ばうえもんのネタ供養 (ばうえもん)
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王国でスローライフを(願望)(オリジナルのふりをした二次創作)
テは転生者ヤバいのテ


みんなが主人公が料理してドヤルのを書いているので自分も書いてみた
気が付いたらドヤルのは別人でオリ主がうまーしてました。

この世界の主人公と縁が切れたので特に盛り上がりも無く完結しました。



ここはとある王国の辺境伯領の冒険者予備校

私の通う特待生クラスにヤバい人がいるです

 

実は私、この世界に存在しない特殊な技能を幾つか所持しています。

私自身は紛れもなく現地人なのですが、なんの因果か異界のスキルやら無駄知識やらを獲てしまいました。

いや因果関係はしっかりと解ってるんですけどね、幼少期に大怪我して苦労したけど最終的にチートに至った並行世界の転生者である私が、他の並行世界の自分が不幸のまま終わる可能性を知り、そんな苦労をさせたくないと別の可能性に到達した自分達と連携を取り可能性の因子を並行世界の私達に向けて送り付けたわけです。

自分でも何をいっているのか分からなくなりますが、つまりチートな私が神様気取りで普通な私達に自分の力を分け与えたわけですね。

正直私の場合は幸不幸以前に明らかに別人ですので全く違う人生です。どちらかといえば転生前の日本人の方が私に近い気がします。おそらくは転生した彼女の方がイレギュラーなのではないのでしょうか。

 

無駄知識にある神様転生の正体は壮大な自作自演ではないかと思います。割としょうもない理由で転生していますが、それが高位な自分が他の自分を引き上げる為にした行為と考えると意外としっくりくるのです。創作に於いては意外と使い古された手法なのですが、最後は更に高次元の存在に至る為に私を取り込もうとするもう一人の私と対決するのでしょうか?

なにか一昔前のファンタジー物のような展開ですね。もちろんこの世界にそんな物語は無いので異界の無駄知識ですが。

 

 

さてヤバい人のお話でしたね、

個人的に重宝しているものの一つが鑑定系の技能なのですが、この時ほど見え過ぎるものも考え物だと思いました。

クラスに魔法使いが居ましたので興味本位で詳しく視てみたところ、下級程度の私と違い文字通り桁違いの魔力の持ち主でした。異界の転生者であった私である「アリサ・スプリングフィールド」に匹敵する魔力ですね、他のパラメータは人並み程度に収まっていましたが。

 

しかし本題は莫大な魔力量ではなくその出自です。

名前の後に(転生者)ってなんですか!

私も余り人の事を言えた義理ではありませんが勘弁して下さい。

地方の名ばかりの貴族の末っ子で魔力持ちで冒険者志望ですか、異界の無駄知識にあった典型的な転生成り上がりルートでしょうか?

まさか実際に目にする羽目になるとは。ここは適度に距離を取り生暖かく観察するべきでしょうか?

いくらチート持ちであっても自力がショボい私にアリサのような波瀾万丈な人生は送れそうには無いので関わりにならないのが吉ですね。

 

 




究極(アルティメット)アリサ被害者その2
ただしガワは夕映吉


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おむすび ちょろイン すっとんとん

転生者さんが同期の格闘ロリ娘さんと付き合っているという噂が流れています。
同時に小さい子が好きとか小さい胸が好きという噂も流れていますが…まさか彼女の自作自演ではないでしょうね。



転生者さんのロリコン(無駄知識より)疑惑は当人同士の問題ですのでどうでも良いです。

生き馬の目を抜く世の中ですので、格闘ロリ娘さんにしてみればそのような噂が有れば牽制に利用するぐらいの図太さが必要でしょう。

問題が有るとすればそれが真実だった場合は私のフラットボディーが彼の琴線に触れないかという事ですね。考えてて哀しくなりますが…

余談ですが実は私ここでは年長なんですよね。

 

 

私が産まれた場所は南方の島で、周囲に海竜が生息する為に島から脱出する為には相応の力を付ける必要がありました。流石に海上を戦って抜けるのは無理がありましたので、縮地による脱出を計画して修得出来るレベルまで氣の運用を鍛えたのですが、流石に一朝一夕とは行かずに地元では嫁に行く年齢になってしまいました。行かず後家になるとかかんとか騒音が酷かったですね。

 

なお縮地を使う移動には幾つかの欠点が有り、そこへ私の無知も加わり死にかけたのはまた別の話です。

 

 

転生者さんは入学順位が5位以内の4人でパーティを組みました。実力主義の世界で有る以上は順当ですね。

ちなみに5位以内の残りの1人は私ですがボッチです。余り大っぴらに出来ない事情が多いのでしょうがないのです。ええ、決して無視されているわけでは無いのです。

普段からちょっと氣を抑えて気配を消しているだけで、影が薄いわけでもありません。

 

そんなある日の事、残り僅かになったお米を購入する為に町へと出かけました。

島を出て何が良かったかといえば、小娘の稼ぎでもお米をお腹いっぱい食べる事が出来ることですね。もう貧しい島の生活へは戻れそうにありません。

などと食欲に支配されていた為か不覚にも彼の接近に気付きませんでした。ええ、今現在隣でお米の物色をしているんですよ。それもこれもお米が美味しいのがイケナイのです。

そんなわけで気配を消しつつ離脱しようか…いや、今購入しないと明日の朝のご飯が…しかし…

等とグズグズしていたのがいけませんでした。

 

「君は冒険者予備校でいっしょだよね」

 

ええ!頑張って存在感消していたのに気付かれていたのですか!?

 

「偶におにぎりを美味しそうに食べていたから印象に残っていたんだ。俺のパーティメンバーは米を出したら食べるけど自分からは食べないからな。美味しいのにな」

 

「そうですよね!お米美味しいですよね!」

 

全てはお米が美味しいのがイケナイのですよ。あっ、いや、そんな理由で気付かれていたのですか?!

 

「ちなみにおにぎりの具は?」

 

「「ぐ」ですか?」

 

「ん? 具じゃ通じない? 中に何を容れるのが好きなのかなって」

 

「えっ? 梅干し以外にも容れるものなんですか!!」

 

なんですって!それは一大事です!!

 

「えっ、マジ!? それは人生損してるだろ」

 

「そっ、それで、いったいどのような物を中に」

 

「いいから落ち着け、店の迷惑になるから先ずは買い物を済ますぞ」

 

「そうですね。明日のお米を買いに来たのでした」

 

なにか、クール系かと思えばこんな娘だったんだとか聞こえた気がしますが気にしません。ええ、それより今は買い物に集中しましょう。

 

「それで、ええっと、何て呼べば「ユエです」ユエは時間あるか?昼が未だなら実際に作って食べるのが早いから」

 

「ええ、そうしましょう!!早速作りましょう!!」

 

「落ち着け、具材の材料も購入しに行こう。場所は家でいいか?」

 

「喜んでお伺いします!!」

 

「いや、どんだけ楽しみなんだよ」

 

何か呆れられている気がしますが、それは既に答えを知るが故の余裕でしょう。私と同じ立場なら彼だって気が急いて仕方が無いハズです!

 

 

途中私の下宿に寄りいくつか荷物を回収して上級区画にあるお屋敷へやって来ました。どうやら転生者さんは順調に成り上がっているようですね、おかげで少し冷静さを取り戻す事が出来ました。

妙な勢いでここまで来た2人ですが、お屋敷を見て若干引き気味の私の姿に転生者さんも勢いが削がれたようです。

 

「えーと、どうする?」

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、覚悟完了です!」

 

「俺の家は龍の巣かなんかか…」

 

呆れつつも時間が惜しいと裏口から台所へ直行されました。なんだかんだ言いつつも彼もお腹空いたのでしょう。

 

 

「さて、ご飯が炊けるまでに次は具材の準備をしよう」

 

湯気吹く土鍋をバックに彼は宣言しました。

しかしご馳走になってばかりではいけませんね、ここは我が調理スキルと調理魔法の奥義を持ちいて産み出された究極調味料の出番でしょうか。

 

「では椀は任せていただけますか、お米に合う良い物が有ります」

 

というわけで魔法の袋から家から持ってきた壺を取り出します!

 

「…味噌……だと…」

 

「地元の調味料なのですがご存知でしたか」

 

「味を見ていいか? ここに俺が自作した物が有るから比べてみたい」

 

「いいですよ、では私も」

 

というわけで二人で味見

 

「くっ、俺のより旨い」

 

「そうですか? これは癖がなくて使いやすそうですね。

 私の味噌を誉めていただいたので味噌汁は私が作りますね」

はぁ~、昆布の佃煮、肉味噌、魚卵の醤油漬け、塩鮭

このような世界があったとは…、確かに私は人生を損していました。

大切な事を惜しげもなく伝えて下さった転生者さんにはいくら感謝しても足りませんね。

 

「味噌汁旨いな、何かほっとする。やけに美味く感じるが人に作って貰ったからか?」

 

「確かそういうの有りますね、貴方が握ったおにぎり美味しいですよ」

 

冒険者予備校に入学する為に義姉さんと別れてからずっと一人でしたから誰かと食事するのは久しぶりです。

 

「よし、デザートに甘味も作るか」

 

なにか生暖かい視線を感じましたが甘味に免じて追及はしないでおきましょう!

 

 

 




即落ちユエさん


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大豆の錬金術師


 

俺が通う冒険者予備校に誰ともパーティを組んでいない小柄な剣士がいる。

ロングの艷やかな黒髪にジト目で無表情、パーティメンバーのロリ枠と大差無い体格の女性だが男性よりも強いらしく腕は悪くな無いのにボッチなのが不思議なのだが、妙に影が薄いからだろうか?

どうでもいい事だがそんな雑談のなか、パーティメンバーの格闘家は同じ小柄でも自分の方が胸が有ると譲らなかった。

 

そんな彼女と偶然町で出会い、話す機会があった

どうでもいい事だがパーティメンバーの剣士にその時の事を話したら完全にナンパだろと突っ込まれた。解せぬ

 

 

「味噌もそうだけどユエは色々と食材とか詳しいな。それなのにおにぎりに具を入れるとか考えなかったのか?」

 

「私の居たところ水が貴重なんです」

 

「あっ…(察し)」

 

「お腹いっぱいお米を食べられるって……、王国って豊ですよね」

 

「もういい、みなまで言うな! 冒険者予備校に来る奴なんてだいたい似たり寄ったりだから!!」

 

「地元を飛び出して、魔物の領域で義姉さんに拾われて、色々あったけど私は今幸せです」

 

くっ、ユエのやつ何かを悟った様な透明な微笑みを浮かべてやがる。迂闊にも地雷を踏み抜いたか!?

 

 


 

大豆の錬金術師

 


 

私の故郷の島は稲作が主体なのですが、昔はそれなりにあった水源が現在は渇れて乏しいという詰んだ状況でした。

水源を押さえている名家の生まれならともかく、武士の家系でも地方の領主の三女など労働力扱いで農民の次男以下の子供と変わらないものでした。そんな理由で家に対してさほど執着も恩義も感じられない私は自身の力を家の為に使う気にもなれませんでした。

 

とはいえ、ここまで育てて貰ったのも事実ですので脱出の隙を作るのを兼ねて涸れたため池の底の岩盤を錬金で脆くして穴を開けて地下水を湧かせて騒ぎをおこしました。あの水源が有れば未だしばらくは大丈夫でしょう。ただ今度は水源を守る必要があるでしょうがそこまでは面倒見きれません。

 

 

「今日も美味そうに食べてるな」

 

「物欲しそうに見たってあげませんよ」

 

「取らんわ!!」

 

ふむ、武士は食わねど高楊枝ですか。

 

「俺だって何時でも食えるように常備している!!」

 

流石はおにぎりマスターさんです。…ん?

 

「どうやらコレの事が気になるようだな」

 

転生者さんが取り出しソレから香ばしい香りが…これは醤油?

 

「焼きおにぎりだ!!」

 

「…焼き……おにぎり…」

 

「クックックッ、やはり知らなかったか。中に具を入れるだけがおにぎりの食べ方では無い事を」

 

なっ、なんですって

 

「そっ、そんな物を私に見せつけていったい何を企んでいるのですか!?」

 

「いや、ちょっと頼み事があるんだが」

 

私が断れない事を見越して交渉するとは悪魔め!

そこへ彼のパーティメンバーが話しかけてきました

 

「ねえ、いつの間にその人と仲良くなったの?」

 

「すみませんが今は大事なお話中ですので後にして下さい」

 

「これから大事な交渉があるから話は後でな」

 

不満顔の格闘家さんを置いて会話を続けます。

 

「それでなんですか? 貴方にはお世話になりましたから大概の事なら聞きますよ……あっ、ハーレム入りはご遠慮しますので。小さい娘がご所望でしたら他の方をあたって下さい」

 

「悪趣味なデマを信じるな!!」

 

ちょっとした意趣返しをしてネギーんと惚けます。

 

「と、に、か、く、調味料を分けてくれ! 焼きおにぎりを作りたい」

「…ちゃんと食わせるから涎を拭け!」

 

転生者さんは天使ですか!!

これは歓待せねばいけませんね。

 

「お茶飲みますか」

 

「いただこう」

 

自作の湯呑みを取り出し温かい麦茶を注ぎます。ボッチの癖に食器複数持ってんのかと彼のパーティメンバーから向けられる視線は黙殺します。

 

「糠漬けもどうぞ」

 

入れ物から自分の分の胡瓜を一本取り出し転生者さんにも薦めます

 

「丸ごとかよ!!」

 

「お行儀悪いですけど、切らずにそのまま齧るのが好きなんですよ」

 

言いつつポリポリと齧ると、転生者さんも一本取り出し齧りついた

 

「むっ、確かにこの食べ方は妙な魅力があるな」

 

「それでは授業が終わったらまた貴方の屋敷でよろしいですか?」

 

そこまで話したところに今度は剣士さんが割り込んできました。

 

「調味料なんか今度でいいだろ、パーティで狩りに行こうぜ!」

 

「貴様「調味料なんか」とはなんだ! もうお前には家に来ても飯は食わせんぞ!」

「それと見ろ!ユエのこの世の終わりを迎えたような表情を!」

 

「いつもどうりの無表情だが…」

 

「だだだ大丈夫でですよ、ええ、私は大丈夫ですのでドウゾパーティメンバーを優先されて下さい。色々と自分で試して「俺がそれを食いたいんだ!」みま…あっ、はい」

 

しかしパーティの女性陣の目が痛いですね、私は別に割り込むつもりなどないのですが。

 

「先日はご馳走になりましたから味噌と醤油は差し上げますから、今日のところはパーティメンバーを優先されて下さい。それでどれにしますか?」

 

そう言って転生者さんの前に各種調味料の壺を並べて…

 

「全部下さい! 金なら払うから!!」

 

イヤシンボですか、これはいっそ作り方り教えた方が良いでしょうか?

 

「全部は流石に…そんな絶望した顔しないで下さい。それでは貴方が作った物と交換しましょうか」

 

「やった! 沢山あるからいくらでも持ってってくれ!」

 

この人も大概イヤシンボですね。そこ、似たもの同士とか失礼ですよ。

 

「食いしん坊が2人になった」

 

「奇遇ね、私も今そう思ったところよ」

 

「先程から失礼な人達ですね」

 

「そうだ!お前ら俺に失礼だぞ」

 

お互いに失礼なとの言い合いは講師が来るまで続きました。

 




この後ボッチオリ主は譲って貰った焼きおにぎりを見本にして一人で焼きおにぎりしました。


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フードハンター夕映


 

ある日冒険者予備校の教室で調味料入りの壺を広げ始めた私と転生者さんに何事かと周囲の視線が集中します。

 

「しかしこいつはともかく君まで普段からそんなに調味料を持ち歩いてるのか?」

 

「おいこら、俺はともかくとは随分な言い様だな」

 

「何を言い出すかと思えば、最悪食材は現地調達出来ますが調味料はそうはいきません。備えて置くのは当然でしょう」

 

「いや、最悪ってどんな事態を想定してるんだよ」

 

ふう、剣士さんは解ってませんね。

 

「そんなの突然魔物の領域に放り出された時に決まってるじゃありませんか」

 

「「「「「「そんな突然はねーよ!!」」」」」」

 

何故かクラス全員の意思が統一されました。人とは分かり合えるものなのですね(私除く)

……えっ?転生者さんもそちら側ですか!?

 

 


 

フードハンター夕映

 


 

さて、その後も転生者さんには様々なお米の料理を教わりました。特に丼ものは一つの完成された世界と言っても過言ではありませんです。

 

ですが転生者さんと食限定とはいえ話が合う私を苦々しく思うのか、彼のパーティメンバーの方々からは嫌われたようです。

彼と私で時々食事会をするせいで狩りに行けないと言うのが彼らの言い分ですが、そもそも転生者さんは私が居なくても食が絡めば暴走する方ですのでとんだ風評被害だと思うです。

 

そんなこんなで夏休み間近、彼から王都行きのお誘いがありました。

なんでも仲が良いお兄さんが結婚するそうで友人と一緒に観光がてら王都へ来ないかとのお誘いがあったそうです。

お米仲間として友人枠に入っていたのは嬉しいのですが、彼のパーティメンバーとは折り合いが悪いのでお断りしました。

もっとも本当の理由はちょっとピンとくるモノがあったからなんですよね。

転生者である彼が王都へ行くとか絶対に騒動に巻き込まれるフラグとか言う奴です。ここは距離をおいて生暖かく見守るのが正確です。

転生者さん、貴方は良い友人でしたが、貴方が転生者なのがいけないのですよ。

 

等と考えて王都行きを断った私の判断は正しかったようです。

転生者さん達が王都行きに利用した魔導飛行船がアンデッドドラゴンに襲われたそうです。幸いにも乗り合わせていた辺境伯家のお抱え魔法使いさんと転生者さんの2人で辛くも撃退して無事王都へ到着。そのまま王城にて陛下に謁見し、アンデッドドラゴンの討伐と魔導飛行船を守った功績により叙勲し法衣貴族に叙任されました。

やはり彼は持ってる人でしたか、多分その魔法の腕を見込まれこの先も平穏無事とはいかないでしょうから距離を取るには最適のタイミングでした。

クラスメイトは私の事を1人だけ置いていかれてチャンスを逃したと間抜け思っているようですが人間分を超えた幸運は毒になりかねません。

 

「何事も程々で良いのです」

 

「程々ねえ、負け惜しみじゃないのはユエの性格的に分かるけど」

 

そこそこなお値段のレストランで向かい合うは私の恩人である二つ名持ちのベテラン冒険者である義姉さん

…ベテランのところで睨まれました。姉さんは気にし過ぎと思うのですが、それを言うと若い奴は余裕だねと絡まれるので黙ってましょう。

 

「領域の主を断首するのを程々と言うとは知らなかったよ」

 

またそうやって出会った時の事を蒸し返しますか

 

土地自体を縮めることで距離を接近させる仙術"縮地"はその逸話から空間を歪めて移動距離を短くすると解釈できます。そして私の使う"縮地"の実態は地脈の流れに乗っての移動(移動中の自分の状態がどうなっているかわかりませんが)で、ようは現世に存在しない道を通っての移動なので転移というよりはSFのワープ航法のイメージが近いと思われます。

仙術"縮地"そのものか分かりませんが、解釈にもよりますが近い概念ではあると思っています。

 

さて、なんとか可能なレベルに過ぎない私の"縮地"は初回は移動先を選べないという欠点があります。その理由は単純に移動先を確認する術が無いというこれまた致命的な理由です。

一度行って場所さえ覚えれば解決する問題ですが、初回はどうしても博打になります。

当然島からの脱出時にも行先不明でとにかく太い地脈を目指せば最悪でも陸地に着くだろうと考えた結果が魔物の領域に出現、それも領域の主の目の前に出て死にかける破目になり、それが義姉さんとの出会いでした。

 

「義姉さんが竜殺しの英雄さんに興味が有るのでしたら紹介しますよ。多分今なら未だ縁を頼れそうですが、この先は疎遠になるだけなので今の内ですよ」

 

「変な気を回すんじゃないよ! だいたい未だガキじゃないかい」

 

「そうですね、小さい娘が好みとの噂もありましたから年上では無理かもしれませんね」

 

「ユエなら行けたんじゃないかい?」

 

「私の方が3歳年上なんですけどね、私の人種は大陸の人と比べると若く見えますから」

 

そんな感じで久しぶりに義姉さんと楽しくお食事をしました。

明日から残りの夏休みは義姉さんの依頼に付い行く予定です!

まだ見ぬ食材達よ、私が狩りに行きますから待ってて下さい!!

 

「ユエ、みっともないから涎拭きな」

 

 


数年後の再会


 

三義姉妹の次女

「義妹だけじゃなく義姉さんまで喰ったんですか

 いくら丼好きだからって(義)姉妹丼とか最低ですね」

 



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パラレルワールド(ヒロアカ連載のif.)
サポート科横嶋



 

俺の名は横嶋忠雄、誤字じゃねぇぞ。『僕のヒーローアカデミア』に似た(・・)世界に転生した『YOKOSHIMA』のパチモンだ。

因みに転生前の記憶は有るが転生した経緯がスッパリ抜けている。

死んだのか?あるいは記憶や魂のコピーなのか?少し悩んだが『Cogito, ergo sum』の精神だ。胡蝶の夢でも良いぞ!

つまり何が言いたいかというと、神様に遭った記憶は無い。お陰で寒いコントをやらされずに済んだのは僥倖だ!!

