ぐだ子inハルケギニア (千草流)
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一話

ぐだ子の名前は安定の藤丸立香でいきます。




 空は快晴であった。しかし、彼女の心は空模様とは真逆であった。どんよりと雲が掛かったその心に、彼女はきっと諦めという言葉を思い浮かべたことだろう。ダメだ、どうしようもない、所詮はこんなモノだ、憂鬱な雲に覆われた心の中で、それでも彼女は願った。暗雲立ち込める空の隙間から少しでもいい、太陽の輝きが見たいのだと。

 

 同じ頃、彼女とは別の場所で空を見上げる者達がいた。その場所は一年の内のほとんどが吹雪に覆われる、白く暗い場所だった。しかし、その日は彼女のいる場所と同じく快晴であった。一年の内の本の数日だけ垣間見える明るい太陽の日差しが、雪に覆われた大地の銀色に輝かせていた。そして空を見上げる者達の心の内も、また晴れやかであり、その者達自身がちっぽけだが太陽のような輝きを纏っているかのように感じられた。

 

 それ故にだろう、太陽の輝きを、本の少しだけ、ちっぽけなものでもいいから欲しいと、雲に覆われた暗闇の中でも諦めることなく願った彼女と、自らが太陽の如く晴れやかな者達が繋がった。科学や魔法などといった如何なる力を持っても干渉、観測が出来ない筈の遠い、遠い地が繋がった。

 

 周囲から嘲笑の声が幾つも聞こえた。もういい加減諦めろと。

 

 初め、彼女はまたかとそう思った。目の前には土煙、既に何度も見た光景だった。だがまだだ、次こそはと彼女は手に握った杖を振り上げようとした。

 

 ゆらり、と土煙の中で何かが揺れ動いた。

 

 彼女は、一瞬だけ何かを期待するかのようにそれを見つめたが、そんなわけがない気のせいだと否定した。諦めたくなかった筈の彼女だったが、彼女自身の制御出来ない所で折れてしまっていたのかもしれない。どうせ見間違いだと次を始めようとした。

 

 ゆらり、とまたも何かが動いた。

 

 彼女は、それをちょうど人間くらいのサイズの何かだと感じた。しかしやはり彼女は首を振る、期待の裏返しが大きな絶望であることを彼女は知っていたからだ。

 

 「げほげほっ…」

 

 土煙の中からだ、まるで人が咳き込んでいるかのような音。彼女は、それすらも幻聴だと否定しようとしたが、気が付けば一歩だけ足を前に出していた。

 

 「酷い土煙、これがエミヤママの言っていた召喚事故ってやつかな?」

 

 ようやく、土煙が晴れた。そこには間違いなく彼女が願い求めた者がいた。彼女はついに否定することやめ現実を直視した。それは彼女の理想とした姿とは違ったが、それでも彼女が望んだ者が確かにあった。

 

 「あ、あんた誰よ!?」

 

 彼女は思わず嬉しさで涙を出しそうになったが、それを堪えた。彼女のプライドがそれを許さなかったからだ。涙を堪え、顔には大げさな感情を出さないようにしながら彼女は問いかけた。

 

 「えっと、確か、召喚に従い参上した。問おう貴方が私のマスターか、でよかったかな」

 

 「え、あ、そう!そうよ! 私があんたを召喚したの、それであんたはなんなのよ!?サモンサーヴァントで人間が出てくるなんて聞いてないわよ! 私はもっとカッコいいドラゴンとかがよかったのに!」

 

 それは彼女のちっぽけな嘘であった。彼女の地位や立場からくるプライドを守るための嘘だった。本当は誰でもよかったのだ、けれど彼女は少しでも召喚した主人としての威厳を見せようと精一杯の虚勢を張った。

 

 「どうしたの?」

 

 「え?」

 

 「泣きそうな顔してる」

 

 しかし、彼女の嘘の仮面はあっさりと見破られてしまった。指摘された通り、彼女は今にも顔を崩し歓喜の涙を浮かべたかったのだ。僅かに動揺したその隙に、彼女は抱きしめられていた。よしよしと小さな子供をあやすかのように扱われた彼女は何が起こったのか分からなかった。

 

 「いいんだよ、嬉しい時も悲しい時も我慢しなくても。隠していたらきっと後悔するよ。それにあなたがどうしたいのか教えてくれなくちゃ、私もあなたと一緒に笑えないし、一緒に悲しめないよ?」

 

