怪物たちのワルプルギス (丑こく参り)
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1話

「ふう、終わったな。」

 

俺は辺りに散らばる肉片と血の海を二本の角のある顔で見ながらこぼした。

 

俺はヴィラン。名は『ラース』。

この超人社会において個性を用いて犯罪を犯す犯罪者だ。

 

「この程度なら問題ないか。」

 

俺の個性の一つは『念動』。ただ物を動かすだけのクソ個性だ。

 

昔はこの力を使って多くの人を救いたいと願っていた。幼なじみと一緒にヒーローに成りたかった。

 

けど、だめだった。俺は人間じゃなかった。ただの『悪』だった。

 

『汝、悪であれたし』

 

悪は悪らしくならなくてはならない。

人間らしく生きるなんてことはもう出来ない。

 

「おーい、『ラース』。行こうよ!」

 

……あぁ、仲間たちが、同じ『怪物』が呼んでいる。なら、俺は戻らないとな。

 

「すぐ戻る。」

 

呼び掛けに応じて身を翻して仲間の元に歩いていく。

 

========

「いやー、今回の依頼は楽だったねー。」

 

「ほとんどお前が殺していたようにも見えたがな。」

 

俺はとあるおんぼろの部屋の中で青い髪とヒレのような耳している海賊の船長のような服を着ている少女と話す。

 

こいつの名前は『シャーク』。頬にシャークアンカーのような痣があるからだ。

 

「『テイマー』や『ヴラド』は欧州の方でかなりセンセーショナルな事件を引き起こしているし、私たちも引き起こさない?」

 

「物騒だが、それも面白そうだ。」

 

「どこでする?」

 

「雄英高校。俺が目指していた場所でいいと思う。」

 

軽いノリで犯罪計画を立てていく。

 

『シャーク』はともかく、俺の個性は応用能力が肝だし、こいつとも合わせれるが他の奴等だとちょっときついところがあるしな。

 

「ーこれはこれは、悪名高い『ラース』と『シャーク』の二人ではないです

 

「「うっさい、消えろ。」」

 

俺は念じて黒いもやを壁にぶつけさせ、そこにシャークの水の塊が弾丸のように射出される。

 

「いやいや、ここまでだったとは予想外だよ。」

 

黒いもやから出てきた男が片手を振ると水の弾丸が霧散する。

 

「うん、君たちはさっき雄英高校へのテロを企画していたね?」

 

「まぁな。……てか、あんただれ?」

 

「僕はただの隠居済みの老人さ。」

 

「はっ、嘘こけ。それだけの気配を持っている奴が隠居済みな訳ないでしょ?ねぇ、オール・フォー・ワン。」

 

オール・フォー・ワン?あぁ、五年くらい前から聞かなくなった都市伝説上の怪物か。

 

まぁ、()()()()()()()だから俺たちとは全く違う存在だけどね。

 

「僕たちも雄英へのテロを企画しててね。君たちも一緒にどうかなと思ってね。ちょっと声をかけたのだよ。あぁ、僕の後継者の組織に入らなくてもいいから。」

 

声をねぇ……胡散臭いがまぁ、いっか。

 

「じゃあ、そこの黒いもやの人に手を触れればいいんだな。あ、シャークは自力でこい。」

 

「えー!ズルい!」

 

「まず、どれだけの実力か試してみたいし。」

 

「わかったよ。けど、ボクの分も残しておいてよ。」

 

「わかってる。」

 

そう言って俺は黒いもやの中に入っていった。

 

(そう言えば、八百万の奴、元気にしてるかな?)

 

=========

 

これは原点(オリジン)の怪物とヒーローとの戦い。

 

始まりの怪物たちは正義を喰らい尽くす。

 

これは、俺のヒーローアカデミアだ。




名前『ラース』

個性:『念動』(これ以外にも複数存在する。)

物に手を触れずに動かせる個性。

今作の主人公。種族『鬼』。八百万とは幼なじみ。


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墜落

「――で、あんたは誰だ?」

俺が黒いもやから出た先にはいい質感のバーがあった。

そこの中に、手のようなマスクをした若者がいた。

 

飲んでいる物は……ミルクか?

なんというか……シャークがきたら大爆笑していたであろうな。

 

「お前が先生が言っていた『ラース』か?」

「そうだが?」

「ふん、俺よりも若いな。」

 

男がどこか子供っぽい言動で俺を馬鹿にする。

 

まぁ、たかだかその程度のことなら怒らないけどな。まあ、最悪の場合は吹き飛ばせばいいか。

 

「死柄木弔、それが彼の名前です。」

「ふーん……。」

 

どうでもいいが、まぁ知っといていいか。

 

「おい、黒霧。何故こんなやつに名前を教える。」

「彼は今回の計画の為の重要なキーパーソンだからです、死柄木弔。どうか、怒りを静めて下さい。」

「ふん……。」

 

心底イラつきながらコップを指を一つ離して持つという変わった持ち方で持ち、ミルクを飲み干す。

 

奇妙な癖だな……。おおよそ、手に関係する個性でそれを制御出来ていないのか。

 

