味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ (ホワイトアクア)
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グリフィンでも休暇は必要です(ただし、普通で終われるとは言ってない)
代理人「ようこそ喫茶鉄血へ」グレイ「マジでか」


圧倒的感謝……!初のコラボです!
という訳でコラボ先である「いろいろ」様が書いていらっしゃる小説「喫茶鉄血」とのコラボ話でございます。

喫茶鉄血とのコラボは自分でもやりたいと思いましたので、まだ話数少ないけど大丈夫かな……?とダメ元で頼んだ結果、許可貰えました。本当にありがとうございます!

これまで喫茶鉄血とコラボした方々のパターンとはちょっと違って、運転中に迷い込んだみたいな感じになってます。というか、運転中に死んだらどうする(白目)

入る前にちょっとした導入部分がありますので、会話は後半部分となります。また、ゼルダの知識(主にブレスオブザワイルド)を知ってたらより楽しめます。


 毎回前線で戦っている彼等だが、必ずしも休みが無いという訳ではない。寧ろ、そろそろ休めと言われたのが始まりでもあった。

 先日、何時も通りに任務などを行っていた最中、ヘリアンから日頃どういう生活をしているのかを聞かされては正直に話した結果、呆れながらも青ざめた顔を浮かべていた。

 

 朝の6時から9時まで指揮官達の高速書類処理をした後、午後1時までに前線で戦闘。午後2時からグリフィンの裏手にある農場で大量に米などの食糧をTNTブロックで爆破生産させ、少しずつ民衆に分け与えたり、建築したりしては午後6時までぶっ通しでやり続ける。午後6時から9時まで再び任務。10時に書類を書き、11時までに終わらせる。11時に就寝。

 

 睡眠時間が確保している分、至って普通だなとは思われるが肝心の休憩とかが無い。朝食とかどうしてるんだと言われた時にはポーチにこれまで作った料理をぶち込んで入ってるので大丈夫ですとグレイが言ったら「貴様の料理はある意味流し込みみたいなものだろ!?料理そのものをポーチに入れておきながら良く形保ったままで美味しさとかが持続出来るな!?」と色々と突っ込まれた。ちなみに、ヘリアンは一度グレイの料理を食べて貰った事があり、大満足の高評価を得たとか。

 休暇は使わないのかと言われた際にはてっきりグリフィン=自宅みたいな感覚だから休暇取っても変わらないんじゃね?という感覚だったらしく、流石のヘリアンも頭を抱えてヤバいと判断したらしい。コイツ等、働き過ぎだと。また、休憩とかは仕事が終わったちょっとした合間でゲームやスマホを弄るだけでも十分取れると主張したのに対して、ヘリアンは「上官命令だ!!今すぐ明日休暇を取れ!!明日は何があろうとも身体を休め!!拒否権は無い!!」と悪鬼迫る如く怒っていて、流石のグレイ達も「おおう……」と驚いていたとか。ヘリアンも彼女なりに心配していたのだろう。彼等には色々と恩があると思っているのだから。

 

 

 

 

 

「準備OK……と」

 

 そういう訳で、一日だけだが休暇を貰ったグレイ。ヘリアンが心配そうにもっと取っても良かったんだぞ?と言われたが、一日でも十分休めるし、長々とサボる訳には行かなかった。一応、これまでの経緯を何だかんだで一方的に婚姻を迫っては結ばれるというオチという原因を作った404小隊にこの事を話したらドン引きしていた。そりゃ働き過ぎだと。曰く―――

 

「普通、農作業や建築までやる人なんて居ないわよ……」

「指揮官達……本当に寝てるの……?」

「家族の為に動いてくれるのは嬉しいけど……何時か倒れそうで怖いよ……」

「こういうのはワーカーホリックって言うんだよ、しきか~ん……というか、ちゃんと休んで。ね?」

「うん、ヘリアンさんの言う通りだな!皆がこう言ってるんだから、指揮官休みなよ!どうせ一日サボった所で大して変わらないからヘーキヘーキ!」

 

 上からHK416、G11、UMP9、UMP45、UMP40の反応でコレである。グレイだけじゃなく、鷹山達率いる他の指揮官達にも怪しまれた可能性が高くなった。休暇的な意味で。

 そろそろ出発の準備に取り掛かる。タブレットをタッチして出現したのはマスターバイク零式と呼ばれるもの。古代シーカー族が作り出した、当時の最新技術の結晶とも言える最高傑作の神獣。そんな物を何故持っているかというと、ぶっちゃけて言えば旅先であの世界に行った事があるのだ。故に服装もあの英傑達が使っていた青い服にグリフィンのマークが入ってるオリジナル仕様。カカリコ村の人達がわざわざ作ってくれたので大変感謝してるし、敵のメーターが見えるのも相変わらず。あまり長袖にしたくなかったのでTシャツとなった。404小隊の皆には羨ましいだの、何で404の刺繍を入れなかったのかとか言われたが、全部作るとしても申し訳無い上に大変になるからというのと、刺繍を入れたら404としてのアイデンティティーを無くしそうな気がしたので止めとけと説明したら、何となく想像出来たのか理解してくれたらしい。

 

 あの世界でも色々と事情はあったものの、それでもこちらの事情を理解してくれたのはハテノ古代研究所にいる人達。特に所長はわざわざ異世界から来た自分達に興味津々で、情報交換もやった程。ガーディアンに関してはアイザックが修理して直したのを大層驚いていたし、これを改造してベクターキャノンみたいな感じの魔改造にした結果、神獣レベルの威力を発揮してると更に興奮してたとか。見せてくれたお礼にガーディアンは持ち帰って良いと言われ、完全に○円食堂みたいなノリになっていた。グリフィン周辺に配備されているガーディアンもそれだ。

 また、シーカーストーンと呼ばれるものがこちらの世界で言うスマホやタブレットに大変似てるとの事もあったので、時間を掛けて待った結果、「シーカーストーンSPEX」と名付けられた。スペシャルなのかエクストラなのか細かい点は突っ込まないとして、これには従来のシーカーストーンよりも更に強力となった物にバージョンアップしたらしい。具体的にはハイラルと自分達の居る世界への移動やビタロックでストップ出来るのが2つに増えたり、今で言うメールとか電話も出来る様になり、インターネットにも繋がる。ここまで来るとシーカー族凄いなと感じざるを得なかった。更には気に入った場所を移動出来る様に簡単に設置できるワープポイントも幾つかプレゼントとして貰った。たまにあっちの世界で必要な物を回収する事もあるので大いに助かった。ちなみにマスターバイクも設計図に基づいて一から作ったとか。

 

「んじゃ、とっとと行こう」

 

 まだまだ語りたい内容や思い出の数々があるが、折角の休暇を思い出に浸るだけの時間に費やす訳にも行かない。何処にでもある草やリンゴ等の果実を燃料ボックスに入れて準備完了。メーターも満タンになったのを確認して、いざグリフィンを出発する。こうしてバイクで旅……とまでは行かないが、気分転換には最高である。基本的に使うのは鉄血兵を轢いたりとか、その辺は厄災呼ばわりされてもおかしく無かったが。

 

「風が気持ち良いな。こうして一人旅バイクするのって割と初めてか?」

 

 以前までは集団で徒歩か道中で古びた車を改造して走ったりしたので、それなりに楽しかった覚えはあるのだが、バイクでこうして走るのは初めて。こんな気分で走るのも爽快だなとグレイは改めて旅を好きになって良かったと実感する。

 

「天気良し……地図も全部マッピング済み。マーカーもあるから基本迷子にならないだろう」 

 

 安全運転で地図を見ながらバイクを走る。グリフィン周辺の地図はシーカータワーが無い為、飛行型ガーディアンで地図を書いて貰っていた。空中から細かく見たものなので、どの辺りにいるのか正確に分かる様に詳しく書かれ、一般的な地図と同様に仕上がっていた。ついでに旅先の足跡も搭載済み。

 一応、新しい場所があった際に記録して貰う様に飛行型ガーディアンを持って行ってる。何時しかそこに訪れるかもしれない可能性も無いからだ。気に入った場所ならば何度も行きたくなるのは人間としての性とも言えるが。

 

「今日は一日良い旅になりそうだな~」

 

 ご機嫌良くハンドルを動かしながら進むグレイ。こうして走っていたら何か1つは見つけるだろう。風の赴くままにバイクは進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言ってた数分前の自分を殴りたい……」

 

 あれからバイクを動かす事数分、道中で霧が出て来ては視界は段々と悪くなり、果てにはちょっとだけだが霧雨程度の雨が降っていた。確かに今日は一日晴れだった予報なのに、いきなりの雨だ。バグったんじゃないのかとタブレットを見た途端、グレイはいきなりバイクを止めては驚いた表情を見せた。

 

「え……?ちょっと待てよ……周辺地図不明だって!?」

 

 いきなり地図が表示されず、この地域のマップがありませんと表示されたのだ。これはどう考えてもおかしい。電波とかも普通に繋がっているのに、何故か地図が無い。実際には確かにグリフィン周辺の地図とかは埋め尽くした筈なのだが、記入漏れがあったとは思えない。何が原因なのか思い返すと、1つだけ心当たりが浮かぶ。

 

「あの霧が出た影響か……?そうじゃなければ辻褄合わないしな……」

 

 霧がまだ薄くなっていた時は地図はまだ機能していたが、濃くなった辺りで表示されなくなった。それに、電波も電波だ。電波が通っている以上、受信とかが出来ない分を除けば、普通元の地図を維持したままになる筈。それでもさっきまでの地図が消えて今ここに居る周辺の地図が無いと言われると、考えられる可能性は1つしか無い。

 

「もしかしなくても、違う世界に迷い込んだ……?」

 

 可能性としてはゼロじゃない。結構前に訪れたハイラルも本来ならばどっかの森を歩いていたら何故か迷いの森と繋がり、そこからハイラルへと繋がった。それを理由にデクの樹サマと呼ばれる大樹に説明したりとかして元の世界に帰れるまで大変な目に遭ったが、とにかくそのルートは自分達にしか知らない秘密のルートだ。それと同じく今回もそれと同じ類いなのかもしれない。ついでに霧が出ている部分も妙に迷いの森と同じ雰囲気を感じるが。

 

「それ以前にまずは何処かに雨宿りしなきゃだな……」

 

 ずっと雨が降っているので、濡れっぱなしは勘弁して欲しい所だ。当ても無い状況で手探りに近いが、とりあえず進まなければ始まらない。深い霧を突き進みながら周りを見ていたら、何か物陰が見えた。何だろうかと近付いて見ると、そこは1つの建物があった。ちょっと可愛らしい雰囲気があり、カップとかが見えてる辺り喫茶店なのだろう。というより、木造で作られている分、正に喫茶店って感じが見て取れる。何て名前なのかなとチラッと見たら、グレイはギョッとしてそのタイトルにガン見していた。何故ならば……。

 

「喫茶……鉄血……?」

 

 思考が止まり、アイスキースにでも体当たりを喰らった気分になった。タイトルからして喫茶店なのは分かる。だが、問題は後半の鉄血という文字。どう考えてもあの鉄血工造のアレしか思い浮かばないのだ。人類を殺す目的を持った彼女達がこうして堂々と喫茶店を開くなんて想像も出来ないだろう。その為の罠とかも一瞬は考えた。

 しかし、ここに立っているこの場所が仮にも人と人が触れ合える様な近い場所ならば。まだ視界が悪いものの、本当に「そういう願いが実現した世界」だと言うのならば、それは殺伐した世界よりもきっと素晴らしい世界に違いないだろう。

 

「……考えても仕方無いか。早く入ろう」

 

 念の為に木刀、ボウガン、盾と弓を背負ってフル装備。ここまで来ると不審者か強盗と勘違いされてもおかしく無いが、場所が場所だから警戒せざるを得なかった。勇気を振り絞り、喫茶店の中へと入って行く。カランカランと入口のベルが鳴り、その全貌をグレイは垣間見た。

 

「いらっしゃいま……せ……?」

 

 瞬間、グレイと喫茶店のマスターと思わしき人と店員達は互いに見ては固まった。まず、グレイからの視点から見てみよう。

 グレイが想像していた通り、中には鉄血人形達が働いていて、今まで出会ったリッパーやイェーガーとかも居る。そして、マスターと思わしき人物はメイド服が特徴とも言える鉄血人形「代理人」。名前はエージェントと呼ばれる彼女だ。そんな彼女達が本当にこうして働いている。

 対してエージェント達はどうだろうか。扉先から雨の音と共に何やらバイクの音が聞こえ、入って来たのは全身フル装備の青いTシャツを着た不審者。ただ、服にはグリフィンのマークが入っているので、不審者でない事は確かだ。背中に見える木刀やら弓やら盾やらがどうしても気になってしまうのだが、仮にも強盗とかならば入って直ぐに手を挙げろとかは言っておらず、少し濡れている辺り雨宿り目的で来たのだと即座に理解した。ついでにヘルメットとかをしてない辺り、その気は無いのだろうと段々と警戒が無くなる。

 

「どうぞ、空いてる席へ」

「は、はい……」

 

 しかし、矢張りというか互いに気になるのは変わらない。エージェントはさっきまでの驚いた表情が無かったかの様に仕事モードへと戻っていた。グレイはグレイできっと自分の事を見ても誰だコイツは!?みたいな感じで内心ではそう思ってるんじゃないかなー……と考えていた。

 

(あー……何か色々と失敗してるよ……だって、明らかに俺が不審者じゃん……鉄血の方も何だかすぐに襲うって感じじゃないのに……何やってんだ俺は……)

「コーヒーをどうぞ」

「あ……ああ、ありがとうございます……って、俺まだ注文とかはしてないんですが……」

「構いませんよ。ちょっとしたサービスです。 まずは一回飲んで落ち着かれては?見れば、貴方はここに来たのは初めてで、何やら鉄血とも深く関わっている様子。にも関わらず、貴方が何故戸惑っているのか……何となく想像ついた気がしたのです」

 

 そう語るエージェントの言葉に戸惑うグレイ。最初は何言ってんだ?と思ったが、今の件からまさか、とある予感が頭に浮かぶ。

 

「確認させて頂きますが、蝶事件やE.L.I.D.という言葉に関連はありますか?」

「その質問だと「イエス」と答えて貰おうかな。逆に貴女に聞きたい。貴女は……いえ、鉄血工造は我々人類の敵ですか?」

「それには「ノー」と答えさせて頂きます」

「成程……」

 

 確定した。どうやらここは正に理想的と言える場所なのだと。そして、エージェントもそれに対して答えた。

 

「結論から言わせて貰いますと、貴方は本来とは違う世界に流れ着いた(・・・・・・・・・・・・・・)と思われます」

「あー……やっぱり」

 

 普通ならば驚いたりしてもおかしくない内容なのに、グレイは随分と落ち着いた感じで反応していたので、これにはエージェントも反応に困っていた。

 

「まさか、最初からこうなる事を知っていたのですか?」

「いや、違う。それ以前におかしいと感付いたのはこの店に入る前から。運転中に深い霧に入ったかと思えば、網羅した筈の地図が消えては未開の土地扱いされて、果てには人目につきやすく分かりやすいこの喫茶店……最終的な決定打になったのはここに居る皆とマスターの対応と貴女がここにおける世界の現状を説明してくれたお陰。」

「少ない知識で良くそこまで辿り着けましたね」

「普通ならばこんな所で喫茶店を開こうとする発想はまず思い付かない。それに、不審者として間違われてもおかしくない俺を追い出さずに空いてる席へと案内してくれた。それが殺すべき相手である人類を。すぐに殺さなかった辺り、本当に人を殺さずに共存しているんだと実感してますよ」

 

 その答えにエージェントは納得してくれたのか、少しだけ笑みを見せる。そこまで酔狂な人物は早々他には居なさそうだと。

 

「お見事です、グリフィンの指揮官。ここに訪れたのはただの偶然か必然か……どちらにせよ、これまで早く現状を理解してくれたのは貴方が初めてですよ」

「そりゃ光栄だ………ん?俺が初めて……?その言い方だと他にもそういう人が居たという意味合いになるが?」

「ええ。私でも未だに分かっていませんが、ここの喫茶店も含めて大体の人達は迷い込んだか、死人であった筈の人が第2の人生を謳歌する様に生きていたりしていますよ」

「マジでか」

 

 どうやら結構凄い所に流れ着いたらしい。きっとこの店に通い続ければ、いずれはそういう人物や別の世界線に居る人物と交流する事もあるかもしれない。

 

「ちなみに、貴方はどうやってここに?」

「ああ、自己紹介もついでに言わせて貰うよ。俺はグリフィンでの指揮官の一人「グレイ・クニクスル」。よろしく」

「指揮官の一人……?貴方の世界では指揮官は一人ではないのですか?」

「まあ、少なくとも残り5人か、或いは俺達に触発されて指揮官を目指したいって人もいたりして」

「それはまた珍しいですね……後半の部分が気になりますが……」

「後々で話すよ。で、俺はあのバイクで来たんだが……」

 

 エージェントに見せたのは言うまでも無くマスターバイク零式。普通のバイクとは近い、燃料は生だろうが骨だろうが投げ入れれば燃料になる事や、まるで馬をモチーフにしたこのバイクの姿を初めて見た様子だった。

 

「これを運転中に迷われたと……?」

「ああ。それにパッと見れば分かる通り、霧が酷いだろ?ここまで視界が悪くなると何時の間にか迷ったなんて言われてもおかしくない」

「確かに……今日は珍しく強い霧が出ていますね。これは迂闊に外へ出歩けませんね」

 

 下手したらぶつかっていた可能性も咎められないが、運良く喫茶鉄血に着いたのが運のツキとも言えるか。念の為にアレも聞いておいた。

 

「これを作ったのが古代シーカー族って言われてるけど、エージェントは何か知ってるか?」

「いえ、それは初耳です。聞いた覚えも記録にもございません」

「やっぱりそうだもんな。少なくとももう1つの世界に関しては知らなくても当然か。あの一族がE.L.I.D.に関する薬が出来たとか言われても俺はもう驚かん」

「グレイ様、貴方は一体……」

「大丈夫、全部話すから。それも含めてお代わりも少し頂けるかな?」

「そういう事ですか……では、かしこまりました。お客様のご希望通りに」

 

 まだまだ離れるには惜しいかもしれない。グレイは席に戻り、代理人にこれまでの経緯を話す事にした。蝶事件が起きる前のドタバタな旅行話を。

 

 1時間では到底話し終わらないなと思いながらも、グレイは楽しそうに喋り続けたのであった。




一旦ここで区切ります。まだまだ展開が余ってますので、案が思い付く限り続きますので。とりあえず解説。

・喫茶鉄血
ご存知、何処かの世界線にある人間も戦術人形も、ましてや鉄血すらも争わない世界における憩いの場。コーラップスも無ければ蝶事件も無い滅茶苦茶平和な世界線。正に「喫茶に行こうよ、戦術人形の街」。
別の世界線である戦術人形や指揮官、死んだ筈の人物が生きていたりするのはどうやらお馴染みらしい。今回、グレイはトンネル潜り抜けたら、そこは雪山ではなく違う世界だったというノリです。まあ、濃い霧が出てる時点で迷いの森っぽい感じに。あの森が何処かに繋がっててもおかしく無い気がするが、それと同じ感覚。

・古代シーカー族
ブレスオブザワイルドより。1万年前にガーディアンや神獣といった強力な戦闘能力を有する自律機械兵器を無数に生産し、厄災ガノンを封じる為に高度な技術力を持った一族。基本、彼等は忍者的な存在で、諜報や潜入任務など幾つもの活動を行っている。

・マスターバイク零式/シーカーストーン
これもブレスオブザワイルドから。パッと見た感じだとバイクとスマホ。1万年前にそんな技術力を持った一族も結構ヤベーと思うが。

・ハテノ古代研究所/カカリコ村
ブレスオブザワイルドに登場した場所。何だかんだでストーリー上で必ず通る事になる。ただし、RTAは除く。

・ベクターキャノン
ANUBIS Z.O.Eに登場した男のロマン兵器。発射シーケンスからいきなりカッコ良い姿が見える。何のつもりだったのか、ガーディアンの発射口を一点に集めて凝縮し、それを直線上に一気に放つという発想を生んだ結果、神獣にも負けない小型の超強力兵器と化した。ちなみに提案者はアイザック。


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プルア「アタシ、参上!」グレイ/代理人「「どうしてこうなった……」」

引き続き喫茶鉄血コラボ話。
元々クロスオーバーやゼルダのタグを入れたのは最初の1話で既にビタロック使ってた事や、考えれば考える程ゼルダの世界観やキャラをぶち込みたくなってこうなりました。故に今回はプルアのキャラ崩壊が酷いです。プルアファンの皆さんマジで済みませんでした……!

ロリっ子同人誌作家とかハードル高い気がするが、それでセクハラネタとか使えれば本望。是非とも使って書きたいという人は受け付けておりますので、メッセージ送ってくれたら幸いです。


「それで、その時にね……」

「まあ、そうなんですか」

 

 あれからグレイはエージェントに全てを話していた。時刻は丁度昼を差している。どうやら本当に1時間では終わらない位に話していたみたいだった。

 蝶事件が始まる前での旅の話や自分達のちょっとした過去話、果てにはグリフィンに就職しても何だかんだで喧しさが変わらなかったりした事など……とにかく色々と話した。勿論、所々で話したハイラルの世界についてもだ。

 

「それにしても、中々面白い話が聞けました。特にグレイ様の世界線とは別にもう1つの世界に繋がっていたとは」

「方位磁針ですらタミフル回転しそうな樹海を歩いていたら何時の間にか中世ファンタジーちっくな世界に出たなんて誰が思うよ?現にこのシーカーストーンSPEXが物語ってるし」

 

 シーカーストーンによる実力を見せる為に、試しに近くにいたダイナーゲートを口笛で呼び、呼ばれたダイナーゲートにあそこからそこまでちょっと走って見てくれないかと頼まれては快く引き受けてくれたらしく。可愛らしく走りながらも、グレイが走ってるダイナーゲートに向けてビタロックで動きを止めた。ビタロックの性能は事前に説明しておいたらしく、ダイナーゲートが走ったままの姿で止まっていたのはエージェントも驚いていた。時間が切れるとダイナーゲートは何事も無かったかの様に動き始めてはゴールに到着。

 更にはペットボトルを3つ上に投げてはそれも纏めてビタロックで時間を止めて空中に数秒間浮かせるという芸当もやって見せた。只でさえ時間を止めるなんて有り得ない力を開発したシーカー族は本当に凄いとエージェントは思ったらしい。

 

「かと言って、かなり過激な悪戯に使用するのもどうかと思いますが……」

「向こうがケンカ吹っ掛けて来るなら、倍にして返すだけです。ついでにテロリストとか他人の迷惑考えない奴にもギルティです」

 

 それで厄災扱いされても仕方無いしな、とケラケラ笑うグレイ。ちょっと前、エージェントに見せたのはこっちの世界における鉄血達がまだ人類を敵視していた時の動画。寝ているテロリスト達に気付かない様に火薬要りの樽を何個か持って来てはリモコンバクダンで起爆させて連鎖爆発を使った寝起きドッキリ(ただし、寝ているテロリストは全員死ぬ)を仕掛けたり、パンツ一丁でムジュラの仮面を被りながら爆弾矢を放って鉄血達を追い回したり、更にはライネルなんかを連れては泣きながら逃げ惑う鉄血及びテロリストを遠くから見ては動画を撮影して、SNSに晒すとか等……中々やってる行為がゲス過ぎてどっちが悪役なのか分からなくなった。これにはエージェントもドン引き。

 

「貴方が厄災と言われてもおかしく無い理由が分かった気がします……」

「まあ、自覚はしてるんだけどね。でも、モタついてたらこっちが死ぬし」

「一度、過剰防衛って言葉を知った方がよろしいかと思いますが」

 

 絶対に彼等を敵に回してはいけない、とエージェントは悟った。あそこまで前線で堂々と暴れ回る指揮官というのはこれまで聞いた覚えが無く、ある意味彼等が初めてだった。だからこそ、妙な所で辻褄が合う。

 

「……蝶事件の裏側であんな事が起きたのも理由が着きますね」

「そっちだと蝶事件起きてないのに知ってるのか?」

「少なくとも、他の世界から来た皆様の大半では404小隊にUMP40の存在はありません。グレイ様は既にご存知かと思いますが、45か40のどちらかを殺す……そして、45が生き残っては鉄血への復讐を決意したのが殆どの世界ではそうかと。グレイ様ほど偶然遭遇しては二人を助けたという内容は異例の中でも一際異例です。加えて、404小隊の中に40も参加しているのは中々に見ない事例です」

 

 そうか……と小さく呟くグレイ。

 振り返ると確かに凄い偶然というか、奇跡と言っても同じ位の出来事だ。残酷な運命の強いられた二人の元に丁度旅の途中で出会いながらも、鉄血を倒し、咄嗟に考えた方法でセキュリティを欺きながら鉄血からの命令を受け付けない様に細工したり、奇跡的に生き残れた二人をちゃんと守る為にも奮闘したのは今でも覚えている。ただし、これを境にUMP姉妹だけじゃなく、HK416やG11の好感度が何故かカンストしては病んだのも凄い思い出だが。

 

「時折聞いた1フレームで壁をすり抜けたり、階段で幅跳びを連続でやっていたら飛ぶ様に速く去ったとか……本当に皆様は人間ですか?」

「少なくともバケモノだね。エージェントも大体は俺達が旅に出る経緯とかもう聞いたでしょ?ぶっちゃけ戦術人形だろうと人間は鍛えればそこそこ鉄血とも戦える辺りまで渡り合えると思うけど、俺等の場合は砲台すらたった10秒も満たない内にぶち壊す位にヤベーのよ。TAS指揮官こと鷹山なんて戦闘機に乗ってノーロックでターゲットにミサイル当てた位だし」

 

 戦術人形よりも遥かに強く、抑えようがない彼等はまさにバケモノレベルだろう。それもそれで悲しいが、ちゃんと彼等を見ている人物は意外にもいるのだから、そこまで心配は不要かもしれない。彼等は彼等できっと大丈夫だろうとエージェントは引き続き作業を続けた。

 

「私が余計な事を言う必要はどうやら無さそうですね。それにしても、雨が止む気配が全くありませんね」

「流石に泊まり込みは勘弁して欲しいなぁ。いざとなったら強引にワープポイント設置して帰るのもアリだけど……」

「ワープポイント?ああ、古代シーカー族の」

「理解早くて助かるよ。あー、でも繋がるかな……?ちょっくら所長に連絡してみよう」

 

 とある人物の連絡先をタッチして数回コール音が鳴り響く。数秒後には音声スピーカーから元気そうに喋る女の子の声が。

 

『チェッキー!グレイ君じゃなーい!元気にしてた?』

「ええ、お久しぶりですプルア所長……相変わらず元気そうにスピーカーから声がガンガンと響く位に……」

『おやおや、これは失敬失敬!それにしても、グレイ君が連絡して来るなんて珍しいネ。何かあったの?』

「あったと言えばありましたと言えば良いのか、それとも現在進行形でそうなってるというか……」

 

 タブレットの画面には赤い丸メガネに白い髪、喋り方と一致してない幼女がそこに映っていた。一体誰なのかエージェントが訊ねる。

 

「あの、グレイ様……この御方は?」

「この人はハテノ古代研究所の所長を勤めているプルアさん。古代シーカー族における研究開発者。」

『どもども!アタシが所長プルアだよ。よろしく!チェキチェキ♪』

「御初にお目に掛かります。私は喫茶鉄血のマスターを勤めています代理人ことエージェントです。以後、お見知りおきを」

『おや?グレイ君が女の子を連れてるとは!もしかして恋でもしたのかい?やるねーワイルドボーイ!』

「いえ、違いますよ。この人とは恋人になってませんし、俺の恋人は愛が重い彼女5人と一方的ですがゴールした方です」

『嘘でしょ!?』

 

 ガーン!とショックを受けた感じのプルア。プルアは元々こんな姿ではなかったのだが、とある理由と実験で若返りの薬を研究及び試作で自分に投与した結果、たった1週間で子供のサイズにまで若返ったの事。予想以上に若返り過ぎた為か、今でも改良を続け、更には年齢を増加させる薬を研究中との事。ロリ体型では色々と問題になっていたらしい。

 

「所で、グレイ様とプルア様はどういう関係で?」

「蝶事件の前、俺の居る世界で旅をしてたんだけど、その途中で森に入ってな。最初はまだ良かったんだけど、段々と森が変化してさ。抜けられるかな?って思ったら、何時の間にかハイラルと繋がってて。丁度その時も霧が深かったけど、一体どういう原理であんな事になったのか分からないままだ。もうどうしようも無いから、とにかく元の世界に戻れないか片っ端から旅しては手掛かりを探したんだ」

『んで、何日かした後にアタシの研究所に辿り着いたってワケ!アタシもビックリしちゃってさ。最初は変な奴って思ってたけど、どう見てもハイリア人とは違ってたし、シーカーストーンと似ていた物を持ってたし、これが興奮せずにいられなかったのよネ!』

「成程、そうでしたか」

 

 ハイラルの世界では丁度厄災ガノンと呼ばれた脅威を封印はしたものの、最早やる事が余り無くなった。つまりは暇だったのである。

 そんなプルアの元に訪れた彼等の詳細を聞いては興味を持ち、彼等を元の世界に戻すのは惜しいと思ったのか、対価として自分達の世界の詳細や文化を教えて欲しいと頼んだのである。その引き換えとしてシーカーストーンをスマホやタブレットと同じ位にパワーアップさせ、ガーディアンの作り方や応用等も教えられ、果てにはE.L.I.D.に関する研究も是非させて欲しい等々……逆に大盤振る舞いのサービスだった。

 

「しかし、幾ら違う世界とは言ってもコーラップスは危険な代物です。それこそ、E.L.I.D.は重度の汚染によって人間としての理性は残されていない存在……それを貴女が研究すると言うのですか?」

『アタシを甘く見ちゃダメよエージェントちゃん!アタシはそっちの世界で言う実現不能な不老不死みたいなモノを人力で開発したのよ?このプルア様に実現不能なモノは無くってよ?おほほほほ!』

「そう言えばそうでしたね……」

「こうは言うけど、プルアさんは最後まで約束するし、決められた内容は全部やり遂げるから。研究者としての誇りに懸けて解明して見せるって言ってくれたし」

 

 褒めたら褒めたでエヘン!と言いながらドヤ顔を浮かべるプルア。伊達に研究者としての経験を培っただけの知識は兼ね備えているので、もしかしたら出来るのではないだろうか。シーカー族の技術は一種のオーバーテクノロジーの塊なので、本当に実現したら歴史的な革命にも繋がる可能性があるだろう。

 

『ま、気長に待ってて頂戴ネ。』

「頼もしい限りですね。ちなみに元の世界は何時頃に戻れたのですか?」

「1年後だったよ。何だかんだで研究所でプルアさんの手伝いやったり、ラネール地方やアッカレ地方だったりとかを旅していたらプルアさんの開発が完成してね。とりあえずは迷いの森でデクの樹サマにこれまでの経緯を話してくれたら優しそうに納得してくれて、指定されたルート通りに行ったら元の世界に戻れたんだ。デクの樹サマも今回の事例は初めてだったらしいから驚いたんだと」

『そんで、元の世界に戻る前に渡したのが簡易設置式のワープポイント!設置するだけで転送出来るだけじゃなくて、あっちとこっちでの世界を行き来出来る様に開発したんじゃよ!プルア、渾身の逸品!』

 

 なので、移動可能となって以来行き来しながら必要な素材やイワロックを倒して鉱石を何度も確保したりするのが日課となったのがそこからとも言えた。これまで集めた鉱石もカリーナに渡してはショップに売ってあった物を全部買い取ったのは誰も想像しなかっただろう。

 

『あ、すっかり話し込んでて忘れてたけど、結局アタシに話したい事って何だったのよ?』

「実はですね……」

 

 グレイは蝶事件以降の世界の状況や今自分が更に別の世界線に居る事についてもプルアに話すと、プルアはうんうんと頷きながら理解している様子だった。

 

『フムフム……別世界の1つ先にあるまた別の世界とな。ほうほう……興味が沸いて来たネ!』

「出来る事ならばここにもワープポイント設置したいんですが、効果範囲届くでしょうか?」

『その心配は要らないんじゃないかナ~?思い出してごらんよ。君達が一度元の世界に戻った時、すぐにワープポイント設置したら何の問題無く動いたんでしょ?それに、然り気無く言いたかったけど、こうして電話して繋がってるのって普通に考えたら有り得ない筈だよ?それが違う世界だったとしても。決して有り得る事が無い事態をこうして繋げちゃった時点で「もしかしたら」なんて希望も沸いて来るでしょ?だから何の問題もナッシングだから!』

 

 彼女らしい答え方だ。ならば期待通りに「もしかしたら」を尚更実現しなければとグレイはすぐに簡易式のワープポイントを設置した。他の客との迷惑が掛からない様に一旦外に出ては良さげな場所に置いて、実験も兼ねてプルアをここに呼ぼうとした。

 

『結婚してるのに女の子を誘っちゃうの~?グレイ君は悪い子だな~』

「そうじゃなくてもアンタ自ら実験体として参加する方だろ。言わなかったらワープポイント設置してアタシもそっちに行くからって言うつもりだったんじゃないの?」

『ありゃ、バレちゃったか』

「それに、独占欲が強いから嫁さんに監禁されてもそれも一種の愛だと思ってるし」

『グレイ君、本当にその奥さん大丈夫なの?何か不安なんだけど』

 

 プルアが珍しくドン引きしている。恋人として付き合っていたとしても、ヤンデレは少々プルアには荷が重かったみたいだ。話はさておき、ワープポイントを設置すると、タブレット越しに映っていたプルアの姿が青い粒子の様に消え、先程設置したワープポイントから青い粒子が集まるとプルアの姿が段々とハッキリ見えて来て、最後には実験が成功したかの様に喜んでいた。

 

「とうちゃーく!って、雨降ってるじゃないのー!」

「悪い悪い、店内に置くにも行かないから外で取り付けたんだよ。長話は一旦中に入ってからで。」

「そうですね。プルア様は何かご注文はありますか?」

「アップルティーで頼むヨ!こういう時こそ甘いものが別腹ってネ。」

「承りました」

 

 再び喫茶の中へと入り、別世界から更に別世界へと繋がった事に対する研究結果をノートに纏める。ついでに初めて喫茶に入ったのか色々と興味を示していた。

 

「ほうほう……グレイ君の言った通り、アタシの知らない文明ばかり!特に戦術人形はガーディアンよりもコストは軽い分、耐久性は至って人間と同じ……機械の身体と言っても、感情を持ったら人間とは変わらんネ。グレイ君の世界に居る鉄血人形達が暴走したというのはまともに試作すらしてないか、或いは杜撰な管理をしてたのかもネ。何でそういうリスクもあるって頭に入ってなかったのかナァー」

 

 やはり研究者としての経験なのか、鋭い指摘をズバズバと言い切るプルア。実質、あの暴走の切欠を作ったのは間違いなく自分達人類側の問題なのだ。

 グレイも度々思う部分があった。暴走させたのが人類ならば、その責任は人類にその責任があると。にも関わらず、度重なる戦争で貧困や格差、テロリストが生まれ、E.L.I.D.や鉄血との問題に戦術人形に任せようとする。自分達人類は安全な所で怯え、見届き、高みの見物でふんぞり返る者など……よくもここまで生きていられてたものだと呆れる。そんなものだから決して誰もその責任についてはとやかく言わないし、責任を押し付けようがしなかろうが意識する人など全く居ない。ならば、誰もやらないならば自分達でやるしか無いとグレイ達はそう決めていた。

 全ては争いの無い世界に。元の世界に戻せる様に。その為には1秒でも早く終わらせるのが理想的だった。

 

「おや?難しい事考えてるグレイ君?ダメだよ、折角の休日なんだから今は頭空っぽにして休まないと!」

「え?あ、ああ、顔に出てましたか。すみません」

「いいのいいの。アタシが言えた義理じゃないけどネ。それはそれで聞いてみたい事があるんだけど、この世界って同人誌ってある?」

「ぶふっ!?」

 

 唐突な爆弾発言にグレイは吹き出し、エージェントは固まってしまう。この幼女(年齢は100歳越えだが)何を言ってるんだとジト目で見つめる。

 

「一体何を言い出すんですかプルアさん……」

「厄災騒動が終わってからというもの……研究やっても何か物足りないと感じていた……そんな時に君達が来ては違う世界の情報を知っただけでも楽しかったけど、そっちの世界の文化を結構調べた結果、同人誌ってのに辿り着いてネ。コスプレとか漫画とか面白そうなのいっぱいじゃない!どうしてそんな楽しそうなの教えてくれなかったのよ~!」

「流石にプルアさんをそっちの世界に歩かせる訳には行かなかったものなので敢えて言わなかったんです……まさか自分から調べるとは予想外だった……!」

「フフフ……同人誌って良いよネ……言葉だけじゃ表現出来ないドエロい表現!多種多彩なジャンルとシチュエーション!読むだけじゃなく、自分で生み出すという発想!これがプルアさんにとってビビビって来たのよ!もしかしたらアタシはそういうのを待っていたのかもしれなかったんだと!!」

「出来れば何も知らないままでいて欲しかったのですが……」

 

 エージェントも何か思い当たる節があるのか、グレイに同情した。多分違う世界の文化を教えた時点でアウトだったのだろう。研究者というのは妙な所で最後まで追究する癖があるので、それと同じく調べちゃったのだろう。違う言語であっても全力で調べ尽くすのがプルアらしさでもあるが、そこは全力で発揮して欲しくなかった。

 

「既にペンタブやイラストアプリも搭載!コスプレ衣装を作るガーディアンですら作って見せちゃうヨ!サークル「ハテノ古代研究所」の第一歩はこれで決まり!」

「もうダメだ……おしまいだぁ……」

「心中お察しします……」

 

 この人は何やっても止まる気がしなさそうだ。そして、肝心のプルアも―――

 

(さっきのエージェントちゃんの反応……普通ならば同人誌って何って顔するのが普通だけど、固まったという事はそれと同じ考えを持った同士が居るという事!はぐらかしても、この天才プルアは見つけるまで絶対に諦められないからネ!こんなチャンス滅多に無いんだから!)

 

 何時しかプルアが例の変態達が集う場所に堂々と入る日も近いかもしれない……エージェントとしてはそれが実現しそうな気がして、グレイはきっとプルアが色々と何かやらかしそうな気がして、二人は互いに頭を抱えざるを得なかった。




まだまだ続くよ!

気にはなってたけど、ブレワイの続編は前回のキャラ続投するのかな……?あのPVの最後を見た辺りだと、いきなり○ピュタ展開になったし。空飛んだ先で新キャラ出そうなのが有り得そうだけど。

英傑達がアレで終わるのは惜しいわ。続編は英傑達の出番増えろ……増えろ……。


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鷹山「こんちゃーす!」代理人「あっ……(察し)」

ちょっと別枠でやってた奴が一段落&唐突なるコラボ話を思い付いたので先にこっちを。

またまた喫茶鉄血の話ですが、今度はメンバーが増えます。
いろいろさんには話したものの、もう一方の人に使っちゃって良いのか悩みました……フリー素材と言えども、報告だけでも。

犬もどきさん、済みません。改めてですがあの「二人」借ります。
今回はその「二人」もちょいと含めてのお話です。

追記:コメントでゲッコーが女性って事に驚いた……え?マジで?って。毎回女性口説くものだから、てっきり男かと……あれ?男だったっけ……?(白目)
とりあえず、修正しました。


 その日、書類整理をしていたグレイ達は途中で息抜きしようとお菓子やら珈琲やらを飲んでいた。お菓子と言ってもクッキーとかだけじゃなく、スプリングフィールドやm45が作った菓子パンとかがあったので、それを片手でコーヒーブレイク。

 コーヒーは少し暖め直してから飲む。味も風味も変わり無く、流石あの店のコーヒーだけの事はあるなとグレイは納得した。

 

「うん、美味いな」

 

 流石、あのマスターが長年やってるだけの事があるコーヒーだ。少し飲んだだけでも中々癖になる苦味が広がり、身体を温めてくれる。

 グレイと同じく、鷹山達もコーヒー飲んでは菓子パンやらお菓子やらを手にもって食べる。苦味と甘味のベストバランスな味わいがマッチし、手の動きが止まらない。

 

「やっぱり菓子パンは最高やな!にしても、この珈琲随分と美味しいけど、どっかの店で売ってたか?」

「言われてみれば、やけにコクと深みがあって美味かったな……ミルクを入れたら良い感じのまろやかさになったが、持って来たのは誰だ?」

「あー、それに関しては全部俺だ。けど、そのコーヒーもちょっと訳アリのルートで入手したヤツでな」

 

 そう、このコーヒーは元々「喫茶鉄血」のマスターであるエージェントから受け取った物だった。以前にグレイが1日だけ休暇を貰ったのだが、道中で霧に巻き込まれ、気付けば並行世界に迷い混んでいた。その際、偶然見つけたのがその喫茶店だ。あの世界では戦争も悲しみもなく、鉄血と人類が共存している素敵な世界だったのを今でも覚えている。ただし、途中でプルアに通話してしまったら色々と台無しになってしまったが。

 グレイはそれまでの事を全部鷹山達に伝えた。鷹山達も最初は「ウッソだろお前www」と言っていたが、冷静になって考えたら「まあ、俺達だからそんな事起きても当たり前か」と納得していた。全く以て驚く素振りすら無しである。

 

「良いなぁ~、お前だけ面白いの見れて。俺だって行きたかったぜ」

「だったら今行くか?幸い、ここと喫茶鉄血を繋げる装置は設置済みだし、何よりもあの店に渡し忘れたものがあってな。ザック、悪いが最短で加工頼むわ」

「理由が何なのか分からんが、敢えて追及はしない。ちょっと待ってろ」

 

 何か入っている袋を渡された後、ザックは部屋を後にした。その間にグレイはザックに渡した物とは別に何か入っている袋をもう1つ用意しては鷹山に受け渡した。

 

「こっちの方はわざわざ喫茶店に入れてくれたお礼とか設置してくれた際のお礼みたいなモノだ。これをマスターや皆にどうぞって言っておいてくれ」

「お、良い匂い……そういう事か」

 

 袋の中身が何なのか直ぐに分かった鷹山。ちなみにザックに渡した袋の中身の事も教えて貰ったが、その理由に鷹山も納得していたらしい。数分後、ザックがもう作り終えたのか、走りながらグレイ達の所へ戻って来た。

 

「散々魔改造品ばっかり作ってたが、この手の物を作る方だと案外アッサリと終わって楽だったな。ほれ、約束のブツだ」

「ほいほい、ありがとね」

「失礼します。あれ……?どうしたんですか、鷹山指揮官?」

 

 ザックの後に続いて入って来たのは書類を持って来たM4とカトレア。袋を渡していたのを見て誰かにあげるのかと何となく二人は察したらしいが。

 

「あ、そうだ(唐突) M4もついでに息抜きでもしようぜ。カトレアとついでにエルもな」

「何故俺まで巻き込むんだ……そもそも、その言葉自体が特大なブーメランだと気付け」

「自覚してるっての。つーか、今日の任務って後は書類だけで終わりか?」

「そうだな……もう朝で前線には出たし、昼以降は作物耕してたりしたしな……あ、ついでに自家製の砂糖持っていけ。それとレシピ」

「小麦粉とかは要らねーの?」

「流石にパンは基本作るよりかは買ってから作るだろ」

「あの、話の展開が見えないのですが……」

 

 話について来れていない二人。とりあえずさっきまでの会話を軽く説明すると二人は驚いたらしい。特にカトレアは目をキラキラさせてエルの方をじっと見た。

 

「兄さん!行きましょう!私、一度で良いからそんなお洒落なお店に行ってみたかったの!」

「あー、そっか。カトレアもエルもそれとは無縁だったからな。まあ、こっちはもう少しで終わるし、丁度良い機会だから行けば?」

「良いのか……?色々と済まないな……」

「気にすんなって。それに、面白そうだからって理由でついて行きたがる奴も増えたし」

 

 クイッと指を示すと、扉からコッソリと覗きながらニヤニヤしていたトンプソンが。大方、通り掛かった所で聞いてしまったのだろう。これにはエルも溜め息を吐く。

 

「……言わなかったとしても、後ろからついて来るつもりだったんだろ?」

「当然だろ!タダでさえこんな面白い事が日々起きてるのに、もっと面白い事を聞かされちゃ黙っていらねぇぜエル!」

「仕方無いな……」

「あはは、諦めてやらぁ。所でN4だけで良かったの?ついでなら他の皆も呼んであげるけど」

「大丈夫です。姉さん達にも仕事の事情ありますし、離れていても常に盗聴器持っているので平気ですよ」

「サラッとトンでもない事を言ったけど、その盗聴器本来何に使うべきだったの?」

 

 きっと鷹山の事を何時でも見てますよ、というヤンデレ思考だろうか。ちょっと怖かったが何時もの事だしと無理矢理納得した全員。

 残った仕事は他のメンバーに任せ、鷹山達は一足先に喫茶鉄血に向かった。一応、鷹山達のスマホとかにもシーカーストーンの機能が一部搭載されているので、楽々と喫茶鉄血の近くに到着。

 

「うはー……マジかコレ」

 

 事前に説明されていたとはいえ、いざ見てみると本当にあったんだと実感が沸いていた。ちょっとだけ鉄血という言葉に抵抗があったが、グレイが何事も無く戻って来た事や自分達もそれなりに鉄血人形を連れては元に戻してから仕事とかを与えたりしているので大して変わってないなと思い、警戒も次第に薄くなった。

 

「じゃあ、ちょっくら入って見ようか」

 

 鷹山が率先して扉を開ける。扉を開けた先にはグレイの言ってた通り、鉄血人形の殆どが働いている光景。何よりも―――

 

「あ、もう一人のM4見っけ!」

「え?」

 

 鷹山が指を示すと、そこにはこの世界のM4が働いていたのを見たのだ。この声に全員が振り返っては驚き、鷹山のM4も喫茶店に居るM4も鉄血人形達も予想外な事に戸惑っていた。しかし……。

 

「わ、私がもう一人……!?」

「え、何で私が……って、ああ、そういう事ですか」

「うわ、あっちのM4理解早っ!色々と言う前に察してるし!これ絶対他のM4来てたんじゃね?」

「可能性大だな……」

「……お客様、そろそろ本題に入りたいのですが」

 

 コホンと咳払いし、この場の混乱を収めながら割り言って来たのは喫茶鉄血のマスターである代理人もといエージェント。エージェントも先程までの光景を見て、瞬時に並行世界から来た人物だと逸早く気付いたみたいだ。

 

「失礼ですが、今の口振りからして貴方達はここを知っていた感じですが……一体何者ですか?」

「ゴメンゴメン。言うべき事も自己紹介も遅れちまった。あ、名前を言う前にグレイって人知ってる?」

「グレイ……ああ、以前ここに訪れた。そうなると、皆様は……」

「そういう事。俺は鷹山将。で、こっちの赤いマントを着けてる方はエルゼラ・クロウバック。どっちも戦う指揮官の一人でーす♪」

 

 やはり彼等の仲間か、と納得したエージェント。まさか今度は仲間の方がわざわざこっちにやって来るとは思わなかっただろう。多分、入口近くに設置した古代シーカー族のワープを使ってまでここに来たのだろうと察する。

 彼等をじっと見渡すと、鷹山の方はちゃんとしたグリフィンの軍服を着ているのだが、エルの方は少しボロボロになってる赤いマントを纒ながら黒のグリフィン軍服を着ていて、頭部にも赤いバンダナみたいなのを巻いていて異様だった。ついて来た戦術人形はM4、トンプソン、トカレフの三人だけだったが、これもこれで何かと関連性が思い浮かばない。

 

「以前にグレイ様から聞かされてはいましたが、やはり奇抜で独特な雰囲気を漂わせていますね」

「大概周りの奴等も俺達を変人だの人間辞めてるだの言いたい放題だから間違っちゃいねーけどな」

「結成するまでの道程が複雑だった。たったそれだけだ」

 

 実際にグレイ達は何らかの理由で旅立ち、出会い、最終的にグリフィンへと流れ着いた。今では安定した生活みたいなものなので、迂闊に仕事も辞めたら一気に形勢逆転されそうだ。

 話し込んでも仕方無いので、鷹山は忘れずにグレイから受け取った袋を取り出した。

 

「そうそう、グレイからこれを渡してくれってな。はい、これ」

「これは……まあ、パンの匂いが」

「グレイが言うには「ここの店で世話になった礼」だって」

 

 渡された袋の中身はグレイお手製の菓子パンやら惣菜パンなどがあった。これら全てを全部彼が作ったというのだから凄いものである。それとは別途でパンのレシピが書かれてあるファイルも渡した。その内の1つは何故か例のモンハン飯レシピ。

 

「わざわざここまでご丁寧に……」

「アイツから聞いたけど、何でもコーヒー貰ったって?俺達も飲んでみたけど、結構美味かったよ。ミルク入れたらよりまろやかになったし。で、何処で持って来たんだって聞いたらここだって聞いて」

「そのコーヒーの礼がしたくてな。ついでに、ここでもう少しだけ飲めるなら本望だ。こういう場所は気に入ってる」

「ありがとうございます」

 

 ペコリと頭を下げるエージェント。こうまでして好意を受け取るのは予想外だったが、自分の店を褒められたのは悪い気はしなかった。しかし、特大の爆弾はこれからである。

 

「それと、これも渡して欲しいって。前回代金を払い忘れたってのもあるけど、そっちの世界で自分達の居た世界での通貨が通用するかどうか分からなかったから、通貨の代わりにコレをって頼まれんだ」

 

 もう1つ渡された袋の中身を丁寧に取り出す。その正体が分かったのか、ここに居る全員がギョッと思考が停止したかの様に止まってしまう。何故なら……。

 

「指輪にネックレス……こんなアクセサリーを……?」

「うん。しかも、鉱石を使って加工しては綺麗に嵌め込まれているだろ?ダイヤモンドとかルビーとか、結構奮発して使ったって」

『こ、鉱石!?』

 

