この素晴らしい天才物理学者に祝福を!! (血の一族)
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第一章この素晴らしいライダーに祝福を!!
この素晴らしい転生に祝福を!!


このすばの映画公開に間に合って良かったです


『これで終わりだ!!エボルトー!!』

 

 

『馬鹿な!!この俺が滅ぼされるというのか!ふざけるなぁ!人間共がぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

仮面ライダービルドのライダーキックがエボルト怪人態へと決まりそのまま地面へと向かっていき…そして大きな爆発が起きる

 

 

『うぎあぁぁぁぁぉぉぉぁ』

 

 

エボルトの断末魔の悲鳴が響きエボルトが倒された事でそのエネルギーか宇宙へと次元の狭間へと広がって行く。そしてそのエネルギーは別次元の壁を越えて2つの地球が融合し新しい世界が作られて行く。。。

 

 

「ここは…何処だ?」

 

 

戦兎が目覚めるとそこはとある建物の中であった。戦兎が周りを見渡すと薬品などがある事から此処は何らかの医療施設の中である事を戦兎は理解した。

 

 

「スカイウォールが無い、此処は本当に新世界なのか?」

 

 

戦兎は窓の外から見える景色で自分が今いる世界はこれまでいた世界とは違う事を理解する。そしてそこまで言った時、戦兎は

 

ある違和感に気が付いた。自分の声がやたらと高いのだ。まるで女性の様な…

 

 

「めぐみん!良かった気が付いたのね!」

 

 

戦兎が後ろを振り返ると黒い髪で赤い瞳をした少女が自分に駆け寄ってくるのが見えた

 

 

「めぐみん、何処も怪我はない?里の大人達が魔獣と戦いに巻き込まれて気を失ったのよ?」

 

 

その少女は自分の事を心配しているのが理解出来たがその会話に違和感を覚えた戦兎は少女の間違いを訂正する為に声を掛ける

 

 

「心配してくれるのは有難いが悪いが俺は君の友人?のめぐみんじゃないんだが…」

 

 

戦兎がそこまで言うとその少女はきょとんとした表情を浮かべると真剣な表情に変わり戦兎の手を掴むとその部屋にある鏡の前へと連れて行く。その鏡に映っていたのはその少女と同じ黒い髪と赤い目をしている1人の『少女』が映っていた。

 

 

「…へ?」

 

 

戦兎も先程の少女と同じ様にきょとんとした表情を見せると鏡の中少女もきょとんとした表情を見せ、戦兎が右手を上げると鏡の中の少女も右手を上げた。その様子を見ていた友人らしき少女は真剣な表情に変わり

 

 

「もしかして…頭を打った所為でおかしくなっちゃったんじゃ?…ひょいさぶろーさんとゆいゆいさんに何て説明すれば良いのよ…」

 

 

ブツブツとその少女は何かを喋っているが当の本人である戦兎はそれどころではなかった。

 

 

(この少女は自分の友人のめぐみんって子の頭が可笑しくなったのではないかと心配しているのか…そしてそのめぐみんって子はこの鏡に映っている黒髪の少女…しかし今此処に立っているのは俺、桐生兎戦だ、でも鏡に映っているのはめぐみんって呼ばれる少女のみ…つまりこの事から導かれる結論は…)

 

 

戦兎は目を閉じて息を吸い込み天を仰き、そして…

 

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

戦兎の大声にビクっとした少女を差し置き戦兎は大声で喋り続ける。

 

 

「落ち着け…確か俺は前の世界でエボルトとの戦いを繰り広げていた筈だ…そしてエボルトを倒した時のエネルギーで新たな新世界を作った…そこまでは間違い、なのにどうしてこんな事になっているんだ!!完全に色々な法則を無視しているぞ?まぁ新世界を作るという時点で物理法則を完全に無視した行いだが…」

 

 

そこまで言うと戦兎の中にぼんやりと不思議な記憶が脳裏に浮かんだ。戦兎は恐らくこのめぐみんって子の記憶なのだろうと考えていると自分を好奇の目で見つめてる少女に気が付いた

 

 

「めぐみん…一体何を言ってるの?エボルトとか新世界とか訳が分からないわよ…」

 

 

戦兎は少女が自分の所為で怯えてしまったと考えた為、戦兎は安心させる様に優しく少女に話しかけた

 

 

「済まない、どうやら記憶が混乱しているらしい。申し訳ないが君の事とこのめぐ…私の事を説明してくれないか?」

 

 

戦兎の説明を受けた少女は驚き半分納得半分の表情を見せると自分の事を戦兎に説明し出した

 

 

「私の名前はゆんゆん、めぐみんのい、1番の親友で私達は紅魔族の一員なの」

 

 

ゆんゆんという少女の説明のおかげで自分は彼女の親友で自分達は紅魔族と呼ばれる魔法使いの一族だという事は理解出来た 。ゆんゆんの話を聞いた戦兎は今度は自分の事を説明する。

 

 

「つまりこの俺は君の親友のめぐみんという少女で間違いないんだな?」

 

 

「ええ、貴方も戦兎さん…で良いのよね?戦兎さんって人はそのエボルトっていう悪い奴と戦って、そしてパンドラボックスという物の力を使って新世界を作った…という事よね?」

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

めぐみんとゆんゆんは近くにある椅子に腰を下ろしてそう会話をしていた

 

 

「夢と現実の記憶が混同しているのかしら?それとも魔獣から幻覚魔法をかけられたとか?でも嘘を言っているようには見えないし…気を失う前のめぐみんとは余りにも性格が違ってるし…夢の世界の話に関しては兎に角、めぐみんの記憶が混同しているのは本当みたいね」

 

 

「俺の方こそ、魔法とか、魔王軍とかまるでゲームの話で正直現実味がないが、今の自分の状況を考えると信じるしかないな」

 

 

めぐみんはゆんゆんが用意したお茶を一口飲むと気を失う前のゆんゆんの友人のめぐみんがどういう性格だったのか気になった戦兎は

 

 

「ゆんゆん、君に聞きたいんだが俺は…めぐみんは一体どんな性格の子だったんだ?」

 

 

めぐみんの言葉を聞いたゆんゆんは嬉しそうな表情を見せて以前のめぐみんの事を話した

 

 

「めぐみんは私の親友と同時に永遠のライバルなの、何時もお弁当の時間になるとこれ見よがしに現れてお弁当をかけて勝負して何時もめぐみんが…」

 

 

「ストップ!!もう分かった!それ以上は嫌な予感がするから聞いたくない!」

 

 

めぐみんはゆんゆんの話を強制的に中断させると頭を抱えた

 

 

(どうやら、このめぐみんって子は色々と性格に難があったらしいな…ゆんゆんって子にも原因があるが…)

 

 

とりあえずは今後ゆんゆんにお弁当をたかる事を止めようとめぐみんは心に誓った。その後、今日のところは家に帰る訳には行かないという事でゆんゆんの家に泊まらせて貰う事になり、めぐみんとゆんゆんはゆんゆんの家に向かって歩いていた。家まで間にゆんゆんはめぐみんにめぐみんが夢で見た世界の事を聞きたがっていたのでめぐみんは快くゆんゆんに夢の世界…即ち旧世界の事を話し始める。何故初めて会った相手に此処まで話す事が出来るのか、恐らくめぐみんは…戦兎は欲しかったのだろう、誰も自分を知らない、自分が知っている人間がひとりもいない、そんな孤独の中にある自分の境遇を理解してくれる人物を、孤独な戦兎にとってゆんゆんの存在はとても嬉しい物だった。そして戦兎の脳裏に共にエボルトと倒す為に戦った大切な仲間達…猿渡一海、氷室玄徳、石動美空、滝川紗羽そして自分の1番のパートナーと言ってもいい万丈龍我、皆エボルトを倒す為に、エボルトの存在しない世界を作り出す為に命をかけてそして自分に未来を託してくれた。自分はそんな仲間達と力を合わせて新世界を作り上げたのだ。自分がいる世界が本当にパンドラボックスで作り上げた新世界ならばこの世界にも万丈達がいる筈だ。ゆんゆんに話している間に戦兎の中にそんな希望が生まれ始めていた。しかし、今の自分はめぐみんという非力な少女の姿に変わってしまっている。龍我達は自分だと気づくだろうか?考え込んでいる戦兎はゆんゆんに声をかけられるまでいつの間にか自分が無言になっていた事に気付かなかった。

 

 

「めぐみん?いきなり黙り込んでどうしたのよ?」

 

 

「ん?あああ、すまない、少し考え事をしてた」

 

 

考え込んでいためぐみんは自分がいつの間かゆんゆんの家に着いていた事に今更の様に気づいた

 

 

「…デッカ!!!」

 

 

ゆんゆんの家を見た戦兎の第一声がそれであった。ゆんゆんの家は大きな館で恐らくはこの里の中で一番大きい物である事を戦兎は理解出来た

 

 

「ゆんゆんの家ってもしかしてかなりの金持ちなのか?」

 

 

「私の父親はこの紅魔族の族長よ?其れも忘れちゃったの?」

 

 

ゆんゆんの説明にめぐみんはゆんゆんの家が里一番大きい理由に納得する。そしてゆんゆんが大きな扉を開けると丁度玄関辺りに人がいたのか、身につけていたマントを翻しゆんゆんと客人であるめぐみんに紅魔族伝統の挨拶を披露する

 

 

『我が名はもすもす!!紅魔族随一のアークウィザードであり、紅魔族の長である者!!』

 

 

決まったとドヤ顔で自分に酔っているモスもすとは対照的にゆんゆんは顔を真っ赤にしており、めぐみんは唖然としていた

 

 

「…紅魔族ってこんな挨拶が日常茶飯事なのか?」

 

 

「…めぐみんも結構ノリノリでこの挨拶をしたんだけど…何回もやめてって言っているのに…本当に恥ずかしい…」

 

 

めぐみん丸くなってるゆんゆんを宥めるともすもすへの挨拶をそこそこにゆんゆんの部屋へと向かって行く。ゆんゆんの部屋に着いためぐみんとゆんゆんはクッションを床にしきその上に腰を下ろし今後のめぐみんの生活の相談を始める

 

 

「とりあえず周りにはめぐみんは授業中の事故で記憶喪失になったという事にしておきましょう。流石に別人の様に人が変わってしまっためぐみんの事を隠すのは難しいし、何よりも夢の世界の事を信じて貰えるとは思えないわ」

 

 

めぐみんはゆんゆんの言葉に同意しゆんゆん言う通りクラスメイトや家族に記憶喪失という設定で通す事した。かつては本当に記憶喪失であった自分が今度は周りを誤魔化す為に記憶喪失の振りをしなければならない事に戦めぐみんは苦笑いを浮かべる。そしてゆんゆんから簡単にクラスメイトと自分の関係を確認した後はゆんゆんからこの際に普通の女の子としての会話ややりたい事に付き合わされた事は余談である。

 

 

ゆんゆんが眠った後、めぐみんは自分の持ち物を改めて確認する。当たり前の話だがビルドドライバーやジーニアスフルボトルを始めとするフルボトルは全て所持してはおらずにそれに関連したサポートアイテムも全て紛失してしまっている。残っているのは前のめぐみんが持ち歩いていた教科書を始めとする物ぐらいだった。

 

 

「ふう…当然の話だが前の世界のフルボトル類のアイテムは失っている様だな…何とかこの世界にある物でライダーシステムを作る事が出来れば良いんだが…見たところこの世界の文明は前の世界よりも低い見たいだし、素材があるかどうか…まぁ、材料は兎も角開発費に関しては前の世界の技術を使えばライダーシステムの開発資金集めにはなるだろう…よし!当座の目的はこれで行こう、まぁ、てぇんさぁい物理学者の俺に掛かれば問題は無いな!なぁはははは!」

 

 

この世界でも桐生戦兎は相変わらずの様子であった…

 

 

次の日、めぐみんはゆんゆんに連れられめぐみんの家へと向かっていった。家に到着するとめぐみんは前の自分が住んでいた家がオンボロである事に驚いていたがそれ以上にめぐみんの両親と妹はめぐみんが記憶喪失となった事に驚きそして心のそこから心配してくれていた。そんな優しい人達を騙している事にめぐみんの良心が痛んだ。めぐみんの家族はそんなめぐみんの本心には気付かずに記憶喪失になった娘のめぐみんの記憶を取り戻す為に紅魔族伝統の名乗りをする。

 

 

「我が名は、ひょいさぶろー!紅魔族随一の魔道具職人となる者!」

 

 

「我が名はゆいゆい!紅魔族随一の魔道具職人の妻となる者!」

 

 

「我が名こめっこ!紅魔族随一の魔性の妹にして、家の留守を預かる者!」

 

 

それぞれに決めポーズとり見事に名乗りを決めた彼らの背後に効果音が聞こえたのは多分気の所為ではないだろう。

 

 

「…あの、この紅魔族の名乗りって一々やんなきゃいけない決まりでもあるんですか?」

 

 

めぐみんは酷く疲れた表情を浮かべゆんゆんを見るがそんなめぐみんにゆんゆんは心の底から同情の視線を送るのだった。その後ゆんゆんは家へと帰って行き、めぐみんはめぐみんとしてひょいさぶろー達との初めての夕食に入るがそのメニューに戦兎は絶句する

 

 

「今日はめぐみんの好物のパン耳のラスク、パン耳とそこら辺の草を使ったサラダ、後はこめっこがめぐみんの為に取って来たセミの素揚げよ」

 

 

あんまり過ぎる夕食にめぐみんは絶句する。どうやらこの家の経済状況はあまり宜しくないらしく、しかもその原因はどうやらひょいさぶろーの魔道具の所為らしい。ひょいさぶろーは一風変わった魔道具作る事が出来るがその多くは実用性がなく売れない為に家計は常に火の車らしい。しかしとあるマニアにだけはその魔道具は売れているという話だ。戦兎はこの家の経済状況を真っ先に改善すべきと決意し、父親には魔道具作りに興味があるという形で工房出入りする事を許して貰い。学校ではゆんゆんからこの世界の常識と知識を教えて貰い、桐生戦兎いやめぐみんはこの異世界で新たな人生を歩み始めたのだった…

 

 

 

ここはとある天界…

 

 

「この魂の波動は…間違いなくあの人の物…いずれは会わなければいけない時が来るでしょう。その時を楽しみにしていますよめぐみんさん、いや『桐生戦兎』さん」

 

 

 

第1話はここまでです。この作品ではめぐみんは爆裂狂になる事はありません、ビルドへの変身はもう少しかかる予定です。気長に待っていて下さい。

 

 

 

 




評価、感想待っています。


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新たな出会いに祝福を!!


『てんさぁい物理学者の桐生戦兎は地球外生命体エボルトとの死闘の末に新世界を作り出す事が出来たが気がついたらその姿はめぐみんと呼ばれる少女になっていた』


『めぐみん、桐生戦兎って誰?貴方はめぐみんでしょ?やっぱりお医者さんの何処に連れて行った方が良いんじゃ』


『ちょっと待てよゆんゆん、此処はあらすじ紹介の場だからあまりそういうツッコミはして欲しくはないんだけど?』


『あらすじ紹介?何言っているのかは分からないけど、今のめぐみんを放って置く事は出来ないわ!さぁ、病院に行くわよ!』


『俺は別に頭がおかしくなってないっての!これからやる2話で分かるからちゃんと見て』





 

桐生戦兎がこの世界に転生してから2年が過ぎた。この2年の間に戦兎は自分がいた世界とこの世界とでは常識というのが大分違う事を改めて実感した。まずこの世界ではエリス教、アクシズ教と呼ばれるふたつの宗教組織が存在しており、そしてそのふたつがこの世界における主要な宗教組織である。しかし実際のところアクシズ教よりもエリス教の方がこの世界における最もポピュラーな宗教というのが一般的な認識となっていた。そしてエリス教でご神体として祀られている女神エリスはこの世界の通貨の名前にも使われている程の人気の女神である事を戦兎は文献で知る。それに対するアクシズ教はエリス教とは正反対の戦兎達の世界でいうカルト組織で信者達も奇人変人、乱暴者、独善かつ自己中心的な者が多く、多くの者に煙たがられていた。その為世間からは『機動要塞デストロイヤーが通った後はアクシズ教徒以外、草も残らない』と並のチンピラやモンスターよりも恐れられている。 そして紅魔族とは優秀なアークウィザードの一族であり。その一族の出身者の多くは前線で活躍する超一流の魔術師が多い。それだけならば普通の一族なのだが紅魔族はカッコイイ名乗りや自分がもっとも輝くタイミングでカッコよく登場する事に拘る所謂厨二病な一族であり、名前にも紅魔族のセンスが目立っている。その為周囲の人達からはアークウィザードとしては重宝される一方そのセンスや性格が災いし周りから浮いたりトラブルが絶えずにいるという良い意味でも悪い意味でも目立つ一族なのだった。

 

 

「よし…今日はこんなところかな?」

 

 

戦兎…めぐみんは父親の工房の一角に併設された自分の研究スペースで手作りの端末…パソコンを開発している途中であった。紅魔の里では明らかに戦兎の世界における現代兵器が存在しており、そんな兵器の一つであるレールガンが紅魔の里で物干し竿として使われているところを初めて見た時めぐみんは腰を抜かす程驚いた。そしてゆんゆんからこの世界には勇者候補と呼ばれる人間が時折現れると言う話を聞いためぐみんは彼らの持ち込んだと言われている技術や知識から彼らが異世界からの転生者である事を知った。つい最近では魔剣の勇者と呼ばれている青年との間で情報を交換したばかりだった。

 

 

「姉ちゃん!お母さんがご飯だって!今日は夕食はジャイアンドトードの唐揚げだって!」

 

 

めぐみんの研究スペースに妹のこめっこがはしゃいで様子で入って来てそう言う。2年前までは固形物はたまにしか食べられずに同年代の子に比べ痩せ細っていたこめっこだがこの2年間で顔色が良くなり体型も同年代の子どもに負けないぐらいになった。それもこれもめぐみんの開発品のおかげである。めぐみんは前の世界の記憶と自分の技術でこの世界には無い便利アイテムやちょっとした生活用品を開発してそれを販売していたのだ。当初は父親であるひょいさぶろーの反発が大きかったがめぐみんの作るアイテムの売り上げを見たゆいゆいの鶴の一声によりひょいさぶろーの反論は封殺されめぐみんのアイテム開発と研究は認められる事となった。ゆんゆんとは良き友人関係を結んでおり学園生活でも良きクラスメイトとしても交流している。そしてこの2年間で一番変わった事といえば一族と学園におけるめぐみんの立場であった。2年前の事故が原因なのか桐生戦兎としての記憶が宿ったのが原因なのかは不明だがめぐみんの中から魔力が消え去っていたのだ。めぐみんのアークウィザードとしての素質は非常に高くこのまま行けば歴史に名を馳せるレベルになれる筈だっためぐみんの魔力喪失は色々な人に衝撃を与え何度か魔力を回復させる方法が試されたが一向に効果は無く周りの人々も次第に諦めの境地へと至りめぐみんの魔力復活を諦めてしまった。紅魔族始まって以来の優等生であるめぐみんは一転して紅魔族随一の劣等生になってしまったが、めぐみんは其れを気にしている様子は一切なく代わりに研究やアイテムの開発へと没頭する様になりめぐみんは別の意味で一族から浮いた存在になってしまったがめぐみん本人には関係のない話であった。

 

 

「ふぅ…今日もお腹いっぱいご飯が食べられて幸せ〜」

 

 

膨らんだお腹をさすりながらこめっこはしない床で横になっており、めぐみんはそんなこめっこに呆れた表情を見せると

 

 

「こめっこ、食べた後直ぐに横になると豚になりますよ?」

 

 

「だって、ご飯が美味しすぎて沢山食べちゃうから何時も食べ過ぎて動けないんだもん〜」

 

 

幸せそうな表情を見せているこめっこにめぐみんはそれ以上強くは言えずにめぐみんは研究スペースへと戻って行く

 

 

「姉ちゃん、また開発の続きをするの?」

 

 

「ええ、もう少しで開発に一息つきそうなのでその後に寝るつもりです」

 

 

めぐみんはそう言うと研究スペースへと戻り再び開発作業へと取り掛かる、2年間の研究の末にこの世界の魔力を利用したあるアイテムが完成直前の為に今夜中に一気に仕上げるつもりなのだ。めぐみんは気合いを入れると一気に開発作業を進めていった。

 

 

 

 

 

「ここは何処でしょう?私は確か研究スペースでアイテムを開発していたはずですが…」

 

 

めぐみんはいつの間にか暗い空間で椅子に座っており、自分は何故こんな所にいるのかと困惑しながら周りを見渡しているととある少女の声が聞こえた

 

 

「お待ちしていましたよ。めぐみんさん…いや、桐生戦兎さんと言った方がよろしいでしょうか?」

 

 

この少女は自分の正体を知っている?めぐみんは桐生戦兎としての表情を見せるとその少女の事を睨み付ける

 

 

「あんた一体何者なんだ?何故俺が桐生戦兎だと知っている?あんたの目的はなんだ?」

 

 

めぐみん…戦兎の強い視線に対してその少女は顔色ひとつ変えずにしっかりと戦兎を見つめる。戦兎は少女の自分に対する視線から敵意を抱いていない事を確信し今の状況そしてゆんゆんから見せて貰った女神エリスの肖像画。そして少女が纏っている神聖なオーラから戦兎はとある可能性にたどり着く

 

 

「ひょっとして貴方が女神エリス様って奴なのか?」

 

 

「はい、私はこの世界で幸運を司る女神エリスです。本来ならば死んだ人物のみ此処に来る事になるのですが今回は特例です」

 

 

「特例?それはどういう意味だ?」

 

 

「私は貴方の戦いの事を知っています。貴方が巨悪を倒した後パンドラボックスで新たな世界を作り出した事も知ってます。しかしその所為で本来ならば起こり得なかった異変が起きているのです」

 

 

「異変?それは一体何の異変なんだ?」

 

 

「本来の歴史ならばめぐみんさんは魔力を失う事はなく、アークウィザードとして旅立ち、アクセルの街でとあるパーティに加入し、いずれは魔王討伐に貢献する事になっていました。しかしこの世界のめぐみんさんは魔力を失いそして桐生戦兎さんの記憶が宿った事で本来の歴史からかけ離れた人物となってしまったんです」

 

 

「成る程、つまりエリス様は俺がこの世界に現れてしまった所為で異変が起きたから、その異変を俺自身の手で何とかして欲しいと言いたいんだな?」

 

 

「簡単に言えばそうなります。戦兎さんには辛い話かもしれませんが…」

 

 

「いや、貴方が気にする必要は無い。俺が原因で起きた事ならば俺自身でカタをつける。それに俺が現れなければ自分の人生を歩めたかもしれないめぐみんの為にも」

 

 

「ありがとうございます!私は普段天界に居るので余り手を貸す事は出来ませんが貴方に女神エリスの祝福を授けます。貴方に女神エリスの祝福を」

 

 

エリスが戦兎に祈りを捧げると戦兎の身体が一瞬淡く光り不思議な力が自分の肉体に宿った事を感じる。その後戦兎の足元に魔法陣が現れ戦兎は光と共に上空に開いたゲートの中に消えていった。そしてひとり残ったエリスはボソと呟いた

 

 

「頼みましたよ…桐生戦兎、いや、悪魔の科学者葛城巧(かつらぎたくみ)

 

 

そんな意味深なエリスの呟きに気づく者は居なかった。

 

 

「ん…朝か…どうやらいつの間か眠ってしまったらしいな」

 

 

めぐみんは自分がいつの間にかうつ伏せの状態で眠っていた事に気付くと固まってしまった身体を伸ばし、顔を洗う為に洗面所へと向かう。顔を洗っている時にめぐみんは昨日自分が見たアレは夢でエリスは夢の中で自分に会いに来たという、普段ならば考えもしない方向に思考が及ぶ、それだけ自分はこの世界に染まってしまったという事だろう。そんな事を考えながらめぐみんは苦笑いを浮かべるが夢の中でのエリスとの邂逅は間違いなく実際にあった事だと確たる確信を持っていた。

 

 

「めぐみん、今日も開発を手伝いに来たわよ!」

 

 

顔を洗い終えためぐみんは服を着替え洗面所から出てくると玄関の方からゆんゆんの声が聞こえて来る。めぐみんはゆんゆんを出迎える為に玄関へと向かうと赤い顔でモジモジとした様子でゆんゆんが立っていた。相変わらずゆんゆんは人見知りで内気な性格をしているがめぐみんに取ってゆんゆんは今のめぐみんが家族以外で心の其処から信頼出来る出来る数少ない存在。大切な友人だと思っていた。その為休みの日などはこうして研究や発明を手伝って貰っていたのだ。

 

 

「今日も手伝ってくれてありがとうゆんゆん」

 

 

「て、手伝うのは当たり前でしょ!だ、だって私とめぐみんはし、親友なんだから!」

 

 

真っ赤な顔でそう言うゆんゆんにめぐみんは思わず庇護欲をそそられていると今日は朝から大事な用事がある事をめぐみんは思い出した

 

 

「ゆんゆん。申し訳ありませんが朝は私に会いたいという人がいるので私がお客と応対している間、居間でお茶でも飲んで待っていてくれないか?」

 

 

「分かったわ、応対が終わったら声をかけてよ。直ぐに研究スペースに向かうから」

 

 

 

そう言うゆんゆんと別れるとめぐみんは客が待っている工房の入り口へと向かって行く

 

 

工房の入り口に到着すると非常に肌が白く、まるで死人の様な顔色の女性がめぐみんの事を待っており、女性が歩いてくるめぐみんの存在に気づくと笑顔を浮かべながらめぐみんの元へ近づいて来た。

 

 

「貴方が最近紅魔族の中で有名な魔道具職人のめぐみんさんですね!わたしはアクセルの街で魔道具屋を営んでいるウィズと申します」

 

 

「アクセル?アクセルっていったら駆け出しの冒険者達が集まるというあの街の事ですよね?何故そんな街の人がわざわざ紅魔の里まで来たんですか?」

 

 

「最近アクセルの住人や冒険者さん達の間でめぐみんさんの作った魔道具や不思議な道具が大人気なんです。でも、その魔道具やアイテムを売っているお店は何処にもないのでもしよければ私のお店で売らせて貰えればと思いまして…」

 

 

どうやらウィズと名乗った女性商人は自分の作った魔道具や生活用品を自分の店で売らせて欲しいようだ。確かに自分が作った物の数々は時折訪れる冒険者達や商人達には大人気なのは理解している。ウィズはそれに目をつけたのだろう。めぐみんは特に断る理由もないのでそれを了承するとウィズはめぐみんの両手を握きると、とても嬉しそうな表情で礼を言った。

 

 

「ありがとうこざいます!これからもめぐみんさんとは末永いお付き合いをしていきたいです!あああ…これで日々の食事や家賃に困る生活から解放されるんですね…」

 

 

どうやらウィズはかなり苦労した生活を送っていたらしい、めぐみんは同情の視線をウィズに送ると、めぐみんはある事を思い付き、其れをウィズに交換条件として提示する事にした

 

 

「ウィズさん、貴方のお店に私の商品を売るのは構いませんが代わりに私の頼みをひとつ聞いて貰えますか?」

 

 

「めぐみんさんにはこれからお世話になるので私に出来る事ならなんでもやらして貰いますよ?」

 

 

めぐみんの言葉にウィズは快く了承してくれたのでめぐみんは遠慮なく交換条件を提示する

 

 

「学園を卒業した後私はアクセルの街へと旅立つつもりです。私がアクセルの街に到着した暁にはウィズさん貴方のお店で住まわせてくれる事それが貴方のお店で私の魔道具やアイテムを売る条件です」

 

 

ウィズはめぐみんの提示した条件が意外だったのか素っ頓狂な声を上げた

 

 

「え?そんな事で良いんですか?」

 

 

「ええ、それで構いません。まぁ、売り上げの一部は家に仕送りをさせて貰いますがそれ以外は住まわせてくれるだけで良いですよ。もしかして迷惑なのですか?」

 

 

「と、とんでもないです!それぐらいは全然構いませんよ!それでめぐみんさんの魔道具やアイテムが販売出来るならば幾らでも住んで構いません!」

 

 

「良し、なら契約は成立ですね。これから末永いお付き合いをお願いしますよウィズさん?」

 

 

その後契約書にサインをして貰うとウィズはウキウキした様子でアクセルの街へと帰っていった。めぐみんは思わぬ形でアクセルの街に行くキッカケを掴めた事に内心安心すると期日までにウィズの店に下ろす魔道具の開発に取り掛かるのであった。

 

 

 

 




第2話の終了です。これでめぐみんはアクセルの街へと行く理由が出来てウィズとの繋がりを持つ事が出来ました。めぐみんが旅立つまで後に2.3話程かかりますがお付き合いしてくれると嬉しいです。

評価、感想をしてくれると嬉しいです。


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この素晴らしい学園に祝福を!!


『天才物理学者の桐生戦兎はエボルトとの死闘の果てに新世界を創生する事に成功したがその世界では俺はめぐみんと呼ばれる少女になっていた』


『ちょっと!あらすじの内容が前回と同じじゃない!真面目にあらすじ紹介をやりなさいよ!』


『此奴はゆんゆん。ぼっちでコミュ障、更にはチョロいという三拍子揃った可愛そうな奴。以上』


『誰かチョロいよ!!もう少しまともな紹介出来ないの!?』


『事実なんだからしょうがないじゃん。それじゃあ聞くけど昨日の放課後ふりくらと何をしようとしたんだよ?』


『そんなの決まってるじゃない!ふりくらさんと一緒にお茶しに行ったのよ!ふりくらさんが友達と言ってくれたからお茶の代金は全部私が出して…』


『其れを世間ではチョロいって言うんだよ!兎に角、第3話スタート!!』






 

魔族の里にも学園は存在している。里の子供達は一定の年齢になると学園に入学する事となっており其処で子供達は一人前のアークウィザードとなる為の勉強をするのだ。そして桐生戦兎としての記憶を宿しているめぐみんも生徒として学園に通っていた。

 

 

「おーい、めぐみん、ゆんゆん。私と昼を一緒食べないかい?」

 

 

2人の同級生であるあるえが一緒に昼を食べないかと誘うが

 

 

「申し訳ありませんが私とゆんゆんは忙しいのです。別の機会にまた誘って下さい」

 

 

めぐみんから断りの言葉を聞いたあるえは残念そうな表情になると

 

 

「そうかい、それは残念だよ。ところでめぐみん、君は一体何を作っているんだい?」

 

 

めぐみんの机の上には工具が散らばっており、めぐみんは其処で何かの装備を開発していた。

 

 

「ふふふ、この天才物理学者のめぐみん様が一体何を作っているか気になりますか?それは午後の授業でのお楽しみですよ?」

 

 

「そのてんさいぶつりがくしゃ?てのは良く分からないけれど忙しいならしょうがないか、それじゃあまた後で」

 

 

めぐみんの言葉を聞いたあるえはそう言うと他の同級生達と昼食を食べる為にめぐみん達の元から去って行った。

 

 

「ねぇ、めぐみん。何か作っているのか私にぐらい教えてくれても良いじゃない?授業中にもずっと開発作業してるんだから、ぷっちん先生物凄い顔してたわよ?嫌がらせで指したら、めぐみんは完璧に先生の質問に答えてるんだから先生更に物凄い悔しそうにしてたし」

 

 

「ぷっちんがレベルの低い授業をしているのが悪いんです。悔しかったらこの私を唸らせるぐらいの授業をすれば良いだけの話ですよ」

 

 

「ねぇ、めぐみんってひょっとして夢の世界では変わり者って言われてなかった?」

 

 

「変わり者とは言われていたしたが他の人達も風変わりな人達が多かったですよ?筋肉バカにアイドルオタク、イタTおじさんとか」

 

 

「めぐみんが何を言っているのか分からないんだけど…」

 

 

よく分からない事を言っているめぐみんにゆんゆんが冷めた様子でめぐみんにそう突っ込んだのであった。

 

 

 

 

午後の授業は学校近くの広場で行われる。そこでぷっちんが今日行う授業の内容について説明しているがあるえ達の意識はめぐみんが手にしている弓形の武器に集中していた。

 

 

「めぐみん、其れが午前中から作っていた物かい?」

 

 

「見た感じアーチャーが使ってる武器に良く似てるけど、何?めぐみんってアーチャーにでも転身するつもりなの?」

 

 

あるえとふりくらがめぐみんにそう突っ込むと待ってましたとばかりにめぐみんのテンションが突然上がり

 

 

「これは私が開発した、『カイゾクハッシャー』です!!すっごいでしょ!?さいっこうでしょ!?てんっさいでしょ!?」

 

 

これまでにない程のハイテンションで騒ぐめぐみんにあるえやぷっちんがドン引きした表情を見せる。

 

 

「めぐみん!!普段の貴女はまともなのに、どうして発明品や開発している物が完成するとそんなテンションになるのよ〜!!」

 

 

ゆんゆんが涙目になりながらめぐみんを抑えつける。ゆんゆんは何度かこうなっているめぐみんを見ている為多少の耐性があるが恥ずかしい物は恥ずかしいのだ。

 

 

「ちょっとゆんゆん、それだと私が研究や開発をしている時はまともでは無いという言い方じゃないか?そういうのは筋肉バカにやってればいいんですよ」

 

 

「誰ですか!!筋肉バカって!!」

 

 

このままだと軽いコントが始まる雰囲気だったのでぷっちんが2人の間に入り話を中断させた(その時のぷっちんは珍しく教師らしかったというのはとあるクラスメイトの談である)

 

 

「めぐみん、私の授業を聞かずに何をしているのかと思えばそんなガラクタを作っていたのか?」

 

 

「私の発明品がガラクタ!?これだから物の価値を分からない馬鹿は…良いですか!?このカイゾクハッシャーはエネルギーをチャージして四段階の攻撃が出来る発明品なんですよ!こんな風に「各駅電車」!!「急行電車」!!「快速電車」!!「海賊電車」!!」

 

 

叫びながらカイゾクハッシャーをゆんゆん達に振り回す

 

 

「きゃあ!」

 

 

「うぉ!!」

 

 

「危な!!」

 

 

三者三様の反応しながらゆんゆん達はめぐみんの動きを避ける

 

 

「ちょっとめぐみん、危ないじゃない!!めぐみんはアレなの?マッドサイエンティストなの?」

 

 

ゆんゆんはめぐみんを揺さぶりながらめぐみんにそう突っ込んでいるとめぐみんが突然ゆんゆんを突き飛ばし暗闇に向かってカイゾクハッシャーを引く。カイゾクハッシャーからエネルギーを発射し暗闇に紛れていた一撃熊の頭部を一撃で吹き飛ばした。

 

 

「ゆんゆん!無事ですか?」

 

 

「う、うん、ありがとう。めぐみん」

 

 

「皆、無事か?しかしなんでこんな所にまで一撃熊が?本来ならこんな所にまで現れる筈が無いのだか?」

 

 

冷静に状況を分析しながらそう言うぷっちん。

 

 

(ねぇ、めぐみん。あれ本当にぷっちん先生?物凄く先生らしいんですけど)

 

 

青い顔で震えているゆんゆんがぷっちんに聞こえないようにそう言っている最中めぐみんは誰にも聞こえないぐらいの小声で呟いているぷっちんの言葉を聞き逃さなかった。

 

 

「まさか…一撃熊まで呼び出してしまうとは…流石はモンスター呼びの護符だ…高価なだけはあったな。一時はどうなるかと思ったが結果オーライだという事にしておこう」

 

 

どうやら一撃熊がやって来たのはぷっちんが密かに用意していた護符が原因だったらしい。この事を後で報告しようとめぐみんは心の底で誓うとまだ震えているゆんゆんを宥めながら学校へと戻って行く。その後めぐみんの報告によりぷっちんは半年間の減給処分に処された事は言うまでもない。

 

 

 

 

その日の夜、めぐみんは自宅の工房に併設されている自分のラボにてとある試作品の最終調整を行なっていた。アレからめぐみんの家はめぐみんが発明した数々の魔道具により財政が潤い、家も今では周りと遜色のないレベルとなっており、この機会にめぐみんは自分のラボを地下へと改築していたのだ。そしてそのめぐみんラボに何時もの様にゆんゆんが夜食が入ったバスケットを持ってやって来ており、工房の隣に併設されている扉からゆんゆんは階段でめぐみんが作業しているフロアへと降りてくる。そのフロアでめぐみんはつい最近完成したパソコンを弄りながら作業を行なっており、その作業の様子からめぐみんが開発している発明品の完成が近い事を感じさせた。

 

 

「めぐみん。お弁当を持って来たから食べてなさい。どうせ開発に夢中で何も食べてはいないんでしょう?」

 

 

「ありがとうございます、ゆんゆん。後で食べるので其処に置いといてください」

 

 

めぐみんはそう言うと再びパソコンに集中する。

 

 

「めぐみん、そのぱそこん?で一体何を開発しているのよ?」

 

 

ゆんゆんの質問にめぐみんは得意顔で

 

 

「私が夢の世界で使っていた装備を作っているんです。そしてその試作品の第1号がもう少しで完成するですよ」

 

 

「それって前にめぐみんが言ってたライダーシステムという物の事?完成する事が本当なら凄い事じゃない!」

 

 

「試作品だって言いましたよね?コイツはまだ完全じゃです。使える事は使えますが身体に掛かる負担が大きいし電力ではなく魔力を使って動いているから使える回数に制限があるんです。この辺りは私がベルトと同時進行で開発してる」

 

 

めぐみんが其処まで言うとラボの中にある電子レンジに良く似たマシンから爆発音が聞こえるとレンジの扉が自動で開く

 

 

「やった、成功だ!!」

 

 

めぐみんが作業を中断してレンジに近づくとレンジの中に手を突っ込んみ、レンジの中から赤い色の小さなフルボトルを取り出した。

 

 

「漸くフルボトルの生成に成功しました!!これでこの世界でもライダーシステムを使えるようになります!!」

 

 

ゆんゆんは高いテンションで跳ね回りながらそう言っているめぐみんに少し戸惑うと

 

 

「そのフルボトルっての確かネビュラガスという物が無ければ生成出来ないって言ってなかったけ?」

 

 

めぐみんはゆんゆんの質問に良くぞ聞いてくれたとばかりに近づくと

 

 

「ゆんゆんの言う通り、この世界にはネビュラガスは存在しません。でも代わりに魔力は存在している。そしてその魔力は空気の中に微力ながらに漂っているんだ。その微力な魔力をこの空のボトルに収集させ、私が開発したこの魔力変換装置を使ってフルボトルに浄化したんです」

 

 

「じゃあ魔力さえあればフルボトルは問題なく使えるという訳ですよね?」

 

 

ゆんゆんの言葉にめぐみんは頭を振り

 

 

「そんなに都合よくは行きません。何故ならばこのフルボトルはネビュラガスを浄化させる事で生まれた物じゃないです。早い話が一度変身に使用してしまうと魔力を使い切り次に使えるようになるまでタイムラグがあるんですよ」

 

 

「それって大した問題じゃないような?」

 

 

「大問題です。タイムラグがあるって事は戦闘中に一度でも使ってしまったらその戦闘ではもう使えないって事ですよ?」

 

 

「成る程、という事は使うタイミングが悪ければ逆にピンチに陥ってしまう危険性があるという事ね!」

 

 

「その通りですよゆんゆん。やっぱりゆんゆんの頭の回転の速さには目を見張る物がありますね。まぁ、私には遠く及びませんが」

 

 

「めぐみんは素直に褒める事はできないの!このお弁当、持って帰っちゃうからね!」

 

 

そう言うとゆんゆんは机の上に置いてあるバスケットを持ち帰ろうとする

 

 

「冗談です!お弁当は食べますから持って帰らないでください!」

 

 

めぐみんの言葉を聞いたゆんゆんは仕方ないなという笑みを見せると弁当箱をめぐみんへ返した後めぐみんの隣に座りめぐみんの最終調整の手伝いを始める。しかし最終調整の時間が思った以上に掛かってしまい、終わる頃にはゆんゆんは椅子に寄りかかる様に眠っており其れを見ためぐみんはゆんゆんが風邪をひかないように毛布をかける。その時のめぐみんの胸の中には色々と喧しい所があったしおっかない時もあったが自分の最大の理解者のひとりである。とある女性の姿が浮かんでおり、めぐみんには今のゆんゆんとその女性の姿が重なって見えていたのだった。

 

 

 

 

 

翌日、めぐみん達はぷっちんの指導の元里の近くの森へとやって来ていた。

 

 

「お前達にはこの森で『養殖』という作業をして貰う!」

 

 

ぷっちんが言っている養殖とはレベルの高い冒険者が

 

レベルの低い冒険者のレベル上げの為に行うとあるレベル上げの事である。

 

 

「ぷっちん先生!養殖って具体的にはどんな事をするんですか?」

 

 

「良い質問だな、ゆんゆん!養殖とは紅魔族の人間が好んで行っているレベル上げの事を言う。簡単に言うとレベルの高い冒険者が強い魔物をワザと殺さずに生かしておいてレベルの低い冒険者にトドメを刺させる事で経験値を稼ぐ事を言う、高レベルの冒険者になるには1番手っ取り早く効率の良い方法だ」

 

 

ぷっちんの説明に気の弱い所があるゆんゆんが青褪めた表情になる

 

 

「ええ…私、それやりたくないなぁ…絶対に躊躇ちゃうもん」

 

 

「確かにゆんゆんにはこうゆうのは向いていませんからね」

 

 

ゆんゆんの性格を知っているめぐみんがカイゾクハッシャーを構えながらそう言う

 

 

「めぐみんは案外と平気そうね…可愛そうだとは思わないの?」

 

 

「私は皆さんとは違って魔力がありませんのでこういうのでレベルをあげませんと、それにこれの調整には丁度良いですからね」

 

 

めぐみんはそう言うとぷっちんがあらかじめ生かしておいあモンスター達がいる森の中へと走って行く。

 

 

「待ってよ、めぐみん!もし、怖いモンスターが出て来たらどうするのよ〜!!」

 

 

ゆんゆんは不安そうな様子でそう言うがあるえとふりくらが揶揄う様な笑みで

 

 

「大丈夫だって!危険なモンスター達は里の大人達が刈り尽くした後だから安全な奴しかこの辺には居ないから」

 

 

「ふりくら、それはフラグという奴ではないかな?」

 

 

あるえはフラグぽい事を言ってしまったふりくらにそう突っ込む、そして其れが現実となるのもまた、お約束通りなのであった。

 

 

 

その頃めぐみんはカイゾクハッシャーで動けなくなっていたモンスターの首を飛ばしていた。

 

 

「ふう…モンスターだから仕方ないと分かってはいるがやはり生き物の命を奪うのは堪えるな」

 

 

めぐみんは冒険者カードに討伐したモンスターの名前が書き込まれた事を確信すると苦い顔でそう言う。すると草むらから殺された仲間の仇を討ちに来たのかモンスターが襲いかかるがめぐみんは慌てずに弓を引くとそのモンスターは矢形のエネルギー弾に貫かれ力無く地面に落ち、その命を散らした。めぐみんは息絶えた事を確認すると疲れた様に地面にへたり込む、すると養殖を終えたのかゆんゆん達が近づいて来た。

 

 

「調子の方はどうだい?」

 

 

あるえが軽く手を振りながらめぐみんにそう言う

 

 

「まぁ、ボチボチと言った所でしょうか。あるえ達の方はどうなんですか?」

 

 

「私達の方もまぁまぁって所かな?ゆんゆんが喚いて結構うるさかったけどね」

 

 

ふりくらがゆんゆんを揶揄う表情でそう言うと

 

 

「し、仕方でしょ!あんなつぶらな瞳で見られたら、私!」

 

 

恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながらそんな事を言うゆんゆん

 

 

「そんなの別に恥ずかしい事ではありませんよ」

 

 

「人に害をなすモンスターとはいえ、『命』を奪う事には変わりません。その気持ちを忘れて簡単に『命』を奪える様になってしまったらそんなのは単なる殺戮マシーンと変わらない。勿論可愛そうだからモンスターを狩るなとは言いません。でも私達は『命』を奪っていた事を絶対に忘れてはならないんですよ」

 

 

めぐみんは戦兎として自分が経験し感じてきた事をゆんゆん達に言葉として伝えた

 

 

「めぐみんって時々難しい言葉を言うわね」

 

 

ふりくらがそう言っていると何かに気づいたのか青い顔であるえが森の奥を指差す

 

 

「なぁ、みんな、彼処に物凄くヤバそうなのがいるんだけど」

 

 

あるえの言葉を聞いためぐみん達があるえの指差した方を見ると明らかに雰囲気の違う…魔獣が其処におり魔獣はめぐみん達の存在に気づくと翼を広げて襲いかかって来る。めぐみんはあるえ達を地面に押し倒して攻撃を交わす、めぐみんは魔獣の動きをみて自分達はコイツから逃げ切るのは不可能だと判断するとゆんゆん達を助ける為にある方法を使う事を内心決意する。

 

 

「仕方がない。コレを使うしかないようだな」

 

 

めぐみんが取り出したのはつい先日漸く形にしたばかりのビルドドライバーだった。

 

 

「待ってよ、めぐみん。其れはまだ試作品で身体に掛かる負担が大きいって…」

 

 

ゆんゆんはめぐみんの身体を心配しそう言うと

 

 

「分かってる。でもこの状況を切り抜ける為には皆を守るにはもうこれしかない!」

 

 

そう言うとめぐみんは悪魔からあるえ達を守る様に立ちはだかる

 

 

「あるえ達は安全な場所に隠れているか先生を呼んで来て下さい。ここは私が…俺が引き止める!!」

 

 

 

めぐみんはビルドドライバーを腰へと取り付け

 

 

「さあ、実験をはじめようか」

 

 

めぐみんは赤と青のフルボトル…ラビットフルボトルとタンクフルボトルを取り出しシャカシャカと振り出すとめぐみんの周りに様々な数式が現れる。

 

 

「何よこれ!って、数字?何で数字が空中に浮かんでるのよ?」

 

 

「それよりもさっきのめぐみん、何時もと様子が違くなかったかい?」

 

 

 

 

めぐみんはビルドドライバーにラビットフルボトルとタンクフルボトルを装填する

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

ベルトからそんな音声が流れるとめぐみんはボルティクレバーを回転させる。レバーを回転させた事でベルト内部にある装置内部の発動機『ニトロダイナモ』が高速稼働しめぐみんの周りにまるでプラモデルを作る時に余るシンナーのような装甲材質『トランジェルソリッド』展開されると其処に赤と青のハーフボディが生成される

 

 

『Are you ready? (準備はできたか)

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ! 』

 

 

めぐみんの掛け声と共にまるでプラモデルを合わせるように赤と青のハーフボディが合体する事でめぐみんは変身を完了する。めぐみんが変身したのは赤と青を基調とするビルドの基本フォーム『仮面ライダービルドラビットタンクフォーム』だ。

 

 

「さてと始めてこの姿を見た皆さんに軽く自己紹介を…私の名前は仮面ライダービルド。『創る』『形成する』って意味の、ビルドだ。以後、お見知りおきを」

 

 

めぐみんいや、ビルドはそういうと軽く手首をスナップし魔獣…を見据えたのだった。

 

 

 




次回、ビルドの初戦闘です。お楽しみに


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この初戦闘に祝福を!!

「仮面ライダー…」

 

 

「ビルド…?」

 

 

ゆんゆん達はポカンと口を開けていた。何故ならめぐみんが何時もの姿から装甲を纏った姿に変わっていたからだ。しかもめぐみんは魔法を使っていない。ゆんゆん達の頭は情報過多で既にパンク寸前だった。

 

 

「勝利の法則は決まった!」

 

 

めぐみんは桐生戦兎がビルドとして戦っていた時に好んで使っていた決め台詞を言うと魔獣へと向かって行く。

 

 

最初にビルドは赤い色の装甲…ラビットハーフボディの能力を使う。ラビットハーフボディの複眼はウサギの横顔を模しておりまるで本物のウサギのように嗅覚や聴覚に由来した反応速度で相手を翻弄しそして素早い反撃を繰り出す事を可能としているが攻撃力が低いという欠点がある。しかしウサギ特有の俊敏力の高さや其れをカバーする手数の多さでその欠点をカバーしていたのだ。

 

 

「ふ、そら、あらやよっと!」

 

 

ビルドは左足に内蔵されているバネ『ホップスプリンガー』で強く地面を踏み込むことでウサギのように高いジャンプ力を発揮して魔獣を翻弄し上空から踏みつけ攻撃を行う。その上ラビットハーフボディは数秒間だけ自身のあらゆる動作を高速化することも可能な為、ビルドはその能力でゆんゆんやあるえ達を一瞬で安全地帯へと移動させると再び魔獣の元へ戻ると左足で蹴りを繰り出した。(因みに足裏にはウサギの肉球があるのは開発者である、ある男の遊び心、かもしれない)

 

 

次にビルドは青色の装甲…タンクハーフボディの能力を使う。タンクハーフボディの複眼は戦車を模しており、戦車の砲身がアンテナ風となっている。

 

装甲は高強度の複合装甲となっている為、防御力にとても優れていおり、それと同時に攻撃力も高くラビットハーフボディに比べ起動力も高い。 その上タンクハーフボディを装備している時の射撃武器の威力や命中率を高めるサポート機能も持ち合わせ、重装甲を活かしたとても重い物理攻撃を敵に与える事が出来るのだ。

 

 

左足によるキックを受けた魔獣が地面に転がるのを見計らうとビルドはドトメをさす為に再びビルドドライバーのボルケティクレバーを回す。レバーを回し終えるとビルドは魔獣から距離をとり其処からグラフ型の標的固定装置を展開するとx軸で魔獣を拘束する。そして最後にグラフ上を滑り、その勢いを利用し加速しながらビルドのライダーキック…ボルテックフィニッシュを放つ

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

「タァァァァァ!!!」

 

 

タンクハーフボディの右足には『タンクローラーシューズ』と呼ばれるキャタピラが装着されており、そのキャタピラが高速回転して敵の装甲を削り取り、ビルドのキックが魔獣を貫いた。

 

 

「グオオオオオオ!!!」

 

 

ビルドのボルテックフィニッシュを受けた魔獣は呻き声を上げるとそのまま大爆発を起こした。

 

 

「やった!!めぐみんが勝ったわ!!」

 

 

ゆんゆんがビルドの勝利に飛び跳ねながら喜びあるえとふりくらはひたすら困惑していた

 

 

「めぐみんのあの姿は一体何なのよ?物凄いパワーだったけど、あんなゴーレム見た事ないわよ」

 

 

「仮面ライダービルドか…もしかしたらめぐみんには私達の知らない何かを背負っているのかもしれないな」

 

 

ゆんゆんとふりくら、あるえがそれぞれ今のめぐみんに対して三者三様の反応をしているとビルドが突然力無く地面に倒れこむと変身が解除された

 

 

(ク…やはり…身体に掛かる負担が大きかったか…)

 

 

薄れいく意識の中めぐみんが感じたのはこちらに走り寄ってくるゆんゆん達と他のクラスメイトとぷっちんの姿だった。

 

 

 

意識を失っためぐみんは里の中にある診療所へとつれてこられていた。めぐみんには大きな怪我はなかったが酷いダメージを受けており暫くの休養を余儀なくされた

 

 

「私の所為だ…私の所為でめぐみんが…」

 

 

ゆんゆんは酷い自己嫌悪と責任を感じていた。あの時自分に出来る事があった筈だ。もしあの時、自分が『上級魔法』を使う事が出来ていたらそんな思いに囚われていた。そんな思いに導かれるようにゆんゆんは自分の冒険者カードを見つめそして何かを決意した表情になると冒険者カードを操作した。

 

 

その頃、紅魔族の里の上空には一体の悪魔が居た。

 

 

「この辺りにヴォハルク様の半身の気配を感じたが…しかしヴォハルク様は封印されていた筈…その封印を一体誰が解いたのだ?それよりあの『コブラ男』が言っていた仮面ライダーは本当に居るのか?」

 

 

その時ホーストの目に1人の少女の姿を捉えた。どうやら里の外で何かをしている様子であり、ホーストは自分が敬愛するヴォハルクと仮面ライダーと呼ばれる戦士の情報を得る為に捕らえようと上空から強襲する。ホーストの存在に気づいた少女…ゆんゆんはホーストに向けて覚えたばかりの『上級魔法』を放った。

 

 

「ライトオブセイバー!!」

 

 

「グアァァ!!」

 

 

流石は光の上級魔法であるライトオブセイバーは悪魔であるホーストに思いもよらぬダメージを与えたが皮肉な事に其れがホーストの気に触れてしまう結果となった。

 

 

「紅魔族の小娘がよくもやりやがったな!このホースト様を怒らせた事後悔させてやる!」

 

 

「くっ…!!」

 

 

ゆんゆんは理解はしていた。今の自分では奴を倒す事が出来ない事を、何とか隙を見て里の大人達に助けを求めようにも奴にはそんな隙などはなく。一か八か全速力で里まで走るしかないのかとゆんゆんは考えており、そして実行に移そうとした時ホーストが自分に向けて魔法を放とうとしていた。ゆんゆんが慌てて魔法を放とうとするが到底間に合いそうもなくゆんゆんの脳裏に死が過ぎった瞬間、ホーストの右目に何処からか飛んで来たエネルギー弾が直撃した。

 

 

「今の攻撃って…まさか!!」

 

 

先程の攻撃が効いたのかホーストで右目を抑えながら呻き声をあげており、ゆんゆんが攻撃が飛んで来た方向を見るとカイゾクハッシャーを構えためぐみんが其処に立っていた。

 

 

「めぐみん!?どうして此処に!?」

 

 

「ゆんゆんの癖に私に黙って無茶するなんて生意気ですよ。私も一緒に戦いますよ」

 

 

そう言うとめぐみんはビルドドライバーを腰へと取り付ける。

 

 

「駄目よ!めぐみん!変身した後自分の身体がどうなったか忘れたの!?」

 

 

「分かってますよ、ゆんゆん。でも辞める訳にはいきません、ヒーローに取ってこんなに美味しい状況を見逃す訳には行かないですし、それに真打ちは最後に登場するものですよ?」

 

 

めぐみんは来ていたマントを翻すと

 

 

「さぁ、実験を始めましょうか」

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

そしてめぐみんはボルティクレバーを回し

 

 

『変身!!』

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

 

ビルドはカイゾクハッシャーを構えるとホーストへと向かって行く

 

 

「お前が仮面ライダーか!仮面ライダーってのはどれぐらいの力があるのか見せてもらうぜ!!」

 

 

ダメージから立ち直ったホーストがビルドを見据えそう言うとそれに言い返すようにビルドも

 

 

「ならその身体に叩き込んでやるよ!ビルドの力を!!」

 

 

『各駅停車』

 

 

『急行列車』

 

 

『特急列車』

 

 

ビルドはそう言うと3回連続で弓を引きカイゾクハッシャーの3段階攻撃をホーストに与えるが決定打までには至らない。

 

 

「ふん。仮面ライダーってのはどんなもんかと思ったがこの程度か」

 

 

ホーストは軽く右手を振る事でビルドの攻撃を打ち消した上にビルドをその余波で吹き飛ばし、吹き飛ばされたビルドは地面へと転がる。そしてホーストが更なる追撃を加えようとした時

 

 

「ライトオブセイバー!!!」

 

 

ゆんゆんの上級魔法がホーストに向かって飛んで来る。ホーストはゆんゆんの攻撃を避ける為に咄嗟に距離を取る、そしてその間にゆんゆんは地面に転がるビルドの元に近づくと

 

 

「偉そうに言っておいて随分と情けないじゃない、めぐみん」

 

 

「う、うるさい!これからこの俺のカッコイイ逆転劇が始まるんだよ!!」

 

 

思わず桐生戦兎としての面を覗かしてしまうめぐみん。

 

 

「それならいい手の一つや2つぐらい思いついてるんでしょ?何時ものめぐみんならね!」

 

 

ゆんゆんの言葉は聞いたビルドは悔しそうに頭をかく動作をすると

 

 

「ゆんゆんの癖に生意気です!良いでしょう!奴を倒す良い方法を教えてあげますよ!」

 

 

そう言うとビルドはゆんゆんに耳打ちをする。そして耳打ちを終えた2人はホーストに向かい合うと

 

 

「勝利の法則は決まった!!」

 

 

そう言うとビルドはホーストとの間合いを一気に詰めるとカイゾクハッシャーで斬りつけようとするが空を飛ばれて避けられる。しかしそれは2人の作戦通りであった。

 

 

「ライトオブセイバー!!」

 

 

ゆんゆんが魔力を手に纏わせて其れをホーストに向けて放つ、上空にいたホーストは避け切る事は叶わずにゆんゆんの魔法の直撃を受ける。ゆんゆんの攻撃を受けたホースト上空から落下する。落下地点ではビルドがカイゾクハッシャーを構えながら待機しており最大火力のカイゾクレッシャーを放ちホーストの身体を貫いた。

 

 

「ゆんゆん!ライトオブセイバーを俺にぶつけてくれ!!」

 

 

「めぐみん、何を言っているのよ!?」

 

 

「良いから早く!!」

 

 

「わ、分かったわ!!ライトオブセイバー!!」

 

 

ゆんゆんはライトオブセイバーをビルドに向けて放つ、そしてビルドはカイゾクハッシャーを構えるとライトオブセイバーをカイゾクハッシャーにぶつける事でカイゾクハッシャーにライトオブセイバーを纏わる。そのまま未だにダメージか立ち直れてはいないホーストを切り裂き更に大ダメージを与えた。

 

 

「ホースト!!これでフィニッシュだ!!」

 

 

ビルドはボルティクレバーを回転させベルトにエネルギーを集中させる

 

 

「ゆんゆん!一緒に決めるぞ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

『ボルテックフィニッシュ!!』

 

 

その音声と同時にビルドは天高く飛び上がり、ゆんゆんはライトオブセイバーを同時に放つ。

 

 

「タァァァァァ!!!」

 

 

ビルドのライダーキックがホーストにクリティカルヒットし其処にゆんゆんのライトオブセイバーが決まりホーストがいた地点で大爆発が起きる。その爆炎の中から満身創痍のホーストが飛び出して来た。

 

 

「まさか、この俺様がこんな連中にここまで追い詰められるとは…ゆんゆん、そして仮面ライダーか…その名前覚えておいてやる!!」

 

 

ホーストはそう捨て台詞を吐くと空高く飛び上がり何処へと逃げ去った。ホーストの姿が見えなくなった事を確認するとゆんゆんはその場に座り込み、めぐみんは変身を解除すると両膝を地面に着いた。

 

 

「何とかなった様で良かったです…でもアイツが言っていたヴォハルク様ってのは一体何ですか?ゆんゆん、貴方はは奴の半身について何か知りませんか?」

 

 

「ハァ、ハァ、私は何も知らないわ、役に立てなくてごめんなさい」

 

 

「いや、ゆんゆんが気にする必要はないですよ」

 

 

めぐみんはゆんゆんを慰める様にそう言うと騒ぎを聞きつけた里の大人達がめぐみんとゆんゆんの元に近づいて来た。

 

 

「二人とも無事か?あの悪魔は何処に行ったんだ?」

 

 

「悪魔ならゆんゆんの上級魔法で退却しましたよ。ゆんゆんが居なかったら私はあの悪魔にやられていたでしょう」

 

 

めぐみんの言葉に里の大人達は驚いた表情を見せると口々にゆんゆんを褒めちぎる。めぐみんは戸惑いの表情を浮かべているゆんゆんを尻目にその場をそっと立ち去った。

 

 

 

ラボに戻って来ためぐみんは戦闘の疲労によりベッドに倒れ込んでしまうと直ぐに眠りへと落ちて行った。めぐみんが目を覚めると布団がかけられており何処からか良い匂いが漂って来る。めぐみんが匂いのする方向を向くとゆんゆんがお盆を持って姿を現した。

 

 

「あ、起きたんだのね、めぐみん。随分と疲労していたみたいだからヒールをかけておいたわよ」

 

 

「ヒールって、ゆんゆん、いつそんなの覚えたんですか?」

 

 

「上級魔法を覚えた時に使ったスキルポイントがまだ余っていたからついでに取っておいたのよ」

 

 

ゆんゆんは其処まで言うと真剣な表情に変わり戦兎の向かいに座ると

 

 

「どうしてあの時に自分も活躍した事を言わなかったのよ?めぐみんが居なかったら私の方が奴にやられていた筈よ」

 

 

「魔力も使えない私が悪魔を倒したと言っても周りは信用なんてしないですよ?其れに私はライダーシステムを余り公にはしたくないんです。ライダーシステムは本来ならこの世界には存在しない物です。使い過ぎて余計な連中に目を付けられる様にはなりたくないんですよ」

 

 

そう、めぐみんはライダーシステムという『力』が権力者の目に止まる事を恐れていたのだ。前の世界でもライダーシステムが兵器利用され多くの被害を出してしまった、その経験からこの世界の権力者や大国に知られた場合は間違いなく戦争に利用される未来が見えていたからだった。勿論、そんな事を言ってもゆんゆんには理解出来るとは思っていない為にライダーシステムが兵器利用される危険性だけを説明するととりあえずは納得してくれた様子だった。

 

 

「あ、そうだ、めぐみんに言わなきゃならない事があったんだった。私、今回の事件のおかげで学校を卒業する事が認められたのよ!!」

 

 

ゆんゆんはとても嬉しそうにそう言っていた。紅魔族の学校では上級魔法をひとつでも覚える事が出来たら一人前と認められ卒業する事が認められるのだ。

 

 

「そうなんですか、卒業おめでとうございます。ゆんゆんには先を越されましたが魔法が使えなくても私は学校を卒業して見せますよ」

 

 

「何言ってるのよめぐみん?」

 

 

「???」

 

 

めぐみんはゆんゆんの言葉に思わず首を傾げた。

 

 

「めぐみんも学校の卒業が認められたのよ!」

 

 

「何故ですか?私は魔法を習得はしていませんよ?」

 

 

「めぐみんは魔法を使えないのに里の為に命をかけて悪魔と戦ったその勇気を認めるべきだと言う声が里の大人達から上がったのよ」

 

 

そこまで言うとゆんゆんはめぐみんの手を強く握り

 

 

「めぐみんが卒業を辞退するなら私も辞退するから!だって私が勝てたのはめぐみんのおかげだし何よりも私はめぐみんと一緒に里から旅立ちたいのよ!!」

 

 

「ゆんゆんはズルいですね…そんな事を言われたら一緒に卒業をするしかないじゃないですか」

 

 

めぐみんは呆れたようにゆんゆんの手を取ってそう言うが同時に罪悪感もめぐみんの胸の中に生まれてしまった。自分はまだゆんゆんに隠し事を沢山している、何よりも本来この場にいた筈の本当のめぐみんが手に入れていた筈の幸福を自分が得てしまっている。そんな闇をめぐみんは自分の奥に押し隠すと今は学校が卒業出来た事を喜ぶ事としたのだった。

 

 




今回も読んで下さりありがとうございます。次回もよろしくお願い致します・


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この素晴らしい旅立ちに祝福を!!


『天才物理学者桐生戦兎は謎の悪魔、ホーストから泣き噦るゆんゆんを華麗に救うと奴を俺のカッチョいい必殺技で片付けたのであった』


『ちょっと、戦兎さん!!何いい加減なあらすじ紹介をしているんですか!?華麗に勝利なんてしていませんし私は泣き噦っては居ませんよ!?』


『この小説は俺のカッコイイ活躍を描いた物だぞ?これぐらい描かないと読書は納得しないって!!』


『読者って一体誰の事ですか!?幾ら何でもぶっちゃけ過ぎですよ!?』


『そんなゆんゆんもあらすじ紹介では充分にぶっちゃけてんじゃん』


『誰の所為だと思っているんですか!ああ!!もう!!この天才物理学者に祝福を!!第5話スタート!』




 

ホーストとの戦闘から数日が過ぎめぐみんの傷もすっかり癒えた事で診療所から退院の許可がおり、ゆんゆんと一緒に入院中に使用していた日常用品を纏めているとゆんゆんからあの時の事について問いかけられる

 

 

「ねぇ、めぐみん。ずっと聞きたかったんだけど、どうしてめぐみんはあの時タイミングよく私を助けに来れたの?めぐみんはずっと意識を失っていたじゃない」

 

 

そう、あの時のめぐみんは意識を失っていた筈。それなのにめぐみんは自分が悪魔に襲われている事を予め予想していたかのあの場所に現れていた。ゆんゆんはその事がずっと気になっていたのだ。そしてゆんゆんの言葉を聞いためぐみんは

 

 

「そうですね。私が何故ゆんゆんのピンチに気付けたのかどうして助けに行く事が出来たのかを説明する事にしましょう。あれは魔物との戦いが終わり意識を失った後…」

 

 

 

戦いの後意識を失ってしまっためぐみんが目を覚ますと見覚えのある暗い空間の中で椅子に座っていた。

 

 

「この場所は確か前に夢で訪れた…という事は」

 

 

「貴方の予想通りですよ…桐生戦兎さん」

 

 

「お久しぶりですね…エリス様」

 

 

其処には戦兎の予想通りにエリスが此方を見つめながら座っていた。

 

 

「エリス様、俺がここに居るという事は俺は死んでしまったのか?」

 

 

戦兎の言葉を聞いたエリスは首を左右に振る

 

 

「いえ、貴方は死んでは居ません。簡単に言えば貴方は今、深い眠りに入った状態にいるんです」

 

 

戦兎はエリスのその言葉を聞くと安堵の表情を浮かべ椅子から立ち上がり

 

 

「なら、問題はないな。悪いが早く俺を現世に返して貰えないだろうか?」

 

 

「それは構いませんがその前にあれから更なる調査のおかげで新たに分かった事があるので少しだけお話しさせて貰ってもよろしいでしょうか?」

 

 

今すぐに現世に戻らなければならない理由もない上にエリスが言っている新たに分かった事について興味があった為、戦兎は椅子に座り直しエリスに話をするように促した

 

 

「戦兎さんがパンドラボックスでこの世界を創生した事で本来の歴史と異なる部分がある事はご存知ですよね?」

 

 

「勿論だ、この俺…めぐみんも本来の歴史ならば魔力を失わずに済み、そして幼い頃からの夢である爆裂魔法を極める為にアークウィザードとして旅に出る事になっていたんだろ?」

 

 

「それ以外にも『本来ならばこの時点でまだ出会ってはいない筈なのに既に出会っていたり、本来なら既に出会っている筈なのにまだ出会ってはいない』という細かな違いがあります。そして1番の違いは」

 

 

「ライダーシステムの存在だろ?この世界に存在しない筈の仮面ライダーがこの世界で生まれてしまった…エリスが言いたい1番の違いはそれじゃないのか?」

 

 

「ライダーシステムも1番の違いである要素の1つですがそれ以外の要素もあります。それは…パンドラボックスの存在です」

 

 

「なっ!?」

 

 

戦兎は絶句する。前の世界における全ての悲劇の元凶であり、多くの人々の運命を狂わせそして命を奪った物。しかし新世界を創生する時のエネルギー源としてエボルトと共に消滅した筈。いや、その話が本当だとすると

 

 

「エリス様、そのパンドラボックスは何処にある?」

 

 

「パンドラボックスは現在6枚のパネルに分かれ魔王軍、人類側にそれぞれ所持されています。6枚の内の1枚は現在ベルゼルグ王国にあります。そしてパンドラパネルを所持しているのはベルゼルグ王国の第一王女。ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスです。そして彼女は6枚に分かれる前のパンドラボックスの光もあびています。戦兎さんならこの意味をお分かりですよね?」

 

 

「そんな…どうしてこの世界にパンドラボックスが…エリス様、パンドラボックスが何故分かれてしまったのかを」

 

 

戦兎がそこまで言いかけるとエリスが何かに気づいた表情になると戦兎の話を中断させた

 

 

「戦兎さん!大変です。ゆんゆんさんが今、悪魔に襲われています!」

 

 

「ゆんゆんが!?エリス様!俺を今すぐ現世に戻してくれ!手遅れになる前に!」

 

 

戦兎の言葉にエリスは強く頷くと現世に繫がるゲートを戦兎の上空に出現させる。そして戦兎は宙に浮き、ゲートの中に入って行った。その後意識を取り戻した戦兎が里の外でホーストに襲われているゆんゆんを助けに向かったという訳であった。

 

 

 

「めぐみんがエリス様と会っていたなんて…もしエリス様がめぐみんに私の事を教えてくれなかったら私はあのまま死んでいたかも知れないわ…今度エリス教の教会に行ったら沢山お布施をしないといけないわね」

 

 

ゆんゆんは全くめぐみんの話に疑う様子もなく頷きながらそう言った

 

 

「ゆんゆん、貴方は少しは疑うという事はしないのですか?」

 

 

「どうして疑う必要があるのよ?めぐみんはこうゆう時嘘はつかないって分かってるから」

 

 

キッパリとそう言い切るゆんゆんを見ためぐみんは嬉しさをにじませながら礼を言う

 

 

「そう言ってくれると嬉しいです。ありがとうございます。ゆんゆん」

 

 

「お礼なんて必要ないわよ。だって私達は友達なんだから!」

 

 

真っ赤な顔で照れながらそう言うゆんゆんにめぐみんは

 

 

「やはりゆんゆんはチョロ過ぎです。私は親友としてゆんゆんの将来が心配ですよ」

 

 

「そういう時は仲間思いだねとかとても優しいんだねとか言えないの!?」

 

 

「ゆんゆんにはそういう扱いがお似合いなんですよ。寧ろチョロくないゆんゆんなんてゆんゆんじゃありませんね」

 

 

その言葉にゆんゆんは顔を更に真っ赤させると、めぐみんをどつく為に捕まえようとするがめぐみんは一目散に逃走しゆんゆんもその後を追いかける。2人はそれから暫くの里の中を舞台にした追いかけっこが始まるのであった。

 

 

 

 

ゆんゆんとの追いかけっこを終えるとめぐみんは久しぶりに自宅へと帰って来た。そしてそんなめぐみんをこめっこと黒い子猫が出迎える。

 

 

「姉ちゃんお帰り!!」

 

 

「なーう。」

 

 

「お出迎えご苦労様です。こめっこ、その子猫は一体どうしたんです?」

 

 

「この子はねぇ、私の使い魔なんだよ。すごいでしょ!?」

 

 

「其れは凄いですね、それではその使い魔は何処で見つけたんです?」

 

 

「私が何時も遊んでる森で見つけたんだ!」

 

 

こめっこが言うには何時ものように森の遊び場に行った時に弱った状態で居るのを見つけ、慌てて家へと連れて帰り懸命に看病し餌も充分に与えた後、元気になった為、森に返そうとしたがこめっこに懐いてしまいそのままこめっこの飼い猫兼使い魔として家で飼われる事となったのだ。

 

 

「この子の名前はちょむすけ、私が名前をつけたんだよ、可愛いでしょ?」

 

 

「…ソウデスネー。トテモカワイイナマエダトオモイマス」

 

 

屈託のない笑顔でそう言うこめっこにめぐみんは何も言えずに同意するしか選択肢がないのだった。

 

 

 

それから更に数日が経ち遂にめぐみんとゆんゆんが紅魔族の里から旅立つ日がやって来た。めぐみんはちょむすけを連れてゆんゆんとの待ち合わせ場所へと来ていた。ゆんゆんが来るまで時間があり、時間を持て余していためぐみんはちょむすけを撫でながらホーストとの戦いをホーストの言葉を思い出していた。

 

 

「一体誰が邪神の封印を解いたんだ?解いたとしたら一体何が目的で?」

 

 

ホーストが言っていたヴォバルク様とは一体何なのか?この里に封印されていたという邪神と関係があるのか?知ろうにも余りにも情報が少な過ぎる。そもそも封印を解いた犯人の目星さえついていないのだ。今の段階では犯人の正体や目的までは掴む事は出来ないなとめぐみんは結論づける。思考の海に沈んでいためぐみんが先程と変わらずにちょむすけを撫でていると何時もとは違う服装をしたゆんゆんが待ち合わせ場所へとやって来た。

 

 

「こんな所に居たのねめぐみん。今日は絶好の旅立ち日和ね!ってその黒猫は一体どうしたのよ?旅に連れて行くつもりなの?」

 

 

「そのつもりです。何故だか分かりませんがこの子は私にとても懐いているようで私から離れたがらないんです。まぁ、少し変わった同行者ですが連れて行っても何の問題はないでしょう、ゆんゆんも反対するつもりはないのでしょう?」

 

 

「別に反対する理由もないしね。ところでこの子の名前はなんていうの?」

 

 

「ちょむすけです」

 

 

めぐみんがそう言うとしんと場が静まり返る

 

 

「めぐみん。もう一度聞いて良いかしら?その子の名前は何ていうの?

 

 

「ゆんゆん。否定したい気持ちは理解しますがこの子の名前がちょむすけなのは本当ですよ」

 

 

「どうしてそんな名前になったのよ?この子の名前をつけたのは誰なの?」

 

 

「こめっこですよ。森で拾って来た時に名前をつけたみたいです」

 

 

ゆんゆんは納得した様子を見せるとめぐみんが思い出したように

 

 

「そう言えば旅立つ前に私に言いたい事があるって言ってましたけどそれって何の話なんですか?」

 

 

昨夜、ゆんゆんが家にやって来た時、めぐみんに旅立つ前に話して置きたい大事な話かあるという話をしていたのだ。

 

 

「う、うん。…その事なんだけど…ねぇめぐみん、もし私がめぐみんに嘘をつき続けていたとしたらどう思う?やっぱり軽蔑する?」

 

 

「…そんなの話の内容を聞いてみないと何とも言えないですよ」

 

 

「…めぐみん。本当はね、あの時にはもう上級魔法を習得するだけのポイントは溜まっていたの」

 

 

 

そう、あの時点でゆんゆんは既に上級魔法を習得出来るだけのポイントが貯まっていたのだ。

 

 

「その話が本当ならどうしてゆんゆんは上級魔法を早く習得しなかったのですか?余程の事がない限り普通ならばポイントが貯まった時点で上級魔法を習得している筈ですよ?それとも習得するのにかなりのポイントが必要な魔法を習得しようとしていたんですか?」

 

 

「そんなんじゃないの…私が上級魔法を習得しなかったのは…めぐみんと一緒に居たかったからなの!めぐみんと離れ離れになるのがどうしても嫌だったのよ!!」

 

 

めぐみんと一緒に居たい。それがゆんゆんの1番の願いであり本心であった。自分が学校を卒業してしまったら学園でめぐみんは独りぼっちになってしましうし、自分もめぐみんとは離れ離れになってしまう。しかも自分は将来里の長となる存在。卒業後は外の世界で経験を積む為に旅へと出る約束になっていたのだ、だからこそゆんゆんは少しでもめぐみんと一緒にいる為に少しで旅立ちを遅らせる為にずっと周りを欺き続いて来たのだ。

 

 

「ごめんなさい…めぐみん…」

 

 

ゆんゆんはめぐみんに深く深く頭を下げる。泣いているのか肩が震えているのが分かる

 

 

「全く、何かと思えばそんな事か」

 

 

「へ…めぐ…みん?」

 

 

ゆんゆんはきょとんとした表情でめぐみんを見つめている

 

 

「そんな事で俺とゆんゆんの関係が終わる訳ないだろ?そんならしくない事をしてないでゆんゆんはゆんゆんらしくずっとぼっちをやってる方が良いっての」

 

 

「ねぇ、めぐみん?一応私の事慰めてくれてるのよね?何だか貶されている気分になるんだけど」

 

 

「気分も何も実際貶してるんだか?」

 

 

ゆんゆんはめぐみんの言葉を聞くと涙目でポカポカと叩く

 

 

「勇気を出して言ったのに!私の勇気を返しなさいよ!」

 

 

「そんだけの元気があるならばもう大丈夫だろ、ゆんゆん?」

 

 

その時ゆんゆんは気づいた、自分の中にあったモヤモヤと鬱屈した気持ちがいつの間か消えていた事に

 

 

「めぐみん…まさか、私を元気にする為にわざと」

 

 

「さぁ、何の事か分かりませんね」

 

 

そっぽを向いてそう言うめぐみんの口調は何時もの物に戻っていた。

 

 

「さてと、里のみんなが待ってます。そろそろいきますよゆんゆん?」

 

 

そう言うと里の出口へと歩いて行くめぐみん。ゆんゆんはめぐみんの後を追いながら、ある事を考えていた。時折めぐみんは別人のような口調に変わる、先程の酷く大人びた雰囲気のめぐみんが本当のめぐみんなのか?それとも年相応な部分があるめぐみんが本当の姿なのか?めぐみんと一緒に居ればいつかは教えてくれる時が来るのだろうか?ゆんゆんはそんな事を考えながらめぐみんに追いつくと里のみんなが待っている場所へと向かっていった。

 

 

 

 

「姉ちゃん、気をつけて行って来てね!」

 

 

「めぐみん身体に気をつけるのよ?」

 

 

「ゆんゆんもぼっちを拗らせないでよ?」

 

 

「めぐみんも一緒に居るんだ。心配をする必要はないだろうね」

 

 

ゆんゆんとめぐみんの両親、クラスメイト達が2人の旅立ちの見送りへとやって来ていた。

 

 

「皆さん、お見送りありがとうございます。アクセルの街に着いたら手紙を送りますよ」

 

 

「姉ちゃん!その時は美味しい物を送る事も忘れないでね!後、ちょむすけの事もお願いだよ!」

 

 

「分かってますよ。手紙を送る時は食べ物も一緒に送ります。ちょむすけの面倒もちゃんとみますよ…ってこめっこ!ちょむすけの面倒を見ていたのは貴方ではなく私とお母さんですよ!?」

 

 

めぐみんの言葉にバレたかという表情になるこめっこにめぐみんは呆れると持って来ていたバッグを開け、出発の日に向けて用意していたとあるコートを出すとずっと着ていたマントを脱ぎそのコートを代わりに羽織る。そのコートは旧世界で自分が好んで着ていた物と同じであった。めぐみんは自分の旅立ちの時にはこのコートを着て行くと決めていたのだ。

 

 

「そのデザイン…どことなく勇者候補と呼ばれている人達が着ている摩訶不思議な服装に似てるわね?」

 

 

ふにふらがめぐみんの着ているコートを興味深く見つめ

 

 

「私も初めて見たけど…なんていうか不思議な感じがするデザインよね?」

 

 

ゆんゆんも初めて見たのかあるえ達と同じ反応をしていた

 

 

「ところで2人共、アクセルへと行くなら途中でアルカンティアを経由するのが1番の近道なんだがちゃんとテレポート屋の手配はしているのか?」

 

 

あるえが心配そうに言うとめぐみんは得意げに『黄色いフルボトル』と『黒くて小さな箱』を取り出す。

 

 

「テレポート屋なんかに頼らなくてもコレさえあればアルカンティアまでは楽勝に行けますよ」

 

 

そう言うとめぐみんは黒い箱に付いているスロットに黄色いフルボトル…ライオンフルボトルを装填すると誰もいない場所に向かって放り投げる

 

 

『ビルドチェンジ』

 

 

その音声と共に黒い箱は変形しながら巨大化し小さな箱はビルドのライダーマシン。『マシンビルダー』へと変形完了した。

 

 

「…本当にめぐみんは最後の最後まで驚かせるわね…」

 

 

目の前で起きた信じられない出来事にその場にいためぐみんとゆんゆん意外が絶句していた。

 

 

そんなゆんゆん達を尻目にめぐみんはマシンビルダーに近づくと運転席にある小さな窓?を操作する。すると黒い兜が2つ現れ、めぐみんはその内の一つをゆんゆんに投げ渡した。

 

 

「それはヘルメットという物です。このバイクに乗る時は其れを被って下さい。まぁ、死にたいならば被らなくても良いのですが」

 

 

「ちゃんと被るわよ!ていうか、めぐみんが出した其れはなんなのよ!!」

 

 

何時もの調子に戻ったゆんゆんのツッコミが冴え渡る。

 

 

「これはバイクという乗り物です。馬車なんかよりも速くしかもテレポート屋の料金よりも安いという最高の乗り物ですよ。さぁ、早く後ろに乗って下さい。出発しますよ」

 

 

めぐみんはバイクに跨ると後ろから乗るようにゆんゆんを諭す。ゆんゆんはめぐみんから渡されたヘルメットを被るとめぐみんの指示通りにバイクの後ろに跨るとめぐみんの腰にしっかりと掴まる。其れを確認しためぐみんはビマシンビルダーのエンジンを入れる。するとマシンビルダーからエンジン音が鳴るとその様子を見ていた里の人々達から驚愕した表情と視線が送られる。其れに気づいているめぐみんは軽く手首をスナップさせると里の仲間達に見守られながら出発した。目的地は駆け出しの冒険者達が集まる街、アクセル。そしてそのアクセルの街でろくでなしだか、しかし素晴らしい仲間達との出会いが待っている事をめぐみんはまだ知らない。

 




紅魔族の里編終了です。

原作をベースとしながらもオリジナル展開が多くなると思いますが宜しくお願い致します。

次回からはアルカンティア編が始まります

評価、感想を待ってます


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この水の都に祝福を!!


『天才物理学者の桐生戦兎はぼっちでコミュ障のゆんゆんをお供に紅魔族の里から旅立ったのだった』


『戦兎さん!ぼっちでコミュ障なんて酷いじゃないですか!!もう少しまともな紹介出来ないんですか!?』


『じゃあ、チョロくて土下座すれば何でもやらしてくれそうなゆんゆん!っで、とう?』


『更に悪くなってますよ!!本当に怒りますよ!?』


『ごめんな、ゆんゆん流石に言い過ぎた。謝るよ』


『えっ!?あ、あの、分かってくればそれで良いので…』


『はい。ゆんゆんが許してくれたので第6話の始まり始まり』




 

めぐみんとゆんゆんはマシンビルダーに乗ってアルカンレティアへの道を走っていた。

 

 

「ホント、このばいくって乗物はどうなってるのかしら?馬車より速い乗り物なんて聞いた事がないわよ」

 

 

「ふふ、この私が作ったバイクに乗ったら、もうチンタラ走っている馬車なんかには乗れませんよ。後、数分もすればアルカンレティアに到着しますよ」

 

 

めぐみんの言う通りに数分後にはアルカンレティアの正門が見えて来た。めぐみんはマシンビルダーのスピードを更に上げると正門へと向かう。アルカンレティアの正門には商人やアルカンレティアを拠点にして活動している冒険者達、そしてアルカンレティアに観光へとやって来ていた旅行者達でごった返していた。その中でも一番の注目を浴びていたのはバイクに乗ってアルカンレティアに入って来ためぐみんとゆんゆんだった。門番の兵士もふたりが乗っているバイクに目を奪われおり正門にはふたりを中心に人だかりが出来ていた。特に商人達は新たな商売のネタにするつもりなのかマシンビルダーをしきりに観察しておりその開発者がめぐみんだと知ると周りからは天才発明家と呼ばれ其れを聞いためぐみんは鼻高々になりフンスと胸を張っていた。その後意気揚々とマシンビルダーをしまっためぐみんに顔を真っ赤にしたゆんゆんが近づくとめぐみんの耳を引っ張った。

 

 

「い、痛いです。ゆんゆん離して下さい!」

 

 

 

痛がるめぐみんを他所にゆんゆんは早歩きで正門から去っていく。そしてそんなめぐみん達を監視するように近くの建物の屋根からコウモリ男が立っているのだった

 

 

 

 

それから数日後…めぐみん達はアルカンレティアに滞在していた。その理由はアルカンレティアは温泉の都と呼ばれている観光名所…めぐみんにとっては懐かし日本の温泉に入れるという事なのでゆんゆんに頼み込み滞在期間を少し伸ばす事にしたのだ。ゆんゆんもアルカンレティアの温泉は有名である事を知っていたし普段から研究と開発以外の事では自分の意見を言わないめぐみんが珍しく滞在したいと言っていたので特に文句もなくその言葉に同意し滞在する事にしたのだ

 

 

「温泉はやはり良い物ですね…この感覚いつの間にか忘れてた気がします」

 

 

「確かに温泉は気持ち良かったけど、でも、めぐみん。貴方、温泉から出る時温泉の源泉を容器に入れてたわよね?ひょっとして何かの研究か開発に使うつもりなの?」

 

 

「ここ数日の滞在でアルカンレティアの温泉はアクシズ教の女神アクアの加護を受けている影響なのか、魔力が大量に含まれているようなんです。その魔力を利用すればビルドの戦力を強化する事が出来るかもしれません、試してみる価値はあるでしょう」

 

 

「めぐみんが言っている事が本当なら、滞在した甲斐があったわね」

 

 

ゆんゆんがめぐみんの言葉に嬉しそうに言っていると路地裏から誰か騒いでる声が聞こえて来た。その声を聞いためぐみんとゆんゆんは顔を見合わせると路地裏へと入って行く。すると其処には金髪のシスターを取り押さえるように屈強な男達が取り囲んでいた。

 

 

「こういう状況を見逃す訳にはいきませんね」

 

 

めぐみんはラビットフルボトルを手にすると其れを振り始めた。するとめぐみんの動きが格段に素早くなりそのまま男達の懐に飛び込むとデコピンで男達の意識を奪い、取り囲まれていた金髪のシスターの手を握ると素早くその場から逃げ出した

 

 

「大丈夫ですかシスターさん?」

 

 

「助けて頂きありがとうございます。私はアクシズ教会でシスターをしているセシリーといいます。もしよろしければ貴方達のお名前を教えて頂けませんか?」

 

 

そんなセシリーの言葉にめぐみんとゆんゆんは何の疑問も持たずに素直に自分達の名前を教える事にした

 

 

「私の名前はめぐみん。紅魔族の里からアクセルの街へと向かっている途中です」

 

 

「ゆ、ゆんゆんと言います。その…めぐみんとは友達で一緒にアクセルの街に向かって旅をしている途中です」

 

 

めぐみんとゆんゆんの言葉を聞いたセシリーは突然俯いたと思うと直ぐに細かく震え出すとカバッと顔を見てあげ

 

 

「ありがとう心優しいめぐみんさん!ゆんゆんさん!この出会いはきっとアクア様のお導きよ!と、いう訳でアクシズ教に入りましょう!」

 

 

突然目の色を変えたセシリーがめぐみんとゆんゆんにアクシズ教の入信書を押し付けて来る。めぐみん達はそんなセシリーの豹変と勢いに戸惑っていた。

 

 

「あああ!!今日は何と素晴らしい日なのかしら!邪悪なエリス教徒に邪魔をされていた私をこんな美少女達が助けてくれるなんて!!」

 

 

セシリーはパァァァという擬音が聴こえてもおかしくない程喜びを全身で表していた

 

 

「エリス教が他の教徒の邪魔をするって…一体何があったんですか?」

 

 

めぐみんはセシリーにそう質問するがその数秒後、セシリーにそう質問した自分を後悔する事になる

 

 

「何時ものようにエリス教の炊き出しに参加してその炊き出しの食料を全部独り占めにした後エリス教会のガラスを石で割って奴らが崇拝している邪神エリス像に落書きしてエリス像の胸を削ったりしただけよ?そしたら奴らは本性を現して清く麗しいアクシズ教徒であるこの私に襲いかかってきたのよ!…てっアレ?めぐみんさん?ゆんゆんさん?何処行くの?」

 

 

セシリーが話を最後まで聞かずにめぐみんとゆんゆんはその場から早歩きで立ち去る

 

 

「ゆんゆん。私はこれからあの男の人達に謝りに行こうと思います」

 

 

「私も付き合うわめぐみん。一緒に誠心誠意謝ればきっと許してくれると思うわ」

 

 

しかしセシリーはそんなふたりを逃さまいと服を掴んで離さない

 

 

「落ち着きましょうふたりとも同じ人間なんだから話し合えば分かり合えると思うの」

 

 

「話し合うも何も一から百まで貴女の所為ですよね!?」

 

 

「やっぱり里のみんなが言っていた通りアクシズ教の人達は変人狂人ばかりじゃない!ねぇ、めぐみん。早くこの街から出て行きましょう?」

 

 

めぐみんは変人度では紅魔族も負けてませんよ?というツッコミを思わずしたくなったが其れを堪えた

 

 

「お茶だけ!お茶だけ良いからもう少しだけお姉さんと付き合ってお願い!!」

 

 

「セシリーさん、結構ヤバめな事になっている事に気付いてますか!?」

 

 

側から見るとヤバめな雰囲気を出しているセシリーに根負けしためぐみん達はお茶に付き合うわ為に近くの食堂へ入ると直ぐにふたりの前にお茶が出された

 

 

「ささ、遠慮せずに沢山飲んで良いわよ?」

 

 

「お茶を飲んだ瞬間、アクシズ教に入信決定って事はありませんよね?」

 

 

ジト目で睨んでくるゆんゆんを誤魔化すように口笛を吹くセシリー、めぐみんはため息をつくと席から立ち上がろうとする。するとそんなめぐみんに老年の男性が声をかけてきた

 

 

「おやおや、随分と可愛らしいお客さんですな。もしや新しい入信希望者ですかな?」

 

 

めぐみんとゆんゆんはその言葉でその老人がアクシズ教徒と確信し警戒心を剥き出しの体制になる。

 

 

「ふたりとも安心して良いわよ。この人はアクシズ教の司祭であるゼスタ様。ちょっとロリコンで変態的なところがあるけど素晴らしい人よ?」

 

 

「今の会話の何処に安心出来る要素があったんですか!?」

 

 

ゆんゆんのツッコミが炸裂していると食堂の扉が大きな音を立てて開かれ凛とした女性と何処かの騎士団らしき兵士が食堂内に立ち入って来た。

 

 

「ゼスタ司祭!貴方には魔王軍と繋がっている容疑がかかっている!大人しく来て貰おうか?」

 

 

突然現れた乱入者に対してめぐみん達は思わず『はぁ?』と口を揃えて言ってしまったのは言うまでなかった。その後ゼスタは騎士団に連行されて行き、お茶も飲んだめぐみん達はやる事もなく、その場で解散する事になり、ゆんゆんはもう少し街を見学すると言っていたのでめぐみんはひとりで宿へと戻る事にした。

 

 

 

 

 

めぐみんが宿に戻って来てから一晩が経ったがゆんゆんは宿へと戻っては来なかった。しかしめぐみんはゆんゆんならば大丈夫でしょうと判断するとちょむすけがカーペットの上で丸くなって眠っている近くで持って来ていたデバイスを組み立て簡単な装置を作り、その装置により次のボトルの浄化の続きを行っていた

 

 

「流石はアクシズ教の総本山…予想通り温泉には桁違いの魔力が含まれていたな。これならフルボトルを何本か復元出来る。後はこの武器も完成すれば更にビルドの戦力を取り戻す事が出来る」

 

 

そう言っているめぐみんはフルボトルの生成以外にも新たな武器の開発も行なっており、その武器の開発も佳境へと差し掛かっていた。そしてフルボトルの浄化の完了を知らせるアラームが鳴るとめぐみんは装置の中から生成されたフルボトルを取り出す。今回生成出来たのはフルボトルこれで4本目だった

 

 

「今度のフルボドルはタカフルボトルか…これで揃ったベストマッチは3つ目…全てのフルボトルが揃うのには時間がかかりそうだが、気長にやるしかないか…」

 

 

めぐみんは浄化の終わったフルボトルをポーチに入れると、開発中ずっと張り詰めていた気が抜けた所為かゆんゆんの事が心配になり、めぐみんはゆんゆんを探す為に外に出た。するとめぐみんはアルカンティアの住人達の様子が昨日と違う事に気がついた。

 

 

「アクシズ教に入れば貴方は幸せになります!!さぁ、アクシズ教に入りましょう!!」

 

 

「アクシズ教に入ればこの石鹸を特典としてあげますよ!!この石鹸はどんな汚れを落とせるしその上この石鹸は食べられるの!!この石鹸は食べても平気なの!!」

 

 

「貴方に女神アクア様の祝福を!!」

 

 

昨日とは違いアクシズ教の信者達がアルカンティアにやってきていた旅行者達に強引過ぎる勧誘を至る所で行なっていた。

 

 

「地獄絵図ですね…」

 

 

その様子を横目で見ていためぐみんは出来るだけ関わり合いにならないように路地裏を経由してゆんゆんの姿を探しているとめぐみんの目の前に非常に見覚えのある少女が現れると目の前でわざとらしく転び、これまたわざとらしく膝を抱え痛がる姿を見せていた

 

 

「膝を擦りむいちゃってもう歩けないよ〜誰が助けて〜」

 

 

カタコトでバレバレな演技をしている知り合いの少女に良く似た少女にめぐみんは頭を抱えながら

 

 

「何やってるんですか…ゆんゆん」

 

 

めぐみんの言葉に目の前で転んでいる少女…ゆんゆんはギクリとするとギギという音が聞こえてきそうな雰囲気を出しながら首だけをめぐみんへと向ける

 

 

「め、めぐみん…違うの…これには事情があって…こうすればきっと助けてくれる人が現れるからって…」

 

 

「一体どのような事情があればこんな真似をする必要があるのかしっかりと説明して貰おうか?」

 

 

珍しく怒りのオーラを出しているめぐみんを見るとゆんゆんは慌てて起き上がるとその場で正座しどうして自分がこんな真似をしたのかを説明し出した。ゆんゆんの話によるとあれからセシリーにせがまれるままに布教活動へと協力する事になり先程の信者達が旅行者達に対して行なっていた強引な勧誘もゆんゆんの発案による物であり、その後ゆんゆん自身もセシリーの懇願により先程の行動に出てしまったらしい。ゆんゆんの言葉を聞いためぐみんは頭を抱えると

 

 

「アクシズ教ってのはまともな奴はいないのか!!」

 

 

思わず桐生戦兎としての顔を出してしまった、めぐみんのそんな叫びが町中に響いた。

 

 

「ゆんゆんもどうして素直に布教活動に協力してんだよ!!普通に断れ!!」

 

 

「だ、だって、私の力が必要だってセシリーさんが友達なら協力してくれるよねって言われたから」

 

 

「幾ら何でもチョロ過ぎだろ!!いい加減にしろ!!」

 

 

「痛い痛い!!ごめんなさいめぐみん。私が悪かったきら許してぇ!!」

 

 

めぐみんのアームロックがゆんゆんに決まりゆんゆんは半泣きでめぐみんに許してと言っており、その様子を隠れて見ていたセシリーがめぐみんの前に出てくると

 

 

「めぐみんさん、ゆんゆんさんも悪気はなかったのだから許してあげて?おねいさんからのお願いよ?」

 

 

「そもそもの元凶が何言ってんだよ!!」

 

 

悪びれる様子も無ければ他人事のようにそう言っているセシリーにまたもや頭を抱えながらそう突っ込むめぐみんだった。

 

 

「それで?ゆんゆんは一体何の助けを求めていたんですか?」

 

 

何とか気を取り直しためぐみんがゆんゆんにあんな手段に出てまでどうして助けを求めていたのかを尋ねる

 

 

「何でもこの温泉にところてんスライムが混入されてだらしく、その犯人探しを手伝ってたのよ」

 

 

ところてんスライム。それ王都を始めとする色々な場所で発売されている所謂嗜好品のひとつである。あやゆる世代の男女に人気の品だったが幼児や老人がところてんスライムをのどにつまらせる事故が続発し現在は王家の命より販売が規制されている筈だった。

 

 

「どうして販売が規制されている筈のところてんスライムがこんなところにあるんです?ていうか何故温泉に混入されているんですか?」

 

 

「事件の経緯については私から説明します」

 

 

めぐみんの疑問に答えるように現れたのは昨日魔王軍の関係者と疑われ兵士達に連行されていった筈のゼスタだった。

 

 

「ゼスタさん?貴方は確か兵士達に連行されていった筈…いつの間に戻って来たんです?」

 

 

「この私が魔王軍の手下などという不当な言いかがりに屈する訳がないでしょう!王都から来た検察官が嘘を感知するという魔道具を持ち出して私を取り調べをしましたがその魔道具がこの私の潔白を証明してくれたのですよ。その時の検察官の顔は見ものでしたよ!!」

 

 

ゼスタがその時の事を思い出しているのか笑い声を上げているとセシリーもゼスタの言葉に同意するように声を上げた

 

 

「ゼスタ様、流石です!!私は貴方様の無実を信じていました!!」

 

 

セシリーはゼスタは無実を信じていたのか、とても喜んだ様子を見せており、その様子を見ためぐみんはセシリーの事をほんの少し見直す事にした。しかしそんなセシリーをゆんゆんはジト目て見つめており、そんなゆんゆんに気づいためぐみんはふたりに聞こえないようにゆんゆんに声を掛ける。するとゆんゆん曰くセシリーはゼスタの身を案じては居らずそれどころか新たな司祭を決める為の選挙の準備を信者達と共に始めようとしていたらしい、ゆんゆんの話を聞いためぐみんはほんの少しだけ見直そうとした気持ちを撤回し呆れ果てた目でゆんゆんと共にセシリーを見つめた。そんなふたりの呆れた視線に気づく事なく、ゼスタはめぐみん達にとって非常に興味深い情報を口にする

 

 

「実は今回の事件、あらかじめ予言されていた物なのですよ。我がアクシズ教と親交の深い紅魔族の凄腕占い師の占いに出ていたのです。近い内に魔王軍の配下の者がこのアルカンティアを貶める為にこのような騒ぎを引き起こすと」

 

 

「魔王軍の配下がそんなショボい事をしますかね?」

 

 

ゼスタの話を聞いていためぐみんは魔王軍の配下の仕業にしては随分とショボい嫌がらせに関して本当に魔王軍の仕業なのか疑問に感じたがめぐみん自身このアルカンレティアの温泉にはここ数日世話になっていたので一応は真相の究明に協力する事を決意した。

 

 

「魔王軍の仕業かは置いといてここの温泉には私もお世話になりましたから事件の捜査ぐらい協力しますよ」

 

 

セシリーはそんなめぐみんの言葉を聞くと全身に喜びのオーラを出しながらめぐみんに抱きついた

 

 

「ありがとうめぐみんちゃん!この調子で私の事もおねいさんと呼びましょう!」

 

 

「呼びませんからね?」

 

 

めぐみんはそんなセシリーを軽くあしらうと今日はもう結構な時間だった為に本格的な捜査は次の日に始める事にしめぐみんとゆんゆんはゼスタとセシリーと別れると宿へと戻った。セシリーがふたりの宿の場所を知る為にこっそりと後をつけていたがセシリーの尾行に気づいていためぐみんによりあっさりと撒かれた事は言うまでなく、めぐみん達に撒かれたセシリーは落ち込んだ様子でアクシズ教の教会へと戻って行く。そんなセシリーの様子をコウモリ男が建物の影から見つめていたがセシリーはそんな目線に気づく事はなかった。

 

 

 

 

 

次の日

 

 

セシリーはアクシズ教会で早朝の清掃の仕事をしていた。

 

 

「全くもう、めぐみんさんもゆんゆんさんも素直じゃないわね。素直に私の事をおねいさんと呼べば良いのに」

 

 

セシリーは全くこたえた様子は無く、あいも変わらずそんな事を呟いでいた。するとアクシズ教会の扉を開く音がセシリーの耳に入り、セシリーがその音の方向を見ると其処にはコウモリに良く似た男が立っていた

 

 

「随分と変わった来訪者さんですね?まぁ、良いでしょう。我がアクシズ教は邪悪なエリス教と違い見た目で人を選んだりはしません。悪魔以外は何でも受け入れる広き心を持っているのよ、さぁ、貴方の罪を懺悔しなさい。そして貴方が可愛い女の子ならば私の妹にして差し上げましょう」

 

 

しかしコウモリ男はそんなセシリーの言葉に答える事はなく、コウモリ男は無言で銃型のデバイスを取り出すと赤いバブルがついている小型の剣型のデバイスと合体させた後セシリーに向かってその合体した武器を構えると引き金を引く、すると謎の黒煙がセシリーに纏わり付いた

 

 

「キャァァァァ!!!」

 

 

その黒煙には何かの薬品が含まれているのかセシリーが悲鳴をあげる。そして煙が晴れるとセシリーの姿がこの世界には存在しない筈の怪人…ストロングスマッシュへと変化しスマッシュとなったセシリーは雄叫びをあげると教会の壁を破壊し外へと飛び出して行った。その様子を見届けたコウモリ男は加工された声で呟く

 

 

「さてと…お前の実力を確かめさせて貰うぞ。めぐみん…いや、仮面ライダービルド」

 

 

コウモリ男はそう言うと持っていた銃型のデバイスで煙幕を張りその場から姿を消した

 

 




謎のコウモリ男の目的は?そしてスマッシュにされてしまったセシリーの運命は?次回を楽しみにして下さい。 感想と評価を待ってます



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この正義のボーダーラインに祝福を!!

