Lost Belt No.8 完了形極刀国 日の本 ※凍結中 (冥土のメイド)
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一本目

初めて書くので至らない点も多いと思いますが、精進していきます。何卒よろしくお願いします

 


 

 2015年、人理保証機関カルデアに所属する私、四季崎緋華含めたAチーム8人がレフ・ライノールによる爆弾で死んだ。凍結保存されたものの絶命していた私達に意味はなかった。

その後、異星の神とやらに蘇生されて選択を迫られた。生きるか死ぬか。

 

 訳が分からなかった。自身が死んだこともそうだが、何よりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかしてそれは、私の人生の大きな転換期であった。私は死にたくなかった。こんなところで終わりたくなかった。まだ何もしていないのだ。私が取った選択は一つしかなかった。

 

 

 

 私の人生は酷く平坦であった。歩んでいく道のりには一切邪魔なものはなく、躓くような凹凸もない。見渡すかぎりの予定調和。生きてきた17年間は大方()()通りでわかりきったことを行うだけの作業でしかなくて、それらはもはや経験とは言えるものではなかった。

 

 生まれは首までどっぷりと浸かった魔術師の家系。父が魔術師で母は普通の人だった。専門的な魔術は「未来を視る」といった限定的で、根源へのアプローチもあまりにも曖昧だった。父なんて「根源に至りたいなら未来で至った人の方法でもパクれば?」なんて言い出す始末。血の濃さは戦国時代初期からつづく600年そこそこらしいのだが、これでは何のために魔術を探究しているのかわからなかった。父は根源に興味がなかった。

 

 そんな家に生まれた私は皮肉というべきか、生まれながらにして未来を視る目を備えていた。「予測の未来視」魔眼であり、超能力、異能に分類されている人類が捨てた機能の一つ。周りの環境を観測してそれらを元に未来を弾きだす力。私はこの力を意図的に使うことができた。勿論先の未来になればなるほど体への負担は大きくなるものだったが、こと未来視においては他の者に追随を許さないほどの家でもあったので父は嬉しそうに私に様々な魔術を施し、与えた。

 

 そんな私は父にひとつの誓約をかけられた。それは「2016年以降の未来を視てはならない。」といったものだった。ゆえに、私は2016年以降の未来は見えない。理由は不明だったので疑問が残っていたが、父は「いつか分かるよ」といつも優しく私に微笑んだ。

 

 母は本当に普通の人だった。父曰く運命だそうだ。心から母を愛したそうだが、確かに父と母は仲が良かった。母は私が小学生のころに不治の病で亡くなった。父は悲しみこそしたがそれだけだった、母の死ですら父には予定調和だった。未来を視る者はそうなる。と父は諦めを浮かべながら笑った。

 

 母との思い出は多くない、元より体が悪かった母に病院へと会いに行く事が多かった。そんな中、私は母と一つだけ約束をした。でも今となっては思い出せない。

 

 そして私が16歳のころ、その日また予定調和だった。

 

 

 

 私は父の書斎へと向かう。呼ばれていたわけではないが、今日はそういう日だ。部屋は暖炉が焚かれいて暖かい。

「ほら、緋華。天体科のロードからの招待状だよ」

笑いつつ、手紙の中身も、差出人の名前も見ずに父は私にそれ放り投げた。仮にも時計塔のロードからの手紙なのだがぞんざいな扱いだ。

「お父さん、やっぱり私行かないと駄目なの?私、まだ研究を続けたいわ」

投げられた手紙を暖炉の火にくべながら、私は父に尋ねた。内容なんて数年前から知ってる。手紙を開く意味はない。

「仮にもロードの手紙なんだから開けなよ。扱いが雑だね。それにわかってるだろう緋華、大丈夫。大したことはないよ。死ぬことはまぁ、ないだろうし」

わかってはいたことだった。人理保証機関カルデア、端的に言えば人類の未来の保証をする場所。そこでこき使われる未来をとうに視ていた。

「何なら向こうで研究を続ければいいさ」

父は続けて言った。私は諦めながら、そのまま部屋を後にし、まとめていた荷物のチェックを始めた。どれだけあがいても行くことは避けられない。

 

 

 

 うんざりするほど寒い中へと私は家から出る。

「じゃあ、行ってきます」

「あぁ、行ってらっしゃい。たまには帰っておいで」

「そんな未来、視てないくせによく言うわ」

冗談を交えながら、父に別れの挨拶をする。少なくとも、現時点で見えている未来において、これ以降父と会うことはない。

「いやいや、僕はいつでも君を見てるよ」

「はいはい、行ってきますね」

家を出る。さぁ、ここからが長い。頑張ろう。

「これ………の……か、………てるよ緋華」

ふと微かに聞こえた父の声に振り返る。そこにはいつもの優しく笑った父が変わらずいただけだった。

 

 

 

------interlude------

 1998年8月07日、僕に娘が産まれた。こんな嬉しいことはない。僕と佳奈の娘、名前はひばな。漢字は佳奈が決める約束だ。名前に深い理由はない。ただ産まれたばかりの姿を見た時、そう娘を呼びたいと思ったのだ。ありがとう佳奈、今はゆっくり休んでね。

 

 

 ひばなは、僕たち四季崎の大願を成就させる子だ。でも、そんなことはどうでもいい。ただささやかな幸せの中で生きてほしいと親として祈る。彼女の人生は彼女のものなのだから。

 

 

 さすがは僕の娘だ!生まれながらにして、未来視の魔眼を持っている!それもわかってはいたが、やはり嬉しく思ってしまうのは親の性なのだろう。なによりたまらなく可愛い。天使のようだ!魔術についても多くのことを教えなければならないが今はまだいいだろう。娘といられる時間はそう長くない。家族の思い出をたくさん作りたいな、うん、こうしてはいられない!早速出掛けよう!

 

 

 あっという間に緋華は6歳だ。明日は小学校の入学式、誰よりもかっこいい父でなければ!でもやっぱり佳奈と一緒に行きたかったな、体調はやはり優れないみたいだ。後2年と172日、それが佳奈といられる時間だ。もっと彼女の傍にいよう。

 

 

 佳奈が死んだ。

 

 

 君は、僕にとって光だった。未来が見える僕にとって、生きることはただの作業でしかなかった。決められた行動を繰り返すだけのロボットだった。けれど、今も覚えてる。高校2年の夏、終業式。君が僕にぶつかった時のことを。あり得なかった。その日も予定調和の未来を視ていた。誰かとぶつかる未来は何処にもなかったんだ。けれども僕たちはぶつかった。久しぶりの人とのふれあい。急いでいた君が恥ずかしそうにする姿を見て、運命だと思った。君が、君だけが、僕を人でいさせてくれるのだと。

 それからは必死だったよ。君にアプローチし続けた。未来を視ることは決してしなかった。君に対しては人間でいたかったからね。君と結ばれて本当嬉しかった。どんなことをしてでも君を守ろうと誓った。その時だ。君との行く末を少しだけ覗き見した時、未来の僕の隣に君はいなかった。絶望した。君が死ぬ理由は訳のわからない病。納得できるわけがなかった。あらゆる可能性を模索した。色んな医学、科学、魔術ありとあらゆるコネも使った。厄介事もかかえこんだりもした。それでも君の死を覆す未来を視ることはできなかった。

 僕が全てを打ちあけた時、君は言ったね。「世界一の幸せ者で死にたい」って。僕は君のその願いを全力で叶えようと思った。緋華と3人で思い出もいっぱい作ったね。遊園地でも公園でも家でも病院でもどんな場所でも。最後の時君は笑っていた。僕はうまく笑えなくて、くしゃくしゃな顔だった。君の願いを叶えることができただろうか?そうだといいな。ありがとう佳奈。僕と出会ってくれて、人間にしてくれて、愛してくれて、緋華を生んでくれて、君は多くの感情と感動くれた。いつまでも君を愛してる。緋華のことは任せて。

 

 

ごめん、佳奈。緋華の育て方ミスった。まるであれじゃあ君に出会う前の僕だ。娘をロボットにする親ってどうなのかな…。いっぱい愛情注いだのに…。でも、見た目は君にそっくりだ。本当に綺麗だよ。

 

 

 …で、わざわざ何の用?いや、答えなくていいよ。大体は把握してる。僕に手伝えっていうことだろう。でも、ごめんマリスビリー。佳奈の時の散々貸しがあるのはわかってるけど、僕は行けない。ただしその代わりに僕の娘が行こう。え?僕の娘だよ。優秀に決まってるじゃないか。性格に難はあるけどね。

 

 

あぁ、遂にこの日が来たか。四季崎の大願成就のための。

 

 

こればかりはもう、どうしようもない。背に腹はかえられない。ここで緋華を送り出さねば、緋華も死ぬことになる。それは駄目だ。人理焼却後の人理再編、この未来は避けられない。僕は娘を守らなければならない。助けた後、どれほどの苦行が待っていようと。ごめんね緋華、君に四季崎の業を背負わせることになる。ご先祖は諸手を挙げて喜ぶだろうな。クソッタレ。

 

 

うんざりするほど寒い中、旅立つ娘を見送る。徐々に遠くなる姿。佳奈そっくりな姿。嫌だな、本当にこれで…

「これが親子の最後の会話か…愛してるよ緋華」

言葉は白い吐息となって空に溶けた。緋華がこちらに振り向く。ねぇ佳奈、僕は今うまく笑えているかい。

 

 

 


・四季崎 緋華  シキザキ ヒバナ

本作主人公、一回死んでから人間性獲得。一応魔術師。

四季崎の大願成就をなす巫女。

父から四季崎については一切聴かされてない。

 

・四季崎 掛  シキザキ カケル

緋華の父。家族が第一なお父さん。

魔術師とは到底いえない感性と考えと行動だが腕は一流。特に未来を視ることにおいては、どこぞの近未来観測レンズより上である。

 

・四季崎 佳奈  シキザキ カナ

緋華の母。

 

 

 

 

書いててパパが主人公な気がしてきた。

と言っても、彼が今後出る予定は一切ないです。



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二本目

2部の序章と本編の間の話、緋華さん異聞帯にIN

カルデアがこの異聞帯に来るのは4章と5章の間ですかね。そのうち、ナチュラルにネタバレもあるかもなので、未プレイの方はお気をつけて。

 


世界について何も聴かされず任された。

異星の神によって私に与えられた異聞帯は日本だった。

「ここが、歴史から淘汰された日本」

とにかく緑が多かった。凡人類史のような高度な文明は何処にも見当たらない。おそらく文明開化も起きていないのだろう。

 

 

私は、未来を視た。父によって封じられていた未来視の制限は、一度死んだからなのかもうなかった。この異聞帯の王に会うべく最適な未来を算出し、行動を起こす。どうやらまだサーヴァントは召喚しない方が良いようだ。目的地へ向かう中、その方角に真っ白な木が天を貫くように伸びていた。

 

 

私は東京にいた。いや、正確には東京だった場所だ。この世界における呼称は「江戸」、誰もが想像しそうな江戸が、侍の世界がそこにあった。城下町を進む。和服姿の住民たちが楽しそうに日々を送っている。やはり私の格好はもの珍しいのか、やたらと視線を感じる。身だしなみには気を使っているが、ここでの常識に合わないならそれも意味がないのかもしれないし合わせるべきなのか。母さん譲りの栗色の髪が風に吹かれる。やっぱり黒にはしたくはない。

 

 

そんな中私は、この異聞帯は凡人類史に比べて弱すぎると思ってしまった。明らかな文明発達の遅れ、他の異聞帯と戦争すれば一発でやられる。間違いない。別に私は世界の覇権を勝ち取りたいわけでもない。私が死ななければそれだけでいい。だからこんな異聞帯だってどうでもいいのだが、私はようやく得た人生の刺激に酔っていた。今を生きることが楽しくて仕方がない。

 

 

城についた。かなり歩いたので辛い。さっさと要件を済ませよう。

「待て!そこの女、ここを何処と心得る。我らが将軍の城であるぞ」

「その将軍様に呼び出されてるの、通して」

「ならん、貴様のような怪しい格好の者をそう易々と通せん」

「あーもう面倒ね、おやすみなさーい」

「何を言っ…」

ちゃんと寝てる。大した魔術ではないちょっとした呪詛返しみたいなものだ。うん、魔術行使も特に問題なし。未来も確認済み。さぁ、天守閣へ参りましょう。

 

 

でも、出会う人みんな眠らせるのはやり過ぎかしら。幸い私を殺せる人はいないみたいだし、ぐんぐん進んでるけど、やっぱりこの異聞帯弱すぎないかしら。このままだと将軍暗殺出来そうなんだけど。

 

 

天守閣、遠い。

 

 

やっと着いた。既に疲れてるけど、ここから色々説明しなければならない。気を引き締めて…

「入られよ、異邦の者よ」

「…っ!」

襖の向こうから突然かけられる声、驚きを隠せない。私の未来視にないことが起きたからだ。私は意識を切り替えた。ここから先は何が起こるかわからない。戸を開けた。

「ほう、格好は渡来人とさして変わらんのだな」

さっき私にかけた声とは違うものだった。

部屋には綺麗に両脇に並らんだ侍たちが十数人いた。奥にいる顔の見えない人が将軍なのだろう。

「よいぞ、楽にせい。お主には多くのことを説明してもらわねばいけんのだから」

将軍らしき人が言う。私は立ったまま言葉を返した。

「あなたが将軍様?」

「如何にも」

「じゃあ、説明させてもらうわ。あなたたちの世界に起こったことについて」

私はまた驚いていた。ここのやりとりは既に視ていたのだ。この後、将軍に対しての口調を一人の侍にキレられて、将軍が諫める。一ミリのずれもない未来。さっきまであった未知という驚異はどこかに消え失せていた。だが、ある男の笑みに嫌悪感を抱いていた。