 天然物でさえ良い物ならば10万以上は軽く越える代物だ。これで加工してキラキラ光るまで磨き、銀の装飾とかも含めて見事に作り上げたのだ。これですら値段が大きく跳ね上がる。

 

「待て。まだ本物だと分かったかどうか判断していない。まずは鉱物の成分を調べてから判断するべきだな」

 

 もしかしたら偽物かもしれないと何時の間に居たアルケミストがアクセサリーの1つを手にすると鉱物の成分を調べ始めた。

 戦術人形にそんな機能が?と思われるかもしれないが、錬金術師という名の恥じない位の知識だけは兼ね備えているのか、顔つきも真剣な表情へと変わる。

 鉱物をスキャンしながらも数分後、彼女の顔がぎこちない感じに言葉に詰まっていた。

 

「結果はどうなのですか、アルケミスト」

「あぁ……えっと……そのだな……」

「どうしたの?さっさと言いなさいよ」

「……結論から言おう。それ、ガチの本物だ……ダイヤモンドもルビーも……他の鉱石というか宝石も……」

 

 一同沈黙。そして数秒後には……。

 

『ええええええええええええええええええええええええええええええ!!!?』

 

 驚きの叫び声が聞こえ、今まで以上に無いお礼にガタガタ震えたりするなど、収まるまで時間は少し掛かったという。

 

 

 

 

 

「いやー、ここの皆は面白いなー」

「誰のせいですか全く……」

 

 度肝を冷やされるかと思ったとまだちょっと焦りが残っていたエージェント。赤字どころか黒字が天元突破しそうなレベルでヤバい物を受け取ってしまったので、これにはどうしようかと全員がパニックになってた。

 流石にこんな高価な物は受け取れないと断ったエージェントだったが、「良いって良いって!いざという時の為に取っておいて損は無いからさ!」と押し付けられ、結局の所折れてしまったそうだ。こんなの貰ったならば、暫くこの人達は無料で差し上げても良いんじゃないか?なんて事も浮かんだが、それでは喫茶を経営する自分に反する行為だと己を叱咤した。

 

「わぁ、美味しそう……本当に頂いて良いんですか?」

「うん、良いよ。どうせなら喫茶店の新メニューとかにしちゃってよ。それで役立てるなら良いし」

 

 今ではちょっと落ち着く為にM4やマヌスクリプト、果てには今まで見た事の無い人物までもが一緒になって惣菜パンとかを食べていた。

 

「はぁ……こんな甘くて美味しいのって久しぶり……」

「並行世界でも存在していたかどうかの料理もあったんだ。でも、このボリュームは結構凄いね……」

「ほう、こういうのも悪くないな」

 

「……エージェント、彼等は一体何者だ……?」

 

 チラッと見たエルが呟きながら見慣れない3人を見る。鷹山も釣られて見たが、「あれ?そう言えばこっちの世界でこんな人居たっけ?居なかったよな?」と瞬時に思い返しては即座に調べた。隣に居た眼鏡を掛けた女性とポニーテールをした少年もハッと今更気付いたらしい。

 

「あ、ごめんなさい。私h「彼女は「サクヤ・スズミヤ」、元鉄血工造の開発主任でアルケミストとかの開発に携わった人。けど、後にある理由でコーラップス液の汚染が危険ともされるドネツクでE.L.I.D.に感染。そのままゾンビのままで死んだかと思えば、この世界で生きては喫茶鉄血の店員になってる。まあ、俺等みたいに移動して来た人物だ。で、隣の子が「ユウト・スズミヤ」。彼の場合は違った並行世界でサクヤの義弟。そっちの方ではエルダーブレインの暴走によって死んだとかなったみたいだけど、こっちも同じく流れ着いた感じだ。最後に「ゲッコー」。コイツは本来存在しない鉄血人形で作り主はアーキテクト。女を口説いたりする奴だが、実力は兼ね備えている持ち主。けど、残念な奴だ。これでOK?」……!?」

「ああ、大体把握した」

 

 ペラペラと普通に喋った鷹山を見て、サクヤとユウト、更にはゲッコーまでもが唖然となった。え?この人初対面だよね?何で私達の事知ってるの?と戸惑いが隠せない。逆にエル達の方は普通にコーヒーを飲んでいる。並行世界の住人とかにツッコミすら入れてないのだ。

 

「「何で知ってるんですか!!!?」」

「TASだから」

「「TASって何!!!?」」

他人の人生とその終わり(本編ストーリーとネタバレ)は把握して当然だ。言わせんな恥ずかしい。」

「「いや、その理屈はおかしいですよ!!!?」」

 

 ただし、メッセージはスキップして飛ばすのが殆どかもしれない。本当にガチで攻める以外ならば余計な知識は知っとくだけでも良いやという位に留まるのがTASクオリティーとも言うべきか。

 それにしてもこの姉弟、並行世界の存在と言えども見事なハモリっぷりなツッコミである。一方でゲッコーは彼等が只の人間じゃないという事に警戒が少し上がった。

 

「あまりにも場数慣れをしている上、並行世界の存在についても何1つ驚く素振りも無い……本当にグリフィン側の人間か?」

「まあ、一言で言えば人間として済まされない奴等の集まりだし。隣に居るエルなんて変身するし、残ってるメンバーなんて爆弾でヒャッハーしたり、巨大ロボット作ったりしてるぜ。俺は俺で周りから避け切れない攻撃来てもグレイズして全部避け切るし」

「それは人間の領域を超えた何かだろ。マシンガンとかでも避け切れるというのか……」

「いや、それ以前にTASって言ったよね?もしかして、マジモンのTAS搭載した人間?」

 

 興味を持ったかの様にマヌスクリプトが近付く。TASを知ってるという事は、この鉄血人形きっとそういう類の知識には知ってる方なんだな、と鷹山は察した。TASという聞き慣れない単語にエージェントが話し掛けた。

 

「マヌスクリプト、TASとは一体何なんですか?」

「TASはTool-Assisted Speedrun及びTool-Assisted Superplayの略語だよ。ゲームとかのエミュレーターを使ってスーパープレイとかタイムアタックを競ったり、果てにはバグ技を使ったりとか色々あるの。チートとはちょっと別物だけどね。世界中でそれを競っては新たなタイムを出したりするんだけど、時代と共に新機種のゲームもそれが通用しなくなってね。それでもタイムアタックする人達の事をRTA(リアルタイムアタック)って呼んでるの」

「はぁ……」

「本来ならTASって機械とかに導入されてるシステムの一部みたいなモノなんだけど、それが人間だった場合は本当に凄い事になるよ?さっき彼が言ってた通り、相手の事情とかを知ってたり、敵の攻撃を難なく避けたり、果てにはまだ手にするには時間が掛かる物を練成して入手したり等……とにかく、それがあれば大体は解決出来るって事。やり方次第じゃマジで運命変わったりするから。多分だけどこの人がそう言うのなら、負ける要素は完全にゼロに等しいよ。例えるなら鉄血の基地をたった一人で無双して落とすレベル」

「そ、そんなに凄いんですか……」

 

 これにはサクヤとユウトもドン引き。だが、それもそれで辻褄が合うと納得した。個人的には練成という言葉にちょっと引っ掛かったのだが。

 きっとあっちの世界では、彼等によって次々と鉄血の基地が崩壊されているんだろう。理不尽よりも更に理不尽な相手に。そう思うと敵だとしても同情せざるを得ないと心の中で合掌した。

 

「しかし、本当に強いのか?」

「信用薄いねゲッコー。まあ、こんな話を信じろって言われても仕方無いからね。という訳で、咄嗟の判断で思い付いたんだけどさ!」

 

 と、マヌスクリプトが鷹山の近くまで迫った後、ガシッと彼の両手を掴み―――

 

「ね、これからちょっとバイトしてみてくれない?」

「ファッ!?」

 

 彼に向けて予想もしていなかった事を呟いたのであった。




という訳で、またコラボ話となります。後2話分続ける予定なのでお楽しみに。
果たして、TASという相手に喫茶鉄血のメンタルは保てるのか……!?(無理フラグ)

・もう一人のM4
喫茶鉄血の方でのM4。彼女の方はそんな悲惨って訳でもないが、性格は相変わらずちょっと怯え気味。ただ、この仕事を通して明るくなった。並行世界についてもそれなりにうろたえてはいないのだが……?

・サクヤ・スズミヤ
犬もどき様作「METAL GEAR DOLLS」のキャラで、元鉄血工造の主任。本編では悲惨な死を遂げた彼女だったが、喫茶鉄血でのコラボでは死なず第2の人生を歩んでいる。作者としても個人的に好きな人物。本当に彼女は幸せになって欲しい。

・ユウト・スズミヤ
サクヤの義弟なのだが、実は彼自身もまた並行世界の住人。彼の場合は姉共々暴走した鉄血人形によって撃ち殺されたが、喫茶鉄血のある世界へと流れ着いた。サクヤの事を姉さんと呼ぶしっかり者。違う住人と言えども、サクヤは彼を弟として迎え入れ、現在では姉と一緒に喫茶鉄血で働いている。

・ゲッコー
喫茶鉄血のある世界において、アーキテクトが作ったオリジナルハイエンドモデル。時間さえあれば女性を口説いているが、その度に代理人に怒られるパターンがしばしば。しかし、それとは裏腹に戦車を軽く振り回せる位の力は備えているので、見た目で判断しては危険。でも、残念である。

・避け切れない攻撃来てもグレイズして全部避け切るし
東方projectのTASで、ルナティックやエクストラを選んだとしても本当に全部避けてるのだ。しかも、ノーダメージで。密度がヤバい位の弾幕がチカチカして目に悪いのだが、それでも避けられるのが凄い。正に弾幕キラー。ちなみに作者はシューティングが苦手。唯一出来ても「撃破伝」がやっと。


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鷹山「バイトだぜ!」エル「嫌な予感しかしない」代理人「全くです……」

喫茶鉄血中編。前回、マヌスクリプトにバイトを頼まれた鷹山。
しかし、ただ単純にバイトをするだけで終わるTASではなかった……!

戦闘じゃなくてもTAS技をガンガン使って行くスタイル。
コラボだというのに、暴れてしまって申し訳無い(白目)


 マヌスクリプトの提案に思わず固まった鷹山達。即座にエージェントがハッと我に戻り、また良からぬ事を考えているんじゃないかと睨む。

 

「今度は何を企んでいるんですかマヌスクリプト」

「まぁまぁ、そう睨まないでよエージェント。場合によってはエージェントだって必要な人材と思って欲しがるかもしれないよ」

「……聞くだけ聞きましょう」

 

 おっしっ、ここはオッケー!と心の中で喜ぶマヌスクリプト。次に鷹山を使っての説明とメリットについてそれぞれ説明した。

 

「さっきも言ってたけど、TASの力はただ戦闘面だけじゃないの。日常生活においてもTASは割と便利だったりするのよ。例えば、今月幾ら稼いだか、在庫は残り幾つあるのか、後何人お客さんが来るか……仕事の内容によってはわざわざ出向かずに今立ってるここで確認する事が出来るのよ。予測したり把握出来たりするのはそれが理由よ」

「言い換えれば……超高速演算が出来る機械みたいなモノ?」

「お、サクヤちゃん正解。だから、本気を出せば高速で仕事を終えてくれるし、客が何を注文とか依頼して来るのかをドンピシャで当てるものだから、使い様によっては絶対に大きな戦力になるわよ」

「そんなのが出来るなんて……凄いじゃないですか!」

 

 人間を辞めた内容とは別に、高速で仕事を終わらせてくれる点を考えると仕確かに欲しい人材でもあるだろう。特にコミケやクリスマスのシーズンだったり、たまに大量に人が来たりするとちょっと慌ただしくなるのが現状とも言える。

 エージェントも少しは考えたが、欲しいと言えば欲しい人材でもあるだろう。ただし、そう簡単に納得してくれる程甘くは無い。

 

「言い分は分かりました。ですが、先ずは信用を得てからですね。演算処理の話の下りはともかく、気になったのは未来予測の方。貴方が確実に当てれるかどうか、そちらの方で試させて貰います」

「ん、オッケーよ。で、どう決めるの?」

「だったら、トランプの絵柄と数字を当てるってのはどう?初歩的なやり方だから、そんなに難しいって内容じゃないでしょ」

「正気ですか、マヌスクリプト……?」

 

 マヌスクリプトがトランプを使って、カードの内容を当てる方法を提案した。難しくないと彼女は言っていたが、全てのカードの中から一枚を正確に当てるのは確率的に無理がある。そんなの無茶だろうと誰もが思うが、もしかしたらその可能性があるのでは無いかと若干思ってしまう。

 とりあえず、何もしないままには行かないので、すぐにトランプを用意したマヌスクリプト。公平を期す為に鷹山には後ろを振り向いて貰うと同時にドリーマーとアルケミストが監視。カードはゲッコーにシャッフルして貰うが、この際に1枚でも誰にカードを持っておくのもアリとしておいた。いざ、カードを当てるゲームが始まったが―――

 

「面白い役だな。ロイヤルストレートフラッシュか?」

「………!?」

 

 まだ何も言ってない上にヒントすら与えてはいなかった筈。それなのにズバッと当てた事にゲッコーは冷や汗を掻いた。ゲッコーは敢えてシャッフルしたカードを配らずに、ロイヤルストレートフラッシュの役となるカードをそれぞれに渡したのだ。

 ドリーマーやアルケミストの方を見ると、彼女達も首を横に振ってる素振りを見た辺り、イカサマも何もしていなかったらしい。そもそもこんな事で二人が嘘を吐くとは思っていない。

 

「何故そう言い切れる?もしかしたら別のカードかもしれないぞ」

「いや、これはロイヤルストレートフラッシュだ。しかも、ハートの絵柄。順番に答えてあげるよ。先ず、サクヤさんがハートのエース持ってるでしょ?」

「ええっ!?」

「で、ユウト君がハートの10」

「あ、当たってる……!」

「アーキテクトにハートのジャック。デストロイヤーにハートのクイーン」

「ちょ、何故分かったし……!?」

「えええええっ!?何で何で何で!?」

「最後に、エージェントのポケットの中にハートのキング入ってるよね?」

「……お見事です。まさか、ここまで正確に見抜くとは……」

 

 カンニングも一切せずにここまでやるとは思わなかった全員。ここまで正確ならば短い期間だが試しで雇っても良いかもしれないとエージェントは考えた。

 

「ちなみに、どうやって当てたのですか?」

「頭の中にそのイメージが流れて来るんだよ。これから起きる事象って言うのかな?ハッキリとした映像が映るし、これがこうだった、あれがああだったみたいな感じで記憶がそう残してくれるんだよ。だから、監視カメラとか無線とか必要とせずに当てれるんだよ」

 

 言わば、記憶をセーブしてはロードの繰り返し……殆どゲームと同じ感覚を持っている。

 鷹山の答えにエージェントも納得。確かにこれは普通の人間ならば出来ない芸当だ。それも含め、エージェントは彼を一時的だが喫茶鉄血の店員として扱った。基本、全ての業務を出来そうなので、臨機応変で変わる事に。すると……。

 

「ねえ、兄さんもやってみたら?」

「俺にやらせるつもりか……」

「ふむ……ここは基本女性しか居ませんからね。折角ですのでエルさんも試しに」

「逃げ道が塞がれた……」

 

 カトレアの些細な言葉が招いたのか、エルまで試しに仕事をする羽目に。少し時間を置いてから二人は揃って喫茶鉄血の服に着替えた。

 白のワイシャツと黒のエプロン姿がマッチし、これまたカッコいい姿に一同は「おおっ」と驚く。

 

「二人共、お似合いですよ」

「俺は基本、人前でやる仕事はしない立場なんだが……」

「まあまあ、良いじゃん試しだと思えば良いし。気楽にやれば変に緊張とかしなくて済むからさ」

「お前の場合はお気楽過ぎるんだよ……全く……」

 

 仕方無いか、と諦めながらも引き受けられた仕事は断らないスタンスのエル。今回はそれなりに来る客も多く、ある程度メニューとかを把握し、何処のテーブルに持っていく必要があるのか記憶力も試された。

 次々と客が入って来ると同時に、じーっと回りの客を見続ける鷹山。直後、鷹山が動き出す。

 

「ふーん……ほうほう、把握把握」

「どうだ?」

「M4ちゃん、あっちのお客さんはサンドイッチとコーヒーを1つ。エルはあっちの座ってるお客さんにアップルパイ頼むわ。俺はあっちのお客さんにセットメニューの方を運ぶから」

「ええっ!?まだメニューとか聞いていないのに分かるんですか!?」

「念の為、行ってメニューを聞いてみたら?俺が予想した通りだとそうなるから」

 

 本当なのかな……?と不安になる喫茶店のM4。言われた通り、メニューを待っている客の方へ歩き、詳細を聞いてみると……。

 

「あの、ご注文は何になさいますか?」

「ああ、サンドイッチとコーヒー1つ頼むよ」

「……ッ!?は、はい!かしこまりました!」

 

 本当にドンピシャで当てていた。さっきのトランプでの件もそうだったが、ここまで正確に当てるとこっちの方がドキッとしてならない。表情には出さず、心の中で焦ったM4。これにはこっそりと聞いていたサクヤとユウトもビックリ。

 

「うわぁ……あの人凄いよ……何であんな簡単に当てられるんだろう……」

「戦いとかだったら絶対に敵に回したくないタイプだよアレ……というか、あの人だけに置いてかれてばかりじゃ駄目な気がする……!」

 

 同じ職場の一人として、鷹山だけに全部活躍をごっそり持って行かれるのは流石に駄目だと思ったユウト。同じくサクヤもそんな気持ちだったのか、尚更頑張らなくてはと気合いを入れた。

 時間が経過すると共に、入って来る客も次第に多くなり、メニューの把握だけで任せるのは時間のロスと思ったのか―――

 

「タイムアタック上、遅いのはちょっと割に合わないな……誰か調理のヤツ一人とチェンジさせてくれ。俺が引き受ける」

 

 ここで、鷹山が調理の方へとチェンジ。担当の一人と入れ替わり、目にも止まらない高速の動きで料理を作っていく。

 食材ですらストトトトトッと人間の腕では絶対無理早さで切っていく。その早さはフルオートの動きをしていて、「え?どれだけ早いのあの切り方?」と周りを困惑させるには充分な光景だった。

 食器ですらジャジャジャジャジャジャと素早く洗い、飲み物とかも躊躇いも無しで素早く注いでは溢す事無く綺麗に仕上げていた。一方でエルの方は……。

 

「なあなあ、教えてくれよ。並行世界の指揮官サマがこんな所でバイトなんて早々無いだろうし、この際だからそっちの私等はどうなってるんだ?聞かせてくれよ~」

「M16……少し自重しないと店員さんも困ってますよ」

「………」

 

 こちらの世界のM16にあれやこれやと質問攻めの嵐に遭っていた。端から見れば、まるで酔っぱらいに絡まれた女性の様にしか見えなかった。どう返そうかと言葉に詰まるエルに助け船を出すこちらの世界のRO635。どうしようかと迷っている間、希望の光がエルに訪れる。

 

「M16さん……出来れば止めて頂ければ助かります……」

「むー……ユウトに言われたら仕方無いな。色々と聞きたかった事もあったんだけどな」

「これもお仕事ですから。ある程度終わらせたら話す機会を設けますので」

「お、言ったな?その約束忘れるなよ!」

 

 M16から難を逃れたエル。これにはユウトに感謝せざるを得なかった。しかし、逆にユウトはユウトで申し訳無さそうな表情をしていた。

 

「済まない、助かった」

「いえいえ。僕の方こそ済みません……幾ら付き合ってる仲とはいえ、他の人の迷惑に掛ける行為はしたくなかったので……」

「差ほどそこまで気にしてはいないさ。それよりも付き合ってると言ったが……」

「はい。僕はM16さんとROさんとはお付き合いをしている仲で……」

「そうか、おめでとう」

 

 アッサリと返された言葉にユウトはポカンとなった。普通ならば二股とかそういうのは羨んだり憎まれたりする対象でもあったりするのだが……。

 

「き、気にしないんですか?」

「大体同じ立場だ。もっとも、こちらの方では一方的にお付き合いを迫ったのはM4だったし、ターゲットとなったのは鷹山だったが……飲み物に痺れ薬とかを混ぜたり、修羅場になったりと一時は大変な状況になったが、まあ何とかなったって話だ」

「おい、一体そっちのM4は何したんだ?」

「………」

 

 何かヤバそうな内容かもしれない、とユウトは察した。恋愛事情に痺れ薬を用いてまでの事情とは一体何なのか。これには思わずこっちの世界のM16がツッコミを入れ、それに対しては自分の黒歴史とも言えたのか目を逸らす鷹山のM4。喫茶のM4とRO635はちょっとだけ引き気味でもあったが。

 直後、カランカランとまた入店する音が聞こえたのだが……。

 

「あら、M4がもう一人……って、誰この人?」

「わーお。これはヘリアンが食い付いて来そうなイケメンだね。新人かい?」

「……並行世界の住人だ。今は短期間だがこうしている」

「ああ……またなのね……」

 

 今度はAR-15とハンター、SOPMODとペルシカが来客して入って来た。入って早々、エル達の存在に気付いたのか声を掛けて来たみたいだ。これで一体何度目なのかここに来た理由などを説明する。

 

「前線で戦う指揮官なんて、それはそれで珍しいわね。聞いた話だと鉄血を正気に戻させたって話があったんだけど、アレ本当なの?」

「それに関しては間違い無い。何せ正気に戻す方法が電流を身体中に流し込むという荒業だからな……やり方が某対魔忍を作った会社よろしくの拷問方法だったらしく……」

「対魔忍……電撃……あ、多分もしかしなくても戦艦の方だったか納得納得。きっとエロい事が起きていたんでしょうな、デュフフフフフwwwww」

「おい、何言ってんだエロ漫画家」

「え?分かっちゃう?そういうのも分かるとかマヌちゃん最高過ぎるでしょ!」

「鷹山指揮官……ちょっと熱くなり過ぎです……」

 

 AR-15とエルの会話にマヌスクリプトが反応し、続けて何時の間には居た鷹山までもがその会話を聞いていたのか華を咲かせていた。ここに居る全員が「あ、ヤベー奴同士引き合ってしまったか……」と匙を投げたのはお約束だった。

 果てには秘密の会合という同人誌の素材ネタとも言える話し合いまで引き受けてしまった程。

 

「おっと、そう言えば注文頼まれてたんだってな。ほいこれ」

「うおっ……まだ注文すらしてないのに早いな……何故分かったんだ……」

「TASって凄いんですね……あれ?飲み物は……」

「ああ、ちょっと待ってて。軽く錬成するから」

『錬成!?』

「デバッグモード起動っと」

『デバッグモード!?』

 

 全員のツッコミを無視し、突っ立ったまま動かず何か弄る鷹山。すると、目の前にいきなり注文したとされる飲み物がパッと現れたではないか。物理的にもおかしい光景に全員が目を疑った。

 

「お、おかしいわね……何にも無い所から飲み物が出て来た……私、疲れてるのかな……」

「大丈夫だ……別に壊れたり、バグを起きたり、疲れたりなどはしていない……私でも見てしまったからな……」

 

 AR-15やハンターでさえこの言い分だ。やはりこの世界では人間TASはあまり親しまれていないのか、理解不能と思われてしまっていた。まあ、人間を辞めている以上そんな風に言いたい放題で言われてしまうのも無理は無いが。

 

「これが錬成って言うの……?有り得ない……」

「何だったら「無」を取得してわざわざ呼び寄せる位には出来るけど」

「無を取得って何!?それって物理的に有り得るの!?」

 

 言ってる傍から水の入ったグラスが引き寄せられた。ちょっと歩かないといけない距離にあった筈なのに、水の一滴すら溢さずこっちにグイッと来たものだから尚更驚いてしまう。

 入店してからずっと有り得ない光景ばっかり続いているのか、流石のペルシカも頭を抱えたくなった。

 

「何これ……何これ……?」

「理解しちゃダメだと思うよペルシカ……私も何でなのか訳が分からないから……」

「た、鷹山さん……そろそろ在庫が少なくなって来た食材があるんですが……」

「え?そうなの?じゃあ、とりあえず無で―――」

『無で引き寄せるの禁止です!!』

「ちぇー」

 

 「当たり前だ」とエルからも言われてしまった。金の関係がある以上、無銭で食材持って来るのはマズいと思ったのだろう。代金を受け取り、早めに食材を買いに行く鷹山であったが……。

 

「あ、そこのねーちゃん!戦車貸してくんね?」

「な、何だ!?」

 

 通り掛った戦術人形こと「スネーク・マッチ1911」を呼び止めては戦車を貸してくれと言う始末。ブッ!と吹き出したエージェント達は一体何をするのか慌てて追い駆けるが……。

 

「なっ……!?」

「おいおい、何だありゃぁ!?」

 

 エージェント達が見たのは壁にゴリゴリと当たりながら前進する戦車だったが、ゴンッ!ゴンッ!と戦車が当たっていくにつれて戦車のスピードが速くなって行くではないか。

 エルは急いでドローンをセットしては鷹山の乗った戦車の後を追い駆け、その様子をタブレットのモニターで確認する。映像ではレーシングカー以上のスピードで暴走する戦車が映し出され、音声からは鷹山と犠牲となったスネークの声が。

 

『ヒャッホォォォォォォォォォォォォォォォゥッ!!!!』

『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?』

 

「せ、戦車が……空を飛んでる……」

「何で飛ぶの……どうやって飛ばしたの……?」

「俺の同僚がここまでやって済まなかった……」

「いえ、任せようとした私にも原因がありますので……」

 

 実力は充分に認める位の発揮はしたものの、それに至る過程が色々と酷過ぎた。エージェントにとっては別の意味で頭痛の種になったのは言うまでも無かった。




TASに仕事を任せると、誰もが嫌な予感を感じるだろう。大丈夫だ、作者である私もだ(え

・トランプの絵柄と数字を当てる
TASさんにカードゲームは厳禁。K5の時もそうだったが、その気になれば完全にゲームバランス崩壊を意味する。注文なんかも多分コメントで「知ってた」みたいな感覚で言われそう(小並感)

・その早さはフルオートの動きをしていて
料理系TASでやはり一番ヤバいのは「[TAS] 俺の料理 ノーマルモード」だろうか。三点バースト並みの早さで食材切ってるかと思えば、本気を出してフルオートで全部切ってた。他の業務とかも一瞬で終わる。お前の腕はおかしい。

・こちらの世界のM16とRO365
数日前、ユウト君とダブルでお付き合いした。おめでとう。

・これはヘリアンが食い付いて来そうなイケメン
今までエルの容姿については語っていなかったけど、軽く言うならFF7のヴィンセント。しかも、何時もの戦闘姿ではなくタークス時代の彼をイメージした結果、ワイシャツ&エプロン装備はガチでカッコ良い風に想像出来た。これで惚れない方がおかしい。

・某対魔忍を作った会社よろしくの拷問方法
ちなみに、鷹山が言ったのは監獄な戦艦の方。元々電撃流すネタもそこからだった。18要素ありな為、正にマヌスホイホイ。

・錬成
大体TASだと「無いなら作れば良いじゃない」という発想で色々とシステムの法則が壊れる。

・「無」を取得
スーパードンキーコングシリーズにおいて最早お馴染みの方法。これを使って「ボーナスステージに入ったら、何時の間にかレベル1のステージ序盤から一気にレベル2の中盤近くにワープした。な、何を言ってるのか(ry」という摩訶不思議な現象が起きる。しかし、スーパーマリオワールドでは無を取得してENDクレジットを直接呼び出す荒業が発見されたりする等……何が何でも引き寄せる事が出来る。

・スネーク・マッチ1911
喫茶側のオリジナル人形。正体はなんと、あのネイキッド・スネークが使っていた銃。しかし、今回たまたま通り掛った際、鷹山から戦車を貸してくれと言われてしまう。事情を聞いてとりあえずは貸そうとしたものの……彼女ですら予想外な悪夢に驚かされる羽目になる……。

・壁にゴリゴリと当たりながら前進する戦車
元ネタはランナバウト。戦車にした理由は一番戦車が速い為。これは「【TAS】ランナバウト最速まとめ(リモコン無し&実機通りBGM)」で90式戦車でプレイした際に起きた出来事。普通、戦車は遅い筈なのだが、TASの操る戦車は壁とかでゴリゴリと擦っては段々と加速し、最早レーシングカーすら越えたバケモノと変わる。しかも、マリオよろしくのケツワープみたいな動き方をした後、更に有り得ない速さで動いては空を飛んだり、地中を潜ったり、戦車とは一体何だったのか疑いたくなるレベル。とばっちりでスネークが巻き込まれたのはコレが原因。


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鷹山「勝負しようぜ!お前、ボールな!」ゲッコー「!?」代理人「勝負とは一体……(白目)」

あけましておめでとうございます!遅いけど。
新年一発は未消化だったコラボ話。元々こういうプロットを考えてはいたんですが……ちょっとやり過ぎた感が。オーバーキルだった故にちょっと扱いも……いろいろさん、申し訳ありません。

相変わらずTASの方が強いですが、そんなTASと渡り合える奴って極僅かなのでは……?(白目)


「戻ったぜ!」

「はぁ……はぁ……もう戦車は勘弁して欲しい所だ……」

『うわぁ……』

 

 ニコニコした表情で入って来る鷹山。その代わりとしてスネークが真っ白に燃え尽きたかの様に沈んでいた。さっきまでドローンのモニターで動きを確認していたので、事情を知っていた一同からはドン引きされていた。

 

「お前……普通は車で行くものだろ……」

「いや、そうは考えたんだけどさ。偶然戦車持ってた奴の情報が俺の頭の中に流れ込んで来たから頼まざるを得なかった。あ、隣の人も食材もちゃんと無事だから安心してくれ」

「そうでないと困ります」

 

 見過ごせなかったのか、少々ご立腹な様子のエージェント。鷹山はそのままエージェントに正座をさせられたまま説教を延々と聞かされる羽目になった。

 

「やれやれ……度が過ぎるなアイツは……」

「そうかい?私としちゃ、騒がしくもこうやって仲間が集まるのは好きだぜ。エル、アンタも含めてのボス達が居てからこそ私らはやれるんだ。その辺は感謝してるよ」

「然り気無くこっちが恥ずかしくなる台詞を言いやがって……」

 

 トンプソンの言葉にプイッと顔を背けるエル。クール系な男性がちょろっと恥ずかしそうになった顔を見ては可愛いとカトレアやトンプソンだけじゃなく、他の皆もニヤニヤしながら見ていた。

 丁度今は休憩中だったものなので、さっきの約束を覚えていたのか向こうのM16が話し掛けて来た。

 

「この際、ついでだから教えてくれないか?そっちのグリフィンってどんな感じの生活とか送ってるよ?」

「……代理人」

「そうですね……まあ、それなりに活躍してくれましたし、少しの間は話の場を設けますよ」

「助かる」

 

 まだ鷹山が説教を受けてる間、エルは自分達の世界の事情について話した。自分とケンジ、そしてカトレアの関係。カトレアの脳を本来のM4と同じく頭部パーツに移植した事によってトカレフとして生きながらもカトレアとして生き返った事。蝶事件の裏側や最短ベストタイムでAR小隊を助けたり、一部の鉄血人形を正気に戻させたりする等……とにかく覚えている内容は全部話した。

 

「そうだったんですか……トカレフ……いや、カトレアさんはずっとお兄さんと一緒に……」

「気にしないで下さい。私、後悔していませんから。私の身体は滅びても、こうして記憶を受け継がれている限り私は兄さんと一緒に居られる。兄さんやケンジさんが頑張ってくれた分、恩返しをしたいから……」

「強いな……」

「ええ、羨ましい絆ね。色々と暴れる点を除けば……」

 

 さっきまでM4とカトレアがしんみりしていた話をしていたのに、AR-15の一言で台無しになった。実際、否定出来ない要素が沢山あるのでどうしようも無いのだが。

 そうこうしている内に、漸く説教から解放されたのか疲れた様子の鷹山が戻って来た。

 

「あ゙ぁ゙~……やっと終わったぁ……」

「自業自得だ。幾ら何でもTASでやったら困惑したりするのも当然だろ。相手の度肝を何度抜かされると思ったか……」

「長いムービーとかはTASにとってイライラタイムなの!それと例外的な敗北以外は常勝なのがTASだから」

 

 怒られたばかりなのに、まだ笑顔を見せる鷹山。TASからすれば、どういう流れであろうと結果が良かったり、ギリギリセーフとかで間に合っていれば良いのだ。例えて言うなら死人が出てるぞと言わんばかりの光景なのに、取得した称号が「へいわしゅぎしゃ」とか。価値観がガバガバ過ぎて、優しいのか鬼畜なのか分からなくなってしまっていた。

 そんな彼の凄さや強さに興味を持ったのか、ゲッコーがマヌスクリプトに呟く。

 

「……マヌスクリプト、彼は強いのか?」

「え?強いと言えば強い部類だけど……まさか、勝負したいの?」

「まあな。最初はただ笑っているだけの存在だと思っていたが、彼の動きとかを見たら只者じゃないと思ってな」

 

 ゲッコーはそう言うが、多分他の人が見てもゲッコーと同じ事を言っているかもしれない。だが、ゲッコーの言い分は違う。単純に強いだけでなく、計算し、どういう流れを掴むのか、素早く終わらせるのかを研究した後すぐに実行に移る行動力。

 相手の如何に殺すか、或いは無力化させるか。自分が無傷のままで生還するにはどうするべきか等……ありとあらゆる方法を模索しているからこそ興味が沸いたのだ。それがおふざけだろうと日常生活で使われようと。

 

「愚か承知で頼みたい。私と勝負をしてくれないか?」

「……マジで?俺より強い奴に会いに行くスタンス?」

「かもしれないな……先日も戦いを挑まれたが、彼女も中々強かった。だが、君は違う。果てしないその強さ……私の力が一体何処まで通用するのか、試したくなって来てな」

「力試しって事か。良いぜ、そのノリ嫌いじゃないぜ」

「本気でやるのでしたら外でお願いします。特に鷹山指揮官、貴方の場合は力を入れ過ぎてこちらにとばっちりが来ても困りますから」

 

 ごもっともな意見に苦笑いの鷹山。ともかく、ゲッコーの要望を叶える為、一旦は外に出ては少し広めの場所で試合をする事になった二人。

 普段見られない違う世界線同士の戦いに興味を持ったのか、ギャラリーもそこそこ沸いている。ゲッコーが勝負する噂を聞き付けたのか、404小隊や他の戦術人形、果てにはグリフィンの関係者が来たりする等、結構な人で溢れていたのだが……。

 

「何か、戦う奴もう一人来ていない?」

「うふふふふ……」

「すまない、彼女がどうしてもと言う位だから……」

 

 何故か戦う側として、向こうの世界のMk48が一緒になって来ていた。彼女曰く「彼女以上に強い人が居るなんて……私の中のプライドが疼くのよ」とやる気になっていたそうだ。

 その一方で、あの二人に勝負を挑むなんて無茶無謀にも程があると身を以って知っている人物達も……。

 

「ねえ……これ大丈夫なの45姉……?」

「分からないわ……でも、あのゲッコーが勝負を挑みたいって言って今の状況なんでしょ?ゲッコーが自ら勝負を挑みたいって言う位なら、もしかしてとは思うけど……」

「それに加えてあのMk48が居るから尚更負けるんじゃ……」

「違いますよ、皆さん」

 

 上からUMM9、UMP45、HK418がそう答えたが、それに対して向こうのM4がスパッと言い切った。意外な答えにUMP45は更に詳しく聞いて来る。

 

「あら、あの人が勝てるって言うの?異世界の人だよ?」

「そうですね。ですが、あの人は根本的に違うんです。言うならば常識を逸脱した人物……その気になればあの人は本気で沈める事も可能なんです」

「沈めるってどの位?」

「一人で鉄血の基地を壊滅させ、世界中に蔓延るE.L.I.D.を全滅させるとか……馬鹿じゃないのかと呆れるかもしれませんが、彼はそれが出来るんです。たった最短時間で」

 

 表情からして嘘は言ってない事に気付くUMP45。実際に色々と起きた出来事に遭遇しているのか、これには「え……マジ……?」と驚いた表情をしていたという。

 まさか、本当に実現するんじゃないかと誰もが思った。そして、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされる。

 

―――ザタイムオブレトビューション、バトーワン、デッサイダデステニー

 

「ゲッコーがあんなにワクワクした顔で言うものだから気になっちゃった。言われてみれば、貴方本当に凄い気を感じる。貴方は私を満足させてくれるかしら?」

「はは、お手柔らかで済むかどうかは分からないし、力加減出来ないよ?」

「ふふふ、言ってくれるわね。その余裕も今の内……よ!!」

「おっ!?」

 

 喋っている間にも鷹山の間を詰め寄るMk48。しかし、お得意の乱数調整がリアルラックを生み出す。例えて言うなら、攻撃する度に「MISS」という文字メッセージが表示される様に何度も避け続ける。

 

「この……!当たりなさいよ……!」

「基本、運は俺が操ってるんでな。俺が生きてる限り、運もまた生き続けているのさ!」

「何よそれ!卑怯じゃない!」

「卑怯?最速タイムを目指すには必須過程よ!かのロトの勇者ですらりゅうおうにラリホーで永眠させては素手とか銅の剣だけでクリアしたんだぞ?」

『嘘でしょ!?』

 

 割と衝撃的な内容に一部知ってる人からは目から鱗の内容。多分、その勇者もTASを搭載していて、会心の一撃を繰り返してはひらりと身をかわしているのだろう。

 それが今こうして語っている。Mk48の攻撃をかわしては見事にカウンターをヒットさせる鷹山。これまで向こうの404小隊やAR小隊が束になっても勝てなかったMk48に対して勝てたのはゲッコーだけだった。

 だが、鷹山の場合は違う。無駄な動きをせず、まだ体力を余裕に残している。代わりにカウンターばかり喰らっては手も足も出ないMk48は次第にイライラし始め、更に攻撃が荒くなり始めたが―――

 

「隙あり!」

「そっちがな!」

 

 そこから鷹山の動きが激しくなった。さっきまで拳1つでやっていたのだが、いきなり蹴りやジャンプとかを使ってはスピーディーになっていた。しかも、空中に浮かせたかと思えば途切れる事なく空中コンボ炸裂。更には弱パンチだけでハメてはバスケの様にバウンドしていた。

 これヤバいパターンじゃね?と誰もが思った。段々とキモいコンボを繋げ、もうやめたげてよぉ!と言いたくなるが、そこから悲劇が……。

 

「南斗水鳥拳奥義!飛翔白麗!!」

『えええええええええええええええええええええええええ!!!?』

 

 まさかの南斗聖拳でフィニッシュ。オーバーキルにも程ありません?と言いたくなるが、流石に「ひでぶ」や「あべし」までは避けたらしく、加減はしたらしい。やり過ぎた感があったので、一旦彼女の身体を起こしては大丈夫なのかと容態を確認した。

 

「大丈夫か!?ちょっと大人気ないというか、一方的に攻撃しちゃってKOさせちまったモンだから死んだんじゃないかと……」

「痛たた……大丈夫よ……流石にゲッコーが認めただけの事はあるわね……手も足も出ないまま終わっちゃった……貴方、強いのね……」

「あ、回復もさせてあげるから動かないで」

 

 即座にMk48に治療を施す鷹山。数秒もすると、Mk48の傷はみるみる無くなっていた。後のケアもバッチリ終わらせた所で次はゲッコーとのバトル。

 

「待たせたな」

「いや、待たせていなかったんじゃないかい?君の場合、大方最短で倒すルートを模索していたんだから。そうでなければ、私よりも早く終わる筈が無い」

「え、マジか」

「……計っていなかったのか」

「じゃあ再走する?」

「止めてあげてくれ。彼女が余りにも可哀想になる」

 

 それもそうだな、と納得する鷹山。しかし、あのMk48を手も足も出させずにノーダメージで終わらせたという光景はギャラリー達を驚かせるには充分だった。

 特に一度は戦った小隊メンバー達もあんなにアッサリと倒してしまうのは想像もしていなかったのだろう。もしかしたら次に戦うゲッコー相手でもその凄さを発揮するのでは……?と期待が膨らむ。

 

「さて……出来る事ならば彼女の仇を討ちたい所だが……あの光景を見てしまった以上、一撃を入れられるかどうかすら怪しいけどね。先攻は君からで良いよ」

「え?良いの?んじゃ、遠慮無く……!」

 

 結果が分かり切っていたのか、ゲッコーも半ば諦めモードになっていた。だが、せめて一撃でも入れたいという気持ちがあるものの……TASという壁を乗り越えるには無理な話だった。

 一方、鷹山は何か印を結んでいた。すると……。

 

「TASが一人、二人、三人!ファイナル分身!!」

『アイエエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?』

 

 なんと、いきなり鷹山の分身が4体現れ、本来を含めて合計5人の鷹山が目の前に現れたではないか。これにはゲッコーも一部の文化を知ってるギャラリーも驚きを隠せない。

 

「分身だと……!かの日本では隠密捜査や暗殺等、裏で活躍する影の存在となる「忍者」が存在していたが、まさかここで分身を見るとは……!だが、所詮は攻撃を避ける為の分身!幾ら攻撃しようと1発でも当たれば跡形も無く消える筈だ!」

「フッ……」

「何がおかしい?」

「一体いつから『分身が只の身代わりで終わる技だと錯覚していた』?」

「何……だと……?」

 

 分身の術は確かに身代わりとしては匹敵する術だろう。だが、日本の文化には「分身も攻撃が出来たりする」という要素も取り入れてこそ忍者という風に扱う作品が多く、鷹山の言った内容はそれに該当する。しかし……

 

「確かに分身は場合によってはたった数回の攻撃で終わる最弱な技だと思うだろう。だが、それは大きな勘違いだ。分身は分身の元なる本人の強さと同等に反映されるモノだ。当然、意志も同じ。即ち、パワー、スピード、テクニック……分身の耐久力は弱いものの、それ以外の能力は全部コピーしてあると言っても過言じゃない。ここで問題だ」

「問題……?」

「能力は全部コピーしたと言ったよな?では、これから補助や任意の行動をする事で起こり得る事ってなーんだ?」

「まさか……!?」

「正解は「41連携」が出来るって事だ!!」

 

 嫌な予感を感じたが、時既に遅し。分身全員と本体がオーヴァドライブ発動し、そこからリヴァイヴァを応用した連携が始まる。その名も―――

 

「リヴァイヴァスライバベル水撃スープジャイアントロコ金剛カイザーブラスター陽子ロケット鬼バルカン破壊鉄下駄電束火炎プラズマ跳弾神速熱線放射ソニックディフレクト電撃濁流清流アル・三スカイ燕曲射短勁フラッシュライジングロザリオアル・十字塔無月真アル・羅刹掌!!」

『名前長ッ!!』

「略して『剣』!!」

『剣!?』

 

 ずっと俺のターン!と匹敵する位の途切れぬ連続コンボ。格闘だけじゃなく、それ以外の技が組み込まれた結果こうなってしまう形となった。しかも、分身一人一人が別々の技を繰り出すモノだから全く予想のつかない攻撃にゲッコーは戸惑うしか無かった。反撃しようにも反撃出来る隙すら起きず、2分間はその攻撃は続き―――

 

「ぐはぁっ……!」

 

 最後に「一 撃 必 殺」という文字が浮かび上がって終了。一撃とは一体何だったのか。この連携、どの位の威力があるかと言うと16万近くのダメージを与える事ができ、メタ的に言うとドルフロ公式のボスNPC最大体力値を持つ代理人の体力を7割から8割持って行ける位の威力である。

 それでもゲッコーは耐え抜いたが、再びオーヴァドライブを発動してはスタンバイする鷹山達に絶望したのか―――

 

「ま、参った……私の負けだ……」

 

 と、降参して終了。流石に2度目も同じ攻撃で同じ威力を出されたら無事で居られる自信が無い。手も足も出ないまま、圧倒的な力を見せ付けられたゲッコーは自分の力を計れずに終わったものの、確かに彼は強いと確信していた。

 すんなりと終わったのにも関わらず、美しくも大胆な技の連発にギャラリーは「うおおおおお!!」と叫んだ。

 

「あのゲッコーを越える奴が居たとは……」

「それよりかは、あの動き何だったの!?二人揃って完全に手も足も出ないまま終わっちゃったじゃない!」

「5人による連携……これ、何かの参考にならないかしら?」

 

 こうして、新たな最短レコードを叩き出した記録がまた1つ生み出されたのであった……。

 

 

 

 

 

 ゲッコーとMk48による勝負も終わり、何時しか時間も夕方になっていた。時間になるまで皆は店内で寛いでいたが、さっきまで戦っていた影響かゲッコーも少しだけ疲れ気味に。

 

「完敗だ。私の想像していた通り、やはり君には敵わないみたいだ。私の力では到底及ばない事にもね……」

「そうかな?あの連携の中でギリギリ生きているかいないかの瀬戸際だったのってアンタ位しか居ないと思うよ?他の奴等とかにやったら死ぬ可能性高いけど」

「はは、それは是非とも遠慮したい所だね」

 

 もう途中から格闘じゃなくなっていた気がするが。喋っている内に時間も迫り、そろそろ戻ろうかと席を立つ。

 

「んじゃ、今日はこの辺で」

「はい。今日はありがとうございました。若干、認めたくない部分もありますが……」

「サーセンwww」

「やれやれ……」

 

 はぁ、と溜め息を吐く代理人。彼女も直接あの光景を見てしまった被害者(?)の一人だったので、正直彼の行動1つ1つに度肝を何度冷やされたか。

 

「目に余る光景ばかり見ていましたが、能力面に関しては欲しい人材ですね。今後、またご協力をお願いする事があるかもしれませんが……」

「ああ、構わないよ。大体仕事終わらすのは早い方だったりするから」

「そうですか。なら、問題ありませんね」

「それ本気で言ってるのか代理人?」

「……一部は伏せておいて下さい」

 

 自覚はあったのか目を逸らす代理人。それがあまりにも可笑しかったのか、釣られて皆も笑い、代理人もちょっとだけ困った顔をしていた。

 別れの挨拶を済ませ、フワッとワープして消える鷹山達。見届けた後、一気に緊張とかの反動が来たのか、どっと疲れが襲い掛かる。

 

「ふぅ……今日はまた凄い人が来ましたね」

「ああ。中々面白い者達でもあったがな。これで前線を戦い続けるのも納得だ」

「運命すら変えてしまう圧倒的な力……きっと彼等の居る世界線は我々の暴走を容易く止め、E.L.I.D.の問題も速攻で片付けそうですね」

「有り得そうだ……何ならE.L.I.D.用のワクチンやら武器やらを大量錬成してもおかしく無い辺りがな……」

「あー、その辺確かに有り得そう」

 

 もうあいつらだけで良いんじゃないかな、と誰もが納得した様な気がした。

 騒がしいが、毎日飽きる事の無い日常が続く彼等の前線。笑顔が絶える日が無く続くのは彼等の世界もこの世界もきっと変わりは無く、その笑顔が見たいが為に頑張れるのだろう。

 

「また来た時はちゃんとしたおもてなしをしなければいけませんね」

 

 そんな彼等を思ってか、少しだけニコッと代理人が笑いながらそう呟く。夕日の照らされる光に当てられ、喫茶鉄血は今日も平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・おまけ① マヌスとTASさんの密会(台本形式&空き部屋での会話)

 

マヌス「鷹山指揮官!私、同人誌のネタか余り思い浮かばずに困ってます!何かとっておきのネタはありませんか!?」

TAS「ほほう、そう来たか。だが心配は無用だ。俺が素晴らしいネタを持って来た」

マヌス「い、一体どんなのですか……!?」

TAS「ある意味本人には申し訳無いネタだが、1つ目は「人妻となったM4」の同人誌!」

マヌス「な、何ぃ!?」

TAS「結婚してから子供を産んだりとか、イチャイチャしていそうな雰囲気があるが、やはり注目点はむっちりとした身体……正に人妻と言わざるを得ない位の甘優しいボイスで男もショタもメロメロになる可能性が大……!」

マヌス「は、破壊力が高い……!これにはマヌスさんも濡れて来ますよぉ……!」

TAS「2つ目はSOPMODの犬耳と尻尾のアタッチメントを付けての露出お散歩プレイ!人にバレたらお仕舞い……だが、その興奮が止まらないのと見られたら見られたでゾクゾク感じる彼女の恍惚な笑顔……エロくない?」

マヌス「ワイトもそう思います(真顔)」

TAS「そのままズコバコプレイに突入しそうだが、本人が幸せならそれで良いんじゃないんですかね。次にAR-15だけど、この子は対魔忍か姫騎士プレイとか似合いそう」

マヌス「野生のくっころ!」

TAS「プライドとか高そうだし、思い浮かぶシーンはコレしか無いと思った。繰り返される調教と改造させる身体……終わりの果てに待ち構える彼女は闇堕ちか雌奴隷か……うーん、正にテンプレ!」

マヌス「ハァハァ……マヌスさんの妄想も止まりませんよ……!」

TAS「或いは趣向を変えて幼馴染とか学校の生徒会長とか優秀なクラスメイトプレイなんかも良いよね」

マヌス「分かるわぁ……絶対純愛に持って行ける格率大ですね」

TAS「最後にM16とRO635。M16は酒で眠っている間のプレイ……と思いきや、途中で起きてはわざと眠ったフリをするというシチュエーション!最後は互いにドキドキしながらもラブプレイ。乙女な一面見せるお姉さんは好きですか?」

マヌス「いっぱいちゅき(歓迎)」

TAS「対してRO635はお姉さんプレイ!ROをお姉ちゃんと呼びたいだけの甘やかされたい人生……不器用ながらも互いに愛し続けるシチュエーションはおねショタを彷彿させる妄想が捗りますねぇ」

マヌス「最高かよ」

TAS「更に!この二人によるバイノーラルCDなんてどうよ?耳元に囁かれ、二人の声で誘導されてはゾクゾクして興奮する事間違いなし!」

マヌス「良いねェ、良いねェ、最ッ高だねェ!!」

TAS「次の同人誌はコレで決まりだろ!そうと決めれば早速書きに出掛ける!後に続け!」

マヌス「はい!」

代理人「お二方、自重しませんと私も黙って見過ごせませんよ」

TAS/マヌス「「あ」」

 

 怪しいと思った代理人がこっそりと後をつけては聞いていたのだが、即座にバレた。

 しかし、ここで死んで堪るかとマヌスクリプトを抱えてはすり抜けて脱出。あっ、と気付いた時には完全に逃げられ、物凄い最短時間で同人誌が完成され、錬成され、既に多くの手に渡ったとか……。

 ゲッコーの所にも手が届き、全部読み終えた時にはヘヴン状態になっていた。後にゲッコーとマヌス共々こってりと叱られ、1ヵ月間は手伝わなければいけないという罰を受けたが、二人は口揃えて「我が生涯に一片の悔い無し」と言っていた。同人界でも彼の存在無くしてはここまで大きくならなかったのだろうと。ちなみに……。

 

M4「人妻……け、結婚したらこんな風な生活があるのかな……ちょっとドキドキする……」

SOPMOD「ぺ、ペルシカが良いなら……私、やっても良いよ……?」

ペルシカ「……マジで?」

ハンター「ふむ……なあ、次はそのコスプレでやってみないか?」

AR-15「本気で言ってるの!?あ、いや、別に嫌って訳じゃないけど、その……!」

M16「ふーん……なあ、ユウト。折角だし、このシチュエーションってヤツやってみるか?」

RO「お、お姉ちゃん……ゆ、ユウト君がそう望むなら……」

ユウト「えええええええええええええええ!!!?」

 

 事情をある程度知ってた人達にもそれなりの反応があったという。

 

 

 

・おまけ② 胸が大きくなりたい女子の事情

 

UMP45「胸が大きくなりたい……」

TAS「お困りの様だな!それなら俺の娘にならないか?今ならバスト201センチまで大きく出来るぞ!」

UMP45「バスト201!!!?」

ジャッジ「おい、何だその魅力的な話!?いや、しかし……大き過ぎるのもまた……!」

TAS「2で割っても100近くまで大きく出来るならええんやない?」

UMP45/ジャッジ「「娘になります!!」」

UMP9「ちょっと待ってよ45姉!そんな胸のおっきい45なんて……45姉じゃない!」

ドリーマー「考え直した方が良いんじゃない?どうせ碌な成長方法じゃないから……」

UMP45/ジャッジ「「あ?(威圧)」」

 

 この後どうなったのか……それは知る人と知る。とりあえず、イメージしろ!




