袁家を支える御遣い (久遠寺バター)
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士官
新たな世界での出会い


なかなか袁家をみないので
あえて袁家を題材にしてみました。
主人公は一刀ですが愛紗ぐらいの強さを持った一刀です。

どうかあたたかい目でみてやってください。


どれ位の時間がたっただろうか

ある日突然、

俺はフランチェスカ学園からこの世界に飛ばされてきた。

状況を呑み込めずにいるといきなり女の賊に襲われ

そいつらを撃退した。

それを見ていた人に近くの街に招待され

行く当てもないからとりあえず世話になることにした。

この街を拠点にいろいろ調べたり考えてわかったことがいくつかある。

ここは、中国の三国時代の前の漢って時代みたいだ。

人、文化、環境を見て大方わかってはいたが正直信じられなかった。

また、この現象がただのタイムスリップではない事がわかった。

ここの近くの城の城主は袁紹というらしいが

袁紹と言えばだ、三国無双とかで有名なあの傲慢な貴族っぽい男だ。

そいつがこの世界では女というのだから辻褄が合わない。

そして、この世界が俺たちの歴史で言う乱世に向かっていることを知った。

個人的には劉備玄徳や曹操孟徳に逢って仕えてみたいとか思ったりもしたが

この街の人たちを放ってはおけない。

ここ最近ひと月に最低3回は賊が襲ってくる。

毎回襲われる度に追い返すが、俺が旅に出てしまうとこの街は荒らされてしまうだろう。

その変な使命感からか、俺はこの街から出ることができずにいた。

しかし、その状況が一変した。

 

黄巾党が暴走したのだ。。。

 

今までの賊とは桁が違い、俺一人ではどうすることもできない状況で

あっという間に隣の街まで飲み込まれてしまった。

黄巾党ももとは不満を溜め込んだ民だったと知ってはいたが

その民が同じく苦しんでいる民からすべてを奪っていく。

そんな悲しい現実を突きつけられ酷い絶望を抱かずにいられなかった。

だが、現実に絶望している暇はない

何としてもこの状況を変えなければ。そのためにこんなところでは死ねない!

 

俺は街の人や聖人を集め籠城することにした。

しかし、この城の城主・徐何とかは、黄巾党が来たという知らせを聞いて夜逃げしたらしい。

幸い城に蓄えがあり、一月は籠城できそうだ。

問題はこちらには戦える者が数百人と女と老人を合わせても千に届かない。

相手は数万の暴徒、どう考えても勝機はないが向こうは暴徒、行動から考えてそんなに多く兵糧があるとは思えない。

なら、籠城して相手の兵糧が尽きるのをまつかそれとも。。。。

 

何て考えていると銀髪の女の子が話しかけてきた。

 

「自分も戦おう。」

 

「え?」

 

俺は目と耳を疑った。

目の前にいるのは体中に傷痕のある女の子。

 

「気持ちは嬉しいけど、君のような女の子を戦わせたくないなぁ」

 

「お兄さん、凪を舐めたらあかんで?」

 

「そうなの!凪ちゃんはすごく強いの!!」

 

女の子三人が詰め寄ってくる。

よく見ても見なくても美少女にこうも詰め寄られると少し焦る。

あえて言おう、俺は童貞だ。

 

「わ、わかった!お願いするよ。こちらの作戦をつたえるからついてきてくれ」

 

俺は彼女たちを連れて城に入った

 

「なあ、お兄さん。城に勝手に入っていいんかいな?」

 

「さあな、城主は逃げちまってるから問題ないだろう。自己紹介がまだだったな俺は北郷一刀。」

 

「うちは、李典や」

 

「沙和はね、于禁っていうの」

 

「私は、楽進といいます」

 

ん?あれさっきから呼び合っている名前と名前が違っているような・・・

 

「あのさぁ、質問していいかな?」

 

「なんや?」

 

「さっき李典のことを于禁が真桜ちゃんっていってたのって字かなにか?」

 

一瞬空気が凍ったと思ったら楽進が回し蹴りをしてきた

 

「のわっ!!」

 

「軽々しく真桜の真名を口にするとは。」

 

「え?ま、真名??」

 

「殺されても文句は言えへんで?」

 

三人が武器を構えた。

彼女たちから発せられる殺気をヒシヒシと感じる。

本気で不味いことをしたらしい、ここはすべて話すしかないか。。。

 

「すまない!悪気は無いんだ。俺は真名の意味も知らなかったんだ!!」

 

「真名の意味を知らないなんてそんな事あるの?」

 

俺はすべて話した。違う世界から来たこと、俺の世界のこと、こちらに来てからのこと、

 

「一刀はんの言ってることはわけわからんわ」

 

「ホント、沙和もわからないのー」

 

「にわかに信じられないことだ。」

 

「信じてくれとは言わないでも、殺すにしてもこの戦いが終わってからにしてもらえないか。この街を守れたらどんな罰でもうけるから!!」

 

三人は顔をあわせて少し話をして答えた。

 

「一刀はんのこと信じたるわ!」

 

「ありがとう。」

 

三人を連れ作戦会議室に入った。

 

「これがこの街の地図だ門が三つあるんだがあと8刻までに門を封鎖しなければならないんだ」

 

「でもでも封鎖したら、出れないんじゃない?」

 

「ここにはざっと見ても一月分の食糧が蓄えられてるからそれは心配いらない。」

 

「封鎖ならうちにまかせとき!」

 

「真桜は工作が好きなので役に立つとをもいます」

 

「助かる!まず、三人で西門を封鎖、次に東門そして最後が南門だ」

 

俺がそういうと于禁が質問をしてきた。

 

「一個一個やるより一斉にやった方が早いと沙和は思うの」

 

「いや、それだと奴らの行動が早かった場合間に合わず全方面から攻められすぐに落ちてしまう一か所一か所確実に封鎖するんだ」

 

「了解や、隊長」

 

「た、隊長?」

 

「あはは、隊長。了解なの」

 

「了解しました。隊長」

 

「・・・・・・まいっか。」

 

各々作戦の準備に取りかかった。

俺は街の人々に話をして、生き残るために士気を高め戦いの準備をした。

黄巾党から乱世が始まる。

こんなところで死ねるか!!

 

時間は光の如く去り夜が明けた。

 

しかし、完璧に補強できたのは東と西の門だけ南門に手間取っていた。

というのも南門は東門や西門に比べ大きな門で

李典曰く補強するには時間とそれ用に大きく加工したものが必要とのこと。

そこらへんの木材や鉄では突破を遅らせるぐらいしか出来ないらしい。

 

「旦那~!!黄巾党の奴等がみえてきやした!!」

 

街の偵察が走ってくる。

悪いことは重なるのが常と言うがこうも絶妙なタイミングがあるだろうか。

 

「投石機と弓、それと武器をありったけ用意しろ!女と子供は後方で火を起こせ!」

 

「何故、火を起こすのですか?」

 

「火なんて起こしたら自分たちの居場所を教えてるようなものなの」

 

「いい所に気がついたな。火で水を沸騰させ奴等の上からぶっかけるのさ。それで戦意を多少はそげるはずだ。」

 

「うひゃー、隊長もエグい事思いつきはるわー」

 

「それと保険として俺たちがここで戦っていることを知らせるためだ、もしかしたら他の軍がきているかもしれない。」

 

そう、たとえ可能性が低くとも全て手を打っておいても損はない。

 

「楽進は俺と共に門の上へ、李典は投石機を指揮、于禁は後方支援を指揮してくれ。」

 

「「了解!」」

 

「なんやなんや!隊長らしくなってきたやん!」

 

「まぁ、命懸けだからなしっかりしなきゃと思ったんだよ。」

 

俺たちは持ち場についた。

補強は不完全だから何日持ちこたえるかが勝負の分かれ目だろう。

あとは奴等が疲弊するか隙を見せてくれれば。

 

「大人しく門を開けろ!逃げ道もねぇんだからよー」

 

「別に殺しはしねぇよ。女はなキヒヒヒヒ。」

 

「黙れ!虫以下の下衆共が!!貴様らは、天の御遣い・北郷一刀がいる限りこの門はくぐらせんぞぉ!!」

 

「「おおおおおおお!!」」

 

城内の兵達が俺の声に答えるように声をあげる。

 

「隊長、天の御遣いというのは?」

 

「ああ、はじめてあった人が俺が光ながら空から落ちてくるのを見たらしくて、俺をそう呼んだからさ。使えると思って」

 

「御遣い様が味方だ!!」

 

「俺たちには天が味方しているぞーーー!!」

 

楽進は士気がさっきとは見違えるように上がっているのに衝撃を受けた。

 

「ね?俺もこの世界にどうやって来たなんて分からないし、俺が天の御遣いかなんてわからないけど…みんなが幸せになれるなら、御遣いにだって神にだってなる覚悟はあるよ。」

 

「・・・なるほど」

 

ボォ~~~~

 

貝の笛が鳴り響き戦闘のあいづを告げる。

 

「やれやれ、ぶち抜いちまえ!!」

 

丸太を担いだ数十人の男たちを中心に突撃して来た。

陣形もなくただの暴徒という攻め方だ。

 

「于禁!熱湯を運ばせてくれ!李典!投石の準備だ!」

 

二人に指示をしていると梯子を持った兵に気づく。

 

「李典、岩であの梯子破壊出来ないか?」

 

「隊長!私が破壊します!」

 

「どうやっーー」

 

「はあぁぁぁぁーーーーはっ!!」

 

ドゴーーンッ!

 

俺が言葉を発する前に楽進の手から火の玉?が発射され梯子は消し飛んだ。

何これ?何でもありっすか?中国数千年の歴史っていうやつっすか?

 

「楽進それはあと何発撃てる?」

 

「十発は軽くいけるかと。」

 

こんなのを何発も撃てるのかよ。。。

と、ひきそうになったが今の状況では寧ろ嬉しい誤算だ。

 

「なら楽進は、そのまま敵の攻城兵器を破壊してくれ!そうすれば流れがこちらにくる!」

 

楽進のチートのような攻撃と門の上からの熱湯と投石、そして相手のこちらに対する油断。

そのせいなのか奴らは日が沈む前に撤退した。

 

「奴らが撤退していく。」

 

今が反撃の時!と言いたいけどこちらには戦力がない。

それに加えこの撤退はどう考えてもおかしい、おそらく増援がくるのを待っているのかも知れない

奴らに対して籠城戦をしかける者も少ないそれゆえ攻城戦の戦い方を知らないのだろう。

 

「この隙に伝令を出す。」

 

「伝令?誰を送るんや?」

 

「伝令は速さが命だだから若い人がいいな。君と君に行ってもらいたい。」

 

俺は街の若者を伝令として送ることを決めた

すると街の長老らしき人が

 

「なら、儂が文を書こう…これくらいしか手伝えぬからな。」

 

「ありがとう、長老。ここから一番近い国と城主はわかるかな?」

 

一刀がそういうと李典、于禁、楽進の三人が話し始めた。

 

「近い城主は袁紹やな、あとは・・・」

 

「少し遠かったけど曹操様の街はとても景気がよかったかも」

 

「あとは小さい街がいくつかありますが援軍を要請できそうなところはないでしょう」

 

三人の発言を整理すると近いが取り合ってくれるかわからない袁紹。

街に活気があるのは民への配慮が出来ているということになる。

ということは伝令をうけてくれる可能性が少なからずもあるということ。

もともと、勝つ気はないができるならこの乱を早めに収束したい。

 

「三人ともありがとう。なら、その二人に送ろう。それと楽進は日が沈んだら俺と偵察にでる。」

 

「なんで凪ちゃんだけ?」

 

「うちらは要らんてことかいな!」

 

「それは違う。于禁は隠密行動にむいていない、そして李典は武器が目立ちすぎるからだ。要らないなんてことは絶対にない。二人がいなかったらこの先戦えないよ」

 

二人は渋々了解してくれた。

伝令が出発したのを見届けると楽進が声をかけてきた。

 

「何故、私だけ偵察に?」

 

「ああ、それは君が冷静に行動できると思うからだよ」

 

俺がそういうと楽進は話を聞いてきた。

 

「今回の偵察の目的は何ですか?」

 

「一つは奴らの潜伏場所に兵糧があるのかと規模、司令官が居るのか?そして。。。。。」

 

「最後はなんですか?」

 

「正直、君にはいうべきでないかもしれないけど。。。捕虜、慰安婦の数だ。」

 

「・・・・・」

 

「奴らは街から街へ攻め入り、食糧、金、女を奪い破壊の限りを尽くしている。攫われた女は連れ回され慰み者になるのが奴らの行動だ、獣と変わらない……。」

 

「なら今夜救いに行くのですね?」

 

「いや、明日だ。」

 

この答えに楽進は納得がいかないようだった。

 

「なぜですか!?すぐそこで救える人がいるのに、何故、助けないのですか!!!」

 

「今日、行動を起こせば数人は助けられると思う。でも明日くるだろう増援に連れてこられる女性たちはどうなる?一回、行動を起こすと警備が厚くなり警戒されるんだそうなると一人を救うのも困難になる。」

 

「クッ・・・・」

 

「それに彼女たちを救うのが目的だと知られれば人質にされるだろう。そうなってからでは誰も救えないんだ!だから、一日だけ我慢してくれ」

 

楽進はやはり知将で、一刀の考えと計画、思いを知り納得した。

 

「わかりました。隊長を信じます。」

 

「うん、ありがとう」

 

・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・

 

その頃、曹操の陣営では

 

「華琳様、何やら伝令が来ております。」

 

「伝令だと?我らは野営をしているのだぞ?」

 

「いいわ、通しなさい。」

 

天幕に呼ばれ跪く伝令。

運良くも一刀が送った伝令は黄巾党討伐のために進軍中の曹操軍と合流したのだった。

 

「お、お初にお目にかかります。私は北郷一刀様の使いのものです。一刀様より親書を預かってまいりました。」

 

曹操は伝令から親書を受け取り読み始め

親書をよみ終えると曹操は笑い出した。

 

「あははははは」

 

「華琳様、いかがなさいました?」

 

「秋蘭、読んでみなさい」

 

隣にいる青い髪の武将が読み始める。

 

「曹操殿、私は城主の北郷一刀です。こちらは軍が無く市民と義勇兵数百人で戦っています。しかし、敵は数万を超えておりますのでどうかそちらで、山中のあたりにある兵糧庫を攻めてほしいのです。もちろん、今回のすべての功績並びに名声は差し上げますのでどうか、御手をお貸しください。」

 

「秋蘭、それはどういう意味なんだ?」

 

「この北郷とかいう奴は、兵糧庫を攻撃してくれたら功績と名声をすべて我らに与えると言っているのだ姉者」

 

「何!それはこちらをなめているのか!!」

 

二人の武将の怒る姿をみて青くなる伝令。

しかし、曹操は顔色一つ変えずに伝令に訪ねた。

 

「その北郷の城はどこにあるのかしら?」

 

「ここから500里位の場所にあります」

 

「その城の城主は徐礼ではなかったかしら?」

 

「徐礼様は黄巾党が近くに来たとの知らせを聞いて私兵団を連れて逃げてしまいました。もう、終りかと思っていたところに一刀様が風のように現れ民をまとめ、籠城戦の指揮をしております」

 

「そう・・・・」

 

城主の席に目がくらんだ馬鹿でも、英雄気取りの無能でもないか・・・

面白いじゃない。

北郷一刀。あってみたいわね。

 

「その申し入れ受けましょう。ただし、この戦いが終わったら直接会いに来ることを前提にすることを北郷に伝えなさい」

 

「はっ!ありがとうございます!!」

 

曹操は翌日、黄巾党の兵糧庫へ向け進軍を開始した。

そして袁紹からの伝令が戻り袁紹もこちらに向かってくれているらしい。

この知らせが届いたのは辰の刻だった。

しかし、状況は一変した。

黄巾党はやはり増援を呼んだらしい。

敵の兵数は倍とまではいかないにしても数は城を囲むほどだった。

 

「援軍の兵糧攻めが終わるのは早くても翌々日...なら夜襲をかけるなら今夜しかないが、この死地を生き抜くぞ!!」

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

 

「基本戦術は変わらないが、今日は三方向から攻めてくる。それ故、投石機は南門のみに配置し東と西には弓と弩弓を使う。東門には李典、西門には于禁、南門には楽進に任せる」

 

「はいなの」

「了解や」

「了解しました」

 

「戦いは怪我したり、するかもしれないけど。戦いは勝敗ではなく本当の勝利は生き残ることだ!!だから絶対に死ぬな」

 

黄巾党の攻撃が開始された。

多方面攻撃は兵数が少ないこちらには不利だが、やるしかない

ここで敗北すれば敵地の捕虜やここの街の人々は殺されてしまうだろ。

必ずこの戦いを勝ち抜いてやる。一刀はそう決意し戦いに臨んだ。

 

「楽進、状況は?」

 

「敵は負傷兵を運ぶことに精一杯のようで戦う力がそがれているようです。」

 

「わかった。そのまま頼む」

 

街の中の移動は馬に乗って時間を短縮する。

すると、于禁が門の上で数人の黄巾兵と戦っているのが見えた。

 

「于禁!!大丈夫か!!」

 

俺は黄巾兵を蹴り落とした。

 

「大丈夫か?于禁」

 

「はぁ、はぁ、怖かったの~」

 

梯子の破壊の術が于禁の守備する西門はなかった。

甘かった。俺はやはり素人だ敵の能力を低く見すぎていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

「何だ!?」

 

黄巾党の群れの後ろから金色の鎧を付けた軍が攻撃している。旗には袁の文字。

ほとんど突撃に近い戦法でとてもじゃないがまともな戦法だとは思えない。

だが、数で圧倒しているので敵は浮き足立っている。

 

「援軍なの〜!」

 

「敵が浮き足立っている。ならーーーー」

 

「旦那ぁーーー!!」

 

李典と楽進から伝令が来た。

二つの門でも袁紹軍が黄巾党を撃退しているらしい。

なかでも、李典のところの門は敵が撤退したらしい。

 

「楽進の方は現状維持で敵が撤退はじめたらまた伝令をくれ。李典の方は敵が撤退したのならこっちに人を回してくれ!」

 

セオリーではここで打って出るのが定石だが今回の目的は街を守ることと生き残ること。

できるだけ損害は少ない方がいい。

 

「よーく狙って〜はなつの〜!!」

 

「手があいているものは石を落とせ!怪我人は下がらせろ!」

 

敵軍は攻城をやめ撤退を始めており

この戦いは運で勝てたようなものだ恐らく次は無いだろう。

しかしこれで奴らの陣に乗り込むチャンスが生まれた。

 

「おお〜黄巾の奴らが逃げて行くだよ〜」

 

「うおおお!俺ら生きとるどー〜〜!!」

 

生き残ることができた喜びと村を護った達成感で歓喜の声が上がる。

 

「たーいちょ。あれやるの〜!」

 

「え?あれって何のこと?」

 

「ええっ!隊長知らないの!?」

 

于禁は目を真ん丸くして驚いている。

あれの?あれってなんだ!?

 

「ごめん、本当にわからないんだ教えてくれないか?」

 

「あのねー、戦いに勝った時に勝ったよ〜〜!ってみんなで叫ぶの!」

 

ああ、ようするに勝鬨のことを言っているのか。

でもあれは将軍とか総大将とかがやるんじゃ。。。

 

「ああ、勝鬨をあげよーーってやつね。あれやるの?恥ずかしいんだけど。。。」

 

「もう!隊長!!しっかりしてなのー!!戦いに勝ったってことをみんなに知らせる意味もあるんだから!!」

 

「。。。。わかった。やるよー。。。」

 

俺は息を吸い込んだ。考える暇は無い、簡単に戦いのことをふれて、何かそれっぽいものをくっつけて言えばいいかな。

 

「みんな!我々は獣にも劣る黄巾党を退け街を守り切った!

この勝利はみんな、一人一人が一つになって戦ったからこその結果だ!

考えなければならないことは多いが今は勝利を喜ぼう!!

勝鬨をあげよおおぉぉーーー!!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

〜南門〜

 

「こんな即興もいいところの軍で何とかなるもんやな〜。なあ凪」

 

「ああ、私達は素晴らしい指揮官に出会うことができたのかもしれない。」

 

「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

「何や!?」

 

「勝鬨だな。私達も勝鬨をあげよー!!!!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

 

〜西門〜

 

「凪ちゃん達も勝鬨をあげてるーー♪」

 

「ああ、よかった。本当に良かった。。。」

 

「あの〜すいませ〜ん!!」

 

「?」

 

城門を見下ろすと援軍の将だろか二人の女の子が大きな剣と槌を担いで立っていた。

ひとまず李典と楽進にこっちにくるように伝言を頼み俺と于禁は門を開けに下に降りた。

 

「初めまして、私は袁紹様配下のーーーー」

 

「っあ。」

 

顔を見て俺は言葉を失った。

何を隠そう、彼女達は俺がこの世界に来て最初に遭遇した賊である。

 

「ああっ!てめえは!アタイと斗詩の邪魔をした、いけすかない奴!」

 

「隊長〜、この人たちと知り合いなの?」

 

「ああ、少し前に俺を襲って来た賊たちだ。」

 

「ち、違います!私達はあの辺りに落ちた流星を探しに来たんです!!」

 

へー流星ねー

んなのあの辺りに落ちたっけなー。

 

「ふーん、何で流星を探してて俺を襲って来たんだ?」

 

「落ちた場所に貴方が居たから流星を盗みにきた盗賊と勘違いをしてしまって。」

 

「本当この世界に来たばかりで丸腰の俺に二人掛かりで襲いかかって来やがって、いい迷惑だ!」

 

「え?ここに来たばかりって隊長は何処出身なの?」

 

「俺は違う世界から天の御遣いとしてこの世界にきたんだ。」

 

訳も分からず村人が言っていた話を信じてもいないくせに言い訳に使う自分が滑稽だった。

 

「じゃ、じゃあ!あんたがアタイ達が探していた流星の正体なのか!?」

 

「あなたが天の御遣いなんですか!?」

 

「隊長って本当に凄い人だったの!?」

 

「さっきの戦いを見ただろ?御遣いつったって、生き残るのが精一杯なんだ。神の力とか特別なものなんて何も無い。」

 

俺がそう言うと街の人達が反論してきた。

 

「そんなことねーです。城主様は逃げてしまって死を待つだけだったオラたちを救って下さったでは無いですか!」

 

「御遣い様がこられなかったら私達も黄巾党に連れてかれてどうなっていたかわかりません。」

 

「数百人で数万人の攻撃から城を守り抜く何て神業としか言えませんて!!」

 

街の人々の言葉に胸が熱くなる。

俺の浅はかな策の所為で重軽傷者がかなり出てしまっているのに俺の功績を認めてくれている。

その姿に俺はこの人達のような人々を護れるようになろうと静かに誓った。

 

「ふふ、あなたはとても街の人に慕われているんですね。」

 

「ありがたいかぎりだ。そう言えば自己紹介がまだだったな、俺は北郷一刀だ。よろしく」

 

「私は顔良と言います。」

 

「アタイは文醜!」

 

「沙和は于禁ていうの。」

 

挨拶を終えると楽進と李典が合流し、袁紹に面会に向かった。

そして、今夜の行動の説明をして協力を要請する為だ。

 

「あなたがあの城の城主ですの?」

 

「逃げた城主の代わりをしているだけで城主では無いが、そう言う認識で構わない。

援軍心より感謝いたしました。

袁紹様のお陰で街を守ることができました。」

 

「おーほっほっほっ!!!そうでしょう!そうでしょう!!見てましたか、私の戦術と軍にかかれば黄巾党なんて取るに足りませんわ!!」

 

ああ、なんて扱いやすいんだろう。

しかも、あの策も無い突撃を戦術と言っているならこの先生き残るのは無理だろう。

率直に俺はそう感じていた。

 

「それでこの後の行動に少し提案があるのですが。」

 

「提案ですの?聞くだけ聞いてあげますわ。」

 

俺はこれからの動きを説明した。

 

「話はわかりましたが私たちが貴方に従って何か利点がありますの?」

 

「そうだ、まず黄巾党の兵糧庫に俺たちが奇襲し混乱を誘う。その混乱の中攻撃を仕掛ければ被害を最小限に抑えて勝てる。更に助けた村人たちにより幅広く袁紹の名が知れ渡り名声はあがるはずだ。」

 

俺がそう言うと何やら一瞬、間を置いて話はじめた。

 

「しかし、それは貴方も同じはずでは無いかしら?それなら、貴方達の方が得られるものが大きいのではなくて?」

 

「いいや、今回の作戦の名声と実績は全て袁紹様に差し上げます。」

 

「「っ!!?」」

 

李典、楽進、沙和だけでなく顔良、文醜までもが絶句した。

それもそのはずだ、黄巾党を撃退したその功績は漢室から恩賞を賜るほどの実績であり数百で黄巾党の攻撃を防ぐなど神業のような功績はまでも全て袁紹のてがらにしようというのだから驚いて当然である。

 

「わかりましたわ。その策に乗りましょう。」

 

「ありがたき幸せ。必ずや獣に落ちた黄巾党を討伐いたしましょう。」

 

俺たちは天幕をあとにした。

 

「ふーーなんとかなったなー。」

 

「なんとかって、全部の手柄袁紹にあげるとか阿呆過ぎるで!!」

 

「そーなの!沙和もがんばったのになんにも褒賞もらえないのはなっとくいかないの!!」

 

「あーそれは済まなかった!代わりと言っちゃ変だけどこの戦いが終わったら俺を好きなようにしてくれて構わないからそれで勘弁してくれ。」

 

「隊長、もう少し自分を大事にされた方がいいかと思います。」

 

「俺の物を売ったり金を取ったりしていいってことだったんだけど。。。まさか本当に殺す気だったの!!?」

 

俺がそう言うと三人はドッと笑った。

そして思いがけないことを楽進が口にした。

 

「隊長、私の真名を預かっていただけませんか?」

 

「ええ!!急にどうして!?」

 

李典や于禁なら冗談だろうと笑って流せるが

真面目で冗談をあまり言わない楽進がいきなり大事な真名を預けるなんて言ってくるなんて、初めの時からは信じられないことだった。

 

「正直、この戦いで武人として命を散らす考えでいました。しかし、貴方は自分達に生きる希望を与え全てをまとめ千人満たない人数で数万の黄巾党を撃退しました。

この事実に未だかつてない感動を感じました。。。」

 

楽進のベタ褒めが続く。。。

何これ誉め殺し?