 

 

「なるほど、気になる点はいくつもあるが、ともかくその他の世界に勝利すれば、我々の世界が今後も続いて行くということで相違ないか?」

「えぇ、その通りよ」

「うむ、ではこれより戦の準備を始めよう。お主は客人としてもてなす。部屋を用意させよう。胡蝶、任せた」

「はい、承りました」

さっきの気に障る笑顔を浮かべる男だった。

とにかくこれでいい、後は私がサーヴァントを召喚して自身の安全を確保する。戦う時は戦う。それでいい。この異聞帯に期待は一切ない。元々ない世界だ気にかける必要もないだろう

「では、こちらに」

私はその場をあとにした。

 

 

胡蝶という男に案内される。長い腰までありそうな黒髪、顔つきは中性的、それでも不思議と男とわかる。理路整然とした佇まいの人だ。腰に下げている刀は何だか気味が悪い。廊下を歩く。それにしてもこんなにもこの男が嫌なのは何故だろうか。

「それは、未知という恐怖に出逢っているからでは?」

「え?」

今思考を読まれた?どういうことなのか。訳がわからない。

「あぁ、口調面倒くさぇな。あーあーよし、サーヴァントを召喚するは必要ないぜ。この世界には最高の刀が多くあるんだからな」

「なんで…さっきサーヴァントなんて一言も言ってない」

私があの場で話したのは、自身がクリプターという異邦人であることと、世界の覇権を奪いあう戦いに参加していること、あの空想樹を守ることだけだ。私の魔術もこの世界においては妖術のような認識で理解はないはず、ただの侍がサーヴァントなんて知っているはずがない。

「おぉ~良いね~その反応」

さっきまでの佇まいの様子はもうない。がさつな口調で私の顔を覗き込んでくる。

「なるほどな、生まれたての赤ちゃんみたいじゃねぇか。最近人間になったのかい?」

駄目だ。怖い。その存在を視ることが出来ない。

「あなたは誰なの」

「初めましてだな緋華。俺の子孫よ。そしてようこそ()()()()()()()()()()()()、毒塚胡蝶はこの体の名前だ。」

 

 

「そして俺は、四季崎記紀だ」

 

 

-----interlude-----

突如として嵐に覆われ、江戸には未知の巨大な木が生えた。ようやくだ。やっと俺の目的が果たせる。ここまではとんでもない博打だったが、うまくいった。勝負はここからだ。

 


 

はい、今回はちょっと短めでした。

書きたいこといっぱいあるので、この辺りは巻きで行こうかなと。

 

読んでいただきありがとうございます。これらも頑張って書きます。



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三本目

昨日、劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン見てきました。本当に綺麗な作品ですよね。絵ももちろんですがお話そのものが。アニメだと、雨傘の回がお気にいりです。たくさんの感動をいただきました。ありがとうございます。

 

さて今回ですが、そろそろこの異聞帯を詳しく描写していきたいと思います。刀語の原作を知っている方はもちろん、知らない方でも楽しめることを目指して行きます。

ガバガバな設定もあると思いますが、どうかご容赦を。

 


 

「し…き…ざ…き?」

しきざき?シキザキ?四季崎と言ったのか?どういうことなのか、子孫?この体?尾張幕府?わけのわからないことが多すぎる。うまく脳が働かない。私は未知に対してあまりにも無力すぎた。

 

 

「あぁ?俺を知らないのか?親から何も聞いてねぇのか?四季崎の大願を」

何故そこで両親がでてくるのか。混乱と恐怖で私の体は一向に動いてくれない。

「はぁ、仕方ねぇな。ちょっと頭の中覗くぞ」

四季崎を名乗る男は腰の刀を抜いた。刀身は黒く、刀からは瘴気のようなものが出ている。男はそっと私の耳たぶを切った。まるで他人事だ。裂けるような痛みも朧気だ。

 

 

次の瞬間、私の中に何かが入ってきた。

 

 

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

中で何かがはいずりまわる。血管を筋肉を骨を神経を魔術回路を乱暴に傷つけながら私の頭に向かってくる。

「痛みはただの拒否反応だ。実際は何も傷つけてない。幻肢痛ってやつだ。もういいか」

男はヘラヘラしながら言ううちに、痛みは引いた。

 

 

「ふーん、なるほどねぇ。お前の父はずいぶんな過保護だなぁ、でもこれもはや裏切りだろ。お前の父が2世代、いやもう1世代早く生まれてたら、俺の博打はどうなっていたことやら。いやお前の母親あってこその存在か、運命とは数奇なもんだ」

男は何を見たのだろうか。少し苛立ちをみせては、すぐに鎮め、何か思いふけていた。

「何を…したの…」

「あぁ、記憶少しばかり覗いただけだ。体に問題はない」

まただ。こいつは当たり前のように常識外の事を言う。

「オーケー大体把握した。色々と説明しなきゃいけねぇな」

男が刀をしまう。私はもはやパニックだった。もう嫌だ。付き合ってられない。このままではいつか殺されてしまう!私は必死に駆けだした。未来視の能力で最適の逃走を視る。いや、逃げるだけでは駄目だ。戦わなければ、未来演算に英霊召喚を組み込む。……いける!これならあいつを殺せる!今は走れ!目的地を目指して。

 

 

「おいおい、殺る気満々じゃねぇか。それにしてもわかんねぇのかなぁ…()()()()()()()()()()()()()()()()ってことが、まぁいい。我が子孫との記念すべき最初の交流は鬼ごっこってことにしよう」

 

 

目的の大きな部屋に入る。この城は霊脈の上にあるためサーヴァントを呼ぶことが出来るだろう。最速で陣を書く。こんな即興ではオフェリアに怒られるのは間違いないが、冗談は言ってられない。

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 」

詠唱を始める。聖遺物もないがそこは私の未来視でカバーする。

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

徐々に魔力を回す。この匙加減で呼び出すサーヴァントは変わってくる

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。」

ここだ。ここで大きく魔力を回す。

「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者。」

右手に令呪がハッキリと浮かび上がり熱を持つ。

「汝 三大の言霊を纏まとう七天 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

間違いない成功した。今呼べる中で最も良いサーヴァントを引き当てた。

 

 

「召喚に応じ、参上した。真名を俵藤太と申す。アーチャーのクラスをもって顕界した。」

米俵を背負った大柄なサーヴァント、彼なら私を守れるはずだ。不思議とそう思える。何なら出し惜しみなく宝具を連射してもらってかまわない。

「む、何やら困っているようだな、マスター。任せろ私が来たからには大丈夫だ」

少しばかり安心する。だが油断出来ないあいつはすぐそこまで来ている。

「お願い。私を守って」

「任された」

多くを語ることはなかったがアーチャーは察してくれた。そうして戦闘体制に入った。

 

 

「…ったく、何処までいくのやら」

あいつが来た。私も魔術回路を起こしておく。

「マスター、あれは本当に人間か?あの刀から出ている瘴気の量はしゃれにならんぞ」

「私にもわからない、でも敵であることに違いはないわ!」

「随分嫌われたもんだなぁ。で?そのサーヴァントで俺を殺すのか?まだ何も知らないのに?」

「えぇ、悪いけど。あなたに殺されたくないの」

「いつ俺が殺すなんて言ったかねぇ。パニック状態なら仕方ない。一度黙らせて話を聞かせるとするか」

「マスターに触れられると思うなよ。悪鬼」

アーチャーが矢を構える。

「その矢が当たるといいなぁ、そう思わねぇか?」

男の口の両端が歪に上がる。

そして次の瞬間、音を置き去りにする矢が放たれた。

 

 

 

「バ……カな…」

アーチャーが粒子となって消滅する。あり得なかった。いくら何でも人間がサーヴァントに敵うわけがない。

「たとえ音速越えてようが、来る場所分かってたらどうにでもなるだろうが、それにとっくに人間やめてんだよ」

「それでも!」

「相性が悪かったな、まぁそうなるように視てたんだけど」

「え?」

「お前にとっての最適解を俺が演算出来ない道理はないだろう?初めから手のひらの上、俺だって『四季崎』なんだぜ」

ようやく理解し始めた。私ではこの男に敵わない。恐ろしかったのは、それを本能的に感じていたからだ。私の足掻きは無意味だった。私に抵抗する気力はもうなかった。

「ひでぇ部屋だな。後処理は御側人衆にでもやらせるか。」

私に近づいて四季崎記紀は語り始めた。

「あーやっと、説明パートだ。耳の穴かっぽじってよく聴けよ。この世界のあり方とこの俺、四季崎記紀の大願についての話だ」

 

 

-----interlude-----

むかしむかし、あるところに一人の鍛冶師がいたそうな。その鍛冶師の腕の良いこと良いこと。摩訶不思議な刀を作るのです。彼が打った刀の数は何と()()()。そして、多くの人がその強い強い刀を奪い合いました。長い戦国時代、その鍛冶師が打った『変体刀』を持つ量で戦の結果は変わったのです。戦国時代は結果、尾張の国が変体刀を一番多く集め、天下を治めて尾張幕府を開き、()()()日の本を治めたとさ。めでたしめでたし。ちなみに、その鍛冶師は「四季崎記紀」と言う名だそうです。中でも彼の傑作、完成形変体十二本は、一つで国が買えるそうな。

 

 

めでたしめでたしで、この世界が続けばよかったんだが。どうやら、人類の総意はこの世界が気にくわなかったらしい。行き止まりにした理由は…今はいいだろう。俺はこんな結果に納得できなかった。俺はこの世界を存続させたかった。だが、いくら未来を視ても演算しても()()()()からじゃあどうにもならねぇ。と言うわけで俺はな、緋華()()()()()()()からアプローチをかけてみたんだよ。

 

 

 


 

・四季崎記紀  シキザキ キキ

全ての始まりにして、元凶。実質異聞帯の王

実は、刀語本編よりスペックが高い。「予測」と「測定」の未来視を持ち合わせ、魔術についても履修済み。刀語本編を越える熱意で刀を一万本打つ。

体は彼自身のものでなく、彼の持つ毒刀・『鍍』の力により、記憶の転写を行い体を奪うことで生き永らえている。体の持ち主は「毒塚胡蝶」と言う名。ちなみに毒塚家は大老の一角、代々毒刀・『鍍』を当主に継承している。

 

○変体刀

四季崎記紀が打った一万本の刀

 

○完成形変体刀十二本

変体刀の中でも、極めて完成度が高い十二本。刀に選ばれた者だけが使える限定奥義が存在する。

 

○毒刀・『鍍』

四季崎記紀の打った『変体刀』一万本のうち、完成形変体刀十二本と呼ばれるものの一つ。

今作の四季崎記紀が刀語本編の10倍に及ぶ刀を打ったので、必然的に完成形変体刀十二本のどれも性能が上がっている。この刀で言うと、毒気の強さ×10。記憶の転写成功率×10。

 

 

今日はこのぐらいで。おそらくもう、「四季崎の大願」については予想がつくのではないでしょうか。と言うよりもう説明出来る方もおられる気がします。

俵さんかませ犬役でごめんね。明日はお米食べます。後6章の劇場版での活躍待ってます。

 

 

皆様、読んでいただき本当にありがとうございます。お気に入りしてくださった方々には涙を流します。先日は感想などもいただいて、大変励みになります。これからも頑張っていきます!



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四本目

説明パートです。どうぞ

 


「あー悪い、少し話す順序を間違えた。「実は俺も生まれた時から未来視が出来たんだよ。そのうえ、四季崎家は占い師の家系でもあったからな未来を視るどころか演算することさえ俺には可能だった。「だからありとあらゆる()()()()()()()()()()()()を視てた。「俺の元々の目的は幕府の転覆にあったが、それを主軸にした未来も未来でまたかなりのもんになっただろうな。この未来視の魔眼を持っていなかったらそういう世界になってたのは違いない。「だが、俺の望みは大きく変わった。俺が一振りの究極の刀を作りあげる。そんな可能性を視てしまった。可能性の中で見えたその刀の閃きに心奪われちまった。お前の父親が母親に出会ったみたいなもんだ。この時俺は例え世界が行き止まりにされようとも、その究極に至る事を誓った。「そして出来たんだよ。その一振りは。あっけないほどに、あっという間に至った。」

 

 

四季崎記紀は一度私をじっと見ては話を続けた。

 

 

「それでも、この世は残酷かな。俺たちの未来はいきなり行き止まりを迎える。俺にはどうしようもできなかった。だからさっきも言ったな、別の世界を当てにした。「実際はただの偶然だったぜ、俺の未来視といえど億や兆ある未来を全ては把握出来ない。脳が処理しきれないからな。だが、条件を絞って俺らの世界が()()()()()に復活しないかを模索した。そしたら見つかったんだよ。異星の神による濾過異聞史現象、地球の白紙化と異聞帯の出現が「後はその現象が起こる世界に、この異聞帯を引っ張ってこれる人間を生み出し、渦中に放り込む。言うのは簡単だが、ぶっちゃけてそんなことは不可能に近い。だから俺は根拠も何もない博打にでた。俺はお前たちの世界を観測し続けた。四季崎の一族を存在させ、この世界を召喚することを大願とし、その運命の日までその世界が確定するように視続けた。そしたらどうだ。お前が来たんだよ。この時の気持ちがお前にわかるか?最高の気分だったよ」

 

 

高笑いをあげる四季崎記紀、正直ピンと来ていない。だがこの男は決定的な見落としをしている事だけはわかる。

「喜ぶなら、他の異聞帯に勝ってから喜びなさいよ」

そうこの一点に限る。この世界はようやくスタートラインに立っただけで、まだ存続すると決まったわけではない。強く深く空想の根をはらなければ他の異聞帯に呑み込まれるだろう。