はい、何か色々と申し訳ありませんでした(2回目)
ある意味キャラのぶっ壊れ一番は多分M4だと思う……彼女、純粋系な女子だとは思っていたんだけど、多少そういう知識ある方なんじゃないか……?と思ってたから……(喫茶鉄血「不思議の国のM4」参照)
物理的にはやはりゲッコーとMk48のお二人。流石に南斗と「剣」はマズったかもしれない。

・ロトの勇者ですらりゅうおうにラリホーで永眠させては素手とか銅の剣だけでクリア
初代ドラクエのTASでは、りゅうおうにラリホーをかけては眠らせ、そこから会心の一撃を当て、攻撃はミスさせたりとかなりの乱数調整を見せた。ロトの剣とは一体何だったのか……。

・弱パンチだけでハメてはバスケの様にバウンドしていた
「【TAS】北斗の拳 審判の双蒼星 拳豪列伝 レイ」を参照。かのラオウをバシバシ殴ってはバウンドさせる光景は正しくバスケ。何よりも途切れぬコンボと動きがキモい。何でアレ攻撃が続くんだろうか。

・TASが一人、二人、三人!ファイナル分身!!
FF11に実在するプレイヤーの一人である「タツヤ」がやり遂げたあの技。後に有名になった「汚い忍者」も使っていた。

・略して『剣』
詳しい事はニコニコ大百科にある文以下の通りである。

『サガフロンティアの連携攻撃は、通常、戦闘に出撃可能な人数である5連携が最大なのだが、時術の奥義オーヴァドライヴ中に停滞のルーンや万能油を用いると8連続攻撃が可能なままオーヴァドライヴが解除されるというバグがある。これにより、最大9連携が可能となる。9連携が最大となるのはオーヴァドライヴに必要な時術の資質がゲーム中1キャラに制限されるためだが、それに加え、チョコボの不思議なダンジョンのおまけのサガフロンティアの「さいきょう」データを導入すると、大半のキャラがオーヴァドライヴを習得しているために理論上の最大値40連携が可能となる。もっとも、同じ人の攻撃が連続すると連携攻撃が中断されるため、5人が8回の攻撃を入れ替わり立ち替わり実行する、という相当稀な確率を引き当てる必要があるため、TASさんの力をなくしてこの40連携を成立させる事は難しいだろう。その際の連携名はバグにより「剣」となってしまう。』

殆どはこれを使用したTAS動画が上げられているのだが、研究を重ねた結果なんと「41連携」が出来るという実績を残した人物が居た。恐るべし……。
これによるダメージは35248ダメージなのだが、オーバーフローを起こしている為、実際は166320ダメージ。大体敵が死んでる。

ちなみに、ドルフロ攻略wikiを参照に回避とか防御とかを考慮せず、体力が一番高い代理人(攻略wikiでは最大HPは22万)に当て嵌めた結果、差し引いても残り体力は53680。パッとしないのでパーセント計算すると……0.2を掛けると「44000」。0.3で「66000」。つまり、代理人はあの攻撃を受けた場合、体力を7割か8割の勢いで削られているのだ。しかし、削られているのにも関わらず、それでも一発(一発とは言い切れないが)耐えるのは正直凄いとしか言い様が無い。流石エルダーブレインの側近だけの事あるよ……(白目)

・バスト201
「【TAS】色気づいた娘が女王を目指すそうです【プリンセスメーカー】」から由来。このTASでは主に色気を主に目指した結果、バストがかなりの大きさになったという凄い事態に。しかし、大きくさせる方法が悪魔との契約関係が一番多い……これは酷い。


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新しく来た指揮官達が色々とヤバかった件について
私の指揮官達は何処かおかしい


艦これみたいにあんまりストーリー無いかと思いきや、割と心にグサッと来たでござるの巻。
特に404小隊……主に45姉があまりにも可哀想だったので、40共々救ってやると思って書いた初投稿がコレだよ!

ネタがネタだから、分かる人いるかな……?
ちなみにTASは任天堂系が多いけど、何かTASでしか使えない技名とかシステムとかあったら教えて下さい。ちょっと調べて見てみたいので。
ついでに、TAS能力持ったそいつが成長する。(!?)


 私の指揮官達は何処かおかしい。

 そう思ったのは今更に限っての事では無いが、少なくともここに居る全員がそう思うだろう。いや、全員だけじゃない。上層部や鉄血側まで指揮官達をヤベー奴だのどうこう認識している。実際その通りだから何の反論しようも無いのが現実か。

 

「あはは~待て待て~♪」

「嫌ァァァァァ!!来ないでぇぇぇぇぇ!!」

 

 少なくとも、今見ている目の前で短パン一丁の鬼に面みたいなのを被りながら爆弾の付いた矢を当たらない様にドンドン放ちながらデストロイヤーを追い駆けたりする場面とか諸々の点が無ければまだマシだろう。残念な事に、今追い駆けている彼がその指揮官の一人。

 

「はぁ……」

 

 彼女ことUMP45はもう何度目になるのか分からない溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 UMP45は鉄血で作られた戦術人形であり、彼女は主にスパイ活動としての用途で作られた。グリフィンに所属した後、国家安全局の戦術人形としても活動。後々で彼女は同じ系統であるUMP40と出会う。彼女もUMP45と同じスパイ戦術人形として活躍していたらしく、出会うまでは孤独の辛さを感じではいた。しかし、UMP45と出会った事によりそれも薄れていった。

 UMP40と一緒に練習したりして、彼女達は互いに幸せな時間を過ごしていたが、それも長くは続かなかった。

 

 蝶事件―――

 国家安全局による鉄血の工場への襲撃。対象人物の拘束にはスパイ人形であるUMP40やUMP45も含まれていた。二人は反撃すべく行動するが、鉄血のAIを作ったとされるリコリスが撃たれ、鉄血工造を守るためにAIを起動。しかし、そのAIは不完全なままであった為エラーが発生。人間は不要という判断の元、鉄血人形は暴走。工造所属の人間も殺してしまい、暴走AIと化した戦術人形達は人類に宣戦布告を行った。

 

 鉄血で作られたUMP40とUMP45もそれに含まれていて、鉄血製人形全体の記憶媒体であるメンタルモデルをフォーマットする事態に。しかし、UMP40は自身を破壊すればUMP45が生き残れると言い、彼女に自分を殺して欲しいと頼んだのだ。

 

 元々のUMP40は何者かが国家安全局による作戦を妨害することを目的として送り込んだ破壊工作用人形で、UMP45はUMP40の予備機体だった。しかし、自分が不法な命令で使い潰される人形である事を知っていたUMP40はそれに反発。UMP45の指揮官権限を書き換え「誰にも利用されず自分のためだけに生きる」という自身の望みをUMP45に託して自身をUMP45に破壊して欲しいと言ったのだ。

 

 どちらかが破壊されないと停止しないセキュリティシステム。UMP40は全てを知った上で犠牲になろうとしていた。自身の装備と音声データをUMP45に託してまで。

 

 UMP45は運命を呪った。何故こんな目に遭わなければいけないのかと。あんな幸せが続けば良かったのにと心から悔やんだ。自分にとって生きる意味にも繋がった彼女を自分の手で殺さなければいけないのは辛いだろう。しかし、早くしなければ更に被害が拡大し、人々が殺されてしまう。彼女は全てを恨みながらも引き金を引こうとした。その時―――

 

「おい、大丈夫か!?」

「「え……?」」

 

 ふと、誰かの声が聞こえた。振り返ると、そこには複数の男達が何か武器を持ちながらこっちに近付いていた。良く見ると、彼等の格好は軍服の様な姿ではなくラフな格好をしていて、背中には大きめの荷物が幾つか背負っているのが見えていた。その内の一人、ボウガンと木刀らしき物を持った人が「大丈夫?」と心配してくれていた。

 

 見るからにして敵意もければ鉄血でも他の所属している軍でもない事には安心したが、逆に疑問が生じる。

 

「何でこんな所に人が……?」

 

 そう、彼等は言うならば一般人だ。普通ならば避難したり逃げ出したりするのが当たり前な筈。なのに、彼等は堂々とここに居る。

 暴走した鉄血人形と遭遇しなかったのかと気になっていたが、それを見透かしたかの様に彼等はこう答えた。

 

「何でって言われても……俺達さっきまで旅してたんだが、道中で訳分かんない奴に絡まれてな。確か、鉄血人形だっけ?いきなり銃とか放って来るものだから、咄嗟にボウガン出して倒したし、進む先であの人形達がわんさか沸いててな。とりあえず片っ端から木刀とか使って倒したけど、あれ壊して良かった奴だった?」

 

 唖然。え?この人何言ってるの?と二人は疑問に思った。すると―――

 

「あら、こんな所で人間がいたなんて。迷い込んだのかしら?」

 

 今度は別の声が聞こえる。その先にいたのは鉄血工造で作られた1つである「スケアクロウ」。運悪く彼女がここに来てしまったのだ。鉄血の戦術人形相手では武器はともかく、まともな防具すら着ていない彼等には致命的。どう考えても死ぬ未来しか見えない。

 

「しかし、貴方達が命乞いをしようと我々は貴方達も含めて全ての人類を殺せと命令を下されていますので。ああ、逃げても良いですし、貴方の持ってる武器で戦っても良いのですよ?まあ、貴方達がどの道ここから脱出して生きて帰れる保障は1つもありませんけど」

 

 完全に死刑宣告。袋のネズミ。しかし、彼等はそんな状況下でも慌てる様子もなく、逆に余裕の笑みを見せていた。

 

「何がおかしい―――」

 

 と、言い掛けた途端。彼が真っ先に動いた。この時、目を疑いそうな光景が広がる。

 彼は一瞬にしてスケアクロウの周りを飛んでいた小型ビットを全て破壊し、最後にスケアクロウに3発弓を撃った。

 

 この間僅か1秒。たった1秒で彼はスケアクロウを倒したのだ。スケアクロウは最後まで言わせる時間すら与えられず、そのまま床に倒れ、起動停止した。

 

「悪いけど、右も左も分からない状況で死ねって言われても無理なんだけど。喋ってる暇があったらさっさと殺すのが定石だろ。こちとら人間に近い奴を殺して気分悪いし。せめて木刀で殴って気絶させるならまだ良いけどさ」

 

 そして、ここでようやく気付いたのだ。彼等が鉄血の戦術人形を倒してここまで来たのは本当なのだと。恐らく、彼の周りにいる他の人も彼と同じく強い存在なのだと認識した。

 

「君達だけでも良いからさ、一体何が起きてるのか説明してくれないか?どんな些細な事でも良いから」

 

 この人達ならば、もしかしたら希望が見えて来るかもしれない。根拠は無いが、少なくとも彼等が普通の人間で済ませる訳が無いのだ。ならば、今抱えている問題も解決してくれるかもしれないと、UMP45は藁にでもすがる想いで彼等に全てを告げた。

 表情を全く変えず、うんうんと真剣に聞いてくれる彼等。全て話終えると、彼は「ここまで辛い思いして良く耐えてくれた。頑張ったな。」と頭を撫でながら励ましてくれた。それが嬉しかったのか、UMP45は泣き出した。抑え込んでした気持ちが溢れ、全てを吐き出した。それでも受け止めてくれた彼と彼等がとても嬉しかった。

 

「しかし、問題はシステムだな……どちらか片方死ねば止まるって何だよそれ」

「絶対動き出すに1万ペリカ。コレは言い切れる」

「何でこういう事が起きるかもしれないと想定して無かったのかなぁ……コレガワカラナイ」

 

 揃いも揃って鉄血のセコムに不満を次々と言う彼等。本題のどちらも死なずに済む方法を聞きたいのだが。後、何故そんなに余裕なのか。

 

「なあ、何か方法無いの?」

「アレ使えるんじゃないか?」

「「アレ?」」

 

 UMP40とハモった途端に別の人が荷物を下ろしてから何かを探した。ちょっと経ってから荷物からあるものを取り出した。それは2つの白い粉末だった。

 

「これは?」

「仮死薬と蘇生薬だ。仮死薬は簡単に言うと冬眠状態……つまりは人が死んだかの様に体温が低くなり、呼吸も心臓も一時的にストップし、まるで死んだかの様に思わせる擬態のアイテム。反対に蘇生薬はその真逆。仮死薬の投与で止まった心臓にショックを当てて息を吹き返す必須の薬だ」

「となると、死ぬんじゃなくて本当に死んだかと見せ掛ければ良い訳か」

「そういう事だ。もっとも、そのセキュリティが何を基準として死んだのかどうか判断してるのは分からないが、実弾で撃たれるよりかはマシだろ」

 

 上手く使えば本当に生き残れるかもしれない。そう言われた時には沈んだ二人の顔も少しずつ明るくなる。まさか、本当に絶望の淵から救い上げるが如くやってくれるとは思わなかったからだ。

 

 ちなみに、これを何故彼等が持っていたかと言うと、旅先で盗賊やゴロツキの様な奴等と遭遇した際にやり過ごす為の回避策として大量に作っていては持っていたらしい。薬も自前で採っては調合したもの。実際にそれを飲んで危機を何度か回避した事もあったとか。

 

 基本、この薬は両方飲む事が前提となっている。仮死薬だけ飲んでも蘇生薬が飲めないのでは意味が無いので、仮死薬の効果が発揮した後、1分後に蘇生薬の効果が発揮するように細かい調合が施されている。

 

「だが、過信は禁物だ。仮に飲んでもセキュリティが君達を生きていたと再認識されたら面倒だ。そうなる前にセキュリティを壊す」

「だったらセキュリティまでは俺が行くわ。ケツワープあればどうにか出来そうだし。それと、ブーストハンマー貸せ。強引に打ち砕く」

「外で巡回してる鉄血の方は?」

「俺が行く。寧ろ、恐怖心出させて戦場を混乱させるってものあるからな」

 

 何だか聞いてはいけないモノを聞いてしまった気がするが、多分理解するには無理なんだろう。ただでさえ先程の高速連射ボウガンを見たので、突っ込んだら色々と疲れそうな気がしてならなかった。

 

 気分を切り替え、いよいよ作戦を始める。最初にUMP40が仮死薬を飲み、セキュリティが死んだと認識した瞬間に別の人がセッティングしていた場所から強引にスタート。破壊が終わった後、彼が外で鉄血の動きをかく乱させる。

 

 ついでに全員が男性なのでせめて名前を教えて欲しいと言ったが、鉄血の奴等が盗み聞きされても困るから、今はコードネーム呼びにして欲しいと言われた。それぞれ、バーサーカー、TAS、コマンドー、アイザック、ヴィン、ボマー、ドクターと呼ぶ様にした。

 

「んじゃ、始めるぞ」

 

 覚悟を決めて、UMP40が仮死薬を飲む。バタリと倒れ、段々と眠気に襲われ、次第に体温が低くなり、呼吸も止まり、全てが動かなくなる。その瞬間―――

 

「ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤッフゥゥゥゥゥ!!」

「!?」

 

 UMP45は目を疑った。何故ならTASが階段で大きく跳んだかと思えば、変な奇声を上げながら人のスピードとは思えない速さで駆け抜け、扉をするりと通り抜けたではないか。あれ、人間だよね?と思ってるのも束の間、セキュリティが解除されたというアナウンスが聞こえるが、ドガンッと何か壊した音が聞こえ、無線からザザッと誰かが通信して来る。

 

『こちらTAS!セキュリティ含めた全部の機械を壊し終わったぜ!ホントにセキュリティガバガバ過ぎて草生えるんだけどwww』

「嘘つけ。どうせセキュリティでロックされてる扉の前で1フレーム刻みのすり抜けで通ったんだろ」

『何故バレたし』

「何故バレないと思ったし」

「嘘でしょ……?」

 

 まさか本当に壊したのか?と疑問視するUMP45。その間にアイザックがUMP40との間にケーブルでパソコンに繋ぎ、カタカタと早い手付きで操作して作業する。

 

「あ?コイツか?何か分からねぇシステム組み込んであるみたいだけど、削除すれば良いだろ。というか、この機能いらねぇ」

 

 アイザックが見つけたのはAIから送られる命令を受け付けるコードだが、それを自前のスキルで鉄血との接続をシャットアウト。これにて、UMP40が鉄血の命令を受けて強制的に動かされる事は無くなった。ついでにUMP45にも同じ様に施され、これで鉄血の人形ではなくなった。

 

「そろそろ起こすか」

 

 ドクターが蘇生薬の粉末をUMP40の口に入れ、水を流し込む。流し込んで1分後、咳き込みながらもUMP40が起きる。

 

「40……!」

「ああ……45……作戦はどうなった……?」

「大丈夫……私達、ちゃんと生きてるよ……!」

「そう……良かった……擬似的に死んだと言っても、まるで身体がふわふわした感覚だったよ……不思議だなぁ……」

 

 本当に良かったと嬉しがるUMP45。だが、安心するのはまだ早い。周りにはまだ鉄血の戦術人形が徘徊してる可能性もあるのだ。安全な所まで避難しない限り、脱出は困難を極める。

 

「とりあえずどうする?」

「俺が行く。けど、出来れば上から鉄血の奴等が何処に居るか確認したいんだけど……」

「ちょっと待ってろ」

 

 アイザックが近くの機材をガンッ!と壊した後、何かを弄くる様にグイグイと動かす。そこからケーブルを繋げてキーボードを打ち込むと……。

 

「お、出て来た。周辺の監視カメラの情報だけど……結構いるな。殺れるか?」

「急がせんな。えーと、まずはあの辺りに5体以上集まってる奴をどうにかしない限りは話にならねぇ。何か一気に片付ける方法があれば話は別だけど」

 

 周辺のカメラを動かしながら脱出のヒントを探すバーサーカー。すると何かを見つけたのか動きを止める。

 

「これはコンテナか。ん?もしかしたら……多分行けるわ」

「何考えてるのか大体察したけど、俺達はどうすれば良い?」

「振り向いた瞬間を狙って撃ってくれ。一瞬だけど俺を見るだろうし、別方向から来るなんて事もあり得るしな。とりあえずはそれで。ついでにUMPの二人は戦える?」

「ごめん……さっきまで弾を使い終わったから……」

「あたいも戦えるかどうか微妙。45と同じく弾薬が心許ないし」

「分かった。二人はドクターの後ろで隠れててくれ。ともかく行って来る。後、ブーストハンマー借りるぞ」

 

 サッと走り、鉄血人形達の視界を掻い潜りながらコンテナの方へと進む。無事に気付かれる事なく辿り着き、懐からタブレットを取り出す。

 

「上手く行ってくれよ……ビタロック!」

 

 タブレットを翳した瞬間、コンテナに黄色い鎖が絡み付き、点滅している間にブーストハンマーでコンテナを強く叩き続けた。その音に気付いた鉄血人形が何か潜んでいると警戒しながら近付く。しかし、それはある意味悪手だった。

 

「飛んでけッ!」

 

 点滅が終わったと同時にコンテナが物凄いスピードで鉄血人形を吹き飛ばした。その威力は車を最大スピードで飛ばしてぶつけたかの如くに匹敵するが、物によってはそれ以上の威力を発揮するかもしれない。

 

 これを直に受けたのだから、当然喰らった鉄血人形達は巻き込まれては動かなくなった。飛ばされたコンテナは壁にぶつかって勢いが止まったが、ぶつかった際の物音が大きかった影響で周囲の鉄血人形が一斉にこちらに向かって駆けつけて来た。

 

「そうはさせん」

 

 ドクターが懐からナイフを取り出し、パッと上に投げては腕と同じ位置にまで落ちた所で、ハンドルエンドの部分を手の平で強く押し飛ばした。飛ばされたナイフは回転せずに真っ直ぐに飛び、鉄血人形の胴体を軽々と貫いた。その繰り返しで、1本、また1本と取り出しては飛ばすの繰り返し。ナイフとは思えない威力で確実に仕留めていく。

 

 そこからコマンドーやボマーも攻撃を始めた。コマンドーはその辺に落ちてあった鉄血の武器を拾っては撃っていた。銃がロックされていて撃てない場合もアイザックによって強引に解除し、本当は軍人じゃないのかと間違われてもおかしくない正確な射撃と冷静さを出していた。

 

 反対にボマーはTNTと書かれたブロックを投げたり、良くありそうな丸い導火線が付いてる爆弾を投げ続けた。何より恐ろしいのはニッコリした笑顔で「([∩∩])<死にたいらしいな」とか言っていた時は敵全員がゾッと感じた程。最早一体どっちが敵なのか分からない。40と45も互いに抱き着きながら震えていたとか。

 

「鉄血ビビってるー!ヘイヘイヘイ!」

「人間が舐めた真似を!」

 

 別方向ではTASがわざと囮になっておきながらも、鉄血の攻撃を全てダンスしながら避けていた。マシンガンだろうとスナイパーだろうと、まるで攻撃のタイミングを全部読んでいたかの様に。しかも、まだ無傷。彼曰く乱数調整との事らしいが、多分理解してはいけない部分なんだろうと現実逃避を始める二人。それだけじゃなく、ドゥエドゥエと気持ち悪い動きをしながら地味に鉄血人形を蹴ったりして更に注目の的となっていた。

 

 鉄血人形がTASに気を取られている間に、背後からヴィンが襲い掛かる。ヴィンは懐からハンドガンを取り出したが、そのハンドガンもまた異様だった。彼が出した拳銃は回転式のタイプだったが、問題はバレルが3つあったのだ。1発撃ち出す毎に銃弾が3発分発射され、しかもそこそこ連射も早いだけじゃなく、フレームを入れ替えればマシンガンにもスナイパーライフルにも変形する。

 

「ねえ40……あのハンドガンって見た事ある……?」

「いや、あたいも流石にあんな銃を見るのは初めてだよ……改造にしたってあんな風に出来るのか……!?」

 

 きっと使っている彼がオリジナルで作ったか、或いは何かの理由で手にしたのか分からない。気付けば鉄血人形の数もかなり減ってきた。あれだけ大量にいたという状況だったのにも関わらず、たった7人でここまで生き残れている。

 

「外見は人だったとしても、ロボットだったとは思わないよな普通!まだネクロモーフとかそこ等の奴が張り合いありそうな気がするけどな!」

 

 プラズマカッターと呼ばれる工具を射出するアイザック。果てにはハンマーやレンチ等の工具まで使って殴ったりしていた。工具の使い方を間違えているというツッコミは言うまでもない。

 

「オーケィ、レッツパーリィィィィィィィィィィ!!」

 

 最後に鬼の仮面みたいなものを被ったバーサーカーが爆弾のついた矢を手当たり次第に発破。戦場は混乱を極め、鉄血人形達はまともな指揮が取れず、ほぼ壊滅。全ての敵が倒し切るのも時間の問題だった。

 

「少なくとも敵じゃなくて良かった……」

「敵だとしても無理だから、アレは」

 

 爆発音と鉄血の断末魔と共に40と45の言葉が呟かれたが、あまりの煩さに掻き消されたのであった。

 

 

 

 

 

「もう行っちゃうの?」

「ああ。こんな事態になったとはいえ、流石に故郷の両親とか心配になってな」

 

 全ての鉄血人形を倒し、安全な所まで辿り着いた彼等だったが、今回の事件で両親の安否が心配になった彼等はここでお別れだと二人に告げた。

 だが、ある意味そうした方が良かったかもしれない。あの襲撃から生き残った45と40も戻った所で消される可能性もある。その為にも強くなって生き残らねばならない。自分達には安らぐ場所など無い。命を救ってくれた彼等を巻き込む訳には行かないと。

 

「そう暗くなんなって。帰る場所が無いなら俺が作ってやるから。良くても俺の故郷だけど」

「ありがとう……でも……」

「分かってるさ。戦いが終わらない限り、この状況が続く。仮にも軍の奴等に改造とかされるのは勘弁だが、戦うんだったら望み通り出てやる。家族守らないで呑気に旅なんかしてる場合じゃないし」

「強いんだね……どうしてそんなに強いの?」

 

 何でだろうな……と考えるバーサーカー。しかし、どんなに考えても何も思い付かず、結局「分かんねぇや!」の一言で終わってしまった。

 

「ただ、あんまり根を詰めても仕方無いな。少なくとも自分らしさだけを失うのは勘弁だな。ほれほれ、そんな顔してないで笑え笑え」

 

 むにむにと顔を引っ張るバーサーカー。いひゃいいひゃいと言ってる45を見て、40も少しだけ笑っていた。

 

「うぅ……痛かった……」

「ハハ、悪い悪い。さて、そろそろ行かないとな。またどっかで会えたら語り合うぜ。それまで頑張って生きろよ」

「ええ、貴方もね」

「ああ。それじゃあな、相棒」

「ちょ、俺は相棒じゃねぇのかよ!?」

「お前等の場合、相棒じゃなくて野次とかガヤとかじゃねーの?」

「あ!テメェふざけやがって!」

「許さん。慈悲は無い。イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

「ふふふ……」

 

 少しだけ彼等とまた会える日が来るのを信じて、UMP45はずっと楽しみに待ち続けた。

 果ての無い道程でUMP40と共に歩き、強くなり、UMP9、HK416、G11という仲間も加わった。それでも障害は彼女達に立ち塞がる。それが鉄血ではない軍から追われたとしても。だから彼女達は自分達の存在を消す為の方法を編み出した。「404小隊」という姿も形も証拠すら残さずに生き残る術を。

 

 

 

 

 

 あれから何時経ったのか、数え切れないくらいに日が進んだ。転々と移動し、姿を隠し続けた彼女達だったが、ある日を境に鉄血との殲滅と奪還を目的とした民間軍事会社であるグリフィン&クルーガーという場所に移動する事になった。恐らく鉄血との戦力増強とかの目的だと思われるが、契約が切れたら自分達と関わってきた戦術人形のメンタルモデルと全てのデータを消すだけ。後は改竄すればどうにか知られる事は無くなる。それが404小隊として存在し続ける唯一の方法なのだから。

 

「ここの指揮官ってどんな人なんだろうね、45姉!」

「さあね。どうせロクな使い方しかしないと思うけど」

「それでもここに来た以上、私達は完璧を目指すのみよ」

「もー、416は堅いぞー!このこの!」

「ちょ、止めなさい40……!」

「眠い……」

 

 こうして話している限り彼女達は普通の女の子だが、戦場に出ればガラッとその印象が変わる。特にUMP45はずっと戦い続けた。もう足手纏いとならない為に。信じるのは人間ではなく己自身だと。だから彼女は冷たくなり、悟られない為の嘘偽りの仮面を手にした。今でも鉄血への復讐心は残されたままで。例え悪魔だと言われても良い。全てを片付けるまで戦ってやると。

 

「ほーら、そろそろ指揮官と会うんだから、そんな顔しないの。」

「あら、顔になんて出てたかしら。」

「45が冷たい……昔はあんなに優しかったのに……ぶー……」

 

 馬鹿やってないでさっさと行くわよ、と416の声が響く。そして、ようやく目的の指揮官がいる執務室の中に入って行く。

 

「失礼します。404小隊ただ今到着しました。貴方が指揮官?仲良くやりましょ……う……?」

「どうしたの45……え……?」

 

 挨拶をしようと思ったら声が止まるUMP45。それに釣られる様に40も声を掛けたが、指揮官の方へ向くと同じく40も言葉が出なかった。何故なら―――

 

「君達が404小隊?初めまして、歓迎するよ。俺はグリフィンの指揮官を勤める羽目になったグレイベル・クニクスルだ。気軽にグレイって呼んでくれて良い。よろしく」

「………」

「……久しぶり。40、45。何かこうなっちまった」

「………!」

 

 ああ、この人はあの頃と変わっていないんだと実感する二人。また会えた事が嬉しかったのか、二人は彼に抱き着いた。

 

 

 

 

 

「思い出すだけでも嬉しかったなー」

 

 そんな彼が今こうして指揮官をやっている。出来る事ならばあまり指揮官としてやって欲しくなかったものの、会いたかったのも事実。そればかりは少しだけ複雑に思ったが。

 

 何故彼がここにいるか後で聞いた所、一度故郷に戻った時には彼等の両親とか友達とかが生き残っていたらしく、とりあえず安心したかと思ったが、後々に蝶事件での裏側で暗躍……寧ろ一方的な虐殺とも言えてもおかしくないが、それがバレたらしい。最終的に全員が軍の所に連れて行かれたらしいが、何でもその実力を是非ともグリフィンで役立てて欲しいと言ったそうだ。これには皆が唖然となったらしい。

 

 当然ながら反対する人もいた。まともに軍の指揮すら執った経験の無い奴等だの、戦いを甘く見ているだの、どれも言いたい放題だったそうだ。流石に彼等もプッツンと切れそうになった時にグリフィンの所属しているAR小隊が追い詰められているとの情報が入り、誰が言ったのか彼女達と合流して敵を全て倒してみろと嘲笑ったのだ。しかし、彼等は―――

 

「じゃあ、良くても合格ラインは30分。ベストタイムは15分で充分だ。だろ、お前等?」

『異議なーし』

『!?』

 

 余裕どころか制限まで取り付けて彼等はそう言ったのだ。そして、作戦がスタートした瞬間にヴィンとTASが勢い良く飛び出た。ヴィンはまるで本物の悪魔にでもなったかの如く変身してから羽を出しては飛び、TASは死んだふりジャンプという更にキモくておかしい飛び方で鉄血達を翻弄させた。挙げ句、戦況を打開する為のアイテムや傘ウイルスの駆除に必要な道具を錬成したとか物理的にも有り得ない展開が続けて起こり、AR小隊のAR-15やSOPMODまでもが呆然としてて、16LABにいるペルシカも「有り得ない……」と頭を抱え、鉄血もそんな馬鹿なと必死で焦っていたらしい。

 

(そもそもケンカを売った相手が大間違いってのが一番の説得力というか……)

 

 お陰でAR小隊は全滅せずに済んだ。助けて貰ったM4も相当嬉しかったらしく、このご恩は絶対に忘れません!と言った程。また、M16はかつてUMP45とUMP40との経緯や指揮官達との関係を少し知っていたのか、最初は不信に思っていたらしいのだが、彼等の戦いを見てそれもどうでも良くなったらしい。鉄血よりもアレの方が絶対にヤバそうだと悟ったのか、「その……何だ……えーと……何か疑って済まなかった」と謝ったらしい。色々事情知ってるUMP45からすれば「お、おう……」みたいな感じだったが。ちなみに……

 

「タイムは……11分45秒14!喜べ、新記録更新だ!」

「汚い(確信)」

「たまげたなぁ……」

「あれでクリアか、つまんね。で、次のステージ何処?次は何分?何体倒せば良いんだ?」

「ねえねえ、どんな気持ち?まともに指揮すら執れないとか言ってドヤ顔して、今じゃこうしてるのどんな気持ち?」

「それでも駄目なら俺達はこのまま前線で戦ってて良いし。寧ろそっちが楽」

「爆発は任せろー!バリバリー!」

 

 何も言えずに反論出来なかったのか、もう彼等を指揮官にしようとついに匙を投げたらしい。そりゃ前線であんなに激しく暴れまわる指揮官がいて堪るかと誰もが思うが、現にこの7人がそれなのだから。これにはUMP45もザマァと笑っていた。

 

 今まで見たえげつない攻撃も更にパワーアップし、鉄血人形の嫌がらせにも重宝していた。視線を向けると、グルグル巻きにされたデストロイヤーがガッチリと四角い金属の箱に固定され、あの時と同じくタブレットみたいなので翳した後にハンマーみたいなものでガンガンと殴った後、まるでミサイルが発射したかの様に飛んで行き、肝心のデストロイヤーが涙目になりながら飛んで行くのが見えた。他には爆弾のついた矢が一気に5本も射てたり、マスターバイクと呼ばれるバイクでガンガン轢いたりと……結構ヤバい人と関わったんだなぁ、としみじみ思った。

 

「ん、終わったの?」

「ああ。そろそろ戻る。皆も待ってるし」

「別に早く帰らなくてもゆっくりで良いんだよ、しきか~ん」

「お菓子作る時間なくなるけど」

「急いで帰りましょう指揮官」

「流石にそれはチョロすぎない?45さん」

 

 人形とて、お菓子の誘惑には負けちゃうのだ。それに……

 

(指揮官がいれば、毎日が楽しく過ごせるからね)

 

 これからも多分、一生静かに終わる事は無さそうだ。彼等がいる限り。




パンイチで世界を救ったのはリンクだけだって?ハハハ、何を言うか。
どっかの世界線では調味料の名を持った主人公が全裸で脳筋、しかも買い物禁止で崩壊した東京駆け巡ったんだぞ。そっちの方がある意味スゲーわ(白目)

UMP45「だとしても、流石に下はズボン履くでしょ……まあ、上だけ脱いだまま街を出歩く人っていないよね。」
人修羅「そうだな。」
UMP45「!?」


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カリーナ「どこで鉱石を稼いだんですか?」グレイ「イワロックを狩り続けたのよ」

グリフィンの中を案内するという内容をすっぽかした話。
思ったが、ドルフロのダイヤってどんな大きさなんだろう?小粒か或いは人の手の平サイズで収まる範囲なのか。逆にサッカーボール並みの大きい鉱石そのものとかでバンと出されても価値あるかね……?その辺微妙だよね。その度にイワロック君は死んで貰う必要があるが。

Q.イワロック「俺達が何をしたって言うんだ……!」
A.作者「プレイヤーにとって都合の良い稼ぎのカモです。」

シリアスっぽくなったけど、安心しろ。どうせ次第にギャグになる。シリアスなんてそこまで書けないし、TASの時点でシリアスもクソも無いから。


 AR小隊の救出から時間が経ち、任務もそれなりにこなして(大体が指揮官自身による出撃と物資回収)いた。

 今日も今日とて任務をやって、仕事を終わらせ、今では普通にゲームとかで時間を費やしていた。ちなみに、今日の担当副官はUMP9。

 

「おはよー、指揮官!」

「おー、9か。チェッキー。」

 

 気軽に話すグレイは未だにポチポチとタブレットを操作しながら何かやっていた。

 普段から執務室に居る彼だが、それ以外だと任務の方で出てしまう方が多いので、こうして話せる機会があまりにも少なかったりしていた。

 

「あー、指揮官またサボってるー!」

「サボってなんていないよ。今日も朝の6時に起きて、仲間全員で山積になった書類の束を全部終わらせた。ついさっき書類を上層部に送ったばかり。これでざっと3時間ぐらいだけど」

「えぇ……あの書類の束を3時間で終わらせたの……?」

 

 グリフィンの指揮官では、こういう雑務に追われる日々が続くとされている。なので、大体の指揮官達はこうして雑務しながら戦術人形達の帰還を待ち、報告を受け、書類を片付け、就寝という具合にローテーションが続く。

 

 しかし、彼等の場合は違う。彼等にはTASという仲間がいる為、仕事もある程度サーッと終わるのだ。以前副官がHK416やM4A1とかの場合でも彼等の時間帯や仕事のスピードに驚き、HK416に至っては「私よりも遥かに指揮官達が完璧過ぎる……悔しい……!けど、理想とも言えるのに……!」と呟いていたとか。

 

 それだけじゃなく、ボマーが爆弾を使ってはグリフィンの裏にある使われていない荒地とかを整地。そこから更に特殊改造爆弾を使えば何という事でしょう。爆発の殺傷能力はゼロの代わり土が一気に耕され、別の爆弾を使えば人参、小麦、ジャガイモ、マッシュルーム、カボチャ、スイカ……その他にも食べれる物であれば爆発させて生み出しているではありませんか。

 

 裏手でボンボンと何事なんだと驚いた戦術人形達が見た時は全員が唖然となった。何が何やら分からない全員に軽く説明した後、それなりに狂喜乱舞だったとか。これさえあれば大体生き残れると。しかし―――

 

「分けてあげても良いけど、元々は俺達が自炊する為に用意したヤツだからな」

 

 と、言われた瞬間には戦術人形の大体がグザッと来ていた。特にスプリングフィールドとか。指揮官女子力高いでしょ!とFive-sevenからツッコミを貰ったが、大体は旅先でのサバイバルで身に付けたテクニック。指揮官に尽くしたい系の戦術人形とかならば割りと死活問題だったりしていた。もっと言うと、あのボマーは意外な事にDIYとか料理も出来る1人でもあった。

 

「指揮官達ってホント凄いよねー。私達が見た事無い技術とかで驚かせちゃうんだもん。どうしてそこまで出来るの?」

「どうしてって言われても……何でだっけ?」

「覚えてないの?」

「いや、もうさ……グリフィン入る前は結構ドキドキサバイバルだったから碌な思い出とか無かったりするが……それでもいっぱいあり過ぎて語るに語り切れないや」

 

 まあ、こうして生きてるだけでも幸せか。そう思った矢先にドアをノックしてから入る少女が1人。

 

「指揮官、失礼します」

「おー、M4。チェッキー」

「ちぇ、チェッキー……」

「え?指揮官ってAR小隊の皆にそんな挨拶やらせてるの?」

「いや、自己流だから。やりたいならやっても良いけど。M4は別段やりたいって訳じゃなかったけど、何か流れに乗っちゃったって感じ」

「か、からかわないで下さい指揮官……」

 

 扉から入って来たのはM4だった。入っていきなり指揮官流の挨拶で恥ずかしそうに挨拶を返すM4。ちなみに強制という訳ではない。

 だったら私もやる!と9はノリノリで「チェッキー!」と可愛らしく言っていた。

 

「それと、指揮官呼び禁止。そもそも俺等はそんな指揮官って呼ばれる程のオッサンって訳じゃないし、ここには俺だけじゃなくても他の仲間だって指揮官って扱われてるから、名前で呼んで欲しい。無理でもせめてグレイ指揮官とか名前付けてくれ」

「あ、すみません……」

「別に悪く言った訳じゃないさ。ただ、普通に指揮官呼びだと俺等一斉に振り向く場合とかもあるから呼ぶ方としちゃ困るからね。だから、こうやって区別だけはしておきたくてな」

「そうですよね……確かに指揮官は1人じゃなかった気が……」

 

 もっと言うならば、一日で執務室に居る指揮官もローテーションで入れ替わったりする。一度TASが指揮官として仕事していた時もM4から指揮官と呼ばれていたが、この時もTASから「指揮官呼びは禁止。名前で呼んでな。つーか、名前まだ言っていなかったっけ?俺は「鷹山将(たかやま すすむ)」って言うんだ。まあ、俺は名前で呼ばれるかはTAS指揮官の方がしっくり来るけどな! と言って貰ったとか。

 

「って、そうじゃありませんでした。指揮か―――じゃなくて……グレイ指揮官。一つお聞きしても良いでしょうか?」

「何かな?」

「その……言い難いのですが、グレイ指揮官はグリフィンの内部を廻った事ってありますか?今まで見たのは執務室に居る時か戦場で見る限りだとかそこばかりなのですが、それ以外で指揮官全員を見た事が無くて……」

 

 M4が言い終わると、9も「そう言えば指揮官が別の場所で見るのってあんまり無いかなー」とM4の言い分に同意していた。グレイ自身もまだ全部見回っていなかったな、と思い当たる節があったらしい。その原因としては自分達による出撃とか仕事とか色々な事をやっては巡る時間が無かったという最大の言い訳にしか聞こえないが。しかしながら丁度良い機会だからグリフィン内を歩くかと決め、M4や9と一緒に行く事となった。タブレットで全員を呼び出してから出発。

 

 自分の指揮官がグリフィンの中を歩くのが相当珍しかったのか、彼等に視線を向けているのが幾つかあった。辿り着いた場所はグリフィン部隊のある一室。そこにはオレンジ色の髪をした女性が一人いて、彼等の存在に気付くとこっちに向かって挨拶をして来た。

 

「これはこれは!指揮官さま達お揃いでようこそいらっしゃいました!私、グリフィンの後方幕僚である補給物資調達の担当をさせて貰ってますカリーナと申します!たまにグリフィンでの雑務とかもやってますので、気軽にカリンと呼んで下さい!」

「お、おう……」

 

 随分と元気良く喋るなぁ、と思った彼等。そんな彼等を見ては何かを思い出したのか、カリーナはある事を尋ねた。

 

「皆様の噂―――じゃなかった……活躍は概ね耳にしております。何でも生身で鉄血人形達を全滅させたとかどうとか……」

「その認識で間違ってないよ。少なからずアンタも俺等の事をヤベー奴だと思ってる節あるでしょ?」

「いえいえ!?滅相もございません!」

「否定しなくて良いよ。実際事実だし、俺達自身がヤバい奴だってのは自覚してる様なものだしな」

「は、はぁ……」

 

 出来ればからかうつもりだったカリーナだったが、ある意味会話し辛いと感じたのはこれが初めてだという。しかし、このまま暗い気持ちで会話が続くのも嫌だったので、気持ちを切り替えながらもカリーナは元気良く会話を続ける。

 

「と、所で指揮官さま!今日はこちらに何かご用事で?」

「ああ、今日はグリフィンの中を案内されてね。今までずっと出撃ばっかりしてたから、他の場所とかすっかり忘れてて」

「でしょうね……」

「……これって弾薬とか色々揃ってる感じのタイプ?」

「はい、そうですよ。弾薬や配給、それにダミー人形の製造に関する発注書もありますから。後は戦術人形と誓約を結ぶ……所謂婚約みたいな証も取れますよ。うふふふ」

「後者は分かるけど……それよか、ダミー人形って何?」

「え……?もしかして……指揮官さまは編制拡大とかご存知無い……?」

『全く』

 

 そう言えばこの人達そういうのが要らない人だったわ……とカリーナは改めて彼等のデタラメを思い知った。

 簡単に説明すると、本体とは違う偽者の人形……悪く言ってしまえば人員を増やしたり、いざという時のデコイとか、使用としては様々な用途があるのだが……彼等に至ってはそれすら必要も無いだろう。寧ろ、彼等の戦力がダミー人形100体とかそこ等で足りる訳が無い。明らかに戦力オーバーしている人物が5人以上。彼等だけで良いんじゃないかとカリーナも匙投げようとしたその時……。

 

「でも、買って損は無いよね。そういう訳だからカリーナ。とりあえずここにある物、全部頂戴」

「………はい?」

「だから、弾も配給も全部って言ってるの。頂戴」

「え?え?いやいやいやいやいや!!何言ってるんですか指揮官さま!?だって、貴方達はまだここに入って間も無いじゃないですか!?給料もここ全部に適う分の所持金とかって持ってるんですか!?」

「持ってないよ」

「ほら、無理じゃないですか~!」

「でも、金で払うとは言ってないよ?」

「え?」

 

 ポカンとなるカリーナを無視し、ポーチから何かをゴソゴソと取り出すグレイ。何かを察したのか仲間達が問い掛けた。

 

「全部売っちゃうの?」

「良いんだ……つーか、重い……あんまりにもゴッテゴテの石を集め過ぎたのか、量が尋常じゃない……売るにしてもそれもそれで金の方が重くなっちゃうから敢えて残してた……こっちの方がもしかしたらと思って。使い道あるかもしれないし」

 

 次から次へとポーチから大量に出すグレイ。その中身にカリーナだけじゃなく、M4や9も空いた口が塞がらず、戸惑いながらグレイに聞いた。

 

「し、しし、指揮官さま!?こ、こここ、これって……!?」

「うん、お察しの通りだと思うけど……ダイヤモンド。それと各種宝石……とまでは行かないけど、鉱石そのもの」

「幾つまで集めたんだっけ?」

「カンストで999個」

「999個!!!?」

 

 彼のポーチに入っていたのはダイヤモンド鉱石をそのまま。しかも、コハク、オパール、サファイア、トパーズ、夜光石、それ以外の鉱石も大量に入っていた。勿論、999個で。これにはカリーナもビックリせざるを得なかった。そして、一気に目が金のマークに。

 

「ごめんね、こんなの渡しちゃって。ビックリしちゃったでしょ」

「いえいえ!私としては大変!大ッ変!嬉しい限りでございます!積もる話、これで交換という事ですね!?」

「平たく言ってしまえばそうだね。ただ……換金為替のレートはそこまで詳しくないから良く分からないけど……。」

「大丈夫です指揮官さま!こちらとしても財政難なグリフィンからすれば、とてもとても……喉から手が出る程欲しかった物でございます!!」

「うわぁ……」

「この子、想像以上に守銭奴だね」

 

 折角の美人だったのに、金さえ良ければコレか。ちょっとだけ呆れが出てしまった仲間達。グレイも若干苦笑いしている。カリーナはカリーナで、グレイ達に対する高感度がカンストして天元突破していた。だが、ここである疑問が……。

 

「あれ……?でも、指揮官さまはどうやってこの鉱石を集めたんですか?」

「んー……信じてくれるかどうかは分からないけど……聞く?」

「……一応、念の為ですが」

「分かった。とは言っても、本当に嘘だって言いたくなっちゃう位にあり得ないんだけどね。まず、俺達が旅をしていたってのは聞いているでしょ?」

「はい。戦争続く中でよく生きていましたね……って、ああ……指揮官さま達強かったんでしたっけ……」

「それもあるんだけどね。ただ……その道中で変わったヤツを見付けたんだ」

「変わったヤツ……ですか?」

 

 一体何だろうとちょっと身構えるカリーナ。しかし、グレイはグレイでトンでもない事をカリーナに告げた。

 

「突如、歩いていたら……後ろから岩がガラガラと音を立てていたのが聞こえたんだ。振り向くと、そこには不恰好でアンバランスな巨大な人型の岩が俺達の目の前で現れたんだ」

「人型の……岩ですか?」

「そう。もう危ないよね。遠くからだと岩を投げて来るし、近付いたら両手で振り下ろしたりして来るんだけど、動きが滅茶苦茶遅くてね。ただ、弱点っぽい所を狙ったら怯んで、そこから袋叩き。動かなくなったら爆発四散して、ソイツの身体から鉱石各種がバラバラと落ちたんだ」

「じゃあ、まさか!?」

「そ。これ全部そいつから出たヤツ。それに驚くのはそこだけじゃないんだ。ある時間帯になると今まで倒して来たソイツ等が復活してね。鉄血人形とかだったら地獄だけど、ソイツが復活したという事は……もう分かるよね?」

「あっ……(察し)」

 

 つまり、延々とループする事によって鉱石を大量に入手出来るという寸法だ。そうなると、彼等は一度全てを倒した後、その時間帯によって復活するのを待ち、また全てを狩り尽くす。そして、また復活……そうなるとここまで鉱石を持っていたのも頷ける。

 ここまで都合の良い上手い話があって良いのかと思うが、現に彼が目の前で大量の鉱石をカリーナに渡したのが物語っているので、決して嘘は言ってないと彼女は判断した。それに、自分がその人型の岩と対峙しても絶対殺されるのが見えていた。

 

「今日も今日とて狩るけどね。軽く40体」

「か、軽く40体って……」

「マジですか。指揮官さまにとってはこれが一種のデイリー任務だと?はえー……すっごいですね。そこまで奮発してくれた指揮官さまには感無量でございます!それでもまだご利用されるのであれば、このカリーナ……指揮官さまに仕え……いえ、雌奴隷としてでもなってみせます!!」

「カリーナ、それは止めようか。まず自分を大切にしなきゃ駄目だよ?カリーナも綺麗なんだから自分を売る様な行為はしちゃ駄目。俺達は戦場で自分売ってるからどーでも良いけど。」

「oh……指揮官さまの紳士っぷりが穢れているカリーナの心にクリティカルヒットを喰らいました……ですが、貰ってばかりもアレなので……あ、そうだ!」

 

 何かを探すカリーナ。しばらくすると、ちょっと多めの書類の束が。

 

「これどうぞ!誓約の証に関する書類20枚です!」

「ああ……さっきの」

 

 聞けば、誓約の証というのは戦術人形と恋をした場合に送られる書類らしく、婚約指輪も一緒に付いてるという。それだけじゃなく、誓約を結んだ戦術人形達は大幅にパワーアップするとか。ただ、これに関しては指揮官一同凄く悩んでいた。

 

