ダンジョンで時を止めて重火器で弾幕を張るのは間違っているだろうか? (ガチャの亡霊)
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1話目

 気が付いたら俺は魔法少女まどか☆マギカに登場するクール系ヤンデレヒロインこと暁美ほむらになっていた。

 

 …いや、どういう事だよ。

 

 違う、もっと具体的に言うならば、俺は仕事やら徹夜やらの疲れで限界が近かったので、自分の部屋のベッドで眠っていたのだ。そしたら夢の中で真っ白い変な生き物が目の前に現れて、

 

『僕と契約して、社畜から魔法少女にクラスチェンジしてよ!(目元モザイク)』

「おう分かった」

 

 てな感じで俺はいつの間にか即答していた。

 

 そして目が覚めたらこの状況。本当、どうしてこうなった?

 

 周囲は森。そして俺はほむほむ。前の俺の名前は思い出せない。

 

 はあー…なんだこれ。本当に何がどうなってるんだ…。

 

 いや、心当たりはある。あの夢だ。恐らくあそこで俺は契約とやらをしてしまい、その契約が履行されたからこんなことになっているのだろう。

 

「あー、あー…うん、声もほむらそのものだなぁ…」

 

 可愛さと凛々しさとが上手く両立している幸せ声。だけど、それが自分の喉から出ているという事実が気持ち悪い。

 

 さて、今の俺は灰色が基調の魔法少女姿なのだが…魔法は使えるのか?見た所盾もソウルジェムもないが。

 

「…時よ止まれ、ザワールド!」

 

 片手を上げてそう唱えてみる…が、やはり何も起きない。そりゃそうだ。盾も無ければソウルジェムもないんだ。

 

 とするとこれは見た目だけってことになるのか。ほんの少し残念ではあるが、ソウルジェムがないのは良い事だろう。魔女になったりちょっとソウルジェムと離れただけで死体になったりする危険がないって事だからな。

 

 と、自分の事を調べるのは良いが、そろそろ移動した方がいいか?ここは森の中で、今は幸い太陽が出ているが、夜になるまで森の中にいるのは不味い。ここが地球か、それとも別の場所かは分からないが、どちらにしろ夜の森は危険だろう。

 

 よし、とりあえず歩こう。森の中をスカートで歩くのは抵抗あるけど…っていうか、これナチュラルに女装なんだよな、俺の精神的に…いや、これ以上考えるのは辞めよう。

 

 

 

 

 歩いて歩いて歩きまくって、俺はやっと日が出ているうちに森の外に出る事に成功した。というか、いつの間にかどこかの街の前まで来れていたらしい。

 

 ぐるりと外壁が周囲を囲い、入り口には門番がいる。そしてそこを馬車に乗った人々が行き交っていた。服装はファンタジーの定番のような、布の服だったり鎧だったり魔法使いっぽい服装だったりしている。

 

 つまり、ここは異世界だ。それも王道のファンタジー世界。

 

 うわー、マジかー…異世界転生モノは少しは読んでたけど、まさか俺が異世界に転生?憑依?することになるとは…。人生何があるか分からないとは言うが、これは流石に突飛すぎるだろう。

 

 どうする?行くか?っていうか言葉通じるのか?門前払いされたり、捕まったりされないか?

 

 ううーん…いつまでもしり込みしてても仕方ないか。

 

 そっと森から出て、門まで行ってみる。

 

「オラリオへようこそ、お嬢さん」

「あっ、はいっ!?」

 

 案の定話しかけられて、思わず声が裏返った。くそっ、見た目はクールほむなのに、なんか眼鏡ほむ見たいな反応しちゃったよ。

 

「ここへは何をしに?」

「へ?えっと…せ、生活の為、です…」

「なるほど、それじゃあ冒険者になりに来たのかい?」

「は、はい…まあ…」

「そうかそうか。だったらあのバベルの塔の足元にギルドがあるから、まずはそこに行ってみるといい。それじゃ」

 

 そういって門番の人との会話は終了した。

 

 ふう…何とか切り抜けた。心臓バクバクだ。異世界で一番最初の会話だったし、返答次第では俺の生活が決まる可能性もあったしで、物凄く緊張した。お陰でコミュ障っぽくなってしまったのはご愛敬ってことにしときたい。

 

 まあ、これで街の中に入れた。それに、冒険者だっけ?俺にも出来そうな職業を聞けたのは運が良かったな…それか、ここが冒険者にとって誰もが通るような有名な場所なのかもしれない。

 

 さて、塔の足元とか言ってたっけ?