『アルカンレティアは女神アクア様の加護を受けている神聖な土地です。さぁ、其処の貴方もアクシズ教に今すぐに入信を…』


『ゼスタさん!!あらすじ紹介で勧誘しないで下さい!読んでくれている人達が逃げちゃうじゃないですか!』


『しかしですね、ゆんゆんさん。この機会にアクシズ教の素晴らしさをこの作品を読んでくれている人々に説いてあげようと』


『それで伝わるのはアクシズ教の素晴らしさじゃなくて恐ろしさです!!』


『何故アクシズ教の素晴らしさが皆さんに伝わらないのですが?我々は何時も真摯に布教活動をしているだけなのに…』


『ゼスタさん達がやっているのは布教活動ではなく、妨害活動でしょう!!戦兎さんじゃないけどアクシズ教にまともな人は居ないんですか!!ああ、もう!第7話のスタートです!』




アルカンレティアに滞在してから4日目めぐみんとゆんゆんは…迫り来るアクシズ教の信者達から逃げていた。

 

 

「急いで下さいゆんゆん!奴らに捕まったら終わりですよ!」

 

 

「待ってよめぐみん!私、もう…息が…」

 

 

朝からずっと逃げ回っているのでゆんゆんは既に体力の限界が近いらしく。俺達は辺りにアクシズ教徒が居ないのを確認すると近くの路地裏へと身を隠した

 

 

「ハァハァ…ここなら暫くは見つからないだろう」

 

 

「そうだと良いんだけど…ねぇ、めぐみん。アルカンレティアからもう出発しましょう?此処にいたらいつか強制的にアクシズ教徒にされちゃいそうで怖いわ…」

 

 

ゆんゆんは最早トラウマレベルになるまでアクシズ教徒を恐れているのか青い顔でカタカタと震えており、俺の目から見ても不憫になり始めたのでゆんゆんの為に飲み物と軽い軽食を買いに行く事にした。

 

 

「ゆんゆんは此処で休んでいて下さい。飲み物と何か食べ物を買って来ますから」

 

 

俺はそう言うと表の通りに人が居ないのを確認すると素早く路地裏から出て飲み物と軽い軽食を買いに行った。

 

 

 

 

めぐみんが居なくなりひとりになったゆんゆんは心細くなっていた。めぐみんのおかげで多少改善はされたものの未だに性格の根本的な何処は変わっていなく。めぐみんが居ないと縮こまってしまうのだった。そしてそんなゆんゆんに背後から音も無く忍び寄る影…というよりアクシズ教の司祭であるゼスタが近づくとゆんゆんに話しかけて来た。

 

 

「やぁ、ゆんゆんさん。こんな何処で会うとは奇遇ですなぁ」

 

 

「ひ、ゼスタさん!?」

 

 

アクシズ教徒の恐ろしさを骨の髄まで刻み込まれているのか、ゆんゆんが怯えた表情でそう言うと

 

 

「人の顔見て怯えるなんて酷いですなぁ、ゆんゆんさん。…まぁ、可愛い少女にそう言われるとそそられる物がありますがね」

 

 

ゼスタのど変態発言にゆんゆんはドン引きすると一刻も早くゼスタの元から離れたいのかその場から素早く立ち上がると早歩きで路地裏から出るがそんなゆんゆんの後をゼスタがついて来る。

 

 

「どうして後をついて来るんですか!?」

 

 

「私の行く方向にゆんゆんさんが向かっているだけで、いやらしい意味合いなどはありませんよ?…あ、そうです、ゆんゆんさん。今アルカンレティアでアンケートを取っているので良かったらどうです?」

 

 

ゼスタはそう言ってゆんゆんにアンケート用紙を差し出して来るがゆんゆんはアンケート用紙に見向きもせずに手で振り払う

 

 

「アンケート用紙と偽って入信書を渡して来るのは辞めて下さい!しかもそれ私が教えた勧誘方法じゃないですか!!」

 

 

ゆんゆんのツッコミがゼスタに炸裂するのと同時に近くのアクシズ教徒の教会のドアが吹き飛びその中から謎のモンスターが姿を現した。

 

 

「なっ!?アレは…モンスター?どうしてこんな街中で…しかも見た事のないタイプの…まさか新種のモンスター?」

 

 

「我がアクシズ教の総本山で、しかもアクシズ教の聖なる教会でのまさかの狼藉…例えアクア様が許したとしても我々が許しませんぞ!!『エナジーイグニッション』!!」

 

 

そう言うとゼスタは炎の上級魔法であるエナジーイグニッションをその新種のモンスターに向けて放つ。瞬く間にモンスターは巨大な炎に飲み込まれてしまった。その光景を近くで見ていたゆんゆんはゼスタのアクシズ教の司祭としての実力が本物であった事を実感する。しかし燃え盛る炎の中からモンスターが全く傷を負っていない状態で現れると余裕を見せていたゼスタの表情に曇りが生じた

 

 

「何と!私の攻撃魔法が効いてはいないようです

 

…もしかしたら対魔法のスキルでも持っているのかも知れません。だとしたら厄介ですな…」

 

 

「私。魔法スキル以外に取っている攻撃スキルなんて無いわよ!!」

 

 

ゆんゆんは自分が魔法スキルしか取っていなかった事を後悔しているとモンスターが雄叫びをあげ手に緑色の光弾を作り出すと其れをゆんゆんとゼスタに向いて放し、ゆんゆんとゼスタは思わず目を閉じてしまった。

 

 

「めぐみん…助けてぇぇぇ!!!」

 

 

「アクア様ァァァァ!!!」

 

 

そしてストロングスマッシュの光弾がぶつかる瞬間、ゆんゆんとゼスタとの間に一台のバイクが割り込んで来る。そしてそのバイクに乗っていた人物は…

 

 

 

 

 

ストロングスマッシュがゆんゆん達の前に現れるほんの少し前…めぐみんは屋台からジュースと焼き串を数本買うとゆんゆんが待っている場所へと戻っていた。(因みにその時に領収書や注文票の代わりにアクシズ教の入信書が渡されたがその場て全て破り捨てた)すると突然街の至る所から爆発と共に謎の兵士が現れ、街に攻撃を仕掛けていく。しかし街には冒険者達が滞在していた為。彼らは事件解決の為、市民を守る為に謎の兵士達に戦いを挑んで行った。しかし歴戦の冒険者達でもモンスターでも無く、もしかしたら人間かもしれない相手に本気を出す事が出来ずに徐々に苦戦を強いられていく。そんな中めぐみんは冒険者達が戦っている兵士の姿を見て心の底から驚いていた。

 

 

「アレは…ファウストのガーディアン!?何故こんなところに!?」

 

 

「君は彼奴らを知ってるのか?」

 

 

めぐみんの言葉に冒険者のリーダー格と思われる男が

 

めぐみんの言葉に反応した

 

 

「はい。あいつらはガーディアンという戦闘用のロボットです!」

 

 

「ろぼっと…って何だ?」

 

 

馴染みのない言葉にリーダー格の男は首を傾げる

 

 

「分かりやすく言いますとアレは小型のゴーレムです!」

 

 

そんなめぐみんの言葉を聞いたリーダー格の男は

 

 

「良く分からねぇが、人じゃないって事が分かればこっちもんだ!!」

 

 

リーダー格の男の言葉を聞いた冒険者達は攻撃魔法やスキルを使ってガーディアン達に攻撃し始める。めぐみんも戦いに参加する為にカイゾクハッシャーを構えた時

 

 

『流石はめぐみん…いや、桐生戦兎と言った方が良いかな?』

 

 

「ッ誰だ!?」

 

 

まさか自分の正体を知っている?めぐみんは戦兎としてその声をした方向を見ると其処にはいつの間にかコウモリ男が立っていた。そして戦兎にとってそのコウモリ男は忘れる事など絶対にできはしない相手であった。

 

 

「馬鹿な…お前はナイトローグ!?何故こんなところに!?」

 

 

『お前の事は奴から聞いているぞ?かつて世界を救う為にパンドラボックスを使い世界を作り変えたそうじゃないか?』

 

 

そう言うナイトローグの声は加工された物であり声だけでは男なのか女なのかは判断出来なかった

 

 

「…パンドラボックスの事まで知っているとはな。お前の目的は何だ?お前は一体何者なんだ!?」

 

 

『俺の正体などお前には関係ない事だ。お手並み拝見と行くぞ?仮面ライダービルド!!』

 

 

「ク、やるしかないのか!」

 

 

めぐみんはビルドドライバーを腰に取り付けると赤と青のフルボトルを装填する

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!!ラビットタンク!イェーイ』

 

 

ナイトローグはトランスチームガンから特殊な光弾を発射してビルドを攻撃するがビルドはカイゾクハッシャーで其れを撃ち落とすとナイトローグへと斬りかかる。しかしナイトローグはバトルシューズ『ナイトシーカーシューズ』で素早く攻撃を避けると無駄の無い動きでビルドの背後をとるともう片方の手に握られていた赤いバブルのついた『スチームブレード』でビルドを斬りつけた

 

 

「クソ!これならどうだ!?」

 

 

ビルドはカイゾクハッシャーでナイトローグ周辺の地面を撃ちそれにより煙幕を立てると其れを目くらましに利用しナイトローグとの距離を詰めるが…

 

 

『こんな小細工に頼るとは…奴の言う通り全盛期の頃からかなり力が落ちているのは間違いないようだ』

 

 

ナイトローグはそう言うとビルドの居場所が見えているような動きで正確にビルドをスチームブレードで斬りつける

 

 

『中々に良い策だったが残念だな?この頭部クリアゴーグル『バットナイトゴーグル』に内蔵されている超音波センサーと視覚センサー『ナイトシーカーアイ』に内蔵されている暗視装置のおかげで暗視状態でも俺は変わらずに戦闘が出来るんだよ』

 

 

余裕綽々な様子でそう言ってくるナイトローグに対してビルドは

 

 

「通用しないのは最初から分かってんだよ!!次はコイツだ!!」

 

 

ビルドはドライバーのボルティクレバーを回転させビルドのボルティクフィニッシュを発動させた

 

 

『ボルティクフィニッシュ』

 

 

「タァァァァァァ!!!」

 

 

ビルドのライダーキックがナイトローグへと向かって行くがナイトローグは慌てた表情ひとつ見せずにスチームブレードを構えるとその刀身に光を集中させる

 

 

『エクステリオン!!!』

 

 

ナイトローグのスチームブレードから巨大な光の斬撃が発せられると攻撃中のビルドに決まりビルドの攻撃は中断される。そしてナイトローグの攻撃を受けたビルドは装甲から火花を散らしながら地面に転がった。

 

 

『どうやら今のビルドではこの程度か…まぁ、良い。お前と接触するという目的は果たした。お前がこれからもビルドとして戦うならばまた会うこともあるだろうさらばだ』

 

 

ナイトローグはトランスチームガンを構えると自分の周りに煙幕を張るとビルドにとある事を言い放った

 

 

『そうそうお前の仲間のところに今頃俺が生み出したスマッシュが向かっている頃だろうがこんなところで道草を食っている暇があるのか。めぐみん?』

 

 

ナイトローグは最後にそう言うと高笑いをあげながら姿を消す。そんなナイトローグの話を聴いためぐみんは痛む身体に耐えながら立ち上がるとマシンビルダーを起動させゆんゆん達の元へと急ぐ

 

 

「ゆんゆん…無事で居てくれ!!」

 

 

そんなめぐみんの必死な言葉は風に乗っていつの間にか消えて行った

 

 

 

 

ストロングスマッシュの攻撃がゆんゆんとゼスタにぶつかる寸前、一台のバイクが間に入りふたりの代わりに攻撃を受けたそれによりバイクは火花を散らしながら大破し運転していた人間…めぐみんも変身が解除された状態で地面に転がる

 

 

「めぐみん大丈夫!?怪我はない?」

 

 

ゆんゆんは慌ててめぐみんの元へと走り寄る

 

 

「私は大丈夫です。そんな事よりも大変な事があります。あのスマッシュは…セシリーさんなんです!!」

 

 

「あのモンスターがセシリーさん!?一体どういう事なのよめぐみん!!」

 

 

「セシリーは我がアクシズ教の大切なシスターです。めぐみんさん詳しい事情を教えて下さいますよね?」

 

 

「分かってますよ…あのモンスターの名前はスマッシュと言います。謎のコウモリ男にセシリーさんはあんな姿に変えられてしまったんです」

 

 

「そんな…セシリーさんを助ける方法はないの?」

 

 

「助ける方法はあります。奴を戦闘不能にした後、このボトルでスマッシュの成分を回収すれば助けられます」

 

 

「めぐみん。あのモンスター…スマッシュには私達の魔法スキルが通用しないのよ!!」

 

 

ゆんゆんは自分の攻撃がスマッシュに通用しない事をめぐみんに話す。そしてゆんゆんがめぐみんに話しているその間にストロングスマッシュの配下のガーディアン達が街に引き続き攻撃を加えて行く。そしてアルカンレティアに滞在している商人や単なる旅行者達にもガーディアンが襲い掛かろうとした時にアクシズ教徒の攻撃魔法が天から降り注ぎガーディアン達を次々と破壊して行った。

 

 

「サンキュー助かったぜ!!」

 

 

「まさかアクシズ教徒に助けられる日が来るなんて!!」

 

 

アクシズ教徒に助けられた商人と旅行者達は口々にアクシズ教徒を褒め称えている。そんな状況をゼスタは見逃す筈がなかった

 

 

「皆さん!こういう時こそアクシズ教徒の力を合わせて多くの人々を救うのです!!そしてその人々にアクシズ教の正義の素晴らしさを解き教徒になって貰うのです!」

 

 

「ゼスタさん、こんな時まで勧誘なんてしないで下さい!」

 

 

「ここで恩を売っておけばアクシズ教へと入って貰えるのかもしれないのですよ?こんなチャンスを我々が逃す訳がないでしょう?」

 

 

「でも…そんな人の弱みに付け込むやり方は…」

 

 

「私達は慈善事業をやっている訳ではないのですよ。ゆんゆんさんも冒険者になるつもりなのでしょう?冒険者は依頼をこなして対価として報酬を得る。其れと一緒ですよ?めぐみんさんも人を助けているのは私と同じ理由ですよね?」

 

 

俺は今まで報酬を得る為にお礼を貰う為に戦った事は一度も無い。俺が人を助けるのは

 

 

「私がビルドをやっているのは誰かの笑顔を守りたいからです。ビルドの力を使って誰かの笑顔をまもれたら、心の底からうれしくなって、くしゃっとなるんです私の顔。マスクの下でみえませんけど」

 

 

そこまで言うと俺はゆんゆんとゼスタをはっきりと見据え

 

 

「見返りに期待したらそれは正義とは言いませんよ?」

 

 

そう、それは俺がまだ桐生戦兎だった時とある男に対して言った言葉だ。俺にとってそれは絶対に譲る事の出来ないボーダーラインであり俺が正義のヒーローである証のひとつでもある

 

 

「別に見返りを受ける事が悪いとは言わない。人助けに対価を報酬を受けてはいけないとは言わない。でも其れが中心に来てはいけないんだ、報酬をメインにして人助けをしてはならないんだ。そうなった時点で其処には正義は存在しない」

 

 

「めぐみん…」

 

 

ゆんゆんは俺の言葉に感じた物があったのか何かを深く考え込んでいる。ゼスタも一応聖職者なだけあってゆんゆんと同じように感じる物があるのか黙っていた。

 

 

「それじゃあめぐみんは一体何の為に戦っているの?」

 

 

俺が何の為に戦っているかって?…そんなのは決まっている。だから俺はゆんゆんの言葉にハッキリと答えた

 

 

「俺が戦っているのはラブ&ピース…愛と平和の為だ!!」

 

 

俺はそう言うと昨日復元されたばかりのふたつのフルボトルを振るとビルドドライバーへと装填した

 

 

『ゴリラ! ダイヤモンド! ベストマッチ! 』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェイ…!』

 

 

俺は茶色のハーフボディと水色のハーフボディで形成されている仮面ライダービルドのふたつ目のベストマッチフォーム。ゴリラモンドフォームへと変身した。ゴリラモンドフォームはゴリラの圧倒的なパワーとダイヤモンドの高い防御力を兼ね備えたベストマッチフォームだ。セシリーが変化したストロングスマッシュが俺に攻撃を仕掛けて来るが俺はダイヤモンドハーフボディの高い防御力によりダメージは一切追わなかった。俺はダイヤモンドハーフボディの複眼を発光させるとストロングスマッシュの目を眩ます。しかしそれによりストロングスマッシュは激昂し更に攻撃を加えてくるそして俺はストロングスマッシュの強力な攻撃をまともに受けてしまい地面に転がるが地面に転がったビルドの姿は幻のように消え去るとストロングスマッシュの死角に当たる部分からゴリラハーフボディにある巨大な右腕『サドンデストロイヤー』でストロングスマッシュを吹っ飛ばした。

 

 

「まさかも…今のは幻覚魔法?もしかして今のはビルドの新しい能力のひとつなの?」

 

 

ゆんゆんの言う通りダイヤモンドハーフボディには相手の目を眩ます以外に幻覚を作り出す能力があった。俺はストロングスマッシュの目を眩ました直後にダイヤモンドハーフボディの能力を使い自分の幻覚を作り出すと奴が幻覚に気を取られている間に奴の死角に当たる部分に移動したのだ。

 

 

「どこ向いてんだデクの坊!!俺はこっちだ!」

 

 

 

俺が挑発するように言うとストロングスマッシュは雄叫びを上げて襲いかかって来るがすれ違いざまに俺は再びサドンデストロイヤーでストロングスマッシュを吹っ飛ばした。サドンデストロイヤーにはパンチの威力を2倍に引き上げる炸裂パワーユニットが内蔵されている為にたった二撃の攻撃でも相手に大きなダメージを与える事が出来るがこのファームには真価は他にある。しかしそれは俺のラブ&ピースの精神に反する物だ、その為俺はこれ以上戦いを長引かせないように短期決戦へと持ち込む事にした。

 

 

「ゼスタ!この噴水を使わせて貰う!!」

 

 

俺はゼスタにそう言うとダイヤモンドハーフボディの能力を使い噴水をダイヤモンドへと変えると俺はベルトのボルティクレバーを回転させてゴリラモンドフォームの必殺技を発動させる

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

俺はサドンデストロイヤーにエネルギーを貯めるとダイヤモンドへと変えた噴水を砕き、砕いたダイヤモンドを礫のようにストロングスマッシュへとぶつけたた。ゴリラモンドの必殺技を受けたストロングスマッシュは地面に転がるとそのまま大爆発を起こす。そして俺は爆破場所へと向かい其処に火花を散らしながら倒れているスマッシュに空のフルボトルを向けると空のボトルにスマッシュの成分が吸い込まれていき、ストロングスマッシュは元のセシリーの姿へと戻った。そしてその直後にベルトの方にも限界が来たのか強制的に変身が解除されてしまった。その後気を失っているセシリーはアクシズ教の教徒達に運ばれ俺はゼスタの回復魔法により直ぐに回復すると後の始末はゼスタ達に任せゆんゆんと共に旅館へと戻った後戦闘の疲れもあったのか直ぐに眠りへと落ちてしまった。

 

 

 

 

 

次の日、体力も気力も完全に回復したふたりはセシリーの元へと向かった。セシリーの身体にはスマッシュにされた事による悪影響は残ってはいなく直ぐにも職務に復帰出来そうだとセシリーは言っていた。そして例のコウモリ男に関してはセシリー自身直ぐにスマッシュにされてしまった為詳しい情報を得る事が出来なかった。そしてめぐみんとゆんゆんはセシリーに簡単な挨拶をした後セシリーの勧めによりアルカンレティアからの出発を翌日に伸ばす事にすると今日一日は街の復興を手伝う事にした。そしてその次の日の朝、出発前まで大分時間があった為、一昨日の戦いで採取した成分の入ったフルボトルを浄化する為の作業をしていた。

 

 

 

 

 

俺は浄化装置の調整に忙しく手が離せない為ゆんゆんにボトルを代わりに取って貰おうとゆんゆんに声を掛ける

 

 

「ゆんゆん。申し訳ありませんがボトルを取って貰えませんか?」

 

 

「このボトルを取れば良いのね?分かった…って熱!!!」

 

 

ゆんゆんがセシリーから採取した成分が入ったボトルに触れた途端、ボトルが熱を発し、ゆんゆんは熱いと声を上げると持っていたボトルを落としてしまった。床に落ちたボトルはまだ浄化をしていない筈なのにフルボトルへと変化した。そしてそのフルボトルは俺にとってとても馴染み深い物でもあった。

 

 

「うう…火傷するかと思った…」

 

 

ゆんゆんが涙目で手を擦っているが俺はそんなゆんゆんに気を止める事なくゆんゆんの足元に落ちたフルボトルを拾う

 

 

「ドラゴンフルボトル…遂にコイツが来たか」

 

 

ドラゴンフルボトルは俺の『相棒』が使用していたフルボトルだった。この世界でフルボトルを復元して行く内にこのフルボトルが出て来る事も予想はしていたがまさかこんな形でドラゴンフルボトルが復元されるとは思ってもいなかった。

 

 

「ゆんゆん。疑う訳ではありませんが変な事はしていませんよね?」

 

 

「何も可笑しい事はしてないわ。私は普通にボトルに触れただけよ?…もしかしてこのボトルはめぐみんにとって大切な物だったの?」

 

 

「詳しくは話せませんがそんな何処です」

 

 

俺はドラゴンフルボトルを持ったままゆんゆんの言葉にそう答える。何故浄化装置を使っていないのにボトルが生成されたのか。何故ゆんゆんがこのドラゴンフルボトルを生み出す事が出来たのか。分からない事が沢山あるがとりあえずわかる事はこのボトルはゆんゆんが持っていた方が良いという事だ

 

 

「ゆんゆん、貴女にこのフルボトルを渡しておきますね」

 

 

俺はそう言うとゆんゆんにドラゴンフルボトルを投げ渡した

 

 

「えっと…私が持って居ても良いの?私よりもめぐみんが持っていた方が良いんじゃ」

 

 

「良いんですよ。このフルボトルはゆんゆんが手にした事で浄化されました。『今は』ゆんゆんが持っているべき物なのでしょう」

 

 

俺の言葉を聞いたゆんゆんは一応は納得してそのフルボトルをポケットの中にしまう。その時の俺の胸の中にほんの少しだけ生まれている気持ちがあった。、それはゆんゆんが『仮面ライダー』となる未来についてだ。俺にとってこのフルボトルを使って変身する仮面ライダーは今も昔もアイツひとりだけだ。口ではゆんゆんが持っているべきと話したがもし俺の予想している通りの事が起きたら俺は其れを受け入れる事は出来るだろうか?俺はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

その後俺達はアルカンレティアを出発する為に馬車乗り場へと向かっていた。一昨日の戦いでバイクが壊れてしまった為にアクセルの街まで馬車で行く事にしたのだ。俺とゆんゆんが馬車の出発所に到着するとセシリーとゼスタが俺達を見送りに来たのか出発所で俺達の事を待っていた。

 

 

「もうめぐみんさんとゆんゆんさんが出発してしまうなんてお姉さんは寂しいわ!!」

 

 

セシリーは俺達と別れるのか辛いのかゆんゆんに抱きついてすんすんと泣いており、ゆんゆんは鬱陶しそうな顔をしてセシリーを引き離そうとしているがそうはさせまいとセシリーはがっちりとゆんゆんを掴んで離そうとはしない。そんなふたりを俺は呆れた目で見つめてるとゼスタが紙袋を持って近づいて来る

 

 

「めぐみんさん。昨日はこのアルカンレティアを守って下さりありがとうございます。昨日のめぐみんさんの言葉に聖職者として大切な事を多く学ばせて貰いました。これは私からのほんのお礼です、どうか受け取って下さい」

 

 

ゼスタはとても優しい笑顔で紙袋を俺に差し出してくるが俺はそれを受け取るつもりは無く

 

 

「それを受け取る事は出来ませんよ。私達に渡すよりもっと良い事に使って下さい」

 

 

「そんな事を言わずに受け取って下さい!これは私達アクシズ教からの気持ちです」

 

 

ゼスタは半ば強引に紙袋を俺に押し付けて来た。しかし俺は紙袋をゼスタに押し返す。するとゼスタがまた紙袋を俺に押し付けてくる。そんな行動を繰り返す内に俺とゼスタさんの手が滑り紙袋が地面へと落ち紙袋の中身が散乱した

 

 

「….ゼスタさん。これは何です?」

 

 

「勿論我がアクシズ教の入信書に決まってるじゃないですか!我がアクシズ教の名誉教徒であるめぐみんさんとゆんゆんさんには是非ともアクセルの街で勧誘を…って何をするんですか!!」

 

 

ゼスタが言い終わる前に俺はアクシズ教の入信書を足で踏み付けるとセシリーからゆんゆんを引き離してアクセル行きの馬車へと向かう…こいつら全然分かってねぇ、と内心でそう叫ぶと丁度出発の時間になったのか馬車の御者の声が聞こえて来た

 

 

「アクセル行きの馬車は間もなく出発します!」

 

 

俺とゆんゆんは慌ててアクセル行きのチケットを買い馬車へと乗り込む、そして馬車はアルカンレティアから出発した。俺はゆんゆんが退屈しないようにと用意してくれたお茶を飲みながらセシリーの言葉を思い返す

 

 

(あの時戦ったナイトローグの変身者は一体誰なんだ?俺の事を知っているという事は俺の知っている人間か?…でも俺の知り合いはこの世界に恐らく存在しない…一体誰がナイトローグに変身していたんだ?何よりもどうやって『トランススチームシステム』をこの世界で開発したんだ?一番考えられるのは俺の事を知っている仲間達以外の人間が俺と同じようにこの世界に転生している事…兎に角アクセル街に着いたら情報を集めてみるとするか)

 

 

俺はこれからの方針をそう纏めると膝の上に丸まって眠っているちょむすけを撫でながら馬車の外を見つめた。

 

 

今回も感想、評価を待ってます。

 

 

 




俺はこれからの方針をそう纏めると膝の上に丸まって眠っているちょむすけを撫でながら馬車の外を見つめた。


今回も感想、評価を待ってます。




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この素晴らしい旅路に祝福を!!

『天才物理学者の桐生戦兎とそのお供ゆんゆんはアルカンレティアでの戦いを終えアクセルの街へと向かっていた』


『誰かお供よ!!ていうかこのあらすじ紹介のノリいい加減にしません!?私を弄らないといけない決まりでもあるの!?』


『ノリっていうかお約束?なんていうかゆんゆんを弄らないといけない使命感があってな』


『一体何の使命感なの!?そんな使命死んでもごめんよ!!』


『嫌だって言ってもお前の立ち位置は筋肉バカで固定だぞ?』


『だから!筋肉バカって一体誰なのよ!!』


『いずれ分かるさ、さぁ、時間も押して来た事だし第8話スタート!!』






アルカンレティアからアクセルの街までは丸一日かかる距離だ。バイクさえ壊れていなければ半日ぐらいで辿り着いた距離だが生憎とバイクは今現在修理中の為使用不能だ。しかし俺達は其れを面倒だとは思ってはおらず1日だけたがのんびりと馬車の旅を楽しんでいた

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃん!この子猫触っても良い?」

 

一緒の馬車になった少女が俺の膝の上で眠っているちょむすけを輝く目でみつめながらそう言っており、俺は軽く笑みを浮かべ少女に了承の言葉を言うとその少女は顔を輝かせながらちょむすけを自分の膝に乗せ換えるとニコニコと笑いながらちょむすけを撫でていた。その様子を微笑みながら見つめていると反対側にいた男が俺とゆんゆんについてとある事に気づいたのか驚きの声を上げる。

 

 

「コイツは驚いた…嬢ちゃん達は紅魔族か!?」

 

 

男はどうやら俺達が紅魔族である事に驚いているらしい。確かに紅魔族は名前とセンスそして目立ちだがりの辺りに目を瞑ればアークウィザードとしてはとても優秀であり前線で活躍している者も大勢いるので男の反応は当然の物であり馬車に乗っていた護衛の冒険者達も俺達に興味があるのかこちらをチラ見していた。

 

 

「はい。貴方の言う通り私達は紅魔族の人間です。私はめぐみんでこの子がゆんゆんです」

 

 

俺の言葉にゆんゆんが顔を真っ赤にしながら頷く。するとその男は神妙そうな表情を浮かべながら俺達を見ており、其れを疑問に感じた俺はその男に話しかけた

 

 

「急に黙ったりしてどうかしたんですか?」

 

 

「君達が不快に思ったら謝るよ。実はね俺は何度か紅魔族の人とは出会った事はあるんだ。その時の彼らはなんていうかさ…その…」

 

 

その言葉で俺とゆんゆんは男が何を言いたいのかを理解する

 

 

「あー、その何て言いますか…私達と同郷と少し感性がズレていましてね。紅魔族特有のノリとかセンスについていけないので気にしなくも良いですよ?」

 

 

「紅魔族ってのは頭のおかしい連中の集まりかと思ってたが君達みたいな常識人も居るんだな」

 

 

その男はウンウンと頷きながらそう言っている。余程今まで会ってきた紅魔族の人間に苦労させられた事を感じた。俺もめぐみんになって直ぐの頃は紅魔族のノリとセンスに慣れるまでは随分と苦労した

 

 

「私もめぐみんには同意するけど里の皆を悪く言われるのは私としては複雑な気分になるからやめて欲しいんですけど…」

 

 

複雑そうにそう言うゆんゆんに男は謝ると空気を変える為に話題を変えて来た

 

 

「嬢ちゃん達もやっぱり冒険者になる為にアクセルの街に向かっているんだろ?」

 

 

「はい。私もゆんゆんも冒険者になる為にアクセルの街へと向かっている途中です。まぁ、私にはそれ以外にも目的はありますが」

 

 

「その目的ってのは分からないが冒険者になるって事はやっぱりアークウィザードになるのか?」

 

 

「ゆんゆんはアークウィザードになる予定ですが私はなるつもりはありませんよ。私には魔力が無いですからね」

 

 

「魔力がない?…もし、良ければどうしてなのか教えてくれないか?」

 

 

その男は興味深そうにそう聞いてくる。他の乗客も俺の話が気になるのか目線をこちらに向けて来ており特に隠す理由もなかった為に俺は彼らに魔力を失った理由を説明する事にした。

 

 

*********************************

 

 

めぐみんはとても強い人だと私は思っている。もし私がめぐみんと同じ立場だったら、きっと立ち直れなかったと思うし家にずっと引きこもっていたかもしれない。

 

 

「稀に怪我が原因で魔力を失う冒険者がいるっていう話は何度か聞いた事があるがまさかそんな事になった奴と実際に会う事になるとは…辛い話をさせてしまって申し訳ない」

 

 

「いえ、大丈夫ですよ。別に気にしてはいませんし、それにゆんゆんや友人達が私を支えてくれたので」

 

 

「そうか、友人達に恵まれたんだな」

 

 

そうめぐみんに言っている男の目には涙が浮かんでおりそしてめぐみんの話を聞いていた周りの人達の目にも涙が出てが浮かんでいるのが分かった

 

 

「しかし魔力を持たない君はどうやってモンスター達と戦うつもりなんだ?君も一応は冒険者になるつもりなんだろう?」

 

 

「問題ありませんよ。何故なら私にはこの…」

 

 

めぐみんがそう言いかけた時、外から襲撃音が響きその衝撃で馬車は緊急停止すると御者の声が聞こえて来た。

 

 

「こ、ゴブリンの襲撃です!!冒険者の皆さんお願いします!!」

 

 

御者の男の人の声で馬車に乗っていた護衛の冒険者さん達がモンスターを討伐する為に飛び出し行く。そして私は護衛の冒険者ではない乗り合わせていた乗客とちょむすけを抱いている女の子に

 

 

「貴女はちょむすけを連れて早く逃げて!!早く!!」

 

 

私の言葉を聞いた女の子は他の乗客達と一緒に離れたところにある岩陰へと隠れた

 

 

「ファイヤーボール!!」

 

 

アークウィザードの下位職業であるウィザードの魔法がゴブリン達に決まりモンスター達は倒れて行く。そして剣士の人はファイヤーボールから逃れたゴブリンを斬り倒して行き最後にアーチャーが遠距離からゴブリンを射抜いて倒して行く。正しく最適なバランスを持った冒険者さんのパーティである事を知らされた。が、しかしゴブリン達の数は非常に多く。いくら護衛の冒険者さん達とはいえこのままでは不利になるかもしれないと考えた私はめぐみんと軽く目を合わすと私は護衛の冒険者さん達の前へと躍り出た

 

 

「ライトニング!!」

 

 

私は雷の中級魔法であるライトニングを使いゴブリン達の集団を一掃するとライトオブセイバーで仕留め損なった残りのゴブリンを討伐する

 

 

「凄ぇ、ゴブリンを数秒の間にあれだけ討伐する何て…流石は紅魔族だ!!」

 

 

護衛の冒険者達は興奮した状態でそう言っているとめぐみんが真剣な声色で叫んだ

 

 

「ッ!!まだ終わってません!!」

 

 

めぐみんのその言葉の通りに私達の目の前に半裸と言っても良い女性…(しかし悪魔の耳と尻尾がある事から悪魔である事が分かる)が現れた

 

 

「私の名前はアーネス。そこの紅魔族が連れているウォルバク様の半身を返して貰いに来たわよ?」

 

 

この悪魔はヤバイ!!本能的にそう判断した私はライトオブセイバーをアーネスに向けて放つ

 

 

「ライトオブセイバー!!」

 

 

光の上級魔法であるライトオブセイバーがアーネスを襲うがアーネスは黒い稲妻の魔法…カーストライトニングを撃ち光と闇の魔法はお互いに相殺された

 

 

「ゆんゆんひとりじゃ不利です。私も助太刀します!!」

 

 

「魔法を使えない嬢ちゃんは危険だ!!下がっていろ!」

 

 

冒険者の男が飛び出して来ためぐみんの身を案じそう言う。それに対してめぐみんは軽く笑うと

 

 

「貴方の言う通り私は魔法を使う事は出来ませんが其れに代わる武器は持っています!!」

 

 

めぐみんはそう言うとドライバーを腰に取り付けた後橙色のフルボトルと濃灰色のフルボトルを取り出してシャカシャカと振り出す。

 

 

「貴女が仮面ライダービルドね?私達の目的の最大の障害物となり得る存在…排除するなら紅魔族の小娘よりもアイツの方が最優先よ!!」

 

 

そう言うとアーネスはめぐみんへと突っ込んで来るけどめぐみんはそれよりも早くにふたつのフルボトルをベルトに装填した。

 

 

*********************************

 

 

『タカ!ガドリング!ベストマッチ!!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『天空の暴れん坊! ホークガトリング! イェーイ!』

 

 

俺は橙色のハーフボディと濃灰のハーフボディで形成された3つ目のベストマッチフォームホークガトリングフォームへと変身する。ホークガドリングはタカの飛行能力とガトリングの連射機能が合わさったフォームだ。タカの能力を保持しているだけあって高い飛行能力を持っており今回のアーネスのように飛行能力を持っている相手にはうってつけなのだ。そして俺は復元に成功していたホークガトリンガーを構えると何時もの台詞を決める

 

 

「勝利の法則は決まった!!」

 

 

俺は背中の『ソレスタルウィング』という翼を大きくて広げる事で空に飛び立ち、悠々と空を飛んでいるアーネスに身体ごとぶつかった後にホークガトリンガーでアーネスを撃ち抜いて行く。

 

 

「貴女、空が飛べるの!?ビルドって奴は一体どれぐらいの姿になれるのよ!?」

 

 

体当たりとホークガトリンガーに身体を撃ち抜かれた事でダメージを負ったアーネスが忌々しそうにそう言っている

 

 

「其れを貴女に説明する必要はありません」

 

 

そして俺はタカハーフボディのスピードとホークガトリンガーを利用する短期決戦へと持ち込む事にするがアーネスが負けじとカーストライトニングで攻撃を仕掛けてくる。しかし俺はタカハーフボディの能力を利用し作り出した俺は空気のシールドを使いアーネスの攻撃から身を守るのと同時に空気のシールドを応用しての体当たりを食らわせる。そして体勢を崩した何処に更にホークガトリンガーで更に撃ち抜く。

 

 

「クッ…流石は仮面ライダービルドと言ったところかしら?…でも私の1番の目的は貴女を倒す事じゃないのよ?」

 

 

そう言うアーネスの目線は少女と他の乗客達が隠れている岩へと向けられておりその時俺はアーネスが襲撃して来た本当の目的を理解した。

 

 

「不味い!!ゆんゆん、皆、今すぐ奴を止めろ!!」

 

 

俺がそう言うのと同時にアーネスがちょむすけを持っている少女の元へと向かって行く。俺は慌てて後を追うがその時にアーネスの回し蹴りをまともに受けてしまい地面へと転がりゆんゆんや他の冒険者達も少女と乗客達を守ろうとするがアーネスはカーストライトニングでゆんゆんと冒険者達をまとめて一掃すると震える少女からちょむすけを奪うと両手で大事に抱き抱えた

 

 

「ウォルバク様…漸く…漸くお会い出来ました…」

 

 

アーネスがちょむすけを両手で抱き抱えながら愛しそうにそう言っている

 

 

「ちょむすけを返せ!!!」

 

 

俺はちょむすけの取り返す為にアーネスに飛び込んで行くが

 

 

「『インフェルノ』!!」

 

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

アーネスのインフェルノをまともに受けた俺は地面へと叩きつけられる

 

 

「めぐみん!!」

 

 

ゆんゆんが地面に叩きつけられた俺を見て叫び声を上げるとゆんゆんはインフェルノをアーネスに向けて放つそしてアーネスも其れに対抗するインフェルノを放ち2つのインフェルノはぶつかり合うとゆんゆんが放ったインフェルノはアーネスの放ったインフェルノに飲み込まれて消え去ってしまった。

 

 

「そんな…」

 

 

「ウォルバク様が此方に居ればもう手加減する必要ないのよ?」

 

 

ゆんゆんはアーネスの言葉を聞いて顔を青ざめるアーネスは今まで本気を出していなかったのだ。その上先程の攻撃により周りの冒険者達も満身創痍でゆんゆん自身も魔力切れが近いのかふらついていた。そしてゆんゆんは何かを決意した表情になると…アーネスに土下座をした。それはプライドや紅魔族の誇りなどを全て投げ捨てたも同然の行いだった。

 

 

*********************************

 

 

「お願いします…ちょむすけを返して下さい…」

 

 

ちょむすけを人質に取れてた状態に私は何も出来なかった。それはめぐみんも同じなのかあれから何度か攻撃は加えているもののちょむすけの身を案じている為に碌なダメージを与えられてはいないようだ。最早打つ手がない絶体絶命という状況に私はみっともなく命乞いをする事を選択した。やっぱり私にはこんな立ち位置が似合っているんだ。護衛の冒険者の人達も満身創痍の状態でこのままでは間違いなく全滅してしまう。だからこそ私は…

 

 

「ウォルバク様を無事に取り戻す事も出来たし…貴女の土下座に免じて見逃してあげても良いんだけど…でも、あそこまでコケにされたら私のプライドに関わるのよね。残念だけど…ここで死んで貰うわね?うらむなら自分達の軽率な行動を恨みなさい?」

 

 

アーネスが私達を見下した様子で魔法を発動させる。めぐみんも仮面を被っている為直接は見れないけれど最早これまでかという表情を浮かべているのが雰囲気で分かった。周りの冒険者達も同じような雰囲気を出しており私自身も覚悟を決めた時、天から巨大な光の柱が近くにあるアクセルの街へと降りて行くのをその場に居た魔力を感じる事が出来る全員が感じた。それはアーネスも例外ではなく突然感じた魔力に戸惑いを隠す事が出来ないようだった。

 

 

「何なのこの強力な魔力…いや、これは神気?どうしてこんな何処で…」

 

 

「ちょむすけ!来い!!」

 

 

アーネスが気をとられている間にめぐみんがちょむすけに向かって手を伸してそう叫ぶ。めぐみんの叫びを聞いたちょむすけはアーネスの腕から逃れるとめぐみんの腕の中へと飛び込んで来る。

 

 

「しまった!ウォルバク様が!!」

 

「今だゆんゆん!!お前はそんな奴に命乞いをするようなみっともないやつじゃないだろ!!俺の一番の親友であるお前の実力を見せてくれ!!」

 

 

そんなめぐみんの言葉が胸に響いて来る。めぐみんは何時もそうだった。私よりも先に行っているけど決して私の事を置いてはいかなかった、今も私の事を信じてくれているからこそあんな事を言ってくれたんだ。私の胸に闘志が蘇って来る。魔力切れが近く鈍い身体に力が入る。するとずっとポケットの中に入れておいたドラゴンフルボトルから強い魔力を感じ私はドラゴンフルボトルを右手で握りしめ私の最も得意な上級魔法であるライトオブセイバーを発動させる。

 

 

「我が名はゆんゆん!!紅魔族随一のアークウィザードでありいずれは里の長となる者!!そして…めぐみんの1番の親友である者!!」

 

 

めぐみんがちょむすけを持ってアーネスから距離を取った事を確認すると私はアーネスに向けてライトオブセイバーを放つ構えを取る。右手に握りしめているドラゴンフルボトルの成分が私の魔力と反応し私の魔力はドラゴンの姿となり私の周りに現れていた。

 

 

*********************************

 

 

「な、何なのよ…その魔法は…話が違うじゃない!!あのコブラ男はビルドさえ何とかすればどうにでもなるって言ってた筈なのに!!」

 

 

「それは残念だったな。アーネス?」

 

 

俺はアーネスに対してそう言い放つ。アーネスは甘く見過ぎた。俺の仲間を…ゆんゆんの事を!!

 

 

「ちょ、ちょっと待ちましょう。さっきの事はちゃんと謝るから…」

 

 

アーネスが何かを言いかけてはいるがそんな事は俺達に関係ない!!俺はビルドドライバーのボルケティクレバーを回しホークガトリングの必殺技ボルテックフィニッシュを発動させるとその場から逃げ出そうとしているアーネスを球状の特殊なフィールド内に隔離し逃げ出せない様にする。

 

 

「ちょ、此処から出しなさいよ!これじゃ逃げれないじゃない!!」

 

 

「ゆんゆん今だ!!お前の全てを奴にぶつけてやれ!!」

 

 

「アーネス!!これが私の全力よ!!『ライトオブセイバー』!!!!」

 

 

ドラゴンの姿をしたライトオブセイバーがアーネスへと向かって行くとドラゴンはアーネスを飲み込む。そしてそのまま天へと上がっていくとドラゴンはアーネスごと消滅しそこには何も残ってはいなかった。

 

 

「スゲェぜ、紅魔族の嬢ちゃん!あんな魔法見た事ねぇよ!!」

 

 

「そっちの嬢ちゃんも凄かったぜ!!流石紅魔族だ!!」

 

 

周りにいた護衛の冒険者も旅行者達も俺とゆんゆんを褒めちぎっている。特に俺に対する先程までの態度とは正反対の反応に苦笑いを浮かべるしかなかったが、ゆんゆんは今回の戦いでほんの少し自信をつけたのらしく誇らしい表情を見せていた。その後俺とゆんゆんはアルカンレティアからずっと同行していた冒険者達と別れるとアクセルの街に入って行く。ここまで来るのに随分と時間がかかったが漸く第1の目的を果たせそうだ。次の目的はエリスが言っていた一緒に旅をする事になるメンバーを見つける事だが…まぁ、色々とやる事があって面倒だかそんな生活も悪くはない。とりあえずウィズの店に荷物を置いてからゆんゆんが言っていたギルドに向かう事にするか、そんな事を考えながら歩いているとやたらと騒いでいる2人組が目についた。片方はジャージを来た少年でもう片方は水色の髪をした少女だ。見たところ恐らく彼らも転生者なのだろう。しかし何故だろう彼らとあまり関わってはならないと直感で感じた為出来る限り距離を取ってその2人組から離れていく、その時の俺は知らなかった、彼らが出会うべき仲間達である事を…

 

 




第8話終了です。最後に登場した2人組は一体何者なのか?彼らと関わるのはもう少し先の話です。彼らの出番を待っている人には申し訳ありませんがもう少しお付き合い下さい。今回も評価と感想を待ってます。




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この素晴らしい冒険者の街に祝福を!!

『天才物理学者の桐生戦兎はアーネスとの激闘を終え遂にアクセルの街へと到着したのだった』


『ねぇ、戦兎さん。そろそろアクセルの街に来た本当の目的を教えてくれませんか?』


『本当の目的?ゆんゆんは何を言っているんだ?』


『惚けても無駄ですよ!戦兎さんがアクセルの街に来たのは商売以外にも目的があるのをちゃんと気づいているんだから!!』


『分かったよ、ゆんゆん。俺がこの街に来たもう一つの理由を説明してあげよう!!』


『ゴクリ…』


『その答えは…今からやる第9話を見れば分かるよ』


『戦兎さんメタいです!!』


『てな訳で第9話スタート!!』




「ここがアクセルの街ですか…紅魔族の里とアルカンレティアとは違い穏やかな街ですね」

 

 

「アクセルの街は比較的に平和な街で有名なのよ、魔王軍の進行もここまで来る事はないから冒険者達の殆どはここの街から始めているのよ」

 

 

ゆんゆんの言う通りにアクセルの街は穏やかな雰囲気に包まれており平和的なのが伝わって来た。確かに冒険者の旅立ちの場としてはこれ以上に相応しい場所はないなと考えているとどう見て中堅レベルの冒険者が道を歩いているのが見えた

 

 

「ゆんゆん。中堅レベルの冒険者もたまに見かけますが彼らは何故ずっとアクセルの街にいるんですか?普通レベルが一定以上になったら拠点を移す物寝なんですよね冒険者って?」

 

 

「普通はそうなんだけどアクセルの街には王都にも通用するレベルを持ってる男性冒険者が滞在してるっていう話があるのよ。もしかしたらそれだけアクセルの街が素晴らしいところって事かもしれないわね」

 

 

「駆け出しの頃からお世話になった街に恩返しをする為にアクセルの街で活動を続けるなんて…良い話じゃないですか」

 

 

めぐみんとゆんゆんは高レベルになってもアクセルに滞在している冒険者達を義理堅く素晴らしい人々だと考えているが実際のところは中堅レベルになってもアクセルの街に居座り続けている理由は街にあるとある喫茶店が原因なのだがそれはまた別の話である。

 

 

「めぐみん、この謝礼金はどうするの?」

 

 

ゆんゆんが手にしている革袋には大量の金貨が入っている。アーネスを倒した時に一緒にいた乗客の中にいたとある商会の会長から謝礼として謝礼金を貰ったのだ、初めはゆんゆんと一緒に受け取るのを断ったが無理矢理に渡されてしまいしょうがなく受け取ったのだ

 

 

「旅費に関してはウィズさんのところで世話になる予定ですから問題はありませんがあって困る物ではありませんしまだ色々と物入りですから有り難く使わせて頂きましょう」

 

 

そんな事を言いながら歩いているととある武器屋のショーウィンドウの前で俺は足を止めた。ショーウィンドウには綺麗な細工がされた小刀が飾らせており俺はその小刀の美しさに目を奪われていると隣にいるゆんゆんが俺に負けないぐらいに小刀に釘付けになっているのが分かった

 

 

「ゆんゆん。この小刀が欲しいんですか?」

 

 

「えっ!?いや、其れは…うん。欲しいと思ってるよ。だって近距離用の武器を持ってれば魔法だけじゃ対応出来ない敵にも対処出来るでしょ?」

 

 

「ゆんゆんも色々と考えているんですね…分かりました。謝礼金もある事ですしその小刀を買いましょう!!」

 

 

俺はそう言うとゆんゆんから革袋を奪うと店の中に入りショーウィンドウに飾られていた小刀を購入すると外で待っていまゆんゆんに小刀を渡した。

 

 

「ゆんゆん、これは私からのプレゼントです。遠慮なく受け取って下さい」

 

 

「ちょっと待ちなさいよ!こんな高い物を貰う訳にはいかないしめぐみんもこれが欲しかったんじゃないの?」

 

 

「確かに細工が綺麗だと思っていましたが欲しいとは一言も言ってませんよ?其れに私にはライダーシステムがあるんですよ?」

 

 

「でも…やっぱりこんな物を何の理由もなく貰うのは…」

 

 

「じゃあ、ゆんゆんには普段からお世話になっているのでそのお礼って事でどうでしょう?親友の貴女なら受け取ってくれますよね?」

 

 

「も、勿論受け取るのに決まってるじゃない。親友のめぐみんの贈り物を断らないわよ」

 

 

デレデレしながらそう言っているゆんゆんを俺はスルーすると先程のついでに買った地図で道を確かめながらある目的地へと向かって歩いて行く。そして数分後に目的地である魔道具店へと到着すると俺はドアを開いた

 

 

「いらしゃいませ!!…ってめぐみんさんとゆんゆんさんじゃないですか、成る程到着の日って今日だったんですね」

 

 

俺達にそう言っているのは茶髪のロングヘアーで死人の様に白い顔をした女性…ウィズさんが俺達を出迎える

 

 

「ウィズさん。私が作った魔道具の売り上げの方はどうですか?」

 

 

「はい!それはもう凄く売れますよ!めぐみんさんが作ったかとりせんこーとすたんがんが冒険者の人達に後主婦の人達にぴーらーとすらいさーが沢山売れてますよ」

 

 

そう言うウィズは前よりも良い生活を送れるようになっているのか前に会った時よりも顔色とツヤが良くなっているのが分かった。

 

 

「ウィズさん、前にも言った通りにこの店に商品を下ろす代わりに貴方のお店に住まわせて貰うという条件を覚えていますよね?」

 

 

「勿論覚えています!めぐみんさんの頼んだ通りに地下室を作って置きましたよ!後貴女が送ってくれた設備をギルドの冒険者の皆さんに運び込んで貰いましたがよろしかったんですよね?」

 

 

「はい。構いませんよ。それでは早速ですがその地下室へと案内して貰えますか?」

 

 

「分かりました。それでは此方へどうぞ」

 

 

ウィズに案内された俺達は店の裏側にある小さな扉の前へとやって来る。するとウィズは持っていた鍵で扉を開けると地下室へと入って行く。そして階段を降りると其処には前の世界で使っていたラボをそのまま再現した空間があった

 

 

「めぐみんさんの要望に出来る限り答えましたがこの設備は一体何に使うつもりなんです?」

 

 

「新しい商品の発明と魔王討伐の為の装備作りです。私は本気で魔王討伐を考えているので」

 

 

俺の言葉を聞いたゆんゆんとウィズが固まる。そう言えばゆんゆんには俺が本気で魔王討伐を考えている事を伝えていなかったなと考えているとウィズが妙に狼狽大量に冷や汗を流しているがどうかしたんだろか?

 

 

「めぐみん…本当なの?本気で魔王討伐を考えているの?」

 

 

「勿論ですよ、私にはどうしてもやらなければならない理由があるんです。やらなければいけない理由が…」

 

 

俺が魔王討伐をしなければならない理由はひとつ。それはこの身体の本来の持ち主であるめぐみん本人の為だ。エリスが言っていた本来の歴史ならばめぐみんはいずれは魔王討伐を成功させるパーティに加入しそして近い将来魔王討伐に貢献する事になっていた。しかし俺がめぐみんになってしまった所為で彼女の人生を運命を奪ってしまった。だからこそ俺は彼女の代わりに果たさなければならないのだ魔王討伐を

 

 

「ゆんゆん、私が魔王討伐を果たさなければならない理由を今話す事は出来ません。でも貴女には話せる時時が必ず来ます。その時まで私を信じて待っていてくれませんか?」

 

 

俺の真剣な眼差しを受けたゆんゆんは暫く考え込んだ表情見せた後

 

 

「…分かったわ。めぐみんがそう言うなら今は聞かないわ、めぐみんが話してくれるのを待ってるから…」

 

 

「…ありがとうゆんゆん。」

 

 

俺はほんの一瞬だけ桐生戦兎としての表情を出すとゆんゆんに礼を言うと話を聞いていたウィズがパンと手を鳴らすと非常に興味深い事を言い出した

 

 

「めぐみんさん、ゆんゆんさん、魔王討伐をする為には魔王城に乗り込まなくては話になりません。でも城には魔王軍幹部達により強力な結界が張られています。其れを正面から破るのは不可能ですよ?」

 

 

「でも結界を破る方法はあるんですよね?」

 

 

「はい。魔王城を守っている結界を破りには結界を張っている魔王軍幹部を倒す事。魔王軍幹部をひとり倒す事に結界は不安定になります。そうですね…幹部の人数か2.3人ぐらいになれは結界を破る事が出来るようになるとおもいますよ?魔王城の結界を破れるだけの力を持ったアークプリーストが居ればの話ですけど」

 

 

ウィズさんは魔王城の事には随分と詳しいのか俺達にそう説明してくる。しかしウィズさんは魔王の事について詳しい過ぎる…そう、まるで『魔王の関係者』であるかのように…そんな俺の視線に気づいたのかウィズさんは申し訳なそうな表情になると俺達の度肝を抜く事を平然と言った

 

 

「すいません、まだ言ってませんでしたね。私はこう見えても魔王軍幹部のひとりなんですよ…ってちょっと待つ下さい!ゆんゆんさんもめぐみんさんも武器を構えて近づかないで下さ〜い!!」

 

 

ウィズさんの言葉を聞いたゆんゆんは小刀を俺はカイソクハッシャーを構えながらジリジリとウィズさんに近づいて行く。ウィズは涙目になりながら必死で俺達の事を制止する為に声を上げている

 

 

「まさかこんなに優しい人が魔王軍幹部だったなんて…危うく騙されるところだったわ!」

 

 

「ウィズさん。貴女が魔王軍幹部である以上此方は貴女の事を見逃す訳にはいかないんだ。悪く思わないで下さい」

 

 

「お願いですから私の話を聞いて下さい!確かに私は魔王軍幹部ですが人をこれまで傷つけた事は一度もありません!!魔王様から結界の維持だけを頼まれているなんちゃって幹部なんですよ!!だからお願いですから話を聞いて下さい!!」

 

 

余りにも必死な様子でそう言うウィズに俺とゆんゆんは武器をしまいウィズの話を聞く事にした

 

 

「ウィズさん。貴女は魔王軍幹部で間違えないんですよね?其れなのに人を傷つけた事はないとかなんちゃって幹部だとかその辺りをもう少し詳しく説明して下さい」

 

 

「昔魔王様と約束したんです。結界の維持だけをして貰えるなら好きに過ごしても良いとだから私は魔王様との約束で結界の維持だけをしているんです。因みに私以外にも結界の維持だけをしている人が居るんですよ」

 

 

「話は分かりました。でも人間である貴女が良く魔王とそんな約束事を出来ましたよね?」

 

 

「私は普通の人間ではありません…私の正体はアンデット達の王である不死王(リッチー)です」

 

 

リッチー?そう言えば紅魔族の図書館でこの世界の事を調べていた時そんな名前のモンスターがいた事を俺は思い出した。リッチー…またはノーライフキングと呼ばれるアンデットのモンスターは高い魔力を持ったアークウィザードが寿命という概念から逃れる為に禁術により生まれ変わった存在でありこの世界で初めて最も恐れられているモンスターのひとつである。

 

 

リッチーは強力な魔法防御をもつ上に魔法のかかった特殊な武器しか効かずにしかも触れるだけで状態異常を引き起こし相手の魔力や生命力を奪う事が出来る。その為に冒険者達からは伝説級と言われているアンデッドである。…その話が本当ならば俺達は大ピンチじゃないか?そう思った俺はゆんゆんの顔を見るとゆんゆんもリッチーの恐ろしさを知っているのか顔を真っ青にしていた。

 

 

「ウィズさん。貴女はどうしてリッチーになったりしたんですか?寿命から逃れる為にリッチーになった訳ではないんですよね?」

 

 

「はい…私がリッチーになったのは私のパーティメンバーを助ける為です。…かつて私はあるパーティに所属していました。そのパーティは自分で言うアレですがとても優秀な戦績をいくつも収め王家からも表彰された事もありました」

 

 

そう言っているウィズさんの表情はその時の事を思い出しているのか遠い目をしていた。するとウィズの話を聞いていたゆんゆんは何かを思い出したのか声をあげた

 

 

「思い出しました!ウィズさんは昔凄腕のアークウィザードとして活躍をしていて戦う姿から氷の魔女と呼ばれていたんですよね?」

 

 

そう言っているゆんゆんは興奮しているのか目が紅く光り輝いて少し怖かった。ウィズも同じ気持ちなのかほんの少し後ずさるがすぐに気を取り直すと改めて口を開いた

 

 

「確かにそんな名前で呼ばれていた時もありましたが其れは昔の話で今はしがない魔道具店の店主ですよ」

 

 

「ウィズさんの過去は分かりました。そんな貴女がどうしてリッチーになりそして魔王軍幹部をやる事になったんですか?」

 

 

「私がリッチーになったのは私のパーティのメンバーを守る為です。先程もお話した通り私達のパーティは多くの功績を挙げていましてそのおかげで王都から正式に魔王軍幹部の討伐を依頼されたのです。…其れが全ての始まりでした。依頼を受けた私達は魔王軍幹部のひとりと壮絶な戦いを繰り広げました。しかし相手には魔王様の加護を受けており私達が不利になるのは当然の話でした。しかし私や他のメンバーの協力もあり次第に相手を追い詰めていきました。しかしその時に私達は相手から死の宣告を受けてしまったのです」

 

 

「死の宣告…って確か掛けられた人間は必ず死ぬという魔法ですよね?」

 

 

「はい。それにより私達は全員1ヶ月後に死ぬ運命となり私達は呪いを解く為に色々な手を尽くしましたが呪いを解く事は叶わずに時間は淡々と過ぎていきパーティー内に諦めの空気が流れ初め皆さんは思い残す事がないように思い思いの時間を過ごすようになりました」

 

 

「ウィズさんを除いて…ですよね?」

 

 

「はい、私は諦める事が出来ませんでした。私は何としても呪いを解く為にあらゆる分野の本や資料を読み漁り遂に呪いを解く方法をみつけたのです。それが…」

 

 

「リッチーとなる事、だったんですね」

 

 

ゆんゆんの言葉にウィズは頷く

 

 

「そして私は知り合いであるとある悪魔に頼り彼の力でリッチーに生まれ変わるとその力で私達にかけられた呪いを解いた後に私は私達に呪いを掛けた相手に再戦を挑みました。そしてその戦いの最中に魔王様の目に止まり私は魔王様の頼みで魔王軍幹部をする事になったんです。そしてリッチーとなり人の身を外れた私は冒険者を引退してこの街で魔道具店を開き、今に至るという訳です」

 

 

仲間達を救う為に人間である事を捨てる。そんな強さを持っているウィズさんを俺は素直に尊敬した。ゆんゆんもそんなウィズさんの話に感動しているのか涙を流していた。そして俺はウィズさんが何故アクセルの街で魔道具店を開いているのか、今のウィズさんの言葉でその理由にも見当がついた

 

 

「もしかしてウィズさんがこの街で魔道具店をしているのはこの街が仲間達との思い出の場所だっただからですか?」

 

 

「はい。めぐみんさんの言う通り、この街には沢山の思い出があるんです。仲間達との沢山の思い出が…私がこの街で魔道具店を開いたのは其れが理由なんですよ」

 

 

「とても素敵なお話ですね…あの、ウィズさんは冒険者に復帰するつもりはないんですか?」

 

 

ゆんゆんが遠慮がちにウィズさんにそう言うとウィズさんはゆんゆんの言葉に軽く首を横に振り

 

 

「リッチーになった時に決めたんです。魔王様を倒すのは今を生きる冒険者達の役目であり私がやるべき事ではないと。だから私は冒険者の皆さんの利になる事は決してしませんし魔王軍の利となる事もやりません。中立の立場を取らせて貰っているんです」

 

 

つまりそれは俺達がピンチに陥ったとしても手助けをするつもりないという事らしい。其れは魔王軍幹部に対しても同じらしいが…兎に角ウィズさんの背景を理解した俺はウィズさんに対する戦闘態勢を解く。ウィズさんは其れにホッと胸を撫で下ろしていた

 

 

「さて、話はこれくらいにしまして今からめぐみんさんとゆんゆんさんの歓迎会をしましょう!この日の為に美味しいお店を調べておいたんですよ!」

 

 

そう言うとウィズさんはニコニコ笑いながら準備をする為に店に併設させている自宅スペースへと入って行く

 

 

「まさかウィズさんが魔王軍幹部だったなんて…」

 

 

「でも、私達とは敵対するつもりはないみたいなので心配は要らないでしょう。其れに私の発明品素晴らしさが分かるならばそれだけで信用に値します」

 

 

「私もウィズさんの事は信用できると思うけど…でも、めぐみんの其れって思いっきりめぐみんの主観と偏見が入ってるわよね?」

 

 

俺は余計な事を言ったゆんゆんに蹴りを入れる。そして準備が終わったウィズさんがやって来たので俺とゆんゆんはウィズさんのオススメのお店に行きそのまま俺達の歓迎会を初めた。そして冒険者ギルドへは明日行く事にしたのだった。

 

 




第9話終了です。感想と評価をお待ちしています


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この素晴らしい冒険者ギルドに祝福を!!

『天才物理学者の桐生戦兎は遂にアクセルの街へとたどり着くと約束通りにウィズの魔道具店へと住まわせ貰う事となった』


『戦兎さん。今度のラボは随分と広いですね。見た事ない設備も有りますし一体どれぐらいの広さがあるんですか?』


『そうだな…寝室が10室に最新設備の風呂が2つに俺専用のラボがひとつってところだな』


『とんでもなく広いですね!?このラボが凄いというのは分かりましたけど気になる事がひとつあるんですよね』


『俺のラボに気になるところ?それって何処だよ』


『お店の地下にこんな空間を一体どうやって作ったんです?これだけの空間を作るとなるとウィズさんのお店だけじゃなく周りのお店にも色々と影響があると思うんですけど…』


『……』


『戦兎さん?』


『てな訳でこの素晴らしい天才物理学者に祝福を!!第10話のスタート!!』


『私の話をスルーした!?』




翌日俺とゆんゆんはウィズから冒険者ギルドの場所を聞くとギルドへと向かって歩いていた。目的地にあったギルドの建物は如何にも酒場という雰囲気がある建物だ

 

 

俺達は扉を開けて中に入ると昼間から酒を飲んでいる冒険者達が中で騒いでおり俺達が入って来た事に気付いたウェイトレスが俺達の元に近づいて来る

 

 

「いらしゃいませ!!食事ならお近くのお席で冒険者登録なら奥のカウンターでどうぞ!!」

 

 

ウエイトレスの言葉を聞くと俺達は店の奥にあるカウンターに向かう。そして丁度並んでいる人が居なかった窓口に行くと金髪の女性が俺達に

 

 

「冒険者登録ですね?登録には千エリス程必要ですか大丈夫ですか?」

 

 

その言葉に俺は予め持っていた財布から俺とゆんゆんの分の登録料2千エリスを出す。すると金髪の女性は俺達の前に記入欄のある用紙を差し出した

 

 

「こちらの用紙に生年月日と名前と体重、身長を書いて下さい。だいたいの数値で大丈夫ですよ」

 

 

俺達は手早く記入をすませると用紙を女性へと手渡す。すると金髪の女性は俺達の用紙を見てある事に気付いた

 

 

「変わった名前に、黒い髪と赤い瞳…貴女達はもしかして紅魔族ですね?」

 

 

「はい。確かに私達は紅魔族です」

 

 

俺の言葉に反応した冒険者達が大勢いたのか、彼らの視線をバッチリと感じる。馬車での移動の時も感じたがやはり紅魔族というのは里の外では重宝される存在なのか?俺がそんな事より考えていると金髪の女性が何かの装置を俺達の前に出してくる

 

 

「それではこちらの機械に手をかざして下さい」

 

 

「この機械は一体何ですか?」

 

 

随分と珍しい形をした装置だこの世界にやって来て2年程経っているがこの装置目にしたのは今回が初めてだ

 

 

「この装置は手をかざした人物のステータスを図る事が出来るんです。そのパラメータからその人に適正のある職業を選ぶんですよ」

 

 

「手をかざした人物のステータスが分かる装置…どんな仕組みが是非とも知りたいですね。この装置、分解して見ても良いですか?」

 

 

「はぁ?」

 

 

金髪の女性は俺の言葉に驚いた声をあげる、すると隣で話を聞いていたゆんゆんが慌てた様子で前に出ると

 

 

「失礼しました!この子は珍しい物を見ると分解したくなるという変わった癖があるんです!!」

 

 

「はぁ…そうですか…」

 

 

金髪の女性はゆんゆんの言葉に戸惑った表情を浮かべるが直ぐに気を取りなおすとゆんゆんにその機械に手をかざす様に促した。

 

 

「これは…凄いですね!!知力と魔力が非常に高いです!!これならば最初からアークウィザードになれますよ!」

 

 

ゆんゆんのステータスを見た金髪の女性は感心した様子でそう言った

 

 

「じゃあ、アークウィザードでお願いします」

 

 

「分かりました!!ゆんゆんさん。これからアークウィザードとしての活躍をご期待しています!!」

 

 

金髪の女性は冒険者カードをゆんゆんに手渡すと俺に目線を向けて来た。

 

 

「さぁ、貴女もこちらの器具に手をかざして下さいね」

 

 

そう言う金髪の女性は期待に満ちた目をしていた。そりゃそうだろう何せ紅魔族の人間が2人もいるんだから期待するなという方が無理な話だ。しかし彼女のそんな期待も直ぐに裏切る事になる

 

 

「これは…魔力が無い?知力はゆんゆんさんよりも高いですけどそれ以外のステータスは普通ですね。」

 

 

そう言う金髪の女性はとても残念な物を見る物でありそれは周りの冒険者達からも感じた。

 

 

「紅魔族の癖に魔法を使えないのかよ…」

 

 

「紅魔族にも落ちこぼれはいるのね…」

 

 

周りからそんなヒソヒソ話が聞こえ来る。馬車の時に一緒に乗っていた冒険者達からは感じなかったがやはりそういう反応があるか

 

 

この事はある程度予想していた為に気にはしていないが俺の隣にいるゆんゆんはそうではないらしく目を真っ赤に輝かせながら感情を高ぶらせており今にも文句を言い出しそうだった

 

 

「ゆんゆん。落ち着いて下さい。私は別に気にしてはいませんしこういう反応されるのは予想していました。彼らにはこれからの活躍で私の事を認めさせますよ」

 

 

俺の言葉を聞いたゆんゆんはとりあえずは納得してくれたのか怒りのオーラが消える。気を取り直した俺は金髪の女性にアークウィザード以外に適正のある職業を聞く

 

 

「そうですね…めぐみんさんのステータスだと上級職であるアークウィザードになるのは不可能です。なれるとしたら基本職の…って何ですかこの『仮面ライダー』という職業は?」

 

 

(仮面ライダーという職業があるのか…そもそも仮面ライダーって職業なのか?いや、ある意味職業かも知れないが…)

 

 

「めぐみんさん?」

 

 

どうやら考え込んでしまったらしく彼女に心配をかけてしまったらしい。俺は彼女に考え事をしていた事を伝えると

 

 

「じゃあその仮面ライダーでお願いします」

 

 

「えっ?宜しいのですか?」

 

 

彼女は俺の言葉が意外だったのか驚いた表情を浮かべる

 

 

「はい。仮面ライダーで構いません」

 

 

「分かりました!めぐみんさん。仮面ライダーとしてのご活躍を期待しています!」

 

 

そして俺は冒険者カードを受け取るとゆんゆんの元へ戻ると彼女をスカウトしたいのか多くのパーティーの人間が話しかけておりそしてゆんゆんが俺に気付くと

 

 

「パーティーに誘ってくれるのは嬉しいんですけど私をパーティーに入れるならめぐみんも一緒じゃなきゃ嫌ですよ?」

 

 

ゆんゆんの言葉に一瞬冒険者達は顔をしかめるがやはりゆんゆんを入れる事のメリットの方が大きいのかその提案を受け入れ今日一日パーティーを組む事となった

 

 

そしてゆんゆんの実力を確かめる意味合いもあり初心者向けの依頼を受けると依頼の為に今は街の外に向かって歩いた

 

 

移動中の冒険者達は一緒にいる俺に対して聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で好き勝手な事を言っている

 

 

(あのめぐみんって子、紅魔族の癖に魔法が使えないんだろ?)

 

 

(しかも選んだ職業は仮面ライダーってヤツらしいぜ?わけわからんよな?)

 

 

(まぁ、恐らくは有能な親友と一緒にパーティーにいれば報酬のお零れが貰えるからそれが目的だろ?)

 

 

仕方がない事だとは割り切っているが俺のこの力を知った時に散々馬鹿にしてきたコイツらはどんな反応を見せるのか今から楽しみだ。今からそう考えると俺の口から笑みが零れる

 

 

今回のクエストはジャイアンドトードの討伐だ。ジャイアンドトードとは所謂巨大なカエルのモンスターであり毎年この時期には餌を得る為に街の近くへとやって来る

 

 

ジャイアンドトードの繁殖期には多くの家畜や農家の人々が行方不明となっておりそんなジャイアンドトードの駆除も冒険者の仕事となっている

 

 

因みにジャイアンドトードの肉は大変美味らしく大切な食料として多くの人々に愛されているらしいその為討伐したジャイアンドトードの肉はギルドが高値で引き取ってくれる事となっていた

 

 

そして街の出口から草原に出ると早速数体のジャイアンドトードを見つける

 

 

「さて、ゆんゆんの実力を見せて貰うぜ?」

 

 

「任せて下さい。インフェルノ!!」

 

 

ゆんゆんはインフェルノで離れたところにいたカエル達を一瞬で丸焦げにする。すると俺達に気付いたカエル達はズシンズシンと音を立てながら近づいて来た

 

 

するとゆんゆんはドラゴンフルボトルをポケットから取り出すと其れを手に握ったままアーネスの時のようにライトオブセイバーを発動させる

 

 

「…ライトオブセイバー!!!」

 

 

ゆんゆんが放ったライトオブセイバーはあの時と同じドラゴンの姿となっておりそのドラゴンはカエルを何体か飲み込みその姿を消したそしてドラゴンに飲み込まれたカエルは死体さえ残さずに消滅する

 

 

「スゲェ…こんな魔法見た事ねぇぞ!!」

 

 

ゆんゆんの魔法を見ていた冒険者達が驚いた様子でゆんゆんにそう言っていた。そしてゆんゆんの魔法の音を聞きつけたのか別のカエルが此方に向かって来ており其れに気付いた俺はホークガトリンガーを構えながら前へと躍り出る

 

 

「オイ、魔法を使えない紅魔族はひっこんでろよ!!」

 

 

パーティーのリーダーである男が見下すようにそう言っているが俺はそんな言葉を無視するとポケットからラビットフルボトルを振りながら猛スピードで移動する。

 

 

そしてそのスピードでジャイアンドトードを翻弄すると持っていたホークガドリンガーでジャイアンドトードを一掃した。

 

 

その様子を間近で見ていた冒険者達は唖然とした表情で俺の事を見つめている、ゆんゆんのように死体ごと消し去る事は出来なかったが奴らの度肝を抜く事が出来たので満足する事にした

 

 

「さてと、魔力を回収して置きますか」

 

 

俺はジャイアンドトードの死体から魔力をフルボトルに回収する

 

 

「驚いたぜ、魔法を使えない落ちこぼれ紅魔族だと思っていたがまさかこんな隠し玉を持っていたとはな」

 

 

「これが私の親友のめぐみんの力よ!さぁ、めぐみんに今まで馬鹿にして来た事を謝りなさい!」

 

 

「あ、あああ。そうだな、えっと…めぐみんっていったな?済まなかったな、お前の事を馬鹿にして来て」

 

 

「別に気にしてはいませんのでもう良いですよ。私としては貴方達の驚いた顔を見れた事で満足していますから」

 

 

そう言うとその冒険者は改めてレックスと名乗った後俺にもう一度謝罪の言葉を口にした後ギルドへと戻ると先に食事をするというレックスと一旦別れ先程の金髪の女性…ルナにクエストの達成を報告した

 

 

「クエストお疲れ様です。此方が報酬になります。それにしてもゆんゆんさんは兎も角めぐみんさんの討伐数も中々凄いですね!これも仮面ライダーという職業の力なのですか?」

 

 

「天才物理学者であるこの私が作ったライダーシステムは最強無敵!あんなカエル程度敵ではありません!」

 

 

「めぐみんさんが何を言っているのかは分かりませんが優秀な人材が現れるのは良い事です。つい先日にも非常に高い魔力を持った方が現れたんですよ?魔力だけならばゆんゆんさん以上の高さを持った方でした」

 

 

「私以上の?どんな人なのか一度会ってみたいわね」

 

 

自分以上の魔力を持つという人物に興味があるのかゆんゆんがそう言うと一足先に食事を終えたレックスが俺達の元に歩いて来ると俺達にある事を持ちかけてきた

 

 

「めぐみん。ゆんゆん。フリーならば俺達のパーティーに入らないか?俺達は近い内に王都に拠点を移す予定だ。お前達の実力ならば王都でもきっと通用するだろう。俺達のパーティー加入について真剣に考えてみてくれないか?」

 

 

レックスは俺達をパーティーに誘って来るが俺達の答えは決まっていた

 

 

「申し訳ありませんがお断りします。私達は暫くはこの街を拠点にする予定ですし、何よりもパーティーを組む相手は既に決まっていますしね」

 

 

「そうか、それは残念だな。でも気が変わったらいつでも言ってくれお前達なら歓迎するぜ」

 

 

レックスはそう言うと俺達から離れまた新たなクエストを受ける為に掲示板へと向かって行った。

 

 

その後俺達はギルドから魔道具店へと帰るとそのまま地下にあるラボへと直行し手に入れたフルボトルの浄化を始めた。そして夕食頃にはボトルの浄化が終わり新たなフルボトルが生成された。

 

 

「これは…ロックフルボトルか」

 

 

俺は生成されたばかりのロックフルボトルを装置から取り出してからそう呟くと近くで本を読んでいたゆんゆんに声をかける

 

 

「ゆんゆん。申し訳ないですがドラゴンフルボトルを私に渡してくれませんか?」

 

 

「別に構わないけれど…もしかしてこのフルボトルとのベストマッチするフルボトルが見つかったの?」

 

 

「そんな所です。後ドラゴンフルボトル専用の武器を開発しておきたいと思っているので」

 

 

「わかったわ。そういう事ならめぐみんにこのボトルを渡して置くわね」

 

 

ゆんゆんは俺の言葉に疑う事なくボトルを渡して来る。ドラゴンフルボトル用の武器を作るのは本当だか俺がゆんゆんからフルボトルを預かった理由は他にもあるそれはゆんゆんとドラゴンフルボトルとの相性の良さだ。余りにも相性が良過ぎるこの世界では測る事は出来ないがもしかしたらハザードレベル3を既に超えている可能性がある…それはつまり

 

 

「このまま行けばゆんゆんは間違いなく仮面ライダーになる…出来ればゆんゆんには仮面ライダーにはなって欲しくはない…このままゆんゆんからドラゴンフルボトルを引き離す事が出来れば…」

 

 

俺はそんな事を考えながら武器の開発作業に集中する。そして武器の開発作業がひと段落すると俺は作業を中断し凝り固まった身体を解す為に背伸びをしながらラボの壁に設置されている時計へと目をむける。時計の針は既に夜が明けている時間を指しており俺はかなりの時間開発に気を取られた事に気付いた

 

 

そして俺は小休止と簡単な武器のテストを兼ねてラボから店に上がって来ると営業中のウィズが俺に気付き声をかけて来る

 

 

「おはようございます。めぐみんさん…その様子だと徹夜をしたみたいですね。いけませんよ、めぐみんさんは成長期なのですからちゃんと睡眠は取らないと!」

 

 

ウィズはまるで母親みたいな事を言って来るが俺の身を案じたゆえの言葉なので大人しく聞いておく事にする

 

 

「すいません、ウィズさん…ところでゆんゆんはもう起きているんですか?」

 

 

ウィズは謝罪にしては軽い俺の言葉に溜息を吐くと色々と諦めたのかゆんゆんについて説明してくれた

 

 

「ゆんゆんさんなら朝早くにギルドにクエストを受けに行きましたよ?めぐみんさんが開発を頑張っている間に自分も冒険者として頑張るんだって言ってましたから」

 

 

ウィズ曰くゆんゆんは少しでも冒険者としての経験を積む為なのか朝早くにクエストを受けにギルドへと出かけたらしい。ゆんゆんがクエストを受けているならば俺も武器の調整の為に簡単なクエストを受けに行くかと考えているとルナが店の中へと息を切らしながら慌てて入って来た

 

 

「ウィズさん!申し訳ありませんが力をお借り出来ませんか?」

 

 

「私の力を借りたい?ルナさん、一体何があったのか説明して貰えませんか?」

 

 

「はい!実は最近この辺りで悪魔が目撃されているのはご存知ですか?」

 

 

ルナ曰く最近この辺りで悪魔の存在が確認された為ギルドはその悪魔の討伐クエストを出したが多くの実力のある冒険者達がその悪魔に返り討ちにあってしまったという話だ

 

 

現在は王都で活躍している魔剣の勇者に討伐を要請しているところだが彼は今現在別のクエストに行っている為にアクセルの街に到着するのは時間がかかるという事らしい。

 

 

切羽詰まってしまったギルドは街の冒険者達に協力を依頼すると同時に元は凄腕のアークウィザードであったウィズに協力を要請しに来たのだ

 

 

「つい先程も討伐隊が組まれ何度目かの討伐に向かいましたが彼等だけでは不安なのでギルドの要請で私がウィズさんに協力お願いしに来たんです」

 

 

「その悪魔の特徴は分かりますか?」

 

 

俺の言葉にルナはその悪魔の特徴を俺達に話す

 

 

「確か…右目に傷を負っていました」

 

 

俺はルナのその言葉を聞くのと同時にラボから飛び出していたルナの言葉が本当ならば俺はその悪魔には覚えがあった

 

 

その悪魔は俺とゆんゆんが里にいる時に闘い何とか撤退させる事に成功した悪魔…ホーストに違いないからだ

 

 

「めぐみんさん!?」

 

 

ルナは飛び出していった俺に驚いた声をあげるが俺は気にせずに開発途中だった武器を持ってゆんゆんの元へと向かう

 

 

そしてアクセルの街にある正面の門をくぐるとアクセルからそんなに離れてはいない草原でゆんゆんと昨日パーティーを組んだレックスがリーダーを務めるパーティーと討伐依頼を受けたがホーストにやられたのか冒険者達が倒れていた

 

 

*********************************

 

 

ゆんゆんと冒険者…レックスがリーダーを務めているパーティーは今大ピンチに陥っていた数日前から噂になっていた悪魔が最近アクセルの周辺へと襲来したのだ。

 

 

それを知ったギルドは冒険者達に正式に討伐を依頼しその依頼を受けたゆんゆん達は悪魔を討伐する為に悪魔が目撃されたポイントで警護しているとその悪魔が襲来して来たのだ

 

 

そしてその悪魔はゆんゆんにはとても見覚えある悪魔だった

 

 

「貴方は…まさかホースト!!アクセル周辺に現れる悪魔って貴方の事だったの!?」

 

 

「お前は確か紅魔族の…ゆんゆんっていったな?まさかこんな場所でお前と再会するとはな。お前が居るという事はあのめぐみんって奴もここにいるのか?」

 

 

「居たとしてもあんたに話す必要なんてないわよ!!」

 

 

私はめぐみんからプレゼントされた小刀を構えながらホーストと対峙する。そして他の冒険者達もホーストを取り囲む

 

 

「ふん。お前達だけで俺に勝てると思ったのか?だとするなら俺も舐められた物だぜ、まぁ、ビルドが来るまでの暇つぶしには丁度いいな」

 

 

ホーストがそう言うと見てる者が圧倒される殺気を放つ、ゆんゆん達冒険者はその殺気にたじろぐが臆する事なくホーストと対峙する。

 

 

「へぇ、中々に骨のありそうな奴らだぜ。だがなお前達じゃ役不足なんだよ!」

 

 

ホーストがそう言うとホーストを取り囲んでいた冒険者達はホーストに切りかかるがホーストはまるで虫を払うかのように右手を振るうと冒険者達は吹き飛ばされた後地面に転がり動かなくなるが息が辛うじてある事は分かった。

 

 

そして私と残ったレックス達は戦闘態勢を崩さずに向かい合っていると其処にウィズさんの何処に居る筈のめぐみんが息を切らした様子で現れた

 

 

「ハァ、ハァ…たっく、ゆんゆんは全くどうしようもありませんね!私を放ってこんな危険なクエストを受けるんですから!」

 

 

めぐみんは私にそう毒を吐くと私達にとっての因縁の相手であるホーストと対峙する

 

 

「まさか、こんな何処で貴方と再会するとは思いませんでした」

 

 

「俺の方こそ久しぶりだなめぐみん?いや、仮面ライダービルド。…やはり似ているなあいつと」

 

 

「一体何の話ですか?」

 

 

「お前には関係のない話だ。さぁこの前のリベンジマッチと行こうぜ?」

 

 

気になるところはあるもののホーストの言葉を聞いた俺はドラゴンフルボトルとロックフルボトルを取り出すと其れをビルドドライバーへと装填する

 

 

『ドラゴン!ロック!ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!」

 

 

『封印のファンタジスタ!キードラゴン!イエーイ!』

 

 

俺はドラゴンハーフボディとロックハーフボディで変身するビルド4つ目のベストマッチフォームキードラゴンフォームへと変身完了する

 

 

キードラゴンは紺と金をメインカラーとしたフォームであり複眼はそれぞれドラゴンの横顔と南京錠を模している。そして胸部には特殊装甲『ブレイズチェストアーマー』が装着されおりその機能でドラゴンフルボトルの成分を蒼い炎に変換する。

 

 

そしてその蒼炎を纏った部分は『ブレイズアップモード』と呼ばれるモードに自動的に移行するようになっておりそれによりビルドの攻撃力が上昇するようになっている。

 

 

そしてロックハーフボディの左腕には鍵を模した特殊武器『バインドマスターキー』を装着しており其処から鎖で繋がった肩部にある装甲『BLDセキュリティショルダー』で生成した鎖と錠前を射出する。

 

 

その上腕に装着されている『BLDセキュリティグローブ』の機能で敵の武器の安全装置を強制的に作動させ使用不能にする事も出来る上に自分自身の装備に異常が起きた時に自動的に制御してくれる安全装置の役割を果たすのだ

 

 

*********************************

 

 

「あれは…仮面の戦士?もしかしてあれが噂の仮面ライダーって奴か?」

 

 

「そう言えば数日前に街の近くで悪魔が討伐された話があったよな?その時にその仮面ライダーが活躍したって話を聞いたぜ!!」

 

 

周りの冒険者がめぐみんの事を見て全員驚いていた。それはそうだろう魔法を使う事の出来ないダメダメ紅魔族のめぐみんが噂に聞いた仮面ライダーだったのだから。しかし私には驚いている彼らの事よりも気になっている事があった

 

 

「ドラゴンと鍵がベストマッチ?一体ベストマッチの法則ってどうなってるのよ?」

 

 

めぐみんは私のそんな呟きを無視するとホーストに向かって走り出した

 

 

*********************************

 

 

俺はドラゴンハーフボディの腕にある白い刃『ファングオブレイド』でホーストの身体を切り付けるがホーストには大きなダメージにならずに逆にホーストの反撃を受ける。

 

 

でもそれは俺の計算のひとつだ。ドラゴンハーフボディには変身者である俺の感情の高ぶりにより必殺技の威力を底上げする機能が搭載されているのだ。

 

 

その上俺は胸部装甲「ブレイズチェストアーマー」の機能でドラゴンフルボトルの成分を蒼い炎に変換するとその蒼い炎を腕に纏う事で自動的に移行するブレイズアップモードにより殴打力を上げた

 

 

 

「オラオラオラオラァァ!!」

 

 

俺は激しいラッシュ攻撃をホーストへと決めていく。そしてファングオブレイドの刃に炎を宿す事で斬撃攻撃も上げ更に殴打攻撃と組み合わせる事でホーストに着実にダメージを蓄積させて行く。

 

 

更にホーストから距離を取るとロックハーフボディに搭載されているBLDセキュリティショルダーで生成された鎖と錠前を射出した。

 

 

そして遠距離から放たれた鎖と錠前を受けたホーストは俺の反撃を許さない猛攻により片膝をついた

 

 

「チィ…まさかこの短期間の間にここまで力をつけやがって…」

 

 

忌々しくそう言うホーストを俺は一瞥するとホーストにトドメを刺す為に必殺技を発動させる

 

 

「コイツでトドメだ!!」

 

 

俺がそう言った次の瞬間、俺の全身に電流が流れると変身が強制的に解除されてしまった

 

 

*********************************

 

 

「ガッハ…」

 

 

変身が解けためぐみんはその場に倒れ込んでしまい、その時にビルドドライバーとドラゴンフルボトルもその場に転がってしまう

 

 

「ハァハァ…」

 

 

めぐみんは立ち上がろうとするが力が入らないらしい、どうやら予想以上にキードラゴンの負担が大きかったようだ。

 

 

しかもビルドドライバーを使用した事による負担も相まってめぐみんはもう指一本動かせそうになかった…そしてホーストはその場から立ち上がると一歩また一歩とめぐみんに近づいて来た

 

 

「どうやら時間切れの様だなぁ?さぁ、大人しくウォバルク様の半身を渡すか此処で俺様に殺されるかどちらかを選びな?俺様としては大人しく渡してくれると嬉しいぜ。何せお前達を殺したらあいつが悲しみそうだからよぉ」

 

 

「残念だがウォバルク様の半身ってのに覚えがなくてね、あんたの提案を飲めそうにないな。仮に覚えがあったとしても聞くつもりもないが」

 

 

ホーストはめぐみんの言葉を答えと受け取ったのか何も言う事はなかった。そしてそのままホーストはまともに動けないめぐみんトドメを刺そうとする。そして私はめぐみんを守る為ホーストに向かってライドオブセイバーをぶつけるとホーストに向かって叫んだ

 

 

「めぐみんに手を出さないで!!」

 

 

「ゆんゆん、こいつはアーネスよりも強い!!お前じゃ勝つのは無理だ!!早く逃げろ!!」

 

 

めぐみんの言葉に私は自分の胸が熱くなる感覚を味わうといつの間にかめぐみんに怒鳴っていた

 

 

「ふざけないで!!」

 

 

そう叫んだ私の声は私自身今まで聞いた声の中で1番大きい物だった…

 

 

 

「めぐみんを置いて逃げれる訳ないでしょ!?私を馬鹿にするのもいい加減にしてよ!私達は友達じゃないの!?困った時ぐらいは頼りなさいよ!!」

 

 

「ゆんゆん…」

 

 

めぐみんは私の雰囲気に驚いているのか何も言えなくなっていた

 

 

「ホースト!!私は貴方なんかに負けない!!貴方を倒してめぐみんを街のみんなを守ってみせるわ!!」

 

 

そう叫んだ時私の身体の中から強い魔力らしき物が溢れてくるのを感じた。其れと同時に何処からか何らかの鳴き声が聞こえて来ると小さなドラゴンが現れホーストに小さな炎を吐いて攻撃してくる。そして攻撃が終わったドラゴンは私の手の中に収まった

 

 

「馬鹿な…それはクローズドラゴン!?一体何処から?」

 

 

めぐみんの言葉によりこの小さなドラゴンの名前を知った。其れと同時にこのドラゴンが何の為に使う物なのかも理解する。

 

 

私はクローズドラゴンの攻撃を受け未だに怯んでいるホーストの隙を突き地面に転がっているドライバーとロックフルボトル、ドラゴンフルボトルを拾うとクローズドラゴンに空いている小さな穴とクローズドラゴンの後ろにスロットに装填させる為のパーツを見て私は自分の考えが正しかった事を確信するとビルドドライバーを腰へと取り付ける

 

 

「駄目だ!!ゆんゆん。今のお前に其れは使えない!!」

 

 

めぐみんは私の身を案じてそう言うが私は辞めるつもりなどはなかった。そして私はドラゴンフルボトルを振ると手元にあるクローズドラゴンにフルボトルを装填するとドラゴンの頭と尻尾を片手で畳み赤いボタンを押してビルドドライバーに装填した

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

そしてゆんゆんはビルドドライバーのボルティクレバーを回転させる。するとビルドの変身の時に現れた装甲材質『トランジェルソリッド』が展開されると其処にドラゴンハーフボディが2つ生成される。ゆんゆんはめぐみんの時と同じように拳をボクシングの様に前後に突き出すポーズを取ると

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

ゆんゆんは左右両方がドラゴンハーフボディに金色のファイヤーパターンが刻まれた装甲『ドラゴライブレイザー』と『バーンアップクレスト』を纏いそして頭部には『フレイムエヴォリューガー』という装甲の追 加により先程のビルドの変身した物から大きく姿が違うライダーへと変身した。 そう…今ここにビルドに続くもうひとりの仮面ライダー…仮面ライダークローズが誕生したのだった。




次回はゆんゆんが変身したクローズの初戦闘と第1部の最終話です。評価と感想を待っています



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この燃えるドラゴンに祝福を!!

