モブだけどヒーロー活動してます (低速のソニック)
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彼が最強のヒーローに成長していく。

※この物語はヒーローを始めたばかりのモブ的存在(神原悠)が何やかんやしていく話である。

ガシャン。

「いってきまーす。」

朝が苦手なのか、元気のない声で言った。今日は入学式。期待とワクワクを胸に秘めて歩き出した。今日から通う高校は多分、普通の高校だ。そう思っていた。何故なら高校を決める時、近さのみで選んでいたからだ。学校に行く途中2メートル位のミノタウルスの見た目をした怪人が襲ってきた。だがいきなり巨大な何かがそのミノタウルスをワンパンした。そう、彼はS級ヒーローの筋トレマンだ。

「怪我はなぁーいー?」

「あっはい、大丈夫です。」

「なら良かった。」と言って去っていった。

この国では一般的に16才で一定の水準を上回っていれば誰でもヒーローになれる。そして今年の春からウチもヒーローの仲間入りしたのだが……。ほとんどの人は全国レベルのマッチョか生まれつき能力を持っているばかりだった。そんな中でモブのウチがヒーローになれたのも幸運だった。そしてウチは無事学校に着いて入学式が終わった。体育館から教室に戻る頃、いかにも友達が少なそうで喋りやすそうな子がいた。ウチはその子と友達になりたかった為、話しかけた。

「ねぇねぇ、良かったら友達に……」その時!その子の紙の毛がいきなり燃えだした。あばばば。ウチはパニックった当然だ。話かけたら突然燃えるからだ。しかし、彼は「あ、うん。大丈夫だよ。」と言った。

「僕、能力者なんだ。火を出せるからヒーローになって見たんだけど、どうにも火を制御できなくて……。」

「え、ウチもヒーローなんだ!今年の春からの新人だけど……。」

「じゃあ、ヒーローとしてもクラスメイトとしても同級生だね。僕の名前は炎魔統宜しく。君は?」

「ウチの名前は神原悠やでー。宜しくねー。」

 

偶然に帰る方角が同じだった為、放課後は一緒に帰った。その時、通りすがりの怪人が現れた。見た目が弱そうだった為二人で倒すことになった。炎魔は炎を出そうとした。しかし、何も起こらなかった……。

「今日は火の調子は悪いようだ!」

えっっっっ!

炎魔は火を使って戦う。スタイルの為、火が使えない炎魔である以上実質一人で戦ってるようなものだ。怪人は市民を攻撃し始めた。人形の怪人だった為にレベル5だと思っていた。しかし、コンクリートが砕けている為レベル4ではないかと思われる。そう初心者にはかなりの強敵である。こんな状況でも神原は少し嬉しそうだった。ついに本物のヒーローになれる!普通の人よりは高い身体能力を生かして蹴りを入れた。しかし、怪人はほとんどダメージが通っていない。それ処か素手のカウンターを受けてしまった。骨が砕けたと勘違いするほどだ。もう立てそうにない。その時だった。何処からともなく、自動スキル底力。と聞こえてきた。その瞬間何処からか力が溢れてきた。

「これなら何とか倒せるかもしれない。」

そして怪人を殴ってみた。ぐふっ!さっきまでとは比べものにならないほどの力だった。怪人が立ち上がる前に連続で叩きつけた。気づいたら怪人は死んでいた。自分でも理解できてなかった。いきなり過ぎて。しかし、そこには怪人の死体と友達がいた。これには炎魔も驚いていた。

「君は一体……!?」

自分でも分からなかった。

 

次の日、学校帰りにSS級ヒーローに来てもらった。彼もまた能力者である。しかし、全くの戦闘向きではない。

能力名は不明だが能力者がどんな能力なのかを知ることが出来るらしい。SS級ヒーローが調べだした。

「ふむふむ……。君の能力は成長だ。あまり強い能力じゃないぞ。何故なら戦って怪我すると前よりも丈夫な肉体になる。つまり強いやつと戦う程身体能力が上がるだろう。恐らく限界は無いだろう。この能力があれば最強にだってなれる。しかし、傷を負いすぎると死ぬかもしれない。ハイリスクハイリターンってことだ。他に知りたいことはあるか?」

「いいえ、ありません」神原は少し険しい顔をしていた。

 




趣味で書き始めました。宜しく。お願いします。


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ゴールデンウィークPart1

暇な休日になる筈が……。


ゴールデンウィークの初日。我らは自転車で出かけていた。何故こんなことになっているのかと言うと…。単純に暇だったからである。部活をやってる訳でもなく、イベントに行く訳でもなく。さっきから誰も喋らない。まるでマホトーンにでもかかったかの用な沈黙が続いていた中、炎魔がうちに聞いてきた。

「さっきから一緒にいるの誰?」

神原と炎魔の後ろには背が高くてスラッとした男の同級生がいた。炎魔は凄く気になった。何故なら前回まではこんな人が居なかったからである。見覚えのない人が2話目から何の前触れもなくこの空気に溶け込んでいたら誰もがツッコミたくなるはずだ。神原は極普通に「二週間前に話すようになった」と答えた。そういえば話してなかったけ?あれは確か……

 

二週間前。それは情報の時間だった。ウチは元々パソコンを使うのが苦手だった。何故なら家にパソコンがないから普段使わない。パソコンが使えない人の多くがこんな理由を背負っているのではないか。そんなこんだで授業中に隣にいた男の子に聞いたのである。その子こそ今一緒にいる曹操である。偶然にも席は前後同士だった為、一緒に話す用になった。更に偶然にもお互いアニメが好きだった為、よく話すようになった。

 

っていう物語があった訳や。

炎魔はすぐにツッコんだ。

「何で先にゴールデンウィークの話を書いた!」

「そっちの方が盛り上がると思ったから……」

色々と話している内にアピタに着いた。暇だったから誘ったのである。三人は最初に二階に行った。ゲーセンでふらついたり、本屋で時間潰しもした。何となくブラブラとしている間に3時になっていた。小腹が空いてきた頃ウチは「何か食べ物買いに行かへん?」と誘った。一回の食料品売り場へ向かった。炎魔はグミを選び、曹操はポテトチップスを選び、ウチはチョコレートを選んだ。そして三人はジュースを選びに行った。ウチはオレンジジュースかカフェオレで迷っていた。その時だった。目を疑うような出来事が起きた。目の前でジュースが消えたのである。その時、数年前から物が突然消える事件があったことを思い出した。その事件のほとんどが日本だったが希に外国でも国宝級の宝がパッと消える事件があったらしい。そんな時、無意識に何もない空気に向かって手刀擬きをしていた。ジュースが消えた時、誰かに当たった気がしたからである。その無意識は見事に的中した。手刀擬きをした時、誰かに当たった感触がしたと思った直後、目の前に人が現れたのである。見た目は黒い忍服を着ていた。ザ・忍者だった。それが視界に入ったのは一瞬だった。何故なら私に気づいた忍は一瞬の間に消えていたからである。今日はこれ以上何も起こらなかった。



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ゴールデンウィークPart2

ゴールデンウィーク2日目、ついにそれらしい戦いが起きようとしていて、何か可愛い少女が出てきたりして、何かそれっぽい展開になってきたんじゃね?皆様も是非読んでみてください。


ゴールデンウィーク2日目の朝、これは紛れもない平和な朝だった。まさかあんなことになるとはな。

「ゴールデンウィーク2日目なのに暇だなぁ」

1人ごとにしたら声が大きいと自分でも思ったウチは「極力1人ごとを声に出すのをやめよう。」と、思った。さっそく昼からどこに行くか考えた。ここら辺は色々な所に行けるから便利である。あれから何分たったか分からない。

「よし、今日はモレラにでも行くかぁ。」

ウチは12時までに昼御飯を食べて準備を整えて出掛けた。途中からは一本道で行けるから楽だと思う。しかし、遠い。そう考えながら自転車のロックを外して走り出した。安全運転をしながら走ること45分。やっと着いた。ゴールデンウィークなのに夏並みに暑いと感じていた。涼まる為にもさっさと店内へと入った。入り口から50m辺りで何か異変があるように感じた。そして店内を見回してみた。しかし、何も変わらない。

「この違和感は何なんだ?あぁ、中二病的なやつかぁ。」この頃まではそう思っていた。まぁ、エレベーターで2階に上るとこれは偶然なのか白いワンピースを着ているロングな金髪少女が歩いていた。背は自分と同じくらいだったため同級生だと思った。本当に可愛かった。しかし、物凄い違和感がその少女からしていた。