女の子に褒められるなんて人生初めてだ。

そんなこと考えていると

 

「それゆえ、私…楽文謙を隊長の。いえ北郷一刀様の配下に加えて下さい!」

 

「え?ええ?俺なんかの配下でいいの?」

 

「隊長だからなのー。」

 

「三人で話して決めたんや!」

 

そういって三人は笑みを浮かべる。

 

「わかった。凪、真桜、沙和、の真名をあずかるよ。」

 

「おやおや〜?うちらの真名を覚えてるなんて隊長も隅に置けない人やな〜」

 

「隊長も男なの〜」

 

「あ、い、いや…その会話の中で気になってたから自然に覚えてーーー」

 

「こら二人とも隊長が真面目に話しているのに!!」

 

初めに真名で呼んで殺されかけたのに、妙に軽い真名の預かり方をしたものだ。




2017/5/2
誤字脱字文修正

何かありましたら連絡お待ちしております。
拙く読み辛い文ですがよろしくお願い致します。


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私たちと戦ってください!

楽進、于禁、李典の三人娘から真名を預かり捕虜救出作戦を決行する。
この作戦は成功するのか?それとも…



そして作戦決行の夜。

俺たちは予定より早く動いた。

そのワケは袁紹軍の行動を予測してのものだ。

袁紹軍には欠けているものが多い、

兵に対しての将の数、策や計略に対しての対応、突撃に近い戦法。。。

素人の俺から見てもこれだけ上げられるんだ、袁紹は正史通りに曹操に潰されるだろう。

 

「真桜、沙和と撹乱部隊は配置についてくれ。凪と救出部隊は俺とともに捕虜の救出に向かう。」

 

「了解や」

「了解なのー」

「了解です。」

 

「隊長、捕虜は何処にいるんでしょうか?」

 

「まぁ、普通なら複数の場所に小分けにされているだろうけど。

多分一箇所にまとまってるはずだ予測だけど。」

 

一箇所にまとまってるのは間違い無いはずだ。しかし、寝室に連れて行かれたりしている数が多かったら対処しきれない。

それ以上に裏切り密告する者がいないか心配だ。

監禁や捕虜の生活が長いとその生活に慣れある程度の信頼関係を結んでいる場合がなきにしもあらずだ。

 

「隊長。あの天幕から声が聞こえます。」

 

「ああ、間違い無い。真っ最中のようだ。」

 

どうでもいい話だが漫画やAVで見るぶんにはいいが、実際に現場を見ると殺意がわいてくる。

 

天幕の影を見てザッと10人は軽くいる。

今飛び出せば騒ぎになってしまう。

少し待機だが、この光景を凪に長く見せるべきではない。さてどうするか。。。

 

「凪、この天幕の周りの灯りがついていない天幕の中を確認してきてくれ何か発見しても絶対に単独行動はするな。」

 

「はっ!」

 

流石に数万の兵士がいるのにこの人数しか捕虜がいないのはおかしい。

襲われた街は数知れず、男は殺し女子供は連れて行かれている。

数千はいても不思議じゃない。

 

三十分後、凪が偵察から帰ってきた。

 

「隊長、ただいま戻りました。」

 

「お疲れ様。んで、どうだった?」

 

「はい、ここら一体数十個の天幕は捕虜が収容されていました。」

 

だろうな。

しかし個々に数千人か…これはマズイな救出するには人数が足りないし逃亡誘導するにしても人数が足りない。

 

「あと、気になる点がいくつかありました。捕虜の天幕の見張りをしてるのは捕虜の女性のようでした。」

 

「やはりそうか。黄巾党が乱を起こして結構経つからな。その期間にうまく取りいって信頼を得た奴がいてもおかしくわない」

 

ボーーーーー!

ボーーーーー!

 

角笛だろうか。

あたりに笛の音が響き渡る。

 

「敵襲だーーーー門に敵が押し寄せてるぞーーー!!!」

 

「なんだと!?」

 

「畜生いいところどったのによぉーーー」

 

奴らは行為を中断し迎撃に向かった。

 

「しめた、凪部隊を率いて各天幕に向かって捕虜を救出だなるべく目立たないようにやれ!」

 

「はっ!」

 

「お前達はここを死守してくれこの道を封じられたら俺たちに活路はない!」

 

「わかりやした。」

 

数少ない男手だった若者に

役割を与えることにした。

 

「君、名は何ていうの?」

 

「私は王経と言います。北郷様、私にこの大役を任せて良いのでしょうか?」

 

「ああ、2部隊が撤退が完了したら君の考えで合図を送ってくれ。君を信じている」

 

俺は手勢を連れて一番奥の捕虜がいるであろう天幕へ向かった。

天幕の入り口には二人の女。

しかし、妙なのは片方しか剣を持っていないということだ。

刃物の所持を許されていると言うことは、相当信頼されているのだろう。

ならまずこいつを制圧すればもう一人はなんとかなる。

 

俺は松明に石を当て注意を促す。

 

「ん?なにかしら?」

 

ダッ!!

 

「喋るな。喋ったら殺す。」

 

訓練されていない見張りを制圧するのはたやすい。

俺は連れてきた手勢を誘導し2人を捕縛した。

 

「いきなり全員で入ってしまっては混乱するだろうから外で隠れていてくれ。」

 

俺は天幕の中へ入った。

入った途端に悪臭と悲惨な光景に目を疑った。

服と言う服は着ておらずほとんどした気が裸の状態で女性が横たわっている。

 

「貴方だれ?あいつらの仲間?」

 

「みんな騒がないでくれ、俺は北郷一刀。この近くの城主をしている。みんなを救出しに来たんだ。今仲間が門に敵を引きつけてくれているから今のうちに早く。」

 

「え?本当なの?」

 

「夢じゃないの?嘘じゃないの?」

 

みんなが口々に疑問をぶつけてくる。

それもそうだろう来る日も来る日も絶望的環境に身を置いていれば疑心暗鬼にもなるだろう。

 

「私はいかない!今逃げて捕まったら今度は殺される!!死ぬのは嫌!!」

 

過去に何度か逃げた子がいたのだろう。

その粛清を見せられ恐怖心を植えつけ逃げられないようにする。

捕虜と言うより奴隷に近いな。

 

「大丈夫だ。俺たちの城は数百の兵で数万の黄巾党の攻撃を防いだ難攻不落の城だ絶対に守るから信じてもらえないか?」

 

「それって昨日言っていた。落ちない城の話じゃな?」

 

「そうよ!ああ、神様。。。」

 

殆ど攻めた城は落としている黄巾党の攻撃を防いだ事実は恐怖心を書き換えることができたようだ。

 

「ここからは静かについて来てくれ敵を見かけても大きな声を出さないで俺に教えて。」

 

女子供を連れての移動は中々の時間がかかるもので正直生きた心地がしない。

そんな中、空高く真紅の矢が暗黒の空を切り裂いた。

奇襲の合図だ。

 

「何だよサボってるのによー。ああ?何にやってんだてめえ等!」

 

ザンッ!!

 

「カハ…」

 

天幕の後ろにいた小柄な男の首を斬りつけ薙ぎ倒す。

 

「後は一直線だ。みんな急いで。」

 

俺達はなんとか脱出ポイントで合流できた。

 

「王経!今の脱出部隊は何部隊だ?」

 

「北郷様の部隊を入れて五部隊です。」

 

「五部隊!?三部隊ぐらいでギリギリだと思ったんだけど。」

 

五部隊!?俺は耳を疑ったどう振り分けても三部隊が限界な兵数なのにどうやって五部隊も撤退できたのだろうか。

 

「はい、兵数的には三部隊が妥当だと思います。しかし、時が少なくまた、捕虜も疑心暗鬼になっているのでより騒ぎを小さくし説得の時間を減らす事を考えたら。捕虜を数人つけて救出に向かわせました。」

 

「なるほど、兵数を減らし捕虜が捕虜を説得していった方が効率も疑いも少ないか……しかし、捕虜の中に反逆する者や敵の攻撃があった場合はどうするつもりだった?」

 

「それを無くすための奇襲部隊です。それに今回の場合、強制的に連行されて来た婦女子がほとんどだった事、見張りも立てる頭がない賊たちだった事、さに時間が少なく兵数も少ないこのような現状をみて判断しました。しかし、博打に近かったのは認めます。申し訳ありません」

 

すごい、そこまでこの現状を把握しかつ時を逃がさない決断力。

彼はもしかしたら逸材かもしれない。

 

「いや、謝る必要はない結果として多くの捕虜を効率的に移動できている。ありがとう助かったよ。」

 

「隊長!!」

 

「凪、どうかした?」

 

「捕虜を数人の黄巾兵が天幕から出し一箇所に集めています。」

 

もともと一枚岩ではない黄巾党だから捕虜を攫い離脱するつもりなのだろう。

いやむしろ好都合かな?

 

「凪、氣弾は何発撃てる?」

 

「昼間使い続けたのでせいぜい三発が限界です。」

 

「んじゃ凪は兵を奴らを囲むように配置しといてくれ、王経はこちらの作戦の進行状況をみて奇襲部隊に撤退の合図を送ってくれ」

 

「「はっ!!」」

 

……………………

 

…………

 

……

 

「集まったな。これだけか?」

 

「他の奴らは逃げたみたいです。」

 

「まぁ、この騒ぎなら逃げるだろうな。ここはもう持たないから女だけでも頂いて行くかなニヒヒヒ」

 

「こんな大勢な女を俺たちの物にできるなんてなぁ」

 

「1人で7人の女を相手にできるのかニヤニヤ」

 

敵は武器を持たない捕虜相手に油断している。

その隙につけこめみ全員斬殺してやる。

 

ダッ!!ザンッ!!!

 

「うっ!!」

 

「キャアアアアアア!!」

 

捕虜の黄色い声が響き渡る。同時に敵が逃げ出す。

 

「凪!!退路を断て!!」

 

「はぁあーー。はっ!!」

 

ドゴーーン

 

目の前に火の玉が飛んできて腰を抜かしたり命乞いをはじめた。

 

「許してくだせぇ、ほんの出来心だったんです!!」

 

「あいつらに従うか殺されるかと考えたら従うしかなくて」

 

「黙れ!!!」

 

あたりが鎮まりかえった。

 

「貴様らの身勝手な考えで、多くの人が死に多くの人から笑顔を。。。幸せを奪った。その行いの対価を払え!」

 

「で、ですからあっしらを配下に加えーーーー」

 

ザンッ!!

 

「お前らは一度獣以下に落ちた…そこに定着し人の幸せを奪った貴様らに明日を生きる資格はない。」

 

「お許しをお許しーーーー」

 

ザンッ!!!ザンッ!!!

 

一斉に処刑が行われる。

全ての捕虜を一気に救出できた。

そして凪と俺は残った。

 

「凪、陣の中心の天幕に氣弾を打ち込んでくれ。」

 

「わかりました。はぁーーーーはっ!!」

 

ドカーーーンッ!!!

 

天幕の周りが一瞬で火の海になる。

一気に敵に騒ぎが広がり兵が浮き足立っているようだ。

いきなり自分の陣の中で爆発が起きたらどんなに鍛えていても動揺はするだろう。

その騒ぎを鎮静化し形勢を立て直せるのが良将なのだろうが黄巾党にそんな良将はいないだろう。

 

「後は袁紹軍に任せよう。」

 

「了解しました。それでは城の方へ戻りましょう。」

 

俺たちは静かな山の中を歩いて城の方へ向かっていた。

その中で以下にも怪しげな舞台を見つけた。

数は8名

派手な服の女の子が4人と黄巾兵が4人で行動しているのだ。

最初は捕虜かと思って見たが真ん中の四人は連れていかれているというよりかは命令と言うか彼らを指示しているように見える。

 

「凪、あいつらを見てどう思う?」

 

「少人数精鋭の部隊にしては少ないですし女を連行しているようには見えませんが。」

 

「周りの兵の行動を見ると多分、黄巾党の相当高い位置にいるやつだろう。」

 

「では捕まえますか?」

 

「ああ、でも森の出口が見えた瞬間に行動に移す。真ん中の四人は捕縛他は無力化する。」

 

そして、その時がきた。

森の出口にさしかかった。

道がない道を切り開いて進んでいるため歩くのが遅い。

さて、チャチャっとやってしまいますか。

 

ザンッ!ズバッ!

 

「なんだ!てめぇ!!」

 

ボカッ!ドカッ!ドスッ!!

 

「はっ!やっ!!はっ!!」

 

「張角様お逃げをーーがは!。」

 

すぐに制圧できた。

俺が一人を切り倒し注意を向けさせ

、各個撃破した。

 

「さて、審判の時間だ。大罪人張角さん。」

 

「大罪人!?ちぃたちが!?」

 

「まぁ、やることやってるからねー」

 

「くぅ、逃げれると思っていたのに」

 

「えー、おねぇちゃん達どうなるの?」

 

さて、美少女たちをどうするかな…

まぁとりあえず城に連れていってから考えるかな。

 

「では、一緒に来てもらおう。抵抗したら彼女の鉄拳か俺の刀で峰打ちするからな。」

 

「そんなので殴られたら死んじゃうわよ!」

 

「えーん、おねぇちゃん痛いのやーだー」

 

「。。。」

 

「従えば命を保証してくれるのかしら?」

 

「それは約束しよう。ただし、城に入るまでだ。それからは俺の一存では決められない。」

 

「まぁ、当然よね。。。」

 

メガネをかけた女の子はフゥと溜息をつき何やら考えている。

 

「それと、ここからは張角、張梁、張宝っていう名を口にしない方がいい。」

 

「ちぃ達の名前を隠せってこと!?」

 

「それは当然ですね、城の中でその名を呼べば嬲り殺されてもおかしくありませんからね。」

 

今まで黙っていた謎の四人目の女の子が口を開く。

 

「人相書きや噂で広がっている私たちの姿は現実からかけ離れているから名前を口にしなければ誰もわからないということでしょう。しかし、私たちを捕虜として扱うのが不思議でなりませんが……」

 

「俺は片方の意見主張だけで暴走する人間になりたく無いだけだ」

 

「……」

 

俺たちは門をくぐった。

そこには沢山の兵や民が俺たちを迎え入れ、まるで英雄かのような歓迎をうける。

真桜と沙和に捕虜は城の浴場を使わせて謁見の間へ通すように言っておいた。

 

「隊長!おかえりーなのー!!」

 

「凪もお疲れさん!」

 

「ああ、ただいま二人とも!」

 

「沙和、真桜、ただいま。」

 

真桜が俺たちの後ろを見て言った。

 

「隊長。後ろの四人は誰やの?」

 

「ああ、黄巾党の総大将の張角、張宝、張梁、そして恐らく黄巾党の軍師だろう。」

 

「ええ!?黄巾党の総大将って、本当なのー!?」

 

真桜と沙和は驚きの声を上げる。

 

「んで、どないすんねんこんなところ連れてきはって?」

 

「ん〜、ひとまず何でこの黄巾の乱を起こしたのか聞こうか。」

 

「チイ達はただ歌っていただけなのよ!!」

 

「チイ姉さんの言う通りよ、私達は私達の歌で大陸を取る夢があるの。」

 

「そーだそーだ!お姉ちゃん達はそもそも戦いに加担してないぞー」

 

三人は猛反発。

しかし、その横で黙っていた軍師が喋り始めた。

 

「私達は歌を歌いそれて食べ物を貰っていました。ある時に知らない愛聴者から変な本を貰ったのです。」

 

「変な本?」

 

「太平妖術の書と書かれていました。」

 

「太平妖術の書かいな。えらく怪しい名前やな。」

 

「それからです。私達が歌えば歌うほど愛聴者が増え、一人から組、組から一団、一団から軍になっていき現在に至るのです。」

 

「要約するとそこに書かれていたことを実行して人気が上がったが、暴徒化してしまったってことか。」

 

「チイ達は悪くないもん!!歌で大陸を取ろうとしただけだもん!」

 

「そーだそーだ!」

 

「……」

 

桃色と青色の髪の女の子が反発姿勢を崩さない中、紫の髪の女の子は沈黙していた。

 

「お前らの身勝手な思いでいくつの村が、幾人の人間が死んだと思っているんだ!!」

 

「「!!!!」」

 

「今、この城には物のように扱われていた女性達が療養している。何日間も風呂にも入れず、着るものも食べるものもロクに与えられない。そんな悲惨な状況にいた彼女達を知ってか知らずか好きな所へ行き好きな歌を歌い好きな物を食べてきた貴様らに言い訳をする資格はない!!」

 

俺は剣を抜き四人の方に向ける。

 

「……いや。死にたくない!!」

 

「助けて!何でもするから!!」

 

「チイ達を殺すっていうの!!」

 

「………」

 

「まずはお前からだ!!!」

 

ザンッ!!

 

「。。。まさか隊長。」

 

沙和が真っ青な顔をして俺を見る。

真桜は目線をそらしていたが、凪はただ冷静だった。

 

「……え?死んでない?」

 

「……………ピクピク」

 

「…………」

 

「な……なんで殺さないの?」

 

「いやー、ダメだな。やめやめ!」

 

俺の発言にみんなが驚いた。

 

「隊長!何故斬首しないのです!!」

 

「はぁ?隊長、何言うてんのや!」

 

「隊長?本気でいってるの?」

 

「やっぱ無抵抗な可愛い女の子を斬り捨てるなんてできねぇや。」

 

俺がそう言うと三人は呆れたようにまた、安堵したように反応する。

 

「はぁー先ほどまで幾人の黄巾兵を斬り捨てていた隊長とは思えませんね。」

 

「隊長は女たらしやなー」

 

「よかったのー。」

 

三人がそれぞれ違う感情を抱いている中。

一刀は四人に話しかける。

 

「殺される側の気持ち…少しはわかったか?」

 

「コクコクコク」

 

「………」

 

「……はぃ。」

 

「ええ、感じたことのない感覚だったわ。」

刀を鞘に収め話しを続ける。

 

「俺は斬り捨てる事は出来ないが、朝廷や官軍、また街に放り出せば誰かが殺してくれるだろう。」

 

「そうね。私たちが生きる為の条件は?」

 

軍師は気丈に冷静を装い俺との交渉に乗ってきた。

 

「話がわかるな、条件は簡単だ。俺と共に戦ってくれないか?」

 

「……私たちに戦場で死ねってことかしら?」

 

状況が状況だけに最悪の筋書きを考え質問をしてきた。

 

「随分と無意味な質問をするんだな。戦場に出すぐらいなら朝廷に差し出すわ!」

 

「では、条件はなんなの?」

 

やはり疑念があるようだ。

 

「君たちのしてきたことは許せない事だ。しかし、君たちの歌には力があるそれも何万人の人を虜にするね。だから、俺の仲間としてその力を使って欲しい。」

 

「その間、何処に居たって命を狙われるのは変わりないじゃない。」

 

「的確な指摘だ。しかし、表向きは君たちを討ち取ったことにしこの世界が平和になるまでは張角、張宝、張梁、それとーーー」

 

「馬元義だ。」

 

「ーーの名を捨ててもらうけど。それ以外は普通に生活してもらって構わない。」

 

「名前を捨てる。。。」

 

ポツリと桃色の髪の子が呟く。

 

「…わかった。それで構わない。」

 

「ありがとう。不便のないようにするよ。」

 

刀をしまうと緊張が解けたのか。桃色の髪の子が地べたにアヒル座りをしてーーー

 

「助かったーー」

 

ジョジョボボボボボボーーーー…

 

彼女の内腿の間から黄金水が漏れだしてきた。

 

「姉さん!?」

 

「天ちゃん!!」

 

その惨事のあと彼女達からひとまず名前を聞いた。

桃色の髪の子が張角、青色の子が張宝、紫の子が張梁、らしい。一旦お風呂に入ってもらい凪、沙和、真桜の三人を交えて真名を預かるか偽名を考えるかの会議をすることになった。1人は漏らして1人は気絶してる状況じゃ話にならないからな。

 

「んじゃどうするか、偽名にするか真名を預かるか。」

 

「私は、真名を預けたいと考えています。」

 

以外なことに馬元義が最初に提言した。

 

「何でそう思うの。和命ちゃん?」

 

「それは私たちのこれからを考えて事。真名で呼ぶあうことはそれだけで意味がある事んだよ。」

 

「確かに俺たちと真名で会話してたら周りから見たら幹部か側近に見えるからな。でも、それでいいのか?真名って相当大切な名前なんだろ?」

 

「いちいち人の考えを読んでくるのは癇に障りますが、その通りです。でも本隊を撃退し奇襲と挟撃で私たちを捕縛したその技量は尊敬に値する。貴方が無能ならまだしも有能な人間に呼ばれるなら意味があると言うものですよ。」

 

何でそんなに偉そうなのかはさて置き、俺たちの事を認めた上でってことなのかな?

 

「三人はどうなのかな?」

 

「お姉ちゃんもね、いいよ。真名預ける。和命ちゃんの話もあるけど、命を助けてもらったし、正直、あの集団の中から逃げたかったし。」

 

ん?張角は逃げたかったと言ったのか?

張角たちには何不自由は無かったはずだが。何故だ?

 

「それはどうしてだ?君たちに不自由はなかったと思うが?」

 

「私達は何もされなかったけど、私達に見えないところで女性を攫って酷い事をしていたのを見ちゃったの。それからね…怖くなったの…」

 

「チイも冗談で命名亭の肉まんが沢山食べたいって言ったら…あいつら命名亭のある街を襲って奪ってくるんだもん…最初は楽しかったけどだんだん人数が増えてきてチイ達じゃ手がつけられなくなっていた。」

 

「私も姉さん達といっしょ。攫われた彼女たちが居るのは知っていたけど、それを取り上げたら私たちに矛先が向くと思って…自分可愛さに彼女達を犠牲にしてたの。」

 

三人は本当はやめたかったらしい。

たった三人であれだけの大軍を主管するのは難しいだろう。

 

「わかった。なら、自己紹介をしよう。俺は北郷一刀、一応一刀って言うのが真名なのかな。よろしく。」

 

「私の真名は、和命(ホーメイ)。」

 

「…お姉ちゃんの真名は天和っていうの。」

 

「チイは地和。。。」

 

「私の真名は人和です。」

 

先ほどの事もありあまりにも重苦しさと息苦しい雰囲気にやられそうだ。

 

「あーと、凪たちは預けたくない?」

 

「あ、いいえ!そんなことはありません。ですが、先ほどまで敵だったものをすぐさま仲間だと受け入れるには気持ちの整理がつきません。」

 

「そうか、ならーー」

 

「が!私は隊長の配下。よって私の真名を預ける。名は楽進、真名は凪だ。よろしく。」

 

「沙和は于禁。真名は沙和っていうのー。よろしくなのー。」

 

「うちの名は李典、真名は真桜や!なんやかんやあったけど、あんたらを殺さずに済んでよかったわー」

 

「んじゃ自己紹介も済んだし袁紹に挨拶に行かないとな。」

 

俺がそう言うと皆んなが焦りだした。

 

「や、やっぱり!私たちを袁紹に引き渡すの!?」

 

「チイ達を騙したのね!?」

 

「だーーもう!んなわけないだろ!!袁紹に助けた捕虜を仲間に入れたっていうんだよ!そうすれば堂々と歩けるだろ?てか、信用しなさ過ぎだろ!」

 

俺たちは袁紹の陣営に行くつもりだったがその前に向こうから使者が三人来た。

顔良、文醜そして、袁紹軍軍師の一人田豊。

 

「北郷さん、黄巾党の本隊を壊滅に成功しました。」

 

「こっちも人質救出できたよ。これで黄巾の乱は、収束に向かうはずだ。」

 

「ま、アタイにかかれば1万や2万の黄巾の奴らなんて屁でもないさ!」

 

「猪々子。寝言は寝て言ってください。戦は個でやるものではないのですから。」

 

田豊が文醜を戒める。

報告なら一人でいいのに何故三人も連れてきたのか?

 

「報告はおわり?なら、俺たちは袁紹に挨拶に行ってからーー」

 

「ちょっと待って下さい!」

 

顔良がらしくもなく大きな声を出す。

 

「北郷さん!私たちのー袁紹軍の配下に入って下さい!」

 

「断る。」

 

俺はあえて即答する。

既に俺の頭の中には、いろいろな英雄を見ておきたいという願望があったからだ。

 

「理由をきかせてもらえないかしら?」

 

俺の即答に田豊が理由を求めてきた。

 

「理由は3つある。一つめは重税。二つめは袁紹の器。そして三つめは…この街だ。」

 

「この街とは。城主が逃げこの街を守り政をする人間がいなくなると言う事でしょうか?」

 

「まぁ、そう言うことだ。」

 

俺がそう言うと田豊はニヤリと笑い

俺の発言に反論した。

 

「では、税を下げましょう。麗羽様の器に関しては、わかってはおりますが名家であり、各々の実力が発揮できる所だと思います。最後の街の事なら我が軍から人材を派遣しましょう。これでいかがですか?」

 

「……まぁ、二つは解った。」

 

「二つ?一つご納得頂けなかったのですか?」

 

「ああ、俺は君主の器が俺の仕える意義になるからだ。すなわち袁紹に仕える事に意義を見いだせずにいる。」

 

「なら、他の諸侯に仕えるということですか?」

 

「まぁそれも考えてはいるが…」

 

俺の言葉を聞きしばらく考えて田豊は答えた。

 

「では期間を決めませんか。」

 

「期間?」

 

「その通りです。今この街は疲弊しています…復興が必要な程に。なら、私たちの軍に所属してもらっている間は支援も人材も惜しまず派遣します。戦となれば手を貸してもらう形にはなります。ですが、この期間でわが主の器を測ってください」

 

そうきたか。期間なら安全に見えるが袁紹軍の人材に囲まれ、更にはこちらの手元を監視できる。

袁紹軍には潤沢な資金と兵力があるということだろう。

 

「それで手を打とう。ただし何をするにもまず俺を通してからにしてもらうよ。」

 

「わかりました。北郷殿の意思のままに。」

 

「ありがとうございます。北郷さん!!」

 

「アタイとあんたが手を組めば最強だぜ!」

 

「よろしく。」




9/1に恋姫 蒼天の覇王の発売に合わせて田豊の口調を変えました!


