閃の軌跡~剣神と謳われた者~ (璞毘)
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プロローグ

妄想が爆発して衝動で書きました
そして某駅でぶらぶらしてたら韓国の美人さんに恐喝されかけました
都会怖い・・・


「どうして、□□□」

 

「どうしてか・・・、それがオレが選んだ道だからだ」

 

一人の少年と数名の男女が武器を構えていた

まるで対立するかのように・・・

 

「前に言ったように戦場に事の善悪はないただひたすら斬るだけ

上が斬れと命じれば斬る

ただそれだけだ・・・

それじゃあ、いくぞ・・・」

 

少年は己の愛刀の太刀をかつては仲間だった彼ら向け一気に疾走し愛刀を振り下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー次はトリスタ、トリスター

お降りの方は準備をお願いします

 

「ん・・・次か・・・」

 

次の止まる駅を知らせる放送で黒髪の少年は閉じていた目をゆっくりと開いた

黒髪にまだ少年の域を脱していないがそれでも整った顔立ちに入るだろう

黒髪の少年―リィンは意識を完全に覚醒させ降りる準備を始めた

 

「ここがトリスタ、大帝ゆかりの士官学院トールズか・・・・

なんでもかのドライケルスが設立に関わったとか・・

まぁどうでもいいけど・・・」

 

リィンは電車を降りると駅をでて辺りの景色を見渡した

都会というほど街並みが広いわけでもないし栄えているわけでもないだが不便というわけでもない見渡す限り最低限の店は導入されているみたいだしここで2年間過ごすのに苦労はなさそうだとリィンは内心思う

 

「それにしてもオレの制服皆と違うんだな・・・」

 

リィンは1人呟いた

リィンの言う通りリィンの着ている制服は少しばかり違っていた

自分と同じく新入生であろう人は何人もみかけるがその人たちは制服が白か緑だ

おそらく平民と貴族を分けての配色だろう

このエレボニア帝国では貴族と平民の差別化がかなりひどい国だ。だからこうして学校にもその風習が濃く表れているのだろう。

だがリィンが着ている制服は白でも緑でもない赤だ

それの意味することをリィンはいくら考えてもわかるはずないと後々わかるだろうと結論付けて学院へ向けて歩き出した

道中リィンは自分と同じ赤色の制服を着た生徒を数名見かけたが特に気にすることもなく学院への道を歩いた

校門前に着くと緑色の制服を着た小柄な女子生徒と黄色いつなぎに身を包んだ男性をリィンはみかけた

女子生徒のほうは見た目だけで言えばリィンよりも年下に見られた

つなぎの男の方はおそらく先輩であろう

 

「えっと、新入生のリィン君であってるかな」

 

「えっと、確かに自分はリィンですが

どうして自分の名前を・・・・?」

 

「ふふふ、ちょっと事情があってね

それが荷物かなちょっと預からせてもらうね」

 

「あぁ、そういえばそんなことかいてありましたね」

 

目の前の女子生徒がなんで自分の名前を知ってたのかはわからないがまぁ悪い人間ではないだろうと結論をつけそういえばパンフレットに書いてあったなと思い出し背負ってる刀袋を女子生徒に預ける

 

「確かに預かりました

またすぐに返されると思うから

それと、ようこそトールズ士官学院へ!!」

 

「・・・えぇ、ありがとうございます」

 

「なんか、おとなしいというか落ち着いてる子だね・・・」

 

リィンは一言それだけ言うと講堂へ足を向け歩き出し

そんなリインの様子をみて先程の女子生徒が呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、最後にこの言葉を遅らせてもらおう

若者よ世の礎たれ

世という言葉をどう捉えるのか。何をもって礎たるのか。これからの二年間で考え切磋琢磨する手がかりにしてほしい

ワシの方からは以上である」

 

「世の礎たれ・・・・か」

 

「うーん、なんかすごいハードルをあげられた感じだね?」

 

「あぁ、そうだな・・・

えっと・・・・」

 

「あぁ、ごめん、名乗ってなかったね

僕は、エリオット

エリオット・クレイグだよ」

 

声をかけてきたのは中世的で童顔な顔立ちをした少年だ

どちらかと言えば女の子に間違えられても仕方ないような顔をしていた

 

「そうか、オレはリィンだ

よろしく、エリオット」

 

一足先にクラスメイトとの邂逅を果たしたリィンとエリオットだった。

 

「以上で第215回トールズ士官学院入学式を終了します

この後入学案内書に書かれた通り指定されたクラスに向かうこと

そこにて各クラスのカリキュラムなどの説明を行います」

 

「そんなの書いてたか・・・?」

 

リィンは呟いた

リィンも環境のせいもあって入学案内書も軽く流し読みぐらいしかしてないが見た限りそんなクラスの案内などは書いてなかったはずだ

 

「はいはーい、赤い制服の子は私についてきなさい」

 

「へぇ・・・

まさか彼女がこの学院にね・・・」

 

リィンは自分たちに声をかけてきた赤髪の女性教官をみて凶悪そうな笑みを浮かべた

それをみた女性教官は軽く顔をしかめながらも生徒たちを学院からすこし離れた古びた建物へ連れていく

女性教官は鼻歌を歌いながらその古びた建物のカギを開けて中に入っていく

 

「さていくか・・・」

 

他の生徒たちがいかにもなにか出そうなこの建物を前に入るかどうか迷ってるとリィンは迷いもせず、女性教官の後を追うように入っていく

リィンは入る前にここからは見えないが高い丘に少しだけ目を向けた

 

「えぇ、ちょっとリィン!?」

 

それに流されるように他の生徒たちも次々と入っていく

 

「それじゃ皆揃ったわね

じゃあ、全員そろったことだし始めましょうか

トールズ士官学院特化クラスVII組のオリエンテーリングをね!!」

 

「VII組・・・?」

 

「オリエンテーリング・・・?」

 

女性教官の言葉に皆それぞれ案内書になかった内容にあるものは怪訝な表情をしたりあるものはどうでもいいとでも言いたげな表情だ。

 

「あの教官、このトールズ士官学院は身分によってクラス分けされ貴族クラスがI・Ⅱ組、そして平民クラスがⅢ~V組と聞いていますが・・・」

 

眼鏡の女子生徒が送られてきたパンフレットを読んだ知識を元に言うと

 

「流石首席入学者ね

よく調べてるわね

確かにそのとおりよ、そっ前年度まではね・・・

今年度から新たに導入されたクラス平民も貴族も関係ないまぁ言ってしまえば身分関係なく集められたクラスそれがあなたたちが在籍する予定のVII組よ!」

 

「身分も関係ない!?

冗談じゃない!!」

 

それを聞き黙っていられず吼えた生徒がいた緑髪の男子生徒だ

このエレボニアは貴族と平民の差別が激しい国でもある

彼のように貴族と一緒のクラスと聞いて我慢できない生徒がいても不思議ではないだろう

 

「えっと君は・・・」

 

「マキアスです

マキアス・レーグニッツ!!」

 

そのあとのマキアスはまぁ酷いものだった

入学初日でいくら苦手な貴族生徒があるからって教官相手に反発、それに加えてVII組には貴族の中の貴族四大名門の一角アルバレア公爵家の息子ユーシス・アルバレアがいたのだ

そのユーシスもマキアスを煽るようなこと言うもんだからマキアスもヒートアップしてなんだかめんどくさいことになりそうだったが、教官が宥めなんとか話を先に進めることができるとなったんだが、教官はリィンたちから少し離れた所まで歩き出しそこにはいかにも怪しいレバーが備えついてあった

教官はそのレバーを迷うことなく降ろした

次の瞬間リィンたちの足元の床が開いた

 

「・・・・・・」

 

リィンと銀髪の少女はなんとなく嫌な予感を感じさりげなく落とし穴の範囲外に避難していた

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁあ」

 

「不覚・・・・」

 

対処できなかったリィンと銀髪の少女以外は絶叫をあげそのまま真っ逆さまに落ちていった

 

「あらら・・・」

 

リィンはその落ちていく様子を他人事のようにみていた

 

「わかっていたけどあんたら落ちなさいよ!!」

 

「いやいや、無理言わないでくださいよ・・・」

 

「いいから行きなさい、オリエンテーリングにならんでしょーが!!」

 

「わかりましたよ・・・」

 

リィンは無茶苦茶な人だなぁと内心呆れながら他の生徒が落ちた落とし穴を飛び降りた

 

「はぁ、めんどくさいな・・・」

 

銀髪の少女もリィンの後を追うように飛び降りた

 

「行ったか・・・

それにしてもまさか<剣神>がこのトールズに入学とはね・・・

まぁ連れてきたのアタシだけど

さぁ、リィン、フィー、アンタら二人にはこの二年色々学んでもらうわよ

戦場とは違った環境を・・・ね」

 




次でオリエンテーリングは終わらせたい・・・・
このリィン君は正確も大分違いますがあの桁違いの分校長のように二つの流派を修めてます
そして実力も・・・
鬼の力・・・出番あるのかな・・・(笑)


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一話

しばらくは原作通りかと思います・・・・多分


「一応、落下防止のための措置はされていたのか・・・」

 

「ん・・・、そうみたいだね」

 

先程の女性から半強制的に地下に降ろされたリィンと銀髪の少女フィーは床の感触が堅い地面と違い柔らかく例えるならクッションのようだった

おそらく先程の仕掛けのことを考えて加工でもされていたのだろう

士官学校にしては甘いなとリィンは内心思う

そもそも育った環境が特殊すぎるリィンが甘いと感じるのは仕方のないことであろう

そしてあんな目にあったにも限らずマキアスはユーシスに絡んでいた

 

「アホらし・・・」

 

リィンはそんな二人には興味を示すこともせず見おぼえのある刀袋のある台座まで歩き

刀袋の中から己の武器である太刀と刀を取り出し腰に差した。

フィーもリィンに続き自身の荷物を回収する

自信の荷物の中に綺麗な球のようなものが入っていた。リィンはそれを入学案内の時に一緒に送られてきた戦術オーブメントを開きその中央にセットする

リィンもフィーもあらかた準備を終えるとそのまんままっすぐ地下を進もうとする

 

「待て、そなたたち何処へ行くのだ?」

 

そんな二人をとめたのは青髪の少女ラウラ・S・アルゼイドだ

 

「なにって進むんだよ

このままここにいても仕方ないだろ」

 

「だが、それにしても協力して・・・」

 

「あー、必要ない

この程度なら俺一人で充分だしな・・・」

 

リィンはラウラに見向きせず腕をあげ手をひらひらと振りながら先へ進んでいった

 

「ま、私もそゆことだから」

 

あのクラスの中で最も年下と思われていたフィーも単独で進んでいった

そのあとエリオットの戦術オーブメント<アークス>に先程の女性教官から通信がかかってきてあらかたの説明を受けた

当初はリィンにかけようとしたのだが単独で行動を開始したためエリオットに変えたのだそうだ

そしてリィンとフィーを抜いた残りの人数でチーム分けをしこの地下を攻略することになった

チーム分けは単純に男子と女子チームで別れた

男子チームに関してはユーシスとマキアスを一緒にするのが本人たち以外から心配の声があがったが本人たちが大丈夫と言い張るので当の本人たちを信じることにした

 

「「なっ・・・」」

 

先に男子チームが先に進むとそこには血の海が広がっていた

 

「これは・・・」

 

「うっ・・・」

 

「ひっ・・・」

 

それは簡単にあらわすなら地獄絵図だった

おそらく先行したあの二人がやったのだがそれは酷い光景だった

おそらく戦闘慣れしてない女子の二人もその残虐さに吐き気を抑えるのが精一杯だ

一体は一刀のもとに一刀両断されておりそこから血があふれ出し内臓やらなにやらが飛び出ている

違う一体的確に急所を撃ち抜かれている

比較的撃ち抜かれた魔獣のほうはマシな方だが魔獣によっては頭を撃ち抜かれなんかぐろいなにかが飛び出たりしている

なにも戦闘慣れしていないのは女子チームだけではない

男子チームの二名マキアスとエリオットもその光景に口元を抑えた

マキアスたちが落ちいたことで先に進むことになった当初は男子と女子チームで別々に動こうとなっていたが両チームの半分がこれでは別行動になれば逆に危険だと判断し一緒に行動をすることになった

道中の戦闘もうまく連携し倒していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、あの光景をみて持ち直したか・・・・

思ったよりはできるのかな・・・」

 

リィンは物陰に身を隠し彼らがゆっくりだが確実に先に進んでる様子を楽しそうにみていた。

リィンもわざとあんなことをしたわけではなかった。いつもの癖というか

“敵を確実に殺す”それがリィンの根底にあったそれが今回やりすぎてしまった理由だ

だがあの光景を見てよく持ち直したなぁと感心する自分で言うのもあれだが結構ショッキングな殺し方をしたとリィンは思っている

いくら戦場にもでたことがない未熟者とは言え流石は士官候補生といったところか・・・とリィンは内心思いながら気配を消してその場から立ち去った

リィンが立ち去ったあと彼らは互いに協力し合い連携し徐々に仲を深めていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが終点か・・・」

 

リィンは一足先にゴールの手前まで来ていた

そしてリィンは終点に向けて進みだした

終点につくとそこには石造と上へ上るための階段があり、そのすぐそばに光がさしている入り口がある恐らく地上への道だろう

 

「へぇ、面白いな・・・」

 

リィンは石造に目を向ける

石造はまるで命を与えられたかのように獰猛な咆哮をし、リィンに目を向ける

どうやらリィンを標的に決めたらしい

 

「なるほど、石造の守護者・・・

ガーゴイルか・・・」

 

リィンは石造の魔獣の正体にあたりをつける

ガーゴイルはその鋭い爪でリィンを切り裂こうとその腕を振るうがリィンはそのガーゴイルの腕をつかみそのまま蹴り飛ばす

 

「その程度か・・・?」

 

リィンはガーゴイルをあしらいながら挑発する

言わせてもらうならリィンはこんなガーゴイルすぐに倒すことなど可能だ

リィンからしたらこのガーゴイルは雑魚だ

だが、これがオリエンテーリングの最終試験だとすればリィンが単騎で撃破してしまってはVII組のオリエンテーリングにはならないだろうとリィンは面倒だが時間稼ぎに徹底していた

時間稼ぎと言ってもそれは酷い光景だった向かってくるガーゴイルをリィンはタイミングを合わせて殴り飛ばしたり、さらには蹴り飛ばし、投げたりと時間稼ぎというより蹂躙してるとか遊んでるという表現のほうが正しいのかもしれない

これには見守りに来た学院長は他の教官陣も苦笑いしかでてこない

 

「これは、育った環境が特殊とは聞いていたが・・・」

 

「まるで相手になりませんね」

 

教官陣は未だにガーゴイルで遊び続けているリィンをみながらそれぞれ感想をもらした

あのガーゴイルも決して弱いわけではない。

もちろん武の最奥にたどり着いたものやそれなりの実力を持つものならリィンのように単騎撃破が可能だ

だがそれはあくまで教官陣のようにかなりの練度を持つものならの話だ

一学生が蹂躙できるような相手ではない

学生レベルなら協力しないと倒せないほどには強いはずなのだ

だが今ガーゴイルと戦っている少年は自身の武器である太刀もぬかずガーゴイルを圧倒している

差異はあれ教官陣はこの少年に興味を抱いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンがガーゴイル相手に時間稼ぎという名の蹂躙をして数分後皆がやってくる気配を感じたリィンは太刀を抜きガーゴイルと互角に戦っているふりを始める

 

「はっ、結構やるな・・・!」

 

そう言ってリィンはガーゴイルに切りかかった

 

「ふむ、あれと対等とはなかなかの実力のようだ・・・」

 

「あぁ・・・」

 

「だが、攻めあぐねているようだ」

 

「私たちも加勢しましょう!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

などとリィンの互角に戦っている振りに見事にだまされる士官候補生

フィーはそんなリィンをみて白い目を向けていた

リィンの戦闘時の姿に感化された皆はリィンに協力しガーゴイルに攻撃を放つがどれも決め手にならず攻め切れてなかった

 

「・・・・・・・」

 

リィンはここまでかと腰の太刀を抜き腰を落とし一気に始末しようとした時

皆が繋がった・・・そんな感覚が彼らの中で共有された

互いに次どう動くかが見えた

これならいける皆がそう感じた

 

「今だ!!」

 

リィンがガーゴイルの攻撃を太刀で弾き皆にむけてそう叫んだ

 

『「「「あぁ!!」」」』

 

そこからはさらに深くつながった感じがした

リィンが作った隙を無駄にしないため皆が攻撃を加える

そしてラウラの大剣がガーゴイルの首に肉薄しそのまんま斬り飛ばした

 

「うわぁ・・・」

 

リィンはその光景をみてグロ・・・と見ていたが

そんなリィンをⅦ組は白い目で見ていた

”おまえがいうな”ということであろう

 

斬り飛ばされたガーゴイルはそのまんま石に戻った

そして斬り飛ばしたガーゴイルの生首も・・・・

 

「ふぅ、なんとかなったか・・・」

 

「なんで、わざと互角のふりをしたの?」

 

銀髪の少女フィーはリィンにしか聞こえない声でそんなことを聞いてくる

とぼけるのは簡単だがフィーにはリィン自身の実力もあらかたばれているため隠すことなく答える

 

「確かにあの程度なら一撃で倒せる

だけどそんな無意味に実力を見せる必要もないだろ

君の場合はオレと似たような匂いがしたから・・・それだけだ」

 

「やっぱり、あなたは・・・」

 

「それはご想像に任せるよ」

 

リィンは適当にフィーをあしらった

 

「それにしても先程の感覚は・・・」

 

「それこそがアークスの真価ってわけね・・・」

 

タイミングを見計らっていたかのように先程の女性教官が現れる口ぶりからして当然先程の戦闘をみていたのだろう

 

「まぁ若干アークスなしでも倒せた子はいるみたいだけど」

 

女性教官は目線だけリィンに向ける

 

「さて誰のことやら・・・」

 

当の本人は肩をすくめてとぼけてみせる

 