ま…まさか…。分かってしまった。その違和感に。ゴールデンウィークなのにワンピースだったことに。そのままウチはゲーセンへと向かってクレーンゲームの景品を見に行った。30分たった頃だった全てのクレーンゲームを見終わってゲーセンから出た時だった。さっき見かけた少女が赤い瞳を輝かせて懸命に何かを探していたようにも見えた。事件性を感じた為、ベンチに座りながら少女を目で追っていた。その時、下の方から複数の蔓が少女の体の隅々まで絡めてきた。この数秒の出来事に反応すら出来なかった。直ぐに助けに行こうとした。しかし、何処からか複数の小型ブーメランを出してそれらを投げて蔓を切ってほどいたのである。ウチは少女の無事を確かめにすぐに駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。あなたは誰?」

「ウチの名前は神原 悠。」

「じゃあ、神原って呼ばせてもらうわ。私の名前は音坂 杏よ。」

「宜しくな。杏。」

「し…下の名前で呼ばないでよね 」

杏は頬を赤く染めながらツンデレ口調で言った。そして杏は反射的にウチの顔を殴り付けていた。そのまま数m飛ばされた。数秒後にきた激痛と共に殴られたことによる快感も感じていた。それもそうだ。金髪少女に殴られたんだ。多少の喜びを感じてもいいだろう。

「あ、ごめん。急に下の名前で呼ぶから。これからは上の名前で呼んでくれる?」

「わ…分かりました。音坂さん。」

顔が腫れながらも訂正した。

そこにスーツ姿のサラリーマン風の男が凄くゆっくりな拍手をしながら現れた。

「あ…あいつよ。さっきから私の後を着いてきていたのは」

音坂がそう言った時、初めて状況が理解出来た。彼女が追われていたことに。

「私の大事な植物たちのご飯を横取りしないでよね」

男はそう言っていたがその言葉から怒りが感じられなかった。そしてすぐに分かった。

「こいつかなり強い…」

ウチは戦う覚悟をした。

 

 

 




次回はついにそれっぽい戦闘?神原にカッコいい出番は来るのだろうか。


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ゴールデンウィークPart3

ついに始まった植物を操る男との戦闘。果たしてこのモブに出番があるのだろうか…。


店内ではピリッとした空気。突然と現れた植物使い。そして金髪少々。平凡な日常に訪れた非日常に緊張がはしる。

(あの子可愛いなぁ。その前にあいつどうしようか)

突然の出来事にも関わらず内心あまり緊張が足りていない。

「逃げるわよ」 杏は相手が悪いことを悟っていたのかすぐにそう言った。しかし、ウチは諦めずに戦おうとした。しかし、ここで格上と戦って服がボロボロになることを恐れて「うん」とだけ返事をして一緒に逃げた。

「え!ここは戦って勝つ所じゃないの!?」と、少し驚きながら反射的にツッコんだ。しかし、逃げても逃げても男は植物を使って追ってくる。(あー、もうここで死ぬんだろうなぁ。)と、冗談半分で考えていた時、突然男が叫び出した。その声は恐怖しているようにも聞こえた。それに驚いたウチは男の方を振り返った。男の操っていた植物を伝って火ダルマになっていたのだ。その時だった。

「誰かぁー。消火器を持ってきてー。」

その声に聞き覚えがあった。更に植物と男が燃えている。それに気づいた時、安心感した。

「大丈夫かなぁ」燃えてしまった男に対して心配そうに言っていたのは炎魔だった。ホッとしたウチは炎魔に問う。

「どうしたの?」

「丁度ここに来たらこの人が暴れているが見えて。で、その時、神原と横の人が襲われているのを見つけたからとっさに火で追っ払おうとしたら…。制御出来なくてそのままあの人が燃えていた。」

「あー、なるほどねぇ。そういえばその男大丈夫なの!?」

フッと思い出した二人はすぐに男の方を見た。既に消火器で鎮火された後で男はひどい火傷を負っていた。

「ガシャン」

突然割れたガラスの音にその場に居た全員が驚いた。驚いたのは音が大きかったからではなかった。いや、音が大きかったのもあるかもしれないが。しかし、何よりも巨大なカブトムシがモーターのような羽音を立てながら男を持ち上げ拐って行ったのだった。その間動けたものは誰一人いなかった。

「あの、ありがとうございます。」

杏は炎魔にそう告げて素早く去っていった。しばらくしてから炎魔は今まで起きた出来事についてウチに聞いた。炎魔は「ほいっ」と、返事をしてから話出した。

「最近今までに比べて能力者の報告が多く上がっているらしい。それについて明日ヒーロー組合から話があるから学校に来るようにだそうだ。」

ウチは何かヤバイことが起こると思い、この時代の流れにワクワクしていた。

 

次の日、朝早くから学校の教室にいた。ウチと炎魔を含めて4人いた。8時30分早速始まった。

「私はヒーロー組合側の人間である。早速だが今日1人欠席している者がいる。既にその人にはLINEで伝えている。要件だけを伝える。近年いや、最近になってから能力者の数だけではなく、怪人の数が急激に増えている。ここの県ではそれほど変化はないが、他の県では既に被害が出ている。その為、もしも何かあったらすぐに連絡して欲しい。」

「あ…あの。昨日植物を操る男とロマン溢れる巨大なカブトムシが現れました」

「他は?」

「特にありません」

「分かった」

この後は昼前に終わった為、炎魔と別れてすぐに帰宅した。

(もしかしたらこの先、命張って戦う日が近いかもしれんなぁ……)

その頃、時は同じくとして

「ギャー!」

複数の男性の悲鳴が響き渡っていた。

「ほらどうした?我を倒すのではなかったのか?勇敢なる者達よ」

その声は何処か寂しげで退屈そうだった。それもそのはず。御触れを出したのにも関わらず彼の前に立った者は何もできずに死に絶えるからである。

(あ、そうだ!我の分身なるものを使って強いものを探すとしよう。ついでにGPSと千里眼機能も着けてっと……。)



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引き波

あれから1週間経ったとある朝、恐ろしい程に気持ちよく目覚めることが出来た。その為、久しぶりに散歩でもしてみることにした。黒く解放感のあるサンダルを履き外へと出た。梅雨前だからなのか程よく風が吹き天気も晴々していた。ウチは胸いっぱいに深呼吸してから歩き出した。

家の近くの御無川の堤防を散歩していた時だった。突然白い髭のおじいさんがウチの方に近寄ってきた。

「神原よ。少し時間をくれないか?」

「あの…誰ですか?」

ウチは完全に忘れていたのでそう疑問返しをした。

「まさか覚えていないか!?」

「ええ。」

「1話の最後で君の能力を見てあげたでしょ?」

……………。数秒考えた後、あー、と一言言った。

「完全に忘れていました。忘れっぽいもので。で、今日は何の用ですか?」

「今日は君を鍛えようと思って来たのだ。」

「えぇ、いいですよ。」

「なら、今から1週間こちらが用意した島で過ごしてもらう。学校なら既に連絡済みだ。そーいえば、まだ名を名乗ってなかったな。私の名前は白井だ。宜しくな。」

そう言うと、まるで見えない壁を蹴っていくかの用に空を飛んで去って行った。

それからすぐにヘリコプターが迎えに来て1つの県くらいの大きさの島へと降り立った。しかし、島の割には色々と手が加えられていて思っていたよりも過ごしやすそうだった。

ホテルの部屋に入ってみた。思ったより広くて過ごしやすそうだ。それからすぐに部屋をノックする音が聞こえた。

「神原、そろそろ訓練するぞ。支度が済んだら一回のロビーに来て。」

そう伝えてすぐに去ったのを確認したウチは五分で準備しロビーへ向かった。合流したウチは白井に広いところへ連れて行かれた。

これから彼女と戦ってもらう。彼女から銃を取り上げられたら昼飯にしよう。それだけ言って白井はホテルへ戻っていった。そこに居た女の子には見覚えがある。杏だった。

「神原、部活は何してるの?」

困惑しながらも帰宅部と、答えた。

「じゃあ、残念だけど昼ご飯は無しのようね。」

そう言って杏は軽やかに走っていった。身体能力が遥かに上の杏を捕まえるのはほぼ無理だ。しかし、捕まえないとご飯抜きになってしまう。女の子を追いかけるのには抵抗があったがご飯の為に必死に追いかけた。全力で走り続けること30分─スタミナと肺が限界に近づいているのにも関わらず寧ろ少しだけ楽になったように感じだした。そして10分後、やっと杏に追い付いた。両者ともゼイゼイ言いながら、その場で呼吸を整えている時、空から隕石が降ってきた。目の前に落ちてきた隕石に死を覚悟した。しかし、次の瞬間2㎞離れたところにいた。とっさに白井さんが助けてくれたのだ。隕石が落ちた周辺は小さなクレーターが出来ており、周りの木々は風で強く靡いていた。やっと周りの状況を把握して杏がいないことに気づいた。すぐさま地面に顔を向けると顔面血だらけの杏が気絶していた。それからすぐ無事を確認してすぐ気を失ってしまった。