「あぁ?……あぁ、問題ねぇな」

「どういった根拠よ。いくらあなたがサーヴァントを凌駕していようと、一人で勝てるはずもないでしょう」

「言っただろ?究極の刀があるんだよここには。そのうち()()してやるよ。今日ここまでだ。部屋の用意は…出来てるみてぇだな……あーあーもう夕刻をまわっている。ゆっくり休まれるとよろしい。それではまた」

 

 

口調を戻しては、また嫌な笑みを浮かべて去っていった。私は疲労によりしばらく動けずにいた。もう駄目だ。今日だけでこんなにも疲れてしまった。サーヴァントを召喚したり、未来を視たりと多くの局面で魔力を使いすぎた。めちゃくちゃにあれた部屋を出ようとした時「もしもし、大丈夫ですか?」声かけられた。鬼の面をつけたおそらく男がいた。

「…あなたは誰?」

 

「これはこれは申し遅れた。わたくし家鳴将軍御側人十一人衆が一人、餓鬼丸と言います()()()()()殿」

 

「あぁさっき将軍様のところにいた…」

 

「はい、胡蝶殿からこの部屋の処理を任されここにおります」

 

「ねぇ…聴いてもいい?」

 

「何なりと」

 

「四季崎記紀って知ってる?鍛治氏の」

 

「それはもちろん、知らぬものなどおりません。私が持つこの絶刀・「鉋」も彼が打ったとされる変体刀ですよ」

 

「その人ってまだ生きてる?」

 

「ご冗談を、もう500年前の人物です。生きているはずがございませんよ」

餓鬼丸は優しく私の質問に答えてくれた。

「ありがとう。でもあなたは何も聴かないの?この部屋の有様とか」

 

「胡蝶殿より、『刀人』と伺っております。来て早々に災難でありましたね……おっとくりぷたー殿はおやすみください。この部屋は私が片付けますので」

そう言われては邪魔はできない。最後の気力をふり絞って部屋までの未来を見て、私は歩きだした。

 

 

私室に着いた。色々と状況と情報を整理したいが、私は堪えきれず眠ってしまった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

 

あぁ、久々に夢を見ている。私が見る夢は二つに限られる。明日の未来か母との記憶、前者は休みを知らない魔眼のせい。後者は内容をハッキリと覚えていないからよくわからない。

 

どうやら今日の夢はどちらでもないらしい。

 

森の中にいる。私はただブラブラと森を歩きまわっている。すると森の中で人を見つけた。大きな岩の近くで刀を振っている。

 

「―――」

 

男が刀を振るう

だが、素人目でもわかる。彼にはセンスがない。身のこなしに太刀筋や切れの良さ、そのどれにも今後光るものを見いだせない。どうやら彼も彼で悩んでいるようだ。時折悔しそうな表情を浮かべては、がむしゃらに刀を振っている。そこに一人の男がやってきた。やってきた男は彼に話しかけている。

 

「───────?」

「──」

 

だがその会話を聴きとる事が出来ない。

 

「──────、─────────」

 

男は彼の近くにあった岩に座る。

 

「───────────」

「─!────!!」

 

次第に彼が感情的になり始めた。男に何を言われたのだろうか。

 

「───。────」

「・・・・・・」

 

そしてそう長くないやりとりの中、彼は自身の持っていた刀を落とした。

 

「─────────────────」

 

男が話を続けている。嫌な気分だ。一人の男が夢を諦めさせられる夢。そんな感じがする。それにしてもこの人たちは誰なのだろうか。身なりからして現代の装いではなく、和装だ。顔を見ても誰かに似ているのか心当たりもない。

 

 

だけど何故、私はまたこんなにも嫌悪感を抱いているのだろうか。

 

 

「─────」

 

岩の上にいる男を見る。彼は歪な笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

目が覚める。

この前までの予定調和はもう何処にもない

 

 


 

 

 

・餓鬼丸

家鳴将軍御側人十一人衆の一人。絶刀・「鉋」の所有者

実力は刀語本編でいうと完了前の七花より強い。サーヴァントには勝負になっても勝てないかな。思案中

この異聞帯の御側人衆は錆黒鍵さんと張り合えてた十一人衆くらいのつもり

 

○絶刀「鉋」

完成形変体刀十二本の一つ。折れない、曲がらない、歪まない、の三拍子。

 

 

○刀人

四季崎の作った変体刀に魅入られたものがなる。

 

 

 

今回はこのくらいで。いよいよ次回から完成形変体刀十二本いっぱい出して行こうと思います。

 

 



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五本目

今回から頑張って文章量を増やそうと思います。

読んでいただいてる皆様に恥じないように頑張っていきます。

 

FGOでBOXイベが始まりましたね…更新は遅れると思います…ご容赦を…

 


不思議な夢だった。今思えば、あの嫌な笑みの男は四季崎記紀で間違いないだろう。だが、記紀に何かを言われていた彼は誰なのだろうか。まだ印象に残る。今の状況も整理しなければならない。だが今はとりあえずお風呂に入りたい。どうにかならないものか。

 

 

いよいよ我慢の限界がきた。元々気の長い方ではない。しかし、今お風呂に入っても着替えがない。

「……………よし」

10秒ほどの審議の結果お風呂を優先した。

 

 

未来視はこういう状況に便利だ。風呂場の位置がわからずとも視るだけでいい。ちゃちな使い方だが仕方ない。私の部屋からそう遠くないところに風呂場はあった。

 

 

脱衣所で服を脱ぐ。私は基本的にジーパンにTシャツ姿だ。何を着るか迷わないし、動きやすくて楽だから。ぺぺはよくそれを嘆いていた。彼曰く勿体ないとの事だが、私は自身の姿に自信はない。母譲りの髪には自信はあるがそれだけだ。魔術的意味合いもあって今では腰辺りまで伸ばしているが、そろそろ切っても良いかもしれない。気分的に、特に意味はない。都合良く脱衣所にタオルがあったので拝借してようやくお風呂に入る。

 

 

広くて大きな露天風呂。

先約はいないのは確認済み、さっさと体を洗ってお湯に浸かる。

「………………………」

駄目だ。気持ちよくて寝てしまいそうになる。しかし今はこの異聞帯について考えなければならない。

四季崎記紀、歴史の改竄、世界の観測、変体刀、尾張幕府、日の本。考えれば考えるほどに馬鹿げている。そもそも手段もめちゃくちゃ、あいつの言う博打はもはや博打でも何でもない。だけど今こうして私が湯に浸かっている時点で紛れもない現実なのだ。これからどうするべきか考えようとした矢先

 

「俺の子孫はまぁ図太いもんだ。呑気に風呂か?」

 

「どうして入ってくるの」

会いたくないやつが来た。会いたい人物がいるわけでもないが。

 

「着替えが必要だろ?それとお前の今日の予定を言いに来た。今日はこの異聞帯を直に見てもらう。部屋に朝飯がある。お前がそれを食ったら迎えにいく」

 

「着替えはどうも。ちなみに私に拒否権ないの?」

 

「クリプターの仕事一つだ。お前には働いてもらうぜこの異聞帯のために」

 

「………」

 

「おいおいそんな顔するな、かわりの報酬はこの異聞帯で一番安全な場所をくれてやるよ」

 

未だに信用はできないが従うしかない。まだまだ情報が足りないのも問題だ次のクリプター同士の会議までそう時間もない。自分だけ異聞帯とのコンタクトに失敗するなんてたまったものではない。

 

「そういうことだ。俺は行く、のぼせるからほどほどしておけよ」

 

「ちょっと待って」

 

「何だ?」

 

「彼は……………いえ、何でもないわ」

 

「?……まぁいいだろう」

記紀は深く詮索する気はないらしく、足早にその場をあとにした。

夢の中でのこと聴こうとしたのだがやめた。何故か聴いてはいけない気がしたからだ。今は少しでもこの異聞帯を知り、次の方針を決めなければならない。誰と戦うべきなのか。何のために戦うのか。今私には目的も何もない。ただ死にたくないだけなのだ。

 

 

パンツがふんどしだった。四季崎記紀、あいつはいつか殺す。

 

 

 

朝食を終えて、私を迎えに来た記紀が開口一番に言った。

「それで?結局ふんどし履いてんのか?」

 

「履いてるわけないでしょう」

あの後、仕方なく下着は洗うことにした。他のメンバーは衣服問題を一体どうしているのだろうか。良ければ解決方法を教えて欲しい

 

「じゃあ履いてないのか?」

 

「・・・・・・・・」

最低の気分だ。下着は部屋で乾かしている。今までに異聞帯をノーパンで歩き回るものがいただろうか。いや、いない。

 

「この仕事の報酬に下着類も追加してやるよ」

笑いながら言う記紀。

 

「それはどうもありがとう。でもあなたは地獄に墜ちろ」

心からの苛立ちを彼にぶつけた瞬間だった。

 

 

城を出て馬車が用意されていた。どうやらこれに乗って行くらしい。その移動の間も記紀は器用に口調を使い分けていた。やはり四季崎記紀であることは秘密のようだ。

「器用に口調使い分けてるけど、どうして正体を偽っているの?」

 

「その方が何かと都合が良いからな。それに600年前の死者だと信じるやつはいねぇよ」

 

「…そう。馬車があるのも驚いたけど、目的地はかなり遠いみたいね」

 

「いや、そうでもない距離だがお前にまずサーヴァントの代わりをくれてやろうと思ってな。お前には死なれちゃあ困る」

 

「あなたの刀ってそんなに凄いの?サーヴァントに勝てるなんて今でも信じられない」

 

「実際、俺は勝っただろう」

 

「あなたは未来が見えるからでしょう、それとも何?ここの人間はみんな未来視を持ってるのかしら」

 

「そうだな…行き道ついでに教えてやるよ変体刀について」

 

さぁ、またまた説明パートの始まりだ

 

「変体刀、俺が打った一万本の刀のことだ。そのどれもが名刀の中の名刀、戦乱の時代は変体刀の持っている数で結果が変わるほどのものだ」

 

「それはこの前聞いた」

 

「あぁ、中でも完成度の高い十二本は完成形変体刀十二本と呼ばれている。俺の持つこの毒刀・『鍍』もその一本だ。他の十一本の刀はこの国を守護する者たちが保有している。基本的にその誰もがサーヴァントを凌駕するだろう。とんでもない化物も中にはいるからな」

 

「その十一人も気になるけど、今気づいた大きな疑問を一つ解決していいかしら」

 

「なんだ?」

 

「戦乱の時代後、あなたの変体刀の影響で歴史が変わり、尾張が天下を治めた。それはわかったわ、じゃあ黒船の来航はどうなったの?日本における大きな転換期でしょう。鎖国が解かれて文明開化する大きなきっかけ」

 

「あれなら今太平洋にでも沈んでるぞ」

 

「……は?」

 

「何なら海外の国はもうほとんど滅んだ。この日の本との戦でな、もちろん時計塔も潰した。」

 

「……理解出来ないのだけれど」

 

「相変わらず未知に対する耐性がねぇな、だからこの日の本は()()()()()()()()()()()()()()()()。俺の変体刀はそれぐらいの強さをほこるのさ。そして天下泰平の日の本だ」

 

「・・・・・・・・」

絶句とはまさにこのことだ。あまりにも文明レベルが低いためにバカにしていたがまさかここまでとは。だがそれではこの窓から見える景色にまた疑問を覚える。

 

「でもなら文明が発達してないのはおかしくないかしら?」

 

「お前の見てきたものだけで判断するのは早いぞ。確かにお前の世界ほど便利ではないが不便でもない。刀の説明に戻るぞ」

 

「えぇ…」

 

「じゃあさっきお前が気にしてた他の完成形変体刀所持者について教えてやる」

 

一本目 絶刀・「鉋」

家鳴将軍家御側人十一人衆 餓鬼丸

 

二本目 斬刀・「鈍」

鳥取砂丘の亡霊  宇練 銀閣

 

三本目 千刀・「鎩」

出雲の巫女  敦賀 色彩

 

四本目 薄刀・「針」

全刀「錆」  錆 灰斗

 

五本目 賊刀・「鎧」

薩摩「鎧海賊団」船長  校倉 要

 

六本目 双刀・「鎚」

凍空一族当主  凍空 ふぶき

 

七本目 悪刀・「鐚」

所持者無し、刀も故障中だ

 

八本目 微刀・「釵」

不要湖のからくり人形  日和号

 

九本目 王刀・「鋸」

心王一鞘流十六代目当主  気口 慚愧

 

十本目 誠刀・「銓」

奥州の仙人  彼我木輪廻

 

十一本目 毒刀・「鍍」

幕府大老  毒塚胡蝶

 

十二本目 炎刀・「銃」

相生忍軍の子孫  左右田 左右柰

 

 

「多過ぎて覚えられないわよ、それに一つ壊れてたら十二本じゃない」

 

「んな重箱の隅つつくなよ。とにかくこの日の本における実力者だ」

 

「ならこの中の誰かが私を守ってくれるのかしら?それとも素人の私にテキトウな変体刀でも与えるの?」

 

「いいや、お前には与えるのは俺の究極の刀だ」

 

「…?だから完成形変体刀でしょ?」

 

「お前を守るのは()()()()()()だ」

 

馬車が止まる。窓から見える景色はあの夢でも見た深い森が広がっていた。

 

 

 

「ここからは私と彼女二人で参ります」

 

「はっ!お気をつけて!」

馬車の御者に記紀が一言入れて森へと進んでいく。やはりこの森に対する既視感を禁じ得ない。

 

「ねぇ…完了形変体刀って何?完成形変体刀と何が違うの?」

 

「俺の最初の目的は歴史の改竄による()()()()()、その目的の中で誕生した最高の刀が完了形変体刀だ」

 

「・・・・・・・・」

 

「…一度長い説明はここで終わりだ。来たぞ緋華」

開けた場所に出る。そこは初めて見た場所ではなかった。一人の青年と人が乗れそうな大きな岩があった。

 