「まぁそれはおいとくとしてさっきの感覚がアークスの真価よ

君たちがⅦ組に選ばれた理由でもあるわ」

 

「へぇ・・・」

 

リィンはとくにどうでもよさそうに答える

 

「まぁリィンのそのどうでもいいみたいな返事は置いといて

エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント

様々な魔法が使えたり通信機能が使えたりと多彩な機能が備えられているけど

その真価は戦術リンク

先程君たちが体験した現象にある」

 

「戦術リンク・・・」

 

「さっきみんなが繋がっていたような感覚・・・」

 

「えぇ、例えば戦場に置いてそれがもたらす恩恵は絶大よ

どんな状況下でもお互いの行動を把握できて最大限に連携できる精鋭部隊

仮にそんな部隊が存在すればあらゆる作戦行動が可能になる

まさに戦場における革命と言っていいわね

 

「ふむ・・

確かに・・・」

 

「理想的かも・・・」

 

女性教官の説明にⅤII組の面々が納得する

あのフィーでさえだ

 

「そんなにうまくいかないのが戦場だけどな

しかも機械に頼った偽りの連携・・・」

 

「うるさいわね

水を差すんじゃないの」

 

女性教官はリィンの茶々入れに注意し続ける

 

「でも現時点でアークスには個人的な適性があってね

新入生の中で君たちは特に高い適性をしめした

そこの不良生徒も含めてね」

 

女性教官はさっきの仕返しとばかりにリィンのことを話題に出しながら言う

 

「それが身分や出身に関係なく選ばれた理由でもある」

 

「なるほど・・・」

 

「なんて偶然だ・・・」

 

「驚いてるけどそこの貴族嫌い

これから大嫌いな貴族様と一緒に勉強するんだからな」

 

「ええい、うるさいわよ

リィン!!」

 

「はは、そんなに怒るなよ

血圧あがるぜ?」

 

「あんたのせいでね!!」

 

またしても茶々をいれてくるリィンに怒鳴るがリィンに効果はなく軽く流す

 

「さて大方の説明もしたし

決めてもらいましょうかⅦ組に参加するかどうかをね

・・・・このトールズ士官学院はこのアークスの適性をもって君たち9名を見出した

でも、やる気のないものや気の進まない者に参加させるほど予算の余裕があるわけじゃない

それと本来の所属クラスよりハードになるわ

それを覚悟したうえで参加か否か聞かせてもらいましょうか?」

 

「ふむ、では私は参加させてもらおう」

 

最初に名乗りをあげたのはラウラだった

 

「新入生最強の使い手は参加っと」

 

「オレも参加させてもらおう

なにより異郷の地まできているのだ

やりがいがある方を選びたい」

 

「ノッポの留学生君も参加・・・と」

 

「私も参加します

奨学金をいただいてる身ですし

少しでもお役に立てたら・・・」

 

「僕も参加します

これも何かの縁だと思うし」

 

「魔導杖のテスト要員も参加・・・と

魔導杖のレポートたのしみにしてるわよ?」

 

「あはは・・・」

 

「うぅぅぅ

早まったかなぁ・・・」

 

女性教官の発言にエマは苦笑いを浮かべエリオットはみるからにうなだれていた

 

「私も参加します」

 

「あら、意外ね

アンタは反発して辞退するものかと思っていたんだけど

 

「確かに試験段階のアークスが使われていることに思わないところがないわけではありませんがこんなことで腹を立てていたらきりがありませんから」

 

「まっ、それもそっか」

 

「これで参加者は5人他はどうするのかしら?」

 

「・・・・ユーシス・アルバレアⅦ組への参加を宣言する」

 

ユーシスの宣言に他のメンバーは意外そうな顔をした特に興味のなさそうなリィンやフィーでさえユーシスに顔を向けた

 

「な、なぜだ君みたいな大貴族が平民と同じクラスなどさぞ居心地が悪いはずだろう!?」

 

「勝手に決めつけるな、アルバレア家からしてみれば他の貴族も平民と大して変わらん

勘違いした取り巻きにまとわりつかれる心配もないしむしろ好都合というものだ

 

・・・・まぁかと言って無用に吼える犬を置いておく趣味もない

ならばここで袂を分かつのが互いのためだと思うが・・・どうだ?」

 

ユーシスはマキアスに提案する

簡単にいえば自分はⅦ組に行くからおまえは辞退して平民クラスに行けと・・・

 

「だ、誰が君のような傲慢不遜な輩の指図を受ける者か!?

マキアス・レーグニッツⅦ組に参加する!!」

 

だがそんな指図を簡単にうけるほどマキアスも単純ではない

半ば意地のようにマキアスはⅦ組の参加を宣言する

 

「なんか先が思いやられるわね・・・」

 

「うん・・・」

 

「ははは・・・

まぁ時間が解決することを祈るしか。。。」

 

参加を宣言したほかのⅦ組らは彼らの参加に先が思いやられる感覚に陥り

軽く頭を悩ませた

 

「それであんたらはどうするのかしら?

リィン、フィー?」

 

女性教官は未だ参加か否か決めていない二人に問いかける

 

「ん・・・?

サラが決めていいよ」

 

「ダーメ

言ったでしょうが自分のことは自分で決める

そういう約束だったでしょ?」

 

「めんどくさいな

じゃ、参加で」

 

フィーは女性教官――――サラに言われ溜息を吐きながらも参加の意思を示す

まぁどっちでもいいや感はあったのだが・・・

 

「あとはリィン

君だけよ」

 

「サラさん、オレも別にどっちでもいい

あんたが参加すれといえばするし辞退しろといえばするただそれだけですよ」

 

「リィン――――

フィーもとりあえずは自分の意志で参加を示した

あんたも自分の意志で決めなさい」

 

サラは諭すようにいう

リィンの事情をある程度知ってるサラからすれば“自分で決める”たったこれだけだが難しいのはわかるでもだからこそサラはリィンに選んでほしかった

ただ言われたからではなく自分で考えてたどり着いた答えなら少なくとも後悔はしないはずだから・・・

 

「まぁそれじゃ・・・参加で

対等に戦えるライバルとかそういうのは期待できなさそうだが退屈はしなさそうだ」

 

「まぁそれは置いといて

今ここにてⅦ組の発足を宣言する

ビシバシ鍛えてあげるから覚悟しなさい

あとタイミングがなくて名乗るのが忘れたわね・・・

Ⅶ組の担任教官となる。サラ・バレスタインよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれまさかここまで異色の顔触れがそろうとはのう・・・

これは少々大変かもしれんのう」

 

高台の上から様子を見ていた学院長は言う

先程までは他の教官陣もいたのだが、授業の準備とやらで各々解散していった

残ったのは学院長と金髪の青年だ

 

「フフ、確かにですがこれも女神のめぐりあわせでしょう

ですが、彼らこそ光となるかもしれません

動乱の足音が聞こえるこの帝国において

対立を乗り越えられる唯一の光に・・・・」

 




なんとか1週間以内にできたぞ・・・
うちのリィン君拾われた人違うだけでこうも違うのか・・・


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二話

最近モンハンアイスボーンを購入いたしまして
面白いですね!!!
はまってしまい、最近モチベが・・・・すいません冗談です
がんばります


西暦1204年4月17日

あのオリエンテーリングから2週間とちょっとばかりの時が経った

午前3時30過ぎトリスタから少し離れた街道で黒髪の少年――――リィンが複数の魔獣に囲まれていた

まぁ囲まれたといっても修行の一環としてリィンが魔獣たちに吹っ掛けたのだが・・・

 

「・・・・斬」

 

リィンが腰の太刀を振りぬき一閃すると魔獣たちは一刀のもとすべての数の魔獣が一刀両断された

 

「・・・・こいつらじゃ肩慣らしにもならないな

それでオレの相手をするためにここに?

“紫電のバレスタイン”さん」

 

「一応気配は消してたつもりだったんだけど

あんたじゃ無理だったみたいね

“剣神”のリィン」

 

リィンが木影に向けて声をかけるとそこに現れたのはリィンも所属する特化クラスⅦ組専任教官サラ・バレスタインだ

彼女の両手には自身の獲物である大型の導力銃とブレードが握られている

 

「そんなんじゃないわ

アタシもあんたと同じで肩慣らしでも・・・と思っただけよ

けどまぁいい機会ではあるわね

“鉄血の一人、剣神”が相手ならいい鍛錬になりそうだわ」

 

「アッハハハハハハハハハハ!

“紫電”まさかあんたがここまでノリがいいとはおもいませんでしたよ

噂の“紫電”の実力みせてもらいましょうか!!」

 

リィンは太刀を構える

 

「上等!!」

 

サラもブレードと導力銃を構えたタイミングは全く同じサラのブレードとリィンの太刀がぶつかり合い火花を散らした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、やば張り切りすぎた・・・・

眠い、寝たい・・・」

 

リィンは大きなあくびをこぼしながら通学路を歩いていた

あのあとギリギリの時間までサラリィンは剣を交えていた

夜中から朝にかけての作戦行動は慣れているとはいえ眠くならないわけではないしかも今回に限っては3時間ちょっとぶっ続けでやりあっていたのだ

眠くもなろだろう

 

「ふぁぁぁぁぁぁあ

なんだ皆もう来てたのか早いな・・・」

 

リィンがさらにあくびをしながら特化クラスⅦ組に用意された教室に入るともうほとんどの生徒が揃っていた

いないのは今来た自分であるリィンとフィーだけだ

 

「ん・・・、おはよ」

 

リィンに続いては行ってきたのはフィーだ彼女も彼女で眠そうで目をこすりながら入ってくる

 

「む・・・、君たち遅いぞ

5分前には入っていたまえ」

 

ギリギリの到着に注意したのはマキアスだ

彼も少々口うるさくあのオリエンテーリングから2週間とちょっとだが毎日登校がギリギリの二人にいつも注意していた

 

「毎日、毎日うるさいなぁ・・・

別に遅刻してるわけでもないしいいだろ?」

 

「ん・・・

マキアスは細かい」

 

「君たちは・・・・・!!」

 

何度言ってもこのように改善のする気のない二人にマキアスは青筋を浮かべる

 

「おいおいそう怒るなよ

将来禿げるぞ?」

 

「は、はげ・・・・

き、君たちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」

 

「アッハハハハハハハ

ほんの冗談だろ

そんなに気にするなよ?」

 

「ん

マキアスはなんでも細かい」

 

マキアスは怒りが頂点に達するがリィンはお構いなしにというか逆に煽って怒らせてまでいる始末だ

フィーも楽しんでいるのか本音なのかはわからないがリィンに便乗してマキアスで遊んでいるのが現状だ

 

「誰のせいだとおもってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

マキアスはさらに怒りが爆発しリィンとフィーを追いかけまわすが身体能力が基本のスペックから違うリィンとフィーをマキアスが捕まえれるわけもなく毎回マキアスが体力切れして終わるというのがオチだ

 

「毎回よく凝りもせずにある意味健気よね・・・」

 

「あはは・・・

まぁリィンとフィーからしたら弄りがいがあるからなんでしょうけど・・・」

 

Ⅶ組恒例の行事としてもはやリィン、フィーとマキアスのこれは認識されていた・・・

しばらくしてサラが教室に入ってきたとき疲れた様子のマキアスと楽しそうにしてるリィンをみてなんとなく察しマキアスの肩を優しく叩いたのだった

 

「いや、あんたも人のこと言えねぇから」

 

というリィンの指摘を受けたサラは無言で裏拳を繰り出すがリィンは軽くあしらうのだった・・・

とまぁⅦ組の間で軽いいざこざがあったが特に問題はなく座学の授業に入った

とまぁ登校時間ことであーだこうだと文句を言われているリィンだが授業態度に問題はなく、しかもそれなりに優秀であり当てられてもしっかりこたえてるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、やっと終わったか・・・」

 

一日の授業が終わったリィンは疲れたと現すように体を伸ばす

普段から斬った張ったの方が性にあってるリィンにとって座学の授業はある窮屈なものである

いくら座学が得意な穂であると言っても本来ならやりたくない分野ではある

 

「はーい、皆疲れ様ね

それじゃあ、明日について説明するわね

前にも伝えた通り明日は自由行動日になるわ

厳密には休日じゃないけど授業はないし、何をするのかも生徒たちに任されているわ

帝都に遊びに行ったていいし、なんだったら私みたいに1日中ゴロゴロしててもいいわよ」

 

「えっと・・・

学院の各施設などは解放されるのでしょうか?」

 

「図書館の自習スペースが使えるとありがたいです」

 

「えぇ、その辺りは一通り使えるから安心なさい

それとクラブ活動も自由行動日にやっていることが多いからそちらの方で聞いてみるといいわね」

 

「なるほど」

 

「確認しておくか」

 

「それと来週だけど<実技テスト>がるから」

 

「実技テスト・・・」

 

「それは一体・・・」

 

サラから聞きなれない言葉に多少なりとも興味を示すⅦ組

 

「まぁ簡単に言えば

戦闘訓練ってところね

一応評価対象のテストだから体調には気を付けておきなさい

なまらない程度に鍛えておくのもいいかもね」

 

サラは多くは語らず軽く触る程度に実技テストの説明をする

 

「そして実技テストのあとなんだけどⅦ組ならではの重要なカリキュラムの説明をするわ

まぁそういう意味でも明日の自由行動日は有意義に過ごすことをお勧めするわ

HRは以上

委員長挨拶を」

 

「は、はい

起立、例」

 

マキアスの掛け声でHRが終わった途端リィンとフィーがさっさと教室から出ていった

 

「君ら・・・!」

 

マキアスはそんなリィンとフィーに怒りを表すが怒るだけ無駄だと判断し肩を落とした

 

リィンとフィーが出て行ったあとⅦ組は集まって話し合っていた

 

「リィンとフィーってなんかあれよね・・・」

 

「えぇ、リィンさんに関しましては間違いなく天才の部類でしょう

一度聴いたら即座に覚えてしまう理解能力

そして戦闘能力に関しましてもかなりのものですし・・・」

 

エマはこれまでのリィンの行動を思い出しながらリィンという人間の情報を整理していく

 

「そしてフィーちゃんですが座学に関しましては年相応といいますか難色をしめしてますが戦闘能力に関しましてはリィンさん同様高いでしょう」

 

そして座学に関してはやる気が感じられないフィーの情報もⅦ組の面々は整理していく

 

「というか、リィンに関しては色々反則よね・・・」

 

「まぁ座学に関しても一度聞いてしまえば覚えてしまえるらしいからな・・・」

 

「それでいて教官から出題された問いは完璧に答える・・・

本当に天才よね彼・・・」

 

その後ある意味Ⅶ組の問題児であるリィンとフィーについて話し合っていたのだが途中サラが戻ってきてⅦ組に生徒会室にⅦ組に必要な“あるもの”をとってきてと頼まれ全員このあと特に用事がなかったらしくリィンとフィーを除いた残りのⅦ組で行くことにするのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自由行動ね・・・

調度帝都に呼び出されてるし帝都に行くか・・・」

 

その日の夜

あのあとすぐにⅦ組の専用寮

第三学生寮の自分の部屋に戻ってきたリィンはすぐに寝っ転がりボーとしていた

しばらく何をするわけでもなくリィンがぼーっとしてるとコンコンとドアを叩く音が聞こえる

おそらく自分に何か用だろうと扉を開くとⅦ組のリィンを覗いた男子生徒がいた

 

「えっと、皆で何か用か・・・?」

 

完全に気を抜いていたリィンは気配察知などしていらずまさかⅦ組の男子生徒全員が自分に用事があるとは思ってなかったので多少驚き目を見開いた

 

「あぁ、すまない

リィンに渡すものがあってな・・・」

 

「あぁ、生徒手帳か・・・」

 

皆を代表するかのようにガイウスが口を開きリィンに先程生徒会室にて預かったリィンの生徒手帳を手渡す

 

「リィンは明日なにか予定があるのか?」

 

「ん?

あ、あぁ明日はそうだな一応帝都の方に行こうと思っててね

知り合いから呼び出されててな・・・」

 

「君帝都に知り合いなんていたのか?」

 

「まぁちょっと年上のお兄さんとお姉さんって感じの人からね」

 

「そうか・・・」

 

「なにか明日オレに頼みたいことでもあったのか?」

 

リィンはそんなこと聞いてくるガイウスたちに疑問に思い問う

 

「いや、そうじゃない

ただ明日はどうするのかきになっただけだ」

 

「そうか・・

あー、悪い、明日始発で帝都に行かないとならなくてな

朝早いんだ」

 

「あぁ、急に押しかけてすまなかったな、リィン」

 

「いんや、じゃぁおやすみ」

 

「「おやすみ」」」

 

それを最後にリィンは扉を閉めた

 

 

 

 

 

 

そして学院が始まって初の自由行動日リィンはトリスタ駅から帝都行きの列車に乗り

帝都ヘイムダルへ向かった

帝都ヘイムダルそこは帝国最大の都市で帝国でもっとも人口が多いとされる

いくつむのも地区に分かれておりなにかと複雑な場所でもある

 

「・・・久しぶりですね、リィンさん」

 

「久しぶりです、会うのは数か月ぶりですか」

 

帝都に着いたリィンを出迎えたのは薄い青色の髪に灰色の軍服に身を包んだ女性軍人だ

 

「まさか出迎えが貴女だとは思いませんでしたよ

クレア大尉」

 

「えぇ、部下たちも優秀ですので出迎えの時間ぐらいは取れますよ」

 

「正直、あなたに関してはあの人と違って真面目過ぎるので会えるのはギリギリかと思っていたんですが・・・」

 

「まぁあの人は・・・まぁ・・・」

 

話題に出された人物に関してはクレアと呼ばれた女性も擁護する言葉が見つからず口ごもる

 

「それでリィンさん“例の件”ですが移動しながら話しましょう」

 

「えぇ」

 

クレアに案内されリィンは止めてある導力車に乗り込む

クレアが所属する部隊鉄憲兵隊の車両だ

通常の導力車と異なり窓ガラスも強化ガラスで更に車両自体もある程度の衝撃には耐えられるような設計になっている

 

「例の件ですがまだ詳細は分かっていません

ですがリィンさんにも動いてもらうことになるかもしれません」

 

「えぇ、わかっています

だから“あの人”はオレを呼んだんでしょう」

 

リィンとクレアはとある場所で車を降り歩く

帝都でも観光客ならここは見るだろうと言われるほど有名な所

ドライケルス広場

そこにはかの有名なドライケルス大帝の銅像が置かれており更にその奥には帝国の象徴とでもいう人物皇族の方々が住まわれる皇宮がある皇宮の前には親衛隊が守っておりよっぽどの使い手でもない限りは正面からの侵入は不可能だ

 

「よっ、リィン

待ってたぜ」

 

「お久しぶりです

レクターさん」

 

リィンとクレアはしばらく歩くと赤毛の青年がまるで誰か待っているかのようにいるのを見かけた

リィンもクレアも知った顔だ

 

「中で待ってるぜ?

