とある科学の全能変化〜八人目の超能力者〜 (萩村和恋)
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禁書目録編
第一話ー全能変化と幻想殺し


初めまして、萩村和恋です。


 科学で超能力が開発されている学園都市、6段階で別れた能力レベルの最上位である超能力者(レベルファイブ)は7人、そう言われていたはずなのに…

 

-第一話、全能変化(オールチェンジャー)幻想殺し(イマジンブレイカー)

七月二十日

 一人の学ランを着た中性的な人物が、キョロキョロと目は走らせながら歩いていた。

 名は月宮小鳥(つきみやことり)、能力は肉体系の能力である。

 月宮は捜し物をしていた、この前自身を救った青年の寮を。

 

 ソレは4月からいつも通りとなった日常を過ごしていた時であった。

 その見た目から可愛い月宮は、不良共に襲われた。

 不良共(なお人数は二人である。)…武装無能力集団(スキルアウト)とは、無能力者(レベルゼロ)の落ちこぼれ達が夜道をぶらぶら歩いたりするヤツらの事…らしい。

 「変態ぃ!私を襲うなぁ!離せよぅ!」

身を(よじ)り不良共から逃げようとする月宮、しかし抵抗虚しく捕まってしまった。

 「いいじゃんいいじゃん!やらせろよ〜。」

 不良はゲラゲラと笑いながらゴツゴツした手で月宮の上着を脱がそうとする…その時だった。

 「スマン!待たせちまったな、早く行こうぜ!」

 青年の声が聞こえてきた、ツンツンヘアーのその青年は月宮の手を掴むと不良共を避け、走って逃げだした。

 後ろを振り向くと、不良共は新たな獲物を探しに行った。

 十分位走っただろうか、大きな道に出てきたところで2人は足を止めた。

 「あっ、あの!助けてくれてありがとうございます!」

 汗をかきながら、月宮はお礼を言う、手を引いて前を走っていた彼に。

 「良いって良いって、困ってる時はお互い様って言うだろ?」

 「そう…ですね。でも何故知り合いでもない私を…?下手すれば貴方まで…。」

 「いや、人を助けるのに理由がいるか?それに相手が2人だったし追いかけてこなかったからな。」

 と言う彼、お礼を言おうと思った月宮はふと、簡単な問いを思い出した。

 「えっと名前…あっ、私、月宮小鳥って言うんですけど…。貴方は?」

 そう、お礼を言おうにも名前がわからないと言い難い。いや、言えるのだがそういう所で相手の情報を得おうとするのが月宮という人物だ。

 「俺は上条当麻(かみじょうとうま)だ、よろしくな、月宮。」

 微笑んで右手を差し出してくる上条に、月宮は何の気もなしに右手を差し出し、握手をした。

 その瞬間

 パキーンッ!

 と、音がした。

 「「…え!?」」

 月宮、上条二人揃って声を上げた。

 そして、月宮の姿が崩れていく

 茶髪ロングだった髪は黒髪ショートへ、少女のような顔立ちは中性的な顔立ちへ、黒い瞳のタレ目は琥珀色のツリ目気味に変わった………いや、戻ったのだ。

 「……。」

 無言で上条を見る月宮、彼は怪訝(けげん)そうな表情をしていたが、何かに納得したのか、眠たそうな顔に表情を戻し

 「月宮は肉体変化(メタモルフォーゼ)なんだな、強度(レベル)はどれくらいだ?」

 と聞いてきた。月宮は

 「あっ…ええっと…超能力者(レベルファイブ)…。」

 と俯きながら上条に言った。

 「超能力者!?」

 大袈裟に身を引きながら驚く上条に、更に月宮は付け足す。

 「それと私の能力の名前は、全能変化って言って、その名前の通りどんなものにでも…いや、変化できない人もいるけど、変化出来る能力なの。それと、私は超能力者の第八位…。」

 そう言うと、上条はまたもや怪訝そうな顔をした。

 「超能力者って確か…七人しかいないはずだろ?」

 そう、超能力者は七人だけのはずなのだ。だがそれも数年前までの話。今では八人になっている。その第8位が月宮小鳥なのだ。

 「私はね、元々は強能力者(レベルスリー)の肉体変化だったの。私頭とか悪いからさ、能力だけ取り柄だったから能力を頑張ろうって思ったら数年前…小学校六年生ぐらいに見事に超能力者になったの。それまでは遺伝子レベルは無理だったんだけど…超能力者になってからは遺伝子レベルの変化も可能になったんだ。」

 通常、肉体変化は遺伝子レベルでの変化は出来ない。それをも可能としたのが月宮の能力、全能変化だ。

 「本当に何にでも…?生物は見たし…無機物とかは?」

 「なれるよ。」

 上条からの問いに答え、全身を何の変哲もない鉛筆へと変える。

 「凄いな…。持ってもいいか?」

 鉛筆と化した小鳥に向かって聞く上条。

 「……(コロン)。」

 どうやら大丈夫、という意味らしい。

 「じゃあ失礼して…うおっ、触り心地も鉛筆だな。」

 と、目を見開いて驚きながら左手で触る上条、すると…

 「……(テレッ)。」

 鉛筆の色が赤くなる、どうやら照れているようだ。

 「あっ、もう戻っても大丈夫だぞ。なんかゴメンな。」

 そういうと上条は、鉛筆をゆっくりと地面に置いて幻想殺しで触れた。

 パキーンッ!という音と共に姿が戻る月宮。

 「と、こんな感じ…かな。ねえ上条、メアドと電話番号交換しない?助けて貰ったのも何かの縁だと思うし…。」

 可愛らしい兎のキーホルダーを付けた銀色のガラケーのような携帯を、ポケットから取り出しながら上条に聞く月宮。

 「ああ、良いぞ。っと、赤外線でいいよな?」

 上条もポケットから黒の携帯を取り出す。

 二人で赤外線通信で連絡先を交換し、そしてその後に別れた。

 

 と、このような事があり、夏休みに入る前に、上条から「夏休みさ、家に遊びに来ないか?」とそのような旨の連絡を貰ったので。「行く行く!お菓子持って訪ねるよ。」という旨の返信をした。

 目的地周辺に着いたから上条に連絡するという約束だったのだが、どうにも連絡を取れないため量を探していたのだ。

 「…?何だこの匂い…何かが燃えてる…こっちかな?」

 何かが燃える匂いにつられて行く途中…見知った顔とすれ違った、その人は…

 「上条っ!?」

 そう、その人は上条…上条当麻と、体が傷ついた見知らぬシスターの少女だった。




月宮はこのあとどうするのか?何故上条は傷付いた見知らぬシスターの少女を連れていたのか。

 次回、シスターを救え①


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第2話、シスターを救え①

間が少し空いてしまいすみません。
それでは2話目、シスターを救え①をどうぞ。


 「上条!?なんでココに…まさか…!?」

 さっきした何かの焦げた匂い、この周辺には上条の寮があったはずだ。そして上条がここにいるということから考えることはたった一つである…。

 「燃えたのは…上条の寮か!?」

 「あっ…あぁ、月宮か…、スマン!本当なら今日は一緒に遊ぶ予定だったのに…。っと、俺もう行くw…」

 そう言って走り出す上条、月宮はそれを止め…

 「私に乗ればいい…、行く場所を教えて。」

 人が2人乗れるほどの獣になる、背中には人が座るための椅子のような器具もある。街中で獣になるのはどうかと思うが、この際、月宮に着いてくれてる研究所等も許してくれるだろう。一応先程風紀委員(ジャッジメント)の知り合いにも連絡している。最悪知り合いが何とかするだろう。

