。」
「それを言うと、あの駆逐艦が黙っていないぞ。」
「それくらいかなぁ?」
「なるほど。なら、次回予告をしてくれ。」
「うん!わかった!次回!第207話!『魔術師みたいな子』らしいね!可愛い子かな?」
「そこまではわからないそうだ。」
「なるほど!」


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207話 魔術師のような子

9日、原爆が長崎に落ちたんだっけ…。
「…そうだね。」
長門さんも一応味わっているんだよね。あの光。
「筆者さんは…。」
いや、味わってたら死んでるよ。
「ううん。違うよ。筆者さんはどう思うのかって。」
…日本は唯一の被爆国で、痛みを知ってる。こんなことはなくなって欲しいと思っている。
「…身体は?」
闘争を求め…。…不謹慎だな。やめよう。
「そこは自重するんだね。」
当たり前じゃん。何人死んだと思ってるの…。この会話自体不謹慎だからね?
「そうだね…。なら、今年の夏はどれほどまで暑くなるか考えてみようか。」
うーん…。40度いくんじゃないか?
「随分生き物が死に絶えそうだね…。僕は、38度くらいだと思う。」
38度か…。…ぬる湯のシャワーをずっと浴びている感覚…。
「恐ろしいね…。」
年々気温が少しずつ上がってきているからね…。いつか、45度とかになったりして…。
「地球崩壊だよ?それ…。」
…つまり、それほど今切羽詰まった状況ってことじゃん…。
「…そうだね。」
…そろそろあらすじ行こうか。ゲストさんを召喚してくれる?
「どうやって?」
そこの地面に文字が書いてあるじゃん?この人間性を持って、召喚しようって思うだけで良いから。
「こう…かな?」
「Здравствуйте(こんにちは)!嚮導駆逐艦、タシュケント、はるばる来てみたよ!…て、なんか光ってない…?」
おー。召喚できたね。
「やったよ。僕。」
偉い偉い。
「あのー…。ここで何をすれば…?」
あらすじを言って欲しいんです。英雄であり、空色の巡洋艦のタシュケントさん。
「英雄…。…知ってるの?」
調べました。すごいですね。あなたも。
「… Спасибо(ありがとう).」
「僕のことは調べた?」
一応調べたよ。というより、そろそろ文字数が多いので、あらすじを始めたいな。
「…わかったよ…。」
そんな残念そうな顔をするなよ。今度ね。今度。
「わかった。」
「アラスジーを言えば良いんだね。」
では、どうぞ。

アラスジー
同士は来なかったけど、面白そうな人たちで安心した。


…………

第4佐世保 3時間前

 

「今日はまるゆとあきつ丸の着任日だな。」

 

ドミナントが一人、執務室で呑気にいる。

 

「秘書艦は今日休みの日だからね〜。…まるゆかあきつ丸に試しに秘書艦させてみようかな。やり方とか知らないと思うし…。」

 

ドミナントは椅子から立ち上がって、秘書艦机と提督机以外何もない執務室を見る。

 

「…殺風景だな。てか、鎮守府にエアコンあったっけ…?少なくとも、執務室には無いし…。」

 

この暑い中、執務室は窓を開けているだけだ。ドミナントに対して少ししか好感度がない艦娘は秘書艦を嫌がるだろう。だからこそ、暑過ぎる日や寒すぎる日は秘書艦をなるべく休みにするのだ。

 

「…まるゆたち嫌がるよね…。てか、艦娘たちが可哀想だ。エアコンを導入する時期かなぁ…?」

 

ドミナントは一人でぶつぶつ呟く。

 

「てか、執務室の家具も少ない…。殺風景すぎるのもアレだな…。…家具はセラフや大淀にコイン(それがあれば家具を作ってくれる)のことを聞いて、他の艦娘たちはどう過ごしているのか覗いてみよう。」

 

そして、ドミナントは執務室を後にする。

 

…………

廊下

 

「誰もいないな…。」

 

日差しが入り込んでいて、ムシムシしている。

 

「熱っ!木の壁に触れただけで無茶苦茶熱い!」

 

なんとなく触った木の壁が暑過ぎて熱を放出している。

 

「…大丈夫かな…?あの子たち…。てか、ちょうど良いや。お小遣いあげよう。給料として。」

 

ドミナントはまずは吹雪型の部屋を目指す。

 

…………

吹雪型の部屋

 

「暑い〜…。」

 

「今年は暑くなりそうね…。」

 

「死ぬ…。」

 

「暑過ぎて何もやる気が出ない…。」

 

「エアコン欲しいわね…。」

 

吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲がこの部屋にいる。暑すぎる為、だらしなく服を緩めたり、ほぼ下着姿になっている。ちなみにそれぞれの艦の種類により、部屋は分かれているが多すぎる子もいる為、多くても5人一部屋になっている。つまり、ここは吹雪型の壱(イチ)の部屋だ。

 

「お金、全員の出しても足りないね…。」

 

「ジャックさんの店にエアコンあるけど…。5万円もじゃ…。」

 

「うちわしかない…死ぬ…。」

 

「まだ売れてないって聞くぜ…?店のは…。」

 

「私は何とか2000円近くあるけど…。」

 

叢雲が2000円を見せる。全部小銭だ。遠征で頑張ってきたのだろう。

 

「私は1000円少しです…。」

 

「私も1500円しか…。」

 

「この深雪様は丁度2000円くらいだよ…。」

 

吹雪が一番金額が少ない。理由はわかるはず。他の物を買っているのだ。

 

「全部合わせて6500円…。」

 

「残り4万3500円…。全く足りませんね…。」

 

「司令官にねだる…?」

 

「それじゃ迷惑じゃない…。」

 

四人が話していると…。

 

「…私のこと忘れてない…?」

 

「初雪ちゃん?」

 

初雪が会話に参加する。

 

「はい。4万円。」

 

「「「!?」」」

 

4人が驚いた。

 

「い、一体どうやってそこまで稼いだんですか…?」

 

「いつも部屋にいるあなたが…。」

 

「引きこもりなのに…。」

 

「悪いことしたんじゃないでしょうね…?」

 

「……。」

 

皆に言われて、初雪が露骨に嫌な顔をする。

 

「いらないなら…良い…。」

 

「待って!」

 

回収しようとする初雪を止める。

 

「でも、どうやってそこまで稼いだの?」

 

吹雪が尋ねると…。

 

「これ…。」

 

あるポスターを見せる。

 

「…ゲーム大会…?」

 

「場所が近くですね。…準優勝5万円…。」

 

「もしかして…。」

 

「…脱走したの?」

 

そのポスターを見て各々が言う。

 

「セラフさんから許可を取った…。」

 

「あー…。丁度セラフさんの管轄の日に行ったんですね。」

 

「セラフさん、すごく強いですけど帰る時間を言えば、いつでも鎮守府から出してくれるものねぇ…。」

 

「そのかわり、私たちが事故とかに巻き込まれないようにジナイーダがついて来るけどな。」

 

「わざわざセラフさんに言って…。司令官から許可を取ろうとするとめちゃくちゃ心配されて行こうにも行けなくなるから気持ちはわかるけど…。」

 

4人が理由を聞いて納得する。

 

「でも、あと3500円…。…ジャックさんにまけてもらうように頼みますか…?」

 

「…まけてくれるかしら…?」

 

「準優勝…今思い出すと悔しい…。」

 

「いや、まけねぇよ。あいつはまけないやつだ。」

 

「…司令官にねだろうかしら…?」

 

初雪以外、エアコンのことを考えている。すると…。

 

コンコン

 

「はーい。」

 

ノックする音が聞こえて、吹雪が身だしなみをある程度整えてドアを開けに行く。

 

ガチャ

 

「うわっ!暑っ!」

 

「あっ!司令官!?」

 

「「「!?」」」

 

全員が驚き、急いで身だしなみを整える。

 

「あつ…。エアコン、やっぱないんだ…。」

 

ドミナントが部屋の中を見る。

 

「…あっ、ごめんよ。いきなりで。」

 

他の艦の子たちに気づき、一応言う。すると…。

 

「あんたさ〜。エアコン買ってくれない〜?」

 

「「「!?」」」

 

ドミナントと含め、全員が驚いた。叢雲が甘えた声を出して、ドミナントにすり寄ってきたのだ。つまり、それほどこの暑さをなんとかしたかったのだ。自分のためにも…吹雪たちのためにも…。

 

「お願いっ。」

 

「いや、そんな声出さなくても…。無かったら、つけようかと思っていただけ…。」

 

ドガァァァァァァン!!!

 

「早めに言いなさいよねっ!!!砲撃するわよ!?」

 

「してるじゃん…。」

 

叢雲がプライドまで捨ててねだったことが無駄になり、ドミナントを砲撃した。

 

「それより…。」

 

「何よっ!?」

 

「これ…。」

 

「何か…。何?それ…?」

 

ドミナントが人数分ある真っ白なポチ袋を叢雲に渡す。睨んでいた叢雲だが書類だと思い、真面目な顔をした。

 

「見てからのお楽しみ…。皆んなに渡った?一つずつだよ?」

 

吹雪たちが一つずつ手に取り、大事なものだと感じて手に持ったままだ。

 

「じゃぁ、開けてみて。」

 

ドミナントが嬉しそうに言う。

 

「なんでしょ…。!?」

 

「これは…!」

 

「!?」

 

「おぉっ!」

 

「!」

 

5人とも開けてみて驚いた。

 

「3万円。今月から、お小遣い制度を始めてね。危険なものは買わないことを約束してくれる?」

 

「します!」

 

「なら、好きに使って。服に使っても良いし。…あっ、エアコンは俺が後でつけるように言っておくから、気にしないで。」

 

「ありがとうございます!司令官!」

 

「いいよ。こんくらい。お前たちは頑張ってるし。」

 

ドミナントが行こうとしたが…。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

「?」

 

叢雲が引き止める。

 

「その…。…ありがと…。」

 

叢雲が感謝の言葉を述べた。実は、叢雲は傷つくようなことを言ったり、暴力を振るったりするが心の中では無茶苦茶感謝している。落ち込んでいる時は話し相手になってくれて、権利の無いはず艦娘に対して普通の人間のように扱ってくれて、失敗しても暴力などのひどいこともせずに逆に励ましてくれて、自分たちのことをいつも思ってくれるからだ。

 

「え?何?何か言っ…。」

 

「い、言ってないわよ!さっさと行きなさい!」

 

「酷いなぁ…。」

 

だが、こういう無粋なところや鈍感なところ、ふざけたりするところは直して欲しいと思っている。

 

…………

倉庫

 

「最後はここか…。…必要なのかどうかは不明だけど…。」

 

ドミナントは倉庫にいる。夕張とセントエルモ、セラフに会いに来たのだ。

 

「夕張たちー!」

 

「「「はい。」」」

 

ドミナントが出入り口で叫び、ゾロゾロとやってくる。

 

「今月からお小遣い制度を始めてね。セラフ以外の艦娘たちには上げているんだ。」

 

「良かったですね。」

 

セラフが夕張たちに微笑む。

 

「それと…。みんなの部屋にエアコンを取り付けようかと思っていてさ。君たちは倉庫の部屋の中と、鎮守府の部屋、どちらに取り付けたいかなって聞きに来たわけ。」

 

「そうですね〜…。…両方じゃダメですか…?」

 

夕張が言う。

 

「両方か…。…セラフ、少し外道なことするけど、協力してくれる?」

 

「内容によります。」

 

「ジャックから買ったエアコンを倉庫で分解して、仕組みを調べてそれを量産して欲しいんだ。」

 

ドミナントが打ち明けた。確かに、主人公がやるような行為ではない。

 

「?あのエアコンのことですか?」

 

「ああ…。艦娘たちがとても欲しがっていてな…。」

 

「これのことでしょうか…?」

 

セラフがエアコンを見せる。

 

「そう!それ!…て、なんで持ってるの?」

 

「それは…。ここで生産しているからです。」

 

「もはやここは工場か…。」

 

どうやら倉庫で生産して、ジャックがそれらを買い占め、販売しているようだ。

 

「…譲ってはくれないだろうか…?」

 

ドミナントが頼む。

 

「えー…。」

 

セラフが意地悪そうな顔をして…。

 

「そうですね…。夕張さんとデートをしたら良いですよ?」

 

「えっ!?」

 

「なにぃ!?」

 

セラフが言い、夕張とドミナントが驚く。

 

「忘れてませんよね?前、スマートフォンの件で夕張さんを陥れようとしたこと。」

 

「ギクッ…。…はい…。」

 

「それに自身のためにやるなんて、ドミナントさんらしくありませんでしたよ?おそらくストレスのせいです。カウンセラーにも一切来てませんよね?ですから、夕張さんと一緒に遊んでストレスを解消しましょう。」

 

「で、でも…。セラフさんは…。」

 

「私のことは良いですよ。私もデートくらいしたことありますし。夕張さんも楽しんで来てください。」

 

「良かったね!夕張ちゃん!」

 

セラフは微笑みながら言った。既に艦娘からしてみたら「お母さん」的ポジションにいるのかもしれない。

 

「ドミナントさんはそれでよろしいですよね?」

 

「む…。…わかった。そのかわり、鎮守府の全員分だぞ?」

 

「約束は守ります。」

 

セラフとの契約が成立した。

 

「良かった…。…ところで、一つ良いかな…?」

 

「「「?」」」

 

ドミナントが言い、首を傾げる面々。

 

「いつまでいるんだよ!?もう帰ってくれ!スティグロ!」

 

「バレちゃった〜♪」

 

スティグロが当然のようにいるのだ。彼女はパラオ鎮守府所属である。

 

「いや、鎮守府の建て直しに貢献してくれたことは本当に感謝しているよ?だから、旅館の時何も言わなかったし…。でも、あれからもう一週間経ってるんだけど…。」

 

「毎日帰ってるよ?」

 

「…え?」

 

「1時間で帰れるし♪」

 

「…1時間?」

 

ドミナントは信じられないようだ。

 

「あぁ、彼女の艦のスピードは時速1200kmですから、丁度1時間で着きます。」

 

「艦娘の限界を超えてるじゃん…。…ビスマルクさんは毎日ここに来ていることを…。」

 

「知ってるよ♪自分は行けないことを物凄く悔やみながら行かせてくれる♪たまにはパラオに来てって言ってる♪」

 

「行ってあげたいけど…。色々用事があってさ。まぁ、当分は行かないことを伝えてくれ。」

 

ドミナントがそんなことを言った後、倉庫を後にする。

 

…………

3時間後

 

「うむ。涼しいな…。」

 

あれから、執務室や艦娘の各部屋にエアコンが取り付けられた。クーラーをしている。

 

「あっ!コインのこと忘れてた…。」

 

紅茶を飲んでいる最中にそのことを思い出したが…。

 

ピンポーン

 

「あっ、来たか。」

 

門のチャイムが鳴る。

 

「このチャイムって特殊なんだなぁ…。毎回音が変わっている気がする…。…気のせいかな…?」

 

ドミナントはそんなことを思いながら門へ行った。

 

…………

 

「やぁ、いらっしゃい。」

 

「まるゆ着任しました!」

 

「自分、あきつ丸であります!艦隊にお世話になります!」

 

まるゆとあきつ丸が元気よく挨拶をする。

 

「いらっしゃい。歓迎しよう。盛大にな。…あと、この鎮守府ではある決まりがある。」

 

「「「?」」」

 

「好きなように生きて、好きなように死ぬこと。誰のためでもなく。それが、ここのやり方だよ。」

 

ドミナントは笑顔で言った。

 

「もちろん、君たちを死なせたりはしない。守るから。」

 

「「「……。」」」

 

三人は顔を見合わせ、あきつ丸とまるゆがとても良い笑顔をした。

 

「ところで…。魔術師みたいな子の君は誰だい?召喚士を雇った覚えはないんだけど…。」

 

ドミナントがフードをかぶったままの子を見ると…。

 

「陸軍特種船『神州丸』です。」

 

「うん、聞いてないんだけど…。」

 

ドミナントは困惑した。この子は誰なんだろうって。




次回は神州丸についてから始まりそうですね。この子たちの件がひと段落したら、日常編へ行けそうです…。

登場人物紹介コーナー
まるゆ…元陸軍特殊部隊所属。潜水艦。艦娘としては最弱だが、対人相手は結構優れている。現在は第4佐世保に所属している。大和姉妹艦である武蔵に会うことを楽しみにしている。
あきつ丸…元陸軍特殊部隊所属。揚陸艦。艦娘としてのレベルは低いが、身体能力は艦娘本来の能力の90%以上まで出すことが出来る。陸軍にいた頃はまるゆ同様、結構なひどい生活をしていた。ドミナントを殺す任務を無理矢理させられていたが、会って話すことによって打ち解けることが出来た。
神州丸…次回参照。容姿は、くすんだ茶色の髪と瞳の持ち主。後ろ髪を二房の三つ編みにしている。目にハイライトが薄く、表情も人形のようなので外見だけでは、ジャック同様感情が非常に読みづらい。 服装は全体的に黒系で統一されているのだが、飾り気のない軍服姿だった同じ陸軍艦のあきつ丸と比べると、普通の女の子らしい格好をしている。さらに、その上に頭巾と一体になった外套をまとっている。 スカートはかなり短く、肉付きのよい脚がはっきりと見えている。

「長門コーナーだ。」
ガーーー…
「…なんだこれ?エアコン…?」
ガーーー…
「…いや、確かに一番の話のミソだったが…。生き物ですらないぞ…。」
ガーーー…
「…シュールだな。エアコンが椅子に座って、私が話しているこの構図…。」
ガーーー…
「…おぉ、風量が変わった…。なかなか心地が良いな。設定温度…。…!?0.1度単位で変えられるのか!?」
ピッ
カーーー…
「風向きも変えられるのだな。空気清浄機能も付いている…。他にもこんなに…。中々高性能だな。5万円は安すぎるんじゃないか…?」
ピッ
ガーーー…
「…て、なんだか電化製品の紹介みたいになっている。おそらく、筆者の面倒とネタ切れだろう。次回予告をする。」
ガーーー…
「次回…あっ、涼しい…。第208話『陸軍特殊船 神州丸』か。陸軍の艦娘が一気に増えるな。」


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208話 陸軍特殊船 神州丸

聞いてくださいよ時雨。
「なんだい?」
俺思ったんすよ。
「何を?」
この小説を続ける意味って奴ですよ。
「そこに行き着いちゃったんだ…。」
毎回書いても書いても終わらない物語。ネタ切れ感も否めないじゃないすか。
「筆者って、本気のマイナス思考の時はRDになるんだね。」
そこに注目しないで欲しいっすよ。まぁ、待ち続けている人がいるから当分は投稿するっすけど。
「そこが良いところだよ。」
……。瑞鶴じゃないとやり辛いっすね…。やめだやめ。気分がそれちゃった。
「で、結局何を言おうとしたの?」
えーっと。それはだな…。…読者がいる前では言えないな。
「つまり、読者に関連すること?」
いや、何…。筆者の文章力の向上のため、悪いところや誤字があったらしっかりと教えてほしいところ。
「なるほど。」
この前知ったんだけど…。『よくここら辺にいる』って字あるじゃん?
「あるね。」
前まで『良くここら辺にいる』って書いていたんだ…。それ間違いなんだよ…。『良く』は『よく』らしいんだ…。
「そこまで注目して見ないと思うよ…。」
他にも色々とね。つまらなくても、その理由を知りたいし。この物語もまだまだ初期段階。全貌を明らかにするには500話は必要だと思うし。
「そこまであるの…?」
だって、まだ色々残ってるよ?深海棲艦の戦う理由や空白の10世記に何があったのか。過去の艦娘たちはなんだったのか。ハスラー・ワンたちや神様の事情、なぜドミナントがこの世界に来たのか。なぜジナイーダたちがこの世界に来たのか。この世界はなんなのか。エンディングはどうなるのか。とか。
「よくよく見たら、たしかに…。全部何一つ解決出来てないね…。」
重要なキーワードは元帥と深海棲艦幹部たち。それと神様かな?
「…筆者さん…。」
どうしたんだい?
「…多分、重要なネタバレ…。」
ハッ!?瑞鶴じゃないから油断していた…。ま、まぁ、それは置いておいて、そろそろあらすじを頼むよ…。
「わ、わかった…。今回はこの人。」
「Buongiorno(こんにちは)!マエストラーレ級駆逐艦、長女のマエストラーレ、今日もがんばりま~す♪ さあ、始めましょっ!」
元気が良いなぁ〜。
「あらすじを頼みます。」
頼みます。
「ここはどこなのか知りたいけど〜…。まぁいいや。」
さっすが〜。
「筆者さん…。」
ん〜?
「確信犯だよね?」
……。

アラスジー
今日はみんなで海水浴したよっ!新しい水着を買ってみたよ!


…………

玄関

 

「えーっと…。」

 

「陸軍特殊船『神州丸』です。」

 

「いや二回も言わなくて良いから…。」

 

唐突。実に唐突。なぜなら、今回着任する艦娘はまるゆとあきつ丸のみ。だが、ここに聞いていない艦娘が一人多くいるのだ。

 

「……。」

 

ドミナントは考える。そして、結論が出た。

 

「敵意無さそうだから、一応上がって。お客様を待たせるのはまずいし…。」

 

「了解であります!」

 

「お願いします!」

 

「はい。」

 

そして、ドミナントは応接室へ一先ず案内するのだった。

 

…………

応接室

 

「お茶どうぞ…。」

 

ドミナントは三つお茶を差し出す。

 

「…で、君は誰なんだい?」

 

「…陸軍特殊船『神州…。」

 

「いや、そうじゃなくて…。うーん…。来る鎮守府間違えてない?」

 

「え?ここは第4佐世保ではないのか…?」

 

「いや、そうだけど…。俺の耳に入ってないんだけど…。」

 

「?元帥殿が任せておけと…。」

 

「……。…ちょぉっといいかな?少し電話してくる…。」

 

「…笑顔なのに、声に少し何か感じる…。」

 

恐らくそれは怒りだろう。

 

ガチャ

 

「て、何してんだ。お前ら。」

 

「い、いやー…。どんな子が来たのかなーって…。」

 

「僕も気になって…。」

 

「食べ物があるって聞いたっぽい。」

 

白露型の長女3人がいた。ドアから覗き見か立ち聞きをしようとしたのだろう。

 

「白露、時雨…あとで紹介するから…。それと夕立は食べ物でつられたな?残念だが、ここにはお茶しかない。」

 

「あれは何っぽい?」

 

「あれは茶菓子だ。…いや、あの子たちの分しかないよ?」

 

「ぽいぃ…。」

 

「残念がってもダメ。さぁ、行った行った。これから大事な話があるから。」

 

「ぽいぃ…。」

 

「…はぁ…。はい。飴あげるから。」

 

「やったっぽい!」

 

「あれ?僕たちのは…。」

 

「ほれ。好きなだけやるから、今はあっち行ってて…。」

 

ドミナントはポケットから飴を取り出し、白露たちにあげて帰ってもらった。

 

「さてと…。」

 

ドミナントは大本営に電話する。

 

『はい、こちら大本営ですが…。』

 

「こちら第4佐世保ですけど…。大和さん?少しいいですか?」

 

毎度お馴染み、大和が出る。

 

『…何かありましたか…?』

 

「こちらに聞いていない艦娘が一人いるんですけど…。」

 

『聞いていない艦娘?』

 

「神州丸と本人が言っておりますが…。」

 

『あれ?その件でしたら、元帥殿が…。』

 

「……。」

 

『…説明してないみたいですね…。』

 

「はい。」

 

『…すみません。少しお待ちしていただいても…?』

 

「あっ、はい。わかりました。」

 

ドミナントが耳に当てながら待っていたのがまずかった。

 

『元帥殿、少しお話があるんですが…。』

 

『何かね。大和くん。』

 

『たった今、第4佐世保鎮守府の提督であるドミナント大佐から連絡がありまして…。』

 

『あ…。』

 

説明…したんですよね?』

 

「あ…いや…その…。」

 

したんですよね…?』

 

『えーっと…。あの…。や、大和くん…?無表情で詰め寄るのはやめようか…?うん…。大和くん…?大和くん!?』

 

『あなたに任せた私が馬鹿でした!!』

 

バキバキバキ…!

 

『ギャァァァァ…!』

 

プッ…ツー、ツー、ツー、…。

 

「…今の、元帥の断末魔じゃ…。」

 

元帥の断末魔を聞いてしまったからだ。

 

「…まぁ、電話が来るまで自己紹介でもするか。」

 

ガチャ

 

ドミナントは気にした風もなく応接室に入った。

 

…………

 

「君がまるゆだよね?」

 

「はい。まるゆです。」

 

「君があきつ丸だね?」

 

「そうであります。」

 

「君が神州丸…?だね?」

 

「陸軍特殊船、神州丸です。」

 

「よし、覚えた。」

 

ドミナントが言う。

 

「じゃぁ、まるゆは誰でしょう。」

 

「まるゆじゃん。答え言ってんじゃん。」

 

「そんな…ハッ!?」

 

「可愛いなぁもう…。」

 

ドミナントがまるゆの頭をわしゃわしゃ撫でる。一方、まるゆは本当に気づかなかったらしく、撫でられながら顔を赤くしていた。そこに…。

 

ブー、ブー、ブー…

 

電話が鳴る。

 

「はい。こちらドミナント…。」

 

『ド、ドミナント君か…?』

 

「この声は元帥殿。」

 

『いや、この度は申し訳ない…。私の完全なミスだ…。今から神州丸がどうしてそこに所属するのか説明する…。』

 

「?良く聞こえないのですが…。」

 

『今大和くんから隠れていてな…。バックブリーカー(背骨折り)をされそうになったが、自力で脱出。そして、今草むらの中というわけだ…。』

 

「そうなんですか…。」

 

『今から…。!』

 

「?どうしました?」

 

『…いや、大丈夫そうだ…。今大和くんが見えてな…。おそらく気づかれていない…。』

 

『誰が気づいていないんですか?』

 

『や、大和くん…。』

 

『今電話している相手はドミナント大佐ですか?』

 

『うむ。』

 

『はぁ…。仕方ありませんね。しっかりと経緯を説明させてあげてください…。』

 

『う、うむ…。』

 

どうやら、あちらの方はなんとかなったみたいだ。

 

『それでは説明しよう。君たちが陸軍基地を破壊したのは覚えているな?』

 

「はい。」

 

『その昨日、新たな艦娘「神州丸」が発見された。君たちが破壊した日に丁度運ばれていてな…。』

 

「…もしかして…。」

 

『そう、君たちが跡形もなく破壊したおかげで、神州丸の行き場がなくなってしまった。元の鎮守府に戻ることも出来ず、可哀想だったのでな…。せめて同じ陸軍出身の艦娘が所属する、君たちの鎮守府に所属させてあげようと…。信用できる鎮守府全部に聞いてみたが、資材や部屋の関係で受け入れてくれなくてな…。』

 

「なるほど…。」

 

ドミナントが神州丸を見る。今まで気がつかなかったが、よくよく見ると瞳が震えていた。受け入れてくれないのだろうか、帰らされてしまうのではないかと思っているのだろう。

 

「分かりました。話を聞きたかっただけです。では、今日からこちらの所属で良いんですよね?」

 

『受け入れてくれるのならありがたい。』

 

「はい。それでは…。」

 

『礼を言う。』

 

ドミナントは電話を切った。

 

「では、そこの3人。鎮守府の案内をするからついて来て。」

 

「…本艦を受け入れてくれますか…?」

 

「まぁ、半分俺たちのせいだしね。それに、新しい子は大歓迎だよ。逆に、仲良くしてあげてくれ。」

 

「…ありがとう。」

 

まるゆとあきつ丸が笑顔で神州丸を見た。彼女たちも神州丸と同じ陸軍で作られた艦娘なので、受け入れてくれて良かったと思っているのだろう。

 

…………

執務室

 

「まずはここ。俺の仕事場。」

 

「涼しいですね。」

 

「アレはなんでありますか?」

 

「気持ちが良い…。」

 

「アレはエアコン。陸軍にはなかったのか…?ちなみに、さっきの部屋は応接室ね。」

 

…………

図書室

 

「ここは図書室。最近出来たばかり。沢山の本が無料で読める。欲しい本があったら、ここの箱の中に入れてくれ。ただ、あまりにぶっ飛んだ本は受け付けないよ。…例えばこれ。」

 

「?BL本…?とはなんでしょうか?」

 

「ブラックロード…?」

 

「ラストブレイカー?」

 

「純粋すぎて眩しい…。てか、かっこいい。」

 

…………

娯楽室

 

「ここは娯楽室。暇な艦娘は大抵自室かここか食堂にいる。今は遠征や警備、主任たちの暇潰しに駆り出されたか、駆り出されないように自室にいるからいないけど…。ここに置いてあるものは自由に使って良い。」

 

「テレビゲームであります!そ、そんなものを自由に…?」

 

「この椅子…。まるゆたちには使わせてくれなかった物…使って良いんですか…?」

 

「将棋やオセロ…双六まで…。」

 

「自由に使って良い。そのかわり、順番や他の人のことも考えてね?」

 

…………

提督自室

 

「ここは俺の部屋。俺が執務室や娯楽室にいない場合はここに来てくれ。」

 

「隊長の部屋…?」

 

「将校…提督殿の部屋でありますね。」

 

「一端の艦娘は立ち入れぬ場所…。」

 

「いや?そうでもないよ?」

 

「「「?」」」

 

ガチャ

 

「吹雪、挨拶して。」

 

「ふぁっ!?ど、どうしていることが…?」

 

「…ベッド、直しておけよ。」

 

吹雪がドミナントのベッドでバフンバフン跳ねていたのだ。

 

「こ、こんにちは。吹雪です。」

 

「まるゆです。よろしくお願いします。」

 

「陸軍揚陸艦あきつ丸であります。」

 

「陸軍特殊船、神州丸です。」

 

4人がそれぞれ挨拶する。

 

「まぁこんな風に、荒らしたりしなければ出入り自由。なるべくして欲しくないけど、ベッドに入ったりも出来る。」

 

「「「……。」」」

 

「だって…!」

 

吹雪は冷たい目で3人に見られた。

 

…………

食堂

 

「で、こっちの棟のここは食堂。時間が決まっているから、後で見て。」

 

「美味しそうな匂いがします。」

 

「まんじゅでありますか?」

 

「……。」

 

「神州丸、まだ何も食べていないのはわかるけど、よだれ拭いて…。君に似合わないよ…。」

 

…………

艦娘寮

 

「ここが君たちの部屋。荷物を置いたら次行くよ。」

 

「広いですね。」

 

「エアコン?もあるであります…。」

 

「嬉しい…。」

 

…………

教室

 

「ここは今は大半の艦娘が使わないけど、これから君たちが使うことになるから紹介しておくね?」

 

「ここは…?」

 

「教室でありますね。」

 

「一応綺麗になってる…。」

 

「…まぁ教師は怖いけど、良く話しかけてあげて?ああ見えて艦娘のような子供大好きだかr…。」

 

ヒュンッ!

 

ドガッ!

 

「誰が大好きだと?」

 

「ぐへぇ…。ジ、ジナイーダ…。聞こえて…いたの…か…。」

 

ジナイーダが瞬間移動の如き速さで溝に蹴りを入れた。

 

「丁度暇だから見回りをしていてな。…ん?あきつ丸か。」

 

「ジナイーダ殿!」

 

倒れるドミナントをまるゆと神州丸が心配している。

 

「ここに所属だったな。どうだ?ここは。」

 

「陸軍と比べればとても良いであります!」

 

「…そこと比べられたらな…。」

 

ジナイーダたちは親しい会話をする。

 

「む?そこの二人もここに所属するのか。…私はジナイーダだ。演習の教官を務めたり、教師をしている。これからよろしく頼む。」

 

「まるゆです。」

 

「神州丸です。」

 

一応挨拶をする。

 

「と、言うわけだ。君たちの一番良く知る先生になる。」

 

「英雄であります。自分を助けてくれた人であります。」

 

「「へ、へぇ…。」」

 

ドミナントとあきつ丸は言うが、さっきの蹴りを見て半信半疑する二人だった。

 

…………

演習場

 

「外に出て、ここは演習場。今もやってるね。演習。君たちは明日からここと教室を行き来するから。」

 

「あのロボットはなんでしょうか…。」

 

「恐ろしい性能であります…。」

 

「……。」

 

「そのロボットが主任って言って、君たちの教官になる人。恐ろしく強いし、変人だから気をつけて。今は演習中だから、邪魔しないようにさっさと行こう。」

 

「「「……。」」」

 

…………

弓道場

 

「ここは結構前からある。航空系の艦娘はよくここにいるよ。…君たちには関係なさそ…。」

 

「航空系…。面白そうでありますね。」

 

「あきつ丸は興味アリ…か。あとで赤城とかに言っておくか。」

 

…………

養殖場

 

「ここは養殖場。頼めば新鮮な魚が食べられる。多摩のお気に入りの場所だな。」

 

「魚…。」

 

「…神州丸が食べたそうだから、今日の晩ご飯は魚に決定〜。」

 

…………

鎮守府裏

 

「久々にここに来たけど…。カオス度が増してるな…。畑…。」

 

「なにか飛んでいるように見えるんですけど…。」

 

「虫!?」

 

「シロアリ…?」

 

「まぁ、今度調べておこう…。今は立ち入ることは出来んな…。」

 

…………

資材置き場

 

「ここは資材置き場だ。」

 

「たくさんありますね。」

 

「あと8年は何もしなくても暮らせそうでありますね。」

 

「すごい…。」

 

…………

倉庫

 

「ここは倉庫だ。夕張やセラフがいる。セントエルモもいるな。」

 

「セラフさんが?」

 

「セラフ殿が?」

 

「…?」

 

「神州丸は知らないか…。セラフはここのオアシス。表情も豊かで、優しいよ。セントエルモは他の鎮守府にも秘密にしているから内緒だよ。ちなみに、そこの横道をまっすぐ行くと、山の中に入れるトンネルがある。そこをそのまま行くと飛行場に出るよ。」

 

…………

甘味処 間宮

 

「ここは間宮さんのお店。お金があれば、ここでデザートを食べることも出来るよ。夜はお酒も飲めるところ。昼間は間宮さんで、夜は伊良子食堂と居酒屋鳳翔。」

 

「甘いもの…。」

 

「まんじゅ…。」

 

「羊羹…。」

 

「…あとでね。」

 

…………

 

「それくらいかなぁ…?」

 

ドミナントが3人を引き連れて外を歩く。

 

「あれ?あれはなんですか?」

 

「どれ?」

 

まるゆが反応して、ドミナントが見る。少し遠くの砂浜に、店の前にいる艦娘たちの行列だ。

 

「どうしたんだい?」

 

「あっ、提督。」

 

古鷹が反応した。

 

「ここに新しいお店がオープンするそうです。」

 

「新しい店…?」

 

「浜茶屋…?だそうです。」

 

「浜茶屋…。」

 

「あっ、でもオープンするのは明日です。」

 

「?なら、どうして今ここに?コミケじゃあるまいし…。」

 

「こみけ…?明日オープンするので、アルバイトの面接です。」

 

「あー…。なるほど。」

 

察しの通り、ここはジャックが新たにオープンする店である。間宮さんに喧嘩を売っているのだろうか…?

 

「時給1500円なので、ほぼ全員来てます。」

 

「へぇ〜。」

 

ドミナントが行列を見る。確かに、100人はいそうだ。

 

「でも、間宮さんがいるからなぁ…。ジャックー。」

 

ドミナントが中に入る。

 

「?どうした?」

 

「どうした?じゃなくて…。間宮さんに言った?」

 

「言ったぞ?…食品のライバル店になると思ったのか?」

 

「ああ。」

 

「あそこの店との共同の店だ。売り上げも五分五分で分ける契約となっている。私が管理して、食品などの調達場はあの店だ。」

 

「ヘェ〜。」

 

ドミナントは安心した。同じ鎮守府の所属同士で争いはして欲しくないからだ。

 

「明日か…。じゃ、俺明日来るよ。暇だし。」

 

「そうか…。メニューを見て驚くな。」

 

「はいはい。驚かんよ。」

 

ドミナントはそんなことを言って出て行った。

 

「あれ?あきつ丸たちは…。」

 

ドミナントが辺りを見ると…。

 

キャッキャ

 

海で遊んでいた。

 

「…そうだな。彼女たちも艦娘なんだ。海が好きなんだろう。」

 

ドミナントは海の水で濡れる3人を口元を緩ませながら見ていた。

 

「今まで辛い思いをしてきた分、取り戻させてあげないとね。」

 

そして、ドミナントはスイカを準備するのだった。




スイカ割り用のスイカです。

登場人物紹介コーナー
まるゆ…最弱の艦娘である。提督のことを「隊長」と呼ぶ。もぐらに何か関連があるらしいが…?
あきつ丸…艦娘レベルはまるゆと同様18。艦娘としての技術や攻撃は弱いが、深海棲艦以外の対人戦などの戦闘センスは高い。
神州丸…一人称は、基本的に「本艦」。また、提督のことは「提督殿」と呼ぶが、艦娘たちに対しては「貴様」と呼んでいる。言動はあきつ丸と同様の堅苦しい口調。あきつ丸のほうが彼女の影響を受けていると思われる。また、何を考えているのかわからない不思議ちゃんキャラ。艦娘としての初々しさを感じさせるあきつ丸とは反対に、常に淡々と冷静で威厳があり、武士を思わせるような凛々しさがある。懐も広い。一方で甘味が好きでミルクキャラメルを頬張って幸せを噛み締めたり、落ちる夕日に見惚れるなど、外見相応の女の子らしい一面も見せる。 提督に対しては軍人というよりも武士のように仕えるものとして信頼と忠誠を向けている様子。少し無防備。あるいは信頼している故か。 夕食に関しては、日向や伊勢が来ることで、飲み会へと突入する。ドミナントが何て言うか…。本人が大酒飲みなのか、日向たちに飲まされたのかは定かではないが、かなり酔っ払う様子が見受けられる。だが、秘書艦としての立場を忘れない点は、ある意味さすがといえる。 ちなみに、秘匿名としての「G.L.(ゴッドランド)」をかなり気に入っている。また秘書艦時には深夜は鎮守府の見回りをしている。

「長門コーナーだ。」
「今回は本艦のようだ。」
「神州丸か。どうだ?ここは。」
「中々良いところだな…。」
「上から目線なのは気になるが、訓練さえ終われば中々良いところだぞ。」
「訓練?」
「ああ。まず誰もが最初逃げ出したくなる。…まぁ、逃げ出しても一歩出た鎮守府から出た瞬間に連れ戻されるが…。」
「それほどキツイのか…。」
「キツイどころじゃない…。ペイント弾で染まっても続行だからな…。」
「……。」
「ところで、色々と紹介してくれ。」
「紹介?」
「自身の史実などだ。」
「…そこまで説明するほどでは無いのだが…。良いだろう。陸軍が計画した上陸作戦用の船として1933年4月から建造が開始された。1935年2月に「神州丸」と命名され同年末竣工し、細かい改装や訓練を行った。」
「このコーナーで年や月を言うのは初めてだな…。」
「そこなのか…?そして1937年7月、盧溝橋事件が勃発。これが本艦の初陣となる。以後、1940年の仏印進駐作戦等、様々な揚陸作戦に従事した。」
「よく分からないな…。」
「聞いておいてそれか…。1941年12月、ついに大東亜戦争が始まった。本艦はマレー作戦、ついで蘭印作戦に従事した。」
「カレー作戦だと!?」
「貴様は何を聞いている…?1942年2月、スラバヤ沖海戦が始まった。翌日、スラバヤ沖海戦で取り逃がした「ヒューストン」、「パース」らとの間でバタビア沖海戦が始まった。この時、ABDA艦隊に対して最上が発射した魚雷が何と本艦ら陸軍揚陸部隊各船に命中、沈没してしまったんだ。」
「最上ェ…。」
「今はもう良い。許している。その後約1年の浮揚修理を経て1943年5月に本土に帰還。7月~10月にかけて、生まれ故郷の播磨造船所で修繕・調整工事を受けた。」
「なるほど。」
「復帰後は各地への輸送作戦に従事した。」
「続けられるのは良いな。」
「最期は1945年1月、マタ40船団の一員としてフィリピン・サンフェルナンドを出港し台湾・高雄への航海中、バルゼー台風を回避するため中国大陸に針路を向けたところを発見され、約50機の編隊による空爆を受け航行不能となり放棄された。なお、マタ40船団の残りの船は高雄へ向かうことができた。」
「犠牲になったのか…。」
「それくらいだ。」
「そうか…。まぁ、これを読んでも大半の人間は理解できないと思うがな。」
「言うな。それを…。」
「そんなことを言ったらこのコーナー自体廃止になるから言わないが…。」
「口に出ていたぞ…?」
「おそらく気のせいだ。次回予告を頼む。」
「気のせいなのか…?次回予告か。」
「ああ。」
「次回、フタマルキュー、『幻の第49憲兵隊』か…。…憲兵だと!?」
「幻…?」
「し、知らないのか…!?あそこは…。」


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第49憲兵隊編
209話 幻の第49憲兵隊


そろそろネタ切れかも…。
「ネタが切れるとどうなるの?」
これからどうするか分からなくなる…。
「そうなんだ。」
実は、もう既に重要な展開は決まっているんだけど…。
「?」
順番をどうするか…。
「順番が変わるとどうなるの?」
辻褄が合わなくなったり、変になる…。
「大変だね…。」
そんなんだよ…。で、今回のゲストは?
「この人だね。」
「ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。ユーとお呼びください。」
ユーですね。
「ユー…。これから日本艦になるんだよね。」
まぁいずれはね。
「…ここで何をすればよろしいのですか?」
あらすじであります。
「お願いします。」
今回はサクサク進むー。
「ユー、間違えずに頑張ります。」
間違っても全然いいよー。
「そうだよ。」
「… Danke(ありがとう).」

アラスジ
ユーは改造をしません。というより、この姿がここに一番馴染むのです。新しい仲間が増えた。…仲良くしたい。


…………

第4佐世保 砂浜

 

「で、これからお風呂の説明だけど…。」

 

「「「?」」」

 

現在、スイカ割りを楽しみ、まるゆたちとスイカを食べながらドミナントは砂浜にいる。

 

「お風呂の説明は流石の俺も出来ないから、お風呂は皐月に聞いてくれ。」

 

「なんでボク!?」

 

「昨日わかってくれるって言ったでしょー?」

 

「そ、そうだけど…。」

 

「忠誠心のある皐月には出来ると信じてるぞー!」

 

「任せて!」

 

…意外と皐月もチョロイんだな…。

 

ドミナントは自信満々の目をしている皐月を見て呟いた。ちなみに、まるゆたちはドミナントの最後の言葉を聞いていて、微妙な顔をしていた。

 

「さて…。最後のスイカを割りますか。」

 

ドミナントがスイカをビニールシートの上にのせる。

 

「じゃ、先ずは神州丸から行こうか。」

 

「良いだろう…。次こそは割って見せよう。」

 

神州丸は目隠しをして、竹刀を持ってうろうろする。

 

「右であります!右!」

 

「もう少し後ろです。」

 

「そこだ!やれ!」

 

艦娘たちは並びながら、やりたそうに見ているだけだ。誰もが羨ましく思っている。だが今より後のことを考え、なんとか振り払っているのだ。

 

「とぉっ!」

 

神州丸が竹刀を振るが…。

 

バシッ!

 

外した。

 

「…外した…。」

 

神州丸は目隠しを取り、残念そうな顔をする。

 

「…隊長が嘘を言っちゃうから…。」

 

「いや、ここから見ると当たるように見えて…。」

 

ドミナントが悪びれる。

 

「じゃ、次はまるゆでありますね。」

 

「頼むぞ。」

 

「まるゆ、がんばりま〜す。」

 

まるゆが目隠しして、回ってうろうろする。

 

「そこだー!」

 

「そこであります!」

 

「行けっ!」

 

ドミナントたちが言い…。

 

「えいっ!!」

 

まるゆが竹刀を振るが…。

 

バチィッ!

 

「弾いた!?」

 

「竹刀がスイカに負けたであります!」

 

「いや、と言うより…。」

 

まるゆが思いっきりスイカに当てたが、スイカは無傷。

 

……まるゆの力が弱いのか…。

 

……まるゆの力が弱いのでありますね…。

 

……まるゆが弱いのか…。

 

全員が思った。どうやら、ここでのスイカ割りは艦娘力が問われるみたいだ。

 

「じゃ、次はあきつ丸ね。」

 

「行くであります!」

 

「がんばれ〜。」

 

「陸軍の意地を見せてやれ。」

 

あきつ丸は目隠しをして(ry

 

「どこでありますか…。」

 

だが、あきつ丸は他とは違うようだ。

 

……心の目を研ぎ澄ますであります…。

 

あきつ丸は集中して、周りの声が聞こえなくなる。

 

……例え目が見えなくても、気配で見る…!

 

「ここであります!」

 

バシィ!

 

「いってぇぇぇ!」

 

あきつ丸が目隠しを取り、驚く。

 

「将…提督殿!?」

 

ドミナントの頭にクリーンヒットしたのだ。

 

「こらー!あきつ丸ー!」

 

「わざとじゃないであります〜!」

 

逃げるあきつ丸にドミナントが追う。まるゆたちは笑っていた。

 

…………

 

「たく、今度は気をつけろよ〜?」

 

「はいであります。」

 

ドミナントは次は少し遠くにスイカを置く。そして、あきつ丸がうろうろする。

 

……次は大丈夫であります。将…提督殿の気配は分かったでありますから…。

 

あきつ丸は再度気配で感じる。

 

……見えたっ!

 

「ここであります!」

 

あきつ丸が竹刀を振ったが…。

 

バッ…パシィ!

 

「し、真剣白刃取り!?というより、誰?」

 

ドミナントの声がして…。

 

「?」

 

あきつ丸が目隠しをとる。するとそこにいたのは…。

 

ズルリ…

 

「白刃取りならず。」

 

「け、憲兵殿…!」

 

「「「!?」」」

 

砂の中から現れたのは『憲兵』と書かれた面頬を被った憲兵だ。

 

「侵入者だ!」

 

「逃しません!」

 

「誰だ?」

 

「誰かな〜?」

 

「はえーな…。お前ら…。」

 

一瞬にして鎮守府の最強格が集う。つまり、AC勢だ。あきつ丸を守る形だ。

 

……敵だった時は恐ろしいでありますが…。守ってくれると思うととても安心するであります…。

 

そんなことをあきつ丸が思う。そして、ジナイーダがナイフを取り出し、抑えようとしたが…。

 

ヒュンッ!

 

パシィ!

 

「!?」

 

「……。」

 

その憲兵が、ジナイーダの持っていたナイフを蹴り飛ばしたのだ。ナイフが宙を舞う。

 

「…ドーモ、キョウカン=サン。憲兵です。」

 

「…私はジナイーダだ。」

 

二人が挨拶を交わした途端…。

 

ヒュンッ!

 

バシィ!

 

「…戦場を知っているな…。」

 

「……。」

 

蹴りを喰らわせようとしたが、ジナイーダが手でガードした。

 

「ジナイーダさん!」

 

セラフが加勢しようとしたが…。

 

ヒュルルルル…!バチィ!!

 

「っ!?」

 

鞭が草むらから飛び出てセラフの手に巻かれる。

 

「痛いですね…!姿を見せてください!」

 

グンッ!

 

その草むらに向かって言った後、魚を釣るように引っ張った。

 

ガサッ!

 

「今…!」

 

セラフがそのまま引っ張り、真っ赤な被る用のマスクをした憲兵が見えた。運動の法則を考えて殴ろうとしたが…。

 

ヒュルルルル…

 

「!?鞭が…!」

 

勝手に巻きつかれた鞭が解け、その憲兵が綺麗に着地して、鞭を構える。

 

「私が相手になる。」

 

ジャックが二人の加勢をしようとしたが…。

 

シュー…コー…

 

『……。』

 

「!」

 

目の前にガスマスクをした憲兵が現れた。

 

ヒュンッ!

 

パシッ!

 

グンッ!

 

サッ!

 

「…やるな。」

 

シュー…コー…

 

『……。』

 

ガスマスクが体術を繰り出し、ジャックが受け止める。逆に、ジャックの攻撃も避け、受け止める。同じくらいの強さだ。半ば争いが起こっているところに…。

 

「待て!何勝手に争っている!」

 

「?」

 

どこかから声が聞こえて、憲兵側の手が止まる。

 

「…その分野の結果を伝えるだけだろうが。何を勝手に戦っている。」

 

「お前たちは敵なのか?」

 

ドミナントが言うが…。

 

「大丈夫であります。将…提督殿。」

 

あきつ丸が言う。艦娘たちと同じく、傍観していた。

 

「?どうして?」

 

「彼らのことを知っているであります。」

 

あきつ丸が言い、全員が警戒を解除する。

 

「早く言え。」

 

ポカッ

 

「へへへ…。」

 

ジナイーダが軽く叩く。痛くもない。どつくの方が正しいか…?

 

「で、誰なんですか?あなた方は。」

 

セラフが聞く。

 

「この人たちは多分、審査に来た人です。」

 

「「「審査?」」」

 

まるゆが言い、不思議に思う。

 

「ここはまだだったのか。」

 

神州丸が呟いた。

 

「審査ってなんだい?」

 

「前は陸軍にいたけど、今は色々あって海軍側の憲兵であります。」

 

「海軍側?」

 

「憲兵は主に2種類いるのであります。昔は陸軍しかいなかったのでありますが、今は別れているのであります。」

 

「どうしてですか?」

 

「艦娘たちが現れて、提督が管理することになったでありますよね?でも、酷いことをする提督もいるのであります。だから、海軍側の憲兵は提督を取り締まり、陸軍側の憲兵はその補佐みたいなものであります。」

 

「補佐…。随分差別されてるね〜。」

 

「話が逸れたでありますが、審査についてでありますね。どこかの艦娘からSOSが送られたら出動するのであります。」

 

「SOS?」

 

「皆の思いを秘めて、気づかれないように脱走した艦娘が直接第1佐世保鎮守府へ行くか、手紙を出すと憲兵が出動するのであります。そして、その憲兵たちは全ての鎮守府を周って一定基準を下回った提督を取り締まるのであります。」

 

「第1佐世保…?」

 

「憲兵の総本山であります。」

 

「マジかよ…。」

 

あきつ丸が説明してくれた。

 

「で、この人たちは?」

 

「この人たちは滅多に…。いや、記録にも記されていない憲兵たちであります。」

 

「へぇ〜。」

 

「記録に記されていない、幻の第49憲兵隊であります…。」

 

「何で49って分かるの?」

 

「噂であります。縁起の悪い数字でありますから、表では48までなのであります。でも、明らかにいないはずの憲兵の目撃情報があったりするのでありますから、噂になっているのでありましたが…。本当にいるとは…。」

 

あきつ丸がもう一度見ようとしたが…。

 

「「「いない!?」」」

 

いつの間にかいないのだ。

 

「任せろ。」

 

ジナイーダが気配で感知しようとしたが…。

 

「…?見つからん…。」

 

見つけられないのだ。

 

……最近セラフと戦ったばかりだから感知能力はいつもと同じくらいなはずだが…。まさか、これほどまでに気配を消すことを可能とするとは…。

 

ジナイーダが思う。すると…。

 

「インストラクション・ワンクリアだ。他の者は外だ。」

 

「「「!?」」」

 

いつの間にか背後にいた面頬に『憲兵』と書かれた憲兵。

 

「出入り口で待っている。」

 

「ちょ、待…。」

 

ヒュッ!

 

その憲兵は一瞬にして消えた。

 

「…ふむ…。奴らは気になるが、待たせているのでな。」

 

「出入り口…つまり、門ですか。」

 

「じゃ、俺は演習場に戻って、今日はもう終わりにするね〜。」

 

ジャックが店の中に戻り、主任が演習場へ向かう。

 

「…ジナイーダ?」

 

だが、ジナイーダは止まったまま動かない。

 

「…気配を察知できなかった…。この世界には、まだまだ私より強いかもしれない奴がいるんだな。」

 

「…ま、井の中の蛙ってやつだよ。まだまだジナイーダより強いやつはいる。勉強になったじゃん。そいつらより強くなれば良いんだよ。ジナイーダなら出来ると思うし。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントが言い、ジナイーダが呟いた。

 

「それより、行こう?ジナイーダも。」

 

「…分かった。」

 

そして、ドミナントたちとあきつ丸たちが門へ行く。

 

…………

 

「勢ぞろいだな。てか、一人増えてるね。鬼の面頬した憲兵が。」

 

「さっきの人たちですね。」

 

「なるほどな。」

 

先ず、安全性を考えてドミナントたち実力派が前に出る。あきつ丸たちは鎮守府の中で待機だ。

 

「…どうぞ。」

 

ギィ…

 

ドミナントが門を開ける。

 

「ありがとう。」

 

鬼の面頬憲兵が言い、他の憲兵も門をくぐる。

 

「…あの…。安全性を考えて、まず敵意があるかどうか問いたいんですけど…。」

 

「…なるほど。」

 

「…敵ですか?」

 

「いや?敵じゃないぞ。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントが困った顔をする。

 

「まぁ、一応敵意がないのなら歓迎します。応接室でお茶でも…。」

 

ドミナントが慣れた感じで案内しようとすると…。

 

「…良い。」

 

鬼の面頬憲兵が言った。

 

「合格。憲兵=サンの記録も見たけど、文句なしの合格。」

 

「えっ?」

 

ドミナントが首を傾げる。

 

「実は、2日前から憲兵=サンに偵察させていたけど、悪い鎮守府ではないことが分かった。実際に自分たちが見てから最終判断をするんだよ。で、合格。昨日踊っていた記録もあるし。楽しそうな鎮守府だね。艦娘に酷いことをせず逆に慰めるために元気付けようとしたり、艦娘にプレゼントまでされるくらい思われていて、とても良い鎮守府だと分かった。それに自分たちのように外から来た人にも一応丁寧に扱う。戦闘になりかけたけど、主にこちらが悪いから減点なし。」

 

「そ、そうですか…。」

 

……踊っていたところも見られていたのか…。てか、皐月と二人で紅茶飲んだことも知ってるんだよね…。紅茶好きなのも知られたのかな?

 

ドミナントは途中から良く聞いていない。

 

「それと実は一つの鎮守府に3日間滞在しなくちゃいけなくて、その間にバレてしまったから正式に泊めてくれない?」

 

「あっ、はい。…はい?」

 

「ありがとう!実はずっと野宿で疲れていて…。それに、ご飯も支給されたレーションだから食べ飽きていて…。仲間の一人は初日にレーション投げ捨てたし…。」

 

「あんなものただの邪悪な食べ物だ。」

 

「ほらね?」

 

「ほらね?って…。…ジナイーダはどう思う?」

 

「…敵でなく、一晩で良いのならな。だが、私たちに戦闘を仕掛けたことを忘れるな。」

 

「えっ。あっ、うん。ごめんなさい。」

 

鬼の面頬憲兵はすぐに謝った。

 

……悪い奴ではなさそうだな。

 

ドミナントはそう思い、泊めてあげることにした。それに、ここで断ったらむしろ面倒ごとに大きく巻き込まれそうな気がしたからだ。




泊めなかったら色々面倒です。妙な亀裂も入り、よく分からないことになります。

登場人物紹介コーナー
鬼の面頬憲兵…まさかの本編登場。他の憲兵のリーダー格。というより、他の憲兵が憲兵になる前に積極的に声をかけたのがこの憲兵。だからこそ、他の憲兵の繋がりの要であり、友人感覚で見られている。武器は刀。深海棲艦を倒すことが出来る能力を兼ね備えている。
憲兵=サン…まさかの本編登場。偵察や隠密活動を得意とする。この世界でも十分に強い。ACになって勝率が五分五分ほど。深海棲艦を倒すことが出来る能力を兼ね備えている。
真っ赤なマスクをした憲兵…まさかの本編登場。ある街の清浄委員の一人。首席がいなくなったところでこちらに来た。強さも憲兵=サンと同じ。鞭を巧みに操る。深海棲艦を倒すことが出来る能力を兼ね備えている。
ガスマスクをした憲兵…まさかの本編登場。名前はあるゲームに出てくるHANK。ヘリコプターに乗っている時にこちらに来た。強さも憲兵=サンと同じ。体術や小型武器を得意とする。深海棲艦を倒すことが出来る能力を兼ね備えている。

「長門コーナーだ。」
「今回は自分だね。」
「そうだな。…ところで、本編に出て来てどう思っている?」
「そうだな…。実のところ、番外編のような形で出てくるような気がしたから驚いている。」
「他の仲間たちとは上手くやっているのか?」
「うーむ…。難しい質問…。普段は意見が合わないけど、いざとなるとものすごい団結力を見せる…はず。」
「はず?」
「今まで、そのいざとなる時がなかったから…。」
「…?つまり…。」
「個々が強すぎて、それぞれ何でも解決しちゃう感じ。」
「敵にならなくて良かったな。」
「まぁね…。というより自分、他の憲兵より強さで差を開いちゃってピッタリの仲間がいなくてさ…。その時は一人任務をずっとしていたよ。仲間は欲しかったけど、全員と息が合わなくて…。結局、一人ぼっちでね。」
「なぜ、仲間が欲しかったんだ?」
「そりゃ一緒に笑ったり、美味いものを食べたり、自分がやったことを語り合う人が欲しかったからだよ。」
「…いなかったのか…。」
「…自分が笑える内容と、相手が笑える内容が合わないし。美味いものを食べても、強さ的に意見を合わせようとしてくるし。自分がやったことを語り合っても、誰もが口を揃えて“すごい”しか言わない。失敗談も誰もがほぼ失敗する内容だから、笑い話にもならないし…。」
「…なるほどな。」
「そんな時、ふと森を歩きたくなって、歩いているとまず最初にガスマスクをした彼に出会った。」
「ほう。」
「第一声が、“これも何かの罠か…。お前も感染者なのか?”って言われてね。笑っちゃったよ。それで、よくよく話を聞くと彼は別の世界から来たみたいでね。」
「別の世界か。」
「話を聞いて、強いことがわかってね。特別に強さのみで憲兵にさせたんだよ。」
「させた…?」
「そう。当時、教官に言ってね。そのかわり、何かしたら自分が責任を持つように言われたけどね…。」
「そうなのか。」
「で、また森へ行きたい衝動に駆られて、行ってみると真っ赤な服を着た彼に出会ってね。彼も第一声がおかしくてさ。小鳥を見た途端、“邪悪な生き物がいるぞっ!”って、めちゃくちゃ怖がっててさ。大の人間が小鳥に怯えていたところを見て、腹を抱えて笑っちゃったよ。」
「そりゃ…構図的にシュールだな。」
「で、話を聞くと別の世界から来たって言うじゃん。笑っていた時に鞭で攻撃を仕掛けてきたから、刀で止めたとき分かったんだよ。強いって。」
「そうなのか。」
「そこで、半ば無理矢理憲兵にした。もちろん、条件は同じで。」
「無理矢理…。」
「最後に、また森の衝動に駆られて行ってみると彼がいた。最初から面頬をしていて、同じ所属の人かと思ったら記録なし。誠実なところも含めて、彼は正式に憲兵になったんだよ。」
「ほう。」
「これが、この部隊の全貌。」
「なるほどな。」
「良い暇つぶしにはなっただろう?」
「まぁ…な。」
「では、次回予告。次回、第210話『他の世界の者』…。つまり、自分たちか。」
「そのようだな。」


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210話 他の世界の者

暑い夏だ…。
「夏は暑いね。」
いや、今日も暑くて朝早くに起きちゃってさ…。
「大変だね。」
そうなんだよ…。最近食欲もなくてさ…。
「夏バテじゃない?」
夏バテか…。皆さんも、夏バテなどに気をつけて…。
「壁に向かって話してる…。」
まぁ、そんなことは置いておいて、今回のゲストを紹介してくれ。
「うん。この人だよ。」
「Buongiorn(こんにちは)!Giuseppe Garibaldi、配置についてるぜ。」
ガリバルディですね。男勝りな…。
「おん?誰だ?」
「ここのマスター。」
フハハハハ…!よく来たな…!さぁ、我を再起不能にして見せろ…!…て、違うじゃん。
「なぁにぃ!?貴様が…!貴様が…!」
「その前に、前座である僕が相手だよ。」
あれー…?
「貴様は…!数多の戦闘士を再起不能にしてきたシグレン…!」
可愛い名前だな。
「伝説の勇者と知られるガリバー、僕が相手だよ。」
ガリバー巨大化しそう…。
「と、そんな遊びはさておいて、そろそろあらすじをしてくれると嬉しいな。」
「おう、そうだな。」
ツッコミをいれた筆者が馬鹿みたい…。

アラスジー…だったか?
結構前に新しい船が来た。奴ら、トラックの方から来たと知った。話を聞くと一応提督を失っているらしい。…どうしてこんな不幸な奴らばかり、追い詰めるようにここに閉じ込めておくんだよ…。…人間の提督もたまにこいしがったりするんだよなぁ。


…………

第2食堂

 

「えー…。こんばんは、あきつ丸、まるゆ、神州丸の歓迎会を始めたいと思います。それと、現在は不在ですが、あと3人の憲兵さんたちも来ています。以上です。」

 

「何か他に言う言葉はないのか?」

 

ジナイーダの辛辣な言葉を軽く受け流しつつ、ドミナントが席に座る。艦娘たちは意味が不明で歓声もない。騒がしい筈だが、面接の件や日焼けが痛くて楽しめる気分でもない。それに、憲兵がいると聞いたため、失礼の無いように黙々と食べる。

 

「…歓迎されてないみたいでありますね…。」

 

あきつ丸が呟く。

 

「そんな事ないよ。少なくとも俺は歓迎しているし。…ただ、憲兵の件もあって少しぎこちないだけ。」

 

「仲間がごめん…。」

 

鬼の面頬憲兵が謝る。どうやら、リーダー格のようだ。

 

「というより、食事の時も面頬脱がないんですね…。」

 

「目の下頬って言う種類の面頬だね。これは食事にも使える。外した途端、豹変する提督もいるため、滅多な事がない限りはとらん。」

 

「そうですか…。」

 

ドミナントは短く呟いた。

 

「隊長、これは何の魚ですか?」

 

まるゆが魚の煮付けを見て聞いてきた。

 

「イサキだね。神州丸が食べたそうにしてたやつ。」

 

「…礼を言う。とても美味い。」

 

神州丸は味って食べていた。

 

「美味しいであります!」

 

「こんなに美味しい食べ物があるなんて…!まるゆ、幸せです…!」

 

「…陸軍でどんな扱いをされてきたのかすごく分かるな…。」

 

はしゃいでいるあきつ丸とまるゆを見てドミナントが呟いた。そして、艦娘たちはあきつ丸たちを見て、自分たちがどれほど恵まれているのか実感した。

 

「気に入ってもらえて何よりです♪」

 

本日のご飯当番であるセラフが嬉しそうな顔をする。ジナイーダが少し悔しそうに見ていたように見えたのは気のせいだろうか…。

 

「美味…。」

 

「憲兵さんにも気に入ってもらえて何よりです。」

 

「…?酒は飲まないのか?」

 

「いえ、自分酒を飲むと色々とダメなので。」

 

「…そうか。」

 

「という憲兵も飲んでないじゃないですか。」

 

「飲酒は基本的に良くはない。敵の奇襲に対応できないから。」

 

憲兵は黙々と食べる。

 

「お仲間さんはどこへ?」

 

「…多分、一人は勝手にキッチンで何か作ってると思う…。もう一人は他人の作るものは信用できないからって森に…。最後の一人はあまり食べなくて。」

 

「バラバラじゃないですか…。」

 

ドミナントがゲンナリした。

 

「て、勝手にキッチン弄らないで!」

 

「ごめん…。今すぐ呼び戻す。…集合!」

 

鬼の面頬憲兵が言った途端…。

 

ザッ!

 

全員集合した。

 

「せっかく作ってくれた食事。食せ。」

 

「「「……。」」」

 

「自分も食べている。毒などはない。」

 

「……。」

 

セラフがとても嫌な顔をする。誰だって、自分の料理に毒があるかも知れないと疑われれば傷つく。

 

「嫌なら食べなくても結構です。なんなら、今すぐ回収しましょうか?」

 

「い、いや!自分は食べるよ?美味だから…。」

 

セラフがキツく言い、慌てたように鬼の面頬憲兵が止める。

 

……?見た目より幼いのか…?言い回しが妙だ…。

 

ジナイーダは今のやりとりを見て思う。他の憲兵たちは食べない。

 

「というより…。なんで全員顔を隠しているんですか…。」

 

ドミナントが面々を見る。

 

「…?」

 

そして、赤みがかった憲兵服を着て、真っ赤なマスクを被った憲兵に違和感を覚えた。

 

「…クリーン…チュルナイ…。」

 

「「「?」」」

 

ドミナントが呟き、艦娘たちが不思議に思った。

 

「隊長、どうかしたのですか?」

 

まるゆが聞いてきた。だが…。

 

「クリーンチュルナイ。」

 

次は特殊な動作をして言った。すると…。

 

「クリーンチュルナイ。貴様、街の者か?」

 

「「「!?」」」

 

憲兵の一人が返してきた。

 

「やはりな…。何故、AC以外からの世界から来た者がいる…?」

 

「「「?」」」

 

ドミナントが呟き、分からない面々。

 

「おい、神様。」

 

「?」

 

ドミナントのおかずを勝手に食べている神様の首根っこを掴み、持ち上げる。

 

「にゃーん。」

 

「“にゃーん”じゃない。どうしているんだ?」

 

ドミナントが神様に問い詰める。

 

「えっと…。その…。えへへへ…。」

 

「えへへじゃない。言え。怒らないから。」

 

「怒る気満々じゃん!」

 

神様が慌てている。

 

「で?どうしているんだ?正直に話そうか。これは今後に左右する重大な事だから。言わなければ、少なくともこの鎮守府にはいられないな。」

 

「えぇ!?…怒らない…?正直に言えば…。」

 

「内容による。」

 

「…わかった…。」

 

「よし。」

 

ドミナントが神様の頭を撫でる。

 

「で、どうして?」

 

「うんーっと…。彼らからまず話を聞いた方が早いかな…?」

 

神様が彼らのうちの一人に話しかける。

 

「君はどこにいたのかな?教えてくれると嬉しいな。」

 

「貴様なんぞに言う言葉は無い。」

 

「クリーンチュルナイ。」

 

神様がドミナントと大体同じ仕草をする。

 

「…怪しいが…。まぁ良い。私はある街にいた。そこは掟を破った者はこの鞭で処罰する清潔な街だ。私と同じ9人の清浄委員がいる。首席がいなくなり、我々は会議をすることになったが、目の前が光だし、いつの間にかここにいた。」

 

「自分があった時は真っ赤な変な服を着ていた。ネズミやカビなどから守るツルツルした服。本人は動物が大の苦手。山に囲まれているから、ここにくるのも嫌がってた。」

 

「大体知ってる。」

 

ドミナントの考えていた者とぴったりだった。

 

「その鞭、異常なまでに痛いんですけど、何か細工でもされているんですか…?」

 

セラフが言う。

 

「特にない。ただの鞭だ。」

 

「でも、普通ここまでならないんですよね…。」

 

セラフが鞭で掴まれた腕を見せた。まだ赤く腫れている。

 

「セラフがここまで食らう威力…。ただの人間にとっては死に至るな…。」

 

ドミナントが分析した。

 

「なら、君はどこから来たのかな?教えて欲しいな〜。」

 

神様が赤いレンズのガスマスクをした憲兵に聞く。

 

『私はアルファチームに所属している。ここはおそらく別の国なのだろう。』

 

「最初に会った時は特殊部隊のような真っ黒な服に真っ黒なヘルメットとガスマスクだったからね。何やら危ないウイルス除けの防具を着ていたし。」

 

「見たことあるな…。バイオの世界で…。」

 

ドミナントの想像していた人物と当てはまった。

 

「…つまり、他の世界の者なのは確かだな。で?」

 

「…分からないか…。」

 

「お前に言われるとすごく腹が立つ。」

 

「ご、ごめんなさい。…つまり…。」

 

神様が謝り、目をそらす。

 

「お前のせいか?」

 

「う、ううん!違うよ!」

 

「なら、なんだ?」

 

「…私の前の神が呼んじゃったのかも知れない…。」

 

「なら、怒る理由がないじゃないか。」

 

「で、でも、私たち神が原因だし…。」

 

「お前が呼んだわけじゃないんだろう?怒るわけないじゃん。でも、何で知らせなかったのかな。」

 

「…知らなかった…。」

 

「…まぁ、ここは先輩神様の世界だしね…。」

 

ドミナントは神様の頭を撫でる。

 

「疑ってすまなかった…。この通りだ。」

 

ドミナントは深く頭を下げた。

 

「神様って何の話し?」

 

鬼の面頬憲兵が聞く。

 

「あぁ、この子神様だよ。」

 

「よろしく。」

 

神様は笑顔で手を出す。

 

「…!よろしく。」

 

何かの遊びだと思って、その手を握る憲兵。

 

「で、神様って何でも出来るし、働かなくても良いんだよね。」

 

「いやいや…。働かなくちゃご飯も何もないよ…。働かざる者食うべからずだよ…。」

 

「意外とシビアなんだね…。」

 

神様と憲兵が話しているのをドミナントが軽く見て…。

 

「セラフ、少し良い?」

 

「はい。」

 

「艦娘たち元気ないけど、どうしたの?」

 

「面接で疲れたみたいで…。」

 

「そうなのか…。ところでこの憲兵たち、どれくらい強い?」

 

「すごく強いですね。ACになって、初めて勝率が50%ですし。」

 

「なら、まだ本気を出していないのか。」

 

セラフとコソコソ話す。

 

「提督殿、もう全員食べ終わっているであります。」

 

「おう。あきつ丸。俺はあまり食べていないけど、神様に食べられちゃってね…。なら、お風呂だな。」

 

「入渠でありますか…。」

 

「いや、怪我してないから普通にお風呂。のぼせないでね。」

 

…………

娯楽室前廊下

 

「で、面接何人受かったの?」

 

「10人だ。」

 

「確率低いね〜。ギャハハハハハ!」

 

男3人歩いていると…。

 

「……。」

 

ボーッとテレビを見ている鬼の面頬憲兵が…。

 

「「「……。」」」

 

3人、顔を見合わせる。そして…。

 

「あのー…。」

 

「?」

 

「もし、よろしければ風呂へ行きません?」

 

「風呂…。」

 

少し考える憲兵。

 

「…いや、いい。他人に裸など見せられん。不意打ちをくらう。」

 

「そこまで危険じゃないんだけどなぁ…。」

 

「食事の時、面頬を外さなかったほどだぞ。」

 

「そうですか…。」

 

ドミナントが少し残念そうな顔をする。素顔を見てみたかったのだろう。

 

「…入りたかったら、いつでも入ってください。でも、男湯の時間は朝の2時ピッタリまでです。」

 

「ほう。」

 

「隣の女湯の方は夜も遠征などで、よく艦娘たちが騒いで24時間うるさいと思いますが…。」

 

「なるほど。」

 

「うるさすぎたら壁を叩いてください。すぐに静まりますので。」

 

「わかった。」

 

そして、ドミナントたちが行く。

 

「…あまり良い反応はしなかったな。」

 

「そうだね…。」

 

「ま!人それぞれだよ〜。」

 

「…テレビを見たかったのかも知れん。」

 

「まぁ、憲兵だからね…。」

 

「厳しいね〜。」

 

「というより、あんな反応されたら気まずいよ…。」

 

「まぁ、警戒しているのだろう。入院時や裸になる時が一番命を狙われるからな。」

 

3人が話す。

 

「憲兵って、帽子すら取らないほど警戒しているんだね…。」

 

「しっかりしているな。」

 

「あれれ〜?ドミナントは〜?」

 

「俺はしたいからしているだけ。寝るときや風呂に行く時はしないよ。それに、ずっとしているとむれる…。」

 

そんなこんなをしているうちに男湯のノレンをくぐる。

 

「あれ?何やらいるよ?」

 

「脱衣所に面頬とガスマスクがあるな…。」

 

「二人だけなのかな〜?」

 

二人分カゴの中にある。一応10人は入れられるようにしてある。ちなみに、女湯の方は50人入れるほど広い。しかも、露天付き。

 

「あの憲兵も入れば良いのに。」

 

「いや、この者たちは裸でも強いのだろう。」

 

「鞭の奴はいないしね〜。」

 

3人が脱衣所で服を脱ぎ、入る。

 

「「「む?」」」

 

「いや、いるし。」

 

「3人いるな…。」

 

「服のままだね〜。」

 

清浄員の鞭使いもいるのだ。だが、憲兵服ではない。ツルツルした服だ。マスクも被っている。

 

「潔癖症だろう…。むれて汗で汚れるぞ…。」

 

「案ずるな。この服は特製で水分のみは弾かぬのだ。毒や菌などは侵入出来ん。その割には中の汚れなどはすぐに外に出るのが可能だ。」

 

「石鹸とかは…。」

 

「服の中にあらかじめ入っている。」

 

「無駄な技術力…。」

 

どうやら、詰まるところ服を着たまま風呂に入ることが可能らしい。

 

「…すごい傷だらけだな。」

 

ジャックが憲兵の二人を見る。

 

「生還率は僅か4%の地獄を乗り越えた。…『死神』は死なず…か。」

 

「死神?」

 

「そう呼ばれている。」

 

ガスマスクを被っていた憲兵が言った。

 

「私は色々と修行を積んだ時に出来た。我が師の名を受け継ぐようになっている。」

 

「師?」

 

「師の名も私と同じ名だ。」

 

そこに…。

 

『あったかいであります…。』

 

『沈んでいるけど、とても気持ちが良いです…。』

 

『そのまま浮かび上がらないのはやめてくれよ?シャレにならんぞ…。』

 

『いっちばーん!』

 

『今日はこれで遊ぶっぽい!』

 

『潜水艦のラジコン…。どこで買ったんだい?』

 

『提督さんがお小遣いくれたから、外のお店で買ったっぽい!』

 

『外の物は高いけど、お小遣いくれたからね。』

 

隣の女湯でワイワイ聞こえる。

 

「…ここは平和だな。」

 

「そうですよ。いつもこんな感じです。賑やかで良いですよ。」

 

「…他の場所もこのようなところなら良いのだがな。」

 

「む?他の場所とは違うのか?」

 

「他の場所は邪悪に満ち溢れている。」

 

「嫌だね〜。ギャハハハハハ!」

 

しみじみと男性陣が言った。どうやら、憲兵も色々あるらしい。日々嫌な提督を取り締まるのだ。憲兵は今日“は”平和です。




書いていて、ナニコレ?と思いました。艦これなのに艦これでもなく、ACなのにACでもない…。この憲兵たちは、おそらく読者さんの想像で合っています。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…

「長門コーナーだ。」
「クリーンチュルナイ。今回は私だ。」
「真っ赤な仮面のようなマスクを被った憲兵か…。服も赤っぽい…。気持ちが悪いな。」
「娘、言葉に気をつけろ。私を誰だと思っている。チュルナイの街を取り仕切る9人のネズヌクと呼ばれる清浄委員の一人だぞ。」
「そうか。」
「私は主席が旅の者にやられ、どうするかと考えていたら…。ここだ。この世界にいた。邪悪な生き物が蔓延っているこの邪悪な世界に。」
「そこまで動物が嫌いなのか…。」
「特に毛の生えた小動物なんかは…。身震いがする。」
「リスとかもダメそうだな。」
「リス…?なんだそれは…?」
「動物だ。」
「…知りたくもなかったな。」
「ところで、武器はその鞭だけか?」
「この鞭はこちらにはない素材で作られている。伸縮自在、力加減を変えるだけで結ぶか否かを分けることが出来る。」
「…なら、その鞭が強いのか?」
「そう思うかどうかは個人だ。だが、これの反動を考慮に入れていないな。」
「反動だと…?」
「使えば分かる。…とは言ったが、使わせないと思うがな。」
「…チッ…。」
「次回、211『無駄な技術の提督印』か。…まぁ、確かにアレは無駄だ。」
「無駄なのだろうか…。」


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211話 無駄な技術の提督印

アーアーアーアー…。
「どうしたんだい?」
なんか、最近AC要素薄すぎないかなーって。
「艦これ要素も少ないじゃないか。」
…憲兵さんは艦これ要素に含まれるかな…?
「…ギリギリ駄目なんじゃない?」
そうかなぁ…。
「そうだよ。」
ソッカー。じゃ、あらすじ頼むよ。
「分かった。この人。」
「Buongiorno(こんにちは)!イタリア生まれの新鋭軽巡洋艦ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィです。」
長い名前ですね。
「失礼だよ…。筆者さん。」
失礼…。
「ところで、ここで何をすれば良いのでしょうか?」
あらすじを頼みます。
「ネタもないので。」
俺のセリフ取らないで…!
「なんだかよく分からないけど、一応やってみます。」

アラスジー
新しい子がそろそろ馴染むころでしょうか?ビスマルクさんはあれからよく笑うようになりました。今では皆んな仲良くやっています。


…………

執務室

 

「ふ〜…。」

 

ドミナントは風呂から上がって執務室にいる。いつも風呂から上がった後、明日の支度をするために執務室に来るのだ。

 

「それにしても暑い…。夜なのにこの気温か…。」

 

ドミナントは執務室で鉛筆を削りながら言う。

 

「…クーラーは入れられるけど、たかが30分…。勿体無いしな…。」

 

エアコンを見ながらドミナントが悩んでいると…。

 

「将校…提督殿。アレを使わないんでありますか?」

 

「うぉっ!?…あきつ丸…。今度から音を立てて部屋に入りなさい…。」

 

無音で入って、いつのまにかドミナントの後ろにいるあきつ丸。

 

「驚かすの成功であります…。」

 

「やってやったぜ。みたいな顔やめろ…。」

 

あきつ丸は陸軍で一度もそういうことをしたことがないため、嬉しいのだろう。

 

「で、使わないんでありますか?」

 

「うーん…。どうしようかねー…。」

 

「『心頭滅却すれば火もまた涼し』でありますよ?」

 

「そっかー。なら、使わないで良いか。」

 

「えっ…。使わないんで…ありますか…。」

 

「何で言った本人が残念がってるの…。」

 

少し残念がっているあきつ丸にドミナントが苦笑いして言う。

 

「なら、あきつ丸のために少し使うかー。」

 

「!」

 

……可愛いなぁ〜…。

 

あきつ丸が目を輝かせた。

 

「…というより、提督殿もやりたいんでありますよね?」

 

「…さてと、何度くらいにする?」

 

「…提督…。」

 

「26度くらいにするか〜。」

 

あきつ丸の言葉をガン無視してドミナントがクーラーを入れる。

 

「「あ〜…。」」

 

ぶつぶつ言っていたあきつ丸も、ドミナントも涼しい風が来てほのぼのする。が。

 

「「あ〜…?」」

 

生暖かい風が来るのだ。

 

「…将校…いえ、提督殿、これは元からこうなのでありますか?」

 

「あれー…?まだ室外機が回ってないんじゃない?」

 

「室外機?でありますか?」

 

「エアコンの心臓部。そこが壊れると何もかもおしまい。」

 

「デリケートなのでありますね〜。」

 

「ま、あと5分もしたら涼しくなるよ。」

 

ドミナントが言い、ドミナント自身は明日の支度をする。

 

「それは何でありますか?」

 

すると、あきつ丸から質問が来る。

 

「ん〜?それ?それは提督印。不思議な印鑑でね。俺、すなわち提督が押さないと効果が発揮されないやつ。…試しにこの書類に押してご覧?」

 

「いいのでありますか?」

 

「どうぞやっちゃって。」

 

「では…。」

 

あきつ丸が押したが…。

 

「!?押したはずなのに…!…であります!」

 

「フッフッフ…。これは提督に登録されている者の指紋を読み取り、提督以外には印を押せないようになっているのだ…!」

 

ドミナントが高笑いしながら言う。

 

「…でも、よくよく考えると無駄な技術なんだよね…。」

 

「?どうしてでありますか?」

 

「分からない書類は大半読まないで、秘書艦に簡易的に訳してもらって教えてもらうから…。」

 

「えぇ…。」

 

「それに秘書艦印ってのがあって、“提督が見てなくても私が見ましたよ”って感じの印鑑だから、それで書類を送信しても良いんだよね…。名前を記入すれば提督じゃなくても認められるし…。」

 

「?でも、名前をわざと他の艦の名前にして陥れようとか…。」

 

「そんなことしてごらん…?鎮守府全体を巻き込む裁判をして、愉快な仲間たちが公平な審査を下して罰するから。少なくともこの鎮守府にはいられないね。セラフやジャックが全てのデータを管理しているから。ジナイーダは圧迫して自白させようとしたり。主任はマジモンの脅しをしたり…。まぁ、そうなって欲しくはないけどね…。だから、君たちもマジで鎮守府内の人間関係争いはやめて。内乱や同じ所属同士での敵対行動はご法度。戦場で影響した場合はマジで俺自身、したくもない失望をしちゃうから…。」

 

「そこまで恐ろしいのでありますね…。」

 

あきつ丸は笑えない顔をする。

 

「なら、これは何でありますか?」

 

あきつ丸が机の上の箱を手に取る。

 

「それはジナイーダからのプレゼント。まだ使ってないんだけどね。今日使うかどうか迷って、しまい忘れていたんだよ。」

 

ドミナントが箱を開けてあきつ丸に見せる。

 

「…ティーポット?」

 

「うん。ジナイーダからもらってめちゃくちゃ嬉しい。紅茶好きだからもらったんだろうけど。」

 

ドミナントは丁寧に机の中にしまった。

 

「他にも、机の中にはティーカップや茶菓子などがたくさんあってな。」

 

「そうなのでありますか〜。」

 

二人が話しているが…。

 

「…提督殿…。」

 

「なんだい?」

 

「むしろ暑くなっている気がするのでありますが…。」

 

「馬鹿な…。とでも、言うと思ったかい?この程度想定の…。」

 

ドミナントがエアコンの風に当たると…。

 

「うわっ!熱風だ…。」

 

「やっぱり…。道理で汗が止まらないはずであります…。」

 

「冷房じゃなくて暖房になってやがる…!」

 

ドミナントが気付く。が。

 

「…いや、消して窓を開けるだけで良いか。明日の支度終わってるし…。」

 

ドミナントが時計を見て言う。ちょうど0時を回ったところだ。既に寝る準備は出来ている。

 

「あきつ丸も寝ろよ?ここは陸軍じゃないから、ふかふかのベッドで寝れるし。」

 

ドミナントがあくびをしながら言う。

 

「…いや、汗でベッタベタだから風呂に入ろうか。もう一度。」

 

「良いんでありますか!?」

 

「もちろん。てか、女湯の方は24時間やってるし。入りたい時に入れば良いよ。…俺の方は午前2時までだけどね…。」

 

「?どうしてでありますか?」

 

「掃除の時間。女湯の方は男湯より優遇されているから、自動掃除されるんだよ…。いいな〜。」

 

この世界の鎮守府では女湯の方が優遇されている。…ちなみに、第4呉は風呂を女性に使わせて、提督自身は水浴びである。

 

「と、言うわけでお風呂に入りなさい。汚いと嫌でしょ?」

 

「了解であります!」

 

あきつ丸は元気よく執務室から飛び出して行った。まるゆや神州丸を誘うつもりなのだろう。

 

「…俺も行くか〜。」

 

ドミナントも汗でむれているため、風呂へ向かった。

 

…………

男湯 脱衣所

 

「やっぱり、この時間帯は誰もいないよね…。」

 

ドミナントが脱衣所のカゴに自分の服を入れていると、気づいた。

 

「あれ?これって…。」

 

憲兵の服だ。綺麗に畳んであり、カゴの中に入っている。しかも鬼の面頬もある。

 

「…包帯?どこか怪我をしているのか…?」

 

さらには包帯まであったのだ。綺麗な包帯だ。

 

「…!これで素顔が見れるのか…。フッフッフ…。俺はああ見えて、意外と幼い顔だと予想するな…。いや、めちゃくちゃ男らしいゴツい顔か…?それとも爺さんか…。フッフッフ…。」

 

ドミナントが予想しながら入る。だが…。

 

「こんにち…。…え?」

 

ドミナントが憲兵と目を合わせた。

 

見たな…?

 

憲兵が近くにあった軍刀を手に取る。

 

「ちょ、お前…!」

 

…………

女湯

 

「ここは良いところでありますな〜。」

 

「そうですね〜。」

 

「何もこんな時間帯に風呂など…。」

 

あきつ丸たちがほのぼの入っていると…。

 

バキバキバキ…!

 

『ギャァァァァァァ!』

 

男湯の方で悲鳴が聞こえる。

 

「あれは提督殿の声では?提督殿しか入っていないはずでありますが…。」

 

「少し心配ですね…。」

 

「放っておけ。どうせGなどが出たのだろう。」

 

そんなことを話していると…。

 

ドガァァァァン!!

 

「ぐはぁぁぁ…!」

 

ドミナントが壁をぶち破って…いや、吹っ飛ばされてきたのだ。ちなみに、タオルを腰に巻いていたため、セーフである。

 

「「「……。」」」

 

あきつ丸たちが壁の方を見る。

 

「…生き絶えたか…?」

 

憲兵…?が来る。どうやら、周りを見失っているようだ。

 

「…あれ!?」

 

あきつ丸が憲兵を見た。そして、誰もが驚いた。

 

「「「女の子(であります)!?」」」

 

あきつ丸たちは心底驚いた。あの化け物の仲間の一人で、リーダーが女性だとは思いもしなかったからだ。




ネタが切れそう…。割と本気で…。だがやり遂げる…。完結はさせてみせる…。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…。

「長門コーナーだ。」
「今回も自分か…。」
「そのようだな。女性だったのか…。」
「そうだが?」
「…年齢は?」
「いきなり言う言葉じゃないよ…。…まぁ、23だけど?何か?」
「…意外と若いな…。それに、23でその強さか…。」
「なに?若いと強くちゃいけないわけ?」
「いや、そういうわけではないが…。…冷静さを失っているか?弱そうに見えるぞ。」
「ぐ…。…はぁ…。」
「おぉ…。キリッとして強そうになったな…。」
「…ここで何をすれば良い?」
「その面頬について教えてくれ。」
「…良いだろう。これは修行場所に落ちていたものだ。被った当初、何か嫌な…寒気がするものを背筋に感じたが、気にしていない。」
「…それは…呪いのものとかではないのか?」
「呪いねぇ…。多分、あの時斬り捨てたかもな。新月の夜、何か面頬から出てな。黒い嫌なものが見えて、すかさず斬った。そしたら消滅した。それのみだ。」
「そうか…。」
「他にも、これは頑丈でな。銃弾の弾などは簡単に防げる。変に凹凸があるがな。形は鬼の口元の形だな。以上だ。」
「そうか。」
「では次回、第212『女だがそれの何が悪い』だ。…自分じゃないか…。」
「良かったな。出番あって。羨ましいぞ。」


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212話 女だがそれの何が悪い

暑い…。
「でも、涼しくなってきてるよ?」
そうなんだけどね…。仕事もあるから、なにも余計に疲れも溜まってさ…。
「最近ログインしてくれないのはそのせい?」
そうなんだよ…。肩もこっていてさ…。
「休みの日とかちゃんと休んでる?」
一応ね…。でも、肩を揉んでくれる人もいないから…。
「大変なんだね。」
仕方ないよ…。
「そろそろあらすじかな?」
頼むよ…。
「今回のゲストはこの人。」
「Buongiorno!じゃなかった…Guten Morgen! でもなくて、おはよう! 名前はねぇ…えーと、もう、ごーちゃんでいいや。」
ルイージ・トレッリであり、現在は伊504ですね…。
「ジャンプ力が高そう…。」
「そっちじゃないよ。」
レッツゴー。
「オーキドーキ。」
「だから違うって…。」
まぁ、そんなこんなのルイージですね。あらすじをどうぞ。

アラスジー
今は夜中…。パラオ泊地はスティグロも寝てるよ。


…………

女湯

 

「…ま、待つでありす!憲兵殿…!」

 

あきつ丸が憲兵に言う。現在、男湯の壁を打ち破りドミナントが来た。正確には吹っ飛ばされたドミナントなのだが…。そして、吹っ飛ばしたのがこの鬼の面頬憲兵だ。…今は面頬をしていないが…。なんと鬼の面頬憲兵は女性であることが分かった。

 

「…?…!」

 

憲兵が正気に戻り、ことの重大さを知った。

 

「…大佐、大丈夫か?」

 

体をタオルで隠して、とりあえず吹っ飛ばしたドミナントをトントン叩く。

 

「ん…。」

 

「…良かった…。息はある…。」

 

憲兵は良かったとホッとする。憲兵が罪のない提督を殺したなんてことになったら、間違いなく大騒ぎだからだ。

 

「あの…。」

 

「?」

 

あきつ丸が憲兵に言う。

 

「オンナノコ…であります…?」

 

「…そう。そうだが?それの何が悪い。」

 

「女性は基本的憲兵になれないのでありますが…。」

 

「……。」

 

その憲兵が黙る。

 

「…いいじゃないか…。なんで女が憲兵に憧れちゃいけないの…?なんで女はなれないの…?」

 

憲兵が言う。

 

「…肉体的に無理もあり、男性ばかりの職場でありますし、何日もペアで過ごすことが多いからだと思うであります…。」

 

「…提督を取り締まることの出来る職業はこれしかない…。艦娘に暴行をしている者もうじゃうじゃいる。女性の気持ちは女性にしか分からない。同時に、癒せるのは同性しか出来ないこともある。」

 

憲兵が淡々と言う。

 

「それに、性的差別だ。…今まで、同士にも知らせていない。自分が女だと言うことを。わざわざ包帯でさらしまでしてこの部隊にいた。帽子を取らないのも髪をばらさないため。顔も面頬で隠していた。」

 

軍刀を近くに置き、あきつ丸のところへ行く。

 

「…頼む…。このことは黙っていてくれ…。本部にバレると身分を剥奪されてしまう…。そうなったら、艦娘を心から救えない…!」

 

憲兵が必死に言う。

 

「「「……。」」」

 

あきつ丸たちは顔を見合わせる。どうするか考えているのだ。昔は自分たちを虐めてきた陸軍の所属で、自分たちのことを気づいてくれなかった。この憲兵一人を黙っていたところで、変わるのかどうか。

 

「…だが、それを決めるのは本艦らの指揮官である提督殿が決めるだろう。」

 

神州丸がドミナントを見ながら言う。気絶しているドミナントを。

 

「…でも、まるゆたちが黙っていたとしても、隊長が知っていたら…。」

 

「水の泡でありますな。」

 

まるゆとあきつ丸が言う。

 

「…とりあえず、医務室だな…。」

 

そして、鬼の面頬憲兵は急いで着替えて、あきつ丸たちと共にすぐに医務室に運んだ。

 

…………

病室

 

「で、なんでこんなことになったんですか?」

 

セラフが問い詰める。意外にも軽い怪我のようだった。

 

「実は…。その…。…足を滑らせて頭を打ってしまったようで…。」

 

鬼の面頬憲兵が苦しい言い訳をする。

 

「なら、どうして男湯と女湯の壁が壊れているんですか?それだけでしたら、どうしてもそこまでにならないと思いますけど。」

 

すかさず、セラフが問い詰める。

 

「それは…。…本艦らがふざけて開けてしまったのだ。初めての入渠ではしゃぎすぎてしまったのだ。」

 

今度は神州丸が言い訳をしてあげた。

 

「ですが、一体どんな風にはしゃいだんですか?ただのはしゃぎではあんな大穴不可能です。艤装ももっていませんでしたし。」

 

だが納得のいかないセラフ。

 

「それは…。」

 

あきつ丸が言葉を詰まらせて、セラフにジッと見られたが…。

 

「…ん?ここはどこだ…?」

 

ドミナントが目覚める。あきつ丸たちは覚えているかどうかでドキドキだ。覚えていた場合は虚偽の証言でお仕置きが待っているだろう。

 

「ドミナントさん!…目覚めたんですね…。良かったです…。」

 

安堵するセラフ。

 

「あ、ああ。ところで、どうしたんだ?こんなに集まって…。」

 

「覚えていないんですか…?」

 

「ああ。なんかあきつ丸と執務室で話していたところまでは覚えているんだけどね…。」

 

ドミナントの記憶がないことに少し安心するあきつ丸たち。

 

「実は、ドミナントさんは風呂で事故に巻き込まれてしまい、気を失っていたんです。」

 

「事故?」

 

「はい。壁に大穴が開くほどの…。」

 

セラフが状況を詳しく話す。あきつ丸たちは思い出してしまうのではないかと心配している。

 

「で、俺が足を滑らせて頭を打ったと?」

 

「はい。…本当なのでしょうか?」

 

「まぁ、そういうのならそうなのだろう。」

 

ドミナントは気にした風もなく言う。

 

「ま、事故ならしょうがないよ。許してあげて?壁に大穴が開くことも、多分脆くなってたんだよ。ここ、元々ボロボロだったじゃん。」

 

「そうなのでしょうか…?」

 

セラフがドミナントに言われて納得する。

 

「憲兵さんも迷惑かけたね。ここまで運んできてくれたんだろう?ありがとう。」

 

「え…。は、はい…。」

 

「もう君たちも各自部屋に戻って良いよ。」

 

「「「ハッ…。」」」

 

そして、あきつ丸たちは部屋から出る。

 

…………

部屋の外

 

「ふぅ…。一時はバレるかと思ったであります…。」

 

「隊長の記憶がなくて良かったです…。」

 

「だが、問題は解決していない。あとで本艦が遠回しに聞いてみよう。」

 

あきつ丸たちはそんなことを話していると…。

 

『ドミナントさん。』

 

『なんだい?』

 

セラフとドミナントの会話が聞こえてきた。

 

『あの憲兵と新しい子たち、嘘をついていましたよ?全部嘘です。あれ。』

 

『心の中読んだの…?』

 

『…あからさまに怪しかったので…。』

 

『セラフ、今度から本当に勝手に心を読むの禁止ね。次はないよ?心を読むのはチート能力なんだから。それに、隠したい理由があるからそう言ったんでしょ?それをズカズカと他人のことを読み取るのはどうかと思うよ。』

 

『ですが…。』

 

『いや、別に読んでも構わない。でも、他人に暴露しちゃダメ。心の中の秘密、誰だって一つや二つあるじゃん。セラフもあるでしょ?』

 

『まぁ…。』

 

『それを暴露されたらどんな気分になる?』

 

『…その人を恨みますね…。』

 

『それと一緒。だから、なるべく心を読まないようにして?ね?』

 

『…ドミナントさんがそう言うのなら、従います。』

 

『ありがとう。』

 

『いえいえ。あと、すみませんでした。』

 

『こっちこそ、キツいこと言ってごめん。勝手に読み取っちゃう時もあるもんね。』

 

そんな会話が聞こえてきたのだ。

 

「…なんとかバレなかったでありますな…。」

 

「でも、セラフさんにはバレていました…。」

 

「だが、他人に暴露はしないだろう。両者とも気持ち良く了承したのだから。」

 

あきつ丸たちはバレていないことに一安心だ。その時…。

 

ガチャ

 

「?いたんですか?」

 

セラフが出てきた。

 

「ということは…さっきの会話も聞こえていましたね…。」

 

「えっと…。」

 

「何か深い理由があると思ったため、何も言いません。ですが、隠し事はあまり良くありませんよ?…それでは。」

 

セラフはそう言った後、歩いて行った。

 

「「……。」」

 

「さてと…。提督殿に聞いてくる。」

 

神州丸が病室に入った。

 

「提督殿。」

 

「神州丸か。どうした?」

 

「…質問だけど…。」

 

「うん。」

 

「もし、他人に知られたくない秘密がある人の秘密を知ってしまったらどうする?」

 

「?それって…。」

 

「もしだ。もし。」

 

「もし…か。そうだな…。それによって、何が起こるかによるな。」

 

「ん〜…。そのことを誰かに話すと、その人の人生が崩壊する。」

 

「そんなに…?」

 

「でも、その人はその秘密である嘘をついてここまで来た。」

 

「んー…。」

 

「けど、その秘密があるおかげで、何人も助かる可能性がある。」

 

「へぇ〜。」

 

「けど、たった一人。大して変わらない。…提督殿ならどうしますか…?」

 

「どうする…か。…まぁ、とりあえず何人も救える可能性があるのなら、黙った方が得策だよ。それに、話したところで他の人が迷惑するってわけじゃないでしょ?」

 

「…わかった。時間をとらせてしまった。ありがとう。」

 

神州丸がそう言って、部屋を出ようとしたが…。

 

「…あの憲兵、そういうことだったのか…。」

 

そんな言葉が聞こえてきたのだ。

 

「…?提督殿、今なにか…。」

 

「?どうした?」

 

「…気のせい…か?」

 

神州丸はそのまま出て行った。

 

「…セラフ、いるの知ってるぞ…。」

 

「どうして分かったんですか?」

 

窓から入るセラフ。

 

「…と、言うわけだ。納得してくれ。」

 

「記憶がなくなったことも嘘だとすぐに分かりましたよ?」

 

「ま、あの時はまだ言ってなかったからな。」

 

「いえ?わざわざ調べるもないですよ。」

 

「読んでないのか?」

 

「…大切な人のことはすぐに分かります。」

 

「…やめてくれ。恥ずかしい。」

 

ドミナントは軽くセラフを受け流し、憲兵のことを考えた。

 

……あの女憲兵、このまま黙っておくわけにはいかないよな…。けどまぁ、本人は誰にも知られたくないみたいだし。…このまま記憶を失ったフリをすれば良いや。

 

呑気にベッドでドミナントが思う。屋根裏からその憲兵に見られているのも知らずに。




ここで切るしかなかった…。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…。

「長門コーナーだ。」
「今回もか…。」
「作者が面倒なのだろう。それに、まだここのネタも取っておきたいみたいだ。」
「そろそろ自己紹介もしなくて良いよね?」
「その軍刀はなんだ?」
「九五式軍刀。」
「…説明はそれだけなのか?」
「それだけ。」
「そうか…。」
「うん。」
「……。」
「……。」
「…ネタ切れか。」
「そう。」
「なら、次回を頼む。」
「分かった。次回、『憲兵になった理由』か。シンプルだな。頭にくるくらい。」
「ヴェニデェ…。」


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213話 憲兵になった理由

なんか異常気象みたいだね〜。
「なんかね。」
大雨も降ってきたし…。暑いしコロナだし…。もう末期だな…。
「そうなんだね…。」
……。…末期→国民が政府に反発する→反発するが何か物足りない→身体が闘争を求める→ACシリーズが売れる→フロムがアーマードコアの新作を出す…。
「すごく都合の良い設定だね。」
いいじゃないか。別に。夢見てなにが悪いのよ。
「まぁ、そうだけど…。」
ま、そんな話は置いておいて…、今回のゲストは?
「この人だよ。」
「Buongiorno(こんにちは)!マエストラーレ級駆逐艦、次女のグレカーレ!」
じゃ、あらすじ行くか。
「もっと何か言ってよ!」
「僕たちも暇じゃないんだ…。ごめんね。」
「……本当?」
すまんな。

アラスジー
眠い…。


…………

 

「…なんか、ずっと誰かに見られているような気がする…。誰?」

 

ドミナントが真っ暗な病室の中言う。

 

ザッ…

 

「…夜分遅くにすまない。」

 

「憲兵さんじゃないですか。」

 

「…覚えていたのか?」

 

「ああ。」

 

「なぜ言わなかった?鎮守府の提督を傷つける重大なことをしたのだぞ。」

 

「別に?気にしてない。あれくらい普通だ。特にジナイーダの蹴りなんか…。」

 

「…どうしたら黙っていてくれる…?」

 

「誰にも言いませんって。」

 

「いくら払えば良い…?」

 

「だから言わないって。」

 

「100万か?1000万か?」

 

「言わないって言ってるでしょうが。」

 

「…金ではないのか…。」

 

「あのねぇ…。…ふぅ…。お金どうこうじゃないの。神州丸との会話を聞いていたでしょ?それが答え。」

 

「信用できん。」

 

「堂々と言うかね…。普通…。」

 

「金ではないのならなんだ…?…まさか…。…そうか…。どうせ使い道のない貞操だ。好きにしろ…。」

 

「あんた、言ってる意味わかってる?それに、もし吹雪たちにバレたらぶっ殺されて、臓器を売られちまう…。」

 

「この肉体では不満か…。」

 

「そろそろ本気で怒るよ?」

 

「女を捨てた身だ。構わん。」

 

「はぁ…。女の子は自分の体をもっと大事にしなさい。」

 

バサッ

 

「これを見ろ。」

 

「見ないよ。そう易々と見せるもんじゃない。」

 

「いいから見ろ。裸ではない。」

 

「嘘だったらガチギレするから…。て、ぉぉ…。」

 

憲兵は背中を露わにした。

 

「…これでも、自分を女扱いするのか…?」

 

「…そんな傷…。女性がしていい傷じゃない…。」

 

「その通りだ。自分はもう傷物…。誰も引き取りはせん。」

 

「馬鹿野郎が。だからと言ってそれとこれとは違うだろう。」

 

「…男は信用できん…。」

 

「…その傷、まさかな…。」

 

「結論から言うと違う…。だが、原因はそうなのだろう…。」

 

「…随分前の傷みたいだが…。」

 

「…自分の両親が原因だ。」

 

「……。」

 

「母親がな…。父親から酷い暴力を受けていた。自分を守るために母親がいつも代わりになっていたんだ。それが毎日続いた。…しかし、ある日父親は死んだ。母親によって殺されたのだ。…世間では殺人扱い…自分は殺人者の娘として世間からレッテルを貼られた。理由を話しても、何も変わらない。その時、女性は男性より弱い立場にいることに気づいたんだ。…だが、それだけではなかった。母親は誰からも煙たがれ、どこに行っても蔑まれた。…ある日、守られた母親にこう言われたよ…。『お前を産まなければ良かった。』とな。」

 

「……。」

 

「最初はショックだった。だがな、その通りだとも実感した。そして、すぐに家から出て行き、山に入った。それからずっと鍛えてきた。自分の性別も関係なくな。…この傷はその時に出来たものだ。」

 

「……。」

 

「それから数年後、艦娘が現れた。現れた1ヶ月後に提督と呼ばれる職が設立された。その半年後に憲兵と呼ばれる職が設立された。自分は迷いなく憲兵になろうと決意した…が、女人禁制。最初は渋々他の職に就こうと思ったが、提督が艦娘に暴行をしていることを耳に挟んだ。提督を捕まえられるのは憲兵のみ…。その憲兵は男性のみ…。女性を助けるのが男性のみだと…?ふざけるなだ。」

 

「まぁ、その通りだろうな。女には女にしか分からない痛みやサインがあるからな。」

 

ドミナントは今までのことを振り返る。

 

「艦娘は女性だ。男の提督は大抵暴行を加える。それが自分を殴ってきた父親を思い出してな…。はらわたが煮えくり変えるほど怒りが溜まった。その艦娘の気持ちが男に分かるものか…。それに、何故自分が取締る時だけこんなに捕まる提督が出るのか。答えは簡単だ。男の憲兵は大抵買収されるからだ。だからこそ、男を信用しないんだ。」

 

「……。」

 

ドミナントは少し考える。

 

「俺には…分かんないっすよ…。」

 

「別にお前を責めている訳ではない。だが、この事を素直に黙っているかどうかは分からないからな。」

 

「…これから言う言葉は本心だよ。俺はまず間違いなく、何をしてもされても知らせると思う。けどね、それ以上に戦場で戦う彼女たちを蔑ろにする奴らなんて吐き気がするほど嫌いだ。暴行を加える奴なんてもってのほかだ。そんな奴らが野放しになっていて良いはずがないと思う。…知らせるべきなんだろうけど…。神州丸にも言ったけど、艦娘たちを救える可能性が0%でないのなら、俺は黙っておく。…何より、ここの鎮守府所属じゃないにしても、暴行されて良い艦娘なんてないから。」

 

ドミナントは窓の外を見ながら言う。今日の月は半月だ。月の光が差し込み、部屋が少し青っぽい。

 

「…まぁ、そうなら俺が憲兵になれば済むんだけどね…。…でも、娘たちと別れるのは辛いよ…。今まで泣いて笑ってふざけあった仲間だもの。…まぁ、俺は嫌われているかも知れないけどさ…。」

 

「?何故だ?」

 

「いや、聞いてくれる?この前長門が秘書艦の時聞いたんだけどさ…。秘書艦をくじでやってるらしいんだよ…。それに、胸を見ているんじゃないか疑惑もかけられたしさ…。」

 

「…貴様も一応捕まるか?」

 

「それは勘弁…。あくまでも疑惑だから…。てか、見てないし…。…いや、第4駆逐とか海防艦は下見て全体入っちゃうからしょうがないとして…。見ないよ。娘のような存在なんだから。」

 

「慌てている…怪しいな…。」

 

憲兵がジリジリ近く。

 

「…フッ。今だっ!」

 

パシッ!

 

「!?」

 

ドミナントが鬼の面頬をひったくる。彼女の素顔がバレている。

 

「ちょ…!返s…!」

 

「しー!夜中だから静かに…。」

 

「ふざけて…!」

 

「へっへっへ…。風呂では気を失って、マジマジと見ることが出来なかったからな…。」

 

「この…!」

 

「隙あり…!」

 

バッ!

 

「帽子まで…!」

 

「おお…。髪長いな…。帽子をとった途端に…。」

 

「ふざけるな…!!」

 

「意外と隙があるんだな〜…。いや、偶然か…。」

 

ドミナントが憲兵が取り返そうとしているのをベッドの上で眺める。

 

「顔は意外と幼いと見た…!」

 

「なんだと…!」

 

「髪は正直、ここまで長くないと思ってた…。」

 

「悪かったな…!」

 

そして、ドミナントが隙を見て…。

 

バッ!

 

「ぐ…。」

 

帽子を被せた。

 

「その方が可愛いぞ〜。」

 

「な…!貴様、からかっているのか…!」

 

カァァァ…

 

つい思わず憲兵が手を止める。ドミナントは相手が女性だと知り、からかっているのだ。

 

…… 貴様にやられた風呂での恨み…忘れたとは言うまい…!

 

しかし、その理由のほぼ全てが風呂場で吹っ飛ばした恨みだ。

 

「それに、顔立ちが整っているな。世間で言う美人か…。」

 

「貴様はおっさんだがな。」

 

憲兵もやはり乙女なのか、少し素直になっている。

 

「…?褒められることに耐性がないのか…?」

 

「…憲兵だからな…。」

 

憲兵は後ろを向く。隙があるように見せて、実は全く隙がない。

 

「ふふ〜ん…。」

 

ドミナントは憲兵が見ていないことを良いことに、悪い顔でニヤける。

 

「ここで問題だ。振り向かないで、俺の右手と左手、どっちに面頬がある?」

 

憲兵に言うと…。

 

「…ふん。下らん。そんな遊びに付き合っている暇などない。明日のためにすぐに睡眠を取らなくてはならないしな。」

 

「ふふ〜ん…。なら、面頬はあげないよ〜。」

 

「力尽くで…。」

 

「いやいや、状況見よ?君が吹っ飛ばしたせいで、俺は紅茶も飲めずにここにいるの。そんなことしたら悪化しちゃうよ?怪我させた上に悪化までさせちゃうのかなぁ〜?」

 

「ぐ…。」

 

憲兵は振り向かずとも、悔しそうな顔をしたのがわかった。

 

「ちなみに、外した場合は明日可愛い服装で面頬被らずに街へ行こう。」

 

「なんだと!?」

 

「見ちゃダメ!」

 

ドミナントが下らないことを始める。

 

「あ、もちろん俺は仕事あるから、艦娘たちと一緒にショッピングだ。」

 

「当たり前だ!て、違う!こちらも仕事が…。」

 

「どっちでしょうか?」

 

「ぐぐぐ…。…はぁ…。」

 

憲兵は何を言っても無駄だと悟り、深呼吸する。

 

……精神統一…。乱れれば乱れるほど心の目は曇る…。そして、微かな音を聞き分けて…。自分の呼吸の音をソナーのように使って、確かめれば良い…。先程は怒りで少し冷静さを失っていた。だから、面頬をとられたのだ…。

 

冷静になればなるほどこの憲兵は強い。

 

……わかった…。大佐から見て左…。

 

憲兵が感じて、ゆっくり目を開けるが…。

 

「!」

 

月明かりでドミナントの持っている手が見えるのだ。そして、同時に驚いた。

 

……おかしい…。右手が正解…?あれは間違いなく鬼の面頬…。そして、左手にあるものは…。…なんだろう…?グニョングニョンの形をしている…。…持ち替えた…?仕方ない…。もう一度…。

 

憲兵がソナーのように探知しようとしたが…。

 

「まだ〜?」

 

「!」

 

ドミナントの声によって、反射音がめちゃくちゃになる。それと同時に冷静さも少し失った。

 

「少し待て…。」

 

静かに言った後、もう一度試す。

 

……?今度は右手に…グニョグニョした物が…。

 

憲兵は訳が分からなくなった。そして、目を開けて月明かりを見る。左手にグニョグニョしたものがある。

 

「…答えは?」

 

「…右…?」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「…いや、左かも…いや右…かな…?」

 

「どっち?」

 

「ううん…。右!もうこれで良い…!」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「…!」

 

だが、憲兵は気づいた。ガラスがあることに。ティーセットがしまってある棚のガラスだ。反射して、少しだけ見える。すると、右側はよく分からないものだ。

 

……?おかしい…?なんで…?

 

そして、月明かりの物をよくよく見ると…。

 

……!壁紙!いつの間に!?

 

壁紙であることに気づいた。

 

「いや…。答えは左。」

 

「…ファイナルアンサー…?」

 

「イエス。」

 

憲兵が答えた。

 

「ちぇっ。」

 

「勝った…。」

 

ドミナントが言い、憲兵が振り向く。

 

「とでも、言うと思っていたのかい?この程度、想定の範囲内だよぉ!」

 

「!?」

 

憲兵は見て驚いた。右手にあるのだ。

 

「…嘘だ…。一瞬のうちに持ち替えて…。」

 

「なら、解説してあげよう。君は強い憲兵だ。感じとろうとするのは目に見えていた。俺より強い奴がうじゃうじゃいるから、経験でね。」

 

「…そうだが…。」

 

「その時、持ち替えたのは確か。だって、ずっとそのままでいるルールはないからね。」

 

「……。」

 

「そして、君は目を開けて驚くはずだ。この月明かりに映る影のような壁紙を見て。」

 

「ああ。確かにそうだ。」

 

「普通ならそれだけで良い。だが、君は疑い深い憲兵と見た。じゃないと、巧みに嘘をつく提督を捕まえられないからね。そして、もう一度感じようとした。そして、俺はまた持ち替えた。」

 

「……。」

 

「やはり、左手にある。と思わせる。だが、壁紙では右手がグニョグニョの物だ。おかしいと思い今度は壁紙を疑い始め、気付く。」

 

「ああ。」

 

「そして、盲点だと思わせたこのティーセットの棚。ガラスを見ると、まるで気付いていないかのように、少しだけ見えるようにした。右手はグニョグニョの物だ。」

 

「ああ。」

 

「しかし、意外なところに穴があった。」

 

「そこが知りたい。」

 

「これ、鬼の面頬を置くようにしただけだよ…。」

 

「!」

 

意外なところでミスをした。子供でも分かるだろうトリックに騙されてしまったのだ。

 

「ちなみに、左手のやつ見る?」

 

「…ああ…。」

 

「左手は象った紙でした。」

 

「……。」

 

憲兵はまんまと騙されてしまった。

 

「…で、明日休まないとね〜。」

 

「……。」

 

「しかも、艦娘たちと一緒にショッピング。楽しそうだなぁ〜。」

 

「…何故…。」

 

「ん?」

 

「何故、自分に行かせようとする…?」

 

「ん〜…。気分かなぁ?それに、艦娘を預けられるくらい強いから安心だし。何より、お小遣い貰って外に出て買い物したい艦娘が増えたし。」

 

「……。」

 

「さ、そこで女の子らしさを学びなさい。潜入捜査とかで必要になるかも知れないし。」

 

「偵察などは憲兵=サンの仕事だ。判決を下す審判は赤いマスクの彼の仕事。ガスマスクを被った彼は開発などが仕事。自分は指示を出すのが仕事。」

 

「…赤の他人に簡単に身体を売ること時点でリーダー失格だから。さ、行った行った。」

 

「……。」

 

鬼の面頬憲兵はぶつぶつ言いながらも部屋を出た。そして、お客様用の部屋に戻り、休息した。




遅くなりました…。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…。

「……長門コーナーだが…。」
「…分かってる。今回で最後だから。」
「4回連続は流石にな…。話すこともないぞ…。」
「…次回!第214話『最低限のおしゃれ』だそうだ…。本当に行くのか…。」
「ん?何か…。」
「いや、なんでもない…。」


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214話 最低限のおしゃれ

暑い…。
「夏だね〜。」
てか、もうこの小説を始めて1周年経つのか…。
「はやいね。」
214話…。いや、予想では290話くらいだと思っていた。
「?どうしてそこまでだったの?」
いや…なに…。当初の計画では敵深海棲艦幹部は三匹だった。ミッドウェー、ソロモン、レイテのね。
「そうなんだ…。」
さらには、他の鎮守府まで出てきた。本来はこの第4佐世保と大本営のみの話だったんだけど。
「そうだったんだ…。」
ま、それ以上はネタバレなんでね。
「ふぅ〜ん。気になるけど。」
「Hi! Essex class Intrepid(エセックス級イントレピッド), 今日も快調です!さあ、頑張っていきましょう!」
イントレピッドさんですね。何を頑張るのかは分かりませんが。
「確か、艦載機などの説明が2時間ほどある…。」
余計なこと言っちゃだめだよ?時雨。
「ごめんね。」
「ううん。気にしてないよ!」
いい子じゃないか。
「そうだね。」
「ありがとう!」
…じゃ!いっちょあらすじいきますか!
「うん!」
「ア、アラスジ…?オ、オー!」
ここで前回にあったことを言えば良いんです。
「頑張って。」
「が、頑張ります!」

アラスジー
先日の夜、遅くまで起きていたらビスマルクさんが来てくれました。そして、飲み物を一緒に飲んでお話をしました。…国は違えど、それぞれのAdmiral(提督)を思う気持ちは一緒だということが伝わり、とても嬉しかったです。


…………

翌朝

 

現在、午前4時。翌朝と書くには、些か早すぎる時間帯かもしれないが…。

 

「……。」

 

鬼の面頬憲兵が支度をしている。

 

……すまんが、本当に仕事がある。約束を破るようで気が引けるが、仕方のないことだ…。

 

憲兵は書き置きを残し、部屋を片付けている。

 

……持ち物…。軍刀、憲兵服、拳銃、食料、水筒、腕章、手帳、筆記用具…。

 

全ての持ち物があることを確認して、部屋を出ようとしたが…。

 

「?」

 

鏡に何か異変を感じた。そして、鏡を見た。

 

「マスクがない!?」

 

思わず驚く憲兵。そして、思い出す。

 

……!大佐の部屋から面頬を持ち帰っていない…!

 

そう思い、急いで足音も気配も消してドミナントの部屋に直行する。

 

…………

 

カチャ…キィ…

 

憲兵がドミナントの部屋に侵入する。

 

……どこだ…?

 

憲兵は急いで探す。だが、机の上にも目立つようなところには置いていない。

 

……。…冷静になれ…。今回は引き出しの中にあるかも知れん…。ソナーではなく、透視だ…。

 

憲兵はしばらく目を閉じ、集中したあと虚ろな目で周りを見る。

 

……あった。

 

この憲兵は色々と特殊なようだ。冷静になればなるほど、人間を超えることができるのだ。

 

……て、寝ている大佐の下…。取り返しに来ることを分かっていたのか…。

 

憲兵がドミナントの近くへ行くと…。

 

「こんな朝早くに、しかもここの総司令官を手にかけるのは誰ですか?」

 

「!?」

 

憲兵が背後を見ると、セラフがいた。

 

「?…見ない顔ですね…。侵入したらすぐに気配がわかるはずなんですが…。…侵入者ですか?」

 

「いや、違う。訳を話すから、騒がないでくれ。」

 

「その声は…。…えっ?あの憲兵さんですか…?まさか、女の人だとは…。」

 

セラフも判別がつかなかったようだ。

 

…………

 

「そうですか…。」

 

「…本当にすまない…。」

 

「全く、ドミナントさんはそんな勝手なことを…。」

 

「いや、元はと言えば自分が原因だ。すまない…。」

 

「謝る必要はありませんよ?」

 

「……。」

 

「…本当はあなた、とても優しいんですね。」

 

「優しい…のか…?」

 

「ええ。…でも、艦娘たちも明日…いえ、今日のショッピングを楽しみにしています。しかし、ドミナントさんはパラオ泊地や陸軍の件で現在は書類を片付けていて、行けないかもしれないという不安を抱いていました。…ドミナントさんのことです、恐らく艦娘たちにぬか喜びをさせたくないため、あなたに頼ったんだと思います。」

 

セラフは申し訳なさそうな顔だが、その瞳は真っ直ぐと見ていた。

 

「……。」

 

憲兵は寝ているドミナントを見る。そして、しばらくして…。

 

「…いいだろう。」

 

憲兵が折れた。

 

「だが、可愛い服は無しだ。」

 

「分かりました。行ってくれるだけでもありがたいので。」

 

憲兵が言い、セラフが微笑んで言った。

 

…………

ヒトマルマルマル(午前10時)

 

「…えーっと…。」

 

「なんだ?」

 

「…最低限のおしゃれはしていきましょうか。」

 

セラフが憲兵の服を見る。憲兵服に憲兵帽だ。

 

「その仕事用の服はやめてください。それに、街でその格好は大騒ぎになりますよ…?」

 

「…困ったな…。これ以外の服装はないぞ…。」

 

憲兵が困っていると、ふと窓の外に気になるものが…。

 

『ドミナント、こんなところで何をしている?サボってデートか?』

 

『うん!そうだよ!』

 

『んなわけないだろ…。嘘つくな。いやー…少し息抜きに散歩を…。』

 

ジナイーダと神様とドミナントだ。

 

『ほう…。一万枚近くある書類はいつ提出するんだ?』

 

『いや、明日か明後日くらいには…。』

 

『信用できるか。今すぐやれ。』

 

『いや…ね…。少し散歩をしてから…。運動不足だし…。』

 

『む…。自ら進んで運動をするところは見たことがないな…。…その心がけは立派だ。少ししたら必ずやれ。いいな。』

 

『了解了解。』

 

『…ところで、何で神様が一緒なんだ?』

 

『え?』

 

『いや、何故神様が一緒なんだ?』

 

『…一緒にいたいって言ってきてね。渋々こうしているんだ。』

 

『ほう…。そんなに素直にお前がな…。』

 

『…疑ってるの?』

 

『いや…?別に?…ところで神様、その冷や汗はなんだ?』

 

『…え…?そ、そんな汗出てないよ〜。それに、最近暑いからね〜…。』

 

『…ほう…。』

 

『う、疑ってるの…?そ、そんな…ねぇ…。』

 

『…ほう…。』

 

『『あ、あははは…。』』

 

『……。』

 

そんな会話が聞こえてきて、ドミナントたちとジナイーダで離れて行く。

 

「…あれはカマかけますよ?絶対。」

 

セラフが言うと…。

 

『…む。そうだ。ついさっき、艦娘が“提督さんと食べるっぽい〜。”とあの店の中で艦娘が言っていたぞ?』

 

「ほら、かけました。ドミナントさんはすぐに気づきましたけど…。あれはアウトですね。」

 

『えっ!?二人だけじゃないの…?』

 

『ほう…。』

 

『…神様…。なんで引っかかったの…?』

 

『あ…。嘘だったのね…。』

 

「ほら。神様はああ見えて、意外と抜けているところもありますからね…。ドミナントさんのこととなると本当に…。一途な故に騙されてしまうほどですから…。」

 

「……。」

 

憲兵は、外でジナイーダに胸ぐらを掴まれて揺らされているドミナントを見る。神様は『自分が誘ったのだ』と言って止めようとしていた。

 

「…提督に大きな不備はない。本気で喧嘩をしているわけでないのが分かる。…ここは良い職場なのだな。上司や部下の関係などなく、皆平等に、友人か親族のような関係性が伺えるな。」

 

憲兵が、目を回していながらも間宮さんの店に行くドミナントと、『どうせなら私も連れてけ』とジナイーダが神様と話しながら同行するところを眺めていた。

 

「…ところで、服装ですが…。」

 

「む。そうだったな…。さっきここの提督の胸ぐらを掴んでいた者のような服が良い。」

 

「えぇ…。あのパイロットスーツですか…?」

 

「?あれはパイロットスーツなのか…。」

 

「…ダメです。」

 

「…なに?なんだと!?」

 

「そんな綺麗な容姿なのに、あんな服はジナイーダさん以外、例外を認めません。排除しますよ?」

 

「だが、自分にはそういうものは…。」

 

「ダメです。さぁ、来てください。お召替えをしますよ。」

 

「…約束と違う…。」

 

…………

ヒトマルサンマル(午前10時30分) セラフの部屋

 

「こんな動きにくい服装…。」

 

「動きにくくて良いんです。最低でもこれくらいはしてください。」

 

セラフが言う。憲兵は現在、誰が見ても女性だとわかる服装だ。黒いベレー帽。ミニのスカートだが、肌をあまり晒したくないらしく黒いタイツを履いている。白い長袖のブラウスを着ていて露出度は全くないが、その歳に合った服装だ。容姿も容姿のため、街へ出たらまず声をかけられるだろう。

 

「…女というものは不便なのだな…。」

 

「その性別で生まれてきた宿命です。あと、化粧もしましょう。」

 

「け、化粧だと!?」

 

「そうですよ?」

 

「いや、化粧は流石に…。自分の職的に…。」

 

「有無は言わせません。さぁ、鏡を向いて。」

 

「ブツブツ…。」

 

「我慢してください。これから髪も整えないといけないので…。」

 

「そ、そこまで必要なのか…?」

 

「当たり前です。」

 

憲兵が驚愕したあと、セラフがしれっと返した。

 

…………

ヒトフタマルマル(12時) 門

 

そこにいる艦娘は、吹雪、夕張、三日月、如月、赤城、加賀、暁率いる第4駆逐隊の面々だ。そこに…。

 

「お待たせいたしました〜!準備に時間がかかってしまい…。」

 

「セラフさん、少し遅かったんですけど、何かあったんです…か…?」

 

「「「…?」」」

 

その面々が、セラフの後ろで出てこようとしない女性を見る。

 

「あの…。その美人さんは一体…。」

 

「鬼の面頬をした憲兵です。」

 

「……。…はい?」

 

「憲兵です。」

 

「…いやいやいや…。本当に誰ですか?」

 

「だから、憲兵です。」

 

「信じられないわ…。」

 

突然のことを聞かれて、戸惑う面々。

 

「…そうなのです…?」

 

「…そうだ…。何故こうなったのか自分でも分からん…。」

 

「「「……。」」」

 

呟き、声を聞くことによって理解した。

 

「…面影がまるでないんですが…。」

 

「可愛い服にするとすごく似合ってしまい、つい調子に乗って化粧をしたり、髪をいじった結果です。」

 

「確かに…。男の人からしたら絶対に釘付けですよ…。際どさではなく、容姿だけでハートを射止めますよ…?」

 

吹雪が憲兵をマジマジと見ながら言う。

 

「…香水の匂いもします。」

 

「だけど、これから山道を1時間ほど歩くんですよ…?」

 

「それに、目立ちますし…。」

 

「鎮守府がバレちゃったら、ちょっと大変よねぇ〜。」

 

皆、加賀以外難癖をつけてきた。少し悔しい気持ちもあるが、1番の理由はドミナント関係だろう。

 

「ドミナントさんなら、今間宮さんのところで食事をしております。帰ってきても、すぐに着替えると思うので大丈夫です。」

 

「「「……。」」」

 

その証拠に、セラフが言うと皆黙った。

 

「それほど、お前たちはあの提督が好きなんだな。」

 

「「「……。」」」

 

憲兵がニヤニヤしながら言い、艦娘たちは目を合わすことが出来なかった。




憲兵〜。

登場人物紹介コーナー
特になし

「長門コーナーだ。」
「今回は私ですね。」
「セラフか。」
「そうです。」
「性能…は前にやったな。」
「はい。」
「なら、何を聞くか…。」
「そうですね…。私の世界のことは話しましたね。」
「ああ。」
「国家が解体されて企業が全てを手中に収めている世界…。」
「そんな世界だったか…?」
「まあ、そんな話です。」
「そ、そうか…。」
「…そうですね…。話すとしたら、この鎮守府のことを私がどう思っているかでしょうか…?」
「簡単だ。答えを聞かなくても想像つく。」
「?そうでしょうか?」
「私たちに対してはとても愛おしい存在だ。」
「そうですね…。ですが、一つ抜けてます。」
「?」
「守りたい存在です。それに、見ていて微笑ましいです。」
「…そんなに真面目に言われると照れるな…。」
「それと、ドミナントさんには好意を寄せていますが…。」
「それは知っている。」
「神様をたまにライバル視しますが、仲が悪いわけではありません。」
「そうなのか?」
「当たり前です。あの子は一途なだけで、悪気はありません。ですが、恋に関しては負けられませんけどね。」
「…そうか。」
「…これくらいでしょうか?」
「そうだな。」
「次回、第215話『これが…平和なのか…』ですね。」
「平和を楽しむと良い。」


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215話 これが…平和なのか…

台風ってやだなー。
「夏が終わってしまったね。」
本当だよ…。…だが、これからは味覚の季節…。
「秋だね。」
栗!サツマイモ!葡萄!サンマ!柿!リンゴ!梨!
「美味しそうだね。」
これからお楽しみが待っている…。…が!コロナの影響とかで無かったらどうしようか…。
「…秋刀魚…。」
あっ…。イベントが…。…狩らねばな…(ジャキン)。
「行くのボクたちだからね…?」
そうそう〜。聞いてくれる〜?
「どうしたの?」
近くにさ〜。ケーキ屋がオープンしたんだよ。
「ケーキ屋さんね。」
…男一人で行くのってどう思う…?
「……。ごめん、答えられないや…。」
…そうかい…。
「そ、そろそろゲスト紹介するね。」
…ああ…頼むよ…。
「北欧スウェーデン生まれの改ゴトランド級、航空練習巡洋艦ゴトランドです。」
ゴトランドさんですね。
「穏やかそうな人だね。」
そうだね〜。
「ゴトって呼んでくださいね。」
ゴンさん。
「ゴトです。」
そうですか…。ゴンさん、あらすじ出来ますか?
「なんか、髪の毛が凄いことになりそう…。」
「だからゴトです!…まぁ、やってみます。」
ゴトさん、ありがとうございます。
「だからゴンさんって…あれ?」
「引っかかってる…。」

アラスジー
新しい朝が来ました。早速、スティグロちゃんは第4佐世保に行きました。あそこの方が退屈しないとか…。…たまには、ここで遊んでも良いのに…。…いえ!羨ましいとか…そんな…。


…………

 

「では、行きましょう。」

 

セラフが言う。だが…。

 

「おーい…!待ってくれー!ちょっとー!」

 

ドミナントが来た。

 

「行ったかと思ったよ…。はぁはぁ…。」

 

「とんでもありません。待ってたんです。」

 

「はぁ…はぁ…。お金…!」

 

息切れをして今にも倒れそうなドミナントがセラフにお金を渡す。

 

「あれ…?そう…はぁ…思ってみれば…はぁ…はぁ…いつもの目に戻ってない…?」

 

「あっ、はい。あの一件が終わってすぐに元の色に戻りました。後日分かったんですが、あれになると物凄く疲れがたまります…。」

 

「そうなの…?ところで…はぁ…はぁ…、交通費…!だから…ね…はぁ…。」

 

「は、はい。わかりましたけど…。大丈夫ですか…?」

 

「大丈夫…はぁ…に…はぁ…見える…?」

 

「…いえ…。」

 

「とにかく…はぁ…。お金…だよ。」

 

「わ、わかりました…。」

 

「あと…憲兵の分も入っているから…。」

 

「はい。」

 

「…ところで、憲兵は?」

 

「ここにいます。」

 

セラフが憲兵を見る。

 

「…え?嘘でしょ?」

 

「悪いか!?誰のせいだ!?」

 

「あー…。憲兵だね。じゃ、楽しんで〜。」

 

「ちょ、おま…!」

 

ドミナントは歩いて行った。

 

「…さてと、予期せぬお金も手に入りましたし、交通機関を目一杯使って行きましょう。」

 

セラフが言い、出発する面々。

 

…………

 

「街なのです!」

 

「着いたわね!」

 

雷電が反応する。バスなどを使ってやっと街だ。

 

「今日は目一杯遊びますよ?仕事を忘れて〜、演習を忘れて〜、嫌なこと全部忘れて。皆さんバレないように私服ですから、どこに行っても構いません。しかし、行く時は一言必ず言ってください。それでは、まずはショッピングモールへ行きましょう!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「…ああ…。」

 

皆、セラフの後をついて行く。しかし…。

 

「…あっ、あそこにソフトクリーム屋さんがありますね。よって行きますか?」

 

歩いて数分で話がそれる。

 

「そうですね〜。」

 

夕張がそんな曖昧な返事をしながらも向かっている。

 

「…何が欲しいですか?」

 

セラフが聞く。

 

「イチ…。…わ、私はレディだから、こーひーで良いわ…。」

 

「ブルーベリー。」

 

「なら、マンゴー。」

 

「ブドウなのです。」

 

「私はバナナにしますね!」

 

「私はメロン。」

 

「う〜ん…。ラムネにします。」

 

「ヨーグルトよぉ〜。」

 

「私は少し変わった紅茶にします。」

 

「…赤城さん…。意識していませんか?」

 

「べ、別にそんなことは…。加賀さんは何にしますか?」

 

「…チョコレート。」

 

「……。」

 

そんな感じで艦娘たちが決めてゆく。

 

「では、注文しますね?…憲兵さんは?」

 

「自分はそういうものは食したことがない。気にしなくて良い。」

 

「……。」

 

そして、セラフが店の人に注文する。

 

「イチゴ、ブルーベリー、マンゴー、ブドウ、バナナ、メロン、ラムネ、ヨーグルト、紅茶、チョコレートを一つずつと、バニラを二つください。」

 

「はいよー。」

 

そしてセラフがお金を払い、店の人が用意した。

 

「暁さんにイチゴ。」

 

「!…で、でもこーひーよ。」

 

「注文を間違えてしまいましたね。もったいないので、食べてください。」

 

「し、仕方ないわねっ!」

 

「響さんにはブルーベリー。」

 

「ハラショー。」

 

「雷さんにマンゴー。」

 

「ありがとう!」

 

「電さんに巨峰。」

 

「ありがとうなのです!」

 

「吹雪さんはバナナで…夕張さんはメロン、三日月さんはラムネですね。」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

「如月さんはヨーグルト。…ただし、下品な食べ方をした場合は取り上げますね。」

 

「下品だなんて…失礼しちゃう。」

 

「そして、抜け目ないお二人の紅茶とチョコレートです。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

「…ありがとうございます…。」

 

セラフが艦娘たちに配り終える。

 

「そして、あなたと私の分のバニラです。」

 

「む?頼んでいないが…。」

 

「そうでしたか?もったいないので食べてください。」

 

セラフが半ば強引に渡す。

 

「む…。」

 

艦娘たちはそこらのベンチに座っておいしそうに仲良く食べていた。セラフも美味しそうに食べている。

 

「……。」

 

しばらく見た後…。

 

パクッ

 

「冷たっ…!でも甘い…。」

 

憲兵も美味しそうに食べる。

 

「憲兵さんもここに来て座りませんか?」

 

吹雪が席をずらして開けてくれた。

 

「う、うむ…。」

 

憲兵はおずおずと座って、ソフトクリームを舐める。

 

「…美味しいですか?」

 

「う、うむ…。」

 

吹雪が聞いて、ぎこちない返事をする憲兵。慣れていないのだろう。

 

「暑いですよね。最近。」

 

「…そうだな。」

 

「確か、今日浜茶屋がオープンするそうです。」

 

「浜茶屋…?」

 

「間宮さんとは別の、夏期間限定のジャックさんのお店です。」

 

「そうなのか…。」

 

「…セミの鳴き声も風流を感じますね〜。」

 

「…山の中はもっとすごいぞ。」

 

「山は虫たちが沢山いますもんね。…そうです。虫と言えば、この鎮守府には少し特殊な虫たちが集まっていて…。」

 

「そうなのか?」

 

「作物が元気になるのは良いんですけど、苦手な人は本当に苦手で…。」

 

「そうなのか…。」

 

吹雪が話しかけてくれるのを淡々と返す憲兵。

 

「…あの…。迷惑だったらすみません…。」

 

「?いや、全然迷惑ではないが…。」

 

「顔が楽しくなさそうで…。」

 

「顔…?」

 

憲兵は今まで気にしていなかったところを気にする。

 

……表情か…。表情は相手に余計な考えを出させるから、いつしか変わらなくなったのか…。それに、面頬をしているから顔に出す必要もなかったから…。

 

憲兵が思った。

 

「表情か…。」

 

「あれ〜?困らせちゃダメだよ?吹雪ちゃん。」

 

「そうよぉ〜?せっかくの休みの日なのに。」

 

「あまり気にしてなかったのかもしれませんし。」

 

「そ、そんなつもりじゃ…。」

 

憲兵が座っているベンチの後ろから、夕張と如月と三日月が顔を出してチャチャを入れる。

 

「そうそう、昨日吹雪ちゃんったら司令官の部屋のベッドを跳ねていたところを見られちゃったらしいわぁ〜。」

 

「た、確かにそうだけど…。」

 

「陸軍出身の艦娘にまで冷たい目で見られていたらしいし…。絶対に引いてるよ。」

 

「そ、そんなこと…。」

 

「それから、噂では自室に戻って暴れていたとか…。」

 

「一人前のレディじゃないわね。」

 

「ハラショオオオオオ!」

 

「なるほど…。」

 

「…なのです…。」

 

「あら、そんなことが…。」

 

「……。」

 

「言わないで〜!!」

 

皆んなにからかわれて必死な吹雪。皆んな微笑んだり、笑ったりしている。セラフも愛おしそうに微笑み、眺めている。

 

……これが…平和なのか…。…久しく忘れていたな…。何というか…。…いいな。

 

憲兵はそう思いながらソフトクリームを舐めていると…。

 

「あっ!憲兵さんが微笑んでいます!」

 

「本当!」

 

艦娘たちに見られる。

 

「ど、どうした…?」

 

「ふふふ。」

 

セラフはそんな皆んなのことが好きなのか、微笑んだままだ。

 

「彼女たちには、人を幸福にさせる何かがあるのかもしれませんね。」

 

セラフが憲兵の隣で、はしゃぎあっている吹雪たちを見ている。

 

「…そうなのかもな。」

 

憲兵も、微笑みながら見ていた。

 

「…この子たちのような艦娘のためにも、自分たち憲兵が頑張らなくてはな。」

 

憲兵がソフトクリームを食べ終わり、立ち上がる。

 

「…だが、今日という休みを満喫するのも悪くない。本当は他の場所へ行かなくてはならないが…。目の前の艦娘を楽しませずとして、他の艦娘が救えるはずないからな。」

 

「ふふふ。」

 

憲兵が吹雪たちのところへ歩き出し、セラフも歩き出した。




遅くなりました…。

登場人物紹介コーナー
ソフトクリーム屋…全50種類ほどある専門店。希少な味はなかなか高額だとか…。

「長門コーナーだ。」
今回は臨時で筆者です。
「おぉ…。て、臨時だと?」
そうです。最近本当に忙しくなりました。
「そ、そうなのか…?」
それと、小説を書く時の気分もあります。
「気分とは…?」
筆者も人間です。イライラしたり、思い出にふけっていたりするとどうしてもあらぬ方向へ偏ってしまったりするため、書き直しが多々あるようになります。
「そうなのか…。」
僅かながらある時間でも精一杯続けて行きますので、どうかご了承ください。
「…大変なのだな…。」
はい。しかし、次回の作品はもう出来ていますので、最近投稿されるかもしれません。
「…そうか。」
次回はせめて、長門さんにお願いします。
「わ、わかった。…次回、第216話『憲兵の長い1日 その1』だそうだ。」
ありがとうございます。それでは。
「お、おう…。」


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216話 憲兵の長い一日 その1

まだまだ暑い…。
「でも、もう終わりに近づいているらしいよ?」
それは嬉しいな…。
「…大丈夫?」
この先の予定を見てうんざり…。
「…大変だね。」
小説、大体の流れや間隔は掴めてきた…。順番も決まってきている…。
「…誰かと相談でもしたの?」
いや…?相談できる相手いないし。
「…ひとりぼっち…。」
なぁに。1人でも、楽しければ良いのさ…。無理して友達作っても長続きしない…。自分に合う人と出会わなければそうならないんだよ…。
「それは他人が決めることじゃなかろうさ。生き死にと同じでさ。」
…そうだな…。…いい感じだし、ゲスト紹介してくれる…?
「うん。わかった。この人。」
「Salut(こんにちは).戦艦Richelieu、今日も付き合ってあげる。いいでしょ?」
“今日も”じゃないですけどね…。
「戦艦だね。今回は色々押しているから、あらすじを頼みます。」
筆者のセリフ…。
「わかったわ。」

アラスジー
正午。お昼は、スティグロが持ってきたオニギーリを頂きましょうか。ナイフとフォークは?え、いらないの?…それに、何故か形が平たいわね…。


…………

ショッピングモール [グローム]

 

「着きましたね。」

 

「ここが…。この場所がしょっぴんぐもーるか…。」

 

憲兵が周りを見る。食品売り場、レストランやら洋服屋、おもちゃ売り場や家電売り場やゲームセンターなど様々な所がある。ちなみに、建物名がどこかの企業名に似ているが、気のせいである。

 

「では、まずはどこへ行きますか?」

 

セラフが言う。

 

「なら、まずは私から良いですか?」

 

「どうぞ吹雪さん。」

 

「洋服屋に行きたいです!」

 

「洋服屋…ですね。分かりました。」

 

吹雪が言い、セラフがマップを見る。

 

「…なるほど…。こう行ってあっちへ…。なるほど…。…分かりました。こちらです。」

 

セラフが道案内をする。憲兵はこのような服を着たことが全くないため、ぎこちない歩き方だ。すると…。

 

「へーい、彼女〜。大丈夫?俺たちと遊ばない?」

 

早速くるナンパ。憲兵の近くを歩み寄る。しかし…。

 

「近寄るな!無礼者!!」

 

「うぉぅ…。」

 

狂犬のような目で睨みつけられ、大声で言われたら誰だって引くだろう…。しかし素直に引けば良いものを、諦めなかった。それほど憲兵の容姿が良かったのか、自分の容姿に自信があったのか…。

 

「ちょっとお茶するだけだしさ〜。」

 

次は腕を掴んできた。

 

パシッ!

 

「これで最後だ…。触るな…。三度目は無いと思え。」

 

嫌に冷静に、手をはたきながら憲兵が吐き捨てるように言った。セラフは容姿と言葉遣いが全く合っていないことに、額に手を添えていた。

 

「いってーな!何しやがる!」

 

ガシッ!

 

そして、その男は憲兵の肩を思いっきり掴んだところで記憶が飛んだ。

 

…………

 

シューーー…

 

ザワザワ…

 

憲兵が思いっきり殴り、男は吹っ飛んでいた。大勢の人の注目の的になっている。

 

「お前たち…。次見かけたら…。」

 

憲兵がその男の連れの方を向き…。

 

「脊髄を完全に破壊して歩けなくしてやるよ…。」

 

「「「ひぃぃぃ!す、すみませんでしたー!」」」

 

殺意満々の目で睨みつけられ、気絶した男を連れて一目散に逃げていった。もう二度とここには来ないだろう。

 

「「「……。」」」

 

吹雪たちは唖然である。セラフはもう目も当てられない状況だ。すると…。

 

「あ、あの…。」

 

大勢の人の中から、二、三人の女の子が声をかけてきた。

 

「ありがとうございます!」

 

「?」

 

憲兵は訳がわからない。

 

「な、何が…?」

 

「あの人たち、無理矢理私たちに声をかけてきて…。」

 

「今のを見て、胸がスッとしました!」

 

「あいつら、毎日のようにナンパを繰り返していて本当にウザくて…。」

 

どうやら、被害者たちのようだ。すると…。

 

パチパチパチ…

 

人々が憲兵に拍手している。正義のヒーロー的ポジションなのだろう。…元々憲兵だけど。

 

「い、いや…。…照れるな…。」

 

憲兵は満更でもなさそうだ。

 

「ホッ…。」

 

セラフは職や自身たちの存在がバレていないことに安堵した。

 

……注目を浴びすぎると、吹雪さんたちの存在がバレてしまいますね…。あとで少し言っておきませんと…。

 

セラフが人気者の憲兵を横目に、考えていた。

 

…………

洋服屋

 

「わ〜!」

 

吹雪たちが目を輝かせている。

 

「ジャックさんのお店にもお洋服はあったけど、こんなにあるなんて…!」

 

「最先端のおしゃれな洋服もあるわねぇ〜。」

 

睦月型の二人、三日月と如月が言う。

 

「たくさんのお洋服がありますね。」

 

「そのようね。」

 

一航戦の二人、赤城と加賀も言っている。

 

「レディはピッタリサイズの服じゃないとねっ!」

 

「ハラショー。」

 

「ジャックさんのお店にもあったけど…。」

 

「電たちのサイズは無かったのです。」

 

第4駆逐隊、暁、ひび…ヴェールヌイ、雷、電が子供用サイズの服を見たりしながら言った。つまりほぼ全員服が欲しかったのだ。

 

「憲兵さんの服も見ないと…。」

 

「自分もか!?」

 

セラフが呟き、憲兵が驚く。

 

「ほら、あの服可愛いですし…。」

 

「動きにくそうだな…。」

 

「…そんなんじゃ、いつまで経っても結婚できませんよ?」

 

「け、けけ結婚だと!?自分は憲…。いや、えーっと…。…ええい、とにかく!自分はする気はない!」

 

「本当ですか?」

 

「…ほ、本当だ…。」

 

「…どうしてそう我慢するんですか…。」

 

「我慢など…。」

 

「ドレスとか、憧れないんですか?」

 

「…昔は憧れていた。」

 

「今は違うんですね。」

 

「…ああ。」

 

……背中に傷がある…。引き取るような男などいるはずもない…。それに、職的に諦めた夢だ。今更どうしようもない。

 

「……。…そうですか…。」

 

憲兵はそんなことを思う。セラフには見透かされているみたいで、哀れんだ目をしていた。そこに…。

 

「憲兵さん!お洋服を選びました!」

 

夕張が積極的に声をかけてくれる。

 

「そ、それか…?」

 

「はいっ!とても似合うと思います!」

 

「お、おぅ…。」

 

夕張が可愛い感じの洋服を持ってきて、戸惑う憲兵。

 

「夕張さんご指名です。さぁ、着てください。」

 

「ちょ、待…。…仕方ない…。」

 

憲兵がぶつぶつ言いながら試着室に入り、カーテンを閉めようとしたが…。

 

「む…。グルだったな…?」

 

夕張とセラフが親指を立ててやってやったような顔をしているのを見て呟いた。

 

…………

 

シャー…

 

カーテンを開けた。

 

「む、むぅ…。」

 

「可愛いですね。」

 

憲兵が恥ずかしそうに俯きながら出てきた。

 

「…自分のキャラじゃない…。」

 

「可愛いじゃありませんか。」

 

「……。」

 

セラフが平然と返し、恥ずかしそうにする憲兵。

 

「まだまだありますよ?」

 

「こっちも似合いそうね!」

 

「ハラショー。」

 

「自分の服を選んだらどうだ!?」

 

次々と服を持ってくる艦娘たちに、憲兵が指摘した。

 

…………

 

「はぁ…。」

 

憲兵がため息をつく。結局、なすがままに着せられ、一番良いやつを選ばれ、ドミナントの持ってきてくれた資金で買わされたのだ。

 

……こんな服、職的にもう着ることは無いと思うのだが…。

 

憲兵が思う。確かに、四六時中憲兵服の彼女は休みの日があまりなく、あったとしても睡眠をとっているか食事をしているだけなので、着ることは稀であろう。

 

「けど、一着は念のために持っておくべきです。」

 

セラフが言う。

 

「艦娘たちも喜んでいますし。」

 

服を購入して満足そうな艦娘たちを見ながらセラフが言った。

 

「あとは、玩具コーナーやホビーショップ、食品売り場などのリクエストがあるので、行きますよ?」

 

「ま、まだ帰らないのか!?」

 

「女性のショッピングは長いものです。行きますよ。」

 

「もう帰りたい…。」

 

「却下です♪」

 

憲兵はセラフたちの後をついて行くことしか出来なかった。




憲兵強し…。

登場人物紹介コーナー
ナンパ者…今回の件で出禁を食らったが、次来るつもりなど元より無い。
被害者…正体は憲兵だとしらず、とても感謝していた。
夕張が選んだ服…憲兵にすごく似合っていた。…だが、それはこのような容姿のためである。普段の彼女には似合わないだろう…。

「長門コーナーだ。意外にも、早く出来て良かったな。」
本当ですよ…。急遽救援が入ってくれたおかげです。あとで彼らを飯屋へ連れて行かなければ…。
「財布が大破しないようにな。」
はい。…で、そろそろ筆者口調のほうが良いかな?
「そうだな。その方がしっくりくる。」
なるほど。まぁ、当分は何とかなりそうになりました。ドミナントのように仕事を早く終わらせたらな…。自分で作ったキャラなのに羨ましい…。
「筆者の宿命だ。」
確かに…。…じゃ、次回予告するか。
「ああ。」
次回、第217話「憲兵の長い一日 その2」ですね。タイトルに悩まなくて済む…。
「たぬきどもが…。」
なに?何か言った?
「いや?なにも…。」


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217話 憲兵の長い一日 その2

この先ずっと後のことを書いていたら遅れました…。
「この先かい?」
おそらく、相当あとの話し。
「何話くらい後なんだろう。」
結構後。この物語の終盤へ差し掛かったところ。
「今どこらへんかな?」
まだ序盤。
「…結構後だね…。最低でもあと200話以上だし…。」
まぁ、予定が変更するかもしれないしね。
「長編小説じゃ…?」
800話の人すごいと思う…。…そこで、筆者は少なからず小説を書いている人の手助けをしたいと思う。この人気で800話行ったらどうなると思う?
「…希望わくかもしれないね…。」
それか、闘志だよ。これだけ人気がなくて、話数が上位の奴…。続ける理由は人気ではない。毎日続けることが一番大事だと誰かが言ってたぜ。
「…続けることって当たり前のように感じるけど、実はとっても難しいんだね。」
そうだね〜。いい感じだから、そろそろゲストでも呼ぼうかな。
「うん。分かった。この人だね。」
「ブォンジョールノ(こんにちは)!マエストラーレ級駆逐艦、リベッチオです。リベでいいよ。よろしくね!」
元気いいね〜。
「そうだね。」
「あれ〜?ここどこ?」
「筆者さんの部屋だよ。ここで物語を書いたり、ここの欄のあらすじをしてくれる人を召喚したりするんだよ。今日はリベッチオさんが選ばれたんだね。」
「リベでいいよっ。ここで言えば良いの?」
そう。お願いねっ!
「さぁ!イタリア駆逐艦の魅力、教えてあげるね!」

アラスジー
第4佐世保の提督がいなくなって、少し寂しいかな…。でも、笑って待っていられるくらい強くなるよ!絶対!


…………

ショッピングモール 2階

 

「おもちゃ売り場か…。」

 

憲兵が見て呟いた。

 

「電さんなど、子供用のおもちゃはジャックさんのお店で売って無いので…。…まぁ、ジャックさんのお店は“特殊なグッズ”専門店ですけど…。」

 

「特殊なグッズ…?なんだ?それは。」

 

「それは…。…秘密です…。ふふっ。」

 

セラフも一応常連の一人だ。そこに…。

 

「ほにゃぁぁぁ…!」

 

電の叫び声が聞こえた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「何があった?」

 

「あ、あれなのです…。」

 

「「!」」

 

ただ事ではないと思い、心配する二人。そして、電が指をさす。

 

スラァ

 

カチャッ

 

そして、二人がそれぞれの武器でその方面に構えた。

 

ブゥゥゥン…

 

「あら、驚かせてすみません。…ほら、吹雪ちゃんも謝って。」

 

「すみません!このらじこん?の操作が難しくて…。」

 

どうやら、電は吹雪が試しに動かしていたラジコンに驚いたみたいだ。二人は武器を出したのに拍子抜けだった。

 

「「……。」」

 

そして、二人は顔を見合わせる。

 

「…とにかく、気をつけてくださいね?それも売り物なんですから…。」

 

「それと、人の近くで飛ばすのはだめだぞ。」

 

「すみません…。」

 

セラフと憲兵が注意をして、電に説明させてあげた。そして、今度は集まって行くことを決めたみたいだ。

 

「…銃刀法違反だぞ…。どこからそんな銃を取り出した…。」

 

「これは護身用です…。もちろん、今は実弾ではありませんよ。…それより、どこから刀なんて出したんですか…。今の場合だとあなたの方が目立ちますよ…。」

 

「…いつ何時襲われるか分からないからな。服の中に隠している。」

 

二人はそれぞれの武器を見てやれやれとする。まぁ、どちらにせよバレたら大変なのだが…。

 

…………

第4佐世保 執務室

 

「終わって暇だーーー!!俺も行きたーい!」

 

「床でジタバタしないでください…。子供じゃないんですから。」

 

ドミナントはあの何十万枚もある書類を4時間で終わらせ、ジタバタしている。

 

「足柄〜、なんかして遊ぼ?」

 

ドミナントが足柄を見て言う。

 

「提督…。子供に戻らないでください…。もう少しキチッとしてくださいな。」

 

「……。…何かをして遊びませんか?お姉さま。」

 

「言葉を直せば良いと言う意味ではありません…。」

 

「…足柄きついよぉ…。」

 

「提督のための仕方のない鞭です。」

 

足柄はやれやれとしている。

 

「…もしかして、秘書艦嫌だった…?…俺のこと嫌いなのかー…。ごめんね。そんなつもりじゃ…。」

 

「そんなことありません!!」

 

バンっ!