「それで、何故雄英を選んだんだ?」

「は?そんな事決まってるだろ?オールマイトを殺すためだよ……!」

「ひゅー、それは無謀といっておいたほうが分かりやすいぜ?」

 

オールマイト、世界でも有数なプロヒーローの一人。そう言えば雄英に転勤していたな。

 

だが、いくら雄英の講師になったとしてもまだ現役だ。殺すというのは少し無理があるようだが……。

 

「大丈夫だ。先生が対オールマイト用の秘密兵器を用意してくれている。」

「なるほど、な。なら、俺も今回はあんたらに従うよ。」

 

だが、「ただし、」と付け加える。

 

「黒霧、俺の場所に偶然を装って特定の生徒を含めた複数人をワープできるか?」

「申し訳ございません、私でも姿形を知らなければ……。」

「黒髪の長髪をポニーテール、女子としては大柄、これでどうだ?」

 

俺は黒霧から掠め取ったスマホから情報を言いながら聞いた。

 

「……それなら可能かと。」

 

やはりか。それなら話が早い。

 

「ですが、何故その人物を……?」

「何、少しばかりの興味ってやつさ。」

「おい、どういうことだ?説明しろ。」

 

面倒だからスルーしておくか。

 

「何してん

 

「では、一週間後。」

 

そして、俺の視界は変わり、大型のビルの屋上に出る。

 

うわ、太陽が眩し!?

 

俺の個性の一つ、『転移』。一定圏内の場所に自由に移動できる移動系の個性だ。

ただ、この個性、メリットが多いが、情報量が多いから『マルチタスク』という個性を平行して使わないとうまく使えないというデメリットがあるけどな。

 

「よし、なら始めるか。」

 

俺は片手を上に伸ばし、ボールを投げるように振り下ろす。

 

「成功したな。」

 

次の瞬間、大気圏の外から高速で飛来し、遠くにある山に衝突し、ここまで来るほどの衝撃が伝わる。

俺の『念動』は単純な出力でもかなりの力だが、『マルチタスク』の援護があれば更に火力を上げ、アメリカの()()()()の一つを落としたのだ。

 

「うん、いい感じだ。コレでデモンストレーションとしてはいいかな。」

 

俺はほくそ笑みながら呟く。

 

「さあ、動乱のはじまりだ、人間ども。」

 

 

 




個性一覧

念動:触れずに物を動かす個性。そこに『ある』と認識すればどんなものでも動かすことができる。
威力の調節の為、一つの物しか動かせない。

転移:一定圏内の別の場所に移動できる個性。応用はきくが、遠くになればなるほど脳に負担がかかる。

強化:この世全ての物の特性を高める個性。体や臓器はもちろん、触れているなら個性すらも強化できる。
集中するため一つの物にしか強化できない。

マルチタスク:高速で計算できる個性と平行して計算できる個性の複合型。超高速で計算でき、他の個性と連結することで多くのデメリットを無くすことができる。
脳への負担が大きい。

補助:異なる個性をカバーする個性。基本的にマルチタスクと連結し、負担によって起きた影響を和らげる。
マルチタスクと連結している間、他の個性のカバーが出来ない。


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雄英襲撃

「ふっ、ふっ。」

 

俺は体を動かしながら体のコンディションを念入りに確認する。

 

今日襲撃するのは雄英高校。日本の中でも最高クラスのヒーロー育成校だ。

 

噂では今年の一年はかなり強いと裏の業界では言われてたし、少し興味がある。

 

ただ……

 

「おい、ラース何で私はいっちゃダメなんだぜ?」

 

「何回も言っているだろ。まずは実力調査、本腰を入れるのはもう少し先だ、ミラアルク。」

 

俺が勝手に住んでいる部屋にムチムチの女性がいた。

 

名前はミラアルク。種族は『吸血鬼』。体……血液に関係する個性を持っている。

 

ヨーロッパ生まれだが、俺らと似たような経緯をたどり俺らと出会っている。

 

「……ラース様。そろそろお時間です。」

 

「おう、わかった。」

 

「頑張るんだぜ。」

 

「わかってるよ。」

 

黒霧が迎えに着たため俺は黒霧の中に入る。

 

―――こうして、雄英史上最悪の事件が引き起こされる。

 

========

 

「うーん、ここが雄英かー。」

 

「はい。では、私は死柄木様がたを送りにいきます。」

 

「おう、頼んだぜ。」

 

俺が降り立ったのは山岳地帯のような場所だった。

 

確かここは雄英の災害訓練用の施設だった筈だ。いやー、雄英ってかなり金を持っているんだな。

 

「何をしているのかなー。」

 

出入口と思われる場所には複数の生徒が宇宙服を着た男に講義を受けているように見える。

 

確か、情報にあった『13号』とかいう『ブラックホール』とかいう個性を持っていたはずだ。

 

人間にしては強い個性だな。一歩間違えれば俺でも死ねる。

 

……暇だな。

 

「お、おいなんだあれ?」

 

お、生徒の一人が黒霧たちに気がついたようだな。

 

暇だし、挨拶にでも行こうかな。逃げ道を封じるのは黒霧のの仕事だけどまあ、少しはいてもいいよな?