 「小萌先生の家だ!場所はわかるか!?」

 「了解!場所ならわかる!」

 小萌先生…というのは、記憶があってれば上条の担任だった筈だ。場所もバッチリわかる。…理由はそのうちわかる。

 「しっかり掴まってろよ!」

 「ああ、わかった!」

 上条の返事を聞くが否や地面をかっ飛ばす獣。

 

 小萌の家に着いた一行は、まず銀髪シスター少女を小萌の家に入れ、治療を行うこととした。

 走ってくる途中に月宮が得た情報は、銀髪シスター少女…禁書目録(インデックス)という少女の事と魔術についてだった。魔術については月宮も知識はあった。…この話はまた今度としよう。

 治療法は禁書目録が小萌に教え、それを行っていくようだ。上条はこの場にいたら右手の影響で治療の邪魔になる為出て行くらしい、月宮もそれについて行くこととした。

 

 二人は近くにあったベンチに座り、話していた。

 「さて上条、その右手の話………聞かせてもらおうかな。」

 月宮には気になっていたことがあったのだ、一番最初の時に右手で触れられて壊された自分の姿。先程の上条の発言。彼の右手には絶対に何かあるはずだ。

 「俺の右手……、上条当麻の右手は幻想殺し(イマジンブレイカー)って言ってな、それが異能であれば、例え神の奇跡だろうがこの幻想殺しで破壊することが出来るんだよ。」

 上条は右手を天に掲げながら答える。

 「幻想殺し…。強度は何なんだ?」

 それ程の能力ならば、さぞかし高い強度であろう。さしずめ大能力者と言った所だろうか。と、月宮が考えていると、

 「いや、俺は無能力者だぞ?幻想殺しは超能力開発の結果なんかじゃなくて、生まれつき持ってたモノなんだよ。」

 と、上条は簡単に言ってのけた。

 「そんな訳n…ん?」

 月宮が、そんな訳ないでしょ?と言いかけていたところで、小萌の部屋の扉がガチャリと開かれた。

 「先生!禁書目録は大丈夫ですか!?」

 上条が小萌に駆け寄って禁書目録の安否を確認する。

 「シスターちゃんは大丈夫ですよ、今は寝ています。」

 と、小萌が言う。

 上条は心底安心した、という感じに息を吐いた。

 「今日はもう遅いので、上条ちゃん達も泊まっていきますか?」

 小萌が上条達に問い掛ける。上条は少し悩んでから

 「そうだな…俺は泊まります。月宮、どうする?」

 と、月宮の方に聞いてきた。

 「私も泊まるよ。」

 簡潔にそう、上条と小萌に言う。

 「じゃあちゃちゃっと、お部屋に入っちゃってください。」

 小萌は、上条と月宮の背後に周り、その小さな手で2人の背中を押してくる。

 「「お邪魔します。」」




小萌の部屋に行き何とか禁書目録の治療は終わった。
しかしホッと安心するのもつかの間、月宮達は彼女を完全に救えるのか?
次回、シスターを救え②


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第3話、シスターを救え②

前回からかなり時間が経ってしまい申し訳ありません。
ではお楽しみください


 インデックスの治療を終えてから数日経ち、月宮、上条、インデックスの三人は銭湯に向けて歩を進めていた。

 「もう体調は大丈夫なのか?インデックス。」

 三人の真ん中にいた上条が、右側にいたインデックスに話しかけていた。インデックスは、両手で大切そうに銭湯用品を持ちながら、上条に笑顔で

 「もうバッチリ大丈夫なんだよ!とーま!」

 と答え

 「それよりも、早く銭湯に行きたいんだよ!ジャパニーズ銭湯は、ヨコヅナがフジヤマで、お風呂上がりは牛乳をごくごく飲むのが風習ってこもえに聞いたんだよ!」

 と、上条と月宮に目を輝かせながら答え、「先に行ってるねー!」走って行ってしまった。

 様子を見ていた月宮も、「一人じゃ心配だし私も先に行くよ。」と上条に言うと、インデックスに向かって走っていく。

 大して気にもせず、月宮がいるなら大丈夫だな。と思いながら上条がそんな二人を見ながら歩いていると。

 突如、周りの空気がおかしいことに気付いた。

 今はまだ日が登っている時間だ、だと言うのに周りには人っ子一人見えないのだ。

 「インデックス!月宮!戻ってこ…」

 「ステイルが人払い(Opiln)刻印(ルーン)を刻んでいるだけですよ。」

 上条の後ろから、女性の声が聞こえた。

 「神浄の討魔(かみじょうとうま)ですか…良い真名です。」

 「アンタ…。」

 女は変わった格好だった、ヘソが見える白い半袖、左右で長さの違うジーンズにはウエスタンベルトに鞘を付けている。

 「神裂火織(かんざきかおり)と申します。出来ればもう一つの魔法名を名乗る前にインデックスを保護したいのですが…。」

 …インデックスを保護、上条には心当たりがあったが、この話は割愛させた頂こう。

 「嫌だ、と言ったら?」

 乾いた笑みを浮かべ冷や汗をかきながら、上条は神裂火織と名乗った女にそう言う。

 すると女は、腰に付けていた鞘から刀を引き抜きかけ…

 「仕方ありません。」

 刀を少し抜き、『何か』を発生させ、上条の近くにあった風力発電機を切った。

 -そして上条当麻はこの女性と戦うことになった。

 

 

 -場面は変わり、インデックスと月宮は、上条が後ろからこないことに気付かず、途中の公園にあったベンチで休憩しながら何気ない会話をしていた。

 「インデックスちゃんってさー、日本語話せるけど、何時からこっちにいるの?」

 「んっと、何時からかはわからないんだよ。」

 「へー、そんなに昔から日本にいたとか?」

 「ううん、私には一年くらい前の記憶からしかないから。」

 「そうなのかー。………え?」

 インデックスは、今とんでもないカミングアウトをした気がする。

 「記憶が無い…?確かインデックスちゃんって『完全記憶能力』ってので、十万三千冊の魔導書とかの原本の中身を脳みその中に入れてるんだよね?」

 上条と、本人にもそれは確認済みだ。

 「うん、そうなんだよ。ことりは魔術とかすぐ信じたのはびっくりしたかも。」

 「まあ私はそういう趣味があるからであって…って話逸れちゃう。記憶がないって言うのは、思い出の方?」

 人間の記憶っていうのは何通りある。

 エピソード記憶だとか、意味記憶とか、それぞれのいれものが違う為、どんなに脳のパンクというのは記憶方面では到底無い話だろう。

 まあ意図的に記憶喪失にするとかなら可能性があるが…。

 「うん、思い出とかの方なんだよ。覚えてたのは禁書目録だとか十万三千冊の魔導書だとか…。多分それのせいで魔術師達から追われたり……あっ…。」

 不味い!とでも言うような顔をするインデックスだが、直ぐに表情を柔らかい笑顔に戻した。

 月宮はソレを見て見ぬふりをして、そろそろ上条が来る頃かと思って周りを見渡す。だが…

 「…まだ来てないのかな?…まさか何かあったとか…。」

 そう、上条がいないのだ。インデックスもソレに気付いたのか焦り始める。

 「本当だ!?とーま!とーま何処!?」

 「上条ー!何処だー!?」

 -能力者とシスターは、二人で上条を探し始める。

 