「いきなり来るのはやめてくれないか、記紀」

青年が面倒くさそうに記紀へと言う。

 

「悪い癖みたいなもんだ、気にするな」

 

「気にするのはアンタの方だよな……彼女は?」

彼がこちらを見る。わからない上手く言葉が出てこない。

 

「わ、私は四季崎緋華!で…す…」

 

「四季崎?あぁ、じゃあ遂に始まるのか。最後の戦いが…」

彼はまた面倒くさそうに呟いては私を見た。

 

「虚刀流十二代目当主、鑢刀華だ。よろしく緋華。待ってたよ君が俺の持ち主だ」

彼と握手を交わす。彼の手は大きくて驚くほどに冷たかった。

 

 

 

 

この日、私は運命に出会った。

 

 

 


 

いかかでしたか。更新が遅れてしまい申しわけございません。NYイベントは頑張って200箱開けたいつもりなのでまたしばらく更新は遅れます。

 

さぁ、ここから私の書きたいものが多く爆発して行きます。オリジナル要素も多いですがそれでも良ければ是非楽しんでください

 



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六本目

久々の投稿で申し訳ないです

FGO忙しいですね(汗)高難度が凄い難しい

 


 

彼の手を握りながら無意識の内に言葉が出た。

「あなたが完了形変体刀の使い手…」

 

「…?全部知っててここにいるんじゃないのか?」

 

「あーそれがちょっと予定外でな。何も知らずに此処に来たんだよ」

 

「そうか、なら色々大変だっただろうな…主に記紀が」

彼は偽りのない同情を私に向けた。彼も苦労しているらしい

 

「それで記紀、カルデアはいつ来るんだ?」

 

「…!」

彼がカルデアと言った。そうか毒塚胡蝶を四季崎記紀と認識している時点で気がつくべきだった。彼もまた全ての事を知っているのだろう。

 

「およそ三ヶ月後だ。と言ってもあいつらはまずロシアに行く。此処に来るのはかなり先だ」

 

「また、随分と暇になるな…」

 

「あぁ、安心しろ。俺の子孫と刀華でやって欲しい仕事がある」

 

話に置いてけぼりされている。それにカルデアの一派は今虚数空間にいる、なのにどうして未来視が可能なのか。そもそもあそこには時間の概念などないのに。

 

「仕事って何かしら?そもそもやることあるの?」

 

「緋華、お前にはさっき教えた完成形変体刀の所持者にこの手紙を渡してきてもらう」

 

彼は「面倒だ…」とため息をついている。

「手紙?」

 

「あぁ今回の戦いについての事だ。カルデアとサーヴァントについても書いてある」

 

「それ、私たちがやらないと駄目なの?」

 

「無駄だぞ緋華、仕事を押しつけてくる記紀に何を聴いても納得できたことはない」

 

「・・・・・・・・」

 

「そういう事だ、言っただろ?この異聞帯を見てもらうって。楽しい日本一周をしてきてくれ」

 

日本一周?そんなバラバラに所持者は点在しているの?この文明力で日本一周?

 

「あぁ、マジで面倒だ…」

彼の深いため息がこの森に響いた。そんな気がした。

 

 

「と言うわけで、頼んだぞ緋華、刀華。餓鬼丸には俺から渡しておく」

記紀はそう言って手紙と小判の入った袋、私の着替え類、地図を渡しては何処かへ消えて行った。私と彼はどうやらここから長い旅を始めなければならないらしい。まさかの丸投げである。

 

「ねぇ…」

 

「分かってる。緋華の不安ももっともだ」

 

「とりあえず何人に渡せばいいの?」

 

「9人だ、斬刀・『鈍』の所有者は亡霊だから手紙渡しても意味がないし、悪刀・『鐚』は記紀が直してるからな」

 

「日本一周って言ってたけどさすがに誇張よね…」

 

「・・・・・・・・」

どうやら真実らしい。

 

「ふぶきは蝦夷に、色彩は出雲、輪廻さんは奥州、かなりの長旅になるかもな…」

 

彼はかなりうなだれている、やはり大変そうだ。そう言えば、ここから私は彼に守ってもらう。思えば、彼は究極の刀を持つらしいが腰には刀を提げていない。

 

「そうだ、とりあえず飯にしよう。今後について話しておきたいこともあるだろうし、それでいいか?緋華」

 

「そうね、もうお昼時だものね」

 

お日様はかなり高いところまであがっていた。時間を意識したためか小腹が空いてきた。どうやら彼の家に招かれるらしい。男性の家にホイホイ行くのも気が引けるが、今のところ悪い人ではなさそうだ。せっかくなのでご相伴に預かろう。私は森の中へ進む彼の後をついていった。

 

 

 

家は古びていたわけでもなかった。と言うか綺麗な木造の家だ。

「おじゃましまーす」

 

「あぁ、くつろいでくれ。俺は飯を作ってくる」

 

「手伝おうか?」

 

「いや、大丈夫だよ。奥でゆっくりしてくれ」

 

そう言うと彼は台所へ向かっていった。奥の部屋は囲炉裏のある部屋、そこには何故か長年過ごしてきた実家のような落ち着きがあった。

 

しばらくして彼がご飯を持ってきてくれた。どうやら雑炊のようだ。卵が溶いてあり美味しそうだ、食欲がかきたてられる。

 

「いただきます」

 

「あぁ、熱いから気をつけて」

 

朝、城で食べたのはいかにも将軍の住まう場にふさわしい豪勢なものっだった。でも私にはやはりこうした身近なご飯が好ましいと思う。この異聞帯で初めて温かいご飯を口にして

 

「美味しい…」

本当に美味しかった。まだ安心しきれるわけではないが少し落ち着けた

 

「口に合ったならよかった」

彼は優しく笑った。

 

「ごちそうさまでした」

 

「お茶いるか?」

 

「いいの?」

 

「すぐ淹れるよ。何ならこの囲炉裏で淹れられるからな。湧かしてる間にとりあえず聴きたいことあるか?」

 

「ありがとう、色々情報交換してもらってもいい?まだ私この異聞帯のことほとんど知らないから」

 

「あぁもちろん。俺も記紀ほど知っているわけではないけどな」

 

「じゃあまずは、今回の旅はどれくらいかかるの?」

 

「2カ月あったら終わるはずだ。危険もない」

 

「私、クリプターとしての報告や会議もあるの、旅の中でできる?」

 

「野宿は基本的にないと思ってくれ、宿屋でその仕事もこなしてくれるといいかな」

今回の旅の懸念事項はこれで大方解決した。日本一周は大変だがやるしかない。

 

「他に何かあるか?」

 

「えっと…そうだ!完了形変体刀って一体どんな刀なの?この家にも刀置いてないから気になって」

 

「俺は刀を一切使えないよ」

 

「え?」

 

「虚刀流、ひとつの武術みたいなもの何だけど、言わば俺そのものが刀なんだよ」

 

「あなたが刀?だからさっき私が持ち主だって…」

 

「そうそう、安心して俺を使ってくれ」

 

「・・・・・・・・」

分かったようでわからない。記紀は最初の目的の中で生み出した()()の刀を完了形変体刀と言った。しかし彼の目的は変わり、より高みにある刀を生み出すことへ情念を傾けた。そして彼は()()の刀を作った。朝、紛れもなく記紀は言った。究極の刀をお前に渡すと彼にはまだ何か隠されているのだろうか…

 

 

 

「出発は明日の朝にしよう、行き先はどうする?」

 

「任せてもいい?」

 

「分かった、まずは出雲に行こう。今日は羽を伸ばしてくれ」

 

そう言い彼は庭へと出ていっては筋トレを始めていた。私はと言うと、とりあえず今まで履いてなかったので記紀のくれた着替え類から履いた。あれ?ここから旅を始めたら、城で乾かしてた私の下着はどうなるの…

 

 

 

-----interlude-----

 

より強く、より速く、より巧く、より鋭く、拳を振り、蹴りを放つ、例え完成していようと完了していようとこの切れ味を落とすことは許されない。まだ高みに至れる。この身は刀、全ては来たる最後の戦いのために、あと少しでこの世界は存続を許されるのだから、負けるわけにはいかない。この世界に住まう多くの人々の未来を背負っている。俺は自身の生まれてきた意味をしめさなければならない。

 

俺は彼女を選んだ。俺は彼女にどれだけのことをしてあげられるだろうか。

 

-------------------------------

 

 

 

刀華と夕ご飯を食べた後、お風呂に入り、寝る準備を始めた。もちろん彼と一緒の部屋で寝るわけではない。いつの間にか私の寝室に引かれていた蒲団、気が利くというよりは本当に優しい人なのだろう、彼はこの一日初対面の私にここまで良くしてくれた。

彼に命を預ける身として彼を軽んじることのないように、また力になれることをしようと思う。

未だにこの異聞帯をどうして行きたいか、私自身の答えは出ていないが、明日から始まる旅で少しでも私のやりたい事が見つかればいいな、ただ生きるのではなく、しっかりと私の人生を歩んで行きたい。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・      寝れない・・・・・・

 

仕方がないので少し歩くことにした。月が雲に隠されて非情に暗い。ふと庭に出てみれば、誰かがいる気配がする。月明かりがうつしだしたのは、刀華だった。美しい、月光も相まってか、そうとしか表現できないほどの一挙手一投足。これが虚刀流なのかわからないがとても魅入いってしまった。ただ強く、ただ速く、ただ巧く、ただ鋭くある様に私は深く胸を掴まれた。言葉にならない。こんなにも感動したのはいつ以来だろうか。

 

「どうした緋華?眠れないのか?」

 

「うん…少しだけ…」

彼が声をかけてくる。うまく喋れないのは何故なのか

 

「そっか、じゃあ明日はゆっくり出発しようか・・・・・・・・寝付けるまで話でもする?」

 

「それじゃあほんの少し」

 

そこからの記憶は酷く曖昧だ。彼と話していた内容もかなり朧気でハッキリ覚えていないが、それでも凄く楽しいかったことは覚えている。

 

そして始まりの朝がくる。私の生きる目的を意味を見つける旅が始まる。

 

 


 

いかがでしたか、話が進まないのはお許しください。これからはまた更新スピードを上げれたらいいなぁと思います。

次回からは完成形変体刀所持者との絡みを書いて行きます!その中でクリプター同士も絡ませたい。今思えばFate要素が薄すぎる。

 

・鑢 刀華  ヤスリ トウカ

虚刀流第十二代目当主、完了形変体刀である虚刀・「鑢」は七代目で完了を迎えており、その後代々続いた虚刀流に記紀がさらなる高みを目指した結果たどり着いたのが彼。究極の刀。

彼の起源は「朧、霞」

 

 

ちなみに、この世界の歴史では四季崎記紀の影響で、ある親子が生まれておりません。それに寄って刀語本編の刀集めも起こっていません。



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千刀・「鎩」

お気に入り3桁を越えて驚いています。本当に嬉しい限りです。これからも頑張っていきます!

 

基本的に一話につき完成形変体刀一本でいこうと思います。

そのため分かりやすさ重視でタイトルを刀の名前にします。それではどうぞ

 


 

出雲に向かうと言うものの、江戸の少し外れた刀華の家から直線距離でも400kmはある。未来視を使っても軽く1週間はかかる事が分かる、ハッキリ言おう、2カ月で終わる気がしない。歩きである時点であまりにも辛い。と言うか馬鹿だ。

 

「ねぇ…本当に歩いていくの?」

 

「違うのか?」

 

「・・・・・・」

どうやら本気のようだ。

 

 

 

~しばらく歩いて~

「少し休憩しようか」

 

「助かるわ…」

 

予想以上に疲れた。まさかここまでとは、正直舐めていた部分もあったが、今思えば魔術師なんて基本的引きこもりだった。それにしてもこの異聞帯、文明レベルはそこまで高くない。さっきまで歩いていた道のりを思い出しても汎人類史で言う緑の多い田舎だ。

 

休憩している私に彼が水筒をくれる。今の時期は春先のようで、桜がぽつりぽつりと咲いていた。

 

「・・・・・・・・緋華歩くのキツいか?」

 

「ちょっとね、私全然運動しないから」

 

「じゃあこうしよう」

 

そう言った彼は私に背を向けて両手を後ろに回してかがんだ。え?何これ?