 

=======

「生徒は全員待避!あれは……ヴィランだ!」

 

生徒たちの後ろに転移したけど、まだかな……。

 

「だ、誰ですか貴方は!?」

 

「ひ、ひいいいいいい!」

 

おっ、俺に最初に気がついたのは13号だったな。

 

「いや、ただ面白そうだから君たちを襲いに来た『鬼』だよ。」

 

「死ねぇ!」

 

突然前方にいた生徒が俺に近づき爆発させる。

 

どうやら爆発の個性か。正面の戦闘ならかなり強そうな個性だな。

 

「いきなりどうしたん爆豪君!?」

 

「うっせえ!!あいつは俺たちの中にいなかった。つまりヴィランだ!!」

 

「まぁ、正解だよ。ついでに言えば、君たちと同じ年齢だけどね。」

 

「なっ!?」

 

俺が爆発に巻き込まれたのに無傷であったのが意外だったためか爆豪とかいう青年は怒りで顔が凄いことになっていた。

 

「さて、そろそろいくか。」

 

「きま

 

次の瞬間、13号の両腕が消えた。

 

やり方は単純。13号まで一瞬で近づき両手を交互に触れて腕だけを転移させたのだ。

 

「ぐっ……!」

 

「はい、止め。」

 

そのまま頭に手を置き頭だけを転移させる。

 

そして、手が上から落ちてきて、その少ししたら13号の頭も落ちてきた。

 

まずは、一人。

 

「13号先生!?」

 

「ひいいいいいい!なんなんだよ、あいつはあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「……まず、一人だな。」

 

「やりすぎです、ラース。」

 

あ、黒霧が来た。

 

「何ですか、そのつまらなさそうな顔は。」

 

「まぁいいけど。」

 

そして、俺は転移する直前振り返った。

 

「ハロージャパン。ハロー雄英。ようこそ、悪徳と狂気に満ちた世界に。」

 

さて、俺は定位置に戻るか。



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怪物邂逅

「な、なんだよここは!?」

「落ち着けよ上鳴、ここはまだUSJ内だ!」

「そうです、先ほどあの男から複数の人影が出てきましたが、敵の数は未知数、落ち着いて行動してください!」

「……!」

「お、おう。」

 

俺が指定した奴と一緒にチャラそうな金髪の青年に無口な青年、ロックな雰囲気の少女に、背の高い綺麗な少女が飛ばされてきた。

 

俺としては八百万以外は殺しても構わないけど……。まぁ、一人くらいならいいかな。

 

「ひひっ、あの男の話に乗ったかいがあったぜ……!」

 

奥からはヴィランがわんさかと出てきた。

 

あいつらは黒霧たちがブローカーに頼んで連れてきたただのチンピラだ。まぁ、実力を測るのには丁度いいかな。

 

「さて、俺も動くかな。」

 

========

「ウェーイ!」

「ブフッ!」

 

ある程度の敵を倒し、後の奴を上鳴とか呼ばれている奴が放電してたおしたら何故かウェーイになっていた。

 

あいつの個性、中々いい個性を持っているな……()()()()

 

食べる前に地面の中にいるヴィランを潰すか。正直、最初のジャミングだけで十分だし。

 

「――――!」

 

声にならない悲鳴と共に電波系ヴィランを圧縮、潰して殺す。

 

さて、次は……っと。

 

「――!上鳴さん、避けて!?」

「もう遅い。」

「へっ?……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

転移した俺が上鳴の腕を肩から引き抜き、上鳴が悲鳴を上げる。俺はさっさと転移して岩の上に乗っかる。

 

いやー、あっさりと背後をとれたなー。てか、八百万の奴、俺を視認したな?よく視認出来たな。

 

「はむ……脂身が少ないな。もう少し鍛えた方がいいぞ。」

 

八百万たちが上鳴の止血をしている間に俺は奪った腕を食べ簡単な感想を言う。

 

俺の体質……いや、鬼の体質はただ身体能力が高いだけではない。人を食べることでその人の力を手に入れれるのだ。

 

昔の鬼たちは武士たちの血肉を食べ、さらなる力を手に入れてたようだけど、今の世の中、強い個性の人の肉体を一定量をたべればその人の個性を俺も使えるようになる。

 

意外にメリットが大きな行為なんだぜ、これ。

 

「お前……よくも上鳴を13号先生も……!」

「……!!」

「うーん、取りあえず試し撃ちでもするか。」

 

ロックな雰囲気の少女の言葉や無口な青年の首肯を無視し、俺は指を拳銃のようにして無口な少年に銃身を向ける。

 

まずは手に雷を帯びる。上鳴の個性は簡単に言えば電気を帯びるだけだが、そこに認識すれば動かせる念動の力を使い、完全に制御する。

 

それを指の一点に集中させ、撃ち放つ。

 

「……!?」

「こ、口田!?」

「口田さん!?」

 

雷の速度を避けきれなかった口田は心臓を雷の弾丸に貫かれ、絶命する。

 

これで、二人。

 