 

転生について意識し始めたのは自身の個性を調べ始めた結果だ。

目覚めた当初は弱い増強型の個性と診断されたのだが、子供なりに違和感を感じて考えていたら知らないハズの知識を識っているという矛盾が発生。

何日か寝込んだ結果個性が霊能であると自覚した。

 

それからは『斬魄刀』(出なかった)やら『霊丸』とか色々と試したのだが最終的に俺が行きついたのが霊具作成だ

原作のミニ四駆のエピソードの影響なのかモノ作り系のスキルが高いYOKOSHIMAは多い、お陰で結構な補正が掛かるようだ

 

始まりは小学校時代に傀儡式神を爆豪に爆破されて意地になったのがきっかけだな

普通のオリ主ならヒーロー科受験なのだろうが俺はヒーローに希望を持てなかった。厳密には強個性優遇の現状、小中学時代虐めをしていた爆豪のような奴がヒーロー科に受かる現状から雄英のヒーロー科に価値を見出せなかったからだ

そんなわけでモノ作りが性に合っていた俺はサポート科を受けていたのだった。普通科よりある種のインパクトがあるしな

 

爆豪め、小学校時代はショボかったからモブ扱いも甘んじて受けたが(1度同じクラスになった。中学は別の校区)近いうちに目にもの見せちゃる!!

 

 


 

サポート科横嶋

 


 

「意味ねェからどけ モブ共」

 

「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」

 

うわぁ、爆豪と会うのは小学校以来だが悪化してねーか?ヒーロー科って生徒の素行調査とかしてないのかね?個性こそ全て!?

 

「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁ

 ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

おお、これが原作のシーンか、俺はサポート科だから全然見れなかったんだよなぁ

 

「ああ!?」

 

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

 

「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ。知ってた?」

 

俺は違うけどな!!

ぶっちゃけやらかす際のインパクトでサポート科を選んだ!!

 

体育祭のリザルト云々言ってるがそろそろ顔見世がてらチャチャ入れるかな

 

……宣戦布告しに来たつもり」

 

「はいはい、そこまでそこまで」

 

「なんだお前」

 

空気を読まずに割り込んだ俺に胡乱な視線を向ける心操に我関せずな爆豪

 

「俺はサポート科の横嶋、最初からサポート科志望だから別にヒーロー科編入とかどうでもいい。将来態度悪いヒーローのサポートは断る予定。オーケー?」

 

「ああ、それでなんの用だ」

 

「いやぁ、君がさっぱりなってないからさ、喧嘩売るんなら先ず名乗りだろ、匿名で言いたい事だけ言うなんてモブ呼ばわりされても文句言えないぜ!!」

 

「ケッ」

 

「なっ」

 

「それとあんまり強い言葉使ってるとかえって弱く見えるぞ、A組の奴もだがな」

 

「なんだと、テメェ」

 

「あっ、怒ったって事はキャンキャン吠えてる自覚ある?」

 

おうおう、スゲー顔しているが赤髪君に羽交い絞めで抑えられてるわ、突っ込んで来たらワザと食らって怪我してやったのにな

まぁ爆豪はあれで平常状態だから吠えてるわけじゃないって知ってて挑発してるんだけどね。向こうが俺を覚えて居ない以上は現在の印象で話しても問題無いだろさ

 

「そんなわけで俺達サポート科はサポートアイテム持ち込み可能なんで結構手ごわいぜ、実際の所は稼働データ取りや企業へのアピールを踏まえているんで目的は違うけど一応はライバルなんでよろしく~」

「と、そこの彼はB組かな?当日よろしく~」

 

「おおい、まてまて、まだ帰るなよ。お前の言う通りだから俺にも名乗らせろ。帰る前に俺の名前聞いて行け」

 

「オッケー」

 

「俺はB組の鉄哲徹鐵だ! 体育祭は俺達B組が上位を占めて勝っ!!」

 

「おお、そうそう、いい感じで男らしいぜ!!」

 

「俺は普通科の心操人使だ、覚えとけ」

 

 

「ちくしょぅ、熱いじゃねーか!!」

 

「うむ、お互い名乗りを上げる事で己が立ち向かうべき目標を認識させたか」

 

「ってこらこら、この流れで無言で出て行くかぁ?」

 

「関係ねえよ……」

 

「はあ―――!?」

 

「上に上がりゃ 関係ねぇ」

 

感じ悪いまま去っていきやがった

 

「あれかね、ヘドロ事件の人質君ってクールな俺カッコイイってタイプ?」

 

俺が爆豪の事を指摘してやると思い当たったの周囲の人間が騒めきだした

 

「横嶋君だったかな、その覚え方はちょっと失礼だよ」

 

空中に映像を投影して当時にニュース映像を流す。それを見て騒めきだす周囲に聞こえるように

 

「君はこのニュースによると当時無個性だったのに飛び出してオールマイトに助けられた緑谷君だったかな、俺は人に敬意を払えないやつにたいして礼儀を払えるほど人間出来てないんで、自己紹介で言ったけど態度が悪いヒーローのサポートは断る予定。イイネ」

 

「君は、いったい……」

 

「情報収集なんて基本中の基本だろ。ましてや俺はサポート科なんで頭が武器なのさ」

 

取り合えず種は撒いた。後は無双するだけだ

 

 

 

 

 

体育祭は WING-MAN SUIT で蹂躙しました。偽オリハルコンの装甲の前には爆破も凍結も無力ですわ。まあ実際は爆破の衝撃でノックバックは起きるから無意味ではないんですがね、その辺は追加装甲のガーダーと立ち回りでカバーしました。

それに現最強兵装のファイナルビームは使って無いからこれでも手加減したんですけどねぇ、信じられるかい? これまだ試作品なんだぜ

 

 

んで表彰式、お前空気読めやって客席からの視線が気持ちいいぜ

雄英体育祭を個性を一切使わずに全身装甲の強化服で蹂躙した俺はこの個性時代に喧嘩売ってるんですよね。

 

俺にメダルを掛けるオールマイトも引きつっている。そりゃ花形のヒーロー科がサポート科の一年に蹂躙とか雄英の教育とヒーロー科生徒の資質を問われるわな

俺の下で爆豪がもう一度戦わせろとかわめいている。会場の空気も爆豪に同情的だな、

 

「なんですかねぇ、この空気は? 自分はなんら不正はしていないのになぜ責められているんでしょうか? 分かりますか、オールマイト?」

 

「私も君がなんらルール違反をしていないのは理解はしているが、そのスーツの性能は少々やり過ぎともとられる完成度だったのが問題だったね」

 

「はっきり言ってもいいですよ、ただその場合は恥の上塗りになると思いますから覚悟して下さいね」

 

「そのだね、君のサポートアイテムの力は凄いが君自身がどうなのかを皆が知りたいんだよ」

 

「立ち回りだけでは俺の能力を測れないと、他の先生方も同意見でしょうか? でしたらちょっと幻滅ですね」

 

『あー、一応クレバーな立ち回りは評価されているんだぜ?でもそのスーツが無くなった時に果たしてどうなのかを知りたいんだが』

 

おっと、代表してプレゼント・マイクが答えてくれたか。つまりマジで教師でも否定意見が出てたのかよ

 

「それって意味ありますか? 俺はサポート科ですから別にヒーローとして最前線に出る予定はありませんので個人の戦闘力とかどうでもいいじゃないですか」

 

あー、なんか客席が騒ぎ出したな。まぁ個性を使った戦いを見に来てこれでは納得出来ないだろうが

 

「ああ、ヒーロー科が俺に優勝辞退を要求しているんですね」

 

「決してそんなことはではないよ」

 

「でしたらメダルを頂けませんか、今更この状態でお褒めの言葉とかは要りませんが」

 

っうわー、会場スゲーブーイングが始まったよ、いや俺別に不正してないのにこの空気なんだから悪態くらい許せよ

 

「あー、はいはい、わかりました。ではスーツを脱いで一戦だけ戦いますよ。それで満足ですか」

 

「いやそうわけで…」

 

「無理ですよ、観客は凄い個性の戦いを見たいのですから収まりませんよ。どうころんでも俺は色々と批判されそうですからやらせて貰いますよ」

 

「そうか、わかった。でもメダルは……」

 

「もういいですよ、辞退しますから、代わりにもう一戦、俺の優勝に納得していない参加者全員を出してください」

 

「まちなさい、まさか一人で何人も相手をする気かい?それは流石に」

 

『待て、横嶋だったか。流石にそれは認められんから大人くメダルを受け取れ。A組担任の俺はサポートアイテム以上にお前の立ち回りを評価している。今回はお前が上手だっただけだ』

 

ん~、流石に今更勝っても負けても得るモノ無いって気が付いたかね。でも遅いよね、会場の空気が悪くなる前に俺の援護をしていれば違ったろうに

でも流石に一対多は認められんのか2位の爆豪と対戦となった

 

 

「良かったな、勝っても負けても優勝メダルはお前のもんだぞ」

 

「イランわ!! 勝ってお前に叩きつけてやるわ!!」

 

「あー、分かり難いツンデレは止めろよな。

 時間オーバーだからデカい一発で勝負しようや。それともチマチマ削るのがお好みかい?」

 

「その挑発のってやんよ!! クタバレ陰険野郎!!」

 

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)だっけ?予備動作として飛び上がった奴の真下に移動する。一瞬怪訝な表情をしたが真っ向勝負を察したのか獰猛な表情で嗤ってやがる。だがすまんな、火力にはちーとばっかし自信があるんだわ。お前らが望んだ個性有りの戦いだ、別に手加減しなくていいよね

 

奴の攻撃のタイミングで文珠を握りこんだ拳を突き上げる!!

 

榴弾砲(ハウザー)着弾(インパクト)!!」

「Level2、(精)(霊)(砲)(アーソナーガン)!!」

 

『爆豪の特大火力をデカいビームで相殺どころか吹き飛ばしたぁ!!!

 お前そんな力あるんなら最初から使えよお!!!!!』

 

ゴン太のビームで爆発を押し返して爆豪を吹っ飛ばす。見た目はヤバ気なしろもんだが俺の霊力だから殺さないように意識すれば自然にダメージは抑えられる。

 

「悪いね、ヒーロー科は半端に強いから手加減出来ないんだわ」

 

直撃食らって落下した所をオールマイトに受け止められた爆豪へ話すが…気絶してるか

 

「酷い傷だ、本当に手加減抜きなんだね。私達の態度はそこまで君を不快にさせたのかい」

 

「あの攻撃にはそれほどの威力はありませんよ、ただあの光は量子レベルの全ての運動を制御するので範囲内の爆発のエネルギーが全て反転しました。つまり彼の怪我は押し返された爆発の熱と衝撃による自滅ですよ。むしろこれ程の殺意を俺に向けた彼を責めて下さい」

 

流石にオリジナル精霊砲にはそんな性質はないが、この手のインチキをフィーリングで可能になるのが文珠の便利な所だな。

 

「君はそれほどの力を持っていてなおサポートアイテムに頼ったのかい」

 

「ぶっちゃけスーツ着用は手加減の為に個性を使わず済ます為。それと慈悲ですよ、サポート科に負けても装備に負けたって言い訳できるでしょ」

 




初心にかえって感じ悪い横嶋を書いてみる



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A組横嶋


 

俺の名は横嶋忠雄、誤字じゃねぇぞ。『僕のヒーローアカデミア』に似た(・・)世界に転生した『YOKOSHIMA』のパチモンだ。

因みに転生前の記憶は有るが転生した経緯がスッパリ抜けている。

死んだのか?あるいは記憶や魂のコピーなのか?少し悩んだが『Cogito, ergo sum』の精神だ。胡蝶の夢でも良いぞ!

つまり何が言いたいかというと、神様に遭った記憶は無い。お陰で寒いコントをやらされずに済んだのは僥倖だ!!

 

転生に付いて意識し始めたのは自身の個性を調べ始めた結果だ(ry

それから、色々と(ry

ところが中学前に自分ちょっと周囲と画風が違うなぁと(ry

それはさておき、横島って(ry

これだけ出来れば実技はなんとかなるだろう(ry

 

そんなこんなで無事合格しました。筆記で苦戦したから首席には届かなかったがな!!

 

そして入学式!クラスもA組20人に潜り込めたぜ!!

しかも今回は! 今回? 何が今回かはわからんが所謂お約束のタグ『青山不在』ってヤツだな。メタ発言はGSだけじゃなくてヒロアカもやってるからなんの問題も無いぜ!!

 

「えーーーーっ? 折角A組に横嶋さんが居るのに、なんで私は居ないのぉぉぉぉおおおお!?」

何処からか抗議の声(CV:悠木碧)が聞こえた気がしたが気のせいか?

何しろ倍率300倍ヒーロー科だからな、落ちた奴なんて10000人超えだ。呪詛の一つも聞こえよう

 

「よし、こうなったら中の人繋がりで」

 

 


 

A組横嶋

 


[戦闘訓練]


 

切島&瀬呂 VS 芦戸&横嶋

 

「瀬呂君は個性把握テストで見れたけど、芦戸さんは切島君がどんな個性か知ってる?」

 

「硬化だよ、同中だったんだ」

 

「硬化かぁ、防御力が高いのは苦手なんだよな。受験でも0Pロボには自慢の蹴りも歯が立たなかったし」

 

「戦っただけでも凄いよ。切島の相手は私がしよっか?」

 

「いや、芦戸さんは瀬呂君の相手をしてくれ。酸ならテープで拘束されても溶かして抜けられるから俺より勝率が高い」

「クソッ、電装脚にも耐えるかよっ!!」

 

「硬化してもスゲー衝撃だったぜ!!だが俺は倒れん!!」

 

やはり硬い相手は天敵だ、だが人間サイズが相手なら対策はある。

倒れんとか大見え切った奴をタックルであっさりと転ばす。すかさず

 

グワァ

「くらえっ スピニングトゥホールドーーーーーッ!」

キィ

 

 

「プロレスーーーーー!?」

「いかんぞ横嶋君!! その伝家の宝刀は負けフラグだっ!!」

「いっけー!!」

「うぉおおお!!そこだっ!クラッチ切るんだ切島!!」

 

「凄く盛り上がっていますわ。何故かしら」

「ケロケロ、子供みたいに盛り上がって可愛いわ。男の子ね」

 

 

 


[人命救助訓練]


 

「あんクソボンバーどもが足引っ張りやがって! おかげで(ヴィラン)の思う壺じゃねーかよ」

 

好戦的な馬鹿が(ヴィラン)に突っ込だ為に転移の個性持ちの攻撃でクラスメイトが散り散りになってしまった。

それはそうと如何にも(ヴィラン)な集団の中に場違いな優男が1人居る。

よく有るパターンだとこの手の手合いが一番ヤバイんだよな。絶対なんか有るぞ、霊感が囁くぜ

 

「あーあ、女なら楽しめたのに男かよ、まあいい、さっさと殺して移動するか」

 

「ケケケ、ヒーローの卵ってもガキ独り、これだけ居りゃ負ける……ぐあああああ!!!」

 

「うぉっ、」

 

やべ、あの優男ビームで先頭の奴らごと俺を攻撃しやがった。巻き込まれた奴らは死んだか!?

 

「テメェ裏切るのか!」

「くそ、先ずコイツからだっワラバッ」「フギャ」「ヒッ」「アガッ」

 

なんだあいつ、体のあちこちからビームを撃って仲間を殺しやがった、何を考えているかわからんが大量殺戮とかヤバイだろ

 

「青山不在」

 

「はっ? お前なに……まさか!」

 

「なにかというと君達転生者のせいで雄英を落されてキラメキを奪われた僕達、青山優雅の恨みを今ここで!!」

 

まさかの原作キャラ闇落ちかよっ、だがそれは言い掛かりだろうがよ!!

 

「やかましいわ!この逆恨み野郎!!」

「そもそも俺は真っ当に試験受けての入学じゃい!! テメーの努力の足りなさを人のせいにするんじゃない!!」

 

「これが! 神様(いたましい神性)が数多の僕達の怨念を汲み上げて生み出してくれた力だっ!!」

 

そういうと変身を始める青山、全然こちらの話を聞いてないな、都合が悪い事は無視かよ。

そもそも別に受験は不正してないからどうこう言われる筋合いはねーよ。俺が俺の人生好きに生きて何が悪いってんだ

それにしてもあの姿は……つまりビームじゃなくて生体レーザーかよ

 

「腹だけじゃなくて全身からレーザー照射、マッシブな甲殻ボディってゼクトールじゃねーか!! しかもネオの方、お前それ死ぬヤツだぞ!!」

 

「君を殺して僕も死ぬ!!」

 

「イ~ヤ~じゃあーーーーーー!!!

 それで上手いこと言ったつもりかぁ!! 誰が男なんぞと心中するかぁああああああ!!!!」

 

「ええい、くそ、デカい図体の癖に良く動く!」

 

レーザー対策が思い浮かばないので身を隠しつつ中央に戻ってきたが緑谷達がデカブツと戦っている。クライマックスか?

 

「わっ、横嶋君と……更に(ヴィラン)が!!」

 

っと、いっそ死柄木弔の所に突っ込んで擦り付けてやれ

 

「何だコイツは? クソッ、次から次へと予定が狂うばかりだ!」

 

そもそもがオメーが連れてきたんだろうがと悪態をはく

 

「こらテメー、手下の能力くらい把握しておけ」

 

「はっ?こんな奴居たか?」

 

「居たんだよ!変身したんだよ!!」

 

「そうだ、お前らを倒せば雄英も僕のキラメキを無視出来ない! 僕のキラメキの為に消えてくれたまえ!!」

 

「なんだと、コイツ裏切るのか! ちっ、遠距離持ちかよ。脳無っ、コイツから片付けろ!!」

 

 

 

「なんだ、仲間割れか!!」

 

「横嶋君、あの(ヴィラン)はいったい?」

 

「雄英ヒーロー科の不合格者、つまり逆恨み」

 

よっしゃ作戦成功、しっかし高周波ブレードに生体ミサイル、熱放射にレーザーって山盛り武装は半端な個性じゃ対抗出来んぞ。この後どうする?

 

「なんでアレで落ちるんだよ、あんなん実技試験楽勝だろうがよ!!」

 

「いいから峰田、突っ込み入れてる暇があるなら先生回収して逃げるぞ!!」

 

「おっ、おう」

 

「もう大丈夫 私が……どういう状況?」

 

 

「複数の個性持ちだと!! こいつも脳無なのか!?」

 

「そのようなエレガントさの無い名前じゃない! 僕の名前は優雅・ゼクトール・青山っ!!」

 

「落ち着いてください死柄木弔、幸い奴は脳無の再生能力を超える攻撃を持ってはいない模様、何れは勝ちます。ですがオールマイトが来てしまいました。脳無が抑えられていてはこれ以上の作戦行動は」

 

「ゲームオーバーかよ、引くぞ」

 

「僕のキラメキの前に消えてしまえっ!!」

 

羽を広げた!? この冷気は……羽が熱交換器になってるんかよ!!

腹部へエネルギーの収束、あいつ脳無をブラスターテンペストで焼き尽くすつもりだ

 

「拙い! そこのカブトムシの正面に立つな!! デカいの撃つ気だ!!」

 

「はっ 秒でブッコロせば関係ねーよ!!」

 

なっ、なんでこのタイミングで突っ込んできやがる! 馬鹿野郎がっ!!

 

「相手の能力も不明なのに突っ込むな!!!」

 

「イカン!! 爆豪少年! それは悪手だっ!!」

 

『ブラスター・テンペスト!!』

 

青山の叫びと同時に腹部から極大の閃光が放射された! 射線にはデカブツとその背後から飛びかかった爆豪。死んだな

 

「かっちゃんっ!!」

 

くそっ、なんて熱量だ。デカブツは蒸発、爆豪は……無事だがオールマイトが負傷!? 片足が焼け落ちた。爆豪を庇ったせいか!!

 

「あああ、オールマイトっ 僕はそんなつもりじゃ…そうだ、貴様らのせいだ! (ヴィラン)も、僕より無能な癖に合格した奴らも」

 

「くそっ、ここから出るな!!」

 

暴走してレーザーやミサイルを乱射する奴から守るためにオールマイトと近くのクラスメイトへ文珠(護)を投げる。ストックは足りてるが治療は…

オールマイトの傷を確認するが流石に足の再生とか現状は無理だ。もう戦力として当てに出来ない以上は

 

「くそ、再生は無理かっ、爆豪テメェ黒いヤツの時と同じミスしてんじゃねーよ!! 無能が!!」

 

「なんだと、テメェ、ガァ」BOOM「クソッが出しやがれ奴らをぶっ殺して」

 

「閉鎖空間で爆発使うとか正気か! 死にたきゃ一人で死ね!! オールマイトを巻き込むな!!」

 

オールマイトを守る為の結界の中に一緒に閉じこめられた爆豪が暴れる。正直霊波刀で叩き切ってやりたいところだが時間が惜しい

 

「フュージョン・マコラっ、シンパレート100%! オーバーソウルッ!! マコラ激情態っ!!」

 

猿の式神マコラと同期合体をして生み出した莫大な霊力で巨大な猿を生み出す。NARUTOの尾獣擬きだな

 

斉天大聖をモデルとするマコラ激情態は10メートル越えのサイズでありながら猿の運動能力で圧倒的な速度を叩き出す。

エネルギーで構成されたボディは通常兵器では破壊出来ないのでレーザーやミサイルを無視してブラスター・テンペストの使用で肉体が限界を越えて崩壊を始めた青山を叩き伏せる

 

返す手でオールマイトに止めをさそうとして結界目掛けて移動していた死柄木弔を殴るが、内側に回避されて手で触られた。意外と動けるが無駄だよ

 

「舐める、チィ、またイレイザーヘッドか グハッッ」

 

残念ながら実体が無いエネルギー体なので崩壊が作用しないだけだ。距離を取られるよりも早く蹴り飛ばし、吹っ飛んだ先に回り込み地面に叩きつける。これで全身罅やら骨折で碌に動けんだろうが念の為に霊波をぶち込んでチャクラと経絡を焼いておく。これで個性も封じたはずだ。

 

残るは黒霧、この感触だと俺の方も残された時間が10秒切ったか? コイツも個性を封じる為にぶん殴りながら霊波をぶち込んでチャクラと経絡を焼いておく

 

タイムオーバー、一気に霊力が低下して同期合体も解除された。そんな俺を見下ろす影が……青山の奴まだ動けるのかよ

 

「君だけでも道連れに」

 

クソッ、同期合体の反動で経絡系がボロボロで霊力が出せねぇ、体も動かん。なにか手は……そうだ、未だ未完成だが一つだけ

 

「とらっ!! ぶっ飛ばせぇーーーー!!」

 

「まかせろ!