 -その頃、上条は、戦闘でボロボロになった身体で、神裂という女から衝撃の事実を聞かされていた。

 インデックスが目の前にいる神裂はと同僚だったこと、親友だったこと。

 インデックスの前の記憶は、神裂達が消したということ。

 神裂達とインデックスの関係…

 「…仮に、アンタの話が本当だとして、インデックスの限界ってのはあとどれ位なんだ?」

 目の前の神裂に、上条はそう聞いた。神裂は少し間を置いて口を開く。

 「……もってあと三日。」

 それを聞いて上条は憤った。

 「どうしてそれをインデックスに言わねぇんだよ!なんで"敵"として最後まで振舞おうとしてるんだよ!」

 「貴方がどれだけ彼女を想っても、記憶を失った彼女には自らの敵にしか見えない…。あんな目で見られるくらいなら…いっそ…。」

 神裂は顔に影を作る。

 「いっそ…なんだ?最初から敵として憎まれた方がマシだってのか?バカか!そんなのテメェらの勝手な都合だろうが!アイツが何遍忘れたって、何遍だって友達になってやりゃいいじゃねーか!!」

 汗をかきながらも神裂に言う上条、その言葉を聞き、神裂は鞘を握っている手に力を入れる。

 「あなたに…。」

 素早い速度で上条の左脇腹を狙って突く、上条はすんでのところで避ける。

 「あなたに何が分かるんですか!」

 声は叫びに近かった、やりきれない思いの詰まった叫び。

 鞘を横に振るうと上条の後ろの壁が破壊されてゆく、上条はひたすら横に避けていた。

 「私がどんな気持ちであの子の記憶を奪ってきたか…ステイルがどんな思いであなた達を見ていたか…!!」

 しかし遂に、神裂の振るう鞘が上条の喉仏に突きつけられる。

 「インデックスは返してもらいます。」

 神裂の目は本気だった。

 乱れた呼吸を少しずつ整える上条は…

 「(やっぱり強ぇ全然歯が立たねぇ!…けどよ!)」

 決意を決め

 「(ここで折れる訳にはいかねぇ!)」

 喉仏に突きつけられた鞘を傷付いた両腕で掴む。

 身体中が叫びを上げている、血だって流れている。

 「その身体でまだ戦う気ですか。」

 「る…せぇよ…」

 「私を倒した所でどうにもなりませんよ、私達が所属している『必要悪の教会(ネセサリウス)』全体から見れば私などこんな極東の島国に出張させられる下っ端にすぎません。どう足掻こうと…」

 「…っっせえっつってんだろ!!!」

 淡々と語る神裂の声を、上条の叫びが横入りする。

 鞘を思いっきり下に押してぐらついた事に驚く神裂の額を、上条の右拳が思いっきり当たる。

 「テメェは…力があるから仕方なく人を守ってんのかよ…?そうじゃねえだろ!守りたいものがあるから力を手に入れたんだろうが!」

 上条の右腕に鈍い痛みが走り、上条は地面に倒れて行く。

 「……。」

 顔を拭い、地面に倒れた上条を見下ろす神裂。

 「俺はさ…死ぬ気で戦って、それでもたった一人の女の子も救えねーような…負け犬だよ。」

 弱々しく、だが同時に強い気持ちを感じる声で上条は言葉を紡いでいく。

 「だけどアンタは…そんな力があれば──誰だって…何だって守れるのに……!!」

 神裂は鞘を上条の方に構える。

 上条開かれた両手を握り締め、腕に力を込めていく。

 「アンタは何のために力をつけた?その手で誰を守りたかった!?」

 ─雄叫びを上げ立ち上がる上条、鞘を振るう神裂。ゴシャァ!という音が鳴り響き、そこで上条の意識は途絶えられた。

 

 -月宮とインデックスはボロボロの上条が道で倒れているのを見つけた。

 「…!上条!」

 「とーま!」

 二人して上条の方に走り、意識がない事に気が付くと、急いで小萌の部屋に帰っていくことにした。

 

 -上条が目が覚めた時には、神裂と戦った三日後であった。

 インデックスと月宮が交代制で看病をし、インデックスの時に目覚めたのだ。

 「三日経ってるのか…!?インデックス!月宮!早く逃げるぞ!」

 怪我がどうだとか言ってる場合ではない、早いところここから逃げ出したかった。

 「ダッ、ダメだよとーま!まだ安静にしてなきゃ…。」

 「そうだぞ上条!何が何だかわからないけど、まだ安静にして!」

 月宮とインデックスが止めるが、上条はインデックスの腕を引っ張り玄関に向かおうとしていたその時。

 コンコンコン、という玄関をノックする音がして、ガチャリという音と共に玄関が開いた。

 現れたのは三日前に上条と戦った神裂と、赤髪の神父服を着た青年…ステイル=マグヌスであった。

 「ふぅん、その体じゃ簡単には逃げられないようだね。」

 上条達の方を向き、ステイルが言い放つ。

 すると、インデックスが上条の前に立った。

 「やめて、これ以上とーまを傷つけないで!」

 ステイルの顔がピクリと動く、月宮は状況についていけず上条の真横に立ち尽くしている、上条が三日前に聞いた事を説明しようと口を開く。

 「インデックス、コイツらは─」

 上条の声も聞かず、インデックスは言葉を続ける。その顔はどこか苦しそうで…

 「私ならなんでもするから、どこへでも行くから…お願いっ…。」

 言葉を言い終えるとインデックスは倒れてしまった。

 身体を支えようと上条が腕を伸ばすが、インデックスはステイルが支えた。

 「今夜午前零時。」

 ステイルがそう呟く。

 「その時刻に全てを終わらせるよう術式を組上げる。」

 「…まっ、待てよ!聞いてくれ!それが魔術師(アンタら)の出した結論(こたえ)かも知れねぇけど…科学(オレたち)ならまだ分からねぇ!ここは学園都市だ、『心を操る能力者』も『心の開発をする研究所』もゴロゴロ転がってる!常盤台には触れただけで人の記憶を抜きとる超能力者(レベルファイブ)もいるみたいだし…そういう所を頼っていけば、こんな最悪な魔術(ほうほう)を選ばなくたって済むかもしれねーんだよ!」

 そう言う上条に、ステイルは睨みつけ

 「それで?そのどこかにいるらしい連中に試したこともない薬を使わせて、この子の身体を好き勝手に弄ろうというのかい?見ろ!」

 ステイルが目を向かわせた先にはインデックスが苦しそうに布団で寝かされていた。

 「今の台詞をこの子の目の前で言えるか?"ちょっと試したいことがあるからそのまま待ってろ"なんて言えるのか!?」

 上条は顔を曇らせる、そこにステイルが十字架を取り出して上条の目の前に突き出してきた。

 「これはインデックスの記憶を殺すための道具だ、君の右手が触れれば僕の魔女狩りの王(イノケンティウス)同様効力を失うはず。そんなに自分の力を信じているのなら消してみろ。」

 ステイルが更に言いよる。今ここで触れてしまったら、最悪インデックスが死んでしまうかもしれないのだ。

 「どうした、やってみろ…!異能者!!」

 上条の右手が十字架に伸び……そして戻した。

 

 上条と月宮は、部屋の外に座っていた。そこに神裂がやってきて

 「ありがとうございました。あなたが、あなた達が"足枷"となってくれたお陰です。インデックスを安全に保護することが出来ました。」

 月宮は先程からの状況が理解出来ず、その言葉自体聞こえてない様子であり、上条は乾いた声を漏らす。

 「─は、そういう事か…俺にトドメを刺さなかったのは。」

 「一年近く我々の追跡を逃れてきた子ですから、それに─()()()()()が必要でしょう?」

 その言葉聞いた上条は、立ち上がって何処かに向かおうとした。

 「どちらへ?」

 「いいか?わっかんねーようなら一つだけ教えてやる。俺はまだ諦めちゃいねぇ。百回失敗したら百回起き上がる。千回失敗したら千回這い上がる!たったそれだけの事をテメェらに出来なかった事を果たしてみせる!」