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つい願望が。

一刀が助けた捕虜達を故郷に帰す手筈をする。
が、当時の指導者に対する不信や恐怖から此処に残ろうとする人が多数を占めていた。
そんな時一人の少女が一刀の前に。


次の日の朝、

俺は例の捕虜たちの元に向かった。

どこから連れ去られたのか、配偶者云々も含めて把握し何とか帰れるように手配するためだ。

 

「北郷様だわ!」

 

「北郷様よ!!」

 

「うわーいお兄ちゃんー!」

 

風呂に入って服装を整えると見違えるようだ。

皆んなが喜んでいる中、一人暗い顔をした女が俺の目の前にきた。

 

「北郷様。私を覚えていらっしゃいますか?」

 

「あ、ああ。あの見張りの子だろ?」

 

俺がそう言うと静かにコクリとうなづいて予想外の事を言い出した。

 

「北郷様。私を殺して下さい…」

 

「は?」

 

耳を疑った。やっとあの呪縛から解放されたのに死にたいなどと…

 

「理由を聞かせてもらえない?」

 

「…私は、妹を人質に取られ奴らの言いなりになりました。彼女達が逃げないように見張り、逃げ出そうとしたら密告したりも…同じ立場のはずなのに彼女達を傷つけ、幾人もの人を犠牲してしまった。」

 

「…それで。」

 

「昨日から探しても妹の姿はどこにもなく、黄巾兵の話だと死んだ…と。」

 

「妹の為に皆を犠牲にしたのに、妹も犠牲にしてしまった。私にはもう…」

 

バチン!!

 

「ふざけるな!そんな事をして誰が喜ぶ!誰が慰められる!誰の傷が癒える!君の言葉は罪悪感からの逃避にしか聞こえない!そんなに死にたきゃ、全て償ってから言え!」

 

女性は泣き崩れた。

彼女の鳴き声を聞いてか一人の女が近づいてきた。

元黄巾党軍師・和命だ。

 

「悪いが話は聞かせてもらった。」

 

「いや、堂々と言えることじゃないだろ?」

 

「そこの娘、そなたの妹の名は呉礼ではないか?」

 

「そして、完全無視で話を進めますか。」

 

「は、はい。呉礼です。呉礼です!!」

 

何やら意味深の笑みを浮かべ

和命は語り出した。

 

「彼女は生きている。彼女は別の場所に拉致されて居たので袁紹の陣の方ににがしたのだ。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「………」

 

要するに袁紹と俺らが本陣を強襲した時に側にいた彼女を逃したのだろう。

 

まぁ結果オーライで。

 

「北郷様。私に罪を償わせて下さい。」

 

「うーん、じゃあ奉仕としてこの城のメイドさんをやってもらおうかな。」

 

「めいど?というのはなんでしょうか?」

 

「んーまぁ、俺への奉仕が仕事みたいな役職だよ。」

 

「わかりました。私も生娘ではありませんゆえ精一杯奉仕いたします。」

 

生娘であるとかないとか関係ないと思いますが。

 

「そうか、よかった。んじゃ後で袁紹の陣に行くから妹を探してもらおう。」

 

「ありがとうございます。では、めいどの仕事は今夜からでよろしいでしょうか?」

 

ん?夜である必要はないと思うのだが…

 

「明日の朝からでいいよ!夜にこだわる必要もないし」

 

「朝からですか。明るいうちから伽なんて少し恥ずかしいのですが。。。頑張ります。」

 

「え?今なんていった?」

 

「はい、明るいうちから伽なんて恥ずかしいと。」

 

伽?伽だと!?伽ってあれだろ権力者とエッチな関係になることだろ!!マジか!俺もとうとう…

 

「って。違ぁーーーう!!」

 

そう言う事ではない。

そもそもなんで伽になった?

何?ピッチなの?エロいの?

いやいや、落ち着け予想外の展開にまともな考えができない。

 

「伽じゃなくて、掃除とか身支度の事だよ!!」

 

「え?あ、ああ!申し訳ありません。つい願望が!!」

 

「願望なの?それはまずいよ、やっぱり国に帰そう。」

 

俺がそう言うと、

彼女は必死に抵抗してきた。そんなにこの街が好きになったのだろうか。もしくは俺、LOVEとか?……

まぁ何とか落ち着かせ城下街の店を任せることになった。

 

「隊長〜〜〜!大変なの〜〜!」

 

一難去ってまた一難か。

何やら問題ありといった表情で沙和が走ってきた。

 

「どうしたんだ。沙和?」

 

「なんかね、曹操って言う人が来ているの!!」

 

曹操だって!?

まさか天下の覇者にこんな所で会えるとはな。

しかし、何故きたんだろう?

 

「わかったすぐ行く!」

 

俺は走って沙和とは謁見場に向かった。




ようやく、曹操と対面です。
ここからは楽しくなるはずと勝手に思い込んで打っていきます。


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貴方が欲しいわ

曹孟徳と対面する、北郷一刀。
しかし、突きつけられたのは今回出兵の対価であった、
果たして北郷軍の命運やいかに!



「貴方が北郷一刀でいいのかしら?」

 

謁見場に着くと五人の女性がたっていて、その中の

金髪ツインテールの美少女が俺に話しかけてきた。

 

「ああ、俺が北郷一刀だ。貴方が曹操でよかった?」

 

「きさまーーー!!曹操様と呼べ!!」

 

横にいるオールバックの黒髪美人がなぜかご機嫌斜めなようで怒鳴り声を上げる。

 

「いいのよ、春蘭。ええ、私が曹操よ。」

 

この子が曹操なのか…

本当に色々と凄い世界だな。

 

「曹操が何で俺に会いに来たんだ?」

 

「ここに来たのは貴方が伝令を送ったからでしょう?」

 

「伝令は届いてたのか?こっちに戻ってこなかったから曹操に会えなかったのかと思っていたんだけど。」

 

「伝令が主の元に帰らず逃亡したってこと?そんな人間に伝令を任せた貴方の落ち度ね。」

 

曹操は表情一つ変えずに俺を観察するかのように話してくる。

 

「その通りだな。だがあの死地を乗り越えられだからいいとするかな。」

 

「んで?その伝令で呼びつけた相応の対価を払って貰えるかしら?」

 

やはり、無償て動いてくれるなんて甘かったか。

さてどうしようか……

 

「……今の一連の話と現状をしってその話をするって事は何か要求したいものがあるんだろ?」

 

「ええ、そうね。要求はただ一つ北郷一刀、私の配下に入りなさい。」

 

「か、華琳様!!このようなブ男を配下に迎えるなんてご冗談をーー!」

 

「桂花。この私がそんなつまらない冗談を言うと思う?」

 

「い、いいえ。」

 

意見は許すが反抗は許さない絶対服従というわけか。

流石は曹操だ。

 

「改めて聞くわ北郷一刀。私の配下に入る気は無いかしら?」

 

「華琳様!!!」

 

「んもぅ!何なのよ!さっきから話の腰ばかり折って!!」

 

割って入ったのは、先ほど曹操が春蘭と呼んでいた、黒髪の女だった。

 

「私とこいつを戦わせて下さい。」

 

「はぁ?何でそうなんだ!!少しはこっちの都合をーーー」

 

「へぇ、春蘭。貴方が私にこの男を献上してくれるの?」

 

「はっ!!」

 

え?何言ってるの曹操?

本気?本気なの?

 

「北郷一刀。春蘭と一騎打ちをしてくれない?貴方が勝ったら今回の件は不問にするわ」

 

勝ったら不問するか。。。

この件をこじらせると袁紹達との関係もこじれそうだから早急に対処が必要とみるが金だな。

 

「……わかった。彼女の一騎討ちを受けるよ。」

 

「隊長!!隊長自ら出なくともーー」

 

春蘭とよばれる子の闘気に当てられ一歩ひく凪。

後ろでは張三姉妹と和命、沙和、真桜が心配そうに見ている。

後には引けない……

 

「君の名を聞いておいてもいいか?」

 

「我が名は。夏侯元譲!いざ参る!!」

 

武器を構えながら黒髪の子が名乗りを上げる。

マジか…

ここで夏侯惇と戦うなんて、どんだけだよ!

何とかこちらも相手も傷つけずに済ませないとな…

 

ガンッ!ガキンッ!!

 

俺の首を狙った横撃を捌き距離を取る。

 

「本気で殺す気なのな。」

 

「当然だ!武人が負ける時は死ぬ時だけだぁああ!!」

 

再び俺に向かって突進してくる。

思ったより強い。

女と言うより大男の一撃かと錯覚するぐらいだ。

力の法則がわからん。むしろ力の法則考えること自体がこの世界では無意味なように思えてくる。

 

ザン!ザン!ザン!

 

考えている暇はない。時間をかければ不利になる。

ならば次の鍔迫り合いに持ち込み勝負をかけるか。

 

「どうした!この程度そこら辺の賊と変わらないぞ!!」

 

人を殺し己の欲望の為だけに生きる賊と同じと言われ北郷一刀の目つきが変わった。

 

ガキンッ!!

 

「おお、やればできるではないか!」

 

ガンッ!ドカッ!

 

「もう。。。囀るな!!」

 

舐めているせいか隙が多い。一刀は夏侯惇の横っ腹に蹴りを入れる。

 

「くっ……何お!!」

 

ガキンッ!ギリギリギリギリ……

 

少し頭が沸騰しそうになったが抑え鍔迫り合いにもち込めた。

 

「呉礼!今だ!曹操を殺せ!!」

 

「なっ!!?」

 

夏侯惇は焦り注意を一瞬、後ろに向けた。そして、勝負は決した。

意識を前に戻した時には一刀の左手の小刀が夏侯惇の首を捉えていた。

 

「勝負ありだな。」

 

「くぅ〜卑怯者め!こんな一騎討ち認めんぞぉ!!」

 

「春蘭。控えなさい。」

 

「しかし、華琳様ー!!」

 

「控えろ春蘭…上意である。」

 

あんなに騒いでいた夏侯惇が曹操の一言で黙り込む。

凄いね、どうやって教え込むのだろうか。

 

「まさか、私たちを欺く何てね。食えない男ね」

 

「いやいや、夏侯惇はマズいだろ。完全に俺を殺す気だったから!」

 

俺がそう言うと曹操はクスと笑って

 

「けれど、貴方は死ななかった。それだけで十分な功績だわ」

 

「どういう事?」

 

「貴方が欲しいと思ったのよ。本気では無いにしろ春蘭の攻撃を捌き策を考える余裕も作れる貴方が。」

 

「天下の曹操にそこまで言ってもらえて光栄だよ。」

 

「なら私の配下に入らない、今よりはいい生活を保障するわ。」

 

曹操が再び配下に勧誘してきた。

俺は袁紹との話をする事にした。

俺が袁紹の話を出すと曹操は意外な反応をした。

 

「袁紹ですって?」

 

「知ってるんだ?なら話は早いや期限付きだけど仕えることになったんだ」

 

「貴方ほどの人材を袁紹が扱えるのかしら?」

 

「まぁー、仕える気も扱われる気も無いからなー。でも、恩は恩だからな。」

 

袁紹の名を聞いてから妙にイライラしているのがわかるが、あえて触れないでおこう。

 

「貴方はこの時代の流れをどう見る?」

 

「時代の流れってわけではないが、もう時期、朝廷は力を無くすだろうね。黄巾の乱で確信したよ。だから出来れば器の大きい王の下に仕えたいね。」

 

「ふふ、ならば今は袁紹に預けておくことにするわ。また、会いましょう。」

 

そう言って曹操は俺たちに背を向けて謁見場を後にした。

曹操が出た後、俺は座り込んだ。

 

「あー危なかったー」

 

「隊長、大丈夫なの〜。」

 

「隊長お怪我はありませんか?」

 

沙和、凪は一刀の身を案じ声をかける。

 

「ん?あぁ、大丈夫大丈夫。いやー本気で殺しに来たからビビっちゃったよ〜」

 

「隊長も強いけどあの夏侯惇とか言う奴もごっつ強いなー」

 

「本当なの〜」

 

「あの闘気に当てられて体が動かなかった…」

 

ひとまずみんな無事なことに安心していると人和が呼びに来た。

 

「一刀さん、袁紹軍の陣に行くのは何時になるんですか?」

 

「あ。。。。」

 

完全に約束の時間は過ぎていた。

張三姉妹と和命を待たせてしまったらしい。

帰りに飲茶の店によってご機嫌を取らないとな〜

そんな事を考えつつ俺たちは三姉妹のところへ向かった。

 




一刀の力はどれくらいなのかと言う疑問ですが。
基本的武力は春蘭に及びませんが、キレると愛紗ぐらいの武力を誇ります。
ですがバランスブレイカーの呂布には勝てません。
やはり呂布には武力の頂点の称号を持っていてもらいたいので。

さて、次は屈辱、後悔、そして恋模様。
袁紹陣営で何があったのか。乞うご期待!


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何をしたの!!

題名から
迷走臭がします。
いや本当に。。。

袁紹と会い彼女に1ミクロンも仕える気がないのにつかえ屈辱に耐える一刀。
その先に未来はあるのだろうか……


「もー。一刀〜おそーい。」

 

「ちぃ達を待たせるなんてどう言うつもりよ!」

 

「一刀さん、時は金よ。」

 

会った瞬間、言葉責めにあう。

本当昨日まで敵だったのにすごい適応力だな。

まぁ、それぐらいの肝が据わってないと黄巾党を指揮することはできなかったのだろうけど。

沢山文句を言われた後一刀達は袁紹の陣営に向かった。

 

「貴方が私に仕えたいと言うのは本当ですの?」

 

「はっ、我らは戦う術を持っても財力、人材が無いゆえ街の再建もままならない状態です。」

 

「知っています。まー貴方たち貧乏人にしてはよくやった方でわなくて?オーホッホッホッホッ!!」

 

わかっちゃいたが…

くそ…めちゃくちゃウザい。

 

「はっ。それ故、どうか配下にお加えください。」

 

「その件については田豊さんと沮授さんの推薦もありますから、好きになさい。それよりも」

 

くそ、街の為とは言えこんな適当な奴に仕えなければならんのか。。。

 

「斗詩さん。北郷一刀とここら辺で有名な菓子を探してきてもらえるかしら?」

 

「は〜い。わかりました〜。」

 

顔良は身支度をしに違う天幕へと移動する。

どうやらみんなで食卓を囲むらしい。

 

「隊長、うちらはどないしたらええんや?」

 

「そうよ!ちぃ達を置いていくなんて言わないでしょうね!!」

 

「そーだそーだ。あたし達を置いていくなんてひどいよ一刀!」

 

「隊長が居ないのならここに残る意味がありません。」

 

「そーなの!」

 

ヒソヒソとここに残りたくないと言いだす五人。

そんな中、人和と和命が話し出した。

 

「まあーみんな食事をしたら帰るわけだし、一刀殿の為に袁紹達と仲良くなっておいた方がいいのではないか?」

 

「タダで美味しい御飯が食べるのに食べずに帰るのはもったいない。」

 

二人の言葉で全員一致で残ることを肯定し始めた。多分ネックなのは一刀の為にと言う事とタダ飯って事とだろう。

 

支度を終えた顔良と城下街に向かった。

そう言えばサシで話すのは初めてだな。

 

「何処にあるんですかね。有名なお菓子。」

 

「いや、知らないのに引き受けたのかよ!」

 

「そうですよ。いつもの事なので。」

 

「なるほどね〜。ここらで有名なお菓子は無いけど、特産品のお菓子ならあるぞ」

 

「あっ!それにしましょう」

 

俺たちは中央通りにある店に入った。

 

「いらっしゃい、ああ!御遣い様。」

 

「元気そうだね、体の方はもういいの?」

 

「はい、御遣い様に助けてもらい店もいただけるなんてお菓子職人冥利に尽きます!」

 

「北郷さん。この人は?」

 

「黄巾党の捕虜だった人だよ。お菓子職人だったって聞いたから店を開いてあげたんだ。」

 

そう、俺はこの袁紹の援助を待つしかできない状況を変えようと街の経済を立て直す為に残る捕虜に仕事を与えたのだ。

助けた捕虜の8割強が残ってくれたのはとても感謝だ。

 

「ええ!?北郷さんってまだ城主になって一月経っていませんよね!?」

 

「まぁ〜逃げて行った人達も居たから空き家が多いんだよね。だから残りたいと願う人達がここで生きていけるようにしてあげただけだよ」

 

一刀がそう言うと店の子達が騒ぎ出す。

 

「もう〜一刀様たら〜!!何回堕とす気ですか〜/// ///」

 

「一刀様の側に入れるならもう、何もいりませんわ!」

 

「一刀様から閨の誘いを受ける日を待ち続けています。」

 

その熱狂ぷっりに顔良は苦笑いをしていた。

お菓子を買い店を出た後、顔良が一刀に言った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「もう少し街を案内して下さい。」

 

「え、いいのか?袁紹たちとの会食は。」

 

「心配いりません。調理に時間がかかる品ばかりでしたからまだ平気です。」

 

「了解。料理は少ししかできないから全然わかんないや、そこらへんの時間調整は顔良に任せるよ」

 

俺はそう言って顔良を追い越してエスコートしようとしたら顔良が、少し怒った顔で俺の前に立った。

 

「北郷さん。私の事は斗詩と呼んで下さい!」

 

「え…斗詩って真名だろ?こんな契約臣下みたいな俺に真名を呼ばれたら迷惑じゃない?」

 

「いいえ!北郷さんに呼んで欲しいんです!」

 

そう言って顔を近づける顔良にドキドキしながら話を続ける。

てか、胸が。。。当たっている。。。

 

「わかった。顔り。。違った斗詩がいいなら呼ばせてもらうよ。」

 

「はい、一刀さん。これからよろしくお願いします。」

 

ちゃっかり北郷さんから一刀さんに変える斗詩。

さっきの子達みたいに一刀さんって呼びたかったのかな?

 

「んじゃ案内するよ。つってもまだ全然復興が進んでないから予定の話が主になるけど」

 

「大丈夫です。一刀さんがつくる街に興味があるので」

 

そうやって中央通りと軽い店の配置と斗詩を助けた子達に紹介したりして回った。

途中変にからかわれたり嫉妬したりされたが問題ないだろう。

と、思っていたら天幕に戻りお菓子を斗詩に渡し「んじゃ、斗詩。これを袁紹に。」「わかりました一刀さん。」と言った瞬間事は起きた。

 

「ちょ!隊長!!顔良さんと何があったの!!」

 

「え?な、何が。」

 

「とぼけても無駄やで!!あんの、夫婦みたいな雰囲気はなんかあったやろ!!」

 

「夫婦。。隊長は……顔良様と夫婦……」

 

沙和と真桜は暴走し凪は自分の世界に入ってしまった。

こっちの三人に気を取られていると更に隣から旧黄巾娘達からも攻撃される。

 

「ちょっとちょっと!一刀!チィ達というものがありながら、他の女に手を出すとかどんだけ節操無いのよ!」

 

「いやいや、手出してないし!てか、チィ達とは会ってまだ数日だぞ!?」

 

「一刀。ひどいよ!私、一刀の事気に入ってたけど一刀に気を遣って抑えてたのに!!」

 

「ええと。それはありがとう?」

 

「まぁ良いいんじゃないの?一刀殿。英雄色を好むと言うし」

 

「だから、その色とか手を出したとかから離れろ!」

 

「一刀さん。。。程々にね。」

 

「人和まで信じてくれないのか!!」

 

何とも騒がしくもあり、

微笑ましくもあるが、それは客観的に見ればのこと。俺は必死に無実を訴え続けたが聞いてもらえず。後日埋め合わせをするということで皆納得した。

 

 




あー描いてたら妄想が膨らむ膨らむ!!!
意外と斗詩好きなんですよね。
あの女房みたいな感じが!
恋姫無双の二代女房、蓮華と斗詩はもう永遠のヒロインです。

そんな感じで本編は各キャラの話を少しした後反董卓連合へと進みます。これからもどうぞよろしくお願いします。


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建国
動乱への兆し


黄巾の乱から世はしばらく安息の時を得た。
しかし、水面下で戦争を起こそうとする動きが活発化し、
北郷一刀のところにもその戦争に参加を催促する書状が届く。
反董卓連合。
正史より少し早く乱世が幕を開けようとしている。
一刀は乱世をどう生き抜くのか…


それから二年。

 

黄巾の乱は鎮圧され一時の平和が訪れていた。

この二年間、復興と領地の内政に勤め、流民や移住者を多く受け入れ街を大きくする事に成功した。

数百で数万の黄巾党を返り討ちにしたと言う噂が後を押して

北郷一刀の名は大陸中に知れ渡ったり多くの諸侯が謁見にきた。

こうしていると泰平の世になりそうだけど。

 

しかし、世の中は平和を望まないらしく

政治的混乱に乗じて政治の実権を握り、権勢をほしいままにしているとして董卓と言う人物を掲げ

諸侯や他の朝臣らの反感を煽り反董卓連合を結成する動きが活発化してきた。

その中心にいるのが袁紹であった。

袁紹の思惑通り正史より少し早く反董卓連合と董卓軍の戦いが始まってしまった。

 

「反董卓連合か…ようやく平和になったのにな。」

 

「はい、それで私たちはどう動きますか?」

 

「沙和、たくさんの人を苦しめてる董卓を許せない!」

 

「沙和の言う通りや。うちらは弱きを助け悪を挫くっちゅう目的で戦ってるんや!」

 

三人はやる気満々のようだ。

さて、どうするかな…

 

「揃いも揃って猪ばかりだわね。」

 

扉を開け入ってきたのは和命だった。

 

「い、いのしし…」

 

「ん、なら和命の考えを聞こう。」

 

俺は周りで騒ぐ三人を無視して和命の考えを聞くことにした。

 

「これは、董卓殿をダシにした権力争いです。先の黄巾党の一件で領地を増やした諸侯や恩賞に対する嫉妬もあるでしょうが…」

 

「そっか、ありがとう。確かにそう言う側面もあるな。んじゃ、それをふまえた上でこの連合に参加する準備を頼むね。」

 

俺がそう言うと和命は頷き部屋をでていった。

おそらく、天和達にこの話をして準備をさせるのだろう。

 

「なんかー隊長。和命ちゃんの事信頼してる感じなの〜」

 

「なんや、うちらより信頼されてるみたいやし。」

 

「隊長は深い考えをあっての事だと思いますが、私達も信頼してほしいというか。」

 

あからさまにヤキモチを妬いているようだ。

なんと言うか、まさか女の子にヤキモチを妬かれる時が来ようとは…

人生わからないものだ。

 

「いや、誰が一番とかは無いんだ。凪も沙和も真桜も信頼してるよ。この連合に参加するって決めたのも三人を信頼してるから決めたんだ。」

 

「別に私は一番信頼して欲しいとは言っては…いませんが。」

 

「隊長が信頼してくれてるなら、沙和頑張っちゃうの!」

 

「にっししし、なんや信頼してるって言われるとくすぐったいわ〜」

 

なんだこの反応。

まさか冗談だったのか?

若い子ってこんな感じなのか?

女の子ってわかんないな…

 

「んじゃ、うちらも準備始めるかいな。新作のカラクリも試せそうやし。」

 

「ああー。真桜ちゃんのカラクリはある意味恐怖なの〜」

 

「では、隊長。私達は準備に取り掛かります!」

 

「ああ、よろしくー」

 

三人は部屋を後にした。

一人取り残された一刀は考えを巡らせていた。

今回の戦いは前回とは違う。

敵が軍隊であり、有能は武将がいるということ…

恐らく俺がいた世界でも有名な呂布と張遼。この二人がどう関わるかによって行動を考える必要がある。

呂布を相手にする場合…俺達だけでは全滅してしまうだろう。

最悪の場合…外道や卑怯と呼ばれようと、策を使う覚悟を持っておこう。

仲間から信頼を失うよりも仲間を失う方が嫌だからな。

 

 

翌日、俺のところに斗詩と文醜が手紙を持ってやってきた。

 

「一刀さん、お久しぶりです。」

 

「アニキお久ー。」

 

「ああ、二人とも久しぶりだな。元気そうで良かった。」

 

この謁見場には俺以外は入れていない。たとえこの二人であっても油断はしてはならない。

 

「一刀さん、風歌ちゃんから一刀さんにこれを渡して欲しいと言われたのですが」

 

「え、誰それ?」

 

「アニキ、沮授だよ沮授。」

 

「ああ、彼女か。ありがとう読ませてもらうよ。」

 

俺は文を受け取り開いてみるとこう書いてあった。

 

『北郷一刀殿。お久しぶりです。

今回、逆賊董卓を討つために反董卓連合を結成するつもりです。

北郷殿には、袁紹様の客将として連合に参加してもらいます。

武器と兵はこちらからもお貸ししますのでご心配なさらず。戦いでの北郷殿の活躍を期待します。

沮授 』

 

選択肢を与えているようで与えてないよな。客将というより属国だな。

俺は文を閉じ斗詩と文醜と相対する。

 

「何と言えばいいかな。とりあえず沮授に了解したと伝えてくれ。」

 

「はい、わかりました。一刀さん」

 

「へへ、アニキと一緒なら呂布も楽勝だぜ!」

 

「文醜、呂布は要注意人物だ。遭遇したら逃げることを進めるよ。」

 

俺がそう言うと意外そうな顔をして斗詩が言った。

 

「一刀さんなら、互角に渡り合えるのではありませんか?」

 

「いや、こちらの流民の話では一万の黄巾兵相手に呂布は一人で全滅させたらしい。」

 

「い、一万を…一人で!?」

 

「そんな事が可能なんですか?」

 

斗詩と文醜が驚愕する。

俺も全て信じてるわけではないが、火がないところには煙は立たないからな…

 

「可能か不可能かは判断しかねるが、現実として呂布は一人で多くの敵を全滅させたってことだろう。」

 

「バケモンだ…」

 

「うう…そんなこと聞いたらますます相手にしたくなくなりましたよー」

 

「ま、個人の武においてはの話だからね。戦いは一人でやるものではなく、軍対軍だから、個人よりも全体の強さが生きてくる。」

 

「でも、呂布はその軍に対して一人で一万人を倒したんですよね?」

 

「ああ、しかし、黄巾党は暴徒であって軍ではない。そこを間違えちゃいけないよ。斗詩」

 

「そうですよね。でも、呂布さんとは戦いたく無いなー」

 

「大丈夫!斗詩はアタイが守ってやるって!」

 

「一刀さんにも勝てないのに?」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

そう言って話をそらす文醜。

まぁ、呂布との戦いは極力避けよう。

 

「んじゃそう言う事で。俺もこれから準備があるんだ。」

 

「わかりました。では、連合招集の時に。」

 

そう言って2人と別れた。

まさか、あそこまで逃げ道を塞いで来るとは…

沮授。恐ろしい奴だ。

まぁ、良い方に考えればこれらの被害は最小限に抑えられ更に名声も上がるのならむしろ喜ぶべきなのかもしれない。

だが、死んでしまっては全てが無に帰する。

やはり生き残る事を念頭に置いておこう。一月後。反董卓連合が集結した。

 

 

 

 

 

 

 




いやー
めっちゃ遅れてしまい申し訳ありません。
恋姫無双の新作が出るという朗報がありました!
楽しみで楽しみで!!楽しみです。

絵が変わったのは少し残念ではありますが楽しみにしてます。
これからもよろしくお願い致します。


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予想外な英雄達

さあ、反董卓連合開始ですよ!
月タンを救うため!
北郷一刀率いる袁紹軍が洛陽目指して突撃〜!!