ミリアムもな」

 

リィンたちは皇宮のとある一室の扉を開くそこにはがたいのいい大男がいた

かれこそ実質この帝国のナンバー2ギリアス・オズボーン宰相閣下だ

そしてリィンたちの直属の上司でもある

そしてオズボーンのすぐ近くには水色の髪の少女がいた

クレアよりは髪の色素は薄めだ

 

「やっほー、リィン、クレア、レクター」

 

「元気そうで何よりだ、ミリアム」

 

「フフ、皆元気そうで上々だ

リィン、クレア、レクター、ミリアム」

 

「あんたもな、おっさん」

 

「では本題に入るとしよう

例の暗躍してるテロリストについてな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレアさん、トリスタまで送ってもらってすいません」

 

「いいえ、これくらいは・・・

リィンさん、どうかご武運をそして気を付けてくださいね」

 

「いえ、それを言うならクレアさんもでしょう

ご武運を・・・」

 

あのあと軽く今後の方針が決められた

そのあと軽く戦闘訓練を行い戻ってきたのが昼を過ぎたあたりだった

鉄道憲兵隊に所属してるクレアに送ってもらい今さっきこのトリスタに戻ってきたのだ

 

「さて、どうすっかなぁ・・・」

 

クレアと駅のホームで別れたリィンは駅を出たすぐそばで呟いた

時刻は昼過ぎ昼食は戻ってくるときに食べてきたし復習する気にもなれないというかリィンの場合は教材を読めばほんの数秒で暗記してしまうので必要がないというのが本音だ

街道にでて鍛錬でもいいがリィンの実力からして話にもならない

 

「あぁ、いたわね、探したわよ、リィン」

 

リィンがこれからどうしようかと悩んでいると見つけたと声をかけてきたのはリィンの所属する特化クラスⅦ組の担任サラ・バレスタインだ

 

「サラさん、どうかしたんですか?」

 

「ちょっと、頼みごとをね・・・

ほい、これ」

 

そう言ってサラはリィンに鍵を手渡した

 

「これは?」

 

「君たちが前にオリエンテーリングの時に入った旧校舎の鍵よ」

 

「あぁ、あの時の・・・

それでそのカギをなんで自分に・・・?」

 

「まぁ、簡単に言えば調査してきてほしいのよ

なにかとあそこはいわく付きらしくてね」

 

「はぁ・・・

オレは構いませんが・・・」

 

「じゃあ、頼んだわよ

あ、なんならⅦ組の子連れてってもいいし他の子と調査しても構わないわ」

 

そう言ってサラは学生寮の方へ向かっていった

 

「いや、必要ないから

まぁ、腕をなまらせないためにも丁度よさそうだな

“今後”もあるしな・・・」

 

そういうとリィンは旧校舎に向けて歩き出した

 

「へぇ・・・

面白いなここ・・・」

 

リィンは旧校舎の中に入りその状況をみて一人呟く

建物の内部構造が以前に入った時とくらべて“変わっている”のだ

正確に言うのなら空間自体が切り替わっているとでもいうべきか

魔獣の気配も以前とは別だ

まぁそれでもリィンは楽に潜り抜けてしまうんだろうが

 

「まぁ、行くか・・・」

 

リィンはこの異常ともいえる状況に驚くこともせずただひたすら旧校舎を進んだ

魔獣はリィンの予想した通り手ごわくなっていたが、リィンの敵ではなかった

それに今はⅦ組もいないにのでⅦ組に合わせることもなく存分に自身の剣を振るえる

 

「はっ、こんなもんか!?」

 

リィンは次々と魔獣を切り伏せる

その様子に魔獣もリィンに恐れをなしたのかリィンを見た瞬間に逃げ出すのもいたがそれを逃がすほどリィンも優しくはない

 

「逃がすかよ・・・」

 

そしてその魔獣に太刀を振り下ろし魔獣は絶命する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンがしばらく進むと見覚えのある装置が設置されていた

前回のオリエンテーリングの時も終点になるとこの回復装置が置かれていたおそらく終点だろう

リィンは装置の先へ進むと案の定終点だったそこにはなにもなく

なにもないが異様な気配をリィンは感じた

突如それは現出する

空間が開き現れたのは中型の魔獣だ

二足歩行で顔は悪魔のようだった

“ミニデーモン”それがリィンの前に現れた魔獣の名前だ

確かにここに至るまでに戦ってきた魔獣たちに比べれば格段に強いかもしれないがそれでもリィンからしてみれば“足りない”

なにもかもが足りないそれがリィンが抱いた感想だった

あの頃の一瞬の気の迷いが死に繋がるあの生きてきた日々を思えば“足りなすぎる”何もかもが・・・

 

「お前程度でオレを殺れるとでも?」

 

そういうとリィンはミニデーモンの前から姿を消した

 

「・・・・・・!?」

 

ミニデーモンは辺りを見渡しリィンの姿を探すがリィンの姿は見当たらなかった

 

「こっちだ・・・!」

 

ミニデーモンが声のした方に身体を向けるとすでにリィンはミニデーモンの目の前まで来ていた

なにもリィンは特別なことをしていないただ”疾い”だけだ

ミニデーモンはせめてもの抵抗でその獰猛な腕でリィンを殴り飛ばそうとするがもう遅い

 

「遅い」

 

リィンは腰に差している愛刀を抜き右肩から斜めにミニデーモンを斬り下ろした

そして止めと言わんばかりに横に一閃する

ミニデーモンはリィンに反撃の機会すら与えられることなく絶命した

 

「・・・・こんなもんか

あともっとうまく気配を消した方がいいですよ」

 

リィンはミニデーモンが倒れたことを確認すると踵を返しそのまま旧校舎をあとにするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく最初から気付いてたってっわけね」

 

リィンが去ったあと物陰から出てきたのはサラだった

旧校舎の調査を頼んだリィンの様子を見に来たのだが余計なお世話だったようだ

サラもリィンの強さはよく知っている並の相手なら相手にならないだろうことも

だが彼の実力はサラの想像をはるかに超えていた

ミニデーモンを倒すときに使ったあの瞬間移動にも似た歩法れはサラにも追いきれなかった

彼の師である剣士が使用していた高等歩法だ

あの剣士の弟子であるリィンが使えてもおかしくはないがあれはもう達人の領域だった

 

「やれやれ、本当とんでもない子ね・・・

剣神・・・・か」

 

サラは彼に与えられた二つ名の意味を理解したのだった・・・

 




最初は原作通りとか言ってた時期も僕にありました
ですが無理でした
まぁヴァリマールに関しては終章までに間に合わせるつもりです一応・・・






モンハンおもしれぇ・・・!


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三話

どうも昨日ぶりです
それではどうぞ!


自由行動日から1日が経ちⅦ組の皆はグランドに呼び出されていた

今日は自由行動日に入る前日にサラから聞かされていた実技テストの日だ

 

「皆、待たせたみたいね

じゃあ、実技テストを始めましょうか」

 

そう言ってサラが指を鳴らすと

そこには銅色の人形のようなものが現れた

Ⅶ組はそれぞれ驚きの反応を示す

 

「結構強めに設定してあるわ

まぁでも君たちがアークスの戦術リンク機能をうまく使えれば倒せない相手じゃないわ」

 

「なるほど・・・」

 

「戦術リンクでの連携が肝になってくるわけか」

 

Ⅶ組の面々が実技テストにやる気になっているとリィンはずっとサラが呼び出した人形を凝視していた

 

「じゃあまずは・・・」

 

「サラさん」

 

サラが早速始めようとしたところ遮るようにリィンは声をかける

 

「リィン

なにか質問が?」

 

「いえ、実技テストに関しては特に

ですが一つだけ“その人形”はどこで?

まさか“例の工房”の一角のおもちゃを貴女が所持してるなんて思いもしませんでしたよ」

 

「あー、やっぱりあなたはこの出所を知っているわけか

でもこの人形はとあるところから押し付けられたのよ

君が今思っているようなことではないわ」

 

「そうですか

すいません、続けて構いません」

 

「えっと・・・」

 

「なんなんだ?」

 

「・・・・・」

 

「ふむ・・・・?」

 

サラとリィンのやり取りを聞いていたⅦ組は疑問に思うがその話をしていたリィンとサラの表情が普段見ることのない真剣そのもだったため聞くに聞けなかった

 

「じゃあ、始めましょう

実技テストをね・・・」

 

そして気を取り直し実技テストが再開された

サラがメンバーを選び呼ばれた者は人形に挑んでいくが戦術リンクをうまくいかせず苦戦していた

サラはそれを楽しそうにみていたが・・・

リィンはそんなサラに白い目を向けていた

 

「じゃあ次リィンとフィー!!」

 

「めんどくさいな」

 

「まぁそういうなフィー」

 

心からめんどくさそうにして前に出るフィーをリィンは宥める

 

「それじゃあ、始め!!」

 

サラの掛け声にフィーとリィンは己の獲物を抜く

フィーは自身の武器であるスピードを生かして人形を翻弄する

人形はフィーのスピードについていくことができず周りをキョロキョロすることしかできていないが・・・人形に動きがあった人形はレーザーを出しレーザーを出しながら周りを人形は回るスピードについていけないなら焼き払うという単純な思考なのだろう

だがそんな付け焼刃程度の攻撃にあたるほどフィーも死線を潜り抜けたわけじゃないフィーはレーザーが焼き払うよりも早く退避した

 

「・・・・・・」

 

リィンはそろそろ決めるかと人形に向かって歩き出した

そんなリィンに気付いた人形は己の腕を刃に変形させ振り払うだがリィンは太刀でそんな人形の攻撃を弾く

 

「フィー」

 

「ん・・・・」

 

そしてリィンが弾いたことによって生じた隙を見逃すフィーではないリィンが声をかける前にすでにフィーは動き出していた

そしてフィーは人形を切り裂き駆け抜けた

フィーの一閃を受けた人形は活動を停止した

 

「まぁ、あんたちは流石ってところね・・・」

 

サラはリィンとフィーを評価した

サラからすればリィンが開幕速攻で倒すんじゃないかと思ったがそこはちゃんと意図を汲んでくれていたみたいでしっかりフィーと連携していた

 

「まぁリィンやフィーみたいにいきなりしろとは言わないわ

アンタらはせいぜい戦術リンクを繋ぐことから始めるといいわ

さて、それじゃⅦ組の特別なカリキュラムについて話しましょうか」

 

そしてサラはⅦ組に紙を配った

リィンたちが配られた紙を見るそこには帝国東部にある町の名前二か所とその町の名前の横にそれぞれⅦ組メンバーの名前が書かれていた

交易地ケルディック:リィン、アリサ、エリオット、ラウラ

紡積町パルム;ガイウス、ユーシス、マキアス、エマ、フィー

 

「それは君たちⅦ組に課せられた特別実習よ

それはその紙に書かれている通りの班分けよ

リィンたちA班はケルディック、そしてガイウスたちB班はパルムに行ってもらうわ」

 

「日時はともかく班分けは・・・」

 

「ありえんな」

 

「・・・・おまえらが勝手に拗らせてるだけだろ」

 

「ちょっとリィン!?」

 

パルムに行くメンバーであるマキアスとユーシスが難色を示すがそんな二人をみてリィンは突っ込む

 

「なんだと!?」

 

案の定というべきかマキアスはリィンに食って掛かる

 

「うるせぇなあ

オレもそんなに人と関わってきたわけじゃないだけどいろんな人たちがいた貴族でも心優しくしてくれた人平民でもくされ外道な腐れ野郎もいた

貴族だから・・・それでそいつの人間性を決めつけるのは早計なんじゃないか?

身分なんて関係ないおまえが学ぶべきはその身分に関係なくその人の人間としての内側なんじゃないのか」

 

「それは・・・」

 

リィンの言葉にマキアスは口ごもる

貴族の偏見が完全になくなったわけじゃないそれでもリィンの言葉は不思議とマキアスの胸に響いた

 

「・・・・らしくなかったな

サラさんすいません続けて下さい」

 

「えぇ、そうね・・・

マキアスが大人しくなったところで話を続けましょうか

特別実習の日時は今週末だいたい実習先には二日くらいの滞在の予定よ

あとリィンはあとで職員室に来なさい」

 

「・・・・・?

えぇ・・・」

 

特別実習の説明のあと各自解散になりリィンはサラに先程言われた通り職員室に顔を出していた

 

「それでサラさん、話というのは・・・」

 

「えぇ、今週末の特別実習だけどリィンうまくサポートしてあげて

士官候補生の実習・・・それ以外の不確定要素がないとも限らないわ

その時はあの子たちのこと頼むわ」

 

「えぇ、わかってます

できる限りはしますよ

それじゃ、オレはこれで・・・」

 

「リィン

貴方の能力はこの学院からすればトップクラスよ

でもあなたは望んであの政府の・・・」

 

「貴方はある程度知ってるんでしたねオレの経歴を

サラさん一つだけオレの師の受け売りですけど

“戦場に事の善悪はない、ただひたすら斬るのみ”それだけです」

 

それを最後に今度こそリィンは職員室をあとにした

 

「・・・・・バレスタイン教官」

 

「ナイトハルト教官」

 

そんなサラに声をかけてきたのは金髪の青年だ

彼もトールズの教官だ

先程のリィンとの会話を聞いて声をかけたのだろう

 

「彼が例の政府の・・・」

 

「えぇ、政府の教えというよりあの子の師の教えの側面が強いですね・・・」

 

「師というのは・・・・」

 

「帝国・・・いえ最強の剣士の称号を欲しいがままにした“セイバー”それがあの子の師ですよ」

 

「なっ・・・」

 

ナイトハルトもその名に絶句した

その名をナイトハルトも知らないわけではないいや正規軍に所属している彼なら知っている情報だ

最強の剣士であり最恐の人斬りで名を馳せた人物だ

そんな人間が弟子を取っていたことに驚きだった

 

「アハハ

いい反応ですねナイトハルト教官

まぁアタシも驚きましたよ

けどあの子の中に確実に師の教えが根付いています

“戦場に事の善悪はないただひたすらに斬る”」

 

「それは・・・」

 

「えぇ、あの子の師が口癖のように言っていた言葉

アタシもあの子の師に会ったことはあります

普段は剣士らしくもなく人斬りらしくもない無邪気なのにいざってなるとあぁ剣士なんだって実感させる人でした

やっぱり師弟だなって思いますねあの言葉を聞くと・・・」

 

サラはあの剣士と初めて会った日を思い出す

それは自分がまだ血と硝煙にまみれたあの戦場に身を置いていたあの頃・・・

 

 

 

 

 

「アハハハ

中々やりますね

“紫電”の名は伊達じゃありませんね」

 

「・・・・よく言うわ

まだまだ余裕でしょアンタ」

 

「まぁ伊達に戦場をこの子と歩いていませんからね」

 

まだ10代のサラが出会った見た目はサラと同じか少し上くらいに見える少女剣士

だが実力派明らかにサラよりはるかに上

そしてその横にはまだ10にも満たない少年が少女の傍らにくっついていた

 

「ほらほら、隠れてなさいと言ったでしょう?」

 

「え、でも・・・」

 

「いいから・・・」

 

そういうと少年は言われた通りにおお物陰に身を隠した

 

「子供?」

 

「帝国に行ったときに妙に懐かれてしまいましてね

それ以降連れて歩いてるんです」

 

「なっ・・・」

 

目の前の剣士の言葉にサラは言葉を失った

とてもじゃないがこんないつ死ぬかわからない戦場に連れてきていいような子供ではない

 

「あんた、何考えてるのよ

そんな戦場に子を・・・・」

 

「守って見せますよ

あの子は必ず自分で道を見出すその時までは必ず・・・!」

 

目の前の剣士の表情と言葉にサラはなにも言えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして成長したあの子はセイバーの剣と数々の強者を輩出してる八葉を修めた

本当、経歴と言い恐ろしい子ね・・・」

 

サラはあの日からの月日の経過を実感していた

まさか師が死ぬ原因となった政府に身を置くことになるとはサラも予想外ではあったが・・・

 

「まぁあの子の経歴は確かに特別ですが、普段通りに接してあげてください」

 

「あぁ、わかっている」

 

ナイトハルトは多少リィンの経歴に驚きはしたが自分のすることに変わりはないというスタンスである

それと職員室にいた教官陣だがこの話しを理解できたものはほとんどいなく頭に?を浮かべていた

そして今週末

あっという間に特別実習の日を迎えたそしてリィンたちは実習地のケルディックに向けて列車に乗るのだった

 



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四話

大変お待たせしました
最近忙しくて中々投稿できませんでした
そして感想の方もありがとうございます
ではどうぞ


西暦1204年4月24日

特別実習当日、いつものようにリィンとフィーがトリスタ駅に時間ギリギリに行くとすでにリィンとフィー以外のメンバーが揃っていた

B班の方も揃っていてマキアスとユーシスは案の定というべきかまだわだかまりがあるようで互いに顔を背けていた

 

「そっちはいろんな意味で大変そうだな」

 

「まぁできるだけフォローはしてみよう」

 

リィンが近くにいたガイウスに二人の様子を見ながら言うと流石のガイウスも苦笑いしながら答えた

リィンとフィーが来たことによりリィンたちA班とガイウスたちB班は駅にてそれぞれケルディック行きとパルム行きを購入し調度到着した電車に乗った

 

「えっとそれじゃあ、実習地のケルディックについて整理しましょうか」

 

「別に今しなくても行けばわかるだろ

ってことでオレはパス」

 

「ちょっ・・・

貴方ねぇ・・・」

 

言うが早いがリィンは目を閉じそのまんま睡眠に入る

 

「アハハ・・・」

 

「まぁ行けばわかるというのもあながち間違いではないが・・・」

 

リィンの態度にアリサはじゃっかん腹を立てているがエリオットに関してはもう毎回のようなものなので苦笑いだ

ラウラもリィンの言葉に一理はあるので否定はしないがリィンの態度事態に難色をしめす

B班ほどではないだろうがこちらもいろんな意味で苦労しそうだと溜息を吐く3人だった

 

――――――次はケルディック、ケルディックお降りの方は準備をお願いします

 

しばらく電車に揺られているとそんなアナウンスが聞こえてくる

リィンたちはそれを聞くと降りる支度を始める

先程まで寝ていたリィンだったがアナウンスが聞こえるが早く起きていたエリオット立ち寄り降りる支度を済ませていた

 

「ここが交易地ケルディックか・・・」

 

リィンは電車から降りてケルディックの景色をみて開口一番そう呟いた。

帝国にある数多くの街に比べれば田舎の方だがいい街だとリィンは内心思った

交易地というだけあり

少し進めばここが交易地と言われる所以なのだろう人々の声が聞こえてくる

戦場や殺伐としたところしか歩いてこなかったリィンからすれば新鮮な所だった

 

「さてと、まずは宿泊場所にいくのよ

あんたたち」

 

「サラさん

気配はありましたから驚きはしませんけど

どうしてここに?