 「残り二時間余り─何をするかはわかりませんが、どうか素敵な悪足掻きを…。」

 神裂がそう言い、上条はインデックスを救うために決意をして歩いてゆく。

 

 「つっても気合いだけじゃあどうしようもないよな…。クソッ!こういう時は一から情報整理しねぇと!」

 「(インデックスは記憶し続けることであたまがパンクする…なら記憶を止めて眠らせれば時間稼ぎになるんじゃないか…?)」

 と情報整理をしている上条の所に、可愛らしい声がかけられる。

 「上条ー!」

 上条が誰かと思い声の方を向くと、そこには月宮がいた。ちょうど考えがまとまって聞きたいことがあったから丁度いいと思い、上条は月宮に問をかけた。

 「丁度良かった…なあ月宮。」

 「何?」

 「記憶のし過ぎで頭がパンクって本当にするのか?」

 そうだ、インデックスの他にも完全記憶能力を持つ人間はいるだろう。インデックスは85%を魔導書を記憶するために使っているらしいので、残りは15%らしい。1年間隔で記憶を消さなければいけないのであれば、一般人の完全記憶能力者は5、6歳でしんでしまうことになる。

 月宮は質問の意味がわからない様子をしたが、直ぐに答えた。

 「上条、記録術(かいはつ)しっかり学んでる?」

 「…は?いやどういう意味だ…?」

 「人間の脳みそってな、元々140年分の記憶が可能なんだよ?」

 「でっ、でも!限界まで記憶力を使いまくったらどうなるんだ!?」

 「良いかな?上条。人の記憶っていうのは一つだけじゃないんだよ。意味記憶とかエピソード記憶だとかは、それぞれのいれものが違うんだ。だからインデックスちゃんの、『十万三千冊の魔導書を覚える為に思い出を削る。』だなんて行為はしなくてもいいはずなんだ。」

 

 「インデックスに別れを言わせてくれ…。」

 上条は外から戻り、ステイル達にそう言った。

 途中彼らは色々と言っていたがあまり聞こえなかった。唯一聞こえたのはステイルが言った、「10分だけだ!いいな!?」という言葉だけ。

 インデックスの方に行くと、苦しそうな顔で上条の顔を覗き込んでいた。

 「なあインデックス、今度こそ全部終わらせてやるから。─そしたら夏休みらしいことしたいよなぁ。海とか補習とか。…嫌なこと思い出しちゃったよ…。」

 そう優しく上条が言うと、インデックスは微笑んだ。

 そうして上条は目的のものを探す。きっとインデックス自身でも気づかない場所にあるはずだ。

 口の方に手をやり、中を見ると…確かにあった。変な文字が。

 「考えてみりゃあ…、使い方次第で世界を捻じ曲げることが出来る危険な十万三千冊(きけんなもん)が野放しにされるはずないよなぁ。」

 『教会』はインデックスを手放したくなかったのだろう、だからこそ絶対に裏切られないような、インデックスの頭に何か細工をしたのだ。

 「…。」

 唾を飲み込み、インデックスに我慢してくれと一言いってから右手でその文字に触れた…。

 次の瞬間、上条の身体が吹っ飛んだ。

 「─告!警告!Index-Liborum-Prohibitorum─禁書目録の「首輪」第一から第三までの全結界の貫通を確認。侵入者の撃退を最優先とします。─警告。第3勝第3節、『首輪』の自己再生は不可能。対侵入者用の特定魔術(ローカルウエポン)(セント)ジョージの聖域』を発動します。」

 インデックスはロボットのようにそう言ってゆく彼女の目が光ると、空間に亀裂が出来た。

 上条はその亀裂の中に恐ろしいものを見てしまった。、正面から視てしまったら死んでしまうだろう…。

 そしてインデックスが光線を放つ。上条は右手でそれに触れていく。

 「(怖いって?まさか!あの亀裂の奥に覗いている「何か」()()()さえ倒しちまえばインデックスは助かる!)」

 

 

 ─月宮は、上条だけを部屋の中に入れさせて自分は外で待っていた。

 上条が中に入って直ぐに魔術師達が中から出てくる。

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 三人とも言葉を交わさず、ただ黙っていた。

 暫く待っていた三人だが、扉が破壊されたので中に急いで入っていった。

 

 「『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』!?なっ…!どういう事だ!」

 そう言ったのは赤髪の神父…ステイルだった。

 神裂も信じられないのか、唖然としており、月宮は状況を把握できてないのか立ち尽くしている。

 「見ての通りだ!インデックスは魔術を使ってる、お前ら『教会』に都合のいいウソを教え込まれてたんだ!一年おきの記憶消去も、全部インデックスの脳に仕組まれた"魔術"が元凶だったんだ!」

 ステイル達にそう言い放つ上条は、右手(イマジンブレイカー)が目の前のモノの処理に間に合ってないことに気づく。

 「お前ら!いつまで固まってんだ!待ってたんだろ……ずっと、インデックスが、俺達が笑って迎えられる結末を!今手を伸ばせば届くんだ!いい加減始めようぜ!魔術師!!」

 言い終えたところで、上条の右手の指からバギィ!という音が響く。

 塞がれなくなった光線が上条に向かってくる、だがそれが上条に当たることはなかった。

 「Salvare000(救われぬものに救いの手を)!!」

 神裂が刀でそれを切ったからだ。言い放ったのは─魔法名だろう。

 インデックスは背中から倒れ、放たれていた光線は天井を突き破ってゆく。

 「それは『竜王の殺息』──伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!どんな力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないで下さい!」

 神裂の言葉を聞きながら上条は、床に倒れ込んだインデックスの所へ走って行こうとする。

 だが、それよりも先にインデックスが首を巡らせた。

 巨大な剣を振り回すように、光線が再び振り下ろされる。

 「────魔女狩りの王!」

 身構える上条の前で炎が渦巻く、人の形を取る火炎は、両手を広げて上条の盾になる。

 「行け!能力者!元々あの子の時間制限(リミット)は過ぎてるんだ!何かを成し遂げたいのなら時間を稼ごうとするな!」

 ステイルが上条へ叫ぶ。

 「ああ!」

 半ば叫ぶように返事をし、上条はインデックスへ走る!

 途中、禁書目録が何かを言うが必死に走る上条には聞こえない!光線の色が血のような赤に変わり、『魔女狩りの王』がみるみる弱っていく。

 頭上には何十枚の光の羽

 足元には、たった一つの想いすら利用されて糸で操られる一人の少女。

 少女の為に右手を振るっていた上条には選択の必要なんて無かった、もとより少女を助ける為に魔術師と戦ったんだから!

 (この物語(せかい)が、神様(アンタ)の作った奇跡(システム)どおりに動いてるってんなら──)

 上条は握った拳の五本の指を思いっきり開く。

 まるで掌底を浴びせるかのように、

 (────まずはその幻想をぶち殺す!!!)