 

「うぉぅ…。」

 

足柄が机を叩いて否定をする。

 

「私たちをここまで強くさせてくれた提督に感謝しているわ。嫌いなんてとても。教官に無理矢理連れ出されても何もしないで、私たちをさらなる高みへ導いてくれようとしていることも知っていますし。」

 

「ゴフッ…。…ごめん…。」

 

足柄は気付いていないが、ドミナントにダメージが入った。

 

「あー…暇だなぁ…。」

 

「そうねぇ〜…。確かに暇ね。」

 

しばらく執務室に沈黙が訪れる。

 

「手と手を繋ぐ目と目が合えばわーい、わーい、張り切っちゃう〜♪」

 

「何の歌ですか…?それ…。」

 

ドミナントが暇すぎて口ずさんだ歌を足柄が聞く。

 

「そうだっ。今日は浜茶屋が出来るんじゃん。」

 

「あら?行きますか?」

 

「ん〜…。…ジャックに言ったし。行くか。」

 

ドミナントが支度をする。

 

…………

ショッピングモール

 

「今度は…なんだ…?」

 

「ホビーショップです。」

 

「おもちゃ屋と同じように見えるが…。」

 

「こちらは専門的です。」

 

セラフが見る。プラモデルなどがある。

 

「あっ、ほら。吹雪さんのプラモデルが…。」

 

「本当だ!」

 

吹雪が自分の艦の姿のプラモデルを見て少し嬉しそうにする。

 

「あ、暁のもあるわよね!?」

 

「ハラショー…。」

 

「見てくるっ!」

 

「い、電も行くのです!」

 

自分の艦があるのかどうか見に行く第6駆逐隊。

 

「私のはあったわぁ。」

 

「もうすでに持ってたんですか。」

 

如月が自分のプラモデル(1/500)を手に、セラフたちに言う。

 

「…買おうかな…。」

 

吹雪が呟く。まぁ、自身の艦は欲しいだろう。次来た時は無いかもしれないから。

 

「私はぁ〜…。…買っちゃおうかしら。」

 

「うーん…。」

 

吹雪たち、大人に見られない艦娘は月に3万円だ。服も購入しているため、吹雪たちにとってはそこそこの値段だ。

 

「…でも、邪魔になると困るから1/700にしたわぁ。」

 

「あっ。」

 

吹雪が自身のその大きさのプラモデルを見つけ、値段を見る。少し値段が下がっていて、余裕が持てそうだ。

 

「買います!」

 

「そうですか。」

 

セラフははしゃぐ艦娘たちを見て微笑む。全員、自身の艦を見つけたみたいだ。

 

「セラフさん…。」

 

「あれ?夕張さん、少し気分が沈んでいますね。」

 

いや、全員ではなかったようだ。

 

「ありませんでした…。」

 

夕張が残念そうに来た。

 

「それは仕方ありませんね…。」

 

「はい…。」

 

セラフは少し残念そうにして言う。

 

「まぁ、ないなら仕方なかろう。」

 

「はい…。」

 

憲兵が言い、夕張が残念そうに返す。目に見えてシュンとしている。

 

「…店の人に聞くか。」

 

「え?」

 

憲兵が呟き、店の人に聞いている。そして…。

 

「…あるそうだ。裏に。」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ。どうやら、補充をし忘れていたみたいでな。良かったな。」

 

「ありがとうございます!」

 

憲兵が言い、夕張が受け取って嬉しそうにした。だが、セラフには見えていた。店の人が何故か恐怖していたことに…。

 

…………

 

グゥ〜…

 

しばらく歩いていると、誰かがお腹を鳴らす。三日月が恥ずかしそうに俯いていたため、犯人がすぐに分かった。

 

「もう15時ですね。遅いですが、昼食をとりましょうか。」

 

セラフが言う。時間帯も時間帯のため、混んでいなさそうだ。

 

「何が食べたいですか?」

 

セラフが聞く。

 

「「「う〜ん…。」」」

 

全員が唸る。

 

「…ハッ!い、いえ!やはり、焼肉などにしましょう。食べ放題の…。」

 

セラフが吹雪たちの後ろにいる二人に気づいて言った。財布の金を何もかもを食い尽くす、死を告げる二人がいたからだ。

 

「焼肉…。」

 

憲兵が呟く。

 

「臭みがあるぞ…?」

 

「猪とかではないので安心してください…。豚ですよ。」

 

憲兵はどうやら、普段から山中で暮しているらしい。

 

…………

ショッピングモール内 焼肉屋

 

「やはり、正解でしたね…。」

 

セラフは積み上がっている皿を見る。店の人の顔は真っ青だ。

 

「ですが、あなたも赤城さんに負けてないじゃありませんか…。」

 

セラフが憲兵を見る。中々のスピードで、よく食べる。

 

「…ゴクン。獣が取れない日もある…。だから、食べれる時に沢山食べるのだ。」

 

「どんな環境で育ったのやら…。」

 

平然と言う憲兵にセラフが呟いた。かれこれ大盛り15皿目だ。彼女の胃袋の底が知りたい。というより、明らかにこの席だけ異様なオーラが出ている。積み上がっている皿のせいだろうか…?艦娘とバレなければ良いが…。

 

「…もう、完璧に元は取れましたね…。私はこれくらいでお腹いっぱいです。」

 

セラフが箸を置く。艦娘たちの食欲に限界はない。

 

「そう思ってみれば、皆さんってよく食べますけど太らないんですか?」

 

セラフが聞いた途端…。

 

ピタッ…

 

憲兵と第6駆逐隊以外の箸が止まった。憲兵は山の中を進むため、良い運動になっているのだろう。

 

「…そう思ってみれば、最近お腹が…。」

 

「太っていると、提督に嫌われる可能性が…。」

 

「ま、まさか…。そんな外見だけで判断しないわよ。…多分…。」

 

「…でも、司令官の隣にいるのが太った女性だと、他人からの司令官の評価が…。」

 

「…最近出撃してましたっけ…?」

 

「…いいえ。赤城さん。最近は食っちゃ寝です。」

 

「…ジャックさんだと、ストレートに言いそうですね…。」

 

「…言わないでください。破滅になりそうです…。」

 

悶々と考えだす面々。

 

……まぁ、ドミナントさんにとっては娘ですから、支障がなければどんな体型でも態度は変えないと思いますけどね。

 

セラフはそんなことを思うが、この場にいる艦娘たちにとっては一大事のようだ。

 

「わ、私もそろそろお腹いっぱいかもな〜…。」

 

吹雪が言い出す。

 

「今日くらいはいいじゃありませんか。こんなこと滅多にないんですから、食べたい分だけ食べてください。」

 

セラフが言う。

 

「それに、恐らく成長期なので、食べた方が良いですよ?立派な大人になったら、ドミナントさんも振り向いてくれるかもしれませんし…。」

 

「本当!?」

 

「…まぁ、ドミナントさんの好みは大人のお姉さんみたいですけどね。」

 

セラフが他人事のように言った。まぁ、吹雪が大人になるのは何年後なのか知らないが…。

 

…………

 

「では、次で行くところは最後にしますね?時間も時間なので。」

 

セラフが言う。艦娘たちは満足そうだ。

 

「では、今夜の夕食の食材を買います。今夜は…。んー…。…!スズキのクリーム煮にしましょうか!」

 

「また魚の煮物ですか…?」

 

「む…。…でも、確かに先日もそうでしたね。…なら…。…!オムレツにしますか!」

 

「オムレツ…。久しぶりに食べたいです!」

 

「なら、決まりですねっ。」

 

セラフや吹雪、夕張が微笑む。

 

「…まるで親子だな…。」

 

憲兵はそんな2人の姿を見て呟いた。

 

「ええ。私たちの教官は少しクセは強いですが、親代わりのような感じです。セラフさんは優しく、駆逐艦のような子供達に好かれます。ジナイーダさんは強く、大和さんの次に艦娘たちの憧れです。主任さんは、どこでも笑っていて、からかう以外ではよく私たちを笑わせようとしてきます。山風さんも笑わせたことがあるそうですし。ジャックさんは…。」

 

「ジャックさんは物事の算段を考えるのが得意で、頭が良いです。」

 

「そうですね。加賀さん。」

 

赤城と加賀が口元を緩ませながら言う。

 

「…幸せなのか…。」

 

「「はい。」」

 

「…そうか。」

 

憲兵が駆逐艦や夕張に囲まれているセラフを見る。全員楽しそうだ。

 

「…いつか、こんな鎮守府を増やしたいな…。」

 

「憲兵さんなら出来ますよ。なんせ、憲兵の中で艦娘のことを一番に考えている、とても優しい人なんですから。」

 

赤城が憲兵に笑顔で言った。セラフにも言われた気がするのは気のせいだろうか。

 

「…ありがとう。」

 

そして、憲兵を含めた三人は買い物をするセラフの後をついて行く。




今まで詳しく書かれていなかった裏話を書きます。
鎮守府の争いごと…実は、艦娘たちは24時間ドミナントたちAC勢に監視されています。(例 倉庫の夕張たちエンジニア艦娘はセラフ。好戦的な艦娘は演習場で主任。その他はジナイーダとジャックが見回りの形で…。)どんなに小さな争い事も必ず見ています。仲良く喧嘩する、もしくはもう少ししたら解決できるような争いは無視します。しかし、同じ鎮守府内のいじめ、陥れ、後々信頼関係に亀裂が入るような争い事は介入します。そうなった場合は鎮守府全員を巻き込む裁判をして、首謀者は必ず永久追放。その他もろもろ。関わりの深い者はAC勢で審議(良くてドミナントからの徹底的無視。悪くて永久追放)をする。見ていて止めなかった場合は首謀者の仲間と見なして、AC勢と艦娘で審議(良くて無罪。悪くて苦痛を伴ったり、思わず泣きたくなるような仕打ちを受ける)。しかし、被害者の方も審議をする(被害者が悪い場合はそちらが永久追放。その他もろもろ)。まぁ、ドミナントは普段は優しいですが、そのような艦娘がいた場合は必ず罰を与えます。(罰を潔く受けて、乗り越えれば許されることも…。)ドミナントはやる時は残酷なまでにやります。…まぁ、鎮守府にそんな人はいませんが。

ドミナントへの好感度
神様 100/100
吹雪 95/100
夕張 90/100
三日月 80/100
如月 85/100
その他(主要平均) 70/100
その他(他平均) 55/100
加賀 38/100

大好き 100
好き(異性) 80〜99
好き(友人) 60〜79
どちらかと言えば好き 45〜59
興味なし 25〜44
嫌い 0〜24

登場人物紹介コーナー
足柄…飢えた狼。妙高型の艦の特徴である、攻撃的かつ洗練されたボディをスレンダーで長身な大人の女性としてアレンジしている。 勝利に貪欲であり、勝つことのみが我らの存在する意味だと信じている。ドミナントは好戦的な性格は嫌いではないが、やりすぎは流石に注意される。そのため張り切って出撃する時は必ず、ドミナントに『生きて帰ってこい。これは命令だ。』と釘を刺される。
プラモデル…本当によく細かく作られている。至高のプラモデル。
ラジコン…吹雪が試しに動かしていた虫型のラジコン。決してわざとではない。

「長門コーナーだ。」
「今回も私だ。」
「最近出番多いな。」
「いや、1日のみの無断休暇だ…。本部に一応連絡したが、怒られる可能性大だ…。」
「…すまんな。我々の提督が…。」
「いや、別に責めてはいない。…確かに最初は嫌な気分だったが、今はこんなのも良いかもしれないと思っている。いつも黒い、裏の仕事をしてきた。明るみの楽しさを知ることが出来て、無駄な休日でなかったことに感謝しているな。」
「…憲兵業というのは大変なのだな…。」
「憲兵は主に肉体を動かして、提督業並みの書類仕事もあるからね。嘘を見破る能力も、妖精さんも見えなければならないし。」
「…提督業より憲兵業の方が幅が狭いのでは…?」
「その分給料良いよ?提督より。」
「そうなのか。…と、そろそろ次回予告だが…。」
「了解。次回、第218話『憲兵の長い一日 その3』だね。」


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218話 憲兵の長い一日 その3

タイトルに悩まなくて済む…。
「いきなり本音を言うのはやめようか。うん。」
憲兵、本当に長い1日なのは確かだよ。
「どうして?」
いつも山道のみしか通ってないし、娯楽なども知らないから。
「なら、すぐに楽しい時間は過ぎるんじゃないの?」
残念だけど…。例えば、ジャングルに住んでいた人が、いきなり今日は都会で遊んできてください。って、言われても困惑するでしょ?望んでいないみたいで。
「まぁ、そうだけど…。」
警戒心出しまくりで、逆に疲れるんだよ…。転勤とかと一緒で…。
「苦労しているんだね…。」
じゃ、そろそろあらすじに入ろうか。長すぎても良いことないし。
「投げ出した…。」
今回のゲストはこの人です。どうぞー。
「Hello!航空母艦、Saratogaです。」
サラトガさんですね。
「こんにちは。」
「Hello.」
こんにちは。今回呼んだのは他でもない、あらすじを説明してもらいたいこと。そして、ネタがない!
「正直だね…。もう…。」
「アラスジー?」
正確にはあらすじ。前回とかの見た光景を言えば良いの。
「Roger.(了解しました)」

アラスジー
もう夕方です…。少し疲れたかな…。…はっ!?いいえ、サラは全然平気です!


…………

第4佐世保

 

時は少し遡る…。およそ2時間ほど前。

 

「ここが浜茶屋…。」

 

「そうですね。」

 

ドミナントと足柄が店の前で立っている。そろそろ15時だというのに、繁盛している。

 

「ジャック〜。2名入りました〜。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「2名。ドミナント提督と足柄さん。案内するから来て。」

 

セントエルモはウェイトレスのようだ。席に案内する。

 

「セントエルモか。しかも、その水着やめい…。際どいぞ…。」

 

「これしかなかった。」

 

セントエルモは一応上着を羽織っている水着仕様だ。

 

「お前は子ど…ゴホン。背が少し低いし、戦艦だから胸が…うん…。…ロ○巨○でそれはダメ。」

 

「本当にこれしかなかった…。」

 

セントエルモが少し恥じらうように手で隠したりするが、あまり効果は無さそうだ。…まぁ、鎮守府で男と言えばドミナントとジャックと主任しかいないのだが…。

 

「気をつけろよ…?マジで。てか、その格好で鎮守府外出禁止ね。」

 

「当たり前。」

 

ドミナントが一応注意をして、セントエルモが当然のように返す。

 

「セントエルモだけ?スタッフ…。」

 

「ううん。まだいるよ。でも、ウェイトレスは私だけ。」

 

「…本当に出来る?」

 

「出来る。…この席です。」

 

セントエルモが言う。

 

「よっこらしょ…。」

 

「ご注文がお決まり次第、声をかけてください。」

 

セントエルモは言うだけ言って声をかけられた席へ急いで行く。

 

「…提督、あの子たちは少しずつ成長しているんですよ?」

 

「…そうだな…。」

 

足柄に言われて、ドミナントがメニューを見る。

 

「…かき氷、牛乳、カレーライス、枝豆、ビール、ラーメン、焼きそば…。メニューこれだけか…。」

 

「わがまま言いなさんな…。」

 

「ん?マル秘メニューだと…?」

 

ドミナントがメニューの端に書かれた欄を見る。それだけ、イメージ図などがなく、書かれているだけだ。

 

「高いな…。…足柄、少し食べる?」

 

「…何をですか?」

 

「いや、俺が注文したもの…。」

 

「是非食べたいわね!」

 

「お、おう…。分かった。足柄注文決まった?」

 

「かき氷にします。」

 

足柄が当然のように返す。

 

「じゃ、決まりだね。セントエルモー。」

 

「はい。」

 

「このマル秘メニューを一つと、かき氷…何味?」

 

「みぞれにします。」

 

「みぞれ…を一つです。」

 

「かしこまりました。」

 

セントエルモが一言言って、厨房へ行く。

 

「マル秘メニューか…。ジャックが言っていた驚くやつだな。」

 

「なんですか?それは。」

 

「…俺もよくわからん…。」

 

そんなことを話しながら暇を持て余して何分後…。

 

「お待たせいたしました。かき氷みぞれです。」

 

「ありがとう。では提督、先に失礼します。」

 

「おう。」

 

足柄が食べ始める。

 

…………

さらに20分後

 

「遅いな…。」

 

「そうですね。」

 

足柄は既に食べ終わっている。すると、セントエルモが来て…。

 

「…お待たせいたしました。」

 

何やら運んできた…。

 

ドンッ

 

「…冷めないうちにどうぞ…。」

 

「「……。」」

 

セントエルモはそそくさと行き、足柄とドミナントは硬直した。

 

「…この暑いのにか…?」

 

「…やっぱりお腹いっぱいなので、遠慮しておきます。」

 

「逃げたな…。」

 

「誰だって逃げるわよ…。鍋なんて…。」

 

そう、目の前にあるものは鍋だ。…たしかに、ドミナントは驚いた。

 

「…こんなもの誰も食べない。…て、えぇ!?」

 

「どうしたんですか?」

 

「あ、あそこの席…。」

 

ドミナントが指を刺す。そこにいたのは湯豆腐を食べていた憲兵だ。普段ガスマスクをつけている。そばにはポン酢らしきものもあった。

 

「さすが憲兵…。あきつ丸が言っていた…えーっと…。何とかすれば火もまた涼しってやつか…。」

 

「すごいわね…。」

 

足柄も素直にすごいと思った。

 

「となりにはマスクしたまま食べている2人もいるし…。」

 

ドミナントが憲兵2人を見る。かき氷を食べていたが、スプーンですくい、口に入る瞬間が早すぎて見れない。素顔が非公開である。

 

「…で、これどうしよ…。」

 

「そうね…。」

 

ドミナントと足柄が鍋を見る。

 

「…しょうがない…。セントエルモ〜。」

 

「はい。」

 

ドミナントがセントエルモを呼び…。

 

「かき氷三つ。」

 

「味は…?」

 

「…無しで。」

 

「…氷となりますが…。」

 

「別に構わないよ。鍋に入れるし。」

 

「は、はい…。」

 

セントエルモはキッチンに行った。

 

「この中に氷を…?」

 

「冷やし鍋にする。」

 

「なるほど…。でも、味が薄くなりますけど…。」

 

「…食べれないよりはマシ。」

 

まぁ、結果的にドミナントは食べたのだが…。あとでジャックは叱られた。

 

…………

帰り道

 

「結構買い物しましたね〜。」

 

「袋が有料だったけど、念のためマイバッグを持ってきていて良かったわ。」

 

セラフと暁が言う。セラフの両手には袋が沢山あり、暁達も一つずつ持っている。鎮守府に所属する全員分なのだから、当たり前であるが…。

 

「卵、安かったですし。…重くないですか?」

 

「一人前のレディーとして、これくらい当然よ!」

 

「少し重いけど…。うん。大丈夫。」

 

「もっと頼って良いのよ!」

 

「頑張るのです!」

 

第6駆逐隊を心配するが、大丈夫そうだ。

 

「これから山を越えるのに、大丈夫なのか?」

 

憲兵がその面々を見て言う。一応憲兵も持っている。すると…。

 

「…この街は治安が悪いのか…?」

 

憲兵が呟いた。

 

「?何か言いました?」

 

赤城が言うと…。

 

「あっ、ううん。何でも。」

 

憲兵が言い、女性たちは行く。そして、憲兵がセラフの横に並んだ。

 

「…何人いますか?」

 

セラフが言う。

 

「…ざっと20人ほど。」

 

憲兵が返した。

 

「そうですか…。本日のショッピングモールの人でしょうか?」

 

「…おそらく。仲間を引き連れているな…。」

 

ちょうど林に差し掛かり、木の影で2人の顔は見えない。唯一見えるのはセラフの赤みがかった黒色の目と、憲兵の黄色がかった黒色の目、あとは微笑む口元のみか…。

 

「…片付けるか?」

 

「…いえ。今回は恐らく復讐…。そういう相手は何度でも来ます。完全に心をへし折るか…。…消すかの二択ですね。」

 

「消すのは後々面倒だ。…まぁ、権限で出来るがな…。」

 

2人が怖いことを言う。

 

「何の話なのです?」

 

電が2人に聞いてきた。

 

「ううん。なんでもありませんよ〜。」

 

「重いか?」

 

2人はすぐに恐ろしい顔をやめて、電に微笑みながら言う。

 

「頑張るのです!」

 

「偉いですね。よ〜し、今夜は私も腕によりをかけて料理を作りますよっ!」

 

「偉いな。感心する。」

 

「えへへ。」

 

電は褒められて嬉しそうな顔をする。そして、前を向き直り…。

 

「…この子たちにはバレないようにしたいですね…。嫌な思いはさせたくないので…。」

 

「…分かった。なら、囮になる。少数から潰しにかかると思うしな。」

 

「分かりました。頼みます。」

 

2人が言った。そして、憲兵が荷物をセラフに託して、離れる。

 

「?憲兵さんはどこへ行くの?」

 

暁が聞いてきた。

 

「お手洗いだそうです。」

 

セラフは微笑みながら言った。

 

…………

 

「…来ない…。」

 

憲兵が呟く。

 

……まずい…。そうか。奴らは私を襲わないつもりか…。強いと知っているから…!そして離れた隙を突いて、あの子たちを…。弱い者を人質に取る…もしくは、性暴力を…。

 

憲兵が思う…。

 

……こうしちゃおれん…!

 

憲兵が走る。

 

…………

 

……向こうへ行きませんね…。…そうか…!憲兵さんにぶっ飛ばされたので、こちらを狙うつもりでしたか…!向こうは警戒心が高いんですね…。ならば、憲兵さんがいない今が好機…。まず来るはずです…。…この子たちに怖い思いはさせたくありませんね…。憲兵さんも今頃向かっているはず…。ならば、私が離れてその間に来るかもしれません…。

 

セラフが思い…。

 

「少し遅いですね…。見に行きますから、赤城さん、リーダーを頼めますか?」

 

「えっ?あ、はい…。」

 

「頼みますよっ!」

 

セラフが行く。

 

「…どうしたんでしょうか…?」

 

…………

 

「セラフ!?何故ここにいる!?」

 

「あなたこそ!計算ではもうすでにあの子たちと合流しているはずですよ!?」

 

憲兵とセラフが鉢合わせる。結局、セラフにもついてこなかったのだ。もうすっかり日が暮れている。

 

「自分は…その…。」

 

「…まさか、道に迷ったなんて…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「……。…悪いか!?いつも山道しか通ってないから、街には慣れていないんだ!」

 

「それより!あの子たちが心配です!早く行きますよ!」

 

憲兵とセラフが駆ける。

 

…………

 

「誰ですか?あなたたちは…。」

 

赤城が敵意満々の口調で男たちに言う。暁たちはその後ろに隠れている。

 

「決まっているだろ…!お前らの…。」

 

「待て。」

 

ガラの悪そうな男が言うのを止め、奥からキチッとした男性が出てくる。

 

「怖がらせちゃったかな?ごめんね。君たちの…仲間から、君たちを迎えるように頼まれた人なんだ〜。」

 

その男性は笑顔で言う。

 

「そ、そうなのです…?」

 

駆逐艦などの艦娘たちは少し安心したようだが、赤城と加賀はさらに警戒する。

 

「車に乗って?」

 

黒いワゴン車を指さした。

 

……明らかに怪しい男…。…ここで暴れるのも手ですが、人目に入りそうですね…。…こちらは世間には秘密の第4佐世保…。どうせ人目のないところに連れて行くはず…。なら、そこで大暴れをすれば問題ありませんね…。もし、車に閉じ込められたとしても、破壊して出れば良いですし…。

 

どうやら、危険な女性はセラフと憲兵だけでは無かったようだ。艦娘の馬力を舐めてはいけない。そして、加賀と目を合わせて頷き…。

 

「では…。」

 

赤城たちも乗った。

 

…………

 

「はぁ…はぁ…遅かった…!」

 

セラフが言う。森の中だ。計算して、もうとっくに合流しても良い距離なのだ。

 

「…確かにな…。」

 

憲兵が呟く。すると…。

 

「…!これは…!」

 

セラフが紙を見つけた。

 

「…どうした?」

 

「…相手は私の逆鱗に触れたようですね…。」

 

セラフが心底怒っていた。

 

「私のことも知っていました…。昔、私がしばいた人でしょう…。今度は性懲りもなく、人質まで用意しましたね…。…今度は容赦しませんよ…。」

 

「…ここから東の倉庫で待つ…か。」

 

憲兵がセラフの紙を見る。

 

グシャ…

 

「…行きますよ…。」

 

「…分かった。しかし夜とは…。本領を発揮できそうだ…。」

 

夜、セラフと憲兵が駆け出した。

 

…………

倉庫

 

「へへっ。そろそろ来る頃だな。」

 

「早く終われば、俺たちにも回してくれるだろうな。」

 

「さっさと終わらすぞー!」

 

中には男たちが何人かいる。あとは見張りだ。

 

…………

 

「あーあ、見張りなんて、損な役だよなぁ〜…。」

 

「全くだ…。でもよぉ、俺たちで倒しちまえば、残りの奴置いて、俺たちだけで行けるぜぇ?」

 

「ははは。そりゃいいな。」

 

見張りのガラの悪い男が話す。

 

「誰を倒すんですか?」

 

「そりゃもちろん、あの女2人…。」

 

…………

 

「悲鳴を挙げさずにサクッと倒すなんて…。殺した方が早いんですがね…。」

 

「ガフッ…。て、てめぇら…。」

 

「うるさいですね…。指へし折りますよ?」

 

ボギッ!

 

「グァ…。」

 

「折れちゃいましたね♪まぁ事故ですよ。まだ折れてない指もありますし…。一本ぐらい平気ですよねぇ?腕や足も残ってますし。」

 

セラフが見張りの1人をいたぶっていると…。

 

「まだやっているのか…。こちらは終わったぞ。叫び声一つさせていない。」

 

「流石ですね。こいつの喉潰しますか?その方が静かですよ?」

 

「やめてやれ…。可哀想だ。」

 

そして、憲兵がその見張りを首トーンした。…頭が取れてないと良いが…。…素直に倒れたので、大丈夫だろう。

 

「では、中ですね…。」

 

…………

車の中

 

「夜景が綺麗なのです!」

 

「良い景色ね!」

 

電と暁が窓から見える夜景を見ている。

 

……呑気にしやがって…。あとで泣いているところが目に浮かぶなぁ…。ゲヘヘヘ…。

 

男性はそんなことを思いながら運転していた。

 

…………

 

「おっせぇな…何やってんだ?」

 

中で待ち構えていると…。

 

バチン!

 

「ん?停電か?」

 

いきなり暗闇になった。その瞬間…。

 

「グァァァァ!」

 

「ギャァァァ!」

 

「グボッ!」

 

彼方此方で阿鼻叫喚、恐怖の悲鳴が闇に響き渡る。

 

「明かりをつけろ!明かりを!」

 

バンっ

 

再び明るくなると…。

 

「…時間オーバーですか…。」

 

「殺してないよな?」

 

2人が中心に立っていた。周りには倒れている者たちが…。

 

「誰がリーダーですか?」

 

セラフが聞く。が。

 

「…いえ、答えさせる必要はありませんね…。あとで一人一人拷問して口を破らせれば良いわけですし…。」

 

どよよ…

 

セラフが正真正銘の恐ろしい顔をした。憲兵も一瞬見て、少し固まっていた。

 

ヒュッ

 

すると、セラフが消えた。

 

ドガァァァァァァン!!!

 

と、思ったら1人の頭の真横に拳があった。

 

「わざと外したのですよ?」

 

セラフがその者に笑顔で言う。が、その者は壁になどいなかった。空気を殴ったはずなのだが…。

 

「ば、化け物…。」

 

「化け物め…。」

 

そう、セラフは外したはずなのだが、拳の延長線の壁が吹っ飛んでいた。それどころか、隣の倉庫も大きな穴が空いていた。そんなので頭を殴られでもしたら、カケラも残らないだろう…。

 

「……。」

 

それを見て、その者たちはゾッとした。

 

「に、逃げろぉ!」

 

「助けてぇ!」

 

逃げて行くが…。

 

ガチャ…!ガチャガチャ!

 

「ドアが開かない!」

 

「ひぃぃぃ!」

 

必死に開けようとするが、どうやっても開かない。それもそうだろう。なんせ、セラフがドアに細工をしたのだから。

 

「……。」

 

セラフが迫る。男たちは絶望し、へたり込む。中には恐怖で漏らしたものも…。

 

…………

 

「殺さなくて安心したよ…。」

 

「……。」

 

「でも、こんなになるとはね…。」

 

倉庫は完全に破壊された。所々に転がっているのは男たちだ。

 

「居場所は分からないそうですし…。首でも晒しますか…?」

 

「やめとけ…。」

 

セラフが言う。

 

「…仕方ありません…。この力を使うしか…。」

 

呟いたが…。

 

「いや、どんな力なのか気になるが、こちらの方が早い…。」

 

憲兵が言った。

 

「…!でも、面頬が…。」

 

「これです…。ドミナントさんが、買い物が終わったら返すように言われていました。…少し早いですが、問題ありませんよね…。」

 

「…ありがとう。」

 

そして、憲兵が鬼の面頬を被った。

 

……これを被ると落ち着く…。精神集中…。心頭滅却…。

 

そして、数秒後…。

 

……千里眼…!!

 

「見えた!ここから北を車で移動中!」

 

「ありがとうございます!」

 

2人が駆け出した。

 

…………

ある場所

 

「ここはどこなのです?」

 

車は、暗い倉庫がある場所へ入って行く。

 

「さぁ、ここで降りて。」

 

「?どうしてなのです?」

 

「良いから…。」

 

男性が言う。車が止まった。

 

……やはりですか…。

 

赤城が思い、暴れようと、加賀と目を合わせてうなずいたが…。

 

「ひっ…。」

 

「「?」」

 

男性が上ずった声を上げた。

 

「遅かったですね。言葉は不要ですか?」

 

「遅かったじゃないか…。」

 

憲兵とセラフが待ち構えていたのだ。しかも笑顔で…。

 

「あっ!教官さんと憲兵さんなのです!」

 

電が降りて、2人に抱きつく。

 

「あれ?なら、本当に送ってくれただけですか…?」

 

赤城が言う。

 

……この子たちに嫌な思いはさせない…。

 

2人が思い…。

 

「実は、サプライズの夜景観光出来ましたか?」

 

トントン…

 

セラフが言いながら、運転席の窓を叩く。そして、男性が窓を開けた。死を覚悟した顔をしていた。

 

「そうだったんですか?とても綺麗なのです!」

 

「本当ですか?」

 

「本当ですよ〜。ね?

 

赤城が聞き、セラフが男性に同意を求める。

 

「え、えーっと…。」

 

男性は逃げることを思いつき、エンジンをかけようとしたが…。

 

「そうでした。運転手の人にはお礼として、渡すものがありました。」

 

セラフが夕張と目を離さずに、男性に写真を渡す。その写真を見て、男は震えた。写っていたのは全壊した倉庫と、吊るされた仲間たちだ。全員、無事ではない。

 

「本当に観光だけだったんですか?」

 

「そうですよ〜。ね!?

 

三日月が聞き、今度は艦娘たちには見えない角度で、男性の方を見た。恐ろしい顔だ。

 

「は、はい!その通りです!!」

 

男性は元気よく返事をした。

 

「さぁ、帰りますよ〜。遅くなっちゃいましたし、皆んなお腹を空かせている頃です。」

 

「ここから結構遠いですが…。」

 

吹雪が言う。

 

「大丈夫ですよ。この人が送ってくれるので。」

 

「えっ…。」

 

送ってくれますよね…?

 

「はい!喜んで!!」

 

そして、セラフたちはすぐに車で帰った。道中、男性は憲兵とセラフに恐喝紛いなことを何度もされていた。

 

…………

おまけ 車の中の様子

 

「帰るのが7時になってしまうのです…。」

 

「そうだな…。少し遅いか…。急げ…。

 

「はい!!」

 

「でも、スピード違反ですよ。…ですが、1秒でも遅れたらただじゃおきません…。

 

「肝に銘じます!!!」

 

「何か、2人とも運転手に厳しいような…。」

 

「「そんなことありません(ない)。ね(な)…?」」

 

「心優しい美人なお二人です!!」

 

「そうかしら…?」




運転手はそのまま服従しそうですね…。

登場人物紹介コーナー
運転手の男…実は、ずっと前にセラフとジナイーダと神様にボコされて気絶している。そして、本日は憲兵にボコされた男の仲間だ。頭を使って、人質を取るも相手が悪すぎた。そして、現在死を覚悟している。

「長ツォコーナーだ。」
「ナインボール・セラフです。」
「おー、セラフか。今回は少し逆鱗に触れたみたいだが…。」
「あんなの、ごく僅かしか垣間見れていませんよ。本当に、逆鱗をむしられるくらいまで触れたら相手は生きてません。」
「恐ろしいな…。」
「まぁ、皆さんが無事で良かったです。それに、バレてませんし…。」
「そりゃそうだが…。」
「運転手の男を可哀想だなんて微塵も思いません。なぜなら、分かりやすく例えると自分の娘、もしくは大切な人を車に乗せて何かするつもりの人なんですよ?私は絶対に許しません。」
「それは同感だ。仲間にしてきた報いは必ず受けてもらうしな。」
「共感してくれて良かったです。では、次回予告ですね。」
「頼むぞ…。」
「次回、第219話『憲兵の長い一日 その4』ですね。…私の出番が少ししかないようです…。」
「良かったじゃないか。私なんて無だ。」
「…すみません…。」


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219話 憲兵の長い一日 その4

遅れてしまった…。
「最近多忙なのかな?」
そうなんだよ…。書いている暇もないし…。これほど詰まったのはネタ不足のせい。
「そうなんだ。」
そうなんだよ…。
「ふぅーん。」
この話は結構前に出来ているから、どんな思いで書いたか分からないし…。
「見れば良いじゃん。」
それでここを埋められたら苦労しないよ…。で、今回のゲストは?
「この人。」
「Hi! MeがIowa級戦艦、Iowaよ。」
アイオワさんですね。
「そのようだね。」
「ここはどこなのかしら?」
「ここは筆者さんの仕事部屋。そこのマイクに向かってあらすじ…つまり、前回の時に何をしたか言えば良いの。」
あらすじじゃなくなってるね…。
「ここに言えば良いのね?」
そうです。
「…それにしても、Nippon(日本)の仕事ってこんななのね…。」

アラスジー
結構暗くなってきたわね…。新しいFriend…。慣れてきているかしら?


…………

第4佐世保前

 

「随分時間かかっちゃいましたね…。」

 

「山に入る前に車を降りたからな。」

 

セラフと憲兵が言う。

 

「まぁあの運転手、これからはお前のために心身共に捧げるみたいだしな。情報を流してくれたり…。」

 

「それはそれで迷惑なんですよね…。」

 

車を運転した者…。それは憲兵とセラフの恐ろしさを同時に知る者である。吹雪たちを拐うような真似をしたが、失敗して服従したのだ。命を守るために…。

 

「これから晩ご飯ですよ…。」

 

「そうか。」

 

「…手伝ってもらいますからね?」

 

「それは勘弁してくれ…。肉などを焼いたことしかない…。」

 

「では、女子力を高めるために、手伝ってください。」

 

「仕事上使わない気が…。」

 

「手伝ってください。」

 

憲兵がぶつぶつ言うが、気にしない。そして、帰還する。

 

「お帰り!大丈夫だった!?危険な目に遭わなかった!?絡まれたり、痛いことされなかった!?」

 

ドミナントが帰ってくるなり、全員に聞く。とても心配していた顔だ。

 

「7時過ぎてる!遅すぎるじゃないか!心配で心配で…。提督をここまで心配させないでくれ…。」

 

「大袈裟ですよ…。ドミナントさん…。それに、私たちもついていましたし…。」

 

心底安堵したような顔をするドミナントにセラフが言う。

 

「「「ごめんなさい(なのです)…。」」」

 

艦娘全員が言う。

 

「まぁ、無事なら良かった…。じゃ、晩ご飯手伝うよ。皆んな疲れただろう?ゆっくり休んで。」

 

「…遊びに行ったのに疲れたかどうかなど…。ここの提督は神か何かか…?」

 

憲兵は怪しんだ目でドミナントを見ていた。

 

「今日の晩ご飯はなんだい?」

 

「本日はオムレツにします!」

 

「美味しそうだね〜。皆んな食堂に集まっているから、早く作らなくちゃ。セラフと俺と…。間宮さん…は、和菓子専門かな…?伊良子…伊良子!伊良子ちゃんとかはどうかな?」

 

「彼女も、和菓子専門です。」

 

「何と…。」

 

「あっ、おそらくジナイーダさんとか…。」

 

「2人でやろう。うん。それが良い。」

 

ドミナントはセラフが言いかけたことを無視して進む。

 

「あっ、それと彼女も手伝ってくれるそうですよ?」

 

「誰?」

 

「ここにいる憲兵さんです。」

 

「もう鬼の面頬しているのか。…とったほうが可愛いぞ?」

 

「余計なお世話だ。」

 

憲兵とドミナントとセラフがキッチンに行く。

 

「まずは手洗いうがい、アルコール消毒をします。」

 

「「はい!」」

 

セラフがやり、ドミナントたちもやる。

 

「次に全身消毒のため、この部屋を通過します。」

 

「「はいっ!」」

 

霧状の中に入り、出る。

 

「最後に、この帽子をつけてください。それとマスクも!」

 

「「はいっ!」」

 

髪の毛が入らないよう帽子をかぶり、マスクをする。

 

「では、始めます。集団感染などには絶対にさせませんから。」

 

「「はいっ!」」

 

…………

 

「うぅ…。」

 

憲兵が焦げたオムレツを見て、泣きそうな顔をしている。

 

「だから料理苦手だって…。」

 

「大丈夫です!初めてでこれは良い傾向です!」

 

「そうだぞ。初めてでこれは良いじゃないか。ダークマターじゃないだけマシさ。」

 

「ひどいよぉ…。」

 

「ドミナントさん…。全く分かってませんね…。」

 

憲兵が言い、セラフが呆れた感じで言う。

 

「そうだよ!ダークマターと比べるなんてひどいじゃん!」

 

「お前は何故いる…。」

 

神様が口出しをしてきた。

 

「どうせ俺と一緒にいたいか、早くご飯が食べたいだけだろ。隙を見て摘み食いするつもりだろ?」

 

「ギクッ…。そ、そんなわけないじゃん!別に…別につまみ食いなんて…す、するわけないじゃん!」

 

「その焦げたやつでも食ってろ。」

 

ドミナントはツッコミを入れず、平然と返した。

 

「それより、約何人分作るんだ?」

 

「200人います。ですが、よく食べる子もいるため、それぞれです。」

 

「…セラフも苦労しているんだな…。」

 

ドミナントはセラフの苦労を改めて知った。

 

「…神様〜。」

 

「…なに…?」

 

ドミナントが言い、神様が焦げたオムレツを少しずつ食べながら不機嫌に返す。

 

「…怒ってる?」

 

「当たり前じゃん!久しぶりに会えたと思ったら、こんな扱いして。…かまって欲しいだけなのにさ…。」

 

神様はそっぽ向いてしまっている。セラフたちはドミナントを見ている。

 

「…悪かった。最近蔑ろにして。」

 

「……。」

 

……これでは許してくれそうにないか…。

 

ドミナントが唸る。

 

「ただ、ドミナントと一緒にいたいだけなのにさ…。一緒に料理を作りたいだけなのにさ…。…つまみ食いも少しはあるけど…。浜茶屋では他の子と食べてたしさ…。」

 

「!」

 

ドミナントは気づいた。これは単なるヤキモチなのだと。

 

「…ごめんな。神様。」

 

ドミナントは手袋を外して、頭を撫でてあげる。

 

「…そうだ!最近一緒にいる時間が少ないから、どこか行こう!それが良い!」

 

「えっ!?」

 

神様のアホ毛が跳ねる。

 

「ほ、ホント…?」

 

「本当だぞ?」

 

「い、いつ行くの!?明日!?」

 

「いや、明日は流石に…。」

 

……それに、褒美の件も夕張の件もあるしな…。そう思ってみれば、三日月の不戦勝の件も…。やることが山積みだな…。

 

ドミナントは思うが、アホ毛がビンビン跳ねている神様を見る。嬉しそうな目である。

 

「…えーっと…。」

 

「いつ!?」

 

……これは来月なんて言うと凹んじゃうな…。

 

ドミナントが思い…。

 

「に、二週間後…。」

 

「「!?」」

 

「本当!?」

 

セラフたちが驚き、神様が嬉しそうにする。

 

「あ、ああ…。約束だ…。」

 

「本当…?破らない…?」

 

「ああ…。破らない…。」

 

「やった!!」

 

神様が笑顔になる。すると、セラフが…。

 

「ちょっと、こっち良いですか?」

 

ガシッ

 

「おっととと…。」

 

ドミナントをつかんで、神様に聞こえないくらい小声で、遠くに行く。

 

「どうするんですか!?夕張さんの件も忘れていませんよね!?仕事も立て込んでいて…。絶対に二週間じゃ無理ですよ!」

 

「無理でもやるしかない…。」

 

「やるしかって…。もし、破ったら神様本当に悲しみますよ!?何をされるかわかりませんよ!?」

 

「大丈夫…。明日に二週間分全て終わらせる…。まずは金剛の褒美を何とかさせて、ほかのメンバーの褒美の内容を聞いて、それの解決。そして吹雪のデート券を消費させ、目安箱の溜まったお願いをそれ相応に叶えさせ、三日月の不戦勝のお願いを聞いて、夕張とデートをすれば良いだけだ…。」

 

「全然大丈夫じゃないじゃないですか!過労死しますよ!?」

 

「過労死…?なにそれ美味しいの…?」

 

「そうでした…。ドミナントさんは別のそっち方面の過酷な世界から来たんでした…。」

 

セラフが呆れる。

 

「だから言った…。簡単じゃないか…。」

 

「とてもそうは思えないので、せめて三週間後にしてください。」

 

「で、でも…。」

 

「でもじゃありません。」

 

「…でもさ、神様を見ろよ…。」

 

「?」

 

セラフが神様を見る。今からもう楽しみなのか、憲兵に笑顔で話している。最近ちょっとシナシナしていたアホ毛がピンピン跳ねているのだ。

 

「…三週間後なんて言ってごらんよ…。テンションだだ下がりだよ…?かと言って、優先させるわけにいかないし…。」

 

「そうですけど…。…優しいのがたまに傷ですね…。」

 

「まぁ、やるしかないのさ…。あと二週間…。死ぬ気でやる…。」

 

ドミナントが言った。そして…。

 

「神様〜。」

 

「なーにっ♪」

 

「少し能力を使って、50人分を一瞬で作れない…?」

 

「任せて♪」

 

神様が一瞬で作った。

 

「後で災いとか降りかからない…?」

 

「自分のためじゃないからOK!」

 

「そ、そう…?」

 

「でも、200人分だよね?それっ!」

 

パチンッ

 

神様が指を鳴らしたとたん、一気に出来た。

 

「ありがとう…。」

 

「ううん。それより、デートしてくれるんでしょ?」

 

「え、あ、うん。」

 

「本当に嬉しかった。最近私、構ってもらえないからとても寂しかったの。でも、連れてってくれる…。とても嬉しい!久しぶりに幸せな気分になれたから…♡。」

 

「そ、そっか〜…。」

 

……これで無理でしたなんて言ったら殺されるな…。

 

ドミナントはこの世界で初めて心の中で本気の焦りを抱えていた。




無理だった場合は確実に殺されます。

登場人物紹介コーナー
トクニ…ナシ…

「長門コーナーだ。」
「今回は私だねっ!」
「神様か…。…初めてか?」
「覚えてないなぁ…。」
「そうか…。」
「ところで、ここは何をすれば良いの?」
「む。そうだな…。見ている者が知りたいと思うことだ。」
「天界は秘密。」
「おそらく、そこら辺を知りたいのだと思うがな…。」
「…本気?」
「ああ。」
「…分かった…。天界は強さこそが全てな感じ。だって、神でも天敵みたいな、宿敵はいるもん…。だから、強ければ強いほど重宝されるの…。だから、ここのスパンだと数ヶ月に一回大会が行われるの…。順位が低ければ低いほど貧相になって、高ければ高いほど裕福になる…。不戦敗は最下位になる…。」
「…そうか…。」
「…別に、戦わなくて後悔はしてないよ。」
「…そうなのか?」
「…怪我人を出したくないから…。」
「…優しいな。」
「天界だと優しいは二の次で、強さ絶対の実力主義だったから…。…だから、私は天界が嫌い。」
「…そうか。なら、ずっといると良い。提督が匿ってくれる。」
「うん。その予定。」
「よし、なら次回予告を頼む。」
「わかった!次回、第220話『憲兵の長い一日 その5』だね。私も出番あるらしいよ!…長門?にはないらしいけど…。」
「ほっとけ。」


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220話 憲兵の長い一日 その5

これで最後の憲兵さん。
「憲兵さん帰るんだね。」
そうだね。これから色々鎮守府見回らなくちゃいけないし。
「そうなんだ。まぁ、ボクと関わり合いが全然なかったから、なんとも言えないんだけどね。」
まぁ…ね。
「うん。」
じゃ、あらすじ行こうか。
「ネタもないしね。この人。」
「Bonjour(こんにちは)!Enchantée(初めまして).Je m'appelle Commandant Teste(私の名前はコマンダン・テストです).どうぞよろしくお願い致します。」
よろしく。長い英文ご苦労。
「よろしくね。」
ネタ無しあらすじよろしく。
「ないの?」
ない。
「?このMike(マイク)は何かしら?」
話が早い…。これの前であらすじを言ってもらえれば良いんです。
「そう?」
「頼んだよ。」
頼みます。
「わかりました。」

アラスジー
今日はワタクシが料理当番…。…午後八時となりました。 De la cuisine française(フランス料理です)!! どうぞ召し上がれ。 Bon appétit(めしあがれ) !


…………

第二食堂

 

「憲兵さんは覚えが良いですね。」

 

「そ、そんなこと…。…セラフが手伝ってくれたおかげだ…。」

 

憲兵とセラフが話す。もうすでに現在進行形で皆食べている。憲兵は既に全身を憲兵服にしている。

 

「んっふふ〜♪…ふふっ。」

 

「神様さん上機嫌ですね。どうかしたんですか?」

 

「ふっふっふ…。秘密〜!」

 

神様が嬉しそうに食べている。

 

「全く、好意の相手と行くとて、嬉しそうにしおって…。困った奴じゃ。」

 

「あなたもね…。来るなら前もって言ってくれないと困ります。」

 

先輩神様とドミナントもいる。

 

「それより…。髪染めたんですね。」

 

「思い切って黒にしてみたのじゃ!」

 

現在、先輩神様の髪の色は銀ではなく黒色だ。

 

「そろそろ婿が欲しくてのぉ…。…嫁に出遅れるのはようないしのぉ…。」

 

「前もそんな話してましたね…。年寄りくらいしかいないとか…。」

 

天界には良い男がいないみたいだ。

 

「若い男がいるとしても希少じゃ…。じゃから、少しでも出会いがあるように染めてみたのじゃ!」

 

「へぇ〜。で、どうだったんですか?」

 

「より年老いて見えると言われたのじゃよ…。もう、妾は既に終わりかの…。ふっふっふ…。」

 

「…ごめんなさい。」

 

「謝るのやめい!さらに悲しくなるのじゃ!」

 

先輩神様が悲しいことを言い、ドミナントが謝った。

 

「まぁ、直ぐに染め直すことも出来るから良いじゃがの…。」

 

「おぉ…元に戻って行く…。」

 

一瞬で髪の色が銀色になる先輩神様。

 

「…ところで今のを見て思ったんですが…。」

 

「この色は地毛じゃ。」

 

先輩神様は何を言うか分かっていたらしい。

 

「それにしても、まさかここで食すことになるとは…。」

 

「?どういう意味ですか?」

 

「いや、なに。後輩からよく分からないメッセージが届いての。よく分からないから降りたのじゃ。」

 

「神様め…。」

 

「まぁ、そう責めんでやっとくれ…。それほど嬉しいのじゃろう。」

 

「それは分かるんですが…。」

 

先輩神様が神様の肩をもつ。

 

「それと、其方に一つ重要な知らせがある。」

 

「?何ですか?」

 

先輩神様が真面目な顔でドミナントに言う。

 

「…後輩もそろそろ婚姻を結べる歳じゃ…。」

 

「つまり…結婚…。」

 

「そうじゃ…。」

 

「いや、気をつけますよ。既成事実など作られたらたまったもんじゃありませんし…。」

 

「そうではない。」

 

ドミナントの言葉を間髪入れずに否定する。

 

「…何というか…。…後輩を嫁にするのかそろそろ決めた方が良いのじゃ。」

 

「よ、嫁!?」

 

ドミナントが神様を見る。嬉しそうに艦娘と話していた。

 

「何でそんなことを…?」

 

「…言って良いのかどうか…。…いや、でも其方には言わねばならないじゃろう…。」

 

先輩神様がドミナントの目を見る。

 

「…政略結婚の道具に使われる可能性が高いのじゃ。」

 

「…は?」

 

「…後輩はあのように、天界の中でも容姿は良いのじゃ…。容姿だけは…。…後輩が散々な暮らしをしてきたのは知っとるな…?」

 

「紙芝居みたいな感じでしたけど…はい。」

 

「…なら、話が早いのじゃ。…もし、天界からの使いが出てきたらほぼ間違いなく連れてかれるのじゃ。…さらには、後輩には天界にトラウマがある…。…会いたくもない親に会うのじゃ…。それがどれほど辛いことかお主にはわかるじゃろう…?」

 

「…はい…。」

 

「とにかく、気をつけい…?連れ去られたら最後じゃ。妾も手出しが出来ん…。」

 

「…その時までに覚悟を決めます…。」

 

「良かろう…。」

 

ドミナントと先輩神様は重い話をしている。そこに…。

 

「どうしたのっ?先輩、ドミナント。」

 

飲み物を持った神様が聞いてきた。

 

「…神様。」

 

「何〜?」

 

「…結婚するか?」

 

「ブフッ!ゲホッゲホッ…!な、なんて言ったの…?」

 

神様が思わず吹き出し、真面目に聞く。

 

「いや、先輩神様に聞いたところ、そろそろ婚姻を結べる歳だと聞いてな…。他の天界の男と結婚するのかと…。」

 

「な、なーんだ…。“するか?”に聞こえちゃった…。そんなわけないでしょ!それに、先輩〜…!」

 

神様がつり目で先輩神様を睨む。先輩神様は顔をそらして口笛を吹いていた。

 

「もう…。私はドミナント以外に興味ない。どれだけお金持ちでも、どれだけ美形でも…。私はドミナントのみ!そこは絶対に譲らない!」

 

神様が元気いっぱいに言う。

 

「……。」

 

一方、ドミナントは本気の真剣に捉えてしまっているため、否定も肯定もできない。

 

「…どうしたの?」

 

「いや…。…なんだか申し訳なくてな…。…そんなにも好意があったとは…。」

 

「前々から言ってるじゃん!むぅ〜!」

 

神様が不貞腐れる。

 

……神様が結婚か…。

 

ドミナントは自然と神様の頭を撫でていた。嬉しそうに目を細めている。

 

…………。結婚について何も考えていなかった…。…こいつが他の男と…。…別に構わないはずなのだが、このモヤモヤ感は…。…何故だろうか…。

 

心に浮かぶモヤモヤをドミナントは不思議に思っていた。

 

「それはヤキモチじゃ。」

 

「やきもち…?これが?そんな馬鹿な…。てか、なんで分かったんですか…。」

 

先輩神様が説明して、ドミナントが否定する。

 

「…はたまた本人が気付かないのか、気付こうとしないのか…。」

 

先輩神様がぶつぶつ言う。

 

「どうしたの?」

 

「?あぁ、後輩か…。ドミナントがヤキモチを妬いていたらしくてな。」

 

「ヤキモチ?」

 

「お主が他の婚約者と一緒にいることを思うとそうなるらしい。」

 

「……。」

 

神様は一瞬ポカンとする。

 

「せ、先輩…。冗談にしては少し悪質だよ…?ドミナントがそんなことを思うわけないじゃん。ね?」

 

「ね?って言われてもな…。ハッキリと言うとよくわからない感情だ。」

 

ドミナントが分析する。そこに…。

 

「ねぇ、ドミナント…。」

 

「?どうした?」

 

「もし…。…万が一ヤキモチならさ…。その…。…一生一緒にいてくれる…?」

 

神様は遠回しの告白をした。

 

「……。」

 

……可愛い…。なに恥ずかしそうに頬を染めているんだよ…。こっちも恥ずかしいわ!しかも上目遣いで申し訳なさそうにみるのやめろ…!こんなことを思うとは思わなかったけど…。めちゃくちゃ可愛い…。

 

ドミナントに多大ダメージ。艦これで言うクリティカルヒットであり、ACで言う脚部損傷だ。

 

「ま、まぁ、いずれか決めるさ。」

 

「えぇー。」

 

ドミナントが曖昧な返事をして、神様が納得いかなさそうな顔をする。ちなみに、艦娘たちはますますやる気を出してしまっているが…。

 

「司令官!」

 

「うぉっ!な、どうした…?」

 

吹雪がドミナントに言う。

 

「私たちはどうなるんですか!?」

 

「そうなるから答えられないんだよ…。」

 

ブーブー

 

一斉のブーイング。

 

「神様だけずるいです!」

 

「そーだそーだ!」

 

「卑怯者!」

 

「無能提督。」

 

艦娘たちの一斉の抗議。

 

「わかった!わかった!この話は今度な!それに、決めたわけじゃないし!それと加賀、聞いたぞ…。」

 

ドミナントは必死に言う。この数の艦娘たちが暴れたら流石に手に負えないからだ。

 

「ここの提督は人気者だな。」

 

「?なら、他の鎮守府では嫌われているんですか?」

 

憲兵とセラフが話す。

 

「嫌われているところもあれば、異常なまでの信頼感がある提督もいる。」

 

「そうなんですか。」

 

「…まぁ、住んでいるところは異常なまでに信頼感のある提督だがな…。」

 

「第1佐世保…でしたっけ?」

 

「そう。憲兵の総本山。様々な奴がいる。見習いもいれば、熟練もいる。1から25部隊はそこにいる。ちなみに、4と9は部隊名についていない。つまり、正確には20の部隊が第1佐世保いる。残りの11部隊はそれぞれの鎮守府にいる。」

 

「あなたたちは…?」

 

「自分たちは正確には存在しない部隊。…記録に残らない、汚れ仕事を任される部隊だ…。」

 

「……。」

 

自嘲したような笑みで、儚げな目になっていた。

 

「いつもは裏で汚いところばかり目に入っていたけど…。今日、表を見ることができて良かった。実は自分たちが裏で動いても、何も起こらないんじゃないかと心配していたんだ。…現に陸軍の艦娘を自分たちが救うことは出来なかった…。」

 

「憲兵さんたちが裏で動いてくれているおかげで、どこかの鎮守府の、誰かわからない艦娘が平和にのんびり暮らしているんですから。」

 

「…ありがとう。」

 

憲兵は騒いでいるドミナントたちを見る。ドミナントは艦娘にまとわりつかれてわちゃわちゃされている。ジナイーダはそんなドミナントを見て、笑みが苦手なのか獰猛な笑みで見ている。主任は笑いながら三日月と話しており、ジャックは加賀と話をしながらもそもそ食事をしている。ガスマスク憲兵は何を思っているのか分からないが、その様子をじーっと見ている。真っ赤なマスク憲兵は迷惑そうに露骨に嫌味な目で見ており、憲兵=サンは艦娘の笑顔を見ていた。

 

「…ホント、自分がただの女性に戻る日が来てしまうのではないかと心配するほどな。」

 

「?何か言いました?」

 

「いや?何でもっ。」

 

そして、微笑むセラフに口元の緩む鬼の面頬憲兵だ。

 

…………

翌朝 3時

 

「準備は出来たか…?」

 

「ああ。」

 

「出来ている。」

 

『行くか。』

 

憲兵たちはもう既に行く準備をしていた。

 

「書き置きは残し、行くぞ。…周回が終わったら、まず間違いなく怒られるが…。」

 

そして憲兵たちが気配を消して、音もなく玄関へ行き、門に辿り着くと…。

 

「もう行ってしまうんですね…。」

 

「…ああ。」

 

後ろから声がしたが、全く驚かない憲兵たち。全員分かってたみたいだ。

 

「もう少しくらい…。」

 

「その気持ちは嬉しいが、まだ鎮守府の周回中だ…。今もどこかで酷い目に遭っている艦娘がいるかもしれん。」

 

「…そうですね…。」

 

「……。…仕方ない…。終わったら、たまに来る。」

 

憲兵は精一杯のことを言った。普段、憲兵は用がない限り警備や鍛錬で出られないのだ。

 

「…心待ちにしております。」

 

セラフが精一杯の微笑みで言った。

 

「…それでは…。」

 

ザザンッ!

 

憲兵たちは闇夜に姿をくらませた。

 

「…私も見回りしますか…。」

 

…ように見えたが…。

 

「そうだっ!思い出した!」

 

「?」

 

鬼の面頬憲兵が戻ってきた。

 

「ここの鎮守府合格。これ、ここの提督に渡しておいて。」

 

憲兵が書類を渡す。

 

「これは…?」

 

「自分から見たここの成績。…それと…。」

 

「?」

 

「…その…。」

 

憲兵が恥ずかしそうにする。それをセラフが見て…。

 

「…!そうです。携帯の電話番号を交換しませんか?」

 

「!い、良いのか…?」

 

「もちろんですよ。…それと、ほかの憲兵にはバレてませんよね…?あなたが…。」

 

「もちろんもちろん…。男のみだから、話がな…。」

 

憲兵も悩みがあったようだ。

 

「LENIやってます?」

 

「う、うむ…。」

 

そして、交換して…。

 

「それでは!」

 

「はい。」

 

憲兵は女の子らしい、目を輝かせながら行った。

 

……本当、可愛い人ですね。

 

セラフはそんなことを思いながら鎮守府に戻って行った。




俺気づいたんすよ…。AC要素ないってことに…。

登場人物紹介コーナー
LENI…ある企業のコミュニケーションアプリ。
先輩神様…叢雲に似ているが、昔の言葉を使う者。

「長門コーナーだ。」
「今回は妾かの?」
「おぉ…。先輩神様?か…。」
「その通りじゃ。」
「嫁に出遅れるとか言っていた…。」
「聞いとったのか…。天界には良い男がいないのじゃ…。」
「提と…。いや、なんでもない。それは大変だな。」
「其方らの提督には多いからの。それに、人間とはちょっと…。」
「我儘だな…。」
「仕方ないのじゃ。人間は寿命が少ない…。妾にとっては一瞬と同じなのじゃ…。別れるのは嫌なのじゃ。」
「だが、神様は…。」
「後輩はそのことが分かってて、あえてそこにおるのじゃ…。たった一瞬でも…。別れることが分かっていても共にいたいのじゃろう…。じゃから、妾は応援するのじゃ。」
「そうなのか…。」
「妾はこれでも天界5強の中でも上位にいる存在じゃ…。なのに…何故…。」
「強すぎるからではないのか…?」
「新しい出会いを求めて色々してみたのじゃ…。しかし、今日なんと言われたと思う…?」
「なんと言われたんだ?」
「より老けて見えると言われたのじゃ…。慣れない化粧?とやらをしてみても、逆に怖がられたり…。言葉を覚えても、誰も振り向きもせぬのじゃ…。妾が一体何をしたのじゃ…?…まぁ、心当たりはあるのじゃが…。」
「心当たりがあるのか…。」
「結構昔の…。まだまだ妾がヤンチャな頃だったのじゃ…。千年くらい前かの?」
「結構昔だな…。」
「強さを競う大会があっての…。」
「…まさかな…。」
「そうなのじゃ…。全員をなぎ倒したのじゃ…。槍で…。」
「大人も含めてか…?」
「…そうなのじゃ…。」
「…それは引くな…。」
「やめい!妾だって反省しておるのじゃ!そして、翌日から5強の仲間入りじゃ…。そのせいで、妾を怒らせないように今まで接してきてくれた者は全員距離を置かれたのじゃ…。」
「そうなのか…。…神様は?」
「……。…後輩も一度だけ、妾と戦ったことがあるのじゃ…。」
「それで?」
「…妾の口から言うべきことではない。後輩から聞くのじゃ。」
「前回聞けば良かったか…。…いや、聞いても話さないな。」
「いつか、そこらの話をするらしいからの。その時に明かされると思うのじゃ。」
「気の長い話だな…。」
「そろそろあらすじ?とやらを話した方が良いのじゃ。」
「分かった。ゲストである先輩神様に任せよう。」
「分かったのじゃ。…次回、第221話『ジャガイモの化け物』らしいの。」
「じゃがいも…。…芋といえば、この前…。」


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鎮守府編 Ⅴ
221話 ジャガイモの化物


今回から随分違う展開になります。
「そうなんだ。」
慣れない人も多いので、一応断っておきます。
「注意事項だね。」
まぁ、筆者のネタ切れもあるけどね…。
「というより、なんでこんなに遅かったの?」
ここと後書きのネタ不足。文章はもうすでに一週間くらい前に完成してる…。
「えぇ…。」
そんなもんさ。
「じゃぁ、ゲストを紹介するね。」
空気を読んだ時雨、ありがとう。
「アれ…?ここハ…?」
「あれ…?深海…棲艦…?」
ま、そうだね。渾だね。艦娘になりかけているけど。
「…なんだろう…。面影が…。」
ま、いずれわかるさ。
「だレ…?」
筆者だよ。
「ボクの名前は時雨。よろしくね。」
「よろシクおねがイしまス。」
「…なんか、すごく丁寧…。」
元々心優しい深海棲艦設定だったからね。
「そうなんだ。」
あらすじ…できるかな?
「ガンバります。」

あらすじデス
今…暗イシンカイ…。…あれ…?月が、きれい…。


…………

第4佐世保鎮守府

 

突然だが、第4佐世保鎮守府とは大本営と一部の鎮守府、憲兵以外場所を知らぬ極秘の場所。一般人や一般の憲兵などは第3までしか知らない…。そんな第4佐世保に属する者たちは規格外のイレギュラー。全世界の平均は現在70前後。だが、1ヶ月以内で平均レベル99を叩き出した猛者の集まりである。しかもそれだけではない。全世界でここにしかいない陸軍の艦娘、大和型の姉妹艦の武蔵…。そして、未確認でイレギュラーな艦娘。だが、それだけで規格外のイレギュラーな鎮守府とは言えない。だがそう呼ばれている理由は、そこに属する者達は艦娘以外にもいるからだ。異世界の真の強者、裏の策士、最強の『9』の称号を持つAI、人間の可能性を信じる規格外のAI…。果てまでは神までこの鎮守府に属している。そしてこの男こそ、その全てを束ね切れていないが一応提督である男。ドミナントである。

 

「…えっと…誰ですか…?」

 

ドミナント…?である…。

 

「おう、赤城。どうかしたのか?」

 

「い、いえ…。その…。前と随分お姿が変わっているような…。」

 

「ははは。気のせいだろう。」

 

「いえ、間違いなく気のせいではないんですが…。」

 

本日の秘書官は赤城のようだ。初めてである。

 

「その…。大変言いにくいのですが…。」

 

「なんだ?気になるじゃないか。言ってくれ。」

 

「提督…最近…。」

 

赤城がドミナントを見る。

 

「…太りました…?」

 

いや、巨漢のぜい肉の塊だ。

 

「バレた?最近1、2kgほど増えちゃってさー…。」

 

「いやいやいや…。控えめに言って100kgほどは太りましたよ…。はい。明らかに…。」

 

「いやいやいや…。体重計で測ったけど、そこまで増えてなかったよ?」

 

「針が一周回ってるんですよ…。それしか考えられませんし…。」

 

赤城が言う。

 

……もしかして、毎日自分を見ているから、少しずつ変化しているのに気づかなかったのでは…?…ですが、流石に目の前で言うのも…。…でも、このまま言わないのも…。どうすれば良いのでしょうか…?

 

赤城が考える。そして…。

 

「!そうです!神様!神様に聞けば分かりますよ!」

 

「そうか?なるべく呼びたくはないんだけどなー…。」

 

ドミナントは渋々言う。

 

……これで、私から言うことはありません。すみません、神様。今度何かお菓子や甘いものを奢ります。

 

そんなことを思っていると…。

 

ガチャ

 

「やっほー。ドミナント〜。」

 

神様がドアから覗く。

 

「あっ、丁度良いところに…。」

 

「あの、神様。提督を見て、どう思いますか…?」

 

「どう思うか…?」

 

神様はドミナントを上から下までマジマジと見る。

 

「…太ったとは思いませんか?」

 

「?そうかな?」

 

神様が不思議そうな顔をする。

 

……毎日見てるから神様も変化に気づいていませんね…。だめですねこの2人…。早くなんとかしないと…。

 

赤城が真面目な顔で深刻そうな顔で見る。そこに…。

 

コンコン、ガチャ

 

「赤城さん、いますk…。ジャガイモの化け物!?」

 

「誰が化け物だ…。」

 

加賀がドミナントを見てギョッとして言う。…自分もある意味芋なのだが…。

 

「加賀さん…。失礼ですよ…。提督です。」

 

「……。」

 

加賀が絶句する。ドミナントは今はもう見る影もない。そして…。

 

「提督。」

 

「なんだい?」

 

「150キロほど太りましたね。」

 

「そ、そんなわけ…。」          

 

「口くさいです。フーフーうるさいです。息が臭いです。部屋が狭いです。汗臭いです。生理的に無理です。鼻息荒いです。提督服が似合っておりません。幻滅です。失望しました。椅子がかわいそうです。汗を拭いたハンカチを今直ぐ洗ってください。手汗が酷いので物に触れないでください。水の消費がもったいないです。食費を減らしたらどうですか。痩せることを推奨します。…。」

 

加賀がまるで早口言葉を言っているように淡々と続ける。ドミナントはどんどん弱ってゆく。

 

「か、加賀さん…!一応提督ですので…。」

 

「そう、提督だからこそしっかりしてもらいたいものです。」

 

加賀が厳しく言った。

 

「…フフ…。そんな訳ないだろう…?」

 

「現実を見てください。」

 

ドミナントが瀕死の顔で言い、加賀がとどめを刺そうとする。

 

「じょ、冗談じゃ…。」

 

バッキャァァ!

 

「「「!?」」」

 

提督椅子に座ったら、一瞬で壊れた。そして、神様も太っていることを知った。

 

「…これではっきりしましたね…。」

 

「…うん…。」

 

赤城が言い、神様がうなずく。だが…。

 

「椅子が腐ってる!?」

 

「現実を見てください…。体重で壊れたんです…。」

 

赤城が勘違いしているドミナントに言った。

 

「何故太ったのかさっぱりわからん…。」

 

「まずは机の上にある紅茶や茶菓子やスコーンなどを取り上げます。」

 

原因は直ぐそばにあった。加賀が禁止令を出す。

 

「それより、他の子たちが見たら幻滅するかもしれませんよ?」

 

「えっ…。マジ…?」

 

ドミナントが驚愕したような顔をして言う。

 

「嫌われても良いんですか?」

 

「…嫌われたくないです…。」

 

「なら、痩せましょう。」

 

「はい…。」

 

加賀が珍しく説教をする。

 

「まずは鎮守府の周りを走りますよ。」

 

「は、走るの…!?」

 

「当たり前です。…赤城さんも行きますか?」

 

「えっ?あ、はい。…というより、加賀さんも走るんですね。」

 

「少し体重が増え気味なので。」

 

「ジャックさん、振り向くと良いですね。」

 

「……。」

 

加賀は表情に出さないが、赤城は分かっている。恥ずかしがっていることに。

 

…………

鎮守府外

 

「ヒィ…ヒィ…。」

 

「まだ走って5分も経っておりませんよ。」

 

「そんなこと言われても…。」

 

ドミナントは5分足らずでへばる。

 

「ヒィ…ヒィ…。…休憩…。」

 

「早すぎません!?」

 

ドミナントが座る。

 

「…神様、お菓子持ってる?」

 

「うん!一緒に食べよ?」

 

「提督、それだからダメなんですよ…。」

 

赤城が問答無用で取り上げる。

 

「神様さん、今の行為はダメです。」

 

「えー?なんで?」

 

「なんでって…。提督は今誘惑を振り切って、運動しているんですよ?そんな時に、甘いものをあげる人がいますか。」

 

「だって、神様だもん。」

 

「そう言う問題ではありません。とにかく、提督のことを本当に思っているのなら、あげないようにしてください。」

 

「…ドミナントのため…?」

 

「はい。間違いなく提督のためです。辛いかもしれませんが、鞭を与えてください…。」

 

「…うん…。」

 

神様は目に見えてショゲている。

 

「…ドミナント…。」

 

「な、なに…?」

 

「…走ろう?」

 

「今!?」

 

「うん…。」

 

神様がドミナントの手を引く。これでも、精一杯走らせようとしているのだ。

 

「…提督、神様さんがあなたを思って言っているんですよ?」

 

「むぅ…。…分かった…。行くよ…。行けば良いんすよね!行けば!」

 

ドミナントは疲れた体に鞭を打って走る。

 

…………

 

そして、ドミナントは一週間、さまざまな苦労をした。食事を制限して、量を少なくしたり、なるべく運動をするように心がけたり、誘惑を振り切ったり…。そして…。

 

「痩せたぜ…。」

 

「随分と…まぁ…。」

 

赤城が微妙な顔をする。

 

「提督…。…痩せすぎじゃありません…?」

 

ガリガリである。

 

「なら、何か食べるか?」

 

「いえ、リバウンドがなんとかと言う話を聞きましたから、少しだけ食べてください。」

 

赤城がお茶を持ってこようとしたが…。

 

「…いえ、これではありませんね。」

 

「?」

 

すぐに入れ物を棚の中から取り替える。

 

「今日くらいは…。」

 

赤城がキョロキョロ周りを見る。ドミナントと2人きりだ。

 

「…大丈夫ですよね…。」

 

「?」

 

「加賀さんから禁止されていた、紅茶。一緒に飲みませんか?」

 

「良いのか…?」

 

「はい。」

 

「ありがとう!そして、懐かしの紅茶…。」

 

ドミナントが慣れた手つきで注ぐ。

 

「…て、提督…。その…。」

 

「?」

 

「これを…どうぞ…。」

 

真中を赤城が用意してくれた。

 

「…なんだ。一緒に飲みたかったんじゃないか。真中まで用意して…。」

 

「それは…。…そうですけど…。」

 

「……。」

 

……可愛い…。恥ずかしがっているなんて特に可愛い…。

 

ドミナントは赤城を見てそんなことを思う。

 

「…?どうかしましたか?」

 

「あっ、いや?別に。…赤城は可愛いなってさ。」

 

「…!」

 

赤城は少し照れる。

 

「…可愛い…ですか?」

 

「もちろん。」

 

「そう…ですか。」

 

「?」

 

赤城は内心とても嬉しそうだ。

 

「…美味しいね。」

 

「はい。提督。とても美味しいです。」

 

……提督と一緒に飲んでいるから…かもしれませんけど。

 

赤城は美味しそうに飲んでいるドミナントを見る。

 

「…?どうした?」

 

「あっ、いえ。別に…。」

 

「?そう?」

 

「はい。…いえ、そうではありませんが…。」

 

「なんなんだよ…。」

 

「…提督に好きな艦娘はいらっしゃるんでしょうか…?」

 

「全員好き。」

 

「なら、全員とケッコン…。」

 

「しないよ。」

 

「……。」

 

「…神様の件?」

 

「…はい…。」

 

「ヤキモチとは…いやはや…本当に可愛い。」

 

「…ヤ、ヤキモチなど…。大人の女性として、そんな…。」

 

「別に妬いても良いじゃん。大人も子供も関係ないと思うよ?」

 

「そうでしょうか…。」

 

「第一、神様を見てごらんよ…。神様、あれでも結構な年上だよ?あいついつものように妬いてるじゃん。」

 

「そうですけど…。はい…。」

 

「…話を戻すけど、あの件は最終手段として使うよ。まぁ結婚はしても、いつものようにここで暮らすし。上部だけのものみたいなものだよ。…一応、神様も大事な仲間だからさ。」

 

「私たちは…?」

 

「大事な娘たち。」

 

「むぅ…。」

 

……可愛い。

 

赤城が頬を膨らませるが、ドミナントには全く効果ない。それどころか、逆効果だ。

 

……娘だと、本気で捉えてくれないじゃないですか…。ずるいです…。

 

「提督、どうやったら娘とは見れなくなりますか?」

 

「…へ?」

 

「今ここで証明して見せましょうか?私になら出来るはずです。」

 

「証明って…。何するの?」

 

「もちろん…。提督との子供でも…。」

 

「……。」

 

ドミナント、思考停止5秒後。

 

「いやいやいやいやいやいやいや…。待て、落ち着こ?ね?」

 

ドミナントは少しずつ後ろに移動する。

 

「逃しませんよ。」

 

バンっ!

 

「ひぃぃ…。」

 

赤城がドミナントを押し倒し、その上に跨ぐ。

 

「…!?ちょ、赤城!そこ危ないよ!」

 

ドミナントは振り解こうとしたが、暴れると赤城に机の角が当たってしまう。

 

「さぁ…営みでも…。」

 

シュル…

 

赤城が服を緩める。

 

「ちょ、ま、待て!落ち着け!あかぎん落ち着け!」

 

そんなワイワイしているところに…。

 

コンコン、ガチャ…

 

「提督…。その…。ダイエットをやりすぎてしまい、申し訳あ…。」

 

「「……。」」

 

加賀に見られた。

 

「……。」

 

加賀、思考停止5秒後。

 

「…頭にきました。」

 

「ちょ!加賀も待て!本当に艦載機来てるんだけど!」

 

ドガァァァァン!!

 

「ギャァァァァァァ!」

 

赤城はいち早く脱出していた。

 

「謝りに来たのに、あんな行為をしているとは…。破廉恥な男ですね。」

 

「ご…誤解だ…加賀…。」

 

「言い訳は結構です。…せっかく、神様も誘って鎮守府の外の店に行こうと思ったのに。」

 

「えぇ…。」

 

「提督は留守番をお願いします。」

 

「ちょ、待…。」

 

バタンっ!

 

「…悲しーなー…。」

 

ドミナントが呟いた。

 

…………

廊下

 

「加賀さんも人が悪いですね。」

 

「赤城さんこそ…。提督は何もしていないことは知っております。」

 

「ふふふ。恥ずかしかったんですよね?」

 

「私はジャックさん一筋です。」

 

「あっ、いえ。好きとかではなく…。せっかく、鎮守府の外の紅茶屋さんを調べて、その道まで覚えて、いくらかかるかも計算して…。そして、勇気を出して誘おうとドアを開けたらあの場面ですからね。」

 

「……。」

 

赤城は加賀が事前に下調べをしていたことを知っていたみたいだ。

 

「…提督はあとで神様に誘わせるつもりでしょう?」

 

「…そこまで分かっているんですね。」

 

加賀が心を見透かされているようで驚いた。すると、赤城がこちらに顔を向けた。

 

「だって…同じ一航戦ですから。」

 

そして、微笑みながら言う。

 

「……。」

 

加賀は滅多に表情を変えないが、この時だけ口元を緩ませて静かに頷いた。




ドミナントは既に元の体重に戻っています。

登場人物紹介コーナー
赤城…空母。加賀と2人でいることが多い。結構な大食い。駆逐艦などの艦娘からも好かれている。

「長門コーナーだ。」
「今回は私ですね。」
「赤城か。アニメでは世話になった。」
「いえいえ。一応セリフですので。」
「セリフなんて言うんじゃない…。ブラックなところが出てしまったではないか…。」
「ふふふ。」
「ふふふじゃない。…まぁ良いか。史実などを教えてくれ。」
「わかりました。長門さんの頼みなら。」
「そんなに私の権限は大きいのか…?」
「私は本来、天城型巡洋戦艦の2番艦として作られる予定でした。」
「まぁ、無理な改造だったんだがな。けど、頑張っていたな。」
「ありがとうございます。三段式空母として完成しましたが、後に一段全通式空母に改装されました。」
「そして、称号を得たのか。」
「初めて作られた大型空母の称号を得ることが出来ました。」
「初めての大型空母の背負うプレッシャーとやらを知りたいな。」
「いえいえ…。なんなら、長門さんも同じじゃないですか。」
「同じ?どこがだ?」
「当時、長門さんと私は日本の誇りであり、1番の人気者でしたし。」
「…そうだったな…。あの頃は懐かしいな…。」
「ええ。…本当に。日頃鍛錬を積んだ自慢の艦載機との組み合わせは、無敵艦隊とも言われましたね。」
「そうだったのか。私は知らなかったがな。」
「でも、ミッドウェー海戦で…。」
「奇襲を受けて沈没…だったな…。」
「長門さんは…。」
「私は…。……。聞くな。」
「…私より辛い目に…?」
「それは分からん…。状況が違うからな。」
「そうですか…。」
「だが、私は赤城を失った時はショックだった。共に支えてきた仲間を失ったからな…。」
「…そこまで…。…嬉しいのでしょうか…?私は…。」
「…だが、今度は違う。必ず守る。そして、この戦いを共に終わらすぞ。」
「そうですね。皆んなで力を合わせて。」
「そうだな。…と、そろそろあらすじをしてもらいたい。」
「わかりました。えーっと…。次回、第222話『ひどい1日 その1』らしいです。知らない話ですねぇ…。」
「…そうだ。赤城。知らない話と言えばこの前提督が…。」


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222話 ひどい1日 その1

ゾロ目。
「そうだね。」
ちなみに、ネタがないから筆者の話をしよう…。
「うん。」
実は、筆者…。恋愛系アニメの耐性が0に近いことが分かりました…。
「…0!?」
モン○ター日常の1話前半で死亡が確認されました。
「早っ!」
いやいや…。死ぬ…。血が出た!
「大ダメージ…。」
致命入りました。
「YOU DIED」
ソウル回収しなくちゃ…。
「て、そろそろあらすじをしなくちゃ。」
そうだね。読者もめちゃくちゃ待たせちゃったし。じゃ、今回のゲストは?
「この人。」
「異界型二番艦♪『スティグロ』っ♪よろしくねっ♪」
スティグロですね。暴走して沈められた。一応パラオ泊地所属だけど、大半を第4佐世保鎮守府で過ごしている。
「はじめて見るかな?」
「初めまして♪」
「…楽しそうな人だね。」
楽しそうだけど、一応強いよ?
「戦っているところ見たことないけど…。」
そりゃ…。そこまでのピンチないからね。
「帰りたいけど…帰っていい?」
「あらすじをしてくれると嬉しいな。」
頼みますよ?
「まっかせて♪」

あらすじ♪
まだ新しい人に挨拶してないけど、いつかするよ♪いつかね♪


…………

その夜

 

「いやはや…。痩せて良かった。」

 

「次からは自分の体調管理しっかりしてくださいね。」

 

赤城が言う。店から出て、夕食を食べに食堂だ。

 

「今日は少なめにしてくださいね?リバウンドがありますので…。」

 

「なら、赤城にあげる。」

 

「…良いんですか?」

 

「もちろん。」

 

「ありがとうございます。」

 

ドミナントが、赤城の大盛りのカレーの上に色々乗せる。

 

「赤城は美味しそうに食べるから。」

 

「ほうへひょうは(そうでしょうか)?」

 

「もう食べてるし。」

 

今日も食堂は賑わっている。そこに…。

 

「提督。」

 

「あっ、加賀。どうした?ジャックがまだなのか?」

 

トレーを持ったまま立っている加賀。

 

「いえ、ところでその袋は?」

 

「あぁ、これ?内緒。」

 

「なら、邪魔なのでどかしてください。」

 

「…わかった。」

 

何やら大きな袋をどかすドミナント。

 

「…提督、その中身は…?」

 

赤城が聞く。

 

「これはみんな食べ終わってからね。」

 

「?」

 

ドミナントがニヤニヤして言い、赤城が不思議がった。

 

…………

 

「では、皆さんにとても驚く報告があります。」

 

「「「?」」」

 

ざわざわ…

 

ドミナントがいきなり前に立ち、そんなことを言う。みんな食後休みをとっていたところだ。

 

「ふっふっふ…。そろそろみんな、ここに来て1周年。そこでだ!プレゼントがある。」

 

「「「!?」」」

 

「どんなかな…?」

 

「プレゼント…気にいると良いけど…。」

 

「司令官から私たちに…?」

 

ドミナントが言い、ざわざわする艦娘たち。

 

「そう…。これだ。」

 

ドミナントが箱を全員の前に見せる。

 

「携帯だ!」

 

「「「!?」」」

 

ワーワー!

 

端末を見て、艦娘たちが歓喜の声を漏らす。

 

「順番だ。全員分ある。一列に並んで!」

 

……可愛い顔して…。本当、艦娘って罪だなぁ。

 

そう言った途端、息を合わせたかのようにピッタリ一列になる。全員ワクワクした顔をして、目を輝かせている。夕張を除いて。

 

「…と、その前にインターネットなどの危険性について知ってもらおうと思う。…まぁ、存在が不明だから、住所バレしても大丈夫だし、顔も同じ艦娘ならほぼ同じだから、平気だと思うけど…。」

 

ドミナントが配りながら言う。艦娘たちはお礼を言った後、早速箱を開けて見てみたり、起動させてみたりする。だが…。

 

「話しているだろう!静かにしろ!」

 

ジナイーダの一声で全員が黙り、携帯を箱の中に戻す。

 

「…そこまで厳しくしなくても…。まぁいいや。インターネットは危険だから、ジャックとかに聞いて。それと、これは俺の自腹だからなるべく壊さないように…。あと住所や顔バレしたら後々面倒だからやめてね?」

 

「「「はい!」」」

 

「分かったなら、自由に使ってね。説明書とか読んで。」

 

ドミナントが言った後、自分の席に戻る。艦娘たちはジャックに聞いたりするが、インターネサインと勘違いしているようである。そこで、セラフが説明してあげたりする。

 

「…で?お前はなんだ?」

 

すぐそばにワクワクしながら手を広げる神様。

 

「…あるでしょ?」

 

「ないな。」

 

ドミナントがしれっと返す。

 

「…本当にない?」

 

すごく残念そうな顔をする神様。

 

「ううん。ある。」

 

「…くれる?」

 

「…どうしようか…。」

 

ドミナントが神様をチラリと見る。楽しみに目を輝かせた顔だ。

 

「…しょうがない。あげる。」

 

「…本当にくれるの?」

 

「もちろん。所属する仲間だからね。」

 

「やった!」

 

神様はすごく上機嫌になる。

 

「ただし、LENI交換はしない。既読しなければどんなになるか分かったもんじゃないからな…。」

 

「えぇー…。」

 

そんな感じで夜を終えたのだった。

 

…………

 

「ん〜…!」

 

吹雪が目覚める。

 

……今日は私が秘書艦の日…!

 

そんなことを考えると、まだある眠気も吹っ飛ぶ。

 

「…早く支度しないと…。」

 

吹雪が起き上がり、ベッドから飛び起きて部屋を出る。既に前日の夜から制服のため、着替える必要がない。それほど楽しみだったのだ。

 

「行ってきます。白雪ちゃん、深雪ちゃん、初雪ちゃん、叢雲ちゃんっ。」

 

ドアを開けて飛び出したためなのか、返事はなかった。

 

…………

廊下

 

「う〜…。眠い…。」

 

川内が廊下を歩いている。夜戦をしていたのか、見回りをしているのか…。その答えは克服したかによるものだ。

 

「おはようございます!」

 

吹雪はすれ違いざま川内に挨拶して、ドミナントの自室を目指す。起きる前に起こしたいのだ。

 

「あぁ…おはよう。今日は早いね…。」

 

川内はすれ違う吹雪に挨拶したが…。

 

「……。…“ます”?」

 

何故か不思議そうに振り返って見た。だが、吹雪はすでにいなかった。

 

「…?気のせいだよね…。本当眠い…。」

 

川内は自室へ直行した。

 

…………

 

「あれ…?ここって…。」

 

吹雪が何かに気づく。

 

「…?あれ…?方向間違えちゃったのかな…?」

 

吹雪が窓の外を見て呟く。いつもの道と景色が違うのだ。

 

「…なら、向こう…?」

 

吹雪が急いで行く。そして、ドミナントの自室の前まで来た。

 

「……。…落ち着いて…。」

 

深く呼吸をした後…。

 

コンコン…ガチャ

 

「失礼します…。」

 

ドミナントを起こすため、そっとドアを開けるが…。

 

「あれ?」

 

ドミナントがいないのだ。ベッドは乱雑になっていて、まるで急いで逃げたかのようだ。

 

「…まだ温かい…。」

 

吹雪がベッドの中に手を入れて、温度を確かめた。

 

……なら、近くにいるはず…。でも、こんな朝早くに逃げるような感じで…。ただ事じゃありませんね…。

 

吹雪は分析して…。

 

「食堂へ行ってみましょうか…?」

 

食堂を目指す。まだ朝の4時前だ。

 

…………

食堂

 

「…やっぱり、いませんね…。」

 

吹雪が中をちょこんとのぞく。少数の艦娘しかいない。すると…。

 

「おい、行くなら早く行ってくれ。」

 

天龍の声が後ろからする。

 

「あっ、すみません。」

 

吹雪が素直にどく。

 

「…“ません”?」

 

天龍が不思議そうな顔をする。

 

「…どういう風の吹き回しだ…?…まぁいいや。一緒に食わねぇか?朝飯。」

 

天龍が良い笑顔で言う。

 

……朝ごはん…。…ここで待ってれば、来るかもしれませんね…。

 

吹雪が考えて…。

 

「なら、お言葉に甘えて…。」

 

「……。」

 

天龍が微妙な顔をした。

 

「ま、まぁ、龍田に内緒で一人で稽古をしていてな。龍田はまだ寝てると思うしな…。」

 

天龍がコソコソ呟く。

 

「おし、行くか。」

 

「はい。」

 

吹雪は天龍の後ろをついて行き、カレーを買う。そして、席についた。

 

「カレーかぁ〜。カレーってよ、正直うまいかどうかわかんなくなってきてんだよ…。」

 

「どうしてですか?」

 

「“ですか”…。…なんか変なもんでも食ったか…?」

 

「えっ?何故ですか?」

 

「いや…その…。なんか変だぞ…。敬語なんて使って…。」

 

「キャラなので気にしないでください。それに、天龍さんはすごいじゃないですか。敬語、使わずにはいられません。」

 

「そ、そうか…?…まぁ、世界水準軽く超えてっからよ。やっと分かったか。」

 

「既にご存知です。」

 

吹雪と天龍という珍しい組み合わせが会話に花を咲かせる。

 

「…ところで…。何故だか他の人がジロジロ見てるんですけど…。」

 

「おん?他の人?珍しいからじゃねぇの?」

 

天龍は気にした風もなく唐揚げを頬張る。

 

……まぁ、天龍さんと食べるのは初めてですけど…。

 

そんなことを思いながらカレーを食す吹雪。

 

「ところでよぉ…。…3日後、空いてるか?」

 

「3日後…?何故ですか?」

 

「そんなやぶさかに聞くなって。予定があるかどうか聞いてんだ。」

 

「空いてますね…。」

 

「そうか!良かった。」

 

天龍が笑顔になる。

 

「何をするんでしょうか…?」

 

「内緒だよ。内緒。」

 

天龍が勢いよく食べて行く。吹雪はそれを見て、なんとも言えない顔をした。

 

……司令官…。まだかなぁ…。

 

そんなことを思う。しかし、ドミナントが来る気配がない。

 

「…食べ終わったので、少し行ってきます。」

 

「おう。」

 

吹雪が食器を正確な位置に入れて、行く。天龍は呑気に言っていた。

 

…………

提督自室

 

「やっぱりいません…。おかしいです…。」

 

吹雪が何気なく紅茶の入れ物に触れる。隠し扉などがないかとか、メルヘンなことを考えながら。

 

「額縁の裏…?は、ありませんね…。鏡の後ろとか…。」

 

吹雪が探索する。だが、驚きは突然やってきたのだ。

 

…………

 

「グゥー…。」

 

ドミナントが寝ている。

 

「…て…。…きて…!…起きてってば!」

 

「む?うにゅ…?」

 

「あっ、やっと起きた。」

 

ドミナントが誰かに起こされる。

 

「…おはよう…。」

 

「おはようじゃありませんよ!今日は当番でしょ?」

 

「当番…?なんの…?」

 

「“なんの”って…。あんなに昨日の夜楽しみにしてたではありませんか!」

 

「昨日の夜…?…ミルクティーを飲んだくらいじゃないの?」

 

「え!?隠れて飲んだの?」

 

「いや、堂々と飲んだよ…。なんで隠れなくちゃいかんの…。」

 

「太りますよ!最近太った人見かけましたし…。」

 

「……。…ところで、なんで白雪がいるの?」

 

「えっ?なんでいるのって…。同じ部屋でしょう?」

 

「いやいやいや…。ここは俺の部屋…じゃない。」

 

ドミナントが周りを見て、気付く。

 

「…それより、早く行った方が良いです!そして、謝ってくださいね!」

 

「ちょ、待…。」

 

バタン!

 

ドミナントが閉め出された。

 

「…吹雪型の部屋…。…寝相悪すぎないか…?俺…。」

 

ドミナントがトボトボ自室まであるいていると、あることに気づく。

 

「…あれ?疲れない。」

 

歩いているのに身体が全く疲れていないのだ。

 

「つまり、俺は体力ついたのか。こんなにグンと上がるものなんだなぁ。」

 

そんなことを腕を組んで考えていると…。

 

「…あれ?柔らかい…。」

 

自身の手がほんのり柔らかいものに当たっていることに気がつく。

 

「…身体柔らかくない…?…これ、胸じゃない…?艦娘で言う胸部装甲…。」

 

ドミナントがあちらこちら触る。

 

「…どうなってるんだ…?おい…。」

 

そして、ドミナントが急いで鏡のあるところへ行き、自身を見た。

 

…………

 

「え…と…。誰…?」

 

吹雪が鏡を見て言う。

 

「…もしかして…。」

 

ある映画を思い出した人、正解。

 

「「入れ替わってる!?」」

 

…………

 

「いや!古いよ!!何年前だよ!?ブームすぎてるよ!!作者何考えてんだよッ!!ネタが無くなったからってなんでこんなんなってんだよ!意味が分からねぇよぉ!どうすりゃいいんだよ!」

 

ドミナントが精一杯叫ぶ。だが、外見は吹雪だ。

 

「…!そうだ…。吹雪とのデート…。」

 

ドミナントが思い出す。ダイエットの時は忘れていたが、今になって思い出した。日に日に近づいているのだ。神様とデートまであと3日。

 

「どうしよう…。」

 

ドミナントが叫んだ後、冷静になって窓の外を見る。

 

「…まずは吹雪だな…。おそらく俺の格好をしているし…。…ここで変なことをすれば自動的に提督である俺が呼ばれて、来ると思うけど…。…吹雪の名誉を傷つけちゃいかん…。吹雪になりきりながら行くしかない…。あーぁ…ひどい一日になりそうだ…。」

 

そして、吹雪はドミナントを目指す。

 

…………

 

「司令官の老け顔…じゃない、司令官の顔がなぜ私に…?」

 

一方、吹雪サイド。

 

「入れ替わっているとして、どこかでそういう映画があった気がしますね…。社会現象がどうとか…。」

 

吹雪…いや、ドミナントが唸る。

 

「あっ、司令官で思い出しました。あの券そろそろ使わないと…。うやむやにされても嫌ですし。」

 

吹雪が心の中で思う。

 

「それに、天龍さんと約束しちゃいましたし…。3日後に…。」

 

早速、ドミナントの予定を妨害する要素が出てきた。

 

……なら、3日以内のどこかになりますね…。

 

吹雪が考えていると…。

 

「ぉーい!」

 

「…自分が走ってくるのを側から見るのって、変な感じがしますね…。」

 

中がドミナントの吹雪がやってくる。

 

「随分探したよ。てか、この体全く疲れないね。」

 

「私の方はもう階段上がっただけでゼェゼェで…。司令官、普段どんなに苦労しているかわかりましたよ…。」

 

中がドミナントの吹雪と、中が吹雪のドミナントが話す。てか、ややこしくなるため、これからは本人の意識の方の名前に変更する。

 

「ところで、俺の身体吹雪になっちゃったけど…。…お風呂とかどうなるの…?」

 

「それを言うならおトイレとかもですよ…。」

 

「…いや、変なことするなよ?さもなくば鎮守府出禁の刑だから…。まぁ、そんなことするはずがないと思っているけど。」

 

「変なことって…。しませんよ。…でも、見えちゃいますけど…。」

 

「極力見ないで。そんなこと言ったら、吹雪の身体だって…。」

 

「…まさか…。…触りましたか…?」

 

吹雪が恐ろしい目になる。

 

「い、いや?触ってないよ。うん。絶対に。」

 

「…そうですか…。」

 

「……。」

 

吹雪が怪しい目で見てきたが、気にしない。

 

「…でも、本当にどうしよう…。俺吹雪だし…。吹雪俺だし…。」

 

「どうしましょうか…。」

 

吹雪とドミナントが唸る。

 

「まぁ、提督印は提督でしか押せないから、吹雪が今日提督の仕事だね。俺は秘書艦の仕事をするから。」

 

「司令官がですか?」

 

「うん。吹雪が秘書艦ならね。それと、周りにバレると変な混乱が起きるから、なるべく避けて…つまり、言わないで今日を乗り越えよう。明日もとに戻ってるかもしれないし…。」

 

「は、はい…!」

 

吹雪はうなずく。まぁ、ひどい1日になるのだが…。




ずっと前からやってみたかったこと。古いけど。

登場人物紹介コーナー
携帯…iPhoneやらAndroidなど。店の在庫を買い占めたため、二種類になった。ちなみに、契約者は一応セラフになっているが、そのぶんドミナントの貯金から引かれている。

「長門コーナーだ。」
「吹雪です。…と、見せかけておいて俺だ…兄弟…。」
「提督か?」
「その通り。現在は吹雪の体になっている。」
「そのような映画を見たことがあるな…。」
「筆者のネタがないからパロディだそうだ。」
「ところで、なんでこんなに遅かったのか聞いて良いか?」
「第3章の最後を書いていたらしい。それが想像以上に長かったらしくてな。ちなみに、この次の次まで終わっているから、後書きと前書きのネタ探しもしているらしい。」
「筆者と言う身分も楽ではないのだな。」
「日頃疲れているらしい。」
「そうか…。そろそろ次回するか。」
「わかった。」
「次回、第222話『ひどい1日 その2』だそうだ。そして、その2までで終わるそうだ。」
「ネタバレがすごいな…。そうだ、ネタバレと言えば、この前皐月が…。」


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223話 ひどい1日 その2

投稿遅くなってすみません。
「どうしてそんなに遅かったの?」
前も言った?ように、第3章の最後らへんを書いていたから。
「後を書いて、今のを書かなかったら本末転倒だよ…。」
まぁ…ね。でも、そこら辺しか案がないんだよ…。それに、時間もないし…。
「筆者も大変なんだね…。」
そうなんだよ…。
「あらすじ入る?」
その方が楽だね…。今回のゲストは?
「この人だったんだけどね…。」
あー…。今は亡き人か。ま、無口無表情だから、何もなかったけどね。
「じゃあ、今回のあらすじは…。」
時雨、頼むよ。
「うん。わかった。」

あらすじ
なんか、提督が変だったね…。いつもは何もない感じなんだけど、柔らかかったって言うか…、女の子っぽかったっていうか…。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室

 

「司令官…これで良いんですか…?」

 

「印鑑押して、パパッとね。」

 

ドミナントが聞いてきて、吹雪が返す。まだ入れ替わったままだ。

 

「随分と書く欄が多いんですけど…。」

 

「まだ1枚目か〜…。…あと5枚ほどで終わ…終わった。」

 

「早い!」

 

吹雪が驚愕して、ドミナントが余裕そうにダラダラする。しかし…。

 

「…腕がめちゃくちゃ疲れてる…。」

 

ドミナントが腕を押さえる。

 

「ど、どうしたんですか…?私の身体に異変でも…?」

 

「いや、おそらく吹雪の身体だから、腕のスピードが追いついていないみたいで…。」

 

「私の方は書くスピードが異常なまでに早いんですけど、書くときの手が全く見えませんし…。」

 

ちなみに『蟹』と言う字を書く時、ドミナントは0.005秒で書ける。化け物級だ。

 

「んー…。適当にね。」

 

「適当って…。」

 

「だって、大本営に送るんでしょ?全ての鎮守府の書類が大本営に行くわけだし…。送った書類は厳選されると思うし…。」

 

否、もれなく全て確認されている。だからこそ、最終確認である元帥と大和がとても大変な職なのだ。

 

「ま、適当にやって。俺はこの身体で遊んでくる!久しぶりに全力で遊べる!」

 

「ちょ!司令官待って…!」

 

「行ってきまーす!」

 

バタン!

 

ドミナントは執務室から飛び出して行った。

 

「はぁ…。この量…。」

 

吹雪は机の上に乗っている書類を見てゲンナリとする。

 

…………

 

「子供の体って、いくら動いても全然疲れないや。」

 

ドミナントは全力疾走している。そこに…。

 

ガシッ!

 

「!?」

 

「ギャハハ!ちょーっと目に入っちゃったね〜!ま!ちょうど良い相手見つけたしねっ!ギャハハハハハ!」

 

主任に見つかり、すれ違いざまに掴まれて持ち上げられた。

 

「ちょ、主任離して…。」

 

「…“主任”…?」

 

「あっ、いえ教官さん、離してください…。」

 

……そうだった…。今の俺は吹雪なんだ…。損傷したら入渠じゃん。…てか、この格好でお風呂なんて…。…そう思ってみれば、あの映画の風呂シーンなんてどうしていたんだ…?トイレだって…。…お互いの身体を隅々まで知ってるってことだよな…?キモっ。

 

ドミナント、気づいてはいけないことに気づく。まぁ、おそらくそこら辺は“カット”と言う魔法でなんとかなったんだろうけど…。てか、自分もその状況なので、人のことは言えないが…。

 

「まぁ、そんなことは良いとして…。なんで行かなければならないんですか?」

 

「……。」

 

主任、面と向かって疑問を投げられて数秒間動きが止まる。

 

「暇だから。」

 

その後、すぐに答えを出して連れて行かれる。

 

「な、なら!資材を数えてください!ふぶ…司令官が資材の確認とか必要としているので!」

 

「あ、そうなんだ〜。で、それが何か問題?」

 

「……。」

 

ドミナントは、主任が何を言っても止まらないことに気づき、考えるのをやめた。

 

…………

執務室

 

「はぁ〜…。」

 

吹雪が執務室でため息を吐く。あれから4時間経っている。

 

……司令官、いつもこんな量を一人でやっちゃってたんだ…。しかも、私たちの分もやって…。

 

まだまだ机の上にある書類を見ながら思う。

 

……いつもあんなにふざけているのに、ちゃんとやってくれているんだよね。私たちの中にはまだ、司令官に対して全く仕事もしていないように見ている人もいますけど、私は今日仕事をして分かった。司令官は私たちの何倍も仕事をしていて、私たちに優しくしてくれるかつ、私たちをより良く暮らせるように努力してくれる人なんだって。普通、こんなに仕事があったら余裕もないはず…。しかも、ここは世間では秘密の鎮守府だから仕事の量も他の鎮守府とは桁が違いますし…。

 

吹雪は改めてドミナントのことを考える。

 

……神様が司令官に本気に好意を抱くのも無理ありませんよね…。ジャックさんはどうでしょうか…?…多分、私は好きになれないかな…。仕事はしっかりやって、的確な指示を出して…。声をかけてくれたり、優しくしてくれるとは思うけど…。…きっと全て計算のうちなんだろうなぁ…。この前だって、兵士の士気を上げるのは当然みたいなことを言ってましたし…。…でも、司令官は純粋な声かけですから、素直に受け取れるんですよね。そこが司令官とジャックさんの違いかな。

 

吹雪は書類の手を止めて、真剣に考えている。

 

……司令官、本当にすごいなぁ…。私たち『艦娘』に対してこんなに思ってくれるなんて本当、変な人です。

 

「フフフっ♪」

 

そんなことを思い、くすりと笑っていると…。

 

バタンっ!

 

「ふ、吹雪!」

 

「し、司令官!?」

 

ドミナントがドアを開けて、吹雪が驚く。

 

「吹雪…!お前、よくあんな演習に耐えたな…!本当にすごいよ…!俺は全力で今逃げてるけど!」

 

「ギャハハハハハ!みーつけたっ!」

 

「ゲッ!じゃ!」

 

ドミナントが全力で逃げて行き、主任がものすごいスピードで追っている。

 

「…本当、変な人です。」

 

吹雪は呟いた。

 

…………

 

「あー…。やっと逃げ切った…。」

 

「お疲れ様です。司令官。」

 

吹雪がお茶を持ってきてくれる。

 

「…お茶を注ぐ自分を側から見るのって変な感じだな…。」

 

「そうですね。」

 

吹雪とドミナントが話す。

 

「吹雪ってさ、毎回あんな演習するの?」

 

「まぁ、そうですけど。」

 

「そうなんだ…。」

 

……やべーな…。吹雪…。いくら最初からいた一人だとしても、主任を全身オレンジはやばいって…。さらに、浜辺にあった巨岩を自分に縛り付けて、沈ませずに海の上を走るって…。

 

もちろん、そんな訳がない。吹雪はそんなことを言われたなんて知らない。

 

「司令官こそ…。こんな量の仕事大変ですね…。」

 

「まぁ、大変かな。少し。」

 

「そうですよね…。」

 

「…でも、そこまでじゃないよ。謙遜とかじゃなくてさ。この仕事をして、君たちが平和で楽しく好きに生きられるのなら、安いものさ。」

 

ドミナントが言う。

 

「…司令官って、どうしてそこまで私たちに優しいんですか?」

 

吹雪が何気なく聞いたが、答えは重いものだった。

 

「俺はジナイーダたちとは他の世界から来たことしってるよね?」

 

「まぁだいたいは…。」

 

「そこの世界の暮らし、どんなだったと思う?少なくとも、子供は笑っていなかった。全員苦痛の表情を内側に隠したような、仮面のような顔で無表情だった。どれだけ過酷な暮らしならああなるのか分からないほどね。…子供のそんな顔なんて俺は見たくない。子供時代って言うのは大昔から元気でよく笑える唯一の時代だ。なのに、それが出来ないほどの過酷な世界。俺はその世界に染まって、他人に構う余裕などなかった。悪く言えば見捨てていた。見ても何も思わなかった。それの罪滅ぼしでもある。…とは言っても、ただの自己満足でしかないんだけどね…。昔、そこの子供を見捨てて今君たちを助けたとしても、見捨てた事実は変わらない…。けど、何もしないよりはしたほうが絶対に良いと思ってさ。他にもあるよ。」

 

「……。」

 

「俺は親から虐待のような、奴隷のような生活をしていた。あの世界だからこそなのかもしれないけどね。捨てられるよりも酷かった。俺はあの時のことを思い出したくないほど…。俺のような苦しみや痛み、恐怖や憎しみを知って欲しくない。味わって欲しくない。こんな気持ちや感情になるのは俺1人で十分だ。だからこそ君たちにはせめて、良い心で、穏やかに育って欲しくてさ…。」

 

「……。」

 

ドミナントが力ない笑みをする。吹雪は黙ってうなずくだけだった。

 

「…暗い話になっちゃったけど、それが理由。君たちが好きだからでもあるし。」

 

「司令官って本当に優しいです…。そこまでの苦しみや憎しみを心の奥深くに隠して、私たちに優しく出来るなんて並大抵のことではありません…。私だったら無理です…。他の提督はどうなのかわかりませんけど…。」

 

……司令官…。もしかしたら、とっくの昔に心が壊れちゃってこんな風になっているのに気づかないのかな…?だから、並大抵のことじゃ怒らないのかな…?…司令官と最初の方に出会って、まるで腫れ物に触れるかのように震える手で私たちを撫でたり、すぐに消えてしまうのではないかと心配した目で見てきたのはそれが原因なのかな…?…けど、今はそんな風じゃない…。心が治ってきているのかな…?だとしたら嬉しいな…。

 

吹雪そんなことを思う。現に、最初の方は心が壊れかけていた。夢にまで現実を見るほどに。だが、今はそんなことはほとんどない。回復していっているのだ。

 

「…人は、痛い目を見て初めて気づくからね。それほど鈍いのか…はたまた愚かなのか…。」

 

ドミナントが呟いた。その言葉が何を意味するのかは本人以外、誰にも分からない。

 

…………

数時間後

 

ガチャ

 

「ドミナントー!遊びにきたよー!あと3日!」

 

神様が入ってきて…。

 

「…!?違う…?」

 

「「!?」」

 

飛びつこうとしたが、すぐに異変に気付いた。実に入って5秒足らずである。

 

「あなた…誰…?ドミナントはどこ…?」

 

神様は途端に、敵意満々の目で睨みつけて問いかける。

 

「落ち着け。」

 

ドミナントが止める。

 

「…あれ?吹雪の方に反応してる…。」

 

「どこで反応しているんだよ…。」

 

神様のアホ毛がアンテナのように、ドミナントの方へピンピン跳ねる。

 

「えっと…意味がわからないんだけど…。」

 

「説明するから、椅子にでも座って少し落ち着け。ここで嘘をついた方が混乱が起きるから…。」

 

そして、ドミナントたちは説明する。

 

…………

 

「えーっ!?ドミナントが吹雪の身体になって、吹雪がドミナントの身体になっちゃったの!?」

 

神様が理由を聞いて驚く。

 

「早く戻さないと…。…ん?いや待って…。」

 

神様が考え出す。

 

「もし、このままなら今は吹雪であるドミナントと一緒のお布団で寝れたり、お風呂に入ったり、あんなことやこんなことが…。」

 

「神様、鼻血でてるぞ。それに、そういうのは聞こえないところで妄想しろ…。」

 

すぐさまドミナントにツッコミを入れられる神様。

 

「なら、夜になる前に戻る方法を考えないとな…。」

 

ドミナントが考え出す。

 

「んー…。…!」

 

「何か思いついたか?吹雪。」

 

何かに気づいたような顔をして、ドミナントが聞く。

 

「何故だか無性に紅茶が飲みたいです…。身体がすごく欲しています…!」

 

「あー…。おそらく禁断症状だね。紅茶の。まぁ、たまに良くあるから飲んだほうが良いよ。」

 

「怖っ!それに、なんか日本語変!」

 

ドミナントの体である吹雪が言い、ドミナントが返す。

 

「神様、なんとか出来ない?」

 

「私も万能じゃないんだから…。…いや、役職は『万能』だけど…。」

 

「…役職?」

 

「あっ…。」

 

神様がうっかり口を滑らせた。

 

「…神様、役職って何?」

 

「よ、よく分からないな〜…。」

 

「…天界関連?」

 

「…大雑把に言えば。」

 

「じゃ、これ以上は聞かない。」

 

「…ありがとう。」

 

神様が素直に礼を言った。

 

「まぁ、そんなことはさておいて…。今何時?」

 

「えっと…。ヒトナナマルマル(5時)です。」

 

「じゃ無理か…。」

 

「?何がですか?」

 

「吹雪との…。…あっ、なんでもない。」

 

ドミナントが神様がいることに気がついて、訂正する。

 

「なーにー?」

 

「なんでもないったら…。」

 

神様が聞いてきて、目をそらすドミナント。

 

「あっ!そう思ってみれば、私とのデート券明日使って良いですか?」

 

「言ったそばから…。」

 

「あ、明日…。」

 

「お前はそんな絶望したような顔をするな。」

 

「ドミナントー!どういうこと!?」

 

「色々あったんだよ。予定にな。吹雪のデートも忘れてなかったし、夕張の券も消費させて、金剛の褒美や長門や赤城などのことも聞かないといけないし、三日月の不戦勝の願いも叶えなければいけないし…。」

 

「し、司令官…どれほど予定を詰め込んでいるんですか…?」

 

吹雪が驚愕した顔で聞く。一方、神様は俯いて顔が見えない。

 

「…もういい…。」

 

「?」

 

「もういいよ。そんなに予定があるんじゃ楽しめるわけないし…。どうせ無理なこと分かってたんだよね…。どれだけ楽しませようとしても、面倒そうな顔をする…ううん、そんな顔はしない。疲れているのに無理して笑っているような顔になるだけだし…。そんな顔されるのが一番辛いし…。」

 

神様はぶつぶつ言いながら執務室から出ようとする。

 

「逃すか。」

 

ガシッ

 

ドミナントは出ようとする神様の手を掴む。ここで行かせたら大変なことになりそうだからだ。

 

パシッ!

 

「!?」

 

だが、神様は一瞬で振り解いた。

 

……い、一瞬で…?…いや、今の俺は吹雪の体だ…。俺の力が弱いんだ。

 

ドミナントはそう思う。

 

「触らないで!もういいから!」

 

「んなわけにいくか!」

 

神様が部屋から飛び出して、ドミナントが後を追う。

 

「ついてこないで!」

 

「やだ!」

 

ドミナントは必死に後を追う。一方、吹雪はドミナントの身体なので、ACのなり方も分からず、とっくにへばっている。そこに…。

 

「廊下を全力疾走しないでください。危険ですよ。」

 

2人を一瞬で捕まえるセラフ。

 

「?神様さんと吹雪さんじゃありませんか。どうかしましたか?…吹雪さんじゃありませんね…。誰ですか?」

 

セラフは2人を捕まえながら聞く。

 

「…セラフもごまかせないな…。」

 

「…ドミナントさん?」

 

「そう。で、俺の身体の中にいるのは吹雪で…。」

 

…………

 

「…て、ことになってる。」

 

「そうなんですか。」

 

セラフに説明したドミナント。神様はムスッとしてそっぽを向いている。

 

「で、なんで走っていたんですか?」

 

「それは…。」

 

「……。…予定のことを神様に言ったんですね?」

 

「…うん…。」

 

「はぁ…。だからあの時しっかりと説明するべきだったじゃないですか。」

 

「…ごめん…。」

 

「謝るなら神様に謝ってください。…彼女、本当に心待ちにしていたんですよ?それを裏切るなんて最低です。一週間前からプランを考えていて、私のところに聞きに来るほどだったんですから…。」

 

「……。ごめん…。神様…。」

 

「……。」

 

神様はそっぽを向いたままだ。

 

「許してもらえないのは当たり前です。ドミナントさんは何回謝っていますか?それでも改善されていないと認識されているのなら、行動で示してください。」

 

「行動で…?」

 

「罰として、ドミナントさん一人で全て計画してください。神様を十分に楽しませ、尚且つ時間配分や、我儘や予想外の展開が起きた時の対処法、どこに行くのか、天候によっても左右されるので、その可能性なども全てです。」

 

「そんなにか…?」

 

「当たり前です。神様は全て計画していましたよ?私たちに頼ることもありましたけど。」

 

「……。」

 

「裏切られて怒らない人はいません。本当に、楽しませないと私が怒りますよ…?」

 

「…わかった。」

 

ドミナントが了承する。一方、神様は少しこちらを見ている。

 

「責任を必ずとる。4日後だ。4日後に必ず行く。セラフ!」

 

「?なんでしょうか?」

 

「4日後も無理だったら…。…腕を切り落としてくれ。」

 

「駄目です。仕事に支障が出ますし、入渠したら治るかもしれません。」

 

セラフは約束事などに厳しい。

 

「…なら、どうするか…。」

 

「…そうですね…。神様が決めてください。」

 

「それが良い。」

 

2人が神様を見る。

 

「な、なら…。」

 

「あっ、神様、それはダメですよ?どちらにせよあなたにダメージが出ますし。」

 

「?…あっ、そうだね…。」

 

「何を想像していたのか気になるな…。」

 

「なら…。」

 

「いや、思いついた。紅茶関連全て燃やせ。壊せ。それが一番の罰だ。さらに数年は禁止にする。」

 

ドミナントは覚悟した顔で言う。

 

「ドミナントさん…。いくらなんでも軽すぎでは…。」

 

「そ、そこまで…?」

 

「…神様さんがそんな顔に…?ドミナントさんにとっては生死を分けるほど辛いんでしょうか…?」

 

セラフは困惑した。ドミナントは一体どれほど人生を紅茶に注ぎ込んでいるんだろうって。

 

「神様…。…楽しみにしておけ。忘れられない1日になる。」

 

「…うん!」

 

神様が笑顔で返事をした。それほど、自分のためにしてくれるのが嬉しいのだろう。

 

「…まぁ、これで一時落着ですか…。」

 

セラフは痴話喧嘩を止めたような気がして、今思えば本当にくだらなく思うのだった。




ストックがががががが…。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…史上最低の出来損ない。痴話喧嘩をする、ハーレム嫌いの変人。

「長門コーナーだ。」
「し、司令官のドミナントです!」
「…む?なんか変だぞ…?」
「そ、そんなことあり…ない。」
「ほぅ…。なら、提督が前見せてくれた特技を見せてくれ。」
「と、特技!?」
「この前、マジックをしてくれたよな。あれがまた見たいな。」
「あ、アレとは…?」
「口からトランプを出したぞ。」
「と、トランプを…。」
「それに、そのトランプを全て鳩に変えたではないか。」
「そんな…無茶な!」
「この前失敗したら、お詫びに頬にキスをしてくれたではないか。」
「そんなことしたんですか!?長門さんと司令官は!?」
「冗談だ。」
「あ…。」
「吹雪…。最初から知ってるぞ。」
「それであんな無茶振りを!?」
「そうだ。我が艦隊にはどんな場合でも臨機応変に対処しなければならない力が…。」
「嘘ですよね!?絶対に嘘ですよね!?」
「とにかく。素人が…話にもならんな。」
「それを言いたかっただけですよね…?」
「それより、あんなに大事な話を聞かなくてよかったのか…?」
「どんな話ですか?」
「最後の…あ、いい。吹雪が暴れ回る様子が見えた…。」
「一体どんな話をしたんですか!?それに、絶対にそんな様子にはなりませんよ!」
「提督が神様とデートを…。」
「んなぁぁぁ!」
「うぉうっ…!暴れ回っている…。」
「ずるいです!羨ましいです!卑怯です!神様権限使うなんて…!」
「いや、これは提督が前々から…。」
「やかましい!」
「キャラ崩壊だな…。次回予告入ろうと思ったが…。吹雪があんなのでは話にもならんな。」
「2回目ですよ!」
「次回、第224話『散々な1日 その3』だそうだ。」
「手抜き!」
「そうだな…。筆者に言ってくれ…。そうだ、手抜きと言えばこの前ジナイーダ教官が…。」


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224話 ひどい1日 その3

遅れました。
「随分と遅れたようだねぇ…。まだまだ続くとも知らずに。」
森…?てか、時雨でしょうが。
「バレちゃった。なんでこんなに遅いのさ。」
大人の事情があるんだ。それに、仕様だよ。
「仕様…。」
というより、この小説を始めたのだって筆者が楽しむためだし。趣味が無かったからね。世界が色づくと思ったんだよ。
「なんか、今の言葉に裏が…。」
気づいてはいけないよ。
「怖い…。」
と、そろそろ本編行くか〜。ストックした話も多くしなくちゃいけないし、もし予定が変わった時ようにね。
「ふぅーん。」
で、ゲストは?
「陸軍の元中将だ。」
陸田中将ですね。あれからどうなったんです?
「謹慎処分だけだった…。…第4には悪いことをしたな。次は敵でなければ良いが…。」
フラグを本編以外で立てるのは禁止しています。
「そうなの?」
「そうなのか…?」
もちろん。ここは飛ばしても良い欄だからね。
「そ、そうか…。」
あらすじ頼みまーす。
「う、うむ…。」

あらすじ
前回、わしは今入院している。リハビリをすれば奇跡的に、前のような生活も出来るらしい…。…部下はいないがな…。


…………

廊下

 

「や、吹雪。」

 

「置いて行くなんて酷いです…。」

 

「すまんな。神様、あのまま放って置いたら手の届かないところに行っちゃいそうでさ…。」

 

「…前もそんなことを話してましたね…。」

 

吹雪が思い出す。

 

「ところでさ、明日のデートのことなんだけど…。」

 

「なんでしょうか…?」

 

……断られちゃうのかな…?

 

「12時から、12時間で良いか…?」

 

ドミナントが聞く。

 

「明日、何時からでも良いです!」

 

吹雪は嬉しそうに返す。

 

……明日の12時から12時間…。…?ちょっと待って…?夜の12時までってことは…。…!

 

吹雪が考えて、恥ずかしそうにする。

 

「無理か…?」

 

「いえ!全然平気です!むしろ…。」

 

吹雪が良からぬことを考えながら何度もうなずく。

 

「よし、決まり!じゃ!夜ご飯ちゃっちゃと食べるよ!」

 

「はいっ!」

 

ドミナントが言い、吹雪が駆け出したが…。

 

ツルッ

 

「「ゑ?」」

 

ドミナントがすっ転んだ。と、なれば…。

 

「きゃっ!」

 

吹雪もすっ転んでしまった。

 

ガツン!

 

「「きゅ〜…。」」

 

2人は気絶した。

 

…………

 

「…はっ!?」

 

ドミナントが起きる。

 

「…あれ?元の体に戻ってる…。」

 

そして辺りをキョロキョロするが、自分の部屋だ。

 

「…夢オチか。」

 

ドミナントが起き上がり、カーテンを開けた。

 

「…夜…。」

 

そんなことを呟くと…。

 

「起きたか。発見して1時間で起き上がるのは回復力以上じゃないか?」

 

「おぉ、ジナイーダ…。」

 

ジナイーダが傍に立っていた。

 

「今何時?」

 

「?現在時刻は10時くらいか…。」

 

「艦娘の消灯時間は?」

 

「10時だ。」

 

「よし、行ってくる。」

 

ドミナントが即答した。

 

「ちょ、ちょっと待て!気絶していた奴が何を言っている!?今日はもう寝ろ!」

 

「いや、倉庫へ行く。」

 

「ダメだって言っている…!」

 

「夕張に言わなければならないこともある!」

 

「!?ちょ、待…。」

 

ドミナントがジナイーダの気迫にも負けず、部屋を出て行った。

 

「…珍しいな…。引かないとは…。…少しだけなら良いか。」

 

ジナイーダはドミナントの成長を少し嬉しく思っていた。

 

…………

倉庫

 

「урааааааааа!!!」

 

ガシャァァァァン!!

 

「な、何事!?」

 

「敵…?」

 

大きな音がして、夕張とセントエルモが驚く。

 

「夕張!どこだ!?」

 

「て、提督!?」

 

「ドミナント提督だったの…?」

 

2人がドミナントを見つける。

 

「夕張!」

 

「は、はい!」

 

「明日の12時からセラフとの約束のデートをするぞ!」

 

「え、えぇ!?」

 

「良かったね!」

 

ドミナントが言い、いきなりのことで困惑する夕張。セントエルモは現在進行形で寝ぼけている

 

「あ、明日の12時…ど、どこで待てば良いかな…?」

 

「この倉庫。」

 

「わ、分かりました!楽しみにしています!」

 

「おう!じゃ!」

 

ドミナントはすぐに去って行った。

 

「…良かったね!明日の12時だって!」

 

セントエルモが言う。

 

「う、うん!とっても嬉しい!もう消灯時間過ぎてるけど、少し予定を考えようかな…?」

 

「それが良いんじゃない…?ドキドキで眠れないと思うし。熱々だね〜。」

 

「そ、そんなにからかわないで、セントエルモちゃん…。」

 

「まんざらでもなさそうな顔!」

 

倉庫で2人は嬉しそうにするのだった。

 

…………

 

「…よし、明日の準備終わり!」

 

吹雪が言う。

 

「嬉しそうね。」

 

そこに、白雪が声をかけた。

 

「うん!そりゃ当然だよ〜。」

 

吹雪が上機嫌に返した。

 

「明日の12時からずっとですものね。」

 

「うん!夜の12時までだから…。」

 

「…ははぁ〜…。と、言うことは司令官と[ピー]ですか?羨ましい…。」

 

「そ、そんなにからかわないでよ〜。」

 

吹雪はそうは言いつつも満更でもなさそうな顔をする。

 

「…て、もう消灯時間1時間半も過ぎているではありませんか。そろそろ寝たほうが良いですよ?明日のためにも…。」

 

「そ、そうだね…。それじゃ…。」

 

吹雪がベッドの中に入る。

 

「…眠れません…。」

 

「緊張かしら?」

 

「明日のことを考えると…。」

 

吹雪たちがそんな会話をしていると…。

 

コンコン…

 

部屋が誰かにノックされた。

 

「…まさか…。」

 

白雪が気づいた。

 

「誰?」

 

「どうぞ、司令官…。」

 

ガチャ

 

「失礼〜。」

 

白雪が当てた。

 

「し、司令官!?どうして…。」

 

「どうしてって…。行くよ?」

 

「…はい?」

 

「いや、12時から行くって言ったじゃん。」

 

「…えっと…。意味がわからないんですけど…。」

 

「明日の12時…。」

 

「…まさか、あと三十分後の…?」

 

「そうだよ?しかも夕張ともね。」

 

「えぇっ!?」

 

吹雪は騙して悪いがされた顔をする。

 

「ど、どうしてですか!?この券には…。」

 

「いやいやいや…。よーく見てみるんだ。」

 

「『提督とデート券』…。」

 

「時間指定は?」

 

「…されてません。」

 

「人数は?」

 

「…書いていません…。」

 

「つまり…。」

 

「……。ず、ずるいです!」

 

「いやいやいや…。労働組合も必要最小限の広さの事務所…。つまり、人が入れれば良いだけだ。それで済まされる時代だよ?」

 

「それは司令官の世界だけですよ!」

 

「まぁ、記載されてないってことは決めて良いってことだからね。紅茶のためだ。悪く思うな。」

 

「……。」

 

吹雪がどうしようもない怒りでワナワナしている。そして、白雪が電話をナチュラルに吹雪に渡した。

 

「…もしもし、夜分遅くにすみません…。元帥殿いらっしゃいますでしょうか…?」

 

「わー!待て!分かった!分かったから!」

 

ドミナントが慌てて止める。

 

「何がわかったんですか?」

 

吹雪が冷ややかな目でドミナントを見る。

 

「わかった…。言うことはなんでも聞く…。許容範囲内なら…。」

 

「…本当ですね?」

 

「本当…。」

 

「…でも、夜の12時だと補導対象になりかねませんし…。」

 

「分かった…。3時間ほど遅らせる…。山を越えるのに1時間ほどかかるから…。」

 

「分かりました。…ところで、どうしたんですか?いきなり…。」

 

吹雪がいつものドミナントでは無いと思い、聞く。

 

「いやね…。最近予定が山積みでさ…。3日後までにほぼ全ての予定を潰さないと俺の人生が終わる…。」

 

「大変なんですね…。」

 

「そうなんだよ…。吹雪の他にも、夕張や金剛とも1日を過ごさなければならないし…。三日月の不戦勝でどんな願いをされるか分からないし…。赤城と長門の褒美の件も聞かなくちゃいけないし…。…いや、夕張は願いが叶う券を一枚持っているから、どうなるか分からないし…。」

 

「予定がぎっしり…。1日は24時間しかないんですよ…?それに、寝る時間が…。」

 

「寝る時間?休みなしで5日は動けるから平気。そのかわり、5日後少し休憩は欲しい。1時間ほど…。」

 

「よほど過酷な世界出身ですね…。」

 

吹雪がドミナントの身体に驚愕する。実際、どうして生きているのか不思議だ。

 

「誰か…助けてくれ…。」

 

ドミナントが呟くと…。

 

(ただの妖精…そんな風には、もう生きられん時代か…。です。)

 

(それは他人が決めることじゃなかろうさ…生き死にと同じでよ…。です。)

 

「なんかカッコいい妖精さん2人組がやってきやがった。」

 

ドミナントは妖精さん2人組に注目する。

 

「妖精さん、妖精さん…。この先俺の待ち受ける運命は…?」

 

(それは他人が決めることじゃなかろうさ…。です。)

 

「…妖精さんならなんとか出来るでしょ…?」

 

(ただの妖精…そんな風には、もう生きられん時代か…。です。)

 

「それしかレパートリーないのかよ!」

 

ドミナントがうわべだけカッコ良い妖精さんに言う。

 

「と言うより、なんとか出来ない…?」

 

(無理です。)

 

妖精さんの無慈悲な言葉が突き刺さる。

 

(出来んことはなかろうさ。…です。なんなら、ブッキングの手伝いでもしてやろうか?です。)

 

「前々から思ってたけど…。その語尾絶対キャラ付けなだけだよね?」

 

(ただの妖精は生きられん時代です。)

 

(そんなことを言うなら、電だってそうだろうさ。です。)

 

「まぁ…そうかもしれないけど…。そうそう、前世?で先輩に好かれようと僕っ子キャラを演じていた子がいてさ…。バレたら信用ガタ落ちで辞めちゃったし…。て、そんな話じゃなくて…。」

 

ドミナントが妖精さんに説明する。

 

(難しい…。です。)

 

(他人が手伝うことじゃなかろうさ…。です。)

 

「ダブルブッキングの手伝いとか…。」

 

(故意にやるとは…。ただの提督は生きられん時代です。)

 

(それは最低のやることさ…。二股と同じでよ。です。」

 

「実質、二股なんだよなぁ…。」

 

ドミナントが妖精さんと会話をする。吹雪たちは妖精さんの声が聞こえない設定のため、ドミナントの最低な会話しか聞いていない。見事と言うべきか、哀れというべきか…。

 

(それはそうとして、報酬です。)

 

(報酬。です。)

 

「まぁ、妖精さんに報酬をごまかすのは案件発生だからね…。もちろんやるさ。そうだな…。マカロンでどうだ?」

 

(決まりか…。です。)

 

(そうです。)

 

2人の妖精さんが納得する。

 

「赤城と長門の褒美の情報を頼む。ついでに夕張や三日月とも…。明日の…15時までに知らせてくれ。」

 

((了解))

 

2人の妖精さんが返事をして、スパイのように天井裏へ行った。

 

「…司令官。」

 

「?」

 

「妖精さんと話している最中思ったんですけど…。」

 

「なんだい?」

 

「3日後の予定の後、皆んなの願いを叶えれば、一番効率が良いんじゃないですか?」

 

「そんなわけにいかんだろう…。」

 

「でも、私だったらギチギチのスケジュールであまり楽しめない方が嫌です。それだったら、日を改めて欲しいです。」

 

「…順番を無視してでもか?」

 

「はい。」

 

「…そうか…。」

 

ドミナントは女性心や、そう言うことに関しては全く知らない。ロクな青春時代を過ごさず、大人になってからも出会いや女性なども仕事の目でしか見ることが許されず、社畜な鬼畜生活を送っていたためである。結婚なども考えたことがない。考えたことがあるのは生きる方法と、仕事、そして寝ることのみである。

 

「…なら、無駄になったな…。マカロン…。」

 

「…ところで、私の用件は明日に予約してあるので、優先順位一番ですよね!?」

 

「さっきと言っていたことが違うぞ…。」

 

「それはそれ、これはこれです。」

 

「都合が良いな。」

 

そして、ドミナントは一先ず寝ることを優先して、明日、夕張に延期になることを伝えるのだった。




波乱の予感…。

登場人物紹介コーナー
妖精さん…さまざまな種類がいる。口調はそれぞれによって違うらしい、謎に包まれた存在。第2舞鶴までは及ばないが、圧倒的科学力や技術力を駆使する謎の存在。艦娘には甘く、提督には厳しくがモットーらしい。甘いお菓子でよく釣れる。第4の妖精さんは他とは違く、かませ犬だったり、漢だったり、騙して悪いがの人物と同じように話すが、空似である。とても似ているが、ACの存在がドミナントたちだけなので、恐らく空似である。

「長門コーナーだ。今回は…。」
((妖精です。))
「…おそらく挨拶をしているのだろうが…。言葉が聞こえないと分かりにくいな…。何か手を必死に動かしているようにしか見えないから可愛らしい…。」
(お菓子です。)
(おやつちょうだいです。)
「な、なんだ…?突然群がってきて…。…!そうか、分かったぞ。高い高いをして欲しいんだな!この長門に任せておけ!」
((ゑ?))
ガシッ!
「ほーら。軽くやったから、そこまで高くないだろう。…て、どうした?妖精…?妖精ーーー!」
(富士山より高いです…。)
(他界他界になりそうだったです…。)
「…死んでしまったか…。次回、第225話『重なる予定』だそうだ。まぁ、私も…な。」


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225話 重なる予定

遅くなりました。
「でも、前よりは早くない?」
前よりはね…。
「ネタがないの?」
そうなんだよ…。どうやっても詰むから…。謝りを繰り返すしかないし。
「提督も大変なんだね…。」
実際、多方から好意を持たれるととても面倒なことが分かった…。
「バレれば即……だもんね。」
何重にも股をかけると、ろくなことがない。間違いない。それを書いている筆者が言うんだ。
「まぁ、書く前までは羨ましがってたでしょ。」
いや?筆者はハーレムとか生理的に無理だったからさ…。特に鈍感、なんの努力もしない主人公がモテるのが気に食わない。
「あれ?この小説…。」
違うね。ドミナントは気づいていないフリをする。そして全力で阻止をする。娘みたいに見ているから、まず恋愛感情は無さそうだし。
「…そうだし?」
これから展開が変わるかもしれないからね。と、そろそろ始めようか。
「わかった。」
「ここはどこだ…?」
装甲車社長だね。あきつ丸たちを助けた…。懐かしいね〜。
「そうなの?」
「ここはどこだ?」
ここはあらすじを言う部屋であり、前書き欄だよ。
「筆者の部屋かな。」
「?…まぁ、いい。陸田中将に会う。早くここから出せ。」
あらすじを言えば出れるけど…。
「そうそう。」
「あらすじだと…?」
前回何があったかをそのマイクに向かって話せば良いの。
「簡単でしょ。」
「…わかった。」

あらすじ
私はいま陸田中将を探している。…仲間も消えたみたいだからな…。今寂しい思いをしているはずだ…。私も中将に救われた身…。恩を返さねば…。


…………

翌朝 倉庫 9時ほど

 

「夕張〜。いる〜?」

 

「はい!提督!準備万端です!」

 

ドミナントが話は延期になったことを伝えようと、倉庫で夕張に会う。

 

「提督!今日はどこへ行きますか!?」

 

夕張がキラキラさせて聞いてくる。キラ付けなのか、素なのか…。

 

「いや、夕張…。」

 

「私は今日ここに行きたいです!」

 

「いや、あの…。」

 

「今しかやっていないみたいです!ほら!ネットにも…。」

 

「ゆ、夕張…。」

 

……めちゃくちゃ断りずらい…。キラキラさせて…。もう、楽しみで仕方のないような感じで…。

 

「提督はどこに行きたいですか?」

 

笑顔で聞いてきた…。

 

「ゆ、夕張…。」

 

「はい!」

 

「実はな…。」

 

「…?」

 

ドミナントがバツが悪そうに言葉を詰まらせた。夕張の笑顔が一変、心配した顔をしたのだ。

 

「その…言いにくいんだけど…。」

 

「無理…ですか?」

 

「……。」

 

「提督…誘ってくれたじゃないですか…。」

 

「いや…それは…。」

 

夕張がとても悲しそうな顔をした。ジナイーダに見られたらぶっ飛ばされるどころでは済まなさそうな感じだ。

 

「嘘…だったんですか…?」

 

「……。」

 

ドミナントが本気で悩む。その時、ふと倉庫の奥に見てしまった。

 

「……。」

 

(……。)

 

(……。)

 

(……。)

 

セントエルモと妖精さん達だ。セントエルモが艤装でドミナントに照準を合わせていて、妖精さん達はスパナやらドライバーなどを持って、素振りをするかのように用意していた。全員顔が怖い。そして、妖精さんたちが、ギロチン台のようなものでジェスチャーまでしていた。

 

「……い、いや〜!そ、そんなわけないじゃないですか〜!いやね!ただ!所持金のことについて相談しに来ただけだよ!もちろん!」

 

「?本当ですか…?」

 

夕張は“良かった”と、安堵したような顔をした。

 

「私の分は自分で出しますから、提督は提督が必要だと思う金額で良いですよ!」

 

「お、おう…。それと、時間だけど少し遅れるかもしれない…。」

 

ドミナントが死んだ目で答える。

 

「待ち合わせ場所は…。」

 

「LENIで連絡する…。」

 

「わかりました。」

 

ドミナントはフラフラと倉庫を後にした。

 

…………

廊下

 

「どうしよう…。」

 

腕を組みながら考えている。吹雪とは時間を遅らせているのだ。すると…。

 

「Hey!提督ー!どうしたんデスカー?」

 

「おう…金剛…。」

 

金剛とすれ違う。優しい金剛はなんとなく雰囲気の違うドミナントを心配したのだろう。

 

「色々疲れていてさ…。大変でさ…。」

 

「…お疲れ様デース。」

 

「どっか、休みたいよ…。」

 

ドミナントが呟くと…。

 

「!なら、丁度良いネー!」

 

「?」

 

「明日、Date(デート)してくださいネー?」

 

「な、なぜ…?」

 

「昨日食堂で明後日の約束しているところを見たからデース!」

 

「…明後日?」

 

ドミナントが首を傾げる。

 

「とぼけるつもりデスカー!?」

 

「いやいやいや…。昨日?」

 

「That's Light(その通り)!」

 

「…昨日…。…吹雪…まさかな…。」

 

「どうしてブッキーが出てくるデスカー!?」

 

「いや、金剛…これには深い訳が…。」

 

「どう言う訳デスカ?」

 

「それは…。」

 

ドミナントが言おうと思ったが、言葉が詰まる。

 

……これ…。話しちゃダメなんじゃない…?1日とはいえ、入れ替わっていたわけだし…。余計な混乱招くんじゃね…?大騒ぎになると、予定が遅れて俺の紅茶人生が終わる…。ここは無難に黙っておこう…。

 

「…いや、なんでもない…。明日行けば良いんだな?」

 

「気になりマース!」

 

「永遠の謎だ。じゃ、明日また会おう。」

 

金剛はぶつぶつ言いながら行った。

 

……どうしよう…。明日は金剛か…。今日の時点でもう既に吹雪と夕張でブッキングだし…。…吹雪だけにブッキーング…。

 

下らないことを考えているくらいなら、なんとかする方法を考えて欲しいものだ。

 

…………

 

「う〜ん…。」

 

「あら、提督。」

 

「おや?赤い一航戦…。」

 

「赤城です。」

 

ドミナントが悩んでいるところに、赤い一航戦が話しかけてきた。

 

「提督、明日空いていますか?」

 

「明日?明日は金剛と…。」

 

「デート…ですか。」

 

「まぁ、そんなもんかな…。元帥殿の褒美としてさ。」

 

「私も、その褒美についてなんですが…。」

 

「?…赤城もデート?」

 

「違います。これです。」

 

「何それ?…ゲッ。」

 

赤城が懐から取り出したポスターに、ドミナントが嫌な声を出してしまった。

 

「…大食い…大会…。しかも明日…。」

 

「はい。ですが、これはペアでしか参加できなくて…。」

 

「加賀がいるぞ…。」

 

「いえなんと、これ…。…異性とのペアでして…。」

 

「…しゅに…。」

 

「教官さんと行った場合、どうなるかお分かりですね?」

 

「…バレるな…この鎮守府…。」

 

「そこじゃありません。外に出た時、私が白い目で見られます。」

 

「その大会に出ている時点でもう既に…。」

 

「何か言いましたか…?」

 

「あっ、いえ。なんでもないです。はい…。」

 

「この職場なので、異性の知り合いが少なく…。」

 

「ジャックはどうだ?」

 

「ジャックさんも悪くなかったんですが…。仕事や、加賀さんがいますし…。」

 

「まぁ…ね。」

 

「残っているのが提督しかいないんです…。」

 

「残っているって…。俺は売れ残りか…。」

 

「あっ!いえ!そんな売れ残りってわけでは…。」

 

「良いんだよ…。赤城…。俺は自分自身理解しているし…。」

 

「違います!」

 

赤城が必死に言う。

 

「それなら!提督以外の誘われなかった一般人なんて、不良品同然ですし!」

 

「赤城、それは流石に言い過ぎ…。」

 

「あっ。…すみません。」

 

ドミナントと赤城が冷静になる。

 

「明日…か。明日の何時?」

 

「明日の昼ですね。12時…いえ、ヒトフタマルマルから、ヒトゴーマルマルまでです。」

 

「今なんで訂正したん?まぁ…なんとかなるか…?」

 

「ありがとうございます。」

 

「お、おう…。」

 

ドミナントはさらに悩むことになった。本日、吹雪とデートをして、夕張とブッキング、明日は金剛と赤城に付き合わされ、明後日は天龍に付き合いつつ、神様とデートなのだ。

 

「…仕事の方がよっぽど楽なのでは…?」

 

どうやらこれら全てを乗り切ることは、元の世界より大変らしい。だが、悪いことはさらに連続して起こるものだ。

 

「提督。」

 

「……。」

 

「提督?」

 

「……。」

 

「提督!」

 

「ハッ!?ど、どうした?長門か…。」

 

「どうした?ではない。何度も呼んだぞ?」

 

「そ、そうか…。ところで、どうかしたのか?」

 

「元帥殿の褒美がどうとか聞こえてな。私の褒美もそろそろ使うべきかと思ってな。」

 

「……。」

 

「?どうしてそんな顔をしているんだ?」

 

「い、いや…。…まさか、3日以内に何か起こるわけでは…?」

 

「?そうだが?」

 

「…長門…。」

 

「?」

 

ドミナントが長門両肩を掴んだ。

 

「助けて…。」

 

ドミナントが弱々しく言葉を発した。

 

…………

 

「なるほどな。」

 

「そうなんだよ…。」

 

ドミナントは長門に全て話した。

 

「断ることは出来なかったのか?」

 

「断ろうとしたんだ…。でも、全員限定がどうのとか、期間がどうのとかで…。」

 

「提督も大変なのだな…。」

 

長門が呟く。

 

「…?どうしたの?」

 

「あっ、いや。何でもない…。」

 

ドミナントは見逃さなかった。長門が何か書類を後ろに隠したのを。

 

「みーせてっ。」

 

「あっ…。」

 

ドミナントは死んだ目でひったくる。もう、これ以上酷いことは起きるはずがないと確信していたからだ。

 

「……。…どこかで見たことがあるような…。」

 

「悪いか!?甘いのが好きなんだ!」

 

「いや、悪くはない…。でも、どこかで…。」

 

ドミナントがスイーツ店のポスターを見ながら呟く。

 

「?行ったことがあるのか?」

 

「…覚えていないが、見たことはあるような…ないような…。…夢か。夢だな。」

 

「そうか?」

 

ドミナントが確信した。

 

「で、いつ行きたいの?」

 

「4日後までやっている。その時までに、なんとかしてくれ。」

 

「分かった…。明日は金剛と赤城、明後日は天龍だから…。3日後?」

 

「4日後だな。」

 

「分かった。そこなら、多分何とかなる。」

 

「礼を言う。…頑張ってくれ。それしか言えない。」

 

「あは、アハハ。想定の範囲外だよぉ…。」

 

ドミナントは死んだ顔で言った。




この後の展開をどうすればいいのか…。

登場人物紹介コーナー
特になし

「毎度お馴染み長門コーナーだ。」
「今回は私ですね!」
「夕張か…。筆者によると、丁度夕張との一日が終わったところらしい。」
「私と提督との1日ですか!?」
「そうなのか?……。そうみたいだ。」
「テレパシー…ですか?」
「そうだ。」
「すごい…。で、ここでは私の説明を…。」
「すまんが夕張…。次回も、その次回もお前だから、ここで言うとネタが尽きると危惧した筆者からの命令だ。次回に回してくれ。」
「次回…。」
「そうだ。」
「…分かりました。では、憂さ晴らしも兼ねて、次回予告しますね。」
「う、うむ…。」
「次回、第226話『夕張との1日 その1』…。…ハッ!?そうだ!次回デートですね!楽しみです!うふふ…。」
「憂さ晴らしは…。」
「なんのことでしょ〜。」
「…羨ましい限りだな。全く。」


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226話 夕張との1日 その1

随分と遅くなりました…。
「どうしたの?」
この先の内容を書いていてさ。なんとか1日は終わった。
「まだ5日ほど残ってるんだ…。」
そうなんだよ…。ま、ストックが溜まったから、近日順次公開する予定。
「へぇ〜。」
てか、後書き見てる人いるのかな?後書きに時間がかかってるし…。今回は随分遅れているので、紹介は無しで…。
「そのうち潰れるんじゃ…。」
ま、長門はんの出番はこれからあるし。
「…僕の出番は?まだ一回も出てないんだけど…。」
出たよ?
「え?」
出たじゃん。旅行に行く前。
「えーっと…。思い出せない…。」
なら、ちゃんと見てみるんだ。て、ことで今回のゲストは?
「この人。」
「初めまして…まるゆです。」
陸出身の艦娘か。彼女は艦娘の中でも最弱の存在…。
「ひどい!」
「筆者さん…。」
……。…ごめんなさい…。
「まぁ、本当にそうなんだけどね…。」
そこで、あえてレベルを最大にする輩がいる…。どれだけ暇人なのか…。
「まるゆ、役に立たないんでしょうか…?あの鎮守府でも…。」
「提督はそんなの気にしないよ。」
そうだよ。
「なら、頑張ります!」
よっしゃ、そのいきだ。て、ことであらすじやって頂戴。
「まるゆ、頑張ります。」

あらすじです
前回、隊長を見かけたけど、フラフラしていました…。まるで世界が終わるような感じでした。…声をかけてあげた方が良かったんでしょうか…?


…………

午前11時

 

「…よう…ブッキー…。」

 

「司令官!…て、何でそんな顔しているんですか…?」

 

この世の終わりのような顔をして吹雪と会う。

 

「…じゃぁ、行こうか…。」

 

「待ってください。司令官。」

 

「…?」

 

「…夕張さんとのブッキングですか?」

 

「…ごめんなさいでした…。」

 

吹雪が聞き、ドミナントは全て打ち明けた。

 

…………

 

「本当、司令官は優しすぎるのがたまに傷ですね。沢山の娘とブッキングって…。バレたら殺されますよ?」

 

「はい…。」

 

「計画は立てたんですか?」

 

「…今日の計画は…。」

 

「どんな予定なんですか?」

 

「…11時に鎮守府を出て、40分後、本日やっているはずのスーパー近くのアイスクリーム屋で足止め…。森の中でAC化をして10分で鎮守府へ到着。夕張と倉庫で待ち合わせをして、共に行く。40分かかり、ようやくレストランで食事。理由をつけて抜け出して、吹雪と会い、カラオケ屋に行きます…。そして、理由をつけて抜け出して、リスクはあるけど夕張も同じカラオケ店へ…。部屋を行き来しながら、何とか誤魔化す予定までは考えておりました…。」

 

「…本当、実現できそうで怖いですね…。」

 

「頼む…!!この話は今から5日後に変更できませんか…!?」

 

ドミナントが土下座した。

 

「…仕方ない人です。」

 

「…良いんですか…?」

 

「はい。そのかわり、5日後、嫌と言うほど沢山甘えるので、覚悟してくださいねっ!」

 

「ありがとう!吹雪!」

 

「!」

 

ドミナントは思わず抱きついた。

 

「し、司令官…!」

 

「おっと…すまない。」

 

しかし、すぐに離れる。

 

「じゃぁ!本当にありがとう!」

 

ドミナントは倉庫へ直行した。

 

「…もう少しだけしてくれても…。…ううん。してくれただけでも、滅多にないよね…。」

 

吹雪は、変更して良かったと思っている。例え、デートをしたとしても抱きつかれるのは超低確率だからだ。簡単に例えるならば、初期機体でブレオン縛りでラスジナを倒すくらいの確率だ。もしくは、0.05%ほどである。

 

…………

倉庫

 

「待たせたな。」

 

「提督!」

 

…………。でも、一人の女性を振り切って来たことを考えると、少し気がひけるな…。

 

吹雪のことを考えてしまい、少し後悔するドミナント。すると…。

 

「?どうかしましたか?」

 

「え?あ、ううん。大丈夫。…ところで、どこ行こっか?」

 

……吹雪…。…でも、ここで夕張を楽しませることができなかったら、結果的に吹雪がわざわざ延期させてくれたことが無駄になってしまうからね…。

 

ドミナントがそう考えて夕張に聞いた。

 

「……。本当に大丈夫ですか?とても疲れた顔をしていますけど…。」

 

「平気平気。これくらい、どうってことないよ。」

 

「…少し休んでから行きましょう。まだ約束の時間まで30分はありますし。」

 

「でも…。」

 

「ダメです。提督は、なんでも溜め込んでしまうクセがありますから。休んでください。」

 

「…そんなこと言ってくれたのは夕張が初めてだな…。」

 

「え?」

 

「いや、なんでも。…ここのソファーで少し休ませてもらおうかな。」

 

ドミナントが素直に言うことを聞いた。

 

……提督…。一体、どんな世界から来たのかな…?多分、私の想像もつかない、教官さんたちとは違う過酷な世界から来たんだろうなぁ…。

 

夕張は、すぐに寝てしまったドミナントを見て思った。

 

…………

 

「…んが?ここは…?」

 

ドミナントが辺りをキョロキョロ見回す。

 

「うわっ…。ちょうど1時間ピッタリ…。」

 

ドミナントがジャストで起きて夕張が驚いた。

 

「じゃ、行こうか。夕張。」

 

「本当に大丈夫ですか…?」

 

「寝たから、少し頭もスッキリしたし。大丈夫。」

 

「そうですか…。なら、行きましょう!」

 

夕張とドミナントは張り切って行った。山道の道中、鳥などを見ながら。

 

…………

 

「さて…。どうする?」

 

「まずは、お昼を食べましょう。」

 

そして、夕張に案内されたのが…。

 

「ここです。」

 

「食堂…?ネットではあまり有名じゃないけど…。」

 

「ネットに頼りすぎるのはダメですよ?」

 

夕張が中に入ろうとしたが、振り向いた。

 

「あっ、提督。この中では、私のことは『夕優』と言ってください。あと提督のことは名前で呼びますね。」

 

夕張が小声で言う。

 

「偽名?てか、鎮守府のことがバレないようにしているの?」

 

「提督が言ったんじゃないですか…。」

 

「わかった。なら、そう言うことにしておこう。」

 

夕張が小声で言い、ドミナントが了承する。

 

「あ、あと…。鎮守府がバレちゃいけないですから…。その…。…提督のことは…。…か、彼氏…と言うことに…。」

 

「わかった。これもバレないようにするためだな。」

 

……かわゆす…。

 

そして、中に入る。

 

「あら、いらっしゃい夕ちゃん。今日はお父さんと一緒?」

 

すると、食堂のおばちゃんが聞いてきた。

 

「え…。あ、はい…。」

 

夕張が、早速予定が狂って少し困惑していた。

 

「どうも、夕優の父のド…土満、南斗と申します。」

 

「どうもご丁寧に。」

 

ドミナントが偽名を使い、丁寧に挨拶を交わす。

 

「ここの海鮮丼を二つお願いします。」

 

「あいよー。今暇だから、すぐに出来んよ。」

 

そして、おばちゃんがキッチンへ行った。

 

「…ここの海鮮丼が美味しいのか?」

 

「は…うん。とても美味しいの。て…お父さん。」

 

「そうか。夕ば…夕優。」

 

二人とも、慣れていないため口調が変だ。すると…。

 

「待たせたね。たんと食いねぇ。」

 

「ありがとう!」

 

「早いな。」

 

すぐに持ってきてくれた。どれも脂がのっていて美味しそうだ。

 

「「いただきます。」」

 

二人が食べる。

 

「…おぉ…。美味いな…。」

 

「でしょ?」

 

ドミナントが言い、夕張が少し笑顔になる。

 

「よくこんなところ知ってたな。」

 

「前、来たことがあるの。」

 

「前?」

 

「お小遣いを貰った時。セラフさんと一緒に。」

 

「へぇ〜。」

 

「ネットにも乗ってないから、穴場なの。美味しい理由は鮮度とか、切り方に独自のこだわりを持っているの。目利きのおじさんが、朝採れの新鮮な魚にこだわって、あのおばちゃんが素早く丁寧に、技術を使って切ってのせているの。魚の種類によって、切り方を変えるからすごいの。」

 

「なるほど…。とても、真似ができんな…。」

 

ドミナントが言う。

 

「そんな大したもんじゃないよ〜。」

 

おばちゃんが出てきて言う。

 

「いえいえ…。ネットにのってないのが不思議なくらい…。」

 

「最近の若ぇもんはネットにすぐ頼る。昔は、歩いて探すのが普通じゃったんだ。探して、一か八かの賭けで店に入り注文する…。そんな古風な生き方をしている人間にこそ、食ってもらいてぇもんなんだ。」

 

店の奥から店主らしき頑固親父っぽい人が出てきた。

 

「あんたも、何年も生きとるから分かるだろ?」

 

「え、あ…はい…。」

 

ドミナントは老け顔のため、年齢が高く見積もられがちなのだ。

 

「あんたの娘は良い子だよ。そんなのに頼らず、一週間前ほどから来てくれたんだ。ネットに載せてねぇのによ。」

 

「ネットに載せないでって言ったら本当に載せなかったかんら。」

 

「そうなのか?」

 

「すごくお腹が空いちゃって…。」

 

夕張が言う。

 

「ま、そんな古風なお店も俺は好きだな。今度、また来るとしよう。」

 

「は…うん!」

 

「お会計は…。」

 

「一つ、2500円だけど…。おまけして、4000円で良いよ。」

 

「えぇっ!?そんな…。1000円も…。それに、一つ4000円くらいはすると思いますし。」

 

「サービスサービス。気にせんでええよ。」

 

おばちゃんが言うが…。

 

「…いえいえ。5000円で。私の気持ちです。大満足です。本当はもっと払いたいんですけど、法的にアレなので…。」

 

「ええのに。」

 

「いえ、私が許せませんので。」

 

ドミナントがきっちりと払う。

 

「夕ちゃん、またきんしゃい。」

 

「はい!」

 

「それでは。」

 

ドミナントと夕張が店を出た。そして、しばらく歩き…。

 

「…ふぅ…。夕張、なんか夕張すごく好かれてない?あの店に。」

 

「えっ?…まぁ、はい。」

 

「どうして?」

 

「…前、来たときに色々とありまして…。店の近くで、あの店主が転んで怪我をしてしまったため、応急治療をして荷物を持ってあげたんです。最初はくどくど言われましたが、家に着く頃には心を開いてくれて…。」

 

「へぇ〜。なるほどね〜。…夕張、えらいことしたね。」

 

夕張の頭を撫でる。

 

「ひ、人に見られますよ…?」

 

「別に見られても平気でしょ?頭を撫でるくらい。親子なんだし。」

 

「もうっ!今はもう親子設定じゃなくていいんです!」

 

夕張が頬を膨らませたが…。

 

……可愛い。

 

ドミナントにとっては逆効果である。




長いので、切りました。

登場人物紹介コーナー
店…とくに変哲もない。ただの店。二人できりもりしている。

「長門コーナーだ。」
「夕張です。このコーナーが潰れるって耳にしたんですが…。」
「なんだと!?筆者!どういうことだ!」
「あっ、いえ、今回だけで…。」
「私はもういらない存在なのか…!くそっ…!」
「そんなヒステリックにならないでください。あなたらしくありませんよ!」
「ハッ!?そ、そうだな…。」
「まぁ、今回は私の紹介が無しってだけで、229話まで続くらしいので、そこら辺までのどこかで艦の私の紹介をするらしいです。」
「そ、そうだったのか…。」
「と、いうことで次回をします。」
「あ、あぁ…。私は疲れたから休むとする…。」
「お大事に…。次回、第227話『夕張のと1日 その2』です。なんの捻りもありませんね。」


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227話 夕張との1日 その2

遅れてしまって申し訳ありません…。アンケートありがとうございます!
「今度はどうしたの?」
深刻なネタ不足により、先が進まない…。
「ネタ不足はしょうがないよね…。」
ACやり直そうかな…。いや、そんな時間ないな…。
「もうすぐ年末…。」
あぁぁぁぁあ!嫌なことを言うもんじゃぁない!
「……。筆者さんも大変なんだね…。」
大体おかしいよ…。なんでこんなに仕事立て込んでるのさ…。今年は特に…。
「新型ウイルスの影響もあったからじゃない?」
コロナめ…。呪ってやる…。
「筆者さんから負のオーラが…。そろそろ危ないから、あらすじを始めるよ。」
あぁ…頼むよ…。
「自分、あきつ丸であります。」
あきつ丸か…。
「陸軍続きだね。」
「自分はもう第4佐世保所属であります。」
随分とあそこが気に入ったようだねぇ…。これから大変なことになるとも知らずに…。
「森…?」
モォーリカァードゥールサーン。
「排除…て、どうしてこんな言葉が出てきたでありますか…?」
それは永遠の謎だな。あらすじをしてくれると助かる。
「頑張るであります!」

あらすじであります!
前回、将…提督殿は夕張殿と一緒に出かけているであります。吹雪殿が何故だか機嫌がものすごく良かったであります。…自分は……


…………

 

「遊園地行きたいです!」

 

「遊園地?」

 

夕張が言い、ドミナントが首を傾げる。現在、エアコンを取り付ける件の夕張とのデート中だ。…とは言っても、目に見えてイチャイチャはしない。独占して二人きりで遊ぶみたいな感じだ。

 

「遊園地か…。…また、あいつらの世話になりそうだな…。」

 

「?」

 

「遊園地…俺は一つだけなら知ってるけど…。」

 

「えっ!どこですか!提督の唯一知っている遊園地へ行ってみたいです!」

 

「…本当に行きたい?後悔しない…?」

 

「もちろんです!」

 

…………

 

「チケットをあげ…。」

 

「はいはい。ありがとう。」

 

ドミナントが話を最後まで聞かず、夕張のところへ行く。

 

「?どうした?そんな顔をして…。」

 

「い、いえ…。なんか…その…。…とても個性的なところだなと…。」

 

「個性的?いや?変だ。普通に変なところだ。」

 

「自覚あるんですね…。」

 

ドミナントは三度目はないと思っていたが、また来た。

 

「だから聞いたじゃないか。」

 

「でも…。」

 

夕張は無理に笑顔をしようとしているのか、口角が釣り上がって笑えない顔をしているだけである。

 

「まぁ、スタッフはアレだけど、乗り物は……。………………多分平気。」

 

「随分考えていたけど本当?」

 

「もーちろんさー。」

 

ドミナントと夕張が入って行った。

 

…………

 

「「世に平穏のあらんことを…。世に平穏のあらんことを…。」」

 

午前中だけで二人はすっかり洗脳気味になっている。しかし…。

 

グゥ〜…

 

「「!」」

 

お腹の音で洗脳が解けた。

 

「ハッ!?お、俺は一体何を…。」

 

「ここ、怖いですね…。こんなにも怖いところがあるなんて…。」

 

「そろそろおやつの時間かな…?」

 

ドミナントが例のレストランのメニュー表を見る。

 

「…なんでハチ関係の物しかないのか…。蜂蜜パンケーキ、蜂蜜味チェロス、蜂蜜ワッフル、蜂蜜トースト…。ハチノコまである…。」

 

「やっぱり、ここ洗脳されますよ…?」

 

「ま、変なのは入れてないと思うし…。てか、すぐ出るんじゃ入場料もったいないし。」

 

「まるで一般人のような考え方…。」

 

「ん?なら、夕張は上司と部下の接待のようにみてる?接待なら、手を繋ぐこともないな〜。」

 

「い、いえ!そんなことはありません!一般人のような考え方大好き!」

 

「ダイナミック手のひら返し…。手だけに…。」

 

「そんなことより、早く入りますよ。」

 

ドミナントのギャグも速攻無視して、夕張が店の中に入る。ドミナントが落ち込んでいるように見えるのは多分気のせいである。

 

…………

 

「提督…。大丈夫ですか…?」

 

「なんとか…。店内に流れている音楽が洗脳気味の音楽だ…。そして世に平穏のあらんことを…。」

 

「提督、洗脳されていますよ…?そして、世に平穏のあらんことを…。」

 

語尾が変である。

 

「あれれ…?世界が黄色と黒の蜂みたいでいい感じだな〜。」

 

「そうですね〜。綺麗ですね〜。」

 

手遅れになりそうだ。

 

「提督〜。世に平穏をもたらすものって、素敵ですよね〜。」

 

「そうだね〜。そうそう、素敵といえば赤城が索敵について…。…ハッ!?」

 

ドミナントの洗脳が解けた。

 

「赤城…!ありがとう赤城…!索敵についてこの前ボヤいてくれて…!夕張!起きろ!夕張!」

 

「ハッ!?わ、私は何を…?」

 

ドミナントが夕張の肩を揺さぶり、目を覚ます。

 

「て、提督…。」

 

「なんとなく言いたいことは分かる…!ここは二人だけだと危険すぎるな…。大勢で来なければ頭がおかしくなる…!」

 

ドミナントが夕張の手を掴み、急いで出口へ直行した。

 

「ありがとうございました。そして、世に平穏のあらんことを…。」

 

「それじゃ!」

 

「世に…。…ハッ!?あ、ありがとうございました!」

 

ドミナントと夕張は洗脳が完全に解けるよう走って出て行った。

 

「…チッ。」

 

従業員は悔しそうな顔で舌打ちをしたと思ったら、次に出て行く洗脳済みの客に笑顔で対応していた。

 

…………

 

「ハァ…ハァ…。て、提督!なんて怖い遊園地連れて来たんですか!?お化け屋敷も真っ青ですよ!」

 

「何を言う…。行きたいって言ったのは夕張だぞ…。」

 

ドミナントと夕張は遊園地から遠く離れた五島椿森林公園にいる。

 

「走って疲れた〜。」

 

ドミナントが芝生の上で寝転がる。

 

「全くもう…。」

 

夕張もドミナントの隣で腰を下ろす。

 

「…夕張。」

 

「なんですか?」

 

「寝転がってごらん。」

 

「?」

 

夕張が寝転がる。日差しが心地よく、風が少し冷たい。秋の訪れを感じさせる。雲はゆっくりと流れ、青い空が広がっている。

 

「…気持ち良いですね…。」

 

「そうだろう?」

 

すると、ドミナントの手に温かな感触がした。

 

「今だけ…。少しだけ繋ぎたいです。」

 

「…今だけね。」

 

気持ちの良い今日この頃、鳥のさえずり、風で木の葉が擦れる音、冷たくひんやりした風に温かな日差し…。至福である。

 

「…でも、どうせならもう少ししてからの方が良かったかな…。」

 

「?なんで?」

 

「つばきはまだつぼみなんですよね…。もうそろそろの気がしますけど。」

 

「へぇ〜。」

 

「まだつぼみです。私のように、季節で咲くことのない花です…。」

 

「なんでさ。」

 

「勇気を出せないところも、恋の行方も…。」

 

夕張が最後の方は小声で言った。

 

「…じゃ、探すか。」

 

「えっ?」

 

ドミナントが手を離して芝生から起き上がる。芝生の草がパラパラ落ちた。

 

「季節で咲くことはないみたいだけど、一つくらいなら咲いているはずだよ。夕張は咲くことが出来る。それを証明してみせるよ。だから、一緒に探そう?」

 

ドミナントが手を差し伸べた。

 

「はい!」

 

夕張はその手を取り、起き上がった。

 

…………

 

「無いね〜…。」

 

「そうですね〜…。」

 

ドミナントと夕張が見ていくが、全くない。

 

「やっぱり…。」

 

「そんなことない!絶対にあるよ。」

 

「提督…。」

 

夕張は、そこまでして探してくれているドミナントに感謝した。

 

「うーん…あっ!」

 

ドミナントが声を上げて…。

 

「あった!どうだ!夕張!」

 

「あぁ!本当!」

 

沢山のつぼみの中、一つだけ花開いている椿があった。その椿は少し小さいが、しっかりと咲いていて目立っている。

 

「いたね。夕張。」

 

「私ですか?」

 

「当然。どう?咲いていたでしょ?」

 

「はい!」

 

夕張が笑顔で答えた。

 

「じゃ、帰ろっか。もう5時だし。」

 

「あっ!本当です!」

 

ドミナントが先に歩き出した。が、夕張がその一輪の椿を見る。

 

「ピンク色…。花言葉は、『控えめな愛』…だっけ。…提督もしかして…。…まさかね。」

 

夕張が気にせず、ドミナントの後を追う。その疑問の答えはドミナント自身にしか分からないだろう。




世に平穏のあらんことを…。

登場人物紹介コーナー
遊園地…もはや洗脳場。行きたいならば誰でも歓迎して、世に平穏をもたらそうとする組織。暴走はおそらくしていない。…多分。

「私のコーナーだ!」
「今回は一つ投票がありましたね!」
「とても助かる…。本当に助かる…。このコーナーが潰れたら私の出番すら無くなってしまう…。…なに?筆者…構わないだと…?」
「テレパシーか何か…?」
「同情を誘うようなことを言うなと…。鬼か!?」
「あのー…。私の艦の紹介…。」
「今は時間がないから、229話でやるそうだ…。」
「それ、段々と伸びてくるやつじゃ…。」
「筆者はだらしがないな…。」
「この後書きコーナーも終わりですか…。長い間お疲れ様でした。」
「うぉぉい!まだ終わってないぞ!」
「次回、第228話『英雄十二人の物語』…ですね。次回は大本営のお話になるそうです。」
「おい!聞いてんのか!ボケッとして!…あっ!おい!夕張!待て!おーーい!…!」


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228話 英雄十二人の物語

随分と遅れましたねぇ…。
「また立て込んでるの?」
シグレン…。そうなんだよ…。ログインすらできていないから、ズイズイに何と言われるか…。
「今年は秋刀魚漁なかったけどね。」
雪風改二が出たのは知ってる。だから、したいんだけど暇がなくてねぇ…。
「そうなんだ。…そろそろあらすじする?」
そうだねぇ…。今回のゲストは?
「今回は私だ。」
佐々木提督ですね。少将の…。
「第2佐世保の…。」
「そうだ…。それ以上でも以下でもない。」
てか、そろそろ新キャラ出さないと前書きの人がいなくなる…。
「新しい人を出さねばな。」
「言われちゃってるよ…。」
ゴフッ…。血が出た!
「YOU DIED」
「お、おう…。」
引かないでくださいよ〜。て、そろそろあらすじを。
「あらすじ?このマイクに向かって言うのか?」
はい。
「お願いします。」
「了承した。」

あらすじ
前回、妻にコレクションの一つが見つかってしまった…。何故わかったのかが不明だ…。何かと通じているような気がしてならないが…。…まぁ、店を切り盛りしてくれていた恩もある…。なるべく疑わないようにしよう…。


…………

大本営

 

「今日の仕事終わりですね。」

 

「そうだなぁ〜。久しぶりに早く終わったな。」

 

執務室で大和と元帥が仕事を終わらせた。

 

「……。元帥殿。」

 

「?」

 

大和が唐突に元帥の名前を呼んだ。

 

「…2年前の大決戦があったじゃないですか?」

 

「…ああ。」

 

「今思ったんですけど…。そっちではどんな感じだったんですか?」

 

「そっち…とは?」

 

「私たちは前線で戦っていたじゃないですか。元帥たちは何をしていたんですか?…あっ、いえ、命を張っていないとか指摘とかではなく…。」

 

「…そうだな…。作戦やら、色々だな。」

 

「色々…。元帥殿一人でやったんでしたっけ?」

 

「いや、違う。」

 

「えっ?」

 

大和は耳を疑った。ずっと、元帥一人が全てをやっていたと思っていたのだ。

 

「で、でも…。元帥殿は大決戦の英雄で…。」

 

「…はっきりと言うと違う。私ではない。“我々”だな。」

 

「我々…?」

 

「ああ。君は知らないだろうが…。あの時の私の知っている英雄は何人もいた。」

 

「そ、そんなに何人もいたんですか…!?」

 

大和が驚く。元帥ほどの英雄が何人もいれば驚くだろう。

 

「あの時は、私も大将だった。そして、その時代で英雄と呼ばれていたのは十二人だ。」

 

「…前に噂で聞いたことがあります…。『英雄十二人の物語』…。」

 

「そうだ。」

 

「…あの物語って、誰かの海軍の英雄伝の作り話かと…。…て、ことは本当にあったことなんですか!?」

 

「勿論だ。」

 

元帥が当然のように言う。

 

「…影のように消え、勝利に導いた諜報員一人…。」

 

「懐かしいな…。今はどこか行方をくらましてしまったが、どこかに生きているのは確かだな。あの者がそう簡単に死ぬわけがない。…彼の本当の姿は見たことがないからな…。」

 

「策略を立てることにおいては右に出るものはいない策士一人…。」

 

「今はもう亡き仲間だ…。あの人のことはイギリス艦がよく知っている。冗談の好きな人だった…。」

 

「国の上部との繋がりを利用して、無茶を通した苦労人一人…。」

 

「今も提督をしているな。あの時は本当に世話をかけてしまったな。はっはっは…。」

 

「圧倒的技術力で国を守った天才一人…。」

 

「最近は随分柔軟化した。確か、ドミナント君が来てからか。」

 

「艦娘の士気を高めて、信じられないくらいの力を出させることを得意とした上官一人…。」

 

「…その者の運命は決まってしまっている。早くなんとかしなければな…。」

 

「地獄の戦術を叩き込む鬼一人…。」

 

「あいつは今も昔もやってることは変わらん…。まぁ、仲良くやっているらしいから良いが…。」

 

「無力だけど自己犠牲の輝く精神を持ち、敵に一矢報いた愛国者一人…。」

 

「あいつめ…。最後はカッコよく散りやがって…。彼についてはパラオ泊地のジョンストン君がよく知っている。」

 

「数多の同胞の傷を完璧に癒した医師一人…。」

 

「その者も最後に見たのは終戦時だったが、おそらく生きているはずだ。」

 

「あと三人は思い出せませんが…。その英雄たちを束ね、向かうところ敵なしの指揮官一人…。」

 

「自画自賛ではないが…私だ。それに、束ねていない。」

 

元帥が思い出すように言う。

 

「全て実在した人物たちなんですか!?」

 

「当然だ。」

 

「…ほ、本当ですか…?本当にあんなことやこんなことを平然とやったんですか…?」

 

「ああ。あの物語は全て真実だ。」

 

元帥が落ち着いて言う。

 

「…逆に言えばだ…。それほどの人材がいなければ勝てなかった戦いだったと言うことだ。…それに、話には出てこない英雄たちもいる…。」

 

「……。」

 

大和は今になって寒気がした。どれほど危険な戦いだったのか実感したからだ。もし、誰か一人でも欠けていたら負けていたのは確実なのだ。

 

「…それが、敵は今となってまた現れようとしている…。今の我々では勝ち目がない。相手が責めてこないと言うことは、幸運なことに何人かいないことに気づいていない。まだ我々も相手も下手に動けないのだ。」

 

「…第4佐世保のドミナント大佐等は…。」

 

「たしかに、彼らの協力は必要不可欠だ。だが、彼らは所謂切り札。そう易々と頼んだら対抗策を打たれてしまう。極力頼ってはならない。」

 

「そうですね…。」

 

大和は不安になりながらもうなずいた。

 

「ところで、元帥殿の言っていた話しに出てこない英雄たちとは…?」

 

「……。」

 

大和に聞かれて、元帥が黙る。そして、立ち上がってポケットから写真を取り出した。相当古そうだ。そして、窓辺に行く。

 

「その方たちが…。」

 

大和が覗き込んで見る。その写真に写っていたのは若い頃の元帥と二人の友人だ。一人は陸軍の陸田中将。もう一人は誰かわからない女性だ。

 

「…あいつらがいなければ今の私はいない…。」

 

「…大切な人たちなんですね…。」

 

「ああ…。」

 

元帥が写真をポケットにしまう。

 

「その女性は誰なんですか?」

 

「…今はもう亡き人だ…。4年前に事故で死んでしまった。」

 

「4年前…。私たちが丁度現れた時ですか…。」

 

「ああ…。派遣で船に乗って向かっていたところ、海難事故で全員死んでしまった。」

 

「…すみません…。」

 

「いや、いい。勝手に話したことだ。」

 

元帥が椅子に座る。

 

「ところで、例の装備はどうだ?」

 

「あぁ、共同開発したものですか?」

 

「うむ。」

 

「はっきりと言うと重いですし、疲れます…。しかし、すごい代物なのは確かです。古代の技術を運用…?でしたっけ。昔、あんなものがあったなんて信じられませんよ…。」

 

「大本営所属でも、一握りしか知らない技術の一つだ。」

 

「そんな大層なものだったんですか…あれは…。」

 

大和がその艤装を思い出す。

 

「ただし、それも極力使用はしないように。資材があっというまに無くなる。」

 

「分かりました。ところで、残りの英雄たちは今どうしているんですか?」

 

「?何度か顔を合わせたことがあるはずだが?」

 

「え…?」

 

「まぁ、多くの者は合わせるどころか知りもしないと思うがな。」

 

「そう…なんですか…。」

 

大和が少し残念そうにした。

 

「ま、いずれ分かるさ。」

 

「いずれですか。…あっ、そうだ。この前良いお歳暮をもらってしまって…。」

 

「茶菓子?茶菓子かな?かりんとう?かりんとうだと嬉しいな。」

 

「食べ過ぎはダメですよ!」

 

「えぇ…。」

 

そんな感じで大本営の1日が終わった。

 

…………

???