オレたちに任せるんじゃ・・・?」

 

「・・・本当あんた規格外よね

一応、気配消してたんだけど・・・」

 

リィンの気配察知能力の高さに多少サラは己の能力が低いんじゃないかと落ち込みかけるが、リィンが規格外なだけと自分に言い聞かせる

 

「まっ、初日は不安だろうからついていってあげようかと思ってね」

 

「それはわかりますけどそれならB班のほうに行った方が・・・」

 

「エリオット、そんなわかり切ったこと聞かなくていいだろ

あんな問題起こすとわかっている班なんてめんどくさくてありゃしないだろ

オレだってサラさんと同じ立場ならB班を切り捨ててこっちの様子見に来るけどな

いかにもめんどくさくなるのがみえてるし」

 

リィンはエリオットが疑問に思っていたことをサラが答えるより先に答えて見せる

 

「ぐっ・・・」

 

サラはリィンの説明に否定できないのか悔しそうな声をあげるだけだ

そんなサラをみて図星だと判断したA班の面々はサラに白い目を向ける

 

「サラ教官・・・」

 

「いくらなんでもそれは・・・・」

 

「ハハハ・・・・」

 

どう頭をひねってもサラのことを擁護できないA班はそれぞれ言いたい放題だ

 

「ええい、うるさいわよ

あんたら!!

それとリィンも余計な事いわんでいいわ!!」

 

「まぁまぁサラさん落ち着いてください

ケルディック名産の地ビール奢りますから」

 

「あら?

そう?

じゃあごちそうになろうかしら?」

 

リィンの言葉にさっきまでのサラはどこへやら態度を百八十度変え宿泊先に着くとサラは真っ先にカウンター席に座りビールとつまみを注文する

 

「やれやれ」

 

リィンは肩をすくめながらもサラの隣に座り地ビールではなくジュースと簡単な食べ物を注文する

 

「おまえらも好きなの頼んでいいぞ

奢るから」

 

「えーっと・・・」

 

サラもリィンも好き勝手しはじめエリオット、ラウラ、アリサは顔をしかめる

リィンの自由さは今に始まったことではないが実習先まで発揮されるとは思わなかった

それに奢るという言葉にまんまと乗せられ担任のサラもこれであるこの先の実習が不安になるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンのおごりで一杯飲んだサラは更にいっぱい頼みながらリィンに封筒を渡す

 

「サラさん、こいつは・・・」

 

「そのなかには今回の課題が入ってるわ必須と書かれた者は必ずやったほうがいいわ

任意のものに関しては判断を任せるわ」

 

「なるほど、そういう趣向ですか・・・」

 

リィンは、封筒から書類を取り出し中身を確認すると簡単なお手伝いから魔獣討伐の仕事まで内容は様々だ

そのあと、宿の女将さんに部屋を案内され男子と女子共同の部屋ということで(特にアリサが)ラウラやエリオットが宥めることでとりあえずは落ち着いた

そして今夏の実習についてとりあえず来てもらったわけだしサラに話を聞こうということになり下に降りサラの元へ行くと完全に出来上がっていた

 

「ぷはぁ~、この一杯のために生きてるわー!」

 

完全に酔っ払いの親父と化していた

 

「なに君たちさっさと始めちゃって構わないわよ」

 

「いえその・・・」

 

エリオット、ラウラ、アリサは今回の実習の課題について聞きたかったことがあるらしかったのだがこれでは聞くに聞けない

 

「とりあえずそいつに書かれてる通り依頼に沿って課題をこなそう

まず必須の依頼を片付けてそしてその残った時間によっては任意の依頼を片付けられるか否かを見極めればいいだけだろ」

 

リィンは流石に困惑したエリオットたちに助け船をだす

必須のものに関しては書いてる通り片付けなければならない案件であるが任意の物に関しては最悪やらなくてもいいものだ

その辺の線引きをしとけばとりあえずはなんとかなるだろうとリィンの判断だ

最も必須のものは多少時間がかかるかもしれないがそれ以外にかんしてはお手伝いのようなものなのでできないわけではない

 

「そうね、リィンの言う通りよ

まぁ考えるのも結構だけど動かないと始まらないわよ?」

 

「さて、とりあえずは必須の依頼を片付けるか

それとも手分けするか?

課題の効率を重視するならそれもまた一つの手だろ?」

 

リィンの提案も間違いじゃないがサラは顔をしかめた

間違いではない確かに効率を重視するなら別々に動いた方が手早く終わるであろう

だがⅦ組としてのチームワークやそこらへんを考えると班で動いてほしいと思うが

サラが任せるといった手前言いにくいのも事実だ

だがリィンの今までの育った環境を考えるとしかなしと言えば仕方なしだ一瞬の気の迷いや判断ミスが死に繋がるリィンが生き抜いてきた世界はそういう世界だ

だからこそ効率重視の意見を言うのは仕方がないようにも思える

 

「いや、我ら全員で動くとしよう」

 

「ふぅん、まぁオレは別に構わないが

効率が悪くないか?」

 

以外にもリィンの意見に反対を申し出たのはラウラだった

サラは意外そうにラウラをみてリィンは口では別にという感じだが表情は不満そうだ

エリオットとアリサも意外そうな表情をしている

 

「ふむ、確かにリィンそなたの言う通りこの課題の効率を考えればおぬしの意見が効率がよく手早くおわるのであろうだが、私たちは出会ったばかりクラスメイトの人となりを知るには一緒に行動した方がよいのではないか?」

 

「まぁそれは言えてるが・・・・”必要か”?

所詮二年間程度の付き合いにしかならないオレらに」

 

「なっ・・・」

 

「なかよこよしやるのがそんなに必要なのかよ

二年後の進路によっては殺しあうかもしれないのに」

 

「それは・・・」

 

「・・・・」

 

リィンの言葉に一同は言葉を詰まらせる

リィンの言葉がまったくのでたらめを言ってると笑い飛ばせないほど帝国の現状をリィンはある意味リアルに語っているも同然だからだ

今は水面下での争いに済んでいるのかもしれないが平民と貴族間の争いが未だ絶えてないのは未だ学生でしかないラウラたちも感じていることだ

それを考えると今は敵ではなく仲良くしているのかもしれないが卒業後の進路によってはこの帝国のためとばからしい大義名分をかざし殺しあう未来が絶対にないというほど帝国は単純ではない

 

「まぁオレはどっちでも構わないけどな

卒業後の進路がどうなるかはまだわからないけど敵対することになったらオレは迷わず”斬る”」

 

リィンはなんの感情も移さない顔でただ無機質にそう口を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後仕方のないことだが空気が最悪と言っていいほど悪くなった

なんとかエリオットとアリサが宥めることでその場は収まったが実習中何もないとは限らないのでサラはB班に続いてこっちもかと頭を抱えたそしてタイミングを見計らったようにサラのアークスが鳴るのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局あのあと効率重視で別行動をとることになったリィン単独とラウラ、エリオット、アリサだ

最初は二名、二名で分けようとしたのだがリィン自身がオレは1人でいいと言うのでこのチーム分けになった次第だ

そしてリィンが街道にいる魔獣退治そして三人が導力灯の交換の課題を受け持つことになった

そしてリィンは早速手配魔獣がいるであろう東ケルディックを歩いていた

”東ケルディックの手配魔獣”それが彼らと別行動する際引き受けた仕事だ

リィン自身戦闘慣れしているし、魔獣も”人”も数え切れないほどに斬ってきた

だからたかが少しでかいだけの魔獣などリィンに至ってはそこらへんに転がってる魔獣と同じだ

 

「あー、いたいた

あれか・・・・」

 

リィンはしばらく街道を歩いているとやたらと存在感のある

中型の魔獣を確認する

 

「あれだな・・・」

 

課題書の通りだと姿、形を確認したリィン手配魔獣に向けて歩き出した

手配魔獣はリィンに気付くとあからさまな敵意をリィンに向ける

リィンはそんな魔獣に対して特に臆することもなくただいつものように斬るだけ

魔獣は形としては恐竜型だろう

そしてその獰猛な牙と爪あれを一撃でも喰らえば悪ければ即死よくても重症だ

ちょっとケガをしましたでは済まないだろう

 

「グオオオオオオォォォォォォォォォ」

 

恐竜型の魔獣スケイリーダイナーは雄たけびを上げるとリィンに向けて飛び掛かる

そしてその鋭い爪でリィンを引き裂こうと腕を振るう

だがその爪は空を切り裂く

 

「なるほど、まぁ確かに攻撃事態は悪くないだが・・・・まだまだ甘いな」

 

「!?」

 

スケイリーダイナーが気付いた時にはすでにリィンは目の前まで迫ってきていた

気付いた時にはすでに遅くリィンの太刀が肉薄しそのままリィンはスケイリーダイナーをそのまんま切り裂いた

 

「この程度ならあいつらに任せてもよかったかもな・・・」

 

リィンはすでに真っ二つにぶった切ったスケイリーダイナーを見下ろしてから静かに呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンが街道から戻ってみるともうすでにラウラたちが宿泊場の前で待っていた

 

「なんだ、オレが思ったより早かったな」

 

「あ、リィン

そっちも終わったんだ」

 

「あぁ、あれだったらエリオットたちに任せてもよかったかもな」

 

「アハハ・・・・」

 

それを聞いたエリオットは苦笑いだ

エリオット自身武術を修めているわけではないそして元来の性格も相まって戦闘も好きではないのでできるだけ戦わないで済んだこっちを任せてもらえてエリオットは内心安堵した

 

「まぁ今日の課題もこれで終わりだな

どうする?

レポート書いちゃうか?」

 

時刻はまだ昼過ぎ

手分けして課題をこなしたのがよかったのか予定より早く課題が終わってしまい時間を持て余していた

 

「あっと、悪い休急用ができた

レポートは三人で先にやっておいてくれ」

 

突如リィンのアークスが鳴り三人に一言告げるとリィンは街道の方へ歩いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この辺でいいか・・・」

 

リィンは街道に出ると物陰に身を隠し周辺の気配を探ってから誰もいないとわかるとアークスに応答する

 

「はい、リィンですが・・・」

 

『よう、リィン

久しぶりだなぁ』

 

「久しぶりってこの前会ったばかりでしょうレクターさん」

 

その声の主はリィンもよく知ってる人物だった

つい最近顔を合わせたばかりのレクター・アランドールだ

彼が連絡を寄越した理由はリィンにも難なく想像できた

 

『リィン、わかってると思うが仕事を頼みたい前も話した例の奴がそっちに向かってるらしくてな

“そいつを殺せ”

学院側にはオレから話を通しておく

そして念のためデータは送っておく

それじゃ、頼んだぜ剣神』

 

「やれやれ、相変わらず人使いの荒い・・・

まぁ、“要請”が出た以上こなすか・・・」

 

そしてリィンは与えられた仕事を全うするため動き出す

その顔は学院生リィンではなくすでに“剣神のリィン”としての顔だった

 



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五話

すいみせんっしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ
イースにはまってましたぁぁぁぁぁぁぁあ

人ではない何者かになるそんな夢を見たことがあるだろうか―――――

このくだり好きです



特化クラスⅦ組初の特別実習ということでA班のサポートをしていたのだが学院経由でサラに連絡がきた

内容は政府の要請によりリィンの特別実習は中止現存メンバーで今回の実習を対応せよというものだ

そして更に追い打ちをかけるよう特別実習1日目昼過ぎ

にパルムに向かっているB班から連絡がありユーシスとマキアスの件でもう手が付けられないというものだ

 

「まぁリィンの場合は大方想像通りではあるけど

こんなに早いなんてね・・・」

 

サラは今回の学院経由で来たリィンの件については全く想像していなかったわけではない

政府の中でも実質帝国ナンバー2である帝国宰相ギリアス・オズボーン直属の部隊

鉄血(アイアン)の(ブリ)子供(ー)たち(ド)その一人でもあるリィンにいくら学院生だからと言って政府からの仕事が来るだろうことは予想通りだ

ただ予想より早かっただけだ。

そうほんの少し早かったそれだけだ、そしてリィンに振られる仕事は“汚れ仕事”それを思うといくらリィンが選んだこととはいえ少しだけリィンが心配になるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、やってるわね」

 

「サラ教官」

 

リィンの手分けして課題にあたるという提案が受け入れられたことにより課題が大方終わっているであろうことはサラにも容易に想像ができた

だから今ごろはレポート書いてるであろうと思いA班の宿泊所にいくと案の定レポートに四苦八苦していた

 

「あんたたちに伝えなきゃならないことがあってね・・・」

 

「伝えなきゃならないこと・・・ですか?」

 

A班はサラの言葉に首を傾げる

 

「リィンだけどね

学院側から通達があったわ

緊急事態につきリィンは特別実習を本日をもって終了とし残りは現存メンバーである、アリサ、ラウラ、エリオットで行うものとする

これが学院からの通達よ」

 

「えっと、その緊急事態というのは・・・」

 

最も気になっているであろうことをエリオットはサラに問う

 

「それは極秘事項につき言えないわ

あなたたちは目の前の課題に励みなさい

それとB班のほうがやばいらしくてね

アタシもそっちの対応に行かなくちゃならないから

リィン抜きで頑張りなさい」

 

サラはそれだけ言うとA班を残して出ていく

本当はもっとフォローしなければならないのだろうがB班のことを考えると時間もない

あとはA班を信じるしかない

 

「せいぜい気張りなさい・・・」

 

サラはそう呟きパルムへと向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リィンの急用ってやっぱりあれかな?」

 

「うむ、十中八九あれであろうな」

 

「それしかないわよね・・・」

 

サラからリィンの特別実習の離脱を言い渡されてリィン以外のA班はレポートも一区切りつき離脱したリィンについて話し合っていた

リィンが離脱の原因としては皆見当がついていた先程の着信しか思い当たるふしがない

あの着信でリィンが急遽特別実習を辞退しなけれべならない“何か”あったのだと推測する

 

「けどこう考えると僕たちってリィンのこと何も知らないよね・・・」

 

「それは・・・」

 

「まぁ私たちも知り合って日が浅いのもあると思うけどリィンの場合は“知らなさすぎ”よね」

 

A班然りB班もリィンのことを名前以外の情報と言えば太刀を扱うということだけだ

下の名前もわからなければ、好きな食べ物もなにもリィンに関する情報を彼らは持っていなかった

リィン自身がⅦ組に踏み込んでこないのも理由の一つだが、リィンにはなにかあるのではないかそう思わずにはいられなかった

それがなんなのかはまだ彼らには知る由もないのだが・・・

これ以上考えてもリィンのことは本人に聞くしかわからないと判断したラウラたちはとりあえずはこの特別実習を成功させることに専念するのであった

といってもリィンの効率重視のやり方によって1日目の課題はすでに終わらせてしまっている

ラウラたちは気分転換も含めてこの交易地ケルディックという街をじっくりみてまわることにした

と言ってもケルディックもそんな大きな町ではなくやはりメインとなるのはだろう

大市を見て回ろうと考えた時

 

「お前の仕業なんだろ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

なにやら言い争う声が聞こえ、ラウラたちが行ってみると若い男性とだいたい30~40代くらいの男性が言い争っていた。

なにやら、トラブルのようでどちらの店舗なのかしらないがめちゃくちゃに荒らされていた

店舗自体がすでに半壊しており、売るはずだった商品に関しては盗まれていた

どうやらこの店舗は30~40代の男性の店舗のようで若い男性を責めた理由に関してはついさきほど店舗の場所の件であらそったばかりで自分の方が店舗の場所もいいのでひがんでやったに決まっているという理由だった

理由としてはわからなくもないのだが早計過ぎてラウラたちは内心呆れていた

その後騒ぎを聞いたケルディックのオットー元締めだった

そしてその後ラウラたちは元締めたちから話を聞いて今回の一件の事件を改めて解決に導くことを誓うのだった

そしてラウラたちはまずは情報収集のために実際に被害にあったいわゆる被害者に話を聞くことにするのだった。

実際に被害にあった男性二人からまずはラウラたちは話を聞くが二人とも互いにあいつが悪いと決めつけており話にならなかった

次にこの地に駐留してる領邦軍に話をきくためケルディックにある駐留所にいき訳を話し実際に話を聞けることになり軍を代表して隊長が話を受けた

そしてエリオットのある気転により領邦軍の穴を見つけることに成功した

そしてこれは本当に偶然だがケルディックの入り口付近で酔いつぶれてた人物からケルディックにあるとある場所に荷物が運び込まれたという情報を得てラウラたちはそこへ向かうのだった

 

「ではアリサ、エリオット準備はよいか?」

 