 

「・・・・・・・・」

 

「やっぱりおんぶは嫌か?」

 

おんぶ…おんぶ…ああ!そういうことか!確かにそれは楽で助かる。体格差的にも問題ない、彼の身長はおよそ180cmに対して私は160cmぐらい。是非お願いしたいが、気恥ずかしいところもある。悩む、5秒ほど考えて、おんぶしてもらうことにした。

 

「じゃあ失礼します」

 

「あぁ、どうぞ」

 

彼におぶられる。彼の肩に掴まる。男性の体は思っていたより硬く、しっかりしていた。桜が咲き始める木々の中ゆっくりと刀華は歩を進めた。

 

 

 

やばい、楽すぎる。さっきまでの疲労はもう何処かへと飛んでいくほどの極楽が彼の背中にあった。そうだ、話くらいはしよう。出ないとただおんぶさせてるだけで申し訳ない。

 

「刀華、あなたってどれぐらい強いの?」

 

「ん?どれぐらいって言われてもなぁ、サーヴァントだっけ?それと戦ったことないから何ともいえないかな」

 

「じゃああの記紀に勝てる?あのチート未来視持ちに」

 

「記紀か?普通に勝てるな」

 

驚きだ。まさかあの未来視持ちに勝てるって言いきれるなんて…

 

「まぁ、いつか俺の戦うところは嫌でも目にするよ。じゃあ逆に緋華はどれぐらい強いの?」

 

「強さで聴かれると私なんて中の下もしくは下の上くらいだよ」

 

「交戦向きじゃ無いってことか」

 

「うん、私がカルデアのAチーム選ばれたのもそこそこ高いレイシフト適正とマスター適正。何よりこの未来視が大きなところを占めてるかな…」

 

「レイシフト?マスター?」

 

「ううん、気にしないで。人理焼却が解決した今そんなものどうでもいいから」

 

そう、私は結局どうでもいいのだ。自分で世界を救えなかったとか、ただの一般人に横取りされたとか、本当にくだらない。私はカルデアに対しての執着は一切ない。でも今私は同じクリプターの彼らをどう思っているのだろうか。

 

カドックはいつも必死だった、自身にもできると証明するために

 

オフェリアは不器用な子だ、真面目なのはいいが、きっとそれで自身が苦しんでる

 

ヒナコは私と似ていた、でも彼女には成し遂げたい何かがあった

 

ぺぺも少し歪んでいた、でも彼は誰よりも正しく己を理解していた

 

キリシュタリアは本当に優秀だ、でも彼は私にはうるさいくらいに眩しい

 

ベリルは…接点全然ないや、変な人

 

デイビッド、間違いのない天才。あんまり関わりたくなかった

 

今まで興味もなかった彼ら、競争相手となる彼ら、次会うとき私はどんな顔をするのだろう。

 

「緋華、大丈夫か?」

 

「大丈夫、さぁ出雲の巫女さんに会いに行きましょう」

 

 

 

この後、気分転換を兼ねて、刀華に本気で走ってみてくれとふざけて言った結果、二時間弱で出雲に着いた。あまりの速さに私は途中で気絶していた。魔術による体の防御がなければ危なかった。

 

 

 

~出雲に到着~

「こ…ここが…出雲…」

 

「さすがにやり過ぎた、ごめん緋華ちょっと楽しくて調子に乗った」

 

「いいの…私がふざけて言ったから…」

人生ではまず、経験出来ない体験だった。なるほど彼のこの速さなら余裕で2カ月で終わるのもうなずける。ひとつ分かったことは新幹線よりも速いなんて彼も人間をやめている。たどり着いた場所は大きな神社だった。

 

「神社ってことは出雲大社かしら」

 

「ちょっと違うかな、ここは「出雲国三途神社」

 

凛々しい声が刀華の言葉を遮る。声の場所へ目を向ければそこには綺麗な女性がいた。髪は黒髪で長く後ろでひとつにまとめており、着て巫女服が本当によく似合う人だった。

 

「ようこそ、刀華と見知らぬ可愛いお方」

 

「久しぶりだな色彩、元気だったか?」

 

「ええ、この通り無病息災ですよ。あなたも変わらないようで何より。ところでその女性は?」

 

「あ、はじめまして四季崎緋華です」

 

当たり障りのない自己紹介のつもりだったが、ややこしくなる原因の姓を普通に名乗ってしまった。

 

「四季崎?」

 

「あー俺たちは今回その辺りの詳しいことを説明しに来たんだよ」

 

刀華がフォローを入れてくれる。そうだ、この世界では四季崎の名はあまりにも大きすぎる。これからは母の旧姓を名乗った方がいいのだろうか…

 

「とりあえず、二人とも中へどうぞ。お茶を淹れてますよ」

 

「あれ?俺たちが来ること聞いてたのか?」

 

「いいえ、何処かの誰かが迅雷の如くこの出雲の土地へ突撃してきたので、何事かと思ったのですが、そんなこと可能なのは錆かあなたくらいですから。お茶でも淹れておこうと思ったまでですよ」

 

 

 

 

「申し遅れました。私はこの出雲国三途神社の長、千刀流当主の敦賀色彩と言います」

 

神社の中へ、彼女の個室へと案内された私たち、彼女はとても無駄のない動きで丁寧にお辞儀をしては名を名乗った。さっきの私のありきたりな挨拶が罰当たりのようにも思えてきた。千刀流とまた知らない流派が出てきたが、溢れ出る気品さから彼女が完成形変体刀の持ち主であることに間違いはないだろう。

 

「それで、今回はどういった件ここまで訪ねに?」

 

「また、戦いが始まる。詳しいことはき、胡蝶からの手紙に書いてある」

 

「戦ですか…しばらく平和でしたが起こってしまうのですね…毒塚殿の手紙とは?」

 

私が持っていた手紙を彼女には渡す。どうやら手紙は一人一人に直筆で書いてあるようで、色彩さんはしばらく黙って手紙を読んでいた。

 

「なるほど、今までとは比べ物にならないほどの強さを持った人が来るのですね。緋華さん貴女のこともおおむね理解しました。お互いに力を合わせ戦いましょう」

 

「あ、ありがとうございます。何か詳しく聴きたい事とかありますか?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。どのような事があっても私はここを守るだけですから」

 

「戦場には立たないのか?」

 

「えぇ、胡蝶殿の手紙にそうありましたから。それに私はここを離れないのは刀華も知っているでしょう」

 

一体どういうことなのか、彼女が前線に出ない理由を尋ねようとした矢先、一人の黒い服を着て顔に御札を貼っている女性が慌てて入ってきた。

 

「色彩様!刀人の発作を起こしたものが!」

 

「っ!誰が発作を!」

 

「巴でございます!今本殿の前で暴れています!」

 

「すぐ向かいます!すまない刀華、いきなりだが話は後で!」

 

急いで部屋を出て行く色彩さん。刀人?確か、あの鬼面の餓鬼丸さんもそのようなことを言っていた覚えがある。

 

「緋華、俺たちも行こう」

 

「うん」

 

 

 

彼女の後を追って本殿らしき場まで向かう。そこには、一本の刀を持っては半狂乱に振り回す白い服を着た女性とそれに優しく向き合う色彩さんがいた。彼女たちの会話が耳に入ってくる。

 

「あああぁぁあ、が、我慢できないぃぃ!斬りたい!キリタイ!人を斬りたい!」

 

「いけませんよ巴、人を斬りたいなどと。刀に心を奪われてしまいます」

 

「うるさい!私のこの衝動がなくなるなんてこときっとない!」

 

「いいえ、必ずおさまります。そのために貴女はここに来たのですよ。忘れましたか?ここに初めてきた時から貴女は誰よりも己と向きあっているのですよ。」

 

「だからって何になる!『刀人』になってしまった私がいまさら何になる!!!!」

 

色彩さんが相手の方と言葉を交わし続ける。女性の言っていることは徐々に整合性がとれなくなっている。刀華はただじっとその場を見ているだけだった。私も迂闊に動くことはできない。できないがため、私はたまらなくなって彼に問いかけた。

 

「ねぇ、『刀人』って何?」

 

「どんな刀にも大小あるけど毒がある。人を斬りたいっていう衝動の毒、美しい名刀ほど毒が強かったりする。中でも記紀の打った変体刀はどれもが名刀の中の名刀、その毒に魅入られる人は多い。『刀人』はそうした衝動が理性を超えた人のことだ。そうなったら彼らは自らの全てを用いて暴れだす」

 

淡々と私の問いに答える彼、あまりの異質さに驚き隠せない。そんな中、色彩さんは彼女へと近づき始めた。

 

「く、来るな!来るな!…あぁぁぁ!」

 

女性は遂に色彩さんへと襲いかかる。手に持った刀振りかぶる、次の瞬間、刀は誰もいない明後日の方向に飛んでいった。そして色彩さんは女性を抱きしめた。何か彼女に囁いているようだが、聴きとることはできない。そうした内に女性は落ち着きを取り戻しては意識を失った。

 

 

 

 

「お話の途中で失礼しました。何においても優先しなければならなかったもので」

 

女性を介抱した色彩さんは私のところに来て一番にそう言った。

 

「私たちのことは気にしないでください!それよりもさっきの人は…」

 

「はい、一度落ち着いたので大丈夫でしょう。あぁ先ほどの刀を回収しなければ…」

 

「ほら色彩、ここにあるぞ」

 

刀華が抜き身の刀を彼女に渡す。いつの間にか回収していたようだ。

 

「ありがとう・・・・・ふふ、貴方にはやはり刀を持つことは似合いませんね、刀華。いつかの間抜けな素振りを思い出します」

 

「アンタはいつも一言余計だよ、まったく…」

 

「間抜け?」

 

「えぇ、彼は虚刀流という素晴らしいものがありますが、刀を振ることはからきしなのです」

 

ちょっと意外だ。そしてあとちょっとその素振り見てみたい。

 

「緋華、そんな顔してもやらないぞ」

 

え?もしかして顔に出てた?次は気をつけよう

 

「それにしても色彩、相変わらずの奪刀術・千刀流だな。腕は鈍ってなくてよかったよ」

 

「ここ守るのが先代から引き継いだ誇りであり、私の生きる意味ですから」

 

「ずっとここを守って?」

 

「そうです。ここは心を患った女性を守り、癒す場なのです。先ほどの彼女のように」

 

そう語る彼女の瞳は真っ直ぐで、生きる目的を何も持たない私は少し辛いものだった。

 

 

「ところで刀華、貴方の胡蝶殿よりの仕事にまだ余裕はありますか?」

 

「別に余裕はあるがどうしてだ?」

 

「少し手合わせをお願いしたいのです。貴方より強い人はそう滅多にいないでしょうから、今の私がどれくらい出来るのかを知るのも兼ねて」

 

「それなら良いぞ」

 

「ありがとう、では緋華さんをお借りしますね」

 

「「は?」」

 

いけない。自分の世界に入っていたために状況が読めない。手合わせ?借りる?

 

「いえ、だから緋華さんは私側で手伝っていただきます。何せ胡蝶殿も唸る程の策士と手紙に記されていましたし」

 

「いやいやいやいやいやいや」

 

「遠慮なさらないでくださいな、見たところ二人共まだ戦闘面ではお互いによく知らない様子、良い機会では?」

 

「確かに一理ある」

 

「刀華まで!?」

 

「俺も緋華がどこまで出来るのかを知りたいし、いいハンデにもなる」

 

のっぴきならない方向で話がまとまった。

 

 

 

 

 

「刀華、お互いの勝利条件を定めましょう。貴方は緋華さんを捕まえたら勝ちです」

 

「アンタの勝利条件は?」

 

「半刻の間で貴方が勝てなければ、私たちの勝ち」

 

「わかった」

 

 

 

 

いや、本当にどうしよう。捕まえたら駄目ってハードすぎない?相手はマッハで動ける。例えどんな未来を視たってつかまらない未来がない。私がどんな術を用いても手にすることの出来ない未来はやはり一定数ある。キリシュタリア、デイビッド辺りの人でも魔術戦でも勝てる未来は限られているぐらいなのだ。

そうこう悩んでいると色彩さんがやってきた。

 

「もう少しで始まりますよ、大丈夫ですか?」

 

「・・・・・いいんですか?この神社で戦って」

 

「えぇ、皆さんには外に出るのを禁止しましたから、それに私以外の者いますよ」

 

「逃げきれる自身ないです」

 

「なら、彼を倒してしまいましょう。そうすれば逃げきれます」

 

「・・・・・・・・」

 

この人について少しわかった気がする。思考がポジティブというよりアクティブすぎる。問題を問題としてとらえてない。

 

「緋華、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!」

 

「やはり聡明な方だ。刀華はもちろんですが、私の完成形変体刀、千刀・『鎩』の力も見てくださいね」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「色彩、もういいか?」

 

「えぇ、緋華も準備出来たようですから・・・・・いざ!」

 

「尋常に!」

 

「「勝負!!」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

神社を囲む森の中に身を潜めた私は、遠くから彼らを視る。私にできることはどこまで行っても未来を視ることだけだ。そう視なければ始まらない。

ゆえにまずお父さんから教わった魔術は『遠見の魔術』。ぶっちゃけ望遠鏡でも補える低級な魔術、しかし今何よりも重要なのは彼らの状況を知ることだ。

 

刀華の恐ろしく鋭い虚刀が色彩さんへ、しかし彼女は臆することなく彼に肉薄する。彼女の体捌きも目を瞠るものがある。何回かの攻防ののち、色彩さんの持つ刀が容赦なく折られる。ん?折られる?完成形変体刀が?ちょっと色彩さん!あっけなさすぎでは!?

私が驚いてる中、彼女はそれこそ眉一つ動かさず刀華と距離をおいてから、逃げた。まさに脱兎の如く、て言うかこっち来てない?間違いない!わかっててこっち来てる!だって笑ってる!

刀華もこっち来てるし!でも動けない。今動けば捕まる未来しかない。

・・・・・・・・

よし、色彩さんに任せた!私は認識阻害と周りの色に同化する魔術を使って縮まる!そうこうしているうちに状況が変わる。森に逃げ込んだ色彩さんはいたるところに仕掛けてある刀を用いて攻撃を始めた。刀投げたり、距離を詰めては離れたり、相手を揺さぶり続けるその動き、これが彼女の戦い方。だが何本もポキポキ折れているのはどうなのだろか、刀が脆いのか、刀華が強いのか…

 

いい感じだ。あいにくまだバレてはいなさそうだ、刀華は色彩さんに釘付けにされてうまく立ち回れていないように感じた。だがそれにしても彼の表情は一切ぶれない。色彩さんと繰り返し打ち合う。手合わせの終了まで後3分もないだろう。このまま様子を見ていればいい。何ならカップ麺にお湯でもいれたいくらい。

 

なんて調子に乗り始めたその時、()()()()()()()。あ、これやばい。一直線にこちらに彼が向かってくる。色彩さんもさすがのスピードに追いつけない。駄目だ、逃げるのは下の下、どうする?戦う?敵うわけもない…

 

 

 

 

いや、足を止めよう。そうだ、私に戦う力などないのだから、色彩さんが追いつけるようにすればいい!他力本願で結構!とりあえずひたすら足止め妨害を、逃げきる未来ではなく色彩さんが間に合う未来を演算していく…視えた。まずはひたすらガンド、ガンド、石ころ強化して投げる。ガンド、ガンド、近くにあった刀を投げる。投げる。彼が驚いている。予定通り。色彩さんも刀を投げる。あと30秒だがこれだけではまだ足りない。最後の一手を打つ!