 

「おい。起きろ。」

 

ハスラーワンが寝ている者を起こした。

 

「やぁ、おはよう。」

 

「おはようではない。一体いつになったら進行を始めるんだ。」

 

「焦りは禁物、今はまだだめだよ。彼等もまだ完成していないしね。それに、はっきりと言ってこれだけの兵器ではまだ不十分だね。」

 

「不十分だと?私が作ったものだぞ。そう易々と壊れん。」

 

「壊れちゃダメなんだよ。もし、相手が易々以上の力を持っていた場合はどうするつもりだい?」

 

寝ていた者が言い、ハスラーワンが黙る。

 

「計画には手順が必要だよ。今は整備とかをして、より壊れないように兵器を調整して欲しいね。」

 

「……。」

 

「時が来たら知らせるよ。今はまだね…。」

 

「……。」

 

ハスラーワンたちが話していると…。

 

「集まらないね〜。人。」

 

人類種の天敵が現れた。

 

「貴様が選り好みするからだ。」

 

「選んで殺すのが、そんなに上等かね。」

 

「ま、二人とも喧嘩はやめようか。無駄に力を使っては本番の時に出なくて本末転倒だからね。」

 

三人がうだうだとする。

 

「それと、また一人増えるよ。」

 

「「!?」」

 

「紹介するよ。彼は…。」




大本営の何気ない一日。ハスラーワン側にもう一人…。

登場人物紹介コーナー
英雄十二人…生きている者もいれば、死んでしまっている者もいる。ドミナントは果たして何人会っているのか…。
写真の女性…艦娘たちが丁度現れる時に船の事故で死亡。深海棲艦にやられたのではないかともっぱらの噂。

「長門コーナーだ。」
「今回は私ですね。」
「大和か…。大本営の…。」
「はい。」
「今回はサクッと終わらせるとの発表だ。筆者め…。本気で潰す気か…?」
「まぁ、そんな時もありますよ…。」
「まぁ…。たまにいるとある分、投稿をなるべく早くにするそうだ。」
「良かったですね。」
「良いのか…?それは…。」
「では、次回、第228話『鎮守府カラオケ大会』みたいです。長門さんが出るとか…。」
「なにっ!?…て、カラオケか…。あの艦娘が騒ぎそうだな…。」
「そうですね…。あっ、騒ぐと言えばこの前元帥殿が…。」


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229話 鎮守府カラオケ大会

なんかやりたかったことと違う…。
「書いているのが面倒になったんだね。」
もっとAC要素を付け足したいけど、無理矢理感が半端ない…。
「計画していたものと違ってきたもんね。」
まぁね…。この第三章のゆるゆるが終わったら、色々と重くなっていきそう…。
「重いって?」
そりゃ…。…色々とね。書いていて投げ出したくなるほどのことを書いていたからね。ある人物の過去とか、大戦の傷とかね…。
「…考えただけでも重いかも…。」
地味に、深みがある小説を目指してるからね。ま!それらが終わったら、ゆるふわ敵なし仲良く生活が待ってるからね。
「平和な世界?」
その通り。ゆるゆるコメディを目指す。
「今回は?」
……ゆるゆるコメディ…。
「じゃぁ、変わらないね。」
そんなことはないよ。登場人物増えるし。
「今どれくらい?」
序盤の中盤かな?深海棲艦幹部たちがまだまだ腐るほどいるし。
「そんなにいるんだ…。」
ま、最近は筆が乗らないから、こんなに遅いんだけどね…。気が向かないと書けないことが分かったよ…。
「大変なんだね…。」
ま、そんなこんなの229話。ゲストを紹介してくれ。
「分かった。この人。」
「ボクを呼んだかい?」
皐月ですね。実は、筆者のお気に入り艦の1人…。
「うわっ…。なんだろう…。この人…。いきなりボクをお気に入りとか…。」
「少し気持ち悪いね。」
ちょ、待…。やめて!そういう意味じゃないから!そんな冷たい顔しないで2人とも!
「なら、どう言う意味かな?」
「ボクも知りたいな。」
え、えーっと…。…!こ、今回僕っ子2人だね。め、珍しいね〜…ははは…。
「「……。」」
……。すみません。マジ勘弁してください…。
「筆者さんが土下座しちゃった…。少し追い詰めすぎたかな?」
「筆者さんなの!?ごめんねっ!知らないおじさんかと…。」
皐月さん、謝ってくれるんですね…。癒されます…。感謝ですね〜…。
「どこかで聞いたね。」
「誰かがお風呂に入る時に…。…ハッ!?ど、どうしてそんなセリフを…!?」
……余計な誤解を生んだことを戒めるよりも、説明するね…。決して覗いたわけじゃないよ。これ本当。筆者嘘つかない。てか、見れない。
「…どうやら本当みたいだね。」
「そう?なら、信じてあげようかな。」
ありがとう2人とも…。…て、そんな茶番している暇はないね。あらすじをお願いします。
「あらすじ?」
「前回何をしていたか説明すればいいの。」
「…それってあらすじなのかな…?」
筆者があらすじと言えば、それはあらすじなのだ。
「ザ・筆者権限。」
「そ、そうかな…?なら、あらすじするね。」

あらすじだよっ
前回、ボクは睦月型のみんなとトランプしてたね。ボクはまぁまぁだったけど、睦月ちゃんが…。にゃしぃで大変なことになったね。ジナイーダさんにそれを見られて、爆笑されちゃった…。ジナイーダさんの笑った顔初めて見た…。


…………

 

「て!まだ5時なので、1日終わってませんよ!」

 

「ちっ。バレたか。」

 

夕張につっこまれ、ドミナントが言う。

 

「けど、もう目の前だけどね。」

 

「なっ!」

 

夕張は気付くのが遅すぎた。

 

「えー…。」

 

夕張が物凄く悲しそうな顔をした。

 

「…鎮守府に戻ってからもずっと一緒に行動する?もう一度暗い森を進むのは危険だし…。」

 

「えぇっ!?」

 

夕張が顔を赤くする。

 

……み、皆んなに見られながら…。デートぉ…!?…で、でもなんでしょうか…。この…優越感は…。

 

「て、提督が…良いなら…。」

 

「よしっ!じゃ、決まり!」

 

ギュッ…

 

ボンっ!

 

ドミナントがいたずらが過ぎたことに反省したのか、自らが夕張の手を取る。夕張は突然のことで耳まで真っ赤になった。

 

……あわわわわ…。て、提督の手…。…あったかい…。

 

夕張はドミナントの顔をチラリと見る。

 

「ん?どうした?夕張。」

 

「ふぇっ!?い、いえ、なんでもないです!」

 

ドミナントが見たが、まともに顔を見れないのか目をそらしてしまう。

 

「?そうか。」

 

ドミナントは気にせずに手を取りながら鎮守府を歩く。

 

…………

 

「提督、今日帰ってくるかしら…。」

 

「き、来ますよ!絶対!」

 

「朝に帰ってこられちゃったら…。」

 

艦娘たちがそんな心配をする。

 

「よっ。調子はどうだい。」

 

「「「て、提督(司令官)!?」」」

 

ドミナントが普通に入ってきたことに全員が驚いた。しかも、夕張と手を繋いだままだ。

 

「早めに帰ってきたから、鎮守府内デートでもしようかなってさ。最近家デート?ってやつが流行っているらしいし。」

 

ドミナントが言う。すると、興味深い情報を聞いた。

 

「提督…今いるけどどうする?」

 

「カラオケ大会ね。」

 

「提督がいる日って昨日約束したけど…こんなに早く来るなんてね…。」

 

「カラオケ大会?なんだい?それ。」

 

「パラオ泊地にあったって…。セラフさんや神様さんがやりたいって言って、機材まで勝手に資材を使って作っちゃって…。あっ!これ提督に言っちゃダメだって…。」

 

「なるほどな。後で二人にお仕置きだな。で?やるの?」

 

「「「え?」」」

 

「いや、大会。やることないし。…夕張はどう思う?」

 

「えへへ…手…。提督と繋いじゃって…。」

 

「……。」

 

夕張が繋がった手を見て、自分の世界に入っていたが…。

 

パンっ!

 

「ふぇっ!?」

 

艦娘たちがなんとなく手を叩き、世界から戻される。

 

「で、夕張はどう思う?」

 

「え?えっと…。いいんじゃないですか。」

 

ちなみに、夕張は何も聞いていない。

 

「じゃ、決まり!さぁ、開くよ。」

 

…………

 

ワイワイガヤガヤ…

 

「一体どれだけの資材を使ったんだ…?」

 

「私がいない時に…。」

 

野外コンサート会場のようなものが作られていた。観客席は満員。てか、全員が集まっている。すると時間が来て…。

 

バンっ!

 

ステージが真っ暗になり…。

 

パッ

 

『はーい!今回の司会は〜いつも通り、皆んなのアイドル那珂ちゃんだよー!』

 

再び明かりがついたと思ったら、那珂ちゃんがマイクを持ちながら司会を務めていた。

 

ワーワー

 

『ありがとー。じゃ、ボリューム最大の『チキチキ、艦娘全員が歌い終わるまで帰れテン』を開催するよー!』

 

「「「えー!?」」」

 

那珂ちゃんが悪い顔をして台本を読む。元々そのつもりだったみたいだ。皆んな騙して悪いがをされた。

 

『まずは1番!何もかもが一番が良い、イチバン依存症の白露ちゃんでーす!』

 

「私!?しかも依存症って!」

 

そんな感じで…

 

『次、38番!自称レディー、お子様ランチで旗がないのがレディーだと思っている暁ちゃん!』

 

「なんで私!?しかも自称じゃないわよ!」

 

約200人いる…

 

『次、49番!元連合艦隊旗艦で今は使わ…待機している甘いもの大好き長門さんでーす!』

 

「おい!今失礼なことを言いそうになっただろう!?しかも縁起の悪い数字で呼ぶな!」

 

「へー…甘いもの好きなんですね。お堅いイメージだったので…。」

 

「ちょ、ま、待て!引くな!特に提督!…って、提督は知っているだろう!」

 

艦娘たちの歌を…

 

『次、78番!食っちゃ寝の代名詞、ご飯に関して天下一、赤城さんでーす!』

 

「赤城さんを侮辱しているのかしら…?」

 

「か、加賀さん。今はふざけているだけなので…。」

 

『おっと!デュエットとして加賀さんが乱入だー!』

 

夕張とドミナントは…

 

『次、105番!陸軍からの刺客、命を狙われたら逃げ場なし!あきつ丸でーす!』

 

「今は改心しているでありますよ!しかも、せっかく打ち解け始めているのでありますから、そういう過激な発言は控えて欲しいであります!」

 

『ん?あっ!トリオしたいと名乗り出た子がいました!同じ陸軍所属、大和さんは心の目標、同じ陸軍所属の仲間のピンチは誰よりも心配するこのコンビ…果たしてトリオになってどうなる!?まるゆと〜。陸軍だけど新参者、この鎮守府について行けるのか…?この先ご期待の神州丸でーす!』

 

「まるゆ…神州丸殿…!」

 

「いつも一緒!」

 

「新参者だが…。仲間に入れて欲しい。」

 

「もちろんであります!」

 

那珂ちゃんの司会で笑いながらも…

 

『次、146番!今日は残念!夕張ちゃんがいなくて寂しい、近距離最強セントエルモちゃんでーす!』

 

「私も歌うの!?」

 

しっかりと手を握って…

 

『次、いよいよ終盤!自称頭脳派!筋肉こそ最強、けど歌は筋肉じゃどうにもならないよー!霧島!』

 

「わ、私のことですか!?お、お姉様方!私は頭脳派では…。」

 

「霧島ー!歌うネー!」

 

「気合い、入れて!もちろん、四人で!」

 

「榛名も歌います。」

 

『Hey!提督ー!聞こえていますカー!?歌うのは“進め!金剛型四姉妹!"デース!』

 

「おっ、聞いたことないな。」

 

「そうでしょうか?」

 

『高速の〜…。』

 

楽しんで…

 

『次、終盤二人目!不死鳥の二つ名を持ちながら、轟沈しても生き返らない矛盾しているような気がする響ちゃん!』

 

『ハラショー…これには訳があるんだ…。歌うのは“どこまでも響くハァラショオオオオオ"だ。』

 

「ま、待て、それって…。」

 

聴いたり…

 

『次、終盤三人目!アニメでは大活躍!吹雪ちゃん?で誰もが困惑したはず!吹雪ちゃん!…と、同じくアニメの主要キャラ、心に闇を抱えていた睦月ちゃん!…と、アニメでも変わらないぽいぽい夕立ちゃん!』

 

「「「さっきやったのに(っぽい)!?」」」

 

「可愛い歌なんだろうなぁ〜。」

 

「それにしても、長いですねー…。一応、私もアニメに出てましたよ。」

 

『で、では…三人なので、“ bright shower days"を歌います!』

 

『うん!』

 

『頑張るっぽい!』

 

見たりして楽しんだ。

 

『次、五航戦だからって馬鹿にしないで!一航戦には負けない七面鳥と、妹にまでセクハラされ、運がものすごく悪い翔鶴さん!』

 

「まず、七面鳥って言ったこと謝りなさい!」

 

「せく…はら…?瑞鶴、私にセクハラ?したの?」

 

「し、してないわよ!」

 

『なら、瑞鶴と一緒なので、“二羽鶴"を歌います。』

 

『もう!仕方ないわね!』

 

「がんばれー。」

 

「意外と楽しいですね!」

 

「そうだね〜。」

 

二人が人ごとのように言う。

 

『最後のトリは誰かに任せて…。一つ前の人は皆んなのアイドル、那珂ちゃんだよー!歌うのは新曲!“初恋!水雷戦隊"』

 

「新曲か〜。」

 

「あっ、盛り上がってきましたね!」

 

『いち、に、さん、ハイ!艦これー!艦これー!艦これー!…!』

 

二人が人ごとのように言っていると…。

 

『次で最後!選ばれたのは…。第4佐世保の提督なのに全く提督らしくない、ハーレム禁止と言う盛大なブーメランが突き刺さる提督さん!…と、皆んなに見せびらかして優越感に浸っていたけど、ここにきてまさか引き摺り下ろされる夕張ちゃん!』

 

「「えっ!?」」

 

ワーワー!

 

待ってましたとばかりに皆んなが手を叩く。

 

『…マジか…。夕張、何か歌えるものある…?』

 

『うーん…あっ!あります!』

 

『じゃ、デュエットしよっか。』

 

『はい!“試してみても?"です!』

 

夕張とドミナントが歌う。

 

『小さくても、きっと輝く♪』

 

『ほら、そうよ素敵あなたも♪』

 

『新しい風感じて♪』

 

『いくよ、そうよ。よし、試していこ♪』

 

『『La La〜La La La〜La La La♪』』

 

夕張がふと、隣を見る。すると、目が合った。ドミナントは笑顔で返してきた。夕張は顔を赤くして歌う。

 

……どうしたんだろう…。今日…。こんなにドキドキしちゃって…。提督…はきっと、こんな気持ちじゃないだろうなぁ…。でも、それでも…、私は一緒にいたいな…。

 

……どうしたんだ…?心の中に変な感情がある…。なんというか…昂っている…?のか?顔に出したら変だと思われるから、いつもと同じような顔だが…。

 

二人がそれぞれ思う。夕張とドミナントとの距離が縮まっているのだ。

 

『だけどね、何度も何度も失敗するとき♪』

 

ドミナントが普段通り歌っていたが…。

 

『あなたの言葉でお願い支えてね…♪』

 

『!』

 

夕張が本気の目で、恥じらいながらもドミナントに向かって歌と一緒に言ってきた。

 

……は、恥ずかしい…!

 

……夕張め…。ずるいな。恥ずかしいからって、歌詞と一緒に言ってきて…。めちゃくちゃ可愛かったじゃないか…。

 

二人がそれぞれ思う。

 

『『あなたの言葉、聞かせて〜♪』』

 

ワーワー!

 

二人が歌い終わる。

 

『ありがとう〜!途中、告白したように聞こえたけど、多分歌詞だよね!ジナイーダさんたちはこの後するみたいだけど、一応課題クリアだから、帰りたい人は帰っていいよー!』

 

那珂ちゃんが言ったが、誰も帰る気配がない。どうせここまで来たのだから、最後まで参加するのだ。

 

「…夕張…。」

 

「は、はい。提督…。」

 

「…支えてあげるよ。何度もね。」

 

「……。」

 

夕張は今の言葉を聞いて、固まった。

 

……て、ててて提督…。い、今の言葉は…そ、その…オ…オッケーって意味じゃ…。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「お、おう。本当に支えるだけだけどね。」

 

「…ですよねー…。」

 

夕張が本気で残念がる。

 

「…でも、ま、今度手伝うからさ。その時教えて。ね?」

 

ドミナントが微笑みながら言う。

 

「…はい!」

 

……本当の意味じゃなくて残念だけど…。…今度、一緒に手伝ってくれるだけでも喜ぶべきだよね。しかも、提督に教えてあげる…。少し嬉しい。

 

夕張は満足した笑顔で返した。




ブロッ子ブロッ子ブロッコリー…(洗脳済み)

登場人物紹介コーナー
那珂ちゃん…鎮守府のアイドル。歌や司会などはほぼ彼女が勤める。今回はふざけの場だったので、あえてあのようなことを言った。

「長門コーナーだ。」
「今回で私の出番は終わりですね。」
「そうだな。…艦の紹介をしてくれ。」
「わかりました。私は佐世保海軍工廠において1922年6月から1923年7月にかけて建造した軽巡洋艦です。」
「と、言うことは私より年下だな。」
「何ニヤついているんですか…。当時、不況でしたが、5500トン型軽巡洋艦…つまり、球磨型さんたちや長良型さんたちと同等の戦闘力をできるだけ小型の艦に詰め込むことを目標として、3,100トンの小さい船体ながら砲力、雷力等の攻撃力を同じにしたんです!」
「かなり無茶じゃないか…?」
「ですよね…。けど、今までになかった新機軸は、軽巡洋艦のイメージを一新させるものでもあったんです。」
「ほう。それはすごいな。」
「しかも海外の反響も大きく、ジェーン海軍年鑑?に特記項目付きで掲載されるなど各国の関係者を驚かしました!私を計画してくれた、平賀譲さんの才能が遺憾なく発揮されたんです。そして、海軍史上特筆される艦とされました!」
「だが、私よりも知名度は低いがな!」
「何張り合っているんですか…。軽巡と戦艦でしたら、そりゃ知名度は戦艦に劣りますよ…。」
「…すまん。大人気なかった。最近、私の出番がすごく削れている気がしてな…。」
「まぁ、最近私メインが多かったですからね…。けど、私にも弱いところはあります…。艦の私は小型艦であるため航続力はあまりなく、また小型の船体に重武装、高速性を追求したため船体の余裕に欠けていました。5500トン型軽巡洋艦が改装で航空機を搭載できたのに、私は不可能だったので大きな欠点となりました…。」
「少し凹むな…。それは…。」
「しかも、太平洋戦争後半では、私より年下の軍艦に対する要求に十分に応えられない部分がありました…。けど、ワシントン海軍軍縮条約等の制限下で建造された古鷹型さんたち以降のコンパクトな艦体に重武装を施す設計の思想の元となる事ができました!以上のことから私は『実験艦』として、その建造意義は大きかったです!」
「…実験艦か…。」
「どうかしたんですか?」
「…いや…。何も…。」
「なんかすごく嫌な顔をしていますが、大丈夫ですか?」
「…大丈夫だ…。それより、次回予告を頼む…。」
「本当に大丈夫ですか?…次回、第230話『金剛との一日 その1』だそうです。提督も大変ですね…。…ところで、辛いことなら聞きますよ?話した方が気が楽になると思いますし…。」
「……。…そうか?」
「はい。」
「……。…実はな、私も昔…。」


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230話 金剛との1日 その1

ストックしている話が少ししかない…。
「どうしてそんなにないの?」
サボり続けたから…。忙しい…。
「…休みとかとってる?」
とってるけどね…。第一、これを書くのは深夜だからお腹も空くし色々なデイリーとかもあるし…。
「…ログインとかは…。」
してないね…。イベントをやってるけど、暇がない…。
「筆者さんってどんな仕事してるの…?」
秘密。
「ふぅ〜ん…。」
……。…色々詮索されないうちに、今回のゲストは?
「……。この人。」
「陸軍特殊船、神州丸です。」
神州丸かぁ〜…。容姿が魔術師っぽいんだよね…。ファンタジーだと完全に魔法使い。
「あぁ〜。それわかるかも。」
「…私はそんなもの使えません。」
分かってる。じゃ、あらすじへ行こうかぁー。
「あらすじ?どうやってするんでしょうか?」
「このマイクに向かって、前回何をしたか言えばいいの。」
「そうですか。」

あらすじ
前回はあきつ丸と共に歌いました。久しく歌うような気分…。雪の進軍を歌いましたが、大半がすごく困惑したような顔でした。…まぁ、楽しめたから、終わりよければ全てよしですね。


…………

翌朝

 

「キツー…。」

 

ドミナントが執務室で声を漏らす。

 

……たった1日のはずが、2日くらいに感じた…。今日は金剛お姉様か…。お昼に抜け出して赤城の大会…。てか、赤城で思い出した…。前大本営に行った時、あのレストランから大本営に出禁の苦情メールが届いたらしい…。

 

机に伏せながらそんなことを考える。

 

……夕張はクリア…。金剛が来るのを待ちつつ、昼に抜け出す用事を考えよう…。

 

と、思った矢先に…。

 

バァァァン!

 

「Hey!提督ー!行くデース!」

 

「早…。」

 

元気いっぱいの金剛が勢いよくドアを開けて、ドミナントが顔を上げる。

 

「今日はしっかりと疲れをとってもらいマース!」

 

……行くこと時点でクタクタなんですけど…。

 

「てか、まだ早いよ…。」

 

「It takes time to cross the mountain(山を越えるのに時間がかかります).」

 

「ちょ、何言ってるか分かんない…。英語は全くわからないんでな…。」

 

「Mountain(山)を越えるのに時間がかかりマース!」

 

「確かに…。だが、いくらなんでも早いよ…。せめて6時で行こう?夕張を運んで仕事の準備をした後すぐだからさ…。」

 

「No problem(問題ない)デース。提督は休みなしで五日間は動けるはずネー!」

 

「その情報どこから流出した…?」

 

「セラフデース!」

 

「…なるほどな…。昨日の機材の件といい、今回の件といい…少しお仕置きが必要だな…。」

 

「penalisation(お仕置き)?」

 

「お仕置きをね…。」

 

…………

 

『セラフ、この前の資材の件といい、俺の情報流出といい、よくもやってくれたな。お仕置きとして、良いと言うまで鎮守府から出て行ってもらおう。』

 

『ええっ!?』

 

…………

 

……こんな感じか…。まぁ、三日後に様子を見て、反省していたら即刻入れてあげるか。世話になってるし。

 

ドミナントがそんなことを考える。

 

「penalisation(お仕置き)デスカ…。」

 

…………

 

『悲鳴をあげろ!豚のような!』

 

『ひぃぃぃ!』

 

…………

 

「うわぁー…。」

 

金剛が考え、ドミナントを嫌悪の目で見る。

 

「?どうした?金剛。」

 

「提督ー…。幻滅したネー…。」

 

「えぇっ!?そ、そこまで酷いことかな…!?」

 

「異常デース。」

 

「い、異常…!?」

 

「流石にout(アウト)デース。」

 

「マジかよ…。てか、どんな想像したん?俺は、軽く家出とかだけど…。」

 

「えっ?」

 

「え?」

 

「……。」

 

金剛が黙る。しばらくして…。

 

「今日は朝一番に行くネー!」

 

金剛がニコッとして言った。

 

「話逸らしたでしょ。…まぁいいや。セラフにどんなお仕置きが良いか一緒に考えてくれ。」

 

「OKデース。」

 

…………

セラフの部屋前

 

「フッフッフ…。まだ朝の5時だが、起きているだろう。」

 

「fruitless(いたずら)デース。」

 

二人がニヤけながらセラフの部屋の前にいる。

 

「なんせ、3時間ほどかけて計画を練ったからな…。最初の会話も想定内だ…。きっと、抵抗するだろう。」

 

「そしたら、予定通り言い返すデース。」

 

「じゃぁ、始めよう。」

 

コンコン…

 

「セラフ、起きてる?」

 

『あっ、ドミナントさん…。おはようございます…。』

 

「おはよう。…起こしちゃった?」

 

『あっ、いえ。部屋の近くに来る気配がすると起きちゃって…。』

 

「あ、ごめん…。」

 

ドミナントが申し訳なさそうにする。

 

「提督が謝ってどうするデスカー。」

 

「そ、そうだな…。」

 

二人がコソコソ小声で話す。

 

「と、ところで…。」

 

ドミナントが言おうとしたが…。

 

ガチャ

 

「どうぞ、入ってください。話はそれからです。」

 

「お、おぅ…。」

 

「あれ?金剛さん?おはようございます。」

 

セラフがドミナントの隣にいる金剛に気づく。

 

「お、おはようございマース。」

 

「あなたも珍しいですね。さぁ、お入りください。」

 

「し、失礼するネー…。」

 

「どうぞ、そこに座ってください。」

 

二人がセラフの部屋の座布団らしき物に座る。

 

「…金剛…。計画と全く違う展開になってきちゃったんだけど…。」

 

「が、頑張りマース…。」

 

二人がまたコソコソ話す。

 

「その…。ゴホン。セラフ、最近…。」

 

「ドミナントさん…。すみません。」

 

「自由に…。えっ?」

 

セラフが真っ先に謝ってきた。

 

「先日、資材を申告もなしに勝手に使ってしまって…。」

 

「え…。あ、あぁ…。そのことで…。」

 

「本当にすみませんでした。」

 

セラフは頭を深く下げた。

 

「「……。」」

 

十分反省しているのが分かる。そんな風にされたら何も言えない。

 

「…ま、次からなければ良いよ。ね?金剛。」

 

「その通りデース!失敗は誰にでもありマース。」

 

顔を見合わせた後、ドミナントが口元を緩ませながら言い、金剛が笑顔で言う。

 

「まぁ、セラフも鎮守府のことで頑張ってたりするからね。そんくらいなら良いよ。全然。」

 

「No problem(問題ない)ネー。セラフー。」

 

「…ありがとうございます。」

 

セラフが申し訳なさそうに言った。

 

……まぁ、かと言っても…。お咎めなしだと自分を許せないかもしれないしな…。

 

「…セラフに頼みたいことがある。」

 

「はい。なんでしょうか…?」

 

「天龍に、その予定はキャンセルだって言ってくれないかな。」

 

「?何か約束でもしてたんですか…?」

 

セラフがまた何か責任のとれない約束をしていたのかと思い、厳しそうな目でドミナントを見る。

 

「怖…。違うよ。…吹雪が約束しちゃってたみたいでさ…。俺は全く知らなくて…。」

 

金剛がいるのを知り、ドミナントが遠回しに言う。

 

「……。…!あっ、はい。わかりました。」

 

セラフはそのことに気づき、了承する。

 

「ブッキー?でも、約束してたのは提督…。」

 

「ま、ややこしくなるからその話は後で。じゃぁね!」

 

「あ、はい。それでは…。」

 

二人がセラフのところから去る。

 

……結局、3時間ほどかけて練った作戦は無駄になってしまったな…。ま、いっか。無駄な亀裂が入らなければ良いし。俺は円満な鎮守府生活を続けられることが最高の至福だ。皆んな笑い合って、皆んな幸せ…。それが良い。

 

ドミナントがそんなことを思い、口元を緩ませて歩いて行った。

 

…………

1時間後

 

「さぁ、提督ー!Let's go(レッツゴー)!」

 

「はいはい分かったよ。ちょっと待てって…。」

 

ドミナントが支度をする。お金なども色々だ。

 

「ところで、ブッキーが約束したってどいう意味デスカ?」

 

「まだ覚えていたんだ…。まぁ、色々あったんだよ。ドミナントの秘密さ。」

 

「気になりマース!」

 

「ま、良いじゃないか。ところで、どこ行くの?」

 

「今日は…。」

 

…………

 

「ここデース!」

 

「おー。」

 

鎮守府から徒歩1時間の山道を進み、街へ着き、さらに交通機関を使って1時間ほどかかったところにいる。

 

「紅茶屋さんだね。本格的な。よく知ってるね。」

 

「紅茶の匂いが鎮守府までするデース。」

 

「怖…。嗅覚どうなってるの…?まぁいいや。」

 

「Why(なぜ)?提督驚いてないネー。」

 

「そりゃ…。」

 

ドミナントがドアを開ける。

 

「いらっしゃい…。おぉ、あんたか。」

 

「や。マスター。…ここの常連だもん。」

 

「What!?初耳デース!」

 

ドミナントがマスターに挨拶をして、金剛が驚く。

 

「おや?元気の良いお嬢さんも連れてるね。デートかい?」

 

「デートと言うより、息抜きをさせてくれるらしくてね。」

 

「Date(デート)デース!」

 

マスターとドミナントが馴染みのありそうな会話をして、金剛が口を挟む。

 

「マスター。俺はいつもの。金剛は?」

 

「む~!」

 

……かわいい…。

 

金剛が頬を膨らませるが、ドミナントにとって逆効果なのは一部しか知らない。少なくとも、艦娘たちは知らない。

 

「私は…提…。」

 

金剛は言葉が詰まる。外では第4佐世保の件を知られないようにするため、人の前で提督と言えないのだ。

 

「!私は~fiance(婚約者)と一緒が良いネー。ね?darling(ダーリン)!」

 

「おっと、あんたこんな若い子と結婚してたのかい?30代のくせして~。」

 

「してません。…てか、30代じゃありませんよ!」

 

ドミナントが弁解するが…。

 

「私たちの関係はsecret(内緒)デース。」

 

「うっ…。」

 

金剛が悪い顔で言い、ドミナントは何も言えない。

 

「夫婦仲良くて良いね〜。」

 

「darling(ダーリン)と私はとても仲が良いデース!ね!」

 

「お、う、うん…。」

 

「なんか曖昧な返事だけど?」

 

「darling(ダーリン)は恥ずかしがり屋ネー。」

 

マスターと金剛が話す。

 

……俺が所帯持ち設定になってる…。今度他の艦娘と来れないじゃん…。てか、なんで誰も彼もが俺を男女仲設定にしたがるんだ…?

 

ドミナントは夕張のことも思い出しながら思う。

 

「はい、いつものね。」

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

マスターがドミナントに紅茶を渡す。

 

「What's this(これは何)?」

 

「これはここで栽培されている茶葉の紅茶。金剛も飲む?」

 

「darlingが飲むなら飲みマース!」

 

「……。…と、言うことです…。よ、よ、よ…嫁にも一つ…。」

 

「なんか苦しそうだが大丈夫か?スペシャル二つね。ちょっと待ってな。」

 

マスターは奥へ行った。

 

「…金剛、ダーリン設定は他の場所ではやめてね…。」

 

「Why(何故)?」

 

「ホワイじゃないよ。流石にダメージが入る…。」

 

ドミナントが苦しそうに言う。相当なダメージが入ったようだ。

 

「…提督。」

 

金剛がマスターがいないことを確認して、真面目な顔をしてドミナントのことを呼ぶ。

 

「どうした?」

 

「…たまにはほどほどに休むデース。働きすぎは体に良くないし、何より倒れてしまうのではないかと心配しマース。」

 

金剛がドミナントの目を見た。

 

「“ほどほどに休む”…か。」

 

ドミナントが金剛の話を真面目に聞く。

 

「今日は休んでもらうネー。嫌なこと全部吐き出しても良いデース。私は全て受け止めマース!提督は私たちの悩みや話を聞いてくれる、素敵な人ネー!」

 

金剛が元気一杯の笑顔でドミナントに言う。

 

「……。」

 

ドミナントはそんな金剛を見て、救われたような気がした。

 

……艦娘は本当に不思議だ。人を心から救おうと思えば救うことが出来る、不思議な存在…普通の人は思わない、当たり前のようなことでもいちいち感謝して欲張らない…。人は幸せが続くと当たり前のように感じて、更なる幸せを望むようになる。それが悪いとは言わない。けど、この子たちは違う…。幸せが続いてもいちいち感謝して恩を感じている。小さな幸せを全力で喜んで、仲間が泣いていたら全力で慰める。偽善でもない、心の底から正直にそう思っている。素晴らしい子達だなと思う。

 

ドミナントは金剛や吹雪、艦娘たちの思い出を振り返りながらそんなことを思う。

 

「提督~?平気デスカ?」

 

「うん?あぁ。お前たちのことを考えていてな。」

 

ドミナントが金剛の頭を撫でる。

 

「お前たちは本当に良い子達だ。おっさんにも優しくしてくれる。」

 

「おじさんだからじゃないネー。提督の優しさが大好きだからデース!」

 

「ありがとう…!」

 

ドミナントが本当の笑顔をした。金剛がその顔を見たのは二回目である。だが耐性がついてなく、また顔を赤くして伏せ、ただただ撫でられていた。マスターはその様子を影で見守っていた。ドミナントたちが提督と艦娘であることがわかっていたらしい。




デモンズソウル…。

登場人物紹介コーナー
マスター…小さな紅茶屋さんの店主。中はバーと似ているが、少々違う。常連の顔はしっかりと覚えていて、人によって、好みや味を調整してくれる。

「長門コーナーだな。」
「今回は〜私デース!」
「金剛だな。」
「早い更新デース!」
「筆者が言うには、最近筆は乗り気ではないが、なんとか続けようと努力をしているらしい。」
「Wow.努力は素晴らしいデース!」
「艦の紹介は随分前にしたからな…。」
「Yes.次回も、私は登場しマース!」
「元気だな…。私はまだまだみたいだが…。」
「次回!第231話『金剛との1日 その2』らしいネー。」
「良かったな…。出番があって…。」
「ナガモンも出番はきっとあるネー!」
「…ナガモン…。…そうそう、ナガモンと言えばこの前初雪が…。」


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231話 金剛との1日 その2

そろそろ付箋貼る時かな?
「どうしたの?」
いやなに…。付箋を貼ろうと…。
「…付箋じゃなくて伏線じゃない…?」
…えっ?そうなの?
「……。」
今まで物語とか、想像だけだったからね…。伏線って言うんだ…。
「…社会人の基本だと思うけど…。」
騙して悪いが、筆者の仕事場はそんなものとは無関係なんでね。
「…直したら?今まで間違って書いたところ…。」
…いつ書いたか分からない…。…小説が完結したら、一から見直すからその時じゃないと…。
「一体いつになるのかな…?」
いやだって…。見続けている人がいるかも知れないから、その人たちのためにも直ぐに進めないと…。
「まぁ、そうだよね。見続けてくれている人は本当に感謝しないとね。」
そう…。クズのろくでなしの筆者の小説を見てくれている人にはとても感謝です…。
「そうだね。じゃ、あらすじ行こうか。」
おう。
「今回は自分のようだな。」
鬼の面頬憲兵さんですね。モデルは無しの…。
「憲兵さんだね。」
「ここに来た理由が分からない…。」
あらすじをそこのマイクに向かって言えば良いのです。
「そう。そうすれば、ここから出られるし。」
「なるほど。了解した。」
飲み込み早くて助かる〜。

あらすじ
前回、第1舞鶴へ行った。…提督と鹿島の様子がおかしかったが…。…何かある気がするが、あえて触れなかった。…しかし、ガスマスクをした同士がジッとみていたな…。…何も起こらなければ良いが…。


…………

 

「よっ、はいよ。奥さん。ついでに、二人分のトーストだ。」

 

「Thank you(ありがとう)ネー、Master(マスター).」

 

金剛が紅茶とトーストを渡された。

 

「で、お客さん。例の噂、知ってるかい?」

 

マスターがドミナントに小声で聞く。

 

「例の噂…?」

 

「なんでも、海軍に極秘の鎮守府があるとか。しかも、意外と近くらしいし。」

 

「へ、へぇ〜…。そうなんですか…。」

 

「旦那の奥さん艦娘に似ているけど、どうなんだい?そういう噂知ってる?」

 

「た、他人の空似ですよ。」

 

「そ、そうデスヨー。」

 

「ふぅ〜ん。」

 

マスターが怪しい目をしてカウンターの掃除をする。

 

……あれ…?これバレてない…?

 

ドミナントはマスターの動作を見て思った。明らかに怪しまれている。

 

こ、金剛…。これ以上いるとまずい気がする…。早く店を出よう…?

 

でも、まだTea time(ティータイム)の時間…。

 

うーん…。その気持ちは分かる…。

 

ドミナントと金剛がコソコソ話す。

 

「まぁ、余計な詮索はお客さんにも迷惑だね。悪い悪い。ゆっくりお茶を楽しんでくれ。邪魔者は退散するとしよう。」

 

マスターが一言言った後に、奥の部屋へと行った。

 

「……。…危ねぇ〜…。でも、マスターにバレてるかな?」

 

「Maybe(多分)…。」

 

「多分って…。…まぁ、一通り楽しんでから行くか。マスターも聞かないって言ったし。」

 

「…そうデスカ?」

 

「お茶の時間は大事だよ。英国紳士としてはね。」

 

「Wow.流石デース。センセー。」

 

「あっ、ネタ分かったんだ。」

 

そんな感じで笑いながら飲む2人。

 

「美味しそうなtoast(トースト)ネー。」

 

金剛がトーストを目につけて、食べる。

 

サクッ

 

「Wow!Delicious(美味しい)!」

 

食感の良い音がして、金剛が美味しそうに食べる。

 

「いつも朝にパンを焼いているから、美味しいんだ。」

 

「Rarely(本当)?」

 

「嘘。てか、分かんない。」

 

「もう!darling!」

 

「ははは。ごめんごめん。でも、本当にそれほど美味しいから、もしかしたらそうなのかもね。今度一緒に鎮…家でも作ってみよっか。」

 

「Nice Idea(ナイスアイデア)デース!」

 

そんな計画をしながらトーストを食べ、紅茶を飲むのだった。

 

…………

 

「さてと。飲み終えたし、行くか。」

 

「OK!」

 

ドミナントが言い、金剛が返事をする。

 

「マスター。お会計を済ませたいんだけど。」

 

「はいよー。ちょっと待ってな。」

 

マスターが奥から来る。

 

「えー…合わせて、1250円だね。」

 

「はい。お釣りなしのピッタシで。」

 

「はいよー。」

 

マスターが慣れた手つきでレシートを渡す。

 

「それと奥さん、あんたのことをよく想う良き理解者だ。隠し事をしないで、全部打ち明けた方が良いと思うがね。」

 

「?マスター?」

 

「…と、小さな紅茶屋のマスターは思う。」

 

「隠し事…。…て、何でわかったんですか…。」

 

「常連さんの顔はよく覚えてるからね。悩みがあることくらいはわかるが…。…そこを掘り下げるほどお節介じゃないんでね。じゃ、また来てくれよ。それと、奥さんあんたが打ち明けるのを待ってるんだぜ。」

 

「お、おう…。」

 

マスターはニヤリとして、カウンターへ行った。

 

「全部打ち明ける…か。」

 

ドミナントが呟いた。そこに…。

 

「Hey!darling.早く行くネー!」

 

金剛が隣に来る。

 

「…!」

 

ナデナデ

 

ドミナントが何も言わずに撫でて、金剛がビクッとする。

 

「ど、どうかしたデスカ…?」

 

「ん〜…。…隠し事。言おうかな。」

 

「!やっと言ってくれる気になったネー!」

 

「えっ…?」

 

「実は、もう鎮…家を出る時からずっと気づいていマース!ずっと待っていたネー!」

 

金剛が本当に嬉しそうに言う。

 

「……。」

 

……すげーなマスター…。心理を読み取るなんて…。

 

ドミナントがマスターを見るが、マスターは知らん顔だ。

 

「…続きは歩きながら話すよ。」

 

「OK!」

 

金剛はドミナントの隣にピッタリと歩き、店を出た。

 

「…若え者は羨ましいね。どうやら、次の世代も大丈夫そうだ。…なぁ?第4佐世保の提督。」

 

マスターはカウンターでドミナントたちのいた席を拭きながら呟いた。

 

…………

 

「そうだったんデスカ…。」

 

「…うん…。」

 

ドミナントと金剛は公園を歩く。

 

「本当にごめん!金剛!今まで黙ってて…。」

 

ドミナントが頭を下げて謝る。

 

ガバッ

 

「!?」

 

すると、金剛がドミナントを抱きしめた。ドミナントは怒られると思っていたため、驚いている。

 

「謝らなくても大丈夫デース。提督は提督なりに考えて、私をガッカリさせないように気を遣ってくれていることもわかってマース。提督は本当に優しいデース。」

 

「金剛…。」

 

金剛がドミナントを優しく抱きしめながら言う。ドミナントは心底、金剛には敵わないことを実感する。

 

「じゃぁ、お昼までどこか遊びに行くネー!帰ってからも遊びマース!」

 

「…そうだね。今は楽しもっか。」

 

そして、ドミナントと金剛は自然と手を繋ぎながら街を歩いて行くのだった。

 

…………

 

「VR?と言うものはすごかったデース!」

 

「そう?」

 

2人はVRというものを体験したみたいだ。

 

「あれを見ると思い出すから、あまり楽しめなかったかな…。」

 

「何を思い出したんデスカ?」

 

「ん〜?前の世界のリモート仕事耐久残業。」

 

「Oh…。」

 

ドミナントが死んだ目で言い、金剛が哀れなものを見る顔になった。そこで…。

 

「あっ、もう時間…。」

 

ドミナントが時計を見て、赤城との約束を思い出す。

 

「…なら、ここでお別れネー。」

 

「…そうだね。」

 

「good by(じゃぁね).提督ー。」

 

金剛は笑顔で言った後、駅の道のりを歩いて行こうとするが…。

 

『あんたをよく想う良き理解者だ。』

 

「金剛!」

 

パシッ

 

「!」

 

ドミナントが歩いて行こうとする金剛の手を掴んだ。そして、金剛が振り返る。その時の顔は驚いた感じもあったが、明らかに寂しそうな顔をしていた。ドミナントの前では気丈に振る舞っていたのだ。

 

……やっぱり…。俺のことを想いすぎて無理してたんじゃないか…。

 

「て、提督…どうして…?」

 

「なーに言ってんだ。まだ午前中だよ?大会が終わった後も時間あるのに、いちいち鎮守府に帰って時間を無駄にするのか?」

 

ドミナントがやれやれ、と薄く微笑んでいる。

 

「まぁ一緒に来てよ。俺の勇姿を見せつけてやるぜ。」

 

そのあとこんなことを言い出し、自信のあるような顔をする。

 

「うぅ…提督ー!」

 

ガバッ

 

金剛が飛びついた。

 

「うぉっ、金剛…。こんな公共の公園で…。」

 

「提督は本当に優しいデース!大好きデース…!本当に…。」

 

「…そっか。よしよし。」

 

ドミナントは飛びついた金剛の背中をさすり、頭を撫でてあげた。

 




最近、登場人物の性格のモデルでもあるとても大切な人が…。突然のことって分からないんですね…。感情って理解できないところがあるんですね…。この先…小説を続けるかどうか…。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…第4佐世保の提督。
金剛…金剛型四姉妹長女。
マスター…紅茶喫茶のマスター。
VR…最新の技術。

「長門コーナーだ。」
「とある事情によりドミナントだ。」
「て、提督…。」
「筆者がやりたくないようだ。すぐに次回予告をしてほしいみたいだ。」
「わ、分かった…。次回、第232話『赤城との約束 其の壱』だ。次回はシリアス面は全くない。ニヤニヤして見るのが最適だそうだ。」
「…筆者はいまネガティブみたいなのでな。」
「ネガティブか…。そうだ、ネガティブと言えばこの前山城が…。」


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232話 赤城との約束 其の壱

例の人はこの小説を気に入ってました。この小説を書き続けることが手向けだと筆者は思います。
「そっか…。うん。頑張ろう。」
おー。…特別話の正月がまだ終わらない…。
「まだ書いていたんだ…。」
他の筆者さんたちも頑張ってたし、俺も頑張らないと!
「それは死亡フラグだね。」
脂肪フラグ…そうそう、筆者も最近太り始めてね…。
「正月太りかな?」
まぁ、そうかもね…。今ネタやイベントだらけで続かない…。
「大変だね。」
…他人事のように言ってるけど、艦これも含んでいますよ…?
「あ、あはは…。」
そんなことより、ゲストをお願いします。
「ドーモ、ヒッシャ=サン。憲兵です。」
来やがったなイカレ野郎。
「殺すべし…。」
グァー!
「筆者さんがやられちゃった…。でも、どうせ生き返るからあらすじできるかな?」
「良いだろう。」
……少しは心配して…?

あらすじ
やはりあの2人はあんな関係のようだ。…提督の過去を知ればそうなるのも無理はない…か。


…………

会場前

 

「あっ、提督遅か…て、金剛さん…。」

 

「ちっと遅くなっちまった。」

 

赤城が、ドミナントと一緒に来る金剛を見る。金剛は幸せそうな顔でドミナントの手に頬擦りしている。

 

「…今回の大会は2人一組ですよ…?」

 

「まぁ、金剛は客席で見るそうだし。」

 

「約束が違うじゃないですか…。金剛さん…。」

 

「so、sorry(ごめんなさい).今度必ず埋め合わせするデース…。」

 

「ん?約束?埋め合わせ?」

 

どうやら、約束のことは最初から双方知っていたみたいで、午前に金剛、午後に赤城の約束を交わしていたみたいだった。

 

「これは高くつきますよ…。」

 

「ア、アハハハ…。」

 

赤城が吊り目で見て、金剛が笑って誤魔化す。

 

「ま、赤城はこの大会だけでしょ?」

 

「いえ…。出来ればそのあと色々行きたかったです…。」

 

「えっ…。マジ…?」

 

「マジです。」

 

「…金剛と一緒だけどいい?」

 

「…今更断るわけにもいかないじゃないですか…。」

 

赤城がため息を吐きながらも了承する。

 

「sorryネー…。」

 

「本当に高くつきますからね。」

 

「ははは…。」

 

三人はそんなことを言いながらも会場に入る。人は…まぁまぁいる。そして、受付を済まして控えにいる。

 

「大食い大会かー…。」

 

ドミナントはトーストを食べたことを思い出す。

 

「今回は強豪揃いですね…。」

 

赤城が他の面々を見て呟いた。

 

「…“今回は”…?」

 

「あ…。」

 

「…俺の他に連れて行く人いたでしょ…。」

 

「そ、そんなわけ…。」

 

ドミナントが怪しい目で見て、赤城は目を逸らす。

 

「そ、それより、見てください。前回の優勝者が…。」

 

「優勝者?」

 

赤城が二人組を見て、ドミナントがその二人組を見る。

 

「「……。」」

 

その2人は紙袋を被っていて顔がわからない。

 

「正体について一切の情報を流さない、普段どんななのか全く分からない2人組です。」

 

「へ、へぇ〜…。そんな人もいるんだ…。」

 

ドミナントがその2人組を見て苦笑いをする。

 

「ちなみに、あの2人に勝ったことある?」

 

「同じくらい負けて、同じくらい勝ちました。」

 

「同じくらいか…。」

 

ドミナントは全く気にせずに言った。そこに…。

 

「今回は負けないわ。赤羽 城崎さん!」

 

「今回は男の人の方変わったんでごわすかー。」

 

「うわっ…出た。大食いあるある二人組。」

 

小柄な感じの少女と大食漢の大男が赤城に向かって来た。

 

「あら?今回は赤い髪のイケメンじゃないの?」

 

「赤い髪のイケメンねぇ…。」

 

「……。」

 

少女が言い、ドミナントが赤城を見る。そう、赤い髪のイケメンとはセラフの男装バージョンである。

 

……セラフも苦労しているんだな…。

 

ドミナントはセラフの普段の苦労を知る。

 

「今回は老け顔おっさんの助っ人さ。」

 

「えー…あんた弱そうね。クスクス。」

 

「……。」

 

少女が挑発して、ドミナントは怒りよりも先にこんなことを思った。

 

……うわぁ…。現実でもこんなガキいるんだ…。よく18禁の本とかにあるから、いないと思ってたけど…。

 

そんなことを思う。

 

「何見てんの?ほーれ。」

 

「あ、いや。本当に現実にそんなキャラがいるとは思ってなかったから。」

 

「何そのタンパクな感想!もっと何かないの?」

 

「んー…。ないな。うちは君よりもっとクセのある子たちを知ってるから。…と、そろそろ時間だ。赤城…じゃない、赤羽さん。」

 

「あっ、はい。提…土満さん…。」

 

ドミナントたちはその2人を後にする。

 

「…セラフに感謝してる?」

 

「はい…。」

 

「俺じゃなくても良かったんじゃない?」

 

「……。」

 

赤城が黙る。そこに…。

 

『時間です。選手は入場してください。』

 

放送が入った。

 

「じゃ、行くか。」

 

「はい。」

 

赤城とドミナントは自信満々で行った。

 

…………

会場

 

ワーワー

 

会場はまぁまぁ人はいる。そんな歓声の中、一際目立つものが…。

 

「Hey!頑張るデース!」

 

金剛だ。めちゃくちゃ応援している。

 

……金剛可愛いなぁ。…でも、他人に迷惑させちゃダメだよ?

 

そんなことを思いながら席に着く。

 

『では、最初はこのラーメンを制限時間以内にどれほど完食できるか!ちなみに、提供スポンサーはスーパーマーケット『グローム』からです。ヨーイ、スタート!』

 

司会のいない放送が入り、選手が食べる。

 

「……。」

 

ドミナントも食べようとしたが、あるものに目を奪われて手が止まったままだ。

 

……赤城早っ!何15秒で一つ完食してんだよ…。てか、紙袋二人組もやべーな…。…ただ、赤城と同じくらい早いな…。女性の方は…。男性の方が負けているな…。…あれ?控室で話しかけてきた少女…。なんで麺を一本一本フーフーしてんだよ…。熱いので苦手なのか…?可愛いじゃねぇかよ…。

 

そんなことを思って、全く食べていない。そんな時…。

 

「手を止めちゃNO!」

 

「ハッ!?」

 

金剛の声援で我に帰るドミナント。

 

「やべっ。もう1分しかない!?しょうがない…。これは使いたくなかったけど…。」

 

「「「!?」」」

 

ドミナントから異様なオーラが出る。

 

「秘技…!社畜流早食い!」

 

ヤバかった。忘れていると思うが、元々ドミナントは社畜世界の出身である。と、なれば社畜の限界突破している身体だ。お昼休憩なんてものは無く、常時徹夜の世界でどうやってご飯を食べるのか。そう、早食いを極めて一瞬のうちに1日の必要な栄養を摂取できるような素早さが自然に身につくのだ。

 

「ズズー!ゴクン。次!ズズー!ゴクン。次…!」

 

赤城もびっくり。5秒に一杯食すドミナントの早さに。

 

『タ、タイムアップ。約1名ヤバい人がいましたが、気にせず次へ。一回戦終了!一回戦のポイントは一杯2点デス。では2回戦の食べ物は寿司!ちなみに、提供スポンサーは普段蕎麦屋の『シティガート』デス。では、ヨーイ、スタート!』

 

そんな感じで大会はサクサク進んでゆく。

 

…………

 

『イヨイヨ、最後ニナリマシタ!最終決戦ハ焼肉デース!』

 

周りは次々脱落して、残るはドミナントたちと紙袋2人組だ。選手が脱落している途中で司会が来た。

 

「……。」

 

ドミナントは今までその2人を見て、正体に大体目星をつけている。

 

『ヨーイ、スタート!』

 

バババババババ…!

 

赤城と紙袋の女性は一瞬で食す。何もかもを喰らい尽くす死を告げる2人だ。

 

「「……。」」

 

男性陣は肉を焼いても、自分の胃に入るものがない。焼いても女性陣が掻っ攫うのだ。

 

『ニ、ニクガナクナッタヨー!今回ハ終了ー!』

 

放送が入り、想像以上に早く終わる。男性陣は何も食べていない。

 

『今回の勝者ハー…。赤羽さんチーム!』

 

「やりました〜!」

 

「お、おう…。そうだな…。」

 

『デハ、賞品をドウゾー。』

 

赤城が賞品を貰っている最中、ドミナントは控え室に戻る支度をする。紙袋の2人はもう控室に戻っているようだ。

 

…………

控室

 

「あっ、いた。」

 

ドミナントが紙袋の2人を見つける。

 

「で?説明してもらおうか?ジャックに加賀。」

 

ドミナントが2人に向かって言う。2人は驚いていた。

 

「…変装は完璧だった筈だ…。」

 

「バレました…。」

 

「か、加賀さんにジャックさん…。」

 

2人が紙袋を取り、赤城が驚く。

 

「で?何で?」

 

「…加賀に聞いてくれ。」

 

ジャックは加賀を見る。

 

「どうして?加賀。」

 

「…赤城さんにプレゼントを…。」

 

「…ふつくしい友情だな…。」

 

「加賀さん!」

 

「うおっと…。」

 

「私のために…。」

 

赤城が加賀に飛びつく。

 

「キマシタワー。」

 

「なんだ…?それは…。」

 

ドミナントが2人を見て言い、ジャックが聞く。

 

「けど…。それは私の一航戦としての誇りが許せませんね…。」

 

「……。」

 

赤城が呟き、加賀が少し残念そうな顔をした。薄々、賞品を赤城に渡すことはあまり良くないことに気づいていたみたいだ。

 

「なら、貰った人は誰にもあげちゃいけないってルールにすれば?」

 

「それがいいかも知れませんね。」

 

「次からは赤城vs加賀の全力の試合か…。見ものだな。」

 

「ジャックさんが望むなら…。」

 

4人はそんなことを話す。すると…。

 

「提督ー!忘れちゃNOデース!」

 

「ブハァっ、あっちぃぃぃぃ!」

 

「て、提督ー!sorryネー!」

 

「金剛、もう少し周りを見てから…。」

 

「騒がしいですね。」

 

「まぁ、そんな感じも悪くないだろう。」

 

「…たまにはですね。」

 

金剛が飛びつき、ドミナントがお茶をこぼす。金剛はこの世の終わりのような顔で叫び、赤城がタオルで拭いてあげる。加賀は迷惑そうだが、口元は緩んでいて、ジャックはやれやれとした。

今日もドミナントたちは平和です。




金剛はこの埋め合わせは絶対にします。ちなみに、これは去年の12月中旬ほどで完成しています。

登場人物紹介コーナー
司会…少し遅れて来た司会。カタカナ表示なのは疲れたからであろうか…?それとも深…。

「長門コーナーだ。久しいな。」
「今回は私のようですね。」
「む。赤城か。」
「はい。今回もお邪魔します。」
「史実の紹介はしたな。」
「はい。」
「今回はどんな話をしようか…。…む?なんだ?これは…。」
「賽子(サイコロ)…ですね。」
「それは見ればわかるが…。全面真っ白だな…。」
「とりあえず振ってみては?」
「振ってみて罰ゲームとかは嫌だぞ…。」
「でも、それ以外では何も話すこともありませんし…。このコーナーも終わりませんし…。」
「話題がなければ続けてもな…。…仕方がない…。」
コロン
「あっ!文字が浮かび上がって来ましたよ!」
「どれ…。『最近悲しかったこと。』…?つまり、それを話題にしろとのことか。」
「最近悲しかったことですか…。…あっ!あります!」
「ほう?」
「最近、何故かボーキサイト備蓄庫の警備が厳重になって来ていまして…。毎晩少しずつ貰うことが楽しみだったのに…。」
「ちょくちょく消えていると思ったらお前か!しかも警備を厳重にするよう提案したのは私だ!」
「長門さんでしたか!ひどいです!」
「私が責められる流れなのか…?」
「世にボーキサイトのあらんことを…。」
「その宗教はやめておけ。」
「ほかに悲しかったこと…ですか。う〜ん…。あっ、そうです。最近駆逐艦の子たちに妙に人気が上昇していまして…。ずっと一緒にいる時とか気を遣ってボーキサイトとかあげることが悲しかったりします…。駆逐艦の子たちが沢山いて嬉しいのか悲しいのか…。」
「……。」
「どうかしましたか?」
「…別に…。」
「怒ってませんか?」
「別に怒ってなどない!」
「怒っているではありませんか…。」
「うるさい!次回!第233話!『赤城との約束 其の弍』!約束など知らん!」
「……。」


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233話 赤城との約束 其の弐

指が乗らないです…。
「随分遅い投稿だね。」
イベントしてたし…。それに、なんかねぇ…。
「?」
普通にネタ切れ。ゆるゆるがこんなに大変だとは思わなかった…。
「人はゆるゆるだけじゃなくて、ちょうど良い緊迫感みたいなものも求めるからね。」
まぁね…。ゆるギャグを目指すが我がために…。
「?」
…まぁいい。ゲストを紹介してくれ。
「?わかった。この人。」
「クリーンチュルナイ…。ここはどこだ?」
出たな。清潔な街からの訪問者…。鞭を自在に操り、必要ならば殺すことさえ厭わない、本当は部隊の中で一番残酷な憲兵…真っ赤なマスクを被った憲兵…。
「そこの男。口の聞き方に気をつけろ。私は九人の清浄委員の1人だ。それに、マスクではなく仮面だ。」
「何だろう…。ものすごく強いね。この人…。」
第4佐世保を取り締まることが出来るのはこの憲兵たちくらいだからね。まぁそんなことより、あらすじを頼むよ。
「お願いします。」

あらすじ
前回、我等はある地方の鎮守府の見回りを終了させた。第一の舞鶴の提督は、普段はごく普通の提督だ。しかし、ある艦娘と共になると…。


…………

 

「で、結局こんなのですか…。」

 

赤城が吊り目で面々を見る。ドミナントと2人で午後を過ごすつもりが、金剛、加賀、ジャックまでいる大所帯になっているからだ。

 

「まぁ、たくさんいた方が楽しいし。退屈しないでしょ?」

 

ドミナントは赤城の心境など知らず、そんなことを言う。

 

「…提督。」

 

「なんだい?」

 

「紅茶、没収しますね?右から3番目のやつを。」

 

「え!?な、何故!?ま、まぁ、3番目のやつは市販で買えるし…。」

 

「いえいえ、奥のものも合わせて3番目です。」

 

「NOOO!それだけは勘弁!限定であり、限られたお店でしか販売されてないから!大本営近くの市街で3時間ほど探したやつだから!」

 

「ダメです。」

 

赤城が笑顔でそんなことを言い、ドミナントが何のことだか分からないが必死に頼む。加賀と金剛は初めて容赦のない赤城を見て、微妙な顔をしていた。

 

「それより、これからどうする。」

 

「五人ですしね。」

 

何の目的もなく歩いていると、ジャックと加賀がドミナントに聞く。

 

「う〜ん…。俺以外の子やジャックたちは何かしたいものある?」

 

「私は赤城の望むことに賛成デース!」

 

金剛とドミナントはどちらでも良いみたいだ。

 

「午後3時だな…。加賀は何かしたいものはあるか?」

 

「私ですか…。……。」

 

加賀が悩み出す。

 

……ジャックさんと2人でいたいジャックさんと2人でいたいジャックさんと2人でいたい…。

 

一部だが、頭の中はこれでいっぱいだ。

 

「…私は、ジャックさんの行くところに着いて行きます。」

 

「む…。」

 

ジャックが困った顔をする。

 

「そかー…。…なら、赤城だな。判断を委ねるのは。」

 

「わ、私ですか!?」

 

ジー…

 

4人が赤城をジーッと見る。

 

「い、行きたいところと言うよりも、して欲しいことが…。」

 

「「「?」」」

 

…………

 

「壁ドン…だと…?」

 

「は、はい。この前、食堂で吹雪さんがとても嬉しそうに話していたので…その…。」

 

赤城がモジモジする。金剛もその時聞き耳を立てていたらしく、やってもらいたいようだ。現在一目につかないような路地だ。

 

「なんだ?かべどんとは…。新種の兵器か?」

 

「違いますよ。ジャックさん。男性が女性を壁際に追い詰めて、手を壁にドンと突き迫る行為です。」

 

「なるほど…。」

 

「…私も、ジャックさんに…。」

 

「…後でやってみよう。いざという時何かの役に立つかもしれん。」

 

ジャックたちが少し離れたところで話す。

 

「…壁…ドン…。…!ほう…。壁ドンされたい?そんなに?」

 

ドミナントが何か思い付いた。

 

「は、はい。お願いします。」

 

「わかった…。ならやろう…。」

 

ドミナントが赤城を壁に追い詰め…。

 

ドガァァァ!

 

バギギギギ!

 

ミシミシ…

 

「これが壁ドンだ。」

 

ドミナントが思いっきりコンクリートに壁ドンした。某王子がくらった岩盤のようになっている。

 

「……。」

 

赤城が一瞬死を覚悟したらしく、顔から血の気がなくなり、引いていた。ものすごく。

 

「て、提督ー…あらかさますぎマース…。」

 

「ほう…あれが壁ドンか…。」

 

「違います。」

 

金剛が微妙な顔をして言い、ジャック本気と捉えたが加賀に即座に否定された。

 

「こうするデース。」

 

トンッ

 

「……。」

 

金剛が手本を見せ、赤城に壁ドンした。背景がキラキラして見えるのは気のせいだろうか…?

 

「キマシタワー。」

 

「だから何だそれは?」

 

ドミナントがニヤニヤして2人を見る。

 

「さぁ、提督の番デース。」

 

「ん?金剛が代わりにしてくれたから、良いよ。それに力加減分からないカラナー…。」

 

「提督…。」

 

「ごめん赤城…許容範囲外…。」

 

「なら、何故吹雪さんにだけ…。」

 

「単純に事故。吹雪が盛ってるだけ。」

 

ドミナントがやれやれとして言う。

 

「私だけ…。」

 

赤城が少し悲しそうな顔で、聞こえないくらいの小声で呟いたが、ドミナントには聞こえていたようだ。

 

「…仕方ないな。ほれ。やってやるよ。」

 

トンッ

 

「て、提督…。」

 

ドミナントが仕方なくやってあげた。

 

「さ、これで良い思い出は出来たろう。それで赤城が明日からも頑張れるなら、安いもんだ。…て、なんか赤城キラキラしてない?」

 

即席キラ付け。一丁上がり。

 

「て、加賀もなんかキラキラしてるし…。」

 

「やりました。」

 

「何を…?てか、キリッとした顔をしても鼻血出てるから…。」

 

どうやら、ジャックが何か考えているあたり、やったのだろう。

 

「…特に意味がなく感じるが…。」

 

「ジャック…意味ありありだから…。加賀にそれをやりすぎちゃダメだよ…?失血性ショック死しちゃうかもしれないから…。」

 

ドミナントがジャックに注意する。

 

「わ、私の番はまだデスカー?」

 

「ん?金剛もやる?…赤城にもやってあげたから、ついでにやってやるよ。」

 

トンッ

 

「thank youネー!提督ー!」

 

「お、おう…。金剛もキラキラしてる…。」

 

三人の艦娘が一瞬でキラキラした瞬間であった…。

 

…………

 

「なんか、遊んでいるうちにすっかり夜だなぁ…。」

 

「日が短くなりましたからね。」

 

「もうすぐwinter(冬)ネー。」

 

「もう日が暮れるのか。」

 

「季節を感じます。」

 

五人が公園のベンチで空を見上げる。一番星が出ていてもう薄暗い。

 

「…今日はなんかこの近くで食べる?セラフには夕食の件連絡しておくよ。」

 

「う〜んと…。いえ、鎮守府に帰ってからゆっくり食べましょう。これから行きたいところがありますし、疲れますから…。」

 

「「「?」」」

 

赤城がご機嫌に言い、ドミナントたちが首を傾げる。そして、赤城に着いて行った。

 

…………

 

「キャンプ場?野原みたいに随分芝生が広がっているけど…。ゴルフ場?」

 

「違います。隠れスポットです。提督から貰ったけいたい…?で調べました。」

 

「隠れスポットって…何の?」

 

「いいから、空を見てください。」

 

「空?」

 

ドミナントが疑いの目で赤城を見るが…。

 

「中々良いところデース。」

 

「ふむ…。綺麗な空ならでは…か。」

 

「……。」

 

「提督、見えましたか?」

 

金剛たちが芝生の上に座りながら空を見上げて、思い思いの感想を言う。加賀はジャックの手をチラチラと見ていた。

 

「…おぉ…。いいな…。これ…。」

 

ドミナントも空を見上げて、芝生に座る。

 

「…冬の星座…。山だから星がよく見える…。綺麗だな。」

 

ドミナントが空を見ながら寝転がる。いくら芝生でも、季節的に寒いが気にしていない。

 

「それだけではありませんよ。そろそろです。」

 

「それだけではない?どういうこと?」

 

赤城が言い、ドミナントが空を見たまま聞く。すると…。

 

ツー…ツー…ツーー…

 

「あっ、流れ星…。」

 

ドミナントが呟く。しかし、ただの流れ星じゃなかった。次々と現れたのだ。

 

「流星群です。今日見れるみたいなので、提督と一緒に…。」

 

……2人きりで…見たかったです…。

 

最後の言葉は言わなかった。すると…。

 

「む…。…少し寒いな。温かいものを買ってくる。」

 

ジャックが立ち上がる。

 

「行きますか?なら、私も…。」

 

加賀もジャックの後をついて行く。

 

「…!わ、私は少しトイレに行ってきマース!」

 

「なんだ、赤城以外全員行っちゃうの?」

 

「すまないが、寒いんでな。」

 

「私はジャックさんの行くところへ…。」

 

「トイレ我慢出来ないデース。」

 

「そうか…。」

 

そして、三人が行く。

 

「…!」

 

赤城がジャックたちの意図に気付いた。

 

……ジャックさんも金剛さんも…。ありがたいですね…。…なら、このチャンスを不意にはしません。

 

赤城は自分に自信をつけて、ドミナントの近くに寄る。

 

「て、提督…。」

 

「なんだい?」

 

「……。…そ、空が綺麗ですね…。」

 

「…そうだね。」

 

「……。」

 

「……。」

 

……私の意気地なし…。

 

赤城が心の中で思う。

 

……けど、このままでは…。…一航戦の誇りを汚すわけには行きません。

 

覚悟を決めて、赤城がまた勇気を奮い立たせる。

 

「て、提督…その…す、す、す…。」

 

「す?」

 

「す…寿司が好きだとこの前聞きましたけど、好きなんでしょうか?」

 

「…寿司…。…うん。好きだね。というより、実はこの世界の食べ物全般好き。その中でも特にってだけ。」

 

「そうですか…。」

 

赤城がそんなことを言う。

 

……せっかく勇気を出したのに…。一航戦の誇りをかけましたのに…。結局…これですか…。

 

赤城が心底、自分の勇気に悲しくなる。

 

「…赤城。」

 

「は、はい!」

 

「…流れ星が消える前に願い事を3回言うと叶うって聞いたことある?」

 

「いえ…。…それって、本当なんですか…?」

 

「さぁてね。叶うかどうかは分からない。流れ星は話で聞いたことがあるだけで、本当に見たの初めてだし。…でも、無いよりはマシなんじゃない?心の中で思うだけでも、結果は変わると思うよ。」

 

「……。」

 

ドミナントがそんなことを言った。そしたら、丁度流れ星が出た。

 

……提督と……。

 

そして…。

 

「て、提督!」

 

「なんだい?」

 

「…また、今度一緒にデートしてくれますか…?」

 

「…良いよ。暇な時なら全然平気。無茶なことを言われなければ、要求は飲むし。」

 

「…次こそは2人っきりで…。」

 

「良いよ。」

 

「そうですか…!」

 

赤城が嬉しそうになる。

 

「…もっとでっかい願い事しなかったの?」

 

「…いえ、最初はもっと…。提督と結ばれたいなと思いました…。…けど、提督はそういうのは望んでいないんですよね…。なら、迷惑なだけですし、自分勝手ですし…。」

 

「良いじゃん。自分勝手で。叶うかどうかはさておき、自分の願い事でしょ?願うだけなら問題ないじゃん。個人の自由だし…。願いってのは叶うためにあるし、夢を見るためにあるんだよ。どんな無茶な願いでも、0.1%でも可能性があるなら諦めないほうが後悔しないよ?」

 

ドミナントが赤城の方を向かずに言う。

 

……提督…。…もう、分かっているんですよね…。私の気持ち…。

 

赤城がそんなことを思うと…。

 

「…赤城、こんな時だ。金剛が来るまでなら…許容範囲内だ。誰かに見られたくはない…。…少しこっちに来て。」

 

「?」

 

バサっ

 

「!」

 

ドミナントがどこからともなく毛布を出し、赤城と自身を包み込んだ。

 

「…寒いからな。人がいたほうが、すぐに温まるし。」

 

「…提督…。」

 

ドミナントが照れくさいのか、空を見ながら言う。赤城はドミナントと一緒の毛布に包まっていることを意識して嬉しそうだ。

 

「…どうやら、良い雰囲気のようだな。」

 

「good jobデース。提督〜。」

 

「何故ここに私たちが…。」

 

ジャックと金剛はその様子を少し遠くから見ていた。

 

「まぁ、缶コーヒーを飲み終わるまで2人だけにさせておけば良いだろう。」

 

「私は温かな紅茶デース!」

 

「私は緑茶です。」

 

三人は暖かい飲み物を飲み終えるまで、赤城とドミナントを放っておくのだった。そして、飲み終わり、ドミナントたちと合流して一通りからかった後、鎮守府へ戻るのだった。




金剛、見事に埋め合わせをしましたね。

登場人物紹介コーナー
流星群…ふたご座流星群。冬…12月の中旬ほどから見られる流星群。

「長門コーナーだ。」
「今回も私ですね。」
「投票がほぼない。私のコーナーは短縮される方針のようだ。」
「それは残念です…。」
「壁ドンか…。…抜け駆けか?」
「こ、金剛さんもされてます!」
「…まぁいいか…。次回、第234話『神様との休日 その1』だそうだ。」
「休日…ですか。」
「休日…最近とっていないな…。」


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234話 神様との休日 その1

随分と遅くなりました。
「どうしたの?」
AC要素が色濃く出る、最終章を書いていまして…。
「…嫌な予感がする…。」
世界中大混乱に陥るね。そしてどうなるか…。ほのぼのをやっていると、身体が闘争を求めるせいか、黒い鳥になりたくなる…。
「…重症だね…。」
まさか…。で、今回のゲストは?
「この人。」
シュー…コー…
『…何故ここにいる?』
ガスマスク憲兵を召喚しました。
「白霊かな?」
シュー…コー…
『…どうやら出れそうにない。』
あらすじを言えばすぐに解放される。
「筆者さん、飽きてきたでしょ…。」
まぁな…。

あらすじ
初見で察したが、鹿島と第1舞鶴鎮守府提督は色々な関係のようだ。


…………

 

「ふぅ…。」

 

現在、鎮守府の外の帰りの山道だ。

 

「提督ー、変わりマース。」

 

「ん?いや、良いよ。これで。2人とも今日は疲れたと思うし…。」

 

「私は元気デース!」

 

「そりゃ良かった…。」

 

ドミナントと金剛が帰り際に話す。隣にはジャックもいた。

 

「…鉄の体だけど、身体とか痛くないよね…?」

 

「大丈夫デース。」

 

「私はそのままの姿で平気だ。」

 

現在、ドミナントはAC化して赤城を…ジャックは加賀を背負って鎮守府に戻っている。赤城、加賀は共に寝てしまったのだ。

 

……つい寝ちゃったふりをしてしまいましたけど…。背負われて帰れるなんて夢のようです。…提督は今は機械なので、少し冷たいですけど…辛抱です。

 

……赤城さんも起きていますね…。夢のような、幸せそうな顔をしています…。

 

2人がそんなことを思う。ドミナントはACのため、触れた箇所が冷たいのだ。加賀は人のことは言えず、自分もだらしない顔になっていることは誰も知らない。

 

「そろそろ鎮守府だな…。帰ったら仕事して神様との休日を過ごさなければならない…。てか、計画してない…。どうしよう…。赤城に全部取り上げられる…?いや、でもセラフは容赦しないだろうな…。…金剛、どうすれば良い?」

 

「紅茶が取られるのは流石に辛いネー…。女性を楽しませるには、まず褒めるところデース!」

 

「褒める…?」

 

「YES!」

 

「褒めるねぇ…。」

 

ドミナントが神様の私生活を思い出す。褒めるところが見つからない…。お菓子を食べていたり、遊んでいたり寝てばかりしているのだ。

 

「…あいつ、太るぞ…。そのうち…。」

 

「何を考えたかすごく気になりマスガ、今はどうでもいいデース。」

 

「練習をしてみたらどうだ?ドミナント。」

 

「「練習(practice)?」」

 

「例えば…金剛の褒めるところを言ってみろ。」

 

「いきなり言われても…。」

 

「なら、パッと思いつかないほど無いんだな?」

 

「む〜!」

 

「Oh…。」

 

金剛が怖い顔をする。

 

「そ、そうだな…。まず、純情なところだ。それに優しい。」

 

「next(次)!」

 

「えと…。金剛型の長女で、しっかりしていて皆んなを引っ張って行く存在が素晴らしい。」

 

「next!」

 

「ネクストは…。えーっと…。…かわいい!」

 

「…next.」

 

「アホ毛がチャームポイント!」

 

「……。」

 

「…紅茶について詳しくて頼れる!」

 

「disqualification(失格)デース!」

 

「…?」

 

「失格デース!」

 

「な、何故…。」

 

ドミナントは何を間違えたのか分からない。

 

「私が艦娘として、戦艦の艦娘だということを踏まえていないデース!」

 

「…神様相手の練習なんだからいいじゃん。…まぁ、忘れてたけど…。てか、私服だから思いつかんわ。」

 

「なら、次は赤城なんてどうだ?寝ているから大丈夫だろう。」

 

「赤城?まぁ、寝てるから平気か…。」

 

……!?

 

今まで心地良かった赤城が驚く。まさか自分に来るとは思わなかったらしい。

 

「なら、ジャックこそどうなのさ。加賀に何かあるのか?」

 

「ふむ…。」

 

ジャックが考える。加賀は表情に出さないが、内面ドキドキで心拍数が跳ね上がっていた。しかし…。

 

「そうだな…。まずは良く私に声をかけて来てくれるところだな。」

 

……ジャックさん…。

 

「そう…。商品開発中にも声をかけてきてくれるところだ。」

 

……。つまり、邪魔をしていると言いたいと…?

 

「それと、いちいち私に聞いてくるところだ。忙しい時でも。」

 

……。

 

「感情を表に出さないから親しみやすいところか。」

 

……ええ、表に出しませんけど何か?

 

「それに、少し戦いで失敗すると呆然とするところだ。」

 

……つまり、弱くて失敗したら使い物にならないと?

 

「踏まえて…。」

 

「も、もういいぞ。ジャック…。」

 

「?」

 

ドミナントが宥めるように言う。金剛は何やら微妙な顔をしている。2人は気づいたのだ。加賀が起きていることに…。その証拠に、加賀から異様な負のオーラが出続けている。後でナニカされてもドミナントは知らんフリをするだろう。

 

「それより、赤城はどうなんだ?」

 

「赤城?あかぎんはね…。真面目で穏やかで優しいところかな。それだけじゃないよ。一航戦の誇りを大切に思っているところは、俺も見習わなくちゃいけない課題だし。まぁ、私欲が無さすぎるところで困ったりボーキの件で困ることもあるけどね。けど、それに勝るほど褒められることをしているさ。」

 

ドミナントが大真面目に言う。赤城はいつの間にか誰にも顔を見せないような角度になっていた。

 

「…それを普通に言えることはすごいな。」

 

「今なら金剛や加賀のことも言える気がする。」

 

「ほう?」

 

「金剛は俺のことを心から分かっていて、よく思ってくれて助けてくれる。心強いし優しくて一緒にいて楽しい。紅茶の趣味も合うし、可愛いよ。加賀は厳しいけれど、たまにいい事言ってくれるし。表にあまり感情を出さないけれど、人の気持ちをすごく分かってくれたり、色々あった時に仲介してくれたりするところはすごく感謝している。」

 

「「「……。」」」

 

ドミナントが言い、4人の口元が緩んだ。

 

「お前はお前なりに十分に感謝しているんだな。」

 

「当たり前じゃん。この生活が出来ているのは彼女たちがいてこそだし。今の俺がいるのも、彼女たちに出会っていたからこそだ。感謝してもしきれないし。もちろん、ジャックのおかげでもあるよ。」

 

「…そうか。」

 

ジャックは少し嬉しそうに呟いた。そのうちに鎮守府が見えてきた。

 

「…赤城。起きろ。」

 

「…はい。」

 

「加賀。」

 

「はい。」

 

ドミナントが赤城を下ろし、ジャックが加賀を下ろす。

 

「じゃ、夜食べてから風呂入って、色々やって寝よう。」

 

「「「はい。」」」

 

「…私はドミナントと明日の計画の手伝いをしてやろう。」

 

「良いのか…!?ジャック…!」

 

「ああ。」

 

明日の予定の計画にジャックが携わってくれるようだ。

 

…………

翌朝 神様の部屋

 

パッ!

 

神様が待っていたと言わんばかりに起きる。

 

「今日は楽しい一日になるかな〜?」

 

そうは呟きながらも気合を入れた服を用意する神様。

 

「キシキシ。」

 

「貴方はお留守番♪…あっ、ご飯だったね…。ごめん。」

 

AMIDAが朝食を要求して、神様が思い出して、あげる。

 

「どう?この服。」

 

「キシ…。」

 

(ご主人様とドミナントが今日デートか…。です?)

 

「キシ!?」

 

AMIDAの背中に妖精さんが乗っていた。

 

……いつの間に…。

 

(気合い入っているです。夜ご飯届けるです?妖精宅配サービスです。)

 

「キシ…。」

 

……いや…。どうせ帰ってくる…。

 

AMIDAが呟いた後、モゾモゾとカゴの中の毛布の中に入っていった。

 

「今日は帰ってこれないかもしれないけどねっ!」

 

AMIDAの冷静な分析は、嬉しさで感覚が麻痺している神様には届かない。

 

…………

提督自室

 

「ぐがー…。」

 

ドミナントは本気で疲れたようで、色々練った後眠っていた。

 

ガチャ…

 

そこにドアがこっそりと開き、覗くアホ毛。

 

「…まだ寝てる…。」

 

神様が足音を立てずに近づく。

 

……本気で疲れた顔してる…。少し、大変だったかな…。

 

そんな心配をして、ドミナントの頭を撫でる。

 

……私が不甲斐ないばっかりに、よく迷惑かけてるし…。おかしいよね…。神様なのにさ…。救いたいのにうまくいかないなんて…。ドミナントの都合も考えずに無理矢理予定入れちゃったり…。料理作っても、あまり上手に出来ないし…。…私がどこか行っちゃった方が、楽になるのかな…。

 

そんなことを考えてしまう。

 

「…ん…。」

 

ドミナントが起き出す。

 

「…何をしている…?」

 

「…撫でてるの。」

 

「やめい。…まぁ、気持ちは嬉しいが、撫でるのは大人の役目だ。」

 

「私の方が年上。」

 

「……。…見た目の問題だ。」

 

「ずるーい。」

 

ドミナントが立ち上がる。

 

「じゃ、行くか。」

 

「予定は?」

 

「たてた。」

 

「どんな?」

 

「…まずは映画館へ行き、ゆったりとした時間を過ごした後に昼食を取る。次はデザートを食べに少し遠出。それからは神様の自由タイム。行きたいところへ連れてくし言うことはある程度聞く。最後に、あのタワーへ行って帰る。」

 

「さほど考えていなさそうだね…。」

 

「……。」

 

ジャックもドミナントも疲れた身体で出した計画だ。完璧であればそれはそれでおかしいのだ。

 

「…まぁ良いよ。それなりに考えたんだと思うし。セラフには黙っててあげる。」

 

「ありがとう。」

 

「ううん。お礼を言うのはこっち。」

 

そんなことを話しながら、ドミナントたちは出発した。




ネタが切れます…。

登場人物紹介コーナー
妖精さん…久々の登場。ちなみに、妖精さんにもちゃんとした役割や種類がいる。傭兵風の妖精さんは傭兵さんと呼ばれ、支援してくれる妖精さんは要請さんと呼ばれている。役割はさまざまで、倉庫兼工廠にも食堂にも『甘味処 間宮』にも娯楽室にも…。さまざまなところに存在していて、存在する場所に適した役割を持っている。また傭兵さんはフリーで、鎮守府敷地内であればどこにでもいる。管理妖精さんは甘味の管理をする、エリート妖精である。性格は十人十色。どの妖精さんもそうだが、技術や文明水準はとても高い。

「長ツォコーナーだ。」
「今回はまた私ですね。」
「赤城か。紹介は…したな。」
「また大きなサイコロがありますけど…。」
「…分かった。やれば良いのだろう。やれば…。」
コロコロ…
「…今世紀最大に恥ずかしかったこと…か。赤城にそこまでのことなど…。」
「…あります…。」
「あるのか…。」
「実はこの前…。弓道着の袴のすそが下着に挟まって、そのまま気づかずにいたことでしょうか…。昼食の時に主任さんに大笑いされてしまったことですね…。吹雪さんじゃないのに、パンツ問題に…。」
「それは恥ずかしいな…。というより、今さらっと吹雪を貶したような気が…。」
「提督に知られなかったのが不幸中の幸いです…。」
「…提督が知ってしまったら苦悩するだろうな…。言って、恥さらしにさせるか…言わないで、黙っておくか…。」
「提督に余計な不安はいりません…。というより、知られたら本当に大変なことになっていましたね…。」
「そうだな…。と、そろそろ次回予告だ。」
「わかりました。次回、第135話『神様との休日 その2』らしいです。監視役も行くみたいですね。」
「監視役か…。監視役といえば、この前主任が…。」


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235話 神様との休日 その2

随分と遅くなりました。
「うん。遅いね。」
続きのネタが切れます…。ですが、こういう展開が終わった後のネタはあるんですけどね…。
「大変だね。」
まだまだ終わらない…。戦闘編がないのがこんなにも大変だったとは…。ゆるゆる物語を書く筆者さん凄いな…。
「みんな食べるために稼いでいるからね。」
本場と比べちゃ…。この筆者は素人のトーシロだよ。
「と、そろそろゲストを紹介しないとね。」
そうだね。
「今回は…。」
「足柄よ!」
足柄さんですね…。筆者の第一艦隊所属の…。
「つまり、主力ね!」
その通り。でも、今回はあらすじのみ。頼みます。
「僕も第一艦隊所属だからね。よしみとしてお願いします。」
「分かったわ!」

あらすじよ!
昨晩、提督帰ってきたのかしら…?まぁ、赤城と金剛が帰って来たから、一夜は共にしてないわね!


…………

屋上

 

「出発しましたね…。」

 

セラフが双眼鏡で覗いている。もれなく、神様すら知らない。

 

「何故私も行かなくてはいけないのか…。」

 

ジナイーダが面倒そうに言う。懐かしい面子だ。

 

「前も監視をしていなかったか?」

 

「…そう思ってみればそうですね。懐かしい…。もう1年以上前になるんですね。」

 

セラフが双眼鏡で覗きながら相槌を打つ。

 

「…今回も行かなくてはいけないのか…。」

 

「神様さんを楽しませるか否かを判断します。」

 

「…まぁ、神様と言っているが、私は信じていないがな。」

 

「…それは分かっています。定着した名前ですしね。」

 

ジナイーダがバスに乗る神様を肉眼で見ながら言い、セラフも頷いた。

 

…………

バスの中

 

「まずは映画館だ。」

 

「映画?」

 

「そ。お前の好きそうな映画だぞ。対象年齢5歳くらいの。」

 

「5歳って…。」

 

「なら、何が良いんだ?」

 

「んー…。風と共に去りぬ。」

 

「…分かるのか?」

 

「…分からない…。」

 

「ダメじゃねーか。」

 

そんなことをドミナントたちが話す。そして、バスを降りて…。

 

「…楽しい系が良いよな…。『山猫と渡鴉の日常』…なんてどうだ?」

 

映画館のポスターを見ながら言う。

 

「うん。結構楽しそうだね。それ見る?」

 

「神様は?」

 

「見たいかな〜。」

 

「じゃ、見よう。ポップコーンは何味がいい?」

 

「…キャラメルにしようかな。」

 

「キャラメルね。」

 

ドミナントが購入しに行く。

 

……なんか、思っていたのと違う…。なんだろう…。足りない…満たされない…。

 

神様が思う。すると、世界が灰色に染まる。そんな時…。

 

「おい。」

 

「ひゃっ!?」

 

頬に冷たいものが当たる。

 

「ボーッとしてたけど…。大丈夫か?」

 

ドミナントだ。反応が無かったから、冷たい飲み物を頬に当てたのだ。

 

「…疲れてるんじゃないか?」

 

「…どうだろう…。」

 

「…軽いネガティブ状態だな。どうかしたのか?」

 

「…分かんない…。」

 

「そうか…。…手、出して?」

 

「?」

 

「じゃ、行こっか。」

 

ドミナントが神様の手を握る。とても温かい。

 

……。…私って…。単純だなぁ…。

 

その瞬間に心が満たされるのだから、そう思っても仕方のないことだった。

 

…………

 

「意外とハード…。」

 

「日常だし、猫って書いてあったからほのぼの系だと思ったんだけどね…。」

 

映画を見た感想がこれだ。怪しげな映画を観るからだ。

 

「2時間潰れたね。今午前11時。次はどうやって私を楽しませるの?」

 

「う…。まだ11時だと…。…何か行きたいところある?」

 

「予定だとゆったりとした時間を過ごすらしいけど…。」

 

「…少し早めの昼食食べる?」

 

「そうする?」

 

ドミナントと神様が結論を出し、映画館を後にする。

 

…………

セラフサイド

 

「あっ、動きましたよ。」

 

「筆者が本気でネタがないみたいだからな…。ご苦労なことだ。」

 

ジナイーダがメタ発言をして、セラフが微妙な顔をする。実際、ネタがない。

 

「第一、この物語のヒロインは誰だ。」

 

「さぁ…。数人いるんじゃないですか?」

 

「ハーレムじゃないか。」

 

「本人が拒否しているから違うとか…。」

 

「筆者が虫の息なんだが…。」

 

セラフたちが話す。

 

「まぁ、そんなことより動きましたよ?」

 

「行くか…。」

 

屋上で話す2人。ちなみに、内部を通らず屋根の上だけで移動している。

 

…………

 

「焼肉がいい!」

 

「お前…。そんなところ行ってみろ。後々服が臭くなって絶対に後悔するぞ。」

 

「別にいいよ。洗濯したら臭い落ちるし。」

 

「俺がやだ。」

 

「なら、どこにするの?」

 

「…最近魚ばかりだからな…。ラーメンにでもするか。」

 

「味気ない!」

 

「味覚障害か?」

 

「違うよ!デートだよ!?なんでラーメンなの!?」

 

「…なら、どこにするの?」

 

「焼肉!」

 

「結局振り出しかよ。てか、そんなに食べたいのかよ…。デートだと焼肉なのかよ…。」

 

ドミナントが焼肉屋へ行こうとするが…。

 

「…あ、思い出した。」

 

「?」

 

「あそこは確か出禁くらったんだ…。」

 

「え…。」

 

憲兵たちが行った焼肉屋…。大本営に出禁メールを出して、確認して第4佐世保は出禁になっている。

 

「じゃぁ、どうするの…?」

 

「焼肉屋か…。近くにあっただろうか…。」

 

「探してくれるの?諦めるんじゃなくて…?」

 

「もちろん。食べたいものを食べる。それに、今日はお前を楽しませるための日だ。我慢なんてするんじゃない。」

 

ドミナントが言い、スマホで検索していると…。

 

「あれ?焼肉の匂いがする…。」

 

「そんなわけ…。…あれ?こんなところに店なんてあったっけ?」

 

焼肉と書かれた出店がある。

 

「へい、いらっしゃい!です!」

 

「何してんだよ…おまいら…。」

 

中にいたのはセラフとジナイーダ。

 

「さ、さぁ?お客さんは初めてのお客さんのはずですが…。」

 

「うるせー!この出店の天井に第4佐世保って書いてある時点で誤魔化せないよ!」

 

「そんなことよりさっき買ったばかりの新鮮な肉です!」

 

「誤魔化した!しかも買ったばかりの新鮮なって…意味がわからんぞ…。」

 

「注文をどうぞ!」

 

「ツッコミが追いつかん…。」

 

そうは言いながらも席に座るドミナントら。

 

「じゃ、おすすめで。」

 

「おすすめはラーメンです。」

 

「ここ焼肉屋だよね?」

 

神様はメニューを見ながら嬉しそうにしている。

 

「なら、牛カルビで。」

 

「品切れです。」

 

「…豚バラ…。」

 

「ありません。」

 

「なら何があるんだよ!」

 

「ラーメンです!」

 

「ラーメン屋に改名しろゴラァ!」

 

謎の疾走感。

 

「私は牛カルビ!」

 

「いや、それはないって…。」

 

「分かりました。」

 

「あるんじゃねーか!」

 

そんなこんな騒がしい出店。

 

「はぁ…はぁ…。水を一杯ください…。」

 

「水は有料となっております。」

 

「もう無茶苦茶だな…。良い子はマネしちゃダメだぞ。この小説ならではの特権だ。」

 

ドミナントが持参したペットボトルの飲み物を飲む。ちなみに、現実ではそんなことはしてはいけない暗黙のマナー。

 

「…ふぅ…。で?なんでいるの?」

 

「そこにお腹を空かせた人がいるからです。」

 

「アンパンマ…そうか。」

 

もうツッコミを入れるのが面倒となり、もう何もつっこまないドミナント。その後、セラフとジナイーダが何度もボケて来たが、全てを受け流した。




随分と遅くなりまし…。

登場人物紹介コーナー
困るけど…トクニ…ナシ…

「長ツォコーナーだ。」
「今回は〜。私〜。」
「神様か。ところで、なんの神様なんだ?オリキャラ…?」
「ううん。一応、オリキャラじゃないんだけどね…。」
「違うのか!?」
「もちろん!…?でも、一応そうなのかな…?半分そうで、半分違う…。なんだろう…。よく分からない…。」
「まぁ、艦娘と同じか?艦であり、娘でも…。少し違うか。」
「少し違うね…。キャラが設定されてないけど、設定しているような…。セントエルモみたいな感じだね!」
「…よく分からん…。と、今回は後書き短縮か。」
「次回!第236話『神様との休日 その3』だね。またも私の出番。」
「私もそろそろだと思うんだがな…。」


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236話 神様との休日 その3

随分と遅くなりましたねぇ…。というより…。ギブ…。
「え?」
ネタ無し…。余計なところはバンバン飛ばします…。この1週間…ずっとネタを考えていましたが、ネタが浮かび上がりません…。
「他のネタは…?」
ある。ハッキリ言って、デート編は恐らく今回で最後。…となりたかったけどまだ続きそう…。はぁ…。
「そ、そうなんだ。」
バレンタインの任務あるし…。色々筆者も多忙になってきた…。
「新たな小説始めちゃったしね。」
なんとなく浮かんだやつ。さらに新たな奴のネタがあるけどね。
「へ、へぇ…。」
深海棲艦が主役の本気のゆるゆる生活。誰も死なない優しいコメディー世界。
「なんか面白そう…。」
だろう?ま、そんなことはさておいて…。今回のゲストは?
「この人…て、あれ?」
いないみたいだね。
「て、ことはどうなるの…?」
シグレン頼む。
「う、うん。余計かもしれないけど…やってみるよ。」

あらすじ
僕は特に何もなかったかな…?部屋でトランプをしていたくらい。…そう思ってみれば、瑞鶴さんと翔鶴さんが言い合っていた気が…。


…………

 

「はぁ〜…。今日はツッコミだらけで疲れた…。」

 

「ほぼ全部にツッコミを入れてたもんね…。」

 

夕方、ドミナントと神様はタワーにいる。あれから色々遊んだ後だ。

 

「…ここに来ると、何故か頭の中で自然と想像してしまう…。」

 

「…なにを?」

 

神様は雲行きの怪しい顔で聞いてきた。

 

「なんというか…。ACが戦い合うような…。」

 

「ゲームのやり過ぎだよ〜。」

 

神様はのほほんとして言う。

 

「…そうなら良いんだけどな…。」

 

「……。」

 

「ところで神様。」

 

「なに〜?」

 

「…俺の正体って何?」

 

「……。」

 

神様は何も言わない。

 

「嫌だな〜。ドミナントはドミナントだよ。それとも、前の世界の名前…。」

 

「神様。…俺はなんなの?」

 

「……。」

 

神様は黙ってしまった。そして、景色を眺めて数分後…。

 

「…分かるの?」

 

「なんとなく。陸軍の時も何か俺はおかしかったし。タワーとか、鉄臭い匂いや荒地を見ると、なんか変な気分になるし。」

 

「…そっか。」

 

「うん。…で?俺はなんなの?」

 

「…詳しくは言えないけど…。」

 

「?」

 

「ドミナントは私の大切な人。」

 

「おい。誤魔化すな。正直に言え。」

 

神様が言い、間髪入れずに問い詰めるドミナント。

 

「…ドミナント。」

 

「なんだい?」

 

「…ドミナントは…生まれ変わっても、そのままの性格になると思う…?」

 

「?どういうこと?」

 

「…前世の人がとても良い人だったら、生まれ変わっても、その人はとても良い人になるのかな…?」

 

神様が山の影と夕陽の入り混じり辺りを見つめながら聞いてきた。

 

「…そうは思わないよ。俺は。」

 

「……。」

 

「人ってのは経験して、どのような人間になるのかが決まると思う。」

 

「…ドミナントはそう思うの?」

 

「うん。だって、もし俺がもっと恵まれていた世界出身だったら、心の奥底の世界に対する憎しみや恨みや怒りは無かったと思うし…。艦娘にその重さを味わって欲しくないとも思わなかったかもしれない。むしろ、ダメな人間になっていたかもしれない。…俺は痛みを知ってるから…傷つくのがどれほど嫌なことか知っているから、それを娘である艦娘に知って欲しくない。そんなん知ったら、幸せそうに暮らしている彼女たちは今までの生活に戻れなくなる。」

 

「…逆を言えば、ドミナントはもう戻れないところまで来ちゃっているんだね…。」

 

「…まぁね…。」

 

「…覚えてる…?初めて艦娘の頭を撫でた時…。すごく心配そうな顔してた時。」

 

「そんな顔をしてたのか…?」

 

「うん。まるで、すぐ消えちゃいそうな顔をしてたし。」

 

「…そうか。」

 

神様が外を眺めて、ドミナントも眺める。

 

「で、俺はなんなん?」

 

「…誤魔化せないか。」

 

「ああ。気を抜けばそのまま良い話になってたぞ。」

 

「あはは…。…言えないってことで。」

 

「なんだ?気になるじゃないか。」

 

「これは先輩との約束。ドミナントを…ううん。君をここの世界に連れてきた条件みたいなもの。だから話すことは出来ない。」

 

「…そうか…。つまり、自分で正体を確かめろってことね。」

 

「そゆこと。」

 

神様が次は海の方面を見る。いつも見ている景色とはまた違う。夕陽が海を反射して水面が輝いている。

 

「…今日…さ…。」

 

「?」

 

しばらくして、神様がつぶやく。

 

「どうした?」

 

「あの…さ…。」

 

「うん?」

 

「ちょ、ちょっと疲れちゃって…。」

 

「そうか…。なら、もう鎮守府に帰…。」

 

「う、ううん。その…近くに…休める場所ある?」

 

「休める場所…。」

 

神様がある建物を見るが…。

 

「あるぞ。」

 

「本当…?」

 

「ほら、市民会館が…。」

 

「市民会館…。」

 

その建物より近くにあった。

 

……市民会館が無ければ…。

 

いや、なくても無理であったろう。

 

「さ、早くここから降りて行こう?」

 

「え…。う、ううん。なんて言うか…。ベッドで横になりたいって言うか…。」

 

「ベッドで横になる…。家具屋は近くにないな…。」

 

「か、家具屋じゃなくて…。」

 

神様が遠回しに言おうとしているが伝わらない。

 

……まぁ、そんなわけないよねー。いかねぇよ?

 

訳でもなく、拒否しているだけである。わざと天然を装っているのだ。艦娘にも良く使う手である。

 

「そんなに疲れたなら、もう帰ろう。帰ればまた来れるから…。」

 

「い、いや、あの…その…。」

 

「なに?」

 

「……。…分かってるでしょ。」

 

「うん。」

 

ドミナントが無慈悲に言う。

 

「今日夜9時までには帰らないと心配すると思うし。…何か買って帰るか?欲しいものある?」

 

「子供!」

 

「アホ。」

 

流れるように返して、文句を言われながらもタワーから降りるドミナントであった。

 

…………

 

「神様も随分と積極的になられたものですね。」

 

「そうだな。…あいつは段々と許容範囲が緩くなっているしな。」

 

「ここままだと、いつの間にかケッコンしてそうですしね…。」

 

「いや、ならない。あいつはそこには厳しいぞ。チャンスがあるとすればお前か…ドミナントの隣にいるやつだろう。」

 

「…そうでしょうか?」

 

「私はそう思うがな。」

 

「そうですか。」

 

2人は毎度お馴染みのビルから監視してた。

 

…………

翌朝

 

「スピードが命だ。1日で済ませよう。執務室から辿ってスイーツ店を突き止め、スイーツを完食して俺たちのいた痕跡を残さず引き上げる。」

 

ドミナントが執務室で支度をしながら呟く。

 

「えっと…。3、2、1…。」

 

バァァン!

 

「提督!」

 

「来たか、長門。丁度時間ぴったりだ。」

 

長門が勢いよく扉を開けて言う。

 

「ああ。」

 

「?なんだその似合わないたいいは…。」

 

「ほっとけ余計なお世話だ。」

 

「…と、言うのは冗談。似合っていて可愛いじゃないか。」

 

「そ、そうか…?」

 

「うん。普段と違う服装でギャップがあって良いよ。」

 

「そうか…!」

 

長門は嬉しそうに言う。

 

「さてと…。じゃ、スイーツ店に行きますか。」

 

「う、うむ…。」

 

ドミナントの長門は特に何もなくスイーツ店へ行く。長門は道中物珍しそうに街並みを見ていたが、ドミナントはここ最近ずっと見ている景色なので無反応だった。

 

…………

 

「ここは…。」

 

「?提督。知っているのか?」

 

スイーツ店である。覚えているだろうか?ジナイーダと共に行った…。

 

「…い、いや。なんでもない…。」

 

「そうか?」

 

長門は先陣を切って歩いて行く。

 

……多分大丈夫だよね…?多分…。

 

ドミナントは長門と共に列に並ぶ。

 

「…ところで、欲しいものとは?」

 

「…あ、あれだ…。」

 

長門が指さす。ジナイーダの頼んだものの違う味バージョンだ。ドミナントは額に手を添える。

 

「マジでか…。」

 

「?」

 

ドミナントがショックを受けている最中に長門は既に買ってきてくれた。

 

「…仕事が早いな…。長門も…。」

 

「ああ。艦隊に的確な指示をしなければならない分な。」

 

そして、ジナイーダと座った席に座る。

 

「……。」

 

……何か、店員が見てるんだけど…。もしかして、あの時の店員…?なんで違う女の人を連れてきているんだろうとか考えているよね?あれ…。てか、見られてるならこれどうするんだ…?2人で一緒には無理だぞ…。長門が恥ずかしそうに待っているが無理だぞ…。チラチラ様子伺っているが無理だからな…?

 

ドミナントはアウトラインを超えているものは拒否する。

 

「て、提督…。その…。…飲もう…では…ない…か…。

 

「…やめとくよ。」

 

「だが…見られているぞ…。色々とな…。」

 

「なに、逆に考えるんだ…。」

 

「?」

 

「1人で飲んじゃっても良いさ…と。」

 

「いや、駄目だろう。」

 

2人がコソコソ話す。1番端の席だから余計に目立つのだ。老け顔のおっさんと若い美人がそんなものを購入していれば気にならないわけがない。

 

「い、一緒がダメなら、先ずは提督から…。」

 

「いや、どちらが先も後もないだろう。どちらにせよ間接○スになるぞ。」

 

「…い、いや…。軍にいた頃はそれが普通であり…。」

 

「お前は娘であり、1人の女性だ。父親としても、流石にな…。てか、それほどの年齢じゃないし…。」

 

ドミナントは25歳だ。

 

「…わ、分かった…。」

 

「分かってくれてよかったよ。」

 

「だが、他人の目もあるため…。飲まなくて良いから、口だけはつけてくれないか…?」

 

「…あん?」

 

長門はあまり良く分かっていないようだ。

 

「いやいやいや…。だから、それがダメなんだって…。」

 

「……。」

 

「…そんな可愛い顔したって、絶対にやらないからな。」

 

「……。」

 

「…そんなガッカリしたような顔もするんじゃない…。…わかったよちくしょう。そのかわり、本当に飲まないからな。」

 

ドミナントが諦めて、片方に口をつける。

 

「ほひゃ(ほら)、ひゃやくほへ(はやくのめ)。」

 

「で、では…。」

 

長門が飲んでゆく。

 

……提督の顔が近い…。なんというか…。接吻をしているように見える。胸が熱く…。

 

……はぁ…。何故俺がこんなことを…。てか、何顔を真っ赤にしてんだよ。恥ずかしくなるからやめろ。

 

2人の感想がこれだ。

 

「も、もう大丈夫だ…。提督…。」

 

「そうかい。」

 

ドミナントがストローを離す。

 

……提督のことしか考えられなかった…。味も分からない…。どうなってしまったんだ…!?

 

長門は机の下の顔を俯かせて、真っ赤になって思っている。

 

……可愛い。

 

しかし、頭から煙が出ているので、ドミナントには意味をなさないようだ。




イマイチ!今回の長門の出番終了!ネタ不足!次回は吹雪と天龍か…。

登場人物紹介コーナー
神様…ある神様。
長門…長門型1番艦長門。

「長ツォコーナーだ。」
今回は長門さん。
「そうなのか?」
筆者はネタ不足なくせして、もう面倒に感じてきたからな…。
「それはダメだろう…。」
ちなみに、今回長門型の紹介をしようと思ったけど、ずいぶん更新していないので、今回は無し。
「ちょ、待…。」
長門出番はこの先必ずあると考えているので、その時にやります。
「…あるのか?」
ある。
「なるほど…。」
次回、第237話『吹雪との寧日』だ。
「寧日…。つまり、平和な1日と言うことか。」
そうだ。
「平和といえば、前に…。」
筆者だから知ってる。
「なん…だと…。」


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237話 吹雪との寧日

血が滾ってきた!
「ど、どうしたんだい…?」
艦これやACのbgmを聴いていたら疼いてしょうがない…。
「相当な戦闘狂だね…。」
まぁ、この小説も大概だけどね。
「そうかもね…。」
通常じゃ絶対に倒せない強大な敵たち…。裏で暗躍する影…。名もなき過去の英雄たち…。オーバーテクノロジー…。…ロマンじゃない?
「…よく分からないな…。」
まぁ、これらが一旦終わった後は普通のイベントとか史実に関係するように直して行くんだけどね。
「へぇ〜。…でも、いつになるのかな…?」
さぁ…。1年後は確定だね…。今から毎日投稿しても1年はかかる…。最終編を書いていて気づいたよ…。…ナニコノカズってね…。
「どれだけ書いたのさ…。」
最終編を少しだけ一般公開出来るくらい。
「よく分からないな…。…ところで、深海棲艦が主役のゆるゆる小説は…。」
あれは嘘だ。
「えぇ!?」
ここは叫ぶところだけど…。
「本当?」
いや?本当は出来てる。でも、ある程度話数を完成させてからじゃないと詰む…。
「溜め込みすぎじゃないかな…?」
しょうがない。案がうじゃうじゃ出てきたんだから…。
「デート編は?」
死んだ。…と、そろそろゲストを紹介…。出来ないんだったな。シグレン。頼むよ。
「ま、また僕…?」
うん。アシスタントの特権。君にはあらすじをやる権利と義務がある。
「わ、わかった…。」

あらすじ
前回、長門さんがウキウキしていたような…がっかりしていたような…。


…………

翌朝

 

「…きつい…。」

 

ドミナントが机の上で手をブランとさせて頬を机につける。やる気なさが見るだけで伝わっている。

 

「…今日はブッキーだっけ…?それとも天龍…?」

 

ドミナントがもうどうでも良さそうに呟いた。

 

……いっそのこと逃げちゃおうかな…。いや、でも逃げたら逃げたでまた大変なことに…。いつもの心優しいセラフが鬼になって俺を探すと思うし…。約束破ったら殺されるし…。

 

ドミナントが机の上で悶々としている。

 

……吹雪たちに正直に話そうかな…。てか、もうなんでも叶う券とか廃止にしようかな…。褒美もこれだと身が持たない…。実際、深海棲艦を倒すよりもキツいし…。命の危険がないだけで、とても重労働…。報酬を貰わないとやっていけないくらい…。…でも、実際、吹雪の持っている元帥発行の券には逆らえないし…。天龍も、吹雪が勝手に承諾したけど、入れ替わっていたとバレたら混乱するから行かなきゃだし…。

 

そんなことをずっと考えていると…。

 

「しれーかんっ。」

 

「うお…。吹雪か…。」

 

吹雪が顔を覗いてきた。

 

「すごく疲れ切った顔ですね…。」

 

「ああ…。この連続する日々が終わったら数日間休暇を取るぞ…。滅多に使わない有給まで使ってな…。部屋に引きこもる。」

 

「たまには外で運動とか…。」

 

「運動なんてしたら死ぬぞ!みんな死ぬ!」

 

「なにを言っているんですか…。それより、早く行きましょう。」

 

「…どこへ…?てか、プラン練るの忘れてた…。」

 

「司令官は忙しいと思いましたので、私がプランを立てておきました。司令官は今日は休んでください。」

 

「……。」

 

……吹雪…。めちゃくちゃ良い子じゃないか…。

 

ドミナントはテキパキとしている吹雪を見ながら思う。

 

「…ところで司令官。」

 

「なに?」

 

「今日疲れているのなら、外じゃなくて鎮守府にしますけど…。どうしますか?」

 

吹雪が言う。その顔は心底心配そうな顔だ。

 

「…大丈夫だよ。ちょっと重労働に感じただけ。」

 

「それなら、ダメですね。」

 

「え…。」

 

「はぁ…。司令官。そういう、女の子からデートに誘われた時に重労働とか思っちゃダメなんです。もっと言えば、面倒とも微塵も思っちゃいけないんです。」

 

「……。」

 

「折角苦労して誘ったのに、重労働とか思われていると感じたら本当に悲しみますよ?無理矢理連れてこられている感を出した瞬間、女の子は楽しくなくなります。むしろ、迷惑だったと考えて自分を責め立ててしまいます。それを言うなら、金剛さんとか涼風さんとか元気の良い艦娘はとても気付きにくいです。何も気にしてないように見せて、実はとっても悲しんでいたりする、心の奥底にしまって空元気を出して装うタイプです。」

 

「……。」

 

吹雪に言われて、ドミナントが思い出す。金剛と1日を過ごした時の帰り際だ。実際、金剛があの顔をしなければ全く気づいていなかっただろう。

 

「…すまんな…。」

 

ドミナントが少し考えて、謝る。

 

「別に大丈夫です。」

 

「そっか…。」

 

ドミナントが机から身を起こした。

 

「吹雪の話聞いてたら疲れ切っていた俺の心が少し楽になった。ありがとう。」

 

「いえいえ。」

 

吹雪が笑顔になる。

 

「ゆるゆるだね。」

 

「こういう、たまには平和な日常があっても良いですよね。」

 

2人が笑顔になって、ほのぼのする。

 

「…ところで司令官。」

 

「なに?」

 

「思ったんですけど…。ヒゲって剃っていますか?」

 

「まぁ、たまにね。」

 

「だから老け顔なんじゃないでしょうか?」

 

「なんか失礼だぞ…。吹雪…。」

 

ドミナントが苦笑いをする。

 

「そうだっ!司令官!暇なら剃りに行きましょう!」

 

「え…。でも今日…。」

 

「いいから!」

 

「…はい。」

 

吹雪に手を掴まれて、洗面所へ行かされる。そして、ドミナントは髭を剃った。

 

「…これで満足?」

 

「……。」

 

「…吹雪?」

 

吹雪はじっと、ドミナントの顔を見ていた。

 

「おーい。」

 

吹雪が固まったままのため、ドミナントが手を振ってみたり、おでこに手を当てたりする。

 

「…ふぇっ!?し、司令官!?」

 

「やっと目が覚めたか。」

 

「は、はい…。」

 

ドミナントが言い、吹雪がしどろもどろしながらも返事をする。

 

「…司令官が老け顔じゃない…。」

 

「そりゃ、髭を剃ったからな。」

 

「とても若く見えます…。いつもなら、髭のお陰で少し慣れてきたベテランに見えますが、こちらは若手優秀ルーキーに見えます…。」

 

「髭を剃っただけでそんなに変わる?」

 

吹雪がドミナントの顔をじっと見ている。

 

「…変?」

 

「い、いえ!そんなことありません!」

 

……何というか…。今までは気の良いおじさん要素がありましたけど、これはダメです…!その要素が無くなったせいで、恋人要素が…!

 

吹雪は顔を赤くして悶々する。そこに…。

 

「あっ、おい提督〜。ここにいたのか…て、誰だ!?」

 

振り向けばそこにいたのは天龍。警戒心丸出しだ。

 

「俺だ…兄弟。」

 

「誰だ…?」

 

「ドミナントだ。」

 

「提督はそんなに若くねぇ…。若くても老け顔だ…!浅ましい嘘をつくな…!」

 

「いや、本当なんだけど…。てか、老け顔で認識してるのね…。お前たちは。」

 

ドミナントが苦笑いした。

 

「て、天龍さん…。司令官です…。髭を剃っただけです…。」

 

「…え…?」

 

天龍がマジマジとドミナントの顔を見る。

 

「…そんなに見られると恥ずかしいのだが…。」

 

「…紅茶…。」

 

「あん?」

 

「標高400から500、ある地方の名前、苦味も香りもあまりなく、さまざまなバリエーショ…。」

 

「キャンディ?」

 

「…提督だな。」

 

ドミナントが即答して天龍が確信する。

 

「答えは知らねぇけど、即答したってことは提督だ。ただの人間なら数秒は悩むはずだ。」

 

「紅茶に詳しかったらそいつが提督なのかい…。」

 

天龍がやれやれとして、ドミナントがツッコミを入れる。

 

「ところで、何か用だったのかい?」

 

「おう。実はよ。明日出かけるだろ?」

 

「そうだっけぇ?」

 

「そうだ。明日どうすんだって話だ。」

 

「明日…ねぇ。今夜ゆっくり考えるよ。」

 

「今夜かよ…。」

 

「仕方ないじゃん。一応、今日はブッキーと過ごす予定だし。」

 

「…は?」

 

「いや、今日はブッキーと…。」

 

「前セラフから断られたのは他の女の方が良かったからなのか…?」

 

「いや、そんなわけな…。」

 

ドミナントは、ふと視線が気になり、窓の外を見た。龍田が覗いていた。

 

「…そんなわけないじゃん。」

 

龍田が怖い笑顔をしている。

 

「いいかい、天龍。ブッキーは実はな、5日くらい前に約束していたんだけど、色々あって今日になっちゃったんだ。その前にも色々限定とか、日にちが決まってしまっているものを要求されてさ。だから、天龍の約束も後の方になったんだよ。誰が良いかなんて、順位つけられないし。みんな大事だし、みんな好きだから。」

 

ドミナントが天龍の頭を撫でながら言う。

 

「だから、明日まで我慢。…出来るかな?」

 

「…ぉぅ…。」

 

「そう。天龍は偉いね。とても優しいよ。」

 

「ったりめーだろ…。俺が1番強いんだからよ…。」

 

……頭撫でてもらって、嬉しそうに目を細めながら言ってるよ。…可愛いなぁ。

 

ドミナントは癒しを求めて、数分間ずっと天竜を撫でていた。

 

…………

 

「司令官、そろそろやめてあげないと…。」

 

「?お、おう。そうだな…。」

 

ドミナントは天龍を撫でるのをやめた。天龍は気持ち良すぎてボーッとしたままだ。

 

「じゃ、天龍。また明日。」

 

「それでは…。」

 

ドミナントと吹雪が去る。そして、数分後…。

 

「…ハッ!?お、俺は一体…。」

 

「提督ならとっくに行っちゃったわよ〜。うふふっ♪」

 

「…そうなのか…。」

 

天龍は残念そうに言った。

 

…………

 

「ブッキー。」

 

「はい。」

 

「今日どこにも行かないの?」

 

「う〜ん…。」

 

吹雪が悩んでいる。

 

「…たまには…。夕食だけ外で食べに行きませんか?」

 

「おっ、いいね。それ。じゃ、夜ご飯いらないってセラフに伝えておくよ。」

 

「はいっ!」

 

吹雪が嬉しそうに頷く。

 

「…それにしても、暇だねー…。」

 

「…たまには安心した日も良いじゃないですか。」

 

「…まぁ、忙しいより暇な方が良いか。それに、国を守る俺たちが忙しい世の中じゃ駄目だしな。」

 

「忙しかったら、毎日戦争が激化している証拠になっちゃいますからね…。」

 

「ね。」

 

ドミナントと吹雪は机の上でトランプを広げる。

 

「…もう1人くらい呼ぶ?」

 

「2人だけだと流石にですし…。」

 

吹雪が微妙な顔をして、携帯を出してLENIする。

 

「吹雪型の皆さんでも呼びますか?」

 

「お、おう…。それはやめて…。」

 

「なら、時雨さんとか…。」

 

「何故時雨…?」

 

「主人公仲間です。」

 

吹雪がLENIをして数分後、時雨が来て神経衰弱をした。艦娘である吹雪たちは情報の重さを理解している。もちろん、元社畜のドミナントも理解しているが、艦娘ほど活用したことがない。つまり、ドミナントは最下位になった。

 

…………

 

「最下位ってろくなことがないな…。」

 

「「ごちそうさま(です)!」」

 

「へいへい。」

 

3人は間宮さんのお店にいる。餡蜜を奢らされたのだ。

 

「あら、提督。お久しぶりです。」

 

「間宮さん。お久しぶりです。」

 

2人とも深々とお辞儀をする。

 

「伊良子の姿が見えませんが、いずこに…。」

 

「今日はお休みです。ちなみに、今夜の酒保は『居酒屋鳳翔』となっております。」

 

「おぉ…。鳳翔さん。」

 

話に割って入ってきたのは鳳翔さんだ。

 

「今までお目にかかりませんでしたので…。」

 

「そうですね。初めて話した気がします。」

 

「提督が酒保へ来てくださったのは、丁度私がお休みの時だったので…。」

 

「そうなんですか〜。」

 

ドミナントは真面目に話を聞いた。

 

「提督は今日…。」

 

「すみません…。今日は吹雪と先約がありまして…。」

 

「そうですか…。では、また今度いらしてください。」

 

「必ず行きます。」

 

鳳翔さんは会話した後、店の奥の部屋へ行った。

 

「少しガッカリしていましたね…。」

 

「…でも、あまりお酒は得意じゃなくて…。」

 

「それは知っています。」

 

ドミナントがバツの悪そうな顔をした。

 

「お酒…飲むとね…。」

 

「どうなるかご存知です。」

 

「司令官が酔うと、陽気になって一人一人の良いところを包み隠さずにストレートに言うじゃないですか。しかも人によっては大胆になって、少し強引になったりするじゃないですか。」

 

「提督はなんだか、僕たちの弱点を突くのがうまいからね。」

 

「そんなつもりはないのだが…。」

 

皆がやれやれとする。

 

「さてと…。皆食べ終わったみたいだし、そろそろ店の邪魔になるから行くか…。」

 

ドミナントが立ち上がる。吹雪たちは餡蜜を食べ終わったところだ。

 

「久しぶりに娯楽室に行くか…。」

 

「そうですね!」

 

「僕は用事があるから…。」

 

お会計を済ませながら3人が言う。時雨は用事があるらしく、一人で部屋へ戻って行ってしまった。

 

…………

娯楽室

 

「この時間に誰もいないなんて珍しい…。」

 

「本当ですね…。」

 

吹雪が周りを見渡す。誰もいない。いつもは賑わっていてうるさいくらいなのにだ。

 

「…あっ、そうか。今日は主任の演習日だ。」

 

「あー…。て、ことは知らずにここに来た艦娘たちは全員連れられて…。」

 

「ま、一応今日は吹雪とデートみたいなものだからね。この広い空間を自由に使うか。」

 

ドミナントがテレビの前の座布団に座る。

 

「吹雪も隣に…。」

 

「はい。」

 

「…て、またそこ?テレビ見れないんだけど…。」

 

吹雪はまたドミナントの膝の上だ。

 

ピッ

 

『深海棲艦による目撃情報が例年よりも少なくなり、生物的にも数が減少しているのではないかと言う声が…。』

 

「例年より少なくなって、暇で良いですよね。」

 

「まぁな。」

 

ニュースを見て、2人がそんな感想を述べた。が。

 

「でも、引っかかるよね…。」

 

「何がですか?」

 

「いや…。いくら秘密にしているとはいえ、ミッドウェー、渾がいたんだよ?」

 

「まぁ…。」

 

「それで目撃情報が少ない…。おかしいよ。あんな化け物が一斉に動き出したんだよ?今まで無かったのに。深海棲艦たちも大騒ぎで目撃情報が増えるはずなのに、逆に減っている…。おかしすぎやしないか?」

 

「…そうですね…。」

 

「レイヴンの勘だけど…。今にとんでもないことが起きる気がする。」

 

「……。」

 

ドミナントがそんなことを言う。いつもなら、笑って気にしないはずのドミナントが怪しんでいる。

 

『あいつら何か企んでいる気がするんだよね。なんて言うか…。静かすぎるんだよ。嵐の前の静けさって感じ。』

 

吹雪はふと、佐藤中佐の言葉を思い出した。彼女も元レイヴンだ。

 

「……。」

 

そう思うと、今まで気にしなかった…わざと気にしないようにしていたが、改めて実感する。すると、嫌な胸騒ぎがして止まない。

 

「…これから、どうなるんでしょうか…。」

 

「…武蔵が言うには、まだまだ幹部がいるらしい。攻めてくるだろうな。俺たちは1人を沈めて、もう1人を沈める手伝いをした。相手からは要注意鎮守府だと認識されているだろう。残りの幹部たちを引き連れて一斉に叩いてくるかもしれない。」

 

「そうなったら…どうなってしまうんでしょうか…?」

 

「さぁね。ま、俺の言ったことはあくまでも、俺の思惑。相手がそうするとは限らない。…まぁ、下手に挑んで数を減らされるより、一斉に叩いた方が確実に潰せるからね…。俺ほど用心深かったらそうなる。…まぁ、そう来ても対処できるようにしなければいけないけどね。課題だよ。俺たちの。」

 

「……。」

 

「何、心配するな。相手も俺たちをよく知らないから、下手に動けない。それと同様、俺たちも相手のことをよく知らないから動けない。情報戦だよ。まずは。…でも、2年前の敵幹部のデータはこちら側に存在する。相手は不利な状態から戦うようなものだ。」

 

「司令官は相手の弱点を…。」

 

「知らない。知ってたらこんなに苦労しない。」

 

「…ですよね…。」

 

「まぁ、俺はあくまでも提督。恐怖というのはとても大事だ。勝手な恐怖で相手が争いに来ないのなら、それで良い。俺たちもわざわざ潰しに行く必要がない。死ぬかもしれない戦闘は避けるのが1番。他人から情けないとか言われてもね。でも、どんなに反感を買っても自分がそれで良いのなら、そうする。好きなように生きて、好きなように死ぬ。それが、俺らのやり方だから。」

 

「……。」

 

吹雪は口元を緩ませて、心底、司令官は司令官だなと思った。

 

…………

夕方

 

「……。」

 

ドミナントが珍しくスーツを着ている。

 

コンコン…ガチャ

 

「司令官、そろそろ…。」

 

吹雪は、ドミナントのスーツ姿を見て戸惑う。

 

「吹雪か。そろそろ行ったほうが良いな。」

 

「え…えと…。」

 

吹雪は自分の服装を見る。一応出かけるようの服そうだが、少し味気ない。市販の、カジュアルな服装。

 

「す、少し待っていてください!」

 

「?」

 

バタンッ!

 

タッタッタッ…!

 

吹雪は急いで着替えに行った。

 

「…スーツは似合っていなかったか…?」

 

鏡を見て呟くドミナントだったのだ。

 

…………

吹雪型の部屋

 

「ない!これもダメ!うう…!」

 

「ど、どうしたの…?」

 

吹雪が服で部屋を散らかし、白雪が聞く。寝ていた初雪は吹雪の出した服に埋まってしまっていた。

 

「大人っぽい服知らない!?」

 

「お、大人…?」

 

突然言われて戸惑う白雪。

 

「大人…て、吹雪ちゃんまだ子供でしょう。」

 

「司令官がスーツなのに、私がこれじゃ…。」

 

「スーツ?あの司令官が?…はぁ…寝言は寝てから言いなさい。」

 

「ひどい!本当だよぉ!」

 

「第一、スーツを着てしまうとより年寄りっぽく…。」

 

「髭剃ってるから!今!司令官!」

 

「髭…。…司令官の髭がない感じが想像できません…。」

 

「皆んな髭で判断してない?」

 

白雪が考え込み、吹雪が色々服を出す。

 

「…仕方ないですね…。吹雪ちゃん。」

 

「?」

 

「これ着ていきなさい。」

 

「これは…。」

 

「最近ファッションブックに載っていた物よ。」

 

「貸してくれるの…!?」

 

「はい。…でも、ちゃんと返してね。」

 

「うん!ありがとう!」

 

吹雪は急いで着替えて、走っていった。

 

「…やれやれね。吹雪ちゃんも気になる年頃になっちゃうとは。」

 

白雪がやれやれとして、出ていこうとしたが…。

 

ムギュッ!

 

「きゃっ!」

 

「ふぬぅ!?」

 

初雪を踏んでしまった。白雪はすっ転び、初雪は丁度溝に入ったようで悶絶していた。

 

「もぅ〜!吹雪ちゃんが帰ったら説教しなくちゃいけませんね!」

 

「…!!??」

 

白雪は吹雪の服をしまいながらぶつぶつ呟いた。初雪は全て片付け終わるまで悶絶していた。幸い、身体の重要な部分にダメージは入らず、夕食までには何とかなっていた。

 

…………

 

ガチャ!

 

「司令官!」

 

「うおぅ…。ブッキー…。どうした?そんな服着て…。かわいいぞ?」

 

「ありがとうございます!…て、司令官こそどうしてスーツを…?」

 

「そりゃ…。ブッキーのような可愛い子と隣に老け顔のよれよれシャツ着たおっさんが楽しそうに会話していたら、間違いなく事案発生だからな…。」

 

「そんなわけないじゃ無いですか。」

 

「いやいやいや…。このご時世、世知辛いからね…。」

 

「……。」

 

ドミナントが儚げに言い、吹雪が微妙な顔をした。

 

…………

レストラン [大蕐]

 

せっかくだから、ドレスコードのお店来たけど…。

 

お値段が高いですよ…。

 

2人は意外とお金のかかるメニューを見てこそこそ話す。

 

しかも、周りがもうマナーが完璧…。プレッシャーだよ…。

 

吹雪と周りを見てみる。黒服の男性や、ドレスの女性が音を出さずに黙々と食している。そんなこんなをしているうちに…。

 

『お待たせいたしました。』

 

料理が来る。

 

……一皿いくらだっけ…?

 

……マナーは完璧に…。

 

2人がもう硬直。2人とも落ち着かなくて大変なのだ。

 

「「……。」」

 

2人はナイフとフォークを持ったまま、数分間手をつけられなかった。

 

…………

帰り

 

「大将、ラーメン麺を硬めにして野菜マシマシで。吹雪は?」

 

「あっ、私は脂っぽいものはちょっと…。野菜を多くしてください!あと、餃子を一皿お願いします!」

 

『はいよー!』

 

結局、ドレスコードで食べていたが、味も分からずあまり食べることが出来なかったため、ラーメン屋に寄っている。

 

「いや〜…。やっぱダメだね。ああいうの。」

 

「そうですね。私も少し緊張して…。」

 

「俺は騒ぐ系の方だからね。静かで肩肘張って、いちいちマナーに気をつけなくっちゃいけないとか…。たしかに、大事だと思うけどやりすぎは逆に楽しむことが出来ないからね。」

 

ドミナントが割り箸を吹雪の分まで取ってあげると…。

 

『へい!お待ち!』

 

「来たな。」

 

「わ〜!」

 

吹雪がラーメンを見て、目を輝かせる。

 

「じゃ、今日も1日頑張った!」

 

「はい!」

 

2人が手を合わせて…。

 

「「いただきます!」」

 

2人は店主の前で料理を美味しそうに食べたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

???

 

「オヨビデショウカ…?」

 

???がこうべを垂れて言う。

 

「…現在の状況は?」

 

???が???に言う。

 

「ゲンザイ、『コン』ト『ミッドウェー』ガヤラレテオリマス。」

 

「そう…。ミッドウェーの後釜は?」

 

「ハッ。コウホハオリマス。」

 

「そう。」

 

「シカシナガラ…。『ダイヨンサセボチンジュフ』ヲケサナイカギリ、ワレワレノショウリハムズカシイカト…。」

 

「分かっている。先ずは第4佐世保鎮守府を潰さないとね…。」

 

「ソウナレバ、コノヨウナサクセンハイカガデショウ…?」

 

「どんな?」

 

「チンジュフニドウシヲオクリコミ、ソトトナカカラコウゲキヲスルノデス…。」

 

「なるほど…。良い作戦だ。」

 

「ハッ。オホメニアズカリ、コウエイニゴザイマス…。」

 

「幹部たちの動きは?」

 

「サホドウゴキハナイカト…。」

 

「そう。なら話は早い。私の直属の部下2人を行かせようか。」

 

「イエ、アナタサマノシモベガデルマクモアリマセン。ウゴイテイナイカンブニイカセマス。」

 

「そう。なら、今回ダメだった場合、私の直属の部下を1人送る。勝利は確実に…だ。」

 

「ハッ。キモニメイジテオキマス…。」

 

「行け…。そして、勝利を我々に…。」

 

「ショウリヲワレワレニ…。」

 

???が消えた。

 

「…提督ー…。部下1人ッテ、誰ヲ送ルンダ?」

 

「そうだね…。この子を送るよ。最終的にどんなになるかが楽しみだし。」

 

深海提督が近くの窓辺で気配を完全に消していた??に言う。深海提督は脈打っている、黒い塊を手に持ち、下に落とした。すると…。

 

「ギュルル…?GLUルル…?」

 

それがイ級に変わった。

 

「さて、私の左腕になる直属の部下…。君はどんな怪物になるのかな?」

 

「?」

 

深海提督はそのイ級に向かって、不敵な笑みを浮かべた。




暗躍者がもう1人…。
相手の悲しい気持ちに気づけるようになりないなと…思います。

登場人物紹介コーナー
大蕐…大手食品メーカーの会社。一応、高級レストランも運営している。どこかの企業と似ているが気の所為である。
ブッキー…ふぶっきー。元ネタは金剛。
スーツ…ドミナントの幻のスーツ姿を見たのは吹雪が初めてである。

「長門コーナーだ。」
「吹雪です!よろしくお願いします!」
「吹雪か。」
「はい。」
「今回は艦の紹介をするか?まだやっていなかったはずだから…。」
「分かりました。ワシントン条約制限下で設計された、世界中を驚愕させたクラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、吹雪です。私たちは、後の艦隊型駆逐艦のベースとなりました。」
「当時の列強海軍に衝撃を与えたらしいな。」
「はいっ!その後も、さまざまな戦いに参加しました。当時、私の名前は『第三十五号駆逐艦』と言う名前だったけど、改名されたんです。」
「様々な戦いか…。」
「あっ、あとそう思ってみれば、神州丸さんに魚雷が誤射された時、最初は私のせいにされたけど、実は最上さんだったと言う濡れ衣も着せられたっけ…。」
「笑っていいのか悪いのか微妙なラインを言うな…。」
「実は、もっと前に深雪ちゃんは電ちゃんと衝突して沈んじゃったっけ…。」
「よく鎮守府で衝突していたのはそれが原因か!?」
「衝突しているんですか…。あと、私が沈む時のワレアオバ事件ですね…。」
「…あれか。」
「別に、青葉さんに恨みとかはありませんよ?あの海域では敵が見えず、誤射するのはよくありましたし…。単純に不運だったと思います。…でも、艦長や大切な人たちを守れずに私は…。」
「吹雪、言うな。仕方のなかったことだ。それは誰もが同じだ。それを乗り越えて、私たちはここにいる。次は守れば良い。…提督もそう言っていた筈だ。」
「はい…。」
「そうだ。次は守れるさ。私たちはあの時よりも何倍も強くなった。次は深海棲艦。勝てるさ。」
「はい…!」
「よし、なら次回予告だな。吹雪、やってみろ。」
「はい!次回、第238話『天龍との佳日』ですね。」
「また天龍か。…そうだ、提督が言っていたな…。天龍可愛がり隊がどうとか…。」
「何ですか?それ…。」
「さぁ…。」


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238話 天龍との佳日

随分と遅れました…。
「遅れたんだ。」
うん…。
「というより、遅れたって言葉正しいのかな?」
?どゆいみ?
「元々、筆者の都合によって投稿されているんだから、元々決めてあったわけじゃ無いし…。投稿すれば、どんなに遅くても続けたことになるんじゃない?」
まぁ…ね。
「ネタないの?」
うん…。
「そっか…。今回もゲストいないから、ひょっとして僕かな?」
まぁ、何でも構わないよ?めちゃくちゃにしてくれれば。

あらすじ
隠し撮りしていた画像は好きにして良いよ。


…………

執務室

 

「アーアードラゴンダイヴ♪」

 

ドミナントが一人、執務室で口ずさんでいる。すると…。

 

ガチャ

 

「おい、提督。今日は確か…。」

 

「あぁ、行くよ。行きますよ。」

 

天龍が顔を覗かせる。

 

「…てか、今日何するか聞いてなかったな…。何すんだ?」

 

「今日は妙な噂の調査だ。」

 

「…調査?」

 

「調査だ。」

 

「…マジで?どっか行ったり、遊びに行ったりとかは?」

 

「…時間があれば、行きたいが…。本来は調査と俺の訓練だ。」

 

「…そうだったんか…。」

 

ドミナントはこの流れからして、天龍からも要求されるのではないかと思っていた。

 

「ところで、何の調査だ?」

 

ドミナントが聞くと、天龍がいつの間にか書類を持っていた。

 

「まず、この不明な生き物の目撃情報だ。」

 

天龍が机に何か分からない絵を広げる。

 

「UMAか?」

 

「噂によると、歌うらしい。」

 

「歌うのか!?」

 

「しかも、目撃情報は稀だが聞く限り姿が全て一致している。幻覚や幻とは言い切れねぇ。」

 

「こんな奇妙な生き物がいるのか…?この鎮守府に…。」

 

「そりゃ…神もいるんだからいるんじゃねぇの?」

 

「…まぁな。」

 

「それに、提督こそ機械になったり人になったり…。」

 

「それを言うな。それを。」

 

「それに、1番恐ろしいのが神出鬼没なところだ。」

 

「ジナイーダやセラフにも探知されないのか?」

 

「ああ。森に現れたり、夜の艦娘寮で目撃されたり、時には屋上で歌っていたりするらしい。鎮守府の敷地内ならどこにでもいるのかも知れない…。」

 

「そんな生き物がいてたまるか。主任だろ。」

 

「いや、主任にも聞いたけどよ、しらねぇって。」

 

「……。」

 

「いや、本当だからな。」

 

「それはそうとして、何故俺に?」

 

「…暇そうだったからだ。」

 

「…まぁ、暇だよ…。」

 

ドミナントが立ち上がる。

 

「ま、とにかくこれを探せば良いんだな?」

 

「そういうことだ。」

 

「よしっ。行くか。」

 

「おう!」

 

ガチャ!

 

ドミナントは張り切ってドアを開けた。

 

「「……。」」

 

「……。」

 

…パタン

 

ドミナントがそっとドアを閉じる。

 

「…天龍。今、何か見えた?」

 

「…ああ。」

 

「……。」

 

ガチャ

 

ドミナントがもう一度ドアを開けたらいなかった。

 

「…あら〜、天龍ちゃんと提督?何をしているの〜?」

 

「あっ、龍田。」

 

「おう龍田。さっき変なものがここ通らなかったか?」

 

「変なもの…。今来たばかりだから、知りませんね〜…。」

 

「そっかー…。…龍田も探す?」

 

「……。」

 

「「?」」

 

ドミナントが聞くが、龍田は何も言わずにドミナントと天龍の顔をマジマジとみる。

 

「どうしたんだ?龍田…。」

 

「んだよ、どうしたんだよ。」

 

「…ふふふ。いいえ〜。」

 

龍田は意味ありげに笑みを浮かべた。

 

「私は用事があるから、付き合えないわ〜。天龍ちゃんをよろしくね。」

 

「?そうなのか…。分かった。天龍の面倒は俺が見よう。」

 

「面倒って言うな!面倒って!」

 

「それじゃ…。」

 

龍田は手を軽く振ってから、歩いて行った。

 

「…龍田ってお姉さんだっけ?」

 

「妹だ!馬鹿提督!」

 

間髪いれずに天龍が暴言を吐いた。

 

…………

 

「天龍〜いる〜?」

 

「いねぇなぁ…。」

 

二人が鎮守府敷地内を歩く。右を見たり、左を見たりして確認している。

 

「第一、鎮守府敷地内ってここから見える山全部でしょ?確か…。」

 

「広すぎんだよ…。調べたけど、こんなに広いのは鎮守府の中でもここくらいだってよ…。」

 

「まぁ、第4呉に行ったことあるからね…。あそこは山全部がそうだだけど、ここは“見える”山全部だからね…。」

 

二人がだらだらしながら捜索する。

 

「ところで、調べてどうするの?その…UMAってやつ。」

 

「……。」

 

「…天龍〜?」

 

天龍が黙ったままだ。

 

「まさか、こうして二人で何かしたかったからって理由だったりしてな。ははは…。」

 

「……。」

 

「…マジ?」

 

「…提督と二人きりなんてこと、全く無かったからな。」

 

「…そうだね。」

 

二人が鎮守府を歩く。

 

「気がつけば、いつも天龍の隣に龍田がいたからね。」

 

「…心配してくれんのは本当にありがてぇけどな…。」

 

「…ずっと一緒じゃ息が詰まるか。」

 

「…一人になりてぇときもある。」

 

天龍が心の想いを打ち明けるように言う。

 

「まぁ、今日は龍田が気を利かせてくれてんだろうけどな。」

 

「…まぁな。」

 

二人は一通り鎮守府を回った。

 

「…結局、その生き物はいなかったね…。」

 

「…そうだな。」

 

「…何か言いたそうだね。聞くよ?二人きりじゃないと話せない時とかあるもんね。」

 

ドミナントが堤防のベンチに、隣を開けて座った。天龍が隣に座る。

 

「……。」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言わず、話してくれるのを待っている。

 

「…提督。」

 

「なんだい?」

 

「…何でもね…。」

 

「気になるんだけど。」

 

「…提督たちつえーから、俺たちはいつか捨てられんじゃねぇかと…。そういう夢を見ちまったんだ…。」

 

「……。」

 

ドミナントは神妙な顔つきをした。

 

「天龍。」

 

「?」

 

「俺がお前たちを…娘のように大事な君たちを捨てると思う?」

 

「夢を見ちまったんだって…。」

 

天龍は本気で心配しているようだ。

 

「…まぁ、そんな夢見ちゃったら怖いよね。大丈夫。」

 

ドミナントは天龍の頭を優しく撫でる。最初は嫌そうだったが、段々と抵抗しなくなった。

 

「それと、何か嫌な夢も最近見た…。」

 

「どんな夢?」

 

「何か恐ろしいよく分からない奴らが、俺たちを沈める夢だ…。」

 

「何それ?俺が守って…。」

 

「それに、提督も…何故か、俺たちに向けて照準を合わせていた…。」

 

「酷いな。天龍、俺に恨み買うようなことした?その日…。」

 

「いや…。だから、何か行動を起こさなくちゃいけない気がしてよ…。提督と一緒にいたかったのはそれが原因なんだよ…。」

 

「……。」

 

ドミナントは何と言っていいのか分からない。天龍は本気で心配して、そんな恐ろしいことの夢を見て怖かったのだ。

 

ギュッ

 

「な…!?」

 

「天龍、大丈夫だよ。それは夢さ。ただの悪い夢。こうすれば、安心できるかな?」

 

「……。…うん…。」

 

ドミナントは自然と、天龍を…少しだけ震えていた天龍を抱きしめていた。

 

…………

数分後

 

……やべぇ…。今のところ龍田に見られたら殺されるどころじゃ済まないんじゃないか…?でも、父親として娘の心配を緩和させるのは当然だと思うし…。でも、許可を得ずに勝手にしてしまったし…。あれ?これ、憲兵に連行じゃね…?やべぇ…クビを切られちまう…。仕事のクビかもしれねぇし、本当の首かもしれねぇ…。てか最近、ちょくちょくと鎌の幻覚が見えてるし…。やべぇよな…?ヤヴァイよな…!?俺、今実はめちゃくちゃピンチなんじゃない…?てか、天龍かわいすぎるだろよぉ…!艦娘がめちゃくちゃかわいすぎるじゃねぇかよぉ…!実質無理ゲーじゃねぇの?こんなかわいい子たちに愛情を与えるなって…!

 

ドミナントはそんなことを考え込む。もれなく、そろそろ死神による制裁が起きそうだ。

 

「お、おい…。提督。考え込んでどうした…?」

 

「…いや…。別に…。」

 

ドミナントの考えは他所に、天龍は別のことを考えていた。

 

……やべぇ…。こんなことになるんだったら、遠征終わって風呂に入っとけばよかった…。汗臭かったか…?提督が俺に汗臭い印象なんて持たれたら死ぬ…。余裕で死ねる…!気を遣って言わないかもしれないから余計に怖い…。龍田の言う通りに素直に風呂へ入っておけば、水準を高く超えてるってアピールできたんじゃねぇの…?もしかしたら、「天龍汗臭いねーww世界水準高く超えてるから頑張っているのかなwww?」なんて言われたり、思われたりしたら…。

 

二人とも別の意味で顔が真っ青だ。

 

「提督!」

 

「天龍!」

 

「あ…いや、提督から先に良いぞ…。」

 

「い、いや、天龍から…。」

 

「提督からにしろよ…!」

 

「天龍からでいいよ…!」

 

二人がわいわい騒いでいると…。

 

ヒュッズガッ!!