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危機

久しぶりに投稿しました。暇潰しにでも読んでいって下さい。


ウチは目を覚ました。どうやらベッドの上のようだ。

突然頭の中に気絶する前の記憶が流れ込んできた。

(そうだ…。あの時、隕石が降ってきて。)

すぐさま隕石の事を聞き出そうと思い、ベッドを飛び出そうとした。しかし、体が思うように動かないことに気づいた。

(そうか、これは後遺症!?)

「それただの筋肉痛だよ。」

ふと、右側を振り向くと髪がパーマっている白衣の青年?が座っていた。

「驚いたねぇ。たしか君、鬼ごっこの鬼してただけだよね?」

(鬼?あぁ、確かに鬼ごっこだったかも。)

「ただ追いかけていただけなのに重症だねぇ。しかも、全然回復してないのに3時間で目覚めて。」

その時だった。突然建物全体が揺れたあと悲鳴が聞こえた。そしてナースの花田さんが息を切らしながらもドアを力強く開けた。その行動からも今の状況を伺える。

「早く逃げて!」

「よし、今回だけだぞ。こう見えても僕は運動音痴だから援護は君に任せる。」

そう言って彼はウチの体の至るところに針を刺した。

刺したかと思えばすぐに抜いた。

「これで少しは動けるはずだ。頼んだぞ。」

そんなこと言われてもCの下なのにこんなの無理やん。しかし、見た所他に戦えそうな人がいない。そこに違和感を感じていた。

 

一方その頃…

白い砂浜、そして水着。楽しいはずのビーチで杏は危機迫る表情をしていた。

「あの白井さんが…?」

杏の目の前には黒いスーツにストレートなロン毛の男が壺を持っていた。

「この壺の中では流石に手も足も出ないようね」

杏は焦っていた。能力を知れる能力者、しかもベテランが捕まって出れない。その事実に驚きを隠せなかった。

男は壺を撫でながら、ふっ。と、余裕の笑みを浮かべていた。

杏は流石の状況に手も足も出ないだろうと諦めかけていた。

ふと、男が壺を持っていることにある連想をした。

蠱術だ。蠱術といえば壺の中に毒虫を入れ、最後の一匹になるまで殺させる呪術のはず…。けれども壺の中には白井さんだけ。そういうことか!

杏は男の所まで一気に距離を詰めた。そして、壺を蹴り割ろうとした。これで白井さんを助けられるとホッとして確認してみると壺は割れていなかった。

っ!

男は余裕そうな顔で、バーカ!と言って杏を蹴飛ばした。5m飛ばされて一瞬意識を失いかけたがすぐに体勢を取り直した。

その時、武装した人たちが数人、男に向けて催眠玉を投げつけた。いきなり過ぎて男は抵抗できずに気を失った。

壺は発光しだすと中から白井さんが出てきた。

「あー、危なかった。」

その言葉からも表情からも不安も焦りも感じられなかった。

「危なかったじゃないの。どうせ知ってて捕まったんでしょ!」

幼い少年がイタズラでもしたかのような表情をしながら、すまん。とだけ言った。

「よし、彼らの援護でもするかのぉ。」

白井と杏は武装した人たちと共に神原たちの援護へと向かった。



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どうやら怪人は弱い相手を狙うようです!

彼は周りの医者を守りながら建物の出口へと向かっていた。筈だった。

怪人は今にでも周りを囲む勢いで進軍していた。

周りの医者は簡単な戦闘くらいなら出来るように仕込まれていた。

しかし、倒しても倒しても周りを囲んでいく怪人たち。

医者たちの戦闘スタイルは皆、様々であった。

ある者はメスを投げ、ある者は白衣の中に隠し持っていた薬品を投げていた。その中には超能力者も居て驚きもした。

超能力者と能力者では根本的に仕組みが違っており、超能力を実用的に扱えるものは居ないとされておりまた、超能力があると言えば、「マジックだ」「トリックだ」など批判的な言葉を返されることもあるくらいだ。

(それにしてもメスを器用に投げるわ、どっかから薬品を出すわ何かすげーなぁ。)

と、ぼーっとしてる。

気がつくと何故か自分の周りには他の人よりも多くの怪人が襲ってきていた。

ついには一匹の狼怪人の殴りを受けてしまう。

(流石に数で押されている。)

しかし、その目は怯えていなかった。

寧ろ希望に満ちあふれていた。

まるで新しいゲームを買ってもらった子供のように。

狼怪人は神原に数発の拳を体中に浴びせていく。

「流石怪人だなぁ。一瞬の余裕すらない。

しかし何故だ?この高揚感。

そうか、自分の弱さを知れたから。まだまだ強くなれ

ることを知れたから嬉しんだ。」

その言葉は喜びに満ちていた。

気づけば体が軽くなっているように感じた。

医者たちの体力が尽き、戦力も無くなりかけていたその時、ウチは前線を駆けていった。

迫り来る怪人の攻撃を避けながら一発一発攻撃を当てていく。

ぐはっ!

くわー!

次々と怪人を行動不能にしていく。しかし、流石に数が多すぎる。そろそろ体力の限界が近づいているのを悟った。

(くっ!全部倒すまでは倒れる訳には…。)

霞み始めた目、消えかけていた意識の中、突然と絶命し出す怪人の姿のみを写して…。

バタン!

次目を覚ました時は既に病室の中であった。倒れる前の記憶が曖昧である。ウチは頑張って思い出そうとする。

一瞬だが倒れゆく怪人のことが脳裏に映像化した。

あっ、そうだ。あのとき…。

見る限り病室は無事そうであった。

と、言ってもあれだけの怪人が襲ってきたのだ。あちらこちらが傷だらけになっているのも言うまでもない。

心を落ち着かせた。そして、周りの観察を始めた。傷だらけなのは自分と病室の壁、備品だけではなかった。あのとき、共に戦っていた多くの医者がベッドの上にいた。ある者は死んだかのように眠り、ある者はあのときの戦いの酷さを語り合っていた。

コンコンッ!

ノックと共に白井さんが入ってきた。

「 怪我の方は大丈夫かい?」

「ええ。お陰さまで。あの…、聞きたい事が…」

「分かっておる。あの怪人の大群じゃろ?」

「ええ。」

「あれは鷲がやった。」

「やはりそうでしたか。」

「鷲はこれから用事がある。帰らせて貰うよ。」

「分かりました。」

そう言って、神原のいる病室を後にした。

白井さんと入れ替わるように杏が入ってきた。

「あんた、怪我は大丈夫なの?」

「うん。能力のお陰で少しだけ回復が早いにたいだ。」

「そうなのね。元気そうで良かったわ。じゃあ、私も行くわ。」

杏はそう言って、杏を置いて出ていった。

(あれ…。お見舞いって言ったら桃じゃね?)

そんな疑問を抱きながらも軽く手を振りながら見送った。

一方、その頃。

 

「やはり、光の者たちは一筋縄ではいかないようだな。だが、最後に勝つのは私だろうな。」

(それにしても本当にSランクヒーローは強いのだろうか…。少し不安だなぁ。)




さて、次回は???


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外編1!

そこはまるで会議室に置いてあるような椅子に対して、バラエティー番組のような派手なセッティングされた何とも不思議な部屋に気づいたらいたという。

カチャッ!