 

「刀華!!」

 

「!!」

 

「私は昨日!実は下着を履いてなかった!」

 

「!?!?」

 

「追いついた、隙ありだ!刀華!」

 

「っ!」

 

これでギリギリ、私たちの勝ち。勝利の代償は私のメンタルだった。もしこのために記紀がふんどしを渡して、私に履かせない選択までさせたと言うなら、私は本当にやつを殺さなければならない

 

 

 

 

「ハッハッハッ!最高だったよ緋華!あんな刀華の姿を見たのは初めてだ!」

 

「・・・・・・・・」

 

「俺の負けってことなんだよな…」

 

「もちろんだとも、さぁ敗北者には刀を元の場所へ直してきてもらおうか」

 

「あぁ…なんて面倒な…」

 

「でもありがとう、いい刺激になった」

 

「別に良いよ、緋華を頼むぞ」

 

「任された」

 

「・・・・・・・・」

 

「緋華、いつまで黙っているのだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「仕方あるまい、緋華、お風呂に入ろう」

 

「・・・・・・・・はい?」

 

 

 

と言うわけではお風呂。まさかのここにも大浴場、それに私たちだけでなくここに住まう女性も一緒に入っていた。何故なのか…

 

「何故みんなで入るか?そんなの楽しいからに決まっている。裸の付き合いと言うやつさ」

 

当主様様はお酒を飲みながら湯船使っている。彼女は着痩せするタイプだった。

 

「刀、ポキポキ折られてたけどいいの?それに何で神社もそうだったけど森の中まで刀が仕掛けてあるのよ」

 

「あぁ、何だ知らなかったのか。千刀・『鎩』は千刀にして一本の刀、本物を破壊しない限り他が壊れても再生する。そしてこの刀の限定奥義、『千刀巡り』あらゆるところに千刀の刀を配置して戦う。どうだ疑問は解消出来たか?履かない緋華」

 

「・・・・・・・・」

 

不機嫌な私を見ては笑う色彩さん、そんな彼女を尻目に賑やかな浴場を見渡す。誰かとお風呂に入る。案外悪いものではなかった

 

 

 

後に帰ってきた刀華、神社のみんなでご飯を食べた。美味しかった。

 

 

 

夜、まさかの色彩さんと刀華と月を見ながらの晩酌、昨日も見た月だがその装いは少し欠けている。

 

「刀華、緋華、いつここを出る?」

 

「明日中にかな、急ぐ理由もないけどゆっくりし過ぎるのもな」

 

「そうか…またいつでも来るといい、私も嬉しい」

 

「色彩さん」

 

「どうした緋華?」

 

「どうすれば、貴女のように生きる意味と言いきれる何かを得られるの?」

 

「・・・・・・・・」

 

押し黙る刀華を尻目に彼女へ問う

こんな時に聴くことじゃないのはもちろんわかってはいる。けどどうしても聴いておきたかった。私にとってこの旅は大きなものになるから。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ、ハッハッハッハッハッ」

 

まさかの笑い、真剣な話だったのだけど…

 

「硬い、固い、堅い、そういって考えている内は決して得られんよ。それがあるから生きるのではない、生きているからこそそれは譲れないのさ」

 

「・・・・・・・・」

 

わかったようでわからない。

 

「今を精一杯生きればいい、君は君らしく。刀華はどう思う?」

 

「そうだな、今俺に言えることは、月が綺麗で酒が美味いってことかな」

 

今宵は深く深くふけていく…

 


 

更新スピード上げるとか言った愚か者はここです。書きたいこと書いたら文章量が結構なことに…

 

・敦賀 色彩  ツルガ シキサイ

出雲国三途神社を守護する巫女、千刀流の後継者であり、腕前も最高峰。千刀・「鎩」の所有者である。礼儀正しく、よく笑い、アクティブな女性

 

千刀・「鎩」

完成形変体刀十二本の一つ、千本で一本。壊れても勝手に治る優れ物、四季崎一万本の影響によってこの治癒力は所持者にも、傷の治癒が早い。そして刀の力を用いて心に傷を負った女性の治療を行っている。

 

 

 

 

 

 



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薄刀・「針」

 

はい、と言う訳で続きであります。

アニメのバビロニアが遂に放送ですね!

ちなみに自分の地域では1週遅れです(血涙)

 


 

・・・・・・・・チュンチュン・・・・・・・・チュン

雀の鳴き声の中で朝を迎えた。昨日の夜はあのままお酒を飲んでいたのだが、どうやらそのまま眠ってしまったみたいだ。いまいちハッキリとしない頭で目をこする。すると私の蒲団で色彩さんが寝ている。裸で、見事なキャスト・オフだ。これが噂の朝チュンなのか……ってそうじゃない!一体どういう状況だ!

 

「・・・・・・・・・・・・おはよう緋華」

 

「そんなカッコイイ顔で言われても…」

 

「いやはや、それにしても昨日は楽しかったな」

 

「誤解を招きそうだからやめて」

 

「今日出るのだろう?せっかくだ朝ご飯は食べていくといいよ」

 

「・・・・・もしかして話聴いてない?」

 

「では、刀華を呼びに行こうか」

 

「ちょ!服着てから!って絶対寝ぼけてる!」

 

色彩さんは朝はあまりにも弱かった。

 

 

 

「おはよう緋華、色彩はどうした?」

 

「おはよう刀華、お風呂に突っ込んできた」

 

「あぁ、朝は駄目だったな」

 

「ここを出るのは朝食のあと?」

 

「そうだな、ご相伴にあずかってから次に行こうか」

 

「出発前に一回クリプターの報告してもいい?」

 

「もちろん大丈夫だ」

 

「刀華緋華!朝ご飯にしよう!」

 

色彩さんが私たちを呼ぶ、あとここにいるのももう僅かだ、今生の別れではないけど凄く名残

惜しい

 

 

 

「ところで次は誰に会いに行くのだ?」

 

朝食の中、色彩さんが刀華に尋ねる。それにしてもここのご飯は本当においしい。魚や山菜と言った和食、日本人の血でも刺激されるのか凄くお箸が進む

 

「あぁ、次は錆に会いに行こうと思う。たぶんあいつ今も変わらず巌流島にいるだろうから」

 

「そうかそうか、次は灰斗か・・・・・・不安しかないな」

 

「錆灰斗?どんな人なの?」

 

「莫迦だよ。戦好きの莫迦」

 

「まぁそうだな、立ち振る舞いなど非常に素晴らしい武人だが、中身がな…」

 

どうやらかなり癖のある人物のようだが、色彩さんが本当にいい人だったのだ。このあとの人たちもそこまで常識の欠けた人はいない気がする。そうだ、報告の内容をまとめておかなければ・・・・

 

「何にしても、灰斗と会うのならよろしく言っておいてくれ。それにほどほどにな刀華」

 

「俺はそんなつもりはないよ」

 

「ハッハッハ、そう言いつつお前も男だからな。また『()()()()()()()()』なんて噂が出ないことを祈るよ」

 

「・・・・・・・・」

刀華は黙ってご飯を食べ続けていた。島が無くなる?よく聞いていなかったがさすがに空耳だと思いたい。ってあれ?渡す手紙の中に私宛が・・・・どうやら報告書の内容変えた方が良いみたい

 

 

 

朝食後温かな天気の中出発する

「色々と本当にありがとうございました」

 

「もう行ってしまうのか…もっといても良いのだが…」

 

「仕事終わったらまた来る、永遠の別れじゃあるまいし」

 

「分かってはいるがな…うむ!気をつけてな、緋華!刀華!」

 

「絶対にまた来ますね!」

「世話になった」

 

別れの挨拶を交わして歩きだす。色彩さんはいつまでも私たちに手を振っていた

 

 

 

「どうだった?色彩さんは」

 

「うん、凄くいい人だった。ありきたりな感想かもだけど言葉以上の感謝があるかな」

 

「そっか、ならよかった。・・・・・・・報告とかってもうしたのか?」

 

「ううん、今やろうと思って。言ってもデータ送るだけだしすぐすむよ」

 

クリプター全員に渡されている原理不明の機械を使ってデータを送信する。内容は大まかな異聞帯の特徴と空想樹の成長具合、あとは王様のでっち上げ。この異聞帯を実質支配してるのは記紀だが、彼はどうやら将軍を隠れ蓑にしているらしい。不敬罪で首刎ねられればいいのに、おかげで書類を作り直す羽目になった。

 

「はい、送信っと」

 

「それだけで情報が届くのか?」

 

「えぇ、便利よこれ」

 

「記紀のやつもこれ使えばいいのに」

 

「・・・・・・・・」

ぐうの音も出ない彼の独り言に激しい同意を覚えた。

 

そしてこの後もまた彼のおんぶによるジェットコースターが始まるのだが、今回は距離も近いこともあり前回ほどの目には遭わなかった。どうやら今回の人はなるべく早く終わらせたいそうだ

 

 

 

砂浜についた。この異聞帯での海をはじめまして見たことになるのだが、別段と今までのものと変わらない。海を挟んだ向こう側に大きな島が見える。さすがの彼も水の上を走れないのか、借りられる船を探していた

 

「あれが巌流島?」

 

「あぁ、あそこに所持者の一人、錆灰斗がいる」

 

「彼の持つ完成形変体刀ってどんなものなの?」

 

「あいつの刀は・・・・っ!緋華!」

 

唐突に刀華は私をまるで何かから庇うように抱きしめながら、その何かを避けた。そして舞い上がる砂、一瞬の出来事で理解が追いつかない、だが、ついさっきまで私のいた場所に小さなクレーターが出来ていた。比喩でも嘘でもない、あそこにはあんなへこみなど存在しなかったのだから

彼は私を抱きながら島の方を睨む。私も未来視を叩き起こす、

島の向こうから飛んでくる謎の衝撃波、荒れる砂浜

未来を視た。

 

「刀華!まだ来る!動き続ければ当たらないわ!」

 

「!!!」

 

また俊敏に回避をする刀華、抱き抱えられている私は状況打破のための未来を演算する。

 

「この攻撃は何!?この異聞帯特有の何かなの?」

 

「いや違う!これはただの正拳突きだ!あの莫迦、やる気満々だ!」

 

正拳突き!?だが周りに人影はない、一体誰が!砂浜が砂塵となって荒れ狂う、彼が避け続ける中、私も巌流島の方を視た。そこには目を瞑っては一回一回丁寧に拳を振るう男がいた。銀髪に白い眼、長い髪を後ろでくくっているが色彩さんとは対照的に髪の毛はモコモコしている。彼が錆灰斗なのだろうが、目を瞑っている。それなのにこちらに正確に衝撃波を飛ばしてくる、サーヴァントでもこんな馬鹿げた真似はそうそうできない。彼も刀華みたい人なのか

 

「緋華!このままじゃらちが明かない!あいつのところに行くぞ!」

 

「行くってどう言うこと!?」

 

「言葉のままだ!歯食いしばってくれ!」

 

「っ!!!」

 

次の瞬間彼は海の方へと駆けだした。その勢いはまるで光の如く、そのまま()()()()()()()()()。それでもまだ拳の脅威は私たちを襲う。爆ぜる水面、水飛沫、島までの距離はそこまでないが、近づくほど衝撃波がくるタイミングも早くなる。まるで機雷を爆破させているように海が暴れる。私は何とか刀華にしがみついて、

錆灰斗が刀を抜く未来を視た。そしてそれを私たちは避けきれない。

 

「刀華!彼が刀を抜く!」

 

「くっ!」

 

視た刀はどこまでも脆そうな薄い刀だった。そして当然のように飛んできた一振りの斬撃、海滑るようにして私たちに襲いかかる。どの未来においても私を抱える刀華は避けきれない、そうか結局こうなるのか、未来は変えられないのか、予定調和、またこの世界に興味を失いかけたその時

 

「ごめん緋華!」

 

聞こえた声、海に墜ちた感覚、海に初めて沈んだ、知らない未来、未知、喜び、あぁどうしようもない女だ。私…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、まさか走るのをやめて海に入るとは、さすがだ・・・・・ゴホン、さすがでござるなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緋華、大丈夫か?」

 

自分もずぶ濡れのくせに第一に私を気遣ってくれる刀華、緊張感があるのかないのか、とにかく彼の優しさで気が緩んでしまう

 

「えぇ大丈夫、攻撃は?」

 

「あれから何もない」

 

濡れ鼠になりながらも巌流島にたどり着いた私たち、辺りを見渡せばテレビのサバイバル番組で見そうな岩ばった場所にいた

 

「あの人は一体どうしてこんなことを」

 

「まともな理由は期待しない方がいいぞ、絶対ろくなもんじゃない」

 

「心外だ刀・・・・いや違う、心外でござるな刀華、久々に会ったと言うのに」

 

「!」

 

さっきまでそこには影すらなかったのに気がついたらそこにいた。彼が錆灰斗、所持している完成形変体刀は薄刀・「針」・・・・・・・・しゃべり方に癖を覚えるのだが

 

「錆、何だそのしゃべり方、戦国時代じゃあるまいし」

 

あ、このしゃべり方古い扱いなんだ。

 

「良く聴いてくれた!いや、聴いてくれたでござる!これは我が敬愛すべき祖先『錆白兵』が書き残した『ときめくおとこ』に記されていた口調・・・・・でござる!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

嬉しいそうにその書物を見せびらかしては、さっきまで襲ってきたことすら忘れたように振る舞う錆灰斗、凄くどうでもいい

 

「まぁそれはどうでもいいよ。錆、どうして緋華を狙った」

 