 

「…って、なにこれ…」

 

 デカい。しかも高い。雲にも届きそうな高大な塔が街の真ん中にあった。正直今まではただ森から脱出する事、この街に入る事だけに意識が向いていて、気づかなかったが、これぞまさにファンタジーって感じだ。

 

 えっと、あの塔の足元にギルドがあるんだっけ?冒険者って単語にはセットだよな、ギルド。

 

 よし、早速行ってみるか。まずは身分になりそうなものと、お金を稼ぐ手段を得るのを目標にしよう。多分、この二つが俺にとっては急務だ。

 

 何事もなく進めばいいんだが…。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 拝啓。父さん、母さん。俺、今異世界にいます。それと、心が折れそうです。

 

 あれから俺は何とかギルドにたどり着いた。ギルドは割と近代的に見える造りをしていて、中に入ると受付の人がたくさんいたので話しかけてどう冒険者になればいいか話を聞いた。

 

 冒険者になるためには、まずファミリアという場所に入って、神様に神の恩恵と呼ばれる特別な力を貰わなければいけないらしい。

 

 ここで知ったが、どうやらこの世界には本物の神様が多数存在していて、それぞれがファミリアを形成し人間っぽく生活をしているのだという。

 

 で…まあ、俺が冒険者志望だって話を聞いて、ギルドの受付さんは人手を欲しているファミリアをいくつか紹介してくれた。なので、意気揚々とそのファミリアって場所に行ってみたのだが…。

 

 …何の成果も…得られませんでした…っ!

 

 門前払いされるのはまだいい方。最悪だと『その身体で奉仕してくれるなら…』とか『いいファミリア知ってるぜ。ああ、ちょっと男とお話して一緒にお酒飲むだけの簡単な仕事が中心なんだけど』とか言われる。こんな最悪な事ってあるか?

 

 お陰で俺は自分に対する自信ってやつを喪失中である。もう無理。人に話しかける事すらしんどい。正直生きている理由すら失いかけてる。

 

 あれだ、就活してた時に連続で落ちた時の心境によく似ている…けど、ここは異世界。歯に衣着せぬ言い方されるので心的ダメージは正直倍に感じられる。マジ、辛い…。

 

 他にも色々と紹介してもらったけど…ぶっちゃけ行く気力は起きない。あーあ、どうしよ本当…。

 

 まあ、言いたいことは分かる。暁美ほむらの見た目は確かに可愛いし美少女だし、非の打ちどころのない見た目をしている。が、しかし裏を返せばそれは華奢な女の子に過ぎないって事でもある。魔法少女に変身できなければ、尚の事普通の女の子だ。力も見るからに弱いし、戦えるとは思えない。

 

 だけど…だからってあんな言い方なー…ないわ、本当、ないわー…。

 

「…君、君。こんなところでうずくまって、一体どうしたんだい?」

「…?」

 

 近くから声がして、俺は思わず顔を持ち上げた。

 

 おかしいな。わざわざ人がいない場所選んで小さくうずくまっていた筈なのに、話しかけられるとは思わなかった。

 

 人気のなさそうな場所を選んで歩いていたら、偶然廃教会を見つけたのでここで一晩過ごそうと思っていたのだ。

 

 丸くて大きな目と合った。そこには子ども程の背丈に童顔、黒髪のツインテールで低い背丈、そしてそんな背丈に似つかわしくない暴力的なほどの豊胸を実らせていた。

 

「誰、ですか…?」

「それはこっちのセリフなんだけどなぁ。まあいいや、僕はヘスティア、神様だよ。この教会に住んでる住神(じゅうにん)だよ、うん」

 

 「まあ、家には見えないだろうけどね…」といって、突如として現れた神様は、優し気に微笑んで「それで、君は誰だい?」と尋ねてきたのだった。



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2話目

「なるほどなるほど。君は異世界から来た異世界人で、夢の中で変な存在と契約してしまった事でこの世界にやってきてしまった、と」

「は、はい…」

 