みたいなアホ全開でやっていきます(笑)


一刀は歴史上の英雄とこの世界の英雄とのギャップに肩を落としつつ、自らの理想を成すために戦って行きます。
月タンの為に……(笑)


反董卓連合結成当日。

 

辺りを見渡すと数え切れないほどの牙門旗が掲げられている。

劉、曹、孫、馬、公…名だたる諸侯がこの連合に参加している事がわかる。

 

「ひゃー、なんちゅう数や!」

 

「凄い数なのー」

 

「これが連合なのか。」

 

真桜、沙和、凪の三人は驚きの声を上げる。

俺も驚きを隠せ無いがこの後のことを考えていた。

俺は馬を降り、三人に此処での身分証明を教えた。

 

「俺たちは袁紹軍の客将だ。所属を言えと言われたらそう言えば大丈夫だから、好きに行動していてくれ。」

 

「わかったのー!」

 

「はいなー!」

 

「かしこまりました!」

 

三人はそれぞれ行動を開始した。

凪以外は遊び感覚かもしれないがな。

 

俺は三人と別れ天幕へと向かった。

天幕へ入ると大きな机を囲むように諸侯が座っていた。

俺は袁紹の横へと向かった。

俺が袁紹の横へ行くと周りの視線が一気に俺に集まる。

それもそのはず、この空間に男は俺一人だからだろう。

俺が横へ立つのを確認すると袁紹が話し始めた。

 

「皆さん!よく集まってくださりましたわ!この度、逆賊董卓をーーーーー」

 

長い前置きと言うのか、大義の説明を始めた袁紹。

袁紹の話が終わると曹操が口を挟む。

 

「要するに、朝廷の信頼を取られた事を嫉妬してるのでしょ?」

 

「あら、曹操さん。何か言いましたか?」

 

「耳が遠いようね、そんなんで戦えるのかしら?」

 

くだらないので袁紹を止める事にした。

 

「袁紹、作戦会議でないのなら俺は退席させてもらいたいのだが?」

 

「あら?北郷さんは、そんな事を言える立場なのかしら?」

 

「客将は客将。その立場に俺を置いたのは袁紹のはずだが?」

 

「そうだったかしら?」

 

「ともかく、作戦会議の場だ話し合うべき事があるだろう?」

 

そう言うと、袁紹はいきなり機嫌が良くなり。話し始めた。

 

「流石、北郷さんですわ。この連合に必要なものが何なのかわかっていますわ!」

 

いや、お前以外全員わかってたと思うぜ。

そう言うと曹操が口を挟む。

 

「総大将は策を献策し、状況を判断できる人間に任せるのが条件ね。」

 

「確かに、兵を無駄死にさせるわけにはいかないからな。」

 

曹操と横にいるポニーテールの女性が釘を刺す。

 

「この中でより良い策を考え、素晴らしい判断をできる。名家は誰でしょう?」

 

 

「…はぁー」

 

思わずため息が出てしまう。

やりたいならやりたいと言えよな…

周りの諸侯は最早聞く気がない。

そんな時、一人の女性が立ち上がった。

 

「そんなにやりたいなら袁紹さんが総大将をやればいいじゃないですか!」

 

「私は別にやりたいわけではありませんわ、ただ皆さんがどーしてもって言うのならやってあげてもいいですわ。」

 

この一言で空気が更にピリピリしてきた。

四人ぐらい本気で殺気を込めた視線を送っている奴が何人かいる。

恐らく袁紹を推薦すると言う屈辱と袁紹の指揮に入る事に対しての不満だろう。

ならそれを取り除いてやるかな。

 

「袁紹、提案だが。総大将は袁紹以外はあり得ないが、指示系統や戦法、連携は軍によって異なる。無理に変えてしまえば本来の戦力を発揮する事が出来ないだろうから、それらは各諸侯に任せたらどうだろう?」

 

「それはそうですわね。ですが、皆さんの意見を聞いて見ないことにはその提案を受ける事は出来ませんわ」

 

さっきの会話で人の意見を聞いていないお前に言われたくないがここは我慢だ。

あとは空気を読んで他の諸侯が屈辱に耐えてくれればいいんだけど…

 

「…いいわ、総大将は袁紹ね。」

 

以外に曹操が最初に口を開き袁紹を推薦した。

そして彼女は俺に視線を送り クスリと笑った。

 

「その案なら孫呉も袁紹が総大将に成るのを支持する。」

 

「我らも支持しよう。」

 

孫呉を始め全諸侯が俺の案の意図を汲み取ってくれた。

こんな露骨な言い回しで引っかかるのは袁紹ぐらいだろう。

 

「そこまで皆さんがおっしゃるのでしたらこの袁本初。謹んでお受けし致しますわ!おーーほっほっほっ!!」

 

袁紹の高笑いと共に諸侯はそれぞれの陣へ帰っていった。

そんな中俺と先ほど声を上げた女性が袁紹に呼び止められた。

激しく嫌な予感しかしない……

 

「おーーほっほっほっ!先ほどは素晴らしい提案でしたわ!北郷さん。やはり貴方を客将として迎えて正解でしたわ!」

 

「お褒めにあずかり光栄の至り……」

 

本当に御花畑だな、この王は。

 

「それに、先ほど誰よりも私を推薦してくださった劉備さん。見る目がありますわ!」

 

「ありがとうございます。でも、私は董卓に苦しめられている人達を早く救いたいんです。」

 

この女。本当にその情報だけでここまで来たのか?

馬鹿なのか、優しさなのか…

 

「その思い、確かに受け取りましたわ!劉備さんには先方をお任せいたしますわ!」

「ええ!!そんな無理ですよ!!」

 

「やってみなければわからないのが戦ではなくて?これは総大将命令ですわ!」

 

こいつはどこまでアホなのだろうか…

 

「そ、そんな〜。」

 

英雄の劉備と言えど、この状況では絶望的だろう。

後で手助けしてやるかな。

劉備さんところの陣営って今誰が集まってるのだろうか。少し楽しみだな。

 

袁紹との話の後。

自分の天幕に戻った。

 

「そろそろ帰って来る頃かな?」

 

「おどろかしてやりましょうよ!」

 

「姉さん達、私達はあんまり目立っちゃ不味い立場なのわかってる?」

 

「わかってたら隠れて来たりしないのではないか?」

 

「おい、何でここにいるんだ?」

 

天幕の中に入ったらここに居ないはずの張三姉妹と和命が居た。

 

「ちょ!一刀!」

 

「もー少し早いよー」

 

「一刀さん、その…」

 

「あー最悪の展開だわね。」

 

「はぁー何やってんだよ。本当に…」

 

この子たちは命を狙われるって事の意味をわかっているのかな。

 

「一刀が帰ってこないかもって思うと怖いんだもん!」

 

「留守番なんて!寂しいもん!!」

 

地和と天和が声をあげる。

確かに命を狙われいてそれを守っている俺らが居なくなるのは不安だと思うが…

荷物に忍び込むのはな……

 

「わかったよ。けど今度から誰にも言わずに隠れるのは無しだぞ!」

 

「今回の事は沙和さん達には話していたんだけど。」

 

「実は知らないのは一刀殿だけだったりするのです。」

 

…後でお仕置きだな。

 

「俺が居ないところで気になることとかあったら伝令で俺に伝えてくれ、それとあまり目立たないようにね」

 

「「はーい!」」

 

既に二年経ったけど張三姉妹の噂は聞かなくなったから心配無いとは思うけど、念には念を入れておかねば。

 

「んじゃ、俺は天幕を回ってくるわー」

 

「行ってらっしゃ〜い」

 

天和が元気よく送り出す。

後ろからズルい!や抜け駆け禁止などの単語が聞こえたが気にしないでおこう。

 

劉備軍の天幕。

 

「おのれ、袁紹め。この様な無謀な策を押し付けるとは…」

 

「どうしよう。朱里ちゃ〜ん!!」

 

「策を講じてみます。」

 

天幕の中で五人の女の子が話している。そこへ伝令が駆けつけた。

 

「劉備様!伝令でございます。」

 

「今は軍議中だぞ!」

 

「伝令さん、何かあったの?」

 

「はっ!劉備様に面会にきたと言う男が一人。我が陣の前に来ております。」

 

「男だと!?誰だそれは?」

 

「北郷一刀と言ってわからないのなら帰ると申しておりました。」

 

「無礼な、会いに来ておいて知らなければ帰るだと!」

 

「桃香様、会いに行きましょう。」

 

「朱里、お主まで何を言っているんだ!!」

 

「確かめたいことがありますので。」

 

「そうだね。それじゃ伝令さん案内してくれるかな?」

 

「はっ!」

 

劉備軍陣営前。

 

俺は待ちぼうけを食らっていた。

 

「はぁー暇だ、携帯もゲームも無ければ小説も無い。時間潰せねー」

 

しかしなー、この世界に来て三年か。早いな。

しかし、三年で一国一城の主になるとは日本じゃ考えられねぇな。

だって学生だったんだぜ?普通なら大学生ぐらいの年だよまったく。

 

「貴様か!桃香様に会いたいという無礼な男は。」

 

「劉備を指名したつもりだったんだけど、伝令さんまちがえちゃったのかな…つうか、あんた誰?」

 

なんだこの髪の長い綺麗なお姉さんは?

話す前から無礼も何もないだろう。

 

「自らは名乗らずに相手に名をたずねるとはますます無礼な男だな。我が名は関雲長!劉玄徳を護る剣だ!」

 

いや、俺既に名乗って待ってたんだけど。聞いてないのかな。

伝令さんどんな報告したんだよ。マジで…

 

「関羽……なるほど、美髭公ならぬ美髪公というわけか。」

 

「我が主に用があるなら私がきこう。貴様のような無礼者を桃香様に合わせるわけには行かない!」

 

そう言って薙刀、恐らく偃月刀を構え俺の前に立つ。

いやーやる気満々だよ、この娘…

 

「出会い頭に無礼者と罵声を飛ばす方が無礼だと思うんだがな。冷静に考えてみてよ、城主であり袁紹の客将である俺に刃を向けるということがどういう事かわかっているのか?」

 

「貴様!立場を利用し我らを脅しているのか!」

 

「助言してやっているんだけどな。劉備を出す気は無いんだな?」

 

「当然だ!」

 

「わかった…なら、この戦いで死ね。」

 

「貴様!」

 

歴史に名を残す英雄だと思っていたら、ただ短気で傲慢な女武将だったようだ。

くだらない、攻城戦でほぼ義勇軍だけの部隊で生き残れるとでも思っているのか?

現実を見れていない、ただの馬鹿だ。

 

「この状況下で劉備と俺が会う意味を理解できず、数人の武があれば生き残れると甘い夢に溺れているお前らが死なないわけがないだろ?」

 

「言わせておけば!貴様に我らの何がわかるのだ!!」

 

「わかるさ、この状況がそうだ。」

 

関羽が飛びかかってきた。

俺めがけて偃月刀を振り下ろす。

 

「やめろ!愛紗!」

 

俺と関羽の間に青い髪の女が飛び込んで来た。

 

「貴様、血迷ったか!」

 

「そこを退け、星!!」

 

青い髪の女は関羽の偃月刀を槍で受け止めている。

恐らくこの状況を理解できるぐらいの知を持っているんだろう。

 

「そこまでだよ、愛紗ちゃん。」

 

「桃香様。」

 

関羽の後ろから劉備が数人を連れて歩いていた。

劉備を確認すると関羽は偃月刀をひき、構えを解いた。

 

「随分、悠長に動くんだな劉備は…」

 

周りの武官が睨むが少しぐらい皮肉言わないと気が済まない。わかるだろ?

 

「ご、ごめんなさい。軍議中でして!!」

 

「まぁいいや、それより質問なんだけどこの落とし前はどうつけるの?」

 

「お、落とし前?」

 

「あんたの所の武官が俺に刃を向けた事実。俺を守ってくれた優秀な武官の功績を引いても帳消しにはできないよ」

 

おどおどする劉備。

睨みつける関羽。

周りの将を俺を睨む、いやー凄く自分が悪役の気分だわ。




あえて黒い一刀のセリフで切りました。
少しぐらい黒い方が人間らしいと思いますので、

普通に殺されかけて「面白いからいいけど」何て言えねぇよ!(笑)

次回で最初の戦闘までいけたらいいなと思います。


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彼女を救う為の一手。

お待たせ致しました。
今回は結構長く書いてしまいました。
タイトルの通り月タンを救う為に一刀が策を一手ニ手と張り巡らせます。

自分で書いてて何でここまで一刀が月を救おうとしてるか疑問です(笑)


関羽に対しての失望が大きかったせいかもしれないが軍神と呼ばれていた人間がああも軽率な行動をするようでは仕方がないものだ。

まぁ、俺自身も冗談半分、戒め半分の行動なんだけどね。

 

「…という事に成りかねないから、状況を考えて行動した方が良いぞ関羽。」

 

「はぁっ?」

 

「え、え?どういうことですか?」

 

「つまり…今のは警告ということですか?」

 

関羽と劉備が驚いている中で金髪ロリっ子が質問してきた。

 

「ま、そう言うことだな。感情、理想だけで生きていると死ぬって事だ。」

 

「では…なぜ不問にするのですか?」

 

「簡単な事だ今回の絶望的な状況で劉備の手助けをするつもりだからだ。手助けをする相手を締め上げてもいい事ないからな。」

 

「では…その手助けの目的は何ですか?」

 

金髪ロリっ子はチクリと俺の手助けの裏を指摘してきた。

ここまで踏み込むということは軍師か知将なのだろう。少なくとも猪ではないようだ。

 

「ご名答。手助けをする代わりに

俺が董卓を仲間にするのを助けてほしいんだ。」

 

「……悪政と独裁で有名な董卓を仲間にするとは、貴様!血迷ったか!」

 

「そんな事許せない!私たちは弱い人を苦しめている奴をやっつける為に戦ってるんだから!」

 

劉備と関羽は声を荒げるが、

対象的に金髪ロリっ子と青い髪の女は、この連合の意味を理解しているようだった。

 

「……そうですか。この連合はやはりそう言う事なんですね。」

 

「フッ…なかなか面白い話をするでわないか。」

 

「ま、この状況で援助を受けずに戦ったらどうなるか。わかっているだろ、劉備?」

 

「う、う〜」

 

「桃香様!我らが武があれば雑兵の一万や二万など相手になりません!」

 

「愛紗。現実を見ろ、こちらは手勢が数千、相手は訓練されてる数万を越える大軍…それは不可能だ。」

 

「ですね、策を講じても今の兵力、練度、では本来の効果を発揮できませんから。援助を受けて戦う方がいいと思います。」

 

「朱里ちゃんがそう言うなら〜」

 

何だこの軍は…

王がこうまで理想に溺れていて本当に蜀を建国できるのか?

 

「なら、場所を移そう。あまり表でできる話では無いのでな…」

 

俺と劉備とその仲間達は天幕へ場所を移し先ほどの話の続きをする。

 

「まず、劉備達の状況を整理しよう。君たちの兵数は数千で間違いないか?」

 

「はい。しかし、調練をしている兵力は4割強ってとこでしょうか…」

 

「6割は義勇軍ということか…相変わらず袁紹は馬鹿だな。」

 

「貴様は袁紹の客将だろうが!」

 

「考えてみろ義勇軍が先方で全滅したら全軍の士気はガタ落ちだ。更に敵さんは先方を撃破し士気が上がるはずだ。最悪の事態に成りかねない。」

 

「攻城戦で攻めるのは汜水関…将は恐らく張遼と華雄…」

 

「はい、虎牢関の前に兵力をあまり減らすわけには行きません。汜水関は出来るだけ被害を抑えないと。」

 

青い髪の女と金髪ロリっ子が悩みはじめた。

いい加減名前を聞きたいところだがあまりいい間を見つけられないでいた。

 

「そうだな、だが敵も人間だ。防衛戦に向いている将ばかりではないはずだ、特に武官はな…」

 

「少数部隊なら各個撃破してしまおうと野戦に転じる可能性があるということですね。」

 

「その通りだ、えーと…金髪ちゃん?」

 

「あ、自己紹介がまだでしたね私、諸葛孔明といいます。」

 

「我が名は趙雲という。よろしく頼む。」

 

「わたしは劉備玄徳。」

 

「関羽だ…」

 

劉備と関羽は知っていたんだけどなぁ。

てか、諸葛亮もう仲間になってるし!それに趙雲か…

名だたる武将が揃いはじめてるんだな。

いや、そんな事より自己紹介をしなくちゃ。

 

俺は今治めている場所と自分の軍の内容を共有した。

正直この時代に自分の軍を公開するなんて無能のする事だろうと思うが、手っ取り早く信頼を得るにはお互いの利害を共有し同じ敵を作る事だから今回は悪い手ではない。

 

「まさか、貴方があの天の御遣い様なんですか!?」

 

「あーそれ、結構広まってるの?」

 

「当然ですよ!天の御遣いって言ったら乱世を鎮めに来る天の御遣いなんですから!!」

 

いや、そのまんまなのだがとツッコミたいが、相手が劉備なので何故か納得してしまう…

 

「諸葛亮が知っているなんて意外だな。俺らはまだ国土すらはっきりしていないのにさ」

 

「城主が逃げ死を待つ城で籠城し黄巾党を撃退した話は、恐らく諸侯の中でも知らないのは桃香様ぐらいだと思います。」

 

「あぅ〜〜何も知らなくてごめんなさい〜〜」

 

三国時代の蜀の総大将が聞いて呆れる。

こんなんでこの先、生き残れるのか不安である。

 

「あとは、同盟の期間と内容だな。」

 

「え!?内容はわかるけど期間ってどういう事ですか!?」

 

劉備は復活したと思いきや

いきなり机に乗り上げるような勢いで立ち上がった。

 

「同盟は同盟。そこに私的な感情を入れてしまっては国は成り立たない。あくまで利害だからな。」

 

「そんなぁ〜。」

 

劉備がまた、しょぼくれる。

驚いたり落ち込んだりやかましい奴だな。

こういう奴を見ていると教育したくなる。

 

「だが、損得を抜きにすれば劉備達とは同盟を結び続けたいと思っているよ。」

 

「本当ですか!?」

 

「桃香様…損得を抜きにしたらの話ですよ…」

 

喜ぶ劉備を抑える趙雲。

なんか、俺の世界での劉備達もこういう感じだったのかもな。

理想を見続ける劉備とその理想を実現させる為に臣下が働く。

まぁ、今は理想と言うか思いこみで現実すら曇っているけどね…

 

「再度確認するが、劉備軍の将はここにいる、4人なのか?」

 

「ううん、あとね。鈴々ちゃんがいるよ!」

 

鈴々?恐らく真名だろう。

確か俺の世界の劉備の陣営って、張飛、馬超、黄忠……

 

「桃香様。北郷殿に真名で言ってもわからんだろう。あと1人武官がいるのだ、名を張飛と言う。」

 

趙雲が劉備の説明に補足をしてくれた。なるほどやはり既に桃園の誓いは結んでいるんだな。

しかし、この戦力でよくもまぁ…

 

「となると五人か。その中で武力としての戦力は3人。兵は義勇兵でいいかな?」

 

「ああ、間違いない。」

 

「了解した。もう話すことはないかな?無いなら俺は今回の作戦遂行の許可を貰ってくがーー」

 

「あ、あの!ちょっといいですか。」

 

金髪ロリっ子ーーじゃない、諸葛亮が手をピンと挙げて質問をしてきた。

 

「どうぞ。」

 

「あのですね、天の御遣い様の所に雛里ちゃーー龐統ちゃんが訪ねて来ませんでしたか?」

 

龐統?龐統ってまさかあの鳳雛!?

何!俺を探しているのか!?

 

「来てないな…いつ頃訪ねて来たのかわかる?」

 

「はい、私と龐統ちゃんは最近まで一緒の私塾で勉強していたんです。しかし、乱世の兆しが見え始め、苦しむ人達を見過ごす事ができず、一人で旅に出たんです。」

 

こんな小さい子が世の中を憂いで一人で旅をするなんてこの子はどれだけ多くの事を背負っているのだろう…

 

 

 

「この連合が始まる10日前に龐統ちゃんから文が届いて『仕えたい人が見つかりました。その人は乱世を鎮めるための使者、天の御遣い・北郷一刀様です。仕えることができたらまた文を出します。』と書かれていてそれから連絡が無いので少し心配していたんです。」

 

天の御遣い様なんて本当にみんな信じてるのかな?

自分の持っている能力値を超える何かを求められているような気がするぜ……

でも、龐統が仲間に入ってくれれば知の部分がかなり強くなるな…

 

「ん?龐統が俺を探してるんならこの連合に参加してるんじゃないか?」

 

「それは難しいと思います。何処かの諸侯に所属しなければ連合に参加は困難なはずです。それに諸侯に所属するということは北郷さんに仕える時に障害になりますから…」

 

「そっか。でもさ、俺なんかで本当にいいの?天の御遣いなんて胡散臭すぎだろ。てか、みんな信じてないでしょ?」

 

「ああ」

 

即答!?流石っすね関羽さん…

ま、俺も信じてないんだけどね。

 

「それは北郷殿次第でございますな」

 

「私は信じてるよ!」

 

「わ、私も信じてましゅ!?」

 

何故だ、何故期待の目を俺に向ける!俺はただの人間だ、天の使者でも使徒でも仙人でもない。

それに、諸葛亮はなんでさっきまでペラペラ喋れてたのに噛むんだ?

 

「まー、俺も背負うもん背負ってるからな。天の御遣いかはわからないけど、仲間のために演じきってみせるさ。」

 

その後、軽い雑談をして袁紹の元へと向かった。

天幕に着くと楽しそうな談話が聞こえてくる。

袁紹の天幕には何故か北郷一刀の愉快な仲間たちが勢せいぞろいしていた。

 

「おい、なんで居るんだ?」

 

「斗詩さんにお茶に誘われまして。」

 

真っ先に和命が返答を返してきた。

あれ?いつの間に真名を預けたんだろう。

 

「チイ達、天幕の中で退屈してたから丁度よかったのよ!」

 

「一刀が居ないならつまらないーー!!」

 

「こんなことなら本でも持って来ればよかった…」

 

ちくしょう、元国賊のマズイ立場のくせに行動力あり過ぎるだろ。

絶対自覚症状ないだろう!

 

「一応聞くけど自由行動の三人はどうしてここに集まったんだ?」

 

「自分は目星をつけていた諸侯の陣営をまわっていたのですが…会議が終わったのを聞いたので天幕で隊長を待っていたところを斗詩さんに誘われました。」

 

「沙和わね、飽きちゃったから天幕でアズアズを読んでてー」

 

「うちわなー最初っから天幕でカラクリ作ってたところを斗詩に誘われてー」

 

なんだこいつら、この規模の軍を前に緊張感の欠片も無いのか?

ある意味流石歴史に名を残す武将達だ。

 

「すみません!一刀さん。みんな初めての遠征軍だって聞いてたので気分転換にお茶でもどうかなと思ったんですけど、ご迷惑でしたか?」

 

斗詩がすっげー申し訳なさそうにこっちを見つめてくる。

やーこの顔されたら何も言えねぇぜ……

 

「そんなことないよ、ありがとう斗詩。俺もありがたく招待を受けるよ。丁度、袁紹に用があったからね…」

 

「麗羽様はもうすぐいらっしゃると思います」

 

「オーーーホッホッホッホッ!!」

 

この耳にイヤーな感じに残る高笑いは…奴しかいない。奴が二人いたら世界が終わる…

 

「皆さん!そろっていますわね。それでは優雅な茶会をはじめましょう!!」

 

袁紹の掛け声とともに茶会が始まった。

出てくるお菓子は本当に美味しくてお茶も香りがよく茶会の雰囲気によってしまう。危うくここが戦場である事を忘れてしまいそうになる。

 

「袁紹、少し話をさせてもらえないだろうか?」

 

「なんですの?北郷さん、あらたまって。」

 

この雰囲気なら簡単に許可が下りるはずだ。

 

「この後の汜水関の作戦の件で相談があるんだけど。」

 

「作戦は華麗に優雅に突撃ですわ!」

 

玉砕を作戦とは言わない。

少しは考える脳を持って欲しいものだ。

 

「董卓の軍勢は約二十万。対する連合は約十五万。……劉備の軍勢は数千、連合の士気、諸侯の状態を見るとこの先陣での戦いは今後の虎牢関の戦いでの士気に影響が出てしまう」

 

そう、あえてこの初戦の重要性を説明しその戦いの価値を過大認識させそのあと餌を撒く……

古典的だが袁紹なら引っかかるはずだ。

 

「そこで俺が率いる軍勢と袁紹の軍勢合わせて二万投入してもらえないか?汜水関を被害を最小限に抑え虎牢関に進むためにはあの少数では不可能だ」

 

「北郷さんと合わせて二万ならこちらは一万の兵と兵糧を出せということですの、その必要がありますの?」

 

「この戦い初戦は全ての諸侯が静観している。そんな中、袁紹の助力で汜水関を突破したとなれば袁紹の名声は広く知れ渡るはずだ」

 

少し考え袁紹が口を開いた。

 

「わかりました。北郷さんの策を採用いたしますわ!」

 

「ありがとう、袁紹の期待に応えれるよう善処する」

 

天幕をでたとたん

全員から質問攻めにされた。

先方の支援を買って出るなんて、死にたいの?