「お前……よくも……!」

「いやー、やっぱりあっさりと死ぬんだね、人間は――!?」

 

突如、下から迫ってきた弾丸を避けきれず、俺は岩から降りる。

 

弾丸……いや、ゴム弾か。なら、ホーミングのヒーローか。……正直に言って少しキレてる。まずは潰すか。

 

「―――死ねよ。」

 

俺は念動で弾を浮かせ、ホーミングのヒーローに向けて音速の三倍の速度で打ち出し、避けれなかったヒーローは脳天を貫通させて絶命する。

 

はい、これで三人。

 

「……話すのは止めるか。」

 

俺は転移して門の前に戻る。

 

……そこそこ殺せばいいか。ま、意外に雑魚ばかりだから全滅させてしまうかもだけど。

 

=======

「おい上鳴しっかりしろ!?」

「だ、大丈夫だ……!それより、あいつは……?」

「あの人は何処かに行ってしまいました……!」

 

私は上鳴さんを背中に背負い、山を下山する。

 

耳郎さんは口田さんの亡骸を背負いながら下山しています。

 

「なぁ、あいつは何であそこにいたんだ?」

「分かりません……。ですが、何か理由が……!?」

 

私が言葉をこぼした瞬間、頭にノイズが走る。

 

『何を目指しているんだ?』

 

『私はヒーローです!私の力でより多くの人を救いたくて!』

 

『……ヒーロー、か。俺には程遠いものだな。』

 

『えー、どうしてですか?』

 

『……俺は化け物だから、かな。』

 

頭の中には私の古い記憶が再生されました。

 

これは……私の記憶?それにしても、この白髪に赤い目をしていて、二本の黒い角が額から生えているのは一体だれ……?……あ

 

「……先ほどの男、私、知っています……!」

「えっ、嘘!?」

「はい、恐らくは彼かと……!」

 

けど、それだと不味い。

 

彼の個性はあまりにも危険すぎる……!

 

「早く戻りますよ!」

「分かった!」

 

私たちは急いで山を下山し始めた。

 

 

 

 

「俺も……いるんだぞ……!もう少し、速度を落として……!」

 

 



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終幕する始まりの宴

「君たちが、雄英の教師かい?」

 

俺が転移してプロヒーローたちに話しかける。

 

まぁ、気配からしてもプロであることは確実だろう。それに、目の前に同僚の死体が二つも転がっているのだからその顔は怒りが滲んででている。

 

まぁ、俺には特に興味のないことだけど。

 

「……コノ男ガ、13号ヤスナイプヲ殺シタノカ……?」

「13号にスナイプ?あぁ、俺が殺した奴らか。そうだ。ついでに食べておこ。」

 

俺は13号の原形を留めていた左腕を俺の右手に転移させ、直ぐに補食する。

 

うーん、そこまで美味しくはないかな。ま、個性が強いし、食べておいて損はないか。

 

「な!?」

「人を……食べたの!?」

 

コンクリみたいな先生に全身白タイツの妙齢の先生が驚きと怒りに顔を歪ませる。

 

「じゃ、そこのコンクリみたいな先生にちょっと試し撃ちでもしますか。」

「……えっ?」

 

俺は左手を突き出し『ブラックホール』をコンクリ先生に向けて発動する。

 

俺の念動の力を合わされば無差別的に力を扱う個性を完全に制御できる。つまり、対象を一人に絞れるのだ。

 

「う、うあああぁぁぁぁぉぁぁぁぁ!?」

 

いくらコンクリートを増やしても無駄。俺はコンクリートごと先生を吸い込み、能力を停止させた。

 

これで、四人。

 

「セメントス先生!?」

「さっきの個性……まさか、13号先生の個性か!?」

「ま、正解だ。俺は一定量の人体の部分を補食することでその個性を使えれる特異体質なんだよ。俺自身の個性はまた複数ある。」

「なっ!?」

 

眼鏡君が驚いているところ悪いけど、俺だって仕事で来てるんだ、少し位殺させてもらっても構わないだろ?ここから、一気に殺すのだから、驚いてもらっては困る。

 

「セメントス先生を……よくも!!『レジプロ・バースト』!!」

 

「まって、飯田君!!」

 

先生の呼び掛けにも応じずに眼鏡君が急加速。俺に直接攻撃を仕掛けようとする。

 

そういう真っ直ぐな闘い方は嫌いじゃない。

けど、相手は本物の『鬼』だぞ?たかだか人を越えたぐらいでそんな真っ直ぐに闘えると思うな!!