 理由は分からなかったが、彼女は出会ってまだ数分も経っていないような相手に深い親しみを覚えた。それはまるで信頼する家族のようだった。そして堰は破れた、彼女の目からは小さな水の雫が流れ出た。

 

 「よかった、よかったよぉ……、ちゃんと、ちゃんと出来た……私でも出来たんだ……」

 

 彼女は召喚した者の存在をしっかりと確かめるように腕を回し抱きしめた。

 

 「うん、大丈夫だよ。私はここにいるよ」

 

 彼女が落ち着くまでに数分程掛かった。その間、彼女は静かに泣き続けた。彼女の周りで囃し立てていた者達も、まるで敬虔な教徒が素晴らしい宗教画を眺めているかのように静かにその光景を見ていた。

 

 「ねえ、私の名前は『藤丸立香』、あなたは?」

 

 「『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』、ルイズでいいわ」

 

 「わかった、じゃあ正直良く分かってないけどこれからよろしくねルイズ!」

 

 彼女、ルイズはまだこの時点では知らない。藤丸立香が世界で最後にして唯一のマスターとして世界を救った存在であったことなど知る由もない。そして、ルイズ自身もまた極大の運命を背負っていることなど知る由もない。

 

 それらを知る旅路はここから始まる。

 




初っ端から絆レベルを上げていくスタイル、これはきっとRTAですね、間違いない。


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二話

二話目でも未だに召喚のシーンとかいう亀のような進み具合なので実質初投稿です。


 「それでどうして私を呼んだの?」

 

 「えっとね、怒らないでね……」

 

 

 誰もが静かに見守っていた召喚の時間は終わり、ルイズしっかりと落ちついたのを見計らってリツカはルイズに問いかけた。

 

 「大丈夫大丈夫、人理焼却するためですとか言い出さない限り怒らないから」

 

 「何よジンリショウキャクって……、実はね、学園の授業の一環で進級の試験として使い魔を召喚するの」

 

 「へえ、学校で皆が使い魔召喚するなんてなんだかおもしろいね」

 

 「普通はね、皆当たり前に召喚できるから進級試験なんてのは建前なんだけどね。でも私は……」

 

 そこでルイズは一度言い淀んだ、口を真一文字にし今度はリツカを無事召喚出来た時とは違って悲しみの涙を浮かべそうになった。少しだけ俯いて、口を開こうとしては閉じてを何度か繰り返した。

 

 「ルイズ」

 

 その様子にリツカがルイズの名前を呼ぶ。それは急かすような声色ではなく、優しく見守るようなものだった。その声を聴いたルイズは顔を上げ、リツカをしっかりと見つめた。何かを確かめるように暫く見つめた後、ルイズはとうとう口を開いた。

 

 「私だけが出来なかったの」

 

 ルイズはその瞳に不安の色を浮かべリツカの顔色を窺っていた。誰もが出来ることが出来ない落ちこぼれの自分に幻滅されるのではないか、折角召喚に成功したのに愛想をつかされて逃げられてしまうのではないか、そんな悪い予想ばかりがルイズの脳内を駆け巡っていた。

 

 「何度も、何度も。頑張って頑張っても、失敗ばかりだった」

 

 「うん」

 

 「それでも私は続けた。考えてみればただやけになっていただけなのかもしれないけど、それでも続けた」

 

 「うん」

 

 「そしたら今回もダメだと思ったら、貴方が来てくれた」

 

 「うん」

 

 「別にね、貴方を狙って召喚したわけじゃないの、なんでもよかった。来てくれさえすればそれで良かった」

 

 「うん」

 

 「無責任なのは分かってる、だからもし貴方がすぐにでも帰りたいっていうのなら出来るだけなんとかするわ」

 

 ルイズは自分のその言葉に再び涙を浮かべそうになった、折角召喚出来た使い魔を手放すことになるかもしれないという不安に強く襲われた。

 

 「でも、もし……もし私の使い魔になってもいいって言ってくれるなら、私の使い魔になってください」

 

 ルイズは半ば諦めるようにその言葉を絞り出した。突然呼び出しておきながら使い魔になれなんて言われて答える人はいないだろう。動物であったならなんとでなっただろうが、相手は人間でありそのリツカにはリツカの生活があって帰る場所がある、そんな事はルイズでも容易に想像がついた。もし仮に自分が素晴らしい大魔法使いであったなら、少しは話は変わっていたかもしれないが、実際には落ちこぼれもいいところ、誰ががそんな者の使い魔になりたいのと思うだろうか。