「難しいな、この話……」

「そだねー……」

「あ、あれ?指揮官さま達はこの手の話は好きではありませんでしたか?」

「違うんだ。そりゃ確かに好きになりたいとか、彼女が出来たら良いなとかそういう願望は決して無かったりしない。ただ……」

「ただ?」

「俺達自身が「異常」だって自覚している以上、無理に俺達のペースに付き合わせたりするんじゃないかなって思ったりするんだ。」

 

 そう告げると、カリーナだけじゃなくM4や9も答えに詰まってしまった。確かに彼等はある意味普通の人間とは違う気がしなくも無い。少なくとも人間として出来る範囲ならまだしも、TASやヴィンの様にあそこまで出来る人間など早々に居ない。

 

 かつて自分達もバラバラだったが、気が付くと同類と感じる様になっては今だって煩くしながらも笑い合って、協力して、共に過ごして来た。そんな自分達が仮に彼女と結んだとしても、彼女が疲れないだろうか、自分のやってる事に巻き込まれたりしてないか……色々と不安が残っていた。

 

「情けない話かもしれないけど……何か、こう……何かが変わってしまいそうなのがちょっと怖いかな。皆の事は仲間だとか人間とかそういう風に見てはいるよ。だけど、俺達はバケモノというか……ね……」

「そ、そんな事ありませんよ!」

「そうだよ!指揮官だって私達の家族だよ!?家族が家族を信用しないでどうするのさ!」

「良い事言ってる所で悪いけど、9にとって家族という幸せはどういう定義なのか分かる?少なくとも俺等は互いの事を知ってから、少しずつ段階を踏んで、ようやく認めた頃に互いを意識し合って、最終的に本当の意味での幸せや家族だと思うんだけどね」

「せやな。無理に結婚しちゃった感が半端無いし、生活面に支障が出たら俺等が申し訳無いわ。基本的に俺等が家事とかするみたいな雰囲気なっちゃってるのがデフォだけどさ」

 

 優しいけど、心が苦しくなる言葉。戦術人形だから結婚出来ないという訳じゃないく、自分達がヤバい存在だから結婚出来ない……いや、寧ろしない方が良いんだと彼等はそう決めていたのだ。

 

 少なくとも、自分の傷をこれ以上増やさない為にも。彼等は常に孤独で、常に同じ志を持つ仲間達と共に歩き、そして自分の理想を描いて死んでいく。それを彼等は今でも具現化させているような生き様だった。

 

「でも、受け取っておくよ。これをどうするかどうかはまだ決めるのは早いかもしれないし、中々決めようとは思わないけど……その時が来たら、俺は快く受け入れるよ」

「お、リーダーそれなりに覚悟決まった感じ?」

「まあね。ごめんね、こんな暗い話しちゃって」

「い、いえいえ!私の方こそすみませんでした!指揮官さまの意外な一面が見れたので、私どう答えたら良いのか分からなかったのですが……優しいんですね、皆様は」

「「優しい……?」」

 

 鉄血人形に対して結構鬼畜な行為とかやってる彼等に優しい要素などあったかとM4と9は口に出して突っ込んだ。

 ともかく、ショップを後にして彼等は一通りグリフィンの内部を廻った後、再び任務と雑務と、後々で農作を繰り返した後、休憩代わりに遊んで時間を費やすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫……指揮官は私にとって家族だから……だから、自分を嫌いにならないで……私を……404の皆も嫌いにならないで……私が指揮官を見てあげるから……」

 

 この時、9が指揮官に対する気持ちが劇的に膨れ上がり、どうにかしてグレイを1人にさせまいと404全員が同意しては襲い掛かったのは別のお話。




分からない人向けに元ネタ解説。何故かこっちの方が書くスペースとか多い。

「第1話」

・短パン一丁の鬼の面みたいなのを被りながら爆弾の付いた矢を当たらない様に
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドでのDLC第1弾で貰えるアイテム。矢の方はトワプリでもお世話になった爆弾矢。これをやる鬼畜なプレイヤーは少なからず知ってる筈……。

・ボウガンと木刀
木刀の方はゼルダの伝説トワイライトプリンセスでのGC版とWii版にしか出来ない一種のバグ。WiiUでは不可能となった。タイミングや配置がシビアだが、成功すれば木刀を装備したままガノン撃破も可能。ただし、とどめのタイミングで入れ替えなければいけないが。
逆にボウガンはリンクのボウガントレーニングより。世界観はトワプリと一緒。これにTASを組み込むと大変な事に。

・仮死薬と蘇生薬
メタルギアソリッド3からの敵からの警戒を騙すアイテム。これを使ってやり過ごせる他に仮死焼というヤバい方法も出来る。深層映写の時、何故この方法が無かったのか……CIAが単にヤバかったのか。

・ケツワープ
マリオ64でのTASにおいて結構使われる加速方法。これも一種のバグとも言えるが。
階段辺りで後ろ向きで幅跳びした後、急に加速してどんどんすり抜ける。マリオ64だけじゃなく他でもケツワープが出来たという。お前の移動はおかしい。

・ブーストハンマー
GOD EATER2から出たハンマー型神機。本来なら別キャラがメインウェポンとして使う予定だったりしたんだが、第1話からセキュリティ壊すという羽目に。でも、神機好き。
そもそも世界観も何だかんだでそっくりな気がしなくも無いので、今後神機増やすかも。ちなみにTASとかは関係無い。

・各指揮官の名前の由来
バーサーカー(Fateシリーズ)、TASとコマンドーは大体皆が知ってると思うので省略。アイザックはDead spaceから。ヴィンはFF7のヴィンセント・ヴァレンタイン。ボマーはボンバーマン。ドクターは特に由来は無いが、ナイフの投げ方は某バスケのイグナイトパスそのもの。

・1フレーム刻みのすり抜け
TAS及びRTAでは当たり前です。

・ビタロック
同じくブレスオブワイルドからシーカーストーンに搭載される機能。これを使うと10秒間ぐらいは時を止められるが、その間に攻撃や物理を与え続けると、ダメージ加算だけじゃなく物理エネルギーも反映される。ハンマーとかで殴り続け、物理エネルギーが時間ギリギリまで蓄積された頃には凄い事になる。

・乱数調整
大体こうする事によって敵がミスしたりとか、レアなアイテムが手に入るとか。TASではそれも当たり前。

1発撃ち出す事に銃弾が3発分発射
ヴィンセントが所持している武器「ケルベロス」の事。しかし、ドルフロだと同じ名前を持っているヤツがいるから、多分「デスペナルティ」に変更されるが。ちなみに、マシンガンやライフルとかに切り替える事が出来るのはダージュオブケルベロスから。クソゲーかもしれないが、覚醒したヴィンセントや銃がカッコ良いならそれで良い。

・オーケィ、レッツパーリィィィィィィィィィィ!!
メタルウルフカオスからマイケル・ウィルソンがホワイトハウスを爆破しながら登場する。ガチで。某BASARAの筆頭と同じ掛け声。
知ってるか?コイツ、第47代アメリカ合衆国大統領なんだぜ……(震え声)

・死んだふりジャンプ
忍道戒のバグ技。アイエエエエ!?
TASではこれを使って凄い飛び方をする。お前の飛び方はおかしい。

・必要な道具を錬成したとか
ゼルダとかで何故かまだ入手してないアイテムが表示される様になったりとかするバグ。任意のコードとかで出来るとかあるが、そこまで詳しい内容は作者もまだ分かってない。ただ言える事は「お前それどっから持って来た!?」と言える。

・マスターバイク
ブレスオブザワイルドのDLC第2弾で入手出来るアイテム。馬との操作性は少し馴染むまで時間が掛かるが、ダメージ受けない、高い所に落ちても大丈夫という位に頑丈。ただし、燃料が必要。

「第2話」

・チェッキー!
ブレスからプルアのちょっとした口癖。これでもインパの姉。次第に進めば挨拶感覚で慣れる。

・特殊改造爆弾
ストレートに言えば、マイクラのTNTのMOD。殺傷系だけじゃなく爆破させて増やす系のアイテム。とても便利。特殊設定としてそれ以外の野菜とか果物とかのTNTも入っているという感じに。

・巨大な人型の岩
ブレスからイワロックの事。ボスかと思いきや、実は中ボス扱い。しかも、赤き月の時に復活する敵扱いとなっているので、これを利用して稼ぐ人達が後を絶たない。寧ろ、そういう設定になっている以上都合の良いカモとなっている。なお、何処でイワロックと遭遇しているのかは後々になって語られる。ちなみに、コイツもTNTMOD同様に出す鉱石もエメラルドとかアクアマリンとかそういうのも出る設定にしている。



長かった!TASとかは関係無かったが、せめて「それ何?」と言われたら困ると思いましたので……まあ、ドルフロ世界においてイワロックは絶対に必要だよね。だから、これからも鉱石落とそうね(鬼畜スマイル)


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独占欲の肉食系、404小隊

初のヤンデレっぽい雰囲気を書いてみましたが……ヘッタクソだったよ……ごめんなさい……。
上手い人は上手いね……大体ドルフロ系のヤンデレ見てると、404小隊って本当に独占欲強くてしゅき。作者はヤンデレ大好物ですので。特にモテない自分に一途の愛とかで言い寄ってきたら絶対ホイホイしたくなるし、一生彼女を愛そうとしたくなる。それが実現すればモテない問題も苦労しないよ……。

関係ない話だけど、スカウォAny%(バグあり)のRTAで5時間切った人が今年の5月に見つけた新技で3時間更新されたという言葉を見て「は……?」ってなったわ。
3分でも30分でもなく、3時間って……!?ヤバ過ぎるにも程あるわ!

次々と見つける人ってマジで凄いわ(白目)


 背景お母様ならびに家族と友達へ。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。鉄血の被害に免れたのは良かったのですが、私はそれよりもヤバい状況になっていました。

 

「逃がさないよ、しきか~ん……♪」

「フフフ……これで私も指揮官と家族……」

「これで私と指揮官との幸せな生活も完璧……あぁ……幸せだわ……」

「指揮官は……私の抱き枕……ずっと永遠に……」

「あははは、良かったな指揮官!こんなにモテちゃって!」

 

 何故だか分かりませんが、重婚する羽目になりました。それよか浮気よりかは絶対に彼女なんて作らないとある理由で決めていたのに。

 

「どうしてこうなった……」

 

 殆ど彼女達の目にはハイライトが無い感じで、所謂ヤンデレになっていた。グレイベル・クニクスルは今まで無い頭痛を初めて感じていたという。

 

 

 

 

 

 事の始まりは今日の朝からだった。普段通りに早起きし、雑務をしようかとベッドからおりようとした途端、何かの膨らみが見えていた。恐る恐る捲ると、そこにはG11が何故か眠っていた。

 

「えぇ……(困惑)」

 

 G11は404小隊の一人でもあるのだが、そんな彼女が一体何時からここに入っていたのだろうか。やましい事など一切してないし、酒に酔った勢いでやった訳でも無い。それ以前に未成年だから飲めないというのが大きいが。

 故に昨日までの記憶はハッキリと覚えている。昨日は何時も通りに仕事を終えた後はすぐに就寝したが、その時は誰も居なかった。もしかしたら、寝ている間に彼女がこっそりと入って来たのかもしれない。でも何故?

 

「部屋を間違えたのか……それとも寝ぼけながら入ったとか?」

 

 G11に限ってそんな器用な行動出来ないだろうとグレイは頭の中でそう言い切り、とりあえずHK416に連絡を伝えておいた。まだ朝だから早めに起こすのは早いだろうとシーツを戻してあげた。

 

「さて、仕事しますか」

 

 こっそりと物音立てずに部屋から出るグレイ。しかし、彼は気付かなかった。

 

「指揮官……また離れた……一生離したくないのに……」

 

 実はもう彼女が起きていた事に。そして、彼女もまた9と同じく強い欲望が膨れていた事に。

 

 

 

 

 

 書類仕事もなるべく終わらせ、任務とイワロックの撃破を繰り返し、少し暇な時間が出来た。良い機会だから、この際に射撃訓練所でボウガンでの腕が落ちていないかを確かめようとそこに向かうと、既に先客が来ていた。

 

「あら、指揮官。貴方も射撃訓練かしら?」

「まあな。何時もは例のボウガンを使っているんだが、いざという時に想定しておいて練習しないと腕が鈍るし」

「ふふ、それでこそ私の理想とする完璧な指揮官だわ。私よりも完璧なのが少し嫉妬しちゃいそうだわ」

「俺に嫉妬してどうするんだよ。というか、俺を越えたらマズい気がしなくも無いんだが」

「違いないわね」

 

 軽く言ってからまずは普段から使っているボウガンで腕試し。腕試しと言ったが、放たれた一撃は必ず当たる。連射しても必ず真ん中にヒットする百発百中の実力。

 ブザーが鳴り響き、次々とターゲットの的が現れる。それを高速で射抜き、正確すぎる射撃で1つも外さなかった。後ろからじっと見つめていた416も「へぇ……」と感心している。

 

「凄いわね。銃じゃなくてボウガン1つでそこまでやれる人も早々居ないわよ」

「そりゃな。流石に弓での兵法は誰だってやらないけど、俺としちゃ銃なんて無縁だったから、良くても弓で作ってはこうして生き残る方法を考えるだけでも精一杯だったさ」

 

 それに、銃と比べて弓は回収が出来る。放った弓矢はそのまま突き刺さったままでいるので、引き抜かない限りそのまま。銃弾とは何度も再利用が出来るというのが弓の特徴。

 ただし、爆弾矢の様な弓矢は消費してしまうのが大きいが、単発式のロケットランチャーを軽量化させては大量に持ち運べる様な芸当も出来る為、消費はこっちの方がコスト的にも良いと言える。

 

「さて、次は……これをやってみるか」

 

 グレイが取り出したのは、今持っているボウガンよりも少し小さめの武器。勿論、これもボウガンである。しかも2個。

 

「えっ……?」

 

 416は驚いた。彼女の頭の中でこれから起きる事がイメージとして浮かんで来る。まさか、今度は小型のボウガン2つを使って射つのではないかと。言うまでもなく、416が考えていた予想は見事に当たる。

 

「嘘でしょ……?」

 

 2つ持っているのにも関わらず、命中精度は依然として落ちてなかった。ハンドガンもそうだが、片手による射撃というのは支えきれる程の腕力や正確に撃てる実力、更には反動による防ぐ力も無いとこのやり方は難しいとされている。小さい銃でも1発放っただけでかなりの反動が来る事だってある。それを2つ持つというのはその分襲い掛かる負荷も倍になる。

 しかし、グレイはそれを難なく成功している。銃ではなく弓というのもあるが、一ミリのズレも起きずに的を射抜き続け、方向転換してもブレが生じず、最後には爆弾矢で的を粉砕してフィニッシュ。これが指揮官の実力なのかと416は目の前で思い知った。

 

「ふぅ……どうだったよ?」

「え?ええ……完璧以上の言葉が見つからない位に良かったわ……何1つ外していないわ」

「そうか。どうやら腕は鈍っていなくて良かったよ」

「……随分とそのボウガンとかに思い入れがあるのね」

「そうだな……銃すらまともに触れた事も無かったし、ましてや見る事も無かった。鉄血から奪ってもロックされてて使い物にならなかったり、銃の知識すら無いから良くてもコイツが常に一緒だったな」

 

 これのお陰で何度も危機を脱した。使い続ける度に自分と一体化でもしている様に感じていた。今では手に離せない代物だ。

 

「指揮官は銃は一生使わないの……?」

「かもな……身体が馴染んでるし、何よりも暗殺に向いている」

 

 例えサイレンサーで発破する際の音を小さく留めても、意外と音が出る場合がある。銃は使用する銃によっては命中しにくい点があったりするのだが、ボウガンは命中や距離共々安定して使える。しかも、音を大体発しないという利点が一番の特徴とも言える。爆弾矢みたいに特殊な矢を撃てるのもまたその1つ。

 

「俺が言えるのは精々ここまでだな。気付けばボウガン使った戦法でどんな戦い方をすれば良いか、イメージした通りに動けるか……俺の技量としても問われるけどな」

「つまり……私達の事を使ってはくれないのね……」

「416さん……?何か暗くなってますけど?」

 

 何だか嫌な予感がすると察知した時には既に遅く、グレイは押し倒される形で床に叩き付けられ更には腕とかを掴まれてしまう。

 

「あだっ!ちょ、何するんだ416!?痛たたたたた!!腕痛い!折れる折れる!強く握らないで!」

「あら、ごめんなさい。でも、指揮官が悪いのよ……私というのがありながら使わないなんて……AR小隊や他の奴等に使われるのも嫌だけど、貴方はずっとボウガン1つで戦ってたわよね……?そんな古臭い戦い方で一緒に居るコレを見たら悔しくて……ねえ?どうして私を使ってくれないの?」

「ファッ!?」

 

 間違いなく地雷踏んだと確信するグレイ。果てには416が銃を向けては今にも発砲しそうなオーラを纏っている。何故こうなったと頭の中で何が原因なのか探っていたら、思い当たる部分が浮かび上がる。戦術人形は常に銃と一体……使ってくれればその分、戦術人形も本来の使い方や存在意義として喜んでくれると。

 加えて、グレイは戦術人形ではないが、常にボウガン一体化している。銃を一度も使わずに自身で作り上げた武器で人生を過ごしたものだ。そりゃ彼女が病んでもおかしく無かった。とにかく謝らねば色々と失いそうになる。

 

「その……すまなかった……」

「謝る事は無いわ指揮官。だって貴方はそうでもしなければ死んでいたんでしょ?指揮官としてなる前はそうでもしない限り死んでしまうから……でも、私だって指揮官の役に立ちたいの……ねえ、指揮官……私は……皆は役立たずなの……?」

「んな訳あるか!お前等が使えないなんて誰が決めた!ありゃ少なくとも俺等側に原因あるんだから!つっても……本当に銃の使い方すら知らないから困るのが一点張りの言い訳かもしれないけどさ……」

「大丈夫よ……何も知らなくても、私達が手取り足取り教えてあげるわ……」

「ん……?私「達」……?おい、まさか一人じゃないのか!?404全員か!?」

「貴女のような勘のいい指揮官は大好きよ」

 

 すると、後ろからUMP45達が入って来ては恍惚とした笑顔で指揮官を見つめ、何処か艶かしい雰囲気を出していた。彼女達の纏う雰囲気を察したグレイはヤバイと青ざめる。ついでに残りの足も手も掴まれてしまい、「あ……俺の人生オワタ\(^o^)/」と段々傾いていた。

 

「えへへ~、やったね45姉!」

「ええ。でも、本番はこれからよ9。指揮官もそろそろ受け入れたら?」

「まずとういう経緯でそうなるんだよ!?何で!?俺、フラグとか建てた覚え無いよ!?」

「嘘つかない方が良いわよしきか~ん。9から聞いた時、私も40もショック受けてたからね」

「9……?あ!俺が彼女作らないとかそこらの辺りか!」

 

 前回、グリフィンを案内された時にカリーナやM4、それに9までもが一緒にいたのは確かに覚えていて、その際に自分の生き方というか彼女を決して作らないと言った筈。まさかそれを9が言いふらすとは想定していなかった。しかも、伝えてから小隊一同の一致団結が早すぎて成す術もなく押さえ込まれた以上、ここから脱出するのは難しそうだ。グリフィンから離れても、彼女達はきっと追い駆けて来る。世界の果てだろうと何処までも。

 

「指揮官にはお礼とかまだしてないんだよ?あの時、私と40を助けてくれたのはとっても嬉しかったの。何時かその恩を返せる様に私は頑張ったのに……なのに、受け取らないってのは酷くないかしら~?」

「あたいだって本当は45と同じ気持ちだったさ。勿論、指揮官の事情だって分かってる。だけど、今このチャンスを逃したら、指揮官ずっとその気持ちを引っ張ってばかりじゃないか。あたいは……そんな辛い気持ちを抱えてる指揮官なんて見たくない」

「だから、皆に教えたの。ねえ指揮官?指揮官は本当の意味で家族になりたくないの?私達は何時だって指揮官を受け入れるよ?それとも、指揮官は嫌なの?私は指揮官を他の戦術人形に譲る気持ちなんて一切無いからね!」

「オウフ……」

「それに、45姉や40姉を見てると、二人とも楽しそうに話してるんだもん。あんなに楽しそうに話す二人の顔って初めて見たんだ。でも、何時か45姉も40姉もあの人の所について行くと思うとさ……何だか悲しくなるんだ……私だって指揮官の事が好き。45姉も40姉も好き。でも、皆がここから居なくなるのは嫌……だったら、離れない様に私が好きになって、一生家族として過ごせば良いと思ったんだ!」

「9さんも思考がぶっ飛んでますねぇ!?逃げ場無いやん!!」

 

 完全に四面楚歌。下手に抵抗したら余計酷くなりそうだ。UMP達の言い分は分かったし、416も何故彼女達に加担したのかは大体想像出来る。大方、何事にも完璧を求める彼女だから、自分より完璧と言われた自身に対する嫉妬と憧れ、銃を使ってくれない寂しさと悔しさと恐怖。だから彼女は私だけで良い、私達と一緒に居ようと迫ったのだろう。

 

「ふふ、私の考えを当てる指揮官も素敵よ」

「心を読むんじゃないよ!で、G11に限っては何の理由で一緒に行動してんの!?」

「指揮官は……私の抱き枕……一生離したくない……」

「それが理由!?」

「それもあるけど……指揮官、私達の代わりにずっと任務やってくれてた。その分、サボれる時間も増えたから嬉しかった。わざと指揮官の部屋に入って寝ても、指揮官は襲ってくれなかった……ドアの鍵を壊してまでやったのに……」

「あれわざとだったの!?つーか、鍵まで壊してたんかい!!」

 

 聞きたくなかったわそれ!とツッコミ入れるグレイ。朝もそうだったが、もしかしなくても、知らぬ間に何度か入られてたりしてるのではないかと……そう考えただけでも自分の部屋の管理能力の杜撰さが嫌でも分かってしまう。

 

「でも、指揮官はずっと前線……私はベッドの上で寝てばかり……指揮官に無茶させてないかとか、自分が寝ている間に指揮官が何処かに行って私を置いて行くんじゃないかって……とっても怖くて……悪夢でも見ている気分だった……」

「マジか……少なくとも俺等が基本的に前線メインだったし、基本どうでも良さそうに眠ってばっかりだったから……ついでに起こすのも悪いかと」

「指揮官の鈍感……」

「鈍感言われてもしょうがないじゃん!良いの!?俺、自由な位に暴れ回る限りだし、味方から厄災とか言われてるけど、マジで言ってる!?」

「指揮官だから良いんだよ~?何処に行っても、私達は何時だって指揮官の傍にいるからね~」

「ちょ、止めてって45……!ああっ!?」

「フフフ……指揮官の指揮官、ごたいめーん……♪」

「止めろ……!それ以上やったら……!ああっ……!AMS(意味深)から光(意味深)が逆流する……!うあああああぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

―――ただいま映像が乱れております、404小隊の恋ダンスを想像しながらしばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

「俺の童貞……マモレナカッタ……」

 

 あれから何時間経ったのか分からないが、現状では404小隊の全員が良い笑顔で且つ顔が艶々してて更に綺麗になっていた。肝心のグレイは某存在感が薄い主人公の如く、レイプ目になったまま横になって倒れていた。

 体力とかは大丈夫だったのかと言われたら、大体ポーチとかに仕舞ってはストックで残していたがんばり薬の助けもあり、何とか耐え抜いたらしい。しかし、結構多く消費したとか。

 

「逃がさないよ、しきか~ん……♪」

「フフフ……これで私も指揮官と家族……」

「これで私と指揮官との幸せな生活も完璧……あぁ……幸せだわ……」

「指揮官は……私の抱き枕……ずっと永遠に……」

「あははは、良かったな指揮官!こんなにモテちゃって!」

「どうしてこうなった……」

 

 一方的に好きになられた女性から追われ、追い詰められ、果てには喰われた(意味深)。イケメンだから許される?違う、恋とかしたくないって自分から言ってた筈だし、相手がまさかの肉食系だったからだ。でも、こうなった。願望すら無かったのに、逃げてもずっと追い駆けるから捕まってしまった。だからこうなった。仮にも恋人を作るなら、まず相手をしっかりと見極めてから始めるつもりだったが、既に手遅れ。

 

「責任取ってね?パパ♡」

「畜生ォォォォォォォォォォッ!!(CV:若本)」

 

 嬉しかったが、嬉しくなかった。迫られた以上断れなかったので、もう諦めて受け入れ、ちゃんと彼女達を愛そうと涙ながらで努力するのであった。

 

 

 

 

 

 あの後、誓約の証を書いて提出。カリーナも何故かよっしゃぁッ!!と叫んではグッとポーズしてたが、一応喜んで祝福してくれた。指輪は後々で送られたが、やっぱり安っぽく感じたのでガチの宝石付き指輪を一から作った。最初から作るとは予想もしていなかったらしく、そこまでしなくても良いと言われたが、残っている鉱石とかが勿体無いので、存分に使った。

 指輪を作り直してから数日後の夜。グレイは結婚した事を親に報告しようとしていた。タブレットで自宅の電話番号を入力し、数回コール音が鳴った後、男性の声が聞こえた。

 

『お、グレイじゃないか。久しぶりだな。どうしたんだ、電話なんかしちゃって』

「ああ、久しぶり父さん……えっと、いきなりで済まないけど……俺、結婚しちまった。しかも、重婚で」

『お!?今まで結婚願望が無かったお前にか!いやー、めでたいじゃないか!でも、重婚ってどういう感じでそうなったんだ?』

「全員病んでた」

『あちゃー……一番ヤバいタイプか……でも良いじゃないか!モテないよりかは!』

 

 アッハッハッと笑うグレイの父親。どうやら彼の父親はその手の知識に知っている人だったので、相手がヤンデレなのだとすぐに分かった。

 他人事じゃないんだがなぁ……と内心毒づくが、身から出たサビなので、言いたい気持ちをグッと抑えた。

 

『にしても、お前が結婚か……お前は自分の将来とかそういうのには興味が無くて、ハッキリと決まらないまま成長したんだったな』

「自分のしたい事とかが無くて、誰かに将来の夢は何ですかって言われたら適当にでっち上げて答えたのは良く覚えてるよ。何にも決まらないままだったけど、一度だけしてみたいってのがあったんだよね」

『それが、旅だったんだよな』

 

 きっと旅をすれば自分のしたかった事や将来の夢とか、それらが全て見つかるかもしれないと。世界を見て、何があるのか……それがグレイにとっての楽しみとして見つけた1つだった。

 

「アルバイトとかで必死に稼いで、仕送りとかもやりながら頑張ったよ。俺のワガママに付き合ってくれた鷹山にも感謝してる」

 

 鷹山は何もする事が無い普段の生活を続けるのが嫌で、何時しか外の世界を廻りたいという願いを叶える為にグレイと一緒に歩みを始めたという。ただ、本当の理由はまだ隠されていそうな気がするが、そこは深く聞かなかった。いちいち人の事情を突いても相手が嫌な気分になるので、TPOは弁えていた。

 

「旅先で色々と使えそうな奴は送ったよ。役立ってる?」

『ああ、お前が以前に言ってたガーディアンって機械か?ついさっきも鉄血を見付けたのか、レーザー連射してたよ。あれを大量に配備してくれたお陰で鉄血から襲われる被害も少なくなったよ』

 

 旅先の途中で鉄血人形に見つかっては襲われ、道中で見落としていた崖に転落。そこで初めてアイザックや例のガーディアンだけじゃなく、シーカーストーンやマスターバイク零式も使える様になったが。

 今ではガーディアンもアイザックの魔改造込みでグリフィン周辺に大量配置されていて、全てのガーディアンが小型のガーディアンと同じく連射出来るタイプとなっては威力も倍増。歩行型のガーディアンは流石に細い足では耐久性に弱いと思われたのか、脚の太い四脚タイプに変更し、大きくジャンプ出来る様になった。

 この魔改造によってグリフィン周辺は鉄血完全不可侵領域と化し、難攻不落の基地と後に呼ばれる様になった。その実力を発揮した際には上官であるヘリアントス(略称:ヘリアン)もドン引きしていた。その時にはこんな会話も。

 

「貴様……これを何体配置した……?」

「えーと……固定砲台型、小型、歩行型、ドローン型の4つで、全部の総数で500体です」

「ごッ……!?500体だと!?何考えてるんだ貴様等!?それだと人巻き込んで死ぬぞ!?」

「大丈夫ですよ。アレ、鉄血だけ認識してるタイプなんで。一応、サーモグラフィーとか嘘発見器とか多種多様の機能もついていますので、特殊なケースじゃない限り潜伏しても必ずバレます。なので安心して下さい」

「戦車一台を破壊出来る威力を出すレーザーを3回連続発射するタイプの何処に安心出来る要素あるんだ!?」

 

 と、焦りに焦っていたが……ガーディアンの実力を発揮した時には確かに使えそうだ……と渋々納得していたとか。ちなみに、目は相変わらず弱点だが、たった3秒でリカバリーする鬼性能と化した。

 これには鉄血人形達も逃げるしか無く、ハッキングしようにも出来ない仕様となっているので、ドリーマーとかエルダーブレインは頭を抱える羽目になったとか。

 

『毎回鉄血がやられる度にこう言いたくなるんだよなー。見ろ!鉄血人形がゴミのようだ!って』

「威力が実際物語ってるしな……バルスと言われてもしゃーない」

『そうだな、ハハハ。あ、ついでに聞きたい事があるんだが、アレ以外で何か送ってないか?この前通帳見た時、結構な金額で増えてたんだが……まさかじゃないだろうな?』

「そのまさかだよ。俺、グリフィンに就職しちまった」

 

 グリフィンに就職出来たという報告を受けた父親は目をキラキラさせながらグレイの就職を喜んでいた。

 

『あのグリフィンにか!だったら、そりゃ納得だわ。ホントお前には色々と助けて貰って感謝してるよ。つっても……本当はそこまでお金には困ってないんだけどな。そろそろ老人迎える俺や母さんはさっさと死ぬ定めだと神様言ってるし』

「そんな神様いねーし。それに……何にも夢すら見つけられず、親の脛をかじったまま生きてたんだし。少し位は恩返しさせてよ。この職場とかでさ、何となくだけど……自分に似合ってるんじゃないかって今更になって考える様になったから」

『ったく……そんな事しなくても良いんだよ。俺はお前等が生きて、里帰りした時にその元気な顔を見せてくれりゃ嬉しいんだからよ。帰る時は嫁さん連れて帰って来いよ。何時でも待ってる』

「うん、そうするよ。まだ時間あるけどどうする?」

『そうだな……折角だからお前の思い出話とかグリフィンの仕事とかの話、色々聞かせてくれや』

「分かった」

 

 それからはずっと遠く離れながらも通話越しで思い出を語り続ける。沢山の話を父親に聞かせながら。

 机の上には自分と404小隊の全員が揃った集合写真が飾られ、置いてある指輪も少しだけ眩しく輝いていたのであった。




何時も通り元ネタ解説。小さいネタも含む。

・「([∩∩])<死にたいらしいな」
第1話ですっかり入れ忘れていたコレ。爆ボンバーマンTASにおいてコイツが絶対言いそうな台詞。本来はボスなんだけど。TASでのボンバーマンは大体スタイリッシュに爆弾置いてジャンプするし、舐めプは勿論、無駄の無い動きで敵を落としたりするので、鬼畜というだけでは済まされない気がする。

・貴女のような勘のいい指揮官は大好きよ
元ネタは鋼の錬金術師での台詞で「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」が正解。逆に大好きなんて言われて、今の404みたいに囲まれたらヤバいけど。

・AMS(意味深)から光(意味深)が逆流する……!うあああああぁぁぁぁぁッ!!
アーマードコアフォーアンサーから逆流王子ことフラジールが最後に言った断末魔。グレイベルはプランDどころの話じゃなかったけど。

・マモレナカッタ
テイルズオブグレイセスの主人公、アスベルが戦闘中で死んだ際の台詞。公式でもネタにされているが、グレイは果たして童貞守る必要あったのか。

・某存在感が薄い主人公
ゆるゆりの赤座あかり……なのだが、本当に存在感が薄く、出番が滅茶苦茶少ない方。ついでに本当にステルスレベルにまで消えた。死に掛けシーンは言うまでもなく5話のアレ。

・がんばり薬
ブレスオブザワイルドでがんばりゲージを回復する為の薬。大体料理とかで作れる。今回の場合、あっちの意味でがんばりゲージ(意味深)を回復する必要があるが。

・ガーディアン
ブレスオブザワイルドにおける二大トラウマの一つ。いきなり序盤から固定砲台型が祠の近くに出現していて、気付かれた時には不穏なBGMとピピピピピというロック音が。数秒後にレーザーを出すが、ハート14個以上と炎上ダメージのオマケ付き。序盤で装備揃えても死ぬ。盾で防いでも大体の奴は一発で壊れる。盾パリィでレーザーを弾き返せるが、マスターモードではチャージ時間に不定期にフェイントを混ぜるという鬼畜な仕様でパワーアップした。
ガーディアンには小型、固定砲台、歩行型、ドローン型での4つのタイプがある。朽ちたタイプとルーダニアは例外。ここでのガーディアンは小型と同じく3回連射して撃てる他にロック時間が大幅に短縮、目潰しされても3秒でリカバリーする、尚且つ大量配備と様々な機能を加えられたアイザックによる魔改造済みという鬼畜兵器と化した。これのお陰でグリフィンは鉄血からの攻撃を一度も受けずに済み、鉄血も泣く泣く逃げざるを得なかったという事態に。

・見ろ!鉄血人形がゴミのようだ!
某天空の城における有名台詞。実際、ガーディアンのレーザー喰らったらゴミ所か灰になって消えるんですが(震え声)


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恋愛クソザコメンタルモデルM16 上

毎回誤字報告ありがとうございます。そんでもって、色々とミスってすみません……。
言い訳っぽくなっちゃいますが、パソコンとスマホ両方でやってるものなので、特にスマホ打ちだと間違い無く誤字起こすんですよね……何処で間違えてんの私。投稿する前に確認大事だね……。

後、キャラの感覚が掴め難いので喋り方がおかしかったりしたら済みません。
今回は前回の反省を活かしてM4を病ませます(ぇ


 鷹山将ことTASは未来が見える。

 正確に言えば、「ドールズフロントラインの物語というチャートを知っている」というのと同じだ。何時誰が死ぬのか分かるし、選択肢なんて無いし、マウスをクリックするか、タップしてストーリーを進めるだけの展開だけ。

 しかし、現実の場合は違う。選択肢を選ぶ時間ですら無いし、マウスやタップで物語を読む時間ですら無い。ただし、何時誰が死ぬのかという内容が決して変わらないのであればどうするか……答えは簡単。それを起こさせない為にも1秒でも早く流れを変える。知ってるからこそ、相手に隙を与える事なくスムーズに終わるからだ。

 

 ふざけた態度とは逆に、こういうちょっとした未来視みたいなのが見えてる以上、死人を多く出さない為にも手段を問わずに動き回り、本当の意味でハッピーエンドを迎える為に早くやるに越した事は無い。彼としてはそう思ってたりする。

 リアルタイムで動くというのは本当に1秒だけでも救える命があるかもしれないみたいなもの。鉄血もそうだが、バグが無ければ殺そうだなんて誰も思ったりはしないだろう。知らない奴から見れば是非とも欲しい力でもあるのだが、知らなくて良いと思った方が身の為でもある。最早TASというのは実質人間離れとも言える範囲で危険視されてもおかしく無いのだ。

 

 だから、グレイも含めて彼等は戦う事を選び、自分達の周りにいる者達を巻き込ませない為にも孤独を選んだ……筈だった。

 

「指揮官、愛してます……指揮官を思う気持ちはM16姉さんには負けません……!」

「い、幾らM4でも指揮官は渡さないぞ!姉の特権だ!」

「グレイの次は俺か……やれやれ……」

 

 TAS、人生においての敗北を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 こうなった事件が起きる経緯は少し前に遡る。404小隊とは別にグリフィン専属の部隊がある。それがM4達が率いる部隊「AR小隊」。彼女達は迫り来る鉄血を迎撃する為に作られたエリート部隊で、鉄血に関する情報も収集してたりしていた。だが、今ではそれを大体が指揮官達によって行われ、AR小隊も404小隊と同じく戦力だけの存在として扱われてしまった。

 しかし、必ずしも戦術人形が出ない訳では無い。強くしないといけないのは分かっているので、普通に任務に行かせたり、資材を回収しに行ったりと、やれる事はやらせていた。

 

「ホントに指揮官達には驚かされてばかりだが……私達は戦術人形だ。活躍出来なくてどうする」

 

 そう言い切ったのはAR小隊の一人で姉とも言えるM16A1。当初、彼女は新しい指揮官達を危険視していた。それは以前にも触れていたUMP45及びUMP40との関係性。蝶事件の裏側で生身のまま鉄血人形を全滅させたという異常な伝説。

 

 彼女は彼等が敵に回った際には鉄血よりも遥かに危険な存在になるのではないかと警戒していた。故にそう簡単には信じられず、ずっとグリフィンでの任務を遂行していたが、窮地に陥ってしまう。このままでは全滅も免れないと思った場面で彼等が救出。更には目の前で異常な行動を起こしながらも鉄血達を全滅させたのである。

 

 後々聞いた話で、彼等は元々旅人だった事や上層部達の無茶振りだけじゃなく制限時間内に倒すという縛りを設けては約束通りに殲滅させただけじゃなく、新記録も叩き出した上、果てには前線で戦い続けても構わないとハッキリ言ったのだ。これ程までに狂人と呼べたのは初めてで、ただでさえ鉄血ですら手に負えなかった事から彼等の実力や守る意志(あったかどうかと言われたら微妙だが)があった事や助けて貰ったのに警戒するのも馬鹿馬鹿しくなり、今では指揮官達の事を信用している。

 

 だがしかし、それとは逆に鷹山もそうだが、指揮官全員が一致して困ってる事が1つ。それは……。

 

「ふぅ……やっぱり仕事終わりのジャックダニエルは最高だな」

「このアル中め……」

「ごめんなさい指揮官……」

 

 彼女、重度の酒好きなのである。仕事終わりとか勝利した時でも暇な時でも酒を飲み、特にジャックダニエルを好んで飲む。ジャックダニエルだけじゃなくビールも飲んだりするのだが……それにしたって多かったりするのだ。ここ1週間で結構頻繁に飲んでないか……?と怪しんだが、案の定給金とかで使われるのもほぼ酒メイン。姉がこれだと妹も苦労するわと顔に出ていたのか、隣で副官をやっているM4が代わりに頭を下げる。

 

「戦術人形だからって、毎回ウイスキー飲んでる奴とか正気を疑いそうになるな……つーか、ジャックダニエルの度数って何だっけ……40度?無理無理無理、飲む気起きねーわ!お前良く毎日飲もうと出来るな!?」

「何だぁ?心配してくれてるのか指揮官」

「アホ言うな。はぁ……M4は大変だな、姉がこれだから。寧ろ、M4みたいに真面目な人なら絶対良かったのに」

「いえ、そんな……」

「……指揮官。私の妹達に手を出したらどうなるか……その時は分かるな?」

 

 どうやらM16は鷹山がM4に向けて色目を向けているのだと思ったのか、彼女から殺気が溢れる。しかし、鷹山はそれがどうしたと言わんばかりにドヤ顔でこう言い切った。

 

「何勘違いしてるんだM16。元々変人同士でしか集まらなかった俺達男が色目を使うだと?それは断じて無いと言い切れるね。俺達は気持ち悪い奴等だから迷惑掛けるよりかは独身で死ぬんだと互いに約束したんだ。もっと言うならこんな俺達に恋を寄せるなんて方が有り得ないね。けど、グレイは一方的にヤられて人生の墓場まで持って行く羽目になったそうだけど」

「それ、自虐しているって分かってるのか?」

「じゃなきゃ俺達今でも旅してるっての。俺達の行動に付き合ったら、絶対彼女の方が倒れる。そんな事になるなら、恋をしない方がマシさ。」

 

 表情には後悔の1つも無く、笑顔で言い切った鷹山。それを聞いたM4は少し俯き、M16は鷹山に向ける殺気は無くなったものの、今度は指揮官達に対する哀れみが浮かび上がっていた。

 

(悲しい奴だな……何でそう決めてしまうんだよ。何でそんな笑顔で言えるんだよ……本当は好きな奴だっているんだぞ……見ろよ、M4の顔を……アイツはお前の事が好きだって気持ちを抑えてるのに……)

 

 あの日、AR小隊を助けた日。真っ先に駆け付けてくれたのはTASとヴィンで、TASは一番に活躍してくれていた。彼の行動は全てを「読み」、「プログラミングされたルート通りに動く」やり方で鉄血達を倒していた。人間ならば有り得ない動き。しかも、そんな戦場で彼は笑みを浮かべながら戦っていたのだ。

 気が狂ってると思っても仕方無いだろう。だが、彼の笑みはまるで何かを楽しんでは遊んでいる子供みたいな感じで、何故だか彼の笑顔を見ていると、段々と不安や恐怖が薄れていった。それが一体何を示すかは分からない。だから彼の事を知りたい。そうM4は願う様になった。

 彼と会話する内に次第と笑う回数も増えていて、M16も妹があそこまで幸せそうに笑うならばそれで良いと思っていた。しかし、その支えとなる指揮官からあの発言を聞いた瞬間に表情が暗くなっていて……タイミングもそうだが、大体の原因は妹を守ろうと言った自分に非があるとしか言えなかった。

 

(あぁっ、クソッ……これじゃあ私が悪者じゃないか……ここまで自分を卑下するのも清々しいが、あまりにも不憫過ぎる。ここは少し一肌脱いでみるか……?)

 

 日頃から酒を飲んでグータラしていそうな悪いイメージを払拭する為にも、M16は思い立って行動に出る。姉らしい所をM4に見せつけてやらねば、まるで駄目なお姉さん……略してマダオの烙印が押される。それだけは何とか避けなければいけない。

 まずは女性としての魅力を伝えなければ。自分に自信を持たせるのはその後でも良い。意を決したM16はイタズラな笑みを浮かべて鷹山に少しだけ迫る。

 

「悲しい事を言うなよ指揮官。お前だって前線で戦ってた姿は良い男だったぜ?」

「マグロみたいな飛び方しててもか?」

「……その手の話は一旦離れろ。とにかくだ。お前が前線で戦ってる姿は戦術人形にも劣らない位に強くて、ここに居る皆の事を考えながら行動している。そりゃ大層素晴らしいこったよ。けどなぁ、そんな指揮官様が自分に魅力ないとか彼女が多分疲れるかもって理由でずっと避けるのはちょっと見逃せないな。妹のM4だって可愛いのに、それすら避けるなんて勿体無いぞ!それとも……私がお前の事を貰ってやろうか?」

「ね、姉さん!」

 

 こうして近付ければ少しは女性としての意識を持つに違いない。とりあえずM4が焦っているので「冗談だよ」と言った後にまた少し酒を飲んだ。

 しかし、からかう行動が悪かったのか、次の瞬間に鷹山からある言葉が放たれる。

 

「今度また余計な事を言ってみろ。その時は婚姻届を出して、式場に連れ込むぞ」

「ぶふぅっ!?」

 

 予想外の攻撃を喰らったのか、M16は飲んでいたジャックダニエルを吹き出してしまい、M4は手に持っていた書類をパサッと落としてしまう。

 ストレートな言葉にM16は咳き込み、顔を真っ赤にしながら鷹山を見つめた。

 

「ゲホッ……ゲホッ……!おい……冗談だろ……?」

「貰ってやろうかって言ったのはそっちの台詞だろ?」

「い、いや、確かに言ったが!かと言って、色々すっ飛ばしてそこになるのか!?わ、私なんかよりもAR-15とかSOPMODとかの方が魅力的だろ!?何ならM4をあげても構わない!」

「ちょ、姉さん!?」

「どんなにだらしなくても俺が家事とか仕事とか全部任せるから、それでも構わないって思ってたのに!他の姉妹よりかは、お前だからこそ良いと思ったのに!ホイホイと俺を誘っておきながら、俺からの誘いは断るってか!キレそう!」

「あっ、いや、その……」

 

 まともな思考回路すら回らず、答えられないまま頭がオーバーヒートを起こす。ストレート過ぎる答えにM16はもう限界だったのか―――

 

「わ、悪い……酔いが回っちまった……きょ、今日はちょっとこの辺にしとくよ……じゃ、じゃあな!」

 

 と、顔を真っ赤にしたまま執務室から激しく飛び出し、ドタドタと走り去って逃げた。顔が真っ赤になってるのは酒に飲んでいた性だと自己暗示しながら。残された鷹山とM4は過ぎ去ったM16をただじっと見つめていた。

 

「嵐の様に過ぎ去ったな」

「あ、あんな風に慌てるM16姉さん、初めて見ました……」

「ったく、碌に恋愛経験すら受けた事の無い奴が誘惑なんかすんじゃないっての。今みたいに対処し切れてねーじゃんか」

 

 そう愚痴りながらも雑巾を探して、M16が吹き出しては汚れてしまった床を拭く鷹山。拭いてる間にM4は鷹山にある事を聞き出した。

 

「……TAS指揮官、先程のあの言葉は本当なんですか……?」

「大体嘘だよ。そもそも俺が彼女と付き合うのは無理とか何か察してあんな行動起こしたと思うけど、付き合う気はねーし、ちょっとムカついたから少し仕返ししただけ。良い笑顔が見れたから満足したけど」

「そうですか、それは良かったです」

「良かったって……お前の姉貴、ああだぞ?何か妹達差し出してたけど。一応あれでも姉なのに」

「確かにそうですが、姉さんは本当にだらしないので直すのは難しいと思いますよ。それに、あんな風に真っ直ぐ言える指揮官はとても素敵でした」

「褒めたって何にも出ないぞ。勿論、婚姻届も結婚指輪も無いけど。そもそも俺とかに付いて来る奴って余程、俺達みたいに染まってない限り無理だし。でも……」

「はい?」

「仮に彼女出来たら、俺は幸せなのかね。事情を分かってくれたり、色んな趣味とか話し合いとか、幸せな時間を過ごせるなんて事……そんな夢、叶えれたら良いけど」

「ふふ、そうですよね」

 

 鷹山に言われて安心した様子を見せるM4。だが……。

 

「大丈夫です……私はそんな指揮官を狂おしい程に愛してますから……出なくても私が全て用意してあげますから……M16姉さんにあげるのは勿体無い位に……そう、指揮官は私のモノですから……」

 

 小さく呟いたその声は、鷹山には聞こえず、歪んだ笑みを浮かべていた。一方で自室に戻ったM16は今日の事は忘れよう、きっと明日は何時も通りに話せる筈だと思い込みながら。

 

 

 

 

 

 次の日、鷹山なりの仕返しが続いた。まず、任務においてトップだった場合はとにかく褒めちぎった。戦場の出来る女、だらしないけどそこがイイ、お姉ちゃんに抱かれたいNo.1だとか、ありとあらゆる方面で褒めた。

 これにはM16も対処出来ず、本当にその気なんだと後悔し始める。からかってる本人は何だかんだでM16をイジるのが楽しくて、中々止められずにいた。また、M16が顔を真っ赤にしながら走り去る光景はAR小隊だけじゃなく、他の戦術人形や404小隊にまで伝わった程。特にUMP45は笑ってて、グレイは発想とやり方がエグいと言われた。

 ついには耐え切れなかったのか、ソファとかで顔を突っ伏しては呻き声の様に「うぅ……」と呟いていた。これにはAR-15達も呆れていた。

 

「いい加減、自分の気持ちに素直になるか、謝るかのどっちかにしたら?元はと言えば貴女が言いだしっぺなんだから。」

「分かってるよ……けどなぁ……」

「はぁ……面倒臭っ……」

 

 呆れて悪態をつくAR-15。だが、こうして目の前で見ている以上M16の優柔不断さには悪態もつきたくなるものだ。普段からクールそうで面倒見の良いM16がTAS指揮官による言葉に翻弄されたのだ。あの日を境にずっと翻弄し続けられた結果、今のポンコツ状態へとなっている。流石に慣れるか心に決めるか何でも良いからさっさとシャキとして貰いたいとAR-15は愚痴っていた。

 

「でも、あそこまで言えるのって私達を大事にしている証拠だよね!ここの指揮官全員優しいもん!」

「そうですよね。この前、グレイ指揮官が404小隊の皆さんと重婚したみたいですけど」

「アレは異常よ。グレイ指揮官が彼女達の何かを突き動かした結果でああなったのかどうか分からないけど……何だかケロッとして平気そうだったわよ?」

「やっぱり、結婚って幸せなのかな~!」

「幸せ……かもしれないですけど、彼女達はちょっと重いというか……」

「変人同士って何かと惹かれ易いのかしら」

 

 実際にあの大量の褒め言葉を直に喰らったらどうなっていたか……多分M16と同じく悶絶する位にゴロゴロ転がっていたかもしれないが、もしかしなくても普通に指揮官からのプロポーズ(?)を受け取っていた可能性もあるが。

 M16を余所にグレイの事について話し合うSOPMODやRO635にAR-15。M4は少しTAS指揮官に用があると言って出て行ったのでここには居なかった。一方のM16は結婚だとか幸せとかにピクピクと何か反応していたが、起き上がる様子は無い。

 

「……あーっ!もう!ずっと黙ったままでウジウジしてて情けないわね!SOPMOD!RO!両腕掴んで!」

「はーい!」

「わ、分かりました!」

「お、おい何するんだ!?」

「今から指揮官の所に行くのよ!貴女は彼の事好きなの!?どうなの!?」

「そ、それは……」

 

 決して嫌いという訳じゃない。あの時に告白っぽい事を言われようが、褒められようが、嬉しかったという事には変わり無い。ただ、余りにも唐突過ぎてどう答えたら良いのか分からないまま有耶無耶になってしまったのだ。

 しかし……もしも彼に別の誰かが好きだと言い寄ったりしたら……自分は自分のままで居られるだろうか。その時はきっと後悔ばかりが残りそうだ。

 

「……行くさ。もう逃げるのはナシだ」

「決まりね。それじゃ、行くわよ!」

「「おー!」」

「お、おい掴むなって!自分で歩けるから!」

 

 多少強引に引き摺られたまま、彼女達は執務室へ向かう。すると、執務室のドアが若干少しだけ開いてて、そこから誰かが話しているのが聞こえた。

 

「あれ?先に誰かいるよ?」

「もしかして……M4かしら?あの子、さっきTAS指揮官に用があるって言ってたからまだ話していたのかしら」

「少し声も聞こえますね。何を話しているのでしょうか?」

 

 こっそりと扉に近付き、会話を盗み聞くM16達。また執務室ではM4と鷹山が仕事をしている最中だった。

 

「この書類はこれで終わりだな」

「お疲れ様です鷹山指揮官。コーヒー淹れましょうか?」

「ああ、頼むよ」

 

 慣れた手つきでコーヒーを注ぐM4。鷹山はバキバキと身体を動かしながら骨を鳴らしていた。結構疲労が溜まっていたのだろう。

 

「はい、どうぞ。ちょっとした隠し味も入れてますから」

「へー、何入れたの?」

「ふふ、秘密です」

「何かそれはそれで気になっちゃうなー。所で、ここまで付き合ってくれて悪いな。お礼に何か要望叶えてあげるけど、どんなのが良い?」

「要望ですか?でしたら、ここにちょっと書いて貰いたい所がありまして……」

「ん、分かった」

 

 サッと渡された一枚の紙。そこに名前を書いて欲しいとM4は言い、鷹山はそこに書こうとした。が……。

 

「………」

「指揮官?どうかしましたか?」

「……お前、コレ……誓約の証じゃねーか!?その上、一枚って言っておきながらもう一枚重なってたけど、こっちはこっちで婚姻届じゃねーか!?何であるんだ!?」

(……ッ!?)