劉備って人が目あてなの?

何か策でもあるんかいな?

どんな真意があるのですか?

何で聞いたこともない人に助力をするのですか?

 

自分の天幕に戻ってから今回の流れを一つ一つ説明した。

何人かブーブー言ってたが、張三姉妹の件もあったので前例が無いわけでもないので何とか受け入れてくれたみたいだ。

どうでもいいけど、若い女の子って耳がキンキンするぐらい声が高いんだな。

 

「んじゃ、そういう事だから頭に入れといてね。」

 

「それでは、隊長私たちは準備に取りかかります。」

 

「あとでーなの」

 

「ほな、あとでなー」

 

三人が出ていった後俺は張三姉妹と和命に俺らの天幕の前でミニライブ的なのをやってくれないかとお願いした。

この遠征軍初めての遠征でしかも相手は大軍……

緊張する兵や不安な兵もたくさんいるだろ、そのあまり高くはない士気を上げる一つの手として今できることをする必要があった。

どうでもいい事だが、ミニライブの意味を説明するのは大変だった。

 

「ん!わかったよ!」

 

「もーしょうがないな~一刀の頼みならしかたないか~」

 

「一刀さんの頼みなら…」

 

「じゃ、そうしよう」

 

四人もさっそく準備に取りかかった。

さて、少し気になっている馬超のいる陣営と孫呉の天幕を見に行ってみようかな。

 

劉備の配下になる馬超という人物と個人的に興味がある孫堅に会ってみたいがため、この空いた時間を利用することにした。

 

馬超がいるは馬騰の陣営かな?

 

「私の陣営に何か用か?」

 

「用というか、軍議での御礼をしに来たんだ。馬騰さんはいます?」

 

先程の軍議での御礼と言えば疑われる事は無いだろう。

 

「少し待っててくれ。」

 

長いポニーテールの女の子は天幕へと入っていった。

すると何故か五人になって出てきた。

 

「ええーと。馬騰さんはどなたですか?」

 

「ふふ、娘に混ざっててもわからないんじゃ私もまだまだイケるかしらね」

 

真ん中の女性が口を開いた。

どうやら彼女が馬騰らしい。

だけど、今娘って言ってたか?4人産んでるって事は中々歳をとっているはずなのに全然そんな気をさせない若さを保っている。

 

「すみません、私は北郷一刀です。袁紹の所で客将をやっております。」

 

「私が馬騰です。後ろに居るのが左から娘の馬超、馬休、馬鉄、姪の馬岱です。」

 

1人1人名前を呼ばれると軽いお辞儀をする。

いやー凄いな、若い…

 

「用件は先程の御礼と伺ってますが」

 

「はい、先程の軍議での私の策の真意を汲み取っていただきありがとうございます。」

 

「いいのですよ。私も袁紹の指揮下に入るのは嫌でしたので結果として助かったんですよ。」

 

なんだろ言葉から優しさが溢れでてくるような声だな…

母性なのか、色気なのかわからないけど、心地いいな……

 

「ところで何故、貴方ほどの人間が袁紹の客将として側にいるのですか?」

 

「え?俺の事を知っているの?」

 

「ええ、黄巾の乱での功績は尊敬に値するものです。」

 

へー馬騰もしっているんだ。

諸葛亮の言ってた事って本当だったんだ。

でもすげぇな…携帯やパソコンみたいな情報機器がない時代でもここまで広く認知されるんだな…

 

「そこまで凄い事では無いよ。たまたまそこに三人の武将が居て俺を補佐してくれたからできたんだ。俺一人だったら全滅してたかもしれない。」

 

「貴方は天の御遣いと言われていますが、あながち間違ってはいないかもしれませんね。」

 

そう言って俺を手を握ってきた。

予想がいの出来事で顔が熱くなる。

今、多分顔真っ赤で童貞なのバレてるかもしれない…

 

「貴方と私達の道がどうか交わりますように…」

 

「あ、ああ、ぼ、僕もそう願う…」

 

思わず僕っていってしまったー

 

「ふふ、それじゃ!翠!鶸!蒼!蒲公英!戦の準備に取り掛かりなさい!」

 

「応!!」

 

これが統率の取れた軍隊というのか、母親の決定に対し即座に応じる。

これだけの統率力があればもう少し俊敏に動けるのかもしれないな…

 

思いのほか長居してしまった。

この時間では孫堅に会いに行く時間は無いだろう。

ならば普通に戦闘準備をするかな。

 

 

 

汜水関前の陣。

劉備と俺らの将軍が集まって軍議を行っている。

内容は武将の紹介に始まり、部隊の編成、配置、作戦の説明だ。

あえて今回は混合部隊にするのを避けた。

あまり劉備の軍との深い接触は劉備と戦う事になった時の足枷になってしまうからだ。

人間は良くも悪くも変わる者だからな…

 

門の前には関羽と張飛。

中央に俺。

右翼に凪、沙和、真桜。

左翼に趙雲。

本陣に劉備、諸葛亮。

 

門の前で小部隊が戦闘をして敵が各個撃破を考え門を開いた瞬間一旦退却し同時に中央、右翼、左翼、本陣を前へと進ませる。

中央と先方の部隊が合流したら反撃に移る。

 

速攻で敵武将を討ち取るか捕縛する。捕縛できたら今後の交渉の駒にできるから、できれば捕縛して欲しいと皆には伝えてある。

俺の陣に配下の武将がいると分かれば董卓の引き込みもうまくいくはずだからな。

それに、呂布にも多少なりとも効果はあるはずだからな。

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

全員が配置についた瞬間門が開き敵軍が抜刀し突撃してきた。

まさか、これほど早く突撃してくるとは思ってもみなかった。

籠城こそ定石な状況下で地の利を捨てるとは…

 

「ねぇ愛紗。難しい事たくさん考えたのに門開いちゃったのだ。」

 

「気持ちはわかるぞ鈴々、しかし、今は作戦を遂行しなければならない。」

 

「わかったのだ。」

 

煮えきれない思いを堪え一時撤退をする。

その頃中央では…

 

「牙門旗は張と華か…作戦を変えよう。中央と先方で分かれて相手をしよう。右で張遼、左で華雄を頼む!」

 

「はっ!しかと伝えます!!」

 

俺は伝令を放ち本陣と右翼、左翼、そして先方の将に作戦の変更を伝えた。

伝わったなら先方は左にそれるはずだから、俺らはそのまま右に移動しつつ前進し、張遼軍と交戦状態に入る。

 

「楽進将軍から伝令です!こちらも外から回り込み張遼隊の斜め後ろから攻撃致しますとの事です!」

 

「流石は凪だな、挟撃はいい手だ。将は大丈夫でも兵には少なからず揺らぎが生じるだろう。」

 

見えてきた。

先頭で薙刀を構え突撃してきているのが張遼だろう。

すげぇ、迫力だ。

これから彼奴と戦うのか…

 

「全軍抜刀!!敵は眼前に迫る張遼隊!!!躊躇うな数では負けていない!相手をぶっ倒す気持ちをわすれるな!」

 

「「おおおおおおおーーーー!!!」」

 

一気に全軍の気持ちが昂ぶる!

先程の緊張感が嘘のように兵の一人一人に炎が宿る。

みんな命を燃やしているんだ。その炎を消さないために勝たなければならない…絶対に!!

 

そして両軍がぶつかった。…

激しい衝突により一人…また一人と敵と味方が地に倒れていく。

兵をかき分け薙刀を持った女が俺をめがけて突撃してきた。

 

「敵総大将、北郷一刀!!その首この張文遠がもらったわー!!」

 

どうやら張遼で間違いないらしい。

これはうまく行けば好機になるかもしれないな…実力は不明だが、負けるつもりはない。

 

「俺の名は北郷一刀!張遼、貴殿との一騎討ちを所望する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます!
我ながら表現力の足らなさに怒りを覚えます。。。

量ばかりに囚われ読み手の事を考え無しの展開と文。
読みづらい回になってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。

ですが、恋姫愛とキャラ愛で頑張って書き続けます。

p.s
恋姫英雄譚が出てきて私の作品のキャラと真名が違う場合もございます。
本当に申し訳ありません。


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北郷流は一撃必殺の剣技

今回は短めになってしまいました……
もっと更新速度を速めて行けるように尽力いたします。


一騎討ち…

その単語を聞いてか聞かずか

周りの敵が舞台を準備するかのように俺と張遼の周りを空ける。

舞台は整った。最早、逃げ場はない。

 

「まさか神風、北郷一刀と戦えるなんてなー。ウチはついとるわー。」

 

噂が広がっている所為で変な尾ひれがついているみたいだ。

何だ神風って…

意気揚々で薙刀を構える張遼。

その瞳は真っ直ぐ俺を捉えていた。

 

「張遼!一騎討ちを受けてくれてありがとう。だが、次の一手の為に君を捕縛させてもらう!」

 

「ええで!ウチに勝てたらの話やけどな!!!」

 

ダッ!!

 

張遼は掛け声と共に駆け出した。

向こうより少し遅い速度でこちらも走り出す。

 

ガキン!!

 

すれ違う瞬間、一刀と張遼の間に光が走った。

そして、すぐさま張遼の連撃が繰り出される。薙刀と思えない速さの斬撃、そして素早い足捌き。

刀を抜かずに攻撃を捌くのが手一杯で、なかなか隙を見つけられない。

やはり、音に聴く遼来々、紺碧の張旗の通り名は伊達ではない。

 

 

「うら!うら!どないした!手も足もでぇへんのか?」

 

「本当、流石だよ張文遠。」

 

恐らく向こうも本気を出してはおらず、相手の力量を測る小手調べってところだろう。

全力の張遼を打ち倒さなければ捕縛は困難。

しかし、そんな力俺にあるのか不安なところだ。

 

ガンッ!ガンッ!ガンッ!キンッ!!

 

わざと得物と得物をぶつけて距離を取る。

さて、やってみるかな。

 

「小手調べは済んだだろ?本気を出さないと後悔する事になる。」

 

「最高に面白くなってきたのに本気出さないわけないやろ!!」

 

張遼は笑みを浮かべ得物を構える。

武官に多い性格だな、戦うのが楽しいというか戦闘狂に近い。

俺の居た世界ではまず、生きてはいけない人種だろうな…

 

「全力で来い!!貴殿の全力俺が受け止めてみせよう!」

 

張遼の攻撃を捌き、全力を防ぎきったのちにこちらの一撃を打ち込む。

このやり方が一番戦意を削げるはずだ。

 

剣術の流派。北郷流は「刀は人を斬る為の道具である」という事を初めに学ぶ、ある意味時代錯誤な流派である。

が、それ故に刀を手足のように扱えるようになれたと言えるだろう。

抜刀術を扱う人間はその速さを知っている。

それを目で追える人間が敵の斬撃を目で追うことはそう難しい事ではない。

 

「行くでー!!はぁああああっ!!!!」

 

ザンッ!ザンッ!ガンッ!ガンッ!

 

早い、避けたと思ったらすぐに次の斬撃がくる。目で終える事が出来ても実際に身体を動かすのは難しい。

持っている得物でなんとか捌けるぐらいだ。

 

ザンッ!ブンッ!ザンッ!

 

ん?なんか攻撃が大振りになったような気がする。俺の攻撃を誘っているのか、それとも……

 

「少し隙を作りすぎじゃないか?」

 

「あのままやったらウチが勝ってしまうやろ?あんたの本気を見てからにしょうと思っただけや。」

 

やはり誘っていたか。

なら、お言葉に甘えるとしますか。

 

「なら…その言葉に甘えよう。」

 

俺は刀を構え静かに目を閉じる。

一撃で決めなければ勝機は無い。

ならば、確実に仕留められる好機を待たなければなら無い。

 

「なんや、えらい変わった構えやなー。得物も抜かずにどう戦うんや?」

 

「………」

 

「無視かいな。ほんじゃ、期待はずれじゃ無いことを願っとるで!!」

 

張遼が駆け出した。

まだだ、まだ、足りない。

張遼は薙刀のやや前の方を持っている。本来の攻撃範囲より狭くはあるがその分速く攻撃を繰り出してくる。その間と時を見誤ってはならない…集中しろ…北郷一刀。

 

「その首ーー!貰うたで!!!!」

 

ザッーー!!ブンッ!!

 

 

【挿絵表示】

 

 

砂地を踏みしめる音と風を斬る薙刀の音が聞こえる。

この間合い、今だ!!

 

シュッ!!ドスッ!!

 

「カハッ!!」

 

ドサッ…

 

攻撃を地面スレスレまで屈んで避け

その低い位置から胴への峰打。

アラバの1.2本はいっただろう…

 

「痛たた…もろに喰らってもうたわー」

 

「その怪我では全力は出せないだろ?」

 

「うちも舐められたもんやなー。こっちは真剣でやってるのに北郷は峰打やからなー」

 

こちらとしては捕虜にする為に峰打にしたがそれはこちらの都合…

武人としては峰打は屈辱に感じるのかもしれない。

 

「ごめん…でも、君に怪我させては今後の計画に支障が出てしまうから峰打にするしかなかったんだ。」

 

我ながら言い訳が多い人間だと思う。

情けないが今は言い訳と言い回しで計画を着実に遂行していくしかない。

 

「ええで、負けは負けや。真剣だったらうちは死んでたってことぐらいはわかるわ…」

 

「ごめん…でも、ありがとう。」

 

張遼は静かに縄についた。

この戦う理由が無くなった張遼軍は武器を捨て投降してきた。

張遼の捕虜と兵の投降によりこちらの戦闘は終わりを迎えた。負傷兵を下がらせ引き続き、凪、真桜、沙和に劉備軍の混戦には参加するなと注意をして劉備たちの救援に向かわせた。

 

俺は張遼を連れて天幕へと入り彼女縄を解いた。

 

「なんや?殺さへんのか?」

 

「生き恥を晒すぐらいなら殺してほしいって事か?」

 

ある小説で武人らしく死のうと考えていた張遼を曹操が説得した話を思い出した。

張遼は根っからの武人で求道者だったと書かれていたんだっけな…

 

「そうや…。部下にも月にも会わせる顔がないわー」

 

「恥じて死ぬより、生きて彼女を救う道を選びたくは無いか?」

 

俺がそう言うと張遼は、俺をまじまじと見て、こう言った。

 

「そんな事できるんかいな?」

 

「今のところは五分五分だな。問題が多すぎてね…でも五分は可能性があるって事だ。」

 

張遼以外にあの呂布と虎牢関を突破し、董卓を説得し董卓を偽造しなければならない。

口で言う計画は簡単だが、その実行にはあらゆる思惑と要因、第三者の介入が不確定要素としてある。

それゆえ、董卓軍の敵将を全てこちらで捕縛し董卓に関する情報を漏らさずにそのまま吸収する必要があるのだ。

 

「計画を聞いてからでも遅うないやろ?」

 

「もちろんだ。君の役割は極めて重要だからね。」

 

俺は張遼に計画の全容を説明した。

全てを明かしてはいないが俺たちの行動の目的をわかりやすく話したつもりだ。

聴き終えると張遼はあぐらをかいて座りしばらく黙り、考えがまとまったのか答えをくれた。

 

「その話乗ったる。うちは、あんたにかけてみたくなったわ。」

 

「ありがとう、必ず成功させよう。」

 

握手を交わして気づいたがかなり際どい格好をしているんだな。

意識したら急に恥ずかしくなってきた。

 

「んーなんや?一刀はスケベやなー。」

 

「い、いや、そんなことないぞ。」

 

「今さら取り繕っても遅いで?一刀なら悪い気はせーへんからええで。」

 

え?それってどういう事?

悪い気はしない→嫌いではない→好き!?

そ、そんなわけないよな?

会ったばっかだし何もしてないし。

 

「なんや悩んどるみたいやけど、要はうちは一刀が気に入ったって言う事や!」

 

我ながら勘違いの仕方がキモかったと思う。なんだよ好きって、自意識過剰すぎるだろ俺…

 

「ありがとう。これこらよろしく、張遼。」

 

「ちゃうで、うちの真名は霞やで。」

 

今までの経験上、真名を預ける女に再確認するのは覚悟を疑うみたいに感じられるので、素直に預かることにした。

 

「ありがとう、霞。」

 

「なんや一刀に呼ばれると照れるわー。。。」

 

張遼は一刀の配下に入る事を承諾した。華雄は捕縛できず、部下と逃走してしまったようだ…

追跡は後ほどやるとして、今は次なる脅威、呂布に対しての策を講じなければならない。

 

 

戦いが終わって劉備達と今後の動きについて話していると袁紹のところから伝令が来た。

この後すぐに、また軍議召集がかかったらしい。

おそらく汜水関での戦いの功績を褒めて欲しいんだろう…

こんなのを総大将にするのは今後は2度と無いだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様までした。
そして申し訳ありません!!
何ともうすっぺらい戦闘になってしまいました。
呂布の時はもう少し伸ばして描けるように致します!

終わりに華雄ファンの皆様、申し訳ありませんでした。
ここで華雄を捉えてしまうと在り来たり過ぎるので後半の楽しみとして逃がしました。
今後とも文法も書方もなっていない小説ですがよろしくお願いいたします!


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一刀を欲する君主

とうとう霞姐さんを仲間に迎え更に力をつけた北郷一刀。
しかし、袁紹の命令でまたもや少数の劉備率いる義勇軍が最前線に投入されることになった。
この危機を脱することはできるのか…

そんな時彼に手を差し伸べたのはーーー!

どうぞご覧くださいませ。


「オーホッホッホッホッ!!」

 

嫌な高笑いから軍議という名目の功績自慢がはじまる。

私の軍の援助でーだの

攻城戦を有利にーだの

汜水関を落とすことができーーだの

 

本当、ここまで自分の功績にしたがる奴もそういないだろう。

自分の指示で窮地に追いやった軍に援軍を送るなんて、自作自演もいいところだ。

本人は気づいてないのかもしれないがな…

 

「お次は虎牢関ですわね。今回も先の戦の通りの劉備さんに先陣をお願い致しますわ!」

 

「今回は私達も先陣を任されましょう。」

 

何と、馬騰が声を上げた。

話した時は兵を無駄死にさせたくはないと言っていたのに何でだろう。

 

「わかりましたわ、今回も華麗に勝利ですわ!オーホッホッホッホッ!!!」

 

馬鹿の無計画に付き合わされる身にもなって欲しいものだ。

軍議のあと劉備軍、馬騰軍、北郷軍合わせての作戦会議を開いた。

顔合わせが初めての人間が多数いるので自己紹介をさせる事にした。少し時間がかかるがお互いを認識する必要がある。

自己紹介を終えると周りの目が俺の部下に集まる。

あの死地を乗り越えた北郷の配下に興味があるのかもしれない。

 

「えーと。それじゃ今回の要点を説明すると、堅牢な虎牢関の攻城戦。それと飛将呂布。大きく分けてこの二点だ。」

 

「呂布って強いのか?」

 

ちんちくりん…じゃなかった張飛が声を上げる。

こんなちっちゃい子が張飛だと聞いた時のショックは俺の世界の人間なら当然だろう。

 

「強いというか最早そういう次元の話ではないかもしれない。呂布はーーー」

 

俺は張三姉妹から聞いた呂布の話をみんなに聞かせた。

この事実をみんな疑っている。

だが、強いと言って弱いならまだ良い…弱いと言って強いなら被害が大きくなってしまうから敵の強さを高く見積っておいて損はない。

 

「呂布が門から出てきた場合、複数で呂布に当たろうと思う」

 

「それは卑怯ではないか!!」

 

「あたしもそれは納得がいかないな。」

 

声を上げたのは関羽と馬超だった。

二人とも真面目で真っ直ぐな武人なのだろう。

本当に素晴らしい人材だ。だがその真っ直ぐさと真面目さは、相手に読まれやすく早死にする事になるというこも考えなければならい。

 

「確かにこの作戦は卑怯なのかもしれない。だが、君たちは何者だ?一軍の将ではないのか?君たちの武人としての魂は尊く評価に値するがそれを出すべき時を間違えると要らぬ犠牲をうみ仲間を失う結果になる事を知るべきだ。」

 

「……わかったよ」

 

「…しかし。」

 

「納得しなくてもいいよ、この戦いが終わってからその武人の魂を出したら良い。ただ、この戦いにおいては俺の軍や馬騰の軍まで被害が出かね無い。勝手な行動は許さない」

 

俺がそう言うと二人とも黙って席についた。納得はして無いが理解はしてくれたようだ。

 

「それじゃ今回は先陣は俺が指揮し、後陣を馬騰と劉備にそれぞれ指揮してもらう。」

 

「総大将自ら先陣で指揮するとは大きく出ましたね。しかし、その代償が大きく付かないか心配ですが…」

 

馬騰が我が子を心配するように俺の心配をしてくる。

そこまで親しくなったとは思わ無いが、おそらくこれが母性なのかもしれ無い。

 

「大丈夫さ、引き際を間違えたりはし無いから。心配なのはどうやって呂布の攻撃を一旦防ぐかだな…」

 

「そんなことできるのー?」

 

劉備が少し怯えたような声を出した。

まぁ無理もない、黄巾党三万を一人ですので殲滅した話をしたら、仲間が死ぬ最悪の事態も考えてしまうのも無理もない。

だが、ここを抜かなければ俺たちに乱世を切り開くなど不可能だ。

 

「問題はまず、どうやって呂布を釣るかだな…」

 

「呂布を釣る…か…。いや、その必要は無いだろう。恐らく呂布は野戦で来るはずだ。」

 

「そんな事がありえるのか!?」

 

「確かにそう言うと手もありますが可能性は限りなく低いと思います。堅牢な虎牢関を捨てあえて勝率を下げるのはあまりいい手とは言えません」

 

「確かに関羽や諸葛亮の言っている事も正しいが呂布の武力は格が違う。そう言う人間は得てして常識では考えられ無い考え方をしているものだ。」

 

「それに籠城したところで疲労と兵糧との戦いになり、援軍は望め無いから、不利になる。ならば敵を蹴散らし悠々と撤退する方が良いと考えているんだろうな。…」

 

「北郷殿にはそれがわかると?」

 

趙雲が聞いてくる。

もちろん俺も確信も何も無いが、もし俺に最強の力があり援軍がこ無いと考えていくと納得できる考えだ。

 

「わかるとまでは言えないが予想はできるかな。」

 

「蒲公英には、脳筋の考え方なんてわかんないよー」

 

「蒼も体育会系はキラーい」

 

馬岱と馬鉄がやる気無さそうに声を上げる。

それにつられてかうちの軍の沙和と真桜も声を上げ始めた。

 

「沙和も、怖いのいやなのー」

 

「せやなーうちらが束になっても呂布に勝てる気がせーへんわー」

 

「二人とも、今は軍議中だぞ!!」

 

「二人とも!戦前に弱音を吐いちゃダメだよー!!」

 

沙和と真桜を叱る凪。

馬岱と馬鉄を叱る馬休。

なんか何処の軍も似てるんだな。

 

俺の世界で言う女子高生と同じぐらいの年の若い子達が青春を捨てて戦に身を置いているんだ。現実は非情である。

 

「まぁ、一騎討ちで勝てる可能性は低いが…戦は一人でやるものではない。こちらには知も武も申し分ない将が揃っている」

 

俺は将を一人一人確認するように見回す。

関羽、張飛、趙雲、諸葛亮、馬超、馬岱、馬休、馬鉄、凪、沙和、真桜。

将の質なら負けてはいないはずだ、後は問題をどう排除していくかだ…

 

呂布一人に全員で当たればどうにかなりそうな気はするがやはり不安要素は少なくない。

ならば軽率な手は打たないようにするしか無い。

しかし、援軍も同盟国もいないこの状況で董卓は何を考えているのだろう…

 

読め無いな…

 

「それでは軍議はここまでにして、夕食にしよう。」

 

「ご飯なのだーーー!!」

 

俺がそう言うと嬉しそうに声を上げる張飛。見た目通りの反応だとこの時は笑っていられた…

 

「勝手に食卓にしちゃったけど二人とも構わない?」

 

「うん、私は全然大丈夫だよ!」

 

「私たちも問題ありません。」

 

劉備と馬騰の承諾が取れたところで俺は席を立ち食材を取りに向かう。

 

「うちの隊長の料理、ごっつぅ美味いから期待しときや〜!」

 

「ん?北郷様が作るのですか?」

 

真桜の発言に馬休が質問する。

確かに主君が料理をするなんて珍しいのかもしれない。

 

「違うの〜。隊長の考えた遠征用の料理を作って貰ってるのー。」

 

「ああ、隊長の料理に唐辛子を加えれば文句の付けようがない。」

 

「へーー武官で君主で料理もできるんだー。お姉様も料理教えてもらえば?」

 

「私は良いんだよ!」

 

「私は少し習いたい気持ちはあるけど…」

 

「あはは、鶸ちゃん顔真っ赤〜」

 

北郷の将たちと馬騰の将たちとの会話が弾んで行く。

歳が近いせいもあり話しやすいのかもしれない。

劉備達は内輪で盛り上がっているようだ。

 

しばらくして、料理を持った一刀と霞こと張遼が入ってきた。

あたりは一斉にどよめいた。

 

「なんで張遼がここに!!」

 

「隊長、捕虜ではなかったのですか!?」

 

関羽と凪が真っ先に声を上げた。

俺はとりあえず事の内容を話し事態の収拾を図った。しかし、張遼の一言で違う混乱を招いてしまう。

 

 

「天幕であんなに口説かれちゃ仲間になるしかないやろ、一刀はうちに惚れてるみたいやし。」

 

「なんやて!?ほんまかいな隊長!!!」

 

「隊長!!」

 

「隊長、本当なの!?」

 

「…え??」

 

あれおかしいな、いつもなら

隊長はスケベやなーとか、やれやれとか、流すはずなのに何故か視線が殺気立ってる。怖…

 

「あははっ!!これからよろしくなー!!」

 

その後、なんとか誤解を解きつつ夕食にした。

劉備達や馬騰達の口にあったみたいで良かった。

ただ、張飛と馬超を呼ぶ時は注意しよう、兵糧が尽きてしまう…

食事を終えて天幕で天和達と合流しまた、いざこざが起きた後。俺は少し天幕を出た。

 

一刀がいない天幕では張遼を中心に一刀の世界で言うガールズトークなるものが行われていた。

もちろん男子禁制で男性はいない。

 

「なぁ、あんたら一刀のこと好きやろ?」

 

この張遼の一言で全員がビクッと肩を動かし顔を赤くした。

 

「私は…そんなこと…ごにょごにょ」

 

「私は、姉さん達程では…」

 

「ま、まぁ!一刀はチィの事好きで仕方ないみたいだし、チィも一刀事気に入ってるし…」

 

凪、人和、地和、は恥ずかしがって本音を語れないようだ。

 

「なんや、素直じゃない娘らやなー!」

 

「沙和はね、隊長の事大好き!!」

 

「うちも隊長の事好きやで!」

 

「あーん、私の方が先に目をつけたのにーー」

 

「ふふふ、確かに一刀殿は女を惚れさせる魅力をもっていますね。」

 

対象的にズバッと好きだと言葉にする沙和、真桜、天和、和命。

それを聴くと霞は笑いだした。

 

「あっはっはぁ!みんな一刀が好きなんやなぁー。うちも一刀の事、気に入っとるで。せやけど…一刀はスケベやからみんな気をつけへんとパクッと食べられてまうで?」

 

「「っ!?/// ///」」

 

一気にみんな赤くなる。

おそらくそう言う、想像をしたのだろう。霞は満足そうにはははと笑いながら酒を飲んでいた。

 

この日から一刀の配下の者たちは、いつか一刀との閨を共にすると言う事を妄想ようになったのは言うまでもない…

 

一方…噂の中心の一刀の方はと言うと意外な人物と会っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「貴方が北郷一刀殿でいいかしら?」

 

「はい、俺が北郷一刀ですが…どなたですか?」

 

「私は孫堅と言う。」

 

そ、孫堅だって!?まさかとは思ったかけどこんな形で会えるなんて!