 

 「いいよ」

 

 「えっ……」

 

 ルイズは何を言われたのか理解出来なかった。早く元の場所に帰せと罵声を浴びせられてもおかしくないと考えていただけに、その予想外の返答困惑していた。

 

 「でも、そんな、勝手に呼び足しておいて帰れないかもしれないのに」

 

 「いやまあ、人類が滅ぼされて帰る場所が物理的に消え去ったわけでもないし、なんとかなるでしょ!」

 

 「それに、私みたいな何も出来ない落ちこぼれの使い魔なんて……」

 

 「あー、分かる分かる。私も一人じゃあなんにも出来ないからね」

 

 「本当に? 本当にいいの?」

 

 「いいよ、というか今まで散々サーヴァントを召喚しておいて、いざ自分が召喚される立場になって嫌だっていうのもなんだか都合が良すぎる気がするしね!」

 

 「……ありがとう、本当に……」

 

 今度こそルイズは涙を流した。すっかり落ち着いたと思っていたルイズだったが、まだまだ気を張っていた、その緊張が解れてつい涙を浮かべた。

 

 そしてようやく話が付いた二人を見守っていた人物が、二人に声を掛けた

 

 「そろそろよろしいですかな?」

 

 「あ、すみませんコルベール先生」

 

 少々頭髪の具合が寂しいその人物は、授業の監督を務めていたコルベールであった。彼は本来は速やかな授業の進行を執り行う立場であったが、ルイズとその使い魔の会話に空気を読んだようで今まで黙っていた。

 

 「おや、いつの間にコントラクトサーヴァントを済ませたのですか?」

 

 「え?」

 

 「ふむ、見たことのないルーンですな」

 

 コルベールはリツカの右の手の甲を見てそう言った。確かにそこには赤色の入れ墨のような紋様が刻まれていた。

 

 「あのぉ、コルベールさん?」

 

 「おっと失礼、使い魔とはいえ許可なく女性の体をあまりジロジロと見るのは紳士的ではありませんでしたな」

 

 「いえ、そうじゃなくてですね。これは令呪っていいまして、ルーン文字とは違うんですよ」

 

 「レイジュ? ああ成程、貴方のいた国ではそう呼ぶのですか。まあ些細な問題です、何はともあれ彼女と契約してくれて感謝します。私はここで教師をしておりますコルベールという物です、異国の地に突然呼び出されて困惑していることでしょう、何かあればいつでも相談に来ていただいて構いませんよ」

 

 「あ、はい。それはありがとうございます、ただこの入れ墨は……」

 

 「おっと、申し訳ない、流石にこれ以上は授業を延長するわけにはいきませんので、何かあればまた後でお願いします。では皆さん解散、次の授業に遅れないように!」

 

 コルベールはルイズに気を使い、ギリギリまで授業時間を延長していたが、流石に限界であったようで、リツカとの会話を早々に切り上げて早々と去ってしまった。それに合わせて、それ以外の生徒であろう者達も杖を一振りしたかと思うと、全員がふわりと宙に浮かび、文字通り飛んで去っていった。

 

 「……飛んだぁっ!?」

 

 「そりゃあメイジなんだからフライくらい皆使えるわよ」

 

 「いやいやいやいや、誰でもそんな簡単に空を飛べたらワイバーンやらなんやらの飛行エネミーの立つ瀬がないでしょう!?」

 

 「あなたの所のメイジは飛べないの? 変わってるわのね、まあいいわそれより私達も早くいかないと」

 

 「ルイズも飛んで行っちゃうの?」

 

 「私は……走るわ」

 

 「おお、それはいいね。私も逃げ足だけには自信があるから!」

 

 「何よそれ、まあいいわ、詳しい話は授業が終わって落ち着いてからしましょう」

 

 「オッケー! じゃあ競争だぁ! あそこに見える建物でいいだよね?」

 

 そう言うが早いがリツカはルイズを置いてそそくさと走り出した。

 

 「あ、ちょっと待ちなさいよ! ていうか本当に足早! 主人を置いていく使い魔がどこにいるのよぉ!」

 

 「うはははは、スパルタ仕込みのこん脚力、追いつけるものなら追いついてみなさい!」

 

 怒っているような、そんな口調でリツカに声を掛けながら走り始めたルイズだったが、その顔は笑っていた。ルイズは本当の意味で楽しいだとか、嬉しいだとか思うことはここ数年なかった。家族以外の殆どの者から嘲られるて過ごしていたルイズにとって、久方振りに心の闇が晴れたかのようであった。

 

 ルイズはようやく自分の旅路が始まる、そんなふうに予感した。

 




ファーストキスから始まる二人の恋のヒストリー?
あちゃあ、ごめんなさい今それ品切れなんすよ。
まあ、RTA走者としてスルー出来るイベントをスルーするのは当たり前だよなぁ?

