学戦都市アスタリスク 愚者の足掻き (kurasuta)
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序幕 意志復元 プロローグ&オリ主紹介

 あらすじの通り初投稿です。

 妄想です。

 生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。

※何で投稿したと言われるかもですが作者は豆腐メンタルです。アンチ、批判は控えて下さると嬉しいです。(改善点、アドバイスはどんどんお願いします)


 かつて、ここには目的があって来た。

 

 

 人には目的があるべきだと、俺は思っている。

 

 

 なぜなら何をするにしても、その到達点がなければ、その意義を見失ってしまうからだ。

 

 

 目的も無く、ただ物事をこなすだけの存在。それはもはや作業でありそれをこなすものは……機械とどう違うのだろうか。

 

 

 別にそれで他人を嗤って、そして押しつける訳ではない。それ以前に深く考えるようなことでもないのかもしれないが……。

 

 

 だが、自分には類稀な才も、選ばれた地位も……そんなものは何も無い。

 

 

 だからせめて、自分は目的だけは失いたくないと……そう思っていた。

 

 

 ただの日常でも……いやただの日常だからこそ、何故自分がここにいるのか分からなくなるだろうから。

 

 

 だがそれは、もう失くしてしまった。 

 

 

 絶対に失ってたまるかと、そんな想いなどいざ知らず。現実は、無慈悲に、それを奪っていった。

 

 

 そこにあったのは失意、絶望、そして喪失感。

 

 

 ──何故、俺は戦っていたのか。何故、俺はここにいる? ああ、これからどうすればいい……。

 

 

 元々のネガティブな思考もありそんな負のスパイラルに陥っていく……。

 

 

 そんな少し前のことを思い出していたとき、思考に割いていた意識が、不意に引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ。ねぇってば。……聞こえてる?」

 

 

 俺はハッとして反応する。どうやら先程から話しかけられていたらしい。相棒である少女が、自分の肩を揺さぶっていた。

 

 

「……あぁ、すまん。ちょいと前のことを思い出してたわ」

 

 

 その事に対し、少女は不思議そうに見つめてくる。

 

 

「へぇ、めずらしい。何を思い出してたの?」

 

 

「お前と会って半年位のことだな」

 

 

 それは自分を踏み留まらせた……目的を失くした俺が得た、せめてもの意味。

 

 

「なつかしいね。あの時の君の顔と言ったら」

 

 

「わざわざ思い出さなくていい」

 

 

 バツが悪く適当に反応する。少女は思い出して笑うが、俺にとっては大事なことだが黒歴史だ。あまり茶化されたくはない。

 

 

「言ったのはそっちだからな。とことん付き合ってもらうぞ」

 

 

「うん、意味ならあげると言ったのは私だからね。責任はとるよ」

 

 

 容姿とは裏腹に頼もしげに、だがあくまで静かに少女が答える。俺が女なら惚れてるな。生憎と俺は男だが。

 

 

 意味ならあげる。それは、辛うじてやっと意味を見いだせる蜘蛛の糸のような、だがそれでも、自らを救ってくれたロープのような言葉。

 

 

「ただ……、それはそれとして何かご褒美はほしいかな」

 

 

「後で何かしてやるよ……。……はぁ」

 

 

 相変わらずの様子に呆れながら答える。今から大舞台に立つと言うのに緊張感がどっか行った気がするが、まぁいつものことなので別にいい。

 

 

 それにどうなろうと、最後は勝てばいい。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 目を閉じて深呼吸をし、気をひきしめる。

 

 

 そして目を開けると、そこには既に先程の少女の姿は無く、あるのは自分が使用する武器だけだ。

 

 

「んじゃー行くぞ。……ニア」

 

 

 そう言って俺は、自分の《純星煌式武装(オーガルクス)》を手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も持たぬ愚者の足掻きが、今始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリ主紹介

 

 イメージ:空(ノゲノラ) Cold Sun(Aimer)

 

 永見行人(ながみゆきと) 男 

 ・身長:170cm

 ・血液型:O型

 ・誕生日:5月14日

 ・所属:星導館学園高等部2年

 ・序列:星導館学園七位→序列外

 ・煌式武装:複合型純星煌式武装《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》、短剣型煌式武装、銃器型煌式武装など

 ・二つ名:聡明な愚者(プロメテウス)

 

 

 鋭い目付きと薄く浮かべた笑みが特徴的な黒髪の少年。比較的標準的だがやつれ気味な見た目をしている。

 

 性格は飄々として狡猾。他人をいじったりするのが趣味。直接的な戦闘能力は中の上程度。星辰力のコントロールに優れる。

 

 中等部1年からアスタリスクにいる。様々な戦いの経験から相手の癖や思考、性格から行動を予測するといった駆け引きや、相手の手札を徐々に潰す戦い方に長けている。

 

《純星煌式武装》を所持しているが使用する武器はそれに限らず様々。煌式武装以外も使い、特に手榴弾や光学迷彩を使用することが多い。

 

 勝つための努力はあまり惜しまないタイプだが、卑怯なことも平気で行うため評判は悪い(無慈悲ではないため相手への敬意はある)。

 

 成績は良いが態度が悪いため指導室の常連。八津崎匡子が元担任で(多分退学してもおかしくないレベルで)犬猿の仲。




 やっぱり難しいです。

 ノリノリでキャラ紹介してるんですが、作者はこの時点では小説を五巻までしか持っていません。

 ですので勝手に作る設定が被らないか(そもそも投稿していけるのか)心配です。

 駄文かもですがこれからよろしくお願いします。


※ここからしばらくの間同じ後書きが続きます。

※※キャラクターの全体像が出来てきたので、二つあったイメージキャラのうち一つを削除しました。


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原作用語集&キャラ募集

 用語の読み方とかあまり書いてなかったので作者用も兼ねて出します。


 その内本編の文章にも(多分)読み方を追加しますのでそれまで待ってください。


 なお、Wikipedia先生のものをコピっただけなので、詳しいものはそちらを参照してください。


 水上学園都市「六花」

本作の舞台となる都市で通称はアスタリスク。北関東のクレーター湖に浮かぶ正六角形型のメガフロートに築かれた学園都市で、日本の領土に位置しているが治外法権領域になっている。統合企業財体によって六つの学園が設置されている。所属する学生は年に一度開催される《星武祭》で闘うために集められ、その大半を《星脈世代》が占める。学生が島外に出るには許可が必要で、長期休暇以外の平時には下りにくい。警察権は星猟警備隊が担っている。近未来的な景観に木々や林などの自然も見られる。

 

 星導館学園(せいどうかんがくえん)

アスタリスク北部に位置する学園で綾斗が所属している。生徒会長を務めるのはクローディア・エンフィールド。選出方法は選挙。運営母体は「銀河」。保有する諜報工作機関は「影星」。校章は不撓の象徴たる赤い蓮の花「赤蓮」。校舎は近代的で開放的な高層建築であり、大学部、高等部、中等部校舎の三棟が広大な中庭を囲むように立っている。

生徒の自主性を重んじる校風で、校則も緩やか。伝統的に《魔女》や《魔術師》の学生が多い。また純星煌式武装の所有数も最多の二十二個。学園運営の多くの職務が生徒会に委任されており、純星煌式武装の貸与や校章の再発行手続きなどと関わることが多い。

 

 落星雨(インベルティア)

作中、20世紀に地球を襲った未曾有の大災害のこと。世界中に隕石が降り注ぎ、多くの都市が壊滅状態に。この結果、既存国家の力は著しく低下し、統合企業財体と呼ばれる新たな経済主体が取って代わることとなる。観測機関などに予兆を捕らえることができなかったため、ただの隕石ではないという見方が主流である。

また、この隕石群からは未知の元素である万応素が検出され、科学技術の発展を促すと共に《星脈世代》と呼ばれる特異な力を持った新人類を生み出した。

 

 統合企業財体(Integrated Enterprise Foundation)

《落星雨》後、混乱の極みにあった世界経済を乗り越え支えるために無数の企業が融合して誕生した、新たな経済主体。疲弊した国家を遥かに凌ぐ権力を有する。

かつては8つ、現在では「銀河」「EP(エリオット=バウンド)」「界龍」「ソルネージュ」「フラウエンロープ」「W&W(ウォーレン・アンド・ウォーレン)」という6つの統合企業財体が存在し、互いにしのぎ合いながら実質的に世界を裏から操っている。アスタリスクにおいては各学園の運営母体でもある。

 

 星武祭(フェスタ)

統合企業財体が主催し、アスタリスクで行われている力を持つ学生同士の大規模な武闘大会。3年を一区切りとし、初年の夏に行われるタッグ戦は《鳳凰星武祭(フェニクス)》、2年目の秋に行われるチーム戦は《獅鷲星武祭(グリプス)》、3年目の冬に行われる個人戦は《王竜星武祭(リンドブルス)》と呼ばれる。定められたルールは、校章の破壊によって勝敗を決する。エンターテイメントであるため、明らかな残虐行為や殺傷を目的とした攻撃は処罰の対象となる、など。

 

 星武憲章(ステラ・カルタ)

アスタリスクの全ての学生に適用される厳格なルール。違反したものには退学を含めた厳しい処分が待っている。重要な項目は以下。

・アスタリスクにおける学生同士の闘争は、互いの校章を破壊することを目的とする場合のみこれを許可する。

・アスタリスクにおける学生が《星武祭》へ参加できる期間は、13歳から22歳までの10年間とする。

・アスタリスクにおける学生が《星武祭》へ参加できる回数は、3回を上限とする。

 

 万応素(マナ)

《落星雨》によって地球にもたらされた未知の元素を指す。現在では世界中に拡散し、どこにでも存在する。特定の条件を満たした生物の意志に反応し、周囲の元素とリンクしあらゆる事象・物質へと変化する。

 

 星脈世代(ジェネステラ)

万応素の影響を受けて誕生した新人類。綾斗やユリスもこれに含まれる。今までの常識を覆す卓越した身体能力と、星辰力と呼ばれるオーラを身に有している。中でも生身で万応素とリンクできる異能者は、女性ならば《魔女(ストレガ)》、男性ならば《魔術師(ダンテ)》と呼ばれている。

 

 星辰力(プラーナ)

星脈世代が持つ特殊なオーラ。《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》はこれを糧に能力を使用する。身に秘めた全てを使い果たすと意識が消失するが基本的には時間と共に回復する。星辰力のコントロールは《星脈世代》の基本技術であり、星辰力を利用し攻撃力や防御力を増加させることも可能。特に防御面においてはその効果が顕著である。

 

 落星工学

万応素や《落星雨》で落ちてきた隕石に関する学問を示す。万応素の働きについてはまだまだ未知の部分が多いものの、隕石に多く含まれていたレアメタルを利用したマナダイトの研究は進んでおり、広く実用化されている。

 

 マナダイト

万応素が結晶化した特殊な鉱石。一定の負荷を与えることにより特定の元素パターンを記憶・固定化する性質を持つ。元来地球上には存在しないはずのものであり《落星雨》によって落ちてきた隕石から採掘されている。煌式武装の起動体として使用されるほか、落星工学によって生み出された様々な製品に幅広く用いられている。

 

 ウルム=マナダイト

極めて純度の高いマナダイトの総称。無論、通常のマナダイトに比べ希少であり、これをコアに据えた煌式武装は純星煌式武装と呼ばれる。色や形は様々で、同じものは2つとない。意思を持つとされる。純星煌式武装に実装されたものも含め、統合企業財体の協定によってそのすべての所在が公開されている。

 

 煌式武装(ルークス)

マナダイトを核に造り上げた武具の総称。特性を持つマナダイトに元素パターンを記憶させることにより、発動体からその素体を具現化することができる。周囲の万応素を集約することにより光状の刃や弾丸など、様々なも物体を生成する。動力自体も万応素から抽出している。

 

 純星煌式武装(オーガルクス)

ウルム=マナダイトをコアに利用した武器の総称。強力・特殊な能力を秘めているものが多いが、その反面様々な「代償」を必要とする。さらに武器自体に意思のようなものが宿っており、使い手との相性によっては触れることさえままならない。アスタリスクにおいては、相性は適合率として測定される。

その多くは総合企業財体が有しており、各学園へ管理を委任、適合率の高い学生に貸し出す形でアスタリスクへと提供されている。また所持者の多くは各校の冒頭の十二人が占めている。

 

 流星闘技(メテオアーツ)

煌式武装に使用者の星辰力を注ぎ込むことで、一時的に煌式武装の出力を高める技。正式には過励万応現象と呼ばれる。

成功すれば強力な攻撃手段となる反面、星辰力のコントロールを誤れば暴発し煌式武装を破損させる恐れもある。そのため使用者の癖に合わせて煌式武装を調整した上で、その扱いに熟練していなければならない。

 

 在名祭祀書(ネームド・カルツ)

アスタリスクの各学園の序列制度を元に、それぞれの学園が有する実力者を明確にするためのランキングリストを指す。枠は全部で七十二名。序列変動の方式は学園によって異なるが星導館では入れ替え制を採用している。

 

 冒頭の十二人(ページ・ワン)

『在名祭祀書』のリストの1枚目に名前が連ねられている上位12名のことを示す。この12人はいずれも手練であり、決闘の際にはブックメーカーが開いたり、報道系クラブに真っ先にライブ実況されるなど学園内でも注目度が非常に高い存在である。また、有力生徒のデータ収集として監視されたり、隙あらば蹴落そうと狙っている生徒も少なくない。また学園から寮の個室を与えられ、トレーニングルームを貸し出されるなどの特典を受けられる。




 これはただWikipedia先生の説明をコピっただけですが、実際にどんなものか分からない方は原作を買って読んでみてください。


 また、「こんなクソ小説に初見の人が来るわけねーだろks」とか「お前そんな多くの人見てねーのに調子のんなゴミ」という方は感想などでご連絡ください。できるだけ早めに削除します。




※ここからはキャラ募集(正確にはキャラ案)についてです

 募集する理由としては作者がキャラを作るのが得意じゃないからです(じゃあなんでオリキャラまで作ってこれ書いてんだよ!?)


 形式としては、
 名前 性別 
  ・身長:
※・血液型:
※・誕生日:
※・所属:
※・序列:
  ・武装:
  ・二つ名:
 能力や性格などの備考
 です。(※付きは無くてもいい部分)


 ただできれば要望があり、まず序列は書く場合、《冒頭の十二人》未満(十三位以下)でお願いします。また、チート級の強さを持たせるのは(オリ主が太刀打ちできないので)控えてくださると助かります。


 興味がある方は是非活動報告欄にお願いします(形式も同じものが書いてあります) 無い方はスルーしてください。
活動報告欄へは↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=228429&uid=287855


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第一幕 紫獅観察 姫焔と叢雲

 星導館学園。日本の学校をもじったこの学園は、緑が多く、他の学園より落ち着きがあり過ごしやすい。

 

 

 行事の学園祭も終わり夏真っ盛りの中、そのほとぼりは冷めること無く、《鳳凰星武祭(フェニクス)》に向けて一層の盛り上がりを見せてきている。

 

 

「まぁ、俺はそんなのほとんど気にしてないけど」

 

 

 その言葉通り回りの熱など意にも介さず、永見行人は早朝から初夏の日差しを満喫していた。

 

 

 ……といっても本来はそんな予定は無かったのだが、今日に限って早く起きてしまったので、自分としても珍しくこんなことをしている。

 

 

 こうして穏やかに時間が過ぎていくと思ったのだが……

 

 

「──咲き誇れ、六花の爆焔花(アマリリス)!」

 

 

「……は?」

 

 

 静かだった風景は一変、女子寮の近くに叫び声と炎の花、そして男の悲鳴が付け加えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さすがに突然で様子が気になったので、気付かれないように木を伝って近づいた。そして現場では、

 

 

「あれは……リースフェルトの技だな」

 

 

 ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト──今年入学してきた序列五位の欧州のどこかのお姫様……が能力を使った火球を放っていた。

 

 

 彼女の炎を使う能力は、公式序列戦でレスターを三度負かしていたためよく覚えている。そして……

 

 

「──んで……誰なんだ? あれ」

 

 

 おそらく悲鳴を上げた少年だが、それが絶賛ユリスの火球に襲われていた。

 

 

 女子寮の敷地にいるが変質者……にはあまり見えないし、あんな少年はこの学園では見たことがない。おそらく新入生──それもこの時期となると特待生の部類だろう。

 

 

 気になってしばらく眺めていたが、どうやら決闘が始まるらしい。回りにもギャラリーが多数、聞こえたところライブまで始まっているとか。

 

 

 少年は《冒頭の十二人(ページ・ワン)》すらわからないようで少々不安だが、正直気になるので俺もギャラリーの一人として観戦することにした。

 

 

 彼は武器を持っていないようでギャラリーが適当な煌式武装(ルークス)を投げ入れたが、

 

 

「あれは……夜吹英士郎か」

 

 

 この一戦、新聞部やらまで絡んでいるようだ。ライブ配信もされているようだし、リースフェルトはともかく少年の存在は一気に広まるだろう。

 

 

 少年は借り物の煌式武装(ルークス)を起動し、青色の刀身を展開する。

 

 

「……我天霧綾斗は、汝ユリスの決闘申請を受諾する」

 

 

 胸元の校章が赤く煌めき、開始の合図となり、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト 対 天霧綾斗の決闘が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲き誇れ──鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)!」

 

 

「くっ!」

 

 

 ユリスの出した炎の槍は超スピードで相手を貫こうとする。天霧も負けじとそれを受け流すが、肩を上げ下げして呼吸をしており、さすがにキツそうだ。

 

 

 ギャラリーからはリースフェルトが手加減していると聞こえたが、それは違うだろう。本気とまではおそらくいかないが事実、彼女の技は容赦なく彼を捉えている。

 

 

 それに彼もそこまで弱くない。息こそ上がっているものの攻撃は全て避けており、素人特有の明確な焦りも感じない。

 

 

「リースフェルトが押しきるか、それとも彼が反撃に出るかだな」

 

 

 この決闘自体は綾斗の方が不利だ。なんせ相手は魔女(ストレガ)、それも能力の汎用性が高い《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》だ。それに対して彼は魔術師(ダンテ)でもなければ得物は剣のみ。前情報も無く個人的に見て状況は最悪と言っていい。

 

 

 しかし彼は見た目より戦い慣れしている。歴代の特待生ほどの爆発力は見られないが、状況を動かす何かがあれば勝機はあるかもしれない。

 

 

 そうして眺めていると、先にユリスが仕掛けた。

 

 

「咲き誇れ──六花の爆焔花(アマリリス)!」

 

 

 リースフェルトの大技、六花の爆焔花。巨大な火球が出現し天霧にけしかける。

 

 

 回りのギャラリーは一斉に退避し、俺もすぐ様下がろうとしたとき、

 

 

「──!?」

 

 

 下からはほぼ死角になる立地から、黒ずくめの人影がクロスボウ型の煌式武装(ルークス)を構えていた。

 

 

 ……まずい。既に人影は、女子寮の屋根から煌式武装の狙いを下へ定めている。ギャラリーや新入生の天霧を狙う道理は無い。十中八九ユリスが狙いだろう。

 

 

 《冒頭の十二人(ページ・ワン)》が狙われること自体はさして珍しくは無い。その手の話はたまに聞くし、行人自身も数回だが経験がある。

 

 

 だが今回は規模が違う。嫌がらせなんてものではなく完全な妨害行為。それも狙いがつけやすい銃型ではなく威力が大きい弓型。そんなものを使うあたり、確実に致命傷を与えるレベルのものだ。

 

 

 迷っている時間は無い。すぐさま懐の拳銃型煌式武装(ルークス)を取り出し起動、人影に発砲する。

 

 

「チッ!」

 

 

 だが焦って狙いが逸れたのか、弾は人影に当たらない。そしてやつは怯むことなく、得物の引き金を引いて矢を放ち、すぐに退散しようとする。

 

 

「逃がすかよッ!」

 

 

 両足に星辰力(プラーナ)を込めて、行人は人影がいる場所へ一気に跳ぶ。幸いなことにまだ森に逃げ込まれてはいないようだ。急げば追い付けるかもしれない。

 

 

「あっぶねぇ、なッ!」

 

 

 自分の星辰力で届くかわからなかったが、ギリギリだが手が届きそこから体全体を使ってよじ登る。

 

 

「見つけた!」

 

 

 屋根の上にまだ人影はいた。今度こそ当てようと煌式武装を構え、発砲。弾は人影の数ヵ所に当たるが、痛がる素振りも見せず森に消えていった。

 

 

「あーやっちまった。もう追えねぇなあれ」

 

 

 規格外の星辰力(プラーナ)を持つのか、拳銃では怯みもしない。おそらく今持っている武器では火力不足。追い付けても逃げられるのがオチだろう。

 

 

「……戻るか」

 

 

 とりあえずここにいても仕方ないので、先の決闘が行われていた場所に戻ることにした。

 

 

 ……自分が変質者に間違われることは、ないと思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戻って来たが案の定決闘は終わっており、先ほどまでいまたくさんのギャラリーもほとんどいなくなっていた。

 

 

 生徒会長のクローディア・エンフィールドがいて、ユリスは腑に落ちない顔をしているあたり強制的に終了させたのだろう。

 

 

 クローディアは最後の転入手続きなんて言ってるが、そんなものは聞いたことが無いし、あいつの性格はよく知っている。多分嘘っぱちだ。

 

 

「……そこにいるのは誰だい?」

 

 

 ……しまった。戻って来た際行人はまた木の上で見物していたが、さすがに気付かれてしまったようだ。逃げてもいいがここは素直に出た方が身のためだろう。

 

 

「……敵意丸出しだなぁ、もう少し警戒解いてくれよ。──天霧綾斗君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──近くの木の上から気配がしたので声をかけると、そこから一人の男子生徒が降りてきた。

 

 

 顔はやつれ気味で目付きが鋭いが、薄い笑みを浮かばせている。その眼光とは裏腹に飄々とした態度からやや不気味な印象を与える。

 

 

「あら、永見先輩じゃないですか」

 

 

「おー、クローディアじゃん」

 

 

「えっ、知り合い?」

 

 

 生徒会長が出て来た男子生徒に挨拶する。木から出て来るという超が付くほど怪しい登場の仕方だが、どうやら知り合いらしい。

 

 

「多分そこの二人はすごい怪しんでると思うけど、横やりをいれたくなくて木から見ていただけだから」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

 まぁ、生徒会長の知り合いだし害は無いのだろう……多分。

 

 

「まぁこっちに煌式武装むけてる《華焔の魔女(ムカチャッカウーマン)》は言っても信じないと思うけどな」

 

 

「誰がムカチャッカウーマンだ!」

 

 

「朝から新入生に決闘仕掛けたどっかのお転婆姫だよアホ。お前んとこの担任も怒るぞ絶対」

 

 

「ぐっ……」

 

 

 前言撤回、今既に会話から火花が散ってる。ユリスが悔しそうにしながら先に退いたけど今のは喧嘩が起きてもおかしくなかった。

 

 

 ユリスはうらめしそうにしながら、永見先輩に向けていた細剣を下ろす。

 

 

「んじゃ、新入生天霧綾斗君。新しい高校生活頑張れよ。……多分今日はすごく疲れるけど」

 

 

「いてっ。って、え? それってどういう……」

 

 

 そして永見先輩は、意味深な言葉を残しながら綾斗を軽く叩いて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ちょーっと疲れたな」

 

 

 朝から厄介事が起き、星辰力(プラーナ)もフル活用した。足は少し悲鳴をあげ歩くのがきついが、……まぁさして深刻ではない。

 

 

 足を引きずり気味で自分の教室に着き、窓際にある自席に座る。

 

 

 クラスに友人はいないため教室では基本一人でいるが、けしてボッチではない……はず……だ、多分。

 

 

「よーし、今日も一日サボるぞ~」

 

 

 行人は決意を新たにし、今日も今日とて授業(戦場)へと挑んだ。




 読んでくれてありがとうございます。


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友人&キャラ紹介

 いつになったら作者は物語を進展させるんでしょうね。

 オリ主にいたってはもはやちょっとしたモブでしかないですし……。


 今日も苛烈な戦場(じゅぎょう)を生き抜いた報酬として、行人は真っ先に学食へ向かった。もちろん安値の『北斗食堂』だ。

 

 

 時刻は昼時、と言っても正午は過ぎているが、まだ人は中々にいる。その中から友人がこちらに手を振って呼んでいた。

 

 

 名前はディータ・カーター。落星工学研究会の部員の一人だ。

 

 

 優しげな目に眼鏡をかけており、余り目立っていないが好青年といえる部類の男だろう。煌式武装(ルークス)のカスタマイズに関してはかなりのもので、たまにその夜更かしで目に熊ができることもある。

 

 

「やぁ行人。今日も授業サボっていたのかい?」

 

 

「答えはイエスだディ。大体はもうわかってるんでね。考え事しながら寝てたわ」

 

 

 まぁ予想できる事を聞かれたので素直に答える。ディと言うのは行人が付けたディータの愛称だ。

 

 

 一応ここに来る前から学力は良い方だったのが幸いし、授業にはついていけてる。行人の場合はマトモに受けてないため指導室呼び出しが比較的あるのだが。

 

 

 ディはそれを知っているので、その事に対して呆れながら答える。

 

 

「相変わらず……というか、それ寝てるって言わないよね?」

 

 

「分かるならそこに割く時間がもったいなく感じる主義なんだよ、俺は。ここ卒業して俺が就くなら警備関係──それこそ星猟警備隊(シャーナガルム)みたいなとこだ」

 

 

 このアスタリスクの実情を捉えながら、行人は質問に答えた。

 

 

 それはここの生徒の大部分に言えることだ。まず第一に、このアスタリスクに集まっている生徒は《星武祭(フェスタ)》のための──いわば闘技場に集められた剣闘士のようなものだが、任期を終えたその後のことはあまり保証されていない。

 

 

 事実、学園での滞在が終わった人物がいつの間にか堕ちていたりする事もあるらしい。

 

 

 自分が星猟警備隊(シャーナガルム)はさすがに言い過ぎだが、ここの落星工学研究会やアルカナントのような生徒なら研究者や開発者、《星武祭(フェスタ)》に出たりする腕に覚えがある生徒は前述の警備系や用心棒。そして新聞部など情報を扱う生徒は《影星》のような情報機関や報道系の仕事──人にもよるが、生活によって行ける道はかなり限られるだろう、というのが行人としての見解だ。

 

 

「えーと、とりあえず僕からも話があるんだけど……」

 

 

「どんなものかによるわーそれは」

 

 

 申し出に対し行人はバッサリ切り捨てようとするが、これには理由がある。

 

 

 ディはお転婆姫やら腹黒かったり、あと他にもロリ巨乳とか異色な人物が多いアスタリスク(一つの学園の中でもこれ以上に名が上がるような都市)では、比較的常識的な人物だ。ただし、あくまで''比較的,,だ。

 

 

 煌式武装(ルークス)の話──特にそれらのカスタマイズの件になると人が変わったかのように饒舌になる。そうなるとついていけないので、するにしてもせめて理解ができる範囲で頼みたいというのが行人の本心だった。

 

 

「大丈夫だって、長くはしないから。何ならここのメニュー少し奢るからさ」

 

 

「よしわかったなんでも聞いてやる何時間でも聞いてやる」

 

 

「誘っといてあれだけど、金欠じゃないよね君?」

 

 

「人から金むしりとっといて言うことかそれ」

 

 

 豹変ぶりに不安が募ったのか失礼なことを聞かれたが、自分は全く異常ではない。

 

 

 戦闘スタイルのせいでもあるが、煌式武装(ルークス)の補充やメンテナンス毎に幾万の金を取られればこうもなるだろう。

 

 

「それは君の責任だけどね。流星闘技(メテオアーツ)でわざと武器を壊すのなんて、君位のものだよ。第一、装備局の煌式武装(ルークス)を何度もカスタマイズするの、結構大変なんだからね」

 

 

「一学生が払える値段じゃないだろ普通……。まぁいいや、とりあえず蕎麦頼むわ蕎麦」

 

 

「了解」

 

 

 これ以上話しても平行線なので、悪態をつきながら終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はい、持ってきたよ蕎麦」

 

 

「サンキュ」

 

 

 ディータが持ってきた蕎麦を行人は急いで啜る。冷たい麺がめんつゆと合わさってすごくうまい。

 

 

「んじゃ、僕の話に移るんだけど──単刀直入に聞くね。今、彼女はどんな様子かな?」

 

 

「ズズッ、……あーあいつ? 元気してるよあいつは。たまに外へ連れてってるが、性格より好奇心旺盛で困ってるぐらいだ」

 

 

 二人の間では、''だれ,,という主語がないまま話を続ける。まるでそれは人ではないかのように。

 

 

「そんなに気になるなら、今度うちに来い。あいつも喜ぶだろうよ」

 

 

「そうさせてもらうよ。滅多にない機会だし、──なんせ喋る《純星煌式武装(オーガルクス)》を自由にいじれるんだから」

 

 

「言っとくがデータ収集が主だからあんまいじくり回すなよ。統合企業財体に勘づかれるし、ーーあいつも嫌がる」

 

 

「分かってるよ。それじゃ、また今度ね」

 

 

「あぁ、またなディ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:カウレス(fate/ap) sh0ut(澤野裕之[nZk])

 

 ディータ・ガーター 男

 ・身長:173cm

 ・血液型:A型

 ・誕生日:9月7日

 ・所属:星導館学園高等部2年

 ・序列:序列外

 

 

 優しい目付きと整った顔に眼鏡が特徴的な栗色の髪をした少年。落星工学研究会に所属しており、煌式武装のことになると口数が一気に増える。

 

 性格は誠実。直接的な戦闘能力はほぼ皆無。しかし煌式武装のカスタマイズの腕は一流。

 

 中等部1年からアスタリスクにおり、永見行人の友人。極度の煌式武装バカで《純星煌式武装》が出た日には頭が限界突破してショートすることも。

 

 余り目立っていないが隠れファンがおり意外とモテるが、本人はあまり女慣れしていない。

 

 成績は普通だが煌式武装の知識は豊富でもはや病気のレベル。永見行人と元同じクラスだった。




 またオリキャラです。

 え? オリ主の純星煌式武装出せって? それとも原作キャラもっと活躍させろって?

 ……はい、早く更新して進行できるよう頑張ります。

 え? そもそもこんな小説見てるやつそんないないって?

 ……はい(泣)


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真偽の確認

 昼食を終えて来たのは星導館学園高等部の生徒会室。ここは高等部最上階にあるため見晴らしが良く、学園の全てを一望できる。

 

 

 といっても、学園の敷地内は高層建築の建物以上に緑が大半を占めている。中央の繁華街とかならともかく、街頭も無い緑を上から一望しても見栄えなんかないと行人は個人的に思う。建築の目的自体が違うため、そんなこと考慮してないと思うが。

 

 

 ──さて、ここに来たのは他でもない。星導館学園生徒会長こと千見の盟主(パルカ・モルタ)のクローディア・エンフィールドに会いに来た。

 

 

 学園自体は終わっているが新入生が来ているしあいつのことだし、まだ生徒会室に残っているはずだ。

 

 

 

 ちなみに千見の盟主(パルカ・モルタ)というのはクローディアの二つ名だ。二つ名は学園で序列入りをしている者に、その特徴に準えたものが与えられる。

 

 

 リースフェルト等も持っており、彼女の場合は《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》だ。有名どころだと他には序列一位の《疾風刃雷》やレヴォルフの《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》等、色々なものがある。

 

 

 生徒会室の前に着いたので、認証システムをパスして扉を開け、会長の名前を呼ぶ。

 

 

「相変わらず社長室みたいな部屋だな、クローディア」

 

 

「ここはそういう部屋ですからね」

 

 

「まるで良い部屋しか持ってない嫌味に聞こえるな?」

 

 

 返答に苦笑いを浮かべる。ここはという表現するあたり、「この部屋は自分の意思ではないが、寮の自室は自分の実力」と聞こえてしまう。

 

 

「フフフ……。では、要件は何でしょうか? まさか暇潰しでここに来たわけではないでしょう?」

 

 

「よく分かってるなーさっすが腹黒会長」

 

 

 さっきの仕返しに皮肉を込めて返答する。八つ当たりだって? 知るかんなもん。

 

 

「んじゃ本題に移るか」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「えー、何個かあるがまず一つ目。天霧を読んだのはお前だよな?」

 

 

 ある意味最大の謎だったことを質問する。するとクローディアは、少し驚きながら答えた。

 

 

「ええ、まぁそうですが、何故私だと思ったのですか? それはスカウトの方々しか知らないと思いますけど」

 

 

「何となく騒ぎを聞いた生徒会長がそこを訪れたらたまたま新入生がいましたーなんて、お前に限って絶対に無い」

 

 

「あらひどい。私そんな風に見られてたんですか」

 

 

「自分のこと一番よく知ってるだろ? 意味も無くそんなことする性格じゃない。多分場所を特定して向かったろ? 例えば《パン=ドラ》の未来視を使うなりしてな。そう考えたら、何かしらがあるに決まってる」

 

 

 あの時、戦闘はクローディアによって止められていた。止めた本人はわざわざ嘘を吐いてまで止めていた。だが生徒会長の役目もあるとはいえ、それだけで行動するとは思えない。

 

 

「スカウトの奴らによって来た新入生なら止める必要性が薄い。むしろ戦わせて戦力を把握、そこから今年の《鳳凰星武祭(フェニクス)》や──お前の場合は《獅鷲星武祭(グリプス)》だな。そっちに参加させるほうが良いだろ? 俺ならそうするし」

 

 

「成る程、よくそこまで思い付きましたね。──それで、先輩は私が彼を呼んだ理由をお聞きになりたいですか?」

 

 

「いや別に。ただどうなのか聞きたかっただけだ。それ聞いても本当か分からんし、お前の息がかかっているのが分かれば十分だ」

 

 

 クローディアが関係するかどうかで考え方がかなり変わる。彼女が関係するということは、陰謀を巡らす側が序列二位の強さを持ち、おまけに未来視まで持っているということになるからだ。

 

 

「まぁ知りたいこと知ったからこの話はもういい」

 

 

「バッサリ切りましたね」

 

 

 バッサリとか言いながらクローディアはあまり気にせずに耳を傾ける。

 

 

 基本笑みしか浮かべないため表情からは何もつかませないが、腹の探り合いをするわけではないので気にしない。

 

 

「んじゃ次の質問に移って良いか?」

 

 

「どうぞ」

 

 

「──今日の決闘で、リースフェルトが襲われたのは知ってるな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──えぇ。勿論知っていますよ」

 

 

「なら話は早いな。……何処の差し金だと思う?」

 

 

「さぁ……今の状況では断定しかねますね。まず第一に、情報が少なすぎますし」

 

 

「だよなぁ……」

 

 

 正直予想できていたが、やはりどこから来たかは分からない。学園間の事情ならクローディアの方が詳しいため聞いたが、さすがに無謀だった。

 

 

「ですが、《鳳凰星武祭(フェニクス)》にエントリーした学生たちが出場を辞退せざるを得なくなる様なことはありました。直接襲撃されたわけではないですけれど」

 

 

「お前的にはそこが怪しいと?」

 

 

「もう少し調べないとなんとも言えませんが、少なくとも関連性はあると思いますよ」

 

 

 要するに断定はできないが、おそらくは関係しているということだろう。

 

 

「……まぁいいや。今のところはどうも言えないだろうし、何か情報が手に入れば伝える」

 

 

「えぇ。お願いします」

 

 

「ついでに仕事があるなら呼んでくれ。──一応元同チームのよしみだ、そん時は駆けつける。んじゃ」

 

 

「はい、わかりました。では、さようなら、先輩」

 

 

 最後に軽く会釈して、俺は生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後すぐに下に降りて、商業区のコンビニで適当に夕飯のカップ麺を買って、男子寮の自室に帰った。

 

 

「ただいまー……って、誰もいないけど」

 

 

 行人の部屋は一人用の普通より狭い部屋だ。そこにルームメイトはいない。

 

 

 部屋の電気をつけてからすぐさまポットの湯でカップ麺を作り始め、それを机の上に置き椅子に座る。

 

 

 帰って来たときには外はすっかり暗くなっており、学園の緑に至っては昼に思った通り真っ暗だ。まぁ帰るのが遅くなったのには他に原因があるのだが……

 

 

「──一応確認してきたが、やっぱ女子寮の屋根に痕跡は何も残ってなかったな……」

 

 

 そう、遅くなったのはコンビニに向かう前、女子寮へと襲撃者の痕跡を調べに行ったからだ。正直誰にも見られなかったのは奇跡だと思う。

 

 

 現場には犯人像を浮かび上がらせるようなものは一切無い。屋根でなければ《星脈世代(ジェネステラ)》は髪が特徴的な者も多いし、それだけでも残っていれば良かったのだが、あの感じだとそれも飛んでいってしまっただろう。

 

 

「学園内でリースフェルトが狙う理由があるとすれば、真っ先に出るのはレスターだが……」

 

 

 多分この線は薄いと見ていいだろう。レスターの執着心は中々に有名だが、それはただの対抗心であって憎悪とかではない。

 

 

 あいつのことだし、自分の力で超えなければ気がすまないだろう。取り巻きのランディは犯人と同じ弓形煌式武装(ルークス)を使うが、こちらも同様にレスターの意に反することはしないはずなので、この線も違うだろう。

 

 

「……考えても仕方無いな」

 

 

 粗方予想したが、これ以上考えても意味がなさそうなので一旦考えるのを止める。そもそもが情報不足なのに、不完全な考えで目を曇らすのは避けたい。

 

 

 明日も襲撃があるかもしれないため、一応戦闘の準備をして、早めに休むことにする。

 

 

「短剣に拳銃、念のため他の武器や手榴弾とかも……」

 

 

 何時でも使える様に、自分でもできる程度の点検をするため様々な武器や道具をベッドの上に広げようとするが、そのベッドに違和感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──何処にもないと思ったら、ここにいたのか」

 

 

 ベッドには、白髪の──自分にとって一番大事な少女(武器)が気持ち良さそうに眠っていた。




 読んでくれてありがとうございます。


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観測

 あの後は普通に寝て普通に起き、学食を食べて教室に向かい、眠気で船を漕ぎながら授業を乗り切った。

 

 

 朝の食堂では色々な場を見ていたが、流石に襲撃は来なかった。暗殺じみた事態も起きなかったため万々歳だ。

 

 

 今回はリースフェルトを襲撃した犯人の観測、そしてその襲撃の阻止が目的だ。

 

 

 本来ならこんなことをする必要は無いが、クローディアのことだ。仕事を受ける前に行動した方が、こちらとしても楽だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、放課後から尾行という形で監視していたが、本人は綾斗と──初めて見る謎の……中等部? とで学園内を回っていた。

 

 

 新入生の天霧を連れているあたり、学園を案内しているのだろう。中等部に見える娘は知らないが、多分うちのあいつと背はいい勝負……にはならなそうだ。

 

 

 しばらくついていったあたりで、中庭のベンチに彼らは一休みしていた。

 

 

 中々に距離をとっているため会話は聞こえないが、一人は笑っているし仲良く会話していると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(とか思ってた時期が俺にもありました)

 

 

 綾斗がいなくなった直後に状況は一転、一気に雲行きが怪しくなった。男一人いなくなったら雰囲気悪くなるって、お前らは天霧の取り合いでもしてんのか?

 

 

 そして奴はあれか? どっかのハーレム系作品の主人公か?

 

 

 ユリスなんて校章に手をかざしている。このまま放っておいたら大変なことになるのは目に見えているため、急いで止めに入ろうとするが──

 

 

「!?」

 

 

 止めに向かおうとした時、彼女らが座っていたベンチに数本の矢が突き刺さった。

 

 

 実行者は昨日ユリスを襲撃したものとおそらく同一人物。黒ずくめの格好で噴水から上半身を浮かべており、同型のクロスボウを装備している。

 

 

 ユリスは炎の槍を飛翔させて応戦。巨大な斧型煌式武装(ルークス)を持った新手に防がれるも、それも中等部(多分)のバカデカイ銃によって吹き飛ばされる。しかし……

 

 

「クソッ、相当やる気じゃねぇかやつら!」

 

 

 二人は見事に応戦しているが、そこに集中して別方向の新手に気付いてない。

 

 

 新手は短剣を持っており、黒ずくめの見た目はあまり変わらないがこちらは中々に身軽そうだ。

 

 

 このままではやられる可能性があり、もうなりふり構ってはいられない。行人は覚悟を決め拳銃型煌式武装(ルークス)を取り出して展開し、牽制として乱射する。

 

 

「なんだ!?」

 

 

 予期せぬ攻撃にリースフェルトは声を上げる。中等部のもあまり顔には出てないが驚きの表情を浮かべているようだ。

 

 

 それに反して短剣持ちは微動だにせず接近してくる。さっきの弓使いといい、本当に人間か疑ってしまう。

 

 

 接近してきた相手は突きで攻撃してきたので、行人も同様に細い短剣を起動し、ずらすように対応しはね除ける。

 

 

「後ろががら空きなんだよッ、お姫様っ!」

 

 

 原因の一つであるお姫様に悪態をつく。これに振り回される綾斗は(一応自分も)少しぐらい文句言っていいのではないだろうか。

 

 

「さぁーて、早く倒してお顔を拝見しようかって、……え?」

 

 

 戦いに参加して攻撃を防いだのもつかの間、爆音がし後ろを向いてみると、噴水が粉々になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ。

 

 

 俺は爆音が聞こえたから後ろを向いてみると、中等部のやつがそのバカデカイ銃型煌式武装(ルークス)で噴水をぶち壊していた。

 

 

 な、何を言ってるか判らねーとと思うが……

 

 

「とか言ってる場合じゃねーなぁこれ……」

 

 

 あまりの衝撃に頭がフランス人になっていたが、冗談を言っている場合ではないと気付く。

 

 

 中庭のシンボルとも言える噴水は跡形もなくなり、ギリギリ残った基底からは水が噴き上げ、雨のように回りへと降り注ぐ。

 

 

 そして中等部にやられた襲撃者たちは瓦礫の下に埋まっている。明らかにやり過ぎだ。襲ってきたとはいえ流石に同情する。

 

 

(短剣持ちとかもういなくなっちゃったよ)

 

 

 噴水の残骸に埋まった名も知れぬ襲撃者一同に対し黙祷の準備をしておくが、

 

 

「あっ」

 

 

 正直死んでしまったと思ったが、どちらも思いの外ピンピンしているようだ。

 

 

 その頑丈さといいさっきの噴水での潜伏といい人間どころか生物にすら思えないが、そんな考えなどお構い無しに埋まっていた襲撃者二人は退散していく。 

 

 

「おーい! なんかさっきすごい音が……って、なんで永見先輩がここに? ……そしてこれは……何があったの?」

 

 

 さっきの爆音で綾斗がこちらに向かってきた。

 

 

 頭には文字通り疑問符が浮かんでいるだろう。実際行人もそうだった、というか現在進行形でそうなっている。

 

 

「俺からできるだけ簡単に説明しよう。そこの小さな中等部が噴水を消し飛ばした、以上だ」

 

 

「紗夜が!? というか、なんでそんなことを……って、わわっ!」

 

 

 天霧は回りを見渡していたが、突然顔が真っ赤に染まり、気まずそうに視線をそらす。

 

 

 視線が向いてた方を見ると……

 

 

「な、ちょ、み、みみ見るな! こっちを見たらただではすまさん!」

 

 

「み、見てない見てない!」

 

 

 ユリスや中等部──紗夜というらしい──が噴水の水で制服を濡らし、下着やらなんやらを透けさせていた。……中等部のは上の下着を着けてないようだが。

 

 

「……なぁ天霧、お前自分が災難体質だって自覚ないか?」

 

 

「──あまり考えたくないです……」

 

 

 綾斗は頭を抱えている。

 

 

「何を言っているんだ! とにかくなにか羽織るものを用意してくれ! 今すぐだ!」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

「いってらっしゃ~い」

 

 

 リースフェルトに叫ばれて天霧は急いで駆け出していき、行人はそれを見送っていた。

 

 

「──先輩、なぜお前は綾斗と一緒に行かないんだ?」

 

 

「いやこの状態を見ないのは損しかないだろ~。──正直一眼レフカメラで撮影したいくらいだ」

 

 

 ユリスは行人が共に羽織るものを取りに行かないことに質問してきたが、当の本人は意にも介さず(かなりゲスい顔で)二人の格好を拝見している。

 

 

 それを聞いてユリスは体をピクピク震わせ、紗夜のほうも行人を軽蔑するような目で──いやまんま軽蔑している。そして……

 

 

「──こっちを、みるなぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「グハァッ!!!!」

 

 

 行人の顔面に、リースフェルトの怒りに震えた拳が星辰力(プラーナ)込みのフルパワーで炸裂した。




 読んでくれてありがとうございます。


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魔剣の所持者

 欲望に忠実だと前回みたくなります。気をつけましょう。


 昨日は散々な目(自業自得)にあったが、中々に良いものが見れたので行人は満足していた。

 

 

 リースフェルトの拳によって頭蓋骨が割れるかと思ったが、あんなものはそうそう見れるものではない。そう考えれば安いものだろう。

 

 

 若干頭をさすりながらエレベーターを下り、高等部の地下ブロックにある装備局へと向かう。

 

 

 廊下は多くの白衣の職員が行き交う。回りには一つも窓がないので映画とかで見る基地のようだ。

 

 

「ちょっと失礼、ここいいか?」

 

 

「……あんたは?」

 

 

「あなたは……? ランディさん、この人は確か、元《冒頭の十二人(ページ・ワン)》の永見先輩ですよ」

 

 

 《純星煌式武装(オーガルクス)》の保管庫を覗ける区画に来ると、そこにはいつもレスターの近くにいる二人の取り巻きがいた。

 

 

 当のレスターはガラスの向こう側にある保管庫にいるため、いつも通り付き添いとしてついてきたのだろう。

 

 

「永見先輩っていうと、あの何度も報道で負けてから勝ってた人か? サイラス」

 

 

「へぇ~俺のこと知ってるんだ。ただ事実でも本人がいるときに言っちゃダメだと思うなーそれ」

 

 

「え? あ、あぁすいません」

 

 

「……まぁ別にいいけどさ」

 

 

 少し丸い方のランディという取り巻きが昔の頃の痛いところを突いてくる。

 

 

 自分は気にしてないからいいが、ちょっとそれは如何なものかと思う。

 

 

「あーとりあえず、ここ座っていいかな? 俺も今回の《純星煌式武装(オーガルクス)》に興味があるんだよね」

 

 

「え、えぇ、どうぞ」

 

 

 もう一人のサイラスという痩せぎみの取り巻きが、少し遠慮がちな態度で席を譲ってくれる。

 

 

「おっ、始まるみたいだぞ」

 

 

 ランディのその声に、サイラスと行人は一斉にガラスの向こうを見る。

 

 

 そこではレスターが純星煌式武装の発動体を起動させ、巨大な光の剣を持っている。適合試験を始める直前のようだ。

 

 

(あの剣は、前にクローディアが言っていた……)

 

 

 現れた純星煌式武装は、名が確か《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》という名前だ。名前とは裏腹の純白の刀身を持つ、防御不可能の魔剣、選ばれた使い手が少なく気難しい性格で有名だとか。

 

 

 スピーカーの声と同時にレスターは星辰力(プラーナ)を爆発させ、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》をねじ伏せようとしているようだ。途中レスターは何度か吹き飛ばされていたが、それでも獲物を狙う獣のように食らい付く。

 

 

「がんばれ! レスター!」

 

 

「がんばってください!」

 

 

 取り巻き二人はレスターを応援しているが、明らかに拒絶しているしあの様子だと無理だろうと行人は思う。

 

 

『た、対象は完全に暴走しています! 至急、退避してください!』

 

 

「あーあ、やっちまった」

 

 

 あの《純星煌式武装(オーガルクス)》は暴走している。その影響で室内は熱気によって赤くなってきてすらいた。

 

 

 このままではどうしようもないので、さっさと退散しようと関を立ったとき、

 

 

「? あの転入生、一体何をするつもりだ?」

 

 

 再度ランディの声でガラスの向こうに目を向ける。

 

 

 しかしそこにいたのはレスターではなく、転入生である天霧だった。さらに、

 

 

(……なんだあれ、この前の決闘より動きがいいぞ?)

 

 

 リースフェルトとの決闘より、天霧の動きは良くなっているように見えた。相手の手数の違いもあるだろうが、ここまで明確に違いを感じるものだろうか。

 

 

 唖然として動きを見ていると、天霧は《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を掴んで地面に突き立て、適合率九十七パーセントを叩き出した。

 

 

 外野(主にランディ)はレスターの《純星煌式武装(オーガルクス)》を横取りしたとか言っているが、行人はそんなことよりも別のことを考えていた。

 

 

(魔剣の所持者。……おもしろくなりそうだな)

 

 

 行人の顔には、自然と笑みがこぼれていた。




 基本原作沿いで書いているつもりなので流れや文章を変えるのに抵抗がある今日この頃。


 実際今までの文のいくつかは原作のコピペという。


 作者としては原作の合間とか細かく描写されてない部分にオリ主の場面を無理やり入れてる感覚です。(自分では判断しかねますが)


 まぁそれだとオリジナル展開のタグ詐欺になるので改変出来るよう頑張ります。


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再開発エリア

 実際に物語の設定を考えていくと、どんどん初期から変わっていっているのに最近気付きました。


 あの後は特にやることも無かったので、夕食を食べてから寮に戻り何事もなく寝た。

 

 

 いつもなら行人は休みの日はほぼグータラしていることがほとんどだが、今回は用事があって再開発エリアに来ていた。

 

 

「……やっぱ痕跡は見当たらないか。いそうな場所はかなり探したんだがなぁ」

 

 

 行人は昨日と今日の土日で、再開発エリアを探索していた。

 

 

 わざわざ学園内で犯行を起こしていることから、実行犯は星導館の学生。さらにそれをするメリットは普通なら無いため、他学園との取引なのは既に掴んでいた。

 

 

 そしてその取引をするならば、再開発エリアが適任だと踏んでいたのだが、流石に痕跡は見当たらなかった。

 

 

 ガラードワースとクインヴェールは露呈した際のデメリットから論外、レヴォルフは《王竜星武祭(リンドブルス)》が主体と聞いているため《鳳凰星武祭(フェニクス)》の時期に動く必要性が薄い。

 

 

 残るは界龍(ジェロン)とアルルカントだが、界龍(ジェロン)も連中の特性からから情報収集ならともかく、仕留めにいくメリットがあるとは考えにくい。

 

 

 しかしアルルカントなら技術力という餌がある。この事から行人は、多少強引だがアルルカントの犯行だとあの事件を見ていた。しかし、

 

 

(そんなことがわかっても、どうもできないんだよなぁこれが)

 

 

 どこの学園がやったのか見当がついても、どうにもできないのが今の現状だ。

 

 

 取引に使える場所はかなり絞って探したが、何も手がかりがない状態でがむしゃらに動いてるのに等しい。

 

 

 せめてこの行動が犯人たちへの牽制になることを祈る。

 

 

 もう日が暮れてきているので、そろそろ裏路地付近から寮へと戻ろうとするが、そのとき何者かの気配を感じた。

 

 

(ーーこの気配は?)

 

 

 行人は少し遠くから星辰力の動きを感じていた。ここに来るまでレヴォルフの生徒などは集団で見かけたが、星辰力を使うような行為は行われてなかった。

 

 

 しかしその感覚の近くからは他の反応がない。おそらくだが一人だけで行動している。

 

 

 反応はどんどん向かってくる。感覚の主はこちら側に近づいてきているようだ。何がおきているか確認しようとするが、

 

 

(こいつらは……)

 

 

 それをする前に、回りを黒ずくめの人物たちに囲まれていた。そしてそれらは、既に見たことがある者たちだった。

 

 

「ーーはぁ~、そうか流石に動きすぎたかこれ」

 

 

 行人自身この展開は想定していたが、可能性としては低いため頭から抜け落ちていた。

 

 

 こちらを始末しに動くということは、こちらの行動が認知されていて、それを脅威の一つと認識しているということだろう。

 

 

 なのでまさか実行犯がこちらに向かってくるとは思ってもいなかったのだ。ついでに付け加えると、自分の身を案じるなら一番最悪な展開とも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その判断を肯定するように、黒ずくめたちは多種多様な煌式武装(ルークス)をこちらへと向けてきた。




 最近夜中に書いての投稿が多めです。


 それは置いといて、ようやくオリ主の本格的(?)な戦闘シーンです。


 戦闘の描写とかほぼ初めてですが、できるだけ頑張ります。


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人形たち&煌式武装紹介

「さて、ここからどうしたもんかな」

 

 

 行人は後ろから放たれる弾を避けながら裏路地を走り、どのように行動するかを考えていた。

 

 

 といってもバカ正直に戦う必要はないため、やつらを撒いて退散するのが好ましい。だがわざわざ他学園と取引するような人物が、それを簡単に許すとは思えない。

 

 

 ただこちらを追ってくるだけならまだしも、仲間が別行動をして追い詰めてくる可能性もある。あれらが能力によるものなら、追っての間で情報伝達をする必要も無いのでさらに厄介だ。

 

 

 やつらの得物は剣持ちと銃器持ちが三体ずつ。それに対してこちらは形状が違う短剣二つに自動拳銃一丁、そして閃光手榴弾が一つ。

 

 

 数人を巻き込める能力や、せめて武器が欲しいが、無い物ねだってもしょうがない。ちょうど良い場所を見つけて、行人は攻勢に出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い裏路地の通路にて、黒ずくめの者たちは一人の生徒を追っていた。

 

 

 こちらは六人に対し相手は一人、既に数で勝っている。元序列七位だがそれも以前の話、その上歴代の《冒頭の十二人(ページ・ワン)》では最弱と言われていた男だ。

 

 

 いくら経歴が良かろうが、負ける道理は無いと踏んでいた──はずだった。

 

 

 曲がり角に差し掛かり一瞬姿を見失ったときだ。辺りを捜索していると、銃持ちの一人が、先ほどまで追っていた短剣型煌式武装(ルークス)を持つ男に押し倒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、やっぱり人間じゃなかったか」

 

 

 近くの建物の裏口付近の足場に登ってから、行人は黒ずくめの一人に頭上から星辰力をこめた足でストンピング、カスタマイズされた特別製の短剣型煌式武装(ルークス)──《ガーダーピアス》を武器を持つ腕の間接に刺してからすぐさまそれを抜き、星辰力(プラーナ)を込めた足で思い切り踏み潰す。

 

 

 《ガーダーピアス》は昔のスティレットとマインゴーシュという短剣をモチーフにして落星工学研究会の友人に改造してもらった煌式武装(ルークス)だ。元となった武器のように、先端での刺突と柄による防御に特化している。

 

 

 本来なら腕から赤い鮮血が出るはずだがそれはなく、無機質な音がなるだけだ。この時点で人ではないが、間接部をやったのでもう武器は使えないだろう。

 

 

(踏んだときの質感は金属、明らかに造られたもの、なら取引先はおそらくアルルカント……なるほど、だんだん見えてきたぞ)

 

 

 今回の事件の全貌がなんとなく想像できるようになってきた。襲撃者たちは全てこの人形で、何らかの方法で操作している人物がいるのだろう。

 

 

 あの動きから擬形体(パペット)のようなものとは別物なのだろう。仮にそうでも、わざわざ高性能のものを何個も送る必要はない。取引して人形を送り込み、捨て駒の誰か暴れさせるほうが一石二鳥でリスクがない。

 

 

 さて、ご丁寧に考察しているが、状況は一切進展してない。ーーならぱこれから進展させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、楽しいショーの始まりだ」

 

 

 数は未だに一対多数、だがさっきとは違い立ち位置はこちらが有利になった。

 

 

 最初は剣持ちが前衛、そして銃持ちが後衛としてこちらを追って来ていた。行人が不意討ちしたのは銃持ちの一番後ろ側にいた人形だ。追われていた立地は、幅が狭い道。

 

 

 結果、本来の隊列が逆となり、剣持ちの人形の動きをある程度封じ込めた。銃持ちの弾幕は脅威だが、幾分かは戦いやすくはなっただろう。

 

 

 何しろ相手は無機物だ。誤射なんてものは気にするはずがない。

 

 

「こんなときあいつがいりゃあなぁ!」

 

 

 敵側から飛翔してくる弾丸の中、星辰力(プラーナ)をこめた足を使い最大速度で接近、速さと星辰力(プラーナ)をそのままにヤクザキックで銃持ち一体を後ろのやつらに吹き飛ばす。

 

 

 もう一体がこちらへと突撃銃を向けてくるが、それを相手に無理やり押し込み銃床でよろけさせ、さらにそれを引き抜いて拝借、至近距離から元の持ち主にフルオート射撃する。

 

 

 人形はフードも本体も穴や凹凸でボコボコになり、見るに堪えない形状になる。R-15指定はいくかもしれない。

 

 

 続けて弾幕を剣持ちたちに掃射する。銃型の煌式武装(ルークス)は弾切れがないためトリガーハッピーにうってつけだ。(熱の冷却は必要)

 

 

 銃持ちと剣持ちを一体ずつ行動不能になり、残りの二体は弾幕を気にせず突っ込んでくる。

 

 

 一体目には左手に《ガーダーピアス》を持ってさっきと同じように腕へと刺し、二体目と自分の間に来るように誘導して突撃銃を掃射。

 

 

 続いて二体目には先の武器を手放して素早く懐に入り込み体当たり。

 

 

「これに耐えれるか?」

 

 

 それと同時に《ガーダーピアス》のようにカスタマイズされた煌式武装(ルークス)──《RS Five-seveN》を展開する。

 

 

 これも同様にFN Five-seveNという拳銃を元に改造したカスタム煌式武装(ルークス)だ。高い貫通力と速度を持ち、流星闘技(メテオアーツ)を使えば威力も上げられる。弾が小さく、当たった対象への衝撃が少ないのだけが難点だ。

 

 

 体制が崩れた隙に《RS Five-seveN》を体のあちこちに乱射する。人形は穴空きチーズのようになり動かなくなった。

 

 

「────あぁぁぁつかれたぁ。……寮に早く帰るか」

 

 

 行人としては休みのほとんどを再開発エリアで探索していたので、心身ともにかなり疲れてきていた。正直明日は登校したくなかったりする。

 

 

「……ネタは出てきた。後はどう動くか」

 

 

 そういって少しガタが来始めていた体に鞭を打って、寮の自室へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日、疲れから学園に遅刻し、あげくには授業中の睡眠まであって午前中は先生に呼び出されていたことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリジナル煌式武装紹介

 

 

 短剣型煌式武装《ガーダーピアス》

 

 

 ディータ・カーターが通常の短剣型煌式武装をカスタマイズしたもの。

 

 スティレットとマインゴーシュを合わせたような形をしており、刺突による攻撃と鍔による防御に特化している。

 

 

 拳銃型煌式武装《RS Five-seveN》

 

 

 ガーダーピアスのようにディータ・カーターがハンドガン型煌式武装をカスタマイズしたもの。

 

 FN Five-seveNのように通常より貫通力に特化した光弾を放つことができる。反面、対消滅には弱く、別の光弾に当たるとほとんどは競り負ける。




 読んでくれてありがとうございます。

※RS Five-seveNの紹介を書き足しました。


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少女

「やっと寝れた。──眠気で死ぬかと思ったぞ…………」

 

 

 昨日の反動で行人はずっと船を漕いでいた。普段なら三限目が終わる頃には目は覚めているが、今回に限っては放課後までずっと覚めることはなかった。というか放課後過ぎた瞬間一時間ほど寝ていた。

 

 

「今度商業区でカフェイン剤でも買っとこうかねぇ。大事なときに睡魔に墜とされるとか笑えないし」

 

 

 そんな風に予定を考えながら寮への帰路を行人は歩いていた。だが悲しきかな、神様は行人にそんな暇を与えはしなかった。

 

 

『永見先輩? 聞こえていますか?』

 

 

「……なんだなんだ、面倒事でも起きたのかクローディア?」

 

 

『えぇそうです、お察しがいいですね』

 

 

 ──生存フラグが立ってほしいという願いは潰え、絶望の音としてピアノの幻聴が聞こえた気がした。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……。──何があったんだ?」

 

 

 行人は鬱陶しさを一切隠さずに、クローディアに今回の要件を聞く。

 

 

『──ユリスを襲った犯人がわかりました。ちゃんとソースもあります』

 

 

「それが何かは聞かないでおく。んで、俺にどうしろと?」

 

 

『──仕事の時間です、今すぐに現場に向かってください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──オーライ、承った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綾斗は再開発エリアを猛スピードで走っていた。クローディアが携帯に送ってくれた地図には、ユリスがいるかもしれない箇所がピックアップされている。

 

 

 該当箇所は意外とあるので、生半可な速度では間に合わないかもしれない。

 

 

 ユリスは自分に、『成すべきこと』を示してくれた。そしてそれをまた失いたくはない、綾斗はその一心で体を動かしていた。

 

 

「ここにもいない……。あとは一つだけ、早くしないと……!」

 

 

 何が起きるかわからない状況で、目的を探し出せず焦りが募ってくる。これで見つからなければ、いよいよ綾斗に出来ることはなくなってしまう。

 

 

「ん? あれは……」

 

 

 最後の箇所に向かう途中で、綾斗は白髪の少女が煌式武装(ルークス)を持った数人に絡まれているのを見かけた。急いでいるとはいえさすがに見過ごせるものではないだろう。

 

 

「──仕方ないか」

 

 

 ユリスを助けにいったときに万が一があってはまずい。武器を試すのにもちょうど良いだろう。

 

 

 綾斗は《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を構えてそこに飛び出し、群がっているやつらの武器を真っ二つにする。すると脅し文句すらなく、無様に逃げ去っていった。

 

 

「君、大丈夫?」

 

 

「──うん。大丈夫、ありがとね」

 

 

 声をかけると少女はこちらを向いて、笑みを浮かべながら礼を言い残して行ってしまった。

 

 

 ──なぜだろうか、少し違和感を感じた。

 

 

 別段おかしな部分があったわけではない。だが、なんだろうか、あの表情からは妙に違和感を感じた。

 

 

 紗夜のように無表情だったりするわけではないが、あの笑顔からはこう、普通の人間にはない、無機質なものを感じた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綾斗が通った場所とは少し違う、人通りが少ない所で少女は仲間と合流していた。

 

 

「頼むから勝手にどっか行かないでくれよ……」

 

 

「ごめんごめん、ちょっと気になっちゃって」

 

 

「はぁ……。で、肝心の《黒炉の魔剣》はどうだった?」

 

 

「──うん、やっぱり凄かったよ。……勝てる?」

 

 

「…………」

 

 

 少女の問い掛けに、仲間は答えなかった。




 読んでくれてありがとうございます。


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数多の偽り&煌式武装紹介

 綾斗とユリスに負け、廃ビルから真っ逆さまに落ち、そしてクローディアにナイフを弾かれたときから、サイラス・ノーマンは、内心では死をさえ覚悟していた。

 

 

 自分を《影星》で処理すると言っていたから殺されるわけではない。だが目の前の金髪の少女の風貌は冷徹で、無慈悲で、死神のように見えていた。

 

 

「では、ごきげんよう」

 

 

 金髪の少女は両手に持った純星煌式武装の双剣を振るい、サイラスは思わず衝撃に備える。

 

 

「…………ん?」

 

 

 しかし来るはずの斬撃は来ず、目の前を確認すると……

 

 

「──はははっ……!」

 

 

 その光景に、思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サイラス・ノーマンを無力化しようと《パン=ドラ》を振ったとき、斧型煌式武装(ルークス)を持った機械が目の前に出てきた。

 

 

 大まかに見ると戦闘用の擬形体(パペット)だが、さっきの動きから普通の擬形体とは格が違うだろう。サイラスが操っていた人形とも違う。

 

 

 クローディアはこれでも星導館の序列二位だ。それをどこからか飛び出して来て受け止めたことから、並みのものとは比較にならないほど高性能なものだろう。

 

 

「なんでだ……? 敵はあっちだ……、こっちじゃないぞ……?」

 

 

 例の擬形体は、サイラスの方に煌式武装を向けて近づく。そして……

 

 

「やめろ……。来るな……、来るなぁ!!」

 

 

 擬形体(パペット)はサイラスに向けてその斧を振るうが、

 

 

「──俺がいて正解だな~クローディア?」

 

 

 その戦斧を永見行人が受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッァ! どんな馬鹿力だよこいつ!」

 

 

 咄嗟に夜吹の持つブレード型煌式武装(ルークス)をパクって斧を受け止めるが、煌式武装は砕けそうで正直かなりきつい。

 

 

「許せよッ!」

 

 

 ブレードに星辰力(プラーナ)をこめて爆発を発生させ、擬形体(パペット)の斧から逃れる。

 

 

「クローディア、こいつは俺がやる! お前はサイラスを追ってくれ!」

 

 

「わかりました、ではお任せしますよ」

 

 

 そういっていなくなっていたサイラスの方にクローディアは向かう。夜吹も同様だろう。──これで条件は揃った。

 

 

「──こい、ニア(数多の偽り)。久しぶりの出番だぞ」

 

 

 そう言うと、さっき自分がいた場所で見物していた、白髪の少女の姿をした自分の《純星煌式武装(オーガルクス)》が、こちらに飛び降りてきた。

 

 

「どうやって倒すの? 今回はいつもみたいな対策はしてないよね?」

 

 

「珍しく力業だ。協力してくれよ? ──《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》だ。頼む」

 

 

「──わかった」

 

 