 雄雄雄雄雄雄(オオオオオオ)っ、オラッァ!!!」

 

影の中から傀儡式神を呼び出す。コイツは機械製のボディだから俺の霊力供給無しでもある程度の戦闘能力は持っている。

ただ強化なしだと強度不足でパワーに耐えられない。だがとらはそんことはお構いなしで自壊しなが連打で押し込み腕が壊れたら食らいつき放電を食らわせた

ギシィィィイ

 

「ぐっ、ぐううっ な、何故こんな事に……」

 

とらの残骸諸共倒れ伏す青山の体は人間に戻ったが崩壊が止まらない

 

「僕も君たちのようにヒーローになりたかっ た」

 

青山の最後の言葉を聞いたところで俺は意識を手放してしまったのだった。

 

 

 

A組横嶋 改めて青山の逆襲(完)

 


 

その数日後、意識を取り戻した俺に対する担任からの説明は、流石に今年の体育祭はオールマイトが負傷した上に(ヴィラン)とはいえ人が何人も死んだので中止に。

オールマイトは事実上引退、片足無くした事もだが怪我のせいで個性自体が大幅に弱体化したそうだ。

 

青山に関しては俺が止めを刺した形だが、元々改造された肉体自体が寿命を迎えていたのでどのみちあの日死んでいた事だろう。流石にお咎め無しとはいかないが、逆恨みで命を狙われていた事で正当防衛となり厳重注意程度で済んだ。実際あの特大レーザーの破壊跡を見れば止むを得ないと判断された。

 

爆豪はオールマイトの片足を奪った青山が許せなくて死体に攻撃を加えようとしたところを先生方に取り押さえられたそうだ。尊敬するオールマイトを引退に追い込んだ自分のミスを認められないのだろう。これには流石に緑谷も怒って糾弾したそうで大喧嘩になったらしい。結果2人とも休学、流石に退学にして野放しにするのは色々な意味で危険との判断らしい。

 

襲撃してきた(ヴィラン)の首魁は捕えたもののオールマイトの負傷に受験に落ちた子供の逆恨みの挙句自殺紛いの襲撃、教師は負傷してそれを護る為に生徒が限界を超えた個性行使で入院、それは事実上の敗北

雄英も色々と崖っぷちだな。

 

 


後日談『実は亜里沙もパチモン』


 

その後の俺は経絡系のダメージが深刻で、肉体的には問題無い状態まで回復しているにも係わらずも動けずにいた。

一人暮らしなのにそんな状態の俺を哀れに思ったのか姉気質で世話焼きな蛙吹が身の回りの世話を買って出てくれた。これは……モテ期!?

なんて甘い考えも直ぐに霧散したのだ。それは……

 

「でも残念ね、折角同じクラスになれたのにこのまま個性が使えないままだと留年か退学する事になるのかしら」

 

そうなんだよなぁ、経絡系を治療出来る人間が居ないので自然治癒任せなのだが、かなり状態が悪いのだ

しかし蛙吹梅雨?蛙吹だよな、彼女ってこんなんだっけ?頭身のバランス変わった?背筋が伸びたからか?髪が緩いウエーブ?「なんかイメージ変わった?」

 

「そんなことナイデスヨ、横嶋さんの気のせいデスヨ」

 

う~む、そうなのか?目が表情豊かな気がするが…

 

「個性の方は今の感触ならまともに行使できるまで数ヵ月はかかるかな? 何らかの救済がなけりゃ留年もあり得るな」

 

「流石に学校側も襲撃された責任があるから対応してくれると思うわ」

 

「相澤先生だぞ、理不尽を乗り越えろとか言って終わりかねんぞ」

 

「いくら相澤先生でもそれは無いわよ。でも横嶋さんって相澤先生に受けが悪かったわね。そうね、私に出来る事が有れば言ってちょうだい、エッチな事も大丈夫よ。むしろバッチコイ!?」

 

「なんでエッチが出てくる!! つーか峰田がなんかやったら怒ってたのになんでそんな事を言い出すんだよ」

 

「だって横嶋さんって処女食べたらパワーアップするでしょ」

 

「なんでそんな事を、いやまて、確かに性魔術系は試した事は無いがやって出来ん事もなさそうだ。可能性は無きにしも非ず? つーか蛙吹は乙女か。もう少しオブラートに包め」

 

「今まで彼氏なんて居なかったから当然乙女よ。だからどうしようも無くなったら相談して下さいね」

 

ん?声もっと低かったよな、なんで時々ニチアサ枠みたいな音程になってんだ?

 

「いや待て、こないだまで「横嶋ちゃん」んて呼んでなかったか!?」

 

「いやですねぇ、前から「横嶋さん」って呼んでましたよ。それとも「忠雄さん」って呼びましょうか? あっ、私の事は亜里沙って読んで下さいね」

 

「呼ばねーよ!

 ったく、まぁ看病してくれてるのに変な事言って悪かったな。ありがとう、榛葉には感謝してるよ」

 

…ん?

 



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中野式横嶋


それは小学生の時の話しだ、クラスメイトからシカトされていた俺が兄ちゃんと出会ったのは。

当時受験する予定であった学校が廃校になっていた為に人生の目標を失い、更には滑り止め等考えていなかったので不幸にも浪人生活中だった兄ちゃんは来年の受験までの一年間を俺の為に使ってくれたのだ。

 

 

それにしても今にして思えば入学資格の為に大卒相当の学歴を修めているのならもう普通に就職すれば良かったんじゃなかろうか?

 

 


[戦闘訓練]


 

モニタールームで武闘派クラスメイトどうしの対決を見守るB組面々の目の前で全員の予想を裏切る光景が展開されていた

 

『ぐわあああーーっ!!』

 

横嶋の拳の一撃を受けてビルの壁に激突した鉄哲徹鐵はガガンと凡そ人が立ててはいけない音を上げた。彼の個性が防御力に長けた物でなければこの一撃で勝敗が決したであろう。

だが彼がその一撃に耐えるのは想定内とばかりにすかさず間合いを詰めた横嶋は更なる連打を加える。受けた彼が背にしたコンクリートの壁は砕け、彼はその破片に埋もれたのであった。

横嶋の拳の連打の衝撃は鉄哲の体を貫通して背後の壁すらも破壊したのだ。

 

だが瓦礫の中からダメージを感じさせることなく身を起こした鉄哲は無傷であった

 

『流石は俺のライバル、スゲー熱い拳だったぜ!!

 だが俺の個性はスティール、金属化した俺を殴った拳はもう使えないだろう?』

 

その個性の性質上一見して無傷に見えた鉄哲だが、実際のところは経験した事が無い程のダメージを受けた軋む体を根性で動かし、自分が見込んだ漢に無様な姿は見せない様に虚勢を張っていたのだ。

自分がここまでダメージを受けたのならライバルの拳だってただでは済まないハズだ、ならば勝負はこれからだ。そう覚悟を決めた彼の思いは直後に裏切られた

 

『ふん、残念だったな。兄ちゃんに習った「十七条拳法」はむしろこういった時の為の拳だ!!』

 

『なっ!! 無傷だと!?』

 

鉄哲の表情が驚愕に歪む、油断せず構えをとるライバルの拳は健在だったのだ

 

【十七条拳法】

 何故電信柱を殴った拳は痛いのだろふかと聖徳太子は考えた。考えた末にたどり着いた結論は「殴った拳が痛いのならば、痛みが伝わる前に拳を引けば良い」

 

『つまりは攻撃したこちらは一切ダメージを受けずにいて、その分相手のダメージは倍になるという非常にお得な拳法なのだ!!』

 

((((((((((……ねーよ))))))))))

 

横嶋の解説に静まりかえるモニタールーム。言ってる事はわかるけど、わかるからこそ何を言っているのかわからない

 

『なっ、そんなスゲー拳法があったなんて…、くう~~っ、聖徳太子、すげー漢だぜ!!』

 

「「「「「「「「「「信じたああああああ!!」」」」」」」」」」

 

なお違う意味で信じた人間も居た。もっぱらフィクションに詳しい面子だ

 

「Oh! 横嶋の勝ちダヨ、一方通行はサイキョウね」

 

「衝撃反射みたいな個性ならできなくもないけど、横嶋は習った拳法って言っているから木原神拳みたいなトンデモ理論を習ったって事?」

 

 

世界人類の平和を確立する諜報工作戦士の養成を目的として設立された陸軍中野学校、その生徒の質の高上を目的として極秘裏に設立された陸軍中野予備校、その実態は未だ謎に包まれているであった

 

 


[取りあえず"中野式"と頭に付けておけば大丈夫]


 

「トランスセクシャル? 円場、彼女できないからって男色に逃げるのは感心せんぞ」

 

何がどうしてそうなったのか、円場が何処か別の世界線(すまっしゅ!!)から電波でも受信したのか妙な事を言いだした。

 

「ちがうから!! 彼女とかじゃなくて単なる興味本位だよ!!」

 

「普通に女装じゃ駄目なんか? 男女とも顔のパーツが同じ漫画家って結構いるから意外と女装の難易度は低いぞ。例えばお隣の緑谷と麗日とかな」

 

と言ってご都合主義的な収納空間からボブカットのカツラを取り出し円場に被せる。「うーん、いまいちだな」

勝手にカツラを被せられて駄目だしされた円場が吠える

 

「まて横嶋、女装が普通とか言ってる時点でオカシイからな、あと後半は突っ込み難いから止めろ」

 

何気に椎名先生も横島とルシオラが同じ顔とか言われているので他人事では無い自虐ネタである

それはともかく横島忠夫にとってトランスセクシャルは鬼門である。TSしてしまった先人たちはそれで苦労をしているので間違っても流行だからと安易に手を出してはいけない領域なのだ

 

「実はやって出来ん事はないがやりたくない。ぶっちゃけるとこっちの界隈ではこんな感じで遊び半分で女体化した挙句に元に戻れなくなってからが本番だからな。連載書く気概が無いなら安易に手を出してはイケないんだよ」

「とにかく俺は元に戻れなくなる可能性が高い女体化には手を出す気はないから。万が一そんな事になった挙句に男に戻る為に世界樹の魔力目当てに麻帆良で中学生からやり直すとか…「「「「それ以上はイケない!!」」」」

 

しかしせっかくネタを振ってくれたのにこのままぶった切ってしまうのもなんだな、TSするのは危険だから嫌なんだが女装なら問題ないだろう。むしろ純粋に受け狙いでやってみるか

 

「そうだな、昔近所の兄ちゃんに習った中野式変装術ってのがある。何年もやってないからどうなるか自分でも興味あるからちょっと試してみようか」

 

女子達に化粧道具を借りて顔を作っていく、下地を作った後は濃いめの……パープルとか誰んだ? ヒーローメイク用か?

目を開け過ぎないように気を付けて……カツラを被れば魔族ルシオラの完成!!

 

「「「「おおおお!!」」」」

 

「これは…」「えっ?何?? 普通に見れるノコ!!」「なんでそんなにメイク上手なのよ、普段からやってるの?」

 

「上出来上出来、腕は落ちてない様だしこれなら調査系でもやっていけるな」

 

「何で女装とかそんな特技があんだよ」

 

「女装じゃなくて変装な、諜報に於いては対象の異性ならば取れる手段が増えるし、姿を誤魔化すなら異性に化けるのが一番効果的だからな」

 

「確かに凄いけど、体格が女性にしてはね」

 

「そっちはこれからだ。少しショッキングな感じだが騒がないでくれよ」

 

これから行う体型補正は割とショッキングなので事前に注意をしておく。さて覚悟を決めるか、これ痛いんだよなぁ

 

「せーのっ!!」

 

掛け声と供にゴキゴキバキバキと体からしてはいけない音を立てて体型を補正していく。事前に注意はしていたがやはり初めて見ればビビるよな

 

「「「ひえーーーー!」」」「ちょと!ウラメシイから止めて!!」「おいおい凄い音がしてるぞ!?」

 

肩をいったん外して肩幅狭めてなで肩にして、余った肉を胸に寄せて整える。ブラがないと維持がきついな。腰回りも少し内蔵を上の方へ引き上げて腹筋辺りの余裕を作り細くして括れを作る。残念ながらルシオラほど細くは出来ない(むしろカップは大きい)がそれっぽくはなったかな? 今回は指とかまではメイクをしなかったので見る人が見れば違和感満載だが全対的なシルエットは女性に見えなくもないはずだ。取りあえずはモデルっぽくくるりと一回転するとクラスメイト達のポーっとしたマヌケ顔が見られた。ふむ、どうやら合格のようだな。

 

「えっ? キノコはちゃんとあるノコ!?」

 

駄目キノコめ、真っ先にそこへ触れるか、まあコッカケじゃねーけどちゃんと下半身用の女装技術も存在するんだよな。だが股間をマジマジと覗き込むな

 

「横嶋、ちょっとシャレになんないよコレ。それにしても声がそのままだから違和感凄いあるわね」

 

「あ~~―――っ、あーー~~~、んっ、んっ。あっ、あっ、うん、これでいいかしら?」

 

「「「「「「声まで変わったーー!!」」」」」」

 

「……凛として素敵な…お、お姉様とお呼びしても宜しいでしょうか!!」「ちょっと茨! 落ち着きなさい」

 

「俺、有りかと思っちまった……」「言うな、奴が可笑しいのであって俺達は悪くない」

 

「こんな美人が女の娘なわけがない!!」「んっ」「もうどっちでもいいかも」

 

 

「変声もできるんだね、しかし大丈夫かな?」

 

侃々諤々の周囲と違い妙に冷静な吹出

 

「久しぶりだったから少し大変だったけど体なら問題無いわ。それとも何か問題があるのかしら?」

 

「いや、あっ、チャイムなっちゃったか。そろそろ予鈴だから時間が心配だったんだけど」

 

わいわいと騒いでいたら予鈴が鳴る。そろそろ昼休みも終わり授業が始まりそうだった

さっと蜘蛛の子を散らす様に席に戻るクラスメイト達、あっ、ちょと、鏡とメイク落としは残していって……

 

「やばい、今から化粧落として……」

 

わたわたと焦っていると無情にも鳴る本鈴、同時にガラリとドアを開けて入ってくるプレゼント・マイク

 

 

Hey Boy!! Hey Girl!! 楽しい英語の時間だッぜぇええ!!

「っと、見慣れないガールだな、チャイムなったから自分のクラスへお帰り」

 

「いえ、私このクラスです」

 

「あん?見覚えないんだが、元が誰かわからんくらいイメチェンしたのか?」

「横嶋っ、声、声、声作ったままだよ」

「あっ、えーと、あー、あー、うん、戻った……横嶋です」

 

「お前、性別変えるだなんて何が遭ったんだ。ブラドに言いにくいなら俺が聞くし男が駄目ならミッドナイト呼んでくるぞ」

 

急に真顔になり心配そうに声をかけてくるマイク先生、いや、単に遊んでいただけとは言いにくい

 

「いえ、その、話の流れで変装の話になって個性使うだけが諜報じゃないぞって見本を示していたところです」

 

「お前諜報系に進むのか? 勉強熱心なのは結構だが今は実習ではなくて勉学の時間だ。時間が勿体ないからそのまま授業を受けろ。あと授業終わったら職員室な」

 

「……はい」

 

この後職員室で改めてホントに何か心の病じゃないかとブラド先生とミッドナイトを交えてしつこく聞かれた。なまじ完成度の高さから常習的にやってるんじゃないかと疑いをもったそうだ。

 




最近トップページの更新とか見てるとTSTSTSTSって一部趣味人の声が大きいなって思った。

ちょっ小大さん時空でなんかないか考えていたがYOKOSHIMAとTSは悪い意味で相性が良いので却下した。
だってどう考えてもTSした小大さんに横嶋が掘られる流れだぜ

その昔マリみてが流行った頃は同時期の男性キャラが女装して転校するような二次創作を結構見た気がする。黒薔薇様ってなんだよ…
なお今回の悪の華、ルシオラお姉様によって何人かのクラスメイトが性癖を捻じ曲げかけました


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MC横嶋



謎の中國人が出てきますがこの時空では基本無害です。
飽くまで商品を提供するだけで、被害に関しては使用者の自業自得なので彼に罪はありません。

商品自体は違法とか合法以前の問題だけどな!!




 

俺の名は横嶋忠雄。

ハードボイルドが似合うと巷で話題の少年執事だ。

どうせ自分の罪を数えてただけだろうって?はっはっは、ばかだなあ。

今雄英高校で帽子がサマになる男っていや俺なんだぜ?

もっともバンダナ標準なんでまともに被ったこと無いけどな!

 

 

「人を愛することが…罪だとでも…? っと」

 

「横嶋おはよー。……うわ、朝早くから勉強? 課題忘れたの?」

 

「ちょっと早く着いたから個人的なレポート書いてんだよ、早起きはサンクレッドだぜ! お前に相応しいソイルは決まった!」

 

(`・ω▼)9m(黒い風)とごっちゃになってるわよ、そもそもそれを言うなら三文の得でしょーがっ!」

 

がんぶれいかぁ!?

 

 

痛たた、拳藤の奴め、個性:大拳で脳天に手刀突っ込みは激し過ぎるぜ。お約束とはいえこんなの毎回受けてる物間はM男、はっきりわかんだね

 

「なにか不本意な視線を感じて凄いイラってきたんだけど」

 

「おはよう物間、気のせいだろ。あっポニーもおはようー」

 

「グッモーニン!」

 

「んっっ」

 

「小大もおはようさん」

 

 

机の上でこれ見よがしに何かを広げている俺の元に暇人達が押し掛けてくる。丁度良いから実験に付き合って貰おう

拳藤、物間、ポニー、小大、鉄哲、柳、小森と、何気に女子率高いせいか向こうで四天王が腐ってるな、腐るぐらいなら混ざればよかろうに…しゃーねーな

手招きしてやると嬉しそうに近付いて来た。これでクラスの半数以上が揃ったか

 

「で、レポートって何を始めたの?」

 

「うむ、よくぞ聞いてくれた。

 先日横浜で中華味巡りを楽しんでいたところ路地裏で胡散臭い自称中国人に呼び止められてな、なんでも中世の錬金術師ドクターヌルが作った大発明品、その名も『ヌル式洗脳装置 けむりの少ない微煙タイプ 10巻』(税別:¥336)だそうだ。余りにもお得なのでつい買っちまった」

 

「「「「「「「「「絶対騙されているよ!!」」」」」」」」」「んっ」

 

「ドクターヌルはデモンフィッシュの悪魔だたて噂あるデース、ダイジョウブ?」

 

「俺も流石に怪しいとは思うが、調べてみたら裏世界で有名な馬呑吐(マー・トンツー)の扱う商品だし案外本物かもしれん」

 

「また(マー)さんか。敵も怪しい店主もこなせてあの人便利 ぷわられる!!

 

「メタ発言は程々にして、それにしても裏世界とかヒーローとしてどうなの?」

 

鱗の些か内情に踏み込み過ぎた発言を首トンパニッシュで黙らせる姐御、バイオレンスぶりに戦慄する周囲に対して何事も無かったの様に話を続ける。何気に首トン(アレ)って結構危ないからそろそろ止めるべきだろうか?

 

「社会の暗黒面じゃなくて文字通り世界の裏側な、トワイライトだったりアウターだったりするSFホラー的なゾーンのマキシマム」

 

「そっちはそっちでウラメシイわよ!!」

 

しかし裏だのなんだの言っているが机の上には

 

「これ知ってるノコ、「蚊取り線香」って言うんだよね」

 

「キャンプとか野外活動では未だ現役と聞いてはいるけど、現物は初めて見たな」

 

問題のブツだがGS美神16巻171ページの左下でヌルがグルグルしているヤツだ。うん、騙されたと思うよネ

 

ふむふむ、この蚊取り線香みたいなのに四角クランクみたいなのを挿して、こう手でシャフトの中ぐらいを持って、ぐるぐる回すのか。そのまんまだな

さて、明らかに人を馬鹿にしたこのぐるぐるをどう使おうか。なんか誰に使っても洗脳とか関係無く殴られそうだ

 

「んっ」

 

「えっ? 興味あんのか? んじゃそーれぐるんぐるん」

グルグルグルグル

「……」

グルグルグルグル

「ぐるんぐるん」

グルグルグルグル

「んっ」

 

「洗脳されたから今から俺の言いなり? 何でも命令しろ? 嘘つけ」

 

「いやあんた自分でやっといてそれは無いでしょ、遊びなら最後まで続けなさいよ」

 

いやでもなぁ、棒読みで洗脳されたとか言われても。その癖目の奥がギラついてるからかコレに乗ったら碌な事にならんと霊感が警鐘を鳴らすんだよ。

 

「いい匂いがするからインセンスかもしれないノコ、ライターあるし火を付けてみるキノコ」

 

そういやライター付属しているな、10巻き入っているなら消耗品の可能性が高いから案外火を付けるのが正解か?