「えぇ!」

 

「う、うん」

 

西ケルディック街道からしばらく進むと錠のついている大門の前に三人は来ていた

そしてその近くには恐らく先程の壊れた店舗の商品であろうブレスレットが転がっている

恐らく犯人がここに運び込む際に落としたのだろう

 

「けどどうしよう鍵かけられてるけど・・・」

 

「ふむ、本来なら係りの者を呼んできて開けてもらうのだが今回は時間がなく致し方ない」

 

ラウラはそういうと己の獲物である大剣を取り出し

 

「え・・・・」

 

「まさか・・・・」

 

二人は嫌な予感を感じ一歩後ろに引く

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」

 

気合一閃

ラウラは己に喝を入れるように雄たけびじみた声をあげると上段から力いっぱい錠に向かって振り下ろした

錠は見事に真っ二つにぶった切られ道が開かれたがラウラの脳筋思考説がアリサとエリオットの中で更新されるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、少し遅かったか

だがまぁ、いい訓練になるかもな

なんか妙な気配もあることだしな

それにしても派手にぶっ壊しやがって・・・」

 

先程要請を終え急いで戻ってきたリィンはケルディックで元締めから話を聞きここにたどり着ききったとされる真っ二つにされえた錠を手に持ち溜息を吐く

そしてリィンは大門の向こう側に見える緑の景色どこか神秘さえ感じるその場所はルナリア自然公園

リィンはめんどくさいことになりそうだと肩をすくめながらゆっくりとした足取りでラウラたちの後を追うのだった・・・

 




そしてイース終章までいく→九州まで出張→ちくしょおおおおおおおおお


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六話

イース、クリアしましたぁぁぁぁぁぁ
赤の王とアドルの関係性には驚かされました
イースもひと段落着いたのでできるだけ投稿頻度あげていけたらなと思っています


ラウラたちが別で動いてる同時刻・・・・

 

 

リィンは、レクターからの要請でとある人物がこのケルディック付近に潜伏してるというその後情報局からの情報で明らかとなった。

とりあえずリィンは、今回のターゲットを見ていないかとケルディックの住民を中心に聞いて回ってたが、変装でもしてるのか中々見てると言った情報は得られなかった

のだが・・・・・

 

「あらアンタ、学院の演習できてるサラちゃんのとこの・・・・」

 

「えぇ、今回は別件で動いてまして別行動を取ってるんです

あ、そうだこの写真の男些細なことでもいいので見ていませんか」

 

リィンは写真を取り出し女将さんに見せた

 

「いや、この人は・・・・うん?」

 

「見たことが?」

 

「あーうん、髪型とか服装が違ってたんで最初は気付かなかったんだが

昨日までうちに泊まっていた人だよ」

 

「なに・・・」

 

リィンは詳しく話を聞くため女将さんに詰め寄るのだった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか数日ケルディックに滞在してたなんてな・・・

しかも旅行者って・・・・

プライドもくそもねぇな・・・」

 

リィンは女将から得た情報を聞いてあきれるしかなかった

リィンにとって、貴族は良くも悪くもプライドの塊のような連中だった。

姿を変えて逃げ切ろうとするやつなど今まで現れなかったリィンにとってそれは楽しくて、しょうがない要素にしか過ぎなかったが・・・

 

「アッハハハハハハハハハハ

逃げ切って見せろよ・・・・

なぁ・・・・?」

 

リィンは、狂ったように甲高く笑うと始末するため動き出す

上が斬れと命じた以上一切の容赦もなく斬り殺すために・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ、ここまでくれば流石の奴も・・・」

 

東ケルディック街道・・・

そこに一人の男性が息を切らし木に片手を突つき息を整えていた

彼独自の情報網を使い己を狙っている者が来ているという情報を得たからだ

彼自身狙われるようなことをした覚えはないといいたいが逆にありまくりだ。

貴族という立場を利用し、平民を食い物にして来た

どうやらそのことが露見したということであった。

 

「くそ、政府の犬が・・・!!

いや、ギリアス・オズボーン!!!」

 

男は、自分をここまで追い込んだ実質帝国のナンバー2初の平民宰相の名を口にする

実際貴族のたしなみという理由で、平民をおもちゃ同然と扱ってきた彼に報いを受ける時が来た。ただそれだけだ。

 

「おいおい、狙われてるってのに随分と余裕じゃないかグリーワイズ家の当主

シルビア・グリーワイズ」

 

「貴様は鉄血の子飼い

”剣神”」

 

「へぇ、外道貴族がオレのことをご存じとはね

有名になったもんだな」

 

「なんだ、私を捕まえにきたのか

残念だが捕まえたとこで金をつめばいくらでも・・・・」

 

「なにを勘違いしてんだよ

グリーワイズ」

 

リィンはシルビアの声を遮るように口を開いた

 

「なに・・・?」

 

「おまえはこの先、生きる必要は・・・”ねぇんだよ”」

 

そういうとリィンは腰から太刀を引き抜く

 

「ひっ・・・」

 

「てめぇはここで”死ぬんだよ”」

 

シルビアはおびえたように腰を抜かす

彼は、甘く考えていた。

帝国政府は、自分を捕まえにきたのとばかり考えていた。

だがそれは、自分が都合のいいように甘く考えていたにすぎなかった

政府は、己を完全に亡き者にするために子飼いの中でも一番の使い手である武人のリィンを送り込んだのだろう

氷の乙女やかかし男や白兎でもなく戦闘に特化した剣神を・・・・

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ」

 

シルビアは、恐怖にかられながらも抜けた腰をあげ一目散にリィンから逃げるため走り出す

 

「おいおい、あまり面倒をかけないでくれよ」

 

そんなシルビアを一瞥しリィンはシルビアのあとを歩き出す

シルビアの平民での遊びは貴族間でも有名な話だった

戦えない平民を雇った猟兵に連れてきてもらい別室に連れ込み魔獣と戦わせて恐怖に染まる平民をみて楽しむという人間性を疑うようなことばかりしてる外道貴族そのものだった

一度その件を受けて、軍が彼の家を調査に乗り出したこともあったが彼はこれを金を積んで退避させた

今回も、捕まりそうになれば金を積めばいいと考えていたのだがそれは愚策にすぎなかった

もし鉄血の子飼い以外から派遣されたのであれば、話は別だったかもしれないが、今回は宰相直属の精鋭から派遣されたそれが一番の要因でもあるだろう

それにシルビアは”やりすぎた”それだけだ

貴族らしく傲慢なだけなら捕まることはあっても政府の目に留まることさえなかった

少なくとも暗殺対象には、ならなかっただろう。

その一線を、シルビアは超えたのだ

だから今この瞬間にリィンに命を狙われている

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・」

 

シルビアはひたすらにリィンから逃げ続ける

だがそれも、限界が近いシルビアは武をたしなんでいるわけではないその時間があるなら平民で遊んでる方が有意義だと感じていたからだ

だが、今その体力の限界がシルビアを追い詰めている原因だ

まぁ、多少武を修めている程度ではリィンを退避させることすら難しいのだが、それこそ光の剣匠や黄金の羅刹など武の最奥、“理”にたどり着いたまたはそれに近い武人でなければ彼とやりあうなど到底無理な話だ

 

「クソッ、クソッ、クソッ

なんでこの私がこんな目に・・・!」

 

「それはおまえがそうなるようなことをしてきたからだろ」

 

シルビアは、本当に自分がこんな目に遭っているのが心底わからないといった風に言うその疑問に答えたのがいつの間にか迫ってきたリィンだ

 

「“剣神”ッ・・・」

 

シルビアは自分をここまで追い詰めたリィンを忌々しいと睨みつける

 

「ハハハ・・・

そんな睨みつけてもお前の運命は変わらないぜ」

 

リィンはそう言うと太刀をシルビアに突き付ける

 

「何故だ!!!

何故私を狙う!!

私は私らしく人生を謳歌していただけだ!

なにがいけない!?

平民は平民らしく貴族に飼いならされ、そして朽ちていけばいい!!」

 

「おまえ・・・

今までいろんな奴を見てきたが流石にここまで腐った奴は久々だったぜ」

 

リィンは要請を完遂するため腰を低く落とし狙いを定める

 

「ま、待て

か、金ならいくらでも積んでやる

いくらほしい

なんなら・・・・・」

 

「おまえ、何を勘違いしてるのかは知らねぇけど

おまえに飼われる気はねぇし見逃すつもりもねぇんだよ

大人しく“死ね”」

 

「ガハッ・・・・」

 

そしてリィンは一瞬でシルビアの心臓を貫いていた

 

「おまえに飼われるような安い人間になった覚えはねぇよ」

 

「く、くそ・・・・・

こ、こん・・・な・・・クソガキに・・・・私が・・・・」

 

「心臓貫かれてんのにしぶといなおまえ」

 

リィンは、シルビアの元まで行くと彼の身体を少し強めに押した

シルビアは、すでにリィンに追いつかれたときにすでに追い詰められ、後ろは川が流れていた。

しかも、リィンの一撃によってかなり弱っている

少し力を加えてやるだけでシルビアは、川に真っ逆さまに落ちて流されていく

そんなシルビアをリィンは見えなくなるまでずっとみていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、リィンさん」

 

「クレアさん・・・

えぇ、そちらも」

 

リィンがケルディックに戻ると出迎えたのはクレア・リーヴェルトだった

 

「でもクレアさんどうしてここに・・・」

 

「実はリィンさんにも耳に入れておきたい情報が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケルディック・元締め宅

 

「あの馬鹿ども・・・・」

 

リィンはクレアから聞かされたラウラ達の行動を聞いて顔をしかめた

正義感に動かされ動いたかもしれないが無謀すぎると考えたが・・・

 

「けどあそこってそんな強い魔獣もいなかったですよね

聞く限り今回の犯人もあいつらで対処できる練度のような・・・」

 

リィンはクレアから話を聞いてそれならと任せる方向にしようかと考えたが

 

「それが・・・ここ最近大型魔獣が発見されたという情報が入ってまして・・・」

 

「なるほど、そして領邦軍と今回の窃盗犯の繋がり・・・」

 

「えぇ・・・」

 

「わかりました、オレも一応そっちに向かいましょう

オレならこっからルナリア自然公園まで一分で行けますから」

 

「えぇ、私たちも準備を整えたらいきますのでお願いします

リィンさん」

 

そして、リィンは一仕事終えたばかりだというのにまた更に動くことになるのだった・・・

 




投稿頻度上げたいのは本音なんですけどコードヴェイン買おうか迷ってる自分がここにいます


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七話

お待たせしました
今回は一週間以内に書き上げれました・・・
ふっ、こんなもんよ・・・
すいません、調子に乗りました
では、どうぞ!!


ラウラたちは、城門の錠を物理的に外し侵入し順調に先に進んでいた

このルナリア自然公園に生息する魔獣もそんな極端に強いわけではなく、アークスを介した戦術リンクをうまく使って連携し、確実に魔獣を倒しながら進んでいた。

 

「ラウラ、今よ!」

 

「うむ、任せるがよい」

 

アリサが導力弓で魔獣を牽制し、その隙にラウラは大きく飛び上がり、そのまま勢いを殺さず大剣を振り下ろす。

その一撃を受けた魔獣は、ラウラの一撃に耐えられずそのまま絶命する。

 

「アハハ・・・

流石だね、二人とも僕なんていらないんじゃないかな・・・」

 

「なにを言う、エリオット

そなたのアーツの補助、助かっているぞ」

 

「うん

ありがとう、ラウラ」

 

魔獣たちを、一掃したラウラたちは先に進むため歩き出した

幸いというべきかラウラたちが窃盗犯たちを捕まえるため侵入した

ルナリア自然公園は一本道というほどではないが、道も迷うことがなくすんなりラウラたちは進んでいた

 

「けど、確かにここなら絶好の潜入場所よね・・・」

 

「うむ、まさかこんなところに潜入してるなど誰も思わんのだろうからな」

 

「うん、それに場所も場所だよね

しかも門には鍵をつけてるんだもん

誰も気づかないよ」

 

エリオットの言う通り、敵が潜伏場所として選んだルナリア自然公園はケルディックから進むとそれなりに歩き、しかも自然公園の入り口は錠がかかっておりおいそれと簡単には入れるわけではない

問題はただの窃盗団にすぎないはずの奴らがどうやって、自然公園のカギを入手したのかが疑問だが、今考えても仕方ないとラウラたちは先に進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

ラウラたちが、自然公園の最奥にたどりつくと案の定というべきか窃盗団らしき集団が潜伏していた

そして、彼らが盗んだとされる商品の山も見受けられた。

まぁ遠目から見ただけであれが大市の彼らの商品かどうかはあとで確認をしないといけないが・・・

 

「アリサ、エリオット・・・

準備はよいか?」

 

「えぇ!」

 

「うん」

 

「では、行くぞ!!」

 

窃盗団にばれないように物陰に隠れていた

三人は、ラウラの合図で一斉に飛び出す

 

「な、なに・・・」

 

「なんだ、おまえらは!?」

 

「鍵はかけていたはずなのに・・・

まさか、さっきの物音は・・・」

 

物陰から出てきた、ラウラたちに窃盗団は驚愕の表情を浮かべた

ラウラが錠を壊した音は聞こえていたとうだが、まさか彼らも錠を壊した音だとは思わず

放置していたらしいが、それらが今回の件を招いたのだが・・・

 

「後ろにおある荷物は太市で盗んだものね?」

 

「その件も含めて洗いざらい吐いてもらうぞ

誰に依頼されたのかもな・・・」

 

ラウラたちは彼らが今回、大市で販売されるはずだった商品を盗んだ犯人だと、確信し武器を構える

 

「ちくしょう!」

 

「こんなガキどもに・・!」

 

「だが、せっかくのチャンスを邪魔されえるわけには、いかねぇんだ!!」

 

窃盗団も儲けのチャンスを邪魔されるわけにはいかないと、彼らも武器を構える

ここにラウラたちと窃盗団の譲れないものの戦いが始まった。

 

「砕け散れ!!」

 

ラウラが飛び上がり大剣を振り下ろし、窃盗団の一人の武器を弾き飛ばそうとするが、窃盗団のほうも荒事は流石になれているらしく、横にステップしてかわしラウラに自身の獲物である導力銃をラウラに向ける

 

「はっ、流石は士官学生だが、甘いんだよ!!」

 

「くっ・・・」

 

「させないわ!」

 

「ちっ・・・」

 

だがそれは、アリサの弓によって遮られる

窃盗団は舌打ちをし、後退する

 

「すまぬ、アリサ」

 

「仲間だもの、当然よ!」

 

「チッ、ガキどもが・・・」

 

ラウラたちの連携に舌打ちをする、窃盗団

 

「はぁあああああああ!」

 

ラウラは、気合の咆哮をあげ、窃盗団の前衛を務めていた男の元まで一気に、疾走し剣戟を繰り出す。

 

「くっ・・・」

 

窃盗団の男は、ラウラの剣戟に防ぐのが精一杯で防御に徹する

いくらたかが学生でも、ラウラはアルゼイド流の中伝を受けるほどの実力だ

多少の荒事しか経験してない窃盗団では、敵うはずもない。

それに、窃盗団の男はいくら前衛と言っても獲物は短剣それに対してラウラは、大剣・・・

リーチでも実力でも差が開いている。

 

「クソがぁ!!」

 

激昂した、窃盗団の後衛の導力銃の男はラウラに向かって、導力銃をぶっ放そうとラウラに向ける

 

「させないよ、アークス駆動、ファイアボール!」

 

エリオットが、導力魔法で導力銃の男を狙い軌道を逸らす

 

「クソ・・・」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「しまっ・・・」

 

男が邪魔をされた、エリオットに導力銃を向けようとしたとき、すでにラウラが迫ってきていた

男は横目で仲間たちをみるが、すでに倒されてしまっていた

男が慌ててエリオットからラウラに標的を変えようとするが、もうすでに遅い

導力銃を向ける前にラウラが男の手から導力銃を弾き飛ばした

 

「あ・・・・」

 

そして、それは勝敗が決したことを意味していた。

 

「それでは、盗んだものは返してもらうぞ?」

 

ラウラは剣を窃盗団に突き付けながら言う

 

「それと、背後関係もしゃべってもらうわ」

 

「チッ・・・」

 

「誰が・・・!」

 

窃盗団がせめて、言葉だけでも反抗しようとしたとき・・・

 

「笛の音・・・?」

 

唯一、音楽に強いエリオットがその音を感知して首を傾げる

そしてその直後・・・

 

「グオオオオオオォォォォォォォォォ!!」

 

雄たけびのようなものをあげて、まるでなにかに導かれたかのように姿を現したのは大猿だった

巨大な大猿だ

 

「なっ・・・」

 

「うそ・・・・」

 

「あ・・・」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「なんだよこれ、聞いてないぞ!!」

 

Ⅶ組も窃盗団も、突然の大猿型の魔獣の登場に呆然とする

 

「グオオオオオオォォォォォォォォォ」

 

大猿はそんな彼らなど、お構いなしに拳を振り下ろす

 

「くっ・・・」

 

一早く我に戻ったラウラは、剣で大猿の拳を受け止める。

だが、大猿の拳は重くラウラもだんだん態勢を崩されていく

そのまんま、潰されるのも時間の問題だ

 

「ラウラ!!」

 

「この・・・!」

 

アリサもエリオット、そんなラウラの様子をみて助けるため弓を放ち、導力魔法を放つが大猿はそんなの効かないと言わんばかりに大猿はラウラを押しつぶそうと拳に力を入れていく

 

――――――ここまでなのか?