 武器の名前を指定すると、ニアはその体をだんだん巨大な大剣へと変えていく。その姿は、さっきまで天霧が使っていたものとほとんど同じ。浮かび上がる黒い紋様だけがない《黒炉の魔剣》だ。

 

 

「フッ、フフフ…………」

 

 

 行人は笑いを含ませながら、その《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に星辰力(プラーナ)を流し込む。それは全長五メートルほどへとなり、振りかぶる。

 

 

 この通路は先日のものと同じように狭く、擬形体に逃げ道などない。

 

 

「特別に見せてやるよアルルカント。《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》をなぁっ!」

 

 

 巨大な大剣を振りかざし、擬形体は耐えるも、しばらくして持っていた武器ごと真っ二つとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリジナル煌式武装紹介

 

 

 《数多の偽り》(ナイアーラトテップ)

 所持者:永見行人 元序列七位

 

 

 星導館学園が管理している《純星煌式武装》の1つ。ウルム=マナダイトの色は白。

 

 他の純星煌式武装より明確な意志と意思疎通が可能な人格を持つ。人格は知識や物事の記憶、分析ができる。

 

 決まった形を持たず、人格が記憶しているものならそこから引き出して剣、槍、盾のような様々な形体を展開できる。逆に言えば展開できるのは人格が記憶または学習しているもののみ。

 

 武器の展開は全て人格が行い、任意での発動はできない。また、展開した形体が《純星煌式武装》のものでも、その特性までは再現できない。

 

 代償は意思疎通、適合率とは別に人格とも折りが合わなければ展開も出来ないため通常より条件がシビア。その上他の純星煌式武装より能力の決定力に欠ける上、扱いが難しい。この性質上、所持者がほとんどいなかった。

 

 

 ニア

 

 イメージ:ヴェールヌイ(艦これ) THERE IS A REASON(鈴木このみ)

 

 ・身長:156cm

 

 

 《数多の偽り》に備わっている人格。会話の際は所持者の星辰力を通しているため、脳に直接声が聞こえているようになる。また周りの状況は万応素を介して感知することもできる。

 

 性格は冷静で穏やか。人間じみたところもあるが根底の倫理観は人間とは少し違いがあり、あくまで自らを武器として扱うことを望んでいる。

 

 意外と好奇心旺盛。人型形態では身長が低い白髪セミロングのタレ目少女。




 読んでくれてありがとうございます。

※紹介を修正しました。


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第二幕 状況加速 黒幕

 他の学園がどうかは知らないが、星導館の《冒頭の十二人(ページ・ワン)》は個別で体育館程のトレーニングルームを持っている。

 

 

 流石に試合場のように防御障壁を張っているわけではないので、やり過ぎると破損することがある。もちろん貸し出ししているだけなので事故じゃない限りは弁償するはめになるが。

 

 

 行人はそんなトレーニングルームへ繋がる道筋で、クローディアとアルルカントの制服を着た二人を発見した。

 

 

 一人は表情豊かそうな少女で、もう一人は褐色の冷やかな印象の女性だ。ついでに付け加えると、なんというか、二人とも整ったプロモーションをしていた。

 

 

「……ちょっといいかクローディア、そちらの二人はどちら様で?」

 

 

「おー、これはこれはあたしの人形を何個かぶった切った人じゃーん」

 

 

「さらっと黒幕宣言するのはやめてくれませんかね? もっと前置きとかあるだろ普通」

 

 

 目の前に出てきた少女のラスボス宣言により、行人は呆れることを余儀なくされた。

 

 

「エルネスタ、あまりはしゃぐのはやめろ。面倒事が増えるのは嫌なんだ」

 

 

「えー、いいじゃーん別に。あの剣士くんとは違う手段であたしの人形を圧倒したんだよー? そりゃー気になるでしょー」

 

 

 そしてその少女──エルネスタと言うらしい──の付き添いをしているのであろう女性の方は全く……といった様子だ。日頃からかなりの苦労人なのだろう。

 

 

「──クローディア、そろそろ説明を頼みたい」

 

 

 事前情報が足りなさすぎて、行人は頭が混乱してきていた。なので新たな情報を求めクローディアに訪ねる。

 

 

「えー今回、新型の煌式武装(ルークス)をアルルカントと共同で開発するのですが、その正式な契約を結ぶためにこのお二人をお呼びしたのです」

 

 

「──どうせこの間の事件絡みだろ? ある意味脅迫に等しいと思うがな」

 

 

 サイラスの人形事件に関しては一切公表されていない。恐らく裏で処理して交渉に使ったのだろう。クローディアはそれぐらいはやってのける。

 

 

「まぁトレーニングルームへの道にいる理由は聞かないでおこう。なんとなく想像つくし」

 

 

「ほほーう、察しがついてるなら聞いてみたいもんだねー?」

 

 

「自分の人形を一網打尽にした剣士をみたいんだろ? ここはリースフェルトのところに近いし、自分の発明品が一人にやられたってなれば気になるのも道理っちゃ道理だ」

 

 

「ふむ、大体あってるなー。いやーよくそれだけで言い当てたもんだよー」

 

 

 かなり強引だったが、どうやら考えは当たっていたようだ。

 

 

「使えるものは使う、あんただってそれは同じだろ?」

 

 

「……なるほどー、それは確かに言えてるねー」

 

 

 それは行人が今までの経験から言える鉄則だった。自分はそうやって戦いに勝とうとしてきたし、これからもそのつもりでいる。

 

 

「でも、──次はそれで勝てるかな?」

 

 

 ──行人がエルネスタが発したその言葉に何かを感じたのは間違いではないと思いたい。

 

 

「《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出るなら、前のようにはいかないから。──完膚無きまでに叩き潰してあげるよよ」

 

 

 その言葉を聞き、行人は興味本意でクローディアに小声で質問する。

 

 

「今回の《鳳凰星武祭》、参加枠はどうなっているっけ?」

 

 

「参加は締め切られていますが、予備登録は空いています。相方さえいればいつでも登録できますよ」

 

 

 その言葉に行人は思った、相方探さなきゃ(使命感)、と。




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刀藤綺凛

 早めの昼食を食べ、行人は校内を見ながら散歩していた。

 

 

 アルルカントのエルネスタに挑発されてから、行人は《鳳凰星武祭(フェニクス)》のための相方を探してるが、案の定いい相手は見つからない。

 

 

「まぁ当たり前っちゃ当たり前なんだけどな……」

 

 

 ぶっちゃけてしまうと、今になって必死になって探してること事態が本当は異常なのだ。

 

 

 なにせこの時期の生徒は《鳳凰星武祭》にタッグでの参加が決まっているか、参加する気がないものの二択だ。その中に今から参加を希望して、尚且つ優秀な生徒なんてもの、普通いない。

 

 

「さて、どうしたもんかねぇこれ」

 

 

 挑発に乗って《鳳凰星武祭》に参加するならば、能力の有無や性格やらを抜きにしてもそれなりの腕を持つ者でなければ厳しい。でなければすぐに負けるのがオチだ。

 

 

 アルルカントのエルネスタといったか、あいつは戦闘をするタイプの人間じゃないが、そこは持ち前の人形やらでカバーしてくるはずだ。それも《星武祭(フェスタ)》に投入してくるものとなれば、自らの最高傑作を出して来るはず。

 

 

 どちらにせよ油断は出来ない相手となるだろう……自分が参加さえできれば。

 

 

「ん? 刀藤綺凛(疾風刃雷)が決闘? そりゃまた大胆だ」

 

 

 散歩の道すがら、序列一位こと刀藤綺凛の決闘による人だかりを行人は見かけた。

 

 

 《星武祭》には序列での優越権があるので、この時期に決闘するのはリスクが大きいので珍しい。一位となればなおさらだ。──参加しないならともかく。

 

 

「んでそのお相手は、……天霧、なんか因縁でもあんのかお前」

 

 

 決闘相手を確認すると、対戦相手は最近よく聞く名前の人物だった。トラブルか何かに取り憑かれているのではとも思うが、今回はそれらが無いことを祈る。

 

 

 まあともかく、天霧の力が実際はかなりのものだったことは、既に以前の事件でわかっている。刀藤綺凛の戦いを見るのにもうってつけと言えるだろう。

 

 

 どうせなので、行人はこの決闘を観戦することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かなりすごかったなありゃ。目で追い切れなくて疲れてくるほどかよ……」

 

 

 天霧と刀藤の戦いは正直言って、目を凝らさなければ追うのが困難だった。特に剣に関しては、剣術を知らない素人目で見てもすごいと言わせるほどだ。

 

 

 刀藤綺凛の動きはもちろんのこと、天霧の方も《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》に振り回されているようにも見えたが、それでもどちらともかなりの腕前だった。

 

 

 元のスペックが違うのもあるであろうが、多分ああいうのが武術を使う者同士の戦いなのだろう。

 

 

 そして一番驚かされたのは刀藤綺凛の卓越した剣技だ。今までも様々な剣士を見たことはあるが、あれほどの者はほとんど見たことがない。

 

 

 ただの日本刀で天霧の《黒炉の魔剣》と一度も剣を合わせず掻い潜り、焦りを突いて校章を狙うその技術は天才と言っても過言ではないだろう。

 

 

「そうだ、確かあいつはまだ……」

 

 

 行人は端末で《鳳凰星武祭(フェニクス)》の参加表を見る。探すのは刀藤の名前だが、そこには刀藤の名は無い。

 

 

 好都合だ。

 

 

「……夕方にでも仕掛けるか」

 

 

 行人は悪い笑みを浮かべながら、その場を去っていく刀藤綺凛とその近くにいる男を見ていた。




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嘲笑

 刀藤鋼一郎とその姪の刀藤綺凛は、夕方の校舎を歩いていた。さきほどまでは星導館の役員等との顔合わせやらがあり、今はその帰りだ。

 

 

 もちろん、こんなことをするのには理由があり、鋼一郎が綺凛を使って自分を売り込む際必要になるかもしれない煌式武装の件や、この二人がセットである状態を知らしめることでもある。

 

 

 あらかじめそのイメージが定着していれば、鋼一郎が所属する「銀河」への売り込みにも多少は有利になる。自らの目的のためには何事も怠る気は鋼一郎にはなかった。

 

 

 夕方の校舎に人影は見えず、音もなく静かだ。近くにいる姪も何も言わないので余計静かだし、自分が《星脈世代(ジェネステラ)》などというバケモノを支配している考えると、とても気味がいい。

 

 

「──ちょーっと失礼、あなたが刀藤鋼一郎氏ですか?」

 

 

「……なんだ貴様は」

 

 

 人っ子一人いないはずの校舎に、星導館高等部の制服を着た男子生徒が自分の前に現れた。

 

 

「また序列外か……。貴様のようなやつと関わっている暇など無い。早々に失せろ」

 

 

 鋼一郎は明確に怒りを込めた声を発する。

 

 

 当然回りに他の生徒がいるわけではないため、こんなことをしても印象面も問題ない。だがそもそも、こんなやつら(化け物)に遠慮など必要ない。

 

 

 鋼一郎は情報端末で目の前の少年のデータを調べる。名前は永見行人、エンフィールドの令嬢の近くにいることが多いため名は頭の隅に入っていた。

 

 

 データを見てもこれといった特別さも無く、序列入りすらしておらず、《純星煌式武装(オーガルクス)》を持ってこそいるが《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》ほどの知名度も無く、隠れて強力というわけでもない。はっきり言って昼間のガキ以上に無価値だ。

 

 

「いやーそう言わずに、話ぐらい聞いてくださいよぉ。あなたにとって無価値な話ではないですし」

 

 

「ほう? 言ってみろ。そんな話ができるとは到底思えんがな」

 

 

 馬鹿にした態度で鋼一郎は少年を嘲笑う。

 

 

「少しだけあなたの姪を貸していただきたいんですよ。《鳳凰星武祭(フェニクス)》に参加するために」

 

 

「ふん、そんなことか。それでどんなメリットが私にあると言うのかね?」

 

 

「今回の《鳳凰星武祭》はちょっと特殊でしてね、アルルカントの研究者が参加するんですよ。それでその人物は天才級の研究者、それも擬形体の開発者でして。そんなやつに日本刀たった一本で勝ったとなれば評判はかなりのものでしょう」

 

 

「話にならんな、第一、その情報が正しいかというのも定かではない。そんなものにのって賭けに出る気はない」

 

 

 やはり無駄だったと鋼一郎は思った。そもそもこちらが狙うのは《王竜星武祭(リンドブルス)》三連覇だ。

 

 

 《鳳凰星武祭》ではない。わざわざ狙う必要がないうえ、《王竜星武祭》による名誉は《鳳凰星武祭》より大きい。そんなことを受ける必要性が、こちらにはない。

 

 

「わかったら早く消えろ、やはり時間のむd」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなだから継げるもんも継げねぇんじゃねーのかおっさん?」

 

 

「──なんだと?」

 

 

 突然の豹変からの嘲笑に、鋼一郎は戸惑いを感じた。言葉遣いだけではない。先ほどまでの少しおちゃらけた雰囲気は無く、そこにいるのは笑みを浮かべながら自らを憐れみ、そして嘲る男だった。

 

 

「それになんだその態度は。私にそんな口を利けるとでm」

 

 

「刀藤鋼一郎、星導館学園の運営母体である統合企業財団「銀河」の社員。肩書きは──確か統合エンターテイメント事業本部第七教導調査室室長、だったかな? 刀藤という大規模武術宗家の名を継いでおられる方がそんなとこに就くとは、何か家でのトラブルでもあったのかな~?」

 

 

「貴様ッ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刀藤鋼一郎はその言葉に対して怒りを露にしており、その反応を見て行人は心の中でほくそ笑んでいた。

 

 

 自分には経験がないためわからないが、武術宗家に生まれた者としてそれを継ぐというのは、そこに生まれてそれを嗜む者としてはおそらく本望なのだろう。

 

 

 ──ならばその部分を突いてやる。

 

 

「例えば、自らの親族が自分を置いて武術継いじゃって~、それが火種となって自分は銀河の社員になって~、──大体こんなところかな~?」

 

 

「!?」

 

 

 おどけた態度で、しかし内心は打算を打ちながら、目の前の男の反応を見て確信する。

 

 

 鋼一郎氏は体つきを見てもかなり鍛え上げられており名前からも武術を嗜んでいただろう。そしていつもの態度から彼は刀藤綺凛という姪を蔑み、──そして刀藤の武術を継いだ彼女の父も恨んでいるだろう。

 

 

 でなければ仮にも親族に対して、あそこまで露骨に嫌悪感を露にすることはしないだろう。

 

 

 ついでに言うと、鋼一郎氏は《星脈世代(ジェネステラ)》にも嫌悪感を露にしている。それに関する何かがあったと見て間違いはない。

 

 

 それをさっきの情報と合わせれば……

 

 

「まぁ別に仕方ないんじゃない? 《星脈世代》に負けちゃったんだから、生まれつきの体質じゃしかたないよね~?」

 

 

 親族が《星脈世代》で、そこに家での何かがあったという風に行人は考える。

 

 

 少し飛躍しているが、クローディアからの情報とここまでの憶測が正しければ相手の冷静を欠くことができるだろう。

 

 

 あわよくば興味を引ければいいが、そこまでは期待しすぎなため二の矢も一応用意している。

 

 

(さて、どうでるよ)

 

 

「──いいだろう、完膚なきまでに叩きのめしてやろう。やれ、綺凛」

 

 

「……刀藤綺凛は、あなたに決闘を──」

 

 

「あぁいいよいいよ、決闘じゃなくて」

 

 

「え?」

 

 

 両手を出しながら綺凛の申請を遮って止めさせる。

 

 

 挑発だけで釣れたのはいいが、ここで決闘をしては意味がないのだ。

 

 

「《冒頭の十二人(ページ・ワン)》には専用のトレーニングルームがあるだろ? そっちの方がお互い面倒がないからさ、それに鋼一郎氏的にも決闘で負けたリスク負うのもいやでしょ?」

 

 

「…………」

 

 

「……いいだろう、そこでお前を叩き潰してやる」

 

 

 こうして三人は、綺凛の所有するトレーニングルームへと向かった。




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熟練者&煌式武装紹介

 トレーニングルームへと向かった三人の内、行人と綺凛は互いに戦闘準備を終え既に位置につき、鋼一郎はその外で二人を見ていた。

 

 

 自分の煌式武装や両太股付近に身に付けたホルスターなど装備を点検しながら行人は確認をとる。

 

 

「さて、ルールは普通の決闘と同じで校章を割ったほうが勝ち。武器制限とかは無し。開始はそっちで決めてくれねいい。あと怪我とかは自己責任で頼む。以上で何か質問はある?」

 

 

「いえ、ありません。……が、一つだけ忠告があります」

 

 

 綺凛も刀の様子をチェックしながら、先ほどより緊迫した様子で返事をする。

 

 

「なんだ?」

 

 

「あまり、刀藤流を見くびらないでください。永見先輩の先ほどの発言も、すぐに撤回させてみせます」

 

 

 目の前の《疾風刃雷(刀藤綺凛)》は刀を抜き放ち、正面に構える。

 

 

「──名前、鋼一郎氏に聞いたのか? まぁいいや。んならやってみろ、むしろそんくらいじゃなきゃ引き込む価値がないからな」

 

 

 刀藤が真剣そのものな雰囲気で放った言葉を、だが行人は気にもせずに言い返して起動した自動拳銃型煌式武装(ルークス)ホルスターにしまい、右手で短剣型煌式武装を起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綺凛は刀を構えながら相手をどう攻略するか考えていた。

 

 

 叔父からの情報によると、彼は近接よりのオールラウンダーで、《純星煌式武装(オーガルクス)》に限らず様々な武器を使うらしい。

 

 

 だが綾斗のように武術を嗜んでいるわけではなく、体術も優れているが自分ほどではないようだ。すぐに接近して攻撃し、防がれてもそこから連鶴で仕留めればこちらの勝ちは確定的だろう。

 

 

「──参ります!」

 

 

 綺凛は素早くステップを踏み、刀を上段から振り下ろし、行人はそれを短剣の柄で受ける。

 

 

 しかし受け止められた刀を翻し、すぐに右袈裟斬りを仕掛ける。そこから相手を連鶴に引き込み、手数で押して行人の校章を狙う、

 

 

 ……はずだった。

 

 

「っ!?」

 

 

 あろうことか永見は綺凛の一撃に完璧に合わせて刀を弾き返し、そこを狙って体当たりで体制を崩すと同時に綺凛が持つ刀に狙いを定めて短剣を振るってきた。

 

 

 ──綺凛には何が起こったのか理解できていなかった。連鶴は連続攻撃を得意とした剣術でその多彩さはかなりの数だ。そしてその剣は重みが乗っており速く鋭い。

 

 

 さらに綺凛は生まれつき他人の星辰力(プラーナ)を感じやすい体質にあり、その体質に加え相手の息使いや視線、体の細かな動きを読み、誘導し、駆け引きを常に行っている。

 

 

 だが行人は、その剣技を切り合いの中で見切るのではなく、戦闘の初手で対応したのだ。

 

 

 能力を使う際の星辰力の動きは無かったし、能力も無くそんなことができるような人物は聞いたことがない。

 

 

「あまり自分を過信するのは止めといた方がいい」

 

 

「──どういう意味ですか」

 

 

「お前は速攻で自慢の剣術で攻撃して、その手数で押しに来たんだろうよ。それが一番の十八番だからな。──だがそれだけで勝てる程戦いは甘くない。現に俺にそれを予測されているからな」

 

 

「…………ですが私には、これしかないんです!」

 

 

 綺凛は永見に対して先ほどより速く踏み込み、今度は下段から逆袈裟に刀を振るが……、

 

 

「──過信するなっつった……ろッ!」

 

 

 永見はそれよりも前にバックステップで距離を取り、左手に隠し持っていた閃光手榴弾を綺凛の前に放つ。

 

 

「ぐ……!」

 

 

 過大な閃光と大音量の轟音に晒されれば、 いかに《星脈世代(ジェネステラ)》といえどもひとたまりもない。

 

 

 回復に専念し綺凛が目を開けたときには、

 

 

「避けてみろよッ!」

 

 

 行人は武装を確認しているときに無かったはずの突撃銃を、綺凛に狙いを定めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回行人が使う突撃銃型はステアーAUGというライフルの短機関銃型を参考にディが自らの手で開発した《ステアーSMG 零式》という煌式武装(ルークス)だ。

 

 

 元となったライフルと同じブルパップ式の機構を備えているが、その機構の欠点である弾倉交換のしにくさや薬莢排出時の問題を、煌式武装の万応素から弾を作る性質で対策している。

 

 

 ただしこの機構を採用した理由の半分は趣味らしい……。本人曰く「昔のゲテモノ銃を今の技術で改良したら面白そうじゃない?」とのこと。

 

 

 そういうわけで別のゲテモノ銃のためのテストとして、まず軸となる機構の問題を解決できるか試すために作られたのがこの試作品の煌式武装らしい。

 

 

 武器としての評価は、反動は小さめで狙いやすくかなり扱い易い部類だと個人的には思う。《星脈世代(ジェネステラ)》なら連射に気をつければSMGの様に片手でもある程度撃てるかもしれない。

 

 

 行人は手榴弾を出した後バックステップで距離を取った後、《ステアーSMG 零型》の弾を綺凛に向かってフルオートでありったけにばらまく。

 

 

「あまいです!」

 

 

 しかし刀藤は閃光と轟音で平衡感覚が狂っているであろう状態で、直ぐに体制を立て直し弾幕を避けながらかなりのスピードでこちらに接近してくる。

 

 

「やぁっ!」

 

 

 そしてある程度近づいてきたところで大きく踏み出し、まさしく二つ名の通り、疾風迅雷の速さでこちらに刀を突き出す。が──

 

 

「これは予測できたかぁっ!?」

 

 

「なっ!?」

 

 

 行人は突き出された刀を左手で弾き飛ばし、刀藤は今回の戦いで二度目の驚愕した顔を晒した。

 

 

 《星脈世代(ジェネステラ)》は星辰力(プラーナ)を込めると攻撃力や防御力が上がる。それは自分の体に顕著に出るため界龍のように徒手空拳を使う者もいる。

 

 

 その強度は星辰力の量にも依存する。行人の場合は星辰力の量は普通だがその扱いに長けていたので、星辰力をかなり局地的に集中させてそこをカバーしている。

 

 

 刀藤は先の影響もあってか後ろにのけぞり、行人はライフルを捨て純星煌式武装《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を持つ。

 

 

「起きろニア!」

 

 

『了解!』

 

 

 行人が名前を叫ぶと頭の中に声が響き、《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》からは標準的な長さの刀身が展開、一振りの剣となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綺凛は現在かなりまずい状態に陥っていた。体制を崩し、千羽切は飛ばされ手元に無い。

 

 

(距離を取って立て直すしか……!)

 

 

 行人は既に剣を構え、こちらの校章を狙っている。とにもかくにも刀が無ければできることはないため、綺凛は後ろに大きくステップを踏み一気に距離を取ろうとする。

 

 

(煌式武装の長さなら、こちらにはギリギリ届かないはず……)

 

 

 綺凛は刀藤流の門下生の中でも天才的な才を持ち、その技術は並みの剣士の比ではない。戦いで間合いを間違えることなど今までほとんど無かったし、ここでそれを読み間違えるはずがなかった。

 

 

 ……それが普通の武器ならば。

 

 

「──俺の勝ちだ」

 

 

「……え?」

 

 

 後ろに下がった後自らの胸元を見ると校章が割れており、そして割った本人は先ほどの剣ではなく、──それよりリーチが長い槍を手に握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリジナル煌式武装紹介

 

 

 突撃銃型煌式武装《ステアーSMG 零式》

 

 

 ディータが通常のアサルトライフルの構造とは違う構造に目をつけて作った文字通りオリジナルの煌式武装。元の銃と同じブルパップ方式を使用している。

 

 通常より銃身が短く光弾が小さいため反動が小さく取り回しがいい。その代わりに弾の威力は低め(それでも牽制には十分)




 読んでくれてありがとうございます。


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種明かし

「ーーあぁぁぁぁぁ疲れたぁぁぁ……」

 

 

「過信、とはどういうことだったんですか?」

 

 

 超がつくほどのため息をついて背伸びをする永見に、綺凛は飛ばされた刀を取りながら問う。

 

 

「え? あぁ、天霧との決闘を参考にして言うと、お前の技術は素人目から見ても天才的で一級品だ。自分でどう思っているかはともかく、剣の速さ鋭さから間合いの取り方、身のこなしまでの全てがな」

 

 

「あの戦いを見ていたんですか……」

 

 

「まぁな。んで、俺じゃそういう部分じゃ絶対に勝てない。まともにぶつかったら確実に負ける」

 

 

 だったら、と永見は続ける。

 

 

「そういった部分で張り合わなければいい。卓越した技術や類稀な才能ではなく、無駄にある経験とこれの力でな」

 

 

 自分の持つ純星煌式武装(オーガルクス)の発動体を見せながら綺凛へ言い放つ。

 

 

「んで、俺はお前の技術に着目した、完璧な間合いの管理にな。ーーだがそれはむしろ欠点となり、間合いが変わる武器に対してはそれが仇になる」

 

 

 そう、現に綺凛は最初に展開された剣で間合いをはかっていた。そして永見はそれを槍へと変えて、綺凛の間合いを狂わせた。

 

 

 いつもの綺凛ならそれも避けれただろう。何せ叔父から情報は得ていたのだから。だがその前からこの男は布石を打っていた。

 

 

 綺凛を二度の動揺で精神的な焦りを誘い、状況を見えにくくするという布石を。

 

 

「人は自分の経験に基づいて動く、だがそれを全てだと思ってしまったのが敗因だ。あんな攻撃は想像してなかっただろ?」

 

 

「私も修行が足りません……」

 

 

 綺凛は少し俯きながら呟いた。全くの想定外を突かれたので妙に憎めない。

 

 

「まだ経験が無いしこういうのには引っ掛かるんじゃねぇかなと、ーー俺はちょっと思うね~」

 

 

 永見はそう言って純星煌式武装(オーガルクス)をしまう。

 

 

「ーーそれはそうと先輩、質問していいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーえっ? あ、はい、どうぞ」

 

 

 刀藤の急な豹変ぶりに行人はつい敬語になってしまった。なぜなら目がギラついているのだ。それはさっきの会話からはあまり想像できなく、少し怖い。

 

 

 正直早く終わらせたいのが本音なのだが、

 

 

「先輩のその動きはどうやって取得したんですか? 我流と武術の動きが混ざっているように見えたのですが……」

 

 

「ーー《鳳凰星武祭(フェニクス)》での件を考えてくれるなら、教えてもいいけど、どうする?」

 

 

「…………すいません、私は自分の目的のためにも、叔父様に従わなければなりません。ーーその申し出は受けれません」

 

 

 刀藤の意志が込められた言葉を聞くと、行人はそれに答えずに出口に歩き出し、外から見ていたであろう鋼一郎に向かって叫ぶ。

 

 

「鋼一郎氏? 多分、いつかこの子に足元すくわれるぞー」

 

 

 そう、目的のために自分を犠牲にできる人物の覚悟は並みのものではない。

 

 

 少し体をふらつかせながらトレーニングルームを出た。




 プロットは何となく想像できているので、次も早めに出せると思います。……多分。


 


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感覚伝導

「ぐっ……」

 

 

「大丈夫? 行人」

 

 

 既に暗く辺りを街灯が照らす中、行人は人型になったニアに体を預けながら寮に帰るところだった。

 

 

「正直、かなりキツい。──うぅぅ……」

 

 

「少し休憩しよっか」

 

 

 公園にあるようなベンチを指差してニアは痛みに唸る行人を連れて近づき、座らせる。

 

 

 行人はベンチに横たわりぐったりとする。決闘からはしばらくたっているというのに息づかいは荒く、顔は今も汗ばんでいる。

 

 

「いつものことといえばいつものことだけど、今回はかなり無茶してたよね。星辰伝導(プラーナトランス)はともかく、刀を手で弾くなんて。あれはまだ練習中でしょ?」

 

 

「ああ、まぁ、な」

 

 

 生身の体に星辰力(プラーナ)をこめて戦う方法は界龍の、それも拳士の戦い方だ。もちろんそれを教える人物はいないので全て独学、いまだに研究中だった。

 

 

 それをぶっつけ本番で試したのだ。といっても本来使う気はなかったのだが、

 

 

「だってなぁ、あいつ、かなり強いんだよ、そりゃあぁでもしないと、俺じゃ勝てない」

 

 

 自分の戦い方は他の《魔術師(ダンテ)》や純星煌式武装(オーガルクス)使いと比べても、かなり違いがあると行人は考えている。

 

 

 星辰力をコントロールすることは《星脈世代(ジェネステラ)》の戦闘では基礎中の基礎で、行人はその技術に関してだけはかなりのものだった。

 

 

 それだけが戦闘の才能も特殊な能力も星辰力の量もない自分にとって、唯一の長所と言っても過言ではない。

 

 

 事実、刀藤の重い斬撃を素手で弾けたのはその技術で身体中の星辰力をかき集めたからだ。──だがそれだけではあの速さの剣に初見で対応するのは行人には不可能だった。

 

 

 そこで行人はそれを攻防以外の別の方向に応用させて使っている。その技術こそが《星辰伝導(プラーナトランス)》だ。

 

 

 この技術は自分の星辰力を神経などに作用させ神経の伝達速度を速め、体の反応速度や脳の処理速度を引き上げるものだ。

 

 

 身体の星辰力を伝達に使うだけなので消費こそ無いものの、あまり多用すれば仕様した箇所は痛み、脳なら下手すると焼ききれそうになるような代物で、今ある痛みはその反動によるものだ。

 

 

 その痛みに顔をしかめながら行人は体を起こす。

 

 

「それは、そうだけど……」

 

 

「それに、こんな戦い方してんのは、いつものこと、だろ」

 

 

 ニアの発言を、だがそれを抑えて行人は口を開く。

 

 

 そう、別にこの痛みを経験するのは初めてではない。かれこれ三年以上は大小あれどこの痛みを受けて、自分は戦い続けている。

 

 

 痛みに耐えて再起を待ち、今ある自分の状況を分析し、負けに負けを重ねた経験でいつかの勝ちを強引にもぎ取る。

 

 

「例え体が雑巾みたくなろうが戦いに赴く。──それに、戦いこそがお前の願いだろ。ッつ……!」

 

 

 ベンチから立つが、行人は抜けきっていない痛みによろけてしまう。

 

 

「うん、……でも無茶だけはしないで。それで行人が燃え尽きたら、戦ってきた意味が全部なくなっちゃう」

 

 

 そこをニアは自分の体を使って支えると、めずらしく不安そうな顔になり行人の顔を見つめる。

 

 

「──とりあえず早く帰るぞ。ッテテ……! あ~こりゃ明日は休みだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《星辰伝導》(プラーナトランス)

 猛者たちと渡り合うために永見行人が編み出した星辰力を応用した技術。

 

 

 体内の星辰力を神経系の補助に使い、体の反応や脳の処理速度を五倍ほど上げることができる。

 

 

 あくまで強引に強化しているだけなので使用した箇所には負荷が掛かり、維持できるのは一度の使用につき最大で十秒程度。

 

 

 何度も使用すると負荷は大きくなっていき、へたをすると一日以上痛みが続いたり脳が強制的にシャットアウトする。




 読んでくれてありがとうございます。


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事件の爪痕

 刀藤との戦いから回復し二日後、行人は無事学校に行くことができた。もちろん、担任にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーやっと解放されたわー疲れたわーすっっっげー疲れたわー夕方まで補習とかないわー」

 

 

「さすがに無断で欠席してケロッと戻ってきたらそうもなるんじゃないかなぁ……」

 

 

 学校の補習から夕方に解放された行人はニアを連れて歓楽街(ロートリヒト)を歩いていた。もちろん校章は付けず、二人とも私服のパーカー姿で、だ。

 

 

「そもそもなんでまたこんなとこに来たの……」

 

 

「あの戦いで手榴弾とかが尽きちまったからな。その補給として」

 

 

「休みの日でよくない?」

 

 

 ニアは若干眠気が混じった声で反論してくる。最初は武器に眠気という概念があるのが驚きだったのだが、人間に似てるのは外見だけではないのだろう。……多分。

 

 

「正直そうしたいんだが、まぁ今回はクローディアからの頼み事もあるからな」

 

 

「──人使いが荒いね~会長さんも」

 

 

「まったくだ」

 

 

 今回クローディアに依頼されたのは、星導館のとある生徒の捜索だ。

 

 

 というのも生徒襲撃事件の一件で《鳳凰星武祭(フェニクス)》に参加できなくなった生徒──桜木わかばのパートナーが、学園に来ないどころか寮にいた記憶もないらしい。

 

 

 タイミングから想定できる可能性としては、襲撃によるものというよりパートナーの脱落による自暴自棄のようなものかもしれない。

 

 

 それにその人物はデータによると自分に対してコンプレックスもあるとのことだ。早めに見つけないとまずいことになるかもしれない。

 

 

「てなわけでさっと補給して、ささっと依頼達成するぞ。まずは再開発エリアだ」

 

 

「りょ~かい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星導館中等部二年、白江利奈は歓楽街の小さな飲食店でしばらく働いていた。

 

 

 一度逃げ込むように入った店だったが、ここのオーナーは優しく、見ず知らずの自分を受け入れてくれた。そして利奈はその恩返しとしてここでしばらく働いていた。

 

 

 しかしその生活はすぐに崩れ去る。ここらを仕切るギャングどもが、利益に支障がでると言ってここの店を潰しにきたのだ。

 

 

 オーナーは自分を逃がしてくれたが、利奈自身はもう死にたいとすら思う気分だった。

 

 

 昔からそうだ。自分の周りにいてくれた人は親切で、優しくて、すごくて、それでいて自分が近くに来たとたん、すぐに不幸なことに晒される。

 

 

 それは全て、自分のせいで、その理由は自分が自分という存在だからなのだろう。

 

 

 そんな自分に心底嫌気がさして、再開発エリアに迷い混んで、回りを取り囲まれてもに気づかないほどに自暴自棄になって、辺りをさ迷っていた。

 

 

「……よぉお嬢ちゃん。あんたあの店のだろ? 上から関係者は始末しろって言われてんだ、悪く思わないでくれよ?」

 

 

 男たちの内の一人は下卑た笑みを浮かべながら自分に近づいてくる。

 

 

 やっと終われると思い目を閉じて安堵の息を吐き、利奈は意識を手放す。……が

 

 

「──おーおーおー、幸先がいいねぇこりゃあ!」

 

 

「──よく一発で引き当てたね……素直にすごいと思うよ」

 

 

 と、思っていたところで現れたのは、黒髪のやつれた少年と白髪の自分より小さい少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再開発エリアに最初に向かうと、柄の悪い男数名がちょっと目が死んでいる少女を囲んでいた。男たちはここらのチンピラのようなものだろう。しかし……

 

 

(いや、まぁ、目標発見しちゃったんだけどさ)

 

 

「……誰?」

 

 

 紫色のショートヘアーに百六十センチほどの身長、写真にあった幸薄なタイプ(すごく失礼だが)の顔。間違いなくクローディアがくれた情報の人物──白江利奈だ。

 

 

 だがこう、状況が状況なだけに、行人には複数の男が乱暴する薄い本のようにしか見えなかった。

 

 

「あぁ? なんだテメェら」

 

 

「ここはテメェらみてぇなガキがくるとこじゃねぇんだよ」

 

 

「いやガキくらいここらにはけっこういんだろ、レヴォルフとか……」

 

 

「かなりチンピラのお約束みたいな感じのセリフだよね」

 

 

 テンプレすぎる脅し文句に完全に呆れる行人とニア。本来ならもっと緊迫するであろう場面も二人からすればもはや今更だった。

 

 

「あー、うん。えーその子うちの学園の生徒でして、ちょっと離していただけませんかね」

 

 

「そう言われて離すわけねぇだろバーカ。こっち近づいてみろよ。その瞬間こいつの命はねぇぞぉ?」

 

 

 一番少女に近い男はナイフを少女の首に当て脅してくる。

 

 

 しかし行人は飄々とした様子で短剣型煌式武装(ルークス)を発動させて交渉する。

 

 

「いやーそうもいかないんですよね~。武器はそっちに渡すんで返してくれません?」

 

 

「へっ、じゃあ言う通り、まずその武器をこっちによこしな」

 

 

 悪い笑みを浮かべて男は要求してくる。おそらくこちらの言い分を聞く気など一切ないのだろう。

 

 

 ──こちらもそんな気は毛頭無いが。

 

 

「はいはいわかりましたよ。──ほいっと」

 

 

 行人はその要求に従い煌式武装(ルークス)星辰力(プラーナ)をバレないように込めてから、男たちの方へ投げる。

 

 

「よーし、それでいい──ッ!?」

 

 

「そいつ頼むぞニア!」

 

 

「──え?」

 

 

 投げられた煌式武装は小規模な爆発を起こし、男たちの笑みは驚愕の表情へと変わる。その隙にニアは囲まれていた少女を抱え行人と二人で走り出した。

 

 

 身長が低めのニアがそれより大きい少女を抱える様子はややギャップがあるが、この際そこは気にしない。

 

 

 もちろん男たちはすぐにこちらを追おうとするが、

 

 

「ぐっ……! 待てッテメェら、ッテ! なんだこりゃあ!?」

 

 

 突然顔をしかめながら足踏みをしだす。その足元にはいつの間にか画鋲(まきびし)が撒き散らされている。それも見えにくいよう黒く塗装されたものが。

 

 

「あーばよー、とっつぁーん」

 

 

「形から全然似てないからねそれ」

 

 

 こうして二人の少年少女は再開発エリアから姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、……どうする?」

 

 

「どう……って、ボスに連絡するしかないだろ」

 

 

「だよなぁ……」




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自己嫌悪

「ふぃ~、なんとか逃げ切れたな」

 

 

「私なんて人持たされてたけどね」

 

 

「まずお前体力の概念あんの?」

 

 

「さすがにひどいよそれ」

 

 

 チンピラ共を無事に振り切り、三人は歓楽街(ロートリヒト)の行きつけの店にひとまず入った。

 

 

 連れてきた少女は校章こそ付けてないが、制服なためかなり目立つ。なのでひとまず自分が着ていたパーカーを着させ、少しは目立たなくさせてから適当に逃げ込むことにした。

 

 

 学園に戻れてない時点でまだ危険があるのはそうなのだが、外も外で最初より人が増えている。やつらの仲間がいるかもしれない状態で出るよりはこの方が安全だろう。

 

 

「……あなた方は、一体誰なんですか」

 

 

 連れてこられた少女──白江利奈はこちらに質問をする。

 

 

 長く寮に帰ってないからか、髪は少々ボサボサで、見た感じはクラスに一人はいる静かで目立たないタイプの少女だ。

 

 

 顔を俯かせているため表情はわからないが、声色からは警戒心が伺える。──もっとも、込められた感情には絶望のようなものも混じっているが。

 

 

「ああ、忘れてたわ。えー俺は永見行人、どこの生徒かは言わずもがなで高等部二年。んでこっちの白いのがニア」

 

 

「よろしくね」

 

 

「……なぜ、私を助けたんですか?」

 

 

 雰囲気には触れず、若干会話になっていない会話を続ける。最悪の可能性を考えていた行人としては比較的ましな状態だと思うが、あまり良いとも言えないかもしれない。

 

 

「なんでそんなことを聞くの?」

 

 

「──こんな私なんか助けたとして、学園にも……もちろんあなた方にも、良いことなんてないですから……」

 

 

 ニアの聞き返しに対して白江は素直に答えてくれるが、やはりその声に助けられたことへの感謝など微塵も無い。

 

 

 ──やはり、と行人は思う。白江は窮地にあったものを助けられて、感謝ではなく疑問で──そして助けたことへの拒絶に近いものを口にしたのだ。

 

 

 何があったかは知らないが、この少女は、既に自分を否定し、自己嫌悪に走っている。でなければ、普通はそんなことを口走りはしない。

 

 

 事情がわからないと説得すら出来ないので、失礼とは思いつつも、行人は問う。

 

 

「事情は知らん、だがなんでそう思うのか聞かせてもらっても?」

 

 

「……私の近くにいる人は、みんな不幸になっていくからです」

 

 

「──ふむ、……根拠は?」

 

 

「私が魔女(ストレガ)だから。そして、私が私だから。──それだけです」

 

 

 諦めの入った声で不幸の根拠を言った白江。

 

 

 星脈世代というのは、世界でも差別の対象となっており、特に能力持ちの《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》は風当たりが強い。

 

 

 ここアスタリスクに来る前のことは知らないにせよ、何かがあったであろうその過去に加わり、自分が《魔女》だから自分の相方は狙われた可能性。

 

 

 そう考えれば、そう思ってしまうのも不思議ではないのだろう。

 

 

 なにせそれが正しければ、自分の相方──桜木わかばは、自分が関わったせいで《星武祭(フェスタ)》への参加を逃したと言っても過言ではないのだから。

 

 

「ふーむ……ま、お前に何かがあったとして、それは俺がとやかく言ってどうにかなることじゃーないわな」

 

 

「……全くです。──もういいでしょう、私のことは放っておいてください」

 

 

「だがちょーっと待った、そういうわけにはいかないんだよ」

 

 

 席を立とうとする白江を、行人は咄嗟に手を掴んで止める。

 

 

「──何なんですか、放っておいてくださいよ」

 

 

「こっちは生徒会長からも直々に頼まれてここに来てる。そう簡単に帰れると思うか?」

 

 

「……本当ですか? それ」

 

 

「無理に信じなくても別にいい。ま、俺としてもお前に頼みがあるんだがな」

 

 

 そう、補習やらなんやらで疲れているのに、行人がわざわざここに来たのには理由があった。

 

 

「単刀直入に言おう。俺と《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出てほしい」

 

 

「本当にいきなりですね。──なぜ私なんです?」

 

 

「《鳳凰星武祭》はタッグ戦だが、俺にはパートナーがいない。んで、それはお前も同じ。なら話は早いだろ? それに、ぶっちゃけ俺は序列入りするような友人がいなくてね」

 

 

 パートナーとして白江を選んだ理由を列挙していく。言っていて悲しくなってきたが、そこはそれとして気にしない。事実だし。

 

 

「私は序列に入ってませんよ……。それに今一緒にいるニアさんじゃ駄目なんですか。それに生徒会長と交友があるなら、そっちは……」

 

 

「その会長さんは断固拒否、あいつは《獅鷲星武祭(グリフィン)》しか出ないからな」

 

 

「なんでです?」

 

 

「さぁな、理由は俺も知らん。んでニアは……まぁちょっと事情があってな、まず《星武祭(フェスタ)》自体に出ることができない」

 

 

「はぁ、そうですか……」

 

 

 いまいち腑に落ちない様子だが、とりあえず自分が選ばれた理由は納得してもらえたようだ。

 

 

 まぁニアに関しては、こいつは純正煌式武装(オーガルクス)だから無理、など言えるはずもないので仕方ない。

 

 

「んで、返答を聞いても? まぁすぐにとは言わないけど」

 

 

「お断りします」

 

 

「即答かよ……理由は?」

 

 

「別にいいでしょう、もう放っておいてくださいよ……」

 

 

 かなり明確に拒否をされた。こうなるとあまり意見を変えるのは難しいだろう。

 

 

「あーわかったわかった。とりあえず《星武祭》はいいから。だからせめて学園に安否の確認位してくれ、じゃなきゃ下手すると星猟警備隊(シャーナガルム)まで出てくる」

 

 

「わかりました。……はぁ」

 

 

 どうやら学園に戻ることもかなり嫌なのかもしれない。そう思わせるほどにかなり嫌そうな顔を白江はしていた。

 

 

「まだ時間は遅くはないし、急ぐ必要は無いか」

 

 

 店の時計で時間を確認して、行人はそう口にする。

 

 

 時刻は七時にいくかいかないかといったところで、さっきから時間もたっている。紛れているやつらも多少少なくなっているだろうし、この時間ならまだ余裕をもって移動できるだろう。

 

 

「んじゃ行くぞ。──勝手にどっか行かないでくれよ?」

 

 

「行きませんよ……」

 

 

 そうして三人は店から出るが……

 

 

「見つけたぞ──!!」

 

 

「──白江、多分これな、能力は関係無い。お前自身の体質だわ」

 

 

 行人は心の中で、今日一番の不幸を呪った。




 読んでくれてありがとうございます。


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余計なお世話

「あぁークソッ! どんだけ人数いるんだよ頭オカシイんじゃねぇか!?」

 

 

「運悪いだけじゃない?」

 

 

「ボッチで不幸でってもうこれ以上属性いらねぇよ俺! しかも絵面的に少女誘拐まで付け加えたら最悪だろ!」

 

 

「別に私を置いてi……」

 

 

「だぁってろお前は!!」

 

 

 店から出た瞬間気づかれるという大ハズレを引き当てた行人たちは、白江の手を引きながら歓楽街(ロートリヒト)を走っていた。

 

 

 うまくかわしてはいるものの、人数が多く少しつらくなってきているのが現状だ。

 

 

(どうする!? まきびしはもうないし、手榴弾系はここじゃ威力がでかすぎる!)

 

 

 手元にある道具では状況を打破できそうになく、行人はかなり焦っていた。

 

 

 爆発物や銃器型煌式武装(ルークス)は使えばすぐ居場所が割れるし、かといってそのために持ってきていた道具(まきびし)も既に品切れ、ニアに至っては論外。打つ手なしだ。

 

 

 入った店が人通りの少ない場所のものを選んだのも裏目に出ており、紛れ込める程の人混みも見当たらない。

 

 

「チッ!」

 

 

「行人!?」

 

 

 逃走ルート上にやつらの仲間が見え、行人は急な方向転換をする。

 

 

「クソッ……どんどん誘導されてんぞこりゃ」

 

 

 さっきから向かうところには追っ手がいる状態が続いており、さらに人通りが少ない場所に追い込まれている。探知系の《魔術師(ダンテ)》か《魔女(ストレガ)》の可能性を視野に入れながら、行人は次の手を考える。

 

 

 ──幸いなことになんとかなるかもしれない。

 

 

「──白江、お前不幸がどうのこうのだから他人とは関わりたくないんだろ?」

 

 

「──急になんです……?」

 

 

 誘導されて来た目の前には、廃墟がある。そこは一切明かりがなく暗闇が広がり、人の気配も無く追い込む場所には最適だろう。

 

 

「自分の不幸が周りに伝わっていくのが嫌で嫌で、だから学園にも帰らないし、俺らにも放っておけって言った……違うか?」

 

 

 そう言って白江を人目につかない場所に隠す。半ば押し込む形だが、下手をすると飛び出て行ってしまうかもしれないし、仕方ないだろう。

 

 

「……だとしたら、どうなんですか?」

 

 

「もしそうなら、そんなこと気にする必要は微塵もないし、その前に自分のことを考えろって、俺は言っておこう」

 

 

 そうだ、何かを背負い込んで人一倍周りを気にする様な人物ほど、自分のことを疎かにする。そして白江利奈の場合、それがかなり明確に出ている。

 

 

 だが星導館の学生は彼女が言う『不幸』などでへこたれる程ヤワではないはずだし、少なくとも自分はそうだと思っている。

 

 

「これがお前の言う不幸なら、──俺がはね除けてやるよ。てかそれくらいできなきゃ《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出ても意味ないしな。……まあ無理だと思ったら、助け船を出せば良い。そういう力がお前にはあるんだからな」

 

 

 そう言って行人は持っていた自動拳銃型煌式武装(ルークス)を展開して白江に渡す。これで自分の武器はニアだけになるが、今回の戦法は銃を使う気はないため問題はない。

 

 

「今回は特別だ、こいつの秘密……見せてやるよ。──いいぞ、ニア。今回は、ひとまずナイフで頼む」

 

 

「りょーかーい」

 

 

「? ──!?」

 

 

 ニアは形を変えていく。白江は頭に?を浮かべていたが、そのうちその顔は驚愕に変わった。

 

 

「元序列七位《聡明な愚者《プロメテウス》》の戦い、見せてやるよ」

 

 

 行人はナイフになったニアと、獰猛な眼と笑みをちらつかせた。




 どんどん文が適当になってる気がする今日この頃。


 作者の文章力は……っていい加減しつこいですね。


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暗雲低迷

「おい、本当にここなのか?」

 

 

「ああ、間違いない。入ってってんのは見たし、《羅針盤(コンパス)》もここだっつってる」

 

 

 目的である女を追っていた男たちは、それがいるという廃墟の前に集まっていた。

 

 

 彼らのメンバーは八人ほどで、金で雇われたレヴォルフの学生に、それを雇ったギャングが一人混じっている。

 

 

 《羅針盤》というのは、彼らの仲間である探知系能力を持つ《魔術師(ダンテ)》だ。

 

 

「無駄口叩いてねぇで早く行け、捕まえたやつにゃ普通より多く金をやる」

 

 

「よっしゃ! 俺が一番に捕まえてやるぜ!」

 

 

「おい、待てよ! ったく……」

 

 

 それを聞くとナイフ使いの一人が我こそはと真っ先に廃墟へと入っていった。

 

 

 他のメンバーは止めようとするが、別に問題は無いだろうと思う。

 

 

 彼はこのメンバーの中では中々に腕が立つ者の一人だ。それに彼らはさほど強くは見えないし武器をほとんど持っていなかった。さすがにそんなやつらに負けるわけはないだろう。

 

 

 最悪通信をすれば安否は確認できる。やられていても五対二だ。戦力過多でフルボッコとすら思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、なんか、変な感じしねぇか?」

 

 

「そうか? 回りに人もいねぇしこんなもんだろ」

 

 

「それはそうだけどよぉ、なんか、静かすぎるっていうか不気味っつうか……、あいつからの連絡もねぇしよぉ」

 

 

 言われてみると、確かに物音一つしないし、入っていったやつの気配も感じない。

 

 

「──ばらけると面倒だ、できるだけまとまって……」

 

 

「うぉぉぉおぉお!」

 

 

 所詮金で雇われたやつらだからか、それとも元々が脳筋なのか、どちらにせよギャングの出した指示など聞きもせず、レヴォルフの学生たちは突入していく。──しかし……

 

 

「う、うわぁァぁぁァァッッッ!!!?」

 

 

 そこから聞こえたのはただひたすらの絶叫だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよこれ……、どうなってんだよ……」

 

 

 レヴォルフの生徒らが廃墟でまず目に入ったのは暗闇、そしてその次に突入した仲間の死体だった。

 

 

 心臓は止まっており、頸動脈からは血が絶えず出てきている。殺られ方から見て間違いなく即死だ。

 

 

 アスタリスクは如何に街中で戦闘が起き、その被害が平然と建物に出るような異常な都市でも、人間を殺すような学生は普通ならいない。

 

 

 利己的に考えれば歴代最強の《魔女(ストレガ)》がいる警備隊に目をつけられ、捕まることになるからだろう。だがそれだけではない。

 

 

 仮に汚れ仕事を請け負う人物やその覚悟ができるような学生ならともかく、圧倒的強者でも普通の学生なら、人を殺すことには抵抗を覚える。

 

 

 なぜなら日々決闘をする者たちでも、身に染み込ませた感覚は『決闘(戦い)』であって『殺し合い』ではないのだから。

 

 

 しかし目の前に広がるのは、無残に最期を遂げたレヴォルフの学生の姿で、それを見た者たちに浮かぶのは恐怖が怒りだけだ。

 

 

「お、おいっ。も、もう一人は、どこ行きやがった?」

 

 

 そしてメンバーは、人数がまた一人減っていることに、気づいてしまった。

 

 

 廃墟の中に灯りは無く、ただひたすらに悪夢のような暗闇が広がっている。

 

 

 暗闇は、そこにいる彼らをどこから襲われるかわからないことへと恐怖を抱かせる。

 

 

「クソッ! 何処にいやがる!」

 

 

「で、出てきやがれ! この腰抜けが!」

 

 

 そしてメンバーの死体は、さらにその恐怖を促進させる。──そう、どことも知れぬ誰かに、いきなり殺されるという恐怖だ。

 

 

「どこに行きやがったアイツ……。誰かリックを知らねぇか!? 拳銃を持った大きいやつだ!」

 

 

「アァァぁァァぁァァ!!!!」

 

 

 一人がそう言った瞬間、待ってましたと言わんばかりに少し離れた場所で銃声が鳴り、耳をつんざくような叫び声がする。そこにいたのは大柄なメンバーの一人、行方がわからなかったはずのリックだった。

 

 

 持っていたはずの拳銃は無くなっており、両足と利き手に撃たれた跡がある。死んではいないがおそらく痛みで気絶しており、拳銃は盗られたのだろう。

 

 

「クソッ、チクショウ……」

 

 

 また一人被害者が増えたことに憐れむが、それで何かが変わる訳でもない。一人ずつやられていく恐怖は伝染し広がっていき、やがてそれは絶望となる。

 

 

「そうだ、みんなで集まれ! そうすればお互いにカバーできる!」

 

 

 その言葉に反応し、散らばり気味だった学生らは一斉に一ヶ所へと集まる。

 

 

 ──しかし、襲撃者は恐怖によって反応が遅れた者を見逃さなかった。

 

 

「い、いやだ……! 誰か、助けて、助けてくれェェェぇェェ!!!!」

 

 

「これは夢だ。……そうだ、あ、は、ハハハ……」

 

 

「なんだよ……一体なんなんだよ……!」

 

 

 メンバーの一人が今度は足を掴まれ、さらに深い闇に引き込まれた直後、また銃声が二発とうめき声が聞こえる。

 

 

「あ……ア……」

 

 

「もう、もうイヤだぁッ!」

 

 

 たった三人を追ってきただけの彼らは、現在は事実上壊滅といっても過言ではない状態だった。

 

 

 叫び恐怖し絶望し、顔は涙に覆われ体をうずくませ、外に飛び出していく者までもがいた。──だが、残ったメンバーもまだ残っていた。

 

 

「来るなら来やがれ……、相手してやるよ……」

 

 

 怯えながらも、彼らはショットガンや二丁の手斧などを装備しており、近接戦では無類の強さだろう。

 

 

 だがしかし、現実はそんなことものともせずに襲い掛かってくる。

 

 

「どわぁッッ!!?」

 

 

「なんだこれはぁぁッ!!?」

 

 

 いきなり頭上から爆音がし、瓦礫が降ってくる。暗闇と状況で感覚が狂っていた最後のメンバーは、瓦礫によって生き埋めとなる。

 

 

 こうして、当初戦力として十分すぎると思われていた追っ手たちは、だがその実完全な返り討ちにあって終わった。




 読んでくれてありがとうございます。


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死体偽装

「──殺したんですか? それ……」

 

 

「いや? というか、もうやめていいぞ、ニア」

 

 

「え?」

 

 

 行人がそう言うと、首から血が出ていた一人のレヴォルフ生徒がどんどん形を変えてゆき、先ほどナイフになった少女へと姿を変える。

 

 

 そして普通なら致命傷を負っていた(傷は消えている)少女がケロリとしながら口を開く。

 

 

「いやー、人間の血ってこんな感じなんだね。不思議な感じだよ」

 

 

「こんなところでも平然と人の体液を再現できるっていうお前に驚くよ俺は」

 

 

「唾液の時点で今さらじゃない?」

 

 

「それもそうか」

 

 

「もう……何がなんだか……」

 

 

 そして利奈はその光景を見て頭を抱えていた。まず少女がナイフなって、そしたら今度は死人が少女になっていた。

 

 

 他にも行人の手からは血が出ていたり、目の前で意味不明な会話が繰り広げられていたりするので、頭は既に熱暴走を起こす直前だった。

 

 

「帰る時に順を追って話すから安心してくれ。つーわけで早く帰るぞ」

 

 

 行人はそうして早く帰るよう促す。しかし行人は気づかなかった。

 

 

 ──廃墟に入ってこなかったギャングが、自分に銃を向けていることに。

 

 

「ダメェッッ!!!」

 

 

 直後、利奈の体は通常の《星脈世代(ジェネステラ)》とは比べ物になら内ほどの速さであっという間に近づき、持っていた拳銃の柄で打撃を与える。

 

 

「ヘブッッッ!!」

 

 

 その衝撃を顔でもろに受けたギャングの男は、後ろにノックバックしながら倒れ込む。男は鼻が少し曲がっており、かなり痛そうに見える。

 

 

「──できればそっちも色々話してくれるとありがたいな……」

 

 

「……はい」

 

 

 そして助けられた行人には、若干戸惑いと驚愕の表情が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──変幻自在の《純星煌式武装(オーガルクス)》?」

 

 

「そ、なりたい物の構成とかを覚えれば大体のものにはなれる。剣とかの武器から、果てには今みたいな人型にもなれる」

 

 

 利奈は行人とニアの三人で普通の商業エリアを歩いていた。回りは暗くて人通りも少なく、街灯の光には虫がたかっている。

 

 

 なるほど、ニアという人物は人間ではなく、意識を持った《純星煌式武装》らしい。本来の用途とは別に、武器以外の姿になれるから人として活動もできるし、死人に成り済ますなどということもできるのだろう。

 

 

 その姿はかなり整っていて、おそらく誰もが一目見ただけで人間だと思うだろう。それほどに違いがなかった。

 

 

 さらに付け加えると、普段からしているのであろう姿は人形のようにかなり可愛らしい。──自分なんかとは違って。

 

 

「そういやそろそろ聞いていいか? お前について。《魔女(ストレガ)》の知り合いはいないから、どんな感じなのか気になるんだよな」

 

 

「──そんないいものじゃありませんよ。こんなもの(呪い)




 少し期間が開きましたが投稿します。


 あととある人からの修正をきっかけに今までの話の線やルビを直しましたので、よかったら確認してみてください。


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天国と地獄

「なぜ、そんなことを言う?」

 

 

「──まず、私の持っている能力については知っていますよね?」

 

 

「ああ、前もって調べてたし、さっきこの目でも見た」

 

 

「……なら私の能力については、改めて話す必要はありませんね」

 

 

 白江利奈の能力、それは物体の動きを速くする《加速》の能力だ。ギャングから自分を助けたときには、その力を自分に使って超スピードを出したのだろう。

 

 

 急な動きであの速度を出せる能力がどんなものなのか。なんにせよ効果ぎシンプルかつ、応用によってはかなり多種多様な使い方ができる能力な気がする。

 

 

「……まず最初にこの力が発動したのは、私が子どもだったときのことです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本という国の北の北、涼しげで冬には雪が降り積もる地方。そこは広く、統合企業財体の手が届かない場所もある。

 

 

 利奈の出身はそこの小さな田舎で、まさしくそれに当てはまる場所だ。畑があって、駄菓子屋があって、学校があった。

 

 

 《星脈世代(ジェネステラ)》への差別が無いわけではなく、絶対に安全というわけでもなかったが、優しいお婆ちゃんがいて、大好きな友達がいて、愛する家族がいて、自由ではなくても、楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校で運動会のとき、利奈はリレーの選手になった。自分は《星脈世代(ジェネステラ)》だが運動が苦手で、いつもはもっと別の人がやっていたけど、今回はあまり早い人がいなく、回りの勢いもあって参加することになった。

 

 

 それでも仲の良い友達が、私たちが距離を稼ぐから安心して走ってと言ってくれて、利奈は最終的にアンカーの位置へとついた。その言葉で安心しきっていたのだろう。

 

 

 ──相手のクラスには自分より運動が得意な《星脈世代(ジェネステラ)》の子がいて、友達をぶっちぎりに抜かしていた。

 

 

 スタートにも出遅れ、その子とはかなりの大差がついていて、このままじゃ、あんなことを言ってくれた友達が責められると思った。

 

 

 必死だった。

 

 

 直線のコースを相手とは大差がある中、汗をかきながら走って、心の中でこう叫んでいた。

 

 

 もっと速さを! もっと速度を!! もっとスピードを!!! 

 

 

 その瞬間だった。──利奈の体が、ゴールラインを越えていたのは。

 

 

 利奈は呼吸を乱し、汗を拭いながら周りを見た。頭は回っていなかったが、そんなことは気にしていなかった。

 

 

 自分がゴールした。その結果だけを利奈は理解していた。自分は勝った。友達や同級生、先生はどんな反応だろうか。褒めてくれるだろうか。……そんな期待を少ししていた。

 

 

 だがそんな期待はことごとく裏切られる。

 

 

 なぜなら周りはみんな顔には、──驚愕と恐怖を浮かべていたのだから。




 読んでくれてありがとうございます。


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元凶

 それから利奈の周りは一転した。同級生はほとんどが自分を避け、走りを見ていた近所の人からの差別はさらに多く、そしてひどくなった。

 

 

 学校にも何人かは《星脈世代(ジェネステラ)》がいたが、彼らすら利奈を避けていった。──自分が《魔女(ストレガ)》だとわかった途端に。

 

 

 その被害は家族や友達にまで来ていた。家には落書きや脅迫状が来るようになり、父母の友人までもが離れていった。《忌み子の親》というレッテルを貼って。

 

 

 離れていかなかった友達はその事実を同級生に広められ、ついには利奈以外に友達と言える人物はいなくなった。親からもそれを指摘される毎日だったとか。

 

 

 ──そんな自分が、利奈には許せなかった。自分のせいで、幸せだった暮らしが崩れ去った。自分の、家族の、友達の幸せが。

 

 

 ──全てが、自分のせいで。

 

 

 なのに親や友達は、利奈を捨てなかった。それは嬉しかったけど、少し悲しかった。暖かかったけど、それが少し苦痛だった。

 

 

 こんな自分をなぜ手離さないのか、全ての火種となった自分が邪魔ではないのか、本当はそれが謎だった。……さすがに失礼だと思ったから、聞きはしなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 運動会の季節は過ぎ、冬、白い雪が降り積もり、辺りは一面が真っ白な銀世界となり、いじめや差別は苛烈さを増していた。

 

 

 さすがに慣れはしてきたが、机に悪口を彫られたり、物を投げつけられるなどで、プラマイゼロになっていたのが現状だった。

 

 

 そんな頃だっただろうか、利奈と友達は──突然襲撃を受けた。

 

 

 統合企業財体の手が入っているような都市は、治安維持のための警備なども手が加えられている。しかしその手が届かない地方などは、当然だがその限りではない。

 

 

 《星脈世代(ジェネステラ)》を優越するような組織や、《星脈世代》を目の敵にする組織などがいる中、そのような場所はそれらの潜伏場所にうってつけで、近所の住民が後者に何か吹き込まれたのかもしれない。

 

 

 家で遊んでいたとき、そこへ爆発物が投げ込まれた。友達はそれに真っ先に気づき、利奈を庇った。あまり大きくなかった家は崩壊し、彼女は家の残骸によって生き埋めとなった。

 

 

 友達は助かり、命に関係するような怪我は幸いにも負わなかったが、代わりに彼女は四肢の神経を失った。救助した人の話によれば、彼女は体はほとんど死に体だった。

 

 

 とにかく利奈の友達は、その日から四肢の不自由を患いながら生きることとなった。

 

 

 ──それは全てに利益を尊ぶ世界で生きるには、あまりにも不利な体だった。

 

 

 そしてその元凶となったのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そりゃまた……、かなり壮絶な過去をお持ちで」

 

 

「いくら《魔女(ストレガ)》でも、いくら力があっても、所詮こんなものですよ……」

 

 

 利奈は自分を嗤いながら、だが諦めも込めながら行人にそう言った。

 

 

 そう、いくら力があっても、周りが守れないのでは意味がない。だがそんな強さを利奈は持っていなかった。だから……

 

 

「私はこの力が嫌いです。こんな力を持つ自分が嫌いです。力を持っていながら何もできなかった自分が……何よりもキライです。だから、私はここに来た」

 

 

 だから利奈は、ここに来た。周りに被害が広がらないように、自分独りで痛みを受けるために、これ以上誰も、傷つけないように。

 

 

「これが私です。何もできないから、ただ逃げてきただけの少女……それがあなたがパートナーにしようとした人の正体です」

 

 

 何もできないから、何もしない。存在が邪魔だから、その存在を自ら消す。実際に自分がでしゃばったせいで、先輩も……。

 

 

 嗤われたって構わない。それで周りが救われるなら、自分一人が耐えるだけですむなら、自分はそれでいい。

 

 

「間違っていたって、そんなこと関係ありません。──私が動いて、誰かが傷つく。そんな連鎖は、もう見たくありません」

 

 

「──間違ってるって何が?」

 

 

 ……え? 