 俺は洗いざらい全てをヘスティアに話した。

 

 どうやら神には嘘を見抜く力があるらしく、俺が「記憶喪失が~」とか言ってると「それは嘘だよね?」と一瞬で見抜かれたからだ。嘘がバレている状況からさらに嘘を重ねられるほどタフな精神を持っていなかった俺は、すぐにゲロっちまったって訳である。

 

 嘘を見抜くという事は、その話が真実であるとも分かるという事。ヘスティア様は俺の言葉を全て信じてくれて、俺の頭を撫でてくれた。

 

「…そっか。大変だったんだね。見ず知らずの土地に一人放り出される恐怖は僕も分かってるつもりだよ。心細かったろうし、何より怖かっただろう…でも大丈夫、もう君は一人じゃないよ。なんたって今は僕が付いてるんだからね!」

「べずでぃあ様…!」

「おおう、凄い量の涙だ。ほら、そんなに泣いてたら折角の可愛い顔が台無しだよ?」

 

 女神や…女神がおる…!ヘスティア様の背に光背が見える…!

 

「いやいや、僕本物の女神だからね…まったくもう、仕方ないなあ」

 

 それから、俺は泣き止むまでヘスティア様に慰められたのでした、まる。

 

「…それにしても、異世界、かぁ。確かに神々の間ではあるかもしれないと噂されていたけど、本当に実在するなんてね。それに、謎の存在についても気になるなぁ…」

 

 そうなのか。それじゃあ、もしかしたらこの世界と俺のいた世界はどこかでつながっている可能性もあるのだろうか…?

 

 …しかし、だとしてもぶっちゃけ帰る気はあんまりないんだけどな。もう社会の奴隷として絞りつくされるのは嫌なんだ。

 

「ぐすっ…ふう…」

「ん?落ち着いたかい?」

「はい…」

 

 まだ余韻は残ってるが、大体泣き止んだ。ヘスティア様の膝枕は最高にようございました。

 

「よし、それじゃあ早速なんだけど、君の今後の話について提案があるんだ」

「提案…ですか?」

「そう。アケミ・ほむら君。僕の眷属にならないかい?」

「…かぞく、ですか…?」

「うん。君さえ良かったら、僕のファミリアに入ってよ」

 

 え…?

 

 いい、のか?俺なんかが入ってもいいのか?俺はオカマ野郎で加えて異世界人という怪しすぎる出生だし、何よりただの社畜。良いところなんて一つもないただの凡人なのに。

 

「俺なんかが…入っても、迷惑じゃ…」

「迷惑なんかないよ。僕は神だから分かるんだけど、君には良いところがたくさんありそうだ。あって間もない僕に言われても信じられないかもしれないけど、神の勘ってのは意外と当たりやすいんだぜ?」

 

 それに、とヘスティア様は言葉を続ける。

 

「俺『なんか』じゃないだろ?正直、どうして君がそこまで自分の事を下に見てるのかは分からないけど…僕なんかちょっと前まで友神の所でニートしてたし、少し前に追い出されてこの空き家に押し込められてからはバイトしてはぐーたらしてのダメダメ神様さ。

だから、これは提案っていうよりも、懇願っていうか…僕を助けると思って、ね?」

「へ、ヘスティア様…」

 

 そんなあからさまな嘘を吐いてまで、俺の事を…!

 

「俺…じゃない。私、入ります!少しでも恩を返せるように頑張りますから!」

「ほ、本当?嘘じゃないよね?今更嘘でしたなんて言ってももう取り消せないからね?」

「本当です…!」

 

 俺の想いが通じたのか、ヘスティア様は笑顔を輝かせて喜びを弾けさせた。

 

「いやったーーーー!念願の眷属第一号、ゲットー!」

 

 超喜んでるヘスティア様を見て、俺はこれからたくさん頑張ってこの小さな神様に恩返しをしていこうと決意を固めたのだった。




(夜の2、3時程に徹夜テンションで落書きして、いつの間にやら投稿していたらしくいつ投稿したのかも覚えていないのですが、お気に入りしてくださってる方が結構いてくださってるようなので、続きを投稿します。少しずつの投稿になるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします…)

ほむら(こいつ、直接脳内に…!)


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