とは言ってもタグにGL付けちゃってるからきっとそのうち始まるんじゃないすかね?


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三話

さっそく捏造設定?独自解釈?が発生


 空には二つ月が浮かんでいた。リツカが使い魔としてルイズに召喚されてから数時間後、授業も終わりルイズはリツカを連れて寮の自分の部屋に戻っていた。

 

 「いやあ、空に二つも月があるなんて凄いね!」

 

 リツカはふと窓から空を見上げて初めて月が二つ浮かんでいることに気が付いた。

 

 「当たり前じゃない? 貴方のいたところは違ったの?」

 

 「月は一つしかなかったよ。ああ、でも最近は月よりもでっかい光帯ばかりに目がいっていたなあ」

 

 「なによそれ? 月が一つしかなくて光の帯が見える空なんておかしいわね」

 

 「月が一つなのは私にとって当たり前だけど、光帯は確かにおかしかったよ」

 

 「よくわからないわ。貴方いったいどこから来たの?」

 

 「生まれたのは日本ていう国だけどね、最近は南極にあるカルデアってところにいたんだ」

 

 「日本? カルデア? どっちも聞いたことないわね」

 

 「うん、私も素人だからあんまり詳しいことは知らないんだけど、もしかしたら並行世界ってやつかもしれない。」

 

 「何よそれ?」

 

 リツカは以前、専門家からその手の話を聞いたことがあった。しかし、彼女はあくまでも素人であったので表面だけを掻い摘んで聞いただけであり、詳しい説明をするのが難しかった。どうやって説明しようかと考えたが、どうにもうまく説明できそうになかった。ああでもないしこうでもないしと唸っていたが、突然はっとして顔を上げた。

 

 「あ! そうだよ、詳しそうな人に聞いてみればいいんだ!」

 

 「そんな人いるの?」

 

 「ちょっと待ってね、令呪があるってことはきっとカルデアとの繋がりはまだある筈だから呼べると思う」

 

 「呼べる? そのカルデアってところから人を呼ぶなんて出来るの? ずっと遠くにあるんじゃないの?」

 

 「いやあ、これまた詳しくないんだけど、この令呪っていうのがあれば結構無茶ができるらしいんだよね。まあ物は試し、やってみるよ」

 

 リツカはルイズに念のために部屋の隅に移動するように言うと、おもむろに右手を前に挙げた。手の甲にある令呪を見せつけるかのようにすると、それを唱え始めた。

 

 「令呪を持って命ずる!」

 

 その言葉に彼女の入れ墨が輝きを放ったのが、ルイズには見えた。

 

 「世界の壁を越えて!」

 

 ルイズにはそれがとても神聖な儀式であるかのように感じた。呪文のような物を唱えるリツカの姿がとても畏いものであるかのように、圧倒されていた。

 

 「来て!」

 

 ルイズは魔力の圧力とでも呼べるようなモノを感じたような気がした。自分たちの扱う魔法がとてもではないが子供の悪戯にしか感じれなくなるようなモノだった。

 

 「『孔明』!」

 

 その瞬間、目を開けていられない程の光が、ルイズを襲った。何が何やら分からないまま、ルイズは数秒程目を閉じていたが、やがて光が収まったのを感じて目を開けた。

 

 「へ?」

 

 ルイズが思わず間抜けな声を上げたのも無理は無かった。その視線の先には自らの召喚に応じてくれた使い魔の他に、見たことのない人物の姿があったからだ。

 

 「だ、誰よあんた!?」

 

 「やった! 成功した!」

 

 「ちょっとリツカ!? 説明しなさいよ!?」

 

 「あ、ごめんごめん驚いちゃった? 大丈夫大丈夫、孔明は見た目はどっかのマフィアみたいだけど良い人だから」

 

 「そういうことじゃないでしょ!」

 