……まてよ?

今、俺は俺の陣営を散歩している。

俺の陣営に孫堅がいる事は偶然出くわすなどあり得ないことだ。

なら孫堅は俺か配下の誰かに会いに来たという事になる。

考えても仕方ない、話してみよう。

 

「うちの将に何か用でもあるんですか?」

 

「ふふふ、貴殿に会いに来たのです北郷殿。」

 

俺に会いに来ただ?

一体何のために…

 

「会いに来るって事は何か用件があるんですよね?」

 

「その通り、聞きたい事が有ったのです。何故貴殿は袁紹に従っているのですか?」

 

会う人会う人にこのくだりを話している気がする。

本当に袁紹って人望のかけらもないんだな……

面倒くさいが孫堅に全てを話すと笑いながらいった。

 

「ならば袁紹との契約が切れたら私の率いる孫呉に来ませんか?」

 

「ありがとう、でもその時にならないと答えは出せない。」

 

俺がそう言うと孫堅は見透かしたように言った。

 

「なるほど、私以外の見る目のある者からも勧誘されているのだな?そして袁紹の期限が切れた時に主を見定めると言う事ね…」

 

「そこまで読まれてれるならわかってくれるだろ?今は現状維持で手一杯なのさ。」

 

「現状維持という考えは無能の諸行…しかし、貴殿は現状維持と言いつつ、着実に人望を集め、良い将を配下に迎えている。貴殿が袁紹を飲み込むのも時間の問題かもしれないわね。」

 

何やら相当な過大評価をされているようだ。

確かに厳密に言うと現状維持は不可能な業だ。それを維持するために行動したり捨てたりしなければならないからだ。だがそれでも今は立場上現状維持という表現しなければならない。

出る杭は打たれるからな…

 

「みんな過大評価し過ぎだよ。そこまで凄い人間ではないし、俺の所為で沢山の人が犠牲になった。」

 

「だが、その犠牲から目を背けず貴方は王に成ったんでしょ?それは、誰にでもできる事ではないわ。貴方にその器と技量があってこそこ結果よ。」

 

そう言って孫堅は手を出してきた。

 

「虎牢関の戦いでの援護くらいはしてあげるわ、貴方の手腕を発揮して見せてね。この戦いに勝てたら次の段階の話をしましょ」

 

俺は誘われるがまま握手をした。

女性とは思えないほどの腕力で気を抜いたらぶん投げられるぐらい力だ。

握手を終えると孫堅は孫呉の陣営の方へ歩いていった。

 

ビックリしたが曹操の他に孫堅と言う仕官先を手に入れる事が出来た。

まぁ、しばらく袁紹に仕えるんだけどね。

 

 

「どうでしたか?お目当ての小僧は?」

 

「小僧というのは失礼だぞ、祭。北郷一刀…天の御遣いやら神風などと噂されている謎の男。しかし、会って話してわかった北郷一刀は龍になるかもしれないわ。」

 

「ほぅ…龍ですか?」

 

「黄龍になるかもね、あそこまで私が惹きつけられたのは弦《げん》以来だわ。」

 

「弦様…もう10年になりますか…」

 

「そうね。そろそろ新しい夫が欲しかったのよ」

 

「炎蓮様!冗談もほどほどに!」

 

「何よー。祭は私にこのまま女を殺して生きろっていうの?」

 

「いえ、そうは言ってはおりませんが…せめて家督を譲ってからーー」

 

「いやよ!戦って高ぶった身体を閨で鎮めても渇くのよー重要なのは男なのよーーーお・と・こ!!」

 

孫堅は自分の胸を持ち上げ見せつける。

黄蓋は溜息をつきながらなんとか落ち着かせようとするが効果はない。

一度決めたらやり抜く…それが孫文台その人であるのだから。

 

「わかりました。それじゃ、合意の上でなら私はとやかくいいませんが、くれぐれも力づくはおやめください。」

 

「わかってるって!…あ!そうだ。」

 

「ん?何か思い出されたのですか?」

 

「虎牢関攻略戦に加わるから準備宜しくね!」

 

「なんじゃと!!そういう事はまず軍議にてーー!」

 

「準備、宜しくね!」

 

「はぁ、わかりました。今から準備にとりかかります。」

 

「流石、祭!話がわかるわね!」

 

「…ありがとうございます。では、粋怜と香来にも伝えておきます。」

 

「うむ、宜しく頼むわ。」

 

この出会いを機に孫堅は虎牢関の戦いに参戦すると同時に北郷一刀の争奪戦に加わったのだった。

そして彼女との出会いによってさらなる混乱が起こるのだが、それはもう少し後の話である…

 

そして決戦の夜が明けた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。
楽しみにしている人がいてくれることはとても感謝だなぁとしみじみ感じます。
次はついに呂奉先との激闘、動き出した三国最強の武。。。崩壊する一刀の前線。一刀は皆を護り生き残れるのか!?

乞うご期待…


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打倒、呂布!!

ついに姿を現した呂布。
やはり呂布も女の子になっている。
俺がいた世界とは逆の性別なのかもしれない。

そんなことを考える暇も無く呂布の攻撃がはじまる。
計算を上回る呂布の力の前になす術はあるのか!?


三国一堅牢と謳われる虎牢関。

この戦いに勝利すれば、洛陽は目と鼻の先だ……

事実上、反董卓連合と董卓軍の決戦と言えるだろう。

 

しかし、諸侯は困惑した。

北郷一刀の読み通り呂奉先は配下の将兵と共に虎牢関の前に陣取っていたからである。

 

 

んーと先頭に呂、そして陳、藏、高、曹、成、などなど多くの旗が上がっているな。

たしか呂布の八健将だっけ?そんなかんじの言葉が本に書いてあった気がする。相手は手札を全て見せ総力戦の短期決戦ののち悠々と撤退するつもりでいるのだろう。

彼らの布陣からそんな覚悟というか王羅《オーラ》を感じる。

 

「あーはっはっはっ!!!」

 

袁紹ほどとは言わないが少し耳に触る高笑いが聞こえてくる。

 

「遠からん者は音にも聞け‼近くば寄って目にも見よぉっ‼蒼天に翻るは、血で染め抜いた深紅の呂旗‼天下にその名を響かせる董卓軍が一番槍っ!!」

 

小さい女の子が呂布の旗を持ち高らかに叫ぶ。

恐らく舌戦ではなく天下に高らかに名乗りを上げているのだろう。

 

「悪鬼はひれ伏し、鬼神も逃げる、飛将軍呂奉先が旗なり‼天に唾する悪党どもその目でとくと仰ぎ見るが良いのですっ!!!」

 

「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」」

 

呂布の軍が一斉に声を上げる。

対して連合は全体的に指揮が下がっているようだ、特に義勇兵が主の劉備軍は致命的な打撃を受けている。

向こうが名乗りを上げてこちらが何もしないのでは気負けしてしまう。

やるか?あのコッパズカスィー激励を…

 

「凪っ!沙和っ!真桜っ!俺の号令に続いてくれ!」

 

「はい!」

「わかったなのー!」

「ビシッとキメたってや!」

 

俺は一人前にでて大きく息を吸いこんだ。

やるしかない、戦いは既にはじまってるのだ。

 

「聴け!!我が兵達!そして友軍達よ!!俺は北郷軍総大将、北郷一刀だ!!諸君等も知っての通り俺は天の御遣いとしてこの世界に来た。この世界を正しい方向に導く為にだ!!」

 

あー言っちゃったよ。

恥ずかしい…

マジ逃げ出したいぜ。

 

「我らの行く手を阻むのは天下の呂布。恐らく我らの人生で一番の強敵である事は間違いない!だが、我らは生き残るのだ!生きて国に帰り平和の世をつくる為に!この戦いに勝利するのだ!!」

 

「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

北郷軍のみんなが声を上げる。

本当、助かるわ

白けたら俺の士気が落ちるからな…

俺は振り返り呂布軍の方を見る。

 

「聴け!呂布軍そして陰謀に乗せられた愚か者達よ!この大陸に貴様達の逃げ場はない、援軍もいなければ庇護者もいない。この状況で何処まで戦い続けるつもりだ!!戦いが続けは罪もない民が苦しむ事になるのだぞ!貴様達はそれを望むのか!!犠牲を強いる行いこそ悪党の諸行!!」

 

俺は刀を抜き天へとかざし高らかに宣言する。

 

「我らは貴様等を撃破し大陸の平和を勝ち取って見せる!それが天の意志だ!!剣を取れ!天高らかに声をあげろ!!これは愛する者を守り、平和を勝ち取る聖戦だ!立ち上がれ兵《つわもの》達よっ!!!!」

 

「「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」

 

北郷軍に吊られるように馬騰軍そして劉備軍と連鎖的に声を上げる。

 

[不安な時、気持ちが負けている時。腹から声を出し、その声に思いを込めろ……

思いを込める事が出来たならそれは意志に変わるのだ!!]

昔、負けた相手と再戦する時に師匠に言われたっけな…

 

バサッ!

 

すぐ後ろで旗が上がる。

振り返ると

兵たちの先頭に凪、沙和、そして嬉しそうに旗を上げる真桜の姿があった。

 

「もっとなの!もっと声を出すの!!」

 

「隊長と戦って負けた事があったか!!隊長がいる限り勝てぬ戦はない!!!」

 

「ここでうちの発明品の出番や!」

 

パンッ!パンッ!!

 

軽い爆発音と共に真桜の周りから煙が出る。

その煙は真桜が旗を振ると左右に拡散していく、遠くから見ると旗から煙が出ているように見えるのだろう…

少し演出が過剰な気もするがある意味ではカラクリの新しい利用法なのかもしれない。

 

「ふふ、これが北郷軍の力か。」

 

「ああ、兵を取り巻く空気が一気に変わった。」

 

「わあぁ、みんな元気になったのだ!」

 

前線の左側に配置している劉備軍の将…関羽、趙雲、張飛は北郷一刀とその兵達の強さを感じ取っていた。

反対側の馬騰軍の将、馬超と馬休も違う強さを感じ取っていた。

 

「不思議だ、聞いているだけで気持ちが高ぶる。これが北郷の力なのか。」

 

「なんだろ…北郷様の声音を聞くだけで力が湧いてくる。天の御遣い様だからかな?わかんないけど…ただ、もっと一緒に戦っていたい…」

 

前線で将兵の士気が上がっている頃本陣では、違った会話がされていた。

 

「わあー!すっごーい!!みんなの士気がどんどん上がっていく!!」

 

「義勇兵の皆さんの戦う理由と大義を背負わせる事によって一人一人の意識を高める。北郷さんの言葉で将兵全体の士気が高まっています。」

 

そんなみんなが絶賛する中、一人考え込む者がいた。

馬騰軍総大将、馬騰である。

 

この状況は諸刃の剣…

一刀殿にもしもの事があれば一気に瓦解してしまう脆さを内包しているこの士気の高揚…

早急にカタをつけてしまいたいものですね…

予想外の事例が起こる前に…

 

「蒼!、蒲公英!騎馬隊を待機させなさい!機を見て横撃をかけます!」

 

「「はい!」」

 

馬鉄と馬岱は馬騰に言われたように騎馬隊を前線のすぐ後ろに待機させた。

騎馬隊を待機させると同時に一刀が号令をかけた。

 

「全軍抜刀!雁行の陣を敷き前進せよ!!」

 

「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」」

 

中心の北郷軍は雁行の陣を敷き前進を始めた。

それに合わせるように劉備軍、馬騰軍が合わせて進軍する。

だが、合わせて進軍していてもこちらは混合軍…やはりばらつきが目立ってしまう。不安要素は多い。

 

「はーはっはっはっ!!全軍抜刀するのです!!」

 

呂布軍が一斉に抜刀する。

そして呂布は軍の先頭に立ち檄を構え静かに号令をかけた。

 

「敵…倒す…」

 

「全軍!恋殿につづくのです!!」

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

呂布はまっすぐ北郷軍の中心へと突撃してくる。

先ずは沙和の弓兵による一斉射撃で敵に打撃を与える。

 

「みんな今なの!!」

 

弓矢は大きく弧を描き呂布軍の先頭に直撃した。

しかし、呂布軍はひるむことなく突き進んでくる。

 

「呂布には弓矢は効かないか…やはり、精鋭で一気に首を上げる必要があるな。」

 

俺は呂布の先頭部隊を孤立させる必要があると考えたそこで、騎馬隊と凪達3人を左右からぶつけ分断し各個撃破する作戦を思いついた。

 

「伝令、今から言うことを劉備、馬騰、凪に伝えてくれ!」

 

「「はっ!」」

 

さてさてどう出る呂布の軍師さん。

 

こちらが行動を起こす前に呂布以外の将が三手に分かれた。

呂布とともに俺たちと戦う部隊、

劉備軍を抑える部隊、

馬騰軍を抑える部隊。

 

「予定変更だ、凪達は劉備軍の応援へ、騎馬隊は馬騰軍へ向かった敵に横槍を入れてくれ!」

 

「「はっ!直ちに!」」

 

呂布の方には1人

劉備の方に5人

馬騰の方に3人

劉備軍を叩き退路を確保し、総大将を討ち取るつもりなのか…

先ほどの進軍の際の劉備軍の隊の乱れを見逃さなかったのだろう。

 

「突撃を受け止めたあと一気に呂布を取り囲む!各々準備はいいか!」

 

「「応っ!」」

「わかったのだ!」

「了解した。」

 

やってやる…呂布だって人間だ。

勝て無い相手ではないはずだ。

両軍がぶつかりあちこちで金属のぶつかり合う音が響く。

 

ドカーンッ!!

 

突然俺らの前の兵士達が吹っ飛んだ。爆弾か?いや、そんな仕掛けを作れる時間も余裕もなかったはずだ。

砂煙りから姿を現したのは呂布だった。彼女の前には大きく抉られたあとがある…まさか、彼女がやったのか?

 

不味い、これは兵士の士気が下がってしまう。ならば呂布とは戦わなくでもいいと思わせないとな。

 

「兵士達よ!諸君らは呂布に構う事なく敵を倒してくれ!呂布は私たちが引き受ける!!」

 

これで彼らは自分達は呂布とは戦わなくていいんだと言う差別化する事ができるはずだ。

俺たちが敗走しない限りは…な…。

 

「あんたが呂布か?」

 

「…コク」

 

「すげえ力だな。このまま戦わず仲間にならないか?」

 

「…フルフル」

 

呂布は首を横に振り、得物を構えるこちらを鋭い眼光で睨みつける…

どうやら会話すらする気は無いらしい。

 

「………董卓軍所属…第1師団師団長…呂 奉先。…目的…洛陽へ進軍してくる敵部隊の殲滅…及び虎牢関の死守…。」

 

「…だから。…お前らは……ここで、死ね……!」

 

一気に闘気が溢れ出てくる。

…スゲェよ、こっちに来て初めて勝算が無いと考えてしまう。

それ程に呂布の闘気は本物だ…

でも、もう後戻りはでき無いな…

 

「関羽!張飛!趙雲!馬超!馬休!各々思うように戦え!呂布を倒せばこの戦勝てる!!」

 

「「応っ!」」

「がってんしょうちなのだ!!」

「ふ…簡単に言ってくれる。」

 

「参る!!」

 

各自散開し呂布と相対する。

関羽、張飛に続き将達が攻撃を仕掛けるも捌かれか避けられる。

呂布の攻撃は牽制ぐらいで手を出してこない…相手の能力を計っているのか、時間を稼いでいるのかわからないが不気味でしょうがない……

…が、こちらが動く前に呂布が動いた。

 

「おらぁ!!」

 

馬超の白銀の槍が呂布の胴を目がけて突き出される。

呂布はその槍を掴み馬超ごと投げ飛ばした。

 

「翠姉様!」

 

馬休が一瞬、馬超の方へ気をやるとその一瞬で呂布は馬休の目の前に移動し檄を振り下ろした。

 

「は、はやっ!!ーーかはっ!」

 

呂布の檄を得物で辛うじて受け止めはしたが得物は折れ、その衝撃で馬休は地面にたたきつけられた。

 

「…弱い……弱い奴は…死ね…。」

 

呂布は檄を振り上げ馬休目がけて振り下ろす。

 

ああ、ここで死んじゃうのかな。ごめんなさい…母様…姉様…蒲公英…蒼……。

 

馬休は最早ここまでと目を閉じた。

 

ガキンッ!!ギリギリギリ…

 

暗闇の中で響く金属のぶつかり合う音。自分は死んだと思っている馬休を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「おい!馬休!撤退しろ!!」

 

目を開けると少し汚れた白い衣を纏いし男が呂布の攻撃を防いでいた。

それが北郷一刀だと認識するのに時間はかからなかった。

 

「北郷様!?なんで!?」

 

「話はあとだ撤退しろ!!」

 

「すみません、でも…立てなくて……」

 

馬休は蛇に睨まれた蛙が如く、体が硬直してしまい。逃げる事できないでいた。

 

「ふざけるな!立てないなら這ってでも撤退して生き延びろ!」

 

「で、でも…」

 

馬休も武人だ仲間が戦っているのに一人撤退するのが心苦しいのだろう。

ならば、総大将として命令を下すまでだ。

 

「さっさと撤退しろ!鶸!!総大将命令だっ!!!」

 

「は…はいっ!!」

 

馬休は少しビックリした表情で産まれたての鹿のように何度も倒れながら撤退をした。

 

ドカッ!

 

呂布の蹴りで距離が開く…

俺が大勢立て直すと

呂布は再び檄を構えた。

律儀なのか遊んでるかは知らんが助かるぜ…

 

「…弱い…つまらない……。」

 

「うがぁー、鈴々はまだ本気だしてないのだ!!」

 

「流石は呂布と言ったところか…」

 

「まだ終わりではないぞ!」

 

「…………」

 

張飛、趙雲、関羽は勝利を諦めてはいないようだ。

しかし、この状況……大分こちらに部が悪い…既に馬超と馬休は撤退した。戦力の三分の一をたった数分で削られたのだ。

呂布は恐らく本気ではないのだろう…ここにいる誰しも呂布に本気を出させる事のできる人間はいないのかもな…

らしくもなく弱気になってしまうほどに呂布は強い。

 

「関羽、趙雲、張飛一気に攻めるぞ!」

 

「「応っ!」」

「応なのだ!」

 

ザンッ!ザンッ!ガンッ!

 

キンッ!キンッ!ザンッ!

 

避けたり捌いたり防いだり呂布に一斉攻撃をし隙を作り神速の一撃を撃ち込むしかない。

呂布にはまだ抜刀術を使っていない…

どんなに強かろうと人間は人間。

初見で抜刀術を見切れる人間なんて居ないはずだ。

 

「はぁっ!!!」

 

ザンッ!ガンッ!ガンッ!ガキンッ!!

 

関羽の偃月刀での剛撃…

しかし、呂布はそれを片手で防ぎ捌いている。

関羽の横から趙雲も連撃を繰り出す。

 

「せいっ!せい!せい!せい!せいやっ!!!」

 

シュンっ!シュンっ!キンッ!キンッ!!

呂布は二方向からの攻撃を華麗に捌ききっている。

更に趙雲の反対側から張飛が矛を振るう。

 

「うりゃりゃりゃりゃあぁぁっ!!」

 

ガンッ!ガキンッ!!ガキンッ!!ガキンッ!!

 

流石に避ける事は出来ないようだが三人でかかっても呂布の体に刃は届かない。しかし、この前方に意識が集中する中俺は視覚から神速の斬撃を撃ち込む。

 

悪いな…これで終わりだ。

 

シュッ!キィンッ!!

 

「なっ!?」

 

呂布の背中に撃ち込んだ斬撃は呂布の檄に弾かれた。

しかも三人の斬撃を受けながらのこの技…化物っているんだな……

 

呂布は俺攻撃を捌くと全員の力量を測っていたのか、檄を地面に叩きつけ、辺りを吹っ飛ばし距離を取った。

 

「お前たちの強さ…わかった…。もう…次で…終わり……。」

 

「…っしゃおらぁ!!!!」

 

ガキンッ!!

 

呂布の真横から白銀の槍が突き出される。

馬超が戦いに復帰したのだ。

 

「馬超、撤退したんじゃ無かったのか?」

 

「少し遠くへ飛ばされただけだよ。それに戦いはまだ終わってないだろう?」

 

そう言って得物を構えた。

呂布は馬超の復帰に眉ひとつ動かさずに話し出す。

「…弱い奴…何人いても…同じ…。まとめて相手…する…」

 

普通の人間なら狂ったかと思うが

呂布の強さは本物だ。

本気で五対一の戦いをやってのけてしまうのだろう…

 

「ならこっちも出し惜しみなしで行くしか無いか…」

 

ゼロ距離での北郷流抜刀術「虚空」。

懐に入らなければなら無いのが欠点だが、確実に斬撃を撃ち込む事ができる。

 

正直、奥義とか秘剣とかあんまり使いたくねぇんだよな…

なんか、先人の二番煎じをやってるみたいでさ…

 

「はっはっはっ!まだまだね!北郷!」

 

馬にまたがった桃色の髪の女が呂布と俺達の前に飛び込んできた。

頭にはデカイ被り物、手には黄金の剣。そして、恐ろしく大きな乳…

呉の総大将、孫堅である。

 

「孫堅!?なんでここに?」

 

「昨日言ったでしょ?援護ぐらいしあげるって。」

 

確かに言っていたが、あんな口約束を信じては居なかった。

それに戦うにも準備期間が必要なはずだ。それをたった一晩で…

 

「助かるがそっちに利があるとは思えないのだが…」

 

「なぁに。この借りは後で返してもらう事にするわ」

 

孫堅は馬から降りると剣先を呂布へ向け宣戦布告をした。

 

「貴様が呂布か、私は孫堅。悪いが貴様はこの戦場から退場願うわ。」

 

「…邪魔するなら……敵…。敵は…殺す…。」

 

「楽しめそうね!」

 

孫堅は速攻で攻撃を仕掛けるが呂布の得物に阻まれる。

攻撃しても届かず呂布の攻撃を避けるのがやっとな感じだ…

しかし、孫堅はどんどん熱くなり少しアレな感じになってきている。

 

「あははははっ!!最高よ!呂布!!」

 

「……お前…変……。」

 

「変?こんなに気分がいいのよ!変にもなるわ!!あはははは!」

 

ザンッ!ザンッ!ザンッ!ズバッ!