 

 

「何がって……」

 

 

「別に俺はそれが合ってるか問う気は一切無いし、それを言う権利も無い」

 

 

「──意外ですね……、もっと何か言われると思ったので」

 

 

「いや全然」

 

 

 心の中で、利奈は行人になんて言われる考えていたのだが、その答えは予想とは遥かに違った。

 

 

「まぁ確かに、その生き方を肯定するか否定するかみたいなとこはあるだろうな。でも前提として俺はそんな生き方をしたことがない。だから、その生き方が間違っているとか言うつもりは俺にはない」

 

 

「……もしかして、憐れんでます?」

 

 

「お前がそう思うんなら別に良いよ俺は。ただ、誰かを犠牲にする方法で何かを救えると思っているのなら、……それだけはやめたほうが良いぞと、俺は言わせてもらおう」

 

 

「──逆に、何を根拠にそんなことを言うのか、聞いてみたいですね」

 

 

 利奈は内心怒りが少し込み上げていた。利奈はかなりおとなしい性格だが、自分のことを何も知らないような男に、そうまで言われる筋合いはない。

 

 

 そんな経験が一切無いようなやつに、──簡単に理解されたくなどなかった。怒気をあらわにしながら行人に問う。

 

 

「ほら言ってみてくださいよ! なんで!? なんでですか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだなぁ、……ちょっと──話をしようか」




 読んでくれてありがとうございます。


※統合しました。


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結果のその後

「むかーしむかし、とある所に村があった。そこは色々な物が豊かな土地だったが、化け物がいた。そいつはその村の人間を喰って生きていた。──ある日一人の若者が、化け物を倒そうとした。そして彼は一人で見事それを倒した。──その若者は死んだけどな。村中は悲しみで溢れ帰ったとさ。めでたしめでたし」

 

 

「どこがですか!?」

 

 

 今の話は確かに村は救われた。だがそれを成し遂げた若者には一切救いがなかった。ただただ村のために死んで、しかも残された村の人たちは……。それではハッピーエンドというより……

 

 

「そ、この結末はどちらかっつうとメリーバッドエンド……か? 解釈によって感じ方は変わるが俺はそうだと思う。彼は村のために戦って死んだが、その村は真に救われなかった。村は救われたが、その村は悲しんだ。──若者に先立たれてな」

 

 

「…………」

 

 

「さて、これが《出来た話》か《クソな話》かはさておき、考えてみよう。──置いてかれた村人たちはどう思っただろうな」

 

 

 それは話でもあったとおり、さぞ悲しんだだろう。……何故その若者は──

 

 

「そして何故、周りを頼らなかった……だろ?」

 

 

「!?」

 

 

 そうだ、そこは豊かな土地なら色々と準備が出来ただろう。なのに何故彼は、そうしなかったのだろうか。

 

 

「答えはお前と同じ、周りに迷惑かけたくなかったから……ほんと、すごいバカだよなぁ」

 

 

「…………」

 

 

 確かにそれは、やめたほうが良いとも言うだろう。だがそれでも……

 

 

「でも、その話は想像で創られたものでしょう? そんなもので、──そんなもので……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──経緯は違うがな、友人が言ってた。親父が死ぬ前は、自分に何も言わずに何かしていたことが多くて、今回それが原因になって死んだ。その真意はともかく、なんで何も言ってくれなかったんだろうってな」

 

 

 そいつは今は割りきっているが、時々それを無意識に考えてしまうらしい。

 

 

「人の死において、辛いのは死ぬことだけじゃない。置いていかれることもで、だがお前にはまだそれがいるんだ。それを自分で捨てるとか、アホすぎて見るに堪えん」

 

 

「…………」

 

 

 さっきから顔を俯かせたままの白江の肩に手を置いて言う。自分を白江の目線と同じくらいにして、少しだけ笑みを浮かべながら。

 

 

「ほら、顔をあげて、そんな悲壮面すんのやめて、自分を卑下にするのもやめろ。──あんなこと言いながら、一度は《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出ようとしたんだ。まだ望みはあんだろ?」

 

 

「──先輩……」

 

 

「──お取り込み中申し訳ないんだけど」

 

 

「ふぇ!?」

 

 

 少女漫画的状態になっていたのもつかの間、ジュースを買いにいっていたニアがいつの間にか戻ってきていた。──かなりのジト目でこちらを見ながら。

 

 

「行人は少し詐欺師なところがあるから、信じるのは気を付けた方がいいよ」

 

 

「人聞きが悪いこと言わないでくれませんかね?」

 

 

「あと下手すると使い潰されるかもしれないから」

 

 

「否定できねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまり笑うところじゃないのかもしれないけど、目の前にいる二人がさっきの、自分の不幸を払いのけた人たちとは思えなくて、利奈は久々に笑った。




 読んでくれてありがとうございます。


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決断&キャラ紹介

 あの後利奈はきちんと寮に帰った。久々の自室は自分がいなくても管理がされていて、清潔なままだった。

 

 

 自分はあの誘いに、乗ってもいいのだろうか……。一度でも不幸をはね除けてくれた彼らを、はね除けてしまった彼らを、頼ってみても──信じてみてもいいのだろうか。

 

 

「──いますか? 桜木先輩……」

 

 

「……利奈ちゃん?」

 

 

 桜木わかば先輩。《鳳凰星武祭(フェニクス)》において──利奈の本来のパートナーだ。──今は良くなってきているが、あの時の後遺症は残っており、まだ決闘などはできる状態ではない。

 

 

「先輩……永見行人先輩から、《鳳凰星武祭》の誘いを受けました。私は、この誘いを受けようと思います」

 

 

「……そっか……」

 

 

「先輩、私は……」

 

 

「ううん、気にしないで利奈ちゃん。私は大丈夫だから」

 

 

「先輩は、私を恨んでたりしませんか……?」

 

 

「……正直、ちょっと羨ましいなって思うよ。けど、それで利奈ちゃんの夢を縛っちゃったら、私最低でしょ?」

 

 

「…………!」

 

 

 その言葉に、涙が溢れてきた。最初に自分を気にしてくれて、《星武祭(フェスタ)》にまで出させてくれた──先輩が、その自分を差し置いて出ることを、許してくれたことに。

 

 

「──先輩! 今まで私に付き添ってくれて──支えてくれ、ありがとうございました!!」

 

 

「うん、いってらっしゃい。──頑張ってね」

 

 

 利奈は先輩に勢いよくおじぎをしながら、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう白江、もう考えはまとまったのか?」

 

 

「はい、──あの誘い……やっぱり受けさせていただきます」

 

 

「そうこなくちゃな」

 

 

 行人は笑顔になりながらそう言う。

 

 

「──さてと今は何時か……」

 

 

 そして時計を確認ししばらく硬直した後、利奈の手を掴み走り出した。

 

 

「えっ!?」

 

 

「ヤッベエントリーの時間ギリギリだ!! 急がねぇと!」

 

 

「いやまずいじゃないですか!? 仕方ありません急ぎますよ!」

 

 

「いやちょっ、うわぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 

 走り出して一瞬、利奈が加速の能力を使い、星導館の敷地内にはかなりの量の土埃が舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:マシュ・キリエライト(FGO) 雪を聴く夜(MYTH & ROID)

 

 白江利奈(しらえりな) 女

 身長:162cm

 血液型:A型

 誕生日:12月13日

 所属:星導館学園中等部2年

 序列:星導館学園序列外

 煌式武装:銃器型煌式武装、大盾型煌式武装

 二つ名:無し

 

 

 紫髪で幸薄だが若干大人びた顔の少女。かなり内気で静かだが優しい性格をしている。

 

 自分に自信がないが芯はしっかりしており、言うべきことははっきり言うタイプ。

 

 戦いの経験は多くないが加速の能力を持つ《魔女》で、シンプルかつ強力な力を持つ。

 

 能力を除いても情報の吸収が早いので、経験を積めば序列でもかなり上に入れると行人は考えているが、本人は戦い自体好きじゃないのであまり興味は無い模様。

 

 戦闘では最初は剣盾を使っていたが途中から銃へと変え、その後行人の考えによって銃と盾を併用するようになった。

 

 相手を傷つけることを嫌い、必要以上に攻撃することをしない。

 

 成績はかなり優秀だが欠席が続いたため、現在補習が確定している。




 読んでくれてありがとうございます。


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第三幕 鳳凰出陣 利奈のスペック

 早朝の夏、長期休暇となり世の中のリア充たちが海やイベントに真っ盛りな時期、星導館学園がある島の端の部分で、二人の少女(約一名は人外)が剣と銃を交える。

 

 

「やぁッ!」

 

 

「くっ!」

 

 

「はーいそこまで。一旦休憩にするぞ~」

 

 

 行人は大きく手を振りながら休憩の時間だと告げる。

 

 

「これまでずっと手合わせしまくってた甲斐があったね。かなり動きが良くなってきているよ。ね? 行人」

 

 

「あぁ。まだ覚束ない部分もあるが、これなら実戦でもなんとかなるだろうな」

 

 

「ありがとうございます、ニアさん。先輩」

 

 

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》への出場が決定した二人は、人通りが少ない島の沿岸で訓練をしていた。といっても基本は利奈の特訓が主だが。

 

 

 相手をしているのはニアだ。念のため戦えるようにしておいたのが功を奏した。

 

 

「正直苦肉の策だったんだがな。銃を俺の使っていたやつに新しくしたのも、それと盾を並行して使うってのも」

 

 

「盾は前も使ってましたし、使うときだけ展開すればそこはかなり楽になりますから。──銃の方はすこし勝手が違いますけど……」

 

 

「弾倉の交換とかが無いにしても、普通のアサルトライフルとブルパップのそれを少しの勝手で修正できるってのはどうなんだ……」

 

 

 通常の突撃銃とブルパップ式の突撃銃はまず構え方などからして違いがあるもので、うまく使うには慣れが必要なものなのだが……。

 

 

 どうやら戦いでずっと銃器を使っていた利奈にとっては多分才能もあると思うが、意外と楽に修正できるものらしい。

 

 

 ちなみに行人はその《ステアーSMG 零式》に慣れるのには二か月以上掛かった。

 

 

 後輩のスペックに頭を抱えている行人に、先ほどまで話を眺めていたニアは口を開く。

 

 

「それより行人。タッグとしての特訓はしなくていいの?」

 

 

「そこは問題ない。この前レヴォルフのチンピラ五人くらいで試してきた。かなりいい感じだったな。お前はあの時いなかったがな」

 

 

「あぁ、だから一昨日は体に傷があったんだ……」

 

 

「も、申し訳ありません……。私もそこにいたのに……」

 

 

「いや、利奈ちゃんは謝らなくても大丈夫だよ」

 

 

 部屋で見たとき行人に何個か傷があった理由に納得したニアは、なぜか誇らしげな本人を小突きながら利奈に答える。

 

 

「とりあえず、後は実戦で慣らしていけば大丈夫だ。トレーニングルームが無いからとはいえ、何度もレヴォルフの奴らで試してたら後がめんどくさくなる」

 

 

 経緯はともかく、利奈とペアで戦ってみた感想としては、かなり戦いやすかった。

 

 

 元々のペアで後衛を担っていたのもあって、前衛のサポートが的確だ。

 

 

 能力無しで単体の戦闘力は中程度だが盾を持たせたことと能力の新しい使い方によって自衛力も上がり、《鳳凰星武祭(フェニクス)》や《獅鷲星武祭(グリプス)》などでは逸材と言えるだろう。──さて、

 

 

「──予選での俺らの方針が決まった。……利奈、体鈍らせんなよ?」




 読んでくれてありがとうございます。


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初日

 ──そして《鳳凰星武祭(フェニクス)》初日、うちのOBこと《星武祭(フェスタ)》運営委員会委員長──《星武祭》の最高責任者マディアス・メサの話はアルルカントの擬形体以外に関しては聞き流し、選手たちがたむろしている控え室へと行人たちも来た。

 

 

 行人たちの試合はIブロックでまだ時間には余裕があるし、このシリウスドームからは近い方なのでしばらくは大丈夫だろう。

 

 

「お、天霧くーん。こっちこっち~」

 

 

「え? 永見先輩?」

 

 

 そうこうしてるうちに行人は天霧を見つけたので、そっちに向かって手を振る。近くにはもちろんリースフェルトがいた。

 

 

「いやーあの時ぶりだねぇ。あれかなり怪しい登場したけど、俺不審者に思われてない?」

 

 

「あはは、言う通りかなり怪しかったですけど、今はクローディアからもどんな人か聞いているので」

 

 

「ほーそれは良かった」

 

 

 行人はヘラヘラしながら答える。

 

 

「それで、その子は一体?」

 

 

 そして天霧は、どうやら利奈に興味があるようだ。

 

 

「あぁ、俺のタッグパートナーの──」

 

 

「初めまして《叢雲》さん。行人先輩のパートナーの白江利奈です」

 

 

「初めまして、白江さん。あと、俺のことは綾斗で構わないよ」

 

 

「おっと天霧、うちの後輩口説こうとしたら容赦なく腹パンするからな」

 

 

「そ、そんなことしませんよ!」

 

 

 あわてふためく天霧を見て行人はさらに笑みを浮かべる。若干後ろにいるユリスはなにやらイライラしているようだ。

 

 

「んじゃ、本戦に出る前に焼かれないよう頑張れよ~」

 

 

「…………」

 

 

 どうせなので後ろにいるリースフェルトを煽ってから、行人は手を振りながら来た道を戻り、利奈は深く一礼した後それに続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

「まぁまぁユリス、気持ちはわかるけどちょっと落ち着いて……」

 

 

 綾斗は手でユリスを制しながらなだめる。

 

 

 ユリスはあの後もしばらくイライラしていたが、仕方ないと割りきったのか苛立ちを収めた。

 

 

「──はぁ……、まあいい。あんななりだが、あれでも奴はうちの元序列七位だ。当たったら厄介なのは確実だろう」

 

 

「元ってことは今は違うんだよね?」

 

 

「ああ、今の序列七位は《雷鳴(かんなり)》という純星煌式武装使いだが、それまではあいつがそうだった。当時の二つ名は《聡明な愚者(プロメテウス)》だそうだ」

 

 

「ということは、あの人もかなりの手練れってことなんだろうね」

 

 

 序列一位ではなくても、《冒頭の十二人(ページ・ワン)》の座を守ってきたということは、それだけでもかなりの実績だろう。

 

 

「だろうな。全てに言えるが、用心するに越したことはない。幸い奴らはうちの生徒だ。白江はともかく、奴のほうは公式序列戦の映像もある。一回戦が終わった後で見てみるのも悪くないかもしれんな」

 

 

「そうだね、暇があったら確認してみようか」




 ようやく大会なのに戦闘は一切無しな話です。

 まあ予選まではなんとなく決まっているんですけど、しつこいですが作者は本戦からの展開決めあぐねているんで……皆さんの投票が頼りです(他人任せ)

 すいません許してください、何でもしm(殴


※Hブロックだとアルディリムシィと被るのでIに変えました。


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不鮮明

「──なんというか……」

 

 

「あぁ……、おそらくだが、私も同じことを思っている」

 

 

『──本当に《冒頭の十二人(ページ・ワン)》だったの(か)?』

 

 

 第一回戦を終えて帰ってきた綾斗とユリスは、永見行人の公式序列戦の映像を見て唖然としていた。

 

 

 特訓も大事だが戦いにおいて情報とはあるだけで有利になるものだ。それにアルルカントのアルディとリムシィの事もある。

 

 

 なので二人は一回戦前に言ったこともかねて、各学園の有力選手のデータを参照していたのだが……行人の戦いはお世辞にも強いとは言えなかった。

 

 

 何戦か見たがその戦いのほとんどはかなりギリギリで、負けているものもあった。その後の「猶予期間(グレース)」を使って勝ってはいたが、現序列七位との戦いを境にそれもなくなっている。

 

 

 何より動きが良くは見えない。当時中等部だったのもあるだろうが、前々序列七位の戦い以外では攻撃にほとんど対応できていなかった。

 

 

「最後の映像から時間が経っているのもあって把握しきれないね……」

 

 

「現在の──高等部からのデータがほとんど無いからな……。おまけに奴が持つ《純星煌式武装(オーガルクス)》の情報も見当たらん……」

 

 

「もうそろそろ先輩たちの試合だし、それを見てみたらいいんじゃないかな」

 

 

「だな。それにペアの白江やガラードワースの有力候補も気になる。──お手並み拝見といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やってまいりましたぁ、Iブロック第三試合! まずやって来たのはぁ、星導館学園永見行人選手とぉ、白江利奈選手だぁ!』

 

 

『永見選手は《冒頭の十二人(ページ・ワン)》入りの経験もある人やね』

 

 

『でも資料的にはあまり強く見えなかったんですよねぇ……もしかして弱いのか? ──えー、一体どう戦ってくれるのか!?』

 

 

『おおっ! ナナやんが珍しく資料をみてる!? というかしれっと貶してるでナナやん……。えー、白江選手はこちらにもデータが無い完全ルーキーや、どんな戦いをしてくれるんやろねぇ』

 

 

「……あいつらグレネード投げ込んでやろうかな……」

 

 

 行人はアナウンサー席に大きく腕を振りかぶったが、利奈の制止によってそれを止めた。

 

 

 プロキオンドームにて行人たちの試合は始まろうとしており、観客席にはかなりの人がいる。──まぁこのステージを当てられた理由は行人たちではないらしいが。

 

 

『それにたいしてぇ、聖ガラードワース学園より序列十七位のジェシカ・クルス選手とぉ、序列二十五位、エイデン・ホワード選手!』

 

 

 歓声が上がり、相手側のゲートからは槍をもった清純な金髪の、まさしく聖女とでも呼ばれていそうな少女。そしてその護衛のような風格のある青年が現れた。

 

 

『ジェシカ選手は《救星の魔女(ジャンヌダルク)》の二つ名を持つ《魔女(ストレガ)》で、かの《鎧装の魔術師(ブライトウェン)》よりも防御に特化した能力を持っとる。それにエイデン選手の剣の実力も中々のもんで、有力候補の一つや』

 

 

『では、まもなくスタートです!』

 

 

「永見先輩……」

 

 

「極力能力での支援に徹してくれ。──お前の真打はまだ使いたくない。一応盾を持ってろよ」

 

 

「……了解しました」

 

 

 双方の校章が、試合開始の合図となる。

 

 

「《鳳凰星武祭》Iブロック三回戦二組、試合開始(バトルスタート)!」




 他作品ネタが出てきたので、元ネタを表示しておきます。《fateシリーズのジャンヌ・ダルク》


 まぁ初っぱなから有力候補に当たった行人たちですが、どうやって勝つのでしょうか!(まだ考えてない)


 予選に関しては本選に関係なく進むのでご了承ください。逆に言えば本選からは原作に絡んでいくんですけどね……


※出してから粗が見える定期(アナウンサーたちのセリフを修正)


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攻守交代

 エイデンは目の前の相手を見て力量を測る。データとしての彼らを一度見たが、その強さはそこではわからなかった。

 

 

 《銀翼騎士団(ライフローデス)》の中には男の方を見たことがある人物がいるが、それでもあまり詳細な強さわかる者はいないらしい。

 

 

 ならば実戦で見極めるまでのことだったのだが、男や少女からは強者特有の覇気を感じられなく、やはりわからない。が、

 

 

「エイデンさん……気をつけてください。あの人たち──特に男の方の回りで、能力を使ったとき特有のざわめきがあります」

 

 

 能力を持っていない自分はわからないが、どうやらジェシカには自分に見えない万応素(マナ)の動きが見えるらしい。

 

 

 ジェシカは万応素や星辰力(プラーナ)の動きには敏感だ。それでしか感知できないほどなのだろう。それを行える──なるほど、侮れない相手のようだ。

 

 

「──了解したジェシカ。危なくなったら頼む」

 

 

 エイデンは起動していた剣型煌式武装(ルークス)を構え直し、気を引き締める。

 

 

(さあ、どうする?)

 

 

 すると男は長めのナイフと拳銃を起動させながら、だが何をするわけでもなく、ゆっくりと無防備に近づいてきた。

 

 

(罠か? それとも……)

 

 

 そんな思考を断ち切り、武器を振るおうと男に近づいてゆく。──たとえ何があろうと、必ずジェシカが能力で守ってくれる筈。

 

 

「ふんっ!」

 

 

 エイデンは剣の扱いや身のこなし方と、修練には人一倍身を置いてきた。かのエリオット・フォスターのような才能は無いが、それでも型にはまらない自分の剣術にはそれなりに自信があった。

 

 

 男へと剣を横凪ぎに振るい、そこから繋げて蹴り等を絡め四方八方から連擊。それらは全ていなされてしまうが……

 

 

「その程度か!? 元《冒頭の十二人(ページ・ワン)》も大したことないな!」

 

 

 男は防戦一方で、さらに手数を多くして続けていけば押し切れるだろう。

 

 

「もらった!!」

 

 

 ナイフを打ち上げられながらよろけ、明らかな隙ができたところに踏み込み、今までより鋭い一閃を放つ。普通なら回避できないし銃も間に合わない。それで決まりだと思った。しかし──

 

 

「エイデンさん!」

 

 

「!?」

 

 

「──いやー厄介なもんだよなぁ、あそこから守ることができるんだから。まさに守りに特化している能力だな」

 

 

「っ……! それは……」

 

 

 その瞬間目の前から男は消え、甲高い音が後ろで響く。声がした方を振り向くと先ほどのナイフとは違う、《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》が持つものと同型の白い細剣を手に握った男がいた。

 

 

(今のはいったい……)

 

 

 ──エイデンには、何が起こったのか理解できなかった。いきなり瞬間移動のように背後へ回られ、後方にいるジェシカからの守りが無ければやられていたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、第二ラウンド開始だ」

 

 

「ほらほらどうしたぁ! こんどはそっちが防戦一方だぞぉ!?」

 

 

「ぐっ……! どんな、手品を、使った!?」

 

 

 先の攻防から一転、エイデンは防御にそして男は攻撃へと移っていた。その細剣から放たれる攻撃は速く、たまに一度に二回行動をしながら、確実にこちらを狙ってくる。だがこの展開で一番驚愕なのは、

 

 

『おーっと永見選手、これは一体どういうことかぁ! なんとなんと、両手に持つ剣と銃で二人の相手を抑え込んでいます!』

 

 

『これはかなりすごい動きやね。本来《鳳凰星武祭(フェニクス)》は二人のタッグで、それぞれ一対一か前衛後衛に別れて戦うのは定石やけど、これはそれを一人でこなしてるみたいや』

 

 

 そう、この男は自分を剣で抑えながら、同時にジェシカの方にも銃撃を加え、一人で二人を相手していた。

 

 

 ジェシカの能力は万応素(マナ)の固形化──座標をイメージして、その場に漂う万応素を固体にし壁などにできる力だ。しかしその能力は発現させる場所をイメージしなければ使えない、少々タイムラグがあるという欠点がある。

 

 

 それを銃撃の回避運動などでイメージしにくくさせ、さらに速い動きで下手に壁を作れないようにしているのだ。

 

 

「さっきのとは、違い、すぎる、だろう。 ──どうやって、その力を習得した……」

 

 

 剣擊が交わる中、苦し紛れに質問する。男の動きは剣術や体術が飛び抜けている訳ではない。──とにかく速いのだ。それは技術ではなく能力──元のスペックによるものに見える。

 

 

「──後で教えてやるよッッ!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

「エイデン・ホワード、校章破損(バッジブロークン)

 

 

 男はそう言うと、一瞬だけ剣の動きをさらに速くした。そこでエイデンは剣の残像が見える。その数は三本──一度の行動で三回もの攻撃を繰り出し、男はエイデンの校章を割った。

 

 

「よくもッ!」

 

 

 校章を割るために銃撃を止めた隙を突いて、ジェシカは能力で壁を作り、そこに開けた穴から手に持つ槍で攻撃する。目線も通っておらず、完全に不意を突いたと思われたが、

 

 

「ジェシカ・クルス、校章破損」

 

 

「……私を忘れないでください」

 

 

「試合終了! 勝者、永見行人&白江利奈!」

 

 

 ジェシカは他方から攻撃される可能性を忘れ壁を用意しておらず、少女から放たれた銃撃によって校章を破損。

 

 

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》Iブロック三回戦は結果として、大衆の予想とは違う大判狂わせの試合として幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ふう、良かった……ちゃんと当たった……」

 

 

 利奈は放った銃弾が校章に命中したことに胸を撫で下ろしていた。なぜなら実戦で狙い撃ちをしたのは今回が初めてだったからだ。

 

 

「? 先輩、なに話してるのかな?」

 

 

 行人の方を見ると、声は聞こえないが先ほどまでの相手となにやら話をしているようだ。青年は普通だが、少女の顔は不満げに見え、少し怖く感じる。

 

 

「──ふざけるなッッ!!」

 

 

 その光景を見ていると、少女はいきなり声を荒らげ、行人の方に怒鳴る。トラブルだろうか。行人はそれを気にしているのか、いつもと同じような──だが暗い表情でこちらに戻り、口を開く。

 

 

「……行くぞ」

 

 

「──わかりました」




 読んでくれてありがとうございます。


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考察

「どうだ綾斗、何か掴めたか?」

 

 

「うん。なんとなくだけどね」

 

 

 行人たちの試合を見終わった二人は、その情報を整理するために意見を話し合っていた。

 

 

「まず、先輩の動きには違和感を感じたよ。なんだか先輩のそれは、動きと速さが釣り合ってないというか、少し強引に動いている風に見えたかな」

 

 

 綾斗は試合を観て感じた、行人の動きに、対して感じたことを伝える。

 

 

 動きを速くするには、脚力を上げたり、脚さばきなどを覚えるのが基本だ。だが行人の動きは、それを完璧に無視したものに綾斗の目には映っていた。

 

 

「なるほどな、あそこまで速い動きなのに変に……いやむしろ速いからそう見えたのだな。──となるとおそらく、それが白江の能力なのかもしれんな」

 

 

「どういうこと?」

 

 

「それが本人の能力や体術によるものでないなら──外部からの力が働いていたなら、《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》によるものかもしれん。となると、必然的にそれをかけられる人物と言えば」

 

 

「──なるほど、そういうことか」

 

 

 ユリスの言葉にハッとして綾斗はその結論に至る。

 

 

 行人に能力をかけられる人物は、必然的に利奈となる。おそらく加速──物理的な速さを上げる能力などなのだろう。

 

 

 能力への考察を立てたユリスは、また一つわかった情報を綾斗に共有する。

 

 

「ついでに奴が持つ《純星煌式武装(オーガルクス)》の事だが、どうやらあの白い《アスペラ・スピーナ》がそうらしい」

 

 

「え? でもその情報は見当たらなかったんじゃ……?」

 

 

「クローディアのやつに連絡してみたんだがな、悪びれもなく情報を渡すと言ってくれた」

 

 

「それは……」

 

 

 綾斗は苦笑いしながら、一瞬だがクローディアの腹黒さというのが見えたような気がした。知人の頼みとはいえ、そのためにまた別の知人を売るというのはさすがにどうなのだろうか。

 

 

「ともかく、あれは《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》というらしい。詳しくは後で端末に届くらしいから、後で目を通しておけよ」

 

 

「──そういえば、最後相手の選手が何か叫んでいたけど……なにかあったのかな?」

 

 

「まぁ、最後のトラブルも含め、実際に何が起きたかは我々にはわからんからな。これ以上考えても仕方あるまい。──とりあえず、今後に備えてさらに訓練でもしておくか」

 

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》一回戦目の勝者が一人永見行人は控え室へと戻り、今、現在進行形で……

 

 

「うぇぇ……。……おぇっぷ……」

 

 

 ──吐き気を催していた。というか一度吐いた。経験済みとはいえ、今までより長く味わった自らの物理的限界ギリギリの速さに、行人の内臓はダメージを受けていた。

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

 

 後輩から背中をさすられ、袋を持ちながら下を向き呻くその姿には、勝利の喜びなど一切なかった。そこあるのは、ただひたすらの絶望(はきけ)だった……




 カラオケ楽しいなぁ~(白目)
     ↑
 サビ歌ってたら声裏返った人


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不満げ

 しばらくエチケット袋を常備していた行人だが、なんとか吐き気は収まり試合疲れもあったからか控え室のソファーでスヤスヤと眠っていた。

 

 

 ーーなおその頭は人型になったニアの太股の上にある(膝枕)状態だ。

 

 

「ーー前々から思ってたんですが……いつも遠慮無さすぎません?」

 

 

「あぁこれのこと? 部屋だとこういうのが普通なんだけどね」

 

 

「はぁ……」

 

 

 この人たちとペアになって何度目かわからない呆れ顔とため息をする利奈。

 

 

 ニアはたまにこういった行動を起こすが、それはかなり前からそうらしい。

 

 

 武器のはずなのに母性というか生活力というか、もう給仕とかの仕事した方が良いのではないかとも思ってしまう。

 

 

「……さっきの人のこと、気にしてる?」

 

 

「……なんでですか?」

 

 

「さっきから行人のこと見ながら考え事してるから。ーーちょっと気になるんでしょ?」

 

 

「ーーはい……」

 

 

「うん、正直でよろしい」

 

 

(使い手に似て洞察力が高いというか……)

 

 

 利奈はあの試合でのトラブルがなんなのか考えていたが、どうやらニアにとってはバレバレだったらしい。

 

 

「まぁ何があったのか話すと、《救星の魔女(ジャンヌダルク)》が怒ったのには理由があるみたいなんだよね」

 

 

「どんな理由なんですか?」

 

 

「なんだか、行人が元《冒頭の十二人(ページ・ワン)》だったのが少し気に触るみたいだよ。それが何故かまではわからないけどね」

 

 

 いつも笑みを含めているニアは、珍しく苛立ちのような表情を浮かべてそう言う。

 

 

「ーーあの、先輩の昔って一体どんなのだったんでしょうか?」

 

 

「どうしたの? 急に」

 

 

「先輩とニアさんの関係が気になるのもあるんですが……戦闘のーー助けてもらったときとかみたいな、ちょっと戦い慣れしすぎているというか……」

 

 

 それは利奈が行人に対して抱いていた畏怖であり、そして畏敬でもあった。

 

 

 アスタリスクの《冒頭の十二人》のような人物なら、自分の腕に自信を持っているため正面からぶつかったりするのがほとんどだろう。

 

 

 だが行人の場合は違った。利奈は多くの戦いをこなしてきた訳ではないので断定はできないが、相手を暗闇()に誘い、そして混乱させて仕留める(狩る)

 

 

 勝利を望む戦士のような戦いというより、確実に相手を倒しに行くーーどちらかと狩人や暗殺者みたいなものに利奈の目には映った。

 

 

 そのような人物はこの都市で今まで見たことが無かったし、いるなんて思っていなかった。ーー目の前の人物に会うまでは。

 

 

「ーー利奈ちゃん。行人は今まで、どんな生活をここでしてきたと思う?」

 

 

 ニアはその姿からは想像できないような、非常に不満げなーーそして先ほどとは違う悲しそうな顔で話を始めた。




 読んでくれてありがとうございます。


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歩みと代償

 真剣に利奈を見つめながら、ニアはそれを語り始める。

 

 

「最初に出会ったのは行人が中学二年の時……《純星煌式武装(オーガルクス)》の保管庫で──といっても実際にちゃんと顔を見合わせたのは部屋でだけど……一緒に生活を始めたときは驚いたよ」

 

 

「驚いた……って、何にですか?」

 

 

「だって、週に二~三回は登校しないで特訓してるんだよ? 休み以外は普通学園に行くと思っていたら平然とそんなことするからさ……」

 

 

「……──え?」

 

 

 ニアの話の内容に目を見開きながら一瞬、利奈は硬直した。まあ確かに能力とかも無しで《冒頭の十二人(ページ・ワン)》になったくらいだから、何かしら努力しているとは想像ができていた。

 

 

 ──だがなんというか、その度合いが利奈の予想より斜め六十度程上に傾いていた。

 

 

「しかもそれでいてテストは大体が八十点前後──いつも身体しか動かしてないのに何してるか疑わしかったよ」

 

 

「何なんですかこの人は……」

 

 

 ニアはおそらくその様子を想像しながら苦笑いしているが、それに対し利奈は少々頭がこんがらがってきている。

 

 

 アスタリスクで勉学はあまり重要視されないが、他はともかく星導館はそれでも一般の学校ほどの学力レベルはある。そこでまともに登校もせずに高得点を叩き出すのは流石に……

 

 

「って、話が逸れたね。それで、学校休みながら特訓していた行人は──ハッキリ言って弱かった」

 

 

「…………」

 

 

「そう、少なくとも今より断然弱かった。多分あの頃の行人なら利奈でも秒で──いや秒もしないで勝てると思う」

 

 

 そろそろ聞いてるだけなのに疲れで倒れそうになってきている。あそこまで戦える人物が、今度はくそ弱かったと──想像ができないし、なんだかもうお腹いっぱいである。

 

 

「まあ完全な一般人だったからね。でもそれを補うために色々やってたよ。強い人に師事したり、技術を研究したり……自分では、小手先と姑息さしか上達しなかったって言ってるけど」

 

 

 そこまで言ってニアは一度言葉を区切り、また話の最初に見せた表情に戻っており、

 

 

「相手を絞ったりして、ひたすら経験を積み重ねて、ついには序列七位──《冒頭の十二人(ページ・ワン)》にまで上り詰めた。──その後なんだよね、行人が今みたくなっていったのは」

 

 

 そしてその目は、まるで自らの膝に頭を置く青年を慈しむかのような目をしている。

 

 

「前に聞いたけど、行人が《冒頭の十二人》……いやアスタリスクに来た理由自体は、利奈と同じでお金だったんだ。──両親の病気を治すためだって言ってたね」

 

 

「そうなんですか……その方は──もう病気は治ったのですか?」

 

 

「──いや、死んでた……俺が《冒頭の十二人》になる少し前にな」

 

 

 利奈が問うその質問に答えたのは、いつからか起きていたその話の張本人だった。

 

 

「──あれ? いつの間に起きてたの?」

 

 

「ついさっき、俺がアスタリスクに来た理由くらいから……。そういや何度も弱いって言われてた気がする……」

 

 

 ニアの膝から頭を上げソファーに横たわる体を行人は起こす。まだ眠気が残っており、目を半分くらいしか空けてない。

 

 

「んー、まぁいいや。──んで、俺の両親……母親だな。ニアも言った通り、俺がここに来たのは金──《冒頭の十二人(ページ・ワン)》の特別奨学金が目当てだな。かなりの額だって聞いてたし」

 

 

「では質問なんですが……、何故まだ戦いを続けていたんでしょうか? お金が手に入ってからは、先輩の戦う理由は無い……いや、今の先輩を否定する訳じゃないんですけど……」

 

 

 今までの話を聞いて浮かんだ疑問を問う。母親が戦う理由だとして、それを失ったとなれば戦う必要は無い。

 

 

 そうでなくても、理由が無くなったというのならそれはかなり辛いはずだ。

 

 

「──理由は何個かあるが、一つは簡単だ。奨学金が自分の生命線だから。どちらにしろ頼る所がないんだ、稼がなきゃどっちにしろ生きていけないだろ? ついでに参考までに言うと、我々の生活費はちょっと危なくなってきている」

 

 

「あー、はい。そうですか……」

 

 

 言っていることはあっているのだが、なんでこう……自分のパートナーたちはいちいち現実的で生々しいのだろうか。

 

 

「んでもう一つなんだが──それは武器(数多の偽り)としてのこいつ(ニア)を使うためだな」

 

 

 行人はニアを指差しながら、顔には明確な笑みを見せて答える。おそらくそれはよほど大事な事なのだろう。

 

 

「俺が戦う意味で一番重要なのはこれだな。多分こいつがいなかったら、俺はとっくに死んでると思う。……すまん。ちょっと外に出てるわ」

 

 

 しかしさすがに気恥ずかしくなってきたのか、頬を掻きながら逃げるように控え室を出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あんな風に言ってるけど……あの時の行人は、もう見るに堪えなかったよ……。まるで今までが嘘みたいに、一気に崩れ去ったみたいだった」

 

 

 それはニアにとってもかなり衝撃だったのだろう。顔を俯かせ、声を震わせている。

 

 

「私にはわからないけど、日常をかなぐり捨てて戦いに臨んでいたこと、そして目的を失った反動は相当だったみたいなんだよ。──私があった頃の行人は皮肉屋だったけど……それでも、真っ直ぐだった」

 

 

「…………」

 

 

「なんともない様に見えるでしょ? でも、本当は心にヒビが入っているようなもので……あの日から私は、行人が心から笑ったのを──彼が満たされたのを見たことが無いよ」

 

 

 利奈は思わず口を紡ぐ。平凡な日常を捨て、一般人から一年で《冒頭の十二人(戦闘のエキスパート)》にまで登り詰めた──しかしその代償は、やはり相当だったのだろう。

 

 

「行人が戦うもう一つの理由。──それは彼が自分の目的を見つけた時──何かのために戦う時のために、力を蓄えるためなんだよ」




 読んでくれてありがとうございます。


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最低条件

 翌日、他ブロックでの試合が進んでいる中、控え室にて三人は各試合映像や提供される選手たちの情報と、現在進行形で二時間程にらめっこしていた。

 

 

「そろそろ目が痛くなってきた……よくそんな長く見てられますね」

 

 

 長時間のにらめっこでドライアイになりかけている利奈は、目を擦りながら訴える。訴えられた被告人側はまだまだ余裕そうだが。

 

 

「んじゃ先に休憩しててくれ。俺はもうちょっとしてからにする」

 

 

「わかりました」

 

 

 行人は画面から目を離さずに利奈へ休憩を促す。その隣には当然ニアもいる。

 

 

「──先輩って、情報収集にはかなり時間を割いてますよね。大会が始まる前からしてますし、──特訓とかはしなくても良いんですか?」

 

 

「時間はあるしまだ大丈夫だ。ブロックで一番有力視されてるやつらは倒したし、他のは普通なら速攻で片付けれる」

 

 

 利奈のもっともな質問に答えた行人。正直最初で有力候補と当たるのは想定外だったが、それは行人にとっては嬉しい誤算だった。

 

 

 有力候補は散らされるのが《星武祭(フェスタ)》では普通で、この傾向は今まで変わったことはない。本来は本選に出るようなやつらだが、それを早めに倒せたのはかなり大きい。しかし、

 

 

「──どちらにせよ俺らに必要なのは情報だ。なんせ有力候補たちに力業で勝てるわけがない」

 

 

 そう、行人が情報収集を行うのはこれが理由だった。第一試合に関しても、例えば最初に速攻でジェシカを狙いにいけば、能力で攻撃を防がれてその隙を突かれ校章破損(バッジブロークン)──そんな流れも考えられた。

 

 

 本選(強者の集まり)でそんな手が通じるとは考えがたい。確かに利奈の能力はシンプルかつ強力だが、その使い方では対策が容易だ。攻撃が来るとわかれば、避けるか受け止めればいいのだから。

 

 

「だから弱点とか──せめて相手への対策ができなきゃ話にならん。……それにまぁ、予選で戦うのは基本俺一人だからな」

 

 

「でもそれは……」

 

 

 行人は淡々と言葉を続けるが、利奈はそれにはあまり納得していない様子だ。

 

 

 ちなみに行人だけで戦うのにも理由がある。急ごしらえのコンビである二人には、コンビネーションを使った行動をとるのが難しい。できて互いを少しフォローするのが限界だ。

 

 

 ならば他にはない利奈の力でとなったが、それも早くにばれて対策されれば、下手すれば積む。そこで苦肉の策だが、行人に注意を集めることで利奈へのヘイトを緩和することにした。

 

 

「仕方ないだろ? 本選で一番重要になるのはお前やニアだ。俺だけの力なんてたかが知れてるし、そこにすがるしか勝ち目は見当たらないんだ。──隠し玉は多い方が良い」

 

 

 それに対しこれ以上は何も言わないという利奈に構わず、行人は注意しておいた方が良いだろう対戦相手のデータをまとめ始めた。




 アンケート最終日です。……はい、書かなくてもいい後書きのネタが無いのでこれぐらいしか書くこと無いです。現在の結果は、
 A:アルルカントのパペットコンビ 5票
 B:ガラードワースの聖騎士コンビ 1票
 C:界龍の双子コンビ 2票
 D:星導館の刀銃コンビ 2票
 E:原作優勝者コンビ 3票
 となっております。ガラードワースエェ……。まあ何度目かわからない(まずカウントしてない)ですが、これが最後です(調子乗んな)


 投票してくださる心優しい方は今日(当日26日)の終わり24時までに入れてくださると嬉しいです(二度目の露骨なアンケ稼ぎ)


 あと天の帆波さん、ゆっくりとか言ってくださったのにすいません!(_ _(--;(_ _(--;


※UA5000回を突破しました! いつも見てくださりありがとうございます!


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不運の極み

「試合終了! 勝者、永見行人&白江利奈!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──予想はしていたんだ。初戦のやつらを倒せたから楽勝かもとは思ったんだ。──実際楽勝とはいかずともかなり良い感じで勝ち抜けたんだ。そこまでは良いんだ。──たださぁ……」

 

 

 無事予選を全て終え、本選に出る三十二組の一つに割り込めた行人たちだったが、しばらくして出た本選の組み合わせを見つめながら不満を垂れ流す。それは……

 

 

「なんで一番勝率低いやつと鉢合わせするんだよォォォォッッッォッ!」

 

 

 現時点で行人がほぼ勝てないと見ていた擬形体──すなわちアルディとリムシィのペアが、自分たちと六回戦目で当たるのが確定したことにだ。

 

 

 他にも懸念することは山ほどあるが、今明らかになっていることで最も絶望的なのはこの事実だった。

 

 

「ちょッ!? 落ち着いてくださいよ!」

 

 

「落ち着けるかァッ!! よりによって一番メンドクセェやつらが当たったんだぞ!? 人間なんて比じゃないレベルの処理能力持った化け物だぞ!?」

 

 

 大会始まって初の絶叫をここぞとばかりに繰り返す。そのさまは銃器や戦闘機で暴れる某乱ス◯ットのようだ。

 

 

「──はぁぁぁァァ……。……一つずつ説明してやるからな? ──そうすりゃお前も頭抱えるだろうよ……」

 

 

 行人はいつも以上なため息を付いて、利奈に説明しながら情報を整理していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間には持たない超高速の脳の処理速度を持つ者──それが機械だ。

 

 

 アルディは鉄壁の防御障壁があるし、リムシィに至っては銃弾を銃弾で防ぐという意味不明な技を披露していた。銃弾で無理なら加速込みでそれより遅い人間(行人や利奈)の動きなど意味がある筈がない。

 

 

 実質利奈が持つ能力のアドバンテージを消されたに等しい。

 

 

 それにその試合の頃には確実に自分たちは消耗している。それに対し彼らには体力という概念が無い上、戦うほどに学習し強くなっていくだろう。

 

 

(戦闘経験が少ないのだけが救いか……? んなもんでどうにかなる相手でもねぇけど)

 

 

 まだ先の話とはいえ、進めばどちらにせよ死ぬ状態に思わず行人は頭を抱える。

 

 

 天霧らや刀藤たち、レヴォルフの姉妹に界龍(ジェロン)の双子のような決定的な連中はいないが、それでも予選を勝ち抜いてきた猛者たちだ。

 

 

 加速無しで戦う場合行人のスペックは一気に下がる。しかし利奈の能力は一度に複数の使い方ができるほど成熟していないのが現状。そちらも突破するのは苦労しそうだ。

 

 

(もういい、頭こんがらがってきた……。目前の相手に集中するか……)

 

 

 《星辰伝導(プラーナトランス)》も使っていないのに頭がショートしかけてきたので、行人は次の相手に目線を移すことにした。




 おまけ
※ここは台本形式です
ユ「アスタリスクお悩み相談室! in、kurasuta作品!」

綾「なんでWeb予告のやつを、いきなりここでやることになったの?」

ユ「なんでも、作者がやってみたかったからここでもやることになったそうだぞ」

綾「適当だなぁ……」

───────────────────────

ユ「というわけで、この作品最初の相談者!」

行「永見行人だ。実はパートナーの一人(ニア)が突然いなくなって困ってる。街中だと変な店にいたり、海辺に行ったらいつの間にか泳いでいたりしてどうしたら良い?」

ユ「ふむ、ならそのパートナーにずっと張り付いていればいい。抱き締めていたり犬の首輪とか付けてれば、とりあえずいなくなりはしないだろう」

行「なるほどそうすりゃいいのか! よし早速首輪と()でも買ってくるか」

ユ「一件落着だな!」

綾「今日も平和だなぁ……(白目」










 まだ書いてる途中に投稿ボタン押ささりました、すいません。


 また、行人は悶えていますが作者はアンケートの結果に不満があるわけではないので、そこはご理解のほどよろしくお願いします。


行「A――urrrrrrッ!!」


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憂鬱

「俺たちの次の対戦相手はアルルカントの実践クラス……でいいのか? まぁとりあえずあそこで造った武器での戦闘を担当するやつらだな。──正直さっきの後じゃ霞んで見える……」

 

 

「わかったから今はこっちに集中しようか? ね?」

 

 

「わかった! わかったから悪かったから俺の首絞めんのやめアッアッアッ……」

 

 

 めんどくさい男は嫌われるのが定めということか、行人は笑顔のニア首を絞められ泡を吹きかける。

 

 

 尚、これを至近距離で目撃した利奈は流石に食い気味で、

 

 

「容赦ないですね……」

 

 

 この反応である。まあ身長百五十cmほどの少女が十cm以上背が高い男に笑みを浮かべながらチョークスリーパーを掛けるなんて光景滅多に見ないだろうから不思議ではないが。

 

 

「……えー気を取り直して……話を続けるぞ。彼らは《在名祭祀書(ネームド・カルツ)》入りもしてる実力者──といっても、単純なスペックでいったら、界龍の宋と羅というやつのペアの方が上だがな」

 

 

「となるとやはり彼らが持つ強みは……」

 

 

「そ、アルルカントの強みと言えばその技術力。お察しの通り、他にはない性能の武器を持っているのが最大の特徴だ」

 

 

 あまり他の学園にも詳しくない利奈にもわかるように、彼らは他学園の煌式武装(ルークス)より性能が上の武器を使ってくる。

 

 

 それは然る事ながら、幾度の実戦によって得た強さと経験も侮れない。

 

 

 そのアドバンテージは凄まじく、それによって前回の《鳳凰星武祭(フェニクス)》の優勝はアルルカントの生徒が手にしている。

 

 

「こいつらが使ってる武器で目立つのは二つ。まず一つが宙を浮いて弾を放つ十二個の遠隔操作武装……でいいか。んでもう一つがおそらく星辰力で爆発を起こし威力を上げるナックルだ」

 

 

 端末のウィンドウを開き、拡大して全員が見える位置に広げる。

 

 

 まずナックルの爆発力はかなり強い。使い手の方も体術に優れており、爆発を利用して肘打ちを繰り出すなどレベルが高い。

 

 

 そして遠隔操作武装──いわゆるファ◯ネルのような物は放ってくる光弾の威力は弱めで単体の速さはそこまでだが、小さくて数が多く、包囲されると逃げるのは容易じゃない。

 

 

 二人はこれを活かした戦法でここまで勝ち抜いている。どんなものかわかっても対応がしにくい戦い方だ。

 

 

 勝負ごとにおいて相手が嫌がることをするのは基本中の基本。それをこの二人は戦術から行っている。まったく骨が折れそうだと感心する。

 

 

「さて、ここからやつらの戦術を崩すために策を練る訳だが」

 

 

「ナックルは戦いの中で対応していくとして……、もう一つの方はどうします?」

 

 

「うーーーーん…………。よし、いいこと思い付いた」

 

 

 行人が手をポンと叩いて頭に電球を浮かべる。はたしてどんな行動をとるのか……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ちょっと買い物行ってくる」

 

 

「逃げないでね(怒)」

 

 

「…………ァ」

 

 

 その後、行人が起きたのは六時間後だったそうな。




 前回から時間がたちましたね。


 さて、おまけと表してクソみたいな茶番とクソ生意気な申し出をした前回ですが。……うん、正直アホですね。もっと多くの人が読んでくれるような作品を作ってから言えよと……


 たまにああいうのがあると思いますが、できるだけ気にしないでください。


※遠隔誘導武装に関して少し修正しました。この次の話も修正します。


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鬱憤の爆発

『ついに始まりますよ、《鳳凰星武祭(フェニクス)》本選第三試合! 実況は私ナナ・アンデルセンとぉ──』

 

 

『左近千歳で、お送りするで』

 

 

 前回から引き続きプロキオンドーム。予選とは違って観客席は満員となっており、大音量の声援が絶えず聞こえてくる。

 

 

「やっぱ本選は迫力が違うねぇ。正直鬱陶しいのが本音なんだが」

 

 

「わかりますけどそういうのはやめてください。観客の方に失礼でしょう」

 

 

「それ言ってる時点でダメだからな」

 

 

 しかし大舞台に立たない行人たちにとっては邪魔なものでしかなく、咎める側の利奈も気乗りしていないようだ。

 

 

『アルルカントアカデミー所属ウィル・リード選手と、苅宿将道選手を相手にするのはぁ! 星導館学園より、永見行人選手と、白江利奈選手!』

 

 

『予選では有力候補の一角を倒し、本選へと上がってきた──いわば今《鳳凰星武祭(フェニクス)》のダークホースといったところやな』

 

 

「──そういうのやめてほしいんだがなぁ……」

 

 

 アナウンサーたちの紹介に対して一切隠さず悪態をつく行人。ただでさえあんな初試合の終え方をしたのだから、いろんな意味で注目を浴びているのだ。わざわざさらに注目される言い方をされると困る。

 

 

「それより立ててきた対策なんですけど……これ、本当に大丈夫なんですか?」

 

 

「あぁ、と言っても装備局のお古を無理矢理使えるようにした物だからな。性能は本来のより下がるが……仕方ない。反動が強いし連射にタイムラグがあるから気を付けろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《鳳凰星武祭(フェニクス)》四回戦第三試合、試合開始!」

 

 

 校章による宣言によって選手たちは一斉に動き出す。

 

 

 予想通り、前衛であるウィルはナックル型の煌式武装(ルークス)を展開し行人に向かってくる。

 

 

 後衛の将道は遠隔操作武装を行人の回りに纏わせるためそれを飛ばすが、それは利奈の銃撃によって阻止される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、将道の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を封じて俺を先に倒す気かな? だけどそれはやめた方が良かったね。──将道の煌式遠隔誘導武装を織り混ぜた戦闘技術は俺より上だからね」

 

 

 ウィルは悪びれる様子も無く、行人たちがとった戦法の粗を指摘してくる。実際将道はあの武器の他に拳銃型煌式武装を持っているようで、利奈は盾を使って守っているもの、四方八方から来る光弾の嵐に防戦一方になっている。

 

 

「まあ、それ以前に君も俺に勝てないんだけどね!」

 

 

 そう言うとウィルはこちらに踏み込み、ナックルを正拳突きの要領で行人の中央付近に突き出してくる。

 

 

 行人はその重い一撃を《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の剣で受け止めるが、ウィルの本命はそこではない。

 

 

「吹っ飛べッ!!」

 

 

 それと共にナックルから衝撃が走り、かなりの勢いで行人を吹き飛ばし、壁に体を叩きつける。

 

 

 煙が上がりどうなったか確認はできないが、あの速度なら相当な痛手になったはずだろう。

 

 

「だから言ったでしょ? 勝てないってさ」

 

 

 相変わらず笑いを絶やさないままで言葉を発してくる。一息ついてパートナーの方を確認しようとすると……

 

 

「ッ!?」

 

 

 何も見えないはずの煙の中から、九発の銃弾が飛翔してくる。それもほぼ同時のタイミングでだ。

 

 

(──なぜ? あの衝撃でここまで早く動けるように……それに今の銃撃は?)

 

 

「自覚があるかは知らんけどなぁ。──さすがにナメ過ぎだクソ餓鬼。技術はともかく、ベラベラうるせぇんだよ」

 

 

 試合が始まってから今まで口を開いていなかった行人が、初めて声を発する。

 

 

 煙が晴れ、そこに立っていたのはさっきの剣ウィルが見たことのない銃を持った鬼の形相の──いやそんな生易しいものではない。ただ、ひたすらにキレにキレて、四白眼どころか十白眼くらいの目にメンチを切った行人だった。

 

 

 行人の使っている武装はG11というアサルトライフルを元にディによって開発された突撃銃型煌式武装だ。

 

 

 元の銃と同じようにバースト射撃で理論上毎分二千発打てるという驚異的な連射速度を持つ。

 

 

 ただし今回ディが開発元としてこの銃を選択したのは失敗だったと言える。なぜなら元銃の問題はマシになっているが、連射時の反動がハンパない大きさで、連続でバースト射撃するのは《星脈世代(ジェネステラ)》だとしてもとてもじゃないが不可能だからだ。

 

 

 しかし《ステアーSMG 零式》は利奈に譲渡しているので、今回はこれで我慢するしかない。

 

 

「ただでさえ最近は血管はち切れそうな思いなんだよ……。これ以上俺の血圧上げてくんのやめてほしいもんだ……なぁ?」

 

 

 表面上はかなり落ち着いてきている行人だが、その内ではまだベ◯ットも真っ青なレベルで苛立ちが募っている。

 

 

 正直今まで使っていなかった隠し玉を全て使って叩き潰したい思いに駆られるが、それをなんとか抑えながらアサルトライフルで攻撃する。

 

 

 銃撃を横移動で避けるウィルは顔を歪ませ気味に叫ぶ。

 

 

「ッ! 君たちは前衛後衛で別れてたんじゃないの!?」

 

 

「と思ったな、あれは嘘だ」

 

 

 行人がウィル用に考えた作戦は至極単純である、近づかれたらやられる? なら撃てば良いじゃない。以上、QED証明完了。

 

 

「──だったら!」

 

 

 という予想を上回り、ウィルはナックルからの爆発の反動で動きを速め、稲妻状にこちらに距離を積めてくる。元々の体格も大きくないので、それも相まって弾が当たらない。

 

 

「チィッ!」

 

 

 ウィルが右のナックルで攻撃してきて、行人はそれをライフルで受け止めるが、ライフルは派手に曲がってもう使い物にならなそうだ。

 

 

 そこからウィルの怒濤の攻めが始まる。大降りで右拳を振ったかと思えば、そこから大幅な軌道修正が入り肘打ち。さらにその動きを利用し今度は左の拳が叩きつけられる。

 

 

 武術のような動きではないが単純に相手を倒す体術と、そこに爆発を利用した威力の増加と大幅な軌道修正込みの素早い動き。

 

 

 容赦なく叩き込まれるその攻撃を《星辰伝導(プラーナトランス)》を使って、後ろに下がりながらなんとか凌ぐ。しかしウィルは攻撃の手を緩めない。

 

 

「まだまだぁッ!」

 

 

 ラッシュの合間に爆発の反動を使い、今度は宙に上がってから踵落としを繰り出す。

 

 

 ここまでの攻防で使い手であるウィルの技量は界龍(ジェロン)の拳士と比べても大差無いほどだ。だがやはりあの武装の爆発が一番とてつもない。

 

 

 下手に拳を受け止めようものなら爆発で追加攻撃をされるため、行人には避けることに徹するしか対処ができない。攻撃の糸口を掴むため、一度《星辰伝導(プラーナトランス)》を全身にフルに活用して見極める。

 

 

(右拳……左拳から爆発で回し蹴り……────ここだッ!)

 

 

 鋭い右フックから出された左足での足払いに合わせて、行人はその膝の関節に星辰力(プラーナ)を込めた蹴りを放つ。

 

 

「うぁぁァッ!!!」

 

 

 防御など考慮していなかった足払いに合わせて行人が繰り出したカウンターに、ウィルの足は鈍い音を立てあらぬ方向に曲がる。

 

 

「良かったな。──足が引きちぎれなくて」

 

 

「ウィル・リード、校章破損(バッジブロークン)

 

 

 必死に足を押さえるウィルの校章を行人は剣の形をした《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》で両断し、無機質な機械音が会場に響いた。




 読んでくれてありがとうございます。


 ここからは編集されてないので後書きも本来の物にもどっていきます(手をつけられてない話も変わってないですけどわ)


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辛勝

 一方その頃、行人たちが戦っている中、利奈と将道も激しい攻防を繰り広げていた。

 

 

(これは……厄介ですね……)

 

 

 利奈の周囲を飛び回る十二の端末は、それを操る将道と共に光弾でオールレンジ攻撃をしてくる。

 

 

 将道はただがむしゃらに攻撃しているわけではない。端末の光弾を放つタイミングをずらすことでこちらの行動を限定させ、徐々にこちらを追い詰めてきていた。

 

 

 盾があるおかげで辛うじて防げているものの、それで守れるのは正面だけなので左右や後方からの光弾には何発も被弾してしまっているのが現状だ。

 

 

 

「何を狙っているのかは知らん。けどその状態から行動を起こさせるほど、俺は甘くないつもりだ」

 

 

「生憎私も、おいそれと、負ける気はありません、よっ!」

 

 

 右斜め前上方、左下、後方から飛翔する三つの光弾を一度に避け、その後将道からの銃撃をまたさらに避ける。このような攻防を先ほどから一分以上続けていた。

 

 

「ならどこまで凌げるか、見物だな!」

 

 

 体力は限界、付け込める隙も見当たらずこのままでは押しきられてしまう。

 

 

「くッ……! ──うわぁ!」

 

 

 気を抜いてしまい後ろから飛翔した四つの光弾に利奈が持っていた盾が弾かれる。将道はこの隙を見逃さず、手に持つ拳銃と動きを止めた十二個の端末が一斉に此方に向く。

 

 

 ──その瞬間を利奈は待っていた。

 

 

 

「ッな!?」

 

 

 利奈は全ての端末が動きを止めたところを狙って自分の能力で体を加速させ、一気に戦線を離脱。そして事前に渡されていた煌式武装(ルークス)の発動体を展開し発射する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それは通常の銃器型煌式武装(ルークス)より二倍は大きく、発射された光弾も一般の物とは比べ物にならない威力をしていた。

 

 

 ──かつて、設計思想の異端さ故にアルルカントを放逐された教授がいた。その設計とは複数のコアを多重に繋げることで高出力のエネルギーを発生させるもの。

 

 

 しかし出力を安定ができない、使用者の負担が大きい、大型になってしまう、そして何より出力の維持に過励万能現象(流星闘技)引き起こす(使う)必要がある──そういった欠陥を抱えていた。

 

 

 ──利奈の持つ武装は二つのコアを連結させ、流星闘技による高出力で炸裂する散弾を放つ……かつての異端児が造った武器の流出品で──将道が操る煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)において天敵と言える物だった。その名は……

 

 

「《八式煌型炸裂散弾銃ウィンドブラスト》! ──発射(ファイア)!!」

 

 

 その一言と同時に一斉に高出力の光弾が放たれ、その全てが小規模な爆発となり強い爆風が吹き荒れる。将道はなんとかそれを躱すが、十二個の端末は逃れることができず塵と化す。

 

 

「クソッ! なんて威力だッ!」

 

 

「……何で……」

 

 

 しかし今までの攻防で傷だらけになっていた利奈はイメージが曖昧なままいきなり能力を使ったため、思わず膝をつく。

 

 

(どうやら、既に限界だったようだな……)

 

 

 動けないでいる利奈に将道は近づき、校章に右手の拳銃を向ける。

 

 

「……ここまでだ」

 

 

 そう言って拳銃に掛けていた引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──前に、

 

 

「苅宿将道、校章破損」

 

 

「いやー危ないところだったなぁ利奈」

 

 

「────先輩……」

 

 

 白い弓を持った行人が放った矢が、将道の校章を穿っていた。

 

 

「試合終了! 勝者、永見行人&白江利奈!」




 この次は(多分)日常に第五回戦……そして最後にターミ◯ーター顔負けの化け物と戦うんですよね。


 ──燃え尽きそう……( ゚□゚)


※最近サブタイの付け忘れがひどいですね……そことその他諸々を修正しました。


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いつかの師弟

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》本選の初戦を終えた後、行人は寮の自室にて次の対戦相手の試合を確認していた。

 

 

 利奈は先の戦いによるダメージが大きいためできるだけ体の回復に専念させているし、ニアはディの所に出張中だ。しかし自分はやることもなかったので、こうしてまた端末と向き合っていたというわけだ。

 

 

 そうして時間がたっていく中、唐突に手にしていた端末へ一通のメールが届いた。

 

 

「これは……」

 

 

 それはかつての師であり、アスタリスク史上最強の《魔女(ストレガ)》……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──星猟警備隊(シャーナガルム)隊長、ヘルガ・リンドヴァルからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──久しぶりだな」

 

 

「久しぶりですね、ヘルガさん。……まーた犯罪臭漂う姿で……」

 

 

「よーしまたみっちり死ごいてやるから覚悟しておけ」

 

 

「すいません冗談ですからあれだけは勘弁してください……」

 

 

 試合疲れのせいかつい滑らせた言葉にいつかのトラウマ(地獄)を行人は甦らせられる。

 

 

 商業区の外れ付近にある小さな屋台で二人は久々の再会をした。

 

 

 当のヘルガは自分であることを隠すために、かなりうら若い──ギリギリ高校生に見られるかもしれないほどの若すぎる姿をしている。

 

 

 最後に出会ったのは《獅鷲星武祭(グリプス)》が終わった後だったため、かれこれ一年以上はたっている。

 

 

「いきなりの呼び出しで悪いが、一応師として最低限のエールは送っておこうと思ってな。──よくもまああんなに愚図だったお前が、まさか《星武祭(フェスタ)》の本選にまで出るとは思わなかった。おめでとう」

 

 

「ありがとうございます──と素直に喜びたいんですが、さすがにそこまで言われるとさすがに無理ですね。弱くても一応、あのヘルガ・リンドヴァル(アスタリスク史上最強の魔女)の弟子なのに」

 

 

 ヘルガの一切誉める気の無い言葉に行人は苦笑して答える。

 

 

「私はそんなもの取ったことは今まで一度も無かったんだがな……。──それに、私から去るときなどあんな眼をしていたのに、よくそんなことが言える」

 

 

「自分でも全くだと思いますよ」

 

 

 当時の過去を思い出して二人はまた苦笑する。少々の亀裂はあったが、それでもそこに関しては二人とも既に割りきっている。

 

 

「そういえば、仕事は大丈夫なんですか? ……心配する必要は無いかもですが」

 

 

「ああ、巡回も今まで通りだし、今の段階じゃ捜査命令なんて物も出ない。どっかの生徒が暴れていた情報はあるが、それも結局誰かはわからないからな」

 

 

 暴れていた生徒とは──星武祭(フェスタ)への出場停止処分の可能性がある中、よくもそんな大胆なことをできる輩がいたものだ。少し感心してしまう。

 

 

「まぁそこはあまり口出ししないようにしておきますよ。──ヘルガさんはただでさえ堅物ですし」

 

 

「……そうか気が変わった。今日はただでは帰さんから覚悟しておけ」

 

 

「ゑ」

 

 

 最近は周りの環境に苦労することが多いが、今回も同様で行人はヘルガの仕事で溜まった愚痴やらその他諸々をしばらくの間聞かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──それは本当ですか?」

 

 

「事実だ。奴等が何をしてくるかはわからん。──くれぐれも、ディルク・エーベルヴァインには気を付けろ」




 日常が思い付かなかった……許してください。


 ヘルガ隊長の語調は把握しきれてないので、間違っていても許してください。まだ原作も五巻までしか読めてなく、最新作まで追い付いてないのです……


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情報

「傷は大丈夫か? かなり多かった気がするが」

 

 

「基本的にかすり傷がほとんどだったので、今はあまり痛みはないです。明日には支障も無く動けると思います」

 

 

 後日、再び控え室に集まった一同は四回戦目と同様に対戦相手への対策を立てていた。

 

 

 五回戦の相手はクインヴェール。《星武祭(フェスタ)》では珍しい枠からの出場者だ。

 

 

 今回は先のアルルカントよりは戦いやすいと行人は見ている。それは武器を作る技術で上回られることがないため変に意表を突かれることが無いからだ。

 

 

 ただし彼女らが強いことに変わりは無い。というか本選に出場した選手でスペック的に一番弱いのは自分たち──いや自分の気がしている。

 

 

「なんせ俺だからなぁ……」

 

 

「?」

 

 

 思わず声に出したが、利奈は行人が何を言っているかわからない(当たり前だが)だろう。

 

 

 ついでに行人のスペックを簡単に説明すると、近接戦の技術はユリスと同じか少し下。遠距離は一般の銃器使いの少し上。身体的スペックは普通の《星脈世代(ジェネステラ)》と同等。もちろん能力は無し。──本来本選に出るような者と比べると見劣りするのがわかる。

 

 

 ヘルガも言っていたが、《獅鷲星武祭(グリプス)》のような番狂わせがあまり無い《星武祭(フェスタ)》の本選に出れているのはかなりすごいことだと自分は思う。というかそうでなきゃやっていけなくなる自信がある。

 

 

「いや、何でもない。えーっと? 刀型の煌式武装を持っているのが辻浦 早香。戦い方を分析した結果、刀藤流の使い手なのがわかった」

 

 

「刀藤流……」

 

 

 刀藤流、それは星導館学園元序列一位、《疾風刃雷》の刀藤綺凛が使う剣術。技の練度は違えども早香が使う剣術はそれと同じ物だった。

 

 

 ただし立ち振舞いに関しては物静かで、基本オドオドしている綺凛よりクールな感じがする。

 

 

「そしてもう一人の二丁拳銃使いがクレア・ライトだ」

 

 

 こちらは早香より活発で、とにかくよく動く。止まることが無いため、狙いを付けるのは容易ではないだろう。

 

 

「なんだか正反対な人たちですね」

 

 

 利奈は試合映像を覗き込みながら言う。クインヴェールは《星武祭(フェスタ)》への価値観もあって、試合の最初にアピールをしたりすることがある。

 

 

 ただしこのコンビの場合、それをしているのはクレアだけで利奈はあまりしていない。軽くお辞儀をするくらいだろうか。

 

 

 他にも武装や見てくれの性格、髪型などが対称的な風に見える。

 

 

「実際にこのコンビで活動とかはしてるみたいだよ。多分その……ギャップ? みたいな何かを狙っているんじゃないかな」

 

 

 アイドル──というよりクインヴェールの事情は知らないが、案としてはニアが言ったように見るのが良いのだろう。本来そこを考える必要は無いが。

 

 

「とりあえずだ、今回は定石通りに前衛後衛のスタンスで戦っていく。フォローは任せるぞ利奈」

 

 

「了解、任されました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なにしてるんですか?」

 

 

「いや、今ニアの能力がどれくらい予想されているかネットで調べてたんだが……面白い記事を見つけてな」

 