暗かった部屋を照らし出すかのように点灯し出した。

点灯していなかった時には気づかなかったが、他にも多くの知人。

また、多くのギャラリーに囲まれているように感じた。良く見たらギャラリーの歓声は録音された音であった。

やぁやぁ。

老人とは思えないほどに張りのある声で話し掛けてきたのは白井さんであった。

「今の状況について説明して欲しいのですが。」

「あぁ、実はこれ、儂にもさっぱりなのじゃ。1つだけ分かっていることがある。それは外編であることだ。」

ウチはさっぱり分からなかった。と言うよりは状況が飲み込めていなかったのである。

「えーっと…。つまりはな、今までの話を振り返ったりたり、自由に何かをしたり。つまり、トーク番組に近しいものじゃな。」

「あー、なるほどね。って分かるかぁー!」

「では、何か討論したいことがある人はいませんか?」

そこに居たのは炎魔だった。

ものすごーく唐突に始めて来やがったそのトーク時間に未だに脳が追いついてない。

ひさしぶり。

そう軽く挨拶をしてきたのはスラッととした高身長の男だった。

「あんた、誰?」

「いやいや、俺だよ!俺!」

ウチは本当に誰か覚えていなかった為、反射的にスマホを取り出して110をしようとした。

「ストーップ!曹操だよ!同級生だよ!そして2話で出てきてるよ。」

………!

「今更かよ!よーし、ここ大事だぞー。2話目は要チェックだ。」

「そこはチェックしなくてもいいだろう。」

「いやいや、一応重要なツッコミ役で入ったぞ。」

「そもそも曹操は無能力者だろ?無能力者はバトル系ではまず出番が少ないものだ。」

「居ないことはないよ。だって、と○るシリーズで…」

「それ以上は止めとけ」

ここで炎魔の止めが入った。

 

数分の間、CMという休息時間を設けて一度全員の気持ちをリセットさせることにした。

改めて話して起きたい話題はないのかを炎魔は問い直した。

「はーい。」

何故か大きめの声で手を挙げたのは神原だった。

「どうぞ。」

炎魔は嫌な予感がしていた。

「この作品ってバトルあり、笑いありが売りだろ?今の所、ショボいバトルがあっても、笑える所が1つもないのだが。」

「その質問に答える。それは作者が悪い。」

「仮にも作者だぞ!これを聞かれたら怪人ではなく、作者に消されるぞぉ!」

曹操は的確なツッコミを即座に入れた。

「あー、大丈夫だろ。この間なごやんを送ったから。 後から感想聞いたら出世約束されたからな。」

えーっ!

一同驚きを隠せていなかった。

「そもそもバトル系なのにバトルショボくないか?」

曹操は何となく聞いてみた。

炎魔は懐から紙を出して読み上げた。

「えー、これから凄くなるそうで。」

……。

良かったな!(一同)

 

ということで今日はここまでです。次回からはちゃんとストーリー進めていきますので。司会務めさせていただきました。炎魔です!

 

ここで神原が立ち上がって大きく息を吸い込んだ。

「これからもお願いします!あ、後、評価もお願いっす。」

「オイィー!せっかく良い終わりかたしたのにぶち壊すなぁー!」

曹操は小声でツッコんだ。

 

 

※次回からは闇の王第二部突入!



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お前ら!強くなっていい気になるなよ!

あれから数ヶ月…も、経っていない。いや、実感ではもうすぐ新学期迎えようとしているのだが。

ドラクエがお友達の我からすると夏休みが地獄でしかない。友達誘ってもノッてくれなかたっり、暑かったり、彼女もいない我からすると夏休みはただの生き地獄に近いものを感じた。最初の1週間は毎日録画の処理をしたりゲームをするなりして割とぐぅたらとして充実だった。しかし、1週間もすると悟り出してしまうのだ。1ヶ月を無駄にしながら生きていることに。それに気づいた頃には夏休みだし。16才であり、連絡手段を持たない我はもう手遅れであった。

 

(早く学校に行きたい…。)

 

ウチは世界レベルで無駄に過ごしている時間を変えることに決めた。

いや、正確には夏休みが始まって3日目からあることを始めたから「している」と言った方が正しいのかもしれない。

そう、あの激戦があってすぐの出来事だった。少しでも自分の能力を活かそうと、

腹筋、スクワットを100回、腕立て伏せ50回

 

を1日の最低ノルマとしてコツコツ頑張ってきたのだ。

これはかなりキツイ。

毎日やるとしたら割と精神がめいる。更にこの暑さだ。平気でいる方がおかしい。

そんなこんなでテレビを見ていると数キロ先に怪人がいると報道されていた。

どうやらB級とA級の数名が戦闘不能らしい。

あれからすぐに向かった。

目の前には2、3メートル位であろうか、二足歩行をする巨大な犬の怪人がいた。

グゥッッ!

犬の怪人は威嚇をするかのようにこちらを睨み付けた。

ウチは先手を取って真っ先に犬の怪人の毛を鷲掴みし、そのまま殴り付けた。

犬の怪人にダメージが入った気配が全く無いことに気づいた。

(ヤバイ…。このままじゃ死ぬな。まぁ、こっちも経験あるから何とかなるか。)

しかし、犬の怪人は予想以上に早かった。

その道筋が見えるような早さで数発の拳が肉体を貫くように。

脳が揺れた。だが、神原は犬の怪人を逃すことは無かった。

まるで獲物を見つけた一匹の狼のように。

犬の怪人が攻撃して足を地につけた隙を突いて足に一発の蹴りを入れた。

犬の怪人は僅かに足元をフラつかせた。

その時だった。

 

小さな火の玉が犬の怪人に当たりに行って犬の怪人が少しフラつかせたのだ。

ッ!

ウチはその火を見た時、その火を飛ばしたのが誰かすぐに分かった。

それでも信じられなかった。

何故なら彼は……。

 

 

時は少し遡る。

「はぁ、我の分身を解き放ったものの、強き者は一向に現れない…。あ、そうだ!闇の因子でもバラまくとしよう!」

「お、お止め下さい。それを使ったら私までもが怪人に…。手伝う代わりに命だけは助けて下さると言いましたよね!?」

「あぁ、命だけはな。」

そう言って禍禍しいその者は黒い何かを大量に放出した。

ここには多くの人がいる。

ある者は外から囚われた者、ある者は囚われ者達から無理やり作らされた子供も多くいる。

そんな人々が次々と理性を失い、ある者は虫の姿に、ある者は獣の姿へと変わっていった。

理性のある者は1%にも満たなかった。

「これで多少の戦力にはなるか…。」

ムムッ!

その者は因子に触れて怪人化しない人を見つけた。

「何と。光の力が強すぎる。」

そう言って、次々と補食されていく。

ギャー!

おい、お前が食われろ!

えーん!

 

容赦なく人々を食らっていく。

その者の戦略には合理性はあった。しかし、合理的な策には心がなかった。

カチャッ。

ドアの向こうから完全人形(ひとがた)のリクルートスーツ姿の怪人が入ってきた。

「闇の王、きららMAX買ってきました。」

「おー、そうか。ありがとうな。近藤さん。ついでにそこの怪人の選別と指揮をしといてくれ。」

「ははっ!」

 

現在に戻る。

自分と同じ位の背丈の男が歩いてきた。

「よっ。」




神原の助っ人はあの人!?だよね?
ってことでお楽しみにー。


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フランスパンが長いのはそう作っているからだ

お前は…。

沢山の火の玉によって巻き上がった煙の中からはおそらくウチと同じくらいで有ろうかと見えるような背丈の男が出てきた。

「ま…まさか。お前生きてたのかよ!?」

煙が薄くなってきた。

「炎魔、お前生きてたのかよ。」

「おい、誰が死んだって!?そう簡単に死ぬ訳ねぇだろ。そもそもそんな描写無かったし!」

「人間はな、どんなにゾンビじみててもアーケードゲームでUR級のカードをあっさり引いてしまうほど、死ぬ時は呆気ないんだよ。スマゲーでよくあるだろ?課金してまで欲しいキャラを当てたのにその後に残るのは虚無だけだと。そういうもんなんだよぉ。」

「いや、無駄に説明長いだけで何一つ説得出来てないんだけど。」

「つまり、人は明日にでも死ぬということだ。」

(やっぱり分からないなぁ。)

炎魔はそれ以上ツッコまなくなった。

グルゥッッ!

犬の怪人は煙にも怯まず飛びかかってきた。

その時、

 

シュパッ!

何故か犬の怪人は胴が真っ二つになっていた。

ッ!