 

孫堅は少し狂ったように連撃を呂布に斬り込む。

ただ、がむしゃらに斬っているのでは無く…攻撃する隙が無いのか呂布は手を出さずに攻撃を受け流している。

見ている俺たちも攻撃に加わらないのは彼女の放つ気が異常だと感じ取っているからだ。

 

「恋殿ーーー!!」

 

呂布の後ろから先ほどの大声で叫びながら呂布の牙門旗を持っていた少女が走ってきた。

 

「……ねね。」

 

「恋殿!ここは撤退するです!月達も離脱準備をしているです!」

 

「わかった…撤退……北郷一刀…孫堅…覚えた…」

 

呂布が交代すると同時に火矢が飛んできた。おそらく陳宮の采配だろう…

 

「あーはっはっはっ!!くらいやがるです!今回は運が良かっただけです。次は呂布殿の本気を見せてやるです!!」

 

ですですと煩い陳宮を殿にして呂布の部隊は撤退して行った。

呂布軍は当初の通り悠々と撤退して行った…

戦としてなら勝利と言えるが戦術としては敗北と言えるだろう。

こちらの計算は全て狂わされたのだから…

 

「孫堅…ありがと助かったよ…」

 

「なぁに、私の気まぐれよ。礼はいら無いわ。ただ一つだけ言っておくわ、もっと強く成なさい。あなたの手で国を護れるぐらいにね。」

 

孫堅はそう言うと撤退を始めた。

おそらく犠牲の対価として虎牢関の突破の功を譲ってくれたのだろう。

 

「全員!虎牢関を目指し前進せよ!!」

 

虎牢関の前へ近づくと門が開き中から人が出てきた。

紫の髪の毛をした西洋の魔女の様な格好をした少女だ。

 

「は、初めまして!わ…私。龐統と、と言いましゅ…あう…」

 

「君が龐統?」

 

俺がそう質問するとコクンと首を縦に振り返答を返してきた。

 

「は、はぃ。私を…天の御遣い様の……ぐ…軍師にして下さい!!」

 

龐統をじっと見つめる。

この子は俺に士官したいというだけで敵地に入り開城の時を待っていたのかと思うと自然と断ろうとは思わなかった。

 

「ありがと、まさか軍師に成ってくれるなんて本当助かるよ。その辺の話は後でにして、一先ず入城をしてしまおう。」

 

俺は雛里を馬に乗せそのまま入城を完了した。

入城したらすぐに凪が旗を持ち城門へと駆け上がり旗を掲げた。

それと同時に俺の将兵が声を上げる。それは戦いの勝利の実感を呼び起こさせてくれるものだった。

 

それにしても…あの有名な虎牢関に俺の旗が刺さるのは少しむず痒いものだ。

戦いは勝利に終わったが少し苦い結果になったな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやー
難しいですね。呂布の凄さと状況描写の拙さが目立ってしまいました。
楽しみにしていただいている読者の皆様、大変申し訳ありません。

次は
真名を呼ぶ禁忌を犯した一刀に対する処罰と
龐統の参入により知力強化と董卓救出劇。
乞うご期待です。
龐統の


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董卓と天命

董卓救出回。
そして、長らくのお待たせ致しまして申し訳ありません。
どんどん投稿できるように頑張ります。



虎牢関陥落から2日。

洛陽を前に一刀達は一旦天幕にて軍議を始めた。

龐統こと雛里の考えや諸侯の動き、あらゆる情報を整理するために。

 

「さて、いよいよ最後の戦いだ。この戦いの前に一旦情報を再確認しよう。」

 

「はい、洛陽を前にしても董卓軍に動きがない事や霞さんの話から董卓さんは洛陽を捨てるつもりなんだと思います。」

 

雛里がそう言うと和命が反論する。

 

「逃げる?兵力で勝るこの状況でですか?」

 

「はい、霞さんの話によると董卓さんに戦意は無く寧ろ国民に被害が出る戦いを拒んでいる様ですので この状況で籠城戦をする確率は低いと思います。」

 

「だが、断定して行動したら足元を掬われますぞ」

 

「それもそうだ。だから何重にも献策と想定をする必要があるんだ。」

 

「仰る通りかと。先ずは劉備さんと馬謖さんとの軍議の際にこちらに先鋒を任せてもらえる様に話し合う必要があります。」

 

「雛里の言う通りだな。この戦いの後の為に劉備と馬謖、とは同盟関係を築いておきたいから後腐れの無い様に話をまとめる必要がある」

 

俺がそう話し終えると雛里が合図を出してきた。

 

「一刀様、そろそろ…」

 

「それでは本題に移ろう。斥候によると董卓は城壁に兵を潜ませているとの情報が入っている。」

 

俺は話しながらある木簡を前へ突き出した。

そこには【これから話す事は嘘だ。話を合わせてくれ】と書いてある。

そう、この戦いは諸侯の権力争いだけでなく各勢力の情報収集というもう一つの側面がある。

常に監視されている事を念頭におき行動する。

偽の情報を流す事によりこちらの意図を隠し尚且つ相手に誤った認識を与える事が出来る。

恐らく袁紹、孫堅、曹操、はこちらに少なからず探りを入れているはずだ。

 

「ーーーーーーと言うわけだから各員宜しく頼む。」

 

「「はっ!!(応っ!!)」」

 

それぞれ天幕から出たら木簡を持って各天幕へ向かった。

木簡にはそれぞれに指示と作戦の詳細を書いてある。読み終わったら一刀の天幕に持ってくる様になっている。

 

「さて、霞、君の役目だけど…」

 

「月の説得と退路の確保やろ?」

 

「話が早くて助かるよ。約束通り董卓は必ず助けるよ」

 

「おう、無事に一刀の国に帰れたら御礼するから楽しみにしとき」

 

作戦は定まり目的も確認した。

あとは布石を打つだけだ。俺は袁紹の元へ足を進めた。

 

「北郷さん。洛陽の先鋒を名乗り出たそうですわね?」

 

「ああ、先鋒は譲ってもらったよ。その方がいいだろ?」

 

そう、俺は既に雛里と内密に事を進めていたのだ。

袁紹の対応は問題無いが軍師の方がどう出るか、それが問題だ。

 

「良いのでは無いでしょうか?北郷殿なら役目を全うしてくれるでしょう」

 

此奴何言ってんだ

俺たちの考えがわからないとでも言うのか

いや、此奴はそんな優しい玉じゃない。

何か考えがあるのだろう。

 

「ありがたき幸せ、必ずや袁紹の名を天下に轟かせましょう!」

 

「オーホッホッホ!頼みましたよ北郷さん!」

 

……沮授の考えが読めないが。

警戒しつつこちらの目的を達成しよう。

天幕に戻ると雛里と和命が待っていた。

 

「おまたせ、こっちは何とか許可が下りたよ。」

 

「おー、さすがは一刀殿!なかなかのお手並みで」

 

「流石です!一刀様。」

 

俺は再度確認をした。

俺と雛里は先鋒へ

和命は本陣で情報収集及び伝達

 

何としても隠すものを隠し演じるものを演じなければならない。

 

入場後 袁紹の旗を掲げ

董卓を捜索包囲

霞、による説得

袁紹軍が董卓を討ち取ったと噂を流す。

町娘に扮して撤退。

 

「それじゃ出陣かな。二人とも頼むよ!」

 

「了解した。」

「はいっ!」

 

準備をし俺たちは偵察と言う名目で先鋒を進み洛陽入場を果たした。

 

「それじゃ凪、お願い!」

 

「隊長の旗では無いのが不服ではありますが、了解しました。」

 

凪と別れ俺たちは董卓がいるであろう城の方へと進んでいく。

董卓の特徴は霞から聞いていたので大方検討はついている。

 

「霞、董卓は何処にいるかわかる?」

 

「わからんけど、退路は知っとるで。」

 

「よし、んじゃまず退路を塞いでから城の方へ向かおう。」

 

俺たちはまず霞の言う退路へと足を運んだ。

正直なところもう撤退していても可笑しくは無いが

俺はまだ彼女が城内にいるような気がしていた。

 

「一刀!おったで!あれや!」

 

霞が前方の一団を指差した。

少女二人を囲むように兵隊が護っている。

一目で身分が高い人物だとわかる。

霞がすぐさま説得に入ろうと駆け寄った。

 

「月に詠!無事で良かったで!」

 

「霞!?北郷軍に捕縛されたはずじゃ。」

 

「そうなんよ、うちも負けてやる気はなかったんやけどなー。んで今は一刀に協力してんねん。」

 

「裏切ったの霞!?」

 

「いやいや、ちゃうで!だからこうして助けにーーー」

 

「裏切り者の言葉なんで信じられるわけないでしょ!!月逃げよ早く!!」

 

「………」

 

霞の説得は失敗したみたいだ。

話すらさせて貰えてないから交渉すら出来ていないか。

仕方ない俺が悪役を演じるしか無いみたいだな。

まじかー嫌だなー嫌われるの。

 

「ちょっといいかな?董卓。」

 

「は、はい」

 

「俺は北郷一刀。北郷軍の総大将だ。君はこの後どうするつもりだ?」

 

「な!あんたが北郷一刀!?」

 

軍師が喚くが無視をして董卓と対話をする。

他人から見たら尋問に見えなくも無いけど。

 

「私は、責任を取らなくちゃいけないから」

 

「君の行動は責任を取ると口にして責任を放棄してる行為だ。それに質問の答えになってない」

 

「あんたに言う必要は無い。月、こんな奴放っておいて早く逃げよ」

 

「では質問を変えよう、軍師。逃げるてどうなる?最早連合はお前らを倒す大義名分を得て何処までも軍をさし向けるだろう。戦火を広げるつもりか?」

 

「月は何もしてない!」

 

「ああ、何もしていない。殺戮は軍に任せ指揮は軍師にやらせる。確かに何もしていない。しかし、責任を負うのは総大将なんだよ。」

 

「……はい。全ては…私がわるいんです。」

 

「全ては自分責任。そんな言葉を吐く時点で君は勘違いをしてる。責任を感じているのならーーー」

 

あー泣きそうだよ……

もー無理、無理無理!

普通に対話に持ち込もう。

 

「まぁアレだ。そう言う事だから出来れば俺と一緒に戦って欲しいんだけどどうかな?」

 

「…ふぇ?」

 

「…は?」

 

後ろに目をやると霞以外が呆れ顔で溜息をついている。

 

「はぁー。隊長はこう言うの苦手やからなー」

 

「隊長の悪い癖なの」

 

「話が飛んだけど。とにかく、董卓ちゃんの意見を聞きたいんだけど?」

 

「何よ、さっきは脅してきたくせに。」

 

「軍師ちゃん。少し黙って」

 

董卓の意見を聞く大事な話なので軍師には退場してもらう。

 

「私は誰も傷つかない笑顔で暮らせる様にしたかっただけです。でも、私はもう死ぬしか道は無いと思います。」

 

「んーそっか…じゃ俺が董卓ちゃんを殺しても問題はないね?」

 

少し考えると言うより俺の目を真っ直ぐ見て彼女は答えた。

 

「それでこの世界が平和になるのなら」

 

「ま、まって!!月!!」

 

「安心しなって軍師ちゃんも一緒に殺してあげるから。」

 

俺は刀を抜き真っ直ぐ振り下ろす。

 

「ちょっ!一刀!話が違うやないか!!」

 

薙刀を構えようとした霞に真桜が耳打ちをする。

 

「姐さん姐さん。大丈夫やって、隊長を信じたりーな」

 

ザン!!

 

「月ぇぇぇえええええっ!!!」

 

…………

 

……

 

「………これで董卓と軍師は死んだよ。」

 

「ーーーーなんやそれ」

 

俺は刀を董卓と賈詡の間に突き刺さした。

脅かす為のちょっとした芝居だけどね。

 

「これで総大将と軍師は死んだから後は俺の好きな様にする。君たちは俺の軍に加わる事。はい決定!」

 

「そ、そんなの僕が許すわけないでしょ!」

 

「あー別にいいんだわ軍師の意思なんて、董卓は俺に殺されてもいいと言った。それは俺に全てを委ねた事になるから董卓は俺の軍に入れる以上。」

 

「そんな屁理屈ーーー」

 

「あーもうるさいぞツン軍師お前はどうしてたって董卓についてくるんだからガタガタ言うなよ。」

 

俺がそう言うと真っ赤にして俺を睨む賈詡。

おー怖、まぁめんどくさいけど、こうでもしないと話が進まないしね。

まぁいっか、これで霞も仲間になったし雛里だけでなく賈詡と言う軍師も加わり更に知の人材が集まった。

そろそろ時期かもな…

 

「一刀〜脅かさんといてーな!ほんまに焦ったわ〜」

 

「敵を欺くにはまず味方からってね。まぁ、でも嘘は言ってないよ。責任は生きて取らなくちゃいけないんだ。どんな重いものでもね。」

 

俺がそう言うと董卓が近寄ってきて予想外の言葉を言い放った。

 

「私の真名は…月です。」

 

「え?」

 

「ちょっ!月!?」

 

周りのみんなが驚きを隠せずにいる様だそれもそのはず先程まで俺にボコボコに責め立てられていた董卓が真名を預けるなど誰が予想出来たであろうか。

 

「理由を聞かせてもらえる?」

 

「私は、貴方に全てを預けようと思ったからです。」

 

「月!それとこれとは別の話だよ!」

 

「いえ、それが一番良い方法かと。」

 

今まで黙っていた雛里が声をあげた。

 

「董卓さんと賈詡さんの名前は多くの人に知られていますが人相までは誰にも知られておりません。寧ろ董卓は男だと言う人もいます。その名を捨て真名で呼ぶ様にすれば正体を隠せると思います。」

 

「そうゆーてもなー隊長はただでさえ難しい立ち位置やしなー」

 

「真桜ちゃんは董卓ちゃんを見捨てろって言いたいの!?」

 

「いやいや、そうはゆーてない。ただ、隊長の弱点になるっちゅーてんのや!」

 

「そうですね。反董卓から反北郷に変わる可能性もあり得ると思います。でもーーー」

 

「俺がそう望んでいるから雛里は策を考えてくれたんだよな?」

 

雛里の頭を撫でながら俺はそう言った。

雛里は顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。

 

「へぅ〜」

 

「まぁ、そうなったらなったらで曹操に士官でもするかなーあはは」

 

「はぁー心配してるうちがアホみたいやなー」

 

「でも、隊長ならなんとかしちゃうと思うの!」

 

「一刀やからなー」

 

少し雰囲気が和んだ所で次の行動に移る。

町娘に扮して撤退。

月と賈詡に町娘の服に着替えてもらい撤退を始める。

 

「んじゃ、月にツン子。この服に着替えてくれ。」

 

「こーの変態何であんたの前で着替えなきゃいけないのよ!」

 

「いやーその発想は無かったわ流石だわ。むっつりツン子」

 

「ツン子、ツン子言うな!僕の真名は詠!すごーーく不本意だけど一応預けておくわ!」

 

「あいよ、詠。んじゃ俺は外の様子を見てくる。沙和、真桜頼んだ。」

 

二人に任せ俺は外へと向かった。

外に出ると和命が放った伝令がこちらに駆け寄ってきた。

話を聞くと痺れを切らした袁紹が自分も見に行くと進軍を開始。

負けじと袁術も進軍を開始し

城門で袁紹軍と袁術軍が乱闘になったらしい。

はぁー本当に面汚しだな。

 

そして更にマズイ事に兵達が略奪などをはじめていた。

 

「下衆な事を…月と詠を逃すのは3人に任せ袁紹を止めなくちゃな。」

 

「隊長!お待たせしました。」

 

「凪か、場内に沙和達がいるからみんなで先に天幕へ撤退しててくれ。あと、兵士に指示して袁紹軍の北郷が董卓を討ち取ったと噂を流してくれ。俺は袁紹の暴走を止めてくる。」

 

「了解しました。」

 

俺は手勢を率いて略奪をしている兵士達のところへ向かった。

 

段取りとしては、証拠として1人捕まえて袁紹の前に突き出し暴挙をやめさせる。

その後、乱闘を止めるが得策だろう。

 

俺は略奪をしていた兵士1人を捕縛し袁紹の前まで連れて来た。

 

「袁紹!話がある!」

 

「あーら北郷さん。今、取り込み中ですから後にしていただけます?」

 

「袁紹の兵士が略奪をはじめている。辞めさせないと袁紹の名声に大きな傷となるぞ?」

 

「北郷殿その件は私が対応致します。」

 

袁紹の隣にいた沮授が手を挙げた。

袁紹軍の軍師なら顔も効くし鎮静化出来るだろう。

 

とりあえず沮授と現場に向かう。

現場に着くと沮授は一言「短慮無能共め…」とぼやく様に言うと少し息を吸い込み大声で言い放った。

 

「誇り高き袁紹軍が略奪を働くなど万死に値する。貴様らは即刻打ち首だ!!」

 

ええ!?マジかよ。殺すの?

 

略奪をしていた数十人が袁紹軍の兵士に連行されて行った。

 

「本気で殺しちゃうの?」

 

「ええ、斬首です。と言っても実行していた数人だけですが。」

 

「残りの者には見せしめとして恐怖を植え付けるか…怖いなあんた。」

 

「そうですか?何処でもやっている事です。人を支配出来るのは恐怖と慈愛ですから」

 

「ま、通りだな。それであれはどうするんだ?」

 

俺は向こうの乱闘を指差した。

この軍師があれをどう処理するか興味があったからだ。

 

「ああ、あれですか…気がすむまで放置ですかね。」

 

「えー、対処しないの?」

 

「ええ、誰も死人が出るわけではないですからね。それにああやって鬱憤を晴らしてるんですよお互いに」

 

「なるほどな、袁家にも色々あるんだなー」

 

「北郷殿が我等の家臣となったらお教えしますよ。」

 

沮授はクスリと笑い俺に視線を向ける。

袁紹の軍師って実は優秀だったのではないかと田豊と沮授を見てそう感じる。

 

「んー、まだ保留で頼むわー。」

 

「かしこまりました。北郷殿。」

 

沮授はそう言うと袁紹の元へと向かっていった。

俺も乱闘を避け天幕へと戻った。

 

天幕へ着くと劉備軍の面々が中にいて大所帯になっていた。

 

「どう言う事だ?」

 

「ええ?えーと…そう!戦いが終わったから御祝いをしに来ました!」

 

「鈴々は御飯もらいにー」

 

「勝手に天幕に入ってしまいすみません。戦いが終わったら雛里ちゃんと会えなくなるかも知れなかったので。お、お話をしに来ただけだったのですが…」

 

諸葛亮はそう言って流しながら劉備と張飛を見た。

 

「なるほどな。諸葛亮が行ってくると報告したら劉備は興味本位、張飛は飯に、関羽と趙雲はお守りでついて来たって事か…」

 

「大方は合ってますが星さ…趙雲さんも興味本位で来ただけです。」

 

趙雲に目をやると雛里を弄って遊んでいる。

雛里が真っ赤になっていて可愛らしい。

 

「……なるほど、まぁ同盟国なら問題ない…わけでもないが事情を知ってるからいいかな」

 

そうここに孫堅やら馬騰やらが居たら些かマズイ事になるが劉備達なら大丈夫だろう。

 

「んじゃ、月と詠の歓迎会は領地に戻ってからやるとして前祝いで飯でも作るかな」

 

「いよ!待ってました隊長!」

 

「隊長の料理」

 

「やった!御祝いなの!」

 

「チイたちも頑張ったんだから!」

 

「わーい仲間がまた増えたねー」

 

「姉さんたち落ち着いて」

 

「天ちゃんはいつも楽しそうだね。」

 

「一刀の飯か!ええな!」

 

周りがギャーギャー声を上げる中。緊張か、思い詰めてか静かにしてる月と詠。

 

「二人ともまだ信用も出来ないと思うし慣れないと思うけど。うちはこんな感じだから気にせずくつろいでよ。」

 

「お気遣いありがとうございます。北郷様」

 

「もっとくだけて一刀でいいよ。そっちの方が嬉しいな。」

 

「では一刀様で 。」

 

「うん、わかったよ。月」

 

俺は調理をしに天幕を離れた。

一刀が居なくなると空気は一変し月と詠に話題が集中した。

 

「ねぇねぇ、月ちゃん!何で隊長に真名を預けたの?」

 

「それうちも気になってたんや!実際のところどうなんや?」

 

「ちょっと!僕たちは強制的に真名を預けた事を忘れたの?」

 

「いやいや、偽名を作るって手もあったはずやろ。詠?」

 

「うううう〜」

 

「一刀様との出逢いを天命だと感じたからです。」

 

「ほう、天命ですか。」

 

「ねぇ人和、天命って何?」

 

「チィ姉さん…天命は天からの使命とか宿命っていう意味。」

 

「ふぅーん、天命って事は天からこの人についていけーって言われたって事?」

 

黄巾党ズの話の後

月はゆっくり確信を持って話始めた。

 

「私は、もう諦めていました。全て私の所為だと…私は死ななければいけないと生きる事さえも諦めていたんです。」

 

「そんな私に対して一刀様の言葉は私にとって辛く厳しいものでした。ですが同時に自分を正しく見つめることが出来たんです。」

 

「自分を正しく見つめる…か…」

 

「そんなに酷い言ったの?北郷さん!?」

 

「酷いってもんじゃ無いわよ!彼奴最低最悪の男だわ!」

 

「でもそれで月さんは自分を省みる事が出来たという事ですか?」

 

関羽、劉備、諸葛亮は真剣に話をする。剣を交えた相手、同盟相手、そして親友の仕える相手。

3人とも一刀の一挙手一投足を確認するかの様に聞き入る。

 

「はい。私は…私で無い何かに縛られていたんだと思います。王としての立場、責任。私はそれで自分を縛り嫌いになってました。心の中では昔の様に詠ちゃん達と楽しく暮らしていたいと思いながら。」

 

「……月」

 

「…そうだったんだね。」

 

詠と劉備が重ねる様に相槌をうつ。

彼女達も少なからずそう言う思いを持っているのかも知れない。

 

「一刀様が刀を振り下ろした時本当に、死ぬつもりでした。でも死んで楽になっても責任を取る事にならないと言い一刀様は私の鎖を奪い一人の人間として向かい入れてくれました。」

 

月の話を聞き皆が一刀の小芝居の意味を理解し感動に近い感情を抱いていた。

 

「一刀様はこれからも私の様な人間を多く救う天の御遣いとして生きていくんだと思います。そんな一刀様の近くで少しでも助けになりたいと思ったから真名を預けたのです。」

 

「一刀は月を助けたちゅーわけじゃなく月を救ったんやなー。ホンマ凄いで一刀は。」

 

「流石、隊長だ!」

 

「少し気障なところもあるけどそれが隊長なの!」

 

「何をしても人を救っているんやなー。大したもんやでホンマ。」

 

「私も一刀だーい好き!」

 

「確かに、一刀さんはそう言う人よね」

 

「流石ちぃの見込んだ男ね」

 

その頃調理場では、とある人物が一刀の調理を邪魔していた。

 

「こーら!一刀!早く肴を作ってよー!!」

 

「はいはい、雪蓮の分も作ってるからちょっと待ってて。」

 

「よろしい!でも、早くしないと次の樽に手を出しちゃうかも〜」

 

どうしてこうなった…

時間は3刻ぐらい前に遡る。

俺は天幕を後にして調理場へ向かい

調理を始めた。

1刻弱経った頃後ろから声をかけられた。

 

「貴方が北郷一刀?」

 

「違います…人違いでは?」

 

何と無く直感で面倒臭い感じがしたから、とぼけてその場を終わらせようと試みた。

 

「ふーん、嘘つくんだ?」

 

「いやいや、初対面だよね?」

 

「軍議で見てたから3度目かな?」

 

「…すみません。嘘つきました。」

 

バレました。

嘘はつくもんじゃ無いなー。

 

「ねぇ一刀って呼んで良い?」

 

「いいけど、君は?」

 

赤いチャイナ服の様な服と桃色の髪。

孫堅に関係する人間かな?