 

「教室で火を使うと怒られそうだけど……いい匂いだわ」

 

「そーれ、ぐるぐるキノコ!!」

グルグルグルグル

そう言って何時の間にか小森が手にした『ヌル式洗脳装置』に小大が火を付けた。あっ、パッケージに『けむりの少ない微煙タイプ』って書いてあるぐらいだから火を付けるのが正解だわ

そして小森は感心する俺と呆れた顔の泡瀬の目の前でぐるぐる回転させる、ぐるんぐるん、そういや「うずまき」ってホラー漫画があったっけ?ぐるんグルン、渦巻き自体が何か神秘に関連するのかな?ツェペリ一族の「黄金の回転」とか最後は次元の壁をぶち抜くし、ぐるるんぐるるん、俺の精神防壁をぶち抜いてもグルグル仕方がな…

グルグルグルグル

「あれ? 二人ともどうしたの。やだなぁ、冗談キツイよ」

 

 


[Darling...Kiss immediate]


 

「まさかホントに効いたノコ!?」

 

「まっさかぁ、泡瀬、ジュース買ってきて。人数分ね」

 

『おう、行ってくるわ』

 

「ちょっ、まてまて、ああ、走って行っちまった。これがホントならシャレにならんぞ」

 

「おい鱗、売ってる人知っているんだよな、連絡取れないか?」

 

「えっ? いや知る人ぞ知るって感じで連絡先までは」

 

急に無言になった横嶋と泡瀬、冗談だろうと拳藤が軽い気持ちで泡瀬に命令したらすぐさま動き出して軽いパニックなる一同。だが、そこで動き出す影があった

 

「タダオは私のボーイフレンドね」

 

『ああ、俺はポニーの彼氏だったんだな』

 

「OK! だから放課後はデートするデース」

 

「「「「「ハッ!?」」」」」

 

『おう、楽しみだな』

 

「これでハズバンドげっちゅデース❤」

 

そこには横嶋に自分が彼女だと偽情報を刷り込むポニーが居たのであった

 

「「「「「なにしとるかーーー!!」」」」」

 

「何やってんの、洗脳なんかに頼らずに普通に告白しなよ!! 横嶋なら喜んで受けるでしょ!!」

 

「無理ダタよ、タダオは草食系だから誘惑してもダメでしたデス」

 

「ええい、このヘタレが原因か!!」

 

「いやヘタレだからって洗脳は拙いだろ、とにかく何とかして解かないと」

 

とにかくこのままは良くないと横嶋に腕を絡めるポニーをクラスの女子が引き離す。特に数名力が入っているようだが彼女達の正義感故の事だろう。そういう事にしておく。

そして男子は洗脳状態なら言葉でなんとかならないか試してみる

 

「おい、横嶋、お前に彼女なんて居ない。わかるな」

 

『おいおい回原、自分が孤児(みなしご)だからって嫉妬なんて醜いぜ。そんなんだから可愛い彼女が出来ないんだよ』

 

殴るけどいいよな、返事は聞いてない!!

 

「落ち着け回原、そいつは洗脳されてオカシクなってるだけだから」

 

「うるせー! どーせコイツはなんだかんだでモテてるから俺達の事を影で笑ってるんだよ!!」

 

窘める円場に眼の幅の涙を流しながら食ってかかる回原、何気に"俺達"などと同類扱いされて若干イラッとしつつも円場と鱗は横嶋に殴り掛かりそうな回原を止める

 

「泣くほどかよ!! いや確かに女子に囲まれてていい加減一人に絞れってイラってくるけど」

 

「落ち着こう、どうも最初に命令した人間の言葉しか聞かないみたいだね。

 それにしてもホント横嶋は騒動ばかり起こしてくれるね、フォローするこっちも身にもなって欲しいよ」

 

物間の推測から全員の視線がポニーへと

 

「「「「「「「「……」」」」」」」」」

 

「テヘッ❤」

 

「「「「「「「「横嶋じゃあるまいしそんなんで誤魔化されるか!! はよ止めろ!!」」」」」」」」」

 

『俺のことチョロ助みたいに言うなよ、可愛い彼女が相手ならそりゃわかってても誤魔化されるだろ?』

 

「「「「「チョロ助は黙ってろ!!」」」」」

 

「アーン、せめてKissくらいシタかたデース」

 

『キスしたいのか。わかった、キスは……フレンチキスでいいのか?』「イエス!!」

 

突如反応した横嶋に食い気味に返答するポニー

 

「「「「「「「「「……!?」」」」」」」」」」

 

「誰か横嶋を止めろぉおおお!!」

 

「ちっッ、面倒かけやがる」

 

『なんだ、自分が独り身だからって恋人達の逢瀬の邪魔をするのは感心せんな。だが漢横嶋忠雄! この程度の障害に屈すると思うなよ!!』

 

これが放課後横嶋の部屋でならもういっそこれが原因で責任取ってくっつけとか思わなくもないが、教室で朝からは流石に拙いと思った物間は咄嗟に周囲に指示を出すが

当の横嶋は視認可能な程の高密度のエネルギーを纏い身体強化を発動してお得意の中国拳法の構えを取るマジ具合、これは一筋縄ではいかなそうだ。

 

「ええい、なんで体育祭より気合入ってんだよ!! 塩崎っ!! コピーさせてくれっ!!」

 

「わかりました。では私は左から攻めます」

 

碌に打ち合わせが無くともすかさず鉄哲が横嶋の正面に立ちはだかり、そのタイミングで物間と塩崎がツルの壁を作り進路を制限する

そこへ背後から拘束すべく獣化した宍田が強襲するが横嶋は背後を見る事も無く絶妙なタイミングで一歩下がり宍田の懐に潜り込む、咄嗟のことで掴み掛かるタイミングを外され対応が遅れた宍田を鉄山靠で浮かせる。こうなると横嶋のペースですかさず繰り出された電装脚で顎を揺らされて意識を刈られる

体育祭で最強を争ったライバルを一瞬で沈めた横嶋に周囲が戦慄するなか果敢にも突撃する人間が居た。先ほどディスられた回原だ!!「()グボッ!?」ツルの壁を個性で突き破り横嶋の隙を付いたと思いきや、円を使う横嶋に隙など無くあっさりとカウンターで気管に肘打ちを食らい悶絶、思わず痛みで体を丸めて首筋を晒したところを霊波を撃込まれて昏倒、朝からまるでいいとこ無しの回原だった

 

「強いっ! 普段より躊躇いが無いのか? それともスケベ心でブーストされてるのか!?」

 

「スケベ違うヨ!! ラブラブぱわぁデース」『そうだっ!スケベ心とか心外だぞ!! 前からベタベタされて辛抱たまらんかったなんてないからな!!』

 

(((((((思いっきりスケベ心じゃねーか)))))))

 

接近戦は危険と判断した物間は塩崎に合図を送り2人がかりで拘束を試みる。決して不甲斐ない男共に見切りをつけた塩崎の発する圧に負けたわけではない。しかし体育祭でもツルで横嶋の拘束は出来なかったのに今の原典並みの煩悩ブーストに覚醒した横嶋に通じるのか!!

だが塩崎とて当時とは違う!! 氣の身体強化の習得によりツルの強度やパワーが格段に強化された。同じく氣を使いこなす物間も塩崎程ではないが器用にツルを強化する。氣による身体強化が可能な物間は場合によってはコピー元以上の力を発揮するのだ!!

 

……が、ツルが横嶋を拘束するもたった一言『魔剣(アンサラー)』と呟いただけで次の瞬間あっさりと細切れに切断され愕然とする。余りにも抵抗なく切り裂かれる様は既に強化とかそういう次元ではない。

 

【次元刀】

 フォルティッシモとか魔戦将軍とか桑原和真とかメダジャリバーとか陸上自衛隊S.A.T.F.とかチェシャ猫等とにかく空間断裂を起こす事により対象を切断する防御無視技。その設定の中二力の高さがクールでカッコ良い為にフィクションに於いては80年代から定期的に現れる超絶技法である。下手に強すぎる為か使用者は主役ではなくサブキャラが多いのが難点だ

 とうぜん80年代辺りからの漫画を嗜む横嶋も再現していたのだが、防御無視という特性上手加減が出来ないので今まで秘匿していたのだ!!

 

こんなタイミングで最強の手札を切る様は非常に馬鹿馬鹿しいのだが、可愛い彼女のおねだりを叶える為に全力を尽くすのが彼氏の務めなのだ!!

 

何が起きたか分からない周囲の人間に対して容赦なく動き出す横嶋、進路上に立ちはだかる鉄哲は対霊仕様の調整で非物理干渉故に逆に物理防御を貫通出来る霊波刀(ハンズ・オブ・グローリー)の一太刀で昏倒させ、円で感知した近付くそぶりを見せたクラスメイトに対しては対象の至近距離の空間に揺さぶりを掛けて衝撃波を起こして脳を揺さぶり昏倒させる。そうやって今まで隠していた防御無視技や確殺コンボのオンパレードで淡々と邪魔するクラスメイトを処理する横嶋。可愛い彼女の(ry

 

「わぷす べ、べりー怖いからストッ ふむぐっ!?」

 

だがその彼女(偽)はバーサークアサシンと化した横嶋に流石にこれは遣り過ぎたと今になって怖くなった

ポニーは自分を拘束していた拳藤を盾にして逃げ出そうとしたのだが時既に遅く、グワッシと背後から横嶋に肩を掴まれてぐるりと半回転、向き合う形で壁に押し付けられた。いわゆる女子憧れの壁ドンというヤツだ。ただし傍から見ると殺人鬼に壁に押し付けられた被害者の様だったとは手を出さなかった為に無事だったクラスメイトの証言だ。自業自得故に誰もポニーを助けようとしない、だって今の横嶋はウラメシイから

 

「むぐっ」

「む゛ぅっ」

「うぐぐっ」

「むーーっ」

「むーーっむふっ」

「んくっ んっ」

「んくっ んっ」

「んむ゛っ!???」

「ん~~~~っ!!」

 

 

 ただ今規約に抵触する可能性がある不適切な表現が繰り広げられております。 

 しばらくお待ちください。

 

ばうえもん 

 

 

ちょ~んとばかりに茹で上がり昏倒して白目を剝き涎を垂らすポニー。女子としては些か見せられない姿ではあるが、緩む口元が満更でもなさそうなのが腹立たしい

 

『んっ、やりすぎたかな?』

 

そこへとてとてと洗脳装置片手に近づく影があった。ポニーの惨状で真っ赤になる女子や前かがみになる男子のなかで唯一マイペースに機会を伺っていた小大である

 

「んっ」

 

『なんだ、俺は別に正気だぞ』

ルグルグルグルグ

「んっ」

ルグルグルグルグ

『酔っ払いの酔ってないは信用出来ない? いや一緒にすんな。つーかグルグルやられると微妙に腹立つな』

ルグルグルグルグ

「んっっ!」

ルグルグルグルグ

『グルグルじゃなくてルグルグって、ああ、逆回転ね、だから俺は別に 俺は、………やべぇ」

ルグル…グルグル

「解けたノコ!!」「んっ!」

グルグルグル

どうやら洗脳が解けたのか自分のやらかした事に気付いて真っ青になる横嶋のフォローは小大に任せて、ジュースを買って戻って来た泡瀬の洗脳を解く為に洗脳装置を持って近付く小森を筆頭に無事な人間で倒れ伏すクラスメイトの介抱をするのであった。

 

 

Mind Control(される)横嶋 (完)

 


後日談


 

あの後はホームルームの為に教室に入ってきたブラド先生がすわ校内暴力かと取り乱して大変だった。

件の洗脳装置は没収されてラボで解析した結果結構強力な催眠作用がある薬物だったようだ。お陰で危険物を持ち込んだとむっちゃ怒られて謹慎一週間となったのであった。

なお騒ぎを大きくしたポニーも三日の謹慎

 

ポニーは加害者の一人とされたが同時に洗脳状態とはいえ俺に衆人観衆の中で唇を奪われた被害者でもある。本来ならば俺が何らかの責任を取るべきなのだろうが…

 

『彼女居る身だから責任は取れんよなぁ』

 

俺は彼女に腕枕しながらなんともなしに呟いた

 

「んっ❤」

 

謹慎しているにも関わらずに俺の部屋に泊まり込む彼女も問題だが、それを拒めない俺はどうしようもないな

 

 




本編でポニーとイチャコラしてない事に気が付いてキスさせてみました。

結果コレジャナイ感が酷いキスでした。


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MC横嶋 2時限目



何故か続いた。
いっそ裏にしようかと考えたのですが流石にネタ短編の更にifとかイミフなので適当に濁します。各自脳内補完で




 

謹慎3日目、窓からの爽やかな朝日が室内を明るく照らすなか俺はベッドの上で全裸で体育座りをして澱んだ空気を発していた。

隣にはスヤスヤ眠るなんの悩みもなさそうな唯、こちらもまた全裸である。所謂事後というヤツだ……

 

件の洗脳装置騒動の夜、明日から一週間も謹慎かと頭を抱える俺の元へ恋人の唯が訪ねて来た。俺に彼女なんて居たのかって?居るわけねーだろ!!洗脳されてたんだよ!!

なんつーか何だかんだで互いの部屋を行き来していたポニーには「ひょっとして俺に気が有るのかな?」なんて考えていたし、実際有ったんだが……唯とは全く接点無いんだけど!!気が付いたら彼女になってたなんて怖えーよ!!

 

だが洗脳されていたとはいえ求められるがままにホイホイと肉体関係まで持ってしまったのは俺の我慢が足りないからだ。仮に正気であったとしても告白されて求められたら押し倒す自信が有る。男子高校生の性欲とはそういうものだからだ。

正直嵌められたとは思うが、一緒に爛れた日常を過ごしたのは素直に言えば楽しかった。唯は余り喋らないが不思議と意思疎通には長けているのか一緒に居て心地よかったし、エッチには積極的でその点では良い思いもさせて貰った、つまりは散々体を重ねれば情も移るという物だ。

 

だがそれでもこの関係は歪な物だ、清算しなければならな「はぅ!!」

 

「んっっ❤」

 

気が付いたら、その、足を開かされて朝の生理現象の処理をされている。

朝〇〇〇で起こしてくれる(今朝は既に起きてるけど)彼女ってフィクションの産物ではなくてちゃんと実在したんだよ!!

この先俺にそんな女性と縁が有るのだろうか? 誰にも迷惑を掛けているわけでもないし、このままこの関係を続けても……

 

 

 ただ今規約に抵触する可能性がある不適切な表現が繰り広げられております。 

 しばらくお待ちください。

 

ばうえもん 

 

 


 

横嶋忠雄と賢者の時間

 


 

意思の弱い俺はそうやって洗脳が解けた後も唯と関係を続けている。謹慎明けにポニーに会うのが怖い

そんなこんなで黄昏ていたらチャイムが鳴った。唯なら合鍵持っているから郵便かな? そういやポニーも持ってるな、唯とこのまま付き合うならば回収せねば

 

誰が来たのかと思えば小森であった、ブラド先生の執り成しで様子を伺いに来たそうだ。

小森も一応は責任を感じていたらしく気になってはいたそうだ。そういやコイツが正解引き当てたのが……いや、流石に悪用も何もしていない小森は悪者には出来んな

 

 

「思ってたよりは元気そうで安心したノコ」

 

「まあな、クラスの皆には迷惑掛けたな」

 

「まったくノコ、謹慎開けたら覚悟しておくノコ」

 

結構な人数をノックアウトしたからな、一体どんな詫びをすればいいやら

 

「……その様子だと唯には何も聞いて無いみたいだね」

 

「ああ、あいつその手の話題はふらないか……はっ!?」

 

「マヌケは見つかったノコ!!」

 

誘導尋問だと!! やべぇ、まさかクラス全員にバレているのか?

 

「それで肝心の小大はどうしたんだ?」

 

「唯でいいのに、今頃保健室のベッドの上ノコ」

 

一体唯に何が遭ったんだ!? そしてさり気に名前呼びがバレてる

表情に出ている俺を安心させるように小森は続けた

 

「今日は実習があったからそれでダウンしているノコ」

 

「ああ、そういや今週の予定は集団戦の演習だったな」

 

くそぉ、こうやって皆と差が付くのを実感させるのが俺への罰か……

 

「ちょっと私の麻痺攻撃が入ったところに女子の半数から集中攻撃受けてたけど命に別状は無いノコ」

 

「なにそれ怖い!!」

 

アカン、俺も実習で俺対全員とかさせられるかもしれない…

 

「皆は何も言わないけど、私も二人に洗脳装置を使って原因を作った駄目キノコだからちょっと肩身が狭いノコ」

 

ああ、やっぱ責任感じているんだな。それで俺を訪ねてきたわけか

そんな感じで暫らく小森の愚痴と謝罪の混ざった話を聞き続けた、多分ブラド先生は責任を感じて凹んでいる小森の為にここへ来させたんだな

 

「さあ食え

 小森式『牡蠣ときのこのバター醤油ソテー』ノコ」

 

「飯作ってくれるのは嬉しいが普通に出してくれと思うのは俺の贅沢か?」

 

「料理は勝負だ!」とか言い出しそうな何処かの外道中華料理人みたいな画風で料理を並べる小森、俺も夏の合宿あたりでやろうと思っていたネタだけに少し悔しい

何気にロケットオッパイタイプだから(これに関してはヒーロー科女子全員に言える。多分鍛えているから胸を支える大胸筋も発達しているのだろう)違和感少ないっていうかこころなしか画風に合わせて胸もサイズアップしている気がする。だがその極端に細いウエストは怖いからヤメロォ!!

 

牡蠣ときのこのバター醤油ソテー、マグロとキノコのオリーブオイル煮 、厚揚げの茸あんかけ、豆類と茸にアスパラやセロリのサラダ

愚痴を聞いて貰ったお礼に料理してくれると言うので任せてみればテーブルの上が凄いことになった。茸尽くしなのはご愛敬だがなかなか凝っていて品数も多いな。手際の良い事だ

 

「それにして大したもんだな、俺も料理出来ないわけじゃないけどここまで手際よくは行かない」

 

「普段から練習しているから自信作ノコ」

 

「しかしまさか茸は自家製とか言わんよな」

 

「食べても平気ノコ」

 

自家製だった、まあ体から直接生やしているわけでもないから……小森の中から出てきたモノと考えるとちょっと複雑だな

せっかくの好意だからいただきますと箸をつける。味が良いのは作り慣れている証拠か、普通に旨くて何だか悔しい

 

「ドキドキするキノコ?」

 

見た目は完璧だったが普段のイメージ的にメシ不味系の恐れもあったので緊張していたのが態度に出ていたようだ。決して女子の手作りだからドキドキしていたわけではないのだ! 茸柄のマイエプロン持参していたからといって期待してなんかしていない。むしろ用意があるという事は予定していた行動ということで警戒もするのだ!!*1

 

「ああ、一服盛られたんじゃないかとドキドキするわ」

 

ぶっちゃけ作って貰っておいてなんだが、個性による生成物に対するその辺の感覚がいまいち馴染めなくて態度に出ていたのを冗談交じりに誤魔化す

 

「失礼ノコね、それは最後の手段だからまだ盛ってないノコ!! 横嶋は自意識過剰ノコ!!」

 

「いざとなったらやるのかよ!!」

 

まあ同じ皿から小森も箸を付けるのだからそんな心配はしていないのだがな、ただ何時もの悪戯する時と同じ目をしているのが気になる。いや別に可笑しな物が入っていないのはわかるんだよ、その辺の警戒技能は持ち合わせているから。

 

「すまんな、その、なんだ、ポニーに小大と立て続けにやられたからな。ポニーはともかく小大は特に親しいとか何か特別な関わりがあったわけじゃないのにあんな事になるとか考えてもいなかったし」

 

「男の子って身近に可愛い娘が居たらオカズにするって聞いたノコ、唯みたいな娘ならみんな考えてるんじゃないノコ?」

 

「それは偏見だ!! 流石に友達を対象にしないくらいの自制心は有るつもりだぞ」

 

「でもトモダチッ〇スとか萌えるノコ」

 

飯時にする話ではない、つーか男子と女子の会話としても俺ら程度の距離感でする話では無い

つーかそこまでバレてるんか、益々謹慎明けが怖いな。

 

「それにしてもさっきからソワソワして落ち着かないね、何か心配事があるなら今度は私が聞くノコ」

 

「あー、いや、もう気付いているだろうが唯がな、帰ってくるんじゃないかと」

 

「それなら大丈夫! 今夜は保健室のベッドから動けないように念入りに麻痺させておいたノコ!!」

 

「いやお前何してんの……」

 

「あのままだと教師にもバレるのも時間の問題だったけどそれでもいいノコ?」

 

「それは流石に拙いかな、俺はもちろん唯にも良くないか。これを機に少し距離を置くのが良いかもしれないな」

 

 

 

そんな感じでなんとはなしにダベリながら夕食を頂いた。謹慎中なのに毎度夕食は女子の手作りとか贅沢をしていていいんだろうか?

そういえば回原に酷い事*2言ったっけ、一発ぐらいは殴られる覚悟は決めておこう。

 

「美味かった。ごちそうさまでした。

 洗い物はやるから部屋のほうでくつろいでいてくれ」

 

「お粗末様でした。本当はお片付けまでするのがお料理だけどお願いするキノコ」

 

「おう、これ位はやらせてくれ」

 

 

てなわけで洗い物を済ませてコーヒーを入れて部屋にいくと俺のベッドの上でつまらなさそうな顔でゴロゴロする駄目菌糸類が居た

 

「人のベッドでテンション下げて何がしたいんだ? 退屈ならテレビとか見てれば良かったのに」

 

「せっかくベッドダイブしたのに女の子の匂いしかしなくて期待外れナメコ」

 

あーそういう事ね、唯の匂いがして生々しくて想像とかしたんかね。つーかそれなら降りろよ!!

 

「それで小森の匂いで上書きしているわけか。嫌がらせのつもりかよ…」

 

ここで問題になるのは俺に対してなのか唯に対してなのかで話が変わる。嫌がらせって決まったわけじゃないけど

 

「そんで俺の匂いがしてたらどうするつもりだったんだ?」

 

「もちろんクンカクンカして……横嶋のエッチ!!」

 

「お前が言いだしたんだろうが!!

 それでいいんかよ、芸能系(アイドル)ヒーロー志望の癖に」

 

「今更横嶋の前で取り繕ってもしょうがないノコ」

 

「いや、そこは男子の夢の為に少し位は取り繕ってくれない?」

 

流石に少し距離感がオカシク感じるんだが気のせいだろうか? ひょっとして童貞卒業したらモテ期到来!?