ゆんゆんがクローズに変身していたのをアクセルの街にある外壁の上から見つめているひとりの人影があった

 

 

『どうやら俺からの贈り物は気にいってくれたようだな』

 

 

そう言っている人影は男なのかそれとも女なのか分からない姿をしておりそしてその人影はコブラの意図をあしらった特徴のある血のような真っ赤なスーツを着ていた

 

 

『もう少しだ…もう少しで全ての駒が出揃う…その時こそ新たなゲームの幕が開く…その時に会えるのを楽しみにしてるぜ?桐生戦兎」

 

 

コブラ男はそう言うと外壁から飛び降りその姿を消した

 

 

*********************************

 

 

仮面ライダークローズに変身したゆんゆんはホーストと対峙していた

 

 

「ビルド以外の仮面ライダーだと?変身出来るのはめぐみんって奴だけじゃなかったのか?」

 

 

目の前で変身したゆんゆんに驚いているホースト。それはゆんゆん本人も同じだった

 

 

*********************************

 

 

「力がどんどん湧いて来る…これが仮面ライダーの力なの?」

 

 

私は変身した自分の姿をペタペタと触りながらそう言うとめぐみんの叫ぶ声が聞こえて来る

 

 

「何ボサッと知ってるんだ!!来るぞ!!」

 

 

「えっ!?…きゃあ!!」

 

ホーストが翼を使い空中を飛行しながら此方へと突っ込んできており私は地面に転がる事でそれを躱した

 

 

「ゆんゆん!!ビートクローザーと叫べ!!」

 

 

「えっ?う、うん。ビ、ビートクローザー!!」

 

 

私がそう言うとラボからビルドドライバーを経由し反応私の手元に剣型武器が転送される

 

 

「そいつは『ビートクローザー』それとフルボトルを使って奴に攻撃するんだ!!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

私はクローズドラゴンからドラゴンフルボトルを抜くと其れを鍔の中央にあるスロットにセットする

 

 

『スペシャルチューン!』

 

 

「そのままグリップエンドを引くんだ!!」

 

 

めぐみんの言う通りに私はグリップにあるレバーを一回引く、するとビートクローザーの刀身に蒼炎が纏う

 

 

「そうはさせるかよ!!カーストライトニング!!」

 

 

私が攻撃するよりも早くに魔法を放つが私も蒼炎を纏った斬撃を放ちホーストの攻撃を相殺させる

 

 

「今よ!!『パラライズ』」

 

 

その時何とか立ち直ったレックスのパーティーメンバーである女性がホーストに麻痺効果を与える魔法『パラライズ』をかけて動きを止める

 

 

「動きが止まってればこっちの攻撃も当たるでしょ!?」

 

 

「やってくれるじゃねぇか、冒険者!!」

 

 

パラライズの効果により暫く動けなくなってホーストは忌々しげにレックス達を睨むがそんなチャンスを私達は見逃さない

 

 

「今だ!!ゆんゆん!!」

 

 

「ええ!!」

 

 

私はジャンプするとビートクローザーでホーストの右にある翼を切り落とす。すると空に飛んていたホーストは片翼を失った事でバランスを崩した

 

 

更に畳み掛けるように私は鍔の中央にあの時に拾っておいたロックフルボトルをセットしてから2回グリップエンドを引く

 

 

『スペシャルチューン!』

 

 

その音声と共にビートクローザーの刀身から鎖状のエネルギーを放出するとふらついていたホーストを捕縛すると地面へと叩きつける。そして素早く間を詰めると残るもう片方の翼を切り落として完全にホーストを飛行不能にさせた

 

 

「まさか…ここまでやるとは…アイツ…こうなる事を分かった上で黙ってやがったな…」

 

 

ホーストが何かを言っているが今の私にはそんな事は気にならなかった

 

 

「ホースト覚悟しなさい!!」

 

 

そして今度こそホーストにトドメを刺す為に私はめぐみんがやっていたようにボルディクレバーを回転させると

 

 

「今の私は…負ける気がしないわ!!!」

 

 

自然と口に出たセリフと共に私は背後にクローズドラゴンの姿をしたエネルギー体を召喚させる。そしてクローズドラゴンの吐く蒼炎に乗ると右脚に蒼炎を纏いボレーキックをホーストに叩き込んだ。

 

 

私のキックを受けたホーストは吹き飛ぶと地面に数回バウンドしその場に転がるとふらつきながらその場に立ち上がる

 

 

「これでウォルバク様との契約は切れて俺様はフリーになるのか…このままだとあのガキに使徒されちまうかもしれねぇな。でも…それも案外悪くねぇかもしれないな…」

 

 

ホーストは最後にそう言うと再び地面に倒れそして大爆発を起こすと完全に消滅した

 

 

戦いが終わった事を確認するとベルトに装填されていたクローズドラゴンが勝手に動き出しベルトから外れるとスロットに装填されていたドラゴンフルボトルを弾き出すとクローズドラゴンは何処かへと飛んて行ってしまった。

 

 

そして変身が解けた私は自分がめぐみんと同じように仮面ライダーへと変身出来た実感が今頃になって湧いてくる

 

 

「私…本当に仮面ライダーに変身したんだ…これで私もめぐみんと一緒に…」

 

 

私は自分の両手を見つめながらそう言うとめぐみんの方へと目をむけるがめぐみんの顔は険しいままだった

 

 

「ゆんゆん。そのビルドドライバーを返して下さい」

 

 

「わ、分かったわ」

 

 

めぐみんの厳しい目線を感じた私は大人しくビルドドライバーをめぐみんに返すとめぐみんはビルドドライバー片手に何かを思い出しているのかとても悲しそうな表情を見せていた

 

 

「めぐみん、一体どうしたのよ?私何かいけない事でもしちゃったの?」

 

 

「私には色々と自分の中で決着をつけなきゃいけない事があるんですよ。ライダーに変身出来たからってはしゃいでいるゆんゆんとは違ってね」

 

 

「そ、そんな言い方ないでしょ!?第一私が変身しなかったら全員ホーストに負けてたのよ!」

 

 

私はつい感情的にそう言ってしまった。するとめぐみんははっとした表情になると申し訳なさそうな雰囲気を出し始め

 

 

「すいません。少し言い過ぎました…頭を冷やします」

 

 

そう言うとめぐみんは私達に見向きもせずにアクセルへと戻って行く。私はめぐみんを呼び止めようと声をかけようとした時にめぐみんがボソッと呟いた言葉が耳に入った

 

 

「万丈…」

 

 

「えっ…?」

 

 

めぐみんが言った万丈という言葉に気を取られた私はめぐみんがアクセルの街に戻って行くのを止める事が出来なかった…

 

 

その後私達は仕方なくめぐみん抜きでギルドに戻るとホースト討伐による報酬金を受け取りレックスのパーティーと折半した後王都に向かうというレックス達を見送と私は街をふらふらとする

 

 

その最中に最近噂になっている摩訶不思議な服を着た少年が青い髪をした少女の襟首を掴んで移動しているのが見えた普通ならば案件ものだろうがアクセルの住人達はもう慣れてしまい今じゃお馴染みの光景となっていた

 

 

そんな彼らを見送った後たまたま立ち寄った喫茶店で夕暮れ近くまで時間を潰すと会計を終えて外へと出る。そのままウィズさんのお店に戻ろうとしたがめぐみんと会うのが何となく気まずいので今日は街の宿へと泊まる事にした

 

 

一度店にもどると朝と変わらずに営業をしていたウィズさんには今日は宿に泊まるという旨を伝えると私とめぐみんの間に何が起こったのかを察してくれたのか何も聞かずに宿に泊まる事を了承してくれた。

 

 

了承を貰った私はギルドの食堂で夕食を取る(その時に例の青い髪の少女がかなり高レベルの宴会芸を見せて周りの冒険者達を楽しませていた)とあらかじめ予約を入れておいて宿に向かったのだった

 

 

 

そして次の日ラボに向かって歩いている私は昨日の事を思い返していた。あれだけ感情を露わにしていためぐみんは初めて見た。どうしてめぐみんは私が仮面ライダーに変身した事に怒っていたのだろうか?

 

 

「もしかしてめぐみんが口にした万丈って人と何か関係があるのかしら?」

 

 

私は変身した私の姿を見ためぐみんが呟いていた名前を思い出す。めぐみんが言っていた万丈とは一体誰なのだろうか?

 

 

もしかして私が変身したクローズには私よりも前に変身していた人が存在していたのか?でも、めぐみんがライダーシステムを完成させたのはつい最近の筈…一体どういう事なのだろう

 

 

「また、めぐみんに関する謎が増えちゃったわね…」

 

 

私は空を見つめながらそう言うと自分がいつのまにかウィズさんのお店に着いていた事に気付いた

 

 

「よし!!ウジウジするのはもうヤメ!!めぐみんは私の一番の親友なんだから!!私は親友のめぐみんの事を信じるだけよ」

 

 

私は自分の考えを吹っ切ると店の扉を開け中にいるウィズさんに挨拶をすると私は地下のラボへと降りて行く

 

 

ラボの中ではめぐみんが何かを開発しているのか私が入って来た事に気付いていなかった

 

 

「めぐみん…昨日はごめんなさい。めぐみんがどうして怒っていたのかその理由は分からないし万丈って人も誰なのかはわからないけれど…でも!!めぐみんと同じ仮面ライダーになった以上は私も」

 

 

私がそこまで言いかけるとめぐみんが突然こちらに振り返ると私に向かって何を投げ渡して来た

 

 

*********************************

 

 

「ゆんゆん。これを受け取って下さい」

 

 

「えっ?うわっ!!!」

 

 

ゆんゆんは俺から投げ渡された物を落とさないように何とか受け取ると自分が受け取った物が何なのかに気付いた

 

 

「めぐみん!渡すならちゃんと渡しなさいよね!!…ってこれビルドドライバーじゃない!!」

 

 

そう、俺がゆんゆんに渡したのはゆんゆん用に開発したふたつ目のビルドドライバーだ

 

 

「私がゆんゆん専用に開発したドライバーです。今度から其れを使って変身して下さい。一応言っときますけど私はまだ貴女を仮面ライダーとは認めてはいません。然るべき時が来たら仮面ライダークローズの名は返して貰いますからね」

 

 

「分かってるわよめぐみん。でもいつかは貴女に必ず認めさせてみせる!!私も仮面ライダーになった事を!!」

 

そう言い終わると俺達はお互いに頷き合っていると

 

 

「良いわね〜可愛い女の子同士の友情は、お姉さんはそういうの大好きよ?」

 

 

いつのまにか其処にいたセシリーがウンウンと頷きながらそう言っている

 

 

「セシリーさん!?どうして貴方が此処にていうかどうやって此処に入ったんですか?」

 

 

俺は思わず叫びながらそう突っ込む確か彼女はアルカンレティアにいる筈だ。そんな彼女がどうしてアクセルの街にていうか何故俺のラボにいるのか訳が分からなかった

 

 

「ゆんゆんさんをこの街で見かけた後、こっそりストーキングを…げっふん、後をつけさせて貰ったらこの魔道具店に入って行くのが見えたのでこのお店の美人店主さん…ウィズさんに2人の仲間だとお伝えしましたらこのラボに案内されたのよ」

 

 

「ウィズさん…」

 

 

俺はウィズの行動に思わず頭を抱えてしまう

 

 

「それで?セシリーさんはどうしてアクセルの街に何しに来たんですか?」

 

 

ゆんゆんが俺の代わりにセシリーにそう言う

 

 

「今度この街にアクシズ教の支部を新たに作る事になったの、そして私がその支部の支部長としてこの街に派遣される事になったのよ」

 

 

アクシズ教か…俺はつい先日まで滞在していたアルカンレティアにおける出来事を思い出すと身震いが起きる。どうやらアルカンレティアは俺にとって色々とトラウマになってしまったようだ

 

 

「支部を作るにはお姉さんひとりでは色々と手が足りないのよ、そこでアクシズ教の名誉教徒であるめぐみんさんとゆんゆんさんにお手伝いをお願いしたく…」

 

 

「人を勝手に名誉教徒にするのを辞めてくれませんか?」

 

 

「アクシズ教の支部なんて物を作ったらこの街の住人に迷惑になりますよ!!」

 

 

「2人共アクシズ教をそんな風に言うのは辞めてくれない幾らお姉さんでも泣いちゃうわよ?」

 

 

俺とゆんゆんの立て続けのツッコミと批判の言葉を聞いたセシリーは涙目になってそう言うがそれは嘘泣きである事はバレバレである。

 

 

そして嘘泣きが通用しない事が分かるとセシリーは

 

 

 

「…ごっほん。とりあえずはこの街に支部長として滞在する事になっているからこのラボを拠点にしようと思っているんだけど…優しいめぐみんさん達は私を追い出したりはしませんよね?」

 

 

「いや、アクシズ教に入るつもりはないし貴女を住まわせる理由も無いですから普通に出て行って貰いますけど?」

 

 

「お願いよぉめぐみんさん!!私をここに住まわせて頂戴!!この街に滞在する間のお金をギャンブルに全部なくなっちゃったの!!住まわせて貰うだけでいいのお願い!!」

 

 

必死に俺にすがりつくセシリーは先程の嘘泣きとは違う本気の泣きつきを見せていた。そんなセシリーを見てられなくなった俺はゆんゆんと目を合わせてからため息をつくと

 

 

「分かりました。このラボに住んでも良いですか条件があります。ひとつ目はこのラボを支部扱いにしない事とふたつ目はこのラボで布教活動をやらない事。みっつ目はここに住む以上はウィズさんと私の仕事の手伝いをして貰います。良いですね?」

 

 

俺の提案にセシリーは間髪いれずに頷いている。どうやらこのアクセルにおいても騒がしい日々になりそうだなと俺は考えると引っ付いているセシリーを引き離しとある用事の為にラボから出るとギルドへと向かった

 

 

「ありがとございます、めぐみんさん。めぐみんさんのおかげで当ギルドも大分設備などが改善されました」

 

 

ルナがそうお礼の言葉を言って来る。ホーストの襲来以来俺達の噂が届いたのかよく色々なパーティーに誘われるようになった。

 

 

特に俺に関してはウィズの店で販売している商品の開発者であると周りに知られてしまったおかげでギルドと街の設備の調整や修理開発なども引き受けるようになった

 

 

因みに今回は魔力を利用ししゅわしゅわを始めとする冷たい飲み物を冷たいまま暖かい飲み物を暖かいままで飲めるようにする。前の世界におけるドリンクバーとギルドの職員達が使うマッサージチェアを開発設置したのだ

 

 

そして依頼された物の設置を終えた俺はルナから報奨金を受け取るとそれを着ているコートの中に仕舞おうとするその時にドリンクバーとマッサージチェアのテスト用に収集しておいた魔力の入ったボトルをいくつか落としてしまう

 

 

俺は慌てて床に転がったフルボトルを回収していると近くにいる少年が自分の足元に転がるひとつのフルボトルを拾う。その瞬間フルボトルはゆんゆんの時と同じように別のフルボトルへと変化した

 

 

俺は其奴からボトルを取り上げるとそのフルボトルをマジマジと見つめる

 

 

「また浄化装置を介せずにボトルが変化した?…ゆんゆんの時と同じように…一体どういう事なんだ?」

 

 

フルボトルを見つめる事に気を取られていた俺はその少年が一体誰なのか気づかなかった

 

 

「やはり…君だったんだな。アクセルの街に襲来した悪魔を倒した仮面の戦士というのは」

 

 

俺は自分の耳に非常に聞き覚えのある声が聞こえると声の聞こえた方向を見る。声が聞こえた方には昔里において起きたとある事件で知り合った少年が居た

 

 

「貴方は…ミツルギさん。お久しぶりですね」

 

 

御剣 響夜(ミツルギキョウヤ)…此奴は勇者候補所謂転生者と呼ばれる存在だ。

 

 

この世界に迷い込み一年程経った時、俺が前の世界の知識を使い色々な便利グッズを開発していた頃に情報収集と自分以外の転生者である可能性のある俺に会うために里にやって来た事があったのだ

 

 

「めぐみんさん。君がアクセルの街にやって来たという事はこの街を拠点に冒険者としての活動を始めるつもりなんだね」

 

 

「はい。そのつもりですよ、女神エリスとの約束もありますしね」

 

 

「君が羨ましいよ。女神から直接この街で活動するように頼まれたのだからね僕ももう一度女神さま会いたいよ」

 

 

「確か…アクア様っていったけ?その魔剣グラムを渡してくれたのは」

 

 

「ああ、その通りだ。僕はアクア様からこの魔剣グラムを授かり魔王を倒すように頼まれたんだ」

 

 

「頑張るのは良いですけど貴方は思い込みが激しく人の話を聞かなくなるところがありますからその辺りは気をつけて下さいよ?いつかそれが原因で痛い目に合わないか心配ですから」

 

 

ミツルギは悪い奴ではないのだが熱くなると人の話を聞かなくなる上に思い込みも激しくなるという悪癖があるのだ。その所為で出会ったばかりの頃に色々とあったのだがそれはまた別の話だ

 

 

「僕達はこの後いくつかの街を回って色々とクエストを受けていくつもりだ。君も冒険者となった以上はパーティーを組むつもりなのだろう?良かったら僕とパーティーを組まないかい?他のメンバー君と同じ女の子だから気が合うかもしれないよ」

 

 

「申し訳ありませんがパーティーを組む人は既に決まっているので貴方のパーティーには入る事は出来ません」

 

 

俺の言葉にミツルギは心底残念そうな表情になると

 

 

「そうか、其れは残念だな。でも君が認める人物ならばきっと素晴らしい人達なんだろうね。君とパーティーを組むのは無理かもしれないが君のパーティと一緒にクエストをするのを楽しみにする事にするよ」

 

 

ミツルギがそこまで言うとミツルギの事を呼ぶ声が聞こえて来る。どうやらミツルギの言っていた同じパーティーの少女がミツルギを迎えに来たらしい

 

 

「それじゃあ、そろそろ失礼するよ。また今度街に来た時には会いに来るよ」

 

 

そう言って立ち去ろうとするミツルギに俺はミツルギが触れた事で変化を起こしたフルボトルを選別代わりに投げ渡した

 

 

「ミツルギさん、コレを持って行って下さい」

 

 

俺がミツルギに投げ渡したボトルには昔共に戦った別の世界の仮面ライダーの姿が描かれていた

 

 

「これは君が使っているアイテムじゃないか、本当に持って良いのかい?」

 

 

「はい。このボトルはミツルギさんが手にした事で生まれた物です。ならば私よりも貴方が持っている方が良いでしょう」

 

 

「分かった。それじゃあこれは貰っておくよ」

 

 

ミツルギはそう言うとボトルを鎧の中にしまい同行者らしき2人の少女とギルドから去って行った。そしてミツルギと入れ替わるようにゆんゆんがギルドに入って来ると俺の元に歩いて来る

 

 

「めぐみん。さっきの人って前に里に来た男の人よね?まさか、めぐみんあの人の事を」

 

 

「んな訳ないでしょう!!彼とは少し情報交換をしただけですよ」

 

 

「そっか、そうよね〜あのめぐみんが恋愛なんかに興味がある訳ないわよね!!」

 

 

ゆんゆんは安心した表情で頷きながらそんな事を言っているが俺はそんなゆんゆんを無視するとギルドの出口に向かって歩き始める。

 

 

(エリスが言うにはこの街には俺のパーティーとなるメンバーがいるらしいが…メンバーとなる人物はどんな人物なのか…そしてこれからこの街でどんな冒険が始まるのか…楽しみだな…万丈、玄さん、一海、絵羽さん、美空。俺はこの世界で上手くやっているよ…だから俺の事見守っていてくれるか?)

 

俺は珍しくセンチメンタルな気分になりながら魔道具店へと歩いて帰って行った…

 

 




第1章はこれで終了です。暫くはストックを貯める為に更新は停止しますがストックが溜まり次第更新を再開予定です。


今回も感想と評価を待ってます。




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設定集

めぐみん・桐生戦兎・仮面ライダービルド

 

 

本編でのエボルトとの最終決戦パンドラボックスにより新たに作られた新世界に迷い込んだ際に桐生戦兎が転生してしまった姿

 

 

それが原因なのかは不明だが魔力を無くしてしまった為にアークウィザードになる事が出来なくなってしまった。

 

 

そして戦兎としての記憶が宿ってしまった影響により原作のように爆裂狂になる事はなくなったが代わりに自意識過剰でナルシストな奴になってしまうが基本的にはツッコミ役であり常識人。

 

 

普段はめぐみんとしての口調を使い振舞っているがビルドに変身している時やシリアスな場面、ツッコミの時には戦兎としての口調が出てしまう

 

 

人間関係や環境も変わっており原作では貧乏だっためぐみんの家の環境は戦兎の発明品によりかなり改善されこめっこも同年代と変わらないぐらいに健康的となった。

 

 

ウィズもめぐみんと商売上の契約を結んでいる影響でウィズの店は原作のように貧乏ではないが役に立たない商品を仕入れてしまうところは変わっていないがめぐみんの商品の利益のおかげで赤字にはなっていない。

 

 

尚ウィズからめぐみんの噂を聞いたとある仮面の悪魔がとある目的の為にめぐみんと接触する機会をうかがっているのはここだけの話である

 

 

ギルドも街もめぐみんの発明品には世話になっており周りからの評価は非常に高い特に開発設置したドリンクバーやマッサージチェアは冒険者や職員には人気があり更なる商品の開発販売を期待されている

 

 

服装は原作で戦兎が好んで着ていたコートを紅魔族風にアレンジした物である。

 

 

因みに戦兎は自分が現れた事でめぐみんの人生を奪ってしまった事に罪の意識を感じておりその為めぐみんは自分が桐生戦兎である事を誰にも話してはいない。

 

 

 

 

仮面ライダービルド

 

 

めぐみんに転生した戦兎がこの世界の設備を使い復元したもの原作のライダーシステムとは違い魔力を使って動かしているので一度使用すると魔力を充電する必要があるので多用は出来ない上にめぐみんの身体に掛かる。キードラゴンフォームの場合は特に身体に掛かる負担が大きいので使用した後は行動不能になってしまう

 

 

現在使用出来るフルボトル一覧

 

 

ラビットフルボトル

 

 

タンクフルボトル

 

 

ゴリラフルボトル

 

 

ダイヤモンドフルボトル

 

 

タカフルボトル

 

 

ガドリングフルボトル

 

 

ドラゴンフルボトル

 

 

ロックフルボトル

 

 

ゆんゆん・仮面ライダークローズ

 

 

めぐみんがこの世界で心を許す事が出来る数少ない人物のひとりである。めぐみんの常識人化により原作よりもぼっちは拗らせてはいないがチョロいのは変わっていない

 

 

そしてめぐみんとは紅魔族の感性に振り回せれている者同士で原作よりも理解者同士となっている。

 

 

そしてドラゴンフルボトルとは非常に相性が良くフルボトルを持った状態でライトニング・セイバーなどの魔法を発動させるとクローズドラゴンの形となってゆんゆんの周りに出現する

 

 

クローズに変身した状態でも魔法スキルを発動させる事ができ、魔法スキルとの組み合わせにより幅広い戦法を持っている。

 

 

ナイトローグ・????

 

 

正体も目的も全てが不明。セシリーをネビュラガスによりスマッシュ化させた。

 

 

ナイトローグが使っていたトランスシームガンもスチームブレードも本来ならばこの世界には存在しない筈の装備を一体何処で手に入れたのか?それも不明である

 

 

女神エリス

 

 

戦兎達が住んでいる世界を管理する女神であり、その世界で死亡した魂は全て彼女の元へと行き天国か転生かを選択する事となっている。

 

 

めぐみんが戦兎の転生者である事を知っており戦兎にこの世界における本来の歴史を辿らせる為にアクセルの街に旅立つ様に進言した。

 

 

因みに水の女神であるアクアとは先輩後輩の中であり良くアクアのミスの尻拭いをしている

 

 

御剣 響夜

 

 

この世界に転生してきた勇者候補のひとり

 

転生して来る際に女神アクアから魔剣グラムを授かる。めぐみんが戦兎の転生者である事は知らない

 

 

めぐみんとは1年前の紅魔の里で出会っておりその時に起きた事件により友好的な関係を築いた。

 

 

めぐみんと再会した際に手に入れたフルボトルがミツルギの運命を大きく変える事になるのはまだ誰も知らない

 

 

 




今回は設定集のみの投稿となります。

本編の再開は近い内になると思うので楽しみにしていて下さい。


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第二章この素晴らしい世界に祝福を!!
この素晴らしい転生者との出会いに祝福を!!


『てんさぁい物理学者の桐生戦兎は女神エリスの依頼により魔王を討伐する為のパーティーをメンバーを見つける為にアクセルの街へとやって来ていた』


『戦兎さん!私も遂に仮面ライダーに変身出来る様になったし私も魔王討伐を全力で手伝いますよ!』


『仮面ライダーになれたからって調子に乗るんじゃないの、これだからぼっちは』


『ぼっちって言わないで下さい!!ていうかそのネタで弄るのはもうやめませんか!?』


『何言ってんの?ちょろくてぼっちなのがゆんゆんだろ?ぼっちではなくちょろくもないゆんゆんなんてゆんゆんではない!!』


『私の価値って何なんですか!?』


『てな訳でこの天才物理学者に祝福を!!第12話のスタート!!』





俺は佐藤和真、現代世界に住む普通の男子高校だったが悲劇的な死を迎え為つい最近この世界に転生して来た。…えっ?どうして死んだのかって?そ、そそそんなのどうでもいいじゃねぇか!兎に角、この俺佐藤和真の異世界ライフがここから始まる!筈だった…

 

 

 

異世界に転生してから2週間が経ち俺達はいつもの日課である土木作業を終えると親方から1日の給料を貰うと何時もの様にこの世界にやって来た時から一緒であるアクアと酒盛りをしていた。あああ…今日も冷たいしゅわしゅわが美味いぜ…って

 

 

 

「俺達は冒険者になりにこの街やって来たんじゃねぇか!!それなのにこの2週間はずっと土木工事の仕事ばかり!いい加減にクエストをやりに行くぞ!!」

 

 

漸く当初の目的を思い出した俺は飲みかけのジョッキを机の上に置くとしゅわしゅわとカエルの唐揚げを堪能しているアクアの方を向く。そしてアクアも当初の目的を同じように忘れていたのか口にくわえていた唐揚げを皿の上に落とすと慌てた様子でカズマに詰め寄る

 

 

「ど、ど、ど、どうしようカズマさん!!私すっかり魔王退治するのを忘れてんですけど!!」

 

 

「兎に角明日からはクエストに行くからお前も準備しておけよ!」

 

 

「嫌よ!どうして私がクエストにいなきゃいけないのよ?魔王退治の事は忘れていたし、魔王を退治してもらわないと困るけどだからといって私がクエストにいく必要はないでしょ?」

 

 

コイツ…クエストに行く事を尻込みしてやがる!!

 

 

「そうかそうか、水の女神であるアクア様にはクエストなんて荷が重過ぎるよな〜。女神ならばクエストのひとつやふたつなんて軽いと思ってたんだけどなのは俺の思い違いかぁ〜」

 

 

そう言いながらニヤリ顔で俺はアクアを見る、ここ数日でアクアははっきり言って単純馬鹿である事は分かっていた

 

 

その上腐ってもアクアは女神だ。潜在能力の高さは先日騒ぎで理解していたしこんな風に持ち上げるように言えば簡単に乗ってくるのは分かり切っていた

 

 

「何ですてぇ!!そこまで言うならば分かったわ!!カズマさんにはこの水の女神であるアクア様の力をたんと見せつけてあげるから大船に乗った気で居なさいよ!!」

 

 

予想通りに俺の言葉に乗り胸を張ってそう言っているアクアの姿に俺は何故か一抹の不安を感じた。そして俺のその不安は見事に的中する事となる

 

 

 

そして次の日、俺はギルドで貸し出しされているショートソードを持ってジャイアンド・ドートを討伐しようとしたが…

 

 

「アクアー!!助けてくれぇぇ!!」

 

 

「クスクス!!カズマさんたら情け過ぎるんすけど!!笑えるんですけど!!」

 

 

アイツ…絶対後で埋めてやる!!!俺が内心そう決意していると先程の人を小馬鹿にしていた物とは正反対のアクアの悲鳴が聞こえ来た

 

 

「助けてェェェェカズマさぁぁぁぁん!!」

 

 

そう言うアクアの背後には1匹のジャイアンド・ドートがこちらに向かっていた

 

 

「馬鹿!!こっちに来るんじゃねぇ!!」

 

 

しかしアクアはそんな俺の言葉を無視して俺の元に来ようとするが…

 

 

「か、カズマ様ァァァァ!!!た、助けて!!助け…ヘップ!!!」

 

 

とうとうアクアがジャイアンド・トードにの長い舌に囚われ捕食された。ジャイアンド・トードは獲物を捕食している間は無防備になるのでそこを叩けばいいのだがもう1匹のジャイアンド・トードが俺に狙いを定めズシンズシンと近づいて来る

 

 

俺は少しでもその場から離れる為に必死に逃げるが不運にも転んでしまいしかもその時に武器も離れたところへと転がってしまった。

 

 

俺が後ろを振り返るとジャイアンド・トードはすぐそこまで迫って来ている

 

 

「も、もう駄目だー!!!」

 

 

武器も無くし打つ手がなくなった俺はもう駄目だと目を瞑る

 

 

その時、何処からかふたりの仮面の騎士が飛び蹴りをジャイアント・ドートを食らわせる。ふたりの蹴りを受けた2匹のジャイアント・ドートは攻撃に耐え切る事は出来ずに身体ごと飛散したその時に食べられていたアクアは地面にヌメヌメ塗れで転がり出て来たがそんな事気にならないぐらいに俺には驚いている事があった。

 

 

それは俺達を助けてくれたふたりの姿だ。その姿は俺の世界では特撮のヒーローであり大好きな作品だった仮面ライダーシリーズに登場する仮面ライダーそのものだったからだ。

 

 

「そこの人達怪我はないですか?」

 

 

「何とか間に合った様で良かった」

 

 

そう言って俺達を助けてくれた人達は変身を解除する。そこで俺は更に驚いたライダーに変身していたのは俺と同い年か少し年下の女の子だったからだ

 

 

俺は思わずライダーに変身していたふたりの少女に走り寄って行った

 

 

******************

 

 

 

「それって…仮面ライダービルドと仮面ライダークローズじゃねぇか!マジか!本物かよ!!」

 

 

ジャージを着ている少年は俺とゆんゆんの姿を見ながら鼻息を荒くしながらそう言っている。

 

 

「貴方は…ライダーシステムの事を知っているんですか?」

 

 

「知ってるのも何もそれって仮面ライダービルドのベルトだろ?もしかしてそれがあんたらの特典なのか?」

 

 

「??特典というのは何の事か分かりませんかそれよりも何故貴方がライダーシステムの事を知っているのか説明して下さい」

 

 

俺はその少年にそう言った。パンドラボックスにより世界が作り変えられた事でライダーシステムの存在は消え去りライダーシステムの事を知っているのはこの世界ではゆんゆんを始めとする紅魔族の人々とこの街の人間ぐらいだ

 

 

しかもこの少年は間違いなく転生者だ、何故転生者である彼が知る筈のないライダーシステムの事を知っているのか俺には知る必要があったからだ

 

 

「仮面ライダービルドってのは俺の故郷でやっていた人気番組なんだよ、確か…19作目だったか?俺も好きで毎週見てたんだよ」

 

 

「番組?…ちょっと待て!!それってどういう事だ!?」

 

 

俺はカズマに詰め寄るとそう言った

 

 

「なぁ、めぐみんって子なんか口調が変わってないか?」

 

 

「めぐみんは時々あんな風に口調が変わる時がありますけど気にしなくても大丈夫ですよ?」

 

 

カズマはゆんゆんの言葉にいいのか?と首を傾げていたが気をとりなおすと仮面ライダーについて話始めた

 

 

「仮面ライダーってのは沢山の番組が作られている人気シリーズで俺の故郷では40年以上も昔から続いているんだ。仮面ライダービルドってのは平成から始まった平成仮面ライダーシリーズの19番目の作品なんだ」

 

 

 

 

「ビルドは平成ライダーの中でもかなりお気に入りの作品だったからなストーリーはよく覚えてるぜ…話の舞台はスカイウォールによって3つに分断された日本っていう国が舞台でそこではファウストと呼ばれる組織が暗躍していてその作品の主人公とその相棒が仮面ライダービルドと仮面ライダークローズに変身して平和の為に戦うというストーリーだったんだ」

 

 

 

 

「にほん?ばんぐみ?めぐみんはカズマさんって人の言っている事が分かる?私には全然分からないんだけど…」

 

 

ゆんゆんはカズマの言っている事が理解出来ないのか首を傾げていた

 

 

「知らないって…思いっきり仮面ライダービルドと仮面ライダークローズに変身してたじゃないか、それなのに転生者じゃなくその上仮面ライダーの事を知らないって無理があるだろ?」

 

 

とりあえずカズマって少年から詳しい話を聞く必要があるなそう判断した俺はカズマに近づこうとした時

 

 

「あのう…私そろそろ街へと帰ってシャワーを浴びたいんですけど…」

 

 

いつのまにかこちらに近づいて来ていたのかヌメヌメ塗れのアクアが泣きそうな表情を見せながらそう言っていた

 

 

取り敢えずそのまま放置して置くのも気の毒だと考えた俺は街へと戻るとアクアを街の風呂屋に行かせた後アクアを待っている間に先程の話をする為にゆんゆんにギルドで待っている様に言うとカズマをあまり人目につかない場所へと連れて行く事にした

 

 

「カズマっていいましたか?申し訳ないですがちょっとだけ話を聞かせて下さい」

 

 

俺はゆんゆんにギルドで待っているように言うとカズマの襟首を掴みそのままギルドの裏へと連れて行く

 

 

「グェ…ぐ、ぐるじい…離してぐれ…」

 

 

「ふう、さっぱりしたわ…ってカズマを何処に連れて行くつもりなのよ!?」

 

 

そこに丁度アクアが風呂から出て来ており俺がカズマをギルドの裏へと連れて行くのを見ると慌てて後をついてくる。

 

 

そしてギルドの裏に到着するとカズマの襟首から手を離すとカズマは酷く咽せておりついて来たアクアがそんなカズマを介抱していた

 

 

「お前の知っているビルドの物語の事を全て教えて欲しい。内容は出来る限り正確で頼む」

 

 

「待て待て!!いきなりギルドの裏に連れて来た理由を教えてくれよ!!無理矢理連れて来ておきながら説明なしに説明しろってのはないだろ!!」

 

 

カズマはイラついた様子でそう言う、確かに何の事情も説明せずに連れて来た事は悪かったと判断した俺はカズマとアクアという少女に自分の事を説明する事にした

 

 

「信じられないかもしれないが俺の名前は桐生戦兎。パンドラボックスで新世界を作った時にこの姿になっていた」

 

 

俺はカズマに此処に至るまでの経緯を詳しく説明した、カズマはビルドの事を知っているならばこちらの事情を知れば良き協力者になってくれる可能性があるからだ

 

 

何よりももしかしたらこのふたりがエリスの言っていたパーティーメンバーになる予定の人物ではないかと本能的に感じたからだ

 

 

そして俺の話を聞き終えたカズマとアクアは信じられないと言っているような表情を浮かべていた

 

 

「って事はあんた…いや、貴方は桐生戦兎本人って事なんですか?」

 

 

「ああ、俺はお前の知っている通り俺はエボルトとの最終決戦の果てにパンドラボックスにより新しい新世界を作り出した…そして気がついた時にはこの世界に居てしかもめぐみんっていう少女の姿になっていたんだ。お前の知るテレビの中の俺はこの俺とは違う道を通ったのか?」

 

 

「テレビの中の戦兎さんはパンドラボックスによりこことは違う別に作られた新世界に行きました。その世界ではスカイフォールもパンドラボックスもライダーシステムも存在しなく死んでいった一海や幻徳といった人々も皆生きていた世界でした。しかしその世界では戦兎さんの事を覚えていませんでした…一緒にその世界に取り残された万丈意外はそしてラストは万丈と一緒に何処かへと旅立ち自分達の戦いを記録として残す為に回想を始めたところでも物語は終わりました。それが俺の知っているビルドの物語の最後です」

 

 

カズマの言っている事に嘘はない。カズマが話した内容は俺が旧世界で経験した事とおおよそ一致していたからだ

 

 

 

「俺達の戦いがフィクションの中の話か…確かに広い並行世界の中にはそんな世界もあっても可笑しくはないな…」

 

 

「俺も目の前にいるこんな子供があの桐生戦兎さんの転生した姿なんて信じられないですよ、まぁそういった話は俺のいた世界にある昔の特撮の映画とかで見た事はありましたけど」

 

 

「私も天界にいた時は長年沢山の人の魂を導いたり転生させたりしてたけど貴方みたいなケースは聞いた事がないわよ」

 

 

「アクア、あんたはどうしてカズマと一緒にこの世界に来たんだ?仮にも女神ならば天界で人々を見守ったり試練を与えたりする立場じゃないのか?」

 

 

「普通はそうなんだけどもこのヒキニートがこの私を特典なんかに選ぶからよ、全く何故女神である私がこんな目に合わないと行けないのかしら、このヒキニートには慰謝料をたっぷりと私をぐうたらさせて貰わないと気が済まないわね!」

 

 

「ハァ!?確かにお前なんかを特典として連れて来ちまった俺が悪いがそもそもの原因はお前だろうが!!」

 

 

俺はカズマからカズマがこの世界に転生して来た理由とアクアが天界から降りて来た理由を知る

 

 

カズマの死因は申し訳ないがくだらな過ぎる。もし俺がその場にいたら腹を抱えて笑ってしまうかも知れないがそれでもアクアの行動は女神としていや、人としてどうなのかと思った俺は無言でアクア頬を両手で左右に思いっきり引っ張る

 

 

「イ、イタタ!!め、女神であるこの私に何するのよ!!」

 

 

俺はそんなアクアの抗議を無視し

 

 

「一応は神の立場でありながら人の死を馬鹿にするのはどうなんだよ?」

 

 

 

「仕方ないじゃない!あんな阿呆らしい死に方をしたヒキニートが悪いのよ!!」

 

 

「反省ゼロかよ!!」

 

 

俺はそう言い終わると頬を左右に引っ張っていた両手を離す

 

 

「ううう…痛かった…」

 

 

赤くなった両頬を手で押さえながら涙目でそう言うアクアを俺とカズマは華麗に無視するとカズマは

 

 

「あの…これから俺は貴方の事を何て呼べばいいんですか?」

 

 

「普通にめぐみんでいいぞ?今の俺はめぐみんという人間なんだ。そんな畏まった口調じゃ無くてもいい、そもそも俺がめぐみんでは無い事を知っているのは今のところはお前達ふたりだけだからな皆のいる場合はめぐみんとして扱ってくれ俺もめぐみんとして振る舞うから」

 

 

「分かりました。そういう事ならばみんなの前では気安くめぐみんって呼ぶ事にしますね」

 

 

俺の言葉にカズマとアクアは頷くと話し始めてから結構な時間がたっている事に気付き慌ててギルドへと戻りギルドで待っていたゆんゆんと合流するとウィズの店へと向かう

 

 

店に到着するとウィズは丁度店を空けておりふたりにはウィズの紹介をまたの機会にする事を伝えると地下のラボへと案内した

 

 

「すげぇ…テレビの中で見た通りのラボだ!!異世界で実際に見ることになんて信じらねぇよ!!」

 

 

ラボを見たカズマの表情は子供の様に輝いており

 

 

「女神としてはあまり異世界の技術ってののを持ち込んで欲しくは無いんですど…」

 

 

それに対するアクアの表情は女神としての感覚や立場があるのか異世界の技術が存在する事に複雑な感情を抱いているようだった

 

 

「カズマ達にはそこの部屋を使って貰います。他に必要な物があったら遠慮なく言って下さい用意出来る物ならば用意させて貰いますので」

 

 

俺の言葉を聞いたカズマは心の底から驚いた表情を見せ

 

 

「マジか!!本当に俺達も住んで良いのか!?」

 

 

「元々はパーティーメンバーと一緒に住む為に作って貰った場所ですから遠慮する必要はないですよ?勿論条件はありますが」

 

 

「私の研究や実験の時には手伝って貰う事とウィズさんのお店を手伝う事です。それが守れるならば他には何をやって貰っても構いませんしウィズさんのお店を手伝ってくれたら私の方からある程度の賃金は渡します。それでどうですか?」

 

 

俺の言葉を聞いたカズマは心の底から嬉しそうな表情を見せると俺の手を握ると

 

 

「もう馬小屋暮らしにはうんざりしてたところなんだ!それで此処に暮らせるなら大歓迎だぜ!!」

 

 

カズマがそう言うとそれまでカズマの話を聞いていたゆんゆんが恐る恐る手を挙げる

 

 

「私は時々クエストを受ける時もあるのでその時にも付き合ってくれると嬉しいんですけど…」

 

 

まだカズマに慣れていないのか恥ずかしそうにそう言うゆんゆん

 

 

「それぐらいならお安い御用だぜ!!えっと…ゆんゆんっていったな、これから同じパーティーメンバーとして宜しくな!!」

 

 

 

「こちらこ此れからは同じパーティーとして宜しくお願いします。カズマさん」

 

 

「勿論だ!!あんたらがこのパーティーに入ってくれたらかなり心強いぜ!!俺とこの駄女神だけでどうしようかと悩んでいたんだよ…本当に助かる!!!」

 

そう言うとゆんゆんとカズマは強く握手を交わす。こうして俺達はエリスが言っていたパーティーを組む事となっている人物達と漸く出会う事が出来た。ここから俺達の魔王軍討伐の為の長い戦いと素晴らしくも愚かな仲間達との物語の始まりだった…

 

 



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この素晴らしい盗賊の少女に祝福を!!

 

俺はギルドの依頼を終わらせると席に座り何やら考え事をしているカズマを見つけると声を掛けた

 

 

「カズマ、何を考え込んでいるんですか?」

 

 

「おお、めぐみんか、実はなレベルが上がったから新しいスキルを覚えようと思ってるんだか、カードに覚えられるスキルが表示されていないんだ」

 

 

「冒険者がスキルを覚えるには覚えたいスキルを直接見せて貰えないといけないですよ?」

 

 

「そうなのか?じゃあめぐみんのスキルっていうか、技を見せて貰えれば俺もめぐみんと同じ力を使える様になるって訳だな」

 

 

「残念ですけどカズマが私の技を覚える事は不可能ですよ?私のはスキルとは違いますからね」

 

 

そう言うと俺はカズマに冒険者カードをカズマに見せる。そのカードのスキル欄には何も書かれてはいなかった

 

 

「やっぱ、そうだよな〜ビルドの技はスキルとは違うよなぁ〜。なぁ、めぐみん俺にも使えるスキルって何だと思う?」

 

 

「冒険者の最大のメリットは全ての職業のスキルを覚える事が出来る所にあります。まぁ、本職に比べたら習得するのにポイントが掛かりますけどね…取り敢えずはサポート系のスキルを覚えるのはどうですか?」

 

 

「サポート系のスキルか〜俺としてはカッコイイ魔法スキルとか剣術スキルを先に覚えたいんだけどな」

 

 

「気持ちはわかりますが今のカズマの実力とレベルではそういったスキルを覚えたところで宝の持ち腐れになる可能性が高いですよ?サポート系のスキルを先に覚えた方が効率は良いと私は思います。それに私達のパーティーには回復役のアクアは居ますがそういったスキルでサポートをしてくれる人間が居ないのでバランスを取る意味合いでもそうしてくれると助かりますね」

 

 

「めぐみんがそこまで言うならば暫くはサポート系のスキルを取る事を優先させるよ、でもサポート系のスキルばかりを覚えたとしても身を守る為の手段が無いのはちと不安だな」

 

 

 

「だったら私がその身を守る為のスキルを教えてあげようか?」

 

 

その声に俺とカズマが後ろを振り返ると頬に傷のあるボーイッシュな少女が其処に立っていた

 

 

「私はクリス盗賊をしてるんだ。君達はスキルを覚えたいんでしょ?私が使えるスキルを今ならば冷たいしゅわしゅわ一杯で教えてあげるけどどうする?」

 

 

「申し出は有り難いのですが何が目的ですか?いきなり現れてスキルを教えてあげると言われても信用は出来ないです」

 

 

「はは、やましい事は考えてないよ。冒険者達はね、助け合いがモットーなんだ周りに恩を売っておけば色々と役に立つでしょ?…それに君達はちょっとした有名人だからね」

 

 

「私達が?一体どうしてです?」

 

 

「君が開発したどりんぐばーとまっさーじちゃあはかなり有名だしそれ以外の発明品もこのアクセルの街においてかなり大きな活躍をしているよね?しかも君自身も最近この街に襲来した上級悪魔を倒したとされている仮面ライダーの変身者。それだけの有名人とツテが作れるならば作ろうとするのは当然じゃない?」

 

 

クリスと名乗った少女はそう言うと今度はカズマの方を向き

 

 

 

「そしてそれだけの技術力を持ちながら有名パーティーに入らずについ最近現れた駆け出しの冒険者率いる無名パーティーに入ったんだから嫌でも噂は聴こえて来るよ」

 

 

…言っている事に不審な点はない。現に今の俺は冒険者というよりも発明家や仮面ライダーとしての噂の方が強く俺に多くの発明の依頼をしてくる人物が後を絶たない(しかし兵器といった人を傷つける戦争に使う兵器などはどんなに金を積まれても絶対に作らないし依頼主に会う際にはその辺りはちゃんと説明はして断っている)

 

 

そしてカズマも無名でありながら上級職の冒険者ふたりをパーティメンバー入れているという辺りで注目されているのも事実だ(まぁ、カズマが注目されているのはそれだけではないが…)しかしこのクリスという少女に不思議な感覚はなんだ?まるで前にも何度か会った事があるような?

 

 

「スキルを教えてくれるならば大歓迎だ!しゅわしゅわの一杯ぐらいは奢るぜ!!」

 

 

そんな俺の考えを他所にカズマはクリスにしゅわしゅわを一杯奢るとクリスと共にギルドから出て行った。

 

 

 

***************

 

 

クリスと一緒にギルドを出るとすぐ近くの路地へと入ると早速教えて貰うスキルについて教えて貰う

 

 

「私が教えるのは盗賊の基本的なスキルであるスティールと潜伏だよ!!」

 

 

「潜伏の方は兎も角スティールはどんなスキルなんだよ?それに教えて貰うにしても今の俺のスキルポイントで覚えられるのか?」

 

 

「それに関しては心配ないよこのふたつのスキルを覚えるにはスキルポイントは殆ど掛からないし特にスティールはランダムに相手の持ち物を一つを奪うスキルだから戦闘スキルをまだ覚えていない冒険者の君にはうってつけのスキルじゃないかな?」

 

 

「へぇ、中々に使えそうなスキルだな。良し早速そのスキルを教えてくれ!!」

 

 

「冒険者がそのスキルを覚えるには覚えたいスキルを一度見せて貰わないと行けないんだ。だから私が今から君にスキルを実践してみせるからその後冒険者カードを見てみればスキルの欄に追加されてる筈だよ」

 

 

そう言うとクリスの姿が俺の目の前から消えると直ぐに後ろから肩を叩かれ振り返るとクリスがしたり顔で其処に居た

 

 

「これが潜伏スキルさ!!自分の姿を消す事でモンスターの目を欺いたり無駄な戦闘を避けたりする時に使うしダンジョンでも色々と重宝するスキルだよ」

 

 

潜伏スキルについての説明を終えたクリスが右手を俺に向けると

 

 

「そしてこれが君に教えるふたつ目のスキル…スティールだよ!!『スティール』!!」

 

 

クリスがそう叫んだ後彼女の右手が光輝き俺はその光に目が眩むそして光が収まった後クリスが右手を開くとそこには俺のサイフが握られていた

 

 

「それ俺のサイフ!!」

 

 

「スティールはランダムに相手の持ち物を奪う事の出来るスキルなんだしかも幸運値が高ければ高いほどレアなアイテムを奪う事が出来るのさ!」

 

 

俺にふたつのスキルを披露したクリスは自分の冒険者カードを見せると

 

 

「これで君のスキル欄に今私が見せたスキルが登録されてる筈だよ、後はそのスキルを指でなぞって登録すればスティールも潜伏も君のスキルさ!!」

 

 

クリスに言われた通りにスキル欄には先程見たスティールと潜伏が登録されており俺はスキル欄を指でなぞりクリスが言う通りに冒険者カードに登録する。

 

 

すると自分の中にふたつのスキルが力として宿ったのを感じた

 

 

「良し!!これで俺にもさっきのスキルを使えるようになった訳だな!!」

 

 

俺はワクワクしながら自分の冒険者カードを見つめていると

 

 

「折角だから覚えたばかりのスキルを試して見る気はない?」

 

 

クリスは俺のサイフを手にした状態でニヤニヤしながらそう言うと

 

 

「君が今から私にスティールを掛けて君のサイフを取り戻すというのはどうかな?もし君がサイフを取り戻さなかったら私の勝ちで君のサイフは賞品として貰っていくよ」

 

 

「ふざけんな!その勝負じゃ俺にメリットなんてないじゃないか!!」

 

 

「メリットはあるよ?君の幸運値が高ければ逆に私のサイフを奪う事が出来るししかも私が持ってるこのタガーは30万エリスはくだらないよ?つまり君にもちゃんとメリットはあるって訳さ」

 

 

確かにそう言われると俺にもメリットがあるなそう判断すると

 

 

「良し、分かった。その勝負乗ったぜ!!こう見えても一応は幸運値の高さには自信があるんでね」

 

 

「そうこなくちゃ!!因みに残念賞はその辺りに落ちていた小石だよ!」

 

 

クリスはそう言うとポケットのなから石ころを数個取り出した

 

 

「汚ねぇそんなんありかよ!?」

 

 

「私がスティールの対策法を考えていないと思ったのかな?冒険者はね盗賊相手に勝負する時は武器や貴重品を奪われない様に小石や奪われてもいい小銭が入った袋を身につけているものだよ?これで勉強になったでしょ?」

 

 

そう言うクリスの表情はムカつくぐらいの良い笑顔だった

 

 

(確かに自分の使ってるスキルの対策を考えていない奴なんて居ないし冒険者の世界ってのは基本的には弱肉強食で騙された方が悪い。ここは俺が今まで暮らして来た平和な日本じゃないんだ!!なら冒険者のルールに則ってやってやるよ!!)

 

 

俺はそう決意するとドヤ顔で立っているクリスに向かって右手を伸ばし

 

 

『スティール!!』

 

 

俺の手から光が溢れその光が収まると何かを握りしめている感覚を右手から感じ右手をゆっくりと開くとそこにあったのは

 

 

 

「当たりも当たり、大当たりだぁ!!!」

 

 

そう、俺の手に握られていたのは真っ白な女性物の下着…そう俺はスティールでクリスのパンツを奪ったのだ

 

 

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!パンツ返してぇぇぇ!!」

 

 

 

クリスは涙目で俺にパンツを返してと言って来るがそんな事に耳を貸さずに俺はパンツを手に振り回していると背後からとてもとても痛い視線を感じ後ろを振り返ると其処には汚物を見るような目で此方を見ているゆんゆんの姿があった

 

 

「ち、違うんだ、ゆんゆん。取り敢えず俺の話を聞いてはくれないか?」

 

 

これは不味いと感じた俺はゆんゆんに事の説明をしようとするが…

 

 

「カズマさんがまさかこんな最低な変態男だったなんて…」

 

 

俺が一歩近づく度にゆんゆんが俺から一歩離れていきそして

 

 

「カズマさんのケダモノ〜〜〜!!!」

 

 

大声で泣きながらギルドへ泣きながら走って行くゆんゆん

 

 

「待ってくれゆんゆん!!話を…俺の話を聞いてくれぇぇぇぇ!!!」

 

 

俺はそう叫びながらゆんゆんの後を追ったのだった

 

 

*********

 

 

「事情は分かりましたけど…普通にそれ事案物ですよ?いつかカズマが本当に逮捕されないか心配です」

 

 

泣きながらギルドまで走って来たゆんゆんから話を聞いためぐみんは呆れた表情で俺を見るとそう言う

 

 

「本当に申し訳ありません…」

 

 

めぐみんの最も過ぎる言葉を受けた俺は深く深く土下座をする。何であの時の俺はあんな事をしてしまったのだろう?そんな事を考えていると

 

 

「それにしてもランダムにアイテムを奪うスキルですか…カズマ、私にそのスキルを掛けてくれませんか?」

 

 

「えっ良いのか?俺が言うのもアレだか今の騒ぎ聞いてなかったのかよ」

 

 

ゆんゆんから話を聞いた上でスティールをかけて欲しいと言ってくる戦、めぐみんに俺は困惑していると

 

 

「このままだとカズマはパンツ脱がせ魔の汚名を背負ってしまう事になります。ここは名誉挽回のつもりで私でスティールを成功させた方が良いと思いますよ?」

 

 

俺はめぐみんに名誉挽回のチャンス与えられた事に気付き其れに感謝しながら立ち上がると

 

 

「あ、ああ、分かったよ。いくぜ!!名誉挽回の『スティール』!!」

 

 

そう言うと再び俺の右手が輝きそして光が収まった後右手を開くと右手の中にあったのは…

 

 

「あ、あれ?可笑しいな、スティールって確かランダムでアイテムを奪うスキルだって聞いてたんだか?」

 

 

俺の右手に握られている…めぐみんの下着に困惑していると

 

 

「ふむ。履いていた下着がいつのまにかカズマの手の中に…一体どういう法則が働いてそうなっているのか是非とも知りたいな…」

 

 

スティールでパンツを取られたにも関わらずめぐみんは冷静に状況を分析した後俺に手を差し出すと

 

 

「取り敢えず下着を返してくれ流石の俺もそのままは恥ずかしい」

 

 

そう言っているめぐみんの顔は多少は赤くなっており周りの冒険者(主に女性の)目線が先程のゆんゆん以上の冷たい視線を感じた

 

 

「ち、違う!!これは事故だ!!俺は悪くねぇぇぇ!!」

 

 

俺は頭を抱えた状態でそう叫ぶが周りの女性冒険者の性犯罪者を見る目は変わらなくその事実に俺が泣きそうになっていると

 

 

「お前か先程私の友人から下着を奪った男というのは」

 

 

凛々しい女性の声が響き俺は声が聞こえた方向を見ると其処には鎧を着た金髪の女騎士がいた

 

 

(おお、ゲームやライトノベルでよく見る女騎士そのものだ…しかもかなりの美人!!)

 

 

俺が鼻を伸ばした状態でいるとその女騎士は俺に近づくと

 

 

「貴様だな私の友人であるクリスからパンツを奪った挙句振り回したい男というのは」

 

 

どうやら彼女は先程俺がパンツを奪ってしまい泣かせてしまったクリスの友人らしい…ってこの状況もしかしなくてもヤバくね?

 

 

「誤解が無いように言っておくが、あれは不可抗力の事故みたいな物だ!!そもそも最初に勝負を仕掛けて来たのはクリスの方だぞ!!」

 

 

俺は必死で女騎士に弁明を図るが女騎士の歩みは止まる事は無くそのまま俺の元に来ると

 

 

「頼む!!私にもその辱めを受けさせて欲しい!!クリスも一緒に頼んでくれ…ってクリス?あいつ何処いったんだ?」

 

 

「…はぁ?」

 

 

俺は思わず自分の耳を疑った俺の聞き間違いでは無いならば今自分もクリスと同じ目にあいたいと言った事になる

 

 

「幼気な少女からパンツを無理矢理脱がすという外道なマネなんと羨ま…けしからん!!」

 

 

「今、羨ましいって言わなかったか?」

 

 

「言ってない」

 

 

間違いないコイツはアレだ。関わったら駄目なタイプの奴だ

 

 

「め、めぐみん、ゆんゆん。た、助けてくれ…って居ねぇ!!」

 

 

いつの間にかパーティメンバーである筈のゆんゆんとめぐみんの姿は消えていた

 

 

「アイツら逃げやがった!!」

 

 

「私に早くクリスと同じ辱しめを!!さぁ、さぁ!!」

 

 

「いくら美人でもねこんな訳のわかんねぇ奴に絡まれるてたまるか!!問題児はアクアだけで充分なんだよ!!」

 

 

俺は叫ぶと野次馬である冒険者達を払いのけて外へと飛び出す

 

 

「あああ!?待ってくれ!!私にも先程の幼気な少女に合わせたのと同じ辱めを受けさせてくれぇぇ!!」

 

 

名前も知らない女騎士はそんな俺の後を追ってギルドかは飛び出した

 

 

*************

 

 

 

 

「おのれ…あの男の人何処に行った?」

 

 

例の男を見失った事を嘆いていると背後に何者かが降り立つ気配を感じ思わず後ろを振り返ろうとした時、後頭部に衝撃を感じるとそのまま私は意識を失った

 

 

 

 

 

 

「此処は一体何処だ…一体何が起きた?」

 

 

私はぼんやりとする意識で辺りを見渡す為に身体を起こそうとした時自分の身体が拘束されている事に気がついた

 

 

「気がついたかな?私の大切なモルモットよ」

 

 

「貴様は一体何者だ?こんな事をしてタダで済むと思っているのか?」

 

 

何時もならば興奮のひとつやふたつをして更なる辱めを受けようとするが今回ばかりはそんな気にはなれなかった。

 

 

このコウモリ男は不味い奴だ。私は本能的にそう感じていた

 

 

「なぁに、今回は君には私の計画に是非とも協力をして貰いたいんだ…最も君には断るという選択肢はないがね」

 

 

コウモリ男が指を鳴らすと音を立てながらひとつの椅子がレーンに乗って暗闇から現る

 

 

「クリス!!」

 

 

その椅子には私の大切な友人であるクリスが意識を失った状態で鎖に縛られていた

 

 

「この盗賊の娘と貴様が友人関係である事は調べがついている。この娘の命を助る為の答えは知っているだろう?」

 

 

コウモリ男が指を鳴らすと気を失ったクリスが縛られた状態で再び暗闇へと消えて行く

 

 

「さて、これで私の計画に協力してくれるかな?勇敢なる女騎士ダクネスいやダスティネス・フォード・ララティーナ嬢?」

 

 

「何故、その名前を…その名を知っている人物は限られている筈…」

 

 

「貴様の質問は聞いてはいない、黙って私に協力をしているだけで良い」

 

 

「ふざけるな!!貴様に協力なんかするものか!!私の大切な友人であるクリスに一体をした!!」

 

 

コウモリ男はそんな私の言葉に耳を傾ける事はなく近くにあった不思議な機械のレバーを引くと何処からか何からしらの薬品が含まれているだろうガスが私が閉じ込められている透明な箱の中に流れ込んでくる。

 

 

私は足掻いて脱出しようとするが箱を破壊する事は叶わずにガスが箱の中に充満して行く内に力が抜けそして意識が遠のいていく…

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そして私の意識は其処で途切れてしまった…

 

 

*******************

 

 

 

 

そんな叫びと共にダクネスの姿はスマッシュへと変貌する。

 

 

スマッシュへと変貌したダクネスをナイトローグは満足気にうなずいていると

 

 

『ダクネスをスマッシュ化させて一体何を企んでいる?』

 

 

ナイトローグと同じように加工された男の声でコブラ男がクリスが消えた暗闇から姿を現わすとナイトローグにそう問いかける

 

 

『これも俺達の計画に必要なプロセスさ、ビルドには1日でも早く全盛期の力を取り戻して貰わないとならない。そして仮面ライダーに覚醒したゆんゆん、女神アクアと共にこの世界に転生して来た佐藤和真、そして桐生戦兎からフルボトルを託された御剣 響夜…彼らも同じようにある程度までは成長して貰わないと困る俺達の計画を次の段階へと移行させる為にもな』

 

 

『ふん、お前は俺が知っている『前の』ナイトローグよりもエゲツない手を使うよな。何せこのダクネスという女騎士は…』

 

 

コブラ男が言い終わる前にナイトローグはトランスチームガンをコブラ男の喉元へと突き付ける

 

 

『お互い余計な詮索はナシだ。『ブラッドスターク』この装備と力をくれた事は感謝しているが俺達の立場はイーブンだって事を忘れるなよ?それにお前だって人の事は言えないだろうが』

 

 

『ちょっとだけ揶揄っただけさ。本気にするなよ、さて、俺は次の手を打ちに行こうとしようかねぇ?』

 

 

そう言ってその場から立ち去ろうとするブラッドスタークをナイトローグは呼び止める

 

 

『ブラッドスターク…お前は一体何を企んでいる?….お前は何がしたいんだ?』

 

 

そういうナイトローグの表情は仮面に覆われているので分からなかったが先程と違いブラッドスタークに対するある種の不安と不信感が滲んでいた

 

 

『俺は唯のゲームマスターだよ。最高の舞台で望んだ通りのシナリオでゲームを進めるだけのな』

 

 

そう言うとブラッドスタークは暗闇の中に消えて行く。そして残ったナイトローグはスマッシュと化したダクネスの元に行くとトランスチームガンで自分ごと煙幕で覆うとその場から姿を消し誰も居なくなった場には静寂しか残らなかった...



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この動きだした陰謀に祝福を!!

次の日俺と戦兎さんはギルドの食堂で朝食を取っていた

 

 

「それにしても酷いですよ戦兎さん!俺を置いて逃げちゃうなんて」

 

 

「悪かったって俺も何だかあの騎士には本能的にヤバイ奴だと感じたしこうしてお詫びとして食事を奢る事にしたんだろ」

 

 

あの後俺は変態女騎士から路地裏といった小道を利用して何とか逃げ果せて来たのだ。そして自分を見捨て一足先にウィズの店に帰っていた戦兎さんとゆんゆんに恨み言をたっぷりと言っていると流石の戦兎さんも悪いと感じたのかこうしてギルドで食事を奢って貰う事になったのだ

 

 

「しかし戦兎さんの発明品のおかげで異世界でもコーラが飲めるなんて本当にありがたいですよ」

 

 

戦兎さんの発明品であるドリンクバーにはコーラといった俺の居た現代ではお馴染みのジュースが入れられておりと同じ様に飲めるのは本当に有り難かった。

 

 

現代世界で生きていた時に良く読んでいたライトノベルでは主人公は普通に異世界の食事文化に馴染んでいたが実際に自分が同じ立場に置かれると普段から当たり前にあった馴染みのある物が無くなるというのは精神ストレスが以外と大きく何時も物足りなさを感じていたのだ

 

 

「カズマの言う通り此処は俺達が住んでいた現代社会から見れば不便で仕方はないがこの世界に来て良かったと思える事が一つだけある」

 

 

戦兎さんはそう言いながら大皿に乗っているサラダから逃げ出そうとしているミニトマトを素早く持っていたフォークではたき落とすと素早くそのフォークで刺し近くに置いてある小皿に入っているドレッシングに浸すとそのまま口に入れた

 

 

「この世界の野菜は無茶苦茶美味い。前の世界に居た時は余り野菜を食べなかったがここに来てからは良く食べるようになったな」

 

 

戦兎さんの言う通り確かにこの世界の野菜は滅茶苦茶美味い…美味いんだが…

 

 

俺はコップに入っていた野菜スティックを取ろうとするが野菜スティックは俺の手をかわす。気を取り直した俺が今度はサラダにドレッシングをかけようとするとサラダは皿ごと空を飛んで逃げようとし…

 

 

「何で野菜が生きて動いてんだよ!!何でドレッシングをかけると暴れるんだよ!!舐めてんじゃねぇぇぇ!!!」

 

 

俺は持って居たフォークを地面へと思いっきり叩き付けた

 

 

「いきなりキレるなよカズマ、それともアレか?最近噂のキレやすい若者かよ?」

 

 

「戦兎さんも何普通に受け入れてんだよ!!可笑しいと思ってんのは俺だけか!?」

 

 

俺は両手で頭を抱えてテーブルに突っ伏しているとギルド内から緊急放送が流れてきた

 

 

「緊急!緊急!冒険者の皆さんは至急アクセルの街入り口に集合して下さい!」

 

 

その放送を聞いた冒険者達は急いで街の入り口へと向かって行く

 

 

「戦兎さん今の放送は?」

 

 

「分からないもしかしたら何が緊急事態かもしれない急ぐぞ!」

 

 

俺と戦兎さんは頷き合うと冒険者達から遅れてギルドから出て行く

 

 

遅れること数分俺と戦兎さんが街の入り口に到着すると先に到着していた冒険者達でごった返しており俺達が何とか人の波を掻き分けて行くと同じく放送を聴いていたのかゆんゆんとアクアが先に到着しており俺達の到着を待っていた

 

 

「来たわねカズマにめぐみん。とうとうこの日が来たわよ!」

 

 

「ふふふ、腕がなるわね!!」

 

 

どうやらふたりともこの騒動の原因を知っているらしく俺は意を決してふたりにこの騒動の原因を聞いた

 

 

「ふたりともこの騒動の原因は一体何なんだ?もしかしてモンスターの襲撃なのか?」

 

 

「何言ってるのよカズマ?今日は年に一度の一大イベント…キャベツ狩りよ!!」

 

 

「…キャベツ狩り?…キャベツってのはアレだよな?緑色でみずみずしいあのキャベツだよな?」

 

 

俺は脳裏に嫌な予感が浮かんだがそれから目をそらすかのようにアクアに問いかけるが…

 

 

「カズマこの世界のキャベツは空を飛ぶのよ、毎年この時期になると栄養を蓄えた美味しいキャベツは人に食べられないように新天地へと旅立つのそして見知らぬ何処かの遠い土地に辿り着くと人知れずにひっそりと朽ちていくのよ」

 

 

「ていうかキャベツが飛ぶのは常識なのにそれを知らないカズマさんは一体どんな田舎に住んでたの?」

 

 

地球では野菜は飛ばないしサンマも畑で採れたりはしないんだよ!!そうツッコミたくなった時めぐみんが俺の肩にふれ

 

 

「カズマ、諦めて下さい。私もその気持ちは2年前に味わいました…この世界で生きて行く以上はこの世界の常識に慣れていく事が一番なんですよ」

 

 

そんなめぐみんの先輩としての言葉はとても重く彼女が慣れるまでどんな苦労をして来たかよく分かった…さっきのめぐみんに対する暴言は撤回しよう。俺は内心そう決めた

 

 

「そう言えばめぐみんも記憶が混乱していた頃キャベツが飛ぶ事を知った後しばらくは寝込んでわね。その時は本当に心配したのよこんな当たり前のことも忘れちゃったんだから」

 

 

そんな事を言っているゆんゆんはめぐみんの事を心の底から心配しているのが分かった

 

 

「皆さん!!今年のキャベツは大変出来が良く一個一万エリスで買い取らせて頂きます!!なので多くのキャベツの捕獲をお願い致します!!」

 

 

ルナがメガホン(めぐみんの発明品のひとつ)で周りにそう説明すると周りの冒険者達の歓声が一際大きくなる。

 

 

…正直言って今すぐに帰って寝たいところだがテンションの高いアクアとゆんゆんを放って置く事は出来ずに大人しくキャベツ狩りに参加する事にした。めぐみんも同じなのかため息を吐くとカイゾクハッシャーを取り出して其れを俺に渡して来た

 

 

「カズマ、キャベツ狩りにはコイツを使って下さい。カズマが持っているスキルでは心許ないのでこういった遠距離用の武器があれば多少はまともに動ける筈です」

 

 

「うぉぉぉ!!これが本物のカイゾクハッシャーか!!遠慮なく使わせて貰うけどホントに良いんだな!!」

 

 

「構いませんよ私には新しく開発した武器があるので」

 

 

そう言ってめぐみんが取り出したのは仮面ライダービルドではお馴染みのメイン武器であるドリルクラッシャーだった

 

 

「漸くドリルクラッシャーの復元に成功したので今回はその試運転です。まぁその相手がキャベツというのは少し切ないですが…」

 

 

「来るわよ!!めぐみん、カズマさん!」

 

 

ゆんゆんの言葉と共に地平線から緑の大群…キャベツの大群がやって来る

 

 

「「「キャベツ狩りだァァァァ!!」」」

 

 

という冒険者達の叫び声と

 

 

「マヨネーズ持ってこ〜い!!」

 

 

そんなアクアの叫びと共にキャベツ狩りが始まった

 

 

クエスト開始!!(アクセルの街に飛来するキャベツをゲットしろ!!)

 

 

「金だ金だ金だ金だァァァァ!!」

 

 

「ヒャャャャハァァァ!!!」

 

 

血走った目で冒険者達は我先にとキャベツの群へと向かっていき持っていた武器でキャベツを次々と仕留めて行く

 

 

「狙撃!狙撃!狙撃!」

 

 

そんな中俺はめぐみんからカイゾクハッシャーを借りた後アーチャーから狙撃スキルを教えて貰い(スキルを教えて貰う条件として後でしゅわしゅわ一杯奢る約束をした)キャベツを淡々と撃ち落としていく

 

 

因みに狙撃スキルは幸運値が高い程命中率が上がるので幸運値の高い俺にはうってつけのスキルなのだ。

 

 

「続いて…『スティール』!!」

 

 

そしてスティールでキャベツの羽を奪うと地面に転がっているキャベツを次々と回収して行く

 

 

「『ライトオブセイバー』!!』

 

 

ゆんゆんの魔法が飛んでいるキャベツ達を撃ち落とし

 

 

『ゴリラ』

 

 

「うりゃ!そりゃあ!!」

 

 

めぐみんがドリルクラッシャーのブレードモードの状態でソケットにゴリラフルボトルを装填する事で拳型のエネルギーをドリルクラッシャーに纏わせてキャベツ達をまとめて叩き落として行く

 

 

「数が多過ぎます!ここはこれで一網打尽にしましょう!」

 

 

そう言うとめぐみんはビルドドライバーを腰に取り付けるどうやらまとめてキャベツ達を捕らえるつもりらしい

 

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ! 』

 

 

 

「アクア!!敵を呼び寄せる魔法を使って下さい!!」

 

 

「はぁ?何でそんな事をしなきゃいけないのよ!?」

 

 

「じゃあ良い事教えてやるよ!!アクアお前が手に入れたキャベツは全部レタスだ!!つまりはキャベツよりは金にならない!!でも此処で俺に協力をすれば損した分は取り戻せるぞ」

 

 

「嘘言って私を騙そうたってそうはいかないわよ!嘘をつくならもうちょっとまともな嘘しなさいよ!!」

 

 

「そうか、なら後で後悔すると良いさ。鳴いても喚いても助けてあげないからな!」

 

 

「わ、分かったわよ!やれば良いんでしょ!やれば!!」

 

 

アクアはめぐみんの圧に屈したのか大人しく言う事を聞く

 

 

…今後何があった場合はめぐみんにアクアの事は任せようかな?そんな事を内心考えている間にアクアは敵を呼び寄せる魔法を使う

 

 

「『ホルスファイヤ』!!」

 

 

空に花火らしき物が打ち上がるとキャベツ達はアクアの居た地点に向かって集まって行く

 

 

「良くやったアクア!!」

 

 

めぐみんはそう言うとアクアを抱えて高くジャンプをしアクアの居た地点にキャベツが充分集まったのを確認するとベルトのボルテックレバーを回してキャベツの群れに『ボルテックフィニッシュ』を決め狙い通りにキャベツ達を一網打尽にする事に成功する

 

 

こうして今年のキャベツ狩りは大成功で終了したのだった

 

 

クエスト終了!!(キャベツ大豊作!!)

 

 

**********

 

 

「何でだよ…何で只のキャベツ炒めがこんなに美味いんだ…納得出来ねぇ」

 

 

カズマは心底納得出来ないという表情を浮かべながらキャベツ炒めを食べておりアクセルはキャベツ炒めを肴にしゅわしゅわを飲んでおりゆんゆんはロールキャベツ(こちらにロールキャベツがあったのは驚いた)を美味しそうに食べていた

 

 

「めぐみん!貴女が沢山キャベツを取れたのはこの私のサポートがあったおかげなんだからちゃんと取り分を寄越しなさいよね!」

 

 

「分かってますよ約束通り損した分はちゃんと渡すので安心して下さい」

 

 

アクアは俺の話を聞いて心底嬉しそうな笑みを浮かべると近くに居たウェイトレスに追加注文もして行く

 

 

「めぐみんアクアを余り甘やかさない方が良いぜ?アイツは直ぐに調子にのるからな」

 

 

カズマは小声でそう俺に話しかけてくる

 

 

「一応はこちらの頼み通りに動いてくれましたし働いてくれた分はちゃんと返してあげないと可哀想ですよ。…後で女神の魔力は研究の為頂きますが」

 

 

俺の言葉に一応は納得したのかカズマはそれ以上言う事は無くしゅわしゅわを一気飲みした後他の冒険者達の騒ぎにアクアと混ざり一緒に騒ぎ始めた

 

 

個人的には酒は嗜む程度にしか飲まない上に余り騒ぐのも好きではない俺は早めに宴会を切り上げるともう少し食べていくというゆんゆんをギルドに残してウィズの店に一足先に帰る事にするとお土産にキャベツ料理をいくつかテイクアウトするとウィズの店へと向かう

 

 

そしてギルドからウィズの店に到着すると店番をしていたウィズにお土産であるキャベツ料理を渡した後地下のラボへと向かうとキャベツ狩りの際にキャベツと冒険者達の魔法から回収して置いたエンプティボトルを浄化装置にセットした後パソコンを立ち上げてドリルクラッシャー以外に最近復元を開始したとあるベルトの図面を開いた

 

 

 

*******

 

 

ここはアクセルの街から遠く離れた土地にある古びた城、昔はとある王族か貴族かが使っていた別荘のひとつらしかったが今は誰にも使われずに朽ちていた。しかしとあるアンデットがつい先日この城へと移住してきたらしいそのアンデットの名前はベルディア…魔王軍幹部のひとりだ

 

 

そしてそのベルディアが王都ではなくこんな辺境の地にきたのにはある理由があった

 

 

「魔王様からの命令でこんな辺境の地に来たのはいいが本当にこんな場所にいるのか?魔王様が警戒を抱くほどの力を持っただ人間が」

 

 

そうベルディアがこの地にやって来たのはアクセルの街にて降りて来た巨大な光の調査の為だったのだ。

 

 

魔王様曰くとんでもなく強い聖なる力を感じたという事だが俺にはイマイチ信じる事が出来ずに寧ろ最近アクセルの街に現れ上級悪魔を倒したとされる仮面ライダーと呼ばれる戦士の方に興味があった

 

 

そんな事を考えながら王の間にひとり座っている俺は壁にかけてある赤いパネルを手に持っている頭で見つめた

 

 

「それにしても魔王様から預かったこの赤いパネルは一体なんなのだ?噂によると王都にもこのパネルがあるというし俺以外の幹部にもパネルを受け取ったらしいが…」

 

 

 

このパネルはこちらに任務で来る前に魔王様から直接預かった物だ。魔王様によると他にも何枚かパネルは存在しており全てのパネルが集まった時とてつもない力が生まれるらしいが…

 

 

「如何にも胡散臭い話だ。魔王様には悪いが俺はそんな物には興味はない騎士たる者己の力で強さを力を手に入れる物だ」

 

 

ベルディアはアンデット…デュラハンとなる前はとある王国に仕えているひとりの騎士だったが彼の功績を妬んだ者達によって覚えのない罪に問われギロチンの刑にされた過去があったのだ。

 

 

その時の無念により彼はアンデットとして蘇り自分を嵌めた人間達には復讐を果たしたがそれでも彼は騎士道精神を捨ててはいなくそんな未知の力を使うよりも己の力で強さを手に入れる事を望んでいるのだ

 

 

「騎士道精神って奴かねぇ…そんなモン持ってた何処で何の意味もねぇてのによぉ」

 

 

「ッ!!誰だ!?」

 

 

ベルディアが椅子から立ち上がり声のした方向を見ると先程まではいなかった筈の柱の影にひとりの男が立っていた

 

 

「俺の名はブラッドスターク。あんたは魔王軍幹部のベルディアだろ?ちょいと俺の計画に協力をしてくれないか?」

 

 

「ふざけた事を言うな!!第一貴様いつの間に侵入した!いつからそこにはいたのだ!?私の部下が沢山居た筈だぞ?」

 

 

「あんな雑魚がいくら居ようが俺の相手にはならねぇよ。それで俺に協力をしてくれるのか?」

 

 

「貴様の様な得体の知れない奴の力など借りんわ!!」

 

 

ベルディアは大剣を抜くと素早く間合いを詰め大剣をブラッドスタークに振り下ろそうとするが…

 

 

「酷いねぇ俺は平和的に話し合いをしに来ただけだってのによぉ」

 

 

ブラッドスタークはベルディアの攻撃をスチームブレードで受け止めていたのだ

 

 

「馬鹿な!俺の剣を受け止めただと!?」

 

 

狼狽えているベルディアの胴体にブラッドスタークは素早くトランスチームガンを押し付けるとゼロ距離射撃を食らわせる

 

 

流石のベルディアも此れには堪らず地を転がりブラッドスタークはそんなベルディアに歩いて近づくと手にしていたボトルをベルディアの中に植え付けた

 

 

ボトルを植え付けられたベルディアはその場にうずくまり苦悶の声を上げているがそれも直ぐに収まると先程とは比べ物にならないオーラを纏った状態で立ち上がった

 

 

ブラッドスタークはその様子に満足気に頷いた後何時ものようにトランスチームガンで煙幕を貼り姿を消す

 

 

「凄い…凄いぞ!!この力は!!この力があればもう恐る物などないわ!!」

 

 

ひとり残ったベルディアは大剣を掲げながらそう叫んだ後生き残っていた配下のアンデット達を集めて当初の予定通りに強い光が降りてきたと報告を受けたアクセルの街へと調査へと向かう

 

 

そしてその手に赤いパネルが握られていた…ここから本来カズマ達が辿る筈だった歴史とは少しずつだが確実に隔離が始まって行くのだった。

 




カズマはめぐみんとふたりきりの時はめぐみんの要望通りに戦兎として接しアクアやゆんゆんがいる場合はめぐみんとして扱っています。


其れを差別する為に意図的に地の分では戦兎とめぐみんを使い分けています分かりづらかったらば申し訳ありません。


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この再会した魔剣の勇者に祝福を!!

 

キャベツ狩りのイベントから2日経った俺は復元しようとしていたベルトの作業が思うように進んでいなくイラついていた

 

 

「クソ、また失敗か…どうしてもこのベルトを稼働させる為の魔力回路と稼働させるだけの魔力が溜められない…どうすればいいんだ」

 

 

俺は色々な設備に繋がれている台の上に乗せられているレバーのついた青いベルトを見つめながら唸っているとボトル浄化装置からボトルの浄化の終わりを知らせるアラームが聞こえて来た

 

 

「漸く終わったか…さて、今回のボトルは何かな?」

 

 

そう言いながら浄化の終わったボトルを取り出してそのボトルを見る

 

 

「このボトルは…」

 

 

そのボトルを見た俺は息を飲んだそのボトルはかつて俺と一緒に戦いそして最後は仲間の為に世界の為に心火を燃やして命が散る瞬間まで戦い続けたある男が使っていたボトルだった

 

 

「これは何かの巡り合わせなのか?」

 

 

俺があるベルトの復元を始めたのと同時にこのボトルが生成されたのを考えると思わずそう考えてしまった

 

 

「気分転換に外でも出るか…」

 

 

上手く行かない事に疲れているのか色々と暗い事を考えてしまう。俺はそんな暗い考えを振り払う為に2日ぶりにウィズの店に出て来るとウィズと商人の男性が会話をしているのを見つけた

 

 

「ウィズさん商談中ですか?」

 

 

「はい!実はこの方は王家からお客様でウチの商品の噂を聞いてわざわざやって来てくれたそうなんですよ!」

 

 

王族からの客?何故そんなところから客が来たんだ?そう俺が不審に思っているとその男は

 

 

「貴女がめぐみん様ですね?貴女の噂は我が王家の耳にも届いていますよ貴女の発明品は大変素晴らしく我が国において絶大な支持を受けていると」

 

 

「御託は良いからさっさと本来の目的を言ってくれないか?悪いがあんたみたいな人間はこの2年の間に沢山いたんでね…俺が単なる小娘だと思って良いように利用しようとする輩はな」

 

 

「ほう…どうやら噂通り単なる小娘ではないようですな」

 

 

そう言うと王家からの客は紳士的な雰囲気を消すとこちらを見下した表情で本来の目的を話し始めた

 

 

「貴女が開発しているライダーシステムを我々に提供して頂きたいあんな素晴らしいシステムをこんな辺境の街で埋もれさせて良いものでは無い」

 

 

「やはりあんたらの目的は俺が開発したライダーシステムだったんだな」

 

 

「貴女方にも知っての通り現在我々は魔王軍と熾烈な戦いを繰り広げておりその戦況は拮抗している。しかし貴女方がライダーシステムを提供してくれればこの戦況をひっくり返す事が出来る大人しく提供してくれればその分報酬も弾みますし貴女方にも悪い話ではない筈だ。何よりもこれはアイリス様のご意思でもあります」

 

 

アイリス?それは確かエリスが言っていた…

 

 

「その通りこの提案を蹴る事は私を王家を敵に回すのと同じです。その意味はいくら馬鹿でも分かりますよね?」

 

 

そう言ってひとりの金髪の少女が配下である金髪の女騎士と共に店へと入ってくるその高貴なオーラで彼女が先程の話に出ていたアイリス王女だというのが分かった

 

 

「魔王軍との戦いではライダーシステムの力が絶対的に必要なのですこれは大変名誉な事なのですよ?下々のものが我が国の力になれるのです其れを断るおつもりですか?」

 

 

「当たり前だ悪いが俺達は誰か手先となって戦うつもりはない何よりもいきなりやって来た上から目線でそんな事を言ってくる奴を信頼するつもりはない」

 

 

「め、めぐみんさん!」

 

 

ウィズが俺の言葉に真っ青になって慌てた

 

 

「俺達のライダーシステムはこの世界を魔王軍と戦う為のものだ力を履き違えているあんたに協力なんかしない世間を知らないお嬢さんは大人しく城にでもこもっているのがお似合いだ」

 

 

俺の言葉にアイリスは顔を真っ赤にして詰め寄ろうとするが近くに居た女騎士に制止されるとため息を吐きこれ以上の議論が無駄だと判断したのか踵を返して店から出て行こうとするその途中で俺の方向を向くと

 

 

「この私を王家を敵に回して無事で済むと思いませんように」

 

 

アイリスは俺に敵意に満ちた目でそう言うと配下の女騎士を連れて店から出て行くその姿を見て俺はエリスから聞いていたとある事を思い出しているとウィズがこちらを不安そうに見つめていた

 

 

「すいません…色々と不安にさせてしまってでもこのボーダーラインだけは絶対に譲れないんです」

 

 

「いえ、気にしなくても大丈夫ですよ私にもめぐみんさんの気持ちはとても分かりますから絶対に譲る事の出来ない部分があるというのは」

 

 

「そう言ってくれると助かります…ところでカズマ達の姿が見えませんがもしかしてクエストに行ったんですか?」

 

 

「はい。何でもギルドの方からアクア様に直接依頼があったようでゆんゆんさんとカズマさん、アクア様の3人でクエストに向かいましたよ」

 

 

それならばカズマ達が帰って来るまではギルドで待つかその前にギルドの大浴場に行くのも悪くないなと考えていると緑の服を来た少女がウィズの店へとやって来た

 

 

「良かった此処に居たのねめぐみん」

 

 

「貴女はリーンさん?珍しいですねどうしたんですか?」

 

 

緑の服を来た少女はリーンといい俺と同じくアクセルの街を拠点にして活躍している冒険者のひとりである。普段はパーティが別の為あまり行動を共にする事はないが俺の方が年下な事もあってかギルドでは何かと気を使ってくれていたのだ

 

 

「あんたのところのパーティのリーダーが兵士達に捕まりそうなんだけど何か知ってる?」

 

 

俺はリーンの言葉に自分の耳を疑った

 

 

「カズマが逮捕!?何かの間違いですよね?」

 

 

「いや、結構な騒ぎになっているから間違いではなさそうよ」

 

 

「と、兎に角今すぐにその場所まで案内して下さい」

 

 

「分かったわカズマは大広場の方にいるから付いて来て」

 

 

俺がリーンと共に大広場に向かうとカズマが兵士達に連行されそうになっており慌ててカズマの元へと走り寄る

 

 

「ちょっと待って下さい!この人は私のパーティのリーダーで警察のお世話になる様な事をする人じゃないです!」

 

 

「めぐみん…」

 

 

俺の言葉に涙を浮かべているカズマ。きっと何か誤解がある筈だ俺が詳しい事情を兵士達に聞こうとすると

 

 

「それは僕が説明するよめぐみんさん」

 

 

俺の耳に聞き覚えのある声が聞こえ声のした方向を見ると

 

 

「貴方はミツルギさん?」

 

 

其処にはこの間王都へと旅立ったミツルギが居た

 

 

「この男は泣いている少女を檻に入れて運んでいたんだ!しかもその少女は僕の大切な恩人でね魔剣を授かった者として男として見逃す訳には行かなくこうして兵士達を呼ばせて貰ったんだ」

 

 

「だから!アレはアクアが自分から入ったんだって言ってんだろ!」

 

 

「か弱い少女を檻に入れて運ぶ奴の言う事なんて信じる訳ないだろ大人しく兵士達の世話になるんだ」

 

 

そう言って言い争いをするカズマとミツルギの姿を見て俺は事情を理解した…説明するの面倒だなぁと内心思いながらも放っておく事も出来ずに取り敢えず誤解を解く事にした

 

 

「ミツルギさんカズマはどうしようもなくヘタレで変態的な所が有りますが犯罪行為は絶対にできはしない人ですよ」

 

 

「めぐみんそれは俺の事褒めてんのか?それとも貶してんのか?」

 

 

カズマがとても複雑そうな表情で俺を見るが其れをスルーし

 

 

「カズマ誤解を解く為にも詳しく私に説明して下さい」

 

 

「あ、ああ、分かったぜ」

 

 

カズマの説明によるとゆんゆんとアクア共にとあるクエストに向かった際にアクアが怯えて檻の中から出てこなくなってしまい仕方なくそのまま街中へと運んでいたらミツルギが兵士達を連れて自分達に絡んで来たという話らしかった

 

 

「カズマ…貴方という人は…」

 

 

俺は頭を抱えた大方カズマ達がやらかしたのだろうと考えていたのか見事に当たっていたからだ

 

 

「前にも言いましたよね?事案になる行為をしないか心配だと…ホントに予想を裏切りませんよねカズマって」

 

 

俺が冷たい目をカズマはうぐっと声を上げる

 

 

「そもそもそんな事をしていたら普通に通報されると考えなかったんですか?ここがアクセルの街で良かったもののアクセル以外ならば間違いなく捕まりますよ?」

 

 

「そんな事を言うけどよぉ一応は俺だって説明はしたんだぜ?ちっとも聞いてはくれなかったけどな」

 

 

「状況的に聞いて貰える訳ないでしょう!例えアクア本人からの説明したとしても庇っているぐらいしか思われませんよ」

 

 

カズマは肩を落とすと何も言えなくなってしまった。正直言い過ぎたかと思ったがカズマを誤解で犯罪者にさせない為にもはっきりと言っておいた良いと思い直した

 

 

「ミツルギさんこの人は私のパーティのリーダーで私が信頼している人物ですここは私の顔にめんじてこれで終わりにしてくれませんか?」

 

 

「君がそう言うならば彼の言っていた事は本当だろうしそこまで信頼しているならば何も問題はないだろう…佐藤和真と言ったね」

 

 

ミツルギは肩を落としているカズマに話かけると

 

 

「アクア様もめぐみんさんも僕にとっての大切な恩人だ。彼女達が信頼しているならば僕も君の事を信じる事にしよう…でもひとつだけ確かめさせてくれないか?」

 

 

ミツルギの言葉に顔をあげたカズマは

 

 

「確かめたい事?それって何だよ?」

 

 

「これも誤解なんだろうが…噂によると君は女性の下着を強奪した事があるとか…他にも年下の少女に養って貰っているという話も聞いたのだがこれも誤解なんだよね?」

 

 

カズマはミツルギの言葉にしばらく無言になると静かにその場で正座すると

 

 

「すいませんでした!!」

 

 

それは見事な土下座をした

 

 

「それは否定できねぇしするつもりもねぇが言い方に気をつけてくれ結構傷つく!!」

 

 

カズマは呻き声をあげながらその場でゴロゴロと転がるその様子を見たミツルギは苦笑しながら

 

 

「確かにめぐみんさんの言う通り色々と問題があるとは思うが悪い人ではなさそうだ一応は今までの無礼は謝る事にするよ」

 

 

ミツルギの言葉にカズマは転がるのをやめると泥だらけの状態で立ち上がり

 

 

「いや、誤解が解けたらばそれで良いんだ。…その代わりって言ったらあれだがひとつ頼みを聞いてくれないか?…俺と一対一の勝負をしてもらいたい」

 

 

「君と?…失礼だか僕は高レベルのソードマスターだ。アクセルの街を拠点にしている君のレベルでは相手にならないと思うが?」

 

 

「そいつはどうかな?こう見えても結構戦いには自信があるし別に直接戦うだけが戦いじゃない。弱いなら弱いなりの戦い方ってのがあるんだよそれに俺だって男の端くれだプライドぐらいはあるさ」

 

 

「わかった。そこまで言うならば相手をしよう」

 

 

そう言うとふたりは広場の中央へと向かいその間に俺はアクアを檻から出すとアクアにミツルギの事を訪ねた

 

 

「アクアあの人も貴女がこの世界に転生させた人ですよね?

 

 

「確かそうだったわよ?魔剣の人…カララキの事は会うまでは完全に忘れてたけどね」

 

 

「カララキじゃなくてミツルギな…ていうか自分が転生させた人間を忘れてんじゃねぇよ」

 

 

もしかしてこいつが忘れているだけで他にも色々とやらかしてるんじゃないか?そんな不安が脳裏に浮かんだが其れを押し殺しそんなアクアを特典として選んでしまったカズマに内心同情しているとカズマとミツルギの決闘が始まった

 

 

「先手は君に譲るよ何処からでもかかって来ると良い」

 

 

そんなミツルギの余裕とも取れる態度にカズマは

 

 

「馬鹿にしやがって!!あまり俺の事を舐めるなよ!『スティール』!!」

 

 

カズマはそう言うと盗賊スキルのひとつであるスティールをミツルギに使用した

 

 

「良し!やったぜ!!」

 

 

スティールが成功しカズマの手には魔剣が握られていた

 

 

「ミツルギ覚悟!!」

 

 

カズマがそのまま魔剣でミツルギに攻撃しようとしたがミツルギは軽くカズマの攻撃を横に避けると足払いをした転ばせそのまま隠し持っていた短剣をカズマの喉元に突きつけた

 

 

「勝負ありだな佐藤和真」

 

 

不敵な笑みを浮かべたミツルギは短剣をしまうとカズマに手を差し伸べた

 

 

「スティールで僕の武器を奪う…良い戦法だ少し前の僕だったらばなす術なく君にやられていただろうけど今の僕は違うよ武器を失った時の為の対策はしてあるしいざという時の為に格闘スキルは取得しているんだ。こちらの世界に来る前には護身術は嗜んでいたしね」

 

 

「チキショウ…イケメンでしかもケンカが強いってとんだけチートスペック何だよお前は!」

 

 

「ははは。僕だって色々と苦労はしていたしみんなに少しでも好かれるように努力はしていたからね」

 

 

多少のしこりはあるだろうが一応は和解に成功したようだ俺は安心するとふたりに話掛けた

 

 

「ミツルギさん貴方がここに来たのには何か理由があるのでしょう?」

 

 

「実は最近この辺りに魔王軍の幹部が住み着いたという話を聞いてね王都の依頼を受けて調査に来たんだ」

 

 

「魔王軍の幹部が?一体どんな奴が分かりますか?」

 

 

「住み着いている幹部は首無し騎士のデュラハン…ベルディアだ」

 

 

まさかこんなにも早くに魔王軍幹部と戦う機会に恵まれるとは…俺がそう考えているとカズマが親しそうに話す俺達を不思議に感じたのか

 

 

「めぐみんお前はミツルギと知り合いだったのか?」

 

 

「はい一年前に紅魔の里で会った事があるんですその時にちょっとした事件が起こりましてね」

 

 

「色々と危なかったがあの事件があったから僕は自分の事を見直す機会を得られたと考えているんだ。だからそういった意味でも彼女は僕の恩人なのさ」

 

 

ミツルギの言う通りにあの時は色々とあった…あの事件を乗り越えられたのは様々な偶然が重なったおかげだと思っている初めは出会いが最悪だったミツルギともこうして良い関係を結べたのだから運命というのは分からないものだ

 

 

「なんかそういうの羨ましいぜ…ホントの事を言うけどさお前の事いけ好かない奴だと思ってたんだ魔剣だよりの苦労知らずの嫌な奴ってな前の世界にあったライトノベルや小説サイトにあった作品ではイケメンはハーレムになっているだけの只の無能な奴で底辺な奴にあっさりやられてハーレムも崩壊して全てを失って自滅するだけの奴だと思ってたがそういうのはやっぱりフィクションだけの話なんだなと思ったよ」

 

 

確かにカズマの言う通りそういう作品は前の世界にあったし俺も読んだあるが流石に失笑してしまった物だ何故元の世界では人気者であった人間が異世界では役立たずになり落ちぶれ逆に引きこもりがいじめられっ子がぼっちだった人間が異世界で大活躍をして大逆転するのか理解出来なかった。

 

 

そんな事が出来るならば元の世界でも活躍しているだろうし何より人間ってのは人間関係ってのは環境や世界が変わったぐらいで簡単に変わるものじゃない。ぼっちや引きこもりはどこまで行っても変わらないしイケメンな奴ってのは何処に行ってもイケメンなものだそしていきなりそんな環境に追いやられたら大抵はそういった連中から自滅していくのが普通だからな

 

 

「めぐみん一体何を考え込んでるのよ?」

 

 

急に黙ってしまった俺の事が気になったのかゆんゆんが話しかけてくる

 

 

「いや、何でもないです。気にしないで良いですよ」

 

 

俺はゆんゆんにそう言うとゆんゆんもそれ以上は聞く事もなくあれから立ち話に花を咲かし始めているカズマとミツルギの元に歩いて行くと突然街中に緊急放送が鳴り響いた

 

 

『魔王軍襲来!魔王軍襲来!冒険者の皆さんは大至急正門前へと集まって下さい!!』

 

 

ギルドからの緊急放送を聞いた俺達は正門へと移動すると其処には先程ミツルギカ話していた魔王軍幹部ベルディアがそこに居た

 

 

「我が名はベルディア魔王軍幹部である!!アクセルの街にいるという仮面ライダーという戦士と戦いに来た!さぁ、仮面ライダーよ俺と戦え!!」

 

 

ベルディアは剣を天に掲げると声高かにそう叫んでいた




今回はここまでです。次回はベルディアとの戦いになりますがライダー無双にはならないように気をつけます。


そして今回のミツルギ編に関しては個人的な考えを反映させて頂きました。ミツルギは二次では必要以上にデスられたりするのが大変多くその癖カズマの肩を一方的に持つという展開がやたらと鼻につきました。


その為この作品ではそんな展開を否定する意味合いもあってこのような形にしましたしかしカズマをアンチする様な意味合いは一切ありませんのでご安心下さい。因みにミツルギが言っていた自分の身を振り返る事となった事件に関してはその内描くつもりなので気長に待っていて下さい。


最後に感想と評価をお待ちしてます。



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この素晴らしい覚醒に祝福を!!