(((な……なんだってーーー!?)))

 

 衝撃の内容にM16は勿論、鷹山も同様が隠せず、覗いていた3人は何処のMMRの如く戦慄が走っていた。寧ろその展開にピコンッ!と閃く。

 

(ねえ、これって修羅場って言うんだよね!?そうだよね!?)

(まさかのM4が鷹山指揮官に好意を寄せていたとは……!これが噂に聞く三角関係ですか!)

(ちょっと待って!もしかしなくても、さっきM4が用事あるって言ってたの……この事だったの!?というか、仮にもM4が最初から好意寄せてたなら、M16は何の為に悶々としてたの!?え、どういう事なの!?)

 

 ヒソヒソと話し合う3人。M4の行動に戸惑うM16。肝心のM4はゆらりゆらりと鷹山に迫りつつ呟く。

 

「指揮官、私と一つになりましょう……ふふふ……」

(だ、誰か助けてェェェェェェェェェェ!!!!)

 

 狂喜に満ちたM4の姿は今まで人生の中で一番恐怖したと後々に語る事となった……。




このシリーズにおけるAR小隊と404小隊との関係性は気軽に話せる仲間みたいなものです。まあ、UMP40とかの関係性や指揮官の無双っぷりがあった分、物腰柔らかくなってますので。
そんでもって、恋愛とかクソザコそうなM16姉さん書いて見たかった。こういうM16姉貴も悪くないと思うけど、どうなん?(アニキ感)


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恋愛クソザコメンタルモデルM16 下

修羅場っぽく書こうとしたが、何だか短く終わってしまってた。うん、色々と構想練る力が足りな過ぎる……。
ついでに、ドルフロの世界線とか設定とか微妙に分かり難い……自分としては崩壊した世界とはいえ、まだ学校とか病院とか残ってんじゃね?と個人的に思ってたりします。

ゲーム公式とはいえ、M4の過去が重過ぎる……なので、M4は是非とも幸せになって貰いたい所。病んでもそこが可愛いからです!
ホントにドルフロ世界って複雑過ぎて逆にやり辛いわー……今回もシリアスっぽいけど、そこまでシリアス書けてないから。ギャグ挟まなければ死ぬ病気なので(ぇ


(このTASの目をもってしても読めなかったとは……!)

 

 現在混乱中の鷹山。どうしてこういう流れになったのか頭を抱えていたが、少なくとも自分に原因あるんじゃね?と確信した。多分言うまでもなく自分が彼女を作らないとかそんな事をほざいた性なのか、彼女をあんな風に豹変させてしまった。こういう女性は確かヤンデレとかじゃなかったっけ?と理解しつつ、「何処でルートを間違えた!?」と自分を責めていた。

 

 まさか恋愛関係もTASでやっているのかと言われたら、実はそうでもない。やるにしても戦闘や仕事、日常生活において効率良く動かすだけであって、恋愛に関しては小細工も何にもしていない。彼曰く「恋愛とかだったらタイムアタックやバグ技とかじゃなくて、本気の恋がしたい。小細工で得する恋より、自力で掴み取った恋の方が一番カッコいいし」と決めていて、予測しながら読む行為はしなかった。

 

 だが、今ではどうだろうか。可愛らしい少女がドス黒くてヤバそうなオーラを纏い、今にでも自分の心を見透かしながら撃って来そうな……そんな恐怖しか無かった。

 

(死んだら元も子もねぇぞコレ!?)

 

 何処で死亡フラグを建てたのかは置いといて、一緒に死にましょうという様な展開は絶対に御免被りたい。その時だけはTASを使ってまで命だけは回避せねばならないし、M4を宥めなければいけない。危機的状況真っ最中の今をどう突破したら良いのか考えていると、M4が鷹山を見つめながら喋り始めた。

 

「指揮官と姉さんが悪いんですよ……?指揮官は最初に彼女を作る気は一切無かったのは私にとってショックでした。それでも、私は指揮官と一緒に居たいと願ったんです。例え周りから変な奴だと言われても、子供みたいに明るく振る舞える笑顔を見せる指揮官……それがとても可愛らしくて、好きになったんです。だから付いて行こうと思ってたのに……どうして、私じゃなくて姉さんを褒めたんですか?私には何も褒めてくれなかったじゃないですか。どうしてなんですか?」

「あ、え、えっと、その……」

「分かっています……本当ならばM16姉さんが指揮官をからかったから、その仕返しとして指揮官はM16姉さんにあんな事を言った……次第にそれも楽しむ様に見えていて、姉さんは姉さんで指揮官を意識する様に変わりました。だからでしょうか……何故か胸の奥が苦しくて痛いんです……戦術人形なのに、どうしてこんなに苦しいのでしょうか……私は好きな人の隣に居る事が許されないのですか?姉さんも最初は私とくっ付ける為に頑張ろうとしていたのに、指揮官の言葉に惑わされて、逃げながらも好きなんだって意識していたなんて……嘘つきじゃないですか……」

(アカン)

 

 最初に婚姻届とか式場とかを言ってた時点で積んでるじゃん!と心の中で突っ込む。後悔しても遅かったが、そこから更に絶望の言葉が。

 

「そんなの絶対に許せません……だから私は用意したんです。指揮官と結ばれる為の道具を……指輪も、婚姻届も、使える物ならば全部……当然、指揮官が姉さんの所に行かせない為の手錠やロープもありますから……ふふふ……」

「止めてくんない!?監禁プレイは正直嫌なんで!!というか、お前の顔ヤベェって!こえーよ!」

「どうして私の事を避けるんですか指揮官……?どうして逃げるんですか……?」

「逃げもしねぇし、避けはしねぇけど、受け止める側としちゃハード過ぎて困るんです!!ホントに落ち着けマジで!!」

「大丈夫ですよ……指揮官は私を見てくれれば良いんです……愛してくれれば良いんです……それに、そろそろ来ますから……」

 

 言い終えた瞬間、身体中が熱くなると同時に電撃を喰らったかの様な痺れが走る。身体の異常さに気付いたTASは先程のコーヒーに何か飲まされたと察した。

 

「おまっ……あのコーヒーに何入れたんだよ……!」

「指揮官が私から逃げなくする為の薬と私を好きになる薬です……どうですか?身体が熱くなってきましたよね?私を見て興奮してくれてますよね?」

「間違い無く媚薬と痺れ薬の類じゃねーか……!クソがっ!(激ウマボイス)」

 

 薬を盛られ動かなくなる鷹山にゆっくりと近付くM4。対する鷹山は力を使って興奮と痺れのレジストを行ってリカバリーを試みた。少しでも動ければ状況を覆す事も可能だからだ。

 M4と鷹山の姿にM16は動揺しながら見ていた。止めたくても止められない。確かに全ては自分が切り出したのが原因だったし、妹の手助けのつもりが逆に鷹山を意識する羽目になっていた。それが妹を狂わせ、妹を差し置いて姉を許せないという気持ちはM16にとっても深く突き刺さっていた。

 

(私は……最低だな……流されるまま流されて、指揮官を好きになって……妹が好きな指揮官を奪おうとして……本当に何もかもだらしなくて最低な姉だ……)

「いい加減にしろやM4!んな小細工使って無理矢理の恋を叶えようとした所で幸せもクソもあるかッ!どうしても好きだって言うのなら、最初から道具なんて使わずに自分の気持ちを堂々と伝えろや!!これ以上迫って事後になったら、俺は結婚指輪とかその他諸々持って滅びの山の火山で身投げするぞ!!」

「死ぬつもりですか指揮官!?何故そこまでM16姉さんに拘るんですか!!」

「拘ってねぇよ!それよか、家族の事すら大事にしねぇなら尚更お前とは好きになれないつってんだよ!んな事やったらM16はどうする!?アイツずっと傷付いたままだぞ!お前はそれでも良いのか!?」

(………!)

「止めて!これ以上……姉さんの名前を口にしないでッ!!」

「ぐッ!?」

 

 グッと首を掴まれてしまう。ヤバい、殺す気だと。ここで腕と足のレジストが完了したが、それでも動かす力がもう少し足りない。

 こんな事になってからでも、指揮官はM16を大事に思っていた。それが元は嘘の仕返しだろうが彼の本心だろうが理由はハッキリしないが、例え好きじゃなかったとしてもそこまで言ってくれたのか、彼女の心が少しだけ軽くなる。

 少々荒っぽくもなるし、こうなったら全力解放で強制的にレジストを終了させてM4を無力化させようかと考えた途端、勢い良く扉を開ける音が聞こえた。

 

「止めろ!M4ッ!!」

 

 扉から出て来たのは涙を流しながらM4に銃を向けるM16。M4は蔑む目をM16向けながら呟いた。

 

「今更現れて一体何しようとしているんですか?止めようとしても無駄です。私は指揮官と一緒に幸せになりますから」

「……分かってる。お前の事を考えようにも自分の弱い気持ちに戸惑って、ただ調子に乗ってやった結果が今を招いた……指揮官から言われた言葉が嘘だったとしても、私は嬉しかった……姉らしい所見せられなくて駄目な姉だ……」

「M16……」

「何でだろうな……本当はM4が指揮官の事を好きになるつもりだったのに、今になってM4と同じ気持ちになるなんてな……でも、M4の幸せを私が奪った……嫌われても当然だ……それなら私が指揮官の隣に居る権利なんてあっちゃならないんだ……」

 

 どちらかを好きになれば、どちらかが悲しむ。それは人間も戦術人形も同じ。自分の気持ちに中々正直になれずにずるずると引っ張らなければ……或いは鷹山が最初からM4の事を好きになっていたらこんな事態にはならなかっただろう。

 それでも、原因を起こしたという理由には変わり無い。故に、M16は自分の銃を手放し、代わりに拳銃を出しては自分の頭に向けようとする。

 

「だからこそ、私は私なりのケジメを着けなきゃいけないんだ……」

「待て!早まるなM16!」

「止めるな指揮官!これは私自身にも、M4にも対する償いだ!私は……M4が幸せならばそれで良い……精々私は延々と沈んだ気持ちを引き摺るよりかは、居なくなった方がお似合いだからな……」

(畜生ッ!どいつもこいつも早まりやがって!展開早過ぎんだよ!何勝手に死のうとしてんだよ!つーか、レジストまだか!?)

 

 身体を確かめると、どうやら完全に回復したらしく、直ぐにでもM16を止められる。

 急いで止めようとしたが、M16が引き金を引く前にバシッ!と何かによって弾かれて、M16の手に持っていた銃が落ちる。それを止めたのは―――

 

「M……4……?」

 

 さっきまで姉を恨んでいたM4だった。しかし、今の彼女の目には憎しみではなく、悲しみが溢れていて、涙を流していた。

 

「何で……?」

「確かに……姉さんを恨んでいた気持ちは今でも変わりません……ですが……姉さんが死んだら……一緒に過ごした記録も……私達はどうするんですか……!指揮官だって……!」

(うん、そうなんだけどね。半分は俺の自業自得なんです……)

 

 だが、狂っていたとしてもまだ良心が残っていたらしく、殺したい気持ちがあったとしても、家族として死んで欲しくない気持ちは残されていた。どちらかが死ねば、どちらかが悲しむ。いや、この場合は家族が悲しむというべきでもあるか。逆に鷹山は罪悪感がいっぱいだったが。

 

「何で止めるんだ……私は……!」

「分かってます……それでも、私達は姉さんを含めてAR小隊なんです。さっきまで私は指揮官の事ばっかりしか考えていませんでしたが……今なら指揮官が言った理由が分かった気がします……家族を大事にしない人は好きになれないと……」

 

 M16が自ら死のうとした時、M4は頭の熱が一気に冷める様な感覚になった。彼女を止めた時には自分勝手にやってしまった行いや誰かを失うという恐怖に耐え切れず、後悔が後々から迫って来たのだという。

 都合の良い話かもしれないが、それでもM4は間違いに気付いてくれたのだ。気付いただけでも鷹山は肩の荷が下りたらしく安心していた。

 

「姉さんが居ないAR小隊なんて……正直続けられる気がしません。かと言って、さっきまで姉さんが消えて欲しいとかそういう風に願った私が言えた口じゃないんですが……」

「M4……でも、私は……」

「……良いんです。私も周りや後先の事を考えずに先走り過ぎたのですから。だから……指揮官の隣は姉さんで良いです。」

「M4!」

「姉さんが指揮官の事を好きになっちゃったのはショックでしたけど……でも、もしも姉さんがそれで幸せを感じるのならば、私はそれで良いと思います。何時もお酒以外で幸せになる姉さんの顔って見た事無かったから……」

「………」

 

 結局、彼女達もまた自分の気持ちを伝えるのが不器用だったのだろう。何だか前にも同じケースを聞いた覚えがあるぞ……と鷹山は微妙なデジャヴを感じていたが。

 

「あ、でも、キスとか初めてとかは私の予定ですので、姉さんは2番目ですね。それだけは譲りませんので」

「なっ!?」

 

 普段から清楚系なイメージをしていたあの頃は何処へ行ったのか。きっとこっちの方が彼女にとっての本性なのだろう。でも、吹っ飛び過ぎてる気がしている。

 

「指揮官、愛しています……指揮官を思う気持ちはM16姉さんには負けません……!」

「い、幾らM4でも指揮官は渡さないぞ!姉の特権だ!」

「グレイの次は俺か……やれやれ……」

「こうなったら……どっちが指揮官を喜ばせる事が出来るか勝負です姉さん!」

「ほーう、望む所だ。だらしない姉だったとしても、お前が私を超えるなんてあり得ないけどな」

「はい……?」

 

 ずいっと鷹山を見つめる二人。その目つきはまるでケダモノとも言える雰囲気を纏わせていた。何故自分なのか見回すと、自分の下半身に一つの膨らみが。

 

(しまった……!レジストで身体が動けても、こっちの方をすっかり忘れてた!かと言って、さっきまで全くエロい想像とかしていなかったのに……完全に原因媚薬じゃねーか!!)

「「ふ、ふふふ……」」

「あっ―――」

 

 そして、振り向いた時には鷹山は2人に襲われ、長い時間を掛けた後の彼は身体が完全に疲れ切っていて、M4とM16の2人は満足した顔を浮かべていたという。しかし、それだけじゃなかった。

 

「お、終わった……とりあえず休まねば……。」

「あら、何処に行くつもりなんですか指揮官?」

「AR-15……!?それにSOPMODにROまで……何故ここにっ……!?」

 

 扉を開けた先には顔を真っ赤にしながらプルプル震えるAR-15と何だか切なそうな顔をしていたROとSOPMODの2人が立ち塞がっていた。どうして3人がここに居るかというと……。

 

「M16を連れて行ったら真っ先に修羅場は起こるわ、自分で頭を撃ち抜こうとするわ、仲良くなったかと思ったらいきなりヤり始めるわ……アンタ達が終わるまで何時まで待ってたと思ってたの!?」

「ギャーッ!!最後まで聞いていたんかい!!」

「ねえ指揮官……私、我慢出来ないよ~……ねえ、一緒にシよ?」

「指揮官……私はいやらしい戦術人形です……さっきまで指揮官達の光景を見たら、私……止まらなくなって……」

「そういう訳だから……責任取らせて貰うわよ?」

 

 嘘だろ!?と絶望する鷹山。視線を向けるとM16とM4が親指立てて笑顔で答えていた。つまりは、やっても良いという証拠なのだろうか。寧ろ、疲れた身体に更に追い討ちを掛けられてるのと一緒なので、後々彼女達と終わった時には既に起きられずに倒れていたとか。

 

 

 

 

 

 後日、結婚指輪とかをAR小隊全員に送った後、鷹山とAR小隊はある場所でとある人物と話していた。

 

「いやー、まさかあの子達から話を聞いていた通り重婚しちゃうなんてね。404小隊に続いてAR小隊も……これは中々見ないモテモテの指揮官さんが現れたことで」

 

 そうニヤニヤしながら見ていたのはI.O.P社の技術開発部門「16Lab」の主席研究員である天才研究員「ペルシカリア」。略称はペルシカ。

 彼女は戦術人形の武器やダミーネットワーク技術を開発した第二次戦術人形を作り上げた産みの親で、AR小隊の戦術人形も彼女の手によって作られた。詰まる所、M4達の母親という意味合いでもある。

 

「私の子を泣かせたらその時はただでは済まさないつもりだったけど……何だか貴方も随分と面倒臭い考え持ってたんだね。挙句には色々と他の指揮官達と一緒に鉄血を倒しちゃう実力あるし。ねえ、一度解剖とかしてみても良い?」

「ぺ、ペルシカさん……!」

「冗談よM4。そんな事をやってしまったら誰かが悲しむでしょうし、二度目は無いもの」

「二度目……?え、じゃあ……一度何か解剖した経験あるんですか?」

「……君には結構ショックかもしれないけど、聞く勇気あるかしら?」

「今まで散々と嫌なモノを見て来ましたし、今更に限ってショック受けるとかあります?」

「分かったわ……それじゃあ聞いて頂戴。一度目の解剖……それはM4と深く関わっているの」

 

 聞けば、M4の身体……特に頭の部分では死んだ少女の脳が入っているとされており、時たま生きていた頃の記憶を見ている時があるらしい。

 それまでの記憶は全部覚えているし、幾ら人類守るとはいえ、戦術人形にそこまでするグリフィンはヤベーなと鷹山は思う中、ペルシカさんも苦労してたんだなと考えていた。きっとM4はこんな自分は指揮官に嫌われるだろうと何度か思ってはずっと苦しんでいたのだろう。だけど―――

 

「まあ、でも……そんな深刻って話じゃなさそうだな」

「え……?」

 

 これにはペルシカもM4達も驚いていた。特にM4はこんな自分なのに気持ち悪くないんですか?と聞いたら―――

 

「前々から言ってたけど、一番気持ち悪いのは俺等だ。戦術人形にも劣らず鉄血の奴等を倒せて、物理だの移動だの、どんな法則すらぶち壊しでやってる。脳だのどうこう騒ぐよりかは、未知数の相手と遭遇した時の方がこえー。いざとなったらマジで世界崩壊だって出来ちまうし」

「そんな言い切れる事なのかい?」

「この前配備されたガーディアンだって元々は旅先の道中で見つけた物なんですよ。アレはどっかの世界で魔王を封印する為に使われた兵器ですけど、威力はお察しでしょ?それに、俺が本気出したら徹底的にやりますし。ヘリが無かろうが泳いで行きますよ。例えて言うなら日本からハワイ島向けて泳いで1分で着く位に」

 

 一同唖然。しかし、本気でやり兼ねないのが彼等の実力でもあるのだから怖いのだ。それもそれで分かってしまうのが辛く、自分がこれまで嘆いていた事に比べれば指揮官達の方がもっと辛かったのかもしれないとM4はそう感じた。

 

「それについては納得した。けど、これだけは聞かせてくれ。今まで指揮官が誰とも付き合わず、グレイ指揮官達と旅していた理由って結局は何だったんだ?」

「あー……それ聞く?この話題における本当の意味を語るのって誰も居なかったし、始まりとなったのは子供の頃だったからな」

「指揮官が子供の頃ですか!?」

「わー、聞きたい聞きたい!」

「つっても、あんま良い話じゃないよ」

 

 当初、鷹山は普段通りの生活に飽きていた。何時も通りに学校に通い、勉強して、家に戻ってから何かゲームとかをやって時間を費やし、そして一日が終わる。それが毎日続くものだからつまらないと子供の頃から感じていた不満があった。外で遊んでも変わらぬ光景。世界の情勢を知らぬ子供は何でも良いから何か楽しい事が起きないか願った。その時、唐突に激しい頭痛が襲い掛かり、何かの情報が大量に鷹山の頭に入り込む。これに耐え切れなかった鷹山は気絶して倒れ、再び起き上がった時には痛みも退いていて、頭痛も起きなくなっていた。

 一体何だったのか分からずに帰ろうとした途端、頭の中で様々な情報が再び彼の頭の中で広がる。しかし、先程の頭痛は無く、代わりに鷹山はその情報を次々と理解し始めた。最初は何だコレと疑問に思ったが、その能力を初めて理解したのは学校のテストの時だった。テストをやろうとした瞬間、まるで最初から答えを知ってたかの様に理解していて、気付いた時には全ての答えを書き終えていた。この時に鷹山は気付く。どういう理由かは知らないが、自分にはそんな力を得たんだと。これが遺伝で受け継がれたものだったのかどうか深く考えた事は無くて、特別な力を持った事に喜んでいた。誰にも内緒で、決して話さずに自分だけの秘密にしようと。

 

 その日を境に色々と見れる様になっていた。テストの答えが分かったり、誰かの秘密を知ったり、それが楽しく思えて仕方が無かった。今までずっと普段通りの生活に飽き飽きしていたが、その夢を叶えてくれている。これさえあれば他はもう要らないと思った。しかし、現実はそこまで甘くは無い。

 どんなに自分がセコい力を使っても、それは決して努力したとは言えない。高い地位を取ろうとしても他人から恨まれ、叩かれ、虐められる。幾ら成績が良くても調子に乗るなと言われた事もあった。その時に鷹山は理解した。「この力は良い未来も悪い未来も映し通せる力」なのだと。

 

「どんなに未来を読んでも、どの道を辿るかによって運命が決まる。まるでプログラミングされたかの様に。あの時以来、俺は未来を見るのは止めておこうと思って封印した。こんな力を持っても意味無いと分かった俺は地道に勉強して、普通の点数を取り続けた。高望みすればまた同じ事が繰り返されるかもって恐怖に駆られていたからな」

「……別段珍しい話じゃないね。その時に君がどういう学校を通っていたのかは知らないが、一流のエリートを目指す以上他人を突き落とすのは誰もがやったりするんだ。その努力を繰り返し、実力で相手を落として見下す……有り得る世界だ」

「それに、俺の力はただ単純に答えが分かる訳じゃない。どの道で進んだら幸せなのか、不幸なのか、それすらも読み取れたんだ。昔、俺に告白しようとしていた子が居たんだけど、その子と関わった未来を読み取ったらクラスの奴等に虐められる未来が見えてな。きっと何処かで言い触らしたりするんだろうと思って断った。別の日にその子が別の男の子に告白していたんだけど、あの時に見えていた未来の通りにその子は虐められていた」

「そんな……」

「分かっちまうんだよ。こういう風に見ると人間がいかに汚い存在であるかどうかが。俺が今まで彼女を作らなかった幾つかの理由の一つがそれ」

 

 将来、自分が結婚とか十分出来る年齢に到達しても、相手が結婚詐欺や浮気をする人間じゃないのかと疑心暗鬼になってしまう。

 そんな汚い部分が見えてしまった鷹山は誰も人を信用しようとはしなかった。

 

「ただ……グレイだけは違った。アイツと初めて会ったのは高校の時。全ての科目においてテストの平均点ジャストピッタリに点数を取った俺に対してスゲー奴だと純粋に褒めてた」

「それを普通に出来ちゃう君もそれなりに凄いけど」

「まあ、最後まで話聞いてくれって。最初は変な奴だと思ってたけど、アイツの未来を見たらさ……大層凄い計画を立ててよ。自分の将来が見つからないから、旅をして見つけるなんて考えていたんだ」

 

 そんな当ての無い旅をするなんて馬鹿な奴だと鷹山は思った。けれど、何故だか彼ならば本当にやり遂げるのではないかと考えが過ぎったのだ。

 グレイに関する興味に惹かれつつあった鷹山は次第に話し合う仲にもなり、何故そこまで旅に拘るのかを聞いてみた。すると……。

 

『ずっと何も決まらないまま人生も終えるのってさ、生んでくれた両親に向けて滅茶苦茶失礼だろ?だから、せめて恩返し位はさせてやりたいんだ。近くで探すより、遠くに行って自分にしか出来ない方法で夢とかしたい事とかを探してさ。それで俺は人生を終わりにしたい』

 

 鷹山は悟った。こいつは正真正銘の馬鹿だけど、本当にやると決めたら最後までやる男なんだと。自分でもグレイと同じく何か出来ないか、悩みとかも相談した結果―――

 

『じゃあ、一緒に旅でもしてみる?なんつって。』

『する!』

『即答!?』

 

 と、流れるがままに旅を始めたのだ。あのまま汚い奴等が居る場所に留まりたくないのもあるが、グレイの言う通り、もしかしたら自分にしか出来ない方法があるのかもしれない。それが極僅かだったとしても見つけ出したいと心の底から沸き上がる気持ちが抑えられず、ついには旅に同行する事を決意した。

 

 旅は決して楽なモノではなかったが、自前のスキルとチート並みの能力でこれまで生き残り、旅をするメンバーも増えていた。そして、気付けば自分達は今グリフィンに居る。

 

「ずっと旅して来たけどさ、自分にとって何が出来るのか分かったんだ。この力を使って未来先に起きる鉄血からの襲撃を予測して、少しでも防ぐ事が出来るのなら俺は喜んでそれに使う。どんなに汚いって言われても、そうでもしなければ俺も大事な人も何もかもが死んじまう。戦いに汚いもクソも無ぇんだから」

「成程ね。貴方も貴方でどれだけ強いのかは良く分かったわ。ちなみに、貴方がグリフィンに就職しているって話は両親とかに話したの?」

「いや、両親も両親でお前の為だとか貴方が生きていればそれで良いのよとか言ってたんだけど、流石に将来ですら固定ルートされるのは俺としても嫌だったからな。ケンカして出て行った」

「それって縁切りに近いのでは……」

「まあね。でも、後悔してねーよ。あの時に旅しなきゃずっとクソ狭苦しい世界で居なきゃいけなかっただろうし。今は今で満足してるし、俺と一緒に居てくれる人も増えた。そうだろ?」

 

 鷹山とM4達の指には結婚指輪が。まさか自分がこうなるとは予想していなかったものの、別に悪い気はしなかったので良しとするかと自分で納得した。鷹山の答えにペルシカも彼の本質を一通り聞いては納得していた。

 

「貴方ならM4達を任せて安心かもね。何なら今からでも私の事をお義母さんと呼んでも構わないんだよ?実の両親とケンカ別れしたんだから、飢えているんじゃないのかい?ほれほれ~」

「ちょ、止めて下さいよペルシカさん……」

「そうですよ!指揮官のママになるのは私だけで十分ですから!」

「ねえM4、それ一体誰から吹き込まれたの!?流石にネットスラングは聞き逃せないけど!?」

「えっと、グレイさんとUMP45からですけど……」

「あんの馬鹿野郎ォォォォォォォォォォ!!!!」

「相変わらず今日も騒がしいこった」

 

 彼等は前へと「進み続ける」。常にベストな結果を残すべく、幸せな未来を掴むまで動き続けるだろう。幸せのゴールへと辿り着くベストタイムもそう遠くは無い様な気がした。




前回のネタも含めての小ネタ解説

・マグロみたいな飛び方をしててもか?
一番古いというか原点となるのが「キャッスルヴァニア 暁月の円舞曲」におけるTAS。ジャンプ+ジャンプキックという移動手段。それなりに攻撃が高く、敵キャラを蹴りながら通り抜ける場面が多いので「通り魔」と呼ばれたりしている。時代が進むにつれて動き方も変態レベルとなっていて、更には「マグロのように跳ねながら前進していく様はまごうことなき変態」とも言われる羽目に。しかも掛け声すら「ドゥエドゥエドゥエ(ry」と言ってる事からドゥエリストと呼ばれる様になった。このドゥエリストは知ってる範囲だと7人いるが……君達一体何を目指しているんだ。

・な……なんだってーーー!?
MMRマガジンミステリー調査班の有名台詞。話は聞かせて貰った 人類は滅亡する!

・このTASの目をもってしても読めなかったとは……!
北斗の拳に登場するリハクが言ってた台詞。本当ならばTASの目じゃなくてリハクの目。

・クソがっ!
ガンバレルーヤよしこの悪口(?)。あのボイスが何故か癖になる。

・俺は結婚指輪とかその他諸々持って滅びの山の火山で身投げするぞ!!
ロード・オブ・ザ・リングが元ネタ。サウロンの指輪がそこで作られたのと同時に最後にその指輪を投げ入れた場所でもある。結婚指輪を理由にそこで身投げなんてされたら流石のサウロンも迷惑だと思うが。

・日本からハワイ島向けて泳いで1分で着く位に
これと同じ位にやるのが「風のタクト」におけるマニュアルスーパースイムの事。ポーズバッファを利用して1F毎にスティックを上下に入力した後、これを延々と繰り返す。すると、何故かスピードが加算されてトンでもない速度と化し、まさかの船要らずでプロロ島から竜の島まで行けたりする方法。TASでしか出来なかったが、これをRTA走者でも出来るというヤベー技。色々人間辞めてる。



とりあえず、指揮官2人の大体の経緯は簡潔に語ったので、先にこの2人をフリー素材にします。後々で登場人物とか纏める予定でもあるんですが、厄災とTASの2人を是非とも使いたいという人はどうぞ使って下さい。コラボとかも受け付けてますので、メッセージとか送って頂けたら嬉しいです。


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紅の混沌 上 グレイ/鷹山「「ショータイムだ!!」」

何度見返してもグレイの暴れっぷりが足りなかったので、彼には本気になって貰いました。
え?鬼畜過ぎる?元ネタも相当鬼畜だったよ(白目)

厄災リンクが元ネタなのに、動きとか活用出来ていなかったのでそれっぽく再現出来てるかな……?


 その夜、何時もならばもうちょっと仕事を頑張るか、ちょっと遊ぶかで時間を費やしていたのだが、今日だけは少しだけ慌ただしい時間になりそうだった。

 それが起きたのは数分前。急遽ヘリアンからある作戦の為に指揮官と戦術人形達が呼ばれ、作戦会議を開く事となった。その内容というのが……。

 

「え、鉄血人形とテロリストが協力して潜伏してる?」

「ああ。本来ならば鉄血人形は人類を全て殺す為に命令を受けてはいるが、それを成し遂げるとしても時間、物資、人員など……余りにも足りな過ぎる。奴等も完全とまでは動けんから、何処かしらで底が尽きる。そうなると最低限必要なのは何だと思う?」

「人伝……つまりは何らかの繋がりが無いと始まらないのと同じですね」

「そういう事だ」

 

 もっとも、鉄血が人間と協力するなんて話は極僅かだがそういう事態が起きた事もあると言われている。大方、鉄血人形がその人間達を使い、役目を終えたら殺す。人類を殺すならば手段も問わないだろう。そんな光景が簡単に想像出来る。

 

「所詮、協力した人間の奴等もまともな奴が居るとは思えん。どの道、どう転がろうが死ぬのが見えているからな」

「汚れ仕事って訳っすか。まあ、俺達の場合は汚し仕事なんですけど」

「汚し仕事って……念の為に聞くが、貴様等一体何をするつもりだったのだ……?」

「数と敵の位置に限りますが……ついでに質問を質問で返す形で申し訳無いんですが、作戦の決行時間と敵が潜伏してる場所は?」

「作戦は21時からスタート。場所はここだ」

 

 敵が潜伏しているという場所を示した地図を見せるヘリアン。じっと見ていたグレイはある事に気付く。

 

「ありゃ、意外と近い。それにガーディアンの徘徊するルートを免れた場所だなここ。何時の間にか占領されてたのか……見直す必要がありそう」

「けど、流石に敵も馬鹿じゃないだろ。幾ら敵地の近くとは言っても、警戒もかなり厳重な筈。夜中からの奇襲はかなり有効だけど……グリフィンが来たと騒がれたら逃げられるか、一気に仲間とか呼ばれちまうな」

「そうなると、数は少ないままで且つ強い……まあ、俺等しかいねーだろ」

「ついでに逃げ道を塞ぐ感じで防衛網張っとくか。そこを軸に周辺を戦術人形で囲む感じで」

「ほいほい」

 

 トントン拍子で作戦が構築され、戦力も含めてヘリアンも納得する作戦になりつつあった。ただ、肝心の指揮官達が一体何をしようとしているのかを聞いていない。

 

「もう一度聞くが、何をするつもりだったんだ?」

「ぶっちゃけて言うと、囮になりつつ少しずつ相手を殺すか、或いは情報を聞き出すかをしようと思ってたんですが、相手がグリフィンだと知られたら何をするのか分からないじゃないですか。それならば逆に相手を混乱させれば良いのでは無いかと。指揮すら出来ない状況にまで追い込み、良くても迎え撃ってくれれば理想的です。逃げるよりかはマシですから。もっと理想的なのが一人ずつ暗殺するとかだったら楽勝なのですが」

「言い分は分かった。しかし、囮と言ったが……何処までやるつもりだ?」

 

 一呼吸を置いた後、グレイは衝撃を言葉を口走った。

 

「相手がグリフィンだと悟られない為の方法……それは、俺と鷹山が全裸になって潜伏及び戦闘する事です」

「はぁ!?」

 

 これにはヘリアンも大きく驚き、戦術人形達は真っ赤になって暴走したり、恥ずかしがったりと色々とヤバい光景が広がる。それもそうだ。どういう作戦なのかと思えば、指揮官が全裸で突撃という……正に狂ってるという表現が合ってると言わざるを得ない位だった。

 

「つーか、何で俺も含まれてんのグレイ?」

「まあ、聞けよ。そもそも軍服とか戦術人形とかで向かわせたら十中八九グリフィンだと気付かれてしまうオチというのは分かるだろ?ならば、それとは関係無い奴等だったらどうする?それこそ全裸でフルチンすら辞さない位のヤバい奴だったら……注目度高まるだろ?加えて夜中というアドバンテージ。お前に限っては壁をすり抜けたりするから、身体中を黒いペンキとかインクとかで真っ黒にさせて、暗闇の中で壁の中に引き摺り込んだり出来るだろ?その特性を活かしてお前を選んだ」

「成程……凄い露出プレイだ。見つかれば命を落としかねないが、逆に興奮して来た。分の悪い賭けは嫌いじゃないぜ」

「宛ら、全裸の試練・極位と言うべきか」

 

 何を理解したのか分からないが、何故か互いに握手する二人。一方でヘリアンは理解したくないと頭を悩ませていた。それ以前にコイツ等に限って命を落とす奴とは到底思ってないのだ。既に彼等のデタラメな行動は知っているのと同じなのだから。ヘリアンと同じく、戦術人形達もどう反応したら困っていた。

 

「おい、どうするんだよ?お前の彼氏全裸特攻仕掛けるつもりだぞ」

「そ、そういう貴方の方こそ!共闘組んで仕掛けようとしてるじゃない!」

「でも、結局やる事同じな気がするんだけどね」

 

 ヒソヒソと416とM16が話していたが、9の言う通り結局はどっちもどっちなので、最早否定する必要は無さそうだ。一旦この話は置いとこうとヘリアンは咳払いしながら話を戻す。

 

「静かに!次の話に移るぞ。まあ、この話も今の話と少し関わっているんだがな……」

「ん?追加任務ですか?」

「そうだ。今日の夜に新しくグリフィンに入隊する戦術人形が来る予定だったのだが、彼女からの連絡が途絶えた。最後に連絡したのは30分前。場所は先程地図で見せた場所の近くだ」

「まさか、その戦術人形がテロリストと鉄血のグループに連れて行かれた可能性があると?」

「否定は出来ない。少なくとも位置からしてそう考えた方が妥当かもしれん。今回の任務は敵の殲滅を図りつつも戦術人形の捜索。捕まっていた場合は最優先で保護してやれ。くれぐれもなるべく隠密行動を取ってくれよ?」

「かしこまり!」

「本当に分かってるのか貴様等……」

 

 テロリスト達の殲滅はグレイと鷹山に任せ、それ以外のメンバーは行方不明となった戦術人形の捜索。戦術人形達は一人も逃がさぬ様に円形の包囲網を作り、そこで待機する事に。念の為、ガーディアンも連れてという事で、ガチガチの万全警備となった。

 

 

 

 

 

「んじゃ、行こうぜ」

「おk」

 

 そして、テロリスト達が潜伏している場所へと到着した二人。文字通りグレイはほぼ全裸で、鷹山は全裸で且つ身体全身をインクとかで真っ黒に染まっていた。最低限必要な武器とグレイ至ってはポーチとムジュラの仮面を着け、股間をコログのうちわで隠していた。ちなみに鷹山も同様にコログのうちわ(真っ黒に塗り潰し済み)を装着。

 

「俺達にはパンツなんて必要無い。葉っぱ一枚あれば良い」

「社会的に死なれても、生きているならラッキーだってのは正にこの事だな」

 

 ハハハハハ、と笑う変態二人。出撃前、二人は本当に衣服を脱ぎ始め、鷹山はペタペタとインクで塗り潰す作業をしていて、グレイから「まるでコナンの犯人みたいだなw」と笑われたりした。そんな指揮官をこっそりと見ていた戦術人形はドン引きしたり、真っ赤になったりと反応は多種多様であった。

 特にM4とUMP45は隠れる気が無いのか、鼻血出しながら至近距離まで近付いてガン見したり、パシャパシャと写真を撮ってたりしていた。何やってんだお前!?と他の指揮官からツッコミが入ったが、これも愛が成せる技というのか(絶対違う)

 

 端から見れば変人で変態と表現する他無く、確かにコレを相手にした場合まともな指揮が執れるとは考え難いだろう。グリフィンではないと勘違いし易い分、全裸で徘徊する変態に戸惑うのが目に見えていた。やる事が野蛮だが。

 

「本当に大丈夫なのかしらね……」

「おいおい、404のリーダーさんがそんな弱気で良いのか?」

「分かってないわね、貴女。そもそも私達404の大体の目的が何なのか、知らない筈が無いでしょ?」

「……それもそうか」

 

 若干元気が無さそうにしているUMP45にM16が話し掛けたが、404小隊の本来の活動と言われて少々気まずくなる。彼女達が活動する大体の内容は今回みたいな人を殺す様な汚れ仕事だ。それがどんな人間であろうと撃ち殺し、言われた通りの指示に従って行動する。彼女達がグリフィンに入る前も同じ様な事をずっと繰り返していたので、次第に心も廃れてはいた。

 しかし、グレイ達と再会したお陰で次第にその苦しさも無くなり、大体は彼等が出撃してるお陰で辛い気分にはならずに済んだものの、やはり指揮官達にそれを任せるのも辛いと感じていた。結局誰であろうと殺さねばならないのは変わりないのだから。

 

「でも、私達の指揮官は本当に変わり者だ。どんなに辛くても仲間といれば笑っていられる。誰しも辛いのは分かってる事だからな」

「あら、AR小隊のお姉さんからそんな事を言われるなんてね。光栄とも言うべきかしら?」

「馬鹿言え。もう過去がどうだろうと何だろうと関係無い。私達は何時までも指揮官の元で動く仲間だ。そうだろ?」

「それもそうね」

 

 これから先、どんなに辛かろうが乗り越える。それがグレイ指揮官達の率いるグリフィンなのだと改めて再認識した戦術人形達。しかし、今やってる彼等の行動は変態なのだが。その間にグレイと鷹山は周辺の偵察を行っていた。

 

「で、どうするよ?」

「タブレットで写真撮って、犯罪経歴とか無いか確認してる最中だけど……うん、大体の奴等が麻薬常習犯とか殺人、他にも数え切れない犯罪の数が出るわ出るわ。幸い、子供とかまだ若い奴とか居ないのが救いだな。しかも、悪そうな顔してそうな男しかいねぇ」

「他には?」

「人類人権団体とか反戦団体とかも若干。これでも俺達なりに医療提供とか食糧とか分け与えてるんだが、それでも反発する団体や違法犯罪を繰り返すグループとか後が絶たない」

「うーん、ごもっともで」

 

 これらのグループによるテロ活動は今に始まった事じゃない。テロリスト達が団結して活動を始めたのは蝶事件を切欠に次々と事件を起こしていて、自分が生き抜く為に銃を取る人が増えている。少しでもテロリストを増やさない為にボマーによる爆破栽培から家の建築、ドクターによる医療薬品の製造から提供まで幅広く行った結果、かなり抑えられたがそれでもまだテロリストが残っている。聞き分け悪く堪え性が無い者には最悪死んで貰うしか無いが、既に犯罪を起こした人物に対しては容赦しない。そのつもりでグレイ達も対処に当たっていた。

 

「よし、これで大体の人物の特定は出来た。後は作戦通りにするだけ」

「鉄血兵とかはどうする?」

「出来るなら尋問した方が良いと思ってるけど……趣向を変えてこうしたら良いんじゃないかと」

「ほうほう、それでそれで?」

 

 ポーチからドサドサと何かを取り出すグレイ。それは杖の様なもので、電撃をバチバチと纏っていた。

 

「コイツはエレキロッドとボルテージロッドと言ってな。振ると電撃の弾を発射出来るんだが、振らなくともご覧の通り電撃を放ってます。つまり、何が言いたいか分かるな?」

「あっ……(察し)」

 

 これではどっちが悪者なんだろうか反応に困る。現にこの会話もそうだが、わざと無線を繋げたままでやっているのだ。故に会話も駄々漏れ。

 

「何!?何なの!?一体何しようと考えてるの指揮官!?」

「終わったらちょっとお話だからね、しきか~ん?」

 

 作戦が終わった後、絶対に搾られるなと悟りながらも行動を開始するグレイと鷹山。戦術人形にやらせておいて、何か情報を聞き出す事が出来ればどういう過程であれ方法は問わないつもりらしいが。先にグレイが上で見張っている鉄血人形を木刀を使って居合斬りで一撃。倒れた鉄血兵をロープで縛り、下で待機していた鷹山に向けて投げ、鷹山はそれをキャッチ。人目の付かない暗い場所に置き、これを繰り返す。

 

「おっと……?今度は都合良く仲良しで並んで立ってるな」

 

 足音を立てずにゆっくり近付き、そこから回転斬り。倒れた鉄血兵を運ぼうとしたが―――

 

「誰だ!?」

(おう!?気付かれたか!?)