 

「ひぇ…!」

 

目の前に、どこからか飛んできた薙刀が…。

 

「あら〜、そっち行っちゃったみたいねぇ〜。」

 

「た、龍田…。」

 

龍田がコンクリートに突き刺さった薙刀を回収する。

 

「今のは何かしら〜?」

 

「その…今のは…あれでして…。」

 

「な〜に〜?」

 

「い、いえ…。その…ええと…自然とそうなってしまったというか…無意識と言いますか…。」

 

ドミナントは必死に弁解する。

 

「私は天龍ちゃんに聞いてるのよ〜?ね?天龍ちゃ〜ん…。」

 

「……。」

 

「?」

 

天龍は冷や汗をかきまくっている。

 

「い、今のは…何て言えばいいのか分からなくて…そ、それにだ!言いたいことは言えたからこれで良いんだ!」

 

「言いたいことねぇ〜。昨日言っていた内容とは随分違うけれど〜?」

 

「それは…。」

 

「寝言でなんて言っていたか提督に教えちゃおうかしら〜?」

 

「?なんて言っていたんだ?」

 

「泣きながら、『提督行かないで』って、連呼…。」

 

「もういい!龍田!それ以上言うな!」

 

天龍が慌てて止める。龍田は意地悪そうに笑い、天龍がムキになる。

 

「……。」

 

ドミナントは、そんな騒いでいる二人がとても好きで堪らない。それと同時に、天龍の見た夢がどうにも引っかかっている。

 

「天龍。」

 

「だから…んあ?」

 

「その恐ろしくてよく分からない奴の形とか分かる?夢で見たって言ってた…。」

 

「あ、あぁ…。それなんだが…はっきり覚えてねぇんだ…。姿形は覚えてなくても、とんでもなく強いことは確かなんだけどなぁ…。」

 

「…でも、強さだけで俺が屈服して、敵に寝返ることはないんだけどなぁ…。お前たちを沈めるくらいなら、自爆するタイプだし…。第一、どこの世界に娘より自分が大事な奴がいるんだよ。そんな最低な奴になりたくないし。」

 

ドミナントは青い空に流れる雲、そして穏やかな波の海を見る。塩のしょっぱそうな風を感じる。

 

「…提督?」

 

「…ん〜?」

 

「どうしたんだ?」

 

「んー。こんな風もあるんだなって。」

 

「風か?」

 

天龍がそんな風を感じる。

 

「…提督ってよ。」

 

「?」

 

「何か、他の人間とは違うよな。」

 

「?どういう意味?」

 

「なんて言うか…。あれだよな?龍田。」

 

「小さなことに気づいたり、何気ない日常に、ふと足を止めて改めて感じるような、自然的な珍しいタイプの人間よね〜。」

 

「そんなに珍しいか?」

 

「「ああ(ええ)。」」

 

二人がうなずく。

 

「…なんて言うか…。気持ちがいいじゃん。天龍たちも無い?たまには遠征や出撃を休んで、携帯からも目を離して、景色を見たり…。いつも歩いている道に、いつのまにか知らない花が咲いていて、それに気づいたような新たな発見。」

 

「本当にたま〜にな。」

 

「ほら、そこ。」

 

「「?」」

 

ドミナントが指差し、天龍たちが足元を見る。そこには、小さなレンゲが咲いていた。

 

「気がつかなかった…。」

 

「春の訪れかな。少し早いけど、この温度じゃこうなるか。」

 

ドミナントがそのレンゲを見る。

 

「ほら、少し楽しかったでしょ?」

 

「…ああ。」

 

「ええ。」

 

3人はそんな花を見たあと、再度ベンチに座る。

 

「…潮風だな。」

 

「耳を澄ますと、駆逐艦たちの声が聞こえるな。笑っていて…怒っていて…楽しんでいる。」

 

「ちょうど、運動場からね〜。」

 

3人がぼーっと、海を眺める。太陽の光が少しチリチリとする。風が吹くと寒い、なんだかよく分からない感じだ。

 

「…駆逐艦たちが騒いでいるね〜。」

 

「楽しそうね〜。」

 

「歌ってもいるなぁ〜。」

「ボクカワウソ〜。」

「歌ってるか〜?」

 

「歌っているわよ〜。」

 

「聞こえないのか〜?」

 

3人がのんびりとしながら海を眺める。

 

「ボクカワウソ〜。」

 

「本当だ〜。何か聞こえるな〜。」

 

「変な歌ね〜。」

 

「そうだなぁ〜。『ボクカワウソ〜』って歌っているな〜。」

 

「そうだな〜。…て!噂のUMAじゃね!?」

 

ドミナントが振り向いて見ると、鎮守府の屋上で歌っているではないか。

 

「天龍、噂のUMAが…。」

 

「スー…。」

 

「くかー…。」

 

天龍と龍田は寝てしまっていた。

 

「よく分からない生き物だな…。あんなの見たことない…。」

 

ドミナントが、天龍の資料をめくっていると、キリン改二と書かれたページを見た。

 

「いやいやいや…。流石にキリンはおらんだろ…。この地域に…。」

 

そして、写真を見つける。

 

「どれ…。…キリン…?」

 

呟いていると…。

 

『ピ・・・ギュラー』

 

キリン?が見えた。

 

「キリン…?いや、あれ違うだろ。鳴き声からして…。」

 

ドミナントは写真をマジマジと見る。

 

「どうだろうか…。」

 

ドミナントはボクカワウソを見ようとしたが、既にいなかった。

 

「キリンは…。」

 

キリンもいつの間にか消えていた。

 

「…まぁ、いっか。」

 

ドミナントは考えることすら面倒くさくなり、天龍たちに上着をかけてあげた。

 

…………

2時間後

 

「ハッ!?」

 

天龍が起きる。

 

「ここは…。」

 

「執務室のソファー。」

 

「て、提督…。」

 

天龍が、呑気に紅茶を飲んでいるドミナントを見る。起こして欲しかったのだろう。

 

……ん?けど待てよ?て、ことは提督が運んでくれたのか…。良いところあるじゃねぇか。提督。

 

と、天龍は思う。しかし、実際は龍田が運び、ドミナントが上着をかけたのだ。ドミナントは寝ている者の近くに寄らない。一度教訓を得ている。

 

「というより、ソファーなんてあったか?」

 

「置いた。よく執務室で艦娘が寝るからね。椅子に座らせたままだと身体を痛めるから。」

 

「ふーん。」

 

天龍は色々と、新しいソファーの座り心地や寝心地を確かめている。

 

「…いいソファーだな。」

 

「セラフ製だからな。そりゃ良いだろう。そんじゃそこらに売ってないって言ってたし…。何か、良い材料で作ったらしい。」

 

「へぇ〜そうなのか。」

 

ドミナントは紅茶の二杯目を飲み始め、天龍の分もカップに入れる。

 

「ほれ、熱いぞ。気をつけて。」

 

「おう。サンキューな。」

 

ドミナントは天龍の隣に座り、カップを渡す。

 

「確かに、触り心地は良いな。…どうしたんだ?」

 

カップを見つめたまま動かない天龍。

 

「すまん、提督。」

 

「?」

 

「俺、実は熱いの苦手なんだ…。」

 

「猫舌かい。早く言ってくれ。」

 

ドミナントは天龍のカップを回収して、何やら材料置き場をガサゴソ探している。

 

「天龍って、苦いのとか無理?」

 

「甘い方が良い。」

 

「りょーかい。」

 

ドミナントは砂糖や、冷蔵庫から氷を取り出して、入れる。

 

「あとは、薄くならないように少し濃くして…。」

 

スプーンで混ぜるドミナント。

 

「はい、アイスティー。ストレートだから、少し渋みが残っちゃうからね。色々やった。」

 

「おお。あまり苦くないな。というより、苦さと甘さが良い感じだ。」

 

天龍はゴクゴク飲む。

 

「さてと…。」

 

天龍が飲み終わったと思ったら、立ち上がった。

 

「提督、いっちょ稽古つけてくれ。」

 

「え…。セラフとかに頼もうか?」

 

「いや、提督じゃねぇとダメだ。」

 

「な、何故…。」

 

「提督は…なんて言うか…。教官たちとは違う独特な戦法や動きをしているからいい訓練になるんじゃねぇかって。」

 

「マジかぁ。」

 

…………

演習場

 

「はい、俺の勝ち。」

 

「くそー…。提督とならワンチャンあると思ったんだが…。」

 

いくつもの戦場を渡り歩いたドミナントの勘や機体の強さによって天龍を完全敗北に追いやった。

 

「軽量二脚型にブレードで挑むのはアウトだよ。」

 

「うっせ!これと小さな砲しかねぇんだよ!」

 

天龍は自分の刀を見せる。

 

「ま、いっか。それより戻ろう?この姿になるべくいたくないし。これで何か損傷でもしたら大損害だからね。」

 

そんなことを言いながら、ドミナントは戻って行った。

 

…………

 

「ふぁ〜…。気づけばもう3時だ。」

 

「そうだな。」

 

執務室で大欠伸をしたドミナント。

 

……こりゃ、俺の赤疲労合図だな…。明日は恐らく一日常部屋に引きこもって寝てるだろう…。

 

そんなことを思うドミナント。

 

「なぁ、提督。」

 

「?」

 

「何か、甘いもん食べにいかねぇか?」

 

「甘いもの…。」

 

ドミナントが想像したり、自分の腹に聞いてみる。

 

「…行く。」

 

「よっしゃあ!」

 

「…最近出来たケーキ屋さんにも行く?」

 

「ケーキか。分かった。」

 

天龍は洋菓子と聞き、少し不安そうな表情をした。

 

…………

 

「ん〜!」

 

「……。」

 

……クソかわゆす…。

 

天龍の幸せそうな顔を見て、ドミナントは思う。心底美味しそうに、目を細めて、頬は緩み、味わっているのだ。

 

「あら〜?どこを見ているのかしら〜?」

 

「い、いえ。どこも…。てか、龍田も来たんか。」

 

「天龍ちゃんが行くならどこまでも〜。」

 

龍田も来たようだ。龍田は上品にケーキを食している。

 

「新しい店だけど、まぁまぁ甘いところだね。糖分を吸収できるよ。」

 

「糖分?」

 

「そう。こう忙しい日々を送ると、どうにも甘いものが欲しくなってな。」

 

「糖尿病よ〜?」

 

「まだそんな歳じゃねぇし!てか、良いじゃねぇか!」

 

「また太るぞ…?提督…。」

 

「悪かったな。てか、知ってたのかよ。」

 

天龍がちゃっかりドミナントの苺を食べていた。そして甘酸っぱそうに目を細めたその顔もまた可愛い。

 

「はぁ…。色々と大変なのよ…。提督って。」

 

「あら〜?私たちが迷惑をかけていると言いたいの〜?」

 

「い、いや。そんなことはないんだが…。あれだよ…。また年に一度の大本営集会に呼ばれてね…。誰と行こうかと迷っているんだ。」

 

「大本営にまた行くのか?」

 

「うん…。色々と報告しなければならないことが多くてね。大本営に集まって、情報を共有して対策をするような感じ。次は、俺たちの存在は一応秘密だから、私服で来て良いってさ。」

 

「もう大半の鎮守府にはここバレてんだろ…。てか、一般人にもほぼほぼバレてるぞ…。ここ…。」

 

「まぁね。でも、バレすぎると大本営がどのようなことを強要してくるか分からないし…。もしかしたら、俺やお前たちがバラバラに所属される未来もあるし…。」

 

「大本営潰すか?」

 

「なんでお前たちはそう物騒なんだよ…。潰すな。他人を蹴落とそうとするのは俺の世界だけで十分だ。ここではまったり生活を望んでいる。…その俺が大本営を潰そうと思うか?」

 

「…いや。」

 

「だろう?だから、そう無闇に物騒なことを言うな。駆逐艦たちの教育に良くない。言いたいんなら、他の鎮守府への異動が決まるが?」

 

「い、いや。それは遠慮しておく…。」

 

いつの間にか、ドミナントのケーキは消えていた。誰かと誰かが食べてしまったのだろう。

 

「さ、食べ終わったのなら出よう。長話は店に迷惑だ。」

 

「お、おう。」

 

「は〜い。」

 

ドミナントが会計をして、天龍たちは何ともなさそうに店を出た。

 

「ひっさびさに甘いもん食うのはうめぇな〜!」

 

「そうね〜。ふふふ。」

 

二人が話しながら歩いていると…。

 

ドンッ

 

「っと…気をつけ…!」

 

何者かの二人組にぶつかり、天龍がよろけて怒声を浴びせようとしたが…。

 

「「……。」」

 

「ぅ…。」

 

二人の鋭い視線に萎縮してしまった。

 

「ちょっと〜?ぶつかっておいて謝らないの〜?」

 

「……。」

 

「なに?どうした?トラブルか?」

 

ドミナントが店から出て、天龍たちの所へ駆け寄る。すると、野次馬が集まってきた。

 

「……。」

 

二人組の一人が、もう一人に耳打ちをする。

 

「…悪かった。」

 

男二人組は頭を下げて、歩いて行った。

 

「なに?どしたの?」

 

「天龍ちゃんがぶつかっちゃったのよ〜。」

 

「マジか…。天龍。お前も謝らないでどうする?…天龍?」

 

ドミナントが天龍の表情を見る。見たことのない表情だ。

 

「…提督。」

 

「あっ、やっと目が覚め…。」

 

「あ、あのな…!……。…いや、なんでもねぇ…。」

 

「?」

 

なんともなさそうに起き上がり、天龍が歩く。ドミナントと龍田はお互い目を見て肩をすくめた。

 

……なんだ…?あの二人は…。少なくとも、人間じゃねぇ…。人間のするような目じゃねぇ…。死肉を貪るような、カラスと同じ目だ…。人を人として見ていねぇ…。胸糞悪りぃ…。

 

天龍は内心不機嫌そうに、そんなことを思っていた。

 

…………

 

「もうすっかり夜だ。」

 

「夜ね〜。」

 

鎮守府の屋上で、ドミナントと龍田が星空を見る。

 

「俺が1番つえーんだぞー!」

 

天龍は何故か星に向かって叫んでいる。

 

「天龍は何してんだよ。てか、寒いだろ…。」

 

「寒くねぇ!大丈夫だ!」

 

「んなわけあるかい。こっちこい。カイロ渡したる。」

 

ドミナントが天龍にカイロを渡す。

 

「あら〜?私には無いのかしら?」

 

「あるよ。」

 

龍田にもカイロを渡した。

 

「「あったかい…。」」

 

「そりゃどうも。お陰でこっちは寒いがな。」

 

ドミナントが屋上のベンチに座る。

 

「冷たい…。いつか、天体望遠鏡でも設置しようかな…。エアコン付きの…。」

 

「お、いいな。でも金かかるんじゃね?」

 

「莫大なお金かかる。」

 

「なら無理じゃない〜。」

 

「まぁ…ね。今は無理だけど、いつかね。」

 

ドミナントの隣に二人が座って、話す。

 

「…のんびりするのも良いわね〜。」

 

「ボクカワウソ〜。」

 

「んあ?何か聞こえたな。…まぁ、いっか。」

 

「あのカワウソはもう忘れろ…。面倒だ…。俺は面倒が嫌いなんだ…。」

 

当初の目的をすっかり忘れていた天龍。ドミナントらはしばらくしたら鎮守府へ戻って行った。

 

…………

天龍型の部屋

 

夜、寝る前に天龍が何か書いている。

 

「……。」

 

「あら〜?何してるの〜?天龍ちゃ〜ん。」

 

「なっ!?た、龍田!何でもねえ!」

 

「ん〜?」

 

「何でもねえって!さ、寝ようぜ!早く!」

 

「気になるけど、寝ようかしら?」

 

「おう!それが良い!」

 

「ふふふっ。」

 

龍田は内容が分かったような不敵な笑みを浮かべた。天龍が書いていたのは日記だった。内容は、ドミナントとの1日の感想であり、とても楽しかったようだ。




長い…。

登場人物紹介コーナー
天龍…天龍型1番艦天龍。今回、あまり活かすことが出来なかった…。やりたかったことと違う内容になってしまった…。フフ怖要素や、活発なところを活かせなかった…。また天龍回があるので、その時に頑張ります。武器は刀。眼帯をしていて、頭に電探が付いている。
龍田…天龍型2番艦龍田。いつも天龍と一緒にいる。お触りしようとすると、腕がなくなる恐れ大。

「長門コーナーだ。」
「今回は世界水準を軽く超えた俺だな!」
「天龍か…。」
「嫌そうな顔してどうしたんだ?」
「…いや…。」
「俺は世界水準を軽く超えている!」
「と、本人は言っているが、確かに完成当時は世界水準を超えていた。」
「だろう!」
「だが、時代が進むに連れて…。小さな存在(船体)が災いして改装ができなくなって、段々性能が劣ってきたのか…。」
「バカなっ!」
「バカなって…。資料に書いてあるぞ。」
「その資料が間違っているんだ!」
「……。…だと良いな。そして、色々活躍した後、潜水艦によって轟沈か…。」
「日本海軍初の潜水艦にやられた軽巡って言われてんよ…。」
「まぁ、そう気を落とすな。潜水艦にやられた者は沢山いる。…乗員の多くが無事だっただけ良いじゃないか。」
「…そう言ってもらえんならありがたい。」
「うむ。…そろそろ次回だな。」
「おう、分かった。次回、第239話『ドミナントの一人の一日』みてーだな。提督が一人…か。」
「提督の一人…か。想像ができんな…。そうだ、一人と言えばこの前山風が…。」


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239話 ドミナントの一人の一日

吹雪がマジでイレギュラー。
「?どうしたんだい?」
いや、この後のことを書いていてね…。吹雪一人で…おっと、これ以上はいけないな。
「気になるけど。」
それと、一旦300話でこの小説を完結させようと思う。
「…うん?」
最初から見直して、色々と変えるから…。要らない話を消すから。第一、この小説は艦core…なのに、色々と属性をつけすぎたからね。
「まぁ、そうだね…。」
つまり、最終章はまだまだ先になるということ。
「気の長い話だね。」
それに、他の小説も書かなくちゃだし…。筆者も色々忙しいし…。
「ふぅーん。」
じゃ、あらすじ頼むよ。
「わかった。」

あらすじ
僕の方では、特に色々…なかったね。


…………

第4佐世保 提督自室 朝

 

コンコン…

 

提督自室…。ここはドミナントの部屋。紅茶の茶葉が飾ってあったり、道具が一式揃っている。意外と整理されており、汚くはない。そんな部屋にドアのノック音が響く。

 

ガチャ

 

「司令官、朝ですよ。起きてください。」

 

そこに本日の秘書艦、吹雪がドアを開けて中に入る。

 

「司令官?」

 

ベッドを揺さぶっても、ドミナントが起きる気配がない。

 

「もう…いつまで寝ているんですか。朝ですよ。」

 

吹雪が掛け布団をひっくり返すが…。

 

「いない!?」

 

ドミナントがいないのだ。

 

「…今日は早いんですね。執務室か食堂を探さないと…。」

 

その時、吹雪は呑気に思っていた。

 

…………

 

「司令かーん!どこですかー!?」

 

だがどこにもいないことが分かり、さまざまなところを捜索する吹雪。

 

「ここらから大声が…。あれ?吹雪さん?どうかしましたか?」

 

セラフがやってきた。

 

「司令官がいないんです!」

 

「ドミナントさんが?冷静になってください。執務室はどうでした?」

 

「今日の分の仕事と私の分の仕事はやってあったんですけど、司令官がいなくて…。」

 

「食堂はどうでした?」

 

「いませんでした…。ティーカップが洗ってあったので、朝早くに食べたような形跡はあったんですけど…。」

 

「…自室はどうでした?」

 

「いませんでした…。一つ、気になったのは出かけるようなバッグが無かったことくらいですし…。」

 

「なら、艦娘の誰かと外に行っているんじゃないですか?」

 

「いえ、艦娘の数は確認しましたが、全員いるそうで…。」

 

「…艦娘も無しに一人でどこかへ…。…LENIしてみますね。」

 

セラフがLENIをすると…。

 

「あっ、来ました。」

 

「どうでした!?」

 

「…探さないで欲しいそうです。」

 

「そんなぁ!折角クジで勝ち取ったのに…。」

 

「まぁ、1人になりたい時くらいあるんじゃないですか?ドミナントさんも…。」

 

セラフと吹雪はそんなことを話すのだった。

 

…………

草原

 

「はぁ…。」

 

ドミナントが1人、滅多に着ない私服で座っている。少し遠くには遊んでいる子供たちがいた。

 

……たまには1人になって、孤独の感覚を思い出さないとな…。最近頼りっぱなしだし…。密接になりすぎて、自分の許容範囲が緩くなり始めてるし…。

 

そんなことを思い、前夕張と行った五島椿園の芝生で横になっている。

 

……空が青い…。雲が流れているな…。今11時くらいか…。

 

そんな空を眺めて何分経っただろうか…。そよ風が吹く。

 

……気持ちがいい…。普段、鎮守府で過ごす風とは違う…。塩の香りのない風…。塩のない風はこんなだったっけ…。あの世界の臭いとも違う…。良い風…。気持ちがいい…。

 

ドミナントは目を閉じながら思う。

 

……今日一日、鎮守府のことは思い出さず、一般人の休日のようなことをするか…。…家族サービスとかはなく、1人の一般人の休日…。

 

そんなことを思い、体を起こすが…。

 

…………。…まだ寝転がっていよう。

 

このまったりとした時間を楽しむため、再び寝転がる。空だけをみて、何も思わずにただただ空を見る。流れる雲を見たりして、フレンチクルーラーなどを思い出したが、すぐに忘れた。鳥や子供たちの声がするが、それも休日と実感できて心地よい。すると…。

 

グゥ〜…

 

「!」

 

お腹が鳴る。

 

……そう思ってみれば、朝ごはんは紅茶だけだったな…。12時…。昼にはちょうど良いか。

 

ドミナントが起き上がり、一先ず街並みの揃う道路へと向かった。

 

…………

道路

 

「…ゴーゴーリムファイアエビノカラアゲ…。」

 

歩道を歩きながら、ドミナントは色々なものを見る。珍しい看板だったり、知らない道などを。

 

……何を食べようか…。魚は鎮守府で…いや、鎮守府は無い。俺は今あの頃の社畜だ。…そばか…?…否、俺は休日の一般人…。何を食べようかは自由だ。

 

そんなことを思いながら街並みを歩く。すると、ある飲食店が見えて来た。

 

「…あそこにするか…。」

 

ドミナント自身、ナマモノは食べ飽きているため、セラフなどには絶対に反対されるジャンクフード店へ入った。

 

『いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?』

 

「これをセットで一つ。」

 

『かしこまりました。店内でお召し上がりになりますか?』

 

「はい。」

 

『かしこまりました。会計は1500円です。』

 

ドミナントは店員に言われるままお釣りなしで渡す。

 

『レシートをお取りください。では、列をずれて少々お待ちください。』

 

営業スマイルをする店員に、ドミナントはすんなりと答えた。

 

『ご注文の品です。』

 

商品を手渡され、ドミナントが持ちながら店内を探す。そして、窓際に座った。午後丁度、賑わっている中では良い席だろう。

 

……いただきます。

 

心の中で思い、それを食べ始める。

 

……懐かしいな…。社畜時代…。会議が少し早く終わったときに食べたっけ…?あの世界のジャンクフードなんて、まずいはカロリー高いはでロクなことが無かったな…。だけど、この化学調味料っぽい味は同じか…。なんだか…やだな…。

 

食べながらも失礼なことを思うドミナント。そして、全て食べ終わり、片付けてから外を出た。

 

……久々のジャンクフード…。まぁまぁ美味しかったな…。次はどこ行こうか…。人が多いところは嫌だな…。…山にいたから、次は海岸にでも行くか…。

 

ドミナントは行先を決めて、その通りに歩く。歩いてすぐのところに海岸があるのだから、まぁ良かったのだろう。

 

……いつも見慣れているけど、やっぱり空と同じくらい綺麗だ。

 

そんなことを思いながら歩いていると、嫌なものが目に入った。

 

……チッ。クソが。ゴミじゃねぇか。花火に貝殻、そして火を焚いたであろう炭…。そしてプラスチック…。マジでクソだな。人間のクズじゃないか。海は母なる存在…。テメェらがこんな呑気にしている間だって、誰かが綺麗にしてるんだよ。クソが。死に腐れ。死ね。単純に死ね。海で溺れ死んで、腐って打ち上げられろ。そしてハエにたかられろ。海の生物の食料にしては汚すぎる。いや、ハエもたからないか…。…後で鑑定して持ち主に直々に行ってやる。環境破壊を嫌うセラフとジャックを引き連れてケチョンケチョンにしてやろうか…。

 

そんなことを思いながら、袋の中にゴミを入れる。

 

……ふぅ…。まぁ、こんなもんかな。

 

一通り、海岸をきれいにしたドミナント。そして、ゴミを適切な場所に捨てて、海を眺める。

 

……今日は艦娘も遠征とか無しにしたからね…。まぁ、有意義な1日を過ごしているだろう。俺が知ったことはないが…。…いかんいかん。また鎮守府のことを考えてしまった…。依存しているな…。

 

ドミナントがそんなことを考え、首を振る。

 

……海は母なる存在…か。

 

堤防に座り海を見る。少し暑い。ドミナントは何も考えず海を見る。波の音が聞こえる。鎮守府でいつものように聞こえているが、こうしてじっくり聞くのは初めてのように感じる。

 

……深海棲艦って何なんだろうな…。何のために艦娘と戦っているんだろうか…。どこから生まれたのか…いや、来たのかな…?どっちなのだろう…。そもそも、存在自体どうなんだろうか…。この世界の武器では歯が立たない存在…。…何のために艦娘を襲い、何を思って攻撃して来ているんだろう…。闘争本能なのか…あるいは…。…深海棲艦は生まれ変わって艦娘になる…。それは武蔵が証明した…。けど、深海棲艦について知らないことが多すぎる…。パラオで渾が言っていたな…。戦いたくて戦っている訳ではないと…。深海棲艦を指揮する者がいる…?深海提督…。だが、それだけだろうか…。野生動物は基本的に自らが戦ってくる訳ではない。…知らないところで世界が何かしているような気がしてならない…。今は艦娘を指揮しているけど、もし主任が艦娘に攻撃していたらラスボスエンドになっていたんだよな…。ラスボスになれば、何か分かっていたのかな…。けど、そうなったら神様もセラフもジナイーダもジャックも一緒にいなかった気がする。でも、よくよく考えたら今いる仲間は歴代のラスボスたち…。こっちがラスボスエンドなのだろうか…。…そもそも、ラスボスって何なのだろうか…。最後のボス…。何だろうけど、ボスとはリーダーのことだ。深海棲艦側から見たら、俺たちはラスボス…。艦娘側から見たら救いのヒーロー…。…皮肉だな…。見方によっては俺たちはラスボスなのか…。第一、正義と悪って何だろうか…。何をすれば正義で、何をすれば悪なのだろうか…。法律に従わない者を悪だと思うのは少し違うと思う…。法律自体、人間の作った勝手な枠組みで、それに従わない者を悪と決めつけるなら、法律を犯して人命を助けた者は悪なのだろうか…?目の前に死にそうな人間がいる。助けるためには法律を犯すしかない。それも、助けられるか不明な状態。世間では助けられたらヒーロー扱いをする。助けられなかったら、ただ法律を犯しただけの悪人扱いをする。…そもそも法律自体、正しいのか…。悪い法律も存在するだろう…。正しさなんて、個人の見方にしか判断できない。利益をもたらす者は崇め、利益をもたらさない者は蔑む。悪人にとって悪は正義だし、善人にとって善は正義…。正義のヒーローと悪の親玉…紙一重の存在か…。そうなると、艦娘自体正義なのだろうか…。けど、艦娘は深海棲艦と同じく人権がない。ただの飼い犬扱いだ。…人の定義って何だろう…。財団は機械化した自分をもう人間ではないって言っているけど…。人間自体、どう判断するのだろう…。人間と動物の違いは感情の有無…意思と肉体の有無だ。ならば、感情のある財団は人間なのだろうか…?いや、肉体が違うから人間ではないか…。ならば、俺自身元々は機械なのだろうから、人間ではないだろう。けど、俺やジナイーダたちには人権が通用している。このまやかしの姿だからだろうか…。…いや、例え機械だとバレても人権を取り上げないだろう。ならば、何故艦娘に人権は無い…?身体が資材で生成されるとしても、質感はしっかりと人間で暖かさもある。さらには感情もあって、国のために尽くしている…。だが、飼い犬程度の人権…艦娘は指揮官を求め、指揮官がいないと鎮守府を運営できない仕様になっている…。だから、権利をあげないのか…?なら、弱い者いじめをする卑怯者と同じだ。…けど、一番許せないのはそれに納得する国民だ。国民の安全を誰が約束しているんだ…?答えは提督でも、国でもない。艦娘たちだ。それでも、艦娘たちが守ってあげているのは100%の善意で、優しくて、人以上の感情を持っているからだ。なのに、何故国民は感謝しない…?守ってもらえるのが当たり前だと感じているのだろうか…?当たり前のことなんてない。普段過ごしている日常も…。今生きているのも普通ではなく、当たり前でもない…誰かが苦労して、見えないところの偶然でそうなっている…。俺が生きているのもその偶然のおかげなのだろう。深海棲艦も…艦娘も…人間も…俺も…。所詮は同じ生き物だ。人間はどうにも、自分たちが生物の頂点だと思っている節がある。いや、自分こそ人類の頂点だと思っている人が大半だ。自分の考えていることこそが正しいと思って、やるにしても周囲が反対するせいで出来なかったと…。人は失敗したら口々に言うだろう…。けど、それは単なる人のせいであり、それに賛同しないことを考えに入れなかった、自身の思慮不足のせいだ。人は責任をとって、自分が不利な立場にならないように他人を蹴落とす。…それがいかに小さく、醜く、虚しいものか誰もが気づく日が来るのだろうか…?…艦娘についての考えを改めない限り、その日が来ることはないだろう。艦娘に対してそうしているのだから。…艦娘は他人を蹴落とそうと考えたことがあるのかな…?…答えはあるだろう。艦娘も人間の感情を持っている…ならば、そう言う考えもあるはずだ。人間と艦娘の違い…数えればキリがないだろうが、俺は一緒に生活していて同じにしか見えない。いや、一緒にいるからだろう…艦娘が人類より先の生き物に見えるのは…。…そんな綺麗事ばかり思っている俺だ。社畜時代はどんなに汚いこともして来た。プライドや誇りだけでは何もできないことも知っている。だからこそこう言えるのだろう。…世の中は汚いことでいっぱいだ。おかしいと思っても、誰も否定できない…。そんな世の中だ。…人間自体、不完全な生き物なのだろう…。俺も…元帥も…国のお偉いさんも…。本来の生物は、自然の循環を可能にするものだ。人間は逆に破壊する…。と、なれば人間は生物じゃない…?第一、人間を生物と判断するのも人間の枠組みだ。人間ほど頭の良い生き物はいないが、その頭で環境を破壊することも、環境を直すことも出来る…。…だが、どちらかと言えば破壊することを簡単にやり遂げ、再生することは時間がかかる…。…やはり、破壊するのは人間なのか…。神様も言っていたな…。破壊神よりも余程手強いのは人間だって…。…そう思ってみれば、神様を作るのが人間だとも言っていたな…。最初の神が人類を作り出し、その人類が神を作り出す…。…不完全な生き物である人間に作られた神もまた、不完全な神か…。この世界を作ったのも神だと言うなら…この世界も…どの世界も不完全な失敗作なのだろう…。その世界から生まれた人間も失敗作…。…だが、それは他人のせいだ。神に責任をなすりつけているだけ…。…結局、俺もそう考えるように、烏滸がましい人間なのだろう…。…でも、俺は人間ではない。身体が機械だから…と、言い逃れもするのも人間の特徴だろう…。…人間って何なんだろうな…。艦娘ってなんなんだろう…。深海棲艦って…生き物って…。

 

ドミナントは座りながら、深く考える。そんなことを考えているともう何時間も経過していた。

 

くぅ〜…。

 

現実に戻ったのは、お腹の鳴る音を聞いてからだ。

 

「…3時半過ぎか…。」

 

ドミナントは小腹が空き、考えるのをやめて砂浜から道路へ歩き出す。すると、小さな食堂のような店が見えた。自然と、足がそこへ赴く。

 

ガラララ

 

時間も時間のため、店の中に客はいなかった。

 

『いらっしゃいませー。空いている席へどうぞー。』

 

店主が笑顔で対応してくれる。昼間の営業スマイルとは大違いだ。

 

「……。」

 

ドミナントが座りながらメニューを見る。ほぼ全てが海鮮系のものだ。おそらく、主人は漁師なのだろう。

 

「すみません。注文よろしいでしょうか…?」

 

「はい。ご注文をどうぞ。」

 

ドミナントが言うと、奥から娘さんのような可愛い子が受け付けてくれる。

 

「このアジのたたきとサザエのツボヤキを一つずつください。」

 

「分かりました。注文を確認させてください。アジのたたきとサザエの壺焼きをお一つずつでよろしいでしょうか?」

 

「はい。」

 

「では、少々お待ちください。…あっ、あとお水はセルフサービスとなっております。」

 

「はい。」

 

そして、その娘さんは奥へ行った。ドミナントは言われた通りに水を取りに行き、席に着く。

 

「……。」

 

その後もドミナントは何も喋らず携帯を手に持って帰る時間を計算していた。

 

「お待たせいたしました。」

 

30分後、注文の品が届く。

 

「…いただきます。」

 

早速、アジのたたきから食すドミナント。

 

……うまい。適度な叩き具合、薬味の調整も良くて普通に美味しい。すだちも入っていて、進む。

 

そして、すぐに食して旬の大きなサザエのツボ焼きを食す。

 

……これもまた…。磯と醤油の香ばしい香りがして、食べるとまた美味しい…。少し苦いが、食べれなくはない。肝はどうだ…?…に、苦っ!あの世界より、苦いぞ!まさに自然の苦さ!…だが、美味…。クセになる味だ…。弾力のある身がなんとも…!

 

ジーンとしながらドミナントが食べた。

 

……ふぅ…。まだ6割ほど腹は空いているが…。もういいだろう。夜は鎮守府で食べるつもりだし。

 

そう思い、会計を済ませて外へ出た。

 

…………

第4佐世保鎮守府

 

「ただいま。」

 

「遅いです!司令官!」

 

吹雪が玄関でお出迎えしてくれた。

 

「お、おう。すまん。」

 

「全く…!わざわざ私が秘書艦の日に!」

 

「そうなのか?…すまなかったな。それは。」

 

「あ!全然反省してなさそう!」

 

「だって…反省する要素ないと思うし…。」

 

「司令官が一人で行くなんてずるいです!」

 

「分かった分かった…。今度連れてくから。…て!吹雪最近外連れてったでしょ!」

 

「それはそれ!これはこれです!」

 

「訳がわからん…。」

 

ドミナントが困った苦笑いを浮かべる。

 

「むぅ〜。…はぁ…。まぁ、良いです。でも、今度は同行させてくださいね?」

 

「考えとく。で、今日の夜ご飯は?」

 

山道を進んでいたら、予想よりも腹が減ったドミナント。

 

「今日は確か…サザエのツボ焼きとあじのたたき、そしてホタテのバター醤油です。主任さんの作った。」

 

「……。」

 

「?どうしました?司令官。」

 

「…いや…。」

 

そして、ドミナントはそれを全て食したのだった。




この世界の真髄について、少し出しました。

登場人物紹介コーナー
特になし

「長門コーナーだ。」
「ドミナントだ。」
「て、提督…。」
「そう、提督だ。この小説が300話で終わると聞いてな。」
「300話で終わるらしい。つまり、もう出番も…。」
「まぁ、仕方がないだろう。筆者の言葉は絶対だ。なにをどうやっても止まらない。」
「まぁ…な…。と、そろそろ次回予告をしろとのことだ。」
「わかった。次回、第240話『修羅場の予感』らしい…。嫌な予感がするな…。」
「修羅場…か。修羅場といえばこの前提督が…。」
「わー!待て!その話は今度だ。今度…。」


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240話 修羅場の予感

遅くなりました。
「どうしてそんなに遅れていたんだい?」
300話で一度完結させようとね。それまで溜まっていた、今この間でしか掲載できない話を書いていたんだ。
「そうなんだ。」
そうとも。ちなみに、後書き前書きのネタもない。ネタは本当にたまにしか思いつかないんです…。思いつく時は、突然ピンとしますが、ピンと来ない…。
「神からの試練かな?」
ハンドアウトってやつか…。まぁいい。あらすじのゲストもいないから、時雨で。

あらすじ
吹雪が何か叫んでいたような気がする…。


…………

 

「ん〜♪」

 

ドミナントが執務室で椅子に座ってえんぴつを削っている。仕事が終わって暇なのだ。

 

「司令官、大本営から封筒が届きました。」

 

「封筒?」

 

秘書艦吹雪が持ってきた。先日の件は本日の分となったのだ。

 

「封筒の外から見てもわかる、何か書類じゃないものが入ってるな…。」

 

固形に膨らんだところがある封筒から書類を一枚出す。

 

「仕事か…?まぁいいや。名前と印鑑を…。あれ?なんだこれ?」

 

ドミナントが名前と印鑑を押した後に、内容に気づいた。

 

「ゲッ…。」

 

ドミナントが嫌な声を出したのも無理はない。

 

……ケッコンカッコカリ…か…。嫁艦認定を迫られるアレだな…。てか!名前書いちゃったよ!

 

大本営からケッコンカッコカリが来たのだ。しかも、自身のサイン付き…。

 

……選びたくないけど…正直、だんだんこのレベルだけではまだ見ぬ強敵に勝てないと思うしな…。たった一隻のミッドウェーにあんな大掛かり出撃だったからな…。

 

ドミナントは、何とか書類を見ようとしてくる吹雪をのかしながら考える。

 

……これを見せた場合、一枚しかないから、血を血で洗う乱闘が起き…るか?第一、俺は気の良いおじさん程度にしか見られていない…はず。でも目の前にいる吹雪はダメだ。きっと、流れ的にサインを書いてしまうだろう…。そうなった場合、俺も不注意だとしてもケッコン…。しっかりと書類を確認するんだった…。ちくしょう…。いつもなら、どうでもいい、他の遠くの鎮守府の考えや意見などに賛否を求めてサインを書かせるだけだから、間違って書いちまった…。大本営め…。

 

ドミナントが大本営に怒りを募らせる。

 

……とにかく、これは俺の部屋の金庫の中に入れておかないと…。吹雪にバレたら鎮守府中噂になって、書類を奪いにくるかもしれない…。一枚しかない、ケッコン…。実質正妻になる切符だからな…。奪われないように気をつけねば…。

 

「司令官、見せてくださいよ〜。」

 

「残念だが見せる気など、もとよりない。」

 

ドミナントが箱をポケットに入れて、書類を封筒の中に入れなおして自室まで歩く。

 

……ブッキー、まだついてくる…。

 

廊下を歩けば、まるで監視のようにトコトコ後ろをついてくる。

 

……これがカッコカリの書類だと勘づいたか…?

 

ドミナントはそう思いながら、自室の前に立つ。

 

「…吹雪。」

 

「?」

 

「これ以上はプライベートに関わることだ。部屋の外にいてくれるな?」

 

「はあ…。」

 

吹雪は不思議そうな顔をして、納得したようだ。ドミナントは部屋に入る。

 

……XA-26483…。

 

ガチャ

 

パスワードを打ち込み、金庫が開いた。

 

「これを奥に…。よし、完成…とでも、言うと思っていたのかい?青葉、窓の外から見ているのは分かってる。今出てきたら何もしない。逃げたのならお咎めあり。どっちにする?」

 

「青葉、来ました!」

 

「早いな…即答かよ…。」

 

青葉が素直に出てきた。

 

「…青葉、見たか?」

 

「見ちゃいました!」

 

「なるほどな…。」

 

ドミナントはしばらく考えたのち…。

 

「…青葉、これはプライバシーの権利を大幅にアウトだ。ネタに出来ないぞ?」

 

「でも、私たちには権利が…。」

 

「俺にはある。人間だから。」

 

「人…間…?」

 

「まぁ、人間だ。とにかく、このことは誰にも言うな。いいな。」

 

「わかりました!」

 

「よし、いい子だ。」

 

…………

 

「号外!号外!なんと鎮守府にケッコンカッコカリが届いたよー!詳しくは新聞で!」

 

「「「えぇ!?」」」

 

艦娘たちがそれを開いて次々と買って行く。

 

「なん…だと…?」

 

そのことをドミナントが聞いたのはすぐのことだった。

 

「青葉…。」

 

「こんなに売れました!」

 

「そんなことはどうでもいい…。一昨日約束しただろう…。」

 

「?そのことは書いていませんよ?」

 

「…?なんのことだ?」

 

「え?昨日金庫の中に提督の大事な〇本があったことですよ?バレたら燃やされてしまうと思いますし…。」

 

「…まぁな。そっちか…。」

 

ドミナントがやれやれとする。

 

「まぁ、金庫の中にしまったから大丈夫だろう…。…多分。」

 

ドミナントがそんな呑気なことを言っていると…。

 

「司令官!」

 

「おう、吹雪。」

 

「届いたのに…初期艦である私に伝えなかったんですか…?」

 

「そんな悲しい顔するな!俺の弱点をつくんじゃぁない!とにかく、俺は考えた。今まで許容範囲が甘かったのではないかと。」

 

「…バレましたか…。」

 

「あっ、確信犯だったな…。」

 

吹雪は悲しそうな顔から一変、悪い顔をした。

 

「俺の許容範囲は昨日からサイレントラインとなった。頭ナデナデしか無理だぞ。」

 

「やっぱり、同行するべきでしたね…。」

 

吹雪が後悔した顔になった。

 

「まぁ、カッコカリの書類は俺の隠し金庫の中だ。誰もあそこを開けることは出来んよ。…と、そろそろ大本営に行かなくてはな…。」

 

「大本営?」

 

「そう。大本営の集会があるって前話さなかったっけ?」

 

「話してません…。」

 

「そうか。まぁ、とにかくそう言うわけだから。」

 

「分かりました。無事に帰ってきてくださいね。」

 

「…わかった。」

 

……いつもなら、自分も行くと言い張るブッキーが来たがらないとは…。仕方ない、他の子たちを誘うか…。

 

ドミナントは頭をかきながら他の子をあたる。

 

……先ずは武蔵だな。

 

…………

武蔵の部屋

 

「と、言うわけで来てもらいたい。」

 

「今日は休みのはずだが…。しかも、大和に会いに行くなど…。呼ばれてないはずだ。」

 

ドミナントが主旨を伝えて、土下座までしたが武蔵が断る。

 

「…武蔵、よく考えてもらいたい。」

 

「?」

 

「年に一度しかない大本営の招集…。そして、今回は私服を許された。さらには、対策というほんわかな内容であり、大和さん直筆の手紙…。それらが何を意味するか分かるか?」

 

「……。」

 

武蔵は手紙を渡されて、内容を見る。

 

「大和さんの立場上、私的な目的でこんな遠くの鎮守府へ赴くことは出来ない。だから、せめて年に一回だけでも会いたいと思う気持ちがある。だからこそ、ほんわかな内容にして本当の理由は言わず、直筆で、しかも武蔵に会いたいから私服で来ても良いと許可を出した。それが分からない武蔵でもあるまい。」

 

「……。分かった。行く。これで満足か?」

 

武蔵が折れた。

 

「あと一人くらい護衛をつけた方が良いな。出来ればしっかりしたタイプの…。」

 

…………

 

「提督殿。自分、本当に大本営に同行してよろしいのでありますか?」

 

「大和さんに会える…?」

 

あきつ丸とまるゆだ。

 

「しっかりしたタイプとは…。」

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。」

 

ドミナントが二人に趣旨を話す。

 

「まぁ、ゆったり準備をしてから行こう。まだ午前中だし。部屋に戻って支度してこよう。すれ違う艦娘とかに行くことを説明してね?俺は大和さんに電話するから…。」

 

「「「了解。」」」

 

そして、各々が解散した。

 

…………

大本営

 

「今日は3時に、年に一度の集会です。」

 

「あぁ、分かっている。」

 

元帥が書類を片付ける。

 

「…それにしても、なんだか今日は機嫌が良いな。どうかしたのか?」

 

「いえ、そんなことありませんよ。」

 

「嬉しそうではないか…。」

 

大和はすこぶる機嫌が良い。そこに…。

 

プルルルルル…プルルルルル…

 

電話が鳴り出す。

 

「はいっ。こちら大本営です。」

 

『もしもし、大和さんですか?』

 

「あっ、ドミナントさん。どうかなさいましたか?」

 

『あ、いえ。どうかなさったと言うわけではありませんが、手土産の件ですが、カステラで良いでしょうか?』

 

「全っ然大丈夫です。」

 

『……。…!あっ、すみませーん。』

 

「はい?」

 

『武蔵が急な腹痛で来れないそうです。』

 

「…え…。」

 

『腹痛で来れないそうです。』

 

「……。」

 

『大和さーん?』

 

「…そう…ですか…。わかり…ました…。はい…。それでは…。」

 

『それでは…。』

 

ガチャリ…ツー…ツー…

 

電話が切られた。もちろん。ドミナントの嘘だ。

 

「…大和くん?どうかしたのかね?」

 

「……。」

 

大和は無言で、椅子に座る。

 

「大和くん…?」

 

「元帥殿…。」

 

「う、うむ。どうし…。」

 

「今すぐいままで溜めていた仕事を片付けてください。」

 

「…?」

 

「今すぐ片付けてください。仕事を!今すぐ!制限時間は2時半までですから!それまでには片付けてください!」

 

「うぉー…。」

 

大和の機嫌が一気に悪化。とばっちりを元帥が受ける。

 

「し、しかし…いつか片付ければ良いと今日の朝…。」

 

「つべこべ言わずにやってください!」

 

「…うむ…。」

 

大本営執務室はとても大変なことになりそうだ。

 

…………

 

「この飛行機だな。」

 

一方、ドミナントらはもう空港のロビーにいた。

 

「飛行機は初めてでありますな…。」

 

「昔は、対空で撃ち落とされると言われていたんだ。」

 

「今は鎮守府が増えたし、鎮守府近海の治安が良くなっているみたいだからね。」

 

「安全は大事ですよね。隊長。」

 

4人は話しながら、空港の検査を通る。大本営直属の飛行機なのだから、艤装を持っていても何も言われない。

 

「昼はまだ食べていなかったな…。」

 

「1時間半で、機内食は無いみたいだから、着いたら何か食べよう。」

 

私服なのに大本営直属の飛行機に乗る時点でバレそうなのだが、そのツッコミは置いておこう。

 

…………

 

「無駄な尺の都合で省かれたな…。昼ごはん描写…。」

 

「武蔵さんが皿うどん食べたいとかだだをこねたせい…。」

 

「こねてないぞ!あきつ丸があんな量を食べたけどギブアップしたからだろう?」

 

「そ、そんなはず…。加勢してほしかったであります…。」

 

「「「助けるつもりなど元よりない。」」」

 

「ボボボボボ…。て、何故かこの言葉を言わなければならないという使命感を感じたであります…。」

 

「同じく…。」

 

そんなこんなで大本営の玄関口に立つドミナントたち。そこに…。

 

「あら、大佐。久しぶりね。」

 

「ビスマルクさんじゃありませんか。お久しぶりです。」

 

ビスマルクも丁度来たようで、フレンドリーな挨拶を交わす。

 

「ところで、そっちの身構えている二人は…。」

 

「身構え…?あっ!あきつ丸、まるゆ!ナイフと艤装を手に取らない!俺の友人だ。」

 

あきつ丸とまるゆがものすごく警戒していた。…まぁ陸軍の、しかも虐められていたからその理由はわかるが…。

 

「失礼したのであります。自分、てっきり敵かと…。」

 

「ごめんなさい…。」

 

二人はすぐさま謝った。

 

「ううん。いいのよ。あなたたちも辛い過去があったのよね。そうなるのは仕方のないことよ。私たちの鎮守府も、新しい子はそういうのが多かったから。」

 

ビスマルクは微笑みながら許してくれた。

 

「…時間はまだ1時間ほど残っているわね。一応早く席についておきましょう?」

 

「はい、分かりました。…あきつ丸たちも行くよ。艦娘用の席は確か多くて一人五人ほどあったから…。」

 

ビスマルクが中に入り、ドミナントたちも続く。




あー…ドラゴンダイヴ

登場人物紹介コーナー
ビスマルク…パラオ泊地提督。
あきつ丸…陸軍出身艦娘。
まるゆ…同じく。
武蔵…大和型2番艦。
ケッコンカッコカリ…艦娘と…。そして、それをするとレベルの上限を超える。

「長門コーナーだが…。今回は短縮だ。次回、第241話『提督会議』だ。」


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241話 提督会議

立て続けに書くのは疲れる…。
「大変だね。」
でも、更新も早くなると思う。早く…もっと早く展開を持って行きたい。
「真面目な話が続く?」
そうだね。続くよ。ドロドロになるよ。
「……。」
ま、この小説も元々さわやかではなかったしな。
「う、うん…。」
じゃ、あらすじ頼むよ。

あらすじ
鎮守府では教官の笑い声が響いてたかな…。


…………

大本営 会議室

 

「こんにち…うわ…。もう皆んないる…。」

 

ドミナントは勢揃いしている提督の面々を見て、少し気まずそうな顔をした。前回集まった時とは違う名前の違う提督や、新しい提督がいた。

 

「……。」

 

目立たないように手を振っている佐藤中佐にドミナントも軽く手をふり返す。

 

……俺の席は…。あっ、瀬戸大佐と佐々木少将の間だ。知らない上官と隣とか気が休まらないからな…。

 

ドミナントがその二人の間の席に座る。あきつ丸たちは少し後ろの、艦娘同士の席に座った。

 

「ほう、あれが例の大和型2番艦武蔵とあきつ丸とまるゆか。」

 

「はい。ちなみに、もう一人の神州丸は日向と話したいと言って来ませんでしたけどね。」

 

「そうか。」

 

佐々木少将は自身の鎮守府の艦娘と楽しそうに話すあきつ丸たちを見て、少し申し訳なさそうな、少し嬉しそうな顔をした。

 

「…私は元陸軍でな。彼女たちに何をしていたのか考えて少し申し訳なくてな…。それと同時に、ドミナントの場所に配属されて良かったと思ってな。」

 

「何故ですか?」

 

「あの笑顔を見て思わないのか?陸軍でとても酷いことをされてきたんだ。笑顔を見れるだけでも奇跡だ。」

 

「……。」

 

ドミナントは笑顔のあきつ丸とまるゆを見た。言われてみればその通りだと感じたのだろう。

 

「そうでござる。心の傷は容易には癒えぬ。其方の所の心が豊かな証拠じゃ。」

 

瀬戸大佐が片目を閉じながらそう言う。神通もあきつ丸と話していた。佐々木少将所属の飛龍は武蔵と話していた。

 

「拙者の目に狂いはなかったのでござるな。友となり申して良かった。」

 

「いえいえ、そんな…。」

 

「冗談じゃ。くくく…。」

 

「ドミナント大佐は素直だな。ふふふ…。」

 

「あっ、からかいましたね…。」

 

二人にからかわれていたと知ったが、前半のは全て本心だ。そんなことをしていると…。

 

『えー、本日はご多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。』

 

大和さんが正面でマイクを片手にお辞儀する。

 

『本日も毎年恒例の会議を…。』

 

大和が鎮守府の面々を一人ずつ見ながら言っていると…。

 

『武蔵!?』

 

武蔵が手を振っているではないか。来ないと聞いていた武蔵が…。

 

ざわざわ…。

 

『あ…。し、失礼いたしました。で、では会議を…。』

 

……ドミナント大佐…来ないとおっしゃっていたじゃないですか…!

 

大和は騙して悪いがされた。そんなこんなで会議が進行する。

 

「…佐々木少将…。」

 

「読むか?」

 

「い、いえ…。」

 

……ずっと本読んでると思ったら、小さくした○本を束ねて本のようにカバーをして見ているだけじゃん…!それを見て表情を変えないとか…プロかよ。

 

佐々木少将はとてつもなく変態だ。

 

『えー、それでは前方のスクリーンに注目してください。このグラフは毎年見られる深海棲艦の目撃数です。そして、今回は新たに強さの表を追加しました。』

 

大和がスクリーンにグラフと表を見せる。目撃数は減少しているが、それに比例して強さが上がっている。

 

『それと、前年ある鎮守府か撃破した『ミッドウェー』と名乗る深海棲艦(戦艦型)と、その鎮守府と共同撃破したパラオ泊地で『渾』と名乗る深海棲艦が確認されております。『渾』…それは、2年前…いえ、3年前の大決戦の幹部と同じ名前であり、同個体であることが確認されております。』

 

ざわざわ…

 

大和の話を聞いて、ざわめく会議室。大決戦の幹部がいたと聞いただけでも恐怖なのだ。それほど繰り返したくもない戦いだったのだろう。

 

『さらには、ある艦娘の話だと幹部らが全員生存しているとの情報が入っております。それに加えて、見たことのない艤装が追加されていると、パラオ泊地の提督であるビスマルク中将の報告が入っております。』

 

「なんと…。」

 

「我々で太刀打ちできるのか…。」

 

「無理だ…。あの英雄たちも今は散り散り…。」

 

「いや!俺はいける!やれるんだ俺は!」

 

新人や新しい提督たちはそれを聞いて騒めく。卒業したばかりで、その闘いの話を聞いているからだ。逆に、騒がない者は提督中堅者と熟練者、経験者だ。いつでも冷静さを保つためだ。ちなみに、ドミナントはさほど脅威に思っていないため、どうでもいいような感じだ。

 

『それと、近々大規模な作戦を開始します。中部海域を突破して、中央海域への強行突破です。』

 

「しかし、あそこは爆撃の嵐だった筈だ。」

 

最年少の、ほぼショタの伊藤中将が意見を挟む。

 

『その突破方法はまだ極秘事項に含まれており、説明の必要性は認められません。それに、これは作戦実施時も参加する鎮守府にのみ伝えられ、一般の鎮守府には伝えられません。』

 

「なるほど。策はある…か。」

 

「しかし、あくまでも策…。失敗する可能性があると見るのが妥当だろう。つまり、参加する鎮守府は悪い言い方をすれば犠牲…違うか?」

 

第一佐世保の斎藤大将が言う。

 

『…はい。失敗すれば提督本人は死にますので、犠牲です。』

 

「ハッキリ言うなぁ…。」

 

『しかし、こちらも万全の対策を心がけております。次に、深海棲艦の…。』

 

そんなこんなで会議は続き、ドミナントがうとうとし始めた頃…。

 

『では、これにて会議を終わります。』

 

「ちょっと待て、話の続きに戻るが、その作戦に参加する鎮守府に指定はないんだな?」

 

「…?」

 

若々しい提督が言い出す。

 

「つまり、これは武勲を立てるチャンスってことか!なら俺が行こう!先輩らは全員立候補せず、怖気ついたようだしな!」

 

「それもそうだな。」

 

「敵は2年前の生き残りだ。今の兵器で太刀打ちもできるだろうしな。」

 

新米提督が言い出して、それに続くように話し始めるまだ初級の提督たち。

 

「本土を守ることしか出来ない役立たずより、前線を張っている俺たちの方が優秀って噂だぜ?どうなんだ?先輩方。」

 

若者が挑発するが、本土を守る鎮守府の提督たちはドミナントを含めて何も言わない。その後、散々罵った後、会議室を出て行った。そして残ったのは本土を守る大湊警備府、横須賀鎮守府、舞鶴鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府だ。それとパラオ泊地のみ。

 

「…ふぅ。聞いていてストレスが溜まりましたね。」

 

「そこまで溜まらんよ。」

 

「え?何故ですか?」

 

「あちらの方が劣っているからさ。本土を守ることしか出来ない役立たず…だったか?逆を言えば、新米は本土を守るに値する信頼すら得れてないってことだ。それに、大本営からの救援も手厚くされる。一方、あちらはどうだ?大決戦時の時の提督の死傷者数は本土より、離れたところの方が多い。救援も来ず、孤立する。つまり、遠ければ遠いほど捨て駒になるわけだ。それに、食べ物だって缶詰だしな。こっちは日本の新鮮な料理だ。待遇は比べるまでもない。」

 

「まぁ、そうですけど…。」

 

「そのことに気づかないのも、新米の特徴でござる。それを理解し、尚且つ優秀であれば本土を守る側に来れるというわけじゃ。」

 

「…それを聞いたら、逆に可哀想に思えてきますよ…。」

 

そんなことを話していると…。

 

『では、本日の本当の会議に移りたいと思います。』

 

「!?」

 

驚いたのはドミナントのみだった。

 

『今回作戦に参加する鎮守府は自由です。しかし、新米や経験の浅い提督に任せる訳にもいかない重要な作戦です。この中の鎮守府が選ばれます。』

 

「やはりか…。」

 

「失敗したら、死ぬもんなー…。」

 

各々が嫌な顔をする。

 

『しかし、選ばれると言っても自由参加を徹底しております。行きたくないのなら、もう一度選び直されますし。』

 

「だとしても、どんな物なのかも知らずに立候補は難しいと思うが。」

 

『…すみません。これはここでも極秘事項でして…。』

 

「まぁ、情報漏洩が一番恐ろしいからな。」

 

そんな風に話して行く面々。

 

『それと、経験の浅い提督や新米を怖がらせないため、少し誇張したグラフは実は…。』

 

「「「!?」」」

 

修正されたグラフに驚かないものがいない。

 

「目撃件数が今年初めて去年を上回った…。」

 

「それに強さの比例も、さっきより断然上がってる…。」

 

「それと、新たなグラフが…。」

 

『この新しいグラフは3年前の大決戦の時のグラフです。』

 

「一致率85%…!?」

 

「つまり、繰り返されるの…!?」

 

『いえ、繰り返されはしません…。』

 

「心配させおって…。」

 

『違います。さらに脅威となる確率が高いのです。』

 

「つまり、3年前のあの時よりひどい事態が起こりうるってことか!?」

 

「大問題だな…。」

 

いくら熟練や中堅、経験者と言ったってこれは動揺を隠せない。それほど恐ろしい事態なのだ。

 

「根拠は!」

 

『根拠は、前年第4佐世保鎮守府の『ミッドウェー』の報告についてです。聞いたところ、今までの戦艦系深海棲艦とは全く似ておらず、一発轟沈と言われております。それがいたという事実が問題なんです。それがこの先もうようよ出てきたらと考えた場合、さらに脅威の%は上がります。』

 

「「「……。」」」

 

悩みだす提督諸君。

 

『これ以上ない大戦争になります…。もしかしたら、あの悪夢以上のものが5年以内に起こるかもしれません…。その間に辞職するのも勇気です。受け入れます。』

 

「しかし、そうなったら誰が本土を守るんだ?」

 

『……。』

 

何も言わない大和を見て、各地の提督も分かっていたような顔をした。

 

「しゃぁねぇ。守りは徹するよ。その分、防衛のための資材を負担してくれ。」

 

「私も。少し範囲は狭いけど、舞鶴近くの海域は完全に守れるから、辞めるわけにもいかないし。」

 

「まぁ、仕方ないか。」

 

提督たちが辞める気はない。

 

『…ありがとうございます。』

 

大和は感謝の気持ちを素直に述べて、会議は終了した。

 

…………

廊下

 

「大和!」

 

「武蔵!」

 

二人が手を取る。

 

「来たぞ。」

 

……行きはあんなに嫌がっていたがな…。

 

「来てくれたんですね!」

 

……素直に受け取っちゃダメだよ…大和さん…。

 

嬉しそうに会話をする二人に、ドミナントが思う。

 

「それと、あなたは陸軍艦のあきつ丸ですね。」

 

「よろしくであります!」

 

あきつ丸が敬礼する。陸軍方式の。

 

「あ、あの…大和さん…。」

 

「あなたはまるゆさんですね。あの時の敬礼は今でも覚えております。」

 

「!」

 

まるゆの顔がものすごく明るくなる。

 

「大和殿に会うのが夢だったんでありますよ。まるゆ殿は。」

 

「そうだったんですか。ようこそ、大本営へ。そして、私も会えて嬉しいです。」

 

「……。」

 

まるゆは感謝感激で言葉も出ない。そんな騒ぎあった後…。

 

「大和さん。」

 

「はい?」

 

「中央海域に爆撃の嵐と聞きましたが、何があるんですか?」

 

「…灰色の空を埋め尽くすほどの艦載機があります…。」

 

「艦載機…。」

 

「恐らく、あの時…。大決戦終盤のあの時に、私と武蔵が関係しているのでしょう…。」

 

「あの時…?詳しく聞きたいです。これからの作戦の要となる気がしますし…。」

 

「……。」

 

ドミナントの真剣な表情を見て、大和が少し戸惑ったが、武蔵が頷くのが見えた。

 

「…分かりました…。あの時、私と武蔵は中部海域に残っている残党を倒しに行きました…。」




長いのでここで終わり!次回、うずうずしてきますよ…。

登場人物紹介コーナー
大和さん…大和型一番艦。

「長門コーナーだ。今回も平均的なため、コーナーはないらしい…。…そのうち打ち切りになるのでは…?次回、第242話『大決戦 終戦間際』だそうだ。筆者が言うにはたまらないらしいが…。ヒントは…なんなんだ…?わからない…蝶…?」


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242話 大決戦 終戦間際 

重い…。
「どうしたんだい?」
他の鎮守府の過去…。重い…重すぎる…。
「…そんなに?」
ああ…。どこもかしくもシリアスばかり…。登場人物、ほぼ全てにそれぞれ違う悩みや過去、色々な…。
「…でも、この小説に出すつもりは…。」
今のところないよ。タグが変わっていたら、出す予定。
「そうならないことを祈るよ…。」

あらすじ

シーン


…………

 

「GYAAAA!」

 

一匹の深海棲艦が逃げている。

 

「残党を排除してください!たかがイ級でも十分な脅威です!」

 

「任せろ!」

 

大和と武蔵が追う。

 

「もう相手側の兵力もつき始めているから、そろそろこの決戦は終わりですね…。」

 

「まだ残党が山ほどいるがな…。」

 

『だが油断は禁物だ。相手側の指揮官が確認されていない。決して油断せずに追え。』

 

「「了解。」」

 

二人が余裕そうに言い、指揮官の無線が入る。すると、イ級が細い洞窟に入って行く。

 

「…罠…っぽいですね。」

 

「だが、大和型の二人…。まだいるなら、残党を蹴散らせば良い。幹部を沈めた二人だ。」

 

「…それもそうですね。」

 

二人が気にせず、後を追う。

 

『やま……。どう……?…ザーーー…。』

 

「武田大将?」

 

「どうした?」

 

「電波が遮断されました…。撤退です。」

 

「なに!?ここまで来てか!?」

 

「はい…。」

 

「たかがイ級だ。沈めて帰っても構わないだろう。」

 

「…まぁ…そうですが…。」

 

「その方が喜ぶぞ?」

 

「……。…分かりました。しかし、危険と判断した場合は即刻撤退です。」

 

「おう!」

 

二人がその洞窟を追う。しかし、そのうちに段々と壁や天井がまるで人工物のようにキチンとしてきた。大和は嫌な胸騒ぎが止まらないが、武蔵が気にせずに進み、言うことを聞かないと判断して後を行く。すると…。

 

「GYAAAA!」

 

イ級が見えてきた。

 

「撃ち方はじめっ!」

 

ドギャァァァァン!

 

一発撃沈。そして、二人が周りを見る。

 

「ここは一体…?」

 

「どこだ…?」

 

緑色に明るく、縦に長い広場のような場所に出た。幸いにも、床は海水で満たされていてそこまで高さはない。

 

「…!アレは!?」

 

「!?」

 

そこで、大和と武蔵が遠くの壁に、培養液で満たされたカプセルに入っている深海棲艦の存在に気づく。

 

「空母水鬼…?」

 

「そうだな…。」

 

大和がカプセルに触れた。すると…。

 

パシュッ!ガゴン!ギュイイイイイイイ…!

 

「「!」」

 

そのカプセルの保護扉が閉じ、奥へ移動させられ、見えなくなった。

 

グォォォォォン…

 

『侵入者感知。排除せよ。』

 

「「!?」」

 

周りが緑色に照らしていた明かりが赤い色に変わり、部屋が赤く染まる。

 

「やはり罠…!」

 

大和が出口へ行こうとしたが、時既に遅し。封鎖されていた。

 

「大和!上を見ろ!」

 

何やら怪しげな機械が飛んだまま静止していた。

 

「なんでしょうか…?あれは…。」

 

「この武蔵に聞かれても答えられんぞ…。」

 

そのまま見ていると…。

 

ウィィィン…ガション!

 

「おぉ…かっこいいな…。」

 

長い砲が後ろに下がり、頭部らしきものが出るような変形をした。

 

『排除 排除 排除 排除 排除』

 

「「!?」」

 

機械が連呼しながら武器を構えた。明らかに、大和達の知っている武器とは違う…。ロストテクノロジーそのものだ。

 

「貴方は…?」

 

ドガァァァァ!!

 

「「!?」」

 

返事もせずにバズーカもどきを撃ってきた。

 

「大和型の装甲は貫通できな…む!?」

 

武蔵が向かってくる弾を正面からガードして無効化させようとしたが…。

 

ダッ!

 

「大和!避けろ!」

 

「!?」

 

ザバァァァ!ドガァァァァァン!

 

間一髪、なんとかカスダメで済んだ。

 

「着弾地点に爆風が…。それに、威力の桁が違います…。」

 

「おそらく巨大な擲弾発射器(グレネードランチャー)だ…。装甲で無効化出来ないぞ…。冗談抜きで真面目に排除されるかもな…。」

 

2人は飛んでいるソレを睨む。圧倒的にソレが有利だ。

 

ドガァァァァ!

 

「おそらく、古代の遺物で…す!?」

 

ドガァァァァ!

 

「おい!今話しているのだから空気読みやが…れ!?」

 

ドガァァァァ!

 

敵の不明な機体がグレネードランチャーを連射してきた。さらにはパルスやレーザーを連射してくる。

 

「ちっ…!弾幕が異常だぞ…!」

 

「下手したら一発直撃轟沈の可能性がありますよ…!アレ…!」

 

「敵の解析は不能…て、何だと…!?そんなものを連続で撃ってきているのか…!?」

 

「ロストテクノロジーなのであり得ます…!」

 

武蔵と大和がギリギリ回避で話す。鈍足の彼女たちにとっては圧倒的に不利だ。

 

「でも、回避に徹していたら攻撃が出来ませんね…!」

 

「なら、攻撃こそ最大の防御だ!」

 

武蔵が一瞬のうちに狙いを定める。

 

「全砲門、開…。」

 

武蔵が撃とうとしたが、すぐにやめて回避に徹する。

 

「どうしたんですか…!?」

 

「…ダメだ…。」

 

「…?」

 

「狙った途端、視界がぼやけて照準が定まらなかった…!」

 

「…!?」

 

大和が避けながら倒す算段を考えるが、案が浮かばない。そのうちに、大和自身も少しずつ体力を削られて行く。

 

パシュッ…ゴォォオオオ!

 

「誘導爆弾(ミサイル)!?」

 

大和が叫ぶ。しかも、多くのミサイルを何発も連射してきたのだ。

 

「こんなもの蚊に刺された程度…ではない!」

 

「当たり前です!」

 

2人が避ける。

 

……このままではいずれ燃料切れで動くことができなくて殺されます…。先程から指揮官殿(武田大将)に連絡していますが、電波が悪いせいで全く状況が掴めていません…。冗談抜きで私たち、ここで死んでしまうのでは…?

 

大和が縁起でもないことを考える。しかし、起死回生の一手が見つからない。武蔵は中破、自身も小破から中破へ変わりつつある。武蔵が大半の攻撃をひきつけてくれているおかげだ。

 

……武蔵がダメなら…私が…!

 

大和がその機械に向かって、艤装で照準を合わせる。

 

……武蔵の言った通り、視界がボヤけます…。…有賀艦長なら、どうしていたでしょうか…?

 

大和がふと、思う。艦の自分が沈む時も絶望的な状況だったからだ。

 

……諦めるときは諦めていましたけど…。今は諦められない時です。…ならば…。

 

大和は深く息を吸った。

 

「死に場所を得て艦娘の本懐これに勝るものなし!」

 

「!」

 

武蔵が驚く。そして、武蔵の口元が緩んだ。

 

「そうか…。なら、こちらも出し惜しむわけにはいかないな…!」

 

武蔵が46cm三連装砲改を構えた。

 

「敵不明機体捕捉、全主砲薙ぎ払え!」

 

「なに、だめでもともとだ!さあ、行くぞ!撃ち方…始めっ!」

 

ドオォォォ!ドガァァァ…!

 

二人が不明機に向かって撃つ。視界がぼやけてもお構い無しだ。

 

ヒュルルルル…ドガァァァァン!!!

 

不明機に大和の攻撃が当たる。

 

「やったか!?」

 

「いえ!まだです!」

 

大和らは煙の中から出てきた不明機を睨む。不明機の装甲は脆く、中破状態になっていた。

 

「この武蔵の近距離攻撃を避けるとはな…。」

 

「どうやら、ただの古代兵器ではないようですね…。」

 

不明機は空中で停滞。しばらくすると…。

 

ドガァァァン!ドゴォォォン!…!

 

「この…!」

 

「武蔵!」

 

不明機が武蔵を重点的に狙ってきたのだ。大和よりもダメージを負っている武蔵へ。

 

……武蔵…!

 

大和は姉妹艦である、この世で唯一の妹である武蔵を助けようとしたが…。

 

「大和!離れろ!罠だ!」

 

不明機がガッツリ大和を捕捉していた。武蔵が叫ぶ。

 

「…なんてな。」

 

「声色で嘘なんて見抜けますよ。」

 

二人が挟み撃ちに構えた。そこで初めて不明機は武蔵が砲を向けていることを知った。

 

「全主砲、薙ぎ払え!!!」

 

「大和型の原点、46センチ砲の威力舐めんな!!!」

 

ドギャァァァァン!!!

 

二人の同時発射。不明機にもろ直撃した。

 

ドガァァァァ!

 

そして不明機が破壊されて、落ちて沈んだ。すると…。

 

ゴオオオオオオオ…!

 

「「!?」」

 

奥から赤い艦載機の群れが…。

 

「「…?」」

 

構えたが、大和たちを無視して、入ってきた入り口側の別の出口へ出て行った。

 

「これは…一体何が…?」

 

「まぁ、終わったのならそれで良い。あそこから出るぞ…。大破進撃は危険だ。」

 

武蔵と大和は協力して、その出口から外へ出た。その瞬間に出入り口が壊れて、中に入ることは出来なくなった。

 

…………

 

「はい…。通信が切れましたので、帰還しております…。あれ以上の進撃は危険と判断しましたので…。それと、あそこにはまだ秘密がありそうでしたが、侵入口が塞がってしまいました…。…はい。武蔵も何とか無事です。…はい。気をつけます。」

 

「どうだって?」

 

「気をつけて帰るように言われました。」

 

「そっか…。良かった…。」

 

灰色の空で、大和と武蔵が帰還する。すると…。

 

「!?無数の艦載機が接近しています!」

 

「何!?」

 

「あの量は無理です!逃げますよ!」

 

「来たぞ!」

 

赤い艦載機が空一面に来た。大和と武蔵が急いで逃げる。二人は低速のため、中々逃げられない。二人はなんとか回避しながらもその場を急いで後にする。

 

「一分もしないうちに沈む!」

 

「早く行きますよ!」

 

二人は急いで行く。振り向く余裕もなく…。そのうち…。

 

「…止みました…。」

 

「…本当だ…。」

 

いつの間にか、空の晴れているところに出て、艦載機たちはいなかった。

 

「…ふぅ…。」

 

「おい!姉…大和!」

 

大和は緊張の糸が切れたように、へたり込む。

 

「やりましたね…。一応…。」

 

「…うむ。」

 

大和はやり切った顔をして、武蔵が頷いた。

 

「あとは帰るだけだ。」

 

「それにしても…。先の施設は一体…あの艦載機は一体…。」

 

「その話は後だ。今は帰ることだけに集中しよう。」

 

大和は何とか、武蔵と共に帰還した。




あのEDは忘れない…。

登場人物紹介コーナー
不明機体…???
艦載機…???
空母水鬼…???

次回、第243話『箱入り娘』


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243話 箱入り娘

この小説も、ここまで読んでくれる人間はもういなさそうだな…。
「どうしたの?」
いや、色々ね…。ネタも切れ始めて…。…いや、切れてはないんだよ?切れては…。ただ、そこに行くまでの経緯のネタがないとか…。300話ピッタで終わろうとしたけど、話数が多すぎる…。ネタだけなら、100話以上出来てるんだよ…。ネタだけはね…。
「つまり、そこに行く展開が思いつかないみたいな?」
そう。それ。最終章のネタが思いついたり、突然、違う展開のネタが思いついたり…。
「…つまり、続きは書けそうになくて、他のところを書けるの?」
恐らく…。
「…瑞鶴さんはどうやって、こんな面倒な筆者の相手をしたんだろう…。」
なんだって?
「あ、いや、別に…。」
そう…。まぁいい。ここで終わらしてやる…。

あらすじ
探偵Sただいま参上。


…………

 

「ということがありました…。」

 

「……。」

 

ドミナントが黙る。

 

……おそらく敵は排除くん…。そして、赤い艦載機は多分特攻兵器だな…。イナゴの襲来だ…。でも特攻兵器なんて、分からない艦娘たちに話したら間違いなくブチギレるな…。『特攻兵器』のこと、心底嫌っているから…。…まてよ?何故排除くんがいるんだ…?神様の話では、俺の来た後にジャックが来て、不明な人間が最大で4人送り込まれたんだよな…?…何故…。

 

ドミナントが考えるが、答えが出ない。もしACの未来の世界だとしたら、タワーなどが存在している筈だ。なのにない。コジマ汚染も見られない。

 

「…一つ分りました。」

 

「?」

 

「その海域に行くことは無理です。私でも死にます。」

 

「ドミナント大佐でも…ですか…?」

 

「はい。死にます。そのことは佐藤中佐が知っていると思います。」

 

「?何故…。」

 

「とにかく、死にます。そこを通ることを考えるのはやめた方が良いです。生半可な装備だと逆に危険です。」

 

「…分かりました。」

 

「ちなみに、これは命令ではありません。忠告です。」

 

「知ってます。…?でも、どうしてドミナント大佐はそこまでソレを恐れているんですか?見たことありませんよね?」

 

「…まぁ、そうですけど…。あのようなEDなりたくありませんからね。」

 

「?」

 

ドミナントの真剣な表情で、大和が不思議に思いつつ黙ってしまった。

 

…………

 

「に、しても本当に驚いたな…。中央海域か…。」

 

ドミナントが中央海域について考える。

 

……中央海域…。中部海域よりも奥の海域だと聞いている…。そこに何かあるのか…?いや、ないとおかしいな…。排除くんモドキについて色々調べたい…。せめて部品の一部でもあれば、回収してセラフに頼めるんだけど…。それはないし…。

 

ドミナントが色々考えながら歩いていると…。

 

トンッ

 

「きゃっ。ごめんなさい!」

 

「うえ?」

 

ぶつかったかどうか分からないくらい華奢で清楚な女性が丁寧に謝ってきた。

 

「いえいえ。こちらも考え事をしてまして…。」

 

「急いでいるので…ごめんなさい!」

 

「あれ…。」

 

その女性は急いでどこか向かって行った。

 

「…へぇ…存外そんなものか…あるいは…。」

 

その清楚な格好で着物を着ている女性の手にある提督帽を見て、ドミナントが呟いた。しばらく歩いていると…。

 

「ひぃ、ひぃ…。む?ドミナント君か…?」

 

「あっ、元帥殿!お疲れ様です!」

 

「そういう堅苦しいのは良い…。」

 

元帥が息を切らしながら走ってきた。

 

「ここに、ある女性を見なかったか…?」

 

「ある女性…どうでしょうか…。ここには沢山の女性がいますからね…艦娘とか、働いている女性とか…。」

 

「痩せ細った、着物を着た者だ…。」

 

「あぁ、見ました。急いでどこか向かっていましたよ?向こうへ…。」

 

「ありがとう!」

 

元帥は急いでその方向へ向かって行った。

 

「…元帥も大変だなぁ。」

 

ドミナントが呟いた。すると…。

 

「ここどこでしょうか…?」

 

「!?」

 

その女性が。

 

「ここ広いから分かりません…。あっ、そこのお方。」

 

「…はい。」

 

「あの、出口はどこでしょうか…?」

 

「…それより、元帥殿が探しておりましたよ?」

 

「…そうですか…。」

 

女性は考える素振りを見せながら、三歩ほど歩き…。

 

「では!」

 

逃げた。

 

「……。…これは追う流れ…?…そう。そんな予感がしてたよ…。」

 

ドミナントは仕方なく追う。

 

「待ってくれー!」

 

「!?追ってきました!?来ないでください!」

 

「それは無理だ!」

 

「何故!?」

 

「追わないとこの小説が進まないんだ!無限ループになって怖いわ!」

 

「なに訳の分からないことを…!」

 

ドミナントが追いながら言う。

 

「おぉ、提督よ。探したぞ。」

 

タイミング悪く、武蔵が角を曲がってきた。

 

「む…?」

 

追うドミナントと、逃げる女性を見た途端…。

 

「ふんっ!」

 

「きゃっ!?」

 

一瞬にして捕まえた。華奢な身体で武蔵の腕は振り解けない。

 

「提督よ…。女性にセクハラは良くないぞ。」

 

「セクハラじゃ…ないって…のに…!」

 

ドミナントが息を切らしながら言う。

 

「それより…何故…元帥に…追われて…るんだ…?」

 

ドミナントが聞くと…。

 

「…秘密です…。」

 

「言え…。」

 

「う…。」

 

「こら!武蔵!力を強めるな!これは拷問じゃない。ただの質問。内容次第では開放するし、元帥に突き出す。秘密なら、一応元帥に突き出す。」

 

「……。」

 

そこまで言っても、何も言わなかった。

 

「じゃ、元帥のところに運ぶ。武蔵、離すな。」

 

「分かった。」

 

ドミナントと武蔵が元帥のところへ行こうとしていると…。

 

「何を…している…?」

 

元帥がいた。その顔はめちゃくちゃ怖かった。

 

「え、えと…。その…探している人を元帥殿のところへ連れて行こうと…。」

 

ドミナントは初めて見る表情に、少し言葉が詰まる。

 

「ところで、何をした者なんだ?理由を尋ねても何も言わん。」

 

武蔵が流暢に話す。

 

「…艦娘である武蔵が言うとなれば本当か…。すまん、少し疑った。」

 

「い、いえいえ…。それより、この人は一体…。」

 

「私の娘だ。」

 

「…はい?」

 

「世間で言う箱入り娘だ。」

 

「娘さんいたんですね…。」

 

武蔵が拘束を解き、ドミナントが改めて元帥の娘を見る。似ていると言われてみれば、どこかほのかに似ているというわけだ。

 

「お父様…わたくしはお見合いをしたくありません…。提督になりたいのです。」

 

「そうもいかん…。それに、相手に不足はなかろう。大企業の社長の息子だ。」

 

「嫌です。あの方とは前お会いしましたが…デリカシーがなさすぎます。女性の前で平然と鼻をほじくり、尚且つ話す話題と言えば自分の力でもない自慢話…。自身の思い通りにいかないのは他人のせいであり、子供相手にも大人気ない一面…。思い出すだけで不快な気分になります。」

 

「そうか…。ならば、あのIT企業の若社長は…。」

 

「あの方とも嫌です。物事を表面上でしか理解しないうえに、信用しているのは結果だけ。あんな人間性に乏しい人とはお断りです。」

 

「むぅ…。」

 

元帥が困った顔をした。

 

「ドミナントくんも何か言ってくれ…。」

 

「うぇ!?私もですか!?えーっと…。佐々木少将は既婚者だし…。あっ!瀬戸大佐…は神通だったな…。いないな…。」

 

ドミナントが諦めた。

 

「ブン!ヤグダダズメ…。…そうだ。ここにいるじゃないか。」

 

「?」

 

「誰?」

 

「ドミナント君だ。」

 

「「……。」」

 

二人が黙る。

 

「元帥殿、少しいいですか…?」

 

ドミナントは武蔵たちを置いて、元帥と少し遠くへ行く。

 

「ドウイウイミデスカ…?」

 

「いや、適任者が君以外いないだけだ…。」

 

「ジブン、チンジュフデサエモアレナノニ、ココマデキタラ、コロサレマス。」

 

「まさか…。誰にだ?」

 

「ハーレム嫌いの死神に命を狙われます…。最近視界の隅に鎌が見えたり、知り合いの影を見間違えたりするほど…。」

 

「君は一度病院に行ったほうが良い…。間違いなく重症だ。…話は逸れたが、まさか本当に結婚など考えてはおらん。」

 

「ですよね。良かった…。」

 

「君を推薦した目的は…。……。…娘は箱入り娘だ…。世間を知らない…。つまり、君のようなハードモードでもないんだ…。娘は今丁度18歳…。ピチピチなのは承知しているが、7歳ほど歳の違う君から、世の中がどう言うものなのかを伝えてほしいんだ…。もちろん、結婚は娘の意思を尊重させようと思う…。あっ、ドミナント君もね…もちろんもちろん。それで、試しにお見合いというものをやってもらいたい。君の礼儀正しさも教えてあげてほしいんだ。」

 

「…でも、それって重労働じゃ…。」

 

「もちろん、十分な報酬は用意したつもりだ。全額前金で支払おう。」

 

「それダメなヤツ…。」

 

ドミナントらがコソコソ話終わり、もどる。

 

「と、言うわけで自分がお見合い相手になります。」

 

「そういうことだ。」

 

ドミナントは元レイヴンプレイヤーだ。美味しい報酬にはすぐに飛びついてしまうのだ…。

 

「ふ〜ん…。あなた老け顔ですね。…けど、よく見ると優しい顔をしております。その髭を剃った方がかっこいいですよ。」

 

「いやいや…。髭を剃りますと艦娘たちから色々言われて…。提督として見られないので…。」

 

ドミナントが少し照れる。

 

「第4佐世保鎮守府のお噂は父からもかねがね聞いております。提督としても、人生にしても先輩であるドミナント大佐を尊敬しております。」

 

「お、おう…。」

 

……堅苦しいなぁ…。

 

ドミナントが心の中で話しづらく感じた。

 

「挨拶が遅れました、第4佐世保鎮守府のドミナントです。」

 

「わたくしは第三大湊鎮守府提督、武田です。階級はまだ少佐です。前から貴方とはお会いしたく思っておりました。」

 

「へー。で、どう?実際会った感想は。」

 

「もう少し体格の良い人だと思いましたが、意外にも体力がなさそうに見えますね。」

 

「見えるんじゃない…。ないの…。」

 

ドミナントと武田少佐が話す。

 

「と、そろそろ帰らないと…。あっ!思い出しました!ケッコンカッコカリの書類なら書類と、ハッキリ書いてくれないと困ります!」

 

元帥に問い詰めた。

 

「しかし…。ハッキリ書いたら書いたでそっちの艦娘たちが黙っていないぞ…?前からそういうのは嫌だと聞いていたから、わざと書かなかったんだが…。」

 

「え…。そうだったんですか…。すみません…。」

 

元帥の善意だった。

 

「まぁ、そんなことより…。武蔵…何を…している?」

 

「ん?あぁ、なんかこの武田少佐?とやらに何か感じてな…。今少し調べている。」

 

「やめい。困った顔をしているぞ…。」

 

武蔵に色々なところを触られて、微笑みの表情のまま嫌そうなオーラを出している。

 

「第3大湊と聞きましたが、そこ地図に載ってましたっけ?」

 

「いや、最近出来たばかりの鎮守府だ。」

 

「そうなんですかー。」

 

ドミナントはこの先も安定だと感じた。

 

「…と、そろそろあきつ丸たちも迎えに行かないと…。それでは!」

 

ドミナントと武蔵は走って行った。

 

「…どう思う?」

 

「…そうですね…。顔は正直好みではありません。」

 

「そうか…。すまんな。」

 

「いいえ…。わたくしのために、お見合い相手を探してくださるお父様には感謝しかありません…。あの人に嫁ぐくらいなら、死を選びます。」

 

「元帥補佐…。元大決戦時の元帥…。あいつにこの先、この地位を譲る訳にいかん。ほぼあいつのせいで多くの艦娘たちが沈んだ…。艦娘を大切にせず、単なる兵器として見たあげく使い捨てのように扱った…。艦娘たちが裏切ってもおかしくはないだろう…。」

 

「あの人は、私を嫁がせてゆくゆくはお父様の地位を乗っ取るつもりです。」

 

「分かっている…。…彼のことだが、顔以外はとても良い者だ。心優しくて、他の鎮守府の艦娘にも好かれているくらいだからな。…体力はないが…。」

 

「…彼はわたくしのことをどう思うでしょうか…?今までの人と違ってくれるでしょうか…?」

 

「わからん。…彼のことは、後の見合いの時に知れば良い。断っても、彼は受け入れるはずだ。」

 

「はい…。」

 

「…頼んだぞ…。明日から配属の第3大湊鎮守府提督、玲奈少佐。」

 

「…はい…。」

 

元帥と武田少佐が話した後、二人は書類を片付けに行った。




この話にオチなどあるものか!

登場人物紹介コーナー
新人提督…元帥の娘。許嫁がいるようだが、当然のように嫌がっている。提督になるのは自分の意思である。
元帥補佐…普段、元帥の近くにいない。てか、来させない。大決戦時の大元帥であり、艦娘を使い捨て兵器としか見ていない。多大な犠牲を払ってまでの作戦を強行する中、現元帥たちの斬新な作戦かつ最小の被害で食い止め、強行しないやり方が成功したため降格した。現在もその地位を狙っている。

「次回、第244話。『怪盗YNAMFK 極秘書類“K”』だ。ほう。次回は出番があるようだな。…ちなみに筆者の話だと、このコーナーは新ゲストがいなければやらないみたいだ。


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244話 怪盗YNAMFK 極秘書類“K”

ネタがない…。もう切り札を使うしか…。
「切り札?」
冴えている、ネタがある時に書いていた章…。それを次回やろう…。
「ついに、一つ解禁されるんだね…。」
まだ3種類ほどあるがな…。数十話単位だから…。
「頑張れ。筆者さん。」
カタリナフェスティバーもあるからね…。さっさとやって、小説やらトライジーやらに専念せねば…。

あらすじ
ザーーーーー…


…………

第4佐世保鎮守府

 

これはドミナントらが行って1時間後の物語…。

 

ガンガン…

 

『合言葉…。』

 

「司令官。」

 

ガチャリ

 

何者かが倉庫の奥の部屋へ行く。黒い人影が数人いる。

 

「…本日、おそらく書類“K”が届いたと思われます…。」

 

「偵察ご苦労様。」

 

「そしてそれは恐らく司令官の部屋の金庫の中にあると思われます。直接は見れなかったのですが、新聞記者の情報です。」

 

「ふむ…。それは困りましたね…。パスワードは分かる人いますか?」

 

「いえ…。流石に…。」

 

「なら、連合艦隊旗艦を務めた私が腕力で破ろう。」

 

「Nさん、それは最終手段です。今回のミッションはなるべく気づかれず、金庫の中から書類“K”を入手してコピーをとることです。それに付属されているアレは今度大本営に行った時に、司令官に気づかれずに入手しますので…。今はとにかく書類“K”を入手して、コピーしたことすら気づかれないようにします。」

 

「ふむ…。なるほど。」

 

「警備はその金庫のみか?」

 

「いえ、さらには雇われたであろう教官さんとジャックさんがドアの前の椅子に座っています。正面突破は不可能です。」

 

「あっ、それなら前に開発した睡眠薬があるから…。」

 

「流石は倉庫に寝泊まりしているだけありますね。」

 

「元々は貴方が夜食堂の食料を食べてしまわないように開発したんですが…。」

 

「YさんもAさんも落ち着いてください。今Mさんが戻ってくると思いますし…。」

 

コンコン

 

『司令官です。』

 

ガチャリ

 

「遅れてすみません。遠征を回されていまして…。」

 

「いえ、睦月型さんたちはよく遠征に回されますからね…。」

 

「これで揃ったな。」

 

黒い人影が全員揃い、話し合う。

 

「しかし教官はともかく、ジャックがそう簡単に睡眠薬を飲むとは思えないが…。」

 

「たしかに…。」

 

「ミッションインポッシブルですね。」

 

「ならば、綿密に計算をして、さまざまなところから侵入できないかどうか考えよう。」

 

「「「了解。」」」

 

そして、今夜怪盗“YNAMFK”が動く。

 

…………

 

コソコソ…

 

全身黒タイツの犯人のような人影の集団が歩く。

 

「では…。発艦してください。」

 

犯人Aが偵察のために艦載機を飛ばす。

 

「…正面入り口に二人の人影が…。」

 

「やはり、いますね…。Yさん、そちら任せます。」

 

『わかりました。』

 

犯人Yが主任とジャックの前に立つ。

 

「夜遅くまでお疲れ様です。こちら、お茶菓子とお茶です。」

 

「……。」

 

「い〜じゃん。」

 

主任は何の疑いもなく食べ、飲む。

 

「…何の前触れもなく、しかもこのタイミングで…か。」

 

しかし、ジャックは固い。

 

「残念だが、私はここで護衛の任務がある。その間は何も口にしないと決めている。」

 

「そんなこと言ってたら、バテちゃいますよ?」

 

「構わん。」

 

そんなこんな話している。

 

『プランBに変更します。Mさん、Kさん。』

 

「わかりました。」

 

「わかったわ〜。」

 

二人が頷いて…。

 

「「きゃーー!」」

 

悲鳴をあげる。

 

「?今の聞こえましたか?」

 

「あぁ、聞こえた。」

 

「…行かなくても良いんですか?」

 

「私にくだされたミッションはここを守ることだ。それに、ジナイーダがいる。」

 

「!」

 

ジナイーダの存在をすっかり忘れていた怪盗団。しかし…。

 

「…気配がない…。」

 

ジャックがジナイーダが来ないことに、疑問を持つ。

 

「…仕方がない…。夕張、ここを見ていてくれ。」

 

「…わかりました。」

 

Yはニヤケ顔を堪えながら頷いた。

 

「…頼んだぞ。夕張。信用している。」

 

「うぇ…。…あ…。うん…。」

 

犯人Y、突然の依頼に少し心が痛い。

 

「…Fさん…。」

 

『はい?』

 

「…私は中に入れません…。ですが、入口はなんとか開けました。」

 

『…わかりました。後で落ち合いましょう。』

 

「うん…。」

 

犯人Y中には入らず、外で待つ。その間にFらが侵入した。

 


 

「真っ暗でよくわかりませんね…。」

 

「Mさん、ライト持ってますか?」

 

「微力ですが…。」

 

Mがライトをつける。

 

「む…。これはなかなか難題だな…。」

 

しかし、部屋の中には厳重な警備がしてあった。

 

「赤外線レーザー…。当たれば即緊急事態警報で封鎖される…。」

 

Nが忌々しそうにつぶやいた。

 

「…私のことは良いから行け。サイズ的に私は行けない。レーザーを回避しながら、金庫を目指せ。」

 

「私もです。とは言え、ドアから外へ行けませんけど…。」

 

外にはジャックと寝ている主任がいる。

 

「まぁ、何とか脱出するさ。」

 

「あとは頼みましたよ…。

 

「…わかりました。」

 

Fがなんとかくぐり抜けて、金庫までたどり着く。

 

「パスワードは…。」

 

……司令官の好きな紅茶の茶葉…?

 

ふと、吹雪が紅茶のある棚を見る。左から、文字や番号のようなものが並べられている。

 

……XA-26483…?

 

吹雪が押すと…。

 

ピー…ガチャ

 

「!」

 

金庫が開く。そして、吹雪が中を探索したが…。

 

……ない…。おかしいなぁ…。

 

さらに捜索を続けるとある紙を見つけた…。

 

「!?」

 

…………

 

書類“K”はいただいた怪盗『S&Z』

 

…………

 

その紙のみが置いてあった。すると…。

 

ギィ…

 

「!」

 

Fが窓が開いていることに気づき、外を見る。そこには屋根の上に二人の女性がいた。

 

「秩序を守る者…S。」

 

「先天的戦術の天才…Z。」

 

「セラフさんとジナイーダさんですよね!?」

 

「知らんな…。」

 

SとZがFに言う。

 

「こちらも、これを奪うように依頼主に言われている。」

 

「依頼主…?」

 

「余計な詮索はなしですよ。それでは!」

 

SとZが姿をくらます。

 

『あか…Aさん!そっちに行きました!全員、セラフさんとジナイーダさんから書類を奪います!』

 

Fが通信をして、各々がセラフたちを探す。

 

…………

一方

 

「これは…多分事件だ。」

 

「ぽい?」

 

時雨と夕立が歩いていたら、寝ている主任を見つけて言う。

 

「事件ではない。」

 

「!?」

 

「脅かさないでほしいっぽい〜!」

 

ジャックがいつの間にか背後にいた。

 

「吹雪たちが悪ふざけのつもりなのか、金庫の中の秘密書類を盗んだ。ジナイーダらを追っているらしい…。」

 

「秘密書類って?」

 

「分からん…。カッコカリ?とやらはドミナントが自らと一緒に大本営へ持っていくと言っていたしな…。」

 

「なら、別の書類だね…。」

 

ドミナントは用心深い。ジャックにも依頼したにも関わらず、態々そのことを黙って、ジナイーダにその偽物の書類を奪うように依頼をして、Fたちにその偽の書類を追わせているのだ。

 

「秘密書類…。」

 

「ぽい?」

 

「この探偵『時雨』まるっと解決しよう。」

 

「夕立は助手っぽ〜い!」

 

時雨も暇をしていたらしく、遊ぶみたいだ。まぁ真夜中だが、見回り役がいないため、皆起きているのだ。

 

「まずは現場調査だよ。」

 

「ぽ〜い!」

 

…………

 

「ふむ…。赤外線レーザーに、開けられた金庫…。この中に必ず手がかりがあるはず…。」

 

時雨がしっかりと捜査する。

 

「美味しいっぽ〜い。」

 

「あっ、夕立。勝手に食べちゃダメだよ。」

 

夕立はドミナントの机を勝手に開けて、中の紅茶用の茶菓子をもぐもぐ食べている。

 

「時雨も食べてみるっぽ〜い。」

 

「…僕はいいよ。」

 

時雨が捜査するが…。

 

「……。」

 

「〜♪」

 

美味しそうに食べる夕立を見て…。

 

「…はむ。」

 

「あっ、食べたっぽい。」

 

ドミナントのものを食べる。

 

……何これ!?美味しい!

 

幸せそうな顔、瞳は輝き満面の笑みだ。

 

「ま、まぁ、少しくらいなくなっても大丈夫だよね…。」

 

「これで共犯っぽい。」

 

探偵が犯罪者になった瞬間であった。

 

…………

 

「おー、おー。やってるやってる。」

 

「なんかドタバタしているでありますな。」

 

「この武蔵、血が疼くぞ。」

 

「隊長、止めますか?」

 

「慌てるな…。次もあるとは限らんだろう…。」

 

ドミナントらが帰ってきて、屋根の上などで乱闘している様子を見た。

 

「ま、書類はあるがな。」

 

ドミナントが懐の中の書類を服の上から確認する。間違って記入した主旨を伝えたため、新しいものに変えてもらったのだ。もちろん、Fたちはそのことを知らない。

 

「む?依頼主か。」

 

「よ!ジナイーダ。」

 

「随分遅いぞ。」

 

「いや、色々立て込んでてさ…。早く帰ろうと思ったんだけどね…。」

 

ジナイーダから例の書類を渡される。

 

「任務完了だ。帰還する。セラフ!」

 

『はい。』

 

「ミッション完了だ。報酬は後に受け取る。」

 

『わかりました。』

 

「…あとは知らんぞ。」

 

ジナイーダは風のように消えた。そこに…。

 

「あっ!書類…て、司令官!?」

 

「よぅ、吹雪。」

 

Fがドミナントの手にある書類を見る。

 

「ところで、全身黒タイツであるアニメの犯人みたいだよ…。…どうしたの?」

 

「…すみません司令官…。」

 

「?」

 

「これだけは、譲れません!」

 

Fがドミナントから書類を奪う。

 

「すみません司令官!」

 

「ちょ、待…。」

 

「すみません!」

 

ドミナントが言うが、Fが行ってしまった。

 

「…まぁ、あとでわかることか。」

 

ドミナントは気にせずに執務室へ戻って行った。時雨たちが茶菓子を食べつくそうとしている…食べ尽くしている真っ只中の執務室へ…。

 

…………

 

「やりました!」

 

「やったか!」

 

怪盗団がその書類を見る。

 

「カッコカリ…。ついに手に入れ…。…あれ?」

 

Fが書類をじっくりみる。

 

「何かが…違うような…。…あっ!!(仮)が(仍)になってます!」

 

「な、なら、私たちの今までのことは…。」

 

「無駄…だったんですか…。」

 

Fがみつけて、へたり込む面々。完全にドミナントに遊ばれた。

 

…………

 

……騙して悪いが、大切なものは肌身離さずもっている主義なんでねぇ。ま、ちょうど良い腕かな。目の前の俺から奪えるなんて。

 

ドミナントは執務室を開けるまで、ニヤけていた。そう、“しまった”と顔をする二人を見つけるまでは…。

 

…………

翌朝

 

「……。」

 

ドミナントは、大本営からのメールと動画に困惑した。

 

…………

拝啓ドミナント様

突然の申し出となるが、君は一時期第8タウイタウイの臨時提督として任命された。僭越ながら、勝手に任命して申し訳ない。だが、君にしか出来ない仕事である。急を要するため、今すぐにでも出発して欲しい。

 

敬具 大本営元帥

 

…………

 

「は?」

 

ドミナントは勝手なことをされて、少し不機嫌になった。が、下の動画を見た途端…。

 

……………

食堂

 

「よし、皆集まっているな。」

 

ざわざわ…

 

艦娘たちが集められ、何の話かと思う。中にはカッコカリの件を知っている者はそわそわしていた。

 

「と、言うわけで第8タウイタウイ泊地に一時異動になりました。」

 

「「「どういうこと!?」」」

 

艦娘たちが意味不明で叫んだ。




長い…。しかも、オチがない…。

登場人物紹介コーナー
犯人A…どこかの空母。
犯人F…どこかの初期艦。
犯人K…遠征に回される駆逐艦。頭に謎の生物がいる。
犯人M…同じく遠征に回される駆逐艦。初霜と似ている。
犯人Y…よく倉庫にいる軽巡洋艦。
怪盗S…赤い9がトレードマーク。
怪盗Z…とても強い。まさに『ドミナント』。
ドミナント…主人公のほうではなく、その名前の意味をここに書く。先天的な戦闘の天才。つまり、最強の称号。
機密書類K…ケッコンカッコカリ。
探偵S…時雨。第4呉鎮守府に行った時の件で、探偵に目覚めた。
夕立…助手。やらかす助手。

「次回、第245話『ドミナントの転勤生活 その1』だそうだ。…次回は、私の出番はないらしい…。全く、面倒だ…。」


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第8タウイタウイ泊地編
245話 ドミナントの転勤生活 その1


ついにこの章が来たか…。
「筆者さんが追い詰められた顔をしている…。」
そりゃそうだ…。これは実はまだまだ後の方でやろうと思っていたものだ…。
「ネタがないんだね…。」
ああ…。あっ、あと艦これアニメ2期おめでとう。来年だったね。
「えっ?あ、うん…。今なんだ…。」
ああ。今知ったよ。
「来年は僕が主役さ。」
どうなるか楽しみだ。
「ふふふ。」
さて、そろそろあらすじに入ろうか。
「うん。わかった。」

あらすじ
提督にすごく怒られた…。でも、怒っても優しく許してくれるから、いい提督だと思う。


…………

 

「と、言うわけで第8タウイタウイ泊地に一時異動になりました。」

 

「「「どういうこと!?」」」

 

ドミナントの一言により、艦娘たちは困惑の極みになる。いきなり集められ、第一声がこれなのだから仕方がない。

 

「いや、俺だって嫌だよ…。君たちと別れるなんて…。でも、元帥が直々に頼んできたんだよ…。人材不足らしくてね…。それに、現在色々あって資材不足であり、金欠だし…。バイトのような感じで、給料も多く貰えるから…。」

 

ドミナントが少し卑屈なように言う。

 

「提督!私たちの給料いらないから残ってください!」

 

「俺ら頑張るからよ!」

 

「大本営を潰しますか!?」

 

「潰すのはやめろ。」

 

艦娘たちに暴動が起きそうだったので、すかさず止めるドミナント。

 

「それに、一時的だけだよ。1ヶ月〜半年かなぁ?」

 

「なぜそんなにも行かなければならないんですか!?」

 

「いや、なに…。そこの艦娘たちの提督がクソみたいなやつだったらしくてさ…。現在艦娘たちはその心の傷が深く、そして多く残っている。更生させるようなもんだよ。…それに、大本営に助けを求めたらしいんだけど人材不足で、ある部署が知ってて無視してたらしくてさ…。大本営所属の人を全く信用しなくなっちゃって…。そこで、提督候補が沢山いるこの第4佐世保に頼ってきたんだよ。」

 

「それなら主任さんが行けば良いじゃないですか!」

 

「お前…。主任を飛ばす気だろ…。とにかく、ダメ。俺直々に頼まれたし。…まぁ、その意味は分かるんだけどね…。」

 

「何故ですか…?」

 

「よく考えてご覧?ジナイーダたちを行かせてごらんよ…。」

 

「……。」

 

ジナイーダたちを行かせたら大変なことになりそうだ。ジナイーダを行かせたら、全員トラウマものになり、誰も信じなくなる…。主任を行かせたらどうなることやら…。ジャックは現在は商売に励んでいるため、提督をやりたくなどないだろう。セラフは…。…まぁ、候補だろう…。

 

「とにかく、俺は行くことになりました。俺の不在中はジナイーダが提督になります。」

 

ドミナントが言い、提督帽を持ってジナイーダの前に立つ。

 

「…頼んだぞ。」

 

「任せろ。」

 

そしてドミナントが渡して、ジナイーダが被った。

 

「では、行ってきます。」

 

ドミナントがAC化して海を渡って行った。艦娘たちは覚悟が揺らがないことが分かり、堤防で手を振ることくらいしか出来なかった。

 

…………

第8タウイタウイ泊地

 

「ここがタウイタウイかー…。」

 

ドミナントが堤防の前で浮かんでいる。…いや、立っている。数時間かけてここまで来たのだ。

 

「…にしても、お迎えなしとはこれはまた重症だな…。」

 

ドミナントが堤防に上がる。

 

「おーい!誰かいないのか〜!?」

 

ドミナントが大声を出すが…。

 

カァー…カァー…

 

帰ってくるのはカラスの鳴き声のみ。暗い空だ。

 

「…誰もいないのかな…?」

 

ドミナントがズカズカと鎮守府に侵入する。

 

「ドアだ。無駄な装飾だな。持ちにくい。」

 

そして、玄関まで来た。無駄な装飾が施してある。

 

ガチャ…キィ…

 

「…趣味の悪い玄関だ。」

 

ドミナントが中に入り、第一声の感想がそれだ。金色に輝いた置き物などがあり、無駄な装飾が至る所にある。

 

「…艦娘いないのかな…?寮を覗くか…。」

 

ドミナントが入り、3分で異変に気付いた。

 

「…何でこっちの道だけボロいんだ…?」

 

ドミナントは艦娘寮に近づけば近づくほどボロボロになって行き、酷い悪臭がすることに気づく。

 

「…鼻が曲がりそうだ…。マスクしなくては…。」

 

ドミナントがマスクをする。床は所々穴が開いており、酷い状態だ。

 

「…木のドアが腐ってやがる…。早すぎたんだ…。」

 

部屋をノックしようとして、すぐに気づいた。

 

コンコ…ガギ…

 

「あっ、壊れた…。」

 

ノックしただけでこの有様だ。

 

「…こんにちは…。」

 

「「「!?」」」

 

艦娘たちはまるで恐怖の存在が来たかのように怖がり、全員一つの壁の隅に震えながらいた。

 

「…暁…?」

 

「……。」

 

「ここ、第6駆逐隊の部屋…?」

 

ドミナントが気付く。

 

「それにしても臭いな…。木が腐っているのか…?」

 

ドミナントが呟くと…。

 

ビクッ

 

「い、今すぐ綺麗にしますので、ぶたないでください…。」

 

「お願いします…。」

 

「……。」

 

「お願い…なのです…。」

 

ビリリ…

 

ゴシゴシ…

 

「!?」

 

ドミナントは驚いた。少し呟いただけでこの反応なのだ。それに、拭くものがないため、自身の服を使うなど…。それに、よく見たら家具がない。ベッドもない。あるのは布切れのようなものだけだ。

 

「あざだらけ…。」

 

ビクッ

 

「ご、ごめんなさい…。」

 

ドミナントが呟き、暁が震えながら言う。

 

「…別に謝ることなど…。」

 

「この子たちに手を出さないで!」

 

「えっ…?」

 

いきなり大声で、敵意満々な声で言われ、後ろを振り向く。

 

「…叢雲…?」

 

「……。」

 

叢雲は冷たい目でドミナントを睨んでいた。

 

「いるなら返事をしてくれ…。」

 

「チッ…。あんたのような大本営の犬に返す返事なんてないわよ…。」

 

「滅茶苦茶嫌われてるな…大本営…。一体何年放置したんだよ…。」

 

「そんなことより、新しい提督でしょ。」

 

「んー…。少し違うかな。」

 

「は?」

 

「一時的な提督だね。新しい提督は1ヶ月後から半年ぐらいで来るよ。」

 

ドミナントが言う。

 

「あっそ。」

 

「…そうだね〜。執務室は?」

 

「自分で探しなさい。」

 

叢雲は一言言った後、行った。

 

「…しょうがない。自力で探すか〜。」

 

ドミナントはそのあと、色々中を見物した。

 

…………

 

……前のここの提督本当にクソ野郎だな。あの憲兵さんに捕まったんだっけ?出所したら追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる…。

 

ドミナントは鎮守府を一通り回り、そんなことを思う。

 

……何で入渠用ドッグが狭くて、男湯の方が広いんだよ。大本営からの給付金も私服にこやしてやがったな…。それに、資材もないし。何で拷問部屋があるんだよ…。てか、血の跡があったし…。それに、なんだ?あのベッドしかない部屋は…。…いや、意味はわかるよ?ただ、この小説を読んでいる健全な読者のためにわざわざ言わないだけで…。

 

そんなことをぶつぶつ考えていると…。

 

「あった。執務室。」

 

執務室を発見する。

 

「趣味悪…。この鎮守府には金ピカなものが何でこんなに多いんだよ…。」

 

ドミナントは悪趣味な金ピカものの置物などを全て袋に詰める。

 

……あとで売っ払ってやる…。

 

そして、提督机と秘書官机しかなくなった。

 

……この机にも無駄な装飾が…。…クソが。

 

ドミナントは暁たちの行動のことを考えて、心底前の提督を恨んだ。そこに…。

 

「…何やってんの…?」

 

叢雲が入ってきた。

 

「あとで売っ払うの。これで、艦娘寮を綺麗にする分の資金ができるでしょ?」

 

「余計なお世話よ。」

 

「え…。」

 

叢雲に冷たく言われ、ドミナントが困った顔をする。

 

「あんたら提督は信用できない。今すぐ死んで欲しいくらい恨んでるわ。」

 

……どうせ売って手に入ったお金も自分のためだけに使う奴でしょ。こいつも。

 

「……。」

 

叢雲が本気の目で言い、ドミナントは困った顔をしたままだ。

 

「…秘書艦は立候補者0かな。これじゃ。」

 

ドミナントが呟く。

 

「いいえ。私がやるわ。」

 

「えっ?やってくれるの?ありが…。」

 

「ミスを見つけて、すぐに提督辞めさせてやる…。」

 

「……。」

 

ドミナントは叢雲は本気で提督のことなどを嫌っていることが分かった。




タウイタウイの話が続きそうです。

登場人物紹介コーナー
第8タウイタウイ泊地…結構前に一度出ていた気がする…。クソ提督が仕切っていて、艦娘たちの心に大きな傷を残している鎮守府。
叢雲…第8タウイタウイ泊地所属。クソ提督が仕切っていた艦娘たちの中の、反発派の中心にいた。実は、第1佐世保鎮守府へSOSの紙を届けたのも彼女。ドミナントを心底嫌っている。

「お待ちかね、長門コーナーだ。」
「叢雲よ。」
「このコーナーで叢雲は久しぶりだな…。」
「そうかしら?私は初めてよ。」
「いや、下水溝調査の時に…な…。本当に色々…。」
「…何があったのかしら…。」
「まぁ、そんなものはどうでも良い。そうだな…。元々の第8のクソ提督のことを教えてくれ。」
「分かったわ。吐き気を催す邪悪そのものよ。存在がクソ。」
「おお…。」
「あんな奴が提督なんて、大本営の目も地に落ちたわね。」
「…まぁ、否定は出来ないかもな。」
「皆んな、ひどいことをされすぎて反抗すらしなくなっていたけど、私は違ったわ。私はそいつを倒すために立ち上がったの。そして、徐々に仲間が増えたわ。艦娘…つまり、私たちはさまざまなことをした…。大本営に直接手紙を送ったり…。でも、いつまで経っても返事もなかった…。だから私一人、クソ提督に気づかれずに抜け出すように皆んなが協力してくれたの。そして、第1佐世保鎮守府に手紙と直接会って、憲兵団に来てくれるように頼んだの。」
「すごいな。」
「皆んなのおかげよ…。なのに、新しい臨時提督がきて…。心の傷が癒えていないのに、トラウマを呼び起こすやつを送るなんてどうかしてる…。」
「…一応、こっちの提督なんだが…。」
「次回、第246話『ドミナントの転勤生活 その2』ね。次回はその提督を叩き潰すわ。覚悟しなさい!」


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246話 ドミナントの転勤生活 その2

タウイタウイ泊地編。
「僕たちの提督が臨時提督に…。」
まぁ、仕方ないさ…。これも、ネタ不足のため。
「ゆるいかな?」
タウイタウイは前にも一応出たと思うけど…。殺伐としています。
「ACネタは?」
タウイタウイはACネタ極力少ないかな…。
「ふーん。」
いや、真面目な雰囲気の時にACネタ持ってきたら白けるでしょ…。まぁ、ACネタをふんだんに使った、特別話はあるから。4万字以上で構成されている話が…。本編でやるべきか否か…。なんせ、別の世界線の話だから…。
「別の世界線?」
そう。これは艦これとACだけど、作ったものは別の世界なんだよ…。それに伴う前の話も作ってあるけど。
「そうなんだ。あらすじやるね。」
スルースキルェ…。

あらすじ
鎮守府の様子は…。みんな真っ暗だね…。


…………

第8タウイタウイ泊地

 

現在、執務室には第4佐世保の提督でもあるドミナントと、秘書艦の叢雲がいる。

 

「おわり。」

 

「……。」

 

……嘘!?

 

2時間ほどで終わらせたドミナントに驚愕する叢雲。だが、表情には一切出さない。

 

「…他の皆んなも見てくるか〜。」

 

「……。」

 

「なんてねっ。手伝おうか?」

 

「余計なお世話よ。邪魔だから向こうへ行って。」

 

「……。」

 

ドミナントが提督椅子に深く座る。すると…。

 

「ん?何だこれ?」

 

「!?」

 

ドミナントが椅子から小銃を取り出した。

 

「…!」

 

…………

 

『遠征で失敗しただと!?』

 

『ごめんなさい…ごめんなさい…。』

 

バァン!バン!

 

『う…痛…い…よぉ…。』

 

『チッ。役立たずが…。さっさと消え失せろ。』

 

…………

 

「……。」

 

叢雲は忘れたい記憶を思い出してしまった。同時に、腰にあるナイフをバレないように手をそえる。

 

「うわっ!小銃じゃねぇか!?こんなの何に使ってたんだ!?…発砲した形跡あり…。…チッ…。まさか…艦娘に使ったんじゃねぇだろうな…?使ってたら殺してやる…。」

 

「!?」

 

叢雲は驚き、ナイフから手を引っ込めた。

 

「…あっ!ごめん…。汚い言葉だね…。注意するよ。殺すなんて言葉使っちゃダメだし…。」

 

ドミナントが小銃を別の袋に入れる。

 

「叢雲。」

 

「……。」

 

「これ、海のど真ん中に捨てといて。誰かが手にすると危ないし。」

 

ドミナントが叢雲に渡した。

 

「他に武器あったら捨てないと…。」

 

「……。」

 

ドミナントが机を捜索する。

 

……こいつも、いずれはあいつのようになる…。提督は変わらない。だからこそウザい…。

 

叢雲は鉛筆を握りながら思った。

 

…………

 

「休憩時間〜。」

 

ドミナントが言う。

 

「……。」

 

叢雲がそそくさと退室した。あることを考えて。

 

「…叢雲行っちゃったなぁ…。……。…そうだ!」

 

…………

 

「…叢雲さん!大丈夫でした…?」

 

赤城が聞いてくる。

 

「ええ…。」

 

「何発殴られましたか…?」

 

「0よ。」

 

「0!?」

 

「おそらく、優しさを見せて取り込もうとしているのね…。汚い野郎よ…。」

 

「……。」

 

「だけど、表面上の優しさなんてすぐに崩れるわ。さっさと本性バラしてやるんだから…。」

 

「と、言うのは…?」

 

「ふん。決まっているじゃない。あいつを徹底的に虐めぬくのよ。」

 

「い、虐めるんですか…?」

 

「大丈夫。殺されそうになったら、叫んで。みんなで袋叩きにした後突き出すから。」

 

「わかりました…。」

 

赤城は言った後、皆に知らせに行った。

 

…………

執務室

 

ガチャ…

 

叢雲が帰ってくると…。

 

「や。時間ピッタリだね。」

 

「……。」

 

「無視か〜。」

 

叢雲は無視して仕事を始める。ドミナントはなんとも無さそうだ。

 

「暇だなぁ〜。」

 

「……。」

 

「…そろそろお昼だね。食べに行こう?」

 

「……。」

 

「待つよ。」

 

ドミナントは無視されているのにも関わらず、待っている。そして…。

 

スッ

 

「……。」

 

「ん?行く?」

 

叢雲が出て行き、後をドミナントが付いて行く。

 

「ここが食堂か〜。…まぁ、見回りで見たけど。」

 

ドミナントが食堂に入る。

 

「食券制なのか。懐かしいなぁ〜。」

 

ドミナントが艦娘たちのいる最後尾に並ぶ。

 

「…何?」

 

前も後ろも何か鬱陶しいようなもの、煙たいものを見るような目でチラチラ見てくる。

 

「…おや?ここはもしかして艦娘専用?困ったな〜。バレちゃった?」

 

「「「……。」」」

 

「……。」

 

全員から無視された。

 

「…おっ、そろそろ番か。」

 

すると…。

 

「すみません。提督。」

 

「?」

 

「残念ですが、ここは艦娘専用となっております。お食事をお求めの際は隣の券売機に並んでください。」

 

伊良子が冷たい目で言う。

 

「そっかー。だから、チラチラ見られていたのか。ごめんね。」

 

ドミナントが言った後、その券売機に並ぶ。

 

「あれ?これ壊れているよ?」

 

「なら、ありませんね。ご愁傷様です。」

 

「…そっか〜…。」

 

ドミナントが言う。腹が立たないのだろうか?

 

……ざまぁみろ…。

 

叢雲は内心思っていた。が…。

 

「じゃ、釣りだな。」

 

ドミナントはそんなことではへこたれない。

 

「釣竿がわりに、近くのいらなさそうな棒に糸をくくりつけて…。針がないから、針金を削った奴で…。」

 

ドミナントがあっという間に作った。

 

「さて、釣りでもするか。」

 

ドミナントが外へ行く。

 

…………

 

「ん〜。大量大量。」

 

ドミナントは外で焚火をして、魚を焼いている。

 

「そろそろかな…?」

 

ドミナントが言った途端に…。

 

バシャァ!

 

「!?」

 

砂がかかった。火も消えて台無しである。ドミナント自身砂だらけだ。

 

「おっと、悪りぃ悪りぃ。いるとは気がつかなかったんだ。へへ。」

 

天龍と龍田だ。確実にわざとである。

 

「…気がつかなかったとして、なぜ砂をかけた?」

 

「えっ?そりゃ…その…。」

 

天龍が言葉を詰まらせる。そこまで考えていなかったのだろう。

 

「別に〜?訓練の一環よぉ〜?それとも〜、提督はわざとやったと言いたいのかしらぁ〜?」

 

龍田が言う。

 

「…訓練か。なら、仕方ないな。」

 

ドミナントは焚き火を戻し、生焼けの魚を海に流した。一応書くが、ゴミではない。いずれ海の栄養となる。

 

……その調子よ。

 

叢雲は陰ながらほくそ笑んでいた。

 

グゥ〜…。

 

ドミナントのお腹がなる。そこに…。

 

「休憩は終わりよ?さぁ、仕事を始めるわよ。」

 

叢雲が言う。悪い顔でニヤけていた。

 

「…そうだね。そろそろだね。」

 

ドミナントは嫌な顔せずに仕事を始めた。

 

グゥ〜…

 

しかし、腹はいついかなる時にもなるものだ。執務室に響く。

 

「ちょっと、なに?うるさいんだけど。」

 

叢雲が、ドミナントが何も食べていないことを分かりきっていて、キツく言う。

 

「ごめんよ。勝手になっちゃってさ。ははは…。」

 

「そんな理由聞いてない。鳴らさないでくれない?ウザいから。」

 

「…ごめん。」

 

…………。

 

流石に、やりすぎたと思ったのか叢雲は何も思わなかった。そして、夜…。

 

「眠れん…。」

 

ドミナントの部屋の隣がうるさいのだ。もちろん、艦娘たちの仕業である。

 

「…でも、隣で加工品を作るって言ってたけど…。夜通しなんてな…。生産能力の向上って…。」

 

ドミナントは全く寝付けなかった。

 

…………

翌朝

 

「仕事よ。」

 

「わかってるよ〜。」

 

ドミナントが執務室で仕事をしている。

 

……寝たら叩き起こしてやる。

 

叢雲がそんなことを思っていたが…。

 

……中々寝ないわね…。

 

ドミナントは元社畜のため眠らないのだ。そして、お昼…。

 

「…券売機直ってないだろうな〜…。しょうがない、修行だと思えば良いか。」

 

ドミナントは執務室で言う。

 

「……。」

 

もちろん、叢雲は無視して行った。

 

…………

一週間後

 

「…今日も仕事だね。」

 

「……。」

 

叢雲はあの日以来ドミナントの監視をしていない。見ていて同情心が芽生えそうだったからだ。

 

「……。」

 

だが、叢雲は気づいていた。だんだんとドミナントが弱ってきていることに。

 

「……。」

 

「……。」

 

執務室で何度も話しかけてきていたが、最近は何も話さない。それに…。

 

グ…。

 

あの日以来お腹の音も一瞬で、よく鳴り続けている。

 

「……。」

 

……もしかして…、本当に何も食べていないんじゃ…。

 

そんなことを頭によぎるが…。

 

……!?何考えてるの…!?そうするように私が頼んだんじゃない…!それに、これこそが私が望んだことでしょう…!?

 

頭を振って、考えを捨てる。

 

「…?大丈夫?頭痛いの?」

 

「……。」

 

……あんたは人の心配より自分の心配しなさいよ…!あぁ!もう!仕事に集中できない!

 

叢雲が思い、立ち上がった。

 

「……。」

 

「どこ行くの?」

 

「……。」

 

叢雲は何も言わずに出て行った。

 

…………

 

…………。

 

ボーッと、叢雲は空を眺めていた。

 

……なんで怒らないのかしら…?前の提督は少し汚しただけでもこっ酷く怒ったのに…。蹴られたり、殴られたり、叩かれたりしたのに…。何で…?

 

叢雲が思う。

 

……ううん。きっとボロを出すわ…!なんたって、大本営の犬ですもの…。

 

叢雲はすぐにそう思い、鎮守府の中に入った。

 

…………

廊下

 

……どうせ、執務室で寝ているでしょうから、叩き起こしてやるわ…!

 

その思いを胸に、ズンズン進んで行くと…。

 

「…何の集まりかしら?」

 

艦娘たちが少数集まっている。叢雲が壁からこっそり見る。すると…。

 

「汚ねぇ野郎だ!ははは!」

 

「ほーら、汚い雑巾で絞ったバケツだよ〜。」

 

「これを提督の入っているトイレの上から流すのですね?流石北上さん!」

 

集まっていたのは球磨型の北上、大井、木曽だ。

 

……何やってんの…!?あんなことしてなんて頼んでない…!

 

叢雲は思うが、こんな現場は初めてで足が動かない。そして、しばらく経ち、3人が何処かへ行った。

 

「……。」

 

叢雲が恐る恐るその廊下を通ると…。

 

「…?叢雲…?」

 

ドミナントがトイレから出てきた。

 

「ちょ…!あんた!大丈夫!?」

 

「どうやら俺は、嫌われているらしい…。」

 

叢雲が思わず駆け寄った。現在ドミナントは汚物などで汚れ、汚い水を浴び、頭から流血をしていたからだ。明らかにやりすぎである。

 

「ハンカチを…。」

 

「触るな。」

 

「え…?」

 

叢雲が取り出したハンカチを、ドミナントが手を添えて止める。

 

「…その綺麗なハンカチが汚れる。他のに使え…。」

 

ドミナントが真剣に言った後、よろよろと何処かへ行く。

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ!」

 

ドミナントが止めようとするのを、無理矢理ハンカチで出血しているところを押さえる。

 

……私のせいで…。

 

自分が、ただ軽く試そうとしたことがこんな大事になるなんて思いもしなかったのだろう。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

叢雲が必死に謝った。

 

「…?何で謝る…?」

 

「それは…。」

 

叢雲は全て話した。今までどのような気持ちで過ごしてきたのか、こうなった原因、嫌っていたことなど。

 

「…そうか…。」

 

ドミナントは短く呟き、手を上げた。

 

「……。」

 

叢雲は殴られて当然だと思い、覚悟したが…。

 

ナデナデ…。

 

「?」

 

来たのは痛みではなく、優しさだった。

 

「…ま、こういうこともあるだろう…。生きていれば…。それに、前の提督が酷かったのならその反応が普通だし。君が悪いわけじゃない…。自分で反省しているなら、それで良いよ…。」

 

「殴らないの…?」

 

「殴ってどうする…?それで解決出来る問題は少ないよ…。それに、女性を殴るなんて男として失格だし。」

 

ドミナントは困ったような笑顔で言う。

 

……この人は…本当に…。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…本当にごめんなさい…。」

 

叢雲は泣きながら何度も何度も謝った。ドミナントの器の広さに叢雲は完全に敗北した。




ドミナントの器の広さと、この鎮守府のイジメ…。

登場人物紹介コーナー
叢雲…ちょっとした試しがこんなおおごとになるとは思ってもみなかった。しかし、ドミナントに全て打ち上けても許してくれたことの器の広さに敗北。

「長門コーナーだ。」
「少し時間はあるみたいね。」
「叢雲か。前回は提督をどうのこうの言っていたが?」
「ゔっ…。そ、それはアレよ…。その…まだ分かっていなかったから。」
「普通なら激怒級だからな。」
「本当に優しい…。優しすぎる…。」
「まぁ、そのせいで色々空回りしたりして逆に迷惑をかけたり、自滅したりするがな。まぁ、一言で言えば面白いやつだ。」
「そんな扱いなんだ…。次回、第247話『改修』ね。改修…何かしら?」


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247話 改修

今回は少し残酷な描写が含まれます。ご注意ください。

「残酷な描写…。」

そう。飛ばしたい方は、途中から雰囲気が怪しくなったところから、自室と書かれたところまでスキップを推奨します。

「不思議とそんな描写は無かったことになるからね。」

完全には無かったことにはならないけどね。…でも、見ないと辻褄が合わなくなるんだよね…。

「この小説って、本当に全年齢対象?」

……。…対象のところもあれば、対象じゃないところもある。てか、それは前々からところどころ漏れてたよね?

「…まぁ。でも…。」

はい!怪しくなってきたので、そろそろあらすじを始めようか。

「話逸らした…。」

今回のスペシャル…ゲスツッ(ゲスト)

「叢雲よ。」

「タウイタウイ所属の?」

てか、この小説、ほかの鎮守府描写はほぼ叢雲だね…。これて3体目…。

「そりゃ…ねぇ?」

「まぁ…うん…そうだね。」

どこでもドロップするから。はい、まぁそれは置いておいてあらすじを頼むよ。そこのマイクに向かって。

「霧島さん特製マイク。」

「…分かったわ。」

…身長が届いてないけどな…。計算ミスだ。

 

あらすじ

前回私は臨時提督に、試そうと思っただけで、大ごとになっちゃったから謝ったわ。…そして、許してくれたわ…普通なら激怒どころじゃ済まないのに…。

 

よく聞こえないな…。

「うん。筆者さんのせいだと思うよ。うん。」

 


 

…………

第8タウイタウイ泊地

 

「ドミナントさん!大丈夫ですか!?」

 

翌日、セラフが来た。流血のことを知り、急いで来たのだ。

 

「ああ…。大丈夫だ…。」

 

「随分と食べてないように見えますが…。それに、寝不足に見えますけど…。」

 

「大丈夫だ…。」

 

「……。…秘書艦さん、少し外でお話があります。」

 

「は、はい…。」

 

セラフは叢雲と共に部屋を出た。

 

…………

 

「……。」

 

セラフは叢雲を冷たい目で睨みつける。

 

「あなたが秘書艦なんですよね?何でこんなことになったんですか?」

 

「……。」

 

「ねぇ、あなたに聞いているんですよ?黙ったままでは分かりません。早く答えてください。早く。早く早く早く早く早く。」

 

セラフが叢雲に厳しく問い詰める。

 

「何日も食べてないように見えますけど、食事しているところを見たんですか?それも秘書艦としての役目ですよね?全うしなかったんですか?秘書艦として…いえ、艦娘として失格ですね。」

 

「……。」

 

叢雲は目を伏せるばかりだ。だが、セラフはそこまで甘くない。

 

ガシッ

 

「あなたに聞いているんですよ?わかっているんですか?」

 

顎を掴んで、無理やり目を合わせるのだ。

 

「黙ったままなんですか?それほどのことをしたと言うことで、罰を受ける覚悟はあるんですよね?」

 

セラフが強い目力で、叢雲を威圧する。

 

「…やめます。ドミナントさんが望んでいません。」

 

なぜなら、セラフと目を合わせた途端、目の色が恐怖に変わり、震え始めたのだ。また拷問されてしまうのではないかと、震えてしまったのだ。

 

「ですが、理由は説明させて頂きますよ。」

 

セラフが言っていると…。

 

「セラフ、そろそろやりすぎ。」

 

ドミナントがドアを開けた。

 

「というより、なんで流血のこと分かったの…?」

 

「妖精さんネットを借りました。この妖精さんの案内のおかげです。」

 

セラフがポケットから妖精さんを出す。

 

「お礼は、鎮守府にあるクッキー30箱です。自由に食べてください。」

 

(ウヒョーー!…です。)

 

「どんなインフレだよ…。しかも“です”忘れてたろ。」

 

ドミナントが、嬉しくて狂喜乱舞している妖精さんを見て言った。

 

「話は戻すけど、さすがにやりすぎだよセラフ。」

 

「ですが、これも必要な処置ですので…。」

 

「お前怖いから言えないこともあるよ。俺が説明するから。…叢雲も中に入って。」

 

ドミナントが言い、入る2人。叢雲は内心は懐いているらしく、ドミナントの傍にいつもいる。

 

「そうだな…。」

 

…………

 

全てを話したドミナント。

 

「ふぅーん…。」

 

セラフは冷たい目で叢雲を見ていた。

 

「明らかにいじめですね。私が一掃しますか?」

 

「いや、それはやめてくれ。」

 

「それより、大本営からあるものが届いたんですけど…。…これがここに来た最大の理由ですよね?」

 

セラフがディスクを見せた。『改修』と書かれている。

 

「…そうだ。」

 

「見ますか?」

 

「…叢雲、少し席を外してくれ。」

 

「…わかったわ。」

 

叢雲は少し気になったが、外に出る。

 

「…大丈夫ですか?」

 

赤城が聞いてきた。

 

「ええ…。というより、もうあの人を虐めるのはやめて良いわ。あの人、本当に優しいから…。」

 

「?」

 

赤城が言う。

 

「それと、ここ一階だったわよね?」

 

「はい。」

 

「窓から執務室見える?」

 

「見えますが…。」

 

「なら、行くわよ。」

 

「執務室見るんですか…?」

 

「ええ。気になるじゃない。」

 

そして、叢雲と赤城が窓から見ようとするが…。

 

「カーテンが邪魔ね…。」

 

叢雲がカーテンに戸惑う。

 

「あった!」

 

カーテンの隙間を見つけて、赤城と2人で覗く。

 

…………

 

「ドミナントさんは知っていたんですか?『改修』。」

 

「前の世界で聞いた知識とだいぶ違う…。俺たちが来たことで改変されているんだろう…。こんな残酷な要素は無かった。」

 

セラフが部屋を暗くして、DVDの映像を流す。そこに写っていたのは艦娘たちだ。

 

『今回は、艦娘たちの『改修』について研究します。今回の注意事項に、艦娘に絶対に見せないことを条件に流します。』

 

ナレーションが入る。

 

『改修。大本営に置かれている大型機械です。それは、艦娘をさらに強くさせることができます。しかし、それには“艦娘”が必要です。なので、一定量の艦娘を集めます。見てください。ちゃんと生きていますからね?』

 

『ここはどこかしら…?』

 

『何するのかな〜?』

 

『あの大きな機械なにかしら!』

 

「艦娘たち…ですね。」

 

「…そうだ。」

 

『まずは強化させる艦娘を選び、大型の機会に入ってもらいます。そして他の艦娘を選び、ある箱の中に入ってもらいます。6人入るのがやっとの箱ですね〜。』

 

『この中に入るのかしら?』

 

『少し狭そうですね…。』

 

『ん〜…入らない…。』

 

「あっ、ドアが閉まりました。」

 

「…そうだな…。」

 

『そして、その箱はクレーンで吊るされ、大型機械のより上に吊るされます。おっと、パイプみたいなものが出てきましたね。それが…大型の機械と艦娘たちの入っている箱と繋がりました。何が起こるのでしょうかね〜?』

 

「…まさか…。」

 

「そのまさかだよ…。」

 

『おーっと!艦娘の入っている箱の上が開いて…。ブレス機のようなものが出てきました!そして、ゆっくりと箱を閉じるようにブレス機が降りてきます!ここから先は絶対に艦娘には見せられませ…。』

 

『キャァァァァァ!!』

 

『いや!いやぁぁぁぁ…!…ぁぶ…。』

 

『いやだよぉ…!』

 

「……。」

 

「……。」

 

『そして、先ほどのパイプから血…じゃない、艦娘を強化させる“エキス”が出てきました。それが大きな機械に入り…。』

 

『プシュー!』

 

『おっと!出てきました!あれが進化した艦娘です!素晴らしいです!』

 

『あれ?皆んなは…?』

 

『以上!改修でした!』

 

プッ

 

ここでDVDが終わった。

 

「残酷…。」

 

「これで、艦娘たちが人間と同じように扱われないのが分かったな…。」

 

「これを…。ここの艦娘たちが犠牲になるんですか…!?」

 

「そうさせないために、俺がここにいるんだ。まぁ、今は研究されていて、装備にその成分?があることがわかっているんだけどね…。装備は艦娘以上に固くて、今の技術ではブレスは不可能らしいんだよ…。艦娘が装備した状態だと、だいぶ柔らかくなるらしいんだけど…。…大本営はこの鎮守府が必要かどうか考え始めている…。艦娘も優秀ではないし、何より大本営を認めておらず反乱が起きるかもしれない危険な場所だからと…。」

 

「……。」

 

「このDVDは艦娘が現れた初期の頃にやっていたらしい。元帥は、最悪この方法をやると知って、俺に頼んできた。あの人も、艦娘のことを人間のように見ているからな…。…実は期間は1ヶ月しか無かった。だが、それまでに終わらなくても俺が何とか粘って、半年くらいまで待ってもらうつもりだった。その間に技術が進歩して欲しいから…。だから、1ヶ月から半年と言ったんだ…。」

 

「艦娘をこんな風に扱うなんて…。」

 

「だから、こんな風に扱わせないために俺がいるんだ。」

 

ドミナントがセラフに言った。

 

…………

 

「……。」

 

叢雲は気が動転してしまっている。それはそうだろう。自分たちがブレスされるなんて知りたくもなく、ましてや艦娘はされていたなんて…。

 

……あの人は…私たちの救世主だったのに…。何てことを…。これで…この虐めで誰かがブレスされたら私のせい…私のせい…。

 

叢雲がひどく自分を責め立てた。

 

「大丈夫ですか?」

 

赤城は途中から見てなかったのか、何ともなさそうに倒れそうな叢雲を支える。

 

「い、今すぐ…。今すぐイジメをやめさせるように言って…。様半ば私たち…。」

 

「?やめさせるんですか?」

 

「そう…。」

 

「…無理ですね。」

 

「無理…?なんで…。」

 

「今更、あの子たちは止められません。あの子たちは、今までの恨みをあの提督にぶつけようとしています。今止めたら、すべての矛先があなたに向かいますよ…?」

 

「……。」

 

叢雲は黙った。なんてことをしてしまったんだと心の底から反省していた。あんな事になるなんて夢にも思わなかったのだ。

 

「……。」

 

叢雲は現在考えている。自分は、ドミナントにあんなになるまで苛めろなんて言ってもいない。ならば、勝手にやったことなのだと。しかし、自分がその恨みを背負わなければ、知らない艦娘はブレスされるのだ。

 

「…時間はあります。後々考えましょう。」

 

「ええ…。」

 

叢雲は精神的ダメージが大きかったのか、ふらふらと自室に戻る。

 

…………

自室

 

「ハァ…。」

 

叢雲がベッドで横になる。

 

……そう思ってみれば、ベッドも部屋も少しずつ変わっている…。

 

前まではカビの生えた布団だったが、今はベッドだ。腐っていた木の壁や床、天井は全て新しいのに取り替えられている。…下手くそだが。

 

……本当…。なんで気がつかなかったんだろう…。普通、何もなかったら他の提督がこんなところに来るはずがないし…。しかも大本営から直々に来るわけがない…。…もしあの提督じゃなかったら、もう一週間以内で調査は終了、全員ブレス機送りになっていたかもしれない…。

 

叢雲が考え始める。

 

……あの時言っていた言葉、本当だったのね…。見たことない家具も増えてる…。前までは共同の鏡しかなかったのに、一部屋に一つある…。本当にあの趣味の悪いものたちを売り払って、私たちに資金を与えてくれたのね…。

 

叢雲がベッドの新しいシーツに触れながら言う。さらに言うには、一部屋に窓が必ずついていて、開放感も空気の入れ替えも自由になっていた。

 

……これからどうしよう…。

 

叢雲がそんなことを考えていたら、いつのまにか寝てしまっていた。

 

…………

 

「…はっ!?」

 

叢雲が起きたのは日が沈んだ後だった。

 

……信じられない…。現司令官の夢を…。…でも…優しく、撫でられている夢…。

 

叢雲が頭に手を軽く添える。

 

……そう思ってみれば、食べ物を食べていないって言ってたわね…。今度、こっそりおにぎりでも握ろう…。

 

叢雲がそんなことを考えたのも束の間…。

 

ドガァァァァァァァン!!!

 

「「「!?」」」

 

鎮守府に大爆発音が響いた。

 

「な、な、な…。なんの騒ぎ!?」

 

叢雲がすぐに駆け、爆発した場所に来た。艦娘寮とは離れている場所だ。その部屋の壁や天井が壊れて、塵が舞っている。

 

「ここって…。」

 

「いや〜。はっはっは。綺麗に吹き飛んだな。」

 

「ダイナマイトを使った甲斐があります。」

 

ドミナントとセラフがヘルメットを被ったまま嬉しそうに話していた。

 

「あんた…ここ…。」

 

「おっ、叢雲来たか。どう?スッキリした?」

 

叢雲が信じられないような顔をして、ドミナントが聞く。

 

「一体何…。おぉ!」

 

艦娘たちも来て、驚いていた。

 

「嫌な記憶の拷問室。スカッとするほど綺麗さっぱり吹き飛ばしてぶっ壊したよ。あとも残らないほどね。」

 

「爆破って気持ちが良いですよね〜。」

 

ドミナントとセラフが嬉しそうに言う。

 

「「「……。」」」

 

叢雲以外の艦娘たちはキョトンとした顔だ。

 

「こんな部屋、必要ないからね。荒々しい拷問用具は売っ払ったり、埋めておいたから。他にも、ベッドだ…。」

 

「ありがとう…。」

 

「けの部屋とか…。て、え?」

 

叢雲が感謝の言葉を述べた。それだけではなかった。少し泣いていたのだ。

 

『任務に失敗したのは貴様のせいだ!』

 

ピシャッ!

 

『ひぃぃ…。』

 

『痛いか!?資材を無駄にしやがって…!』

 

ピシャ!

 

『すみません…!すみません…!』

 

艦娘たちはそんな昔のことを思い出し、少し泣いていた。

 

「君たちの嫌な思い出の場所はいらない。この部屋は後で君たちの娯楽室とか作るつもりだよ。リクエストあったらドンドン言ってくれ。追加するから。」

 

ドミナントが笑顔で言った。

 

…………

 

「さてと…。」

 

ドミナントが一応の計画を立てた。艦娘たちのリクエストは0だ。

 

「相当嫌われてるな。俺。まぁ、知ってたけど。」

 

「なら、私が変わりますか?」

 

「ダメ。させない。大切な仲間に傷ついて欲しくない。」

 

「その気持ちは本当に嬉しいんですけどね…。」

 

セラフが写真を見せる。

 

「うわっ…。めちゃくちゃ暗…。」

 

「分かりますか?ドミナントさんが行った後からずっとこの感じで…。士気がだだ下がりで、疲労も溜まったままで仕事になりませんよ…。」

 

写真に写っていたのは鬱状態の艦娘たちだ。神様なんて、負のオーラが出まくりである。

 

「こりゃ重症だな…。」

 

「しかも、ドミナントさん…。あの子たちとLENIやってませんよね?メッセージを送るだけでだいぶ違うと思いますけど…。」

 

「まぁ…ね。ならセラフ、伝言頼めるかな?」

 

「…LENIで…。」

 

「それも良いけど、登録が面倒なんだよね…。200人以上いるし…。それに、毎日一回ずつ通知が来たら大変なことになるし…。」

 

「まぁ…。」

 

「と、言うわけで伝言を頼むね。」

 

「…分かりました。」

 

セラフが渋々了承する。

 

「“俺がいない間、頑張った子にご褒美をあげる”って。」

 

「嫌です。」

 

「えぇっ!?」

 

「アンフェアじゃないですか…。仕事のない神様や私たちACにとって…。」

 

「…そうだな…。なら、セラフたちは家事?とかをしてくれれば良いよ。」

 

「…わかりました。」

 

セラフが渋々言った。

 

「それでは、私は帰ります。…なるべく早く帰ってきてくださいね…?」

 

「努力はする。」

 

「それでは…。」

 

セラフが一言言った後、風のように消えた。

 

「さて…。まだまだやることが山積みだな。」

 

そして、ドミナントが一先ず明石の部屋へ行く。

 

…………

明石の部屋

 

コンコン…

 

『はい。どちら様ですか?』

 

「新しい提督のドミナントですぅ。」

 

『……。』

 

「……。」

 

コンコン…

 

『……。』

 

「…居留守使っても無駄だよ。」

 

コンコン…

 

『……。』

 

「……。」

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン…!

 

ガチャ!

 

「はい!なんでしょうか!?」

 

「おぉ…。」

 

明石が不機嫌に出てきた。

 

「少し手伝ってもらいたいことがあってさ。」

 

「今忙しいので後にしてください。」

 

明石が不機嫌にドアを閉めようとしたが…。

 

ガッ!

 

「!?」

 

「残念だが、そうはさせん。」

 

ドミナントがドアの間に片足を挟んだのだ。

 

「君には来てもらう。必ずね。」

 

ガシッ!

 

「やっ…!離して…!」

 

ドミナントが腕を掴み、無理矢理連れて行く。

 

……この人もどうせ…!資材とか私が作ったものを取り上げるつもりなんでしょう…!この人も…。どうせ、提督なんてみんなそうよ…!

 

明石は散々な目に遭っていたらしい。すると…。

 

「あ、明石さんを離してください!」

 

夕張が艤装の照準をドミナントに定めていた。

 

「あっ、ちょうど良かった。夕張にも来て欲しかったんだ。」

 

「「…?」」

 

その言葉で二人に疑問が湧く。なぜ、夕張が来て欲しかったのか…。明石の品物を分取るには他の艦娘が邪魔なはず。変な気を起こそうにも、2体1では不利になるからだ。

 

「…何故ですか…?」

 

夕張は砲を下さずに言う。

 

「…後でのお楽しみにしようと思ったけど…。そこまで警戒されてちゃ言うしかないよね。」

 

「「……。」」

 

「男湯と女湯あるじゃん?」

 

「…ありますけど…。」

 

「男湯の方が断然広い…。そこを艦娘たちが入渠とかに使えるようにしたくて。」

 

「…混浴ですか…?」

 

「んなわけないでしょ。逆にするの。広い方を君たちに、狭い方を俺に。艦娘たちの入渠はバケツとか必要でしょ?それに何百単位でいるから…。まぁ、とにかくパイプの配線とか色々いじらなくちゃいけないからね。俺一人では今日中に終わらない…。だから、君たちメカニック専門の二人に頼もうとしたわけ…。」

 

「「……。」」

 

ドミナントが言い、二人がキョトンとした。

 

「…本当ですか?」

 

「本当。」

 

「後で嘘だったとか…。」

 

「ないない。」

 

「…録音しても?」

 

「良いとも。」

 

「「……。」」

 

餅つきのように淡々と返すドミナント。二人は嫌がるのをやめて、砲を下ろした。

 

…………

 

「明石〜。ここどうすれば良いの…?」

 

「ここは…。そのバルブを絞めた後、そこのパイプを取り外して、こっちに変えてください。」

 

「了解。…夕張、そっちどう?」

 

『大丈夫です!』

 

ドミナントと明石が男湯の方で調整して、夕張が女湯の方で調整している。

 

「?あれ?なんでお湯のパイプが一つしかないの?」

 

「それは…。」

 

明石が嫌な顔をした。

 

「…いや、言わなくて良いよ。…前の提督はクソのろくでなしなのが分かったから。」

 

「えっ?」

 

ドミナントが言い、明石がキョトンとした。

 

「…俺はね、艦娘に酷いことをする奴とか、差別したり人のように扱わない…。そういう奴は死ぬほど嫌いなんだ。嫌がっているのに無理矢理やるなんてもってのほかだ。俺はそいつを人のように見ない。そいつが誰かを人のように見ないのと同じようにね。」

 

ドミナントが重く言った。

 

「…よし、出来た。ごめんね。重い話をしちゃって。つまり、俺はクソのようなそいつとは違うってことを言いたかっただけ。」

 

「えっ?あっ、いえ…。」

 

明石のドミナントを見る目が変わった。

 

……。この人…。良い人なのかな…?…と言うより、私たちにお湯が行くようにパイプが配置されてるし…。…前の提督とまるで違う…。…とても優しい…。

 

そして…。

 

「…提督。」

 

「なんだい?」

 

「…先程部屋を爆破してくれた件といい、今回の件…。誠にありがとうございます!」

 

明石が頭を下げた。

 

「?良いって良いって。それより、そんな堅苦しいこと言わなくて良いよ。“ありがとう”って言ってくれるだけで。もう友達でしょう?」

 

「友達…。」

 

「そう。上司と部下じゃなくて、友達。共に笑いあったり、楽しんだり、助け合ったり…。たまに喧嘩することはあるけど、しっかり仲直りしてまた明日って言えるような仲。」

 

「……。」

 

明石はドミナントに驚きまくりである。

 

……目を見ればわかる…。本心…。本気で言ってる…。前の提督とは全然違う…。前の提督は上下関係が甘いとすぐに怒って叩いてきたりしたのに…。この人は友達って…。

 

「…本当にありがとう…!」

 

「別に良いって。」

 

ドミナントが笑いながら言う。

 

「あ、あの…!」

 

「?」

 

「私たちって…もう…友達ですか…?」

 

「?友達じゃないのか?俺はもう友達だと思ってたよ?最初はわだかまりがあったけど、一緒に協力して、お礼を言い合ってるし…。…違うの…?」

 

「いえ!友達です!」

 

「だよね。夕張とも友達だよね?」

 

「友達です!」

 

二人がにこやかに言った。ドミナントを信用する艦娘が3人になった瞬間である。




ドミナント、少しずつ打ち解けて行きますね。

登場人物紹介コーナー
タウイタウイの明石…前の提督から重労働を課せられた挙句、溜めていた資材などをよく分取られていた。
タウイタウイの夕張…明石と同じで、重労働を課せられていた。開発が失敗すれば全て彼女のせいにさせられて、酷いことをされた。
ダイナマイト…TNT。大爆発させると、スッキリしますよね?
改修…ゲームとは設定は似ているが違います。

「今回の長門コーナーのゲストは…。」
「明石です。よろしくお願いします。」
「明石か…。」
「明石です。」
「そうか。」
「はい。」
「……。」
「……。」
「……。」
「…あのー、他に何か無いんですか?」
「いや、タウイタウイの明石はよく知らない上、話すこともなくてな。」
「司会が諦めたらそこでゲストの必要性は排除されますよ!」
「わかった。やる。…で、何か話したいことなどあるか?」
「結局丸投げ!…でも、まぁやりますか。私は明石です。」
「知っている。というより、そろそろ時間だ。明石は明石だが、タウイタウイの明石で説明させる気はもとよりない。」
「えぇ!?な、ならえーっと…。臨時提督と友達になれてよかったです。」
「シンプルだが、それ故に良いことを言ったな。では、次回を教えてくれ。」
「次回、第248話『デマ新聞を潰せ』デ、デマって…。新聞なんてあの人しかいないじゃない…。」
「なぜそうなるのか…見ものだな。」


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248話 デマ新聞を潰せ

248話…。残り、52話。
「52話…。カウントダウンが始まっちゃったね。」
案が有れば話数は増えます。さて…。最終話に納得するかどうか…。
「最終話を見なければ分からないと思う…。」
そう…。時雨〜、聞いてくれる?
「何をだい?」
…いや、いいや。何でもない。
「気になるよ?」
……。
「…辛いこと?」
…まぁね…。
「どうしたのさ?」
人間性を否定された…。
「え?」
人間性を否定されたよ…。嫌な、クソみたいな奴がいてさ…。
「人間性を否定って…。何したの?」
色々ね…。筆者自身、非があるのは理解してるよ?でも、そんなに言うことあるかなってさ…。実際、他の人からもそいつが最悪で嫌なやつって知ってるし…。関わりが少なければいい奴とも言われる、表面上だけは取り繕ってるクソみたいなやつ。
「…筆者さんがそんなことを言うって、相当なものだね…。」
所謂、死にたくなったって奴だね。まぁ、生きてるけど。捻くれてるって、誰のせいでそうなったと思ってんだよ…。今考えたら腹立ってきた。
「ストレス?」
ストレスもいいところだよ。筆者は発散する方法が知らないから、溜め込むだけなんだけどね…。最近、パンクしそうなのが実感するんだよ…。なんていうか…分かるって感じ。てか、所々怖い顔してるって言われるし…。怪獣を作って、思いっきり暴れさせたいよ。
「現実に疲れてきているね…。」
そう思ってみればイベントもあったっけ…。
「忙しいのか、最近ログインしてくれないけどね。」
くっだらないことで一々言ってきたり、マウント取りたいだけのクズなんだろうね。あいつ。
「筆者さん、そろそろ始めよう?そんな人考えていても、時間の無駄だし、何よりストレスになると思う。」
…そうだね。ふぅ…。話し相手になってくれて助かるよ。…と、言っても自身と対話しているようなものだけどね。
「まぁ…。」
ま、現実から逃げたい時もあるってことよ。さ、始めようか。
「工作艦、明石です。」
タウイタウイの。
「あれ?何気にこのコーナーを明石さんでやるのは初めて?」
いや?前やったと思う。…多分…。
「私は初めてです。」
おっと…。そろそろ1000字超えそうだ。前書きだけで。さっさとあらすじやってくれる?
「お願い。」
「了解しました。」

あらすじ
前回、臨時提督であるドミナントが私たちの嫌な場所を吹き飛ばしてくれました。…後片付けは大変でしたけど…。でも、良い人なのは確かです。間違いありません。


…………

翌朝 執務室

 

「ふぅ~。仕事終わり。」

 

「お疲れ様。」

 

「ありがとう。」

 

ドミナントが仕事を終わらせて、叢雲がお茶を出す。

 

「ところで…。」

 

「?」

 

「夕張さんと明石さんに何かした?」

 

「何か…はしてないね。鎮守府の改装に手伝ってもらったくらい。」

 

「嫌がる彼女たちを無理矢理?」

 

「失礼な!無理矢理じゃない!」

 

「なら、あの新聞はデマカセ…。」

 

「あん?」

 

「い、いえ。何でもないわ。それより、仕事仕事…。」

 

「何?新聞って。」

 

「何でもないわよ。それより、仕事を…。」

 

「気になるから行ってくる。」

 

「あ…。」

 

ドミナントは執務室を後にして、一先ず鎮守府の新聞を探しに行った。

 

…………

 

「新聞…あった。」

 

掲示板のような板に号外と書かれた文字付きで貼ってあった。

 

「なになに…?…先日、提督に連れられて嫌がる明石を発見…。無理矢理…。寝室…。…ハッ!なんだこの新聞。全部デタラメじゃないか馬鹿馬鹿しい。明石たちに聞けば良いものを。」

 

ドミナントは下らなさそうな顔で言う。

 

……ま、新聞と言えば青葉だろうけど…。真実を知る者は少ないからね…。下手に動かないほうがいい。

 

歩きながらそう考えるが…。

 

……だが、新聞の影響力をなめてはいけない…。叢雲が疑ってきた程だからな…。…メルツェルなら百聞は一見にしかず…。とか言うと思うけど、艦娘たちだからなぁ…。青葉に言いに行って、それが報道の自由の侵害とか書かれたらまた面倒だ。ま、身の潔白などいつでも証明できるし、放っておこう。

 

その日、ドミナントは放って執務室に戻って行った。

 

…………

執務室

 

ガヤガヤ…

 

「ん?騒がしい…。」

 

ドミナントが執務室に戻ると、何やら艦娘たちが集まっている。

 

「て、提督…。」

 

「夕張?」

 

夕張や明石が泣きそうな顔をしていた。

 

「どうした?」

 

「皆んな…。私たちは提督に力を貸した悪者って…。部屋をめちゃくちゃにされたり、ご飯がなかったり…。」

 

「…は?」

 

ドミナントはその言葉を聞いて、重い、骨まで凍りそうな声を出す。

 

「新聞のせいか…?」

 

「多分…。」

 

「なるほどな…。…誰かは想像がつくが、思い込みだと申し訳ない。誰が提供か分かるか…?」

 

「前も青葉さんが出していたから…。」

 

「ほぅ…。やはりか…。少し行ってくる…。」

 

「で、でも…。それだとまた提督が…。」

 

「良いんだ。君たちが傷つかないなら安いものだ。」

 

ドミナントがそう言い残し、執務室を後にした。

 

…………

青葉の部屋

 

「フッフッフ…。皆んな青葉の新聞を見てる…。人気急上昇中〜。…夕張ちゃんたちには悪いけど、これも司令官の評判を落とすため…。」

 

青葉がまた良からぬ新聞を使っていると…。

 

キィ…

 

「?」

 

ドアの開く音が聞こえた。振り向いてみるが、何もない。

 

「閉め忘れたかな…。鍵も一応閉めなくちゃ…。」

 

ガチャ…カチン…

 

「よし、じゃぁ明石さんと司令官がベッドで横になっているように、写真を合成して…。」

 

「ほぅ…。そんなことをしようとしたのか…。」

 

ゾクッ

 

後ろから、重い、人間でない化け物のような声がした。

 

「ひ…。し…司令官…。」

 

「なんだ…?弁解があるなら聞こう…。」

 

「こ、これは…。その…。」

 

青葉は、今までいじめても何をしても怒らなかったドミナントに、心底恐怖していた。

 

「俺はな…。俺のことならいじめても何も言うことはなかった…。けどな…。友達や笑い合える仲間を傷つける奴は容赦しない…。青葉…。お前は友達を中傷するデタラメな記事を書き、夕張たちを泣かせた…。違うか…?」

 

「そ、それは…。」

 

「……。青葉…。」

 

「は、はい!」

 

「今すぐ二択選べ…。今までの記事は事実無根の真実を言って、皆から失望されるけど俺に見捨てられないか、このままいずれはバレる嘘の記事を続けて皆んなの怒りを買って、追放されるか…。どちらかを選べ…。」

 

…………

翌朝

 

「あんた、昨日なんかした?」

 

「別に〜?」

 

「夕張さんたちが今日皆んなに謝られてたけど…。」

 

「そうなんだ。」

 

「あと、昨日と比べてあんたの陰口も聞かなくなったわ。昨日と比べてだけど。」

 

「昨日と比べてか…。」

 

ドミナントと叢雲が執務室で話す。

 

…………

掲示板

 

『ごめんなさい。青葉嘘をつきました…。夕張さんと明石さんは司令官と鎮守府を直す手伝いをしてくれていたんです…。申し訳ございません。』

 

…………

執務室

 

「さてと、仕事終わ…。」

 

ガチャ!

 

「司令官〜!」

 

「あ、青葉さん!?」

 

青葉が執務室に駆け込み、ドミナントが嫌な顔をする。

 

「チッ。青葉か。なんのようだ?」

 

「そんな冷たい顔しないでください〜!実は…。」

 

青葉が訳を話した。張り紙をした結果、全員から冷ややかな目で見られて居場所がないだとか…。

 

「…でも、それって全部青葉さんがまいた種…。」

 

「自業自得だ。」

 

「そんなぁ〜!」

 

ドミナントが冷たくあしらい、青葉が泣きそうになる。

 

……まぁ、あんたがそんなことを言う気持ちはわかるけどね…。

 

叢雲がそんなことを思う。

 

「でも、一応助けてあげたら?」

 

「助けてほしいか?」

 

「は、はい!」

 

「だが、肝心の謝りの言葉を聞いていないな。夕張たちに謝った?」

 

「……。」

 

「はい、アウト〜。いってらっしゃい。」

 

そんなことを言っていると…。

 

ドンドン!

 

『青葉!ここにいんのか!?さっさと出てきて土下座しろ!』

 

『あんたのせいで1日を無駄にしたじゃない!』

 

ワーワー!

 

執務室の外が騒がしい。

 

「……。はぁ…仕方ない。この状態で外に出ろなんて言えないじゃないか…。」

 

「匿ってくれるんですか…?」

 

「いいよ。仕方ない…。その代わり、この暴動がおさまったら、しっかりと謝ることを誓うか?」

 

「誓います!誓います!」

 

「デタラメな新聞を書かず、真実だけを書くことを約束できるか?」

 

「できます!できます!」

 

「よし。じゃ、叢雲。ドアを開けて。青葉は机の下に潜って。」

 

「は、はい!」

 

「わかったわ。」

 

叢雲が仕方ないような顔をして、ドアへ行く。ドミナントは青葉を机の下に潜らせ、椅子に座る。

 

「行くわよ。」

 

「良いよ。」

 

ガチャ

 

「何か用かしら?」

 

「ここに青葉が来たはずだ。」

 

「知らないな。」

 

「嘘をつくな。提督。いること知ってるぞ。」

 

「なら、気の済むまで探せば良いさ。」

 

ドミナントが言い、艦娘たちが入る。

 

「そこをどけ。提督。」

 

「俺は今仕事をしているんだ。どいたら能率が落ちるとか言ったし、サボるなって誰かが言ってたぜ?」

 

「ぐ…。嘘をついたらひどいぞ…?」

 

「どうぞ?それに、そんな些細なことですらめくじら立てて探すことかな。俺を陥れたいのは知ってるけど、うまくいかないからって仲間にイライラをぶつけるのはどうかと思うぞ。」

 

「チッ…行くぞ。」

 

艦娘たちは執務室から出て行った。

 

「…良いよ、青葉。出てきて。」

 

「は、はい…。」

 

青葉が机の下から出てくる。

 

「全く、どうしてそんな些細な事で怒ったりするのかね。」

 

「……。」

 

「…なに?」

 

「い、いえ!ありがとうございます…。」

 

……司令官…。今までひどいことを書いたのに、匿ってくれた…。それに、私を庇ってくれた…。いい人なのかな…?本当に…。

 

青葉がそんなことを思う。

 

「…居場所がないなら、たまにここ来なよ。話し相手になるよ?それに、少しは俺のせいでもあるし…。」

 

ドミナントが少し笑みを浮かばせながら言い、叢雲が口元を緩ませながら秘書官の仕事をしている。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

青葉はしっかりと頭を下げて言った。




マスゴミには制裁を。
投稿するのをすっかり忘れていました…。

登場人物紹介コーナー
青葉…あおば。カエデの葉。青い葉っぱ。…ではなく、艦娘。艦これのマスメディア人。

「今回の長門コーナーは青葉がゲスト…か。」
「どうも、恐縮ですぅ。青葉です。」
「今回は主に筆者の原因で簡潔に済ませることになった。」
「原因ですか?」
「投稿していたと思い込んでいたらしい。」
「あれま。」
「全く、しっかりして欲しいものだ…。それだと、筆者の鎮守府の艦娘も苦労するぞ…。」
(うるせー!)
「あ、今何か聞こえた気が…。」
「青葉、取材だ。見出し文はこうだ。『筆者、自身の投稿のし忘れ!?正論を受け付けない!』だ。」
「売れますかね〜…?」
「…やめてほしいそうだが、売れないと売れないで不満そうだな…。」
「所詮、誰もがハッピーになる新聞は作れないってことですか…はは…。」
「…筆者が謝った。まぁ、それくらいで良いだろう。次回予告をしてくれ。」
「ども!恐縮ですぅ!次回!第249話『クソの人間を象った像』ですね。ついにまだ見ぬ秘境へ…!?」
「私の出番はいつになるやら…。」


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249話 クソの人間を象った像

最近、どこか遠くのそのまた遠くに行きたいような衝動に駆られます。
「どうしたの?いきなりそんなこと言って。」
んー…。なんて言うか…。疲れてるのかな…?日常に。
「大変なんだね。」
まぁね。…最近とても疲れた…。仰向けになって、体がほどけて塵になりたいな〜って。
「本当に大丈夫?」
大丈夫じゃないって言ったら、誰か助けてくれる?
「……。」
所詮、そんな世の中さ。あるのは言葉。動かなければ、何もしてないと同じ。ネタを考えていても、書いてないんじゃ進まないのと同じさ。
「…そうかもね。」
あらすじは…。
「第8タウイタウイ所属、夕張です。」
うわ…輝かしい光を放ってる…。俺は影にいたい気分だからな…。あらすじを頼んだよ。時雨…。
「え!?ぼ、僕!?…て、行っちゃった…。仕方ないや。このマイクに、前回のあらすじを言って欲しいな。」
「これ?これ…。」
「そう。…あっ、違う。その向き。そう。そうやるの。大丈夫?」
「頑張ります。」

あらすじ
前回、提督がマスゴミを潰しました。


…………

執務室

 

「昨日は良く眠れた?」

 

叢雲がドミナントに聞く。現在タウイタウイ泊地。ドミナントの一時的な転勤である。

 

「うん。ぐっすり眠れた。」

 

ドミナントがにこやかに言う。隣の大型作業は明石が撤去してくれたみたいだ。そのおかげで静かでよく眠れた。

 

「そ。なら、仕事しなさい。」

 

叢雲が冷たく言うが、内心は少し嬉しく思っていた。

 

「はい。おにぎりよ。ありがたく思いなさいね。」

 

「ありがとう!叢雲が作るおにぎりは本当に美味しいよ。」

 

「なっ…!あ、当たり前でしょう!まずいなんて言ったらぶっ飛ばしてやるから!!」

 

「そんな酷いこと言わないよ。」

 

叢雲が言い、ドミナントが苦笑いして返す。そこに…。

 

ガチャ!

 

「青葉、やってきました〜!」

 

「おう。青葉か。夕張たちには?」

 

「謝りました!」

 

「よーし!良い子だ。紅茶飲む?」

 

「飲みます!」

 

青葉がドミナントの向かいの席に座る。

 

……青葉さんもよく来るようになったわね。司令官の紅茶も美味しいし、良い司令官だってわかったから…。

 

叢雲が、ドミナントと楽しそうに話す青葉を見ながら思う。

 

ガチャ

 

「こんにち…あっ!青葉さん。」

 

「こんにちは。」

 

「こんにちは〜!」

 

そこに、明石と夕張までやってきた。

 

……夕張さん達も来るようになったわね。段々と打ち解けているのね。

 

叢雲が、新しいカップに紅茶を注ぐドミナントと嬉しそうに待つ明石たちを見ながら思う。

 

「叢雲も飲む?」

 

「……。」

 

「てか、よそっちゃったから飲んで。」

 

「そうですよ!」

 

「一緒に茶菓子も食べましょう?」

 

「このクッキー美味しいですね。」

 

「…仕方ないわね。」

 

叢雲がやれやれとして椅子に座ってティータイムを楽しむ。会話に花を咲かせ、しばらくしたあと…。

 

コンコン…

 

「?誰だろう?」

 

ノックする音が聞こえてきた。

 

ガチャ

 

「はーい。どちら様…?」

 

叢雲が覗くように、いつでもドアを閉められるくらい少しだけ開ける。

 

「…あ、あの…!」

 

「あら、暁じゃないの。」

 

そこにいたのは暁だった。叢雲がそれに気づき、ドアを開けて招く。ドミナントに危害を加える様子がないと判断したのだろう。

 

「おや?暁?どうかしたの?」

 

ドミナントが聞く。夕張たちは少し警戒心が高いのか、いつでもドミナントを守れる体制を整えている。

 

「あの…。その…。」

 

「なんだい?」

 

「…絆創膏を…。」

 

「バンソウコウ?怪我したの?」

 

「電が転んじゃって…。医務室にはもう包帯もなくて…。」

 

「そりゃ大変だ。…てか、医務室に包帯もないの…?補充しなければな…。」

 

ドミナントが立ち上がり、行く支度をする。

 

「あんたは執務室でじっとしてなさい。」

 

しかし、叢雲が止めた。

 

「なんで?怪我したんだよ?上司が行くのは当然でしょ。それに、場所も詳しく聞きたい。改善点が多すぎるからね。この鎮守府の建物…。」

 

「私が報告するから、あんたはじっとしてなさい。仕事してないように見えるじゃない。」

 

「俺の面子なんてどうでもいい。意地も張れぬ面子などこちらから願い下げだ。」

 

「そう…。なら来なさい。」

 

叢雲が支度を整えて、ドアへ行く。夕張たちも行くみたいだ。

 

…………

 

「は…?」

 

ドミナントは目を疑う光景を見た。

 

「裏庭は行ったことなかったけど…。ここが艦娘たちのいこいの場なのか…?クソ提督めが…。死に腐れ。」

 

元は艦娘たちの遊び場だったのであろう場所の広場だ。今はクソ提督の趣味の物や下らない銅像、果てまではいらないゴミまで置いてあるのだ。

 

「そんなことを公共の場で平然と言わない。」

 

叢雲は内心その通りだと同意しているが、艦娘の目もあるため、なるべくそのようなことを言わないでほしいと思うのだった。

 

「痛いのです…。」

 

「もう少し待って…。あと少しの辛抱だから…。」

 

「絆創膏を持って来てくれるよ…。あの司令官思っているよりも優しいと思うから、きっとくれる…。」

 

そのゴミ山の中、電たちがいた。

 

「電!」

 

「暁ちゃん…。」

 

暁がドミナントたちを連れてやってきた。

 

「!?し、司令官…。ご、ごめんなさい…。怪我しちゃって…。」

 

「なんで謝る?それより、大丈夫?痛いでしょ…。俺がここを見落としていたミスだ…。本当にごめん…。」

 

「「「!?」」」

 

ドミナントが頭を下げて謝る。電たちは何故上官が自分たちに頭を下げるのか不思議で仕方ない。前の提督ならこっ酷く叱られていただろう。

 

「足にガラスの破片が刺さってるじゃん!どうしよう…!」

 

「提督、慌てないで。まずはピンセットで異物を取り除かないと…。それと、消毒液を頂戴。」

 

「もちろん!」

 

ドミナントがすぐに何の迷いもなく明石に渡す。電は怖いのか、震えてしまっている。

 

「…電、大丈夫。俺がついてる。手を握ってあげるから…。痛い時は思いっきり手を握って。」

 

ドミナントが軽く手を添えた。電は少しだけ震えがおさまった。

 

「…痛くないように、すぐに終わらせるから…。」

 

明石が慎重に狙いを定める。

 

「夕張たちは雷たちに見せないであげて。見るだけでも痛いから…。」

 

「分かりました…。はい、雷さんたちはこちらへ…。」

 

夕張たちが雷たちを少し遠くへ案内する。

 

「行くよ…!」

 

シャッ!スッ!

 

ぎゅぅぅぅぅ!