今回は結構シリアス気味かも知れないです


カズマのキャラもこれじゃない感があるかもしれないですがベルディア戦後は何時ものカズマに戻るのでご安心下さい





「お前が魔王軍幹部のベルディアか?こんな辺境の街までご苦労なことだな」

 

 

俺はそう言うと人集りから一歩前へと出る

 

 

「ふん、魔王様からの依頼が無ければ好き好んでこんな辺境の街へとやってこないわ…成る程どうやらお前が噂に聞く仮面ライダーらしいな」

 

 

そう言うとベルディアの身体から赤いオーラが発せられる。すざましい戦気を感じベルディアは間違いなく魔王軍幹部なのだと確信した

 

 

しかし俺はそんな事に臆する事なく不敵な笑みを見せるとベルトを腰へと取り付けた

 

 

「ベルディア!お前を此処で討伐させて貰う!!」

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ! 』

 

 

「めぐみんだけには戦わせられないわよ!!来て!クローズドラゴン!』

 

 

そう叫ぶとゆんゆんの元にクローズドラゴンが飛来しそれを右手で掴み取るとドラゴンフルボトルをクローズドラゴンに装填するとそのままドライバーへとセットした

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

変身した俺達はそれぞれ武器を構えるとジリジリとベルディアとの距離を測る。そして俺達以外の冒険者達もミツルギを先頭に街を守る為のフォーメンションを組みベルディアを包囲し一斉攻撃の機会を受かっていると…

 

 

『グォォォォ!!!』

 

 

という叫び声と共に街中から悲鳴が聞こえてきた

 

 

「まさか…スマッシュの襲撃か!?クソ、こんな時に!!」

 

 

 

「ゆんゆん!申しないがベルディアの相手は頼んだ!俺はスマッシュの方を片付ける!!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

「ならばゆんゆんさんのサポートは僕達に任せてくれ!!」

 

 

俺はゆんゆんのサポートをミツルギ達に任せると街中へと向かう

 

 

「チッ、アイツの仕業か…余計なことを…」

 

 

ベルディアはスマッシュをけしかけたのは例のブラッドスタークだと思っているようだが実際のところは違う事を気づいてはいない

 

 

********************

 

 

 

俺は街に現れたスマッシュ…ニードルスマッシュの攻撃を交わすとドリルクラッシャーをガンモードに切り替えて遠距離から攻撃を加えて行く

 

 

「こんな相手に手こずっている暇はないってのに」

 

 

俺がそう嘆いているとニードルスマッシュがそんな俺の隙をついて攻撃してきた

 

 

「『スティール』!!」

 

 

聞き覚えのある少女の声が響くのと同時に視界が光に包まれた後目を開くと此方に向かって飛んで来ていたニードルが消えていた

 

 

「助っ人に来たよ…ビルド!!」

 

 

「君は…クリス!!」

 

 

其処には先日カズマが泣かせてしまったという盗賊の少女クリスがニードルを手に微笑んでいた

 

 

「このまま奴らに好き勝手に暴れさせる訳には行かない奴らを絶対に倒すよ!!」

 

 

「ああ!!」

 

 

「奴の攻撃は私が引き受けるからビルドは攻撃に集中して!!」

 

 

クリスはそう言うとニードルスマッシュの前に出ると

 

 

「『スティール』!!」

 

 

再びスティールでスマッシュのニードル攻撃を防ぎ

 

 

「続けて『バインド』!!」

 

 

クリスの右手からロープが出現するとニードルスマッシュを拘束する

 

 

「今だよビルド!!一気に決めて!!」

 

 

「分かった!!」

 

 

そう言うと俺はボルティクレバーを回転させて必殺技を発動させた

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

「タァァァァァァ!!!」

 

 

動けないニードルスマッシュはそのままラビットタンクの必殺技を受けたがまだ倒れていない

 

 

「こうなったら身体の負担は無視してやるしかない!」

 

 

『タカ!ガドリング!ベストマッチ!!』

 

 

俺はラビットタンクからホークガドリンクに変わるとガドリンガーで奴のニードルを全て撃ち落とすと上空からホークガドリンガーによる連射攻撃食らわせ

 

 

『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!!』

 

 

ゴリラモンドによる強力な打撃攻撃を上空から駄目押しとばかりにニードルスマッシュに食らわせた

 

 

 

そして怒涛のベストマッチによる必殺技ラッシュを受けたニードルスマッシュはなす術も無くそのまま爆発すると力なく地面に横たわっており俺がボトルで成分を回収するとスマッシュは元の人間の姿に戻ったそしてその人物はつい先日俺達に絡んで来た変態女騎士だった

 

 

「ダクネス!!しっかりしてよダクネス!!」

 

 

クリスが必死でダクネスと呼ばれた女騎士を揺らしているが反応はない

 

 

「クリスとりあえず今はダクネスを連れて教会へと連れて行って欲しい教会ならばアークプリーストが居る筈だからきっと助けてくれる筈だ」

 

 

「うん…わかったよ。君はどうするんだ?」

 

 

「ゆんゆん達の元へ向かうゆんゆん達だけでは分が悪いかもしれないからな」

 

 

そう言うとクリスにダクネスと呼ばれた女騎士を任せて正門へと急いだ

 

 

*********************

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

ミツルギ達とゆんゆんは息を切らした状態で膝をついていた特にクローズの装甲はぼろぼろで至るところから火花が立っていた

 

 

「どうした?仮面ライダーというのはこの程度か?俺はまだ全力を解放はしていないぞ」

 

 

(どうして最初の街に現れる幹部が滅茶苦茶強いんだよ!こんなん無理ゲー過ぎるだろ!)

 

 

俺が内心そう毒吐いているとベルディアの攻撃パターンについてある事に気づいた

 

 

(あいつ攻撃する瞬間一瞬だが身体を覆っている赤いオーラが消えている?…もしかしてオーラが消えている間ならば此方の攻撃が効くんじゃないか?)

 

 

俺は長年のゲーマーの勘でそう判断すると潜伏で姿を消すと奴がゆんゆん達に気を取られている間に距離を詰めそして充分に距離を詰めた事を判断すると

 

 

「『スティール』!!!」

 

 

俺はスティールをベルディアに向かって発動させたこれで奴の武器を奪う事が出来れば…しかしそんな俺の考えは敢え無く打ち砕かれる事になる

 

 

「スティールか…成る程それで俺の武器を奪う算段だったようだが悲しいかなお前と俺ではレベル差が大きいようだ」

 

 

…俺の手には何も握られてはいなかったそうスティールは失敗に終わったのだ

 

 

「小僧覚えて置くと良い勇気と無謀は違う物である事を!!」

 

 

「カズマさん危ない!!」

 

 

俺を庇ったゆんゆんはベルディアの攻撃を受けてしまう

 

 

「グ…ハァ…」

 

 

「ゆんゆん!」

 

 

ゆんゆんは変身が解けるとその場に倒れてしまう俺はゆんゆんの元に近づくがゆんゆんは力無くその場に横たわっていた

 

 

「貴様ぁぁぁ!!」

 

 

ミツルギは激昂するとグラムでベルディアの鎧に攻撃するが傷ひとつ付ける事が出来なかった

 

 

「っ!?今のは?」

 

 

ミツルギはその時に何かに気づいたがその時の隙が致命的となってしまう

 

 

「魔剣の勇者か…中々に面白い相手だが今の私には貴様では役不足だ消えろ!!」

 

 

ベルディアは持ってい大剣を一閃するそれだけで決着はついた。ミツルギの胴体に深い傷があるつけられた上に右腕が吹っ飛びグラムも真っ二つに折れてしまった

 

 

「イヤァァァァ!!キョウヤァァァ!!」

 

 

緑色の髪をしたミツルギの取り巻きの少女が悲鳴を上げた

 

 

「このまま絶望しろ!!『死の宣告』!!」

 

 

ミツルギの身体に一瞬黒いオーラが纏わりつくとオーラが消え去った

 

 

「これで貴様は一週間後に死ぬ事となるが俺はこう見えても寛大でな貴様達にはチャンスをやろう6日後再びこの地に俺はやって来る。その時に俺に膝をつかせれば宣告を解いてやろう!!その時まで対策を考えるのも良し!諦めて過ごすのも良し!好きに過ごすがいい…では6日後にまた会おう!!フハハハハ!!」

 

 

そう言うと黒いオーラに包まれてベルディアは姿を消した。…相手が見逃してくれたのは明らかであり今回の戦いは俺達の完全敗北だった…

 

 

「ヒール!!切れてた腕はこれで何とかなるけどでも折られてしまったグラムに関しては修理にかなり時間がかかるわ…仮に直ったとしても前のような威力を発揮出来るか…でも胴体の傷が浅いのは良かったわねてっきり致命傷だと思っていたから」

 

 

アクアは取り巻きの女の子達にミツルギの容態をそう説明しているが俺にはそんなな耳に入らなかった

 

 

…俺の安易な考えの所為でゆんゆんとミツルギが死にかけてしまったそれが俺の胸に深く突き刺さる

 

 

「サトウカズマ…」

 

 

忿怒に満ちた声が聞こえ俺が声をあげるとミツルギの取り巻きの女の子達が此方を怒りの表情で見つめていた

 

 

「あんたの所為でキョウヤは!!絶対に許せない!!」

 

 

「そうよ!!キョウヤじゃなくあんたが斬られれば良かったのに!!」

 

 

そう言って俺に詰め寄ってくるが今の俺に言い返す気力がなかった…

 

 

「そこまでですよクレメア・フィオ」

 

 

「あんたは…あの時の」

 

 

「紅魔の里以来ですね、ミツルギさんを大切に思うのは良いですが行き過ぎるのももんだとあの時にいいましたよね?」

 

 

「でも!こいつの所為でキョウヤが!」

 

 

「そうよ!もしミツルギが死んだら責任とれるの!?」

 

 

「冷静になって下さい!大切な人を傷つけてられたのは貴女達だけじゃない!カズマだって自分の行為の所為で仲間が傷ついたんです!そんなカズマが責任を感じていないと思っているのですか!?」

 

 

その言葉にクレメアとフォオは黙ってしまう

 

 

「しばらく頭を冷やして下さい」

 

 

めぐみんはそう言うと踵を返してアクセルの街へと戻って行く

 

 

「めぐみん何処に行くんだ?」

 

 

 

「奴の言う通りならば約束の時までは6日ありますそれまでに何とか新たなパワーアップアイテムを復元します…絶対に!!」

 

 

「俺も…俺も手伝うぜ!!このまま待つだけってのは嫌だ!!」

 

 

「サトウカズマあんたの事は絶対に許せないでも…今は私達も協力するわよ!!ミツルギの仇を取ってやるんだから!!」

 

 

「分かりました…協力をお願いします!!」

 

 

そう言うと俺はクレメア・フィオそしてめぐみんと共に地下ラボへと急いで戻った

 

 

 

*******************

 

 

 

「クソ!!!もう時間がない!」

 

 

あれから俺はほぼ徹夜でベルトの復元を目指したがどうしても上手くいかない。『スクラッシュゼリー』の復元は然程難しくはなかった対応しているフルボトルの復元には成功しているからだ。既に『ロボットゼリー』の復元を終わらせており後はベルトの復元を成功させるだけなのだが…

 

 

「やはりデータが足りないのか?しかし新たなデータを取っている時間はないみんなも色々と無茶をさせているこれ以上は無理はさせられない」

 

 

俺が後ろ振り返ると徹夜続き&ミツルギ達の看病で疲れ果ているクレメアとフィオそして研究に協力していてくれたアクアとカズマが床で雑魚寝していた

 

 

「兎に角もう一度…もう一度やるぞ!これでダメだったらもう打つ手がない」

 

 

俺がそう呟いた時後ろから誰かが起きる気配を感じ後ろを振り返るとアクアは俯いた様子で起き上がっておりそのまま立ち上がるとベルトの元へ近づいていく

 

 

「アクア…何をするつもりだ?」

 

 

アクアは俺の言葉に答える事は無く無言でベルトに手をかざす。すると手から魔力が放たれそれがベルトに流れ込むとベルトが一瞬光ったのが分かった。俺は繋がれている装置でベルトの状態を確認すると信じる事の出来ない事が起こっていた

 

 

「ベルトが完成している?」

 

 

そう魔力的な観点から復元に手こずっていたビルドドライバーに次ぐ第2のドライバー…スクラッシュドライバーが完全な形で存在していた

 

 

「アクア貴女あの時何をしたんですか?」

 

 

俺がアクアに詰め寄るとアクアはポカンとした表情を見せると

 

 

「そんなの私にも分からないわよ。でも完成したって事は私のおかげって事でしょ?ならお礼として最高級のしゅわしゃわを所望するわ!」

 

 

アホな事を言っているアクアを俺は無視し完成したベルトに触れようとした時カズマの手が先に伸びベルトを取った

 

 

「カズマ?」

 

 

俺はカズマの突然の行動に驚きを隠せなかった

 

 

「これで俺も仮面ライダーとして戦うんだ…ゆんゆんとミツルギの仇をこれで取ってやる!」

 

 

カズマはこのベルトを使ってベルディアに敵討ちを望んでいるらしかった

 

 

その気持ちは痛い程分かるし俺も仇を討つという気持ちは同じだ。でも…だからこそ

 

 

「残念ですがカズマにはこれを使いこなす事は出来ませんよ?」

 

 

「何でだよ!!俺だって力が欲しいんだ!!奴を倒す為の力が!!」

 

 

やはりカズマは分かっていない。嫌、本来ならばカズマは平和な日本で過ごしていた年相応の普通の少年だ。いきなり分かれというのも難しい話だろう…だが

 

 

「力を手に入れるというのはそれ相応の覚悟が必要なんなんだよ今のお前は怒りに支配されている…そんな奴にライダーシステムを渡す訳にはいかない。ライダーシステムは復讐の為の道具じゃない!」

 

 

だからこそ俺は此処でカズマを突き放す。カズマが道を踏み外さないようにカズマが力に飲み込まれないようにカズマが力というのを履き違えないように

 

 

俺はカズマの元に近づくとカズマの手からドライバーを取り上げる

 

 

「ベルディアは俺がこの手で倒すスクラッシュドライバーだって前の世界とは違って魔力稼働になっている。俺にだって扱えるようになってるんだよ」

 

 

俺の言葉にカズマは俯いてしまうと走ってラボから出て行ってしまった。そしてラボには寝ているクレメアとフィレを除くと俺とアクアが残った

 

 

そしてアクアは真剣な表情になると俺にある事を聞いて来る

 

 

「めぐみんさっきカズマに言った事は嘘でしょ?」

 

 

「やはりアクアには分かるか…流石は女神だな」

 

 

「当たり前よ女神の前で嘘をつくのは馬鹿のする事よ?それでどうしてあんな嘘をついたの?」

 

 

「スクラッシュドライバーはハザードレベルが高く無ければ使う事が出来ないそしてそのハザードレベルの上昇には人間の感情が深く関係しているんだ」

 

 

「それならカズマが怒れば怒る程使える可能性が高くなるんじゃないの?」

 

 

「怒りじゃ駄目なんだライダーシステムは怒りで使う事は出来ない。怒りや復讐心ではなく純粋に誰かを守りたい…誰かの笑顔を守りたい…そういった気持ちが覚悟が必要なんだよ」

 

 

「成る程ね今の怒りに囚われているカズマにハナから使う事は出来ないって訳ね」

 

 

「そういう事だ。じゃあそろそろ時間だベルディアとの約束の場所に行ってくる」

 

 

「ねぇ、めぐみん…今の貴女に勝てる見込みはあるの?」

 

 

「出来るに決まってるだろ?俺は自意識過剰でナルシストな…正義のヒーローだからな」

 

 

そう言うと俺はスクラッシュドライバーを金庫にしまうとラボから出てアクアと共に正門前へと向かって行く(クレメアとフィレは起きなかったのでそのまま寝かせた)その時近くの物陰に隠れていたカズマの姿に気づかずに…

 

 

正門に辿り着くとベルディアがひとりで俺達を待っていた

 

 

「逃げなかった事は褒めてやろう。しかし俺に膝をつかせない限りあの魔剣の勇者を助ける事は出来んぞ?」

 

 

「それならば心配はありませんよ?私が直ぐに貴方をサクッと倒しますから」

 

 

「その意気は良し!さぁ勝負と行こうか仮面ライダービルド!!」

 

 

そう言うとベルディアは前の戦いの時以上のオーラを出して戦闘体勢に入る

 

 

対する俺も腰にベルトを取り付け怯む事なくベルディアと向かい合うが…

 

 

(ベルディアが纏っているあのオーラ…クソ!やはり初期フォームだけじゃ分が悪過ぎる!せめてスパーキングフルボトルがあれば…)

 

 

しかし無い物ねだりもしたところで時間の無駄だと判断すると腰にベルトを取り付け赤と青のフルボトルを取り出した

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!』

 

 

俺はラビットタンクフォームに変身する

 

 

「ではこちらから行くぞ!!」

 

 

繰り出されたベルディアの大剣からの重い一撃をドリルクラッシャーで何とか受け止めたが完全には受け止めきれずに地面が陥没してしまう

 

 

「パワーで勝てないならばスピードならばどうだ!!」

 

 

そう言って俺は素早くベルディアから距離を取るとウサギハーフボディの能力を利用して素早い移動でベルディアを翻弄する。ベルディアは図体がデカい分細かい動きが苦手なのか俺の動きについて来られないようだ

 

 

そしてベルディアの背後に回ると左足に内蔵されたバネ『ホップスプリンガー』を利用して強力なキックを食らわせるが…

 

 

「どうした?貴様の攻撃程度では俺の鎧を傷つける事は出来ぬぞ?」

 

 

ベルディアの言う通り奴の鎧には傷一つついてはいない

 

 

「なんて硬い鎧なんだよ!!これならどうだ!!」

 

 

ビルドはすかさずホークガドリンガーでがら空きの胴体を狙うがベルディアの鎧に傷一つつける事は出来ない

 

 

「そんな小細工など俺には通じん!!この魔王軍幹部ベルディアを舐めるな!!」

 

 

そう言ったベルディアの大剣の横に振るった斬撃によりホークガドリンガーを破壊されてしまった

 

 

「クソ!負けるかぁぉぁぁ!!」

 

 

俺は再びドリルクラッシャーを構えるとドリルクラッシャーのソケットにゴリラフルボトルをセットすると拳状のエネルギーを纏わせてベルディアに攻撃するがベルディアは大剣で受け止める

 

 

「面白い…面白いぞぉ!!仮面ライダーよ!!だが、これでやられる俺では無いわぁ!!」

 

 

ベルディアがそう言うと纏っていた赤いオーラが更に強くなり先程とは比べ物にならないパワーを発揮し俺はそのパワーに力負けしてしまった

 

 

「はぁ!!!」

 

 

「グァァァァ!!」

 

 

体勢が崩れたところにベルディアの強烈な一撃を受けた俺は壁へと叩きつけられた。変身は解除されてはいないが痛みにより呻き声をあげる事しか出来なかった

 

 

「クソ…スクラッシュドライバーさえ使えれば…」

 

 

俺が思わずそう呟いたその時

 

 

「たく、しょうがねぇなぁ!真打ちは最後に登場ってな」

 

 

其処には俺達よりも先にラボから出て行った筈のカズマがスクラッシュドライバーを手に立っていた

 

 

 

「カズマ!?どうしてそれをそのドライバーは金庫にしまっておいた筈だそもそもどうやって暗証番号を!!」

 

 

「へへへ…俺の幸運をなめんなよ!!」

 

 

カズマはそう言うとベルディアの元まで歩いて行き

 

 

「俺はもう間違えない…今度こそ…今度こそ大切なみんなを守ってやる!!」

 

 

 

そう言ってカズマがスクラッシュドライバーを腰に取り付けるしかしその時電流が身体中に流れカズマは苦痛の声をあげた

 

 

********************

 

 

「グワァァァァァ!!ま、負けるかぁぁぁ!!俺の所為でゆんゆんはミツルギは死に掛けたんだ!!もう大切な仲間のあんな姿を見たくはねぇ!!男の意地って奴をみせてやるぜぇぇぇぇ!!」

 

 

これぐらいの痛みに負けるか!ゆんゆんもそして気にくわねぇがミツルギも死にかけてんだ!!俺に力をくれよ…俺にも戦兎さんのような意思の強さを…みんなの笑顔を守れる力を!!!

 

 

『お前の叫び届いていたぜ佐藤和真』

 

 

「えっ?」

 

 

気が付くと俺は辺り一面が真っ白な空間にひとり立っており

 

 

「あなたは猿渡一海(さわたりかずみ)さん!!」

 

 

『やっぱり俺の事を知ってやがったな…佐藤和真お前は仲間の為に心火を燃やす事が出来るか?心火ってのは心の火の事だ心火を燃やして闘い抜く事が敵をぶっ潰す事が出来るか?』

 

 

一海さんの言葉に俺は迷い無くはっきりと強い言葉で答えた

 

 

「敵をぶっ潰すとかそんな覚悟は俺には出来ません…俺は一海さんのように戦えません。今まで俺は平和な世界にいたんですいきなり命をかけられるかと言われたらそんなの答えられないです…でも!!」

 

 

そこまで言うと俺ははっきりと一海さんを見る

 

 

「俺は大切な仲間を守りたい!!前の世界では俺はどうしようもない奴だったでもこの世界で変わりたいんだ!強くなりたいんだ!だから俺は一海さんとは違う形で自分なりの心火を燃やして戦い抜きます!」

 

 

…言ってやった。自分の心の中の物を全部吐き出してやった。そして俺の言葉を聞いた一海さんは

 

 

「それで良いお前は俺とは違うお前はお前の言う通りに心火を燃やして戦い抜け!後戦兎の事は頼んだぜ?あの馬鹿の事も…佐藤和真今からお前が仮面ライダーグリスだ!!」

 

 

「ありがとうございます…一海さん…俺の心火を見せてやるぜぇぇぇ!!」

 

 

俺の叫びと同時に再び視界が真っ白に染まった

 

 

*******************

 

 

カズマがそう叫ぶのと同時に身体を走っていた電流が飛散し消えた

 

 

そしてカズマは手にしていたパック状のアイテムを取り出すと上部にあるキャップを回わしてドライバーに装填する

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

カズマは両手をクロスさせる構えを見せ

 

 

「変身!!」

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

そう言うとカズマはベルトについているレンチ型のレバーを下ろしてパックを潰すパックの中身がベルトに注入されるとカズマの周りに巨大なビーカーと装置『ケミカライドビルダー』が出現するのと同時に変身する為の成分がカズマの身体を覆うとスーツが生成される

 

 

 

そして最後に頭部から液体を放出してボディや頭部のパーツ等が出現し変身が完了する。その姿は金と黒を基調としたカラーリングであり頭部はゼリー飲料の飲み口を模し頭部と胸部はクリアブラックにより機械的な装甲という印象を与えており腕には専用武器『ツインブレイカー』が装備されていた

 

 

「嘘…カズマがめぐみんやゆんゆんみたいに仮面ライダーに変身した?」

 

 

「仮面ライダーグリス…」

 

 

そう言う戦兎の脳裏には心火を燃やして戦い抜いたひとりの男の姿が浮かんでいた



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この忌まわしき再会に祝福を!!

 

「新たな仮面ライダーだと?面白い!」

 

 

ベルディアはそう叫ぶと纏っていたオーラを更に強くしそして剣を抜くと斬撃を俺達に向かって飛ばして来るがカズマが真正面から其れを受け止める

 

 

「この程度かよ魔王軍幹部ってのは!これじゃあ俺の心火を止める事は出来やしないぜ!」

 

 

「中々やるではないかならばこれはどうだ!!」

 

 

ベルディアは何かを思いついた表情になると謎の仕草をする

 

 

それと同時に街の入り口前に大量のアンデットナイトが出現すると街の中へと進行して行く

 

 

「ふっははは!!俺からのちょっとしたサプライズだ。早く俺を倒さなければ街がどうなっても知らんぞ?」

 

 

「汚ねぇ!お前それでも騎士かよ!!」

 

 

「騎士である前に俺は魔王軍幹部だ。勝利の為なら魔王様の為ならば何でもするわぁ!!」

 

 

「クソッタレ!!」

 

 

俺とカズマはベルディアに背を向けるとアンデット達のところに向かおうとする

 

 

「お前達ふたりを行かすと思うか?」

 

 

そう言うとベルディアがその図体から予想出来ない素早さで移動すると持っていた頭を上空に投げる。次の瞬間ベルディアは俺達の死角にあたる部分へと移動すると一撃二撃と斬撃を食らわせた

 

 

「「うわぁぁぁぁぁ!!」」

 

 

ベルディアの攻撃を受けた俺達は地面に転がり

 

 

「クソ!!邪魔するな!!」

 

 

俺はドリルクラッシャーを構えカズマはツインブレイカーを構えベルディアに向かって行くが再びベルディアは頭を上空に投げると俺達の動きを全て見切っているような動きで攻撃を避けていく

 

 

「どういう事だ?まるで俺達の動きが全て見切られている?」

 

 

「これが俺のスキル『魔眼』の力だ相手の動きや弱点を見抜く事には長けていてな中々に役に立つんだよ」

 

 

「流石はボスキャラ超強力なスキルを持っていやがる…」

 

 

「いや…それだけじゃない筈だ。それだけだとこれまでのパワーと先程のスピードの説明がつかない」

 

 

魔眼のスキルは確かに強力だがでもそれはあくまでも敵の動きや弱点を見抜く事に特化した物の筈パワーやスピードが段違いに上がった事の説明にはならない

 

 

ベルディアはそんな俺の考えを見抜いたのか

 

 

「俺を楽しませてくれている礼だ貴様らには冥土の土産として教えてやろう。何故俺がこのような力を手に入れたのかを!」

 

 

ベルディアはそう言うと懐から赤いオーラを纏っている一枚のパネルと身体の中から赤く輝いている一つのフルボトルが見えた

 

 

「それは…パンドラパネルそしてフルボトル!!お前其れを何処で手に入れた!」

 

 

「其れを敵である貴様らに教える義理はない俺を倒す事が出来れば教えてやろう」

 

 

「ならお前を直ぐに倒して聞き出してやるよ!」

 

 

「それはどうかな?俺の魔眼にかかればお前の動きを見切る事など造作もないぞ?」

 

 

俺はもう一度攻撃をしようとするがベルディアのスキル『魔眼』によって全ての動きを再び見切られてしまった俺はベルディアの斬撃を受けて街の障壁へと激突する

 

 

それにより障壁と幾つかの建物を巻き込んで倒れこむがまだ立ち上がる事の出来るダメージだった

 

 

 

「ドリルクラッシャーが…クソ!負けるかぁぁぁぁ!!」

 

 

俺は先程の攻撃により壊れたドリルクラッシャーを捨て代わりにカイゾクハッシャーで遠距離からベルディアに攻撃を仕掛けるがベルディアは剣で全て叩き落した

 

 

「どうした仮面ライダーというのはこの程度か!!」

 

 

「俺の事を忘れてんじゃねぇ!!」

 

 

いつの間にか間を詰めていたのかカズマはツインブレイカーの砲身部分『レイジングビーマー』を動かしアタックモードに切り替えるとベルディアを殴りつけた

 

 

「カズマ!こいつを使え!!」

 

 

俺は手にしていたロボットフルボトルを投げ渡す

 

 

「ありがとうございます戦兎さん!」

 

 

フルボトルを受け取ったカズマはツインブレイカーにロボットボトルを装填すると必殺技を発動させた

 

 

『シングルブレイク』

 

 

エネルギーをパイル先端に集中させロボットハンドを形成させるとベルディア再びを殴りつける

 

 

「ゆんゆん!お前の力を貸して貰うぞ!!」

 

 

俺は気を失っていたゆんゆんから拝借していたドラゴンフルボトルとロックフルボトルをベルトに装填する

 

 

『ドラゴン!ロック!ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

『ビルドアップ!!』

 

 

『封印のファンタジスタ!キードラゴン!イエーイ!』

 

 

「戦兎さん!!そのフォームは身体にかかる負担が!!」

 

 

「こいつに今のとこまともにダメージを与えられるフォームはこれはしかない負担なんて構ってられるか!!」

 

 

キードラゴンにビルドアップした俺はビートクローザーを召喚するとスロットにロックキーを装填する

 

 

『スペシャルチューン!』

 

 

俺はグリップにあるレバーを一回引きビートクローザーの刀身に蒼炎を纏わせる

 

 

「うぉぉぉ!!」

 

 

俺の渾身の一撃により遂にベルディアの鎧に大きな傷をつける

 

 

すると奴の身体からフルボトルが排出され俺はフルボトルをしっかりと握りしめるとベルディアの身体が赤いオーラが消えるのを見た

 

 

「カズマ!!今の弱体化したベルディアならお前のスティールでアイツのパンドラパネルを奪い取る事が出来るかもしれない!!」

 

 

「分かりましたやってみます!!」

 

 

カズマはベルディアが怯んでいる内にもう一度スティールを仕掛けた

 

 

 

**********

 

 

アクセルの街内

 

 

カズマ達が街の外でベルディアと命懸けで戦っている間街の方に大挙していたアンデットを他の冒険者達が食い止めていた

 

 

「ふっ!!!」

 

 

ひとりのアーチャーの矢が的確にアンデットの額を貫きアンデットの動きを止める

 

 

「セイヤァァァァ!!」

 

 

そのアーチャーの仲間であるクルセイダーの男もアンデットを次々と斬り伏せていく

 

 

「『マジックゲイン』!!『ブレード・オブ・ウィンド』!!』

 

 

続いて緑色の服を着た少女…リーンが風の中級魔法によりアンデットをまとめて吹き飛ばす

 

 

「テイラー!キース!ダストが教会から聖水をありったけ持ってくるのを待つのよ!!」

 

 

リーンは周りの冒険者達にそうげきを飛ばしながら必死にアンデット達から街を守る為支援魔法と中級魔法を駆使して戦っていると仲間のひとりであるテイラーの叫び声が聞こえた

 

 

「リーン危ねぇ!!」

 

 

その言葉にリーンが背後を振り返った時其処には今まで何処に潜んでいたのかアンデットが襲いかかろうとしていた

 

 

「キャァァァ!!」

 

 

リーンが思わず目を瞑ったその時リーンの手に触れる筈だったアンデットの手が文字通りに吹き飛びそして何処からか花火のような音が聞こえて来たのと同時に周りに居た数体のアンデットが纏めて吹き飛ぶリーン達は自分達の目の前に起きた事に戸惑う事しか出来ていなかった

 

 

 

その様子をリーン達がいる場所から然程離れてはいない建物の屋上でトランスチームガンを構えているブラッドスタークが見ていた

 

 

「サトウカズマも無事に仮面ライダーに覚醒か…この辺りが潮時だな」

 

 

そんな事を呟いているスタークの姿に気づける冒険者は誰も居なかった…

 

 

「リーン!みんな!!待たせたな!!」

 

 

其処に漸くダストが何故のカバンらしき物を背負って帰ってきた

 

 

「ダスト聖水はどうした?」

 

 

「聖水はこのたんく?って奴に入ってるぜ!何でもあのめぐみんって奴がいつでも冷たい水を教会で飲めるようにと開発してくれてたらしいぜ」

 

 

「めぐみんの発明品って本当に凄いよね…噂じゃ仮面ライダーの装備も全部ひとりで作ってるって話だし私も作って貰おうかな?」

 

 

そしてその聖水によりアンデット達にダメージを与えそしてプリースト達の神聖魔法とウィザード達の中級魔法により何とかアンデット達を全滅させるとダスト達は勝利の雄叫びをあげたのだった

 

 

************

 

 

「スティール!!!」

 

 

カズマの右手が光輝きそして光が収まると

 

 

「よっしゃぁぁぁぁ!!!」

 

 

カズマの手にはベルディアが持っていた赤いパンドラパネルが握られていた

 

 

『スクラップフィニッシュ』

 

 

カズマは肩や背中からヴァリアブルゼリーを勢いよく噴出させる事で加速しそして前腕部にはヴァリアブルゼリーでロボットハンドを形成しベルディアに強力なパンチ攻撃を加える

 

 

「ヌォォォォォこの程度で負ける俺ではないわぁぁぁ!!」

 

 

しかしベルディアは負けじと其れを押し返そうとする

 

 

「させるかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

『ボルティクアタック』

 

 

俺はすかさずボルティクレバーを回転させるとジャンプし前に一回転しながらキックをカズマの背中にぶつけた

 

 

 

「「うぉぉぉぉぉ!!!」」

 

 

俺達はそのままベルディアとの力押しとの勝負に入る

 

 

「いい加減諦めろ!!この駆け出し冒険者どもがぁぁぁ!!」

 

 

「俺達はなぁ、諦めが悪いんだよ!!」

 

 

「ベルディア!!お前の敗因は…俺達を…アクセルの冒険者を甘く見た事だ!!」

 

 

その言葉と共に俺達の攻撃は遂にベルディアの身体を貫いた!!

 

 

「馬鹿なァァァァ!!魔王軍…幹部であるこの俺が負ける筈が…」

 

 

そう言うとベルディアは全身から火花を飛ばしながら倒れると大爆発を起こした

 

 

「「はぁ、はぁ、はぁ」」

 

 

其れを見た俺達は安堵感からか力が抜けそれと同時に変身が解除された

 

 

「見事だ…仮面ライダービルド…仮面ライダーグリスよ…力に呑まれ我を失っていた俺に騎士としての誇りを取り戻させてくれた事に関してはお礼を言おう」

 

 

 

俺達は驚いた表情で声が聞こえた方を見るとベルディアがボロボロな姿で膝をついていたそしてベルディアは何とか立ち上がり

 

 

「約束通りにあの勇者にかけた呪いを解除してやろう…」

 

 

そう言うとベルディアは手のひらから黒い光を街中へと飛ばした

 

 

「貴様達ならば…俺以外の幹部を倒して魔王様の元に辿り着く事が出来るかもしれんな…もっともあの男…下手したら魔王様以上の力を持つかもしれん男に出会ったとしたら話は別かもしれんが…」

 

 

そう言うベルディアの身体は次第に薄くなっていく

 

 

「消滅する前に教えてくれ!お前にフルボトルを渡したのは…パンドラパネルを渡したのは…ナイトローグという男じゃなかったか?」

 

 

「ナイトローグ?…違うパンドラパネルは魔王様から貰ったが俺に訳の分からん物を植え付けたのは…グハァ!!!」

 

 

そこまで言い掛けていたベルディアの身体を一本の触手が貫く

 

 

「ベルディア!!」

 

 

俺がそう叫んだのも虚しくベルディアは触手に貫かれた後倒れると静かに消滅した。

 

 

『お喋りが過ぎるぜぇベルディア?ま、所詮はアンデット、俺が力を与えたところでたかが知れてるか』

 

 

そう言いながらとある人物が俺達の前に現れる。俺はその人物を…この声を…人を馬鹿にするような喋り方をする奴を俺は知っている!!

 

 

「お前は…エボルト!!」

 

 

『惜しい!今の俺はブラッドスターク』

 

 

エボルトいや、スタークは以前と変わらない人をおちょくる態度でそう言ってきた

 

 

「何故お前がこの世界に居るんだ!!お前は俺が新世界を作った時に消滅した筈だ!!」

 

 

『さぁね?どうして俺が消滅しなかったのか其れを説明する必要はねぇし第一この世界に迷い込んだのはお前達だけじゃねぇって事だそれに今回はほんの挨拶代りさ』

 

 

「何だと!?」

 

 

『俺の力は完全には取り戻せてはいない。お前と遊ぶのは完全に力を取り戻せた後だその間は俺の用意したゲームを楽しんでくれよ?…じゃあな? チャオ!!』

 

 

そう言うとスタークは高速移動でその場から消えその場には残ったのは俺とカズマそしてアクアだけだった

 

 

そして戦闘終了後ギルドの職員達にベルディア討伐成功を報告すると(パンドラパネルとブラッドスタークの事は伏せた)後の処理を任せ俺達はウィズの店に帰ると今回の戦闘で手に入れた情報を改めて整理する

 

 

「まさかスタークの奴が生き残っていたとは…成る程この間会ったナイトローグの装備はスタークがこの世界の人間に与えた物だったのかこれでひとつの謎が解けたな」

 

 

 

「ねぇめぐみんカズマあのエボルトって奴は一体何者なのよ?」

 

 

そんなアクアの質問には代わりにカズマが答える

 

 

「エボルトは仮面ライダービルドのラスボスなんだよ。序盤では今俺達の目の前に現れたブラッドスタークって奴の姿で現れて主人公達を手助けしたり成長を促したりして所謂敵か味方か分からないポジション的な奴だったんだか…」

 

 

「そんな奴の本性は破壊を楽しむ地球外生命体で地球にいる目的はパンドラボックスを復活させる事と完全体の力を取り戻す事そして地球を滅ぼす事だったんだ」

 

 

そして俺はカズマの言葉にそう補足する

 

 

「パンドラボックスって…もしかして貴女達がベルディアから手に入れたパンドラパネルと関係があるのかしら?」

 

 

珍しく的を得た質問をしてくるアクア

 

 

「パンドラパネルはパンドラボックスを形成する6枚のパネルの事をいうこれも新世界が形成される際に消滅した筈なんだか…」

 

 

「でもこの世界ではエボルト…スタークも存在しているしパンドラパネルもまた存在している…で良いんですよね戦兎さん?」

 

 

「その認識で問題はない。スタークが存在している限りこの世界でも旧世界で起きたのと同じ悲劇が再び繰り返されるのは間違いない」

 

 

俺の言葉を聞いたカズマもアクアもとても不安そうな表情を見せている特にカズマはテレビでスタークが起こした悲劇を知っているのだろう特に不安そうな色が強かった

 

 

そんなカズマの姿を見た俺の脳裏には旧世界での悲劇が蘇る…この世界では絶対にそんな悲劇は引き起こせない!ゆんゆんやこめっこ、アクアにカズマといった大切な仲間達を絶対に守り抜いてみせる!!

 

 

俺はカズマ達には知られないようにそして俺に旧世界で未来を託して命を散らしていった仲間達に強く誓った

 

 

********************

 

 

ベルディア討伐から数日後俺達は怪我が治ったゆんゆんと共にギルドへ向かって歩いていた

 

 

 

「ゆんゆんもミツルギも怪我が治った良かったぜ」

 

 

「これもアクアの治癒魔法のおかげですね」

 

 

そうあの後アクアは自身の治癒魔法によりゆんゆんやミツルギを初めとするベルディアとの戦いで傷ついた冒険者達を治療して回っていたのだ

 

 

「当たり前でしょ?私は水の女神アクア様よ!あの程度の治癒魔法は朝飯前よ!!」

 

 

俺とカズマに褒められて有頂天になっているアクア

 

 

その時のカズマも今回ばかりは素直にアクアを褒めてやるかと呟いていたので何だかんだ言ってカズマとアクアは名コンビなのだなと考えていると

 

 

「今思ったんですけどアクアさんの神聖魔法を使えばベルディアを倒すまではいかなかったとしても弱体化させる事が出来たんじゃ?」

 

 

「「「あっ」」」

 

 

ゆんゆんの何気ない一言により俺達の空気が凍りつくどうやら俺達全員その方法を考えなかったようだ

 

 

「ま、まぁ無事にベルディアを倒す事が出来たんだから良いじゃねぇか!」

 

 

「そ、そうよ!ベルディアの報酬金も手に入るんだからそれで良いわよね!」

 

 

…確かに結果的にはベルディアは討伐出来たのだから何の問題はない筈だ決して俺達のアホ過ぎる凡ミスを誤魔化す為ではないそう自分達に言い聞かせながら俺達はギルドの扉を開けた

 

 

 

 

今日はギルドから報酬金が支給される日だ。キャベツの報酬金そしてベルディア討伐の報酬金を今日受け取る手筈となっている

 

 

その為かギルド内は既に出来上がっている冒険者達で溢れており一瞬此処は本当にギルドなのかと思ってしまった

 

 

「めぐみん本当に良いのか?俺達がベルディア討伐の報酬金の半分も貰って?」

 

 

「私ひとりでは奴を倒す事は出来なかったですしカズマにも報酬金を受け取る資格は充分あるので遠慮なく受け取って欲しいです」

 

 

因みに俺は残った報酬金もギルドの冒険者達と折半するつもりだ。

 

 

ベルディアを討伐出来たのはカズマ達ではなく他の冒険者達のサポートがあったおかげだ。彼らがベルディアの配下であるアンデットを引き受けてくれたからベルディアとの戦いに専念する事が出来た。だから彼らにも報酬金を受け取る資格がある

 

 

そんな事を考えているとルナが俺達の元へと歩いてくる…その時俺は見逃さなかったルナが何故か申し訳なさそうな表情を浮かべいたのを

 

 

「サトウカズマさんそしてパーティーの皆さんベルディア討伐おめでとうございます!ここにベルディアの討伐により報酬金3億エリスを進呈致します!」

 

 

その言葉にギルド内に大歓声が広がるが俺には先程のルナの表情がどうしても気になりルナに問いかけた

 

 

「ルナさん私達に一体何を隠してるんですか?言いたい事があるならばはっきりと言って下さい」

 

 

「やはりめぐみんさんには分かりますか…」

 

 

そう言うとルナは大変言いづらそうな表情になるとゆっくりと口を開いた

 

 

「実はカズマさん達に損害賠償請求が来ているのです…カズマさん達の戦いにより壊れてしまった障壁と民家そして怪我人の治療費など締めて3億4千万エリスになります…普段我がギルドとアクセルの街はめぐみんさんの発明品に大変お世話になってはいますし魔王軍幹部討伐の功績は素晴らしいですが…せめて一部の賠償金は支払って頂きたいと話になっているんです…」

 

ルナの言葉にカズマは勿論アクアやゆんゆんは凍りつき俺は静かに天を仰くしかなかった…



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この素晴らしい幽霊退治に祝福を!!

今回はとあるライダーのエピソードを元にしています

あるキャラのキャラ崩壊に注意してください


ベルディアを討伐したのは良いが結果的には4千万エリスの借金を背負う事になった俺達は借金を返済する為クエストをこなす日々を送っていた

 

 

「すっかり寒くなったな」

 

 

もうすぐ冬の季節になる所為で寒い日々が多くなって来た。こんな日は暖かい鍋でも食べないなぁと考えながらギルドの扉を開けるとカズマとゆんゆんそしてアクアが金髪の女性がいるのを見つけた

 

 

そしてその金髪の女性は俺の姿に気づくと嬉しそうな表情を浮かべると俺に近づき話しかけて来た。その女性はあの変態女騎士だ

 

 

「お前がめぐみんか私は新しくパーティーに入ったクルセイダーのダクネスだ」

 

 

「カズマ?これは一体どういう事ですか?」

 

 

カズマはこいつの変態性を知っている筈だ今更仲間に入れるとは考え難かった

 

 

「俺だってこんな奴を仲間に入れたくはなかったがアクアは高い酒で買収されてなすっかり乗り気なんだよ…」

 

 

カズマが指差した方向を見ると既に出来上がっているアクアが冒険者達と大騒ぎしているのが見えた

 

 

俺は無言で近づくと黙ってアクアの足を払うそしてアクアはそのままひっくり返り頭を床へと打ち付けのたうち回る俺はそんなアクアを無視してカズマ達の様子を見る

 

 

「それでお前達は何故こんな季節になってもクエストをしているのだ?お前達はベルディアを討伐し報酬金を得た筈だろう?」

 

 

そんなダクネスの言葉を聞いたカズマは忘れていた怒りを思い出したのか

 

 

「チキショウ!本当なら今頃はベルディアの討伐金を手に入れて引き篭もりの日々を送っていた筈なのによ!」

 

 

そう言ってカズマはギルドのテーブルに両手を叩きつける

 

 

「だったら私が残りの半分の借金も肩代わりしても良いんですよ?借金の半分は私が返していますしもう半分返すのも変わりませんが?」

 

 

「俺にだって一応プライドはある。流石に全部返して貰うのは申し訳ぇよ!!」

 

 

そうあの後俺は発明品の売り上げ金により借金の半分を返す事が出来た本当ならばそのまま返す事も出来たが先程言った通りカズマ本人が断ったのだ

 

 

「でもよぉ俺達はあの魔王軍幹部ベルディアを倒したんだぜ?それなのに借金を背負わせるなんてこの国の連中は頭が可笑しいだろ!」

 

 

ゆんゆんもカズマの言葉に同意するように頷く

 

 

「確かに言っている事は納得は出来るけど…命懸けで戦った人に対して報酬金どころが借金を背負わせるなんてこの国の司法は一体どうなってるのかしら?」

 

 

 

ゆんゆんの言う通り明らかにおかし過ぎる命懸けで戦った冒険者達に借金を背負わせるなんてホントこの国の仕組みはどうなってんだ?

 

 

「……」

 

 

俺がふとダクネスの方を見るとダクネスは何かを考え込んでいる表情になっていた。そんなダクネスに俺が話しかけようとした時

 

 

 

「今日も賑やかだね君達は」

 

 

其処にはベルディアの怪我から回復したミツルギが立っていた。因みにその姿は普段の鎧ではなくカズマが普段着ているジャージとは色違いのを着ていた

 

 

「アクア様。治癒魔法をありがとうございますおかげで僕の腕も元通りになり動かずのも問題はありません」

 

 

「私にかかればあの程度の怪我ぐらい直すのは簡単よ?でもあんたの傷は思ったよりも深くなかったのよてっきり致命傷ものだと思う思ってたから」

 

 

「それはこれのおかげさこれが僕の身を守ってくれたんだ」

 

 

そう言ってミツルギは壊れたフルボトルを出した

 

 

「これは…フルボトル?成る程このフルボトルのおかげで致命傷にならずに済んだという事ですね」

 

 

「でもその所為で君から貰ったフルボトルが壊れてしまったこのお詫びは必ず…ってん?」

 

 

その瞬間ミツルギが持っていた傷ついたフルボトルは何かの時計の形をした物体に変化した

 

 

「これは…」

 

 

俺とミツルギは目の前で起きた事に困惑していた何故フルボトルが別のアイテムに変化したのかしかもこの時計は一年前の事件で見た事のあるものだった

 

 

「何故フルボトルが別のアイテムに…益々謎が深まったな」

 

 

色々と気になるが今のところはどうしようもない為俺は一旦気分を切り替える事にした

 

 

「別にお礼を言う為だけに来た訳ではないでしょう?本題の方を言ったらどうです?」

 

 

「流石はめぐみんさん。実はこの街に拠点を構える事にしてね今日はその拠点に引っ越すからその手伝いをして貰いたいんだ」

 

 

「分かりました。そういう事ならばお手伝いしましょう人手なら居ますからね」

 

 

そう言うとカズマ達を連れて俺達はミツルギの屋敷へと向かった

 

 

 

「ここがこの街で1番の屋敷ですか…ミツルギさん達はこの屋敷を拠点に活動をするんですよね?」

 

 

その屋敷は街の外れにありながら中々に広くミツルギの話によると元は貴族が住んでいた物件らしかった

 

 

「そのつもりだよ恐らくはこの街がこれからの戦いに重要な意味合いを持つ事になるかも知れない。その為にもアクセルに拠点を構えて置いた方が良いからね」

 

 

「成る程確かにこの街を拠点にするには屋敷でもあった方がなにかと都合は良いでしょう」

 

 

屋敷は広いだけあってミツルギ達だけでは掃除の手が回らなく俺達も掃除の手伝いをする事になった

 

 

「にしても本当に広いですよねこの屋敷は、ミツルギさん達だけで住むつもりですか?」

 

 

「基本的にはそのつもりだよ。でも、非常事態の場合は他の冒険者達にも解放する事を考えているよ」

 

 

「流石はミツルギさんですね」

 

 

こいつは本当に性格がイケメン過ぎる取り巻きのふたりも夢中になるのが良く分かる

 

 

「おい、ミツルギこの荷物は何処に運んだら良いんだ?」

 

 

「それは大広間に運んでくれないか?僕とカズマは大荷物を運んでいくからめぐみんさんとゆんゆんさんはクレメアとフィオの荷物と細かい小物を運んでくれないか?」

 

 

「取り巻きのふたりは手伝わないのかよ?」

 

 

「ふたりは今レベル上げの為にアクセルの街を離れているんだ。ベルディアとの戦いの時に何も出来なかったのが余程堪えたらしいからね」

 

 

「ふ〜ん。でもあいつらふたりだけで大丈夫なのかよ?」

 

 

「それなら心配はないさふたりにはダクネスさんとアクア様がついてるからねいざという時は守ってくれる筈さ」

 

 

「ミツルギ…お前…」

 

 

どうやらミツルギはあのふたりのヤバさを知らないらしい取り敢えず俺はふたりが無事に帰って来れる事をそっと祈った

 

 

屋敷の掃除も一息つく頃にはすっかり日が暮れていたので俺達はそのままミツルギの屋敷へと泊まる事となり俺達はミツルギが用意してくれた客室へ向かう

 

 

そして俺は部屋に入ってすぐにベッドに入ると掃除の疲れもあった為とそのまま眠りに落ちていった

 

 

夜も更けてふと目が覚めた俺は尿意を感じトイレに行こうとドアに手を触れた時にカズマとゆんゆんの悲鳴が聞こえ扉がぶち破れた

 

 

「イヤァァァ!!!めぐみ〜ん!!」

 

 

「マジヤバイ!アレはマジでやば過ぎるって!!」

 

 

ふたりはパニックに陥っているのか何を言っていのがよく分からなかった

 

 

「落ち着いて下さい。一体何があったんですか?」

 

 

「人形が!!人形が沢山空に浮かんで私達に襲い掛かって!!」

 

 

「人形が襲い掛かった?ゆんゆん夢でも見たんじゃないんですか?」

 

 

俺が呆れた表情でそんな言っているとカズマが

 

 

「めぐみん…うしろを見てみろ」

 

 

カズマの言葉に後ろを振り返ると…そこには目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目…数え切れないぐらいの沢山の人形達が窓に張り付いて此方を見ていた周りが暗いだけに人形達の目が月の光に照らされて一層不気味だった

 

 

「うそーん」

 

 

俺がボソリと呟くのとカズマとゆんゆんが悲鳴をあげ逃げ出すのとは同時だった

 

 

俺達は廊下をひた走るそれ間後ろを振り返る事は怖くて出来なかった…(笑い声が聞こえてくるから)

 

 

曲がり角を曲がると俺達の声を聞いたのか様子を見に来ていたミツルギと衝突した

 

 

「イタタタ…君達こんな夜中に騒いで何を考えているんだ!迷惑というのを考えたらどうだい!?」

 

 

ミツルギのグウの音も出ない正論にカズマが

 

 

「ミツルギそれは俺達の後ろにいる物をみても同じ事が言えるか?」

 

 

カズマに言われた通りにミツルギがカズマ達が逃げて来た方向を見ると…

 

 

「ぎゃああああ!!」

 

 

襲い来る人形達を見たのか先程のポーカーフェイスは何処にやらミツルギは真っ青になって悲鳴をあげた

 

 

******************

 

 

あの恐ろしい人形の大群は一体なんだ?僕とめぐみんさん達は廊下を必死に走って逃げていた

 

 

その間も人形達も様々な形で嫌がらせを仕掛けてくる食器棚を倒してきたり花瓶や絵画などが倒れて来たりするというポルターガイスト現象という形で…

 

 

 

そして屋敷の外まで逃げて来ると大量の人形が後を追って出て来た。その時僕は感じた自分の恐怖心がマックスに至るのを

 

その時持っていた時計から強い光が溢れたのと同時に腰に謎のベルトが巻かれており両手には赤いライドウォッチと青いライドウォッチが握られていた

 

 

僕は殆ど無意識のうちにふたつの時計をベルトに取り付けると反時計回りに回転させる

 

 

「変身!!」

 

 

『ライダータイム!ゲイツ!!』

 

 

『ビビルタイム! びびるぅ~ ビ・ビ・ル! 』

 

 

******************

 

 

ミツルギは全身の色が真っ青で顔にひらがなでびびると描かれた仮面ライダーへと変身した

 

 

「ええ!?ミツルギさんも仮面ライダーに!?」

 

 

ゆんゆんはミツルギが仮面ライダーに変身した事に驚きを隠せてはいないようだった。しかもあの仮面ライダーは…

 

 

「アレは仮面ライダーゲイツじゃねぇか!」

 

 

やはりカズマも知っているようだ。俺自身1年前の事件で一度見ただけなので記憶が曖昧だがでもあのフォームは見た事がない。しかしカズマの様子を見ると何か知っているようだ

 

 

「カズマはあの仮面ライダーを知っているのですか?」

 

 

「仮面ライダーゲイツは平成ライダー最終作の仮面ライダージオウに登場する2号ライダーなんだよでもあんなフォームはない筈だが」

 

 

カズマがそんな事言っている間にミツルギと人形達との戦闘が始まる。ミツルギの腰は完全に引いているが一応は勇者としてのプライドがあるのか変身した以上は逃げるという事はしていなかった

 

 

「ヒィ!来るなぁぁぁ!!!」

 

 

ミツルギ本人は怖がっているだけなんだろうがその動きが人形達の動きと上手く噛み合い絶妙な回避と攻撃を生み出していた

 

 

「もう勘弁してくれぇぇ!!」

 

 

ミツルギがそう叫ぶとミツルギの身体を青いオーラが包み込みそのオーラに触れた何体かの人形が粉砕するそしてその様子を見た俺達は

 

 

「まさかミツルギの恐怖心が上がった分だけあのフォームの攻撃力が上がるのかよ!?」

 

 

「ミツルギの恐怖心がそのまま自分のパワーになる…正しく最強フォームと言っても良いかもしれないな」

 

 

「最強フォームというより最『恐』フォームなんじゃ…」

 

 

最後にゆんゆんのツッコミが入るそしてミツルギと人形達との戦闘の方も終わりに入った

 

 

「これで…決まって下さい!!」

 

 

「フィニッシュタイム!ビビルタイムバースト!」

 

 

ミツルギはジャンプするとまるで幽霊が襲いかかる様な体勢で人形達の大群へと突っ込むと残りの人形達は纏めて爆砕した

 

 

「もう…無理!!限界だぁ!!」

 

 

そう言うとミツルギは変身解除すると尻餅をつくと大きく息を吐いた

 

 

そんなミツルギの様子をみたカズマは意地の悪い笑みを浮かべるとミツルギに近づき

 

 

「しかしミツルギがホラー苦手だったなんて知らなかったぜ」

 

 

「幼い頃にお化け屋敷で迷子になった事があってねそれ以来すっかりホラー系が苦手になってしまったんだ。こんな事クレメアやフィオには話せなくてね」

 

 

確かに大の男がお化け苦手なんて言えないよな俺はミツルギの言葉に同意するように頷く

 

 

「でも私達はミツルギさんの仲間なんですからそんな事は隠さなくてもいいんですよ?私達4人ならばお化けやアンデットなんか怖くないですよ!」

 

 

ゆんゆんの言葉にミツルギは嬉しかったのか涙目になっていたが

 

 

「ゆんゆん。4人居ても怖いものは怖いぞ?」

 

 

カズマのボソと呟いた言葉に俺達は吹き出して暫く笑いあっていた

 

 

 

 

そして夜も明けて朝になりめちゃくちゃになった屋敷の掃除もひと段落した後クレメアとフィオのレベル上げを終えたのか帰って来ていたアクアが屋敷の片隅で何かをしているのを見つけた俺達はアクアに話しかける

 

 

「何をしているんですかアクア?」

 

 

「このお墓が汚れているのを見つけたから私が綺麗にしてあげたのよ」

 

 

アクアが指差した方向には綺麗になった墓石があった

 

 

という事は昨夜暴れたのはその墓の亡霊か?俺がそう考えているとアクアは俺の考えを見抜いたのか

 

 

 

「昨夜暴れたのは近くの墓地から溢れて来た亡霊の魂でこの屋敷に元からいた魂じゃないわよ」

 

 

「アクア様には分かるのですか?その幽霊が悪い物ではない事に」

 

 

ミツルギの言葉にアクアは悲しそうな表情を浮かべるとこの屋敷に元からいた亡霊に関して話し始める

 

 

「この屋敷には貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた隠し子の霊がいだのよ。生きていた頃は貴族の父親によって幽閉されて母親も失踪その上元々身体が弱かった父親も彼女を残して病死してしまったのよ。そしてひとり屋敷に残された少女は父親と同じ病に伏しこの屋敷で一人で寂しく死んでいったの。そんな彼女の名前はアンナ=フィランテ=エステロイド。好きなものはぬいぐるみと人形、冒険者の冒険話!でも安心してこの霊は悪い子じゃないわ私達に危害は加えないはずよ!おっとでも子供ながらにちょっぴり大人ぶった事が好きなようね甘いお酒を飲んだりしてたみたいよ。だから時々で良いから冒険の話と甘いお酒をお供えして欲しいみたいよ?」

 

 

初めは悲しそうな様子であったが話していく内に段々とテンションが上がっていくアクアにカズマは

 

 

「アクアそれはお前の作り話じゃないよな?」

 

 

余りにも具体的過ぎるアクアの話にカズマを含めた人間(ミツルギ意外)は疑いの目線を送る

 

 

「作り話なんかじゃないわよ悪魔がいるように霊も間違いなく存在するのアンナの事は怖がるなとは言わないけどでも出来るだけ優しくしてあげて欲しいのそうすれば彼女の心も満たされて天へと登る事が出来ると思うから…」

 

 

 

先程のテンションは何処にいったのか何時もとは違う優しさに溢れたアクアの言葉にセンチメンタルか気分になった俺達は彼女の墓にそっと手を合わせたのだった

 

 

 



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この素晴らしい冬将軍に祝福を!!

幽霊屋敷の騒ぎが終わった日の昼間俺が遅めの昼食を食べようとギルドに顔を出すとセシリーとアクアが地ベタに正座をしておりそのふたりを睨みつけているカズマがいた

 

「一体何があったんですか?」

 

その光景を見た俺は近くの椅子に座っていたゆんゆんに質問する

 

「それはあのふたりが幽霊屋敷の騒ぎの真犯人だからなの」

 

「真犯人?意味がわからないのですが?」

 

「言った通りの意味よあれは私達が幽霊屋敷の騒ぎについてギルドに報告に来た時の話なんだけど」

めぐみんがギルドにやって来る少し前

 

「しかしあの幽霊屋敷の騒ぎがギルドに知られていたとは思わなかったぜ」

 

私達はあの幽霊屋敷の騒ぎの後ギルドに事の報告をしにやって来た時にルナさんからあの幽霊屋敷の話を聞いていたのだ

 

「はい。あの幽霊屋敷の話は当ギルドでも把握しておりまして近い内に特別クエストとして掲示板の方に張り出す予定だったんです」

 

ルナさんはそこまで言うと机の下から数枚の金貨と銀貨が乗ったトレイを取り出す

 

「まだ貼り出されていなかったとはいえカズマさん達が幽霊屋敷の問題を解決してくれたのは事実なので当ギルドから特別手当を支給します。ご確認下さい」

 

「やったわねカズマさん!早速これでしゅわしゅわを飲みましょうよ!」

 

「馬鹿か!この金は冬を越す為の資金にするだよ!何でもかんでもめぐみんの世話になる訳にはいかねぇだろ!」

 

カズマさんは怒鳴りながらアクアさんにそう言っている。カズマさんはいい加減そうに見えても意外と義理固いところがあるなと考えていた私はふと気になった事をルナさんに質問する

 

「ルナさん。あれだけの幽霊が現れていたのにこの街のアークプリーストは何もしなかったんですか?」

 

私の言葉にルナさんは不思議そうな表情になると

 

「どうやらあの幽霊達は近くにある共同墓地からやって来たようなんです」

 

「共同墓地ってあそこにある?何故そんなところから?」

 

「誰かのイタズラなのかあの墓地全体に結界がはられていたようなんです。それで居場所をなくした幽霊達が近くにあったあの屋敷に住み着いたしまったようなんですよ」

 

「そんなの有り得ないわよ!」

 

そんなルナさんの言葉を否定するようにアクアさんが声を上げた

 

「彼処の墓地の結界は我がアクシズ教の信者であるセシリーがはっていたのよ!そんな事絶対にありないわよ!」

 

墓地の結界を張ったのはアクシズ教のセシリーさん?…嫌な予感しかしない。カズマさんも同じ考えなのか顔を引攣らせておりアクアさんをギルドの隅っこに連れて行き詳しく聞こうとすると丁度アクアさんの姿を見つけたセシリーさんが走り寄って来た

 

「アクア様!!今日も大変麗しいお姿…早速宴を始めましょう!アクア様がお好きな高級焼酎を沢山ご用意します!」

 

そう言うと何処かに走り出そうとするのをカズマさんが呼び止める

 

「セシリーお前アクアに頼まれて墓地の結界をはったんだよな?その辺りを詳しく教えてくれないか?」

 

カズマさんの言葉を聞いたセシリーさんは

 

「結界て…あの共同墓地の事よね?大丈夫よ!アクア様の言う通りに聖なる結界をちゃんとはったからこれであの墓地には彷徨える魂は居なくなった筈よ?さぁ、ゆんゆんさんもお姉ちゃんの事を沢山褒めてくれても良いのよ?」

 

…つまりセシリーさんがはった結界の所為で幽霊屋敷の騒ぎが起きてそれを私達が解決をしたと、でもその結界をはるように言ったのはアクアさんで…これってもしかしなくてもマッチポンプって奴よね?これってかなりまずいんじゃ…カズマさんもまたもや私と同じ考えに至ったのか顔色真っ青にしていた

 

そしてカズマさんはアクアさんとセシリーさんに近づくと無言でふたりにアイアンクローをかけた

 

「い、イダダダ!!な、何をするのよカズマ!!」

 

「さ、流石のお姉ちゃんもこんなプレイは…」

 

「ギルドからの特別報酬は受け取らない…良いな?ふたり共」

 

聞いているこっちが震えるぐらいの怖くなる声色でカズマさんはそう言う。そんなカズマさんの迫力に押されたアクアさんとセシリーさんは何も言えなく静かに「ハイ…」と答えたのだった

ゆんゆんから話を聞いた俺は呆れた表情でアクア達を睨みつけた恐らく悪気は無かったのだろうがやった事はまず過ぎる。ギルドから何かしらの罰を受けても文句は言えないぐらいだ

 

「あの後カズマさんがふたりの首根っこを掴んで関係者達に土下座させたのよ…ホントみんなが許してくれて良かった」

 

ゆんゆんはそう言ってため息を吐くそんな話を聞いた俺はゆんゆんとカズマはこのメンバーにおける苦労人ポジションになるなと俺はそう確信しカズマとゆんゆんに同情の目線を向けているとダクネスがクエストの紙を持って此方に歩いてくるのが見えた

 

「そこまでにしておけ確かにこのふたりは別に悪意を持ってやった訳ではないだろう」

 

ダクネスの言葉にカズマは納得し切れない表情を浮かべたが取り敢えずはアクア達を正座から解放するとダクネスの方を向く

 

「ところでお前が持ってる紙はなんだよ?」

 

「これか?私がお前達のパーティーに入ってからまだこのメンバーでクエストを行った事はないだろう?私の実力を知って貰う為にもちょっとした討伐クエストに行こうじゃないか」

 

 

そう言ってダクネスが差し出した用紙には雪精の討伐クエストが描かれていた報酬金の方は…雪精一体につき十万エリス!?

 

「このクエストどう見ても美味しすぎないか?難易度の割には報酬金が高いと思うんだが」

 

俺がジト目でダクネスを見つめると何故かダクネスは顔を赤く染め息をハァハァと吐き始めたので俺は無視する事にしカズマ達とそのクエストについて相談する事にした

 

「めぐみんこの雪精って一体何なんだ

よ?」

 

「雪精というのは冬の間に現れる精霊みたいな物です。人畜無害で一体倒す事に一日早く春が近づくと言われているんですよ」

 

「成る程だからこんなに討伐金が高いんだな。でも何で他の冒険者はこのクエストをやらないんだ?どう見ても美味しいクエストだろこれ?」

 

「そもそも冬のクエストは過酷な物が多くベテランの冒険者でも基本的には冬の間はクエストを避けているの」

 

カズマの質問に俺の代わりにゆんゆんはそう答えた

 

「とりあえずそのクエストを受ける事にするか一日も早く借金を返さなきゃいけねぇし冬を越す為の資金も必要だからな」

 

リーダーであるカズマの意見に反対する声も上がらなかったのでクエストを受ける事になった。その時の俺は気づくべきだったダクネスがひとりニヤニヤとしていた事を…

「へ?めぐみん今回のクエストについて来ないのかよ?」

 

「はい先日のベルディア戦で手に入れたボトルの浄化がもうすぐ終わるのでそちらの方に集中したいのです浄化が終わり次第合流するので先にクエストに向かって貰って構いませんよ?」

 

「そう言う事なら分かったぜじゃあ先に向かってるから浄化が終わり次第来てくれよな」

 

俺はカズマとそう話すともうすぐ終わるボトルの浄化をする為にラボへと戻って行った

 

 

********************

 

 

雪原走りながら俺は手にしたショートソードでまた一体雪精を討伐する

 

「よしゃ!これで9体目!!」

 

ニヤニヤしながら俺はそう言うと他のメンバーの様子を見る。ゆんゆんは中級魔法で何体か纏めて討伐しアクアは何故か虫取り網で雪精何体か捕らえていた

 

「アクアお前何で雪精を捕まえてんだよ?」

 

「そんなの決まってるじゃない雪精を捕まえておけばいつでも好きな時にしゅわしゅわを冷たいままで飲めるのよ?めぐみんのおかげでギルドでは冷たいしゅわしゅわ飲み放題だけど自分の部屋でも冷たいしゅわしゅわを沢山飲みたいのよ!!」

 

こいつはそういう奴だったと俺は思い直すと今回のクエストで初めて同行する事になったダクネスを見ると

 

「ハァァァ!!ヤァァァ!!」

 

と果敢に剣を構えながら雪精へと向かって剣を振り回すダクネスだがその剣は雪精に擦りもしなく虚しく空振った

 

「へ……?」

 

俺は思わず自分の目を疑ったそりゃあ雪精は小さいし一度や二度ぐらいならば攻撃が外れる事ぐらいはあるだろうしかし一度も当たらないというのは…そんな俺の視線に気づいたのかダクネスは申し訳なそうな表情になると

 

 

「実は私はかなりの不器用なんだその所為で相手に剣が当たった事は一度もないんだ」

 

「マジかよ…」

 

「あの、両手剣のスキルとか取らないんですか?そうすれば少しは命中率を上げる事が出来ると思うんですけど」

 

「そんな事をしたら敵の攻撃に当たる事が出来なくなるじゃないか!そんなの気持ち良くなれ…げふん!クルセイダーとしてお前達を守れなくなるじゃないか!!」

 

「駄目だこいつ」

 

俺は頭を抱えた攻撃の当たらないクルセイダーって何なんだよていうか自分の性癖を優先させてんなよ色々と突っ込みたい事がありすぎた

 

「ゆんゆん…お前とめぐみんだけだよ…このパーティーでまともなのは」

 

「カズマさん気を落とさないで下さい…」

 

そう言ってゆんゆんは俺の肩に手を置く本当に良い子過ぎだろ。もうこの子が俺のメインヒロインで良い!!俺がそう内心そう考えていると突然周りの空気が変わるのを感じた。

 

そして何処からか法螺貝の音が聞こえその音が聞こえる方向を見ると鎧武者が現れていた

 

「嘘でしょ!?アレ冬将軍じゃない!!」

 

アクアが慌てた様子でそう言う

 

「冬将軍ってあの冬将軍の事か?そんなに慌てる必要があるのかよ?」

 

「カズマこの世界では冬将軍は冬にしか出現しない強力モンスターなの罪のない雪精を討伐している冒険者達を倒す為にその姿を現わすのよ」

 

「マジかよ!!道理でこんなに美味しいクエストなのに誰もやってねぇと思った!!」

 

それ以前にあのダクネスの持って来たクエストという時点で少しは警戒すべきだった!!

 

俺はそんな後悔の念に捕らわれたがそんな俺の気持ちも知らずにアクアやたらと強気な姿勢を崩さずに冬将軍と向かい合うと

 

 

「ちょっと!!雪精を狩る事ぐらい許しなさいよ!!良いじゃないまた冬になれば勝手に増えるでしょ!?」

 

アクアの言葉に冬将軍の怒りのオーラが増すのが分かった

 

「オイ馬鹿!辞めろ!奴をこれ以上怒らずんじゃねぇ!」

 

俺の言葉にアクアは

 

「大丈夫よ!!だってこっちには仮面ライダーがふたりもいるのよ!!冬将軍ぐらい楽勝よ!!」

 

 

「馬鹿か!!あんな奴が出て来るとは思わなかったしそもそもクエストに行くつもりじゃなかったからベルトなんて持ってきてねぇよ!!」

 

「私のベルトもベルディア戦で傷ついちゃったからまだ修理中なのよ!!」

 

俺とゆんゆんの言葉を聞いたアクアは先程の強気な姿勢は何処に行ったのか真っ青になるとカタカタ震え始めた

 

「ど、ど、どうすんのよカズマ!!冬将軍完全に怒ってるし今更謝っても絶対許してくれないわよ!!」

 

アクアがそう言っている間に冬将軍は俺達との間合いを詰めて来る。すると何をトチ狂ったのかダクネスが突進して来る冬将軍の前に立ちはだかる

 

「私のパーティーメンバーには指一本触れさせん!!」

 

「ダクネス…」

 

俺はその言葉に感動を覚えたあのドMな事しか考えていないダクネスらしからぬ発言だからだ

 

「そして仲間を逃す事には成功するが私だけは卑劣な敵の手に落ち、その後それはもう酷い辱しめにあう事にはなるだろうが私は屈しはしないぞ絶対に!!」

 

前言撤回こいつはやっぱり単なるど変態だ!!

 

「何言ってんだよこの馬鹿!!」

 

俺がダクネスの頭を鷲掴みにして地面に押し付けたその時

 

 

「カズマさん危ない!!」

 

ゆんゆんの言葉が聞こえたのと同時に一閃の風が吹いた後俺の視界は反転しそして意識を失った

 

********************

 

ビルドのパワーアップアイテムを完成させた俺はマシンビルダー(雪原仕様)でカズマ達の元へと向かっていた

 

「ふう…結構時間がかかったな…カズマ達待ちくたびれてないと良いが…」

 

そう呟きながらバイクを走らせているとゆんゆん達の姿を見つけるとバイクから降りて近づく

 

「すいません遅くなり」

 

俺の言葉は其処で途切れた。何故なら俺の目の前には首の無いカズマの胴体を抱きしめながら泣いていたからだ

 

「これは…ゆんゆん一体何があった説明しろ」

 

そしてゆんゆんは泣きながら説明するカズマが死に至った要因をその要因となった冬将軍についてもそして話を聞いた俺は無言で泣いているゆんゆんとカズマの死体を近くにいたダクネスに任せると俺は冬将軍と対峙した

 

 

「お前がカズマを…絶対に許さない!!」

 

そう叫んだ俺はビルドの顔が描かれた缶型のアイテムを取り出すと2.3回程軽くふるとプルタブを開けた

 

『ラビットタンクスパークリング!』

そしてベルトにラビットタンクスパークリングフルボトルを装填するとボルディクレバーを回転させる

 

俺の周りに現れた『スナップライドビルダー』はビルドのライダーズクレスト型のフレームに変化しており内部にはパンドラボックスの残留物質の代わりに魔力を元ににした発泡増強剤『ベストマッチリキッド』が追加されていた

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!」

 

『シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!』

 

『イエイ! イエーイ!』

 

ラビットタンクのカラーリングに新たに白がメインカラーに追加されトリコロールカラーとなり更に装甲は炭酸の刺激のイメージからかギザギザになり、上半身の一部には泡のような白いドットが表れているビルドの強化形態ラビットタンクスパークリングへと変身した

 

『ウオオオオ!!!』

 

冬将軍は雄叫びを上げながら素早く俺の懐に飛び込んで来るが俺は右肩の『BLDバブルラピッドショルダー』と左脚『クイックフロッセイレッグ』で『ラピッドバブル』という特殊な泡発生させその泡の破裂を活かした高速移動で冬将軍の一閃を避けそしてその時に左肩の『BLDバブルインパクトショルダー』と右脚の『ヘビーサイダーレッグ』で『インパクトバブル』を発生させその泡の破裂時に発生する衝撃波で攻撃を加える

 

そしてその衝撃波に冬将軍が怯んでいる間に更なる追撃を仕掛ける

 

俺は両腕には新たに装着された3本の鋭い刃で高速斬撃を繰り出した

 

右腕に新たに装着された『クイックフロッセイアーム』の『Rスパークリングブレード』は切断力に優れ左腕に装着されている『ヘビーサイダーアーム』の『Tスパークリングブレード』は刺突力に優れている。更に一つ一つに大型のエネルギー刃を発生させることで先程の高速斬撃を可能にしているのだ

 

「これでフィニッシュだ!!!」

 

俺はボルディクレバーを回転させラビットタンクスパークリングの必殺技を発動させる

 

ワームホールの様な図形を出現させるとその中に冬将軍を拘束しそのまま無数の泡と共にライダーキックを叩き込んだ

 

『スパークリングフィニッシュ』

 

そしてライダーキックを受けた冬将軍はそのまま大爆発を起こす

 

爆発が収まると冬将軍は地面に片膝をついており倒すまでには至らなかったが冬将軍の鎧に大きな亀裂を入っているのが分かった

 

そして冬将軍はビルドの力を認めたのかそのまま静かに姿を消したのだった

 

「カズマ…」

 

その後変身を解除した俺は自分の中にある虚無感に嫌でも気付かされたこの世界でも大切な仲間を失ってしまった…俺がもう少し早く駆け付ける事が出来たら…そんな後悔が俺の中に渦巻いていた

 

せめてカズマの死体はキチンと埋葬してやろうと後ろを振り返ると其処にはカズマが居心地の悪そうな表情で此方を見ていた

 

「その…なんだ…元気かめぐみん?」

 

カズマは掛ける言葉が見つからないのか大変申し訳なさそうな表情で俺にそう言う

 

「は?カズマお前何で生きてんの?冬将軍に首を飛ばされた筈だよな?」

 

俺は非常に混乱しながらも何とかカズマにそう言うとカズマは何故自分が生きているのかを説明し始めた

 

********************

 

 

俺が目を覚ますと暗い部屋の中でひとり椅子に座っていた。

 

「ここは…確かあの世界に転生してくる前にいた…という事は俺は…」

 

俺は冬将軍の手によって自分がまたもや死んでしまった事を思い出した

 

「チキショウ!折角転生したのにこんなのありかよ!?しかも俺が死んだ原因はダクネスじゃねぇか!」

 

俺がそう言って頭を掻きむしっていると誰かの気配を感じて前を見ると誰もいない空間にいつのまにかひとりの少女が姿を現していた

 

「私は幸運の女神エリスと申します…サトウカズマさん。残念ながら貴方の冒険はもう終わってしまったのです…」

 

エリスと名乗った少女は悲しそうな表情で俺に対してそう言う

 

「あの…何とか生き返る事とか出来ませんか?このままじゃ未練がありまくりなんですけど…」

 

「貴方は既に一度生き返っています。天界の規定により生き返る事はもう出来ません折角この世界に転生して来てくれたのに申し訳ないと思ってはいますが規則は規則です。貴方がえらべる選択肢はこの世界か貴方が元居た世界に転生する事です…さぁ、貴方はどちらを望みますか?」

 

エリス様は優しく俺にそう問いかけてくる。その言葉により俺はもうあいつらと一緒に冒険出来ないんだと実感してしまう

 

その時俺は改めて感じたあの世界での日常はそんなに悪くはなかった事に…出来ればもう一度あいつらと冒険をしたかったな…そしてエリス様は優しい笑顔を見せながら俺が決断するのをずっと待っていた。そして俺がエリス様に答えを口にしようとした時

 

『カズマ〜!!!あんたの死体再生してあげたから早く戻って来なさい!!』

 

「その声はアクアか!!俺また生き返れるのかよ!?」

 

「私を誰だと思ってんの!?水の女神アクアよ!!この私にかかれば死にたてホヤホヤの死体なら蘇生させる事ぐらい簡単よ!!」

 

「そっちに戻りたいのは山々なんだが俺は天界規定って奴でもう生き返れないって言われてんだけど?」

 

「はぁ!?そんな事を言ってんのは何処の誰よ!!」

 

「えっと…確かエリスっていう女神様だけど?」

 

「エリスってあの胸パッド女神のエリスのこと!?あんな奴の言う通りにする必要ないわよ!!そんな辺境女神よりも地球担当私の方が偉くてすっごいエリートなんだから私が良いと言えば何の問題ないのよ!!」

 

そんなアクアの暴論とも言える話を聞いていたエリス様は顔を引きつらせておりそしてやれやれと息を吐くと

 

「分かりました先輩に免じて特別に下界に戻しましょう」

 

そう言ってエリス様が手をかざすと俺の足元に魔法陣が現れ俺の身体が宙へと浮かびいつの間にか上空に開いていたゲートに向かって上がっていく

 

「カズマさん。もうこんな所に来てはいけませんよ?」

 

エリス様のそんな言葉を聞いたのと同時に俺の視界は真っ白に染まった

カズマが上空に開いたゲートをくぐって現世へと戻っていった後ひとり残ったエリスは静かに笑みを浮かべていた。その時エリスの目が一瞬『赤く』光った事に気づく者は誰もいなかった

 

********************

 

「成る程そんな事があったんですか…」

 

カズマの話を一通り聞いた俺はカズマが無事に生き返って来れた事に安堵すると共に内心どんでもない事になるのではないかと不安を抱いた

 

何故ならばエリスの言う通りならばカズマに対する処遇は異常という事になる。簡単に言ってしまえば俺達はゲームでいうところの無限リトライが可能になっているという事だ。カズマはアクアを連れて来た事を嘆いている事が多いがもしかしたらその逆でカズマはとんでもないチートを持って来たのかもしれないな

 

俺はそう考えながらカズマを死なせた罰として冷たい雪の上で直接正座させていたダクネスを見ると

 

「ハァ、ハァ、良いぞ雪の冷たさと足が痺れいく感覚は!!」

 

「お前喜んでんじゃねぇよ!!それじゃあ仕置きの意味がないだろ!!」

 

罰を受けている筈なのに何故か興奮し出したダクネスにそうツッコミをしているカズマ。なんやかんや言ってダクネスの事を仲間と認めているんだなと俺はカズマの人の良さにしみじみと感心していた

 

その後カズマが死んだ事とアクアの進言によりクエストは中止にして街へと戻る事になった。クエストの報酬に関しては何匹かは討伐をしている為に全くの無駄骨にならずに済んだがアクアとダクネスが調子に乗ってギルドで食事を頼み過ぎた為報酬の殆どが支払いに消えた事になるのは余談である



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この素晴らしい喫茶店に祝福を!!

冬将軍戦で一度死に生き返ってから一週間たった。あれからはクエストには行っておらずに戦兎さんの手伝いをして過ごしていたが今日は特に手伝いも無いという事で散歩にしていたのだ

 

 

「ん?あれは…」

 

 

辺りをキョロキョロと見渡しながら路地裏へと入ろうとしているダストとキースがそこにいた

 

 

「ダストにキールお前達こんな何処で何やってんだよ?」

 

 

「「うひゃあ!!!」」

 

 

そんな俺の言葉に驚いたのかダスト達は変な叫び声を上げる

 

 

「なんだカズマかよ!驚かせるな!!」

 

 

「それはこっちの台詞だ!!…で?お前達はこんなところで何やってんだ?」

 

 

俺の言葉を聞いた後ダストは周りキョロキョロ見渡たすと俺の襟首を掴んで路地裏へと引っ張り込んだ

 

 

「良いかカズマ、これからお前をある店へと連れて行く。其処はこの街に住む女性冒険者達には一切知らされてはいない、いわば男性冒険者達にとってのオアシスなんだ」

 

 

「もし、お前がこの事を街の女性冒険者に知らせた場合は…このアクセルに住む全ての男性冒険者達がお前の敵となりお前の命を狙う事になるだろうな」

 

 

ダストとキースがそんな物騒な事を俺に言って来る。それにしても男性冒険者達とってのオアシスか…丁度今日はやる事が無くて退屈してたところだし行ってみるか

 

 

「わかった、誰にも言わないから俺も連れて行ってくれよ」

 

 

俺の言葉を聞いたダスト達は安心した表情を見せると人目を気にしながら路地裏の奥へと進んで行き俺はふたりの後を追って奥へと歩いて行く

 

 

 

「カズマ、このアクセルの街は他の街に比べてかなり治安が良い事を知ってるか?」

 

 

路地裏を歩いているとダストがふとそんな事を口にする

 

 

「冒険者ってのは基本的には死となり合わせの世界だ。特に王都や魔王軍の侵略が激しい場所では特にな、だから男性冒険者により性犯罪が後を絶たねぇんだよ」

 

 

 

「だからこそそれを防ぐ意味合いも兼ねて所謂そういうサービスをメインとした宿や店が何処の街にもあるんだか、このアクセルの街にだけはそういった物は一切存在してないんだよ。それなのにこの街ではそういった犯罪は全くと言ってもいい程起こっていないんだ」

 

 

ダストの言葉にキースが補足するようにそう説明してくる。…転生してくる前にたまにやっていたエロゲーやネットで読んでもいたエロ本でそういうのを見た事がある。どうやらこの世界ではそういう事が実際に起きているらしいそれならば何故アクセルの街ではそういった犯罪が起きてはいないのだろうか?

 

 

「その理由がこの店だ」

 

 

ダストが指差した先には一軒の喫茶店が立っていた

 

 

「見た感じ只の喫茶店なんだかこの店が本当に男性冒険者にとってのオアシスなのかよ?」

 

 

「店の中に入ってみれば分かるさ」

 

 

 

店の中に入ると店内はピンク色の照明に照らされており全体的薄暗い雰囲気をうけたがそれ以上に目を引くのは店内にいる女性店員の服装だった

 

 

「「「うぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

兎に角エロイ!!エロ過ぎる!!店員の殆どが裸に近い姿をしておりその姿に俺は目を奪われているとダストとキースが鼻息を荒くしながらこの店についての説明を始める

 

 

「驚いたか!!ここはなサキュバスが店員をしている店なんだよ!!」

 

 

「只でさえ男性冒険者は普段は色々と溜まる事が多いのにそれを発散させる事が出来ない!!そんな俺達にとっての救世主といっても良い場所がこの店なんだ!!」

 

 

ダスト達が説明を終えたのを見計らって店員のひとりと思われるサキュバスが俺達に近づいてきた

 

 

「いらしゃいませ。このお店をご利用するのは今回が初めてでこざいますか?」

 

 

「いや、俺とキースは今回で2回目で初めてなのはこいつです」

 

 

ダストの言葉を聞いた店員は俺に接客スマイルを向けた後俺達をそれぞれ違う席へと案内するとサキュバスの店員が俺に一枚の用紙を差し出す

 

 

「それでは初めてのお客様にこのお店について説明をさせて頂きます」

 

 

そういうとサキュバスの店員は身体をクネクネと官能的な動きを見せる。それを見た俺は不覚にも自分の喉がゴクリとなるのを感じた

 

 

「ここではお客様のご要望通りの夢を見せる事が出来るお店です。その見返りとして多少の精気を頂きますが日常生活には何の支障はありませんのでご安心下さい」

 

 

成る程サキュバスはそうして男性冒険者から精気を得る代わりにその見返りとして要望通りの夢を見せてくれるという訳か上手い具合に共存関係が構築されているんだな

 

 

「お客様の好みの女性のタイプと容姿そしてシチュエーションをお書き下さい」

 

 

「好みのタイプとかシチュエーションとか制限は無いんですか?」

 

 

「ありません。お客様がどんなシチュエーションを望んだとしても全て実現が可能です。過去には幼い少年となって気の強いお姉さんに犯されたい。または女性の立場となって快感を味わいたいというお客様がいらっしゃいました」

 

 

サキュバスの言葉を聞いた俺はほんの少しだけこの街の男性冒険者は大丈夫なのか?と感じたがそれ以上にサキュバスの言葉は魅力的であった

 

 

「因みに好みの子の容姿というのは憧れのあの人は勿論二次元嫁なんかも可能でしょうか?」

 

 

「二次元嫁というのは分かりませんが可能です」

 

 

「後になってから訴えられたりとかはしないですよね?」

 

 

「しません。何故なら『夢』ですから」

 

 

最高過ぎる!!最高過ぎるじゃないか!!サキュバスの淫夢サービス!!この店があれば世の中は平和になる!!

 

 

俺が感激に震えていると近くの席に座っていたダストの書いている用紙が目が止まりこっそりと覗き込むと書いている内容が目に入った

 

 

『天才科学者の黒髪と赤目の少女がお兄ちゃん大好きと言って迫って来る』

 

 

…これって間違いなくめぐみんの事だよな?でもめぐみんは戦兎さんで…うん。この事は戦兎さんとダストには黙っておこう…俺はそう決心した

 

 

そして用紙を書き終え意気揚々と店から出ようとした時に戦兎さんに声をかけられた

 

 

「おや、珍しい場所で会いましたね。カズマもここのお茶がお気に入りなのですか?」

 

 

「いや、俺はお茶を飲みに来たわけじゃ…」

 

 

そこまで言うと俺は凍りついたそして思わず思っていた事を口にしてしまう

 

 

 

「めぐみん!?なんでこんな所に!?」

 

 

「ここは私の契約先のひとつです。今日はこの店設備を点検する為に来ていたんですよ?」

 

 

「じゃあめぐみんはこの店がなんなのか知ってるのか?」

 

 

「まぁ、一応は。ここのサキュバス達はこのアクセルで静かに暮らしていたいと願っているだけですし男性冒険者も理解した上で利用しているので何も言いませんが…」

 

 

そこまで言うと近くのサキュバスを睨みつけ

 

 

「もしこの店とは関係ない人間の精気を吸ったりして被害が出た場合はその時は私が全力で貴女達とこの店を叩き潰しますから」

 

 

そう言っている戦兎の圧に屈することなくサキュバスはにっこり笑い返すと

 

 

「我々も貴女を敵に回す事はしませんよ…私達はあくまでもこの街で平穏にひっそりと暮らしていきたいだけなので」

 

 

「ならその言葉を信じる事にしましょう」

 

 

その会話を最後に戦兎さんは喫茶店から出て行く俺も用紙に記入し終えていたので一緒に店を出るとそのまま魔道具店へと向かって歩いて行く

 

 

戦兎さんがそういった事に理解がある人で本当に良かった。ていうか戦兎さんも元は男だったのだから色々と思ったんだろうなぁと俺は思った

 

 

もし戦兎さんが自分もそのサービスに出ている事を知ったらどうするだろうか?…辞めておこう。余りにも痛々し過ぎる俺の立場だったらトラウマになるぐらいに

 

 

「どうしたんですかカズマ?」

 

 

俺の様子がおかしい事に気づいたのか戦兎さんが声をかけて来る。そんな戦兎さんに何でもないと言って安心させると早歩きで先へと進んだ

 

 

そして魔道具店に帰って来た俺達をウキウキした様子のウィズが出迎えた

 

 

「お帰りなさいめぐみんさんカズマさん、今日は物凄い御馳走ですよ!」

 

 

ウィズはそう言うとひとつの箱を差し出してくる

 

 

「これは…もしかして霜降り赤蟹ですか?」

 

 

霜降り赤蟹?俺がめぐみんに詳しく聞こうとすると

 

 

「霜降り赤蟹はすっごく高級品で私達庶民には滅多に口にする事が出来ない一級品なの!!」

 

 

俺の疑問に答えるようにハイテンションの状態でそう言うゆんゆん

 

 

「それは私の実家から送られて来た物なんだ。だから遠慮なく食べて貰って構わないぞ」

 

 

どうやらこれはダクネスの実家から送られた物らしい。それなら遠慮なく頂く事にするか!

 

 

俺は内心そう決心すると霜降り赤蟹は一体どんな味なのかワクワクしながら夕食を待つのだった

 

 

*****

 

 

その日の夕食は大変素晴らしかった霜降り赤蟹…高級品なだけあって非常に美味だ。只でさえそのままでも充分美味いのにそれを焼き蟹や蟹鍋などにして食べるのだから堪らない、特にウィズなんて涙を流しながら食べておりそのまま昇天してしまいそうな勢いだった。そんな中アクアが蟹の甲羅鍋で酒を飲み始め(この世界では子供でも飲めるが俺は元の世界でもあまり酒を飲む方ではなかった為に飲む気にはならなかった)ているのを見ていたダクネスとウィズもその甲羅酒を堪能していたがカズマは酒には一切手をつけずにそのまま就寝する為に部屋へと戻っていた。

 

 

それを珍しそうにアクア達が見つめていたがその理由を知っていた俺は苦笑いを浮かべた

 

 

*****

 

 

夕食を終えた俺はラボへと戻ると改めて開発作業に入る

 

 

ラビットタンクスパークリングフルボトルの復元に成功したがそれでもこれからの戦いには更なる力が必要だと判断している俺は新たな装備の開発に取り掛かっていた

 

 

そしてその装備の開発には前のベルディアとの戦いで入手したパンドラパネルの力が必要な為開発と同時に解析作業も進めていだがそれ以外にも俺の頭を悩ましている事がある

 

 

「ナイトローグとブラッドスタークの変身者は一体誰なんだ?スタークは一体誰に乗り移っているんだ?ナイトローグは一体誰が変身しているんだ?」

 

 

余りにも謎が多過ぎる。それに出来る事ならば周りの人間を疑いたくはない…周りを疑って疑心暗鬼になるのはごめんだ

 

 

俺は自分の中でそう結論付けると一旦自分の中にある疑心を払うすると喉が渇いていた事に気づいたので気分転換も兼ねてラボから出るとカズマ達の騒ぐ声が聞こえて来た

 

 

俺が何事かと声の聞こえた方向に辿り着くと其処にはアクアとダクネスにゆんゆん。そしてその3人にタコ殴りにされたカズマが倒れておりそして極めつけに逃げて行くサキュバスを見て俺は全てを察した

 

 

「全く!私の神聖な基地に悪魔の匂いが染み付いちゃうじゃない!塩をまいて置くわよ!!」

 

 

そう言って塩をばら撒いているアクア

 

 

「めぐみん聞いてよ!!この基地にサキュバスが侵入していたみたいなの、その上カズマさんが操られてホント大変だったんだから!!」

 

 

「ううう…あんな辱しめに合わされるなんて…あのサキュバス今度会ったらぶっ殺してやる!!」

 

 

ひとり怒り狂うダクネスと顔を真っ赤にしながら先程の事を思い出しているゆんゆん

 

 

そして俺は比較的に冷静だったアクアから詳しく聴くとなんでもダクネスが風呂に入ろうとした時には先に入浴していたカズマと鉢合わせしたそうだ。

 

 

それだけならば普通の話なのだろうがそこから話が可笑しな方向へと向かって行く。カズマがこれは夢だのリクエスト通りだのダクネスは変態な所に目を瞑れば良い肉体をしているだのと訳の分からない事を言い出すとダクネスに所謂いやらしい事を強要させようとしたらしい

 

 

その時アクアが潜入していたサキュバスに気づき捕縛しそのまま討伐しようとした時にやって来たカズマがサキュバスを庇い出しその時にやって来たダクネスからカズマがサキュバスに操られている事を知り今に至ったらしいかった

 

 

それらを聞いた戦兎は真実を知らないというのは幸せな事だなぁと思ったのだった。

 

 

*****

 

 

 

次の日俺とカズマはふたりで店前の掃除していた

 

 

「なぁ、戦兎さんあの事は…」

 

 

カズマは不安そうな顔でそう話しかけてくるそして俺はそんなカズマを安心させるように

 

 

「誰にも言わないさ、でもあまりのめり込まない様にしろよ?必要以上に通うのは反対だからな?」

 

 

「マジでありがとうございます!」

 

 

まぁ、カズマの気持ちも分からない事はない。年頃の男子には住んでいる環境がきつ過ぎるもんな俺が内心そう考えていると俺達の耳に街の緊急放送が入った

 

 

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!冒険者の皆さんは大至急ギルドに集まって下さい!!』

 

 

……デストロイヤーってなんだ?

 

 

俺とカズマは突然の放送に首をかしげる事しか出来なかった

 

 

 



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この素晴らしい要塞に祝福を!!