 

 行人はそう言うが、その顔は全然笑っていない。むしろ少しひきつっている。

 

 

「《星武祭(フェスタ)》に出てる選手やらについて話し合うサイト──いわゆるスレってやつだな。アルルカントの人形とか、天霧の能力についてとか色々載ってる」

 

 

 そこには各学園の評価や分析、批判や好き嫌いまで様々な情報が記載されている。

 

 

「んで、俺が見ていたのはこれだ」

 

 

「……これは……!?」

 

 

 そこに載っていたのは利奈の情報や行人の純星煌式武装、そして一番多かったのは──行人への批判だった。

 

 

「なんなんですか……これは……」

 

 

「そういや利奈はこういうの見んの初めてだったか」

 

 

 《星武祭(フェスタ)》の闇の部分を初めて見たのだろう、利奈は驚きを隠せないようだ。あれだけの熱狂を呼ぶイベントでこんなものを見れば信じれないのもわからなくもないが。

 

 

「《星武祭》に限った話じゃないが……こういったのは以外とよくあることだ。──ここまで規模が大きいのはかなり珍しいけどな」

 

 

 それに比べ行人は自分のことのはずなのに、あまり深々と考えてはいない。それはさも当然なことだとさえ思う。

 

 

 スレには「何であんなやつが勝っちまうんだ?」「相手がクソ弱かったんじゃね?」「つか序列も入ってねぇのに気持ちわりぃな」といった言葉が数多くある。

 

 

 中には客観的に試合を分析している者や、ただただ脳死状態で言葉を羅列している者。いずれも共通して行人を快く思っている者は一人もいなかった。

 

 

「観客には基本推しの選手とかがいる。それが名も知れぬ輩に倒されたでいい気分になるやつはいないだろ?」

 

 

「──先輩は何とも思わないんですか?」

 

 

「? 何を?」

 

 

「いや何をって……」

 

 

「こんな反応をされんのは初めてじゃない」

 

 

 淡々と、それが普通だと、激情する利奈を律する行人。

 

 

「《冒頭の十二人(ページ・ワン)》入りしているやつはこういった類いのことを経験するもんだ。俺の場合は他より過激だがな」

 

 

「それは……どういう意味ですか?」

 

 

 しかしやはり納得のいかない利奈は問うことをやめない。

 

 

「俺は他の《冒頭の十二人》と違って《魔術師(ダンテ)》でもなければ戦闘の天才とかでもなかった。──大衆が望むのは、何か特別な証や資格のような物を持つやつが、そういう特別な地位につくことだ」

 

 

 例えばユリスや綺凛のような人物なら説明がしやすい。前者の場合は一国の王女で《魔女(ストレガ)》。後者は日本刀のみで一位にのし上がるスーパールーキー。──ここまでで彼女らに一つの属性も見えない者はいないだろう。

 

 

 そしてそれを周りから見ている大衆は、そういった人物たちが《冒頭の十二人(ページ・ワン)》になることを望み、《星武祭(フェスタ)》でも優勝を期待する。

 

 

 しかし行人の場合は違う。たまたま《純星煌式武装(数多の偽り)》を手にいれただけの、ただの一般人(平凡)。それをなんとも思わないほど、この世界は優しくない。

 

 

 それは嫉妬を呼び、怒りを生み、憎しみを抱かせる。なぜ自分じゃない、なぜあんな奴が選ばれるといったものを。

 

 

「これが利奈の場合なら批判もあまりないだろうな。容姿端麗、文武両道、友人のために健気に戦う孤独の《魔女(ストレガ)》。──これ以上ない資格だ」

 

 

「そんなことは……」

 

 

 無い、とは言い切れない程には、利奈もこの世界の実状知っており、それを体験している。

 

 

「しかしそれが? 容姿も普通、成績も微妙で態度はクソ、挙げ句に一般人で大した願いも無いときた。──不思議なもんだよなぁ? 単に回りから吠えるしか能がないクセに」

 

 

 ここまでこの待遇を実際に受け、それを繰り返そうとしているが、行人はむしろ手をおおらかに広げながらそれを嘲笑う。

 

 

「バッシングにブーイング、脅迫状にむしろオールオッケィ! 周りがそうやってほざいている間に、俺らは自分より上のやつらの不意を突き、喉元を引きちぎって勝つ。利奈の願いは言い方は悪いが要約すれば金だ。付き合わせてるのは俺だし、たとえ負けたとしても俺の方の報酬金からも出す。……だからさ、お前は心配しなくていい」

 

 

 そう言うと利奈は少し俯いていたが、震えるような笑顔で無理矢理にでも答えた。




 最近話数多すぎて再編集して投稿し直そうか迷っている作者です。


 五回戦目の相手が紗夜と綺凛のパクりみたくなってますね、作った後で気づきましたすいません。


※この話も統合しました。


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運命の分かれ道

「やあっ!」

 

 

 毎度恒例のプロキオンドーム。既にここでは《鳳凰星武祭(フェニクス)》五回戦目──クインヴェールとの戦いが始まっていた。

 

 

 行人が相対するのは刀藤流の使い手である辻浦早香。序列入りはしておらず、その剣も連鶴までは至らず生粋の天才である刀藤綺凛と比べると見劣りしてしまうが、その実力は高い。

 

 

 校章を狙って右袈裟から振るわれた刀を剣状の《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》で受け流す。

 

 

 早香は綺凛のように連鶴で斬撃を繋げることは出来ていない。しかし彼女は四十以上ある刀藤流の剣術を一つの技として使うことに重点を置くことで、本来とは違う使い方を編み出していた。

 

 

「はあッ!」

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 先ほどとほぼ同じの体制から繰り出された斬撃が、今度は全く違う方向──左から水平に迫る。

 

 

 早香の剣は一回の切り合いでの駆け引きが綺凛よりも正確だ。それこそ一瞬でも気を抜けばその隙を突かれて終わるだろう。

 

 

 ──しかし武術に心得がある者ほど、行人が持つ武器は猛威を振るう。

 

 

「せいっ!」

 

 

「あまいッ!」

 

 

 互いに間合いを測っている中、今度は行人から剣を右から逆袈裟に振るうが、当然それは受け止められる。

 

 

 鍔迫り合いになり両者は共に出方を伺うと思われたが、またしても行人は先に動きバックステップで距離を空ける。

 

 

 それを追って早香は一歩踏み出すが、

 

 

「辻浦早香、交渉破損(バッジブロークン)

 

 

「なっ……!?」

 

 

 それより先に、行人が持つ槍状の《数多の偽り》が早香の交渉を割っていた。

 

 

 武器を使う戦いで最も大切な事の一つは、徹底した間合いの管理だ。剣、槍、銃──この三つは全て、効果的な間合いが違う。それを測ることができなければ、武器を扱った戦いで勝つのは難しい。

 

 

 しかし《数多の偽り》はその名の通り数多くの形態を持っている。その無数の形を持つ特性は、相手の間合いを侵食する。その効果は初見ならいざ知らず、間合いを測る技術が高いほど顕著にでる。

 

 

 ──彼女もまた、それによって戦いを狂わされた者の一人だった。

 

 

「クレア・ライト、校章破損。──試合終了! 勝者、永見行人&白江利奈!」

 

 

 途中から陣形を崩され一対一同士に持ち込まれたが、どうやらあちらの戦いも無事に終わったようだ。

 

 

 利奈の相手であるクレアは確かに素早いが、利奈は能力の恩恵でそれより速い。さらに戦闘能力も向上してきているので、このペースだと撃ち合いでは優勝候補の一人である、あの沙々宮紗夜にも引けをとらない人物になるかもしれない。

 

 

 試合に勝ったことを喜び、行人と利奈は拳を軽くぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──と、ハッピーエンドのように締めたかったのだが、ここで終われないのが今回の《星武祭(フェスタ)》だ。

 

 

 何せまだ決勝に行けたわけでもないし優勝候補を倒したわけでもない。締め括りとして次の相手は最有力候補──アルルカントの擬形体たち。

 

 

 その事実は行人を鬱にするには十分すぎるもので、控え室に入って早々顔から生気が抜け落ちた……

 

 

「って、何度やるのその流れは……」

 

 

「何度と言われればあえて言おう何度でもできる」

 

 

 やろうと思えば無限回はやると硬い意志を露にする。は《鳳凰星武祭(フェニクス)》始まって以来、今まで見せたことのない威風堂々とした姿だった。

 

 

「ま、まぁ……状況は当初予想していたよりずっと良い。やつらに使う手の内をかなり温存できたからな。目当ての物ももうすぐ届くし」

 

 

 だがそんな姿をすぐさま投げ捨ていつもの状態に戻る。

 

 

「えーっと……ちなみに何頼んだんですか?」

 

 

「ちょっとモ○タロウでワイヤーと尖った感じのフックを」

 

 

「釣りでもする気ですか?」

 

 

 かくいう利奈の方は行人が奇行を起こすのにはもう慣れたらしく、今回も冷めた反応だ。

 

 

「実戦になったらわかるさ。ただしこれは第二の戦略だから使いたくないが……」

 

 

 行人は一転して神妙な表情になる。

 

 

「──まず第一の手は?」

 

 

 それに応じて利奈も真剣な顔をして案を聞く。これまでの戦略を考えてきたのは行人だ。彼は自分に道を示して、自分はそれに従う。そうやってここまでは戦ってきた。

 

 

「お前は打ち合わせ通り。……そして俺が取る手段は」

 

 

 ここで行人はこれまた相当にゲスい表情を浮かべて答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────奇襲だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さてさて試合はいよいよ準々決勝。ここを勝ち抜き、ベスト四の座を確かなものにするのは一体どちらかなのか! 会場はお馴染みシリウスドーム、実況と解説も、お馴染み梁瀬ミーコとファム・ティ・チャムさんでお送りします』

 

 

『いやー遂にここまで来たっスね。アルディ選手とリムシィ選手は全ての試合を一分で終わらせてきた猛者っスけど、今回の対戦相手は今大会のダークホースとも言われる永見選手と白江選手っス。どんな絡めてを仕掛けるかが重要だと思うっスね』

 

 

『なるほとなるほど……。確かに永見選手らは、ここまで手の内を大きく見せてないように感じますね。っとここで各ゲートから選手たちの入場です!』

 

 

 やはりと言うべきか、プロキオンドームも盛況はすごかったが、シリウスドームのそれはそのどれと比べても勝るものはない。

 

 

 そしてこれも予想通り、アルディのあの宣言が出てくる。

 

 

「聞くがよい! 今回も貴君らには一分の猶予をくれてやろう。我輩たちはその間、決して貴君らに攻撃を行うことはない。存分に仕掛けてくるがよい!」

 

 

『出ましたー! アルディ選手のこの宣言! 一体彼らを止めることができる者は出てくるのか!?』

 

 

 この宣言に観客からは絶叫のような歓声が聞こえてくる。──やはりうるさくてかなわない。

 

 

 ポケットに仕込んであった煙幕を手に握りながら、眼前を見つめる。

 

 

「《鳳凰星武祭(フェニクス)》準々決勝第一試合、試合開始(バトルスタート)!」




 改稿に合わせ、これから書く文も2000ほどにしてみました。これからもそうなると思います。


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奥の手

 試合開始の合図と共に行人はその煙幕をアルディたちの回りにばらまく。リムシィは早々に離れたが、その中心にいるアルディからは無機質だが感情のこもった機械の声が聞こえる。

 

 

「ほう、これは……」

 

 

 この煙幕は赤外線などのセンサーも無効化できるような特注品だ。無論煙幕自体だけではなく、その撒き方も工夫をしてある。

 

 

『おおっとこれはなんだぁ!? 永見選手はアルディ選手ではなくその周囲へと煙を展開したぁ!』

 

 

 そう、これは彼ら本体ではなく彼らの回りへと張り巡らした。回りから見えない状態での攻撃は《星武憲章(ステラ・カルタ)》違反だが、これならば観客からも一応見えるだろう。

 

 

 行人はまずその煙の中に突っ込んだ。そして、

 

 

『そして永見選手、煙の中からすれ違いに攻撃している! あ、上の映像からその様子を映しているので、見えない方はそちらをご覧ください』

 

 

『確かにどこから来るかわからなかったら多少守りにくくはなるっスけど……アルディ選手相手じゃそれもあまり有効には見えないっスね』

 

 

 円形の煙の中からタイミングをずらしながらすれ違いざまに攻撃を繰り出す。だがそれは全て防御障壁に防がれてしまう。

 

 

「……あと三十秒」

 

 

 アルディから無慈悲にカウントダウンを告げられる。それに呼応して行人はさらに攻撃の手を激しくしていくが、

 

 

「…………あと十秒」

 

 

 全て、攻撃は一切アルディの装甲に届かない。利奈の方もリムシィと銃撃戦を繰り広げているが、初戦の様にリムシィの光弾に全て防がれている。

 

 

「──時間である。……興ざめだったであるな」

 

 

 制限時間は当に過ぎ、煙も完全に晴れ、もはや真っ向から戦っても今までの戦い方ではなすすべもない。

 

 

 アルディはハンマーを出現させ、行人に向かってそれを振り下ろそうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬッ!?」

 

 

 その前に、アルディは攻撃を止めの校章付近に防御障壁を発生させる。そしてそこには──

 

 

「──やっぱ化け物じゃねーか……予想していたが二の矢を使うことになっちまったな」

 

 

 短剣型煌式武装(ルークス)《ガーダーピアス》を右手に持つ、もう一人の行人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なぜ? なぜ私がただの銃弾に対抗できない?)

 

 

 一方こちらも、カウントの一分が過ぎたところから状況は一変していた。

 

 

 最初はリムシィが利奈の銃弾を自らの銃弾で防いでいた。それは周りも予想していたことだ。そこからは初戦と同じように、リムシィが勝つと思われていた。

 

 

 しかし事はそのように進まなかった。利奈の戦い方は最初の一分とはまるで違う。動きの速さ、位置取り、そういった立ち回りは去ることながら、一番厄介なのは──

 

 

『白江選手、カウントダウンを終えてからは一変! あの神業を持つリムシィ選手が銃弾を防ぎきれていない!』

 

 

『これは……おそらく加速の能力を使って弾のスピードを変化させてるみたいっス。こんな芸当ができるのも白江選手が持つ能力の恩恵っスね』

 

 

 一番厄介なのは、彼女が放ってくる銃弾だ。解説が言っていたように利奈はアサルトライフルで撃った弾を能力によって様々な速さに変えている。

 

 

 時に音速の速さに、時に誤差の範囲に、そして時に普通の速さに。今まで経験したことがない弾丸の応酬がリムシィを襲っていた。

 

 

「さすがにあなたでも、こんな芸当をされればすぐに対応するのは無理でしょう!?」

 

 

 利奈が言った通りに、リムシィは何発か光弾にかすっていた。ただの銃弾ならば速度はほぼ一定なため単純に迫ってくる位置を割り出せばいい。

 

 

 しかし弾の速さが任意で変わるとなれば、その計算の答えはぐんと増える。撃つ姿勢や銃口の向き、使い手の状態といった撃つ際に確定する要素に、使い手の考えという不確定要素が混入する。

 

 

 人の行動──心というのは、コンピューターなどの計算とは絶対に相容れないものだ。いつどうなるか、なぜそうなったか、当の本人にすらわからないことがある要素が計算に混じる……それは最も計算を狂わせる。

 

 

「──このまま押しきらせてもらいますよ!」

 

 

 利奈のその言葉に、だがリムシィは自分でも気づかぬ内に、自らが持つ《心》が高ぶっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、予想を遥かに上回っているであるなぁ!」

 

 

「あぁもう黙れよお前! 性格からウザイ上暑苦しいんだよそんままショートしちまえ!」

 

 

『アルディ選手、ここに来て初めてハンマーによる攻防が繰り広げています! やはりその威力は相当すさまじいです!』

 

 

 アルディが攻撃を初めてから地面には少し凹凸が浮かび上がっている。戦闘に支障はないが、地面が変動するほどの威力なら行人が喰らえば一発KOなのは容易に想像できる。

 

 

 その上でこちらは攻撃が通用しないのだ。気を散らされるような行動に愚痴が出ても不思議ではないと思う。 

 

 

 一応回収した《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》は《純星煌式武装(オーガルクス)》だが、四色の魔剣のような能力はない。そもそもが協力な攻撃ができるものではないのだ。──手段はあるにはあるものの、負担が大きいのでできれば使いたくはない。

 

 

「隙あり!」

 

 

「なんであるか!?」

 

 

 大降りに振られたハンマーの柄にワイヤーに付けられたフックを引っ掛ける。

 

 

「──さぁ、暴れんじゃねぇぞッ!!」




 燃え尽きそうです……


 やっと原作を十二巻まで読めたんですよ。なのでさらにアスタリスクの知識が増えました。やったぜ


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本性

 行人はワイヤーを持ったまま身の丈の二倍はあるアルディの股下を潜り抜け、そこからさらに宙返りの要領で跳んで首にもワイヤーを巻き付ける。

 

 

「何をする気であるか!」

 

 

 アルディはそのワイヤーを解こうとするが時既に遅し、もう一方の端についたワイヤーもハンマーに掛ける。

 

 

「こんなものぉ!」

 

 

「変異体の捕獲にも使われるまさに一級品のワイヤーだ。そう簡単に外れるわきゃねぇだろぉ!」

 

 

 そう口にしながら行人は拳銃型煌式武装(ルークス)《RS five-seven》を流星闘技で発砲する。

 

 

 巻き方は少し無理があるかもしれないが、それでもワイヤーの質は折り紙つきだ。それなりには持つだろう。

 

 

 あの巻き付けられたワイヤーが用意した第二の矢。そして第三の矢が……

 

 

「なぬ!?」

 

 

『アルディ選手どうしたことかぁ!? 鉄壁と言われる防御障壁に僅かながら穴ができています!』

 

 

 アルディの障壁にはアナウンサーが言った通りに少し傷がついている。──あの《螺旋の魔術師(セプテントリオ)》の攻撃すらものともしなかった障壁にだ。

 

 

『おそらく永見選手が使っている煌式武装のせいっスね。これは煌式武装の性能を、威力ではなく貫通力に特化させているからみたいっス』

 

 

 第三の矢はまさしく行人が発砲している《RS five-seven》のことだ。威力以上に貫徹力を重視した光弾を射出するこの武装は、流星闘技(メテオアーツ)を使うことでさらにそれを増す。

 

 

 自分の星辰力はあまり多くないため多用しすぎると星辰力切れ(プラーナアウト)に陥ってしまうが、まだ大丈夫だ。

 

 

「おのれぇ!!」

 

 

「はぁ!?」

 

 

『しかしアルディ選手、力ずくでワイヤーを取り外しました!』

 

 

 と思っていたら思ったより早く別の問題が発生した。なんとアルディはワイヤーを力だけで外したのだ。その出力はいよいよ勝てるものか怪しく感じてきた。

 

 

「さぁ、第二ラウンド開始である!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ! 速すぎじゃないですか!」

 

 

「生憎と私は機械なので、あなたのように枷がないのです」

 

 

 利奈の方も状況はあまり芳しくなかった。

 

 

 リムシィは機械だ。それ故の弱点もあれば、それ故の長所もある。

 

 

 銃弾の加速を使ってリムシィを押していたが、しばらくするとリムシィは自分の速度を一気に上げてきた。当然その体には内臓などないためリムシィのスペックに応じてそれは上がっていく。

 

 

 しかし利奈は人間だ。いくら《星脈世代(ジェネステラ)》でも内臓があるし脳の処理速度も劣る。本来リムシィには性能面から勝つことができない。

 

 

 したがってリムシィ本来の速さに気圧され、利奈はどんどん追い詰められている。

 

 

 これが経験を積んだ選手であれば、リムシィを誘導し誘い込み、狙い撃ちすることもできるかもしれない。だが利奈はまだ《星武祭(フェスタ)》初出場のルーキー。それをするための経験が、圧倒的に足りなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ならば別の手段を使うまでだろう? 

 

 

「ッ!」

 

 

「それは!?」

 

 

 盾を構えながら、片手には有り余るそれをなんとかリムシィへと狙いを定める。次に来るであろう箇所を、予想ですらない直感で。

 

 

「──発射!」

 

 

 リムシィのマスターも禁忌する発想の銃──《八式煌型炸裂散弾銃ウィンドブラスト》。星辰力(プラーナ)が込められた銃身から数多くの熱源体がばら撒かれ、爆ぜる。

 

 

 反動に肩が外れそうになるが、それを必死に耐える。

 

 

「まだ……まだ……終わっていませんッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで万策尽きたであるか!? まだまだこんなものではないであろうッ!!」

 

 

 ワイヤーが切れ、ハンマーを振り獅子奮迅の戦いを見せるアルディ。その威力は凄まじく、一切行人を近付かせない。

 

 

『……行人?』

 

 

「……………………仕方ないな」

 

 

 一度大きくバックステップして距離を取り、そう呟く。

 

 

「……頼む」

 

 

『────了解』

 

 

「む?」

 

 

 アルディは行人が武装の展開を止めたのに応じて足を止める。観客たちもそれに唖然しているようだ。

 

 

『一体これはどうしたことか永見選手? 戦いの最中に《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の展開を止めてしまいました』

 

 

 そして回りに聞こえない声で何かを呟き、行人はまた武装を展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──今までとは違う、色のついた弓を。

 

 

「!!!」

 

 

 アルディは飛翔する弓を障壁で防御するが、その威力は先の拳銃とは比べ物にならないものだった。それは……

 

 

「……《那由他の魔弓(ロングシャンクス)》。オリジナルに及ばないとしても、この威力を受けた感想はどうだ?」

 

 

「……どうやら貴君の評価をさらに改める必要があるようであるな」

 

 

 ──数多なる姿を持つと言われる《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》、その本来の姿だった。




 作風が崩れてきてませんかね?

 オリ主最強的なのは避ける方針なのでなんか変なことになってる気がします……(主に強さが)

 ま、是非もないよネ!(すいません)


※誰かサブタイを付け忘れるバカに効く薬を持ってないでしょうか……?


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最後の足掻き

「……ありえん…………なんなのだあれは……」

 

 

「……ユリス?」

 

 

 控え室にてアルディたちの試合を映像で観戦していた綾斗とユリス。そこには紗夜や綺凛もおり、いわゆるいつものメンバーが揃っていた。

 

 

 当初は普通に落ち着いて見ていたのだが、行人が色の付いた弓を展開したところからユリスが勢いよく立ち上がった。

 

 

 その光景には立ちこそはしていないものの綺凛も混じっており、ユリスと同じように唖然としている。

 

 

「どうしたリースフェルト? 怖じ気づきでもしたのか?」

 

 

 紗夜はいつものように少し挑発的な問いを掛ける。普段ならユリスも反応するはずだが、今回は違った。

 

 

「あれは《那由他の魔弓(ロングシャンクス)》……うちの序列七位が所有しているはずの《純星煌式武装(オーガルクス)》だ……」

 

 

「え?」

 

 

「では、永見先輩が持っているのは偽物なのでしょうか?」

 

 

 綺凛はもっともな可能性を投げ掛ける。この世に同じ《純星煌式武装》一つも存在しない。ならばそれを模倣した別の武装というのが一番その可能性が高い。

 

 

「いや、データとして見たことがあるだけだが、あれは形から威力まで全て本物に見える」

 

 

「ならば、元の使い手が手放したのでは?」

 

 

 今度は紗夜がもう一つの可能性を出す。それならば違う人物が同じ《純星煌式武装》を持っていてもおかしくない。しかし……

 

 

「いえ、序列七位の遠野百舌妃先輩は公式序列戦でもまだ《那由他の魔弓》を持っていました。私もそのときの映像を見ただけなのですが……少なくとも、その時使われていたそれは本物だったと思います」

 

 

 その案は綺凛によって否定された。綺凛が言っていることが本当であれば、それは全く同じ《純星煌式武装》を持っていることになる。

 

 

「それなら、永見先輩が持っている《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の能力だと考えるのが一番だけど……あれは他人の《純星煌式武装》の能力までは模倣できないはずだよね?」

 

 

「あぁ。──それにそのデータはクローディアから送られたものだ。やつがそんなミスを犯すはずがない……」

 

 

 綾斗もユリスも《数多の偽り》の能力には目を通してあるが、その情報によれば他の武装の姿形は真似できても、能力を模倣することができないはずだった。

 

 

 どちらにせよ、自分たちにもたらされた情報に無い事象が起きている中で、それを落ち着いて考えられる余裕はそこにいる四人には無かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぉぉぉッ!!」

 

 

 そんな回りの疑問などいざ知らず、行人は《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》が模倣した《那由他の魔弓(ロングシャンクス)》を放ち続ける。障壁によって防御されているもののアルディはその衝撃までは消せてない。

 

 

「はぁ……はぁ……どうだ……? もうそろそろ倒れてくんねぇかな」

 

 

 しかしキツイのは行人も同じだ。弓はどんどんブレがひどくなり、持ち手は負荷に耐えられるかわからなくなっている。

 

 

 ──隠されているが、この武器はいかなる統合企業財体も、所有している「銀河」でさえその本質を掴めていない。なぜなら使用者が現れるまで、一切のコンタクトができず研究が進まなかったからだ。

 

 

 そこで「銀河」はまず自らが所有する学園から適合者(被験体)を発見し、この武器を稼働させてから研究を行うことにした。

 

 

 《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》が模倣できるのは武器の形状だけで、《純星煌式武装(オーガルクス)》の特殊な能力まではできない。それが学園の、そして母体の「銀河」が所有する情報で、使用者である行人が学園の装備局を通して提示した情報だ。

 

 

 ──だが、ただ私利私欲で戦うはずの学生が、自分のために何かしら虚偽の情報を渡していても不思議ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「銀河」に伝えていない情報は三つ。一つは《数多の偽り》には意志がある(ニアがいる)こと。二つ目は、本来の能力は模倣ではないこと。そして三つ目は……

 

 

「喰らえッ!! ……ッ」

 

 

 今行人が持っているように、その本来の能力を使えば《純星煌式武装》の能力まで再現できることだ。

 

 

 ただし完全には再現できないし再現は代償までもが対象だ。現に行人は本来の《那由他の魔弓(ロングシャンクス)》の使い手のように力を扱えていないし、それの代償である徐々に増す重量に蝕まれている。

 

 

「あぁ、クソッ! がぁッ!」

 

 

 行人は重量に耐えられず弓の持ち手である左手をだらんと下げてしまう。

 

 

「……ようやく、力尽きたようであるな」

 

 

 アルディは障壁を無くしてゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。おそらくこちらの体力か星辰力が尽きるまで耐えていたのだろう。なるほど意識しているかはわからないが、実に機械らしい、合理的な戦いだ。

 

 

 ──エルネスタとやらが創りたかったのは、本当にこんな、ただの擬形体(機械)だったのだろうか……

 

 

「くッ……!」

 

 

「……これで終わりです」

 

 

『行人ッ!!』

 

 

 ……どうやらこの試合、既に勝機は無いらしい。奥に見える利奈も武器を失くして横たわり、リムシィに追い詰められている。

 

 

(ならせめて、最後の悪足掻きをさせてもらおうか)

 

 

 そうして最後の手を打つため──偽の《那由他の魔弓(ロングシャンクス)》を撃つ準備をする。構えていた左腕は負荷によって使えないが、問題ない。

 

 

「? 何をしてるのであるか?」

 

 

 アルディは行人の星辰力が足に集中してることに気づいたようだ。

 

 

「……弓の撃ち方は、何も一つじゃない」

 

 

「──まさか!」

 

 

 全力で空中に跳び、こちらに注意を向けていないリムシィを狙って目に星辰力を込め、手足を全て使って弓矢を構える。

 

 

「いくぞニアッ!!!!」

 

 

『了解ッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……狙い撃つッ!!

 

 

 ──矢を放ち、真っ逆さまに空を落ちる中、行人の意識は暗転した。




 休み期間を投入して二回目の投稿です!(知るか)


 今回アルディたちを準決勝とは違う感じで書くことにしていましたが、アルディとリムシィのファンの方々起こってないでしょうか?((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル


 えー、もうそろそろ第四幕に突入する予定です。では、また次回もよろしくお願いしますm(_ _)m


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一時の休息

『──本当に無茶をしましたね……。まさかあれが事実とは思いませんでしたが……』

 

 

 アルディたちとの一戦は終わり夜中、星導館学園男子寮の狭く暗い一室で、通信ウインドウからクローディアの声が響く。

 

 

「いけると思ったんだよ……。まぁ代償に慣れてないから左腕が折れるかと思ったがな」

 

 

『その上ぶっつけ本番ですか? なんとまぁ、もはや先輩は無茶をするのが日課になっているようで』

 

 

「性格から無茶苦茶なお前が言うか?」

 

 

 試合中に意識を失ってからどうなったか、行人は画面の奥にいるクローディアから聞いた。

 

 

 まず自分は《星武祭(フェスタ)》が終わり次第、《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》に関する事情聴取が行われるらしい。正確な情報を送っていなかったのだから当然の反応だ。すぐに行わない理由としては《星武祭》真っ最中の今、そこに割く人員がいないのだろう。

 

 

 次に自分が最後に放った矢だが、案の定外れたらしい。カッコつけて「狙い撃つ!」とか言ったクセに、標的にバレて避けられたそうだ。その後は利奈が能力を使って、意識がないまま落下していた行人を受け止めた後に星辰力切れ(プラーナアウト)で気絶、意識消失で敗北した。

 

 

 両者とも試合が終わってから治療院に運び込まれたが、どちらかというと疲労が主な原因だったので、どちらも数時間後には目覚めてからのメディカルチェックだけで済んだ。

 

 

 ただし利奈の方は傷も行人より多く、しばらく安静にとのことらしいが。

 

 

「まぁ良いだろ? 星導館学園は予想外のベスト八によって得点を底上げし、俺たちは後に褒賞金を受け取り目的を達成。《星武祭》も予期せぬダークホースの善戦によって賛否両論あれどさらなる盛り上がりを見せた……はずだ。自信無いけど。それに、お前の計画にも支障は出てないはずだし、もしかしたら役立つかもだろ?」

 

 

『それはそうですが……、まあいいでしょう。今は身体を休めてください。──お疲れさまでした』

 

 

 そうして呆られながらクローディアの画面は閉じられる。──さて、

 

 

「…………暇だな」

 

 

 《星武祭(フェスタ)》期間中は何かしら調べ物なりするのが常だったので、こうもやることがないと暇になってしまう。普段部屋にいるはずのニアも買い出しでいないので本格的に困った。

 

 

「……寝るか」

 

 

 帰って来てさほど時間もたってないが、行人は布団の誘惑に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──お前は俺に、何を求める?

 

 

『──戦うの。私のために。そして……いずれ来る、君が自分で戦える日のために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんとまぁ、懐かしい夢を見たもんだ……」

 

 

 朝日に顔を照らされながら目を覚ます。眠りについたのは午後七時くらいだったはずだが、今の時刻は午前八時を過ぎている。

 

 

 自分では気づいていなかったが、まだ疲れは相当に残っていたらしい。長く眠りすぎた体は少しだるく感じる。

 

 

「──おはよう、よく眠れた……って聞くまでもないよね」

 

 

 そして部屋にはいつも通り星導館の制服姿でいるニアがいた。──ただしニアがいるのは、行人が入っている布団の中にだが。

 

 

「……せめてパジャマとかそういう姿になろうぜ?」

 

 

「どんなのかわからないから無理だよ。……それに、服装なんて関係ないでしょ?」

 

 

 ニアは行人の顔を胸に埋めてくるので、行人はそれを受け入れ、そして抱き締める。その様はまるで家族や恋人をあやすようなもので、行人にとっては久々の感覚だった。

 

 

「……よく頑張ったね、行人」

 

 

「──せめてもう少しグラマラスな体してたら良かったがなぁ……」

 

 

「窒息させるよ?」

 

 

「冗談冗談」

 

 

 ──といっても根本的な物は変わっていないらしい。それに行人は、少しだけホッとした。




 クソ遅くに投稿します。後書き書く気力もあんま無いんで適当ですが、次回もよろしくお願いします。


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第四幕 悪辣影動 影の逃亡

「熱狂なのは変わんねぇな~。……いや準決勝ともなればこうもなるか」

 

 

「え? 《獅鷲星武祭(グリプス)》もこんな感じじゃなかったっけ?」

 

 

「覚えてない」

 

 

「それくらい覚えとこうよ……」

 

 

 シリウスドームにて《鳳凰星武祭(フェニクス)》準決勝、アルディリムシィペア対刀藤綺凛沙々宮紗夜ペアの決戦が始まろうとしていた。

 

 

 現在は参加選手用のパスがまだ機能していたので星導館のブースをニアと共に利用している。観客の熱がドーム内までもを暑くする中、ここはそういったものも無く自分たちしかいないので快適だ。

 

 

「……そろそろ始まるみたいだね」

 

 

 アナウンサーの的確だがそろそろ喧しくなってきていた解説も終わり、両方のペアが戦闘体制に──ただしアルディだけは堂々と腕組みをしたまま試合開始の合図が鳴る。

 

 

「ニア、本来の目的忘れんなよ?」

 

 

 行人たちがここに来た理由は観戦のためではない。あくまで観るのはそれを観戦する観客たちだ。

 

 

 《鳳凰星武祭》本選の初戦の後に、レヴォルフの諜報組織である黒猫機関が動いているとヘルガが教えてくれた。なんでも警備中の星猟警備隊がたまたまそれを目撃したという。

 

 

 この時期に動く理由など《星武祭(フェスタ)》に関する何かしかありえない。なので可愛い後輩に被害が及ばないか確認をするのが今回の目的だ。

 

 

「──外野の好きになんざさせてたまるかよ……。ニア、怪しい人物を見つけたらすぐに教えろ」

 

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁっクソッ! あいつら盛り上がりすぎだろ見えねぇよ!」

 

 

「ちょっと行人、これまずいんじゃ……」

 

 

 本選準決勝は予想以上に白熱し観客は立たずにいられないといった様子だ。勝手な都合で行動しているのであまり強く言えないが、今回に限っては行人たちとって邪魔でしかない。

 

 

 一気に立ち上がった観客たちによって後ろ側の部分は完全に見えず、警備もいないので隠れて行動するにはうってつけの状態となった。

 

 

 幸いにもそれは少ししたら収まった。タイムロスを補うため目に星辰力を集中させ《星辰伝導(プラーナトランス)》を使い確認の時間を短縮する。

 

 

(何か……何か変化したことは……)

 

 

 アドレナリンの分泌もあり時間感覚が麻痺していく中、ようやくそれを発見する。

 

 

「最悪だな誘拐かよッ!? 速攻で追うぞニア!」

 

 

「えっ、ちょっと待って!」

 

 

 ──観客席の最も後ろにいるメイド姿の女の子がいなくなっているのを確かに見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 黒猫機関(グルマルキン)所属、金目の七番のヴェルナーは車を使い高速道路を走っている。後部座席には先ほど気絶させたメイド姿の幼女を乗せていた。こいつは標的と親しいらしく、天霧綾斗を脅迫するための材料になる。

 

 

 目立つ訳にはいかない。あの熱狂で子供一人がいなくなろうと気づくことはないはずで、後は所定の位置へ移動するだけだ。

 

 

 ……そのはずだったのだが、

 

 

「追ってか……厄介だな」

 

 

 車の後ろから星導館の学生がこちらを追ってきている。確か名前は永見行人だったはず。これでは回りからの視線も集まり、何かしらの騒動は免れないかもしれない。

 

 

 そう判断したヴェルナーは高速道路を降りる。だが焦る必要はない、何しろヴェルナーは《魔術師(ダンテ)》なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……。──やっと、追い付いた、な……」

 

 

 行人は高速道路を走る車を生身で追うという前代未聞の出来事を経験し、肺が多量の酸素を求めている。《星脈世代(ジェネステラ)》は法外な速度を出せるとはいえ、星辰力まで使い続けたこともあって疲労は免れない。

 

 

 しかし追い詰めればこちらのものだ。適当な場所で止まった車は逃げる気配もない。拳銃を取り出しながらおそるおそる窓を覗く。──しかし、

 

 

「──能力持ちか……? まずいな……完全に見失ったぞ」

 

 

 車内には誘拐された子も、それを実行した犯人も誰一人いなかった。

 

 

「──クローディア、今回りに誰がいる?」

 

 

 通信ウインドウを開きクローディアに繋げる。

 

 

『先輩ですか。綾斗やユリスたちがいますが……どうしたんですか?』

 

 

黒猫組織(グルマルキン)が……おそらく、ディルク・エーベルヴァインが動いた」




 期間が少し開きましたが、少し構想を練るのに手間取ってました。

 さして凝ってもいない上、前回とかどんな終わり方だとつっこまれるような物語ですが、今回から第四幕です。ここはちょっと原作にも干渉していくつもりなので、よろしくお願いします。


 あとリアル事情もあって書くペースが遅くなるかもしれないのでそこもご了承ください。


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先方の維持

「それは……フローラのことですか?」

 

 

『それが誰かはわからんが、メイド姿の女の子だったらおそらくそうだ』

 

 

「!」

 

 

 画面の奥から聞こえてくる声にユリスが目を見開いて反応する。しかしそんなことは露知らず、さらに問いは重ねられる。

 

 

『お前らのとこに奴の通信か何かが来ている……って解釈でいいか?』

 

 

「はい、それで間違いありません」

 

 

『──だとしたら早すぎるぞ……』

 

 

 何か問題があったのか、今度は訝しげな声がする。

 

 

「どうしましたか?」

 

 

『さっきまでそいつを追っていたが、それを見失ってから五分と経っていない。どこか定位置に着いたのなら移動が早すぎる……』

 

 

「それは──追っていたというのは本当か!? そいつはどんな人物だった!?」

 

 

 余程フローラが心配なのだろう。ユリスは画面の奥にいる行人に声を荒げながら尋ねる。

 

 

『……とりあえずそっちで何があったか、詳しく教えてくれ』

 

 

 確かでもない情報にがっついてくるユリスを余所に、行人は何が起きていたのかを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、大体の事情は把握した」

 

 

 要約すると、そのフローラという子を誘拐したという通信が届き、綾斗に《黒戸の魔剣(セル=ベレスタ)》の緊急凍結処理を行うことをその子の解放する条件とした。

 

 

 そして要求を呑まない、他所の機関にそれが伝わる、そして試合を棄権した場合はフローラの身が危険になるということだ。

 

 

「──天霧はどうする気だ? 狙われてるのはお前の《純星煌式武装(オーガルクス)》だが」

 

 

『……俺はそれを申請しようと思います。それでフローラちゃんが助かるなら……』

 

 

「アホかお前は」

 

 

 速攻で《黒戸の魔剣》を手放そうとする綾斗に行人はその問題点を指摘する。

 

 

「よく考えろ天霧。お前が言う通りに《黒戸の魔剣》を手放したとして、それでフローラが帰ってくる保証はどこにもない」

 

 

『でも……!』

 

 

「天霧」

 

 

 お人好しがすぎるアホに一喝する。

 

 

「でももへったくれもあるか。《星武祭(フェスタ)》の試合もそうだが、お前は何かと自分一人で突っ走ろうとする癖がある。それにお前はリースフェルトの力になると、そう言ったんだろ? ──そんなお前が真っ先にそれを放り出してどうする。《黒戸の魔剣(セル=ベレスタ)》もそんな腑抜けを認めた訳じゃないはずだ」

 

 

『…………すいません』

 

 

 綾斗は理解してくれたようで、しかしそんな自分を責めるかのように悔しそうに呟く。

 

 

「クローディア、お前だったら何か案があるだろ? 黒猫組織(グルマルキン)に気づかれると不味いから、これ以降は一旦通信を切るぞ。出来れば沙々宮辺りが増援に来てくれるとありがたいんだが」

 

 

『なら私も……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前はダメだ刀藤。足での捜索が主になる今回は、その状態で来られても足手まといになる』

 

 

「…………」

 

 

 綺凛も先の綾斗と同じように顔に涙を浮かべながら泣きそうになっている。この非常事態に自分だけ動けないのがよほど悔しいのだろう。

 

 

『……刀藤、お前はもう十分頑張った。アルディの障壁をただの刀で破った──その功績は凄まじい。だから今度はこっちに任せろ。……それとも、たまたま連鶴を破っただけの不甲斐ない先輩じゃ不安か?』

 

 

「いえ、そんなことは……!」

 

 

「それは本当なのか?」

 

 

 ここまでは口を開いていなかった紗夜が真剣な顔で問う。それは口にしてはいないが綾斗も……いやユリスとクローディアも同じ気持ちだった。

 

 

 綺凛の剣術の強さは周知の事実で、元序列一位《疾風刃雷》の称号は伊達ではない。綾斗ほどの腕前でさえ搦め手を駆使してようやく勝てる域のものを、行人は影で打ち破っていたということになる。

 

 

『無理して信じてもらう気はないが、それでも最低限サポートくらいはできる。まぁ影星ほど情報に精通してる訳じゃないし強さはお前らより見劣りするかもだが……とりあえず指針はそっちで決めてくれ。……通信を切るぞ』

 

 

 そう言い残して画面は消失した。

 

 

「……ねぇクローディア、前々から疑問だったんだけど……永見先輩って一体何者なの?」

 

 

「──先輩は一応、影星とは別の私直轄で動いてくれる唯一の人物です。まあこれは非公式なもので、プライベートな面が強いですけど」

 

 

「そんなものがあったとは……。だがそれは影星だけで事足りるのではないか? わざわざあんな男をそんなものに任命する必要はなかろうに」

 

 

「あはは……」

 

 

 言葉は辛辣だがユリスの意見はもっともといえる。星導館には影星という部隊がある以上、情報収集といった裏仕事はそちらに頼めばいいだけだ。そのようなものを作る必要性はないと思われる。

 

 

「いえ、影星は形式上、運営母体である「銀河」も行動に絡んできますから私だけの一存で動かせない事もあります。しかしこういった状況ならそれもありませんし、最悪一人の生徒が暴走したと片付けられるので都合がいいのですよ」

 

 

 

「やはりエンフィールドは腹黒い。そこに痺れはするが憧れない」

 

 

 少し気の抜ける声が部屋に聞こえるが、気を取り直してこれからの方針を考えることにした。




 どんな風にしようか迷ってます。というか紗夜の喋り方がよくわからなくなる……。これ大丈夫ですかね……?


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始動

「なんか最近裏仕事が多い気がするなぁ」

 

 

 車が止まった周りの建物などを捜しながら思わず呟く。

 

 

 以前の《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》襲撃事件に白江利奈失踪事件、そして今回のフローラ誘拐事件と、天霧が来てからはトラブル三昧の日々を送っている気がしている。やつこそは厄介の種なのでないだろうかと思う。まあ厄介事はもう今さらだが。

 

 

 ひとまずここら周辺を調べたが、車内にいた──おそらく男だろう人物は何処にもいなかったし、それどころか証拠もなかった。車から出た所は見てないし、能力を使って外に出たとしてもその痕跡がない。能力の範囲が広域だったかこの手の犯行に相当手慣れた人物なのだろう。

 

 

 なんにせよやつは近域にもうおらず遠くに潜伏しているはずだ。こうなると捜索は一気に難しくなってくる。潜伏場所として考えられるのは再開発エリアだが、それだけでもかなりの範囲が対象となる、それも何の情報も無しにだ。

 

 

「考えるだけで超絶無理ゲーなんだが……」

 

 

 もうそろそろオーバーワークとしてクローディアに休暇を申請したいところだが、報酬の上乗せすら出るかどうか怪しいところだ。期待はしないでおこう。

 

 

「──ん? ……誰だ?」

 

 

『私だ』

 

 

 最近ご無沙汰になった絶望くんにまた出会っていたところに沙々宮紗夜から連絡が来た。最初に増援を求めたおいたが、おそらくはそれだろう。

 

 

「お前か沙々宮。クローディアはどうすると?」

 

 

『エンフィールドは綾斗に《黒戸の魔剣(セル=ベレスタ)》の凍結処理を偽装させて時間を稼ぐことにした。その間に私たちはフローラの捜索を開始する。まず探すのは再開発エリア。──制限時間は、大体決勝戦が終わるまで』

 

 

「そりゃまぁ……かなりハードだな。……ちなみに沙々宮、お前人探しとかは得意か?」

 

 

『ふふん、聞いて驚け。私は探すのではなく探される側なのだ』

 

 

「………………そっか、そっかそうなのかぁ。──ハハ、ハハハハッ…………はぁ……」

 

 

 せめてこの激ムズ難易度に、せめてもの慈悲があることを願いながら行人は再開発エリアへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと? ──それは本当か?」

 

 

『あぁ、本当だとも。彼が使っている《純星煌式武装(オーガルクス)》は少し特殊でね。あれも本来の能力とは違うんだよ。言うなれば劣化版……と言っても元の能力が使いにくかったみたいだから、今の方が実用性はあるだろうけどね』

 

 

 ディルクは誰もいない生徒会室でマディアスと通信で会話をしていた。聞いているのはアルルカントの人形共と張り合っていた星導館の生徒──永見行人についてだ。

 

 

 ディルクという人間は能力で他人を判断する。それは誰であっても変わらない。当初は行人など眼中に無かった。──そう、最初は。

 

 

「なんだっていい。お前がその情報を知っているなら、何故やつが来た時点で伝えなかった」

 

 

『無茶言わないでくれないか。あの武器の正確なデータは銀河にも無い。僕もあの試合を観て、ようやく理解したんだから』

 

 

「チッ! 役に立たねぇな」

 

 

 腹立たしい返答に悪態をつく。やつは完全に無名──正確には過去の栄光があるが、それでも実績は歴代の《冒頭の十二人(ページ・ワン)》の中で最下位レベルだ。なにせ試合では絶対に一度は負けているのだから。

 

 

 そんな人物を警戒する必要など本来はなかったのだ。──やつがあの試合で見せた弓さえなければ。

 

 

「そもそもあれで劣化版だぁ? 普通の《星脈世代(ジェネステラ)》にとっちゃそんなもん誤差の範囲だろうがよ」

 

 

『わかってないな。あれは確かに強力だが元となる武器と同じ性能は出せない。それこそ《四色の魔剣》のオリジナルとで比べれば雲泥の差だ。それとも君は限定的とはいえ、敵が《赤霞の魔剣(ラクシャ=ナーダ)》を使ってくる方がマシだと思うのかい?』

 

 

「…………」

 

 

 ムカつくが、マディアスが言ったそれは事実だった。《四色の魔剣》──防御不可能の魔剣であるそれらは敵に回った時点で驚異だ。既に天霧綾斗という敵になり得る人物が《黒戸の魔剣》を所有しているうえで、《赤霞の魔剣》までもが立ちはだかったら? 文字通り悪夢だろう。

 

 

「……仕方ねぇな。だが一つ聞いておく。あんな武器はウチの情報にもねぇし、お前の言う通りなら統合企業財体の一つである「銀河」にもねぇ。──あれにはどんな秘密がある?」

 

 

『──あれはヴァルダと同じウルム=マナダイトを使って作られ……言わばヴァルダの妹といったところだな。──そしてもう一つ、あれは構造故に当時の使い手の命と引き換えに生まれ変わった唯一の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──命を吹き込まれた《純星煌式武装(オーガルクス)》だよ』




 どうしようか迷っているところを維持で間に合わせているアホです。

 初期の段階で考えていた設定が(少し変わってますけど)うまく噛み合ってくれそうで助かっています。

 最近じゃ現実逃避して別の作品とか書いてみようかなと思ったり……今のままじゃ絶対無理ですけどねw


※サブタイしっくり来なかったので変えました。


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停滞

 再開発エリアとは言わばアスタリスクの姿を象徴する地域ではないかと行人は思っている。

 

 

 歓楽街(ロートリヒト)では様々な欲望が渦を巻き、あらゆる事が欲望で動く。そこらの薄っぺらい仮面を被った人々は金さえ貰えば簡単に裏切る。挙げ句の果てには命すらが商品に。

 

 

 スラムは暴力という弱肉強食かつ絶対不変のルールが無意識に敷かれており、人間の住む場所とは思えないほど荒廃している。

 

 

 ──人間が持つ薄汚さの温床であり、それが集まるアスタリスクの本性を表しているだろう。

 

 

 しかし散々に言ったが、ここは犯罪が発生した場合などは絶好の隠れ家がちらほらある。その上紗夜は方向音痴なので二手に別れることはできないし、バレたらまずいのでニアを人型にして探させることもできない(そもそも通信系を登録していないため連絡が取れない)。

 

 

 そんな中から目印も無い状態で探すのが無謀すぎるのは自明の理であり、

 

 

「いたか?」

 

 

 尋ねると紗夜は無言で首を振り、行人はもう何度目かわからない悲痛な叫びを上げる……かと思いきや、

 

 

「いないか……だがここら辺の建物は散策し終えた。次はもう少し奥の方を探すぞ」 

 

 

 今回の行人は冷静だった。それがもはやSAN値がなくなったからか慣れたからかは分からないが、落ち着いてクローディアから送られた地図を見ながら次のポイントを探しにいく。紗夜の方も頷きながらそれについていく。

 

 

「──永見、お前に聞きたいことがある」

 

 

「……一応俺は先輩なんだがな……。んで、何が聞きたい?」

 

 

「二つ、パートナーが使っていたあの煌式武装(ルークス)と、綺凛に勝ったという話について」

 

 

 将来大物になりそうな言動だが身長が釣り合っていないように感じる後輩から問われる。誰が盗み聞きしているかもわからないが別にいいだろう。

 

 

「じゃあまず前者から。あれは装備局を物色させてもらったときに発見したやつだ。リムシィに対して必要なのは避けられないほどの制圧力だったから……」

 

 

「違う。私が聞きたいのは彼女が使っていたライフル型の方だ。──あんな機能をもつ煌式武装は見たことがない……どうやって銃弾の速度を変えた?」

 

 

 しかし紗夜が聞いてきたのは《八式煌型炸裂散弾銃ウィンドブラスト》のことではなく、利奈がメインウェポンにしている《ステアーSMG 零式》のことのようだ。だが……

 

 

「……あれは武器じゃなくて使用者側の能力だ。他の誰にも真似することはできねぇよ」

 

 

 発射した光弾の速度を変えたのは利奈の能力によるものだ。それは聞いたところで再現はできない。

 

 

「──そうか……」

 

 

 すると紗夜は顎に手を当てながら頷く。どうやら納得してくれたようだ。

 

 

「そして次、綺凛にはどうやって勝った? 永見は普通より強いが綺凛に勝てるとはあまり思えない」

 

 

「──沙々宮、お前赤い彗星の名言を知らない?」

 

 

「それはわかっている。だが綺凛は綾斗ですらやっとのことで倒せた逸材。いくら考えても永見が勝てるとは思えない。……少し失礼だが、何かイカサマでもあったのではないかと」

 

 

「振っといてなんだがよくわかったな……」

 

 

 が、こちらに関してはまだ納得がいかない様子。かの彗星さんが言っていたようにスペックだけが戦いの全てではない。技術や駆け引き、相性などetc……そういった要素が絡んでくる、それが戦いというものだ。

 

 

 第一にあの戦いは記録がないため、真偽は行人か綺凛にしかわからない。綺凛が認めた以上揺るぎない事実だが……流石に信じきれないのだろう。だが……

 

 

「──いいか沙々宮、凡才でも天才に勝つことはできる。スペックで勝てないなら技術で、技術で勝てないなら駆け引きで、だが駆け引きでも勝てないなら……それ以外の何かで勝つ──例えイカサマでも。そういう身を賭した戦いの結末に外野が口出しすることはできないと思うぞ──まあイカサマ自体してないけどさ」

 

 

「……それは悪かった。すまない」

 

 

 紗夜はそこに何かを感じ取ったようで、一瞬だけ目を大きく開いてから頭をペコリと下げて謝ってくる。

 

 

「別にいい。そういう心配は刀藤を思ってのことだし、否定はしない。──着いたぞ。まずはこの建物からだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は過ぎ……

 

 

「……あぁクソッ、ここにもいねぇか……」

 

 

 空は夕日も射しておりもうそろそろ暗くなってくる時間。地図は印によってかなりの数を調べたのが一目瞭然だが、それでもまだ調べてない場所は山ほどある。フローラの所在は一向に見つからないままタイムリミットがどんどん迫り、行人は額の汗を拭って熟考する。

 

 

(──一度歓楽街(ロートリヒト)の方に視点を移すか? だがここから移動したらまたここを調べる時間はない……いやそもそも歓楽街は誘拐犯が好む環境なのか……)

 

 

『──紗夜、そっちの状況は?』

 

 

「……ごめん。まだこれといった手がかりはなし」

 

 

 周りの情報をシャットアウトし脳をフル回転させていると、行人の横で紗夜と綾斗が連絡をとっていた。

 

 

「試合は終わったみたいだな天霧。んで結果は? どうなったよ」

 

 

『先輩たちのおかげもあって、決勝に行けることになりました』

 

 

 どうやら無事に済んだようだ。紗夜の方も安堵したようで、控えめに笑みを浮かべている。

 

 

『俺たちも支度してからそっちに向かいます。紗夜、こっちにデータを送ってもらえるかな』

 

 

「わかった」

 

 

「再開発エリアはこっちに任せろ。そっちは歓楽街らへんを探してくれ」

 

 

『──よし、わかりました。それじゃまた後で』

 

 

 そうして通信は切れる。

 

 

「よし、これで人手の問題はマシになった。それでもまだ厳しいが……とりあえず手を尽くすぞ」

 

 

「……わかった」

 

 

 その時の紗夜の声は、なにやら悔しそうに震えていた気がした。




 紗夜がネタ要員になってくる定期と、他の方の作品をみて描写がすごい細かいのや個性がすごいものに当たると自分に対して(;ω;`*)となりそうな定期。

 そういえば煌式武装の紹介を前の話に書き足しました。サブタイもそれに合わせて変わっているのでよかったら見ていってください。


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渇望

「……おい一向に見つかんねぇぞどうすんだこの状態」

 

 

 あの後からさらに時間がたち、再開発エリアをあちこち回ったがフローラは見つからないので、行人は思わず愚痴を吐く。もう夜の時間で辺りはすっかり暗くなり、長時間の行動で心身ともに疲労が積み重なる。

 

 

 そこで行人はあることに気づいた。

 

 

「……はぁ、さすがに少し休むか」

 

 

「でも……!」

 

 

「アホ、お前自分の足がどんな状態かわかってんのか?」

 

 

 行人は一日の休憩を挟んでいるからまだしも、紗夜の方は試合が終わってからすぐに捜索を始めそれをここまで続けている。それもあって紗夜の体は少しフラつき始めていた。これで何かと戦闘にでもなれば、さすがに負けはしなくても相当まずいことになるだろう。

 

 

「何かあった後じゃ遅い。一度十分は休憩してから、もう一度捜索を開始する」

 

 

「……わかった」

 

 

 紗夜は今までのようにあまり表情を変えずに答える。だがその顔にはやはり、先ほどと同じような気持ちが滲み出ていた。

 

 

「……焦るのはわかるが、一旦落ち着け沙々宮。そんなんじゃとれる疲れもとれん」

 

 

「──永見は冷静だな。何故そんなに落ち着いていられる?」

 

 

 地面にへたり込むように座った紗夜が不思議に思ったのかそんなことを尋ねてくる。しかし、

 

 

「落ち着いてる? 俺が? まさか、ただ焦る余裕もないってだけだ」

 

 

 行人の頭の中には焦燥などなかった。ただひたすら、次に自分ができることを考えるだけだ。

 

 

 そもそもの話、初期状態からこの事件はほぼ詰んでいる。再開発エリアという超広域のマップ(しかもマーカーは一切なし)から人一人を見つけろなど、ぶっちゃけムリゲーだ。

 

 

 そこへさらに時間制限まで入ってくる。そんな前提からぶっ壊れた依頼を引き受けたとなれば? 無我夢中で思考を繰り返すのはある種当然といっていいだろう。──といっても、これはクローディアからの様々な依頼を無理矢理にでもこなしてきた行人だから持つ持論だが。

 

 

「何かに没頭したら、自ずとそれに不要な感覚は無くなる。人間なら誰だって経験あるはずの状態に俺はなってるだけ。だから、これは普通だ」

 

 

 それに行人はそういった経験には慣れている。

 

 

 ──自らの青春を棄て、ひたすらに前を向き続け、望むものを手に入れて、……そしてその代償にも、気づかな、い…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……永見?」

 

 

「……ん? あぁいや、なんでもない。──もうそろそろ十分たちそうだな。よし、捜索を再開すr」

 

 

「? これは……」

 

 

 行人を心配したのかと思いきや、すぐに踵を返して端末に目線を移す。そこにあったのは綾斗から送られてきたフローラの情報だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なぁニア~。最近俺の扱いなんか雑くねえか?」

 

 

 行人は《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の発動体に愚痴る。端から見ればただの変人としか思われない行為だが、今は回りに誰もいないので気にする必要もない。しかし当の相棒(ニア)から返ってきたのは無慈悲な言葉だった。

 

 

『仕方ないと思うよ? 今はフローラっていう子の事が何より大事なんだから』

 

 

「やっぱ後輩は利奈が一番だわ。あんなに健気なのは多分刀藤ぐらいのもんじゃないかね」

 

 

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》のパートナーを感慨深く思い出しながら行人は(今は深夜だが)黄昏れる。

 

 

『いや、他の人に失礼すぎるでしょ。というか接したの、あの戦いくらいなのによくわかるね』

 

 

 そしてニアはそんな様子の行人にツッコミを入れる。が、刀藤の方はちゃんとした根拠がある。

 

 

「刀藤は捜索開始前に、怪我をしながらもついていこうとしただろ? それを健気と言わずしてなんと言う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんというか、相変わらず人を観る癖は変わってないね……』

 

 

 人のあらゆる場所に目を向けようとするのは、行人の癖の一つだ。

 

 

 いつも戦いで敵の弱点を見極めようとしていたのが、いつの間にか癖になっていたらしい。まあニア自身も、行人の些細な変化すら感じようとするのが普通になってしまっているので、人のことは言えないが。

 

 

「もはやそれが基本だからな。他人を知ることは、他人と渡り合うためのコツでもある」

 

 

『まあそうだね。──ねぇ行人、これが終わって冬になったらさ、二人でお出かけに行かない?』

 

 

「──ニア、お前無意識にフラグでも建てる気なのか?」

 

 

『フフッ、そうだね。じゃあ、この話はまた後で』

 

 

 こちらも変わらず、雰囲気とかムードを気にしない。ここはもう少し、気を聞かせた反応をしてくれてもいいだろうとニアは思う。

 

 

(──やっぱり私は、武器にしかなれないよね……)

 

 

 自分を武器として使うのは自ら望んだ道だ。だが自分にあるとも知れない心の中で、ニアは少しだけ、自分の出生を呪った。




 少し期間が空いての投稿です。まぁ遅れた理由はリアルが忙しかったりゲームしてたり活動報告とか書いてたからなんですが……

 とりあえず、一応今回で五十話目ですね。……はい、だからなんだって話ですけど、改めて、ここまで見てくださってくれてありがとうございます。

 できれば次回も楽しみにしていてくださいm(_ _)m


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突入

「……おい夜吹、本当にここなのか?」

 

 

「まあ、俺が調べてた限り、ここらで一番怪しかったのがここだったってだけなんですがね。可能性は高いと思いますよ」

 

 

 目の前の高くそびえ立つビルを見ながら行人が問うと、英士朗はとぼけた様子で肩を竦めながら答える。

 

 

 綾斗が大体の位置は絞り込んだが、昼の歓楽街は人が少ないのもあって行人たちはその後どうするか四苦八苦していた。そこに現れたのが英士郎で、辺りの店から話を聞き出して早々にこのカジノを割り出して見せたのだ。

 

 

 事前に情報を聞いたところだと、どこかの客が大暴れして休業、外はともかく中が相当ひどい有り様のようで、改装工事を行っているらしい。──しかし最近はそれが止まっているとのこと。業者の方でのトラブルが原因だそうだが……確かにこれは怪しい。

 

 

「まーとにかく、ちゃちゃっと中を調べちゃいましょうや」

 

 

「おい警備があんだろ。それはどうする気だよ」

 

 

 行人は張ってあるだろう警備システムのことを懸念するが、英士郎は慣れた手つきでキーボードを操作し、ビルのドアを難なく開けた。それを見て行人と紗夜は漠然としている。

 

 

 ちなみに紗夜からはさらに不信感溢れる眼差しも英士郎に向けられている。

 

 

「「……」」

 

 

「え? いやいやどうしたのお二人さん?」

 

 

 当の本人は困惑しているが、まあ目の前で警備システムをこじ開けたとなれば、女子ならば特に不信感は募るだろう。そして……

 

 

「……夜吹、一生のお願いだ。──今度それ伝授してくれ」

 

 

「はい? いや、別にこれくらい大したことないっすよ! ツールもちょっとネットで拾ってきただけだし……」

 

 

「──はぁ……」

 

 

 不詳変態である先輩(仮)と生理的危機感を匂わせる同級生に呆れながら、入り口でわいわいするそれを無視して紗夜はビルへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビルの中を色々と推測していた行人だったが、実際に入ってみて抱いた感想は今までと同じ、ボロボロとなった廃墟だ。再開発エリアにあるそこらのものよりはマシだが、パッと見るだけではあまり変わらないようにも見える。

 

 

 だが行人はビルの中に入ってすぐに疑問を浮かべた。

 

 

(……なんで照明がついているんだ? 警備システムはツールで突破したから、それ関連で起動したとは思えない。入り口で何も罠がないのも気にかかる……)

 

 

 ビルの中には罠が一切無い。それ自体は嬉しいことだが、今はそれがまた逆に怪しい。誘拐の初動から位置、逃走手段、身の隠し方からここまで巧妙なことをしでかす人物が、まさかの侵入に何も備えてないとは考えられない。絶対に何かがあるはずだ。……とそこへ、

 

 

『行人、左の柱の近くを見て!』

 

 

「!?」

 

 

 万応素を通して伝えられたニアの言葉に従い柱に警戒を移す。そこには柱の影で蠢くナニカがいた。

 

 

「なんだありゃ!?」

 

 

 他のメンバーも気づいたようで、全員が蠢くナニカ──強いていうならば人影──を認識する。

 

 

「っ! そういうことかよッ!」

 

 

 行人は事前に展開していた拳銃の引き金を引き、影の身体を貫く。

 

 

「お前らッ! これはおそらく犯人の能力によるもってあっぶねえな!」

 

 

 弾は見事命中し影を霧散させたが、それを喜ぶ暇もなく別の影が行人を襲う。至るところにそれはおり、ざっと見てサイラスの人形と同じくらいの数はいるだろう。

 

 

 紗夜はそれをウォルフドーラで薙ぎ払うが、影の軍勢はすぐにその数を揃える。まともに戦えば勝ち目はない。むしろ体力を消耗してしまい、フローラも助けることもできなくなる。しかしそこには思わぬ助っ人が来ていた。

 

 

「──《ブラストネメア》!」

 

 

 その声と同時にビル内へと衝撃が走り、襲いかかってきた影を全て吹き飛ばす。そしてそれを起こしたのは、星導館の序列九位、レスター・マクフェイルだった。

 

 

「ちっ! なにやってんだてめぇらは!」

 

 

「おーやっと来たかー。まったくあまり待たせないでくれよなぁ」

 

 

「人を脅迫して急に呼び出しときながら、無茶言うんじゃねーよ!」

 

 

 まぁ傍で繰り広げられている漫才コンビのおかげで体制は立て直せたが、また影は新たに出現しこちらを狙ってくる。

 

 

(……仕方ねぇな)

 

 

 ならばここはやはり……

 

 

「──沙々宮! 合図をしたらここを突破する! タイミングを合わせろ! 夜吹もそれと同時にここから脱出しろ!」

 

 

「!」

 

 

 行人は手に持った物を紗夜に見せながら指を下に指し目配せをして、紗夜はそれに頷いて応じる。

 

 

(3……2……1……)

 

 

「行くぞ!」

 

 

 そういって行人は、一度綺凛に使ったものと同じ、閃光手榴弾を影たちの中心に向かって投げる。

 

 

 圧倒的音量と光量によって影は全て消え去り、奥に見える階段への突破口ができた。そこへ行人と紗夜は一斉に走り出し、そして下へと飛び降りながらこう言う。

 

 

「んじゃーなマクフェイル! 足止めは任せたぞ!」

 

 

「はぁ!? お、おい、ちょっと待t」

 

 

「マクフェイル、ファイト~」

 

 

 そうして二人は地下へと姿を消した。その後のビルの一階にはいつの間にか英士郎もおらず、ただ戦斧を振る音と扱いに対する絶叫が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なんで俺がこんな役目を背負わなきゃならねぇんだぁぁぁぁッッ!!!」




 実質三日ぶりの投稿ですね。もうそろそろリアルも追い付いてくると思うのでもう少しお待ちください。

 あとレスターファンの方すいません。噛ませ役みたいになってしまいました。


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起死回生

「──えー、マクフェイルの尊い犠牲によってなんとかここまで来れたわけだが……。沙々宮──俺らにはやっとかなきゃならんことがあるな?」

 

 

「──さらばマクフェイル、お前のことは忘れない」

 

 

 文字通りの犠牲を甘んじて(無理やり)受け入れてくれた強者(脅迫のせい)にはやはり敬意を払うべきだろう。その思いは二人の中で言葉なく交わされていた。

 

 

 行人と紗夜は二人で上を向きながら敬礼、そして黙祷。

 

 

 これにて第三部、完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、ふざけてる場合じゃねぇな」

 

 

「同感。おそらくこのドアの向こうにフローラはいる」

 

 

 行人と紗夜は目の前の扉を見据えて、それぞれ拳銃型の煌式武装(ルークス)を起動し突入の準備をする。相手は手練れだ。綺凛もいればそれこそ百人力だったのだが、怪我で動きが鈍い状態では連れてくることもできない。

 

 

 ついでにこの戦闘では一切経験の無いタッグで望むことになっている。初めて組む相手にどれだけ動きを合わせれるかわからないが、敵の強さがわからない以上各々で戦うのもまずい。ここはチーム戦である《獅鷲星武祭(グリプス)》に出た経験のある行人の腕の見せ所だろう。──最悪の場合はもっと別の手段に出ざるを得ないが。

 

 

「沙々宮、敵がこっちを上回る強さだったら、俺がそのフローラって子を捨て身でそっちに渡す。その後は敵を抑えるから、その子を連れて逃げろ」

 

 

「……行きなり何を言い出す」

 

 

 紗夜はまだ《星武祭(フェスタ)》に一回しか出てない。ならば今回の《鳳凰星武祭(フェニクス)》で果たしたかったはずの夢があるはず。それに比べて行人にはそういったものは無い。ならばここでの犠牲に適任なのは行人だ。

 

 

「──お前には果たしたい夢があるはずだ。だったらここでつまずいちゃ……」

 

 

「私の目的は父さんの武器の宣伝。そしてカミラ・パレートの擬形体を倒して、やつに父さんの武器を認めさせてやることだ。別段《星武祭》にこだわるようなものじゃない。──それに、誰かが犠牲になるような夢なんて、私も綾斗も、みんなごめんだ」

 

 

「…………」

 

 

 ……どうやらこの後輩は、見た目よりもしっかりした心を持っているようだ。

 

 

「──先輩はやけに死亡フラグを建てたがる。そんなに死に急ぐようじゃ、この先フローラを助けれるか心配でしょうがない」

 

 

「……言ってくれるなぁ……。──わかった、そこまで言うなら、そっちこそ先にくたばるなよ?」

 

 

「大丈夫、肉壁になるとしたらそっちだから」

 

 

「お前はシリアスブレイクをしたがるなぁおい……」

 

 

 なんとも締まらない会話だが、向こう見ずだった思考も少し落ち着いてきた感覚だ。そもそも自分を犠牲にするとか、まったく自分は何を考えていたのか。

 

 

「そんじゃ……俺から突入するぞ」

 

 

「……了解」

 

 

 小声で伝えて行人は《RS Five-seveN》を構えながら、音が出ないようゆっくりと扉を開ける。そこに広がっていたのは多大な柱が立つホールだ。明かりはランタンのような物だけで全体的に薄暗く、ただしその奥でぐったりとする猿轡をされた少女の姿だけはハッキリと見えた。

 

 

「…………!」

 

 

 少女──おそらくフローラだろう──はこちらに気づきハッとするが、行人は声を上げようとするフローラを自分の口の前に指を置くことで制した。

 

 

(あの子以外の気配は感じないが、絶対にこの部屋にはいる筈だ。──上で見た人影から推測するに、敵は『影』を使う能力者)

 

 

『行人後ろ!』

 

 

 するとそこで行人の左後ろから黒く巨大な棘が現れ、胴体の脇腹辺りに向かってきた。既に敵はこちらの位置を把握しているようだ。ニアの警告がなかったら今ので戦闘不能に陥っていただろう。

 

 

(……こりゃ常に影の位置を把握しなきゃならないな)

 

 

 部屋全体には明るくはなくともあの光源が無数にあるようだ。注意深く見てみると床に壁に天井、あらゆる場所に『影』がある。先のように予期せぬ位置からの奇襲、はたまた上下左右からの攻撃による拘束──敵がとってくる手段は山ほどある。

 

 

 ──獲物が来る可能性がある場所に罠を仕掛けない狩人はいない。なんらかの予想はしていたが、これがやつが用意した『罠』なのだろう。それも極上の餌まで用意している。行人たちは文字通り誘い込まれた。

 

 

『次! 肩と足に来るよ!』

 

 

「ッチ! あぁクソッ!」

 

 

 先に続いて前後から挟んでくる形で肩を狙う第二波を行人は身を捻って避け、太ももを狙う第三波を星辰力(プラーナ)を集めた箇所に斜めに当てそれを逸らす。

 

 

「ほう、今のを凌いでみせるか。完全に不意をつもりだったんだがな」

 

 

「──生憎と、不意打ちの類いには慣れているもんでね。お前の攻撃がどこから来るか予想するなんて容易いことだ」

 

 

 フローラがいる柱から声がして、そこを振り向くと先ほどまでいなかった黒ずくめの、目は死んでいて無機質な声の男が立っていた。間違いない、車に乗っていたあの男だ。

 

 

 牽制としてそんな言葉を投げかけるが、半分は嘘だ。影による攻撃を避けれたのはニアがそれを感知したからだ。──そしてそれは万応素(マナ)や星辰力を使ったものにしか反応しない。やつが能力ではなく武器を使ってきていたら、行人は反応もできずやられていただろう。

 

 

 ──だがそれより厄介なことがある。

 

 

「そうか。だとしても、俺には関係が無いことだ。──俺の邪魔をすれば、この娘の命は保障しない」

 

 

 そう言ってフローラの首筋に行人を襲ってきた棘が突きつけられる。

 

 

 やはりだ。元々この男には生気が一切感じられない。まるで人形のように、着々と任務を遂行するエージェント(黒い猫)。……そんな人物にとっては、自分がどうなるかなど問題にすらならない。現にこの男はこちらが動けば容赦なくその棘を動かし、フローラの喉を刺し貫くだろう。

 

 

「わかったなら、まず装備している全て捨て、……お前の持つ《純星煌式武装(オーガルクス)》をこちらに渡せ」

 

 

「……チッ」

 

 

 行人は舌打ちをしながら装備している煌式武装、手榴弾をやつに見えるようにして捨て、《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を投げ渡す。男はそれをキャッチして口を開く。

 

 

「……やけに素直だな」

 

 

「その子に死なれちゃ意味がないからな……。──それに……」

 

 

「…………?」

 

 

 そこで言葉を止めて行人はニヤリと笑みを浮かべ、それに反応して男は目を細めて身構え、こちらへの警戒を強める。……が、

 

 

「──ふんッ!!」

 

 

「ぐはッ……!!」

 

 

 男には行人とまったく関係ない場所からの蹴りが顔面に飛翔する。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に私の発動体に触らないでほしいなぁッ!!」

 

 

 《数多の偽り》の発動体を持っていた男の手の中から、脚だけ無理やり出したと同時に男と同じくらい容赦ない蹴りを放ったニアのものだった。




 ギリギリ一日がたたないうちに投稿できました。

 別の書いたりゲームしたり動画見たりゲームしてた中でよく投稿できたなと思います……(遊んでただけ)

 えーまぁそれは置いといて、ようやく自分が思い描いてたもの(行人とニアの共闘)を書けました!