 その人物はルイズにとって奇妙な人物だった。あまり馴染みはないが、良質そうな布地のキッチリとした燕尾服のような黒い衣装に身を包んでいるところを見ると、良家の生まれであるかのように見えるが、顔を見ると目つきが悪く、まるでスラムのゴロツキのようだとルイズは感じた。

 

 「マスター! 急にいなくなったとマシュから聞いて、皆が慌てふためいているというのに! ここはどこだ! きっちり説明してもらうぞ!」

 

 「まあまあ落ち着いてよ、私もここがどこかいまいち良くわかないから孔明を呼んだんだよ」

 

 「落ち着いていられるか! カルデアでマスターとの繋がりは残っていたから存命であることは確認されいたが、それでも人理を救った直後に行方不明になるなど! マシュに至っては半ば狂乱状態だったのだぞ!」

 

 「ああっと、それは悪い事しちゃったなあ。無事帰れたらちゃんと謝らないとね……」

 

 「全く……、しかし無事でなによりだマスター」

 

 ルイズはリツカがその人物と親し気に会話をしているのを見て、不安に駆られた。やはり、リツカには自分の居場所があったのだ、やっぱり帰りたいなどと言われたらどうしようかと、ルイズは考えた。

 

 「とりあえず、そこの小娘が何か知っているのだろう? とっとと説明してもらおうか」

 

 ルイズはその人物の視線が自分の方に向いたのを感じて罪悪感のような物を覚えた。リツカを召喚してしまったことを責め立てられるかと思い、思わずびくりとした。

 

 「だ、だれが小娘よ!」

 

 「ハッ! 餓鬼の癖してプライドだけはいっちょ前か、昔の誰かを見ているようでイライラしてくる」

 

 「誰が餓鬼ですって!」

 

 「貴様以外にだれがいる? ちんちくりんの餓鬼」

 

 「なんですってぇ!」

 

 ルイズはその人物の安い挑発に乗り、先ほどまでの不安感も忘れ怒鳴り始めた。このままではルイズが殴り掛かるのではないかと思ったその時二人の間にリツカが飛び込んだ。

 

 「二人ともストップ! 喧嘩しない喧嘩しない! 孔明はルイズを無駄におちょくらないで! ルイズもちょっと落ち着いてよ、ね!」

 

 リツカに言われ、ルイズは風船がしぼむかのように怒りをゆっくり鎮めていった。

 

 「えっとルイズ、この人は諸葛孔明さんって言って、私のサーヴァント……使い魔みたいな人なの。ちょっと口は悪いかもしれないけど、実は結構良い人だから」

 

 「リツカには悪いけど、とてもそうは見えないわね」

 

 ルイズは未だに胡乱な目でその人物を見ていた。

 

 「そんでも持って孔明、この子はルイズっていってね、私はこの子に召喚されたの」

 

 「何? マスターはいつの間にサーヴァントになったというんだ? そんな寝ぼけた話があってたまるか!」

 

 「いやあ、でも残念ながら事実なんだよ。それよりも話を戻したいんだけど、孔明ここがどこか分かる?」

 

 「そんな物こっちが聞きたいわ!」

 

 「いやね、私としては並行世界とかそういんのじゃないかと思っているんだけど?」

 

 「馬鹿を言えマスター、そんなホイホイと並行世界なんぞ行けてたまるものか。それとも何か? そこの小娘がかの宝石爺の魔法を受け継いだ魔法使いだとでもいうのか? 馬鹿馬鹿しい!」

 

 「そうは言ってもねえ……、ああそうだ、空を見てよ!」

 

 「空だと? 空に何があると……」

 

 リツカが孔明にそう言うと、孔明は渋々といった風で窓から空を見上げた。そして言葉を失った。

 

 「マスター」

 

 「なに?」

 

 「あれはなんだ?」

 

 「月だね」

 

 「ああ、綺麗なもんだ。ところで、空には月が二つあるように見えるのだが、私もとうとう疲労で幻覚を見るようになったのか?」

 

 「私にも二つあるように見えるよ?」

 

 「フム、成程、どうやらマスターも疲労で少しおかしくなっているのだな。カルデアに戻ったら十分にメディカルチェックを受けることをお勧めしよう」

 

 「孔明」

 

 「なんだ?」

 

 「ところがどっこい! これが事実! 月は確かに二つあるんです!」

 

 リツカが自慢げに胸を張ってそういうと孔明は思わず頭を抱えた。

 

 「なんでさ……」

 

 別の人物の口癖が思わず出てくるくらいに、孔明は困惑していた。

 