いや待て、相手は小森だ、年中無休のハロウィン娘だ、それは無いと断言出来る!!

いやしかし、エプロン持参で料理上手とかアピールか? まさか唯と張り合っているのか?

だからなんで色事に結び付けて、小森は友人の一人だ、せっかく出来た友達なのに進んでそれを壊して……

 

「そろそろ効いてきたキノコ?」

 

待て、この菌糸類今なんて言った?

 

「効いたって……お前何か盛ったのか? さっき最後の手段とか言ってなかったか」

 

「別にお薬とかじゃないキノコ、普通に健康に良さそうな食材を厳選しただけノコ」

 

「なんだ、脅かすなよ……」

 

「主に男の子のキノコに効く食材キノコ」

 

「そのせいかよ!! おまっ、何考えてんの!! 唯を遠ざけたのは今夜一人で悶々として過ごせという罰かよ!!」

 

「ベッドは唯の匂いがするから嫌ナメコ、ささ、こっちにきて駒打ちするキノコ」

 

そういった小森はベッド代わりのデカい茸を生み出した。

そして茸の上でスカートをゆっくりと持ち上げ足を見せつける。駒打ちってそういう事かよ!! いや確かに穴に種入れる作業と言えなくもないけど……

 

医食同源という概念があるがこれがなかなか馬鹿にできたものではない。そもそもその手のお薬は自然物が原材料だったりするので食材の形でも体に取り込めばそれなりに効果はある。特にこの異能が幅を利かせる世界で個性産の食材ならばその効果は推して知るべし

そしてあくまでも食材に過ぎないので俺の危機察知の類は全く反応しなかった結果俺は……

 

 

 ただ今規約に抵触する可能性がある不適切な表現が繰り広げられております。 

 しばらくお待ちください。

 

ばうえもん 

 

 

謹慎4日目、窓からの爽やかな朝日が室内を明るく照らすなか俺は巨大な茸の上で全裸で体育座りをして澱んだ空気を発していた。

隣にはスヤスヤ眠るなんの悩みもなさそうな希乃子、こちらもまた全裸である。所謂事後というヤツだ……

 

昨夜は精が付く食材を山盛り喰わされて我慢が出来ない状態に持ち込まれ求められるがままにホイホイと肉体関係まで持ってしまったのは俺の我慢が足りないからだ。

俺を嵌めてエッチに持ち込んだ癖に希乃子自身は未経験な為か俺がリードする形になった。いや演技かもしれんが

 

とはいえ唯の件もある以上は清算しなければならな「はぅ!!」

 

「茸めっけ❤」

 

*1
横嶋は肝心な場面でそんな調子だから今までチャンスを逃して彼女が出来なかったのだ

*2
孤児(お一人様)認定



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六波羅式横嶋


それは小学生の時の話しだ、俺は爆豪とひと悶着あった結果クラスメイトからの虐めでシカトされていた。

見返す為に本格的に戦闘を前提とした方向で訓練を始めた俺だが、どうせ原作ブレイクするのなら徹底的にしてしまおうと無個性で俺とは違った位置で底辺だった緑谷出久に声を掛けた。

それからなんやかんやで二人で体を鍛えて、個性が無い出久のハンデを埋める為に氣と魔力を目覚めさせて運用方法を仕込んで並みの増強型なら正面からねじ伏せるだけのパワーを使えるようにした。

正直に言えば出久は思考が武器であることを考えると術者方面が適正高いと思うのだが、本人が重度のオールマイトファンなので力 is パワーの脳筋ビルドを希望した。確かに長い修行を続けるのならば本人のモチベーション的にはそれが正解だったのだろう。最終的には俺がカバーに入る前提での身体能力極振りのビルドで落ち着いた。

 

正直に言えば体格的に素の身体能力の上限が低いのでパワーファイターは向いていないのだが、奥の手として咸卦法も仕込んだから(魔力も並行して鍛えたのはこの為)短時間なら日本のトップヒーロー相手でもパワー負けはしないと思う(なおオールマイトは例外、アレの半分はアメリカで構成されているから)

 

 

そんなこんなで中学二年まで出久を鍛え上げて、未だ二式しか習得していないがどうにか来年の雄英受験の目途が立って俺は油断していた。

或る日テレビのニュースを見ていて飲みかけのお茶を噴いた。近くの商店街で人質を取ったヘドロ(ヴィラン)が暴れてオールマイトが解決したそうだ。

中学から校区の違いで別の中学校に通う関係で時間がズレ始めた為に普段の行動は別々だった。そして俺の知らないところで出久のヤツはしっかりと原作通りのヘドロ事件フラグを回収してやがった。慌てて電話で連絡してみれば後の祭り、既に体が出来ていた出久はオールマイトの個性を継承したのか俺に個性が目覚めたとウソを付いたのだった。

 

 

 

 

そして今俺達は不法投棄された粗大ゴミで溢れる海岸で向かい合っている。影でコソコソしてる骸骨面が元凶だな

 

「氣を使うなってどうして?

 確かに使おうとすると個性の制御が乱れるけど」

 

あー、クソ、事前にわかってりゃ文珠を使ってでも調整したんだが。

 

「そういう物だからだ。ぶっちゃけ個性のせいで体の作りが個性を十全に扱える方向に変化して行くから前提条件から変わってくるんだよ」

「今は差異が少ないからその程度だが将来的には害悪になりかねんから二度と使うな。これは純粋に警告だ」

 

「魔力はどうなの? これも駄目かな?」

 

「そっちもお前は経絡系での使用を前提にしてたから同じだ。俺の様に術者系なら使えるかもしれんが」

 

「そっか、個性が使えるし仕方ないのかな」

 

コイツ今までの努力がふいになったのに仕方がないと軽く済ませやがった。俺との数年はその程度だったんかよ

ああそうか、オールマイトとの半日に勝てないわけか。

 

「どうして事前に(・・・)俺に相談しなかったんだ? 少しはマシな状況を作れたかもしれんぞ」

 

「えっ? 相談なら今している…」

 

「だから事前に(・・・)だ。出久、何年の付き合いだと思ってんだ」

 

「何を言っているのかな。急に目覚めたのに事前にだなんて」

 

そうか、話す気が無いのなら俺達は此処までだな。

 

「これは純粋な警告だ。俺が教えたモノは全て捨てろ。技術も訓練メニューも全てだ」

 

「えっ? なんでそんな意地悪を」

 

「意地悪じゃない。師匠替えをするのに古いやり方を続けるのはそこでコソコソ隠れている奴にも失礼だからだ」

 

出て来る気はないか、傍から見りゃ違う意味で修羅場だかんな。実際俺の心情的にはそうだが

 

「えっと、両方とか無理なのかな?」

 

「無理だろ、併用出来ないのに続ける意味は無い。お前が個性(ソレ)を選んだんだからもう俺には関係無い。さよなら緑谷」

 

「なっ、なんで?」

「ちょっと、忠雄君! 待って!!」

 

踵を返して浜辺を立ち去る俺を追ってくる気配がしたので振り向きざま足元に嵐脚をぶち込み砂浜を分断する。二人の間に出来た亀裂で関係を終わりと意識させる為だ。

 

カッコ付けたつもりが二人して盛大に砂被っちまったぜ。締まらんな…

まっ、爆豪は相変わらず「かっちゃん」なのに俺は最後まで「忠雄君」だかんな、元から距離は有ったんだろうさ

 

 

 


 

NTR嶋

 


 

うーん、俺って独占欲強い束縛タイプだったんだな。

ある意味手を付ける前で良かったかも。今ならまだ諦められる

しかしかけてきた時間を考えると全く元を取ってないのはムカつく。せめて童貞くらい捨てたかったな(最低)

 

俺の名は横嶋忠雄、幼馴染の緑谷出久(♀)をオールマイトに奪われたNTR系オリ主だ(違います)

 

 

しかし進路はどうしたものか、元々ヒーローに成りたいとか本気で考えてたわけじゃない。結局のところ爆豪を見返したいのが始まりで、その後は出久に付き合って一緒に目指していたからだ。

 

その上現実問題として現状の俺は無個性の出久と組む前提のビルドだからソロだとパフォーマンスが落ちるしなぁ、かと言って他の誰かじゃ前提条件から変わってくるしどうする?

 

やっぱ止めとくか?

まあせっかくここ迄頑張って来たし気持ちに区切りをつける為にもパーっと記念受験でハジケるか。

 

 

 

雄英ナウ

ただいまアホ面晒して巨大ロボを見上げおります。あっ、あそこ逃げ遅れた奴がいるな。

別に試験結果はどーでもいいから救助しとくか

 

 

「てか皆逃げるのな、なんか萎えるわー」

 

「当たり前だよ、戦う意味ないんだから逃げよ、合格しなきゃ意味ないんだからねっ」

 

瓦礫をどかして助けた透明女子が律義に相槌をくれた。逃げりゃいいのに自分を助けた俺が逃げないから残っていやがる。

それにしても普段から透明で自己主張が薄い為にそうしていたのかオーバーリアクションでわちゃわちゃされても現在真っ裸なので見えない

俺には見えるから救助出来たんだが言ったら変態扱いされそうだな

 

「あー、俺記念受験だからその辺どーでもいいし馬鹿やるのも一興だから行くわ。じゃっ、合格するといいな。頑張れよ」

 

「えっ!? ちょっと 行っちゃった。記念受験だからってなんで立ち向かえるの?」

 

 

月歩で周囲を見て回るが逃げ遅れた人影は無し、んじゃテキトーに咸卦法からの豪殺居合拳でボコるか。六波羅式どうしたって?いんだよ細けえ事は(・・・・・・・・・)アアアア~~~~~~!!

楽勝でした、俺TUEEE

 

……気持ちに区切りをつける為に受けたけど、むしろなんか萎える現実に晒されて虚しい受験だったな(現役JCヌードご馳走様でした)

 

 

 

「思わずYEAH!(イヤー)!って言っちゃたからな」

 

「しかしもう一人の撃破者である04540番と比べると一段落ちる。

 先ずは周囲を確認の上安全の確保、それから機動力を奪うように攻撃、最後に上空からの攻撃で破壊、周囲に被害は皆無だ」

 

「一見一撃で倒した彼女の方が派手だが。後先考えない突撃で破壊した挙げ句に残骸で建築物に被害を出した彼女とは違い、時間を掛けて被害を抑えたのは余裕が有る故だろう」

 

ここまで横嶋の行動は好意的な評価で一致していたのだが、校長から疑問の声が上がった。

不正を疑うわけではなく、それは純粋な好奇心からの発言である。

 

「だが問題は……この空中移動や真空波の斬撃は六波羅式だね。実際に見ないと本物か紛い物なのかは確証は持てないけどまさか確認されている十二家以外に使い手が居たとは」

 

モニターに映るのは試験スタート直後、月歩での空中移動で一気に先頭へ躍り出て嵐脚で前方のターゲットを纏めて刈り取る横嶋の姿だった。

 

「念の為に問い合わせてみますが、分家でも聞かない名前ですね」

 

校長に応えるのは戌の個性を持つハウンドドッグ、凶暴な見た目に見合うだけの実力者でいて実は希少な治癒能力も持つ。ただ患部を舐めるというビジュアルが問題となり余程の事がない限り使用されることは無い。

想像して欲しい、成人男性が年頃の女性をペロペロするなど事案一直線ではないか。

 

「これは一度面接して見る必要が有りそうだね」

 

 

再び雄英ナウ

ただ今校長先生と犬の異形型の先生と面談しております。

 

「わざわざ来てもらって済まないね。実は入学前に是非とも確認しておきたい事が有るのさ」

 

「いえ、自分もお伝えしないといけない事がありますので」

 

「そうかい。では先ず君の六波羅式について聞かせて貰えないかな?

 十二家以外で継承が確認されたのは初めてだから是非とも情報交換を前提とした……」

 

「その、済みません、それ話さないと駄目ですか?」

 

「入学する以上は疑問は晴らしておきたいのだがな。無論犯罪行為の疑いではなく純粋に六波羅式の情報についてなのだが」

 

ここである意味爆弾を放たなければならない。俺は別に悪くないハズだけどこの流れだと怒られそうだな

 

「それがですね、首席合格とのお話でしたが入学を辞退しようと思います」

 

「「えっ!?」」

 

「記念受験で受けただけなので雄英ヒーロー科に通う気は無いのです。

 ヒーローに成る気も無くなりましたので、この先皆さんと関わる事もないでしょうし話す必要もないですよね」

 

雄英の校長室に何とも言えない沈黙が訪れた。

だが事前に調べた受験要項には別に記念受験とか合格辞退の禁止はされてはいないので何の問題も無い

 

『僕は悪くない』

『だって』

『何もルール違反はしていない僕は悪くないのだから』

 

「「心情的にはアウトだよ!!」」

 

その日雄英高校に根津校長とハウンドドッグの叫びが轟いた

 




特にオチは無い。
説得されて留意してB組行くもよし、普通科行くもよし。
A組行かないのはやる気が無いので除籍されるから。
流石に説得して通わせておいて除籍は不味いのでクラス分けには気を付ける校長先生

あと遂にハーメルンにて主流のTSタグが付きました


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おボクさま

遂に手を出してしまった


ここは雄英高校講堂、問答無用で渡された原稿を暗記した俺は若干のアドリブを交えて新入生代表挨拶をしている。

原因はA組の担任が入学式をブッチしたからである。何考えてるんだ?

登壇の際にアナウンスで次席と紹介されたのだが当然出席者は困惑している。首席ではなく次席、言い換えれば首席に届かなかった奴だ。ある意味さらし者である。

 

 

正直当日になっていきなり首席が居ないからって新入生代表挨拶を振られる方の身にもなって欲しい。なんでも何かというと合理的ではないと言って周囲の都合を無視する迷惑な奴のしわざらしい。いやはや、自身の効率重視の為になら周りに負担を強いるのが合理的とは恐れ入る。ホントに合理的なのはちゃんと根回しを済ませて他者にも無駄な事させない事だと思う所存である。

なんて感じの内容をオブラートにつつみかつもっともらしく聞こえるようぶちまけた。以上が次席からの挨拶でした。

 

 

ところ変わって1年B組の教室、波乱の入学式も無事?終了して午後から早速体力測定を実施するとの事。

そうそう、こういうのでいいんだよ。こういうので。

それはさておき……

 

「すみませんブラド先生、オレは何処で着替えればよいのでしょうか?」

 

「よし横嶋、さっさと更衣室へ行こうぜ!!」

 

「男子何考えてるのよ! 行きましょ、横嶋」

 

「タダオはワタシと一緒にイクのデス」

 

「なんて羨まじゃなくてソイツは元男だぞ!!」

 

「今は女の子じゃない。戸籍でも女の子なんだから気にしてもしょうがないでしょ」

 

「あー、盛り上がっているところ悪いが、ちゃんとその辺りの対策はしてあるぞ」

 

良かった!!

ちゃんと事前に出した要望は聞き入れてくれていたらしい。入学式のせいでちょっと不信感に囚われていたのだがそこら辺はちゃんとしていたようだ。

 

「このご時世、両性や無性の異形型や横嶋のような個性の影響による問題も有るからな。雄英にはちゃんと個室の更衣室も準備してあるので事前に申請してある。ほら、これが鍵だ」

 

「流石はブラドキング先生!! 一生憑いて*1いきます!!」

 

「いや、ちゃんと卒業して巣立ってくれ。教え子と余り親しくすると色々と邪推して騒ぎ出す連中も居るしな」

 

「うっす!!」

 

つーか舌打ちすんな、女子

 

オレの名は横嶋唯生、個性:霊能を持つ転生者だ。昔から自分の中に何かが潜んでいそうな気がしていた(中二病では有りません)のだが、第二次性徴期に入ったとたん中の人達(♀)が目覚め、その影響でトランスセクシャルしてしまった元男「横嶋忠雄」の成れの果てだ。

 

トランスセクシャル直後は霊拡張の術を使って男の皮を被って誤魔化していたのだが、生理にビビった為にお袋にバレてしまったのが運の尽き、娘が欲しかったとか言い出してあれよあれよと改名やら個性届けの変更やら済まされた挙げ句、中学はお嬢様学校を受験させられてしまった。

A組の八百万さんとか同年代のお嬢様達に知り合ったのもその時なんだが、まあ女になった途端女子にモテるとかなんなんだ?

 

外見はお袋似かというとそうでもない。髪質が親父似なので会った事ないけどおキヌちゃんみたいな外見だ。

なんせ椎名先生って顔のパーツ同じdaゲフンゲフン

 

 

「やはりお姉様とお呼びするのは駄目ですか?」

 

同い年だろうが!!

 

「僕はTS百合もイケるから!!」

 

吹出ならわかってると思うが*2、ちゃんと棲み分けしないと荒れるからな

 

「エルダー投票はタダオに入れるヨ」

 

雄英にそんな制度は無いから!!

 

「ん」

 

精神的にはノーマルカプだからOK? そう思うんなら男子扱いしてくれ

 

「お前らLGBT問題は色々な方面が口を出して複雑だから気を付けろ。マスコミの餌食になりたくなければ冗談でも茶化すような真似はしてくれるなよ」

 

 

そんな感じで社会が個性、すなわち"個"の存在を重視するようになったこの世界。その最先端である雄英高校ならTS転生者も安心です。

この世界ではTSした弊害でおきる嬉し恥ずかしなエロトラブルは極力排除される風潮であった。

 

だからこの物語は特に山も落ちも無いのだ。残念、無念

 

*1
誤字ではなく個性の影響

*2
初日なのに謎の信頼感




TSとか俺に書けるわけないだろ(白目)
マジな話ヒロアカ社会なら公的施設ではちゃんとしてくれると思うんだ。

マグ姉?
個人の主張と社会はまた別問題だからな、そういう不幸は減らんだろ(人間不信)


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婚約者・横嶋

横嶋
幼少期からアメリカにホームステイしてます。
宿泊先の家族に気に入られたので幼馴染みの婚約者がいます。

ポニー
中学から横嶋宅にホームステイしています。
オリ設定姉がいます。姉はシングルマザーで、父親不明の息子は父親似のわんぱく少年だとか

最近インプットが偏ってきたので吐き出す為に初投稿です



 

「ステイツの男の子と違ってニッポンジンの男の子は甘えんぼサンね」

 

朝のホームルーム前の教室でふと聞こえてきた幼馴染みであるポニーの声

…あっ、これは俺に飛び火する流れだわ。俺は知ってるんだぞ!

 

ふんふん、どの辺りがと続きを促す女子の視線は自然と彼女に一番近い異性である俺へと向いていた。ほら見ろ

 

親父がまだ独身だった頃仕事でアメリカにいた時の話しなのだが、ポニーのお袋さんには世話になったそうだ。その関係で俺とポニーはお互いホームステイを繰り返していた。因みに一体何のお世話なのかはフラグっぽいので聞いてはいない

 

そんなわけでガキの頃から一緒なのでまあ色々と心当たりがなくもない。ポニーには姉がいて俺がホームステイに行くと弟が来たと構い倒してくれ、俺もまあねーちゃんが出来て嬉しかったんで結構甘えてた(フラグ2)

 

「ニッポンジンの男の子が被ってるのは女の子に剝いて貰う為ネ。オネーチャンが言ってたデース」

 

その瞬間まるで轟の全力の氷結を食らったが如く男子が凍り、女子の視線は俺の下半身へと集中した

 

「お前まさか剝いて貰ってるのか!? 羨ましいぞコンチクショー!!」

 

被ってないわボケ!!

 

回原、お前そのセリフは自己申告と取ら取られかねん悪手だぞ。

 

「プププッ、やっぱ皮の中で回るのかな」「んっ!? それって手で擦らなくても刺激出来るって事?」「天才の発想!! ウラメシイ」

 

オイコラ、幸い俺以外には聞こえてないようだけど少しは女子に夢見させてくれよ。つーかダメージ受けた男子を女子達はしっかりとチェックしてるな

 

「まあ、両親公認で同棲してる婚約者だしヤッてっかなーって思ってはいたけど」

 

「同居な、ホームステイの延長だから」

 

女子はまあ婚約してるからかそんなんでもないけど、モテない男子の怨嗟の声が酷い

 

「今回はそっちよりも男の尊厳の危機だよ。婚約者の手綱はしっかりと握ってくれないかい」

 

「いやなんかスマン、だが俺も暴露されてダメージ受け…」

 

「タダオが切るの怖いって言ったからオネーチャンと一緒にタダオのを剝いてあげたんデース」

 

容赦ない追撃!?

ちょっ、おまっ、それは普通は秘密にするだろ!?