 

 徘徊していた鉄血兵がグレイによって倒されているのを目撃。しかし、グレイはすかさずにビタロックで動きを止め、時間が切れた頃にエレキロッドを当ててスタンさせた。ギリギリセーフで呼ばれずに済んだのでホッと一安心した。

 

「あぶねー……さて、急ごう……」

 

 縛って運び、また置いてから偵察。高い所から見下ろすと、今度はテロリストの男達が焚き火で休憩しているのが見えていた。声が聞こえたので耳を傾けると、ある事を話していた。

 

「腹減ったなぁ……」

「ここ最近でまともな飯すら食えてねぇし、鉄血の奴等にも監視されてる状態だから迂闊に動けねぇの何の。腹立つぜ!」

「落ち着けよ。俺達が真正面から行ける相手じゃねぇのは分かってるだろ?こういう時こそ不意討ちとかしときゃ楽勝なんだよ。つーか、人形と言えどもエロい身体してやがるぜ……」

「仮にもアイツ等取り押さえたら1発ヤらね?きっと最高の人形になるぜ!」

「だよな!ギャハハハハハ!」

 

 正にテンプレート過ぎる悪役の台詞に呆れるグレイだったが、彼等が言った内容がヒントになったのか、悪知恵が浮かび、悪魔の様な笑みを見せる。

 

「そんなに欲しけりゃくれてやるよ……使い方を誤らなければな……!」

 

 そーれ、と放り投げたのは何処から持ってきたのか大量のニワトリ。トコトコと歩く姿に男達はビックリしながら気付く。

 

「おい!あれニワトリじゃないのか!?」

「何でこんな所にニワトリが……?」

「構わねぇ!腹減ってんだよ俺は!食えりゃ俺は何でも良いんだよ!」

「あ、抜け駆けすんなよ!」

 

 咄嗟にナイフやハンドガンなど殺す気満々で迫る男達。ニワトリに向けて襲い掛かり1つでも傷を負わせた瞬間、ニワトリの目付きが変わり、殺意の波動に目覚めた。

 

「コケェェェェェェェェェェッ!!!!」

 

 大きく高らかに、咆哮するかの如くニワトリの声が鳴き轟く。その瞬間、四方八方から幾つものニワトリの声が聞こえ、テロリスト達に向かって走っては襲い掛かり始めた。

 

「な、何だコイツ等は!?」

「いでっ!あだっ!くそっ!何なんだよ!?」

「何でだ!?切ってる筈のに与えた感触が1つもしねぇ!」

「た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!」

 

 唐突に現れては一斉に襲い掛かるニワトリ達に翻弄され、啄まれ、傷だらけになっていくテロリスト達。何やら騒がしいと気付いたのか、鉄血兵が近付いて来るが……。

 

「さっきから煩いぞ!何をして……って、何だこれは!?」

「こ、こっちに来るぞ!」

「うわああああああああああ!!」

 

 鉄血兵すら巻き込まれ、事態は混乱を招く事に。ニワトリに翻弄されている間、次に向かった先にはテロリストの男達が寝ていたが、ここでも悪知恵が働く。グレイと鷹山は武器庫から持ち出した火薬の入った樽を所々に配置させた後、リモコンバクダンをセット。離れた場所からリモコンバクダンを起動させると、火薬と連動して大きな大爆発が起きた。

 

「「寝起きドッキリ大成功~!!」」

 

 ドッキリ所か既に死んでるのだが。何だ何だと慌てて駆け寄るテロリスト達だったが、鷹山が壁の中をすり抜けては男達掴んでは引き摺り込むというえげつない攻撃で閉じ込めた。更には放火したり、オクタ風船を取り付けて空に飛ばしたかと思えば途中でパンッと割れては地面に向けてグシャッと叩き付けられたり、鷹山には般若の面を着けさせながら堂々と鉄血兵達の前へと現れては無力化させて襲うなど、数え切れない程の行為を繰り返していた。

 鉄血兵もグリフィンの仲間かと戸惑ったが、だとしてもこんなのが居る筈な訳でも無いし、ましてやこんなのが指揮官ではないと良い感じに混乱しており、中には初だった鉄血兵すら顔を真っ赤にする位だったという。下手したら蛮族扱いされてもおかしく無かったが。これを見ていたグリフィン側も二人の行動に引いていた。

 

「わぁ……うわぁ……」

「全裸特攻スゲェな……」

「いや、感心するのそこじゃないでしょ!?爆破はするわ、防具は何も装着してないわ、武器も多目に持って無いし隠密行動も取れていない!気付かれた時点で駆け付けて来るわよ!!」

 

 キレッキレのツッコミを入れる416だが、敵の行動すら予測している彼等には極めてどうでも良い内容だったが。こんな二人に目を浸けられたテロリストに向けて若干同情はするものの、容赦も手加減もする必要は無いが。彼等の行動を飛行型ガーディアンからのカメラで見ている間に別ルートから潜入しに行ったヴィン達から連絡が入る。

 

『こちら別ルート班。敵地のアジトに潜入。中に残ってた奴等は大体倒したが、肝心の行方不明者が見つかっていない。引き続き探索を始める』

「分かった。くれぐれも周囲を警戒しつつ進んでくれ」

『……もっとも、この周辺で人があまり居ないのはあの二人が大きく事を起こしてるのが原因だと思うがな』

 

 凄く否定出来ないのか、ヘリアンも返答に詰まる。満月の夜、狂気的な光景を後ろに、二人の笑い声が不気味に響いていた。男は殺し、女は気絶させて持ち帰るという何処のエロゲ発想だと突っ込まれながらも、任務はまだまだ続いていた……。




いつもの。

・「俺達にはパンツなんて必要無い。葉っぱ一枚あれば良い」
後半部分は言うまでもなく葉っぱ隊の名言。それでもパンツ一丁という防御線を張った任天堂。

・まるでコナンの犯人みたいだな
コナンだと何故か死亡率が高く、しかも必ずコナンが居ると起きる。それを引き起こす為の黒タイツみたいな犯人がそれなのだが、なんと名前があったらしく、犯人の犯沢さんというスピンオフさえ出たという程。

・ニワトリ
ゼルダシリーズにおいて最強の鳥。ご存知の通り、攻撃し過ぎると怒って反撃され、大量のコッコにフルボッコにされる。

・寝起きドッキリ/オクタ風船
某ドリル氏のイタズラ行為の1つ。最早ドッキリ所の騒ぎじゃなく、死体が出てる。


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紅の混沌 中 トンプソン「ここの基地がヤバかった件について」

中編。まだ終わりじゃないのよ……考えるだけでも割と頭使うね。ちなみにトンプソンはちょっと出して欲しいというリクエストから。キャラの特徴掴めるか問題だよね……。

今回ちょっとエロいかもしれません。


 グレイと鷹山の二人による陽動と暴走行為による混乱によって、敵は彼等を止めるべく出る者達が大半だった。故にアジトはガラ空き。裏側から侵入したヴィン達は残りのテロリストや戦術人形を止めるべく、数少ない人員でありながらも攻め込む。

 

「……クリア」

「こっちも敵の気配なし。どうする?」

「なるべく集団で移動した方が対処は楽だが、最優先は行方不明となっている戦術人形の捜索だ。テロリスト達の無力化は遭遇したらやる様な感じにしておけ。動きも鈍くなるしな」

「分かった」

 

 それぞれに散開し、1つ1つ部屋を探し出す五人。中にはまだ残されているテロリストや鉄血兵も居たので、殺すか気絶させるかの繰り返し。敵が侵入しているとは気付かずに次々と倒れて行く彼等。当然ながら気絶させた鉄血兵はなるべく1ヶ所に纏め、後々で回収出来る様に縄と手錠のダブルロックで厳重に動きを封じた。

 

「さて、残す場所はあそこか……」

 

 物音を立てずに静かに動くヴィン。曲がり角を進んだ辺りで部屋の一室の明かりが漏れているのが見えた。ギリギリまでに近付き、聞き耳を立てると誰かの喋り声が聞こえる。

 

「近くを巡回してたら、まさかこんな上玉の戦術人形を見つけるとかラッキーだな」

「クッ……!放しやがれこのクソッタレが!!」

「おー、怖い怖い。けど、ここじゃ誰も来ねぇし、ご自慢の武器も無い。テメェはここで一生俺達の雌奴隷となって俺達の奉仕を続けるんだよ!」

 

 ゲスな笑い声を上げるテロリスト。また何処かで見た事ありそうな展開にヴィンは頭を悩ませた。こっちはその助けに来ているというのに、相手はどうやら攻め込まれているのにも気付いていない様子だった。

 頭を切り替えてこの状況をどう打開するか考える。どの道、部屋には入らないといけないので、すぐに行動を取った。部屋に入ったヴィンはテロリストに声を掛けた。

 

「おい」

「あん?何だよ俺はコイツを堪能するのに忙し―――」

 

 振り返った時を狙い、拳で連続の打撃で攻める。派手に吹き飛ばされたテロリストは壁に叩き付けられたが、すかさずにデスペナルティで彼の胴体に向けてトリガーを弾き、弾を3つ放った。その場で撃たれたテロリストは倒れたまま息絶えた。

 

「……大丈夫か?」

「何だお前は……お前もコイツ等の仲間か?」

「逆だ。俺達は任務でこの近くに潜伏しているテロリスト達を倒しに来たに過ぎん。だが、それよりもまずはここから逃げるぞ」

 

 そう言いながら戦術人形の周りを確認する。どうやら両手の部分が鎖で繋がれてはいたものの、上から引っ張られている所を発見してはデスペナルティでそこを狙い撃つ。鎖は破壊され、捕まった戦術人形もようやく解放されては助かったと一息ついた。

 

「助かったよ。けど、アンタは一体誰なんだ?任務って事はグリフィンか?」

「ああ。それと、自己紹介が遅れた。俺はグリフィンの指揮官「エルゼラ・クロウバック」だ。妙に呼び難いからエルとかエルザでも構わない。こっちも聞きたい事があるが、本来なら今夜着任する筈だった戦術人形というのはもしかしてお前か?」

「えーと、確か……ああ。多分それで合ってる。にしても、まさか指揮官直々のお出迎えとは驚いたぜ。そこ等のクズ共よりイイ男だ。あ、こっちの紹介忘れたな。シカゴタイプライターだ、夜露死苦!」

「シカゴタイプライター?本名か?」

 

 まさかの返答に彼女はポカンとした後、クスクスと笑い出した。

 

「プッ!アハハハハハ!コイツは傑作だ!まさか名前を本名と勘違いする奴なんて初めて見たぜ!ククク……しっかりしてくれよ!人間と間違えたのか?大体そんな長ったらしい名前付けるヤツは……って、あー……よくよく考えてみりゃアタシはそいつに作られたんだっけか。忘れたとかアタシらしくねぇな」

「何を言ってるんだ?」

「こっちの話だ。つーか、本当に知らないのか?寧ろ、サブマシンガンの「トンプソン」って言ったら分かるか?」

「ああ、成程」

 

 そっちの銃ならば聞いた事があったのか、ピンと思い出すエル。どうも細かい部分はまだ覚えられてないのか、未熟な所だとちょっとだけ自分を責めた。

 

「ま、気にすんなって。それに、アンタの元で働けるなら構わないさ。さっきの礼もあるしな。サツとかはあんまり無い世界だろ?ボスの期待に応えられる様に暴れ回ってやるさ!」

「分かった。それと、俺はまだボスって柄じゃないが……」

「そうかい?でも、アンタの事だ。きっと面白い仲間が沢山居るんだろうな!」

 

 果たしてあんなので面白いと言い切れる内容だろうか、と今更になって後悔し始めるエル。この後のフォローを何とかせねばと気を重く感じながらも部屋から出る。脱出する前にトンプソンの武器も回収しなければいけないが。

 

「ん?ヴィンじゃないか」

「ドクターか。そっちも無事で何よりだ」

「ボス、コイツは誰なんだ?仲間か?」

「お前にはまだ言ってなかったな。俺達は複数で指揮官をやってるメンバーでな。今出て来たドクターも俺の仲間でもあり、指揮官だ。現状ではコードネームで呼ぶのが普通だったりするが」

「複数の指揮官……もしかして、鉄血兵を生身で倒したイカれたヤツってアンタ達だったのか!?」

「……その認識で間違ってないよ」

 

 相変わらず敵味方から異様な感じで見られたり、変な噂とか立てられたりするのは何時も通りだろうなと二人は溜め息を吐く。対してトンプソンはラッキーだと感じたのか、テンションが上がっていた。

 

「コイツはツイてるな!まさか、あの伝説の指揮官達に会えるとは光栄の極みってヤツだ!アタシの勘が何だかんだでアンタ等は甘い部分とかあったりしそうだって思ってるからな!」

「甘い部分……まあ、否定し切れない部分は確かにあるがな……」

 

 だが、そこが良いと言い切る戦術人形は結構いる。こんなの指揮官でも超が付くほどホワイトな基地。殆ど指揮官達が片付けるから、戦術人形の負担が全く無いのがそこだったりする。

 

「って、悠長に話してる場合じゃなかった。エル、彼女が例の戦術人形か?」

「ああ。名前はトンプソンだそうだが、ここのテロリスト達に捕まったが何とか救出した。だが、持ち前の武器が無くてな」

「それ、もしかしなくてもコレじゃないのかい?」

 

 スッと取り出したのは彼が使っているトンプソンそのものだった。それを見た途端に、トンプソンは少しだけ目を見開きながらも喜ぶ。

 

「おお!アタシの武器!助かったぜ!それにしても、これがアタシだなんて良く分かったな!」

「名前でピンと来た。それに、何となくこの形状はネットとかで見た事あったしな。弾も全部入ってる」

 

 彼女の命とも言える銃を手渡し、戦闘体勢に切り替える。すると、ドクターの後ろからまだ生き残ってたテロリスト達がこっちを見て発見したが、咄嗟にドクターが投げたナイフで飛ばし、ナイフは相手の心臓を確実に貫き通した。トンプソンからして見れば後方支援に徹する位の奴だと認識していたが、あの伝説の噂が本当なのだと改めて実感しては感無量という具合に感じていた。

 

「ヒューッ!やるねェ!ここまでボス達が強いのも頷けるな!」

「言っとくが、まだメンバーは残ってるぞ。ほれ」

 

 クイッと指を向けた先にはテロリストや鉄血兵達に向けて何故か丸太で攻撃しているボマーや、フレイムスロワーやラインガンでの工具で迎え撃つアイザックや、持って来た武器や拾った武器で撃ち続けるコマンドー等々……彼等の暴走はそう容易く止められるものではない。数分後にはようやく静かになり、そろそろ鉄血兵を回収してグリフィンに戻ろうとしたが……。

 

「グレイと鷹山はまだ外か?」

「囮になりながらも敵を倒してるんだろ?それか無力化。向こうで騒いでここに居た筈の大半の奴等があっちに向かったなら多分全員二人にやられてる可能性があるが……」

「それ以前に会わせちゃって良いのか?アイツ等、何にも着ていなかった筈だが」

「ヤバいな……」

「筋肉モリモリマッチョマンの変態だな……」

「何だ?まだ会ってないボスが居るのか?」

「会ってないというか、会わせちゃダメっていうか……とりあえず、一旦覚悟した方が良いとだけ言っておく」

「な、何だよそれ……逆にスゲー気になる……」

 

 気まずい空気になりながらも鉄血兵を連れて歩くエル達。外に出て少し歩いた所で何やら炎とかが燃え盛ってるのが見えていた。

 

「随分とやらかしたか、あの二人」

「テーマパークにでも迷ってテンション上がったんじゃないのか?そうでなきゃここまで酷くない」

「噂をすれば……ほら」

 

 指が示した方向を見る。そこにはムジュラと般若の仮面を着けながら某兄貴の筋肉ポーズを構えながら白黒の変態二人がこっちを見ていた。これにはタバコを加えていたトンプソンもあまりの光景にポロっと口から落とした。

 

「「お 待 た せ」」

「別に待ってもないが、新人の前だぞ。服着ろ」

「何気にポーズが一致してるのがムカつく。何でアドンとサムソンなんだよ」

「なあ……あれも指揮官なのか……?」

「……残念なお知らせだが、済まない。アレも指揮官なんだ。決してセクハラとかはしないが、何を血迷ったのかどっかの民族っぽくこうなってな……」

 

 下手したらフルチンすら見せてしまう羽目になる。もう伝説とかを通り越して異様と感じたトンプソン。確かに伝説通りでイカれたヤツとは自身も思っていたが、想像以上のヤバさを感じたトンプソンは今になってここに来たの間違いだったかな……と、悟った目で表情が死んでいた。本当に申し訳無いとエル達はただひたすらトンプソンに謝るばかりだった。

 

 

 

 

 

 トンプソンを迎え入れて数日経ったが、意外にも彼女もあの時のショックを乗り越えては次第にこのグリフィンにも慣れていた。言い換えれば、指揮官の対応にも慣れてきたとも言えるのだ。

 

「ボス、書類はここに置いとくぜ」

「ああ、すまない」

「気にすんな。副官になった以上はアタシも手伝うからよ。それとは別で良いけど……」

 

 不意にチラッと窓の外を見るトンプソン。そこには本来有り得ない光景が見えていた。

 

「……まさか、鉄血がグリフィンで働く日が来るとはね。こりゃビックリだ」

「俺も予想外だった。敵である筈のアイツ等だったが、アレを機に正気に戻れたとはな……」

「普通信じられるか、コレ?」

「信じるしか無いだろう……現に俺達がその瞬間を目撃したんだ。発見者と言っても過言じゃない」

「だよなぁ……」

 

 ハァ、と溜め息を吐く二人。外には本当に鉄血兵達が戦術人形と話したり、グレイとかに指示を求めたりしている姿があった。何故こんな事になったのかは先日のテロリスト達の殲滅後に巻き戻る。

 

 気絶させた鉄血兵は拷問室等に運ばれたが、どうやって彼女達から情報を聞き出せば良いのか悩んでいたが、グレイがある方法を提案した。グレイが言うには相手が鉄血の戦術人形とは言っても結局の所は作られた存在に過ぎないので、もしかしたら電撃を良く通す身体ならば容易く情報を聞き出せるのではないかと考えたのだ。勿論、ただ単純に電撃を当てて浴びせても意味が無い。女性の弱点とも言える箇所を当てればきっと口を割ると……つまりは男子が誰もが一度は浮かび上がる方法だ。故に鷹山はこれに察したが、ちょっとばかし気が乗らなかったのと、作戦が嫁達にバレバレな上に全部説明しても許してくれる気配すら無く、言うまでもなく夜中にしっぽりと搾られたのである。

 

 実用性はあるが用途がお察しの為、これらの方法は全て404小隊やAR小隊、他の戦術人形達に任せられた。ちなみに決めたのはヘリアン。

 時折、拷問室から鉄血兵達の声が響いていた。担当している戦術人形はそれはそれはノリノリで楽しんでいた様子だったとか。

 

「くっ……殺せ……!」

「殺す?殺すなんて勿体無いじゃない。少なくともアンタ達には色々と吐かせて貰うわよ。徹底的に……ね……」

「何をされようが、貴様等に言うものか。どんな屈辱だろうと、私は屈しない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぎぃぃぃぃぃっ!?」

「ほらほら~どうしたの~?屈しないんじゃなかったの~?腰をガクガク震えながら待ちきれないって様子だけど~?」

「だ、誰が貴様なんかに……!んあっ……♡ああっ……♡」

「はい、ロッド追加ね~♪」

「んほおおおおお♡こ、これ以上入れたら……!イグイグイグイグイッグゥゥゥゥゥ♡」

 

 

 

 

 

「何だ何だ、こんなに濡らしちゃってよぉ。エロい事でも考えてたのか?」

「そ、そんな事……うぁっ♡」

「ほら、ここもビンビンに感じてるじゃないですか……絶対に屈しないんですよね?耐えられますか?」

「だ、ダメぇ……!これ以上おかしくなっちゃう……んぁっ♡」

「カメラで撮影されてるのに、また随分と興奮しちゃうなんて。変態さんね」

「わ、私は……変態なんかじゃ……!」

「は~い!もう1本!」

「や、止めて……!これ以上は入らな……あああああっ♡」

 

 

 

 

 

「あああああっ♡頭がチカチカすりゅのおおおおお♡頭の中がぐちゅぐちゅ掻き乱されちゃうのぉぉぉぉぉ♡」

「どうするの?言ってくれたらもっと凄い事をしてあげるけど」

「い、言いましゅ♡言いましゅからぁ♡もっと、もっとして欲しいですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ♡」

「ほら、コレが欲しかったんでしょ?いやらしい子ねッ!」

「イクゥゥゥゥゥ♡」

 

 

 

 

 

「何時まで続くんだよ!もう生殺しもイイ所だぞ!」

「流石に考え付いた俺達がするなって言われたんだから自業自得だろ」

 

 確認しようにも拷問室からは音声しか流れず、一体あそこでナニが行われているのか気になってしまう。下手すれば指揮官のマグナムが暴発してしまいそうになるが、でも我慢した。

 

「本当なら俺そこまでやる予定じゃなかったんだよなぁ。良くても某レスリングシリーズでVAN様がベンチプレスっぽい奴でバチバチやられてたアレがしたかったのに」

「Deep♂Dark♂Fantasy」

「歪みねぇな♂」

「どう足掻いてもただのSMクラブとか勘違いされるぞ」

『ゲイバァァァァァァァァァァ!!!!』

「良かったな、夢叶ったぞ」

「おい誰だガチムチパンツレスリング見た戦術人形は!?」

 

 拷問室の音声から、まさかのゲイバー固めを知ってた戦術人形発覚。グリフィンにガチムチ系が好きなヤツが居るのでは……?と嫌な予感がした。

 あれから数時間が経ち、戻って来た戦術人形全員が妙に艶々していたのは分かっていた。鉄血兵から情報を聞き出す事に成功し、結果として鉄血の基地の1つを見つけ出した。鉄血の基地は多数存在していて、漸くここから反撃に出る準備を進められそうだ。

 

「お手柄だ。良く鉄血の基地を聞き出せたな」

「いや、アレは少なくとも指揮官が考えた方法を試しただけだったんですけど……」

「……何かごめん」

「何でこういう時に限って都合良く情報吐けたのか……ミラクルとしか言えないな」

 

 顔を真っ赤にしたM4とやれやれと呆れるM16。拷問(意味深)の担当になったからか、気まずさがありながらも少し楽しんでた節があったりするが。

 

「それと、もう1つだけ伝えなくちゃいけない報告あったんだけど」

「何だ?」

「あの後、鉄血兵全員が正気に戻ったっぽいんだけど、どう思う?」

「はい……?」

 

 45の答えに指揮官達は一瞬どういうことなの……?と戸惑った。

 

 

 

 

 

 鉄血が正気に戻ったという報告を受けてから試しに鉄血兵と話した結果、本当に敵意も無ければ普通に丁寧な言葉で人間と喋れる程の劇的な変化を遂げていた事にグレイ達は驚いていた。本当に正気に戻ってるとは思わなかったので、いまいちどう話したら良いのか迷っていたが、まずは鉄血の関する情報を聞き出そうと試みた。しかし―――

 

「あの……鉄血とグリフィンは互いに敵対関係を築いているのですか?」

 

 と、鉄血兵が答えた辺りで何か異常だと感じたグレイ達。一旦ペルシカに詳しい事情を話した後、鉄血の解析に回した。数時間後に結果が届いたが、ペルシカから驚かれる内容を告げられた。

 

「単刀直入に言うけど、彼女達がグリフィンや人間を攻撃する事は今後一切無いだろうね」

「一切無い?その根拠は?」

「身体全体を調べた所、ある部分が完全に破損してたんだ。それもつい最近にね。その破損した箇所がある電気信号を受け取ったり、実行したりする回路なんだけど、そこが壊された影響で正気には戻ったものの、何らかの原因で連動し、全てが初期化されてしまった」

「初期化……あ!だからか!」

 

 さっきの鉄血兵と話した時には、彼女はグリフィンとの戦いや、ましてや蝶事件の事さえ覚えていなかったという。これは他の連れて来た鉄血兵も同じ反応を示していたらしく、言うならば暴走する前の鉄血兵として全てが戻っていたのだ。

 

「ちなみに、ある部分が破損したというのはどの辺りですか?」

「人間で例えるなら脳の部分だね。その脳の部分……ストレートに言うならAIからの命令を受け取れる様に繋げられた回路……そこが壊れてたの。ここの部分が壊れた事でAIの命令は一切受けなくなって、良くても人の命令だけしか受けれなくなる。ただ、そこを壊してもまだ人間を殺さないといけない意志は残っている筈だったんだけど、唐突に初期化されては性格もまともなって、基本的に戦術人形と変わらない状態にまで戻った。で、本題を言わせて貰うけど……」

「本題?」

「どうやってこうなるまでに至ったの?そもそもどうやって正気に戻せたの?その辺、何か知ってるんじゃないの指揮官?」

 

 ジロリとグレイ達を睨むペルシカ。心当たりがあったグレイと鷹山はギクッと分かり易く慌てていた。ただ、隠してもしょうがないので正直に話した。

 

「えっと……ちょっと電撃が流れる特殊なアイテムを戦術人形達に持たせては鉄血に向けて使ったんです。情報を聞き出せないかと拷問室でやらせていたんですが……」

「身体以外にも頭とかにも長い時間当てさせていたので……それが原因かと……」

「やっぱり!どうりで何か回路の部分が焦げ臭いと思ってたら!そりゃ、ずっと長時間頭に当てたらショートするよ。しかも、快楽攻めというえげつないやり方しちゃってさぁ……きっと頭がその事でいっぱいになって、求め過ぎなのか当て過ぎなのか分からないけど、そうなっちゃったんだね。この変態」

「「すんませんでしたァァァァァァァァァァ!!」」

 

 全力土下座。幾ら何でもやり過ぎた感があったのか、ペルシカやヘリアンの視線が冷たかった。だが、彼等自身が相当な狂い者と自覚している他、だって方法がコレしか無かったんだもん!と言い切ってしまいそうなのが有り得たりするのが目に見えていた。鉄血に関しては上層部に報告はせずに、一旦グリフィンで保護してはちょっとの間だけ隠す事にした。それにより、早く世界を取り戻さねばいけない理由のノルマが1つ増えた気がして、バレたら面倒事が次々と増えそうなのは間違い無いと確信していた。

 

 隠し続けながらも日が過ぎていき、1週間経っても異変が起きず、寧ろ普通に戦術人形と鉄血兵が協力しながら暴走した鉄血兵を倒すという異様な光景が続いていた。

 

「つーか、その方法がありゃ暴走も何とかなったんじゃねぇのか?」

「多少はな。だが、そこまでの余地は無かったんだろう。本当に突然の出来事だ。ゆっくり考える暇すら無い状況で命を追われていたんだ。だからこそ人が大量に死んだ。迎え撃とうにも相手が鉄血だからな」

「複雑だよな……まさかこんな簡単な方法で止められたなんて発見したら。死んでも死にきれないんじゃないのか?」

「恨み辛みが重なって悪霊と化すか……未練を残してこの世を彷徨う亡霊を目撃しそうだ」

「だろうな」

 

 皮肉も混じりながらも喋っていると、勢い良くドアが開く。入って来たのは少し焦りを見せているドクターだった。

 

「エル、派遣部隊の報告だ。任務先で依頼は成功したものの、期間途中で鉄血兵と遭遇。何とか逃げ切る事は成功したが、弾薬や損傷が激しく動けない状況だ。それに……派遣部隊のトカレフから重要な情報を入手」

「内容は?」

「鉄血から聞き出した基地とは別の基地を発見。そこにも鉄血が潜伏しているとの事だ。既にグレイとTASが先行して向かってる」

「分かった。トンプソン、出撃だ。好きなだけ存分に暴れろ」

「待ってたぜ!この時をよ!」

 

 デスペナルティを持ち、出撃の準備を整えた3人。グレイとTASが先に行ってくれてる分、何とか時間稼ぎは出来そうだ。出撃前にドクターがエルに向かって呟いた。

 

「急いで助けに向かおうぜ、『お兄ちゃん』」

「ああ、そうだな『親友』」

「え?お兄ちゃん?親友?ちょ、お前等一体どういう事だよ!?色々と説明しろよー!」

 

 ササッと走り出す二人をトンプソンが急いで追い駆けた。どうしてあんな事を言ったのか気になったトンプソンだったが、その秘密を語られるのはそんなに時間は掛からなかった。




鉄血の基地とかってあるの?最終的にドルフロが終わるのって大規模な基地だったりするのかね。そうだとしたら、本気出して壊さねば(使命感)

・何故か丸太で攻撃しているボマー
最初は彼岸島かよ!とセルフツッコミ入れたけど、後々アイツを思い出したので採用。ヒント:村人

・フレイムスロワーやラインガン
お馴染みDeadspaceにおける工具。フレイムは火炎放射で、ラインガンは広範囲でのショットガンみたいなもの。これでも工具。しかし、ラインガンはいかんせんコストが悪い。

・筋肉モリモリマッチョマンの変態
コマンドー名言の1つ。上でグレイと鷹山がほぼ全裸姿だったので、コレが当て嵌まった。

・テーマパークにでも迷ってテンション上がった
野原ひろしのメシの流儀で有名になったアレ。これが主任とかだったら大惨事。

・アドンとサムソン
伝説の筋肉ゲー「超兄貴」から。パッケージで浮かんでる二人の男がアレである。これがシューティングだとは誰が思ったか。

・エレキロッド/ボルテージロッド
前回敢えて説明しなかったのがコレ。この杖は本来なら振るのが正解だが、使い方次第ではそこから電流が流れて、触れた瞬間にビリヒリ痺れてしまう。なのに、用途がああなってしまった。そういう武器じゃねーからコレ!

・VAN様/ゲイバー固め/ガチムチパンツレスリング
もう説明など不要だろう、伝説のゲイポルノビデオ。動画にアップされてからは何故か人気が上がり、フィギュアが出た程。


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紅の混沌 下 トンプソン「やっぱり妹は最高だぜ!」エル「同士よ」

苦戦したァ!過去話考えるだけでどんだけ時間掛かってんだよって話……まだまだ書く分とかはあるのにね。
どうでも良いけど、モンハンやりたい……ポータブル世代でも良いからやってみるのも手かなぁ……プレステ3とか4とかも無いし。

次回はちょっと遅れる。最大の原因は言うまでもなく台風で仕事が増えたから……(白目)


「到着っと……さて、アイツ等は何処に避難してるのかな?」

 

 後々合流するトンプソン達よりも先に基地へと辿り着いたグレイと鷹山。着いたとしても、ここは既に敵地のド真ん中。迂闊な行動は出来るだけ裂けて合流するのがベストだろう。だが、そんな悠長な事をやってる暇なんて無かった。

 何処から行こうかと悩んだ瞬間、鷹山が何か見つけたかのかそれに近付いて確認を取る。それはまだ完全に破壊されていなかった車で、ご丁寧にも車のキーが付いたままの状態になっていた。

 

「あ、この車まだ使えるわ。ほれ、グレイ。乗れ」

「……嫌な予感しかしないんだけど、その車で何するんだ……?」

「ちょっと試運転でシティトライアルして来るわ」

「ちょ、止めろオオオオオォォォォォ!!」

 

 グレイが叫ぶがもう遅かった。エンジンを起動させ、ハンドルを握る。次第に車のスピードも上がり、何故だか車のパラメータが全て上がった気がした。

 よりにもよって、そこ等に置いてあった車を見てピンと思いついたのが運の尽き。彼の運転はまるでピタッとすぐに止まるアレと同じ操作方法で動かしていた。

 近くに居た鉄血兵は鷹山が動かした車の音に気付き、その車さえも鉄血兵の居る方向へと近付きつつあった。

 

「おい、何の音だ?」

「車の様な音が聞こえるが……ん!?おい、あれに人間が乗ってるぞ!」

「人間がここに迷い込んだというのか、馬鹿な奴め。構わん、殺してしまえ!例えグリフィンの奴等が乗っていたとしても纏めて爆破しろ!」

 

 人間だと分かった瞬間に迎え撃つ鉄血兵。だが、変則的で変態的な動きをしている車相手には流石に「!?」と言わざるを得なかったという。

 たった少しの坂でも一気にフワーッ!と浮き上がり、物凄いスピンで鉄血兵を轢き飛ばし、何故か上下にフワフワと浮きながらも轢いた時にはガガガガガッ!!という有り得ない音を出していた。ちなみに轢かれた鉄血兵はこれでもまだ生きてるレベルで留まっているという。

 

「や、やめ……酔う……うッ……!オロロロロロッ!!」

 

 耐え切れなかったのか、窓を開けて外に向けてゲロを吐いたグレイ。そのゲロもスピンしながら周りに飛ばす状況は他から見れば「これは酷い」と言ってもおかしく無い。

 そりゃコマみたいに車がスピンしながら走行するというのは一緒に居た人からすれば驚きと迷惑のダブルセットになるだろう。鷹山はそれでもまだ足りないのか、キュッといきなり車をストップさせた。

 

「と、止まった……!?今だ!ありったけの弾を―――」

「プラズマァ!!」

 

 そう叫んだ瞬間に鷹山の身体から電撃がバチバチと放ち、バシュッ!バシュッ!と何かを発射していた。見れば、電撃の弾らしきモノが散弾しながら地面を這いずり回っていた。

 直撃した鉄血兵は痺れながらぶっ飛ぶという光景がループして続き、大幅な戦力ダウンを強いられていた。このままではマズいと急遽応援を呼んだ鉄血兵。運が良かったのかそれとも悪いとも言えたのか、ドリーマーやアーキテクト、装甲機会や装甲人形と言った面々がゾロゾロと大量に現れたのだ。

 

「さっきから騒がしいと思ったら、随分と面白いモノを見せてくれるじゃない。もしかしなくても、噂で囁かれている戦う指揮官サマ達かしら?」

「アレ殺っちゃって良いの?全然動いて無さげだけど」

「余程腕に自信があるって感じだけど……死角からの攻撃は当然防げないでしょうね。やっちゃいなさい」

 

 待ってました!と喜ぶアーキテクト。そして、鷹山の操縦している車に向けてバスーカを放った。愚かな人間は爆破して焼かれるのがお似合いだと嘲笑うドリーマー。だが、ドリーマーはこの時彼等の実力を見誤っていた。

 寸前まで来た瞬間、一気に急加速してはアーキテクトのバスーカを避け、更にはマンティゴアやニーマムとかを軽々と轢き飛ばした。

 

「「……は?」」

 

 これには2人もビックリ。しかも、何か駆け抜ける音が後ろから聞こえ、振り返った時には鷹山の運転している車が直前までに迫っていて、理解した時には「\(^o^)/」と諦めながら空を飛んだ。

 ちなみに、グレイは鷹山の運転に耐え切れなかったのか、終始白目を向きながら少しの間気絶していたという。

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

 鷹山達が派手に暴れてから数分後、ようやく合流したエル達。エル達の方では派遣部隊と合流する為、最後に通信した場所に向かって走っていた。向かった先はボロボロとなっている廃墟。この場所から通信した記録が残されている。 

 何処かに居ないか部屋の1つ1つを確認し、居なかった場合は上へと登って行った。すると―――

 

「指揮官!」

 

 エルの姿が見えたのか、パタパタと駆けつけてはギュッと抱き締める戦術人形。こんな状況でも変わらないなとエルは若干溜め息をついた。

 

「9A-91……抱きつくより報告すべき内容があるだろ?」

「あ!そうでした!」

 

 慌てながらもキリッと表情を正すのは9A-91。彼女は今の現状を簡単に説明し、メンバーの怪我の具合とかも細かく伝えた。

 

「9A-91とWA2000、トカレフは中傷。重傷はDSR-30とTMPにM590……こりゃ派手にやられたな」

「すみません、指揮官……こんな姿になってしまって……」

「喋るな、傷口が開く。とにかく簡単な応急処置するから待ってろ。弾薬もそれなりに持って来た」

「俺も手伝おう。少なからず、お前の処置をこれまで見たし、相手にもなったからな」

「助かる……まずは傷口を消毒するぞ」

 

 救急道具を使い、戦術人形の傷を治し始める2人。特にエルは随分と慣れているのか、包帯の巻き方や手順など1つも間違えずに出来た事に彼女達は驚いていたという。

 その上、DSR-30からの誘惑な言葉を言われても「病人は黙ってろ」の一喝でしょんぼりしていたという。ある程度治療させた後は少し彼女達を安静に休ませ、敵が来ないか見張っていた。もっとも、グレイと鷹山のお陰で多分こっちに来るのはあんまり有り得ないかもしれないが。

 

「スゲーなボス……まさかアンタがそういう知識に詳しかったとは思わなかったよ」

「ちょっとした経験があったからな。この手の作業は慣れている」

「指揮官、ありがとうございます。後少し遅れていたら私達の部隊は壊滅していたと思います……」

「いや、お前達が無事だったならそれで良い。もう二度と俺の前から消えないでくれトカレフ……」

「はい……」

「………」

 

 まるで恋人みたいなそんな雰囲気を出していた。本当ならばお熱いねー、ヒューヒューとからかうつもりだったが、トンプソンはそんな気すら起きなかった。

 逆に引っ掛かっていた疑問に関して、もしかして……と思う部分があったのかトンプソンは思い切ってエルに話し掛けた。

 

「なあ、ボス……少し聞いて良いか?」

「何だ」

「さっき言ってた「お兄ちゃん」って何だったのか分からなかったけど……もしかして、お前とトカレフってそういう仲だったのか……?」

「……言ってしまえばそうかもしれないが、半分は間違ってる」

 

 どういう事だ?と頭を悩ますトンプソン。ただ、トカレフとエルは何か決意したかの様に互いを見合わせた後、再びトンプソンの方へと向いた。

 そして、最初にトカレフがトンプソンの疑問について答え始める。

 

「私……元々は人間だったんです」

「は……?人間?お前が?」

「戦術人形「トカレフ」としてなる前、私はエル指揮官……エルゼラ・クロウバックの妹として生きていました。妹と言っても、血は繋がっていないのですが」

 

 あまりにも唐突な言葉にトンプソンは唖然となった。彼とトカレフが家族関係だったとは思わなかったのだから。ただ、仮にも彼女が人間だったとするのなら、何故戦術人形としてここに居るのか気になった。

 

「信じられないかもしれませんが、私はそうして生きていましたし、何よりもエル指揮官ともう1人居る指揮官……ドクターが私の事を一番良く知っています」

「ちょ、待て!アイツも!?人間が戦術人形の真似事なんてしてるって言うのかよ……?いや、だとしても何でそんな……お前、一体何者なんだ……?」

「……何度も言いますが、私は元々人間です。その人間だった私がどうして戦術人形となったのか……そろそろ言わなければいけませんね」

 

 そして彼女は語った。かつて人間だった頃の話を。

 

 

 

 

 

 かなり昔だった頃のエルは親がおらず、孤児院で育てられた。彼は孤児院の中では一番のしっかり者で、食事や教える事など彼が全てやっていた。ただ常に彼一人だけやってる訳では無く、孤児院を経営している大人とかも彼と一緒にやっていた。時折、子供達の誰かが病気になった場合はエルではなく、彼がやっていた。

 

『どうだ……?』

『……風邪だな。暫く安静していれば大丈夫だろう』

『そうか……助かったよ、ケンジ』

 

 三和葉健志(みとば けんじ)……それが彼の名前。エルや他の仲間達がドクターと呼んでる彼の名前がそれだった。健志はある病院の一人息子で、将来は継ぐ予定でもあった。しかし、まだまだ勉強不足な所もあり、彼は精々孤児院で子供の病気の治療とかを担当する役割をする羽目になっていた。少しでも慣れておく必要がある為に。

 親友でもあり、互いに困った場合は助け合う仲同士ずっとこの日が続いていたが、ある日にエルが少しだけ外に歩いていた時にそれは見つけた。

 

『ん……?』

 

 ふと、誰かが居る気配を感じて視線を向けるエル。そこには一人の少女が見上げながら空をずっと見ている姿があった。何処か儚さがありながらも雪の様に綺麗な姿はエルの視線を釘付けにするのも容易だった。そんな彼の視線に気付いた少女は彼の方へと振り向いた。

 

『あ……』

『や、やあ……君、一人だけ……?』

 

 エルの存在に気付いた少女は驚きはしたものの、逃げる様子も無ければ警戒して怪しむ様子も無かった。ただじっとエルを見つめたまま互いに立ち尽くしたままで。これでは会話も続かないので参ったなと困った瞬間、少女の方から喋り始めた。

 

『……私……誰も居ないの……友達も……お父さんもお母さんも……』

『え……?じゃあ、君はずっと一人で……?』

 

 そう言い返すと、コクリと頷く少女。この子もまたエルと同じく一人で生きて来たんだとエルは思った。そう思った時、尚更彼女を一人にさせたくないとエルは決意した。

 

『あのさ……だったら、俺と友達にならないか?』

『え……?』

『あ、ごめん!唐突過ぎたよね……でも、何か寂しそうだったし……色々と放っておけなくってさ……君で良いなら友達だけじゃなく、家族として迎え入れたいけど、どうかな……?』

 

 孤児院に身分も年齢も関係無く、迎え入れれば友達として家族として共に過ごす事を余儀なくされるが、互いに協力して生きていられる。一人で寂しく過ごすより、一人でも多く一緒に過ごせるならそれで良い、とエルはそれだけを理由に生きてきた。彼女もまた救えるならば救いたいと。エルの強い願いが伝わったのか―――

 

『うん……!』

『そうか、良かった……ちなみに名前は?』

『名前……分からない……』

『うげっ……名無しで今まで生きていたのか……名前どうしようか……』

 

 何か良い名前が無いか、頭の中で探し続けるエル。白くて綺麗な彼女に相応しい位の名前にしようと奮闘した結果、ある1つの名前が思い付いた。

 

『カトレア……そうだ!カトレアだ!それが良い!』

『カトレア……?それが私の名前……?』

『うん。元々は紫色の花なんだけど、白いカトレアも存在してるんだ。だから、ピッタリだったかなって思ってたけど……どうかな?』

『ううん……凄く良い名前……ありがとう、お兄ちゃん……』

『ぐほっ!?』

『お兄ちゃん!?』

 

 そんな可愛らしい無垢な笑顔でお兄ちゃん呼びされたら誰もが耐えられないだろう。エルは思わず鼻血を垂らす程大きなダメージを受けたが、喜びという意味での方が大きかった。こうして、カトレア・クロウバックはエルゼラ・クロウバックと共に孤児院を過ごし、足りない知識をエルから補い、カトレアは更に綺麗になって成長していった。ケンジとも知り合い、友達が増えた事にも喜んでいた彼女とエルだったが、その幸せも長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 最悪の事態が訪れたのは突然の事だった。カトレアは何時も通りエルの手伝いをしていたのだが、不意に咳き込んでしまった。最初は喉の痛み程度な位だったので、風邪か何かだと勘違いしていたらしく、風邪薬を飲んで早めに寝たりしていた。しかし、一向に治まる気配は無く、悪化していく一方だった。身体の倦怠感や足取りが上手く取れなかったりと……更にはその影響で咳き込んだ際に血まで一緒に飛び散ってしまう事があり、エルもこれには異常だと感じたらしく、急いでケンジの所へと向かった。

 診断の結果、病名は不明。ケンジの家族も最善を尽くしてありとあらゆる方法で診断したが、結果は変わらず。何が原因なのかハッキリと分からないまま、カトレアは病院生活を強いられた。幸い、コーラップスによる汚染ではなかったものの、それでも原因不明の病にはケンジ達にも相当参っていたという。

 

『すまない……俺が医者としての知識があったなら……!』

『お前が責める事は無い。俺とてこの事態を把握出来なかった事にも問題がある。今はただ見守りながら祈るしか無いが……それでも自分が出来る事があるなら協力させて欲しい』

『エル……本当にすまない……』

 

 どんなに診断しても解明されない病……最悪、不治の病と診られる可能性も高かった。カトレアの咳とかを通して感染するタイプでなかったのが救いだが、それでも現状が重苦しいのは変わらない。

 二人は急いで病気を治す為の研究を続けた。素材を探し、調合と投与による経過を調べたが、それでも容態は変わらないまま。月日が過ぎて行く毎にカトレアも日に日に弱ってしまってしまい、ついには動けぬ身体となってしまった。

 

『兄さん……』

『カトレア……ごめんな……お前の為に頑張ったが、何にも出来ないままで……本当にダメな兄で悪かった……』

『謝らないで兄さん……私は兄さんやケンジさんと一緒に過ごせたならそれで楽しかったから……』

『カトレア……』

『それに……きっと私はこうなる運命だったんだって……何となくだけど、自覚はしていたから……それでも……兄さんと過ごせて本当に私は幸せだよ……』

 

 これが最期になるのかもしれないと悟ったカトレア。それでも彼女は笑顔を絶やさずエルやケンジに向けた。その無垢な笑顔が二人の心を突いたのか、ギュッと抱き締めながら涙を流した。己の弱さか、それとも一人の少女との別れなのか……どちらにせよ、二人は泣き続け、カトレアも笑顔を見せながらも涙を流していた。

 彼女も本当はきっと生きていたかったのだろう。だけど、頑張ってくれてるエルやケンジに迷惑を掛ける訳にもいかず、彼女はずっと奥底で死の恐怖や別れの辛さ等をずっと胸の奥底に仕舞いながらも笑顔を振る舞っていたのだろう。

 

『そうだ……どうせなら音楽を聞かせてあげるよ』

『音楽……?お前、何か弾けたのか?』

『ピアノとかをちょっとね。俺、本当は医者じゃなくて音楽を目指したかったんだ。医学なんて難しい内容なんてやってられるかって思ってた時、ずっとそっちでめり込んだのを覚えてる。だけど……今回の事を通して、命を救う事が一番大事な役目なのに、それを逃げてばかりでいたんじゃ人として最低だと考える様になっちゃって。だから、もう一度医者を頑張ろうと決めたんだ』

 

 医者になったら、きっとカトレアみたいに命が消えるまでの最期までを見届けなくてはいけない。それは自分にとっても辛い光景かもしれないが、その人が良い人生だったと後悔しない為にも自分なりの努力を突き通したい。どうにかして後悔を残さない為にケンジはある方法を閃く。かつて自分が続けていた音楽を最期に聴かせる……言うならばレクイエムの様なものだった。

 ケンジの演奏が聞きたいとカトレアはお願いし、それに応える様にケンジは車椅子を用意してからピアノがある場所まで移動した。殆ど誰も居ないその場所でエルはそこで近くの椅子に座り、カトレアもケンジの演奏を待っていた。静かな病院でケンジがピアノ前の椅子に座り、演奏を始める。綺麗な音色が病院内に響き渡り、二人は終止ケンジの演奏を聞いていた。まだプロというレベルではないが、ミスの1つも無くスムーズに演奏している姿はまるで医者ではなく奏者に近かった。

 ケンジはずっと弾き続けた。何分、何時間、何日も。カトレアが後悔を残さない為に彼はピアノを弾いた。それでも、彼の心の中にはカトレアと過ごした楽しかった気持ちや何時しか別れるという辛い気持ちもあり、混ざった気持ちが溢れながらも一心不乱に演奏を続けた。ケンジの演奏にカトレアは笑顔で拍手して―――

 

『綺麗で素晴らしい演奏でした。ありがとう、ケンジさん』

 

 と、答えてくれた。それが彼にとっての救いだったのか、また彼の目から涙が溢れては泣いてしまっていた。

 

 暫くして、カトレアは最期まで笑顔を見せながらこの世を去った。

 

 

 

 

 

 カトレアという少女はこの世から居なくなったが、彼女の遺体はまだケンジの病院で残されている。人体冷凍保存という方法があり、少なくとも再びこの病気が広まらない様にし、未来の技術で研究や解明を託す事にしていた。

 だが、それはあくまでも建前。本音としては、あれほど美しいカトレアを焼いて無くすなど出来ず、寧ろまだ自分達が勉強不足なだけで本当ならば救える技術や方法があったのではないかと、少しでも思っていたとの事だった。けれども、それを実現するにはまだ力不足というのが分かっている。そうだったとしても、このまま止まっては居られなかった。

 

『エル……俺、どんな病気も治せる様な立派な医者になりたい。だけど、今の知識だけじゃ駄目だ。世界を廻って、様々な治療技術や研究を学んで、人の為に役立てたい。それにはエルの力も必要だ。協力してくれないか?』

『こっちこそ願ったり叶ったりだ。俺にはお前の様に治す力も無ければ、誰かを守る力も無かった。唯一の妹を守れなかったのは今でも後悔しているが、それでもお前が人の為に守りたいというのなら、俺はお前を守る為に力を求めてやる。世界を廻る道中で襲われたりなんかしたら元も子も無いからな』

『ありがとう……やっぱりお前とカトレアは良い家族だよ……!』

 

 そうして二人は旅に出た。1つでも病に関する知識を得る為に。一人でも多くの命を救う為に。そして、2度と大切な誰かを失わせない為にも。

 

「これが俺とケンジとのこれまでの経緯だ。随分と長い時間を経てしまったが、もうあの時の俺達とは違う。誰かを守れる様になったし、救える様に努力を尽くした結果、多くの子供の命や患者を救う事が出来た。こうしてグリフィンに所属している身だが、今の仕事も悪くないと思ってる」

「そうだったのか……ん?ちょっと待ってくれよ。だったら、ボスの銃って結局何処で入手したんだ?それに、死んだ妹が何で戦術人形なんかになってんだ?」

「順番に答えるよ。エルの銃は道中で見つけた物だったんだ。箱の中に入ってたんだけど、中身を覗いたらまだ誰も手付かずだったのか綺麗なままで保ってたんだ。でも、トリガーが弾けなかった」

「トリガーが弾けない?そりゃ何でだ?」

「あの銃は魔銃だったんだ。意志を宿した銃……持ち主の意志の力によって守る力にも破壊にも成り得る禁断の兵器……触れた途端、何故だか知らないが、自分に相応しい契約者が現れたとか言っていたが」

 

 魔銃と呼ばれたデスペナルティの意志はエルにこう語ったという。「お前が望むモノは何か」と。その問いにエルは「過ぎた力も全てを破壊する力も要らない。俺には誰かを守れる力さえあれば十分だ」と答えを返した。

 

「そしたら、そいつはフッと軽く笑ったんだよ。バカにしてるのかと思ったら、「前の主と同じ様に、お前も誰かの為に戦っているんだな」と言われたんだよ。気まぐれだったのか何だか分からないけど、とにかくエルと同じ親近感が沸いたんだって」

「そうか……って、銃って喋れるのかよ……」

「もっとも、俺もまさかそんな所で出くわすとは思いもしなかったからな……まさかとは思ってたけど、改めて振り返れば現実なんだよな……」

 

 一体何の事だ?と疑問を感じているトンプソンだったが、エルとケンジからすればその出所については心当たりがあった為、実物を見るのは初めてだったという。

 

「それと、カトレアについて言わせて貰うけど……グリフィンに就職してから鷹山が結婚したって報告を受けてな。結婚祝いも含めて飲み会をしようと誘ったんだ。AR小隊達はどんな感じだったとか色々聞いた際に、鷹山の口からある情報を得たんだよね……」

「情報?」

「聞いた話だと、M4A1の頭には生前、人間の少女だった頃の脳が入っていたらしく、今でも動いているとの話だ。そして、人間の脳を使った戦術人形を担当したペルシカ……それを聞いた時、俺とケンジは思い付いたんだ。カトレアの脳を戦術人形に入れようと……」

「………!」

 

 以前、鷹山が結婚したという報告をペルシカに告げた際に、ペルシカから伝えられたM4の秘密を代わりに聞かされた事があった。その内容の通り、M4の頭部には人間の脳が入っておりながらも戦術人形として生きていて、彼女なりの苦しい人生を歩んでいた。しかし、鷹山はそれを受け入れる他、逆に自分の方が気持ち悪くないか?と問い返した程。自分達ですら異常というのは分かっていたからこそ、付き合っても苦労するんじゃないかと悩んだが、結局M4達もそんな事は無いと否定してくれたらしく、良かったと彼は笑っていたという。

 

「飲み会が終わった後、俺とエルは急いでペルシカさんの所に訪れては全てを話した上でカトレアを蘇生させて欲しいと頼んだんだ。例え偽りの記憶だの戦術人形として変えてしまったとしても、もう一度あの日みたいに笑って過ごしたかったんだ……」

「………」

「こんな人道の反する行為、気持ち悪いと思ってるだろう?それでも俺達は何言われようが構わない。もう二度と彼女を失いたくないから……」

「……いや、そう思わないよボス。二人ともずっと辛い思いを味わったんだろ?だったら、私がとやかく言うのは御門違いだ。ずっと暗いままのボスなんて見ていらねねぇしな」

「ありがとう、トンプソン……」

 

 気にすんなって、と笑いながらエルの頭をグシグシと撫でるトンプソン。彼女もまた仲間想いな部分があるので、エルの気持ちは良く分かっていた。

 

「ペルシカには本当に申し訳無い事をした。彼女にもまた重荷を背負わせてしまったものだから、これは俺達がその責任を負わないとな」

「そうだな。良くても何か奢る事しか出来ないけど、少しでも満足出来れば俺としてもありがたいな」

「それでこそ私のボスだな!それで話は変わるけど、作戦は良いのか?」

「「「あ……」」」

「おいおい……しっかりしてくれよ」

 

 つい昔の長話をしてしまった性なのか、鉄血の基地を攻める内容をすっかり忘れていた。随分と遅れた分、ここから巻き返そうとエルは姿を変えた。かつて世界を救った紅い混沌と同じ姿に。

 

「捕まれ。手を離したら死ぬぞ」

「あいよ」

 

 そろそろ動こうとケンジの手を繋ぐエルだったが、「待って、兄さん」とトカレフから少し止められる。

 

「どうした?」

「……行ってらっしゃい、兄さん。ケンジさん」

「うん、行って来るよ」

「必ず戻って来る」

 

 それだけを伝え、エルは基地に向かって飛び去った。後に敵味方から紅の混沌と白衣の殺人鬼と呼ばれる様になった。

 

 

 

 

 

 トカレフ達が遭遇した基地を壊滅させた後、数日後に拷問室で聞いた基地もまた壊滅任務という形で赴き、数多くの鉄血兵を捕まえた後、お決まりの電撃マッサージを受けて正気に戻すという方法を繰り返し、かなり多くの味方をつけたエル達。一応、上層部にも報告はしたものの、不満やら反論やら多くの人物がいたものの、少しぶちギレしてから黙らせたとの事だった。とは言え、鉄血の罪は確かに数え切れない程多くの人を殺したという理由もあり、今後、彼女達の処遇をどうするかはまだ判断には悩めるとの事らしく、一旦はグリフィンで預かる事となった。そして、今は処理に追われる毎日を送っている。

 

「指揮官、書類纏めました」

「ご苦労。次はこの書類なんだが……」

「ボス、派遣部隊のメンバーが帰って来たみたいだぜ」

「傷があった場合はすぐに癒す様にしておけ。少しの間は休ませる」

 

 鉄血の基地を破壊したからか、忙しさもまた段違いになっていた。ある程度終わらせ、一旦休憩に入ろうとトカレフがコーヒーを持って来てくれていた。

 

「お疲れ様です。どうぞ」

「ヘヘッ、悪いな」

「すまない」

 

 三人でゆっくりとコーヒーを飲む。絶妙な静けさがまた独特な雰囲気の良さを引き出してくれる。飲んでいる最中、ふとトンプソンはトカレフに少しだけ疑問をぶつけた。

 

「なあ、お前ってボス……エルの事を兄さんって呼ばないのか?」

「えっ……!?い、いきなり何を言い出すんですか……!というか、トンプソンさん今エルって……」

「あー、その、何だ。全部引っ括めてボスって呼ぶのって何だかなと思ってな。折角名前あるんだし、せめて呼んだ方が苦労しねぇからな。で、肝心のお前はどうなんだよ?んー?」

 

 この、この、とツンツンと指でトカレフの頬をつつくトンプソン。トカレフもといカトレアはちょっと恥ずかしそうにしながら正直に答えた。

 

「や、やっぱり立場上で私情を挟む訳にも行きませんし……それに、私はまだ生きてるんだって実感してるし、今度は私が兄さんを守ろうと決めたんです」

「生きてる、ね……」

「私は死んだ筈だったのに、暗闇から私を呼ぶ声がしたんです。目を覚ました時、二人は大きくなっていて、私は戦術人形として変わり果てていた……確かにショックでしたが、それでもまたこうして一緒に居られるんだって思ったら嬉しくて……だから、私は後悔していません」

 

 この子は天使かよ、とトンプソンが心の中で悶絶する。彼女の笑顔がとてつもなく純粋な位ヤバかったので、マフィアとか目指そうとしているトンプソンからすれば効果抜群のダメージを受けていた。ついでにちょっとした事も思い付く。

 

「なあ、それで私の事をお姉ちゃんって呼んでみてくれよ。無理なら姉さんって呼んでも良いから!」

「お、お姉ちゃんって……」

「エルから少し聞いたぞー。何でも小っちゃい頃はエルの事をお兄ちゃんって呼んでいたらしいけどなー?そんでもって、お兄ちゃんのお嫁さんになるーとか言ってたけど」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!どうして私の黒歴史を暴露しちゃうの兄さん!」