「デストロイヤー警報!!デストロイヤー警報が発令されました!!機動要塞デストロイヤーがこの街に接近中です!数時間以内にアクセルに上陸すると予測されます!冒険者及び警察、衛兵の皆様は直ちに装備を整え冒険ギルドへ!それ以外の皆様は直ちに避難してください!繰り返します、デストロイヤー警報が――」

 

 

町中のスピーカーからそのような避難警報が繰り返し流れておりそれを聞いていたアクセルの住人達は大混乱に陥っていた。あるものは荷物を持って街から逃げだす準備を、あるものはもう終わりだー叫びながら地面に両手をついていた。

 

 

俺とカズマは状況が飲み込めず呆然と立ち尽くしていると沢山の荷物を背負ったアクアとゆんゆんが慌ててやって来た。

 

 

「この街はもうお終いよぉ!!早く荷物を持って逃げましょうよ!!」

 

 

「ギルドから緊急放送があったのに逃げる訳にはいかないだろ!!ていうかデストロイヤーってなんだよ?状況がさっぱり分からねぇよ!!」

 

 

確かに俺達には今なにが起きているのか全く理解可能出来ていない。そんな俺達を見かねたのかゆんゆんがデストロイヤーについて説明を始める

 

 

 

「機動要塞デストロイヤーというのは通った後にはアクシズ教徒以外なにも残らないと言われている、最低最悪の賞金首なの。いや、アレはもう天災の類いと言って良いわね」

 

 

「ちょっと待って、なんで私のかわいい信者達がそんな風に言われているの?ウチの子達ってそんなに周りから怯えられているの?みんな普通のいい子達ばかりなのよ!?」

 

 

いや、アレは普通じゃないだろう。俺は過去にゆんゆんとアルカンレティアに訪れた時の事を思い出して苦笑いを浮かべた

 

 

「なんだ待っていてくれたのか。だがお前達なら街の危機に立ち向かうと信じていたぞ」

 

 

ダクネスが装備を整えた状態で現れるとそう口にする。どうやら彼女には街を捨てて逃げるという選択肢はなくそのデストロイヤーと戦うつもりらしい。

 

 

「聞いて皆!ウチの信者は皆いい子達なの!巷で流れる悪い噂は...そう、胸パット女神エリスを崇める邪教徒達の陰謀なの!アクシズ教を陥れようとしているの!だから!そんなエリス教よりもアクシズ教を清く正しいアクシズ教をお願いします!」

 

 

「アクア、今それどころじゃないので黙ってくれないか?」

 

 

 

「神を自称するだけじゃなくエリス様の悪口まで言うなんて…いつかバチが当たりますよ?」

 

 

「ダクネスとゆんゆんもなんなのよー!!!」

 

 

騒いでいるアクアを俺達は華麗に無視すると放送にあった通りにギルドへと向かった。

 

 

****************

 

 

 

「お集まりの皆さん!本日は緊急の呼び出しに応えてく下さりありがとうございます。ただいまより、デストロイヤー討伐の緊急クエストの開始と説明をさせていただきます。本クエストはレベルと職業は一切関係なく全員参加の総力戦となります!クエストの達成が不可能と判断した時点で街を放棄し全員で逃げることになります。皆さんが最後の砦なんです!どうかよろしくお願いします!」

 

 

ルナさんがギルド職員を代表してそう説明する。その後周りの職員達が長卓やアクセル周辺の地図を用意し作戦会議室のような空間をつくるとギルドの職員達に席につくよう促された。

 

 

よく見ると冒険者だけでなく街の治安機関の人員も駆り出されているようで百は軽く越える人数はいそうだった。

 

 

「さて、まず現状について説明したいですが...デストロイヤーについて説明が必要な方は?」

 

 

「私とカズマはデストロイヤーについて詳しくは知らないので説明してくれると嬉しいです」

 

 

俺が手を挙げてルナさんに言うとルナは周りを見渡した後デストロイヤーについて説明を始めた。

 

 

「機動要塞デストロイヤーとは古代の魔導大国ノイズで作られた巨大ゴーレムです。外見は...説明するより見てもらった方が早いですかね」

 

 

ルナさんがそう言うと隣で控えていたギルドの職員が全員に見えるように持っていた水晶をテーブルの上に置いた

 

 

「今ギルドの職員がデストロイヤーの監視のために使い魔を飛ばしてましたのでその映像を写します」

 

 

ルナさんがその水晶に手をかざすと水晶に外の映像が映った。そこには八本足の巨大な金属製の蜘蛛が猛烈な勢いで大地を駆けていく姿がはっきりと写っていた。その上よく見ると足元にはジャイアンド・トードが豆粒のような大きさで逃げ回っておりデストロイヤーがどれだけ巨大なのかを理解させられた。

 

 

「見ての通り小さな城ほどもあるのですが特種な魔法金属が使われているおかげでこの巨体にも関わらず馬車ほどのスピードで移動が出来ます。その上近付こうものなら巨大モンスターですら挽き肉にされる上に周囲からの攻撃から守る様にデストロイヤーには常時強力な魔法結界がはられており魔法攻撃は一切通用しません」

 

 

ルナさんの言葉を聞いている冒険者達の顔がどんどんと暗くなっていく。何人かはどうにもならない事を悟ってしまったのか顔がひきつり始めていた。

 

 

「ですからデストロイヤーに攻撃するためには物理攻撃しかないのですが...金属製のため弓程度は跳ね返してしまいますし大砲などの攻撃兵器の類いは機動力の高さによってほとんど回避または移動速度の早さで使用する前に破壊される始末でして」

 

 

「それならば空からはどうです。例えば今この映像を届けている使い魔使って爆弾でも落とすとか...」

 

 

俺がそう言った瞬間、デストロイヤーから光のようなものが放たれると水晶玉の映像が途切れた。

 

 

「...デストロイヤーには自動防御する魔法陣以外にもバリスタや魔光銃による自動迎撃装置がありまして、迂闊に近づき過ぎると関知されるとこのように撃ち落とされてしまいます。上手く内部に侵入出来たとしても多数の警備ゴーレムが配置されているので攻略は難しいかと」

 

 

「そんな要塞がどうして暴走なんかしだしたんですか?」

 

 

「それはですね…」

 

 

ルナさん曰くこの要塞が暴れている原因はこの要塞の研究開発を行った研究者が要塞を乗っ取ったかららしい。この研究者は当時のノイズにおける対魔王兵器の責任者を務めており当時の魔王退治の貢献の大きさから勇者と言われていたようだ。

 

 

しかし自分の開発した兵器が魔王を倒すためでなく、ノイズが他国を支配するために使われる事を知った彼は人類に絶望するとデストロイヤーを乗っ取り大陸中の都市を襲い、人類に暗黒時代をもたらしたという。

 

 

その研究者は今もデストロイヤーの中枢頭脳と一体化したままであり人類への攻撃を続けているという。これを倒すために何度も諸国による連合軍も組まれたがそのすべてが失敗に終わり今では倒すのは不可能と判断されデストロイヤーが襲来した街は一から建て直すしかないらしくこの世界ではもはや天災の一種として人々に認識されているという話だった。

 

 

…魔王討伐の為に開発した物を戦争に利用される。その時の気持ちと絶望はよく分かる、俺も葛城匠であった時に同じ目にあった事があったからだ。俺は会った事もないがその科学者に対して軽いシンパシーを感じていた

 

 

「ルナさん。これを作った国はどうなったんです?これだけのもの作れる国ならば対抗策のひとつやふたつはあった筈じゃ?」

 

 

 

「真っ先に滅ぼされました。本国の都市はほとんど焼きつくされノイズの技術のほとんどは衰退し、最早、誰にも再現できません」

 

 

…自分達が開発した兵器で自分達の国を滅されるか…最高に皮肉が効いてるな。俺は失笑を浮かべると

 

 

「成る程…他にはないのか?ヤツを止めることができる方法は?」

 

 

俺の言葉に冒険者達もギルドの職員も黙り込んでしまう。そんな中カズマが口を開いた

 

 

「アクア、お前の魔法ならあの結界を打ち破れるんじゃないのか?」

 

 

「確かに私なら結界を破壊は出来るかもしれないけれど絶対に出来るという保証もないわよ?」

 

 

「ええ!?あの結界を破れるんですか!?」

 

 

アクアの言葉にルナさんが驚きの表情を浮かべた。

 

 

「もしかしてですけどね」

 

 

「それでも構いません!可能性のあるならば!!」

 

 

「結界さえ破れれば魔法による攻撃や大砲で何とか出来るかもしれません。でもこんな辺境の駆け出しの街ではろくな武装も魔法使いも...」

 

 

「遅くなりました!ウィズ魔法道具店の店主です!」

 

 

丁度いいタイミングでウィズがギルドへと入って来た。そう言えば店の事があるから遅れて来るって言ってな、俺がそんな事を思い出していると

 

 

「氷の魔女だ!彼女がいれば、百人力、いや、千人力だ!」

 

 

「勝てる、勝てるぞ!」

 

 

「美人店主さん万歳!」

 

 

「いつも、めぐみんちゃんと同じく夢でお世話になってます!」

 

 

ちょっと待て、今誰か聞き捨てならない事を言わなかったか?…深くは考えないようにしよう…兎に角ウィズは凄腕のアークウィザードだったからな、その実力は折り紙付きだ。ウィズが現れた事で周りの士気もどんどん上がって行く。

 

 

「私ひとりの魔法ではあの素早いデストロヤーを破壊する不可能ですよ!何とか動きを止めることが出来れば可能性はありますが…」

 

 

さすがのウィズも自分だけではデストロイヤーの動きを止めるのは難しいらしい。

 

 

「ウィズ、あの馬鹿デカイ要塞の動きを止める方法ひとつだけある」

 

 

「本当ですか!?そしてそれはどんな方法なんですか?」

 

 

「ビルドとクローズそしてグリスの力を合わせればあいつの動きを止める事が出来るかもしれない」

 

 

「そうか!仮面ライダー達の力を合わせれば!!」

 

 

「氷の魔女だけじゃなく仮面ライダーもついてるなんて…これはマジでイケるかも知れないぞ!!」

 

 

氷の魔女と仮面ライダーの力を借りれると知った冒険者達と職員達のテンションは最高調に至った。

 

 

「では、結界解除後、めぐみんさん。カズマさん。ゆんゆんさん達により脚を攻撃し万が一に脚を破壊できなかった場合は前衛職の冒険者達がハンマー等を装備して脚を攻撃し魔法使いの皆さんは爆発系の魔法を即時に打てるよう準備していてください。そして要塞内部に潜入に成功した場合はデストロイヤーの開発者やゴーレム達が我々に何かを仕掛けてくる可能性があります。装備もしっかりと用意しておいて下さい!」

 

 

作戦がまとまるとギルドの職員達が冒険者達に次々と指示を出して行く。そして俺も装備の点検を行おうと席を立ち上がるとルナさんがこちらに近づいときた。

 

 

「ルナさん私に何か用ですか?」

 

 

「実はですね、めぐみんさんに現場指揮をとるアクセル防衛隊長を務めてして貰えないかと思っているんです」

 

 

「どうして私なんです?他に適任者居ますよね?例えばミツルギさんとか」

 

 

「ミツルギさんは現在クエストを受けている関係でこのアクセルの街には居ないんです。何とか連絡をとりましたら自分の代わりにめぐみさんにリーダーを任せるようにと言われましたので」

 

 

成る程、ミツルギは自分がいない代わり俺にリーダーを務めて欲しいという事か

 

 

「そんな事はないぜめぐみん」

 

 

そんな俺の考えを見抜いたのかカズマがそんな事を言う

 

 

「俺だけじゃない。この場にいる全員がお前をミツルギの代わりだとは思ってはいない、この街の連中もギルドの連中も冒険者の皆もだ。ここに居る全員お前の凄さを知ってるんだぜ?勿論あのミツルギもな」

 

 

…嬉しい事を言ってくれるじゃないの。それを聞いちゃ、やる事はひとつしかないじゃないだろ!!

 

 

「そこまで言われたらやるしかないな。この天才物理学者であるめぐみん様に任せ貰おうか!!」

 

 

俺が腕を上げてそう叫ぶと周りにいた冒険者やギルドの職員達も同じように手を上げ叫んだのだった。

 

 

********************

 

 

冒険者や街の住人達は協力し合い対デストロイヤー線の為にバリケードを築いていた。そしてその周りではウィズを始めとする魔法職の人達が攻撃用と支援用魔法陣を展開して戦いに備えていた。

 

 

先頭には剣を大地に刺し、仁王立ちでまだ姿すら見えないデストロイヤーを睨み付けている金髪碧眼の騎士の少女がいた。

 

「ダクネス・・・気持ちは分かるが後ろに下がっていてくれないか?流石にこんな時にまで自分の性癖を優先させるのはどうかと思うぞ?」

 

「めぐみん…普段の私の行いでそう思うのも仕方がないが…私がこんな時にも自分の欲望を優先する女だと思うか?」

 

 

「普通に思うけど?」

 

 

「なっ!」

 

 

ダクネスは俺の言葉に仰け反るが直ぐに気を取り直し

 

 

「それはさておきだ、めぐみん。この私は聖騎士だ。そしてそれ以外にも私にはこの街を守る理由が義務があるのだ。まあ、この街の連中が気にするとも思わんが少なくとも私はそう思っている。だから無茶だと言われようと此処からは一歩も引く訳にはいかないんだ」

 

 

「…流石はダクネス、いやダスティネス・フォード・ララティーナと言った方が良いかな?」

 

 

「やはりめぐみんは…気づいていたのだな、私の正体に」

 

 

「まぁ、この俺に隠し事なんて通用しないって事さ」

 

 

こいつは正体を隠していたつもりかもしれないが所々に品の良さが滲み出ていたし雰囲気からして只者じゃないと会った時から思っていた。それに仕事をしている時の縁でダスティネス家の令嬢が冒険者をしているという噂を聞いた事があり、色々調べたらこのダクネスが例の令嬢である事を掴んでいたのだ。

 

 

「安心しろ、この事は誰にも言うつもりはない。お前はこの街で活動している冒険者ダクネスだからな、まぁ、変態的な所はあるが」

 

 

「んぅ…褒めていると思わせてたからの罵倒…イイ!!」

 

 

「ダクネスそういうところが駄目だと思うぞ?」

 

 

折角人が褒めてやっているところにこいつは…俺はこんな時までペースを崩さないでいるダクネスにほんの少しだけ尊敬の念を覚えていた。

 

 

 

アクセルの前には冒険者達と憲兵そしてギルドの職員達との協力により突貫工事で作られた巨大な堀とバリケード。そしてその先にはフル装備をした冒険者達がデストロイヤーの集落に備えていた。

 

 

それから程なく冒険者達の視界に巨大な小さな城ほどもある金属製の蜘蛛が姿を見せた。しかも巨体でありながらその早さは馬車ほどのスピードを出していた

 

 

「きたぞ!」

 

 

「想像以上にでけえし、早ええ!」

 

 

「もうダメだ!俺達はアクセルはもうお終いぁぁぁー!」

 

 

それを目にした人々から次々と諦めたような弱気な発言が次々と上がって行く。確かにアレをみたら誰だってそうなるだろう。でも、俺達は引くわけには行かない。あれを放置していたらこれからも蹂躙される街が破壊される国がそして命を落として行く人々が増えて行く、ここで何としてもデストロイヤーを止める!!!

 

 

「ゆんゆん、カズマ。行くぞ!!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「おう!!」

 

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

「「「変身!!!」」

 

 

『シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!』

 

 

『イエイ! イエーイ!』

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

「アクア!準備は良いか!!」

 

 

「私を誰だと思ってるの!?そんなのとっくに出来てるわよ!!」

 

 

アクアがそう言うと空から蓮の杖が現れるとアクアの手の中にしっかりと収まった。

 

 

 

「セイクリッドォォォ…ブレイク・スペルッッッッッ!!!!!」

 

 

その瞬間アクセル正門の空中に巨大な魔法陣が出現する。そしてアクアの杖の蓮の蕾が開くとそこから白い光がデストロイヤーに向かって放たれた。

 

 

それは空中の魔法陣を通すと巨大な光線となってデストロイヤーとぶつかる。そして光線がデストロイヤーにぶつかった瞬間複雑な魔法陣で構成された薄い結界のような物が現れた。恐らくあれが説明にあったデストロイヤーを自動防御する結界なのだろう。光と結界は拮抗しているが結界を破る事が出来ていない。

 

 

「くぅぅぅ…うおりゃあああ!」

 

 

アクアが叫んだ瞬間光線が巨大化する。結界と光線はそれでも暫くの間は拮抗していたが直ぐに結界に亀裂が入りだしそして結界はぶち破られた。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

『スパークリングフィニッシュ』

 

 

『ドラゴニックフィニッシュ』

 

 

『スクラップフィニッシュ』

 

 

俺達は3人同時に飛び上がると前方に一回転し迫り来るデストロイヤーにキックを放つ体勢をとった。

 

 

「「「タァァァァァァァァ!!!」」」

 

 

ライダーキックを放ちながら俺達はデストロイヤーへと向かって行く。そしてトリプルライダーキックを受けたデストロイヤーの両脚は破壊され胴体が地滑りを起こしながらアクセルの街へと向かって来る

 

 

「後は私に任せて下さい!!」

 

 

ウィズがそう叫ぶとウィズの周りに強力な魔力の流れ始め。

 

 

「黒より黒く、闇より暗き、漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう」

 

 

そしてウィズの力強い詠唱がアクセル中に響いて行く。

 

 

「無謬の境界に落ちし理、無行の歪みとなりて現出せよ!」

 

 

ウィズの頭上にアクアが出現させた魔法陣に負けないぐらい巨大な魔法陣を出現させると

 

 

「『エクスプロージョンッッ』!!」

 

 

その魔法陣から巨大な火柱が上がると此方へと向かってくるデストロイヤーへとぶつかる。そしてウィズの魔法を受けたデストロイヤーは完全に破壊は出来なかったものの街の正門の直前でその動きを止めたのだった。

 

 

「どうやらやったようだな」

 

 

俺は無事に作戦が成功した事を感じると緊そんなことを口に出した。俺の言葉に続くように多くの冒険者達も歓喜の声をあげ始めていた。

 

 

「やったわ!デストロイヤーなんて女神たる私にとっては敵じゃなかったようね。さあ、帰って飲み明かすわよ!貰える報酬はおいくら万円かしら?」

 

 

「バカッ!どうしてお前はそうお約束が好きなんだ!そんなことを言ったら...」

 

 

『被害甚大、被害甚大。機体が進行不能に陥った為にこれから数分後にこの機体は自爆します』

 

 

「「「嘘だろぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 

突如デストロイヤーからそんな音声が流れ始めた。歓喜していた冒険者達がそれを聞いて凍りつくとすぐに正気を取り戻すと叫び声を上げたのであった。



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この素晴らしい宴会に祝福を!!

冒険者達の中には絶望し崩れ落ちる者少しでも早く逃げようとする者など色々居た。

 

 

「めぐみん、カズマ。私達も早く逃げましょうよ!」

 

 

「逃げたところでデストロイヤーの爆発に巻き込まれてお陀仏だ!」

 

 

「そんなの嫌よ!!」

 

 

アクアが俺の言葉に対してそう叫んでいると

 

 

「アクア達には悪いが私はここを離れる訳にはいかない!民を守らずに逃げるなど騎士の行いではなからな」

 

 

地面から剣を抜いたダクネスが凛々しい表情でそう言う。流石のダクネスもこんな時は真面目に…

 

 

「...それにだ。あれほどの威力の銃砲に狙われていると思うとどうだ。...かつてないほどの興奮の沸き上がりを感じないか?」

 

 

…んっ?なんだか雲行きかおかしくなって来たぞ?

 

 

「...それにだ。あれほどの巨大の爆発となったらどれほどの威力なのだろうか?そう思うと私は今、かつてないほどの興奮の沸き上がりを感じる」

 

 

………。

 

 

「もう、辛抱...いや、もしもの時、私があの攻撃を受け止める為にいってくりゅ!」

 

 

前言撤回!!こいつはやっぱり大馬鹿野朗だ!!

 

 

「オイ!ダクネス!?」

 

 

カズマが走り出すダクネスに声をかけるのと同時にダストが大声をあげた。

 

 

「いいのかよ?みんな?この街には俺達には何としても守らなければならないものがあるんじゃないか!?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、男性冒険者達の多くがハッとなる。

 

 

「そうだ、コイツの言うとおりだ。俺たちは今こそあの店に恩返しするときだ!」

 

 

「ああ、そうだな。...なぜ、レベル30にもなってこの街に居座り続けたのか思い出したよ」

 

 

ダストの声に反応するように男性冒険者達は次々と漢の顔になっていく。…側から見ればとても良い話に聞こえては居るがこいつらが守りたいのは街ではなくサキュバスの店だからな。…まあ、気持ちはわからないでもないが、その辺りを知って居るととても感動は出来ないな。

 

 

「今まで安い値段でお世話になってきたんだ!ここで立ち上がらなきゃ、男が廃るってもんだろッ!」

 

 

「そうだ!普段あれだけお世話になっているめぐみんちゃんにも少しはカッコいいところを見せなけゃいけねぇだろ!」

 

 

一体誰だよ!さっきから可笑しな事を言っている奴は!!…取り敢えず後でそいつには詳しく聞く事にしよう。

 

そう言って迷うことなく拳をあげる男性冒険者達と少数の女性冒険者、そして普通の冒険者達。

 

今さらだがあの店を放っておくのはヤバイんじゃないのか?この街の男達はあのサキュバス達に支配されているのと同じでは?

 

 

俺のなかにそんな不安が生まれるがアーチャー職の冒険者たちが次々とフック付きのロープがついた矢をデストロイヤーに向かって打ち込んでいく。アーチャーが発射した矢はスキルで強化されている影響なのか難なくデストロイヤーの甲板部の障害物に引っ掛かっていく。

 

 

そして引っかかったそのロープを伝い次々と冒険者達がデストロイヤーへと侵入して行く。その光景を間近で見た俺はコイツらはここは本当に駆け出し冒険者でここは駆け出しの冒険者達が集まる街なのかよ?と思わず突っ込みたくなってしまった。しかもフルアーマーの鎧着た状態でデストロイヤーを登っている奴もいるだが...。欲望の力ってのは世界を救うという事なのか?

 

 

「さあ、俺達もいくぞ、アクア?」

 

 

カズマがアクアの近くに行くとそう言った。

 

 

「私、あそこに混ざるの怖いんですけど?あとは任せて大丈夫よ。私たちは明日から頑張りましょう。ね?」

 

 

「だめだ。魔力をかなり使ったとはいえ、回復魔法ぐらいは使えるでだろう?急ぐぞ!」

 

 

カズマがデストロイヤーというより冒険者達にびびっているアクアを無理連れて行く。

 

 

「私も行きます!」

 

 

ウィズがそう言ってカズマ達の後に続いて行く。俺はそんな3人の後に続くようにデストロイヤーに向かっていった。そしてロープを伝いデストロイヤーの甲板に辿り着くと先に到着していた冒険者達が罠やゴーレムを破壊し破竹の勢いで進撃を進めいるところであった。

 

 

「「「いっけえ!ヒャッハー!!」」」

 

 

「ゴーレムがなんぼのもんじゃいッ!」

 

 

「囲め、囲め!ゴーレムとはいえロープで引きずり倒せばタダのおきもんだ!そのままハンマーで潰せっ!」

 

 

最早、その姿は野盗かチンピラ崩れと言われた方が納得でき、デストロイヤーの方が正義で俺達の方が悪なんじゃないのかという錯覚が生まれて来てしまう程だった。

 

そして最深部へと続く扉へとたどり着くとその扉の守護者であろう巨大なゴーレムが私たちの行く手を塞ぐ

 

 

「ここは俺に任せろ!!クリエイトウォーター!!」

 

 

そしてカズマがいつのまにか取得していたのか水の初級魔法を使いゴーレム達の足元を水浸しにしていき。

 

 

「続けて…フリーズ!!」

 

 

続けてカズマが氷の初級魔法を使用した事でゴーレム達の足元が凍りつきゴーレム達の動きが鈍くなりその間にカズマを始めとする冒険者達が一網打尽にして行く。

 

 

「カズマさん、いつの間に初級魔法を覚えたんですか?ていうかどうして魔法職の私達よりも魔法を上手く使いこなしているんですか!」

 

 

ゆんゆんがそうカズマに突っ込みを入れた

 

 

「仮面ライダーの力に頼り切るのもアレだと思ったからなら初級魔法を一通り取得しておいたんだ。これなら戦略の幅が広がるだろ?」

 

 

「確かにそうですね。初級魔法は戦闘にはまるで向いてはいなく、生活に役に立つ程度の物だったんです。カズマみたいに合体魔法を使うのは紅魔の里にも居ましたがカズマの様に初級魔法同士を組み合わせるというのは見た事がないです。いや、初級魔法は殆ど魔力を使わないのでかなり使えるのでは?」

 

 

「めぐみんがそこまで手放しで褒めるなんて…少し自信が無くなるかも…」

 

 

「そんな事はないですよ。カズマは冒険者だからこそ、魔法職ではなかったからその活用方法を思いついただけですよ?」

 

 

カズマみたいな奴はたまにいるんだ。専門家達よりも素人の方が思いもよらぬ発想をする奴がな

 

 

「めぐみん、ゆんゆん。私は今、猛烈に感動している!冒険者達がここまでアクセルの為に戦ってくれるとは…騎士冥利に尽きるぞ!!」

 

 

いつの間にか追いついていたのかダクネスが感動しながらそう言っていた。

 

 

…実際には街の為ではなくサキュバスの店の為に彼らは戦っているのだがそんな事を言う程俺は野暮ではなく勘違いしているのならばそのまま勘違いをさせておく事にしよう。

 

 

そして扉が破れると俺達はダストの案内で中へと入る。すると全員先程までのテンションは何処へやら一様に沈んだ表情を見せていた。

 

 

そこには干からびてミイラになった研究者らしき遺体があった。そのミイラは部屋の中央の椅子に腰かけており何処か寂しそうな雰囲気があった。…この研究者は人類の未来に絶望しながら一人寂しく死んでいったんだな…そう思うと同情してしまうな…

 

 

 

「完全に成仏してるわね。それはもう未練の欠片も残さずスッキリと」

 

 

「いやいや、どう見ても見られる未練有りまくりの最後だろ!こんなところで一人寂しく死んでいったんだぞ!」

 

 

その時アクアがミイラのそばからなにかを見つける。それは机の上で埃を被ってあかたが間違いなく一冊の日記だった。

 

 

アクアは黙って日記を手に取ると皆が沈黙する。そしてアクアが周りを一度見渡してから日記を読み始めた。

 

 

…国の為に平和の為にデストロイヤーを開発しそしてその思いを裏切られた為人類の敵となった科学者…彼の残した日記か…どんな事を書き残しているのか興味がある。

 

 

『〇月△。

国のお偉いさんが無茶言い出した。こんな低予算で機動兵器を作れと言う。無茶だ』

 

 

アクアが喋り出した内容に周りの空気が凍りつくのを感じた。

 

 

『△月□日。

頭がおかしくなった振りをする為にパンツ一枚で走り回っていたら女研究者にそれも脱げよと言われた。この国はもう駄目かもしれない』

 

 

周りの視線が痛くなり始めた。別にアクアの所為ではないのだがアクアは冷や汗をかき始める。

 

 

『△月△日。

現実逃避に部屋の掃除をしていたら大嫌いな蜘蛛が出た。つい、勢いで設計図提出用の紙でたたき潰しててしまった。もう面倒だからそのまま研究者達に渡してやった』

 

 

アクアが気まずそうにこちらを見てくる。

 

 

『△月〇日。 

何故か知らんけどあの設計図が好評だ。それ蜘蛛をたたいた汁ですけどよくさわれますねとか言いたいけどいったら殺されるんだろうな』

 

 

周りの冒険者達から舌打ちが聞こえた。様子を見ると何とも言えない怒りに震えていた。

 

 

『△月×日。

動力源をどうこう言われたけど知るか。伝説のコロナタイトでも持って来いと言ってやった』

 

 

『△月△日。

本当に持ってきちゃった。どうしよう。これで動かなかったら死刑じゃないの?動いてくださいお願いします!』

 

 

遂にアクアは此方を振り向かなくなった。

 

 

『△月□日。

明日が起動試験らしい。今日は王様が近くの寺院で各国の首脳ををもてなすパーティーを開いているらしく明日そこで要塞を見せつける気すだろう。もし動かなかったら間違いなく殺されるな...とりあえず酒でも飲もう、今この要塞には誰もいないしな。こっそりくすねておいたパーティーの高級酒をのみまくるぞー!』

 

 

『△月□日。

目が覚めたらなんか警報とかがなりまくってた。なんだこれ?というかまた記憶が飛んでいる昨日なにしたんだっけ? えっと...たしか中枢部にいって、コロナタイトに説教した後研究の最中偶然にも手に入れた小さいけれどとんでもなく熱いエネルギーを持った謎のボトルで根性焼きしたんだった』

 

 

『△月×日。

国滅んだやべー!滅んじゃったよやっべー!でも何かスカッとした。よし決めた、もうここで余生を暮らすとしようだって降りられないしな。止められないしな。これ作った奴絶対バカだろ』

 

 

 

『…おっと、これ作った責任者俺でした』

 

 

「終わり…」

 

 

アクアが静かにそう言うと日記をパタンと閉じた。

 

 

「「「「ふざけんな!!」」」

 

 

その場にいた全員の叫びがひとつになった。

 

 

此奴はアレだ。間違いなく科学者であってはいけないタイプの人間だ。此奴が開発したデストロイヤーの所為で多くの街や人が壊滅し亡くなったと思うと一発殴ってやりたくなるがそんな事よりも今は此奴を何とかしなきゃならない。

 

 

「どうする!もう爆発まで時間があるないぞ!!」

 

 

カズマの言う通りコロナナイトの色が赤を通り越し白く輝き始めており爆発が近い事を嫌でも知らされた。

 

 

「こうなったら一か八か『ランダムテレポート』に賭けるしかありません!」

 

 

ランダムテレポートって…確か普通のテレポートとは違いテレポート先が選べないというアレか!!

 

 

「ウィズ!!そのランダムテレポートに賭けるぞ!!このままじゃここにいる全員はおろかアクセルの街も吹き飛ぶ!!」

 

 

「めぐみんさん…分かりました!!ランダムテレポート!!」

 

 

ウィズのランダムテレポートによりコロナタイトはその場から消え去った。その後俺達はデストロイヤーから無事に脱出すると俺は安堵の溜息をつき、近くにいたカズマと合流する

 

 

「これでアクセルの街は助かったんだよな?」

 

 

「あああ、もう問題はないと思う」

 

 

しかしこれで終わりになる筈がなくフラグを立てるのが此奴らだった。

 

 

「まだだ。まだ終わっていないぞ。私の強敵を嗅ぎ付ける嗅覚がまだ危険の香りを嗅ぎとっている!」

 

 

「おい馬鹿!!フラグぽっい事を言ってんじゃねぇ!!」

 

 

ダクネスに対するカズマの叫びも虚しく活動を停止した筈のデストロイヤーの至る所から蒸気が吹き出し警報音が鳴り響き始めた。

 

 

「もしかして要塞内に溜まっていた蒸気が外に出ようしているのかもしれません。このままだとこの要塞は爆発しアクセルの街は火の海と化してしまいます!!」

 

 

「俺達が頑張った意味は!?」

 

 

カズマが叫んでいる間にもデストロイヤーは益々熱気を増していき亀裂が至る所に走り始めた。

 

 

「クソ…一体どうすればいい!?」

 

 

どうやってこの状況を打開すれば良い!!どうすればこの要塞を爆発する前に破壊出来る!?俺が何とかして要塞を破壊する方法を考えているとダスト此方に走ってくる

 

 

「なぁ、これ使えないか?あのクソ研究者が着ていた白衣のポケットの中に入っていたんだが」

 

 

「これはフェニックスフルボトル!!どうしてこれがここに?」

 

 

その時研究者が残していた日記の中にフルボトルの事が書かれていた事を思い出した。

 

 

「これならデストロイヤーを何とか出来るかもしれない。みんな俺から離れてくれ!!」

 

 

そう言うとダストから渡されたフルボトルと持っていたもうひとつのフルボトルをベルトに装填する

 

 

『フェニックス! ロボット! ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

『不死身の兵器! フェニックスロボ! イェーイ!』

 

 

俺は赤色のハーフボディと黒のハーフボディで形成されたビルドの強化フォームであるフェニックスロボへと変身完了した。

 

 

フェニックスハーフボディのメインカラーは赤で複眼はフェニックスを横から見た姿を模しておりそして炎の翼がアンテナ風となっていた。更に各部には燃え盛る炎のような意匠があり背部の『エンパイリアルウィング』からは炎の翼を展開しそれにより飛行する事を可能としている。そして高温の炎を利用した火炎弾射出や炎を拳や足に纏わせる事で破壊力を上げる事も出来る上にそれらを応用する事で自身の回復や物体を再生させるといった能力を持っている。

 

 

ロボットハーフボディのメインカラーは黒でありその複眼はロボットアームを模していた。更に複眼にあるアンテナには相手の損傷の激しい部分をロックオンしてピンポイント攻撃をサポートする機能や、アーム部分を射出して敵を捕獲する機能、アーム基部に備わった機銃で空中の敵を撃ち落とす機能など多彩な能力を備えている。

 

 

そして左腕はロボットアーム状の『ディストラクティブアーム』と化しており其処からパワー重視の強烈な攻撃を繰り出す事を可能としているのだ。

 

 

 

「勝利の法則は決まった!!」

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

俺はロボットハーフボディの左手から万力のようなパワーアーム『デモリションワン』を出現させると巨大なエネルギーアームでデストロイヤーを掴んで締め付けた後爆発させても被害の出ないであろう空中に放り投げた。

 

 

そしてフェニックスハーフボディの背部にある『エンパイリアルウィング』からの炎で全身を包み込むとデストロイヤーに体当たりを仕掛けた。俺の体当たりを受けたデストロイヤーは空中で分解するとそのまま大爆発を起こしたのだった…

 

 

********************

 

 

機動要塞デストロイヤーとの戦いは終わり街には平和が戻った。今アクセルの街はデストロイヤーを倒したということで街はお祭り騒ぎだった。長年人類を脅かし続けついた魔王軍に匹敵する厄災がなくなったのですから騒ぐのも無理もない。ギルドもこの件の事後処理におわれデストロイヤーの懸賞金は王都の役人が来てから支払われる事になっており、俺達はそれまで家で待機する事になっていた。

 

 

「めぐみん、いるか?」

 

 

俺がラボで研究をしていると珍しく鎧ではなく私服を着ているダクネスがやって来た。

 

 

「改めて礼を言わせてくれ、お前達のおかげでアクセルの街はすくわれたんだ。この街に住まう者としてこの街を守る者として本当にありがとう」

 

 

…普段は変態発言ばかりをする癖にこういう時だけ真面目になるのはズルいだろ。そう思った俺は

 

 

「お礼いってくれるのはいいんだが…結局お前さ格好つけたわりになんの役にも立ってなかったよな?」

 

 

「なっ!」

 

 

「あのアクアですら結界を破壊したり、ゆんゆんやカズマもデストロイヤーの脚を破壊したりしたぞ?ウィズも魔法で色々とサポートしてくれたしな」

 

 

俺の言葉を聞いて、ダクネスが小さくふるえだす。そして耐えられなくなったのかダクネスは両手で顔を覆いしゃがみこんで震え始めた。

 

 

「一体どんな気持ちだ?あれだけ街を守ると意気込んでいた癖に何も出来なかったダクネスさんよぉ?」

 

 

「こっ、こんなっ!新感覚はっ!…わあぁぁぁ!」

 

ダクネスが悶えているとアクアとゆんゆんがラボへと入ってきた。

 

「王都の騎士がめぐみんに用があるって!」

 

俺達は服装を整えると騎士が待っているギルドへと向かう、用というのは間違いなくデストロイヤー討伐の件についてだろう。何せ魔王軍に匹敵する脅威を倒したのだから。俺がそう考えながらギルドの扉を開けるとそこには騎士を従えた、黒髪の眼鏡をかけた制服の女性がいた。雰囲気からして恐らく王都の役人さんなのだろう、その時、ギルドの雰囲気がおかしい事に気がついた。普通こういう時は盛り上がっていてお祝いムードとなっている筈だ、気のせいか、周りは困惑しているような憤りを感じているような雰囲気であった。そして黒髪の女性の目は鋭く、此方を睨みつけていた。まるで親の敵を見ているかのような…

 

 

「めぐみん!貴様には国家転覆罪の容疑がかかっている!一緒に来てもらおうか!」

 

 

………はぁ?

 

 

どうやらこの世界は俺の事が嫌いなようだった。

 




第2章の終了です。


ストックが溜まるまでまた更新を停止します。出来るだけ早く再開させるのでその時はまたお願いします。


感想と評価をお待ちします。





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番外編 この呪われたチョーカーに祝福を!!

それはとある日の暖かい昼間の話だった。

 

 

「ウィズ、お店の調子はどうですか?」

 

 

「はい。めぐみんさんのお陰で売り上げの方は良いのですが…」

 

 

何故が歯切れが悪いウィズ

 

 

「めぐみんさんの発明品はよく売れるのに私が仕入れた商品は全く売れないんですよ!私のお店なのにめぐみんさんの商品しか売れないというのは複雑です…」

 

 

「確かにめぐみんの商品以外にこの店で売れているのを見た事はないよな?」

 

 

「ひ、酷いです!私だって一生懸命やってるのに…」

 

 

一緒にいたカズマがつい本当の事を言ってしまった所為でショックを受けて地面に両手をついて落ち込むウィズ。

 

 

「だ、大丈夫さ!めぐみんの商品以外にも良い商品は沢山あるだろ!たとえこの小瓶に入っている薬はポーションだろ?戦闘の時に重宝するじゃないか」

 

 

「あっ、それは強い衝撃を与えると爆発しますから気をつけてくださいね」

 

 

 

「何でそんなモンが売ってんだ!?」

 

 

カズマはウィズの言葉に驚くとその瓶を棚に戻し隣にある瓶を指刺すと。

 

 

 

「そ、それじゃあこの、飲むと魔力が回復すると書いてあるコイツは…」

 

 

「それ、蓋をあけると爆発しますよ?」

 

 

カズマが無表情その隣の瓶をもつと。

 

 

「…この薬は?」

 

 

「水に触れると爆発します」

 

 

とうとう無言でひとつの瓶をウィズに見せると。

 

 

「じゃあこの高級そうな薬は?」

 

 

「温めると爆発を……」

 

 

「そんな危険物を店頭に並べんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!? ごめんなさぁぁぁぁぁい!?」

 

 

流石のカズマも遂にキレる。そりゃあ必死にフォロー入れようとしているのに置いてあるのかどれも危険物だったらそうなるわな。

 

 

「こんなん売れる筈ないだろ!つうかそんなモンを街中で売ってんじゃねぇよ!!」

 

 

カズマはウィズにそう怒鳴っているがカズマまだ知らない彼女の恐ろしさを。

 

 

「因みにウィズ。このアクセサリーの効力は?」

 

 

「はい。付けると魔力が増大するアクセサリーですよ!魔法職の方にはオススメです!まぁ…つけたら自分自身の魔力に耐え切れずに身体が飛散するという小さな欠陥があるんですけどね…」

 

 

「全然、小さくねぇよ!?」

 

 

「このペンタンドは?」

 

 

「はい。そちらのペンダントは愛する者を守ってくれる物でカップルに売れるんですよ!」

 

 

「ほうほう、それで?どんな風に愛する者を守ってくれるですか?」

 

 

「それはですね。装備者が敵対者に襲われて瀕死になった時、愛するものを敵対者から守るために自爆して守ってくれるんです!」

 

 

「敵対者は勿論守るべき者もろとも吹き飛ぶだろうが!!何処が愛する者を守ってくれるペンダントなんだよ!!」

 

 

「それでは最後にこの水晶について教えて下さい。」

 

 

「それは2人1組で魔力を注ぐことで互いの恥ずかしい過去を映像として暴露させ2人の絆を深めるという大変徳の高い水晶なんですよ」

 

 

「そんなん絆どころか溝が深まるわ!!」

 

 

ウィズの商品紹介に悉く突っ込みを入れまくるカズマ。見ている分にはとても面白いコントであった。

 

そう、ウィズの商人としてのセンスは少し、いや、かなりズレているのだ。仕入れてくる商品ははっきりと言ってガラクタ同然の物ばかりであり、使えそうな物があったとしてもとんでもない欠陥がある物ばかり。まともだとしても高すぎて初心者ばかりの街では買えない物ばかりなのだ。

 

その為、売り上げなどは全くなく、日々の食費や家賃に困っている有様だったのだが俺と契約を交わし便利グッズや発明品を売る事でそれは解消されたのだが商才の無さは変わらない為、売り上げの殆どは役に立たないアイテムの仕入れに消えているのだ。とはいえ以前の様に家賃や食費に困る事はなくなったのが唯一の救いと言えるだろう。

 

 

「なぁ、ウィズ。お前、本当に只の善人な店主なんだよな?実は悪人だとか役に立たないアイテムを売る事で遠回しにアクセルの街を潰そうとしているんじゃないよな?」

 

 

「そ、そんな事はしていませんよ!!それに私は何処にでもいる普通の魔道具店の店主です!!」

 

 

カズマのジト目にドキッとしながらもウィズは必死で元冒険者である事を自分は善良な市民である事を訴えていた。

 

…因みにウィズがリッチーである事を知っているのは俺とゆんゆんだけだ。カズマやアクア、ダクネスはまだこの事を知らない。

 

 

「あーーーー!!!」

 

 

すると突然耳を貫く大声が聞こえ後ろを振り返ると其処にはいつから居たのかゆんゆんとそしてアクアがプルプルと震えながら立っていた。

 

 

「どうしてこんな場所にクソアンデッドがいるのよ!?しかも貴女はリッチーね!?まさかリッチーがお店を経営していたなんて…女神である私の目が黒いうちは貴方の好きにさせないわよ!さぁ、神の名のもとに大人しく罪を懺悔しな…いだいっ!?ちょっ、めぐみんやめてっ!?痛い!」

 

 

俺はウィズに飛びかかろとしているアクアの頭をわしづかみにすると手に強い力を込めた。

 

 

「アクア、仮にも一宿一飯の恩義のある相手に対して一方的過ぎませんかね?少しは話を聞いてあげようとはしないんですか?」

 

 

「ごめんなさい!大人しくするから離して!」

 

 

アクアのその言葉を聞くと俺は手を離す。するとアクアは余程痛かったのかそのまま頭を抱え蹲り動かなくなった。

 

 

「カズマにアクア、黙っていてすいません。ウィズは確かにアンデットですが別に人間に危害はいませんし、人間に対して友好的な姿勢を保っているので安心してください」

 

 

「めぐみんがそう言うならば問題はないか」

 

 

カズマは俺の説明に納得したのかウィズに対する警戒を解いてくれた。

 

因みにウィズはアクアの所為なのかとても怯えていた。

 

 

「あ、あの粗茶です。よろしければ....」

 

 

ウィズはアクアだけではなく俺達にもわざわざお茶を持ってくる。必要ないのにしてくれる辺り、ウィズの人の良さを感じた。

 

 

 

「なぁ、カズマ、お前ウィズからリッチーのスキルを教えて貰うのはどうた?丁度ポイントにも余裕が出来たって言ってたろ?」

 

 

「ブッ!」

 

 

俺の話を聞いていたアクアが飲んでいたお茶を吹き出した。そして吹き出したお茶は向かい側に座っていたゆんゆんに思いっきりかかる。

 

 

「何するのよ!おかげで顔がびしょびしょじゃない!」

 

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

 

心配したウィズがゆんゆんにタオルを持ってきてくる。ゆんゆんはそれで顔にかかったお茶をふき取る。

 

アクアはカズマがリッチーのスキルを覚えようとするのが余程気に食わないのか今にも飛び掛かって来そうだ

 

 

「ちょっと何を考えているのよめぐみん!カズマにリッチーのスキルを覚えさせようとするなんて!そもそもリッチーのスキルなんて碌なものじゃないのよ!そんなものを覚えてみなさい、覚えたら最後ナメクジやカエルみたいな暗くてじめじめしたところが大好きな連中にすかれるわよ!リッチーなんてそいつらの同類なんだから!」

 

 

「ひ、ひどい!」

 

 

「リッチーのスキルなんてそうそう覚えられる機会なんてありませんし、それにパーティーに3人の仮面ライダーがいるとはいえ万が一の事態に備えて私達のフォローできるスキルをカズマには覚えて貰うと非常に助かるのです」

 

 

「女神の従者がリッチーのスキルを覚えるなんて見過ごせないんですけど」

 

 

「いつから俺達がお前の従者になったんだ?」

 

 

思わず戦兎として突っ込みをしていると

 

 

「あのう…アクアさんが今言った女神って?まさか…アクアさんって本物の女神だったりするのですか?」

 

 

流石はウィズ。リッチーなだけあってアクアが本物の女神だと見抜いたようだ。そしてアクアは女神と久々に認められて嬉しいのか胸を張って堂々と言った。

 

 

「そうよ、私こそアクシズ教団が崇める水の女神アクアよ!控えるがいいわ、リッチー!」

 

 

「ヒイッッッ!?」

 

 

ウィズが恐怖からか叫び声をあげるとお前の後ろに隠れた。流石は女神、リッチーであるウィズをここまで怯えさせるとは。

 

 

「ウィズ、確かにアクアは女神ですがそこまで恐る必要ありますか?まぁ、アンデットが女神を恐れないのはどうかとは思いますが…」

 

 

 

「いえ、そうではなくて…世間一般ではアクシズ教団の人は頭のおかしい人が多いからかかわり合いにならない方がいいと言うのが世間の常識でして…そのアクシズ教団の元締めの女神様と聞いて....」

 

 

「なんですって!」

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

このすば!!

 

 

「では、一通り私のスキル見せますので好きなものを覚えていってください。普段お世話になっているめぐみんさんの頼みですし何より先程アクア様から守って頂いた恩返しですから…」

 

 

とウィズはそこまで言いかけると何かに気づいたかのように俺とアクアを交互に見ておろおろし始めた。

 

 

「ウィズ。どうかしました?」

 

 

「いえ、私のスキルは相手がいないと使えないものばかりでして、つまり、そのう...」

 

 

なるほど。そういうことか、ならアクアが適任だな

 

 

「そう言うことならば問題はないですよ。丁度ここに実験台がいますから」

 

 

「もしかしなくても私のことよね?アンタ、女神を何だと思ってるの?一度天罰受けてみる?まあ、いいわ。リッチーごときがこの私を傷つけられるわけないんだし」

 

 

そういうとアクアはウィズを睨みつけ威嚇する。それに怯えながらもウィズは話を続ける

 

 

「そ、そうですね…ドレインタッチなんてどうでしょう?これは相手の体力や魔力を吸ったり逆に魔力を分け与えることができるスキルです」

 

 

成る程、攻撃にも回復にも使えるとは中々に便利スキルだ。こういったスキルは俺達のパーティーにはありがたい。

 

使い方によってはベルトの調整やフルボトルの生成に役にたつかもしれない

 

 

「...では、アクア様、実演よろしいでしょうか?も、勿論、ちょっとしか吸いませんので!」

 

 

慌てたように早口になったウィズに対しアクアは何か碌でもないことを思いついたのかにんまりと凶悪そうな笑みを浮かべていた。

 

それを見て女神と悪魔の立場が逆転していると思ったのは俺の気の所為だろうか?

 

 

「いいわよ?いくらでも吸ってちょうだいな。さあどうぞ?」

 

 

「では失礼します......」

 

 

アクアはすんなりと自分の手を差し出します。ウィズがその手を取る。するとスキルが発動したのか手が淡く光り始めた。しかし...

 

 

「?…あれ?あ、あれ?」

 

 

「ほらほらどうしたの?私から吸うんじゃないの?自称、ノーライフキングであろう者がドレインもできないなんて聞いてあきれるわね」

 

 

「あ、あれええ―――!?」

 

 

余裕たっぷりに勝ち誇っているアクアと対照的にウィズはどんどん涙目になっている。どうやらアクアはドレインに抵抗しているようだ。

 

 

「やめんか」

 

 

俺はアクアの脳天にツッコミ用に作っていたハリセンを食らわせた

 

 

「痛いっ!?ちょっとめぐみん、邪魔しないでよ!これはリッチーと女神の戦いなのよ!私だって女神の端くれ簡単に吸われたまるもんですか!」

 

 

「話が進まない上にリッチーを退治に来たんじゃないだろ。とっととドレインされろっての」

 

 

アクアは俺の言葉に渋々ながら納得したのかウィズの手の光が少しだけ強まった。

 

 

「はい、これで良いはずですよ」

 

 

カズマはそれを聞くとすぐに冒険者カードを出しカードを操作した。どうやらスキル習得に成功したのか嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

 

「あ、あのう、アクア様?」

 

 

カズマが冒険者カードを懐にしまうと後ろからウィズの困ったような声が聞こえてきた。

 

ふたりの方向をみるとアクアはウィズの手を繋いだままだった。

 

 

「アクア様?もういいですよ?というかアクア様と触れていると手がピリピリするのでそろそろ離していただいてほしいのですが... 」

 

 

ウィズの言葉を聞いたアクアはにっこりと笑うだけで手を離そうとはしないばかりかウィズの手にもう片方の手を重ね離されないようにガッチリ握りしめた。

 

 

「アクア様、なんだか熱を帯びてきているような....あの痛いです、痛いんですが!私の身体、アクア様の魔力を吸うごとにどんどん浄化されっていっているんですが……私、消えちゃう!?消えちゃう、消えちゃう、消えちゃいます!」

 

 

「やめんか!」

 

 

「あぶし!?」

 

 

俺はドサクサに紛れてウィズを浄化しようとしているアクアの頭に再びハリセンを食らわせる。

 

アクアは芸人の様な声を上げるとウィズの手から手を離した。

 

 

「ドサクサに紛れてウィズを浄化しないで下さい。ウィズは確かにアンデットですが私の仲間です、危害を加えるつもりならばアクアだろうが容赦しませんよ?」

 

 

俺が睨みを利かせてそう言うとアクアは俺の眼光にビビったのか大人しく引き下がる。

 

そしてため息を吐いてからカズマの方向を見るとカズマはいつのまにかチョーカーを持っていた

 

 

「それは願いが叶うチョーカーですね、カズマさんはそれで一体どんな願いを叶えるつもりですか?」

 

 

アクアの神気を受けた為に身体を薄くしたウィズが涙目で商品について説明する。

 

 

それにしても願いが叶うチョーカーか…ウィズの店にしては意外にもまともな商品を置いてあるな…確かに現代社会にもそういったラッキーアイテムや風水グッズというのは人気があった、その辺りはこの世界でも同じって事か。

 

 

「めぐみんはこういった物とかには興味はないのかよ?」

 

 

「興味ありませんね。そんな物に頼らずとも自分自身の力で願いは叶えてみせますよ」

 

 

カズマは俺の言葉にそうか、と答えるとそのチョーカーを自分の首に身につけた

 

 

「カズマ、どうしてチョーカーを身につけるんですか?」

 

 

「いや、おしゃれなチョーカーだったし、幸せになれるから試しても良いかなぁと思って...」

 

 

「そんな物に頼るなとは言いませんが商品を勝手につけるのはどうかと思いますよ?」

 

 

「か、カズマさん!?」

 

 

俺がそう突っ込んでいると先程のアクアの攻撃から何とか立ち直ったウィズがやけに焦った声でカズマの名前を呼んだ。

 

 

「そ、そそそ、それ...」

 

 

「あそこの棚に置いてあった願いが叶うチョーカーですよ?あ、やっぱり勝手に付けたのは不味かったですか?」

 

 

商品を勝手に付けた事に怒っているのかと思ったが、ウィズがやたらと切羽詰まった表情をしているのが気になった俺はウィズにチョーカーについて問い詰める。

 

 

「ウィズ。このチョーカーを付けると一体どうなるんです?嘘偽りなく正直に全て話して下さい」

 

 

俺の圧に怯えたのかウィズは正直にそのチョーカーについて話し始める

 

 

「そのチョーカーは一度つけたら願いが叶うまではずれない上に、日を追うごとに徐々に締まっていく魔道具でして...」

 

 

「呪いのアイテムじゃねぇか!!」

 

 

カズマの突っ込みが冴え渡る。つうか、なんでそんな危ないもん売ってるんだよ。何も知らずに一般人が買ったらどんでもない事になるだろ。

 

 

「違います、女性に人気の商品なんです!死ぬ気になれば絶対に絶対に痩せられるって...」

 

 

自力で叶えるならばそんなの願いが叶うチョーカーとは言わないし、そもそも願いを叶える為には命がけで、失敗したら死って…そんなの本末転倒じゃねぇかと思う。

 

 

「それで?カズマ、貴方は何をお願いしたんですか?」

 

 

「そんなの一々覚えてないねぇよ!!ていうか、こんなんで死ぬとなったら末代までの恥じゃねぇか!!」

 

 

いや、既にお前は末代までの恥な死に方をしてるだろうと突っ込みたくなったがカズマの精神衛生的に突っ込むのはやめた

 

 

「このままだとチョーカーはゆっくりと締まっていって四日後にカズマさんは…」

 

 

「こんな馬鹿馬鹿しい死因は嫌だぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「私のせいですね...あの時私がちゃんとカズマの事を見ていれば...」

 

 

「いや、勝手につけた俺が一番悪いんだ。めぐみんの所為じゃない」

 

 

「一番悪いのは私です!!私がこんな危険な商品を店に並べていたのがいけないんですから...」

 

 

「「「・・・」」」

 

 

と、アクア以外の全員はそう言ってるのだが、この状況でアクアだけは謝らない。その辺りの図々しさというか厚かましさだけは流石だと思った。尊敬も感心もしないが、俺がそう考えているとウィズが俺とアクア、そしてカズマの手を取ると

 

 

「カズマさん。なんとしてでもそのチョーカーを外してみせますから安心してください!」

 

 

「私も協力する事にしましょう。カズマに死なれるのは気分が悪いですからね」

 

 

「わ、私は何も悪くないわよ!でも一応言っておくわ。ごめんね!もし死んだら、ちゃんとリザレクションかけてあげるから安心しなさい」

 

 

「俺、今度死んだら生き返るのは辞める。人生をストライキするわ」

 

 

「カ、カズマさん。冗談よね?魔王討伐はどうなるのよ?カズマさんが魔王討伐してくれないと天界に帰れないんですけど?」

 

 

カズマが冗談を言っている訳ではない事を知ると涙目で慌て始める。

 

 

「だったら真面目にやって下さい。一応は女神なんですから」

 

 

「わ、わかったわよ!やればいいんでしょ!やれば!!」

 

 

こうして俺達によるカズマ救出作戦が始まった。

 

 

**********************

 

 

 

その後俺の連絡を受けて地下にあるラボへと集合した、ダクネス、ゆんゆん、ミツルギの3人はカズマが置かれた状況に驚くと共にカズマからチョーカーを外す為の作戦を一緒に立ててくれる事となり、取り敢えずはカズマが満足しそうな事を片っ端から試してみる事になった。

 

 

「カ、カズマさん?こ加減は如何でしょうか?」

 

 

「ウィズの太ももはひんやりしてて悪くない、あととても柔らかい。そしてウィズが恥ずかしがっている様子もとてもいいです」

 

 

「そ、そうですか。それは、あの...どうも!」

 

 

願いが叶うチョーカーを外す為ならば何でもやるとウィズはカズマに言ってしまったたので、早速カズマはウィズに膝枕をさせていた。

 

そしてそんなカズマにミツルギが飲み物を持ってきてくる。

 

 

「サトウカズマ。飲み物はいるかい?」

 

 

「いただきます。でも飲ませるのはウィズに頼むからな」

 

 

「は、はい...」

 

 

赤い顔をしたウィズにストローを持って貰い飲み物を飲んでいるカズマは幸せそうな表情を見せている

 

 

「サトウカズマ…状況が状況とはいえこれは…」

 

 

「いいだろう、貴様が何を望むか知らないがこの私がすべて受け」

 

 

「お前は鎧を脱いで腕立て伏せ100回」

 

 

カズマの発言にダクネスは喜んでいたがもう突っ込まない。そしてフルプレートで出来た鎧を抜いたダクネスはそのまま腕立て伏せを開始する。

 

 

「流石はダクネス…俺の見込んだ通りだったか」

 

 

カズマの視線はダクネスの胸に釘付けだ。因みにミツルギも顔を真っ赤にさせながらもダクネスの胸を見ていた。

 

 

「あんなけだもののような視線に晒されている上に逃れることも出来ないとは...恐らく奴らの頭の中ではもっとあられもない姿に剥かれ...や、やめろー!!私は騎士として屈するわけにはいかないのだ!!」

 

 

そう言いながらも腕立て伏せを止める事はないダクネス。

 

 

「ねぇ、めぐみん。ダクネスさんが言ってる事全く理解が出来ないんだけど….」

 

 

「ゆんゆん。世の中には理解しなくていい事が理解してはいけない事があるのですよ?」

 

 

 

「な、なんてこと。この男ここぞとばかりに美しい私たちに欲望の限りを尽くすつもりね!」

 

 

「おまえはダッシュで焼きそばパン買ってこい」

 

 

「なんでよー!!」

 

 

「アクア様ー!」

 

 

アクアは泣きながら焼きそばパンを買いにいく。(その時ミツルギはアクアの後を追いかけ行った)普段カズマは散々アクアに苦労させられているからなのか、今までの鬱憤をここぞとばかりに晴らしているのだろう。…それにしても少々調子に乗りすぎなのでは?

 

 

そう思い庭に移動したカズマを追いかけると

 

 

「あのカズマさん?膝枕って向きが逆なのでは?」

 

 

「俺が生まれた国にはこういう膝枕もあった」

 

 

「そ、そうですか」

 

 

そう今のカズマは顔をを太ももの方に向けているのだ。つまりカズマの顔面にウィズの胸が当たっている事になる訳で…

 

其処にカズマに言われた通りに焼きそばパンを買ってアクアとミツルギが帰って来る。

 

 

「かってきたふぁ!」

 

 

「遅い!!あと買ってきましただろ!」

 

 

「きまふぃた!」

 

 

なんかアクアの声が変だ。そう思った俺はカズマと共にアクアの顔を見る。

 

 

「…アクア。お前、半分食っただろ」

 

 

「ふ、ふってない!」

 

 

「隠すならばせめてそのリスみたいに膨らんだ頬を何とかしろ!!」

 

 

頬を膨らませた状態で口をもごもごとさせているアクア。カズマは呆れた表情になると諦めたのかゆんゆんの方を見ると

 

 

「次はアクアとゆんゆんで野球拳だ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「野球拳?」

 

 

「アクア説明してやれ、ウィズはそのまま膝枕で」

 

 

「サトウカズマ!!流石にアクア様とゆんゆんさんが可愛そうだ!!」

 

 

ミツルギの言葉にカズマは首元を撫でるとミツルギは何も言えなくなってしまう

 

 

「それじゃあ終わったら呼んでくれ、それじゃあウィズ続きをお願いします!」

 

 

 

今度はウィズの太ももを堪能し始めるカズマ。はっちゃけ過ぎだろう…

 

結果から言うと勝負はアクアの惨敗であり、真っ裸で座り込みすんすんと泣いているアクアをゆんゆんが必死で慰めていた。

 

 

********************

 

 

そして2日目、この日もカズマのチョーカーを外す為周りはカズマの願いを出来る限り叶え続けた。ウィズとゆんゆんの胸の上に頭を置きながらワインを飲んだり、ふたりの太ももを楽しんだりとやりたい放題であり周りもカズマの命がかかっている為に逆らえなかった。

 

因みにダクネスにはスクワットをさせていた。その理由は1日目に腕立て伏せをやらせていた理由と同じである。

 

 

「はぁ、はぁ、良いぞ!この身体の心地いい倦怠感!!めぐみんもそう思うだろう!?」

 

 

頬を上気させながら俺にそう言うダクネス、こいつの息が上がっているのは嬉しさなのかわからない。いや多分嬉しいんだろう、だってコイツ、瞳の奥がよろこんでるもん。

 

 

その後調子に乗りまくったカズマをゆんゆんがスリープで眠らせるまでそう時間はかからなかった。

 

 

********************

 

 

3日目、今度はウィズ、ダクネスと共にお風呂に入る事になったカズマだがその願いは段々と過激になっている。

 

 

「私は体を洗っているだけでいいのか?」

 

 

「あああ、頼む。でも優しくな」

 

 

「かゆいところはないですか?カズマさん」

 

 

「問題ない」

 

 

ダクネスは背中をウィズは右腕をそれぞれ洗っていた。

 

 

因みにアクアは風呂掃除を命じられている。こんな時にまで異性と認識されていないアクアには同情を禁じ得ない。

 

 

 

「ふたりにはお願いがあるんだ…今度はそのたわわに実ったその胸で洗って欲しい!!!」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

 

カズマの願いに驚いた声をあげるウィズ、カズマも味を占めたのか要求が其方の方向に振り切れ始めていた。…あいつチョーカーが無事に外れた後の事を考えてんのか?

 

…えっ?ダクネスはどうしたって?いつものように俺の隣で羞恥心と性的興奮で悶えているが?

 

 

 

 

「アクア、お前は天然温泉掘り当てろ、出来るだろ?あ、ミツルギはその手伝いな?」

 

 

「は?どうして私がそんな事をやらないといけないわけ?」

 

 

それまではカズマの要求を渋々聞いていたらアクアだったが流石にカズマの言葉の意味が分からないのかカズマの方を見る。

 

 

「水の女神と呼ばれたお前ならば温泉のひとつやふたつの掘り出せるだろ?それともお前は見せかけだけのなんちゃって女神なのかよ?」

 

 

「言ったわね!言いじゃない、やってやるわよ!!女神の実力見せてやるわ!」

 

 

「アクア様!?流石に挑発に乗り過ぎじゃないですか!?」

 

 

安い挑発に乗り庭へと飛び出して行くアクアとミツルギ。うわぁ…カズマの奴、明らかに邪魔者は居なくなったって顔をしてやがる。

 

 

「かゆいところはないですか?カズマさん」

 

 

 

「うーん...とくにはないかな、そのまま続けてください」

 

 

「はい」

 

 

「うんっ...」

 

 

「どうしたウィズ?」

 

 

「いえ...」

 

 

うわ…カズマの奴、ドサクサに紛れてウィズの胸を弄り始めたぞ。

 

 

「そうだ、ふたりにはその胸で俺を挟んで貰ってそのまま胸で洗って貰おうかな?」

 

 

二人が驚いたような声をあげるが、カズマは気に止めず

 

 

「ほら、ほら!!」

 

 

カズマが急かすように言うと羞恥心に顔を真っ赤にしたウィズとダクネスが震えながらカズマに近づいていく。

 

 

「きたー!!」

 

 

「カズマさんの…ケダモノーー!!!」

 

 

 

ゆんゆんのそんな声が聞こえたのと同時にカズマの頬に思いっきり握り拳で殴りつけた

 

 

「んぎゃーーーー!!!!!!!???」

 

 

吹っ飛んだカズマはそのまま床に頭を打つと目を回すとそのまま気絶してしまいそのまま3日目が終了した。

 

 

**********************

 

 

遂に4日目になってしまった。未だにチョーカーを外す事が出来ていないカズマは居間にみんなを集めるといきなり土下座をし出す

 

 

「ありがとうみんな。俺、幸せだったよ」

 

 

「えっと、カズマさん?」

 

 

「もういいんだ。今まで付き合ってくれてありがとう、本当にありがとう」

 

 

ウィズが困惑しているがカズマはまた頭を下げる。ここ数日の欲望の限りを尽くしていたカズマはどこに行ったのだろうか?

 

 

「わ、私は筋トレして体を洗っていただけだぞ!もっとえぐい命令...を?」

 

 

興奮しているダクネスだが、カズマの表情を見た瞬間冷静になった。なんせそう言っているカズマの表情は完全に死んでいたのだから。

 

 

「恥の多い人生を歩んできました。欲望のまま振舞っても、虚しさが残るだけでした」

 

 

確かにこの3日間は欲望のままに動いていからな、充分に恥の多い人生と言えるだろう。

 

 

「俺が死んだらこのジャージをもらってくれ。俺がこの世界にいたせめてもの証のために...」

 

 

「ちょっと待ちなさいよ...」

 

 

普段の態度が嘘の様にしおらしいアクアはカズマに近づく

 

 

「アクア、お前が買ってきた焼きそばパンとしゅわしゅわ。大変おいしゅうございました」

 

 

手を合わせて遠い目をしだしたカズマ。

 

 

「「カズマさん...」」

 

 

「カズマ」

 

 

「サトウカズマ…」

 

 

そんなカズマにこの3日間振り回されたウィズにアクア、ゆんゆんそしてダクネスが感極まった様子で近づいていく。ミツルギもそんなカズマの様子を見て深い悲しみを顔に浮かべていた

 

 

「カズマ、私と一緒に魔王を討伐するんでしょう?こんなところで居なくなるなんて言わないでよ…」

 

 

「カズマさんは死なせたりしません...もっと何でも言ってください」

 

 

「カズマ、諦めるのはまだ早い。きっと助かる方法がある筈だ」

 

 

「サトウカズマ、君はこんなところで諦めるような奴ではないだろう?」

 

 

カズマはアクア達の言葉に涙を浮かべており

 

 

「だったら最後に謝りたいことがあるんだ...ゆんゆん、ウィズ。二人と話している時、俺の視線はいつも胸のところに固定されてたんだ。ウィズは豊かだしゆんゆんは歳の割には発育がよくつい目が行ってしまったんだ…でも俺は自分が悪いとは思わずにそんな体をしているお前たちが悪いんだといつも思っていたんだ、ごめんな。ダクネス、屋敷で一緒に暮らし始めてからお前にはおっぱいしか求めていない。お前はおっぱいだ、おっぱい。ごめんな。アクア、ごめん。どんなに頑張ってもお前をヒロインとして見る事が出来なかったよ、ごめんな」

 

 

 

「「「ごめんっていえば何でも許されると思うな!!!」」」

 

 

カズマの謝罪になっていない謝罪を聞いた女性陣からの怒りの声が上がる。謝罪にかこつけて今までのセクハラ紛いの行動を自白し始めたのだから当然だろう。

 

 

「諦めないでよカズマさん!諦めないでよー!おねがい、お願いだからカズマさん!」

 

 

アクアが涙を流しながらカズマを揺さぶりながらそう懇願する

 

 

「これでもう思い残すことはない、ありがとうみんな」

 

 

 

カズマがそう言った瞬間、チョーカーがカズマの首からポトリと落ちた。

 

 

「あれ...なんで?」

 

 

いきなりの事に混乱しているカズマと女性陣+ミツルギ、その様子を見た俺はふとカズマの発言を思い出した。

 

 

「そういえばカズマは幸せになると思ってこのチョーカーをつけたと言いましたよね?それってカズマが満足したと幸せだと言えば外す事が出来たのではないですか?」

 

 

俺の言葉に周りの空気が凍りつくのと同時にアクア達の目線がゴミグスを見る目に変わり、それをカズマは顔面を蒼白にして震えていた

 

 

「…ねぇクソニート、もう一度このチョーカーつけてみなさい。大丈夫、優しいみんながきっとあなたを助けてくれるわ」

 

 

そう言ってカズマの首にチョーカーをつけようとしたアクアの手を俺は掴んで止めた。

 

 

「悪いがソイツをさせる訳にはいかないな。幾ら蘇生出来るからといって死なせていい理由にはならない」

 

 

「めぐみん…」

 

 

カズマが潤んだ目で此方を見てきた。俺は其れを横目で見るとアクアの手からチョーカーを奪い取った後

 

 

「まぁ、半殺しぐらいならば全く問題ないがな」

 

 

「めぐみん!?」

 

 

俺の言葉を聞いた女性陣は笑みを浮かべるとカズマにゆったりと近づいていく。

 

 

「ミ、ミツルギ!頼む、助けてくれ!!」

 

 

カズマは近くにいたミツルギに助けを求めるが

 

 

「悪いけど、今回は助けるつもりはない。しっかりと反省するといい」

 

 

「この薄情モン!!!」

 

 

ミツルギの言葉にカズマは怒りの表情を浮かべたが

 

 

「ギャーーーーーー!!!」

 

 

そのすぐ後にカズマの悲鳴がラボに響き渡ったのだった

 

 

そしてラボの外へと移動した俺は手にしていたチョーカーを空に放り投げるとカイゾクハッシャーで其れを貫く

 

 

「やっぱりどんな状況でも自分の欲望のまま生きるのは良くないよな」

 

 

そう口にすると俺は騒ぎがまだ続いている魔道具店へと戻っていく、その後カズマは女性陣にフルボッコにされた上に包帯だらけで暫く放置されてしまったのは余談である。

 

 

 

 

 

 




コロナの影響で私生活がかなり忙しくなってしまった為に通常更新に戻るまで時間がかかりそうです。

なので今回は特別に2話連続更新です。  

楽しんでくれると嬉しいです

評価と感想をお待ちしてます。


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外伝この素晴らしい平行世界に祝福を!!
この素晴らしい世界移動に祝福を!


 

この外伝の時間軸はデストロイヤー戦後の話です。

 

 

俺は桐生戦兎、この世界ではめぐみんとして生きている。女神エリスの依頼によりアクセルの街へと向かい本来の歴史通りにする為に現代からの転生者である佐藤和馬と水の女神アクア。そしてゆんゆんにダクネスという仲間達と共に魔王軍幹部ベルディアと移動要塞デストロイヤーを撃破する事ができた。

 

 

そしてこれはデストロイヤーを撃破してからほんのしばらく経った後の物語だ。

 

 

********************

 

 

デストロイヤー討伐してから3日後…報酬金が支給されるのはもう少し先であるが多くの冒険者達は既にツケで呑んで大騒ぎだった。ギルドや街もその気に乗じて商売をする気らしく至るところで出店が出ており街が活気付いていた。

 

 

「凄い人気ですね…こんな風に出店を回るなんて前の世界では考えられなかったです」

 

 

俺は今街へと繰り出し出店を回っていた。本来ならばビルドの新たな装備の開発と魔力の回収をしたかったのだがゆんゆんに無理矢理祭りへと連れ出されていたのだ。

 

 

「私が無理にでも外に出さないとめぐみんは外には出ないでしょ?折角のお祭りなんだから楽しまないなんて馬鹿みたいじゃない」

 

 

「ゆんゆん…貴女アクセルに来てから口が悪くなりましたね」

 

 

出会ったばかりの頃は正直言ってチョロいところがあったので心配していたのだがこの2年間で大分改善されたと思う。

 

まぁ、チョロいところは大して変わらないが…でも、たまにはいいか、祭を楽しむのも。

 

 

「まぁ、たまにはいいでしょう。デストロイヤーも討伐した事ですし暫くはゆっくりとしましょうか」

 

 

ゆんゆんの言葉によりオレは素直に祭を楽しむ事にした。よく考えたらこの世界にめぐみんとして転生して以来心から楽しんだ事は一度もなかった。祭に関しても参加したのは葛城巧だって頃の一度ぐらいだ、ならば今日ぐらいは楽しんだってバチは当たらないだろう。

 

 

祭では色々な屋台やイベントが開催されていた。屋台では焼きそばやたこ焼きといった前の世界に当たり前にあった庶民派グルメが大人気であり、俺はゆんゆん共にそのグルメに舌鼓をうったり、ゆんゆんがミスアクセル決定戦に参加させられたり射的の腕を競い合ったりとこの祭を心の底から楽しんでいた。…その時の俺は気づかなかった。新たな脅威が直ぐ近くまでに迫っていた事に

 

 

********************

 

 

そして夜も更けてきた頃、ひとりのフードを被った男がアクセルの町を見下ろしている

 

 

「仮面ライダー…お前に我が計画を台無しにされた恨みを必ず果たして見せるぞ。地獄で新たに手に入れたこの力で…」

 

 

その言っている男の顔はフードにより見えなかったがその手の中にはフルボトルてトランスチームガンに良く似たデバイスがが握られていた…

 

その夜俺はひとりで魔道具店へと歩いていた。カズマ達はギルドで宴会と洒落込んでおりゆんゆんもそれに巻き込まれた形でギルドに残っていた、俺は騒ぐのもほどほどにすると一足先にラボへと戻る為に誰もいない街中を歩いていた

 

 

「ふう…流石に騒ぎ疲れたな、明日はギルドの設備の点検もあるし早く帰って寝ないと…」

 

 

そんな事を呟きながら歩いていると目の前に赤と青のふたつの色の歯車を合体させた怪人が上空から現れた

 

 

「お前は…最上魁星(もがみかいせい)!?生きていたのか!」

 

 

最上魁星…それは俺がまためぐみんとして転生する前、まだ世界が作り変えられるまえの旧世界にいた時に戦った事のある男だ。

 

その時はエグゼイドを始めとする異世界の仮面ライダー達と力を合わせて奴の野望を阻止した事があった。

 

最上はその時に死んだと思っていたのが…

 

 

「いや、違うな…お前は何者だ!」

 

 

しかし俺は直ぐにコイツは最上魁星ではない事に気付いた、何というかこのバイカイザーからは生者の雰囲気を感じないのだ。どちらかと言えば死者と言った方が…

 

 

『私は仮面ライダーに恨みを持つ者…それ以外の何者でもない。この世界の仮面ライダーよ我が復活の狼煙となるが良い!』

 

 

「悪いがそんなもんになるつもりはない!」

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

 

ラビットタンクに変身した俺はつい先日復元したドリルクラッシャーを構えるとバイカイザーに攻撃を加えようとするが奴は俺の攻撃を難なくと躱していく

 

 

「ちょこまかと素早いんだよ!」

 

 

俺はドリルクラッシャーのソケットにゴリラフルボトルを装填しバイカイザーに攻撃を仕掛けるが…

 

 

『無駄だ』

 

 

バイカイザーの左半身にある青い歯車から青い歯車の形をしたエネルギーを発生させるとそれでめぐみんの攻撃を防いた後そのエネルギー体をめぐみんに向かって投げつけてくる。

 

そしてその攻撃をまともに受けた俺は地面に転がるが直ぐに立ち上がり

 

 

「なら、上空からの攻撃ならどうだ!!」

 

 

『タカ!ガドリング!ベストマッチ!』

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

『天空の暴れん坊!ホークガドリング!イェーイ!』

 

 

ホークガドリングにビルドアップするとソレスタルウィングで上空へ飛び、ガドリンガーでバイカイザーに攻撃していくがまるで効いてはいなかった

 

そしてバイカイザーはナイトローグやブラッドスタークが使っているトランスチームガンに良く似たデバイス…ネビュラスチームガンを構えると正確な射撃で羽を撃ち抜いていく。翼を失った俺は墜落していき、トドメとばかりに奴の蹴りを受け壁へと叩きつけられてしまう。

 

そして変身が解除され地面に転がった所を近づけて来たバイカイザーに襟首を掴まれると直ぐ近くに謎のゲートが開かれた

 

 

『貴様は嬲り殺すだけでは足らない…精神的に苦しめてから殺してやる!!』

 

 

そう忌々しくそう言うとめぐみんをそのゲートの中に放り込む

 

 

「ウワァァァァ!!」

 

 

悲鳴をあげる戦兎を飲み込むとゲートは消え、その場には最初から何もなかったような静けさを取り戻した

 

 

『桐生戦兎、こことは違う世界でイレギュラーな存在である自分を呪うが良い!!』

 

 

誰も居なくなった街中でそんな男の声が響いていた…

 

 

********************

 

 

 

そして俺が目を覚ますアクセルの広場の中心にあるベンチの上にいた。

 

 

「何故俺はこんな何処で寝てしまっていたんだ?…まぁいい、取り敢えず風呂に入ってかはギルドに向かう事にするか」

 

 

何故だか夕べの記憶が抜け落ちている。何かとても重要な出来事があった筈なんだかんだが…しかし一向に考えてもその出来事を思い出せない為、一度、頭をすっきりさせる意味合いも兼ねて冷えてしまった身体を風呂で温めるとギルドから依頼を受けていた事を思い出し冒険者ギルドへと向かう、しかし街を歩いている時僅かな違和感を俺は感じていた。

 

 

「なんだかアクセルの雰囲気が昨日までと違うような…気の所為か?」

 

 

そしてギルドに入るとその違和感が更に強くなる。何時ものギルドとなんも変わらない筈だ、冒険者達も何時もの面子だ。しかし何だこのぬぐい様のない違和感は?

 

俺はそんな事を考えながら受付に行くと其処にいたルナさんにいつものように話し掛けた。

 

 

こんにちはルナさん。ギルドの依頼を受けて設備の点検をしに来ましたよ」

 

 

俺の言葉にルナさんは不思議そうな表情を浮かべると

 

 

「???何の話でしょか?当ギルドはめぐみんさんに依頼は出してはいませんが?それにめぐみんさんのその服装は一体?何時もの紅魔族の服じゃないんですね?」

 

 

「は?」

 

 

「へ?」

 

 

…どうやら俺はまた変な事件に巻き込まれたようだ。




まだまだ更新は不定期ですが応援してくれると嬉しいです。

それでは感想と評価をお待ちしています。


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この紅魔族の少女の世界移動に祝福を!!

お待たせしました更新再開です。


「めぐみん!お前はまたお礼参りをしやがったな!毎度謝りにいく俺の身になりやがれ!」

 

 

「それは出来ない相談ですね。紅魔族は売られた喧嘩は買う種族なのです!」

 

 

「お前はいちゃもん付けてただけだろうが!!」

 

 

「私は背の低い事を馬鹿にされた事に対して怒っただけです!何も悪くないですよ!」

 

 

私はめぐみん。紅魔族随一のアークウィザードになる為に爆裂魔法を極める為にそして私の魔法をあのお姉さんに見て貰う為に紅魔の里からこのアクセルの街へとやって来ていた。

 

 

「兎に角!しばらくは爆裂散歩は無しだ!!反省してろ!!」

 

 

「それだけは、それだけは許して下さい!!紅魔族は1日に一度爆裂魔法を放たなければ死んでしまう種族なのです!」

 

 

「そんなデタラメ通用する訳ないだろ!!ダクネスとアクアにも良く言って置くから俺の代わりに連れて行って貰おうとしても無駄だからな!!まぁ、ドレインタッチであらかじめ魔力を吸い取っておくから打とうとしても無駄だけどな」

 

 

なんと酷いことを!!カズマはそれが私にとってどれだけ残酷なことなのかわかってません!!

 

 

「どうしてですか!私は只、爆裂魔法を極めたいだけなんですよ?どうしてそれを分かってくれないのですか!!」

 

 

「それを分かって欲しければ辺り構わず魔法を放つのは辞めろや!!ついでにその直ぐに喧嘩にはしる癖もなんとかしろ!!話はそれからなんだよ!!」

 

 

カズマはそう怒鳴り返すと私の頭を掴むとギリギリと握りしめて行く

 

 

「い、痛いです!離して下さい!あ、あたまが割れてしまいます!!」

 

 

そう言っていると私は自分の魔力が吸われていることに気づいた。

 

 

「こ、これはド、ドレインタッチ!?お願いですから今すぐドレインタッチを解除して下さい!や、やめ、ヤメロー!!」

 

 

そして魔力を吸い取られた私は力なくその場に座り込む。カズマはそんな私を見下した様子で

 

 

「これに懲りたらもう二度周りに迷惑をかけるのは辞めろ!また同じことをしたら、もっと酷いお仕置きをしてやるからな!!」

 

 

カズマが怒鳴りながらそう言っていると近くにいたアクアが引き気味でカズマに近づき

 

 

「カズマさん。何だか私にはカズマさんが幼気な少女に外道なことをしようとしているようにしか見えないんですけど…」

 

 

「カズマ!!そのもっと酷いお仕置きに関し詳しく教えてくれないか!!」

 

 

「お前ら…特にダクネスは自重しろや!!アクアも誤解を招く言い方はやめろ!!周りもそんなゴミクズを見るような目でみてるんじゃねぇぇ!!」

 

 

カズマは周りの冒険者や職員達のゴミクズを見るような目に耐え切れずに周りにそう怒鳴り返していた。

 

その後、私は警察へと連れて行かれると冒険者にお礼まわりをしたことに対するお説教をたっぷりと受けた上に今までの爆裂魔法の被害や冒険者ギルドに来ていたクレームに対する説教もたっぷりと受けることとなり警察から解放される頃にはすっかりと夜も更けており私は文句をブツクサと言いながら屋敷へと帰っていた。

 

 

「全く…カズマも警察の連中も分かっていません!我が爆裂魔法の素晴らしさも!紅魔族は舐めたられたら終わりなのですよ!!」

 

『この世界の桐生戦兎は随分と変わり者のようだな』

 

その声に私が前をみると赤と青の歯車が合体した魔物にも騎士にもみえる謎の人物が其処にたっていた。

 

 

「あ、貴方は何者ですか!?わ、私に手を出そうならばアクセル一の鬼畜男が黙ってはいませんし我が爆裂魔法で無に還ることになりますよ!!」

 

 

実際のところはカズマに魔力を吸い取らているので爆裂魔法を放つことは出来ない。しかしブラフとしては充分に通用する筈だ、それにこの街に住んでいるならば私の爆裂魔法やカズマの恐ろしさをよく分かっている筈…しかし

 

 

『ブラフならばもう少し上手く貼るのだな…貴様が爆裂魔法を放つことが出来ないのは承知している。それにこの世界の佐藤和真など私の敵ではない』

 

 

この世界の?一体何を何を言っているのだろう?そしてその人物は私の首を掴んで持ち上げる。

 

 

『この世界の貴様には恨みはないが別の世界の貴様には恨みがあるのでな。悪いが我が計画に利用させて貰うぞ!!』

 

 

「さっきから貴方が言っているこの世界のカズマだとか別の世界の私とか何を言っているのか分かりませんよ!」

 

 

しかしその謎の人物は私の言葉を無視すると空中に手をかざすことで謎のゲートを出現させると私をその中へと放り込んだ

 

 

「ウワァァァァ!!」

 

 

私は悲鳴をあげながら自分の意識が遠のいて行くのを感じていた

 

********************

 

 

私が気がつくといつのまにアクセル近くの草原に倒れていた

 

 

「ここは確かアクセルの近くの…アレは夢だったのでしょうか?」

 

 

でも、夢にしては随分とリアルだったような気が…だが、これ以上考えても仕方ないと思い直すと私はアクセルの街へと戻って行く。

 

 

そして私達が住んでいる屋敷に帰ってくると屋敷の扉を開けようとするが扉が開かない、どうやら誰も居ないようだ。

 

 

「可笑しいですね、何時もならばアクアかカズマが居るはずなのですが…」

 

 

つい最近大金を手に入れたカズマが自分からクエストに出るとは思えない、だとしたら朝からギルドで飲んでいるのだろうと考えた私はギルドへと向かう

 

 

「何だか何時ものアクセルと何処か違う気がしますね…この違和感は何でしょうか?」

 

 

歩いている間私は街の至る所から違和感を感じていた。それだけではない、街の住人達がやたらと親身に話掛けてくるのだ。

 

 

「おっす!めぐみんちゃん。今日は変わった服装をしているね?何時もの服装も良いけどその服装も似合っているよ」

 

 

「めぐみんさん。今日の夕方、家に来てくれないかしら?家の前の街灯の調子が悪くて…」

 

 

一体何を言っているのだろう?私は何時もの服装をしているだけだしそれに街灯のメンテナンスなんてやったことはない。

 

その時、私は街から感じていた違和感に漸く気づいた。街の設備が見たことの無い物に変わっているのだ。それだけではない、街中の屋台で売っている物も見たことがない物ばかりだ。私は酷く頭を混乱させながらもギルドに到着するとギルドの扉を開いた

 

 

「おはようごさいますめぐみんさん。本日は設備の点検の方を宜しくお願い致しますね」

 

 

…ルナさんも訳の分からないことを言っています。私はため息を吐くと

 

 

「一体何の話です?そんなものは受けた覚えはありませんよ?」

 

 

しかしルナさんは私の言葉にクスリと笑うと

 

 

「冗談はやめて下さいよ、昨日頼んだじゃありませんか。今日のめぐみんさんは何か様子が可笑しいですよ?服装も可笑しいですし」

 

 

「おい、私の服装に関して文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

 

「痛い!痛い!痛いです!めぐみんさん、やめて下さい!!」

 

 

私がルナさんに掴みかかっていると周りの冒険者や職員達が私を信じられないという表情で見つめていた。

 

 

「ちょ、ちょっとめぐみん!ルナさんに何をしてるのよ!!」

 

 

私とルナさんの様子を見ていたのかゆんゆんが人混みの中から飛び出してくると私を羽交い締めにしてルナさんから引き離した。

 

 

「めぐみん!一体どうしたのよ!!貴女は他の紅魔族と違って可笑しいことをする子じゃないでしょう!?」

 

 

「いつから貴女はそんなそんな生意気な口を聞けるようになってのです?私がいなければ誰にも相手にされないぼっちが」

 

 

「ぼっ、ぼっち?めぐみんが居なかったら誰にも相手にされないって…そ、そんなこと無いわよ!!貴女は誰なの?私の知ってるめぐみんはそんなこと言わないんだからぁぁぁ!!」

 

 

私にぼっちと言われたことが余程ショックなのか大粒の涙を流しながら私に掴みかかってくる

 

 

「まさかのガチ泣きですか!?ちょ、ちょっと待って下さい、本気で泣かれると困るのですが!」

 

 

ゆんゆんに掴み掛かられた私が混乱していると頭部に強い衝撃を感じ、後ろを振り返るといつの間かやって来ていたカズマ達が其処にいた。どうやら私はカズマに拳骨を受けたようだ。

 

 

「オイ!言い過ぎだぞ!!一体どうしたんだよめぐみん!!今日のお前はおかしいそう!!」

 

 

カズマが泣いているゆんゆんを慰めながらそう口にする。ゆんゆんが私の言葉で泣くことなんて何時ものことなのに何を言っているのだろう?

 

 

「何があったのかは知らないが親友にそんなことを言うのは感心出来ないな。めぐみん、ゆんゆんに謝れ」

 

 

「ど、どうしちゃったのよ、めぐみん?なんていうか何時もの優しい貴女じゃない見たいよ?」

 

 

「アクア。それは普段の私が優しくないように聞こえますが?」

 

 

駄目だ。カズマやゆんゆんだけじゃない。アクアやダクネスの様子まで変だ

 

 

「一体どうしたのですか!?ダクネスもゆんゆんも可笑しいですよ?何時ものやり取りでは無いですか!」

 

 

本当に今日のカズマ達は可笑しい。なんていうか…私の知っている彼らとは別人みたいだ。

 

 

「ゆんゆん。気にすんなよ、きっとめぐみんは調子が悪いだけなんだよ思うよ」

 

 

カズマはゆんゆんの肩を叩きながら慰めるようにそう言っているとゆんゆんはハッと何かを思い出した様子で口を開く

 

 

「思い出したわ、このめぐみん…頭を打つ前の性格にそっくりなのよ」

 

 

「頭を打つ前のめぐみんみたいだと?だということは頭を打つ前はこんな頭のおかしい奴だったってことか?」

 

 

「おい、誰が頭のおかしい奴なのか聞こうじゃないか?答えによっては我が爆裂魔法によって吹き飛ぶ事になる」

 

 

私が目を紅く輝かしながらそう言っているとカズマが小さな袋らしき物を取り出すとそれを見せてくる。

 

 

「めぐみん。こいつに見覚えがないか?」

 

 

「何ですかこれは?見覚えがないですね。魔力を感じますがウィズのところで買ったマジックアイテムですか?」

 

 

私はカズマからその小さな袋を受け取ると手に取ってそれを眺める。そのアイテムは今までにない不思議な感触をしていた、こんなマジックアイテムは見たことがない。

 

 

「この様子…嘘をついている訳じゃなさそうだな」

 

 

「じゃあ、このめぐみんは私達が知っているめぐみんとは別人ってことなの?」

 

 

カズマとゆんゆんが何を言っているのか分からない。…そう言えば、昨日私を襲って来た謎の男が似たようなことを言っていたような?

 

そう考えながら私が首を傾げているとカズマが何か信じられないような、そして納得したような表情を浮かべると私に話しかけてくる

 

 

「めぐみん。これから言うことはお前にとって信じられない物かもしれないが恐らく事実だ。驚かずに聞いて欲しい」

 

 

カズマはそう言った後一息つくと

 

 

「恐らく…この世界はお前が知っている世界とは別の世界だ。お前が今持っているのはスクラッシュゼリー、この世界のお前が作ったアイテムだ。そして俺とゆんゆんはお前が作った装備で戦っている、仮面ライダーとしてな」

 

 

「それだけじゃないの。この世界のめぐみんはその…魔力を持っていないのよ。昔の事故が原因でね…」

 

 

「わ、私が魔力を!?そ、それではこの世界の私とやらは爆裂魔法を使えないのですか?信じられません!!」

 

 

ゆんゆんが言っていることが信じられない。私が魔力を使えないなんて…それどころか爆裂魔法も習得していないとは本当に私なのだろうか?

 

 

「確かにこの世界のめぐみんは魔力を使えなかったが、それでも自分の信じる物の為に絶対に譲れない物を持っていたぞ」

 

 

そう言っているダクネスの表情は尊敬して言っている物だった。…この世界の私は爆裂道を歩んでは居ないがこの私と同じように素晴らしい仲間達に恵まれているようだ。

 

 

「くかー」

 

 

そんな良い雰囲気の中アクアはよだれをたらしながら居眠りをしていました

 

 

「人が真面目な話をしてる時に居眠りなんかしてるんじゃねぇ!!」

 

 

「あいた!?」

 

 

カズマはツカツカと居眠りしているアクアに近づくとアクアの頭に拳骨を落とした。目が覚めたアクアは涙目で頭を抑えながら

 

 

「し、仕方ないじゃない!難し過ぎて話が分からなかったんだから!謝って!私に難しい話をしたことを謝ってよ!!」

 

 

「お前は何言ってんだよ!!」

 

 

そう言ってアクアに更に拳骨をするカズマ。…アクアはこの世界でも変わらないらしい。その事実にほんの少しだけ安堵したなのは内緒だ。

 

その後のカズマ達の話によると私が魔力を使えずに爆裂魔法も覚えていなく、天才物理学者で仮面ライダーといった大きな違いもあれば、この街における拠点が違う、背負っている借金の額が少ないといった細かな違いもあるがそれ以外はおおよそ同じらしかった。

 

 

「そう言えば、私はまだその仮面ライダーというのを見たことはないのですが仮面ライダーとは一体何なんですか?」

 

 

「まだ説明していなかったな。仮面ライダーってのは…」

 

 

その時、ギルドにボロボロな装備をした冒険者達が飛び込んで来た。

 

 

「た、大変だ!か、怪人が街に現れたんだ!仮面ライダーの助けが必要なんだ!!カズマ、ゆんゆん!お前達の力を貸してくれ!!」

 

 

カズマとゆんゆんが冒険者の言葉を聞くと真面目な表情に変わった。ふたりこの表情は元の世界では見たことがない。そしてふたりはお互いに頷き合うとギルドの外へと飛び出して行った。




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平行世界の天才物理学者に祝福を!!

ルナさんと話が噛み合わないと理解した俺はルナさんから離れると近くの椅子に座って状況を理解する為に考えをまとめようとしていた。

 

 

(この異変は昨日の夜に出会ったあのバイカイザーに有るのは間違いない。奴が言っていた、こことは違う世界…どうやら俺は本当に別の世界へと迷い込んでしまったようだ)

 

 

改めてギルド内を見渡すと俺が開発したドリンクバーやマッサージチェアが何処にもなく、そして俺が街中を歩いている時に感じていた違和感に関しても思い返してみるとその理由にも気づくことが出来た。

 

 

「オイ、めぐみん!お前はまたルナさんに迷惑をかけるつもりだったのか!!」

 

 

突然肩を掴まれた俺は思考を中断させ声のした方向をみるとそこにはカズマがいた。

 

 

「ルナさんから聞いたぞ!!お前が変なことを言ってたってな!!頼むからこれ以上俺に迷惑をかけるのはやめてくれよ!しかも何時もの服装と違うし一体何を考えてるんだよ」

 

 

どうやらカズマは俺に対して何かを怒っているらしい

 

 

「あの、すいませんが私の話を聞いて…」

 

 

俺がカズマに何故怒っているのかを聞こうとした時

 

 

「勝負よ!めぐみん!今日こそどちらか上か決着をつけましょう!!」

 

 

そんな言葉と共にゆんゆんが私達の前に現れる。そんなゆんゆんの言葉に一瞬戸惑いを覚えたが直ぐに気を取り直すと

 

 

「勝負って何を言っているのですか?私と貴女は親友であり共に戦う仲間なのですからそんなの必要ないじゃないですか?」

 

 

俺の言葉にゆんゆんは一瞬驚いた表情を見せるが直ぐにニヤニヤという表情に変わり

 

 

「し、親友!?私とめぐみんが?…し、親友…私とめぐみんが親友…えへへへ」

 

 

「カ、カズマさん。今日のめぐみんは何だか気味が悪いんですけど…」

 

 

「あ、あああ、俺もそう思う。めぐみん、お前、何か変な物でも食べたのか?」

 

 

…こいつら…さっきから少し失礼じゃないか?…とりあえず、事情を説明するか。

 

 

「あのですね、信じられないでしょうが私は…」

 

 

その時、ダストとリーンが酷い怪我を負ったテイラーとキースを背負ってギルドに息を切らしながら飛び込んで来る

 

 

「アクア!ヒールを頼む!手酷くやられちまった!!」

 

 

ダストの言葉にアクアは驚いたが直ぐに冷静になると怪我をしているテイラーとキースにヒールをかけ始めた。

 

 

「ダスト、一体何があったんだよ?また、お前が周りの意見を無視して無茶なクエストを引き受けて痛い目に遭ったとかそんなんじゃないのか?」

 

 

カズマの言葉にダストは

 

 

「受けたのは良くある討伐クエストだったんだよ!なのによ…」

 

 

言葉を詰まらせたダストに代わってリーンが何があったのかを説明する

 

 

「ダストの言う通り私達はとある討伐クエストを受けたの、その内容は最近とある地点で現れる謎のモンスターの討伐と調査。私達は簡単なクエストだったと思っていたんだけど…そのモンスターは見たことない姿をしていて、その姿に驚いた私達は不意を突かれて…」

 

 

リーンの話を統計すると謎のモンスターに関するクエストを受けたのは良いがそのモンスターに返り討ちにされたということか。

 

 

「ふたりとも、良かったらそのモンスターに関して詳しく教えてくれませんか?」

 

 

俺がふたりにモンスターに関して聞いてみようとした時にウィズが先程のダスト達と同じように息を切らしながら飛び込んで来た

 

 

「た、大変です!!謎のモンスターの軍団がアクセルの近くに現れました!!討伐をする為に協力をお願いします!」

 

 

そしてウィズの言葉を聞いた俺達が街の正門に向かうとウィズが草原の方を指差す

 

 

「気をつけて下さい!あのモンスターには私達の魔法では効果がないようです!!」

 

 

そこには俺に取って非常に馴染みのあるモンスター達が居た。

 

 

「あれは…ガーディアン!?何故この世界に?」

 

 

俺の言葉を他所に冒険者達が武器や魔法を発動させる態勢を取りながらガーディアン達を迎え撃とうしていた

 

 

「お前達は下がってろ!!お前達じゃ相手が悪い!!」

 

 

確かにスキルや武器を使えばガーディアンを倒せないこともないが何の策も無しに戦いを挑むのは彼らの方が不利だ

 

 

「何言ってんだ!爆裂魔法しか撃てねぇお前の方が危ねぇぞ!!」

 

 

冒険者のひとりが俺にそう言ってくる。この世界の俺に対してならばそういう反応も当然だが…

 

 

「こういう時は素直に専門家に任せておけば良いんだよ!!」

 

 

そして俺はビルドドライバーを腰に取り付けた後、赤と青のフルボトル…ラビットフルボトルとタンクフルボトルを取り出すと笑みを浮かべながら

 

 

「さぁ、実験を始めようか?」

 

 

そう言って俺は両手に持っているラビットフルボトルとタンクフルボトルを振り始める。すると俺の周りにお馴染みの色々な数式やグラフが現れた。そしてふたつのボトルをベルトに装填する

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「変身!!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ』

 

 

 

「「「ええええええええっ!?」」」

 

 

俺の変身を見ていた全員が驚きの声を上げた

 

 

(やはり…俺が変身することを知らない…と、いうことは…)

 

 

「マジかよ…あれって仮面ライダービルドじゃねぇか!!何でこんなところに!?ていうか何でめぐみんが?」

 

 

「こちらの皆さまにはお初にお目にかかるので軽い自己紹介を…私の名前は仮面ライダービルド。『創る』『形成する』って意味のビルドだ。以後、お見知りおきを」

 

 

俺は手首をスナップさせながらそう言うとドリルクラッシャーを構えてガーディアンの軍団に突っ込んで行く。

 

 

「うおりゃ!それ!タァ!!」

 

 

ドリルクラッシャーでガーディアンの装甲を削り、またはガーディアンの装甲を貫くことでガーディアン達を倒していき

 

 

『ゴリラ』

 

 

ドリルクラッシャーのソケットにゴリラフルボトルを装填してドリルクラッシャーにエネルギーを溜めるとガーディアン達を一気に叩き潰し

 

 

「お次はこれだ!!」

 

 

『タカ!ガドリング!ベストマッチ!!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!」

 

 

『天空の暴れん坊!ホークガドリング!イェーイ!』

 

 

そしてラビットタンクからホークガドリングにビルドアップすると俺はソレスタルウィングを巨大化させガーディアン達の攻撃から身を守った後天空へと飛び上がりホークガドリンガーで近くに居たガーディアン達を狙撃してまとめて破壊する。

 

 

「これでフィニッシュだ!!」

 

 

地面に降りた俺はもう一度ラビットフルボトルとタンクフルボトルを取り出してベルトに装填するとボルテックレバーを回転させる

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

 

再びラビットタンクにビルドアップするともう一度ボルテックレバーを回転させ必殺技を起動させる。

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

地面にグラフ型の標的固定装置を展開しx軸で残りのガーディアン達を拘束するとグラフ上を滑って加速しながら残りのガーディアン達にキックをぶち込んで破壊した。

 

 

そして戦いが終わり変身を解除すると俺は未だに唖然としているカズマ達の方を向き

 

 

「この世界のカズマ達は始めまして、私は別の世界のめぐみん。私の世界では天才物理学者をやらせて貰ってます。以後、お見知り置きを」

 

 

********************

 

 

「じゃあ、お前は本当に別の世界のめぐみんなのか?」

 

 

「本当です。じゃなかったら私とカズマ達の記憶のズレと私が仮面ライダーに変身出来る理由に説明が出来ないと思いますが?」

 

 

「それはそうだが…流石にいきなり別の世界のめぐみんだと言われても…」

 

 

カズマは兎も角ダクネス達は半信半疑といった様子であった。

 

 

「なら、証拠としてこのドライバーとフルボトル、そして冒険者カードをお見せしましょう。特に冒険者カードの方は偽造が不可能なので私が貴方達の知るめぐみんとは別人であるという証明にもなりますよね?」

 

 

そう言って俺はフルボトルとベルトそして冒険者カードを机の上に置くとダクネスやギルドの職員がベルトやフルボトルそして冒険者カードを手にとって調べた。

 

 

「確かに冒険者カードには魔力がゼロと記せされている上にスキルも殆ど記されてはいない…爆裂魔法もだ…信じられないがこのめぐみんの言っていることは真実ということか」

 

 

「異世界だけではなく平行世界も出てくるとはな…ホント、ドラブルには事欠かねぇな。まぁ、異世界も広い意味では平行世界のひとつなんだろうけど」

 

 

流石は現代からこの世界に転生して来たカズマだ、話が早くて助かる。

 

 

「そもそも、パラレルワールドとか平行世界とか一体何なのよ?私達にも分かりやすく説明してよ!」

 

 

ゆんゆんの言葉に同意する様に周囲の冒険者達も頷いていた、其れを見た俺はゆんゆん達にも分かりやすい様にパラレルワールドについて説明する。

 

 

「パラレルワールドというのは分かりやすく説明すると可能性の世界のことです。なので可能性の数だけ世界が存在します。例えるならば『カズマとアクアがアクセルの街にやって来なかった世界』『ダクネスが真っ当な騎士だった世界、或いはダクネスが冒険者とならなかった世界』『ゆんゆんが紅魔族らしく育った世界』があるということですよ」

 

 

「そうして聞いてみるとそのパラレルワールドというのも興味深い物なのだな」

 

 

ダクネスが興味深そうに頷きながらそう言っていたが俺はそんなダクネスの言葉に首を振りながら

 

 

「その程度ならば良いですが、パラレルワールド…平行世界はそれだけじゃない。とてつもなく悪い可能性の世界も存在するということです」

 

 

「悪い可能性とは何だ?」

 

 

「『魔王軍により人類が滅ぼされた世界』『魔王軍ではなく国同士の戦争により滅んでしまった世界』もまた存在するんです」

 

 

「成る程…パラレルワールドというのはそんな単純な物ではないということか」

 

 

「なぁ、めぐみん。もしかしてお前の世界にはビルド以外の仮面ライダーは存在しているのか?」

 

 

「勿論存在していますよ、仮面ライダーグリスと仮面ライダークローズが。因みに変身者は私の世界のカズマとゆんゆんです」

 

 

「マジか!!その世界の俺も仮面ライダーに変身するのかよ!!羨まし過ぎるだろ!!」

 

 

カズマは別の世界の自分が仮面ライダーに変身しているのを知って驚いている様だ。

 

そしてそんな私の様子を見たゆんゆんはうんうんと頷きながら

 

 

「その様子だとこのめぐみんは私達が知ってるめぐみんと違って爆裂魔法で周囲の人達に迷惑はかけてはいないようね」

 

 

「その言い方だとこの世界の私は周囲に迷惑をかけているように聞こえますが?」

 

 

「私達が知っているめぐみんはなんていうかねぇ…一途と言えば聞こえは良いけど…」

 

 

「その世界の私は一体何をしているのでしょう…」

 

 

ゆんゆんからの説明を聞いて俺は頭を抱える。この世界の俺、ていうかめぐみんはとんでもない問題児のようだった。

 

 

「頭にくると直ぐに周りに喧嘩を売り、爆裂魔法をバカにされても喧嘩を売り、そして爆裂散歩という害しかない物を毎日していてその所為で地形が変わったり他の冒険者達に迷惑をかけ冒険者ギルドや市民に迷惑をかけると…」

 

 

自分で言っていても酷いと思う。確かにエリスは本来の歴史ならばめぐみんは魔法使いとして旅立ちそして魔王討伐をすることになっていたらしいが…まさか、こんな風になっているとは思わなかった。

 

 

「なんていうか…此方の私が至る所で迷惑を掛けていて本当にすいませんでした」

 

 

そう言って俺はゆんゆんや周りの人達に頭を下げる

 

 

「本当に私が知っているめぐみんとは違うのね…めぐみんが自分から謝るなんてあり得ないもの」

 

 

ゆんゆんの言葉にこの世界の俺はどんだけ傍若無人なんだよとツッコミたくなるのを堪えると頭を上げ、今度は自分の世界についての説明を始める。

 

 

「この私が辿った道筋は此方と大体は同じです。ゆんゆんと同じパーティーに入っていることと街やギルドの依頼を受けて偶に何でも屋みたいなことをしている以外は、それに此方の私とは違って私は素晴らしい発明品の数々でアクセルの街やギルドに貢献していますから評判はそれ程悪くはありませんし街の人達からは何かと頼りにされているんですよ?」

 

 

「それ、自分で言うか?」

 

 

「れっきとした事実ですから」

 

 

カズマの言葉に俺はドヤ顔でそう言うと話を続ける

 

 

「後、此方の世界では分かりませんがベルディア戦で私達は借金を背負いましたがその借金もこれまでの商売の利益で返済は出来ましたしね」

 

 

「じゃあ、その世界では俺には借金がないのか?」

 

 

「私も全額を返済するつもりだったのですがカズマ本人がそれを断ったのです。自分にもプライドがあるんだっと言って、だからといって放って置くわけにも行かなかったので半額だけ返済させて頂きました」

 

 

「やべぇ…簡単に想像出来たわ。確かに自分よりも歳下の奴に借金を全額肩代わりして貰うのは良心が痛むからな」

 

 

「カズマさんに良心なんてものがあったの?」

 

 

「良し、アクア、お前そこから動くんじゃねぇぞ?」

 

 

「カ、カズマさん?両手をポキポキ鳴らしながら近づかないて貰えるかしら?さっきの言ったことは謝るから」

 

 

アクアが悪どい笑みを浮かべながら両手を鳴らしているカズマにそう言うが…

 

 

「今日という今日はお前に自分の立場ってのを分からせてやる!!覚悟しろ!!」

 

 

「うわぁぁぁぁ!!ごめんなさい、許してぇぇぇ!!」

 

 

そう言って逃げるアクアを追いかけて行くカズマ。そんなカズマ達を横目にウィズは口を開く

 

 

「先程、商売と言っていましたが一体どのような商売をしているのですか?良ければ教えては貰えないでしょうか?」

 

 

「簡単に言えば便利な魔法グッズの開発をしたり販売をしたりしていますね。その魔法グッズというのが良く売れるんですよ?」

 

 

「成る程…めぐみんさんが持っている装備を見ればめぐみんさんがかなり高い技術を持っていることが分かります。便利な魔法アイテムの開発ぐらいは簡単でしょう。だとするとアクセルにおける活動拠点もこの世界とは違うのですか?」

 

 

「私達の世界ではウィズの店に住んでいます。私の世界のウィズとは所謂ビジネスパートナーの関係を結んでいるんです。簡単に言えば共同経営者ってところですね」

 

 

「そのきょうどうけいえいしゃというのはよく分かりませんがその世界のカズマさん達が私のお店に住んでいるなんて…世界が変わるとこうも変わるとは…不思議な気分になりますね」

 

 

ウィズが感心したように呟いていると

 

 

「なぁ、めぐみん。この世界にいる間の住むところは考えてるのかよ?」

 

 

カズマが頭にタンコブを作り涙を流しているアクアを連れながら帰って来るとそんなことを口にした

 

 

「決めてないなら俺達の館に来ないか?別の世界のめぐみんとはいえ俺達の仲間であることに変わらないんだから遠慮をする必要なんて無いぞ。それに、何時元の世界に戻れるかもわからないんだからな」

 

 

「カズマの言う通りだ。別の世界のめぐみんだろうと私達の仲間であることには変わりない。遠慮なんてする必要はないぞ?」

 

 

カズマの言葉にダクネスも同意するように声を上げる

 

 

「分かりました。では、遠慮なくお言葉に甘えさせて貰いますね」

 

 

俺はカズマ達の好意に素直に甘えることにした。この世界のカズマ達が住んでいる場所は俺達の世界ではミツルギ達が拠点としている屋敷だった。そして俺は元の世界に帰れるまでカズマ達の館に厄介となる見返りに現代でのお馴染み料理の数々(転生してから何かと料理する機会が増えた為に人並みに料理が出来るようになっていた)を振る舞った。カズマは久しぶりの食べる故郷の味に涙を流し、後でレシピを教えてくれと言われたのでレシピを教えて置いた。

 

 

そしてその夜、俺は小腹が空いてしまったので軽く何かを食べようとリビングへと降りて行くとアクアと鉢合わせをした。どうやら俺と同じように小腹が空いたらしく何か食べる物を探しに来たらしい。

 

 

 

「小腹が空いてしまったのなら軽く何かを作りますよ?」

 

 

俺の言葉にアクアは顔を輝かせると

 

 

「ありがとう。少しお腹が空いていたから嬉しいわ。どうせなら、しゅわしゅわに合うおつまみを所望するわ!」

 

 

「はいはい。今から作りますから少し待ってて下さい」

 

 

そして調理を始めているとアクアが先程とは全く異なる静かな声で話しかけてくる

 

 

「めぐみん…貴女は一体『誰』なの?」

 

 

アクアのその言葉に俺はどきりとする。

 

 

「何を言っているんですか?私は別の世界のめぐみんですよ?」

 

 

俺は動揺を悟られないように冷静にそう言うが…

 

 

「私の目を誤魔化そうとしてもそうは行かないわよ?貴方は一体誰なの?身体は確かにめぐみんだけど心は…魂の方は明らかにめぐみんの物とは違うもの」

 

 

「…やっぱりこの世界でもアクアはアクアなのですね…」

 

 

俺は観念したように息を吐くとこの世界のアクアに全てを話した。あの世界における俺が辿って来た道筋を…アクアはそんな俺の話を目を閉じたまま聞いており、そして話を聞き終えると閉じていた目を開き

 

 

「めぐみんさん。貴女の背負っているものは分かりました。そして貴女がめぐみんとして今を生きていることを…だから、私は水の女神の名の元に貴女を『許します』。貴女は今、精一杯めぐみんの代わりに生きています。その努力を私は否定はしません。ですが、忘れないで下さい、貴女は貴女。決してめぐみんの代わりになることは出来ないと…何時か貴女に決断を迫られる時が来るでしょう。その時は決して後悔する決断をしないで下さいね?」

 

 

この時、俺はアクアもれっきとした女神なのだと改めて実感したのだった。

 

その後しんみりとしてしまった空気を変える為、アクアとしゅわしゅわで軽く一杯やった後酔い潰れてしまったアクアを寝室へと送りその日は休んだのだった。

 

 




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この世界を超えた再会に祝福を!!