神原は何が起こったか分からなかった。

しかし、犬の怪人を斬ったのが誰かはすぐに分かった。

煙の中から私服に赤いマントを付けた男が歩いてきた。いや、よく見ると手に太くて長いものを握っていた。

「私はパンの王であり、救世主である。」

「あの…。何故手にフランスパンを…」

「これはエクスカリパンだ。私はパンで多くの人を助けてきた。」

長めでストレートな髪、凛々しい姿勢…だけを見れば騎士とも言えなくはないが。

しかし、そこらの私服にマントにダサさも感じたが黙っておこう。

「何故助けた?」

「ヤられている人がいたら助けるのは当然だろ?」

「ウチは助けてとは言ってない。」

「そうだな。なら助けがいる時はこの小麦粉を開けて。」

そう言って渡されたのは小麦の袋だった。

「私が助けるのは困ってる人だ。邪魔して悪かったな。」

そう言ってパンの王は去っていった。

「大丈夫か?炎…」

その時だった。またパンの王が戻ってきた。

建物の壁を蹴りあげて進む姿はトランポリンで跳ねる子供のように軽やかだった。

「そーいえば名乗るのを忘れたな。Sランクのプレスター。ギャグリック星から来た。困ったときは小麦粉を開けるように。」

「はーい。」

プレスターはまた軽やかに去っていった。

 

変なヒーローだったな。

神原は棒読みで話した。

「設定がカッコ悪いな。」

炎魔も呟いた。

「パンなのにな。」

この後は何事もなくお互い家に帰っていった。

 

「プレスター、神原はどうじゃったかの?」

そこは本部の一部屋。白井と一緒に座っていた。

「そうだな。あいつは普通とは何かが違う。だが、ヒーローに向いてるとも言えない。」

「これから儂は少し遠出してくる。その間のサポートを頼む。」

白井は少しだけ笑みを浮かべていた。だが、その目は目の前を見ていないようにも見えた。

あれから約2ヶ月が経とうとしていた。

ニュースを見るかぎり日本では怪人が出没しているらしい。だが、ウチの市では怪人が出ていなかった。

まるで3・11の時のようだ。あまりにも危機の重要性が分からない。

それでも筋トレだけは欠かさずにやっていた。

ピンポーン

 

10月になったばかりなのに暑かった為に出る気にもなれなかったのだが。イヤイヤ インターホンを見てみると杏の姿が映っていた。

これは大事件の予感しかしていなかった。

いや、大事件だ。

何故なら家に女の子が来ているからである。

ウチは急いで上の服を着るとそのまま玄関へと走っていき玄関の戸を開けた。

「久しぶりね。神原。」

 




さーて!次回のモブだけどヒーロー活動してますはー?
新たな章突入。そしてプライベートに新キャラ、学校にも新キャラ。季節は秋!新キャラの秋!


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大きな壁

「どうした?」

突然家に来た杏に対して少しばかり驚いた。

ウチはサンダルを履いて急いで外に出た。

「ちょっと散歩に付き合ってくれない?」

散歩するには少し張りきり過ぎているような服装だった。

正直、眠いから早く散歩を終わらせたいとも思っている。

その頃、白井は朝とは思えないほど暗い所にいた。

「強いな。だが、我に傷はつけられぬ。」

「どうやらそのようだな。」

白井は闇の王と名乗る怪人のボスにダメージを与えていないらしい。

闇の王は複数の黒い塊を白井に投げた。

白井は軽々く避けるが黒い塊が地面に触れた瞬間に地面が溶けるように崩壊していく。

もはや足場は闇の王周辺にしか残っていない。

白井は足場が消えるよりも前に闇の王の近くに移動していた。

「どうやら儂では無理らしいな。」

その声は少し楽しそうにも聞こえる。

「お前は強い。多分、全力でかかっても倒せないのだろう。しかし、お前も我に傷を付けられぬ。」

闇の王はため息が出そうになるのを堪えながらも無理やり威厳を保つかのように話した。

「少し前に四天王を送りつけた。もはや、我らを止めることは不可能であろう。」

白井は倒せないことを悟り、一度戻ることにした。

 

 

その頃、神原は朝の早い散歩に対して切り上げようと声をかけた。

「あ…」

「あのね、今日は少し伝えたいことがあって呼び出したの。」

偶然にも言葉が重なり、ただの散歩じゃないと知ったウチは杏の言葉に耳を傾けることにした。

「実は私、趣味で占いをしてるんだけどね。それがよく当たるの。」

へぇー。と、思いながら聞いていた。まさか、知り合いで占いをしてる人がいるとはな。

「四年後に世界の危機が訪れるの。そうね。公になってから1年半後に医療崩壊が起きるわ。で、3~4年後に第三次世界大戦が勃発するわけ。まぁ、それでも3年後に終わるの。以上よ。」

正直、彼女の言ってることが分からなかった。どうせ起こる筈はないだろう。

「因みに1年前だっけ?結構凄い人が5年後に戦争よりも危険なことが起きるからって警告してたわね。あとあんた、世界はそこまで長くないのよ。だから100歳目指そうとか思わないことね。」

何を言ってるんだ?そもそも未来は誰にも分からないし、長く生きたいとも思ってないしな。

「そうか。」

その一言しか言い返せなかった。

ゴゴゴゴッ!

いきなり地震でも起きたかのような轟音が鳴り響き、揺れも感じた。

「キャッ!」

いきなりの揺れに杏は声を漏らしていた。

不意に襲った揺れには驚いたがすぐに周りの確認をした。

殆どの通行人がしゃがみ、走っている車もいなかった。

何より一番驚いたのは目の前に50mくらいありそうな巨大な何かが立っていた。

揺れよりもその巨大な何かの方に驚いた。

本能的に足が走っていた。いつ自分が踏み潰されるかもしれない。勝てないかもしれない。

いいや、内心生きたいだけかもしれないし、死ぬのが恐いのかもしれない。

声に成らない叫びを出しながら数百メートル走った時だった。

「こんなところで何走っているんじゃ?」

服をガッシリと捕まれたウチは蟻を踏んだ像のような反射速度で後ろを振り返った。

その白い髭には見覚えしかなかった。

(白井さん!?)

ウチよりも早く杏は白井の存在に気づいていた。

(この人の能力は瞬間移動なの!?彼が来た道筋が見えなかった…。)

「こんなところでマラソンの練習してる場合じゃないぞ。さっさと怪人を処分しておかないと。」

「いやいや、無理でしょ。このままじゃ死にますよ!」

「まさか、この程度も倒せないのか?儂の若い頃なんてしがみついてでも倒してたぞ。」

ズバッ!

白井さんが投げた大きめの石が巨大な怪人に直撃した。

「一撃!?」

ウチも杏も。もしかしたら、その場に居合わせた人たちも驚いているであろう。

あまりにも一瞬すぎて信じられなかった。

 



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欲しいキャラほど出ないもの

「一撃!?」

その光景に目を疑った。

(本当に倒しやがった…。)

目の前にいる師がとんでもない化け物であることを初めて知った。

正直目が悪いのは昔からであったが、ここまで人を見る目がないとは思ってもいなかった。

動揺しながらも杏の方を素早く向いた。

やはり驚いてた。

「思ってた通りです。」

突然怪人の死体の前に鎌を持った男が現れた。

「どうもー。私はジャック。王直属の殺し屋です。あなた方に快楽を与えに来ました。」

白井はジャックの能力を見ようとした。

しかし、文字化けして見ることが出来なかった。

「!?」

白井はウチらを助ける為にジャックを蹴飛ばした。

「なんてこった。ぱんだこった。抜け出せん。」

白井の足はジャックのマントの中へ吸い込まれるように入っていき、アスファルトから足が生えた。

「本当ならば影の中に閉じ込めて起きたかったのですが、あなたには弟子の死ぬところを見る仕事があるので。」

ウチはその瞬間危険を悟った。

(ヤバイ…。今のウチじゃ、どう転んでも勝てない。)

「安心してください。直ぐには殺しませんので。」

そう言うと、ジャックの周りから紫色の煙がたち始めた。

その規模は視界に入る人々が見えなくほどである。

(やべっ。意識が…。)

そこで意識が途絶えた。

 

神原はふと目覚めた。

そこは今までいた場所とはまるで違った。

何故ならそこは草むらの中だったからである。

170㎝くらいだと思う。自分をスッポリと包み込むような草むらであった。

しかし、遠くの方を見ると黄色の花びらを付けた花あった。

量からしてお花畑なんだろう。

だが、この世のモノとは思えぬほど神々しく、キラキラと輝いていた。そしてウチは花の美しさに吸い込まれる。

ジジッ。

頭の中に数刻前の、気絶する前の風景が映像として流れた。

立ち込める紫色の煙。バタバタと倒れていく人々。

(あれっ、今まで何してたっけ?)