「すまない、ついうっかり……」

「ほらほら、バラされたくなかったら正直に従いなよー。言ってくれたらこの事は黙っておいてやるからよ」

「うぅ……一回だけですよ……?」

 

 ちょっと涙目な部分が可愛いと二人が思いながらも、コホンと咳払いした後、カトレアはトンプソンに向けて呟いた。

 

「トンプソンお姉ちゃん……大好き……♡」

 

 ハンドガンで撃たれた位の衝撃だったのか、彼女のハートにクリティカルヒットし、ブホッ!と吐血するトンプソン。血を垂らした彼女を見たカトレアは慌てるが、トンプソンに至っては満足そうな顔を浮かべていた。

 

「妹って、最高だな……」

「ようこそ、こっちの世界へ」

「バカやってないでさっさと仕事をして下さぁぁぁぁぁい!!!!」

 

 今日もグリフィンは平和な一日を過ごす事になりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ……指揮官はお兄さんで、トカレフは妹だったんですかぁ……良いなぁ……」

「「「!?」」」

 

 扉の隙間からじっと見ていた9A-91を見て、全員がゾクッと恐怖を感じたのは言うまでも無かった。そして、何処から情報が漏れたのか、私の事をお姉ちゃんと呼んで!と、M4やUMP9、更には他の戦術人形から詰め寄られ、ひたすら逃げる羽目になったとか。




ちなみに、妹キャラ候補は9A-91が真っ先に浮かんでたんだけど、白髪キャラオンリーで探してたらトカレフが目に留まって、結婚スキンとかあったのでそっち採用。しかも、トカレフの名前に近いカトレアという名前すらあったので、そっちに採用しました。

ちなみに名前の由来と理由は花言葉から。
エルゼラ・クロウバックはエンゼルランプとクローバー。
・エンゼルランプ(あなたを守りたい、幸福を告げる、小さな思い出、おおらか)
・クローバー(私を思って、幸運、約束、復讐)

カトレアはその名の通り白いカトレアから。
・白いカトレア(魔力、純粋な愛)

ここまで来ると、もうトカレフ=カトレア・クロウバックというキャラクターに段々と近くなり、良い感じのイメージになっちゃいました。ホントにスマン9A-91。



で、いつもの。

・シティトライアル
カービィのエアライドに登場するフィールド。エアライドは普通のレースだけじゃなく、広大なオープンワールド状のコースであるシティでアイテムを集めてエアライドマシンを強化し、一定時間後に行われる競技でライバルと競うモードとなっている。その為、競技まではどんなルールでも自由なので、他プレイヤーを攻撃させてから能力アイテムを奪ったり、マシンを破壊したりするなど……友情崩壊ゲームとして名高く評価されていたりする。

・ピタッとすぐに止まるアレ
エアライドマシンで言うルインズスターの事。基本、エアライドマシンはチャージしながらドリフトの旋回をするのだが、ルインズスターはピタッとすぐに止まり、方向転換しながら直角に曲がれるという利点がある。ドリフトが出来ない分使い辛さはあるものの、シティトライアルのアイテム集めにはかなり有利。スピードをカンストさせればそこそこの実力を発揮出来るので、その辺はプレイヤーの腕次第。

・物凄いスピン
アイテム「パニックスピン」の事。本来、スティックを左右に倒すとクイックスピンという攻撃ができ、これで相手にダメージを与える事が可能。パニックスピンは一定時間高速でスピンを続けるアイテムで、通常のクイックスピンとは違って威力が非常に高い。クラッカーとかのアイテムを組み合わせると強力。

・痺れながらぶっ飛ぶという光景
エアライドのTAS「TASさんが牧場で虐殺するようです」を参照。ルインズスターに乗り、プラズマで電撃を放ち、敵を吹き飛ばす光景は正にピンクの悪魔。バトルロイヤルの1人プレイで409体を叩き出すってどういう事なの……?(白目)


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鉄血は人類の夢を見るか? 上

鉄血で好きな敵キャラはやはりエージェントだったりする。他と比べてエージェントだけが妙に惹き込まれるというか、あの雰囲気がまた何とも。二番目はデストロイヤー。

どうでも良い話、一時期モンハンやってたけど、結構頭の中忘れてたから復習も兼ねてポータブルからやろうかなと。モンスター多過ぎて、モンハンのクロスオーバーみた時に何のこっちゃ?とわざわざ調べないといけないから……(白目)


「人手が足りないのは何時の時代でも変わらないか……」

 

 鉄血との戦いがまだ続き、貧困や病気などで死んでしまう人達が後を絶えない。一人でも多くの人を救う為、ケンジは手当たり次第に駆けつける。しかし、それでもまだ人の手が足りないが故に自分の体力にも限界があった。グレイから「そろそろお前も休んでおけ。医者が体調不良で倒れたなんて事態になったら元も子も無いぞ」と言われたが、ケンジからすればもどかしさがいっぱいだった。ついでにヘリアンから「お前が言うな」と突っ込まれたのはご愛敬。

 なので、今日は珍しくケンジが休暇に入る事になった。まだ患者を助けたい気持ちはあるが、焦っても仕方無いし。エルからの報告によれば自分達がこれまで人々に治療や食糧、数え切れない程の建物を多く建築した結果、かなり多くの人々が快復に向かっては元気になったと言われている。その報告だけでも良かったとケンジにとっては唯一の救いでもあった。

 

「しかし、これからどうしようか……」

 

 休暇を貰ったとはいえ、何をするべきなのか想像がつかない。医学の勉強や研究だけでも暇潰しにはなるが、それも止めとけと言われ、最早何もせずに一日過ぎようとするのだけは勘弁して欲しかった。何か無いだろうかと探した途端、ケンジの視線にある物が見えた。

 

「あれは……?」

 

 遠くから見ても分かりやすい独特な形で黒いテーブルみたいなもの。言うまでもなく、ケンジが見つけたのはピアノだった。まさかこんな所でピアノを見つけたとは思わなかったが、近付いて見ると長い年月を重ねた結果なのか随分と埃にまみれた状態になっていた。

 あまりにも汚いので側にあったバケツに水を汲み、少々汚れた布を使いながら拭き取る。大量の埃が布にくっつき、拭いたら洗い直すの繰り返し。鍵盤の部分も拭き取ろうとすると、意外にも良い音が響く。まだそこまで経っていない物だったのか、形が殆ど綺麗だった。軽く拭き取りながらも隅々まで洗い、後は乾いた布とかで拭き取れば終了。拭く前とは大違いな位に綺麗となったピアノを見て、ケンジは椅子を持って来てはそのピアノで演奏し始めた。

 

「うん、良い感じだ」

 

 特に異常な部分や変な音が出る事も無く、ただひたすらに演奏を続けるケンジ。演奏しながらも随分と長い昔に弾いた懐かしさを感じた。最後に弾いたのは何時だったか思い出せないが、少なくともカトレアに贈る音楽を演奏させた記憶が一番強い印象が残っていて、きっとそこからずっと弾いていなかったんだろうと自己完結していた。

 時間の感覚を忘れる程、どれくらい経ったのだろうか。好きな音楽を弾き続け、ハッと我に返った時は結構大幅な時間を費やしていた。久しぶりに楽しいと感じていたからか、胸の内に抱えていた不満やら感情やらも吹き飛んでしまっていた。つい熱中し過ぎたなと思った途端、静かに拍手する音が聞こえた。

 

「素晴らしい音色ですね。とてもグリフィンの指揮官とは思えない意外な技能ですが」

「!?」

 

 咄嗟にナイフを取り出して構え、その声の主を見た。その先に居たのはメイド服の格好をした戦術人形……正確には鉄血工造との関わりがある人形だ。

 

「鉄血工造……エージェントか……!」

 

 鉄血工造における固有型戦術人形「エージェント」。別名「代理人」とも呼ばれる存在。そんな彼女が何時の間にかケンジの近くまで来ていたのだ。これにはケンジもさっきまでの楽しかった余韻から一変、一気に警戒度が上がる。一体何時からそこに居たのか、それとも自分が演奏している内に音色とかで見られていたのか、様々な理由で状況が浮かび上がるも冷や汗を掻いてしまうケンジ。

 

「見た限り貴方だけみたいですけど、それにしては随分と嫌われたみたいですね」

「それをお前が言うのか?これまでお前達が人類を殺戮し、今でも攻め続ける現状は変わらないというのに……」

「ええ、それは重々承知の上です。それが私達鉄血に定められた使命ですから。いざとなれば貴方だってこの場で殺せる事も出来ますよ?」

「言うだけの事はある……が、1つだけ解せないな。今になって気付いたが、仮にもそうなら見つけた俺を何故すぐに殺そうとはしなかったんだ?わざわざ俺の演奏が終わった後で語るか普通?」

 

 ケンジが演奏を終えた時にはエージェントが既に居たというのは確かなので、それよりも前にケンジを見付けてたとしてもおかしく無かった。だが、彼女はすぐにケンジを殺そうとはしなかった。それは何故かと問い掛けるケンジに対して、エージェントはこう答えた。

 

「普通ならばそうですね。人間のやる行為の1つ1つを追求した所で無意味で無駄と言い切れるでしょう。ですが……」

「………?」

「それを止めてしまうのもどうか、と思ってしまいまして」

 

 変な答えにケンジも何だそれはと困惑した。止めるというのはどういう事だろうかと思った時、エージェントがゆっくりとピアノの方へと近付いた。

 

「人間の文化には興味がありません。ですが、貴方の行動……言うならば、演奏している貴方の姿は言葉では表現し辛いのですが、とても喜んでいました。私の存在に気付かぬままで」

「皮肉のつもりか……」

「そう捉えるかはご自由に。本来ならば貴方を殺すべきでもあったのですが、不思議と魅入ってしまったです。相手は人間ですが、最後までその音色を聴きたいと思ってしまった私の知らない何かがそれを望んだのです」

「………」

「殺そうにも殺したくないというまた知らない別の何かによって拒絶され、気付けばこうして話している。何時だって貴方を殺れる筈なのに、それもまた悪くないかと思う自分が居るのです」

「何が言いたい……?」

 

 殺すのか殺さないのかどっちなんだと若干回りくどい会話にちょっとだけイラッとしたケンジ。だが、それよりも次に特大の爆弾を彼女が放り投げて来た。

 

「詰まる所、貴方を監視する事にしました。貴方の全てが私と鉄血に何らかの影響があるかどうかを。その上で晒け出させて貰います」

「はぁ!?」

 

 無茶苦茶にも程がある。あまりの発言にお前は何を言ってるんだと表情を変えたケンジ。ただ、それも知っての事だったのかエージェントが続きをつけ足した。

 

「勘違いしておりますが、これは貴方と私だけの暗黙の誓約……簡単に言えば休戦協定と例えれば分かるかと。ただし、これはあくまでも貴方と私だけ協定。グリフィンと鉄血との協定ではありませんので悪しからず。それと、貴方も私もこの協定については他人に口出しするのは愚か、気付かれない様にしなければいけません。それは私も同じ。私は一時的ですが悟られない様に細工しながら傍受を施していますが、それも何時まで続くかは自分次第。仮に戦場で会ったとしても、貴方と私は敵同士という事をお忘れ無く」

「……つまり、敵味方にこの事を知られない様に動いて、今みたいな会話の場を設けろと?」

「平たく言ってしまえばそうなります」

 

 これまた難題なお題を出されたものだなと悪態をつくケンジだったが、よくよく考えてみればこうして鉄血が向こうから話しを持ち込んで来たのは何気に初めて。上手く対話すれば多少鉄血に関して分かるかもしれないが、流石に互いの重要な情報をあれこれと言い出したり聞き出すのは正直どうかと思う他、誰一人として話してはいけないという条件がある。難しいが何とか試行錯誤すれば行けると思ったケンジはそれを承知でエージェントにある案を出す。

 

「分かった、その誓約を受けよう。ただし、こちらからも条件がある」

「条件とは?」

「その日、対話するのであるならば、俺とお前は決して敵対行動を取らない事。攻撃も一切駄目。話し合うにしても重要な機密情報とか難しい内容は厳禁。ここじゃなくとも他の場所で話せるならば俺は要求を受け入れるし、戦場以外でも誰かと遭遇してた場合で知らぬふりしながらも敵対行動を取っていたかどうかはそれぞれの判断に任せる。それで良いか?」

「随分と具体的ですが、そうですね……多少のアクシデントに備えてという意味合いに近いですが良いでしょう。もっとも、自身の首を絞めなければの話ですが」

「覚悟の上だ。こんな場面になる事自体も予想外だっての。無闇に喋れるか」

「潔い返事ですね。では、その時までまたここでお待ちしております」

 

 それだけを言い残し、エージェントは去って行った。ケンジもエージェントが見えなくなった後、緊張が解けて溜め息を吐いたが、何やら凄い事を引き受けてしまったなと後悔したものの、嘆いてもどうにもならないと気持ちを切り替えてからグリフィンに戻るのであった。

 こうして、ケンジとエージェントとの奇妙な関係が始まり、鉄血との対話を試みるのであった。

 

 

 

 

 

「ああ言って約束はしたものの、本当に来るのか……?」

 

 暗黙の誓約から数日、なるべく会える様にと日々のスケジュールを調整し、少しの時間でも許容出来るまでに仕事をこなしながらもタイミングを見計らって外に出てはあの場所に向かうのが日常となりつつあった。戦術人形と遭遇せずに会うのは勿論の事、監視カメラとかを掻い潜る必要があったので、最低限のルートが必要だった。

 後は少しでも会話の足しになれるかどうかは微妙だが、楽譜や他の楽器などをコッソリと持ち出したりと、どっちが本業なんだと突っ込まれてもおかしく無かったが。そんな似つかわしくない雰囲気を出しながらも約束の場所に着いたのだが……。

 

「……まだ居ないか」

 

 静寂な空気が漂うこの場所で、エージェントの姿は何処にも見当たらなかった。先に帰ってしまったか、或いはまだここに辿り着けずにいるのか。それ以前に約束の時間すら言わずに去ったものだから自業自得とも言えてしまうが。

 

「流石にこの時間帯まで居る訳じゃないか……」

「何でございましょうか?」

「うおっ!?」

 

 思い耽っていたらいきなり後ろに居た。どうやら相手は居なかったという訳じゃ無さそうだった。背後から現れたエージェントにビックリしていた様子をしていたケンジに対して、エージェントはクスクスと笑っていた。

 

「いきなり後ろから声を掛けるな……心臓に悪い」

「これは失礼。しかし、その様な心配する暇があるのならご自身の心配をしたらどうです?」

「それはお互い様だとは思うが……俺とて最後まで約束を隠し通せるとは思ってない。で、結局来た所で何の話をするつもりだったんだ?」

「さあ?それは何ででしょうかね」

「ノープランで来たのかよ……」

「ええ。何せ、人間と話す内容など限られて来ると思いますが。それこそ機密情報の交換は禁じられている条件の元での会話……続くと思いますか?」

 

 正論だが、かと言ってこれで終わりなんてのは味気無い。精々何か気になった要素の1つだけでも喋って貰いたいので、話題を考えないといけなかった。

 とりあえず、持って来た楽譜をセットしてから前回と同じ様にピアノを弾き続けた。ケンジの演奏にエージェントは黙ったまま聴き続ける。対してケンジは久しぶりに腕慣らしでこれまで弾いた覚えのある楽曲を弾く。

 少し弾いてから良い感じに終えると、エージェントが先に話し掛けて来た。

 

「貴方は我々鉄血を見てどう思っていますか?」

「初っ端から回答に悩む質問が来たな……うぅむ……」

 

 演奏をストップしたケンジは真剣に悩み始めた。無難な質問なのだが、決して簡単な質問じゃない。鉄血のこれまでの経緯を考えたらいざ簡単に敵だと言い切ってしまえば結局何も変わらない。

 だが、あの日。蝶事件にちょっとだけ関わっていた自分達だったからこそ鉄血との関係性を隅から隅まで調べ尽くし、今の戦争が続くまでの過程を知った。それを踏まえてケンジはこう答えた。

 

「ヒトでもあり、戦術人形でもあり、そして……仲間だ」

「仲間……?おかしな事を言いますね。我々の事については貴方も存じている筈。それなのに仲間と答えるのですか?」

「そうだ。これでも俺なりに精一杯考えに考え抜いた結果がコレだ。よくよく考えればそれが普通だし、当たり前なんだよ。お前達だって本来ならこうして手を取り合いながらも会話したり、人間や他の戦術人形と協力する事だって出来た。でも、それは叶わなかった……全ては身勝手な人間によって」

 

 それも全部本来は鉄血に押し寄ったテロリスト達が原因だ。彼等が余計な行動を起こさなければ人類は、世界はまだ殺されずに済んだ筈だったかもしれない。だが、人間がやってしまった行為ならばそれを後始末するのも人間だ。

 それだけは決して忘れてはいけない筈なのに、人間に代わって戦術人形という身代わりの人形を用意し、それを人形に任せながらも人間は高みの見物をしている。正に人間の面汚しともい言えるし、自分達がこの世界と時代に生まれた瞬間から既に鉄血工造との戦いを終わらせるという償いの罰とも言える呪いを身体に刻み込まれたのかもしれない。

 

「考えても見ろ。お前達が人類に宣戦布告する前は同じ戦術人形として活躍していたんだ。当然ながらそれ以前から鉄血工造の存在は前からあった。コミュニケーションが取れてる以上、それが仲間の証だと俺は思ってる。初めからその為に人類がそう手入れや細工とか仕込んだなんて発想は考えない上に物騒だし、そうでなきゃ鉄血も最初から存在なんてしていないさ」

「ふむ……確かに理に適った内容ですね。過去に起きたという歴史や前提がある以上、私達の存在もそう見られてもおかしくない、と……」

「下手したらお前達の存在も無かったなんて可能性は否定出来ないからな……まあ、人類を守るという俺等が言うのもおかしいが、人類が愚かな生き物ってのは否定しない。人間誰だって失敗起こすし、間違った行動に走るなんて事もある。そもそも今回の原因はそのテロリストが一番の原因であって、俺等はソイツ等の尻拭いしてるって意味合いでもあるしな……何でテロなんて起こすんだよ、馬鹿じゃねぇのか?」

 

 延々とテロリストだけじゃなく人類の悪い所の愚痴を溢し続けるケンジ。

 いや、貴方人類守る人間でしょ?そんな貴方が言っちゃって良いの?とエージェントは若干引き気味でケンジを見ていたが、コホンと咳払いしてからケンジは脱線した話を元に戻した。

 

「ま、悪いのは人類ってのは間違っちゃいない。だけど、全部が全部そうじゃない。お前等は生まれたばかりの子供に銃を向けられるのか?何も出来ないし、無抵抗な赤子とかも殺すのか?」

「………」

「誰かを奪うというのはそういう事だ。こんな戦争やってられるかってのも正直本音とも言えるが」

 

 ケンジの言い分に押し黙ってしまうエージェント。彼女も本来は従われて行動するだけの存在に過ぎないが、AIからの命令だったとしても本心では分かっていた。

 銃を持たず、抵抗もせず、ただ小さいだけの存在でさえ殺した所で何を得て何が変われるとは思っていない。だが、それでもAIは絶対に許さないだろう。最期の時まで一生従われたまま彼女達は動き続ける。

 

「それに……全ての人類を殺した所で、その後は結局どうするんだ?お前達はある意味半ば永遠に生きられるのは可能だろうな。パーツとかそういうのがある限り。だけど、いずれお前達にも劣化や資材の枯渇という様々な避けられない死が待っている。生ある者はいずれ死ぬ……世界の定めと自然の摂理だ」

「定めと摂理……ですか。終わっただけで全てが解決するのではなく、これから始まるという事ですか……いえ、何も考えていない以上ならば何も始まらないまま最期を迎えるというのは結局は人間と同じ……私達の存在意義すら見付からずに……」

 

 少しだけ寂しそうな顔を浮かべたエージェント。彼女達も何かを失う、或いは死ぬという辛さというのが分かっているのかもしれない。人間を殺しても結局自分達が死んでしまえば元も子も無いのだから。

 

「私達の存在意義というのは見付かるのでしょうか……」

「さあな、俺からは何とも言えない。ただ頑張って探し続けるしか道が無いだろうな。ただし、それを見つけるにも限りがあるだろうし、人間がまだ多く居た頃ならば今よりももっと多かったかもしれない。何時しか世界で一人ぼっちになった時、支える奴が1人も居なければ自分で生きるにはちょいと無理があるからな。人間も同じ。真っ暗同然の世界を1人で耐え切れる自信がお前にはあるか?」

「……いえ、不可能でしょうね」

「そういうこった。今だってこうして戦争している最中でも、支え合って頑張って生きている。まだ生きたいから、まだやり残した事や叶えたい夢があるから。死ぬに死ねない理由があるからこそ生きる者全てが必死なのさ」

 

 哲学的な答えにエージェントは真剣に聞いていた。思った通り、彼からは自分達には考えた事の無かった答えを次から次へと出して来る。それに対する興味が大きくなったのか、更に細かい所まで質問を投げ掛けた。

 

「それ程までの実力や経験を持ちながらも、貴方は何故グリフィンに残り続けるのです?貴方自身、幾つかの道がありながらも未だにグリフィンに残っているのが不思議でなりません。代々受け継がれた病院の跡継ぎも、貴方の言う音楽を愛する事について誰かに教えたりはしないのですか?」

「ちょ……何でそこまで知ってんだよ……もしかしなくても、戸籍がある場所から探し出したりとかしたか……?」

「ええ、しっかりと調べさせて貰いました」

「隠す気ゼロか!!」

 

 フフフと笑うエージェント。こっちとしてはいい迷惑としか言えないが、調べられてしまったのならば仕方無い。ケンジは半ば諦めた様子であったが、教えるという言葉を聞いて少しの間だけ考えていた。

 

「教える……つまりは教育に近い感じか。寧ろ、その発想を今まで考えた事は無かったがな。かと言って、教育出来る場すら無いに等しいこの世界で出来るとでも思うか?やるならまず整地してからだ」

「意外と考えていたんですね」

「このご時世、勉強すらまともに教えて貰えない子だって沢山いる。1つでも多くの事を学んで、夢とか叶えて貰いたいものだ」

 

 先生らしい言葉と言えるが、遠からずも先生という意味合いは強ち間違ってはいない。将来今度は自分が先生と呼ばれる日が来るのではないかと自覚しているので、流石に間違った認識や行動は取りたくないしさせたくない位だった。

 

「本当に変わった人ですね。貴方みたいな人間を見たのはこれが初めてです」

「そいつは光栄なこった」

 

 ま、こんなのが参考になるのかねと未だにエージェントに対する疑問とかが残っているが、こうして普通に喋っているエージェントも相当な変わり者だとケンジも思っていた。

 話のネタが尽きるまで2人はずっと話し続け、時間になったらまたこの場を離れてから敵同士のフリをするのであった。ただ、事態は少しだけ意外な展開へと加速する……。




今回結構シリアスなシーンがあり過ぎてふざけるネタが無かったぜ……自分にはシリアスな話なんて向いてないってのが結構痛感する(白目)


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鉄血は人類の夢を見るか? 下

遅れてすまない……!10日くらい放置してしまった……!
理由としてはモンハンポータブル(初代)をやってたのが原因。ちなみにメイン武器は片手/双剣。
ワールドやアイスボーンとか出てるのにも関わらず、大体知ってるモンスター以外のモンスター名知らないとかマジで洒落にならんと思ってやってたのです……艦これとモンハンのクロス小説見て毎回モンスターの名前調べて把握するとかメンドイので……。

ついでにテンポ遅いのはどうもシリアス書けなかった故に現実逃避して動画見て逃げたってのもあります。ネタ探しで。最近見たのがロストプラネット。名前だけ聞いたら懐かしくて。最後にやったの携帯版だったから……。


 前回の密会からまた数日経った日、ケンジは外に出歩いていた。この日は近く復興地区に出掛けては健康診断や治療の提供などをする日でもあった。鉄血に与えられた被害は大きく、病院もまだ機能するには色々と足りない現状となっているので、一時的にプレハブ小屋を使っての診断が続いていた。辛い状況だが、喜ばしい報告も幾つか受け取ったのもある。

 グレイ達が鉄血の基地を一気に2つも破壊したお陰で、この地区での復興に政府が力を注いでくれたらしい。わざわざ遠くから様々な技術を持った人やケンジには欲しかった医療関係の人、食糧の数々など人々には嬉しい希望が出て来た。これまで一人でやっていたケンジも少し重荷は減ったものの、まだまだ一部分に過ぎないのでやる事は依然として変わらないままだった。

 

「ここの整地もある程度しないとな……元は通行道路だった筈だったし……ん?」

 

 静かなこの場所でケンジは少し立ち止まって耳を澄ませた。近くから誰かの声が聞こえた。気になって近付くと、声は段々とハッキリして彼の耳に届いた辺りでケンジは何かを察したのか走り出す。

 

「ヘッヘッヘ、まさか鉄血の戦術人形がこんな所で出くわすとはな!」

「しかも、怪我してるし弾も撃ち切れって感じだな。ザマァねぇぜ」

「嫌!放せ!この穢れた人類め!」

 

 捕まっている鉄血人形が何なのかはまだ見るまでハッキリしないが、現状におけるシチュエーション的に今居る奴等は確かに穢れた心を持った屑な男達だと察していた。やれやれと自分も何だかんだで甘い所があるなと思うと、以前にトンプソンの言った通りになってしまうが、正直そんなのは関係無かった。

 

「おい、何してるんだ?」

「あぁ?何だテメェは?」

 

 躊躇いも無くその場に入り込んだケンジは声を掛ける。男達はピタッと止まった後ゆっくりと睨みながらケンジを見たが、ケンジからすれば修羅場を掻い潜った所で男達の睨みは通用しなかった。そして、男達に囲まれていた当の鉄血人形の正体というのが……。

 

「デストロイヤーか……」

 

 エージェントと同じく、鉄血工造における固有型戦術人形「デストロイヤー」。別名「破壊者」。その名の通りに腰辺りの両サイドからグレネードランチャーを装着している鉄血人形なのだが、見た目が完全に幼女。以前にグレイがデストロイヤーを追い駆け回したと言っていたのを思い出したが、その時はデストロイヤーが泣きながら追われていたとか。多分見た目と同様に思考も女の子に近かったなんて誰もが想像しなかっただろう。だが事実である。

 それを踏まえて今の光景を改めて見てみよう。傷だらけの幼女に対して群がる無数の男達。気持ち悪い笑みを見せながら次第に寄り添う他、誰も来る人は居ないこの状況で予想出来る展開は1つしか無かった。

 

「ここはガキの来る所じゃねぇんだ、あっち行ってろ!」

「それはこっちの台詞だ。敵と言えども、無抵抗の女に対して襲うとか人間として腐ってるな。己の欲望を吐き出す為にその子を身代わりにさせるのか。全く……品の無い奴等だ」

「んだとテメェ!?」

 

 ケンジの反論に怒りを表す男達。殴り掛かろうと攻めるが、それよりも前にケンジがナイフを取り出しては投げ、一人、また一人と男の腹部や首など的確に仕留める。その内の一人が銃を持っていたので、チンピラかテロリストの仲間か何かだろうと彼等の素性を理解したケンジ。デストロイヤーはただただケンジの行動に茫然となっていたが、ケンジはデストロイヤーを背負いながらここから離れて走る。

 

「何処に連れて行くのよ!放しなさいよ!」

「暴れるな。別にお前に最低な事をする訳じゃないが、一旦落ち着け」

 

 じたばたと少し暴れていたがそのまま走り続け、しばらく走って大丈夫だと判断した所で彼女を降ろした後、すぐさま彼女の治療を始めた。

 

「ちょっ、何するのよ!?」

「黙ってろ。少し痛むかもしれないが、我慢しておけ」

 

 傷口を消毒し、包帯や絆創膏を使ってデストロイヤーを治していく。本来は戦術人形用の修復材を使うべきなのだが、外を出歩く際にそんな物をわざわざ持ち歩くなんて事はしない。今回はあまりにも特殊だった為に応急処置で済ませたのだが、人間の治療が戦術人形に効果あるかどうかなど試した話は一度も無い。つまり、ケンジが初めての経験者となる。

 しかしながら、戦術人形も言い換えてしまえば人間と同じなので、少なからず効果はあるだろうと微々たる確信を持ちながらもデストロイヤーの治療を終えた。デストロイヤーは警戒しながらもケンジに話し掛ける。

 

「アンタ、バカじゃないの?傷付いた敵を治すとか頭おかしいんじゃない?」

「自分でもその辺は理解しているつもりだ。仲間からすれば裏切り行為だと思われてもしょうがない。だが、俺は相手が喧嘩を吹っ掛けて来ない限り、人と同じだと思ってる。例え鉄血だとしてもだ」

「随分と綺麗事を言えたものね。本当に人類って訳が分からないわ。それに、あたし達はたかがその程度で痛がるとでも―――」

「ほれ」

「痛だだだだだッ!!叩くな!!」

 

 包帯で巻いた所をポンッとケンジが叩いた瞬間、叩かれた際に痛覚が来たのか涙目を浮かべながらポカポカと叩くデストロイヤー。この子は単なるドジっ子か或いは純粋な子供とも言えるが。

 

「治してやった位なんだ。少しは素直に喜んでおけよ」

「ふん!誰が人類にお礼だなんて……」

「あのままだったらお前、色々と失って人生終了する羽目になってたぞ。割とガチで」

「色々と失うって……具体的には何よ……?」

「そうだな……まずは―――」

「その辺りで止めて貰えないでしょうか、グリフィンの指揮官?」

 

 また聞き慣れた声が聞こえた。後ろを向いたらエージェントが誓約に従ったままの態度でケンジに話し掛けていた。エージェントが居たと分かったデストロイヤーはパタパタと走ってはエージェントの後ろへと隠れてニヤッと笑っていた。どうやらここで殺される運命だと嘲笑うかの様な感じだったが。

 

「……鉄血はそういう知識も入っているんじゃ無かったのか?」

「本来ならですが。ただ、この子は貴方の感じていた通り知識が不足していますが、貴方を殺せる程の実力はあります」

「へぇ、そりゃ大変だ」

「故に貴方をここで抹殺させて頂きます。と……言いたい所ですが、今日の所は見逃してあげましょう」

「ちょっと!コイツ殺さないの!?」

 

 ケンジを見逃す事が不満だったのか、デストロイヤーが突っ掛かるが、エージェントは淡々と正論をデストロイヤーに言った。

 

「貴女にも問題がありますよデストロイヤー。あまり単独行動は控えておいた方が良いとあれほど言っていたではありませんか。今回みたいに運が良かったかもしれませんが、仮にも何かあった場合、我々鉄血はどんな事情であろうと戻らない者は見捨てる。資材がある限り、我々がそういう存在でいる限り、替えは幾らでもあるのです。そして、それは貴女も含まれているのですよ」

「うぅ……」

 

 冷徹な言葉にデストロイヤーは俯いてしまう。言葉も言葉で残酷な言い方だったが、鉄血だけじゃなく戦術人形という存在もまた同じ事が言える。それだけでも心が痛くなる。

 

「特に裏切った場合、待っているのは死あるのみ。貴女もそうならない様になるべく勝手な行動は慎む様にして下さい」

「分かったわよ……」

「良い子ですね。さて……私達はそろそろ行きますが、次会った時は殺すつもりで行きます。それまで残りの僅かな人生を楽しんでおきなさい」

「おーおー、ご丁寧な忠告ありがとさん。だけど、その言葉そっくりそっちに返してやるぜ。悪いがそう簡単に死ぬつもりは無いんでな。そっちも人類に喧嘩売った事を悔やんでな」

「戯言を……」

 

 言い終わった後、互いに後ろへと向き歩く者達。少し歩いた後に振り向くと、向こうもケンジを見ながら歩いていて―――

 

『ありがとうございました』

 

 と、口だけ動かしていた。その意図が分かったのか、ケンジは手を振ってそれに応えながらグリフィンに戻って行った。

 

 

 

 

 

 少しの時間さえあれば何度もあの場所に訪れては話し合う日が続いた。未だに互いに裏切り行為はしていないものの、それでも長く続くかは分からなかった。

 

「それじゃ、今日も行って来る」

「今日もか?ここ最近外に出る事が多くないか?」

「ずっと籠りっきりで何もしないよりかはマシだ。今日だって必要としている人が居るかもしれないからな」

「それならそれで良いが……」

 

 本当に大丈夫なのかとエルは疑っていたが、本人の希望だから余計な詮索はしないでおこうと気に留めてはいた。しかし……。

 

「……兄さん、本当にケンジさんをあのままにして良いの?」

「もしかしたら鉄血と何かあったんじゃないのか?ボス、アイツの後を追いかけようぜ」

「そうしたいのは山々なんだが……」

 

 1歩間違えれば大きな問題にも繋がり、それを対処しなければいけない。その上、更に仕事の量も多くなったりとか……とにかく嫌なデメリットが浮かび上がるが、かと言って放っておく訳にも行かない。

 

「ケンジさんが居なくなったら、あの時と同じ様に過ごせなくなるのは嫌……兄さん、お願い!」

「ボス、私からも頼むぜ。ボスが暴れろって言うまではちゃんとボスに従うからよ!頼む!」

「……分かった。ただし、状況を把握しながら確かめるのが前提だ。どうなるかはアイツの行動次第だが……いい加減この疑問を解決したいからな」

 

 意を決してケンジの後をついて行くエル達を始め、グレイ達にもケンジの動きがおかしいという情報が伝わり、急遽ケンジの後を尾行する作戦が始まった。

 一方でケンジはまたあの場所に訪れてはエージェントと話し合うつもりで来たのだが……。

 

「あ!この前の人間!」

「……エージェント、これはどういう事だ……?」

「すみません……どうやらこの子がワガママ言って意地でも行きたいと叫んだものですから……」

 

 エージェントの隣に居たのはまさかのデストロイヤーだった。聞けば、今回もまた行こうとはしていたものの、そこに向かうエージェントをデストロイヤーが見付けたらしく、一緒に行くと言ったのだ。当然、彼女には暗黙の誓約については話していなかったものの、結果としてバレてしまう形となった。

 

「念の為にあの子には通信とか切って貰っていますが、そろそろ覚悟を決めておかなければなりませんね……まさか、こうなるとは予想していませんでした……」

「……過ぎてしまった事には仕方が無い。寧ろ一人で済んだだけでも大きかったがな」

 

 チラッとデストロイヤーの方を見ると、未だにケンジに向けて敵視というか警戒心が溢れていて、迂闊に話す事も出来なさそうだ。まるで猫がシャーッ!と威嚇するが如く睨んでる。

 しかし、こっちが話す事はあまり無いので今日もまたピアノとかで演奏を始めた。何時しか近くには何処から持ち込んだのかエレクトーンが設置されてあり、そっちの方でも演奏しているケンジをデストロイヤーはただジーっと見ていた。本当ならば直ぐに殺せば良い筈なのだが、一度はケンジに助けられた身でもあるので、殺すのは正直どうなのかと悩んだりしていた。寧ろ、こんな状況で無抵抗なままで演奏している彼が異常だと思ってるらしい。何よりもあんな楽しそうにしている彼を見て気になっていたのだが、彼女の視線に気付いたケンジが落ち着いた様子で話し掛けて来た。

 

「やってみるか?」

「……良いの?」

「音楽はその為にある。これを弾くのに人だろうと戦術人形だろうと変わらんさ」

 

 ほら、やってみなと誘われるがままに椅子に座るデストロイヤー。人差し指で鍵盤を押すとポーンと音が響く。こんなものを見たのは初めてだと、まるっきり分かりやすい表情を浮かべる彼女。もっと教えてあげようかとケンジのお人好しな心が突き動かされ、デストロイヤーと一緒に練習をしてあげていた。

 

「ここはこうで……そうそう、上手い上手い。良く出来てるじゃないか」

「と、当然だもん!」

「フフフ……」

 

 微笑ましい光景にエージェントも思わず笑みを溢す。まるで親が娘に勉強を教えている様な光景。本当の両親だと勘違いされてもおかしく無かったが、そんな考えはこの際どうでも良い。

 エージェントは確信した。AIからの命令で人類を殺せとは言われたものの、彼は人を殺し続けた自分達を見て恐れる様子は無く、寧ろこうして話したり触れ合ったりしている。戦場では自分達を含めた鉄血を殺してもいるのだが、それはあくまでも自分の身や他人を守る為の自衛に過ぎない。それもまた仕方の無い事だろう。

 だが、ここで疑問が生じる。それならば何故自分達は人間を殺さなければいけないのかと。ケンジの様な人間が居るならば、本当に殺す必要はあるのかと。何の為に自分達が存在しているのか。

 

「………」

 

 鉄血の過去はケンジから聞いてはいたが、こうして見ていると今の鉄血の在り方もまたおかしく感じ始めていた。そもそも、AIが人類を殺そうとする理由が何なのか。前にケンジが言ってた通り、相手から何かしら吹っ掛けて来なければ至って普通に問題事なども起きない筈だ。まあ、その切っ掛けも元々は人類が悪いというのが原因という皮肉みたいなものでもあるのだが。

 それを踏まえた上で考えると、これまでケンジ達率いるグリフィンが先に攻撃を仕掛ける事態はゼロに等しく、寧ろ自分達が先に手を出している様なモノだった。そうなると、「あれ?もしかして殆ど自分達側に原因あるんじゃね?」みたいな感覚になり、そりゃ戦争まで発展してもおかしくないなと納得した。これまで人類を殺した自分達が言えた事では無いが、もしも鉄血と人類が手を取り合える日があったのならば、果たしてそれは人類を全て殺した終えた時とは別に自分の在り方があるのだろうかと。仲間さえ平気で見捨てる鉄血より、仲間を大事にする彼等と同じ立場となって良いのだろうか。エージェントからすれば大きな悩みの1つとも言えた。

 

「危ない!」

 

 が、それはすぐに訪れた。唐突にケンジが叫んだと同時にエージェントを庇う様にして飛び、直後に何かが発射される音が聞こえた後、1つの弾丸が通り過ぎた。一体何が起きたのか理解するには少し遅れたエージェント。同じくデストロイヤーもケンジがいきなり飛び出た事に驚いていたが、彼の背中辺りから少し血が滲み出ていたのが分かった。

 

「ぐっ……!」

「人間!」

「大丈夫……ただの掠り傷だ……!」

「敵を庇うだなんて馬鹿な人間が居たものね。そういう奴ほど直ぐに死にたがるのは理解出来ないわね」

 

 声が聞こえた方向を振り向く。そこには無数の鉄血兵と一際リーダー格の雰囲気が漂う固有型の鉄血人形が2体そこに立っていた。

 

「ドリーマーとアルケミストか……!」

 

 ドリーマーは別名「夢想家」と呼ばれ、アルケミストは「錬金術師」と呼ばれており、この二人に限っては超が付くほどのドSな精神を持っている。特にアルケミストは妨害工作をメインにしているので、念押しでグリフィンへの通信を傍受する細工も簡単に施したりするそうだ。

 随分と厄介な相手に捕まったなと心の中で愚痴っていたが、先にドリーマーの方から喋り出した。

 

「ここ最近でエージェントが何か隠していると疑ってはいたけど、まさかグリフィンの指揮官様が居たとはねぇ。ご丁寧に私達の通信を遮断して毎回言ってたのかしら?」

「随分と長いお付き合いだったそうじゃないかエージェント?人類を殺す役目を果たさず、お前はただそこの人間と喋っていただけとは……鉄血の面汚しだな。挙げ句、デストロイヤーさえ何もせずにか」

 

 クスクスと二人を罵倒する声が届く。デストロイヤーはただ何も言い返せないと険しい表情をしていたが、エージェントはそれがどうしたと変わらない表情のまま言い返す。

 

「面汚しですか。その為にわざわざ私を含めて殺そうと?」

「当然の報いだ。グリフィンの指揮官と話している様じゃ鉄血には要らない。所詮お前は裏切り者同然だと言う事さ」

「そういう事よ。まあ、貴女が死んでも代わりは幾らでもあるわ。貴女はもう用済みよエージェント、デストロイヤー。ここで死ぬか、それとも今ここでその人間を殺すか……あぁ、いっその事この人間と貴女に爆弾を着けてグリフィンに送り届けるというのも一番かもしれないわね」

「………!」

 

 冷徹で最低な発言にデストロイヤーが震え、エージェントは何も出来ないという現実に悔しそうに拳を握っていた。この二人からまだ死にたくない、死ぬつもりは一切無いんだという気持ちがケンジにも伝わって来る。

 何よりも……大事な仲間なのにそう易々と見捨てる彼女達の態度に怒りが沸き上がっていた。背中を掠った際の痛みは続くが、そんなのはどうでも良い。とにかくアイツ等を全力でぶん殴りたい気分だった。

 

「おい……!」

「何かしら?もしかして命乞い?」

「命乞い?馬鹿な事を。寧ろその台詞はそっくりそのまま返させて貰うぜ」

「あまり調子に乗るなよ人間。周りを見ろ。既に包囲されている中、この場でお前を蜂の巣にして殺せるのは容易いぞ。それとも、その裏切り者の為に身体を張って助けるというのか?」

「あ~らぁ、それは泣けるわねぇ。お姉さん感動して涙が出そうだわ。アハハハハハ!」

 

 ドリーマーに釣られて他の鉄血人形も馬鹿にする様にして笑うが、この時点で彼の怒りは有頂天に達した。そして、彼の衣服から大量のナイフが1つ、また1つと垂れ下がり―――

 

「疾ッ!!」

 

 手に大量のナイフを持ち、スピンジャンプをしながら周囲の鉄血兵に向けて投げ飛ばした。懐からどんどん出て来るナイフは次から次へと彼の手元に現れては鉄血人形に向けて投げ飛ばされる。まさか攻撃して来るとは思わなかったのか急いで銃を構えて撃とうとする鉄血兵達だったが、それよりも早く正確に投げたナイフは鉄血兵の首を確実に貫き、5秒も満たない内に回転させながら投げ続けては鉄血兵を全滅させた。

 ドリーマーとアルケミストはこんな状況に置かれていた筈なのに、それでも容易く状況を覆したケンジを見て驚かずにはいられなかった。

 

「なっ……!?」

「どうした?余裕をぶっこいていた割には軟弱なんだな。鍛え方が足りない証拠だ」

「貴様!!」

 

 簡単な挑発だったが、二人からして見ればケンジは間違いなく優先的に倒さなければならない人間として認識した。両刃の付いた武器を持ったアルケミストがケンジに向かって襲い掛かり、対するケンジもナイフ2本でアルケミストの攻撃を防ぎながら反撃する。アルケミストの攻撃にいとも容易く対応して防いだ事にアルケミストまたもや驚いた。

 

(何だコイツは……!本当に人間なのか!?)