 

「『転移・虚無の領域』」

 

俺は眼鏡君を転移させる。

 

俺が眼鏡君を転移させた場所は虚無の領域。その名前通り、何も無い本当の『無』の領域。

ここに転移させることは俺でも少し難しいが……同じ位相にあるのなら転移出来る。最も、産まれた位相が違うから位相と位相を移動できず、その狭間で無限に死に続けることになるだろうけど。

 

これで、五人

 

「い、飯田君はどこに!?」

「死んだよ。無限に死ぬ領域に飛ばしたのだから。」

「なっ!?」

「それと、今の会話のうちにもう一人殺したよ?」

「うっ……。」

 

俺の言葉と同時に低身長の先生が倒れ、絶命した。

 

実は会話のうちに念動を使い、対象の心臓と脳、脊髄を破裂させたのだ。俺の念動は一つの計算で動かせるのは一つだけだが、平行して計算すれば複数の物を同時に動かす事をできる。

 

取りあえず、これで、六人。

 

「『死因・重要臓器破裂』。思いつきにしてはいい技だろ?」

「フザケルナ!!」

 

マスクとマントを羽織った先生が自分の分身を俺にけしかける。

 

あのさぁ……俺が格闘能力に優れていないと誰が言った?

 

俺は僅か数秒の間に手、脚、角、肘、をフルに使い、全滅させ、本体のゼロ距離まで近づく。

体にあるもの全てを凶器に変え、鬼の超人並みの身体能力を生かした近接格闘術

 

「『鬼殺し』。俺の格闘術は同族すらも殺す。人間にはまず俺の姿を見ることすら出来ないだろ―――

 

「死ねぇ!!」

 

突如、後ろから鳴り響く怒鳴り声の方向を向き、転移する。

 

ちっ、あの爆発の個性使いか。あいつ、素の頭もいいし、苦手なんだよな……。

 

「爆豪、一人で戦闘をはじめ、って、なんだこりゃ!?」

「こいつ……先生どもを殺そうとしていやがった……。いや、そこにある死体から見ても、かなりの先生を殺していやがる。」

「なっ!?」

 

へぇ、今の一瞬で辺りを状況を認識したのか。本っ当に闘うのが嫌なほどヒーローらしい奴だ。

 

「ま、お前らは殺さないでおくか。お前らの行く末も気になるし。」

「お前……何で殺す!?」

 

赤髪のツンツン髪何か言っているな……。ま、時間潰しに答えてやるか。

 

「俺が『怪物』だからだよ。」

「……はっ?」

「詳しくは八百万にでも聞け。」

 

さて、殺戮劇でも再開させますか。

 

「ッチ!白タイツ避けろ!」

「えっ?」

「ま、俺の射程圏内に入っているから問題無いんだけどな。」

「き、きゃあああああああああああぁぁぁぉぁぁぁぁ!?」

 

俺は白タイツの近くに接近し、左腕を転移させたところで白タイツを巻き込んで爆発使いが爆発させる。

 

「ッチ、遅かったか。」

「さっきよりも強い火力だね。もしかしてスロースターター?」

「ヴィランに答える筋合いはねぇ!」

「そうだよ、わざわざラースが手を下さなくてもいいんだぜ。」

 

……ん?その声は……

 

「何故来ている、ミラアルク。」

「いやー暇だったからつき来ちまったぜ。」

「……が、あ……。」

「あ、こいつ殺しておくね。」

「いや、殺さなくてもいい。それをする程度の価値もない。こいつからは右足でも奪っておけ。」

「了解なんだぜ!!」

 

何かうるさそうな先生の右足を伸ばした爪で切り裂いたミラアルクが俺に脚を投げてきたからキャッチする。

 

「血は飲んだのか?」

「ん?えーと、何かカエルっぽい子と真っ黒な子に赤と白の髪をした子に無重力な子の血を飲んだぜ。もちろん、一定量は越えてあるんだぜ。」

「死ねぇ!!」

「邪魔なんだぜ!」

 

爆発させて一気にミラアルクに近づいた爆発使いはミラアルクに触れられ、両腕を凍結させられる。

 

へぇ、氷か。案外単純で強い個性を手に入れれたのだな。

 

「ぐっ……!」

「大丈夫か爆豪!?」

 

落ちてきた爆豪……だったか。そいつを滑り込んでキャッチする。

 

「おーい!こいつも殺しておくのだぜ?」

「いや、殺すまでが面倒そうだし、何より

 

『スマッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアシュ!!』

 

「時間切れだ。撤収するぞ。」

「りょーかいなんだぜ!」

 

俺の視界は暗転し、そのまま外にでて、ミラアルクもそのまま空中を飛びさっていった。

 

取りあえず、何となくうるさそうな先生の右足でも食べてから行こっと。

 

 

―――こうして、雄英史上最悪の事件、教師四名と生徒一名が死亡、教師二名と生徒二名が重症、生徒一名が行方不明、生徒数名が気絶した事件『USJ事件』が幕をおろした。

 



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モンストロ

「……お、何が始まろうとしているんだ、弔。」

「記者会見だよ、ラース。」

 

俺は妙にウキウキとした声音で話す弔の隣に座り、黒霧が出したテレビを見る。

 

あれから数日たったものの、俺たちが起こした惨劇は報道され続けている。生徒が最低でも二名が死亡し、それ以上のプロヒーローが死んだのだから、マスゴミが大いに書き立てているのだろう。

 

……まぁ、それのせいで最善を尽くした奴らが自ら最善を尽くせなかった、とか言うもんじゃないとは思うけど。

 