父上、申し訳ありません

 

ラウラが諦めかけたその時・・・

 

「やれやれ、本当に世話が焼けるな」

 

「ガァァァァァッァァァァァァ・・・!」

 

聞き覚えのある声を、聞いたと思ったらいつの間にかラウラは先程まで感じていた重みがなくなっていた

 

「よう、無事だな?」

 

「あ、あぁ・・・」

 

ラウラが顔をあげるとそこには先程、別件で特別実習を抜けたはずのリィンがそこにいたリィンの登場にも驚いたが、先程の大猿の片腕がなくなっていた

大猿のなくなった腕から多量の血が流れ出ていた

ラウラたちは片腕はどこに行ったのかと見回すと大猿の近くの地面に落ちていた

 

「へぇ、片腕を持ってったってのに元気じゃねぇか」

 

リィンは片腕を持ってかれてもなお闘志を失わず、こちらを睨みつけてくる大猿に感心する

 

「いいぜ、来な

相手をしてやる」

 

「グオォォォォォォォォォオ」

 

リィンの言葉が分かったのかは定かではないが大猿は雄たけびを上げて、リィンに向かって突進してくる

 

「はっ、おせぇよ」

 

リィンは、そんな大猿にむけて走り出す

そして、すれ違いざまに太刀を一閃する。

 

「ぐ・・・ガァァァァァッァァァァァァ・・・」

 

さらにリィンは大猿の腕を先程の一閃で切断する

大猿は雄たけびは立派なものの見るからに弱ってきている

 

「・・・・なんだ、“この程度か?”」

 

「グ・・・ガ・・・」

 

リィンの言葉に大猿は底知れない恐怖を感じたかのように、先程まで闘志全開だったが今はみるからにそれがない

その証拠に、大猿は一歩ずつ下がっている

 

「ハッ、まぁ今更オレに恐怖を抱いたとしてもお前は死ぬんだけどな?」

 

「ガ・・・アアアアアアアアアア!!」

 

大猿はついにリィンの威圧に恐怖し、背中を向けて走り出す

 

「逃がすかよ、“絶風刃”」

 

リィンが、走り去っていこうとする、大猿に向けて太刀を振るうと、風の刃が衝撃波となって大猿の背中を切り裂く

 

「グ・・・オオオオオオオォ」

 

風の衝撃波を受けた大猿はかわすこともかなわずまともに受け、地面をゴロゴロ転がり地面に倒れる

 

「さて、止めといくか・・・」

 

リィンは、先程の絶風刃で地面に伏している大猿に向けて歩き出す

 

「じゃあな、大猿」

 

そして、リィンは容赦なく一辺の慈悲もなく大猿の首にむけてその刃を振り下ろした

そして、大猿の首は宙を舞い地面に落ちる

 

「うっ・・・」

 

その光景をみていた、Ⅶ組も窃盗団も顔を青ざめて中には吐き気を感じ、口元を抑えている者もいた。

 

「おいおい、折角助けてやったのに酷いなおい」

 

リィンは、そんな彼らの反応に傷ついたような表情をした。

まぁ、実際はそんなに気にしてはいないのだが・・・

リィンの仕事上このような反応をされるのは日常茶飯事だ。

 

「さて、そろそろ来るかな・・・」

 

「え・・・?」

 

「リィン・・・?」

 

「なにを・・・?」

 

リィンの言葉にⅦ組は意味が分からず、首を傾げるがその意味はすぐ知ることになる。

その直後、ピーッという音が聞こえ、瞬く間に領邦軍が現れ、窃盗団ではなく、Ⅶ組達を取り囲んだ

 

「ちょっ・・・」

 

「なんで、僕たちを・・・」

 

「・・・・・」

 

アリサ、エリオット、ラウラは驚いているがあらかじめこの展開を、想定していたのかリィンは騒ぐこともせずおとなしくしている。

 

「・・・やれやれ、やっぱりグルかよ」

 

大人しくしていたリィンだが、溜息を吐き口を開いた

 

「フフ、なんのことかな

君たちがそこの商品を盗んだ可能性だってある」

 

領邦軍の中でも隊長らしき人物がそんなことを言い始める

 

「ハハハ

なるほど、そうくるか・・・・」

 

リィンは笑いながら、領邦軍の隊長を見る

 

「まぁ、その程度の人数で取り囲んだところで“無意味だけどな?”」

 

「なにを・・・?」

 

領邦軍が聞き返そうとした瞬間すでに隊長の目の前からリィンの姿は消えていた

 

「がっ・・・・」

 

「ぐっ・・・」

 

「ガハッ・・・」

 

隊長以外の領邦軍は武器を弾かれ、意識を刈り取られていた

 

「なっ・・・!?」

 

「さて、どうする隊長さんよ?」

 

隊長がその光景に驚いてる時すでにおそくリィンはすでに隊長の背後に回っており太刀を突き付ける

 

「動くなよ?

少しでも動けば・・・・“殺す”」

 

先程の雰囲気から一転、リィンの低い声に窃盗団、Ⅶ組もリィンに何も言うことをせず、黙るしかなかった

なにかすれば、確実に殺られる

そんな、認識ができあがってしまったからだ

 

「さて、答えてもらうぜ?

そこの三流窃盗団とグルだな?」

 

「な、なんのことだ」

 

「そうか」

 

領邦軍の答えを聞いたリィンは、隊長に突き付けてた太刀を離す

それを感じた隊長は、安堵し、息を吐こうとした瞬間・・・

 

「—――――――ッ!!」

 

声にならない叫びをあげ、地面に転がり続ける

 

「主に忠実なのはいいが・・・・

あまりふざけてると死ぬぜ?」

 

リィンは、隊長の足に太刀を容赦なく突き刺したのだ

現に隊長の足からは赤黒い血が流れ出ている

 

「おい、正直に答えろよ」

 

痛みに悶え転がっている隊長をリィンは、冷たい目で見下ろしていた

 

「リ、リィン・・・」

 

「ちょっ・・・」

 

「いくら、なんでも・・・」

 

突然の、リィンの行動にⅦ組は、驚くがその後正気に戻り、リィンを咎めようと口を開くが、リィンはそれを無視する・・・

そして、リィンがつけた足の一撃が効いたのか隊長は、窃盗団とつながりがあったことを正直に認めるのだった・・・

そして、その後クレア率いる鉄道憲兵隊が現れ、窃盗団を拘束し、連れて行くのだった・・・

領邦軍も拘束しようとしたのだが、そこは後ほど貴族の権力が働いたとだけ記しておこう

そして・・・

その後、クレアと供にリィンを含めたⅦ組はケルディックに戻ってきていた

そして、一日早いが、今回の窃盗団の件を受けて早めに戻ることを学院側から、言い渡された

それは、A班に限らず、パルムに行っていたB班も同じようなことがあったらしく早めに戻ることになった

 

「この馬鹿どもが・・・

なんだ、お前らは自殺願望でもあるのか?」

 

ケルディックに戻ってきて、早々、窃盗団を制圧しようと、動き逆にピンチに陥ったラウラたちをただひたすらリィンは追い詰めていた

 

「正義感が働いたんだかどうか知らねぇけど、それでこの様じゃ笑い話だな」

 

リィンは、鼻で笑いながら言う

 

「「「・・・・・・」」」

 

ラウラたちも事実なだけになにも言い返せずにいた

 

「まぁまぁ、リィンさん

結果的には、誰も犠牲にならずに・・・」

 

「領邦軍の隊長さんは、意外にも重症ですけど」

 

「それは、リィンさんが突き刺したからでしょ・・・」

 

クレアは、呆れ半分で溜息を吐いた

クレアの同僚である、赤毛の青年に隠れているがこの目の前の少年も、なにかと問題児なのである

 

「あぁ、あとおまえらは学院側から帰投命令出てるだろ

さっさと戻れよ」

 

「え・・・?

リィンは・・・?」

 

「あぁ、オレはクレアさんと話すことがあるからな

戻るのは、その後だ」

 

エリオットは、リィンも戻るかと思い、首をかしげたが、リィンから説明され納得するが、士官学生でしかないリィンが軍人であるクレアとなんの話なのかと疑問に思うが、自分が考えてもわかるはずないと判断してこの件に関しては気にしないことにするのだった・・・

 

「話って、なんの話よ?」

 

「いいから帰れ」

 

アリサが、さらに追及するが、リィンが手でシッシとやり、あしらう

 

「ちょっ、なによその扱い!!」

 

「うるさいぞ、アリサ・ライン・・・・」

 

「ア――――――!!」

 

リィンが、アリサが隠してる下の名前を言おうとすると、アリサは大声でそれを遮る

 

「さぁ、みんな行きましょ!!」

 

アリサは、態度を180度変えてエリオットとラウラと帰ろうと二人の背中を押しながら駅に入っていく

 

「言っとくが、帰るふりして聞き耳立てたら切り刻むからな」

 

そう言いながら、リィンは腰の太刀から少し刃を出す

 

「わ、わかってるわよ」

 

アリサは、一瞬固まってから駅内に入っていくのだった

リィンは、念のため気配を探るがどんどん遠ざかってるのが感じられるため本当に今度こそトリスタ行きの列車に乗ったらしい

 

「さて、クレアさん

今回の件・・・」

 

「えぇ、どうやら、本格的にうごきだしたみたいですね

例のテロ組織が・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルナリア自然公園・深夜

 

「・・・・・・・・」

 

「やれやれ、あのタイミングで“氷の乙女”、そして“剣神”彼らが現れるとはな・・・」

 

ルナリア自然公園の最奥にて、一人はいかにも文系と言った感じだ、そしてもう一人は顔全体を覆うマスクにマント付きの衣装を羽織っていて、素顔は確認できない

 

「少々、段取りを狂わされたな」

 

「想定の範囲内だ。

今後の計画の障害となりうる

<鉄度憲兵隊>と<情報局>・・・

その、連携パターンが見えただけでも大きな成果と言えるだろう。」

 

「フフ、確かに

それでは、このまま計画を進めるとしようか」

 

マスクの男は、踵を返す

 

「もちろんだ・・・」

 

「すべては、あの男に無慈悲たる鉄槌を下すために」

 

「すべては、あの男の野望を完膚なきまでに打ち砕かんために・・・」

 

そして彼らは、動き出す

あの男に思い知らせるために・・・・

 



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八話

皆さん、遅れてすいません
では、どうぞ


Ⅶ組の特別実習から、数日・・・

授業も本格になってきていた

一般の高等授業に加えて、士官学校ならではの授業も行われてきている

そして、リィンも、度々帝都のほうに呼び出されるのが多くなっていた

ケルディックの件を受けて、帝国政府も”なにか”が動き始めていると考えた結果である

リィンの所属を知る、サラは、なんとか苦しくない理由をつたえているが彼らのリィンへの疑念は募っていくのはサラにも感じられた

 

「まぁ、あの子はバレた所で何も思わなさそうだけど・・・」

 

リィンが自身の正体がバレても、特に気にした様子を見せないリィンをサラは容易に想像できるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================================

 

「よう、数日ぶりだな」

 

リィンが帝国政府からの呼び出しを受け、帝都に向かってから数日

特別実習以来にトールズのⅦ組に顔を出した

 

「リィン、なんかサラ教官から用事で帝都に行くって聞いたけど・・・」

 

「おぉ、まぁちょっとした用事があってな・・・」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

数日ぶりに顔を出したリィンに、声をかけたのはエリオットだった

何気に入学式から、声をかけてくれるクラスメイトだ

その、エリオットもリィンに対して疑問があるが元来の性格も災いして聞けずにいた

そして、なにを聞こうとリィンは絶対に答えないだろうとも思っていた

リィンが来た瞬間Ⅶ組・・・主にリィンともに実習に行ったA班の空気が心なしか暗いように感じた

それもそのはずで実習の最終日にいくら、盗賊団とグルだったとはいえ、領邦軍の隊長の足を突き刺し、拷問に近いことを行ったのが原因だ。

だが、当の本人は気にした様子もなくいつもと変わらない態度だ

 

「リィン・・・」

 

「あ?」

 

そんな空気を破って、リィンと同じ班だったラウラが椅子に座りぐだーとしてるリィンに話しかける

その表情は心なしかリィンには険しく感じた

 

「この前の特別実習だが・・・」

 

「あぁ・・・

あれは、大変だったな。お疲れさん」

 

「そうではない!!」

 

リィンの、ねぎらいの言葉をラウラは無視し、声を荒げる

 

「リィン、答えよ、何故、あんなことをした!?」

 

「ハッハハハハハハハハハ!

何を言うかと思えば、そんなことかよくだらねぇ」

 

「なっ・・・!?

リィン、そなたは・・・!?」

 

「“戦場に事の善悪はない、ただひたすらに斬る”それだけだ」

 

リィンはラウラの言葉を遮り先程の問いに答える

それは、リィンが戦場で、そして今は亡き師から学んだ真実.

 

「確かにオレのやり方が正しいとは言えない

だけどな、お前らあの場で何とかでたのか?」

 

「それは・・・」

 

「「・・・・」」

 

特別実習のあの日、ルナリア自然公園でラウラたちはピンチになった

確かに、あの巨大魔獣はリィンが出ていかなくても何とかなったかもしれないが、あの領邦軍に関しては、あの手この手で適当な理由をつけ、ラウラたちを連行していたかもしれないのは事実だ

まぁ、リィンがあんな荒事にしなくとも、多少時間を稼ぐことで、クレアたちが乗り込んできていたのでなんとも言えないのだが、リィンはそのことを言わないでおくことにした

 

「特別実習初日から両班とも程度はあれ面倒ごと・・・か

楽しくなりそうだ・・・」

 

リィンは、これから何かあるであろう予感に笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、二度目の自由行動日の日が来た

リィンは自分にあてがわれた部屋のベットでぼーっと寝転がっていた

すでにこのⅦ組のために用意された寮、第三学生寮にほとんど人の気配はなく皆出ているようだった

 

「皆は、出てんのか

それにしても、実習初日であれか・・・

中々、楽しませてくれるな・・・」

 

リィンは、ケルディック方面での実習を思い出していた

あれは、リィンからすればどうともないが貴族と平民の関連性をA班はなんとなく感じれたのではないかと思う

彼らからすればいい社会勉強にはなっただろう、まぁ社会勉強というには少々過激であったかもしれないが・・・

 

「そして、“奴ら”はとうとう動き出した

見せてもらおうじゃねぇか

どうやって、あの人をかき乱すのかをな・・・」

 

リィンは、これから起こるであろう荒事に笑みを浮かべるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============================

 

 

 

「さて、ここに来るのも久しぶりだな・・・」

 

リィンは、前回同様一人で旧校舎に来ていた

そして旧校舎の気配がなんとなくだが変わっていることに気付く

外観は特に変化は見られないが、おそらく内観は変わっているであろうことに予想を立てる

旧校舎に入ってみると、案の定と言うべきか内観が変わっていた

更に奥へ進むと、そこには大きなダンジョンになっていたのだが、そこは昇降機のようなものが置かれていた

 

「おいおい、マジかよ・・・」

 

リィンは、その光景をみて、呆れたような表情を浮かべた

 

「まさか、ここまで大きく内部が変わるとはな・・・

それにこの気配・・・」

 

旧校舎の内部だけでなく、生息する魔獣の気配もあの時より強力だと感じたリィンは笑みを浮かべて昇降機を操作し進んだ

昇降機を降り、リィンは周辺を見渡したがダンジョンの構造については前回と変わらず見た感じ進みながらこのダンジョンのロジックを解いていく仕様のようだった

 

「まぁ、腕を鈍らせない程度にはなるが、拍子抜けだな・・・」

 

リィンは、襲ってくる魔獣を難なく切り伏せ、ロジックを解きながら、先に進んでいく

そして、難なくリィンは最奥へとたどり着いた

 

「おい、もったいぶってないで出て来いよ・・・

なぁ・・・?」

 

リィンが、そう言うと前回同様空間を裂くようにこの階層のボスクラスの魔獣が姿を現した

そこから現れたのは三体の大型魔獣だ

いくら武術を学んでいても、三体となると苦戦は免れないだろう

そう、相手が“リィンでなければ”・・・

 

「前回よりは、楽しませてくれんだろ・・・?」

 

リィンは腰の太刀に手を添え、いつでも抜刀できるようにする

 

「ガァァァァァァァァア!!」

 

三体の大型魔獣は、すべて同じ姿形をしていた

前回同様、強靭な四肢がなく、代わりに翼のようなものが生えていた

大型魔獣は、三体とも大きく息を吸い込み溜めこむ

 

「へぇ、三体でオレを囲み

逃げ場をなくしてオレを狩る気か・・・」

 

リィンの言う通り、三体の大型魔獣はリィンを取り囲み攻撃態勢を作っている

戦術としては悪くない、むしろ多対一のセオリーを理解していると言っていい

 

「gaaaaaaaaaaa」

 

そして三体の魔獣は一斉に雄たけびを上げ、リィンに向かって口に溜めていた力を吐き出す

それはビームとなって、リィンに迫る

 

「ハッ・・・」

 

「ガっ・・・!?」

 

リィンは、迫りくるビームを前にするが・・・

次の瞬間、リィンは姿を消した、そして一体目の大型魔獣の背後に廻り、翼のようなものを斬り飛ばす

リィンは、二体目、三体目も同じ要領で片方の翼を斬り飛ばしていく

更にもう片方の翼も斬り飛ばす

 

「おいおい、付属品を斬っただけだろ

喚くなよ」

 

リィンは、翼を斬り飛ばされて、怒りの雄たけびを上げている魔獣にそう言う

魔獣は、リィンの言葉を理解してるのか、リィンにビームを放ってくる

だが、それは悪手だ

一度、リィンに見せ、なおかつ初見にも関わらず、リィンに通じなかった攻撃が効くはずもない

 

「馬鹿が、効くか・・・」

 

リィンは、次はかわすことなく太刀で弾いて見せる

 

「我が閃きの剣、受けるがいい」

 

リィンは、そういうと魔獣に向かい駆け出す

 

「一歩、音越え」

 

更にリィンは加速する

 

「二歩、無間」

 

そして、リィンは魔獣からは視認できないほどの速度に到達する

それはまさに、リィンの師が歩法だ

その名も“縮地”

 

「三歩、絶刀・・・

無明三段突き!!」

 

そして、リィンの全く同時の三突きが魔獣を捕える

リィンの必殺の剣、無明三段突き

それは,今は亡き師の技であり、師から教わった必殺の剣

ほぼ同時ではなく全く同時の三度の突きを喰らわせる技だ

一の突きを防いでも二の突き、二の突きを防いでも三の突きが襲いかかる

防御不可の対人魔剣それがリィンの剣である

 