「怖い顔するな…でござるよ。もちろん刀華を信頼してこそ、そもそも俺…いや拙者たちは出逢えば斬り合う中で…ござろう」

 

「慣れてないならそのしゃべり方やめろよ、挙動不審だぞ」

 

「それで?そこのお嬢さんは?」

 

「え、あ、四季崎緋華です」

 

「四季崎、四季崎と言ったか?…ござるか?」

 

もう口調が無茶苦茶でござる、今わかった事はただ一つでござる、この人はとんでもない莫迦でござる。さっさとここからおさらばしたいで候

 

「えぇ四季崎だけど特に気にしないで。私たちは手紙を渡しに…って手紙が!」

 

「うん、見事に濡れてるでござるござる」

 

「おい、もはやわざとだろアンタ」

 

「それで要件は?」

 

「コイツ…」

 

あの刀華が青筋を立てるほどとは、確かに色彩さんの言う通りだ中身が酷すぎる。今はとにかく手紙を何とかしなければ、今ならまだ復元くらいならできる、魔術回路を起動して修復にはいる。そんな中刀華は錆さんに苦言を呈していた

 

 

 

「よし直った」

 

「ほほぅ、これまた珍妙なことを…」

 

「はいこれ、あなたの分の」

 

「ありが…かたじけないでござる」

 

「・・・・・・・・」

 

「緋華、もう次に行こう。これ以上ここにいたくない」

 

見るからにぐったりしている刀華、精神的疲労が大きいようだ、実際これ以上錆さんと一緒にいる理由もないし仕事は終わった。失礼させてもらおうとした矢先

 

「待つでござる刀華」

 

「まだ何かあるのか?」

 

「ふむ、大方理解した。毒塚もとい四季崎記紀の姦計でござろう。重要なのは()()()()()()()()でござるな?」

 

「あぁ、出し惜しみはしなくていいぞ」

 

「よし、それでは一戦交えようか」

 

「はぁ?」

 

「虚刀流()()でもかまわぬ…だが、殺す気で行くでござる」

 

有無を言わせない彼の殺気、先ほどの小競り合いの時以上の緊張感が広がっていく。

 

「はぁ、面倒だ。というより口調板についてて腹立つ、あとやるにしても条件がある。緋華を巻き込むなよ」

 

「もちろんでござる。『女性は傷つけない』ときめくおとこの条件でござる」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「じゃあ緋華、今回は立会人を頼む。それと常に安全な場所にいてくれ」

 

「えぇ、わかったわ。気をつけてね」

 

「ありがとう」

 

「準備は万端でござる。刀華、拙者にときめいてもらうでござる」

 

「その頃にアンタは…どうにもならないか。緋華」

 

「わ、私?・・・・・・・・いざ尋常に!始め!」

 

その瞬間、巌流島は真っ二つとなった

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

音もなくまさに気づいたら切られたかのように島は恐ろしいほど綺麗二つに分かれた。その後から繰り広げられる攻防、周りの木や岩が嘘のように砕けては容易く切断されていく、彼らの姿を目視することはできない。速すぎるのだ。未来視をもってして安全な場所に移動し続けるが、地震のように島が揺れては斬撃が飛び交う。これが刀を持つもの同士の戦いなのか、これは確かにサーヴァントにもひけ劣らない

 

 

 

 

ーーーーーinterludeーーーーー

 

初手から錆灰斗は、薄刀・「針」を音速で抜刀しては本気の一刀を繰り出す。

遠慮も容赦など一切ない、そもそも彼自身この程度で終わる一戦だと思っていない。

刀華こそこの世において最も優れた究極の刀、実際に刀華は今の一太刀を最小の動き、紙一重で躱しては錆との距離を詰める。

その一つの動作さえ絶技、斬撃は何処かの亡霊のように光速を超えてはいないもののそれを当たり前に避ける。

並の人間には到底できるものではない。

錆は喜びに頬を緩める。

我が友はこうでなくてはならないと、彼はあえて間合いを離して拳を放った。

狙うなら3km先まで狙える拳による衝撃波、それを惜しむことなく放ち続けるが、刀華はこれを意図もたやすく()()

これもまた一切の無駄な動作もなくこなしては瞬時に懐へと潜り込んでくる。

彼もまた一切の加減なく技を放つ。

「鏡花水月」虚刀流の奥義の一つにして、第一の構え「鈴蘭」から繰り出される最速の掌底、食らえば絶命は免れない死の一撃をこれまた錆も当然の如く躱しては薄刀を振るう。

薄刀・「針」とは簡単に言えば軽すぎる刀であり、その薄さは刀身の向こうが透けて見えるほどに、ゆえに脆く完全な軌跡を描いて振らなければ折れてしまう刀。

だが錆はこの刀を臆することなく振り続ける。

刀は折れない、それこそまさに彼の実力を物語る。

速すぎる攻防、島の木、岩、大地、その他多くが砕けては切られ、切られては砕けていく。

そんな中、錆と一度間合いを離す刀華、そこを勝機とばかりに縮地を超える爆縮地で間合いを詰める錆、しまいには海に出ては海を切り裂いた。

モーセが海を割るように錆はその一刀を振るい続ける。

もはや

 

刀華はここで己の愚かさに気づく、決着の付け方を決めていなかったことに、こうなってしまっては錆が満足するまで戦い続けることになる。

そうなってしまえばこの日の本の半分は海に沈むだろう。

彼を殺すことはできるが死なせるわけにはいかないし、殺したくない。

この後、まだ抑止力からの使いやカルデアとの戦いもある、彼には生きていてもらわなければならないのだ。

殺さず、無力化を理想として攻めていく。だがあまり迂闊にも攻撃を繰り出せないああ見えて受け流し、カウンター技術も洒落にならない巧さなのだから

一方で錆のバイブスは上がり続けた。久々の猛者との剣戟、高まらないはずもなく、彼は遂に限定奥義を抜刀した。

「薄刀開眼」彼の全力をもって自身中心とし円形にありとあらゆるものを切断する神業。その気になれば半径数十kmにおよぶ範囲を切ることが出来るが今はその必要はない。

彼に切れぬモノなどありはしない。

彼な鞘でも万物を切るだろう。

まさに彼こそ剣聖の中の剣聖、ありえたかもしれない完了形変体刀の一つ、全刀・「錆」棒状のものならどんなものでも刀として扱うことの出来る最強の武人。

緋華を巻き込まないようにして、刀華にその神域の一刀を向ける。

下手をすれば刀華でも死ぬかもしれない。

だが、それ以上に彼は刀華を信じていた。

 

 

 

 

 

刀華は迫りくる死の一刀の中一人でに呟く

「十■本目抜刀、■刀・『■』」

究極の一刀をもって神域の一刀を凌駕する。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最後の大きな揺れを最後に戦闘音は止んだ。彼らの戦いを魔術をもって何とか見ていたが、最後に天をも切り裂く勢いで伸びた黒い光は一体何だったのか、刀華の一撃なのは間違いないが‥

 

「終わったよ緋華、ここ出て宿にでも泊まろうか…さすがに疲れた」

 

「錆さんは?」

 

「ここでござるよ」

 

「・・・後ろに立つのやめて」

 

「いや~楽しかったでござるな、帰りの船ならあそこでござる」

 

「あぁ、当分アンタとはこりごりだ、島も無茶苦茶だし」

 

「色彩さんにまた言われるね」

 

「・・・・・・・・」

 

刀華は本当に疲れたみたいで、一人でに歩き始めた初めてそんな姿を見て微笑ましくなった。

 

「じゃあ私たち行きますね」

 

「わざわざ来てくれてありがとうでござる、次にはあなたにもときめいてもらうでござるよ」

 

「が、頑張ってくださいね」

 

「かたじけないでござる、それと緋華殿」

 

「?」

 

「刀華を頼む、いつもギリギリなんだあいつ」

 

口調を変えて、いやこれが彼の普通の話方、刀華がギリギリ?その時私はその言葉の真意を知ることは出来なかった。

 

 


お久しぶりです、hollow期間に何とか更新できました(汗)これからも何とか頑張ります。そろそろサーヴァント出そうと思ってますが、期待はしないでください。当分は刀所持者のお話しですね。

 

 

 

・錆 灰斗  サビ ハイト

完成形変体刀、薄刀・「針」の所持者にして、四季崎記紀のありえたかもしれない完了形変体刀、全刀・「錆」であり棒状のものならどんなものでも刀として扱うことが出来る。所持者たちの中でぶっちぎり強さを誇っており、並のサーヴァントなら歯が立たない。性格的にはかなり残念な人

祖先の錆白兵の残した一冊の本「ときめくおとこ」、これは錆白兵の思い描く理想の男の姿を書き記したものである。ござる口調などもこの影響

 

薄刀・「針」

完成形変体刀の一つ、軽さに重きをおいた刀

脆いので完璧な軌跡を描いて振らなければ壊れてしまう。その分切れ味がエグい。色んなものが豆腐みたいに切れます。

 

 

ちなみに、刀華が抜いた刀は虚刀・「鑢」ではありません



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九本目

お久しぶりです。

実は受験生だったので戦っておりました。

色々と落ち着いたので、またぼちぼちとあげて行きます。

分かりにくいので一部台本形式にしています

キリシュタリア→キ     刀華→刀

カドック   →カ     緋華→緋

オフェリア  →オ

ヒナコ    →ヒ

ペペロンチーノ→ぺ

ベリル    →ベ

デイビット  →デ


 

錆さんと別れた後、船に乗り、クレーター地帯となった砂浜へと小船を刀華が漕ぐ。ふと振り返ればズタボロになった巌流島、ついさっきまであの場にいたことを思うと信じられない。

船を漕ぐ刀華も心なしか疲労が見てとれる。

 

「刀華、大丈夫?随分疲れてるみたいだけど。漕ぐの変わる?」

 

「いや、大丈夫だよ。緋華こそ大変だっただろ?今日はもう宿でゆっくりしよう」

 

「私は全然問題ないよ、錆さんは色んな意味で凄い人だったけど」

 

「はは、違いないな」

 

話していたらすぐに砂浜に着いた。時間はお昼を過ぎたくらいで、宿もすぐ見つかった。まさかの相部屋。だ、大丈夫、問題ない。き、気にしてない。

 

もちろん問題などなく、夕ご飯まで二人して部屋でくつろいでいれば、刀華うたた寝している。完了形変体刀などと呼ばれる彼の無防備な姿は少し可愛いらしいものだった。そんな折、原理不明のデバイスに連絡がきた。まさかのキリシュタリアからだ。

 

「失礼、今時間は大丈夫かな。」

 

「ええ、構わないわ。わざわざどうしたの?」

 

「・・・・・・・・」

 

「キリシュタリア?」

 

「あぁ、すまない。普段の君から言わずとも知っているだろうと思ってしまってね。珍しい、未来を見ていないのか」

 

「え、あぁそうね。少し疲れていて」

 

「そうか、では手短に。明日クリプター会議を開くため出席して欲しい。12時30分時開始予定だ」

 

「わかったわ、わざわざありがとう」

 

「・・・それでは」

 

キリシュタリアは通信を切った。

彼は私にかなりの違和感を感じたのだろう。無理もない。ロボットみたいな人間がいきなり感情豊かに話せば、驚きもする。そう、それほどまでにカルデアにいた頃の私は無感動だった。記紀とあってから、一日分の未来をまともに見ていない。睡眠時も未来を見ない。それに今の私には未知はあまりにも魅力的過ぎて、未来を視たいとは思えないのだ。だからこそ、クリプター会議のことも知ることなく、誰かと話すことにさえ、酔っている。知らない未来に酔っている。酔って多くのことを誤魔化している。

 

「緋華、今のは他のクリプターか?」

 

「あ、ごめん。起こしちゃったか。そう、一応クリプターのリーダー。もしかして内容聴いてた?」

 

「あぁ、聞こえた。明日も一日休もう。明後日に次の所有者の所へ向かおう」

 

「いいの?」

 

「焦る理由もないからな、のんびりしよう」

 

その後、二人で夕飯を食べた。

 

 

 

「次に会いに行く人はどんな人?」

 

「次か…一番近い場所にいるのは校倉要だな、薩摩にいる。簡単に言えば海賊の船団長だ」

 

「海賊…」

 

「まぁ、錆ほど戦狂いじゃないよ」

 

「どんな変体刀なのかしら…」

 

「教えようか?」

 

「いいえ、楽しみにしておくわ」

 

たわいない会話が続き、いつしか夜となる。

ここの旅館の露天風呂から見える景色は凄く美しいものだった。夜空という紙に大きな穴を空けたかのように大きな満月が大海の上にある。遠目にはボロボロになった巌流島、これがわびさびと言うものなのかもしれない。

お風呂から出れば刀華と入れ違いに、宿の外で鍛錬でもしていたのだろうか。そういえば、彼のこと、強いてはお互いのことをあまり話していない。いつも話すことと言えばこの異聞帯のことを私が聴くばかりだ。出会ってまだ数日だが、これからもお世話になる身だ。彼のことをもっと知っておきたい。刀華と話したいことを考えながら部屋に戻る。

・・・・女将さん、ちょっとは布団に隙間空けてください。もはや重なってます。

 

 

 

「というわけで」

 

「どういうわけで?」

 

「もっとお互いのこと話さない?」

 

直球ストレートにもほどがある。禄に人と事務的な会話しかしてない証拠だった。しかも部屋に戻ってきてすぐの刀華に言ってる。どうやらテンパっている。

 

「急に改まってだな、いいよ。確かに俺も緋華のことよくは知らないしな。腹割って話そうか」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「緋華?どうした?」

 

「・・・・・・・・ご趣味は?」

 

「ぶふっ!!!」

 

刀華が急に吹き出し、笑うのをこらえてか、うずくまって肩を揺らしている。話の切り口としては良い話題のはず…マシュやオフェリアもこうして聴いてきたの気がするのだけれども。

 

「ダメだ、ぶふっ!可笑しい可笑しい。緋華その質問はおかしいぞ。まるで見合いみたいだ」

 

「し、しかたないでしょう!腹割って話すなんてまともにしたことないし!」

 

「それにしても『ご趣味は?』って、ぶふっ!