 では、次回もお楽しみn

行「この作品楽しみしてる方3ケタもいねぇだろ」

 お前(いろんな意味で失礼だから)一回黙れ。

行「アベシッ!(°o°C=(_ _; 」
        ↑  ↑
        行  作 

 邪魔が入りましたね、ではまた次回!


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絶望

 蹴りによって男の意識が逸れた隙に、フローラに向けられた棘を星辰力を込めた拳で打ち払い、地面に落としたナイフで手に巻かれた縄と猿轡を解く。

 

 

「出口に走れッ! 速くッ!」

 

 

「あ、あい!」

 

 

「させん……ッ!」

 

 

 行人の声でフローラは走り出すが、ニアとの取っ組み合いを受け流し、僅かな隙を突いてフローラの走るルートに近くの影から棘で妨害しようとする。しかし今回の相手は行人とニアだけではない。

 

 

 複数の光弾が飛翔しフローラに迫った棘は全て霧散した。紗夜からの援護射撃だ。

 

 

「フローラ、走れ! 先輩も!」

 

 

 的確な射撃により男はニアから引き剥がされ、同時に部屋に光が充満する。辺りの影を打ち消し、また新たな影を作り出す光。ちょうど中心から照りつける光は使える影を減らし、こちらを狙う箇所を絞ることができる。

 

 

 ──だがまだ足りない。

 

 

「ッ! 戻ってこい!」

 

 

 仕上げに先ほどと同じように今度は煙幕を拾い栓を抜く。同時にニアの方へ声かけると、当の本人はすぐさま行人の方に向かいその手のひらに収まるほどの発動体に変わる。

 

 

 ──行人が閃光だけでなく煙まで部屋に広げたのには意味がある。本来なら影を抑制し迫る棘を限定するだけで十分に効果的だ。だが侮るなかれ、敵はレヴォルフの少数精鋭《黒猫機関(グルマルキン)》の一人、それが自分の弱点に気づいてないわけがない。

 

 

 ──故に、弱点に関係なく打てる手が限定される一手を打たせてもらった。

 

 

「──クソッ……」

 

 

 静かだが、少しイラつきを見せる男の声が確かに聞こえた。

 

 

 男の能力は走っているフローラの影に使っていなかったことから、少なくとも動いている敵には使えないという制約がある。でなければ先の逃亡でわざわざ柱の影から棘を出す理由がない。

 

 

 なので男は逃げる人を見ながら影から棘を出すが、その人が見えなてければどうだろうか。予測撃ちはしてこないと考えたとして、その場合ヤツがとってくるであろう行動はただ一つ。

 

 

「狙いが見え見えなんだよッ!」

 

 

「ッチ……」

 

 

 ヤツがとる行動──それは出入り口の封鎖だ。物理的干渉力があるのなら、当然それを防御に使うこともできるだろう。その場合強度はともかく少しは時間を稼がれてしまう。──だが予測さえしていれば半ば強引に突破することも可能だ。

 

 

「じゃあなマグロ目野郎ッ!」

 

 

 最後の手土産に通常の手榴弾を二つほど撒く。爆発と共に砂埃と瓦礫が降り注ぎ、男を阻む。行人はギリギリ瓦礫に巻き込まれずに、無事砂埃の中から出てきた。

 

 

 ここまですれば普通は追ってこれない筈だが……

 

 

「──先輩、さっきのは……」

 

 

「まだ気を抜くなよ……。多分だが、まだヤツは諦めてない」

 

 

 紗夜がひとまず安堵しようとするも、行人はまだ臨戦態勢をとっていた。行人は実際に、男が車から消えていたことを体験している。それもなにも仕掛けの無い車の中からだ。故にヤツの能力は攻撃だけではない。

 

 

「影だ。ヤツの能力の起点である影に気を付けろ」

 

 

「わかった」

 

 

「沙々宮様……」

 

 

 紗夜はフローラの身を寄せながら意識を周りに集中させる。

 

 

 そして行人は唯一持ち出せたナイフを握って、自分に対して大丈夫だと言い聞かせる。万応素と星辰力のレーダーでもあるニアの警告は外れる筈がない。文字通りの闇討ちを仕掛けられたとしても、こちらには通じない。

 

 

「──そこかぁッ!」

 

 

 ニアの指示に即座に反応、大きいステップで後ろにある柱の影に斬撃を食らわせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──外れだ」

 

 

「……がはッ……!」

 

 

 しかし当のナイフは本体ではない人影を断ち、変わりに後ろから腹部を一突きされ、大いに血をぶちまける行人の姿があった。

 

 

「フローラ! 見るんじゃない!」

 

 

「……あ、あぁ、ぁ……」

 

 

 紗夜はフローラの目を隠すが、それでもその動作にはタイムラグがある。結果としてまだ十代前半ほどのフローラは、目の前で人が刺されて倒れるというトラウマにもなりうるほどショッキングな光景を、あろうことか間近で見てしまうこととなった。

 

 

「ふん、所詮この程度か。──処置をすればこの男はまだ一命はとり止められる。その娘をこちらに渡すか、それともこの男を見殺しにするか選べ」

 

 

「くッ……!」

 

 

 男が無機質な声でそう言うと紗夜とフローラの回りに棘が出現する。紗夜は思わずフローラを抱きしめるが、この状態で刺されれば二人仲良く串刺しになる。

 

 

「……そうか。──ならばッ」

 

 

 さらに無数の棘が出現する。しかし今度は紗夜たちの方ではない。

 

 

 ──脅しなどは一切なく、それこそ無情の工作員に相応しい鋭さと冷徹さで、なんの躊躇もなく行人の四肢が貫かれ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁあぁぁぁぁッッ!!! …………ぁぁ」

 

 

 絶叫が部屋に響きわたり、最後に静寂が満ちた。




 一応展開が思い付いたので投稿できました!

 微妙すぎるオリジナル展開のせいで自分が苦しむとか正直予想してませんでした……(←原作の文を悪化させながら自分の首を絞めるアホ)

 えー最後に、今回は少しだけ質問があります。といってもこの作品自体にはあまり関係ないのですが、自分が作っている作品が他の方の影響を受けてしまい、どうしても似てしまった、という場合はどうすれば良いのでしょうか?(設定の丸パクリではなく、ただ単に似てる部分があるだけ)

 ついでにもう一つ(こっちは無視して大丈夫)、こっちは純粋な疑問で、第三幕の最終決戦とその後の話のPAが同じなのはなんででしょうか。

 「仕方ねぇから答えてやるよ」という心優しいお方は、答えてくだされば僕としては嬉しいです。

 ……最近露骨なアピールや今回みたいなのが多くなっていますね。ごめんなさいm(_ _)m

※叫び声を修正しました。


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任務完了

 行人が四肢を貫かれ、まだ暖かいであろう鮮血にまみれる。その光景に紗夜は声を出すこともできなかった。

 

 

「この男はもはや限界だ、痛みによるショックで死んでもおかしくない。──最後にもう一度聞く。娘を渡すか、男を死なすか、どちらか選べ沙々宮紗夜」

 

 

 冷淡に、無慈悲に、この男は告げる。──やはり、この男は本気だ。自分を含め誰がどうなったとしても関係無い、この男に映っているのは任務の遂行、ただそれだけだ。

 

 

 紗夜は今までにない恐怖を感じる。数多もの猛者が集う《星武祭(フェスタ)》、だがそんなものでは到底味わうことのない命のやり取り、そしてそこにある、死に対する恐怖だ。

 

 

 身の毛がよだち、汗が絶え間なくで続け、瞳が目の前の男を離さない。既に自分は死んでいるのではという錯覚すら起きる。

 

 

「沙々宮様! フローラはもういいです! 離してください!」

 

 

「…………」

 

 

 だが紗夜は男にも、フローラに答えない。この腕の中にいるフローラだけは守りきってみせる。必ず取り戻すと、任せろと、そう友達に約束したのだから。

 

 

「──時間の無駄だったな」

 

 

 男の声と同時に紗夜たちの回りの棘はよりいっそう数を増す。その数はざっと三桁はあるように見える。文字通りの針地獄、この数に身体を貫かれれば紗夜の命はない。

 

 

 しかしフローラだけは、助かるかもしれなかった。

 

 

(この照明弾を使えば、一時的に影を封じることができる筈……)

 

 

 それは最後のチャンスだ。もしかすると自分は助からないかもしれない。綾斗や綺凛、ユリスにクローディアとはもう会うことはできないし、アルルカントにリベンジすることも叶わなくなる。

 

 

 だがそれでフローラが助かるならばユリス(友達)との約束を果たせるし、そうすれば、

 

 

(──綾斗の役に立つことも、できるかな……)

 

 

 もはや紗夜に迷いはなかった。ハンドガンの引き金に指を当て、それを下に撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その前に、

 

 

「──気づいてないとでも、思っていたのか?」

 

 

 銃は棘によって弾かれ、遠くへ飛んでいく。──こうなってしまえば、紗夜にできることはない。ここから指一歩でも動かし他の煌式武装を出そうすれば、棘はこちらを殺しに来る。いかに強力な武器を持っていようと使えなければ意味がないのだ。

 

 

 もはや為す術はない。今までの疲労と枯渇気味の星辰力もあって紗夜は俯き、膝をついてしまう。

 

 

 その様子を見て、男は一部分だけ棘を収めてフローラに声をかける。

 

 

「……よし、お前はこっちに来い」

 

 

「…………あい……」

 

 

 フローラはゆっくりと歩みを進める。そしてフローラは、血塗れになっている筈の人物が、しかし血の染みなど一切ない姿で男に迫るのを、しっかりと見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………つ、……ぜ!?」

 

 

「……なフ……ラ! さ……のちか……いろ!」

 

 

 あまりの絶望に半ば放心状態であった紗夜の意識が、その輝きを取り戻してきた。まだハッキリとは見えないし聞こえないが、目の前で誰かが戦っているのはわかった。

 

 

「よ……も……まを……」

 

 

「────………………ッ!?」

 

 

 その光景に紗夜は絶句した。絶命したと思われた行人が、しかしそれが嘘のように身体を回復させ、後ろから《黒猫機関(グルマルキン)》の男の首を絞めていたのだ。

 

 

「ぐぅゥぅ……。 俺から、離れろ……ッ!」

 

 

「やだね!」

 

 

 呼吸をできないようにして少しも集中させず、行人は男に能力を使わせない。男は身体を暴れさせて拘束を抜けようとするが、むしろ大きく動くことによって体力を消耗してきているように見える。そして最後に……

 

 

「オラァッ!」

 

 

 疲れがたまったのを見計らい一度離して拘束場所を首から腕に変える。離れる際の遠心力を使った動きで格ゲーのような回し蹴りを食らわせる。男から鈍い音が鳴り、そしてそのまま宙に放り上げる。

 

 

「沙々宮、撃て!」

 

 

「!! ──了解!!!」

 

 

 紗夜は行人の指示に従い、文字通り早撃ちのような、目にも留まらぬ早さで《三十九式煌型光線銃ウォルフドーラ》を展開する。

 

 

 ──これは、先ほどのお返しだ。

 

 

「《バースト》!」

 

 

 光線は男を押し出し、さらに空中へと打ち上げる。もはや意識もないのか、男の叫び声は聞こえない。

 

 

 まあそんなこと、もうどうでもいいが。

 

 

「──……ピース」

 

 

 右手でVサインを作りながら、今度こそ、紗夜の意識は遠くに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方行人はそんな紗夜の様子はいざ知らず、自分で指示をしたとはいえ、予想より大きな穴がビルの全ての階の天井に空いた惨状を見て呆然とした。

 

 

 紗夜の煌式武装(ルークス)の威力は既に拝見していたが、やはり実際に見るとその凄まじさが実感できる。

 

 

「────よし、……全部クローディアに丸投げするか」

 

 

 おおクローディア、仕事が増えるのは仕方ない。やはりクローディアは苦労ディアになる運命なのだ。──それにどうせ後で処理に追われるのは決定事項だ、ビルの後始末が一つ二つ増えようが変わらないだろう。

 

 

「……ねえ、流石に動けないんだけど」

 

 

 その声でようやく行人は今回のMVP(一番身体を張ったメンバー)に意識を向けた。

 

 

「そりゃ作り物でも四肢を抉られりゃ動ける訳ねぇな。万応素の濃度も少なくなってきてるだろうし、早く休め」

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」

 

 

 ニアは人の形から発動体に戻り、行人はそれを煌式武装のホルスターにしまう。……さて、

 

 

「──クローディア、聞こえているな? ……よし、フローラは奪還した。早く天霧たちに伝えてやれ」

 

 

 ──行人たちの任務は無事終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そうか、君は君の方で目的を果たしたようだね」

 

 

『ケッ! どの口が言ってやがる。そもそもてめえがちゃんと調べてりゃ、こんなことにはならなかったんだぞ。おかげで猫まで失っちまった』

 

 

 誰もいない執務室の中でマディアスはディルクと会話をしていた。本来ならば静寂に包まれているだろう執務室も、画面に映る男の怒号によって騒がしい。

 

 

『天霧といい永見といい、てめえ一体何を考えてやがる……?』

 

 

「何だっていいだろう。そもそも我々は同盟を結ぶ仲だが、その誰もが、目的以外の何かのために行動したことがあったかな?」

 

 

 そうだ、《金枝篇同盟》は同盟と名乗っているものの、それはあくまで共通の目的を持つ者の集まりだ。友情とか信頼とか、そのような感情を求む者などいないし、それこそそんな人物であればこんな同盟を組んだりはしない。

 

 

『そうかよ、聞いた俺がバカだったな』

 

 

 そう言い残してディルクは一方的に通信を切った。

 

 

「はぁ、──そろそろ聞かせてもらってもいいかな? あの武器が君にとってどんなものなのかをね」

 

 

 闇から現れたもう一人の同盟にいる者に、以前は聞けなかったことをマディアスは聞く。

 

 

「言った通りだ。あれは我の半身から作られたもの。故に我の能力の一端を使える」

 

 

 マディアスは思考する。彼女の──ヴァルダ=ヴァオスの能力とはとどのつまり精神干渉の力だ。それもそれらの効果が薄くなる《星脈世代(ジェネステラ)》をも操るほど強力な。

 

 

「我の能力は精神を狂わせ記憶を操る。その記憶を操る能力を使い──武器の記憶を読み取ることであのような武器となったのだ」

 

 

 それを応用することで《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》は作られた……いや、産まれたと言ったほうが正しいだろうか。

 

 

「それは知っているさ。元々は銀河で作られた《純星煌式武装(オーガルクス)》だったんだ、情報は公開されていたし、なにせ私はそれを知っているのだからね」

 

 

 マディアスはその武器の元の姿を知っている。なにせその所有者の戦いを、《蝕武祭(エクリプス)》で見ていたのだから。

 

 

「私が聞きたいのはそういうことじゃない。あれが君にとってどんなもので、どうしたいかを聞いているんだ。……後々の行動のためにね」

 

 

「──あれはもはや我ではない、異物の混じった我のような何かだ。……興味なんてないし、むしろ反吐が出る」

 

 

「そうか、ならよかった」

 

 

 そしてマディアスはアスタリスク全貌を見渡せる窓に椅子を向け、予想外のイレギュラーに思った。

 

 

(永見行人…………。──彼がどこまで行けるか、楽しみだ)




 あ、ありのまま、今(書いてる当時)起こったことを話すぜ。おれは夢中になって文を書いていたら、いつの間にか字数が3000を越えていた!

 というわけで今回は少し字数が多いです(多分こんなことは稀にしか起きないです)

 あー、あとこの作品の四章が終わったら、そこを区切りとして別作品の投稿を始めようと思います。なのでこちらの投稿ペースが落ちると思われますが、ご了承ください。詳しくは作者の名前から活動報告をチェック!(書くのは一番最後の作品です)


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苦労ディア

※「苦労ディア」に対しての注意書きが後書きに書いてあります。


「──そ! れ! で!? 一体あなたはどれだけ私の仕事を増やせば気が済むんですか!?」

 

 

「い、いや! 別にというか、あれは沙々宮がやった……」

 

 

「それは年長者のあなたにも問題があるでしょう! ──何をどうしたら、ビルの天井全てに穴を開ける事態になるんですか……」

 

 

「……あー、それは……」

 

 

 場所は変わって星導館学園の生徒会室、行人は顔を真っ赤にしたクローディアからお叱りを受けていた。いつもの雰囲気からは想像もできないその怒号には、まるで背後に修羅でも見えるかのようだ。

 

 

「──まずビルで《黒猫機関》からフローラを救出、ここまではいいです。ですが裏社会の建物だとしても、それを破壊して戻ってくるとはどうしてなんですか!」

 

 

 落ち着いてきてはいるものの、未だに怒気を込めた声でクローディアは続ける。

 

 

 確かに行人たちはフローラを奪還した。だがそれ以外を全く考えていなかったのでビルは破損し、それによって《星武祭(フェスタ)》に関する事件として報道されたようだ。なんでもたまたま近くを通った住民が自分たちの一部始終を目撃していたらしい。

 

 

「──とりあえず落ち着いてくれ……。あの件は賭博に関する邪魔をしてきたマフィアを、星導館の生徒──つまり俺と沙々宮が捕らえようとしたということで収まっただろ?」

 

 

 そしてもちろん、その事件の犯人に関しても取り上げられた。行人たちの事実と比べると違いしかないことから、レヴォルフは偽の証拠も用意していたようだ。

 

 

 もしくは情報操作が徹底されているのだろうが、そこは統合企業財体のお膝元だ。何がなされていても不思議ではない。

 

 

「それに、そのグループの一員は先日捕まっている。この程度の事態は直に終息を見せるし、むしろ学生たちの精神面のアピールにも使えるかもしれんだろ?」

 

 

「というよりそれすらなかったら《パン=ドラ》であなたを切り伏せていたところですよ……。確かに私は面倒事が好きですが、わざわざいらない仕事まで作らないでください……」

 

 

「りょーかーい」

 

 

「せーんーぱーいー?」

 

 

「ハイスイマセン」

 

 

 悲しきかな。降りに入った獲物はそこから逃れる術は持たない。行人は既に、《パン=ドラ》の発動体をチラ見せするクローディアの()にハマっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紗夜、本当に大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫だ綾斗、私は特に問題ない」

 

 

 アスタリスクの医療院にて綾斗はベッドに横たわっていた紗夜のお見舞いに来ていた。

 

 

 綾斗たちが《鳳凰星武祭(フェニクス)》の決勝戦で戦っているなか、紗夜はそれとは別の戦いでの軽度の星辰力切れ(プラーナアウト)と疲労によって、意識を失っていたのだ。幸いにも大きな怪我はなかったため、すぐに退院できるそうだ。

 

 

 無論、ここに来たのは綾斗だけではない。

 

 

「──沙々宮様! 今回はフローラのせいで、ご迷惑をおかけしました……!」

 

 

「──私からも、すみませんでした紗夜さん……。……私があの時に怪我を負っていなかったら……」

 

 

 フローラと綺凛は揃って紗夜に深くお辞儀をする。今回の事件は猫に連れ去られたからとはいえ、フローラが火種となったのは否めない。綺凛もその時に動けなかったのだから、それも相まって二人は申し訳ない感情でいっぱいなのだろう。

 

 

「いや、別にフローラのせいじゃないし、綺凛のその怪我も、アルディたちと戦ったときの勲章だ。だから気にしないでいい」

 

 

「……よくもそんなことを、お前はぬけぬけと言っていられるな」

 

 

 最後にドアの向こうから、ユリスが呆れた声と同時に少し笑みを浮かべながら病室にやって来た。

 

 

星辰力切れ(プラーナアウト)に疲労による意識消失、傷はなくとも満身創痍じゃないか。しっかり休まなければだめであろう」

 

 

「別に一日中寝ていたから大丈夫だ。むしろ寝足りないくらい」

 

 

 二人は冗談も混じっているが、それでもかなり親しげに話し合っている。やはりフローラを助けたことなど色々あって、始めてみたときより、二人は随分親しくなった。

 

 

「──フローラを助けてくれてありがとうな、紗夜」

 

 

「友達を助けるのは当然だ、ユリス」

 

 

 会場の控え室でのように、二人は自らの拳同士を軽く当てる。

 

 

「……そういえば、クローディアはどこだ? ここに来るときもいなかったし、もしかすると先に来ていると思っていたのだが」

 

 

 ユリスは不意に浮かんだ疑問を、病室を見渡しながら紡いだ。その言葉に他のみんなもそれに気づいたようだ。綺凛は一番最初に反応する。

 

 

「確かにいませんね。一体どうしたんでしょうか……」

 

 

「──クローディアは「胃痛の原因が増えました」って言ってたから、もしかしたら生徒会の仕事が忙しいんじゃないかな」

 

 

 するとしばらく口を閉じていた綾斗が今度は口を開く。胃痛の原因が増える物事と言えば、それはあの事件しかないだろう。

 

 

「……エンフィールド、強く生きろ」

 

 

「……紗夜、最近なんか変な言葉を使うの多いよね」

 

 

 まあ現在進行形で絶賛苦労ディアになっている状態らしいので、これくらいしか自分達にできることはないのだが。

 

 

「あ、そうだ。紗夜さん、永見先輩はどうでしたか? あの人は私よりもかなり実戦慣れしていると思うのですが……、信じてもらえましたか?」

 

 

「ああ、綺凛の言う通り、永見先輩は凄かった。あれなら何かしらの手段で綺凛を破っても不思議じゃない」

 

 

「──二人がそう言うくらいだから、相当なんだろうなぁ……」

 

 

 綾斗は《鳳凰星武祭(フェニクス)》であのアルディたちに、自分達以外で唯一肉薄した二人について、そう思った。




 最近キャラ崩壊気味な自分の作品が悩みの一つな作者です。

 紗夜が漫画好きに、クローディアが苦労ディアになっていく定期。……まあ二次創作じゃたまによくあることだし、仕方ないね。

 そしてもう一つの悩み、今後の展開どうしよう!?

 ……またアンケとかとろうかなぁ……










注意:「苦労ディア」はbang bangさん作『刀藤綺凛の兄物語』という作品のプロットが元ネタとなっております。これはその作品の読者様が名付けたもので、自分が考えたものではありません。

 自分は後に許可を頂けたのですが、言葉の使いやすさから無断で他の作品で使われる可能性があります。

 もし、アスタリスクの作品で「苦労ディア」という単語を使いたいと思うならば、著作権的にも常識的にも、せめて許可を取りに行ってからにしてください。

 また、それで使用を拒否されたとしても、それは全て製作者側が決めることです。なので、使えないからといって逆恨みなどは絶対にしないでください。


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第五幕 休息霧散 悪巧み

 落星工学研究会の誰もいない個人用の部室で、二人の青年が会話を交わす。

 

 

「──煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)?」

 

 

「うん、最近うちの学園で装備局が開発してる新しい煌式武装だよ。なんでも、星辰力と思考だけで動かせるらしくて、今までにない全く新しい武器らしいよ」

 

 

 ディータはその煌式遠隔誘導武装について行人に説明する。

 

 

 そのような武装は、確か《鳳凰星武祭(フェニクス)》でアルルカントの学生が使っていたはずだ。ということは、

 

 

「……クローディアが言ってた、アルルカントからの技術提供ってのはこれのことか」

 

 

 利奈と会う前に星導館へ来ていた、エルネスタとカミラを思い出す。アルルカントであればアルディやリムシィを創る技術力があるのだから、その程度のことは造作もないのだろう。

 

 

 理論的に考えれば、要するに《魔術師(ダンテ)》や《魔女(ストレガ)》の星辰力コントロールを武器に転用するといった所だろう。武装である以上能力のような先天性のものではないため、これから使用者も増えるだろうと予想する。

 

 

「ついでに、行人と利奈ちゃんが《鳳凰星武祭》当たった相手は、それの試作品だったみたいだ。普通より威力も小さいから数が多くなる分、負担が大きくて実用性が薄かったようだよ。──これは彼ら自身が、試合後に報道陣に向かって回答していた」

 

 

 なるほど、あのときから既にこの武装は完成間近だったらしい。アルルカントの技術がどの程度なのか行人には推し測れないが、その一部を少しでも先に取り込めたのは星導館にとっても大きいだろう。

 

 

 尚ディータも、この煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)には興味があるようだ。机にはそれら関連のデータが取り上げられており、かなりの数ブックマークがされている。

 

 

 しばらくの間考え込んでから、行人静かにその口を開いた。

 

 

「……ディ、できればその煌式遠隔誘導武装、完成したら俺にも使わせてくれないか? ──もちろんカスタム仕様のやつで」

 

 

「──何か案があるのかな?」

 

 

 二人は同じ机を向き、邪悪な笑みを浮かべている。その顔は悪巧みを考える小物のそれとまるで似ている。

 

 

「少し待ってろ。……………………よし、異論ないな?」

 

 

 《数多の偽り(ニア)》に向かって行人は話してから、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「煌式遠隔誘導武装を────こいつと連動させる。……どうだ?」

 

 

「…………最ッ高……!」

 

 

 ──その後、二人のことを聞いて差し入れに来た利奈は蔑むような目で、当時の状況をこう語っている。

 

 

「……ドン引きです……先輩……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──リーゼルタニア?」

 

 

「ああ、フローラの一件で、兄上がお前も国に招きたいと言っていてな。なんでも、フローラを助ける第一人者となったのはお前だと聞いた。ならばお前のようなやつでも、やはり礼をしなければならんだろう」

 

 

 この事を伝えたのはおそらく紗夜だろう。確かに助けてくれた人に礼を言うのは普通だが、それより……

 

 

「……なんでそんなにツンツンしてるんだ?」

 

 

 ユリスのが素っ気ないのはいつも通りのことだが、今回行人に向けられている視線や態度はいつも以上に尖っている。

 

 

「──夏、お前に受けた仕打ちは忘れていないからな」

 

 

「あぁ……」

 

 

 つまりサイラス事件で噴水が壊れたとき、ユリスの透け姿を凝視していたことを未だに根に持っているらしい。それは完全に行人が悪いが、三ヶ月はたったのだから水に流してほしかった。

 

 

「ん? お前もってことは、やっぱり他にもいるんだな?」

 

 

「綾斗に紗夜、そして綺凛にクローディアの四人、お前が入れば五人だな。無理にとは言わん。だが、お前には私の言うことを聞く義務はあるんじゃないか? 何故なのかは言わんがな」

 

 

 珍しくユリスは他人をいじるような笑みと言動をする。ユリスはこういう人物ではなかったはずだから、少し新鮮に見える。──が……

 

 

「なんだ? いまさらそんな露骨にあの件を引き出してくるとはなぁ。ひょっとしてあれか? あのユリスに!? 好きな人でもできたのかぁ!!?」

 

 

「なっ、何を言い始めるのだ馬鹿者!! 大体、あれはお前が悪いだろう! だから、ただ借りくらいは返せといっているのだ!」

 

 

 わざわざ大声で叫んだ行人の反撃により、ユリスの顔に浮かんでいた笑みはすぐさま恥と焦燥に変わる。所詮はやはりユリス、元が生真面目な性格なのに慣れないことをするから、このように返り討ちに逢うのだ。

 

 

「あーはいはいわーったわーった。別に予定はないし、どうせだからその話に乗らせてもらうわ。──あー、ただ一つだけ、頼んでいいか?」

 

 

「……なんだいきなり、録でもないことならば即座に焼くぞ」

 

 

「わかったから世紀末やめろ」

 

 

 行人はバツが悪いように頭を掻きながらユリスに聞くと、逆にユリスからは訝しげな言葉で汚物は消毒宣言をされた。

 

 

 それはさておき、これまた珍しくかしこまった様子で行人はユリスに頼み事をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──連れていきたいやつがいる。そいつもその中に入れてやってくれないか?」




 ちょい急ぎ目で書いたので雑ですが、できるだけ気にしないでください。

 えー、今回から第五幕です。第四幕がこれまでより短かった分、今回の幕は少し長めにできればなと思っています。

 では次回もお楽しみに!

※次回は、アスタリスクお悩み室 in kurasutaもやるかもしれません。


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下準備

「──どんな服にしようかな?」

 

 

「……俺に聞かんでくれ……」

 

 

 数ヶ月たって男子寮の自室、あの日からしばらくしてユリスからの了承も受け、誰かは隠しているもののニアを連れていけるようにはなった。

 

 

 ただし、それを伝えてから数週間、行人はある種の地獄を見ることになった。それは……

 

 

「──いい加減さぁ、裸姿で部屋の鏡を独占すんのやめてくんね……?」

 

 

「じゃあ、少しはアドバイスとかくれないかな?」

 

 

「……はぁ……」

 

 

 その地獄とはすなわち、自室でたまに、百五十センチほどの少女が、全裸でうろついていることがあるという、健全な男子には完全に生殺しと言っていい状況がしばらく続いていることだ。

 

 

 本人曰く、基本の姿のスタイルやらを考慮する場合は服が無い方がいいから、だそうだが、せめて下着くらいはしろとそれを見るごとに、毎回行人は心の中で叫んでいた。

 

 

 別段ニアの頭がおかしいというわけではない(ある意味おかしいが) 人間ならともかく、ニアは武器だ。おしゃれを楽しむことはあっても、本来は服など着ない存在だ。当然肌を晒すことに恥なんてものはない(むしろ武器になっている場合は刀身が生肌である)

 

 

 服を着ていることもあるにはあるが、色々なものを試そうとすると、やはり矢継ぎ早に着て脱いで(ニアの場合は万応素で展開して消失させて)の繰り返しになる。そしてネタが尽き、そこから何にするか考える時間が長くなっていき、そして今に至る。

 

 

 確かにニアには問題無いだろう。しかしよく考えてみてほしい。この場合行人はどうなるだろう。十五~六歳ほどの少女が、年頃の青年の部屋をうろついていたら? それなりに耐性があるとしても全裸という前代未聞の状況に数週間も付き合わされたら? 

 

 

(……………………)

 

 

 正直行人は白目を向いて気絶したいと、既に二十回は思っていた。

 

 

 兎にも角にも、このまま鏡の前で考えていても始まらないだろう。丁度今日から土日休みだ。見かねた行人はニアの手を取る。

 

 

「──早く服を着ろ……。新しいの記憶するついでだ、買い物行くぞ」

 

 

「──わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開くだけで宣伝効果があるアスタリスクの商業エリアには、その特性上色々な店が集まる。富豪の集まる高級店に怪しさ満載の店、超有名チェーン店から隠れた名店など、様々だ。

 

 

 今回はその中から、誰でも名前くらいは聞いたことがある有名な洋服店を選んだ。この時期になるともう冬物は出回っており、上着類──特にコートが多く見える。

 

 

 ──が、生憎二人ともブランドどころか何がいいかすらわからないほどにずぶの素人なので……

 

 

「──これなんてどうでしょうか!? こう、柔らかそうな感じでマフラーとかとも合わせれますよ!」

 

 

「おい、声でかいしちょっと落ち着いてくれ」

 

 

 元々北の寒い地におり、まだファッションに気を使う方の利奈に協力を仰いだ。丁度差し出されたのは顔周りが見えやすく、白を基調としたデザインのコートだ。ニアの容姿と合わさればまさしく純白という言葉がふさわしい姿になるだろう。

 

 

 ついでに普通の服を欲していたニアには、上着を変えるだけで印象は変わると言って説得した。

 

 

 ──ちなみに意外だったが、初めて人の服を選ぶのもあってか利奈はかなり興奮している。

 

 

「……か、かなり熱が入ってるね、利奈ちゃん……」

 

 

「え? あっ、はい。ニアさんは可愛いですから、そんな人の服を自分が選べるとなれば、やっぱり張り切っちゃいますよ」

 

 

 落ち着きはしたが未だに熱のこもった声の利奈に、さすがのニアもタジタジになり、珍しく押されている。

 

 

「……まあ、女子とかが服に気を使うのはなんとなくわかるんだが……、普通そんなに興奮するか?」

 

 

「──先輩、あなたは可愛いは正義という言葉をご存じないですか?」

 

 

「……なるほどよくわかった」

 

 

「え? え?」

 

 

 行人はしばらく考え込んだが、顔をあげると利奈と互いの手をがっちりと組み、熱い思想を静かに理解した。もはやそこに言葉はいらない、ただ可愛いには抗えないという事実が、二人の間で静かに交わされていた……。

 

 

「──が、悪いが今回は却下だ。リーゼルタニアは日本とは比べ物にならないほど北にある国で、当然そんな極寒の地で可愛さ重視の格好だと怪しまれる」

 

 

 しかし、さすがにそれもやむを得ない事情には勝てず、約四桁の熱い思想も簡単に打ち砕かれた。

 

 

 ──ニアが《純星煌式武装(オーガルクス)》であることを知るのは自分が知る限り、行人と利奈、そしてディとフローラだけだ。無論、このメンバー全員にはこの件はオフレコでと頼んでいる。うっかり話していなければ、外に漏れることもない。もっとも、それを信じる人物はどれ程いるかといったところだが。

 

 

 気を取り直して、事情を理解した利奈は他のコートに手を伸ばす。次に取ったのは、襟が長めで全体的にスラッとしており、ベーシックで大人に雰囲気がありそうな黒いコートだ。

 

 

「んー、…………! だったら、これとかどうですか? 襟もちゃんとしていて首元も暖かそうですし」

 

 

「……どうするニア?」

 

 

「──いいね、これにしよう」

 

 

 どうやらニアもこれを気に入ったようだ。案外無骨なデザインの方が好みなのかもしれない。

 

 

「じゃあ、どうせだし俺も選ぼうかなぁ──って、どうしたんだお前ら……」

 

 

「「──どんなのがいい(ですか)!!?」」

 

 

 ──勢いよく行人の冬物選びも始まったが、結局似たようなデザインの物に収まったのは使い手と武器の相性故だろうか。




 感想でアドバイスもらったのにそれを無視して作ってしまった……。ロムラーさんごめんなさい。

 それとアスタリスクお悩み相談室をやるといったな、あれは嘘だ(もう少しお待ちください)

 最後に切実なお願いです。ニアに対して、どうか引かないであげてください。お願いしますm(_ _)m


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当日

「……なぁニア。俺、途中で道間違えたりしてないよな……?」

 

 

「ちゃんとさっきの案内図の通り、目的地に道なりに歩いてたよ?」

 

 

 基本アスタリスクの外には出ないため飛行機には縁がない行人だが、それでも窓の奥に佇む、側面に何らかの紋章が描かれた豪華な旅客機に、思わず息を呑んだ。それはまるで王族や貴族のようなお偉方が乗るような……

 

 

(って、そういや王族だったなリースフェルトは)

 

 

 そこまで思考して、普段の態度から忘れていた事実を思い出す。とても厳格で全ての敵を燃消毒(ムカ着火ファイヤー)するその姿からは想像できないが、一応ユリスはリーゼルタニアの王女だ。

 

 

 だが、今回の件を旅行のように考えていた行人にも落ち度はある。ユリスの兄(国王)から礼として招待してもらったのだから、少しは気を引き閉めねば。

 

 

「こっちだー!」

 

 

 準備を終えて待っていたメンバーの内、ユリスがこちらに手を振っていた。二人はすぐにそちらに向かう。

 

 

「すまん。待たせたか?」

 

 

「いや、そこまで時間はたってない。──ところで……」

 

 

 ユリスたちの所に着いて軽く挨拶をしたところで、行人と共にいるニアに視線が集まった。一番早く反応したのは紗夜だ。

 

 

「その子が、ユリスの言っていた……?」

 

 

「あぁ、紹介しよう。こいつは……」

 

 

「ニア、ニア・フローレス。──よろしくね、みんな」

 

 

 行人が紹介する前にニアはそれを遮って自己紹介をする。ついでに今回の旅の裏で、ニアには偽名をつけさせてもらった。一番の鬼門はパスポートだったが、こちらもディータに偽造してもらうことで、かなり危ないが一応は事なきを得た。

 

 

「……あ、言っとくけど、こいつこう見えて一番年上だからな」

 

 

「余計なこと言うね行人は」

 

 

「あの、……確かユリス先輩からは、ニアさんはフローラちゃんを助ける手伝いをしてくれた人と言っていたのですが……。一体何をされてる方なんですか?」

 

 

 今度は綺凛がいつもよりオドオドした様子で質問してくる。これは初めて会う人物がいるせいだろう。

 

 

歓楽街(ロートリヒト)で情報屋をやってるよ。行人は私のお得意様だから、親しいのはそれが理由だよ」

 

 

「はぁ……そうなのですか」

 

 

 事前に打ち合わせをしていたとはいえ、ここまで表情を変えずに嘘をつけるのは素直にすごいと感嘆する。感情がある以上何かしらの微表情が出たりはするのが普通だが、声色も変えずに視線も力まず自然体で前を向いている。

 

 

 ……そのはずだが、

 

 

「……本当にそうでしょうか?」

 

 

「どうしたんだクローディア」

 

 

 気づいているかわからないが、クローディアはニヤニヤとしながら行人とニアを見つめる。クローディアは立場上銀河に情報が漏れる可能性があったためニアのことを伝えていなかったが、もしかするとばれてしまうかもしれない。

 

 

「いえ、ただのお得意様なら、なぜ行人の腕に抱きついているのか不思議に思いまして」

 

 

「は?」

 

 

 そう思っていたのだが、とんだ杞憂だったようだ。ただし別の問題が発生したが。

 

 

「私はアスタリスクの外には出たことがあまりないからね。空港の構造もわからないんだよ。だから、行人にエスコートしてもらってたんだけど……ねぇ?」

 

 

 さらにニアまでその杞憂に悪ノリし始めてしまった。こうなると、行人は真っ向からこの被害を受け止めなければならない。

 

 

「人の関係に詮索しすぎるのはマナー違反だぞクローディア。学生とは関係ない立場なんだから、あまり探りをいれるもんじゃない」

 

 

「あらそうですか、すみません先輩」

 

 

 わざとらしく微笑みながらそう返すクローディア。それ以外の三人からはさらに熱(あるいは疑惑)のこもった視線が送られていた。

 

 

(……勘弁してくれよまったく……)

 

 

 その後は無事に綾斗も来て、シルヴィア・リューネハイムから通信によって修羅場が発現し、綺凛が船酔いならぬ飛行機酔いに陥りもしたが、無事ドイツのミュンヘン空港に着くことができた。

 

 

 その後、綾斗たちは紗夜の家に泊まるらしいが、さすがに部屋が足りないらしく、行人たちだけ近くのホテルを使うハメになってしまった。

 

 

(金、足りるかなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──しかしこの後、リーゼルタニアでそんなことを気にする必要などなかったことを思い知らされることを、行人はまだ知らない。




  おまけ
※ここは台本形式です
紗「アスタリスクお悩み相談室~。in、kurasuta~」

苦「苦労ディア・エンフィールドです。実は先輩が問題児すぎて扱いに困っているのですが、一体どうすればいいでしょうか?」

紗「ならばもうそいつを実力で黙らせればいい。そいつは文字通り地獄すら生ぬるい鬼の形相を思い知り二度と問題を起こすことはないだろう」

苦「あぁ確かにそれはそうですね! それならもう私に逆らうことはなくなるでしょう!」

紗「これにて一件落着~」

綾「なんでいつもこうなるんだろうなあ……」










 ちょっと急ぎ目なのでまた雑になっています。

 今回はくどいくらいですが、自作品の宣伝をさせていただきます。今回から新作、『不思議の錬金術士と昔馴染みの冒険者』も投稿することにしました。気になった方はこちらのリンクからどうぞ(使うの初めてなので該当するページに行けないかもです)
https://syosetu.org/novel/207996/

※全然違う作品の話を投稿してしまいました。本当にすいません……。

※※記載してある作品の名前を変えました。


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 行人にとって冬というのは、どうにも好きになれない季節だった。理由として、まず寒い。北国育ちというわけでもないのでとりあえず寒さに耐性がない。

 

 

 平日の朝などは、寮に暖房あれどそれだけですぐ暖かくなる筈もなく、起床時してから体に鞭打って登校の準備をする。……率直に言って地獄である。

 

 

 アスタリスクに冬のレジャースポットはないし、帰郷したとしても行人にはそれを迎えてくれる肉親もいない。やることもなくただ寒さに耐え、ついでに言えばクリボッチ(厳密にはニアがいるが) ここまで問題があって好きになれる訳がない。

 

 

 ──そしてそれは居場所が変わっても同じだった。

 

 

「あー寒っ、コート買っといて正解だったなぁ。ちょうど冬物なかったし」

 

 

 アスタリスクの冬より遥かに寒いドイツの街中を悪態をつきながら歩く。ホテルでは言語から勝手が違ったので困惑したが、端末で日本語をドイツ語に翻訳することで乗り越えられた。しかし、寒さだけは乗り越えれる気がしなかった。

 

 

「私はその感覚があまりないからわかんないけど、寒さってそんなにいやなの?」

 

 

「世界中の人間が最も嫌いなのが冬で、その冬に付き物なのは寒さだ。──つまり人間が最も嫌いなのは寒さだ。以上、Q.E.D.証明完了」

 

 

「いや、かなり極論だけどね」

 

 

 強引すぎる証明に、もはや呆れもしなくなってきたニア。流石に数年も一緒に暮らしていると反応するのも面倒なのだろう。

 

 

「はぁ……。で、これから紗夜ちゃんの家に向かうんだよね?」

 

 

「あぁ、なんでも沙々宮の家に迎えが来るらしい。そこであいつらと落ち合って、それからリーゼルタニアに向かう。……そういえば、お前はあいつらと一緒にいなくてよかったのか?」

 

 

 今回に限って、ニアは普通の人間として行動している。身に纏う服はいつものように展開したものではなく実物を着ているし、経歴や身分証も偽造してきている。

 

 

 行人にはあまりわからないが、旅行での男子トーク、女子トークというのはお約束らしい。やろうと思えば綾斗を誘って男子と女子を分けることもできた。

 

 

 それに、こんなことは今後あるかわからない。意外と好奇心のあるニアのことだ。そういった思い出作りには興味があると思っていたのだが。

 

 

「ううん、大丈夫だよ。そういうのはまだ機会があるからね。──それに行人が寒さで苦しんでいるなら、そっちに寄り添っているほうが役に立てるから」

 

 

 何故かわからないが、ニアはまた腕を絡めてくる。このスタイルを貫き通すのはニアの中では確定済みらしい。

 

 

「……まぁ、ニアがそう言うならいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あのさぁ……」

 

 

「あい?」

 

 

「なんでこう……、王族とか富豪とかのお偉いさん方は、いちいち庶民をびっくりさせるんですかね……」

 

 

 無事沙々宮家に到着した行人とニアだったが、飛行機の件に続いて、また行人は驚きを隠せなかった。

 

 

 飛行機と比べると少し控えめだが、それでも普通は馴染みのないリムジンが目の前にあれば、こういったリアクションも普通なのではないだろうか。

 

 

「す、すみませんです……。大勢でリーゼルタニアに行くとなると、やっぱりこういうのが一番いいので……」

 

 

「ああいや、別に責めたりしてる訳じゃない。ていうか、貧乏人がわめいているだけだから、気にしなくていい」

 

 

 この送迎を担当している内の一人だからか、フローラは行人の方に頭を下げてしまう。配置としては綾斗とユリス、紗夜と綺凛とクローディア、そして行人とニアとフローラといった形で分けられている。

 

 

 ここに他の人物──捜索を手伝った英士郎や影を引き付けていたレスターが来た場合も考えられているとしたら、おそらくさらに大きいリムジンも用意されていると考えられた。

 

 

「……あ、あの! 永見さまにはお礼を申せていなかったので、ちゃんとお礼を申し上げたいと思っていました! あの時は、本当にありがとうございました!」

 

 

「ちょっ、落ち着け! 張り切りすぎて顔湯立ってきてんぞ!」

 

 

 かなり声を上げてお礼を言うフローラだが、顔が赤くなりすぎて茹でダコのようになってしまっている。

 

 

 その声はリムジン全体に響き、フローラに一番親しいユリスが真っ先に反応した。

 

 

「おいどうした永見。なんでフローラの叫び声がしたんだ」

 

 

「いや俺に言われても困る……。って、もういいから早く顔を上げろ……。──別にお前のせいじゃないんだから、そんなにかしこまらなくていい」

 

 

 安心させるために行人はフローラの肩に手を乗せた。しかしフローラの赤みは治まるどころかむしろ増す一方だった。

 

 

「あ、あい……。ありがとう、ございます……」

 

 

「……あ、すまん……。ちょっと配慮が足りなかったか」

 

 

 そこで行人は手を元に戻した。助けられたとはいえ、ほとんど知らない男に体を触られるのはフローラとしても嫌だっただろう。姿はまだ十歳前後だが、それでも立派な少女だ。そういった配慮はやはり必要だろう。

 

 

「──そうかなぁ……?」

 

 

「……?」

 

 

 しかしニアにだけは、それとは違う何かが見えていたようだった。

 

 

「あ、みなさん! もうすぐリーゼルタニアです!」




 こちらでは二日ぶりほどでしょうか? 更新が遅くなっていてすいません。

 今回からフローラが出てきましたね。原作でもフローラは少し大人に近づいた姿とか描写されているので、もし大人になったらとか考えると面白そうです。

 他にも、フローラの友達が、アスタリスクに来て必死に必死に戦う……とか良さそうですよね。

 だがしかし、フローラをメインキャラクターとして扱う作品は(主に他のキャラクターが魅力的すぎるのもあって)少ない(もしくは一つもない)という……。二次創作で人気を誇るシルヴィアさんの正妻っぷりによる圧倒的ヒロイン力(迫真) 最高です……(変態)

 えーっと、次回もお楽しみに!

 ……この流れありきたりですかね……?


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袖通し

「正装に着替えたのはいいが……天霧、やっぱオールバックだと印象が全然違うな」

 

 

「そういう先輩はあまり変わってない感じですね」

 

 

「そうか?」

 

 

 フローラから夜会用の礼服に着替えた二人は、女性陣たちの着付けが終わるのを雑談しながら待っていた。

 

 

 服が黒いタキシードなのは変わらないが、綾斗の髪型がオールバックなのに対して、行人はいつもの髪をサッと整えただけのものだった。

 

 

「ま、多分似合うかどうかだろ。お前ならともかく、俺みたいなのだとちょっと違和感あると思うしな」

 

 

「えーっと、ありがとう……ございます……?」

 

 

 言い方から多分褒めてくれたのだろう……多分。だが確かに、失礼だが行人にオールバックが似合うようには見えなかった。どちらかというと自然体で、ショートやセミロング程度の髪型の方が合っている気がする。

 

 

「にしても、今回は俺まで連れて来てよかったのか? フローラを助けたとはいえ、ポッと出で隙を突いただけなんだがなぁ」

 

 

「むしろ先輩がいなかったらフローラちゃんを助けることもできなかったんですから、大丈夫だと思いますよ」

 

 

「──凱旋パレードに巻き込まれるくらい本命の一人から言われてもあまり嬉しくないな」

 

 

「あはは……」

 

 

 事実なので仕方ないが、リーゼルタニアに来たらまず凱旋パレード、そして国王に出会ってからすぐに夜会の準備だ。しかも主賓はユリスと、そのコンビだった綾斗だったはずだ。とりあえず、今後も苦労が絶えないだろうと思う。

 

 

「……そういえば先輩。ニアさんはどんな人なのか知っていますか?」

 

 

「逆に聞きたいが、それはどういう意味で、お前はそれを聞いてどうする気だ? 第一職業やらは既に言ってある筈だが」

 

 

「──実はサイラスの事件の時に一度顔を見たんです。……気のせいかもしれないんですが、そのとき、何か異質な雰囲気がした気がして……」

 

 

 綾斗がニアを──あの白い少女を見たときに感じたのは、普通の表情の筈なのに、普通の人間とは違う無機質な何かだった。──そしてそれは、今回も変わっていなかった。

 

 

「──別におかしな存在なんて、俺もお前も飽きるほど見てる筈だが? 例えば八津崎さんなんて釘バットを持って体罰増々の教師だし、お前は会ったことないだろうが序列三位のファードルハ・オニールなんてまさに狂人と言っていい。そして、これからお前はそういうやつに、さっきも言ったが飽きるほど会うことになる」

 

 

「…………」

 

 

「今回はいいが、今言った通りだ。この件は俺から話す気はないから、……憶えとけよ」

 

 

 行人の雰囲気は一変し、それは綾斗にも息を呑ませるほどの豹変ぶりだった。

 

 

「──あ、そういえば俺も聞きたいことがあってな。《鳳凰星武祭(フェニクス)》でやっていた、周りを全て把握するあれは何なんだ?」

 

 

「……え? あ、はい。あれは識と言って、知覚を極限まで拡大して周囲の情報を把握する、《天霧辰明流》奥伝の境地です」

 

 

「それは消えている呪符や《幻映霧散》すら見えるものなのか?」

 

 

「うーん……。見える、というよりはわかる、と言った方が合ってると思います。こう……物の位置がなんとなくわかるんです」

 

 

 識の境地というのは、そこにある物が視覚的に見えるというより、そこに何が感覚的にあるかがわかる、といった方が正しい。

 

 

「──ふーむ、知覚……か……。──挑戦してみるか」

 

 

「? 今なんて……」

 

 

「いや、なんでもない。……そろそろ夕方になるな。……なあ天霧、唐突だがお前なら誰のドレス姿が一番見たい?」

 

 

「……いきなりですね……」

 

 

 表情を崩すことはなかったが、行人の質問に綾斗は戸惑ってしまう。ユリスから聞いたが、行人にペースを掴まれれば最後、鬱陶しいほどに弄られまくるとのことだった。雑談とはいえ、これからもさらに苦労するだろう中で、今から疲れるのは流石に嫌だった。

 

 

「……先輩なら、誰のが見たいんですか?」

 

 

 ここで答えたら絶対にそこを突かれると思った綾斗は、逆に行人へ質問を返すことで切り抜けようとする。

 

 

「全員気になって選ぶのは難しいが……やはりニアのドレスが見たいな。んで? 俺は答えたぞ? ほら早く言えよほらほら~?」

 

 

 が、この質問をされた時点で逃げ場は無かったようだ。半ばパワハラのような会話は、女性たちがドレスの着付けを終わる夕刻まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なんか、思ってたより似合ってるもんだな」

 

 

 やっと全員が正装姿になって夜会がスタートし始めた頃、行人はニアをリードしながら会場の散歩を楽しんでいた。今回の主賓はやはり綾ユリの二人だったので、ほとんど部外者である二人には話してくる人物は一人もいない。

 

 

「余計なお世話だよ。というか、それは一体どういう意味なのかな?」

 

 

「単にドレス姿を想像できてなかっただけだ。──よく似合ってる」

 

 

 ニアが着ているドレスは、他の女性陣たちと同じイブニングドレスで、清楚なイメージの青を基調としたものだ。元々の白い肌や髪と合っていてよく似合っている。……が、

 

 

「ニアだけに?」

 

 

「その台詞で台無しだ……」

 

 

 せっかくわざとらしい台詞を吐いたというのに、それはニアのしょうもないダジャレによって雰囲気ごと崩れてしまった。

 

 

「なんでこう……、お前は変なところで空気をぶち壊すんだ?」

 

 

「死亡フラグを建てたがるとか言われた仕返しだよ」

 

 

 ニアはわざとらしく舌を出しながらそう言って挑発してくる。別にそれくらいはなんてことないので、さらりと受け流すのだが。

 

 

「はいはいわかったわかった。……上か?」

 

 

 ここで行人は最初は見当たらなかった異様な人影に気付く。行人は気配を探る感覚はわからないタイプの人間なので、本当にこれはたまたまだろう。──識の境地をどうにかして模倣できれば、まだ克服できるかもしれないが。

 

 

「──ニア、何があっても、絶対に武器にはなるなよ」

 

 

「……了解」

 

 

 本来は持ち込めないため、懐に隠し持っていた拳銃型煌式武装(ルークス)の発動体を手に握りしめて、その人影へ、帽子をかぶった謎の老人の背中を気づかれないように追跡した。




 最近文章が雑になってきていますね……文字数も少なくなってきてますし、できが悪い作品をお気に入りが減らないかビクビクしながら投稿する今日この頃です。まぁ減ったとしても手抜きしている自分の自業自得ですが。

 もうそろそろオーフェリアとか関係してくる時期になってくるのでお楽しみに。


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宣戦布告

「──はっはっは、まさしく両手に花といったところですn」

 

 

「そう思うんなら少しは楽しませてやったらどうだ爺さん?」

 

 

 天霧が紗夜と綺凛に手を絡められている──こんな状況でなければ軽く蹴りをいれてやるところを、わざとらしいタイミングで訪ねる老人に持っていた拳銃を向ける。

 

 

「!? 何してるんですか先輩!」

 

 

「──これはどういうことですかな?」

 

 

「──潜入まではうまくいったが、機会を伺いすぎたってところか。あんた、わざわざこっちの視線からは隠れながら、ただしこっちに付かず離れずで監視していただろ。──大方、障害になる人物に意識を向けすぎたのかもしれんが」

 

 

 やる気になればすぐに頭を吹っ飛ばせる位置に拳銃を向けているというのに、老人は一切動揺を見せない。

 

 

 ──先に発見したこの老人はパッと見では普通に社交界を楽しむ人物の一人だった。だが、基本的に多くの人と話さず、どちらかというと辺りを歩いている時間の方が多かった。そして歩いていたルートは、人が集まっている下ではなく人の少ない上側がほとんどだった。

 

 

 あまり他人としゃべるのが苦手ならともかく、このような夜会にわざわざ参加しているならそれはないだろう。綾斗たちを見るためだとしても、そちらを見ているだけで直接話しに行きはしなかった。

 

 

「第一この夜会、天霧たちのために開かれているんだぞ? それなのにそのメインと話せる、もしかしたら唯一の機会かもしれない場で伺うことしかしない。……どう考えても浮くだろジジィ」

 

 

「ほっほっほ、大した妄想で」

 

 

「ご託はいい、持ってるものを地面に置いて、両腕を頭に回せ」

 

 

 行人の勧告に渋々ポケットの中身を全て出して地面に置く。──ただしこの老人、ただで従いはしなかった。

 

 

「──うがあッ!!!」

 

 

「「!!」」

 

 

「ここで何か仕込もうとするとか、神経図太すぎんだろジジィ。──一体何をした?」

 

 

 星辰力(プラーナ)の動きを垣間見た行人は老人の足に向けて引き金を引く。他の三人も気づいたようだが、それよりも急な発砲に対して驚いているようだ。

 

 

「……少しは老人を労るということをしてはどうですかな……」

 

 

「!?」

 

 

 今までの声よりも少し焦りを見せた声を上げると、それと同時に数個の魔方陣が展開され、そこから骨でできた複数の兵士が行人に組みかかってくる。

 

 

「ッ! ……なるほど、なァッ!」

 

 

「先輩!」

 

 

 個々の戦闘力はそれほどないようだが、それでも行人にとっては十分な障害となった。綾斗も救援に来て応戦するが、そこでできた隙が、老人の行動を許してしまう。

 

 

「この傷の恨み、必ず晴らさせていただきますよ……」

 

 

 空中に謎の魔方陣を浮かべさせて、老人は姿を消してしまった。

 

 

「あの野郎……!!」

 

 

 魔方陣から出てきたのは、五メートルほどの体長を持ち、背中にはコウモリの羽、尻尾は蛇、そして頭はライオン──俗に言うキマイラの姿をした、万応素(マナ)の塊だ。先の骨の兵士も含めて、これがあの老人の能力なのだろう。これほどに揚々として生き生きとしたものを作るのは不可能に近かった筈だが……

 

 

(いや、それどころではないな……。まずあれをどうにかするのが先か)

 

 

 化け物の襲来によって会場は混乱の真っ只中だ。招待された人々は逃げ惑い、警備員連中は戦力としては期待できなさそうだ。

 

 

 一番戦力として期待できるのは、ちょうど今来たユリスの能力と綾斗の組打ち術だけだろう。行人は煌式武装(ルークス)を隠し持っていたが威力が弱すぎるし、クローディアや綺凛、紗夜に綾斗はそもそも武器を持っていない筈だ。綾斗や紗夜の持つ強力な武器ならばどうにかできるだろうが、それも今は持っていない……

 

 

「──私は常に煌式武装(ルークス)を持ち歩いている」

 

 

「物騒すぎんだろお前!?」

 

 

 ──まあ、アスタリスク以外だと真っ先に逮捕されるだろう人物は置いておくとして、どちらにせよ戦力は組打ち術(徒手空拳)の綾斗、能力(火炎)のユリス、煌式武装(ルークス)の紗夜の三人だけだ。しかしユリスと紗夜は強力すぎてこのままでは使えない。なので……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ちょーっと失礼!」

 

 

「な、なんだお前は!?」

 

 

 ──行人は招待客たちを飛び越して真っ先に警備員に向かい……

 

 

「どうせ使わねぇだ……ろッ!!」

 

 

「どわぁっ!」

 

 

 警備員の持っていたライフルを強引に取り上げた。

 

 

「…………」

 

 

 急すぎる行動に思わず目線を向けていた他の五人も、さらなる予想外行動に唖然としていた。尚、紗夜を物騒とか言っていた当の本人はそれを気にも留めていない。

 

 

「ほら援護してやるから早く行け天霧!!」

 

 

「っ! りょ、了解!」

 

 

 行人は綾斗を狙っていた尻尾をライフルで的確に狙い撃って撃退。そしてキマイラの懐に綾斗が飛び込み、

 

 

「天霧辰明流組打ち術──不破轟(ふわぐるま)!」

 

 

 腹部を思い切り蹴飛ばす。さらに綾斗は自分も飛び上がり別の技で三連撃、キマイラをテラスの向こうへ転がす。

 

 

「咲き誇れ──六弁の爆焔花(アマリリス)!」

 

 

「……どどーん」

 

 

「ガアアアアアアアァァァァ!」

 

 

 これでもかというほどの威力の爆発と爆炎によって、キマイラの身体は溶けていき、遂には跡形もなく消え去り万応素(マナ)が拡がっていった。




 オリキャラを作ってくださった方が二人もいました! キリトさん、あかつきさん、魅力的なキャラクターをありがとうございましたm(_ _)m

 ……で、それに関することなんですが、送られたキャラクターの設定は極力守っていくつもりなんです。が、自分独自の解釈やさじ加減によって、製作者のイメージとは少しだけ変わってしまう部分があるかと思われます。例えば、二つ名が変わったりなどです(募集しておきながらすいません)

 その場合、できるだけ考えてくださったものと同じくらい良いものになるように頑張りますので、ご理解のほどよろしくお願いします。

※ルビと線と少しだけ文を修正しました。


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隔てる壁

 ──行人が主に担う役割というのは二つほどある。一つはいざというときの戦闘、そしてもう一つが散策や偵察による情報収集だ。

 