 

「やっぱり剝いて貰ってるじゃねーか!!」

 

「ガキの頃にイタズラされたって話しだ!! アメリカじゃ割礼がメジャーだから…とにかく色々とあったんだよ!!」

 

向こうじゃ割礼は文化みたいなもんだしなぁ。

一緒にシャワー浴びた時に親父さんと俺のナニが違うって話しになって剝かれた。ポニーはよくわかってなかったけどねーちゃんは絶対に確信犯だったよな。

 

 

……そしてママになった大きなお腹のオネーチャンが羨ましかったワターシにタダオはこう言ってくれました」

「『大人になったら中出し孕ませックスで種付してママにしてやる』って」

 

「「「「横嶋ァァァア!!!!」」」」

「アンタポニーが難しい日本語がわからないのをいい事に何言ってんのよ!!」

 

「冤罪だ!! んなガキが居るか!」

 

「小学生で孕ませとかいや、でも」

「いくらなんでも流石にそれは無いだろ」

「でも横嶋だぞ」

 

 

想い出を捏造するなと女子の輪の中から引っ張り出したポニーにウメボシを喰らわせる。アウチとアメリカンに痛みを告げるポニーを女子達が俺から引き離すがジロリと睨むと素直に暴露した。

 

「ホントはママがそう言ってマシタ」

 

「そんなこったろうとおもったよ!!」

 

親父の息子って事でおばさんにはロックオンされてたからな(フラグ3)

 

「それはまた、お国柄なのかな?」

 

「婚約はしていますし、最終的にそうなるのでしょうが。子作りは子作りで在るべきでそこへ必要以上に…とにかく感心出来ません」

 

わちゃわちゃとしている俺達に対して何か確認する様に宍田が声をかけてくる

 

「横嶋氏、さてはお父上に売られましたな」

 

「言うな、色々とあんだよ」

 

なるほど、コイツも獣人型だから思い当たる事があったのだろう。

 

異形型の個性の中には獣の習性が強く出る場合があり、元の生物の生態の中には人間には存在しないモノがある。

個別の特性もだが特に問題となるのが発情期なのだ。常に発情期とも言える人間でありながら特定の期間になると動物のそれの様になってしまう。一応は子供を産めば段々と落ち着いてくるそうだ。

そんなわけで彼女の一族も早い段階で子作りをする為に姉妹のパートナーを探していた。そして候補に上がったのがアメリカでヤンチャしていた親父の息子である俺と言うわけだ。息子を売るとはいったい何をやらかしたのか聞くのが怖い

 

ただ節操無しの親父はともかく俺はまあ普通の感性をしてたのでどちらかといえば余り人型から外れていない方が好みだった。

そこで子供の頃から姉妹と引き合わせ、比較的に異形要素が少ない姉(フラグ4)で慣らして異形型への忌避感を無くし、最終的には妹の婚約者へと仕立て上げられたのであった。

 

幼少期からの刷り込みのおかげで今では立派なケモナーです。

すっかり性癖が歪んだよ!!

 

 




リハビリ作
スマホからだとしんどい


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―偽書・裡宮巴比倫―
来訪者、二人


ネギまで時代小説読もうかと言ったな

何故かソノラマ文庫を読んでいた




風が吹いた

 

この街特有の妖気混じりのそれとは違う渇いた風、業風や魔風とは違う 光を孕んだ風が吹いた―

――ターイラー――

嘗て旅人らが訪れた国にもこのような風が吹いていた

郷愁に近い思いを抱いた。自分も旅は嫌いではない、街を離れて気の向くままに何処かへ―

――ターザンメ――

被りを振って思い直す。今この街に何かが起きようとしている。だから古い記憶に気を取られている暇などなさそうだと……

そして若干の申し訳なさと供に思い浮かべるのは白い少女 彼らの力不足故に未来へと送りだした魔女の魂、古代の女王の運命に囚われる必要はなくなった彼女は今を生きるべきだと――思ってしまった

 

だからそんな僅かな罪悪感が十六夜京也の意識を熱砂の風から逸らした――ウォウアリフ――彼は風が孕む人ならざるモノの声をこの街らしい(・・・・・・)と聴き流してしまった

その音の羅列を――イェーター――まるで、神語のようだと考えた時には全てが遅かったのだ――

 

 

異界に封じられし邪神が

神が光あれと命じるが如く、乾いた風に命じた――

 

 

―― 疾き風よ、光と共に解放されよ ――

 

 

神の来訪に騒めく街を吹く風が――神罰の炎となり街の一画を焼き尽くした

 

 

 

 

 

 


 

来訪者、二人 ―裡宮巴比倫―

 


 

 

時間は一月程遡る。

都心のビジネス街、路地裏からふらりと現れた揃いのGジャン姿の二人組、些か場違いな格好の双子と思われる彼らは何やら感慨深げに辺りを見渡す。

 

「久し振りの現代文明だな」

 

「そうか? 現代って言うにはなんか古臭いというか…ああ、誰もスマホ見てないな。よく見りゃ車角ばってるし、なんか昔の特撮とかで見た昭和臭い?」

 

「言われてみればガキの頃を思い出すな。ところでスマホってなんだよ。」

 

「えっ?」

 

「「えっ?」ってなんだよ」

 

「いや子供の頃って何年前だと……まさか昭和生まれなんか!?」

 

「えっ? じゃぁお前はまさか平成ベイビーか!?」

 

「平成8年だけど」

 

「おまっ、連載の折り返しとっくに過ぎてる頃じゃねぇか!! マジかよ」

 

双子と思われた少年達は何やら噛み合わない会話をしながら目に付いた公園へと足を進める

雑談を続けながらもさり気なく公園に設置されたゴミ箱から雑誌や新聞を手に入れた彼らは情報収集を始めた

 

「ふ~ん、世界線にも時代のズレとか有るんだな。それはそうと今は2000年過ぎてるようだぞ」

 

 

数週間後、新宿のブラックマーケットにて武器を購入する彼らの姿があった。

 

冷やかしで訪れたマーケットだったが、想像以上な品揃えにこの国の未来を案じつつも使えそうな武器を物色する。

二人の内若干大人びた方は手慣れた様子で銃器を物色して、その様子にもう一人の表情に幼さが残るほうが遠い目をする。どうやら自分と変わらない年齢なのに銃器を扱った事が有る相棒の物騒さに呆れているようだ。

 

「既に21世紀初頭なのに街並みは昭和後期でスマホとやらどころか携帯電話もない世界。

 そのくせサイボーグやらレーザーやら一昔前のSFに登場しそうな兵器が存在していて当然コンピューターやエネルギー関連もそれらで使用する為に相応の小型化がされている。加えて悪魔や妖怪や死霊が存在していてそれらに対してなのか魔術師や霊能者や超能力者も存在している。なんなんだこの世界の歪さは」

 

「裏市場で手に入る武器とか見た限りじゃ明らかに俺が居た令和よりも科学技術は進んでいるのに生活関連の技術レベルが低い、なんかラノベか漫画で出てきそうな昭和100年とか言いそうな世界観だな」

 

「なんだよ昭和100年って。言い得て妙だが……」

 

「まあ実際のところは俺が居た時代がその手前辺りなんだけどとてもじゃないが全身義体のサイボーグとか人間と区別がつかないアンドロイドとか実現しそうになかったな。あとこの世界はエネルギー関連の技術レベルが特に異常。なんだよサイボーグの動力が核融合炉って。この気象爆弾ってなんだ? いったい街の何処で使う気だよ」

 

「とはいえだ、ハンドガンサイズのレーザーとかブラスターとかこの手の武器ってなんだかんだで燃えないか?」

 

「俺は普通に大型拳銃の方が燃えるな。っと、(ダーク)教団の連中だな。どうでもいいけど(ダーク)教団って直球過ぎるセンスが昭和臭いんだよなぁ」

 

「連中の目的ってやっぱり噂の"神"なんだろうな」

 

「"神"ねぇ、どうするつもりだ?」

 

「そうだな、ソイツが何かしたってよりは周りが騒いでいるって状況ってのもあるけど…その面子が嫌過ぎるよな。正直こういう国やら宗教やら入り乱れた事態は人間の方が怖くて介入したくない」

 

やたらと実感が籠った相棒の言葉に何かを感じるのか、もう一人の男は手短に結論だけを返した

 

「んじゃ、欲をかかずに件の魔導師から魔導書を取り返したら速攻退散するんだな」

 

「そうだ、この底知れない街に長居したくはない。まったくこの街の連中はどういう神経してやがんだ? 住めば都で済ませられるレベルじゃねーぞ」

 

そうしてマーケットで幾つかの武器と噂話を仕入れた彼らは情報を求めて街を彷徨う、今まで渡ってきた世界と勝手が違うのかお得意の魔術や霊的探索がこの街では上手く使えないのだ。

もっとも彼らの目的である魔導書が存在していた世界、彼らの臨時の雇い主?である龍神が住まう迷宮内でも自ら歩いて地図を埋める必要があった。そう容易く世界のルールの裏をかけるものではないのだ。

 

街を彷徨い歩いた成果として――もっとも薄手の文庫一冊分程度のトラブルと引き換えにだが――魔導士らしき人間の目撃情報を得た。なおソノラマ文庫では大体中盤といったところであろうか?

樽の様なと言ったら樽に失礼な太目の情報屋から得た情報によると件の魔導士の消息は最高(M)危険(D)地帯(Z)のひとつである新宿中央公園付近で途絶えたらしい。

日中を探索に費やした彼らは夜の新宿中央公園に近づくような愚を犯さず――区外から訪れた彼らが余程危なっかしく見えたのか情報屋を含むその場に居た人間達は口を酸っぱくして止めた――新宿中央公園付近では比較的に安全と紹介された宿を取る事にした。

 

「げぇ、メシ付きって軍用レーションじゃねーか。元の世界の自衛隊のミリメシなら美味いらしいけど……粘土食ってるみてぇ、コッチ方面は全然発展してないんだな…」

 

「…ストックからなんか出すか」

 

ホテルと名乗ってはいてもベッドが有るだけで碌な施設も無いところではあるが、この生き馬の目を抜くような街で区外の人間が比較的と頭に付くが安全に泊まれるという点では優良店である。

少なくとも情報屋の――人柄は無視すれば――情報は信じられると理解している二人は不平を零しつつもそのホテルを拠点として周囲の探索の準備に取り掛かった。

 

「それにしても、アイツなんで中東から態々日本に来たんだろうか? 逃走先に新宿ってのはポピュラーらしいけど場当たり過ぎるな」

 

「……新宿はどうかと思うが日本は有りかもしれんぞ」

 

「まあこの世界でもよその国よか脇が甘いみたいだしな」

 

「ちょっと違うな、これは受け売りなんだが日本は神話の終着点、神々の最終処分場らしい」

 

「なんだそりゃ?」

 

「陰陽師ならシルクロード経由で宗教を含めて色々と入って来てるのは解るよな? そんで神様がそっち経由で流れついた結果や仏様なんかになっているのも知っているだろ」

 

「そういえば日本の仏教系神魔族はそういうの多いな。だが別に日本に限った話でないだろう?」

 

「まあ聞け、世界中の神話との日本の民話なんかの類似点をまとめたオカルト系のライターが八百万の神々、地方で祭られている土地神なんかの元は渡来神じゃないかと考えたそうだ」

 

「シルクロードの終着点は神話の終着点でもあるわけか…なるほどな、それで神々の最終処分場なわけか。確かに日本は民話なんかも含めればキャパだけは有るな」

 

「島国の割に北や南からの移住ルートとかあるし、以前から外部から人が入ってきた形跡があるしな」

「つまり日本には古い神の残滓が形を変えて残っていると考える人間もいるって事だな。何を呼び出したいのか知らんが当てがあっての事だと思っていたんだが…」

 

「…なんか日本に入ってからの動きがおかしいな。東北を目指していたのに突然目的地を新宿に変更した形跡が有る」

「召喚の書と新宿と神様ねぇ、因果関係が無いとも言い切れんのがなぁ…単純に魔力の補充とかならいいんだけど」

 

 

そうして彼らは何処かに潜んでいると思われる魔導士に気付かれないように人目を忍んで新宿中央公園へ侵入して……早々に引き返す破目に陥った。

二人の内一人は能力はあれどこういった霊的方面では全くの素人であった事に加えて、もう一人の方も元の世界で体験してきた霊障とは性質も方向性も全く違った為に、その経験が役に立つどころか寧ろ判断を誤る原因になったのだ。

 

神すらも屠る二人組は魔導書を碌に扱えない魔導士の事を軽く見ていた。だがこの世界では、ましてやこの魔界都市においては彼らの方が物を知らない異邦人なのだ。

 

 

 


 

この街を犯すのならば心せよ

善も悪も、人も人以外も受け入れる寛容な街なれど、魔界都市を侮る者は――たとえ"神"であれ――手痛い報復を受ける事になるのだから

 

 




ソノラマといいつつ秋田書店時空です


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異邦人

久し振りに色々と調べながらでしたが難産でした。
何しろ原作が昔の物なので地理に疑問があります。図書館の建物はおそらく今のエコギャラリー新宿だろうと思うのですが、そうすると侵入経路次第では直ぐに着くんですよね。もしかしたら正規の出入り口からは遠いのかもしれませんが。

それとも公園周辺も含めて結構な範囲が最高(M)危険(D)地帯(Z)なんですかね?



“Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.”

 

[新宿西口中央公園 ―― 図書館]

 

廃墟に佇む一人の老人

否、それは人の悪意に晒され続け狂った神の姿

 

「大勢きた……四人……二人……一人……そして少し離れてもう一人……」

「だが 何人が選ばれる!?」

 

神であったからこそ、人を観察し続ける行為は致命的になったのであろうか

 

「おまえたちはどうだぁ?

 しんどいぞ わしに近づくのは………………」

 

だがこの街の行く末は……神ですらも予測不可能

 

「……潜む一人……二人は……知らんぞ 識らんぞ しらんぞ!?」

 

ここは魔界都市、

余所者が大きな顔をするのを許すほど、住人も、そして街も優しくはない……

 

 

 


 

異邦人 ―裡宮巴比倫―

 


 

男達が魔界都市を訪れる数日前、新宿中央公園内に積み重なる空中庭園の残骸跡で爆発が起きた。僅かな観測データから推測されたそれは放射能を発しない原子爆発と思われる。中央公園の情報の一つとして崩壊した空中庭園の事を話してくれた情報屋はそのエネルギー施設の物と考えていたようだったのだが、それは二人にして見れば魔導士への手掛かりと関連付けるには十分な物であった。考えたくはないが7階位の魔術呪文の行使、それが可能な存在の召喚に成功したという事だ。幸いにも推測された威力から魔界都市の妖気が迷宮と同じように力場として働いて威力を抑え込んでいるようだが、核撃(それ)を使える存在を呼べること自体が脅威であり、そんな存在を続けて召喚などされては目も当てられない事になる。

斯くして神の思惑も困惑も知らないバンダナを巻いた二人は意を決して公園に侵入して、早々に死霊に追われていた。

彼らは何時もの様に気配を、気を、霊波を"絶"っていた。だが生者を仲間に引き入れようとする死霊達の目にとって、彼らの強すぎる魂の光は真昼の太陽のように眩しすぎた。

 

『にくい~~~ 生きているやつがにくい~~~』

 

「クソッ、光の精霊11柱 集い来たりて(ウンデキム・スピリトゥス・ルーキス)…詠唱有りでも発動しないか、文珠(爆)(コレ)でも喰らって往生せいやぁ!!」

 

「おま!? なんで事前に確かめてねーんだよ!!」

 

力有る一人は、人間だった頃の除霊の様にその物理干渉すら可能な高出力の霊波刀で死霊を軽く薙いだ

手応えはあった、違う意味で。まるで人間だった頃に魔族に切り掛かった時の様に硬すぎて切れない。物理干渉は働いているのか実体部は破壊できたのだが、肝心の霊体に通らないのだ!!

 

「普段使わねーからしょーがねーだろ!!」

 

「そもそも感応系や借力系は相手が居なけりゃどうにもならんだろうが!! これだから文珠に制限無い奴は……桜花ッ一閃!!」

 

「何だその小汚い刀は!? そういうお前の陰陽道はどうなんだっ 伸びろっぉぉおお!!」

 

「さっき拾った、外ならともかく魔界都市(ここ)じゃジャミングされてるのか反応悪いんだよ!! ―MERITO(爆ぜよ、炎)―」

 

「知ってたんなら事前に言っとけぇええ!! そして拾うな!! 呪われてたらどーすんだよ。そんで侍魔法はいけるんかっよっと、見様見真似手(刀)斬鉄閃」

 

「自己完結するタイプなら大体使用可能だ、テメーが自信満々だったから知ってるもんだと思ってたよ!! それと侍魔法ちゃうわ」

 

「クソっ、ソーサーも霊波刀も削る程度とか上級魔族並かよ…まさか今更悪霊に後れを取るなんて…、しかし何故文珠は普通に効く?」

 

幸いにも奥の手だけは普段に近い威力が出た。もう一人の方*1は多少威力は落ちるが霊撃も効果があり、それ以外の魔術や逃走中に手に入れたこの公園の被害者の物であろう刀の攻撃は通用していた。

 

少し離れた場所から近代兵器が使用された火薬の炸裂音が数度続き、そして稲光が見えた。何者かの能力で場が変化したことを感じた剣士はこの場を乗り切る為に切り札を切る。

 

「あんたの霊波刀で切られても消滅しないとか魔界都市(ここ)の悪霊はどんだけ恨みつらみを溜め込んでんだよ… 大技行くぞ!! ―LAZALIK(大いなる天の、怒りの一撃を)―」

 

「そこは雷撃よりも不死特攻だろ う …ちょっ、お前それ!?その魔法剣技は禁じっ「誰かが雷を呼んだ今しかないんだよ!! 天撃斬改め――」撤退ぃぃいいいい!!!」

 

普段荒んだ顔をするバンダナ男が半泣きになりながらドタバタと死霊の群れから逃げ出すのをしり目に、雷を纏ったバンダナキャップの剣士が、男ごと死霊の群れを打ち据える

 

―― 裂雷撃(唸れ 咲く、雷) ――

 

神鳴る怒槌が振るわれた後には、死霊の群れは亡骸さえ残さずに消滅した。

 

 

 

「あー死ぬかと思った…じゃねーよ!!

 刀で範囲攻撃してんじゃねーよ!! このなんちゃってサムライ!!」

 

「うっせ、アンタだって本場のニンジャがドン引きするくらい手刀で切りまくってたじゃねーか!このエセニンジャめ。囲まれる前にさっさと移動するぞ」

 

「つーか、禁じ手は"斬"の剣技じゃないのか?」

 

「基本押さえてりゃ下位の剣技に落とし込むくらいできるだろ?」

 

「オリジナルかよ、まあ停滞よりは発展させた方が健全なんだろうが」

 

死霊を撃退して人心地ついたのか悪態を吐く男達は周囲を見回す。

 

「一度外に出て仕切り直したいんだが……逃げ回ってる間に奥にきちまったのか?」

 

「霧のせいで遠くが見えんから方向が判らん!! なんで俺ら公園で遭難しそうになってんだよ!?」

 

「アンタGSとかいうこの道のプロだろ。落ち着けよ

 しかし困った、地脈も汚染されているから迂闊にマップを接続したら汚染が怖いし……文珠でフィルタリングして拾得は…よし、(/置)(/報)に絞ればなんとかなるか? あかん、欺瞞入ってそうで情報自体が信用出来んわ」

 

「いやお前何を見た!? 地脈から妖気を取り込んで精神汚染とか勘弁しろよな!!」

 

「座標しか見てないよ。こういう空間異常が有りそうな場所で下手に三次元マップとか作ったら負荷でSAN値直葬しそうだし……」

 

「産地直送? よくわからんがフリじゃないからな。ん?……流石魔界都市、地面から人が生えてるぞ」

 

「向こうにゃ煙噴く戦車に反対側にゃ上下に分かれた神父か、こりゃ流石に助からんだろうな、なんまんだぶ、なんまんだぶ。

 さっきの騒ぎは(ダーク)教団と国のエージェントの対決ってわけか」

 

「六字名号って、一応は神父だぞ。んでこっちは肺に穴開いてっけど出血はそうでもないしショック死か?蘇生は間に合うな、しかしこの材質でどうやりゃ綺麗に埋まるんだ?……あそっか、そういや昔似たような事やったな(柔)(化)っと」

 

「おお、材質をそのままで柔らかくするのか、こりゃ普通の土行の術じゃできん芸当だな。参考になる」

 

「蘇生できたし、(/化)っと「なんでやねん!?」

 

地面に埋まった軍服めいた姿の男性を引き上げたバンダナ男は、何らかの処置を行い心臓が動き出したの確認後、やおら石化の呪いをかけた。当然意識が無い死に掛けの男に抵抗する術はなく、あっさりと石像と化す。助けた人間を石化する相方にバンダナキャップは驚き食って掛かる。

 

「落ち着け、こうすれば仮死状態で肉体を維持できるしストレージに入るんだよ」

 

「ああっ! 解呪するまでは死なないのか。まさか呪いをそんなふうに使うとは…」

 

「ホウライの寺院があるだろ、あそこに収容されていた被害者見てて考え付いたんだよ。それでだ、爆発地点まで行きたかったんだが…無理そうだな」

 

「なんか飲み込まれたらヤバそうだな」

 

「このタイミングで闇が沸いてきたのはおそらくこいつら関係、つまり闇と逆の方に進めばいずれは外に出るだろう」

 

二人の視線の先に広がるのは"闇"、光を吸い込むのか中の様子が伺えない暗黒の大気は妖樹の森を、森から這い出てきた魔性の生物を、彷徨う死霊すらも飲み込む。

顔を見合わせ頷き合った二人は、全力の身体強化を行使して一目散に逃げ出した。

 

 

数刻後、二人の姿は拠点としているホテルの中にあった。

拾った防衛庁のエージェントは新宿一の名医が居るというメフィスト病院とやらに放りこんできた。何かトラブルがあったのかロビーが混乱していたのをこれ幸いとドサクサに紛れて侵入、同じく入院していた仲間らしい男の隣に寝かせて置いたのでその内気が付くだろう。なんか凄い名医らしいから石化の呪いくらいどうにでもなるだろうとそのままである。

 

特殊能力戦略部隊(Special Ability Task Force)だと許せるのに超戦士(スーパーソルジャー)と呼称したとたんダサくなる件について」

 

「そんなにダサイか? 超戦士(スーパーソルジャー)って普通にカッコイイだろ」

 

「これが頭昭和ってヤツか、演歌番組でなにかと故人を持ち上げ続けて何一つ新しい事をせずに平成が終わったTV局と同じだな!!」

 

「一緒にすんな、張っ倒すぞ」

 

雑談をしつつ遅めの昼食を取る。なんにせよ体が資本だと経験から叩き込まれている二人はエネルギー補給は欠かさないのだ。

 

「そういやその刀持ってきちまったのか。大丈夫か?刀剣類の呪いは厄介らしいぞ…」

 

「ふ~ん、それってGSの知識か?」

 

「ああ、うん、今にして思えばちょこちょこ大事な事を教えてくれてはいたな」

 

「向こうの師匠の話なんか? そういやその手の話を聞くのは初めてだな」

 