少しの間考え込んだ。

う~ん。

少しずつ思い出していく。

足を固定された白井さん。

そして…。

数刻後に草むらの間で立っていたウチは現在へ戻ってきた。

相変わらず趣味の悪い色だった。

違和感があると言えば、自分にそっくりな人が倒れていたことである。

(やばい!)

自分が今、死にかけいることに気づいた。

(11年前のデジャブか!?)

ふと自我を取り戻すとゆっくりではあったが、ジャックへと攻撃を仕掛けており、弱々しく殺意のこもっていた。

だがウチがいるのは数メートル上の空気であり、地上で戦っているのも自分であった。

 

っ!

そこで一度意識が途切れた。

気づいたら目の前にジャックがおり、ジャックもまた自分の前にいた。

「ウフフフフフッ!」

ジャックはとても楽しそうにウチを苦しめていた。

最初に皆を巻き込んだ催眠ガス、寝込みを襲いに来たかのような鎌の斬撃、そして今始まった大量の武器の雨。

避けているが、長時間の戦闘で体力の限界がきていた。

今にでも停止しそうな肺。

だが止まったらそのまま命が停止するほどの斬撃。

呼吸を乱せばその反動でしばらく動かないであろう肺。

全てがギリギリだった。

無数の斬撃が勢いを緩まってきた。

「これで貴方は終わりです。」

そう呟き、神原には温度のない斬撃が四肢を切り落としていった。

四肢が無くなるのに気づくのは早くなかった。

滑らかな切断面。流れ行く血。それらはピカドンが落ちる前の青空のように静かだった。

手足の感覚が消えた神原はゆっくりと自分の四肢を確認した。

それを認識した時、初めて痛みが襲ってきた。

「!!!!!」

今まで感じたことのない痛みだった。

4方向からの痛みが体を押さえつけてきた。

痛みの重力に教われて声を出す処か意識さえも飛びそうになった。

いや、正確には何度も意識を飛ばされ意識が戻る繰り返しだった。

少しずつ痛みの重力にも感じなくなってきた頃、ジャックの顔がかすみながらも見えるようになっていた。

「いいか…、ウチはこれからも死ぬ。しかし、ウチが死ぬのはお前が強いからじゃない…。ウチが弱かっただけだ…。」

そう言って、意識が途絶えた。

神原が意識を失う少し前。

 

足を封じられ動けなくなった白井は懐から球体を出した。

数十メートル先のジャックに致命傷を与えることができなさそうなものだった。

(ほいっ。)

数十メートル上まで飛ばした球体は昼間の中で眩しく光るほどの閃光を数秒間放ち静かに消えていった。

 

またその同じく時にして、ある男が動いていた。

白い服の後ろにはその小さな体に似合わないくらい大きな刀を背負っていた。

「まったく、役立たずども目が。」




〈キャラ紹介〉
・ジャック
能力:???
得意なこと:感情のコントロール


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平和っていいよねぇって思うけど警察官からすると犯罪人がいないと警察官やっていけないから実は警察官と犯罪人は共存関係だったりするの巻

「てめえら、家に帰ってろ。」

白い服に大きな刀を背負った男。白刀 悟。

生きた死神と呼ばれるとあるヒーローの弟子である。

 

悟は背中の刀を握って助走をつけた。

「カツ丼をおごってやる。」

そう言ってジャックに切りかかった。

だがジャックは切りかかる悟との間に無数の斬撃をはしらせた。

それに対して悟は気にせず飛び込んでいった。

斬撃は普通の人間ならば間違いなく細切れになるほどの威力だ。もしかしたら、普通の熊も一瞬も耐えられないであろう威力だ。

そんな斬撃を一本の刀のみで弾き返していく。

「これで終わりだ。」

少し息を吸い、数刻後にはジャックの体がバラバラに分かれていた。

この時には既に時遅し。

ジャックによって切り落とされた四肢からは大量の血が流れ落ちていた。

「白刀、今すぐ針を探してきてくれ。あと、救急車も。」

ジャックが倒されたことによって能力が解かれた足はすぐさま四肢のない神原の元へと向かった。

そして自分の服の糸をほどく。

「まさかその糸でそいつの体を繋ぐ気か?」

「若いもんはそこで見てな。」

そこへ杏が糸を持ってきた。

「持ってきたわよ糸。」

「ありがとよ。」

そう返事をして黙々と切断された神原の四肢と体を繋ぎ合わせていく。

「何て応用力だ…。

・嘘でしょ!?」

白刀と杏は見たことも聞いたこともない光景に鳥肌がたった。

そして15分くらい経ち、四肢と体が1つになる頃。

ピーポーピーポー…。

近くから救急車の音が聞こえてきた。

「じゃあ、俺はここで退席させてもらう。」

そのまま歩いて消えていった。

あれから数日後。

ウチは目を覚ました。

目に入る白い朝日に家ではないことはすぐに気づいた。

(手足に感覚がない…。)

部屋の中を確認してみた。

しかし誰もいなかった。

それから部屋全体を隅々まで確認してみた。

(え?…)

数分後にガラガラっと戸を開ける音がした。

(あー、看護師かぁ)

その看護師は隣の個室に入っていった。

(何でだぁー!何でウチの所じゃないの?あ、そっか。目覚めても声も音も出してないから気づかれてないのか。)

隣の部屋の看護師の足跡が自分の方に向く。

次第に自分の所へ近づいてくるのが分かった。

人が来るのにワクワクする。

向こう側に現れた影が手をかけ、遮るカーテンを横に引いた。

自分と看護師を妨げていたカーテンが無くなり目が合った。

看護師は少し時間が経ってから「ぎゃー!」っと叫びパニックを起こした。

「死人が生き返ったー!」

平静さを失った看護師の肩に老人の手がぽんっと軽く置かれた。

「冷静になれ。生きてるじゃろ。」

「あ、そうだった。」

「ちょっとその前に状況を教えて下っ、くれませんか。」

神原は2人の会話に割って質問した。

「そうじゃったな。お主が気絶してから白刀がジャック撃退後、応急措置で四肢を繋いだ。」

はぁ…。

言ってることが今一分からなかったが理解したかのような反応をした。

「失礼します。」

戸の音と同じタイミングだった。

炎魔、杏、そして白刀と同じく見覚えのないお侍さんが1人部屋に入ってきた。

「早速、闇の王討伐作戦会議を始める。今から3か月後、闇の王を討伐する。」

「あのー。」

「何じゃ?」

「ウチ怪我人だから行けませーん。」

(何か危なそうやし。それに12月はゲームの月だと決まっている。流石に苦痛に悶えながらゲームをしたくない。)

「大丈夫じゃ。お主の能力なら完治し修行も出来るぞ。」

(ふぁ!?)