 そして上条は右手を振り下ろした。

 そこにあった黒い亀裂、更なその先にある亀裂を生み出す魔方陣。

 上条の右手が、それらをあっさりと引き裂いていった。

 本当、今までなんでこんなものに苦しめられていたのか笑い飛ばしたくなる程に。

 「───警、こく。最終……章。第、零─……。『首輪、』致命的な、破壊………再生、不可……消」

 プツン、とインデックスから発せられる言葉が途切れた。

 光線も消えて、魔方陣もなくなり、部屋中に走った亀裂が綺麗に消えていき、

 

 その時だった、上条当麻の頭の上に1枚の光の羽が舞い降りた。

 

 「ーーーー!」

 その瞬間、上条は誰かの悲鳴を聞いた。

 それが誰のものだったか、それすらも上条には分からなかった。

 金槌で頭を殴られたように、全身の指先一本に至るまで、たった一撃で全ての力を失った。

 上条は未だ床の上に倒れているインデックスに覆いかぶさるように倒れ込んだ。

 

 まるで降り注ぐ光の羽から彼女の体を庇うように。

 

 粉雪が降り積るように、何十枚という光の羽が上条の全身へと舞い降りていく。

 上条当麻は、それでも笑っていた。

 笑顔のまま、その指先は二度と動かなかった。

 この夜。

 上条当麻は『死んだ』。

 

 

 

 

 

 病室の前には、銀髪のシスターと学ランの中性的な人物と、カエルに似た顔をした医者の三人がいた。

 医者から色々言われ、手紙を貰っていた(恐らくは病室の人物へのものだろう)銀髪のシスター…インデックスはその手紙を8枚ほどグチャグチャに丸めていた、敵だと思っていた魔術師から貰ったものだったので。

 と、最後の九枚目に大体だがこのような事が書いてあった。

 『インデックスは様子見ってことになってる。』

 読んだ直後に、手紙はクラッカーのような音と共に爆発してしまった。(尚、危険そうだったので最後の手紙は学ランの人物…月宮が対爆発性の手にしている。爆発したが怪我はなかったよ!やったね!)

 「何だよあの神父……チッ…。まあいいや、インデックスちゃん!早く上条と会おう。」

 悲しげな表情をしている隣のシスターの頭に手を乗せて笑う。インデックスはその笑顔を見ると少しは気分が晴れたのか、少し笑顔になった。

 コンコンと扉をノックする、中からは少年の声ではい?と来た。インデックスは緊張しており、月宮は笑顔のまま扉を開く。

 

 「?()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 少年の言葉はとても丁寧で、それでいて他人行儀のものだった。

 ─『記憶喪失』というより、『記憶破壊』だね?一体何があったんだい?

 インデックスの脳裏にはその言葉が思い出していた、夏の暑い部屋でカエル顔の医者から言われた言葉。

 色んなことがあって、ある少年は身体ではなく精神(こころ)が死んだという簡単な話だ。

 「えっと…君たち大丈夫?とても辛そうだけど…。」

 「私は大丈夫大丈夫!さあさインデックスちゃん。インデックスちゃんが先に話すんだ。」

 インデックスを残して、月宮は病室を出た。

 

 

 

 

 

 

 病室の前の壁に寄りかかりながら月宮はインデックスを待っていた、インデックスがでてきた後で話そうと思っていたからだ。

 「変身しようかな…。」

 その言葉と共に、月宮の姿は変わっていく、長い茶髪に、元々可愛らしい顔はさらに可愛く、少女のような顔になっていく。目の色も髪とおなじ茶色のツリ目だ。服装もセーラー服になる。

 (本当に記憶を失ってないのなら、この姿に気付く筈だし、少しの表情の歪みもない筈……。)

 病室からは少年とインデックスの言い争いの言葉が聞こえてくる。それでもその声はとても楽しそうで…。と、そんな風に考えてると扉が開き、インデックスが走り去ってしまった。

 「どうしたんだろう…?まあ入るか…。」

 開いたままの扉から病室に入ると、少年が困った顔をしながら笑っていた。……こちらに気付くと、()()()()()()()()()()()()()()()()

 「さっきはゴメンな月宮!ちょっと寝惚けてたんだよ!」

 と、謝ってくる…だが、先程の表情の歪みで月宮は察していた。だからこそ言う。

 「謝るなよ、()()()()()()()()()よ。やっぱり『記憶破壊』されてたんだな?インデックスちゃんには言ってないんだろうけど…。」

 少年……上条当麻はびっくりしたような顔をしたが、柔らかな笑みを浮かべると話し始めた。

 「なんだ、気付いてたのか…。本当にゴメンな、俺、何も憶えてないんだ。正確にはエピソード記憶が無いんだよ。」

 「つまり……自分の思い出や人間関係を思い出せないっていうの?」

 「そうなる……のかな。」

 「そっか…。」

 その言葉を聞いて、月宮はダムが崩壊したかのように涙を流した。

 もう覚えてくれていないのだ、目の前の彼は、自分を救ってくれたことも、インデックスを救ったことも。それどころか自分達の知ってる彼ではない…。受け入れにくいがその点は受け入れなければいけないだろう。何よりも上条はインデックスには知らせていないみたいだし。

 泣く月宮を、上条は困った顔をしながら慌てていた。…そんな顔をさせたくて、ここに来た訳じゃない…月宮は泣き止むと、初めてあった時のように、言葉を放つ。

 「私の名は月宮小鳥、上条とは同級生で超能力者第八位。…またよろしく、友人(親愛なる上条)




インデックス編はこれで終わり、次は日常を一つ入れてから吸血殺し編です。


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日常回とかサブストーリー的なやつとか①
日常回というかなんというか①


日常回です、時間軸としては第三話の後となります。
それではどうぞ。


 風紀委員(ジャッジメント)、というものがある。

 この学園都市にて、学生達によって形成された治安維持

をする集団だ。

 風紀委員は、それぞれ学区と部隊で別れており、此度の舞台は第七学区の第一七七支部である。

 

 「くーろこちゃ〜ん♪」

 おちゃらけたな声が支部の部屋の中に響く、声の主は深い青髪のポニテに赤い瞳(心做しかハートが見える)の少女の名は、黒川(くろかわ)瑞祈(みずき)。この第一七七支部の一員だ。

 「どうしたんですの?黒川先輩。」

 茶髪のツインテールの少女、白井(しらい)黒子(くろこ)が、手元にあった書類を整理しながら、鈴のような声で黒川の呼びに応じる。

 「んもー、瑞祈って呼んでって言ってるのに〜!…っと、そだそだ。」

 黒川は不満げな表情をしたが、直ぐに用事を思い出したのか、真面目な声色にして言葉を続ける。

 「巡回、確か今日私達だよね?早く行こーよ。」

 「そうでしたっけ?直ぐに準備しますので先に外で待っていてくださいません?」

 そう言うと、黒子は残り少なくなった書類を整理し始めた。黒川は巡回用具一式を用意して外に出た。

 

 -月宮小鳥は、ある青年と出会っていた。

 藍色のロングヘアに、鮮やかな赤と黒のメッシュ。顔立ちは整っており、琥珀色(こはくいろ)の右目、鮮やかな赤の左目の青年…名前は確か、崩宮(くずれみや)柚季(ゆずき)と言ったか。

 崩宮と月宮は第七学区の公園のベンチに座り、二人で話していた。

 「小鳥さ、身長伸びた?」

 何気なく月宮に尋ねる崩宮。

 「…伸びたと思う?」

 ニヤケながら崩宮の方を見て言う月宮。崩宮は少し考えると…

 「…伸びたろ?」

 キリッと表情を浮かべて言う崩宮。

 月宮はニヤケていた顔に影を入れると、可愛らしい声を低くして

 「伸びてないよ?もうかれこれ二年程ね。」

 と、崩宮に言い放った。

 「なん…だと…!?」

 崩宮は驚愕の表情を浮かべ、月宮はソレを見ながら笑っていた。

 そんな二人に、二人の少女が近付いていた。

 

 -黒川と黒子の二人は、会話に花を咲かせながらも周りに目を向け、治安が維持されているか確認していた。

 「にしても平和だねぇ〜、ついこないだ火事があったばかりなのにさぁ。」

 黒川は欠伸をしながら、隣の黒子にそういった。

 黒子はそんな黒川の事をジト目で見つめながら

 「あまり欠伸とかしないで下さいな。私達がしっかりとしなければ他の学生に示しがつきませんわよ?」

 「そーんな事言ってー、黒子ちゃんも柚季とイチャイチャラブラブやってるんじゃないの〜?」

 黒川は悪びれずに、むしろ愉快そうに笑いながら黒子にそうやって言う。黒子は顔を赤くしてから大きな声で

 「そっ、そんな訳ありませんの!