「・・・話にならないな・・・」

 

リィンは、広い空間で一人呟き、旧校舎を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

============================

 

そして、実力テストの日・・・・

 

「はい、それじゃ、始めるわよ

リィン、アリサ、エリオット、ラウラ前に出なさい」

 

「なるほど、そういうメンツか・・・」

 

「これって、前の特別実習の時の・・・」

 

「そうみたいね」

 

「・・・・・・」

 

選ばれたメンバーは先月の特別実習で、A班としてケルディックに行ったメンバーが最初に選ばれた

察しのいいリィンは選ばれた時点で気付き、それ以外の者も後になって気付きこれなら前回の実力テストのように酷い結果にはならないだろうとアリサとエリオットは内心思った。

確かに、前回の特別実習を通じて親睦を深めたのは事実だろう、だがそれは、一部を除いてだ

リィンは、途中で特別実習を中断し、別件にあたっていた

そして、その後合流はしたが、リィンが領邦軍にやったことに関してそれぞれいい思いは抱いていない

特にラウラは、それが強く出ている

現に今もリィンを複雑な表情で見つめている

 

「やれやれ」

 

Ⅶ組の生徒の中で唯一それに気づいたリィンは、肩をすくめるのだった

担任であるサラは、そんなリィンの様子を見て呆れたように溜息を吐いた

結果で言えば、散々だった。

アリサ、エリオット、ラウラの三人は問題なく、リンクをつなげれたのだが

何故か、三人ともリィンとだけ繋ぐことができなかった

いや、原因などわかり切っている、ケルディックでリィンが行った行為が原因だ

領邦軍から窃盗団とのつながりを聞き出すため拷問まがいなことをしたせいで三人のリィンの評価が大きく悪い意味で変わってしまったのだ

エリオットやアリサは恐怖の対象、ラウラは己の信じる騎士道が正道とするならリィンの行ったそれは邪道そのものだ

 

「おいおい、なんだよ

そんなにオレのこと嫌いか?」

 

リィンは、からかうような口調で言う

口ぶりからしてそこまで気にしてはいない様子だ

 

「ご、ごめん」

 

「エリオット、冗談だ

所詮は、卒業までの付き合いだろ?」

 

「リィン・・・」

 

エリオットは何とも言えない表情をした

確かに、リィンの言う通り二年後リィンたちは卒業し、それぞれの進路に進み、バラバラになることはエリオットにもわかっている

だけど、例え二年後の進路の進む道が違うとしてもこの士官学院で築いたⅦ組と言うクラスは大事にしていきたいと感じるのだった・・・

 

「それじゃ、残り前に出なさい!」

 

そして、A班以外のⅦ組が前に出て、実力テストが開始された

A班以外のメンバー・・・B班の成績も酷いありさまだった、というよりとある二人が確実に足を引っ張てるのが目に見えていた

マキアスとユーシスだ

この二人も他のⅦ組メンバーとは結べるのだが、ユーシスとマキアスこの二人の組み合わせだけできなかった

できないのならこの二人だけリンクしなければと話はそう簡単ではない

戦闘中、どんな状態になるかわからない

もしかしたら、相性の悪い、ユーシスとマキアス二人だけになり戦況を何とかしなければならない状況が絶対にないとも言い切れない

だからⅦ組とのリンクは最低限必要だ

リィンに関しては元々の戦闘能力に状況把握能力と元から高い能力を有してるので必要ないと言えばないがⅦ組に属してる以上特別扱いはできない

 

「原因は言わなくてもわかるわね?

さぁ、お待ちかね次の実習地とそのメンバーよ

受け取りなさい」

 

そう言うとサラは、次の実習地の詳細とメンバーが書かれた紙を配った

翡翠の公都バリアハート:リィン、ユーシス、マキアス、エマ、フィー

白亜の旧都セントアーク:アリサ、ラウラ、エリオット、ガイウス

 

「ハハハ、マジかよ

面白そうな、メンツだな

しかも、アルバレアの若様はともかく、帝都知事の息子を貴族の街に放り込んで大丈夫かよ?」

 

「えぇ、そこらへんは安心していいわ」

 

「じょ、冗談じゃない!!

バリアハートと言えば貴族の巣窟じゃないか!!

セントアークも似たようなところだがバリアハートよりはマシだ!!」

 

「ふざけるのも大概にしてもらおう

メンバーの再編を要求する」

 

「セントアークも貴族の街だけど、ハイアームズの当主は穏健派で有名だしな」

 

貴族派と言っても派閥が分かれており、先程の話にあったハイアームズ公は穏健派として有名だ

そして過激派として四大名門の一角カイエン公が有名な話だ

そして、ラウラの実家であるアルゼイド、ユミルのシュバルツァー家は中立派だ

貴族と言っても一枚岩ではなく様々で、家柄も習慣も何もかもが違うのだ

そして、今回のメンバーに納得のいかないユーシスとマキアスはサラに食って掛かる

まぁ二回連続でそりの合わないクラスメイトと一緒の班にされたら文句ぐらいは言いたくなるだろう・・・

 

「・・・まぁ、確かにアタシは軍人ってわけじゃないから、命令が絶対とは言わないわ

だけどね、Ⅶ組の担任教官として君たちを導く義務がある・・・

文句があるなら、いいわ

力ずくで聞かせて・・・みる!?」

 

そう言うとサラは、ブレードと導力銃を取り出し、戦闘態勢になる

 

「と言いたいところだけど、いいわ

ユーシス、マキアスにチャンスをあげましょう」

 

「チャンス・・・だと?」

 

「えぇ、そこのリィンに一本でも入れられたら班の再編を考えてあげるわ」

 

「は?

オレ?」

 

まさかの予想しない提案に流石のリィンも目を見開いてサラを見た

話の流れ的にもリィンは、サラが二人の相手をすると思ってた手前まさか、自分が指名されるとは思ってなかったのだろう。

 

「まぁ、いいけどな

ただ、お前ら二人で、どこまでオレに食い下がれる?」

 

「・・・・いいだろう」

 

「目にモノをみせてやる!!」

 

リィンのわかりやすい挑発に乗ったユーシスとマキアスはそれぞれの獲物を構え、戦闘態勢に入る

 

「フフ、リィンも準備はいいわね」

 

「えぇ、構いません」

 

「それでは、リィンVSユーシス&マキアス・・・はじめ!!」

 



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九話

「お前らに、先行を譲ってやるよ」

 

「なに・・・?」

 

「どういうつもりだ・・・・?」

 

リィンの言動にマキアスやユーシスは勿論のこと観戦していたⅦ組の皆も訝しげにリィンを見る

どういうつもりなのかと、皆の目がリィンにそう訴えていた

 

「なに、いくらサラさんがお前らの勝利条件を緩くしたって言っても、万全のオレじゃ、お前らじゃ一太刀どころか“触れることすら”できねぇだろうからな

なんなら、オレはこいつを抜かずに相手をしてやるよ」

 

リィンは、そういうと己の腰に差してある二本の刀のうちリィン自身が使っている太刀を軽く叩きながら言う

要するに自分は素手で相手してやる・・・とリィンはそう言っているのだ

 

「ず、随分な自信ね・・・」

 

「うん、特別実習の時のリィンは確かに強かったけど・・・」

 

「いくら、リィンとは言え、連携できておらぬがあの二人を相手に大きく出たものだな・・・」

 

「ふむ、リィンのことはラウラ達から聞いてはいるが・・・」

 

「はい、いくらリィンさんでも・・・」

 

リィンの素手で相手してやる宣言にあのケルディックの実習の日リィンの実力を目の当たりにしてるラウラ達でさえ、リィンが負けると誰もが思っていた・・・

そう、一部を除いて・・・・

 

「皆、めでたいね・・・」

 

「まっ、リィンのこと知らないとそういう評価になるわよね・・・」

 

「え・・・?」

 

「サラ教官・・・?」

 

「まぁ、見ていればわかるわ

あの子の異常ともとれる戦闘能力を・・・・ね」

 

「・・・正直、リィンは化け物レベル」

 

サラとフィーのリィンの戦闘力の評価にⅦ組の面々は今まさに始まろうとしてる、実習メンバーをかけた戦いに目を向けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、来いよ・・・」

 

リィンは、人差し指を上げ、それを曲げて戻すを繰り返し挑発する

 

「舐めるな!」

 

「君に恨みはないが、行くぞ・・・リィン!!」

 

リィンの挑発に簡単に乗ったユーシスとマキアスは、リィンに向かって駆け出した

 

「フッ・・・!」

 

ユーシスは、リィンに向かい大きく足を踏み込み剣を横なぎに振るう

踏み込みも剣筋も悪くない、学生にしては中々いい太刀筋だろう

だが、それでも所詮は学生レベルでの話だ

 

「なっ・・・・!?」

 

「悪くはねぇ、このまま鍛錬を続ければいずれはその高みへと至れるだろう・・・

だが・・・オレを相手にするには“足りねぇな”」

 

リィンは、ユーシスの剣を片手で掴み、そのまま回し蹴りでユーシスを蹴り飛ばす

 

「ガ・・・ッ」

 

「おい、おい、もろすぎねぇか・・・?

ちょっとつついただけだろ・・・?」

 

リィンは、そう言うとユーシスの元へゆっくりとした足取りで向かう

 

「ま、待て!」

 

呆然としていたマキアスだったが我に返り、ユーシスに向かって歩き出しているリィンにショットガンを向ける

 

「・・・マキアス、その獲物は飾りか?」

 

「なに・・・?」

 

「ゴム弾なんてつまんねぇもん入れてねぇでオレ相手の時ぐらい実弾で来な

いや・・・殺す気でかかってきな」

 

「なっ・・・!?」

 

リィンの発言にマキアスは驚愕も表情を浮かべた

Ⅶ組の実力テストではもしものために銃火器を扱う生徒には原則として、実弾ではなく、ゴム弾を使用させていた

それは、模擬戦などの時に誤って生徒を殺すことなどないように安全を考慮してのことだ

だが、リィンはそれをやめろと言っている

下手をすればリィンが死にかけない提案でもある

マキアスは、指示を仰ごうと困ったような表情でサラを見た

 

「・・・・」

 

サラは無言で首を縦に振る

実弾を使ってもオーケーとの合図だ

マキアスは、サラの許可があったとはいえ、しばらく悩んでいたが、意を決してショットガンの弾をゴム弾から実弾に入れ替える

そして、マキアスはそれをリィンに向ける

 

「クク、それでいい

さぁ、始めるとしようぜ

この、命たぎる刹那の殺しあいをな!!」

 

「クッ・・・

君は・・・・」

 

マキアスは、リィンのその異常とも呼べる嬉々とした態度にひるみながらも実弾の込めたショットガンをリィンに向けるだが、それは震えていた

 

「・・・クク、その震え・・・

相手を殺してしまうかもしれないという”恐怖”・・・

だが、悪くはねぇな・・・

恐怖に支配されながらもオレにそいつを向けて見せたんだからな」

 

リィンは、マキアスを称賛していた

いくら士官学生とは言え、相手を殺してしまうかもしれないこの状況で

銃を向けて見せた

大半は恐怖に支配されてしまい、向ける前に戦意喪失してしまうのがほとんどだ

それは軍人になったばかりの奴は特にだ

士官学生のうちからこのようにできる奴は稀だ

 

「さて、おまえの覚悟はどの程度か見させてもらおうか!!」

 

リィンは、そういうと駆ける

そしてリィンは、その拳をマキアスにむけて放つ

 

「グ・・・」

 

マキアスはかろうじてだが、自らの獲物でそれを防ぐが、それだけでリィンが止まるわけがない

 

「ハッ!!

いいねぇ、上げるぜ!!」

 

リィンは。目に見えないほどの速さで連続で拳を叩き込む

 

「ガッ・・・ハッ・・・・」

 

いくら、リィンの拳を防いで見せたからと言っても、目で追えない攻撃をすべて防げるわけでもない

マキアスは、リィンの連続の拳を受けそのまま倒れ込む

 

「まぁ、こんなもんかな」

 

リィンは、マキアスを下し、一言そう言った

 

「さて・・・と

おい、ユーシス、いつまで寝てやがんだよ」

 

リィンは、先程蹴り飛ばした方向に目を向ける

ユーシスは、そんなリィンの言葉に反応したかのように肩がピクッと動き

ゆっくりとだが、ユーシスは身体を起き上がらせ、そして立ち上がる

 

「なんだよ、元気そうじゃねぇか

それじゃ、始めようぜ

オレを殺して、お前の意見を通すのか

それとも、お前をオレが殺して屍となるのかをな!!」

 

リィンは、一瞬でユーシスの元まで駆け抜け、その拳を振るった

 

「な、なんか、趣向が違ってないかしら?」

 

リィンとマキアス&ユーシスの戦闘をみていたアリサがリィンの様子から感じたことを口にした

それは、口には出さなかったが、他のⅦ組のメンバーも同じように感じていた

そもそも、今回の戦闘の発端はユーシスとマキアスのわがままによるものだ

リィンは、それに巻き込まれ相手をしてるだけに過ぎない

 

「まぁ、あの子なら大丈夫よ

殺しはしないわ

気絶にとどめるでしょうからね」

 

「・・・ん」

 

Ⅶ組の懸念を悟ったサラがリィンを擁護するような発言をした

フィーもサラの発言に頷いた

 

「まぁ、刹那の命のやり取りは楽しむけどリィンはね」

 

フィーは付け加えるように言うとリィンとユーシスの戦いに目を向けた

勝敗が分かり切っている戦いを・・・

 

「ハッハハハハハハハハハ!

いいねぇ、よく耐えるじゃねぇか

まぁ、折角獲物は使ってねぇんだから

これくらいはたえてくれねぇとな!!」

 

リィンは、さらに振るう拳の速度を上げる

 

「クッ・・・

これ以上は・・・」

 

「ハハハ

どうした

もうへばる時間か?

まだまだ、早くできんだけどな」

 

リィンは、次々と拳をユーシスに振るう

ユーシスは自身の獲物、騎士剣で防いではいるが、それはかろうじて防いでるにすぎない

リィンもその気になればいつでも自分など下せると気付いていた

だが、リィンがどんな思惑かは知らないが、リィンは大幅に加減し、自分が対応できるギリギリのラインの質で拳を振ってくる

だが、ユーシスがそんな思考をしているうちに集中力が知らないうちに切れかけていた

それを見逃すリィンではない

 

「馬鹿が

切れたな・・・」

 

「え・・・」

 

「終わりだ」

 

リィンは、大きく踏み込み、掌底をユーシスの胸部に叩き込んだ

 

「ガッ・・・」

 

リィンの掌底をまともに喰らったユーシスはそのまま意識を手放すのだった・・・

 

「勝者、リィン!!」

 

ユーシスが意識を手放す直前、担任教官のそんな声が聞こえたのだった

 



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十話

マキアスとユーシスの班編成をかけた戦いは、圧倒的な実力の差を見せ

リィンの勝利となった

そして、時の流れというのは早いもので、特別実習の日すぐに訪れた

 

特別実習・当日

 

「おーっす」

 

「おはよ」

 

リィンとフィーが顔を出すと、すでにほかのⅦ組のメンツが揃っていた

この前の班編成をかけた戦いが尾を引いてるのか、それともマキアスとユーシス両者が一緒の班なのが気に入らないのか、互いに背を向けている

まぁ、どちらもなんだろうなぁとリィンは内心思う

口に出せば、マキアスもユーシスも突っかかってくるのがわかりきっているからだ

余計なことを言わないのが吉だ

そんな、二人の態度が災いしてか空気はかなり険悪なものとなっていた

 

「おいおい、大丈夫なのかあれ」

 

リィンは、今回一緒の班となるエマに互いに背を向けている

マキアスとユーシスを横目でみながら問う

 

「アハハ・・・

私が着いたころにはもうあんなでして・・・」

 

「というか、リィンがわざと負ければこんなことにならなかった」

 

「おいおい、無茶言うなよ

わざと負けたら今度はサラさんに小言、言われんだろ

オレが

というか、負けるのは性に合わん」

 

「ん

言うと思った

まぁ、負けるのが性に合わないのはわかるけど・・・」

 

「わかってるなら、言うなよ・・・」

 

リィンは、あきれたように言う

リィンもフィーも所属は違えど、戦場で生きてきた人種だ

負ける=死を意味する。

その意味でも、リィンも訓練であっても、わざと負けてやるようなことはしないだろう

それは、フィーもわかってはいるが、ここまで空気が悪いのとその空気の悪さが、実習の最終日まで続くとなると言いたくもなるというものだ

 

「君たち、いつまでそこで油をうっているんだ」

 

「さっさと、行くぞ」

 

「やれやれ、仕方ない

行くか」

 

「ハァ、めんどくさいな」

 

「フィーちゃん・・・」

 

フィーのストレートな言葉にエマは表面上では咎めるが、内心はフィーと同じ気持ちだった

リィンもリィンで、傍観を決め込んでいるため、実習最終日までその調子でいくつもりであろう

マキアスとユーシスによる険悪な空気の形成は実習地だけに留まらないようで、移動手段である電車の中でも険悪な空気は続いていた

 

「さて・・・と、オレちょっと車内見てくるわ」

 

「それじゃ、私も」

 

「ちょっ、リィンさん、フィーちゃん!!」

 

リィンとフィーがあまりの空気の悪さにいい加減鬱陶しく感じ始めたのかエマに押し付けて逃げる気であろう

エマもそれを察し、止めるが

返ってきたのが、リィンの無表情からのウィンクだ

そして、声に出さず口を動かし、エマに告げる

“任せた”と・・・

そして、リィンとフィーは席を外してしまう

 

「はぁ~」

 

置いてかれたエマは、深いため息を吐くのだった・・・

ユーシスとマキアスは互いに喧嘩には発展しなかったものの互いに一言も喋らず、そっぽを向いてる状態だ。

なんとか対話をエマが試みるが、一言、二言で終わってしまい、長く続かない

そんな状態のため、エマもあきらめ、傍観の立場をとった

 

そして、電車に揺られて数時間、電車は実習地である

公都バリアハートの到着のアナウンスを告げるのだった・・・

 