 「とにかくさ、私もここがどこか分からないから、そういうのに詳しそうな孔明を呼んだだよ。それでどう思う?」

 

 「分からん……、いいかマスター並行世界というのは言わば在り得たかもしれない可能性だ。月が二つ生まれた可能性も宇宙の誕生まで遡ればあるかもしれんが、殆ど在り得ないと言ってもいいだろう。まだ地球とは別の惑星ですとでも言われたほうが納得できる。だがやはり詳しく調べてみないことには分からないだろう」

 

 「そっかあ……」

 

 リツカが大げさにがっくりと肩を落としたところで、話に全くついていけていなかったルイズが痺れを切らした。

 

 「ねえちょっと! いい加減に私にもどういうことか説明してよね!」

 

 「あっと、ごめんごめん。ええっとね、結局なんていったらいいのかな孔明?」

 

 「だから分からんと言って……」

 

 リツカに聞かれ孔明は話始めようとしたが、そこでふとあることに気が付いた。

 

 「分からんが、ただ一つ残念な事に気が付いてしまった」

 

 「えっ!?」

 

 「どうにも、まるで誰かに引っ張られているような感触がある。恐らくだが、世界が私という異物を弾きだそうとしているのではないかと思われる。あまり強い物ではないようで、気を張っていれば幾分かは耐えられそうだが、気を抜けばすぐにもカルデアに戻されそうだ。

 

 「ええっ!?」

 

 「なんとか踏ん張ってみても精々数時間が限度といった感触だ。しかし都合がいい面もある、この現象を利用して私は一度カルデアに戻ろう」

 

 「もう帰っちゃうの!?」

 

 「マスターの無事を報告する必要がある、それに長期間こちらに居座って調査することが出来ない以上は設備の整ったカルデアでいろいろと調べたほうが効率的だ。令呪を使用できたということは魔力的な繋がりもある、恐らく一日も経てば使用した令呪も回復するだろう、何かあればまた呼べば問題ない」

 

 「ああ、成程ねぇ……。分かった、じゃあ向こうに付いたらマシュによろしくね」

 

 「ああ、無事であったことは伝えておこう、だが心配を掛けたことに対する謝罪は無事に帰還した時に自分で言うことだ」

 

 「はーい!」

 

 「ではなマスター」

 

 そういうと孔明はいつの間にかその姿を消していた。ルイズの目には瞬きしたその瞬間にはもういなくなっていたように見えた。

 

 「それでリツカ?」

 

 「ん?」

 

 「結局どういうことなの?」

 

 「よく分からないってこと、かな……」

 

 「なによそれ……、もういいわ疲れたから今日は寝るわ」

 

 「そうだね、おやすみなさい」

 

 そう言うとリツカは迷いなく部屋の隅に置かれた藁束の上に寝ころぼうとした。

 

 「ちょ、ちょっと何してるのよ!?」

 

 「え? これ使い魔用にルイズが用意してくれたんじゃないの?」

 

 「そうだけど! それは普通の動物とかが召喚出来ると思ってたからで……」

 

 「じゃあいいじゃん、大丈夫大丈夫、野宿には慣れているから!」

 

 リツカは自信気に親指でグッドサインをルイズに出した。

 

 「だ、だめよ!」

 

 ルイズは自分に優しくしてくれた、大切な大切な使い魔を、それも人間の女の子を藁束の上で寝かせれる程に悪辣な性格はしていなかった。

 

 「えぇ、じゃあ私はどこで寝たらいいかな?」

 

 ルイズは少し迷った後に、自分のベッドを差した。

 

 「しょ、しょうがないから私のベッドで、一緒に寝てあげるわ!」

 

 「え?いいの?」

 

 「特別よ特別!」

 

 「わーい!」

 

 リツカは喜んで、ルイズのベッドに突撃した。

 

 「ちょっと、あんまりシーツを引っ張らないでよね」

 

 「分かってるよ、おやすみルイズ」

 

 「……おやすみ、リツカ」

 

 疲れていたのか、リツカはルイズに先んじて寝息を立て始めた。同じベッドで寝ているルイズも寝入ったリツカの顔を見て、独りではないことに不思議な安心感を覚え、やがて同じように寝息を立て始めた。




 ちなみ呼べる鯖は作者がゲーティア戦で使用した鯖限定にする予定
 そんな何十人もキャラを書き分けられる文章力なんてないからね、仕方ないね


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