「おーい!飲み物を買ってきたんだぜ、黒霧の旦那。」

「ええ、ありがとうございます。……そちらのかたは?」

「やっほー!来てやったよ、ラース!」

「……シャークか。『ヴラド』はともかく、こいつは危険過ぎる。」

「えー、酷すぎるよー。」

 

因みにヴラドとはミラアルクのヴィラン名である。

 

「……今日は気分が良い。別に良いのでは?」

「たく……まぁ、いっか。」

「あ、そろそろ始まるんだぜ。」

 

さて、どうでますか。

 

========

 

「此度の事件、生徒たちを守れず、誠に申し訳ございませんでした!!」

 

私は頭を床につき、土下座をする。

当然だ。私はあの時、脳無一体と闘っている間に多くの同僚と生徒を殺されてしまったのだ。

 

「オールマイト、いきなりなのですが、それは……。」

「今回、私しめがいち早く敵を取り押さえておけば、このような事態にはなっていなかった。最善を尽くしたとは言い難い!」

「オールマイト、私たちな今回の事件は貴殿方の責任ではありません。ただ、私たちは記者です。真実を話して下さい。」

「……ソレヲ説明スルノハ私ダ。」

「僕もいるのさ!」

 

後ろの扉からエクトプラズマ先生と根津校長が出る。

今回、敵の一人と相対しながらも唯一大きな怪我を受けなかったエクトプラズマ先生から説明してもらったほうがいいだろう。私たち自身、それぞれに何が起きたのかは理解していない。

 

「……ヴィランノ名前ハ『ラース』。ソシテ『ミラアルク』。ラースノ方ハ人ヲタベル事デ個性ヲ手ニ入レル個性。ミラアルクノ方ハ血ヲ飲ム事デ個性。ドチラモ個性ノ枠ヲ越エタ力ダ。」

 

そ、それほどの個性なのか……!

これ程の個性の使い手がヴィランに堕ちてしまったことが悲しい。もし、ヒーローになっていたら多くの人を救えたのに。

いや、悲しむよりも今は記者会見だ。

 

「それと、僕から言えるのは……彼ら、ラースとミラアルクは敵()()()()連合ではない、と言うことさ。」

「ヴィラン連合では……ない?と、言いますと?」

「彼らの正体、それは――――

 

「いい加減にしろ。お前の口から言う出任せには興味はないが、面倒だし、来てやったぞ。」

 

突如、私たちの目の前に白髪の鬼が現れた。

 

「貴様ハ……!」

「エクトプラズマ。そしてオールマイト、根津校長。そして、集まったマスゴミども。俺の名前は『ラース』。今回の事件の首謀者の一人にして、人ではない『鬼』。そして『モンストロ』の一人である。」



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質疑応答

「貴様、ドウヤッテ……!」

 

「邪魔だ。ちょっと失せろ。」

 

俺は適当にエクトプラズマを外に出す。

メタ的な話をするとエクトプラズマの言葉を書くのは面倒なのだ。何たって片言だし。

 

「君は……!」

 

「質問したいならどうぞ。あぁ、俺の個性ならここにいる奴等は瞬きするよりも早く殺せるからヒーローたちは反抗的な行動はしないでくれよ。」

 

俺はオールマイトの言葉を無視してマスゴミたちに質問を投げ掛ける。

 

俺がマスゴミと言っているのは単純にマスコミが嫌いだからだ。報道の自由を盾に不必要な事を面白おかしく書き立てるからである。

 

最も今回は不必要な殺人は犯したくないから殺さないでおくけどな。

 

「では、私から。何故雄英高校を襲ったのですか?」

 

「うーん、暇潰し?」

 

「なっ!?」

 

「うーん、まさか暇潰しの感覚で襲撃されるとは……ある意味恐ろしいことではあるね!」

 

「リアクションナイスだぜ校長先生にオールマイト。」

 

俺としては単独でヒーローたちと殺りあってみたかったけど……そこら辺は質問されてないから言わないけど。

 

「貴方の個性は『人の部位を食べることで個性を使える個性』なのですか?」

 

「うーん、違うね。それはまた別の要素だ。俺の個性は『マルチタスク』『念動』『転移』『強化』『補助』の五つだ。無論、この個性は俺が元から持っていた個性だ。」

 

「では、人を食べる個性は……。」

 

「俺の体質。正確には『鬼』と言う霊長類に分類される『人ならざる者』の共通の体質だけどな。」

 

「人では……ない?」

 

「最初に言っただろ?『怪物』だと。古の時代から存在する個性の原点、それが俺たちだ。」

 

俺の言葉にマスゴミもヒーローたちも押し黙ってしまった。

何て言うか……つまらないからさっさと次の質問をしてもらわない困るんだけどな……。

 

「では、ボクからいいかい?」

 

根津校長が手をあげてる。

 

今度は根津か、どんな質問かな。

 

「構わないよ。」

 

「飯田君はどこにいるんだい?」

 

飯田?あぁ、真っ正面からきたメガネか。ま、取り出しておいてもいっかりもう死んでるのだし。

 

それに、俺への悪意を集中させたいしな。人の死体を出したほうが効率がいいだろう。

 

「あぁ、ここにいるよ()()()()()()。」

 