「よっ、エマ、お疲れさん」

 

「ん、お疲れ」

 

先に降りていた、リィンとフィーが疲れ切った表情をしているエマに労いの言葉をかけた

 

「リィンさん、フィーちゃんもそう言うくらいなら、逃げないでください・・・」

 

エマは恨めしい表情を浮かべ、リィンとフィーをジト目で見る

 

「それは・・・・

無理だな・・・」

 

「てか、ぶっちゃけほかのところでやってほしい」

 

「まぁ、それは同感だな・・・」

 

「リィンさん、フィーちゃんも本人がいるのに・・・」

 

リィンとフィーは当の本人である二人の前でこんなことを言っているのだ

 

「「・・・・・・」」

 

当の本人たちはバツが悪いのか顔をそらすのだった

 

「まぁ、けどいかにも貴族って感じの街だよな

豪勢っていうか・・・

まぁ、貴族はこの帝国の象徴みたいなものだし、仕方ないかもしれないな・・・」

 

「フンッ」

 

リィンの説明にマキアスは面白くなさそうにそっぽを向く

 

「あぁ、それとマキアス

一つ言っておかないとな」

 

「な、なんだ」

 

「おまえの貴族嫌いは否定はしねぇ

人間、好き嫌いはあるものだからな・・・

だが、ここは腐っても貴族の街・・・

そんなところで、普段ユーシスに突っかかってるような真似してみろ

一瞬で独房か下手すれば処刑になる

そうなっちまえば、いくらアルバレアのユーシスがいてもかばいきれない可能性がある

精々、言動は気をつけろよ?」

 

リィンは、諭すようにマキアスに言う

 

「グっ、わかっている!!」

 

「そうだといいけどな」

 

リィンは、普段のマキアスのユーシスに対する態度や言動をみてもなにかの拍子にやらかすんではないかと内心思う

そうなってしまえば、なにもかもがおしまいだろう

マキアスには注意しとかないとな・・・とリィンは静かに溜息を吐いた

別にマキアスが捕まり、処刑されようがリィンにとってはどうでもいいことだった

それはマキアスの注意不足でなることだし。マキアスであれ他のメンバーであれ死ぬときは死ぬ

それが早まるだけ、リィンはそう解釈している

だが、死人が出たとあってはサラになにを言われるかわかったもんではないし

何より“あのオヤジ”が好意にしている奴の息子だ

あとあと、どんなことになるか分かったものではない

リィンは二度目になる溜息を吐いた

 

「まぁ、気をつけてんならいいさ

じゃあ、早速行こうぜ

実習の開始だ」

 

とリィンたちが行動を開始しようとしたタイミングでリィンたちの前に黒い高級車・・・

リムジンが目の前で止まる

リムジンの運転席から妙齢の男性が下りてきて、その男性は後部座席のドアを開ける

そこから降りてきたのは、ユーシスと同じ髪色の青年だ

どことなく、紳士のような雰囲気を出している金髪の青年は、リィンたちの目の前まで来ると

 

「フフ、トールズ士官学院Ⅶ組の諸君だね

話は聞いてるよ

乗りたまえ、君たちを宿泊先まで案内しよう」

 

「なるほど、あんたがそうか・・・」

 

リィンは目の前の青年が誰なのか合点がいったらしく納得したように呟く

 

「ん・・?」

 

「えっと・・・?」

 

「貴方は・・・?」

 

フィー、エマ、マキアスは青年のこともそうだが色々混乱したように、困った表情を浮かべる

 

「兄上・・・」

 

「え・・・?」

 

「兄・・・」

 

「ってことはまさか!?」

 

ユーシスのつぶやきに三人は目の前の青年が誰なのか合点がいったらしく

驚愕の表情を浮かべた

 

「紹介しよう

オレ・・・我が兄

アルバレア家が長子

ルーファス・アルバレアだ」

 

「フフ、もう少し黙って君たちの反応を楽しみたかったのだが・・・

紹介されては仕方ない

そこの不肖の弟、ユーシスの兄

ルーファスだ

よろしく頼むよ、Ⅶ組の諸君

弟のことも含めてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、リィン君だったか、君の噂はかねがね」

 

「恐縮です

ですが、いくら車の中とは言え、そういった話題は別の機会に・・・

お互いのためにも・・・ね」

 

「フフ、それは失礼」

 

リィンもルーファスも笑みを浮かべる

笑みは笑みでも、不敵な笑みをだが・・・

 

「兄上・・・?」

 

「な、なんだ・・・」

 

「リィンさんもルーファスさんのことご存じみたいですけど・・・」

 

「・・・・・・」

 

リィンとルーファスの間に流れる異様な威圧感にも似た空気に三人は不思議に思いながらも空気のせいか息苦しさを感じていた

 

「フフ、忘れるといけないのでこれを渡しておこう」

 

ルーファスは一通の封筒を取り出し、それをリィンに渡す

 

「確かに、受け取りました」

 

「確かに、渡したよ

それと、マキアス君だったかな

カール氏の息子の・・・」

 

「父をご存じなのですか?」

 

「あぁ、貴族と平民といってもそんな四六時中牽制しあってるわけではない

彼とはとあるパーティーで会ってね

色々、勉強させてもらっているよ」

 

「は、はぁ・・・」

 

「フフ、二人も可憐なお嬢さんだ」

 

「ども」

 

「アハハ・・・

いえ、そんな」

 

ルーファスのナンパともとれる言葉にフィーは無表情で、エマは若干照れながら対応する

 

「フフ、話しているうちに着いたようだ

君たちの宿泊先に・・・」

 

リィンたちが車から降りると、目の前にいかにも高級な感じのホテルだった

外観からなにやら豪勢な雰囲気を感じ、内装もそうなんだろうことは容易に想像できた

 

「では、私はこれで失礼するよ」

 

リィンたちを送り届けたルーファスは再び車の後部座席乗り込もうとする

 

「ルーファスさん」

 

そんなルーファスをリィンは呼び止める

 

「なにかな、リィン君」

 

「いえ、先程の件ではありませんが・・・

“彼”にお伝えください

精々、今この平和な瞬間を楽しめ・・・

そして、精々足元を掬われてその首食いちぎられぬよう気を付けるように・・・・とね」

 

「フフフフ・・・・

ハハハハハハハハ

君は、面白いな・・・

わかった、確かにその言葉、伝えよう“彼”にね

君も、君の仲間たちに伝えると言い

刻限は刻一刻と迫っていると」

 

「あぁ、確かに承りました・・・」

 

「君と再び相まみえる時を楽しみしていよう

“剣神”よ・・・」

 

「兄上・・・?」

 

「なんだ・・?」

 

「えっと・・・」

 

「ん・・・?」

 

ルーファスとリィンの意味深なやり取りを四人は訳が分からず、首を傾げるのだった

そして、このやりとりの意味をそう遠くない未来に彼らは嫌でも実感することになる

だが、それはまだ先の話だ

二人の意味深なやり取りを疑問に思いながらもホテルに荷物を預け、バリアハート組は実習を開始するのだった・・・

 



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十一話

ルーファスと別れた、Ⅶ組の五人は受け取った封筒を開け、中身を確認する

ケルディックの時と同じように、各種様々な依頼が用意されていた

 

・オーロックス峡谷道の手配魔獣

・穢れなき半貴石

 

の二つの依頼だった

このバリアハートについた時間も考え、終わるころにはいい時間帯であろう

まぁ“手分けをしなかった”場合の話だが・・・

 

「んー、手配魔獣はオレとフィーでいくから

エマ、ユーシス、マキアスは二つ目の依頼を頼んだ」

 

「リ、リィンさん

せめて、フィーちゃんか、リィンさんどちらかをこっちに・・・」

 

リィンは明らかにめんどくさいことになるからと、面倒ごとをエマに押し付け

ようとしてるのを察したエマは、慌てて引き留める

 

「フィー、どうだ」

 

「ん・・・」

 

フィーは首を横に振る

 

「リィンが行ったらいい」

 

「え、やだ」

 

リィンもフィーもあの二人といるとめんどくさくなるのが目に見えてるのと

なんかやらかして、こっちに飛び火した時の対処を考えると魔獣を狩るほうが楽だ

それに、二人ともあれこれ考えるより体動かすほうが向いてるタイプもあり、真っ先に魔獣の討伐を行くと申し出たのだ

 

「リィンさん、フィーちゃんも・・・・

頼みます、マキアスさんもユーシスさんも人目考えず、言い争いし始めますし、なんか実習地の人たちなんか生暖かい目で若いねぇとか言うんですよ

確かに、喧嘩するほどなんとかって言いますけど、もう少し常識とか持って行動してほしいわけでして、えぇ、本当迷惑極まりないんですよ

そんな喧嘩に巻き込まれる私の身にもなってください!!」

 

「お、おい」

 

「エマ、落ち着いて」

 

息切れしながらまくしたてるエマを、リィンとフィーが宥める

そして、呆れた表情を浮かべ、マキアスとユーシスを見る

 

「おまえら、エマにここまで言わせるって・・・」

 

「ある意味すごいね・・・」

 

「グ・・・・」

 

「む・・・・」

 

二人は、バツが悪いのか、呻き声のようなものをあげると、視線を逸らす

 

「あー、しょうがねぇな・・・

じゃあ、喧嘩する二人を切り離すか・・・

オレとユーシスで魔獣の対応

そして、残りで半貴石とやらの依頼だ

これで、文句ねぇだろ

 

「えぇ、それでしたら・・・」

 

「ん・・・」

 

エマとフィーはそれだったらと納得して頷いた

 

「前回はどんだけひどかったんだよ・・・」

 

リィンは、呆れた表情をマキアスとユーシスに向けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、喧嘩する二人を切り離し、魔獣討伐組となった、リィンとユーシスは魔獣の目撃場所である

オーロックス峡谷道まで来ていた

道のりはそこまで言うほど険しいわけではなく、魔獣も襲い掛かってきたりはするが、リィンの一刀のもと、切り伏せられるか、ユーシスも決して弱いわけではないのでそんな苦にならず、進むことができた

 

「中々、やるな」

 

リィンは、ユーシスの太刀筋をみて称賛する

別にお世辞とかではなく、素直にそう思ったから、リィンは言ったのだ

 

「フン、貴様に言われると、嫌みにしか聞こえんな」

 

だが、ユーシスの言う通り、リィンの剣は次元が違う

リィンの剣は帝国で有名な光の剣匠や黄金の羅刹などの達人の領域に達した者たちのレベルだと感じていた

ユーシスやラウラの剣が学生内では強いほうだとするならば、リィンの剣はこのゼムリア大陸で通用するレベルだ

そして、加減され剣さえ抜かせることさえできなかったとはいえ、直接手合わせしたユーシスは・・・感じた

リィンの“底が見えない”・・・と

オリエンテーリングの時、先行し、フィーと一緒になって魔獣の死体の群れを作ったときは確かに強いとは感じた。

だが、直接手を合わせ、そして今一緒になって戦ってみるとその底知れなさが肌で感じ取ったのだった。

そして、リィンとユーシスは、担当した依頼である、標的の手配魔獣を見つける

依頼書の魔獣の特徴とも一致する

その名はフェイト・スピナー

外見こそ、そこら辺にいる虫のような姿、形だが、両腕の鋭利な爪は要注意だろう

まともに喰らえばケガどころでは済まない

下手をすれば死に関わる

 

「さて、狩りの時間だ

行くぜ、遅れんなよ、ユーシス」

 

「フン、言われるまでもない」

 

先に駆け出したリィンを追うように、ユーシスは駆け出した

リィンとユーシスに気付いた、フェイト・スピナーは迎え撃たんとその両の腕の鋭利な爪を交差させるように薙ぐ

 

「ハッ・・・!」

 

「くっ・・・」

 

フェイト。スピナーの攻撃にユーシスは獲物である騎士剣を盾のように構え、フェイト・スピナーの攻撃を防ぐが・・・衝撃までは消しきれず衝撃でわずかに後退する

リィンは、薙ぎの瞬間すでに姿を消しており、すでにフェイト・スピナーの背後に回っており、腰の刀を抜く、そしてそのまま一閃する

 

「・・・・!?」

 

フェイト・スピナーはリィンを狩らんと反対を向くがすでにリィンはいない

 

「・・・・!?」

 

そして、またもや背後から一閃される

 

「まだまだ、行くぜ?」

 

そう言うと、リィンはまた姿を消す

流石に攻撃パターンを理解したのか、フェイト・スピナーは、後ろを振り向くだが、そこにリィンの姿はなく

横からの斬撃がフェイト・スピナーを襲った

 

「ハハハ

どうした、ユーシス

もう、ばてたのか

なら、こいつはそのまんまもらっちまうぜ?」

 

リィンは、フェイト・スピナーの相手をしながら、ユーシスを挑発する

 

「ぐ・・・

舐めるな!!」

 

ユーシスはまだしびれが残っている腕を無理やり動かし、フェイト・スピナーへ、駆ける

 

「喰らうがいい、クリスタル・・・・セイバー!!」

 

ユーシスは剣に闘気を纏わせ、それをフェイト・スピナーの前で一気に解放し結界状に展開し、フェイト・スピナーを閉じ込め、そして、その結界ごとユーシスはフェイト・スピナーを切り裂く

 

「クク、やればできんじゃねぇか」

 

ユーシスの技を受けたフェイト・スピナーはそのまま倒れ伏した

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・」

 

それを見届けたユーシスは、地面に手をつく

 

「クク、まぁ上々といったところか

さて、“奴ら”が本格的に動き出すまでどこまで抗えるかな・・・」

 

リィンは、ユーシスの様子を見ながら楽し気に呟く

力を使い果たし、息を整えている最中のユーシスには、そんなリィンを気に掛ける余裕など微塵もなかった

 

「・・・・さて、目的は達成したし、戻るかユーシス」

 

リィンは、未だ息を整えている最中だが、落ち着いてきた頃合いを見計らって、声をかける

 

「・・・・あぁ・・・」

 

依頼の魔獣を倒し、バリアハートへ戻る道なりを進んでいる、巨大な施設のようなものが目に見えた

 

「へぇ、あれがクロイツェン州領邦軍拠点、オーロックス砦か・・・」

 

リィンは、無駄に拡張された痕跡がある、砦を見ながら言う

当のユーシスは、砦の拡張のことは伝わっていないらしく、呆然とその砦を見ている

 

「ふ~ん、その様子だと”知らなかったみたいだな”?」

 

「あぁ、父はオレには無関心だから仕方ないが・・・

兄上からの手紙にもこのような事・・・」

 

ユーシスはそこまで言うと下を向き俯いた

 

「まぁ、わざわざ言うようなことでもないけどな」

 

「なに・・・!?」

 

「考えてもみろ、いくら四大名門の若様だからって、一々軍事のことを伝えてなんになるんだよ

しかも、おまえはお前の父親やルーファスさんからみて、学生またはただの子供でしかない

そんなやつに報告する必要なんかないだろ」

 

「それは・・・」

 

リィンの言い分に、ユーシスは押し黙る

家督に関しても、ルーファスが後を継ぐことはほぼ確定している

そして、ユーシスはその代用でしかない、それはユーシス自身もわかっているし、仕方のないことだと割り切っている

だから、アルバレア家の人間として恥ずかしくない教育は受けていても、家の根っこの部分まではユーシスは知らなかった

今回の軍事施設拡張についてもだ

ルーファスもユーシスの父も知る必要のないことだと判断したのだろう

それに関しては頭では理解しても、納得できないと思うのもまた事実だ

ユーシスは唇をかみしめるのだった

その葛藤をリィンはユーシスを馬鹿らしいなど思わず

”人間らしい”と思うのだった

それは、人間として当たり前の感情なのだから・・・

 

リィンとユーシスがそんな軍事施設を眺めていると、警報が鳴り、戦車やら車が何台も走っていくのを見かける

 

「なんだぁ?」

 

リィンはその様子を見ていると、一台の車がリィンとユーシスに気付き、リィンたちの前で停車し、降りてくる

そして、兵士はユーシスに気付くと背筋を正し、敬礼する

 

「ユーシス様、お戻りになられていたのですね

お疲れ様です」

 

兵士たちはユーシスたちに敬礼しながらも先程の警報の件を話した

リィンだけならこの兵士は話さなかっただろう

そこはユーシスがアルバレアの人間故であろう

 

「実は、砦の方に侵入者が現れまして我々はそれを追っていたのです」

 

「侵入者?」

 

「えぇ、なんでも銀色の人形を操る子供でして・・・」

 

「は?」

 

兵士からそれを聞いた途端リィンの口から間抜けな声が出た

リィンの想像が正しければ。その子供はリィンがよく知る”子供たち”の一人だ

そもそも、子供で銀色の人形を操りバリアハートの軍事施設に侵入する者など、リィンの知る限り”彼女”しかいない

というよりこんなことをするのは彼女くらいなのでリィンは顔をしかめた

そしてリィンは小声で毒づいた

 

「あのバカ・・・・」

 

そして、その後ユーシスも含めてその侵入者について兵士たちは聞いてきたが、リィンは当然のようにとぼけ、ユーシスは本当に知らないため知らないと一言だけ兵士たちに告げた

それを聞いた兵士たちはその回答が来るのが分かり切っていたのかそれを聞くと敬礼し車に乗り込んで去っていった

 

「いやぁ、すげぇ練度だなー」

 

リィンは去っていく車を眺めながら何気なく言う

 

「フン、当然だ兄上が直々に指導しているのだからな」

 

ユーシスはいつも通りの傲慢な態度で言うが若干どうだと言わんばかりの嬉しさが混じっていた

 

「へぇ、あの若様が直々に・・・ね

まぁ、確かにあの若様はまさしく文武両道を絵にかいたような人物だが・・・

やりあってみたいもんだな」

 

リィンはそれを聞いてニヤリと笑みを浮かべ呟いた

 

「おまえは・・・・」

 

「あぁ、悪い

だがオレは腐っても剣に生きる人間だからな

強いって聞くと殺りあいたくなっちまうんだよ

さて、そろそろ行こうぜ

エマ達の様子を見にな」

 

そして、リィンとユーシスはバリアハートへ戻るのだった

 



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