 

「い、痛いのです…!」

 

「電…。大丈夫…。後でご褒美あげるから…。」

 

ドミナントが言う。実は、電に握られている手も尋常じゃなく痛い。艦娘の馬力を舐めてはいけない。そして、5秒もしないうちに…。

 

「…取れました。」

 

明石がガラスの破片を見せる。

 

「あとは消毒液で…。」

 

「しみるのです…。」

 

「はい、あとは包帯か絆創膏頂戴?」

 

「今は絆創膏しかないから、我慢して…。」

 

ピタッ

 

「はい。これで大丈夫。」

 

明石が笑顔で言う。

 

「あ、ありがとうなのです…!明石さん…!司令官さん!」

 

「別に大丈夫だよ。」

 

「電、よく頑張った。ご褒美あげるよ。何がいい?」

 

「ご褒美…?」

 

「うん。ご褒美…。」

 

「…痛いことなのです…?」

 

「えっ?違う違う!真逆だよ!自分の欲しいものとか、お願いとかを聞くよってこと。」

 

「い、いいのです…!?」

 

「それがご褒美の意味なんだけど…。…前の提督が原因か…。いつか肥溜めにぶち込んでやる…。」

 

「肥溜め…?」

 

「あっ、ううん。なんでもないよ〜。それより、ご褒美は?」

 

「ご褒美…。今は大丈夫なのです!」

 

「そう?なら、保留だね。」

 

ドミナントが電の頭を撫でる。

 

……暖かいのです…。優しくて…嬉しいのです…。

 

電は嬉しそうに目を閉じて思った。

 

「さてと…。この銅像は燃やすか…。溶かして、何かにするか…。売るか…。いや、売れないな。逆に支払わなければな。命名、クソの人間を象った銅像。…艦娘たちが壊す?鬱憤を晴らすために…。…まぁいいや。銅像は今は保留として、ゴミの山をなんとかしなければな…。それと、趣味のものも…。」

 

ドミナントが袋に詰める。売るものとゴミを分けているのだろう。

 

「ここを綺麗にしたら何をするのです…?」

 

「艦娘たちの公園を作るの。ここを遊べる広間にしようかなってね。」

 

ドミナントが平然と言い、電が目をパチクリとする。艦娘のためにそこまでしてくれるとは思っていなかったようだ。すると…。

 

「終わりました?」

 

夕張が暁達を連れてくる。

 

「大丈夫!?電!」

 

「大丈夫なのです。」

 

暁たちが心配して、電が柔らかに返す。

 

「あんたは何やってんの?」

 

「ゴミと売るもの分別してる。公園を作るために。」

 

叢雲が、せっせと袋に入れるドミナントを見て聞いた。

 

「公園…?」

 

「シーソーとかブランコとか。リクエスト有れば作るよ。日曜大工で。」

 

「日曜大工…。今日は水曜日よ?」

 

「知らないの…?…あ、そうか。冷戦の時に普及したんだっけ…。まぁ、とにかく暇な時に大工をするようなもんだよ。」

 

「できるの?」

 

「頑張る。…よし、終わった。」

 

ドミナントがゴミの分別をし終わる。

 

「これは売る物。恐らく前の提督の…趣味の悪い物。電たちは見ちゃダメだよ〜。」

 

「私なら良いわよね。」

 

「あっ、叢雲もやめた方が…。」

 

「……。」

 

「…見ちゃったか…。」

 

「……。」

 

「とてもついていけねぇよ…。うすっ気味悪いぜ…。」

 

モザイクのため、ナニがあるのか不明だ。

 

「これ…どうするのよ…?売れないわよ…。絶対に…。」

 

「…一部のマニアには売れるかもよ?」

 

「何のマニアよ…。絶対に売れないわ。」

 

「そうかなぁ。なら、叢雲はこれをどうするの?」

 

「え…。こ、これを…。……。」

 

「言えないじゃん。」

 

「とにかく、鎮守府からは出さないとね…。」

 

「まぁね。教育に絶対に良くないし。」

 

ドミナントが袋を担ぐ。

 

「提督〜。『友達』の私に見せないなんて少し意地悪だよ〜?」

 

「明石…。…明石は…。これは改造しない方がいい…。知らない方が幸せなことがある…。」

 

「そう言われると、気になっちゃうんですよね〜。」

 

明石がドミナントが担いでいる袋を引っ張ったりするが…。

 

「明石さん!やめた方が良いです…。青葉、見ちゃいました…。」

 

「青葉も見たんかい。」

 

青葉は見たくもなかった…知りたくもなかったような神妙な顔をして俯いている。よほどのモノだったのだろう。明石はなんだか怖くなって見ようと思わなくなった。ちなみに、夕張は暁たちと仲良く話している。

 

…………

執務室

 

「うーん…。」

 

「何を悩んでいるの?」

 

悩むドミナントに叢雲が声をかける。

 

「…第4佐世保鎮守府がとても心配…。」

 

「第4佐世保…。」

 

叢雲が少しだけ寂しそうな顔をした。注意してみなければ分からないくらいだ。

 

「でも、私たちより強いんでしょ?なら平気じゃない。」

 

「そうかもね。でも、これ見て。」

 

ドミナントがセラフからもらった写真を見せる。

 

「……。」

 

叢雲が嫌な顔をした。ドミナントがいつか帰ってしまうことを実感するからだ。

 

「…別れは寂しくなると思うけど、所詮は一時的な提督としての仕事。君達の提督にはなれないからね。」

 

「…分かってるわよ…。それくらい…。」

 

ドミナントが念を入れるかのように言う。所詮は一時的な提督だと明確にしなくてはいけないことだからだ。

 

「…まぁ、当分はここにいるけどね。てか、どうしよう…。」

 

「何よ。」

 

「まだリクエスト箱に5枚しか入ってない…。俺はそんなにも信用されてないらしい…。まだ天龍や間宮さんとも仲がよろしくないし。」

 

「まずはリクエストに応えなさいよ。」

 

「わかった…。…一つ目のリクエストは『娯楽室に椅子が欲しいわ』だって。」

 

「そ、そう…。」

 

「…叢雲〜。」

 

「な、何よ。」

 

「…叢雲の?これ。」

 

「そうだけどなに?」

 

「ソカー。…本当に?」

 

「…お金かかるのかしら…。」

 

「いやいや…。もっと他に…。ソファーが欲しい!とかテレビが欲しい!とか…。」

 

「そふぁー?てれび?何よそれ。」

 

「え…。」

 

どうやら、その存在すら分からないほど、前はひどかったらしい。

 

「…だからリクエストも少ししかないのかな…?」

 

「とにかく、次のリクエストは?」

 

「『一人前のレディーとして、食堂にエレファント(エレガントのつもり)な旗無しのランチが欲しいわ。』…て、これ絶対に暁だろう。」

 

「何で分かったの?」

 

「何でって…。もう最初に…。…いいや。面倒は嫌いなんだ。…『ハラショー。』…。……リクエストは!?…す、すごい物…てことかな…?」

 

「?」

 

「次…。『司令官をよしよししたい。頼られたい。』…何となく、誰なのか想像はできたけど…。流石に幼な子によしよしされるってのは…少し恥ずかしいな…フフ。」

 

「なにまんざらでもなさそうな顔をしているのよ。」

 

「次〜。『ぶらんこ?が欲しいのです!』…いいとも。作ろう。喜ぶだろうな〜。」

 

「またニヤけてる…。」

 

ニヤニヤして、喜ぶ姿を連想するドミナントと、少し引き気味の叢雲。

 

「んじゃ、まずは食堂の旗なしランチだな。」

 

「また問題のある場所に…。」

 

「提督として、皆から信頼されるのは義務なのだよ。」

 

「はぁ…。仕方ないわね。」

 

ドミナントが歩いて行き、叢雲が後ろをついて行く。間宮さんと伊良子のところへ…。食を管理する、まだ敵視されている二人のところへ…。




どうしよう…。最終章書くのめっちゃ楽しい…。

登場人物紹介コーナー
アレ…例のアレ。書けないアレ。皆の大好きなようだけど、一部嫌いなアレ。連想するとまずいので、アレしか書けないアレ。
目安箱…タウイタウイ出張目安箱。第四佐世保での色は白だけど、こちらは緑色。
紅茶…私腹と勘違いさせないため、紙コップで注がれている。
クッキー…ドミナントが第四佐世保から持ってきた。
裏庭…艦娘たちの元いこいの場。ゴミ捨て場になっており、臭い匂いが充満していた。

次回、第250話『給糧艦の心の内』


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250話 給糧艦の心の内

随分お待たせいたしました。
「約1ヶ月だね。」
まだタウイタウイ編が終わらんよ。
「どこまで行ったの?」
結構。でも終わってないよ…。
「その間に、他のやつ書いてたんでしょう?」
まぁね…。でも、こっちも進めてるよ?…この先の話を。
「それじゃダメじゃん…。」
本末転倒ってやつだね。じゃあらすじ頼むよ。今回のゲストは?
「えーっと…。青葉さんだね。タウイタウイの。」
「ども、青葉ですぅ!」
でたなマスゴミ。
「言い方がひどい!」
「筆者さん、流石に失礼だと…。」
ソカー。まぁいいや。
「よくない!」
じゃ、マスコミらしいあらすじを頼むよ。

あらすじ
前回、[ピーーー]を見てしまって戸惑いましたが、提督が[ピーーーーー]を[ピーー]して[ピーーー]しました。


…………

食堂

 

「さて…。叢雲、俺行ったらどうなると思う?」

 

「冷たくあしらわれて出禁にされて終わりよ。」

 

「マジか…。」

 

「逆に、私が行ったらどうなると思う?」

 

「皆に命令した張本人が、相手と一緒にいて反感を買われて追放される。」

 

「なによそれ。」

 

そんな軽口を叩きながら歩き、食堂ホールの前についた。

 

「さて、冗談はさておいて…。叢雲、こんな時はどうすりゃいいと思う?」

 

「さあ。私は経験したことないから知るわけないでしょ。」

 

「それもそうか。なら、行き当たりばったりだな。」

 

「いつも通りね。」

 

「ああそうだ。」

 

ガチャ

 

ドミナントと叢雲が食堂に入る。その瞬間、他の艦娘たちから視線を向けられた。

 

「よ〜皆さん元気?食事中すまないが、こっちもやらなきゃいけないことがあるんでねぇ。邪魔させてもらおう。」

 

ドミナントは全く気にせずにキッチンへ行く。

 

「……。」

 

「どうしたのよ?」

 

しかし、ドミナントは入ろうとした途端、心に何か引っかかる。

 

「…そうだ。キッチンに入る前は消毒だ。伊良子さん、ありますか?」

 

「……。」

 

そこで叢雲が初めて、伊良子に入る状態を見られていたことに気づく。伊良子は無言で消毒液を出した。

 

「さらには、エプロンや入っても問題のない服装にならなくてはならない。まぁ、提督帽の中に髪の毛をいれて、粘着ローラーで衣類の服のゴミを取って…。叢雲にはこれ貸すから、被りなさい。」

 

ドミナントが、衛生キャップの代わりの手ぬぐいを渡した。ほのかに紅茶のいい匂いがする。

 

「手洗い消毒OK、衣類OK、そしてドアをノックして用件を…。」

 

「もう既に外にいますけど。」

 

「……。こんにちは。」

 

間宮さんは既に外で、話を聞く姿勢になっている。物腰を柔らかそうにしているが、その断りそうな目は隠せていない。

 

「実は、暁…ちゃんの、リクエストに旗なしランチが欲しいとリクエストが来まして…。」

 

「それで?」

 

「そのメニューを追加していただくことは出来ないでしょうか…?」

 

「…すみません。私たちも他の艦娘の食事を作るのに手一杯で、いちいち構っていられないんです…。」

 

間宮さんが申し訳なさそうに謝るが…。

 

……やな感じ…。

 

……周りの奴がニヤけている…。おそらく、この話は嘘だな…。

 

叢雲とドミナントが見抜いた。

 

「…そうですか。」

 

「はい。それに、自分で解決できないものを、他の者に頼るのはどうかと思いますが。」

 

「…なるほど。言いたいことは分かった。つまり、俺に手伝えと言うことだな。」

 

「…え…?ど、どうしてそんな…。」

 

「いや、間宮さんが自分で言ったんですよ?他のもので手一杯で、構っていられないって。猫の手も借りたいんでしょう?」

 

「……。」

 

間宮さんか引きつった顔をしていた。こんなになるなら、素直に応じておけば良いと言うもの。しかも、その内容を暁達に聞かれていたため、評価も下がっている。

 

「まぁ、改善ある鎮守府を立て直すなら、まずは飯だな。腹が減っては戦が出来ぬとまで言われているほど、食は大事だ。」

 

ドミナントがエプロンをして、衛生ばっちりでキッチンに入る。あったのは…。特にない。あるのは小豆を煮ている鍋のみである。

 

「さてと…。忙しい割には、特に目に見えて忙しそうには見えないな。…まぁ、そんなものはプロにしか分からないから、何も言わないけどさ。」

 

注文表を見ながら言う。

 

「…おっ、多分これは金剛型の注文表だな。紅茶系か。」

 

「…毎回、金剛さんに紅茶について言われます。」

 

間宮さんは仕事モードに切り替えて、悪い雰囲気にならないようにする。雰囲気とは大事で、険悪ムードで作られた食事は大抵まずくなると知っているからだ。

 

「なるほど。なら、俺の出番だな。金剛も納得の紅茶の作り方を俺は知っている。」

 

ドミナントが持ってきた茶葉や道具を慣れた手つきで使い、作った。

 

「…まぁ、こんなもんだろう。」

 

「…早いですね。」

 

「ありがとうございます。」

 

ドミナントは伊良子のところに持って行く。

 

「伊良子さん、運んでくれ。」

 

「……。」

 

しかし、応じない伊良子。そこに…。

 

「なら、私がやるわ。」

 

叢雲が出てきた。

 

「いや、叢雲。気持ちは嬉しいが、これは試しでもある。」

 

「試し?」

 

「そう。伊良子へのな。」

 

伊良子は応じないままだ。そこに…。

 

「伊良子ちゃん、何をしているの?運んで。」

 

間宮さんが顔を出す。

 

「でも…。」

 

「伊良子ちゃん。ここでは私的な理由で応じないのはいけません。私たちは給糧艦でしょう?待っている艦のために、私たちは作ってお届けする。それがここのルールであり、ここに立つ者の役割です。」

 

「…はい…。」

 

伊良子が受け取って運ぶ。

 

「…やっぱり、俺は嫌われているようだな。」

 

「最初だって、私も嫌っていたわよ。」

 

「今も?」

 

「ええ。」

 

「フッ。なら、そのウェイトレスの格好はなんだ?」

 

「気分よ。」

 

「そうかい。」

 

ドミナントは叢雲と話したのち、仕事に戻った。いつの間にか、食堂に人が賑わっていた。忙しくなるだろう…。

 

そして

 

『そこの鍋を今すぐ火元から外してください!』

 

『了解!』

 

『新たに注文が入りました!』

 

間宮さんたちと

 

『皿洗いお願いします!』

 

『了解!』

 

『空母や戦艦の方々が帰ってきました!さらに忙しくなることを考慮に入れてください!』

 

協力しながら

 

『白玉デザートは冷凍庫の中の左上です!解凍してから、粒あんをかけて提供してください!熱すぎるとダメです!』

 

『よしきた!』

 

『18番テーブルに20品の追加注文です!急いで!』

 

『了解!』

 

『私も手伝うわ!』

 

忙しい時間帯を

 

『おにぎりを12個握ってください!』

 

『間宮さんは味噌汁をお願いします!』

 

『わかりました!』

 

『急ぎなさい!待たせているわよ!』

 

『追加注文はありませんが、15分経っています!』

 

『ひぇぇ〜!』

 

乗り切った。

 

…………

 

「はぁ〜…。疲れた…。」

 

ドミナントは、もう誰もいない食堂のテーブルに突っ伏す。

 

「…こんなに大変なことを毎日してるのかよ…。間宮さんたち…。」

 

「ええ。」

 

「…はい。」

 

「大変すぎるでしょ…。」

 

「ですが、それも役割なので…。それより、貴方もよく頑張りました。最初であんなに動ける人はそうそういません。」

 

「途中から、意識を失いかけましたからね…。」

 

ドミナントはエネルギー切れですよぉ。

 

「…間宮さん…。」

 

「…はい。」

 

「…伊良子さんも、すごいですね…。本当に…。自分、今まではさほど気にしていませんでしたが、今ものすごく大変だと言うことを知りました…。」

 

「…前の提督は知ろうともしませんでしたけどね。」

 

「毎日毎日これを繰り返して…。労う日もありませんよね…。」

 

「はい。私たちは給糧艦として、毎日24時間料理を作って、届けるようにしています。」

 

「…間宮さん。」

 

「はい?」

 

「…本当に忙しかったんですね…。すみません…。疑っていました…。いつもの癖をそう簡単に直すことなんて、難しすぎますよね…。」

 

ドミナントが謝る。

 

「…いえ、提督…。私も謝らなければなりません…。」

 

「どうして…?」

 

「…提督の話を断った理由は、個人的な感情でした…。…前の提督は、私たちに強要ばかりして、文句を言ってばかりでした…。自分では何もできないクセに、無理な事ばかり言って…。伊良子ちゃんもそうです…。すぐに届けても、『遅い』しか言われず…。自分の求めている味じゃなかったら、伊良子ちゃんに料理を投げつけたりもしました…。」

 

伊良子は近くで立っていた。瞳の端に薄らと涙が見える。

 

「戦闘に参加しない私達の扱いをひどくしたり、暴言ばかり言うんです…。…貴方も同じ提督ですから、どうせそうなると思っていました…。前の人とは違うと分かっていても…。自分でも分かっていても…。本当にごめんなさい…!」

 

「ごめんなさい…。」

 

間宮さんと伊良子が謝ってきた。ドミナントに対して、陰で今までしてきたことに対してだろう。

 

「…いえ、いいんです。そんなひどい提督だったんですね…。前のは…。…そんななら、提督に対してそういうふうに扱うのも無理はありませんよ。自分だって、そうするかもしれません。間宮さんたちは悪くありませんよ。悪いのはその前の提督です。それに、一つ嬉しいことがあります。」

 

「「?」」

 

「理由がわかって良かったです。自分、間宮さんたちに気づかないうちに迷惑をかけていたり、ひどいことをしたわけではなかったんですね。良かったです。本当に。」

 

ドミナントは、今までの自分の行為が迷惑になっていないことに喜んでいる。それなら、打ち解けられると思ったからだ。

 

「ま、だから何だですけどね。間宮さんたちは立派です。そんな傷を負っているのに、表情に出さずに今まで仕事をしてきたわけですから。とても、普通の人なら出来る行為ではありません。給糧艦として誇ってください。それが手向けです。」

 

「「……。」」

 

提督に、初めてそんなことを言われて、嬉しそうな、泣きそうな顔をする二人。

 

「それに誰もいない、食堂が終わった時間にたまに来ます。その時は、弱音だろうとなんだろうと、俺にぶつけにきてください。給糧艦として、今まで我慢していたことを全てぶつけても良いです。自分、全て受け止める覚悟ですから。」

 

ドミナントが朗らかな、望むところのような笑顔で言った。その笑顔が何を意味するか…。

 

「「はい!」」

 

少し返事をした。その顔は、今までの鬱を浄化させるには十分な顔だった。




普段、艦娘たちの食事を作っていたりする2人は、一体何を考えているのだろうか…。それを何も思わずにいる提督…。それが筆者です。

登場人物紹介コーナー
伊良子…タウイタウイ所属。過去に元提督と色々あった。
間宮…タウイタウイ所属。過去に元提督と色々あった。伊良子が虐められる度に、夜遅くまで話を聞いてあげていた。

「今回は、タウイタウイ泊地なので間宮コーナー?らしいですよ。」
「助手の伊良子です!」
「ところで、コーナーを設けてくれるのはありがたいんですが、ここで何をすれば良いのかしら…。」
「過去の話をしたら、お通夜状態になりますよね…。」
「い、伊良子ちゃん。そんなことを思い出さなくても…。」
「そ、そうですね!今は違いますし!」
「ええ。…うーん…。どうすれば…。」
「やっぱり、お料理コーナーでしょうか?」
「それが妥当だと思いますが…。しかし、ただレシピを載せるだけならインターネットを使った方が早いですし…。」
「…そうだけど…。あっ、そうだ!なら、食材を使ったコントをしましょう!ボケます!…羊羹はよう噛んで食べなさい。なーんて…。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「…次回、第251話『タウイタウイ中庭公園化作戦』。」


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251話 タウイタウイ中庭公園化作戦

あーあ。どうしよ。やる気なくなっちゃったな…。
「どうしたんだい?」
いや、なに…。人間は全くわからないユニークな生き物ってことさ。
「?」
人にはそれぞれ個性があるのに、認めない人も多くてね…。てか、この小説の注意書き読んでる人いるの?『これは人類には早すぎた上級者向け』って書いてあるよね…。しかも、ずっと前のこの場所に、最後まで読んでから評価してって書いてあるよね…。これ、まだまだ続くよ…?てか、そこまで読んでいないのに評価するって浅ましすぎない?
「どうしたのさ。いきなり。」
いや、なに…。人々の勝手だよ?そりゃね…。でも、この小説を読んでくださいって頼んでいるわけでも、お願いしているわけでもないんだよ…。なのに、勝手に評価するってのは筆者に人権ないんじゃないかと…。てか、これ自体俺得だし…。…筆者得?
「うーん…。多分、それは筆者さんにしか分からないんじゃないかな…?」
アンチも多い世の中だよ…。てか、ネタがないから思いっきり内面の一部をぶちまけてみた。多分、他人が筆者…つまるところ私自身を見る目も変わると思うし。
「多分、引いているよ。ネタがないからって、ブラックの一部を見せるのは…。」
なら、後で編集しておくよ。でも今はこれで勘弁して…。ネタが出来たら消すから…。
「ネタ切れなんだね…。」
実際、タウイタウイ泊地編だもんね…。それ以外ネタないもんね…。最終章ばかり出来上がって…。まぁ、最終章は熱い展開ばかりだけど。
「相当大変なことになっていそう…。」
そりゃね。艦娘と深海棲艦の関係、この世界はどこなのか、なぜドミナントなのか、神様とはなんなのか、何を求めて何を失っているのか。などなど…。それらが…まぁ、多分最終章以前に少しずつ明かされて行くと思うけどね。
「つまり、ミステリー?」
超長編小説になる予定だったから、タグがどうしてもね…。しかも、ホラーやコメディや現代とかも合わせ過ぎているから…。もしかしたら、今までその役だった艦娘が変わるかもだし。艦娘を知るごとにだんだん史実もわかるようになってきたし…。
「筆者さんは勉強しているんだね。」
そりゃもちろん。まぁ、日常生活では全く役に立たないけどね…。例えば、舞台となる場所を決めて、VOBでそこからここまで何分か…とか。徒歩何分か、1日にどれくらいイザコザがあれば、人は倒れるのかとか…。舞台となる場所が日本でも他の国でも、その文化や分布する生態を調べるし…。
「頭も良くなるのかな?」
さぁね。実際、調べていることもあれば適当なところもあるけど。金剛なんて見返してごらんよ。ほぼ英語使ってないし…。
「まぁ…。て、前書きやりすぎだよ…。」
おぉ…。1000字超えた…。で、今回のゲストは?
「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね。」
「暁だね。水平線に、勝利を刻もう。」
一人前のレディー様じゃありませんか。どうぞ、あらすじを。ご褒美に飴玉あげるから。
「む〜!レディーらしくないわ!」
暁よ…。いいかい、一人前のレディーというのは、仕事で有れば泥水を平気で啜り、血反吐を吐くことさ。一人前だからこそ、そういうキツいことでもレディーらしさを忘れずに貫き通す姿が一人前のレディーと言うものではないか?
「う…。」
「さぁ、あらすじを…。」

あらすじ…
今、お弁当を詰めているわ。お弁当箱がないから、弾薬入れに詰め込んでいるけど…。油で汚れないかしら?


…………

 

「ん〜。」

 

ドミナントは執務室でだらけている。

 

「しっかりなさい。一応、ここの提督でしょう?」

 

「まぁね…。リクエスト箱は?」

 

「娯楽室の道具とブランコの作製、新鮮な食材の入手よ。」

 

「なんかリクエスト増えていない?」

 

「今朝見たら、新しく入っていたのよ。」

 

「そうなのか…。」

 

ドミナントが机の中を漁る。危険物がないかどうかの確認だろう。

 

「…変な形のサバイバルナイフ…。叢雲、これ売るといくらになると思う?」

 

「…一万ってところかしら?」

 

「なら、多く見積もって一万五千円で売ろう。ネットオークションで。」

 

ドミナントが写真を撮って出品する。

 

「…送料はどうする?」

 

「んー…。こっちが負担した方が、売れやすいわよね…。場所が場所だし…。」

 

「まぁ、ここ海外だから送料が高いし…。じゃ、送料無料っと。…期間は?」

 

「なるべく早い方が良いわよね…。」

 

「じゃ、一週間にして…。オーケー。あとは待つだけ。」

 

「…今までもそうだったけど、そんなので本当に稼げるのかしら…?」

 

叢雲が怪しく思った。今すぐに必要だった資金の分は現地で売り、他の器具や置物、銅像を溶かして延べ棒にしたものは全部出品しているのだ。

 

「さてと…。これで、一週間後にお金が入る。…まぁ、アレ全部だから、精々50万ほどあればいい方だけどね。」

 

「ごじゅ…。」

 

叢雲が思考停止した。

 

「…ハッ!?今何かが見えたわ…。とんでもない大金が見えて…。でも、それでもこの鎮守府は少しは良くなるわよね!」

 

「…そうだな。」

 

「楽しみね!」

 

叢雲が心底嬉しそうな顔になり、ドミナントの口元が緩んだ。

 

「さてと、一週間後にお金が入るから、少しはリクエストを叶えられるし公園も作れるかもしれない。余った木材があるから、それで作ろうか。少しは節約しよう。」

 

「ええ。」

 

二人は木材の保管庫まで歩く。

 

…………

 

「ということで!裏庭で実際に…。」

 

「作ってみたわ!」

 

二人は裏庭で木材を持っている。そこに…。

 

「あれ?何してるんですか?」

 

「公園を作っているんですか?」

 

「青葉、この勇姿を取材します!」

 

「おぉ、夕張に明石に青葉…。」

 

夕張たちが気になってやってきた。

 

「公園を作ろうと思ってね。」

 

「提督!この明石にお任せください!」

 

「私たちになんで声をかけないんですかー!」

 

「いや、流石に手伝ってもらうのは悪いし…。それに、忙しいと思うし…。」

 

「後に、私たちが主に使うんですから、当然です!」

 

「マジか…。ありがとう。」

 

その一連の流れを叢雲が見て、少し微笑んだ。

 

「ブランコを作りたいけど…。木製だと壊れて怪我をするかもしれないし…。まずは、シーソーやら砂場の周りの枠を作ろうか。」

 

「いいですね。でも、私たちでかかれば、木製のブランコも…。」

 

「いや、木が傷んできた場合を考えて。そのうちに、座るところがガサガサになって、こいでいたらお尻に沢山の、小さな木片が深く刺さって…。」

 

「提督!そんなこと言わないでください!ゾッとしました!」

 

「寒気がしました…。」

 

「全く…。」

 

そんなこんな言いながら、シーソーを作っている。ドミナントは切ったりくっつけて、明石がどんなにするか設計図を書き、夕張と叢雲が案を出し、青葉が指示を出している。

 

…………

1時間後

 

「出来た。」

 

意外と時間がかかった。

 

「試してみてくれ。」

 

「なら、私が…。」

 

「私もやるわ。」

 

叢雲と夕張が恐る恐る乗り、確認をする。

 

「…うん。大丈夫ね。」

 

「なら、もっと激しくしてくれ。」

 

「ん。分かった。」

 

叢雲と夕張が激しく揺らす。が、特に異常はないようだ。側から聞こえたら変態発言である。

 

「全然大丈夫よ。」

 

「よし。シーソーは良し。次は砂場の枠だな。これは簡単だ。どのくらいの大きさか計画を立てて、長方形の木材を四つ作れば良いだけだからね。」

 

ドミナントが適当に作る。あっという間だ。体力がついてきたのだ。

 

「これをこうして…。出来た。あとは、砂を買うだけ…。」

 

「砂を買うの?近くにいくらでもあるじゃない。」

 

「近くのはダメなのだ…。病原菌や感染症ウイルスがあるかもしれない…。しっかり、殺菌されている砂を買うのだ。」

 

「ふぅ〜ん。」

 

叢雲はどうでも良さそうな顔だ。

 

「滑り台は木材だと無理があるな。危険だし…。なら、木材で作れるものはこれで終わりかな。花壇も必要かな?」

 

「ん〜…。今はまだいいと思うけど。」

 

「でも、確かに公園にあると素敵ですよね〜。綺麗な花があるのは。」

 

「そうね。」

 

「青葉も取材します!」

 

「そうか…。こっちの鎮守府では公園作らなかったからなぁ〜。色々言ってくれてありがとう。」

 

ドミナントは木材で花壇や鉢植えを作る。

 

…………

2時間後

 

「出来た…。めちゃくちゃ疲れた…。」

 

「お疲れ様です。」

 

夕張が水を持ってきてくれた。

 

「ありがとう。」

 

ドミナントが飲む。キンキンに冷えてやがる。

 

「これで、あとは植物の種を植えれば完成か。」

 

「そうね。」

 

「風が心地よいな…。暑いけど。」

 

「暑い…。あっ!そうだ!日除けを作ってみない?」

 

「こらこら…。司令官は疲れているわ。」

 

「おぉ…。叢雲…。優しいところあるなぁ。」

 

「ふふん。だから、10分ほど休ませなさい。」

 

「もとい、畜生め。」

 

「暴言取材しましたぁ!」

 

「うぉー!青葉やめろー!」

 

「あっ!お疲れ様!一人前のレディーとして、色々作ってきたわ!」

 

「ハラショー。」

 

「私も手伝ったんだから!」

 

「お弁当なのです。」

 

そんなこんなで休むメンバー。そこに、暁達がバスケットがわりの砲弾箱に色々食べ物を詰めて持ってきてくれて、お昼休憩をした。

 

…………

 

トントントン…

 

「?」

 

叢雲が木陰でのお昼寝から目を覚ましたのは、何かを叩く音が聞こえてからだ。周りを見ると、夕張や暁達がお昼寝をしていた。

 

「…何してるの?」

 

「あっ、起こしちゃったか。」

 

ドミナントだ。

 

「いや、木陰だけじゃアレだから、日陰を作ろうと思ってさ。」

 

「大変じゃない。一人で?」

 

「まぁ、叢雲たちは休んでるからね。俺が、なんとかしないといけないのだ。…この日陰は雨除けには出来そうにないな…。」

 

ドミナントが、一人で作った日陰の屋根を完成させる。が、隙間だらけだ。

 

「んー…。あっ、そうだ。バーゴラにしよう。」

 

「ばーごら?」

 

ドミナントはその板を取り外して、隙間だらけにする。

 

「ちょ、ちょっと!これじゃ日陰にもならないわよ!」

 

「まぁね…。今はね…。」

 

格子状の屋根である。

 

「これに、植物が巻き付けば、天然の屋根の出来上がりと。」

 

「あぁ、そういう…。」

 

叢雲が納得した。が。

 

「でも、これ屋根になるのはいつ頃かしら…?」

 

「……。…取り外す?」

 

「そんな提案をするってことは、相当長いのね…。でも、これはこれでいいんじゃない?いつかこの下で、このメンバーでお昼を食べるのが待ち遠しいわ。」

 

「……。」

 

叢雲が口元を緩ませながら言い、何も言わないドミナント。果たして、その頃自分はいるのだろうか…。

 

「…でもベンチ作ろうにも、まだ先だな…。」

 

「それは…そうだけど…。今はまだ、この木があるわよ。」

 

叢雲が木陰に入り、その木に触れる。

 

「これは、毎年『くあば』って言う木の実がなる…らしいの。」

 

「らしい?」

 

「…いつも、元司令官が独占していたから、味を知らないの。」

 

「そうなのか…。…あっ、あそこにちょうど食べごろそうなものがあるぞ?」

 

「あれはまだ酸っぱいわよ。」

 

「…よく分からないな…。まぁ、いつか鎮守府にいる全員が食べれるくらいになるだろう。」

 

ドミナントはそれを見て、やはりわからないと思った。

 

「次は娯楽室の道具かー…。」

 

「今日は休みなさい。もう十二分に働いたわよ。」

 

「だと良いんだけどね…。まだ他の艦娘たちから信頼を得てないから、出来る限り信頼を得たいんだよ…。」

 

「……。」

 

叢雲はドミナントの課せられた使命を知っている。つまりドミナントの中で、艦娘からの信頼を得られたらOK。得られていない艦娘はブレス機送りにしなくてはならないのだ。

 

「んー…。なら、長門さんのところに行く?」

 

「…ゑ?」

 

「長門さんのところ…。」

 

「…連合艦隊旗艦の…?あの長門…?」

 

「…まぁ…。」

 

「…俺、はっ倒されない?流石に長門本気殴打されたら、俺も部位損傷すると思うんだけど…。」

 

ドミナントは目に見えて暗い顔になる。

 

「大丈夫よ。前の提督じゃないんだし。…多分…。」

 

「…そうか…。」

 

一応、ドミナントと叢雲は長門のいる場所へ行くのだった。

 

…………

 

「めちゃくちゃ緊張するんだけど…。一応代表みたいなものでしょ…。だって…。」

 

「…私たちには優しいわ。」

 

「俺、提督だからなぁ…。」

 

コンコン

 

そうは言いつつもノックをした。

 

「…臨時提督のドミナントです。」

 

『…入れ。』

 

「お邪魔します…。」

 

ドミナントは恐る恐る扉を開けて中に入る。そこにいるのは仁王立ちした長門だ。

 

「何のようだ?」

 

「あの…。臨時提督として、ほぼ艦娘代表の貴公に会いに…。」

 

「御託はいい。何のようだ?」

 

長門は怖い顔をする。

 

「いえ、本当に挨拶だけでして…。」

 

「挨拶だけだと…?貴重な時間を挨拶に…?」

 

「あっ、いえ…。すみません…。」

 

「……。まぁいい。態々挨拶をしてくるとはな。前のアイツとは違うみたいだ。」

 

「どうも…。」

 

「…それと、言葉はいらん。貴様がどのような提督なのかは、私自身の目と日頃の行動で判断する。」

 

「分かりました。」

 

「ああ。」

 

「失礼しました。」

 

ドミナントはドアを閉めて、歩く。叢雲はトコトコ後ろをついていっていた。

 

「…長門、なんだか…見たことのない表情をしていたな…。新しい表情だ。」

 

「そりゃそうよ…。挨拶だけに、提督の時間を割いてまで行ったんだから…。」

 

「え?貴重な時間って長門自身のことじゃないの?」

 

「違うわよ。」

 

叢雲は流れるように返す。

 

「…怒りのやり場がないんだと思う…。」

 

「やり場か…。まぁ、前の提督と比較されちゃな…。」

 

「…長門さん、前の司令官のせいで、姉妹艦の陸奥を亡くしているの…。」

 

「…へ?」

 

「前の司令官が、無理に大破進撃させた挙句、デコイ代わりにされたのよ…。敵艦は大破の艦娘ばかりに攻撃するから…。そして、轟沈…。しかも、長門さんの目の前でね…。そのことについて問い詰めたら、次は他の仲間が犠牲になるとか脅しをかけたの…。」

 

「そいつ最低のクソ野郎だな。」

 

「うん…。だから、同じような司令官だったら、怒りの吐口にしようと思っていたんだと思う…。でも、違って優しい司令官…。無実でもなければ、そんなことをしない司令官に怒ることなんて出来ない…。だから、そのままなのよ…。」

 

「……。」

 

叢雲が暗く言い、ドミナントが黙る。

 

「…なら、長門はいつかパンクするぞ…。まともじゃいられなくなる…。」

 

「…そうかもね…。でも、長門さんにはそれ以外に感情があるとは思えない…。」

 

「俺に対して…か。」

 

「うん…。」

 

「…やっぱり俺は悪者になって、皆からボコボコにされれば気を済まさせることが出来るのかなぁ?」

 

「やめなさい。折角少し信用してくれる人がいるんだから。」

 

「…まぁね。」

 

2人はそんなことを言いながらも裏庭へ出た。

 

…………

 

「……。」

 

長門はそんな2人を窓からしっかりと見ていた。




あー…。最近雨だ…。コロナだ…。涼しいのか暑いのか…。…国が支配するんじゃなくて企業が支配するようになったりして…。

登場人物紹介コーナー
木材…鎮守府の艦娘たちの部屋を直すときに使ったあまり。
トンカチ…攻撃力の高いもの。間違っても、振り回したりしてはいけない。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「おたよりコーナー。」」
「と、言うわけで今回のお便りは一通だけしか来ませんでした。」
「前回も今回も告知しませんからね。第一、タウイタウイまでお便り書く人いませんし…。」
「そうですねぇ…。ですが、一通あります。」
「へぇ〜。物好きもいますね。」
「えーっと…。ペンネーム、『とある組織の生体兵器』さんからですね。」
「どこかで見たことありますね。特に上にスクロールした方で…。」
「えーっと…。最近、ネタがなさすぎて困っています。なんとかしてください…ですか。」
「ネタですか…。簡単です。酢飯の上に魚の切り身を置けば完成です。」
「それは海鮮丼。伊良子ちゃん、そこまでダジャレを言うことはないんですよ?」
「そうですかぁ…。(´・ω・`)<シュン…」
「…顔文字…。まぁ、お便りコーナーはタウイタウイが終わったら廃止ですけど…。あと5話があるのは確実ですね。」
「そこまで終わってるんですね〜。」
「と、言うことで次回予告してくれる?」
「あっ、はい。…あれ?でもお便り結局解決してない…。」
「いいのいいの。こういうのは、黙っておけば納得してくれるわよ。」
「わーい、間宮さんなのに腹黒ーい。」
「ふふふ。」
「次回、第252話『200円』なんか中途半端な数字ですねー。小物道具とか買えそうですね。」
「そうね…。200円…。」


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252話 200円

200円ってバケツ何個買えましたっけ?
「さぁ…。と言うより、更新早いね。」
たまりすぎた。125話溜まっている。
「125話も公開されてない話が…?」
もちろん。全部公開すれば、300話超えるね…。まぁ、厳選する予定だけど。
「300話で終わるんじゃないの?」
どうしようかね…。まぁ、300話で終わらせようと思えば、終わらせられる。
「へぇ〜。」
今は艦これイベントもあるし…。地中海のアイツを倒さないと…。
「大変だね。」
ま、そんなことよりあらすじだね。今回のゲストは?…と、言いたいけれどそろそろマンネリ化してるから、このコーナーは廃止しようかな?
「瑞鶴さん怒るよ?出番がなくなるって…。」
致し方ない犠牲だ。と、言うわけであらすじは筆者が…。

あらすじ
ドミナントは転勤した。


…………

 

「叢雲ー。」

 

「何?」

 

「叢雲〜。」

 

「だから何よ。」

 

「叢雲ー。」

 

「何って言ってるでしょう!」

 

「からかっただけ。」

 

「酸素魚雷くらわせるわよ!?」

 

現在、執務室にはドミナントと叢雲の2人だけ。

 

「仕事はどうしたのよ?」

 

「終わった。」

 

「なら、明日の計画でも練りなさい。」

 

「えー…。明日は明日の俺の気分だから…。てか、出撃できないでしょ。こんな状態じゃ…。」

 

「…まぁ…。」

 

鎮守府立て直し計画の途中段階だ。皆、『提督』を信用していないため、赤疲労のままだ。

 

「…おっ、長門は赤からオレンジに変わってる。少し信用されたんだな。嬉しい。」

 

ドミナントは初めて、叢雲から渡された疲労の分かる書類を渡された。叢雲の部分だけは抜けているが…。第4佐世保では、そういうことはセラフが管轄しているため、ドミナントに来ない。

 

「まぁ、約200人だから、真っ赤っかだけど…。」

 

「それはそれで問題だな…。この書類が赤色じゃなくなったら、任務完了か。」

 

「そうね。」

 

叢雲が安易に同意してしまった。

 

「…叢雲。」

 

「何よ。」

 

「…どうして、俺が任務完了って言った時聞かなかったの?」

 

「え?」

 

叢雲はしまったと思うが、もう遅い。

 

「…もしかして、俺がここに来た理由…知ってる?」

 

「な、なんのことかしら…。」

 

「とぼけるな。…真実を言え。改修のムービー…見たか?」

 

「……うん…。」

 

「なるほどな。」

 

ドミナントがやれやれとした。

 

「このことは、皆に話したか?」

 

「いいえ。ショックが大きすぎるもの…。」

 

「…だろうな。…あっ!まさか、この疲労丸見え書類に叢雲の名前がないのって…。」

 

「違うわよ。そんな、浅ましい考えはしてないわ。」

 

「そうだよね。」

 

「あんたが、帰る日になったら見せてあげる。」

 

「そっか。なら、それまで叢雲の信頼を裏切っちゃいけないね。」

 

ドミナントはのほほんと言う。

 

……ごめんなさい…。本当は、自身では信じきっていると思っていたのに、オレンジなんて…。でも、これを見せるとあんたが無茶しそうで怖くて…。

 

叢雲は自身の疲労度がわかる書類を後ろに隠していた。同時に、まだ信じきれていない自分に、不安を感じていた。

 

…………

 

「ん〜。久々の散歩もいいねぇ。」

 

「…そうね。」

 

「どうしたの?元気ないじゃん。」

 

「な、なんでもないわよ!」

 

「?」

 

海岸沿いを叢雲とドミナントが歩く。

 

「…そう思ってみれば、ネット、昨日がオークション締め切りだったっけ…。」

 

「…そうね。」

 

「見てみる?」

 

「…少し怖いけど、うん…。」

 

ドミナントが海沿いの松の木陰に腰を下ろし、叢雲がその隣に下ろしてドミナントの携帯を見る。

 

「あった。このサイトだ。」

 

ドミナントがサイトをクリックして、ログインする。

 

「あっ、送料が5万ほどかかってる…。全部売れたんだ…。」

 

「良かったじゃない。」

 

「でも、実際全ての売れた値段が5万以下なら赤字…。」

 

「……。」

 

叢雲とドミナントはドキドキしながら売れた金額を見ようとしたが…。

 

「何してるんです?」

 

「「!?」」

 

「おや?2人でデートですか?」

 

後ろを振り向き、そこにいたのは夕張と明石だ。

 

「ふー…びっくりした。」

 

「心臓に悪いわよ…。」

 

「「?」」

 

ドミナントと叢雲が2人に説明する。

 

「なるほど。つまり、5万円以下なら赤字ってことですか…。」

 

「いくら売れたのか気になるわね。」

 

「そうなんだよ…。見る?」

 

ドミナントが言い、4人で集まって見ようとした。

 

「青葉ー!怪しい雑談に突撃です!」

 

「どわー!」

 

青葉が文字通り突撃しにきた。

 

「自由と真実を愛したマスコミの代表青葉です!」

 

「何が自由と真実を愛しただ…。主に2人の自由を奪って、嘘新聞出したくせに…。」

 

「新聞?なんのことやら…。」

 

「分かった。マスゴミだ。」

 

ドミナントは即答え、説明した。

 

「つまり、鎮守府の資金源が増えるというわけですか!」

 

「まぁ、ざっくり言うと。逆に赤字になるかもしれないし…。」

 

「それは嫌ですね…。でも、この瞬間が終わった後の取材は貴重です!ご一緒しても?」

 

「別にいいけど…。変な記事作らないでね?」

 

「何々〜?」

 

ドミナントが青葉に行った途端に第4駆逐の面々が来た。

 

…………

 

「では…。いくよ…!」

 

ゴクリ…

 

皆、その画面に注目する。そして、いくらなのか見た。

 

「…こ、これは…!」

 

ドミナントが見て驚愕する。

 

「とんでもない額がついて…200円!?」

 

たったの200円。

 

「多いじゃない。」

 

暁が言う。青葉は取材とか言っておいて、自分も少し気になって期待していたらしく、額を見た途端取材すら忘れて固まっていた。夕張と明石は尚更だ。

 

「200円あれば、お菓子棒20本も買えるのよ!」

 

「あの…暁…でもね…。」

 

「?」

 

「送料って、こっちから届けるのはこっちがお金払うの…。五万円ほど…。」

 

「うん。」

 

「五万円ってのは、そのお菓子棒5000個分…。」

 

「ご、ごせ…。」

 

暁はぼーっとする。

 

「はっ!い、今宇宙が見えたわ…。」

 

「そら大変だ。てか、マジでどうしよう…。逆に赤字になっちゃった…。」

 

皆が困った顔をする。そんな中…。

 

「…でも、それが手を尽くした結果なら、仕方がないと思うわ。」

 

叢雲が言う。

 

「あんたはこの鎮守府のために色々して、売った。それがどのような結果になろうが、その事実は変わらないわ。そして、赤字になったこともね。…でも、あんたはあんたなりによく頑張った。ずっと側にいた私が言うんだから、間違い無いわよ。」

 

叢雲は振り返り、笑顔で言った。

 

「…ありがとう。叢雲。」

 

「ま、精々嫌われている割にはだけど。」

 

「嫌われてる割にはかぁ〜…。」

 

「ふふっ。」

 

ドミナントが残念そうに言い、くすりと笑う叢雲。そんな2人を見て、夕張たちは微笑んだ。

 

「…あれ?なんでこの画面のまま…?」

 

「ん?」

 

ふと、携帯のあった場所を見ると、艦娘がその画面を見ていた。

 

「あっ、それ俺の…。」

 

「ログインしたら、ここをタップして、金額を見れる…。これはホーム画面…。」

 

「え?」

 

その艦娘がナチュラルに説明してくれた。そして、ドミナントは教えてくれた通りにする。

 

「…500…。」

 

「どっちにしろ300円の差だったわね〜。」

 

「…500万…。」

 

「…はい?」

 

叢雲たちは聞き慣れない金額を聞いて、間違いだと気づく。

 

「500万…。」

 

「全く、なに間違えているのよ。桁がずれてるわ。」

 

叢雲はその画面を見て、間違いを正そうとしたが…。

 

「ほら、ゴー、マル、マル、マル、マル、マル、マル、マル…。…あれ?」

 

「あ、ホントだ。間違えてた…。5000万…。」

 

「五千万?大した額じゃないわね。」

 

「あ、暁ちゃん!お菓子棒が五百万個…。つまり、あなたの部屋が埋まりますよ!」

 

「……。」

 

暁は無言で鼻血を出した。そんなこんなで皆嬉しがっている。

 

「あ、所で君の名は?」

 

ドミナントの銀行所持金額はそんなものでは済まないので、平然となっている。そして、艦娘に聞いた。

 

「吹雪型…。」

 

「初雪ちゃーん!」

 

そこに、吹雪型の子が来た。

 

「す、すみません!今すぐ消えますので…。ほ、ほら行くよ!初雪ちゃん…。」

 

無理に連れて行こうとするが、初雪は動かない。

 

ジー…

 

「…ど、どうしたんだい?」

 

初雪がじっとドミナントを見る。

 

「…ありがと…。」

 

「え?」

 

「爆破してくれて。」

 

「?あ、いいよ。そんなこと。もしかして、そのお礼?律儀だね…。偉いよ。」

 

ドミナントは初雪のことを褒める。

 

「…それと、悪い人じゃないことが分かった。」

 

「?」

 

「目を見れば分かる…。」

 

初雪はそう言った後、吹雪型の子達に混じった。

 

「…不思議な子だったな…。」

 

ドミナントはそんな感想しか無かった。…初雪がドミナントの人格選抜者と知ったのは、後日の疲労丸見え書類を見てからだった。




なんかイマイチな終わりかた。なぜならオチのネタすらないからだ。

登場人物紹介コーナー
なし

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、今回もやってきましたお便りコーナー。伊良子ちゃん、お便りある?」
「えーっと…。前の人がまた出していますね…。コロナワクチンの副反応がどうとかって…。」
「あまり面白くなさそうなので、燃やしちゃって。」
「はい。」
ボォォォォ…
「さて、今回もやってきましたお便りコーナー。伊良子ちゃん、お便りある?」
「えーっと…。あっ、一通だけ来てます!」
「あら、誰かしら?」
「ペンネーム、『一人前のれでぃー』さんからです。」
「誰かしらね〜。」
「最近、臨時提督が着任しました。とてもやらしくて…や、やらしい!?優しいと間違えているのかな…。気を取り直して、とてもやら…。ゴホン、紅茶が大好きな人です。いつも感謝しています。」
「いい人ですね〜。」
「でも、私自身一人前のレディー扱いしてくれない。とてもエレファント…ゾウ?エレガントの間違いじゃ…。ゴホン、…に、振る舞っているのに、たまに飴をくれたり、お子様ランチに旗をさしてきたりします。どうすれば、一人前のレディーとわかってくれるのでしょうか…みたいです。」
「そうね〜、そもそも、一人前のレディーって何かしら。」
「いきなり哲学はやめてください…。う〜ん、その臨時提督に、一人前のレディーと見られていないことが問題だと思います。」
「そうね。多分、背伸びしている女の子に見えるのだと思います。多分、すぐにムキになってしまうのだと思います。そんな時は、飴をくれたら微笑み、意味ありげな表情で『ありがとう』と言い、旗をさしてきた時は落ち着いて、無駄のない動きで旗を取って食べましょう。さらには…。」
「あっ、間宮さん。何かファックスから文章が…。えーっと、ペンネーム、『紅茶提督』さんから。…大きな文字で、やめて。と書かれています。」
「どうやら、からかいたいだけのようね。と、言うわけでペンネーム『一人前のれでぃー』さん、この問題はその人とじっくり話し合ってください。…あら、そろそろお時間。伊良子ちゃん、次回予告お願いします。」
「わかりました!次回、第253話『五航戦と第4佐世保のさつまいも』らしいです。」
「さつまいも…もうすぐ秋ねー。」
「お芋食べたいです。」


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253話 五航戦と第4佐世保のさつまいも

あー…。秋になったかな…?
「最近暑かったり寒かったりしてるからね。」
時雨…。…そう思ってみれば、秋は時雨の季節でもあるね。
「なんで?」
調べてみると、時雨は秋から冬初めまでの通り雨なんだってさ。
「へー。知らなかったよ。」
興味なさそうな返事だねぇ。まぁ、いいや。あらすじを頼むよ。
「第八タウイタウイ所属、伊良子です。」
後半のコーナーを任せてる人だね。

あらすじ
前回…店にいたのでわかりません。


…………

 

「仕事終わりっ!」

 

「お疲れ様。」

 

執務室に毎度お馴染み叢雲とドミナント。

 

「…今日の疲労度丸わかり書は?」

 

「これよ。」

 

叢雲がその書類を渡す。

 

「おぉ…。ついに、半分以上は治ってる…。」

 

「やったわね。…というより、あれから2ヶ月だもの…。」

 

叢雲が言う。2ヶ月ほど経った後の話だ。

 

「あの初雪の後、吹雪型の疲労度がなんか大幅に無くなったし…。公園を作ってから、主に駆逐艦の疲労度が消滅したし…。…長門は相変わらずオレンジか…。」

 

「長門さんは、みんなが通常に戻らない限りそのままね。」

 

「…真っ赤なのが天龍と龍田、そして瑞翔、赤城、北上大井木曽、金剛型…か。大人ばかりだな…。一筋縄じゃいかなそう…。」

 

「とても面倒よ。天龍さんと龍田さんは今でも陰口を叩いているし、瑞鶴さんと翔鶴さんも顔すら合わせない、金剛型は表面だけ笑顔だから、尚悪いし…。北上さんたちは不良女子高生みたいだし…。」

 

「口悪いな…。叢雲…。」

 

「誰かさんが、前の司令官を“追い詰めて、肥溜めにぶち込んでやる”とか“脳みそまでカビたか”とか“死に腐れ”とか言っていたせいでね。」

 

「…まぁ、その点については反省してるけど…。5000万円あったお金も、建て直しでもう100万弱しかないし…。」

 

「…でも、その使った分皆んな笑顔になっているじゃない。それに、普通そんなにお金があったら、少しは自分の私腹を肥やすわよ。」

 

「そうなのかなぁ?」

 

「そうよ。」

 

2人は執務室でそんなことを話す。

 

「まずどこから攻略する?」

 

「攻略って…。…まぁ、私だったらまず瑞鶴さんと翔鶴さんかしら?」

 

「なるほど。じゃ、行くか。」

 

「え!?今!?」

 

「え?当たり前じゃん。俺は行ってくるよ。」

 

ドミナントはすぐに立ち上がり、ドアから出て行った。

 

「ま、待ちなさい!私も行くから!」

 

叢雲も急いで行った。

 

…………

翔鶴型の部屋の前

 

「さて…行くか。」

 

ドミナントがノックしようとしていると…。

 

「ま、待ちなさい!」

 

「叢雲?」

 

叢雲が来た。

 

「なんで来た?」

 

「あんたねぇ…!秘書艦を置いていくなんて酷いわよ!」

 

「お、おう…。」

 

コンコン…

 

そして、ドアをノックする。が反応がない。

 

コンコンコンコンコン…!

 

「おーい、七面鳥!ドア開けてー!」

 

「ちょ!ちょ!ちょ!あんた、今置かれている状況わかってんの!?」

 

叢雲が一喝する。

 

「まぁまぁ。どうせ怒ってくるよ。」

 

ガチャ!

 

「誰が七面鳥ですって!?」

 

「ず、瑞鶴…!」

 

「ほら来た。」

 

「あんた…。」

 

叢雲はどうしようもないものを見るような目をして、瑞鶴は怒って出てきた。翔鶴は瑞鶴を押さえている。

 

「な、何か用でしょうか…?」

 

翔鶴は瑞鶴を押さえながら聞く。

 

「えー。今日はとても良いお天気ですね。」

 

「爆撃の雨を降らせるわよ!」

 

「もし宜しければ、間宮さんのところでデザートでも食べませんか?」

 

「し、失礼ですが…!今瑞鶴を押さえていますので…!それでは…。」

 

翔鶴はドアを閉めようとしたが…。

 

ガッ!

 

「逃すか!」

 

「え!?ちょ、待…!」

 

ドミナントが翔鶴(だけ)の手を掴んで、走り去る。

 

「ちょ!翔鶴姉!ガーーー!待ちなさい!」

 

「あんた!私をまた置いていくなんていい度胸じゃない!」

 

2人が怒って後を追う。

 

「はっはっは!今までの俺と思うなよ!段々とスタミナがついてきているんだ!」

 

ドミナントは笑いながら走る走る。

 

「も、もう!なんで私ばっかり!」

 

翔鶴は巻き込まれてそんなことを言う。

 

「いーじゃないかー。間宮さんのところでみんなで食べに行くんだし。」

 

「部屋の外に出たらまた不幸が…!」

 

「また?」

 

ドミナントが聞き返そうとしたが…。

 

ガッ!

 

「きゃっ!」

 

「翔鶴!?」

 

翔鶴が何もないところでつまづいた。

 

「!」

 

走っているスピードもあるため、顔から突っ込んだ。

 

「とでも!言うと思っていたのかい!」

 

「!?」

 

ドミナントが落ちる翔鶴を持ち上げて、なんとか回避させる。

 

「ふぅ…。危なかった。…怪我ない?」

 

「は、はい。」

 

「そう…。よかった。」

 

立ち止まって、そんなことを聞いたりしていると…。

 

「「とりゃーーー!」」

 

「グハァ!」

 

2人からのダブル飛び蹴り。ドミナントが吹っ飛んだ。

 

「大丈夫!?翔鶴姉!」

 

「え?ええ…。」

 

「あんた!いつまで伸びてるの!?さっさと立つ!」

 

「叢雲ひどい…。それはひどい…。」

 

瑞鶴は翔鶴を心配して、叢雲はドミナントを無理矢理立たせる。

 

「…次翔鶴姉を連れ出したら承知しないわよ…!」

 

「お、おう…。」

 

「行きましょ。翔鶴姉。」

 

瑞鶴が手を取ろうとした刹那…。

 

「今だ!叢雲も!」

 

「「え!?」」

 

ドミナントが言い、2人を連れ出す。

 

「…今言ったばかりじゃない!」

 

「そうだ!だから、『次』ではないぞ!」

 

「あ!汚っ!待ちなさい!」

 

瑞鶴だけが後を追ってくる。

 

「あんた…。もしかして、私に殴られたかないから…。」

 

「何のことだか分からないな…。」

 

「というより!何のつもり!?翔鶴さんだけを連れ出して…!」

 

「翔鶴だけ…?そんなわけないだろう。後ろから瑞鶴がついてきている。」

 

「…まぁ、そうだけど…。どこへ行くのよ…。」

 

「間宮さんのところ。みんなで期間限定蒸かしサツマイモを食べるのだ。最近、俺の鎮守府からサツマイモがとれて、送ってくれたんだから…。」

 

「普通に誘えば良いのに…。」

 

「普通に誘ってたら来た?」

 

「……。…来ないわね。」

 

叢雲とドミナントがそんなことを話す。そのうちに…。

 

「着いた!」

 

ドミナントは食堂の扉を開けて突入する。

 

「間宮さん!蒸かしサツマイモ出来てますか!?」

 

「あっ、はい。今出来ました。」

 

「それを二つお願いします!」

 

「かしこまりました。」

 

間宮さんはキッチンへ行く。同時に…。

 

「やっと…。追い詰めたわよ…。」

 

瑞鶴が怒りのオーラを出しまくって、ゆっくり席に近づいてく。

 

「翔鶴の不幸が原因かな…?」

 

「あんたが原因よ!」

 

「…まぁ、死に臨む覚悟は出来ている。今更殴られても何も思わん。」

 

ドミナントは気にせずに席についていた。

 

「まぁ、瑞鶴も蒸かしサツマイモ食うか?」

 

「誰が…!」

 

ぐぅ〜…

 

「「「……。」」」

 

おやつの時間且つ、走ってきたため空腹だ。

 

「……。」

 

瑞鶴は無言で席に着く。

 

「…やっぱ、翔鶴怖がってる?」

 

「…そりゃ…。前の提督に囮役ばかりやらされて、何度も危ない目に遭ってるもの…。」

 

「ひどいな…。」

 

「美味しいものを出されて、次は特攻なんて言われるんじゃないかと、心配している顔ね…。」

 

「そんなことしないのになぁ…。」

 

2人がコソコソ話す。そこに…。

 

「蒸かし芋です!」

 

伊良子が元気よく持ってきてくれた。

 

「…まぁ、これでも食って…話でもしようや…。」

 

ドミナントは一つとって、半分に分けて片方を叢雲に渡す。

 

「…うちでとれたサツマイモ。美味しいと思うから。」

 

「「……。」」

 

2人はそれを手に取り、分けて一口食べる。

 

「…美味しい…?」

 

「…美味しい…。」

 

ドミナントが聞き、翔鶴が言う。

 

「美味しい…美味しい…。」

 

「…なんか、まるゆとか思い出すな…。」

 

泣きながら言う彼女に、ドミナントが呟いた。

 

「酷いことされてきたんだろうな…。」

 

「…翔鶴姉は、色々と前の提督さんから言われていたから…。不幸がうつるから部屋から出るなとか…。」

 

「最低だなそいつ。」

 

「本当よ。」

 

瑞鶴が言い、ドミナントがその提督を恨む。すると…。

 

「あ、あの…。」

 

「?」

 

「これ、おいくらでしょうか…。あまりお金持ってなくて…。」

 

「いやいや、奢りだ。うちで取れたサツマイモだし。もっと食べたいなら、また送ってもらうし。」

 

「奢りなんて…。」

 

「人の好意は素直に受け取るものだぞ。」

 

「…はい。」

 

翔鶴はうなずいて、サツマイモを頬張る。

 

「瑞鶴の怒りは治ったかな…?」

 

「まさか。食べ終わったら爆撃するわよ。」

 

「マジかぁ…。」

 

「…でも、お腹いっぱいで動けないかもしれないからやめておく。」

 

「ふふ〜ん。だといいが。」

 

ドミナントは瑞鶴の言葉にニヤついていた。4人がむしゃむしゃ食べていると…。

 

バァァン!

 

「おい!あいつはいるか!?」

 

天龍が勢いよく扉を開けて、誰かを呼ぶ。

 

「…あんたじゃ…。」

 

「俺なわけないだろ…。何もしてないのに…。」

 

「…まぁ、そうね。」

 

むしゃむしゃドミナントと叢雲が食べていると…。

 

「いるじゃねーか!出てこいや!」

 

天龍が机を叩いて言ってきた。

 

「…叢雲、お客さんだぜ。」

 

「あんたよ!!」

 

「…だろうな…。」

 

ドミナントが行こうとしたが…。

 

「てめーじゃねぇ!引っ込んでろ!」

 

「アッハイ。」

 

ドミナントは再度座り直して、さつまいもをむしゃむしゃ食べる。

 

「え…なら、翔鶴さん?」

 

「ちげーよ。」

 

「瑞鶴さん?」

 

「ちげーよ…。」

 

「誰よ?」

 

「叢雲!てめーだ!」

 

「……。」

 

天龍に言われて、面倒そうに立ち上がる叢雲。

 

「……。」

 

「あら〜、あなたはここで大人しくしててね〜?」

 

ドミナントが立ち上がろうとしたが、龍田に遮られる。

 

「…何をするつもりだ?」

 

「ふふふ〜。」

 

ドミナントは聞くが、龍田はなにも答えない。

 

「おい、叢雲。どう言うことだ?」

 

「…何がよ。」

 

「お前の指示通りにしていたのに、言った本人がなに呑気に一緒にいるんだよ?」

 

天龍は主にドミナントに聞こえるように話している。

 

「…私はそこまでしろなんて言ってないわ。それに、やめるように言っても聞かなかったでしょう?」

 

「誰がそんなこと言った?」

 

「赤城さんよ。止めるように頼んでも、無理だと言われたわ。」

 

叢雲と天龍の間にギスギスした空気が流れる。

 

「…おい、止めないとまずいぞ。」

 

「……。」

 

しかし、竜田は薙刀を下ろさない。

 

「裏切り者め…。」

 

「……。」

 

叢雲も、そう言われたら目線を床にそらすしかない。

 

「俺たちはお前の意見に従った。前の提督を失脚させたのも叢雲のおかげだ。皆んな信頼していた。だが!お前はそんな俺たちを裏切った。言い出したクセして一緒にいるなんてよお!全てお前が仕組んだことだ!」

 

「……。」

 

天龍は大声で、叢雲の胸ぐらを掴みながら言った。

 

「全て叢雲が計画したことだ。さぁ、それを知って今の臨時はどう動くか…。」

 

「…え?それで?」

 

しかし、ドミナントはとうの昔から知っている。

 

「…は?叢雲に怒りは湧かねーのか?」

 

「おん。だって、前話してくれたし。謝ったし…。今更咎めるのもアレだし。」

 

ドミナントは平常で言う。

 

「そうか…。なら、次は俺たちを裏切った罰だな。」

 

天龍が言い出した途端…。

 

おい…。

 

ドミナントの重い声が食堂に響いた。その瞬間、全身に寒気が走った。

 

天龍…。お前、仲間に手をあげんのか…?

 

「…へっ!だからなんだよ。裏切り者…。」

 

そうか。なら、お前も前の提督と一緒だな。

 

「ああ!?なんでそうなんだよ!そっちが悪りぃんじゃねぇか!」

 

どこが悪いのか説明してみろ。

 

「……。」

 

そう言われたら黙るしかない。実質、ドミナントをイジメるためであり、言い出しっぺが悪いことだと改心したからと言って裏切り者認定など悪役そのものだ。

 

「言えないじゃないか。」

 

「…なんで叢雲だけ…。」

 

「あん?」

 

「なんで叢雲だけそんなに…。」

 

「なんでって…。叢雲はしっかり謝ったよ?他の子もちゃんとお礼を言ったり、謝ったりしたよ?」

 

「……。」

 

「…でも、まぁ。一応平等に接しているつもりなんだけどね。でもさ、悪いことをしているって自覚もあって謝らないのとは、どうしても対応は変わるよね。」

 

ドミナントが平常で言う。

 

「天龍にも色々あるんだろうけどさ。仲間に手をあげるのって、やっぱり良く無いじゃん?そんな子じゃ無いって、俺は思ってるし。叢雲も、一応皆んなに謝ろうと努力はしているんだよ。でも、どうやって謝れば良いのか分かんないし、謝ったら皆んなから敵意を向けられることを恐れて言いにくいんだよ。」

 

「敵意…?」

 

「今そうやって、天龍がしていることだよ。」

 

「……。」

 

天龍が敵意ある目でドミナントを見る。

 

「…でも、それでも殴りたいなら俺を殴ることを勧める。」

 

「……。」

 

天龍は何も言わずに叢雲を掴んだ手を離す。

 

バリィィィ!

 

パリィィィン!

 

「「「!」」」

 

窓を割って何者かが侵入。その場にいた全員が瞬時に戦闘態勢に入った。

 

「何者…!」

 

ヒュンッ!

 

……速い…!

 

天龍が問い詰めようとしたところ、目にも止まらぬ速さで駆ける。

 

「…ん?」

 

しかし、ドミナントは微妙なしかめっ面になった。

 

「やろ…!」

 

ドカッ!

 

「……。」

 

侵入者の1人は、無言で天龍を押さえつけた。

 

「天龍ちゃ…!」

 

カチャ

 

「動くな…。」

 

「……。」

 

龍田ももう1人に背後を取られて小銃を頭に突きつけられている。そんな緊迫した状況の中…。

 

「…お前ら…何してんの…?」

 

ドミナントが声をかけた。

 

「何って…危ない目に遭っていたので、増援を呼んできたんです。」

 

「薙刀を司令に突きつけるとはな…。」

 

セラフとジナイーダだ。ジナイーダが龍田の頭に小銃を突きつけている。

 

「天龍、龍田。絶対に動くな。今のお前たちなら、セラフとジナイーダはなんの躊躇いもなく骨を折ったり、頭を吹き飛ばすぞ…。だから動くな。」

 

「「……。」」

 

2人はドミナントの言うことを素直に聞く。実際、ゾワっとする気配で分かるからだ。

 

「…セラフ…。」

 

「はい。」

 

「何してんの?マジで。今助けとか必要ない状態だったよね?他の子まで不安にさせてるよ?」

 

「…え…。」

 

「助けようとしたことは嬉しいけど、実際そこまでのピンチじゃなかったし…。てか、天龍を掴んでいる手を離してやれよ。いい加減。」

 

「す、すみません…。」

 

「俺に謝んなくていいから。失敗することもあるし。でも、天龍には謝って。」

 

「はい…。」

 

「そして、ジナイーダ。」

 

「なんだ?」

 

「…多分、セラフに言われて来たんだろうけど…。小銃を向けるのはやめよう?」

 

「情報もない武器を持った相手に、素手で戦えと言うのか?」

 

「…まぁ、その判断も正しいけど…。なんて言うかなぁ…。ちょっと過激すぎじゃない?」

 

「それくらいが丁度良い。」

 

「…まぁ、龍田に向けた小銃をしまってね?今。」

 

「…わかった。」

 

2人を解放するジナイーダとセラフ。

 

「…あんたの知り合いって、みんなあんなのなの?」

 

叢雲が聞いてきた。

 

「うーん…。あと2人いるけど、1人はあの2人の方がマシだと判断するし、もう1人は策士だから礼儀とか知ってると思う。てか、あの中じゃセラフが一番優しいと思う。」

 

「男?女?」

 

「なんで聞くのよ…。2人とも男だ。」

 

「そう。」

 

叢雲は食堂全体を見る。ほぼ全員がセラフとジナイーダを見ている。

 

「…明日、あんたの評価下がりそうね。」

 

「それはマジで困る。あの2人にはなるべく干渉しないように言っておくか…。」

 

ドミナントはセラフたちになるべく来ないようにやんわりと注意した。翌日、幸いにも赤疲労になったものはいなかった。




飛び散ったガラスで誰も怪我はしませんでした。

登場人物紹介コーナー
瑞鶴…タウイタウイ所属。翔鶴の妹でもある。
翔鶴…タウイタウイ所属。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「さて、今週もやってまいりましたお便りコーナー。」
「たまに放送されるタウイタウイ限定のラヂオ。誰かが聞いていると信じて放送していまーす。」
「さて、今回のお便りは…。あっ、2通も届いています!」
「知名度が上がったのね。」
「えーっと…。あ、またこの人…。生体兵器さん、やることないんですね…。『最近風邪気味で、コロナじゃないかと心配しています。どうすれば良いでしょうか。』です。」
「まず、病院に行きましょう。話はそれからです。」
「辛辣!でも、確かにそれが一番です。…さて、次のお便りは…。ペンネーム、『アイテム売り』さんからのお便りです。」
「ピンク色かしらね?」
「臨時提督が着任しました。紅茶好きで執務室に行くと、必ず紅茶とそれに合う茶菓子をくれます。前とは違ってとても良い提督です。」
「臨時提督ですか〜。」
「しかし、一つ問題があります。」
「何かしらね。」
「その紅茶が飲みたくて、いつも足が赴いてしまいます。用もないのに、適当な用事を作って…。そうすると、その人に用事を押し付けて迷惑になってしまいます。どうすれば良いでしょうか。…みたいですね。」
「難しいわね〜。そもそも用を作るのではなく、単純に飲みに来たと言えば良いのではないでしょうか?」
「そうですね。しかし、立場上相手は『提督』。そう用もないのに出入りするのは不謹慎だと思っているんじゃないでしょうか?」
「う〜ん…。難しいわね…。あ、それなら作り方を伝授して貰えば良いのでは?」
「あー!たしかに!…あれ?FAXから音が…。…あっ、ペンネーム『アイテム売り』さんからです。えーっと…。違う、そう言う意味じゃなくてもっと…何か…。…らしいですね。」
「それ以上は分からないわね…。伊良子ちゃんはどう思うの?」
「わ、私ですか!?うーん…。あっ。それなら、執務室にいない時に話かけて、作って貰えば良いんじゃないでしょうか!?…あっ、また…。えーっと…。ありがとうございます。…らしいですね。良かったです。問題が解決できて。間宮さんはどう思いますか?」
「そうね…。それなら、そのまま調子を保って、将来ずっと共に暮らせば飲み放題ですね。…またふぁっくす?から…。…試してみます。ですって。若い子は羨ましいですね。」
「そうですね〜。…あれ?FAXにまた新しいのが…。ペンネーム、『紅茶提督』さんからですね。また文字がデカデカと…。えーっと…。今度作り方教えるからやめろ。…だそうです!良かったですね!」
「そうね。あっ、そろそろお時間ですね。伊良子ちゃん、次回をお願い。」
「あっ、はい!次回、第254話『攻略!金剛型四姉妹』だそうです。」
「では皆さん、ただ今鎮守府では午前0時になります。波打つ音以外全く聞こえない、とても深夜の静かな時間です。それではまた今度、この番組でお会いしましょう。伊良子ちゃん、せーのっ…。」
「「さようなら〜。」」


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254話 攻略!金剛型四姉妹

ダメだ…。現状況よりも、ラストスパートの話がスラスラ進む…。なんだ呉空襲の時にあんなのが登場って…。絶望の塊だ!どうやって倒すか、どういう物語にするかの案が止まらない…!
「そ、そんなものを考えてるの…?」
もう一番最後の話は終わったからね。この小説の後半はまぁ、AC世界の物が大暴れだ。それらと艦娘の戦い…!そして、平和な日常…。わくわくが止まらない…!胸熱展開ばかりだ…。
「この小説って、日常ほんわかで進むんじゃ…。」
残念だが、初めはそうだったが日常に刺激を求めてな。騙して悪いが筆者得なんでな。
「そんなのと戦わされるんだ…。」
大丈夫だ。ちゃんと艦娘たちの出番もある。日常を過ごすのも。まぁ、オフはオフ、やる時はやるって感じだよ。
「怖いなぁ…。」
今回は久しぶりだし、時雨頼むよ。
「うん…。」

あらすじ
僕たちの鎮守府は今、すっごく暗いね…。僕も含めて…。止まない雨は…ないといいな…。


…………

 

「ふぅ…ガラスの片付け終わりました。」

 

「ご苦労様です。」

 

「なんで私まで…。」

 

ドミナントは、ジナイーダたちの割った窓ガラスをきれいに片付けていた。

 

「やっぱり、天龍と龍田だよなぁ…。最大の敵…。」

 

「あと、北上さんと大井さんと木曽さん。金剛型四姉妹も…。」

 

「考えただけで憂鬱…。」

 

「「はぁ…。」」

 

2人は考えて、ため息を吐く。

 

「…そんな顔しないでください。そんな顔をしていると、幸せが逃げてしまいますよ?」

 

「…それは嫌ですね…。でも、どうしても…ね。」

 

ドミナントはどうやって、和解するかを考えている。

 

「…金剛型は少し怖いな…。普段優しく接してくれるから、尚怖く感じるし…。かと言って、北上たちに会うのもなぁ…。便所の件もあったし…。お互い気まずいだけだしなぁ…。というより、会うことを望んでいないかもしれないし…。」

 

「そう考えると、キリがないのよね…。」

 

「うん…。ま、兎にも角にも金剛型から攻めるか。」

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫。なんたって、パラオのお茶会に出席したこともあるし。」

 

「ここはそこまで生易しくないと思うけど…。」

 

…………

 

「……。」

 

ドミナントは金剛型のお茶会に出席している。

 

……こえー…。

 

感想がこれだ。

 

……怖い。めちゃくちゃ怖い…。てか、特に霧島がヤバい…。メガネが光っていてマジやばい…。マジパナイ…。普通に怖い…。長女の金剛も、元気いっぱいな感じだけど、空気でわかる…。マジで怖い…。比叡なんて、夜叉そのものの目だし…。榛名なんて、笑顔のままだから余計に怖い…。

 

ドミナントは椅子にちんまり座るばかりだ。

 

「あんた…。どうすんのよ…。」

 

「……。」

 

ちゃっかり来ていた叢雲も、小声で言ってドミナントを膝で気づかれないようにつつく。

 

「ヘーイ!テイトクー。ティータイムだから笑顔じゃないとダメネー!」

 

「…ハィ…。」

 

金剛な言った直後の、笑顔の時の瞑っていた目が少し開き、無茶苦茶怖い。

 

「…あ、あの…。」

 

「「「…?」」」

 

「よ、良かったら、紅茶…持ってきたので…。」

 

「Rarely?」

 

「は、はい…。自分で調合したものと、『プリンスオブウェールズ』です…。」

 

「サンキューネー。」

 

金剛は優しく受け取る。だが、空気が和らがない。

 

「……。」

 

そこで、ドミナントは一度深呼吸して、自分を勇気づける。次に吐く言葉をしっかりと言えるように。そして…。

 

「…あの、金剛さん。」

 

「?」

 

ドミナントは覚悟を決めた目になった。

 

「…こんな空気ですけど、どうしてこのような空気なんですか?それと、その原因である自分に、どうして欲しいんですか?正直な感想が聞きたいです。」

 

ドミナントが言い、その場が凍った。叢雲も顔が真っ青だ。

 

「……。」

 

金剛は口元を緩ませたまま黙って…。

 

「……。」

 

夜叉比叡は、より一層眉間にシワがより…。

 

「……。」

 

榛名は貼り付けた笑顔…。

 

「……。」

 

霧島は恐ろしいオーラが出る。

 

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとあんた!な、な、何言ってんの!?いきなり!」

 

叢雲はこんな空気になり、大慌てだ。

 

「だって、この空気のままで俺にどうしろっていうの?何があったかも分かんないし、何を求めているのかも分からない。なのに、察しろなんて出来るわけがない。提督の前に、俺だって1人の人間だ!できることと出来ないことくらいある!俺はなんとかしたいって思っても、相手が心を開かなければ出来るわけないだろ!助けてって言わなければ分からないこともある!俺は超能力者でも神でもない!1人の人間だ!…結構失礼なことを言います!…何も知らない人間に、いきなりその態度は失礼に値するんじゃないんですか?」

 

バンッ!

 

ドミナントが言った途端に、霧島が机を叩いて立ち上がった。が。

 

「霧島、Sit down.」

 

途端に金剛が冷静に言い、霧島が座る。

 

「…テイトクの言っていることは正しいデース。分かってはいるネー…。でも、それと同時にどうしても許すことが出来ないんデース。」

 

「…前の提督は何をしたんですか?それを言わないと、自分もどう接すれば良いのかわかりません。」

 

ドミナントが聞いた。

 

「…Tea timeの時間を短縮されたり、紅茶の材料を取り寄せてくれなかったり…。なによりも許せないのが、私のかわいい妹たちに傷つけたことデース。かわいい妹たちに叩いたことが許せないんデース…。…中でも、榛名は、度重なる仕打ちでその顔のままになってしまいマシタ…。精神的な症状だから、入渠でも治らないんデース…。」

 

「……。」

 

ドミナントはそれを聞いて、黙るしかない。

 

「…庇ってくれたお姉様を傷つけられたことです。」

 

夜叉比叡はポツリと呟く。

 

……それを言われちゃ、なにも言えねぇよ…。金剛たちを知っている…。姉妹思いで、命くらい大切にしているからな…提督に対してこうならない方がおかしい…。

 

ドミナントが思う。

 

「…自分は、出来ることなら協力を惜しみません。…自分、助けを求めないと何も分からないような使えない男です。察しろと言われても、大抵無理です。だから、必ず協力を申し出てほしいです。」

 

「「「……。」」」

 

金剛型は張り付いた笑みだけだった。そして、お茶会が終わり、解散した。

 

…………

 

「こりゃだめだな…。」

 

「そうね…。多分、金剛さんたちは変わってないと思う…。」

 

「……。」

 

夕日の光の入る執務室で2人が呟く。

 

「…あ〜!俺にどうしろってんだよー!」

 

「な、なに!?どうしたの!?」

 

ドミナントが叫び、叢雲が慌てる。

 

「今までうまく言ってたのはたまたまだし…!金剛さんたちに何すりゃいいんだ…!何すりゃ信用してくれんだよー!」

 

「まず、叫ぶのをやめることね。」

 

「他人事のように…。まぁ、そうだな…。叢雲の言う通りか…。所詮は他人事だからな…。」

 

「…ヤケに素直ね。」

 

「……。…まぁね。」

 

ドミナントは一言そう言って、机の上の疲労丸わかり書を眺める。

 

……分からないけど…。あんた、ずっと前にきっと何か辛いことが何度もあったのが分かる…。他人事…。…見捨てられたことでもあるのかしら…?ううん…。それだけじゃない気がする…。たまに、あんたが無意識になった時、あんたの目が異常なほど怖くなる…。あれは普通の人間がする目じゃないことくらい、私でもわかる。

 

叢雲がドミナントのことを見ていると…。

 

「…ん?どうしたー?叢雲ー。」

 

「あっ…。…なんでもない。」

 

「?」

 

ドミナントが気づいて、見てきた。

 

「金剛たちをなんとかしなくちゃなー…。金剛たちは精神的な傷だし…。癒すにはカウンセラーが一番…。てか、あの金剛が提督に反応しないほど病んでるんだよな…。」

 

「まぁ、そうね…。」

 

「けど、カウンセラーやる人いないよね…。多分…。」

 

「あんたがやるしかないわ。」

 

「俺がやったら逆効果でしょうが…。」

 

ドミナントが、提督ペンを眺める。

 

「…ふぅ…。行き詰まった。気分転換しよう。」

 

「気分転換?」

 

「そ。行き詰まったまま案を出すより、気分転換して案を出した方が良い。」

 

ドミナントが紅茶を注ぐ。

 

「…叢雲?」

 

「あ、うん。ありがとう。」

 

叢雲は半ば強引に紅茶を渡された。ふと、机を目にするといつの間にか茶菓子があるのだ。

 

「…珍しいわね。」

 

「ん?」

 

「あんたがその茶菓子を食べるのを見るの初めてよ。」

 

「エクレアのこと?」

 

「ええ。」

 

今回の茶菓子はエクレアのようだ。毎回、そういう溶けやすいものまであるのに、どうやって机の中に保存してあるのか不思議である。

 

「これは行き詰まった時に食べるんだ…。いつもはちょうど良い塩梅の茶菓子にするが、行き詰まった時だけ甘い菓子にして頭を活性化させる。」

 

「ふーん。…甘っ!甘すぎない!?」

 

「だから、糖分で無理矢理活性化させる…。」

 

「えぇ…。」

 

二人で甘いティータイムを過ごし、出た作戦は…。

 

「成果なし…。」

 

「でしょうね。」

 

案は出なかった。

 

「どうすりゃいいんだろう…。」

 

ドミナントが考え込んで目を閉じた。

 

「…第4佐世保なら…どうするか…。」

 

「?」

 

「落ち込んでいる山風を元気にさせる方法…。激怒している山城を宥める方法…。無表情の弥生を大笑いさせる方法…。」

 

「全部難関ね…。」

 

「あっ、ちなみに、この写真が弥生の吹き出した時の写真。」

 

「えっ?どれどれ?あっ、本当…。こんな顔するのね。あんた何したのよ?」

 

「で、こっちが弥生の爆笑値限界突破寸前の顔。」

 

「すごいわね…。見てるこっちも吹き出しそう…。特に口元が…。」

 

「まぁ、これを金剛たちに見せても笑うとは思えないし…。」

 

「…笑う気もするけど…。」

 

ドミナントが悩む。

 

「…まぁ、とにかく榛名だな。榛名は…何か好きなものあるかな?」

 

「好きなもの…。私は、優しい上司ね。」

 

「おや?俺のことかな?」

 

「寝言は寝てから言いなさい。」

 

「くっくっく。」

 

冗談を言い合って、二人でクスリと笑った。

 

「さて、まじめに考えよう。」

 

「そうね。」

 

「…叢雲。」

 

「?」

 

「榛名があの顔のままになった根本的な原因ってわかる?ほら、前の提督のトラウマになったこととか…。」

 

「そうね…。金剛さん達は他の皆んなよりひどい扱いを受けていたから…。」

 

「たとえば?」

 

「殴られたり…。あっ、そういえば…。」

 

「なに?」

 

「一度、榛名さんに懐いた猫がいて…。」

 

「…ね、猫…?」

 

「ええ。それで、すごく可愛がっていたんだけど…。それが見つかって、その猫はあいつに…。」

 

「……。…まさか…。…その…殺し…?」

 

「……。」

 

叢雲はコクリと頷いた。

 

「…無駄な殺生までしていたか…。人間の屑め。そういう奴は犬のクソになれば良い。」

 

「ほんと。」

 

「それから、榛名の表情がなくなったの?」

 

「ええ。そりゃ雨の中、ずっとその猫を探していて、見つけたら殺されていたなんて…。…前、金剛さんから聞いたわ。榛名さんの心が閉じたのは、それ以上悲しい想いをしたくないからだって…。感情があるから、悲しいと思うんだって…。好きで、愛情を注いでいたから、その分失った時の悲しみが辛いからって…。」

 

「……。」

 

ドミナントは、そのことを聞いて何も言えなかった。想像以上に重い鎮守府に来てしまったことを実感している。

 

「…それが、榛名さんの表情が無くなった理由よ…。」

 

「…なるほどな。」

 

ドミナントが納得した。

 

「…よし。金剛型の皆さんを呼んできてくれる?」

 

「え?どうして?」

 

「いいから…。」

 

「わかったわ…。」

 

叢雲は、金剛たちを呼びに部屋から出て行った。




金剛型四姉妹が怖い…。

登場人物紹介コーナー
金剛型四姉妹…前提督からいじめられていた。主に、金剛と榛名が他の姉妹たちを庇っていた。ドミナントと前提督は違うと分かってはいるが…。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、今回もやってきましたこのコーナー。」
「毎回不定期で、タウイタウイ限定で放送されるこのラヂオ。今回も、誰かがこの放送を聴いていると信じて、お送りしております。」
「今回は重大な発表があります。」
「重大な発表ですか?」
「なんと、このラヂオに広告が流れるようになりました!これも、このコーナーが続いていく良い前兆ですね。」
「やっと広告金が入るんですね。つまり、誰かがこの放送を聴いているということになりますね。」
「では、早速。その広告を流してみましょう。マイクオフにしまーす。間宮さん、お願いします。」
「はい。」
ブツン
「…今流れているかしら?伊良子ちゃん。」
「多分、流れていると思いますけど…。」
「今回はお便りが前回と同じ、2つも来ているわね。」
「そうですね。とっても嬉しいですね!」
「そうね。…あっ、そうそう。伊良子ちゃん、今広告中だから、少しいいかしら?」
「なんでしょうか?」
「今度、この新作スイーツを限定で出そうと思っているのだけれど…。少し味見をして欲しくて。人気が出るかしら?」
「このちょこかけがとーしょこらですか!?周りに果実が盛り沢山ので、ほいっぷまで付いている…。」
「そう。」
「いただきます!…あま〜い♡とっても美味しいです!このちょこれーとに果汁が入ってますね!それに、このほいっぷもがとーしょこらにすっごく合います!とってもおいしい…!毎日食べたい…。これはバカウレ間違いなしですよ!」
「よかった〜。なら、これはタダであげるから、皆んなには内緒よ。今度の秘密の限定新作だから。」
「分かりました!…あっ、そろそろ広告が開けますね。」
「そうね。…こっちのボタンで良いのかしら?」
「え?そっちのボタンは広告を流すやつ…。え?」
「え?」
「え…。」
「……。」
「……。」
ポチッ
『居酒屋鳳翔。この道8…いえ、30年創業の老舗。現在繁盛しているのは皆様のおかげです。なので、○月○日から□月□日までの間、サービスをします。ぜひ、ご来店をお待ちしております。』
ブツン
「えー、先程放送事故が発生しました。広告の前のは数年前録音したものです。え?そんなスイーツ聞いたことない?…はは、なんのことやら…。では、今回のお便り2つ…。ですが、時間の関係もあるので一通だけで。ペンネーム、『北海道メロン』さんからのお便りです。」
「メロン…。」
「えー、少し前から臨時提督が着任しました。その人は、艦娘にとっても優しく、私たちの抱えている悩みを解決してくれます。それに、提督に毎回話しかけられるのが嫌だった私が、今では話しかけられるのが待ち遠しく思っています。これは、恋なのでしょうか?みたいですね。」
「恋…。」
「…間宮さん?次回のスイーツのこと考えないでくださいね?」
「…あっ、はい…。」
「話、聞いていましたか?」
「聞いていました。いいですね。若い子はういういしくて。憧れます。ならば、思い切って自分の心のうちを相手に言うのが一番手っ取り早いのではないかしら?」
「それに恋だと分からないみたいですし。一度、想いを伝えてはっきりさせた方が良いかもしれませんね。」
「いいえ。恋ですよ。わたしには分かります。」
「はぇ〜。て、ことは『北海道メロン』さんは恋をしてしまったというわけですか。」
「そうですね。その悩みを聞いて、解決させてくれた人を好きになる。典型的な展開です。」
「なるほど…。なら、そんな人を私は知ってますね。」
「その話はいいから、この人の解決策を考えましょう。」
「ふむふむ。でも、相手は臨時提督…。なら、思い切って応えざるを得なくすればいいんですよ。既成事実とか作って。寝ている間にしちゃえばいいんです。…あっ、FAXが…。えーっと、『北海道メロン』さんからありがとうございます!早速やってみます!だそうです。解決できて良かったです!」
「そうね。…あれ?またFAXから…。ペンネーム、『紅茶提督』さんから…。やめろ!マジで!さもないと永遠に声をかけない!だそうですね。」
「いい案だと思ったんだけどなぁ…。」
「次は、きっと承認してくれますよ。…あっ、そろそろお時間ですね。伊良子ちゃん、次回をお願い。」
「あっ、はい!次回、第255話『奪還!榛名の笑顔作戦』だそうです。」
「では皆さん、ただ今鎮守府では午後2時になります。艦娘たちの、公園で遊ぶ声がワイワイここまで聞こえる中、午後も頑張っていきましょう。それではまた今度、この番組でお会いしましょう。伊良子ちゃん、せーのっ…。」
「「さようなら〜。」」


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255話 奪還!榛名の笑顔作戦

ネタがない…。
「そろそろ、瑞鶴さんが休暇から復帰するね。」
そうだね…。また爆撃されるのかぁ…。
「らしいね。」
ネタが…ない…。
「大変だね。…ところで、筆者さんは艦これやってるんだよね?」
もちろん…。
「噂では、2-3で止まっているとか…。」
あー…。それは、結構前の話だね…。
「結構前?」
そう…。攻略中、丁度イベント時期と重なってさ…。
「うん。」
実は、艦これを始めて一年くらいずっと2-3だった…。
「そこまで弱い艦隊だったの…?」
いや?
「え?」
イベントと重なったって言ったじゃん…。
「あー。なるほど。」
それに、まだあるんだよ…。そこで止まった原因が…。
「?」
筆者はフロム脳なのは分かるじゃん?
「うん。」
2-4のボス、強いって聞いたんだよ…。知り合いから…。
「戦艦とか空母いるからね。」
そして、『初心者にとって』と言う意味を知らずに、筆者はどんな奇行に走ったか分かる?
「…?」
当時主力艦隊だった、吹雪、榛名、足柄、隼鷹、阿武隈、時雨を全員改二にさせてから攻略するっていう奇行に走ったわけよ…。
「…え…。」
で、改二になるまでイベントと演習をやりまくったわけ。
「じゃあ、改二になってから2-4らを…。」
そう。それからというものの、敵が弱すぎて弱すぎて…。北方海域すっ飛ばして、一気に5-2まで。面白いのね。敵の攻撃はほぼ当たらず、カスダメで全部済んでボスは完全勝利連発。
「可哀想…。」
敵もびっくりだろうね。2-4がやられたって聞いて準備したら、平均80前後の、その海域に似合わない艦隊が押し寄せてきたんだもの…。戦果がとんでもないことになってたよ…。資材は少し消し飛んだけど。
「筆者さんほどの変人はいないと思うよ…。改二にさせてから南西諸島海域ボスを消し炭にして、北方海域を辺獄と化させ、南西海域をアツアツのローストチキンに変えて、西方海域を穴あきチーズにさせたんだから…。」
まぁ、スピードこそ兵器の本質…逃げ回りながら死ね!状態だったからね…。そんな感じで前書き潰れたんで、あらすじ頼むよ。
「また僕…。」

あらすじ
鎮守府では、全体的に暗い雰囲気…。真っ暗だよ。夕立は狂ったようにぽいぽい言い続けてすごいよ…。


…………

司令室

 

「おぉ、ここの司令室はこんな感じなんだ…。」

 

ドミナントが金剛たちを待っている。

 

ガチャ…

 

「おぉ、来…てないみたいだね…。」

 

「……。」

 

来たのは叢雲のみだった。

 

「あんたの顔見たくないって。」

 

「まぁ、嫌なものの対象だったらそうかもね…。だが、断る。鎮守府全体放送をかけよう。」

 

「ますます嫌われるわよ?」

 

「承知の上。」

 

ドミナントが司令室のマイクで鎮守府全体放送に切り替える。

 

『えー、金剛型四姉妹様、至急司令室までお越しください。ちなみに、提督命令なので。』

 

「『提督命令』までして…。そこまで大事な用なの?」

 

「うん。」

 

ドミナントが放送をしたら、金剛たちがすぐにやってきた。

 


 

「ソくん。集まっているかね?」

 

「「「……。」」」

 

金剛は何も言わずに無表情なままだ。比叡は相変わらず夜叉そのものの目。榛名の顔は微笑んだままで、霧島から怒りオーラが出ている。

 

「さて、疲労度真っ赤の君たちに任務だ。…と言っても、海域に行く任務ではない。対象の護衛をしてもらいたくてね。」

 

「「「……。」」」

 

「その対象とは、この子とこの子だ。」

 

「!」

 

ドミナントが見せた二匹に、叢雲が驚く。

 

「ちょ、ちょっと!あんた!」

 

「俺は何も知らないんでね。」

 

猫とAMIDAだ。

 

「……。」

 

金剛の顔が、初めて少し怒りを露わにした顔になった。

 

「……。」

 

比叡の目はますます冷たくなり…。

 

「……。」

 

榛名の顔は変わらず…。

 

「……。」

 

霧島は赤いオーラで見えない。

 

「ま、この子達の護衛だ。そして、その任務はこの鎮守府の裏山を超えて街まで行き、魚を買ってAMIDA用の天然綿を20g、そして軍手の片方買ってくること。…あと、紅茶。種類は…お好みで。特殊条件、この二匹の好きにさせること。いいね?」

 

「…断…。」

 

「あっ、断るっていう選択ないから。提督命令。今すぐ出発。」

 

「……。」

 

「じゃ、俺は忙しいんでね。叢雲、行くぞ。」

 

「え!?ちょ、あんた…!」

 

ドミナントは叢雲を連れて部屋を出てしまった。

 

「…お姉様、どうしますか?」

 

「…やるしかないネー…。」

 

「……。」

 

「ですが、あまりにも酷な任務です。あいつに任務放棄を強制させた方が良いのでは?」

 

「しかし、榛名にトラウマがあるなんて知らない可能性がありマース…。そうなれば、私たちの方が悪人デース…。」

 

「榛名はどうしますか?」

 

金剛たちは榛名に判断を委ねる。

 

「…この顔は、やるだけやるって顔をしてマース…。」

 

「…わかりました。なら、やりましょう…。」

 

『ニャー。』

 

『キシキシ。』

 

猫は榛名の近くに擦り寄ろうとするが…。

 

「No.榛名に近づくのはダメデース。」

 

金剛が持ち上げた。その瞬間…。

 

ブーン!

 

「な、なんですカー!?」

 

「お姉さま!」

 

AMIDAが金剛の周りを飛び回り、体当たりを仕掛ける。猫は金剛の手から飛び降り、その猫の上にAMIDAがとまって威嚇するように羽を広げていた。

 

「特殊条件に違反したから…。猫の好きにさせるよう…。」

 

「はぁ…。仕方がありません…。ささっと行きましょう…。」

 

金剛たちは猫をなんとか部屋の外へ誘導して行った。

 

…ガチャ…

 

「AMIDA、しっかりやってたな…。」

 

「あれ飛ぶんだ…。」

 

ドミナントと叢雲が別のドアから覗いていた。

 

「ところで、なんであんな傷を抉るようなことを…。」

 

「トラウマ払拭のため。トラウマを克服するには、それと同じ状況にしてから助けがあるようにする。そうすれば、トラウマは消えて良い記憶になる。」

 

「ちょっと意味がわからないわ…。」

 

「そ…。まぁ、見たほうが早いよね。…何してるの?」

 

「何って…。何も。」

 

「早く準備して。金剛たちのあとを追うよ?」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントの無茶なことに叢雲も付き合うことになった。

 

…………

 

「この険しい山を登るのネー…。」

 

「最悪ですね…。」

 

「……。」

 

「この猫はどうしますか…?」

 

猫は霧島の肩に、だらけるようにぶら下がっていた。

 

「そのまま今のうちに登りマース。早くした方が良いデース。」

 

「服は後で入渠時に洗いましょう…。」

 

「……。」

 

「重い…。」

 

金剛たちが山を登る。

 

「ひぃ…ひぃ…。」

 

「あんた、ここまで来るのにへばってどうするのよ…。山はこれからよ…。」

 

ドミナントたちも後ろにいる。何かあった時に助けるつもりなのだろう。逆に助けられる未来が見えるが…。

 

「あっ、比叡、榛名、霧島。少しトイレに行ってきマース。」

 

「そうですね。山にトイレはありませんし…。私たちはここにいるので、気合入れて頑張ってください!」

 

「……。」

 

「私も、猫がいますので…。」

 

「すぐ戻りマース!」

 

金剛が近くの鎮守府へ行く。

 

…………

 

ジャー…

 

「ふぅ〜…。」

 

金剛がトイレから出た途端…。

 

「金剛、やっと一人になったな…。」

 

「!」

 

後ろから気配がして振り向いた。

 

「もごもご!」

 

「ちょ、暴れないで金剛。怪しいもんじゃないから。」

 

ドミナントが金剛の口を押さえて、体を拘束する。

 

「もがー!!」

 

「暴れないでって…!叢雲見てないで手伝って!」

 

「うわー…。」

 

「何引いてんの!?そういうことしないから!知ってるよね!?」

 

叢雲がドミナントを冷徹な目で見て引いていた。

 

「金剛、少し待てって。悪いことしないから。そして、大きな声出さないで。説明するから。」

 

「……。」

 

それを聞いて、金剛が大人しくなった。

 

「…すまんな。」

 

「プハー…。…何デスカ?」

 

「少し協力して欲しくって…。」

 

「後にして欲しいネー。」

 

「いや、今じゃないとダメだ。」

 

「……。」

 

金剛はドミナントのいうことを無視して行こうとしたが…。

 

「榛名を元に戻したくないのか?」

 

「……。」

 

その一言で立ち止まる。

 

「…あなたに出来るんデスカ…?出来る訳のないことを言って欲しくないデース…。」

 

「あくまでも可能性の話だ。そして、それには協力者が必要だ。ダメでもともと。やるだけやってみようじゃないか。それに、そんなことを言うってことはもう手がないんだろう?」

 

「…話だけ聞きマース。」

 

「よっしゃ。いいだろう。てか、試したことがあるのは言ってね?」

 

そして、ドミナントは金剛に話した。

 

…………

 

「遅れたネー。」

 

「あっ、お姉様。遅かったですが、何かありました?」

 

「なんでもないネー。」

 

金剛が先頭を歩く。

 

「金剛…頼むぞ。」

 

「全く…。」

 

ドミナントと叢雲が草むらから見ている。

 

「…ところでお姉様。」

 

「どうかしましたカ?比叡。」

 

「後ろから二人ほど気配がするのですが…。何か見ませんでした?」

 

「み、見てないネー。気になるなら見た方が良いデース。」

 

「なら、私も行きます。丁度猫が榛名の肩で寝ていますので。」

 

「なら、私も行くネー。」

 

金剛たちが草むらに近づく。榛名は猫が起きないようにじっとしている。

 

「やば…。ここだと榛名に見られる…。逃げるぞ。」

 

「あっ、ちょ、待…。」

 

「何か逃げました!追います!」

 

ドミナントたちが逃げて、比叡たちが追う。

 

「ここなら榛名に見られない…。比叡、すまん!」

 

「!」

 

比叡も金剛と同じように拘束された。

 

「やはり、あなたも前の提督と同じ…!」

 

霧島がドミナントを殴打しようとしたが…。

 

「シー。quiet please(静かに).」

 

「金剛お姉様…。」

 

二人は金剛も協力していると知り、静かになる。

 

「…どういうことですか?」

 

「金剛にも説明している。今回は榛名を元に戻す計画を実行する。」

 

「元に…!」

 

「戻れるんですか…!?」

 

「あくまでもpossibility(可能性)デース。」

 

「そう。可能性よ。」

 

比叡たちにも説明した。

 

…………

 

「あっ、いた。動いていませんね。」

 

「ただいま戻りました。気のせいでした。」

 

「帰って来たデース。」

 

金剛たちが帰還する。そして、見ていた。やはり、榛名は猫を避けていることに。その証拠に、寝ていた猫を少し遠くにやっていた。

 

「じゃあ、山に登りマース!」

 

「はい。気合い、入れて、行きます!」

 

「……。」

 

「行きましょう。私の計算によれば、こちらの道が近道です。」

 

比叡の声で起きた猫が、霧島の指差す方向へ行く。金剛たちはその後ろを歩いている。

 

「…ところで、あの猫本物?」

 

「え?そりゃ…。…もちろん。」

 

「嘘ね。で、あれはどうやって動いているのよ…。」

 

「いや、本当に猫だって。…いや、でもどうなんだろ…。」

 

「?」

 

「まぁ、猫ってことにしておこう。」

 

「?」

 

ドミナントたちが後ろからついて行く。

 

…………

 

「随分歩きましたね。」

 

「そろそろ休憩をしましょう。お姉様。」

 

「OK.」

 

「あそこに洞窟があります。そこに行きましょう。」

 

金剛たちが洞窟で休憩しようとしたが…。

 

ポツリポツリ…ザーーーーー!

 

大雨になった。金剛たちは急いで雨宿りをするために洞窟に入ったが、ずぶ濡れだ。

 

「大雨になりましたね。」

 

「たまたま洞窟があって良かったネー。」

 

「そうですね。」

 

「……。」

 

金剛が洞窟から上空を見る。ドミナントと叢雲が絶賛、近くの川からパイプを使って雨を降らせていた。そして、もっと激しくしろとの合図を送る。

 

ザーーーー!!

 

「激しくなってきたネー…。」

 

「お姉さま、猫が濡れてしまって風邪を引いてしまいます。」

 

「Oh!何とかしないといけないデース!少し使えるものがないか探してきマース!」

 

「比叡、お手伝いします!」

 

「私は、拭くものを探してきます。榛名、頼みましたよ。」

 

金剛たちはその洞窟から外へ駆けて行った。

 

…………

 

「…よ。金剛に比叡に霧島。」

 

ドミナントは洞窟のある崖の上からパイプを持ちながら座っている。隣には叢雲もいた。

 

「これで、あとは待つだけデスカ…?」

 

「そう。」

 

「榛名は、元に戻るんですか…?」

 

「それは分からない。でも、やるだけやった。」

 

「……。」

 

金剛たちがその隣に座る。しかし、前と違うところがあった。金剛は本気で心配している顔で、比叡の目は少し儚げだ。霧島は怒りのオーラは出ておらず、心配している顔である。

 

「…榛名、元に戻ると良いけど…。」

 

榛名が本当に、金剛たちにとって大切な存在であり、欠けるわけにいかない存在であることをドミナントが改めて実感した。

 

…………

 

『ニャー…。』

 

「……。」

 

猫が榛名に擦り寄る。猫は濡れていた。

 

『ニャー。』

 

「……。」

 

榛名はその顔のままだ。しかし、自身の服で猫を拭いてあげる。

 

「……。」

 

そのまま撫でようとしたが、失う辛さを思い出してしまい、躊躇した。途端…。

 

スリスリ…

 

「!」

 

猫の方が榛名の固まったままの手に擦り寄った。

 

「……。」

 

『ニャー。』

 

座った榛名の膝の上に寝転がる猫。

 

「……。」

 

榛名は、自然と猫を撫でる。

 

『ニャー。』

 

「…お腹空いたの…?」

 

榛名が初めて喋った。そして、懐から猫の餌を取り出した。残っていたのだろう。

 

「…美味しい?」

 

『…にゃー!』

 

「…良かった。」

 

榛名の顔は無表情。

 

…………

 

「ところで、良くこんな辺境の地で洞窟があるって分かったわね。」

 

「まぁね。たまたま見つけた。」

 

「たまたまって…。…え?ちょっと待って?見つけた!?」

 

「え?うん。見つけた。」

 

「掘ったんじゃなくて!?」

 

「うん。掘るのめんどいし。……。…あ…やべぇ!」

 

叢雲が聞いて、ドミナントも気付く。

 

「金剛!今すぐ榛名の場所へ行くぞ!」

 

「?」

 

「まだわからないの!?自然に洞窟が出来るはずないじゃない!つまり、野生動物が掘ったのよ!しかも、あの大きさじゃ相当大きいわ!」

 

「!?」

 

金剛たちもヤバさに気がついた。

 

「榛名!今行きマース!」

 

…………

 

『グルルルル…。』

 

「?」

 

洞窟の奥から何か音がして、榛名が振り向いて暗闇を見つめる。

 

『フー!』

 

猫はすぐに降りて、毛を逆立たせて威嚇する。

 

『キシキシ…。』

 

AMIDAはその場でじっとしているが…。

 

『グルルルル…。』

 

「……。」

 

出てきたのは何やら訳の分からない動物だ。今まで見たことのない、変な形をしている。しかし、大きなチャック状の牙を剥き出しにして威嚇しているあたり、凶暴性を感じさせる。

 

『グルル…。』

 

その生物が威嚇している猫を見た。

 

グワァパ!

 

「…この子に手は出させません!今度こそ守ります!」

 

バッキャァァ!

 

猫を喰おうとした口を、榛名が思いっきり殴った。

 

『グルル…。』

 

次は、何もしないAMIDAを…。

 

グワァパ!

 

「間に合わな…。」

 

榛名が駆け出したが、間に合わない。しかし…。

 

ブシャァ!

 

『グル…?』

 

AMIDAが何か吐き出した。

 

『グルァァァ!????』

 

「え?」

 

AMIDAが何か吐き出した液体を吹きかけたら、その生物がのたうち回る。

 

ブシャァ!ブシャァ!…!

 

ブーン!

 

『グルァァァ!!!グギャァァァ!!!』

 

AMIDAが飛んで、その生物に何度も溶解液をかける。しかも、濃度がヤバいやつだ…。まぁ、ACを溶かすことの出来る溶解液なのだから当然か…。しかも、小さくて飛んでいるため攻撃が当たることすら難しい。榛名と猫は呆気に取られて、立ったままだ。

 

『グギャァァァァ!!!』

 

その生物は洞窟の奥へと逃げて行った。

 

『キシ!』

 

AMIDAはやってやったぜと、誇らしげにいる。そこに…。

 

「榛名ー!大丈夫デスカー!?」

 

金剛が真っ先にやってきた。

 

「はい。お姉様。」

 

「!」

 

榛名が普通の笑みをしたことに、金剛は心底驚いた。しかも、猫を抱き抱えていた。

 

「ぉーい!榛名ー!」

 

次にドミナント、比叡たちと順に来た。

 

「榛名はなんとか、無事みたいデース。」

 

「そうか…はぁ…はぁ…良かったよ…。」

 

「まぁ、誰かさんがこんな危ない目に遭わせると思わなかった私のミスでもありマース。」

 

「悪かったって…。本当に…。」

 

金剛に厳しそうな目で見られて、ドミナントが謝る。

 

「ところで、猫は大丈夫なのですか?」

 

「はい。今回は、何としてでも守り切ることが出来ました。」

 

「この昆虫は…。」

 

「キシ!」

 

「この子が追い払ってくれたんです。ものすごく強いです。」

 

「誰かさんとは大違いね。」

 

「叢雲…2回目は泣くよ…?」

 

そんなこんな、ドミナントも混じりながら買い物をして帰る。

 

…………

帰り道

 

夕陽が浜辺を照らしている。そこを、ドミナントたちが歩きながら帰っている。

 

「紅茶があって良かったデース!」

 

「沢山お買い物しましたね!」

 

「はい。この子のご飯も買えましたし。」

 

「榛名が無事に元に戻って良かったです。色々買えましたし。」

 

「俺の財布は大破したけどな…。」

 

「あんたはちょっと黙りなさい。」

 

五人分の買い物をして、ドミナントの財布は大破した。ドミナントと叢雲は、四姉妹より少し後ろを歩いている。

 

「にゃー。」

 

「降りますか?」

 

榛名の手から、猫が降りる。そして、真っ直ぐドミナントの前に来た。

 

「…そうか。そろそろ時間か。」

 

「「「?」」」

 

ドミナントが呟き、首をかしげる艦娘たち。

 

「後で部屋に来て。報酬を支払うから。」

 

「にゃ〜。」

 

ドミナントが言ったら、ドミナントの隣で座る猫。

 

「…あの…どういう関係で…。」

 

「この猫は、妖精さんとペアになっている猫だよ。」

 

「え!?」

 

「別名エラー猫。必ず、鎮守府のどこかにいる猫。いると、電子機器に異常をもたらすから、大半の提督は嫌う。だから、前のは…。…いいや、よそう。その話は。で、この猫と契約したわけ。まぁ、二代目だな。」

 

ドミナントはスラスラと猫の説明をする。

 

「二代目…。」

 

「そう。」

 

「あなたは…。」

 

「?」

 

「この子が…嫌いですか…?」

 

榛名が砂浜に目を逸らしながら言う。金剛たちは答えを見守っていた。

 

「…正直に言うと嫌いだね。電子機器狂わせるんだもの。」

 

「……。」

 

「でも、害を及ぼすとしても殺生はやりすぎだ。しかも、榛名が大事に育てていたものなんでしょ?俺はそんなクソのような提督にはならない。なってなるものか。…榛名は、その猫をどうしたい?」

 

「…私を守ってくれました…。だから…。……。」

 

「…言え。俺は別に鼻っから断ろうなんざ思ってないから。そうそう無茶なこと以外は承諾する。」

 

「…一緒に…暮らしていきたいです。」

 

「…そうか。」

 

しばらく、沈黙が流れる。

 

「…世話、出来るのか?」

 

「え…?」

 

「世話が出来るのか?」

 

「は、はい!やります!」

 

「……。そうか。なら、別に構わないんじゃないか?そもそも、まだ出撃予定も遠征予定もないからね。ただし、しっかり世話をするんだぞ?」

 

「はい!」

 

「金剛さんたちも、榛名が困っていたら助けてあげてくださいね?」

 

「Yes!!」

 

「はい、気合い、入れます。」

 

「かしこまりました。」

 

金剛型4姉妹が返事をする。

 

「…と、言うわけだ。猫くん。悪いが、もうしばらくやってもらうぞ。」

 

猫が榛名の足に擦り寄る。そして抱き抱えて、榛名が嬉しそうな、幸せそうな顔をしていた。

 

「…あんたにしては、まぁ、やるんじゃない?」

 

「そう?」

 

「まぁ、嫌われている割には。だけどね。」

 

「嫌われている割にはかぁ…。」

 

そんなことを少し遠くで呟くドミナントと叢雲。金剛型四姉妹の後ろをゆっくりと帰還して行った。




攻略完了。

登場人物紹介コーナー
未確認生物…エド・ワイズによると一説では新種の深海棲艦、または突然変異した生物と地域で囁かれている。しかし、彼が言うには深海棲艦には全く似ておらず、突然変異だとしても元となる生物がいないため、なんらかの実験により生み出された生体兵器だと言う見解がなされた。
猫…妖怪猫吊るし…ではなく、猫土下座の本体と噂されているが、真相は不明。実は、何度倒してもその度に甦る説が有効であり、実は猫吊るしなのではないかと言われている。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、今回もやってきました第6回目…!長く続きましたね〜。」
「そうですね。でも、もう2ヶ月ほどやっている気がします…。」
「何故だか、そう思うんですよね…。なぜなのか…。…まぁ、そんなことはさておき、今回はお便りコーナーに何と2通の艦娘からの手紙と、一人の人間のお便りが届いています。」
「一人の人間?」
「はい、まぁ、そちらは後で紹介するとして…。ペンネーム『ピーター・アオバナルド』さんからですね。えーっと…最近…と言っても最近ではありませんが、かねてから主張したように、…かねてから主張…?…現提督は優しいです。今ではすっかり仲が良くなり、執務室に話しに行くほどです。そんな仲、やはりライバルと言うか…。人がいます。このままでは取材内容のための質問や写真が撮りづらいです。どうすれば良いでしょうか?らしいですね。」
「まさにマスコミですね…。汚らしいところも…。」
「そうですね…。ならば、その部屋に腐った食品をたくさん置けば、皆んなどこかに行くと思います。さらには匂いが染み付いて、多分誰も入りたがりません。しかし、提督は執務が仕事ですので、強制的にそこにいかなければなりません。その時がチャンスだと思います。」
「腐った食品…なんだか納得がいきませんね…。だったら、下水などの水で床を掃除したり…あっ、FAXに何か…。」
「ぺ、ペンネーム『紅茶提督』さんより…。もし、それを言って本当にそうなったらマジでこのコーナーを訴える…らしいです!間宮さん!やめましょう!はい!」
「え、ええ。そうね。廃止はシャレにならないし…。」
「つ、次!人間からですね。」
「人間から…。」
「ペンネーム…は特に無しですね。プライバシーの侵害なので。えーっと…。巨大イ級についてみたいです。」
「そんなものが存在していたなんて…。」
「最近知り合った、えど?さんと言う人から情報を得ました!」
「えど?江戸…?エド?」
「どうやら従来のイ級とは違って、光線を撃つようです。」
「光線を…。」
「そして、そのエネルギーの源はある施設から行き届いており、そこが破壊された途端に弱体化したとの情報があります。えどさんが言うには、恐らくそこは古代の建物らしく、それをエネルギーとしているイ級も古代からの物と推測されています。大決戦の時の中ボス的な感じでしょうか…?」
「そんなものが中ボス…。どれだけ激しい戦いだったのかわかりますね…。」
「他にも、全長100m前後だと思われ、自然回復力も異常と書かれています。ちなみに、これが写真です。」
「少しボヤけていますが、そうとう強そうですね…。」
「第4佐世保の保護下であったとは言え、パラオ泊地のみで倒したのは大きな戦果と言える。大本営や多くの鎮守府では第4佐世保の功績が大きいと言われるが、俺はパラオ泊地の実力だと思っているがな。まぁ、現場で見ていないのは俺も同じだが、第4佐世保を過信し過ぎている未熟な提督が多い結果であろう。らしいです!」
「随分と毒舌…。エドさんは…。」
「そうですね…。」
「あっ、そろそろお時間ですね。伊良子ちゃん、次回をお願い。」
「あっ、はい!次回、第256話『天龍との殴り合い』だそうです。」
「では皆さん、ただ今鎮守府では午後6時になります。夕陽が海に沈む幻想的な風景を見出す浜辺…カモメが静かに鳴く心地よい空間で放送しました。それではまた今度、この番組でお会いしましょう。伊良子ちゃん、せーのっ…。」
「「さようなら〜。」」


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256話 天龍との殴り合い

いつの間にか12月…。
「聞いたよ筆者さん。来年…。」
そう…。来年はまるまる更新できない…。1年くらい空くかもしれない…。話は出来ているのに…。出来るだけ投稿するように努力をしようとは思いますけどね…。
「うん…。これが最後の晩餐…。」
不吉なことを言うもんじゃないさ…。まぁ、生きていればどこかのシリーズを更新をしますので。最低でも1年に一回くらいは。
「どうして、そんなに空くんだろう…?」
…まぁ、もしかしたら2年かもしれないけどね…。
「に、2年!?」
おっと、口が滑った。まぁ、いい。いつか…ね。
「…瑞鶴さん悲しむよ?」
艦これ自体、その1年はログインすら出来ないからね…。いつか、画面や次元を乗り越えてくれることを祈るよ…。
「そこまで言ったらただの夢。」
いいじゃないかー。夢なんだし。
「…まあね。」
と、そろそろ時雨のあらすじだ。
「わかった…。」

あらすじ
今鎮守府ではセラフさんが一念発起でなにか計画しているみたい。一体何をするんだろう…。


………

 

「ん〜♪」

 

「上機嫌ね。どうしたの?」

 

ここは第4佐世保…ではなく第8タウイタウイ。ドミナントは一時的な転勤で来ているのだ。

 

「大本営から山風改二の実装が電文で送られてきたんだよ〜。」

 

「ふ〜ん。」

 

「帰ったら、多分山風のパーティーをするだろうな。娯楽室一面をまっ緑にして、山風がどこにいるか分からないくらい同じ色で埋め尽くしてあげないと。そして言うんだ。『山風、改二おめでとう!どこにいるか分からないけど!』ってね。見えていても、わざと山風の後ろで言うから。」

 

「それはそれで迷惑なんじゃ…。」

 

「あ、ちなみにうちの鎮守府では『パパ』と呼んでOK。だけど、夫やダーリン、旦那や恋人などの名称はダメ。絶対に。俺は父親兼提督兼友人だから。」

 

「設定が重量過多…。」

 

そんなこんなドミナントと叢雲が話す。

 

「さて…。金剛型四姉妹との絆はやったな。」

 

ドミナントが疲労丸わかり書類をチェックする。金剛型四姉妹の疲労がなくなっていた。

 

「あとは…。来た神(北上)天ぷら(天龍)竜田(龍田)揚げ多い(大井)赤城来そう(木曽)か…。」

 

「なんか変な語呂のように言うのやめなさい。…頭にこびりついちゃったじゃない!」

 

ドミナントが語呂合わせのように言い、叢雲がその語呂を覚えてしまったらしくて怒る。

 

「…というより、毎日やってるわよね。鍛錬。あのセラフって言う人と…。」

 

「うん。銃の撃ち方を教えてもらったり、狙いを定めるのも痺れも。近距離戦闘術…つまり、体術も習っている最中。俺一人だと、どうしても力不足だし。人のままでも強くなくちゃ、条件付きだと何もできないからね。」

 

「人のまま?どう言う意味?」

 

「…いや、忘れてくれ。」

 

「気になるじゃない。教えなさいよ。」

 

「余計な混乱を招く。」

 

ドミナントは、自身がACということを内緒にしておくようだ。

 

「今回は…北上か天龍か…。」

 

「前門の虎後門の狼ね…。」

 

「うーん…。」

 

ドミナントが悩みに悩む。

 

「問題は天龍じゃなくて、龍田なんだよな…。北上じゃなくて、大井なんだよなぁ…。」

 

ドミナントがそんなことを呟く。

 

「…北上から行くかぁ。」

 

そして、北上のいる部屋へ行く道中…。

 

……ん?天龍?何してんだ?

 

何やら暗いところで、壁に手をやっている天龍。

 

「なぁ?提督を潰そうぜ。」

 

「で、でも…。公園作ってくれたし…。そもそも、悪いこともしてないし…。私たちの待遇も良くしてくれたし…。」

 

「あん?今まで散々やってきたのに、今更やめんのか?裏切るのか?」

 

「そ、そう言うつもりじゃ…。」

 

「なら、どう言うつもりなんだ?まさか…。やはり、裏切るのか…?あの提督に、お前が今までどんなことをしていたか言ってやろうか?」

 

「そ、それは皆んなも…天龍さんだって…。」

 

天龍は駆逐艦を捕まえていて、脅迫まがいなことをしていた。

 

「天龍!」

 

「!」

 

流石に、ドミナントも黙認しかねたようだ。少し大声で言い、天龍がこちらに注目する。今のうちに、駆逐艦は逃げていった。

 

「あーあ、せっかく良いとこだったのによお。」

 

「何をしていたんだ?」

 

「教える必要はねぇ。」

 

天龍はそう言ったのち、歩いて行く。

 

「おい、まだ話は終わってない。勝手な行動をするな。」

 

「……。」

 

「『提督命令』だ!今すぐ戻れ!」

 

「……。」

 

天龍はそれを聞いて、さも面倒そうに戻ってきた。

 

「すぅ…はぁ…。…天龍…。…教えてくれ。前の提督はお前に何をしたんだ?」

 

「……。」

 

「何も言わず…か。」

 

睨んでいるだけの天龍。

 

「…天龍、ちょっと来い。」

 

ドミナントは天龍を連れて、砂浜へ行く。そして…。

 

「楽にしろ。もう、『提督命令』はいい。」

 

「……。」

 

ドミナントは提督帽を近くにあった岩の上に被せる。

 

「天龍。気に入らないことがあるなら全部俺にぶつけろ。俺自身にぶつけろ。ぶつけてみろ!どれだけ理不尽でも、俺は責めない。そのかわり、しっかりと俺のやり方を教える。反論もしても良い。だから、他の子達を責めるのはやめろ。叢雲を責めるのもやめろ。」

 

「……。」

 

天龍はその言葉が何を意味するのか知り、艤装や刀を砂浜に捨てて、首や手を鳴らしてドミナントを見る。そして…。

 

「龍田。手ェ出すなよ。これは手助けしたり、支援するのは俺にとっての侮辱にもなるぜ。」

 

天龍がドミナントを見ながら言う。ドミナントは、草むらに一瞥した後天龍を見た。二人とも、龍田のいる場所を最初から知っていたようだ。

 

「良いのか?艦娘の本気は吹っ飛ぶどころじゃすまないぜ。」

 

「もういい。言葉など、既に意味をなさない。」

 

「そうかよっ!」

 

天龍が思いっきり殴ろうとしたところ…。

 

「ちょ、ちょっと!何やってんの!?」

 

叢雲が乱入。ドミナントと天龍の間に立つ。

 

「邪魔すんな!」

 

「邪魔も何も、自分の上官に手をあげようとして止めない艦娘はいないわ!」

 

「うるせぇ!てめぇはすっこんでろ!」

 

「すっこむわけないでしょう!?あんた頭大丈夫!?」

 

叢雲が結構ガチめにキレている。

 

「もういい加減、自分の苛立ちを何も悪くない人に向けるのはやめなさい!何回も虐めてもまだ足りないの!?」

 

「……。」

 

天龍は叢雲とドミナントを睨んできた。

 

「叢雲、いいから…。もう言わないであげて。」

 

「でも…。」

 

「こうなった理由は、前の提督のせいだし…。でも、悪事に加担させようとする行為は見逃せない。だから、天龍と本気でぶつかり合いたいわけよ。艦娘がいる分だけそれぞれの思いがあるから。」

 

「……。」

 

叢雲は心配そうな眼差しをしたのち、提督帽子のある岩へと腰を下ろした。

 

「…さて…。天龍、俺にぶつけたらどうだ?お前自身の気持ちを。」

 

「……気が逸れた。やんねぇよ。」

 

天龍は装備を回収して、鎮守府に戻ろうとしたが…。

 

「待て。天龍。」

 

すると、天龍は振り向かずに足を止めた。

 

「俺の名前を気安く呼ぶな。」

 

「すまん…。だが、これ以外なんて呼べば良いのかわからなくてな…。前の提督が何をしたかだけでも教えてほしい。」

 

「なんだ?それを言って、俺の問題をお前が解決するのか?無理に決まっている。」

 

「無理かどうかは俺自身が判断する。それに、前も言ったような気がするけど、俺に出来ることがあるなら、手を尽くす限りはするつもりだ。」

 

「……。…そうかよ。」

 

天龍はそう言った後、鎮守府へ戻った。

 

「…今のはどうだ?」

 

「う〜ん…。どうかしら…。」

 

ドミナントと叢雲が話す。

 

「一応、天龍と和解したいんだけどね…。」

 

「まぁまぁ…50点ってところね。多く見積もっても。」

 

「少ない…。叢雲を思い出すなぁ。」

 

「どうしてよ?」

 

「だって、最初に謝った時なんて言ってたか覚えてる?」

 

「忘れたわ。」

 

「とでも!言うと思って録音しておきました。揶揄うネタのために。」

 

「ちょ!あんた!?一体いつ録音してたのよ!?」

 

「妖精さんパワァー。」

 

「あっ!その録音機ね!かしなさい!ぶっ壊すから!」

 

「だが断る!茶菓子1週間分だ!」

 

「茶菓子1週間でも1ヶ月でも買ってあげるからよこしなさい!」

 

「やーだよっ!再生!」

 

カチッ!

 

『ごめんなさい…ごめんな…。』

 

「あっ!本当に再生したわね!?本当に怒ったから!覚悟しなさい!」

 

「残念だが、俺はあるストーカーに追いかけられ続けて、避けることなど可能なのだよ!」

 

叢雲とドミナントが騒いでいた。

 

…………

鎮守府

 

「……。」

 

天龍は窓の外をボーッと見ている。

 

「どうしたの〜?」

 

「龍田…。」

 

龍田が薙刀を持って来ていた。

 

「…俺は、自分の苛立ちをあいつにぶつけているんだろうな…。きっと…。」

 

「……。」

 

「…まだ、前の提督のことを鮮明に思い出しちまう…。その時やられたこととかよ…。提督って聞いただけで、イライラしちまう…。俺は、それを関係のない提督にぶつける悪い奴なんだろうな…。」

 

「……。」

 

龍田は何も言わない。天龍の成長を見守っているからだ。

 

「…龍田はどう思う?」

 

「私は〜。…それは、天龍ちゃんが決めることだと思うけど〜?」

 

「…俺が決めることか…。」

 

天龍は窓の外で叢雲に怒られて、叩かれているドミナントを見ていた。

 

「…あいつはよ…。」

 

「…?」

 

「…本当に、俺を助けてくれんのか…?」

 

「…私には分からないわ。助けを求めるのも、助けられたと思うのも天龍ちゃん次第だから。」

 

「……。あいつは…こんな俺でも受け入れてくれんのか…?」

 

「それは、あの人が決めることね〜。」

 

「……。」

 

…………

 

「おい。」

 

「んあ?天龍?」

 

天龍が立っていた。叢雲は察してどこかへ行った。

 

「お前は…。」

 

「俺は?」

 

「こんな俺でも受け入れてくれるか…?」

 

「こんな俺ってどう言う意味?」

 

「…全然悪くねぇお前に…。前の提督のイライラをぶつけて…。」

 

「それは、前の提督のせいでしょ?天龍のせいじゃないじゃん。」

 

「お前を執拗にいじめて…。」

 

「みんな虐めていたさ。」

 

「素直に謝ることも出来ねぇ俺をよお…。」

 

「素直じゃない子は沢山いるじゃん。」

 

「…俺は許されねぇことをした…。」

 

「許すか許さないかは俺が決めることさ。全面的に許すよ?」

 

「でもよ…。」

 

「?」

 

「俺は…『提督』を許すことは出来ねぇ…。」

 

「そうかい。」

 

「…怒らねぇのか…?」

 

「なんで怒るの?それは天龍が決めた選択。ならば、“我々”提督はそれに従うのみ。」

 

ドミナントが当然のように言い、天龍は『違う』と歯を食いしばる。

 

「ならよぉ…!俺たちの意見に従うならよぉ…!」

 

「?」

 

「どうして…!嫌だって言ったのに…!どうして…!!俺の目の前で仲間を沈ませたりしたんだよお!!!」

 

「…!」

 

ドミナントは天龍の心の内側が分かった。天龍は長門並みでないにしろ、目の前で同士を失った艦娘なのだと。

 

「そうか…。天龍は仲間を失ったのか…。」

 

「……。」

 

天龍はその時の光景を思い出してしまい、我慢した顔をしていた。

 

「だったらさ。」

 

「…?」

 

『別にお前たちが死のうがどうでも良い。俺にとってお前たちは使い捨ての道具だからだ。』

 

「俺が、お前たちを絶対に沈ませたりしないようにするさ。お前が…お前たちが…俺にとって家族と同じだからね。」

 

「!」

 

それを聞いた途端、天龍は心の奥底にある、縛られたものから解き放たれた気がした。世界が再び色づいた。昔の嫌な記憶が壊れ、ドミナントの清々しい顔を見た。

 

「…!」

 

天龍はいつの間にか涙していた。

 

「その言葉…嘘じゃねぇな…?」

 

「当然だ。覚えておけ!今の言葉が嘘だったらお前たちによって殺されても文句はない!」

 

「…そうか…。そうか…!」

 

天龍は心底嬉し泣きしながら言い、ドミナントを殴った。ドミナントはいきなり殴られ、なにおうと殴り返す。しかし、ドミナントは顔や腹、胸などをまるっきり避けていた。ダメージの少ない、握り拳ではない力の入っていない手のひらで叩く。だが、二人の顔は笑っていた。

 

…………

 

「ホント、馬鹿みたい。」

 

叢雲はその様子を岩に座って見ている。

 

「ほんとよね〜。」

 

龍田は隣で立っている。

 

「でも、不思議よね。」

 

「不思議ね〜。」

 

「あいつ、心底私たちを救おうとするんだもの。目を見れば分かるもの。心底思っている人と、表面だけ思っている人の目は違う。伝わってくるのよね。」

 

「そうね〜。…天龍ちゃんも、スッキリした顔でいるもの。何年ぶりかしら。あんな清々しい笑顔…。」

 

叢雲と龍田は二人を見る。

 

「単なるバカよね〜。」

 

「そうね。単なるバカよね。」

 

二人はくすりと笑いながら見ているのだった。

 

…………

 

「いやー。はっはっは…。傷だらけだ…。」

 

「そうだな。」

 

「あんたたち、本当にバカね…。この始末書どうするのよ…。」

 

叢雲は呆れる他ない。ドミナントはボロボロで、天龍も軽い傷だらけになっていたからだ。

 

「なぁ、提督。」

 

「んー?」

 

「…あの言葉…。」

 

「嘘じゃないって。殴り合いしてた時も何度も聞いてきたよね?」

 

「…まだ信じられなくてよ…。」

 

「まぁ、今まで普通だったのが解放されるとね。でも、俺は嘘はつかんぞ。本当に、お前たちを誰一人失わせるものか。俺にとって提督は、鎮守府でも艦娘を守る権利と義務がある。」

 

「ありがとよ…。」

 

「いいってことよ。」

 

ドミナントはそう言いながら、天龍の頭を優しく撫でる。

 

「…提督…。」

 

天龍は解放されたような、優しそうな顔でドミナントを見る。

 

「はいはいはーい!天龍さん、そろそろ入渠しないと風呂の時間になって入渠できないわよ。」

 

「天龍ちゃ〜ん。お風呂行きましょう〜。」

 

「お、おう。分かったよ…。」

 

天龍は龍田に連れて行かれた。

 

「さ、あんたは今日の仕事終わらせなさいね…?」

 

「今までの仕事も今日の仕事も終わってるよ?」

 

「なら、明日の仕事をしなさい。」

 

「んな無茶な…。」

 

「黙ってやる!」

 

「……。」

 

結果的に、ドミナントは無駄に仕事を増やしてそれをやると言う二度手間を積極的にやることになった。




久しぶりにログインした気が…。うん、なんかスッキリしない。次回はなるべく色濃くしたつもりです。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、というわけで今回もやってきましたこのタウイタウイ限定ラヂオ。今回でなんと7回目と言うわけですね。」
「結構やりましたからねぇ。このコーナーも久しぶりのような気もしますが。」
「ふふふ。伊良子ちゃんと毎回このコーナーをしているもの。」
「もう季節は冬。そろそろクリスマスですね。皆さんはイベントとかもう終わりました?ちなみに、とある組織の生体兵器さんはまだだそうです。あと12時間切りましたからね。こんなところ書いている暇はなさそうですけどね。」
「そう思ってみれば、今度クリスマスケーキがどうとか言ってましたね。」
「なら、私たちが大きな、美味しいケーキを作りましょう!タウイタウイケーキを。」
「ふふ。そうね。と、そんな世間話は置いておいて、そろそろお便りを読みましょう?」
「そうですね!えーっと…ペンネーム、『子供大好き戦艦』さんからのお便りです。」
「どこかの大きな7じゃないかしら?」
「えーっと…。…最近、臨時提督が着任した。最初は疑っていたため、冷たい態度をとってしまった。そのせいで顔を合わすのが気まずい…。その臨時提督は私たちに希望をもたらしてくれた。どうにかして恩返しをしたいのだが、どうすれば良いだろうか?…みたいです!」
「割と本気な感じね。」
「う〜ん…。顔を合わすのが気まずいけれど、恩返しをしたいんですよね〜…。うーん…最初に冷たい態度をしたことをまず謝った方が良いんじゃないんでしょうか?」
「それが一番よね…。でも、やっぱり気まずいと思います。」
「なら、謝らなくても認めたことを主旨に言えば、きっとそれが恩返しにもなるような気もします。その臨時提督は厳しい方なんでしょうかね?」
「優しいのなら、それでいいと思いますけどね。」
「私たちの考えている人は優しい感じですからねぇ…。あっ、FAXに…。ペンネーム『子供大好き戦艦』さんからですね。えーっと…。分かった。礼を言う。…らしいです!解決して良かったですね!」
「そうね。…あら、またFAXに…。」
「本当。…『紅茶提督』さんからですね。毎度お馴染みの。…そんなことしなくても、受け入れさせてみせるから待っててほしい。…らしいですね!」
「青春ね〜。」
「最近知ったんですけど、ちまたではアオハルって言うみたいですよ。」
「あおはる…。青葉さんと榛名さん?」
「…違うジャンルです。あっ、そろそろこのコーナーの終わりの曲が…!」
「なら、今回はここまでですね。伊良子ちゃん。」
「はい!次回、第257話『銅像石投げ大会』ですね。…そう思ってみれば、銅像に石を投げるストレス解消の張り紙があった気が…。」
「では皆さん、ただ今鎮守府ではヒトハチマルマル。そろそろ食堂が混む時間です。帰ってくる友人や姉妹艦と一緒に今日の無事を祝いましょう。今日頑張ったと。それではまた今度、このラヂオで会いましょう。伊良子ちゃん、せーのっ。」
「「さようなら〜。」」


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257話 銅像石投げ大会

今回はちょっと長いです。
「2話分繋げてるからね。」
そう。でも、出来れば赤城まで出したかった…。
「まだ次の話できてないんでしょ…。」
まぁね。クリスマスだし、タウイタウイの関わりメンバー全員を出したかったんだけど…。…まぁ、出せるけどさ。
「投稿される場所は一番下だもんね。時系列とか関係なくなるし。」
まぁね。それと、まだクリスマス編を2話書かなくちゃいかん…。ゆるい日常とここで。
「大変だね。…そろそろ長いからあらすじやるね。」
急だね。まぁいいや。シグレン頼むぞ。

あらすじ
鎮守府ではちょっと大変なことが起きそうかな…。


…………

 

「ん…。」

 

叢雲の起床。現在臨時提督であるドミナントの、第八タウイタウイ泊地の秘書艦である。

 

「……。」

 

きっちりと服を着替えて、その他諸々無駄なく動いて秘書艦らしくする。そして、鏡を見て僅かなところを整え、変なところがないか確認した。

 

「よしっ!」

 

叢雲は確認が終えた後、背伸びをして窓の外を見る。

 

「いい天気のお昼ね。」

 

叢雲は空の太陽の高さを確認して言うが…。

 

「…お昼!?大遅刻!」

 

寝ぼけていたが気がつき、急いで部屋を出て執務室へ走る。

 

ガチャ!

 

「ごめんなさい!久しぶりに寝坊したわ!」

 

叢雲は執務室に入るのと同時に謝ったが…。

 

「…いないし…。」

 

ドミナントはいなかった。

 

…………

 

「はぁ…どこ行ったのよ…。」

 

叢雲はショゲショゲ鎮守府内を歩く。提督自室へ行っても誰もいなかった。

 

「…てか、みんなどこ…?」

 

ふと、本日は一人もすれ違ってないことに気づき、周りを見る。この長い廊下にも誰一人見えない。さらには、そこらの適当なドアをノックしても反応がない。

 

「…ん?こっちから声が…。」

 

歩き回っていると、中庭から声が聞こえる。

 

「みんなここにい…何やってんの!?」

 

「おー、叢雲。やっと来たか。」

 

「来たかじゃなくて、何してんの!?」

 

「え?元提督像の石投げ大会…。」

 

ドミナントたちが処分に困っていた元提督の銅像。鎮守府の艦娘など全員で、それに向かって石投げをしている。

 

「艦娘のストレス値を下げようと、冗談半分で石投げの張り紙を掲示板に貼ったら、1時間でほぼ全員集まっちゃって…。」

 

「半分本気だったのね…。」

 

叢雲が周りを見る。艦娘たちは前の提督の恨みを大声で叫びながら石を投げていた。

 

「…教育に良くないんじゃ…。」

 

「まぁね…。でも本当に、悪い人に対しても優しいだけじゃダメだし。純粋な子ほど、騙されちゃうからね。」

 

「…まぁ、そうだけど…。」

 

叢雲はそこらにあった石を手に取る。

 

「ばかやろーーー!」

 

叢雲は叫びながら石を投げた。そして、それが顔面のど真ん中に命中。

 

「…少しスッキリするかも。」

 

「そうさ。俺だって、日頃のイライラをぶつけてるし。」

 

「日頃のイライラって何よ…。」

 

「例えば…。」

 

ドミナントが石を手に取る。

 

「艦娘に危害を加えたクソ野郎がーーー!!!」

 

それも顔面のど真ん中に命中。

 

「…たまに、暁とか駆逐艦の子が呟くんだよ。前の提督はああだったのに…前の提督はすぐ怒って叩いていたのに…とかさ。それを聞くと、とても胸糞が悪いんだ。なんでそんな酷いことを平然と出来るのかなって。なんでそんなトラウマを植え付けたんだろうって。そんな酷い思いは俺一人だけで十分だって思ってた。けど…俺以外の鎮守府でそんなことが行われていた…。それを知って吐き気が込み上げたよ。俺だけの鎮守府しか見てこなかったのに、勝手に皆同じだろうと確信していた…。一ミリも行われているなんて考えなかった…。まるで喜劇さ…。…俺みたいな経験者を増やしたくないとか言っていながら、考えもしなかったなんて…。」

 

「あんた…。」

 

叢雲はドミナントを見る。ドミナントの目は少し俯いていて、悲しそうな目をしていた。

 

「…気がつかなくて当たり前よ…。皆んな、自分の鎮守府が忙しいんだから…。別に、皆んなが皆んな本当に、気がつかなかったあなたのことを責めているわけじゃないわよ…。怒りのやり場がないだけで…。このまま許したら、また痛い思いをする…またいじめられる…そう思っちゃうのよ…。だから…もう嫌だから、皆んな強く見せようとする。本当は弱い心なのに。私だって、最初見た時あんなに強気で言ったけど、本当はものすごく怖かったわ。足が震えて、歩けないくらい。あんたが最初に、私たちがいるかどうか聞いた時、怖すぎて見ることも動くことができなかった。もう真っ青な顔をして、震える身体を必死に堪えて…。でも、私が行かなくちゃまた誰かが痛い思いをするかも知れない…だったら、私一人がその思いをすればいいって思った…。…でも、あなたは前の司令官とは違う。本当に優しい…。そんなに考えてくれる司令官なんていないわよ…。違う鎮守府なのに…私たちの…ことを考えて…助けて…くれて…。あんたみたいな…司令官…が…いつか…帰っちゃう…て…分かっていても…どうしても…。…なんで…なんで…私たちの…司令官が…あんたじゃ…ないのよ…。」

 

「叢雲…。」

 

叢雲が泣き出し、うずくまる。

 

「あー!提督が叢雲を泣かしてるぞー!」

 

「うわー!最低です!」

 

「クソ野郎がここにもいるぞーーー!」

 

艦娘たちは状況を理解しておらず、ヤジを飛ばす。

 

「ま、待て待て!今本当に大事な場面だから…。」

 

ドミナントは叢雲に上着をかけてあげ、ずっとそばにいてあげた。

 

…………

 

「ごめんなさい…少し取り乱したわ。」

 

「いいよ別に。」

 

叢雲はしばらくして泣き止み、身だしなみを整えてキチッとする。

 

「でも、嬉しかったよ。」

 

「?」

 

「叢雲に、ここにいて欲しいって言われて。」

 

「…そりゃ、いて欲しいわよ。」

 

「…ありがとうね。でも…ね。」

 

「分かってるわよ。…それくらい。あんたにはあんたの鎮守府があるってことくらい…。」

 

「…たまに来るからさ。遊びに。」

 

「本当!?最後の別れじゃないわよね!?」

 

「お、おう…。いきなり食いついたな…。一応、パラオ泊地とも約束しているからね…。あっちは良くて、ここがダメなんておかしいし…。」

 

「……。そうね。必ず来ることねっ!」

 

「なんか上機嫌だな…。」

 

「別に?」

 

叢雲は、先ほどの悲しい心に温まるものを感じた。これが幸せなのだろうと思う。

 

「…ところで、あんた北上さんとはどうなったのよ?さっき一緒に石投げしていたみたいだけど…。」

 

「あー、それね?もう和解したよ。」

 

「え!?」

 

「簡単だった。」

 

「どういうことよ…。」

 

…………

遡ること数時間前…

 

「暇だなぁ…。叢雲来ないし…。寝坊なんて珍しい。」

 

ドミナントは執務室で椅子に座ってくるくる回る。

 

「…叢雲が寝ている間に、北上攻略するか。起きた時には和解してたら、きっと驚くだろうな〜。」

 

ドミナントがドアを開けて、北上たちの場所へ行く。すると…。

 

「北上さーん!?」

 

「んあ?あれ大井っちじゃない?」

 

大井が顔を真っ青にしてキョロキョロしていた。そして…。

 

「この際仕方がないわ!提督!北上さんを見なかった!?」

 

「い、いや、見てないが…。どうしたんだ?」

 

「北上さんが朝からいないんです!」

 

「今午前7時前なんだけど…。大井っちの朝って何時ごろなのよ…。」

 

「7時前です!」

 

「…え?」

 

「7時前です!!」

 

「お、おう…。今と同じ時間じゃ…?」

 

「2分も見てないんです!承諾もなしに!」

 

「お、おう…。」

 

……北上はいつもこんな感じなのか…?クソほど大変じゃないか…。

 

「一緒に北上さんを探すのに協力してください!」

 

「お、おう。分かった。」

 

ドミナントは半ば強制的に捜索させられる。すると…。

 

「いや〜。大井っちごめんごめん。急にトイレに行きたくなってさ〜。」

 

「北上さーん!」

 

大井が北上に抱きつく。

 

「ところで…なんでいるの?」

 

「いや、大井に北上がどこか探してくれって頼まれたのさ。」

 

「ふーん。」

 

北上は興味なさそうな顔である。

 

「あ、そうだ二人とも。ちょっと提案があってね。」

 

「「…?」」

 

「そんな怖い顔で見ないで…。これだよ。」

 

ドミナントが張り紙を見せる。

 

「前提督銅像石投げ大会。自由参加。ストレス値を低下させるため。どうよ。」

 

「…大井っちがやってみたいって言うなら…。」

 

「私はそんなくだらないものなんかに興味はありません。それより、北上さんと…。」

 

「大井、待て待て。少し提案がある。耳を貸してくれるか?」

 

「……。」

 

ドミナントは大井にコソコソ話す。

 

「よーく考えろ。もちろん、俺は君たちと和解したいのは知ってるよね?」

 

「まぁ…。」

 

「だから、俺は君たちの協力も惜しまないつもりだ。つまり大井が望めば、北上とのハプニングコースも選べるわけだ。遊んでいたらあんなことが…的なハプニングも期待できる。そうは思わないか?大井。大井にはその要素が必要だ。大井は大井だけで生きるべきではないのだ。」

 

「最後の方は何を言っているのか不明ですが…。良い話というのは確かよね?」

 

「そうだ。楽なことだとは思わないか。」

 

「……。」

 

そして…。

 

「やっぱり、行きましょう!北上さん!」

 

「う、うん。」

 

「やはりな…そんな気がしていた。」

 

そして一時間後、艦娘たちほぼ全員が集まり、中庭へ行く。

 

…………

 

「叢雲まだ起きてこないし…。」

 

「早くやりましょう!今すぐ!」

 

「お、おう。わかった。わかったから少し待って…。」

 

ドミナントが集まった艦娘たちに銅像を見せて説明する。一応、投げ終わったら溶かして売るので、粉砕などさせて片付けを大変にさせないように。

 

「始め〜。」

 

ドミナントが言った途端に、艦娘たちは次々に叫びながら投げる。暁たちは声は出ているが、残念ながら届いていない。その様子を見てほっこりする。

 

「提督、早くハプニングを…。」

 

「お、おう。分かったから…。…銅像に当てて、跳ね返らせて北上…さんを服ビリするというのは…。」

 

「…提督…。」

 

「ハッ!?」

 

ドミナントは、大井の声で地雷を踏んだと思った。大井の大切な北上に…下手したら、北上自身に怪我が及ぶかもしれないのに、そんな適当な案を出したからだ。もちろん、大井は…。

 

「最高の案じゃない!」

 

「お、おう。良かったよ…。そうだな…ホッとしているよ…今は…。」

 

別に、気にしていないみたいだ。そもそも、艦娘が石などで怪我するはずがないのだ。

 

「許可は取りましたからね。」

 

「まぁ…。」

 

大井がそこらにあった、握り拳以上のサイズの岩を取り…。

 

「これが、北上さんへの愛の1億分の1…!いっけー!」

 

「随分重いな!」

 

投げる。もちろん成人男性でも、10m先にある銅像に当たるなど到底不可能だ。せめて3mであろう。しかし、大井は…。

 

カコンッ!

 

「跳ね返った!?」

 

見事銅像に当てて、跳ね返らせた。

 

「おっと!」

 

「「!?」」

 

しかし、タダでやられはしない北上。見事に避けた。

 

「大井っち〜。危ないじゃ〜ん。」

 

「ご、ごめんなさい!北上さん!」

 

「まぁいいけどさ〜。」

 

大井が北上の場所へ行き、頭を下げて戻ってきた。

 

「…もう少し、何か速くて効果的な物を…!」

 

「全っ然反省してないなお前。」

 

「一応、もし問い詰められても提督から許可を得ていますので…。」

 

「うわっ。そのための許可かよ。うまく盾にしやがって…。」

 

ドミナントがゲンナリする。大井はさらなる物を探していた。

 

「これは、作戦が必要ですね…。」

 

「お前北上のこととなると見境なくなるよな…。」

 

大井がさらなる大いなる物を求めて作戦を立てていた。

 

「まず、私の慢心が敗因でした。こんな馬鹿らしい案に付き合った私の敗因です。」

 

「なんかひどくない?まぁ、否定できんけど…。」

 

「そもそも、服は砲撃によって破かれます。」

 

「そうだな。」

 

「と、言うことで何か深海棲艦を連れてきた方が効率が良いと考えます。」

 

「そうだ…え?連れてく…え?」

 

「そこで、その囮役は提督がやると言うことで…。来たら、私が攻撃するフリをして北上さんの動きを制限しますので、服が破かれます。そして、私が格好良く助けて…北上さんとラブラブに…。」

 

「お、大井…。色々ツッコミどころあるけど、いつの間にボードを召喚した…?」

 

「そこら辺は野暮なツッコミです。」

 

「さらに、俺が囮をやると言うところだけど…。」

 

「不満は言わせないわ。やれと言ったらやりなさい。」

 

「そこじゃなくて…。いや、確かに不満もあるけど…。図があるけど、俺カヌーに乗ってんだけど?それで海に行くの?せめてカヤックにしてくんない?」

 

「この泊地の裏にはカヌー1隻しかありませんので。」

 

「それで海の沖に行けと…。ブラック企業も真っ青だな…。」

 

ドミナントはこのままでは本気で出撃させられると感じて、新たな案を出そうと考える。

 

「そ、そうだ。なら…。」

 

…………

 

「きったかっみさ〜ん!」

 

大井がドミナントとの作戦後、北上の元へ戻る。

 

「大井っちどこにいたの〜?心配したよ〜?」

 

「ちょっとサプライズを計画していましてー。」

 

大井が北上の元へ近づく。しかし、それだけではなかった。

 

「お、大井っちー…?ナニシテルノカナ…?」

 

大井が北上の上半身のあそこをピンポイントで鷲掴みしていた。流石に北上も困惑。

 

「でへへ…。じゃない!えっと、提督が私たち艦娘の私服の調達でー。」

 

「と、とにかく鷲掴んでモミモミするのはやめようか〜…?」

 

「サイズとか測らないといけないらしくてー。」

 

大井は現在頭の中がお花畑である。ヨダレを垂らして変態な顔をしている。しかも、頭をそこに押しつけて…。

 

「流石にー、北上さんは測られるの嫌かな〜って思いまして〜。」

 

「お、大井っち…。変態みたいな触り方ダヨー…?」

 

「私が〜測るって〜相談したら〜良いと言いましたので〜。」

 

「…ふーん…。」

 

北上はしばらくして、ドミナントの元へ歩き始めた。

 

「き、北上さん…?」

 

「大井っち、そろそろ測れたよね?ちょっとどいてて。」

 

北上は大井を後にして、ドミナントの元へ向かった。

 

「…提督。」

 

「お、おう。北上…どうした…?」

 

「大井っちが私のサイズの寸法を測りにきたんだけど。」

 

「ギクッ…。う、うん。」

 

「大井っちから相談受けたんだよね?」

 

「ま、まぁな…。まぁ…。」

 

「…ふーん。」

 

北上はドミナントに近づく。

 

「…そうなんだ。…提督。」

 

「は、はい。」

 

ドミナントはバレて怒られると思い、体を強張らせた。

 

「…トイレの時の話なんだけどさ…。」

 

「…?」

 

「…あの時は悪かったよ…。また…いじめてくるんじゃないかって怖くて…。やり過ぎたと思ってる…。」

 

「…あー、あの時か…。別にいいよ。そうなる理由もあるんだし。そもそも、そこまで大きな怪我してないし。」

 

「…怪我してないんなら、良かったけど…。とにかく…。…ごめん。」

 

北上が頭を下げて謝ってきた。

 

「…北上は素直に謝れるんだぁ。」

 

「?」

 

「誰かさんとは違って。」

 

「おい!提督!誰のことだ!?昨日のこと撤回するぞ!?」

 

遠くで天龍の声が聞こえた。ドミナントは笑って手を振り、天龍はまったくとした顔で許す。

 

「…ところで、北上はどうして突然そのことを言うつもりになったの?」

 

「大井っちが相談したって言ったから。大井っちが仲良くしようとしているのを、私が邪魔するのはなんかアレじゃん?」

 

「……?」

 

ドミナントと大井は疑問しか残らない。

 

……北上…。そんな綺麗な話じゃないよ…。大井と俺はお前を中破姿にさせようとしてたんやで…。別に大井が俺に仲良くしようとしたんじゃないんだよ…。そうとも知らずに…おめでたい…。

 

ドミナントが微妙な顔をして思う。

 

「北上さん…!私のことを想って…!」

 

ガバッ

 

大井は北上に抱きついた。

 

「と、言うわけでして提督!これからは蟠りはなしということでよろしいですね!」

 

「お前はそれで良いのか…?」

 

ドミナントは散々大井に振り回されてしまった。そこに…。

 

「みんなここにい…何やってんの!?」

 

「おー、叢雲。…」

 

…………

 

「と、言うわけさ。」

 

「何その話…。私は何を聞かされていたの…?」

 

叢雲は脱力する。

 

「これで、大井北上天龍龍田はクリアだ。残るは赤城と長門だな。」

 

「どれどれ…。…あっ、いいえ。まだ残ってるわ。」

 

「ゑ?誰が?」

 

叢雲が書類をペラペラめくっていると…。

 

「残っているのは赤城と長門だけではないッ!!この木曾だッ!」

 

「ズキュゥゥン…て、やめーや。」

 

「いたわね。」

 

木曾が自信満々の顔でいる。

 

「姉さんたちは騙せても、この俺は騙されんぞ!」

 

「騙して悪いが仕事なんでな。」

 

「その言い方は誤解を招くわよ…。」

 

木曾は警戒心を丸出しにして、ドミナントたちに近づこうとすらしない。

 

「まぁ、騙したか騙していないかは本人が決めることだし。俺がとやかく言うことではないしな。」

 

「まぁ、あんたの言うことは正しいけど…。どうすんのよ。木曾さんだけ送るわけ?」

 

「言い方ひどいな。時間が解決するだろうってこと。」

 

「……。」

 

「…分かったよ。その案は捨てるよ。」

 

ドミナントと叢雲がコソコソ話す。木曾は無視されて何度も呼びかけている。

 

「木曾ー。」

 

「…なんだ?」

 

「なら聞くけど、どうすれば信用してくれるの?」

 

「信用しねぇっつってんだろ!」

 

「あそー。じゃ、俺は忙しいんでね。これにて失礼するよ。」

 

「ま、待てー!」

 

木曾がドミナントを止める。そして、ドミナントはまた叢雲とコソコソ話し始めた。

 

「なんで突っかかってくるのかしら…。こっちが帰ろうとしているのに…。」

 

「ふふーん。俺にゃ分かるのよぉ。」

 

「どういうこと?」

 

「木曾は今、孤立してしまったわけだ。」

 

「孤立?」

 

「ほら、俺を敵にしているから…。」

 

「…?」

 

「…北上と大井は俺を敵にしていたけど、今北上と大井は敵じゃなくなったじゃん?」

 

「…つまり、味方がいなくなっちゃったってわけ?」

 

「そう。自分の姉達はもう俺を認めているから、俺を敵にするとしても姉たちは協力しない。それどころか、敵になる可能性もある。しかも、自分だけ向こうに残されちゃったからね。孤立しちゃったから、俺に無理難題をクリアさせて、晴れて自分もー。的な感じだと思う。」

 

「何よそれ。面倒くさいわね。素直に言えば良いのに。」

 

「……。…そうだな。」

 

「何よその間。」

 

「いや?別に?」

 

「あんた、私が言えること?みたいなこと思ったでしょ。」

 

「……ソンナワケナイサー。」

 

「あんた…。嘘つく時は大抵目を逸らすから分かりやすいのよ!」

 

「そっち!?」

 

叢雲とドミナントはまた追いかけ追いかけられて遊んでいる。

 

「…おーい…。」

 

木曾は存在が忘れられかけている。ドミナントは叢雲に捕まってバシバシ叩かれていた。

 

…………

 

「いやー。遅くなってすまんな。木曾。」

 

「全く。」

 

ドミナントと叢雲が木曾の話を聞きに来た。

 

「で、木曾。単刀直入に聞くけど、俺に何して欲しいの?」

 

「べ、別にお前など…。」

 

「何して欲しいの?」

 

「……。」

 

「何もないじゃん。」

 

「ま、待て!今考えている…!」

 

「考えている時点で終わってるよ…。」

 

ドミナントは、近くにあったベンチを見つけ、そこに座って叢雲と木曾も座るように指示した。叢雲は、上官と座れるわけがないと断ればドミナントが立つと予想して素直に座った。

 

「…木曾。」

 

「ま、待て!少し待て!」

 

「…いいや、タイムアーップ。」

 

「く…!」

 

「…さて、冗談はさておき…。…木曾は、俺のことどう思ってる?」

 

「な…!ど、どう思っているかだと…!?」

 

「そう。」

 

「どうと言われてもな…。」

 

「たとえば、罪悪感とか敵対象とか…。」

 

「……。」

 

木曾は考え始める。長くなりそうだが、ドミナントはずっと待つ。

 

「…はっきり言うと、まだ警戒している。…今はもう敵対象の意識は薄れている。…それと…。…結構な罪悪感だ…。トイレでの件のことでな…。…お前が良い提督なのは分かる。…こんなに、姉さんたちや他の皆んなが笑顔になっているんだ。前は笑いもしなかったのにな。…俺は俺自身を許せねぇんだよ…。ここでお前に許してもらうと、俺の罪の意識は消えねぇ。」

 

「なら、どうして突っかかってきたのさ。」

 

「…お前に罰を与えてもらうのが楽だったが…。お前はそんなことしない奴だ。そこまで優しい奴だ。…だから俺が突っかかって、依頼を出し、俺が正しかったと、自分の中で納得したかっただけだ…。」

 

「…そ。」

 

「…それだけだ。」

 

木曾はそう言って、ドミナントを見る。

 

「うーん…。気持ちはわからんでもない。…かと言って罰を与えるのもなぁ…。」

 

ドミナントは少し考える。

 

「あ、なら良いことがある。」

 

「「?」」

 

「木曾の醜態を皆に見せびらかせ、木曾自身が羞恥心で顔を真っ赤にして表を歩けないほどのな。」

 

「「……。」」

 

…………

 

「これが…罰か…。」

 

「そう。罰だよ。」

 

「まぁ、平和的よね。…でも、木曾さんにそれはキツいかもしれないわね。」

 

「キツいどころじゃない!」

 

木曾が叫ぶ。

 

「おやおや?木曾ちゃん汚らしい言葉使っちゃダメだよ?プラス1時間になりたくなければ。」

 

「このゲs…ごほん、わ、わかり…ました…。」

 

木曾は我慢した笑顔で言う。現在、ドミナントや叢雲によって木曾の服装がフリフリのついた可愛い服を着させられている。いや、可愛いと言うよりも…キツい?

 

「くっ…殺せ…。」

 

「おぉ、くっ殺でた。叢雲、カウントして。」

 

「いやよ。」

 

木曾が羞恥のあまり死んだ方がマシだと考えたのだろう。

 

「だが残念!木曾に与えた罰はこれだけじゃあ無いんだなぁ。さぁ、その格好でこの泊地内の全ての施設に行くこと。」

 

「わ、わかりました…。」

 

……行ったフリしてやる…。

 

「あ、行ったフリするかもしれないから、一応スタンプ置いておいたし。これスタンプカードね?」

 

「……。」

 

木曾はカードを渡される。

 

「さぁ、そして無駄にあがく姿をよぉく見せておくれよぉ!」

 

「くっ…!俺はお前のような腐ったチーズには決して負けない!この俺が負けるわけねぇだろぅ!行くぞぉぉぉぉぉ!」

 

ドミナントがニヤニヤして木曾が歯を食いしばる。そして、木曾はスタンプを押しに走って行った。

 

「…行かないの?」

 

「え?うん。」

 

一方、ついていくと思って準備をした叢雲だが、ドミナントは行かない。

 

「そもそもこれ自体、木曾が罰を与えてくれって言ってこうなったんだし。やめたきゃいつだってやめても良いし。」

 

「まぁそうね。」

 

ドミナントと叢雲が歩く。すると早速…。

 

「こんにちは、提督。」

 

「こんにちは、朧。」

 

「さっき、ものすごい勢いで走る木曾さんとすれ違ったんだけど…。フリフリのついた服を着てなかった?見間違いだとは思うんだけどね…。」

 

「いや?着てたよ。どうしても罰を与えてくれーって言ってたから、あの格好で全ての施設へ旅するようにさせた。ま、今の木曾はレア度MAX衣装だから見れたならラッキーじゃん。」

 

「……。」

 

朧はどういう反応をすればいいのか困った顔をしている。

 

「ま、いいや。次はとうとうラストバタリオン、赤城か。朧〜、赤城ってどこにいるか知ってる?」

 

「う〜んと、自室か弓道場みたいなところにいると思います。あっ、弓道場みたいなところは、海側から出て西側の…。」

 

朧は丁寧に教えてくれた。

 

「そして、海岸沿いを行くと見えてきます!」

 

「へぇ〜。朧、ありがとう!」

 

「どういたしまして!」

 

そして、朧は軽く手を振ってから歩いてく。

 

「…いい子だなぁ。」

 

「あんたが皆んなに優しくしてくれたから、信用しているのよ。壊れた信頼関係がまた復活してきてるって言うのかしら?」

 

叢雲がその朧の後ろ姿を見ながら呟いた。そこに…。

 

「うおー!」

 

「おっ、戻ってきた。」

 

「めちゃくちゃ走ってる…。」

 

木曾が全力疾走して戻ってきたのだ。そして…。

 

「想像以上にハードだぞコラー!」

 

バッキャァァァ!