 

 行人自身は今までの経験による予測や星辰伝導のような他にはない技術で戦闘を行うが、圧倒的なスペックの差の前にはそんなもの所詮付け焼き刃にすぎない。

 

 

 綺凛のように技術や駆け引きが伴う戦いなら、武器の相性、ブラフ、フェイント、相手の癖……そういった情報を駆使すればなんとか勝てる。しかし、かのオーフェリア・ランドルーフェンのような者が相手だった場合前者のような小細工は一切通用せず、ほぼ確実に負ける。

 

 

 煌式遠隔誘導武装を使えばやっとその点をカバーできるかもしれないが、どちらにせよ前提は変わらない。事前にある情報が、行人の勝敗には大きく影響する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……というわけで、 

 

 

「──あんなでも一応国王なんだよな……。威厳とか一切ないが……」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

「もう首刎ねられてもおかしくないんじゃないかな」

 

 

 行人とニア、そして綺凛は、先日襲撃してきた老人、ギュスターヴ・マルローの話をユリスの兄ヨルベルトに聞いたその後、大事な話があるといって部屋を追い出された。なのでそれで空いた時間を使い、観光も兼ねてリーゼルタニアの地理を把握中だった。

 

 

「そもそもなんであのアホどもはこういうときだけ欲望に忠実なのか……」

 

 

 ちなみに紗夜とクローディアはその大事な話を盗聴すべく、それが行われている部屋に対して必死に聞き耳を立てている。

 

 

「で、でも、少し以外でした。紗夜さんはなんとなくですけど、クローディア先輩もあんなことするなんて……」

 

 

「私はよくわからないけど、あの金髪の娘は学園だと違う感じなのかな?」

 

 

「クローディア先輩はいつもおしとやかで女性らしくて、頼りになる先輩です。フローラちゃんのときも、先輩たちの中で一番落ち着いてて……」

 

 

「付け加えると、目的のためには手段を選ばなくなる程度には図太いやつだってのも言っておk……」

 

 

「あ、うん……、もう十分かな……」

 

 

 とりあえずクローディアがどんな人間か聞きすぎてお腹いっぱいになったようで、ニアは手を出して遠慮する。

 

 

 最初は綺凛もついてきたこともあって少し不安だったが、ニアは自分のキャラクターをちゃんと守って接している。妙な素振りを見せることもなく、綺凛とはだいぶ打ち解けたようだ。

 

 

「──そういえば、今回ここに呼ばれた理由はフローラを助けてくれた礼としてだよな? ……なんで刀藤も呼ばれたんだ?」

 

 

「…………」

 

 

「──刀藤、目線逸らしても無駄だぞ」

 

 

「……は、はい……」

 

 

 その話題を出すと明らかによそよそしくなり涙目になりかけた綺凛を問いただし、あのとき何をしていたのかを聞き出した。

 

 

 綺凛は足がやられているのにも関わらず、一人で歓楽街を歩き回ってフローラのことを探していたらしい。綾斗に見つかって説得もされたが聞く耳を持たず、最後までフローラのことを探していた。──ついでにこれがユリスや紗夜たちにばれたときは大変お叱りを受けたようだ。

 

 

「ご、ごめんなさい、です……」

 

 

「……もう、怒る気にもなれん……」

 

 

「え、えぇっと……ほ、ほら、次はあっちでしょ? 早くいこうよ」

 

 

 一気に険悪となった雰囲気をなんとかすべく、ニアが次の目的地を指差し二人の背中を押す。まあ綺凛はともかく行人は言葉通り完全に諦めており、一切言及せずに元の空気を取り戻した。──行人だけが。

 

 

「……う、……うぅ……」

 

 

「──本当にごめんなさい刀藤さん、一生のお願いなので機嫌直してください……、いやほんとマジで……」

 

 

 先の行人によって強められた自責の念によって涙ぐみ、今にも泣き出してしまいそうな綺凛を必死になだめる時間が少しだけ続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ……! かわいいと思いません……!?」

 

 

「えっと──これ、一体なんなのかな……」

 

 

「……はぁ、よかった……」

 

 

 元の調子に戻った綺凛はニアと共に、店に置いてある──かなり特徴的な人形を二人で眺めていた。尚、綺凛が元に戻るよう説得に使った時間は十分程度だ。これは元々控えめで自分に自信がない性格なのが災いし、行人が思っていたよりダメージが大きくなってしまったが故の結果なのだが。

 

 

(もっと気を付けないとな……)

 

 

 女子のデリケートさをこの身でじっくり味わった行人は、心の中でさらに慎重さを深めるよう肝に命じた。

 

 

「──あー、ここのマッピングは終わったし、もうそろそろ貧民街に向かうぞ」

 

 

「わかりました」

 

 

「りょ~か~い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──行人が貧民街で真っ先に感じたのは、この国で最初に見た首都ストレルからは信じられない程、見ただけでわかる重圧感だ。

 

 

 そこらの家屋はヒビが入っていてとても安全には見えがたく、人々は焚き火を囲って残飯のような粗末な食べ物を頬張っている。なにより彼らの目には光がなく、ここにも統合企業財体の力(人間が持つ汚い欲望)が重くのし掛かっているのが嫌でも実感できた。

 

 

「これは……ひどいですね……」

 

 

 そこは綺凛も同意見のようで、周りに映る風景も痛々しくて見ていられないようだ。

 

 

 ──そしてニアの方は……

 

 

「────何?」

 

 

「……いや」

 

 

(……やっぱりか……)

 

 

 全く気にしていなかった。周りに存在している惨状に見向きもせず一切の発言もせず、ただ行人と綺凛についていくだけである。

 

 

 たまにだが、こうして行人たちとニアの違いを思い知らされることがある。確かに自分たちには関係のないしどうにもできないことで、本来はユリスやヨルベルトがどうにかすることだ。別にニアの行動は間違っていない──それは事実として受け入れるしかないが、やはりこういった感覚(人間と武器)の違いは、あまり慣れることができないと感じる。

 

 

 思わず考え込んでしまっていた行人に、利奈よりも身長が低い後輩の顔が覗き込まれる。

 

 

「……先輩? どうしたんですか?」

 

 

「──なんでもない。早めに記録して、さっさと城に戻るか」

 

 

「あ、──はい……」

 

 

 綺凛とってその時の行人の声は、少しだけ焦りを含んでいた気がした。




 最近行きたいイベントに行けなくて悶絶しそうな作者です(隙自語)

 えーっと、募集キャラクターについて現状報告すると、既に三つの案は採用決定してます。ついでにこのキャラクターたちが使われるのはグリプスでですのでもう少し先になってしまいます。

 手を加えた部分もありますが、それでも全員魅力的なキャラクターなので、お楽しみしていてください。

 それではまた次回もお楽しみに!(グリプスに入るのは第六幕からです)


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来訪

「──ここで、ようやく終わりだな……。ハ、ハックション!」

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

 無事、リーゼルタニア領の首都ストレル周辺を把握できた行人はそのデータを見て安堵する。今までは慣れない土地で地理感覚がわからなくなる不安もあったが、やはり相方が複数いるだけで安心感は変わってくるものだ。

 

 

 まあ一番の不安は他にあったのだが。

 

 

「正直貧民街ってだけでかなり警戒していたんだが……、思ったよりも平和だったな」

 

 

「本当、アスタリスクの歓楽街(ロートリヒト)とは大違いだよ。普通に聞くこと聞いたら答えてくれるし」

 

 

「あそこを基準にするのはちょっと……」

 

 

 対象が大きすぎたか、綺凛からの共感は得られなかった。

 

 

 歓楽街は合法非合法関わらず店がひしめき合い、ある意味アスタリスクの中では一番経済が盛んな地だ。そんな金こそが正義の土地の治安は例外もあるとしても、誰もが察することができる筈。

 

 

 行人もニアも──というか多分綺凛もだが、そんなものアスタリスクでしか見たことがないので、まず基準にできるものがそこにしかないのだ。

 

 

 貧困や非合法が象徴となる地域が、あそことほとんど変わらないと考えても仕方ないのではと行人は思う。

 

 

「……! ……すまん、二人は先に城に戻っててくれ」

 

 

 貧民街を歩いていると、とある古い建物が行人の目に留まった。当然、いきなりの宣言に綺凛はその意図を聞こうとする。

 

 

「え? 一体どうしt」

 

 

 ──しかしその一瞬、行人の考えをなんとなく察したニアによって綺凛の発言は遮られ、さらにその手を引っ張られて城に連れて行かれた。

 

 

「よーし綺凛ちゃん。私たちは先にお城に帰ろっか~」

 

 

「ちょ、ちょっと!? ひ、引っ張らないでくださーい!」

 

 

 ……南無阿弥陀仏……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちこっちー!」

 

 

「あはは! まてまてー!」

 

 

 行人が気になった建物というのは、レンガと木組みでできている二階建てほどの教会だ。回りでは小さな子供たちが鬼ごっこや雪合戦をして、わいわい楽しそうにはしゃいでいる。

 

 

 子供たちは、貧民街に見えた黒さを一切持っていない。皆明るく、無垢で、純粋な眼差しをしていると感じた。

 

 

「……すいません」

 

 

「ん?」

 

 

「……フローラちゃんが言っていた、あの……! ……フ、フローラちゃんを事件から助けた人は、あ、あなたです、か……?」

 

 

 教会の入口に向かって歩いていると、少し気弱そうでこちらを覗くように見ている男の子が声をかけてきた。歳はフローラと大差ない……十歳前後といったところだろう。見るからに不安そうで、あまり人前に出ないタイプだと思う。

 

 

「……それは……フローラに聞いたのか?」

 

 

「は、はい……!」

 

 

 しゃがみこみ、視線をできるだけ低くしてから答える。聞いた話によると、確かフローラは孤児院の出身だった筈だ。ならばそれを孤児院の友達に話していても不思議ではない。ただちょっとだけ、フローラと正反対すぎると思わなくもないが。

 

 

 そうこうしていると、教会から老年のシスターが歩いて来た。

 

 

「あらあら、今日はお客さんが多い日ですね」

 

 

「──あなたは……」

 

 

「私はテレーゼ。ここのシスターをしている者です」

 

 

 テレーゼというシスターは落ち着いた声と表情で自己紹介をしてくる。

 

 

「すいません。ここにある教会が気になってしまって、思わず……」

 

 

「そんなにかしこまらなくても大丈夫。あなたのことはフローラからよく聞いているわ。永見行人さん」

 

 

 やはりフローラは、行人のことを孤児院で話していたようだ。ここのシスターにまで知られていたというのは、さすがに少し驚いた。

 

 

「……フローラ──ちゃん……は、何と言っていたのでしょうか」

 

 

「ほら。外は寒いから、中へどうぞ。そこで話しますよ」

 

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会の中に入ってまず目に入ったのは、忙しそうに室内を行き来する若いシスターや、外にいた子たちより一回り大きい子供だ。

 

 

「えーっと、……本当にお邪魔してもいいのですか?」

 

 

「大丈夫ですよ。今は行事の準備をしていますけど、一度休憩を入れようかなと思っていましたから」

 

 

 テレーゼはまた柔らかく優しい言葉で、そう言ってくる。初対面の行人ですら、この言葉には包み込まれるような温かさを感じる。

 

 

「ふう……。フローラは孤児院のみんなに、アスタリスクでのことを話していましたが、特に多かったのはユリスと──あなたのことでしたね」

 

 

「あぁ、やっぱり……」

 

 

 椅子に座ったテレーゼは一息をはいて、一旦落ち着いてから口を開いた。先程まで他と一緒に、行事とやらの準備をしていたのだろうか。

 

 

 ともかく、予想どうりフローラは行人のことを話していたようだ。まさかユリスと同じ頻度とは思わなかったが。

 

 

「いや、もしかするとユリスより話していたかも。フローラは、あなたのことが気になって仕方ないようでしたし」

 

 

「そんな大層なことはしてないんですけどね……。横からいきなり出てきて、たまたま助けることができただけですし……」

 

 

 テレーゼはあんなことを言っていたが、それに答えた行人の言葉に嘘はない。あの時行人は、天井の落下によってできた煙の中から誰にも見られないように隠れ、代わりにニアを自分の姿をさせて身代わりにした。

 

 

 根拠もほとんどない勘で行った行動だったがそれは的中し、行人は完全に油断していた誘拐犯の不意をつくことができた。

 

 

 だが実際に犯人を仕留めたのは紗夜の煌式武装だったし、そもそもこれが行人ではなく万全な状態の綺凛だったならば、もっとスムーズに犯人を倒せていたとずっと思っている。

 

 

 しかしテレーゼは、そうではないと言った。

 

 

「そんなことはないですよ。あなた方のおかげでフローラは助かった。そして、フローラにとって一番の恩人と思ったのは行人さんだった──だから、そんなことを言う必要はありません」

 

 

「……そう言ってくださると嬉しいです」

 

 

 自分の思いは変わらなかったが、それでもそんな風に言ってくれたのは、行人にとっても嬉しかった。

 

 

「──話は変わりますけど、実はあなたと話したい子がいるんですよ。彼と一緒にお話ししてあげてはくれませんか?」

 

 

「それくらいなら、お安いご用です」

 

 

「──ダン! こっちよ!」

 

 

 テレーゼが大きくも静かな声でそう叫ぶと、教会に入ると近づいてきた──今はこちらをずっと見つめていた男の子が、行人とテレーゼが話していた部屋にゆっくり入ってきた。

 

 

「──ごめんなさいね、この子はちょっと人見知りだから……」

 

 

「いえいえ、大丈夫です」

 

 

 最初は寒さで震えているのかとも思っていたが、その後に行人が出した見解は当たっているようだった。となると……

 

 

「あ、あの……! ダ、ダンって言います……! きょ、今日は聞きたいことがあって──」

 

 

「あー、えーっとな、とりあえず落ち着いてくれ」

 

 

 ──目の前の少年、ダンはかなりアガッていた。




 リーゼルタニアの文章書くの遅れたしめっちゃ疲れた……。あまりセリフとか少ないキャラ多いから性格が読み取れないんですよね……。テレーゼが変だと感じたら間違いなくそれですのでご容赦ください。

 ついでにオリキャラの選定していたのも原因の一つですね。どれも魅力的なんですけど、その設定をいじったり組み合わせたり……少しビクビクしながら作業していました。

 その過程で後の展開ばっか考えているから、頭に情報詰め込みすぎてパンクしそうになったり……。

 と、とりあえずいつも通り楽しんでくださったのなら嬉しいです。

 ではまた次回!

※またサブタイつけ忘れました……


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羨望

※注意、今回の作品には他作品ネタが今までより多く含まれております。(ついでに作者も暴走しています)

 それらが苦手な方にはおすすめしません。


「ほら、一度深呼吸して……」

 

 

「すー……はー、すー……はー」

 

 

「──どうだ?」

 

 

「な、なんとか……」

 

 

 教会の子供、ダンを深呼吸するように促す。これによって一応喋れるくらいにまでは落ち着いた。

 

 

「それで、何が聞きたい? フローラを救った熱き冒険談でもしたらいいか?」

 

 

「い、いえ、僕は──なんでフローラちゃんを助けれたのか……聞きたくて……」

 

 

「それは……一体どういう意味だ?」

 

 

 ──質問の意図がよくわからなかったので、思わず聞き返してしまった。子供が捕まっていて、自分がそこで動けて、だから助けに行ったのは普通だと思っていたのだが。

 

 

「え、えっと……フローラちゃんが捕まっていたとき、た、確か警察とかにも、伝えれなかったんですよね? だ、だったら、なんでそれなのにフローラちゃんを助けれたのか不思議で……。だ、だって、自分たちでしかなにもできないって、すっごく不安なことで、なのになんで、フローラちゃんを助けれたのか──」

 

 

「うん、まあ、それはごもっともな意見だな」

 

 

 相変わらず自身無さげに言うが、それは別段間違ったことではない。

 

 

 自分しかできない何かがある……。それは自身になることもあれば、かえって緊張のような負担になってしまうこともある。

 

 

「──ダン、それを伝えるために、お前に聞かなきゃならんことが二つある」

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 ──しかしそれを乗り越えれるのが人間でもある。ならばこの少年には、それをじっくりと教えなければならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──お前から見て、フローラは可愛いか?」

 

 

「……へ?」

 

 

 その質問はまだ無垢で純粋な子供には早すぎたか、その顔に一瞬で火がつき、そしてリンゴのように真っ赤になってしまう。ついでにそれを横から聞いているテレーゼも少し苦笑い気味だ。

 

 

「ふ、フローラちゃんは、か、かわ……かわいい……と思い……ま……す」

 

 

「そうか……ならば教えよう、なぜ、我々がフローラを救えたか。その理由のひとつを……。──古来より男とは、戦にて身を投げるように戦いへと臨んできた生物……その理由とは……!」

 

 

 セクハラで訴えられても問題ない上司の質問みたいになったが、ある意味男にとってこれは重要な問題である。まるで悟りを開いた仙人のような雰囲気をまとい、その壮大たる威厳(笑)を持って行人は口を開く……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──可愛いのためだッッッ!!!!」

 

 

「…………」

 

 

「可愛いとは男──いや時には女すらも惚れさせ虜にしてきた! つまり、可愛いには何者すら抗うことはできない!」

 

 

 いつもの行人を知る人物が見ればこれは替え玉だとすら思わせるだろうその威厳。外にいた筈の子供たちをも惹き付けるそれは、何故か大地を、空を、空気を、全てを(声量で物理的に)揺らした。

 

 

「世界中の歴史……人間より上位という神とやらが出てくる神話においても、彼らはその可愛さに魅了され、女を連れ去ったり不倫したりとか……まーしょうもねぇことやらかしてる。──何故か? それは──彼女らが!! 可愛いからだッッ!!」

 

 

「……そろそろいいのではないですか?」

 

 

「あ、すいません。つい熱くなってしまいました」

 

 

 流石にとがめてくるテレーゼに行人はお辞儀する。

 

 

 なにせリーゼルタニアに来る前から、色々と鬱憤が溜まっていたのだ(何故かはあえて言わないが) それこそ、何度頭を叩き割りそうになったか覚えていない程に。だから……これくらいは許してほしかった(無理だけど)

 

 

「ま、まあこれが理由の全てじゃないが、それでもその一つなのは本当だ。テレーゼさんや他のシスターたちも、お前らが可愛いから守ってくれる。──見過ごせないんだよ、やっぱり」

 

 

「は、はあ……」

 

 

 いまいち納得できたとはあまり言えないだろうが、さほど問題かと言われればそうでもないので大丈夫。時には『考えるな感じろ』の心も大事なのである。

 

 

「──んで、二つ目だな。今度のはちょっと自分でもできてるかわからんから、他人の言葉を使わせてもらうぞ」

 

 

 さっきまでの気迫ある男はいずこへ、今度は落ち着きのある──例えるならば、こう……イギリスでゾンビにやられた男爵のような雰囲気だ。

 

 

『──ノミっているよな? ちっぽけなムシケラのノミじゃよ。あの虫は我々巨大な人間にところ構わず戦いを挑んでくる。これを『勇気』と呼べるだろうかね』

 

 

「え!? えーっと……」

 

 

 ダンだけに留まらず、回りにいた子供たちもどんどん考えだすが、それがわかった子はいないようだ。──実は以前感銘を受けた某有名漫画の名言をパクるだけなので、知っている子もいると思っていたのだが……、やはり貧富の影響が強く表れているのだろう。

 

 

『ノミ共のは『勇気』とは呼べんなぁ』

 

 

 ──ならばちょうどいい。こんな人権など無慈悲に捨てられる世界、娯楽の一つや二つは宣伝しておいた方が、彼らにとってもいいだろう。これは文字通り、人間讃歌を表す台詞……

 

 

『では『勇気』とは一体何か!? 『勇気』とは怖さを知ることッ! 『恐怖』を我が物とすることじゃあッ!』

 

 

「おおおォォォッ!!」

 

 

「これが! ツェ○リのおっさんの名台詞だぁッ!」

 

 

 子供たちは一斉に声をあげる。ただしこれは自分の台詞ではないので、少々複雑な気分だが。──というか、これ色々と大丈夫だろうか?(作者の声)

 

 

「──ダン、不安ってのは誰だって感じるものだ。俺も、お前も、テレーゼさんも、ここのお姫様も、みんな不安とかそういう負の感情を感じる。──例外なんて、一人もいない」

 

 

 人間とは、曰く、感情の生き物だ。正の感情も負の感情も全て合わさってできているのが、人間という生き物だ。笑いも、怒りも、悲しみも、喜びも、全て人間の一部であり、それから切り離すことは誰一人としてできない筈だ。少なくとも、行人はそう思う。

 

 

「──お前の引っ込み思案は、もしかしたらそこから来るものもあるかもな。でも、それは全てお前の一部だ。否定する必要はない。自分を誤魔化して、不安を感じないようにしたり……色々と試行錯誤して頑張ってみろ。どれくらい難しいかはわからないが……俺はそういうのは、すごく楽しいもんじゃないかって思うよ」

 

 

『……先輩!? 永見先輩!? 聞こえますか!?』

 

 

 ダンの頭を撫でながら、できるだけ優しく伝えていた場に、端末からクローディアの叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダン、俺から最後のアドバイスだ。──これからの未来において、絶対に自分を見失うな。絶対に……俺みたいになるな」

 

 

「────え?」

 

 

「──ありがとうございました……」

 

 

 いきなりで意味のわからない言葉に困惑するダンに、行人は見向きもせずに教会を後にした。

 

 

 ──行人にとって、自分を見失ったことは今までで一番後悔したことだ。元来自分には才能がない。努力でその差を埋めれたとしても、世界の内の中堅程度が限界だろう。

 

 

 だが当時の行人にとっては、そんなもの興味もなかったのだ。ただ目的さえ果たせれば、それ以上を望むことは……。

 

 

 それが消えた今、行人は未だにさまよっている。そんな行人だからこそ、感情(自分から薄れたもの)を、目標(自分が失ったもの)を、最も羨み、そして渇望するのだ。




 はい、ご存じの通り、今回は頭おかしくなりながら書いていました。

 最近、楽しんでくださる方もいる一方マンネリ化も進んでいるのかなと感じたので、かなりパロ要素が強くなってしまいました。

 あからさまに台詞流用していたりしますし……もうこれわかんねぇな。消されないかビクビクしています((( ;゚Д゚)))

 今回の話を要約すると、ただただ行人がキャラ崩壊しただけです。ストーリーもなにもないです(多分)

 ではまた次回、お楽しみに!


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帰還

「……ここは……?」

 

 

「──ようやく起きたか? リースフェルト」

 

 

 場所は変わって城内へ、行人の座る椅子の近くにはベッドがあり、そこで横たわっていたユリスはやっと目を覚ました。

 

 

 まずクローディアからいきなり連絡、何事かと思いながら森の中に向かうと、そこには綾斗とユリスを一人で運んでいるクローディアの姿があったのだ。行人がついてからは役割を分担したが、その際に持った身体の冷たさには驚きを隠せなかったものだ。

 

 

 例のギュスターヴに襲われたとクローディアからは聞いていたが、何より一番驚いたのは、クローディア曰く、あの《弧毒の魔女(エレンシュキーガル)》がいたとのことだ。あくまで予想なので確実ではないが、近くにあった土の腐り具合から可能性は高いようだ。

 

 

「なっ!? なな、何故ここに綾斗が!?」

 

 

 ユリスは同じベッドに横たわっている綾斗に今さら気づき、その眠気もこもっていた顔はすぐに炎のように赤くなった。

 

 

「いやな? 触ってみて体温も低下してたから、それならある程度暖めたらら密着させて体温維持した方がいいかなって」

 

 

「それは色々と違うだろう!」

 

 

「ぎゃーぎゃーうるさいな静かに寝てろ。大体会って一ヶ月せずに膝枕した仲なんだからいいだろうに」

 

 

「いやだからそれとこれとは……ん? おい待て、それはつまり──見ていたのか……?」

 

 

 そして今度はいつも以上に訝しげになりながら行人をジト目で見てきた。

 

 

「実はちょこっとだけ見えてなぁ、正直マジか! って思ってたわ」

 

 

「──炭になるか丸焦げになるかを選ばせてやる。さあ……好きな方を選べ」

 

 

「んなことやってみろ……そんとき撮った写真ばら蒔いてやる」

 

 

「ぐっ……! ──はあ……、お前のそういう性格は最初から変わらんな。《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出て少しはマシになったかと思えば……」

 

 

「生憎と、俺は以前からこんな性格だぞ」

 

 

 いつも通りにユリスの口撃をいなし、さらに口撃を返す行人。この光景、もはや模式美の一つに数えてもいいのではないかと自分でも思う。

 

 

「──とりあえず、だ。あそこで何があったのかは聞かないでおく。プライベートな何かかもしれんからな。でもこれだけは言っておく。何か大変なことがあるなら、少しは周りを頼れ。わかったな」

 

 

「片隅には留めておこう」

 

 

「聞き分け悪すぎんだろ……」

 

 

 もやは慣れてきている自分が嫌になってきたが、どうしてアスタリスクの学生は色々と難儀な性格が多いのか。

 

 

「まぁ、初めてあった時よりかはだいぶ丸くなったけどなぁ。あのツンツンフェルトが懐かしいな~」

 

 

「あの頃は色々と恐ろしかったのだ。仕方あるまい」

 

 

「そこ怒んないのか、リースフェルトのくせに」

 

 

「……その手には乗らんからな」

 

 

 約一年前を振り替えって雑談をしていたが、やはりあの頃と比べてユリスは変わっていたようだ。仲間も入るし、どうにも難儀だった性格も多少改善されている。──綾斗との出会いは、それほどに大きいものだったのだろう。

 

 

「さて、俺はもうそろそろ帰るわ。ギュスターヴに対する対抗策も練っておいたし、あとは俺なんかいなくても大丈夫だろ」

 

 

「……正直に言って、お前のその、何事にも策を弄しすぎるところは、あまり好きではないな」

 

 

「お互い様だ。……俺も、お前の持つ溢れんばかりの才能は、あまり好きじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして綾斗が目覚めたその日に、ギュスターヴの襲撃は始まったらしい。今までとは段違いに強い、ヒュドラの化け物を出してきたとのことだ。

 

 

 しかしそこは、やはり《鳳凰星武祭(フェニクス)》を勝ち抜いた猛者たちだ。所詮は万応素(マナ)の塊であるヒュドラに勝ち目などなかった。念のために紗夜のための狙撃ポイントを絞りだし、綺凛にもここの土地勘を覚えさせていたのだが、この感じではそれも必要なかったかもしれない。

 

 

「──やっと見つけたぞ」

 

 

 行人が探していた人物は、アスタリスクの商業エリアの道端にある店の前にいた。それは出会ってからいつも隣にいた、全身が白と言っても過言ではない、少女の姿をした武器だ。

 

 

「……いつもは普通なのに、こういうときにいきなりいなくなるのは本当にやめてくれよ……」

 

 

「え? あぁ、ごめんごめん。リーゼルタニアに行ってから買い物に興味持っちゃって」

 

 

 相変わらずだが、ニアのいつの間にかどこかにいってしまう癖は、会ってから三年以上たっているというのに一向に治る気配も治す気もないのだからすごいと思う。もしやこの行動こそが本当の代償なのではないか。

 

 

「それにしても行人も鬼畜だよねぇ。あの……ギュスターヴ、だっけ? 自分から因縁つけたのに放置プレイなんて」

 

 

「お前……どっからそんな言葉覚えてきた?」

 

 

「行人の使ってるネット端末から」

 

 

 ……。

 

 

「いやー。母親の気持ちってあんな感じなのかなぁ。すごく気まずいけど中々おもしろく……」

 

 

節子(ニア)、それ母親やない。ただの同級生のムッツリスケベだ」

 

 

「あれ?」

 

 

 自分のせいで穢れが増してしまったニアを憐れみ、今度からは端末にフィルターをかけ直そうか、行人は超回転する脳を使って葛藤する。答えはもちろんイエス。一秒すらかからない一瞬のことだった。

 

 

 ──まぁ既に汚れているので手遅れかもしれないが……。そんなことは一旦置いておいて、急遽アスタリスクに戻ってきたのには理由がある。

 

 

「放置プレイは天霧たちが相手してるからなってない。確かに自分の手でケリをつけたい気持ちはあったがな。──だが今回早めに帰ってきたのにはちゃんとした理由がある」

 

 

「……どうせ学園祭のカジノでしょ」

 

 

「まあ間違ってはいない」

 

 

 ジト目で理由を当ててきたニアに、行人は苦笑いしかできない。実はこれは、中等部三年になってから始めた小遣い稼ぎの一環だ。実家からの収入などないので、こうしたことをしなければならなかったのだ。勿論ポーカーフェイスを鍛える目的も多少あったりする。

 

 

 駄菓子菓子(だがしかし)、今年の行人にはもう一つの理由があったのだ。

 

 

「実はな、利奈からちょっと連絡があったんだよ。お前はいなかったから知らないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──来年の《獅鷲星武祭(グリプス)》に出るつもりらしい。経験者の付き添いが欲しいとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ここから行人は、それぞれの思惑が蔓延る戦いへの、第一歩を歩み始めていた……。




 どうも、昨日(12月6日)に出そうとしたら寝落ちしてしまった作者(アホ)です。

 最近停滞気味だった物語もようやく次に移れます! ついでにネタバレするとオリキャラもようやく出てきます! もうようやく祭りです!(?)

 それでは次回もお楽しみに!

行「ちょっと待てや」

 何? もう終わらせようと思ったのに……

行「お前オリキャラについてどうすんの?」

 あ……。……えーっとですね、感想でオリキャラをくれた方々にお聞きしたいんですが、それらの感想を消してもいいでしょうか。

 理由としては、感想を見たときにネタバレの可能性が出てきてしまうので……。魅力的なキャラ案たちを消すのは忍びないですが、どうかお許しください。


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第六幕 祭中苛烈 顔合わせ&キャラ紹介

 放課後、利奈に指定された日になったので学園の中庭に行人は向かった。用件は《獅鷲星武祭》に対する相談だ。

 

 

 《獅鷲星武祭(グリプス)》──それはで最もハードルが高く、最も番狂わせが起きやすく、そして最も訓練が必要な星武祭だ。

 

 

 経験したことがあるから言えることだが、行人がまず味わったのは連携をとるための地獄の日々だった。某八津崎氏による苦行の数々は今でもトラウマになっていて忘れることができない程だ(当時が今より弱かったのもあるが)

 

 

 そんな行人だが、それでも一応はチーム戦経験者だ。そこらの素人よりは勝手はわかっているつもりだ。少しくらいは他人にも教えられる……と思っていたのだが、

 

 

「……おい利奈、俺にはお前含めて三人しかいない気がするんだが?」

 

 

 中庭にいると思っていた利奈含む五人のメンバーは、その実三人しかいなかった。

 

 

 《獅鷲星武祭》は五人いなければ参加できないため、人数がいないと話にすらならない。なのに呼ばれて来てみればそこにいたのは利奈と見知らぬ少年と、少しだけ見覚えのある少女二人しかいない。

 

 

 どちらも見たところ利奈と同じか一つ下だろうか。少年の方はやけに気だるげで、少女の方も見る限りかなり荒れている雰囲気だ。

 

 

 閉じていた口を先に開いたのは少女の方だった。

 

 

「……おい利奈、こんなやつ本当に役に立つのか? 足手まといになる気しかしねぇぞ?」

 

 

 口調からわかるが、外見もだが内面も荒れているらしい。中々キツいこと言ってくる。少年の方も声は発しておらず無表情のままだが、首を振っているあたり同じ意見らしい。

 

 

「──えーっと……二人とも私のクラスメートで、男の子は賀川燈也(かがわともや)で、女の子の方は刀藤風夏(とうどうふうか)。態度はともかくいい人たち……なはずです、多分」

 

 

 男子は燈也、女子は風夏という名前のようだ。聞いたことによって思い出したが、風夏の名前には聞き覚えがあった。綺凛のように実剣の刀で戦う《電光石火》の二つ名を持つ星導館学園の序列十四位。《冒頭の十二人(ページ・ワン)》の座にすら手が届くほどの、屈指の実力者だ。

 

 

 燈也に関しては一切聞き覚えがないが、行人の強さを気にしてきた風夏が突っ掛かっていないところから、こちらもそれなりの実力はあるはずだ。

 

 

「うん、わかったけど違うよ? 俺が聞きたいのは人数だよ?」

 

 

「それは、ちょっと事情がありまして……」

 

 

 どうやら何か事情があるらしい。利奈はもじもじと恥ずかしそうに呟く。

 

 

「あの……私、あんまり友達とかいなくて……」

 

 

「──大丈夫、それは俺もだ」

 

 

 嗚呼、神よ。なぜ、あなたは『ぼっち』という生き物を創ってしまったのか。なぜ世界に陰(キャ)と陽(キャ)を創り出してしまったのか(適当)

 

 

 肩に手を置いて互いを慰め合う二人は、外の世界を完全にシャットアウトしていた。

 

 

「……僕らを……忘れ、ないで……」

 

 

「いちゃついてるところ悪いがな、《獅鷲星武祭(グリプス)》のメンバーに心当たりがあるって聞いたから来てみたら、──お前本当に戦えんのか?」

 

 

「人を見かけだけで判断すんのは愚策だって知らないのかお前」

 

 

 体格は違えど風夏はレスターのような圧を持っている。普通の人なら圧されてしまうだろうが、それ以上を幾度も経験している行人にとってはさほど問題ない。逆に聞き返して、少女の性格について探りを入れる。

 

 

 しかしそれで返ってきたのは、意外なほど冷静な判断だった。

 

 

「そりゃわかってる。だがな、それでもお前が優秀とは思えないね。《鳳凰星武祭(フェニクス)》で見た感じ中堅くらい強さだろ?」

 

 

 ──なるほど、猪突猛進の馬鹿ではないようだ。元序列一位のように、ただの刀一本で戦い抜いてきた実力は伊達ではないらしい。

 

 

「……それを言われると言い返せないが、戦いにおいて勝敗を決めるのは、なにも強さだけじゃないんだわ」

 

 

「──ならそれを見せてもらおうかァッ!!」

 

 

「ちょっと風夏ちゃん!?」

 

 

 百聞は一見に如かずということか。女子らしからぬ狂暴な声で風夏はそう叫び、手を刀の柄に置き居合いの構えをとる。今の時刻はちょうど四時くらい。回りに人は見えず、いきなり戦いが始まったとしても咎める者はいない。

 

 

 ──行人にはその時、自分の脇腹が何かに切られたかのように感じた。

 

 

(ッ!? なんだこれは!?)

 

 

 我に返るとあったはずの傷は無かった。まるで無像の斬撃に襲われたような……

 

 

「そこぉッ!」

 

 

 そんな思考をゴミ箱へ追いやり目の前の相手に対し集中する。確かに先の力には動揺したが、次に繰り出される剣撃は既に経験済みだ。

 

 

 即座に星辰伝導(プラーナトランス)を使い自ら動きを速め、そして思考を早める。──刀藤流の剣術は綺凛と戦い、行人はそれを打ち破っていたのだ。そしてそのとき使った技術は、当時よりもさらにコントロールがうまくなっている。

 

 

「ッ! させるかよ!」

 

 

「はぁッ!?」

 

 

 風夏が頭付近を狙って上段から振るった刀を白羽取りで受け止めた。これは予想外だったようで、受け止められた風夏だけでなく、それを見ていた利奈と燈也も驚愕していた。

 

 

 星辰力を使って体の攻撃力、防御力を上げる技術。《星脈世代(ジェネステラ)》ならば誰でもできることだが、行人のそれは星辰力の込め方、発動のスムーズさが界龍の拳士が使うそれと比べれる程になっていた。体術のレベルさえ上げれば、徒手空拳でもそれなりに戦えるかもしれない。

 

 

「おきに召してくれたかな? 刀藤風夏ちゃん?」

 

 

「……チッ! わぁったよ……」

 

 

 やったぜと言わんばかりに嫌味な笑みを浮かべ、風夏はそれを見て刀に込めていた力を抜く。

 

 

「……風夏、手加減……した?」

 

 

「……いや。寸止めする気はあったけど、あたしは刀自体は本気で振った」

 

 

「……そう、なんだ……」

 

 

「すいません先輩! 大丈夫ですか!?」

 

 

「あぁ。──利奈、お前の呼んだ仲間は、とんだ大当たりだよ」

 

 

 行人は武芸者ではない。だが風夏の刀には、綺凛とは違った何かを感じた。それに風夏が利奈と同級生ならばまだ中等部の生徒だ。──それは恐ろしいことに、未だ伸び代があるということになる。

 

 

 燈也の強さはわからないが、普通以上の強さがあると見積もれば、──メンバーによってはいいところにまで行けるかもしれない。

 

 

(……若葉に連絡をしてみるか。それと……もしかするとあいつもいけるかもしれないな)

 

 

 既に行人は、利奈に頼まれた《獅鷲星武祭(グリプス)》の件について考え始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:モードレッド(fate) 逆転(春猿火)

 

 刀藤風夏(とうどうふうか)  女 キャラ案:キリトさん

 

 ・身長:159cm

 ・血液型:A型

 ・誕生日:12月12日

 ・所属:星導館学園中等部3年

 ・序列:星導館学園十四位

 ・武装:村正

 ・二つ名:電光石火

 

 

 刀藤綺凛に似ており、しかし綺凛より短い銀髪と碧い瞳の少女。元々は刀藤流の分家で生まれたが、後に本家刀藤鋼一郎の養子(つまり綺凛の従姉妹)となった。ついでに胸は普通。

 

 本来は感情豊かで面倒見のいい人物だが、綺凛への嫉妬と強さへの執着心によって攻撃的な性格になってしまっている。しかし無意識だが綺凛に対する対抗心や庇護欲のもあるため、その気持ちは複雑である。

 

 風を操る力を持っているがそれをあまり好まず、綺凛同様に実剣での刀藤流を使う。また、刀藤流抜刀術の腕は綺凛よりも上である。

 

 実は意外と家事ができ、そこには自信を持っている。

 

 

 イメージ:シグ(ぷよぷよ) 爱丽丝(米津玄師)

 

 賀川燈也(かがわともや)  男 キャラ案:キリトさん

 

 ・身長:150cm

 ・血液型:AB型

 ・誕生日:9月17日

 ・所属:星導館学園中等部3年

 ・序列:序列外

 ・煌式武装:ブレード型煌式武装二本→ブレード型煌式遠隔誘導武装六本

 ・二つ名:なし

 

 

 ボサボサの赤髪と赤瞳を持つ気だるげな少年。父親が銀河の幹部なので、銀河幹部のご子息。

 

 一応礼儀はよくて頭も中々、社交の場に出た経験もあるが、基本は無口、無表情、無愛想の3Nが揃っており、あまり自分から人に関わらないタイプ。

 

 刀による我流の近接戦を得意とし、戦闘力は高い。

 

 実はこれといった願いが無く、アスタリスクにもなんとなく来た。

 

 見た目からは考えられないほど大食いであり、北斗食堂での定食セット五人前抜きは星導館で知らないものはいないほど。




 今回から第六幕です。あんなに因縁つけてたギュスターヴをあっさり見捨てたのは私の責任だ。

 ──だが私は謝らない(無責任)

 で、今回からついにオリキャラの登場です。キャラ案をくださった方の名前は記載してあるので、気になった方は見てください。

 また、後々のためにキャラ募集は続いていますが、これからは活動報告にてすることにしましたので、よろしくお願いします。

※ネタバレを防ぐため、感想欄のキャラ案は削除させていただきます(手遅れかもしれませんけど) 消されたとしてもちゃんと採用されているので、ご了承ください。
 ログインしている方のものは、こちらから手出しできないので、できればそちらでお願いします。


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懸念の解消&キャラ紹介

 流石に空も暗くなっていたので、詳しくは明日話すということになり、翌日。待ち合わせ場所を北斗食堂に決め昼休みに再び集まった四人だが、その内燈也だけは一心不乱に料理を頬張っていた。

 

 

「いや食いすぎだろ賀川……。──それ全部どこ入ってくんだ……?」

 

 

「お腹の……中……。いっぱい……食べた方……が……元気……でる……し、背も……伸び、る……」

 

 

「燈也君の大食い記録は、学園ではかなり有名ですよ?」

 

 

「マジか……。──俺にもくれないかなーなんて……」

 

 

「……ヤダ……」

 

 

 全世界のダイエット中人物が漠然とするであろう量が、それとのギャップがありすぎる体の中に入っていく。その様は料理を作る側には微笑ましく見えるかもしれないが、正直暴飲暴食に見えなくもない。

 

 

「運動も……してるし……普通……だと思、う」

 

 

「あぁ、さいですか」

 

 

「……そろそろ話を始めますよ」

 

 

 おっと、本来の目的をすっかり忘れていたようだ。風夏に至っては若干イラついているし、ここは大人しく従う。

 

 

「──で、結局は《獅鷲星武祭(グリプス)》に出んのか? 既に二回も《星武祭(フェスタ)》に出てんだし、そこらへん考えることあるんじゃねーの?」

 

 

 最初に《獅鷲星武祭》について切り出したのは風夏だ。行人は《星武祭》にあと一回しか出場することができない。本来なら後輩の願いでもあるので、少しは深く考える場面だ。

 

 

「出ないが?」

 

 

「即答かよッ!」

 

 

 しかし行人は違う。端からチームの一員として戦う気など全くない上、ここで《星武祭》のチャンスを捨てるのは流石に惜しい。要約すると、行人は最初から自分の身を惜しんでいたのだ。

 

 

「だが可愛い後輩(利奈)からの申し出、ズバッと切り捨てるのも捨てがたい」

 

 

「おい今なんか妙なニュアンスだったろ!?」

 

 

「第一あと一回しかない機会を、ほぼ初対面に賭けれるわけがねぇだろアホ。──で、だ。俺がその替わりに、二人ほど助っ人を出すってことでどうだ?」

 

 

 といっても、もう助っ人の目星はついていたりする。昨日の内にその二人に……行人にとって数少ない友人に許可を取っておいた。あとは利奈たちの了承を得るだけだ。

 

 

「──先輩。できれば先に、先輩が《獅鷲星武祭(グリプス)》に出ない理由を聞いてもいいですか?」

 

 

 だが利奈は少し納得していない様子だった。前回は目的もなく出場していたのに、今回は拒否されたのが不可解なのだろう。

 

 

 健気で根も真面目、クラスで例えるならば口うるさい委員長気質なのが利奈だ。こうなってくると、ちゃんとした理由がない限り、利奈はあまり意見を変えることがない。ただし今回はそれを心配する必要もない。

 

 

「……戦力として、俺じゃ不十分なんだよ。攻撃的な能力を持つ《魔術師(ダンテ)》や《魔女(ストレガ)》がいないこのチームだと、俺が加わっても焼け石に水だ」

 

 

 チームの勝利を考えるならば、行人では単純な戦闘力が足りない。連携による防御力というのは並の攻撃では崩せないほど厚いもので、それを破るためには純粋な突破力が必要になるのだ。

 

 

 行人には《純星煌式武装(オーガルクス)》という手もあるにはあるが、能力上これも効果は薄い。

 

 

「──安心しろ。一人はお前にとっても信頼できるし、もう一人もこいつら以上に癖があるが腕は確かだ」

 

 

「信頼……?」

 

 

「どこが……癖の……ある……?」

 

 

「それでは、ご来場~!」

 

 

 それぞれ意図の違う声を完全に無視して高らかに声を上げると、こことは別の席から人が立ち上がり、そして行人たちのいる席に近づいてくる。

 

 

「──久しぶり、利奈ちゃん」

 

 

「……え?」

 

 

 一人は黒髪のロングヘアの女子生徒だ。その姿や喋り方からおっとりした性格が少し伺える。

 

 

「……わかば先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「利奈がいなくなったけど、先に紹介しておくぞ」

 

 

「……ルーカス・ロペス。よろしく」

 

 

「……それだけ……?」

 

 

 風夏たちの目の前に立ったもう一人の人物は、男では珍しい長めのクリーム色の髪をした、利奈と共に離れていった生徒とは正反対のイメージを持たせる男だ。

 

 

 喋り方からして寡黙な性格だろうか。目元はやけに鋭く、身のこなしも洗練されている。風夏から見ても、ただ者ではない雰囲気をまとっているように見えた。

 

 

「今わかばはあの子と一緒に別のところに行ったし、詳しくは後での方がいいと思ったけど」

 

 

「まぁ、ひとまず今回はそんなところだな。──お、時間もいいところだし、一旦ここらで解散するか。場所は利奈に連絡させる」

 

 

「お、おい。まだ聞きたいことは──」

 

 

 タイミング悪くチャイムが鳴ったことで風夏の言葉は遮られ、結局何もハッキリしないうちに二回目の集会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後は予定が合わなかったため集会は無し。すっかりお馴染みとなった三人が、雪の降り積もる帰り道を歩く。

 

 

「ご、ごめん二人とも……、久々にわかば先輩に会ってつい……」

 

 

「大、丈夫……」

 

 

「いまいちぱっとしないけどな。あの永見……だっけか? なんか好きになれないんだよな」

 

 

 昨日初めて会ったときから、あの男には自分とは相容れないような何かを感じたのだ。力が抜けきった、脱け殻のような……そんな何かを。

 

 

「そう言わないで風夏ちゃん。あれでも先輩は頼りになる人だから」

 

 

「……風夏、……利奈が言うなら……心配……ない……」

 

 

「──はぁ、わーったよ。あたしも刀を止められた身だし、少しは信用するって」

 

 

「改めて言葉にするとすごいね……」

 

 

「……あたし自身も、なに言ってんのかわかんねぇよ」

 

 

 利奈は白羽取りをする行動に対して驚いているのだろう。だが風夏としては、白羽取りをされたことに対して驚愕していた。

 

 

 風夏が使う剣術は刀藤流──名前を出すと妬ましくなるが、あの元序列一位《疾風刃雷》が使っているものと同じだ。彼女と戦ったことのある人物ならわかる筈だが、完成された刀藤流との戦いは、普通よりも駆け引きの量が格段に増える。

 

 

 風夏が使ったのは代名詞とも言える連鶴ではないが、それでも存在しない剣撃からさらに繰り出された剣は、常人に見切れるような代物でもない。行人に判断する時間は一秒もなかった筈だ。

 

 

 ──それなのに行人は、ろくに剣も合わせていないのに、風夏の剣をしっかりと見極め、あまつさえそれを手で受け止めたのだ。そんな人物は今まで見たこともない。おそらくあの《叢雲》でさえ不可能だ。

 

 

(一体なんだってんだ……あいつ……)

 

 

 得体の知れない人物の介入に、風夏の思考は引き付けられるばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:奥村春(ペルソナ5) 雲雀(ASCA)

 

 桜木(さくらぎ)わかば  女

 

 ・身長:165cm

 ・血液型:A型

 ・誕生日:12月18日

 ・所属:星導館学園高等部3年

 ・序列:星導館学園十九位

 ・武装:ブレード型煌式武装 拳銃型煌式武装

 ・二つ名:花鳥風月

 

 

 明るめで茶色のロングヘアと目の、アスタリスクでは珍しい普通の少女。青春を謳歌するためにアスタリスクへやって来た。

 

 他人に優しく、見た目や話し方からおっとりとした雰囲気も見てとれる。壮大な使命や渇望する願いも特になく、勉学や試合に励んでたまに友達とカフェで談笑する。そんな日々を生きている。

 

 一昔前に流行った剣と銃を合わせた戦い方を好む。また試合の流れを作ることも上手い。反面、予想外の出来事には少し弱い。

 

 優しさ故に、自分の経験がないほどに辛い出来事が、共感できないことを悲しんでいる。

 

 

 イメージ:シンエイ・ノウゼン(エイティシックス) Mirror(安田レイ)

 

 ルーカス・ロペス 男 キャラ案:キリトさん

 

 ・身長:176cm

 ・血液型:O型

 ・誕生日:9月28日

 ・所属:星導館学園高等部3年

 ・序列:星導館学園二十二位

 ・武装:大鎌型煌式武装 

 ・二つ名:処断の魔術師(ライヒハート)

 

 

 長めでクリーム色の髪と、銀色の瞳の青年。目が鋭く、初対面には怖がられやすい。

 

 皮肉屋で若干抜けている性格だが、いい加減ではないため約束は守る人間。少し寡黙かつ、他人に良くも悪くも干渉しすぎないタイプなので、目元を除けば人畜無害な印象を持たれている。しかし学園内に知り合いが多いが、友人はほとんどいない。

 

 過去のとある出来事から自己評価が低く、自らの存在に対して疑問を持っている。

 

 鎖による拘束の後に鎌で攻撃する一撃必殺が主な戦法。鎖自体でも鞭のように攻撃できる。

 

 実は友人と言い切れる人物が、永見行人と桜木わかばしかいない。




 またまたオリキャラ紹介込みの投稿です。

 わかばだけは唯一自分で作ったオリキャラですね。また正確にはアニメの方であった名前を流用して設定を妄想しただけですが。

 それはそうと、どうやらクリスマス当日にアスタリスクの新刊が出るらしいです。真偽のほどはわかりませんが、もしそうなら嬉しいですね。ただしリア充たちが蔓延る街中を越えて買いに行かないとだめですけど(ネットなら別)


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承諾

 場所は変わらず星導館学園北斗食堂にて、見知った顔もある六人は再び集うことになった。今回は休み時間ではなく放課後なので、途中で中断されることもなく時間が許すまでやれる。

 

 

「よーし全員が集まったな? それじゃあ始めるぞ~」

 

 

「おー……」

 

 

 何気なく出した行人の号令にノってくれたのは燈也一人だけであった。数少ない友人にすら見捨てられたことに涙を禁じ得ないが、メンヘラではないためそれは抑えておく。

 

 

「たしか利奈ちゃんたちは行人くんから、メンバーの件をどうするか決めておいてって言われてたんだよね? ──結局のところどうするの?」

 

 

「──俺としては、正直どっちでもいい」

 

 

 彼らをメンバーとして採用するかどうかは、結局のところ利奈たちが決めることだ。行人は案を一つ提供しただけで、それを押し付けるつもりはない。……受けてくれないと困るけど。

 

 

「──私は、その案を受けようと思います。わかば先輩はやっぱり信頼できますし、ルーカス先輩もかなりの実力者なのがわかりましたから」

 

 

「右に同じだ」

 

 

「……おな、じく……」

 

 

 どうやら杞憂だったようだ。利奈たちは案を受けることを決めた。

 

 

「……決まりだな。早速チーム戦への訓練を開始するぞ」

 

 

 ──《獅鷲星武祭(グリプス)》に向けた訓練が、今幕を明ける……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーではまず──不詳、私永見行人! 皆様のアドバイザー兼、その他諸々を勤めさせていただきます!」

 

 

 と、思っていた全員の期待は完璧に裏切られ、目前にいたのは謎に自己紹介(?)をする行人だった。

 

 

「……突然どうしたの? 行人くん」

 

 

 これにはかなり温厚なわかばまでもが、思わず呆れてしまう。まさしく開いた口が塞がらないといった状態だ。

 

 

「……ルーカス・ロペス。武器は大鎌で能力は鎖、一撃必殺が主な戦い方」

 

 

「いや、ルーカス先輩まで何を……」

 

 

「ここにいる五人はチームを組むんだ。──だったら互いを知る必要があるだろ?」

 

 

 チームを組む際に必要なのは、メンバーの特徴を知ることだ。武器、能力、長所や短所、互いの特徴を知った上で、連携や戦術は建てられていくものだ。

 

 

「ほれ、他のも早く早く」

 

 

 行人に煽られて、それぞれの面子も次々に自己紹介を始める。

 

 

「……賀川……燈也……、剣……二つ……使っ、て……戦、う……」

 

 

「わかったよ……。──桜木わかば、私は剣と拳銃を使って戦うよ」

 

 

「白江利奈です。突撃銃とたまに盾を使います。能力は加速で、光弾を速くしたりもできます」

 

 

「……刀藤風夏だ。──刀藤流の剣術を使う」

 

 

「……まあ妥協点だな。正直考えてたのと少し違うが」

 

 

 欲を言えばもっと詳細なことを聞きたかったところだが、自分には見えないものというのもある。俗に言うジョハリの窓のようなものだ。

 

 

「じゃあ早速、チームを組んで実戦といきますかね」

 

 

「それをするとして、場所はどうする」

 

 

「僕たち……《冒頭の十二人(ページ・ワン)》……でも、ない……」

 

 

「大丈夫大丈夫、心当たりがちゃんとあるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──な? 行った通りだろ?」

 

 

 次に六人は、《冒頭の十二人》が使うことを許されているトレーニングルームにいた。

 

 

 ──行人に言われるがままにまず連れてこられたのは、星導館学園の女子寮だった。そして《冒頭の十二人》である《雷鳴》を呼び出し、行人はトレーニングルームについて会話をしてから、最後に笑顔でこう言い放った。

 

 

『──貸さなきゃあの恥ずかしいエピソードをばら蒔く』

 

 

 以上これが、これこぞがド畜生(行人)の所業である。

 

 

「ぜってーあたしの方に近づくなよ。お前、全女子の敵だ」

 

 

「先輩……、少しは自重してくださいよ……」

 

 

「控えめに言って、行人くん最低だよ?」

 

 

『……行人……』

 

 

 これにはその場にいる女子全員から非難の眼差しを向けられる。──女子に分類していいかわからないが、珍しくニアからもそれが来る始末……。

 

 

「小さいこと気にしすぎたら剥げるぞ? まずあいつもここ使わない筈だし、結局のところあまり変わらんし。それにネタはあるけど詳しく自体は知らないから、ばらそうにもばらせない」

 

 

「ごめん、ちょっとなにいってるかわかんないよ」

 

 

「恥ずかしいエピソードがあるのは知ってるけど、それを他の人に話せるほど詳しくはないってこと」

 

 

 まず《雷鳴》がトレーニングルームを頻繁に使う人物かと聞かれると微妙なところだ。だから彼女の私生活に大して影響は出ない。それにならば大して変わらないだろうというのが行人の主張だ。

 

 

 ついでに行人はあんなことを言ったが、その実ただカマをかけただけなので、《雷鳴》の秘密が漏出する可能性自体微塵もなかったのだ。

 

 

「いやそれはそれで……なぁ……」

 

 

「鬼畜度……が……増す一方……だと、思……う」

 

 

 しかしそれとこれとは話が違うと、お前はヤバイやつだと遂には約一名を除き全員から非難が殺到してくる。

 

 

「……そろそろ始めた方がいいと思うけど」

 

 

「「あ」」

 

 

 そしてその一名による指摘を受けてようやく、模擬戦の準備が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の模擬戦は六人を利奈、風夏、燈也のAグループと、行人、わかば、ルーカスのBグループ。この二つのグループに分けて行う。

 

 

 現在は両グループともに作戦会議の時間がとられており、利奈たちは行人たちへの対策を話し合っていたところだ。

 

 

「──そういやぁ燈也。お前自分の武器を新調したんだよな?」

 

 

「う……ん、……煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)……にした」

 

 

「確か、アルルカントと一緒に新しく開発された武装だよね? 複数の武器を思考だけで動かせるって聞いたけど……」

 

 

 利奈は行人とディータから聞いていたのでわかるが、正式な発表はもう少し先だとも聞いていた。それを燈也が知っているのは意外だった。

 

 

「大、体……あって、る……」

 

 

「そりゃすげぇな……で、それは一度に複数を操れたりすんのか?」

 

 

「……でき、る……。……一番……すご、くて……六個……くらいまで」

 

 

「お前は何個だ?」

 

 

「……六個」

 

 

「「…………」」

 

 

 それには素直に驚愕した。まさか燈也が最高峰のレベルで、煌式遠隔誘導武装という新しい武器を使えるとは。

 

 

「……じゃあ、風夏ちゃんが前衛、燈也くんが遊撃で私が後衛。この陣形でいこう」

 

 

 直接的な戦いの経験が豊富な風夏を前に置き、遠隔操作も可能という煌式遠隔誘導武装を持つ燈也は遊撃に。そして武器的に後ろにいた方が機能しやすい利奈はやはり後衛となる。

 

 

「やつらの対策はどうする? ルーカスもそうだが特に永見、あの中じゃ一番底がしれねぇぞ」

 

 

「ルーカス先輩はデータを見る限り能力に注意。先輩は多分後衛だと思うから、他の二人を倒した後で、そこを一気に叩けばいいと思う」

 

 

「……意義……なーし……」

 

 

 そうしているうちに、時刻は模擬戦の開始時間となっていた。




 どうも、最近知人にこれ書いてることバレそうになった者です。リアルですらあれなのにここで持ち出されたらホントに死ねます(色んな意味で)

 そんな私事は一旦置いといて、アスタリスクの新刊が発売するのは決定事項だったみたいです。これを機に原作を読んでみるのもありかもしれません。ただし好みが分かれるのと、現在十四巻まであるので費用がかかるのがネックですけど(宣伝乙)


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消沈

「──チームA対チームB、模擬戦開始(プラクティスマッチスタート)!」

 

 

「行くぞッ!」

 

 

 開始の合図と共に、風夏は行人たちに向かって走り出す。その周りには、燈也の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を三つまとわせている。

 

 

 まだ公表もされていない新しい武器を、燈也はかなりうまく扱えている。煌式遠隔誘導武装のテスターとして携わったのが大きく影響しているようだ。本人曰く、さらに複雑な動きもできるとのこと。

 

 

「受けてたつよ!」

 

 

 それに対して前衛にいるわかばは剣を前に出し、完璧に受けの姿勢に入っている。

 

 

 相手の構成は剣と銃を持ったわかばが前衛で、その後ろにいるルーカスが、能力と大鎌による遊撃を担当している。そしてさらに後方には、後衛であろう行人が銃を構え佇んでいる。概ね予想通りといったところか。

 

 

 行人の持つ銃は利奈と同じものだ。以前と同じものを新しく新調したのだろう。

 

 

「おおっと!」

 

 

 風夏の前方から光弾が、地面からは魔方陣が出現し鎖が飛翔してくる。しかしそれは燈也の煌式遠隔誘導武装と利奈の光弾によって遮られた。

 

 

 三人はそこまで短い付き合いではない。さすがに互いをほとんど知り合っている訳ではないにせよ、それでも付き合いからくる感覚は、初対面の人物と戦うより立ち回りやすく、それがチーム戦の素人よりはずっと連携がとれる理由だった。

 

 

「食らえッ!」

 

 

「はあッ!」

 

 

 わかばへと十分接近した風夏は互いに切り結ぶ。風夏の剣の冴えは並の人物よりも鋭い。あの刀藤綺凛のような流れる剣筋にはないものの、それでも利奈の知るわかばと風夏とでは後者が勝つと思われる。

 

 

 しかしそれはわかばも承知の上のようだ。風夏と比べて剣の腕が見劣りするのはデータからも一目瞭然である。だからこそ、わかばは深く剣を合わせず、もう一つの手に握る銃を使ったヒットアンドアウェイを主に実行していた。

 

 

「っ! チッ!」

 

 

 さらにここでも経験の違いが出てくる。風夏は敵を崩すため、前衛に突っ込んでいった。しかし前に出すぎなのである。現在、両チームの遊撃と後衛は前衛の支援に回っていて、それは距離が離れれば離れるほど、精度がどんどん落ちていってしまう。これでは相手の遊撃に抜けられてしまうかもしれない。

 

 

「風夏! 戻って!」

 

 

「……了解っ!」

 

 

 一度後退の指示を風夏に出す。燈也の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)は残っているものの、それも半数だけだ。ここで支援の手を緩めれば突破される可能性が高くなる。だがこのままでも襲われれば防衛できずにやられてしまう。

 

 

「させると思うか?」

 

 

 ルーカスがそう言うと、突如風夏の四方八方から鎖が出現し、風夏の行く手を遮ってくる。利奈も必死にそれを撃ち抜いていくが、さすがに数が多すぎる。

 

 

「風夏……!」

 

 

 そこで燈也が残りの煌式遠隔誘導武装を投入し、なんとかギリギリで風夏を救出することができた。だが相手の攻撃は緩む気配がない。

 

 

「もらった!」

 

 

「利奈!」

 

 

 いつの間にか右側へ移動したわかばの拳銃からさらに光弾が放たれる。間一髪避けることができたが、わかばはさらに剣を使った接近戦に持ち込んでこようと近づいてきたところを、今度は燈也が煌式遠隔誘導武装を一本戻すことで防ぐ。

 

 

「へぇー、煌式遠隔誘導武装は取っ手が無いって聞いたんだけど」

 

 

「注文……したから……!」

 

 

 燈也の本領は、正確には剣による接近戦だ。煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)は風夏や利奈と戦う上で、より多くの状況に対応できるようになったが、その本質は未だ変わっていない。

 

 

 燈也とわかばは、先の風夏と同じように切り合う。

 

 

「燈也くんお願い! ──風夏ちゃんは……っ!」

 

 

「刀藤風夏、交渉破損(バッジブロークン)

 

 

 しかしその風夏は、思いもよらぬタイミングで脱落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──お前の相手は俺だ」

 

 

「クソッ! 邪魔すんじゃねぇ!」

 

 

 風夏の目前には大鎌を持つルーカスが立っており、行く手を塞いでいた。鎌を使う相手との戦いは、レヴォルフの《吸血暴姫(ラミレクシア)》をイメージして一度だけ想定したことがある。あの凄まじい体術に興味を持ち、それと戦った場合どうなるか気になったからだ。

 

 

 しかし目の前の男は《吸血暴姫》とは違った戦い方をしていた。その動きは演舞のようなのに、刃は全てこちらを狙ってきているのだ。おそらく鎖による誘導も交えているのだろう。

 

 

 ──元々完成していない上、鎌に対して使ったことはないが仕方がない。ここから先に進まなければ、《獅鷲星武祭(グリプス)》でもどのような結果になるか知れたものではない。刀を正眼に構え、呼吸を整える。

 

 

「────」

 

 

「……なんだ?」

 

 

 一歩踏み出し、刀を下段から左上に振る。そこから繋げて今度は左から横凪ぎ、鎌を崩しながら太もも、肩といくつもの斬撃を繰り返していく。

 

 

 ルーカスの表情は次第に青ざめていく。

 

 

「……ッ! まさか……!」

 

 

 そう、これは連鶴だ。綺凛のような完璧な駆け引きなどは欠けているが、それでも一人を確実に倒すならば、刀藤流の連鶴以上な的解はない。風夏は刀藤流分家の抜刀術を得意とするが、刀藤流はそれだけではないのだ。

 

 

 集中していく中で思考が極限まで早くなっていき、風夏の感じる世界初徐々にゆっくりとなっていた。

 

 

(……校章の守りが薄くなってきた……もうすぐで完璧に崩せる……!)