少し寂しそうに「あ…はい。」だけ答えた。

「この3ヶ月で闇の王に対抗出来るだけの戦力になって貰う。もちろん、私たちはあの闇の壁への対抗策を見つける。」

「了解(一同)」

どうしても行かんといかんのかなぁ。

てか、ウチが行かんくてもどうにかなるやろ。

そう内心ぼやいていた。

そーいえばもうすぐ文化祭と期末テストかぁ。



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休日って休日なのに同僚から無理矢理仕事に引っ張り出されることって無いことは無いよね

と言うことで9月の終盤、何とかギリギリ学校に行けるくらい体が治っていた。

と言っても体が完治に近づいてきた訳ではなくただ学校に行かなければ成らないという使命感だけで学校に来ていただけだが。

そのため、四肢の縫い目はまだ痛むし、満足に動くことすら出来ない。たまに血もにじむ

しかし、誤魔化し続けた。だって嫌じゃん。休むと色々提出しんといかんし、授業うのノートも纏めて書かんといかんし。

と言うことで早速学校に着いた。

もちろん、車だ。こんな状態で毎日自転車こげば痛みにうなされながら学校に行く羽目になる。

そこら辺は常識的であると思う。

まぁ、そんなこんなで学校に着くとチラホラと空席があった。

(何でこんなギリギリになってから着くようにしてるんかねぇ。自分なら不安で仕方がない。)

そう心の中で呟きながら教室に入り自分の席に向かった。

そこには炎魔がいた。

おはよう。そう一言言った。

おはよう。そう炎魔は返した。

そしていつも通り炎魔を含む3人で軽く話をするとあっという間に朝の回が始まった。

「一時間目は10月にある文化祭の話し合いをする。」

先生はそう言った。

(文化祭かぁ。何だか楽しそうやなぁ。去年までのウチなら全体残念やったわ。)

神原は出店や演劇、その他多くの期待を膨らませていた。

なんせ初めての文化祭であるからだ。

そう色々考えている内に10分がすぎ休み時間となった。

ほんとだったら友達とあれやこれやと文化祭の会話をする所だが元々人見知りだったウチは友達と大した会話をせずそのまま一時間目へと突入した。

 

 

なーんて感じで突入した一時間目。

最初はリーダー決めるのに一時間を食い、四時間目の英語すらも潰れて文化祭の内容が決まった。

あのあと文化祭で悲劇いや黒歴史を刻むとは誰も予想していなかった。

いや内心そう思っていた。

少なくとも今の自分にはそこまでの確証はなかった。

この先、5、6時間目は何事もなく過ぎていった。

「それにしても何であんな弱っちぃやつが選考されてんだ?」

そこは山の奥深くに建つ一軒の家の中である。

「そんなにも知りたいことか?白刀。」

日本刀のようなものを腰に差している男が言った。

「そりゃそうさ。あんな弱いやつが人類を守れるとは到底思わん。あんたもこの間神原の見舞に行ってそう思わなかったか?」

「そうだな。あまりにも貧弱すぎたな。だが白井も何か考えがあっての事だろ。あんま気にすんな。」

「…。」

白刀は何も言い返せなかった。

すぅー。深呼吸をし少し気持ちを落ち着けてから白刀は聞いた。

「マスター、あんたの本名は何だ?」

「俺の事はウェポンマスターと呼べといつも言ってるだろ。」

「今初めてです。」

「あはっ。」

マスターと呼ばれているその男は軽くふざけていたかのように笑った。

今に戻る。

「神原大変よ。すぐそこで怪人が暴れてるの。救援に来てちょうだい。」

自転車を引きながら学校に出る途中、偶然杏に会った。

いや、明らかに待ち伏せされていた。

「今日は日常回だ。誰が何と言おうとも戦わん。」

「いいから早く来てよ。もう既に一人犠牲者が出てるの。」

「死んだのか!?」

ウチは少しだけ興味津々になって聞いた。

「まだ死んでないわよ。そうなる前に来てって言ってるの。」

「嫌だ。」

きっぱりと断った。

「何でよ。」

「ウチは別にそいつがどうなろうが知ったこっちゃない。顔も知らんやつの為にわざわざ行こうとは思わん。ウチは趣味でヒーローやってるだけだからな。」

「後で何か奢るから。」

「分かった。ならバトスキャ10回分で。」

「バトスキャが何か知らないけど分かったわ。」

杏はウチの手を強引に怪人のいるところへ引っ張っていこうとした。

「ちょっと待て。」

突然神原は杏を止めた。



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番外編なのに前の話続いちゃってるよ…。

杏は突然話かけられて反射的に足を止めた。

「どうしたの?」

少し焦りながら聞き返した。

「この作品、UAが1000越えたからみんなにありがとう伝えたくて。ありがとー!」

「ねぇ、それ今言うこと?」

この状況からの突拍子のない感謝の言葉に苛立ちすら覚えていた。

「ところでUAって何?あと、評価に1付いてたうれしー!」

「いや、それ最低評価だから。あと、私もUA知らないわ。それはいいから早く向かうわよ。」

「おう。でもよ、1貰えるなんて嬉しいじゃねぇか。だって、読んでちゃんと指摘してくれてるんだぜ。」

「ポジティブすぎるわ!」

そうツッコミながらも着々と怪人のいる場所へと近づいてゆく。

着い…たわ…よ…。

杏は息切れを起こしながらそう答えた。

おぇぇ。

その隣に居た男はもっと苦しそうにしていた。

「もう…帰って…いい…?」

「ダメに決まっているでしょ。早く行くわよ。」

「先に行ってて。」

「置いていくわけないでしょ!」

「分かった…。行く…から…。」

休んでいるときだった。

「そこで休んでいていいぞ。永遠に。」

そこには知らない男がいた。

木棒を片手に持っているが さほど長くはない。

見た目は黒いスーツを着ている以外の特徴はないはず…。

だが、明らかに何か違うように見えた。

まるで妖術でも極めた仙人のように。

「では狩らせて貰うぞ。ヒーローよ。」

男はそう呟いて一瞬で神原に間合を詰めた。

間合を詰めた勢いで回し蹴りをした。

それだけのはず…だった。

神原は男の足に触れた瞬間、体が軽くなったかのように浮き上がりそのまま数百メートル吹き飛ばされた。

何!?

ウチは驚いた。

相手の強さにではない。

相手に触れた瞬間体の力が抜けたからである。

「お前じゃ俺には勝てないさ。」

そう言って男は神原に強烈な蹴りで追撃した。

神原は動揺していたが触れている一瞬だったため、深く考えることはなかった。

「それにしても体術か!?簡単に体が投げ飛ばされる…。」

「それがお前の…思考の限界だ。」

「なら、一撃殴ってやる!」

そう言って神原は地面を強く、強く蹴って走った。

そして男の前まで来たとき、もう一度地面を蹴り名一杯殴り付けた。

「グフッ!」

ニヤッ!

「やっと拳が届いた!」

な…なんだと!?何故ダメージが!

男はひどく動揺した。

「何故ダメージが…今何をした!」

「ただ地面を強く蹴ることを意識して名一杯力を入れることに意識しただけさ。」

「マジかよ!?尚更その力を消さなければならない。」

ドーン!

男は突然吹き飛ばせた。

そして気を失っていた。

よし、チャンスは今しかない!

今止めを指そうとしたとき、

「神原!その男に触れるな!」

突然白井さんが来たことに驚いた。

「あと、数刻遅れていたら死んでいたぞ!」

「どういうこと?」

ウチは尋ねた。

「今は関係ないことだ。忘れろ。」

そんなキツく言わなくても良いやろ。

っと内心思っていた。

「ところでその男と何か喋ったか?」

「いんや、特に。」

「そうか。だったらいいんだが。」

そう言って男に手錠をした。

「なんだったのさっきのは。」

杏はそう言った。

「さっきのって?」

「ハッキリ分からないけど気迫が有ったから驚いたの!」

「ほんと?えへへー。嬉しいー。」

神原は半分棒読みで喜んでみた。

「少しだけよ、少しだ・け!」

その後、何事もなかったのように静かに1日が過ぎていった。



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大人っていつも大事なことを教えてくれないけどこれってウチだけ?

 で、昨日の敵は何者だったんだ?

 神原はいあつ的な態度で問い詰めていた。

 「あれだけ隠してるんだ。あの男にそれだけの何かがあるんだろ?」 

 何もない。

 白いお鬚をたくわえたおじいさんがそう答えた。

 「何故そんなにも知りたいんじゃ?」

 おじいさんは問うように質問した。

 「ただ、何故死にかけたのか知りたかっただけですが。」

 ウチはそう答えた。

 「分かった。教える。ただし、やつの能力に関することだけじゃ。」

 ありがとうございます。白井さん。

 すぅー。

 白井は軽く息を吸い込んだ。

 そして吐き出す息とともに声が漏れていく。

 

 「やつの能力は特別でのぉ。能力の先に到達している。

  これまでは能力者が使用する能力を封じてくるだけの能力だったんじゃ。

  だからやつの能力は能力者がいなけば一般人と変わらない。

  儂と同じなのじゃ。

  だがな、やつは考えるようになったんじゃ。

  自分の能力を知るために。

  それからやつの能力は成長し始めたのじゃ。

  その結果、とてつもないアンチアビリティを習得してしまった。

  これ以上はまだ喋れぬ。

  神原が更に強くなった時、教えてやる。」

 

  ウチは納得いかなかった。

  あいつのどこが危険なのか分からなかった。

  これ以上何も聞き出せないと判断したウチは

 「おー」と、一言返事だけして白井と別れた。

  

  その帰り…

 

  何故、あそまで隠すんや?