 

「ぐはぁ!」

 

木曾に、走った勢いのまま飛び蹴りされた。

 

「理不尽な…。」

 

「うるへー!ほらよ!スタンプだ!」

 

「あっ、全部やってきてる。」

 

「これでチャラだ!もう脱ぐぞ!」

 

「え、ここで…!?やめろ木曾!」

 

「うるせー!これ以上は俺は恥ずかしくて死ぬ!」

 

「お前の女性としての誇りが死ぬわ!叢雲!そこらのどこかの扉に木曾を連れて着替えさせて!」

 

「え、ええ。」

 

木曾は叢雲に連れられてどこかの部屋に入っていった。

 

「…外は平和だなぁ。次は赤城か…。」

 

ドミナントは窓の外の青空に鳥が飛んでいるところを見ていた。




次で赤城と信頼を築ければいいなぁ。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー!」」
「はい、今回もやってきました第8回目!タウイタウイ限定ラヂオ!というわけでこのまま進めたいと思います。」
「今回の更新は少し早いですね。」
「なんでも、来年は休止らしいですからね。今まで溜まっている話を全部やるつもりじゃないですか?噂によると150話溜まっているとか…。」
「150話…。一日一回投稿でも、無理なんじゃ…。」
「その時は、あくまでも可能性なので、できるなら続けるみたいですけどね。」
「そうね。…ところで、そろそろお便りのハガキを…。」
「あっ!そうですね!えーっと今回は…ペンネーム『不幸な姉』さんからのメッセージですね。えーっと…最近、臨時提督が着任いたしました。やはり、前の提督と比べてしまいますが、どうしても比べてしまうくらい臨時提督は優しいです。…ですが、私は不幸艦なのでこの幸せは実は不幸なのではと、たまに思ってしまいます。実は、その臨時提督は裏ではものすごく恐ろしい人なのかもしれませんと。その正体を確かめるにはどうすれば良いでしょうか。…みたいです!」
「意外と本気の悩みが来ましたね…。正体を確かめる…ですか。」
「うーん…。今までずっと不幸だった人にいきなり幸福が来たら、たしかにちょっと不安になりますよねー…。」
「そうね。こっちも、朝や昼にお客が少なかったら、夜にどっと来るんじゃないかと不安ですし。逆に、夜少なかったら誰か轟沈したんじゃと不安になりますし。」
「ですよね。それと、正体を確かめるですか。うーん…カマをかけてみたり、少し話したりすれば段々と正体が掴めると、個人的には思いますが…。間宮さんはどう思いますか?」
「一緒に食事をしたり、お酒を飲み交わせば大体のことはわかりますよ。その人の目の奥を見てください。そして、感じ取ればどういう人生を歩み、何を考えているかなんてお見通しです。私たちは艦娘ですし。」
「まぁ、そうですよね。あっ、FAXから…。ペンネーム『不幸な姉』さんからです!…分かりました。ありがとうございます。…だそうです!悩み解決して良かったですね!」
「そうね。…このコーナーの終わりの曲が流れましたよ。伊良子ちゃん。」
「あ、はい!次回!第258話『臨時提督の終わり』みたいです!そろそろこのコーナーも最終回ですかー…。」
「仕方ありませんよ。最初からそういうコーナーでしたし。」
「そうですね…。まあ、最後は思い残しのないように全力でやります!」
「では、皆さん。現在時刻はヒトフタマルマル。まだまだ寒いですが厨房は常に暖房みたいな暑さです。…あ、そろそろ業務に戻らないと…。それでは今度、またこのラヂオでお会いしましょう。伊良子ちゃん、せ〜のっ。」
「「さようなら〜。」」


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258話 臨時提督の終わり

随分と長らくお待たせいたしました。
「そうだね。どうしてそんなに遅くなったの?」
いやね…。特別話のクリスマス、お正月を書いていたら、こんな遅くになっちゃって…。てか、もう遅いから投稿するも季節外れだし。だから、今年のクリスマスはタウイタウイ泊地のクリスマスをやります。
「へ〜。」
んじゃ、色々節分とかで忙しいから、時雨頼むよ。
「わかった。」

あらすじ
雨はいつか止むさ…。


…………

 

「ここか。」

 

「そうね。」

 

ドミナントと叢雲が、サスペンスでありそうな崖の上にいる。そこには、矢である艦載機を構えている赤城がいた。

 

「…提督。」

 

赤城がドミナントらを見る。

 

「…赤城、早まるな!」

 

「え?」

 

「赤城さん!自首してください。」

 

「え…。…こ、これ以上来ないでください…。飛び降りちゃいますよ…。」

 

「て、あんた赤城さんに何してんのよ。私もノリに乗っちゃったけど。」

 

ペシッ

 

「いてっ。いや、だってサスペンスでありそうだし…。」

 

「全く。」

 

ドミナントたちが普通に話す。

 

「…ふふっ。叢雲さんも、随分提督のことを信頼していますね。やはり、ブレス…だからでしょうか。」

 

「「!?」」

 

赤城が分かっていたかのような顔をしていた。

 

「…どうしてそれを…。」

 

「…叢雲さん。」

 

「は、はい。」

 

「…私がここの最古参であることはご存知ですよね。」

 

「まあ…。…もしかして…。」

 

「ええ。私は大決戦の経験者です。…その時の艦娘の強さは今の比較にならない…。…つまり、そういうことなんですよ。私も、誰かの血液が流れています。私じゃない、誰かの血液が…。同胞の血液や感情が…。」

 

「…赤城さん…。」

 

叢雲は初耳だったらしく驚いていた。

 

「…それもあって、私はどうしても提督を疑ってしまいます。私の疲労回復は難しいでしょう。それに、加賀さんのこともありますし…。」

 

赤城がその崖の上の隅に建てられた物を見る。毎日のように置いてある花があった。

 

「…なるほどな。」

 

ドミナントが察する。

 

「でも、見捨てるわけにはいかんのよ。その加賀さんの想いも答えて。」

 

「本当、貴方は優しいんですね。加賀さんも、一度お会いしたかったと思います。」

 

「…手を合わせても良いか?」

 

「はい。」

 

「では、失礼する。」

 

ドミナントは真面目に答えて、それの前で手を合わせた。しばらくして立ち上がる。

 

「…俺がここに来た理由はもう分かってるよね?」

 

「はい。…ですから、私は大本営に行き、例の機械に行きます。」

 

「いや、行かせないよ。加賀の後を追わせるつもりなど元よりない。そう考えると、俺は最低の提督だがね。」

 

「いやいや、そういう話じゃないでしょ…。」

 

叢雲が何か変な空気になっていることに気づく。

 

「ま、そんなことはさて置き、どうしたら赤城は信用してくれる?」

 

「本人の目の前で言いますとは…。」

 

赤城が少し困った顔をした。

 

「ま、とりあえず2番目秘書艦として、今日はずっと一緒にいてもらおう。」

 

「「え?」」

 

ドミナントが言い出して、叢雲と赤城が耳を疑う。

 

「さ、加賀さんにしっかり挨拶したし、行こう。」

 

「ちょ、本気!?」

 

「本気。」

 

「今ですか…?」

 

「今。」

 

「また冗談を…。」

 

「じょ、冗談じゃ…ない。」

 

「ええ…。」

 

「戦い…生き続ける悦びを知ってもらおう。」

 

そして、赤城と叢雲とドミナントの午後が始まった。

 

…………

 

「ふはははは!その程度か…?あかぎんとMURAKUMO…。」

 

「くっ…!あんた…。」

 

「…まだです…。まだ…戦えます…!」

 

「ほう?だが残念だが、これで終わりだ…!しねぃ…!」

 

「「きゃあぁぁぁぁ!」」

 

『ドガアアアアン!』

 

『K.O!!!』

 

毎度お馴染み、娯楽室でゲームだ。2時間ほどやっている。ちなみに、このゲームは艦娘のために購入したのだが、警戒をしていて、全く手をつけなかったのだ。

 

「さてと、ま、ゲームは後にして仕事しないと…。」

 

「え?もう終わるの?」

 

「まあね。あかぎんも。」

 

「あかぎん…。あ、はい。」

 

ドミナントたちは執務室へ向かい、そこで色々とする。

 

…………

 

「でね、古鷹さんが笑顔になったの。」

 

「へぇ〜。きっと、嬉しかったんだろうね。叢雲がそんなことしてくれて。」

 

「そうね!」

 

仕事をするわけではなく、お茶会だ。テーブルの上の茶菓子は、シュークリームである。赤城が食べようかどうか、怪しんでいた。

 

「あかぎんも食べなよ。おいしいよ?」

 

ドミナントが勧める。叢雲はドミナントを真似しているうちに、紅茶の作法を無自覚で自然と覚えているらしく、少し上品になっていた。

 

「…それでは、ひとつ…。」

 

あかぎんがシュークリームを一口食べ、紅茶を飲む。

 

「……。」

 

驚きの美味しさのあまり、言葉すら発せない。

 

「…まずかった…?」

 

「…いえ、そんな…。」

 

パクッ

 

「ふぉんなことは…。」

 

パクッ

 

「ごふぁいまふぇん。」

 

パクリ

 

この美味しさを知ってしまえば、もう止まらない。止められない。

 

「…あ…。」

 

そこで、あかぎんは何もかもを食い尽くすことを思い出したが…。

 

「…ま、いっか。どんどんお食べ。」

 

「…ふぁい。」

 

いつもは食べれていないことを思い出して、赤城にどんどん食べさせる。

 

「美味しいかい?」

 

「ふぁい。」

 

「そっか。良かったよ。」

 

「こんなに…モグモグ…美味しいものが…ゴクリ…あるなんて…。パクッ。」

 

赤城が食べる食べる。

 

「まだまだ、この世の中には美味しいものは沢山あるよ。」

 

「そうなんですか…?」

 

「うん。…どうしたの?」

 

ふと、気がつけば赤城が残りわずかとなったシュークリームを見つめている。

 

「て、提督…。」

 

「いいよ。食べちゃいな。俺の分はいいから。」

 

……よだれなんて出して…。かわいいなぁ。

 

「いえ…。…その、これを後で食べたいんですが、持ち帰っても…。」

 

「?いいよ。別に。何個?」

 

「んと…それでは、二つください。」

 

「二つね。分かった。」

 

ドミナントはシュークリームを紙の箱の中に入れて、保冷剤を入れる。

 

「なるべく早めにね?」

 

「はい!」

 

赤城が紙箱を手に持って柔らかな笑顔で言う。先程の、強ばった笑顔とは全く違う。

 

「さてと、お茶会もすんだし、次行こうか。」

 

「そうね。」

 

「次?」

 

ドミナントと叢雲が茶会の食器などを片付けて言う。

 

…………

 

「えーっと、今どこまで行った?」

 

「えと…。25000までよ。」

 

「なら、次25100、25200、25300…。25354?」

 

「そうね。燃料はこれくらいかしら?」

 

倉庫で、資材の量を数えて記している。

 

「提督?何を…。」

 

「今夜の装備の晩御飯。どれくらい減るかなって。あと、資材を数えて明日やることを決めないといけない。次に弾、剛鉄、ボーキサイトとバケツに開発資材、改修資材とか見ないといけない。」

 

「意外と、やることあるのよね。まあ、すぐに終わるけど。」

 

ドミナントと叢雲が仕事をしている。

 

「それと、妖精さんたちのお給料である甘味が不足しているみたい。さらに、医療室で薬品の不足。この泊地の外壁である金網に大きな穴があったから、直すように。それと、かなり大きな穴だったから、野生動物が侵入している可能性があるわ。次はこれね。注意勧告をしないと…。」

 

「ひえぇぇぇ…。」

 

「ひえーじゃない。やりなさい。」

 

叢雲がテキパキと仕事内容を言い、ドミナントが従う。

 

「本当、叢雲さんも変わりましたね。」

 

「そうかしら?」

 

「そうですよ。前より、本当の笑顔が見れていますし。」

 

「…そりゃ、変わるわよ。こんなに優しいんだから…。」

 

「ふふふ。」

 

赤城と叢雲が話す。

 

「何か言ったか?」

 

「いいえ。それよりも、さっさと数えなさい。」

 

「今剛鉄を数えてるんだけど、やっぱり昨日計算した数と合わなくて…。」

 

「数式が間違ってるんじゃないの?」

 

叢雲がドミナントと一緒に数合わせをする。やっぱり足りないらしく、ドミナントは叢雲に怒られていた。

 

「…ふふふ。」

 

赤城は、そんな平和なドミナントたちを見ていて微笑んだ。

 

…………

 

「……。」

 

赤城は、部屋からこっそり抜け出して稽古場にいる。

 

「こんばんわ。加賀さん。」

 

そして、ある物の隣に座り、紙箱のシュークリームを一つ取り出して、そっと添える。もう一つは、自分の手に持つ。

 

「今日、新しい臨時提督ならいただいたものです。とても美味しいですよ。しゅー…くり?らしいです。」

 

独り言を言いながら、月を見る。青白い光が辺りを照らす。

 

「…今日は満月ですね。…加賀さん…。あなたが庇ったあの日から、私はずっと生きていませんでした。あなたを失ったのに、変わらずに虐待される毎日…。何度も死にたいと思いましたが、あなたからもらったこの命を粗末にも出来ず…。…しかし、臨時提督となってから全く違います。臨時提督は優しく、私たちのことを第一に考えてくださる人です。…出来れば、加賀さんと今の鎮守府を見たかったです…。多くの皆んなが笑顔で…。とても平和な鎮守府です。」

 

シュークリームを食べながら話す赤城。

 

「これを、加賀さんと一緒に美味しく食べたかったです…。」

 

赤城が、初めて弱いところを見せた。誰もいないからこそ、見せられるのだろう。

 

「…赤城さん、やっぱりここにいた。」

 

「!?」

 

声がして、すぐに目元を拭う赤城。そして、声の主の方を見た。ドミナントだった。手には、日本酒とジュースがあった。

 

「…持ってきたから、一杯どうですか?」

 

「…そうですね。」

 

ドミナントは赤城の位置の反対に座る。そして、赤城たちへのコップに日本酒を注ぐ。ドミナントはジュースだが…。

 

「かんぱーい。」

 

「はい。」

 

杯を掲げる面々。

 

「…いい夜ですね。」

 

「そうですね。」

 

二人…三人は満月を見る。幻想的だ。

 

「あ、そうだ。今度はスルメを持ってきましたよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

ドミナントはスルメを赤城に渡し、ある物の前に置く。日本酒の隣に。

 

「…臨時提督…。」

 

「なんだい?」

 

「…どうすれば信用できるか…おっしゃっていましたよね?」

 

「うん。」

 

「…私はただ、他のみんなの笑顔が見たいだけなんです。ここにいる間だけでも、平和で過ごしたい…。誰かを失ったりもしない場所でいたいんです。…私は、それをずっと願い続けています。ずっと…。」

 

「…そうか。」

 

ドミナントが言う。

 

「だったら、もう叶ってるね。俺は、絶対に見捨てないし、虐待もしない。俺だって、鎮守府にいる者は全員平和なほうがいいし、笑顔の方がみんな似合ってるし。」

 

「はい。…私の願いは、あなたが来ること…だったのでしょうか?」

 

「さあね〜。」

 

ドミナントは新たにジュースを注ぐ。赤城にも、少なくなっていたから注いであげた。

 

「加賀さんも、それを望んでいるはずです。」

 

「…そっか。」

 

「臨時提督…。」

 

「なんだい?」

 

「…ここに来てから色々と、ありがとうございました。」

 

赤城が頭を下げて言う。

 

「いいって。別に。」

 

「それと、もう一つ謝らなければならないことが…。」

 

「ん?」

 

「…今まで、提督を虐めるように影で指示していたり、唆したのは私なんです…。」

 

「別に…て、ええ!?」

 

「叢雲さんにも、巻き添えを喰らわしてしまったり、他の子にも迷惑をかけてしまいました…。もちろん、簡単に許してはもらえませんと、重々承知なうえです…。」

 

「…そっか。…他のみんなは、なんて言ってるの?」

 

「…私を責めておりません…。こうなるのは仕方なかったって…。」

 

「んじゃ、俺も責めないよ。」

 

「な、なぜ?」

 

「そりゃ、あかぎんが迷惑をかけたのは他のみんなじゃん。みんな責めないのに、俺が責めるのはおかしいし。」

 

ドミナントは立ち上がる。

 

「それに、仕方ないことだと俺も思うし。社畜の時はもっと酷かったし…。」

 

「?最後、何か言いましたか?」

 

「なんのことかな。ま、いいや。それと、そろそろ行かないと叢雲も心配するし…。」

 

「叢雲さんが?」

 

「そうなんだよ…。なんだか、最近すっごく俺のことを見ていてさ…。紅茶の作法まで無意識に覚え始めてるし…。なんか知らない、俺がトイレ行くのにもついてくるし…。軽い軟禁状態。すごいよ?マジで。ストーカーの域。」

 

「誰がストーカーですって?」

 

「ひぇっ…。」

 

「あんた…。教育が必要なようね…。」

 

「…なるほど…。ところで、叢雲は誰を連れてきたんだ?」

 

「?」

 

叢雲が振り向くが、誰もいない。

 

「ひっかかったな!叢雲!残念だが俺は逃げる!」

 

「こらー!」

 

ドミナントと叢雲の追いかけっこが始まる。

 

「…ふふふ。」

 

……加賀さん、見ていますか?私と加賀さんの望んだ鎮守府。提督も艦娘も分け隔てなく、友達のように遊ぶ鎮守府。…本当に、平和です。

 

赤城がその様子を見ていて、心底楽しそうに微笑んだ。




キリがいいので、ここまで!次回はどうなるのか…。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…臨時提督。訳あって、第4佐世保から第8タウイタウイに臨時として提督となった。
叢雲…第8タウイタウイ泊地所属。今は専属秘書艦となっている。そのおかげで、毎日茶菓子食べ放題…。
赤城…前の提督で色々あった。しかし、今回で赤疲労が消し飛んだ。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー!」」
「はい、今回もやってきました9回目!と言うわけで始まりましたタウイタウイ限定ラヂオ!」
「今回のお便りはこちら。」
「ペンネーム『爆撃七面鳥』さんからのお便りです!」
「どこかで聞いたような…。」
「えーっと…。…臨時提督が着任して結構経つけど、悪いことをしている人じゃなさそう。さつまいもがとても美味しかったわ。…姉のために、なんとか少しでも長く臨時提督のことを留まらせたいけど、どうすればいいかしら?…みたいです!」
「そうね…。あくまでも、臨時提督…。留まらせる…ですか。かなり難しい問題です。」
「そもそも、今まで来たお便り、一つの鎮守府から来ているような気が…。」
「留まらせる理由を作ればいいわけですよ。例えば、大問題を起こすとか…。」
「そうですね。でも、それだと怒られるんじゃ…。」
「そもそも、そのお姉さんはそれを望んでいるのでしょうか?自分の幸福のために、妹が身を削るとなると、絶対に反対すると思いますし…。」
「まあ、そうですよね。それに、留まらせるということは、その臨時提督自身にも負担がかかりますし…。」
「…難しいわね。…なら、留まらせるのはやめて、そのお姉さんと臨時提督の喜ぶことをすれば良いのでは?」
「あっ!良い考えですね!でも、喜ぶこと…。」
「人は、お祝いされると喜ぶものです。それに、無難だと思いますし。」
「なるほど。…あっ、ペンネーム『爆撃七面鳥』さんから…。なら、早速爆撃してくるわ。…だそうです。聞いていましたか?」
「どうやったらその答えに…。あっ、そろそろ終わりの曲が…。伊良子ちゃん。」
「はい!次回!第259話『さよならタウイタウイ』ですね。ついに、タウイタウイ泊地編最終回ですか。」
「では皆さん。現在時刻はフタフタマルマル。夜空は青い満月が出ていて幻想的。どこかかすかに笑い声が聞こえて、波の綺麗な音が響く浜辺でお送りしました。それではまた今度、このラヂオでお会いしましょう。伊良子ちゃん、せ〜のっ。」
「「さようなら〜。」」


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259話 さよならタウイタウイ

随分と待たせたねぇ…。
「筆者さんはあるゲームをやっていて遅くなったようだよ。」
気が乗らない上に、最近忙しいから…。まぁ、ゲームもだけど…。
「この小説、終わるのかな…?未完するの?」
できれば、したくない。ま、いいんじゃないの?どうでも。
「よくないでしょ…。」
そろそろ、瑞鶴も休暇を終えて帰ってくるかな?
「うーん、どうだろう?」
てか、そろそろはじめようか。あらすじ。

あらすじ
雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ…


…………

 

「んー…。叢雲、どう見る?」

 

「…かなり怪しいわね。」

 

ドミナントと叢雲は、報告書にあった金網を直しに来ている。

 

「…押し切った感じの穴じゃない。かじられた形跡もない。…おそらく、カッターのような物で破られてる感じ。」

 

「…この大きさ…もしかしたら、不審者が入り込んでいる可能性があるわ。」

 

「だよね…。でも、こんな辺境の鎮守府に入る奴がいるんだろうか…。」

 

「…嫌な予感がするわ。とにかく、すぐに全体放送にかけるわよ。そして、人員の確認を最優先に。」

 

「ああ。」

 

ドミナントと叢雲は急いで、全体放送をかけた。

 

…………

 

「はぁ…。こんなことは初めてだ…。」

 

「そうね…。」

 

執務室で、人数の確認をする二人。

 

……今まで、そういうのはジナイーダがやっていたからな…。ジナイーダやセラフたちがいないだけでこの有り様か…。俺は、ジナイーダたちに頼りすぎていたのかもしれん。

 

そんなことを思いながら、確認するドミナント。

 

……不安そうな顔…。こんな時こそ、秘書艦である私がしっかりしないと…。…でも、しっかりってどうすればいいのかしら…。いつも、あんたに助けられてばかりだったし、仕事だって任せていたから…。…私は、あんたがいないと全然出来ないのね…。

 

叢雲は目を光らせながら思った。

 

「「はぁ…。」」

 

そして、同時にため息をつく。

 

「…今のところはなし。あとは、警備だね。」

 

「そうね。…警備?」

 

「そう。一応穴は直した。もし入り込んでいるとしたら同じ穴は使わないだろう。…全体放送もしたし。だから、必ず他の道を探すはず。かと言っても、そこの警備をしないわけにもいかないけどね。それに、倉庫や保管庫、艦娘寮とか施設内とかを見回らなくちゃいけない。穴の発見が2日くらい前だから、危ないし。夜間の外出を気をつけさせないといけないし…。」

 

「大変ね…。」

 

「別に、叢雲は休んでいていいから…。」

 

「そういうわけにもいかないわよ。秘書艦なんだし。」

 

「…そっか。」

 

ドミナントはそう呟いた後、書類を一気に片付ける。

 

「…あー、どうしてこんなになるかなぁ…。俺の聞いていた話じゃゆるゆるで行くって感じなのに…。」

 

「なぜかしらね。」

 

「よし終わり。」

 

「お疲れ様。さっさと行きましょ。」

 

「うん。」

 

二人は外に出る準備を始めた。

 

「あぁ、あと叢雲これ。秘書艦歴長いから。」

 

「何かしら?」

 

「なんかあったら、これで…。」

 

ドミナントは叢雲に無線機を渡す。

 

「なんかあったら、すぐに使って。」

 

「分かったわ。」

 

「その時は俺はすぐに駆けつける。」

 

「えぇ、よろしく頼むわ。」

 

二人は執務室を出ると、歩き出した。

 

…………

廊下

 

二人が見回りをしていき、どんどん潰していった。そして、いつの間にか夜になる。廊下を歩いているのはドミナントと叢雲だ。

 

「叢雲。」

 

「また酸素魚雷くらいたいの?」

 

「んや。今回はふざけてもからかってもない。」

 

「なによ。」

 

「…今回の騒動が終わったら、俺は任務終了で自分の鎮守府に戻る。」

 

「……。」

 

叢雲は突然そんなことを言われて黙ってしまう。分かっていたのだ。いつかは帰ると。しかし、受け入れたくなくて目を背けてきた。

 

「その時、新しい提督にも秘書艦になってあげてよ。俺と一緒にいるように、うまくやって。叢雲は優秀だから。」

 

「……。」

 

叢雲は俯く。ドミナントの顔を見ていられなかったからだ。

 

「叢雲?」

 

「……。」

 

「大丈夫?」

 

ドミナントが顔を覗き込む。

 

「うぅ…。ぐす…。」

 

叢雲の目には涙が溜まっていた。

 

「大丈夫に決まってるじゃない!」

 

「……。…そっか。」

 

ドミナントは優しく微笑む。

 

「ちょっと!そんな目で私を見るんじゃないわよ!」

 

「へいへい。」

 

「全く…。あんたのせいなんだからね…。」

 

「僕に非があるとは思えないけどね。」

 

「だまらっしゃい!」

 

ドミナントは苦笑いしながら言った。

 

「まぁ、何にせよ、頑張ってくれ。」

 

「当たり前よ…。それに、たまには来てくれるんでしょう?」

 

「…まあね。」

 

ドミナントは前を向いて頷いた。叢雲も、ドミナントも分かっている。提督はそう簡単には他の鎮守府に来ることはできない。おそらく、次会えるのは何年か先だと。

 

「…ちょっと待って。この流れ、よくあるフラグじゃない?」

 

「突然何言ってるのよ…。」

 

「フラグが立った気がする…。」

 

「あんたねぇ…。」

 

「ん?なんだあれ…。」

 

ドミナントは立ち止まる。そこには、小さな黒い影があった。それは、人のような形をしている。

 

「叢雲…。」

 

「ええ…。」

 

二人はその黒い影に向かってゆっくりと歩いて行く。

 

「誰だ!」

 

「!?」

 

そこにいたのは…。

 

「天龍…何してんだよ…。」

 

「あぁ、提督と叢雲じゃねえか。」

 

「こんなところで何をしているの?」

 

「おう、龍田と二人で警備だぜ。」

 

「いやいや…。警備は俺がやるから、天龍はおねんねしてな。」

 

「おい、提督!なんだって!?」

 

「言い方は冗談だけど、内容はおんなじ。天龍は明日も出撃でしょ?早く寝ないと…。明日疲れるよ?」

 

「でも、お前は警備してんじゃねえか。」

 

「提督特権。天龍は寝なさい。龍田も。欲を言えば叢雲も。」

 

「やだ。」

 

「やだって…。ナチュラルに言われて一瞬戸惑ったけど、ダメなものはダメ。てか、部屋から出られると管理しづらいから。もしかしたら、侵入者がいるかもしれないから危険だし…。」

 

「なら、もっと警備するやつが必要じゃねえか。」

 

「いや、でも…。」

 

「提督。信じてくれよ。俺はもうお前をいじめようなんて思ってねえし、叢雲にも悪りぃことしちまったと思ってんしよ。」

 

「…戦える?侵入者と。」

 

「もちろん。」

 

「相手が誰であろうと、どんなものを持っていようと。」

 

「やるだけやるしかってやつだ。」

 

天龍がドミナントの目を見て言う。

 

「龍田は?」

 

「私も同じよ〜。」

 

「…そうか。」

 

そして…。

 

「なら、警備を頼む。天龍、龍田。無線機だよ。もし何かあったら、すぐに呼んでくれれば駆けつけるから。」

 

「分かった。任せな。」

 

「頼んだぞ。」

 

「えぇ、まかせてね〜。」

 

こうして、ドミナントは天龍と龍田に警備を任せて、また歩き出す。叢雲も隣でついてくる。

 

「…あんたがいなくなるって…。」

 

「話してない。話したのは叢雲だけ。」

 

「そう…。なんで今…?」

 

「なぜだろうな…。」

 

「……。」

 

「…叢雲はさ。最初からずっと俺の秘書艦になってくれた…からかな。」

 

「…ふーん。そうなのね…。」

 

「そう。…俺がいなくなっても、元気で過ごして。叢雲はみんなを引っ張ってくれる人だと思ってる。」

 

「…買い被りすぎよ…。」

 

「いいや。間違いないね。」

 

「…ありがと。」

 

「どういたしまして。」

 

「ふんっ…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

会話が途切れる。二人は黙って歩く。

 

「…もうやだ…。」

 

しばらくして、叢雲が立ち止まった。

 

「どうして…。どうして私たちばっかりこんな目に…。」

 

「……。」

 

ドミナントが来る前、ここはブラック鎮守府だった。提督の日常的に行われる暴力などが原因で、その八つ当たりがドミナントにも来るほどだった。そしてドミナントを信用した途端に、どこかへ行ってしまう。

 

「…大丈夫だよ。次の提督は俺よりいい人さ。」

 

「そんなの分かんないじゃない…。」

 

「…ま、そりゃそうか。」

 

「…ねぇ、お願いがあるの。」

 

「なんだい?」

 

「……。私と一緒にいてくれない?」

 

「そりゃ無理だ。申し訳ないけど。」

 

「わかってる…。でも、どうしても聞いちゃうのよ…。」

 

「…俺は臨時提督。佐世保に帰らなくちゃいけない。吹雪たちが待ってる。」

 

「……。」

 

「叢雲?」

 

次の瞬間、叢雲が突然走り出した。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

ドミナントは慌てて追いかける。叢雲は全力疾走で走っている。

 

「ゼェ…ゼェ…おい…!ヒィ…ヒィ…叢…雲…!どこに…ハァ…ハァ…行く…ゼェ…ゼェ…んだ…!」

 

「…どこでもいいわ!」

 

スタミナのないドミナントはすぐにへばった。叢雲はそのうちにどっか行ってしまった。

 

「待ってよ…ハァ…ハァ…!単独行動は…!ゼェ…ゼェ…危ないじゃん…!」

 

息を整えながら、ゆっくりと歩いて行く。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

……何やってるのよ…。こんなことしても…走っても、問題解決にはならないのに…。

 

叢雲は崖上まで行って、立ち止まった。月の光が反射して、水面をキラキラと輝かせている。

 

「…うぅ…!…どうして…!」

 

叢雲が膝をつく。途端…。

 

ガバッ!

 

「!?」

 

叢雲の視界が黒く染まる。そして、手足も同時に口も縛られた。

 

「んんっ!!んん!!」

 

「静かにしろよ。」

 

「あぁ、悪いな。」

 

「いやいや、問題ないぜ。」

 

「ぐっ……。んんっ……。」

 

叢雲の目の前に男が現れる。

 

「よお、久しぶりだな。叢雲。」

 

「……。」

 

叢雲は相手を睨む。元提督だ。

 

「流石はお前だなぁ?その目つき…。あの頃は何度も何度も、従順にさせようとしたが、他の駆逐艦は言うことを素直に聞く中、お前だけは違った。その時に俺は警戒すべきだったよ。お前が単独行動で本土まで行って、憲兵に直接SOSを出すなんてな?お陰で、電波を完全に遮断していた俺は捕まった。」

 

「……。」

 

「でも、神は俺を見放さなかったようだ。こうして、国のお偉いさんは俺が買収しておいたおかげで、俺は無実で釈放さ。憲兵には提督資格は取られたけどなぁ?」

 

「……。」

 

「あの時の屈辱を忘れたことはないぞ…。」

 

「……。」

 

「まあいい。そんなことよりも、今すぐ無線を操作しようとするのはやめるんだな?」

 

「……。」

 

叢雲は忠告を無視して、自分はどうなっても構わない覚悟で無線をいじろうとしたが…。

 

「もし操作すれば、この子はどうなるかなぁ?」

 

その提督が縛られている古鷹を見せる。古鷹は泣いていた。

 

「!?」

 

「さて、どうする?」

 

「……。」

 

「いい子だ…。」

 

「……。」

 

叢雲は黙って従うことにした。

 

「今すぐ無線を捨てて、足で踏み潰せ。自分で希望を断て。」

 

「……。」

 

叢雲がゆっくりと無線機を踏みつける。完全に壊れた。

 

「よし、それでいい…。」

 

「……。」

 

「おい、そろそろ行かないと怪しまれる。行くぞ…。」

 

「そうですねぇ。分かりました。あとでじっくり痛ぶりますか。」

 

国のお偉いさんに言われて、提督が古鷹と叢雲を山奥に連れて行く。鎮守府敷地外のため、ドミナントはどこにいるのか分からない。

 

…………

 

「っかしいなぁ…。叢雲はどこだ…。」

 

ドミナントは海岸沿いを探す。

 

「…全部探したし…。まさか、侵入者に…?…いや、叢雲だぞ。ないわ。」

 

ドミナントは露とも知らずに歩く。すると…。

 

「青葉参上!」

 

ドッゴォォォ!

 

「ぐはぁぁ!」

 

青葉が飛び蹴りしてきた。

 

「愛と真実の平和を願う、パパラッチ青葉です!」

 

「まず飛び蹴りはやめような…。威力の音おかしかったし…。」

 

ドミナントがフラフラ起き上がる。

 

「てか、青葉はこんな夜中に何やってんの…。」

 

「犯罪の匂いがしたので、マスコミとしてネタを追っていました!」

 

「うん…。今度から危ないことをするのはやめようね…。」

 

「結果を出せて、報告しに来たんです!」

 

「え?結果?」

 

青葉が写真をドミナントに見せる。

 

「叢雲に古鷹…。」

 

「相手はここの元提督でした。青葉一人だと危険と判断したため、提督に知らせに来たんです!」

 

「…そっか…。よくやった。青葉。」

 

「はい!」

 

「ちなみに、どっちに行ったか分かる?」

 

「森です。鎮守府敷地外の…。」

 

「…なるほど…。」

 

そして、ドミナントが青葉から少し離れる。

 

「じゃ、探しに行かないと。」

 

「恐縮ながら、青葉もお供します!」

 

「…まあ、案内してくれると助かる。それと、鎮守府艦娘全員集めようか。恨みつらみを全部ぶつけようぜ。」

 

「そうですね。ガサの恨みもありますし…。」

 

「ただし、条件があるよ。」

 

「?」

 

「存分にやって。でも、殺しちゃダメ。殺したら、後悔するよ。絶対。」

 

「…わかりました。」

 

「それと、流石に大人2人は危ないから、少し元の姿に戻るね。」

 

「はい?元の姿…?」

 

…………

 

「ここなら誰も来ないだろう。」

 

「では、早速…。」

 

提督が叢雲たちに振り向く。古鷹は完全にトラウマを思い出して、抵抗する気力すらない。叢雲はチャンスをうかがっている。しかし…。

 

ズガン!!

 

「うっ…!」

 

「…!」

 

足に銃で撃たれた。

 

「これで、逃げられませんねぇ?」

 

「歩けないではないか。その荷物はお前が待て。」

 

「大丈夫ですよ。今に軽くなりますから…。」

 

提督が叢雲に近寄る。

 

「さて、ならまずは古鷹を痛めつけるか。」

 

「ひっ…ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

古鷹はとにかく謝る。何もしていないが。

 

「すっかり、調教済みだな。」

 

「何度も何度も…苦痛を与えた結果ですよ。もう、逆らう気力もありませんし。」

 

「ほう。」

 

国のお偉いさんと提督が話す。

 

「なんなら、臓器売買も出来ますよ?ちょうど、古鷹くらいの子の臓器は高く売れるんで。」

 

「それはいい!だが、まだ殺すな。」

 

「はい。」

 

「あぁ…!お願いします…やめてください…!」

 

「うるさい!」

 

ドガッ!!

 

提督の蹴りが古鷹に入る。古鷹はうずくまったまま動かない。

 

「死んだか?まあ、死んでも別に構わないが。」

 

ヘラヘラしながら言う。叢雲は、それを目の前で見せられて、怒りを抑えていた。

 

「次は叢雲だな…。」

 

「……。」

 

「おい、起きてるよな?」

 

「えぇ、起きてるわよ。この縄がとけたら、あんたたち二人をどう苦しませるかで頭がいっぱいよ…!」

 

「ほぅ?元気そうだな?安心したよ。」

 

提督はポケットに手を入れて何かを取り出す。

 

「これはなんだと思う?」

 

「なによそれ…。」

 

「お前みたいな、反抗的な奴にはぴったりのものだ。覚醒剤だ。」

 

「やってみなさいよ…!その腕の神経を食いちぎってやる…!」

 

「だろうな。だが、こっちも痛いのは嫌だからな。こういうものを用意した。」

 

麻酔銃を見せる。

 

「弾は睡眠薬じゃない。こいつは注射器代わりだ。これをお前の腕に打ち込む。痛みはないぞ?」

 

「ふん…。やれるものなら…!」

 

叢雲は敵意ある目つきで提督を睨む。

 

「く…。」

 

「?何だ?叢雲…。その目、気に入らんな…。」

 

パァァァァァン!

 

その提督が思いっきり頬を引っ叩いた。叢雲は意識が飛びそうになったが、なんとか耐える。そして、歯を食いしばりながら睨みつける。

 

「やめろ。傷つけるな。値が下がる。」

 

「…すみません。どうも気に入らんのでな…。」

 

2人が話す。

 

「やっぱりやめだ。古鷹を嬲った方がよほどこたえそうだ。どうだ?お前の行動ひとつで、古鷹は痛い目をみる。まず、これはお前が俺を睨みつけているからだ。」

 

パァァァァァン!

 

その提督が古鷹を引っ叩く。古鷹は悲鳴をあげる。

 

「ぐっ…。」

 

「分かったか?俺に反抗的になるということは、古鷹が痛い目にあうということだ。」

 

「……。」

 

叢雲は何も言えなかった。しかし、望みは捨てていない。大きく息を吸う。

 

「さて、じゃあ始めるか…。」

 

「ひっ…。」

 

古鷹がまた蹴られそうになった瞬間…。

 

た、助けて…。

 

叢雲が呟く。

 

「あん?よく聞こえないなぁ?」

 

元提督はヘラヘラしながら煽る。

 

「助けて!司令官!」

 

叢雲はプライドも何もかもを捨てて叫ぶ。仲間のために、自分の今まで築いてきたプライドを捨てた。

 

「ははは…。こんな森奥まで来るはずが…。」

 

ガシャァァァァン!

 

「「「!」」」

 

目の前に、大きな機械が落ちてきた。軽量二脚の機械が。

 

「な、なんだ!?」

 

そして、その機械の頭部が2人を見る。

 

「う、撃て!撃てぇぇ!」

 

カァン!ガギィン!…!

 

どれだけ撃とうが、鋼鉄よりも硬い、オーバーテクノロジーの塊には効果がない。

 

「な、なんて硬さ…。」

 

言い終わる前にその機械がその2人を叩いた。それだけで3mほど吹っ飛ぶ。

 

「……。」

 

その機械の頭部が叢雲を見た。

 

ブチッ

 

「…?」

 

その機械が縄を千切る。

 

「…遅すぎるわよ…。馬鹿…。」

 

「!?」

 

叢雲が言う。

 

「…何故分かった…?」

 

「…なんでかしらね…。…なんとなく分かったのよ。」

 

叢雲が笑みをこぼす。

 

「な、なんだと…!?それに、何故ここが…!?」

 

「青葉、見ちゃいました!」

 

「青葉ぁぁぁぁ!」

 

元提督が聞き、暗闇の中で青葉がやってやったと言わんばかりの、仕返しと言わんばかりの顔でニヤけて言う。

 

「おい、何叫んでんだ。自分の置かれた状況を見ろ。クズが。」

 

「き、貴様…!臨時提督の分際で…!」

 

「それがどうした?俺は臨時提督だ。だが、お前はなんだ?今はもうすでに提督ではない。」

 

ドミナントはACのまま相手を睨みつける。

 

「クソッ!」

 

「殺れ!」

 

2人がその隙に銃をドミナントに構えようとしたが…。

 

ズガァァァン!

 

ズガァァァン!

 

「なっ!」

 

「ぐあっ!」

 

2人の手にある拳銃を素早く、見事に撃ち抜いた。拳銃は半分溶けていた。

 

「…ろくに銃を扱えない素人に、セラフから訓練を受けた俺が負けるはずがない。大人しくしろ。」

 

ドミナントが冷静に言った。

 

「て、提督!」

 

古鷹がドミナントのところへ駆け寄り、青葉に縄を解いてもらう。

 

「貴様…!」

 

ズガァァァァン!

 

ドミナントが2人の足元に撃つ。

 

「き、貴様…!私はこの国の幹部だ!後でどうなるか…!」

 

「どうなるか…か。だからどうした。ここは国会じゃない。第8タウイタウイ泊地だ。視察しに来たわけでもない貴様らは不法侵入だ。…もう一度無駄口を叩いてみろ。次はない。」

 

ドミナントが真っ直ぐ、冷静に言う。

 

……本当…。遅すぎるわよ…。

 

叢雲が思う。

 

……でも…。例え鎮守府の皆が何と言おうとも…。今、あんたが1番輝いているわ。

 

叢雲が、自分たちの前にいるドミナントを見て思った。

 

「ひ、ひぃぃぃ…!」

 

「に、逃げろ!」

 

2人が逃げる。が。

 

「照明弾を撃て!探照灯を当てろ!」

 

「「了解!」」

 

ドミナントが叫び、暗闇の中で夕張と明石が返事をする。

 

バン!バン!

 

シュゥゥゥゥ!

 

「ゔっ!」

 

「何も見えん…!」

 

明るすぎて目の前が真っ白になった。しかし、男達は走り続ける。そのうち見えなくなった。

 

「よし、オッケー。」

 

「!?…何で追わないのよ!」

 

叢雲が、追いかけていったと思ったドミナントがすぐ隣にいることに気づき、怒る。

 

「何故追いかけないのか?逃げられるわけがないと分かっているからだよ。全く、素直に捕まりゃ良いものを…。」

 

「?」

 

「それより、傷の手当て。…頬を叩かれたね…。可哀想に…。もう心配ないから…。」

 

ドミナントが叢雲を抱きしめる。大きな怪我をしていなくて心底安堵したのだろう。

 

「…うぅ…。」

 

叢雲は素直にドミナントを抱き締めていた。

 

…………

 

……やっと目が見えてきやがった…!

 

元提督が目を少し開ける。

 

……畜生…!次こそは必ず…!

 

貴様らに次などあるものか。

 

「!?」

 

そこで気づいた。自分やもう1人の仲間が発光していることに。

 

……照明弾と共に発光塗料を…!

 

夜の闇の中、2人は丸見えだ。そのうち…。

 

ドンッ!

 

「ぐわっ!」

 

壁にぶつかり、反動で転ぶ。

 

「いってー…。クソ…!」

 

起き上がり、走ろうとしたが…。

 

「よぅ…。元提督…久しぶりだなぁ…!」

 

「ひっ!」

 

天龍だ。真っ暗な闇の中、天龍の怒りを露わにした目が光る。

 

「提督の言った通りねぇ〜…ふふふ…。夜の闇でも光ってる…。」

 

それだけではなかった。直ぐ近くに龍田の声がする。

 

「ど、どけ!天龍!龍田!」

 

「おいおい、いつまで提督ぶってんだ…?それに、俺たちだけだと思ったか?」

 

「……。」

 

すると、次々と闇の中から目が現れ、囲まれる。今まで散々虐めてきた艦娘達だ。パキパキと指を鳴らす者や、素振りしている者もいる。

 

「提督から許可は取ってある。」

 

長門の声がした。

 

「存分にやれ。ただし殺すな。」

 

長門が言い、元提督は心底自分がやってきたことに後悔した。

 

…………

翌朝

 

「提督、連行完了した。」

 

長門が引きずっているのは、ボロボロの布切れのような2人だ。

 

「おう。ありがとう。」

 

「いや、いい。私たちもスッキリした。」

 

長門が久しく笑った。

 

「…それと、礼を言う。」

 

「?」

 

「…殺すなという命令だ。」

 

「?どゆこと?」

 

「…最初に聞いた時は、少しおかしいと考えたが…。それで良かったんだ。今考えてみたら、そうなったらまず後悔していた。」

 

「…そっか。」

 

ドミナントが少し口元を緩めた。長門の荒んだ心が回復したことが分かったからだ。そして、書類を書く。

 

「…何をしている?」

 

「君たちの報告書。」

 

「?」

 

長門が書類を見る。

 

「大本営審査、合格。どれだけ憎くても殺さない寛大さ、心の回復度、提督が酷くなければ良い子達だと言うこと。結果、満点。」

 

「おぉ!」

 

長門が少し喜ぶ。

 

「…それじゃ、これを提出っと。封筒に入れて、出してくるよ。…留守番頼める?」

 

「勿論だ。」

 

「じゃ、行ってきまーす。」

 

「ああ。」

 

長門はドミナントを行かせた。そして、5分後…。

 

バン!

 

「いる!?」

 

「?どうした?叢雲。」

 

叢雲が走って来た。入渠が終わってすっ飛んできたのだ。

 

「司令官は!?」

 

「提督なら、書類を出しに…。」

 

「…そう…。」

 

叢雲がすごく悲しそうな顔をした。

 

「?どうした?」

 

長門は何も気づかずに聞いた。

 

「…多分、もう帰ってこないわ…。」

 

「なに!?」

 

長門が椅子から思いっきり立つ。

 

「…忘れたの…?今の提督は臨時提督…。いつかは自分の鎮守府に帰らなくちゃいけない…。」

 

「……。」

 

「大本営へ書類を提出したってことは、もう帰ってこない合図なのよ…。」

 

「……。ずるい奴だな。最後まで…。…本当に……。」

 

「…本当…ずるいわよね……。」

 

2人は泣きながら、鎮守府の全員に知らせるのだった。

 

…………

郵便局前

 

「提出しちゃった。」

 

ドミナントが悟ったように独り言を言う。

 

「…さよならを言うと、多分あの子たち泣いちゃうからね。このまま去るのが良いか。」

 

ドミナントは来た道を戻らず、海辺へ歩いて行く。

 

…………

海辺

 

ザザァ…ザザァ…

 

快晴の青い空、美しい青い海。波は穏やかに浜に打ちつけ、海鳥が軽やかに歌う。

 

「さてと…。」

 

……AC化!

 

誰も見ていないことを確認してACになろうとしたが…。

 

「ちょっと早かったかな?」

 

「!?」

 

後ろから声がして、振り向く。

 

「や。久しぶり。」

 

「鬼の憲兵さん…。」

 

鬼の面頬をした憲兵がいた。

 

「鎮守府に悪人2人います。彼らを世に野放ししてはいけませんよ。さもなくば彼ら、また来ますから。」

 

「ん?あぁ、平気だ。一度自分たちに連行されてるから、今度は大丈夫。元提督は完全に身分を剥奪、お偉いさんも身分を剥奪させる。もう二度と海を渡ってここに来れない。安心しろ。」

 

「ありがとう。」

 

2人が話す。

 

「…ところで…。」

 

「?」

 

「こんなところにいていいのか?」

 

「あぁ…。自分、もう帰るところです。」

 

ドミナントが海側へ向く。

 

「…彼女たちを連れ帰るのか?」

 

「連れ帰ることは出来…なんでいる!?」

 

いつの間にか、ドミナントの後ろに沢山いた。

 

「あら、あんた。私たちに黙って行こうとするなんて、いい度胸じゃない。」

 

叢雲が前に出て言う。

 

「今までずっといた私に最後の挨拶が無いなんてね。」

 

「私達も最初の友達じゃないですか!」

 

「そーだそーだ!」

 

「青葉、報道しちゃいますよ!」

 

「一人前のレディを相手にするとしても失礼じゃない!」

 

「ハラショゥッ!」

 

「頼りなさいよ!」

 

「言って欲しいのです!」

 

艦娘達がワーワー言う。しかし、一言一言言うたびに、言った艦娘が泣き始める。

 

「泣くなよ。最後じゃないだろう?また会えるさ。きっと。」

 

艦娘たちはその言葉を聞いて、ますます泣き始めた。

 

「提督!」

 

長門が大声で言う。

 

「胴上げだ!!」

 

「「「ワーッショイ!ワーッショイ!」」」

 

艦娘達がドミナントを胴上げする。長門は大声で言っていた。いや、長門だけではない。大人っぽい艦娘達が大声で言っていた。泣くのを堪えて、気合いを入れるためだろう。

 

「…ありがとう。」

 

しばらくして、胴上げが終わる。すると、暁達小さい駆逐艦達が抱きついてきた。寂しいのだろう。

 

「…あれが本当の提督の姿だ…。艦娘達からすごく親しまれていて楽しそうだろう。」

 

「……。」

 

「お前は楽しかったか?艦娘を虐めて。」

 

「……。」

 

「自分は、あんな風になった方が虐めるより何百倍も…何千倍も楽しいと思うぞ。悪いことをしたら全力で叱ってくれて、優しくしたら全力で喜んで、泣いている時は全力で慰めてくれて、ふざけたら全力で笑ってくれる。どこか行っちゃう時にあんなに泣いてくれる。楽しくないわけがない。」

 

鬼の面頬憲兵が元提督に言う。

 

「…あんな風になりたいなら、もう一度提督をやり直すことだな。一から全部。」

 

「…なれるだろうか…。」

 

元提督が呟いた。

 

「なれる。自分を変えることが出来ればだがな。自分が保証しよう。」

 

鬼の面頬憲兵が元提督の目を見て言う。

 

「……。」

 

元提督は無言で頷いた。

 

…………

 

「じゃぁ…行ってくる。」

 

ドミナントはACで艦娘達を見る。艦娘達は全員涙を拭いていた。

 

「行ってきなさい。あんたはすごいってことをそっちの鎮守府でも証明しなさいよ。」

 

「たまに遊びに来てください。…永遠の別れなんて嫌です。」

 

「こっちは任せて。全力で提督業をやって!キラキラ!」

 

「青葉、ピンチの時はいつでも駆けつけます!」

 

「次に会う時は一人前のレディになってるわ!」

 

「ハラショゥッ!いつでも歓迎する。」

 

「ピンチの時は頼っていいのよ。だから、また来てね!」

 

「必ずまた会うのです!」

 

「今度も稽古してくれよ!」

 

「あらぁ〜、天龍ちゃん泣いてるの〜?」

 

「じゃ〜ね〜。」

 

「さようなら。」

 

「また、挨拶しに来てくださいね。」

 

「羊羹などを冷やして待っています。」

 

「また来てください!」

 

艦娘達が敬礼をする。

 

「おう!」

 

ドミナントが答礼をする。

 

「じゃ!必ずまた来る!」

 

「「「はい!!!」」」

 

「じゃあな!」

 

バシュッギュゥゥゥン…ウィィィィィィン…!

 

ドミナントがOB(オーバードブースト)を使って、海を駆けて行った。




ドミナント帰還。最後に、暗躍者たちの活動を書きたかったけど、文字数が多すぎて…。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…第4佐世保に帰還。
叢雲…最後まで秘書艦をやりきった。
提督…ブラック提督。憲兵の言葉で変わるかもしれない。
国のお偉いさん…ボロ雑巾のようにされた挙句、マスコミに叩かれて辞職に追い込まれる。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、今回は最後ですねー。このコーナーも…。ある佐世保の提督まで届いていることを祈って、このラヂオお送りします。」
「はい、今回のお便りはこちらです。」
「ペンネーム、『ある給糧艦』さんからだそうです。」
「ダレカシラネー。」
「えーっと…。達筆ですね…。ある意味読みづらい…。」
「そうですか?なら、代わりに読んであげます。」
「あ、はい。」
「つい最近、臨時提督が元の鎮守府に帰還しました。今回の騒動では、あまり活躍することも、出番も少なかったですが、私なりに、主に最後の方の担当に活躍できたと思います。臨時提督がいなくなりとても寂しい思いですが、これからも頑張っていきたいと思います。さて、質問はこのラヂオが臨時提督に届いているかです。」
「何故すらすらと…。」
「届いていますのでしょうか…。」
「うーん、ここから佐世保は遠いですし…。」
「頑張れば届きます。」
「おぉ…、いつになく間宮さんが燃えています…。」
「ですが、流石に電波に限界が…。」
「FAXに何か…。ペンネーム『紅茶提督』さんからですね。届いているそうです。」
「そうですか…。よかったです!」
「何故間宮さんが喜んで…?」
「あ、えと…。ペンネーム『ある給糧艦』からのメッセージです。」
「……。…まあ、そういうことにしておきましょう。」
「ふふ…。」
「それと、まだ1人あったのですが…。そろそろお時間なので、名残惜しいですが今までお聞きくださった皆様、今回まで誠にありがとうございました。いつしか、またこのラヂオが受信されるかも知れない…で、その時には…た、よろしくお願いします。」
「では皆さん、ただいま鎮守府では午前…時になります。快晴の空が心地…く、お洗濯はすぐに乾きそ…です。臨時提督はいなくなってしまい…したが、これからも頑張って…ごしていきたい…思います。伊良子ち…ん、そろそ…時間なの………わりに……しょ…。」
「そう…す…。……、皆……いつ…お会い……ょう!…宮…ん、せ………。」
「「さようなら〜。」」
ザーーーーー


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北方棲姫編
第260話 またもメチャクチャな日々が始まる


筆者は、いま現実とは離れたところにいます。
「仮想世界?」
瑞鶴じゃないか。んにゃ、仮想世界じゃないんすね。
「なんか、キャラが違くない?」
キャラが違う?ンッフッフッフッ…。現実だけど、外と隔離された場だよ。あっ、ちなみにコロナじゃないからね?
「どこよ。」
鎮守府に住んでいる提督の気持ちがわかる場所。軍隊学校みたいなところ?
「出世したわね…。」
携帯もいじれなくて小説がめちゃくちゃ遅れるし。てか、総理撃たれたな。
「問答無用ってやつね。」
そんな感じだったかなぁ?ま、ぼちぼち始めましょーかね。


…………

浜辺

 

「たまには浜辺を散歩するのも良いもんだなぁ。」

 

「そうですね。」

 

現在、ドミナントとセラフが鎮守府近くの浜辺を歩いている。あれから、色々あってもはや半年ほど…。ドミナントは帰ったあとめちゃくちゃに怒られたのは言うまでもない。

 

「あっ、あそこ吹雪さんに似た岩がありますよ!」

 

しばらく歩いたあと、セラフが気付いて指を刺す。一瞬は近くにのそのそ歩く“犬”…おそらく犬。が、岩だと思ってその近くの岩を見る。

 

「どれ…?…!アッハッハッハ!こりゃ傑作だ…!アハハハハ!」

 

セラフが笑い、ドミナントが大笑いする。吹雪の横顔にそっくりだが、どこか間抜けそうな顔をしている。失礼だと気づくのはいつだろうか…。

 

「…!命名、『吹雪岩』です!」

 

「アッハハハハ…!」

 

セラフも悪ノリしてドミナントが笑いこける。

 

「ひ〜。怒られるな。いかんいかん。…フフッ。」

 

ドミナントがなんとか堪える。だが…。

 

「あっ!あそこの海藻の溜まったところ、夕張さんの髪型に似てません?」

 

「どれどれ?あはは!そうだな!緑色だし!」

 

セラフがまた余計なものを見つけて、ドミナントが笑う。

 

「…ドミナントさん…。あれ…。」

 

「次はどんな面白いものが…?…て、えっ…?」

 

セラフたちが見つけたのは岩でも海藻でもない。人だ。浜辺に打ち上げられた人だ。

 

「ちょ、君!大丈夫!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

セラフたちが駆け寄り、息を確かめようと仰向けにする。

 

「…セラフ、待て。」

 

「?」

 

ドミナントがセラフを一旦止めて、よくよく見る。暁たちと同じくらいの背の幼女で、真っ白な髪。頭の左右に黒くて短い角、白いワンピースにミトン状の手袋がしてある。

 

「これ、敵じゃね?深海棲艦じゃない…?」

 

「そう言われてみれば…。」

 

セラフもマジマジと見る。

 

「ですが、たこ焼きが近くに転がっているあたり、祭り中に海へ落ちてしまった少女かも知れません。」

 

「それたこ焼きじゃなくない?敵の武器じゃない?」

 

ドミナントはセラフからたこ焼きではなく、敵の艦載機を持つ。

 

「…明らかに敵の艦載機じゃん…。」

 

ドミナントはそれを見る。敵の装備だ。

 

「…どうします?」

 

「えっ?何が?」

 

「この子です…。」

 

「…どうしよう…。」

 

セラフとドミナントは浜辺で倒れている深海棲艦を見る。

 

「放っておく訳にも行きませんよ…。」

 

「…鎮守府へ一旦連れて行く…?気を失っているみたいだし…。」

 

「…艦娘たちがなんて言うか…。ジナイーダさんとジャックさんは猛反対しますよ…?」

 

「けど…ねぇ…。それに、まだこの子は何もしていないし…。…て、よく見たら傷だらけじゃん…。」

 

ドミナントが背負う。

 

「連れて帰るんですか…?」

 

「仕方ないだろう…。見つけちゃったんだから…。それに、敵意がないなら、誰でも歓迎するのが俺たちだ…。…重いな…。」

 

ドミナントがその子を背負いながら鎮守府へ戻る。

 

「…私の責任でもありますよね…。」

 

セラフも嫌な予感がしながらも帰った。

 

…………

 

「馬鹿野郎!!なんて奴連れてきているんだ!?」

 

ジナイーダに早速怒られた。

 

「セラフ!お前もいてなんでこうなる!?」

 

「すみません…。」

 

現在、門の前だ。

 

「ドミ…。そこの敵を背負っている馬鹿!もとの場所にそいつを返してこい!」

 

「でも、この子怪我をしていて…。」

 

「そんなの知ったことか!!敵だぞ!?」

 

「しかし、まだこの子は何も悪いことしてないし…。」

 

「これからするかも知れないだろ!馬鹿!!」

 

「けど…敵意のない奴は一応歓迎するのがこの鎮守府の決まりで…。」

 

「おま…馬鹿が勝手に作った決まりだろう!」

 

「吹雪なんだけど…。」

 

「とにかく!!武蔵はともかく、そいつは明らかに敵だ!絶対に入れないからな!!」

 

ジナイーダがキツく言う。他の艦娘たちを危険に晒したくないのだろう。

 

「あっそう。わかった。」

 

「そうだ。」

 

「なら、俺も出てく。」

 

「はぁ!?なんでそうなる!?」

 

「だって、入れてくれないし。」

 

「そいつを元いた場所へ戻せと言っているんだ!!」

 

「それじゃ可哀想だろ。…敵でないかもしれん。傷が治るまで看病する。」

 

「この…!勝手にしろ!!!」

 

そして、ジナイーダはドミナントとその子を閉め出した。

 

「ちょ、ジナイーダさん!」

 

「知らん!あんな奴!」

 

「ですが二人とも熱くなっただけで、冷静に…。」

 

ジナイーダは門の鍵まで閉めて、不機嫌に建物内に戻って行った。セラフも説得しようと中に入って行った。

 

「…さてと…。…どうしよ…。」

 

ドミナントは葉と葉の間で見える空を見ながら呟いた。ちょうど良い感じの休日がとんだ休日になってしまった…。

 

…………

 

……さてと、まず家だよな。家がなくては何も出来ん。

 

ドミナントが背負いながら森の中に入る。

 

……なるべく動物との遭遇を避けねば…。てか、山の中から鎮守府へ侵入するか…?…いや、気配でバレるな…。

 

ドミナントはそんなことを考えながら森の中にいると…。

 

「そんな時こそ、これだ。」

 

「誰!?て、ジャックか…。…で、なにそれ。」

 

いつの間にかいたジャック。

 

「便利なノコギリだ。」

 

「ノコギリ?…てか、お前俺相手に商売しようってんじゃないだろうな…?」

 

「……。…このノコギリの便利なところは…。」

 

「聞けーい!」

 

どうやら、商売しようとしているらしい。

 

「なんともまぁ、足元見やがって…いやらしいやつだ…。」

 

「商売の基本だ。」

 

「はいはい。」

 

ドミナントは気にせず山の中を歩きながら受け流す。

 

「まぁ、必要なものがあったら頼むから、帰ってくれ。忙しい。」

 

「だからこそ、便利な道具が…。」

 

「なぁ、ジャック。」

 

「?」

 

「忘れてるかも知れないけどさ…。」

 

「ああ。」

 

「俺もACになれるんだけど…。艦娘と違って…。ノコギリもブレードを使うからいらないし…。」

 

「…そうだったな…。」

 

ジャックはドミナントの話を聞き、残念がる。

 

「まぁ、この子の傷を癒す薬とかは必要になるかも知れないから、必要になったら門の前へ行く。だから、作業の邪魔になるから帰ってくれ…。」

 

「…良いだろう。」

 

ジャックは大人しく帰った。

 

…………

 

「…まぁ、ないよりはマシだな。」

 

ドミナントはその子を背負ったまま、ボロボロの家を完成させる。狭いが、なんとかこの子とドミナントだけは入れる広さだ。ドアも作り、野生動物の侵入は出来ない。虫は心配だが、気をつけていれば大丈夫であろう。

 

「よいしょ…。」

 

ドミナントがそこに寝させる。

 

「さてと…。買いに行くか。薬と食料。」

 

ドミナントはジャックの店に行くことになった。

 

…………

 

「ただいま。て、うわぁ!」

 

「カエレ…ッ!」

 

帰ってきたら、その子が目覚めていた。

 

「危な…。何も石を投げることはないだろ。それに、俺の家でもあるし。」

 

その子はめちゃくちゃ敵意満々だ。

 

「ご飯だけど…。危なっ!」

 

「イラナイ…ッ!」

 

「投げることないだろ…。もったいない…。」

 

「コナイデ…ッテ…イッテル…ノ……!」

 

「初めて言われたな。」

 

ドミナントは食事を諦めて、傷薬を塗ろうと近づくが…。

 

「…怖いな…。」

 

敵意満々の目で睨み、手を出したら食いちぎらんとする歯を剥き出しにする。

 

「だが、俺が鎮守府に帰るにはこいつの怪我を治さないと…。」

 

「ガルルルル…!」

 

「ほーら、怖くない怖くない…。」

 

ドミナントが手を出した瞬間…。

 

ガブッ!!

 

「いってぇぇぇぇぇぇ!」

 

「ガルルル…!」

 

ドミナントの手に食いついた。ちなみに、普通の提督なら食いちぎられている。

 

「くそっ!」

 

ドミナントは手を振ったりして、ようやく手を離してくれる。歯型がついていた。

 

「いってーなぁ…。怪我を治してやろうってんだぜ?動けないだろう?痛くて…。」

 

「コナイデ…!」

 

「そう言うわけにいくか。俺が帰れない。」

 

そして、再度薬をつけようと手を出すが…。

 

ガブッ!!

 

「くそっ!いってぇな…!」

 

噛み付いてきた。だが、ドミナントは噛み付かれたまま、片方の手で薬を塗ろうとする。

 

ミシミシ…。

 

「グルルルル…!」

 

「力を強めやがった…。」

 

肌に触れようとするとさらに強く噛んでくる。だが、ここで退くドミナントではない。

 

ヌリヌリ…

 

「ほーら、痛くない痛くない…。て!俺がいてーわ!」

 

「グルルルル…!」

 

しばらくして、全ての箇所を塗る。そして、なんとか手を口から引き剥がす。

 

「全く…。めちゃくちゃ痛いぞ。」

 

ドミナントの手は真っ赤に腫れていた。

 

「これから毎日薬を塗るのか…。俺の腕持つかな…?」

 

ちなみに、ジナイーダからの許しはこなかった。




なーんか、何にも浮かびません。ずっと前に書いていた話です。


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第261話 北方棲姫

…………

 

「いででででで!」

 

「ガルルルル…!」

 

あれから、毎日薬を塗ってあげている。3日目だ。そして、腕を引き剥がす。

 

「スッゲーいてぇ…。昨日も一昨日も噛まれているから、治るどころか悪化しているな…。」

 

ドミナントの手の噛まれたところは赤ではなく、紫色に変化していた。

 

「そろそろ傷も治ってくるかなぁ…?…食事は投げないようになってきたけど、全く食べないし…。」

 

…………

四日目

 

ドミナントが家を広げようと、木を切って帰ってみると…。

 

「ウゥ…。」

 

なんとか、ここから逃げようとよろよろ足を引きずりながら行こうとしていた。

 

「おいおい…。まだ治ってないんだから無理するな…。」

 

ガブッ!!

 

「いってぇぇぇ!」

 

手を貸そうとしたら噛み付いてきた。しかも、腫れているところをピンポイントにだ。激痛が走る。

 

「この…!」

 

ドミナントは叩こうとしたが、その子が丸くなって、頭を手で守って、目をギュッと閉じていた。

 

「……。」

 

それを見て、気が失せてしまった。

 

……いかんな。いかん…。この子はまだ幼い少女だ…。それに、俺が勝手に連れてきて、勝手にしているんだ。この子の反応が普通だ。知らない人に軟禁もどきされているんだ。そりゃ噛み付かれる。

 

ドミナントは首を振り、彼女が正しいと思う。

 

「…だが、このままだと治る傷も治らんな。」

 

ドミナントは噛みつかれるのを覚悟で、背負う。

 

ガブリ!!

 

「いってぇけど…!まだ手じゃないだけマシだ…!」

 

ドミナントの背中に噛み付いた。そして、急いで家に入り、寝床に下ろす。

 

「ジャマスルナ…!」

 

「俺はお節介焼きなんでね。おー痛い…。」

 

そして、毎回噛まれながらも傷薬を塗ってあげる。

 

…………

5日目

 

その日、少し変化が起きた。

 

カプッ!

 

「…?」

 

「……。」

 

いつもは思いっきり噛んでくる彼女だが、この日は試すように優しく噛んでいた。だが、それでも十分に痛い。

 

「痛くない、痛くない…。」

 

肌に触れると少し強めるが…。

 

「はい、終わり。」

 

「……。」

 

スッ…

 

すぐに噛むのをやめる。

 

「…あと少しで動けるくらいにはなるよ。」

 

「……。」

 

ドミナントは幼い子に言い聞かせるように言った。その日の食事は全く手をつけなかった。

 

…………

8日目

 

「薬の時間だよ。」

 

「……。」

 

「…あれ?」

 

噛み付かなくなった。

 

ヌリヌリ

 

「大丈夫だよ〜。」

 

「……。」

 

染みるのが痛むのか、少し噛みつこうとしてくるが、噛み付いてはこない。

 

「はい。終わり。明日くらいには動けるんじゃないか?」

 

「……。」

 

「はい。ご飯。」

 

ドミナントはコンビニおにぎりを渡す。投げつけられてもいいようにだ。だが…。

 

ガサガサ…パクッ

 

「!?」

 

「……。」

 

食べたのだ。初めて。

 

「まだおかわりあるよ…?」

 

ジーーー…

 

「……。」

 

「はい。」

 

ドミナントが渡す。そして、一定の量を食べたあと、寝転がる。

 

「…昔々、あるところに…。」

 

「!?」

 

突然始まったおとぎばなし。その子は突然のことでめちゃくちゃ驚いている。

 

「驚いた顔をしてるね。…ここだけの話、実は俺、本当の子供が出来たらこうやって話を聞かせたくてさ。」

 

「フン…。」

 

ドミナントは言うが、興味もなさそうに向こうを向く。

 

「…まぁいいや。そして…。」

 

結局、ドミナントは一人でやった。

 

…………

10日目

 

……?

 

ドミナントは気配を感じて、ふと、森の中で後ろを見る。

 

……ついてきてる。あの木の後ろにいる…。頭のてっぺんにある一本だけのアホ毛…?が木からはみ出てる…。可愛いな。

 

だが、ドミナントは気付かないフリをして歩き始める。

 

……やっぱり、ついてきてる。

 

見てなくても、足音などで分かるのだ。

 

……このままの生活を続ければ、打ち解けるような気がする…。そうすれば、うちの鎮守府に正式に招待できるな。

 

ドミナントはふとそんなことを考えながら歩いていると…。

 

「今日も買いに来たか?」

 

「あっ、ジャック。」

 

いつの間にか鎮守府の門の前だ。いつも薬を買いに来ている癖で来てしまったのだ。ちなみに、ドミナントが建てたボロボロの家と門は結構近い。徒歩3分だ。

 

「傷薬を頼む。」

 

「良いだろう。300円だ。」

 

「一回限りなのに相変わらず高いな…。足元を見るんじゃない。一応住まわせているんだから…。大家さんだぜ?俺は。」

 

「む…。なら、150円で良いだろう。」

 

「さっすがジャック。男前!」

 

「分かっているじゃないか。」

 

…守銭奴…。

 

「何か言ったか?」

 

「あっ、いえ。なんでもないです。」

 

ドミナントは毎度お馴染みの傷薬を買う。

 

「ところで…。」

 

「?」

 

「動けるようになっているじゃないか。」

 

ジャックは存在に気付いているようだ。

 

「まぁ、まだ動けるだけだよ。しっかり完璧に治さないと。」

 

「…とか言って、実は満更でもないんじゃないだろうな?」

 

「…いや?」

 

「艦娘たちはお前が出て行ってから士気がだだ下がりだ。遠征まで失敗続き、出撃すれば一回戦目でほぼ全員大破だ。代わりにジナイーダが提督を務めているが、仕事で悩ましている。それと…えーっと…。自称神はほぼ毎日ジナイーダを責めているぞ。」

 

「あいつ…。」

 

「仕方ないだろう。ジナイーダも、責める時以外はアホ毛がシナシナになって、トボトボ歩いてため息ばかりついて心配していることを知っている。いい加減可哀想だ。」

 

「戻りたいけどねぇ…。あの子を中に入れることは出来ないからねぇ…。敵意がないとわかったら、正式に招待する。そうすれば、全て丸く収まるからね。」

 

「…なるべく早くしろよ。遅かった場合はいつ自称神が爆発するかわからん。」

 

「なるべくね〜。」

 

ドミナントはそんな感じで行こうとするが…。

 

「少し待て。」

 

「?」

 

ジャックが呼び止める。

 

「…その腕の傷、治りがやけに遅いな。」

 

「そうか?」

 

「転んで打撲した訳ではないだろう。少し見せてみろ。」

 

「いや、良いよ。」

 

「…内出血をしているな。…噛み付かれたか…?」

 

「…いや?」

 

「噛み付かれた場所の肌が切っていた場合は他の菌が入り、繁殖する。…取り返しがつかなくなる前になんとかした方が良い。」

 

「大丈夫だ。…それに、もうお金も全然ないし…。」

 

「…そうか…。」

 

ドミナントはジャックに軽く手を振りながら、戻って行った。

 

…………

 

……あれ?いない。

 

ドミナントとジャックが話している隙に、何処かへ行ってしまったらしい。

 

……薬が無駄になったかなぁ…。まぁ、海に戻ったならそれで良いが、ここまでしたんだ。内出血に毎日噛まれてお金も使って…。道中怪我をしたらマジで怒る。

 

ドミナントはそんなことを思いながら帰宅する。

 

「やっぱり、出て行ったか。」

 

誰もいなかった。

 

「さてと…。俺も帰るか。…あれ?」

 

ドミナントが立ち上がったが、あることに気づく。

 

「艤装だ…。別名たこ焼き。」

 

艦載機を持つ。深海棲艦の物なので、とても禍々しい。飛行機とはとても思えない。ましてや飛ぶなんて…。投げつける用ではないかと疑問に思ったりする。

 

「…まぁ、そんなことはどうでも良いとして…。これがあるってことは海に帰ってないのか…?帰ってないってことは、まだ森の中にいるのか…。」

 

直に座りながら呟く。そして、ふと外を見る。夕方だ。

 

……外がオレンジ…。夕方か。…ん?待て。あんな小さな子が夕方まで帰ってこないってことはおかしくないか…?…野生動物…。…武器になる艤装はここにあるし。…怪我したらマジで無駄になる。行ってこよう。

 

ドミナントは気が気でなくなり、飛び出した。

 

…………

 

「おーい!どこだー?」

 

ドミナントは森の中を捜索する。日が沈み始めている。

 

「ちっくしょ…。日が完全に沈んだらアウトだぞ…!真っ暗な森の中、敵とは言えあんな子が一人でいるとわかったら心配する…!ましてや、10日ほど一緒にいた子だからなぁ…。」

 

森の中を走りながら、慌てながら呟く。

 

……こうなったら仕方ない…。AC化…!

 

カッ!

 

ドミナントがACになる。

 

「これで、敵だからあの子がロックオンされる筈だ。これを頼りに行こう。」

 

ドミナントは滅多にならないACで捜索する。太陽は沈み、目に見えるものは青っぽい。あと10分くらいで真っ暗だ。

 

…………

 

「グスッ…。」

 

一方、こちらは一人で森の中で泣きながら彷徨っている。

 

「イエノバショガワカラナイ…。」

 

どうやら、迷子になってしまったようだ。

 

「ブキモナイ…。」

 

泣きながら歩く。すると…。

 

ガサガサ…

 

ビクッ!

 

「フゴフゴ…。」

 

イノシシが現れた。

 

「……。」

 

突然のことで固まってしまう。

 

「コ、コナイデ…ッ!」

 

「!?」

 

突然声を出したことにより、イノシシが気付いてしまう。しかも、意外と近い距離だ。一方、近くにあった棒を前に出して、僅かな抵抗をしている。だが、イノシシが突進してきた。

 

「タスケテ…ッ!」

 

ガシャァァァン!!

 

そう呟いた途端、目の前に大きな鉄の塊が降りてくる。

 

「「!?」」

 

巨大な人形ロボットだ。

 

ジーーー…。

 

イノシシは一目散に逃げていったが、その子は恐怖で足が動かなくなってしまった。

 

ガタガタ…。

 

初めて見る恐怖の塊に、震えながら少し泣いていた。

 

「…やっと見つけた。」

 

「!?」

 

カッ!

 

ドミナントが人型に戻る。

 

「全く…。艤装もなしに帰る奴がいるか…て、うわっ!」

 

ガシィィ…!

 

「あ、あの…。腹が…苦し…。力緩め…て…!中身出ちゃう…!」

 

とても怖かったのか、ドミナントに抱きつく。

 

「コワカッタ…。グスッ…。ヨカッタ…。」

 

「あーあーあー…。提督服が鼻水と涙で…。…まぁ、無事で良かった。怖かったね。よしよし…。」

 

ドミナントはよしよししてあげる。

 

……敵でも、中身は幼い少女なんだな。そりゃ怖いよな。

 

よしよししながら思う。そして、しばらくよしよしした後…。

 

「で、どうしてこんなところにいるんだい?」

 

ドミナントが理由を尋ねる。

 

…………

 

「つまり、川で魚を取っていたら帰り道がわかんなくなっちゃったの?」

 

コクコク…

 

「……。」

 

ドミナントが聞き、泣きながら頷いている。

 

「そのとった魚も、多く取りすぎてバケツがひっくり返って、川に落としちゃって全部逃げちゃったの?」

 

コクコク…

 

「……。」

 

泣きながら頷く。ドミナントは哀れんだ目で見ている。

 

「諦めて薪を取っていたらこんなところまで来ちゃって、その薪すらも少しずつ気付かずに落としちゃってもう無いの?」

 

コクコク…

 

「……。」

 

哀れすぎる…。

 

「……。」

 

ドミナントが立ち上がる。その子は怒られると思って、目をギュッと閉じていたが…。

 

ポンッナデナデ

 

「…?」

 

頭に手をポンとして、そのまま撫でる。

 

「…まぁ、そんな時もある。何もかも上手くいかない時もあるよ。俺もそうだ。だから、そんな泣くな。次頑張れば良い。今回失敗したことは無駄じゃないから。次成功する糧になる。」

 

「……。」

 

ドミナントは気にした風もない。優しく言う。

 

「じゃぁ、帰ろうか。ご飯まだでしょ?」

 

「ウン…。」

 

そんな感じで帰るのだった。




現在MIとレイテ、艦娘と暗躍者の戦いで結構長引いています…。


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第262話 北方棲姫ノ気持チ

遅かったかな?
「遅すぎよ。」
最近忙しくて…。マジで休みないと死ぬ…。
「仕事お疲れ様。」
ちゃっちゃとやって…。ブラック企業でクタクタだから…。

あらすじ
忘れたわ。


…………

 

「スー…スー…。」

 

「家に着くなり寝てしまったな…。それほど疲れていたのか。」

 

ドミナントと深海棲艦の少女は色々あり、現在共にいる。

 

「…イテテテ…。やっぱり、診てもらったほうが良いかな…?」

 

その子には隠していた右腕を見る。ボロボロだ。紫色に変色している。

 

「…でも、いつ帰れるか分からない…。お金も大事にしないと…。」

 

そう呟きながら、横になる。

 

「…悪くて切断か…。その前にACに戻って、入渠すれば大丈夫か…。元がACで、今の姿が仮の姿だし…。」

 

そんなことを呟いていたら、寝てしまった。

 

…………

 

「……。」

 

しばらくして、その子が起き上がる。

 

ジーーー…

 

「……。」

 

そして、ドミナントの右側へ足音を立てずに接近し…。

 

スッ

 

服の袖をまくり上げた。

 

「!?」

 

その腕の状態を見て、噛み付いた本人ですら驚くほど悪化していた。

 

オロオロ…

 

しばらくオロオロした後…。

 

ガチャ…

 

外に出て行った。

 

…………

 

「ココ…。」

 

鎮守府の門の前にいる。そして、門に触れようとしたら…。

 

「何をしているんですか?」

 

ビクッ!

 

後ろから声が聞こえたのだ。門を開けて、外に出た形跡もなければ、通り抜けたりもない。元からいたなんてこともない。幽霊の如く後ろに立っているのだ。

 

「あれ?あなたは確か…。」

 

「クスリ…オイテケ…。」

 

「薬…?」

 

セラフだ。セラフが首を傾げる。

 

「なんのですか?」

 

「ウデ…ヨクナル…。」

 

「腕…良くなる…。…分かりませんね…。ジャックさんに聞きます。本日当番ではないですから、迷惑かも知れませんが…。」

 

セラフが携帯を手に取る。

 

「…あ、ジャックさん?…いえ。侵入者はいません。…実は、前言っていた深海…の件なんですが…。…いえ。…腕が良くなる薬を渡して欲しいとか…。…はい。…えぇ!?ドミナントさんが!?…話してません。…はい。…えっ?お金取るんですか…?……本気で言っているんですか…?…はい。…へぇ…。そうですか。よく分かりました。今後一切、ジャックさんには私の開発した物などを出品させるのをやめます。その他、情報提供も停止させて頂きます。…そうですよ?…本気で言っています。…そちらがそのつもりなのですから。…はい。…無料にしてくれるんですか?…わかりました。では、今後とも良い関係を。…それでは。」

 

セラフが通話をやめる。

 

「この世の中、商売する人ってこんなこともするんでしょうか…?」

 

セラフが呟いた。なんの通話があったのか、想像するのが容易い。

 

「クスリ…オイテケ…。」

 

「これが薬です。」

 

セラフが見せるが…。

 

「その前に、何か思うことはないんですか?」

 

セラフが渡さず、問い詰める。

 

「…ワルイコトシタ…。」

 

「そうですね。」

 

「ワタシノセイデコウナッタ…。」

 

「そうですね。」

 

「ハンセイシテル…。」

 

「当たり前です。」

 

セラフはツンとしている。

 

「…ゴメンナサイ…。」

 

「それは、ドミナントさんに言ってください。…はい。薬です。」

 

セラフはそれ以上なにも嫌なことを言わず、渡す。

 

「今言った後でなんですが…。自分自身を追い詰めないでください。今怪我を治そうとしていると言うことは、悪いことを認めている証拠です。大半の人は自分が正しいと思います。悪いことをしても、正当化させようとします。…ですが、あなたはしっかりと反省していることが分かりました。それはとても素晴らしいことです。…あと少ししたら、ジナイーダさんも許してくれます。その時、しっかりと会いましょう。」

 

「…アリガトウ…。」

 

セラフが微笑みながら言い、その子は薬を持って走って行った。

 

…………

 

ガチャ…

 

「……。」

 

帰ってくるなり、すぐにドミナントの腕に薬を塗る。

 

「?」

 

そこに、包帯を手に取るが、どうするのか分からず掲げてみたりしている。

 

「…?」

 

いまいちやり方がわからないが、自分にやってくれたように包帯を巻いてみる。そんな感じで試行錯誤しながらなんとかやった。

 

…………

翌朝

 

「ふぁ〜…。」

 

ドミナント、起床。

 

「!?」

 

右腕を見るなり、驚く。とても下手くそだが、薬も塗られていて包帯も巻かれていたからだ。

 

「…お前か…?」

 

すぐ近くで寝ているその子を見る。

 

「だが、これでは緩いな…。」

 

ドミナントはもう一度巻き直そうとしたが…。

 

……いや、流石に無礼だ。このままにしておこう。

 

ドミナントはその子の頭を撫でる。

 

「ン…。」

 

少し嬉しそうにした。

 

……艦娘とほぼ変わらないな。

 

そんなことを思う。そして、朝食の支度をするのだった。

 

…………

夢の中

 

「ココハ…?」

 

その子は夢を見ている。…いや、夢…なのか?

 

「キコエル…?」

 

「オネーチャン!」

 

「イマドコニイルノ…?」

 

「モリノナカ。」

 

「ケイカクドオリ、『ダイヨンサセボ』ノテイトクトアッタ?」

 

「ウン。」

 

「チンジュフノナカニハイッタラレンラクシテ。ソノトキニナカトソトカラキシュウヲカケルカラ。」

 

「…ウン…。」

 

「…?ドウシタノ?」

 

そう、この子は大決戦の幹部の「インド」だ。そして、姉が「セイロン」と呼ばれる幹部である。その子は少し残念そうだ。

 

「ココ、オモッテイタトコロトチガウ…。」

 

「エッ?」

 

「テイトクモヤサシイ…。」

 

「…“ニンゲン”ニモソウイウノガイルコトヲシッテイルワ。…デモ、ワスレタワケジャナイワヨネ?」

 

「……。」

 

「ニンゲンハシンヨウデキナイ。アノトキモ…アノトキモアノトキモ、ニンゲンハウラギッテキタ。ワタシタチガ“コウナッタ”ノモニンゲンノセイヨ?」

 

「…ウン…。」

 

「アトイッシュウカンゴ、ワタシガクルワ。…ソノトキマデ、ワリキッテオイテ…。ジャナイト、ココロガコワレルワ…。…ワタシモ、アナタニコンナコトタノミタクナイ…。デモ、アイテハカンブヲナンニンモシズメテキタ『ダイヨンサセボ』…。タオスニハ、ナカトソトデドウジニヤルシカナイ…。」

 

「……。」

 

「…ツライコトヲゴメンナサイネ…。ホッポ…。」

 

「…ウウン…。ガンバル…。」

 

こうして、夢から覚めるのだった。

 

…………

 

「ン…。」

 

その子が起き上がる。

 

「やぁ、おはよう。朝食の時間を開始するよ。」

 

「……。」

 

「…?どうした?」

 

起き上がって、朝食と聞いても複雑な顔をしているその子に、ドミナントが心配する。

 

「…目玉焼きは好きではなかったか…。ベーコンだけでも食べる?」

 

だが、ドミナントは状況を理解していない。

 

「…イラナイ…。」

 

「えっ?」

 

「タベタクナイ…。コンナマズイリョウリ…。」

 

「まずい…。マジか。君の口には合わなかったかな…。」

 

ドミナントは呟くが…。

 

グゥ〜〜…。

 

お腹の音が鳴る。

 

「おや?今の音って…。」

 

「…シラナイ。」

 

ガチャ

 

小走りに家から出て行った。

 

「…夢で何かあったのかな?」

 

だが、そういう勘は鋭いドミナントだった。

 

…………

 

「……。」

 

切り株に腰を下ろしている。どうすれば良いか分からないのだろう。

 

……アンナニヤサシクシテホシクナイ…。コレカラ…ウラギルノニ…。

 

どうするか本気で迷っているのだ。

 

グゥ〜〜…。

 

だが、お腹は空くみたいだ。

 

「…タベテクレバヨカッタ…。」

 

そんなことを呟くが…。

 

クン…クンクン…。

 

美味しそうな匂いがする。

 

「!?イツノマニ…!」

 

背中に袋みたいなものが付いていた。

 

ガサガサ

 

「コレッテ…。」

 

ドミナントの作った朝食だ。ベーコンエッグトースト。ラップに包まれている。恐らく、ジャックから購入したのだろう。

 

モグモグ…

 

「…オイシイ…。」

 

食べて、素直な感想を言う。

 

……ドウシヨウ…。

 

だが、そうなればそうなるほど本気で悩んでしまう。

 

「どうしたの?」

 

「!?」

 

いつの間にか、切り株の隣にドミナントが立っていた。

 

「いつもよりシオシオしているじゃん。」

 

「……。」

 

その子はドミナントを見上げる。…だが、その途中にどうしても怪我をした腕を見てしまう。

 

「腕の包帯、ありがとな。今日、正式に俺の鎮守府に招待するよ。」

 

ドミナントが笑顔で撫でながら言う。だが、撫でて欲しくないらしく、頭を降ったりして弾く。

 

「それに、美味しい食べ物あるよ?餡蜜とか、カステラとか…。」

 

「カステラ…?」

 

「おっ、食い付いたな。カステラってのは甘くて美味しいお菓子だ。フワフワでほんのり甘い、とても美味しい味。」

 

「カステラ…。」

 

「しかも、俺の記憶だと一日数個限定。賞味期限の問題で。…あぁ、賞味期限ってのは食べられなくなる日のことね。」

 

「カステラ…オイテケ。」

 

「食べたいってことかな?」

 

コクリ

 

「……。」

 

「じゃ、行くか。」

 

そして、ドミナントたちは鎮守府の門に行った。




続けてもう一話投稿するので、どうかご勘弁を…。

ザーーープッ
「あっ、出来ました。」
「繋がりましたね。」
「はい、では今週もやって行きましょう!」
「電波ジャックした甲斐もありますね。」
「やっぱり、このコーナーはあると良いわよね。キラキラ!」
「最終的には、果汁で水攻めもありましたが…。ジャックだけで良かったです。」
「じゃあ、行くわよ。」
「はい!」
「伊良湖と間宮のお便りコーナー。とでも、言うと思っていたんですか?」
「新コーナー、明石と夕張の兵器解説コーナー!です!」
「そうね。やっとレギュラー持ちになったのね。」
「ちなみに、私は第4佐世保。明石さんは第2舞鶴鎮守府からのリモートで行ってまーす。」
「さて、今回の兵器は何にしましょうか?」
「早速なので、この世界のネジについて解説してみては?」
「そうしますか!えーっと、この世界のネジについて。ネジと言うものは、この世界でも存在しています。ただし、ある一定の条件を満たさない限り、特殊だけど、ただのネジの力しかないです。」
「あまり過ぎていたので、セラフさんとエアコンの部品にしちゃいましたし。」
「そもそも、兵器をネジ一個でなんとか出来るなんておかしいんです。」
「それを言ったらおしまい!」
「ちなみに、壊れたACパーツの修理にもそれ相応のネジを必要とします。この部分で、艦娘より強いのではないかと思いますけど。」
「確かに、強いですからねー。」
「まぁ、第2舞鶴では…え?なになに?危険?えっ!?提督!?何を…!?プッザーーーーー」
「あー…通信が切れてしまいましたね。それじゃあ、私しかいませんがまたいつか!」


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第263話 渾の考察

やっばーい。更新遅れすぎて、ちょっとキツいかも。てか、重い話ばかりになりそう。
「ゆるゆるはどうしたのよ?」
深海棲艦のゆるい日常でやっちまってるんだよぅ…。これじゃ、コイツマジじゃねぇか…て、思われる…!
「もう思われてるわ。」
慈悲を…。

あらすじ
まぁ、なんか…あれね。忘れたわ。


…………

鎮守府 門の前

 

「む?」

 

ジャックが二人の影を見つける。

 

「今日は何が所望だ?」

 

「いや、買いに来たわけじゃない。」

 

ドミナントが言う。怖がっているのか、ドミナントの後ろに引っ付いて隠れているあの子も一緒である。

 

「ジナイーダと話をしに来た。」

 

「なるほど。なら、呼んでこよう。」

 

ドミナントが説明したら、ジャックが鎮守府の中に戻って行った。

 

「……。」

 

「大丈夫だよ。怖くない。」

 

心配そうな眼差しで見るその子に、ドミナントが言う。撫でようとしたが、嫌がった。そこに…。

 

「……。」

 

ジナイーダが来る。隣にはセラフもジャックもいた。ちなみに、騒がないだけだが、鎮守府の窓から艦娘たちも見ていた。

 

「…なんのようだ?」

 

「なんのようって…。入れて欲しいから来たんだよ。」

 

「…そいつがまだいるぞ。」

 

「そうだな。だが、敵意はない。」

 

「…何故そう言える?」

 

ジナイーダが聞き、ドミナントが手の包帯を見せる。

 

「俺が巻いたわけではない。」

 

「…そうか。…だが、そいつが噛み付いたのだろう?」

 

「そりゃそうだが…。知らない男に拉致されれば噛みつくのは当然だ。」

 

「それに、そいつは敵意はなくても敵だ。入れるわけにはいかない。」

 

ジナイーダが厳しく言う。

 

「なぁ、ジナイーダ。お前は外見だけでしか見れないのか?」

 

「なんだと?」

 

「確かにこの子は敵だ。けどな、何もしてない。和解?してから俺を傷つけたりしていない。」

 

「するかも知れないだろう。」

 

「その時はその時だ。俺が全責任を持つ。辞職もしよう。いや、永遠にお前たちとは会わないことを約束する。」

 

ザワザワ…

 

ドミナントの言葉によって、聞いていた艦娘たちが大騒ぎをする。

 

「静かに!」

 

シーン…

 

だが、ジナイーダの張りのある声によって、静まり返る。

 

「…その言葉、嘘ではないな?」

 

「ああ。」

 

「そいつが何かした場合は、お前の手で始末することも承知してか?」

 

「勿論だ。」

 

「…よし。入れ。」

 

ジナイーダが門を開ける。セラフがホッと安堵の息を吐く。

 

ジーー…

 

「…?どうした?入るよ?」

 

「…ワカッタ…。」

 

その子は少し心配していたが、直ぐにドミナントの後ろを歩く。すると…。

 

「帰ってきたーーー!」

 

ビクッ!

 

「よっと。」

 

ドミナントが神様の額に手をやり、抱きつかれないようにしている。

 

「場を弁えろ。お客が来ているんだ。」

 

「お客?この子のこと?」

 

神様がドミナントの後ろに隠れている子を見る。

 

「私の名前は…。えーっと…。神様で良いよ。よろしくね。」

 

神様はしゃがんで、目線を合わせて笑顔で手を差し伸べる。

 

「…大丈夫。危険じゃないし、危害を加えないと思うから。」

 

「ン…。」

 

「ミトンの手袋なんだ。可愛いね〜。」

 

ドミナントが言うと、その子が神様と握手を交わした。

 

……コノヒトエガオダケド…。ナンカトテモオコッテル…。

 

その子はなんとなく神様の心の中を感じとる。

 

……ドミナントをドクセン…?許さない…許されない…。この11日と1時間26分37秒をずっと二人きりで過ごしてきたんだ…。私とはそんなことないのに…。それに、腕に噛み付いたんだよね…?それ相応の態度を取らせないと…。

 

神様は怖いことを考えている。露骨に声に出したり、顔に出たりするとドミナントに怒られるため、そんな余計な作り笑顔を出来る様に進化したのだ。

 

「神様。」

 

「何?」

 

「作り笑顔やめろ。」

 

「…だって、怒るじゃん…。」

 

だが、進化しているのは神様だけではない。ドミナントもだ。ほぼ毎日見ているドミナントはなんとなくわかるのだ。

 

「そんな笑顔しない方がまだ可愛かったのに…。激減だな。魅力が。」

 

「えぇ!?」

 

「隠し事をしない。もしくは、分かりきった嘘しかつかないお前の方がまだ良かった。が、こんなになってしまったなら仕方ない…。さらばだ。」

 

「ちょ!待って!しない!もうそんなことしないから!」

 

慌てて引き止める。あの子はこの二人がどんな関係なのか、だいたい想像ついた。

 

「さてと…。カステラ食いに行くか。」

 

「ウン。」

 

「カステラ…。」

 

「…はぁ…。一緒に行く?」

 

「良いの!?」

 

「その代わり、代金は自費な?」

 

こうして、ドミナントたち三人は間宮さんの場所へ行くのだった。

 

…………

甘味処 間宮

 

「やってますかー?」

 

「その声は久しぶりのていと…。えっ…!?」

 

間宮さんはドミナントの隣にいるその子を見てギョッとする。

 

「北方棲姫…。」

 

「え?」

 

「提督、その子北方棲姫ですよ…?」

 

「…姫?何を言っているんだ?この子はまだ幼い。子供だろう。」

 

「間違いなく北方棲姫ですよ!耳がついた丸い艦載機を装備していますよね!?」

 

「たこ焼きのこと?」

 

「たこ焼きじゃありません!あれで大破した艦娘は何人もいるんですよ!」

 

「またまた冗談を…。カステラ三つ。」

 

ドミナントは全く信じず、三人とも椅子に座る。

 

「あっ、はい。カステラ三つ…て!冗談じゃありません!本当です!」

 

間宮さんがガラにもなく慌てている。まぁ、敵の大将的な存在が目の前にいるのだから、慌てる気持ちも分からなくもないが…。

 

「北方棲姫って…。じゃぁ、名前は『ほっぽちゃん』か?」

 

「ニンゲンニイワレテイルナマエハ『インド』。」

 

「ほら、違…う…?」

 

その場にいた艦娘たちや間宮さん、伊良子やドミナント…。神様を除いた全員が顔を青くした。敵の…。散々脅威になってきた深海棲艦幹部の一人だと気づいたからだ。

 

「…あの…。もしかして、『ミッドウェー』知ってる…?」

 

「シッテル。」

 

「…『コン』のことも…。」

 

「シッテル。」

 

ドミナントが笑えない顔をするが、その子はどこ吹く風だ。それどころか、カステラが来るのを足をブラブラさせたりして楽しみに待っている。

 

「…で、でも敵意ないから…。皆んな、冷静にね…。冷静に…。」

 

ドミナントはとりあえず艦娘たちを落ち着かせようとする。そこに…。

 

「艦娘の訓練の感想はどうだ?」

 

「力が制限されている気がします。レベル?を上げれば強くなると聞きますが…。…ところで、武蔵さんはなれるのですか?」

 

「ん?そっちもか?…と、もう間宮の前だ。それじゃぁ。」

 

元深海棲艦幹部の武蔵が入ってきた。

 

「カステラを頼む。」

 

間宮さんに頼む。間宮さんは心が大忙しだ。

 

「ごめんなさい武蔵さん。カステラ終わっちゃいました。」

 

「何ぃ…!?そんな…馬鹿な…。まだヒトフタマルマルだと言うのに…。」

 

膝までついてガッカリする武蔵。

 

「そ、そんなに気を落とさなくても…。明日にはきっと食べれますよ。それに、限定のもう一つの杏仁豆腐も美味しいですよ?」

 

「流石伊良湖だ…。杏仁豆腐を頼む…。」

 

「はい。」

 

間宮さんはすぐに仕事に切り替える。…いや、切り替えたことでこの状態から抜け出したのだろう。

 

「提督がカステラを…。明日帰ってくれば良いものを…。」

 

「自分の提督に対して言う言葉か?それ…。」

 

「神様に、北方棲姫までカステラを頼んで…。皆んなで私を虐めたいのか…。全く…。」

 

武蔵は一人歩いて行く。ように思えたが…。

 

「北方棲姫だと!?」

 

気づいて、すぐに戻ってくる。

 

「しかも…!」

 

武蔵は言葉を失う。

 

「インド!?」

 

「アッ、『ミッドウェー』ヒサシブリ。」

 

北方棲姫は武蔵を見ても動じない。カステラを待っているのだ。

 

「なぜここに…?

 

「カステラタベニキタ。」

 

「カステラが目的なのか!?」

 

北方棲姫の理由に武蔵が驚愕する。まぁ、ものすごく強い敵がわざわざカステラを食べに来るなんて予想もしないだろう。

 

「お待たせいたしました。カステラを三つです。」

 

伊良子が持ってきてくれた。彼女も仕事に切り替えたのだろう。

 

「伊良子!?なぜそんなに普通に動けるんだ!?」

 

武蔵が聞いたが…。

 

「お客様ですから。」

 

「…心を完全に閉ざしてる…。」

 

余計なことを入れない為に、間宮さんと伊良子は完全にシャットアウトしたのだ。作業のように作り、作業のように持って行く。それを繰り返すことだけを考えている。

 

「オイシイ!」

 

「そりゃ良かった。」

 

北方棲姫が言い、ドミナントが返す。

 

「ミルクもあると良いぞ。」

 

「ミルク…。」

 

ドミナントが普通に渡す。

 

「…ウマイ!」

 

「そうか。」

 

ドミナントが頭を撫でたが、相変わらず嫌がった。

 

「…艦娘と変わらないな…。」

 

ドミナントが呟いた。

 

「…やめろ。なるべく意識しないようにしている…。」

 

武蔵が嫌な顔をする。

 

「…なんで戦っているんだろうな…。…褌が、『戦いたくて戦っているわけではない』と言ったな。」

 

「…らしいな。」

 

「なら俺の考察だが…。艦娘と深海棲艦はお互い因縁の関係がある。その因縁とは人間に左右されているのではないか…だ。」

 

「……。」

 

「あのパラオ泊地で戦った時の推測だが、褌や仲間たちは血を吐いて沈んだと聞いた。何故血を吐いたのか。そういう症状を俺は知っている。毒だ。もし毒ならば、どこで患ったか…。もちろん、自然に発生するようなものならサインがある。誰かが気づいて、被害は最小にできる。だが、出来なかった。あのグループでの幹部はみんな毒で死んだ。おそらく感染性で、症状が出るまで気がつかないと思われる。感染性で、自然界にもない毒など人間にしか作れない。」

 

そして、ドミナントは武蔵を真っ直ぐ見た。

 

「人間に、仲間を殺された恨みがあるからこそ、人間を守る艦娘と戦う。…そうなんじゃないか?」

 

ドミナントは覚悟した顔で聞いてきた。

 

「…その情報で、そこまで推測できるのは大したことだ。」

 

「やはりか…。」

 

「だが、それは半分正解…いや、半分以下の正解なのかもな。」

 

「…半分以下か…。」

 

ドミナントは少し残念がる。

 

「…だが、少なくとも褌はそうだったのかも知れんな。」

 

「…かも?」

 

「深海棲艦だったころと、今では見方が少し違う。」

 

武蔵はバツが悪そうに言う。

 

「…でも、少し正解なところが嫌だな…。」

 

「?なぜだ?」

 

「そりゃ…。仲間を殺されて恨まない奴なんていない。仲間の敵討ちに行ったら返り討ちなんて…。…泣き寝入りそのものじゃないか…。哀れすぎる…。」

 

「…提督よ、貴様は優しいな…。」

 

「?どうして?」

 

「敵の心配もして…。尚且つ、どうしてこの現状なのか知ろうとしている。普通の提督はただ何となく倒して、何となく海域を手に入れるだけだ。」

 

「…そんな奴はいないだろう…。人間性が欠けすぎている…。」

 

2人が話していると…。

 

「「スー…スー…。」」

 

カステラを食べてお腹が膨れたのか、神様と北方棲姫が座りながら一緒に寝ている。

 

「…和解する道はないのだろうか…。」

 

「…そうだな…。」

 

2人は呟くのだった。




ここでストップ。和解する道は………


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第264話 サクセンドオリ?

もうやだ…話が続くにつれて、どんどん重くてシリアスでキツくなってく…。
「どうしてそんなに…。」
瑞鶴じゃないか…。大決戦の話で、もうヤヴァイ…。轟沈が当たり前で、めちゃくちゃだよ…。第3佐世保鎮守府が暗すぎてシリアス過ぎる…。
「第3佐世保…確か、あそこはパラオ泊地と同じ…。」
それより酷い。残った艦娘たちの集いかな…。パラオは、“残された”だけど、第3佐世保は…。
「はい、もう暗い話やめ。」
そう…。あらすじスタート。

あらすじ
北方棲姫が来たわ。


…………

夢の中

 

「キコエル…?ホッポ…。」

 

「オネーチャン…。」

 

北方棲姫(インド)とセイロンが話す。

 

「『ダイヨンサセボ』ノ ナカニハ ハイレタ?」

 

「…ウン…。」

 

「…コンヤ ソウコウゲキ ヲ シカケルワ。ジュンビ シテオイテネ?」

 

「……。」

 

「…ホッポ?」

 

「…スコシ マッテホシイ。」

 

「?」

 

「モウスコシダケ…マッテ…。オネーチャン…。」

 

北方棲姫が頼む。

 

「…ワカッタワ…。マイバン レンラク スルカラ ハナシ ヲ キカセテネ?」

 

「ワカッタ!」

 

セイロンは初めて北方棲姫が言うことを聞かなかったことが嬉しかったのだろう。

 

…………

 

「ン…。」

 

北方棲姫がベッドで目覚める。何やら棚に枯れ葉の入った瓶が多く飾ってある部屋だ。

 

「目が覚めたか。」

 

「!?」

 

ドミナントが近くで紅茶を注いでいる。

 

「近くに知っている人がいないと、あの時のようになるかも知れないからね。…はい。ミルクティー。」

 

ドミナントがミルクティーを渡す。

 

「クンクン…クンクン…。」

 

「毒とかじゃないから。」

 

「……。…ゴク…。!。ゴクゴクゴク…!」

 

北方棲姫は夢中で飲んだ。

 

「オイシイ!」

 

「良かった。」

 

ドミナントもミルクティーを飲みながら言う。

 

「…ココハ…?」

 

「ここは俺の部屋。あのあと、神様と俺と君の分の代金を払って、寝ちゃっていたから運んだの。」

 

「……。」

 

「…いや、俺は寝ている最中襲うなんて非人道的なことしないし…。それに、今日はそのベッド使って。俺は…。…あれ?こんなものあったっけ…?…ここにあるソファーで寝るから。」

 

ドミナントが何故か新しく追加されている家具に気がついた。

 

クゥ〜…

 

そこに、可愛らしいお腹の音が響いた。

 

「…ツレテケ…。」

 

「ご飯だね。今日はなんだろう?」

 

ドミナントが行く。その後ろをトコトコついて行く。

 

…………

食堂

 

ざわざわ…

 

艦娘たちがドミナントたちを見ている。

 

「あの噂、本当だったとは…。」

 

「幹部の1人みたいですよ…?」

 

「本当…?」

 

「何故提督が…?」

 

「2人で何日も過ごしたのかな…?」

 

艦娘たちが噂をする。

 

「…ゴハン…。」

 

「そう。君の分もあるから。」

 

ドミナントが北方棲姫の分も用意してあげる。

 

「今日はカツカレーか。おそらく足柄が当番だな。」

 

ドミナントが言い当てる。

 

「あそこの席で食べよっか。」

 

ドミナントの後をついて行く北方棲姫。

 

「いただきます。」

 

「?イタ…。」

 

「…いただきます。だよ?」

 

「…イタダキマ…ス?」

 

「そう!良い子だ。偉いね。」

 

「イタダキマス。」

 

「そう。」

 

「イタダキマス!」

 

「お、おう。わかったよ。」

 

「…タベル?」

 

「うん。食べよっか。」

 

2人とも向かい合って食べる。

 

「…口元についてるよ。」

 

「ン。」

 

……可愛いなぁ…。

 

ドミナントが北方棲姫の口元についたカレーを拭う。艦娘たちは羨ましそうに見ていた。が。

 

「テキ…!?」

 

「んにゃ、違うよ。ジナイーダだよ。」

 

「まぁ、そう見られても仕方はないがな…。」

 

ジナイーダが北方棲姫の隣に座る。北方棲姫は驚き、ドミナントは普通に挨拶する。

 

「艦娘の目がある。あとは任せろ。」

 

「こちらに逃げ込めぇ…。」

 

「変なのが来たわぁ…。」

 

「テキ…!?」

 

「んにゃ、違う。ジャック・Oだね。」

 

ジャックが北方棲姫の隣、ジナイーダの反対側に座る。

 

「テキ…カコマレタ…。ニゲル…!」

 

「「「ちょ、待…。」」」

 

「アンゼン…。」

 

「あーあ…。ジナイーダたちのせいで変に好かれちゃったじゃないか…。」

 

北方棲姫が机の下に潜り、ドミナントの隣に来た。まぁ、知らない大人2人に挟まれたら逃げたくもなる。しかも、自分を嫌っているような奴と、お金儲けにしか興味がなさそうな奴に。

 

「あれ?ついさっきまで誰もいなかったのに…。」

 

そこに、セラフがやってきた。

 

「ここ、良いですか?」

 

「…ウン…。」

 

そして、セラフが北方棲姫の隣に座る。

 

「セラフには敵反応しないんだな…。」

 

セラフは薬をくれた人だと認識しているためである。

 

「あらら…。カレーが…。」

 

セラフまで口を拭ってあげた。

 

「…ハハ?」

 

「お母さんじゃありませんよ〜。」

 

セラフが微妙な顔をして言う。

 

「…家族はいるのかな?」

 

「オネーチャン!」

 

「…が、いるみたいだね。」

 

北方棲姫が元気よく答える。

 

「お姉さんも、この島のどこかにいるのですか?」

 

「イル!」

 

「そっかー。なら、早く迎えに来ると良いね。」

 

「…ウン…。」

 

「…どうかしたのか?」

 

「…ナンデモナイ…。」

 

「そうか。」

 

AC勢が聞きに来て、元気なさそうに答える。

 

「あれれ〜?まさか俺の席ない…?」

 

「主任、今は静かにしてくれ。」

 

「…やーだよっ。俺のキャラじゃないしねぇ〜。」

 

「キャラじゃないなら、少し向こうへ行ってくれ。見ろ!ほっぽちゃんがこんな顔をしているじゃないか!」

 

北方棲姫は何かよくわからない、どうリアクションすれば良いのか不明な物を見るような、追い詰められて子供がするような顔じゃない顔をしていた。

 

「ん〜?」

 

「……テキ…?」

 

「なんで聞くねん…。」

 

「隊長、仲間外れは良くないなぁ〜。俺も入れてくれないと…。アポイーッと!」

 

主任がどこからか椅子を持ってきて、無理矢理座る。

 

「ちょ、狭いって…。」

 

「キツキツ…。タァーッ!」

 

「て、ほっぽちゃんはどこに座っとるん。」

 

「ヒザ…ヒロイ。」

 

「俺が食べにくい…。」

 

「…クチ…ハコベ。」

 

「いや、食べさせねぇよ?それは許容範囲外。」

 

「ンー…!…ゼェゼェ…。ンー…!…トレナイ…。」

 

……可愛い…。

 

スプーンを取ろうとするが、身長や腕の長さにより取れない。

 

「致し方なし…。ほれ。ニュースプーンだ。予備もらっておいて良かった。」

 

「オォ…!」

 

ドミナントが綺麗な、誰も使っていないスプーンを渡した。

 

「…ン?カタイ…。」

 

「そこに話題を触れるな…。俺も提督だからな…。」

 

「提督全員変態発言やめてもらえませんか?」

 

セラフがジト目で見ていた。

 

「何何〜?」

 

「主任、お前分かってて言ってるだろ。」

 

「なるほど…。膝の上に乗られるとそうなるか…。新しい…惹かれるな…。」

 

「ジャックもやめろ。」

 

「ほう…。なるほど…。そうか…。ふぅん…。へぇ…。」

 

「ジナイーダはその凍て突くような視線やめて…。痛いから。普通に痛いから。ダメージ通ってるから。」

 

AC勢全員からダメージを受けたドミナント。

 

「オワッタ。」

 

「なら、ごちそうさまだね。」

 

「ゴチソウ…サマ。」

 

「うん。」

 

「ゴチソウサマ。」

 

「そう。」

 

「ゴチソウサマ!」

 

「わかったって…。」

 

「イク。」

 

「どこへ?」

 

「タンケン…!」

 

北方棲姫が目を輝かせて言う。

 

「そっかー。…心配だからついて行って良い?」

 

「…ワカッタ!」

 

「あっ、なら私も…。」

 

「ウン!」

 

「そうか…。なら、私もついていかないわけには…。」

 

「エェ…。チョット…。」

 

「ほっぽちゃんが嫌そうな顔をしたから、ジナイーダは除外…と。」

 

「…分かった。」

 

「私は明日の仕込みがあるから行けないな。」

 

「誘ってないよ?それに、一瞬嫌そうな顔をしてたし…。」

 

「ギャハハハ!じゃ、俺は良いかなっ?」

 

「ウン!」

 

北方棲姫は笑顔で言う。

 

「「な、なんだと…!?」」

 

「どうしたの?2人とも。」

 

「な、何故主任が良くて私が駄目なんだ…!?納得が出来ん!」

 

「主任に負けたなど…。レイヴン失格だな…。」

 

「2人とも、主任にすっごく失礼。それに、原因は自身だろう…。」

 

主任に負けて、すごく残念がるジナイーダとジャック。

 

「ハハハ!ま!人間性ってやつだよ。気付いてないかも知れないけど。」

 

「貴様にだけは言われたくない!一番人間性が乏しいのは貴様だろうが!」

 

「これは夢だ…きっと夢だ…。」

 

「モテる男は辛いね〜。ま、誘われなかった二人は残念だけど。」

 

「ふざけるなよ!?貴様!たかがOKされたくらいで何が人間性がどうかだ!?ふざけるな!」

 

「主任、嫌味か?それは私に対しての嫌味なのか?」

 

ギャーギャー

 

ジナイーダがギャンギャン言い、主任が煽る。ジャックは夢だと確信している。

 

「さ、行こっか。」

 

「そうですね。」

 

「?トメナイ…?」

 

「いつものことだし。」

 

「仲が良いんですよ。」

 

「?ソウ?」

 

そして、関わらないようにドミナントとセラフ、北方棲姫は食堂をそそくさと退室した。

 

…………

資材保管庫

 

「ココハ…?」

 

「資材保管庫。ここには資材とかが保管されているの。倉庫は色々あるから、新しく作ったみたい。まぁ、倉庫に入りきらない物とかも置いてあるけど。」

 

「ボーキ…?」

 

「そうだね。この巨大コンテナの中にはボーキサイトが敷き詰まっているの。隣のタンクは燃料が。その隣のコンテナには剛鉄、その隣の…よくわからない鉄箱の中は弾が入ってる。」

 

「ボーキ…?」

 

「そ。…そろそろ行く?」

 

「……。…ウン。」

 

…………

 

「今夜は俺の部屋のベッドを使ってくれ。」

 

「私の部屋でも良いのでは?」

 

「…セラフのベッド、少し狭くなるけど良いのか?」

 

「構いませんよ。」

 

「そうか…。なら、礼を言う。風呂に入った後、腕が治っていなかったら治療しなくちゃだし、久しぶりにベッドで寝たいしね…。」

 

ドミナントが欠伸をしながら言う。

 

「じゃぁセラフ、お風呂頼んだ…って、どうした?」

 

北方棲姫がドミナントにひっつく。

 

「…ダメだよ?」

 

「ダイジョウブ!…テキ!」

 

北方棲姫が自分を指差して、敵だと言う。

 

「ダメ。敵でも、モラルは守ってもらう。君は女の子でしょ?」

 

ブンブン!

 

「えっ!?男なの?」

 

コクンコクン!

 

「…いや嘘つけ。そんな可愛らしい顔して何言ってんだか…。」

 

キョロキョロ

 

「…!」

 

キュッキュッキュー…

 

「ヨシ!」

 

「“よし”じゃない。マッキーで眉を太くしてもダメだよ。」

 

ドミナントが呆れる。が。

 

「そんなに一緒が良いなら、入れてあげれば良いじゃないですか。」

 

「だが…。」

 

「見た目の年齢が幼いのでセーフです。」

 

「…そんなものなのか…?」

 

「そんなものです。それに、その子がそこまでするんですよ?マッキーで眉を描くくらい…。」

 

「…分かった。ジナイーダにはセラフが説明してくれよ。」

 

「わ、私ですか!?」

 

「当然だ。勧めたのはセラフだからな。」

 

「…分かりました…。」

 

セラフが渋々了承して、ドミナントと手を繋いで風呂へ行く北方棲姫を見ていた。北方棲姫が歩きながら振り向き、手を振ったときは微笑みながら手を振り返した。

 

…………

男湯

 

「…あれ?すぐ取れる…。…!それ油性じゃないな…。水性だな…。」

 

「バレタ!」

 

「全く…。…セラフ気付いていたんじゃ…?」

 

男湯で、北方棲姫を洗ってあげるドミナント。

 

「…シャンプーって平気なのかな…?」

 

「…?」

 

「それに、黒いリングも黒いツノも取れないし…。身体の一部なのかな…?…おぉ、意外とスベスベ…。」

 

ドミナントがツノに触る。

 

「…オ…オ…オ…。」

 

「?」

 

触ると、何やら変な声を出す北方棲姫。

 

「どうしたの?」

 

「…エッチ。」

 

「えぇ!?どゆこと!?」

 

ドミナントは訳がわからないよ…。

 

「ま、まぁそこは触らないとして…。シャンプーって平気?」

 

「クンクン…。」

 

匂いを嗅ぐ北方棲姫。

 

「…ダイジョウブ!」

 

「どこで判断しているんだろう…?」

 

ドミナントがシャンプーで北方棲姫の頭を洗ってあげる。

 

「〜♪」

 

「気持ちよさそうにしやがって…。目に入るから、これ被って。」

 

ドミナントが気づき、被せてあげる。

 

「…タベモノ?」

 

「んにゃ、違う。シャンプーハット。」

 

ドミナントが一応かぶせるが…。

 

「…髪の毛が長すぎて無理だな…。たいほーみたいに、また来るかもしれないと思っていたが…。」

 

元の場所に戻す。

 

「…洗える?」

 

「…ヤ。」

 

「とことん甘えてきやがるな…。全く大洗だ。」

 

ドミナントはやれやれとしながらも洗ってあげる。

 

「…身体の方は自分で洗って。流石に駄目。変なところ触るかもだし。たいほーだって、洗っていたし…。」

 

「…ツノ?」

 

「…本当、深海棲艦の基準ってどうなっているんだろう…。はい、目を閉じて。」

 

ドミナントがシャンプーを洗い流してあげる。

 

「はい。あとは身体は自分で洗って。」

 

「ヤ〜…。」

 

「駄目。俺は折れないから。さ!さっさと洗っちゃいな。」

 

「ヤ〜…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「…チッ。しょうがない…。大事なところ以外洗ってやんよ。全く…。」

 

「…!ダイスキ!」

 

「へいへい。」

 

そして、ドミナントが洗ってあげて、大事なところは自分で洗った。

 

…………

 

「おぉ…直っていく…。」

 

「ロボット…。」

 

ドミナントはAC化して入っている。ACの時代的に、膝や腰が完全に曲がらないため、少し深いところで入っている。そして、しばらくして人型に戻る。

 

「ほら、腕治っちゃった。」

 

「スゴイ…!」

 

そんなことを話していると…。

 

「ん?誰かいるな。」

 

「黒い紐パンがあるから、ドミナントたちじゃない〜?」

 

「…そんなパンツだったんだ…。」

 

「……。」

 

ベシッ!

 

「あ痛て。」

 

ドミナントは北方棲姫に叩かれた。

 

「その子、どうするつもりだ?」

 

ジャックが言う。

 

「…前もそんな話ししなかった?」

 

「したな。で、どうするつもりだ?」

 

「ん〜…。一応、お姉さんが来るまでここで生活してもらうつもりだけど…。」

 

「…いつ来るんだ?」

 

「さぁ…。」

 

「…決まっていないのか。」

 

「まぁね…。」

 

「…厳しいことを言うようだが、もしその姉が死んでいたらどうなる?」

 

「ここに所属だね。」

 

「そうではない。…もし、そうならその子も異変に気づくだろう。その時、悲しみを受け止めることが出来るのか?」

 

「もちろん。やってやるよ。どれだけ拒絶されてもね。」

 

「…覚悟あり…か。なら、これ以上は言わない。」

 

「ああ。」

 

「…成長したな。」

 

ジャックはそんなことを言って、身体を洗いに行った。

 

「…オネーチャン?」

 

「ん?大丈夫…。きっと来るよ。」

 

「…ウン…。」

 

「…夜、俺はソファーだけど一緒の部屋だから安心して。リラックス出来る紅茶を飲んで、トイレに行って寝よう?今日はもう。」

 

「ウン…。」

 

北方棲姫は目を伏せながら、頷いた。




前書きで、この先シリアスだけって書いたかもしれないけど、過去の話ね。ドミナントが存在している現代ではなるべく出さないようにします。レイテ編やAL/MI/ハワイ島奪還作戦はなんとかしてますので。
え?それを次回やってほしい?おっとっと…。艦core全開で、巨大兵器がお祭り状態ですから、終盤らへんになるかと…。
要望があれば、〇〇〇〇〇字って感じで期間限定で公開します。コメント欄で。
登場人物紹介コー…ザザッ


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第265話 北方棲姫の抱えてるもの

なんと、この一章が終わっていたのは2020年の10月だった件について。
「…約3年前!?あんた一体何してたの?」
いや、色々と仕事も忙しい上に、MIとレイテ編やってて…。MIは期間限定で出してるけどね。
「そういえばそうね。敵はどんなのかしら?」
そうだね…。まぁ、見てわかる通りソルディオス・オービットキャノンに、多分分かっていると思うけどデヴァステイター…くらいかな?公開しているのは。
「他にもいるの…?」
いるよ。じゃないと、どれほど時間かけてるの?って感じだし。でも、時間配分としてはALとMI3割、レイテ7割なんだよね…。いや、レイテ8割と言っても過言じゃないけど…。
「レイテ…。」
そう、瑞鶴の活躍の場だよ。まぁ、楽しみにしてて。エンガノは『未来』、スリガオは『過去との決別』、シブヤンは『壁越え』、パラワンは『絶望を越えた先』、サマールは『仲間』を題材としてるからね。そして、敵はまさに艦coreだったり、AC巨大兵器の数々。
「まさに大惨事…。」
最終章では白露型たちや吹雪単独で…。や、加賀さんが!?ってのも完成してるんだよね…。死神部隊にゾディアック、深海提督やボス海域深海棲艦。AC世界の組織や艦これ世界の組織や噂をふんだんに、惜しみなく取り込んで、最後は気づいた伏線、気づかなかった伏線を一気に回収。まさか!?となったりする展開。
…まぁ、続けばだけどね。
「最終章…筆者さんが絶望に叩き落としてきそうね…。」
だが!可哀想なのは嫌なんでねえ。ハピエンになんとかしてみますよ。ご都合主義をふんだんに使ってな。
「言っちゃったわね…。この人…。」
そうだよ?当然。バッドエンドより、ハッピーエンドの方が楽しいだろう。悲しむより、複雑な心境になるよりよほど、スッキリする方が良いと思うがね。
「まぁ…そうね。」
ま、とにかくMIは終わったから。
「そういえば、敵はどうなったのよ?」
敵?クジラにカニコンビ、深海空母艦隊、粉砕するもの、地上の大砲(旧式)にあんなものだね。で、臨時の仲間としてはドミナントとの面会はないけれど、第47代……。くらいだね。
「私は出ないようね。」
そりゃ…ね?あらすじどうぞ。
「完全にそらしたわね…。」

あらすじ
覚えてないわね!

瑞鶴さんそりゃないよ…。
「あんた覚えてる?」
……。


…………

真夜中

 

「……。」

 

北方棲姫は夜中、起きる。

 

「スー…スー…。」

 

「……。」

 

ガチャ…

 

ドミナントが寝ていることを確認して、気配を消して廊下に出た。一応、深海棲艦の幹部だ。気配が全くない。

 

「……。」

 

足音を消して外に出て、堤防に出た。そして堤防で座り、足をぶらぶらさせる。すると…。

 

ブクブクブク…

 

「バォ…。」

 

「シー…。」

 

深海棲艦が現れた。潜水ソ級だろう。何やら紙の入った瓶を持っている。

 

「バァ…。」

 

「……。」

 

そして、それを北方棲姫が手に取る。

 

ブクブクブク…

 

そして、深海棲艦は潜った。

 

「何をしてらっしゃるんですか?」

 

ビクッ!

 

赤みがかった黒色の目を光らせて、セラフが聞く。

 

「いきなり海側に気配を感じたので窓から見て、外に気配もなくあなたが立っていたので来てみれば…。そんなもの拾って、文通でもするつもりですか?」

 

「…?」

 

どうやら、セラフに見られていなかったようだ。

 

「まぁ、仲間が近くにいるかもしれないので、流したい気持ちも分かりますが…。…外に出るなら、一言言ってください。しかも、気配まで消して…。…何というか…。怪しいですね。ハッキリと言うと。」

 

セラフが言う。

 

「次からは知らせてくださいね。1時間だけ外出を許可します。」

 

セラフはそんなことを言って、鎮守府に戻って行った。

 

「……。」

 

北方棲姫はビンの蓋を開けて、中の紙を見る。

 

「……。」

 

その内容を見た途端、眉をひそめた。

 

…………

 

「……。」

 

北方棲姫がドミナントの部屋に戻り、ベッドに入ると…。

 

コンコン…

 

『提督、起きていらっしゃいますか?』

 

ガチャ

 

「提督、起きてください。」

 

「ん…?誰…?まだ夜中じゃないか…。」

 

「大淀です。少しご報告が…。」

 

大淀がドミナントを起こす。

 

「…ボーキサイトが数量なくなっている…?」

 

「はい。大変申し上げにくいのですが、今晩確認した時には確かにあったのですが、現在確認したところ、約1万ほど消費されているのがわかりました。」

 

「1万…かなりの数だな…。」

 

「倉庫に一応行ってみたものの、夕張はセントエルモと寝ていたため可能性は低いです。そして先ほどセラフさんから、北方棲姫が気配を消して出歩いていたとの情報を掴みました。」

 

「…大淀、憶測だけで判断するのはよせ。…だが、お前のことだ。他にもあるのだろうな。」

 

「はい。また、先程川内もこの部屋から出て行く姿を確認しており、資材保管庫へ行く時間と一致します。」

 

「まさか。北方棲姫はいまここで寝ている。疑うのはよせ。」

 

「ですが、証拠が…。」

 

「…そうだな。証拠もあれば、調査するなとは言えないな。…寝ていたら起こすことになる。その時は詫びを入れておけ。」

 

「はい。」

 

2人が話す。そして…。

 

「…オキテル。」

 

「うぉっ!?…起きてたか…。…ところで、今の話は事実か?」

 

「……。」

 

「資材保管庫のボーキサイトを盗んだのか…?」

 

「チガウ!シテナイ!」

 

「…なら、なぜ出歩いたんですか?」

 

「ソレハ…。」

 

「…言えないではありませんか。」

 

「デモ、シテナイ…!」

 

北方棲姫は首を振る。

 

「…まぁ、本人は否定している。なら、他のところから調べるしかないな…。」

 

「……。」

 

大淀は部屋を出て、ドアを閉める瞬間まで北方棲姫を疑いの目で見ていた。

 

「…で、本当はどうなの?怒らないし、正直に話してくれた方が助かるな。」

 

ドミナントは同じ目線で言う。

 

「シテナイ…ホントウ…。」

 

「……。」

 

ドミナントが北方棲姫の目をしっかりと見る。

 

「本当?」

 

「ホントウ…。」

 

「…そっか。」

 

そして、ドミナントが諦めたような表情をした。

 

……ホントウ…ナノニ…。

 

北方棲姫は完全に決め付けられたと思っていたが…。

 

「なら、調査して犯人探しでもしよう?一緒に。」

 

「…?シンジル…?」

 

「決めつけは良くないし。それに、断定されたわけじゃないしね。…大淀や他の艦娘たちは疑っていると思うけど。」

 

「…アリガト…。」

 

「当然じゃん。別にいいよ。」

 

ドミナントは気にした風もなく、資材保管庫へ行く。

 

「…なるほど。確かに無くなっている。…そう思ってみれば、ここを案内していた時、ボーキサイトに反応していたような…。」

 

「!?」

 

ドミナントが呟き、北方棲姫が驚く。

 

「…いや、決めつけは良くない。いただきますの時もそうだったじゃないか。あまり有力な情報じゃないな。」

 

ドミナントが調べる。

 

「…ん?梯子を使った形跡あり…。」

 

ドミナントが梯子の上にあるホコリを見る。

 

「なら、身長が低い人…。…いや、だから良くないって…。」

 

ドミナントが首を振る。

 

「軽巡とかだね…。…身長的に…。」

 

ドミナントが大きさなどから調べて行く。

 

「ん?梯子に付着している白い髪の毛…。」

 

ドミナントが北方棲姫を見た。

 

「うりふたつだ。」

 

「チ、チガ…。」

 

北方棲姫が泣きそうになりながらも、否定する。

 

「…だが、あらか様すぎるな…。まるで自然にそちらに仕向けているような…。第一、そんな物たちなどどうとでも出来るしな…。こんなに証拠を残すはずがない。…と、なれば誰かの犯行…。おそらく北方棲姫に恨みがあり、妬むもの…。…カステラの恨み?武蔵か?…それとも、誘われなかった恨み…ジナイーダとジャック?」

 

ドミナントが考えていたが、一つの結論にたどり着く。

 

「あらかさますぎるな…。ジャックたちなら、もう少し工夫をするだろう。武蔵にこんなことをする脳があるとは思えない…。…と、なればもう1人しかいないな…。」

 

「?」

 

ドミナントが想像した人物に会いに行くことになった。

 

…………

 

「ごえんなひゃい!ごえんなひゃい!」

 

「やはりお〜ま〜え〜か〜!ベッドの下に隠しやがって…!」

 

犯人は神様のようだ。それほど羨ましかったのだろう。

 

「らっひぇ!らっひぇぇぇ!」

 

「だってもクソもあるか!なに陥れようとしているんだ!?そのまま頬を引きちぎろうと思ったぞ!?はっきり言って失望した!鎮守府内での争いはご法度なのに、お前は犯した!それ相応の罰は受けてもらうぞ!」

 

「ひぇぇぇ…!」

 

「泣くな!泣きたいのはこっちの方だ馬鹿野郎!これから裁判にかける!もっと酷いことが起きるから、覚悟しておけ!天界へ直送してやろうか!?」

 

「ごえんなひゃい!ごえんなひゃいぃぃ!」

 

「泣いてもダメ!さぁ、さっさと行くぞ!」

 

「やらよぉ〜…!」

 

「やだじゃない!責任取れ!歩け!歩かないなら引きずってく!」

 

神様はガチ泣きして、激怒したドミナントに引きずられてく。

 

「マ、マテ…カワイソウ…!」

 

いくらなんでも可哀想だと思ったのか、北方棲姫に行く手を遮られる。

 

「可哀想かもしれないが、最低限のモラルすら破った!前から言っていた筈だ!鎮守府内の争いは絶対禁止、ご法度だと!なのに、破った!許されないことだ!」

 

「ソ、ソウカモ…シレナイ…。デモ…キニシテナイ。」

 

「そう言う問題じゃなくてな…。」

 

「タノム…カワイソウ…。」

 

「……。…分かった。このことは内密に処理しておく。」

 

「グスッ…グスッ…。」

 

「…次やったらマジで許さんぞ…。慈悲に感謝しろ。」

 

「…ありがとう…。ほっぽちゃん…。本当にごめんなさい…。」

 

神様は泣きながら感謝をした。慈悲をくれたことに。

 

「全く…。…今はまだ夜中の2時だぞ…。俺は寝るからな。」

 

ドミナントはやれやれとして、その場を去った。

 

「……。」

 

「?」

 

その後ろ姿を北方棲姫は儚いようなものを見るような目で見ていた。

 

…………

夜3時半頃…

 

北方棲姫が手紙を握っている。

 

「……。」

 

…………

 

佐世保提督ヲ暗殺セヨ

 

…………

 

姉からの連絡だった。

 

「スー…スー…。」

 

ドミナントは疲れたのか、呑気に眠っている。

 

「……。」

 

そこで、ドミナントの部屋にある果物ナイフを手に取った。

 

「……。」

 

震える手で、突き刺そうと首に狙いを定める。しかし…。

 

「ほっぽ…。」

 

「!?」

 

ドミナントが寝言を言った。それを聞いた途端すごく驚き、一瞬気が逸れたが…。

 

「……。…ゴメンナサイ…。」

 

覚悟した顔で、申し訳なく言った。

 

ドスッ

 

…………

堤防

 

「……。」

 

月の光が照らすベンチで1人いる、北方棲姫。気配は完全に消しているため、誰にもバレていない。

 

「な〜にしてるのっ?」

 

…わけではないようだ。川内が顔を覗き込む。

 

「…何か悩み事だね〜。隣、座るよ?」

 

有無を言わさずに隣に座る川内。

 

「いや〜。鎮守府を見回っていたら、ベンチに白い変なのがいると思って来てみたら、君がいるなんてね〜。ボーキサイトの件は既に知っちゃった艦娘には口止めするように言っておいたから、安心して?」

 

「……。」

 

「…どうしたの?」

 

川内が聞く。

 

「……。」

 

だが、何も言わない。

 

「…提督なら、心開いてくれたかな…?」

 

川内が呟く。

 

「…なんだか、あなたを見ていると深海棲艦って全員が全員、悪いんじゃないような気がするけど。…て!何その腕!?」

 

川内が北方棲姫の左腕を見る。

 

「…キッタ。」

 

「切ったとかの次元じゃないよね!?誰にやられたの!?」

 

左腕が千切れかけていた。出血は止まっていない。白いワンピースが青く染まってゆく。

 

「ジブン…。」

 

「どうして!?」

 

「……。」

 

「…何も言わない…。でも、治療は受けてもらうよ。セラフ教官!!」

 

ザッ

 

「呼びましたか?」

 

セラフが突然現れる。

 

「この子の腕!」

 

「?…血!?」

 

セラフがとりあえず常備してある包帯で圧迫止血を試みる。

 

「…かなり時間が経過しています…。およそ1時間…。なんで早く言わなかったんですか!?腕は身体の大切な一部なんですよ!」

 

セラフが怒る。元がAIなので、人に焦がれているのだ。だからこそ、持っていないからこそ適当に扱かってほしくないのだ。

 

「それに、ドミナントさんが本気で怒りますよ!?せっかく自分の身体を無視して怪我を治したのに…。」

 

「…ドミ…ナントガ…?」

 

「当たり前です!」

 

「…ヤダ…。」

 

北方棲姫が悲しそうな顔をして俯いた。

 

「……。…何か深い事情があったようですね…。すみません。いきなり怒鳴ってしまって…。…この件は黙っておきます。それと…。突き刺さっていた果物ナイフですが、どこから入手しましたか?」

 

「ヘヤ…。」

 

「……。…と、なれば今頃…。」

 

セラフが日が昇りそうな海を眺める。

 

「…時間がありませんね。あなたはベッドに、私は片付けておきます。あと、洋服は私のでなんとか怪我をごまかしてください。」

 

セラフが無理矢理服を渡し、ドミナントの部屋に急いで行った。

 

「…どんな事情かは知らないけどさ。提督ぐらいには、正直に話した方が良いんじゃない?提督はああ見えて意外と鋭いし、老け顔だけど仲間を思う気持ちはすごいから。」

 

川内はそんなことを言った後、自分の部屋へ戻って行った。

 

「……。」

 

川内の言葉を聞いて、真面目に考えながら鎮守府の中に戻って行った。




あとがきかぁ…。

登場人物紹介
筆者…レイテに詰まっている。

ピーピー…ガガガ…ザザッ…
「チャンネルハ、ココデ合ッテイルノカ?」
「多分…。マダ、私達登場シテナイノニ、イイノ?」
「イヤイヤ、ネタガナイカラダロ。テカ、ドウダ?」
「多分繋ガッテルト思ウ。」
「ココデ、話スダケッテ聞イタノニ…。ラヂオノ操作ハ難シイナ。」
「アーアー、マイク入ッテル?ア、ソウナノ?入ッテルラシイワ。レ級。」
「オイ!早メニ言エ港湾棲姫!」
「ジャァ、遅イケド始メルワ。セーノッ。」
「「深海ラヂオ〜。」」
テーレッテッテッテー
「ウオ!?ナンカ、効果音出タ!」
「設備ハ良イミタイネ。テ、コトハレ級ハ機械オンチ…。」
「コラ!港湾棲姫コラ!オ前モダロ!」
「喧嘩シナイ。モウオンエアヨ。」
「オン…エア…?」
「ニッチモサッチモイカナイノデ、ハジメマス。テ、オ便リ来テナイワネ。」
「ソリャ…始メタバカr…」
「紹介シマース。私ハ港湾棲姫。タマニ、臨時デホッポニナルワ。」
「ナンダ?臨時ッt…」
「ソッチハレ級。チナミニ、『深海棲艦のゆるい日常』トハ何ノ関係モナイ…ワケジャナイケレド、ソッチノネタハ一切出ナイワ。」
「イヤ、出タラ駄目ダr…」
「アッ、ソロソロ時間ネ。誰カサンガ冒頭デ時間ヲ使ッタカラ。」
「オイ!誰カッテ誰ノコt…」
「ソレデハ、マタ今度!深海ヨロシク〜。」
「ソレパクr…」

ブッ
…だそうですよ。どうしますか?司令官。
そうだね。とりあえず、武装解除しようか。ブッキー。
どうしますか?司令官。
無害なら、このまま続けても良いんじゃない?パクリは流石に直すように言っとくけど。
分かりました。紅茶提督さん。
おっけー。特型駆逐艦さん。


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特別編
特別話 秋分の日


特別話です。いや〜…デモンエクスマキナ…。敵の傭兵を倒せないじゃないか…。ラストレイヴンになろうと思ったのに…。
はい!冗談はさておき、遅くなってすみません。仕事ではなく、趣味をしていて遅れました。


提督自室

 

「グー…。グー…。いびきはガ行が似合う…。グー。」

 

どこかのペンギンのセリフをドミナントが寝言で言う。

 

「提督、起きてください。」

 

「むにゃ?…まだ朝だぞ?昼まで寝よう?」

 

「いや、そういうわけには…。」

 

「…仕方ないな…。」

 

「あ、起きてくれるんですね。」

 

「今日は提督風邪ひいてしまったので休みます。」

 

「いや、起きてくださいよ。」

 

今日の秘書艦はドミナントを起こそうとする。

 

「俺は風邪だ〜…。」

 

「早く起きてください!」

 

そんな感じで二進も三進もいかないところに…。

 

バァァン!

 

ドアが開く。

 

「ドミナント!朝だ!起きろ!」

 

「ん?ジナイーダ?俺は風邪ひいたから休むよ…。」

 

「ほう、そうか。ならば良い方法があるぞ。」

 

「えっ?…ギャァァァ!」

 

ドミナントは叩き起こされた挙句、窓から投げ捨てられる。

 

「て、提督ー!…て、提督が落ちちゃった。どうしよう。生きてるかな?」

 

「大丈夫だ。あいつはこれくらいで死なん。…心配なら見に行った方が良いと思うぞ。」

 

ジナイーダが言うと…。

 

ドシーーーン!

 

『キャーー!司令官がー!?』

 

『て、提督!燃えていますよ…。』

 

『火です!火なのです!火傷するのです!早く海に飛び込むのです!』

 

下が何やら大騒ぎである。

 

「て、提督ーー!!」

 

大慌てで下に降りていった。

 

…………

堤防

 

「ハックション!うぅ…ジナイーダのやつ…、俺を火だるまにするつもりかよ…。」

 

ドミナントは、海に飛び込んで火を消したあと地上に戻る。

 

「どうだ?治ったか?」

 

「逆にひいたわ馬鹿野郎。」

 

ニヤニヤするジナイーダに真顔で言うドミナント。

 

「て、提督。大丈夫ですか?」

 

「ん?まぁ、大丈夫…ではないが、大丈夫みたいなものだ。ところで君は?」

 

「私は、本日秘書艦を担当する『阿武隈』です!」

 

「そうか…。秘書艦だったのか。」

 

ドミナントは海に入ったせいで、すっかり目が覚めている。

 

「そうか。さっきはすまなかった。では、執務室に行こう。」

 

ドミナントは阿武隈を連れて執務室へ行く。

 

…………

執務室

 

「さて…仕事するか。」

 

「はいっ!……あっ!待ってください!」

 

ドミナントがペンを走らせようとしたが、止められる。

 

「?どうした?」

 

「大本営から通達が来ています。」

 

ドミナントは、紙を受け取った。

 

「大本営か…ろくなことがなさそうだ。」

 

ドミナントがそう言った後、手紙を見る。

 

…………

 

拝啓、全国の鎮守府所属の皆様

 

本日は、9月23日。秋分の日です。秋分の日とは、ざっくりというと、季節の分かれ目であり、夜と昼の時間が等しくなる日です。皆さま、秋であることを感じましょう。

 

敬具 大本営記念日連絡係

 

…………

 

「また来た…。」

 

ドミナントがため息をつきながら言うと…。

 

「提督、どうかしたんですか?」

 

阿武隈が聞いてくる。

 

「いや、前にもこんな風な書類から届いたんだ。」

 

ドミナントは思い出す。敬老の日を…。

 

「へぇ、そうなんですか〜。…で、それで何をするんです?」

 

「分からん。…秋を感じとれということか?」

 

ドミナントは首を傾げている。

 

「そうですよ。説明にも書いてありましたし。多分、何か秋っぽいものをやれば大丈夫ですよ!」

 

阿武隈が自信満々に言う。

 

「なるほど。どうしても味覚の方に行ってしまったが、そこであえてプレイの方を選ぶとは。新しいな。」

 

ドミナントは少し見直す。

 

「ありがとうございます。」

 

阿武隈は少し嬉しそうに返す。

 

「……ところで、秋にプレイするのは何だろう?」

 

……ここで言い出した私が言わなくちゃ、カッコが悪い…。

 

阿武隈はそう思い…。

 

「そうですね…。……すみません。わかりません…。」

 

「……。」

 

阿武隈は必死に考えたが、何も浮かばなかった…。

 

…………

数分後

 

「…ふむ…。これは難題だな。」

 

ドミナントは一人、執務机の椅子に座って考えている。

 

「やっぱり、秋刀魚や栗などか?いや、違う気がするな…。」

 

様々なことを考えていたが、浮かんでは消えてを繰り返している。

 

「提督〜。今は仕事をしません?」

 

「む。そうだったな。仕事を優先させなきゃな。」

 

ドミナントはそう言って提督業に励むのだった。

 

…………

数時間後

 

「終わった。」

 

「お疲れ様です。」

 

ドミナントは、いつもながらの驚異的なスピードで終わらせる。

 

「ふぅ。…で、何か案は浮かんだか?」

 

ドミナントは阿武隈に聞くが…。

 

「いえ…。何も…。すみません。」

 

「なぜ謝る?」

 

「…なんとなくです。」

 

阿武隈が言うと…。

 

「なんとなくならば謝る必要もなかろう。…それとも、お前の“謝る”とはそんなに安いのか?」

 

「いえ。そんなつもりじゃありません。」

 

「そうか?。ならば、今度から言うな。…面倒くさい性格なのだ。すまなかった。」

 

ドミナントが謝る。

 

…………

 

「マジで何をすれば良いんだろう。」

 

「もう何もしなくて良いんじゃありませんか?」

 

「まぁ、たしかにそうだけど…。」

 

「そもそも、秋分の日って、何か祝うこともないと思いますし…。」

 

「まぁね…。」

 

その日、ドミナントたちは考えるのをやめた。

 

…………

廊下

 

「う〜ん…。でも、祝うことがなかったら祝日にならないしなぁ…。」

 

ドミナントは、一人廊下で歩く。

 

「や!今日について悩んでいるね!」

 

「む。その声は神様か?」

 

ドミナントが振り向く。

 

「……。なんだその格好は?」

 

神様は珍しく着物を着ていた。

 

「今日だけの格好。ほら、私神様じゃん?だからこの格好をしなくちゃいけない決まりで…。」

 

「どうして?」

 

「秋分の日って、祖先を敬い、亡くなった人をしのぶ日なんだよ。だから、私たち神様はしっかりとその信念に応えてこの格好をする決まりなの。」

 

神様が珍しく解説してくれた。

 

「なるほどな。…て、ことは普段着物姿の先輩神様はどうなるんだ?」

 

「えーとね。確か…いつもと違う色の着物を着るって言ってたっけ?」

 

「……。自分の先輩なんだから覚えておけよ。」

 

ドミナントが微妙な顔をする。

 

「まぁ、そういう日ってこと。それよりどう?この着物姿。似合ってる?」

 

神様が笑顔で聞いてくる。

 

「そうだな。似合っていない。…といえば嘘になる。認めたくはないが、似合っている。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「素直じゃないんだから!でも、嬉しい!ありがとう!」

 

神様は満面の笑みで言った。

 

「ところで、着物を着ているのは良いが、ここにいて平気なのか?」

 

「大丈夫大丈夫。本来なら自分の世界に帰らなきゃいけないんだけどね。バレないよ。」

 

「そうか。…!?ちょっと待て、それってまずいんじゃないか?」

 

ドミナントが驚きながら言う。

 

「う〜ん…。なんとかなるよ!それに、ここに私の騎士がいるんだから…。」

 

神様はドミナントを見る。

 

「いや、帰れよ。それはやらんとまずいだろ…。しかも、いつ俺が騎士になった?」

 

「え〜。だって、あっちの世界はもう末期なんだもん。もうつまんないし。…グヒャッ!」

 

神様が頭に置物が落ちてきて悲鳴をあげる。

 

『馬鹿者!その世界を作ったのはお主じゃろうが!』

 

小さな光の玉が現れ、光が強くなる。

 

「全く、何が“私の騎士”じゃ。ドミナントも困っておるじゃろう。はよう行くぞ。」

 

先輩神様の形になり、本人が登場した。いつもは青い着物だが、今回は紫色の着物である。

 

「ふぇぇん。置物は痛いよぉ…。」

 

神様は頭をさすりながら涙目で言う。確かに、さっきのやつは痛そうだった。

 

「…ドミナント、撫でてやっとくれ。」

 

「わかった。」

 

そう言ってドミナントは撫でる。

 

「うぅ…。ぐすん。」

 

「大丈夫か?」

 

「うん…。少し楽になった。」

 

「なら良かった。見てて痛そうだったからな。先輩神様も少しやりすぎたと思っているみたいだし。」

 

「わ、妾は別に…。」

 

「えへへ…。みんなありがとう。元気でた!行こう!そしてさっさと終わらしてすぐに帰る!」

 

神様は元気に言った後、光の玉になる。

 

「それじゃ、あとは任せとくれ。妾が責任持って暴走せぬよう見張るから。」

 

そう言って先輩神様も光の玉になり、二人とも消えていった。

 

「……。疲れた…。」

 

ドミナントはそう言って自室へ戻るのだった。その日のうちに神様が帰ってきて、真っ先に抱きつかれたのは言うまでもない。




秋分の日ですか…途中マジでネタが切れました。わかると思います。
阿武隈…名前が難しい。ドミナントは万能な愉快な仲間たちがいるため、必要されなくなるんじゃないかと心配している。(しかし、ドミナントはそんな酷いやつではないし、愉快な仲間たちにも欠点があるため、艦娘を捨てたり、いらないやつ扱いは絶対にしない。)


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特別話 敬老の日

はい!今日は敬老の日です!ドミナントはどんな日を過ごすのでしょうか…?


「ふぁ〜…。暇ですねぇ。」

 

「そうだな。」

 

執務室にドミナントと本日の秘書艦である如月がいる。そこに…。

 

ピーピーピーガーーーー…

 

大本営から連絡が届く。

 

「司令官、大本営からです。」

 

「うむ、ありがとう。」

 

ドミナントはその内容を見る。

 

…………

 

拝啓、各地の鎮守府提督皆様

 

本日は9月16日、敬老の日となります。身近にいる社会に尽くしてきた老人を労りましょう。

 

敬具、大本営記念日連絡係

 

…………

 

「……。そんな係があるのか…。」

 

ドミナントは微妙な顔をする。

 

「何か特別なことがあったんですかぁ?」

 

「いや、今日は敬老の日だから身近にいる社会に尽くした老人を労わるらしい。」

 

「そうなんですかぁ。」

 

「ああ。……身近にいる老人っていたかなぁ〜?」

 

ドミナントはふと考えてみる。

 

……艦娘たちは社会に貢献しているけれど、老人ではないしなぁ…。神様は論外だし、ジナイーダはまだ若いし、主任は社会に貢献していないし、ジャックも若い。セラフは…。

 

ドミナントが考えているところに…。

 

「司令官、いつもお疲れ様です。」

 

「え…?俺…?」

 

如月が笑顔で言う。しかし、ドミナントはどちらかというと若い。

 

……俺、25歳なんだけどなぁ…。しかも、俺そんなに社会に貢献していないし…。…艦娘からしたら俺は老人なのか…。

 

ドミナントは考えたあと…。

 

「如月…、ありがとう。」

 

「はい。」

 

ドミナントは心の中で涙を流しながら如月に笑顔になる。

 

…………

廊下

 

……それにしても、やっぱりセラフかなぁ…。でも、歳を聞くのは失礼だしなぁ…。

 

ドミナントはその考え自体が失礼だと気づかず腕を組みながら歩いていると…。

 

「や!ドミナント!今日は敬老の日だよ!」

 

神様に会う。

 

「ん?神様か、今日が敬老の日だってよくわかったな。」

 

「えへへ。…労わらないの?」

 

「いや、労ろうと思うんだけど、労わる相手がいなくてな。」

 

ドミナントが言うと…。

 

「ここにいるじゃない!」

 

「いや、誰?」

 

「む〜、目の前にいるじゃん!」

 

「……。まさか、お前か?」

 

「そうだよ!」

 

神様が元気いっぱいに答える。

 

「……。歳いくつ?」

 

「えぇ〜。な・い・しょ!」

 

神様が意地悪い顔で言う。

 

「わかった。俺は探さなければならないからな。それじゃ。」

 

「待って待って!!」

 

神様が慌てて引き止める。

 

「なんだ?」

 

「む〜…、聞いて欲しかったのに…。」

 

頰を膨らませる。

 

……くっ、可愛い…だと…!?そんな…馬鹿な……。

 

ドミナントが勝手に敗北していると…。

 

「私、まだ17歳だよ!」

 

「…え?嘘だろ?」

 

ドミナントは驚く。

 

……そんな馬鹿な。絶対に12歳とかそこら辺だろ…。

 

「……。本当か?」

 

「……。ごめんなさい。嘘つきました。」

 

「だろうな。」

 

……やはり、12か…。

 

ドミナントが予想しているが…。

 

「実は1400歳超えてる…。」

 

「…へ?」

 

……え?1400歳?いや、待て。神様ならあり得ないはずがない。なるほど。

 

「やはりな…。しかも、人間で例えると14歳だろう。」

 

「いや、それは違うよ…。人間で例えると本当に17歳だよ…。」

 

「……。嘘だ…。」

 

「本当だよ!」

 

「正直に言え。じゃないと嫌いになるぞ。」

 

「いや、本当だって!」

 

……ここまで言い張るなら本当みたいだな。

 

ドミナントは思う。しかし、そのせいで新たな問題が…。

 

「そうだ!私もう1400歳超えているから、法律的にはあんなこととかして大丈夫なんだ!」

 

神様が気づいたような感じになっている。

 

「!?。待て、神様。落ち着こう?な?わかるだろ?同じ鎮守府にいる仲間じゃないか。」

 

「えへへ…。エヘヘヘヘ……。」

 

神様はドミナントに一歩一歩近く…。

 

……目が…目がヤバイ!あれはヤバイ目だ!!このままでは俺が…。

 

そんなことを考えているうちに…。

 

「ドミナントーー!!」

 

神様がジャンプして飛びついてくる。

 

「…ハッ!!」

 

だが、それを回避できないドミナントではない。しゃがんでクラウチングスタートをして逃げる。

 

「アッ!ヨケラレタ!マテーー!!!」

 

神様もすごい速さで追いかけてくる。

 

「うおっ!?ついてくる!?やばいやばい!!」

 

…………

倉庫

 

「はぁ…はぁ…。ここまでくれば大丈夫だろう…。」

 

ドミナントは最近覚えたブースターを使って逃げ切った。

 

……だが、まだ鎮守府内部には戻れなさそうだな…。

 

そんなことを考えていると…。

 

「どうかしたんですか?」

 

「うおっ!?…て、セラフか、驚いた。」

 

セラフと夕張が何やら作業をしている。

 

「何をしているんだ?」

 

「はい。今は艦娘たちの装備を作っています。」

 

「そうか…。まぁ、セラフがちゃんと見ているなら兵器開発も許すんだけどな。まぁいいや。で、どんな感じなのを使っていたんだ?」

 

そう言ってドミナントは夕張とセラフが作っていたものを見る。

 

「こっちは魚雷です!こっちは弾を作っています。」

 

夕張が元気よくしっかりと説明する。

 

「なるほど。あと整備をしている…と言ったところか。」

 

「そうです!」

 

「そうか。ありがとう。」

 

ドミナントはそれそう言って頭を撫でる。

 

「えへへへ…。」

 

……本当に嬉しそうな顔をするんだなぁ。

 

ドミナントがそう考えていると…。

 

「で、ドミナントさん、何かあったんですか?」

 

セラフが聞いてくる。

 

「いや〜。今日は敬老の日らしいんだ。だから、身近に労わる人いないかな〜、ってさ。」

 

ドミナントが説明する。すると…。

 

「ならセラフさんですね!いつも艦娘の整備をしたり、私に教えてくれたり、鎮守府で不具合のある場所もすぐに解決してくれますし。」

 

夕張が元気に言う。しかし、セラフは…。

 

「いえ、私まだそんな歳じゃ……。」

 

「ありがとうございます!セラフさん!」

 

「……。ありがとうございます…。」

 

セラフは腑に落ちない感じに笑顔で礼を言う。

 

……さっき俺もあんな感じだったんだなぁ。

 

ドミナントが人ごとのように思っていると…。

 

「提督も!いつもありがとうございます!!」

 

「oh…。」

 

「…どうかしましたか?」

 

ドミナントが残念そうな顔をしたので、夕張が聞いてくる。

 

「…いや、なんでもない。ありがとう。」

 

「はい!」

 

夕張が笑顔になる。

 

「「あ、あははは…。」」

 

セラフとドミナントが微妙な顔をして笑った。

 

「あっ!セラフ、夕張。年は関係ないにしても、感謝しているよ。ありがとう!」

 

「あっ、いえ。私もドミナントさんに感謝しています。ありがとうございます!」

 

二人とも笑顔になる。側から見れば、仲の良い夫婦と、愛娘の高校生がいる。

 

(私たちには無しですか?)

 

「お、おう。妖精さん。もちろん忘れていないよ。」

 

(ほんとです?)

 

妖精さんが疑いの目を向けてくる。

 

「本当だって。その印に、ほら。」

 

ドミナントは高級菓子を妖精さんたちに配る。

 

(おおおお!!これは1日100個限定高級菓子!誰も食べたことがないとネットで有名な…。)

 

「ああ。そのお菓子だ。朝早く並んで買い占めた。」

 

(提督ーーーー!!)

 

(提督ゴッド!)

 

(キャーー好きよー!!)

 

(お菓子だ!妖精さんたちの魂!)

 

(そうだ!我々妖精の正義ははここにあり!)

 

(((うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!)))

 

妖精さんがドミナントに集まる。

 

…………

演習場

 

「ここはやっぱり演習しているなぁ…。」

 

ドミナントは演習場で演習している艦娘たちと主任を見ながら言う。

 

「あっ!提督です!一旦休憩にしましょう!」

 

古鷹が言い、艦娘たちの目に光が戻るが…。

 

「ギャハハハハハ!そうだねぇ。じゃぁ、俺に一発当てたら休憩しようか。」

 

その一言で再び光を失うのだった…。

 

2時間後

 

「提督。ありがとうございます。」

 

艦娘たちが次々にお礼を言っていく。

 

「な、何がだ?」

 

「私たちのことを心配で見に来てくれたんですよね?提督が来てくれたおかげで休憩に入ることができました。」

 

艦娘たちが笑顔になる。

 

……どれだけ酷い演習を毎日行っているんだろう…。

 

そこに…。

 

「ギャハハ!ドミナントじゃん、どうしたのかな?」

 

「いや、今日は敬老の日みたいでな。歳関係なく日頃の感謝を伝えに来た。主任、みんな。ありがとう!」

 

「ギャハハ!珍しいねぇ。」

 

「いえ、こちらこそ私たちのことを思ってくれてありがとうございます!」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

艦娘が笑顔になり、主任が笑う。

いい感じになったが、この後も演習である。

 

…………

娯楽室

 

「さて、ここが最後だな。」

 

ドミナントはダンボールを被って神様をやり過ごし、娯楽室に着いた。

 

……本当にダンボールってすごいな。愛用品にするか…。

 

そんなことを考えていると…。

 

「む?ドミナントじゃないか。どうした?」

 

ジナイーダがジャックや吹雪と遊んでいる。

 

「あっ、司令官!司令官も遊びませんか?」

 

吹雪が言う。

 

「ありがとう。少し遊ぶのも悪くないな。如月も呼ぼう。でも、先に言うことがある。」

 

「「「?」」」

 

全員首を傾げたりする。

 

「今日は敬老の日みたいでな。歳関係なく感謝を伝えに来た。ジナイーダ、ジャック、艦娘のみんな。ありがとう!」

 

ドミナントが言う。

 

「私たちも司令官に感謝しています。むしろ、私たちが言わなければならないのに…。」

 

「いいんだ。国のため、この鎮守府のために働いているお前たちに感謝しているからな。」

 

「それなら、私たちも、私たちのことを思っている司令官に感謝しています。ありがとうございます!」

 

「「「ありがとうございます!!」」」

 

吹雪に合わせて、ほかの艦娘たちも礼を言う。

 

「……。まぁ、お前だけに言われるのもシャクだ…。…ありがとな。」

 

ジナイーダがそっぽを向きながら言う。

 

「私は働いていないのに。変なやつだ。まぁ、そういう奴も嫌いではない。ドミナント、私を拾ってくれて感謝している。」

 

ジャックがドミナントにまっすぐ見て感謝を伝えた。すると…。

 

「フフフ…ドミナント。ヤットミツケタァ!!」

 

神様が飛びついてきた。しかし、ドミナントは受け止めてまっすぐ神様を見つめる。

 

「エッ…?避けない…?」

 

「最後に神様、たまにイタズラしたり、嘘をつくのは悪いと思うが、お前と話すと嫌なことも忘れられる。いつもありがとな!」

 

ドミナントがしっかりと伝えた。

 

「え…。…ズルイよ…こんな時だけしっかりと感謝を伝えてくれるなんて…。」

 

神様は顔を赤くしながらモジモジしている。

 

「まぁ、こんな日だから言えるんだ。」

 

「そ、そうなのかなぁ?」

 

ジャックが神様に言った。

 

「さて、もう夕方だな。艦娘や、妖精さんたちを集めろ。感謝の印に今日はどこか食べに行こう。俺の奢りだ!」

 

そう言って飲食店を予約して食べに行ったのだが、“ドミナントさんだけに奢らせるわけにはいきません!”と、みんなが反対した。優しい世界である。




はい!終わりました!これは、みんな優しい世界ですね。ドミナントがどれほど信頼されているかがわかります。


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特別話 体育の日

ナル…ホド…。オマエモ…ドミナント…。


…………

執務室

 

カリカリ…。

 

執務室にペンを走らせる音が響く。

 

「…終わった。」

 

「お疲れ様です。」

 

そう言って吹雪がお茶を出す。

 

「今日の秘書艦は吹雪か。」

 

「そうですよ?今朝起こしに行ったじゃないですか?」

 

「そうだったな…。だが、説明が必要な気がして…。」

 

「説明…?」

 

「いや、なんでもない。」

 

そんなことを話していると…。

 

ピーピーピーガーーーー…。

 

大本営からまた書類が届く。

 

「大本営からです。」

 

「俺は面倒が嫌いなんだ。」

 

……また何か面倒ごとか?まぁ、見てみよう。

 

「えぇ…。あっ、見てくれるんですね。」

 

ドミナントが書類を見る。

 

…………

 

拝啓、全国の鎮守府所属の皆様

 

本日は10月14日『体育の日』です。しかし、最後の体育の日です。来年からは『スポーツの日』に変わります。スポーツに親しみ、健康な心身を培いましょう。最後の『体育の日』を味わいましょう。

 

敬具、大本営記念日連絡係

 

…………

 

「なんて書いてあったんですか?」

 

書類を見終わったドミナントに吹雪が聞く。

 

「…そうだな。所謂、体を動かして健康になろう的なやつだ。」

 

ドミナントは嫌に簡単に説明した。

 

「そうですか。…体を動かさないんですか?」

 

吹雪は座っているドミナントを見た。

 

「俺は体を動かすのは得意じゃないからな…。」

 

ドミナントは長年のデスクワークによって、体が鈍りまくっている。

 

「それだと、年老いたときに体が動きませんよ!」

 

吹雪はドミナントにキツく言う。

 

……年老いて、体が動かなかったら提督続けられないじゃないですか…。

 

しかし、それは吹雪の優しい考えから来ている。

 

「…年寄りになるのかな…?この体…?」

 

ドミナントはそんな気持ちなど露程も思わずに体を見る。ドミナントは元がACなのでわからない。

 

「例え年寄りにならなくても、体を動かしましょう!仕事も終わって暇ですよね?」

 

「まぁ…暇だけど…。」

 

「なら、行きましょう?」

 

「行くって…。どこへ?」

 

「外です。」

 

「えぇ…。」

 

ドミナントは渋々外へ行った。

 

…………

中庭

 

「では、司令官。走りますよ。」

 

「えぇ…。」

 

「私についてきてください!」

 

吹雪が走り出す。

 

…………

 

「待ってくれ〜…。」

 

ドミナントは五分と経たずにへばる。

 

「司令官…。そこまで体力ないんですか…?」

 

吹雪がペースを落としてドミナントの横に並ぶ。

 

「AC化したら楽なんだけど…駄目?」

 

「駄目です。」

 

「…くそぉっ…!」

 

「頑張ってください。」

 

そう話していると…。

 

ヒュゥゥゥン。

 

AMIDAに乗った妖精さんが吹雪のいない、ドミナントの横に並ぶ。

 

(はい、そのための妖精です。)

 

「キシッ!」

 

……妖精さん…来たのかよ…。

 

ドミナントは心の中で会話する。

 

(プランP、所謂ピンチです。)

 

「キシ。」

 

……ああ。ピンチだ。なんとかできないか?