カーディアンを筆頭にマスカレイド・ドーパントにグール、初級インベスそして眼魔コマンドといった仮面ライダー達と戦った戦闘員達がアクセルの街中に現れ人々を襲っていた。

 

 

「ドーパントにグールに初級インベス…平成ライダー達と戦った怪人達がこんなに…早く街の人達を助けるぞ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

「「変身!!」」

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

「お、おおおお!!!か、カッコイイです!!それが仮面ライダーという物ですか!?」

 

 

めぐみんが目をこれまでにないぐらい真っ赤に輝かせながらそう言っていた。やはりあのめぐみんとゆんゆんが紅魔族の中で特殊なだけで普通の紅魔族ってのはこんな感じかもしれないな。まぁ、生の仮面ライダーを見たら興奮するのは分かるが…それよりも今は奴らを何とかするのが先だ。

 

 

「行くぞ!ゆんゆん!!」

 

 

「めぐみん、これがこの世界の私とカズマさんの戦いよ!!」

 

 

そう言うとゆんゆんはビートクローザーを召喚するとドーパントやグール達を切り裂いたり回転斬りして周囲の戦闘員を一掃する。

 

そしてカズマは潜伏で姿を隠した後ガーディアンやインベス達の目を欺くとバインドで奴らを一箇所に集めた後スクラップフィニッシュで一網打尽にした。

 

 

「うおりゃ!たりゃゃぁぁ!!」

 

 

「フャイヤーボール!!」

 

 

「バインド!!」

 

 

そしてダストを始めとする冒険者もスキルや武器を使って怪人達を倒して行く。だが、そんな中ダスト達の攻撃が全く通用しない相手が現れた

 

 

「なんだ?こいつ俺達の攻撃が効かねぇぞ?」

 

 

冒険者達はそう戸惑いの声をあげていた。その戦闘員達はパティシエや修行僧に魔法使いと姿がバラバラであった。

 

 

「あれはバクスターウイルス!?あんな奴までいるのかよ!」

 

 

其処に現れたのはバクスターウイルスと呼ばれる怪人達だ。

戦闘力自体は大したことはないが奴らにはあるやっかいな特性があるのだ。

 

 

「大丈夫ですよ!カズマさん!こんな連中直ぐに片付けます!」

 

 

「駄目だ!ゆんゆん。そいつに攻撃は!」

 

 

ゆんゆんはビートクローザーでバクスターウイルス達に攻撃を加えて行く。しかしゆんゆんがいくら攻撃をしてもMissという表示がされるだけでバクスターウイルス達にはダメージを全く受けていないことがわかった。

 

 

「攻撃が通用しない?どうして?」

 

 

「バクスターウイルスには通常の攻撃が効かないんだよ!!」

 

 

攻撃の通用しない相手の出現に冒険者達は焦り出し次第にバクスター達に追い詰められ始めた。その時、何処から銃弾が飛んでくる。それはバクスター達にぶち当たるとバクスター達は吹き飛んで行く。

そしてカズマ達が銃弾が飛んで来た方向を見ると其処には黒のスーツとマゼンタ色のトイカメラをぶら下げている青年が立っていた。

 

 

「どうやらこの世界における俺の役割はこいつらの手助けをすることらしいな」

 

 

「嘘だろ!?あの人は!!」

 

 

「カズマさん、あの人のことを知ってるんですか?」

 

 

驚いている俺にゆんゆんがそう話しかけている間に冒険者のひとりがその青年に声をかける

 

 

「何だよお前は?一体何処から現れた?」

 

 

そんな冒険者の言葉に謎の青年は

 

 

「俺か?俺は通りすがりの仮面ライダーだ」

 

 

そう言うと謎の青年はマゼンタ色のバックルを取り出すと腰に取り付けてからバックルを開きベルトの左側に付いているホルダー…『ライドブッカー』から赤色のライダーカードを取り出すとベルトに装填した

 

 

「変身」

 

 

『KAMENRIDE』

 

 

その音声と共に謎の青年はバックルを閉じた

 

 

『DECADE』

 

 

謎の青年の周りに計20個のライダークレストが現れると同時に人型のエフェクトも現れた後青年に重なるように消える。そして現れたのはマゼンタ色のボディとバーコードを連想させるマスクをした仮面ライダー…仮面ライダーディケイドが其処に立っていた。

 

 

「うっは!!仮面ライダーディケイドだ!!本物のディケイドじゃねぇか!!」

 

 

「落ちいて下さいカズマさん。アレも仮面ライダーなの?」

 

 

ゆんゆんがはしゃいでいる俺にそう訪ねてくる

 

 

「ディケイドは俺達と同じ仮面ライダーなんだよ。でも、まさかこんなところで会えるなんて」

 

 

俺は興奮しながらそう言っているとディケイドはライドブッカーからライダーカードを取り出すと其れをベルトに装填するとバックルを閉じた

 

 

『KAMENRIDE』

 

 

『EX-AID』

 

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!』

 

ディケイドの姿はピンクをメインカラーとしその姿はゲームキャラを豊富とせる平成ライダー18番目の戦士・仮面ライダーエグゼイドへと変身した。

 

 

「別のライダーに変身した!?カズマさん、あのライダーは一体何なんですか?」

 

 

ゆんゆんはディケイドが別のライダーの姿に変わったことに混乱している様だった。

 

 

「ディケイドには歴代の仮面ライダーに変身する能力があるんだ。変身するだけじゃない、そのライダーの武器や能力を使えるのさ」

 

 

エグゼイドに変身したディケイドはライドブッカーをソードモードに切り替えた後バクスターウイルス達を切りつけて行く。すると先程はゆんゆん達がダメージを与えられることは全く出来なかったというのにディケイドがバクスターに攻撃するとHitという文字が出ると共にバクスターにダメージが負っているが分かる

 

 

「私がいくらやってもダメージを与えられなかったのにどうして?」

 

 

ゆんゆんの当然の疑問に俺は答える

 

 

「バクスターウイルスはゲーマーライダーでしかダメージを与えることは出来ない。だからディケイドはバクスターを倒せる力を持つエグゼイドに変身したんだよ」

 

 

俺が説明していると今度は黄色のライダーカードを取り出すと其れをベルトに装填すると先程と同じようにバックルを閉じる

 

 

『FINAL ATTACK RIDE E・E・E・EX-AID』

 

 

『マイティクリティカルストライク』

 

 

「ハァァァァァァ!!!!」

 

 

Dエグゼイドは右脚にエネルギーを貯めると残ったバクスターウイルス達に多段キックを決めるとバクスター達は全滅した。そしてDエグゼイドは変身を解除し青年の姿に戻ると俺達の元に歩いて来る。

俺とゆんゆんも変身を解除すると士さんと向かい合った。

 

 

「俺は佐藤和真と言います。彼女はゆんゆん。そして俺は仮面ライダーグリスに彼女は仮面ライダークローズに変身します」

 

 

「俺は門矢士、世界の破壊者さ。と言っても、そっちの男は俺のことを知っているようだがな」

 

 

 

「はい。俺は貴方のことをよく知ってます。貴方が辿って来た物語も…」

 

 

********************

 

 

俺達は冒険者ギルドに移動すると何故俺が士さんのことを知っているのか。どうやって仮面ライダーの力を手に入れたのかを説明した

 

 

「成る程…それがお前が俺のことを知っている理由か…にしても不思議な気分だ。俺の物語がフィクションの世界の話というのは」

 

 

士さんはそこまで言うと手元にあるコーヒーを一口飲んだ

 

 

「士さんがこの世界に来たのは俺達の知ってるめぐみんが消えた代わりに別のめぐみんが現れたことに関係しているんですよね?」

 

 

俺の言葉を聞いた士さんは飲んでいたコーヒーを机に置くとトイカメラをいじりながら

 

 

「お前達が知ってる通りこの世界のめぐみんはこことは別の世界に居る。そしてこの事件の真相を知る為にはその世界に行く必要がある。俺の力でお前達をその世界に連れて行ってやるよ」

 

 

どうやら士さんは俺達を戦兎さんがいる世界に連れて行ってくれるらしい。そんな士さんにゆんゆんが

 

 

「士さん、貴方はどうしてそこまで協力してくれるんですか?」

 

 

ゆんゆんの疑問は最もだ。ゆんゆんからしたら会ったこともない相手にそこまでする士さんを不思議に感じるのだろう。

 

 

「それがこの世界における俺の役割だからだ。それに可愛い後輩達と同じ力を持っているお前達を放って置くわけには行かないからな」

 

 

「ゆんゆん。アレがツンデレって奴だ」

 

 

俺は思わずニマニマしながらそう言っていると

 

 

「お前、いっぺん締められるか?」

 

 

士さんが睨みつけながら俺にそう言って来る

 

 

「すみませんでした」

 

 

俺はすぐさま頭を下げてそう言うと士さんは残念な物を見る目で俺を見ながら話を続けた

 

 

「これから行く世界はこの世界とは別の歴史を辿った世界だ。行くメンバーは少ない方が良い。メンバーは俺とその世界のめぐみん。そしてカズマとゆんゆんの4人だ」

 

 

「何故その4人なのだ?行くなら沢山メンバーがいた方が良いだろう?」

 

 

ダクネスの疑問に士さんは

 

 

「理由は簡単だ。今回の異変は本来ならば存在する筈のない仮面ライダーと怪人があの世界に現れたことが原因となっている。そもそも『この世界では本来仮面ライダーは存在しない』んだ。だからこそ、イレギュラーな世界から行くメンバーは出来る限り少なくするんだ。世界に余計な影響を与えないようにな」

 

 

確かにこれから行く世界に取って俺達はイレギュラーな存在だ。士さんの言う通りに行くなら最低限の方が良いだろう。そしてそのメンバーが仮面ライダーの力を持った俺達が適任であるのも当然の話だ、ダクネスも士さんの考えに納得したのかそれ以上口を開くことはなかった。

 

 

そして士さんが何もない空間に手をかざすと灰色のオーロラが現れる

 

 

「カズマ、ゆんゆん。ふたりとも気をつけてくれ。お前達がめぐみんを連れて帰って来るのを待ってるからな」

 

 

ダクネスがそう言い終わるとアクアが不安そうな表情を浮かべながら近づくと

 

 

「もしも貴方達があっちの世界で死なれたら私の力じゃ蘇生出来ないから絶対に死なないでね?」

 

 

「アクア…」

 

 

あのアクアに他人を思いやるところがあったのか、俺がそう感動していると

 

 

 

「だって、あっちの世界でカズマさんが死なれたら私が天界に帰れなくなるじゃない!そんなの絶対嫌だもの!!」

 

 

…前言撤回

 

 

「俺、事件が終わったらあっちの世界で暮らすわ。アクア、魔王討伐はひとりで頑張ってくれ」

 

 

「ごめんなさい!お願いだからそんなこと言わないで!謝るから許してよ!!」

 

 

アクアは直ぐに前言撤回すると俺にしがみつき泣いていた

 

 

「夫婦漫才は事件が終わった後にしてくれないか?」

 

 

「そんなんじゃねぇよ!!」

 

 

俺はそう突っ込むが士さんは無視するとオーロラを潜っていく。ゆんゆんやめぐみんもその後に続いていき、俺もアクアを引き離すとそのオーロラを潜った。

 

 

********************

 

 

俺がオーロラから出るとそこはアクセルの街だった。

 

 

「ここが別の世界のアクセルか…見た感じ俺達の世界と違いはなさそうだけど…」

 

 

別の世界のアクセルを見た俺がそう言っていると

 

 

「そこにいるのはカズマですか?」

 

 

俺が声のした方向を見るとそこには俺がよく知っている服装をしためぐ…戦兎さんがいた。

 

 

「おお!!貴女が別の世界の私ですか!服装も紅魔族の服装とは違いますが紅魔族のセンスにビビって来ますね!!」

 

 

俺達と一緒にいためぐみんが鼻息を荒くしてその言っているのを見て事情を察した、戦兎さんは頷きながら口を開いた

 

 

「成る程…このカズマ達は私の世界からやってきたわけですね…そして世界を超えることが出来たのは貴方のおかげということですね?」

 

 

「察しが良いな。流石は仮面ライダービルド。俺は仮面ライダーディケイド、お前の先輩ってところだ」

 

 

「めぐみん。士さんは味方だ。士さんの力があったから俺達はこの世界にやって来ることが出来たんだ」

 

 

俺は士さんは信用できる人物であることを説明する

 

 

「別に疑うつもりはありません。同じ仮面ライダーなんですから信用は出来ます。そもそも私をこの世界に送ったのはバイカイザーと呼ばれる存在なので最初から怪しむつもりはないですよ」

 

 

「話が早くて助かる。大抵の仮面ライダーは俺が破壊者だと分かると襲いかかってくる奴らばかりだったからな」

 

 

その後、俺達は無事に合流出来た俺達の世界の戦兎さんとこの世界の俺達と情報交換を行う為にこの世界の俺達と落ち着いて話が出来る場所へと移動することとなったのだった。

 

 

********************

 

 

「お前が別の世界の俺か…なんつうか妙な気分だな」

 

 

「うん。まるで双子の姉妹を見てる気分になるわね」

 

 

屋敷で別の世界の自分同士と対面しているカズマとゆんゆんは不思議な気分になっているようだ。おまけに俺達がいる館は俺達の世界ではミツルギ達が住んでいるがこの世界では俺達が住んでおり改めて自分達の世界とは別の歴史を辿っていることを実感する

 

 

「カズマとゆんゆん。色々と聞いたいことがあるんだが」

 

 

ダクネスが別の世界のカズマ達に質問するが…

 

 

「「なんだよ、ダクネス?」」

 

 

「「どうしたんですか?ダクネスさん?」」

 

 

その場に居たカズマ達全員がダクネスの言葉に反応してしまった

 

 

「い、いや。私が声をかけたのは別の世界のカズマ達で…ってややこしい!!何とかして区別する方法はないのか!!」

 

 

ダクネスは頭を抱えてそう叫んだ。確かに同じ顔をした人間が何人もいるのだから区別なんかつかないもんな。

この世界のカズマ達と俺達の世界のカズマ達と区別する方法はないかと俺が考えていると…

 

 

 

「そうだ!私達の世界のカズマ達のことを本名で呼び、仮面ライダーの力を持つカズマ達はライダーの名前で呼ぶというのはどうだろうか?」

 

 

ダクネスの言葉に俺達の世界のカズマが反応する

 

 

「じゃあ…俺はグリスでゆんゆんはクローズ、めぐみんはビルドということで良いのか?」

 

 

「そうですね。それなら分かりやすいし区別する方法としては丁度良いんじゃないかと思います」

 

 

ゆんゆんも賛同するようにそう言っているとこの世界のめぐみんが

 

 

「なんだかコードネームみたいで私としては羨ましいですね」

 

 

「お前…本当にぶれないな」

 

 

この世界のカズマがこの世界のめぐみんに呆れた様子でそう突っ込んでいた。

 

その後、名前以外にもこの世界のカズマは普段来ているジャージをゆんゆんは紅魔族の服装の上にスカーフを巻いて見た目にも区別出来るようにした後平行世界の話で盛り上がるカズマ達をその場に残すと俺はめぐみんを連れてめぐみんの部屋へと移動する。

 

 

********************

 

 

寝室へと移動すると俺はめぐみんをベッドに座らせた後、俺は近くにあった椅子に座りこの世界のめぐみん…自分自身と対面する。

 

 

「めぐみん…この世界のお前のことはカズマ達から聞いているよ、この世界のお前も魔王討伐のために頑張っていることもそして爆裂魔法を極めるという夢を持っていることも…」

 

 

其処で俺は一度深く息を吸うと

 

 

「その上で俺は君に謝らなければならないことがあるんだ」

 

 

そう言うと俺は腰を下ろしていた椅子から立ち上がりめぐみんの正面を向くと

 

 

「俺はイレギュラーな存在なんだ。本来ならばこの世界には存在していない。そんな俺が現れた所為で今回の事件は起きてしまった上に別の世界の君の夢を奪ってしまった。其れをどうしても君に謝りたかったんだ」

 

 

俺はそう言ってめぐみんに頭を下げた

 

 

「何故謝る必要があるのですか?」

 

 

「えっ?」

 

 

そんなめぐみんの言葉に俺は下げていた頭を上げる

 

 

「勿論爆裂魔法に人生を愛を捧げていないことに対しては言いたいことは沢山あります。でも、その世界の私自身が決めたのならば何も言いませんよ?貴女が一体に対して罪悪感を感じているのかも何故自分の存在をイレギュラーだとが思っているのかは分かりません。ですが、貴女も私と同じ『めぐみん』なんです。貴女が思う道を歩めばいいのです。私は私で貴女は貴女なのですから」

 

 

「めぐみん…」

 

 

彼女のその言葉は単純な物であったが俺の胸に染み渡る物だった。…アクアにしろ万丈にしろめぐみんにしろ俺にはその単純な真っ直ぐさが痛く眩しく見えた、だからこそ。

 

 

「ありがとう。貴女のその単純バカさに救われますよ」

 

 

「オイ、誰が単純バカなのか答えて貰おうじゃないか?」

 

 

めぐみんがドスが聞いた声でそう言うが直ぐにお互いに笑い合う、そんな風に笑い合っていると屋敷の外から何やら騒ぐ声が聞こえて来た。その声が気になった俺達は頷き合うと屋敷の外へ出て行った。

 

 

アクセルの上空には謎の巨大な手のひらが現れていた。それと同時にアクセルの地面を突き破るようにもうひとつの手のひらが現れるとお互いに握手するように合体する。

 

すると何も無かった上空に街がボンヤリと現れる、その街は俺達にとって見覚えのある街だった。

 

 

「あれは…アクセルの街だ!!上空に俺達の世界のアクセルの街が現れたんだ!!」

 

 

グリスの声といきなり現れた巨大な手のひらと街を見た住人達はパニックを起こして逃げ回っていた。すると何処からか突然謎の声が聞こえて来る

 

 

「遂に…遂にこの時が来た!!我が恨みと悲願が叶うこの時がな!!」

 

 

その声に俺は聞き覚えがあった、その声の主は俺をこの世界に放り込んだ男の声だったのだから。




次回は遂に事件の真相が明らかになります。


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この素晴らしい事件の真実に祝福を!!

「もう少しだ…後24時間で我が願いと怨みを果たすことが出来る!!」

 

 

そう言う仮面の男の足元には手の形をした巨大な兵器が存在していた。かつてマッドサイエンティストの手よって作られた兵器…エニグマによりふたつの世界が融合した事件…歴代の仮面ライダーによりその野望は阻止されマシンを破壊された筈なのだが…

 

そのエニグマが今アクセルの街の上空に現れていた

 

 

「あれは…エニグマ!?何故こんなところに!!」

 

 

戦兎の言葉に仮面の男が高笑いを浮かべた

 

 

「私がまだ地獄の底にいた時にとある男から受け取ったデータの中にこのエニグマがあったのだ!!それと同時にこの兵器が過去に引き起こした事件を知り、前に失敗したのならばその計画を私が引き付き今度こそふたつの世界を融合させそしてこの世界を手に入れると決めたのだよ!!」

 

 

「ふざけるな!!そんなの許す訳がないだろ!!」

 

 

「止められる物ならば止めて見ると良いい、止められるものならばな!!」

 

 

仮面の男は笑いながらそう言うとエニグマの手の平に飛び乗るとアクセルの街から去っていった。

 

 

********************

 

 

アクセルの冒険者ギルド内にて仮面の男の緊急会議が開かれていた

 

 

「あの仮面の男が言っていた、エニグマとは何なのだ?ビルドが言っていた別の世界と何か関係があるのか?」

 

 

「エニグマは簡単に言えば平行世界移動装置なんです。私が此方の世界に来たのもそのエニグマの力によるものでしょう、ですがエニグマの真の力は平行世界に移動させるだけではありません。エニグマはふたつの世界を融合させることが出来るのです」

 

 

「世界が融合?そんなことが有り得るのか?」

 

 

「ここに別の世界のめぐみんである、私がいるんですよ。世界が融合したとしても不思議はないと思いますよ?」

 

 

「確かに…その通りだが…」

 

 

ダクネスは戦兎の言葉に言い返すことが出来ないのか黙り込んでしまう

 

 

「ビルドさん。この状況を打開する方法はないのですか?」

 

 

ルナが何か解決する方法はないのか戦兎に尋ねてくる

 

 

「あるにはあります、それはエニグマを破壊すること。しかし奴らもそれはわかっている筈ですから妨害に現れるでしょうね、確実に」

 

 

「しかも奴はライダーシステムに近い装備を持っているのよね?ライダーの力を持ってる私達なら何とか出来るかもしれないけれど…」

 

 

「無い物ねだりをしたってしょうがないだろ。ふたつの世界を救えるのは俺達しか居ないんだからな」

 

 

対仮面の男とエニグマの対策を話し合う3人を羨望とも取れる目線で見つめている5人がいた。

 

 

(クソ…情けねぇ、大事なパーティーメンバーを傷つけられたってのに何も出来ねぇなんて)

 

 

(悔しい…何も出来ない自分が!!でも私に何が出来るの?ダクネスみたいな防御力もウィズさんみたいな魔力も無い私に何が…)

 

 

(私は何て無力なのだ…この街を守る騎士として、ダスティネス家の者として情けない限りだ…)

 

 

(私はどうすれば良いのでしょうか?私は人の身ではありません。本来ならばこの戦いには介入すべきではありません。ですが…)

 

 

(わ、私は水の女神のアクア様よ!!危険な事は別の世界のカズマさん達に任せておけば良いじゃない!私には癒す力はあっても戦う力なんて無いんだだから!)

 

 

そんな暗い気持ちと劣等感がダスト達を包み込みそれに合わせてギルド内も暗い空気に飲まれそうになった時

 

 

「何をグダグダと悩む必要がある」

 

 

そんな士の言葉がギルド内に響いた

 

 

「お前達は只護られるだけなのか?そうやって力をないことを言い訳にしてうじうじしてる間にアイツらに何とかして貰おうと思っているのか?だとしたら随分と卑怯な話だな」

 

 

「あんだと!?」

 

 

士の言葉にキレたダストが掴みかかるが士は軽くそれをかわすと逆にダストに背負い投げを決めると決めた見下した様子で

 

 

「お前達は何故こんなところにいる?アイツらは今、命をかけて戦おうとしているぞ?お前達は勇敢な冒険者だと思っていたか…それは俺の思い違いだったようだな」

 

 

「なら、どうすればいいんだよ!!仮面ライダーじゃない俺達に何が出来るんだよ!仮面ライダーじゃない俺達に戦える訳ねぇだろ!それぐらいあんたにも分かってる筈だろ!?」

 

 

ダストの自虐とも言える言葉に士は

 

 

「違うな、アイツらは仮面ライダーだから戦いに行くんじゃない。守りたい物があるから戦うんだ、逃げ出したくて仕方なかったとしても目の前にある小さな命を守る為に戦うんだ。力があるからだと力がないだととかアイツらには関係ないんだよ。大事なのは今何が出来るのかを考えて動く事じゃないのか!」

 

 

士の諭す様でそれでいて発破とも取れる言葉を聞いたダスト達は自分達の中の迷いが晴れていくのを感じていた

 

 

「ははは…大事なのは戦う力を持っている事じゃなく、自分に何が出来るのかか…そこまで言われたら黙ってるわけにいかないねぇな!!アクセルの冒険者の意地を見せてやるよ!!」

 

 

「私も士の言葉で目が覚めた思いだ。先程までの自分をぶん殴ってやりたい!力が無いのを理由にしていた自分が恥ずかしい!私はもう迷わん、ダスティネス家の者として最後まで戦うことをここに誓う!」

 

 

「こんな奴に慰められるのは嫌だけど…ここまま奴らの思い通りになるのも尺よね!世界にいる1万人のアクシズ教徒達の為にも私はやるわよ!!」

 

 

「私もこのままやられる訳には行きません。大切な仲間達との思い出の詰まったこの場所を守る為にも私は戦います!!」

 

 

「ふん。少しはまともな顔するようになったじゃないか、よし、こっちの世界のエニグマは俺とこいつらで何とかする。お前達はお前達の世界のエニグマを破壊しろ。ふたつのエニグマが起動している影響で次元かのトンネルが繋がっている今ならば世界を移動するのは容易な筈だからな」

 

 

士の提案に戦兎達は当然難色を示す

 

 

「まさか、ダクネス達を連れて行くつもりなんですか?危険過ぎです!ダクネス達は仮面ライダーに変身することが出来ないのですよ!」

 

 

「お前達はお前達の世界のエニグマを何とかする事に集中してればいい。それともこの世界のお前の仲間達を信じる事が出来ないのか?」

 

 

「士、お前…」

 

 

戦兎は士が言わんとしている事に気付いた。それと同時に士がどうしようもなく不器用で素直じゃないってことにも。

 

 

「分かった。士、この世界の私達を任せましたよ?」

 

 

「妙なことを言うな?俺は奴らの子守りをするつもりはない。俺は奴らとこの世界を守りに行くんだが?」

 

 

「意外と面倒くさい性格してるな?お前」

 

 

「褒めるなよ、照れるだろうが」

 

 

「誰も褒めてねぇよ」

 

 

こうしてカズマ達は士の提案により二手に分かれて対処することになった。ビルド率いるチームビルドはエニグマAと黒幕である仮面の男とビルドの世界で戦い。

 

士率いるチームディケイドはエニグマBをこの世界で対処することに決まった。

 

 

「この世界の私やカズマ達にはこちらの事情に巻き込んでしまって本当に申し訳ないと思ってます」

 

 

「気にすんなよ、めぐ…ビルド。お前の世界のピンチは俺達世界のピンチでもあるんだぜ?力を貸すのは同然だろ」

 

 

「こっちのカズマも変わらないな。普段はだらしない癖にしっかりと決めるところは同じだよ」

 

 

「なぁ、前から思ってたんだが、ビルドの力を持っていると良い時々見せる大人びた人格と良いお前はいや貴方はまさか…」

 

 

「さぁ、何のことか分からないですね」

 

 

その時のカズマにはめぐみんにとある男の姿が重なって見えたのだった

 

 

********************

 

 

ビルド達と別れた後この世界のカズマ達は士と共にこの世界にあるエニグマの元へと走っていた。すると…

 

 

「イーッ!イーッ!イーッ!」

 

 

カズマ達の前に大勢のショッカー戦闘員が立ち塞がる

 

 

「クソ…!!こんな連中に構ってる時間はないぞ!!」

 

 

カズマ達が焦った様子でそう言っているが士は至って冷静だった。

 

 

「安心しろ、こんな事もあろうかと助っ人を呼んでおいた」

 

 

士がその言うのと同時に背後から誰かがショッカー戦闘員達を狙撃した。

カズマ達が後ろを振り返ると其処にいたのは

 

 

「成る程…これが僕に力を貸して欲しいと言った理由なんですね」

 

 

「お前は…カツラキ!!」

 

 

「ミツルギだ!!この世界では僕と君は親しい訳じゃないのか…まぁ、平行世界ならば有り得ない話じゃないか…」

 

 

「ビルドが言ってた通り、俺とお前が友人関係だったというのは本当だったんだな」

 

 

「ここは僕は引き受けるよ、君達は早くエニグマの元に行きたまえ」

 

 

「こっちのミララギは中々カッコいいじゃねぇか!!」

 

 

「こんな時ぐらい名前を間違えないで欲しいんだが…まぁ、良いさっさと行ってくれ!!」

 

 

ミツルギの言葉を聞いたカズマ達はエニグマの元へと向かっていき、その場にはミツルギだけが残った

 

 

「あの士さんに任されたんだ、悪いけど直ぐに終わらせて貰う!!」

 

 

『ゲイツ』

 

 

「変身!!」

 

 

『ライダータイム!ゲイツ!!』

 

 

ミツルギはゲイツに変身するとジカンザックス・おのモードでショッカー戦闘員を斬り伏せていく。ショッカー戦闘員は数こそ多いが1体1体の実力は大したことはないのですぐに倒れて行くが…

 

 

「雑魚とはいえここまで多いと流石に手を焼くな!」

 

 

ゲイツがそうボヤいた時、何処からか声が聞こえて来たくるのと同時に足元に何かが転がる音が聞こえた

 

 

『随分とお困りのようだね?なら同じ二号ライダーのよしみで力を貸してあげるよ』

 

 

その青年は高台にひとり立っていた。ゲイツはその姿を確認しようとするが逆光の為に誰かは分からなかったがその人物が男だというのだけはわかった

 

 

「待って下さい!貴方は!」

 

 

ゲイツはその人物に質問しようとするが風が吹くのと同時にその人物は姿を消しており、ゲイツはその青年が放り投げた物を拾う

 

 

「これは!…誰かはわからないけど、ありがたく使わせて貰う!!」

 

 

『ゲイツリバイブ』

 

 

ゲイツは左のスロットにリバイブウォッチを装填すると反時計回りにベルトを回転させた

 

 

『アーマータイム!』

 

 

『スピードタイム! リバイ×3!リバイ×3!リバイブ疾風! 疾風! 』

 

 

ゲイツはゲイツリバイブ疾風へと強化変身する。

 

ゲイツリバイブ疾風は胸部のアーマーが翼のように展開されており、そして全体的なカラーリングは青で統一されてるゲイツの強化フォームだ。

そしてゲイツはリバイブの新たな専用武器『ジカンジャックロー』を二本のクローを伸ばした籠手のつめモードに切り替えると超高速移動でショッカー戦闘員を攻撃して行く。リバイブ疾風は胸部の『ブルークリスタライナー』でエネルギーを分子レベルで延伸することで超スピードエナジーを生成し俊敏性を飛躍的に高めた後、両肩の『リバイブストリーマー』で高速移動をする事が出来るのだ。

 

 

「ヤァァァァァァァ!!!」

 

 

ゲイツリバイブ疾風の高速移動とジカンジャックローを組み合わせた事による連続攻撃によりショッカー戦闘員達を一掃する。

 

そしてその様子を高台の上で先程の青年が見つめていた。

 

 

「僕があげた力を直ぐに使いこなすとは、流石は勇者候補と言った方がいいかな?さてと、士も色々と動いているようだし僕も動かさせて貰おうかな?」

 

 

青年は青い拳銃形のデバイスを器用に回しながらそういうと灰色のオーロラに包まれるとこの世界から姿を消すのだった。

 

 

********************

 

 

そしてカズマ達がエニグマの元へとたど着くと其処には仮面ライダーマルスと仮面ライダーダークゴースト、仮面ライダーソーサラーに仮面ライダーエターナル、そして仮面ライダーダークキバがエニグマの前に立ち塞がっていた。

 

すると何処からかあの仮面の男の声が聞こえてくる。

 

 

『こいつらは歴代の仮面ライダー達と戦った、悪の仮面ライダー達だ。私の科学力により本物そっくりのコピーを創り出すことに成功したのだ!!只の人間である貴様らには過ぎた相手だろうが…問題は無かろう、流石のディケイドもこれだけのライダー相手に勝つ事は出来まい。世界の崩壊よりも前に地獄へと送ってくれる!!』

 

 

ダークライダー達は無言でダクネス達の前に近づいて来るがダクネス達も臆するどころが更に強く地面を踏みしめて前へ躍り出る

 

 

「そんな脅しに臆する我々ではない!お前達に私達の国を!世界をめちゃくちゃにされて溜まるものか!!」

 

 

「あんたがどうやって地獄から脱走したのかはわからないけれども、あんたにこの世界を滅ばさせないわよ!水の女神の名においてあんたを地獄に送り返してあげるわ!」

 

 

「ウチのパーティーメンバーが世話になったな!その借りを返させて貰うぜ?あの街には…この世界には愛着があるんでな!」

 

 

「私はダクネスみたいに高い防御力もなければアクアみたいな魔力もウィズさんみたいな戦闘力もないけれど…アクセルの街の冒険者として!この世界に住まう人間として譲れないものぐらいはあるんだから!!」

 

 

「私はこの戦いに介入するつもりはありませんでした。ですが、貴方達の計画が罪の無い人達を巻き込むものならば…見逃すわけにはいきません!!」

 

 

『愚かな…そんな一時の気の迷いで滅びの道を選ぶというのだな?仮面ライダーに変身出来ない貴様達に何が出来る?』

 

 

「確かに私達は仮面ライダーにはなる事は出来ないが…それでも私達は貴様達と戦う!!私達の…誇りに掛けて!!」

 

 

そんなダクネス達の叫びを聞いた士はふっと笑みを浮かべると

 

 

「良い面構えをしてるじゃないか。俺も遠慮なくお前達の力を借りるとするか」

 

 

士がそう言った瞬間、ライドブッカーから光が漏れると勝手に開き4枚のライダーカードが飛び出すとダクネス達に向かって飛んでいく。

 

そして4枚のライダーカードはアクア、ダクネス、ウィズそしてダストの腰付近に行くとそれぞれ『ウィザードドライバー』『戦極ドライバー』『ゴーストドライバー』『ダブルドライバー』に変化した

 

 

「うおおお!!コイツはベルトじゃねぇか!!ってことはこれがあれば俺も仮面ライダーに変身出来んのかよ!!」

 

 

「これで戦えるのか…カズマやゆんゆん、もうひとりのめぐみんのように!!」

 

 

「私は変身していいのでしょうか?立場的に色々と複雑です…」

 

 

「ふふふ、良いじゃない!!仮面ライダーと女神の力があれば敵無しよ!!」

 

 

『オレンジ』

 

 

『アーイ!』

 

 

『サイクロン!』

 

 

『ジョーカー!』

 

 

『シャバドゥビタッチヘンシ〜ン』

 

 

「「「「変身!!」」」」

 

 

『ソイヤ!』

 

 

『オレンジアームズ!花道オンステージ!』

 

 

『カイガン! オレ! レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!』

 

 

『サイクロン!』

 

 

『ジョーカー!』

 

 

『ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィー!!』

 

 

ダクネスがベルトのガッテンブレードを降ろすとダクネスの頭上にオレンジが降ってくる。そしてダクネスの頭に嵌った後オレンジが開くと鎧へと変化する。

ダクネスは平成ライダー15番目の戦士・仮面ライダー鎧武へと変身完了した。

 

 

アクアが手の平の形をしたバックルに手を当てると赤い魔法陣が出現しアクアの身体がその魔法陣を通りぬけるとアクアの姿は長い黒のロングコートに大きな指輪を模した頭部を持つ

平成14番目の戦士・仮面ライダーウィザードへと変身完了した。

 

 

ダストがジョーカーメモリをベルトに差し込むのと同時にリーンもサイクロンメモリをベルトに差し込む。そしてサイクロンメモリがダストのドライバーに転送されるとリーンは意識を失ってその場に倒れる、ダストは転送されたサイクロンメモリとジョーカーメモリを差し込んだ状態でベルトをWの形に開くと風がダストの周りを包み込むとダストは平成ライダー11番目の戦士・仮面ライダーWへと変身完了した。

 

 

ウィズの身体がトランジェントに包まれるとゴーストドライバーから黒いパーカーが出現しそれを身に纏うこと平成ライダー17番目の戦士・仮面ライダーゴーストに変身完了した。

 

 

「う、ウォォォォ!!仮面ライダーだ!!テレビで見た、仮面ライダーその物だ!!スゲェェェ!!」

 

 

「ず、ズルイです!!ダクネス達だけ変身するなんてズルイですよ!!」

 

 

カズマとめぐみんは酷く興奮した様子でそう叫ぶ。

 

 

「さて、俺も行くとするか」

 

 

「変身!!」

 

 

『KAMENRIDE』

 

 

『DECADE』

 

 

士もマゼンダをメインカラーとし歴代の平成ライダーへと変身する能力を持つ平成ライダー10番目の戦士・仮面ライダーディケイドへと変身した

 

 

「さぁ、最終決戦を始めるとするか」

 

 

士の言葉が戦いの開始の合図だった。




この世界のダスト達を仮面ライダーに変身させてみました。


ダスト達の戦いは次回のお楽しみです。


感想と評価をお待ちしてます。





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それぞれの戦いに祝福を!!前編

長くなったので前編後編に分けます。一部のキャラが崩壊しているのかもしれないですがご了承下さい。




士はライドブッカーをソードモードに切り替えるとダークキバを迎え討つ、それに対するダークキバはザンバットソードで士の攻撃を受け止めた。

 

 

「また、お前と戦うことになるなんてな。お前の正体はあの世界の紅音也か?」

 

 

「確かに俺は紅音也の人格と記憶を持ってはいるがあくまで別人だ。一応はあの男には生き返らせて貰った恩があるんでね?こうして協力しているって訳だ」

 

 

「そりゃあ、ご苦労なことで。なら俺が直ぐにお前をあの世に送り返してやるよ」

 

 

そう言うと士はライドブッカーからカードを取り出すとベルトのバックルを開いてそのカードを装填する

 

 

『ATTACKRIDE SLASH』

 

 

 

その音声と共にライドブッカーソードモードの斬撃技『ディケイドスラッシュ』が発動する。ソードブッカーの刃がマゼンタ色に発光・分身するとそれでダークキバのサンバットソードと鍔迫り合う

 

 

「緩いな…この程度なのか?破壊者とやらは?前に戦った時よりも弱くなったんじゃないのか?」

 

 

そう言うとダークキバはサンバットソードで分身しているソードブッカーの刃を全て受け止めるとそれを弾いて行く。

 

 

「結構やるじゃないか。ならコイツはどうだ?」

 

 

士はそう言うと新たなカードをベルトに装填する

 

 

『ATTACKRIDE ILLSION』

 

 

仮面ライダーディケイドの分身技『ディケイドイリュージョン』が発動すると士が4人に増える。

 

そして分身した状態でディケイドスラッシュを再び発動させると4人の士達がダークキバに向けて斬撃を飛ばした

 

 

「ハァァァ!!」

 

 

だがダークキバはその場で回転斬りをする事で分身は全て倒された上に士を斬り付けられ地面に転がる

 

 

「なら、こいつで相手してやるよ」

 

 

立ち上がった士はそう言うとライダーの顔が描かれたカードを取り出すとベルトに装填する

 

 

『KAMENRIDE 』

 

 

その音声と共に士はバックルを閉じる

 

 

『KUUGA』

 

 

その音声と共にディケイドの姿が変わる、その姿は平成ライダーの第1号…仮面ライダークウガだ。

門矢士が変身する仮面ライダーディケイドは平成ライダー10番目の戦士であると同時に歴代の仮面ライダーに変身する能力を持っているのだ。

 

 

「フッッ!!!」

 

 

士は純粋な格闘戦でダークキバと戦う。士が変身した仮面ライダークウガ・マイティフォームはクウガのフォームの中でもパワー・スピード・感覚といった能力のバランスがとれているクウガの完成形態であり、クウガの所謂基本形態となるフォームである。そしてマイティフォームは他のフォームとは違い武器を持たずに素手で戦うのが特徴だ。

 

 

「面白い…そうでないと倒し甲斐ないという物だ」

 

 

そう言ってダークキバはサンバットソードで士の胴体を切り裂こうとするが士はそれを上半身を逸らすことで華麗によけるとダークキバから距離をとり

 

 

「お次はこいつで行くぜ?」

 

 

そう言うとクウガとは別のライダーの顔が描かれたカードを取り出すとベルトに装填する

 

 

『KAMENRIDE HIBIKI』

 

 

Dクウガの姿が再び別のライダーに変わる。

 

次に変身したのは平成ライダー6番目の戦士・仮面ライダー響鬼だ。

 

 

『ATTACKRIDE 』

 

 

『ONGEKIBOU REKKA』

 

 

続いて新たなカードを装填することで仮面ライダー響鬼の武器である『音撃棒 烈火』

を召喚すると其れを構える

仮面ライダー響鬼は魔化魍と呼ばれる妖怪達と戦った鬼の戦士だ。清めの音という特殊な音波を使った戦いを主としている。

 

 

鬼棒術(おんげきじゅつ)烈火弾(れっかだん)!!」

 

 

士は音撃棒の先端から火炎弾を放つ攻撃『鬼棒術・烈火弾』も発動するとダークキバに向けて火炎弾を放つ

 

 

「こんな物が通用すると思うな!!」

 

 

ダークキバはサンバットソードで烈火弾を全て払い落とすが其れは士の狙い通りであった。

 

 

『FINAL ATTACK RIDE HI・HI・HI・HIBIKI!!』

 

 

その音声と共にダークキバの腹部にエネルギー体の音撃鼓が現れると士はその音撃鼓をリズミカルに叩き込むことでダークキバにダメージを与えて行く

 

 

「グッ…だが、この程度でやられる俺では無い!!」

 

 

ベルトの両サイドのフエッスロットに装備されている6つのフエッスルのうち、黒いフエッスルを取り出すと其れをダークキバに噛ませた。

 

 

『ウェイクアップ・1』

 

 

その音声と共にダークキバは遥か上空に飛び上がると士にストレートパンチを繰り出した。

 

ダークキバのウェイクアップ・1の必殺技である『ダークネスヘルクラッシュ』が士に決まる。そしてダークキバの必殺技を受けた士は吹き飛ぶと地面に転がった後なんとか立ち上がると

 

 

「中々手強いな…なら、お前にはとっておきの奴を見せてやるよ」

 

 

そう言うと士は見覚えあるライダーの顔が描かれたカードをベルトに装填するとバックルを閉じる

 

 

『KAMENRIDE BUILD』

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

 

更にD響鬼の姿からまたもや別のライダーに変わる。

 

その姿は平成ライダー19番目の戦士でありそしてめぐみんこと桐生戦兎が変身する…仮面ライダービルドだ。

 

 

「勝利の法則は決まった!!…なんてな?」

 

 

『ATTACKRIDE DORIRU KURASYA』

 

 

士はビルドの武器ドリルクラッシャーを召喚すると其れでダークキバの装甲を削って行く。そしてドリルクラッシャーを投げ捨てると黄色のライダーカードをベルトに装填して必殺技を起動させる

 

 

『FINAL ATTACK RIDE B・B・B・BUILD!!」

 

 

「ハァァァァ!!!」

 

 

その音声と共に士の周りに方程式やグラフが現れると士はジャンプをし現れたグラフに沿ってダークキバに向けて下降して行く。ビルドお馴染みの必殺技であるボルテックフィニッシュをダークキバに放った

だが、ダークキバはもう一度黒いウェイクアップフエッスルをスロットから取り出すと再びダークキバに咥えせた後、今度は2回フエッスルを吹かせる

 

 

『ウェイクアップ・2』

 

 

ダークキバは先程と同じように上空に飛び上がると強力な両足蹴りを放つ、ふたつのキックは上空で激しくぶつかり合い大爆破を起こした後ダークギハは優雅に地面に降り立ったのに対し士はうつ伏せの状態で地面に落ちてしまう

 

 

「これで終わりだな…所詮は唯の人間が俺達に勝てる訳がないだよ」

 

 

ダークキバが勝ち誇った様子でそう言っていると

 

 

「ククク…フハハハ!!」

 

 

ディケイドの姿に戻っている士が地面に伏せてまま何故か笑い声をあげ初める。不審に思ったダークキバが笑い声をあげ続けている士に話しかける

 

 

「何がおかしい?」

 

 

「お前達はいつもそうだ、俺達を人間を舐めてかかる。…だからこそ、痛いしっぺ返しを食らうんだよ!!」

 

 

その時、ダークキバの背後で閃光が起きた

 

 

********************

 

 

「リーン!?しっかりしろ!!」

 

 

ダストは自分から離れているところに倒れているリーンに声を掛けるが一切反応を見せない。ダストの脳裏に最悪な可能性が過った時

 

 

『わ、私が倒れてる?どうなってるの!?』

 

 

そんなリーンの声がダストの頭に響いた

 

 

「リ、リーンか?お前、何処にいるんだよ!」

 

 

『わ、分かんないわよ!急に意識が遠くなったと思ったら、私が倒れてるんだから!』

 

 

そこまで言うとダストとリーンはある可能性にたどり着く

 

「ひょっとして…リーンは」

 

 

『私は…ダストの頭の中にいるの!?』

 

 

ダストは頭を抱えてそう叫んでいるとエターナルが攻撃を仕掛けてくるのが視界に見える

 

 

「何時までふざけている?お前達がこないならば、こっちから行くぜ?」

 

 

「リーン。言い合うのは後だ!!今はこいつを何とかするぞ!!」

 

 

『ああもう!分かったわよ!!』

 

 

「うおおおおお!!」

 

 

ダストは雄叫びをあげながらエターナルへと向かっていく。

 

ダストとリーンが変身している仮面ライダーW・サイクロンジョーカーは風の記憶を宿した『サイクロンメモリ』と切り札の記憶を宿した『ジョーカーメモリ』を使って変身する基本フォームである。主に旋風を纏った素早い格闘を得意とし、蹴り主体の戦闘を行うフォームだ。

 

 

ダストがエターナルの元に走ると回し蹴りを放とうとするがその蹴りはエターナルに届くことはなく、ダストはその場にひっくり返った。そしてダストは上半身を起こすと

 

 

「オイ!リーン。息を合わせろ!」

 

 

「それはこっちの台詞よ!!ダストが私に合わせなさい!!」

 

 

仮面ライダーWは2人で1人の仮面ライダーだ。ソウルサイドとボディサイドの息が合ってこそ、その力を100%引き出せるのだ。

 

それ故に完全に息を合わせなければ充分に力を引き出すことは出来ないのだ。

 

 

「かつて俺を倒したWはこんな雑魚ではなかったんだがな…」

 

 

そう言うとエターナルはエターナルエッジに『アクセルメモリ』を装填する。

 

するとエターナルの全身を赤色のオーラが包み込むとエターナルは高速移動でダストを翻弄しながらエターナルエッジで的確にダメージを与えていく。

 

 

『「うわぁぁぁ!!」』

 

 

エターナルの攻撃を受けたダストとリーンは悲鳴をあげながら地面に転がった後黄色と青のメモリを取り出すとスイッチを入れる

 

 

『ルナ!』

 

 

『ドリガー!』

 

 

ダストとリーンは一度ドライバーを閉じるとメモリを抜き、代わりにルナメモリとドリガーメモリを装填すると再びドライバーをWの形に開いた。

 

 

『ルナ!トリガー!』

 

 

ダストとリーンは幻想の記憶を宿した『ルナメモリ』と銃撃手の記憶を宿した『トリガー』を使用することで変身するWのフォームのひとつ仮面ライダーW・ルナドリガーへとフォームチェンジする。

 

 

「コイツならいくら動きが早かろうが関係ねぇだろ!」

 

 

ダストはトリガーマグナムからエネルギー弾を発射する。そのエネルギー弾は高速で移動をしているエターナルを正確に撃ち抜いた。

ルナドリガーは武器のトリガーマグナムから変幻自在に軌道を変えるエネルギー弾を発射することで動き回る敵を確実に銃撃するのに有効なフォームだ。

 

 

「こいつをセットすればいいんだな?」

 

 

そしてダストはドリガーメモリをドリガーマグナムに装填するとマキシマムモードへと変形させた後必殺技を起動せる

 

 

『ちょ、ちょっと!ま』

 

 

『トリガーマキシマムドライブ』

 

 

「トリガーフルバースト!!」

 

 

ドリガーマグナムから黄色と青の破壊光弾を多数同時発射されるとエターナルの方へと追尾していきエターナルへと直撃する。

 

 

「うおおおおお!!!???」

 

 

攻撃の反動で後ろへと吹っ飛んで行くダストとリーン。

 

 

『ダスト!あんたねぇ、勝手なことしないでよ!!』

 

 

「別に良いじゃねぇか!奴にドデカイのを食らわせられたんだからよ!流石の奴もあれを食らえば」

 

 

そしてダストがエターナルが吹っ飛んで行った方向を見ると砂煙の中から無傷のエターナルが現た。

 

 

「流石はW…そうでないと面白くない!!」

 

 

「殆どダメージがないって…マジかよ」

 

 

エターナルは『ヒートメモリ』をエターナルエッジに装填するとエターナルの身体を赤い炎が覆う。

 

その炎はエターナルの攻撃力を増幅させると炎を纏った拳を蹴りをダストに食らわせていく、そしてエターナルの蹴りを腹部に食らったダストは地面に膝をついてしまった。

 

 

「げほ…さっきよりもパワーが上がってやがるぜ」

 

 

『ダスト!今は奴を倒す事に集中しましょう!!』

 

 

「分かってる!…パワーに対抗するには、こいつだな!!」

 

 

『ヒート!』

 

 

『メタル!』

 

 

そう言うとダストとリーンは赤と銀のメモリをドライバーに装填した後ドライバーを開いた

 

 

『ヒート!メタル!』

 

 

ダストとリーンは熱さの記憶を宿した『ヒートメモリ』と鋼鉄の記憶を宿した『メタルメモリ』を使用することで変身するWのフォームのひとつ仮面ライダーW・ヒートメタルへとフォームチェンジした。

ヒートメタルは動きは機敏ではなくなるが極めて高いパワーを誇りヒートメモリにより高温に熱しられたメタルシャフトによる力強い棒術を得意とするフォームだ。

 

ダストはWの武器のひとつであるメタルシャフトを取り出すと其れを振り回してから構えた

 

 

「やっぱり銃よりもこっちの方がやりやすいぜ!!」

 

 

そう言いながら棒術でエターナルの攻撃を受け流すとエターナルの胴体に強烈なつきを食らわせる。

 

そしてダストの突きを受けたエターナルは呻き声を上げると腹部を押さながら蹌踉めいた。ダストは攻撃の手を一旦止めるとエターナルに声をかけた

 

 

「お前は何であんな奴に協力してるんだ?」

 

 

そんなダストの言葉に同意するようにリーンも声をあげる

 

 

『あの男の目的はこの世界を滅ぼすことなのよ?協力してもあんたにメリットなんてないじゃない』

 

 

「あの男の目的なんて知らん。それにお前達がいくら足掻いたところで結局は未来も過去になるだけなんだよ」

 

 

そんなエターナルの言葉がダストとリーンの闘志に火をつけた。

 

 

「テメェが何を言ってんのか分かんねぇし、未来だとか過去だとかそんなもん俺達には関係ねぇな。俺達が守りたいのはそんなご大層なものじゃなく、仲間と生きていく現在(いま)だ!!」

 

 

ダストが力強い声でエターナルにそう言い放つ

 

 

『ダスト…今のあんた、すっごくカッコイイじゃん!!』

 

 

「何言ってんだ?俺は最初からカッコイイに決まってんだろ!」

 

 

『サイクロン!』

 

 

『ジョーカー!』

 

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

 

そう言った後再びサイクロンジョーカーに戻ったダストとリーンは右腰にある『マキシマムスロット』にジョーカーメモリを装填すると仮面ライダーWの必殺技を起動させた

 

 

『ジョーカーマキシマムドライブ』

 

 

ダストはサイクロンメモリの風の力で空に舞い上がると咄嗟に頭に浮かんだ単語をリーンと共に叫ぶ

 

 

『「ジョーカーエクストリーム!!」』

 

 

するとWは正中線で二つに分かれると微妙にタイムラグのある二段蹴りをエターナルに放った。

だがエターナルはその攻撃を避けようともせずにまるでダスト達の攻撃を受け入れるのかの体勢で攻撃を受けるのだった。

 

 

「感謝するぜ…Wと同じ力を持つお前達に倒されるのだからな…これで仲間達の元に戻れる」

 

 

エターナルのその言葉を聞いたダストは

 

 

「ひょっとしてお前…わざと」

 

 

エターナルは静かにそう呟くと地面に倒れ爆破を起こした。その時のダストとリーンには炎の中で微笑んでいる男の姿が見えていた。

 

 

「漸く倒せたな…って、どうやって変身を解除すりゃいいんだ?」

 

 

ダストがそう言うのと同時にダストの腰に着いていたベルトが跡形無く消え去り、ダストも元の姿に戻った。

 

 

「ベルトが消えた?…それよりもリーンは大丈夫なのか?」

 

 

その時、遠くの方でリーンが起き上がるのが見えたのでダストは安心すると柄にも無く先程まで戦っていたエターナルに対する黙祷を心の中でしたのだった。

 

 

 

********************

 

 

仮面ライダーウィザードはアクロバティックな動きで敵と戦うライダーだ。

 

その仮面ライダーウィザードに変身しているアクアもアクロバティックな動きでソーサラーと戦っていた。

 

 

「凄いわ!身体が軽い!!今ならなんだって出来るわね!」

 

 

ソーサラーは魔宝石『エクセルシャード』が埋め込まれた長大な斧『ディースハルバード』をアクアに向かって振り下ろしてくるがアクアはアクション映画顔負けの動きでそれを避けた後黄色のウィザードリングを取り出すとそれを左手の中指にはめた後ベルトの手形に触れる

 

 

『ランド!プリーズ ドッ ドッ ドッ ドドドンドン ドッドッドン』

 

 

そんな変身音が流れるとアクアの身体を黄色の魔方陣が通り抜ける。するとアクアの姿は黄色がメインカラーで土の属性の魔法を操る、仮面ライダーウィザードのフォームのひとつランドスタイルへとフォームチェンジした。

そしてアクアは魔法用のウィザードリングを右手の中指にはめるとベルトのバックルにある左右のレバーを動かす事で右手の向きへと変えると其処に手を出してかざして魔法を発動させる

 

 

『ルパッチマジック タッチ ゴー!』

 

 

『バインド』

 

 

ソーサラーの周りに黄色の魔法陣が現れると土の鎖が現れソーサラーを縛りつけた。

 

 

「どう?これなら動けないでしょ!!」

 

 

アクアは嬉しそうな様子でそう言っているがソーサラーは慌てた様子は見せずに

 

 

「魔法使いとしての格の違いを見せてやろう」

 

 

ソーサラーは静かにそう言うとウィザードベルトに良く似たドライバーに左手を当て魔法を発動させる。そしてソーサラーが地面にディースハルバード叩き付けると其処から岩で出来た棘が沢山地面を突き破るように生えてくる。アクアの魔法とはレベルが違うのは明らかであった。

 

 

「うぎゃあ!!」

 

 

ソーサラーの魔法に鎖は簡単に破壊された上にアクアもあっさりと吹き飛ぶと頭から地面に落下した。

 

 

「イタタタ…良くもやったわね!ならこれならどう!?」

 

 

今度は緑色のウィザードリングを取り出したアクアはそれを指にはめた後ベルトに触れる

 

 

『ハリケーン!プリーズ フーフーフー フーフーフー!』

 

 

アクアはメインカラーが緑でスピードと風の魔法に特化したフォームのひとつハリケーンスタイルへとフォームチェンジした。アクアは風を纏うことで飛行するとウィザードの武器『ウィザーソードガン』を召喚するとソードガンにある手型のハンドオーサーを起動させることで必殺技の待機状態にする。

 

 

『キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ』

 

 

そしてハンドオーサーにハリケーンウィザードリングを翳すことで必殺技を放つ

 

 

『ハリケーン!スラッシュストライク!フー!フー!フー!』

 

 

アクアは風を起こすとソーサラーを吹き上げと風の斬撃を放った。

だがソーサラーは空中にいるにも関わらず最小限の動きでアクアの攻撃をかわしていく、そしてそのままベルトに右手を翳すことで竜巻を発生させる。その魔法も先程アクアが放った風の魔法とは比べ物にならないのは明らかだった。

 

 

アクアはその竜巻に巻き上げられるとまたもや頭から落下した

 

 

「どうしてまた頭から落ちるのよ!!普段の行いは良い筈なのに!」

 

 

アクアは頭を抑えながら地面を転がると今度は水色のウィザードリングをはめるとベルトに触れる

 

 

『ウォーター! プリーズ スイー スイー スイー スイー』

 

 

アクアはメインカラーは青で水属性の魔法を得意とする仮面ライダーウィザードのフォームのひとつウォータースタイルへとフォームチェンジする

 

 

「ふふふ…これよ!これ!水の女神の私にふさわしい姿じゃない!!」

 

 

水の女神なだけあってウォータースタイルの姿ではしゃいでいるアクア。

 

そして魔法用のリングを右手にはめるとベルトにスキャンする

 

 

『リキッド』

 

 

アクアの身体が液状化するとソーサラーの攻撃を避けて行く。

そしてソーサラーの背後に回りこむとウィザードソードガンで背中を切り裂くとソーサラーが地面に転がった。

アクアはウィザードソードガンをガンモードに切り替えるとウォータースタイルでの必殺技を起動させた

 

 

『キャモナ・シューティング・シェイクハンズ』

 

 

『ウォーター!シューティングストライク!スイー スイー スイー スイー』

 

 

アクアはソードガンから水の弾丸を連射する。

 

だがソーサラーは炎の壁を出現させるとその圧倒的な熱量でアクアが放った弾丸を制圧する

 

 

「嘘でしょ!?水の女神の力がこもった弾丸なのに!!」

 

 

「言っただろ?君とは魔法使いとしての格が違うことを教えてやると」

 

 

確かにソーサラーの魔法使いとしての実力は自分とは格が違うことが分かった。

それと同時にこうも思った、何故奴に協力しているのだろうかとその実力があれば従う必要があるとは思えなかったからだ。

 

だからこそアクアはその疑問を口にした。

 

 

「あんた、どうしてあんな奴に協力してるのよ?そんなに強いなら、奴に従う必要なんてないじゃない。何か目的でもあるわけ?」

 

 

「目的?…そんなのあるに決まってるだろう」

 

 

アクアの言葉にソーサラーは誇らしげに自分の目的を語り始めた

 

 

「私の目的は人類の全てをファントムを変えることなのだよ!あの男の計画に協力する見返りに私の目的を果たす契約となっているのだ!!」

 

 

「なんですって!そんな事をしてどうするのよ!!人間がひとりもいない世界で一体何をしたいのよ!!」

 

 

「決まっている!私はその世界の王として君臨するのだよ!!ファントム達が支配する世界の王に…いや、神としてな!!」

 

 

そうソーサラーが言った瞬間、アクアの雰囲気がガラリと変わる

 

 

「沢山の人々の命を奪おうとしただけではなく、神になろうなんて嘆かわしい…女神の名の元に神の名を語ろうとする愚か者に天罰を与えるわ!!」

 

 

そう言うとアクアはウィザードラゴンの顔を囲う様に『フレイム』『ウォーター』『ハリケーン』『ランド』を象徴する宝石がはめられたウィザードリングを中指にはめるとベルトの手形に触れる。

 

 

『スペシャルラッシュ プリーズ! フレイム!ウォーター!ハリケーン!ランド!』

 

 

ベースはフレイムスタイルだが胸部のウィザードラゴンの頭部『ラッシュスカル』を中心に背中に赤い翼『ラッシュウィング』、腰に赤い尾『ラッシュテイル』、両腕に赤い爪『ラッシュヘルクロー』を武装している。

ウィザードの特別形態、仮面ライダーウィザード・スペシャルラッシュへとフォームチェンジした

 

 

「水の女神の私が炎の力を使うのは少し尺だけど…あんたを倒すことが出来るなら構わないわ!」

 

 

アクアの言葉にこれまで冷静であったソーサラーが遂に逆上する

 

 

「調子に乗るな!!この頭の可笑しいプリーストが!!」

 

 

「あんですって!!あんたには女神の力ってのを思い知らせてあけるわ!!」

 

 

そう言うとアクアはラッシュウィングで飛行するとラッシュヘルクローで連続でソーサラーを切り裂いた後ラッシュテイルでソーサラーを天高く打ち上げる

 

 

「うおおおお!!」

 

 

アクアはそんなソーサラーの声を無視する。そしてベルトの手形を一度逆向きにしてからすぐに戻し魔法使用待機状態した後もう一度スペシャルラッシュウィザードリングをスキャンすることで必殺技を起動させる

 

 

『チョーイイネ!スペシャルラッシュ!サイコー!』

 

 

アクアは天高く飛び上がる。そして先程蹴り飛ばしたソーサラーよりも高い位置に行くと勢いよく下降していく。

そしてソーサラーの胴体に両足でキックを決めるとそのままアクアはソーサラーを地面に思いっきり叩きつけた。

 

 

「ば…馬鹿な…こんな頭の可笑しい奴に負けるなんて…」

 

 

ソーサラーは倒れたままそう言うと彼の背後に魔方陣が出現しそして爆破を起こした

 

 

「ちょ、ちょっと!!それどういう意味よ!!!」

 

 

折角敵を倒したというのに締まらないアクアであった。




前編は此処で終了です。


多少無理矢理感があるかもしれませんがこの展開は外伝を書き始めてからずっと考えていた物なのでご了承してくれると嬉しいです


今回変身したのは原作のダスト達ですが、今後この作品のダスト達も変身する可能性があるかもしれません。



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それぞれの戦いに祝福を!!後編

後編です。残りのライダー達の戦いを楽しんでくれると嬉しいです。





ふたりのゴーストは空中に飛びながら戦っていた。

 

 

何故そんな事が出来るのか、その秘密はゴーストの全身各部を覆っている透明なプロテクター『アーマーインビジブル』にあった。『アーマーインビジブル』には空中浮遊といった物質・質量の法則を無視した行動を可能にする機能が搭載されているのだ。

しかしそれはダークゴーストも同じでありお互いに空中浮遊しながらぶつかり合う、だが、仮面ライダーとしての実力は相手の他が上な為にウィズは地面に落とされてしまった。

 

 

「僕と同じ存在である君が人間の味方をしているなんて信じられない。僕が君の目を覚まさせてあげよう」

 

 

ダークゴーストは水色のアイコンを取り出すとゴーストドライバーに装填した後レバーを引く

 

 

『カイガン!一休!迫るピンチ!冴えるとんち!』

 

 

メインカラーは水色でマスク部分は?マークを模したマスクをしている。

ダークゴーストのフォームのひとつ一休魂へとフォームチェンジする

 

 

そして一休魂はその場に座禅を組むとその場で回転・竜巻を発しながら飛び上がるとウィズに攻撃して行く。そして竜巻に巻き上げられたウィズは勢いよく地面にぶつかる。しかしふらつきながら直ぐに立ち上がると

 

 

「貴方が姿を変えるならば私も姿を変えさせて貰います!」

 

 

ウィズは青いアイコンを取りだすとオレ魂を取りだした後青いアイコンをゴーストドライバーに装填すると再びレバーを引いた

 

 

『カイガン!ニュートン!リンゴが落下!引き寄せまっか!』

 

 

メインカラーは青で両手に球状の『リパルショングローブ』と『アトラクショングローブ』をはめ、パーカー『グラビテーションコート』は他の形態より厚手などどこかボクサーを思わせる外見をしている。ゴーストのフォームのひとつニュートン魂へとフォームチェンジした

 

 

「それ!!」

 

 

ウィズは左手で引力を操るとダークゴーストの動きを空中で止め右手で斥力を操りダークゴーストを吹き飛ばした

 

 

「中々やるな…だが、僕の力はこの程度じゃないぞ?」

 

 

そう言うとダークゴーストは金色のアイコンをドライバーに装填すると再びレバーをく

 

 

『カイガン!ピタゴラス!三角の定理!俺の言う通り!』

 

 

メインカラーは金色で三角を模したマスクをしているダークゴーストのフォームのひとつピタゴラス魂へとフォームチェンジする。

そしてダークゴーストはゆっくりと歩いて行くともう一度レバー引いた

 

 

『ピタゴラスダイカイガン!トライレイズ』

 

 

ダークゴーストは素早くウィズの間合いに入ると連続でパンチを繰り出す。ダークゴーストの攻撃を受けたウィズは地面に転がるが負けじと立ち上がり

 

 

「次はこれで行きます!!」

 

 

ウィズはドライバーからニュートン魂を取りだすと今度は赤と白のアイコンをドライバーに装填した後レバーを引く

 

 

 

『カイガン!ムサシ!決闘!ズバット!超剣豪!』

 

 

メインカラーは赤でマスク部分は二つの刀が重なったデザインとなっており全体的に和風な外見となっている。ゴーストのフォームのひとつムサシ魂へとフォームチェンジした。

 

 

ウィズはガンガンセイバーの上部ブレードを取り外し、収納されていたグリップを展開するとガンガンセイバー・二刀流モードに切り替えるとダークゴーストへと向かっていく

 

 

「フッ!!」

 

 

ダークゴーストはもう一度連続パンチを放ってくるがウィズは紙一重で其れをかわす

 

 

ウィズの頭を覆っている『ニテンノフード』は相手の殺気や挙動を読む力があり、多人数相手にも手に取るように攻撃を躱すことが出来、そして肩口を縛る『ハガネノタスキ』は肩の動きを最適化することでハンドスピードを最大まで上げる効果を持っているのだ。

ウィズはダークゴーストの攻撃をかわしながら二刀のガンガンセイバーでダークゴーストのプロテクターに傷をつけていく

 

そして一気に勝負を決める為にレバー引いて必殺技を起動させた

 

 

『ムサシ魂ダイカイガン!オメガスラッシュ』

 

 

ガンガンセイバーの刃にエネルギー集中させると一気に間合いを詰めダークゴーストを切り裂いた。

 

 

「やりました…!!」

 

 

ウィズは自分の勝利を確信しそんな声を上げる。

 

だがダークゴーストは大してダメージを受けた様子はなく余裕のある声色で

 

 

「さて、そろそろ終わりにしようか?」

 

 

ダークゴーストは赤と青と白のアイコンをドライバーに装填した後レバー引いた

 

 

『カイガン!ナポレオン!起こせ革命!それが宿命!』

 

 

 

メインカラーは赤&青&白でマスクには二角帽子(ビコーン)が装着されている。

ダークゴーストのフォームのひとつナポレオン魂へとフォームチェンジする

 

 

「さっきの借り…返させて貰うよ?」

 

 

『オメガドライブ ナポレオン』

 

 

先程のウィズと同じようにガンガンセイバーにエネルギーを集中させるとそれでウィズを切り裂く

 

 

「きゃああああ!!!」

 

 

ナポレオン魂の必殺技を受けたウィズは悲鳴をあげ吹き飛ぶとムサシ魂から基本フォームであるオレ魂に戻ってしまった。

そしてダメージから地面に伏して動けないでいるウィズにダークゴーストが近づくと

 

 

「もう気が済んだだろう?僕には君の苦しみも悲しみも理解が出来る。一緒に協力しようじゃないか、こんな下らない世界に守る価値なんてないからね」

 

 

ダークゴーストは諭すようにそう言うとウィズに手を差し出してくる。それに対してウィズははっきりとした声で答える

 

 

「私は確かにリッチーですが…心は人間のままです!多くの人を不幸にしようとしている貴方を絶対に許す事なんて出来ません!」

 

 

ウィズはそう言って立ち上がるとこれまでアイコンとは雰囲気の違う赤と黒のツートンカラーのアイコンを取り出しすとドライバーに装填する

 

 

『一発闘魂』

 

 

『バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!』

 

 

ウィズは力強くドライバーのレバーを引いた

 

 

『闘魂カイガン!ブースト!俺がブースト!奮い立つゴースト!ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!ゴー!ファイ!』

 

 

ベースは基本フォームであるオレ魂だがトランジェントは全体的に赤く燃えるような意匠がありマスクの目元部分も燃えたような意匠がある。仮面ライダーゴーストの強化フォーム・闘魂ブースト魂へとフォームチェンジした。

 

 

「それが君の答えなのか…残念だよ、君とは同士になれる気がしたんだけどな!」

 

 

ダークゴーストはガンガンセイバーとサングラスラッシャーを構えるとウィズへと向かっていく、そしてウィズもサングラスラッシャーを構えるとダークゴーストを迎えうった。

ダークゴーストはガンガンセイバーをブレードモードにサングラスラッシャーをブラスターモードにするとウィズに攻撃し始める。ガンガンセイバーでウィズの胴体を切りつけた後にサングラスラッシャーを押し付けるとゼロ距離で発射した

 

 

「く…私は…絶対に負けません!!」

 

 

ウィズはサングラスラッシャーのサングラス部分に闘魂ブーストゴーストアイコンをセットする

 

 

『メガマブシー』

 

 

『闘魂ダイカイガン!メガ!オメガシャイン!』

 

 

サングラスラッシャーの刀身に炎が宿るとウィズは炎の斬撃をダークゴーストに向けて放つ

 

 

「ヤァァァ!!」

 

 

「グァ!!」

 

 

ダークゴーストはウィズの攻撃を受けると怯んだ。ウィズはその一瞬を決して見逃さない。

 

 

「これで終わりです!!」

 

 

ウィズは闘魂ブーストゴーストアイコンをドライバーに戻すともう一度レバー引いて必殺技を起動させる

 

 

『闘魂ブーストダイカイガン!オメガドライブブースト』

 

 

そのままウィズは上空に飛ぶと背後にアイコンの形をした紋章が浮かんだ後右足に炎が集中して行く。

 

 

「命!燃やします!!」

 

 

そして渾身の力を込めるとダークゴーストにキックを喰らわせた!!

 

 

「食らってたまるか!!」

 

 

ダークゴーストはカンゼンセイバーとサングラスラッシャーでウィズの攻撃を受け止めようとするがウィズの攻撃に耐え切れずに武器が砕けるとそのまま攻撃をくらうと地面に転がる。

 

 

「またしても…ゴーストの名を持つ者に敗れるとは…これも運命か」

 

 

自分の負けを悟ったダークゴーストは静かに倒れ込むとそのまま爆破した。

 

 

其れを見届けウィズは静かに変身を解除する

 

 

「ふう…何とか勝てましたね。他の皆さんは大丈夫でしょうか?」

 

 

ウィズはそう心配そうに呟いた

 

 

********************

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

ダクネスは無双セイバーと大橙丸を構えるとマルスへと切り掛かっていく。マルスは盾で攻撃を受けることでダメージを防ぐがダクネスはすかさず『ブライトリガー』を引く事で銃口の『ムソウマズル』から強力な弾丸を連射してダメージを怯ませると大橙丸で胴体を切り抜ける

 

 

「ふっ…アハハ!!凄いぞ!私の剣が当たっている!これが仮面ライダーの力なのか!?」

 

 

ダクネスは自分の攻撃が当たるようになっていることに歓喜の声を上げる。普段攻撃が当たらないだけに嬉しさもひとしおなのだろう、因みに当たらないのならば両手剣スキルを取れば良いだろうというツッコミはしてはならない。

 

 

「フッ!!」

 

 

マルスは素早く間合いを詰めようとするのがダクネスは真正面から攻撃を受け止める。無双セイバーとマルスのソードブリンガーが火花を散らしながら鍔迫り合っていた。

 

 

「ほう、所詮は仮面ライダーの力を借りているだけの紛い物かと思いきや…中々やるではないか」

 

 

マルスは初めて鎧武に対してそう言葉を発しする。その言葉は鎧武と戦える事を純粋に喜んでいる声色だった。

 

 

「貴様は…貴様は悪ではない。短い間だが刀を交えてそれが分かった。何故あんな奴に協力している?」

 

 

ダクネスのクルセイダーとしての直感がマルスを悪ではないと訴えていた、だからこそどうして悪に協力をしているのか知りたかった。

 

 

「他の連中はどうだが知らないが少なくとも私は私のオリジナルとなった奴とは多少違うらしいな。貴様とは正々堂々と勝負がしたい」

 

 

マルスはそう言うとソードブリンガーの刃先を鎧武に突きつけてきた。

 

 

「分かった。私も誇り高きクルセイダーとして貴様の願いに答えよう」

 

 

鎧武はそう言うと無双セイバーと大橙丸を合体させナギナタモードにするとオレンジロックシードをセットし必殺技を起動する。

 

 

(オレンジチャージ)

 

 

「オリャャァァ!!」

 

 

鎧武は斬撃を飛ばすとオレンジ型のエネルギーでマルス動きを封じるとそのままナギナタモードの強力な一閃を喰らわせようとするが…

 

 

「こんな小細工が通用するか!!」

 

 

マルスはカッテンブレードを2回下ろし

 

 

『ゴールデンオーレ』

 

 

「フンッ!!」

 

 

マルスは力づくで拘束を振り払うと逆に鎧武を斬りつけた。そしてマルスの攻撃を受けた鎧武は地面に転がりその時に鎧武から3つ程ロックシードがこぼれ落ちる。鎧武はこぼれ落ちたロックシードを拾うと

 

 

「そうか!これを付け替えながら戦うのだな!!」

 

 

ダクネスはオレンジロックシードを取り外すと先程零れ落ちたロックシードのひとつを取り出すとロックを解除した

 

 

『イチゴ』

 

 

そしてオレンジロックシードの代わりイチゴロックシードを戦極ドライバーに取り付けるとカッテンブレードを下ろした

 

 

『ソイヤッ』

 

 

『イチゴアームズ!シュシュッとスパーク!』

 

 

鎧武はメインカラーは赤でゴーグルはイチゴの断面図を模したような複眼をしている鎧武のフォームのひとつ、イチゴアームズへとフォームチェンジする。

イチゴアームズは姿勢制御装置『エイキーンスラスター』と多数生成される『イチゴクナイ』を武器にスピード重視の戦いを得意とするフォームだ。

 

 

「ヤァ!!!」

 

 

鎧武は移動しながらイチゴクナイをマルスに投げつけ攻撃して行く。イチゴクナイは投げたそばから新たに生成されるて行くので武器が切れる心配はない。おまけにイチゴクナイは内蔵するスラスターにより当たると爆発する仕様となっているのでマルスにダメージを更に増幅させて行くが…

 

 

「このアームズは私に向かん!別のに変えるぞ!!」

 

 

どうやら鎧武にはイチゴアームズの戦法は合わなかったらしく、今度はパイナップルを模したロックシードを取り出すとベルトに取り付ける

 

 

『パイン』

 

 

『ソイヤッ』

 

 

『パインアームズ!粉砕デストロイ!』

 

 

鎧とゴーグルは明るい黄色でパイナップルな断面図を模した複眼をしている、鎧武のフォームのひとつパインアームズへとフォームチェンジした。

パインアームズはパイナップル型の鎖鉄球『パインアイアン』を使ったパワー重視の戦いが得意なフォームだ。

 

 

「オリャャァァァ!!」

 

 

鎧武はパインアイアンを振り回しながらマルスに攻撃する。パインアームズは攻撃の隙は大きいがその分当たれば大きなダメージになるのは請け合いだ。マルスもそれが分かっているのか回避に専念しており、ある程度間合いが取るとカッテンのを3回下ろし必殺技を発動させた

 

 

「ハァ!!」

 

 

『ゴールデンスパーキング!』

 

 

『ゴールドチャージクラッシュ 』

 

 

マルスはソードブリンガーに地面に突き刺すと其処から黄金の衝撃波を発生させ鎧武のパインアイアンを爆破させる。そしてその余波で鎧武を吹き飛ばした

 

 

「この程度か?お前達人間の力とやらはこれで終わりか?お前の全力をぶつけて来い!!」

 

 

マルスの挑発とも叱咤とも取れる言葉を聞いた鎧武は凛とした声でマルスに返す

 

 

「私は負けん!クルセイダーとしてひとりの人間としてお前に打ち勝って見せる!!」

 

 

そう言うと今までのロックシードと比べてひと周り大きいロックシードを取り出すとロックを解除した

 

 

『カチドキ』

 

 

鎧武はパインロックシードを取り外すとカチドキロックシードをベルトに取り付けこれまでのロックシードと同じようにカッテンブレードを下ろす

 

 

『ソイヤッ』

 

 

『カチドキアームズ!!いざ出陣!エイエイオー!』

 

 

見た目もモチーフもオレンジアームズと同様だが、アームズより重厚かつ絢爛なアーマーとなっており、兜飾りの形状も従来の三日月に加え、徳川家康所有の歯朶の葉前立てを思わせる兜飾りが新たに追加されて更に戦国武将然とした出で立ちとなっている。鎧武の強化フォーム、仮面ライダー鎧武・カチドキアームズへとフォームチェンジした。

 

 

「行くぞ!仮面ライダーマルス!!」

 

 

「来い!!仮面ライダー鎧武!!」

 

 

ダクネスはカチドキアームズ専用武器『火縄大橙DJ銃』を召喚するとダクネスは銃身についているディスク型のプレートをスクラッチするようにタッチする事で火縄大橙DJ銃を大砲モードに切り替えるとマルスに攻撃していく。

 

 

そして大砲モードの攻撃を受けたマルスはよろめきながらも喜びを滲ませた声色で

 

 

「鎧武よ!お前の強さを認め、私も全力で答えようではないか!!」

 

 

そう言うとマルスの身体に黄金色のオーラが出現し其れをマルスは纏った

 

 

「まだまだ!!」

 

 

鎧武はプレートをタッチする事で今度は火縄銃モードに切り替えて攻撃していく

 

 

「この程度の攻撃が効くかぁ!!」

 

 

マルスは盾で鎧武の攻撃を防ぐ

 

 

「更に行くぞ!!」

 

 

鎧武はさらにプレートをタッチしマシンガンモードに切り替えるとマルスを撃ち抜いて行く

 

 

「グゥゥゥ…」

 

 

マルスの盾を弾き飛ばすとマルスに攻撃が直撃する。

 

そしてもう一度大砲モードに切り替えると一気にマルスを上空に打ち上げた

 

 

「これでトドメだ!!」

 

 

鎧武は火縄大橙DJ銃と無双セイバー合体させることで火縄大橙DJ銃を大剣モードにする。

 

 

『ロックオン』

 

 

そして火縄大橙DJ銃・大剣モードにカチドキロックシードをセットすると必殺技を発動させる。大剣の刀身にエネルギーを溜めると落ちて来たマルスを切りつけた。

 

斬り付けられたマルスは地面に転がった後立ち上がると

 

 

 

「見事だ…最後にお前の名前を教えて置いて欲しい」

 

 

「私の名前はダク…いや、ダスティネス・フォード・ララティーナだ」

 

 

「その名前…覚えて置こう…グァァァァ!!」

 

 

マルスはそのまま倒れると爆破した

 

 

「私もお前と正々堂々と勝負が出来て良かったよ」

 

 

変身が解除されたダクネスもマルスと戦えた事に満足しているのかそう言うと天を仰いだ。

 

 

********************

 

 

「カズマ!彼処にリーンがたおれていますよ?早く助けに行きますよ!」

 

 

めぐみんは俺達から離れた所に居る仮面ライダーWとその近くに倒れているリーンを指差してそう言っていた。

 

 

「分かってる!めぐみん。急ぐぞ!」

 

 

俺とめぐみんは戦いの一瞬の間をついてリーンの元に走り寄るとめぐみんがリーンのに近づく

 

 

「リーン!しっかりして下さい!」

 

 

めぐみんは何度も揺さぶるがリーンは目を覚まさない

 

 

「カズマ!リーンが何の反応もしないですよ?まさか…」

 

 

めぐみんが顔を青ざめた表情でそう言う

 

 

「いや、リーンは大丈夫だ。ここにいると危ないから俺達は勿論リーンの身体も安全なところに運んでやろうぜ?」

 

 

そう言うと俺はリーンを背負うとめぐみんと共に戦いに巻き込まれないように安全な場所へと移動する。その間背中に感じている柔らかい感触を考えないようにしながら俺はめぐみんに説明する

 

 

「仮面ライダーWはふたりでひとりの仮面ライダーなんだよ。説明すると長くなるから端折るが、要するにリーンは無事ってことだ」

 

 

「良くは分かりませんがリーンが意識を失っているのはダストが変身しているのと関係していると考えて良いんですね?」

 

 

「まぁ、そんなところさ」

 

 

そう言ってから俺はリーンを岩影の寄りかからせるように置くとめぐみんと共にそこからダクネス達の戦いを見つめていた。

 

 

「仮面ライダーとダークライダーの戦いを見れるなんて、こんな状況じゃなかったら大興奮したぜ」

 

 

「どうするのですカズマ?このままだと私達は完全にやって来た意味が無いです

 

よ?」

 

 

めぐみんは言う通りこのままだと俺とめぐみんがここに来た意味がない。しかし俺達としてはこのままライダーバトルを見ていたい気持ちもある。

 

 

 

「カズマ。今の内にあのエニグマを私達で破壊しませんか?私としてはひとつぐらいは戦績を作って置きたいのですが」

 

 

確かにめぐみんの気持ちも分かる。ここで見ているだけならば別の世界の俺達に顔向けが出来なくなる。何よりも俺にだってある。譲れない物が…。

 

 

「たく!しょうがねぇなぁぁぁ!!」

 

 

その後カズマとめぐみんは潜伏を使うことで姿を消し敵に気付かられないように戦いに巻き込まれないようにその場から移動すると戦いによりガラ空きとなっているエニグマの元へと移動した。

 

 

「俺達にはビルドやクローズ達のように戦いは出来ないがこういう狡っからい戦法は任せろって感じだな」

 

 

「狡っからいのはカズマだけですよね?同類のように扱わないで欲しいのです」

 

 

「お、どうやら着いたようだぜめぐみん」

 

 

俺はめぐみんの言葉をスルーすると崖の上からエニグマを見下ろす事の出来るポジションへと移動する。

 

 

「良し、ここならばお前の爆裂魔法の射程圏内だろ?ダクネス達が戦っている間にひと思いにやっちまえ!!」

 

 

カズマがそう言うのと同時に鎧武カチドキアームズの攻撃が仮面ライダーマルスを吹き飛ばすとマルスが俺とめぐみんの足元の辺りに激突しその衝撃でカズマ達は数メートル後ろに転がった。

 

 

「あっぶねぇ…ここにいるといつ巻き込まれてもおかしくないな。オイ、めぐみん!さっさとエニグマを吹き飛ばせ!!」

 

 

「あ、あうう…も、もし、我が魔法が失敗しエニグマを吹き飛ばすことが出来なかったら…」

 

 

どうやらめぐみんは土壇場でエニグマを破壊出来るかどうか不安になったようだった。

 

しかしカズマには分かっていた、普段強気なめぐみんはいざという時には弱くなるという事を、だからこそカズマはめぐみんに発破をかける。めぐみんの爆裂魔法への憧れを誇りを知っていたから、そしてそれはあの世界のめぐみんには持っては居なくこのめぐみんにしかない物だから

 

 

 

「めぐみん!ここでびびってる場合じゃねぇだろ!!それともアレか?お前の爆裂魔法は、お前の誇りとやらはその程度で役に立たなくなる物だったのかよ!?」

 

 

カズマの言葉にめぐみんはカチンと来た様子になると

 

 

「何を!!我が爆裂魔法を馬鹿にするのは誰であろうと許しませんよ!良いでしょう!!我が最強の爆裂魔法の力を今こそ見せてあげましょう!!」

 

 

そう言うとめぐみんの周りに魔力が集まり始め

 

 

「紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!」

 

 

そして詠唱を言い終えためぐみんは杖を天高く掲げ魂を込めて叫ぶ!!

 

 

 

『エクスプロージョン!!!』

 

 

********************

 

 

 

めぐみんの叫びによりエニグマは強力な爆発に飲まれ瓦礫ひとつ残さずに消滅する。

 

そして其れを目撃したダークキバは突然のことに混乱していた。

 

 

「馬鹿な!エニグマが!!…おのれ!!愚かな人間如きが生意気なことを!!』

 

 

「人間の底力を思い知ったか!!」

 

 

ディケイドの斬撃が狼狽えていたダークキバの背中に決まる、背中から煙を上げているダークキバはディケイドを睨みつけると忿怒に満ちた声で

 

 

「人間は大人しく迫り来る恐怖に絶望してれば良い!!何故抵抗などするのだ!!」

 

 

ディケイドはそんなダークキバの言葉を鼻で笑った後

 

 

「お前がどんなに絶望させようとこいつらは絶対に絶望なんかしやしない!この世界の人間に気高い誇りと勇気がある限り!!お前達の企みなんか上手く行く筈がないんだよ!!」

 

 

『FINAL ATTACK RIDE』

 

 

『D・D・D・DECADE!!』

 

 

「ハァァァァァァ!!!」

 

 

ディケイドとダークキバの間にカードがずらりと並ぶとディケイドは斜め上に飛び上がると一気に下降する。

 

その時にカードの中を通り過ぎながらエネルギーを溜め込むとそれをキックと共にダークキバに叩き込んだ。

 

 

「グガァァァァァァァァ!!!」

 

 

そしてダークキバは背後の壁までまで吹き飛んで行くと壁に叩きつけられ大爆破を起こした

 

 

「ふう、此方は片付いたが…ビルドもそろそろケリがついてる頃か」

 

 

背後で爆破炎上する壁を尻目にディケイドはそう静かに呟いた

 

 

********************

 

 

カズマ達がエニグマの元にたどり着いたのと同じ頃…

 

 

 

「良くぞ、ここまで来たな仮面ライダー!!我が積年の怨みを今こそ晴らしやる!!」

 

 

エニグマにたどり着いた戦兎達を仮面の男は怨みのオーラを出しながそう言っていた。

 

 

「悪いがそこまで怨みを買うことをした覚えはないぞ?」

 

 

「お前達にはなくてもこちらにはあるのだよ。貴様らに受けた屈辱を!!この傷の痛みを!!忘れた事など一度もないのだからな!!」

 

 

仮面の男はそう言い終わると仮面に手を触れると勢いよくその仮面を外した




ダクネスが攻撃を与えられたのは仮面ライダーに変身していたことによる補正だと思って下さい。


後今回ダスト達が変身したのはあくまでも士の力を借りたことによるイレギュラーな物なのでこのダスト達の変身がレギュラーになることはありません。




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この素晴らしい平行世界に祝福を!!