俺は飯田の死体を転移させ、両手に持つ。

 

飯田の死体は無限の死によって人としての形を保っておらず、完全な正方形となっており苦しみの果てに死んだような右顔と左顔が真ん中で裂かれ、脚と手は融合し、着けていたヒーロー活動用の服は粉々となって右顔と左顔の間に挟まっていた。

しかも、心臓は動いたまま死んでいるっぽい。だって脳は肝臓や膵臓と融合し、心臓は胃と融合し小腸や大腸が絡まっている。

 

うーん、人の死体ではなくただの悪趣味なオブジェと言ったほうが正解かもな。

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

「な、なんだそれは!?」

 

「さっき根津校長が言ってただろ?飯田だって。そこまで煩く喚くのなら……この状態にするよ?」

 

俺がかん高い声で喚く軽くマスゴミに殺気をだすとあっさりと黙った。

 

取りあえず、これは適当に床にでも置いておくか。

 

「貴様……!」

 

「じゃ、そろそろ俺は帰らせて貰うぞ、バイバイ!」

 

俺は適当に転移してビルの外に出て連続で転移をしてビルに戻る。

 

いやー、いい暇潰しになった。

 

 

==========

「天哉!!」

 

彼が、ラースが去ってすぐに飯田君の兄である天晴君がヒーロー服を脱ぎ捨てて走ってくる。

 

ボクは何も出来なかった。ただ生徒の無事を確認しただけだった。それなのに……こうなってしまうとは……。

 

「リカバリーガール!天哉は、助かりますか!?」

 

「無駄じゃよ。こりゃ何で生きてるのさね。心臓とか心臓とかに様々な臓器が融合しているのに心臓だけは動いている。生きながら死んでいると言う言葉が最もよくにあうのかもね。」

 

天晴君が連れてきたリカバリーガールの診断を聞いて天晴君は膝から崩れ落ちた。

 

それは当然さ。ボクこれは衝撃を隠せなかった。

 

「……根津校長。天哉をこんな状態にした奴は誰ですか?」

 

「ラース。複数の個性に加えて人を食えば他人の個性すらも取り込む事のできる体質があるヴィランであり……正真正銘の『怪物』だよ。」

 

「そうですか……。それと、オールマイト、天哉の葬儀は死んだ皆さんと一緒に行うことは出来ますか?」

 

「……分かった。親御さんたちや親戚の人たちに相談してみよう。」

 

そう言って天晴君は去っていった。

 

その手は……赤く染まっていた。

 

「オールマイト、君なら勝てると思うかい?」

 

「……無理です。彼一人なら刺し違えれるのなら勝率はあると思います。けど、彼の体質は人を食べれば食べるほど強くなる、なら身体能力すらも取り込んでしまうため、恐らく彼の身体能力は全力でやり合ってみても私と遜色ないでしょう。」

 

「人の個性に身体能力を取り込む体質に反則極まりない応用性を持つ『個性』、更にそれが複数体……。正直に、勝ち目がないね。」

 

けど、それでもボクたちは闘わなければならない。

 

彼らは……1年A組の生徒たちがどう思っているのか聞いておきたいね……。



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葬式

デク視点です


「うう……何でこんなことに。」

 

僕たちは重たい足取りで葬式場に向かう。

 

あの日、僕は後で知ったけど多くの先生方と同じクラスメイトが殺され、体の部位を奪われた人もいた。

そして、それを行ったのは『ラース』と呼ばれる(ヴィラン)一人だった。あの男は異常なまでに常識知らずだった。

人を殺すことを躊躇わず、無邪気に残酷に人を殺す。そして、僕は助けることも出来なかった。

 

「デクくん……。」

 

「どうかしたの麗日さん。」

 

「私たちに出来ることは何かあったのかな……。」

 

「……分からない。彼は、『ラース』は凶悪な敵だから……もし、オールマイトと戦っても勝てるかどうか……。」

 

僕は麗日さんと話ながら葬式場に足を踏み入れた。

 

中では既に親族や関係者の人たちが集まって来ていて多くのマスコミも来ていた。何でも、遺族の人たちの希望で一緒に亡くなった先生方と生徒の合同で葬式を行うらしい。

 

「……あ、緑谷。」

 

「緑谷ちゃん、麗日ちゃん。」

 

「あす……梅雨ちゃんに峰田くん……。」

 

少し奥に行くとA組のみんなが揃っていた。

 

けど、全員が何時もの明るい表情をしておらず涙を流している人たちもいる。あのかっちゃんですら言葉を出さずに押し黙っている。

 

特に一緒に転移させられた口田くんを目の前で殺された八百万さんは特に悲しそうで苦しそうな顔をしていた。

 

「あれ?上鳴くんと耳朗ちゃんは?」

 

「ちょっと遅れてくると電話がありました。」

 

麗日さんの質問に八百万さんが苦しそうな顔で答える。

 

あの日、上鳴くんは『ラース』に腕を喰われたらしく、それで入院してたから今日退院してすぐにこっちに来るらしい。それを案内するのが耳朗さんらしい。

 

「……なんでこんなことになったんだろう。 私たちは誰だ ヒーロー目指していただけなのに。」

 

「あのヴィランが悪いだろ!!」

 

誰かの呟きを聞いた切島くんが怒りの限界なのか怒りを露にして無意識だろうけど手を硬化させる。

 

切島くんは熱い性格だから友達を殺されて怒っているのだろう。

 

「あのヴィラン、ノリで動いているようにしか見えねぇ!男なら男らしく闘えって話だよ!それなのにあんな卑怯な手で殺されるなんて……俺はあのヴィランが許せねぇ!」

 

「うっせぇ黙ってろ!」

 

BOM!!