 

(できるです。…でも、少し報酬が高く…。)

 

妖精さんは手を揉みながらいう。

 

……わかった。…もみじまんじゅうはどうだ?美味いぞ。

 

(わかったです。それでは…)

 

「キシ!」

 

ヒュゥゥゥゥゥン…。

 

……はえーな!?さすが穴妖精!

 

瞬時に移動する妖精さんとAMIDAを見てドミナントは思った。

 

…………

 

(よし!これで依頼完了です!)

 

「キシ?」

 

(これで走るのをやめさせられるです。)

 

妖精さんはある看板を仕掛ける。

 

…………

 

「はぁ…はぁ…。」

 

「まだ5kmも走ってませんよ!もっと頑張ってください!」

 

……妖精さん何しているんだ…?

 

そこに…。

 

「…あっ!司令官!アレです。アレをしましょう!」

 

「え…嘘だろ…?」

 

ドミナントはそれを見て倒れそうになる。よく見ると、その下に親指を立ててドヤ顔している穴妖精さんがいた。

 

……誰が…、誰がテニスを勧める看板を立てろなんて言ったぁぁぁ!?

 

ドミナントは心の中で叫ぶが生憎妖精さんと離れていて妖精さんに聞こえていない。

 

「司令官!行きますよ!」

 

「約束が違うじゃないか…おおい、嘘だろ…?夢なら覚め…。」

 

ドミナントは吹雪に手を掴まれ、引っ張られていった…。

 

(これで依頼達成です。…提督は今手が離せないみたいだから、勝手にもらいましょう。いい傾向です。)

 

妖精さんはドミナントの自室からもみじまんじゅうを一つ取り、どこかへ行った。

 

…………

 

「…ん?ここはどこだ?」

 

ドミナントの目が覚めた場所は病室だった。

 

「あっ。司令官!」

 

「ど、どうした吹雪?」

 

吹雪はドミナントが起きるなり抱きついた。

 

「ごめんなさい…。私が無茶をさせたせいで…。」

 

「な、何の話だ?俺はどうしたんだ?」

 

「…実は…。」

 

…………

 

「いきますよ!司令官!」

 

「ちょっと休憩しないか…?」

 

吹雪はテニスをする格好に着替え、準備をする。一方、ドミナントは息を切らしながら立っている。

 

「もっと体を動かさないと、健康になりません!」

 

「そ、そうは言っても…。」

 

「いきます!」

 

そして、テニスが始まった。

 

…………

数分後

 

「ひ〜…。」

 

「まだいきます!」

 

……いったい、いつになったら終わるんだ…?てか、だんだん目の前が暗く…。

 

ドサッ…。

 

……倒れたのか?…意識がもうろうとしている…。これはやばいやつだ…。

 

「大丈夫ですか!?司令官。司令……。」

 

……吹雪の声が遠くなっていく…。

 

…………

 

「そんなことがあったのか…。つまり、脱水症状か?」

 

「はい…そうらしいです…。」

 

吹雪は元気なく返事をする。

 

……私のせいだ…。私が無茶をさせたから…。司令官が休憩しようって言ったのに、それを無視した私の責任です…。…これは嫌いになってしまっても仕方がないですよね…。…あれ?そう考えたら涙が…。

 

「吹雪…。…涙を拭け。責任を感じているのは十分わかった…。」

 

「ありがとう…ございます…。」

 

ドミナントがハンカチを渡し、吹雪が礼を言う。

 

「よし、これで教訓を得たな。」

 

「…何がですか…?」

 

「運動もほどほどにってこと。」

 

「…はい…。得ました。」

 

「じゃ、吹雪はほかのみんなに体育の日について知らせてくれ。」

 

「…わかりました!」

 

吹雪は笑顔で言った後、部屋から出て行く。

 

「…だそうだ。責めないでやってくれ。」

 

「…よく私がいることに気づいたな。」

 

ジナイーダが床から顔を出す。

 

「まぁいい。責めやしないさ。ただ、お前の様子を見ただけだ。」

 

「そうか。…ありがとう。」

 

「別にいい。仲間なら当たり前のことだ。…お前が倒れたことは内密にしておく。」

 

「助かるよ。」

 

そう言って話していた。

 

…………

 

「ドミナント!大丈夫!?」

 

「大丈夫ですか!?ドミナントさん!?」

 

「あれ?前もこういうことなかったっけ〜?ギャハハ!」

 

「前も…?体が弱いのか?」

 

「大丈夫ですか!?司令官!?」

 

「提督ー!」

 

「それくらいどうってことないでしょ?心配させないで!」

 

愉快な仲間や沢山の艦娘が押し寄せてきた。

 

「…ジナイーダ…。内密にしとくと言ったのに…。」

 

「いえ、私です。」

 

「吹雪!?…でも、知られたくないんじゃ…?」

 

「倒れさせてしまったのは事実です!うやむやにしてはいけないと思いました!」

 

「そ、そうか…。」

 

ドミナントは知らぬ間に成長した吹雪に感心した。

 

「じゃ、ドミナントも元気そうだし、野球でもしようか〜。ギャハハ!」

 

「主任!貴様…何をするつもりだ!?」

 

「いやいや、ちょっとお手伝いをねっw!」

 

そして連れて行かれた。……とでも、いうと思っていたのかい?そんなわけがない。連れて行かれそうになったが、みんなに止められたのだ。そして、みんながお見舞いに来てくれたことに感謝をしたドミナントであった。




ヒヅケ…カワッタケド…カイタ…。コウカイ…スルゾ…。


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特別話 ハロウィン

日付が変わりましたがやります。さぁ、ご一緒に。コジマオアトリート。


…………

提督自室

 

「グーグー…。」

 

ドミナントは寝ている。すると…。

 

『司令かーーん!大変です!』

 

バァァン!!

 

「グー。」

 

「起きてください!司令官!」

 

「む?地上へのゲートロックが解除されたって?」

 

「言ってません!寝ぼけないでください!」

 

「まぁ、それより君は誰だ?てか、なんだその格好は。」

 

「駆逐艦朝潮です。本日の秘書艦です!この格好はわかりません!目が覚めたときにはこの格好でした!トリックオアトリート!」

 

「そうか。…今日は確か10月31日だったな。少し待ってろ。」

 

「え…?はい、わかりました。」

 

動じていないドミナントに呆気にとられる朝潮。実はまだドミナントは寝ぼけている。そして机の中を漁り…。

 

「はい、お菓子。」

 

「え…。あ、ありがとうございます…。」

 

うまい棒。

 

「俺は寝る。夜起きていたから眠い。」

 

ドミナントは一言言った後ベッドに戻ろうとするが…。

 

「司令官、起きてください。もう起床時間過ぎてます。」

 

「……。」

 

現実は非常なり。

 

…………

執務室

 

「ふぁ〜…。終わった。…ところで、まだその格好なのか?」

 

「だから、起きたときには既にこの服だったんです!」

 

ドミナントは朝潮を見る。すると、あることを思いつく。

 

「そうだ!俺もAC化すれば仮装したことになるのかな?」

 

「…司令官はその姿こそがもう仮装だと思いますが…。」

 

ドミナントは元がACである。つまり、普段が仮の姿なのだ。

 

「じゃぁ、やめとくか。…仕事が終わったから街まで行ってくる。」

 

ドミナントは出口へ歩く。

 

「えっ?何をしに…?」

 

「買い物だ。…I will 撤収…。」

 

ドミナントは呟いてふらふらと出て行った。

 

…………

 

「ただいま。」

 

「わっ!なんですかこれ?すごい量ですよ?」

 

「ああ。これね…お菓子だ!」

 

「あぁ、なるほどです。」

 

朝潮は納得する。すると…。

 

バァン!

 

「がるるー!提督にいたずらするっぽい!」

 

「お、お菓子をくれないと悪戯しちゃうのです!」

 

「クソ提督!いたずらするわよ!」

 

駆逐艦の子たちが押し寄せる。

 

「ちょ、絶対に数人はお菓子あげても悪戯する気満々だよね!?て、うおっ!…夕立!お前、その爪本物だよな!?引っ掻こうとするな!曙は蹴るな!並べ並べ。」

 

ドミナントは大忙しだ。

 

「…司令官は人気者なんですね〜。」

 

朝潮は遠目で見ている。ボロボロになっていくドミナントを…。

 

…………

 

「いや〜…あはは…。ボロボロだ〜。」

 

「大丈夫ですか…?」

 

「あはは…大丈夫に見える?」

 

「…いえ…。」

 

朝潮は顔を引きつらせる。

 

「まぁ、これで終わっただろう…。後は暇をつぶすだけ…。」

 

「…お疲れ様です。」

 

ドミナントは何処かへ行く。

 

…………

倉庫

 

「…みんな用にあげなくてはいけないからな…。」

 

倉庫に足を踏み入れる。

 

「あっ、提督!…どうかしましたか?」

 

少しボロボロの夕張。

 

「夕張、今日何日かわかるか?」

 

「えっ…と…。何日でしたっけ?」

 

「…たまには外へ出ろ。夕食食べているのか?風呂へ入っているか?」

 

「食べていますし、入ってます!」

 

夕張は頬を膨らませる。

 

「まぁいい。ほれ、お菓子だ。」

 

「え…?ありがとうございます…。…何故ですか?」

 

「今日はハロウィンだ。」

 

「あ…。」

 

夕張は気付く。

 

「…とりっくおあとりーと?」

 

「ああ。…それじゃ、俺は他の場所へ行ってくる。」

 

すると…。

 

「ドミナント提督、私…。」

 

「あ…すまん。忘れていた。」

 

「……。」

 

「安心しろ。お菓子はある。」

 

「そういう意味じゃないです。」

 

セントエルモはドミナントに呆れる。

 

「それより、お前はちゃんと仮装しているんだな。」

 

セントエルモは鎧みたいなものを着ていた。

 

「うん。トリックオアトリート。お菓子くれないと悪戯するよ。」

 

「はいはい。」

 

ドミナントはお菓子を渡す。

 

「それじゃぁ、俺は別の場所へ…。」

 

ドミナントが外へ出ようとすると…。

 

「誰か忘れていませんか?」

 

……さっきと同じ展開?

 

外の光でよく見えない。

 

「む…。セラフ?」

 

「はい。トリックオアトリート。」

 

セラフだった。

 

「…?なんだその格好は?」

 

「…ダメでした?」

 

セラフは魔法使いの格好をしていた。

 

「…恥ずかしがるくらいなら、露出度なんとかしろ。」

 

「あ、あはは…。」

 

露出度が高く、着ている本人すら恥ずかしがっている。

 

「まぁ…、ほれ。お菓子だ。」

 

「ありがとうございます。」

 

セラフはお菓子を受け取る。

 

「さて、俺は他の場所へ向かう。」

 

「あっ、はい。お疲れ様です。」

 

そして、ドミナントはどこかへ行く。

 

…………

教室

 

「…ここは誰もいないか。…少しのんびりするか。」

 

ドミナントは夕焼けの光が差し込む教室で、椅子に座る。

 

……懐かしいな。…教室か…。

 

ドミナントは学生の頃の時代を思う。すると…。

 

「…懐かしいのか?」

 

「!?」

 

ジナイーダが扉の前にいた。

 

「…ああ。」

 

「…そうか。」

 

ジナイーダがドミナントの隣に立つ。

 

「…私は、こんな施設に通ったこともないがな。」

 

「……。」

 

「…だが、なんとなくわかる。…思い出の場所だろう?」

 

「…ああ。」

 

ジナイーダとドミナントは少し沈黙した後、ジナイーダが言う。

 

「…今日は10月31日。ハロウィンだ。トリックオアトリート…?でいいのか?」

 

「…ああ。…お菓子だ。」

 

ドミナントはお菓子を渡す。

 

「…さて、のんびりしたし、残りを配ってくるよ。」

 

「…菓子食いすぎるなよ。」

 

「わかってる。」

 

そして、ドミナントは何処かへ行く。

 

…………

 

「寒いな。次は演習場か?」

 

ドミナントは歩く。すると…。

 

「トリックオアトリート。」

 

後ろから声が聞こえる。

 

「ん?誰だ?…駆逐艦?」

 

カボチャを頭にかぶった子供だった。

 

「どこ行くの?」

 

「演習場だ。…ほら、お菓子。」

 

ドミナントは渡す。

 

「…いいの?」

 

「当たり前だ。」

 

そして、ドミナントは演習場を目指す。

 

「まって。」

 

「?」

 

「…怖がらないの?」

 

「ん〜。まぁね。他にも怖いものあるし。」

 

「そ…。じゃぁ悪戯しないよ。」

 

「はっはっは。まぁ、悪戯もほどほどにな。」

 

ドミナントは笑いながら言う。

 

「…ところで、君は誰だい?」

 

振り向くが…。

 

「…誰もいない?…あれ?デジャヴ?」

 

ドミナントは首を傾げたが、面倒に思い、演習場を目指した。

 

…………

演習場

 

「…やっぱり、毎日いるな。」

 

日が沈んでも演習する艦娘と主任。

 

「仮装している者もいれば、何もしていない者もいるな。」

 

ドミナントは高みの見物をする。

 

「…邪魔しちゃ悪いからここに置いていくか。」

 

ドミナントは、ドミナントに気付いて内心助けを求める艦娘に気づかず、置いて何処かへ行った。その後、艦娘たちの士気が下がり、主任にボロ負けだった。

 

…………

廊下

 

「トリーーックオアーートリーート!!」

 

「よっと。」

 

「グヘッ!」

 

飛びつく神様を軽く避け、神様が壁に激突する。

 

「ひどい!避けなくてもいいじゃん!」

 

「少しは学べ。」

 

ドミナントはツッコム。

 

「全く、後輩には呆れるのう。」

 

「あっ、先輩神様。」

 

神様と共にいたのは神様の先輩の先輩神様だ。

 

「ご無沙汰しております。」

 

「よいよい。それより、この鎮守府では化け物の格好が流行っておるのか?」

 

先輩神様は聞いてくる。

 

「え?いや。今日はイベントの日で、みんな仮装しているんです。」

 

「何?イベント?…ならこういうのはどうじゃ?」

 

ぽんっ。

 

先輩神様は一瞬で着替える。

 

「どうじゃ?」

 

「…なんか違う気がします。」

 

「…天狗は駄目なのか…。」

 

「じゃぁ、こういうのはどう?」

 

ぽんっ。

 

神様も着替える。

 

「蜘蛛っ!」

 

「…オーケー。」

 

「やった!…なんでそんなに離れるの?」

 

ドミナントは神様からすごい距離をとっていた。

 

「…いや、俺蜘蛛苦手なんだ。何処か行ってくれないか?」

 

「ひどい!」

 

ドミナントが理不尽なことを言い、神様が言う。

 

「ほう。ならば妾は…。」

 

ぽんっ。

 

「蝙蝠じゃ。」

 

「露出度ぉ…。」

 

ドミナントは露出度が高い先輩神様に微妙な顔をする。

 

「これでいいのかの?」

 

「…まぁ、仮装には変わりないな…。ほれ、お菓子だ。」

 

ドミナントは二人に配る。

 

「これが“お菓子”というものか。天界にはないからの。」

 

「やった!ありがとう!…て、石じゃん!」

 

「騙して悪いが、行いが悪い子には石をあげる決まりでね。」

 

「ひどい!うぅ…なんか今日ひどいよぉ…。」

 

「…すまん。からかいすぎた。お菓子あげるし、頭なでなでしてあげる。」

 

ドミナントは神様を撫でてあげる。

 

「うぅ…。」

 

「ごめんな。」

 

それでもまだ立ち直れていないようだ。するとドミナントが…。

 

「じゃぁ、はい。これ。みんなには内緒だぞ。」

 

ドミナントがコソコソと神様のポケットに少し大きめのお菓子を入れた。

 

「……。」

 

「そうそういないぞ?俺がここまでしてあげる相手なんて。」

 

「…うん。元気出す。」

 

神様は立ち直る。先輩神様が口元を緩めていた。

 

「フフ。なんだかんだ言って、お前たちは仲が良いのう。」

 

「……。」

 

ドミナントは何も言い返さなかった。実際、ドミナントは神様のことを彼女とは露ほども思っていないが、仲間だと思っている。

 

「…まぁ、そうなのかもな。」

 

「えっ?」

 

ドミナントの一言に神様が驚く。

 

「?どうした?」

 

「いや、いつも私をからかっている割には本心を言うな〜って…。」

 

神様はキョトンとする。

 

「いや、こんな時こそ本心を言わなくてどうする?…こんな時間だ。それじゃぁ…。」

 

「待って!」

 

「?」

 

神様が呼び止める。

 

「私は…、私は大好きだよ!仲間というより、もっと…、もっとそれ以上の関係になりたいくらいに!」

 

神様の突然の告白。

 

「…そうか。…というより、その格好で言われても俺の胸には響かん…。」

 

「あ…。」

 

「…すまんな。どちらにせよ、今は答えられん。」

 

そして、ドミナントは配りに行く。

 

…………

駆逐艦

 

「仮装似合っているじゃないか。」

 

「う、うるさいわね!」

 

「ありがとうなのです!」

 

「ありがとうございます!!」

 

…………

軽巡、雷巡

 

「ほれ、お菓子だ。」

 

「やったクマー!」

 

「アイドルにも休息は大事!」

 

「提督、ありがとうございます。」

 

…………

重巡、航空巡洋艦

 

「提督、ありがとうございます!」

 

「なんだ?酒のつまみか?」

 

「おお!礼を言う。筑摩ー筑摩ー…。」

 

…………

戦艦、航空戦艦

 

「おぉ…。甘くて美味しいな。」

 

「提督がsweetsくれたネー!」

 

「あっ、提督、ぶつかってごめんなさい。…え?何でお菓子?」

 

…………

軽空母

 

「なんや?お菓子くれるんかぁ?」

 

「提督ぅ、あたしに限ってはお菓子よりお酒よ〜。」

 

「提督!トリックオア…。なんで先に…いえ、なんでもありません。ありがとうございます。」

 

…………

正規空母、装甲空母

 

「菓子くれるの?…一応言っておくわ。ありがとう。」

 

「えっ?お菓子!?そんな、私には…。えっ?みんなもらってる?…ありがとうございます…。」

 

「瑞鶴?あっ、提督。どうかしましたか?えっ?お菓子?ありがとうございます。」

 

…………

潜水艦

 

「オリョクルは嫌でち!!…え?お菓子?」

 

「海のスナイパーにお任…お菓子?」

 

「提督が来てくれて嬉しいのね。…お菓子?」

 

…………

執務室

 

「司令官、途中からおかしくなってませんか?」

 

「不安だ…この鎮守府は不安だ…。」

 

朝潮が聞き、ドミナントは答えになってない呟きをしながら頭を抱えている。

 

「まぁ、みんな元気そうだからよかったものの…。」

 

「司令官、忘れてますよ…。」

 

「えっ?何を?」

 

「あれです…。」

 

(お菓子をよこすです!)

 

(甘味甘味です!!)

 

(おかしだーーーです!!)

 

(菓子よこせーーです!!)

 

(お菓子をくれないとマジで、この鎮守府が機能できなくなるまでいたずらするです!!)

 

朝潮が指差した方向に大量の妖精さんが…。

 

「キシキシ!!」

 

「キシ!」

 

「キシャーー!!」

 

AMIDAまでやって来た。

 

「ちょ、待て!ある!あるから押すな!!うわぁぁ……。」

 

「司令官…南無…。」

 

朝潮は手を合わせて、妖精さんやAMIDAに埋もれていくドミナントに冥福を祈った。




日付変わったけど、見たかったのでね。
「くぅ〜〜…。やり過ごせると思ったのに…。」
はっはっは。筆者という権限があれば可能なのだよ。
「あんた…覚えときなさいよ…!」
フハハハ。それより、隠れてないで出てきたらどうだ?
「……。」
さぁて、早く来ないとその格好のままだぞ?
「…わかったわよ…!」
おー、流石に可愛いな。お題!『小悪魔!』
バッコォォォン!!
「あんた…殴られたいの!?」
殴ってから言うなよ…。
「あんた…ほんとに…この話が終わったら待ってなさい…。後でたくさん嫌になる程謝らせてやるから…!」
顔赤くしながら言ったってなんの説得力もないな〜。
「…ブチッ。おりゃーーーーー!!!」
ぐはぁぁぁぁぁぁ!!!
…だからよぉ…止まるんじゃねぇぞ…。
「止まれ!!」


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Anotherミッドウェー

没案です。これは轟沈描写が含まれているため、やめました。そういうのが苦手な方は、ご遠慮ください。


「赤城!避けろ!!」

 

長門は叫ぶが遅い…。

 

「提…督…。」

 

ドガァァン!ザパァァァン!ドガァァン!

 

直撃。そして周りに弾が落ち、水しぶきが上がる。

 

「赤城ーーー!!」

 

長門は叫ぶが返事がない。

 

「アハハハハ!!ヤットシズンダ!!ゴミハゴミラシクサッサトキエサルノヨ!!」

 

「よくも赤城を…。うぉぉぉぉ!!」

 

ドゴォォン!ドガァァン!ドゴォォン!

 

「ダカラァ、キカナイッテイッテイルデショ?」

 

「!?」

 

ガッシャァァァァン!

 

長門はまた殴られた。

 

「ゴフッ…。」

 

「アナタハナグリコロシテアゲル…。ワタシノナカマガソウヤッテシズンダヨウニ…。」

 

ガシャァァァン!ガシャァァン!ガシャン!ガッシャァァァン!!……

 

ミッドウェーは深海より冷たい声で言い放ち、無慈悲に殴る。

 

「やめてください!!」

 

「長門さん!!意識を保ってください!!助けます!」

 

ドガァァン!ドゴォォォン!ドガァァン!

 

吹雪たちが必死に攻撃するが、大したダメージにもなっていない。ミッドウェーはそれを無視して長門を殴り続ける。長門はだんだんと抵抗もしなくなっていった…。

 

……提…督…。最後に…しっかりと…顔を…見たかったな…。

 

長門はぼやける視界、そして消えていく意識の中それだけを考えていた…。

 

…………

 

「……。イシキガナクナッタカシラ?ハンノウガナクナッタワ。ツマラナイワネ。」

 

ミッドウェーは意識のない長門を沈めもせずに放っておく。

 

「長門…さん?」

 

「イキテイルワ。マア、アトデイシキヲトリモドサセタアトナグリツヅケテシズメルケドネ。ハンノウガナイトツマラナイモノ。」

 

ミッドウェーは邪悪な声ををだして言う。

 

「よくも、長門を…!提督はいないけど、あなたを倒すデース!!」

 

「待って!」

 

突っ込もうとする金剛を古鷹が止める。

 

「突っ込んでいったら相手の思う壺です!作戦を立てて相手を少しずつ削っていきます!」

 

古鷹が言う。

 

「フゥン。マトモナノガイルジャナイ。ソウヨ、タダツッコンデキタラカンタンニシズメテアゲル。アタマヲツカイナサイ、ソシテワタシヲタノシマセナサイ。」

 

ミッドウェーが挑発する。

 

「まずは瑞鶴さん!あなたは後方で爆撃機を飛ばして攻撃してください!私と吹雪さんは囮になります!金剛さんは注意しつつ攻撃を行ってください!」

 

古鷹の立てた作戦に、それぞれが自らの役割を果たすべく動く。

 

「デモ、サクセンヲアイテニキカレタライミガナイワ。」

 

ミッドウェーは狙いを瑞鶴に定める。しかし…。

 

ドガァァン!ドゴォォォン!!ドガァァァン!!

 

「?。ドユコト?」

 

近距離で、囮になるはずだった吹雪と古鷹、中距離で隙を伺うはずだった金剛が同時に撃つ。

 

「やっぱり無傷ですか…。」

 

「硬いネー…。」

 

「でも、少しずつですがちゃんとダメージは蓄積されているはずです。」

 

3人はそれぞれ言いながら離れる。

 

「ドウヤッテベツノサクセンヲ…?イヤ、アノサクセンジタイガアンゴウダッタトハ…。」

 

ミッドウェーは瑞鶴に狙いを定めていたが、遠いため、当たる確率が少ない。一方、囮は狙いやすい近〜中距離のため、近づいて攻撃をしやすい。

 

「ナルホド…。イッポントラレタネ。」

 

ミッドウェーは感心したように言う。

 

「次の作戦です!今まで通りにしてください!」

 

「……。」

 

ミッドウェーは考える。

 

……コノパターンハ、イママデドオリトミセカケテチガウチガウサクセンヲスル…。デモ、ウラヲカイテホントウニイママデドオリノカノウセイガアル。シカシ、ソレモミスカサレテチガウサクセンカモシレナイ…。デモ、マズヤラナケレバナラナイコトガアル。

 

ミッドウェーはそう考えて、金剛に狙いを定める。

 

ドガァァン!!ドゴォォン!ドガァァン!!

 

近距離で古鷹と吹雪が撃つ。本当にさっきの作戦である。しかし…。

 

「アハハハハ!カカッタワネ!!」

 

「!?」

 

爆煙で見えなかったが、砲身が古鷹に定められていた。

 

「あ…。…提督、今までありがとうございました。」

 

古鷹は目を閉じて今までの思い出を振り返る。

 

ドガァァン!!ザパァァン!ドガァン!

 

直撃。

 

「古鷹さん!」

 

「危ないヨ!ブッキー!」

 

近づこうとする吹雪を金剛が止める。

 

「アハハハ!サテ、アタマヲツブサレタモノタチハドウスルノカナァ?」

 

残りは3人になってしまった…。状況は最悪である。

 

「何よ!何よ!!まだ…まだ戦えるわ!!」

 

瑞鶴が艦載機を飛ばすが…。

 

「ツギハアナタ。コノキョリナラハズレナイ。」

 

いつのまにかミッドウェーの確実に当たる射程内に入っていた。

 

「きゃっ!?」

 

ドガァン!ザパァァン!ドガァ!!

 

瑞鶴に当たった。

 

「こ、金剛!?なんで…私を…?」

 

と思ったが、当たる直前に金剛が瑞鶴を突き飛ばしていた。かすったが、なんとか金剛も沈まずにいた。

 

「制空権を取られたら勝ち目がないネー…。」

 

金剛は大破状態で、頭から血を流していた…。

 

「それに…これ以上仲間が沈んでしまったら、きっと提督が大泣きするネー…。」

 

金剛が言う。

 

「早く離れるデース。」

 

「う、うんっ!」

 

3人は散り散りに離れる。

 

「…モウスコシデアタッタノニ…。ヤッパリアナタヲシズメルワ。」

 

金剛に狙いを定める。

 

「させないわ!」

 

バコォン!ドガガガガガ!…

 

「…。ゼンインデノコウゲキナラソラセタカモシレナイケド…。ムダヨ。」

 

ドガァァン!ザパァァ!ザパァァン!

 

金剛を標準に定めるが、神の加護なのか全く当たらない。

 

「…アタラナイワネ…。ナラバコッチヨ。」

 

再び瑞鶴を狙う。

 

「次は油断しないわ!」

 

ドガァァン!!ザパァァァン!ザパァァン!

 

瑞鶴にも当たらない。

 

……ヤッパリ、スキガナイワネ…。ワタシノホウダイノカクドヲハカッテカイヒシテイル?ナラバ…。

 

ミッドウェーは突然回り出す。

 

ズガァァン!ズガァァン!ズガァァン!ズガァァン!

 

回りながら連射する。

 

……コレナラワタシノイシキモナイシ、テキトウニマワッテイルダケダカラドコニトンデイクカワカラナイ。

 

「危ない!避けてください!」

 

吹雪は叫ぶ。

 

「わかっているわ!」

 

「当たり前ネー!」

 

3人とも避ける。しかし…。

 

ザパァァン!!ザパァァン!!

 

周りに水柱が立ってよく見えない。

 

「きゃぁっ!?」

 

周りに弾がかすって瑞鶴が悲鳴をあげる。

 

「瑞鶴さん!」

 

……アタッタ?ナラバコンランシテイルハズ…チャンスダナ。

 

ミッドウェーは回転をやめて狙いを定める。一方、吹雪たちは水柱に集中しすぎてミッドウェーを見ていない。

 

ズガァァン!ズガァン!ズガァァン!

 

弾はまっすぐ瑞鶴へ行く。

 

「へ?」

 

「危ないネー!」

 

また金剛が瑞鶴を突き飛ばす。

 

「金剛さんっ!!」

 

「ブッキー…、もし倒せて提督に会ったら、私が立派にfightしたことを伝えて欲しいデース。」

 

最後に金剛は力ない笑みで吹雪に伝えた。

 

ドガァァン!バシャァァン!ドゴォォォン!!

 

直撃。

 

「アハハハハ!ジブンガイキノコレバイイモノヲ。バカダネ。」

 

その時、吹雪はいつかジナイーダが漏らしたACの世界を思い出す。

愉快な仲間たちの戦場がどのようなところなのかを知った。強大な敵の前では例え非戦闘員でも区別なく殺されていくだけなのだと…。

ジナイーダやセラフ、主任やジャック・Oがどのような場所で生きてきたかを…。

そして勝者が敗者を嘲笑い、罵倒する世界なのだと…。

 

「馬鹿って…。お前!!」

 

瑞鶴が怒り、艦載機、爆撃機を飛ばす。

 

ドガァァン!ドゴォォォン!

 

「ソンナモノキカナイトイッタデショウ?シズミナサイ。」

 

ミッドウェーは瑞鶴に狙いを定める。だが攻撃の手は緩めない。

 

「くっ…。吹雪!あとはあなたに託すわ!…あの提督に言ってくれる?『引っ叩いてごめんね。』て…。」

 

ドガァァン!ザパァァン!ドガァァン!!

 

直撃。

 

「瑞鶴さん!」

 

とうとう吹雪一人になってしまった…。長門は現在も気を失っている。

 

「アハハハハハ!!モウオワリ?ヨワイワネ。アトハアナタダケ。シニナサイ。」

 

「赤城先輩…、長門さん…、古鷹さん…、金剛さん…、瑞鶴さん…。」

 

「ソウ、ゼンブワタシガシズメテアゲタワ!アナタハドウスルノ?オナジウンメイニナル?ソレトモニゲル?」

 

「そんなの…戦って勝つ!それ一択です!」

 

吹雪は突っ込んでいく。

 

「アナタハマトモダトオモッテイタケレド…ヤッパリツッコンデクルノネ。…イイワ。ノゾミドオリシズメテアゲル。」

 

ズガァァン!ズガァァン!

 

ミッドウェーは撃つが…。

 

「当たりませんよ!」

 

全て避ける。

 

……皆さん…皆さんの伝えたい言葉、しっかりと覚えました…。必ず勝ちます…。そして提督に言います…。立派に戦ったことを…。最後まで諦めなかったことを…。謝ることを…。

 

「ホウ…サスガネ。デモムダヨ、チガウモノ。」

 

ドガァァン!ドガァァン!

 

ズガァァン!ズガァァン!

 

吹雪は駆逐艦の強みである立ち回り、回避力の高さを駆使して存分に力を発揮する。

ミッドウェーは巨大な艤装で身を守りつつ他の大砲で攻撃をする。

圧倒的に吹雪に不利だが、それでも負けていないのは努力の賜物だろう。

 

「クッ…。ナゼ!?ナゼアタラナイノ!?アキラカニアナタノホウガフリノハズヨ…!?」

 

ミッドウェーは叫ぶ。

 

「私は…負けるわけにはいかないからです。皆さんの言葉を伝えないといけないからです!」

 

吹雪も負けじと叫ぶ。

 

「アンナコトバヲツタエテナンノイミガアルノ!?ソンナモノ、イキルノニヒツヨウナイジャナイ!ナンノチカラニモナラナイワ!!…ソンナノ…ワタシダッテ…。」

 

「言葉には相手の感情、そして気持ちがこもっています!それが力になるんです!」

 

「ソンナノタダノメイシンジャナイ!ツヨサニハマッタクカンケイガナイワ!」

 

二人の意見が衝突し合う。

 

「アアモウ!コレハツカイタクナカッタケド、ツカウシカナイミタイネ…。」

 

ミッドウェーは体を覆っていた大砲の艤装を攻撃に使う。

 

「!?」

 

吹雪は驚いた。しかし、吹雪が驚いたのは艤装ではなくミッドウェー自身だった。

自分より全然幼く、顔に大きな傷のある少女だった…。




続けて後半も投稿します。


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Anotherミッドウェー2

没案の後半です。


「コレデオワリヨ!」

 

 吹雪は自分より幼く、顔に大きな傷がある少女に狙いを定められる。

 

ギュウィィィィィィン……ズガァァァァン!! 

 

 ミッドウェーを覆っていた大きい三つの砲台は電磁波を溜めて撃つ、オーバードウェポン『三連レールガン』だった。

 

……あっ…。皆さん、ごめんなさい…。無理そうです。…司令官、ごめんなさい…。最後に司令官と平和な話をしたかったなぁ…。

 

 吹雪はレールガンを避けられないと知り、覚悟を決める。ところが…。

 

ギュウィィィィィィン……ズガァァァァン!! 

 

 どこからかもう一つのレールガンが火をふく。そして、双方とも空中で爆発する。

 

「吹雪! 大丈夫か!?」

 

「なるほど、絶体絶命の大ピンチみたいだな」

 

「あれれ〜。ね〜あれやばいんじゃない〜。ギャハハハハ!」

 

「吹雪さん! 大丈夫ですか!?」

 

「吹雪! 大丈夫なのか!?」

 

 助けに来たのはドミナントとジナイーダ、主任と夕張とセントエルモだった。

 

「司…令官…?」

 

 吹雪はドミナントを見るなりぐったりする。

 

「吹雪大丈夫か!?」

 

「はい…大丈夫です…。」

 

 倒れる吹雪をドミナントが支える。

 

「そうか…。すまなかった!」

 

「何が…ですか…?」

 

「俺がお前たちと一緒に行かず、ジナイーダたちと合流して、あとで助けに来ようと思っていたんだが…。遅れてしまって…。」

 

「遅いですよ…。司令官…。」

 

「すまなかった!」

 

 ドミナントが吹雪に謝る。すると…。

 

「なぁ、ドミナント、長門以外の艦娘が見えないんが…。長門と吹雪だけか?」

 

 ジナイーダはドミナントに聞く。

 

「いや、あと金剛、古鷹、赤城、瑞鶴がいたはずだ」

 

「司令…官…。」

 

「吹雪、あいつらはどうした? 逃げたのか? まぁ、逃げていてほしいがな…。」

 

「司令官…。」

 

「どうし…。」

 

 吹雪は泣いていた。

 

「……。なるほどな…あいつがやったのか…?」

 

 ドミナントはどうしたのか察して、心の底の重く、憎しみの詰まった声で言う。

 

「ひっ…。て、提督…?」

 

「司…令官…。」

 

「…。ドミナント提督…。なんか寒い…そして苦しい…。」

 

 ドミナントが普段なら絶対に発さない声で夕張が驚き、吹雪が心配している顔をし、セントエルモが正直に言う。

 

「ドミナント…どうかしたのか?」

 

「あれれ〜、まさかビビっちゃった〜?」

 

 二人は平常を装っているが、少し驚いていた。

 

「金剛、古鷹、赤城、瑞鶴があいつに沈められた…。」

 

ピシッ…。

 

 そうドミナントが言った途端、主任が一切笑わず、ジナイーダがキレた。セントエルモと夕張もキレたが、格が違う3人の壮絶な殺意に息を吸うので精一杯だ。風は吹かず、波の音も消え、海鳥たちは逃げる。

 主任と言えども、毎日のように教えて、笑い合う仲間が殺された。

 ジナイーダは、授業を受ける教え子、つまり娘みたいなもので、殺された。

 二人はブチギレた。もちろん、ドミナントも例外ではない。愛娘を殺されたも同然だ。

 3人はミッドウェーの方を向く。

 その時、ミッドウェーは生まれて初めて恐怖を抱いた。それもとてつもない恐怖を…。ミッドウェーは生まれた時からこの艤装で、喧嘩なら負けたこともなかった。人間や艦娘も簡単に沈めてきた。恐怖なんて抱くはずがないと確信していた。だが、今は違う…動物的危機感、意識していないのに体が勝手に震える。目の前にいる“化け物”から逃げ出したい気持ち…だけど、体が動かない。そう、ミッドウェーは瞬時にして体を恐怖で支配されてしまったのだ。手が震え、標準が定まらず、恐怖でガチガチと歯を鳴らし、視界すら暗くなってきた。

 

「死ね…。」

 

 ドミナントたちは銃口をミッドウェーに向けた。しかし…。

 

「…ナメルナァ!!」

 

「「「!?」」」

 

 ここまでの強者であるミッドウェーは恐怖すらも振り払い、戦闘態勢を整えたのだ。

 

「オマエヲ…オマエタチヲコロス! オマエタチハコノセカイニイテハイケナイ…! キエロイレギュラー!!」

 

 ミッドウェーは至近距離で連射する。

 

ドォォォン!ザパァァァン!……

 

 だが、ドミナントたちに当たるはずがない。それどころか…。

 

ブヴゥゥゥゥゥン! ズパァ……。

 

 ドミナントはすかさずブレードで切った。

 

「ナ…!?」

 

 砲身が切れたのだ。そしてドミナントがもう一振りしようとするが…。

 

「クッ…。」

 

 ミッドウェーは後退する。しかし…。

 

ドォォォォン! バコォォォォォン!! 

 

「!?」

 

 ジナイーダの鬼パルスが連続して当たる。

 

「…コノママジャホウダイガ…。」

 

 そう呟いた途端…。

 

ギャァオ!!! 

 

「キャァッ!?」

 

 主任の最大限までためたKARASAWAが当たる。とてつもない威力に思わず悲鳴をあげる。

 

「コノママジャ…ヤラレル…!」

 

 ミッドウェーは半壊した砲台でもドミナントたちに撃つ。

 

「「「……。」」」

 

 だが全員無言で避ける。

 

「アタラ…ナイ…!?」

 

ガガガガガ!! ドォォン! ドォォォン!! 

 

 だが驚いている暇はない。ドミナントたちの攻撃によって、次々と砲台が大破していく。

 

「ソンナ…。ソンナ…!!」

 

 ミッドウェーは残った砲台で撃とうとするが……。

 

ドガァ!! 

 

「ゴフッ…。」

 

 主任が蹴り上げる。ミッドウェーは想像以上の威力に内臓が破壊された。しかし、これで終わりではない…。

 

「「「……。」」」

 

ドガァ!ドガァ!!…!!!

 

「ゲホッ……ガハッ……ウッ……オエ……ゴフッ……。」

 

 ドミナントたちに次々と蹴られていく。

 

「みんなの恨み…。思い知れ…!!」

 

 ドミナントは低く、重い声で言う。

 

「司…令官…。」

 

 吹雪は見た…。

 自分の近くで息を吸うのに苦しむ仲間…。

 怒りに身を任せ、ミッドウェーを甚振るドミナントたち…。

 うずくまり、涙を流しながら助けを求めるミッドウェー…。

 これではどちらが敵なのかわからない状態だった…。

 

「もう…やめて…ください…司令…官…。」

 

 吹雪は言うが、ドミナントの耳には届かない…。

 

「もう…やめてください…。司令官…。」

 

 涙が頬を伝う…。

 

「もう…やめてください…。」

 

 吹雪はゆっくりと立ち上がり、足を海面に引きずりながらドミナントの元へ行く…。

 

「死ね…!死ね…!死ね…!苦しみながら死んでいけ…!これくらいじゃ死なねぇよなぁ…!?たっぷり生き地獄を味わってから死ね…!」

 

「司令官…。」

 

 ドミナントの蹴りが止む気配がない…。

 

「もう…やめてください…!」

 

 吹雪はドミナントにひっつく。

 

「止めるな吹雪…! 俺はこいつを…!」

 

「お願いです…。もうやめてください…。」

 

 その時、ドミナントは吹雪が泣いているのに気がつく。それと同時に冷静になり、蹴るのをやめた。ジナイーダと主任もやめている。

 

「ア…ウ…」

 

 ミッドウェーは身体中がアザだらけで、抵抗せず、反応すらできなくなっている。

 

「……。」

 

 ドミナントはそれを見てしまい、自分がやったことに寒気がした。

 

「司令官…。お願いですから…、元の司令官に戻ってください…!」

 

 吹雪は涙の懇願をする。

 

「吹雪…。戻る。戻るから泣くな…。」

 

 ドミナントは優しく吹雪を撫でる。

 

「だがどうするんだ…? こいつにあいつらが沈められたのだぞ…!」

 

 ジナイーダはまだ怒り状態である。

 

「ああ…。わかっている…。まだ甚振るか…。生かすか…。殺すか…。吹雪…お前が決めろ…。」

 

 ドミナントは吹雪に判断を委ねる。

 

「もう…これで十分だと思います…。楽にしてあげてください…。」

 

 吹雪は仲間が沈められたにもかかわらず、最後に慈悲をあげる…。

 

「…だそうだ…。ジナイーダ、拷問は無しだ。トドメを刺してやれ…。」

 

「…。仕方がない…。吹雪が言うんだ…。私より辛いはずのな…。」

 

 ジナイーダはそう言ったあと、ミッドウェーに銃口を向ける。

 

「…じゃあな…。もう二度とくるなよ…。」

 

 ズガァン…! 

 

…………

 

「…ん…? ここは…? 確か、私は殴られて…。」

 

 長門が目を覚ます。

 

「…赤城…。…他の艦は生き残っただろうか…?」

 

 長門は海の上を見回す。

 

「長門…。起きたか…?」

 

「提督!」

 

 ドミナントは目を覚ました長門に声をかけた。ミッドウェーが完全に沈んだ少しあとである。

 

「提督…、赤城が…。」

 

「ああ…。わかっている…。俺が遅かったせいだ…。それに金剛、古鷹、瑞鶴も沈んだ…。犠牲が多すぎる…。」

 

 ドミナントはいつも頭にある提督帽を、手で持っている。

 

「そう…なのか…。」

 

「ああ…。なんとか吹雪とお前だけは助けられた…。」

 

「そうか…。」

 

 長門は小さく呟く。

 

「……。吹雪から聞いたよ…。」

 

「…何がだ…?」

 

 ドミナントは息を吐いたあと、長門から顔を背け、遠くを見ていた。

 

「全員の最後の言葉を…。赤城は最後に俺の名前を呼び、古鷹は今までありがとうと言った…。金剛は立派に戦ったらしい。瑞鶴からは謝られた…。…理不尽だよな。言葉を返すこともできないのに、俺のことを言うの…。いい迷惑だよ…。本当にさ…。」

 

「提督…。」

 

 長門はドミナントの肩が震えているのを見て、もらい泣きする。

 

「俺は…瑞鶴の言う通り、不甲斐ない提督になっちまった…。今俺は後悔している…。最後、なんでお前たちのことを見なかったんだろうって。無駄に意地を張ったのかもしれない…。ピンチの時に出てきてかっこよく登場したかったのかもしれない…。だがその結果、赤城、古鷹、金剛、瑞鶴を失った…。繰り返したくない過ちを繰り返してしまった…。自分のわがままのせいで繰り返してしまった…。」

 

 ドミナントはポツリポツリ言う。

 

「もう…提督の資格ないな…。辞職するか…。」

 

「!?」

 

 ドガァァァン!! 

 

 長門に殴られる。

 

「な、何を…?」

 

「提督…それを言ったらお終いだ…。」

 

「?」

 

「みんな提督の…お前のために戦って沈んだんだぞ…。それなのになんだ…? “提督の資格がなくて辞職”だと…? 許されることではない。それは沈んだ艦娘たちにとって最大の侮辱だ! 何故だかわからないか? 私たちはお前を提督と認めているから立派に戦って沈んだんだぞ! この先も提督を続けて欲しいからこそ逃げ出さずに戦って沈んだんだ! それなのに本人はどうだ!? 自分のために戦ってくれた艦娘が沈んでしまい辞職…。ふざけるな!! 命をかけてまで信頼する提督に裏切られる気持ちくらい考えろ!! …うっ…ゲホッ、ゲホッ…。」

 

 長門は大声を出しすぎたため傷口が広がり、血を吐く。

 

「長門…。」

 

……苦しいのを我慢してまで俺にそのことを言ったのか…。傷口が広がってまで…。…ここで答えないとな…。

 

 ドミナントはそう思い…。

 

「…そうだな。すまない長門。俺は弱気になっていたようだ…。確かに、侮辱になるな。…2、3日は部屋に引きこもるかもしれないけど、その日が過ぎたら元気で出てくるさ…。」

 

 ドミナントは言う。長門は少し顔をしかめたが、“まぁいいだろう”みたいな感じで普通に戻る。

 

「…なるべく早く頼む。」

 

「…努力はしよう。」

 

 そんなことを話していると…。

 

『…。見てられないわね。しっかりやりなさいよ。提督…。』

 

『oh…提督がそこまで私たちのことを…。ありがとうデース!』

 

『ふふふ。提督らしいです』

 

『提督、私、立ち直ってくれることを信じています!』

 

「!?」

 

 ドミナントは後ろから声が聞こえてきたので振り向く…が

 

「……?」

 

 誰もいなかった。

 

「…うん…、しっかりやるさ。瑞鶴、金剛、赤城、古鷹…。」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 ドミナントたちは帰還する。

 

 [戦果]

 

 ヌ級改flagship50以上 ロ級改flagship50以上 ホ級改flagship50以上 etc……

 

 ミッドウェー(戦艦仏棲姫特別上位亜種)撃沈

 

 [大破]

 

 長門

 

 [小破]

 

 吹雪

 

 [轟沈]

 

 瑞鶴 金剛 赤城 古鷹

 

 何の代償もなしに、勝利を掴むことは出来ないのだ…。




終わりました。ちなみに、Anotherスティグロは最初からハードモードの光波付きブレードを乱射します。Anotherセントエルモは、暴走して、第4佐世保鎮守府を破壊しようとするため、ドミナントたちが出撃します。
ドミナントは1人でも艦娘が沈められた場合、艦娘の慈悲がない限り相手を嬲り、虐殺します。残酷なことも平気でやります。“娘くらい大切な艦娘を殺したんだから、それなりの覚悟はあるよね?”とばかりに嬲り、遊び殺します。吹雪が止めなかった場合は、さらに地獄を見てますね…。何度も蹴られるくらいならまだ優しかった方ですね。


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特別話 クリスマス

冬のイベント。静かな冬の夜、シンシンと雪が降る。雪を蹴散らして、騒ぎまくる第4佐世保はどのような日を過ごすのだろうか。…雪は降ってはいないが…。


…………

第4佐世保鎮守府 執務室 昼間

 

「フッフッフ…。」

 

提督椅子に座りながら、一人静かに笑うドミナント。

 

「あら提督、何か私の格好に不満がありまして?」

 

本日の秘書艦である、熊野が言う。もちろん、クリスマスグラだ。

 

「いや、今日はクリスマス…ということは、駆逐艦たちがそわそわしているだろう…。…考えただけでも可愛い…。」

 

「…気持ち悪いですわ。…この格好は嫌なんですが…。」

 

「フッフッフ…そうは言いつつも、満更ではなさそうじゃないか。」

 

「…提督は、この衣装どう思いまして?」

 

「可愛いぞ。」

 

「…気持ち悪い…。」

 

「…じゃ、さほど可愛くない。」

 

「ぶん殴りましてよ?」

 

「どう言えば正解なんだよ…。」

 

ドミナントは熊野に振り回される。

 

「そうですわね…。例えば、『似合っている』や、『素敵だね』などを所望していましたわ。」

 

「気が利かない提督ですみませんね。」

 

ドミナントが若干拗ねる。

 

「それより、仕事が終わったのなら…。」

 

熊野が話そうとすると…。

 

バァン!

 

「熊野ー!暇ー?」

 

鈴谷がノックもせずに入ってくる。

 

「す、鈴谷!?」

 

いきなり扉が開けられたことにより、驚いて上ずった声を上げる熊野。

 

「ちーっす。提督ー。」

 

「やはり、クリスマスグラは素晴らしい。」

 

そう、鈴谷もクリスマスグラだ。

 

「ところで提督ー。」

 

「何かね?」

 

「駆逐艦の子たちがさー。」

 

「フッフッフ。」

 

ドミナントは、駆逐艦の子たちがサンタさんにお願いをしているところを思っている。

 

「提督からどんなプレゼントもらうのかそわそわしているよ。」

 

「……。」

 

ドミナントは現実を思い知らされる。

 

「…俺に?」

 

「そうだよ?」

 

「良かったですわね。思っていたことがその通りになって。」

 

鈴熊コンビは言う。

 

「…違う…。」

 

「「?」」

 

「違うんだ…。」

 

「な、何が?」

 

「どうかしまして?」

 

「俺が想像していたのは…、駆逐艦の子たちが、サンタさんを寝ないで待っているところを思っていたんだ…!」

 

「「……。」」

 

黙る二人。

 

「…提督、今時サンタを信じる人なんていないよ。」

 

「そうですわ。そんな人が存在するなんて、誰も信じておりませんよ?」

 

二人が言う。

 

「…駆逐艦、誰も信じぬ、サンタさん…。」

 

「「……。」」

 

…………

数分後

 

「う〜ん…。」

 

ドミナントが唸る。

 

「提督、トイレなら外出て左だよ?」

 

「…提督はこの部屋で何をするつもりでして?」

 

「んなわけあるかい!話をややこしくするな鈴谷。」

 

「ごっめーん♪」

 

「確信犯だな…。」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

バァン!!!

 

「ドミナント!クリスマスだよ!どこか行こ!」

 

神様が入ってきた。

 

「ノックぐらいしようか?ドア壊れるから。」

 

「クリスマス!今イルミネーションやってるから、夜に見に行こう!二人で!」

 

「うん。ごめん。夜は用事が…。」

 

「…いいんだよ…。そんな嘘つかなくても…。」

 

「いや、本当だよ。」

 

「最近私のことを構ってくれないし…。どうせ私には飽きたんでしょ!もういいよ!」

 

神様は走って廊下を走って行った。そこで、少し泣き声が聞こえた。

 

「うーっわ…。提督、それはないよ。」

 

「…人間のクズですわね。あぁ、ごめん遊ばせ。人間ではありませんでしたね。じゃぁ、ただのクズですね。死ねば、汚染も少しは軽減されるのでは?」

 

「俺が悪いのか!?それに熊野…流石にメンタル壊れる…。」

 

ドミナントの心はズタズタだ…。

 

…………

廊下

 

「クーリスマスが今年もやぁて来るー。」

 

「何ですか?その歌。」

 

ドミナントと鈴熊コンビが廊下を歩く。

 

「神様どこだろう?」

 

3人が歩いて行き、娯楽室に入る。

 

…………

娯楽室

 

「おー。でっかいもみの木だな。」

 

ドミナントは、華やかな飾り付け、てっぺんに輝く星、そして、綿だらけのもみの木を見る。艦娘たちが一生懸命飾り付けをして、楽しんでいる。

 

「今日、ジャックさんが買ってきてくれたのです。」

 

「私の自腹だ。」

 

電とジャックが言う。

 

「ジャックが自腹とは…。ありがとう。今度、お昼を奢らせてくれ。」

 

ドミナントが言う。

 

「…まぁ、これで新しい商品の告知も出来たことだしな。」

 

ジャックは呟いたが、誰の耳にも届いていない。

 

「…ん?何で葉っぱに短冊が吊るしてあるんだ…?」

 

ドミナントは短冊を見る。

 

…………

 

最強の称号を手に入れられますように。

ドミナントと、少しは仲良くなれますように。

胸が…。

 

…………

 

「…?誰だろう?」

 

ドミナントは名前を見ようとしたが…。

 

「何を…している…?」

 

ビクッ

 

後ろにジナイーダが立っていた。ドミナントが驚いた。

 

「え?いや、これ七夕だよね?だから、クリスマスはそういう行事ではないことを知らせようと…。」

 

「…そうか。私が回収して言っておく。」

 

「え?でも、それだと大変だし、何より、『提督』がやるべきことのような…。」

 

「私が回収しておく。」

 

「……は、はひ…。」

 

ジナイーダからただならぬ何かを感じとり、『はい』としか言えないドミナントであった。

 

…………

 

「ところで、電、サンタっていると思う?」

 

ドミナントが期待を膨らませながら聞く。

 

「う〜ん…。いない。…とは言い切れないのです。でも、いると信じているのです。だから、サンタさんに会うまで起きているのです!」

 

「うん…。電は可愛いなぁ…。」

 

ナデナデ

 

ドミナントが少し涙を滲ませながら電の頭を撫でる。

 

「あっ!ずるい〜!私も撫でてー!」

 

「クリスマスプレゼント…ゲーム…。」

 

「わ、私たちを撫でないのは平等とは言えないと思います。」

 

「いいなー!」

 

吹雪型の皆さんが押し寄せる。すると…。

 

「私も撫でられたい。」

 

「ボ、ボクのこと忘れてないよね…?」

 

「私にも撫でられる権利がある。」

 

「あらぁ、私たちだけ除け者にする気ぃ?」

 

睦月型の皆さんも来る。そして、それがどんどん増えていき…。

 

「た、助けてくれー!」

 

駆逐艦の大半がドミナントの周りに…。

 

「逃がさない!」

 

「なでろー!」

 

「逃がさないよぉ。」

 

「うぁ…ぁぁ…。」

 

ドミナントは断末魔をあげながら駆逐艦娘に埋め尽くされ、見えなくなった。

 

「…提督、人気あるね。」

 

「なでなで…。」

 

「熊野?」

 

「…ハッ!?な、何でもないですわ!」

 

「?」

 

…………

廊下 夕方

 

「なんとか…逃げ切れた…。」

 

「煙玉なんて、どこにあったの?」

 

「煙くて、警報機がなるところでしたわよ。」

 

3人は、また廊下を歩く。すると…。

 

『ギャハハハハ!』

 

外から主任の声が聞こえて、ドミナントがチラリと見る。

 

『う〜ん。楽しみだ。あとで試してみよっと!メリー!クリスマース!アーハハハハハ!』

 

主任が、空を飛びまくっていた。

 

「……。」

 

「?どうしたの?」

 

「どうかしまして?」

 

「…いや、なんでもない。幻聴が聞こえただけだ…。」

 

ドミナントは見なかったことにして、再び歩き出した。

 

…………

 

「結局、中にはいなかったな。」

 

「外さっむ!」

 

「この季節は寒いですから、うんと厚着することを推奨しますわ。」

 

3人が外に出て、鈴谷が寒さで根を上げた。熊野は寒いことを対策していた。

 

「…仕方ない。これを着ろ。」

 

ドミナントが上着を鈴谷に渡す。

 

「え、でも、上着を鈴谷に預けたら、提督の着るものは?」

 

「俺は…平気だ。いざとなればAC化すれば良いし、体が資本のお前たちが、病気になっては敵わん。」

 

ドミナントが鈴谷に提督の上着を預ける。

 

「…つまり、私たちの体を想って、病気になって欲しくないからということではなくって?」

 

「……。」

 

「どうやら、当たりだね。」

 

ドミナントは黙っていた。

 

「ありがと!」

 

「…やはり、キザにはできないものだな。」

 

「提督のキャラじゃないから無理だよー。」

 

鈴谷とドミナントが話す。

 

「…わたくしも、厚着しなければ、今頃…。」

 

「熊野ー、行くよー。」

 

「…わかりましたわ。」

 

そして、3人は歩く。すると…。

 

「ん?ポストの中に手紙がぎっしり…。」

 

ドミナントがポストを開け、手紙を読む。

 

…………

 

メリークリスマス!クリスマスも演習だ!いつかお前たちを超える! 第3呉鎮守府 

 

…………

 

こっちはホワイトクリスマスだよー。ジナにもよろしくね。あと、そっちに何か送ろうか?そして、メリークリスマス! 第2舞鶴鎮守府

 

…………

 

メリークリスマス。…こっちの世界では『ドミナント』だったわね。何かなくてもたまには連絡ちょうだい。また会える日を心待ちにしているわ。 大湊警備府

 

…………

 

メリークリスマスだ。ドミナント大佐。たまには私の鎮守府に遊びに来ないかな?君とは気が合いそうだ。階級なんて関係なく、気軽に訪ねてきてくれ。 第2佐世保鎮守府

 

…………

 

拝啓 ドミナント様

 

メリークリスマス。やぁ、覚えておるかね?中山だ。こちらに連絡がないということは、そちらも平和なのだな?少し前に、未確認深海棲艦を駆除してもらえて助かった。一度と言わず、二度までも助けられたからには、何があっても、君の力になろうと思う。遠慮はいらない。

 

敬具 第2横須賀鎮守府

 

…………

 

拝啓 第4佐世保鎮守府 ドミナント様

 

寒い季節になりました。そちらはいかがお過ごしでしょうか。こちらは、雪は降っておらず、寒くて、乾燥した気候です。武蔵はお元気でしょうか?今度、会いに来てくれると嬉しいです。メリークリスマス。

 

敬具 大本営 大和

 

…………

 

拝啓 ドミナント大佐

 

メリークリスマス。そちらは元気にしているかね?こちらは、大和と仕事をして、忙しいが元気だ。毎日、平和なのは良いことだ。そちらに何かあったら、遠慮なく知らせてくれ。

 

敬具 大本営 元帥

 

…………

 

「すごい数だな…。」

 

ドミナントが呟き、鈴熊コンビが内容を覗く。

 

「て、ててて提督!?だ、大本営からの手紙なんて、滅多に届くようなものではなくってよ!しかも、元帥殿や大和さんまで…。」

 

「それに、その他の手紙って、大物ばかりの鎮守府じゃん…。提督一人を敵に回しただけで、これだけの戦力が動くと考えてもおかしくないじゃん…。」

 

二人は驚き、興奮しながら言う。

 

……確かに、よくよく見れば、この世界の人間たちにとって、この人たちを絶対に敵に回したくはないな…。天才の佐藤中佐、パワーの難波少将、その気になれば、国家を動かせる中山大将、人望あふれる八神…いや、星奈提督、戦術の佐々木少将、どれもこれもヤバすぎる…。

 

ドミナントは、今頃恐ろしさに気づいたのだった。

 

…………

倉庫

 

ガラガラ…

 

「ここか?…ん?何だこれ?」

 

ドミナントは近くにあった、ビニールシートがかぶってある大型の機械を見つける。

 

「あっ、提督。」

 

夕張が、ドミナントに気づき、寄ってきた。

 

「…夕張…、また…無許可で兵器開発か…?」

 

ドミナントの体の芯まで凍えそうな声を出す。

 

「ち、違…。」

 

夕張は、体がカタカタ震え、目の縁に涙がたまる。

 

「じゃぁ…これはなんだ…?」

 

「私が許可を出しました。」

 

セラフが奥から姿を現す。

 

「…そうか。ならいい。夕張、疑ってすまなかった…。」

 

ドミナントは頭を下げる。

 

「え…。い、いえ、別に大丈夫です。」

 

夕張が許してくれた。

 

「…でも、ドミナントさん。」

 

「なんだ?」

 

「この場で確実に、皆さんに恐怖を与えましたよ?」

 

「あ…。」

 

機械に隠れて様子を窺っているセントエルモ、鈴谷が、ドミナントを本気で怒らせちゃいけないことを心に誓い、熊野は鈴谷の後ろで怖がっている。夕張は言うまでもない…。

 

「…皆、すまなかった。」

 

ドミナントは謝るが、あとの祭だった。

 

…………

 

「神様ですか?」

 

「ああ。見当たらないんだ。」

 

「こちらには来てませんね。」

 

「そうか…。」

 

ドミナントとセラフが話したあと…。

 

「夕張、セントエルモ、セラフ。」

 

「はい。」

 

「何か用?」

 

「どうかしましたか?」

 

ドミナントが呼び、3人が集まる。

 

「サンタにプレゼントはお願いしたかい?」

 

「サンタ…?…本当に、いるんですか…?」

 

「!?」

 

夕張が聞いてくる。ドミナントはピュアな心を持った夕張に驚く。きっと、否定されると思ったからだ。

 

「いる。そして、俺は友達だ。」

 

「!?提督はサンタとも友達なんですか!?」

 

「ああ。プレゼント伝えておくから、教えてくれ。」

 

「ええ…。提督に教えるのは…。」

 

夕張がもじもじする。

 

「…じゃぁ、欲しいものを書いた紙を窓にセロハンテープで貼ってくれ。そう伝えておくから。」

 

「わかりました!」

 

夕張はピュアな心を持っていた。…深夜アニメを見るが。

 

「……。」

 

一方、セントエルモは黙っていた。

 

……サンタなんて、いるわけがない。夕張ちゃんが簡単に騙されてる…。悪い人に騙されないようにちゃんと注意しておかないと…。

 

セントエルモは思うが…。

 

「セントエルモちゃん、書こう!」

 

夕張が笑顔で言ってくる。

 

「…あのね、夕張ちゃん…。」

 

「みんないないって言っているけど、私はいるって信じているの!セントエルモちゃんはどうかな?」

 

夕張が楽しみにしたような…、嬉しそうな笑顔で聞いてくる。輝いた目で聞いてくる。

 

「…うん。絶対にいる。私も書く。」

 

セントエルモも人のことは言えないのだった…。セラフは微笑みながら二人を見ている。

 

「…ところで、これは何の機械なんだ?」

 

ドミナントが、ビニールシートにかぶってある大型の機械のことを聞く。

 

「…内緒です!」

 

「…そうか。」

 

ドミナントが簡単に引き下がる。

 

「…聞かないんですか…?」

 

「セラフが許可を出したんだ。危険なものではないのは確か。それだけでもわかっただけ十分だ。」

 

ドミナントはそう言い残し、3人は倉庫をでた。

 

…………

鎮守府内 夜

 

「神様どこだ?」

 

「どこにいるんだろう…。」

 

「疲れましてよ…。」

 

3人が鎮守府を全て探し回り、ヘトヘトになり、座っている。

 

「ありがとう、鈴谷、熊野。お前たちは疲れただろう。ゆっくり休んでいてくれ。」

 

ドミナントが二人に言う。

 

「えっ、でもまだ探せる…。」

 

「提督…、ここまで来て最後に私たちを置いて行かないでください…。」

 

「…すまん。もう十分だ。それに、これは俺の問題。お前たちが関わる必要のないことだ。自由時間をつぶさせたようなものなんだ…。」

 

ドミナントが言う。

 

「もう、これからお前たちは自由時間だ。ただ、食堂でご飯は食べてくれ。」

 

ドミナントが立ち上がり、行こうとするが…。

 

「なら、私たちも行きましてよ。」

 

「しょーがないなー。鈴谷もついて行ってあげる。」

 

「お前たち…聞いていなかったのか?」

 

「いいえ。聞いていましたわ。自由時間なら、何をしても、文句はないはずですわ。」

 

「だから、鈴谷たちは自分の自由時間を使って、提督のあとをついていくの。」

 

「お前たち…。ありがとう!」

 

ナデナデ…

 

ドミナントは二人の頭を撫でる。

 

「あぁ…。よろしくてよ…。」

 

「いいじゃん…。いいじゃん…。」

 

二人とも嬉しそうにする。

 

「じゃぁ、行くか。」

 

「はい。」

 

「りょーかい。」

 

…………

食堂

 

本日はクリスマス仕様となっているため、艦娘全員に、ケーキや、チキンなどが配られている。一部の艦娘は、この日は特別に食堂での酒盛りも許可を出している。

 

「提督、お疲れ様だな。今日くらいは一緒に飲もう。」

 

「長門、ありがとう。でも、酒を少しでも飲むと、暴走するから、また今度ね。」

 

「チキン美味しい!」

 

「ケーキ、冷たくて甘くて美味しいよ。」

 

「うーん。つまみに合うなぁ〜。」

 

全員が言う。もちろん、クリスマスグラの子もいれば、いつもと変わらない子もいる。

 

「…やはり、神様はいないか…。」

 

鈴谷、熊野はご飯を食べている。

 

……!もしかして…。

 

…………

???

 

「ふぇぇぇん…グスッグスッ…。」

 

神様は一人泣いていた。

 

ガチャ…

 

「やっぱりここだ。」

 

「…!ドミナント…?」

 

「屋上は、ここ以外登れないし、第一、こんな寒いのにいるとは思わなかった。」

 

「…何の用…?屋上に何か置くの?」

 

「そんなわけないだろう?お前を探していたんだ。」

 

「…ふん…。今頃遅いよ…。」

 

神様は拗ねる。

 

「……。」

 

ドミナントは仕方ないような顔をして…。

 

「ほれ。」

 

ドミナントの方を向かない、拗ねている神様の首に温かなものを回す。

 

「マフラー…?…くんくん…。ドミナントの匂い…。」

 

「お前のクリスマスプレゼントだ。」

 

「えっ!?」

 

「ほら…。その…。なんだ…。…よく世話になっているし、この世界に来れたのも、お前のおかげでもあるし、ジナイーダたちに会えたのも、…偶然でも、そうなって良かったと思っているしな…。」

 

ドミナントが言う。

 

「……。」

 

「夜に用事があった理由は、艦娘たちのプレゼントを買いに行くためだ。ただ、曲者がいてな。俺に教えたくない人ばかりで、欲しいものを紙に書いて、窓に貼ってもらっている。それを見回らなければならないしな…。」

 

「…サンタが存在しないってみんな知っているのに?」

 

「俺が信じ込ませた。まず、中心にいる人物に信じ込ませれば、少し話しただけで、次々と芋づる式に信じていったからな。」

 

「その才能が怖いよ…。」

 

「…だから、すまないが一緒に行くことは出来ない…。わかってくれ…。」

 

ドミナントが頭を下げる。すると…。

 

「…もう、何で早く言わないの?私が手伝ってあげるのに。」

 

「えっ…?…だが、それだと…。」

 

「二人でやれば、時間も短縮されて、少しでも見れるでしょう?」

 

「まぁ、そうだが…。いいのか?」

 

「…やっぱり、私とじゃダメ?」

 

「そんなことはない。それより、自由時間を使わせてだ。その時間帯だと、勤務時間はとっくに過ぎているだろう?」

 

「それはドミナントもでしょう?お願い。手伝わせて。」

 

「だが…。」

 

「…私のためにも。」

 

「…わかった。」

 

ドミナントが言ったら…。

 

「話は聞かせてもらいましたわよ。」

 

「提督ー、私たちを置いていくのは良くないなー。」

 

熊野と鈴谷がいたのだ。

 

「お前たち…。」

 

「私たちは、提督のやったことを知っていますわ。もう正体をわかっているなら、4人でやったほうが効率はうんと上がりますわ。」

 

「熊野…。」

 

「そうだよ?2人より、3人。3人より4人だから。」

 

「鈴谷…。」

 

ドミナントは笑顔の二人を見る。

 

「本当にありがとう!」

 

「「!?」」

 

ドミナントの本当の笑顔に二人が驚く。

 

……ヤバ…少し好きになっちゃったかも…。

 

……一撃必殺を喰らいましたわ…。すごい一撃…。

 

二人はそんなことを思う。神様は二人を『今頃?』みたいな感じで微笑んでいる。

 

「それじゃぁ、さっさと買いに行きますか。」

 

「「……。」」

 

「…鈴谷?熊野?」

 

「…ハッ!?な、何…?」

 

「…ハッ!?ど、どうかしまして…?」

 

二人はドキドキである。

 

「う〜ん…。二人だけで行きたかったけど…。ドミナントと少しでも長い時間過ごせるならまぁいいや。」

 

神様も了承してくれた。

 

「じゃぁ、行こうか。」

 

ドミナントが言ったら…。

 

ヒューーー…ドーン!

 

「花火!?」

 

ドミナントが驚き、打ち上げたところを見るとそこには夕張とセラフ、セントエルモと大きな機械があった。

 

「花火を打ち上げる機械だったのか…。」

 

ドミナントが呟くと…。

 

「ギャハハハハ!どんどん持ってくるよー!」

 

遠くで主任の声が聞こえる。どうやら、玉を準備していたらしい。

 

「たーまやー。…季節違うけど。」

 

ドミナントが言い、誰もかれもが見た。そして…。

 

「じゃぁ、行くか。」

 

「うん。」

 

「ええ。」

 

「りょーかい。」

 

…………

真夜中

 

艦娘たちが寝静まり、見るまで起きている駆逐艦の子たちも寝落ちしてしまっている。

 

「…こんな感じかな…?」

 

ドミナントがコソコソと話す。サンタ姿だ。

 

「…プー…クスクス…。似合って…クスッ…。」

 

「鈴谷…覚えてろよ…。」

 

「でも、確かに今の提督の格好は…その…クスッ…。」

 

「お前もか?熊野…。」

 

「みんな、ドミナントに失れ…プフッ…。」

 

「…もういいや…。」

 

ドミナントは小声で笑いこけている女性陣を放って、窓から侵入して、プレゼントを配って行く。

 

……電は…間宮のアイスクリーム券。

 

……長門は…アザラシのぬいぐるみ。

 

……三日月は…強い装備。セラフに作ってもらった駆逐艦用38センチ主砲。ロックオン付き。駆逐艦用7連酸素魚雷ロックオン付き。

 

……夕張は…新しいスパナと、機械道具一式。

 

このように、次々と配って行き、艦娘たちのは全て配ったが…。

 

……ジナイーダ…まだ起きている。

 

ジナイーダが起きていたのだ。

 

……ここは正直に行くしかないか…。

 

ドミナントが考え…。

 

コンコン…。

 

窓をノックする。

 

『…鍵は空いている。』

 

ジナイーダがとっくに窓の鍵を開けていたのだ。

 

「…お疲れ。飲め。そろそろ来ると思って、入れたばかりだ。」

 

ジナイーダがお茶を差し出す。

 

「ありがとう。ところで、何か欲しいものはあるか?」

 

ドミナントが聞く。

 

「そうだな…。…お前ともう少し親密な関係になれないか…?」

 

「…というと…?」

 

「…私とシレアみたいな仲になれないか?」

 

「…それが願い?」

 

ドミナントはもっとすごいものを要求すると思っていたが、拍子抜けだった。

 

「ああ。」

 

ジナイーダは真っ直ぐドミナントを見て言う。

 

「…そんな仲だと思っていたのは俺だけか…。」

 

「…?どういうことだ?」

 

「もう、俺はお前のことを親友のように感じていたぞ。」

 

「…そうか。」

 

「ああ。だから、明日からは、シレアのように接してくれ。…まぁ、性別は違うがな…。そこは勘弁してくれ。」

 

そして、ドミナントは窓から出て行った。

 

「…双方が認めていないと、そういう仲にならないのは辛いな…。」

 

ジナイーダは呟いた。

 

…………

 

「最後は主任か…。ジャックの『店の新調』と、セラフの『夕張の規制をゆるく』の願いより、大変なものになりそうだ…。」

 

ドミナントは呟く。そして、それが本当になった。

 

…………

 

……何でこんなに防犯システムだらけなんだよ…!いつもはないだろう!?

 

ドミナントは今ミッションインポッシブルをしている。

 

……ターゲットは机の上の裏返してある紙…。

 

ドミナントは赤外線センサーをあたらずに通り抜け、監視カメラにも映らずに移動する。

 

……あと少し…。…届いた!

 

そして、ドミナントはその紙を裏返す。

 

…………

 

残念ハズレ

 

…………

 

…………。

 

クシャ

 

ドミナントはイラついて、つい紙を握り潰してしまった。

 

……なら、本物はどこだ…?

 

ドミナントはあたりを捜索する。すると…。

 

……主任の内ポケットに…性格悪!

 

ドミナントのミッションは続く…!

 

…………

 

「主任の願いが…『面白いことがありますように』だった…。」

 

「…それは災難ですわね。」

 

「プレゼント出来ないし…。」

 

「私たちがやるしかないわね。」

 

「いつもと変わらないし…。」

 

「そんなに見ないもんね。」

 

そして、すべての願いを叶えたドミナント。

 

「じゃぁ、鈴熊、お願いは?」

 

「言うと思っていましたわ。」

 

「やっぱりね。」

 

「「お願いはー…。」」

 

…………

イルミネーション

 

「わぁ!すごい!綺麗だね!」

 

「そうだな。」

 

結局その二人のお願いは、全員で記念撮影だった。ちなみに、もうとっくにイルミネーションの時間はやっていないが、海軍権力と、潜入である。

 

「ここら辺がよろしくて?」

 

「少し狭いかな?」

 

カメラを持った鈴谷が位置を指定している。

 

「ここかな?じゃ!とるよー!」

 

カシャ

 

「よしっ!」

 

鈴谷が声を上げる。そして、熊野もそれを見る。神様も、変なところがないか確認する。…みんな笑顔だ。

 

……じゃぁ、鈴熊にも、これをやるか。

 

ドミナントは近づき…。

 

「鈴谷、熊野、話がある。」

 

「えっ?な、何…?」

 

「ど、どうかしまして…?」

 

二人はドキドキしている。背景がイルミネーションという、組み合わせ。

 

「目を閉じてくれ。」

 

ドミナントが言う。

 

「う、うん…。」

 

「ん…。」

 

二人は期待したが…。

 

「よし、目を開けて良いよ。」

 

「「?」」

 

何も起こらなかったことに不思議に思い、手を見る。

 

「あっ!熊野と同じ。」

 

「手袋ですわね。」

 

二人が言う。

 

「ああ。二人のお陰で助かった。これはお礼だ。俺が編んだ、世界で二つしか無い手袋だ。大事にしてくれ。」

 

「もちろん!一生宝箱のなかに大事にしまっておきます!」

 

「いや、ちゃんと使ってね?」

 

ドミナントがツッコム。

 

「綺麗…。」

 

神様はずっとイルミネーションに目を奪われっぱなしだ。神様は、世界で一つしかない、ドミナントが編んだマフラーをしている。

 

「…綺麗だな。」

 

嬉しくて騒いでいる鈴熊コンビを後ろに、神様に近づく。

 

「うん!」

 

「来てよかったな。」

 

「うん!!」

 

「…俺でよかったのか?他にも俺以外に良い男などまだまだ腐るほどいるぞ。」

 

「ううん。いないよ。」

 

「?」

 

「だって、ドミナントはドミナントしかいないもん!」

 

神様が元気いっぱいの、太陽のような笑顔を見せる。

 

「…ありがとう。」

 

ドミナントも笑顔で返した。本当の笑顔で。

 

「…やっぱり、その笑顔反則だよね…。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「えっ、あっ…。ううん。」

 

「?」

 

そして、クリスマスは過ぎて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

提督自室

 

ガチャ

 

「ふぅ〜、疲れた。…て、何だこりゃ!?」

 

ドミナントの部屋に、沢山のプレゼントがあった。

 

「?え?誰?何?どゆこと?」

 

ドミナントがあたりを見回すと…。

 

「赤い三角帽…そして、それに付着している白い髪?髭?」

 

赤い三角帽が落ちていた。

 

「…いたずらか…?」

 

ドミナントが呟いた途端…。

 

『シャンシャンシャンシャン…』

 

窓の外から鈴の音が聞こえる。

 

「!」

 

ドミナントは急いで、窓を開け、確認するするとそこには…。

 

『ホーッホッホッホッホ!メリークリスマース!』

 

青い満月をバックに、トナカイのソリに座り、白い袋を担いだ赤いおじさんが見えたのだ。




普通に10000字行くかと思った…。遅くなってすみません。
登場人物紹介コーナー
熊野…お嬢様。お昼は大体サンドイッチ。重巡洋艦。よく鈴谷と共いる。気安く触られるのは好きではない。
鈴谷…渋谷の女子校生。熊野とよく一緒にいる。重巡洋艦。提督を誘ってくるようなことをするが、いざ提督が乗り切になると、若干戸惑う系。
???…世界中で人気の存在。赤い格好に白い髭、そして少し小太りなおじさん。鈴をつけたトナカイのソリに乗って、世界中を駆ける様は、どこでも共通。(1部例外あり。例え 魔女など)


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特別話 お正月

はい。今回、大掃除、大晦日、お正月をやります。三つ続けています。ご了承ください。この小説を続けてこれたのも、読者さんのおかげです。本当に…ありがとうございます!今年もよろしくお願いします!


…………

第4佐世保鎮守府

 

「大掃除〜。大晦日〜。お正月〜。」

 

ドミナントは一人、執務室で仕事をしながら口ずさむ。

 

「さてと…終わった。…今日は大掃除で騒がしいな。」

 

辺りが騒がしかったり、揺れていたり、ミシミシいっているので、執務室にホコリやチリが舞う。

 

「…ゴホゴホ…。俺もマスクが必要かな?」

 

ドミナントはマスクをもらうため、執務室を出た。

 

…………

娯楽室

 

「なんで娯楽室にあるのか不明だけど、一応一つ取ろう。」

 

“どうぞご自由に”と書かれているマスクを取り、つける。

 

「むぅ…。…誰かに見られているような…。」

 

視線を感じ、後ろや辺りを見るが…。

 

「…気のせいか…。」

 

いや、気のせいではない。ジャックが遠くから着けるところを見ていた。あとで『商品』として売り出すつもりなのだろう。この鎮守府では、道端の石でも、ドミナントが使用しただけで価値が跳ね上がる。つまり、1円のものが100円で売れるようなものだ。丸儲けだな。

 

「さてと…。自室は、机くらいしか使ってないから、きれいだし…。誰か手伝いに行くか〜。」

 

こうして長い1日?2日?は始まる。…いや、執務室なんとかしろよ。

 

…………

 

「ここはセラフがきれいにしたとはいえ、随分前の話だ。落ち葉やら、ツルが巻きついているだろう。」

 

門の近くに行くと…。

 

「あら提督、何か用かしら?」

 

「お姉さま、どうかしましたか?…なんだ、提督か…。」

 

ここで、ほうきを使って落ち葉を集めているのは扶桑型姉妹。最初に気づいてくれたのが姉の扶桑であり、第一声が辛辣なのが妹の山城だ。

 

「お、おう。暇だから手伝いにな…。」

 

……はっきり言って、扶桑型の君たちは苦手なんだよなぁ…。

 

うわべだけの笑顔を見せながら思う。

 

「提督、なら門に巻きついているツルをとってくれないかしら?山城、一応提督を手伝ってきてくれる…?それで怪我をして欲しくないけど。」

 

「…不幸だわ…。」

 

「そ、そかー。なら俺一人で十分ダヨー。」

 

……いや、手伝うだけで不幸って…。やっぱり苦手だ…。見ればわかると思うけど、妹の山城は極度のシスコン…。姉の扶桑は妹ほど重症じゃないにせよ、シスコン…。接しづらいというか…。前は北上と話しただけで大井に睨まれて、蹴りを食らったからなぁ…。下手に刺激しないで、一人でやった方が…。

 

ドミナントが一人黙々と作業をしながら思う。そこに…。

 

「はぁ…。不幸だわ…。」

 

……まだ言うんかい。てか、手伝ってくれるんだ。

 

ドミナントの隣でツルを取る山城。

 

「…一人で大丈夫だ。手伝わなくても平気だよ。」

 

「そして、向こうへ行ったら、この山城が怒られて、お姉さまに嫌われます…。」

 

「そ、そうか…。」

 

……自身のためか…。…なんか…寂しいなぁ…。

 

ドミナントはツルを取りながら、思春期の娘を持った父親のような気持ちになると…。

 

「…別に提督は嫌いではありません…。」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

ドミナントが驚く。

 

「当たり前です…。…そんなこと思っていたなんて…不幸だわ…。」

 

「ご、ごめん…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

沈黙が起こり、遠くで扶桑が落ち葉をほうきで掃く音とドミナントたちのツルを切る音がする。

 

「…それと、いつもありがとな。」

 

「……?」

 

「よくここの掃除をしてくれているだろう?」

 

「それはお姉さまがきれいにしたいと言って、手伝っているだけです…。」

 

「だが、理由はどうであれ、きれいにしてくれているだろう?」

 

「…まぁ…。」

 

「じゃ、これをあげよう。」

 

ドミナントは作業をやめ、ポケットから紙を取り出す。山城も手を止める。

 

「…?なんですかこれ…?」

 

「割引き券。間宮アイスの。」

 

「お姉さまの分は…?」

 

「いや、あるよ。当たり前じゃん。」

 

「そう…。」

 

山城は作業を再開する。

 

「お姉さま大好きっ子だな。」

 

「当たり前です…。」

 

「ハハ…。」

 

ドミナントは苦笑いする。そのうちに、ツルを取り終わり…。

 

「終わった。」

 

「お姉さま、終わりました!」

 

「なんで扶桑に伝えるときだけそんな元気なんだよ…。」

 

ドミナントは再度苦笑いをする。

 

「もう終わったのですか?やはり、二人と一人では違いますね。こちらももうすぐ終わります。」

 

扶桑が掃きながら言う。

 

「あぁ、急がなくて良いよ。それと、これ。」

 

「?何かしら?」

 

「割引き券。間宮アイスの。」

 

「そう。ありがとうございます。あとで使わせていただきますね。」

 

「ああ。」

 

「…山城の分は…?」

 

「いや、渡してあるから。山城にも言われたよ?」

 

ドミナントは苦笑いする。

 

「…それより、艤装とかはやった?」

 

「やりました。…ホコリが凄かったです…。」

 

「それほど海に出ていなかったということね…。不幸だわ…。」

 

「…そ、そかー…。…まぁ、今度海に出れるように大淀やセラフに言っておくから。」

 

ドミナントは扶桑の仕事を手伝いながら言った。

 

数十分後…

 

「提督の指揮のおかげで早く終わりましたね。」

 

「お姉さまの言う通り、早く終わったわね。…提督、実は指揮を取るのは上手なのでは…?」

 

「いや、それとこれとは違うよ。効率の良い指示を出しただけ。戦略と効率は違う。」

 

ドミナントは言う。

 

「…まぁ、そういう才能しか無いってことだよ…。」

 

ドミナントが儚げなく言うと…。

 

「…自身では長所を見つけられないというのは本当みたいね。」

 

「そうですね。お姉さま。」

 

扶桑型姉妹は静かに呟いた。

 

「…さて、私たちも終わりましたので、提督の自室をやりましょうか?」

 

「いや、自室は大丈…。あっ!執務室忘れてた…。」

 

「ならお姉様と二人でやりますので、提督は他の艦の子たちの手伝いを…。」

 

「いや、でも普段俺が使っているからさ。」

 

「提督を待つ子たちもおります。…駆逐艦の皆さんが心配です。」

 

「そ、そうか…。なら任せるが…本当に大丈夫か?」

 

「提督は山城と、お姉さまを信用してないと…?」

 

「いや、そういう意味ではない。大変だから…。」

 

「なら、任せてください。」

 

「しかし…。」

 

「提督、提督を労るのも、私たち艦娘の役目よ…。」

 

「むぅ…。…そうか…。…わかった。なら頼む。」

 

ドミナントは重く唸ったあと、扶桑型の二人に任せた。そして、扶桑が少し笑みをし、山城がドミナントの目を見て、何かを伝えたあと…。

 

「山城、遅れないで。出撃よ。」

 

「はい。お姉さま。」

 

ビュビュンッ!

 

ドミナントも見たことのない表情をして、ジナイーダほどではないにしろ、戦艦とは思えないスピードで行き、あっという間に見えなくなる。

 

「…いつもの顔じゃなかったな。あれは戦いの顔だ…。あんなに怖い顔になるんだ…。」

 

実際は全然怖くないがドミナントは、うちなる強さと入り混じり、感じているのだろう。

 

…………

 

「次は駆逐艦の子たちかな〜。」

 

ドミナントは駆逐艦の部屋を覗く。

 

「手が…手が届かないのです…。」

 

「ハラショー。こいつはどこにおけば良いの?」

 

「こんな…仕事も…こなせないなんて…一人前の…レディーじゃ…ないわよ…。」

 

「椅子持って来たわよ。」

 

そう、ここは第4駆逐隊(?)の部屋だ。

 

「…(可愛い)。」

 

……可愛い。

 

ドミナントが思っていることが口に出ていると…。

 

「あれ?司令官?」

 

「手伝い…に…来て…くれた…の…かしら…?」

 

「ハラショー。」

 

「届かないのです…。」

 

暁型の子たちがドミナントに気づく。

 

「…電、天井は届かないだろう…。ひび…ヴェールヌイ、それ重くないか?ストーブは机の隣で良い。火事にならないように、燃えやすいものをどかして。雷はみんなのために椅子を持ってきたのか。えらいな。ところで、暁は何で挟まっているんだ?」

 

「暁は、奥をやろうと無理して突っ込んだら…。」

 

「あー…。……(可愛い)。」

 

「?司令官、何て言ったのですか?」

 

「いや、何も…。…それより、まずは暁の救出だな。」

 

そして、暁の救出作戦が始まる。

 

…………

 

「いたたたた!」

 

「が、我慢するのです!」

 

「おーえす。おーえす。」

 

「あと少しだから…。」

 

「暁…すまん…。だが、こうするしか他がない…。」

 

色々試したがうまくいかず、最終手段で無理矢理引っ張っている。

 

グググググ…スポンっ!

 

「きゃっ!」

 

ドシャーン!

 

なんとか暁を引っ張り出す。しかし、ドミナントたちが後ろに倒れる。

 

「な、なんとかいけたな…。」

 

「頭が…千切れるかと思ったわ…。」

 

「暁…、これからは気をつけろ…。今回はたまたま千切れなかっただけかもしれん…。」

 

暁はドミナントの言葉を聞いてゾッとし、次からは気を付けようと心に誓う。

 

「さて…ホコリがすごく舞ってるし、ゴミ箱もひっくり返ったからやり直しみたいだな…。」

 

「…なのです…。」

 

「「「……。」」」

 

そして、ドミナントと暁たちは片付けて、アイス割引券を渡したあと、部屋を後にした。

 

…………

 

「ん〜。さて…、次の部屋は吹雪型…だっけ?こんちはー。」

 

ドミナントが気楽に部屋のドアを開ける。

 

「きゃっ!」

 

「女の子が着替えているときにノックもしないで覗くなんて、提督さんいい度胸っぽい…。後悔させてやるっぽい!」

 

「何か…ようかな…!」

 

ドミナントは固まる。

 

「…やば…ここ白露型の子たちか…。」

 

ドミナントの背筋が凍るがもう遅い…。

 

「ちょっと、こっち来るっぽい…。」

 

「逃がさないよ…。」

 

「ここで逃げたら承知しないよ。」

 

「まちな。」

 

ドミナントは夕立や時雨、川風や涼風に肩や腕を掴まれ、部屋に入れられる。

 

「…怖い…怖い。すみませんでした…。いや、マジで部屋を間違えました…。いや、本当に…。吹雪型の部屋と間違えただけです。勘弁してください…。」

 

ドミナントは必死に謝る。

 

「提督、この責任…どうとってもらうつもり?」

 

「それ相応のことをしなければ許されないっぽい。」

 

「今回のは、流石にボクも提督が悪いと思うよ。」

 

「なんとか言いなさい。」

 

白露型の、主に怖いのが聞いてくる。

 

「すみません…。本当に部屋を間違えただけです…。」

 

「謝って済むんなら、憲兵はいらねぇし、こうして部屋に連れてこられてねぇだろ?」

 

「はい…。」

 

ドミナントの目は死んでいる。

 

「じゃぁ、どうするの?」

 

「…どうすれば許してくれますか…?」

 

「考えた?」

 

「……。」

 

……怖すぎて考えられないよ。そんな殺すような目で見られたら、ビビって話もできやしねぇ。…仕方ない。最低だけど、当初の目的で誤魔化すしかない…。

 

ドミナントは正座しながら考える。

 

「…部屋の掃除を手伝いましょうか…?」

 

「それだけっぽい?」

 

「…あと、間宮アイスの割引き券を差し上げます…。」

 

「ふぅーん。…次は?」

 

「…次…。」

 

「…もっとあんでしょ?」

 

「……。」

 

「もう終わりかい?」

 

「…すみませんでした。」

 

ドミナントは頭を下げる。

 

「はぁ…。それだけのようだね。」

 

「最低。」

 

「うぅ…。」

 

ドミナントは気楽に開けた自分を呪った。

 

「ま、まぁ、提督はわざとじゃないんだし、許してあげよう?ね?」

 

白露が止めに来てくれた。

 

「手伝ってくれるって言ってるし…、もうその辺にしてあげた方が…。」

 

海風も来てくれた。

 

「提督は…そんなことが出来るほど…度胸ない…。」

 

山風も傷つく言葉を言いながら一応来てくれた。

 

「…わかったっぽい。」

 

「…うん。ちょっと責めすぎちゃったかな。ごめんね。」

 

「まぁ、今回だけは許してやろう。」

 

「しゃーねーなー。今回だけだぜ。」

 

許してくれた。

 

「ありがとうございます…。」

 

ドミナントは痺れる足を我慢しながら立つ。

 

「…では、何をすれば良いでしょうか…?」

 

「そうだね…肩車すれば天井は届くから、隅の埃を…。」

 

そして、ドミナントは働いたのだ。

 

…………

 

「ひどい目にあった…。次はなんだろう。」

 

ドミナントは、次はノックして入る。

 

「ちわー。」

 

「あっ!提督!来てくれたの?」

 

「来てくれたー。」

 

「遊びに来てくれたぴょん。」

 

「いや、遊びじゃないと思うけど…。」

 

「嬉しいわぁ。」

 

睦月型の皆さんがお出迎えしてくれる。

 

……可愛いなぁ…。癒される。

 

ドミナントはそんなことを思う。

 

「司令官も可愛いね。」

 

「なっ、何故…。隠れエスパーか…?」

 

「「「?」」」

 

皐月はいつも言っているが、今のドミナントはそう思っていたため、心を読まれたと思っている。

 

「それより、どうしたの?」

 

「…あっ、そうだった。手伝いに来たんだ。」

 

「遊びにじゃないぴょん?」

 

「何を?」

 

「手伝い?」

 

睦月型の皆さんは首を傾げる。

 

「年末だから、大掃除だよ。」

 

「あー…。でも、もう終わっているよ?」

 

「そうなのか?」

 

「そうよぉ。」

 

「…の割には、綺麗に見えないが…。」

 

奥は少し物が出ている。そこで弥生が言う。

 

「あれ…全部卯月の…。」

 

「卯月、そうなのか?」

 

「卯月だけじゃないぴょん!」

 

「そうなのか?」

 

「あっ、これボクの…。」

 

「そうか。」

 

「あっ!これ水無月のパンツッ!司令官の変態!」

 

「いや、回避不可能なんだが…。それより!全員片付けてないじゃないか!片付けるぞ!」

 

「「「はーい。」」」

 

…………

 

「やっと終わったな…。というより、本当に卯月のばかりだった。」

 

「ぷっぷくぷ〜。」

 

卯月はそっぽ向く。

 

「はぁ…。まぁ、綺麗になったな。」

 

部屋はピカピカ輝いている。

 

「あと、艤装は…。やってあるみたいだな。」

 

「もちろん。」

 

「よく頑張った。ご褒美だ。」

 

「わーい。」

 

ドミナントは全員に割引券を渡して去って行った。

 

…………

 

「さて…最大の難関、吹雪型の部屋…。」

 

ドミナントは部屋の前に立つ。

 

「…また押しつぶされないように…。」

 

ノックして、おそるおそるあける。

 

「…こんちわー…。」

 

「あっ、司令官。お疲れ様です。終わったんですか?私たちはもう直ぐ終わります。」

 

「汚れが取れない…。」

 

「窓を破らないように…。」

 

吹雪型の皆さんは、丁寧に掃除していた。

 

「おー…。すごい。…手伝うことはなさそうだな…。じゃぁ、これ。全員に渡しておいてくれ。」

 

「わかりました。」

 

「あとは頼んだぞ。吹雪。」

 

「はい!」

 

…………

 

「愉快な仲間たちはどうかな?」

 

ドミナントは歩く。そして、ジナイーダの部屋を訪れる。

 

「ジナイーダ、大掃除だが、手は足りるか?」

 

ドミナントがドアの前で言う。

 

「…手は足りている。大丈夫だ。」

 

ジナイーダはドアを開けて話す。

 

「そうか…。…ん?意外に可愛い部屋だな。」

 

ドミナントはジナイーダの部屋にあるぬいぐるみを見つける。

 

「ぶっ飛ばされたいのか?」

 

「そんなに怒ることかな!?」

 

「プライバシーの侵害だ。他のところを手伝え。」

 

「ひっでぇ言い草。…まぁ、大変なら手伝う。言ってくれ。」

 

ドミナントはそう言って、部屋を後にした。

 

「次は主任、セラフ、ジャックの順か…。」

 

ドミナントは主任の部屋を覗く。

 

「…意外に綺麗だな…。」

 

本人がいないため、無断で開けて確認する。

 

「次は…セラフか…。きれいそうだな。セラフー。」

 

「はい。」

 

ドミナントが呼び、部屋を開けるセラフ。

 

「大掃除は終わりました。」

 

「次の言葉を予測するとは…。まぁ、終わったなら良い。次はジャックか…。」

 

「ジャックさんなら、部屋に荷物は置いていないので、綺麗だと思います。」

 

「そうか?…まぁ、そうなら良いが…。」

 

ドミナントはセラフの言葉を信じて、部屋を確認しない。

 

「最後はここか…。大変なことになりそうだ…。」

 

ドミナントは難関、神様の部屋の前に立つ。

 

「おーい。」

 

ドタドタ…。

 

「な、何?どうしたの?」

 

神様がドアを少しだけ開ける。

 

「騒がしかったが…何かあったか?」

 

「い、いや。別に?」

 

「…少し中を見せてもらおうか。」

 

「えっ!?え、えぇ、なんで…?」

 

「今日は大掃除だよ。」

 

「あ、ああ。そうだったね。大丈夫、一人でできるよ。」

 

「…怪しいな。俺も手伝おう。」

 

「えっ、ちょ、大丈夫だって。」

 

「大丈夫には見えん。」

 

「ほ、本当だよ?」

 

「…嘘だったら?」

 

「……。」

 

「じゃぁ、嘘だったら天界へ直送してもらうから。」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!わかったよ!わかったからそれだけはやめて…。連れて帰されちゃう…。ドミナントに会えなくなっちゃう…。」

 

「その気持ちは嬉しいけどね。」

 

神様は素直に中に入れる。

 

「うわっ。きたねー。」

 

「……。」

 

「キシキ…シ…。」

 

「て、AMIDA!AMIDAがゴミに埋もれているぞ!こちらドミナント。あとは任せろ!」

 

ドミナントはなんとかAMIDAを救出する。

 

「ふぅー…。で、どうするんだ?」

 

「……。」

 

「お菓子の山に、ゴミに、よくわからないおもちゃ…。そして、誰からかの手紙…ん?天界?」

 

「あっ!それダメ!」

 

神様は手紙をひったくる。

 

「今天界って書いて…。」

 

「気のせい!そ、それより、これどうしよう…?」

 

「露骨に話を逸らしたけど…。確かに、これどうしよう?」

 

ドミナントはタオル?みたいな布切れが挟まっていたため、なんとなく引っ張る。すると…。

 

ゴゴゴゴ…ドシャーン!

 

「ギャーーー!」

 

「ドミナントー!」

 

ドミナントはゴミの山に閉じ込められた。

 

「どうしよう。どうしよう。どうしよう。ゴミ、まずはゴミを…袋、袋…!」

 

神様はゴミ袋を空中から出し、次々と入れていく。

 

「今助けるよ!」

 

「む…ぎゅ…ぅ…。」

 

「これは…これ。…うーん…!面倒くさい!服!あなたは元の場所!ゴミはゴミ箱!それか袋!おもちゃはおもちゃ箱!本は本棚!シワも直して!自動的に!はい!動いて!」

 

神様がそう言いながら手を叩くと…。

 

ヒョイ

 

ビュンッ!

 

次々と勝手に動いていく。

 

「むぅ…なっ!?」

 

ドミナントは気がついて驚く。本が宙を待って本棚へ自動的に入ったり、ゴミが消えたり、飛んでいるのだ。

 

「こ、これは…。」

 

「あっ、気がついた?」

 

「気が付いたが…これは…?」

 

「…少しだけ力使っちゃった…。」

 

「ずいぶん便利だな。」

 

「そんなものじゃないよ…。この世で使うと、あとで大変なことに…。」

 

神様が言いかけた途端…。

 

ゴッ!

 

「ギャッ!」

 

置き物が落ちてきたのだ。

 

「だ、大丈夫か…?」

 

「痛いよぉ…。」

 

さらに…。

 

ツルッ

 

「あ…。」

 

ゴチン

 

歩いた途端に滑り、頭を床にぶつける。

 

「ふぇぇぇん。」

 

「……。」

 

カサ…

 

「!?ゴ、ゴキブリ…あっち行って!」

 

カサカサカサ…

 

「なんかいっぱい出てきた!追ってこないでー!」

 

神様は走って逃げる。

 

「しょうがない。くらえ!」

 

シューーー!

 

カサカサカサ…

 

ゴキブリキラーを使って、ゴキブリを追っ払う。

 

「なんとかなったぞ。」

 

「あ、ありがと…。」

 

ドシーン!

 

「う…。」

 

壁にぶつかる。

 

…ドサッ

 

「痛いよぉ…。」

 

「…災難だな。よしよし。」

 

ドミナントが痛い場所を撫でようとしたが…。

 

「危ねぇ!」

 

「!?」

 

ドシーーン!

 

本棚がドミナントたちがいた場所に落ちてきたのだ。堪らずに神様を突き飛ばす。

 

「痛い…。」

 

だが、突き飛ばされて、下敷きにならなくて良かったが、またも壁に…。

 

「…もしかしてだが、力を使うと、ものすごく不運になるのか?」

 

ドミナントが聞く。

 

「…うん…。」

 

神様は少し泣いていた。

 

「本棚、戻さないとな。あと置き物とかも。」

 

「…うん…。」

 

「…もう何も起こらないってことは、終わった…のか?」

 

「少しだけしか使わなかったから、時間も少しだけなの…。」

 

「…全力出したら死ぬな。」

 

「うん…。」

 

ドミナントと神様は本棚や置き物を戻す。

 

「ふぅ…。で、さっき絶対に痛かったろ。見せてみろ。…うわー…タンコブできてる…。かわいそうに…。よしよし。」

 

ドミナントは優しく撫でる。

 

「うぅ…グスン…。」

 

「絆創膏も貼ってあげる。見せてみろ。…痛そうだな…。」

 

「ひやっとする…。」

 

「我慢しろ。あと、ベッドで安静にしていろ。あとはやっとくから。」

 

「ありがと。」

 

「別にいいさ。」

 

ドミナントとAMIDAは協力して片付けた。

…………

 

「…次は海防艦エリアかな?」

 

ドミナントは、新しく出来た海防艦の寮へ行く。

 

「にしても、全員やると、字数が半端なくなるし…。ここで書くのは最後にするか…。」

 

ドミナントが独り言を呟きながら部屋を覗くと…。

 

「クナ、そこの窓の掃除は頼むっしゅ。ガッキは机の上、ハチはベッドを頼むっしゅ。占守は床をやるっす。」

 

占守は次々と国後、八丈、石垣に指示を出す。

 

「おぉ。しむしゅしゅしゅは計画性があるなぁ。…可愛いだけではなく。」

 

ドミナントはコソコソ言ったあと、占守の近くへ行く。

 

「やぁ、来…。」

 

「しれぇは天井をお願いっす。」

 

「…気づいていたんだ。…じゃぁ、さっき…聞こえてた?」

 

「?」

 

「…知らないならそれで良い。」

 

そして、ドミナントは天井をやる。

 

「ちょっと、そこ邪魔。」

 

「ごめんクナ。」

 

国後は窓をやっていたはずだが、いつのまにかドミナントの近くにいる。

 

「全く、本当に邪魔ね。」

 

「…すみません。」

 

「執務室で鉛筆でも削ってたら?」

 

「クナ、さすがに泣くよ?」

 

ドミナントは天井をやりながら言う。

 

「…占守、そこのバケツ取って。…占守?」

 

ドミナントは見るが…。

 

「…クナか…。」

 

「…え?占守と間違えたぁ!?はぁ?なにそれ、帰るっ!」

 

「いや、ここ君の鎮守府だし君の部屋なんだけど。」

 

「しむ姉、ベッド終わったよ〜。」

 

「ハチ、ありがとっしゅ。終わった順に、択捉型、御熊型、日和型の部屋に行って手伝うっしゅ。」

 

「わかった。」

 

八丈は次の部屋へと行った。

 

……なるほど。効率が良いな。次々と増えていって、時間が短縮されるわけか…。

 

ドミナントは感心する。

 

「提督…手伝う?」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

「そうですか…。」

 

「…石垣、その気持ち、ありがとな。」

 

ドミナントはつい、頭を撫でてしまった。

 

「ずるい!」

 

「あ…しまった…。」

 

……面倒なことに…なった…。

 

他の艦に見つかればどうなるか…。

 

「占守にもするっしゅ!」

 

こうやって見た艦も要求する。それだけならいいが…。

 

「しむ姉遅い…って、ずるい!」

 

そう、さらに連鎖が続いていくのだ。

 

……今度から、頭を撫でるのは撫でる艦娘と二人きりの時だけだな…。

 

ドミナントは思う。何人いるかわからない艦娘たちの列を見ながら。

 

…………

 

「さてと…全部屋やったな…。」

 

ドミナントはボロボロになりながら言う。

 

「あっ、執務室…。」

 

執務室のことを思い出し、走る。

 

……扶桑型の二人、すまん。…あとで間宮アイスを奢ってあげよう。

 

そして、執務室のドアを開ける。

 

「遅れてすま…。!?」

 

開けて驚いた。

 

「…こ、こんなことをするなんて…。」

 

「…あ、あんなものがあそこに入るのですか…?明らかに物理法則を無視しています…。」

 

「……。」

 

扶桑型の二人は、禁断の引き出し(上から4番目)を開けてしまっていたのだ…。

 

「…何を…している…?」

 

「あっ…提督…。」

 

「こ、これは…その…。」

 

「…あまりきれいになっていないのを見ると、ここに来て数分でその引き出しを開けて、片付けるのを忘れて夢中で見てしまった。…と、いうことかな?」

 

「……。」

 

「夢中…。」

 

「…なるほどな…。」

 

ドミナントは紅茶カップを持つ。

 

「…まぁ、失敗は誰にでもある。そのことは忘れるが良い。」

 

紅茶をなれた手つきで入れていく。

 

「…て、提督…これ、私たちに似ていませんか…?」

 

「えっ!?」

 

ドミナント自身驚いて、見てみる。

 

「…あー…。確かに、少しだけ似てるね…。もうアレに出来ないな。気が引けるから。」

 

そして、紅茶の作業をする。

 

「…まぁ、はい。紅茶。これでも飲んで落ち着け。」

 

「はい…。ありがとうございます…。」

 

「いただきます…。」

 

扶桑型の二人は飲む。しかし、ドミナントは飲んでいない。

 

「…?あれ?目の前が暗く…。」

 

「お姉さま…?」

 

二人は倒れ、意識がなくなった。

 

…………

 

「…ん?ここは…?」

 

扶桑は秘書艦の椅子で目を覚ます。

 

「目が覚めたか?」

 

「提督!?…寝ちゃってました…?」

 

「ああ。執務室の掃除するって手伝いに来てくれたらな。おそらく、疲れて寝てしまっていたのだろう。そのおかげでピカピカだ。」

 

「そうでしたか…。…でも、何か忘れているような…。」

 

「お礼に間宮アイスを奢ることか?」

 

「アイス…?…そうでしたっけ?」

 

「そうだ。」

 

ドミナントは、あの紅茶に睡眠薬と忘れ薬を混入させていたのだ。残念だが、ああいうお楽しみはない。騙して悪いが、R-18ではないのでな。そして、一人で全て掃除したのだ。

 

「う…ん…。…ハッ!?お姉さま!?」

 

壁に寄りかかって、体育座りをしていた山城が目覚める。

 

「…あれ?何も思い出せない…。…不幸だわ…。」

 

「まぁ、そんなこともある。間宮アイスを奢るから、気持ちを切り替えろ。」

 

「わかりました…。」

 

山城も騙される。

 

…………

間宮食堂

 

「ちはー。夜だけど、やってるかい?」

 

「あら提督。本当なら閉まっているけど、この年最後だから特別に受付します。」

 

「それはありがたい。なら、この二人に間宮アイスを一つずつと、俺にお茶をちょうだい。」

 

「わかりました。」

 

間宮さんは笑顔で応えてくれた。

 

「…と、その間にお金を…。」

 

「提督、毎度ありがとうございます。お釣りです。」

 

「ありがとう伊良子。」

 

レジの伊良子も笑顔で対応してくれた。

 

「お待たせしました。年末限定間宮アイス二つです。あと、提督にお茶です。」

 

間宮さんが持ってくる。

 

「えっ?いや、間宮さん。限定じゃなくてただのアイスです。」

 

ドミナントが言うが…。

 

「いいんですよ。作りすぎちゃったので。」

 

「そうか…。ありがとう。」

 

「いーえ。」

 

間宮さんはいたずらな笑みを浮かべたあと、奥に行った。ドミナントは目で追っていた。その後ろで、扶桑型姉妹が美味しそうにアイスを食べていた。伊良子はドミナントを見ていた。

 

…………

娯楽室

 

「ん〜。夕食も美味しかったし。そろそろテレビ見るか…。」

 

ドミナントはテレビをつける。

 

「ふむ…紅白…笑ってはいけない…ドラマ…などか。」

 

チャンネルを回しながら呟く。

 

「あっ!提督、何やっているの?」

 

「年末は夜戦でしょ!」

 

川内と那珂が来る。

 

「夜戦って…大晦日だよ。全員集合だろ?」

 

「えっ!?みんな集めるの?」

 

「いや、違う!ネタだ。」

 

「あっ、そうなんだ〜。」

 

「テレビを見ようと思ってな。…なのに、艦娘たちが来なくてさ…。寂しいもんだよ。」

 

ドミナントはため息混じりに言う。

 

「いや、艦娘たちはそれぞれ集まって、遊んでいるよ?」

 

「何それ?聞いてないんだけど…。」

 

「あー…。多分、恐れ多いんじゃないかな?」

 

「なんでよ。俺も普通の人間だよ?」

 

「普通…?」

 

「…少しかけ離れているね。」

 

「…まぁ、ACになるけどさ…。」

 

「ま、大晦日だから、勇気を出して来たりするんじゃない?私は夜戦しに行くけど。」

 

「那珂ちゃんはー、大晦日ライブがあるから。」

 

「お、おう…。二人とも頑張ってな…。」

 

「提督もねっ。」

 

「じゃぁ。」

 

二人は外へ出て行った。

 

…………

1時間後

 

「アハハハハ。」

 

…………

2時間後

 

「おー。そうくるか…。」

 

…………

3時間後

 

「……。」

 

…………

4時間後

 

「…つまんね。みんなどこだ?」

 

ドミナントは探し回る。

 

…………

 

「やっぱ会議室だよな。」

 

ガチャ…。

 

ワイワイガヤガヤ

 

「やったー!夕立の勝ちっぽい!」

 

「負けたー。」

 

「むぅ…。」

 

「じゃぁ、有り金全部よこすっぽい。」

 

「金ではないがな。ほれ、おやつだ。」

 

「いーじゃん!盛り上がってきたねー!」

 

艦娘や愉快な仲間たちが集まって遊んでいた。

 

「……。」

 

ドミナントは突っ立ったままだ。

 

……俺は約4時間何していたんだ…。一人で…。ぼっちで…。

 

ドミナントの目から水が流れているのは気のせいだろうか?

 

「あっ、司令官。呼びに行こうと思っていたところです。」

 

吹雪がパーティーハットを被り、美味しそうなものを皿に乗せて食べながら来た。

 

「……。」

 

「さぁ、司令官も楽しみましょう。」

 

「……。…いや、いい。帰る。」

 

「えっ?ど、どうして…?」

 

「帰りたいからだ。じゃぁな。」

 

「えっ?ちょ、司令官?司令官ー!」

 

ドミナントは廊下を走って行った。

 

「どうしたの?」

 

「司令官が…拗ねちゃった。」

 

「あー…。でも、来るから平気だよ。」

 

「そうでしょうか…?」

 

「平気平気。」

 

吹雪は廊下を少し眺めたあと、中に戻った。

 

…………

 

「寒い〜。寂しい〜。一人だけの大晦日〜。」

 

ドミナントは堤防を散歩する。波が穏やかだ。

 

「ん〜…。何しようかな。…少し座って休もうかな。」

 

ドミナントは堤防に座り、足をブラブラさせながら休む。

 

……今何時だろう?…11時30分か。あと少しで今年も終わりだな。

 

ドミナントは思う。

 

……今年は色々あったなぁ…。というより、着任して1年も経っていないのか。色々ありすぎだろ…。来年は平和な年が良いなぁ。

 

ドミナントは思うが、もちろん、平和にさせるつもりなどもとよりない。

 

……星がきれいだなぁ。それほど寒いのか。

 

ドミナントは空を見ながら思う。そこに…。

 

「…あら。」

 

「…む。」

 

「ん?赤城に加賀か…。どうしたんだ?」

 

「提督こそ。…私たちはそこのベンチに座って、穏やかな海と煌く星空を見に来ました。」

 

「…あらかた、拗ねているのでしょう。」

 

「…何故わかった?加賀。」

 

「そのような人物だからわかります。」

 

「そうか…。風邪をひかないようにな。病気は入渠では治らないからな。」

 

「分かっています。提督も風邪を引かないよう気を付けてください。」

 

「あなたが病気になったら、誰が指揮を取るんですか?そこのところを考えて行動してください。」

 

「ああ。わかっている。」

 

……加賀も、きつい言い方するけど、一応心配してくれているんだな…。

 

ドミナントが口元を緩めながら言う。

 

「…提督もベンチに座りません?」

 

「それは良い考えだが…。加賀はそれで良いのか?」

 

「私は赤城さんが望むことをします。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

そして、ドミナントと赤城と加賀は堤防のベンチに座る。

 

「…今年も色々ありましたね。」

 

「…そうですね。」

 

「そうだな。」

 

「提督が着任されてから覚えているのは、弓道場を建設してくれたことと、畑に種を植えたこと、大本営へ連れて行ってもらえたこと、夜の鎮守府を探索したこと、『ミッドウェー』を共に倒したこと…。あと、話したりです。」

 

「そんなに提督と共に過ごしたんですか…。私はジャックさんと色々ありました。昔の話を聞かせてもらったり、話したり、共に提督を観察したり。…提督には、弓道場を建設してくれたことは感謝しています。」

 

「そうか…。そんなにあったか…。俺も色々あったなぁ…。今も覚えているのは、神様やAC勢と出かけたことや、一気に艦娘が増えたこと、旅行に行ったり、『ミッドウェー』と戦ったり、畑をしたり、養殖場の依頼をしたり、艦娘たちと話したり、大本営に行ったり。…爆発して消えそうになったけど。スティグロと戦ったり…色々だな。」

 

ドミナントたちは思い出しながら空を見る。

 

「今日は満月か…。」

 

そのうちに…。

 

「あっ、提督、あと30秒で今年が終わります。」

 

「長かったですね。」

 

「あと少しか…。」

 

ドミナントが言い終わった途端…。

 

「あっ!司令官いました!皆さん!急いで!」

 

吹雪がみんなを引き連れて来る。どうやら、結局探しに来てくれていたらしい。

 

「…別に楽しんでてよかったのに。」

 

「もう!いつまで拗ねているんですか!皆さん、司令官と一緒に年が変わる瞬間を過ごしたいから来たんです!」

 

吹雪が少し頬を膨らませながら言う。

 

「…そうか。なら、みんなこっちに来い。一緒に新しい年に変わる瞬間を過ごそう。」

 

ドミナントが口元を緩ませながら言う。

 

「あと10秒です。」

 

赤城が言う。

 

「さて、今年も色々あったな。」

 

「そうですね司令官。」

 

「…みんな、今まで俺のわがままに付き合ってくれて感謝する。」

 

「今まで?違います。これからもです。提督。」

 

「ふふっ。みんな、本当に…。」

 

「あと1秒…。」

 

「0…。」

 

「ありがとうな!」

 

ドミナントは笑顔で言った。嬉しそうで、優しい笑顔で。その時、大半の艦娘の顔が赤かったのは気のせいだろうか。いや、きっと気のせいではないのだろう。あのドミナントが、こんな笑顔を見せるのだから…。

 

…………

新しい年

 

「朝日ですね。」

 

「そうだな。」

 

「明るい…新年の…始まり…。」

 

「まさか、みんなここで起きているとは…。寒いだろう?」

 

「いいんです。司令官と一緒にいたいからです!」

 

「…そうか。さて、朝日を拝んで…。新年の抱負でもするか。」

 

「そうね。私は…もっと強くなるわ!駆逐艦とは思えないくらいの!」

 

「大きな抱負だな。霞なら絶対に出来るよ。断言できる。」

 

「う、うるさいわね!そ、そんなこと言ったって…嬉しくなんてないんだからねっ!」

 

「はっはっは。そうかそうか。」

 

「私は…遠征で失敗しないようにしたいです。こんな私でも、もっと司令官のお役に立ちたいです。」

 

「ありがとう三日月。その気持ちだけでも嬉しい。失敗なんて誰にでもあるんだからさ。別に気にしなくて良いんだよ。」

 

「本当に甘い男なのだな。…だが、私はこんな甘い男の下で、その男を支える存在になりたいな。」

 

「告白かな?」

 

「…そういう馬鹿なことを言うのはやめてほしいがな。」

 

「冗談だよ。ありがとうジナイーダ。」

 

「私も、ドミナントさんの支えになりたいです。」

 

「セラフもありがとう。感謝する。」

 

「ギャハハ!俺は今年も面白ければ文句はないかな?」

 

「そうか。面白い一年になると良いな。」

 

「私は、店が繁盛することだ。」

 

「ジャック、お前はいつレイヴンを転職して、店を本業にした?…まぁ、いいけど。」

 

「私は、今年ことドミナントに振り向いてもらう!」

 

「そうか。…もうとっくに振り向いてはいると思うがな。」

 

「…両思いになる!」

 

「まぁ、頑張れ。俺の気まぐれで、たまたま命中するかもしれんしな。」

 

「あれ?いつもならひどい言葉を送ってくるはずじゃ…?」

 

「そんなわけなかろう。俺は、お前のそういう真っ直ぐな気持ちは好きだけどな。」

 

「ど、どうしたの?ドミナント…。」

 

「何がだ?…どうした?」

 

艦娘たちも、愉快な仲間たちもキョトンとしている。

 

「これが提督の素ですか…。」

 

「結構素直なのね。」

 

「うん!司令官は可愛いね!」

 

「?俺が素直な感想を言うのはダメか?」

 

「いや、そういう感じじゃないんだけど…。」

 

「…つまり、俺は今まで、沢山のことを学んだり、体験したりした。それでさ、君たちがとても大切で、必要な存在かわかったんだ。そしてさ、今まで、そしてこれからも迷惑をかけてごめんって思っているし、君たちのことが大好きで、俺に慕ってくれてありがとうって思っていることを伝えただけだよ。」

 

「司令官…。」

 

「提督…。」

 

「しれぇ…。」

 

艦娘たちは笑顔になったり、口元を緩ませる。

 

「全く、本当に馬鹿だな。」

 

「?ジナイーダ?」

 

「私たちもお前のことをそう思っているんだ。いつも私たちに声をかけてくれるだけで、私たちは頑張れる。部下を思えば、上司も思われる。いい例だな。…もちろん、私もお前を支えたいと思っているしな。」

 

ジナイーダも口元を緩ませながら言う。

 

「…ありがとな。…じゃぁ、俺の新年の抱負は、艦娘のことを思い、何をどうするか考えて、しっかり指示を出し、休日でもなるべく艦娘や仲間と話したりして、楽しい時間を過ごす!それが俺の抱負だ!」

 

ドミナントが大声で言い、艦娘は笑っていたり、嬉しそうに目を細めていたり、口元を緩ませていたりした。

 

…………

 

「えー、新年、明けましておめでとうございます。これからも、どうか俺のわがままに付き合って…。」

 

「提督、それはもう聞いたよ。さっさと乾杯しよう?」

 

「…そうだな。じゃぁ、するか!かんぱ〜い!」

 

そう、ドミナントたちは新年会をしている。

 

「お料理はまだまだたくさんあります。好きなのを食べてください。」

 

セラフが笑顔で料理を持ってきてくれた。

 

「ありがとう。」

 

「いえいえ。」

 

セラフはそう言ったあと、席に着く。そこに…。

 

「て、提督…。」

 

「ん?天龍、どうした?」

 

「…俺が…。俺がお年玉が欲しいって言ったら変か…?」

 

「どこが変なの?あげるよ。銀行に数千万あるから、全員分として、1〜3万円くらい。欲しいものがないからたまるだけだし、鎮守府の運営は国が資金出してくれるし。第一、俺ここに住んでるし。ところで、何に使うんだ?」

 

「その…。」

 

「天龍ちゃんはぁ〜、提督に…。」

 

「わー!待て!龍田!内緒のはずだ!」

 

天龍が慌てて止める。

 

「内緒?」

 

「な、なんでもない!あとで話す!」

 

「そうか。わかった。はい、3万円。大事に、自分のことに使えよ。」

 

「え…。自分のこと…だけか…?」

 

「…他の人のためでも良い。大事に使えばな。」

 

「お、おう。」

 

天龍は席に着いた。もうすでに皆は食べ始めている。

 

…………

その夜

 

『提督…いいか…?』

 

天龍がドアをノックする。

 

「?どうした?」

 

ドミナントはドアを開ける。

 

「これ…作ってきたんだが…。食べてみてくれ…。」

 

「…カレー?美味しそうだな。」

 

「あ、ああ。感想は言わなくていい。そ、それじゃぁ、俺は部屋に戻…。」

 

「あらぁ〜、逃さないわよぉ〜。」

 

「た、龍田…。」

 

「天龍ちゃんがずっと部屋に閉じこもって作っていたのに、感想がないなんてひどい話よぉ〜。」

 

「む?そうなのか?天龍。」

 

「ち、違…。そ、そんなわけ、な、ないだろ…?ば、馬鹿らしい…。」

 

「…(慌てている天龍も可愛い。)」

 

「あらぁ〜、提督?何か言ったかしらぁ〜。」

 

「い、いや、何も言っていない。だから薙刀を出すのはやめよう。」

 

そして、ドミナントはカレーを食べる。

 

「う、美味い…か…?」

 

「む…。うまいぞ!これ!」

 

「そ、そうかそうか!ならよかった!」

 

「ありがとな。天龍。」

 

ドミナントは天龍の頭を撫でる。

 

「……。」

 

天龍は顔を赤くし、俯いて黙ってただ撫でられていた。

 

「ふふ。」

 

龍田はそれを見て、目を細めて嬉しそうだ。

 

「お小遣いまだ余っているだろう。それで好きなのを買うといい。」

 

「お、おう…。」

 

……可愛い。

 

ドミナントは調子に乗って30分近く撫でていたそうだ。




多分今までで最長。カルタとタコ上げ、羽つきはオチが丸見えなのでやめました。ジナイーダとセラフがガチバトルして、ドミナントが最下位、そして、タコは一番高くあげたのが主任で、飛ばなかったのが神様(あとでドミナントによしよししてもらった)。
今年もよろしくお願いします。


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特別話 成人の日

特別話なので。これからも休暇を予定しております。


…………

第4佐世保 執務室

 

「ん〜。暇だ。今日はやるべき書類もない休暇だからね〜。」

 

ドミナントが呟く。すると…。

 

「司令官、お疲れ様!」

 

「まだ何もしてないよ…。」

 

本日の秘書艦である長良が元気に言う。

 

「それにしても…。なんでそんなにハァハァ言ってんの?発情期?」

 

「違います!走り込みをしてきたんです!それに、今の言葉すっごく失礼です!」

 

「そかー。…からかってみると結構可愛いな…。

 

「?何か言いました?」

 

「いや、別に…。それより、走り込みって…。この時期?それに、足の筋肉がどうとか言ってなかったっけ?」

 

「…それは…。その…。」

 

「…まぁ、好きなんだろうな。走り込み。そうやって鍛えて、仲間をしっかり守れよ。」

 

「はいっ!」

 

ドミナントたちが話していると…。

 

ピーピーピーガーーーーー…

 

大本営から連絡が届く。

 

「…1月13日…。何かあったっけ…?」

 

「…さぁ…。」

 

ドミナントは紙を見る。

 

…………

 

拝啓 各地の鎮守府提督様

 

本日は1月13日。成人の日となります。成人の日とは、実は1月8日〜1月14日までの間の月曜日に該当する日となっております。今年で二十歳の人は、成人式を開きましょう。

 

敬具 大本官記念日連絡係

 

…………

 

「…こういうケースは前にもあったよな?」

 

「…そうなんですか?」

 

「そうだよ。」

 

ドミナントはその紙の最後を見て、一つ疑問に思った。どうやら、長良も疑問に思ったみたいだ。

 

「…長良、俺が考えていることわかるか?」

 

ドミナントが長良に聞く。すると長良は頷きながら言う。

 

「…はい…。大本営が大本官と間違わえて書かれていることですね!」

 

「違う!てか、気がつかなかった!なんで二十歳未満の奴が提督出来るんだよ!基準おかしくないか!?」

 

「司令官…。」

 

「ん?なんだ…?」

 

「…それ、司令官が言えることですか…?」

 

「……。…俺も一応は人間だ。」

 

「…人間って一体…。」

 

長良は困惑した。この男は人間なのかって。

 

「はぁ…。まぁ、それより暇だから、この鎮守府で二十歳の人を見つけよう。」

 

「たくさんいますよ?」

 

「ここでただただ鉛筆を削るよりかは良いだろう。」

 

「…暇なんですね。」

 

こうして、ドミナントたちの暴走が始まった。

 

…………

 

「あっ、足柄さんじゃないですか。」

 

ドミナントが早速足柄を見つける。

 

「あら提督。出撃ですか?」

 

「んにゃ違いますよ。」

 

「何かしら?」

 

「歳って幾つですか?」

 

「…は?」

 

足柄が少し冷たく返したが…。

 

「いや、歳って幾つかなと。」

 

ドミナントはマイペースを崩さない。

 

「…あら〜、提督〜。この世に、女性に言ってはいけない言葉があるって知ってますか〜?」

 

長良は少し離れる。足柄の顔が引きつっている。

 

「え?初めて聞いたな…。てか、なんか怖いんだけど…。」

 

「あらそう〜。その言葉を言ったら、どんなことがあるか知りたいですか〜?」

 

「…確かに知りたいな。」

 

「あらそう。例えば〜。こんな〜ことよっ!」

 

ドガァァ!

 

「ぐはぁ!」

 

明らかにドミナントが悪い。

 

「これで分かったかしら?」

 

「は、はひ…。わかびました…。」

 

足柄は歩いて行った。

 

「…司令官、いくらなんでも無謀すぎます…。」

 

「な、長良はこうなると知っていたのか…?」

 

「女性に年齢を聞いたらまず間違いなく張り倒されます。」

 

「そう…なのか…。」

 

「はい…。」

 

「ところで、長良は歳いくつなんだ?」

 

「…今話したこと聞いてました?」

 

…………

 

「ジナイーダはどうだろうか?」

 

「ジナイーダさん…ですか。」

 

「うむ。ジナイーダは俺とさほど歳が変わらないように見えるからな。」

 

ドミナントが言い、ジナイーダの場所へ行く。

 

「…む。ドミナントか?」

 

「あたり。ところで、何才?」

 

「天才だ。」

 

「…いや、ふざけないで…。」

 

「ふざけないでだと?ふざけているのはどっちだ?」

 

「あれ…?もしかして…怒ってらっしゃる…?」

 

「別に。ただ、女性に対して歳を聞くなど、やってはいけない行為を知っててやっているのか、知らないでやっているかによって決まる。」

 

「えーっと…。し、知りませんでした。」

 

「そういうところだ!」

 

ドガァァン!

 

「ぐぼはぁぁぁ!!」

 

ガシャァン!

 

ドミナントが吹っ飛び、壁に当たる。

 

「…嘘をついているかいないかなど、すぐにわかる。」

 

ジナイーダは不機嫌そうに歩いて行った。

 

「…司令官、もう懲りましたよね?」

 

長良が駆け寄りながら言う。

 

「…あ、あぁ…。もう懲りたぞ…。というより、これ以上は体が持たん…。」

 

「……。」

 

長良は苦笑いした。

 

…………

娯楽室

 

「なんかいいのやってないなー…。」

 

「そうですね…。」

 

ドミナントたちがテレビのチャンネルを回している。

 

ピッ

 

『故郷に帰りたまえ。うるわしの地獄の…』

 

ピッ

 

『これが目に入ら…』

 

ピッ

 

『で、味は…?』

 

ピッ

 

『グリッド1!戦闘不能!よって…』

 

ピッ

 

『ニッコニッコ…』

 

ピッ

 

『ただいま、成人の日を祝う…。』

 

プッ

 

「なんもないな…。」

 

テレビを切る。

 

「あっ、司令官…。今少し気になるものが…。」

 

「?わかった。」

 

ドミナントはテレビをつけた。

 

『こちら、第3横須賀鎮守府でも成人式が行われるようです。』

 

「…は?どゆこと?」

 

ドミナントはわけわかめだ。

 

「二十歳未満の提督がいたわけ?」

 

「そのようですね…。」

 

「マジか…。しかも、俺より全然イケメンじゃないか…。」

 

ドミナントが言う。

 

「そうですね。」

 

「長良まで…。…許さんぞ?そんな男と結婚など…。結婚するなら一言でも言え。どこの馬の骨か知らねぇ野郎がうちの大切な娘…じゃない。艦娘と結ばれようなどとおこがましさにも程がある…。」

 

「司令官、今娘って言いませんでした?」

 

「あ…、いや…。別に…。」

 

「それに、結婚しません。そんな人より好きな人が近くに…。」

 

「さて、そろそろ仕事するか。」

 

「…長良、司令官のことが…。」

 

「仕事仕事。」

 

「……。」

 

「…言わせないよ?」

 

ドミナントは絶対に言わせないようにする。そこに…。

 

「はぁーい!久しぶりに来たよー!」

 

神様が来る。

 

「うおっと。簡単に避け…。ぐはぁ。」

 

「ふっふっふ。私も学習くらいするよ!」

 

神様はドミナントの避ける場所を予測して抱きついてきたのだ。そこに…。

 

「てーとくのHeartを掴むのは、私デース!」

 

「どぅはぁ。な、なぜ金剛も…。」

 

反対側から金剛が抱きついてきた。ドミナントは予測できていなかった。

 

「お?なんだあれ。楽しそうじゃねぇか。鍛えてんのか?」

 

「あっ、天龍ちゃ〜ん。」

 

天龍もやって来て、龍田もやって来た。

 

「あっ!提督が襲われてる!助けなくちゃ!」

 

「いや、あれ絶対に遊んでいるっぽい〜。混ざるっぽい!」

 

「卯月もやるぴょんっ!」

 

「む?なんだアレは?」

 

「集まって暖め合っているのか?」

 

「むさ苦しいです…。北上さん、向こういきましょう?」

 

「ん〜?でも、私も少し混ざろうかな〜。」

 

「そうですね!混ざりましょう!」

 

「赤城さん、あれ何かしら…?また提督が変なことを…。」

 

「まだお昼は早いはずでは…?」

 

「提督グッズか…?」

 

「…ゲーム…大会…?」

 

「盛り上がってきたねー!」

 

「なんだ!?これは!?娯楽室が…娯楽室が艦娘で埋まっているぞ!」

 

「ここを通りたいのですが…。ドミナントさんはどこに…?」

 

「…店に誰も来ないと思ったらこんなところにか…。」

 

ワイワイガヤガヤ…

 

艦娘がいつの間にか大勢集まって、娯楽室がパンパンだ。

 

「ぐぁぁ…つ、潰れる…。」

 

「例えあの世でも一緒だよ…。」

 

神様が耳元でささやく。

 

「いや、マジで潰れるから…。てか、暑いな…。」

 

「提督ー…、私のHeartの想い、伝わったデスカ…?」

 

金剛も耳元でささやく。

 

「二人とも耳元で囁くのやめい。しかも、そのあつさじゃないし。てか、本当に…誰か…。」

 

ドミナントが言うと…。

 

パカッ。

 

「「「!?」」」

 

床に四角い穴が開く。

 

フッ。

 

その中にドミナントだけ落ちた。

 

「に、逃げられた!早く追わなきゃ…。て、動けない…。」

 

「ちょ…。皆…どいてほしいネー…。」

 

娯楽室がぎゅうぎゅう詰めのため動けない二人だった。

 

…………

 

「うーん…。はっ!ここは…?」

 

「司令官。起きましたか。」

 

長良がドミナントの上で言う。

 

「て、顔近い近い…。息が普通に顔にかかってるから…。」

 

「す、すみません…。でも、ここ狭くて…。」

 

ドミナントたちがいるのは、暗くて、狭い場所だ。箱の中…の方が例えやすいだろうか…?

 

「で、なんでこうなっているんだ?」

 

「はい…。実は、司令官を落としたのは長良です。そして、こっそり移動させるつもりでした…。」

 

「移動?」

 

「はい。妖精さんが掘ったと思いますけど…。流石に二人は入れなかったみたいです…。」

 

「…なるほど。俺を引きずって行こうと思ったら何かに引っかかり、それをなんとかしようと無理して上を通ろうとしたらこうなったと。…違うか?」

 

「…はい…。」

 

つまり、二人は挟まっているのだ。

 

「…落ち着け。落ち着け。冷静に。ここで慌てたら、出れるものも出れない。」

 

ドミナントは自分を落ち着かせようとする。実際、挟まると二度と出れないと思う恐怖で暴れる人もいるのだ。

 

「司令官…。落ち着けますか…?よかったら、飴舐めます…?」

 

「なんであるんだよ…。てか、どこだ?」

 

「長良のポケットの中です。」

 

「取れないな…。」

 

「…もう一つあります…。」

 

「どこだ?」

 

「…口の中に…。」

 

「…うん。ごめん。耳が遠いのか、なんて言ったか聞こえなかった。口の中って聞こえたものでな…。変態だな俺。」

 

「言いました。」

 

「…マジかぁ…。」

 

ドミナントは目の前が真っ暗になる。…元々暗い場所だが。

 

「…舐めますか…?」

 

「…長良、長良の心臓がすごくドキドキしているのがわかってこっちが恥ずかしいんだけど…。舐めないよ?口から口はアウトの気がするし。」

 

「そうですか…。」

 

「うむ。想像したら…な…。口から唾液と共に甘い飴を口移しすることを想像したら、股座がいきり立つから。」

 

「…表現が…すごく恥ずかしいです…。長良はそんなことを…。」

 

暗闇で見えないが、耳まで赤いのがわかった。

 

「過ちをする前に気がついて良かったな。さて、どうやってここを抜け出すか…。」

 

ドミナントは考える。すると…。

 

(いいものが観れると思ったです。)

 

(あーあ。意気地なしの本性が出たです。)

 

(男は黙って受け入れるです。)

 

妖精さんがヤジを飛ばしている。

 

……お前ら…。見てるなら助けろや。

 

(ただで助けるのは嫌です。)

 

(図々しいです。)

 

(変態です。)

 

……あーもううっせうっせ。プリンやるよ。

 

ドミナントが交渉を持ちかける。

 

(プリン…。あの大きさのままです?)

 

……勿論だ。

 

(滑らかにとろける…。)

 

……そのプリンだ。

 

(ポケ○ンなんて食べれないです。)

 

……盛大に勘違いしているな…。黄色いやつだ。

 

(それはピ○チュウです。)

 

……頭の病院から抜け出して…いや、違うな。そこの妖精、お前普段初雪の部屋にいるだろ。

 

(何故分かったです?)

 

……ゲームの話ばかりだからだ。

 

そこで、妖精さんたちが集まり、何か話している。

 

(…プリン…。でも、少し試してみたいです。)

 

(プリン…諦めなくちゃダメです?)

 

(ドミナントの度胸を試すです。…プリン…。)

 

……プリン欲しいならプリンにしろ!俺の度胸を試すって言ったって無理だろ!この状況じゃ。

 

ドミナントは心の中で話す。長良は抜け出そうと試行錯誤している。

 

(((…決まったです。)))

 

……おお。決まったか。なんだ?

 

(飴を舐めるです。)

 

……は?

 

(艦娘をどれほど愛しているのか試すです。)

 

……ちょ、ちょっと待て。もちろん、長良のポケットの奴なんだろうな?

 

(そんなわけないです。)

 

……それ以外の方法は…。

 

(((ないです。)))

 

……ちくしょーー!

 

ドミナントは考えている。すると…。

 

「司令官、何を考えているんですか?」

 

長良が聞いてきた。

 

「…うむ…。非常に困ったことなんだが…。ここを出るにはどうやら…うん…。長良の…うん。飴を…うん。舐めなきゃダメらしい…。」

 

「……。」

 

何を言い出すのかわからないドミナントに真っ白に固まる長良。

 

「…妖精さんに頼んだら、その見返りがこれらしい…。もしかしたら、ここから出る方法がないかも知れん…。」

 

ドミナントは深刻そうに言う。

 

「…すみません。」

 

「…え?」

 

「飴、舐めきっちゃいました…。」

 

「…よくやった、長良。」

 

ドミナントはニヤける。

 

(聞こえてたです。)

 

(あと少しだったです…。)

 

残念がる妖精さんたち。

 

「約束どおり、プリンでなんとかしてくれるな?」

 

(((チッ。)))

 

「ホントに口悪いな…。」

 

そして、ドミナントたちは無事地上へ戻れた。

 

…………

 

「成人の日から、随分と話の内容がおかしくない?」

 

「い、いきなりどうしました?もしかして、地下の出来事が…。」

 

「いや、なんとなくそんな気がしただけ…。」

 

「成人の日…。つまり、成人式ですか…。私たちはすることがないと思います…。」

 

「なんで?」

 

「私たちは生まれた姿がすでにこの状態です…。それに、私たちには権利が…。」

 

「なら、やるか。」

 

「えっ…?」

 

「そうだ。誕生日もやるか。…と言っても、最初の四人以外の誕生日は同じだけどな。」

 

「えぇ!で、でも…。」

 

「む…。それだけでは不満だったか…。困ったな…これくらいしか思いつかない…。」

 

「そういう意味ではありません。」

 

「?」

 

「いいんですか…?」

 

「当たり前だ。国や俺に尽くしているのに、なんで祝われる権利がないんだ?おかしいだろ?無償で働くなんてまっぴらごめんなはずだ。」

 

「ですが…。」

 

「長良、お前たちは政府や誰かの道具じゃない!自分の好きに生きること。この鎮守府では、それが決まりだ。好きなように生き、好きなように死ぬ。それが俺たちのやり方だ。」

 

「はい…。」

 

「そんな泣くな。当然のはずだ。」

 

「…この世界では…こんなことを…してくれる…提督は…極一部で…他に…いません…。」

 

「…そうか。この世界はお前たちを道具としか思っていない連中もいるんだな。そういう奴もいるだろう。人間だからな。」

 

ドミナントは表面上は口元が緩んで長良を撫でていたが、心の底ではそのような人間に対して憤怒が湧き上がっていた…。




はい。成人の日とあまり関係ありませんでしたね。実は、こういう時は思いつきで書いています。ストーリーではないので、中々難しいです。
追伸
最後はこれが精一杯でした。すみません…。
真ん中の長良とドミナントの件について…。筆者が血を吐きました。


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特別話 バレンタインデー

それは独身者やノーカップル、非リア充を敵に回す日。貰った相手が、さりげなさを装いながらドヤ顔してきたら、遠慮なくコジマチョコレートを投げつけてやりましょう。(*・ω・)ノシ=コジマ∑(゚Д゚)


…………

第4佐世保 執務室

 

「ん〜♪ん〜。」

 

ここに機嫌よく一人で仕事をしているのはここの提督のドミナント。

 

……今日はバレンタインだからなぁ〜。艦娘がチョコレートをくれる日だ。まぁ、三日月や夕張、如月と吹雪からは貰えるよな〜。…恋愛対象にはならないけど。…それって最低かな?

 

ドミナントは1人思う。そして…。

 

「仕事終わり〜。さて、少し散歩でもするか。」

 

ドミナントは期待を胸に膨らませながら執務室の外へ出た。

 

…………

キッチン

 

「では、これよりバレンタイン特別チョコレート作りを始めます。」

 

ワーワー

 

キッチンには、ドミナントと主任、ジャック以外の艦娘やセラフたちが集まっている。

 

「本日はバレンタインデー。好きな人、もしくは世話になった人にチョコレートをあげる、年に一回の気になる相手に想いを伝える日…。失敗したくないですよね。皆さん、それぞれに想い人がいるはずです。その想いが実る様、愛情をたっぷり込めて作りましょう。ちなみに情報は共有であり、いないと思いますが、他人を蹴落とす様な真似、抜け駆けをしようとした人には漏れなく報告しますのでそのつもりで。」

 

セラフが笑顔で、最後の方怖い感じで締めて、それぞれが動き出す。

 

「吹雪ちゃん、何か司令官の好きなものとか知ってる?」

 

「前も聞かれた様な気がするけど…。確か雪風さんの話ではお寿司みたい。」

 

「そう…なんだ。…チョコ寿司…。」

 

「うん。初雪ちゃん、それだけはやめた方が良いよ…。司令官にメシマズ認定されちゃうから…。」

 

「…チョコレートをお寿司の形にするのは?」

 

「…ギリギリアウトなんじゃないかな…。」

 

「…龍田、なんで心配そうに見ているんだ?」

 

「なんか失敗しそうで…。」

 

「そんなわけねぇだろ。チョコレートを砕いて、溶かして、型に入れるだけだぞ?」

 

「そうなんだけどぉ〜…。」

 

「なぁに。この天龍さまのチョコレートを見て驚くが良い。」

 

「天龍さん!電子レンジから煙が出てますよ!?」

 

「何ぃ!?」

 

「やっぱりねぇ〜…。」

 

「確かに驚きました…。」

 

「赤城さん、ジャックさんはどのようなちょこれーとをお望みなんでしょうか…?」

 

「甘いのは少し無理そうな顔ですよね。」

 

「いえ、甘いのは平気です。」

 

「なんでそんなことわかるんですか?」

 

「…?顔を見れば分かりますが。甘いものを貰って食べている時など少し眉が1度くらい下がります。あれは少し嬉しい時の反応です。」

 

「加賀さんが一番よく分かってそうじゃないですか…。そんな些細な変化分かりません…。」

 

「ただ、ジナイーダさんは分かりません。」

 

「何故ですか?」

 

「よく見て…。…いえ、無数の戦場を駆けてきたから表情に出さないようにしているからですね。」

 

「…つまり、四六時中ジャックさんに夢中だから、他のものがあまり視界に入らないんですね。」

 

「……。」

 

「…提督はどのようなチョコレートを望んでいるんでしょうか?」

 

「…そうですね…。甘いものが好きそうな顔ですね。」

 

「そうですね。ですが、甘すぎるものも好きではないですね。紅茶に合いそうな甘さ…ですね。表情は出ますが、たまに表情と心情が一致していない時もありますし…。」

 

「何故そこまで…。」

 

「見れば分かりますよ。目の奥を見ると、面白いほど思っていることが伝わりますよ?」

 

「……。」

 

「…いつも世話になっている人…。」

 

「どうしたのぉ〜?三日月ちゃん。」

 

「如月ちゃん、チョコレートって、1人だけにしかあげちゃいけないの?」

 

「えっ?…いいえ〜。そんな決まりはないはずよ〜。」

 

「そうですか!なら良かったです!」

 

「…チョコレート…。失敗して変な形になっちゃいました…。」

 

「大丈夫です!貰うだけでも嬉しいはずです!司令官はそんな些細なことで怒る最低なクズ人間とは違うことは知っているでしょう?」

 

「そうだけど…。」

 

「まぁ、形は大事だよね。でも、完璧じゃない方が嬉しい人もいるから。下手だけど一生懸命作った感じがして。」

 

「セントエルモちゃん、誰に作ってるの?」

 

「夕張ちゃんやドミナント提督、ジナイーダ先生にセラフ警備長、主任教官とジャック策士、そして神様。世話になってる人全員に。」

 

「偉いね。確かに、今の私がいるのは沢山の人…機械?が育ててくれたからだよね。私も作ろ。」

 

「…チョコ…レート…。司令官…喜ぶ、かな…?」

 

「ボクも、余計かもしれないけどボク達が主役の日だもんね。きっと喜んでくれるよ。」

 

「そうっぽい。多分楽しみにしているっぽい。」

 

「出来たのです!」

 

「一人前のレディとして当然よ!」

 

「ハラショー。…でも、包み込む箱やラッピングは?」

 

「あっ。」

 

「ここにあるわ。私が用意してあげたんだから。」

 

「ありがとう雷。」

 

「…惚れ薬は入れてないですよね?」

 

「そんなことしたら、今回は間違いなく天界へ直送されちゃうからね…。」

 

全員試行錯誤して作っている。

 

「…ふふ。なんだか、微笑ましいですね。」

 

「お前が始めといて、後は高みの見物か。」

 

ジナイーダとセラフが話す。

 

「私はもう作ってありますので。…ジナイーダさんは?」

 

「私か…。…市販のもので大丈夫だろう?」

 

「ザ・義理チョコみたいな感じですね。それではドミナントさんは振り向きませんよ?」

 

「別に良い。私とあいつは友でいれば、それ以上は望まない。」

 

「謙虚な人ですね。」

 

「本音だ。…そういう感じではないんだ。私はあいつと親友でいれば、それで良いのだ。」

 

ジナイーダが素に戻り、少しだけ儚げなさが漂っていた。

 

……今少しだけ心の奥を見ることが出来ましたが…。それ以上の関係になってしまって、失った時のことを考えていますね…。深い絶望…。失うことへの恐怖…。溢れる後悔…。

 

セラフはジナイーダを横目に見て思う。

 

「…私は、一度親友を失っている。あれ以上の悲しみはもう味わいたくないのでな。」

 

ジナイーダは一言言った後に艦娘たちのところへ行った。

 

…………

廊下

 

「ん〜。…て、主任か?」

 

「あれ?俺と2人で会うのなんて珍しいねぇ。」

 

「確かに。」

 

ドミナントが歩いていると主任と鉢合わせる。

 

「なんか艦娘が見えないんだけど〜、知っているかな?」

 

「えっ?いないの?…多分、どこかでチョコレートでも作ってるんだよ。」

 

「?」

 

「バレンタインデーっていう記念日だから。チョコレートは黒くて甘い奴。」

 

「…小人が持ってる奴?」

 

「妖精さんね。まぁ、そんな感じだよ。」

 

2人で歩きながら話す。

 

「う〜ん、楽しみだぁ。ま!今日貰えないかもしれないけどさ!ギャハハハハハ!」

 

「…それはないだろう。いい子達だ。お前みたいなイカレ野郎でもくれるさ。」

 

「もしもーし!今の全部聞いていたよ〜。傷つく様な言葉もさぁ。」

 

2人が歩いていると…。

 

「む。ドミナントに主任か?」

 

「あっジャック。て、何してんの?」

 

「チョコレート、箱やラッピング販売だ。」

 

「傭兵やめて店を本業にしたのか…。」

 

ジャックが店を広げていた。様々な種類のラッピングの色や、箱がある。ハートはもちろん、星や三角、四角や正12面体の形をしたものまで。

 

「艦娘を見た?」

 

「ああ。数時間前にな。列が4つ出来るほど大繁盛だ。」

 

「儲かってるな。で、今は誰もいないと。」

 

「ああ。その時間帯が終わったらさっぱりとな。」

 

「へー。…ジャックはチョコレート貰った?」

 

「いや。一つもだ。」

 

「甘いのダメそうな顔だもんね。」

 

「む。この顔は生まれつきだ。それに、苦手でもない。」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。」

 

ドミナントたちが話す。

 

「…暇なら、そこら辺散歩しないか?」

 

「…そうだな。」

 

そして、ジャックが店に休業の札を出そうとしたら…。

 

「待ってー!」

 

1人の艦娘が走ってくる。

 

「ん?皐月か?」

 

「し、しし司令官!?な、なんでここに…?」

 

「暇だから。で、皐月は何買いに来たの?」

 

「…チョコレート…。」

 

「そっか〜。失敗したのか〜。」

 

「……。」

 

「いつも俺にかわいいって言うけど、お前のほうが可愛いじゃないか。」

 

「ん…。」

 

ドミナントは皐月の頭を撫でる。

 

「…誰に作ってたの?」

 

「…司令官。」

 

「…ありがとう。ホワイトデー楽しみにしてろよ。」

 

「…うん。」

 

そして、ドミナントが撫でるのをやめて、皐月が買い物をしてどこかに走っていく。

 

「…リア充だね〜。ジャック、トマト売ってる?」

 

「ああ。代金はいらん。あとで投げつけるか。」

 

走っていく皐月を見ながらニヤニヤしていているドミナントの後ろで、ジャックたちが話す。だが…。

 

「ジャックさん。」

 

後ろから聞いたことがある声を聞く。

 

「…加賀か?」

 

「はい。」

 

「…何か欲しいものがあるのか?」

 

「はい。」

 

「何が良い?」

 

「…ジャックさんのお好みで。」

 

「む…。そうだな…。ドミナントにやるのなら、これはどうだ?」

 

「いえ。提督のはもう作ってあります。(市販のチョコレートを。)」

 

「そうか…。…じゃぁ、誰にだ?」

 

「……。あとのお楽しみです。」

 

「む…。なら、この形はどうだ?誰にでも好かれそうな色をしている。」

 

「…ジャックさんはどう思いますか?」

 

「私か?私は…少し似合わないな。私が好きな色はこれだ。」

 

「なら、それにします。」

 

「…こんな私が勧めたので良いのか?」

 

「はい。間違いがないからです。」

 

「そこまで信用されているとはな…。」

 

そして、加賀が買い物を終えて皐月と同じ方向へ歩いて行く。

 

「……。」

 

主任はそれを見ていて察していた。

 

「…で、主任。あとでドミナントに投げつけることだが…。」

 

「あ、そうなんだ〜。で?」

 

「…?」

 

主任は冷たく返した。そして…。

 

「さて、じゃぁ、毎年恒例のあのシーンやりますか。」

 

「「?」」

 

「いざ、靴入れへ。」

 

…………

玄関

 

「やってきたきたバレンタイン。」

 

ガチャ

 

ドミナントが靴入れロッカーを開ける。

 

「おかしいな〜?何かが間違ってるとは思わないか?」

 

「ドミナント、過度な期待はより絶望を深くするぞ。」

 

「俺の靴入れどうかな〜?」

 

ガチャ

 

主任が開ける。

 

「あれれ〜?何かが間違っているとは思わない〜?」

 

「主任、諦めはいたずらに自分を傷つけることを防いでくれるぞ。」

 

「うん。これだな。」

 

ドミナントは納得する。そして…。

 

「ジャックはどうだろうな〜?」

 

「どうせ何もないと思うが…。まぁ、開けてみるか。」

 

ジャックがロッカーを開ける。すると…。

 

ガラ

 

「「「!?」」」

 

一つだけ転がってきた。

 

「…誰から?」

 

ドミナントが興味ありありに聞く。

 

「…分からん。」

 

だが、名前も書いてない箱では誰のものかわからない。

 

「…そうか。」

 

ドミナントはソワソワしている。何せ、自分の娘(の様な存在)がチョコレートをジャックに送ったのだ。気にならないはずがない。

 

「ま、俺には何もないけどね〜。」

 

「…しっかり確認した?」

 

ドミナントが主任のロッカーを漁る。

 

「…あるじゃん。」

 

「「!?」」

 

主任の靴入れロッカーの中のよくわからない場所から取り出す。

 

「ほら。…名前ないけど。」

 

「いーじゃん。」

 

主任は嬉しそうだ。

 

「つまり、俺だけなしか…。」

 

ドミナントは少し残念そうだ。

 

「まぁ、まだ一日は始まったばかりだ。これから渡されるかもしれんだろう?」

 

「…まぁね。」

 

そして、ドミナントたちは娯楽室へ向かった。

 

…………

キッチン

 

「では、皆さん。これでチョコレート作り、およびラッピングを終了します。それぞれ想い人に渡しに行きましょう。タイミングは自分で考えてくださいね。」

 

セラフが皆の前で言う。全員終わった様だ。

 

「タイミング…。一番大事なこと…。」

 

「司令官に渡すタイミング…。」

 

それぞれがざわめく。そこに…。

 

「終わったから行く。早めに渡しておいた方が良いだろう。」

 

ジナイーダが1人行く。

 

「…凄いわね。私もあれくらい素直に渡せたら…。」

 

「叢雲さん、素直に渡せない時はロッカーや執務室に置くのも手です。」

 

「…でも、それだとなんか申し訳なくて…。」

 

「まぁ、司令官もそれだと気づきにくいでしょうし…。第一、本命と受け取ってくれるかどうかも…。」

 

「私たちのことを娘の様に思っているらしいからな…。恋愛対象としては見てくれないだろう…。」

 

「工夫しなくてはいけませんね。」

 

「…そう思ってみればこんなにチョコレートあげて、提督困らないかな…?」

 

「「「あっ…。」」」

 

全員が困った顔をする。

 

「…大きすぎるのは逆にダメでしたか…。」

 

「チョコレートの食べ過ぎで糖尿病になって苦しむかも知れませんね…。」

 

「肥満になってしまったら…。…気持ちは変わらないと思いますが…。少し…ね…。」

 

反省する艦娘もいれば…。

 

「やはり、甘さは少しの方で正解でしたね。」

 

「持ち運びやすいものを選んでよかったかも。」

 

「低脂肪チョコレートを選んで良かったわ。」

 

よく考えていた艦娘もいる様だ。

 

「まぁ、最終的には気持ちだよね。大きさ、味関係なく貰えるってだけでも嬉しい人はいるから。」

 

「そう…ね。うまく…出来なかった…けど…、司令官…は…嬉しい…はず…。」

 

「…まぁね。」

 

だが、結論がすぐに出て、気にせずに部屋を後にしていく艦娘たち。

 

「…まだいるのはどうしてですか?」

 

セラフが残った艦娘たちを気にする。

 

「いざ渡す時のセリフも考えないと…。」

 

「あと、シミュレーションもしておかないと、渡すときに何も出来なかったら意味がありませんから。」

 

「計算も大事です。」

 

計画を立てている子たちもいる。

 

「…すごいですね。てっきり、すぐに渡しに行くのかと…。」

 

「む。そこまで私たちは単純ではありません。…と、セラフさんにもこれを。よく世話になってもらっているので。」

 

赤城がセラフにチョコレートをあげる。

 

「ありがとうございます。私からも皆さんにあるんですが…。ここだとヒイキ扱いされそうなので、後で娯楽室に置きに行きます。」

 

セラフが微笑みながら言う。

 

「私も世話になっているのであげます。」

 

「私も…。」

 

「ボクも…。」

 

艦娘たちがセラフにどんどん渡していく。

 

「…これだけでもう両手一杯ですね…。ドミナントさんはどうなさるのでしょうか…?あと、これで部屋を閉めます…。各自解散で…。」

 

セラフは呟きながら自室に戻り、色々準備をしていく。

 

…………

娯楽室

 

「…主任…。貴様…裏切るのか…。」

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。あっちが残った方が面白いよ。」

 

「仲間割れだと…。ダメだ…。出来ん…。協力プレイでもっても届かんとは…。」

 

『Game Over』

 

三人はゲームをしている。ちなみに、今やっているのは負けイベントである。

 

「あの火炎放射器がチートすぎる…。」

 

「空から降ってくる爆弾を避けながらだもんね〜。」

 

「不規則に足場が移動する…。炎の中に突っ込んだりバルカンの嵐の場所へワープしたり…。」

 

三人が愚痴をこぼす。そこに…。

 

「楽しくやってるな。」

 

ジナイーダがやってきた。

 

「楽しいもんか。負けイベなのに。」

 

「そうか。それより、これを受け取れ。私からの気持ちだ。」

 

ドミナントたちはチョコレートをもらう。

 

「チョコレートを入手しました。」

 

「解析不能です。」

 

「ギャハハハハ!」

 

反応は三者三様。

 

「ありがとう。」

 

「礼を言う。」

 

「ありがとね〜。」

 

だが、気持ちは同じだった。

 

「それより、まだたくさんの艦娘が来るぞ。」

 

ジナイーダが言った途端…。

 

「あっ!いました!」

 

三日月がやってくる。…いや、沢山の艦娘か…。

 

「ちょ、多っ!?また苦しい思いは嫌だよ!?」

 

ドミナントは前、ぎゅうぎゅう詰めにされたことがあった。

 

「まぁ、諦めて受けとれ。艦娘たちの気持ちだ。…まさか、受け取らないと言う、無い選択肢を選ぶわけではあるまいな…?」

 

「いや、受け取るから…。銃をナチュラルに取り出すのやめようね?」

 

「そうか。」

 

そんなことを話しているうちに…。

 

「司令官!三日月特製のチョコケーキです!受け取ってください!」

 

「勿論だ。三日月、ありがとう。」

 

「Hey提督ー!burning Love!な、chocolates(チョコレート)を持ってきたヨー!」

 

「大きいな。ありがとう金剛。」

 

「司令官、大きなハートのチョコ作ったんですよ。はい。」

 

「吹雪、なんか溶けてない?あ、ありがとう。」

 

「あれ!?溶けてる!?」

 

「はいっ。夕張からのチョコレート。ちゃ〜〜んと果汁も入ってるんだから。ホントよ?」

 

「夕張だけに?ありがとう。」

 

「はぁーい。寝食を惜しんで作り上げた、如月の気持ちを込めたチョコレート。ちゃんと最後まで食べてね。」

 

「当然だ。残すやつなんているのか?ありがとう如月。」

 

……寝食を惜しんで?それに、まだAMIDAいるんだ…。

 

5人からチョコレートをもらう。主任がうらめしそうに見ていた。

 

「まぁ、金剛を忘れていたけど、ノルマ達成…か。あとはジャックと主任だけ…と。」

 

ドミナントは艦娘から5個もらう。

 

「ま、いいんじゃないの?どうでも。」

 

「主任が拗ねてる…。」

 

「俺は人間の可能性が見たいんだ…。」

 

「思い出したかの様に言うのやめてくんない?」

 

ドミナントと主任が楽しそうに会話しているところに…。

 

「あっ!もちろん主任さんの物もあります!」

 

三日月が主任に出してくれる。

 

「いーじゃん!ありがとね〜。」

 

「いえいえ。」

 

主任と三日月が話す。

 

「…司令官〜。」

 

「ん?どうした?」

 

如月がドミナントのことを呼ぶ。

 

実は、少し気になることが〜。

 

…何?

 

如月が楽しそうに会話している三日月を横目に、小声で言う。ドミナントも小声になる。

 

三日月ちゃん、もしかしたら主任さんのことが好きなのかも知れないわぁ。

 

「何っ!?」

 

「しっ。」

 

…ごめん。で、何で?何でそんなことが言えるの?

 

実は、作っている最中に聞いてきたのよぉ。

 

…主任の好みとか?

 

ええ。前に世話になったとかで…。

 

まぁ、一番最初に主任に声をかけたのが三日月だからね。だが俺の私服もあげた気がするんだが…。

 

司令官も好きで、主任さんも好きなんじゃないかしらぁ?