仮面の男がその素顔を遂に戦兎達に晒した。仮面の下の素顔は老人でありその顔には酷い傷跡が刻まれていた

 

 

「あんたは何者だ?何故そこまでに仮面ライダーを憎んでいる!?」

 

 

「良いだろう…私の名前を教えてやる!!私の名前はイワン・タワノビッチ。 またの名を死神博士!!偉大なるショッカーの大幹部である!!」

 

 

「ショッカー?悪いがそんな組織俺は知らないぞ?」

 

 

そんな戦兎の言葉に反応したのはカズマだ

 

 

「そっか、ビルドは知らなかったんだな。ショッカーていうのは仮面ライダーシリーズに登場した一番初めの悪の組織なんだ」

 

 

「ほう…其処の小僧は私の事を知っているのだな」

 

 

「あんたは知らないだろうが俺のいたせ…故郷ではあんたはテレビの中の存在なんだよ。ショッカーってのも仮面ライダーという番組に登場していたんだ」

 

 

カズマ曰く仮面ライダーシリーズは平成だけではなく昭和という時代でも放映されていたらしい。ショッカーというのは仮面ライダーシリーズの1番初めの物語…仮面ライダーの敵だったという話だ。1番初めの敵ということなのかその後のシリーズにも何度か登場もしているらしく、死神博士はそのショッカーの大幹部なのだという話だ

 

 

「そのショッカーの大幹部様がどうしてこの世界に?何故今頃になって蘇ったんだ!」

 

 

「決まっておるだろう!貴様らに仮面ライダーに復讐をする為だ!!仮面ライダーによって我らの悲願である世界征服を阻止されただけではなくショッカーも壊滅させられた!私は地獄の底で長い時を過ごしながらも仮面ライダーに対する怨みを忘れた時は一度もないのだ!」

 

 

「そりゃ、ご苦労なことで。でも、俺達はあんたらの怨みの対象である仮面ライダーとは別人なんだが、それで良いのか?」

 

 

「私にとって仮面ライダーの名を語る者は全てが怨みの対象である!!ここで貴様らを倒すことで我が怨みを晴らし、そしてこの世界でショッカーの復活の狼煙をあげてやるわ!!」

 

 

死神博士はそう言うとネビュラスチームガンを取り出すとフルボトルによく似たアイテムを装填する

 

 

『ギアエンジン!』

 

 

そう音声が流れた後死神博士は一度空に向かって引き金を引いた後直ぐにギアを抜くとまた別のギアを取り出してネビュラスチームガンに装填する

 

 

『ギアリモコン!』

 

 

そして死神博士はもう一度引き金を引く

 

 

『ファンキーマッチ!!』

 

 

「バイカイザー!!」

 

 

『フィーバー!』

 

 

『パーフェクト!』

 

 

死神博士の身体を黒煙が包み込むそしてその黒煙が晴れると其処に居たのは半身に赤と青の装甲を纏い見た目はビルドに良く似た戦士…バイカイザーが現れた

 

 

「これが!!地獄の底で私が手に入れた新たなる力だ!!この帝王の力で積年の怨みを今こそ晴らしてやる!!」

 

 

「亡霊は亡霊らしく大人しく地獄に帰ってろ!!ゆんゆん!カズマ!行くぞ!!」

 

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

「「「変身!!!」」

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ』

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

 

ビルドはドリルクラッシャーを構えるとバイカイザーへと向かって振り下ろすがバイカイザーは易々とビルドの攻撃を受け止めると片手でビルドを数度地面に叩きつけた後、グリスとクローズの元に放り投げた

 

 

「「ビルド!!」」

 

 

「イテテテ…流石にバイカイザー相手に基本フォームじゃ分が悪いか!!」

 

 

ビルドは赤と黒のフルボトルを取り出すとビルドドライバーに装填する

 

 

「フェニックス!ロボ!ベストマッチ!!」

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

『不死身の兵器! フェニックスロボ! イェーイ!』

 

 

ビルドはラビットタンクフォームからフェニックスロボフォームへとビルドアップした

 

 

「今度は俺達のターンだ!!」

 

 

そう言うとクローズとグリスはバイカイザーに向かっていく。クローズはビートクローザーのグリップを一度引き必殺技を起動させる

 

 

『スマッシュスラッシュ 』

 

 

ビートクローザーの刀身に蒼炎を纏わせて斬撃を上に下にと繰り出して行くがバイカイザーは其れを簡単に避けて行く

 

 

「足元がガラ空きだぜ!?クリエイト・ウォーター!!」

 

 

グリスのクリエイト・ウォーターがバイカイザーの足元を水浸しにする

 

 

「そして…フリーズ!!」

 

 

今度は氷の初級魔法により水浸しとなったバイカイザーの足元を凍らしていく、カズマの十八番である初級魔法同士を組み合わせたコンボ技が決まった

 

 

「小癪な…」

 

 

「ビルド!!アイツにキツイのを一発食らわしてやれ!!」

 

 

「任せてくれ!!ゆんゆんとカズマは巻き込まれないように離れていてくれ!!」

 

 

『ボルテックフィニッシュ』

 

 

ビルドはエンパイリアルウィングからの炎で全身を包み込むとバイカイザーに体当たりを食わらせようとするが…

 

 

「この程度で…私を止められると思ったか!!我が積年の怨みの力を思い知るがいい!!」

 

 

 

そう言うとバイカイザーは高速移動で足元の氷を砕くとクローズとグリスに攻撃を加える。その後のビルドの攻撃を避けるとビルドにも攻撃をして行く。そしてバイカイザーの攻撃を受けたビルド達が宙に浮くと赤と青の歯車のエネルギー体による追い討ちを仕掛け、それを受けたビルド達はそのまま吹き飛んでいくと地面に転がる

 

 

「つ、強い…だけど、俺達は負けるわけにはいかないんだよ!」

 

 

「ここで私達が倒れたら…世界は貴方の手に堕ちるのでしょう?魔王軍に征服されのは嫌だけど貴方に征服されるも嫌なのよ!!」

 

 

「それに俺達の帰りを待ってる奴らも沢山いるだよ!!そいつらの為にも負けられねぇんだよ!!」

 

 

「グリス…お前の言う通りだ!!こんな何処で倒れるわけにはいかない!!こんな雑魚に苦戦しているようじゃ、エボルトどころか魔王にだって勝てやしないからな!!」

 

 

そう言うとビルドはラビットタンクスパーキングフルボトル取り出すと3回軽く振った後プルタブを開けてボトルを起動させる

 

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

 

そしてラビットタンクスパーキングフルボトルをビルドドライバーに想定するとドライバーを回転させる

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

『シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!』

 

 

『イエイ!イエーイ!』

 

 

ビルドはフェニックスロボから現段階での最高戦力ラビットタンクスパークリングへとビルドアップする

 

 

「ふん。また姿を変えたようだか、このバイカイザーに勝てる筈がないだろう!!」

 

 

「そいつはどうかな?敵がどんなに強かろうが最後には必ず正義のヒーローが勝つ、そう相場が決まってんだよ!!」

 

 

そう言うとビルドはラビットタンクスパークリングの能力で高速移動をし素早くバイカイザーの懐に飛び込んで行くがバイカイザーも同じく高速移動をする事でビルドの攻撃を避けていく

ビルドとバイカイザーの高速移動しながらの戦いはその場にいるクローズやグリスの目には止まらなかった。

 

 

「ウォォォォ!!!」

 

 

「ハァァァァ!!!」

 

 

ビルドはカイゾクハッシャーでバイカイザーの装甲を傷つけるがバイカイザーも負けじとネビュラスチームガンを至近距離から撃つ、そしてビルドとバイカイザーはお互いに攻撃の反動による地面に転がっていく

 

 

「ふっ…フハハハハ!!流石だな、仮面ライダーよ!!だがな、お前などにやられる死神博士でないわ!!」

 

 

バイカイザーが勝ち誇った様子でそう言った時

 

 

「忘れてるんじゃないだろうな、仮面ライダーは…」

 

 

「ビルドだけじゃないわよ!!」

 

 

ビルドの背後からクローズとグリスがバイカイザーの前に現れるとバイカイザーに連携攻撃を仕掛けていく、クローズはビートクローザーにロックフルボトルをセットすると2回グリップを引き

 

 

『ミリオンスマッシュ』

 

 

そして刀身から蒼炎の火炎弾を飛ばしてバイカイザーにダメージを与えた後今度はグリップを3回引き刀身に蒼炎を纏わせな

 

 

「ビルド!!ロボットフルボトルを貸してくれ!!」

 

 

「わかった!!」

 

 

そしてグリスはビルドからロボットフルボトルを投げ渡された後、ツインブレーカをアタックモードに切り替えると其処にロボットゼリーとロボットフルボトルをセットしツインブレイクを発動させる。

ふたつのロボットのチカラをパイルの先端部に集中させると渾身の力を込めてバイカイザーをぶん殴る、そしてツインブレーカはバイカイザーの装甲を大きく削りとることに成功した。

 

 

「喰らえ!!俺とクローズのコンビネーションを!!」

 

 

『スクラップフィニッシュ』

 

 

 

ドライバーのレンチを下ろすとグリスの肩や背中からヴァリアブルゼリーを勢いよく噴出させるとそのまま加速しツインブレーカ・アタックモードで強力なパンチ攻撃を繰り出すのと同時にクローズもバイカイザーに蒼炎色の鍵型のエネルギーを繰り出した

 

 

「こんな物、私に通じるか!!」

 

 

バイカイザーは赤と青の歯車のエネルギー体でグリスとクローズの攻撃から身を守るがふたりの攻撃に耐え切れずに徐々に歯車に亀裂が入ってくる。そして歯車のエネルギー体が砕け散るとクローズとグリスの攻撃を真正面から受けた

 

 

「バカな!!!」

 

 

その時にバイカイザーの手から離れたネビュラスチームガンをビルドはカイゾクハッシャーで正確に貫く

 

 

「しまった!!」

 

 

「「タァァァ!!」」

 

 

駄目押しとばかりにクローズとグリスの回し蹴りを受けたバイカイザーは地面に叩きつけられるが何とか立ち上がると

 

 

「おのれ!!地獄の底で永き時を過ごし!積もり積もった怨念で蘇ってきたこの私が!!永き怨みで力を得たこの私が破れるだと!?そんなことがあり得るはずかない!!」

 

 

ズタボロの状態でエニグマを背後にそう叫ぶバイカイザー、そんなバイカイザーをビルドとクローズそしてグリスが鼻で笑う

 

 

「当たり前だろ。お前は怨みの力でそこまでの力を得たかもしれないが所詮はそこまでなんだよ!」

 

 

「私達は大切な人達を守る為に戦っているの、復讐のことしか考えていない貴方とは違ってね」

 

 

「恨み辛みで蘇り力を得たお前が人々の希望の声で立ち上がりそして勝利して来た士さんや戦兎さん達が…仮面ライダーが負ける筈がないだろ!!」

 

 

「「「仮面ライダーを…人間達を…舐めるな!!!」」」

 

 

『スパークリングフィニッシュ』

 

 

『ドラゴニックフィニッシュ』

 

 

『スクラップフィニッシュ』

 

 

「「「ライダー…キッック!!!」」」

 

 

ビルド、クローズ、グリスはジャンプすると一回転をしバイカイザーへと突っ込んで来る。バイカイザーは其れを抵抗もせずに其れを受けると背後にあるエニグマに突っ込んでいく

 

 

「「「はぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

「おのれぇ!!!仮面ライダーァァァァ!!」

 

 

「死神博士!!あんたの野望は…ショッカー復活はこれで…終わりだ!!」

 

 

「グァァァァ!!!」

 

 

バイカイザーの断末魔と共にライダー達はエニグマごとバイカイザーを貫くと大爆発を起こす。それと同時にもうひとつのエニグマは士を始めとする別働隊により破壊されたことでふたつの世界の融合は止まり…そしてふたつの世界の崩壊は回避され、今回の事件は幕を下ろしたのであった。

 

 

********************

 

 

今回の戦いがふたつの世界に与えた被害は思ったよりも深く、崩壊した建物と怪我人の救出により時間がかかったがそれも終わりめぐみん達との別れの時間がやって来る。

アクセルの街から少し離れた原っぱで士とカズマ、めぐみん、そしてゆんゆんが別の世界の自分達を見送りに来ていた

 

 

「安心しろよ。別の世界のあんたらはちゃんと元の世界に送り届けてやる」

 

 

そう言って不敵に笑う士

 

 

「カズマ達を送り届けた後貴方はどうするつもりなのですか?」

 

 

そんなめぐみんの言葉に士は

 

 

「この世界における俺の役目はとりあえずは終わったようだ、また旅に出るさ。機会があればお前達と再び出会う時があるだろうな」

 

 

そう言うと士はトイカメラでめぐみん達を撮影しているとめぐみんが戦兎に近づいてくると手を差し出し握手を求めて来た

 

 

「貴女もこの私に負けないぐらいカッコ良かったですよ?これからも頑張って下さいね」

 

 

「そっちの世界の私、あまり周りに迷惑をかけてはいけませんよ?周りの人達を仲間を大切にしてくださいね」

 

 

俺はそうめぐみんに返すと握手に答えた

 

 

「そっちの俺はこっちと違って仲間達にさほど苦労はしてないようだし、あのミツルギとも仲良くしているみたいだな…これからも色々あるだろうがあいつらと仲良くしてやってくれよ」

 

 

「お前もあいつらのことは好きなんだろ?……これからもあいつらのことは大切にしてやれよ?サトウカズマ?」

 

 

ふたりのカズマもそう言うと握手を交わしていた

 

 

「そっちの私もめぐみんに苦労してるかもしれないけど、大切な友達を見捨てないであげてね?そっちのめぐみんもきっと貴女のことを大切に思っていると思うから」

 

 

ゆんゆんもお互いにそう言うと照れ臭そうに微笑み合っている

 

 

そしてお互いに最後の別れの話を済ませた俺達は最後にもう一度お互いに握手を済ませると士が灰色のオーロラを出現させた

 

 

「またな!この世界の仮面ライダー達!」

 

 

士がそう言った後灰色のオーロラは士と別の世界の俺達を飲み込むとその場から消え去った。

 

 

「なんつーか、不思議な事件だったな。別の世界の俺達に出会うなんて…」

 

 

「うん。パラレルワールドなんて今まで考えたことなんてなかったから」

 

 

カズマとゆんゆんはそう言いながら屋敷へと戻って行くのを俺は離れて見ていた

 

 

(俺がめぐみんに転生しなければ今回の事件は起きていなかったのかも知れない。でも…)

 

 

俺はあの時のめぐみんとの会話を思い返した

 

 

(…そうだよな…俺は俺なんだ。あのめぐみんが言っていた通り俺もめぐみんなんだ…俺は桐生戦兎としてそしてめぐみんとしてこれから生きていこう…)

 

 

そう結論を出した俺は俺の中に巣食っていた悩みのが晴れて行くのを感じながら屋敷へと戻っていった。

 

 

********************

 

 

ここはめぐみん達と死神博士との激闘が起きた跡地、エニグマの残骸の中心で赤い装甲のコブラ男…ブラッドスタークが見下すような声色で呟いていた

 

 

「ふん、この俺が力を貸してやったというのにこのザマか…まぁ、見世物としてはそこそこ楽しめたな。さてと、今度はどんな奴をどう利用してやろうかねぇ…」

 

 

そう言うブラッドスタークの手にはミツルギが持っていた同じライドウォッチが握られていた…そのライドウォッチがとある事件により戦兎達の前に現れるのは…そう遠くはない未来の話だ。




これで外伝の終了です。

次からは原作に戻ります。

感想と評価をお待ちしてます。

 

 




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第三章この素晴らしい世界に祝福を!!2
この理不尽な逮捕に祝福を!!


 

「めぐみん!貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛かっている!自分と共に来てもらおうか!」

 

…はぁ?何言ってんだ?国家転覆罪って、アレだろ?クーデターとかそんな感じの事をやった人に掛けられる罪の事だよな?そんな事をした覚えはないし、やった事と言えばデストロイヤーをぶっ壊したぐらいだぞ?

でも、俺の目の前に居る、二人の騎士を従えた女性は俺を親の仇を見るかのような、敵意に満ちた目で睨みつけているし…一体何が起きているんだ?

 

 

「国家転覆罪ってのは何かの間違いではありませんか?身に覚えは全くないのですが…」

 

俺が戸惑いながらも質問をすると目の前の女性は冷たい眼差しで俺を睨みつけたまま俺の質問に答えた。

 

 

「自分は、王国検察官のセナと言う者だ。国家転覆罪とはその名の通り国家を揺るがすような犯罪をしでかした者が問われる罪、貴様は現在国の最重要指名手配犯とされている。貴様が犯人である事は調査によって裏付けされている。人違いなどと、とぼけても無駄だ」

 

 

……本当に覚えがないのだが、自分でも言うのはアレだが俺の発明品のおかげでアクセルの街のレベルはかなり上がったと思うし、仕事の取引先も沢山出来ている。とても国家転覆罪にましてや最重要指名手配にされる理由なんて見当たらない。

 

 

「おい、どういう事だよ!?めぐみんが国家転覆罪って一体何なんだよ!めぐみんは命をかけて魔王軍からデストロイヤーからアクセルの街を守ったんだぞ!!」

 

 

「そうよ!!めぐみんが国家転覆罪なんて一体何の根拠があってそんな事を言っているのよ!!私の大切な親友を冒涜するのは絶対に許さないんだから!!」

 

 

ゆんゆんとカズマがセナに対しそう声を荒げてそう言った

 

 

「カズマさんとゆんゆんの言う通りよ。めぐみんはそんな大それた事をやらかすような人じゃないわ。確かに色々と怖いところはあるけれど基本的には私にもセシリーにも優しくしてくれるわよ?」

 

 

「私もみんなと同意見だ。めぐみんの実績は勿論、このアクセルの町で起こした功績や戦績などを見れば彼女がそんな事をしない人物だと思う分かるはずだ」

 

 

アクアもダクネスもカズマ達に同意するように声を上げる

 

 

「そういう訳なのでめぐみんを逮捕するつもりならばもう少しちゃんとした証拠や容疑を持ってからにしてくれませんかね?」

 

カズマ達はそう言うと俺を守るかの様に前へと躍り出る。しかしセナはたじろぎもせずに依然として冷静な体勢なまま口を開いた。

 

 

「分かりました。そこまで言うならばちゃんとした根拠と容疑についての説明をしましょう。つい先日、この地の領主アルダープ家の屋敷が跡形もなく吹き飛びました。爆発の原因はコロナタイトです。調査の結果そのコロナタイトは機動要塞デストロイヤーの動力源であることが判明しました。そしてそのコロナタイトをテレポートをさせるような命じたのはめぐみんだという我々はわかっています!これがめぐみんを国家転覆犯と判断する容疑と根拠!何か申し開きがあるならば聞こうではないが!」

 

 

セナの言った一言でカズマ達は静まりかえってしまった。

 

カズマだけではない。その場に居るカズマ達以外の全員が俯いて黙り込んでしまっている。

 

 

 

ランダムテレポートを使ったのは事実だがまさかそんなところにテレポートするとは…

確かにその話が本当ならば疑われるのは一応納得はできる。納得は出来るが何か釈然としなかった

 

 

「それで?屋敷にいた人達はどうなったんですか?無事だったんですか?それとも…」

 

 

「いや、不幸中の幸いか死者は勿論怪我人も出てはいない。その時アルターブ様は地下へと居た為に難を逃れていたのだ」

 

 

そうか、死者と怪我人は出てはいないのか、その事実にホッとしていると

 

 

「屋敷が吹き飛んだ事に対しては災難だったとしか言えないが、でも、めぐみんがテレポートを命じなかったらこのアクセルの街は吹き飛んで死者も沢山出ていたかもしれないんだぞ?」

 

 

「そもそもめぐみんが使わせたのはランダムテレポートなのよ?故意的に領主の館に送るなんて不可能よ。普通に考えたら不幸な事故だと分からないの?」

 

 

カズマとゆんゆんの言う通り俺が釈然としていないのはその部分だ。ランダムテレポートはその名の通りテレポート先がランダムになっている魔法の事だ、そんな魔法で領主の館を狙ってコロナタイトをテレポートさせるのはほぼ不可能と言っても良いし、何よりも調査をしているならばこちら側の事情もわかっている筈。それなのにこうも一方的な話になるとは…

 

 

「アレクセイ・ バーネス・アルダープか…奴の権力はここまで巣食っているのか?」

 

 

しかし、それだけだとは思えない。こんな横暴に近い行いが許される筈がない、きっと何かがある筈だ、それこそ好きな風に物事を捻じ曲げる事が出来る奴が…この世界には悪魔やら天使やら女神やらが存在しているんだ、そんな奴が居たとしても不思議ではない。

そして俺の沈黙を肯定と取ったのかセナが周りに目配せをするとセナの左右にいた騎士が俺の両側に移動し両腕を掴んで逃げられないようにする

 

 

「「めぐみん!!!」」

 

 

ゆんゆんとカズマ俺を助ける為に騎士に走り寄ろうとすると

 

 

「ちなみに国家転覆罪は犯行を行なった主犯以外の者にも適用される場合がある。この女と一緒に牢屋に入りたいのなら止めはしないが、発言は気をつけた方がいいぞ」

 

 

セナのその言葉にゆんゆんとカズマは固まるがそれはほんの一瞬の事で再び動き出そうするところに

 

 

「ふたりとも落ち着いて下さい。私なんかの為にふたりが捕まる必要なんか無いですよ、直ぐに戻ってくるので安心していて下さい」

 

 

「そんな事をする必要はないぞ、めぐみん」

 

 

俺がふたりを制止する為にそう言っているとダクネスがセナとカズマ達の間に立った

まさか、ダクネスの奴…俺を庇うつもりなのか?そんな事をしたら俺は二度と彼女を変態などと言えないかもしれないな。

 

 

「主犯はめぐみんではなくこの私だ。私がやれと指示した。だからぜひとも、めぐみんの代わりに私を牢屋に連れて行け、そこで監獄プレイを……ではなく。私に激しい、身悶えるような拷問……では無くて尋問をするが良い、たとえどんな尋問が来ようとも私は耐えてみせるぞ」

 

 

どうしてそこで性癖を押えられないんだよ!?途中までかっこよかったのに台無しじゃないか、見ろ!周りにいる騎士の連中も困惑してるだろ!!

 

 

 

「あなた、デストロイヤー戦の時には何の役に立たなかったそうじゃないですか」

 

 

「!?」

 

 

や、やめてあげて!!確かにダクネスの奴身体は硬いが心の方は以外と繊細なんだよ。ついさっきそれで弄った時に顔を真っ赤して震えて動けなくなったからそういった事には滅法弱いんだよ!

と、言っても役に立たなかったのは事実である為否定は出来ないが……

 

 

「下らん邪魔が入ったが大人しく署まで来てもらうか。一応言っておくが無駄な抵抗するなよ?」

 

 

セナのその言葉を最後に俺は騎士達より連行される。取り敢えず事態を少しでも打開するチャンスを掴むの為、俺は大人しく連行されたのことにした。

 

 

********************

 

 

デストロイヤー討伐の指揮した上にアクセルの街を救った最大の功労者と言ってもいいめぐみんが捕まるなんて…一体どうなってんだよ!セナと王国の騎士達にめぐみんが連れ去られてから1時間が過ぎた。ギルドの冒険者達もセナが居なくなったからか怒り心頭な様子を見せている

 

 

「ふざけんなよ!何でめぐみんが捕まらないとならないんだ!!」

 

 

「めぐみんちゃんは何時も色々な発明品で俺達冒険者を助けてくれてたんだぞ!!あいつらはその辺りをちゃんと調べたのかよ!!」

 

 

「そうよ!こんなの横暴よ!!めぐみんちゃんが可愛そうよ!!」

 

 

その様子を見た俺は内心嬉しくなった。ギルドの冒険者達はめぐみんを見捨てた訳ではない事が分かったからだ。確かによくよく考えればセナと呼ばれた奴のやり方は余りにも横暴で周りの反感を買わない方が可笑しい。

そう考えていると人混みの中からリーンが現れる。現れたリーンの姿は服装は乱れており疲れた何やら表情をみせていた。

 

 

「リーンじゃないか、何だが疲れてるみたいだしダストはいったいどうしたんだよ?」

 

 

「ダストの奴は騎士達に逮捕されたわ」

 

 

「ダストが逮捕?一体何をしたんだよ?」

 

 

俺の言葉を聞いたリーンはダストが逮捕された理由を俺に説明してくる

 

 

「カズマ達が来る前に私達も抗議したの、めぐみんが逮捕されるなんて可笑しい!って、ダストなんて騎士の人達に掴みかかったのよ。おかげでダストは逮捕されちゃうしその時に騎士の人達に殴られた冒険者もいたのその所為でみんなすっかり萎縮しちゃって…」

 

 

リーンは申し訳なそうな表情で俺にそう言って来る

 

 

「いや、リーンが謝る必要はないさ。悪いのはあのセナって奴らの方だ。それにしてもこの街の領主って一体どんな奴なんだ?幾ら屋敷を吹き飛ばされたからってデストロイヤー撃破の功労者を逮捕なんてどうかしてるぞ?」

 

 

俺の言葉にリーンは難しい表情になると俺にその領主について説明してくれる

 

 

 

「その屋敷を吹き飛ばされた領主は昔から黒い噂が耐えないのよ、過去にも何度か裁判になってるんだけど全て無罪…だから領主は司法に強いつながりが持っているって言われてるの」

 

 

だとしたら、めぐみんが幾ら無実を訴えたとしてもみ消され無理矢理有罪にされる可能性もある。

 

最悪の場合、脱獄などの方法を考えておく必要があるのかもしれないな

 

 

「それに裁判は被告人の親族か友人が弁護人を務める事になってるの、…あまり大きな声では言えないけどめぐみんの弁護を出来るのはカズマとゆんゆん以外にいないからもしあのままふたりが捕まっていたら状況はより最悪な物になっていたかもね」

 

 

リーンの言う通りもしあのまま無茶をして俺達が捕まってしまっていたら…めぐみんを弁護する人が居なくなっていたのか…そう考えるとゾッとするな。何故ならば俺とゆんゆん以外の仲間は役には立たないだからだ。特にアクアなんかにやらせたら最後、無罪ではなく有罪にしかならない未来しか見えない。

その後、リーンを始めとする冒険者達は何とかしてめぐみんを助ける為に職員と作戦会議を開き始め、それを見た俺はめぐみんが普段から作り上げてきた物の大きさを改めて感じるとめぐみんを救う為の策を周りの冒険者達と一緒に練り始めた。

 

 

 

 

 





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この不当な取り調べに祝福を!!

ギルドから連れ出された俺はそのまま警察署らしき場所へと連行されると牢屋の中へと放り込まれた

 

「取り調べは明日行う。今日はここでゆっくり過ごすがいい」

 

「分かりました」

 

 

俺はセナに促されるままに牢屋の中に入っていく。 その気になれば逃げ出す事など簡単なのだがそんな事をしたら自分から罪を認めるようなものだ、そんな真似は出来ればやりたくはない。

……最後の手段として一応考えてはおくが…それに俺の予想が正しければもしかしたらアルターブには『あの力』が後ろ盾にあるのかもしれない。

 

 

それにしてもこの世界の裁判は一体どんな形で行われるんだ?俺やカズマ達が居た世界にように弁護士や検事などはいるのだろうか?…あまり考えたくはないが裁判ってのは形だけであの領主に冤罪をかけられたら最後そのまま死刑判決が下ったりするんだろうか?

俺はそう考えながら牢屋にある布団(床にボロいシートを敷いただけのもの)に座っていると先に牢屋に放り込まれていた人物が居たのか、誰かの声が聞こえた。

 

「やっぱりお前も捕まったのかよ、めぐみん。この国のお偉いさん方はマジて腐ってやがるな」

 

 

目の前には俺よりも先に捕まっていたらしいダストがやはりという表情を見せながらこちらを覗いていた。

 

 

「ダストさん、何故貴方が捕まっているんですか?」

 

 

…ダストの奴、一体何やったんだ?ていうか幾ら容疑者とはいえ男女同じ牢屋に入れるか?

 

 

「実はなお前達がギルドにやってくる前に色々とやらかしてな…お前の方は国家転覆を測った容疑だろ?」

 

 

「知ってるならば話は早いです。何でもコロナタイトの転送先が領主の屋敷らしくてその所為でこのざまですよ」

 

そこまで言うとダストは俺を慰める様に

 

「気にすんなよめぐみん。お前がそんな事やる奴だと誰も思ってねぇよ、それは俺が保証する、悪いのはお前を犯罪者扱いするお偉いさん達さ」

 

「そう言ってくれると気が楽になりますよ…まぁ、領主が怪我をひとつもしてないのはいささかムカつきますがね」

 

 

俺の言葉を聞いたダストは大きな声で笑いだした

 

 

「ああ、本当に残念だ!どうせならば怪我のひとつぐらいしてくれた方が良かったのにな!俺だけじゃなくアクセルの街に住んでいる連中は殆どそう思ってるだろうよ、そこで人の話を盗み聞きしている兵士達もな」

 

 

そんなダストの話を聞いた兵士はビクッと肩を震わせていた。そして俺はダストの言葉を聞いている内に少しだけ気が晴れている事に気付くとダストの方を静かに見る

ずっと前から思っていたことだがダストは何かを隠している。普段はダメ人間ぷりを周りに見せつけている為に誰も気づいてはないが…それが一体何なのか、何故其れを隠しているのがは分からないがいつかは教えてくれる時はくるだろうか?

俺はほんの少しだけダストと一緒の牢になった事に感謝するとダストと下らない世間話をしながら1日を過ごした。

 

 

********************

 

 

そして翌日、俺は朝一番に牢から出されると取調室へと連行された。部屋の中には俺とセナ、それと護衛らしき騎士ふたりだけであった。

俺が部屋の中を見渡していると騎士に急かされたので部屋の中央にある机の前に座るとセナが俺の正面の席に腰掛けた。

 

 

「今から取り調べを行う。貴様の言い分次裁判における貴様の立場が不利になる可能性もある。よく考えて発言するように」

 

セナはそう言うと小さなベルを取り出して俺の目の前に置く

 

 

「コイツは嘘を見抜く魔道具だ。このベルの前では嘘は通用しないと思うが良い」

 

 

…成る程、嘘発見器みたいなものか。結構面倒なものを用意してるな。そう思った俺は一応は性能を確かめる為に簡単な嘘を口にする

 

「……私は男です」

 

 

チリーン。

 

俺の言葉にベルが鳴る。……成る程

 

 

「流石は天才科学者と呼ばれるだけはあるな、理解が早くて助かる」

 

 

セナが感心したようにそれ告げてくる。確かにこの魔道具の前ではない下手な嘘は通用はしないだろう。しかし其れを利用すれば逆に俺は嘘をついていないと証明する事が出来る。

俺が上手くセナを味方につけようと考えているとセナが俺に対する尋問を始めた。

 

「名前はめぐみん…紅魔族の出身で…年齢は14歳、アクセルの街では色々と有益な発明品を開発し其れを利用した商売も行っていると…そして職業は仮面ライダー…では、貴様が持っている技術とそして仮面ライダーとは一体なんなのか言ってもらおうか」

 

 

「出身地は紅魔の里です。技術に関してはは学生の時に魔力を有益に利用しようとした時に見たヒーローの姿を見て思いつきました」

 

俺の言葉にベルは鳴らない。

 

………やはりな。

 

「紅魔の里か…成る程、では次に貴様が何処でその仮面ライダーをみたのかを述べろ」

 

「はい。仮面ライダーを見たのは夢の中です。私は2年前に事故で頭を打って意識不明になった時にそんな夢を見たんです…例え周囲の人から称賛されなかったとしても見返りがなかったとしても戦い続ける彼らの姿に感動したんです。…今、思えばアレは夢ではなくこことは違う異世界の記憶だったのかも知れません」

 

 

…またしてもベルは鳴らなかった。

 

 

当たり前だ。俺は嘘をひとつもついてはいない。セナに話した内容も俺が旧世界で体験した事なのだから…その為ベルが鳴る事もない。

そしてこの魔道具は『嘘』をついた人間に反応する。それはつまりついた本人が『嘘』だと思わなければ反応しないのだ。

 

それが分かれば幾らでも手の打ちようがある、嘘ってのは真実にほんの1%含ませるだけで信憑性が増すのだ。

後はセナの質問に対する機転と素早い判断力。それさえ気を付ければこの取り調べを切り抜ける事が出来るだろう

 

 

「それでは領主殿に怨みなどはなかったか?調査によると貴女が所属しているパーティーは領主殿に怨みを抱いていたそうじゃないか」

 

 

「そりゃ恨みを抱くのに決まっていますよ。ベルディアを倒した時は報酬金どころか借金を背負わされたのですよ?しかも今回は命をかけて街を助けたのに国家反逆罪の容疑をかけられて逮捕。怨みを抱かれて当然だとおもいませんか?」

 

俺の話を聞いたセナはオレに対して同情の視線を送り始める。そりゃあ、年端もいかない幼い少女がこんな不当な目に遭っているのだ。同情を覚えるのは当然だろう。

 

 

「私の方も聞きたいのですが貴女達は本当に領主の言い分をそのまま信じたのですか?幾らなんでも横暴というか領主としての品性を疑いますよ?セナさん達はなぜあの領主に従っているんです?誰も彼の領主としての適正に疑問の声を上げなかったのですか?」

 

 

俺の言葉にセナが図星をつかれた様な表情になる。どうやらあの領主、人望はゼロらしい、そんな奴がどうして領主を務められているのが益々不思議だ。

 

「……めぐみんさん。あまり過ぎた口を聞けない方が良いですよ?確かに私も領主殿には良い印象は持ってはいませんが取り調べでその様な反抗的な態度を取っていると貴女の裁判での立場が苦しくなります」

 

俺の言葉にセナはそう苦言を呈する。ま、セナの立場上そう言うしかないよな。しかしだからといって此処で引くつもりもない。

 

「手っ取り早く終わらせたければいっその事『お前は意図して領主の屋敷に向かってコロナタイトを吹き飛ばしたか』って聞いてくれませんか?そうすれば私が本当に意図して屋敷に向かってコロナタイトをテレポートさせたかどうかは分かる筈です」

 

セナは俺の言葉を聞くと直ぐにコロナタイトを領主の屋敷にテレポートさせたのは意図した物なのかを聞いてくる、勿論聞いたところでベルが鳴る筈がない。

あれはコロナタイトのテレポート先が偶々領主の屋敷だっただけのいわば事故のような物だ。寧ろ何故有事の時に領主は屋敷にいなかったのか、どうして地下室にいたのか其方の方を追求すべきだろう。

 

 

それを聞いたセナは俺の話に納得は出来たのか

 

「……分かりました貴女の言葉には嘘は無いようですね。今まで申し訳ありませんでした」

 

先程とは正反対である丁寧な口調になったセナが俺に謝罪してくる。この人はあくまで職務を遂行しただけだろう、容疑が晴れたとはいえ責め立てたりする気は起きない。

調子に乗って好き勝手やった挙句に墓穴を掘ったらどうしようもない。…何故だろうか、そのビジョンがありありと脳裏に浮かんだぞ?

 

 

「セナさんも色々と大変ですよね?仕事上仕方がないとはいえ、やりたくもない尋問しなくてはいけないのですから…折角ですから何でも聞いて下ってかまいませんよ?どの道裁判は行われるのですから少しでも私の行動には何の問題はなかったと証明して置かないといけませんからね」

 

 

「そうなると、このまま取調室で取り調べを続けることになってしまいが良いのですか?」

 

 

「別に構わないです。このまま牢に戻っても暇なだけですから」

 

 

「調査へのご協力、感謝します」

 

 

ここで不利になりそうな情報や証拠は修正しておいた方が良い。なんせ、公平に裁判が行われるがどうかさえも怪しい。

裁判で聞かれそうな疑惑や情報を事前に提供してくれるならば何の問題もない

 

 

「それではなく後ひとつだけめぐみんさんに質問したい事があるのですが、宜しいですか?」

 

 

「何でも聞いて下さいと言ったのはこちらなので構いませんよ?」

 

 

しかし一体何を聞かれるんだ?自分で言うのはアレだが疚しい事はしたつもりはないが

 

 

「実は領主殿の方から貴女は魔王軍幹部と繋がりがありアクセルにはスパイの役目を持ってやって来たと聞いていたので…」

 

 

……そうか、そういう手で来るんだな。アレクセイ・ バーネス・アルダープ。

 

 

 

「知らず知らずのうちに魔王軍に与する人と仲良くなっていたってことはあるかもしれませんけど、少なくとも、魔王軍だと知っていながらその人と知り合ったってことは一度もありませんし、人間を裏切ろうと思ったこともないですよ」

 

 

当然この質問にもベルは反応しない。ウィズと初めて会った時はまだウィズが魔王軍幹部である事は知らなかったのだからならないのは当たり前である。

 

「セナさんも本当に大変ですね。どんなムカつく相手でもの裁判をやる以上はそんな奴の側に立たないといけないのですから」

 

「これも私の仕事ですから慣れてはいますよ、こちらこそ数多くの実績を立てている貴女に容疑に掛けた上に裁判を受ける事になるなんて本当に申し訳ありません」

 

俺はセナの言葉に同情を感じていると外に続く扉から騒ぐ声が聞こえてくると扉が外側から開かれた

 

 

「お久しぶりですね…めぐみんさん」

 

 

其処にはふたりの側近を連れたベルゼルグ王国の第一王女…アイリス王女がそこに居た

 

 

「ア、ア、ア、アイリス様!?何故こんなところに!?」

 

 

「めぐみんさん、貴女と取引しに参りました」

 

 

「取引?…妙にタイミングが良すぎじゃないか?まるで…最初からあんたに仕組まれていたようだ」

 

 

「あ、貴女!アイリス様になんて口を!!」

 

 

セナが顔を真っ青にして騒ぎ立てるが俺もアイリスも其れをスルーする

 

 

「貴女はこのまま行けば死刑は間違いでしょう…しかし、貴女がライダーシステムとその技術を全て王家に提供してくれるのならば私の一存で刑を取り消す事ができます。これは貴女にとっても悪い話ではない筈です」

 

 

「成る程、全ては貴女の思惑通りって訳か。死刑を見逃す代わりに技術の提供を求める…上手いやり方だな」

 

 

「何の事でしょうか?」

 

 

そんな白々しいアイリスの言葉に俺は

 

 

「もし、断ったら?」

 

 

そう言うとアイリスは小馬鹿にするような笑みを見せると

 

 

「私がその気になれば貴女のお仲間を共犯者として捕らえる事もアクセルの街にあるギルドも潰すのは簡単なのですよ?」

 

 

「それは脅しと取って構わないんだな、アイリス様?」

 

 

「お好きにどうぞ、それでは良い答えをご期待してますよ?めぐみんさん」

 

 

そう言うとアイリスは側近を連れて取調室から出て行くと緊張感から開放されたのかセナが力が抜けたように椅子に座り込んだ

 

 

「まさか、こんな場所にアイリス様がいらっしゃるとは…めぐみんさん貴女は一体…」

 

 

「私は何処にでもいる只の天才物理学者ですよ?」

 

 

「いや、天才物理学者というのは何処にでも居ないと思うのですが?」

 

 

そんなセナの突っ込みを無視すると俺は牢屋へと戻り明日の裁判に備えて眠りについた。




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この不当な裁判に祝福を!!

そして裁判当日、この日の判決によって俺の運命が決まるといっても良い。そしてそんな俺の命を握っていると言っても過言ではない裁判にて俺を弁護するのは…

 

 

「弁護なら任せて置いてくれ、めぐみんを死刑にはならないように守り切って見せるぜ」

 

そう言っているのは今回、俺の弁護士を務めてくれるのはパーティーメンバーであるカズマだ

 

「頼みましたよ、絶対に無罪判決を勝ち取ってください。私はこんなところで終わる訳にはいかないですから」

 

 

「ああ、こんなありもしない容疑なんて成立する筈がない。絶対に無罪判決を勝ち取ってやるぜ」

 

 

「静粛に!これより国家転覆罪に問われている被告人めぐみんの裁判を始める!告発人はアレクセイ・バーネス・アルダープ!」

 

 

裁判長の呼びかけに、太った中年のおっさんが立ち上がる。

 

…成る程あれがアレクセイ・バーネス・アルダープの御尊顔か、禿げていて、大柄で、毛深くて、脂ぎってて……。

 

つうか、カズマ以外の俺達4人を嘗め回すような目で見てる気がするな、女になっている今だから分かるが嫌悪感がマジで凄い。隣にいるゆんゆんなんて恐怖感からか真っ青な顔で涙目になっているぐらいだ。

男であるカズマでさえアルターブに対して嫌悪感丸出しの表情で睨みつけている

 

「……カズマ、あの領主ダクネスを凄い目で見つめてませんか?最早執念と言ってもいいかも知れません」

 

「俺もそう思う、かなりヤバいだろ。あれ」

 

冗談抜きでダクネスへの視線がすごい。まるで獲物を前にした蛇みたいな、本当に身の危険を覚えるレベルだ。

 

 

 

「では検察官は前に。この魔道具があるということを肝に銘じて、起訴状を読み上げるように」

 

 

 

裁判長の指の先には、例の嘘発見器の魔道具が設置されていた。

それを俺達が確認すると裁判長は持っていた木槌が振り下ろした後セナが立ち上がる。

 

 

「それでは読ませていただきます。被告人は機動要塞デストロイヤーを他の冒険者と共に討伐する際、爆発寸前であったコロナタイトを近くにいた冒険者に対し、それをランダムテレポートにより転送させろという指示しました。結果、コロナタイトは領主殿の館へとテレポートされ爆発、アルダープ殿はそれによって危うく命を落とすところでした。領主という地位の人間の命を脅かしたことは国家を揺るがしかねない大事件です。よって、検察官の立場として、彼女に国家転覆罪の適用を求めます」

 

 

完全に無表情のまま、セナが読み終える。

 

ベルがならないのは紙に書いてあることを読んでいるだけだから、当たり前だ。しかし昨日の取り調べによりセナは俺がそのような罪に処されるべきではないって事がわかっていると思ってたんだか?

 

 

そしてそれを聞き届けた裁判長が。

 

 

「続いて被告人と弁護人に発言を許可する。では、陳述を」

 

「述べさせていただきます」

 

裁判長の言葉にカズマが勢いよく立ち上がると法廷をゆっくりと歩き回りながら陳謝を述べ始めた

 

 

「めぐみん…被告人はコロナタイトの処理を行っただけです。元々の手段としては、『テレポート』でコロナタイトを誰も居ない安全な場所へと転送するつもりだったのですが、それを行える人間が魔力不足でそれを行使することができなかったために、やむを得ず、ランダムテレポートでコロナタイトを転送する方法に踏み切りました。其処には悪意も何もなく周りの安全を守るためだったのです。よってこれは只の事故だと弁護側は主張します」

 

 

カズマはそうはっきりと主張した。

…カズマの奴中々にカッコイイじゃないか、まるで本物の弁護士のようだ。そしてカズマはそこでは留まらず、そのまま領主の近くまで歩み寄ると

 

「そもそも、貴方は領地の一大事の時に一体何処に居たんですか?本来ならば領主である貴方が先導して立ち向かうべき案件だったはずです。それなのに貴方は屋敷の地下室に居たらしいじゃないですか?…まさかとは思いますが貴方は守るべき民を領地を放っておいて、自分だけ安全な場所に隠れていた訳ではないですよね?そう言えば貴方は前に魔王幹部が襲来した時のアクセルの修理費も負担しなかったそうじゃないですか、領主でありながら果たすべき責任も果たさずにこの街を救った功労者の一人というべきめぐみんに国家転覆の容疑をかけたのは一体どういう思惑があったのか?…どうか、お答えください」

 

 

この裁判の…俺にかけられた容疑の根幹となる事についての質問を始める。

 

確かにこれに関しては皆が気になっていたことだろう。

 

領主であるアイツが自分の領地の一大事に何故地下室に居たのか、その辺りの事実を明らかになれば逆に奴の資質を問う事が出来る上にもしも其処に嘘が混じっていれば俺の無実を証明する事にもなる。

これはクリティカルな質問だと思いきや、アルダープはいやらしそうな表情を浮かべながら、口を開く。

 

「ならばこの場で改めて主張してやろう。儂があの時地下室に居たのは貴様ら程度の民には理解が出来ない理由があったのだ。もしもあの時に地上にいたら儂の命はなかっただろうな」

 

 

……ベルは鳴らない。

 

 

それはつまり、今のアルダープの言葉は真実であるということだ。そんなバカなどう考えてもそんな事情があったなんて思えない。なのに、何故ベルが鳴らないんだ?だが、カズマは狼狽えるどころかむしろ何かに対して納得した表情になっていた。

 

まさか…カズマの奴これを予想していたのか?

 

 

「では、検察官、被告人が国家転覆罪が適用されるべきだという証拠の提出をお願いします」

 

 

「分かりました。それでは証人は前へ」

 

 

セナの言葉に現れたのはミツルギだった。

 

 

「ミツルギさん。あなたは以前被告人から魔剣を奪われそれを返してほしければ全財産をよこせ、と脅されたそうじゃないですか」

 

 

何故そんな噂が?俺はミツルギから魔剣を奪い取った覚えは無いぞ?まさか俺を確実に死刑にする為にありもしない罪をでっち上げたのか?セナさんも俺がそんな事をする人間だとは思っていない筈だ。

 

 

「それでミツルギさんはどうですか? 被告人に対して思うところは?」

 

 

そんなセナの問い掛けにミツルギは凛とした口調で

 

 

「魔剣を奪われたというのが何処から生まれたのかは知りませんがそんな事は一切ありません!彼女は僕の恩人であり、そして大切な友人です。彼女のおかげで僕は自分の至らなさに気付く事が出来たのです。被告人には怨みどころか感謝しかありません。なのでそのような下らない噂で恩人を愚弄しないで頂きたい」

 

 

そうか、セナさんの狙いはこれだったのか!

 

俺の評判を落とすための証人を召喚したと見せかけて逆にそれを利用し俺に対する好印象を裁判長に与えるのが狙いだったのか!…しかし何故だろう、ミツルギの話を聞いたセナさんと裁判長は何やら微笑ましいものを見る目になっているぞ?…なんだか色々な誤解を生んだ気がするが法廷の雰囲気は完全にこちらに向いている。たたみ込むなら今しかない!

 

 

「私は魔王軍の味方でも、テロリストでもない!領主の館を吹き飛ばすつもりも領主も殺すつもりもありませんでした!コロナタイトは街を守るために仕方なしにやったことです!」

 

…俺の発した言葉に当然ベルは鳴らない。

 

それを見たアルダープは言葉に詰まらせ、そしてセナはほっとした様子で肩の力を抜いていた。

 

「もういいでしょう。被告人が意図して原告の館にコロナタイトを送り付けたとする根拠があまりにも薄すぎる。被告人の咄嗟の判断のおかげで物的被害も怪我を負うこともなく済んだのです。よって、被告人めぐみん。あなたへの嫌疑は不十分と見なし……」

 

裁判長がそう判決を下そうとした時。

 

「おい、その女は魔王軍の関係者であり手先だ。今すぐに死刑にしろ」

 

 

と、領主がまるで裁判長に命じるかのように口にする。領主の言葉を聞いたセナと裁判長は何故か口ごもったまま黙ると

 

 

「…そうですね。被告人には死刑が妥当です。検察は死刑をもとめます!」

 

 

いきなりセナさんも裁判長も先程とは正反対の事を言い出す…そう、まるで何かに操られるているように

 

 

「えー、主文を後とし、まず判決理由から述べます。被告人両名は反社会的行為を度々――」

 

 

何故だ、何故、こんな無茶がまかり通る?やはり…居るのか?奴の背後に、真実を自由にねじ曲げる事が出来てしまう存在が

 

 

「では、主文、被告人を死刑と」

 

 

『残念だが…そうはさせない』

 

 

その瞬間、何処から加工された声が聞こえて来るとその声の主が裁判所の中心に降り立った

 

 

「お前は…ナイトローグ!!!」

 

 

『領主様よぉ、この戦…少女には俺の計画には欠かせない存在なんだ。ここで死刑にされるのは困るんだ』

 

 

「誰ですか!貴方は!今は被告人の裁判中でー」

 

 

セナがそう言ってナイトローグに近づいていく

 

 

「駄目だ!!其奴に近づくな!!」

 

 

「えっ?」

 

 

俺の言葉に驚いた表情を見せるがそれよりもナイトローグの動きが早かった。銃型のデバイス…トランスチームガンと赤いバブルがついている小型の剣型のデバイス…スチームブレードと合体させるとセナに向かって引き金を引く、すると謎の黒煙がセナに纏わり付きセナの姿はバーンスマッシュへと変化した。

 

 

「ひ、ヒィィィ!!!」

 

 

目の前で怪物に変わったセナを見てアルターブはみっともなく腰を抜かして驚くと地面を這うようにその場から逃げ出した。…裁判長や俺達をおいて。

 

 

「あの野郎…俺達をおいて逃げやがった!」

 

 

カズマが恨めしそうに言っているが今はそれどころじゃない、早くセナを何とかしなければ!!

 

 

「カズマ!あんな奴の事はどうでもいい!!今はセナを何とかするのが先だ!!」

 

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

 

「うん!早くあの検察官さんを助けよう!!」

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

「ミツルギ。お前にも協力して貰うぜ!!」

 

 

「わかっている!」

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

『ゲイツ』

 

 

「「「変身!!!」」

 

 

『シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!』

 

 

『イエイ! イエーイ!』

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

『ライダータイム!ゲイツ!!』

 

 

「ナイトローグは俺とゆんゆんが引き受けるからスマッシュの方を頼む!!」

 

 

「任せてくれ!!」

 

 

俺達は二手に分かれて敵を個別に対処する事にした

 

 

********************

 

 

 

俺はカイゾクハッシャーを構えると遠距離から狙撃するがナイトローグは素早い動きで全ての攻撃を避けた後俺の背後まで接近するとトランスチームガンを背中に押し付け

 

 

『スチームブレイク』

 

 

そして背中に押し付けたトランスチームガンにフルボトルをセットすると特殊な弾丸を発射しビルドに攻撃を加える

 

 

「よくもめぐみんを!!『ビートクローザー』!!」

 

 

ゆんゆんはビートクローザーを召喚するとナイトローグのスチームブレードとの鍔迫り合いが起きる。一見すると互角に見えるが力の方はナイトローグの方が上のようでそのまま力負けをすると地面に転がってしまった。

 

 

『落第点だな、ビルドと違って貴様はつい最近仮面ライダーになったばかり。経験が圧倒的に足りない』

 

 

ナイトローグは見下す様にゆんゆんにそう言っているとめぐみんがカイゾクハッシャーでナイトローグに切りかかるがナイトローグの装甲には傷一つ付ける事が出来ない

 

 

『無駄だ。今のお前では俺に傷ひとつ付ける事など出来ない』

 

 

「確かに俺はまだ全盛期だった頃の力は取り戻せてはいない…だが、お前達に好き勝手にさせるほど落ちぶれてはいない!!ウォォォォ!!」

 

 

その時、ビルドの複眼が光ったかと思うとカイゾクハッシャーの強烈な一閃がナイトローグの装甲を削る。そしてナイトローグは煙が上がっている装甲を手で撫でながら驚きの表情を浮かべていた

 

 

『これは…力が…いや、ビルドのハザードレベルが上がった?』

 

 

そして俺はラビットタンクスパーキングフルボトルをベルトから外すと先日の事件の時に手に入れたふたつのフルボトルをベルトに装填する

 

 

『忍者!コミック!ベストマッチ!』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

『忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!』

 

 

忍者とコミックふたつの能力を併せ持つ紫と黄色を基調とする新たなベストマッチフォーム『ニンニンコミックフォーム』へとビルドアップした。

 

 

「めぐみんがまた新しい姿に?でも、私だって負けていられない!!」

 

 

『スペシャルチューン!!』

 

 

ゆんゆんはビートクローザーにドラゴンフルボトルを装填してからグリップエンドを1回引き、必殺技であるミリオンスラッシュを起動させると刀身に青いオーラを纏せると斬撃を飛ばしナイトローグに攻撃を加えた後めぐみんがナイトローグに追撃を加える。

めぐみんはニンニンコミックフォーム専用武器4コマ忍法刀を召喚すると忍法刀にあるトリガーを1回引く。すると分身の術が発動しビルドの姿が4人に増える。続けてトリガーを2回引く事で火遁の術を発動させ2体の分身体が持っている4コマ忍法刀の刀身に火炎を纏わせる。そこから更にトリガーを3回引いて風遁の術を発動させると残りの2体の分身体が持っている4コマ忍法刀の刀身に竜巻を纏わせた後風と炎の合体攻撃をナイトローグに食らわせた

 

 

『ガァァァァ!!』

 

 

漸くナイトローグが苦悶の声を上げると吹き飛び地面に転がるとダメ押しとばかりにボルティクレバーを回転させ

 

 

『ボルティクフィニッシュ』

 

 

その音声と共にめぐみんは4コマ忍法刀を地面に突き刺しそこから煙幕を発生させ、その煙幕にナイトローグが気を取られている間に背後へと回り込むと紫色の巨大手裏剣を投げつけてダメージを与え後、再び4人の分身を出現せると火炎を纏った斬撃を四方から繰り出す。

ナイトローグはスチームブレードで迎え撃とうするが流石に四方からの攻撃をしのぎ切る事は出来ずにまともに攻撃を受け、その時に持っていたスチームブレードも破壊する

 

 

「良し!このまま一気に決めるぞ!!」

 

 

そう言うとめぐみんはニンニンコミックから再びラビットタンクスパーキングへとビルドアップするとボルティクレバーを回し2度目のボルティクフィニッシュを発動させる

 

 

「私も行くわ!!」

 

 

ゆんゆんももう一度ドラゴンフルボトルを装填するとグリップエンドを3回引き、ビートクローザーの刀身にエネルギーを集中させる

 

 

「タァァァァ!!!」

 

 

ラビットタンクスパーキングのボルティクフィニッシュ、そしてすれ違い様にクローズのメガスラッシュがナイトローグに決まるとローグは苦悶の声をあげて地面に転がる。ナイトローグは何とか立ち上がるが装甲からは火花が立っておりダメージが大きい事がわかった

 

 

『グ……今回は負けを認めてやる…だが、諦めんぞ、必ず…必ず。お前達、仮面ライダーを…ライダーシステムをこの手に…」

 

 

「ナイトローグ…あんたの正体はやはり」

 

 

ビルドが最後の言葉を言う前に背後から巨大な翼を出現させるとふらつきながら飛行しその場から離脱した

 

 

********************

 

 

バーンスマッシュは腕の音叉のような形をしたバーナー『スマッシュバーナー』から高温な火球を打ち出してカズマとミツルギへと攻撃をするがミツルギのジカンザックス・おのもーどで其れを切り裂いていく

 

 

「サトウカズマ!君と僕の連携攻撃で奴を倒すぞ!!」

 

 

「お前に言われなくても分かってるての!!」

 

 

俺はそう言うと初級魔法クリエイト・アースとウインドブレスを組み合わせ、バーンスマッシュの目潰し攻撃を行った

 

 

「…君の初級魔法の使いかたには感心するよ、サトウカズマ」

 

 

ミツルギは感心した様子でそう言う

 

 

「俺はお前と違って魔剣なんか持ってねぇからな、手数の多さで戦うしかねぇんだよ。例えライダーの力を手に入れたとしてもな」

 

 

「成る程ね…君の強さの理由がわかった気がするよ」

 

 

そう言いながらミツルギはジカンザックスをゆみもーどにすると正確無比な狙撃でバーンスマッシュに攻撃を行う

 

 

「そう言うお前も色々なスキルを持ってんだろ?」

 

 

「魔剣頼りの奴とは思われたくはないからね、習得出来るスキルは全て習得しているんだ」

 

 

「流石はイケメン…強くなる為の努力は欠かさないってか…『バインド』!!」

 

 

俺はバインドでバーンスマッシュの動きを止めるとミツルギと俺で一気にトドメに入る

 

 

「ミツルギ。一気に決めるぞ!!」

 

 

「あああ!!」

 

 

『タイムバースト』

 

 

『スクラップフィニッシュ』

 

 

「「ウォォォォ!!!」」

 

 

俺とミツルギのダブルライダーキックを受けたバーンスマッシュは火花を散らしながら地面を転がった後爆破を起こした。それと同時にナイトローグも地面に転がりながら現れると何とか立ち上がりめぐみんに恨み言を言った後その場から逃走した。

その後めぐみんは撃破されたバーンスマッシュに歩いて近づくと空のボトルを向けてスマッシュの成分を回収すると姿は元のセナの姿へと戻る。そして俺は戦闘により荒れ果てた裁判所の真ん中に歩いて行くと感情のこもった声でこの場に残っている全員に聞こえるように叫ぶ

 

 

「さて…ここに居るみんなに聞いたい。めぐみんは…仮面ライダービルドは命をかけて俺達をスマッシュにされたセナさんを救ってくれた!これでも彼女は死刑にされるべき人間だと思うか!?めぐみんが魔王軍幹部のスパイにみえるかよ!?」

 

 

そんな俺の叫びを真正面から受け止めた裁判長は暫く眼を閉じ、そして眼を開くと

 

 

「分かりました……では、改めて。被告人、めぐみん。あなたへの嫌疑は不十分と見なし、無罪を言い渡します」

 

 

裁判長がそう言うと木槌を鳴らすと裁判は終了する。

因みに真っ先に逃げ出したアルターブに関しては後々領主としての資質を問われる事になっている。色々と謎は残ったが一応は死刑は回避出来た事に俺達はほっと胸を撫で下ろしたのだった。

 

 

********************

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

満身創痍であるナイトローグは王都にある城のバルコニーに降り立つとその変身を解除する。

 

 

「あ、危ないところでした。もう少しでやられていました…まさかビルドの成長があそこまで早いなんて…」

 

 

戦兎達の前に何度も現れたナイトローグの正体はベルゼルグ王国の第一王女、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスその人であった。

 

 

「だから言っただろ?アイツらを甘く見ていると痛い目にあうってな」

 

 

そんなアイリスの目の前にブラッドスタークが現れる

 

 

「スターク!貴女が手を貸してくれれば負ける事はなかったんですよ!」

 

 

「勘違いするなよアイリス王女?俺はあくまでゲームを面白くする為の手助けをするだけだと言った筈だ。恨むならば自分の詰めの甘さを恨みな」

 

 

アイリスはそんなスタークの言葉に忌々しい表情を浮かべていると

 

 

「安心しろよ、アイリス王女。ちゃんと後でフォローはいれてやるからよ」

 

 

スタークはそう言うと怪しげなムラサキ色の小瓶を軽く振りながら笑うのであった。




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この素晴らしい運命の再会に祝福を!!

あの裁判から数日後…俺はアクセルにある図書館にてとあることを調べていた。

 

 

「こんなにも判決理由が曖昧な裁判が沢山あったなんて…流石に不自然だ」

 

 

俺の机の上には沢山の資料が散乱している。その資料の全てがアルターブが関わっている裁判や事件についてのものばかりだ

 

 

「あの野郎…今まで好き勝手にやっていたようだな。読んでいるだけでも気分が悪くなる」

 

 

其処にはアルターブが関わっていたと思われている不正や裁判に関する資料以外にも自分の権力を盾にし自分の好みの女性を懐柔したことや気に喰わない貴族を謂れのない容疑を掛けて処分を下しているという気分が悪くなる事実が記されている

 

 

「流石のアルターブもここまでの権力を持ってはいない筈だ。そうなるとやはり…」

 

 

俺はそう言うと一際分厚さが目立つ本を手にするとその本を開く

 

 

「俺の予想が当たっているならば必ず何処にある筈だ。俺の推理を裏付けてくれる答えが…」

 

 

俺がいる世界は女神や魔王軍に果てまではアンデットのリッチーが存在している世界だ。だと、するならば…

 

 

「あった!やはりこの世界には存在しているのか…真実を捻じ曲げることの出来る存在が…」

 

 

俺は別に悪魔の存在を信じていなかったわけではない。この街に来る前にアーネスとそしてこの街に来た後にホーストという2体の悪魔と戦いそして勝利したのだ、今更悪魔の存在を疑う必要がないのはわかっていた。俺が疑っていたのはそれ程の強い力を持つ存在は本当にいるか、その一点についてだった。

 

 

「古来から歴史の裏で悪魔と呼ばれる存在と契約を交わし権力を手に入れて来た者達が居たのか…本当に今更だがこの世界は何でもアリなんだな」

 

 

その書籍には古来からこの世界に存在しそして欲深い人間を上手く誑し込み契約を迫る悪魔と悪魔と交わす契約について詳しく説明されていた。

 

 

悪魔が交わす契約は公平でありそして絶対である。契約を交わした者は望んだ通りの富や栄光を手にすることが出来るがその対価を契約者は悪魔に支払なければならない。対価は悪魔によっては違う、例えば地獄の公爵にして、通称『見通す悪魔』と呼ばれている『バニル』という悪魔は人間の放つ悪感情を契約の対価としているらしい。

 

そしてそのバニルと同じ地獄の公爵『マクスウェル』…恐らくこいつの存在こそが俺の探していた疑問の答えなのだろう。

その書物には簡単ではあるがマクスウェルについて説明されていた。

マクスウェル…地獄の公爵と呼ばれている最上級の悪魔であり人々からは『真実を捻じ曲げる者』『辻褄合わせのマクスウェル』と古くから恐れている大悪魔と記されていた

 

 

「マクスウェル…アルターブの背後にいるのはコイツなのか?この悪魔の能力ならば俺が感じていた疑問の答えが出るが…それでも疑問はいくつか残るぞ?」

 

 

その書籍にはマクスウェルは最上級の悪魔と記されている。そんな悪魔が何故アルターブ如きに使徒されているんだ?悪いがあんな男に最上級悪魔を使徒出来る器だとは思えない。

そもそも悪魔の契約には対価が必要と記されていた筈…アルターブはその対価をどうやって払っているんだ?最上級の悪魔となればその対価もすざましい筈だ。まさか…アルターブは別の人間に支払せているのか?そんな最悪な想像をした時に背後から俺を呼ぶ声が聞こえ後ろ振り向くと其処にはアクアとカズマそしてセナがいた

 

 

**********************

 

 

その後、俺達はとある事情により町外れにいた。先日降った雪によりこの辺りは雪原となっており、思わず雪合戦かかまくらを作りたくなる…カエルさえいなければ

 

 

 

「こんな寒い時期にカエルが出るなんて…この世界の生き物は逞し過ぎませんか?」

 

 

「何でも先日の裁判の時の戦いの余波で冬眠中だったカエルが目を覚ましてしまい近くの農家に迷惑をかけてしまっているから早く討伐して欲しいんだと」

 

 

俺とカズマがそう他人事のように話していると

 

 

「あの…あの人を放っていて良いのですか?」

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!カエルはもう嫌なの助けてぇぇぇぇ!!」

 

 

セナが指さした先には目から涙をポロポロと流しながら必死な表情でカエルから逃げているアクアがいた。

 

 

「カズマさん!めぐみん!早く仮面ライダーになって私を助けてぇぇぇぇ!」

 

 

「済ませんがライダーシステムは今調整中なんです。けど、直ぐに助けるから安心して下さい!!」

 

 

そう言うと俺はカイゾクハッシャーを構えるとアクアの背後にいるカエルの額を正確に撃ち抜いた。その時に攻撃がアクアの髪にほんの少し掠っていた

 

 

「ちょっと!貴女の攻撃が私のチャームポイントを掠めたんだけど!!もしものことがあったらどうし…ぺぎゅ!」

 

 

アクアは奇声を上げるとそれっきり声を上げることはなかった。

 

何故ならばアクアはまだ生きていたカエルに頭からぱっくりと食べれ今にも飲み込まれそうになっていたからだ。

 

 

「「アクアァァァァァァァァ!!!!」」

 

 

俺とカズマはそう叫ぶと俺達は武器を構えジァイアント・トードに走って行く

 

 

「エッグ…ひっく…」

 

 

アクアはカエルの死体の側でヌメネメ塗れで泣いており人によっては同情を禁じ得ない光景であった

 

 

「えっと…貴女達は何時もこんな感じなのですか?」

 

 

「いえ、何時もはめぐみんのおかげでさほど苦労せずにクエストをこなしてるんですが…」

 

 

カズマは肩を落とした様子でそう言っていると背後からズシンという音が3つ程聞こえ後ろを振り返ると…

 

 

「に、逃げろぉぉぉぉ!!」

 

 

カズマの言葉に俺達はアクセルの入口に向かって走り出す。流石にライダーシステム無しで3匹のジァイアント・トードに立ち向かうのは無理な為なので必死に走る

 

 

「カ、カズマさん!ここは誰かが囮になって皆を逃した方が良いと思うの!」

 

 

「そうか、なら囮は頼んだぜ!」

 

 

「ちょっと!其処はカズマさんが囮になる場面でしょ!!」

 

 

「ふざけんな!俺が喰われたらめぐみんがひとりで喰われた奴の救出をしなきゃいけなくなるんだぞ!!それにお前は既に一度食べられてるんだから二回も三回も対して変わらんだろ!!」

 

 

「もうカエルに食べられるのはいやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「オイ!今はコントしてる場合じゃ…うわぁぁぁぁ!!」

 

 

俺がふたりにそう突っ込んた瞬間ジャイアント・トードの長い舌に囚われ俺はジャイアント・トードに捕食された

 

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!ぬ、ヌメヌメがぁぁぁぁぁぁ!!喰われるぅぅぅぅ!!」

 

 

「め、めぐみんんんんん!!」

 

 

「チャンスよ!カズマさん。今の内にカエルを」

 

 

その言葉を最後までアクアは話すことは出来なかった。何故ならば…

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

アクアもジャイアント・トードの長い舌に囚われ再び捕食されたからだ。そして最後のジャイアント・トードがカズマとセナさんを捕食しようと近づいて行く

 

 

「ち、ちきしょう!こうなったらやるしかねぇ!ジャイアント・トードの奴どうせならめぐみんじゃなくセナさんを捕食してくれよ!そうすればまだ何とかやりようがあったのによ!」

 

 

「カズマさん!?私も食べられるのは嫌なのですか!?」

 

 

セナのツッコミを無視したカズマがショートソードをやけくそ気味に最後のジャイアント・トードに向かって構えていると

 

 

『ルーン・オブ・セイバー!!』

 

 

何処から青い斬撃が飛んでくるとめぐみんを捕食していたジャイアント・トードが真っ二つに切り裂かれた

 

 

「「へっ………??」」

 

 

目の前で起きたことにポカンとするセナとカズマだが攻撃を放った青年は素早く残り2匹のジャイアント・トードに向かって行くとその青年はにしていた武器…ビートクローザーを放り投げ、ジャイアント・トードに打撃攻撃を仕掛ける

 

 

「駄目です!ジャイアント・トードには打撃攻撃は…」

 

 

セナの言葉は途中で止まる。カズマも目の前に突然現れた人物に驚いているのか口をパクパクとさせているだけだ。

 

 

「オラァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

その青年の拳に青い炎が宿るとジャイアント・トードに強烈な打撃が決まる。そしてジャイアント・トードは気持ち悪そうな表情でアクアを吐き出す。其れを見た青年は素早く投げ捨てたビートクローザーを拾うとそれでジャイアント・トードの胴体を切り裂いた後残り一匹のジャイアント・トードの伸ばしてきた舌の下を地を滑るように避けジャイアント・トードと間合いを詰めると

 

 

「パワースラッシュ!!」

 

 

ジャイアント・トードを真横に切り裂いた

 

 

「ふぅ……お前ら大丈夫か?それと…めぐみんって奴はどいつだ?」

 

 

其処に居たのは…かつて旧世界において桐生戦兎と共に戦った…あの人だった

 

 

*********************

 

 

めぐみん達がセナの依頼によりジャイアント・トードの討伐に向かっていた時に私はダストさん達と一時的にパーティーを組んでクエストを受けておりそのクエストが終わったのでアクセルのギルドへと帰って来ると

 

 

「この街の仮面ライダーに会わせてくれって言ってるだけだろ?それの何処が駄目なんだよ?」

 

 

何やら困った表情をしているルナさんの前には変わった服装を来た男の人が何やら話し込んでいるのが見えた

まぁ、カズマさんも初めて会った時にはじゃーじと呼ばれる物を着ていたので青年に対してさほど違和感は感じてはいなかった

 

 

「もしわけありませんがちゃんとした理由を提示しない限り仮面ライダーについての情報は一般冒険者に開示出来なくなっているんです」

 

 

つい先日に起きた異世界を巻き込んだ事件と裁判での戦い以降アクセルを始めとするギルド連合が仮面ライダーに対する情報規制が行われることになり一部の冒険者以外には情報を開示しないこととなったのだ。

そしてその男の人は私達の視線に気づくと人懐っこい笑みを見せながら私達に近づいてくる

 

 

「お前達はこの街の冒険者なんだろ?良かったら仮面ライダーについて教えてくれよ」

 

 

「オイオイ、仮面ライダーはこの街の英雄なんだぜ?何処の馬の骨か分からない奴に教えるわけねぇだろ?」

 

 

「そもそも自分の素性を教えない奴なんか信用できるわけないでしょ?」

 

 

ダストさんとリーンさんの最もな言い分を聞いたその男の人はそりゃそうだと頷くと

 

 

「俺は万丈龍我。一応ソードマスターをやってるが武器を使うよりも拳で戦う方が得意だ。宜しく」

 

 

バンジョウと名乗る男の人はそう言っていた。しかしソードマスターなのに剣で戦うよりも拳で戦うのが得意なんて…何を言っているのだろうかこの人は?

そんな私達の残念な物を見ている目線に気付かずにそのバンジョウと名乗った男の人は

 

 

「話を聞いてるから知ってると思うが、俺がこの街に来たのはこの街にいるという『仮面ライダー』に会いに来たんだ」

 

 

「仮面ライダーに?…よろしければ理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

 

「ドリスの街のギルドで魔王軍幹部ベル…なんとかの討伐と起動なんやらの破壊に貢献したと話を聞いたんだよ」

 

 

…魔王軍幹部ベルディアと起動要塞デストロイヤーの討伐の件は他の街やベルゼルグ王国にまで広がっているのでこの人が知っていたとしても不思議じゃない

 

 

 

「俺は其奴らに絶対に会わなきゃいけねぇ。何故仮面ライダーの力を持っているのかどうしてその名前を名乗っているのが問いただせなきゃいけねぇ…その為にトリスからやって来たんだ」

 

 

「バンジョウって言ったけ?あんた、随分と仮面ライダーって名前にこだわってるようだな?」

 

 

「当たり前だ!仮面ライダーは…あいつとふたりで作り上げて来たものなんだよ!!何処の馬の骨か分からない奴が軽々しく名乗って良いもんじゃねぇ!ましてやあいつらと同じ名前を名乗るなんて…もし、生半可な考えで仮面ライダーを名乗っているなら…俺は其奴らを絶対に許さねぇ」

 

 

バンジョウさんはとても真剣な表情でそう言っていた。まるで仮面ライダーという称号がとても大切な物だと思っているように…

 

 

…待ってバンジョウって確か…めぐみんが前にボソっと言っていた名前?

 

 

「あの…間違っていたら申し訳ないですけど…これに見覚えってありませんか?」

 

 

そう言って私はビートクローザーとドラゴンフルボトルをバンジョウさんに見せる

 

 

「これは俺のフルボトルとビートクローザーじゃねぇか!どうして其れをお前が持ってんだ!答えろよ!!」

 

 

 

驚いたバンジョウさんが詰め寄って来るがダストさんやテイラーさんが咄嗟に間に立つことで私を守ってくれる

 

 

「これを作ったのは私の友達のめぐみんって子なの、それだけじゃないわ。この街にある設備は全部めぐみんが作った物なのよ」

 

 

「こいつをお前の友達が作った?…嘘ついてんじゃねぇぞ!こいつを作れるのは…アイツしか居ねえんだよ…あのナルシストで自意識過剰なあいつにしか…これを作れねぇんだよ!!」

 

 

バンジョウさんの言葉がギルド中に響く、その言葉には迂闊には言い返すことの出来ない何かがあった

 

 

「お前さんにも何か事情があったのは分かったぜ。でも、ゆんゆんが持っている装備を作ったのは間違いなくめぐみんなんだよ」

 

 

「それにめぐみんも自分のことを天才物理学者って言ってるわよ?仮面ライダーという名前を誇りに思っているところも全く同じよ?」

 

 

ダストさん達の言葉に同意するようにギルドにいた冒険者達も声を上げていく。其れを見ていた万丈さんも段々と周りの言っていることが真実であることに気づき始めたようだ。

 

 

「あんたらの言うことが本当なら自分で自分のことを天才物理学者なんていうところも仮面ライダーに対する考えも彼奴にソックリだ…もしかしてマジなのか?なぁ、そのめぐみんってのは何処にいるんだ?」

 

 

「それぐらいならば教えられますが…今はパーティーメンバーと一緒にアクセルの近くでジャイアント・トードの討伐クエストをしていますよ」

 

 

バンジョウさんはルナさんの言葉を最後まで聞くことなくギルドの外へと飛び出しいく…私のフルボトルとビートクローザーを持って

 

 

「私のフルボトルとビートクローザー!!」

 

 

「もしかしたら彼奴は俺の大切な相棒かもしれねぇんだよ!悪いがコレも借りて行くぜ!!」

 

 

そう言ってギルドを飛び出して行くバンジョウさんに私達は呆気に取られていた。

 

 

********************

 

 

カエルの体内から放り出された俺は自分の目を疑っていた

 

 

そんな馬鹿なことがある筈がない…あいつが『この世界』にいる筈が…でも、エボルトもこの世界に居たのだからばあいつが…万丈がいても可笑しくはない…!!

 

 

「嘘だろ…あの人は…万丈龍我さん!?まさか、この人までこの世界にやって来ていたのか!」

 

 

カズマが驚いているとセナさんの表情が先程とは違い凛とした物になるとバンジョウに近づき

 

 

「助けて下さりありがとうございます。まさか、貴方がトリスではなくこんな辺境の街にいるとは思いませんでしたよ…『プロテインの貴公子』バンジョウリュウガさん」

 

 

「「「…はぁ???」」」

 

 

 

バンジョウの通り名にそんな反応した俺達は悪くないだろう

 

 

 

その後、俺がカエルのヌメヌメを払っているとバンジョウが話しかけてくる

 

 

「もしかして…お前がめぐみんか?」

 

 

「はい、私がそのめぐみんです。貴方の聞きたいことは分かります、少し離れて話しませんか?」

 

 

俺がそう言ってカズマに目線を向けるとカズマは俺の意図を理解してくれたのかそれとなくセナさんの気をそらしてくれた(アクアはヌメヌメ塗れで泣いている為に放置した)

そしてカズマ達から充分に距離を取ると俺はめぐみんとしての仮面を外し桐生戦兎としてバンジョウに話し掛ける

 

 

「まさかお前もこの世界に居たとは思わなかったよ…万丈」

 

 

俺の言葉にバンジョウは信じられないと思う表情になると

 

 

「マジかよ!本当に…戦兎なのかよ!!お前…無事だったんだな!!」

 

 

「無事って言うには微妙なんだけどな…それと他の冒険者や仲間達がいる前では俺のことはめぐみんって呼んでくれ、この世界での俺はめぐみんという人間だからだ」

 

 

「よく分からねぇけど…とりあえずはアイツらの前ではめぐみんって呼べばいいのか?」

 

 

「基本的にはそれで頼む。でも、あそこにいる高校生ぐらいの歳をした男…カズマとヌメヌメ塗れで泣いてるいるアクアって奴は俺の正体は知っているからあいつらしか居ない場合は前のように戦兎呼びで頼む」

 

 

「そいつはわかったけどよ、どうしてお前だけ別の人間になってんだ?俺は元の姿のままなのによ?」

 

 

「詳しくはわからないが…恐らく新世界が創生された時の状況の違いじゃないか?お前はエボルトの体内に吸収されてたから運良くそのままの姿で放り出されだけかも知れないな」

 

 

他に推理をする要素がない以上はそう考えるしかない…だか、その答えは魔王軍と戦っていく内に明らかになるような気がしている。エボルトがこの世界に存在している理由も…確かな根拠はないが何となくそう確信出来る。学者としては失格なのかもしれないがな

 

 

 

「エボルトまでこの世界にいるなんてマジかよ…でも、戦兎がこの世界に居てくれてマジで良かったぜ…この世界であの世界のことを覚えてるのは俺だけだと思ってたからな…」

 

 

バンジョウの気持ちは良く分かる。俺もめぐみんになったばかりの頃自分が孤独だと思っていた時期があったからだ

こいつも能天気そうに見えて色々と苦労して来たのだろう、少しは優しくしてやるかと考えていると

 

 

「しかし…お前が女になっているなんて思わなかったぜ。アイツらも今の姿を見たらきっと爆笑すると思うぜ?…っていうか、ヌメヌメしてる上にカエル臭いなお前、悪いけどあんま近づかないでくれねぇか?」

 

 

人がしんみりモードでいる時にこの筋肉馬鹿は…

 

 

「なぁ…バンジョウ知ってるか?ジャイアント・トードのヌメヌメには美容効果があるんだとよ?…俺だけ美肌になるのも悪いからお前にもこのヌメヌメをお裾分けしてやるからこっち来いよ?」

 

 

そう言ってジリジリとバンジョウに近づいて行く俺

 

 

「いや、俺女じゃねぇし美容効果なんて要らねえから…近づいて来るなよ、ヌメヌメが付くだろうか」

 

 

「遠慮すんなって…こんな美少女とヌメヌメプレイなんて元の世界なら高い金を払ってもやって貰えないんだからさぁぁぁぁ!!」

 

 

「悪かった!!謝るから許してくれって…カエルくせぇぇ!!」

 

 

その後俺の熱い抱擁によりカエルのヌメヌメ塗れになったバンジョウと俺は(カズマとセナさんは警察署に今回のことを報告にアクアはギルドに討伐を報告しに行った)

地下ラボへと帰って来るとふたり一緒に脱衣所に入る

 

 

「なぁ、戦兎。もしかしてクローズとグリスに変身してるのはお前と一緒にいたカズマとゆんゆんって奴なのか?」

 

 

服を脱ぎ上半身裸になったバンジョウがそんなことを俺に聞いてきた

 

 

「そうだ。お前の想像の通りゆんゆんとカズマが変身している」

 

 

「俺はあのふたりのことを何も知らない。あいつらは本当にお前の信頼に値する奴らなのかよ?」

 

 

俺がカズマとゆんゆんにライダーシステムを託したことを不満に思っているのかバンジョウはそんなことを言ってくる

 

 

「お前の気持ちも分かる。でも、あいつは…カズマは一海が認めた人間だ。きっと仮面ライダーグリスとして相応しい人間だと一海が判断したんだろう」

 

 

バンジョウは俺の言葉に驚いた表情になると

 

 

「一海があいつのことを認めたのか?…正直、直ぐには信じられねぇがお前はそういう嘘をつく奴じゃねぇってことは良く分かってるつもりだし、あいつが認めたってことは良い奴なんだろうなそいつは」

 

 

「ゆんゆんもああ見えてかなり芯の強い奴だ。始めは俺もクローズはお前以外に勤まるものかと思ってたが、それでもあいつはクローズとして必死で戦い続けている。かつてのお前のようにな」

 

 

「お前がそこまで言うなんてな…確かにあのゆんゆんって奴は意外と根性がありそうだ。一度あいつとはちゃんと話してみるのもアリかもな」

 

 

俺はバンジョウの言葉聞き笑みを浮かべると羽織っていた上着を脱ぐ

 

 

「ちょっと待て!!お前一緒に入るつもりか?」

 

 

何にやらバンジョウが慌てた様子でそう言って来る

 

 

「そのつもりだけど?」

 

 

「アホか!今のお前は女の子だぞ?流石に色々と不味いだろ!!」

 

 

「どうでも良いでしょうか!早いとこヌメヌメな服を脱ぎたいんだよ!!」

 

 

そして俺は上着と同じくヌメヌメ塗れなシャツに手を掛けると

 

 

「ちょっと待ってって!本当に待ってって!」

 

 

「「おわぁぁぁ!!」」

 

 

 

その時俺は足元のヌメヌメに足を取られてすべりバンジョウはそんな俺の手を掴んで助けようとするがバンジョウも足元のヌメヌメに足を取られると俺を押し倒す形で倒れた

 

 

数分前….

 

 

めぐみんとバンジョウが脱衣所に入ったのと同時にゆんゆんが地下ラボへと帰って来る

 

 

「あのバンジョウさんって一体何者なんだろう?めぐみんと何だか親しい様子だったけど…」

 

 

バンジョウリュウガ…名前だけならば時々現れるカズマさんやミツルギさんみたいな勇者候補と呼ばれる人達と同じだと思うけど、あのふたりにはそれとは違う強い何かがあるような雰囲気を感じていた。

そしてそれはずっと一緒にいた私としては羨ましくもあり妬ましくもある複雑な感情を持ってしまう物であった。

 

 

「少し…頭をスッキリさせようかな?確かれいぞうこにこーらがあった筈…」

 

 

私がそう言ってれいぞうこの扉を開けようとした時

 

 

「「おわぁぁぁぁ!!」」

 

 

「今の悲鳴は…めぐみんとバンジョウさん?一体なにが起きたの!?」

 

 

 

悲鳴に驚いた私がビートクローザーを構えて脱衣室の扉をぶち破ると其処には…

 

 

真実・足を滑らせ頭を打って涙目になっているめぐみんとそんなめぐみんを助ける為に手を掴んだバンジョウだがバンジョウも足が滑り倒れた

 

 

誤解・涙目の幼気なめぐみんを半裸のバンジョウが押し倒している

 

 

「あ…あ…ああああ」

 

 

顔を真っ赤にしたゆんゆんがビートクローザーを構えながらジリジリと近づいて行く

 

 

「ま、待て!俺の話を聞け!!これは誤解だ!先ずは話を」

 

 

「めぐみんに何してるのよ!!このヘンタァァァァイ!!」

 

 

「ギャァァァァァァァァァ!!」

 

 

カズマとアクアが地下ラボに入って来るのと万丈の悲鳴とゆんゆんの大声が響いたのは同時だった

 

 

********************

 

 

その後夜のギルドで万丈と宴会騒ぎをしていたが女性陣の目はとても冷たくそれを見ている万丈は冷や汗をダラダラと流しながらカエルの唐揚げを食べていると冷たい目で見ていたアクアが

 

 

「……ロリリューガ」

 

 

「ロリリューガ言うな!!!」

 

 

万丈龍我は称号『ロリリューガ』を手に入れた

 

 

「嬉しくねぇ!!」

 

 

********************

 

 

 

次の日、ドリスへと戻らなければならないバンジョウを見送る為に俺はカズマとふたりでアクセルの正門へとやって来ていた。

 

 

「戦兎、本当に俺がいなくても大丈夫なのかよ?」

 

 

「筋肉バカのひとりやふたり居なくても別に変わらないっての」

 

 

「女になっても減らず口は変わらねぇのかよ!」

 

 

俺とバンジョウは昔を思い出すやり取りをするとお互いに旧世界のことを懐かしむような表情になる。

 

その時に俺はバンジョウに渡す為に昨夜の内に開発していた物があったことを思い出すと

 

 

「これは選別だ、持って行きな」

 

 

俺はふたつのアイテムを万丈に投げ渡した

 

 

「コイツはドラゴンゼリーとスクラッシュドライバー…復元してたのかよ」

 

 

「まぁな、お前の為に特別に用意したんだ。有り難く思えよ?」

 

 

「……そうだな、有り難く受け取らせて貰うぜ戦兎」

 

 

万丈はふっと笑みを浮かべると受け取ったドライバーとドラゴンゼリーを仕舞った。

 

 

「お前から見てどうだった?もうひとりのクローズは?」

 

 

「初めは女にクローズなんか任せられるかと思ってたが、中々にスゲェ奴じゃねぇか誤解とは言え友達の為にあそこまで出来る奴は中々いねぇ。あいつにならクローズの名前を預けても良いかもな」

 

 

「その言葉ゆんゆんが聞いたら嬉しがるよ」

 

 

その言葉に俺は笑みを浮かべる。そしてバンジョウはカズマの方を向くと

 

 

「佐藤和馬、あいつが認めたならば文句は言わないがあいつの力をろくでもない事に使ったら許さねぇからな」

 

 

「わかってますよ。バンジョウさん」

 

 

カズマはその言葉に強く頷く。それを聞いたバンジョウは安心した表情になるとドリスへと戻っていくのを俺達は見届けたのだった




万丈龍我を登場させました。

カズマの覚醒の時には幻影として一海が現れたのにゆんゆんの場合は現れなかったので万丈がこの世界にいることを予想していた人がいるかもしれませんね。

万丈は今後準レギュラーとして本作にチョイチョイ絡ませていくことを考えています。

評価と感想をお待ちしてます


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この素晴らしい迷宮の主に祝福を!!

「キールのダンジョンの探索クエスト?」

 

 

俺が何時ものようにギルドでクエストを探しているとルナさんからこのクエストを受けて欲しいという要請を受けた

 

 

「キールのダンジョンって言ったら、練習用のダンジョンで探索はし尽くされているのではありませんか?」

 

 

キールのダンジョンとはアクセルの街から山道を半日ほど歩いた場所にある駆け出し冒険者達の練習用ダンジョンのことをいう。練習用のダンジョンである為に山麓の入り口近くに『避難所』と書かれたログハウスも建てられているのが特徴だ。

その昔、とある貴族の令嬢に恋をした国一番の魔法使いキールがここを作り、立て篭ったという伝説がある。

当の昔に攻略されつくしたダンジョンの筈だが…

 

 

「実は最近そのキールにダンジョンにて隠し通路が発見されたのです。しかも通路の中にはレベルの高いモンスターも何体か確認されたので、こうして特別クエストを当ギルドで設定したのですが、中々引き受けてくれる方も居なかったので…」

 

 

成る程、だから俺にそのクエストを消化して欲しいというわけか。確かにデストロイヤーの破壊とベルディアの討伐による報酬で多くの冒険者達の懐は潤っている。わざわざ危険を犯してクエストに行く奴はいないよな

 

 

「分かりました。そのクエストをお受けしましょう」

 

 

「ありがとうございます!そのクエストで何か財宝を見つけたとしてもそれはめぐみんさん達が受け取って貰っても構いませんので、どうかお願い致します!」

 

 

俺はルナさんからクエストの用紙を受け取ると簡単な食料を持ってキールのダンジョンへと向かっていった

 

 

********************

 

 

「んで?どうしてお前達までついてきてんだ?」

 

 

「最近新しくスキルを覚えまして、そのスキルを試してみたいと思っていたんです」

 

 

「私はお宝があるなら何処にだって行くわよ!!」

 

 

同行者であるカズマとアクアが張り切った様子でそう言ってくる。

 

 

「まぁ…今回行くダンジョンは練習用のダンジョンだからそんなにレベルは高くないし問題はないだろう」

 

 

ふたりもやる気を出しているしここでアクセルの街へと追い返すのもアレだと思ったのでそのまま3人パーティーでキールのダンジョンへと向かった

 

 

 

 

 

やはりというか何の問題もなくキールのダンジョンに辿り着けた俺達はそのままダンジョンの奥へと向かい地図に記された場所を弄ると隠し通路へと続く階段が現れ、俺達は階段を降りて行く

 

 

「中々に暗いな…足元に気をつけてくれ」

 

 

「ここは俺に任せて下さい。『敵感知』!」

 

 

カズマが新しく覚えたスキル『敵感知』は所謂危険なものや安全なものを見分けることの出来るスキルだ。カズマ曰く視界はサーモグラフィーのような状態になっており、危険なものは赤く光って見えるという因みに習得に必要なスキルポイントは冒険者で1である。

 

 

「冒険者の他の職業のスキルを全て覚えることの出来るメリットはやはり大きいな」

 

 

冒険者はタンク役から後方支援に回復役といった幅広いフォローが可能だ。本職に比べたら威力も劣る上にスキルポイントもかかるがそれでもメリットの方は大きいと言えるだろう

 

 

「カズマさんも結構色々と考えているのね」

 

 

アクアが関心した様子でカズマにそう言う

 

 

「冒険者である以上はその職業のメリットを最大限に生かす方法を考えないと行けないだろ?何でもかんでも戦兎さんに頼るわけにはいかねぇよ」

 

 

「カズマは兎も角アクアもわざわざついて来なくても良かったんだそ?」

 

 

俺の言葉にカチンときたのかアクアが詰め寄ると

 

 

「ねぇ、めぐみん。私が誰なのか忘れたのかしら?私は水の女神アクア様なのよ?スキルなんて使わなくもこんな暗闇私の目には真昼のようにはっきりと見えるのよ!」

 

 

胸を張ってそう言うアクア、別に胸を張って言うことではないと思うのだが…

 

 

「えっと…アクア、お前さっき暗闇でも普通に見えるって言ってたよな?」

 

 

先頭を歩いていたカズマがアクアの言葉に急に立ち止まるとそんなことを口にする

 

 

「言ったけどそれがどうしたのよ?」

 

 

「それってつまり…前に馬小屋で一緒に寝てた時もずっと見えてたわけ?」

 

 

俺はカズマの言わんとしていることに気づいてしまった。見かけだけならばアクアは美少女な上にカズマは多感な年頃の男子高校生だ

 

 

「見てないわよ?ゴソゴソと音がしたら反対の方向をみて寝るようにしてたから」

 

 

それがどうかした?という表情でカズマを見ているアクア

 

 

「……ありがとうございます。アクア様」

 

 

真っ赤な顔をしてアクアに礼を言うカズマに俺は元男としての同情を覚えた

それから俺達はカズマの敵感知と千里眼を駆使して先にある空間が安全なのかを確認しながら先に進む。ダンジョンらしく通路には幾つかのトラップもあったがそれもカズマの罠感知により難なく突破していると

 

 

「にしても随分と手ごたえがないダンジョンね?そろそろアンデットモンスターの一匹や二匹が出て来ても良いんじゃないかしら?」

 

 

ダンジョン探索に飽きたのかアクアがそんなことを言い出す

 

 

「馬鹿!!お前はどうしてそうフラグを立てるんだ!!」

 

 

アクアのフラグとも言える台詞にカズマが律儀に突っ込みを入れているのと闇の中からモンスターが襲い掛かるのとほぼ同時だった。

 

 

 

「これはグレムリンね。ダンジョンには下級の悪魔が住み着いたりするのよ」

 

 

俺が倒したグレムリンの死体を見下ろしながらアクアはそう口にする。

 

 

「やはり簡単には先に行かせてはくれないのか…」

 

 

俺は溜息を吐くとそう口にする。あくまでも俺達が特殊なだけで冒険というのは本来はこのように苦労して先に進むものなのだろう、そう気を取り直すとドリルクラッシャーを構えながら通路の先に進む

 

 

「これは…」

 

 

俺は言葉を無くした。俺の目の前には途中で力尽きたのだろう、白骨化した冒険者の死体が転がっていたからだ。

 

 

「このまま放って置くのもアレだし何とか埋葬してあげたいけど…」

 

 

カズマの言う事は最もだ。この世界では人の命というのは俺達が考えている以上に軽い、だからと言って死体を放っておくのも気分が悪い、どうしたものかと悩んでいると

 

 

「ふたりとも少し退いてくれるかしら?」

 

 

「アクア?」

 

 

カズマがアクアの言葉に首を傾げているとアクアは優しげな表情で死体の近くに屈むと手をかざし

 

 

「志半ばで倒れた哀れな魂よ。安らかにお眠りなさい…」

 

 

アクアが優しくそう言うとアクアの手から光が溢れ冒険者の死体を包み込むと冒険者の死体はその場から消えた

 

 

「さて、先に行きましょうか?」

 

 

そう言って先に進んでいくのアクアに珍しく女神としてのオーラを感じた俺達は何も言わずにそのままアクアの後を追って奥に進んだ

その後何度もアンデット達の襲撃を受ける俺達。その度にドリルクラッシャーとカズマの初期魔法によるサポート、アクアの浄化魔法などで撃退して行くと遂にダンジョンの最奥地へと到着する

 

 

「ここが最奥か…行き止まりだな」

 

 

俺達の目の前には壁しかなく先にはもう何もないことがわかった

 

 

「まさか、ここで終わりなのかよ?他に何かないのか…っておわ!!」

 

 

カズマがそう言って壁を弄っていると何かに触れたのか壁が消えカズマはその奥へと倒れ込む、そしてカズマが倒れ込んだ部屋の奥から謎の声が聞こえて来る

 

 

「おや…数百年ぶりのお客さんだねぇ。初めまして私はキール。その昔貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いさ」

 

 

************************

 

 

その昔、キールという名のアークウィザードは偶然見かけた貴族の令嬢に一目惚れをした。たが、彼はその報われることのない恋心を押し殺しながら魔法使いとしての修行を続けた。

そして月日が流れキールは遂に国一番のアークウィザードとなりその国に大きな貢献をする。その後王は彼に尋ねた。貴殿の功績を称えどんなものでも一つ望みを叶えよう。と

その問いにキールは答えた。

世にたった一つ。どうしても叶わなかった望みがあります。それは、虐げられている愛する人が幸せになってくれる事、私が望むのはそれだけです

 

 

「そう言って、私は貴族の令嬢を攫ったのだよ」

 

 

久しぶりに人と話すことが楽しいのがはしゃいだ様子でキールはそう言っている

 

 

「そして攫った後にプロポーズをしたのさ、そしたら見事に二つ返事でオッケーをもらえてねぇ、あの時の感動は今でも忘れられないな。その後、令嬢を攫った罪で指名手配されてね、何度か王国軍とのドンパチをしたのさ、いやぁ〜あの時は楽しかったなぁ〜」

 

 

俺は問答無用でキールに襲い掛かろうとするアクアをカズマとふたりで抑えながら話を聞いていた

 

 

「そしてこのベッドに眠っているのが私が攫ったお嬢様さ。見てくれこの骨の白さを。惚れ惚れとする美しさだろう」

 

 

「済まないが骨の美しさはよくわからないんだ」

 

 

俺が冷静にキールの言葉にそう言っているとアクアが彼女の白骨に近づき

 

 

「安心しなさい。お嬢様は何の悔いもなく成仏しているわ、生前はきっと幸せに過ごせたのね」

 

 

アクアは優しげな笑みを浮かべておりキールはそんな俺達を見ると部屋の奥へと歩いて行き

 

 

「君達がここまで来たのはあそこにある財宝が目的なのだろう?」

 

 

キールが指さした先にはこのダンジョンのものと思われる財宝の他に電車と海賊船が描かれたフルボトルが2本あった

 

 

「アレは…フルボトル!?それに2本も!何故こんなところにあるんだ?」

 

 

「それは私と彼女が大陸中を旅していた時に手に入れたものさ、まぁ…何に使うものなのかはわからなかったかね。もし、必要としているならば君達にあげるよ?そこにある財宝も含めてね、その代わりに私の願いを聞いてはくれないか?」

 

 

そこまで言うとキールはアクアの方を向き

 

 

「どうか私を浄化してはくれないか。君はそれができる存在なのだろう?」

 

 

アクアがキールを浄化する為の魔法陣を床に書いている間、俺達はキールからこれまでの人生?について話を聞いていた

 

 

「いやぁ、本当に助かるよ。彼女が亡くなった後の無限に続くような時間はとても苦しいものでね。このまま朽ちるまで眠り続けようかと思っていたんだが、とても強い神気を感じてねぇ…こうして目が覚めたというわけさ」

 

 

キールはお嬢様の手に触れながら嬉しそうにそう呟いていた。

かつてキールはお嬢様を守りながら戦った際に重傷を負い、彼女を守るために人であることをやめてリッチーになることを選んだらしかった。…大切な人を守る為に人間であることを捨てる。ウィズにしろキールにしろその強さというのは心の底から尊敬できるものだった

 

「大切な人を守る為に人の身を捨てリッチーとなった魔導師キール。水の女神アクアの名の元に貴方の罪を…許します」

 

 

普段と全く雰囲気の異なるアクアが魔法陣の中心に居るキールに手をかざしながらそう言っていた。

 

 

「誰だろか…この人は?」

 

 

カズマが静かにそう呟いた。確かに普段のアクアは呑んだくれだしトラブルしか生まないから当然と言ったら当然の反応なのだか、そんな扱いにほんの少しだけ同情を覚える。アクア本人には絶対に言わないが

 

 

「次に貴方が目を開けた時にはエリスという胸が不自然な女神がいるでしょう。もし、貴方がもう一度彼女に会いたいのならば、例え恋人同士じゃなかったとしてもどんな形でも良いから彼女に会いたいのならばエリスに願いなさい。もう一度彼女に会いたいと、きっとエリスは貴方の願いを叶えてくれるでしょう」

 

 

「女神様…私は彼女を…妻を幸せにすることが出来たのでしょうか?」

 

 

キールは不安そうにそう言う。自分の所為で彼女に苦労させたんじゃないのか、彼女は自分と居て本当に幸せだったのか、彼のそんな不安が苦悩が言葉から伝わってくる

 

 

「…『セイクリッド・ターンアンデット』」

 

 

アクアはキールの言葉に何も言わずにニッコリと笑うとキールを浄化する。

 

 

「妻よ…今行く…」

 

 

その言葉を最後にキールの姿はその場から消えた

その後俺達はキールの財宝とキールがくれたふたつのフルボトルに残留していた魔力を回収するとキールがいた隠し部屋から出ると出口へと向かう

 

 

「なぁ…あのお嬢様は本当に幸せだったのかな?」

 

 

出口に向かって歩いている時カズマがふとそんなことを口にする

 

 

「さぁ?私にそんなこと分からないわよ。でも、彼女の魂は何の未練も無く成仏していたわ。それが答えじゃないのかしら?」

 

 

「そうか…そうだと良いな」

 

 

カズマもアクアの言葉に何かを感じたのか黄昏るようにそう言っていると

 

 

『ぎゃおおおおおおおお!!』

 

 

突然闇の奥からアンデットのものと思われる叫び声が聞こえて来た

 

 

「またかよ!?一体どうなってんだ?いくらなんでもモンスターの襲撃が多すぎるだろ?こんなの初心者向けのダンジョンじゃないだろ!」

 

 

「そう言えば…キールの奴が言ってたよな?強い神聖な力を感じて目が覚めたって、もしかしてその神聖な力の持ち主って…」

 

 

そう言うと俺はアクアの方を見る、カズマも俺の言いたいことに気づいたのか一緒にアクアの方を見る

 

 

「そう言えば…行きの時もやたらとアンデットに襲われたよな?もしかしなくても俺達が襲われ続けた原因はお前じゃないだろな?」

 

 

カズマの鋭い突っ込みにアクアは冷や汗をダラダラと流しながら固まる

 

 

「そ、そんな訳じゃない…た、多分」

 

 

「おい、多分ってなんだ」

 

 

アクアの言葉に突っ込んだ俺はカズマと一緒にアクアから距離を取る

 

 

「ね、ねぇ。どうしてふたりして私から離れようとするの?ダンジョンは暗いし危険だから一緒に居た方が良いと思うのだけど…」

 

 

しかし俺達はそんなアクアの言葉を無視して更に離れようとすると

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!私をひとりにしないでぇぇぇ!!」

 

 

涙を流しながら俺にしがみ付いて来た

 

 

「大声出すな!引っ付くな!逃げれないだろ!」

 

 

そんなことを言っているとカズマがひとり距離を取るのを視界に捉えると俺はすかさずカズマの襟首を掴んで逃げれないようにする

 

 

「馬鹿!引っ付くんじゃねぇ、潜伏使えねぇだろか!!」

 

 

「カズマ、自分だけ逃げるじゃないよ?潔く一緒に地獄に行こうぜ?」

 

 

「なんていう清々しい笑顔!!」

 

 

そうこうしている間に闇の中から大量のアンデット達がこちらに向かって群がって来るのが見えた

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「チキショウ!こうなりゃヤケクソだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「まとめてかかって来いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

俺達の三者三様の悲鳴が通路に響いていた…

 

 

************************

 

 

「ヒック…エッグ」

 

 

「…何があったのか聞いて良いですか?」

 

 

クエストに行った俺達を追って来たゆんゆんが見たのはダンジョンの入り口前で泣いているアクアとボロボロな状態でいる俺達だった

 

 

「もう二度とアクアとはダンジョンには入りません」

 

 

「し、仕方ないじゃない!私がアンデットにたかられるのは生まれつきなんだから!!謝って!私と一緒にダンジョンには行かないと言ったことを謝ってよ!!」

 

 

「開き直ってんじゃねぇよ!置いていかれなかっただけでもありがたく思え!!」

 

 

「そうは言ってますけどカズマは一度私達を見捨てて逃げようとしましたよね?」

 

 

そんな醜い言い争いを見ていたゆんゆんが俺達にパラライズを使ったのはそれから数分後のことだった。

 

 

 

 

「そのキールのダンジョンで何かあったの?あったのは宝物だけじゃなかったんでしょ?」

 

 

パラライズが解けて何とか動けるようにようになった俺が立ち上がるとゆんゆんがそんなことを聞いてくる

 

 

「そうですね。ダンジョンの奥にいたのは愛する人の為にひとりでずっと生きていたひとりの『人間』がいただけですよ」

 

 

そう言うと俺はダンジョンの奥であったことをゆんゆんに全て話した。そして話を聞き終えたゆんゆんは優しげな表情を浮かべ

 

 

「その人は絶対に幸せだった筈よ?同じ女性としてそこまで大切に思われたんだから未練なんて絶対にないわよ、断言しても良いくらいに」

 

 

「そうですよね…きっと、そうに違いないですよね。未練なんかなかったですよね…絶対に」

 

 

ゆんゆんの言葉に夕焼けに染まる空を見上げるとふたりがいつか再会出来ることを心の底で祈った

 

 

 

その夜ギルドにて大規模な宴会が開かれることになった。

俺達がお宝を手に入れたことが漏れたのか冒険者連中から奢れコールを受けたカズマが気を良くしてギルドにいる全員に奢ることになり今に至る

 

 

「全く…カズマらしいと言ったらカズマらしいですが後で後悔しても知りませんからね」

 

 

呆れたように俺はそう言うが、カズマのそういうところが周りから好かれる要因であることを俺はちゃんとわかっているのだ

その後調子に乗ったカズマがゆんゆんにスティールを仕掛けると案の定パンツを奪い取ってしまい、周りの女性冒険者達にボコられ、そしてアクアの宴会芸が炸裂し何時もの夜以上にアクセルのギルドは賑やかなのであった。

 

 

「呑気なものだなねぇ…ま、束の間の休息ってのを精々楽しんで置くんだね」

 

 

そんなことを言っているのはギルドの扉に寄りかかっているクリスだ。

しかしクリスの言葉はこの場にいる人間の耳には届くことはなかった

 

 

 

 

 




感想と評価をお待ちしてます。


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この素晴らしい縁談に祝福を!!