 

熱弁を言っていた切島くんに向けてかっちゃんが爆風を浴びせた。

 

「ってぇ……!何すんだよ爆豪!」

 

「黙ってろ中学上がり!あのヴィランが狙ってものは分かってんだ!それなら来るところも分かってくる!」

 

「……あ。」

 

僕はかっちゃんの言葉を理解できた。

 

「もし、あのヴィラン、『ラース』が強個性の肉体を補食して個性を取り込もうとするのであれば……狙われるのは直接的な戦闘能力を持った人……ヒーローや凶悪やヴィランである可能性が高い、そうゆうことだよねかっちゃん!」

 

「うるせぇくそデク!」

 

何時ものように僕を罵倒してくるけどその言葉の裏には僅かに恐怖を滲ませている。

 

『ラース』が直接的な戦闘系の個性を持つヒーローたちを狙うとすればこの中で狙われる確率の高い人は……かっちゃんだ。

だからかっちゃんはその心を虚勢を張って隠しているのだ。

 

「おーい、連れてきたよ。」

 

「うっす。みんな、久しぶりだな。」

 

「か、上鳴……!その腕は……!」

 

耳朗さんが上鳴くんの腕を引っ張ってきた。そして、その姿を見てみんな絶句した。

 

聞いた話どおり、片腕が失くなっていたのだ。いくら知っていても実物を見るとショックは大きい。

 

「取りあえず……中に入ろうぜ。」

 

みんな、上鳴くんの声に同調して中に入っていった。

 

 

 

 

 

 



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少女との邂逅

「……何をしているのですか。」

 

「んー?ちょっとね。」

 

俺に話しかけてくる死柄木にちょっと反応を示しながら俺はとある作業を進める。

 

あの二人が買い物に行っているので俺は簡単に言えば暇だ。だから、暇を補うために()()()()()()()を作り上げているのだ。

 

「それは構わないのですが……何を作っているのですか?」

 

「サポートアイテム。名前は『ヨルムンガンド』、空気中にある物質を毒物に変換し圧縮し、凝縮。そしてトリガーを引くことで発射するものだ。」

 

俺は自分の作り上げた物の簡単な説明を行った後、ヨルムンガンドを構える。

 

ヨルムンガンドの形状はロケットランチャーのような形状をしており、全体的には黒塗りでトリガーには樹を巻く蛇の刻印してある。

 

俺の個性なら大抵のヒーローには勝てるが……あのオールマイトと闘うのなら幾つか装備を整えておいたほうが良いだろうしな。

 

……最も、俺らはあくまで協力関係でしかない。ゆえに連合を離れることだって考えている。その後は……取りあえず、ヴィランとして活動するか。

 

「ちょっと外に出かけてくるから留守番頼むは。」

 

「あの……前の事件で貴方の顔は既に出回っているのですが……。」

 

「なーに、俺が取り込んだ個性を使えば……」

 

俺は取り込んだ個性を使って自分の姿を変えて角を無くした。

 

これは『変装』と呼ばれる個性で自分の姿や形を自由に変えれる個性だ。最も、衝撃を受ければ元に戻るし戦闘能力は存在しないから使いどころは困るけどな。

 

「んじゃ、行ってくるで。」

 

「わかっていますよ。」

 

そう言って俺は転移した。

 

==========

「よっと。」

 

俺は適当な街の路地裏に転移した。

 

俺の転移の個性だと短距離でしか転移出来ないから数年前に『転送』の個性を持ったヒーローを殺して捕食したから長距離の移動も可能となった。

 

「うーん、どうしたものか。」

 

俺個人としてはどうでもいいけど……やっぱ、ここはあいつらのいる場所にでも転送したほうが効率よかったかもな……だって、俺はこういった暇な時間を潰す方法なんて知らない訳だからな。

 

「取りあえず、路地裏からで

 

「た、助けて……!」

 

「……あ?」

 

路地裏から出ようとした俺に頭に角が生えた少女がしがみついてきた。

 

……俺はガキは嫌いだ。特に、こういった路地裏で助けを求めてくるガキは面倒事を運んでくるものだからな。

 

まぁ、暇だし助けるか。

 

「名前はなんて言うんだ、ガキ。」

 

「え、エリ……。」

 

俺は泣きそうな顔のエリを背中に乗せる。

 

別にロリコンではないがガキが泣く姿は見ても面白くもなんとも無いわけだからな。

 

取りあえず、どこか腰を落ち着ける所にいくか。

 

……カード、使えるかな……。



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