 

どうやら彼のツボに入ったらしい。不本意である。

 

「ほ、ほら、聴いたのだから答えなさい!」

 

「ふー、ふー、・・・・落ち着いたかな。そうだな、趣味って言われても俺にはそんなものないな。緋華は?」

 

「え?私も趣味っていう趣味は…ないわね‥」

 

「おれらは、お互いないのにそれを話題にしたのか」

 

「・・・・ごめんなさい」

 

「いや、緋華が謝ることじゃないよ」

 

「そうじゃないの、きっと腹を割って話すのはこう言うことじゃない。」

 

「あぁ、そうかもな」

 

「・・・・私はね、正直この異聞帯に深い思いはないの、いいえ、私と言う人間にそもそも思いなんてない。だから全てが凄く他人事、異星の神とか、クリプター同士の競争とかも凄くどうでもいい。私はとにかく死にたくなくて、この未来視からの支配から抜け出したい。それだけなの。知らない未来、未知、それが今私を突き動かすものなの。でも同じくらい怖い。だから私は結局、こうして・・・・こうして・・・・」

 

「言っていいよ、緋華。こうしてここにある日の本がどうなってもいいって」

 

「っ!!!」

 

「君は記紀にこの世界の呼び水にされた。利用された。いわば被害者だ。」

 

「・・・・」

 

「でもだからこそ見て欲しい。この日の本を。本当に淘汰されるべき世界だったのかを君に見てほしいんだ。感情移入しろとは言わない。ただ、この日の本で過ごす中で君を少しでも楽しませて、幸せに出来ればと俺は思う。難しく考えなくていいんじゃないか?」

 

「どうして?そんな…私、この異聞帯がどうでもいいのに。私、何の意志もないよ。色彩さんみたいに生きる意味も持ってない。何にもないのに。ごめん、何言いたいかわからないよね。私も何言ってるか…」

 

「確かに全部はわからない。でも焦らなくていい。緋華はそれをここから見つければいいんだ。何があっても俺は君も守るから、安心してくれ。緋華は大丈夫だ」

 

わからない。今の会話はお互い噛み合っていない気がする。気がするのには何故だろう。ほっとする。

知らない未来には期待と同じくらいの恐怖もあった。その恐怖ですら、新しいものだと誤魔化していた自分を、何も持っていない自分への不安を曝け出して、それでもいいんだと彼は受け入れてくれた。頭がぐちゃぐちゃだ、色々と何かが込み上げてくる。

 

「ひ、緋華!?ご、ごめん!俺、何か気に障ることを言ったか!?」

 

「え?」

 

気づけば涙が頬を撫でていた。

 

「いや、な、えっと、その、お、俺も気持ちが分かるっていうか、う~ん何て言えば」

 

「大丈夫だよ、ちょっと動揺しちゃっただけ。刀華は本当に優しいだね」

 

「・・・大丈夫だよ緋華、君きっとこれから多くのことを見る。俺はいつだって君を支えるよ」

 

私はこの異聞帯でこの日初めて安らかに眠れたのかもしれない。

 

・・・・・・・・

 

・・・・

 

・・

 

 

 

夢だ。夢をみている。懐かしい母との記憶だ。

病弱な母。いつも病院のベットの上で外の景色を眺めていた。私がものごころつく頃にはそれが当たり前だった。

 

「おかあさん、どうして私の名前はヒバナなの?」

 

幼い私が名前の由来を尋ねている。

 

「えーっと、お父さんが緋華が生まれる前から、娘には絶対に華を入れた名前にしたいって言っててね。緋華が生まれたときお父さんが『ヒバナ!この子の名前はヒバナだ!』って叫んだの、だから緋華」

 

「お父さんが決めたの?」

 

「漢字は私、緋色の華。おかあさんが好きな花」

 

「そっかー」

 

「そうよ…ゲホッゲホッ…」

 

「おかあさん!」

 

「大丈夫、ちょっと咽せただけ。」

 

「・・・・・」

 

「緋華」

 

「なに?」

 

「心のままに生きてね」

 

 

・・

 

・・・・

 

・・・・・・・・

 

目が覚めた。時刻は11時くらい。明らかに寝すぎた。頭が痛い。刀華は・・・・まだ寝てる。

確か13時からクリプター会議が・・・・ダメだぼぉっとする。懐かしい夢を見たような。見てないような。・・・・お風呂行こう。

 

 

 

 

 

 

~大西洋異聞帯オリュンポスにて~

 

 

キ「では、時間になったためクリプター会議を始めたいと思う」

 

ベ「おいおいキリシュタリア、始めていいのかい?まさかの四季崎のやつが来ていないぜ。あの機械女がだぜ?」

 

オ「ベリル、彼女のことをそのように言うのはやめなさい。もしかすると事情があるかも知れないのよ」

 

ベ「お!珍しいな!オフェリアもそこは遅れたあいつを非難すると思ってたんだが」

 

カ「オフェリアの指摘はアンタの言い方だろ」

 

ベ「あぁ!なるほどね。棘を感じるなカドック!心なしか顔色が悪いぞ?」

 

カ「ほっといてくれ。キリシュタリア、会議を進めよう。早く済ませたい」

 

キ「あぁもちろんだ。緋華さんは今も呼び出している。議題の内容としては各異聞帯の進捗の報告、サーヴァントの召喚に成功しているかどうかの確認だ。」

 

ヒ「その前に、私は異聞帯における競争を降りるわ。」

 

ぺ「あらあら、いきなりねヒナコ何か事情が?」

 

ヒ「あなたたちには関係ないし、ぺぺも気にしなくていいわ。最低限の義務は果たすから」

 

ぺ「まぁ、今はいいかしら。問い詰めも駄目でしょうし」

 

その時、四季崎の席に反応が生じる。

 

ぺ「あら、かわいい遅刻者さんがきたみたいよ」

 

しかし青色の映像に映し出されるのはその四季崎ではなかった。鑢刀華である。

 

ぺ「えっと、随分な男前が出てきたけど、誰なのかしら?」

 

刀「えっと、緋華、四季崎緋華の代わりだ。鑢刀華って言う。悪い、出るつもりはなかった。機械が五月蠅くて止めようとしたらこうなった」

 

ぺ「へぇ~緋華ちゃん、こんなかっこいい人と一緒にいるなんて羨ましいわ」

 

オ「でもあまりにも珍しい。やっぱり彼女に何かあったんじゃないかしら」

 

ベ「いいねいいね!見た感じ日本異聞帯の人間だろ?その四季崎はどうしたんだ?」

 

刀「あー多分風呂入ってる」

 

瞬間、場が固まったのを刀華は映像越しに感じた。

 

オ「えっ?お風呂?」

 

カ「マジか、四季崎がそんな理由で」

 

ベ「気が合うな!俺もさすがに言葉を失ったぜ、デイビットはどうよ?」

 

デ「・・・・・・・新鮮な驚きを得た。予想外すぎる理由だ」

 

ベ「はは、確かにその通りだ。にしてもただの住民にクリプターの話は理解できないと思うんだが?どうなんだ鑢?」

 

刀「狼っぽいアンタ、そこは気にしなくていい。大方の事情は知ってる。異星の神、世界の競争だろ?」

 

ベ「そうか。俺の名前はベリル、よろしくな」

 

キ「・・・・異聞帯でまだ数日、緋華さんはそこまで話したのか。よほど信頼関係があるようだ」

 

刀「ぶっちゃけ俺のことは探らないでくれると助かる。謀り合うのは苦手なんだ」

 

ヒ「それを自分で言ってしまうのね」

 

キ「まぁいい。彼を代役としては会議を進めよう」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

当然、刀華が代役でうまく行くはずもなく…

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ベ「俺の異聞帯はやばい所っていう具合だな、あれが本当に人類の辿ったものなのかね…」

 

キ「なるほど、デイビット。君はどうだ?」

 

デ「俺も滞りない。召喚も済んでいる」

 

キ「最後は鑢君、君に尋ねたいのだが」

 

刀「あぁ、空想樹っていうのはあれだろ?馬鹿でかい木のこと。問題なくでかいぞ」

 

キ「・・・・・・・・」

 

刀「サーヴァントっていうのは、まだだな。というか今後召喚しないだろ、それ」

 

オ「召喚しない?それはあり得ないわ。緋華、彼女自身の戦闘能力は低いのだから、サーヴァントがいなければ危険なはず」

 

刀「あぁ、そうか。アンタらは知らなくて当然か。俺が…」

 

刀華が言葉を繋ごうとした矢先、旅館の廊下を全力疾走する音を耳にした。

 

緋「刀華!クリプター会議が!!!」

 

刀「あぁ、緋華。代わりに出ておいた問題なく進んでいたぜ」

 

「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」

 

沈黙するクリプター一同。

 

緋「ちょっと刀華どいて!」

 

刀「おおい!いきなり押すな!」

 

緋「遅れて本当にごめんなさい。会議はどこまで進んだのかしら、いえ聴かないわ。視た方が速いでしょうし。」

 

キ「ああそうしてくれ」

 

彼女の焦りから生まれる勢いにも冷静なキリシュタリア。

 

緋「私のサーヴァントについてね…召喚するつもりではあるけれど、まだしてないわ」

 

カ「さっきの鑢は召喚しないとかなんとか言ってたぞ」

 

緋「カドック、彼の言葉は気にしなくていいわ」

 

カ「そ、そうか」

 

ベ「にしても、お前が遅刻なんてな。しかも風呂でって、かなり調子がわるそうだな?」

 

緋「えぇ、予想外なことが多くてね」

 

ベ「予想外、ねぇ」

 

ぺ「これ以上、緋華ちゃんを責めるのはよしましょう。時間も勿体ないわ、キリシュタリア議題を進めてちょうだい」

 

緋「ありがとう、ぺぺ」

 

ぺ「!ええ!もちろんよ!」

 

キ「では進めよう」

 

 

~~~~~議題終了後~~~~~

 

緋「遅刻者の分際だけど、ごめんなさい。先に失礼するわね」

 

会議の場から緋華の姿は消える。

 

ぺ「それにしても、今日の緋華ちゃんは凄かったわね。彼女と初めてちゃんとお話した気がするわ!」

 

カ「元からあんなヤツだったのか?カルデアにいた頃に比べると…」

 

ヒ「あまりにも人間的ね」

 

ベ「交友の少なさで言えばヒナコと似ていたのにな」

 

ヒ「ベリル」

 

ベ「おっとこれは失礼」

 

オ「それにしても、彼女の異常はどこからのものなのかしら。異聞帯も特に特徴もないみたいだし」

 

カ「あれは絶対何か隠してるだろう。鑢がいい例だ。それに元から何考えてるかわからないヤツだったからな」

 

キ「とにかく、私たちの行う事は変わらない。空想樹を育て異聞帯を大きくすることだ。それは変わらない。今日はありがとう」

 

カドック、オフェリア、ヒナコ、ペペロンチーノ、ベリルが順に姿を消していく。

だが、デイビットだけは未だとどまっていた。

 

「デイビット、君は彼女のことについてどう思った」

 

「心が生まれたばかり、持ち合わせている知性に対して感情が追いついていない。そうとしか見えない。だが問題はあの男だ」

 

「鑢刀華かい?」

 

「あぁ、おそらく前々から、四季崎緋華に聞く前に異星の神、クリプターについて知っていた。ただの極東はずれの異聞帯ではない」

 

「・・・・・・・」

 

「鑢刀華がいれば、おそらくサーヴァントも召喚しないだろう。危険だ」

 

そう言い残しデイビットの姿も消える

 

「かまわない。どうであろうと私のやることは変わらない」

 

 

~~~~~~~~

 

「で、何で勝手に出たの?」

 

「いや、出るつもりはなかったんだ。止めようとしたらそうなった!」

 

「・・・・まぁお風呂で寝てた私が悪い」

 

「まぁ、ドンマイ」

 

「他に変なこと言ってないでしょうね」

 

「別に遅刻の理由が風呂ってぐらいしか言って・・・・」

 

「ふん!」

 

「こら!枕投げるなよって、ふて寝してるし」

 

「うるさい!あぁなんて恥ずかしい!」

 

「いつかのノーパン宣告よりましだろ」

 

「忘れろおおおおお!!!」

 

「落ち着け緋華!ああほらもうすぐ夕餉の時間だし!」

 

「私は腹ペコキャラかあああああ!!!」

 

「ああ!もう駄目だ!手に負えない!悪かった緋華!ノーパンは二度と言わないから」

 

「今言ってるでしょうがああああ!!!」

 

天下泰平世はこともなし、日々が過ぎて行く 

 


皆様、お久しぶりです。体調のほうは大丈夫ですか?

今大変物騒ですし気をつけたいですね

 

約4カ月間ぶりの更新、そのうえクリプターの面々の登場、キャラ崩壊してないかが本当に心配であります。よければご指摘ください。一番崩壊してたのは間違いなく緋華さんなのですが、そこは彼女の成長と思ってください。

いただいていた感想も今さらながらですが返信させていただきます!いただいていたのに大変申し訳ございませんでした(汗)

 

第5章、アトランティスもオリュンポスも非常に良かったですね。

アトランティスでは、アルゴノーツ、月と狩人

オリュンポスでは、キリシュタリア、アデーレとマカリオス

ネタバレしたくないのでこの程度ですがまだの人も是非ともプレイしてくださいね!

 

 

ただしデメテル、テメーはだめだ。



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