「こんの馬鹿がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「私だけが悪いんじゃないもん!カズマだってみんなだって喜んでくれたじゃない!」

 

 

「うっせぇ!!こうなりゃお前のヒラヒラを売っぱらってやるからそれをよこしやがれ!!」

 

 

「いやぁ!これは私が女神であることの唯一のアイデンティティなの!それを奪わないでぇぇぇ!!」

 

 

地下ラボから上がってきた俺の目に写ったのはアクアのヒラヒラを奪い取ろうとするカズマとそれをオロオロとして見ているだけのウィズの姿だった

 

 

「一体何があったんですか?」

 

 

「聞いてくれよめぐみん!コイツが昨日のクエストの報酬を全部飲み代に使いやがったんだ!」

 

 

カズマ曰く、昨日のキールのダンジョンで得た報酬をアクアが全て飲み代の支払いに使ってしまったらしい。まぁ、あんだけ飲んで騒いでたら金なんか無くなるわな

 

 

「カズマ、落ち着いて下さいよ。アクアだけの所為ではないでしょう?周りに奢ると決めたのはカズマですしちゃんと自重しなかった貴方にも非はありますよ?」

 

 

「うぐ…そ、それはその通りだけど」

 

 

カズマも俺の言う通りだと思ったのか、反論はしてこなかった

 

 

「ほら!めぐみんも私だけの所為じゃないって言ってるじゃない!謝って!私が悪いって言ったことに謝ってよ!!」

 

 

「貴女は貴女で調子に乗りすぎです。貴女にも責任の一端が有るのを忘れないで下さい」

 

 

そう言って俺はアクアの頬を引っ張る

 

 

「ご、ごへんなふぁい!お、おねふぁいだから頬を引っ張らないで!!」

 

 

「ふぅ…念の為に手を打って置いて良かったですね」

 

 

アクアの頬を離した俺は溜息を吐いた後そう言った

 

 

「めぐみん?一体何の話をしてるんだ?」

 

 

カズマが不思議そうな顔で俺に尋ねて来たので俺はカズマに念の為に打っといた手の内容について説明をする

 

 

「ルナさんに頼んでカズマ達が得る予定であった報酬の一部を借金返済に充てるように頼んでいたんです。こんなことになるのは予想していましたから」

 

 

「流石に何も言い返せねぇ…一体いつになったらめぐみんの助けなく借金を返せるんだか…」

 

 

カズマは肩を落とした様子でそう言っていると入り口の扉を開けてダクネスが慌てた様子で店内に入って来た

 

 

「カズマ、めぐみん!頼む!私のことを助けてくれ!!」

 

 

そう言っているダクネスの服装は何時もの鎧姿ではなく黒いドレスと令嬢が被るような帽子をかぶっていた

 

 

「えっと…ダクネスで良いんだよな?」

 

 

普段のダクネスからは予想出来ない姿にカズマは混乱をしているようだ

 

 

「カズマ。気持ちは分かりますが彼女はダクネスで間違いないですよ?それで?ダクネスは何から私達を助けて欲しいのですか?詳しく説明をして下さい」

 

 

「そ、そうだな。詳しく説明する前これを見て欲しい」

 

 

そう言ってダクネスが懐から取り出したのは、一枚の写真だった。

 

カズマが代表してそれを受け取ると

 

 

「これって…イケメンの写真か?」

 

 

カズマの言葉を聞いて俺達が覗き混むとそこには爽やかなイケメンの姿が映っていた。

確かに写真に写っている青年の容姿はイケメンの部類に入るし、もし俺に戦兎としての記憶もなく普通の少女だったならば、一目惚れしても可笑しくはない容姿をしていた。しかも一目ですごく良い人だと分かるオーラも纏っているが…

そもそもこいつは何者なんだ?ていうか、この人とダクネスのピンチに一体どんな関係があるんだ?ダクネスが騒いでいる意味が理解出来ずにダクネスに直接聞こうとした時

 

 

「カ、カズマさん?写真をいきなり破ったりしてどうしたんですか?」

 

 

俺がウィズの方向を見るとカズマが受け取った写真を破りかけていた

 

 

「カズマ!お見合いの写真に何をしているんだ!?そんな事をしたら、お見合いを断れなくなってしまうだろうが!!」

 

 

「あ…いや、悪い。無意識に手が動いてしまって…」

 

 

「無意識って何だよ?カズマはイケメンに恨みでもあるわけ?」

 

 

俺はカズマの奇行に冷静に突っ込みを入れていると

 

 

「あの…ダクネスさんは先程この写真をお見合い写真って言いましたよね?もしかしてさんが言っている大変なことって…」

 

 

ウィズの言葉によりズレかけた話題を修正出来たので俺達はダクネスに詳しい事情を聞いた

 

 

「…つまり、話を纏めるとこう言うことですか?危険な冒険者稼業をやめさせたかったダクネスの父さんが以前からお見合いのセッティングをしていたと、でも、ダクネスとしてはまだ結婚したくないから今までは全て断っていた…それで良いんですよね?」

 

 

「その通りだ」

 

 

アクアが破れた写真を修理中なのでアクアを除いたカズマにウィズそして俺の3人でダクネスのお見合い対策をすることになった。

取り敢えず分かったことはダクネスのお見合いが今日の昼からあると言う事と、それを断る事は出来そうにないということだった。

 

 

「どうして今回に限って断ることが出来ないのですか?今まではなんだかんだで断っていたのでしょう?」

 

 

ダクネスの父さんの地位はそれなりに高い筈だ。断れるのは簡単な筈だし、何よりも見合い相手は若い。ダクネスの父さんよりも地位が高いとは思えなかった。

そんな俺の考えを分かったのか、ダクネスがその理由を俺達に説明してくる

 

 

「写真に写っているのはアルダープの息子なのだ。アルダープは先日の一件以降貴族として領主としての立場が苦しくなったようでな、何とか立場を立て直す為に今回の見合いを設定したのだ」

 

 

そこまで言うとダクネスは頭を抱えると困った様子で

 

 

「おまけに息子の方はアルダープとは違い黒い噂が一切ない上に実力も高く、周りの評価も高くてな…父も彼を高く評価しているだ。だから私と息子との結婚については乗り気なんだよ」

 

 

「成る程…事情は分かりましたがアルダープ一体何を企んでいるのでしょうか?この前の裁判の時にはダクネスに対して欲望を隠していませんでしたから」

 

 

どうして奴はダクネスに自分の息子との結婚を申し込んだりしたんだ?息子の幸せを祈るような男には見えない上にどちらかというと奴は自分の欲に率直な人間に見えるだろう。

 

 

「何かが引っかかります…奴に一体どんな魂胆があるんでしょう?」

 

 

奴の狙いが分からない。みんなで奴の狙いに付いて考えていると

 

 

「やったわ!写真が直ったわよ!!」

 

 

そう言って見事に直った写真を持ってアクアが俺達に近づいて来る。アクアが持って来た写真は破れたことが嘘ではないかと思ってしまう程綺麗に直っていた。

…こうも見事に直すなんてアクアは本当に器用だ。いっそのこと、こっちの道で生きた方が良いんじゃないのか?

 

 

「あの…ダクネスさんって一体何者なんですか?貴族からお見合いを受けたりお見合いを断ったり、普通の冒険者だとは思えないんですけど…それにめぐみんさんはダクネスさんの秘密を知っているようですが?」

 

 

ウィズの言葉に俺とダクネスは頷き合うとダクネスは意を決した様子で自分の素性を告白する

 

 

「私の本名は…ダスティネス・フォード・ララティーナと言う。なんていうか…そこそこ大きい貴族の娘だ」

 

 

「ダ、ダスティネス家ですって!?」

 

 

ダクネスの言葉にウィズは驚いたのか大声でそう叫んでいた

 

 

「そこそこどころか、王家の懐刀って呼ばれてる大貴族ではありませんか!!ダクネスさんは本当にあのダスティネス家の娘なんですか!?」

 

 

「ダスティネス家って一体どれだけ凄い家なんだよ?王家の懐刀って言われるだけだから大貴族なのは間違いないだろうけど…」

 

 

首を傾げているアクアとカズマと驚いた様子をしているウィズの姿が対象的だ

 

 

「分かりやすく言いますとダクネスの家はこの国でも有数のお金持ちと言うことと、とんでもない権力を持っているということですね。とはいえダスティネス家自体は倹約家で知られていて無駄な贅沢はしていないと有名ですが」

 

 

俺がダスティネス家についてそう説明すると

 

 

「めぐみんは何時それを知ることが出来たんだよ?そしてどうしてそれを俺達に隠していたんだ?」

 

 

話を聞いていたカズマが当然の疑問を俺にぶつけてくる

 

 

「私は仕事の関係上ダスティネス家と関わることがあったのでダクネスの素性を知ることが出来たんですよ。カズマ達に隠していたのもダクネスの意思だったのでそれを尊重しただけです」

 

 

俺の話を聞いたカズマは納得した表情を見せた後

 

 

「まぁ…ダクネスが例え大貴族の娘だとしても俺達の仲間である事には変わらないからな、これからも仲間としてよろしく頼むぜ?」

 

 

「カズマ…ありがとう。これからもよろしく頼む」

 

 

そう言って安心したように微笑むダクネス。

 

恐らく今までは正体を明かした結果パーティーを解散させられたか距離を置かれるなどの目にあったのだろう。だからこそ、自分の正体を知っても変わらずに受け入られたことが嬉しかったのだろう

 

 

「取り敢えずダクネスさんの素性の話はこれぐらいにしまして今はダクネスがどうやってお見合いを断ることが出来るのかを考えることにしましょう」

 

 

ウィズの言葉を聞いた俺達は頭を切り替えるとダクネスが如何にしてお見合いをせずに済むかを考え出す

 

 

「それなら私にある考えが有るんですが…」

 

 

俺は自分の考えを全員に話す

 

 

「例え断ったとしてもダクネスの父さんはまた勝手にお見合いのセッティングを始めると思います。だったらいっそのことを今回のお見合いを受けたらどうでしょうか?」

 

 

「一体何を言っているのだめぐみん!?私は見合いを受けるつもりはないと言った筈だぞ!?」

 

 

俺の言葉に焦った様子でダクネスはそう言ってくる

 

 

「勿論そのお見合いは成功させるつもりはありません。ダクネスが家の名誉を傷付けない程度に暴れる事で相手から断るように仕向けるんです。そうなればダクネスの父さんも次からは慎重になるかもしれませんよ?多分、ですが」

 

 

俺のアイディアを聞いたダクネスは満面の笑みを浮かべると

 

 

「よし、それで行こう!それが成功すれば、毎度親父の元に行って張り倒す必要がなくなる!!」

 

 

…毎度自分の父さんを張り倒してるのかよ、張り倒されているダクネスの父さんが不憫過ぎるな

 

 

「ですが、やり過ぎてしまいその所為でお見合いする相手が居なくなる事態になるのは避けなければならないですけどね」

 

 

付け加えるようにダクネスに俺はそう言うとお見合いを台無しにする為のサポートとして俺とカズマにアクアが使用人としてダクネスに同行し上手い具合に失敗する方向に先導していくことに決まり、俺達4人はダクネスの屋敷へと向かった。

 

 

************************

 

 

「ララティーナ、本当か!?本当に、今回のお見合いは受けてくれるのか!!」

 

 

そう言ってダクネスの父さんは興奮気味にダクネスの両手を掴む

話に聞いていた通りダクネスの父さんは大貴族の割には自分の娘には甘いタイプのようだ

 

 

「本当です、お父様。このララティーナ、この度のお見合いお引き受けしようと思います」

 

 

あのダクネスが何時もとは違ったお嬢様じみた言葉遣いを使っている。

普段の冒険者としてのダクネスの姿を知っている俺達は笑い声をあげないように堪える。だか、ダクネスにはそんな俺達の様子が見えているのか顔を真っ赤に染めて俯いていた。

 

 

「ララティーナ、此処にいる3人は」

 

 

「わたくしの冒険者仲間です。今回のお見合いにメイドと執事として同伴させようかと」

 

 

「成る程…ん?君はもしかして最近アクセルの街で有名な天才発明家のめぐみん君ではないかね?」

 

 

流石は大貴族。ダクネスの父さんは俺の噂を聞いているらしい。それと、一応修正しておくと俺は発明家ではなく天才物理学者なのだが…

 

 

「めぐみん君がララティーナと冒険者仲間だったとは知らなかったよ。君ならば安心出来るとは思うがそのふたりは…」

 

 

 

ダクネスの父さんはアクアとカズマのふたりを不安にそうに見る。俺と違いこのふたりは一般人だ。その上、執事やメイドとしての訓練を受けていないカズマ達が同伴したことで不備を起こされて、ダクネスや家の名が傷つくことを恐れているのだろう。

ダクネスの父さんには悪いが今回の目的がそれなのでどうしたもんかと考えていると…

 

 

「初めまして、私は日頃からララティーナお嬢様のお世話になっている冒険者のサトウカズマと申します。今回の件ですが、もしお嬢様が結婚となれば、一介の冒険者に過ぎない私達は、二度と顔を合わせることは出来なくなってしまうでしょう。ですから、お嬢様の仲間としてどのような方と結婚なされるのかこの目で拝見したいのです。無理な望みとは承知しておりますが、どうかお願い存じ上げます」

 

 

……誰だ。コイツ?今のカズマの姿を見てそう思ったのは俺だけじゃない筈だ。

 

 

************************

 

 

「こちらがメイド服と執事服です。カズマ様はお隣の部屋で、アクア様とめぐみん様はこちらの部屋でお着換えください」

 

 

メイドから執事服を受け取ったカズマは隣の部屋に入り、そして俺達はメイドからメイド服を受け取るとメイド服に着替え始めた。

…まさかメイド服を着ることになるとはな、これをバンジョウに知られたら間違いなく腹を抱えて笑われたことだろう。…旧世界の雑誌で見たことのあるメイド服とは違いメイドから渡されたメイド服は露出が少ないのは俺が見たのはメイドカフェやコスプレなどに使うものだったのだろう。

美空が着ていたメイド服なんてスカートが異様な短さで目線を逸らすのに苦労した。そんな事を考えてる内に着替えを終えたのかカズマが部屋に戻ってくる。

 

 

「二人とも、似合ってるじゃないか」

 

 

俺達の姿を見たカズマはそう言って褒め称えくる、中身は桐生戦兎のままなのだから褒められても全く嬉しくない上にまるで俺だけ罰ゲームを受けている気分になるのは何故だろう?

それにカズマはカズマで俺の正体を知っているので特に意識した様子はなく寧ろアクアの姿を見て何かを考え込んでいるようだった。…恐らく、これで中身も伴っていればなぁ…と考えているのだろうな。

まあ…否定のしようがないし面倒くさいから突っ込まないことにしよう。

一方で執事服を着ているカズマもお世辞にも似合っているのかと言われたら似合ってはいないと言ってしまうようなものであり。もし、本人に似合っているかと言われたら感想に困るだろう

 

 

「これで準備は出来たので行く事にしましょうか、確か…お見合いはこの家でやるのですよね?」

 

 

「ああ、そうなっている。3人とも手はずは分かっているな?変な事はしでかさないようにしてくれ。流石に庇いきれないないからな」

 

 

相手はこの土地の領主の息子、変な印象を与えることは避けるようにするつもりだ。そして屋敷の玄関には使用人達と俺達が並びその中央にはダクネスとダクネスの父さんが立っている。

…自分がまさかこういった光景に立ち会うことになるとは思わなかった。こういう光景は映画か漫画の中くらいでしか見たことがない。

商売上、何度か貴族の家にも行ったことはあるがこんな形で出迎えられたことなどはなかった。俺がそんなことを考えながらお見合い相手が来るのを待っていると

 

 

「しかし……お前がお見合いを受け入れてくれるなんて嬉しいよ。アルダープの奴からお見合いの話を持ちかけられた時は何事かと思ったが、あいつはともかく、息子のバルターは本当に良い男だ。きっとお前を幸せにしてくれるはずだ」

 

 

そんな事を言いながらダクネスの父さんはにこやかにダクネスに微笑みかける。

それに対して、顔を俯かせているダクネスはプルプルと肩を震わせていた。

…まさかダクネスは今此処で見合いの場を滅茶苦茶にするつもりか?

 

 

「いやですわね、お父様。わたくしはお見合いを受けると言いましたが、結婚するなんて一言も申しておりませんわ。今更止めようとしても遅い。ふっふっふっ、ぶっ壊してやる!二度と私にお見合い相手が出来ないように、滅茶苦茶に引っ掻き回してやる!!」

 

 

ダクネスの奴…完全に暴走仕掛けてやがる。見ろよ、ダクネスの父さんをこの世の終わりのような表情をしているぞ?ダクネスの気持ちは分からないでもないが、少しは父さんの気持ちを考えやれよ。

そしてお見合い相手がやって来たのか、玄関の扉がゆっくりと開かれるのに対してダクネスは何を待ち構えているのか腕を構えて仁王立ちをしていた。

 

 

「バルターよ、よく来たな!私の名はダスティネス・フォード・ララティーナ。これからはダスティネス様と呼ぶが……」

 

 

流石にこれは駄目だろ。

そう感じた俺がララティーナの後ろ首に手刀を落とすことで会話を強制的に中断させた。

 

 

************************

 

 

「めぐみん!どうして邪魔をするんだ!あともう一歩でお見合いをご破算にできたのだぞ!!お前は私に協力してくれるのではなかったのか!?」

 

 

ダクネスが涙目で俺達にそう訴えてくる。因みに見合い相手であるバルターにはダクネスは少し緊張しているということで、落ち着かせるという名目で隣の部屋に強制的に連れて来た

 

 

「確かにそう言ったが、家の名前に傷をつけない程度にという条件を忘れているだろ」

 

 

「ダクネス。気持ちはわかりますが少しは父さんのことを大切にしてあげてはどうでしょうか?あれでは余りにも不憫ですよ?貴女も父さんのことは嫌いではないのでしょう?」

 

 

「うっ……確かに父のことは嫌いでない。男手ひとつで私を育ててくれたのだからな。しかし、私は自分が決めた相手と結婚をしたいのだ、それにあの男は私のタイプではない。毎回、父がお見合いを持ってくる男にはロクでもない奴しかいなくてな」

 

 

確かに人の好みというのは十人十色で様々な形があるだろう。だが、見合い相手のバルターは元男の俺から見ても中々にイケメンだと思う(桐生戦兎だった時の自分には及ばないが)

 

 

「まず写真から分かる通り、顔がイマイチだな」

 

 

「そうか?こいつがいまいちだとミツルギなんてブサイクな奴になると思うが?」

 

 

カズマの最もなコメントに俺もアクアも頷き合う

 

 

「それに、評判も全く駄目だ。聞く話ではとても人当たりが良く、平民だからと言って差別はせず、こちらに非があれば素直に頭を下げ、家臣が失敗しても怒らずに、一緒に失敗の原因を考える変わり者らしい。また、剣術にも優れ、頭も良く。まるで絵に描いた理想のような貴族だと言ってもいい」

 

 

「ねぇ、ダクネス。聞く限りだとすごく良い男に見えるんだけど、どこが不満なの?」

 

 

アクアの言う通りにその噂が本当ならば優良物件じゃないか、何をそんなに不満に思う必要があるのか不思議だ

 

 

「どこが?だと!!全てが不満に決まっているだろ!!平民に頭を下げるとはなんだ!?それに私の好みタイプはあのように、出来る男とは違うのだ!!私が求めているのは私の身体をじろじろと舐めるような視線を向けるスケベ心と他の女にホイホイと飛んでいく意志の弱さが絶対条件なのだ!!後は日頃から仕事をしたくないと言いのたまっている、人生を舐めきった心と、何か悪い事があれば世間が悪いという、自分の責任を絶対に認めようとしているところがあれば尚良い!そして私はそんな男の元に嫁いで酷い目に遭わせれ、最終的にこう言われるのだ!『ダクネス。お前のその身体でカネを稼いでこい』っと…くぅ!んぁぁ………ッ!!」

 

 

ダクネスの余りにもアレな本音にその場にいた全員が節句する

 

 

「なぁ、めぐみんにアクア。こいつの頭を治せる発明品と治癒魔法はないのか?」

 

 

「残念だけど無いわね。私が治せるのは病気と怪我だけで元から可笑しいのは治さないもの」

 

 

「私の発明品も頭を治せるものはありませんね」

 

 

そんな俺達の話を聞いていたダクネスは何故か顔を赤くして息をはぁはぁとさせていたので俺はもう手遅れなのだなぁと考えていると

 

 

「兎に角、お前達が私の邪魔をするなら、私自身の力でお見合いをぶち壊してやるから覚悟しておけよ」

 

 

ダクネスは発情していた表情を引き締めると部屋から出て行こうとしたのを俺は引き止める

 

 

「ダクネス。お前の性癖については諦めたから何も言うつもりはないが、冒険者を続けたいならばもう少しちゃんとした理由をつけたらどうだ?今のお前じゃ、父さんを納得させることなんて出来ないぞ?もう少し父さんを大切にしないと、もしもという時に必ずお前は後悔することになる」

 

 

俺は父親であった葛城忍について思い出す。地球を守る為エボルトを倒す為に人類を裏切ったふりをし、命をかけて俺達を守ろうとしてくれた。俺がそんな父さんの真意に気づくことが出来たのは最後の時だった。その後、間も無く父さんはエボルトの手により殺されてしまった。あの時は死ぬ程後悔をした。もう少し父さんを信じられていれば…と

だからこそ、今のダクネスに忠告をする

 

 

「めぐみん…そうだな、その通りだ。私は…バルターに全て告白をしようと思う。その上で見合い話を断ることにするよ」

 

 

俺の言葉に感じるものがあったのかダクネスはそう言うと部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

「バルター様、私はまだ結婚を考えては居ません。仲間達と共に冒険者稼業を続けて行きたいのです、なので、これから私と貴殿で一対一の決闘をし、もし私が勝てたら貴殿とのお見合いはなかったことにしていただきたい」

 

 

大広間に移動したダクネスはバルターと向かい合うと自分はまだ冒険者を続けたい意思を伝え、そしてその上でバルターに決闘を申し込む。わざわざ決闘を申し込んだのは自分の覚悟がお嬢様のお遊びでなく、本気であると伝えたいのだろう

 

 

「…ララティーナ様、僕は騎士です。いくら事情があるとはいえ女性相手に手なんて上げられません」

 

 

そんなバルターの紳士とも言える言葉を聞いたダクネスは表情を厳しいものに変えると

 

 

「バルター様、私は自分の全てをかけてこの勝負にかけることにしました。それを貴方は私が女性だから自分は騎士だからといって受けないつもりですか!?…それは私の覚悟を愚弄する発言ではないか!?」

 

 

ダクネスの言葉を聞いたバルターもダクネスの覚悟に対して答えることを決めたのか、木刀を構えるとダクネスの振り下ろした木刀を華麗にかわした後、手に持った木刀を腹の辺りに叩きつける、普通ならばこれで勝負あったとなるところだが…

 

 

「どうした、これでお終いか?私はまだまだ大丈夫だぞ?」

 

 

そこにはピンピンした様子のダクネスがいた。そりゃそうだ、ダクネスは守備力だけは馬鹿高いからな、…普通ならば良いシーンに見える筈なのにそんなシーンには全く見えないのは何故だろうか?

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

「どうした、これでお終いか?私はまだまだ大丈夫だぞ?」

 

 

数分後、息を荒くして膝を先に地面につけたのはバルターだ。

正直、異常な硬さと高すぎる体力を持ったダクネス相手に木刀で勝てる道理はないし必然的にバルターの方が不利になる。

しかもダクネスはダクネスで木刀で何度も叩かれたことに興奮して喜んでいるのでかなり不思議ないや、かなり奇妙な光景が其処にはあった

ダクネスはそんなバルターに対して心底つまらないという表情になると

 

 

「カズマ、次はお前の外道さをこの男に見せてやれ」

 

 

そう言ってダクネスはカズマの方に木刀を放り投げた

 

 

「ダクネス、お前は一体何を言ってんだ!?そもそも誰が外道だ!!」

 

 

「ララティーナ様が認める男の力、僕も見て見たいな……」

 

 

カズマの突っ込みも虚しくバルターのその言葉によって決闘を受けなければいけない雰囲気になり、カズマは面倒くさげな顔をしながらも仕方なく木刀を拾う

 

 

「本当に良いのかダクネス?悪いが俺はお前に一切の手加減なしで行くぞ?」

 

 

「それで構わない!むしろそうしてくれ!!さぁ、お前の全力を私にぶつけてくれ!!」

 

 

…シリアスな雰囲気がいつの間にかシリアルに、こいつは本当にどうしようもないな。何故こいつがお嬢様なんだ?

このまま結婚させるか勘当させた方が家の為になるんじゃ?いや、駄目だな、こいつの性格を考えたら逆に喜びそうだ。

そしてダクネスとの対決を始めたカズマはいきなり片手を突き出すと

 

 

「『クリエイト・ウォーター』ッ!!『フリーズ』ッ!!」

 

 

カズマの奴、剣での勝負で魔法を使ってやがる。しかも水と冷気のコンボ技だ、酷過ぎる。

しかもダクネスはドレス一枚の状態の為、水を受けたことでドレスが透けて下着が丸見えになっていた、それには流石のカズマも予想外だったのか、バルターと共に顔を真っ赤にしている

 

 

「…くっ!!やるではないか、カズマ!!こんな真冬に水浸しにした挙句に、こんな辱めを与えるなんて…だ、だが私の心はこんな事で屈しないぞ!!」

 

 

「こんな真冬の中に女性を水浸しにするなんて……」

 

 

「流石が鬼畜のカズマさんね…そんなこと普通誰もやらないわよ?」

 

 

カズマをゴミを見るような視線を向けるアクアとバルター

 

 

「う、うるせぇ!!別に魔法を使っちゃいけないってルールはないだろ!!」

 

 

「いや、それでも普通は使わないのでは?」

 

 

バルターの突っ込みにカズマは顔を背ける

 

 

「流石はカズマだ…だか、其れが良いぃぃぃ!!」

 

 

ダクネスは顔を真っ赤にし発情しながらカズマに掴み掛かるがカズマが両手でダクネスの腕を掴むと

 

 

「『ドレインタッチ』!!」

 

 

カズマがドレインタッチによりダクネスから魔力と体力を奪い取っていく

 

 

「ド、ドレインタッチか、残念たが、この私の体力の高さは尋常ではないぞ?体力を全て吸われる前にこのままケリをつけてやる!!」

 

 

確かに素のステータスはダクネスの方が上だ、このまま行けばカズマがダクネスの体力を全て吸い取るよりも早くねじ伏せることが出来るだろう。

だが、それはカズマもわかっているのか

 

 

「お、おい、ここはひとつ賭けをしないか?勝った方が好きなことを命令出来るというなぁ?勿論どんなこともアリだ。もし、俺が勝ったらお前にしゅごいことを願ってやるよ…お前が後悔して死にたくなるぐらいになぁ〜」

 

 

カズマが物凄い悪どい笑みでそんなことを言っている。そんなカズマの言葉を聞いたダクネスはどんなしゅごいことを命令されるのかと考えたのか顔をみるみる赤くさせると理性の臨界点を突破したのか

 

 

「しゅ…しゅごいことぉぉぉぉ!!」

 

 

そう叫ぶとダクネスは仰向けで倒れて気を失った

 

 

「や、やったぁ…俺の勝ち」

 

 

流石に罪悪感を感じているのか顔を引きつらせながらカズマがそう言っているとダクネスの父さんが使用人達と一緒に大広間に入ってくる

 

 

「やぁ、ふたりとも調子はどうかな?少し一休みを…」

 

 

そこまで言うとダクネスの父さんがカシャン!!という音と共に手に持っていたワインボトルを落とす。

…今のダクネスの姿はびしょ濡れの状態で顔を赤らめた様子で気を失ってる、これはどう見てもアレな光景にしか見えないだろう。

アクアも其れが分かっているのかカズマとバルターを指さすと

 

 

「あのふたりがやりました」

 

 

「よし、処刑しろ」

 

 

「「違います!誤解です!!」」

 

 

いや、カズマの方は誤解とは言い切れないよな?内心俺はそう突っ込むと必死に弁明しているふたりに助け船を出した。

その後誤解が解けた為に俺達は気を失ったダクネスを連れて居間の方に移動した

 

 

「ここは……応接間か?私は……」

 

 

「ようやく気がつきましたか?どうして自分が気を失うことになったのかは覚えていますよね?」

 

 

「ああ、私はカズマとの勝負に負けて…まさか、私が気を失った後、口では言えない卑猥な事を私に!!」

 

 

「してねぇよ!何もしてねぇから!!誤解を招くようなことを言ってんじゃねぇよ!!」

 

 

「そ、そうなのか……」

 

 

こいつ…残念がってやがる。もう本当に手遅れになっているな…そんな俺の気持ちなんかつゆ知らずに冷静さを取り戻したダクネスは父さんの事を真っ直ぐと見据えると…

 

 

「お父様。バルター様。どうか今回のお見合いはなかった事にして下さい。実はこのカズマと言う男とわたしは既に…そしてこのお腹には彼の子供が……」

 

 

カズマがダクネスの言葉に呑んでいた紅茶を吹き出す

 

 

「お、お前ふざけんな!!本当にマジで何言ってんの!?」

 

 

「そうか、お腹の中にカズマ君の子がいるのなら仕方ないですね。では私は帰ることにしましょう。お見合いは私から断ったいう事にしておきましょう。その方が都合が良いでしょうしね」

 

「お前もお前で変な誤解をしてんじゃねぇよ!!」

 

 

そんなカズマの言葉を無視するとバルターは爽やかな笑みを浮かべながら立ち上がる。

ダクネスはこの人と結婚した方が良いと思う。普通の人ならばこんな人に結婚と言われたら大喜びするだろう。

 

 

「兎に角、これで見合い話を破断に出来たしそろそろ帰ることにするか」

 

 

俺がそう言って椅子から立ち上がると

 

 

「ま、孫。わ、私の娘に初孫が…」

 

 

ダクネスの父さんが涙を流しながらそう言っていた。

…どうすんだよ。この状況、物凄くややこしいことになってるじゃないか。

その後、俺とカズマの必死な説明により何とか誤解が解け一息をつく為に使用人達に改めて入れて貰った紅茶を飲んでいると…

 

 

「めぐみんさんは!めぐみんとそのパーティーの皆さんはここに居ますか!!」

 

 

俺達のお茶の時間を打ち破るかのようにセナさんが居間に扉を開けて入って来た




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この素晴らしい仮面の悪魔との邂逅に祝福を!!

俺達のお茶の時間を中断させるように入って来たセナさんが真剣な表情で俺達に話をしてくる

 

 

「街の近くにあるキールのダンジョンにおいて謎のモンスターが大量に湧き出してるという報告を受けました。最後にあのダンジョンを探索したのは貴女達というのはわかっています。最後に探索した時に何か予兆みたいなものを感じはしませんでしたか?」

 

 

キールのダンジョンって言ったらつい数日前に俺達が探索したところだよな?探索した時はそんな予兆は感じなかったが…

 

 

「申し訳ありませんが分かりませんね。確かに最後に探索したのは私達ですが特に可笑しいものは見かけませんでしたよ?」

 

 

「俺もだ。俺もめぐみんと一緒に探索をしていたが特に可笑しいものはなかったな」

 

 

「私もそうよ?私がやったのはアンデットの浄化ぐらいよ?」

 

 

だよな?どうやら俺達全員に心当たりがないようなのでそれをちゃんとセナさんに説明しようとした時

 

 

「私がリッチーのキールを浄化する為に書いた魔法陣ならばまだ残ってるかもしれないわね?なんせ、アレは水の女神である私が本気の本気を出して書いたんだから邪なモンスターなんて寄せ付けないわよ?」

 

 

「おい!?今の言った事は本当か!?」

 

 

アクアのその言葉にカズマの表情が変わる。カズマの反応も当然だ、何故ならば魔法陣が残っているということはそれによりダンジョン内にいたモンスター達は居場所をなくし外へと追いやられるということ、それはつまり…

 

 

「セナさん!!ウチの馬鹿が本当に本当に申し訳ございませぇぇぇん!!」

 

 

カズマが額を擦り付けながらセナさん達に謝っている

 

 

「クズ…私は悪くないのに…悪いことはしてないのに…良かれと思ってやっただけなのに…」

 

 

アクアは頭にタンコブをいくつも作った状態で涙をポロポロと流していた

アクアに悪気はないのはわかってるよ?でもよ、前の幽霊屋敷の件と良い、今回の騒ぎと良い、無自覚にやらし過ぎなんだよ。下手すれば今回の騒ぎの元凶としてそのまま捕らえられても文句は言えないぞ?

 

 

「あの…取り敢えず貴方達に悪気はなかったのはわかったので、泣いているアクアさんを何とかして貰えませんか?流石に気の毒に見えて来たので…」

 

 

必死で謝るカズマと泣いているアクアを気の毒だと思ったのかセナさんがフォローに入る。確かに見ている奴らが思わず同情を覚えてしまうレベルなのだから無理はない。

 

 

「悪意がなかったとはいえこの騒ぎの原因は私達にあります。なので協力をさせて下さい」

 

 

俺が事態の解決に協力を申し出るとセナさんも嬉しそうな表情になる

 

 

「めぐみんさん達のパーティーとしての実力は知っているのでそう言ってくれると助かります…アクアさんにも悪意がなかったのはわかっていますので解決してくれれば今回は特別にお咎めなしということにしますので…」

 

 

「そうしてくれるとホント助かります…」

 

 

セナさんの言葉にカズマは一度あげた頭をもう一度下げたのだった。

 

 

 

その後キールのダンジョンに向かう準備をする為に俺とカズマにアクアそしてダクネスはギルドに向かうと暇そうにしていた冒険者の何人かに声を掛けるのと同時にアクセルの屋敷に丁度戻って来ていたミツルギとゆんゆんにも声をかけた後充分な準備を整えてキールのダンジョンへと向かう

 

 

 

「ウィズの店で魔法陣を消せる魔道具はで買ったから、早く魔法陣の場所に行って魔法陣を消せばそれで万事解決だな」

 

 

そう言いながらカズマは背にあるリュックを指差す。

カズマの言う通りに魔法陣を消すことで全てが終われば良いが…今までのケースを考えるとそれだけで終わらない気がするのは気の所為だろうか?

まぁ、念の為にゆんゆんとカズマのベルトは持って来ているから大丈夫だとは思うが…俺はそう考えながらベルトが入っているカバンに目を落とす。だが…その時の俺は気づかなかった、カバンの中にいつの間にか紛れ込んでいた『赤いトリガー』の形をしたアイテムがあることに…

 

 

「成る程…謎のモンスターってのはアレのことか、確かに謎のモンスターだな」

 

 

ダンジョンにたどり着いたカズマの言葉に俺が入り口へと目を移すとそこには仮面を被った小さな人形が沢山歩いていた

 

 

「こんなモンスター見たこともないですね。ダクネスとゆんゆんは知ってますか?」

 

 

「ごめんなさい。あんなモンスターは図鑑でも見たことはないわ」

 

 

「悪いが私も初めて見るモンスターだ。悪いが誰がこのモンスターについて知っている者はいないか?」

 

 

俺達が未知のモンスターに対して警戒していると

 

 

「なによ、皆こんなちっこいモンスターに恐れてるの?全くだらしないわね。ちょっと見ておきなさい、私がこいつらを退治してみせるわ。それになんか見てるだけで妙にイライラしてくるしね」

 

 

「ダメです!相手がまだとんな奴がわかっていないのに不用意に近づいては!」

 

 

俺の忠告を無視してアクアはその小さいな人形にズカズカと近づくと踏み潰そうと足を上げた時に小さな人形の内の一体がアクアの足にしがみついて来る

 

 

「あら?こうしてみると中々可愛いじゃない、ほら、こっちに来なさ」

 

 

アクアの言葉が最後まで続くことはなかった。

何故ならばアクアの足にしがみついていた小さな人形が光り出すとそのまま爆発を起こしたからだ、爆発した後アクアは爆破の中心地で伏せた状態で倒れていた

 

 

「成る程、張り付いてから爆発する習性かあるようですね、中々に厄介です」

 

 

「確かにな、対策としては近づく前に攻撃することが最善手か?」

 

 

俺とカズマがあーでもないこーでもないと対策を話し合っていると

 

 

「ちょっと!少しは私の心配をしなさいよ!!」

 

 

すす汚れたアクアがかばっと起き上がると俺達に抗議してくる

いや、アクアのステータスは高いしちょっとしたことじゃダメージは受けない上に勝手に独断行動をしたアクアの自業自得だろ?一応は忠告もしたし、カズマも同じことを考えているのかため息を吐いていると

 

 

「君達は…この人が水の女神様だと忘れてはいないかい?」

 

 

「ミツルギさん。私が知っている女神は人様に迷惑をかけたり借金を作ったりはしないと思いますが?」

 

 

呆れたように言うミツルギに対してゆんゆんの鋭い突っ込みが刺さる。

流石のミツルギも言い返すことが出来ないのか顔を逸らした。コイツ…前のチョーカーの一件以降、少しだけアクアに対するイメージが変わったのか少しだけ態度がこちらよりになった気がするな

 

 

「カズマさんにはコレを渡して置きます」

 

 

セナさんはカズマに小さな札らしきものを渡してくる

 

 

「これに強力な封印の魔法が込められています。モンスター発見の原因は未だに分かっていませんが、召喚によるものならば魔法陣に貼るだけで効果がありますのでダンジョンの最奥地にてそれをお貼り下さい」

 

 

カズマは其れを受け取るとポケットの中に仕舞った後、ダンジョンに入る準備を始めた

 

 

「そうだ。カズマとゆんゆんにはベルトを返して置きますね」

 

 

俺はカバンの中からビルドドライバーとスクラッシュドライバーを取り出すとカズマとゆんゆんに返した

 

 

「お、メンテナンスが終わったのかサンキュー」

 

 

「ありがとう、めぐみん。もしもの時の備えがあるとやっぱり安心感が違うもの」

 

 

カズマとゆんゆんはそれぞれに礼を言うとベルトを受け取る

 

 

「よし、ダンジョンに入るメンバーは先頭には守りの要のダクネスが次に俺が他の冒険者達は俺達の周りをめぐみんは中心から俺達のサポートを頼む」

 

 

カズマが地面に詳しく絵を描きながらそう説明する。

こう見えてもカズマは意外と観察眼が高く何気に要所で最適なサポートをしてくれることが多いのだ。だから、こういう時のカズマが立てる作戦は意外と有益なものが多いのだ。

そんな中ダクネスが平然とモンスターの前へ出るとそな小さなモンスターを殴り倒した

 

 

「ちょ、何をやってるんだ!!」

 

 

それを見た冒険者の一人が慌てたダクネスを静止する。もしかしてこいつ、ダクネスの防御力の高さを知らないのか?

そういえばこいつ、あのベルディアとの戦いの時もデストロイヤー襲来の時も見かけなかったよな?

俺がそんな事を思っていると爆発音が聞こえてきた。どうやらダクネスが攻撃を加えたモンスターが爆破したようだ

 

 

「ふむ、こんなものか……」

 

 

だが、爆発の直撃を喰らった思われるダクネスは殆ど無傷で其処に立っていた。

やはりというか予想通りの光景に俺は苦笑いを浮かべる

 

 

「めぐみん。私はミツルギさんと一緒にダンジョン前で待機してるわね。もしも、何かトラブルがあったら何とかして此処まで逃げてきてね」

 

 

大人数でダンジョンに入った場合、もしもの場合の行動に遅れが発生する可能性がある

それにダンジョン内で大人数による戦闘を行うとダンジョン自体が崩れて俺達が生き埋めになる危険もあるのだ。なので、ここは素直にゆんゆんの意見に同意する

 

 

「じゃあ私も、めぐみんと一緒に地上で待ってるわね。支援魔法は掛けてあげるから四人で頑張ってきてね」

 

 

「ちょっと待て!そもそもの元凶はお前だろうが!俺達と一緒にダンジョンに入るんだよ!!」

 

 

「いやよ!入ったらまたモンスターに追い回されるじゃない!私はもう二度とこのダンジョンには入らないって決めたのよ!!」

 

 

どうやらアクアは前回の一件がトラウマになっているようだ。

こうなったアクアはもう役には立たないだろう、大人しく俺達だけでダンジョンに入ることにすると慎重にダンジョン内へと降りていく

 

 

 

 

「ふふふ、あははははは!!見ろ、皆!私の剣が敵に当たっているぞ!私が次々と敵を倒しているぞ!!もうノーコンとは言わせない!!」

 

 

そう言いながら迫りくる敵を切り捨ていくダクネス。

例のモンスター達は自分の方から剣に向かってくるのでダクネスでも余裕で斬ることが出来るのだ、しかも取り零したモンスターはダクネスに張り付いて爆発するがダクネスの異常な硬さの前に何の意味もなさない。…正直言って、かなり異様な光景だと思う。あのステータスの高いアクアだって痛がっていたのに、ダクネスは痛みを感じてはいないのか?…いや、感じてはいるがこいつはそれを快楽に変換しているだけたな。だって、顔を見て赤くして息をきらしてるもん。

 

 

「ていうか、ダクネスの奴自分がノーコンなの気にしてたんだな」

 

 

「そんなに気にしているのならば両手剣スキルを取れば良いだけの話ですよね」

 

 

「それだけは出来ない」

 

 

そんな俺とカズマの話が聞こえたのかダクネスが無表情で振り返りながらそう口にする

駄目だこりゃ、俺は内心そう呟くと気を取り直して奥へと進んで行き、前回キールがいた部屋までにたどり着いた

其処には謎のモンスターがつけていた仮面と同じ仮面をつけ、そしてタキシードを着ている謎の男が土を弄りながら座っていた。

 

 

「貴様が今回の件の元凶か、何の為にモンスターを沢山生み出している?貴様が生み出したモンスターがダンジョンから溢れて出て近くの村や冒険者達が迷惑をしているのだ、貴様の目的は一体何だ?」

 

 

ダクネスが剣先を突き付けながら凛とした声で謎の男に話しかける

 

 

「近くの?…成る程、どうやら当初の目的であるダンジョン内のモンスターの駆除は終わったようだな。それならば、バニル人形の製造は中止して次の段階に取り掛かる事にしよう」

 

 

そう言ってその男はそのバニル人形?の制作をやめて立ち上がる

 

 

「貴方は一体何者なのですか?何故こんなところにいるのか正直に話して貰いますよ?」

 

 

「おっと、これは失礼。吾輩としたことが自己紹介を忘れておったな。吾輩の名はバニル!地獄に住まう悪魔の公爵にして、魔王軍の幹部!!全てを見通す大悪魔、バニルである!!」

 

 

バニルだって!?それって確か、前に読んでいた本に書いてあった上級悪魔のことじゃないか!しかも魔王軍幹部だって?何故、そんな奴がこんな初心者ダンジョンにいるんだ!?

 

 

「そんなに警戒心を抱くのではない。『異世界の仮面の戦士の魂を宿す少女』よ吾輩は魔王軍の幹部と言っても魔王の奴に頼まれて結界の維持のみをやっている、言わばなんちゃって幹部である。それに吾輩たち悪魔は汝ら人間の悪感情を餌としているため、自分達から人間の数を減らそうとはしない。寧ろ魔王軍の活動によって人間の数が減る事は我等にとっての死活問題になっているのだ」

 

 

仮面の男…バニルは俺の考えを見通したようにその言う。

本人が言っていた通り全てを見通す力を持つというのは真実らしいな、だとしたらバニルがこの街に来た目的は一体なんだ?まさか、人間の数が減るのは困ると言っていたがアクセルの街の襲撃を命令されたのか?

 

 

「一応言っておくが、吾輩は別にアクセルの街の襲撃を命じられたわけではない。魔王にこの地の調査を頼まれたのと、働けば働くだけ貧乏になるという奇妙な特技を持ったポンコツ店主に用があっただけだ。お前達と争うつもりはない」

 

 

「悪いですけど悪魔の言うことなんて信用出来ないですね。恐らくはあるんじゃないんですか?調査やそのポンコツ店主とやらに会う以外に目的が…それも説明して貰いますよ?」

 

 

「中々に警戒心の高い人間だな…貴様のようなタイプの人間は我ら悪魔に取って扱い辛い存在なのだが…まぁ、良い、吾輩の真の目的を教えてやろう!」

 

 

そう言うとバニルは目を真っ赤に輝かせながら

 

 

「悪魔とは永久に近い時を過ごす存在でな、それは非常に退屈でつまらない物なのだ。そんな日々を過ごす内に吾輩にひとつの野望が宿った、それは至高の悪感情を食しながら滅びたいというものだ。だが、それをそ実現させる為にはどうすれば良いのか、それを必死に考えた末に、ひとつの案を思いついたのだ」

 

 

「話の途中で悪いがお前の言う悪感情って一体どんなものなんだ?お前以外の悪魔もお前と同じ悪感情を食べるのか?」

 

 

「それはその者によって様々。悪魔も人間と同じように個体によりその味覚は様々。例えば恐怖や絶望と言った感情を好む悪魔もいれば、吾輩のように女に化けて誘惑し、堕ちる直前に『残念、吾輩でした!』っと言って相手に血の涙を流させるのが好きな悪魔もいる」

 

 

「この悪魔、退治された方が良いんじゃないか?」

 

 

カズマが俺の方を向くとそう言ってくる。バニルも所詮は悪魔だからなのか、人がどのようなタイミングで1番精神ダメージを受けるのか的確に把握しているのだろう

 

 

「おっと、その悪感情は吾輩好みではないが…一応、悪感情を喰わせてくれた礼をしよう、悪魔というのは吾輩を含め、全員そんなものだ。…話を戻させて貰うぞ?」

 

 

そう言うとバニルは眼を更に真っ赤に輝かせ表情を愉快そうに歪ませると

 

 

「まず、ダンジョンを手に入れるのだ。そしてそこには我が部下を配置し苛烈な罠を仕掛ける。そこに挑む冒険者は何度も失敗を繰り返しながら一歩ずつ進んでいくだろう!遂には最深部に到達するとそこには吾輩が待ち受けており、冒険者達と吾輩は其処でお互いの誇りと命をかけて激闘を繰り広げるのだ!そして僅差で吾輩を倒した冒険者達の目には厳重に保管され宝箱があり、冒険者達はこれまでの苦難の道のりを噛みしめながら、その宝箱を開けると…」

 

 

バニルはそこで話を一旦切ると間を少し溜めた後

 

 

「……その中にはスカと書かれた紙切れが。吾輩はそれを見て呆然とする冒険者を眺めながら滅びたい」

 

 

「…それだけは…それだけは…やめてやれ」

 

 

「酷い…それは酷すぎる…」

 

 

流石は悪魔、考えることがエグ過ぎる…もしも俺がその冒険者達の立場ならば立ち直れなくなるどころか下手したら冒険者として再起不能になるな…自分が望む最上級の悪感情を得る為にそんな壮大な計画を立てるとは…末恐ろしいものを感じる

 

 

「ともかく、お前に敵意がないならば俺達も戦うつもりはない。これ以上人形を生み出さないなら俺達は言う事はないよ。それじゃあ、その後ろにある魔法陣だけは消させてもらうからな」

 

 

 

「なっ!!カズマ、正気か!?魔王軍の幹部が目の前に居るんだぞ!それを見逃せと言いたいのか!!」

 

 

相手が魔王軍幹部となったら今の俺達で戦ったところで勝てるかどうかは分からない。

それに今はアンデットや悪魔相手には強力な切り札となれるアクアが居ない。しかもここはダンジョン内、もし戦闘となれば此方の方が不利になる。しかも前に戦ったベルディアとは違いこいつには全てを見通す力がある、前回のようにごり押しで勝てるような奴ではないだろう。

とりあえず今の時点で出来ることは魔法陣を消したら直ぐに地上に撤退しアクアにミツルギ、そしてゆんゆんと合流した後対策をするのが1番だな

 

 

「魔法陣?それはこの部屋の奥にある厄介な魔法陣のことか?吾輩の苦労していた魔法陣を消してくれるとは、それはご親切なことで。そのお礼として汝らの未来でも占ってやろうではないか」

 

 

「いや、遠慮するよ。さっきのお前の発言から考えて、お前好みの悪感情を出させる為に利用されそうだ。それにその魔法陣が残っていると俺達としても不都合なんだよ」

 

 

遠慮しますとハッキリ言い切るカズマを見たバニルはそんなカズマの態度に興味を持ったのか

 

 

「それにしても、何故、汝らがわざわざこんなところまでこの魔法陣を消しに来たのだ?…ちょっと汝らの過去を拝見……」

 

 

そう言うとバニルは目が輝き何かを見通されている感覚を味わっていると

 

 

「ふはははは!ふはははははははッッ!!この厄介極まりない魔法陣は貴様の仲間が作ったものであったか!この大悪魔すら通さぬ魔法陣と言うことは…なるほど、そう言うことであったか!!」

 

 

高笑いをあげながらそう言うとバニルはダクネスとカズマの方を見ると

 

 

「そこの決闘で勝った際の要求は正当なのかっと悩んでいる男と本当に要求されたらどうすればとモジモジしている娘よ。通して貰おうか…なぁに、心配いらない。吾輩は『人間』を殺さぬ悪魔だ。そう『人間』はな。今すぐ地上へと行き、迷惑な魔法陣を作り出したプリーストにキツイ一撃を喰らわせてくれるわ!!」

 

 

まさか、こいつ…アクアの正体を知ったのか!?だとしたら…地上にいるアクアの身が危ない!!

 

 

「貴様がアクアに危害を加えると言うのなら引くわけにいかない!!それとデタラメを言うな!!私はモジモジなど…」

 

 

今、現在進行形でしているじゃないか。

顔を真っ赤に染めて、剣先が馬震えている様子を見てモジモジ以外の言葉があるとは思えないが?

 

 

「何度も言うが、吾輩は人間を殺さぬし、危害を加えるつもりもない。とっとと屋敷に帰って、自らの望みを言うが良い。さすれば万事上手く行くとこを見通す悪魔が予言してやろう」

 

 

「カズマ!!この悪魔の言うことに惑わされるな!相手があのダクネスだというのを忘れるな!!」

 

「はっ!!そうだ!相手はあのドMクルセイダーだぞ!!見た目は良くても中身が全く伴っていない奴だぞ!落ちつけ、俺!!一時の欲求に惑わされて人生を破綻に追いやって良いのか!!」

 

 

カズマの言葉に顔を真っ赤にさせているダクネス。

彼女には悪いが事実なだけに否定が出来ない

 

 

「ほほう、吾輩の甘言に惑わされぬか。しかし、どうしたものか…吾輩の使う技の数々はチート級の威力の物が多い。例えばバニル式殺人光線、これは名の通り当たれば死ぬ光線を出すのだが、当たらば死んでしまうため使う事は出来ない。後はバニル式目ビームなどがあるのだが…」

 

 

「何をぶつくさと言っている!貴様をアクアの元に絶対に行かせん!どうしても通るつもりならば、この私を倒してからにしろ!!」

 

 

ダクネスは剣を構えるとバニルに対してそう宣言したのだった。




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この悪魔のトリガーに祝福を!!

 

「フハハハハハっ!!どうしたのだ!?先程からスカばかりしている娘よ!これでは三対一ではなくて、二対一になっているではないか!!」

 

 

「うるさい!黙れ!!」

 

 

バニルの言葉に顔を真っ赤に染めたダクネスが躍起になって更にバニルに剣を振るうがダクネスの剣は全く当たってはいないのが事実であった。

 

キレるぐらいならば両手剣スキルを取ってくれ、切実にそう願わざるを得ない状況だった。

 

だが、流石に魔王軍幹部を勤めているだけはあるのか俺とカズマの二人掛かりの攻撃をバニルは簡単に交わしていく

 

 

「フハハハハハ!!無駄だ!!貴様らの攻撃など吾輩には通じはせんわ!!」

 

 

「なら、これならどうだ!!」

 

 

俺はドリルクラッシャーを地面に突き刺すと地面を抉り取るように振り抜きバニルの視界を奪った後ドリルクラッシャーをガンモードに切り替えると高速回転と共に標的を貫く加速光弾『スピニングビュレット』でバニルの手足を撃ち抜ぬく、するとバランスを崩したバニルは前のめりへと倒れて行く

 

 

「ダクネス!今だ!!」

 

 

「分かった!…ハァァァァァァ!!」

 

 

そしてダクネスの剣が倒れた来たバニルの上半身を斜め下に切り裂いた

 

 

「馬鹿な…貴様…これを狙っていたのか…」

 

 

上半身が斜め下に切り裂かれたバニルは自分の敗北が認められないのか唖然とした様子でそう言うと只のつちくれへと戻ると地面に広がる

 

 

「やったのか?…でも、こんな簡単に公爵級の悪魔がこの程度が倒されるするだろうか?」

 

 

「フハハハハハッ!!その小娘の言う通りだ!!」

 

 

そう言って浮かび上がったのは土塊の中に残っていた仮面だ。

やはり魔王軍の幹部がそう簡単に死ぬ筈がないか…俺が奴が次にとる行動を警戒していると奴を倒せていなかったことが余程ショックだったのかダクネスが悔しそうに顔を歪めている

 

 

「もしかして吾輩が倒されたと思ったのか!?残念、吾輩の本体は仮面であるゆえ、身体をいくら切り飛ばされたところ土くれに戻るだけ、ダメージには全くならないのである!!最も仮面を狙われたのであれば、少々不味かったが……」

 

 

「なら、次はその仮面を狙ってやるよ」

 

 

俺がドリルクラッシャーを構えると笑みを浮かべそう言った。

だが、コイツ相手に何度も同じ手は通用はしないだろう…俺が次の策を考えようとしていると

 

 

「流石の吾輩も何の手も無しに仮面ライダーと戦う程、愚かではない。吾輩の奥の手をみせてやろう!」

 

 

「おい、なんかやばいのが来るみたいだぞ!気をつけろよ!!」

 

 

俺がカズマの言葉に一瞬気を取られてしまったその時

 

 

「めぐみん危ない!!!」

 

 

そんなダクネスの叫び声と共に俺は突き飛ばされる。

そして俺が先程までにいた所にはダクネスがおり、そんなダクネスの顔にはバニルの仮面が付いていた

 

 

********************

 

 

「フハハハハハ!!この娘の身体は我が力によって乗っ取らせてもらった。さぁ、この娘に攻撃できるものならばしてみるが良い!!」

 

 

そう言って笑うダクネス…いや正確にはダクネスに取り付いたバニルか。

なんて厄介な能力だ、やっとの思いでバニルを倒したとしても仮面が無事ならば近くにいた人間の身体を奪うことで蘇る。しかも仲間の身体相手に平気で攻撃出来る奴なんていないだろう。

例え変態ドMクルセイダーだとしても大切な仲間であることには変わらない、しかも俺を庇ってこんな事になったのだ、そんなダクネス相手に平気な顔で攻撃するなんてことが出来る訳がなかった

 

くそ、どうする?カズマがバインドを使ってダクネスを拘束するか?だが、それではバニルは別の身体に移るだけかも知れない。

一体どうすれば…

 

 

「フハハハハ!!どうだ?如何に仮面ライダーとはいえ迂闊に手を出すことは…(ああっ!!どうすれば良いのだ、カズマ、めぐみん!私の身体が乗っ取られてしまった!!お前たちとは戦いたくない、戦いたくないのだが、身体言う事をいかないのだ!!カズマ、こうなっては仕方ない、私の身体ごと……)ええい!!鬱陶しいわ!!この(麗しき)娘は…って余計な言葉を挟むではないわ!!おい、お前の仲間はどうなっているのだっ!!」

 

 

どうなっていると言われても…アクセル一の問題児パーティーとしか言えないな

ゆんゆんにカズマに俺が居るからこのパーティーは上手く回っているだけで普通の人ならばアクアとダクネスの扱いに困り果てパーティーが機能しないと思う…

 

 

 

取り敢えずバニルを何とかしてダクネスの身体から追い出すことを考えるのが先か?

だが、ダクネスを追い出したとしてどうする?ダクネスから追い出したら奴が次にねらうのは俺かカズマになるだろう、そんなことになったら奴にライダーシステムを使われる可能性がある。

 

しかし、このままダクネスの身体に封じ込めたまめでアクアのところに連れて行ければ俺達に勝機がやってくる。しかもダクネスの精神ならばバニルの支配力には恐らくは耐えられるだろう。だとするならば俺がするべき行動は…

俺はカズマからお札を受け取るとそれをダクネスが被っている仮面に張り付けた。

 

 

「む!?……なんだ、この札は?……触れぬ。おい、一体何を張ったのだ?手が弾かれて仮面を外す事が出来ないのだが(めぐみん…これは確か?)」

 

 

「セナさんに貰ったお札です。このまま地上に連れて行ってアクアに中身だけ浄化して貰いましょう」

 

 

「(ちょ!?)」

 

 

その声は二人揃ったのか綺麗に聞こえた。

 

 

 

 

****************

 

 

「小僧!!吾輩の支配力に抵抗しておるこの娘には、常に激痛が走っているのだぞ!!仲間をこのような目に合わせて良心が(はぁ……はぁ……カズマにめぐみん!!これはヤバいぞ!かつてない痛みだ!!もしこれがこのまま続くようであれば私は堕ちてしまうかもしれない!!そのときはカズマと目んが私を……んっ!!)」

 

 

「凄く嬉しそうにしているんだが……」

 

 

「………………」

 

 

カズマの指摘に黙り込む魔王軍幹部

 

 

普通ならば仲間の身体を盾にされていることに憤慨する場面なのだろうがダクネス相手というか俺達のパーティー相手にそんなのは意味を為さないんだよな。

そんなことを考えている内に地上へと繋がる出口が見えて来た

 

 

 

「もう少しだけ耐えてくれダクネス!地上に付いたらアクアに直ぐ浄化して貰うからな」

 

 

「……フハハハ……フハハハハハハハ!!ダクネス?一体誰に話しかけているのだ!!」

 

 

急に人が変わったかのように笑いだすダクネス……まさか…ダクネスの心が負けたのか!?

 

クソ!!後もう少しでアクアの元にたどり着いたのに!!

 

 

「そんな奴の支配なんかに負けないで下さい!ダクネス!!」

 

 

「無駄だ!小娘!この娘の身体は先ほど支配を終えた!!このまま地上に行って、仲間だと油断しているプリーストに手痛い一撃を食らわせてくれる!!」

 

 

これは不味い。いくらアクアと言えども油断している時にダクネスの一撃を食らったんじゃ無事じゃ済まない。

カズマも必死に追いかけてはいるが、ステータスの低いカズマと俺ではダクネスに追いつくことが出来ない。このままだとアクアが!!

 

 

「さあ、ダンジョンから生還した仲間との再会……」

 

 

「『セイクリッド・エクソシズム』ッ!!」

 

 

「(あああああああっ!!)」

 

 

アクアの声が響いたと思った瞬間、ダクネスの身体は白い炎に包まれる

 

 

 

「おい、アクア!!お前何やってるんだよ!悪魔に乗っ取られたとは言え、あれはダクネスなんだぞ!!」

 

 

「いきなりそんな大声を出さないでくれる?悪魔の匂いがしたから退魔魔法を打ち込んだだけよ?安心してしなさいな、退魔魔法というのは人間には効果がないのよ」

 

 

「いや、それでも仲間相手にいきなり魔法をぶち込んだりするか?」

 

 

「フハハハハハ!!仲間相手にいきなり魔法を撃ち込むとはやはり女神というのはろくでもないな!!」

 

 

未だに燃え続ける白い炎の中から高い笑い声と共にそんな言葉が聞こえると無傷のダクネスが姿を現した。仮にも女神であるアクアの魔法を受けてどうしても平然としているとは…同じ幹部であるデュラハンには大きなダメージを与えていたというのに同じ幹部でもこうも違うのか?

単なるやせ我慢ならばありがたいんだが…

 

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』ッ!!」

 

 

「甘いわ!!」

 

 

アクアは退魔の魔法を次々と放っていくがバニルはそれを軽々と回避していく、数発ほど当たってはいるがバニルには殆ど効いていない様だった。

 

 

「ちょっとダクネス、避けないでよ!!ダクネスはその悪魔に乗っ取られたままでも良いの!?」

 

 

「(そう言われても、身体が勝手に……)」

 

 

どうやらまだダクネスの意識はあるようだ。

だが、身体の支配権は奪われたまま…一瞬でも良いから体の支配権を取り戻してくれれば…

そんな事を考えているとセナが俺達に声を掛けてくる

 

 

「ちょっと、これはどういうことなのですか!?あの仮面は確か魔王軍幹部、見通す悪魔バニルのもの…一体何があったんです?何故ダクネスさんの身体に乗り移っているんですか!?」

 

 

「その魔王軍の幹部がダクネスの身体に乗り移ったんだよ。今はお前に貰ったお札で封じてるから、ダクネスの外に出ることはないと思うが……」

 

 

「仲間の身体に悪魔を封印!?めぐみんさん。貴女は一体何を考えてるのですか!?そんなこと……」

 

 

「すいません。でも、こうするしかなかったんです。もしダクネスの身体に封印しなかったら他の冒険者の身体を乗っ取り、下手したら今よりも最悪な状況になっていたかもしれません」

 

 

「それは……」

 

 

俺の言葉に理があると判断したのか、セナさんは黙り込んでしまった。

しかし、この事態本当にどうしたらいいのか、何とか打開することは出来ないのか…頭を抱えているとゆんゆんが今のダクネスの強さについて冷静に分析をする

 

 

「あの悪魔、アクアさんの悪魔祓いの魔法をダクネスさんの耐久を使って耐えているようです。ダクネスさんの職業はクルセイダー…光の魔法には特に強い耐久があります。それが防御特化のダクネスさんとなれば……」

 

 

つまり、とんでもないレベルの耐久になるって事かよ!

だから、バニルは女神であるアクアの魔法に耐えることが出来たのか…

そしてアクアはダクネスに取り付いたバニルに対して魔法を放ち、セナの連れてきた冒険者たちがそのアクアを庇う形でダクネスを取り囲んでいく。

何時ものダクネスでなれば、冒険者たちに袋叩きになっている筈なのだが…

 

 

「くそっ!!どうしてあのダクネスに当てられないんだよ!!」

 

 

「畜生、ダクネスがこんなに強いなんて聞いてねぇぞ!!」

 

 

「駄目だ!剣を振ってもはじき返されるか、避けられてしまう!そして、今俺達が立っていられるのもダクネスが致命量になる所を避けているから…クソっ!!」

 

 

 

「バインドッッッ!!!」

 

 

その瞬間、何時の間にか潜伏により姿を隠していたカズマのバインドがダクネスの身体を拘束した

 

 

「作戦成功!!」

 

 

そう、俺の提案によりカズマは洞窟からでるのと同時にミツルギと共に潜伏をしずっとチャンスを伺っていたのだ。

そして俺はドリルクラッシャーにゴリラフルボトルを装填するとダクネスの身体にドリルクラッシャーを押し付けた

 

 

「さぁ、このままダクネスの身体ごと吹き飛んで貰おうか!!」

 

 

「正気か!?貴様ら本当にこやつの仲間なのか!?」

 

 

流石のバニルも俺の行動に度肝を抜かれたのか慌てた様子でそう言う

 

 

「身体さえ残っていればアクアの力で蘇生が出来る!お前を倒す為ならばこれぐらいのことやってやる!!」

 

 

そして俺がドリルクラッシャーのトリガーを引こうとした瞬間、俺が上半身を逸らすとカズマが魔法を発動させる体勢で待機しておりティンダーで額に貼られていた札を燃やすとカズマの潜伏により近くに潜んでいたミツルギが魔剣グラムを構えながらダクネスさん近づくと

 

 

「ダクネスさん…済まない!!」

 

 

ミツルギが魔剣グラムでバニルの仮面をダクネスの顔面の皮膚こど切り離す。

皮膚を切り離されたダクネスが顔面を押さえながらその場に膝をつくと

 

 

「アクア!!ダクネスにヒールを掛けろ!!」

 

 

「えっ?…わ、分かったわ!!」

 

 

すかさずアクアのヒールによりダクネスの傷を癒すとダクネスの血により汚れていた仮面が浮かび上がると土が盛り上がり人の形を作ると俺達がダンジョンの奥で見たタキシードを着ている姿に戻った

 

 

「この見通す悪魔を騙したことは褒めてやろう…だかな、貴様ら風情が倒せる程吾輩は弱くはないぞ?」

 

 

バニルは素直に称賛の言葉を送ってくるが自分が負ける筈がないという傲慢とも取れる表情で此方を見ていた

 

 

「それはどうかな?人間ってのはお前が思っているよりも弱くはないぞ?」

 

 

そう言うと俺はベルトとラビットタンクスパークリングフルボトルを取り出す。その時に俺の荷物の中に赤い小型デバイス…『ハザードトリガー』が紛れていることに気づいた

 

 

(これは…確かラボに置いておいた筈だ。何時の間にか紛れていたのか?いや、詳しく考えるのは後だ。今はバニルを何とかしよう!!)

 

 

 

『ラビットタンクスパークリング!』

 

 

 

『ウェイクアップ!』

 

 

 

『クローズドラゴン!』

 

 

 

『ロボットゼリー』

 

 

『ゲイツ』

 

 

『Are you ready?』

 

 

「「「「変身!!」」」」

 

 

『シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!』

 

 

 

『イエイ!イエーイ!』

 

 

『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』

 

 

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 

 

『ロボットイングリス!』

 

 

『ブラァ!』

 

 

『ライダータイム!カメーンライダー・ゲイツ!』

 

 

「勝負だ!!魔王軍幹部バニル!!」

 

 

「かかって来ると良い!勇敢なる異世界の戦士達よ!!」

 

 

俺達は武器を構えるとバニルに向かっていった

 

だが、バニルには俺達の攻撃が『一切』当たらない。これが此奴本来の実力なのか?先程までは全力を出してはいなかったのか?そんな疑問さえ生まれてくる。

そしてバ二ル人形達に張り付かれ身動きも取れなくなった何処にバニルが指をパチンと鳴らしたことで身体に張り付いていたバニル人形が爆発し俺とカズマは爆発のダメージを受けると地面に転がる

 

 

「吾輩は全てを見通す大悪魔仮面のバニルである!貴様らの攻撃や行動パターンなどはお見通しなのだよ!!」

 

 

そう言うと死角から切り掛かってゆんゆんと斬撃とミツルギの攻撃をみもせずに躱した後腕を十の字に構えると

 

 

「バニル式殺人光線!!」

 

 

「「「うあァァァァァ!!」」」

 

 

「きゃああああ!!」

 

 

バニルの攻撃を受けた俺達は装甲から火花を散らしながら地面を転がった後全員変身が解除されてしまう

 

 

「フハハハハハ!!残念だったな!異世界の戦士の力を持つ者達よ!!貴様らの力では吾輩の力の前に勝つことなど不可能なのだよ!!」

 

 

地面に転がっている俺達がそんなバニルの言葉に歯を食い縛っていた時俺は思い出した。この状況を打開出来る可能性がたったひとつだけあることを

 

そして俺が荷物の中からハザードトリガーを取り出すと

 

 

「めぐみん!それは…」

 

 

やはりカズマはハザードトリガーの危険性を知っているのか俺がハザードトリガーを使用しようしていることに気づいたようだった

 

 

「分かってるさ、こいつを使うのは危険だってことを…でも、これ以外に奴を倒せる可能性はない…カズマ、もしもという時は頼む」

 

 

そう言うと俺は立ち上がると手にしていたハザードトリガーのスイッチを入れる

 

 

「俺がお前を倒す。この身をかけても!」

 

 

『ハザードオン!』

 

 

ハザードトリガーをビルドドライバーのBLDライドポートに接続すると何時ものようにフルボトルをドライバーに装填した

 

 

『ラビット!』

 

 

『タンク!』

 

 

『スーパーベストマッチ!』

 

 

『ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!』

 

 

そんな音声と共にめぐみんの周りには鋳型のような専用のフレーム『ハザードライドビルダー』が出現する、フレームにある黒と黄色の警戒ラインが見る者の本能に警告を感じさせていた

 

 

『Are you ready?』

 

 

そしてめぐみんはそのままプレスされるように変身する

 

 

「変身!!」

 

 

『アンコントロールスイッチ! ブラックハザード!』

 

 

『ヤベーイ!』

 

 

そこに居たのはフルボトルの組み合わせで様々に色が変える普段とは真逆の黒一色のボディのビルドだった

 

「見た目が変わったぐらいで吾輩に勝つことは不可能であるぞ?」

 

 

そう言ってバニルは殺人光線を再び放ってくるがハザードトリガーに内蔵された強化剤により基礎攻撃力・耐久力が先ほどよりも大幅に向上しているおかげで先程は耐えることの出来なかったバニルの攻撃に耐えるとバニルの本体に強烈な突きを決めるとバニルは地面に転がる

 

 

「中々に攻撃力を上がってはいるがそれではこのバニル様を倒すことなど出来んぞ?」

 

 

ニヤニヤとした嫌らしい笑みを浮かべそう言うバニルに対しめぐみんは暫く考え込む

 

 

 

「……お前は人の心を見通すことが出来るんだろ?なら、見通せなくすれば良いだけの話だ」

 

 

『マックスハザードオン! オーバーフロー!……ヤベーイ! 』

 

 

めぐみんは初めて自分の意思で強化状態『オーバーフローモード』へ移行する。

 

 

「ほぉ…ここまでの人の身でありながらここまでの戦闘力を発するとは…」

 

 

バニルは感心したようにそう呟いている。

 

カズマやミツルギにゆんゆんそして周りの冒険達も俺の発するオーラに臆している様子であった。

 

 

(グッ…意識が…何とか奴を倒すまで耐えるんだ!!)

 

 

意識を保ちながらゆっくりとバニルに近づいていく、バニルは殺人光線や泥人形を使って攻撃して行くが俺にはそれらの行動は全てスローモーションに見えており軽く身体を逸らしたりドリルクラッシャーを横になぎ払うことで攻撃を躱していきバニルとの距離を詰めるとボルディクレバーを回し必殺技を発動させる

 

 

「貴様…一体何をした?貴様の未来が全く見えなくなったぞ?」

 

 

『ハザードフィニッシュ』

 

 

バニルの言葉を無視したビルドの全身から黒いオーラが噴出するとそれを右足に集中させバニルに向かって強力な蹴りをバニルの胴体に放つとバニルは吹き飛んで行くそして背後の岩に叩きつけられるとヒビだらけの仮面で此方を見上げ

 

 

「グッ…流石は仮面ライダービルドだ。このバニル、最後に貴様のような戦士と戦えたことを誇りに思う…では、サラバだ…勇敢な冒険者と仮面ライダーよ!!」

 

 

バニルは最後にそう言うとそのまま倒れ大爆発を起こすとその場にはひび割れた仮面とつちくれだけが残された。こうして魔王幹部バニルとの戦いは終わったのだが…

 

 

********************

 

 

 

「グッ…ガァァァァァ!!」

 

 

戦闘終了後と共に頭を抱えて苦しみ始めた戦兎さん。

 

 

「は、早く…ハザードトリガーを…早く!!」

 

 

どうやら戦兎さんは自力でハザードトリガーを外すことが出来ないようであった。

 

 

「め、めぐみん!!」

 

 

ゆんゆんが苦しんでいる戦兎さんに駆け寄ろうとする

 

 

「ゆんゆん、今のめぐみんに近づくのは危険だ!!ここは俺とミツルギが何とかするから離れていろ!!」

 

 

「ミツルギ!!お前のルーン・オブ・セイバーでめぐみんの動きを止めてくれ!!」

 

 

「分かった!『ルーン・オブ・セイバー!!』」  

 

「そこだ!『スティール』!!」

 

 

暴走している戦兎さんがドリルクラッシャーでミツルギの攻撃を受け止めた瞬間に俺はスティールを使用する。

すると次の瞬間には俺の右手にハザードトリガーが握られており俺は自分の考えが上手くいったことに安堵した

そしてハザードトリガーを失った戦兎さんは変身が解除されると地面に膝をついた

 

 

「助かったよ…カズマ。ハザードトリガーは再び封印するしかはないか…少なくとも『アレ』の復元が終わるまでは」

 

 

そう言うのと同時に戦兎さんの身体から力が抜けていき、しばらくすると戦兎さんは意意識を失った。

 

 

********************

 

 

目が覚めると俺は自室のベットの上におり、俺が意識を取り戻したのと同時に部屋に入って来たカズマが俺が意識を取り戻したことに気づいたのか嬉しそうな笑みを浮かべながら近づいてきた。

 

 

「良かった。戦兎さん、気がついたんですね!あれからずっと意識を取り戻さなかったので心配していたんです」

 

 

カズマ曰くあれから2.3日は気を失っていたようでありその間には色々とあったようだ。

 

 

「そんなに長い間気を失っていたなんて…やはり、この身体でハザードトリガーを使うのは負担が大き過ぎたのか…」

 

 

「取り敢えずは目が覚めて良かったですよ。店の方にウィズ達が待っていますから行きましょう」

 

 

そして俺がカズマと共に階段を上がりながらウィズの店に向かっていると

 

 

「えっと…戦兎さん…これから何を見ても驚かないで下さいね」

 

 

妙なことを言い出すカズマ俺は不審に思ながらもウィズの店へと続く扉を開けると

 

 

「へい!らっしゃい!!本日は一体どんな商品をお求めで?」

 

 

「良かった!めぐみんさん。気がついたんですね?」

 

 

そこにはウィズと先日倒した筈のバニルが仲良く営業をしている姿があった

 

 

「カズマ…どうなってんだ?あの時、倒した筈バニルが何でウィズと一緒に店番をしてる?詳しく説明しろ」

 

 

俺がカズマにそう説明を求めるとカズマが説明するよりも先にニマニマと嫌らしい笑顔を見せながら

 

 

「フハハハハハ!!残念ながら吾輩の本体は地獄にあるのでな?本体を倒さない限り何度でも蘇るのだ!!…とはいえ、残機をひとつ減らされたのは変わらない為これからは2代目バニルとでも貰うか?」

 

 

バニルのそんな説明に俺はなんとも言えない思いになるとチラッとカズマを見るとカズマも苦笑いを浮かべていた。

 

取り敢えず俺は息を吸い込むと

 

 

「ざけんな!!」

 

 

そう叫んだのだった。




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この素晴らしい旅行に祝福を!!

 

バニルが店員になってから数日が経った。

 

あれからは真面目に働いてはいるようで何か悪事を企んでいる様子などはなく当のバニル本人も

 

 

「吾輩の目的はこの店であくまでもダンジョンを作る為の資金を貯めること。それ以外には何も企んではおらぬ」

 

 

とのこと。…悪魔が言うことなんて信用などは出来ないが一応はウィズもバニルの動向には目を光らせておくとのことで今の段階では放置しておくことにする。

そして俺はバニル戦で手に入れて置いたバニルの魔力の残留を使い新たな装備の開発へと取り掛かる。バニルは自分の魔力が使われることに不満そうな顔をしていたがこちらとしてもバニルを店員として働くのを認めているのだからお互い様だろう。

俺が現在復元を試みているのはクローズのパワーアップアイテムだ、勿論ゆんゆん専用としてカスタマイはするし何よりもこれからの魔王軍幹部との戦いでは必要になるのは間違いないからだ。

そして俺が復元作業に没頭していると頬にいきなり冷たい感触を感じて驚いて後ろを振り返ると其処にはバンジョウがいた。

 

 

「おっす!戦兎。女になっても相変わらずの発明バカだな」

 

 

「筋肉バカに言われたくないっての!…それで?わざわざラボにまで来たりして何の用だ?」

 

 

「あああ。俺がお前んとこにきた理由はな…」

 

 

「アルカンレティアへの旅行?」

 

 

バンジョウから突然の旅行の誘いを受けた俺はそんな声を上げる

 

 

「今度纏まった休みを取れることになったから旅行をしようかと思ってな?ひとりで行ってもつまらないからお前達を誘いに来たんだよ。勿論旅費は全部俺が持つからその辺りは安心してくれよ」

 

 

旅費は全部バンジョウが持ってくれるか…普通に考えるならば是非とも話に乗りたいところだが…行くのはあのアルカンレティアだろ?前に滞在した時の嫌な記憶が蘇るな…

 

 

「アルカンレティア!!今、アルカンレティアって言ったの!?もしかして水の都のアルカンレティアに旅行に行くの!!」

 

 

どうやらアクアは旅行にいくことに乗り気のようだ。

 

アルカンレティアはアクアを祀っている街なのだからアクアは行きたがるのは当然だろう。

 

 

「温泉かぁ…そういえばこの世界に転生してからゆっくりと旅行に行ったことなんてなかったけ…」

 

 

やばいカズマも旅行に行く気満々だ。

 

 

「温泉旅行ですか…良いですねぇ…私も温泉に入ってゆっくりしたいです」

 

 

ウィズがうっとりとした表情でそう言っている。

 

こんな空気では俺だけ行かないという選択なんてもう無いに等しかった

 

 

「分かりました…私もゆんゆんと一緒にアルカンレティアに行きますよ。でも…行った後に後悔しないで下さいよ?」

 

 

「不吉なことを言うなよ!アルカンレティアに行ったら後悔する何が起きるのかよ!?」

 

 

カズマのそんな叫びを俺はスルーしながら数日後の旅行のことを考えると今から憂鬱になるのだった

 

そして旅行当日、その日カズマ達は外すことの出来ないクエストが残っているということで俺とゆんゆんにバンジョウが先にアルカンレティアへと向かうことになった。(因みにウィズも店の用事で出発が遅れるとのこと)

アルカンレティアまでの移動は馬車ではなくテレポートで行くことなっている。早朝にバンジョウが手配してくれていた出張テレポートサービスの人達が俺達の元にやって来てくるとあっという間にアルカンレティアへとテレポートさせてくれた、次に俺達が目を開けた時に目に入ったの見覚えのある巨大な噴水だった。

その噴水からは大量の綺麗な水が溢れその下にはとても広大で美しい湖がありそして俺達が湖に掛けられている神秘的な造りの橋を歩いていると水に滴る美しい女神の像が目に入る

 

勿論像のモデルはアクシズ教の女神であるアクアなのだがアクアを知っている俺達からすれば最早別人にしか見えないのが不思議であった。

だが、今の俺達にはそんなことよりも厄介なことに巻き込まれていた。それは…

 

 

「ようこそ水の都アルカンレティアへ!観光ですか?入信ですか?お仕事ですか?入信ですか?参拝ですか?入信ですか?少しでも入信と思った貴方!アクシズ教徒になれば毎日を自由に楽しく過ごす事ができますよ!今ならアクア様の教えが書かれた有難い教本と洗剤をプレゼントしております!」

 

 

「ここはアクシズ教の総本山、アルカンレティアです!どうです貴方、アクシズ教に入信しませんか??アクシズ教は水の女神アクア様を崇拝する素晴らしき教えですよ!今ならアルカンレティアの温泉の割引券と洗剤がついてきます!」

 

 

「知ってますか?アルカンレティアで作られた洗剤は…飲めます!!」

 

 

以前来た時よりも明らかにアクシズ教徒達の勧誘レベルが前より引き上げられており、以前にも増してドン引き案件であった。

ていうか、洗剤って飲んでも大丈夫なのか?まぁ、大丈夫だから言っているのだろうがそもそもの飲める洗剤に需要はあるのか?

 

 

 

「…前にも増してすごくなってるな…」

 

 

「もしかして…勧誘が激しくなったのって私の所為?」

 

 

罪悪感を感じて地面に伏しているゆんゆんを慰めながら俺達を囲い込んでいるアクシズ教徒達から強引に抜け出そうとするが中々動けない。止む無く万丈に助けを求めようと顔を向けると…

 

 

「お前ら離れろよ!つうか、変なところ触ってくんな!!」

 

 

「見て皆!!この人物凄くワイルドなオーラがあるわよ!あ、貴方こそアクシズ教徒になるべき逸材ですわ!!さぁ、この入信書にサインを…あ、ついでにこの婚姻届にもサインしてもよろしいですよ♪」

 

 

「ちょっと貴女!!抜け駆けはずるいわよ!!こんな年増はほっといて、向こうでお姉さんとお茶しないかしらー?とりあえずまずは入信書にサインするところから…」

 

 

「こんな状況で婚姻届にサインとかできる訳ねぇだろ!つうか、離してくれよ!!」

 

 

「ちょっと邪魔するんじゃないわよ!貴女の方が年増でしょうが!!この売れ残りプリーストが!!」

 

 

「なんですってぇぇ!?私は売れ残ってるんじゃないの、私に相応しい高貴な方を待っているだけなのよ!売れ残りはそっちでしょうが!!」

 

 

ふたりのアクシズ教徒が取っ組み合いの喧嘩を始めたことによる隙を突いて万丈が脱出してくると人混みをかき分け俺とゆんゆんの手を掴むとその場から離れていく

 

 

「めぐみん!ゆんゆん!急いで逃げるぞ!!」

 

 

俺達は全力疾走しながら後を追ってくるアクシズ教徒達から逃げていく。

ゆんゆんも疲弊しながらも一緒に走って行く。以前の身体ならばバンジョウのスピードにもついてくることが出来たがめぐみんの身体だと流石にバンジョウの後についてくるのは体力的にキツい物がある。たが、アクシズ教徒達は俺達のことを諦めてはおらずに追いかけて続けていた。

しかし俺達も諦める訳にはいかないので色々な裏道を利用して逃げ回る。すると大勢いたアクシズ教徒も諦めたのか追ってこなくなった、もう大丈夫だと判断すると俺達はその場に座り込んで息を整える

 

 

「アルカンレティアの恐ろしさを理解したか?筋肉バカ。ここは俺達の理解を越える魔境なんだよ…」

 

 

「良く分かったぜ…だから、アルカンレティアに旅行に行くと言った時に周りの奴らが凍り付いた訳だ…」

 

 

「ははは…」

 

 

俺達は綺麗にため息を吐くと取り敢えず後で合流するカズマ君達の為にも早く万丈が予約をとっている宿にチェックインする為に立ち上がるとその場から歩き出す

 

 

「確か、バンジョウさんは1番高い宿にしたって…言ってましたよね?」

 

 

「確かに一番良いところの宿にしたがこの街にいる以上奴らの魔の手から逃げれる気がしないんだよな?」

 

 

再び3人揃ってため息がでる。

なんというか予想していたことだがこの旅行前途多難過ぎる。恨むべきはアルカンレティアを旅行先に選んだ万丈かこんな勧誘方法を教えたゆんゆんか

 

 

「取り敢えずはこの街にいる間は何かを食べる時も常に警戒しておくことにしましょう。少しでも油断したらアクシズ教に入信させられそうですから…」

 

 

「なぁ、エボルトの時よりも厄介な事態に巻き込まれたと思うのは俺だけか?」

 

 

「いえ、その考えは間違ってはいないと思いますよ?奴らはある意味でエボルトよりも厄介な奴らですから」

 

 

エボルト本人が聞いたら間違いなく突っ込みが入るであろうことを言っためぐみんに反論する者はその場には居なかった

 

 

「ここが今回泊まることになる宿ですか、何ていうか…凄いですね」

 

 

俺達が泊まることになった宿は予想以上に立派なところであり見るからにアルカンレティアの宿の中でも上位に入ることが分かる。俺達が立派な装飾がされている扉から宿の中に入るとこの宿の女将と思われる着物を着た女性が俺達を出迎えた

 

 

「いらっしゃいませ。ご予約していたバンジョウ様でこざいますね。先ずは宿帳にサインして頂いた後私がお泊まり頂く客室までご案内させて頂きます」

 

 

因みに女将が宿帳と称して渡してきたのはアクシズ教徒の入信書でありバンジョウが宿泊の手続きをしている間にも執拗にサインを求めてくるのをバンジョウは見事にスルーしていた

どうやらバンジョウはこの短い間にスルースキルがかなり上達したようだ、俺はバンジョウの成長に少しだけ感動を覚えていた。

その後客室に案内する迄に女将は執拗に入信書にサインを求めて来ていたがそれらを全て無視し続けること数分俺達が泊まる客室に案内すると女将は残念そうな様子で戻って行くのを見届けた俺達はふぅと溜め息を吐くと客室の扉を開けると中へと入る

 

 

「「「…………….…」」」

 

 

客室に入った俺達が最初に目にしたのは至るところに置かれていた入信書の山であった。

其れを見た俺達は早くも帰りたくなった気持ちを押し殺すと入信書をまとめてゴミ箱に捨て荷物を置くと夕方まで休息を取った後俺は宿の温泉に入る為にフロントへと降りて来ると其処には酷く憔悴した様子のカズマとウィズにないやらホクホク顔をしたダクネスと泣いているアクアが騒いでいた

 

 

「一体全体この街はどうなってんだよ!!旅行にやって来たらいきなり勧誘地獄に遭うわ!幼気な少女を装って入信書にサインさせようとするわ、ふざけんじゃねぇよ!!」

 

 

「どうしてよ!どうして誰も私が水の女神だと信じてくれないのよ!!どうして私が女神って言うと鼻で笑われるのよぉぉぉぉ!!!」

 

 

「なぁ、カズマ。この街に住まないか!?私は是非ともこの街に住みたいぞ!!」

 

 

 

…どうやらカズマ達も相当な目に遭ったらしい。

それにしても幼い子供を使ってまでも入信を迫るとは…カズマの奴下手したら人間不信になるんじゃないか?そんな不安さえ覚えてしまう程今のカズマは荒んでいた。

 

 

「カズマ、気にするなとは言いませんが折角の旅行なので気楽に過ごしましょうよ?これまでは何かと忙しかったですし」

 

 

「めぐみんだけだよ…俺にそんな気遣いをしてくれるは…ダクネスもアクアもトラブルばっか起こすしよぉ…」

 

 

そう言って涙を流しているカズマを肩を優しく叩きながら立ち上がらせると気分転換の為にこの宿の名物である温泉へとカズマを連れて行く。

今回泊まっている宿には男女に別れている露天風呂以外にも混浴するタイプもあるようなのでカズマに折角の機会だからと誘ってみたがカズマに断固拒否するとひとりで男湯の脱衣所へと入ってしまったので仕方なく俺はひとりで混浴へと入る為に女性側の脱衣所の扉を開けると中へと入る。そして俺は棚に置かれていた大量の入信者が入れている籠を床に捨てた後衣服を脱いた後タオルを軽く羽織るとと露天風呂に続く扉を開けた

 

 

************************

 

 

温泉事業をしているだけあってアルカンレティアには沢山の露天風呂がある、そのひとつの混浴露天風呂には今ふたりの男女が入浴していた。

普通ならば仲の良い恋人同士だと思うところなのだろうかふたりの雰囲気は明らかにカップルの物ではなかった

 

 

 

「仮面ライダーか…ベルディアもバニルも其奴に倒されたって話だが何とも胡散臭い話だな、最近新しく魔王軍幹部に加わった怪しいコブラ男もそうだが英雄候補でありながら人類を裏切り俺達側に着いたテメェも信用できるか怪しいものだ」

 

 

「私だって魔王軍幹部の奴ら何て信用してないわ。私があんたらに協力しているのだって奴に復讐する為よ…奴さえ居なければ私は…」

 

 

その少女は心底恨んでいる相手がいるのか、血が出てきそうな程に強く歯を食いしばっている

 

 

「兎に角あんたは指令通りにアルカンレティアの源泉を汚染すれば良いのよ。このアルカンレティアを潰すことが魔王の望みよ」

 

 

「様を付けろよ様を…まぁ、俺もアルカンレティアをぶっ潰すことは反対はしねぇよ。俺もこの街には色々と恨みがあるからよ」

 

 

謎の二人組がそんな怪しげな会話を繰り広げていると女性側の脱衣所の扉が開かれる後が聞こえると

 

 

「こんちにわ、お話中失礼します…ってあれ?」

 

 

乱入者…めぐみんがそう言って温泉の方を見ると其処には誰も居なかった。

 

めぐみんは首を傾げながらも身体を軽く洗った後温泉に入る

 

 

「ふう…良い湯だ…にしてもさっきまで誰か居たような気がしたんだか気のせいか?」

 

 

そう言ってもう一度辺りを見渡すが其処には誰もいない。

 

だが、つい先程まで誰かそこに居た雰囲気をめぐみんは感じていた。そんなめぐみんを露天風呂からの死角に当たる部分で先程まで謎の男性と一緒に入浴していた少女が見つめている

 

 

「まさかこんな何処でビルドに会うなんて…これも運命なのかしら?ビルドには深い恨みがあるから完全に油断し切っている此処で晴らしても良いけれど、そんなんじゃ私の気が済まない。ビルドには最高の舞台で地を這いつくばる屈辱を味わせてやるんだから…覚悟して置くことね」

 

 

そう言って姿を消した少女はカズマと同じ黒髪をしていた…

 

 

************************

 

 

次の日、眠い目を擦りながら宿の食堂に降りてくると食事をしながらアクアがテーブルを叩きつけながら何やら騒いでいた

 

 

「この街の危険が危ないようなの!!」

 

 

「危険が危ないって何だよ」

 

 

国民的アニメの某ロボットが言いそうなことを言っているアクアにカズマは突っ込みを入れる

 

 

「朝から騒がしい人達です…一体何があったんですか?」

 

 

「ええ、実は最近この街の温泉が何者かの手によって汚染されているようなの」

 

 

「成る程、それは確かに困りますよね。温泉事業はこの街にとって重要な資源ですからね」

 

 

「めぐみんだけよ!心配してくれるのは!!他の奴らなんてちっとも協力してくれる様子がないのよ?酷いとは思わない!?」

 

 

いや、これまでのアクシズ教の所業から考えたら当然の反応だと思うし何よりもアクシズ教に恨みを持たない人間を探す方が難しいんじゃないか?

 

まぁ…アクア本人に言ったら泣きそうだから言わないが

 

 

「正義の味方としたら困っている人を見捨てる訳には行きません、それにアルカンレティア全体の温泉を汚染するとなると相当に危険な相手かもしれません。相手出来るのは私達仮面ライダーとリッチーであるウィズぐらいでしょう…取り敢えず詳しく事件の概要を知る為にも街の人達から情報を収集することにしますか」

 

 

そう会話を纏めると俺達は情報収集する為に街中を探索する為に宿から出発したのだった。




感想と評価をお待ちしています。


ついでに今回登場した転生者の少女はオリキャラでありません。

このすばに登場しているキャラです、名前が明かされるのはもうちょっとだけ後ですか予想している方は感想などに書き込んでくれると嬉しいです。

後、今回でストックが切れてしまったのでしばらく更新を停止します。

更新が再開したときはまたよろしくお願いします。


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