昔語りを始める荒んだ表情の男、気のせいか少し表情から険が取れているようだ。

 

「まあなんつーか、久しぶりに素人時代並みの下手打っちまったからついな。

 あの人は師匠っていうか雇い主だな。普段からちゃんと勉強しなかった俺の方にも問題はあったけど……向こうもちゃんと育てる気も無かったようだから師匠呼びは無いな」

「どれ、鞘とか傷んでる癖に刀身は綺麗だな。

 益々怪しいが……"梵我一如"…ねぇ、悪霊斬れた時点で明らかに普通じゃないんだが……全く判らんとか自信無くすぜ」

 

「妙にしっくりくるからこのまま使いたいんだが、何より加減したとはいえ禁じ手を使える刀を手放すのは惜しい」

 

「まあいいんじゃね、ホウライでもお前の方が上手くやれてたし。

 おまけに魔界都市(ここ)じゃ勝手が違うのか俺の力は効果が低かったからな、お前の手札が増えるのは歓迎だ」

 

「しかし外見はなんとかしたいな。兼光の拵で補修出来ないかな」

 

「別の刀の鞘が…ああ、文珠で変形させればいいのか。妙に手際いいな」

 

「転職すると専用装備の扱いを覚えるんだよ」

 

「なにそれズルイ!? 俺なんて基本職にすら就けなかったのに!!」

 

「……よし出来た、この鋭さはキリジュツ未収得でも*2首はね(クリティカルヒット)が出そうだぜ!!」

 

 

休息を取り、額にバンダナを巻いた男は一端思考をリセットするつもりだったが……これだけは早めに解決しておきたいと考え込む。

 

「しかし何故文珠だけは通じたんだ?」

 

「多分だけど、表面上は元の世界と同じように見えたから深くは考えてなかったけど、実は別世界って事なんだろうな」

 

「そこまでは解る。だが何故お前は通じる?」

 

バンダナキャップの男は考えを整理する為か少し黙り込む。

元々神秘が存在しない世界で生まれた彼にとってこの手の話はサブカルチャーの話題の延長である。頭の中ではレベルアップで無駄に高いINT値*3を駆使して漫画やアニメ、ゲームやラノベ等で使い古された設定からそれらしい仮説を構築していく。こういう事態においては昭和脳よりもガキの頃から異世界転移や転生物が溢れていた頭平成が強いのだ。

 

「平行世界についてはどれくらい知っている? 特に分岐についてだが」

 

「枝分かれしていくやつか?」

 

「まあそんな感じだな。俺も木で考えるが、最初始まり種から生えた幹が枝別れするよう分岐していくが…根本まで辿れば一つになる。つまり元は同じ世界だから構成要素の差は無いわけだ」

「アンタが俺に会う前の世界間移動は多分隣の枝に移る程度だったんだろう。だから一見違う世界でも同じ木から生える枝、平行世界移動だからアンタの能力も問題無く使えたんだろう」

「そして俺に出会った世界ではアンタは元の世界へ戻れなくなっていたよな。その時の移動はそれまでと違ったんじゃないか?」

 

「虚数空間を経由したから…つまり今の俺達の移動は違う木へ渡り歩いている、つまり異世界への移動なのか!?」

 

「多分そうだろう。俺は最初から虚数空間経由の移動しか経験していないから想像だけどな」

 

バンダナの男は考える、不本意ながら自分は亜神の域にまで到達している。

だからこそ本来の世界を離れるほど世界のバックアップが無くなり結果的に弱体化しているのだろうか?

最初の世界間移動、あそこでは十全に力を行使出来た。何故だ? そういえば簡単に勇者召喚やら転生やらが行われていた。つまり世界間のハブのような場所だとしたら、敢えてそんな仕様なのかもしれない……そして出入りし易い場所だから虚数空間に落ちた俺やコイツが出現したのか? ある程度の辻褄は合う

 

「世界が変わったから力が通用しないとして、じゃあなんでお前は通用するんだよ」

 

「俺の力の源である魔は何処に居ると思う? 何の集合体だと説明したか覚えているか?」

「俺もさっきまで勘違いしていたんだけどな、平行世界ではなくて異世界の同位体が融合していたとすればだ、俺はそれらの居た世界でならそれなりに力を発揮出来るわけだ。魔の居場所が虚数空間ってのも仮説の補強になる」

 

「つまり俺は元の世界から離れたから制限を受けるが、お前にはそれが無いって事か? ズルくねぇ!?」

 

「全ての要素が稼働するわけじゃないからそうでもないぞ。一応違う幹でも木の種類が同じならある程度は同じなんだろうな、アンタの様子から今回は外れの部類って事だろうさ」

 

「だったら何故文珠だけが…っそうか、俺が奴らに通用するように念じたから文珠がこの世界の流儀に合わせたのか。その分のロスはあっても十分な効果は有ったのか」

「よし、だったらお前を参考に文珠で霊力を変調させれば行けそうだな」

 

自身の不調に対する仮説から、世界の秘密に当たりを付けたバンダナ男はこの世界に来てから初めて確かな手応えらしき物を感じていた。

だがバンダナキャップの方は未だ説明出来ない不安を感じている。以前の二つの世界と強さの質が何処か違うのだ。

確かな事は一つ、中央公園の死霊がそうであったように相手を侮ると不覚を取りかねないという事だ。

 

(どうにも魔界都市(ここ)はそれだけじゃなさそうな気がする。マジで邪神関係じゃなきゃいいけど)

 

日本神話では神も死ぬ

ましてやここは魔界都市、亜神の域にいる横島忠夫も例外足り得ない。だったらどこまでも人でしかない自分は……

 

 

新宿西口中央公園を覆っていた"闇"は消失した。

人死にが出たそれを幸運と呼ぶのは些か不謹慎ではあったが、騒動のお陰か死霊の数も減り今度は小競り合いを回避する事に成功した二人は穴の前に居た。

爆発後に出現した地下へと続く大穴、空間異常の為かあきらかに公園の面積に匹敵するその大穴の中、逆しまに築かれたそれはバビロニアの空中 否、地下宮殿への道

 

「根堅洲の……いや、裡宮か?…海底じゃないだけましか。日本で凶風(まがつかぜ)の神にでもなってたんかね」

 

「なんだそりゃ?」

 

「ああ、いや、こっちこそがオリジナルで空中庭園はそれを模した物かなって」

 

「そりゃまた大胆な仮説だな」

 

「土地柄を考えてもおそらくは悪霊の王様だろうよ。しかしホントなら山から降りてくるハズなのに地の底へ押し込められるとか皮肉なもんだな」

 

こうして二人の男は地の底へと足を踏み入れた。

悪霊も死霊も消え失せた新宿中央公園の一画、そこに生じた大穴は未だ妖気と空間異常により抑え込まれ隠されていた

 

 

*1
同じ格好に思うところがあったのかこちらはバンダナキャップ

*2
ホウライは基本仕様がFC版#1~3なのでどう頑張ってもBoCFの職業スキルは習得出来ません

*3
なお(Intelligence)は強化されるが(Wisdom)は強化されないという80年代のPCゲーム以下の残念仕様である




これを書くにあたってハンターを読み直したのですが、キャラクターをギャグシーンで丸っこく崩して描く手法がまんま80年代のエロ漫画でした。


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冥宮

初期プロットでは中野三佐、大林三佐、オリ念法使い(妙神山念法ではありません)と共闘させるだけの短編でした。どうしてこうなった?
いやまぁ中野三佐と大林三佐の組み合わせが本編中だと無理が有るのと読み返していたら本田三佐をね、当時スピンオフ連載するくらい人気だったし。




神が生み出した闇から解放されたと思ったのだが出た先も暗闇の中だった。今度は何らかの建築物の中で単純に光源が存在しない事が原因の暗闇、先ほどまでの何も存在しないし何も出来ない超常空間とは違って一先ずは安心なのだが、気のせいでなければ解放されたというよりは空間に飲み込まれたという感覚がある。神が生み出した闇から俺達を解放したという事は此処には神を上回る何かが存在しているという事か?

 

 

 

「ええい、漸く出れたと思えばここは何なんだ?」

 

「建築様式としては古いものだが…矛盾するが古さが感じられん。新築、もしくは高度な状態保存の処理がされているのか?」

 

少し歩くとライトで周囲を照らす円谷隊長とロダンがいたので意識して軽い調子で声を掛ける。

 

「よっ! 奇遇だね、お二人さん」

 

「貴様もこの場に居たのか、フンッ 何が遠い存在だ、結局は同じ穴の狢ではないか」

 

よくわからんがこのしゃくれアゴはオレの事が気に入らないらしい。行掛り(ダーク)教団とは敵対しているので当然かもしれないが、この非常事態は恐らく区外の人間?が関わっている。ここは区民どうし協力してくれないもんかね。

 

「十六夜君、ひょとして君には見覚えがあるのではないのかね?」

 

「大有りだよ、あの黄金仮面の家にそっくりだ」

 

「黄金仮面だと!? まさか、中央公園にあの空中庭園が復活したと言うのか!!」

 

「正直これを復活っていうのかはわからん、あっちを見て見ろよ、何が見える?」

 

俺はテラスへと続く通路を示した。結構な距離があるがこの二人にも外の様子が見えたようだ。

 

「土、だと!? まさかここは地下なのか?」

 

全員でテラスへと移動して外の状況を確認する、そして俺は違和感正体に気が付いた

 

「もう一つ断言出来ない理由なんだが、俺の記憶が正しければ建物の配置が逆しまなんだ」

 

「逆しま…鏡の世界とでも言うのか…」

 

「そちら方面の専門である(ダーク)教団でもわからんかね?」

 

「五月蠅い!! 素人は黙ってろ!!」

 

オレもこういう事は詳しくはないが、ひょっとしてあの空中庭園と対になる存在なのか? 二つ存在する事に何か意味があったのだろうか?

あの宮殿で調査をしていたメフィストならば何か知っているのかもしれないが、荒事専門だからとそういう面倒事を丸投げしていたツケか…

 

「ッ!!」

 

「何奴!!」

 

急に周囲が明るくなったと同時に悪霊の気配がした。そしてそれは覚えが有る気配

 

「黄泉がえったか…」

 

「不本意ながらな」

 

オレ達の前に現れたのは黄金仮面ことネブカドネザル二世と"マルドゥークの三騎士"が長兄、紅の剣士ビアンの二人だった

 

「これはアンタの仕業かい?」

 

「否、と答えておこう。セミラミスは失われたのだ、今更現世に固執する意味など無い」

「とはいえ呼び出された以上は仕事をせぬわけにいかぬのでな、ゼムリア…いや、十六夜京也よ。付き合って貰うぞ」

 

どうやら黄金仮面はこの地下宮殿の主に利用されているようであの時のような怨念染みた執念は感じられない。ホントに不本意なのだろう。

 

「円谷一佐、ロダン 騎士の方は任せていいか?」

 

「勝手に仕切るな!! ええい、(ダーク)教団の力を見せ付けてくれるわ!!」

 

「ああ、任せてくれたまえ」

 

 

 


 

冥宮 ―裡宮巴比倫―

 


 

侵入者へと対峙するのは二人の騎士。この迷宮の建築様式からすれば未来的ともいえる中世ヨーロッパ寄りのフルプレートに時代考証仕事しろと悪態を吐きつつバンダナキャップの剣士は矢を(逸)らして正面の紺色の槍使いへと踏み込む。間合を詰めたい剣士に対して槍使いの鋭い突きはそれを赦さない。

流れを変えるべく、剣士の相方のナイフ使いは六本腕の大弓の騎士目掛けて牽制の電磁ナイフを投擲する。道中に除霊した自衛隊員の悪霊からの戦利品であるそれは(/化)された事によりこの迷宮の住人にとっては必殺の一撃足り得る威力を秘めているのだ。だが弓の騎士もさるもの、自身や槍使いに当たる軌道のナイフを矢で迎撃してみせた。

だがそのお陰で剣士を狙い放たれる矢が一瞬途切れた。それを好機と判断した剣士は槍使いの神速の一撃を半身になって躱し、そのまま体軸を旋回させる運足により加速して一瞬で間合いを詰める。だが歴戦の勇士たる紺色の槍使いはその程度の使い手など幾度となく葬ってきた、槍を引き戻しつつ回転させ剣士を薙ごうとして――空ぶった!! 何の予兆も無い転移に驚きつつも、消えた剣士と入れ違いに飛来した電磁ナイフを弾く為に槍は振るわれ――その埒外な衝撃に弾かれる!! 辛うじて槍を手放すことこそなかったものの崩れた体勢を整える間もなく絡みつくような体術で引き倒され――蒼く輝く短刀に首を狩られた

 

昏くなる視界の中、紺色の騎士が最後に見た光景は

 

―― 「凩」・双波斬 ――

 

背後からの一撃で両の腕を切り飛ばされ、返す刀で首を落とされる青色の騎士の姿

望んでいた戦士の最後とは程遠い終焉、外道に落ちた自分らには誇りある戦いなど望めないだと、失意のなか悪霊の騎士は消滅した

 

 

 

中身が消え、残った鎧の残骸を皮鎧姿の二人は検分する。

 

「しかしこいつらなんで金属鎧なんか着てるんだよ。レイバーロードの親戚かなんかか?」

 

「悪霊だしそれはなさそうだぞ。それにしても六本腕でよくもまぁ弓のような大型の武器を扱えるよな、どう考えても弓どうしが干渉しそうなもんなんだが…」

 

地下宮殿を進み出会ったルームガーダーと思われる異形の騎士。マシンガンを上回る速度で飛来する矢の嵐を前に正攻法では勝ち目がないと判断したストライプは策を講じた。

投擲したナイフと剣士の位置を(/換)する事によって槍を回避させ弓兵の背後へ送る。

剣士と入れ替えたナイフは他の弾かれたナイフと違い特殊な投擲技法でライフル弾並みの威力で放ったものであり、それを他のナイフと同様に弾こうとした槍使いはその衝撃に腕を流され隙を作ってしまった。そして百戦錬磨の騎士とはいえど組み技では現代の技術に分が有ったようだ。

 

「…朝の仕返しじゃねーだろうな」

 

「なんのことですかいのお」

 

策は見事に決まったものの格上相手であったので剣士はギリギリの綱渡りを強いられた。隙を突く為とはいえ槍が触れたタイミングで転移をさせられた男の口から不平が零れるのも仕方がないのだろう。

どこかの影が薄そうな男の口振りで惚ける相方に誤魔化してんじゃねーとバンダナキャップの男は零しその場を後にした

 

 

「さしずめ『イシュタルの冥界下り』ってところかな?」

 

「……なんだよそりゃ」

 

「アンタとこの場所、何気に縁があるなって思ってな。どっちもメソポタミア文明絡みだろ」

 

「俺のせいなんか? 流石にそれは言い掛かりだろう」

 

出現の際に取り込まれたのだろうか? 石作りの建築様式に似つかわしくない中央公園の悪霊達や怪生物、稀に空中庭園の物と思われるガーゴイルや黒い鎧に憑いた悪霊を退け、二人は進む。

地上から地下宮殿の中心部へと昇って(・・・)きた二人は自分達以外の真っ当な(・・・・)存在を感知した。

 

「これは氣か? となると取り込まれた公園の魔物共とガーディアンの小競り合いではないな」

 

「音が止んだな、決着は付いたようだな」

 

手が掛かりを求めて明かりが洩れる大部屋へと、気配を殺して接近した二人に声が掛かった

 

「居るのはわかっている。姿を見せてくれないかい」

 

木刀を手にした青年と超戦士(スパーソルジャー)(ダーク)教団の神父、本来ならば手を取り得ない面子が共闘していたとすれば彼らにしてみれば非常事態だったのだろう。おそらく中央公園に居合わせて巻き込まれた口だろうと当たりを付ける。だとすれば目的をもってこの場に居る自分達の方にイニシアチブは有るとバンダナキャップの男は考える。

隠形を解いて姿を現す二人、聞こえてきたのは感嘆の声。超戦士(スパーソルジャー)(ダーク)教団から見ても彼らの隠形は完璧な物だったのだろう。だが、

 

「良く気が付いたな。流石は音に聞いた十六夜京也ってか?自信無くすぜ」

 

「この死が満ちる場所でアンタらみたいなのが居れば直ぐ判るよ」

 

なんでもないことのように返した京也は"死"と言った。この場に居る三人の中で一人視点が違うようでこの地下宮殿の本質に気が付いているようだ。

視界の隅に映るのは紅の鎧と黄金の仮面、どうやらここにも騎士は出現していたようだが…

 

「そこの成金趣味の仮面はここの元主人の物かい?」

 

「わかるのかい?」

 

「情報屋から姿は聞いていたからな。こっちが本命だったか……」

 

「同じ顔の二人組、(ダーク)教団の情報部が掴んでいるぞ!! 貴様らは区外から入ってきた魔導士だな。ここへは何をしに来た!! 神が目的であるのならば消えて貰うぞ」

 

「まてロダン、私達も掴んでいるが彼らの目的は少し前に新宿へ入った魔導士だろう?」

 

「フン、このタイミングだぞ。その魔導士もコイツらも神が目的でないとどうして言い切れる?」

 

「神様のトラブルはお腹一杯でな、神父のアンタにゃ悪いが随分前から無神論者なんだよ」

 

「……おう…そうか」

 

(ダーク)教団の男、神父(ファーザー)ロダンの物言いにバンダナの男は心底疲れたように返す。その疲労具合が余りにも真実味があったのか気勢がそがれたロダンは取り敢えずは矛を収めた。

 

「ではこの場所の情報を含めて目的を明かしてくれないか。自分は防衛庁科学局所属の円谷一佐」

 

「アンタらの掴んでいるとおりだよ、(神様から)依頼を受けて魔導書を回収する為に中東から魔導士を追って来た。面倒事を押し付けるエル何とかは死ねばいいと思うよ」

 

「エルとやらが何者かは知らんが魔導士ではなく持ち物が目的か。それでこの場所には何処なのか教えてくれないか」

 

「入口は中央公園の爆心地だが、今いる宮殿は次元の違う場所だから正確な位置はわからないな。現象としては神話の冥界下りの再現だな」

 

「貴様はここが地獄だとでも言うのか?」

 

「死者が闊歩していただろう? もっとも区民にゃ日常茶飯事らしいから信じ難いかもしれんが……っ!?」

 

突如バンダナの男達は武器を構え視線を宮殿の中央へと進むと思われる通路の先へと向ける、僅かに遅れて悪寒を感じた十六夜京也もその暗闇で満たされた通路を睨む、内心では自分よりも早く反応したバンダナキャップの剣士の技量に感心しつつもおくびにも出さず、暗闇に浮かぶ人影を確認して口を開く

 

「何か近づいてくるな、足音がしない…普通に歩いているのに無音だと?」

 

「おお、クロウではないか! 無事だったのか!! これで百人力だ…なんのつもりだ十六夜京也!! 何故邪魔をする」

 

通路より現れた人影の正体が中央公園で別れた仲間、神父(ファーザー)クロウだと知った神父(ファーザー)ロダンが声を掛けつつ歩み寄ろうとしたのだが、十六夜京也が木刀を向けて制した。

 

「アンタ気が付かないのかい?」

 

「何を……まさか…」

 

「アンタらがどんな神様を祭っているのかしらないけどな、どうやらアイツは宗旨替えをしたらしいぞ」

 

「クックックッ、その通り!! さあロダン、貴方もわしと供にその血肉を、いや魂を神へと捧げるのです!!」

 

神父(ファーザー)クロウが大仰な身振りで床へ両手をつくと同時にその場から石作りの床が、壁が、果てには天井までもが魔界の海へと変化していく!!

魔術「死海」、嘗て異なる世界線で魔道士レヴィ・ラーが使役していた水の妖魔が使いし魔技を(ダーク)教団の魔人は人の身でありながら行使するのだ!!

 

「クソッ!! また水泳させら…海水から血の匂い、骨の化け物だと!!」

 

LITOFEIT(解き放て、大地からの縛め)

 

咄嗟に愛刀・阿修羅で円を描くように床をなぞり簡易的な結界を構築して足場を確保した十六夜京也は、一度経験した魔術故に焦らず反撃を行おうとした。だが術者である神父(ファーザー)クロウが死人と化したことで起きた死海の変化に戦慄した!!

その水は生き物が住めないのだろう、魔界の魚達はその身を海の溶かされてスケルトンとなり生者の血肉を求める、文字通り死の海と化していたのだ!!

 

「はっ!! みんなはどうした…」

 

その海の危険性にその場にいた面々を見渡せば、ロダンは巨大化させた干し首に乗り、円谷隊長は飛行装置を装着して飛んでいた。流石だと感心しつつ残り二人を伺うと

 

「おー、あれってターボ・ファンってヤツだろ。カッケーな」

 

「呑気だな、浮場(LITOFEIT)で防げたから良かった。飛行系だと足場が無いから踏み込みが浅くなるからなぁ」

 

浮いていた。荒波に揺られ敵に近づく術がない彼と違って呑気に会話する余裕さえあるようだ

 

「飛べないのオレだけかよ!!」

 

 

飛んでるんじゃなくて落ちないだけなんだがなと剣士がぽつりと溢したが、京也にしてみれば同じである。少し前に力不足を感じた彼は雪山に籠り修行をし、そのかいあってネブカドネザル二世や三騎士に勝利した。だがもう少し、せめて空中浮遊をマスターするまで修行するべきだったかと思う。先日も(ダーク)教団のメンバーが普通に空中浮遊を使っていて少し、いや、かなり悔しい思いをしたのだから。

 

だからそんな八つ当たりを念に込めて彼は放つ、雑念結構!!