 

 

「……そこだッ!」

 

 

 風夏はここぞと見たタイミングで、校章に向かい刀を突き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし……

 

 

「!?」

 

 

「──勝敗は戦う前にすでに決する、とはよくいったものだな」

 

 

 突き出した風夏の剣は校章に届かず、さらに空中で繋がった鎖が複雑に絡み合い、風夏の動きを封じていた。

 

 

「刀藤風夏、校章破損(バッジブロークン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──チーム戦においては、たった一人が抜けるだけでも相当な痛手となる。こうなると両チームの均衡は崩れ、後は耐えれたとしてもジリ貧になっていく。ならばそれを防ぐには──

 

 

「桜木わかば、校章破損(バッジブロークン)

 

 

「あちゃー」

 

 

 風夏がやられた合図がなったその直後、わかばの校章も割れ無機質な機械音が鳴り響く。

 

 

(これならまだ戦えr)

 

 

「白江利奈、校章破損」

 

 

「……ふぇ?」

 

 

「お前……俺のことすっかり忘れてただろ」

 

 

 その後も激戦が繰り広げられるかと思われた第一回模擬戦は、呆気なくその終わりを迎えた。




 模擬戦書き切りました(白目)

 展開を考えるの面白かったんですが、正直かなりキツかったです。頭痛とか知恵熱発生しそう……。


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決定打

「──今回、初めてにしては連携がとれてたな。……が、まだ足りないのも事実だな」

 

 

 予想はしていたが、初のチーム戦を終えて行人が抱いた感想はやはりこれだ。チーム戦に慣れてないのもあり、こちらの簡易的な戦略にすら対応しきれていない。

 

 

 行人が使った戦略──といっても戦略と言えるかも怪しいが、それは一方に注意を引き付けて、その間に不意を突くという、どちらかというとセオリーに近いだろうか。

 

 

 以前組んでいたクローディアのような人物であれば、周りの状況をほとんど把握し、行人への注意も向け続けていたはずだ。ここまでうまく決まりはしなかっただろう。

 

 

 これは経験の面もあるので、何度も訓練を重ねるしかない。

 

 

「実際はメンバーが五人でチームを組むから、三対三の戦いよりは仲間をカバーしやすくなる。だがそれは相手も同じだ。とってくる手も増えるし、そこまでいくと力押しで勝てる範疇を越える」

 

 

 《獅鷲星武祭(グリプス)》に出てくる輩には、格上に勝てる可能性があると聞いてまぐれを狙う者もいる。そしてそういうやつらは、大抵が初戦で負ける。

 

 

「──チーム戦の要は、メンバーを活かす連携や戦術だ。フォーメーション、立ち回り、連携、それらをあらかじめ打ち合わせしておいて、それを実行できるようになって、初めて相手と同じ土俵に立てる。──たまに例外もいるけどな……」

 

 

 例外というのは、ガラードワースの《銀翼騎士団(ライフローデス)》──前回の優勝チーム、チーム・ランスロットのことだ。彼らには連携や戦術を弄したとしても、それを真っ向から打ち破るだけの力があり、それは実際に戦った行人自身が一番よく知っている。

 

 

「……話が逸れたな。これからはまず二人での連携を覚えれるように、二対二での戦闘を主に行っていく。メンバーはこっちが指示する。その都度タッグは変えるからそのつもりで」

 

 

 とにかくチーム戦において、連携が出来なければまず話にすらならない。なんにせよ、地道に進めていくのが一番の近道だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落星工学研究会は現在、珍しく慌ただしい雰囲気を帯びている。歴史があるとはいえクラブ活動の一種で、普段は所属している学生が籠って研究や煌式武装のカスタマイズをしているのが普通だ。

 

 

 なのにここは、機材を持って右往左往する生徒などで溢れかえっていた。──そしてその風景には、何故かディータまで含まれていた。

 

 

「──ディ、いるかー? まぁいなくても入るけど」

 

 

「ちょっと待ってね。今ちょっ……と、忙しいからっ!」

 

 

 上半身が見えなくなるほどの機材を抱えながらディータは返事をする。さすがに肉体はではないディータにはきつそうなので、行人もそれを手伝うため機材を持つ。

 

 

「……一体なにしてんだ? それにこれは……」

 

 

「学園祭の一大イベントに使うつもりでね。相当に規模がでかくて人手も不足ぎみだから、今こうやって力作業もやっているってわけ」

 

 

「なるほど。──規模を表すと?」

 

 

「三つの学園が合同で」

 

 

 それは驚いた。珍しく行人は目を見開く。学園祭はアスタリスクにおいて《星武祭(フェスタ)》に並ぶ一大イベントだ。しかし三学園合同でイベントを開くのは極めて希だろう(行人の場合はほとんどがカジノ漬けだが)

 

 

「んっしょっと。──それで、今回は何の用件?」

 

 

「……あ、ああ、煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)の件だ。もうそろそろいい頃合いだと思ってな」

 

 

 しばらく《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を使っていないことが多かったのだが、その理由はこれだ。《数多の偽り》と組み合わせて使うというアイデアを実現するには、煌式遠隔誘導武装の他にも《数多の偽り》本体も必要となる。ちなみ返却されたのはちょうど三日前だ。

 

 

「──あ……ごめん、すっかり忘れてたよ……」

 

 

「いや忙しいみたいだし別にいいけどさ」

 

 

「──はい、これがカスタム仕様の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)──名付けて、《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》だよ」

 

 

「──あのさ、そのネーミングセンス、今ちょうどつけたのか?」

 

 

 ディータから渡されたのは、《数多の偽り》と同じ程度の大きさの煌式武装だ。名前をかっこいいと思うか厨二臭いと思うは人それぞれだが、作り主はディータだし名称は何でもいいだろう。

 

 

「別に? というか、そんなことはどうでもいいんだ。運用方法を説明するよ?」

 

 

「はいはい。専門用語は少なめで頼む」

 

 

 ディータは声にさらなる熱を帯びせながら説明を始めていく。こうなったディータは止めるのも一苦労なので、大人しく聞いておくことにする。

 

 

「まず、これは《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》との併用を前提としているから、単体じゃ絶対に使えない。でもその分、他の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)より性能は高く設定してある」

 

 

 燈也の使っていたそれより数は少ないが、その分単体の性能もチューンアップしてあるようだ。

 

 

「次に、通常のものと違う一番の部分は、《数多の偽り》の能力を使用──つまり、色々な武器を展開できる点だよ。もちろん《純星煌式武装(オーガルクス)》も可能だけど、展開した分の代償は一度に来るから、使う際は気をつけて」

 

 

 ディータは《数多の偽り》の本当の能力も知っている。《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》は《数多の偽り》のように、様々な形態を展開できるということだ。

 

 

 そして能力も模倣した《純星煌式武装》を複数使った場合は、その代償を一度に受けなければならない。《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》と《覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)》を使えば星辰力と血液の大量消費に見舞われるし、《黒炉の魔剣》を二つ使えば星辰力の消費は倍増する。

 

 

 《純星煌式武装》は強力な能力と、それに対する代償の二つを兼ね備えている。普通ならばその一つを耐えるので精一杯だ。これは本当に、自滅覚悟の最終手段だ。

 

 

「なるほどな……、わかった。──無茶を通してくれて、ありがとな」

 

 

「僕も興味があったから、これくらい平気だよ」

 

 

 久々に会った友人に短く会釈をして、行人は落星工学研究会を後にした。




 早く学園祭に移りたいと思っていたのが、叶いそうな作者です。

 他のオリキャラもこっちで出したいと思っていますので、登場に期待していてください(提供者様の理想とはかけ離れるかもしれませんが)


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学園祭

 月日は過ぎて春、時期は学園祭の真っ最中だ。

 

 

 学園祭では各学園がそれぞれイベントを開き、それに合わせて他校の生徒や外からの来場者を受け入れるようになる。一番顕著なのはクインヴェールで、特に男の来場者が多くなる傾向にある。

 

 

 他のメンバーは訓練に時間を割くとのことで、学園祭には興味がないらしい。

 

 

 ──なので、学園祭を思う存分楽しもうと思っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ヘルガさん。人(しかも未成年)を居酒屋に連れ込んだ挙げ句、さすがに飲み過ぎですよ……」

 

 

「らってなぁ? しゃいきんはもんだぃじがおおしゅぎるんだぞ~? これくりゃいしないときがしゅまないんだよぉ!」

 

 

「痛っ、痛い痛い! ただでさえ馬鹿力なのに叩かないってぇっ!!」

 

 

 ……はずだったのだが、行人は昼間突然ヘルガに呼び出されて居酒屋に連れ込まれ、前回同様犯罪臭漂う姿で酒をガブガブ飲み干すヘルガに、何度も背中を叩かれていた。

 

 

 普段はあんなに硬いヘルガが酒に呑まれここまでなっているところを見るに、相当ストレスが溜まっていたようだ。──そもそも仕事仲間を呼べばいいものを、なぜ行人が呼び出されなければならないのかわからない。

 

 

「……で? その問題児ってのは、一体なんなんですか」

 

 

「クインヴェールのぉ、せりかっていうやつでにゃあ? つじらいふやいたじゅらのとりしまりがおおしゅぎるんだよぉ。わかるかぁ? このたいひぇんひゃが……」

 

 

 もう呂律も回らなくなっているが、言いたいことはなんとなくわかった。そのセリカという人物がヘルガの憂鬱となっているのだろう。学園祭の時期はいつも以上に警備が厳重となるが、そいつのライブなどがそれに拍車をかけているのだ。

 

 

「あーはいはいわかりました。とりあえず一回出ましょう。二日酔いになりますから」

 

 

「わたひならのうりょくでなおしぇるから──」

 

 

「お勘定お願いしまーす!」

 

 

 正直もうめんどくさかった。これで何かあっても責任をとれないし、とにかく早く終わらせたかった。華奢なヘルガの体を背負って居酒屋を逃げるように出ていく。

 

 

(──何かあったら、星猟警備隊(シャーナガルム)に色々請求してやる)

 

 

 自分もイタズラをしてやろうかと心から思いながら、行人はヘルガの身柄を星猟警備隊に引き渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クインヴェール女学園序列六位、セリカ・サシャールの朝は早い。まずは身だしなみを整える。いつもならアレンジを加えたクインヴェールの制服なのだが、今回は向かうところの関係もあって男装をする。

 

 

 黒を基調としたシックなデザインで、少し怪しさもにじみ出ている。謎の若い紳士とでもいったところか。

 

 

 他にもいつも使うトランプやナイフ、コイン、武器として一応片手剣の煌式武装も持っておく。

 

 

 次に誰もがご存知の歌姫、シルヴィア・リューネハイムの部屋に侵入しそして、

 

 

「……セーリーカーちゃーん?」

 

 

 着替えを見られ怒りに震えるシルヴィアの姿を拝見する。実はあの容姿の秘密を探るために行った行為がことの初まりだったが、いまではシルヴィアのリアクションを見るためになっている。

 

 

 そしてここからが今日の大本命、なんとレヴォルフの校内に入っていく。学園祭中のレヴォルフは校内がカジノとなっていて、それもポーカーやブラックジャックといった本格的なギャンブルが楽しめる。

 

 

 何を隠そう、今回はカジノへと遊びに来たのだ。元々セリカはカジノに遊びに行くことが何度かある。それは自分のためにお金を稼ぐためでもある。セリカは立場上色々な物資が必要となるため、それこそかなりの量の金が必要なことがある。

 

 

 そうして今日も今日とてギャンブルに手を出そうとしたとき、

 

 

(あれは……)

 

 

 見慣れない男がポーカーをプレイしているのが目に留まった。普通にプレイしているだけならば特に関心はなかった。セリカが興味を持った理由は、その人物がゲームで荒稼ぎをしているからだ。

 

 

 男は自分の表情やチップの使い方が異様にうまかった。一つも揃っていないカードでも焦りを見せず汗もかかず、むしろ顔は笑みを深めていた。緩急をつけて相手にこけおどしだと思わせておき、最後にチップをかけて一気に取り戻していた。

 

 

 ──男は完全に、相手を手玉にとっていた。

 

 

(──へぇ~)

 

 

 セリカとしては、なんとなくだがさらに興味を持った。サーカスのピエロのように、成功し、時に失敗し、そんな感覚を持っているように見えた男に、自分と似た者同士かもしれないという興味を湧かせていた。




 急ぎめで書きましたが、やはりというか、かなり雑になってます。オリキャラ出したくて辛抱たまらなかったんですすいません許してください何でもしますから。

 書いてる途中アスタリスクのアニメ公式ホームページで漫画を見ていたんですよ。ユリスとアーネストとイレーネのキャラ崩壊でクッソ笑いましたw あとソフィアとシンルーが可愛すぎました。

 でもソフィアはクインヴェールの翼持ってないから全然わからないっていうね。近くに売ってないかなぁ……(白目)


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空裂の奇術姫&キャラ紹介

 二人の男が行っていたのはクローズド・ポーカー。プレイヤーが全てのカードを伏せて行う、ポーカーと聞けば大体の人が思い浮かべるタイプの、今時のカジノでは少し珍しいルールだ。

 

 

 片方の男は黒ずくめでサングラスに、ハットを目深く被っているマフィアのような男だ。それらは顔のほとんどを覆っていて、あまり表情は伺えない。

 

 

 

 もう一人は体格や仕草からの推測だが、おそらくは学生だ。こちらも同じように黒の格好だが、顔を隠すような格好はしておらず、あくまで少し抜けた──というよりおどけた表情をしていることが多い。

 

 

 ここまでの勝率は七対三くらいで、チップは前者が圧倒的に多く持っている。

 

 

 男は内心でほくそ笑んでいた。この学生は態度は生意気だが、こっちにとっては良いカモだ。チップをレイズするときは大体がノーペアで、こけおどしもいいところだ。

 

 

 表情も隠す気がまるでないし、強いて不満があるのは勝負中に意味のない質問をしてくる点だろうか。たまに不意を突かれることはあるが、それでも勝率は体感的にこちらが高い。

 

 

 少し頭が回るのかただの自信家なのかは知らないが、素人じみた者に出し抜かされるほど、男は甘くなかった。そもそもの経験が──といっても歴戦の猛者ほどではないが、それくらいの場数は踏んできている。

 

 

「……ちょっと質問良いですかね? ああ、答えなくても大丈夫ですよ」

 

 

「……」

 

 

 次のゲームを始めカードを配り終えたところで、学生は不気味な笑みを浮かべながら、何かを問いかけることを告げてきた。

 

 無表情を貫きカードを確認しながら男は思う。──またこれだ。集中力を削ぐための行為なのだろうが、男からすれば無視をするだけだ。別に聞く必要があることを話すことなど……

 

 

「あなたのその手札は、──ジャックと七のツーペア……ですね?」

 

 

 ──その瞬間からだった。男と学生の勝率は逆転したのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。ここ、座っても良いですか?」

 

 

「どうぞ」

 

 

 セリカはしばらくしてカジノから出た男を追い、その男が座っていたベンチに腰を下ろした。遠くからではわからなかったが、近づいてみると普通の猛者にはない雰囲気が感じられる。

 

 

「──あんたみたいな人が一人で出歩くような場所ではないと、俺は思うけどね」

 

 

 どうやらその感覚は当たっていたらしい。今は隠す必要もないので、帽子を脱ぎ束ねていた真っ白な髪を下ろす。

 

 

「……よく男装だってわかりましたね」

 

 

「……いや、変装なのはわかっていたが、女だとはわからなかったな」

 

 

「えっ」

 

 

「格好と仕草からどっかのお偉いさんが隠れて遊びに来たのかと思ってたんだわ。──それがまさかの《空裂の奇術姫(レラティビティ)》とはな」

 

 

 セリカは敬語をやめた男の言葉によって気がついた。男はあなたのようなと言っていたが、それが誰なのかについては言及していなかった。それ自体は今回は問題ないが、気を抜いていたとはいえ、誰でも対処できることに引っ掛かってしまったのは少し悔しい。

 

 

「で? クインヴェール女学園の序列六位が、俺に何か用でもあるのか?」

 

 

「いや、ただなんとなく気になったから、近づいただけですよ」

 

 

「そうかい」

 

 

「……そうだ! いきなりですけど、あっちで私とポーカーやりません?」

 

 

 トランプを出しながら話を切り捨て、頭に思い付いたことを真っ先に口にする。カジノで見ていたのもあって、少しゲームをしてみたいとセリカは思っていたのだ。

 

 

「……いや遠慮しておくわ。何かされても困るし」

 

 

「……ありゃ、ばれちゃってましたか」

 

 

「マジックもカジノでの行いも動画サイトにも上がってて、それを見たんだよ。お前カードにも人の扱いにも慣れてんだろ。それも相当に」

 

 

 目論見が外れたことに、舌をペロリと出す。セリカは白髪紅眼でミステリアスな雰囲気を持っているが、本質は違う。明るく天真爛漫であり──そしてどうしようもなくイタズラ好きなのだ。

 

 

「本当、良い性格してるよお前。ついでに俺から一つだけいいか? 頼むから星猟警備隊(シャーナガルム)に迷惑かけるのはやめて? いやマジで」

 

 

「それはあまり期待しない方がいいですよ」

 

 

「…………」

 

 

 嘘である。セリカの辻ライブ──というより辻マジックだが、それはセリカにとって習性のようなものだ。これは星猟警備隊に遮られても治ることはない。

 

 

 ──セリカにとっての至高は、人間の持つ感情だ。正の感情も負の感情も、それら全てがセリカにとって、生きている実感を与えてくれる。

 

 

 感情の無い人間になど、自分はなりたくない。かつて自らの母がそうなってしまった時は、それこそどす黒い、絶望を覚えた。

 

 

 それだけは、セリカは絶対に受け入れることができない。

 

 

「それでは。……今度ショーをするときは、あなたも見に来てください」

 

 

 もう一度目深に帽子を被り、セリカは男の前から姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──今度の子たちはすごそうだね。序列もそうだけど、それ以上に内に秘めているものが」

 

 

「……そういう感覚は、俺にはよくわからないんだがな」

 

 

 行人は人の姿となったニアと面を向きながら、ため息をつく。

 

 

 元々が一般人で、そこまで重い状況に巡り会わなかったからか、行人はそういった気配や雰囲気に対して鈍い。だから特有の感覚もわからないからそれに気づくこともないし、逆に言えばその感覚に膝をつくこともない。

 

 

「どうしてこう、行人は鈍感なのかなぁ……」

 

 

「……悪かったな」

 

 

 行人はムスっとするが、これはある意味短所だが長所でもあるので、ニアとしてはそこまで責めたりする気はないし、こんなことで怒っていたら、お互いに付き合っていくことはできない。

 

 

 ──行人とニアの目的の一つは、行人自身の目標を見つけることだ。そしてそれは、他人の様を観ていれば何か見つけられるかもしれなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:黒羽快斗(まじっく快斗) 夜行バスにて(花譜)

 

 セリカ・サシャール 女 キャラ案:シグナさん

 身長:152cm

 血液型:O型

 誕生日:10月30日

 所属:クインヴェール女学院髙等部2年

 序列:クインヴェール女学院序列六位

 武装:ナイフ多数、刻印入りトランプ二組程度

 煌式武装:ナイフ型煌式武装 他、剣や銃など様々

 二つ名:空裂の奇術姫(レラティビティ)

 

 

 真っ白な肌とピンで留めたショートヘアの髪、そして紅眼を持つミステリアスな少女。実際は明るく、噂といたずらが好きでそこから付いたあだ名はシリアスブレイカー。

 

 アイドルというよりマジシャンの面が強く、度重なる辻マジックや本人の性格も相まってルサールカ以上の問題児となっている。

 

 七歳で唯一の肉親である母親を失い、その後アスタリスクに来るまではサーカス団の一員として暮らしていた。ジェネステラでありながらアルビノであったため、この二つ理由による迫害を一度に受けていた。

 

 物体の相対座標を入れ換える能力を持ち、触れたものまたは専用の刻印を刻んだものに発動でき、刻印を刻まれたものと自分、または刻まれたもの同士の場所を入れ換えることができる。基本戦法は武器の投擲。騙し合いが得意なため駆け引きにも強い。

 

 亡くなる寸前の母親はほとんど感情を失くしていて、そのような人をあまり出したくないと思っている。




 えー、学園祭初日(笑)です。はい……読んだ通り、ほとんど学園祭要素ないです。その上キャラの登場シーン適当というのはもはや頭おかしいですねw(閲覧者の方を蔑ろにしていく無能)

 今回、ここからの後書きが愚痴で溢れかえっています。もし不快に感じた人がいた場合は削除するので感想で伝えてください。

※製作者の要望もあり、セリカの設定を少し変えました。










※ここからが個人的な愚痴です。興味ない方は勢いよくスライドして飛ばしてください。


 実は少し前にアニメとかの評価をしているスレとかを見たんですよ。アニメ内の設定や話の進み方に対して、やれ「それはおかしいでしょw」とか、まあ色々と感想があったんです。

 自分が好きなものだったからというのもありますが、あまり気分いいものではありませんでした。話や設定が自分に合わないとかはわかりますよ。「クソ寒ッ」なんて見てていいものではないですが、それぞれ感受性とか違うのでまだ許容できます。

 でもそれら対して自分や現実の基準ぶちこんで批判とかしてくるのは(自分の意見ですが)ちょっと違う気がするんです(二次創作などではないです) 

 動画サイトとかでたまに創作物に対して「自分ならこうだな」みたいなことを(間接的ですが)言い出すのがいますよね? 正直知ったこっちゃないです(こんなこと書いといて矛盾してますけど) 

 その世界の設定や常識が、それを作った作者の感覚があるんだから、それでその作品を楽しめば良いでしょう。実際にそれを楽しむ人もいるのに、なんでわざわざ興ざめするようなこと書き始めるのかわかりません。

 もしかしたらその作品の世界が、手に持った石を離したら宙に浮かび空高くに飛んでいく世界かもしれません。それがそこでの常識かもしれないのに、そこへ客観的な批評ならともかく、自分の物差しを押し付けて批判していくのは明らかに違うと感じます(あくまで個人的な意見ですけど)











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特別な友人

「……はぁ……」

 

 

「どう……したの……? 風夏……」

 

 

 回りは学園祭ムードで盛り上がっているなか、それに興味も持たず刀を見てため息をつく一人は、そもそも興味があるかすらわからないもう一人に声をかけられる。

 

 

「いやな? どうもチーム戦において、自分の剣は向いてねぇって思っててさ」

 

 

 最初の模擬戦の後もさらに訓練を続けたが、その末に風夏はその結論に至った。

 

 

 風夏が使う刀藤流は、そもそもが一対一を考えられている剣術だ。故に使い手は相手に対してあまり距離を取らず、かなり近くに肉薄しなければならない。そしてそれが、後衛の支援のしにくさに繋がっていた。

 

 

 相手と密着をすればするほど、後衛は誤射の確率もどんどん上がっていってしまうのだ。前衛を入れ換える場面ならともかく、相手と剣を合わせているときなど後衛からすればお手上げである。

 

 

 これらの理由のため模擬戦の際、風夏は連携が絡まない戦い方になることが多かった。

 

 

「それは……仕方ない……」

 

 

「そこはっきり言わないでくんねぇか?」

 

 

「でも、……大丈夫。……僕……なら、……風夏に合わせれる……」

 

 

 その例外となるのが燈也の煌式遠隔誘導武装だった。なぜなら銃撃や能力による攻撃より、リアルタイムで風夏の動きに追従させることができるからだ。

 

 

「……そうだな。実戦だとチームの中でもコンビやグループができるらしいし、あたしらはそっちのタイプでやるか」

 

 

「──そう……いえば、……能力、は……どうなの……?」

 

 

「いや、それは何度か試したんだが……全然だった。能力があるっつっても、そのイメージがわかんねぇからなぁ……。──元々ほしいものでもねぇんだけど」

 

 

 ──風夏は《魔女(ストレガ)》だ。だが風夏には、普通の《魔女》ならば絶対にあり得ない違いがあった。──風夏は自分の能力が使えないのだ。

 

 

 本来能力者は、自分の星辰力(プラーナ)万応素(マナ)をリンクさせることで自らのイメージを具現化する。しかし風夏はそのイメージができなかった。

 

 

 それができたのは綺凛に追い付くため速さを追い求めていた、幼少期の一度だけらしい。そして風夏自身はその感覚を覚えていない。その時の記録から風を操れる《魔女》だと登録されてはいるが、実際はそんなものを使うことはできない。

 

 

 それを見ていた人物によれば、その時の風夏の回りには風を感じたらしい。しかしそれを言われても、風夏にはその感覚がわからない。ゲームのように風を放出したりまとったりする自分を、一切想像できないのだ。

 

 

 これには風夏の出で立ちにも関係があるのだろう。風夏は剣術の道場出身で、剣の道に身を置いてきた人物だ。剣以外で戦う自分を考えられないのも、ある意味仕方のないことかもしれない。

 

 

「──あたしは綺凛を越えるためにここに来た。メンバーには悪いが、下らない力に頼ることはしたくねぇ」

 

 

 ──風夏は綺凛が羨ましかった。剣の立ち合いで一度たりとも勝てなかった、刀藤家始まって以来の天才とまで呼ばれた、ついでに自分にない家族やプロモーションやらも持つ、あの刀藤綺凛が。

 

 

 その綺凛を越えるために、風夏はあらゆる感情と欲望が交わるこの学戦都市に来た。──どんな手を使っても、風夏は綺凛に勝ちたいのだ。

 

 

「お前と知り合いになったのも、元々はそれが根底にある理由だ。……今はそんなの、あんま関係ねぇかもだけど」

 

 

「ん……。風夏はいい友達。……僕も……会えて良かった……と、思ってる……」

 

 

 風夏も燈也も互いに笑みを浮かべて向かい合う。

 

 

 二人が友人になるきっかけは風夏で、共に剣を使う学生だからというのが始まりだった。風夏にとって燈也は、切磋琢磨し合う仲だ。

 

 

 ──燈也にとってはもっと大事な存在だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燈也は夢も目的もなく、このアスタリスクに来た。

 

 

 親が銀河の幹部で、そこが運営母体である星導館を薦められたから、ただそれがいいと言われたから来た。ただそれだけだ。それが親心からか、はたまた幹部としての判断かは図れないが、燈也にとってそれはどうでもよかった。

 

 

 目標もなく、美味しいものを食べ、それなりに知識を習得し、たまに戦ってすごす。そんな生活を繰り返すだけだ。

 

 

 それに慣れて半年ほどした頃だっただろうか。燈也は初めて風夏と話をした。たまに決闘をしている自分を見て、それに興味をもったからだそうだ。

 

 

 その時燈也は、初めて心を震わせた。自分とは正反対な、確たる目標を持ち、そこへひたすら進み続けようとする……それが燈也から見た、刀藤風夏であった。

 

 

 ──もっとそれを知りたい。そう思って、二人は友人となっていった。片や切磋琢磨する、ライバルのような友人に。片や未知の感覚を教えてくれる、特別な友人に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし! 次はあたしとお前がペアだ。──あのムカつく野郎を見返すためにも、頑張ろうな!」

 

 

「……その言い方、じゃ……どっち野郎……か……わからない、よ……」

 

 

「そりゃどっちもに決まってんだろー? ははッ!」

 

 

 次の模擬戦用の手を考えながら、二人はトレーニングルームの方に歩き始めた。




 前回、自分のストレスをぶつけたせいでお気に入りが減ったり低評価つかないか震えていた作者です。

 まあはい、身の上話とか需要ないし本来書く必要もないことですから、減ってても自業自得なんですけどね。

 では本題です。実はキャラ募集の件で、グリプスで利奈たちが戦う相手の案を考えてほしいのです。あと、今回は所属を書かないで提供してください。所属でネタバレする可能性がありますので。また、どの案を採用するかはわかりません。

 キャラ案はいつも通りに活動報告の方にお願いします(活動報告のURLは用語集の後書きの最後に載っています)

 興味のある方は、ぜひよろしくお願いしますm(_ _)m

※UAが10000を越えました! こんなにも読んでくださってありがとうございます!


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虎の子

 一方その頃……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲き誇れ──赤熱の灼斬花(リビングストンデイジー)!」

 

 

「おいッ! 最初っから飛ばしすぎんだろぉッ!!」

 

 

「知ったことかッ! 今日はとことん付き合ってもらうぞ!」

 

 

 試合開始の合図と同時にユリスの詠唱によって発生したチャクラムと煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)が、すさまじい密度となって行人に襲いかかる。

 

 

 《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》も駆使してなんとかしのぐが、攻撃は厚い壁のようで近づくことすらできない。

 

 

「というか、なんでそんなピリピリしてるn──」

 

 

「黙れッ!」

 

 

「理不尽すぎィ!」

 

 

 そもそもなぜ行人がユリスと戦っているのか。

 

 

 事の発端は時を遡り夕方、学園祭初日が終わりを迎える頃だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──先輩? 今どこにいますか?」

 

 

「クローディアか? 一体どうしたんだこんな時に」

 

 

 行人が帰路に入ってもうすぐ星導館が見えてくるところで、突然クローディアから連絡が来たのだ。

 

 

「実は先輩に頼み事があるんです」

 

 

「……学園祭中に仕事か? さすがに勘弁だぞ」

 

 

「いえ、違います。今回はそういう依頼じゃなくて、純粋にお願いがあって連絡しました」

 

 

 頼み事と聞いて行人は一瞬身構えたが、続いた言葉でそれはすぐにとけた。

 

 

 クローディアは人と接する場合は公私混同はそこまでしないタイプなので(多分)、とりあえずいつもの危険極まりないO☆NE☆GA☆ I のようなことがないことだけは確認できたからだ。

 

 

「ふむ……、んで? それはどういう用件なんだ?」

 

 

「実は、ユリスが最近トレーニングルームから出てこないんです。こちらからも一度連絡しましたがそれにも出ませんし、かといって私が直接会いに行くのも生徒会があって難しいですし……」

 

 

「刀藤や天霧とかじゃだめなのか?」

 

 

「刀藤さんも、ユリスと同じように籠りっきりなんです。綾斗や紗夜は最近、何か別の用事で忙しいみたいなので」

 

 

 聞く限りユリスと綺凛は、一緒に訓練をしている最中なのだろう。学園祭は開かれている間各学園全て休日になる。訓練にはうってつけだ。ただ、そこに天霧と紗夜の名前が無いことにないことが妙に気になるが。

 

 

「──わかった。じゃあそっちに向かってみることにするわ」

 

 

「お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んでなんもないと思ってた矢先これだよクソがッ!)

 

 

 行人は失念していたのだ。クローディアの暗黒物質を煮立てて焦げ付かせたものをブラックホールにぶちこんで黒蜜をかけたくらいの真っ黒さは、所構わずいつも発揮されることを(実際は知らなかっただけかもしれないが)。

 

 

 唯一味方になってくれるかもしれなかった綺凛も、ユリスから溢れんばかりの気迫に涙目で役に立ちそうにない。

 

 

「綻べ──栄裂の炎爪華(グロリオーサ)!」

 

 

「しまっ!」

 

 

 飛翔して来た煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を行人が避けると、それは行人の周囲に突き刺さり魔方陣を展開される。その上左右からはまだ残っていたチャクラムが飛んできて、前に突っ込めばユリスがいる。

 

 

 行人は星辰伝導(プラーナトランス)を発動し状況を全て理解する。星辰伝導の感覚に慣れてきたことで、行人は身体の動きをより早く、脳の処理速度も維持できる時間は変わらないが以前より速度を上げることができる。

 

 

 特に脳の処理速度はかなり成長し、数値にすると前までが処理速度を最大で十倍にできたのに対し、今では最大十五倍にまでできるようになっている。つまり今までよりも長く時間を使えるようになったのだ。

 

 

(左右は論外。後ろも……ダメか。二重攻撃の危険がある。かといって上も……)

 

 

 しかしいくら身体の反応などがよくなっても、実質的なスペックが上がった訳ではない。強引に身体を動かせばその分の痛みを伴うし、脳が焼ける可能性も増したのだ。

 

 

 この状況も星辰伝導で無理やり突破することも可能かもしれない。だが無理は禁物だ。

 

 

(ならば……)

 

 

 チャクラムと巨大な炎の爪がもう寸前にまで迫っている。だが相手はあの《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》だ。罠が仕掛けてある可能性から、前後左右どの方向に避けるのも悪手だろう。

 

 

 ──ちょうどいい機会だ。避けるのが悪手ならば、それを避けなければいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリスは最初から行人を倒す気でいた。というかボコボコにする予定だった。瀕死寸前にまで追い込むつもりでいた。

 

 

 なぜか? イライラしているからである。綾斗があのシルヴィア・リューネハイムと共にいることが、なぜか無性に腹がたつのである。

 

 

 それを紛らわせるためにも綺凛と訓練をしていたが、それでもなぜか気が治まらない。思い切り戦おうにも、あまり本気を出しすぎてユリスだけでなく、綺凛にまでその影響が出ては困る(ユリスの能力上火傷などで傷ができやすいからだ)。

 

 

 そこで来たのが、クローディアからの連絡だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ちょうどいい相手をそちらに向かわせましたよ』

 

 

(せっかくだ。せいぜいサンドバッグにさせてもらうぞ!)

 

 

 どうせ行人は《獅鷲星武祭(グリプス)》にも出ないのだ。ならばクローディアの言葉に甘えて、存分に行人を叩きのめす。

 

 

 行人をチャクラムと炎の爪が包み込んでいく。こうなればもはや後ろから逃げる他に方法はない。そうさせるためにも栄裂の炎爪華(グロリオーサ)は前から爪が迫るようにしたのだ。

 

 

 そして後ろには既に熔空の落紅花(セミセラータ)を設置してある。もしユリスに被弾覚悟で突撃してきても、煌式遠隔誘導武装は戻してあるため対処も容易だ。

 

 

(さぁ、どう出る永見行人……!)

 

 

 全ての技が着弾し、それによって煙が舞う。

 

 

「──なんだと……」

 

 

 しかしユリスは、自身の全ての技を同時に受けながら、それでもほぼ傷を負ってない行人と周りを浮かぶ盾を、確かに見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外、なんとかなるもんだなぁ。──さすがディお手製の煌式遠隔誘導武装(カタリスト・クラスター)だ」




 学園祭のネタが思い付かず結局戦わせている作者です(もはやお約束の後書き)

 いや、書きたかったんですよ。原作の綾斗とシルヴィアみたいにデートとか考えてたんですよ。ですけどね? 行人とニアの設定上どこ行っても目立つイベント無いのに気づいたんです。

 人と武器のマニアックすぎるデートとか誰得すぎて……。あとこう……その橡生で原作の黒幕たちと絡ませたくてもできなかったり……。

 まあ代わりに行人の新しい武装が出てくるので許してくださいm(_ _)m


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腐れ縁

「──珍しいな。大抵の使い手はもっと攻撃的な武器にすると思っていたが、まさか盾型の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)とはな……」

 

 

 行人が回りにまとわせていたのは、ユリスのそれとは完全に異なる盾型の煌式遠隔誘導武装だ。完全に守りに特化しており、実際にユリスの猛攻を全て防ぎきっていた。

 

 

「必要があればそうするやつもいる。それに切り札を切るのは、俺の基本ムーブだろ?」

 

 

「そうだったな。今度はなんだ? 煙幕で撹乱でもしてくるのか?」

 

 

「さて、どうだろう……なッ!」

 

 

 そう言い切ると同時に、行人は煌式遠隔誘導武装を前方のユリスに向け、自分を守りながら走る。

 

 

「させると思うか!? 咲き誇れ──鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)!」

 

 

 対してユリスは、複数の炎の槍を飛翔させる。行人もそれを防ぐが、その毎に煌式遠隔誘導武装が弾かれそうになり、終始ヒヤヒヤさせられる。

 

 

 ユリスの能力は応用力が高く、こと技の多彩さでいえばアスタリスクでも有数の部類に入るだろう。

 

 

 技が多彩ということはつまり、それだけ戦闘で取れる手が多くなるということだ。無論、本人の状況判断などに左右されるが、少なくともユリスはその利点を最大限に活かしている。

 

 

 ここでもそれは発揮されている。遠距離用の有名な技だけでも、六弁の爆焔花(アマリリス)鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)赤熱の灼斬花(リビングストンデイジー)九輪の舞焔花(プリムローズ)の四つがある。

 

 

 大まかに分けて前者の二つが威力重視、後者の二つは操作性重視といったところか。ともかく、ユリスは遠距離攻撃だけで四つもパターンがある。

 

 

 ──そしてさらに恐ろしいのが、こういった選択肢を様々な方面で持ち合わせており、さらにまだ伸び代があるということだ。

 

 

「行くぞッ!」

 

 

「……綻べ──栄裂の炎爪華(グロリオーサ)!」

 

 

 行人は盾型の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を使ってなんとか近づくが、ユリスはそれも想定済みのようだった。ニヤリと笑みを浮かべ、すぐさま魔方陣を発動させる。

 

 

「罠はもう見飽きてんだよッ!」

 

 

「だろうな!」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 予想通り張ってきた魔方陣を破壊するが、ユリスの笑みは未だ崩れていない。そしてユリスの次の行動に、思わず行人は声を上げる。

 

 

「なんのつもりだ……!」

 

 

「お前と私の純粋な肉体スペックはほぼ互角……。ならばこれくらいは造作もないことだ!」

 

 

 行人が意識を魔方陣に向けていた隙に、ユリスはなんと近接戦を仕掛けてきたのだ。しかもそれは煌式遠隔誘導武装を使った前後左右からのオールレンジ攻撃だ。

 

 

 左右と後方を煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)で、前方を行人自身が防ぐが、こうなると動くこともできない。そして……

 

 

「……この状況を私は待っていたッ! 咲き誇れ──六弁の爆焔花・下弁咲(アマリリス・アンダーフロース)!」

 

 

 ユリスの詠唱が引き金となり、行人の真下に爆焔花の種が出現する。

 

 

「……畜生が……!」

 

 

 行人には今の状態から、ユリスを引き剥がす術がない。例えユリスを退けれたとしても、そこから煌式遠隔誘導武装を動かして爆発をしのぐこともできない。おまけにユリスは自分の能力のレジストが可能──こうなっては完全に詰みだ。

 

 

 せめて某志々雄のようにならないよう、火傷が軽症であることを祈りながら、行人はユリスと共に爆焔に包み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──な、永見先輩、大丈夫ですか……?」

 

 

「………………鬼が……鬼姫が襲ってくる……。……死にたく、なぁぁい……」

 

 

「我ながら重傷だなこれは……」

 

 

 案の定、といったところか。行人は熱さに耐えきれず気絶してしまい、見たところユリスの炎に襲われる悪夢にうなされている。

 

 

「まあこいつなら大丈夫だろう。幸い明日はまだ学園祭だし、生活に支障が出ることもあるまい」

 

 

「……容赦ないですね……」

 

 

 綺凛から見るとかなりの重傷(二つの意味で)なのだが、ユリスの方は綺凛ほど気にしていない。綾斗とは違った意味で、ユリスと行人は遠慮のいらない関係なのだろうか。

 

 

「──ユリス先輩は、永見先輩といつ知り合ったのですか?」

 

 

「ん? ああ、私とこいつの出会いは、私闘中のでしゃばりだ。──もちろん私ではないぞ」

 

 

「へぇー、そうなんですか」

 

 

「それからというもの、こいつは存外しつこくてな。近づくなと言ったのに片っ端からそれを無視して、一度ストーカーで訴えてやろうかと思った程だ」

 

 

「そ、それは……」

 

 

 ユリスはあまり警備や他所の機関は信用しないタイプだ。そんなユリスがそこに頼ろうとするくらいなのだから、それは相当に酷かったのだろう。

 

 

「だがフローラの恩もあるし、今ではこうやって、それなりには信用できる人物だがな」

 

 

 やけにユリスが行人の行動に詳しかった理由は、まさしくこれだろう。先の戦いでも、ユリスは戦略に行人が取ってくるであろう戦い方も計算に入っていた。──それはもちろん、あの煌式遠隔誘導武装を含めてだ。

 

 

 一度の立ち合いと買い物しか接点の無い綺凛では不可能だろう。しかしユリスはそれよりも長い月日を、不本意だったが過ごしている。その付き合いがあってこその戦いが、ユリスと行人の試合だった。

 

 

「とにかく、このままここに置いておくわけにもいかん。誰か心当たりがある人物は知らないか?」

 

 

「うーん……。……あ、いました!」

 

 

「これは……、──刀藤風夏?」




 友人に自分の顔をアプリに使われ本田翼と似ているという結果になって、その後TRPGの迷言集を見て爆笑していた作者です。まず性別から違うねんけどなぁ……(困惑)

 前回よりはましになった出来だと思うので許してください。


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葛藤の末

「…………」

 

 

「……久しぶりだね。風夏ちゃん……」

 

 

「……あたしは顔も見たくなかったがな」

 

 

 幼い頃実家で会ったきりで、久々の再会をしたはずの綺凛と風夏の間に、やや険悪なムードが流れる。風夏は完全に背を向けていて、言った通り顔も見たくないほどらしい。

 

 

「……現序列一位との決闘を見たけどな。ありゃなんだ一体。ーー正面切って戦って、挙げ句にゃ負けるなんてなぁ」

 

 

「私はあの時、自分の最大限を尽くして戦った。あの戦いには負けたけど……、悔いはなかったよ……」

 

 

「──そういうのが一々ムカつくんだよ……」

 

 

 風夏が綺凛に嫉妬する理由は、綺凛という存在が妬ましいからだ。自分に無き才覚、剣士としての心構え──特に後者が、風夏にとっては羨ましく、そして理解できなかったものだ。

 

 

 戦いにおいて、それは負けてしまっては元も子もない。《星武祭(フェスタ)》などその筆頭例だ。決闘においても、負ければその瞬間築いてきた序列も崩れ去ってしまう。

 

 

 そんな明確なペナルティも出ているのに、負けて悔いがない? ──訳がわからなかった。

 

 

 それが武人にとって必要な精神であることは、風夏にもわかっているつもりだ。しかし風夏はそれを理解する気はないし、──なにより目標にすら届いてないこの様で、澄ました顔で悔いは無いなど、そんなことどの口で言えようか。

 

 

「──あたしもお前も、次の《獅鷲星武祭(グリプス)》に出場する。……そんときは覚悟してろよ……!」

 

 

「……わかったよ。──風夏ちゃん……」

 

 

 綺凛にとってそれはどうしようもなく、ただ返事を返して、行人を引きずっていく風夏を見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ここまでくりゃ心配ねぇだろ。……いつまで狸寝入りしてるつもりだよお前は」

 

 

「なんでこんな時だけ察しがいいんだお前は……」

 

 

「呻き一つ上げなかったらおかしいと思うもんだろ」

 

 

「お前自分がやってることのエグさ理解してから言えよそれ」

 

 

 屋内外問わず地面を引きずってこられた行人には、火傷に加え痛々しい擦りむきがいくつか追加されていた。ちなみに行人が起きたのはついさっきのことだ。

 

 

「腹いせなの? しばらく訓練に顔出ししてなかったからそらの腹いせなの?」

 

 

「そんままタヒねばよかったってのになぁ……」

 

 

「もう突っ込みが追い付かねぇよ」

 

 

 風夏は冗談じゃなく本気で残念そうにする。初対面の時から思っていたが、風夏は辛辣でやたら狂暴だ。属性で例えるならばツンデレじゃなくツンギレ──いやそれ以上だろう。

 

 

「せめて明日ぐらいは訓練に来いよ。チーム戦の経験者は他にいねぇ。お前がいねぇと、ろくに確認もできやしねぇんだからさぁ」

 

 

「はいはい、わかりましたよツンギレさん」

 

 

「誰がツンギレだッ!」

 

 

「いってぇッ!」

 

 

 またこれだ。お得意のツンギレが発動して顔面に風夏の拳が炸裂する。

 

 

「……少しは先輩をいたわってくれよ……」

 

 

 行人は呻き声を上げながら、渋々トレーニングルームへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーニングルームに入って目に入ったのは、利奈・燈也ペアとルーカス・わかばペアが行っていたコンビ戦だ。だがそれは行人が以前見たものとはまるで違った。

 

 

 一番に連携の精度が格段に上がっていた。利奈は以前ならできなかっただろう攻撃中の味方に対して、しかし今では攻撃中の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)の間を通り抜けるような射撃までできるようになっている。

 

 

 燈也も同様で、それを行うための立ち位置の取り方がうまい。普段は後衛の牽制をしつつ、隙を見せた瞬間に不意打ちの弾丸を叩き込む戦い方が確立されていた。

 

 

 もちろんルーカスたちも、鎖を攻撃を防いだり相手の逃げ道をなくすなどの成長を遂げており、正直行人の予想を遥かに越える早さで連携をものにしていた。

 

 

 ──そこまではよかったのだが……

 

 

(チーム戦の経験が無いことが、唯一の懸念材料だなこれは……)

 

 

 ここまでの連携の精度は、完璧と言えるほど確実によくなっている。しかし完璧すぎるのだ。

 

 

 《鳳凰星武祭(フェニクス)》ならばこれでもまだよかったが、今回の大会は《獅鷲星武祭(グリプス)》だ。味方も相手も五人チームで、いつもこのような連携を許してくれるとも限らない。

 

 

 実際に五人同時に戦う経験もこれまで一度も無かったため、特にガラードワースなどの学園と戦えばそれが顕著に出るはずだ。かといってシミュレーションバトルをさせるのもかえって実戦みがない。

 

 

(──仕方ないか……)

 

 

 当初は考えてなかったが、ここまでうまく戦えるようになった現状を見るともったいない。

 

 

「……風夏、模擬戦が終わった後であいつらを集めてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──五対五の(本格的な)チーム戦を始めるぞ」




 これを書いてる少し前、原作七巻に水が直撃してショックを受けている作者です……。※更新遅れてしまいすいません……m(_ _)m

 ようやく風夏にそれっぽい過去を描写できました。自分の作品は人物たちの過去などがかなり不鮮明なので、そういった面白さがないんですよね……

 登場人物に息を吹き込んでいる他の作者様を見て、やはりすごいなと思うばかりです。マジで。


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実践教練

「──いいかお前ら。これから見せることは絶対にオフレコで頼む」

 

 

「ったく。一体なんだってんだ? いきなりチーム戦を始めるとか言っときながら、今度は辺りを調べさせやがって」

 

 

「他チームにバレたくない……っていうには少しやり過ぎなきもするけど……」

 

 

「──何か方法でもあるんですか? 先輩」

 

 

 突然の奇怪な指示に一同は謎を浮かべるばかりの様子。その光景には珍しく燈也の姿も混じっていた。なお、ルーカスだけはその内容にも興味がないらしい。

 

 

「──いくぞ?」

 

 

 行人はそれだけ言うと、自分の前列に煌式遠隔誘導武装──《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》を展開し《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を翳す。

 

 

『……本当にいいの?』

 

 

「……オーケーだ」

 

 

「? 誰と話してるの?」

 

 

「今にわかるぞわかば」

 

 

 そして《数多の偽り》を手放す。すると、それと《偽りの触媒》が人の形を作り、それらは全く同じ姿の、純白の少女となる。

 

 

「なっ!?」

 

 

「なに……これ……!?」

 

 

「これは……」

 

 

「……もう慣れてきた自分が嫌です……」

 

 

「俺は訓練に役立つなら何でもいい」

 

 

 これまた選り取りみどりな反応をするチーム……名称がないため呼称できないが、とりあえずみんな色々言っている。

 

 

「始めまして。チーム……って、名前ないんだよね」

 

 

「ちょうど俺も思ったけどそれは後でいいな。──えー、紹介するぞ。こいつはニア、これからお前らの相手をする──」

 

 

「ちょ、ちょっと待てよおい!? なにがなんだかよくわからなくなってきたぞ!?」

 

 

 ──説明中──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にわかには信じられないね……」

 

 

「でも……、実際に……いる……」

 

 

「ニアさんって複数でいられたんですか……」

 

 

「……ルーカス、お前もう少し反応したらどうなんだ」

 

 

「……別になんでもいい」

 

 

 ルーカスが行人の目には人形に見えてきたのは気のせいだろうか。それはさておき、これから五人同士でのチーム戦を開始するため、行人は四人のニアに煌式武装を配り自分も位置に着く。

 

 

「──指示しといてなんだが気持ち悪いなこれ……」

 

 

「今ここでリンチにしてもいいんだよ行人?」

 

 

「ゴメンナサイ」

 

 

「──チームA対チームB、模擬戦開始(プラクティスマッチスタート)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい、永見行人の《純星煌式武装(オーガルクス)》は、例のものと同じように、明確な意思を持つようです」

 

 

 現序列七位《雷鳴》のトレーニングルームにて、人影が通信で報告する。報告相手は銀河の幹部──つまり星導館学園の運営母体である統合企業財体、その直属の人物だ。

 

 

「──どういたしますか。……はい……。……了解しました。以降も監視を続行します」

 

 

 そう言い終え、人影は表の世界へと向かう。もっとも人影にとっては、そこが表でも裏でも関係のないことだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、皆様方。よくぞお集まりいただいた。今回もチームに必要不可欠な重要な事を話し合っていくぞ」

 

 

「……こういうときの先輩はロクなことをしたためしがないんですけど」

 

 

「「同感」」

 

 

「お前らノリ悪すぎだろ……」

 

 

 逆に行人からすればこの五人を話し相手にするとロクな反応が返ってこないと内心思うが、それは口を固く閉ざして我慢する。今回は自己紹介と同様に重要な事を決めるのだから。

 

 

 それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──チーム名だッ!」

 

 

「「(何となく)知ってた」」

 

 

「( ;´・ω・`)」

 

 

 ( ;´・ω・`)

 

 

『その……元気だして?』

 

 

「寮に帰ったらニア(お前)○○○○○(自主規制)するわ」

 

 

『!?』

 

 

「ついに頭おかしくなりました?」

 

 

 閑話休題。

 

 

「えー、こほん! 今さらチーム名を決めるのは、まあちゃんとした理由がある。まず全員で物事を決めるのはそこまで経験ないだろ? 特に実戦への作戦会議なら、全員が納得できることをしっかり表すのが重要になってくる」

 

 

 ここのメンバーは五人全員で作戦を立てるのはほぼ初めてだ。ここまで人数が多くなると、なるべく意見をまとめたりすることが非常に重要になってくる。

 

 

 だがそれは言われてすぐできるかというとそうではない。こういったことには少なからず慣れが必要だ。

 

 

 それに人間というものは、普段はいなかったものがいきなり現れるとストレスを感じることもあるという。ならば、まずはこうした他愛もない話をしていくのも重要だと思ったのだ。

 

 

「つまり、まずはみんなでチーム名を決めてみて話し合いの土台を作るってこと?」

 

 

「そういうこったな」

 

 

「別にいいけどよ。いきなり言われても特に思い付かねーぞ?」

 

 

「ネットとかで良さげな意味の英単語にするのも結構いいぞ。他にも全然関係ない言葉を別の意味を込めて選んでもいい。例えば赤いバラとかで「愛情」、そこからチーム・ローズとかな」

 

 

 困ったときはインターネット。現代人の切り札だ。事実、ネットの渦にある無数の知識や意味深な言葉はそういったことにも役立つだろう。

 

 

「そういうわけで、俺は今日の一大イベントに出てくるわ。それが終わるまでに考えたらいいんじゃないか? あ、他校の生徒も何人か参戦するし、見学しておいたほうがいいぞ~」




 どうも三日振りで投稿した作者です。遅れてしまいすいませんでしたm(_ _)m

 なんだか雑になってしまいましたが、今回はどうでしたか? 個人的に戦闘もなかったし日常的にも微妙だった……


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一大イベント

 シリウスドーム内にて行人は思わず驚嘆する。ドームには名も知れぬ人物から《叢雲》こと天霧綾斗、《天苛武葬》の(ジャオ)虎峰(フーフォン)に《吸血暴姫(ラミレクシア)》のイレーネ・ウルサイスといった有名人がちらほらいる。

 

 

 そしてその中には剣聖と名高い《聖騎士(ペンドラゴン)》ことアーネスト・フェアクロフ、世界トップアイドルもとい《戦律の魔女(シグルドリーヴァ)》のシルヴィア・リューネハイムの姿もある。

 

 

(この面子がいる中でどれだけの間持つやら……)

 

 

 わざわざ三学園が合同で開き、さらにはシリウスドームを使えるとなれば、戦闘系のイベントだろう。

 

 

 しかしイベントの詳細が語られてない以上、その場でのアドリブで耐えしのぐしか手段はない。だが、行人の戦闘力自体は一般の学生と比べて少し上くらいといったところだ。

 

 

 前述の猛者たちならば造作もないことだろうが、あまりに高性能なものが来ても行人には耐えれない。武器もいつもの《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》ではないし、道具も一切持ち込めない。あるのは支給された一本の煌式武装(ルークス)だけ。

 

 

 なるべく強者たちの後ろに隠れられるタイプのイベントであることを祈る。

 

 

(──ま、あんまカッコ悪い姿も見せられんけどな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イベントの第一フェイズの種目は、煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)の回避とターゲットである特定の赤いそれを破壊することだ。

 

 

 煌式遠隔誘導武装の数はざっと見てもかなり多く、その上で特定の赤いものを破壊しなければならない。天霧らのような実力者はすぐに抜けてしまったようだが、その分脱落者も出てきている。

 

 

「キツすぎるだろ……! これ……!」

 

 

 行人は飛翔してくる数多くの煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を紙一重で避けるが、その後への一歩が全く踏み出せない。なにせ一発でも当たればそこで終わりなのだ。下手に行動は起こせない。

 

 

(あらゆる方向から飛んできやがる……。──まてよ……?)

 

 

 一度星辰伝導(プラーナトランス)を使い頭を落ち着かせる過程で、行人は一つの結論を出す。

 

 

 この数の煌式遠隔誘導武装は強力だが、それでも操作している人物は全て人だ。ならばある程度たった頃から動きが鈍くなってくるはず。

 

 

「──試してみるか……」

 

 

 極力リスクを大きくするのは避けたい。回りの選手もほとんどいなくなってきた頃に、行人はようやく動いた。

 

 

「……そこだッ!」

 

 

 自分を襲う煌式遠隔誘導武装の動きが鈍くなってきたところを狙い、遠く離れた場所を飛んでいる目的のそれに、支給されたブレード型の煌式武装(ルークス)を勢いよく投擲する。

 

 

 それは数ある武装の中をくぐり抜けて行き、目的である赤の煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を破壊した。

 

 

(──最大速度で突破する……!)

 

 

 最後に行人も再度星辰伝導(プラーナトランス)を使って道のりを探しだし、星辰力(プラーナ)を脚に作用させてそれらをくぐり抜け、煌式武装を手にとってから最後にゴールへとたどり着く。

 

 

 イベント出場者最後の突破者であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……永見先輩?」

 

 

「あれ、綾斗君知り合い?」

 

 

 綾斗が攻撃を避けている行人の方を見て呟くと、シルヴィアから声がかかる。

 

 

「えっと、俺より一つ上の先輩だよ。ほら、《鳳凰星武祭(フェニクス)》にも出てた……」

 

 

「あー、あの見慣れない《純星煌式武装(オーガルクス)》を使ってた人だね」

 

 

「それなら僕も見覚えがあるね。彼は以前の《獅鷲星武祭(グリプス)》で戦ったチームメンバーの一人だったよ」

 

 

 それは訓練中にクローディアから聞いたことがあったので、綾斗はその事について思い出す。

 

 

 行人は当時クローディアのチームの一人で、繋がりもそこからが主なものらしい。そこから裏で活動させられるのは少し理解しかねるが……

 

 

「んー、……なんというか、状況の判断力がすごいね。普通ならミスをしてもおかしくないのに、動きの精度が尋常じゃないよ」

 

 

「元々、彼は遊撃手として立ち回っていたのもあるだろうね。スペックや技術の面は並程度だとしても、試合運びでそれを補っている。もっとも、以前よりも全体的に成長しているみたいだけど」

 

 

「そうなんですか。──ん……?」

 

 

 そんな話をしていると、綾斗にシルヴィア、アーネストは一斉に、攻勢に出た行人から違和感を感じ視線を向ける。

 

 

 動きを変えたのもあるが、三人が感じたのはその少し前だ。攻勢に出る刹那、突然星辰力(プラーナ)に違和感を感じたのだ。星辰力の量などはそのままだが、体内のそれの動きがいきなり指向性を持ったような感じがした。

 

 

 こうやって近くでなければ感じないほど微弱で、かつ一瞬のことだったため綾斗だけなら気のせいだと断じただろう。しかしそれを感じ取ったのは綾斗だけではなかった。

 

 

「……今の、感じた?」

 

 

「……あんなのは初めて見るね。今まで戦ってきた人にも、あんなことをする人物は僕は知らないな」

 

 

 二人は考え込んでしまう。綾斗よりもここでの生活も戦いも長い二人にとっても、今のは経験したことがないもののようだ。

 

 

星露(シンルー)なら何か知ってるかも? 私たちの想像もつかないことを知ってたし」

 

 

「いや、でもそれは……」

 

 

「……公主に聞きに行くのは、少し止めておいたほうがいいだろうね。──もしあの人が知らないとして、その場合新しい戦闘技術に目を光らせること間違いない」

 

 

 その後さらなる雑談を繰り返し行っていると、既にイベントは第二フェイズへと入る寸前になっていた。




 はい、原作のイベントを出してみました作者で え? 学園祭はどうしたって? 知らんな(描写できませんでしたすいませんm(_ _)m)

 これからのグリプスもいいけど早くリンドブルス書きたいって結構思ってます。番外編で日常とかバトルとかその他諸々やろうかな……


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対抗策

 煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)を退け、なんとか第二フェイズにまでは漕ぎ着けた行人。星辰伝導(プラーナトランス)による痛みなどはあるが、動けなくなる程度ではない。まだ戦える。

 

 

 次のフェイズで出てくるものは、擬形体(パペット)よりもロボットらしく見える戦闘用外骨格(パワードスーツ)だ。装甲はアルディのようなものより重厚そうで、見た目は全体的に太く動きは鈍重だと思える。

 

 

 こちらも一切の被弾を許さない形式の上、実際の性能がわかっているわけではないため油断できないが、行人の予想が合ってさえいるならば、第一フェイズの煌式遠隔誘導武装群の突破よりは比較的楽そうにも見える。

 

 

 なぜならあっちが百機程の圧倒的密度でこちらを封じてくるのに対して、現在出てきている戦闘用外骨格(パワードスーツ)は見た目から動きが遅いと予想でき、数も二十体と少ない。

 

 

『──それでは第二フェイズ、スタート!』

 

 

 その合図と共に突進してきた一体の戦闘用外骨格の機動力と膂力に、思わず行人は驚愕する。

 

 

「……マジかよ……」

 

 

 なんとその巨体からは想像もつかない速さで動き、近場にいた一人の生徒を腕に内蔵されたブレードと圧倒的なパワーで弾き飛ばしたのだ。さらに追撃として左腕から光弾が放たれる。

 

 

 素早いスピードに遠近に対応した装備、さらに多人数での連携も可能、反撃しようにも装甲によって防がれる上一度でも被弾すれば即退場ときた。

 

 

(──やべぇクッソ逃げ出したい……)

 

 

 はっきり言ってイベントに使うスペックを越えていると思う。上位陣にはまだまだ足りないのかもしれないが、一般からすれば脅威すぎる。

 

 

 動きが鈍いのならばまだ考えもあったが、ここまでの性能を見た限りでは逃げ切れる気がしない。参加者側の速さで逃げ切れるのは(ジャオ)虎峰(フーフォン)くらいのものだろう。

 

 

 戦って打ち破るしかないにしても、あの装甲にこちらの攻撃がどれほど効くかわかったものではない(地面で試したが、この武器自体も威力が弱く設定されている)。

 

 

 元々は《聖騎士(ペンドラゴン)》も《戦律の魔女(シグルドリーヴァ)》もいなかったらしいし、主催者側にはイベントをクリアさせる気がほとんどないようだ。

 

 

「危ねッ!」

 

 

 例の戦闘用外骨格がこちらにも一体突進してきて、右腕の光剣で振るってくる。その様は断ち切るというより叩き潰すようにも見える。

 

 

 そこから二撃目、三撃目とさらにこちらをなぎ払ってくる。中の操縦者も熟練とまではいかないがそれなりの強さだ。堅実にこちらを壁際にまで追い込んでくる。

 

 

「チィッ!」

 

 

 行人は剣を振るう腕の内側に入ってなんとか関節を切りつけ立ち位置を逆転させるが、当の腕にはダメージがない。

 

 

 正面よりは薄いが、動きを妨げない程度の装甲が関節にもあるのだろう。重装甲の相手に対するセオリーにもしっかり対策がなされている辺り、製作者も抜け目がない。

 

 

「……は? え? は?」

 

 

 しかしそこに何らかの金属が斬られた音が鳴り響く。戦闘用外骨格(パワードスーツ)もそちらを向いたのだろう。その方向には腕をだらりとさせ膝をつく、もう一つの戦闘用外骨格の姿があった。その側には《戦律の魔女(シグルドリーヴァ)》もとい、シルヴィア・リューネハイムの姿もある。

 

 

 状況から察するに、あれはシルヴィアによるものだろう。かの《戦律の魔女》ほどの腕前であれば、方法はともあれ戦闘用外骨格を無力化できるのも納得がいく。

 

 

(問題はその方法だ……。どうにか参考にできないか……?)

 

 

 そこにちょうどよく、今度はアーネスト・フェアクロフと二体の戦闘用外骨格(パワードスーツ)がそれぞれ肉薄していた。剣聖と名高いアーネストにも、シルヴィアと同じような芸当ができるはずだ。

 

 

 何とかその一端から原理だけでも探れないかと、迫り来る攻撃を大きく避けながら星辰伝導(プラーナトランス)まで使って危なげに観察する。

 

 

 そして行人が出した結論は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……全くわからん!!)

 

 

 心の中で行人は恥じた。後悔した。己の小ささを嘆いた。

 

 

 《聖騎士(ペンドラゴン)》──五代目の剣聖ともうたわれるその剣技を、技術どころか身体スペックも経験もさらにはぶっちゃけ戦闘とは関係ない部分(顔とか)でもハイスペックな人物の技を、剣術ド素人かつ低スペック人である行人が見ただけで理解できるはずもなかったのだ。

 

 

 それこそ、関節は他の部位より装甲が薄いということしか行人にはわかっていない。参加者の人数も二桁を切った。この状況でどこかのグループに入りでもしたら、敵がそこに集中し乱戦となって一貫の終わりだ。

 

 

 何か……何か手はないだろうか。煌式武装(ルークス)の威力にこだわらず、戦闘用外骨格(パワードスーツ)の関節を突破できる方法は……

 

 

(……! そうか!)

 

 

 突如行人の頭でエジソンの電球が光を灯す。リスキーだが切ってだめならば方法はこれしか思いつかない。

 

 

 行人は上から振り下ろされた戦闘用外骨格の攻撃をその股をくぐることで避け、戦闘用外骨格側に振り返り足の関節の僅かな隙間に煌式武装を左で逆手持ちにして差し込む。

 

 

(切ってだめならば……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──貫け!」

 

 

 そして星辰力を込めた拳を、今度は武器を差し込むときの力も使って、煌式武装(ルークス)の柄頭に思い切り叩き込む。

 

 

 煌式武装のブレード先端、その一点に集約された力は一気に放出され、戦闘用外骨格(パワードスーツ)の足関節部装甲を貫き、操作系をめちゃくちゃにした。




 お久しぶりです。一週間立たないで一応帰ってこれたけど、他の方の作品と自分の作品を比べると(´・ω・)となる作者です。

※しばらく愚痴が続きます

 いや、比べれないのはわかってるんですよ。でもやっぱり自分の作品がどれくらいなのかなぁ、って思うとそうなっちゃうんですよね……。

 まず他より見劣りすると思うのは題名とあらすじです。

 アスタリスクの二次創作で有名なものといえば、やはり綺凛の兄が出てくる作品とかでしょうか。明確に「兄」という存在がメインであるとわかり、これだけで興味をそそります。他にもクロスオーバー系であるだけでも同様です。

 でもこの作品の場合、原作に「愚者の足掻き」を加えただけでインパクトが薄いんですよね。他作品の合併もないですし、なにより強さ弱さとかもよくわかりません。

 この作品自体、強さ中間ぐらいのモブの視点が繰り広げられるってだけですからね。他の作品は最強クラスが暴れたり、底辺が這い上がる物語とか他にも色々あります。

 では前者と後者、どちらが面白そうですかね? 自分は後者です。

結論:自分の力不足(泣)

 次回もお楽しみに!(他作品の作者の皆様《特にbang bangさん》、勝手に話に出してすいません)


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第七幕 黒光現参 謎の人物

「──なぁなんであれで失格なの? まだ武器にかすってもいなかったんだぞ?」

 

 

「あからさまに突撃を食らってからねあれは……。さすがに言い逃れはできないと思うよ」

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 あの後行人に舞い降りたのは勝利の女神ではなく呆気のない終了であった。

 

 

 半ば強引に戦闘用外骨格(パワードスーツ)を戦闘不能に追い込んだが、それから別の戦闘用外骨格にタックルを受けてしまったのだ。煌式武装(ルークス)を使っていなかったためそのまま続けようとした矢先、審査員からの忠告を受けた。

 

 

 いくつか抗議もしたがタックルも攻撃の一つだともっともな正論で弾丸論破されたため、仕方なく退場口から少しした場所のベンチに横たわって今に至る。

 

 

 最近は多用していたので星辰伝導(プラーナトランス)にも以前より慣れてきたが、それでも頭が割れそうになる痛みにはやはり抵抗が残る。

 

 

「もうあいつらラグビーでもしてろよ……」

 

 

「合ってるのタックルだけだからね」

 

 

 ニアからはあしらわれるが、あんなにいけるかギリギリの場面を突いたその直後にゲームオーバーとなれば、クレームの一つや二つはつけたくなるものだろう。

 

 

 ついでに、イベントは現在第三フェイズにまで移行しており、ドーム内では先ほどより白熱した(もとい鬼畜すぎる)戦いが繰り広げられている。

 

 

 攻撃で壁はめり込むし防御も戦闘用外骨格(パワードスーツ)以上だし、──これなんて無理ゲー? 

 

 

「ま、得るもんはあったし、あいつらにもいい手土産ができた。しばらくしたらここから……って、どうした?」

 

 

 そう気楽に話していると、行人はニアの態度に異変が生じたのを感じ取った。

 

 

「──今……、純星煌式武装(オーガルクス)の反応があった……」

 

 

「ッ!!? ……どこだ……?」

 

 

 回りに聞こえないほどに声を小さくし、耳をニアの口元に寄せる。

 

 

 ニアが気配を感じたということは、今ここの近くに純星煌式武装を起動している輩がいるということだ。考えられるのは近辺の別室、換気扇の中、トイレ、etc……とにかくそんな人物がいるならば、それは襲撃者の可能性が高い。

 

 

「……今、目の前を通ってた……」

 

 

「……それは本当か……?」

 

 

 ──だがニアから返ってきたのは、そんな予想を覆すようなものだった。

 

 

「──それはつまり、視覚とかに干渉してるってことか?」

 

 

「わからない……。けど……、あれは逃したらだめな気がする……、行人、追って……!」

 

 

 ニアが普段なら見せない、懇願するような視線で訴えてくる。ニアはあまり感情を表に出すタイプではない。それがこんなに慌てるとは、よほど不安が募っているということだろう。

 

 

「……!」

 

 

 そして行人は目付きを変える。戦闘や裏仕事をするときの、普段より鋭さを増した眼光だ。

 

 

 ニアに反応を伝えるよう指示してホルダーの中に《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》をしまい、その不可視の存在の追跡に移る。指示を基準に大まかな距離を割り出し、付かず離れずを維持しながら。

 

 

「──どっちだ……」

 

 

『右、二メートル先ぐらいにいるよ』

 

 

 そうしてたどり着いたのは、お偉いさん方が扱うような特別観戦室への道のりだった。関係者以外立ち入り禁止なので人はいないが、ここは奥に行けば行くほど一方通行で、隠れる場所もほとんど見当たらない。

 

 

 尾行する分には都合がいいが、気づかれた際のカバーは期待しない方がいいだろう。わざわざ純星煌式武装(オーガルクス)を持ってくるほどの手練れに見つかれば、戦っても勝てる気がしないので即逃亡の準備もしておく。

 

 

 ふと、目の前の扉が、誰もいないのにいきなり開いた。

 

 

『──入っていったよ』

 

 

 わかっている、と行人は心の中でそう答える。これでニアの感じたものがそこに確かに存在していることが明らかになった。おそらく透明化や五感への影響を及ぼす能力持ちだ。

 

 

 開く扉から視覚になる位置で待機し、また扉が開くと、そこから出てきたのは目深にローブを被っている女性だ。ニアはそれが対象だと言うので追跡を再開する。

 

 

 ついでに中も覗いてみたが、そこにいたのは界龍の謎の幼女とアザもないのにのびていたアルルカントの男だ。

 

 

 ここにいる人物はいずれも要人なのだろうが、誰かがさらわれた形跡もなし。かといって物をとられたり襲撃を受けたわけでもない(のびていた男も命に別状がない)。

 

 

 何者かはそのままどこに立ち寄るわけでもなく、こちらもその目的を一切図れないまま、もう廊下の出口のうちの一つに近い場所まで来ている。

 

 

(見失うのを覚悟で先回りしたのはいいが……、一か八か捕らえるか……? いやそんなことしたら返り討ちの可能性が……)

 

 

「──ウルスラ!」

 

 

「!?」

 

 

 強行手段に出ようとした行人を踏ん張らせたのは、突然現れたシルヴィア・リューネハイムの声だ。時間から考えてまだイベントの途中だったはずだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 短い会話を聞いて、二人は何か親しい間柄だったことはわかった。だが……、

 

 

『──この身体の関係者か』

 

 

『──あなた……誰?』

 

 

『──名乗る必要はない』

 

 

 どうも人間かすら怪しい。シルヴィアの口調から、ウルスラは彼女の知る人物とはかけ離れている。それに「この身体」なんて普通なら言うはずがないし、それこそ何かがあの中に潜んでいるような……。

 

 

(……まさか……、そうなのかよおい……!)