 と叫んだ。

 辺りを歩いていた人達が何だ何だと黒子をチラ見していく。恥ずかしくなった黒子は

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 泣き叫びながら空間移動(テレポート)で逃げていった。

 「ちょっごめーん!」

 黒川は逃げていった黒子を、能力で追いながら走ってゆく。黒子が逃げた先には、丁度自分の幼馴染と黒子の彼氏が居るようだった。

 

 「…アレ黒子か…?黒子ー!」

 崩宮は、座っていたベンチの近くに、急に現れた人影に声をかけた。

 人影…黒子は、それに気付いたのか、先程までの涙を拭い、パァーっと笑顔を浮かべて崩宮に抱き着いた。

 「おっ兄様ー♪お兄様ではありませんか!こんな所でどうしましたの?」

 「今日は小鳥と会う予定があってな?ここで会ってたんだよ。…ほれ、そこにいる奴。」

 崩宮が指を指す方向には、苦笑いをしながら二人を見ていた月宮がいた。黒子は月宮の方を見ると、おかしなものを見た、と言った顔をした。

 「?どしたの?」

 月宮が黒子にそう尋ねると、

 「…いえ、黒川先輩から聞いていたような人ではなさそうな…というか貴方、性別はどちらですの?」

 と、聞いてきた。月宮はニパッと笑顔を作り出してから

 「見てわかるでしょ?」

 と言った。

 黒子はしばし考え込むと、やがて諦めたのか再び崩宮に抱き着いた。

 「こっとり〜ん!柚季ー!黒子ちゃーん!」

 暫くして深い青色のポニテの少女、黒川が三人を呼んだ。三人は一斉に向くと、黒川は何やら可愛らしいものを連れていた。

 ふわふわでもふもふな熊のぬいぐるみだろうか。

 「…どうしましたの?ソレ。」

 黒子が怪訝(けげん)そうな表情を浮かべながら黒川に聞く。

 黒川はアホっぽい表情を浮かべて

 「さっきそこで歩いてた人に渡されてねぇ。最近ぬいぐるみが爆発するーとかそういう事件あるけど…まさかねぇ。」

 黒川はケラケラ笑いながら人形を月宮の方に渡す。

 「なんで私に?」

 「ことりんの能力があれば最悪の事態は免れるでしょ?」

 「……ええ…酷くなぁい?」

 「まあまあ!ほら!身体を耐久力の高いヤツに変身しちゃいなよ〜!」

 と、茶化し立てる黒川を後目に、仕方ないかと呟きながら"人形"を何やらごそごそとする月宮。

 「この人形は………大丈夫、爆発しないよ。」

 何を言っているんだ?と言わんばかりの顔で月宮を見る三人、月宮は先程から手にしている人形と、上に来ていた学ランを脱いで、手で触れる。

 「いい?今から説明するから見ててね?えーまずはこちらから〜。」

 マジックをするようなテンションで学ランを丸める。そしてそれを…

 "セーラー服"に変化させた。

 「えー、このように私の能力は、自分以外も変化させることができます。ここまでOK?」

 三人は頷き、ソレを確認した月宮は説明を続ける。

 「これの応用でね、人形なんかの素材も粒子レベルで変化させることが出来るんだよ。だから大丈夫って事♪」

 変化させたセーラー服を学ランに戻しながら、月宮は3人に言う。

 と、ここで黒子が手をあげて質問する。

 「どのような原理を使っているんですの?貴方の能力は。」

 月宮は爽やかな笑顔で

 「わからない♪私、本能で能力使ってるから。」

 と、爽やかに言ってのける。…黒子は?マークを頭に浮かべたが、黒川は乾いた笑みを、崩宮は呆れた顔をしていた。

 「いいか?黒子、コイツは馬鹿なんだよ。」

 「馬鹿…?確か月宮さんは超能力者ですよね?」

 「そうだよ?」

 「それなのに馬鹿…とはどう言う…。」

 「ことりんは本能で能力を超能力者まで上り詰めてる人なの。」

 「成程…。つまり学力は低いけれど能力面は高い…と。」

 「そういう事!」

 …と、黒子は納得したような顔をした。

 

 「…さて、人形の件は風紀委員に任せて…私は帰るよ。」

 あの後、四人で色んな話をして過ごしていたが、そろそろ完全下校時刻になる為、解散にしようということになった。

 「じゃね〜。」

 「ええ、さようなら。」

 「じゃあな。」

 「ほいほいじゃねー。」

 熊の人形を片腕で抱きながら手を振って別れを告げる月宮と、3人で途中まで帰るのであろうか、黒子、黒川、崩宮はそれぞれ帰路に着いた。




次回は黒子と美琴回を挟んで、吸血殺し編となります。
また次回から書き方を変えますので、了承して頂ければ幸いです。


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ハロウィン回〜謎時空だけどコスプレしようぜ!〜

急遽仕上げたハロウィン回、今日の月宮達を見てみましょう?


 「ハッピーハロウィーン!お菓子頂戴♪上条!」

 「どちら様…?」

 

 今日は10月31日!科学の街である学園都市でもハロウィンが行われていたのだ!

 月宮はカボチャを被り、黒のマントを付けて上条の家にお菓子を貰いに行っていた。

 

 「えっと……ハロウィンのテンションでつい…アハハハ……」

 上条宅には上条(いつも通りの服)、インデックス(いつものシスター服)、月宮(カボチャ怪人)の三人がいた。

 「あっそうそう、インデックスちゃんコレどうぞ。」

 カボチャ怪人はカバンの中からクッキーを取り出してインデックスに渡す。インデックスは嬉しそうにはしゃいでいた。

 「もしかしてインデックスにお菓子を渡しに来たのか?」

 「え?うん。」

 「貰いに来たのではなく?」

 「あげに来たの。あっ、上条の分もあるよ!はい、手作りパンプキンクッキー。」

 上条にもクッキーを差し出す、上条はそれを手に取り

 「これ月宮の手作りなのか?」

 決して初心者が作れるようなレベルでは無いだろう、ハロウィンをイメージしたのか、可愛らしい人狼をもしたクッキーが入れられた袋があった。

 「どう?お菓子作りは意外と得意なんだけど…上手にできてるかな?」

 褒められて照れているのか、月宮は頬を染めながら上条とインデックスに聞く。インデックスは既に1枚食べたのだろう、笑顔で

 「すっごく美味しかったんだよ!」

 と、素直に感想を言ってくれた。

 上条も手に取り、口に運ぶ…。

 「んっ…これ美味しいな。カボチャの味が上手い感じに混ざってて、カボチャが苦手な人でも食べれそうだな。」

 「えへへ…♪上条やインデックスちゃんがカボチャ苦手かもしれないからね、上手く出来たなら良かった♪」

 3人で笑い合う、と、ココで上条がふと呟いた。

 「アイツ大丈夫かなぁ…。」

 かつて戦い、今では心強い親友である人物のことを気にしていた……。

 