 

―― 十六夜念法"突き"!! ――

 

が、そんな雑念交じりの念法にキレは無く、また死人となった事で肉体の損壊を無視して動ける神父(ファーザー)クロウは死の海を割く一撃をあっさりと躱して

 

「そんな雑な攻撃など食らう「避けるなっ!!」カハッ!!」

 

同時に動いていたバンダナのナイフ使いに当て身を食らい突きの軌道上に弾かれ――その身に念の洗礼を受けて消滅した。

死海が消失するさなか、呆然とした三人の間に何とも言えない沈黙が訪れる。

 

「「「…………」」」

 

「ほんとストライプは容赦ねーな。する理由もねーけど」

 

悪霊と化したとはいえ嘗ての仲間をギャグのように処理されるという余りの出来事にやるせなそうなロダンに対して、円谷隊長はいたわるように肩を叩く。所属は違えど自分達の異能に誇りを持つ者同士のシンパシーであろうか

対して十六夜京也は戦慄していた。彼の経験に存在しない移動方、自分も今の歩法が使えれば、たまらずバンダナの剣士に声を掛ける

 

「一瞬であの距離を詰めるとかどんな体術だよ。後で話が出来ないか」

 

「ああ、まあ機会があればな。俺も今さっき(視)せて貰ったしな」

 

そう返した剣士は話は終わりとばかりに相棒の元へと歩き出す。

元々神の騒動に無関係故か初対面の為か、先ほどの所業に特に思うところも無いのか元の姿を取り戻した石作りの広間を進み始めるバンダナの二人に京也は追いすがる。

 

「待ってくれ、せっかくだから一緒に進もう」

 

「ん? アンタらは中央公園に居合わせたから巻き込まれたんだろ。さっさと脱出しなよ」

 

「だから上に進むんだろ。一緒に行こう」

 

「ああそうか、ここは別次元だから上が地上ってわけじゃないぞ。俺達が来たルートを考えると宮殿の外へ出る為に下るのが正解だぞ」

 

「そうなのか?」

 

京也は剣士の情報で一度脱出すべきか考えたが、バビロン宮に関わった者としてこの事態を無視する事が出来なかった。敵対していたとはいえ死を弄ばれたネブカドネザル二世や三騎士達の仇を取るのが生者である自分の使命だと考えたのだ。

そしてどうやら仲間の死を弄ばれ信仰を穢されたロダンも同行すると決断したようだ。

 

「逸れた高山三佐や本田三佐も囚われているかもしれない。オレも同行させてもらうぞ」

 

円谷隊長も逸れた仲間の安否が不明な為に同行を申し出る

 

 

「迷宮で合流して善悪混合パーティ結成か、やれやれ――」

 

ああそうか、陰と陽の混合ね。そう呟き霊気を練り上げた剣士は

 

―― 咸卦・桜花一閃 ――

 

何かを確かめるように壁を抜けて現れた悪霊目掛けて刀を振るう。

舞い散る桜のような光を散らし数体の悪霊を斬り捨てる。手応えに納得出来なかったのか剣士は溜息を一つ、その様子を見ていたナイフ使いは声を掛けた

 

「この調子で戦力を小出しにしてくれればいいんだがな、進むぞ」

 

こうして所属も目的も異なる五人は死の王の宮殿を往く。

 




書き方を変えてみるテスト。迷走中


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死闘

ネタが被ったので初投稿です。



「何だ? 気温が…室内で霧…チッ 霧の癖に火だと!!」

 

通路を進む神父(ファーザー)ロダンが霧に覆われた直後、突然の発火現象に驚くも既にその身は魔法の炎から逃れていた。妖物に馴染み深い魔界都市の住人にとっては不自然に霧が発生すれば用心もする。故に霧魔の類の奇襲を躱す事など造作もなかったのだが、流石に水の気配から火が発せられたのには面食らったようだ。

 

「ガスクラウドの類か? 代われ!!」

千邪斬断 万精駆逐

納刀した剣士は両手で印を切り入れ替わり前に出る。

――――起風ッ 発雷ッ!!

 

剣士の指先より放たれるは閃光!! 遅れて大気を切り裂く音の後には焼き尽くされた霧魔が苦痛に歪む顔を描き怨嗟の咆哮を上げ消滅する。

 

「クソっ、地の底じゃ雷撃は威力が出ないな。風の方も思い通りにならんときたもんだ」

 

「道教系? 貴様大陸の者なのか」

 

「あっちこっちのいただき流だよ、節操無しの日本人らしいだろ ―MAHALITO(炎よ、力もちて大火とせよ)―」

 

思った程の術の威力が出せない事に苛立った剣士だが、先程の霧魔の断末魔に呼び寄せられた新手の霧魔の群れを大炎(MAHALITO)の呪文で焼き尽くした。

 

剣士にとっての本来の系統と違い、侍の精神修行の末に開眼した七階位の呪文は力を損なうことなく機能する。元より迷宮で抑制される前提(・・)で使用される呪文故に異界でも力を行使出来るのだろう。とはいえその魔法は精神領域に依存する為に使用回数に細かい制限がある。特に使用出来れば一人前のラインである第三位は、低層向けの下位攻撃呪文だけではなく未来(・・)に於いてはむしろ深淵でこそ必要になる守りの呪文がある為に高位の魔法使い程乱用するのを避ける貴重な領域となる。故に先を見据えた呪文配分こそが魔法使いの腕前とも言っても過言ではない。

 

遅れて現れた巨大サソリの群れに対峙するロダンと十六夜京也を押し留めたバンダナの男と円谷一佐は時間の無駄とばかりに携行していた光学兵器で次々と大サソリを処理していく、遅れてハンドガンを抜いた剣士も加わるが、軽快な射撃音に対して結果は散々な物であった。

 

「昆虫系もこのサイズだと装甲車を相手するようなもんか? せっかく闇市で買ったCz75の出番だと思ったのに」

 

「いい趣味だな。だが魔界都市で使うならせめて特殊弾頭ぐらい準備しておかないとな」

 

円谷一佐のアドバイスに単なる趣味だししゃーねーかとボヤいた剣士だったのだが、ふと何か思いついたのか弾倉を交換するなり突然ガンスピンを始める!?

銃を廻す腕の軌道で五芒星を描きつつ各頂点で何らかの所作を行うのかガッガガッと金属音を響かせた後、描いた五芒星の中心目掛けて銃を構えて発砲した。

 

「発想は悪く無いが、この程度の相手にその手間は割に合わんな」

 

魔法陣を通過した弾丸は見事大サソリを爆散させたのだが、一発撃つのに1秒以上の時間が掛かる上に魔法陣を描く為にその場を動けないのは実戦に置いて致命的な隙となる。小技が増えたのはいいが剣士のスタイルとはいまいち噛み合わない。弾丸か銃に細工する方が現実的だろう。

 

「そういえば口径は合わんが昔イギリスの退魔組織とやり合った時に拠点でガメた法儀式された水銀弾頭とかあったっけ? いやオカG時代に拝借しておいた精霊石弾頭なら……」

 

「よくわからんが後にしたまえ、今度は鳥のようだぞ」

 

「シルエットは鶏だがサイズが異常だな。まあ新宿ではよくある事だ」

 

通路の先から現れたのは鳥と爬虫類の中間のような巨大な生物、姿を見た十六夜京也はそう見取ったが

 

「…いや、遺伝子組み換えの紛い物じゃない。本物の神話生物、コカトリスが2体…くるぞ!! 石化持ちだから攻撃を食らうなよ!!」

 

バンダナキャップの剣士はそう返す。

 

現れる障害に異変が生じている。明らかに新宿にもメソポタミアにも縁が薄い存在が混じり始めたのだ。

召喚の書で呼ばれたのならばまだいい、最悪なのは悪霊の王として顕現した物がそれを足掛かりにして封印された本体から干渉始めた可能性が有るという事だ。

 

 

 


 

死闘 ―裡宮巴比倫―

 


 

「他に何を警戒すればいい?」

 

「奴の石化は接触とガスブレスだ。ガス系は基本暫らくはその場に停滞するから密度が下がって無害化するまでは気をつけろ」

 

「生物と言ったな、ならば殺せば死ぬのだな?」

 

「まあな、そういう形で生み出された怪物だから多少タフだが殺せる相手だよ」

 

散開しながら銃を創造する円谷一佐が問えば剣士は返し、巨体を挟んで反対側からは僧衣の袖から短刀を取り出したロダンの声が響く。異常な生物相手に的確な判断が出来るのは新宿の住人故か

 

「ふっ!!」

 

何処かで見たような熱線銃(デッカード・ブラスター)の牽制射撃で体毛を焼かれ暴れるコカトリスの足元に重力で加速する歩法「縮地」で滑り込んだ剣士は刀を振るう。チャクラを回し氣を練り上げた一撃は見事関節を消し飛ばして足を切断してその巨体を横転させる!!

 

「けやああ!!」

 

機を見て跳躍したロダンは倒れて暴れるコカトリスの頭部目掛けて落下し体重を込めた一撃を眼窩にねじ込み息の根を止めた。

 

まるで戦士(・・)の剣戟の様に対象を破壊する無様な一刀に落ち込みつつもう一体のコカトリスを見やれば、ブレスを吐こうとした嘴を十六夜京也にかち上げられ、晒した喉笛をバンダナの男に搔き切られていた。

剣士は十六夜京也の剣を見取って真似してはみたのだが、チャクラの稼働により圧力が増した氣の制御にしくじり侍にあるまじき剣を振るってしまった。剣士はどうしたものかと考える。

 

魔導士を追う最中に出会った退魔士は米軍の特殊部隊相手に「その土地にはその土地のやり方が有る」と啖呵を切った。その挙句、すったもんだの末に自分達と特殊部隊と共闘しエイリアン相手に大立ち回りをするというそれはそれは濃い一日だった。所属も国籍も違う男共を率いる退魔士の姿はなかなか様になっており、気風が良い女だった。なおその最中に顎で使われ「こんな扱いが落ち着く俺って…」と珍しくぼやくバンダナが居たのだが。

 

偶々自分に近い剣術を見れたので、新宿のやり方に習ってはみたが練度の関係でどうにも巧くはいかない。だがストライプがこの地では十全に力を振るえない以上は自分が主体となる必要がある。退魔剣術が不完全なのは自身の氣がこの世界に合っていないからだ。だから今使用しているのは咸卦の氣、「自分で足りなければ他から持ってくればいい」とは誰の言葉だったろうか。本命の元にたどり着く前に咸卦の氣で侍の剣術を扱えるようにしなければならない。

 

 

 

その後も幾度かの戦闘を経て、そろそろ終着点かと思われる所まで来た一行は大広間に踏み込む。広間を埋め尽くす骸骨兵(スケルトン)の奥を見ると一段高くなった場所には古めかしい本を手に直立する木乃伊が居た。

 

「木乃伊取りがなんとやらか、どうやら奴らの仲間入りをしたようだな」

 

「アレが君達が追っていた魔導士の成れの果てという事か? 死んだのなら何故この現象が続いているのだ?」

 

「普通は召喚者が死ねば召喚を維持出来ない物だが…、何しろ呼び出そうとしたのが悪霊の王だからな。召喚者を殺して逆に傀儡にして自身を留める為の楔代わりにしたんだろ」

 

魔導士の木乃伊への道を塞ぐ骸骨兵(スケルトン)へと一行が足を進めると群れの中から伏せていた身を起こす巨大な姿があった。

大小二体の異形のシルエットは大まかには昆虫の様だが頭部と胸部は人骨の形だった。上体には巨大な鎌状の腕が二対生え、胴体はムカデのような多足。それは人骨で構築された蟷螂と百足の間の子ような姿をしていたのだ。

 

その冒瀆的な髑髏の巨体を眼にした二人の反応は早かった。バンダナの男は背を低くしその身を闇へと沈め、剣士は先手を取るべく前に出る。だが周囲を埋め尽くす骸骨兵(スケルトン)とその背後から湧いてきた飛行する髑髏の群れに接近を阻まれ先制を許してしまう。剣士はとっさに全員を庇う為に解析途中の遺失呪文(CORTU)を模した(障)(壁)を張り呪文に備えるがニ体の髑髏の内巨体を起した一体がその顎を開き高所から漆黒のガスを撒き散らした!!

 

「スペルじゃなくてブレスだと? 墓所で遭遇した個体と別物じゃないか!」

 

ここが死者の世界だからだろうか? その異形の髑髏はバンダナの男達が前に居た世界で遭遇した個体より巨大で存在の密度からして違っていた。幸いにも魔法(障)(壁)(CORTU)により無効化に成功はしたものの、継続するブレスにより身動きを封じられたのを好機と見たのかもう一体の通常サイズの髑髏は魔術詠唱を始めた。

髑髏百足(サイデル)』、二対の巨大な鎌状の腕を持つ不死の怪物、巨体とその凶悪な見た目から物理攻撃に特化しているように見えるが最高位呪文の破壊魔術を操る知性を持つ強敵である。

核撃の本来の威力を発揮すれば街一つを灰燼と化す。それは太古の世界であれば正に神罰と言い表すべき破壊の力、迷宮内では威力を抑制されるがそれでも一撃でマスタークラスの冒険者パーティを壊滅させる威力を持つ。よって迷宮の冒険者達は高位呪文を操る怪物を優先して撃破する。

 

そう、動けないのはこちらだけでなく、詠唱中の髑髏百足(サイデル)も同様なのだから……、次の瞬間髑髏の首が堕ちた

 

姿を消していたバンダナの男が詠唱中の巨体を背後から強襲し竜の気配がする蒼く輝く短刀で髑髏百足(サイデル)の首を刈り取ったのだ!!

同族を狩られたもう一体の異形の怪物はその鎌を振るい襲いかかるが、バンダナの男は軽い動きで身を躱し再びその姿を闇に沈める。

 

バンダナの男が使用したのは後の世で迷宮で活動する斥候職の必須の技能となる隠行の技である。視界以外にも匂いや音といった探知手段を持つ様々な魔物からその身を隠し、高位の使い手ならば魔王にすら気付かれる事なく接近出来るのだ。

 

「クソッ、飛行髑髏(スクライル)がブレスだと!? いったいここはどうなっていやが…っ!? お前躱せなかったのか!?」

 

バンダナの男の奇襲により死のブレスは中断したものの、周囲を舞う飛行髑髏(スクライル)の数体がブレスを吐き出した事により一行は魔法(障)(壁)(CORTU)の中にから動けずにいた。そんななか突如バンダナの男が魔法(障)(壁)(CORTU)内に転がり込む

精彩に欠けるその動きを疑問に思った剣士がバンダナの男を見れば酷く消耗していた。

 

「…少し掠めただけで魄を削られた。成田山の御守り(アミュレット)が無ければ即死だったぜ。ついでにドレインに麻痺と…精神系か? 珠で守ってんのにこのザマだ。どれか一つでも貰えば戦闘不能もんだぞ」

 

「ああ、アレ効果あるんだ…じゃなくて珠の防御貫通したのか!?」

 

「個別に対応すれば数回は防げる、手を抜いて汎用で済ませたから貫通した。俺にも効くレベルだからドレインと精神攻撃は特にヤベーぞ」

 

ここにきて襲い来る異界の者の中にバンダナの男達が識るモノよりも強力な力を有する個体が混ざり始めた。このタイミングで脅威判定を誤ったバンダナの男はダメージを受け一時的に動きを止める事となる。

 

「すまんが雑魚をなんとかしてくれ!! 不死者相手の切り札を使う!!」

 

「ええい、仕切るな!!」

 

「守って貰ったんだからそう言うなって。 往くぞ、十六夜念法――空震」

 

十六夜京也が眼前に立てた愛刀・阿修羅の刀身を叩くと音叉の様に音を発し空気を振動させた。個人用の小型とはいえヘリの集団を制御不能にして墜落させてしまう程の振動波を受けた飛行髑髏(スクライル)達はバランスを崩し失速もしくは周囲の味方に衝突してしまい死者達の動きを乱す。それを機にタイミングを計っていたロダンと円谷一佐は飛び出した。

 

群がる髑髏たちの対処を相方に任せた剣士は刀を床に突き立て軽く両手を広げ詠唱に入る。

異界の者達は特殊な障壁を持ちいて呪文を無効化する。威力の減衰ではなく攻撃呪文その物を一定の確率で無効化してしまうのだ。無論確率なので当たらないわけではないのだが、高位の存在はかなりの高確率で無効化してしまう為に呪文は効かないと思って行動する必要がある。唯一の対抗策は自身の格と引き換えに人の限界を超えた力を呼び起こす「変異」「大変異」という呪文で障壁を剥ぎ取るしかないのだ。

 

だが、

 

「悪いが対策済みだ!! (/効)(/通)!!(/中)!! 俺の取って置きの確殺コンボを食らって死ね!!」

 

限定的とはいえ神の領域に手を掛けたこの男には人為的に奇跡を呼び起こす力がある

 

「―ZILWAN(我、光の力用いて不死者を退け、呪を解かん)―」

 

突き出した両手より発せられた退魔の光は剣士の異能により強化され、射線上に居た飛行髑髏(スクライル)を消滅させてなお突き進み髑髏百足(サイデル)の持つ魔法無効化の障壁を貫通して直撃した!!

 

「このコンボなら確実に通る!! ………なん……… ………だと………」

 

「っ 呆けるな!!」

 

必殺の呪文を受けてなお健在な髑髏百足(サイデル)の姿に呆然とする剣士目掛けてその巨体で襲い掛かるが振り下ろされた鎌を十六夜京也が横合いから打ち付けて逸らす

続けて骸骨兵(スケルトン)の群れの間を気配を消して抜けてきたバンダナの男が京也の一撃で上体が流れた巨体目掛けて飛び掛かる

 

「ナイスフォロー!! 神鳴流小太刀二刀術 斬岩剣ッ――硬ぁあ!?――九連・咬」

 

岩をも断つ一撃をいれようとしたが、未だダメージから回復していない為か精彩を欠いた短剣の一撃は鎌で受けられる。だが続いて抜刀した中華風の拵えの小剣を振るい二刀で連撃を撃ち込み鎌腕を叩き折った。

 

「こいつ全然別物だが、ちゃんと退散(ZILWAN)のダメージは有る!! 異様にタフなだけだ!!」

 

遅れて周囲から爆発音がした。先ほど群れを抜けながら抜け目なく爆発物をばら撒いていたようだ。

鎌腕を一本失い開いた空間に刀を下段に構えた剣士が踏み出す。十六夜京也の目には剣士の正中線に眩しく輝く七つの光が見えた。出会った直後に見た悪霊を切り裂いた花散る剣技、念法ではないようだがそれに近い技を修めているのは解る。ならば自分は次に備えて念を練る。

 

 

元は天使族や悪魔族といった外来精神寄生種に対抗する為に生み出された神殺しの剣術、だが人はそれを戦の道具にしてしまった。

 

「鳳龍――」

 

髑髏百足(サイデル)退散(ZILWAN)の呪文を使う剣士を一番の脅威と判断したのか残った鎌椀を振り下ろした。京也の目には異形の怪物に相対する剣士のチャクラから刀へと莫大な念が込められるのが見えた。だが踏み込みが浅くあれでは切っ先は届かない、自分の突きや一文字の様に念で攻撃するのだろうか? 次の瞬間

 

―― 破剣撃 ――

 

振り下ろされた鎌を剣士は氣を込めた逆袈裟で打ち据え破壊する!!

 

剣士は己の剣戟に確かな手応えを感じた。彼は知らぬ事だが武器破壊という人同士の戦の過程で生まれたであろう歪んだ技が、開祖・スサの意思に沿い異界の者を相手に正しく振るわれたのだ!! だが…この異形を斬るには未だ足りない

 

鎌を一つ破壊こそしたが剣士は振り切った体勢で胴ががら空きになる

 

「十六夜念法―― 一文字!!」

 

だが髑髏百足(サイデル)が残った鎌を振るうより、機を伺っていた十六夜京也が阿修羅を振るう方が速かった

 

「鳳龍――」

 

髑髏百足(サイデル)は念の斬撃を残った鎌を盾に受けきり、そして剣士は振り切った刀を引き寄せ無意識に右肘を引いた状態で顔の横に構る。再び対峙した異形と剣士、剣士の堂に入った構えに京也は知らず息を飲む

 

異界の者にはホウライの侍の剣技を。だが異界の理で浸食されつつあるが同時にここは新宿、脳裏に過るのはシガ王国で出会ったジィ・ゲイン流の侍の姿。彼は魔力とスキルで剣を振るう彼の地でただただ剣術の基礎と魔力操作を突き詰めて基本の切り下ろしを必殺剣へと昇華して見せた。

ホウライの地で侍へと転職した直後の事だ。訓練場でひたすらに型稽古を繰り返す彼の姿に教官達は奇異の目を向けた。氣のコントロールを主体とする侍の剣技と元々彼の中にあった体術を突き詰めた一刀流の太刀筋が噛み合わずにいた為に転職仕立てとはいえ無様な素振りだったからだ。故に彼は一刀流を封印して氣のコントロールを主体とする剣術に切り替えた。

だが今彼の中にある一刀流の理はこの日ノ本の地にて不思議と合致した。ただ速く、ただ強く、ただ斬るだけの日ノ本の剣術で――、斬る事を突き詰めた鳳龍の技を放つ!!

 

―― 水月斬 ――

 

「お見事!」

 

十六夜京也の場違いとも思える称賛の声が響く、一歩の踏み込みから――否、体全体を使い全ての運動エネルギーを一刀へと注ぐ。京也の目をしても完璧と思える切り下ろしに彼は剣士の勝利を疑わなかった。

 

剛剣の摂理で加速した鳳龍の技に――異形の髑髏は反撃する間もなく真向から割られたのだった。

 

「なんの、さっきは助かっ…た…」

 

剣士は死闘の果てに何かを掴んだのか、以前何処かで見たような顔をしていた

彼等が強敵を相手の勝利に安堵するなか、振動と供に広間の奥からドンと鈍い音がした

 

―― 熱風が吹きぬけた。熱砂を渡る乾いた風。風の魔神の先触れだった ――

 




戦闘描写を色々と考え実際に書いて見るが書きたい物と何かが違うとしかわからない

スゴいね、剣豪小説。(マホメド・アライ並感)


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