  能力が強くなるだけやろ?

  うーん。

  

  神原ー!

  知ってる声が呼びかけてきた。

 「今から帰り?少しお話しながら帰りましょうよ。」

  ウチは全然乗り気ではなかった。

  とにかく早く帰りたい。

  時間通りに家に帰ってご飯食べてゲームして寝たい。

  頭の中はそれでいっぱいだった。

 「今から帰るから…」

 「実は変な夢を見てね。神原と白井さんと…あと数人の人が闇の中にいるの。光さえ    飲み込むくらい深い闇の中に。その大きな闇と戦うの。だから、とっても不安なの。」

  そうか、じゃあ帰るわ。

  ウチは早歩きで離れていく。

 「ちょっと待ちなさいよ!」

  それでも足を緩めない。

  ちょっとー!

  杏は無視して通り過ぎようとする神原にドロップキックをきめた。

  ぐふっ!

  不意に食らった神原は意識が飛びかけたが気合いで耐えた。

 「何してんじゃー我はー!」

  そう喉から声を振り絞った。

 「なんで女の子をほっといて帰ろうとしてるのよ。」

 「だって5時になるから。」

 「だからってそんなことする?普通。」

  ウチはこの言葉で少し機嫌が悪くなった。 

  というよりも少しだけプッツンプリンしてしまった。

  だがこんなことで怒ってはいけない。

  と言い聞かせて感情を押し殺した。

  で、何で夢見ただけそんな大げさなん?

  ウチは軽く尋ねた。

 「べ…別に。」

  口調はいつもと一緒だった。

  しかし、何となーく杏が不安そうな感じにも見えた。

 「バイバイ」

  そうさよならの挨拶をした。

 「ちょっと待って」

  杏はウチの裾を掴んでぼそっと呟いた。

  一つだけ約束。何かあったらすぐに知らせること。

 「分かった」一言だけ返してそのまま解散した。

  

  翌日、朝起きてパン食べてスマホの電源付けて出かけると着信音が鳴り響いた。

  水の滴る音である。

  ウチのお気に入りの音である。

  まるで血が滴っている感じだったからだ。

  いつもは着信をスルー自分であったが、何となく出る気になったので何となく出ることにした。

  電話の主はウチがもしもしと言う前に喋りだした。

 「神原、週末暇か?おー、それは良かった。じゃあ土曜の昼、五六川の下に集合で」

  白井は1人会話をされたのち、そのままプチっと切られてしまった。

  まったくとんでもない師匠だ。

  ウチは朝から不機嫌になって学校に行くはめになった。

 



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授業はいつもきついもの

 ウチの名前は神原悠。

 ただのモブだ。

そんなウチだが今本物の殺し屋に追われている。

 「誰でもいいからヒーロー来てくれー!」

 あっ、ヒーローウチやんけ(笑)ってそんな場合じゃねー!

 自分はかなりピンチだと自覚していた。

 そしてそんな現実から逃げるように走りながら笑っていた。

 「あははははっ、誰でもいいから助けてー!」

 周りには田んぼがある。

 しかしそこは完全に田舎という訳でもなく、パン屋、コンビニ、住宅が密集する至極普通な場所。

 そんな街の歩道を走っていた。

 ハァハァ、ハァハァ。

 数分も走っていれば疲れて当然だろう。

 このままでは息が持たない。

 そう考えたウチは決着をつけることにした。

 ウチは物理法則を無視する勢いで思い切り踏ん張った。

 スーッ。

 草履は数ミリほどすり減る中、腰を低くし無理やり体勢を取った。

 目の前には追いかけてくる殺し屋の姿がある。

 しかし、殺し屋はチャンスと言わんばかりに加速しそのまま神原を切りつけに行った。

 ウチは殺し屋が切りつけると同時に足で踏み込み、相手の溝内に一発撃ちこんだ。

 殺し屋に対して僅かにダメージが入ったように見えた。

 しかし、視界には誰もいなかったのだ。

 数刻ほどであった。

 腕が冷たく感じた。

 嫌な予感しかなかったウチは腕を確認した。

 そこには腱が切れ、ブラブラしてる腕があった。

 腕に痛覚が戻ったのはそれを視認してからだった。

 真っ先に考えたのは止血方法だった。

 このままでは失血多量で死ぬかもしれない。応急処置をすれば、傷口からばい菌が入り悪化するかもしれない。

 しかし、今は戦いの真っ最中だ。

 考える時間はなかったのだ。

 その間に追撃をしてきたのである。

 その刃はもう片方の腕の肉を削り、足の肉を削り、どんどん不利になっていく。

 無傷は無理だったか。

 そう呟くとウチは相手を睨んだ。

 しかし、今は体勢を直す時間はなかった。

 もちろん、止血する時間も。

 ここでウチは腹をくくった。

 「いざという時ほど、誰も助けてくれない。だから自分で何とかしなくちゃいけないんだ。」

 「にぃっ」と笑った。

 自分を鼓舞するかのように。

 そして着ている服を全て脱いだ。  

 相手に見せるように。

 「さぁ、殺し合おうじゃねぇか。」

 「お前ごときじゃ殺し合いなぞできないわ。」

 そう言って、心臓に向けて突進してきた。 

 喝!

 ウチはそう言いながら突進した。

 ブチッ!

 ウチの腹からは布を引き裂いたかのような音が響いた。

 それは皮膚に刃物が刺さった音でもある。

 その音の方に目を向けた。

 その瞬間、腕に引き続き腹が割かれたことを悟った。

 自分の拳が当たったかは分からない。

 しかし、自分の腹に刃が刺さったことは明確である。

 それを認識したとたんに視界が白くなった。

 

 

 きろ…起きろ…

 その知っている声で目が冴えた。

 神原、さっさと起きるのじゃ。

 やっと起きたか。

 居眠りはするなよ。

 では早速本題だ。

 今日は特訓する前に知識をつけてもらうぞ。

 知識はな…

  

 あれ?さっきまで殺し屋に襲われてなかったけ?

 今授業?を受けているてことは今までのことは夢だったのか?

 どこまでが?

 家出たところまでは起きてた。

 あの戦闘も痛みも本物だった…はず。

 そうだ!

 手を見てみれば全てわかる。

 そして腕を確認してみた。

 あ、普通に重症だ。

 こういうのって夢オチだったり、予知夢的なものだったりするんじゃないの?

 そもそも何で重症なのに治療終わって授業を受けてるの?

 てかさっき授業終わったら特訓するって言ってなかった?

 この怪我でまた瀕死レベルの負荷を体にかけるの?

 もう意味分かんねぇよ。

 頭の中、ザラキだよ。

 バトルロードのとどめの一撃のザラキ並に頭の中にいろいろ流れてるよ。

 もう自分でも何言ってるか分らんくなってきたわ!

 そこで白井さんに聞くことにした。

 「白井さーん、ウチ今怪我してると思うんですけども何で特訓してるんですか?」

  

 「何を言っておるんじゃ。そんなもの怪我の内にもならないじゃろ?」

 彼の目には微かだが殺気が宿っている気がした。

 常人では察知できないほどのものだった。

 「何故ですが?」

 「何故とは何じゃ?戦場に行ったら怪我だからという理由で休めるのか?怪我してたら相手が生かしてくれるの         か?違うじゃろ?」

 う…うん。

 ウチは気迫に押されながら答えた。 

 スゥッッー。ハァー。

 白井さんは呼吸を整えてからもう一度話始めた。

 「いいか?ヒーローとは市民を守るのが役目だ。だからこそ、何があっても逃げたらいけないんだよ。儂等が諦めたら数千人の人が死ぬんじゃ。いいか?儂等ヒーローは死んでも戦い続けなきゃいけないんだ。」

 「白井さん、死んだら戦えないんじゃないですか?」

 「バカ野郎!人間はな、脳や心臓が潰されれば死ぬ。寿命を迎えたら死ぬ。病気になったら死ぬ。でもな、気合があれば人間、立っていられんだよ。だから心だけは負けちゃいけない。」

 その気迫の前にウチは何も言い返せなかった。

 

 では、「授業を始めるぞ」

 

 こうして大けがの中、生死をさまよう授業が始まることになった。

 



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