 

 

 

 

 一方通行(アクセラレータ)は、吸血鬼のコスプレをしながら打ち止め(ラストオーダー)がお菓子をねだりに来るの待っていた。

 「まさかこのオレがガキとハロウィンなンざやるとはなァ……。コレもアイツのお陰なのかもな。」

 袋には子供が好きそうなお菓子の詰め合わせを用意していた、一人では選べないので知り合いの超能力者と無能力者が手伝ってくれた。後であの二人にはお礼を言っておかねばなるまい。

 居候先のソファーで寝転がり、コーヒーを片手に打ち止めを待っていると、部屋の外の廊下からパタパタと足音が聞こえた。

 「トリックオアトリート!ってミサカはミサカネットワークで手に入れた情報を元に一方通行に元気よく言ってみる!お菓子頂戴!」

 そういったのは10歳くらいの少女、打ち止めだ。彼女は今、白と灰色のボーダー柄のシャツを着ていた。

 「ほれ、菓子だろ?コレやるよ。……その格好オレか?」

 一方通行はお菓子の詰め合わせを渡しながら打ち止めに聞いた。

 「正解!ってミサカは嬉しそうに答えてみたり!似合ってるかな?どう!」

 「あーそうだなァ、似合ってる似合ってる。」

 「もー、適当に答えてない?」

 「適当じゃねェよ、オレの打ち止めは今日も可愛いわァ。」

 「そっ、そんなに直接的に言われたら顔赤くなっちゃう!ってミサカは既に赤くなっているであろう顔を隠しながらあなたに言う!」

 二人きりで過ごす10月31日…、こんな幸せが永遠に続けばいいのに。と一方通行は思った。

 

 

 

 

 その日白井黒子は恋人の家にいた。

 せっかくのハロウィン、コスプレもしてみようとサキュバスの格好を用意しながら彼氏の家に向かった黒子は、途中で面倒くさい人物と出会っていた。

 「やっほー黒子たん!今日は柚季の家でコスプレエッチ?その袋の中は………さてはサキュバスだなぁ〜?」

 ニヤニヤしながら露出の高いバニーガールのような格好ででそう尋ねるのは、黒子の風紀委員の先輩であり黒子のストーカーである少女、黒川瑞祈だ。

 「貴方…………風紀委員……です…よね?」

 「?風紀委員だけど?だってほら!」

 見せてきたのは風紀委員が付けている腕章だ。

 「貴方のような風紀委員がいてたまりますか!せめて吸血鬼などに…!」

 「嫌だ!吸血鬼とか在り来りだもん!それより早く行ったら?今日は私に任せなさい!さあさあ早く行けよおおお!」

 「……………はぁ…では行って参りますわ。」

その後、黒子と柚季はコスプレ●●●をしたのだとか。




どうでしたか?にしても黒子と柚季……何時か詳しく書かないといけませんね………。


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吸血殺し編
黒髪ロングの巫女さんは正義


長らくお待たせしました、全能変化吸血殺し編一話です。

尚、先に補足しておきますと本編開始時より前に、上条は青髪と土御門にはあっております。月宮と一緒に会っております。


 本棚を見るとその人の性格がわかると聞いたことがある。

 「オカルト、オカルト、漫画にラノベに……現実的なものが無いなぁ。」

 私、月宮小鳥はそんなどこの誰が言ったかも分からない戯言(うわさ)を何となく思い出したので、今見て見たという事だ。

 「そだ…上条はどうだったんだろ。」

 兎さんのキーホルダーがついた携帯を手に取って、電話帳から彼の番号を鳴らす。

 記憶喪失の友人、上条当麻の電話を。

 

 先程メールで、友人である月宮小鳥から本棚を見るとその人の性格がわかる…と言われたので、俺、上条当麻は自分の部屋の本棚を見ていた。

 「見事に漫画ばっかりだな……本棚は愚か部屋中見ても漫画だけじゃねぇか…。」

 こんなんでは月宮から電話がかかってきた時、何を言われるかわからないな……そう思ってると電子音が部屋に鳴り響く。

 それは携帯から鳴っている音だった、俺は携帯を手に取って電話に出た。

 「もしもし、上条ですけど…なんだ、月宮か。さっきの事だろ?見てみたけど漫画ばっかりだったわ。」

 『つまり上条の心の中は夢見がちってことか……。』

 「うわ言いやがったよこの人!言われたくない事を!」

 『まあそんな事だろうなぁーって思ったよ、あっ、漫画以外にもエロ本とかもあるんでしょ?ベッドの下は大丈夫?インデックスちゃんにバレてない?』

 「エロ本は別のとこに隠してあるよ。」

 『あっ、持ってるんだ。えなになにどんなやつー?』

 「急に食いついてきたな……、つーか男なら持ってるだろ?な?月宮。」

 『まーそうじゃないかな?私も持ってるよー百合物のえっちなやつ。』

 「へー…俺はお姉さん系のエロ本を…いや待て、なんでエロ本の話になってんだよ…。」

 『いーじゃんいーじゃんエロ本、もっと話そうよ。』

 「はぁ…。」

 月宮…月宮小鳥、学園都市に八人しかいない超能力者(レベル5)の第八位、オレとは7月に会ったらしい。()()()というのは、今の俺は記憶を失っているからだ。月宮にはこの事は知られている。同居人であるインデックスは知らないが…そうだ。

 「スマン月宮、オレ用事あるから切るわ。」

 『ん、OK。』

 さて、宿題をやる為の参考書を買いに行くか…。

 「インデックスー、出掛けるぞー。」

 

 「…?メール…青髪からか。」

 上条との電話を終えた後、メールが来ていたので確認すると青髪…クラスメイトにして親友にして変態同盟(HENTAI仲間)からのものだった。

 『つっきみーん、暇やし一緒に出掛けへん?』

 というメールだった。

 『私も暇だったし良いよ、何処に集合する?』

 と返す。暫くすると

 『OK〜!ならそっちに迎えに行くでー。今近くやし。』

 と返ってきた。近くにいるのか…なら迎えに来てもらおう。

 『なら迎えに来てもらおうかな、準備して待ってる。』

 と返した。さて…パジャマから着替えよう。

 

 さて、と身だしなみを整える為に鏡の前に出る。

 上は白の半袖にうさ耳パーカー(半袖)、下はジーンズのショートパンツを着る。姿は……このままでいいか、別に何かある訳でもないし。

 財布と…後は携帯を持って……っと、よし、準備OK。

 「月みーん!来たでー!」

 「はーい、今行くよー。」

 じゃあ行くか。

 