 

マジか。確かに、ラッピングが青いからね…。主任を意識しているのか…。

 

まぁ、如月が思ったことだからわからないけどぉ。

 

2人が話していると…。

 

「司令官?何を話しているんですか?」

 

「ん?あぁ、なんでもないよ。」

 

ドミナントは何でもなさそうにする。

 

「そうですか。それと、ジャックさんにもあります。」

 

「礼を言う。」

 

三日月がチョコケーキをジャックに渡す。

 

「美味しいはずです!」

 

「だろうねぇ。」

 

「それじゃぁ、失礼します。」

 

渡すだけ渡して、三日月はどこか行った。

 

……あれは部屋に行ってベッドの上で恥ずかしがる奴ねぇ。

 

如月はそう思ったあと、頭にいるAMIDAにチョコレートを食べさせてから自室に戻った。実際、その通りだった。

 

「…取り敢えず、俺は部屋に戻るよ。チョコレートを置きに。」

 

「そうか。ちゃんと食べてやれよ?」

 

「勿論だ。…て、主任はもう食べているのか。」

 

「う〜ん。中々美味い。」

 

そして、ドミナントは自室に戻る。しかし道中…。

 

「なっ。…あのだな…。一応用意しておいたんだ。陸奥のやつがだな、こういうのは大事だと…。…これなんだ。どうだろうか?」

 

「ありがとう長門。陸奥はこの鎮守府にいないけどね。」

 

「なっ……。」

 

……顔を真っ赤にして可愛い…。

 

「し・れ・え!チョコ、あげます!買ってきたチョコです!おいしいと思います。」

 

「ありがとう雪風。」

 

……市販か〜。

 

「一生懸命作りました。チョコ、よかったら召し上がって。…でも私、料理とかあまりしたことがなくって……すみません。」

 

「貰えるだけありがたいさ。白雪。」

 

……白雪…だよね?前秘書艦やった…。

 

「手作りチョコ、よし。気合十分、よし。この季節は、恋も戦いも、負けません!」

 

「ありがと。比叡、負けるなよ。」

 

……誰と勝負してるんだ…?

 

「提督…もしよかったら、この榛名のチョコレートもらっていただけますか?」

 

「当たり前じゃないか。ありがとう榛名。」

 

……むしろ、くれ。

 

「甘さよし、ほろ苦さよし、包装よし!よーし、大丈夫!しっ、司令!こちらを!」

 

「霧島もありがとう。ぐちゃぐちゃな包装でも大丈夫だけどね。」

 

……少し緊張しているのがわかる…。可愛い。

 

「提督。よかったら、この…ちょこれいとを、受け取っていただけないでしょうか?…よかったら…。」

 

「ありがとう扶桑。受け取るの一択だよ。」

 

……よかったら?だと?だぁい歓迎だよ。

 

「姉さま。この山城、チョコレートを差し上げます!提督?仕方ないですね。はい、これ。」

 

「う、うむ。ありがとう山城。」

 

……余り物感スッゲー出てるもの貰われた。…まぁ、嬉しいけど。

 

「はい、提督。睦月からのチョコ、差し上げます!えへへ、どうぞです♪」

 

「ありがとう睦月。味わって食べるよ。」

 

……可愛い…。ひたすら可愛い…。5億アグニカポイント。

 

「しれーかんにぃ、ふみつきのあまーいチョコのプレゼント、あ・げ・る・ねー♪…(私の邪魔をする者皆死ねば良い。)

 

……可愛い天使の声だ…。…ん?顔の見えない角度で最後何か聞こえた様な…?

 

「バレンタインなど下らない。そう思うよな?提督。…思わないのか…?思っているんだろう…?」

 

「…そうだな…。長月は用意してないのか…。」

 

「…え、司令官、そんなにガッカリ…。なんか、すまん…。」

 

……まぁ、そう思う艦娘もいるよね。十人十色だもん。…え?悲しいかって?そんなわけ…。別に死ぬわけじゃないし…。うん…。

 

「提督、チョコあげるにゃ。…マタタビじゃないにゃ。多摩のチョコにゃ。………にゃー。」

 

「お、おう。ありがとう多摩。」

 

……最後変だったけど…。本当にマタタビ入ってないよな?てか、恥ずかしそうな声で言って、すごく可愛いんだけど…。

 

「司令官、これ、どう?長良の特性、チョコケーキ!食べてみて食べてみて!」

 

「お、おう。」

 

……今食べるのか。

 

「…むぐむぐ…。」

 

「…どう?」

 

「うみゃーがや。」

 

「う、うみゃ…?」

 

「…美味いって意味。ちなみに名古屋弁だよ。」

 

「なら良かったです!」

 

……かわゆす。

 

「提督、バレンタインでも夜戦だよ!」

 

「流石川内だよ…。…あっ、でもチョコレートくれるんだ。ありがとう。」

 

……夜戦バカの意味がわかった気がする。…ん?夜戦(意味深)?

 

「提督、受け取っていただけたら嬉しいです。」

 

「お、おう。神通ありがとう。」

 

……なんか事務的っすね。

 

「那珂ちゃんはー、もっちろん義理チョコなんだけどー、これ、あげるね。きゃはっ♪」

 

「貰えるだけありがたいよ。那珂ちゃんはアイドルだからね。」

 

……まぁ、自称アイドルですからね。

 

「ぁ、はい!ボクのチョコ、食べてみてね。味は保証しないけど…。」

 

「そうか。なら食べてみよう。…もぐもぐ…。」

 

「…どう?」

 

「美味しいよ。もがみんのチョコ。」

 

「良かったぁ!ボクも嬉しいよ!」

 

……喜ぶもがみんも可愛いなぁ〜。

 

「提督、こ、これ、受け取ってください!」

 

「ありがとう古鷹エルさん。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「こっちこそ…。本当に嬉しい。」

 

……古鷹はいい奴だ。優しい子だしな。

 

「んー。まぁ、なんてーの?チョコってやつ?あたしも一応用意しといたよ。ほれ。」

 

「ありがとう加古。礼を言う。」

 

……加古はやる気ない感じだけど、いい奴なのは確かだな。いい子だ。

 

「提督…あの、よかったら、こちらを受け取っていただけますか?これは私からです。」

 

「妙高さんはピシッとしてますね。勿論、受け取りますよ。」

 

……妙高さんは事務的だけど、一応恥じらっている。…可愛いな。

 

「あっ、あの!司令官さん!こっ、このチョコレート、よ、よかったら、受け取ってください!」

 

「羽黒もか。ありがとう。いくらでも受け取るよ。」

 

……羽黒…。顔を赤くして渡してくれる。…結構可愛いな。

 

「し、司令官!ちょ、チョコ作ったわ!一人前のレディーとして…あの、その…。」

 

「ありがとう暁。暁は一人前のレディーだなぁ。」

 

……暁も可愛いなぁ〜。あとで飴でもあげよう。

 

「司令官、ロシア風のチョコ、あげる。…どこがロシア風なのかって?それは…内緒だ。」

 

「ありがとうВерный(ヴェールヌイ)。そして…。ハラショォッ!」

 

「ハラシォォォォ!私には祖国がある。負けるわけにはいかない。」

 

……すっかりボリスビッチが板についてるな…。まぁ、それも良…いや、良くはないな。可愛さを目指す様に仕向けよう。

 

「じゃーん!雷の手作りチョコを用意したわ!司令官、よーく味わって食べるのよ?はいっ!」

 

「ありがとう雷。最初から味わう予定だけど。」

 

……雷はおかんだからなぁ〜。甘えて良いのよオーラが出てるから、ついつい甘えそうになるんだよね〜。

 

「あの、司令官さん、電の本気のチョコ、差し上げるのです!こちらなのです!」

 

「お、おう。ありがとう電。」

 

……本気と書いてマジ。でかいな。本当に。…まぁ、金剛よりは小さいけど。

 

「提督。一応これ、ボクからも渡しておくね。…邪魔、かな?」

 

「そんなことないよ時雨。だぁい歓迎だよ。僕はチョコレートを貰いたい。」

 

……ギブミー!チョコレート!

 

「えっと、このチョコレートあげるっぽい。夕立、結構頑張って作ったっぽい。」

 

「ありがとう夕立。大切に食べるよ。」

 

……あの夕立が…か…。まぁ、番犬付きだけど、可愛いから尚OKだな。

 

「てーとく、今年は手作りで作ってみました。どうでしょうか…?あたし的にはOKなんですけど…。」

 

「ありがとう阿武隈。去年もらってないけどね。手作り嬉しいなぁ。」

 

……可愛いなぁ。例えどんな形でも、どんな味でももらうだけ嬉しいのさ。

 

「このトリュフ作ったんだー!提督、食べて〜♪」

 

「お、おう鬼怒。今か…。パクッ。」

 

「…えへへ、どう?辛い?甘い?1つだけ甘い、ロシアンチョコ仕様なのだ〜。」

 

「うん。辛い。7択で1つ出すのは難しいな…。」

 

……バレンタインってこんなチョコレートも貰うのか…。貰ったことなかったからなぁ。

 

「提督、私が本気で作ったチョコレート…食べる?」

 

「頂こう。瑞鳳ありがとう。」

 

……食べりゅぅぅぅぅ!

 

「あの!あげる!…あとで、食べて、ね…。」

 

「食べない奴はいないだろう?山風。」

 

……山風もあれから少し心を開いてくれたし。素直な子は可愛いな。

 

そして、ドミナントは自室の前まで来る。

 

「思わぬチョコレートも手に入ったことだし。…にしても…。両手が塞がって開けられないという悲劇。」

 

ドミナントが扉の前で立っていると…。

 

「提督!ば、バレンタインです!このチョコケーキをどう…。」

 

五月雨が走ってきて…。

 

ツルンッ

 

ドシンッ

 

「ぞっ!」

 

転んだ。

 

「いたた…。て、あれ!?」

 

「五月雨、大丈夫か?」

 

「それよりも、チョコケーキが…。て、ああ〜〜〜!!」

 

「どうした?」

 

「提督!上です!」

 

「上?」

 

ドミナントが上を見る。するとそこには宙に浮かんで真っ直ぐな放物線を描いてやってくるチョコケーキがあった…。

 

「…まずいな。」

 

今のドミナントにキャッチするという選択肢はない。両手が他のチョコレートやケーキなどでいっぱいなのだ。

 

「うぅ…。」

 

五月雨は自分のドジを悔やんで少し泣いていた。

 

「…普通のカッチョいい男なら決断をするが…。俺はこうする。」

 

そして、ドミナントはキャッチをした。

 

「!?提督…。」

 

「ほーあ(どうだ)!いひゃか(見たか)!?ふうーおおほこあらえきあいこーいあ(普通の男なら出来ない行為だ)!」

 

口で受け止めたのだ。

 

「…すごく格好は悪いですけど…嬉しいです。」

 

五月雨は苦笑いしながらも、そんな格好をしてまで受け取ってくれたドミナントに感謝していた。

 

「ろこおえさみあえ(ところで五月雨)、ろああええくんあい(ドア開けてくんない)?」

 

「わかりました。」

 

ガチャ

 

「どうぞ。」

 

「あいあおう(ありがとう)。あひおかんひょーはあおえいうかあ(味の感想は後で言うから)。」

 

「はい。それでは。」

 

五月雨がどこかへ行った。

 

「…いおふおおおひゃあいお(荷物もおろさないと)…。」

 

ガララララ…

 

とりあえず机の上に全てのチョコレートやケーキを置く。

 

「…もぐもぐ…。…むぐっ。」

 

ドミナントは五月雨のチョコケーキを食べたが、急いで水を飲む。

 

「ガブガブ…。…ふぅ…。…すっごく失礼だけど…、これチョコじゃなくてコゲだ…。」

 

ドミナントは水を飲み終わり、ゲンナリする。

 

……まぁ、俺のために作ってくれただけでもすごく嬉しいんだけどね…。

 

そんなことを思う。

 

「…にしても、全部義理だよな?本命は吹雪たち以外無いと思うし。だが、チョコはチョコだ。ホワイトデーでもしっかり返すのが礼儀だろう。長月はなかったけど働いてくれているし、戦果も出しているからあげよう。」

 

ドミナントが独り言を呟いていると…。

 

コンコンガチャ

 

「やぁ!ドミナント!遊びに行こう!」

 

「おう神様。できればノックの後少し間を開いてくれるとありがたいぞ。」

 

神様がやってきた。

 

「今日はバレンタイン!遊びに行こう?」

 

「うーん…。鎮守府の中なら良いんだけどね。なんせ、極秘な場所だから。」

 

「思い出したかの様に極秘鎮守府設定言うのやめて?デートしたり買い物したり、遊園地行ったり、旅行へ行ったりしてるよね?」

 

「あれ、大本営や先輩神様が裏で手を回していたんだって。」

 

「何その都合の良い情報…。」

 

神様は微妙な顔をする。

 

「ま!とにかく行こう?」

 

「しゃーないな。」

 

そして、ドミナントは神様と散歩しに行こうとしたが…。

 

「…ん?何この紙…?」

 

机の上のチョコレートたちの下に手紙があったのだ。

 

「どうしたの?」

 

「なんかよく見ると手紙みたいなものがわんさかと…。」

 

ドミナントたちが手紙を見る。

 

…………

 

ヒトナナマルマル 堤防

 

…………

 

ヒトロクサンマル 自主練場

 

…………

 

ヒトゴーマルマル 倉庫

 

…………

 

ヒトロクマルマル 弓道場

 

…………

 

ヒトナナサンマル 演習場

 

…………

 

ヒトハチサンマル 屋上

 

…………

 

ヒトゴーサンマル 玄関

 

…………

 

「…呼び出されたね。」

 

「…そうだな。」

 

ドミナントと神様が会話する。

 

「つまり、3時に倉庫、3時30分に玄関、4時弓道場、4時30分に自主練場、5時に堤防、5時30分に演習場、6時30分に屋上か…。」

 

「…そうだね。」

 

「…じゃぁ、行くか。」

 

「えっ?でもまだ2時だよ?」

 

「余裕を持って行くんだよ。」

 

「へ〜そう。なら、私はここで待ってるね。」

 

「?なんで?」

 

「なんでって…。気持ちわかるでしょ。早く行ってきなさい。」

 

バタン!

 

神様がドミナントを閉め出す。

 

……あいつがか…。珍しいな。俺を閉じ込めることはともかく、閉め出すとは…。

 

ドミナントはそう思いながら行った。

 

…………

 

「…まぁ、独占したい気持ちもあるけど…。フェアじゃないとね…。」

 

神様はドミナントのベッドに入りながら言うのだった。

 

…………

道中

 

「まずは倉庫…か。…倉庫に呼び出し…タンク…。」

 

ドミナントが歩いていると…。

 

「あ、あのっ!」

 

「ん?」

 

後ろから声が聞こえてきた。

 

「叢雲か。どうした?」

 

「こ、これっ!そこに落ちてたわよっ!…あ"っ、私が買ってきたわけじゃないんだからっ!あんたのじゃないの?…早く持って行ってよ!」

 

叢雲がチョコの箱を片手にそっぽ向きながら言う。

 

……フッフッフ。絶対に叢雲のだな。恥じらいを隠すのも可愛い。…このまま受け取っても良いが、俺はもう少しからかいたいのでね。

 

ドミナントはニヤニヤしながら思い…。

 

「あー、叢雲。」

 

「何よ!早く持って行ってよ!」

 

「俺、落としてないんだよね。」

 

「…えっ?」

 

「道中もらったチョコレートは自室に置いてきたから今ないの。それに、一個、一瞬でも落としてないし。ケーキは口でキャッチしたしね。」

 

「……。」

 

「誰のかな?正直に言おうか。」

 

……可愛い!

 

顔を赤くしてワナワナしている叢雲に、ドミナントはその感想しかなかった。

 

「なっ…こ…馬鹿っ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「何礼を言ってるの!?本当に馬鹿!」

 

叢雲は無理矢理ドミナントの手に渡しながら走って行った。

 

「あ〜可愛かった!…でも、少し悪いことしちゃったな…。」

 

ドミナントはニヤニヤしながら倉庫へ向かった。

 

…………

倉庫

 

「……。」

 

乙女が春用の格好にマフラーをしてチョコレートを両手で胸に抱きながら立っている。現在時刻2時30分だ。

 

「…時間が過ぎるのが遅く感じます…。」

 

そう、ここにいるのはセラフだ。実はもう2時から待っているのだ。

 

「まぁ、私も渡すけどね。」

 

セントエルモもいた。夕張やジャックたちには渡しているから、後はドミナントだけのようだ。

 

「こんなに早くから待っているけど、来るのは確か3時だよね?早すぎない?」

 

「少し緊張してしまって…。何度も頭の中でシミュレーションをしています。」

 

「完璧主義者って奴だね。ドミナント提督もこんなに早くから待っているって知ってるのかな?」

 

「…おそらく、伝わらないはずです…。」

 

「だよね〜。」

 

2人が話していると…。

 

「ゴーゴーリムファイアエビノカラアゲ」

 

ドミナントが歌を口ずさみながらやってきた。

 

「…毎回思うんだけど、よくわからない歌を歌ってるよね…。」

 

「…そうですね…。」

 

2人が話していると…。

 

「随分と調子良さそうだねぇ。3時に誰かがここに来るとも知らずに…。」

 

ドミナントが2人を見つけて近づく。

 

「3時からここに誰か来るみたいだから、席を外してもらえる?」

 

「3時…ですか。おそらく、私たちが呼び出しました。」

 

「セラフたちか。」

 

「あの…その…。これ…を…。どう…ぞ。」

 

「おー、チョコレート。ありがとうセラフ。」

 

……可愛いな。…ハート型…か…。まぁ、確か俺に好意があるような気がするけど…。こんな美人と俺とじゃ釣り合い取れないよな…アハハ…。

 

「ドミナント提督、これは私から。」

 

「セントエルモも?ありがとね。」

 

……セントエルモもくれるんだ…。今度出撃させてあげよう。いい子だし。

 

ドミナントはそう思う。

 

「…ドミナント提督。」

 

「何?」

 

「…一応言うけど、セラフさんのは本命だよ?」

 

「セ、セントエルモさん…。」

 

「知ってるよ。告白された…様な気がするし。」

 

「しました!」

 

「ご、ごめん…。」

 

「忘れないでくださいね…!」

 

「すみません…。」

 

ドミナントとセラフが話す。

 

「まぁ、返事が出来ない優柔不断な奴と一緒にいてくれてありがたいよ。ホワイトデー楽しみにしてろ。」

 

「期待しないで待ってます。」

 

「忘れないでねー。」

 

「へいへい。」

 

そして、ドミナントは玄関向かう。

 

…………

道中

 

「玄関か〜。」

 

ドミナントが呟きながら歩いていると…。

 

「あら、提督。」

 

「ん?間宮さんと伊良湖ちゃんか?」

 

後ろから声が聞こえて、振り向き様に答える。

 

「はい。今日は特別な日なので、チョコレートを差し上げます。」

 

「私からも、頑張っている人にあげたいです。」

 

「おお!?まさか、2人に貰えるとは思っていなかった。ありがとう!」

 

ドミナントは、2人にお礼を言う。

 

「いえいえ、提督こそ頑張っているので。」

 

「当然です!」

 

「2人とも、本当にありがとうね。」

 

ドミナントは2人を撫でる。

 

「あっ、それと一つ提督に質問が…。」

 

「どうした?」

 

伊良湖がドミナントに尋ねる。

 

「皐月ちゃんから受け取りましたか?」

 

「いや、受け取っていない。」

 

「そうですか…。皐月ちゃん頑張っていましたよ。」

 

「そうなのか?」

 

「まぁ、少しだけ手伝いましたけど…。」

 

「そうか。…まぁ、もらったら礼を言っておくよ。それと、皐月のチョコ作りを手伝ってくれてありがとな。」

 

ドミナントは礼を言ったあと急いで玄関へ向かった。

 

…………

玄関

 

「ん〜。次は玄関だよな…。」

 

ドミナントが呟きながら玄関に来ると…。

 

「提督…!」

 

「ん?どこ…?」

 

姿が見えないが、声が聞こえる。

 

「提督!こちらです。」

 

「ん?翔鶴か?」

 

あたりを見回して、鎮守府の壁の色と半分一体化して、カモフラージュ率80%の翔鶴をようやく見つける。

 

「…翔鶴が俺を呼ぶのは珍しいな…。緊急か?」

 

ドミナントが急いで行く。

 

「あっ、急がなくても大丈夫。私もちょうど今来たところなんです。あの、提督…もしよかったら…。」

 

「翔鶴もくれるのか。ありがたい。」

 

翔鶴からチョコレートを渡される。

 

「ありがとう翔鶴。」

 

「いえ、私のほんの気持ちです…。いつまでも提督を続けてくださいね。」

 

「もちろん。この世界が消滅…あるいは俺が死ぬまで続けるさ。」

 

「…変な言い方ですけど、言いたいことはわかります。」

 

翔鶴がそういったあと…。

 

「て、提督…?何を…?」

 

「ん〜?翔鶴の出番が最近あまりないからさ〜。そういうシーンが無くても頑張っているのは知ってるから。翔鶴は良い子だよ。」

 

ドミナントが翔鶴の頭を撫でている。

 

「…瑞鶴とは違って拒否しないんだな。」

 

「…瑞鶴は…少し…照れ隠し…も…ありますから…。」

 

翔鶴がドミナントの呟きに嬉しそうに目を閉じて言う。

 

「そうか…。」

 

そして、一定時間過ぎたあと、ドミナントは弓道場へ向かった。

 

…………

弓道場

 

「赤城さん、まだ少し早いのでは?」

 

「いえ、こういうものは早い方が良いのです。」

 

「しかし、少し冷えますよ。」

 

「大丈夫ですよ。加賀さんは中で待っていても平気ですから。」

 

「赤城さんを置いて行けません。」

 

ドミナントを待っている赤城と加賀が話す。

 

「あっ、来ました。」

 

「…2、1…0。提督、遅刻です。」

 

「ハァ、ハァ…。加賀厳しいな…。」

 

ドミナントが走ってきた。

 

「提督、こちらのチョコを良かったら…。」

 

「もらおう。」

 

ドミナントが即答して赤城からチョコを入手する。

 

「あっ、はい!お返しなんていりません。うふふっ♪」

 

「そうはいくか。ホワイトデーを楽しみにしてろよ。」

 

「それと、紅茶に合う様に甘さは控えております。」

 

「そこまでしてくれるとは…。本当に礼を言う…。」

 

そう言ってドミナントは赤城の頭を撫でる。

 

「赤城…。いつもありがとな…。」

 

「提督…。」

 

ドミナントと赤城が良い雰囲気なところに…。

 

「提督、甘いものがお好きでしたらこれを。」

 

「お、おう。加賀。今渡すか…。」

 

加賀が邪魔をしようと言わんばかりにチョコレートを渡してきた。

 

「…もう…。」

 

赤城が少し頬を膨らませている。

 

……可愛い。

 

……可愛い。

 

だが、ドミナントと加賀には逆効果なのは赤城自身知らない。

 

…………

道中

 

「んー。」

 

ドミナントが歩いていると…。

 

「司令官!」

 

後ろから聞き慣れた声が聞こえる。

 

「皐月か。どうした?」

 

「司令官、チョコあげるよ。ボクの手作りさ!」

 

「ほう。伊良湖に手伝ってもらった…。」

 

「なっ、そ、そんなことないよ!ホントだよぉ!」

 

「皐月、嘘はいかんぜよ。まぁ、貰えるだけありがたいんだけどね…。」

 

ドミナントは恥ずかしがっている皐月からチョコレートを入手する。

 

「…皐月は可愛いなぁ〜。」

 

「司令…官…こそ…。可愛い…よ…。」

 

ドミナントが頭を撫でながら言い、皐月が嬉しそうにする。

 

……皐月くらいだろうな…。こんな冴えないおっさんを”可愛い"って言ってくれるの…。ちゃんとお礼をしないとな。

 

ドミナントはそう思い、しばらく撫でたあと自主練場に向かった。

 

…………

自主練場

 

「…なんとか間に合ったか…?」

 

ドミナントが時計を確認する。

 

「…4時25分…。セーフ…。」

 

ドミナントが休んでいると…。

 

「…あっ。」

 

瑞鶴がやってくる。

 

「おう瑞鶴。お前か。」

 

「そうよ。」

 

「…最近筆者の具合はどうだ?」

 

「ネタが行き詰まっていて、案がないらしいわ。」

 

「そうか…。」

 

そして、瑞鶴がドミナントの前に立ち…。

 

「て、提督さん。どうせきっと私だけだと思うから…、かわいそうだからチョコあげるわ。ほら…ちゃんとお返ししてよね。」

 

「おう。ホワイトデー楽しみにしてろよ。」

 

……翔鶴…。まさか、瑞鶴には渡すことを知らせていないのか…?てか、瑞鶴の話が本当なら、良い子過ぎるだろ…。

 

ドミナントは心の中で思う。

 

「瑞鶴、お前は優しくて良い子だな。」

 

「えっ…。いきなりどうしたの…?」

 

「なんでもないさ…。」

 

「???」

 

…………

堤防

 

「ん〜。次は誰だろう?」

 

ドミナントが堤防に行く。すると…。

 

「よっ、提督。待ち兼ねたぜ。俺の世界水準を軽く超えたチョコやるよっ。」

 

「て、天龍!?おま…いつの間にそんな女の子らしいこと出来たんだよ…。」

 

「おい!提督!今凄く失礼なこと言ったぞ!」

 

「す、すまん…。つい…。」

 

「…まぁいいや。それより、ほら。」

 

「う、うむ。ありがとう。」

 

ドミナントは天龍のチョコレートを受け取るが…。

 

「…あっ、すまん手を触って…。…何時間ここにいた?」

 

「な、なんでそんなことを聞くんだ?」

 

「手が冷た過ぎるぞ…。」

 

「…そっ、そんなに長時間待ってねぇよ…。」

 

「いいから答えろ。」

 

「…2時間…。」

 

「馬鹿野郎が。こんな寒い中俺のためにそんなに長時間待つなよ。遅れてきても良いんだ。お前が風邪をひいたら元も子もないだろう…。」

 

「け、けどよぉ…。」

 

「駄目。次からはそうしないように反省しなさい。…ほら、マフラーあげるから。」

 

ドミナントは首にあるマフラーを天龍に巻いてあげる。

 

「…!?でも、それがねぇと提督が寒いんじゃ…。」

 

「ああ、寒いよ。でも天龍、お前が寒い思いをすれば、俺がかわりに寒い思いをする。そう心の中で戒めろ。そうすれば、もうこんなに長い間待たないだろう?」

 

「で、でも…。長官を待たせるのは…。」

 

「ん〜?マフラーだけでは足りないか?上着もあげるよ?」

 

「い、いや!いい。なんでもない…。」

 

「そうか。…まぁ、そういう心構えは嫌いじゃないさ。」

 

ドミナントは天龍の頭を撫でる。天龍は嬉しそうにしている。

 

「…褒められれば、また撫でてくれるか…?」

 

「当たり前だ。…というより、抱きしめることは出来ないからな。これが俺の許容範囲の精一杯の愛情表現だ。」

 

「ん…。」

 

天龍は嬉しそうに目を細めた。

 

「あらあら〜。天龍ちゃんが落ちちゃったわぁ〜。」

 

「た、龍田!?」

 

「龍田もいたのか?」

 

堤防の岩の陰から龍田が姿を現した。

 

「ええ。天龍ちゃんが心配になって〜。」

 

「そうか。」

 

「…どうしたの?何を物欲しげな目で見ているの?欲しがり屋さん、しっかり味わうと良いわ。」

 

「俺そんな目をしてたか?まぁ、ありがたいけど。」

 

……おそらく、これが龍田の愛情表現なんだろうなぁ〜。

 

ドミナントは龍田のチョコレートを受け取り、思う。

 

「…ところで提督〜。」

 

「ん?なんだ?」

 

「私には撫でないのかしらぁ〜?」

 

「えっ?でも、前は腕を切り落とすって…。」

 

「なぁ〜にぃ〜?」

 

「い、いえ。何でもないです。」

 

そして、ドミナントは2人を両手で撫でたのだった。

 

…………

演習場

 

「すっかり遅くなってしまった…。いるかな?…いたら謝らないと…。」

 

ドミナントがAC化して、海の上の演習場の中に入る。すると…。

 

ドヴェーーー!ドヴェーーー!ドヴェーーー!…!

 

ゴゴゴゴゴ…ガシャァン!

 

ガラガラガラ…ガシャァン!ビビビビビ…!

 

シャキン!シャキン!シャキン!…!

 

「!?」

 

演習場の扉が閉まり、デスマッチ戦用のステージに切り替わる。扉は電圧二千万Vの電流が流れ、天井が閉じて曇りの日の様な明るさになり、壁が鉄の刺で埋まる。

 

「だ、騙して悪いがだ…。油断していた…。」

 

ドミナントはかすれた声で言う。

 

「…5分遅刻だ。」

 

「5分遅れただけでデスマッチ!?」

 

ドミナントはどこからかの声に叫ぶ。

 

「…ところで、誰だ?」

 

「大和型2番艦であり、元『ミッドウェー』だ。」

 

「…武蔵か。」

 

武蔵が姿を現す。

 

「…で、何の様だったんだ?」

 

「…提督よ。チョコレートを用意した。」

 

「へぇー。くれるの?」

 

「この武蔵のチョコレートが欲しかったら、ここでデスマッチを挑み、勝ってみろ!」

 

「遅刻関係なくデスマッチにする予定だっただろ!?」

 

ドミナントがツッコミを入れている最中に武蔵が艤装でドミナントに狙いを定める。

 

「ちょ、ちょ…。俺のペイント弾じゃないんだけど…。」

 

「何を言う?私の装甲は伊達ではないぞ。」

 

「まぁ、そうだけど…。一応ね…。怖いじゃん。」

 

「…その優しさは嬉しいな。…そこの部屋の中にたっぷりあるから、取ってこい。」

 

「お、おう。」

 

そして、ドミナントは部屋の中に入る。

 

……さて、どうしたものか…。ここで逃げるのも手だな…。時間も押しているし…。第一、間に合わなかったら他の艦娘にも迷惑だ…。…だが、武蔵も作ってくれたんだよね…。もらわないと言う選択肢はない…か。

 

そして、ドミナントはペイント弾を武器に敷き詰めて出て来た。

 

「…?てっきり逃げたものかと…。」

 

「お前がわざわざ作ってくれたのに、なんでそれを貰えないんだ?別名『仲間の証』だぞ?お前を倒して、それを証明してみせる!」

 

「ほう…。なら、少し私も本気をダスカ…!」

 

「半分『ミッドウェー』に戻ってない?まぁいいけど。」

 

そして、ドミナントたちのチョコレートをかけたバトルが始まる。すると、上にモニターが映し出される。

 


ドミナント Lv.???

 

VS

 

武蔵 Lv.99


『READY GO!!!』

 

どこかで聞いた様な声を聞いた途端、武蔵とドミナントが撃つ。全身がオレンジに染る、もしくは威力余って大破、残りAP10%を切った方が負けだ。

 

「武蔵も中々やるな。」

 

ドミナントはロックして撃っているが、武蔵がギリギリで回避してくる。

 

「…はっきり言って、提督の実力はそこまでではないと思っていたが…。他の教官と違って動きや、攻撃するタイミングが独特だな…。」

 

武蔵も相変わらず撃ち続けているが、独特にブースターを使ったり、後ろに回り込もうとしたり、ブレード(ペンキの水圧で出来ている)を当ててこようとしたりして中々武蔵の攻撃範囲に入ろうとしない。

 

「だが、この武蔵、提督にも負けられん。」

 

「ほう。同じだな。上司として負けるわけにはいかないな。」

 

両者とも回避しながら言う。…だが、完璧に回避はすることが出来ない。少しずつ染まっていく。

 

『グリッドワン!残りペンキ範囲50%!』

 

「ちっ。」

 

武蔵が舌打ちする。

 

「勝負はこれからだ!」

 

『両グリッド!接戦を展開!』

 

 

…………

 

「提督…私より弱いと思っていたのに…。」

 

『グリッドワン!戦闘不能!よって、ドミナントの勝利です!』

 

「まだまだ部下には負けられんよ。」

 

結局、ドミナントの勝利だ。だが、余裕かましているが、ギリギリの戦いだった。そして、武蔵がチョコレートを持ってドミナントの前に行く。

 

「その…疲れたら食べてくれ…。遠慮はいらん!」

 

「いま疲れているけど…。あとで味わって食べるよ。」

 

「そ、そうか…。」

 

「…おめでとう。今日から君は相棒だ。」

 

「お、おう。期待してくれ。」

 

そして、ドミナントは武蔵を撫でたあと、演習場を出て行った。

 

…………

道中 外

 

「次はどこだっけ…?」

 

ドミナントが呟きながら歩いていると…。

 

『久しぶりじゃのう。』

 

「どこからか先輩神様の声が…。」

 

『ここじゃ。』

 

ピカーー!

 

「うわっ。」

 

カッ!

 

ドミナントが光の眩しさで目を手で塞いだあと再度見る。

 

「…やっぱり先輩神様でしたか…。」

 

「そうじゃ!」

 

「…着物の色は今回は赤いんですね。」

 

「世間で言うバレンタインじゃからのう。天界では規則はないが、雰囲気を変えてみたのじゃ!」

 

「似合ってますね。…ところで、何か御用で?」

 

「お主〜、わかっておるじゃろ。ちょこれいとを持ってきたのじゃ。」

 

「へぇ〜。先輩神様がね…。」

 

「なんじゃ?不満か?」

 

「い、いえ…。ただ、意外だなと…。」

 

「…妾でも料理はするのじゃ。乙女の嗜みじゃ。後輩も出来るじゃろ?」

 

「まぁ、出来ますが…。」

 

「教えたのは妾じゃからのう。」

 

「せ、先輩神様が教えたんですか!?」

 

「そうじゃ。」

 

先輩神様はどうだと胸をそらす。

 

「そうなんですか…。」

 

「それより、ちょこれいとじゃ。受け取ってくれ。もちろん、後輩の分もお主の仲間の分もあるのじゃ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

……先輩神様からチョコレートを貰えるとは…。

 

ドミナントはチョコレートを受け取りながら思う。

 

「それじゃぁ、妾はこれから仕事があるからのう。実に名残惜しいが、そろそろ帰るのじゃ。」

 

そう言ったあと、光の球になる。

 

「あっ、はい。またいらしてくださいね。」

 

『当然じゃ』

 

ドミナントと別れの挨拶をした後、空へ消えて行った。

 

「…やっぱり、良い人じゃないか。」

 

ドミナントはそう言ったあと、歩き始める。が。

 

「…ん?」

 

鎮守府の前にトラックがあるのを見つける。

 

「すみませーん。」

 

そして、運転手に声をかける。海軍の人だ。

 

「はい。」

 

「ここに何か御用でしょうか…?」

 

「あなたがドミナントさんですね。」

 

「えっ?はい…。」

 

「第2舞鶴鎮守府、大湊警備府、大本営から食品の荷物です。」

 

「そ、そんなにですか…?」

 

「それでは、下ろしますね。」

 

そして、海軍の運転手がドミナントにチョコレートを渡していく。

 

「私もそれくらい欲しい限りです。それでは…。」

 

そして、運転手は戻って行った。

 

「…佐藤中佐(シレア)、星奈、大和さん…。本当にありがたい限りだ…。」

 

ドミナントは両手のそれを持って鎮守府の中に入り、佐藤中佐の、ジナイーダとドミナント宛のチョコレートはそれぞれの部屋に、大和は愉快な仲間たち全員に作っていたため、全員に配った。星奈(八神)のものはドミナントにしか送られていなかったので、武蔵たちのと一緒に自室に置いて行った。

 

…………

道中 中

 

「屋上か…。告白でもされるのかな…?阻止しなければ…。」

 

ドミナントが呟きながら歩いているとキッチンから…。

 

『〜♪』

 

「?」

 

可愛らしい鼻歌が聞こえて来る。

 

……誰だろう?

 

ドミナントはそう思いながらキッチンに入る。

 

「ふふっ、作っちゃった。大鳳特製、彗星艦爆型チョコレート。提督、ちゃんと食べてくれるかな?…ふふっ、綺麗に包もうっと。」

 

可愛らしいことをしている大鳳がいた。

 

「大鳳か。」

 

「ひゃぁっ!?て、てて提督!?お、おお驚かさないでください!」

 

「お、おう…。すまん…。そんなに驚くとは思ってなかったから…。」

 

凄く驚いている大鳳にドミナント自身が驚いた。そして…。

 

「それ何?」

 

「…こ、これは…。」

 

「誰にあげるの?」

 

「…わかって言ってますよね?」

 

そして、大鳳がチョコをドミナントの前に出し…。

 

「提督…受け取ってください。」

 

「…ありがとう。大鳳、お前からも貰えて俺は幸せ者だ…。ホワイトデーではしっかり感謝の気持ちを伝えなければ…!」

 

「な、泣いているんですか…?」

 

「義理でも嬉しいよ…。本当に…。」

 

「そ、そうですか…。」

 

……義理では無いのですが…。

 

大鳳は言おうと思ったが、少しドミナントとの距離を置いているため言わなかった。

 

…………

屋上

 

「最後はここか…。誰だろう?」

 

ドミナントが屋上に来ると…。

 

「や!遅かったね。」

 

「んあ?神様か?部屋にいるんじゃなかったのか?」

 

「わざわざ手紙を一緒に読むフリをして、追加しておいたの。」

 

「なるほどな。」

 

屋上のベンチにバックがあった。

 

……あのバックの中にチョコレートが入っているんだな…。少し大きいな…。

 

ドミナントが思いながら神様のところへ行こうとする。すると…。

 

ブーーン

 

「ん?」

 

ドミナントの携帯にメールが入る。

 

「ごめん、神様。少し見るよ。」

 

「……。」

 

……メールとは珍しい。誰からだろう?

 

メールを見る。差出人は神様からだった。

 

「なんだ神様か。目の前にいるんだから、言葉で言えよ…。」

 

ドミナントが苦笑いしながらも内容を見るが…。

 


名前: 神様

件名:



ごめん

さよなら。


 

か〜な〜し〜みの〜向こ〜へと〜、辿り〜つけるなら〜…。

 

ドミナントは背筋が凍った。そして、神様を急いで見る。

 

「か、かかかか、かみ、かみ、神様、や、ややややめ、やめてね…?」

 

ドミナントが言葉にならない言葉をあげて、必死に神様に言う。

 

「…?」

 

だが、神様は不思議そうな顔をする。

 

「何が?」

 

「こ、こここれ、これのこと…。」

 

ドミナントが必死にメールを見せる。

 

「?あぁ、これね…。初雪?から渡す前にこのメールを送れば、恋が成就するって…。

 

神様が最後の方、顔を赤くして俯いて小声で言う。

 

「そ、そうか…?…そうか…。…よかった…。」

 

ドミナントはすごく安心した。

 

「初雪…覚えてろよ…。」

 

ドミナントは恨めしそうに呟く。

 

「これどういう意味なの?」

 

「えっ?これ?これは…。」

 

ドミナントは言葉が詰まる。

 

……言えない…。このメールのあと何度も包丁で腹を刺されるなんて…。

 

ドミナントは思う。つまり、これをそのまま言えば、本気の想いでドミナントに送ったこのメールが逆効果だと知り、悲しませてしまうからだ。

 

「これは…。…うん。大好きってこと。」

 

「”ごめん"って書いてあるのに?」

 

「うん。」

 

「…違うでしょ。目が泳いでるもの。」

 

「…はい。違います…。」

 

「やっぱりね。どうせ逆効果なんでしょ?」

 

「当たりです…。」

 

「やっぱりね。」

 

神様がやれやれと言う。

 

「…知ってたのか?」

 

「まぁね。まぁ、その方が面白いから。」

 

「…俺の寿命が結構縮んだぞ。」

 

「…そこまでなんだ…。」

 

ドミナントが疲れ切った顔で言い、神様が本気で心配する。

 

「ところで、これ…。」

 

神様がバックの中からハート型のチョコレートを出す。

 

「私の大好きなドミナントにあげる。一生懸命作ったよ。…惚れ薬とかは入ってないし、変な物とか入ってないから。それと、甘さは少なめにしてあるし、紅茶にも合う様に作ってあるから。」

 

神様が恥じらいながらもチョコをドミナントの前に出す。

 

「…受け取って…くれるよね?」

 

「…ああ。」

 

ドミナントは本命チョコを入手する。

 

「…ところで、どうした?」

 

「…何が?」

 

「なんかいつもと違うぞ?」

 

「そ、そうかな…?」

 

神様は無理に笑顔をした後…。

 

「実は、なんか今日少し体が変でさ…。なんか、ドミナントといると胸が苦しくなるのはいつものことなんだけど、今日はもっと…締め付けられる様な…緊張なのかな…?いつもよりドキドキしちゃって…しかも、身体が変にポカポカしちゃって…。」

 

ガバッ

 

そして、ドミナントに抱きつく。いつもより締め付けが強かった。そして、抱きしめながらゆっくりと顔を上げ…。

 

「私の身体…どうかしちゃったのかな…?」

 

神様が上目遣いで、弱々しい目で聞いてくる。

 

……何これ!?めっちゃ可愛い!誰!?この美少女!?

 

ドミナントは見たことのない神様を見て、心の中ですごく動揺している。

 

「う、うむ…。」

 

ドミナントは目を合わせずに言う。

 

「…ドミナントのことが好きで好きで堪らなくて…。でも、それ以上のことにならなくて…。だから、今日チョコレート渡したんだけど…、私の身体はいつにも増して変になっちゃって…。」

 

「そ、そう…か…?」

 

「身体が変なのが少し怖くて…。わかる…かな…?胸がドキドキしちゃって…。」

 

「お、おう…。」

 

神様の心臓の音が服を通じて伝わる。心拍数も、音も大きい。

 

「…ドミナントなら…私の身体を癒せる気がして…。」

 

「ど、どうすれば良いんだ…?」

 

「このままでいれば…、治るかな…?」

 

「わ、わかった。このままだな。」

 

ドミナントは神様を抱きしめながら話した。

 

…………

数十分後

 

「ご、ごめん。」

 

「?どうした?」

 

「さっき、結構弱いところ見せちゃって…。」

 

「別に良い。」

 

「良くないよ!私は元気が取り柄なんだから!」

 

「そうか。」

 

神様とドミナントが話す。

 

「…弱々しかった方がすごく可愛かったな。」

 

「ひどい!今は可愛くないってこと?」

 

「そうかもな。」

 

「む〜!」

 

神様が頬を膨らませる。

 

「…まぁ、こっちも可愛い…か。」

 

「本当!?」

 

「…そういうところは敏感なんだな。」

 

ドミナントが苦笑いをして、神様が嬉しそうにする。

 

「さてと、じゃぁ、中に入るか。寒いし。」

 

「そうだね。…でも、もう少しドミナントといたい!」

 

「…マジか。」

 

そして、ドミナントはベンチに座り、隣に神様の席を開ける。

 

「ありがとう!」

 

神様は嬉しそうにそこに座った。少し体が震えている。

 

「…上着の中に入れ。」

 

「!?」

 

ドミナントが上着の中に神様を入れる。

 

「ありがとう。」

 

「別に良い。」

 

「…えへへ。あったかい…。」

 

「…そうか。」

 

……まぁ、普通にしておけば可愛いんだけどね。

 

神様とドミナントは甘い時間を過ごした。

 

…………

時間が変わり、場所も変わった場所。

 

「む。そろそろ3時か。」

 

ジャックが時計を見る。

 

「ギャハハハハ。どうかしたのかな?」

 

「加賀に弓道場へ向かう様言われている。」

 

「あ、そうなんだ〜。」

 

主任は一つでも貰えたことに満足なのか、冷たくは言わない。

 

「では、行ってくる。」

 

ジャックは歩いて行った。

 

「…チョコレートかぁ〜。…クールだよね。いつも。」

 

主任が呟いていると…。

 

「あ、あのっ!」

 

「ん〜?」

 

「これは電からなのです!」

 

「!?」

 

電が主任にチョコレートを渡しに来てくれたのだ。

 

「いーじゃん!中々やるじゃない?」

 

主任は嬉しそうに受け取る。

 

「電のチョコなのです!味わって欲しいのです!」

 

「ありがたいよぉ〜。」

 

電が渡してくれて、主任がものすごく喜んでいる。そこに…。

 

「主任さん!私からも…。」

 

「今まで世話になってるからな。」

 

「これをどうぞ!」

 

「ボクからの気持ちだよ。」

 

他の艦娘たちもどんどん渡していく。

 

「主任さん…。」

 

「「「いつもありがとうございます!」」」

 

「最高だ貴様らぁぁぁぁ!」

 

娯楽室に楽しそうな笑い声が響いた。

 

…………

弓道場

 

「遅かったじゃないですか。」

 

「む。先に言われるとは…。」

 

ジャックが着く頃には加賀はもうすでにスタンバイしていた。

 

「ジャックさん、甘いものがお好きでしたらこれを。…いえ、意味はありません…。」

 

「そうか。礼を言う。」

 

加賀からチョコレートをもらうジャック。

 

「…ジャックさんの好みに合う様に作りました。特に意味はありませんが。」

 

「そうか。」

 

「…指摘しないんですか?」

 

「ああ。そこを問い詰めるのは野暮だろう。」

 

ジャックが言う。ドミナントだったら指摘しまくりだろう。

 

「…私は、ジャックさんに好意を抱いています。」

 

「そうか。」

 

「…ジャックさんは…私のことをどう思いますか?」

 

「どうも思わん。」

 

「…そうですか。」

 

加賀はとてもがっくししている。顔には出さないが。

 

「…だが、これだけは確実に言えることがある。」

 

「…なんでしょうか…?」

 

「嫌いではない。」

 

「!?」

 

加賀はジャックの言葉に驚いている。顔には出さないが。

 

……つまり、嫌いではないなら、好きになる可能性が大いにあるということ!今のがわかっただけで十分です!

 

加賀は思い…。

 

「…ありがとうございます。」

 

「礼を言う必要はない。本当のことだ。」

 

ジャックが短くそういった後、自室に向かって行った。

 

…………

道中

 

「ジャック、こ、これ、うち、一生懸命作った、「ちょこれーと」っちゅう奴や。甘いもん嫌いやったら別に…。」

 

「頂こう。」

 

「あっ、もう食っとる!?…どや?おいしい?」

 

「普通だな。」

 

「うぅ、お、美味しいって言えや〜!」

 

「偽善では失礼だろう。…まぁ、嬉しかったがな。」

 

「本当か!?」

 

ジャックが喜ぶ龍驤をあとに歩いていると…。

 

「ジャック〜、島風のチョコあげるよ〜。誰のよりも早く食べてね。ほら、早く早く〜。」

 

「…もうすでに食べたがな。」

 

「えぇ〜。」

 

「…まぁ、チョコレートだな。美味いな。」

 

「やったぁ!」

 

喜ぶ島風を後に、またジャックは歩き出す。

 

「ジャックさん。あの…よかったら、こちらを、その…。受け取って頂けますと、神通、ありがたい…です。」

 

「頂こう。…カラスは恩を忘れない。覚えておくぞ。」

 

「ありがとう…ございます。」

 

「ジャックさん。あの、すみません。大淀からのチョコレートも受け取っていただけますか?」

 

「もらおう。」

 

「あっ、ありがとうございます。手作りなんです。」

 

「それは嬉しいな。」

 

ジャックはそれなりにモテている。

 

「ジャックさん!これあげるでち!ゴーヤ特製『ゴーヤチョコ』でち!」

 

「相変わらずの語尾だな。…普通のとどう違うんだ?」

 

「…内緒でち!」

 

「そうか。」

 

しかも、いちいち詮索したりしない。

 

「ジャ、ジャックさん。このチョコレート…よかったらもらってください。…あっ、甘いです♪」

 

「そうか。礼を言うぞか…。…かし…ま。」

 

「はいっ♪」

 

それに危なかったが、名前は忘れない。ドミナントの性格と似て非なる性格である。真逆は言い過ぎだが。

 

「ふぅ。ここまで貰えるとはな。…まぁ、かりは返すが。」

 

そして、ジャックは自室に戻った。

 

…………

 

「「「さて、ホワイトデー…。どうするか…。」」」

 

三人は場所は違うが、同時に言った。




瑞鶴からのチョコレート貰い損ねた…。
「残念だったわね!そう簡単にはあげないわ!」
くっ…。公式のTwitterを随時確認するべきだったか…。
「例え、今反省しても後の祭り!来年まで我慢ね!」
…まぁ、来年だとグラ出て嬉しさ二倍だったりね。
「うっ…。」
楽しみだなぁ〜。
「……。…今回あげたほうがよかったかも…。」
まぁ、後の祭りって奴だよ。運命だと思って受け入れろ。
「…まぁ、来年まで続けてくれるのはありがたいわね…。」
おっ。瑞鶴に褒められたぜ。…て、どうした?妙にしおしおしてるじゃないか。
「…待たされる方は本当に辛いんだから…。たまにはログインしてほしい。本当にたまにでいいの…。3日に一回でも。一週間に一回でも…。…一ヶ月に一回でも…。」
……。
「毎日…毎日待っているの。今日来なければ、明日来るんじゃないか。って。認めたくないけど、楽しみなの…。話すことが…。一緒にやることが…。」
……。
「だから…。いつまでも…。ずっと…、ずっと続けて欲しいの。半年に一回でも良い。忘れて欲しくないの…。わがままなのはわかってるわ…。でも…。でも、待たされる身にもなってみなさいよ…。」
……。…そうか。
「うん…。」
…明日ログインするか。寂しがり屋さんのためにさ。
「……。」
…撫でても文句言わないんだな。普段もそれくらい素直ならなぁ〜。
「…何か言った?」
あっ、いえ。なんでもないです…。はい…。…フッフッフ…。
「…ふふ。ふふふ。何笑ってるのよ。笑いがうつっちゃったじゃない。」
いや、なんだ…。やっぱり、こんな関係が良いなって。
「……。そうね。ふふ。」
フッフッフ。
追伸、バレンタイン当日に書き始めて、ネタ不足により遅くなりました。今までの登場人物を書くのは疲れます…。(特別話以外)


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特別話 ハロウィン 2020

今日はハロウィンですねー。コロナの影響もあるのに渋谷へ行く人はいるみたいですね。まぁ筆者は“自分だけは大丈夫”などと、甘い考えはしたことがないので行きませんが…。第四佐世保は浮き足立っていそうです。


…………

ハロウィン当日

 

「今年もやってきたか…。」

 

ドミナントは執務室で深刻そうに一人呟く。

 

「去年は妖精さんやAMIDAで埋もれて生死不明だったからな…。朝潮には冥福を祈られたし…。今日はどんな酷い目に遭わされるんだ…?」

 

ドミナントが執務室で呟いていると…。

 

「どうかしましたか?司令。」

 

「…いや、別に。」

 

秘書艦が聞き、ドミナントは何もなかったかのように答える。

 

……誰?全く知らない子…。何型なのかも分からない…。声かけたことあったっけ…?銀髪で目つきが鋭い…。男装っぽいけど…。おそらく、それが彼女の制服なのだろうな…。どうすれば良いか…。ハロウィンの服を着ているのは確かだな…。狼?の格好をしている。てか、その手じゃ鉛筆持ちにくいだろ…。

 

ドミナントが悶々としている。

 

「…司令?」

 

「あっ、はい。」

 

「あの…野分の顔に何かついていますか?ずっと見ているようですが…。」

 

「えっ?いや。別に…。」

 

秘書艦は野分のようだ。限定ハロウィングラフィックであり、狼のような服を着ている。ケモミミにケモ手袋だ。

 

「…えっと…。」

 

「野分です。」

 

「そう。野分、少し思ったんだけど…。そのハロウィンの服って毎朝勝手に変わってるの?」

 

「はい。」

 

「へぇ〜。」

 

「……。」

 

「……。」

 

会話が続かず、執務室に沈黙が流れる。

 

「真面目なんだね。」

 

「そう…ですね。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「…野分。」

 

「はい。」

 

「秘書艦…、嫌だったら誰かと変わるから、嫌な時は嫌だと言ってね。怒ったりしないから。」

 

「別に嫌でもありません。」

 

「…仕事手伝う?」

 

「いえ、秘書艦としての務めですので。」

 

「…野分。」

 

「はい。」

 

「俺に対して、どう思ってる?」

 

ピタッ

 

「……。」

 

先ほどまで鉛筆を動かしていた手が止まった。

 

「…そうですね…。良い司令だと野分は思います。」

 

「そっか…。」

 

「はい。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「ごめん、野分。」

 

「?」

 

「俺、あまり野分のこと知らないんだ…。もし良かったら、この後一緒に鎮守府を歩かない?お菓子を配らなくちゃいけないし、野分のことももっと知りたいから。」

 

「…舞風も誘ってよろしいでしょうか?」

 

「オッケーオッケー。」

 

……舞風…?まぁ、それは置いておいて、舞風は多分友人でしょう。野分の素を見てみたいな。

 

ドミナントが思った。

 

…………

鎮守府玄関

 

「じゃ、行くか。」

 

「はい。」

 

「いっこー!」

 

ドミナントと野分と舞風が歩く。

 

「まずはどこ行こっか〜。」

 

舞風が明るく話しかけて来た。

 

「柔らかな表情だね〜。その表情、いいじゃん。…今日は野分の素を知ろうと思ったけど、舞風の素も見ないとね〜。」

 

「舞風の素?」

 

「……。」

 

「ま、そんなことは置いておいて今日はまず倉庫から行こっか。毎回の倉庫へ。」

 

ドミナントが言い、ドミナント率いる野分、舞風御一行は倉庫を目指す。

 

「舞風〜。元気出して。」

 

「…知ってたんですか?」

 

「さぁてね。そこら辺はいつか本編でやると思うから、今日は何もしないよ。いつも通りで構わないよ。」

 

「…そ。」

 

「?」

 

「舞風〜、いつも真面目な野分って普段何してるの?」

 

「のわっち?え〜っとね〜。いつも筑摩と話してたりする〜。」

 

「へぇ〜。筑摩とね〜。」

 

ドミナントと舞風がマイペースで進み、マイペースで話す。

 

「て、のわっち?」

 

「あたしはそう呼んでるよっ。」

 

「そうなのか…。…距離を縮めるチャンスかな?」

 

「そうだよ提督!頑張って!」

 

「よしきた。のわっち〜。」

 

「司令、のわっち…とか呼ぶの、やめてもらえないでしょうか。」

 

「…と、反応されましたよ?舞風さん…。」

 

「あちゃー。普通に拒否されたね〜。」

 

「野分は俺に厳しいなぁ…。」

 

「こんな日は一緒に踊ろうよ。ワンツー!ワンツー!」

 

「躍る気分じゃないや。」

 

そんなことを話している内に倉庫前に来た。

 

「さてと…。」

 

ガキ…ギィィィィ…!

 

重そうな引き戸をドミナントが開けると…。

 

「「「トリックオアトリート!」」」

 

「おぉ…。」

 

待っていたのだ。

 

「セントエルモは去年と同じ鎧で…。」

 

「そうだよ。」

 

……顔が見えないから無反応に見えがちだが、そこで無反応に感じるのは素人だ。声でわかる。少し恥ずかしがっている感じなのをな!ふっふっふ…。可愛い。

 

「夕張は変わらず、少し汚いな…。」

 

「ひどい!」

 

……去年もそんな感じの服だったな…。本当に風呂に入っているのか…?…おぉ、頬を膨らませている…。可愛い…。

 

「セラフは…去年は魔女で今年はミイラか…。だから、恥ずかしがるくらいなら露出度をなんとかしろ!しかも、本当に包帯だけだろ!どんなプレイだよ!?」

 

「……。」

 

……相変わらずだな…セラフ…。何をどうやったらそんな露出度が高い服を着ているんだ…?…俺のせいか!?…いやいやいや…そんなわけがないな…。…まぁ、そんなセラフも可愛いね。

 

ドミナントが一人一人に丁寧に返し、心の中で思う。

 

「や♪」

 

「あれ?スティグロは初めてか…。お前も仮装しているのか…。」

 

「そうだよ♪scarecrowって言うカカシの仮装♪」

 

「随分マイナーなところを攻めるな…。」

 

「鎮守府の皆んなが来て行けってね♪」

 

「そうなのか?…たまにはそっちへ行ってみるか。」

 

……スティグロ…。お前も仮装するんだな…。てか、カカシって…。金髪ポニテが輝きすぎて怖くねぇよ!…まぁ、可愛いからいいけど…。

 

スティグロは面白そうに言った。

 

「ま、今年もそんな感じのハロウィンなんだな…。はい、お菓子。」

 

「これは♪」

 

「内緒。」

 

スティグロがドミナントの持っていた大きな袋の中を見て聞いてきた。全てラッピングされており、中身が見えない。

 

「この中に、一つだけ俺の手作りがあるからね。ま、誰が当たるか罰ゲームですな。しっかりした製品版の美味しいお菓子ではなく、老け顔おっさんの手作りお菓子…。どう考えたって罰ゲームだよ。運は日頃の行いがどうとか言うからね。日頃の行いが悪い子にはそれが当たるんじゃない?」

 

ドミナントがニヤニヤして言う。周りの艦娘やセラフは“逆”だと思った。そう、逆にドミナントの手作りは誰もが欲しがるだろう。日頃の行いが良い子がそのお菓子に当たるようなものだ。

 

「じゃ、これにしようかな〜♪」

 

「これにする。」

 

「ど、どれにしようか…。」

 

「一つだけ…。」

 

セントエルモとスティグロはすぐに選んだが、夕張とセラフは中々選ばない。

 

「…そろそろ他のところへ行きたいから締め切るよ?」

 

「ま、待ってください。どれにするか…。」

 

「もう少しだけ…。」

 

「3、ニー、いち!」

 

「「こ、これ!」」

 

二人ともそれぞれ手に取った。

 

「よし、じゃぁ俺たちは次のところへ行くから。」

 

「…普通は逆だよね。私たちが行く方…。」

 

ドミナントが言い、セントエルモが呟いた。夕張とセラフはラッピングを開けて、製品版の、子供がお菓子を食べている表紙を見て心底ガッカリしていた。

 

…………

娯楽室

 

「おー。…仮装している子はあまりいないね。」

 

ドミナントが娯楽室に入る。

 

「司令官!」

 

「提督!」

 

艦娘たちはダラダラやる気のなさそうにしていたが、ドミナントが来た途端にしっかりとして元気ハツラツになり、ドミナントに近寄る。

 

「「「トリックオアトリート!」」」

 

「へいへい。お菓子ね。悪戯は妖精さんたちだけで十分だ。」

 

ドミナントがお菓子を各艦娘に配る。艦娘たちは手作りお菓子のことを聞いて、心底迷い、選んで開けて心底ガッカリしていた。そこに…。

 

「ドミナント。」

 

「おぉ、ジャック…。て、お前も仮装しているのか。ドラキュラ伯爵か?」

 

「そうだ。」

 

「よく出来ているな…。」

 

「当たり前だ。この格好にするために歴史から見直して、その時代にあった格好も…。」

 

「お、おう。分かった。長くなりそうだからそれでいいよ。…で、なんか用?」

 

「手作りお菓子の件だ。」

 

「?」

 

「…たまに作って、譲ってくれないか?もちろん、それ相当の金銭は払うつもりだ。」

 

「売るつもりだな?艦娘に。しかも、ボッタクリ同様の値段で。」

 

「……。」

 

「残念だが、俺は艦娘たちには無料で提供するつもりだ。…ジャックに恩を感じていないわけではない。沢山助けてもらった。ただ、こんな形で返すのは性に合わなくてな…。ただ、高額な値段で売るのは少し嫌だ。どうせなら、そんなにお金を払わなくて、安くて手に入るようにしたい。」

 

「…そうか。」

 

「だから、俺もお金なんていらないから、その分そのお菓子を安くしてくれ。クッキーは一枚五円くらいに。」

 

「とんだ安さだな。」

 

「それで、ジャックも商売繁盛で艦娘たちは安く手に入って心底嬉しそうに笑顔で食べる。それが俺の理想だ。…出来れば、もっと安くして欲しい。」

 

「貴様が作るんだ。どんな値段でも変わらん。」

 

「ありがと。」

 

「礼を言われるのはおかしいがな…。」

 

ジャックはバツの悪そうに言った。

 

「ところで…。はい、お菓子。」

 

「?」

 

「セラフにもあげたし、用意していたから。」

 

「…礼を言う。」

 

「別にいいよ。」

 

ジャックはそう言ったあと、どこかへ歩いて行った。

 

…………。仕方ない…。艦娘の感謝祭のような感じで無料で提供するか。

 

ジャックはお菓子を見ながら思った。

 

…………

教室

 

「久しぶりにここに来たな〜。」

 

ドミナントと野分と舞風が教室に入る。

 

「ここで様々なことを習ったね〜。」

 

「先生が怖かった…。」

 

「ジナイーダ怖いもんね〜…。」

 

そんなことを話しながら三人、教室の机の上で話していると…。

 

「誰が怖いだと?」

 

「そりゃ、ジナイーダ…て…。」

 

「なるほどな。」

 

ジナイーダが機嫌の悪そうに立っていた。

 

「あの…怒らないんでしょうか…?」

 

「別に。怒ったところで何も変わらん。」

 

「…ごめんなさい。」

 

ドミナントが謝った。そこに…。

 

ガラララ…

 

「おや?将…提督殿!」

 

「隊長!」

 

「提督殿。」

 

陸軍出身艦娘たちが入ってきた。丁度授業の時間なのだろう。

 

「や、久しぶり。君たち、もうここ慣れた?」

 

「少しぎこちないでありますが、ここはとても優しくて楽しいところであります!」

 

「先生は優しいですし。」

 

「いつもは厳しそうにしています。しかし、テストで満点を取ると口ではきついことを言いますが、回答欄に“よく頑張った。えらいぞ”とか書いてありまs…。」

 

ドガァ!

 

神州丸にジナイーダが投げたチョークが着弾した。

 

「…手が滑った。」

 

「嘘つけ!」

 

ドミナントが顔が少し赤いジナイーダにツッコミを入れた。

 

「まぁ、そんなことよりお菓子。あきつ丸たちにもあげるね。」

 

「?なんでありますか?これ…。」

 

「プレゼント。」

 

「まるゆたちに…プレゼント…?何もしてないのに…?」

 

じわ…

 

「ありがたい限りであります…。提督殿…。」

 

「ありがとうございます…。こんなに優しい人がいたんですね…。」

 

「なんで泣く!?」

 

二人は扱いが酷すぎた陸軍出身である。優しくされたことすらあまり無かったのだろう。二人は嬉しくて泣いている。

 

「はぁ…。優しくするなんて当たり前だろう。お前たち二人は俺の大事な家族みたいな二人なんだから。」

 

ぶわっ…!

 

「提督殿!!」

 

「隊長!!」

 

「おっとっと。」

 

二人が泣きながら飛びついてきた。ドミナントはそれを受け止める。野分と舞風が面白くなさそうに見る。

 

「ちなみに、俺の手作りが一つだけあるよ。」

 

ドミナントが袋の中を見せる。

 

「一つだけ…?」

 

「どうしてでありますか?」

 

「何となく。」

 

あきつ丸とまるゆがそれぞれ手に取る。

 

……でも、どうせなら将…提督殿が作ったものが欲しいであります。

 

……隊長の作ったお菓子…。

 

二人はそんなことを思うとドキドキしてしまった。

 

「…精進しないといけないでありますな…。」

 

「まるゆ、今ふしだらなことを…。だめですね…。」

 

「?」

 

二人はすぐにその考えをやめ、適当に一つずつ取った。そして、ラッピングを開けて、製品版の表紙が出て少し寂しく思ったのは気のせいだろうか…。ジナイーダもついでに一つ取る。

 

「ところで…。ずっと触れなかったけど、ジナイーダのその格好って…。」

 

「魔女だ。」

 

「中世のヨーロッパの魔女って感じを忠実に再現…していないな…。」

 

「悪かったな。」

 

「まぁ、性格が…。」

 

なんだと…?

 

「あっ、いえ!なんでもないです…。」

 

「もう我慢出来んな…!」

 

「えっ?」

 

バ ッ ク ブ リ ー カ ー

 

バギッバキキキキ!!

 

「ギャァァァァァ!!」

 

ドミナントはジナイーダのバックブリーカー(背骨折り)をくらった。

 

「ふん!」

 

「あふぅ…。」

 

ジナイーダは一仕事終えたあと、不機嫌に出て行った。

 

「本官ももらいますね。」

 

「好きにしてくれ…。」

 

そして、しばらくしてドミナントが立ち上がり、次のエリアへ向かった。

 

…………

演習場

 

「相変わらずだね。まぁ、相変わらず置いて行くか。」

 

ドミナントはフランケンシュタインの格好をしている主任を見たあと、お菓子を人数分置いて行った。艦娘たちの士気は駄々下がり、前回同様結果的には惨敗した。

 

…………

廊下

 

「全員配ったかな…?」

 

「まだ誰かいるんじゃない〜?」

 

舞風がのわっちを見ながら言う。

 

「まだ…。あっ!そうか!」

 

「そうそう。」

 

「神様がいた!」

 

「そっち!?」

 

舞風が微妙な顔をした。

 

「神様ー。」

 

「?」

 

神様が振り向く。ドミナントが自ら来ることなんて珍しいからだ。

 

「ドミナント!嬉しい!私にもくれるの!?」

 

「当たり前だよ。今日、一度も邪魔しに来なかったご褒美。」

 

「やった!」

 

神様がラッピングに包まれたものを一つ取る。

 

「中は…。…製品版…。」

 

すごく残念そうな顔をする神様。

 

「てか、神様、それなんの格好?」

 

「フクロウ。どう?似合ってる?」

 

「ふむ…。難しい質問だな…。」

 

「似合ってない…?」

 

「…似合ってるよ。」

 

「ありがとう!」

 

「「……。」」

 

舞風と野分はたしかな違和感を感じる。

 

「…司令。」

 

「どうしたの?」

 

「距離、縮まっていますか?」

 

「誰との?」

 

「神様とのだよ〜。」

 

「俺が?こいつに…?」

 

ドミナントが今までのやりとりを振り返る。

 

「…確かにな。神様、もう少し離れてくれ。」

 

「ひどい!」

 

「最近疲れているから、そのせいかもな。あと、先輩神様の分も選んでくれ。」

 

「どれがいいかなー…。これにしよう!」

 

神様が適当に一つ選んだ。

 

「じゃ、俺はそろそろ行く。」

 

「もう行っちゃうの?」

 

「まだ楽しみにしている子たちがいるのでね。じゃ、俺は帰らせてもらう。」

 

「…じゃあね。また来てね。」

 

「わかった。」

 

確実に距離が縮まっている神様を後にして、ドミナントが行く。

 

…………

執務室

 

「なんとか全員に配った…。」

 

「お疲れ様です。司令。」

 

ドミナントは各部屋に行き、一人一人に配ったのだ。

 

「妖精さんたちにもあげたから、袋の中はもう一つしかないけどね。」

 

「「えっ…。」」

 

舞風と野分が困った顔をする。二人とも、まだ貰っていないのだ。

 

「あ…。」

 

ドミナントもそのことに気づく。

 

「…どっちがもらう?」

 

「「……。」」

 

二人が黙った。今まで、ドミナントの手作りが出たことが無かった。つまり、これは確実にそうなのだ。すると…。

 

「…舞風、今日ずっと付き合ってくれてありがとう。だから、舞風にあげて。」

 

「…いいのか?」

 

「うん。」

 

野分が舞風に手渡しする。

 

「あ、ありがとう…。」

 

「ううん。」

 

舞風がラッピングを開けたが…。

 

「製品版…。」

 

まさかの製品版。

 

「「もしかして…!」」

 

「ふっふっふ…。全ては私のシナリオ通り…。残るは本物の手作りだ。」

 

ドミナントがポケットから取り出した。

 

「俺が本当に罰ゲームとしての手作りを用意すると思うか?俺の知っている者たちは手作りの方が良いと誰もが思っているのは確認済みだ。最後に君たち二人を残していたのは、今日一番二人が俺と一緒に働いてくれたことの礼として、どちらかにあげようと思っていたからだよ。」

 

「て、ことは…。」

 

「そうだ。おめでとう。野分。そして、その格好は本当に可愛いよ。」

 

「……。」

 

ドミナントが言って頭を撫で、野分は顔を赤くして俯いた。

 

「なーんだ〜。提督も悪だねぇ〜。だから、神様にもあの態度だったんだ〜。」

 

「当然。本物の手作りなんてこの袋の中にはないからね。」

 

ドミナントと舞風が笑う。

 

「…まぁ、鎮守府の皆んなの方が一枚上手みたいだけど。」

 

「何故だ?」

 

「多分、知ってるよ?そのこと。」

 

「えっ?」

 

「袋の中に本物なんて入っているわけがないって噂していたから。」

 

「マジかよ。」

 

舞風が言い、ドミナントが驚いたと思ったが…。

 

「なんてな。その製品版の中を見てみろ。」

 

「?…!」

 

舞風が中を見て驚いた。手作りだったのだ。

 

「裏の裏をかく。元々手作り以外のものなんてないんだよ。俺は差別嫌いだから。」

 

「これは予想外…。最初の定義自体が違ったんだ…。」

 

「まぁ、野分はラッピングを解いていないから、中の表紙は違うけどね。」

 

「えっ!?」

 

舞風が驚いた。

 

「…て、そろそろ撫で過ぎだよ。提督。のわっちの顔が今凄いことになってるから…。」

 

「え?…そうだな。」

 

野分は嬉しすぎてケモミミが垂れ下がって、本当に嬉しそうな顔をしている。

 

「じゃぁ、開けてみて?野分。」

 

「は、はい!」

 

野分が嬉しそうにそのラッピングを開けた。

 

「「わぁ!」」

 

「ふっふっふ。」

 

他の製品版とは違う、ドミナントの手書きの箱だ。happy Halloweenと書いてある。そして、可愛らしいお化けの絵だ。

 

「いいなぁ〜いいなぁ〜。」

 

舞風が何度も呟き、野分は嬉しそうな顔をしたままだ。幸せなのだろう。

 

「じゃ、食べよっか。」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

ドミナントも茶菓子や余った手作りお菓子を机に広げた。

 

「「「いただきまーす!」」」

 

そして、皆んなお菓子を食べながら楽しそうに会話をする。その声は執務室の外まで聞こえてきたみたいだ。




1日遅れのハロウィン。三時間で仕上げるのは無理でした…。来年こそは必ず…。てか、ズイズイのハロウィングラはまだなのか…。人気を誇る金剛のグラもまだだから、まだなのだろうか…。
ま!そんなことは置いておいて、トリックオアトリートと女性に言われたら、お菓子をあげるかあげないか迷いますよね?
あんたも迷うだろう?…迷わないのか…?迷ってるんだろう…?


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特別話 クリスマス 2020

クリスマス。2020年も終わりかぁ…。そして、三日も遅れてしまった…。10000字超えました。


…………

第4佐世保鎮守府

 

「クリスマスー。クリスマスー。」

 

ドミナントが執務室でワクワクしている。

 

「なのに、どうしてそんなに怖がってるんだろう…。」

 

ビクッ

 

ドミナントが勝手に決めた秘書艦…本日は潮である。

 

……やっぱり、クリスマスだからクリスマスグラでしょ。とかの認識がよくなかったのかな…。

 

ドミナントは一生懸命仕事をしている潮を見て思う。

 

「…潮。」

 

「は、はい。」

 

「…嫌だったなら、無理しなくて良いんだよ。折角のクリスマスだし。」

 

「そんなこと…ありません。」

 

「ほんとー?」

 

「はい。」

 

「ふふ〜ん。だと良いが。」

 

ドミナントがそんなことを言いながらペンをコロコロ転がしていると、潮の後ろ姿からはみ出て見える、プレゼント箱に注目する。

 

「……。」

 

……気になる…。

 

そんなことを思い、触ると…。

 

「ひっ、あああああ!」

 

「!?」

 

驚いたのか、潮が悲鳴をあげたのだ。

 

バァァン!

 

「なんだ!?」

 

ジナイーダが悲鳴を聞いて突入して来た。もはや憲兵だ。

 

「ドミナント…。なにを…している…?」

 

「ま、待て!誤解だ!誤解!」

 

ドミナントが必死に弁解する。

 

「な!潮!」

 

怖がっている潮に同意を求めたが…。

 

「いきなり…後ろから…(プレゼント箱に)触られました…。」

 

「ほう…いきなり後ろから触られたのか…。」

 

「ちょ、待…。」

 

「死ねぃ!」

 

「やっぱりかー!」

 

ヒュー…ガシャァァァン!

 

久しぶりに、ジナイーダに掴まれて窓から投げられた。

 

…………

 

「アウチ…痛い…。」

 

ドミナントは想像以上に飛ばされて、何かの建物に落下した。

 

「ここはどこだ…?」

 

キョロキョロ見回していると…。

 

「赤城さん!大丈夫ですか!?」

 

ドンッ!

 

「ぐはぁ!」

 

ドシャァァ!

 

加賀がドミナントを突き飛ばし、下敷きになった赤城を心配する。

 

「赤城さん!赤城さん!」

 

「て、提督の下敷きに…。」

 

「何で嬉しそうな顔をしているんですか!?」

 

下敷きになった赤城は何故か嬉しそうな顔をし、加賀が本気で心配する。

 

「痛い…。」

 

「提督…どういう意味か説明してもらいますよ…?」

 

加賀がドミナントを睨み、手をバキバキ鳴らす。

 

「ちょ、待…。事故…事故です…。」

 

「説明…ですか?それは…。」

 

「い、いえ…。あの…まず、潮のプレゼント箱が気になりまして…。」

 

「……。」

 

「触ったら驚かれて…。」

 

「……。」

 

「ジナイーダに窓から捨てられて…。」

 

「……。」

 

「何故かこうなりました…。」

 

「…執務室と弓道場の距離は1980尺(約6000m)あるんですよ?納得がいきません。」

 

「いや、でも納得って言ったって…。」

 

「遊んでいたらこうなった。違いますか?」

 

「……。」

 

……否定が出来ないところがまた困る…。

 

ドミナントは何もいえない顔になった。

 

「……。」

 

加賀はこれ以上聞いても答えが出ないことを悟った。

 

「では、提督。」

 

「お、おう…。笑顔なところがまた怖い…。」

 

「歯を食いしばってください。」

 

「ゑ?」

 

バッゴォォォォォン!!!

 

「ぐはぁぁぁぁ!」

 

バッキャァァァ!

 

ドミナントは加賀にグーパンされ、吹っ飛んで弓道場にめり込んだ。

 

シューーーー…

 

「これで少しは懲りるでしょう。」

 

動かなくなったドミナントを横目に、赤城を心配するのだった。

 

…………

 

「すみませーん!」

 

「あら、潮さん。」

 

しばらくして、秘書艦である潮が走ってくる。

 

「こちらに提督が来てませんか…?」

 

「提督ならあそこです。」

 

「提督ー!」

 

加賀がめり込んだままのドミナントを指差し、潮が駆け寄った。

 

「て…い…と…く…!」

 

ギューーーー…!

 

『イテテテテ!千切れるって!潮!やめて!』

 

潮がドミナントを壁から引き抜こうと力任せて引っ張ったら…。

 

ズポッ!

 

「…え…?」

 

頭をなくしたドミナントが…。

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

「うーん…ハッ!?…潮さん…?」

 

潮の悲鳴により、赤城が起き上がった。

 

ポンッ

 

「ふっふっふ…。加賀に殴られた仕返しだ。…て、あれ?」

 

ドミナントは服の中から顔を出して種明かししたが、潮は泡を吹いて気絶していた。

 

「あら、提督。どうかしましたか?」

 

「潮が気絶しちゃった。」

 

「まぁ、それは大変ですね。そこに毛布があるので、かけてあげてください。」

 

「了解!」

 

気絶させた張本人のドミナントが潮に毛布をかけてあげた。加賀はなんとも言えない顔をしていた。

 

「ところで、クリスマスですね。提督。」

 

「そうだねぇ〜。去年は…。…いた?」

 

「「いません…。」」

 

「…だよね…。去年は鈴熊と一緒にいたっけ…。今年はあの2人何してるかな…?…だが、今夜は違うプランがあるんでね…。皆んなでパーティーっぽい。するっぽい。夜ご飯に食堂に集まるっぽい。」

 

「何故夕立さん…?」

 

「そんなことよりも、プレゼントは用意してあるんですか?」

 

「あぁ、例のブツは予定通り今日の夕方には届くだろう…。」

 

「例のブツ…。」

 

「そうですか…それは楽しみですね…。」

 

「加賀さん!?」

 

「「フッフッフッフ…。」」

 

ドミナントと加賀が怪しげな笑みを浮かべて笑っている。そこに…。

 

「ハッ!?ここは…。」

 

潮が目覚める。

 

「アタマナクシタドミナントダヨー。」

 

「?」

 

「…覚えてないなら、それでいい。思い出さない方が良いこともある…。」

 

「???」

 

…………

 

「て、ことは提督の冗談だったんですか!?」

 

「あぁ、そうだ。」

 

「提督酷いです!本気で心配しましたから!」

 

「やったぜ。」

 

ドミナントは悪びれもなく言う。

 

「提督、彼女をからかい過ぎてはいけませんよ?」

 

「彼女は私たちが新米の時、護衛してくれました。」

 

「え?そうなの?」

 

「はい!」

 

「そっかー。…偉いな。」

 

「ありがとう…ございます!」

 

ドミナントが潮の頭を撫でる。

 

「ところで、皆の衆のプレゼントは決まった?」

 

「「……。」」

 

2人が目を合わせる。

 

「私たちにも貰えるんですか?」

 

「え?当然じゃん。去年ももらったでしょ?」

 

「そうですが…。提督のサイフを少し圧迫しているのかと…。」

 

「そんなの気にしちゃダメ!しかも、駆逐艦の前でそのセリフダメ!夢を壊さないで!」

 

「提督の…財布…?」

 

「ち、違うよー。」

 

潮が純粋な眼差しでドミナントがダメージを喰らう。加賀はしまったという顔をして、赤城は笑顔が張り付いている。

 

「とにかく、そういうことは気にしちゃダメ!」

 

「潮は…秘密です。」

 

「なぬっ…。(またサンタの格好か…。)」

 

「私は…。…ささやかな物で結構です。」

 

「そうか…。(また難しいことを…。)」

 

潮と赤城から情報を聞く。

 

「私は爆撃機『富嶽』の完全版を要求します。」

 

「よし!今日の晩ご飯はパーティーだから、俺の料理も振舞っちゃうぞー。」

 

「「提督の…手料理…!」」

 

「聞いていますか?」

 

加賀無茶な願いをスルーして、2人に言う。2人は嬉しそうな顔をした。

 

…………

 

「さて、無茶なことリストが段々増えてきたぞー。」

 

ドミナントと潮は執務室に戻らず、艦娘の部屋に行き、情報を集めて行く。

 

「でも、プレゼントするのはさんたさん?ですよね…?」

 

「うっ…。ま、まぁね…。」

 

嘘を突き通すのは難しい…。

 

……こりゃ、後でセラフとかにも手伝ってもらわないとな…。

 

そのリストを見ながら苦笑いして、セラフに頼ろうかと思った。すると…。

 

「あれ?提督ですか?」

 

「おや、その声は…えーっと…。あの…ほら…。あれだ…。」

 

ドミナントが声の主の艦娘を見て、人差し指を出しながら軽く振る。

 

「アラグマ!」

 

「違います!」

 

「冗談だ。阿武隈。」

 

「はいっ!」

 

阿武隈は名前を覚えてくれていることに心底嬉しそうな笑顔をする。

 

「丁度よかった。阿武隈はクリスマスに何か欲しいもの…いや、サンタから欲しいプレゼントある〜?」

 

「プレゼント…ですか。う〜ん…。…あっ!クリームです!」

 

「クリーム?」

 

「美容とかの…。」

 

阿武隈が雑誌を見せる。

 

「なるほど。それか。」

 

ドミナントがメモをする。

 

「協力ありがとう。ところで、クリスマスツリーのところは行った?娯楽室の…。」

 

「いえ、まだです!」

 

「なら、一緒に行こうか。」

 

「はい。」

 

三人で娯楽室へ向かう。

 

…………

娯楽室

 

ワイワイ…ガヤガヤ…

 

「今年は一際騒がしいな…。おっ、ビンゴしてる。良いなぁ〜。」

 

娯楽室は意外と広い。

 

『次は…45番だ。』

 

「当たったー!」

 

「やったー!」

 

ジャックが司会を務めているようだ。店に売れ残った物などを景品としているのだろう。番号を言い、阿鼻叫喚。はっきりと言うとうるさかった。ドミナントは可愛いなぁと思い、そのフィルターで声など聞こえない。潮は少し嫌な顔をしていた。そんなお楽しみムードが険悪ムードで台無しになるのは次の一言だった…。

 

「…はしゃいでる…。駆逐艦、ウザい。」

 

阿武隈が何気なく言ってしまった一言により…。

 

は…?

 

ゾワッッ!!

 

ドミナントの一言により一変、背筋が凍った。恐怖がAC勢以外を支配する。ビンゴをしていた艦娘たちも静まり返り、誰も動かない。振り向くことすら出来ない。潮はその顔のまま固まり、動けなくなった。

 

「阿武隈…今なんて言った…?俺の目の前で言ってみろ…。」

 

いつもは朗らかで優しそうな笑顔をするドミナントは、この時鬼教官と同じ顔をしていた。社畜の世界で幾つもの修羅場を潜り抜けた、歴戦の古兵がするまさにそれ。

 

「阿武隈…聞いているのか…?」

 

阿武隈は一瞬にして瞳の色が恐怖に変わり、歯がカタカタなるだけだ。目の縁には涙が溜まっている。時間が遅く感じてしまう。身体は動かない。呼吸困難になる一歩手前だ。

 

「なぁ…!阿武隈…!」

 

ドミナントは苛立ち気に阿武隈の名前を呼ぶ。阿武隈はこの世の終わりのような顔をしていた。

 

「そのくらいにしておけ。可哀想だ。」

 

すると、ジナイーダがドミナントの肩を叩く。すると、やっと動けるような空気になった。

 

へた…

 

「はぁ…はぁ…。」

 

潮と阿武隈が崩れ、呼吸をする。

 

「少し厄介だぞ。その気迫。周りの艦娘にまで影響を及ぼしている。」

 

「…そうだな…。」

 

ジナイーダが少しキツめの目で言い、ドミナントは少し目つきが和らいだ。

 

「全く…。折角盛り上がっていたのが白けたぞ…。」

 

ジャックが迷惑そうに言う。

 

「で?49番だっけぇ?ギャハハハハ!あれれ〜ハツユキン外れたね〜。ハハハハハ!」

 

主任はさっきのことなどまるで気にしていない。マイペースを崩さず、まだ盛り上がっていた時と同じノリだ。

 

「他の子もすごく怖がってしまったではありませんか。もう少し考えてください。」

 

「すみません…。」

 

セラフが少しムッとしている。

 

「あと少しでビンゴだったのに…。」

 

「そっちか…。」

 

今まで空気だった神様が、ビンゴを続けられないと思い、悲しそうな顔をしていた。

 

「…阿武隈、そういうことを言うのはドミナントの前ではNGだ。おそらく、誰かの口癖がうつったのだろう。次からは気をつけろ。」

 

「はい…。」

 

「ドミナント。お前も、それくらいなら聞き逃してやれ。聞き逃さなかったせいでこんなになっている。次は気をつけろ。」

 

「はい…。」

 

「全く。クリスマスの準備で私とセラフは忙しいんだ。」

 

ジナイーダは2人に言った後、廊下へ行った。

 

「カッコいい…。」

 

「やっぱり、教官さんには敵わないわねぇ〜…。」

 

「オレもあんな風に言えたらなぁ…。」

 

他の艦娘たちのジナイーダへの株が上昇した。

 

「…阿武隈。」

 

「は、はい…。」

 

ドミナントに言われ、阿武隈は少し恐怖しながら返事をする。

 

「…すまなかった。」

 

ドミナントが言う。

 

「だが、はしゃいでも良いではないか。クリスマスだもの。皆んな浮き足立つさ。阿武隈も、あんなにはしゃいだことは無かったか?旅行の時飛行機の隣の席だった時とか。」

 

「…はしゃいじゃいました…。」

 

「だろう?その時、みんなそう思っていたと思うよ?でも、誰も言わなかったじゃん。だから、そこを考えてくれれば何も言うことはないよ。次からは気をつければ良いし。じゃ!もうこんな話はやめ!ビンゴしよう?潮もね。」

 

「ふぇっ!?な、何の話ですか…?」

 

「…はい!」

 

潮は何も聞いていなかったらしく驚き、阿武隈が元気よく言う。

 

…………

 

「そう思ってみれば、潮と阿武隈って何か関係あるの?」

 

三人がジャックの店の売れ残…いや、景品を貰って話す。

 

「潮ちゃんにはとても感謝しています。」

 

「へぇ〜。…どうして?」

 

「レイテ沖海戦で、私がやられちゃった時…。付き添ってくれました。それに、沈んじゃう時…潮ちゃんが乗員を助けてくれたんです。」

 

「…そう…なんだ…。」

 

ドミナントは阿武隈の話を真剣に聞く。

 

……潮…そんなこともしたんだ…。

 

ドミナントが、景品の人形を嬉しそうに眺めている潮を見る。

 

……すごいじゃないか…。立派だよ。

 

ドミナントが潮の頭を撫でながら思う。潮は何故撫でられているか分からなかったが、気持ちよかったのでそのまま撫でられた。

 

…………

 

「そろそろ11時ですね。」

 

「ん?そういやまだ朝だったな。」

 

ドミナントが時計を見る。

 

「お昼はどうしようか…。…て、あれ?何してるの?」

 

お握りを握っている潮。

 

「ふぅ…狭霧さんに持っていくんです。」

 

「ふぅ〜ん。ところで、お昼は何食べたい?」

 

「お昼…。…提督の好きなところで大丈夫です。」

 

「好きなところって…。」

 

そんなことを話しているうちに出来上がった。

 

「これを持っていきます!」

 

「そっか。」

 

……潮の姉だっけ…?…良い子だな。…2人だけにしてあげよう。

 

「行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい。」

 

ドミナントは執務室に残り、昼食をどうするか考えていた。

 

…………

 

「ただいま戻りました。」

 

「おかえり。お昼は間宮さんのところでいい?」

 

「はい!」

 

「よっしゃ、行くか。」

 

…………

間宮

 

「ちわー。」

 

「こんにちは。」

 

2人が間宮の所に来る。ちなみに、本来の店名は「甘味処間宮」なのだから場違いでもあるが…。

 

「あら、提督と潮ちゃん。いらっしゃい。」

 

間宮さんが柔らかな表情で出迎えてくれる。

 

「そうだなぁ…。お腹すいたから、ガッツのあるものを食べたいな。」

 

「ガッツのある…。」

 

間宮さんは難しそうな顔をした。

 

「私は…おむすびに…。」

 

先程握っていて食べたくなったのか、潮は握り飯を注文する。

 

「お二方…食堂と間違えていませんか…?」

 

「いや、俺はあんなこと言ったけど、純粋に間宮さんの作るカレーを所望していたんだけど…。」

 

「私も、間宮さんの作るおむすびを…。」

 

……かつてないほど提督と潮ちゃんに期待されてる…!?

 

間宮さんは心の中でそんなことを思う。

 

「この間宮…!受けた注文は必ず出します…!それが私です!私は補給艦!それ以上でも以下でもありません!いざ!」

 

「おぉ…。」

 

ハチマキをキリリと締めてキッチンへ行く間宮。伊良子は微妙な顔をしていた。

 

…………

 

「どうぞ!」

 

「おぉ…!」

 

「わぁ…!」

 

間宮さんが出した、キラキラ輝く料理に2人が目を瞬かせた。

 

「うまい!」

 

「美味しいです!」

 

2人が食べるなり言う。間宮さんは満足そうな顔だ。伊良子は子供っぽいなぁと思いながら見ていた。

 

「……。」

 

一方、間宮さんは潮を柔らかな表情で横目に見ていた。

 

……潮ちゃん…。私を助けてくれた1人…。あの時…。救助してくれた子…。

 

どうやら、間宮さんも潮に助けられたことがあったみたいだった。

 

…………

 

「ぷはー。美味しかったぜ…。」

 

「そうですね。」

 

2人が笑顔で、会計を済ませた後歩いている。

 

「ハラショオオオオオ!」

 

「きゃっ!?」

 

「む!そのセリフは…ボリスb…。」

 

いきなり大声がして、振り向いてみると…。

 

「ひび…Верныйだ。信頼できると言う意味の名なんだ。」

 

「なんだВерныйか。」

 

「驚きました…。」

 

Верныйがいた。

 

「ハラショー。」

 

「ハラショオオオオオ!」

 

「やはり、第4佐世保の響だな…。」

 

「?」

 

「ところで、どうしたんだい?」

 

ドミナントが聞く。

 

「暁たちや他の艦の欲しいものリスト…。」

 

「… Верный(ヴェールヌイ)…。」

 

「リスト…?」

 

潮が聞き、ドミナントがВерныйを雲行きの怪しい顔で見る。Верныйには協力してもらっているようだ。色々な報酬をつけている。

 

「あ…えと…。…司令官にリストを渡して、手紙を出してもらうんだよ。」

 

「あっ、なるほど。」

 

Верный回避成功。

 

「ありがとう。Верный。君のおかげで、俺には内緒にする者の欲しいものがわかったよ。これで、心置きなく手紙を書ける。」

 

「役に立てたのなら嬉しいよ。」

 

「と、言うわけでВерныйにはこの暗号文を与えよう。」

 

「暗号文?」

 

ドミナントがВерныйにどこからともなく出した暗号文を渡す。

 

「ドミナントからの挑戦状。それじゃ。」

 

ドミナントと潮が行く。

 

……今夜のプレゼントは楽しみにしておけって書いてあるからなぁ…ふふふ。

 

ドミナントがそう思っていたが…。

 

「……。」

 

……は、ハラショー…。どう見ても買い物のメモにしか見えない…。高度な暗号…?敵に知られないようにするのが暗号…。つまり、艦娘の能力が試されている…。解いて、司令官をギャフンと言わせてみよう。

 

Верныйは、にんじん、パセリ、砂糖、紅茶、じゃがいも、シャンパン、七面鳥…などなど書かれたメモを見ながら歩いて行くのだった。ちなみに、今夜のパーティーの料理の材料だ。

 

…………

 

「次は曙ちゃんに会いに行きたいです。」

 

「何か会いに行く旅になってない?…まぁ良いけど。てか、ここから部屋近いから良いけど。」

 

廊下を歩きながら2人が話す。

 

「曙かぁ〜…。」

 

……いつもいつもクソクソ言ってる奴だよなぁ…。俺が何したってんだ。

 

もちろん、いつもクソクソ言っている曙にも、そういう理由がある。それは史実に関するが…。…クリスマスに話す内容ではないので、言いません。が、ドミナントに対しては完全なとばっちりである。

 

……まぁ、一人で堤防にいる時とか寂しそうにしてるから、声かけてあげるんだけどねぇ。…その時「クソ提督」って言葉が少しだけ嬉しそうに言うから、嫌いじゃないってのは分かるけど…。態々会いたいとは思わないな…。…少しからかってみるか…。

 

「あ…クソ提督。」

 

そんなことを考えていると、曙と遭遇する。丁度部屋に戻る最中だったらしい。

 

「曙ちゃん。プレゼントは何にしたのか聞こうと思って…。」

 

「クソ提督がいるから話せないわ。」

 

「……。」

 

「?」

 

曙は不審がる。いつもなら笑いながら流すドミナントが、冷たい目で見ていたからだ。

 

……どうだ。曙。この表情を見て動揺するか…?

 

しかし、ドミナントは心の中では全く気にしておらず、反応を見て可愛がろうと思っている。

 

「…まぁいいわ。」

 

……おっ。ガード固。

 

平然を装ってはいるが、曙は内心動揺している。

 

「提督はここに来たくなさそうでしたけど。」

 

「え…?」

 

……潮?どうした?

 

潮が突然言い出す。曙は少し驚いたような声を出した。

 

……提督の思っているように、少し動揺して可愛い曙ちゃんを見たい…!

 

潮はドミナントと同じ気持ちだった。ドミナントの意図に気付き、少し追い詰めてわたふたしているところを見たいのだろう。そして盛大に種明かしをするのだ。こんなに愉快な鎮守府が他にあるだろうか…。

 

「そ、そう…。クソ提督なんてどうでも良いけど。」

 

……動揺しているな…?ふっふっふ…あと一息だ。

 

ドミナントが思い、潮が頷く。

 

「…そうだな。俺はクソ提督だ。それ以上でも以下でもない。そんな曙に朗報がある。」

 

「え?」

 

話しかけられて内心ホッとする曙。しかし、どん底に突き落とされてしまう。

 

「前々からクソクソ言ってたよね?」

 

「え…ええ。」

 

「そんなクソな上司に従うのは嫌であろう。」

 

「…ええ、そうね。」

 

「そんな曙に朗報。前々から元帥殿にお願いしていた異動の話が決まったのだ。」

 

「…え…?」

 

「曙は明日から第1大湊鎮守府へ異動だよ。俺とはもう二度と顔を合わせることがないほど遠いから、思い出さずに済むでしょ〜?それに、提督も優しいし。」

 

「……。」

 

「何より、職場でマイナス言葉ばかり言っているようでは、環境も悪くなると思うし。」

 

「……。」

 

「ま、そんな訳で曙は異動するよ。」

 

「そ、そんなの…。だ、第一、1人居なくなったら…。う、潮!潮はどうなの!?」

 

曙は藁にもすがるような顔で潮に同意を求める。

 

……あれ?やりすぎちゃった…?

 

2人が思う。明らかにやりすぎの雰囲気だ。しかし…。

 

……だが、ここを乗り越えた後の曙の表情も見てみたい…。

 

ドミナントが悪い顔をする。

 

「潮も同意してるよ?ね?」

 

「は、はい。」

 

……提督…。何か良い考えが…?

 

潮は何も考えずに同意した。

 

「そ…そう…。で、でも部屋が…。」

 

「大丈夫。向こうの曙がこっちに変わるから。提督の話だと、めちゃくちゃ良い子らしいよ?クソクソ言わないらしいし。」

 

曙はこの世の終わりのような顔をした。しかし、数分後元の顔に戻り…。

 

「そ、そう!私もこんなクソ提督と一緒にいなくて済々するわ…!さよなら!」

 

曙はそう言ったあと、部屋に入ってしまった。

 

「…潮…やりすぎ…?もしかしてだけど…。」

 

「提督…これは想定の…。」

 

「範囲外だよぉ…。」

 

「…ですよね…。」

 

2人が外でコソコソ話す。そして、ドアに耳を当てると…。

 

『グスッ…ヒック…ヒック…。どうせ私なんか…。どうしてクソっていっちゃったの…。グスッ…。私の馬鹿…。ヒック…。もう言わないって言ったら…。ヒック…取り消してくれるかしら…?グスッ…。あのク…提督…。グスッ…どうしても言っちゃう…。』

 

「「……。」」

 

すすり泣く声と一緒にそんな言葉が聞こえた。これがからかっただけだと分れば、2人は間違いなく怒られるだろう…。

 

「…でも、言わないわけにはいかないよね…。」

 

「はい…。」

 

2人が頷き…。

 

ガチャ…

 

「曙ちゃん…。」

 

「ぼのさーん…。」

 

2人がドアからそっと顔を出す。

 

「…!ク…提督!潮…ちゃん!」

 

「「!」」

 

2人が、言葉遣いを直そうとしていたことに気づいた。ちなみに、曙はトランクに荷物を入れていた最中だった。

 

「もう…言葉遣いを変えるから…!クソなんて言わないから…!ほら!ク…提督!提督!ほら!言えるから…!良い子になるから…!」

 

「ぐふっ…。」

 

曙が涙目で必死に懇願して、ドミナントの心にダメージを負わせた。

 

「曙ちゃん。」

 

「潮…ちゃん…!お願い…ここにいさせてくれるように…。」

 

「曙ちゃん。落ち着いて。これは冗談です。」

 

「グスッ…冗談…?」

 

「…冗談です。」

 

曙がドミナントを見る。ドミナントは殺されることを覚悟していた。

 

「良かった…!良かったわ…!本当に…。」

 

潮に抱きつき、曙がめちゃくちゃ喜んでいる。嬉し涙を流している。怒られると思っていた2人は拍子抜けだ。

 

「…提督…。」

 

そんな時、潮が申し訳なさそうにドミナントを見る。

 

「うん。分かってる。ちょっと冗談が過ぎた。もう二度としないようにしよう…。こんな冗談…。」

 

…………

 

「ク…提督。」

 

「良いよ。今までの呼び名で。自由に呼びな。名前なんて所詮飾りだし。」

 

忘れているかもしれないが、ドミナント自身本名ではない。

 

「本当…?捨てたり異動させたりしないわよね…?」

 

「ああ。本当だ。我が名にかけて!」

 

「ク…ソ…提督…。」

 

曙が試すように言う。

 

「おうおう。クソ提督だぞー。プレゼントは何が良い〜?」

 

「…内緒…。」

 

「結局かい!」

 

「曙ちゃんは提督からのプレゼントがほしいって言ってましたよ?」

 

「潮!」

 

「ふふ〜ん。」

 

「な、何か文句あるの!?クソ提督!」

 

……これだ!!

 

曙が真っ赤になって言う。2人はやっと追い続けたものに手が届いた気がする。艦娘馬鹿…その称号はドミナントにこそふさわしい…。

 

…………

夕方 門

 

「今年もポストの中がぎっしりだ…。まぁ、会った人全員に出してるから何も言えないけど…。」

 

「?」

 

ドミナントがはみ出そうなポストからカードを取り出す。

 

「全部クリスマスカードだ。」

 

「わぁ〜。素晴らしいと思います。提督。」

 

「まぁ、そうだよね…。」

 

一枚一枚ドミナントが見る。

 

…………

 

今年も演習!演習!演習!血の滲む努力でお前たちを越える!

 

第3呉鎮守府!

 

…………

 

今年もホワイトクリスマ〜ス。今年も注文ありがとね!粗品も同封されてるから、使って。ジナにもよろしくね!

 

第2舞鶴鎮守府

 

…………

 

メリークリスマス。『ドミナント』。北方海域の不明な深海棲艦の連絡ありがとう。機会があったら伺うから、その時お礼も兼ねてゆっくり話しましょう。

 

第1大湊警備府

 

…………

 

クリスマスだ。この間は当旅館をご利用いただき感謝する。また今度会おう。その時は、例の物の貸し借りしようではないか。

 

第2佐世保鎮守府

 

…………

 

拝啓 ドミナント様

 

メリークリスマス。やぁ、今年もこのカードを書いた。中山だ。あれから責任を持って指揮を任された時から艦娘たちは1人も轟沈させていない。平和にのんびり暮らすことがここの決まりだ。そちらも平和そうで何よりだ。連絡があればすぐに駆けつけることを忘れるな。遠慮はいらない。

 

第2横須賀鎮守府

 

…………

 

拝啓 ドミナント大佐

 

や。今年は初めてカードを書いた。…どこかの鎮守府にこんなカードを送るのは初めてでよく分からない気持ちだ。と、そんな話はさて置きメリークリスマス。今は猪のステーキを食しながら書いている。カードに匂いがあったらすまない。それと、憲兵たち諸君は皆元気だ。憲兵沙汰にならないように気をつけろ。

 

第49憲兵隊一同

 

…………

 

拝啓 第4佐世保鎮守府 ドミナント様

 

寒い季節になりました。そちらはいかがお過ごしでしょうか。こちらは今年も寒くて乾燥した気候です。武蔵のLENIを教えていただきありがとうございました。今も関係は良好です。またいつか大本営にお越しください。メリークリスマス。

 

敬具 大本営 大和

 

…………

 

拝啓 ドミナント大佐

 

メリークリスマス。ドミナント君、元気かね?こちらは大和と年末仕事で大忙しの毎日だ。と、書いても、これを書いている時点で忙しくなさそうに感じるだろうが…。…ハッキリと言うと書くのは義務になっている。だが、勘違いしないでくれ。君や信頼のおける鎮守府には心の底からの言葉だ。そして、何かあったら遠慮なく連絡してくれ。全力で対応する。

 

大本営 武田元帥

 

…………

 

Guten Tag(こんにちは). 私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。覚えているかしら。今年もクリスマスの季節なのね。早いわね。あなたたちが来てくれたおかげで、こちらはとても良い環境や信頼関係を築けたわ。それに、たまにAdmiral(提督)の夢を見るの。あなたたちにお礼を言っている…。それと、皆んなも会いたがっているから、たまには来なさい。

 

パラオ泊地提督 Bismarck.

 

…………

 

「今年も来たか…。」

 

ドミナントがカードを一枚一枚眺める。新たにパラオ泊地まで来ていた。

 

「第4呉がないけど…。…あっ、あそこはクリスマスとか海外文化だからないのか。」

 

ドミナントが気づいたが…。

 

「危ないです!」

 

「ぬわっ!」

 

ヒュンッカッ!

 

ドミナントの顔のすぐ隣に矢文が飛び、門の壁に突き刺さった。

 

「いつか殺されるんじゃないかと思う…。」

 

ドミナントが矢文を壁から引き抜き、内容を見る。

 

…………

 

第4佐世保

 

世俗にてはくりすます?と呼ばらるる日にかような文を出したでござる。今度そちらに友として邪魔する。

 

(世間ではクリスマスと呼ばれる日に手紙を出しました。今度、そちらに友人としてお邪魔します。)

 

第4呉鎮守府 瀬戸大佐 (川内)

 

…………

 

「カッコ内が川内さん…。川内さんが訳してくれたんだ…。ありがたいな…。」

 

「沢山の人からカードや文が届いていますね。」

 

ドミナントは川内の苦労を知る。潮は羨ましそうに見ていた。すると…。

 

ブウウウン…

 

門にトラックが来た。

 

「やっと来やがった。マジで重いのかよ。今日で記録を更新させてもらうぜ。筋肉がぁ。」

 

「何を言っているのか、正直意味が不明です。」

 

ドミナントがトラックの積み荷を見ながら言い、潮に言われる。

 

『お届けものでーす。食品なので、取扱注意です。』

 

「はーい。」

 

ドミナントが巨大な箱を渡される。

 

『ここにサインしてください。』

 

「渡す前に言ってくださいよ…!潮…頼む…!」

 

「あっ、はい。」

 

潮はスラスラとサインをした。

 

『それでは、いつも海軍運送をごりようありがとうございます。』

 

トラックの運転手は行ってしまった。

 

「好きでわざわざ海軍運送してもらってるわけじゃないぞ…!」

 

そう、この場所は世間では極秘のため、運送会社も限られるのだ。

 

「潮…その箱運んで…。」

 

「ダジャレは10点です。」

 

「潮こそ意味不明だよ…!俺は言った覚えないよ…!」

 

ドミナントが重すぎると思ったのか、AC化した。そして、キャスター付きの板に箱を一瞬で積み重ねる。

 

「ふぅ。これくらいか。じゃ、この荷物を運ぼうか。」

 

「はい。」

 

ドミナントがACのため、2人とも重さを感じなかった。

 

…………

食堂

 

「提督。例のブツは?」

 

「これだぜ。」

 

「「フッフッフッフ…。」」

 

2人が悪い顔でにやける。

 

「あの…これは…?」

 

「見せてやろう。」

 

ドミナントが箱を開けた。

 

「産地直送七面鳥だ!」

 

「あの五航戦の顔を見たいですね。」

 

潮は、そんな2人を見てほのぼのした。

 

…………

翔鶴型の部屋

 

「ハックション!」

 

「どうしたの?瑞鶴。風邪かしら?」

 

「どうやら、私のことを誰かが噂したようね…。そして、なぜか無性に腹が立って来たわ。」

 

「?」

 

どうやら、瑞鶴は噂されているようだ。

 

…………

食堂

 

「では〜。本日はクリスマス!皆、美味しい料理を沢山たんまり食べてくれ!セラフたちが腕を奮ってくれた!そして、俺の作ったものもある!残さず食え!いただきます!」

 

「「「いただきます!」」」

 

ワーワー!

 

艦娘たちが食べる食べる。

 

「クリスマス。素敵ですね。」

 

「ほら。一杯あるよ。故郷の味だ。」

 

「提督、ありがとうございます。素敵です♪」

 

潮とドミナントが笑顔になる。

 

「クリスマス…?別にあたしには関係ないけど。…まぁ、ケーキは、食べるけど…ね?」

 

「お肉美味しい〜。」

 

「提督!今年こそは一杯やろう!」

 

「たまには酔うのも悪くないか?て、飲んだら暴走しちゃうからオレンジジュースで。」

 

「子供か!」

 

「今年は提督と一緒にいることは出来ませんでしたわ…。」

 

「熊野が落ち込んじゃってるね〜。ま、私も少し寂しいけどね。手袋が温めてくれるよ。」

 

「俺のプレゼントは刀だ!刀!」

 

「銃刀法違反で逮捕ですよ…?それは…。」

 

「あら〜でも、セラフさんも銃を持ってるわよね〜?」

 

「あれは…護身用です。」

 

「電、これ美味しいわよ。」

 

「司令官さんの手料理なのです!」

 

「ハラショー…にんじんは古来より中国の…。じゃがいもは日本では北海道が産地で…。」

 

「一人前のレディーとして、エレファント(エレガント)に食べるのよ!」

 

「クリスマス…今日の夜はお休みです。伊良子ちゃんも楽しみなさい。」

 

「美味しそう〜!」

 

「紅茶がなんとも…。美味しいデース!」

 

「赤城さん…。本当に大丈夫ですか…?」

 

「そういう加賀さんもジャックさんばかり見ているではありませんか。」

 

「ギャハハハハ!う〜んこの七面鳥美味いね〜。あれれ〜食べないんですか〜?」

 

「わざと言ってるでしょ!?爆撃されたいの!?」

 

「瑞鶴、今はおめでたい席だから…。」

 

「私の出番無かったです…。」

 

「夕張ちゃん。来年こそはあるといいね。」

 

そんな感じで各々が楽しそうに会話しながら食べて行く。そんな光景を見て、ドミナントも嬉しそうにする。社畜の世界では、決して見ることのなかったであろう、楽しそうな景色。皆んな笑って、ゆっくり楽しそうに食べる。そんなクリスマス。

 

…………

 

「で、結局これかい。」

 

「ふふっ。お似合いですよ。提督。」

 

潮は、何となく正体に気付いていたようなので、ドミナントが明かした。毎年、秘書艦や他に手伝ってくれた艦とは一緒にいる決まりみたいになっている。

 

「今年もそれだね〜。あははは!」

 

「で、結局神様も一緒か〜。」

 

ドミナントはプレゼントを配りに行く。

 

……天龍は刀が良かったみたいだけど、ダメだから刀を模した危険じゃないおもちゃ。鈴熊は強い装備…15.2cm10連装砲改。ロックオン付き。暁は…俺の仕事を楽にさせて…だと…?なんて良い子なんだ…。なんでも叶う券一枚あげちゃう。ひび… Верныйはみんなで遊べる人生ゲーム…と、おまけの小型ドローン。

 

ドミナントはそんな感じで次々配って行く。

 

「さてと…。今年も来たか。主任…。お前には石炭があるぞ?お?」

 

部屋の前でそんなことを呟くドミナント。しかし…。

 

……あれ?いない…。

 

ジナイーダやセラフの部屋に行くが…。

 

……いない…。

 

そして、全ての艦娘たちに配ったあと、一旦神様のところへ戻る。

 

「ジナイーダたちが…。」

 

「遅かったな。」

 

「遅かったじゃないか…。」

 

「遅いですね。」

 

「言葉は不要かなぁ〜?」

 

「いた。」

 

皆集まっていた。

 

「で、どうしてここに?」

 

「私が呼んじゃった。」

 

「神様…。」

 

神様が悪びれもなく言う。

 

「だって、皆んな一緒の方が楽しいし。」

 

「まぁな…。」

 

「今日は違うところのイルミネーション行こう!皆んなで少し遠出してさ。」

 

「潮は俺の背中に乗ってか。」

 

「そう!」

 

神様が計画する。五島ではなく、九州のどこかだ。

 

「じゃ、元帥たちに言わないとな。クリスマスの日は皆んなイルミネーションとか行きたいみたいで、元帥たちも起きてるから。」

 

そして、連絡を入れる。大和さんが笑顔で対応してくれた。

 

「じゃ、行きますか!」

 

…………

 

「綺麗〜!」

 

「素敵ですね。提督。」

 

「そうだね。」

 

「私のいた世界には無かったな…。…良いところだ。」

 

「そうですね。」

 

「商品開発したら売れそうだ。」

 

「今はそういうこと省こうよ〜。」

 

ドミナント御一行と潮がいる。海軍権力というものは素晴らしい。…もちろん、相応のお金がかかるが…。

 

…………

 

「さてと、一通り見終わったところで、皆にプレゼントがある。」

 

「「「?」」」

 

全て見終わったあと、ドミナントが言う。そして、袋を開けた。

 

「神様には俺の作った耳当て。」

 

「嬉しい!」

 

「潮にはこれ。俺の作った帽子。」

 

「ありがとうございます!提督!」

 

「ジナイーダには最新ゲーム機。いつも暇してるって言ってたからね。」

 

「おぉ…。欲しかったものだ。…ありがと…。」

 

「セラフは俺の作った安眠マスク。前欲しいって言ってたし。」

 

「ありがとうございます!ドミナントさん。一生大切に使います!」

 

「ジャックは新しい店だったな…。折り畳み式で少し小さいけど…。これしかなかった…。」

 

「それだけでも嬉しいさ。礼を言う。」

 

「主任には、保湿機をあげるよ。喉がキツイだろうし…。」

 

「ギャハハ!冬は特にね〜。それに、今渡されても…。」

 

ドミナントが一通り配り終わる。

 

「じゃぁ、毎年恒例の記念写真!」

 

神様が写真機を取り出す。そして、時間をセットして並んだ。

 

「1+1は古いよな。」

 

「そうだね〜。」

 

「ミソスープ。」

 

「それは違うぞジャック。」

 

「ちなみに、チーズって言うのはチーの発音で口角が上がり笑顔になるからみたいです。」

 

「そうなんですか。」

 

「知らなかった…。」

 

「そろそろシャッターが切るぞ。各々笑顔になれば良かろう。」

 

そんな会話をして…。

 

カシャッ

 

皆、思い思いの笑顔で写真が撮れた。

 

「また来ましょうね!」

 

潮が幸せそうな笑顔で言い、全員が頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

第4佐世保鎮守府 提督自室

 

「さてと…。寝るか。」

 

遊びに遊んだ明けごろ、朝日が登る少し前…。地平線がオレンジ色に明るいころ…。

 

「また謎のプレゼント…。」

 

すると…。

 

タッタッタッ…

 

「!今度こそ正体を!」

 

すぐ近くから音がして、ドミナントが窓から覗く。

 

「メリークリスマース!」

 

やはり、赤い服を着たおじさんがトナカイに乗って朝日へ向かって行っていた。

 

「…メリークリスマス。」

 

自然とその言葉が出てきて、口元が緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

三日後

 

「司令官…どうしても解けない…。」

 

「まだ悩んでたの…?」

 

Верныйは三日間、とても考えていたようだ。




なんだか面倒になっちゃった…。
「まーたそんなこと言って…。」
おぉ…懐かしい瑞鶴…。五航戦の急に踊り出す人…。
「イベントあるけど、全く進んでいないじゃない。」
時間がないんだよ…。こう見えても筆者は忙しいんでね。
「はぁ…。」
ため息つきたいのはこっちだよ…。てか、まだ見続けている人なんていないと思うし…。もう、今まで書いたストックしていたもの公開しようかな…。時系列無茶苦茶で、未完の章とかあるけど…。
「それはやめなさい。質が落ちるわよ…この小説の…。」
別にねぇ…。図書館の奥の本棚の一番上にある、埃を被ったものなんて誰が見るのさ…。
「…それ言っちゃおしまいじゃない…。」
もうさ…疲れて来ちゃって…。案は浮かばないし…。
「…筆者さんはそれでも投稿するじゃない。どんな筆者さんにも言えることだけど、筆者さんたちがいないと私たちは真っ白な紙に閉じ込められた、動きも話すこともできない人形のような物なのよ。ううん、存在もしてない。筆者さんたちが書くから私たちに命が吹き込まれる。続けるって簡単なように見えて、とても難しいことなのよ。時には間違えちゃったり、転んだり、ぶつかる時もあるかも知れない。それでも続けているから、人々は喜んだり楽しんだり暇潰しになったり…つまらなかったり、下手だったり、人気なんてなかったり…。例えそうだとしても、プラスのことと何も変わらない。沢山の人に感情や思いを伝える手助けになっているの。それに、筆者さんの目標はACと艦これのクロスオーバー作品が増えることでしょう?」
…うん。
「なら、頑張りなさい。私も…この私もこの小説で応援してあげるから。」
…ありがとう。元気出て来た。
「そう。その粋よ。」
じゃ、近いうちに投稿するか!
「ええ。」
瑞鶴のクリスマスグラは無かったけど…。
「嘘おっしゃい!あるわよ!」
知ってる。
「なっ!からかってるの!?」
うん。
「爆撃するわ!発艦始め!」
うぉっ!冗談だったのに!
ドガァァァン!
ぐふぁ!
「どうよ!」
……。
「何?私の威力に声も出ないのかしら?」
…ふふふ…いや。瑞鶴の爆撃を受けたのが久しぶりでさ。なんか、これだなぁーってね。
「な…。……。…もう…爆撃する気がなくなっちゃったじゃない…。馬鹿…。」
ひどっ。…これだね。次のイベントの日にまた会おうっ!
「見てくれる読者さんがいれば良いけど。」
それを言うなって…。


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特別話 ホワイトデー

一年以上あきましたー。


…………

 

「今日は年に一度のWhite day...。実は、アメリカなどではホワイトデーなどはなく、日本発祥だと言われている…。」

 

ドミナントが独り言を暗い部屋で呟いた。

 

「…そろそろ準備をしなければな…。」

 

バンッ!

 

電気をつけたそこは執務室ではなく、調理室。

 

「…バレンタインデーのお返しに…ありきたりだが、クッキーをあげるか。」

 

席から立ち上がり、オーブンを確認して材料を確認する。

 

「…セラフ…。やってくれるのはありがたいんだけどね…。今回は余計かな…。」

 

材料はどれくらいか、艦娘の数、作り方などを記したメモと、袋に小分けされた材料、そしてオーブンの点検まで済んでいた。ドミナントは自分の手作りを渡したいため、その小分けされた袋の材料を全部出して、艦娘の数以外のメモを捨てて、別のオーブンのある場所へ移動する。

 

「では、作ろう。てか、ジャックらはどうすんだ…?来てないけど…。…まさか、スーパーの奴で終わらせるつもりじゃ…。」

 

ドミナントの頭にそんなことがよぎり、材料を放ってジャックの部屋へ直行する。

 

…………

 

コンコン

 

「ジャック、いるか?」

 

『いる。』

 

「邪魔するよ。」

 

ドミナントが部屋に入ると…。

 

「これから行くところだ。共についてくるか?」

 

「やっぱり…。」

 

外へ行く私服を着ていた。

 

「ジャック…。艦娘達は俺らの手作りをずっと待ってるんだぜ…。」

 

「待っていると言われてもいまいちピンとこないな。」

 

「とにかく、一緒に来て作るぞ。」

 

ドミナントは否応なしにジャックを引きずって行った。

 

…………

 

「今日はホワイトデー♪司令官からお返しにっ♪」

 

吹雪は部屋でそんなことを機嫌よく言う。

 

「ホワイトデーって、日本発祥みたいだよ…。」

 

初雪がドミナントと同じことを言う。

 

「そうなんだ〜。…初雪ちゃんあげた?」

 

「寝てたかも…。」

 

「私はちゃんとあげたよ!」

 

吹雪はどうだと言わんばかりにドヤ顔をしたが…。

 

「でも、溶けているやつでしょう?」

 

白雪が言う。

 

「もしかしたら…。溶けていたから…失敗作を…渡されるかも…。」

 

「…え?」

 

「司令官なら、あり得るかも知れないわね…。」

 

「じょ、冗談キツイよ?二人とも…。」

 

二人が不安を煽り、吹雪が少し心配する。

 

「まぁ、どうなるかは結果次第ね。例えそれがなんであろうとも、満足すればいいけど…。」

 

「なんかとても不安になってきちゃった…。」

 

吹雪のテンションががくっとさがった。

 

…………

 

「では、クッキー作りを始める。」

 

「「……。」」

 

主任とジャックは乗り気ではないようだ。効率を求めるジャックは面倒であり、製品版の方が美味いため、時間の無駄だと考え…。主任は眠そうな目を擦っていた。

 

「まず生地だ。今回は外はサクサク中はしっとりを目指す。焦がしたやつをあげるのは終身刑だと思わねば。」

 

ドミナントは手際良く生地を作る。

 

「…ジャック?」

 

「…やらなければならんのか?」

 

「バレンタインデーに、チョコレートをくれた子たちが悲しむ姿を見たいのなら、市販でも構わないんじゃないか?」

 

「…いいだろう。やろう。卑怯な言い方までするとは…。」

 

ジャックは渋々クッキー作りをする。主任はふざける元気がないのか、黙々と始めていた。

 

…………

 

「はぁ…。」

 

「どうした?」

 

「少し心配で…。」

 

「少し分かるかも。」

 

ため息を吐いたセラフ、ジナイーダ、神様が屋上で話す。

 

「ドミナントなら、問題はないだろう。あいつは義理堅い。必ずもらった人数分返すだろう。」

 

「いえ、そうではなく…。あの二人が…。」

 

「…主任とジャック・Oか…。」

 

「あの二人、なんか色々面倒を起こしそうだよね…。」

 

「ジャックさんは変なところで細かいですから、本日が終わってしまう可能性もありますし…。主任さんは逆に大雑把なので、とても食べられるようなものじゃないものを作る気も…。」

 

「まぁ、あの二人はな…。」

 

「この鎮守府の男って、客観的に見ると変人だもんね…。」

 

「否定は出来んな。…いや、私たちもだろう。生物的に。」

 

「それもそうですね…。ははは…。」

 

「「「はぁ…。」」」

 

女性陣のトップの3人はそんなことを言い、ため息をついた。

 

…………

 

「では、俺は出来たけど…。ジャックは?」

 

「私も出来上がったところだ。」

 

「主任?」

 

「俺も出来たんじゃな〜い?ま、お返しのお下がりだけどねぇ。」

 

「じゃ、各々配りに行こ〜。」

 

「一つ味見…。」

 

「こら!主任!手を出すな!クッキーに手を出すな!分かったかぁ!」

 

「いかん!そいつには手を出すな!」

 

「二人して言わなくても…。ギャハハハハハ!」

 

ドミナントらは調理室を出た。

 

…………

 

「考え直してください。飛べば処理機に吸い込まれてグチャグチャです。」

 

「その通り!」

 

わーわー

 

「?」

 

何やらキッチンで騒いでいる。

 

「おい、何してるんだ?」

 

「「あっ、提督…。」」

 

「一航戦のお二人が何してるんだか…。」

 

「瑞鶴も一緒に止めてあげてましたけどね。」

 

赤城と加賀だ。周りにその他もろもろがいる。

 

「で、何してるんだ?」

 

「赤城さんが食の大切さを皆に…。」

 

「何が『食の大切さ』よ。最後に残していた鮭の皮を残飯と間違われて捨てられちゃったから、稼動中の処理機に行こうとしていたのを止めていたんじゃない。」

 

「…マジで?」

 

青い一航戦が説明しようとしたところ、本当のことを七面鳥五航戦が話した。

 

「赤城…。いくらなんでも意地汚すぎるぞ…。まぁ、食にそこまで敬意を持っている所はすごいがな。」

 

ドミナントがやれやれとする。翔鶴は張り付けた笑顔だ。

 

「そんな悲しそうな顔をするな…。今日が何の日か忘れたのか?」

 

「今日…。…!」

 

「……。」

 

「あっ!今日は…!」

 

「ふふふ。」

 

赤城が悲しそうな顔から一変、嬉しそうな顔に変わった。

 

「そんな4人にあっと驚くプレゼントをあげよう。」

 

ドミナントがクッキーをあげる。

 

「提督…このクッキーを、チョコのお返しに?こんなに沢山!?では、一つ…ううーん美味しい♪…でも、鮭の皮…。」

 

「そうか。美味しいなら本望だろう。」

 

……だが、俺のクッキーは鮭の皮以下なのか…?

 

「お返しですか?そうですか。」

 

……加賀はなんか事務的に貰われた…。嬉しいのか…?加賀は…。

 

「提督さん、チョコのお返しくれるの?」

 

「当然だぜ。元社畜の俺に勝てるもんか。それと、翔鶴も…。」

 

「提督、これを私に?お返し、ですか?あらやだ、ありがとうございます!楽しみです♪」

 

「やったー!え、翔鶴姉にも?なんでなんで?!」

 

「え…。だって、翔鶴もくれたし…。」

 

「微妙に納得出来ない!!」

 

「瑞鶴?瑞鶴、何を怒っているの?」

 

……翔鶴…。やっぱり、瑞鶴に言っていなかったな…。とぼけた顔までして…。さすが姐さんだよ…。

 

ドミナントは一先ず姉妹のことを放って、先へ進んで行く。

 

…………

 

「次はフフ怖の代名詞…。」

 

「あ、提督。」

 

「天龍だ。」

 

ドミナントは態々天龍の部屋まで来たのだ。

 

「なんだよ、俺になんかくれるのか?」

 

「くれるもなにも…。今日はホワイトデーだよ?」

 

「…ホワイト?なんだそりゃ…。」

 

「バレンタインデーに乙女らしかった天龍とは大違いだな…。いいだろう。私が説明する。」

 

ドミナントは天龍に分かりやすく説明した。

 

「と、言うわけでクッキーあげる。」

 

「…あっ…ん…えっ…ありがとな…。」

 

「…ホントにわかってる?」

 

……天龍…。もう少しだけでも乙女になれば可愛いのに…。……。…いや、天龍は天龍だな。今のままが良いか。

 

ドミナントと天龍がドアで話していると…。

 

「あら〜?提督〜?」

 

「おう、龍田。」

 

「おかえり…龍田。」

 

龍田がやってきた。

 

「そうだ。丁度いいや。これ、あげる。」

 

「あら~私に?いいのかしら? ありがたく頂戴するわね。……勿論、私にだけよねぇ?」

 

「騙して悪いが、天龍にも配っている。それに、不平等なことはしない。くれた人に渡す。それだけだ。」

 

「律儀ね〜。」

 

……今龍田の目がめちゃくちゃ怖かった…。龍田に睨まれると怖くてたまらなくなるんですぐに分かる。

 

ドミナントは突き刺さる視線を背に、歩いて行った。

 

…………

 

「よぉ、三日月。てか、やっぱり娯楽室にいたか。」

 

ドミナントは娯楽室の入り口から顔を覗かせる。

 

「皆んなソワソワしてやがる…。可愛いなぁ。」

 

「変態ですよ…。」

 

「そうか?まぁいい。三日月にもあげるよ。変態のクッキー。」

 

「えっ!?このクッキー、頂けるんですか!?有難うございます、大切に頂きます!」

 

「おう。」

 

……変態クッキーを大切に頂く…。なんか笑えるな。

 

「ヘェ!イー!提督ぅー、私へのホワイトデーのBigなお返しは何ですカー?」

 

「お返しをすると言ったな。あれは嘘だ。」

 

「NOOOOOOO!!」

 

「冗談だから…。はい、金剛は特別に大きなクッキー。」

 

「oh!thank youネー!提督ー!」

 

……実は、あのチョコレートのせいで血糖値に問題が発生したんだよな…。安心しろ。そのクッキーも中々に甘いからな…。

 

「クッキー、貰ってもいいんですか?私、チョコ失敗しちゃったのに…。」

 

……まずい!ブッキーが少し悲しそうな顔をしている…!ホワイトデーに女の子を泣かせるなんて問題外!貰ってくれないかもしれない!つまり、ジナイーダにより俺の命が…。

 

「い、いや!ねぇ!溶けたからなんだ!ホットチョコレートがなんだ!とても美味かった!これホント!だからお礼!」

 

「え、珍しいホットチョコのお礼、ですか? ああっ、すみません…。」

 

「謝んなくていいよー。」

 

……何とか受け取ってくれた…。あぁ、良かった…。

 

「夕張にもあげる。」

 

「え? 提督、これを私に? ありがとう♪ 早速、開けて食べてしまっても、いいかしら~?」

 

「どうぞお好きにしてください。」

 

……もちろん、紅茶の入ったチョコレートだぜ。夕張は果汁を入れたから、俺は紅茶を入れる…遊び心あるな〜。

 

「えーっと、如月ちゃんと提督にクッキー焼いたんだけど…食べて、くれるかにゃー?」

 

「…睦月?逆じゃない?…まぁ食べるけど。むしろ、く…。…いや。」

 

「あ、睦月ちゃん、このクッキーを如月に?ありがとう。大切に食べるわね?うふふふ♪」

 

「今食べてほしいにゃ〜。」

 

ドミナントと如月が睦月のクッキーを食べる。

 

「うん。美味しい。美味すぎるわ。もっと食わせろ。」

 

「美味ねぇ〜。」

 

「やったぁ!」

 

睦月が嬉しそうな顔をした。

 

「…それと、なんか対抗しているみたいで今渡すのは少しあれだけど、渡しておくね。寝食を惜しんで作り上げた俺のクッキーだ。」

 

ドミナントが睦月と如月に渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

「美味しそうねぇ〜。」

 

……二人とも嬉しそうに…。ひたすら可愛いぞ…。俺に理性がなかったら尊死している…。

 

ドミナントはそんなことを思った。

 

「さてと…。もういないな。なら、俺はセラフのところへ渡しに行く。楽しいホワイトデーを過ごしてくれ。」

 

「「「はい!」」」

 

ドミナントは行き、艦娘達は嬉しそうな顔をしていた。

 

…………

道中

 

「重い…。」

 

ドミナントは沢山のクッキー袋を持っていた。

 

「ふぅ…。あっ!長門!良いところに!」

 

廊下から歩いてくる長門を見つけて、呼ぶ。

 

「はい。長門にもあげる。いつもお疲れ様。」

 

ドミナントがクッキー袋を長門に渡した。

 

「これが、例のお返しというものか。ありがたい。これは、胸が熱くなるものだな。いただこう、嬉しいぞ!」

 

……かわいいな…。いつもは鋭い目つきなのに。

 

長門が生き生きとして言うものだから、ドミナントの心も自然と明るくなる。

 

「しれえ…チョコのお返しほしいです!」

 

「まさかの催促来たよ…。ほれ。これだ。」

 

「あ、これですね! ありがとです! 食べます!」

 

ドミナントの手から、雪風がクッキー袋を手に取った。

 

「司令官、このクッキーは?…はっ、貰ったらお返しを、という文化。そうなのですね?私も再度のお返ししないと。何がいいかしら…。」

 

「シラユキ…なにを…言ってる…?そんな和のおもてなし要素無いから。」

 

「え、違う、の?」

 

「ああそうだ。白雪は変なところが抜けてるな…。」

 

分かって言っている白雪にドミナントが大真面目に捉えた。

 

「司令、お姉さま見ませんでした? せっかくクッキー焼いたのにー…あの、味見します?」

 

「ありがとう。いただくよ。それと、クッキーあげよう。」

 

……相変わらず金剛が好きだな…。比叡…。てか、なんだこれ…。……。…!このクッキー…クソまずいぞ!土を食った方がマシなんじゃないか!?金剛め…逃げたんだな…。

 

「榛名にもやろう。俺のクッキー。」

 

「えぇっ?チョコレートのお返しだなんて、そんな…榛名には、もったいないです…嬉しいです♪」

 

……その100万ドルの笑顔。浄化…され…る……。

 

「そうですねー、チョコレートのお返しは、特に気にしないでください。ええ、特には…。」

 

「逃すか。あんたにも食べさせてやんよ。どんなもんじゃい。」

 

……謙虚だなぁ…。けど、こっちも命がかかってるんでねぇ。貰ってくれないと…。

 

「扶桑もあげるー。」

 

「提督。これを、ちょこれいとのお返しに?嬉しいです。」

 

「そりゃよかったよ。」

 

「姉さま、山城、姉さまにこぉんなにクッキー焼いたんです!」

 

「あっ、山城も来た。」

 

「…え、何です、それ? …うわ。」

 

「…あら、どうしたの、山城?」

 

「引かないでくんない?逆に俺は山城の作った量に脱帽だよ…。」

 

……実質、俺よりも多いしな…。クッキー渡してからも睨んでくるのやめてくれない…?扶桑は幸せそうな笑みをしてるし…。可愛いし…。

 

「文月にもあげよう。そして世に文月のあらんことを…。」

 

「しれーかん、ありがとー♪ …あれ? これ伊良湖ちゃんがいつもつくってるのと…まさか…。(しれーかんのご意志に逆らう愚か者を抹殺せよ!!)

 

「いや、俺の手作りだよ…。」

 

……君のような勘のいいガキは嫌いだよ。

 

「はい。去年俺に君だけくれなかったけど、いつも頑張ってるからご褒美だよ♪」

 

「ぅ…お返しされる理由はないのだが…。すまん、来年は必ず用意する。」

 

「……。気にしなくていいよ。いや、マジで。」

 

……笑ってくれるかと思ったら違う展開になっちゃった…。

 

「多摩にもあげるよ。」

 

「いただくにゃ。」

 

……可愛いなぁ。可愛いなぁ…。

 

「長良にもあげるー。」

 

「ありがとうございます!」

 

……ハァハァ息切らしてるよ…。走ってたのかな…?発情と間違われるぞ…。

 

「ほい川内。」

 

「くれるの?ありがとう!今度絶対、夜戦してよね!」

 

「ああ。」

 

……夜戦(意味深)。

 

「神通さんにもあげますよ。」

 

「ホワイトデーのお礼ですか?ありがとうございます。」

 

……相変わらず事務的だな…。

 

「BANG!BANG!BANG!撃ち抜く那珂ちゃん。」

 

「キャハッ☆…て!提督ー!それ那珂ちゃんのセリフー!…?提督ー、これはー?ファンの贈り物?」

 

「とでも、言うと思っていたのかい?」

 

「あっ、提督の!?ありがとー!楽屋で食べるね♪」

 

「おうよ。」

 

……楽屋あったっけ…?まさか、部屋を楽屋と言い張る気じゃ…。

 

「最上ん発見!クッキーを…。」

 

「提督、なあに? チョコのお返しは何がいいかって? そうだなあ、一日提督に甘える券、とか、どう?」

 

「あげ…。…甘える券…。」

 

…………

 

『提督〜、遊びに行こう!』

 

『提督、アイス美味しいね!』

 

『あれ買って欲しいな〜。』

 

…………

 

……娘に甘えられる…。…いいな。

 

「そ、そうか?なら、作って…。」

 

「なあんてね、冗談だよ。さみしがりやの甘えん坊さんは提督の方だもん。…ふふっ、これも冗談さ。」

 

「…そうか。まぁ、とりあえずクッキーだよ。」

 

……掴めない性格だな…。もがみん…。

 

「古鷹エル様にお供えを…。」

 

「こちらを?!提督、ありがとうございます!嬉しい♪」

 

……あれは…天使だ…。

 

「うお!提督、気ぃ利くじゃん!ちゃんとお返しくれるんだ~。いいね♪寝る前の楽しみにしよっと。サンキューな!」

 

「寝る前は太る…。」

 

「おい!折角楽しみにしてたのを台無しにしちゃダメだぞ!」

 

……でも、大事に食べてくれるなら、こんなに嬉しいことはない。

 

「はい、妙高さんも。」

 

「え?提督、このクッキーを私に?ありがとうございます♪頂きます…。うふふ、うれしい♪」

 

……妙高さん…。すっこく嬉しそう…。

 

「羽黒にも、丹精込めて作ったクッキーあげる。」

 

「え…?この、可愛らしいクッキーを…私に!?司令官さん…本当に…ひっく…ありがとうございますぅ……ぐすっ、うぅ~……。」

 

「ちょ、待…!泣かないで。もっとあげるから…。」

 

……羽黒…。今までどんな生活してきたんだよ…。泣くなんて…。

 

「司令官、レディーに対するチョコのお返しは…。」

 

「もちろん、第四駆逐にもあるぞ。一人前のレディー様。」

 

「あぁ、これね!…あぁ、後で開けるわ!」

 

……そう、自称レディーにはチョコチップクッキーだッ!

 

「司令官、これは何だい?」

 

「なんだと思う?」

 

「…お返し?Спасибо.いただくよ。」

 

「300貰おう。」

 

「資本主義者め…。吾輩には祖国がある。負けられない…。ハラショオオオオオ!」

 

……もう混ざりすぎてごちゃごちゃだ…。

 

「これ、チョコのお返し?」

 

「その通り!」

 

「じゃあ、雷、司令官のためにもっとも~っと働いちゃうねっ?」

 

「1日8時間以内なら、なんでも良いぞ。」

 

……8時間超えは流石にアウトだけど…。

 

「ほわわぁ…司令官さん、チョコのお返し、頂けるのですか!?あの…ありがとう…なのです!」

 

「どういたしましてなのです。」

 

……艦娘は貰われることを考慮に入れてないのか…?お返しって、大事だろう…。何事においても…。

 

「シグレンもあげよう。」

 

「提督。これ、は…僕に?ありがとう♪」

 

「どういたしまして。」

 

……可愛い…ただひたすらに可愛かった…。

 

「夕立にも…。」

 

「提督さん、この包みは?いい匂い…クッキーっぽい!もしかして手作りっぽい!?」

 

「もちろんさー。」

 

……流石番猫…いや、番犬付き…。鼻がきくな…。

 

「阿武隈にもあげようじゃあないか。」

 

「てーとくがあたしに…?てーとくの手作り…!?」

 

「ああそうだ。て、今開けるんだ…。」

 

「えへへへ、不恰好なところが可愛いですねぇ。あたし的には大事にいただきます」

 

「そうか…。嬉しい限りだ…。」

 

……阿武隈…。大事にしてくれるならありがたいな…。でも、とっておいてカビが生えたなんてオチじゃ…。

 

「鬼怒にも特別なクッキーをあげよう…。」

 

「提督、このクッキーくれるの?わーい!ありがと…ぅ~っ!!??」

 

「へっへっへ…。」

 

「辛いよこれ…え、チョコのお返し?くっそぉ~、マジパナイっ!!」

 

「あの時のお返しだ。中にはハバネロのタネがぎっしり…。…のやつがあったが、どうやら当たりを引いたようだな…。」

 

「…もし当たっていたら…?」

 

「口の中は大火傷だ。」

 

……運が良いな…。けど、運で戦いは決まらない…。

 

「えっ、提督、これ、私に?」

 

「なんかときめかしちゃっているようだが…。今日はホワイトデーだ。」

 

「ぁ…チョコレートのお返しですか?ありがとうございます♪」

 

……なるほど…。まぁ、アリなんじゃないか?瑞鳳。

 

「山風もね。チョコレート美味しかたよ。」

 

「これ…!いいの…!?…ありがと…ありがとぉ……ッ。」

 

「何もそんなにありがたみを持たなくても…。」

 

……艦娘と言うのは、普段はお返しをもらえないのがウリなのか…?

 

「五月雨にもプレゼントだ。」

 

「え…。く、くれるんですか?ありがとうございます!大事にします!」

 

……そんな幸せそうな顔して…。後で落として全部パーなんて、そんなドジを踏まないように気をつけてね。

 

そんなこんなしているうちに、セラフの部屋の前だ。

 

「道中会っている間に、随分減ったな。」

 

ドミナントは残りの小分けしてあるクッキーを見る。

 

「軽くて助かる。」

 

コンコン

 

「……。」

 

シーン…

 

「…外出中かな?…仕方ない…。次は…武蔵だったか…?」

 

ノックしても反応がないため、一先ず部屋を後にするドミナント。すると…。

 

「あっ、叢雲…。」

 

「……。」

 

叢雲が待っているように立っていた。

 

「はい、ホワイトデーおめでとう。」

 

「いらないわよ。…でも、食べ物を無駄にするのは勿体無いから、食べてあげるわ。」

 

「ふーん。いや、別にいらないなら他の子にあげるし。無理にもらわれてもお互い気持ち良くないからね。…どうしたの?」

 

「……。」

 

「いや、いらないなら他の欲しい子にあげるから、返して?それとも、そんなに楽しみにしてたのかな?」

 

ドミナントがからかいたくて、意地悪を言うが…。

 

「……。」

 

「…嘘だよ。そんな悲しそうな顔で返却しようとしないで?ね?それは叢雲のために作ったんだから…。悪かったよ。謝る。」

 

とても悲しいのを我慢した顔でクッキーを返そうとしてきたため、止めてあげた。

 

「ところで、セラフしらない?」

 

「セラフさん?確か、屋上にいたような…。」

 

「そっか。ありがとう。」

 

ドミナントは屋上へ走って行った。

 

…………

屋上

 

「誰か…いるか…?」

 

「いるよー!」

 

「おるぞ。」

 

「神様か…。先輩神様もいるな。」

 

二人ともいた。

 

「今日の着物は白いですね…。」

 

「もちろん、ほわいとでー?じゃからじゃ。ほわいとでーとは、日本発祥の文化でのぉ…。」

 

「あっ知ってるんで大丈夫です。」

 

「…そうか。」

 

先輩神様が説明しようとしたが、知っていると言われてしまった。

 

「ところで、御二方にもクッキーがあるので、いかがですぅ?」

 

「くれるの!?本当に!?ありがとう!」

 

「ありがたいのぉ。天界に菓子はあまりないからの。」

 

二人が嬉しそうに貰って、早速食す。

 

「美味しい!」

 

「美味じゃ…!」

 

「そいつは嬉しいねぇ。ところで、セラフどこにいるかわかる?」

 

「セラフ…なら、倉庫じゃない?」

 

「倉庫か。分かった。行こう。」

 

「ん〜。」

 

ドミナントが倉庫へ歩いて行く。

 

…………

倉庫

 

「やっといたぜ…。」

 

「あっ、ドミナントさん。」

 

「ドミナント提督。」

 

セントエルモとセラフが待っていた。

 

「はい、バレンタインデーありがとね。」

 

「クッキーですね♪ありがとうございます。」

 

……セラフは相変わらず嬉しそうだね。

 

「美味しそう。」

 

……セントエルモもヨダレを拭こうか…。

 

ドミナントがそんな感想を述べた。

 

…………

甘味処 間宮

 

「ちはー。」

 

「あら提督。」

 

「ホワイトデーのクッキーをお届けに参りました〜。」

 

ドミナントが休業中と書かれた札を無視して入り、伊良子と間宮にクッキーを渡す。

 

「「ありがとうございます!」」

 

「いいんだよ。いつも頑張っているし、あの時のお返し。がんばってね!」

 

ドミナントはそう言ったあと、忙しいのかすぐに店を出た。

 

「…折角、何か作ってあげようと休業にしましたのに…。」

 

「提督って、そういうの分かんないのかな…?」

 

二人はため息をついた。ドミナントに女心は分からないのだ。いや、分かっていても、分からないフリをすることが多い。

 

…………

道中

 

「おっ、皐月。」

 

「あっ、司令官。」

 

皐月と会う。

 

「皐月にも会う予定だったから、丁度良いか。」

 

ドミナントが袋の中を漁る。

 

「皐月にもあげる。バレンタインデーありがとね。」

 

「ふぇ?ボクにくれるの?相変わらずかわいいなぁ…!ありがとう、司令官!」

 

皐月はクッキーをもらって、心底嬉しそうな笑顔をした。

 

……かわいいなぁ…!

 

ドミナントも同じことを考えたのはいうまでもない。

 

…………

演習場

 

「提督よ、来たぞ。」

 

「来たか、武蔵。」

 

演習場に二人、ドミナントと武蔵がいる。

 

「ところで、本当に近くに上手い皿うどんが食べられる店が本当にあるのか?」

 

「……。」

 

ピッ!

 

ドミナントは無言で手にあったボタンを押した。

 

ドヴェーーー!ドヴェーーー!ドヴェーーー!…!

 

ゴゴゴゴゴ…ガシャァン!

 

ガラガラガラ…ガシャァン!ビビビビビ…!

 

シャキン!シャキン!シャキン!…!

 

「!?」

 

武蔵が周りを見た。これはバレンタインデーの状況と同じだ。

 

「よく来てくれた。残念だが、皿うどん専門店などはじめからない。だまして悪いが仕事なんでな。死んでもらおう。」

 

ドミナントがペイント弾を構える。

 

「やはりな…。そんな気がしていた。」

 

武蔵は事前に分かっていたらしく、同じくペイント弾を装填してあった。

 


武蔵 Lv.99

 

V.S

 

ドミナント Lv.??


 

READY

 

GO!!

 

開始した途端、両者ともペイント弾を撃つ。ルールは前と同様のようだ。

 

「この前の敗北を勝利で塗り直してやろう!」

 

『グリッド2の攻撃が空中で連続HIT!!!』

 

「おぉ…。やるな。武蔵。」

 

『グリッド1のブレードがHIT!』

 

「大和型の装甲は伊達ではない!」

 

『グリッド2の攻撃が連続HIT!!!グリッド1!危険温度が続いている!』

 

「やるな!」

 

「今度は負けないさ!」

 

『両グリット!接戦を展開!』

 

…………

 

『グリット1!行動不能!よって、武蔵の勝利です!!!』

 

「私は大和型。その改良二番艦だからな。当然か。しかし、礼は受け取ろう。」

 

武蔵はMVPを取り、余裕そうでいるが、実際はとても危なかった。ドミナントが本気を出していたら当然、やられていたであろう。…いや、それとも…。

 

「ついに部下に負けたー!」

 

「ふっふっふ…。」

 

「と、言うわけで俺に勝った戦利品だ。受け取れ。」

 

ドミナントはクッキーをあげる。

 

「なに?これを、私に?提督よ、ありがとう。見慣れぬ戦闘糧食だが、いただこう。」

 

「戦闘糧食じゃないけど…。まぁ、本人がそう思っているならそれでいいか。」

 

ドミナントは気持ちの良さそうな笑顔をして、武蔵も満足した笑顔になった。

 

…………

 

「次はここだな。そして、もうクッキーは大和さんや星奈提督、佐藤中佐に届いている頃だろう。喜んでもらえてるといいなぁ。」

 

ドミナントはそんなことを呟きながら、ドアをノックした。

 

「はい。て、提督!?」

 

「ああ。熊にでも見えたか?これはあの時のお返しだよ。大鳳。」

 

「あっ、バレンタインデーの…。ありがとうございます!」

 

「別にいいさ。クッキーだから、大事な物をしまう場所に入れちゃダメだよ。腐ってカビでも生えたら大変なことに…。」

 

「……。わかりました。」

 

大鳳は後で入れておこうなどと考えていたのだろう。

 

……本当、大鳳もあの時、かわいかったな。こんな娘たちがいるなんて、世の中の父親は羨ましがること間違いなしだ。え?ケッコン?なんのことやら…。

 

…………

ジナイーダの部屋

 

「よお、やってるな。」

 

「ノックがして、来てみたらお前か。」

 

「ああそうだ。で、バレンタインデーのお返しさ。」

 

「……。…忘れていなかったのか…。」

 

「うん。はい。クッキー。」

 

「……。」

 

ジナイーダはクッキーを受け取り、何も言わずにお礼を述べるような動作をした。

 

「ところで、ジャックたちは?」

 

「来たぞ。数分前にな。」

 

「良かった…。ちゃんと配っていて。」

 

「まぁ、あの二人だ。心配にもなるさ。」

 

「まぁね。ジナイーダもお疲れ様。」

 

「お前もな。」

 

二人はそんな会話をした。

 

…………

ジャックサイド

 

ソワソワ…ソワソワ…

 

「加賀さん?どうかしましたか?」

 

「なんでもございません。」

 

ドミナントが来たあと、加賀がソワソワしている。…と言っても、目に見えてソワソワしてないが…。

 

「ここにいたか。」

 

「ジャックさん。」

 

「あー…。」

 

加賀が言い、赤城が納得した顔をした。

 

「これはくっきー?というものだ。試行錯誤して作ったが、中々上手く出来なくてな…。口に合えば良いのだが…。」

 

「そうですか。いただいておきます。」

 

「ふふふ。」

 

赤城はなんともなさそうな加賀の顔を見て笑う。分かっているのだ。嬉しいことが。

 

「む。そこにいるのは龍驤だな。これを渡そう。」

 

「なんや?これ、お返し?うちに?あぁ~、めっちゃうれしいで! ありがとうな!」

 

龍驤が喜ぶ。ジャックは無表情だ。そして、龍驤を後に次の目的地に歩いて行く。

 

「島風だったな。これはあの時のお返し…。」

 

「ごちそうさま〜。」

 

「…早いな。」

 

食べ終わった島風を後に、またも歩くジャック。

 

「神通、これは礼だ。」

 

「これを…。ありがとう…ございます。大切にいただきます。」

 

「大淀もだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

ジャックもちゃんと覚えている。助けられた恩は忘れず、必ず返すのがモットーだ。

 

「伊58にもやろう。」

 

「てーとく、これ、ゴーヤチョコのお返し?ほんとに?わーお!ごちそうさまでち!」

 

「鹿島、お前にもだ。」

 

「提督さん、これを私に?ありがとうございます。 美味しそ~♪ いただきます。えへへっ♪」

 

ジャックはもらった艦娘全てにあげ、ある部屋の前に立つ。

 

コンコン

 

「ジャック・O。お前か。」

 

「ああ。」

 

ジナイーダだ。

 

「これはあの時もらったお返しだ。礼を言う…。」

 

「…別に構わない。」

 

「…貴様も、この鎮守府で少し気が緩み始めたな。」

 

「…?」

 

「昔の、データを見る限りだと、貴様にはそういうことに全く興味がなかったように見えた。」

 

「…貴様もな。…これが平和だと感じてから、私は緩みすぎているのかも知れん。」

 

「だが、その平和も捨てたものでもない…か。」

 

「ああ。」

 

「…同感だ。」

 

ジャックはそう言い残して、過ぎていった。

 

「…そうだな。」

 

「見てたよルーキー!中々やるじゃない?ハハハハハ!」

 

「主任!」

 

「プレゼント…気にいるといいけど…。」

 

「…なんだ…!?これは…!?大規模コジマ反応を確認…!」

 

「失礼だね〜!ギャハハハハハ!」

 

「まぁ、嬉しいがな…。…嬉しいか?」

 

「ま、どうでもいいんじゃな〜い?」

 

「ところで、皆に配ったのか?」

 

「いいや〜。」

 

「配っておけよ。」

 

「配るさ〜。ハハハハハ…!」

 

「…悪い顔だな。」

 

主任は何か企んでいた。

 

…………

夜 外

 

「こんな時に夜の外なんてなんのようだ…?しかも皆を集めて…。」

 

艦娘やドミナントらが外にいる。

 

「レディースエン!ジェントルメーン!みんなにプレゼントがあるんだよぉ〜。ギャハハハハハ!」

 

「やっと来やがった…。主任、要件はなんだ?」

 

「クッキーのプレゼント…気にいるといいけど…。」

 

「クッキー?まぁ、良いんじゃないのか?」

 

「けど、そのまま配るのは面白くないなぁ〜。と、言うわけで…打ち上げることにしたよぉ〜!ギャハハハハハ!」

 

「!?主任…!貴様…何をするつもりだ!?」

 

「ちょっとお手伝いをね!!」

 

主任が何やら導火線に火をつけた。

 

ドーーーン!!!

 

「クッキーが花火に!」

 

「食べ物を粗末にするな!」

 

ワーワー!

 

艦娘やドミナントから一斉ブーイング。

 

「あれれ〜?何言っているのかな?あれは君たちのだよ〜?」

 

「ちょ、おま…!きたねーぞ!」

 

「キャッチしないと落ちちゃうよ〜?じゃ!頑張ってぇ〜!」

 

主任はそう言い残したあと消えた。

 

「「「うおおおおおお!!!」」」

 

艦娘やドミナントたちは無駄にさせないように、全てキャッチする予定だ。ある意味、主任らしかった。まぁ、後で一斉攻撃されたが…。

そんなこんなのホワイトデー。しかし、怒った後また笑い飛ばせるのだから、良い1日だったのだろう。




チョコレートもらえたぜ!
「よかったじゃない。」
瑞鶴のグラはなかったけど…。
「そんなもんよ。世の中なんて。」
悟られた…。二次元の存在に悟られた…。まぁ、ホワイトデーにあげるよ。
「クッキー?」
ああ。楽しみにしてろ。
「やったー!」


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期間限定 運命のMI(切り抜き)

生存報告…まだ…まだ終わらない…。MIが長い…。レイテもまだ終わってなく、必死に製作中です。終わったら、本編の方を作ろうと思います。


MI作戦。ハワイ島電撃攻略作戦。その実行中。ドミナントと吹雪、時雨、江風、秋月、夕立がVOBを背負って行く。後続のジナイーダ、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、榛名、霧島たちはVOBを背負ってついてきていたが、途中に無視できない深海棲艦を発見。連合艦隊が分裂したのだ。

 

「チッ…!空母水鬼め。…皆、気を引き締めろ!」

 

『『『了解!!!』』』

 

吹雪たちが返事をした。そこに…。

 

『敵艦前方!北方棲姫…じゃありません!』

 

吹雪から通信が入る。VOBと言う、ほぼ音速並みのスピードで向かっているが、よく見えるなとドミナントも感心する。

 

(北方棲姫じゃない…?だが、北方棲姫に似ているということか…?)

 

そのうちに、ドミナントも敵目標が見えた。

 

(小柄な少女、ミトンの手袋、短い左右の角。北方棲姫。…じゃ、なさそうだな…。)

 

その、後ろにある禍々しいオーラで、普通じゃないことが分かった。

 

「来ナイデッテ…言ッテルノォォォオオ!言ッテルノォォォオオ!!来ナイデッテェェェエエエ!!!」

 

「アイツやべぇ!」

 

瞳の中の光はなく、顔を歪ませるような笑みを浮かべて、何やらぶつぶつと言っている。明らかにナニカされたようだ。その瞬間…。

 

ザバァァァ!!

 

バチバチバチバチ!!!

 

4つの大きな丸い球体が海の中から、北方棲姫の周りから現れた。要塞かと思ったが、色も形もどことなく違う。と言うより、知っている。

 

「ゾルディオスオービットキャノン!?」

 

『『『!?』』』

 

「死ぬ気で避けろ!一発轟沈!」

 

4つのソルディオス砲の群れ。さらに…。

 

ザバァ!ザバァ!…!

 

いくつものヲ級flagship改や空母棲姫が現れ、随伴艦まで現れる。皆、瞳の中の光がなく、ナニカされている。ハッピーセットだ。確認すると同時に艦載機を発艦してきた。

 

『強襲…空母機動部隊…っぽい…!』

 

空を見れば白や黒のドットのような艦載機が唸り声を上げて蠢いている。中でも大きなソルディオス砲は4つ、縦横無尽に飛び回り、三次元の闘いを強要してくる。

 

「皆に告ぐ!今すぐ撤退迂回ルートを探す!ソルディオス砲の群れに艦載機の雨の予報!お前たちを死なせるわけにいくか!」

 

ドミナントは迷わず撤退をしようと、各艦に告げるが…。

 

『司令官!今回は電撃作戦!もう、敵に私達が向かってきているのは知られています!再度行ったら、今度はこれ以上の物量でひねり潰されます!』

 

『僕も、行くしかないと思う!大丈夫。僕は幸運艦だから…!止まない雨は…ない!』

 

『大丈夫!あたしを信用しろってんだ!』

 

『対空なら任せてください!』

 

『強行突破っぽい!』

 

駆逐艦たちは行く気だ。

 

「……。畜生!なんで俺の行くところはいつも死と隣合わせなんだ!もうヤケクソだ!行くぞ!死にたくなければ付いて来い!!!」

 

ドミナントたちは進路を変えず、突っ込む。爆撃と魚雷群、ソルディオス砲の嵐に。

 

ドガァァァン!ザバァァァン!…!

 

爆弾は投下され、魚雷を放たれる。空は黒く、また白くもある。しかし、VOBのおかげか大半を避ける。

 

「秋月が大半の艦載機を落としてくれてる…。でも…!」

 

時雨が横を見る。平行に付いてきているのはソルディオス砲。

 

「来る…避けて!」

 

ズドォォォ!

 


「H、HELP Me!化け物だ!」

 

「あれは仲間の…!」

 

耳をすませば、戦いの音は砲台を壊している音だけではない。誰かが遠くで戦っている。

 

「巨大な…。」

 

「「?」」

 

「Big Monster!!!」

 

…………

 

「な、なんだいアレは!?」

 

「デカすぎるっぽい!」

 

「ミサイルを全然撃ち落とせない!」

 

「唯一有効的な打撃はあたしだけか…!」

 

時雨たちが戦っている。砲撃を繰り返し、敵の攻撃を避けて、ダメージを与えようとする。しかし、ダメージを与えられているとは思えないほど固く、巨大だ。球体のような頭部を持ち、重量二脚型を連想させる太い脚に太い腕部。背中は何か背負っているようだが、全く見えない。2から3等身に見えるが、それは巨大な兵器そのものだ。こんなのが現代で敵として現れたら兵士らは畏怖し、恐怖の2文字を連想するだろう。

 

「聞いてないよ!こんなの!」

 

「支援、足りないっぽい!秋月、ちゃんと援護するっぽい!」

 

「や、やる時はやってます!」

 

「何やってんだ!あんたら!」

 

それをたった四人で立ち向かい、戦う少女たち。ちなみに、会話はドミナントはひっそりと傍受しており、あ、この四人じゃ駄目かもと思っていた。

 


「敵機直上!急降下!!!赤城さん!!!」

 

赤城の後方にいる敵機に気づいた加賀が叫ぶ。空を見れば絶望。敵艦載機が飛び回っているのだ。

 

「させるか。」

 

ズガァァァン!!

 

ジナイーダのハンドレールガンで敵機を落とす。それだけで十機は落とした。

 

「敵深海…なんだ。そいつらはどこだ…?」

 

ジナイーダの索敵に引っかからない敵深海棲艦。

 

(艦娘…その索敵能力に頼りたいが、手一杯か…。)

 

ジナイーダがそう感じ、敵機を墜とすのに専念しているが…。

 

「…ジナイーダさん…。」

 

「……。」

 

「…二航戦飛龍より意見具申…我レ今ヨリ航空戦ノ指揮ヲ執ル…。」

 

「…出来るのか?」

 

「はい…?」

 

「出来るのか?」

 

「は、はい!」

 

「…分かった。赤城、加賀、蒼龍、榛名、霧島。聞こえたな。」

 

『『『は、はい!』』』

 

「…飛龍。」

 

「は、はい!」

 

「失敗したら、その時は全滅するだけだ。あまり背負い込むな。お前にできなければ、誰にもできなかったのだ。」

 

「…はい!!!」

 

飛龍ははちまきを巻いて、弓をつがえる。

 

「飛龍さん…あなたが要です。」

 

「二航戦…ここが…この戦場が…あなたの魂の場所よ!」

 

「お願い!」

 

「榛名はこれくらい大丈夫です!」

 

「航空戦の時間だオラァ!」

 

赤城たちが敵機を撃ち落としながら激励する。そして、飛龍は索敵機を飛ばし、大きく息を吸い込んだ。

 

「全機発艦!敵空母を撃滅せんとす!!!」

 


「非常にまずいことに…。」

 

「んー?夕張どうした?紙?……え゛っ…!?」

 

ドミナントは思わず二度見して、さらに目をこすってその紙を見る。

 

「資材…全てヒトケタ…?さらに、補給できてない艦もいる…?」

 

「その…提督たちの破損率が大きく、消費エネルギーが多すぎまして…。」

 

「オワタァァァ!…あたしって、ほんとバカ…。」

 

「大馬鹿です!はい!今からでも大本営に資材の件について援助を…。」

 

「けど、漢たるもの二言は…。」

 

「は・い…?」

 

「アッハイ…。」




本当は、あと二つくらいのそれぞれの戦いがありますが、それは本編で…。ちなみに、ALはここでは一切公開していません。ですが、ALは終わっています。
そして、物語が進むごとに吹雪がイレギュラーに…。駆逐艦が駆逐艦を超えたナニカに…。


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