 

「私の事は雪蓮と呼んで」

 

「一応聞くけど名はなんて言うの?」

 

「秘密!」

 

「普通、逆じゃ無いの?」

 

「私が認めたんだからいいの!」

 

「会話したの初めてだよね?」

 

「私、勘がいいの!だから、貴方に真名を預ける!」

 

「んじゃ、雪蓮さん。」

 

「しぇーれーん!!」

 

「しぇ、雪蓮。」

 

「なーに、一刀!」

 

「用が終わったならお引き取り願いたいのですが…」

 

「やーよ、だって面白いしこれ美味しいんだもん。あと敬語禁止」

 

雪蓮は台に置いてあった酒のつまみを食い始めた。

 

「おい、それは皆んなに持って行くやつだから勝手に食うな!」

 

「一個や二個じゃわからないわよ」

 

「既に倍以上食べてるだろ。」

 

「だってお酒に合うんだもん!」

 

「わかった!雪蓮の分も作るから少し待ってくれ。」

 

雪蓮が食べている皿を取り上げ

天幕へ運ばせる。

 

「うん、待ってる!」

 

「待ってる間も飲む気か?」

 

「もっちろん!お酒は人生の友だもーん!」

 

そして今に至る。

 

「マジで洒落にならない量だから。孫堅に請求するからな」

 

「送っても意味無いと思うわよ。」

 

「伝令!伝令ーー!!」

 

「ちょっと待った!!」

 

俺が伝令を呼ぶと雪蓮が大きな声で口を抑える。

 

「意味無いんだろ?」

 

「ぶー、一刀の意地悪。」

 

「雪蓮は孫家の誰かだろ?見た目と風格でわかるよ」

 

「食えないわねー本当」

 

「自主的に帰るか強制送還。雪蓮はどっちがお好み?」

 

「むー、わかったわよ帰る!」

 

雪蓮は回れ右をして歩き出した。

 

「雪蓮!」

 

「何よ!」

 

俺は一本の酒とツマミの入った木箱を投げた。

 

「また今度!」

 

「ええ、またね一刀!」

 

はぁー、何だか嵐の様だったな。

まぁいいや遅くなってしまったけど皆んなに料理を持って行こう…

 

長かった1日が終わり緊張感が切れたのか寝てしまう将達もいた。

俺はある事を確認する為、内密に諸葛亮を天幕まで呼んだ。

 

「北郷さん。話とは何でしょか?」

 

「一応聞いておきたいんだけど、天子様って今、劉備の陣営にいるんでしょ?」

 

「な、何を根拠にそんな事をおっしゃるのですか?」

 

「反董卓連合が勝利した時点で天子様を発見すれば一気に名声と風評を手に入れられてる。しかし、全軍誰しも天子様の事を触れようとして来ない。いや、あえて触れていないんだろうね。」

 

「曹、袁、馬、孫、劉、公…連合に参加した諸侯ならこの実は逃しはしないはずだよ。ただ、劉備を除いてね。」

 

「しかし、それは証拠には」

 

「戦場では神がかった策を弄する諸葛亮も言葉の駆け引きは苦手のようだね。まあ、こっからは独り言だから…」

 

「…」

 

「天子様を出来る限り中央から離して差し上げて欲しいんだ。なりふり構わず天子様を護ろうとして月は結局全てを失ってしまった。正しい人が犠牲になる事なんてあっていいわけがないんだ…」

 

「もし、私達が天子様を帝へ戻し天下へ名乗りを上げたらどうしますか?」

 

「その時は理想を抱いたまま消えて貰うよ。俺にどんな汚名が浴びせられようと…」

 

「何故そこまで天子様を御守りするのですか?」

 

「月が護ろうとしたものだからだよ」

 

「!?」

 

「先程まで敵だった者の思いを背負っていると言うのですか?」

 

「それだけじゃないさ。でも、それが俺の天命だからね。誰も傷つけないとか夢を語るより、行動で示して行く。それが天の御遣いとしての責務だと考えてるんだ。」

 

「正しい世界を作る為の行動ですか。」

 

「だから、最低限の戦いしかしたくないんだよね……長々と独り言を話してごめんね。話せて良かったよ。」

 

少し強引に話を切り俺と諸葛亮はみんなの所へ戻った。

 

宴会が終わり時間は丑の刻を回っていた。

一刀は1人天幕でこれからの事を思考し、先の行動を模索していた。

そんな一刀の天幕を尋ねてきた者がいた。

 

「あ、あの!」

 

「だ、だれですか?」

 

「一刀様。月です。」

 

天幕に来たのは月だった。

 

「ああ、入って!」

 

「失礼します。」

 

「こんな時間にどうしたの、眠れない?」

 

こんな時間って言うのは変かもしれないけど時間は、丑の刻を回っている。

普通、月ぐらいの子は寝ている筈だ

 

 

「いえ、一刀様とお話をしたいと思いまして。」

 

「そっか、俺も月に色々聞かなくちゃいけなかったから丁度良かった。」

 

一刀がそう言うと月はお辞儀をして天幕へ入り目の前に座った。

 

「そんな仰々しくしないでよ。」

 

「すみません、癖のようなものなので」

 

「諸葛亮と話してた時、天幕の前にいたでしょ?」

 

「はぃ、一刀様と諸葛亮さんが出て行くのが見えたので…その…」

 

「天子様の件はあまり知られない方が良かったし劉備より舵を握っている諸葛亮に釘を刺しておきたかったからさ…ごめんね、心配しちゃったかな?」

 

「い、いえ。その一刀様にそこまで考えて頂いてお心遣い感謝致します。」

 

「固い!固過ぎるよ、虎牢関の守りぐらい固いよー月。」

 

「申し訳御座いません。一刀様を前にすると緊張感してしまって…」

 

あれ?笑う所なのに真返し…

んー何とか肩の力を抜いて欲しいんだけどなー。

 

「そっか少しずつ慣れていってね。月に聞きたい事があって天子様の他の将達はどこへ行ったの?」

 

「それはーーー」

 

月は自分が多くの血を流し天子様の周りを浄化させようとした事。

何進達の行方などを説明した。

ゆっくり何かを確認するかの様に話す姿は罪を懺悔している様にも見えた。

 

「なるほどね。何進達は他の群に逃亡した可能性が高いね。差し迫った問題にはならないか…」

 

何進達が声を上げ反何進連合か反劉備連合に発展する可能性もあるが…しかし、月の話だと身の保身を第一としているのならそんな愚行は犯さないだろう。寧ろ…

 

一刀が1人で考えていると月が一刀に質問を投げかけてきた。

 

「一刀様は何時もこの時間まで政務をなさっているのですか?」

 

「んーまぁ政務と言うか一人会議かな。」

 

俺がそう言うと月は淡々と話し始めた。

 

「一人で何事も背負ってしまうのですか?」

 

「んー、皆んなにも結構頼ってると思うよ。でも一人で考えなきゃいけない事もあるんだ。天の御遣いなんて言う業、誰にも背負わせたくないから」

 

「一刀様。私は一刀様の道を共に歩き付けたいです。一刀様に助けられた時に私の天命が決まったんだと思います。」

 

「そっか、ありがとう。大変だったよね、もし辛い事とかあったらすぐに言ってね、おやすみ」

 

「はい、一刀様。おやすみなさい。」

 

月はそう言って部屋を出た。

んー確かに無理し過ぎかな?

そろそろ寝よ…

元の世界とは違い日々死と隣り合わせの戦場にいる所為か全然疲れが出ない。

もしかしたら緊張してるのかな。

しかし、帰ったら色々と大変だろうな…

 

そう考えながら、一刀は意識を手放した。




読んで頂きまして誠にありがとうございます。
若干表現が拙い所為で空気になってしまっているキャラもありますが何とかしていきます。

次回は富国強兵を図る一刀の所に思いもよらない伝令が!?乞うご期待!!

p.s
恋姫 蒼天の覇王面白い!
しかし、絵に若干抵抗があるキャラが(笑)
次は呉ですがとても楽しみです。
出来れば死なないようなルートがあって欲しいものです。


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その国は大和

大変、大変長らくお待たせしました。
革命呉に時間と精神を削られておりました。
なかなか時間をうまく使えず、皆様には多大なるご迷惑をおかけしております。
頑張ります。


反董卓連合解散後俺たちは一時的に洛陽に留まり黄巾党の残党と一部の暴徒(袁紹と袁術軍)の所為で荒れた街の復興をしていた。

 

全く、本当に袁紹軍に身置いていて良いのか考えさせられるぜ…

 

「あ!北郷さん!」

 

声をかけてきたのは劉備だった。

昨日の酒盛りの後。殆どが二日酔いでうな垂れていたので俺たちの天幕に寝かせていたのだ。

朝無事に起きれたのは、月、詠、霞の三名のみだったので

仕方ないが4人で炊き出しをしている。

 

「二日酔いはもう良いのか?」

 

「はい!もう大丈夫です。北郷さんも大丈夫ですか?昨日私達より遅かったですよね?」

 

「まぁ、いつも通りだよ」

 

一刀はそう言って汁物の調理に意識を戻した。彼なりの拘りがあり、丁度いい状態で具材を入れて料理したいのだ。

 

「今、炊き出しをしてるんですか?手伝います!」

 

正直では足りているから休む様に言うつもりだった一刀だが予想以上に近い距離でグイグイと接近され思わず口を零してしまう。

 

「ああ、ありがとう。それなら向こうを手伝ってあげて」

 

「わっかりました!」

 

劉備は月達の方へ走っていった。

正直向こうも手が余っているだろうと思うが

俺の身に何かあった場合、劉備の所へ降るのが最善。

ならば、将と将の交流は多い方がいい。

まぁ、咄嗟の判断にしては我ながら良い判断だな。これから乱世は更に深まって行き情勢は不明瞭だ。

俺がいつまでこちらに居られるかわからない以上歴史に名を残している劉備に近づいて居た方が彼女の未来は少しは長くなるだろう。曹操や孫堅とも考えたが月達を受け入れるというより利用しようと考えるだろうからな。

 

「ほう、君主自ら炊き出しとは中々味な事をする。」

 

考えながらスープに具を入れていると

思わぬ人物から声をかけられた。

 

「まさか、こんなにいきなり来るとは思っても見なかったよ…孫堅さん」

全然気を感じなかった…

 

「あははは、何分暇なのでな北郷と次の段階の話をしに来た。」

 

目の前に現れたのは、孫堅だった。

決戦前夜に話していた件の続きだろうか。

 

「ははは、暇だからね。」

 

「帰っても、溜まっている政務やら何やらがあるのでな!」

 

「それは暇じゃないでしょ!早く帰った方が良いでしょ!」

 

「そうだな、政務も必要な事だが北郷との対話も今後の我々に必要な事のだ。」

 

「…随分と含んだ言い方だね。次の段階ってどういう事?」

 

「何、簡単だ袁紹との契約期間は残り僅かであろう?それまで我らと同盟を組んでくれないか?」

 

「かの有名な孫呉と同盟を組めるなんて有難いけどそっちに利益があるの?」

 

「ある、大いに。」

 

「参考までに教えて頂きたいのですが」

 

俺たちと同盟を結ぶメリットを知っておけば今後の駆け引きに使えそうだ

 

「それは同盟を結んでからだ」

 

「ですよね。その同盟の条件は何?」

 

「ふふ、二つ返事を期待していたが中々食えんな…条件は一つ…江東で同盟の義を行う。二つ…年に何回か江東へ訪問する事。この二つだ。」

 

勿体つけた割に随分と軽い条件だった。いや、寧ろありがたいと言えばありがたいぐらいだ。何か裏がありそうだけどね。

只々、江東に行く事を袁紹が許すかな…

 

「わかった、それでいいよ。ただ少し時間をくれないか?少しこの街に留まった後袁紹に許可を貰わないと動けないからさ」

 

「構わん、待っているぞ」

 

そう言い残し孫堅は去っていった。

と思いきや孫の牙門旗を持った何人かの兵が兵糧を持ってきた。孫堅からの手土産らしい。俺たちと同じ事を考えて居たんだろうか。

 

本当に助かる。正直、袁紹はケチだからそこまで兵糧をもらえなかったんだよな国力はあるはずなのに…

 

「一刀様。こちらは終わりました。」

 

「本当、人使いの荒い奴ね。」

 

「いや、君には何も頼んでないけど?」

 

「うっさい!!」

 

「あーはっはっはっ!!賈っち一本取られたな。」

 

「いや、事実を言っただけなんだけどなー。あ、劉備もありがとう!」

 

「いいえ、私達も炊き出しをしたいと思っては居たのですが兵糧が少なくて汜水関で精一杯でした。」

 

汜水関でも炊き出ししたのか、流石は仁徳と名高いあの劉備と言うわけか。

でも、戦いが終わっていないあの時にその選択をしてしまう劉備はちょっと王としては問題だな…近づく相手の選択を間違えたか?

 

「北郷さん?」

 

「ん、ああ、ごめん考え事してた。そろそろみんなを起こしに行こう。」

 

それから俺たちはこの街に2日〜3日滞在した。

狙って居たかの様に新たな領主が決まり俺たちは炊き出しをやめ、帰る分以外の兵糧を街に置いて城に戻る事にした。

他の街の復興もそうだけど俺が知る三国志で言う乱世の始まりが見えてきた事もあり拠点の護りを固める必要があると考えたからだ。

 

「なぁ隊長。」

 

「ん、何だ真桜?」

 

「ほんまにこれで平和になるんかいな」

 

それは素朴な疑問だった。

世を乱した董卓は表向きは死んだ。だが、この戦いの本質は世の為ではなく私利私欲…乱世の始まりの鐘に過ぎない事を俺は知っている。

嘘を言って気を抜くよりは現実を伝え気を引き締める方が良いだろう。

せめて此処にいる仲間だけは志を同じくしていかなければならないからな。

俺のせいで死んでいった者達の願いを背負って…

 

「んー、ならないだろうね。」

 

「えー沙和もう戦いたくないの〜」

 

「こら、真桜!沙和!そんな事を隊長の前で!!」

 

「いいんだ、凪。戦いたい者もいればそうでない者もいるそれが人だよ。だからこそ戦う意味や理由が必要なんだ。死んでいった者たちの分も俺たちは生きて平和な世を創らなければならないんだ。」

 

「はい、隊長のお気持ち痛いほどわかります。」

 

「ありがとう…頑張らないとなぁ、俺たち。」

 

「一刀様の様な方ばかりでしたらすぐにでも平和な世が出来ると思うのですが。」

 

「そんな簡単な話じゃないわよ。人間にはそれぞれに考えや信念があるんだから」

 

「せやな、誇りちゅうのは命より重いからなぁ」

「それでも一刀様の願いを果たすのが私の使命です。あぅ」

 

言ってて恥ずかしくなったのか目の前で俯いてしまう雛里。

自然と頭に手を乗せて撫でてしまう。

俺の前に座る雛里を撫でていると背中から殺気の様なものを感じた。

うん、気のせい気のせい。

 

「隊長ー。みえてきたでぇー」

 

「はぁー帰ったら暫く休みたいなー」

 

「隊長、恐らく政務が溜まっているかと」

 

「凪ちゃん真面目過ぎなの〜」

 

「一刀様、私も手伝いますので…あの…頑張りましょう、へぅ」

 

「ありがとう雛里。」

 

お礼を言いつつ頭を撫でてあげるとまた下を向いてしまう。

あーもう!可愛いな!!

さっきとは別に若干周りから痛い視線を感じるけど気にしない!

 

俺たちが戻ってすぐに袁紹から使いの者が来た。

 

内容が復興の目処も立ったのでそろそろ配下に加わらないかと言う内容だった。

この時期にこの話をしてくると言う事はすぐに戦を始める気だと考えた俺は一旦同盟にしてもらう為の交渉をしに袁紹の元へ向かった。

 

疲れが取れていない状態での強行軍…しんどい…体調的にも精神的にもあまりいいものではないけど此処は逃げちゃダメな所だ。

救いなのはみんなが来てくれる。

拠点には正体がバレたらまずい月と詠、

軍師として雛里、あまり表立って活動できない黄巾4姉妹、新たに召しかかえた知将、王経を残してある。

 

数日で着くからまぁ遠くは無いけれど大変なんだよなーこの時代の移動手段って…

だって馬だぜ。お尻が痛い痛い…

 

冀州まであと少しのところで俺たちは夜営する事にした。

冀州に入ってしまうとどこで監視されてるかわからないからだ。

袁紹がそんな狡猾な事は出来ないだろうがあの軍師は底が読めない。

本当恐ろしい奴だ…

 

「あー緊張する。」

 

「しっかりしいや!一刀。建国の第一歩なんやろ?」

 

「わかってるんだけど、下手したら全員敵になるかもしれない所に行くのは正直、嫌だよ。」

 

「沙和、ちょっと怖いけどみんなと一緒だから平気なの!」

 

「せやな!隊長がおればなんとかなりそうやしな」

 

「隊長、私達は何処であろうと共に行きます。」

 

たった数十人で敵国へ行く事がどんだけ無謀な事かは分かっているつもりだ。

正直ビビっているけどこれをやらなければ属国のままになってしまう。

 

俺は平和な国を作る事それが俺の為に散っていった者達に報いる唯一の方法だと考えた。

その為に袁紹の庇護下にいる状態から自ら君主として建国する必要がある。

しかし、あの袁紹にも恩はある。

だから、その義理を果たす為に袁紹と同盟を結び、属国とは別の形で恩義に報いるつもりだ。

 

「悩んでても仕方ないな。今はできる事やるだけだな。」

 

「その通りです!隊長!」

 

「明日は気張らなあかんからな、しっかり体を休めとこ!」

 

「夜更かしはお肌の敵なの〜」

 

「早いとこ寝るで!」

 

皆んなが寝静まった頃を見計らい目を開けた。

寝たふりでやり過ごしたが俺は眠れなかった。

天幕から出て空を見上げながら考えていた。

歴史は狂う事なく動いている。

死ぬ筈の者を生かし歴史を確実に改変しているにも関わらず大局は物語を書き換える事なく続いている。

もし俺のやってきた事が意味を成さないとしたら……

そもそも歴史を変えてしまったら現代の俺はどうなるのか?

あるいは未来に帰るのか?

御遣いの役目を終えたら俺は消えるのか?

そもそも乱世を鎮めるは俺が居なくても出来るのではないか?

そんな疑問が浮かんでは消え浮かんでは消えていく。

不安故なのか…

何かを諦める為のなのか分からないが…

 

ただ一つ言えるのは他の人間に害が及ぶより自身が滅ぶ可能性が高いという事。

 

何故なら俺が別世界の人間だから…

その結論は俺の心にそっと小さな影を落とした。

 

朝、俺たちはすぐに袁紹の元に使いを出し

袁紹の本拠地に足を踏み入れた。

街は意外にも活気があり、民達が喜んでいる風に見える。

約定に従って高い税を辞めてくれたのかな。

 

城門の前で斗詩が俺たちを出迎えにきていた。

 

「一刀さーん!」

 

「斗詩、久しぶりだね。」

 

「はい、一刀さんも皆さんもお変わりない様で!」

 

斗詩はそう言うとささっと城へ通してくれた。

道案内として迎えを寄越したのか、罠なのか。

斗詩の善意だけなのかもしれないが状況が状況なだけに疑心暗鬼になってしまっている。

まぁ、仲間の命を背負う君主なんだそれぐらいが丁度いいのかもしれない。

 

しばらく歩くとあからさまに豪華な扉の前で斗詩は足を止めた。恐らく謁見の間だろう。

 

「麗羽様は既にいらっしゃいますので、どうぞ」

 

扉を開けると中規模ライブぐらい出来そうなほど広い謁見の間が目に飛び込んで来た。

俺たちの城とは比べ物にならない広さの部屋に圧倒的な国力の差を見せつけられる。

 

「あーら、北郷さんお待ちしておりましたわ。」

 

一刀は袁紹からの挨拶を皮切りに気持ちを切り替えた。

 

「大変お忙しい中、お時間を作って頂き有難う御座います。袁紹様より頂きました書簡を拝読し参上致しました。」

 

「書簡?私は出しておりませんわ」

 

「麗羽様、あの件で私が出しました。」

 

横で沮授が耳打ちの様な進言をした。

袁紹の名前を勝手に使ったと言うことになるがそこはどうでも良いのだろうか…

 

「そーでしたわ!北郷さん。そろそろ私の配下になる返事を聞かせて頂きたいんですが?」

 

「その件で恐れながら提案が御座います。この度、私北郷一刀は、君主同士の同盟を結ばせて頂きたく参上致しました。配下ではなく盟友として軍列に加わりたく存じます。」

 

俺がそう話しをすると沮授は、不気味な笑顔を浮かべ袁紹に耳打ちをした。

袁紹は沮授の方を見て再度、一刀を見た。

そして数秒の沈黙の後、袁紹は口を開いた。

 

「いいですわ。但し条件があります。」

 

「こほん、一つ我が軍の将軍を一名客将として迎える。一つ定期的に我が領内へ訪問をする。一つ他国との衝突があった場合、共同で事に当たる事。以上の3つを盟約にするのは如何かな?北郷殿。」

 

タダでとは考えてなかったがまさか、軍事まで盟約に盛り込んでするとは。

やはり、天下を狙っているのか袁紹は…

 

「……一つ問いたい。この盟約を交わすと言う事は袁紹軍は何処かの国に宣戦布告を受けているのか?」

 

「そうではなく、あったらの話ですよ北郷殿。」

 

沮授はそう言って俺の前へ降りてきた。

そして、小さい声で耳打ちをした。

 

「従ってくださいませ。この盟約は北郷殿を縛る為のものではありませんのでご安心を…」

 

確かに沮授はそう言った。

この条文の何処が縛るものでないと言うのだろうか?

それともこの盟約の裏に何かがあるのだろうか…

 

「それはどう言う事?」

 

「時機にわかります。そう遠くない未来で」

 

「わかった。どうせ選択の余地は無いんだ。なら君を信じるよ。虎牢関でも助けてくれたしね。」

 

「ふふ、ありがとう御座います。」

 

沮授はそういうと立ち上がり袁紹に条文を持って上がって言った。

そして、彼女は袁紹に耳打ちをし袁紹の隣に立った。

彼女が定位置に移動したのを確認すると袁紹は声を大にして言い放った。

 

「北郷さん!貴方の申し出をお受けいたしますわ!私、袁本初の名の下に北郷さんと同盟を結びますわ!」

 

その言葉を聞くと後ろに控えている。凪達が一斉に跪いて頭を垂らした。

それも効果音でザッと聞こえてきそうな勢いで…

格式なのかそう言うものなのかは知らないけどとりあえず俺も真似した。

 

「皆さん、これからは盟友ですわ!ささやかですが宴を用意致しましたのでどうぞ彼方の部屋へ。」

 

俺が立ち上がりみんなの方を向いた瞬間袁紹から呼び止められた。

 

「ああ、北郷さん。風歌さんが貴方と話がしたいそうですわ。」

 

「…わかった。」

 

個別の呼び出し!?

これは何かある。

 

「隊長。大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。少し話をしてくるわ」

 

一刀は沮授に導かれるまま謁見の間を後にし軍議を行う様な部屋へと入っていった。

大きな机を間にして一刀と沮授は相対するように座った。

最初に口を開いたのは沮授だった。

 

「早速ですが北郷殿。北郷殿の国の名前は如何するのですか?」

 

「いきなりだね。でもさ、朝廷が居るのに国を建てるって不味く無いの?。」

 

「北郷殿も気づいているのでしょう?最早、朝廷に力は無く、形のみだと言う事を…」

 

彼女は朝廷の擁護を掲げる袁紹とは全く別の話を始めた。

 

「各諸侯の領土争いの時代が見え隠れしております。董卓の敗走後、諸侯達は均衡を保てないでしょ。あの戦いでお互いの力を知ってしまいましたから」

 

「だからこそ、今建国し名を示すって事?」

 

「そうです。新たな国が出来て同盟を結ぶ相手が最大の軍事力を持つ勢力ならば民や物資が集まるでしょう?」

 

確かにこの時代に警察は無い。強い者の庇護下に入れるか否かで人生左右される。

彼女の意見には歴然としたこの時代に置いての利がある。しかし、この話だとまるで俺たちを大きくしようしている様に感じる。

彼女の意図が読めない…

 

「わかった。実は国の名前は大和に決めてたんだ。」

 

「大和ですか。良い名ですね。」

 

国名を沮授に伝えると要件は終わった様で沮授は立ち上がり出口へと足を運んだ。

それを確認し俺も席を立った。

誘われるままに部屋から出ようとした時付け足す様に沮授は言った。

 

「それから一刀様。これからは私は風歌とお呼びください。」

 

「風歌さん?」

 

「いえ、風歌です……」

 

後でわかった事だけど、客将としてくる袁紹軍の将は風歌だった。

自分の右腕の軍師を客将にするなんて正直理解に苦しむわ。

 

 

 

 

 

 




ようやく建国しました。
名前は使い古されていますがしっくり来る大和です。
一刀君がこれから進む先で袁紹との関係はどうなるのでしょうか?
乞うご期待です。


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均衡は脆く崩れる。

2018年中に一話投稿したくて
途中ですが載せます。


天の御遣いが国を作った・・・・・・

 

その事実は多くの民達を大和に集めた、俺たちの想像を遥かに超える程に民の受け入れに日々追われていた。

住居、食糧、仕事、可能な限り民望を聞き受け入れを行っていった。

沮授には客将としての領分を超える程助けて貰っている。俺たちなんかより広大な領地を有した国家の軍師と言うのはやはり凄い。

沮授…風歌は想像以上に人を指揮する事に慣れており、俺が聞いていた袁紹の内政とは違うやり方をしている。

他の軍師を立てつつ俺の意向を第一に汲みとり献策をしてくれる。

俺たちに対しての風歌の溶け込み方は正直恐怖を覚える程だ。

 

「一刀様。いかがされた?」

 

「え?ああ、ちょっとね。」

 

いかんいかん、政務中なのに考えにふけってしまった。

だってそうだろう?こんな優秀で容量のいい軍師を他国に渡して置いて本国は回るのかなーと思うじゃん。

 

「それはそうと、そろそろ情勢に動きがあるかもしれませんよ。一刀様。」

 

「動き?また、戦争が始まるって事?」

 

「一刀様もお気付きのはずです。帝に従う形で領地を広げている曹操殿、水面下で動く孫策殿、一刀様と同じく民心を集める劉備殿、不可能とされた西涼を統一した馬騰殿、未だ行方不明の呂布殿、そして、我らが君主 麗羽様…最早、誰が先に動くか様子を伺っている状態です。」

 

既に勢力の均衡は保てていない。

各勢力は戦いの準備をしているのだろう。

それが攻めの為の者もいれば守りの為の者もいる。

この緊張している状態がいつまで続くのかわからないが少なくとも風歌はそれがもうすぐ崩れると考えてるようだ。

 

「なら、こっちも準備をしなくちゃいけないかな?」

 

コンコン

 

「一刀様、いらっしゃいますか?」

 

「馬鹿ね、そんな事を言っている暇わないわよ」

 

「失礼しますぞ。」

 

いきなり、雛里、詠、和命の3名が訪ねてきた。何やら焦っているように伺える。

扉を閉めた瞬間に詠が話し始めた。

 

「袁紹が動いたわ…手始めに公孫瓚を攻めるつもりみたいね。報告だと遠征軍を準備しているらしいわ。」

 

「やはり、抑えられませんでしたか…。この均衡を破るのが麗羽様とは嘆かわしい…。」

 

「既に国境を越えていると考えるられますな。さてさて公孫瓚殿はどうするか…」

 

「恐らく敗走は免れないでしょう。そして逃げた先で新たな火種となる筈です。」

 

袁紹は公孫瓚を足がかりに何処まで領地を広げる気なのだろうか。

やはり勢いをつけて曹操か

それとも劉備か張燕か…

 

「一刀様。戦の準備を始めた方がよろしいかと…恐らくこの機に乗じて弱小勢力は領地拡大の為に行動を始めるでしょう。」

 

「それじゃあまた、多くの人が…」

 

「それは守りきれたものの苦悩です。この競争に負けたらそれすら失うのですから」

 

そう言って風歌は書簡を広げた。

そこには公孫瓚の撤退経路と袁紹の進軍経路が示されていた。

これを見せるという事がどういう事なのか風歌に対し軍師達は詮索を巡らせる。

 

「成る程ね。初めから決めていたって事かしら?(この情報が嘘なら更に隠された策があるはず)」

 

「いえ、この書簡は大和に来てから私の考えを起こした物です。」

 

「そうですか。では公孫瓚さんが劉備さんの国に逃げると言う根拠は何ですか?」



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