 

 

 その考えにたどり着いたとき、行人はゾッとするのを感じた。

 

 

 もし、あの身体が何者かに操られているものだとしたら? 

 

 

 《魔術師(ダンテ)》や《魔女(ストレガ)》の精神干渉能力では《星脈世代(ジェネステラ)》を操ることなどできない。かといって彼女以外から純星煌式武装(オーガルクス)の感覚はないらしい。

 

 

 だが彼女が、──自分の持つ純星煌式武装に操られていると考えたら? 

 

 

 性格、口調、癖、それら全てを身体そのままで完全に違うものにするならば、それこそ別の誰かが入る他ない。──それに行人の目の前には、自我を持つ純星煌式武装の例もある。

 

 

「──う、あああ……ッ!」

 

 

 ──突如シルヴィアが、謎の黒い光によって覆われ、頭を抑えながら苦しみ始めた。




 後書きで愚痴りすぎたせいかお気に入りが一人減ってしまいました。さすがに自重しますm(_ _)m

 えーっと、今回から第七幕です。グダグダだった学園祭から一変、原作の中心に迫っていければと思っています。

 日常を望んでいた方々には申し訳ありません。それを補完するために企画していた番外編もできてないという状態ですけど、次回も楽しみにしていただければ嬉しいです。


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一矢

「……お前の記憶を消させてもらう」

 

 

 ──これで確信がいった。あのおぞましい黒はウルスラの持つネックレスから。これまでのような武器ではないが、あれがおそらく純星煌式武装(オーガルクス)だろう。

 

 

 そしてそれがシルヴィアのような《星脈世代(ジェネステラ)》に通じている……。これは純星煌式武装にしかできない芸当だ。

 

 

 しかしわかったはわかったで大きな問題が発生する。現在進行形で、能力にやられているシルヴィアを助けることができないのだ。

 

 

 《星脈世代》にすら影響を及ぼすほど強力な能力──それを考慮すると、下手に手を出すのはかえって危険だ。ましてやその能力は精神干渉系だ。最悪の場合、心や記憶がぐちゃぐちゃになる危険性もある。

 

 

(……今のままじゃどうもできねぇなこれは)

 

 

『行人、あのままじゃ、あの人……』

 

 

 ニアには感じるものがあるようだが、行人は現状なにもできない。自分の装備品は全て手元にある。しかし手を出すこと自体が危険では手の打ちようがない。

 

 

 それ以前の問題としても、相手は純星煌式武装(オーガルクス)持ち。見つかった時点であの輝く黒に行人はやられてしまうだろう。助けにいって、それで犠牲が増えればそれこそ本末転倒だ。

 

 

 せめて気づかれない程度に注意を引ければ……、

 

 

「……! ……ニア、《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》の一つを缶にしろ」

 

 

『……わかった……』

 

 

 《偽りの触媒》を空き缶に変えさせ、それを向こう側に投げる。

 

 

「? ──誰かいるのか」

 

 

「──っ!」

 

 

 こちらからは確認できないが、音を聴く限りシルヴィアは呪縛から抜け出せたはずだ。そこからすぐに能力が使われてない様子から、その範囲もさほど広いものではないらしい。

 

 

 できればこのまま立ち去ってほしいが、この発端から見てそれは絶対にない。

 

 

「……もう一度聞くよ。あなたは誰なの?」

 

 

「聞いてどうする?」

 

 

 そして状況は最初に引き戻される。さて、これから自分はどうするべきか。といっても、こうなると取れる選択肢はそこまで多くないが。

 

 

「行くか……。──後ろで待機してろ。合図するまで動くな」

 

 

「了解」

 

 

 ホルダーの《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を音をたてずに床へ置き、拳銃を手に様子をうかがう。だが状況は先ほどのものに戻ろうとしていた。

 

 

 ……まずいことになった。

 

 

「──迷うな!」

 

 

「っ! 君は……っ、ああああああッッ!!」

 

 

 陰から一気に飛び出す。行人は煌式武装(ルークス)を手に取ろうとして、しかしそれに迷っていたシルヴィアに叫んだ。

 

 

 だがそれは一歩遅く、シルヴィアはまたあの黒い光の餌食となってしまう。

 

 

「チィッ!」

 

 

 能力の効果がまだ薄いことに賭けて、行人は星辰力(プラーナ)で加速しながら拳銃を乱射。そこから加速を利用して踏み込み、一撃を叩き込む。

 

 

「──我をなめるな、人間」

 

 

 しかし光弾も掌打もあしらわれ、逆に鳩尾へ蹴りを入れられる。

 

 

「ッ!!」

 

 

 ──息ができない。辛うじて気絶は免れたが、横隔膜の動きが止められてしまい、声にならない声を出そうと必死に口を動かす。

 

 

「勢いはあるが脆いものだ、人間の身体というものは」

 

 

 もはや立ち上がるのも困難だ。能力だけでなく、動きも速い。行人が真正面から戦って勝てる相手ではない。──この状態で行人にできることは……

 

 

「ぐぅッ……!!」

 

 

「……何をしている」

 

 

 行人はまだ手に握っている拳銃を撃つ。しかしそれはどこにも当たらない。ウルスラにも当たらず、ただ甲高い発砲音が鳴り響くだけである。

 

 

 ──そして行人の狙いはまさしくそこにある。

 

 

「──シルヴィ!」

 

 

 拳銃の音を聞きつけ、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》の所有者であり《叢雲》、天霧綾斗が駆けつける。

 

 

「……おせえんだよ……、ハハッ……」

 

 

 それによる安堵感から、行人の意識は途切れてしまった。




 ここは台本形式です
綺「ア、アスタリスクお悩み相談室! い、イン kurasutaです!」

?「シ○○・ヒ○○○だよ! せっかく見てくれてる方が作ってくれたのに全然使われないんだけど、どうしたらいいの!?」

綺「え、えと、まだ《獅鷲星武祭(グリプス)》の試合に出てないので……!」

?「そんなの納得できるわけないじゃん! はやく風夏ちゃんとか燈也くんみたいに強いのと戦いたいのに~! こうなったら本編のネタバレいっぱいしてy──」

綺「れ、連鶴っ!」

 チーン……

綺「で、では次回もお楽しみにっ!」

綾「なんで綺凛ちゃんもこうなるの……」










 久々のお悩み相談室ができて満足な作者です。師走時なのにこんなことへ時間費やす人自分以外にいないんじゃないかと思いますが、自分は元気です(吐血)

 ちょっと字数少なくなりましたが、逆に前回は多いので大丈夫てすね(は?)

 では次回もお楽しみに!



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黒飾

 意識を失ってからのことは、ニアが機転を利かしてどうにかしてくれたようだ。「結局出番なかった」と拗ねられたが、そこは適当にパ○コでも買ってなんとかした。

 

 

 まあ自分としても、いいところで全てを掻っ攫ってった後輩A・A氏を妬ましいと思わなくもないが、そこは助けてもらった身でもあるので、胸の内に閉まっておくことにする。

 

 

 一番の問題点は、あの謎の女に関することだ。あれは何者で、何のためにシリウスドームに来たのか。そしてあの純星煌式武装(オーガルクス)は一体何なのか。全てが不透明で謎は尽きない。

 

 

 順番に片付けていく。まず何者か。あれは一連の出来事から、シルヴィア・リューネハイムと親しいウルスラという人物らしい。

 

 

 ただ会話を聞いた限り、その性格はシルヴィアが知っているものとは全く異なっているようだ。あそこまで動揺した声と発言だ。疑う余地はないだろう。

 

 

 そしてその原因は、あの黒い光を発したネックレス型の純星煌式武装だと、行人は考えている。なぜならあのネックレスにニアと同じような人格があると仮定して、その人格が身体を乗っ取れば、全く違う人物になることができるからだ。 

 

 

 ──人間の本質は、いくら月日がたったとしても、そうそう変わるようなものではない。その親しい人物がそれを見抜けなかったとすれば、もはや自分だけでできるような芸当ではない。──それこそ、何らかの干渉を受けなければほぼ不可能だ。

 

 

 故に行人は、あれが純星煌式武装によるものと考える。そもそも純星煌式武装(オーガルクス)は、使い手に何らかの代償を求めるものである。星導館にも使い手の心を壊すような代物があるくらいだ。今さら使い手の意識が乗っ取られようと、あまり驚きはしない。

 

 

 次はあれがシリウスドームに来た理由だ。行人が追跡していたときは、ドームの特別観戦室に向かっていた。だが肝心のドームにいたのは界龍の幼女──(ファン)星露(シンルー)らしい──と、何故か伸びていたアルルカントの、妙に小物臭く見えた誰かだ。

 

 

 資料を盗んだり、暴れた形跡もなし(かの《万有天羅(規格外の化け物)》の目前で暴れるアホがいるとは思えないが)。何故ここに来たのかはさすがに図れない。この案件は後回しだ。

 

 

 最後に例の純星煌式武装(オーガルクス)だ。最初の件と合わせてわかっているのは、能力が精神干渉系のものであること。その力は範囲こそ狭けれど強大で、《四色の魔剣》の一振りである《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》をも封じること。あれにはおそらく自我があること。この三点だけだ。

 

 

 正直純星煌式武装に関することは行人にはお手上げ状態だった。純星煌式武装とはその定義すら曖昧な代物で、未だ統合企業財体もデータの収集、解析に手を回しているようなものだ。

 

 

 学者のエリート様方にすらわからないのだから、一人の学生の頭では何を絞り出したって無意味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──というわけで、お前に白羽の矢が立ったわけだ」

 

 

 ならば他人に頼ればいいじゃないかと、行人はクロえもんがいるであろう生徒会執務室の扉を迷わず開けた。なお事前にアポはとっていない。

 

 

「──私もそこまで暇ではないんですけどね……」

 

 

 予想通り頭を抱えるクローディアだが、行人には彼女以上に適任と思える人物がいなかったのだ。

 

 

 クローディアは星導館の生徒会長であり、そのバックである統合企業財体「銀河」の幹部、その令嬢というステータスを持っている。

 

 

 この二つの立ち位置から、少なからず行人よりは情報網が広いはずだ。それだけで量も質も段違いだ。

 

 

「別にただで頼むわけじゃない。──《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》、その本質の一部を教えよう」

 

 

「……それは……」

 

 

 クローディアは考え込む。──ここからは交渉だ。ただでさえ、こちらは危険な分野に手を突っ込ませようとしているのだ。クローディアも安易に承認するほどバカじゃない。

 

 

 ならばこちらから餌を垂らしてやればいい。《数多の偽り》の情報については、《鳳凰星武祭(フェニクス)》を終えてからというもの、それの価値が非常に高まっている。なぜから所有している統合企業財体でも、未だその力の全貌を掴めていないのだから。

 

 

「……俺の《数多の偽り》の情報は銀河にも伝わっていない。なんせ俺自身が伝えてないからな。──この情報は銀河への交渉材料にも、はたまた他学園に対する切り札にも使える」

 

 

 この言葉の半分はハッタリだが、もう半分は本当のことだ。この武器の能力は、使い方によってはそうなりうるアドバンテージを誇っている。

 

 

「──その情報が確かなものであるという証拠は……?」

 

 

「これを扱えた人物は、今までで俺しかいない……ってのはどうだ」

 

 

 《数多の偽り》の所持者になるとき、行人は付き添いの役員にそう言われた。それにそうでなくては、わざわざ一介の生徒にまで協力を仰ぐ必要がない。

 

 

「…………」

 

 

 どれだけの情報を引き出せて、どの程度の対価を支払わされるか。前者を多く後者を軽く、それが目標だ。

 

 

 だが先手を取れたこと、そして他の知り得ない情報というハンデを踏まえても、自分より交渉ごとに慣れているクローディアにどれだけ通用するか……。

 

 

「──まずは何の情報を求めるか。それを聞いてから判断しましょう」

 

 

「ああ、……俺が欲しい情報は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネックレスの形をした、黒い純星煌式武装(オーガルクス)についてだ」




 最近TRPGがしたくて友達を誘ってるけど時間がない作者です。仕方ないね。

 ついでに自分の作品の設定よくわかんなくなってきてます。誰か助けて……


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純能の宿命&煌式武装紹介

「ヴァルダ=ヴァオス、ね……。──アスタリスクの武装とかの由来はやっぱよくわからんなぁ」

 

 

「神話などから独特なものを名付けてたりしますからね。それを言えば、私や先輩の二つ名もそうですし」

 

 

「《聡明な愚者(プロメテウス)》か……、地味に懐かしいな」

 

 

 いつぞや自分に付けられていた、懐かしく厨二臭ただよう二つ名を懐かしむ。ついでにこの部屋の人払いはしてあるので、この会話も聞かれることはない。

 

 

 ──《叢雲》に《疾風刃雷》、ならばまだなんとなくわかるが、《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》、《千見の盟主(パルカ・モルタ)》など、能力者や純星煌式武装(オーガルクス)使いの二つ名は、由来がわかりにくいものが多々ある。どれも男の子のココロをくすぐるので良いセンスだと思うが。

 

 

「──んで、本題だ。そのヴァルダ=ヴァオスってのは、一体どんな存在なんだ?」

 

 

「ヴァルダ=ヴァオスとは、精神干渉系の能力と、明確な自我を持つ純星煌式武装です。あの《翡翠の黄昏》を引き起こしたのも、これによるものです」

 

 

 ヴァルダ=ヴァオスという純星煌式武装は、今まで見てきたどこの統合企業財体の情報にも載っていなかった。その驚異的な力を兼ね備えていることから、他所の組織が作ったものとは考えにくい。

 

 

 統合企業財体が作ったと仮定すると……

 

 

「──何があろうと秘匿されるタイプの情報だな……。で? なぜそんな情報を、事もあろうかお前が知ってるんだ?」

 

 

「さあ? それは教えられませんね。──さらにこちらにも貰えるならば、それもやぶさかではありませんが」

 

 

 クローディアはいたずらに笑みを浮かべている。しかしその目は笑っていない。自らの心情を悟らせない、偽りの笑みだ。

 

 

「あれでもう十分だろ。銀河に報告でもすれば、今すぐ俺からこれを取り上げさせることもできるんだし」

 

 

「それはあなたも同じでしょう。他の統合企業財体に伝えれば、確実なスキャンダルです。《星武祭(フェスタ)》に出なくとも、望みを叶えることも……」

 

 

「今のところ興味がないな。なんせ俺には望みがない」

 

 

 ──妙に悲観したような言い方になった気がしたが、気のせいだろう。ただの事実だ。

 

 

「……まあそうですね。以前も……というか以前からそうでしたし」

 

 

「自分で言っといてあれだけどひどくね?」

 

 

「気のせいです。──存外驚かないものですね」

 

 

BOOMERANG(ブーメラン)なのわかってるかそれ」

 

 

 行人は珍しくジト目になる。自分もポーカーフェイスに多少自信がある。が、クローディアはその非ではないほどにうまい。

 

 

 各学園の思惑が蔓延る『六花園会議』を、一ヶ月毎に経験しているのだから当たり前だが。

 

 

「こう見えて意外とビックリしてますよ。──理論上、全ての純星煌式武装(オーガルクス)を使える純星煌式武装なんて、訳がわからなくなりそうです」

 

 

 クローディアはおどけたようだが、言っていることは本当だろう。行人とクローディアはそれなりの付き合いだし、それくらいは少しぐらいわかる。

 

 

 ──《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》は、自らの姿を持たない。その代わりに、他の純星煌式武装は普通なら持ち得ない能力を持つ。

 

 

 一つは明確な自我を持つこと。そしてもう一つは、それによって持ち得ている唯一の能力だ。

 

 

「『記憶の再現』、ですか……。なんとまあ、経験を積むほど強力になる、厄介な能力ですね」

 

 

 以前、こんなニュースを見た。『星導館に新たな純星煌式武装か!?』『能力は武装の模倣?』といった、なんともありがちな文面のニュースだ。

 

 

 ──ニアの能力はそんなものではない。人格まで持つような純星煌式武装が、そんな能力だけである訳がない。

 

 

「そうだ。こいつの能力は、こいつが記憶しているものであれば全て、際限なく。記憶が鮮明であればあるほど、本物に限りなく近く、本物に届かずとも再現する。……使用者の星辰力(プラーナ)が必要だがな」

 

 

「綾斗や《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》が使えば、それこそ高層ビルすら再現できそうですね」

 

 

 乾いた笑いだが、事実だろう。《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を長時間扱える量の星辰力がある綾斗ならば、不可能でもない。

 

 

「──まあ文面だけだとすごく聞こえるかもしれんが、『厄介』ではあれど『強力』ではないんだよな。これ」

 

 

『さらっと言わないでほしいんだけど』

 

 

 生徒会室に入ってから、初めてニアの声が頭に響いてくる。

 

 

 純星煌式武装(オーガルクス)すら再現する能力、この能力の真価は強力な能力を使うことではなく、経験を積んで相手に合ったものを使い分けることにある。

 

 

 要するに、よく言えば汎用性が他の純星煌式武装より高く、状況に合った戦い方ができる。

 

 

 だが悪く言えば、扱いが難しい割に決め手に欠けやすく、特性を活かすための習熟が必要になる。そんな武器だ。

 

 

「……話が完全に逸れたな。ヴァルダ=ヴァオスの話に戻るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ヴァルダ=ヴァオスの代償は、使い手の心に関係する何かだろ?」

 

 

「私の情報によれば、純星煌式武装が使い手を乗っ取るようですよ。そのネックレスをしていた人も、おそらく身体の中身は違うでしょうね」

 

 

「……それもう使わせる気ないだろ……。作ったやつ頭おかしいんじゃねぇか?」

 

 

 制作者である人物は、明らかに人の手に負えないものを作っている。使い手が武装に乗っ取られるのでは話にならないし、戦わせる気自体がないのだろうか。

 

 

「……別に良いか。その確認ができれば十分だ。──じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリジナル煌式武装紹介

 

 

 《数多の偽り》(ナイアーラトテップ)

 所持者:永見行人 元序列七位

 

 星導館学園が管理している《純星煌式武装》の1つ。ウルム=マナダイトの色は白。

 

 本来の能力は記憶の再現であり、それは使い手の星辰力が許す限り際限なく可能。

 

 さらに《偽りの触媒》(カタリスト・クラスター)という専用の煌式遠隔誘導武装を使用することで、その能力をこれに作用させることもできる。

 

 ただしこれにも星辰力が必要であり、尚且つ純星煌式武装を使う場合はその代償を一度に受けることになる。




 後書きが思い付かない……どうも作者です。

 アスタリスクの二次創作が少なかったからというのが書き始めなんですが、最近は他の方の作品も見たいと思っています(元々が見る専門だったので)。

 自分で納得いくものを書ければ、それが一番良いんでしょうけどね。


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始動&キャラ紹介

「──それで? 今までどこをほっつき歩いてたんですか先輩?」

 

 

「何してたか答えねーっつーんならよォ~~~~~ッ、一発ぐらい殴られる覚悟しておいた方がいいなあああ~~~~永見行人さんよォォォ~~~~~~~~」

 

 

「……なん、で……、ミスタ……?」

 

 

「いやなんとなく使ってみたかった」

 

 

 ──現在、行人は天女のような形相の利奈、某四嫌いのギャング口調の風夏という、二人の後輩に詰め寄られていた。その心は……、

 

 

(今すぐ逃げ出してぇ……)

 

 

「オーケーオーケー、一旦落ち着いて……。──わかばさんルーカスさん助けてください……」

 

 

「無理だ。諦めてくれ」

 

 

「私も、さすがに庇えないな……」

 

 

「と、燈也……」

 

 

「ファイ……、ト……」

 

 

 ふむ……、完全他力本願だったが、どうやらこの場に自分の味方はいないらしい。……くたばれド畜生(自業自得)。

 

 

 応援が出ない以上、もはや自分でなんとかする他に生き残る術はない。というかそういう目を後輩たちはしている。

 

 

「あの、はい、えっとですね……。……! そうだ情報だ! 《獅鷲星武祭(グリプス)》に役立つ情報を集めてたんd」

 

 

「ではなんでそれを伝えずにしばらく留守だったんですか……?」

 

 

「……うん、それは……ですね……。──留守にしていて何が悪い!」

 

 

「「天誅!」」

 

 

「へぶッ!!」

 

 

 萎縮から切り返し、挙げ句には開き直りすら厭わない華麗な地雷ムーブに、天からの制裁が下された。

 

 

 尚、その様子を間近で見ていた者は語る。

 

 

『自業……、自得……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──やぁ!」

 

 

「このっ!」

 

 

 クインヴェール女学園序列三位が保有するトレーニングルームに、五色の音色が彼女ら自身の連携と共に響き渡る。

 

 

 ルサールカはバンドという枠組みであり、戦いにおけるチームであり、互いを助け合える仲間だ。常日頃から共に活動していることもあり、個々の戦闘力はともかく、連携と五人全てが純星煌式武装(オーガルクス)を持つこともあって、総合力ではガラードワースにも引けをとってはいない。

 

 

 《ライア=ポロス》本来の能力を使えば、それこそ本選で勝ち進むこともできる。

 

 

 現在はモニカの阻害弱体化とマフレナの活性強化を封じているが、彼女らの連携はまるで一つの旋律のように見事に組み合わさり、相手側を追い詰めていく。

 

 

 ……はずだったが、

 

 

「────私はこっちだよ? フフッ」

 

 

「クソォッ!」

 

 

「トゥーリアさん! 踏み込みすぎです!」

 

 

 それも連携ごと完全に避けられ、付け加えられる嘲笑によって乱れが生じていく。マフレナの指示によって崩壊は免れているが、ミルシェやトゥーリアが前のめりにならないか、指示する側としては冷や汗ものである。

 

 

 ──ルサールカの連携が失敗しているわけではない。後ろ側からの妨害もあるにしても、それを掻い潜って戦えるほどには、精度が低いわけではない。寧ろ全体で見れば高い水準だ。

 

 

 だがこうもことごとく避けられるのは、その相手が持つ能力が非常に厄介なのだ。

 

 

(《空裂の奇術師(レラティビティ)》……)

 

 

 《空裂の奇術師》──セリカ・サシャールの能力は、物体と自分、または物体同士の相対位置の入れ換えだ。範囲が無限というわけではないだろうが、ミルシェやトゥーリアの破砕振動波の範囲から一度で出る程度の範囲はある。

 

 

 それに彼女は自分のトランプをばらまき、それを利用して何度も能力を使っているのだ。

 

 

 いわば指定の位置に何度も瞬間移動をしているようなもので、それが軽々とした身のこなしと合わさり、折角の攻撃も完全に避けられてしまう。さらに……、

 

 

「やっぱり面白いねぇっ! チーム戦はさぁ!」

 

 

「訓練とはいえ、少しは緊張感をもったらいいんじゃないかしら?」

 

 

 それを支えているのが、この二人だ。一人は壁や足場となる氷を生み出し、また自らもこちらの行動を妨害し、時に校章を狙いに来る。

 

 

 もう一人に至っては、マフレナには理解ができない。

 

 

「──そこ」

 

 

「うわっ!」

 

 

 最後衛のマフレナの元に、上空から光弾が飛翔する。パイヴィが音圧防壁を展開してくれなければやられていただろう。

 

 

 ──彼女はバーニアユニットを装着しており、上空から大型ライフルの煌式武装で狙い撃ちをしてくる。その精度は恐ろしいほどに高い。

 

 

 今のクインヴェールに……、いやアスタリスク全体で考えても、これを真似できるものはそう多くないだろう。

 

 

「こんのー! ──パイヴィ!」

 

 

「終わりよ……」

 

 

 ミルシェの合図で音圧防壁が相手の前衛二人の回りに展開され、逃げ道を完全にふさぐ。

 

 

「くらえ!」

 

 

「粉々になっちまいな!」

 

 

 トゥーリアも傍に行き、ミルシェと共に衝撃波を放った。氷で守ろうとしているが、いかに《氷乱の魔女(ダイヤモンドダスト)》といえど、純星煌式武装(オーガルクス)二人の力に魔女の能力では到底及ばない。

 

 

 氷壁は軽く破壊され、防壁の中は地面が割れるほどの衝撃に襲われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──惜しい惜しい」

 

 

「ほんと、相手からすれば厄介すぎるだろうなーそれ」

 

 

 あらかじめ設定していた時間がすぎ、この泥仕合は引き分けとして幕を閉じる。

 

 

 ──その有り様を最後衛で、無機質すぎる眼の双子が、なにをするわけでもなく見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:アリー・アル・サーシェス(ガンダム00) Full Metal Jacket(DJ Mass MAD izm*)

 

 シオナ・ヒョウガ 女 キャラ案:あかつきさん

 

 ・身長:172cm

 ・血液型:B型

 ・誕生日:7月7日

 ・所属:クインヴェール女学園大学部2年

 ・序列:クインヴェール女学園十六位

 ・武装:なし

 ・二つ名:氷乱の魔女(ダイヤモンドダスト)

 

 

 紺青色の髪とオレンジの瞳を持つ女性。おしとやかに見えて実際は活発さが目立つ性格。

 

 根っからの戦闘狂。ただし強者との戦いではなく、戦いという行為自体を楽しんでいる。戦闘になると性格はそのまま冷徹に相手を倒すだけのマシンと化す。

 

 底無しの体力を持ち、氷を生み出す能力と、主に足技を使った近接格闘戦を好む。

 

 かなりざっくりとしており、またあまり頭を使うことは苦手。しかし最低限の常識やTPOは持ち合わせている。

 

 

 イメージ:キノ(キノの旅) 嗤うマネキン(ナポリP)

 

 波動(はどう)(かおる) 女 キャラ案:キリトさん

 

 ・身長:164cm

 ・血液型:A型

 ・誕生日:5月1日

 ・所属:クインヴェール女学園大学部1年

 ・序列:序列外

 ・武装:大型ライフル煌式武装

 ・二つ名:なし

 

 

 黒髪ポニーテールの少女。目は若干茶色で右側が特別製の義眼となっている。

 

 比較的落ち着きのある性格で、思慮深く、柔軟な考え方ができる。ただ少し天然な発言で回りを困惑させることも。

 

 序列入りこそしていないが射撃の腕は暗殺者並みに高い。実戦ではバーニアユニットと大型ライフルを組み合わせ、空中からの射撃を行う。

 

 義眼のスポンサーは学園外のとある技術屋だが、右目を失った理由を知るものはいない。




 自動保存の条件がわからない……。どうも作者です。

 単刀直入に言いますが、今回の話は二回程消滅した経緯を終えてできています。理由はわかりませんが、とにかく疲れました。イラつきました。こんな顔でした→(゜д゜)

 まあ執筆中のものをしっかり保存しないからなんですけどね。

 ついでにちょっとアンケートを取ります。といっても重要なものではない(作者の暇潰しでもある)ので、暇な人だけどうぞ。


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巨無への対抗

「──相変わらずやかましいこって……」

 

 

『……なんでそんなにいやがってるの……』

 

 

「最初に出た《獅鷲星武祭(グリプス)》のトラウマを思い出すから」

 

 

 人型になっていないため端からすればキチガイに見られてしまう会話をしているが、当の二人はアスタリスクとは全く関係のない場所に来ていた。

 

 

 目的は日本の高層ビル、それも統合企業財体「銀河」が直轄で管理している一つだ。行人とニアは夏期休暇終了間近に規制が緩くなる間を使って日本国内に来ていた。

 

 

 ちなみに現在は秋。終わりが近いとはいえ、わざわざ夏から秋までをホテルやらなんやらで過ごしていた。アスタリスクの外で暮らしたのは確か五年ぶりだが、如何せん肩身が狭く感じる。

 

 

 《星脈世代(ジェネステラ)》への差別意識があるのは、こういった豊かな国の都市部ほど強くなっているのかもしれない。少なくともリーゼルタニアで街を歩いていたときは、露骨なほどの嫌がらせはなかった(国の王女が《星脈世代》なのもあるだろうが)。

 

 

 その上で政府も統合企業財体も、逆に《星脈世代》側の規制を強くしているのだから、わからないものだ。最も、行人自身としては知ったことでもないのだが。

 

 

「……また怒られるな、これ」

 

 

『今回のは規模が違いすぎると思うよ。もしかすると、アスタリスクにも戻れなくなるかも……』

 

 

 ここに来てやろうとしていることは、アスタリスク内での小競り合いとは比べ物にならない。何せ統合企業財体の一つに、真っ先に楯突いて害を加えるような行動なのだから。

 

 

 ヴァルダ=ヴァオス──アスタリスク最大の事件、《翡翠の黄昏》を誘発させた純星煌式武装(オーガルクス)とのことらしい。

 

 

 これまで行人は、そのヴァルダ=ヴァオスに関するの情報を集めていた。

 

 

 ヴァルダ=ヴァオスは《翡翠の黄昏》に関わっていたらしいが、その情報はほとんどが非公開で探しようがない。わかっているのは、それが純星煌式武装の仕業ということだけだ。

 

 

 そこでまずは、純星煌式武装の製作者と考えられる人物についてから情報収集を始めた。

 

 

 純星煌式武装(オーガルクス)の開発に関わっていた著名な学者などを調べていくうちに、浮かび上がって来た名前はラディスラフ・バルトシークという人物だ。

 

 

 《パン=ドラ》、《ライア=ポロス》といった類を見ないほどに強力な──言い換えれば使い手の負担など考えていないような純星煌式武装の製作者である星導館の元教授だ。

 

 

 他にも多くの煌式武装開発に携わっており、それこそ名前を残すレベル……だろうか。とりあえず量だけ見ても他とは段違いの貢献をしているのはわかる。さしずめ落星工学界のエジソンといったところか。

 

 

 そして次は《翡翠の黄昏》だ。単騎でそれを解決した人物、ヘルガ・リンドヴァルによると、その事件を起こした主犯は、そのラディスラフ・バルトシークだったそうだ。

 

 

 《翡翠の黄昏》、「ラディスラフ・バルトシーク」、星導館学園、《ヴァルダ=ヴァオス》──この四つの情報から、ヴァルダ=ヴァオスは星導館のバック、「銀河」が一番詳しいだろうという結論に至った。

 

 

 ──個人的な感覚だが、《ヴァルダ=ヴァオス》は底知れぬ何かがあると思っている。ニアがあそこまで反応を示したのは《四色の魔剣》や《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》以来だ。

 

 

 それに自我を持ち、使い手に縛られず行動する、精神干渉能力を使う純星煌式武装(オーガルクス)──危険すぎる存在故に、調べておくに越したことはない。

 

 

『──それでやられちゃったら意味ないと思うんだけど』

 

 

「そんなジト目みたいな感じで人の心読むのやめてくれません?」

 

 

『表情わかってるしお互い様だよ』

 

 

 まあ、バレれば即堕ち二コマ的スピードで人生が終わるだろう。統合企業財体に楯突いて生きていられるものは、国内に一桁数いればいい方だろう。いや、実際はそれよりも少ないのかもしれないが。

 

 

 ともかく危険なことに変わりはない。捕まればその瞬間ゲームオーバー。顔がバレただけでも時間の問題だ。《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を使っても同じことになる可能性が高い。

 

 

 対策として自分は黒いコートにスカーフと仮面を着用し、武装もいつもより銃型煌式武装(ルークス)を主要にして、現地で使うであろう道具もできるだけ自作した。《数多の偽り》は展開する武器の色を現地で黒にしている。

 

 

 ついでに煌式武装は現地の非合法的裏商店から購入したものだ。一応そこら辺の店でも護身用程度のものは売られているが、実戦を想定するとやはり心許ない。

 

 

 とはいえ手に入れた煌式武装もアスタリスクと比べると粗悪品だ。《星脈世代(ジェネステラ)》の敵がいると考えるとこれでも不安だが……、

 

 

「……贅沢言っても仕方ないか」

 

 

 行人はそびえ立つビルを向いて呟く。やろうとしていること自体がキチガイだし、何かを心配する必要もないだろう。

 

 

 もうなにも怖くない(圧倒的死亡フラグ感)。

 

 

『絶対にしくじらないでよ? 危なくなったら急いで逃げる。いいね?』

 

 

「自分の心配するとこだろそこは」

 

 

『私は別にいいよ。それに──武器の是非は、使い手によって決まるものだからね』

 

 

「その姿で突然シリアスをぶっこまないで?」

 

 

 武器とその使い手が違えばシリアスになれたであろうセリフも、ハンググライダー状態の武器(ニア)とシリアス作る気が全くない使い手(行人)にかかればただの会話と化してしまう。

 

 

「えーっと、もういいですよね? いやよくなくてもいくけどさ」

 

 

『どうぞどうぞ』

 

 

 そんなただの会話を終えて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──行人とニアは、目的と同じような高層ビルの上から飛び降りた。




 新年明けましておめでとうございますm(_ _)m 年明けを完全に忘れてスマホを見ながら越した作者です。

 アンケートで黙って書けに票が入っていたので頑張りました。ただ新年早々から頭おかしい話になりましたがw

 では皆様、今年も『学戦都市アスタリスク 愚者の足掻き』を──

一同「「よろしくお願いします!」」

 セリフとられた……


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初陣と突入

「……本当、何してるんですかねあの人は……」

 

 

「あたしはもうどうでもよくなってきたぞあんなやつ……」

 

 

 《獅鷲星武祭(グリプス)》Aブロック一回戦目、つまり初戦を戦うチームがステージへと入場する……、その第一声がこれである。

 

 

 これから試合を繰り広げるというのに対し、一切のやる気を感じ取れない声色は、観客が聞いたらブーイング間違いなしであろう。

 

 

「別にいなくても変わらない。あいつはチームメンバーじゃないからな」

 

 

「ひど、い……、けど……正論……」

 

 

「行人くん、見えないところですっごい言われてるね……」

 

 

 メンバーも、彼がいなければ連携の訓練もできなかった。なので感謝はしているだろうが、それとこれとは話が別だ。

 

 

 自分を育てたコーチが、当日になって来ないことになって不満を持たないのはおそらく少数だろう。現に少数派は一人しかいない(多分)。

 

 

「テ、テレビ放送で見ていると考えましょう。……多分」

 

 

「──おい、お相手のお出ましだぞ」

 

 

 風夏の声で一斉に正面を向くと、相手のチームもこちらを見据えていることがわかる。

 

 

 相手のチームはアルルカントの制服を着ており、武器は既に展開している。煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)が主な武装らしく、多種多様なものを同時に操っているようだ。

 

 

 チーム名はチーム・オーバードーズ(過剰摂取)。……確かに煌式遠隔誘導武装の過剰摂取とも取れるだろうか(まだ真新しくあるため、煌式遠隔誘導武装を複数人装備するチームはほぼいない)。

 

 

 だが煌式遠隔誘導武装以外の使い手もおり、行人の言っていた勘違いをしている(まぐれを狙った)チームではないことが見て取れる。

 

 

 煌式遠隔誘導武装を活かした、だがそれだけには頼らない戦略を考えているだろう。

 

 

『さあ皆さん、本日初の試合がいよいよスタートします! ──《獅鷲星武祭》Aブロック一回戦目二組、試合開始(バトルスタート)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっむ!! コート着てて正解だったわクソが!」

 

 

 高層ビルが立ち並ぶ都市の空を、一つの黒いハンググライダーが滑空する。普段は馴染みがない高所からの景色は辺りを遠くまで見渡すことができ、これが夜であれば絶景だっただろう。

 

 

 だが夜間飛行とか初心者にできるわけがないし、何より空気が冷たく乾燥していて、コートがなかったら凍えで手を離してしまいそうだ。

 

 

 いかに怪盗○ッドがすごくてキチガイかよくわかる。今すぐカイロを買いに行きたいところだ。

 

 

(……愚痴っても意味ないし、改めて攻め入る方法を考えますかね)

 

 

 目的のビルは行人が飛び立ったものよりも大きく、このまま着いたとしても少し下の階にたどり着く。故に入ったら、そこから上へ上へと自力で上っていかなければならない。

 

 

 しかし第一関門となるのは、そこにいる警備員たちだ。銀河はおろか統合企業財体は《星脈世代(ジェネステラ)》の人物を重要事に使うことは少ない。

 

 

 だが警備などであればあらかじめそれを雇っているはずだ。《魔術師(ダンテ)》や《魔女(ストレガ)》がいたとしても不思議ではない。そうでなくても、世界に名を轟かせる大企業。そのビル一つを守る警備員の量……想像するだけでおそろしい。

 

 

 そしてそれをどう攻略するかが、真っ先に思いつく一番の問題となる。なぜなら行人には、それらを一蹴するような力はないのだから。

 

 

 最善策は、やはり戦闘を確実に避けることだ。それは言葉にするだけなら簡単だが、敵の巣穴に入り込もうとしている状態で言えることではない。

 

 

 せめて敵の注意を引くことができればいいが……、爆発物も無い今、それを実行するのも難しい。

 

 

 最初は忍び込もうとしていたプランも、ドローンなどの可能性を失念していたため役に立たない。

 

 

(さて、どうしたもんか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀河直轄高層ビル「佐渡星(さどぼし)」。そのオフィスに警報音が、受話器からはやかましい大声とさらなる警報音が二重にとなって鳴り響く。

 

 

「──なんだ」

 

 

 しかしそこに佇む男は、それに動揺する素振りもなく受話器を手に取って話す。その佇まいからは人間らしき感情を感じとることができない。

 

 

「し、侵入者です! 三十二階に侵入者が!」

 

 

「地上から百メートルは優に越えているはずだが? ……ヘリによる降下ではないだろう。ドローンは感知しなかったのか」

 

 

「方法は不明ですが……、万応素(マナ)の反応があったことから、何らかの能力によるものと思われます!」

 

 

「犯罪組織の誘導の可能性もある。上下の階にいる警備員は三十二階に増援を、それ以外の警備員はその場で待機させろ。敵の狙いはわからん。全員気を抜くな」

 

 

「了解!」

 

 

 機械のように指示を並べていく。その声に抑揚はない。

 

 

「──出番だ」

 

 

「わかりました。ちょうど、体が鈍ってたところですし──承りましたよ」

 

 

 男はそれ以上何も言わず、もう一人の男も、何も聞かなかった。




 最近自分の後書きが動画投稿者の挨拶に見えてきた作者です(錯乱)。寝堕ちしたので朝の投稿です。

 利奈たちのチーム名はもう少し待ってください。すいません、許してください! 何でもしますから。


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凡才と偉才

「隈なく探せ! やつはここにいるはずだ!」

 

 

 窓が割られた三十二階に、警備隊の増援が送られてくる。彼らはいわゆる突入部隊のようなものだ。

 

 

 普段建物内を見回っている者たちとは違って大半が《星脈世代(ジェネステラ)》で構成されており、中にはアスタリスクで過ごしていた猛者も混じっている。

 

 

 レヴォルフのような場所からもお構い無しで来るので素行が良いとは言えないが、仕事はしっかりこなしている。実力は本物だ。

 

 

「……いたか?」

 

 

「いや、見当たらない。もう別の階に移動したんじゃないのか?」

 

 

「他の階の監視カメラには、その人影は映ってないらしい。エレベーターや窓は封鎖してあるし、この階しか考えられない」

 

 

「ですが、どこを探しても形跡すらありません。もしかすると、ここにはもういないんじゃ……」

 

 

 そんな彼らだが、未だ侵入者の姿を見つけられていない。隊を総動員し、光学迷彩用にサーマルゴーグルも使って捜索しているが、どうもこの階には見当たらないのだ。

 

 

「そんなはずはない! もっとよく捜せ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ビル内の警備隊たちは捜し出せていなかったが、行人が今現在、どこを進んでいるかわかるだろうか? 

 

 

「──これメチャクチャキツイし寒い……」

 

 

『落ちた方がシャレにならないよ。ほら、グチャグチャになりたくなかったら頑張って』

 

 

「ほ、補助があっても、参るからやめて?」

 

 

 ──そう、行人は煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》を駆使し、ビルの外壁──つまり側面を登っていた。……昇っているのではなく、登っているのだ。比喩ではない。登っているのだ(二回目)。

 

 

 これにはビルの中で一網打尽にされる事態を防ぐ理由があるのだが、控え目に言って死ねる。

 

 

『……これ行人自身で思い付いた考えのはずなんだけど』

 

 

「生涯で一度でも、強風吹き荒れて落ちたら即死する高所で垂直な壁を登ったやつがいたら、俺がビビりって認めてやるよ」

 

 

『寮があるでsy「俺住んでんの、四階だぞ……?」

 

 

 尚、どう登っているか詳しく説明すると、煌式遠隔誘導武装に《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の能力を伝わらせ、大剣や斧、槍のような刃や柄を足場にしやすい武器として展開、それを壁に突き立てることで登っている。

 

 

 ……ついでにこの行為は、強風による寒気と落下=死という、普通に暮らしていれば経験しない恐怖が付きまとっているとも付け加えておこう。

 

 

『……だったら、なんでこんな方法にしたの? 安全に登るだけなら、もっと良い方法あったと思うけど』

 

 

「──その是非はともかく、これ以外にここへ攻め入るのに良い案は思いつかなかったな」

 

 

『どういうこと?』

 

 

「まず、最初にビルに突入して襲撃が来たと思わせ、内部の警戒を高める。同時に監視カメラを破壊し、こっちの行動を確認できないようにする。するとあらビックリ、連中俺が外にいるなんて気づきもしないだろ?」

 

 

 物がいきなり見えなくなると、それがそこからなくなったと考えてしまう。単純で、簡単なマジックでも使われる手法の一つだ。

 

 

 だが、それは脳の錯覚──つまり根本的な感覚によるものだ。故に効果が期待できる。しばらくはビル内に釘付けだろう。

 

 

「この陽動が決まれば、手練れの相手も引き寄せられる……もちろんいなくなるわけじゃないがな。でも、守りが薄くなるとは思う。──こんな成りだが、スピード勝負になるな」

 

 

『──なら、なおさら急がないといけないね』

 

 

「へ?」

 

 

 突然、《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》が展開を解除し、最後の一つが全く違う武器へと変わる。赤の外装に紫色のマナダイト。これは……

 

 

「……待て、早まるな、だからそれはやめt」

 

 

『いくよ』

 

 

「だから待っ──」

 

 

 そして行人の体が、まるで落ちていくように上空へ上がって行く。

 

 

(やりやがった! あいつ《覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)》で重力を反転させやがった)

 

 

 現在進行形で貧血になりつつある行人には、それを心の中で思うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──到着っと』

 

 

「……お前なぁ……」

 

 

 どうにか、干からびることだけは免れることができたようだ。もっとも、戦闘もせずに疲労が溜まったという事実は変わらないが。

 

 

「──まあ、早く着くことができたのも事実だな……。……頼む」

 

 

『了解』

 

 

 そう言って行人は、今度は自分の意思で《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を純星煌式武装としての展開を求める。全てを焼き切る、純白の魔剣。《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》だ。

 

 

 天井を切り裂き、室内への穴を開く……、

 

 

(さーて、一気に最上階に侵入……)

 

 

「──お宝でも探しているんなら、ここにはありませんよ」

 

 

 と同時に、その穴から火炎弾が迫ってくる。

 

 

「……ここは、あなたのような人が来る場所じゃー、ないんですよ」

 

 

 丁寧な言葉、態度に似つかわしくない、鋭利な刃をちらつかせる男が、そこにはいた。

 

 

「──遊んでやるよ盗人」




 どうも、作者です。……はい、今回は前振りが特に思いつきませんでした。というわけで、雑談(?)もなしです。

 次回もお楽しみに!(なんか久々な感じがする……)


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文字の魔術師&キャラ紹介

 男は跳躍し、行人と同じく屋上に立つ。

 

 

「なんでいるのかわからないって感じですね」

 

 

 全くもってその通りだ。なぜ最上階に、こんなに攻撃的な力を使う者がいるのか。完全に予想外だ。

 

 

 行人の中では、このビルは警備システムによって隔壁も展開される。閉鎖された空間から、先ほどまでいた敵がいなくなるなど、そうすぐに見破れるとは思えない。そう思っていた。

 

 

 なので監視カメラを破壊しながら突入、その後自分の姿を消し潜伏したように見せかけることで、警備はビル内に釘付けになるだろうと予測していた。奇抜すぎる方法で、ありもしない何かを警戒させながら。

 

 

 そうしてビル内の警備がアホみたく警戒している中、自分は外壁を移動して頂上にたどり着いた。最後に最上階から銀河の情報にアクセス、《ヴァルダ=ヴァオス》の情報を入手するつもりだった。

 

 

 ──だがその思惑は外れてしまった。

 

 

「撹乱によっていないはずの敵への警戒を促す……といったところですか? 少々、強引な作戦と言わざるを得ませんねぇ」

 

 

 確かに、良い作戦とは言えないだろう。だが、どこから見破ったか、行人にはわからない。

 

 

 行人がもたらした状況の場合、目的地──最上階の幹部室──を守る場合、そこを固めるために入り口付近に警備を配置、その戦力で敵を引き付けるなりして迎撃するものと考えていた。

 

 

 なぜなら見えない敵がいると考えて、だが狙われる標的が予想できるなら、それを探す必要はない。誘い込んで、そこで袋叩きにする。

 

 

 外からの侵入は、それも避けれると考えていた。守りを固めている、その裏から侵入だからだ。予想外の事態にそこの警備は混乱、無力化もしやすい。

 

 

 ──しかし見破られた場合、それは地獄だ。

 

 

「……既に下にいる警備も呼んであります。着くのも時間の問題ってやつです。おとなしく投稿してほしいんですが」

 

 

「…………」

 

 

 行人は今、失敗の自責と状況の打開、この二つが頭の中に混在している。口にも表情にも出さないが、冷や汗も止まらず、焦りが思考を欠き乱していく。

 

 

 そもそも相手の情報もわからない。易々と《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を使うわけにもいかず、逃げ場もない。そんな状態で、どう戦えばいいかわからない。

 

 

 使える煌式武装(ルークス)は拳銃型と、一応持ってきた護身用のナイフ型だ。威力は期待できないし、ここでは距離もとれない。それに対し男は《魔術師(ダンテ)》。炎を飛ばしてきたが、おそらく拳銃より威力も命中率も段違い、遠距離戦は明らかに不利だ。

 

 

 かといって、これをここで倒さなければ厄介なことになる。追跡でもされればその瞬間終わりだ。それほど銀河の情報網は広い。

 

 

(……あれ、これほぼ詰んでね?)

 

 

 逃げてるのは無理、相手を倒すのが一番の手だが、それも一筋縄ではいかない気がする。しかしここまで追い詰められたら、もはや致し方ない。

 

 

(……倒すしかないな……)

 

 

 行人は拳銃を片手に持つが、接近戦の構えを取る。そこらの調整もされてない拳銃や護身用のナイフが、《星脈世代(ジェネステラ)》相手に有効とは思えない。銃はあくまで牽制用だ。

 

 

 ──男は詳細はわからないが、何か文字のようなものを展開している。

 

 

「……ッ!」 

 

 

 だが行人は銃を撃ちながら男に接近する。界龍の拳士のようにいかないが、星辰力を込めた拳は、攻撃にも防御にも十分有効だろう。また火球でも軽くあしらえるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……それが火球であれば、の話だが。

 

 

「……!?」

 

 

 男に接近した行人は、謎の水の噴出によって吹き飛ばされてしまう。

 

 

「──驚きすぎて声も出ないですかね? まあ声を出す気なんて毛頭ないんでしょうが」

 

 

 ギラリとした目をちらつかせながら、男は声をかけてくる。

 

 

「星仙術……は知ってるでしょう? これはそれと似たようなものでしてね。個別の事象を発生させる文字を並べて、術を行使する……。──ルーン魔術、っていうものです」

 

 

 ……なるほど、先の火球も、今の水も、全てそのルーン魔術によるものらしい。文字のようなものの展開は、そのための準備……言わば予備動作だ。

 

 

 界龍の道士以外に、このような技術が残っていたのには驚いた。

 

 

(しかし、この威力は……)

 

 

 道士と戦った経験はあるにはあるが、その使い手は汎用性を活かし支援に徹していた。星仙術での戦い方は、威力よりそれを活かすものだと思っていたが、このルーン魔術は単体の威力が大きい。それこそ《魔術師(ダンテ)》のそれと遜色ないほどに。

 

 

「まあ今ので仕留め損ねたし、どうせですから教えてあげましょう。星仙術とルーン魔術の違いをね」

 

 

「…………」

 

 

「星仙術は発動する術を呪符を読み取って使います。代表的なのは雷撃符とか強力符とかですね。ですがその分、既に読み込まれている術しか使えません。一方、ルーン魔術はその術自体を、その場で一から作ります。その分、星仙術よりも細かな調整を行えます。それはもう幅広く、属性威力範囲方向その他諸々……、まあその判断によるタイムラグはありますが……ッ!」

 

 

「……!」

 

 

 そう男が言うと、今度は先ほどよりも早く文字を展開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──俺には関係ないんだなこれが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラ紹介

 

 イメージ:クーフーリン《キャスター》(fgo) database feat. TAKUMA(MAN WITH A MISSION)

 

 ジェイド・クランシー 男 キャラ案:歌唄い翼さん

 

 ・身長:172cm

 ・血液型:B型

 ・誕生日:5月7日

 ・所属:銀河直轄情報管理ビル『佐渡星』

 ・序列:幹部特別警護隊員

 ・武装:杖型煌式武装

 ・二つ名:文字の魔術師(ルーンウィザード)

 

 

 青髪が基調の青年。とある宗派の出身で、実用できるのに使われないルーン魔術を使わない一族に嫌気が差し、そこから現在に至る。

 

 基本は物腰柔らかな姿勢で面倒見がよく、皆の兄のような存在。しかしその裏には経験から裏づけられたシビアさなどが混じっており、戦いになると素の冷徹さや狂暴さが垣間見えてくる。

 

 戦いでは故郷秘蔵のルーン魔術を使用する。また、杖を使った接近戦も可能な実力者。

 

 ルーン魔術の使用速度は一族随一で、それによってルーン魔術の弱点を補っている。

 

 

 ルーン魔術

 

 とある地域の宗派が作り上げた、星仙術のようなもの。

 

 火や水といった属性、正面や追尾といった指向性や範囲を表す万応素の文字を組み合わせて術を発動する。そのため細かな調整、組み合わせによって新たな術も作成できる。

 

 ただしその分、文字の把握や実践での慣れ、発動までのタイムラグなど、星仙術より扱いが難しい。




 少し遅くなりました。作者です。新しい術が出てきましたが、現実のものとは関係ないのであしからず。キャラを考えてくださった「歌唄い翼」さん、案と違っていてすいません。

 それはそうと、今回はこの作品始まって以来の報告があります。なんと、










 bang bang様作『刀藤綺凛の兄物語』とのコラボが決定いたしました! 了承してくださったbang bangさん、また先駆者のムッティさん、本当にありがとうございます!m(_ _)m 

 OKサインをもらえた時は一度頬をつねろうかと思いました……、これを書くのに必死だったので結局しませんでしたがw

 この機会に、『刀藤綺凛の兄物語』もご覧になることをおすすめします。というかあちらを見た方が面白いと思います。
※回覧する場合は好みが別れるので、タグをしっかり確認することをおすすめします。
https://syosetu.org/novel/190038/

 また、この作品のお気に入り数が50人となりました! 公開非公開構わず、これまで見てくださった方々、今までありがとうございました! これからもよろしくお願いします!m(_ _)m


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蛇毒と猛毒

「──防戦一方ですねぇ! でも、リミットは確実に迫ってますよッ!」

 

 

 火球、水流、雷撃、石弾……様々な術が行人に飛翔してくる。それらは全てが異なっており、一度として同じような攻撃をしてこないのがまたいやらしい。

 

 

 《偽りの触媒(カタリスト・クラスター)》を使えれば多方向からの攻撃にも対処しやすいのだが、これは《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》以上に特徴がありすぎる。すぐに調べがついてしまうだろう。

 

 

「……ッ!」

 

 

 銃で撃ち落とし、ナイフで捌き、あれやこれやで術を避けきっているが、体力も時間も着々と減っている。このままでは確実に負ける。そうわかっていても、逃げに移れる一手が思いつかない。

 

 

 いや、無いわけではない。手はあるにはある。……が、それは使った後の影響が大きい。しかもそのためには、二分の一の確率で失敗する博打に打ち勝たなければならない。

 

 

「そーぉらッ!」

 

 

「……!? ……ッ」

 

 

 突如発生した岩の槍が左手にかすって持っていた銃を落としてしまい、自らが空けた穴に落としてしまう。残りの使える武器は、護身用のナイフと《数多の偽り》だけだ。

 

 

 ──もはや本当に、迷っていられる余裕はないようだ。強引にでも、とにかく即行で片付けねばならない。

 

 

「──ニア、────」

 

 

 拳銃を失くした左手に《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》を持ち、求める純星煌式武装(オーガルクス)の名を告げる。それは星導館が持ちうる中で、最も凶悪と言える純星煌式武装の名前。

 

 

『!? それは……!』

 

 

「……やってくれ。合図は指でする」

 

 

『……わかったよ』

 

 

 あらかじめ名前とタイミングを告げる。武器の特性上、いきなり出した方が効果が出るだろう。隙を作る方法は思いついてある。

 

 

「……念仏でも唱えてましたか? まあ、何してるかなんて知らなくてもいいんですがね」

 

 

 おどけたような口調だが、目に潜んでいた刃は未だ鋭さを見せびらかしている。

 

 

 ──時間をかければかけるほど、不利になるのはこちらの方だ。仕掛けたのは行人が先だ。今までのように切り込むと見せかけて、右手のナイフを投げる。星辰力(プラーナ)をありったけ込めながら。

 

 

 それはつまり、流星闘技(メテオアーツ)の失敗、煌式武装(ルークス)の爆発を意味する。爆発は小規模で威力もない。

 

 

 ──だが敵の気を逸らすには十分だ。

 

 

(……今だ……)

 

 

『……!』

 

 

 それでできた隙に、《数多の偽り(ナイアーラトテップ)》の持ち手を右に変更、純星煌式武装(オーガルクス)を能力を伴って展開する。それは標準的な刃渡りの長剣だ。

 

 

「……ッ!」

 

 

 既に代償の影響が出ているのがわかる。だがとりあえず、二分の一の博打に勝つことはできた。

 

 

 ──今なら、まだ戻ってこられる。

 

 

 切り込む。一撃を、一撃でも攻撃を加えれば、それで勝ちだ。

 

 

「そう来ると思ってましたよ!」

 

 

 男は時間がかかっていた分、ルーン魔術の文字を多く配置している。文字の効果も法則性もわかったものではないが、これまでより強力な術が行使されることだけは、本能的に察せられる。

 

 

 だが、ここで避ける余裕はない。いつ下の増援が来ても、もうおかしくないのだ。何より……、

 

 

(代償が長引けば、免疫のない俺は戻ってこられない……!)

 

 

 男は術を発動させる。出てきたのは巨大な岩、その威力は計り知れない。ビルに当たれば、屋上の床が全て崩れてしまうだろう。

 

 

 チャンスは一度、幸い命中率は高い方だ。

 

 

 長剣を縦一文字に──巨大な岩石に向けて振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーン魔術を使う男──ジェイドは、岩の後ろにいる行人に回り込んで、手に持つ杖を叩き込みに行く。

 

 

 最初から岩は囮だ。この岩石にはルーン魔術で、途中で消えるようにしてある。視界を遮り、こちらの行動を知覚できないようにする。

 

 

 真正面から受け止めるのは予想外だったが、むしろ好都合だ。攻撃を抑えるのに必死であれば、その隙を突くだけだ。

 

 

(……隙あり!)

 

 

 ……だがその攻撃だけは、体に巻き付く刃によって遮られた。

 

 

(ッ!? これは!?)

 

 

 その時ジェイドは見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──岩を抑える行人の剣が、半分ほど失くなっていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──よっ、と……)

 

 

 巨大な岩──といっても万応素(マナ)の塊だろうが、刃を飛ばした剣で軌道を逸らす。

 

 

 行人が展開した純星煌式武装(オーガルクス)は、蛇腹剣型純星煌式武装《蛇剣オロロムント》だ。蛇腹剣とは、簡単に言えば剣と鞭を合わせたような武器だ。分離させた刃を鞭のように飛ばして操り、時にはそれを戻して剣として使うことができる。

 

 

 扱い以上に作成が難しく、それこそウルム=マナダイトでも使わなければ作れないような代物(鞭で切った際の威力が小さいなどの問題もある)だが、純星煌式武装である分、備わっている能力と合わされば優秀な武器となる。

 

 

 もっとも、使い手からすれば最恐の純星煌式武装だが。

 

 

(その最恐足らしめる代償を、あの狂人は好んでるらしいから、わからないもんだ……)

 

 

 そんな思考は余所に置いて、行人は蛇腹剣の取っ手を引く。

 

 

 男にまだらに巻き付いた刃は、引き抜かれるときに体を傷つけていく。その傷は決して深いものではないが、オロロムントに限れば傷がつくこと自体が禁忌だ。

 

 

「……てめぇ……!」

 

 

 男が睨み付けてくるが、その体はガクッと崩れ落ちる。立ってもいられないようだ。

 

 

 オロロムントの能力は、名の如く蛇のように強力で即効性の毒だ。その強力さは身を持って体験している。毒を受けた者は視界が揺れ、体を思うように動かせず、立つこともままならないのだ。

 

 

「ジェイド様!」

 

 

「……チッ……!」

 

 

 ──どうやら増援が来たようだ。こうなっては、目的達成は完全に不可能だ。

 

 

 動けない男を増援たちに放り投げ、行人はビルから退散した。

 

 

 だが行人は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──代償による影響は、もはや自分で気づかないほどに進んでいたことに。




 『キスをねだってみた』とかの診断でオリキャラたちの名前を入れたら自分の想像にかなり近かった。どうも作者です。

 特にこの作品の代名詞とも言えるあの二人! 後の展開を読まれてるんじゃないかと疑ってしまいそうです。

 それはそうと、また二つ報告があります。

 まず、風夏のイメージ曲を変更しました。

 次に、お気に入り登録者五十人突破を記念に、ちょっとした質問返信とかできないかなーと……。……浮かれててごめんなさい……。

 形式は物語のキャラクターに質問をすると、そのキャラが答えてくれるというものです。質問は感想欄にお願いしますm(_ _)m


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休息時間

「──ッ! ……」

 

 

「……だから言ったのに……」

 

 

 うなされるかのように苦しげにベッドで横たわる行人。ニアはそれを悲しげに見つめていた。

 

 

 ビルからの逃亡から、もう半日はたっただろうか。それとも、まだ半日というべきか。とりあえず、今のところ銀河による追跡網からは逃れることができていた。

 

 

 二人がいるのは、無人対応で指名手配未遂者にはうってつけな建物の一室。言ってしまえば──ラブホである。

 

 

 無理矢理にでもビルから離れ変装を解いた後、行人は以前から逃走経路の一つとして目を付けていた繁華街へと向かった。

 

 

 ここらは雰囲気や人通りが歓楽街のそれと似ており、特定の人物を探すのは、統合企業財体でも一筋縄ではいかない。故に潜伏場所としてはかなりの立地だ。

 

 

 当初は感知系能力者はどうするかも聞いたが、曰くプライバシー対策の一環でそういった対策まで最近はされてきているらしい。ラブホ様様である。

 

 

 まあ正直……

 

 

(こんな状態の時点で、喜ぶことなんてできないけどね……)

 

 

 非が自分にもあると考えれば尚更である。

 

 

 行人はこの瞬間にも、《蛇剣オロロムント》の代償に体を蝕まれているのだから。

 

 

 オロロムントの代償は麻薬のような多幸感。そこから来る強烈な依存性こそが、最も禁忌しなければならないものだ。

 

 

 今の行人を苦しめているのは、その多幸感がきれたことによる禁断症状だ。

 

 

 この依存性にはまってしまった者は、それこそ片手を失っても平然としていられる程に強靭な精神力でもなければ、すぐ抜け出すことはできない。

 

 

 実際ここに来るまでもここに来てからも、行人は頭をぶつけ、舌を噛み、手に爪を食い込ませて、そこまでしてやっとで耐えていた。今もただ気絶しているだけで、起きればまたその兆候が見えるかもしれない。

 

 

 ──こんな手段を実戦で使うのは、今回が最初で最後にしてほしい。戦闘を始める時点で二分の一の賭け──オロロムントの多幸感には二つの種類があり、片方は戦闘スタイルへの影響が大きいらしい──をしなければならないうえ、何より後の代償が大きすぎる。

 

 

「……さすがに、これじゃ見に行けないなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──暇……じゃさすがにないですけど、正直できることがあまりないですね……」

 

 

「それ……、言わない……約束……」

 

 

「でも事実だしなぁ。確認しなきゃどうにもなんねぇよ。それに、できることをしなきゃ、次勝てるかも怪しいしな」

 

 

 次々と口を開く彼らの口調はいつも通りだが、その言葉には覇気がない。

 

 

 五人は、これまでの試合を順調……とまではいかないが、順当に勝ち進んで来た。チームの全員が《獅鷲星武祭(グリプス)》初出場だが、それで本選まで勝ち抜上出来だろう。

 

 

 とはいえこのような結果になったのは、多少運が関わったのも否めない。

 

 

 利奈たちはチーム戦の訓練を重ねてきたが、それでも《獅鷲星武祭》を本命とするチームの面々には、連携の面で劣ってしまう。

 

 

 だが逆に言うと、そんじょそこらのチームには負けない程度には仕上げられている。これは行人の訓練と、メンバーが連携を行う戦いに慣れるのが早かった、というのが理由だろう。

 

 

 利奈、わかばは元々《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出るはずだった二人で、風夏と燈也は以前からコンビのようなところがあった。ルーカスは……、理由はわからないが、何かと戦闘自体に慣れていたのだろう。

 

 

 とにかく、人選や相手の運、そういった諸々が噛み合ったから、このチームはここまで来れたということだ。

 

 

 ──だがそれも、決勝へ近づくに連れて厳しくなってきたところだ。

 

 

「さっきの戦いも、ちょっとギリギリだったからね」

 

 

「……先が思いやられるな。何とか対策をできればいいけど……」

 

 

「──そうなんですよねぇ……」

 

 

 今、利奈たちメンバーが悩んでいたのは正にそれだ。

 

 

 やはり本選にまで出てくる他のチームは、後々のことも考えた試合運びがうまい。先ほど見た試合でも、以前の戦い方とは全く違うものに移行するなど、戦術というより戦略といった戦いをするものも見える。

 

 

 出場チームにはまさにそんな、未だ試合中に動かず、戦闘力を計らせないような相手が混ざっているのだ。

 

 

 次に戦うチームは正しくそういった類いだ。今回に限らずこれからの試合は、これまで使ってこなかった切り札を切ってくる可能性……それを考慮していった方がいいだろう。

 

 

 ──それが予測できないから、この現状から一歩も踏み出せないのだが。

 

 

「「…………」」

 

 

 そしてまた振り出しに戻る。

 

 

(落ち着け私……! ──こういうとき、先輩はいつも何から始めていた……?)

 

 

 行人が《鳳凰星武祭》で見せた、戦術を建てるときの順序を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の相手は、チーム・メイルストロム。メンバーはセリカ・サシャール、シオナ・ヒョウガ、波動薫、そしてエマとエヴァの五人がメンバーだ。

 

 

 相対位置置換のセリカや、遊撃手シオナ、利奈を上回る遠距離エキスパートとの薫の三人は、当たり前だが注意が必要だ。

 

 

 だが一番注意するのは、あの双子、エマとエヴァだ。

 

 

 彼女らは今までの試合で、一歩も動いてすらいない。それはまるで、何かの秘密道具を隠しているようにも見える。一番マークしなければならないのは、おそらくこの双子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……よし! 整理もできてきたし、早速話し合おう)




 眠い、以上。

 次回もお楽しみに……


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