 「暑っついな…。」

 思わぬ出費だった、まさか参考書が3600円もするとは……。いや、実は見栄を張るために買ったとかも言い難い…。

 「とうま。」

 隣を歩くインデックスが声を掛けてくる、彼女は不機嫌な顔でオレの向こうを見ながら

 「え?マジで?お前三千六百円分もアイス食うつもりだったの?」

 「違うんだよ!別に食べたいとか暑いとか思ってないんだよ!」

 「うおっ!?急にキレるなよビックリすんだろ!」

 インデックスは確実に暑いだろう、だって彼女が着てるのはシスター服だし、しかも長袖だ。どう考えたって、誰が見たってこんな真夏日に着るもんじゃない。

 「それに…って話を聞いてよとうま!」

 「なんだよ、アイス食わないのか?」

 「それは食べるけど!」

 と、二人で騒いでいると

 「なあなあカミやん、そのシスターさんは誰?どういう関係?」

 「うおっ!?」

 「なんや、カミやん。えらいでっかい声出して。」

 「そーよそーよ上条。ドデカい声なんて街中で出すもんじゃないよ。」

 「なっ、なんでお前らがいるんだよ!」

 そこにいたのは友人二人…クラスの男子学級委員、青髪ピアスと八人目の超能力者、月宮小鳥がいた。

 月宮は呆れ顔で

 「なんでって言われてもねー。コイツ(青髪)と暇だし出かけてたのよ。」

 「そーそー、そうしたらカミやんが銀髪シスターとおるんやもん。そりゃやる事はひとつやろ?」

 青髪と月宮は互いを見て、呼吸を合わせて

 「「話しかけて関係性を確認する!」」

 「いや…月宮は知ってるだろ。オレとインデックスの関係性。」

 「なんやて!?月みんは知っとるんか!?」

 「ん?うん。アレよアレ、インデックスちゃんと上条はこい「おおーい待て月宮ァ!お前何を口走るつもりだ!?」恋人なんだよー。」

 コイツ思いっきりいい笑顔で嘘つきやがった!?

 「無い無い、流石に無いでー月みん。そんなんやったら完全に殴っとるよカミやんを。」

 笑顔でそういう青髪、目は笑ってない……。

 「なーカミやーん?」

 「あぁ当たり前だインデックスが俺の彼女なわけないじゃないかなー月宮なー!」

 「え!?違うの!?」

 なんだその『うっそ超意外ー!』って顔は!おかしいだろ!?お前いたんだろ!?なぁ!

 「?とうまは私の彼氏なんかじゃないんだよ。それよりもとうま!早くアイス屋に行こ!」

 そうインデックスがいう、それで納得したんだろう、青髪はそれ以上何かを言うのをやめた。

 「あっ、インデックスちゃんインデックスちゃん。今日そこしまってるよ。」

 「え……?こっ、ことり!今のってどういう意味!?」

 「いやね、私と青髪もさっき食べに行こうとしたんだけど、閉まっててやめたの。ねー青髪。」

 「せやせや。」

 「そんな…!」

 「…あっそうだ!アイスじゃなくても涼めるところならあるよ、そこ行こっか。」

 

 

 

 今の状況を説明しよう。

 月宮の言葉でオレたち4人はファストフード店に来ていた、そしてここはその二階の窓側の禁煙席、座る場所がなかった、ということで相席をすることになったのだ。まあそこまではいい……問題は、そこに座っていた少女のことだ。

 「─────食い倒れた…。」

 長い黒髪を投げ出して突っ伏した巫女さんだった、いや別にいいんだ、いいんだが一つ言いたい。

 「何故巫女さんがファストフード店で食い倒れを!?」

 巫女さんだってファストフード店くらい来るだろう、でもまさか食い倒れるほど頼むとは思えるわけが無い。

 と、巫女さんの隣に座った月宮が話しかけた

 「ねぇねぇあなた名前はなんて言うのかな?あっ私は月宮小鳥っていうのあなたの名前が知りたいな、姫神(ひめがみ)秋沙(あいさ)ちゃん…ね、いい名前だね、で、秋沙ちゃんはなんで食い倒れちゃったのかな?良ければ理由とか教えてくれると嬉しいな。」

 普段よりも饒舌な気がするが…きっと、気の所為だろう…うん、きっと気の所為だ、月宮が嬉々とした顔で巫女さんと話すなんてわからない。

 「……一個五十八円のハンバーガー、お徳用の無料(クーポン)券が沢山あったから。」

 「うん。」

 記憶喪失の上条にはなんの事だか分からないが、身体が『ぺちゃんこな非常食用ハンバーガー』と覚えていた。

 「だから30個ほど頼んでみたり。」

 「お徳過ぎだバカ。」

 ビクッ、と動かなくなった巫女さん、無言だからこそなのか傷ついてるのが感じ取れる。

 「あー上条酷いこと言ったー!秋沙ちゃん傷ついてるよ!」

 「すっ、すまん!さっきのバカは言葉が足りなかったんだ!だからそんな目で俺を見るんじゃねぇ青髪とシスター!」

 「…やけぐい、お金足りなくなって。」

 「は?お金足りないって……なんのお金だよ。今日の晩飯代か?」

 「帰りの電車賃、400円。今の手持ちは300円。」

 「あぁそういうことか……。てか計算してなかったのか?」

 「無計画だったから。」

 「はぁ…。足りないんだったら誰かから借りればいいんじゃねぇの?」

 「それはいい案。」

 「なんでそこで真っ直ぐオレの方を見る!?ってか期待の目を向けるんじゃねぇ!」

 彼女から離れるように後ろに反れる、てかコイツ……

 「わ〜!秋沙ちゃん顔綺麗!美人さんじゃない!」

 と、月宮がテンションMAXで言う。そう、彼女はとても美人だった。眠たげで感情に乏しい瞳が攻撃性が感じれなく、奇妙な包容力さえあるような美人。

 「カッ、カミやんが…!たった今あった女の子と普通の会話してる!?嘘や!こんなん嘘やろ!」

 「うるせえ二次元星人(あおがみピアス)!業務連絡テメェは後で体育裏へ集合するように!あとそれと姫神(おまえ)もどうにか残り100円を調達してさっさとおうちに帰るように!以上作戦終了!」

 「100円くらい貸してあげなよー。」

 「無理なもんは無理なんだよ、だったらお前が貸せばいいじゃねぇか。」

 む…と少し悩む月宮、だが直ぐに答えが決まったのか、ポケットから財布を取り出して

 「秋沙ちゃん秋沙ちゃん、百円とあとこれ、私の連絡先!」

 とてもいい笑顔でお金と紙を渡していた、姫神もお金と紙を受け取りお辞儀をして

 「有難う、今度返す。」

 と、お礼の言葉を言っていた。

 「さて…と、そろそろ俺らは帰るか。じゃあな、姫神。」

 「バイなら〜秋沙ちゃーん!」

 早く帰って宿題を終わらせたい……その一心での言葉だ。オレ、インデックス、青髪、月宮は立ち上がって姫神をあとにした。

 

 

 姫神と別れたあと、青髪とも別れて俺ら三人は帰路についていた。

 「…なあ月宮、なんでお前猫の姿なの。」

 「猫は可愛いからだけど?」

 「可愛いからいいんだよとうま!」

 ぎゅーっと猫の姿の月宮、猫月宮を抱きしめるインデックス、インデックスは笑顔で猫月宮の方にしても楽しそうな雰囲気だ。

 「いやーこの姿はいいもんだよ。子供からモテモテだからね。」

 …楽しそうなと言うか、変質者のような態度だな猫月宮。まさかコイツ子供とか襲ってないだろうな?

 「失礼なことを考えておるね?少年。」

 「なんでそんな口調なんだよ……考えてねぇって、ほらとっとと帰るぞー。」

 「はーい。…ん?どうしたの、インデックスちゃん。」

 「ちょっと気になることがあって……とうま、ことりと先に帰ってて。」

 インデックスが月宮を俺の方に置いて走ってゆく、大丈夫だろうか?気になるしついて行こう。そうして足を動かした時だった、後ろから、声をかけられた。

 「久しぶりだね、上条当麻。そして月宮小鳥。」

 その声の主は、2m近くもある赤髪の神父の少年だった。




さてさて、早速違うとこもありました。原作とは少し違った展開で書いてゆきます。次はまた長くなるとおもいますが……気長に待っていてください。


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