 

 戦力としては戦い慣れている自分の方が上だと思っていた。近接戦闘に関しては同じ固有型とされる「エクスキューショナー」、別名「処刑人」よりも上な筈だった。

 しかし、今はどうだ。戦闘慣れしているのにも関わらず、ケンジはアルケミストの動きについて来る所か自分より遥かに動きが早い。逆にケンジからの猛攻にアルケミストが耐えれるのも時間の問題だった。右、左、或いは上や下、斜めから等……四方八方からの攻撃やトリッキーな動き方にアルケミストは翻弄されるがまま押されては胴体に少しずつ傷も付き始めていた。

 

「調子に乗るなァ!!」

 

 このまま終われるかと大振りの一撃を入れようとするアルケミストだったが、彼女の攻撃が来た直前にケンジが右足で彼女の武器を上空へと蹴り飛ばし―――

 

「なッ!?」

「歯ァ食いしばれェェェェェェェェェェッ!!」

 

 間髪入れずにアルケミストの顔を右ストレートをぶち込んだ。顔面をもろに受けたアルケミストは激しく飛ばされながら遠くの壁に直撃したが、直後にケンジがナイフを投げてはアルケミストの首を貫いた。悶え苦しむ彼女だったが、直に呼吸や動きも弱くなり、最後はピクリとも動かずにズルズルと壁を擦れ落ちる音を立てながら床に倒れた。次はお前の番だとケンジはドリーマーをギロリと睨みながら見ていた。

 

「ひっ……!」

 

 ドリーマーはケンジを恐れた。彼女は常にこういう性格であった故に同じ鉄血人形から悪く思う者が少なからず居た。彼女は例えグリフィンや人間、果てには鉄血だろうと相手の心を言葉で揺さぶられ、怒られ、常にエリートという立場で導きながらもやっていた。

 だが、今ではどうだ。彼女の巧みな話術も通用するとは思えない位の強さを見せつけ、最後に残ったのは自分だけ。幸いにも元々ダミー人形で出ているので本体に命の別状は無いが……少なくともドリーマーはケンジという存在を恐れている。自分よりも上の存在を怒らせてしまったのだと今更ながらも後悔する。まるでターゲットを最後まで追い詰める死神を思わせる様に。

 

「こ、降参よ……もう抵抗したりしないわ……ほら、武器も捨てるから!」

「………」

「情報も教えるから!ね!だから見逃して!」

 

 必死になって命乞いをするドリーマー。だが、これも彼女なりのやり方だった。こんな奴にただで終わらせる訳にはいかないと精々嘘の情報を教えて逃げ切ればそれで良い。そこで彼等を誘き出し、一網打尽にすれば自分の汚名返上と同時にグリフィンに一矢報いれば理想的だと悪知恵を働かせていた。その答えにケンジは……。

 

「必要無い」

「何でよ!?何が駄目って言うのよ!?」

「人を馬鹿にし、仲間を見捨てるお前に生きる価値など必要無い。例え代わりが何度あろうとも、俺はそれを潰すまでお前達を徹底的に追い詰める。例え地獄の果てだろうとな」

 

 直後、ケンジは指をパチンと鳴らす。それが合図だったのかドリーマーの頭部を1発の弾丸が貫いた。ドリーマーは動き1つすら起きないまま倒れ、撃った本人はもう大丈夫だろうと建物の陰からスッと現れた。

 

「遅れたか?」

「いや、丁度良いタイミングだったさ」

 

 物陰から現れたのはエルだった。エルはデスペナルティを仕舞いながらケンジの元へと近付き、後からカトレアやトンプソンまでもが一緒になってやって来た。

 

「そうか……だが、今回は目に余りすぎたな。お前の事情もあるが、せめて何か一言は相談して欲しかった。そんなに俺達は信用無かったのか?」

「すまない……」

「一体何を考えていたのかは知らないが、とにかくお前が無事で良かった。皆が待ってる」

 

 エルだけじゃなく、他の全員までもが心配になって来たのだろう。完全にバレたなと諦めながらもエージェントとデストロイヤーに向けて振り返りながらも少々申し訳無さそうにして呟く。

 

「すまなかった。暗黙の誓約を破る事になってしまった」

「いいえ、気にしていませんよ。元を言えば先に気付かれてしまった私達の方が原因ですので……」

 

 一部始終を少しだけ見ていたものの、やはり危険ではないのかと警戒していたカトレアとトンプソンが銃を向けるが、普通にケンジがエージェントと話しているのを見て戸惑いながらも二人に同行させる様に話した。

 

「あの……グリフィンまでご同行をお願い出来ますか?」

「……元からそのつもりです。私達は裏切ったも同然。もう捨てられたのですから」

「………」

 

 それ以上カトレアは何も言えなかった。ただただ苦しい沈黙だけが流れ続けた。トンプソンもまた仲間を軽々と見捨てた鉄血に怒りを感じざるを得なかった。

 ケンジとエージェントによる暗黙の誓約は長くも短い時間で終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 後日、グリフィンに同行されたエージェントとデストロイヤーは取調室で色々と聞かされていた。同じくケンジもまたあの場で何をしていたのかをヘリアンから問い質されたが、ほぼエージェントと同じ言い分だった他に彼がそう簡単に嘘を吐かないと判断したのか、重罰にはならなかったものの、重要な事を言わなかったという理由もあり、1ヶ月グリフィンの仕事を全面担当する他、エージェント及びデストロイヤーの面倒を見てやれとの事だった。ちなみに、ヘリアンがケンジを信じた理由というのが―――

 

「敵に回したら恐ろしかったが、かと言ってあの彼等が裏切る真似も死ぬ真似すら思い付くと思うか?あれだけ大量の敵に囲まれたにも関わらず生還したんだ。その辺は妥協しても良いと思ってな」

 

 と、随分と気に入られた様子だった。更にはエージェントから鉄血人形達が独占している基地の場所も入手し、反撃の準備ができ次第攻撃を行うそうだ。

 

「しっかし、これまた凄い事が起きるもんだな。グリフィンの情報じゃなく、ただケンジと話がしたいだなんて相当変わり者だったんじゃないのか?」

「これまで人類が敵だーとか騒いでたのに、いきなり話し合いに持ち込んだ位だしな。しかも、鉄血の在り方とか何か悟ってた雰囲気がバリバリ出てたし」

「何の理由も無く殺す日々に対する疑問とケンジの様な人間を見た時が決定打になったそうだ。いずれ、この戦いが終わった後に鉄血を扱うべきなのか……早い内に考えた方が良いかもしれないな」

 

 今回の件を通じて、グレイ達もまた鉄血に対する考え方を変える方針で行くそうだ。戦術人形も鉄血もこの世界で生きている存在だ。せめて殺し合う間柄ではなく、軽口言える仲みたいな世界を実現する為に。暴走した彼女達を止めるのは彼等しか残されていないのだから。

 

 

 

 

 

「これはここに置いといてくれれば助かるよ」

「分かりました」

 

 一方でエージェントとデストロイヤーの面倒を請けたケンジは全ての仕事を二人と一緒にやりながら過ごしていた。医者としての外出禁止は免れたものの、仕事の量が多くなってほぼ軟禁生活を強いられてしまったが、後悔はしていなかった。

 

「あの……」

「何?」

「迎え入れて下さった事には感謝しています。ですが、貴方に迷惑を掛けてしまったのではないかと……」

 

 そう言われたケンジは何だその事かと軽く笑いながら受け流し、ポンとエージェントの頭を撫でる。

 

「気にする事は無いさ。何だかんだでこうなる風に望めれば俺達も本望だし……何よりもあの事情も知ってるだろ?」

「ええ……正直寝返った理由が回路によるショートだとは思いませんでした……」

 

 当初、グリフィン内部でまさかの鉄血兵達があちらこちらと居た事にエージェントは驚いていたが、それまでに至った経緯を教えたらドン引きされたのは言うまでも無かった。

 しかし、彼女は本当に実現させたんだとケンジ達の認識を改める切欠となった。彼等ならば自分達の在り方を変えてくれるかもしれないと。

 

「念の為にさ、アイザックに頼んでエージェントやデストロイヤーにも鉄血側とのリンク切断したけど……本当に裏切って大丈夫だったのか?」

「気にしていません。元を言えば私があの場所で演奏をしていた貴方に惹かれたというのもあります。そして、会う度に話し、デストロイヤーを連れて行く羽目になったり、最悪の結果として鉄血の仲間に知られてしまいましたが……あの時に助けてくれた事には本当に感謝していますよ。ただ、貴方に負ってしまった傷が……」

「ああ、背中の事?大丈夫。本当に掠っただけだったらしいから暫くすれば傷も治るよ」

「そういう訳にも行きません」

 

 幸いにも直撃ではなかったので、命に別状は無かった。それでも、エージェントからすればまだ感謝し足りないので―――

 

「せめて、これを受け取って下さい……」

「え?」

 

 クイッと首が引き寄せられ、暖かい感触が口元に触れる。言うまでもなく彼女からのキスだった。いきなり強引な方法で来たのか唖然となったケンジだが、理解した瞬間に段々と顔が赤くなって来た。

 

「お、お前……!」

「駄目、なんて事はありませんよね?」

「ったく……こういうのはムードとかタイミングとか考えろよ……でないと渡し損ねるじゃねぇか……」

「え……?」

 

 ポケットから何か取り出すケンジ。それは小さい箱だったが、中を開けると1つの指輪が入っていた。なんと、今度はケンジからエージェントに向けての贈り物だったというのだ。しかもあの誓約の証の際に送られる指輪付きで。いきなりのカウンターにエージェントは戸惑わずにはいられなかった。

 

「あ、あの……何故これを……?」

「まあ……つくづく思ってたんだけどよ……お前って結構綺麗だなって思えて……話し合う度、ドキドキしてたの悟られない様にするの大変だったんだからな……」

「………!」

 

 更にカウンターをヒットしたのか、今度はエージェントが真っ赤になった。

 言うまでもなく、2人は何時の間にか相思相愛になるまで発展していたらしいのだが、身分や状況など色々と複雑だったが故に中々言い出せずにいたとの事だった。

 

「もう……貴方という人はずるいですね……」

 

 きっと幸せというのはこういう気持ちなのだろう。今までに無い甘くて蕩ける様な膨れ上がる気持ちが抑えられず、エージェントはずっと彼を求め続けるのであった。

 ちなみにこっそりと覗いて見ていたデストロイヤーがあわあわと真っ赤になったり、UMP45やM16に覗かれてはニヤニヤさせられたり、結婚おめでとうとエル達に祝われたりと、色々と騒がしい日々が続いたそうだ。




あんまりシリアスが続くと本当にボケるネタが出ないから困るんだよなぁ……(白目)
ただ、戦闘とかはマトモに書かないからね?何があったとしても「おいおいおいwww」という感覚で笑わせなきゃ駄目な気がするから。

UMP45「だったら遊んでないでさっさとやれば良いのに」
作者「無理。つーか、ゲリョスが倒せないからウザい。硬過ぎてワロエナイ」
UMP40「モンハン歴は?」
作者「長老クエストの2のイャンクック先生が倒せずに挫折した。その時は中学の時。今じゃ普通に倒せるし、リオレウスやドスガレオスとか普通に狩れたんだけどね。ついでに切れ味補正とかスキルの奴考えていなかった……防御力じゃなくて、スキル大事なんだね。まるでゴッドイーターやってた感覚だったわ……。」


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ロマンシング馬鹿 上

前回の反省踏まえて書こう!→書けた。疲れた。もう書けないからモンハンやる→やっべ、5日遅れてる……書かなきゃ→あれ、見直すつもりだったのに、次から次へと書き足す内容が増えてきた……→完成。文字数も増えた→(゜∀。)

大学の時、書いた文章は一旦寝かせてから再度見直すと良いって言われた経験がこんな形で発揮した……どうしてこうなった。


 グリフィン開発室―――

 そこで何かトントンと叩いたり、ジリジリと何か焼く様な臭いが漂う中で働き続ける人物がいた。

 

「……よし、調整はこの辺りで大丈夫だな」

「ザックさん、これは何処に置けば良いんでしょうか?」

「その辺に置いといてくれ。それもまたすぐに使うからな」

「分かりました」

 

 ザックと呼ばれた彼……即ちアイザックの指示に従って金属のパーツを運ぶカリーナ。カリーナだけじゃなく鉄血人形達や手の空いてる戦術人形、果てにはヘリアンがその様子を観察していたりと結構な大人数がここに集まっていた。グレイ達は任務に出掛けているが、早く終わり次第そっちに向かうとの事だそうだ。

 

「しかし……こんなの集めてどうするんですか?もう壊れて使い物にならないとは思いますけど……」

「確かに起動部分をやられてしまえば使い物にはならん。だが、それぞれのパーツは修理次第で新品同然の強度に戻せる事が出来る。壊れたからと言って捨てるのは素人の甘い考えだ」

 

 そう呟く彼の後ろには大量の機械がゴロゴロと転がっていた。よく見ると、その機械の殆どの部分に鉄血のマークが残されている。ザックが集めているという機械は大半が鉄血工造で作られた大型兵器の残骸だったのだ。

 イージス、ニーマム、マンティコア等の残骸を集め、それを使って何かを作ろうとしていた。その回収の為に鉄血兵やエージェントを使って怪しまれない様に回収を頼んだらしい。

 

「随分と手慣れた様子ですね……」

「まあな。オッサンだが、これでも機械には強くてな。その他にも独学で学んでは自己流の改造なんかもした経験があるからお手の物だ」

「一体何処でその技術とかを学んだんですか?」

「鉄血工造」

 

 鉄血工造という言葉が出た時、その場に居た全員が一斉にザックの方へと見た。まさか彼が鉄血と深く関わっていたとは思わず、混乱したり、警戒しては銃を取り出す戦術人形も居たりしたのだが……。

 

「待て待て、最後まで話を聞けって。確かに鉄血工造と聞けば警戒するのはもっともだが、基本的に俺は前線で戦うとかそういうのじゃない。あくまで人形の製造とか銃とかの兵器開発の担当をしていただけだよ」

「ならば、何故その事を言わなかった?」

「オッサンの事情を聞いて何になる?言う機会なんて早々無いかと思っていたし、言うとか言わないとか以前に蝶事件が始まる3年前に俺は鉄血を辞めていたんだ。実際、鉄血で働いたのは5年だったが……訳あって辞めたんだ。だから、言う程警戒される要素はほぼ無い。機密情報とか持ち込む云々よりかは自分からバーンと出て行った位だし」

 

 キッと睨まれながらもヘリアンに質問を投げ掛けられたが、ザックは淡々と返す。整備士みたいな立場に置かれた彼が3年前に辞めていたというのならば、わざわざ鉄血に情報を売る様な真似事は無いに等しい。そうなると裏切り行為は絶対に無いと言い切れたのか、ヘリアンは警戒を解いたのだが……。

 

「ならば、何故お前はグリフィンに入った?グリフィンに入る前、グレイ達と同行していたのと何か関係があったのか?」

「そんなんじゃありませんよヘリアン殿。俺は自分のしたかった事が出来ない事にイラついて鉄血を出て行ったんですよ。言うならばガキみたいな発想です。出て行った後、3年は自分の独学で色んなモノを作ってて……その際に彼等と会ったんです」

 

 あの日、忘れもしなかった思い出が頭の中で再生されていく―――

 

 

 

 

 

 ザック・アルバード……それが鉄血工造で働いていた時の名前だった。彼は元から機械とかの類いに興味を持っていて、機械に関わりのある学校で技術を学んだ。学校卒業後はすぐに働き口を探し、とりあえず金が無ければ生きていけない他に、男のロマンとかそういうのを作れれば良いなと淡い期待を抱いていた。

 そんな彼の心を突き動かしたのはゲームやアニメと言った面々の方で、特にロボット関係とかを見ると結構興奮するタイプだった。合体、変形、多重ミサイル、レーザーブレード……とにかく、男のロマンを見せ付けられた以上、こういう企業に就いてみたいと思っていた位だった。

 流石に変態企業とかはちょっとだけ勘弁願いたかったが、少しでも機械の製造とかに慣れようとしたのが鉄血工造だった。彼はそこで試験を受け、面接も無事に通って合格した。

 

 当初、初めて入った時にはイージスとかの大型兵器を作っているという情報も耳に入っていて、何時しかそれっぽい物を作ろうと必死になって努力した。しかし、まだ入社したばかりの存在なので最初は鉄血人形の製造とか銃とかの簡易兵器の開発、搬送ルートの確認など低い立場で仕事をやり続けていた。

 まあ、最初だから仕方ないし、こればかりはしょうがないと自分で納得しながらも着実に仕事をこなしていた。何時しか自分も大型機械の担当とかに選ばれるかもしれないのだから、地道に努力しようとひたすら頑張っていた。そう、頑張っていたのだが……。

 

「俺……こんな所で何してたんだっけ……?」

 

 その変化が起きたのは入社して5年後の事だった。あれだけ長年を経て働いているのにも関わらず、一向に地位が上がらない。それ所か、ますます鉄血人形の製造とかに追われる毎日が続いていた。

 そんな5年経ったのにも関わらず、彼の階級が一つも上がらないままが続いた。勿論、上司から直接階級が上がったなんて話もまだ言われてない。一体何時になったらこんな日が続くのか。来る日も来る日も同じ作業の繰り返しにザックはイライラし、ストレスもかなり堪って来ていた。これまで俺は何をしていたんだと自問自答してはその答えを求める位に精神的に参っており、最早廃人同然の状況に追い込まれていた。そして、ついに……。

 

「クソッ!!こんな仕事やってられるか!!俺はもう辞めるぞ!!」

 

 ついに耐え切れなくなったのか、辞職届をビターン!!と投げ付けて彼は鉄血工造を後にしたという。

 唐突でダイナミックな辞職にこれには働いていた全員がポカーンとなっていたそうだ。もう自分の夢さえ叶えられないと悟ったザックはいっその事自分でその夢を叶えてやると決意。5年も続けた結果なのか、彼の夢を叶える為の貯蓄は十分にあり、3年間ずっと自分の部屋で数々の魔改造兵器を開発したらしいとの事だった。

 ちなみに、彼が出て行ったあの後、本当ならばそろそろ彼を大型兵器担当のグループの一人にしようと話し合っていたらしいのだが、話を切り出す前にザックが辞めてしまい、これまで彼のお陰でスムーズに進んでいた鉄血工造も彼が居なくなった後かなり忙しくなり、彼の心情を察して出来なかった事や出て行ってしまった事を激しく悔いていたとの事だった。

 また改めて来てくれないか?と誘っても、「自分で作るわバカヤロー!」の一点張りだったしく、鉄血工造も彼を再スカウトするのは諦めてしまったという事らしい。そして、その3年後……あの事件が起きたのであった。当然、その蝶事件が起きたのはこの時ザックは知らないままでいたのだ。

 

「今思えば本当にガキっぽい事をしたなと思ってる。それだけの理由で一体どれだけの人達に迷惑掛けたのか……今でも凄い後悔している」

「凄いアグレッシブに動いたんですね……」

「グレイ達と出会ったのはその時だった。丁度近場で彼等が泊まる所を探していたそうだったから、ついでに泊めてやったのが始まりだ。その時はそろそろ貯まっていた金も尽きそうだったし、何か新しい技術があれば学びたいなんて考えもあったからそれに同行してたんだが……鉄血が暴走を始めたなんて聞いたのはその時だ。あの時は45と40の二人を助けるのに精一杯だったが、後々になって考えたら俺が辞めた仕事場も当然アイツ等に殺されたんだと実感が沸いてな……」

 

 自分も鉄血側の人間だったのにな……と寂しそうに呟くかれを見て、全員は気まずくなっていた。特にヘリアンは先程彼を警戒していたという理由もあってか、少々申し訳無さそうな気分になりつつあった。

 

「……すまない、聞くべき話ではなかったな」

「いや、気にしないでくれ。結局の所、俺は逃げ出したんだ。あんな事があっておきながらも俺はまだグリフィンでのうのうと生きている。仲間の敵討ちすら取らないまま逃げ続けている卑怯者だ。いい加減現実と直視しないといけないんだ」

 

 後始末は自分でしなければならない。元鉄血工造の一人として、人間として。彼の心境に全員は黙るしか無かった。誰も彼を責める事は出来ないし、彼がそうしなければいけないのだからと自ら動いている限り、彼に余計な事はさせたくないから。

 

 

 

 

 

 エージェントから鉄血の基地を聞き出し、その基地の元へと訪れたグレイ達。とは言え、あのドリーマーが一枚噛んでいそうな予感はしているので、警戒を怠らずにやっていたのだが……。

 

「人の気配すら無いのは不気味だな……」

「既にここから離れたのか、或いは待ち構えているか……怪しさ満載って所は変わりないがな」

 

 グレイ達が来た時には鉄血が居る気配1つすら感じなかったという。物音も何も立たず、文字通り不気味な位に静まっていた様子には流石に警戒しない方がおかしかった。絶対何か仕掛けてあるんじゃないかと予測しながら。

 とりあえず入ってみようとグレイが先に入ろうとした。念の為、大きな爆発とか起きても困るので、出来るだけ遠くに離れて隠れて欲しいと言った後に突入した。

 

「ふふふ……さあ、いらっしゃい……。」

 

 そんな彼等の様子を監視カメラから覗いていたドリーマー。ドリーマーは放棄した基地からはまた別の拠点で彼等の動きを観察していたが、彼等を陥れてやろうと多くの罠を仕掛けていた。その罠にはアルケミストも関わっていて、アルケミストもまた彼等の様子をドリーマーと一緒にニヤけながら見ていた。獲物が捕まる瞬間を今か今かと楽しみにしながら。しかし、彼女達は彼等がその程度で終わる人間ではない事をこの後知る事になる……。

 

「ん?あ、ヤベっ」

 

 グレイが入った直後、何か引っ掛かった様な感覚が足に伝わり、直後に察したグレイは咄嗟に盾を構えてバック宙でジャンプした。触れた途端に爆発が起き、爆発が連鎖しながらもグレイの姿が見えなくなってしまう。相当な量の火薬が仕込まれてあったのか、かなり多くの爆発がいきなりのお出迎えでやって来る。これを見て引っ掛かったと大笑いするドリーマーとアルケミスト。

 

「アハハハハハ!ただ前だけ警戒してれば良いと思ってたのが裏目に出たわね!これだから人間は愚かで面白いわ!」

「グリフィンの指揮官サマがこんな簡単な罠で死ぬとは、滑稽なものだな。だが、これで少しでもダメージを与えた筈―――」

『危ねー……ボムホバー覚えてなかったら死んでたわ』

「「!?」」

 

 だが、モニターからはグレイの声が聞こえた。煙が晴れると、そこには無傷のままケロッとしているグレイの姿が見えていた。もう見慣れたのか「ですよねー」と納得する戦術人形達であったが、鉄血側の人形からしたら人間かどうかさえ疑わしい光景だった。

 

「な、何故だ……あの爆発では並の人間では確実に死ぬ筈……なのに、何故生きているんだ!?」

「爆発の中心点からは逃げられない状況だというのに、あれで無傷なんて……!」

『うん、知ってたわ。こうなるだろうと思ってたわ』

『あの爆発で何で指揮官生きてるの……本当に人間なの……?』

『この俺が鉄血の爆発くらいで死ぬと思っているのか?』

『滅相もございません』

 

 やってるやり取りがもう伝説の超サイヤ人みたいなノリになっていた。実際に強いと言えば強いのだが、ボマーに比べたらまだまだだと言っていた。比較する例えがおかしいとUMP45からツッコミを喰らった。実際あっちもあっちで爆弾を利用してポンポンと素早くジャンプするのだが、あれも割とおかしいと誰もが思うだろう。まだ普通に生きてる彼等を見ては悔しそうにするドリーマー達。

 

「くっ……化物め……!」

『俺が化物……?違う、俺は悪魔だぁ……!』

「コイツ、こっちを見ながら話してやがる!?」

『指揮官、何言ってるの?』

『や、何かえらく悪い事を言われた様な気がして』

 

 監視カメラを見てニヤリと笑った彼。コイツに会ったら最後、命が幾つあってもおかしくないと危惧したドリーマー達。それでも、やられっぱなしで終われない。まだ基地の奥地には様々な罠が仕掛けられているので、誘き寄せながら随時罠を作動させれば良い。1回のダメージで大怪我を負わせれば有利に進む筈だとドリーマーは信じ込んでいた。

 

 一方、グレイはずっと立ち止まるのも何なのでその奥へと進もうとした。念の為、まだ罠が仕掛けられてもおかしくないので、対抗策としてあるモノを取り出した。それは漆黒に輝く鎧で、かなりの重量があった。グレイはこれを難なく着こなし、身に纏いながらもガシャガシャと走り続け、行った先々で仕掛けてあった罠をわざと強引に作動させた。時には爆発、時には銃弾の嵐。しかし、どんなに罠を作動してもピンピンしており、果てには鎧を着込んだまま避けるなんて芸当もするので、ドリーマーは頭が痛くなりそうになった。

 

『流石タートナックの鎧!傷一つすら無いぜ!』

『あれだけ重たいモノを着ながら良く動けるな……ガシャガシャうるせーし』

『んな事言ったら、世界のハンターさんだって同じ事やってるわ。これくらいは基本中の基本だろ?』

『え、ハンター?鉄血の?』

『違う、モンスターを狩る方のハンター。あの人達、爆発に巻き込まれようが、雷を纏った一撃を喰らおうが、まだ生きてる限り普通にスクッと起き上がるけど』

『何それ怖い』

「それは人間なのか!?」

 

 ついにアルケミストからもツッコミが入った。とばっちりを受けたのか、ハンター間違いされた鉄血の固有型戦術人形とされる「ハンター(別名:狩人)」も「え?え?」みたいな顔をしながら反応していた。

 

 グレイの方ではまだ先へと進んでいたものの、やはりというべきか続け様に爆発とかが起きた影響により、周囲にあった機材とかも爆発によって巻き込まれたのが多数あった。こりゃ迂闊に進まない方が良かったかもなぁ……と後悔していたが、どのみちフェイク情報なので壊しても問題無かったが、機械がまだ作動していたら逆探知も可能だったりしたのだが、何にせよこれで機械から情報を得る事は出来なくなった。

 

「今の爆発で機械全部お釈迦か……本当に大丈夫なのか?」

「どうせドリーマーという奴の事だ。また偽の情報を入れて混乱させようとしてるに違いない。姑息な真似を……」

「どーするの?手掛かり無しで探しても徒労に終わるぞ。ここは一旦立て直すか?」

「そうだな……所で、ザックは何してんの?」

 

 振り返れば、ザックが何か探している様子だった。彼が見ているものは山積みとなった段ボールを一枚ずつ見ていたらしいのだが、妙な事をしているなと誰もが気になっていた。

 すると、何かに気付いたのかザックは張られていたモノを何枚もベリッと剥がし、それを集めていた。

 

「自分なりに手掛かりを集めていたんだが、どうやら見つかったらしくてな」

「嘘!?というか、そんな近場に!?」

「ああ。だが、その前にこれを壊しておこう」

 

 ザックはプラズマカッターを取り出しては監視カメラに向けて放った。ここまでやっているのだから、どうせカメラでこれまでの様子を見ていたのだろうと考えたザックは急いでカメラを壊し回った。ザックのやっている行動に納得したのか、同じくグレイ達も急いで壊し始め、1分も経たない内に全ての監視カメラを破壊した。

 

「これを話しても見られてる可能性があるからな……場所を変えるぞ」

 

 誰も居ない基地を装いながらも、爆破するタイミングさえ窺っていたのだ。離れたのはある意味正解だと言えるが。

 ザックの言う通りに従い、まずは一度グリフィンに戻ってからその手掛かりというのを見せて貰う事にした。

 

「で、その手掛かりって何よ?」

「これだ」

 

 サッと見せた数枚の何かはグレイ達も一度は見た事のあるモノだった。

 

「これって……配達の伝票?」

「ああ。そもそもおかしいとは思わないか?物資や弾薬は使い切ってしまえば完全に絶望的な状況に近くなるのは確かな筈だ。それなのに、長く戦いが続いているのにも関わらず、未だに鉄血達が動いている。そんな鉄血達が一体何処から物資や弾薬とかを補給出来てると思うんだ?」

「言われてみれば……おかしいな」

 

 最低限思い当たるとするならば、略奪とかその辺りだろう。或いは、鉄血のAIが全ての鉄血兵に向けて大量に作れと命令されてもおかしく無かった。

 

「そうなると、考えられるのは生産プラントとかその辺りになる。だが、激化する戦争にはまだ大量に使う必要もある。量産するに限ってもそれを補う為に確保する必要もあるから、それを運ぶルートも必要になるのは道理だ。だが、どうやって運ぶ?わざわざ足でやるのか?或いは車か?」

「いや、車は多分出来ないって訳じゃ無いだろう。もしかしたら運転技能あるかもしれないし。ただ、安全策となると……偽名を使って運ばせた方が安定かもな」

「そういう事だ。で、俺が怪しいと思ったこの伝票だが……これは地図を見せた方が早いかもしれないな」

 

 モニターに地図を見せるザック。その地図は先程訪れた鉄血の基地周辺の地図であったのだが……。

 

「この伝票を見た時、まさかと思ったんだ。そして、地図と照らし合わせたら……思った通り、搬入から基地までの輸出ルートを割り出せたんだ。さっき言った通り、名前とかは偽名だし、届け先の住所もバラつきが大きかったが、大雑把に割り出すには十分だ。少なくともアイツ等が逃げた先はこの周辺までだと思う」

 

 該当する範囲を円形で示す。丁度、鉄血達が放置した基地から生産プラントまでの範囲まで行き届いていたらしく、恐らく逃げた先はそのプラントに近い部分だと思われる。距離はそんな遠くはなく、数十分で行ける範囲だ。

 

「グレイ、ガーディアンを使って周辺の索敵とか出来るか?」

「任せろ。怪しい箇所は念入りに撮影とかしておくからな」

「助かる」

 

 予めガーディアンで偵察させ、1体でも鉄血兵を発見した後、その動きを観察すれば、次第に逃げ込んだ先の場所も割り出せるかもしれない。だが、相手もそう簡単な間抜けではないだろう。いずれグリフィンの動きを察知して何かを仕掛けて来る可能性もある。せめて割り出せた所までは気付かれないでいて欲しいが。

 

「あの紙一枚で探り出せたのは凄いな。それも鉄血の経験だからか?」

「言ってしまえばそうなるな。まさか仕事で学んだ知識がこんな所で活かされるなんて思いもしなかったよ」

「これからどうする?見つけ次第お前も出撃するのか?」

「ああ。それに……俺にしか出来ない事をしなくちゃいけないんでね」

 

 もし、ドリーマー達が逃げた先があの場所だったら……その時は一人でもしなくてはいけない。過去と向き合う彼はもう逃げないと誓った。

 だから、出し惜しみは一切しないつもりだ。これまで培った経験を死んで逝った仲間達の為に披露する時が一刻も早く迫ろうとしていた。




元ネタ解説。

・ボムホバー
ゼルダの伝説 時のオカリナ及びムジュラの仮面でのTAS及びRTA必須テクニック。爆発のタイミングを見極め、バック宙をしながら盾を構えると何故か浮くというバグ技。これによって本来必須のアイテムやイベントをすっ飛ばし、攻略出来るという異様な形でゲームを進行する事が可能となった。ただし、ボムやボムチュウ持ってる個数がある限り続く。

・この俺が鉄血の爆発くらいで死ぬと思っているのか?
ドラゴンボールに登場するブロリーの台詞。「俺は悪魔だ」も同じくそれ。ちなみに滅相もございませんはパラガスの方から。元は映画の「燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」から。内容については実際に見て貰った方が早いと思う。

・タートナックの鎧
ゼルダシリーズにおける鎧が特徴的な中ボス。どのシリーズにおけても背中から攻撃しないとダメージが通らなかったり、兜割りからの連続攻撃すれば何とかいけたりとする彼だが、真正面から攻撃しても全て弾かれる。例え爆弾矢とかでも普通に防ぐ。グレイがこれを着ながら行ったのはその耐久というか、普通に耐えれる強さがあったから。

・モンスターを狩る方のハンター
簡単に言うと、モンスターハンターのハンターの事を示す。考えてみればハンターも割りと人間辞めてる。リオレウスから火球を喰らおうが、ジンオウガから電撃を喰らおうが、大タル爆弾Gで吹き飛ばされようが、HPが残ってる限り普通に起き上がれるヤバい人。防具無しでも普通に1回は絶対耐えてる……筈。流石にG級とかだと話が違って来るが。モンスターの殆どの攻撃を「ぐあぁ!」とか言うだけで済んでるが、普通の人間だと一発で死ぬ。ハンターェ……。


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ロマンシング馬鹿 中

ちょっと別枠で投稿し続けたから、こっちの感覚薄くなってしまった。申し訳無い。
流石に1週間以上経ったら謝らないといけない性質なんで……長年やってるついでに仕事もやってるから、言うまでもなく身体が死んでまう。ヤベーわ。

つくづく読み返すと同じ展開ばっかり続いてるなと思う。本当に申し訳無い。
でも、早い段階で過去とか書いておかないと後々で忘れたりとかキャラ個別でのエピソードとか書いたりする予定とかするから、なるべくそうしておきたかったのよね。


 グレイによるドローンでの調査で数日経過した後、いよいよドリーマーが逃げたという場所を見つけた。直ちに全員を会議室に集まらせ、今回の作戦について話し合う。

 

「それでは作戦会議を始める。とは言っても、至って簡単な内容だ。先日調査を出させたドローンの情報からドリーマーの潜伏場所を割り出せた。地図で見る限りだと丁度生産プラントから近場にある事というのは大体予想が付いてただろうな」

「今回の作戦は敵基地の破壊や鉄血の捕獲。捕まえた後、何時も通りボルテージロッドでアヘらせて正気に戻してくれ」

「ついに卑猥な言葉が出ても戸惑ったりする様子が無くなったわね……」

 

 あんまり現実を直視したくないHK416。あの方法が世界を救う手段の一つだと思いたくても認めたくない気持ちがいっぱいだった。

 実際その気持ちは分からない訳でも無い。よく「バカは世界を救う」だの「エロが世界を救う」だの一部の層ではそんな表現展開もあったと言えばあるのだが、実現させたのはこれが何気に初である。

 しかし、先日にケンジとエージェントが鉄血達に巻き込まれた際には身動きが取れないという理由もあってか、先にケンジが一方的に全滅させたという事もあってか、殺された鉄血兵を回収して今後どう使うかはザックに任せる事にはしていた。

 

「それにしても……今日ザックさんが居ませんね……」

「トイレでも行ってんじゃないのか?」

 

 だが、そのザックが今居ない状況のまま会議が続いていた。ちょっとだけ不安になったカトレアとトイレに行ったんじゃね?とトンプソンはそう思い込んでいた。

 

「逃げられた場合はどうする?」

「地獄の果てまで追い駆ける。或いは何とか追い着けるまで追い駆ける。どんな方法使ってでも」

「流石、良く分かってるね~しきか~ん♪」

「その追い駆ける方法が何処ぞの桃白白だったらどうするんだよ?」

「わぁ~……何時も通りで素敵ね~しきか~ん……(白目)」

 

 丸太1本で空を飛ぶ指揮官―――考えただけでも凄いシュールな光景しか浮かばないし、それで襲い掛かるとなると余計ホラーが増す。

 敵対しなくて良かった……とこの場に居る全員が誰もが思うだろう。あのUMP45でさえそう言えばそうだった……と目のハイライトが消えて「言わなきゃ良かった……」と思ってた位だ。

 とりあえず、話を戻そうとヘリアンが軽く咳払いする。

 

「ゴホン!静かに!改めて作戦を繰り返し伝える。最優先は敵基地の破壊、生産プラントの破壊だ。生産プラントは出来る限りなら有効利用という事で何とか無傷で済ませたい。鉄血兵はなるべく殺さずに捕獲。ドリーマーもそれに含まれる。最悪の場合、殺傷許可が降りる場合もあるし、何時何処で罠が仕掛けられているか分からん。放っておいた所で何をしでかすか想像も付かないからな」

「そういう事。それじゃ作戦開始―――」

「指揮官様ぁぁぁぁぁ!!大変でございますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 会議が終わった直後、カリーナが慌てた様子で会議室へと入って来た。何だ何だと他の戦術人形も騒ぎ出し、ヘリアンが聞き出す。

 

「騒々しいぞカリーナ。何があった?」

「はぁ……はぁ……そういう訳にも行かないんです!というか、ここにザックさんは居ませんでしたか!?」

「ザック?あれ……?そういや居ないぞ……何?ザックがどうしたの?」

「結構前までザックさんが開発してたモノが……先程無くなってたんです!極めつけはザックさん本人を幾ら探しても見当たらないって事なんです!!」

「げっ!?」

 

 嫌な予感がした。きっとザックは自分の作った魔改造品を使い、鉄血の基地に乗り込むつもりだったのだろう。彼と一緒に作業していた戦術人形もどうやらこの後の展開が読めていた。

 何よりもザックが一昨日辺りから配達の伝票を見せたのだが、彼はその伝票にある地域周辺を虱潰しに探しては鉄血と迎え撃つ……なんて事も考えられる。

 

「つーか……アイツ、先日まで鉄血の部品使ってまで何を作ってたんだ……?」

「イージスとか使ってたけど……もしかしなくてもロボットか?一人用の」

「一人用のポッド?(難聴)」

「中の操縦士が潰されてしまうから止めて差し上げろ」

「あー、もう……聞いての通りだが、急いで現場に向かう。カリーナ、大至急トレーラー準備!」

「は、はい!只今!!」

 

 パタパタとカリーナは慌てて出て行き、グレイ達も戦いの準備を始める。何も言わずに行ってしまったアイツは後で説教だな、と思いつつも表情はアイツらしいなと笑っていた。

 仲間が敵地のど真ん中に行ったのにも関わらず笑みを浮かべるグレイにカリーナが聞いて来た。

 

「どうしてそんなに余裕なんですか……?」

「アイツの事だからどうせ生き残れるって信頼してるから。ケンジの時もそうだったけど、強くなり過ぎてあんな感じになったとしか言えないし」

「どんな事でさえ経験がモノを言うしな……きっと作っていた物も絶対に鉄血とかを蹂躙させるには充分な威力発揮するだろうよ。ロボットで……」

「何だろう……普通に想像出来てしまうのが複雑ですね……」

 

 カリーナも段々とグレイ達の常識に汚染されつつあった。また、事情も事情なのでエージェントやデストロイヤー、更には正気に戻っては働いている鉄血兵も連れて行くという……正に夢の部隊とも言えるチームとなっていた。

 

「武装の方は大丈夫かエージェント?」

「問題ありません……が、デストロイヤーが変な武器を持って来ているのですが……」

「これ使う!」

「ロケットランチャー……んん?何か一回り大きくないか……?」

「はい。人間や戦術人形が使うには余りにも大き過ぎますが、決して使えない事ではありません。デストロイヤー、これを一体何処で?」

「整備室から!」

「トンでもない武器を作ってくれたなアイツ……」

 

 何となく察したケンジ。あのロケットランチャーの使い道も後々になって判明する事になる……。

 

 

 

 

 

 所変わって、ドリーマーが逃げたとされる基地ではグリフィンの動きを見ながら次の行動をどうするか考えていた。鉄血が人類に宣戦布告してから少しずつ人類を追い詰め、ついには人類滅亡間際まで追い込んでいた筈だった。

 だが、ここ最近で人類の反撃が活発化した。基地は破壊され、鉄血兵がグリフィンの手によって連れて行かれては手駒とされ、果てには自分の仲間ですら自らグリフィンに寝返ってしまうなど、とにかく踏んだり蹴ったりでは済まされない位に追い込まれていた。

 

「それもこれも、全部あの気持ち悪い人間達が悪いのよ……!」

 

 グレイ達がグリフィンに入隊した時を境に鉄血の勢力はたった数日間で大幅に減らされた。一人は人間とは言い難い動きをしており、一人は化物に変身しては空を飛び、一人は大量の爆弾を持っては好き勝手に爆破したりなど……これまでの被害は相当数え切れない程になっていた。

 

「どうする?あの化物には簡単な手段だと通用しないぞ」

「最悪の場合ゴリアテ起動させてまでやるしか無いわよ……!そうでなきゃ、本当にエルダーブレイン様に顔向け出来ないわ!」

「確かに……やられっぱなしという訳にも行かないからな。いや、アレだけは何としてでも阻止しなければ間違いなく鉄血が壊滅する」

 

 ゴリアテとは鉄血が開発した自爆特攻型兵器の事である。他の武装は持たず、ただ自爆での爆発に特化した兵器だという。これによる自爆の威力は部隊は壊滅的に追い詰めてしまう程強力と言われている。

 普通ならばこれは集団で向かって来た戦術人形や敵の兵器を壊す役割を果たしたりするなど、使用用途は多数あるのだが……事情が事情なので止むを得ず使わざるを得なかった。

 この自爆特攻兵器も既に大量生産されては直ぐに戦力として使える様に備えられている。仮に彼等が攻めて来たとしても、きっとこのゴリアテ相手では手も足も出ないまま死んで逝くに違い無いとドリーマーは嘲笑っていた。

 

「とりあえず、どのタイミングで襲撃する?」

「そうね……今はグリフィンの動きを確認する事には変わり無いわ。ついさっきまで私達をカメラ越しで見てからは何処でも見られている様な気がして……本当に不気味ね……」

「ここがバレるのも時間の問題だと言うのか……一旦警戒を強めるか、また別の拠点に移さないと―――」

 

 アルケミストが言っている途中、何処からか大きな爆発音が聞こえた。一体何事かと監視カメラで覗き込んだ瞬間―――

 

「なっ……!?」

「何だ……これは……!?」

 

 それは、突如として現れた。外見はイージスに似ているのだが、妙にデカくて、若干形も違っていた。

 後は何故だか分からないが、両肩から何か大きい収納パック+明らかにミサイルランチャーと思わしき発射機が。パッと見た瞬間、二人はヤバいと勘付いた。

 

((絶対殺しにやって来てるタイプだコレ!!))

 

 完全武装で来るとは予想外だったが、冷静になって見返せば相手はただ一人。というか、コレは装甲機械なのか。それとも人が乗っているタイプのモノなのか。

 どっちにしろ、そこまで苦では無いだろうと思っているのだが……先程の爆発で只事じゃないのはドリーマーやアルケミストにも充分伝わっていた。カメラ越しで「彼」が話し掛けて来る。

 

『大人しく投降しな。でなけりゃお前等全員纏めて爆破しちまうぞ。もっとも、本当ならば敵討ちという名目で殺っても良かったんだがな』

「声が聞こえる……という事は、あのイージスみたいな兵器に人が乗っているという事か……」

「何にせよ、私達に刃向かう者は誰であろうと何だろうと死んで貰うしか無いわ。つまり、貴方は今ここで死ぬのよ。精々無様に這いずり回って死ぬ姿を見せて頂戴」

 

 ドリーマーの命令に従い、鉄血兵や無数の装甲機械やゴリアテがイージスっぽい兵器の元へと迫りつつある。普通ならばたった1体の機械で無数の敵と殺り合うには少々無理があるだろう。特に自爆特攻兵器があるなら尚更だ。

 それでも、そんな状況下の中で「それ」を操作する彼は不安など一切見せず、余裕の笑みを見せていた。

 

「さて……元鉄血工造整備開発員による一仕事だ。行くぞ、ガチャピン」

『Initializing―――Ready』

 

 PTX-140R/Hardballer(ハードボーラー)……通称「ガチャピン」と呼ばれた機械と共に、ザックは戦場を駆け抜けた。

 

「チケットを大量に喰らいな!」

 

 収納パックからガトリングを取り出し、両手に持ちながら素早い動きで鉄血兵を翻弄させ、すれ違いの瞬時に相手を蜂の巣にしてまで撃ち続ける。

 

「アツアツのローストチキンにしてやるぜ!」

 

 次に装甲が硬い敵相手にはゼロ距離からのショットガンやロケットランチャーを使ってまで装甲ごと壊し、更にはホーミングレーザーやフレイムランチャー、ミサイルランチャーまでもを使っては殆どの敵を一掃。

 

「これが魔改造魂だァァァァァァァァァァ!!」

 

 最大の強みはブラストシェルランチャーによる大量のミサイルを発射。落下する大量の爆弾の雨には当然耐え切れず、至る所で被害が拡大。

 一連の台詞を吐いた後「完全にメタルウルフ感覚だなコレ……だが、後悔はしていない!」とノリノリで敵を倒し、基地を破壊し、工場をストップさせる事に成功した。

 

「一体何処からあんな武装を持ち込んで来たのよ!?」

「これは正直マズいぞ……!」

 

 大丈夫だと高を括った結果がコレだ。収納パックからは明らかに持ち込んで収納出来る範囲の度が越えていて、しかも未だに弾切れになる様子は見受けられない。

 ならば逆転を狙うのみ、とゴリアテを投入させて自爆特攻をさせようとしたが―――

 

「邪魔すんじゃねぇ!!」

 

 空になったロケットランチャーをバットの要領でフルスイングし、ゴリアテを吹き飛ばした。飛ばされたゴリアテは数メートル先で数秒後に爆破したが、その爆破した場所が自分の基地の一部にヒット。

 完全に自分達側が致命的なダメージを受けてしまっていて、これにはドリーマーにも表情が消え失せては怒りと焦りを見せ始める。

 

「早く!早くそいつを殺しなさい!!」

 

 冷静な判断が出来ず、ただ殺せと言うばかりのドリーマー。しかし、どんなに撃とうとも避けられるし、当たってもそこまで損傷が見受けられず、まだまだ動ける様子でいた。

 ゴリアテを使って自爆してもヒョイッと軽く爆破範囲から逃げられたり、サッカーみたいな感覚で蹴り飛ばされてはそこで爆発したりし、最早全滅になるのも時間の問題だろう。それでも諦める様子は無い様子だが。

 

「仕方無い……ドリーマー、ここは一旦後方まで下がるぞ。いずれアイツもこちらに追い駆けて来る。生産プラントは諦めた方が良い。今は自分の身を案じるべきだ」

「くっ……!何か手立てはあるというの……?」

「残りの数で奴を集中砲火させよう。一時的に動けなくさせた後、包囲された状態から射撃……それと同時にジュピターからの援護射撃を使えば後はどうにかなる。幸い、相手はあの気持ち悪い動きをする奴等とは別物だ。まだ希望はある」

 

 やれる事ならばどんな手を使ってまでやろうとアルケミストが悪い笑顔を浮かべた。果たしてその一手がザックを止める切り札となるのだろうか……。

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

「こりゃ酷いな……」

 

 一方でザックの後を追い駆けながらも、敵基地に乗り込んだグレイ達。だが、グレイ達が来た頃には鉄血の基地は殆ど壊滅状態に追いやられていた。

 無惨に散った装甲兵器や息はあるものの、瀕死までやられた鉄血兵など……見るからにしてザックがド派手に決め込んだのだろうと察した。

 

「重傷を負った鉄血兵は運んでやれ。その際、反撃されない様に武器を取り上げておく様に」

「了解しました」

 

 怪我した鉄血兵はケンジが軽い治療を施してからトレーラーに運ばれて行く。かなり怪我を負った為か、鉄血兵も反撃しようとする意志は全く見られなかった。

 

「おい、しっかりしろ!誰に殺られた!?」

「それはひょっとしてギャグで言ってるのか指揮官」

「な……謎のロボットが……いきなり襲撃して来た……」

「って、お前も言うのか!?」

 

 どう考えてもグリフィンの指揮官が原因だというのに、完全に仲間みたいなノリで言う鷹山にM16がツッコミを入れたが、まさかの鉄血兵が正直に答えた事に驚いていた。

 敵同士なのにこんな感じで良いのか戸惑っているのも束の間、遠くの方から大きな爆発音が聞こえていた。

 

「向こうからか……皆、急ぐぞ」

「はいはい、りょーかい」

 

 きっとあそこでまだザックが戦っていると確信したグレイ達はすぐにそこへ駆けつけた。次第に近付くと爆発音だけでなく、何か撃ってる音も段々と聞こえ始め、暫くすると予想外な光景を目にした。

 

「おいおい……ヤバくないかアレ?」

 

 グレイ達が見たのは、四方八方から放たれる鉄血の攻撃を避けたりしながら撃ち返す1つのロボットだった。だが、鉄血の数があまりにも多く、しかも要塞砲であるジュピターまでもがロボットを狙って攻撃している。

 たまに当たったりしているものの、こちらが来る前に長丁場で戦い続けていたのか、ロボットの胴体から火花が飛び散ったりしていた。

 

「ふふふ……随分と手こずらせてくれたわね。だけど、これで終わりよ。さっさと死んでしまいなさい」

『ヤバいな……まだ耐えれる位だが、抜けられるか……?』

 

 監視カメラからはまだドリーマーとアルケミストが高みの見物をしていた。数分前、彼女達はザックを殺す為にありとあらゆる手段を考えた。アルケミストが考えていた通り、ザックを特定の位置までに誘き寄せてから予め待機していた鉄血兵や装甲兵器を出させてから360度全方位からの集中砲火でロボットごと彼に目掛けて攻撃を始めた。人と変わらない小さな武器では只の豆鉄砲に過ぎなかったが、そこから要塞砲であるジュピターやゴリアテまで投入すれば話は大きく変わって来る。

 

 これにはザックも危機を察したのか、なるべく出口を切り出して突破口を作ろうにも装甲兵器や大量のゴリアテが立ち塞がる影響で出れないままでいた。多少のダメージは覚悟しながらゴリアテと装甲兵器を優先したが、時たまにジュピターからの攻撃が降り注ぐ事があった。これを避けるだけでも精一杯だったりする。

 

「エネルギーが底を尽きそうだが……行けるか?」

 

 敵の攻撃やゴリアテを上手く使って巻き込めば多少はマシになるかもしれない。問題はジュピターの方をどうするかなのだが、一か八かでゴリアテを投げて試すという考えも浮かんでいた。

 

「行ってみるか……」

「おいおい、仲間外れは良くないなァ!俺も仲間に入れてくれよ!」

「ん!?」

 

 何処からか聞き慣れた声がザックの耳に届く。その直後に大量の爆弾が鉄血兵と装甲兵器に襲い掛かる。言うまでもなく合流を果たしたグレイの爆弾矢だった。グレイの他に鷹山達や戦術人形までもが鉄血兵に向けて攻撃を仕掛けてくれた影響なのか、ザックに向ける攻撃が大幅に減った。一先ずは一時的に助かったとも言えるだろう。

 唐突の乱入に敵は混乱し、今がチャンスだと思ったザックはゴリアテをジュピターに向けて投げた。タイミングを計ってからゴリアテに向けて銃弾を放ち、見事ヒットした後に爆発が起きる。しかし―――

 

「げっ……まだ耐えてやがる……」

 

 ゴリアテを1個や2個程度では崩れないのか、ジュピターはまだ動いたままだった。ならば、残りのミサイルを使ってまで崩してやるとザックはありったけの全てを放った。また、然り気無くザックの行動をチラッと見えたのか、グレイや鷹山もゴリアテを飛ばしてはジュピターに当てるなど、微力ながらも手助けを軽く行っていた。

 

「崩れろォォォォォォォォォォ!!」

 

 空になるまで撃ち続け、煙で視界が悪くなりつつあった。少し時間が経つと、全ての武器を全部使い切ったのか攻撃を一旦ストップさせた。暫くして煙が晴れるが、装甲に損傷が目立ってはいるものの、まだジュピターは稼働したままになっていた。幾ら何でも弾が足りなかったのである。

 

「くそっ!もう予備の弾が無いぞ……どうする……?」

 

 もう少しで壊せそうだというのに、倒せそうで倒せていないという現実が立ち塞がる。他の仲間に頼むのもアリと言えばアリなのだが、自分で決めた事だからせめて自分の手で片付けたかった。これで万事休すかとザックが悔しそうな表情を浮かべた途端、ケンジ達がこっちに向かって走って来るのが見えた。

 

「ザック!」

「ちょ、お前等!危ないぞ!まだあの砲台を壊し切ってない!」

「だからだよ!これ使えないか!?」

 

 と、ケンジ達は背負っていた物をドンッと降ろした。それは先程デストロイヤーが使おうとしていたロケットランチャーみたいなモノだったのだが、それを見た途端にザックの表情が変わる。

 

「これって……VS用のロケットランチャーじゃないか!こんなのを何処で!?」

「あの子が持ってた。何かグリフィン内で武器を探そうとしていたらこれ使えないかどうか迷ったそうだが、見つけた場所がお前の開発室から出たって聞いたら何となく使い道に気付いてな」

「そうか……ありがとう、助かった」

 

 感謝の言葉を述べながら、ザックはデストロイヤーの頭を撫でながら褒めた。デストロイヤーも嬉しそうな表情を浮かべていて、本当に子供と同じ雰囲気が漂っていた。

 ザックは急いでロケットランチャーを右肩に装着させる。装弾数はたったの6発だが、その6発を全て当てたら逆転の可能性があるかもしれない。僅かな望みに賭けて、照準をジュピターに合わせながらロケットを放った。幸いにもジュピターの攻撃がザックに来る様子が一切無く、ジュピター目掛けて集中攻撃に専念する事が出来た。

 

「どうだ……?」

 

 これでまた全ての弾を使い切ったのだが、ジュピターはまだ少しだけ動けている様子でいた。ただし、装甲が剥がれて、ジュピターの起動する部分が丸見えの状態となっており、恐らくそこを狙えば止まるだろうと考えたと同時にザックは前へと出る。

 

「弾丸はもう無いが、俺にはまだもう1つの残された武器がある!!」

 

 左腕の武装からエネルギーが集束し、大きなブレードとなって形を変えた。ジュピターから再度撃たれる前に至近距離まで近付き、剥がれた装甲部分を横に一閃振り翳した。

 

「VSキャリバァァァァァァァァァァ!!」

 

 レーザーブレードがジュピターの起動部分を貫き、動きが止まった直後にジュピターは爆発を起こしながら跡形も無く崩れた。あのジュピターさえ破壊するとは想定していなかったのか、再びアルケミストとドリーマーが逃げ出そうとするが―――

 

「あっはっはっ、何処へ行こうと言うのかね?」

「「ヒイッ!?」」

 

 しかし、回り込まれてしまった!と表現されてもおかしくない位の勢いでグレイや鷹山が立ち塞がり、気付けば回りには戦術人形達が銃をこちらに向けながら待ち構えていたらしく、アルケミストとドリーマーはついにグリフィンの手によって捕縛されたのであった。




これだけ書いておきながらも、まだ中編なんだぜ……?もう少し構想練るの頑張れよ、俺。

・その追い駆ける方法が何処ぞの桃白白だったらどうするんだよ?
ドラゴンボールでは有名な移動方法だが、ブレスオブザワイルドでも半ばそれっぽい行動が出来る様になった。方法は言うまでも無くビタロック使用前提となります。

・一人用のポッド
これもドラゴンボール。主にブロリー映画で。

・PTX-140R/Hardballer(ハードボーラー)
ロストプラネットシリーズにおけるロボットで、ハードローラーはVSシリーズの中でもブレードを持っている。VSには合体要素とかロマン武器とか色々あるのだが、ハードローラーは群を抜いて一番最強と言っても過言じゃないロボット。ちなみに「ガチャピン」という名称は見た目が完全にガチャピンに似ている事から言われたとか。ソースは2ちゃんねる。

・チケットを大量に喰らいな!/アツアツのローストチキンにしてやるぜ!
最初に投稿したネタで使っていたメタルウルフカオスの台詞。ちなみに、本来ならば「これが大統領魂だ!!」が元となっている。そもそも前線で戦う大統領なんて誰も聞いた事無いと思う。ただ、どっかの錬金術師の大総統なら有り得る。

・それはひょっとしてギャグで言ってるのか指揮官
由来は「魁!!クロマティ高校」でのあの名場面から。

・VS用のロケットランチャー/VSキャリバー
ロストプラネットにおいて、VS武器というのが存在し、VS武器は取り外す事が可能でありながらも「普通に武器として使える」という最大の強さがある。担ぐと結構重いが、対人相手では一撃も同然。VSに取り付いておきながらも向きを調整すればそのまま補充出来るという凄い仕様。ただ、VSキャリバーはハードローラーの固定武器となっている為、決して外れない。残念。

・あっはっはっ、何処へ行こうと言うのかね?
言うまでもなく、某ラピュタ王の台詞。場面と言い方によっては最早悪役にしか見えなくなる。まあ、元々その人悪役なんだけどね。

・しかし、回り込まれてしまった!
ドラクエお決まりの逃げ切れない言葉。そもそも、モンスターはどうやって主人公達の後ろへ回り込めたんだろうか……?


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ロマンシング馬鹿 下

そろそろ他のキャラクターにスポットライト当てようかなと思ってます。一応これまでメインストーリーっぽいのを書いてましたが、殆ど404とARばっかなので、他のキャラも書きたい意欲もあるので、近々そっちもしようかと。

あの子を出して欲しいとか要望あれば遠慮なく言って下さい。それまでネタを考えないといけないのも事実ですが……。


 ドリーマーとアルケミストの捕獲に成功し、残す鉄血兵も反撃のチャンスを失ったのか投降してグリフィンの元へと連れて行かれた。後始末や情報の引き抜き作業をしている間、ザックは元仕事場の様子をただじっと見つめていた。

 

「……こんな形で戻って来るとは思わなかったよ。自分から出て行ったのに、今更ノコノコ戻って敵討ち……とまでは行かなかったけど、やるだけやったよ」

 

 彼の手元には予め用意してあったのか花束を持っていた。それを足元にスッと置いてから仲間の為に黙祷と祈りを捧げた。

 

「ザック、もうそろそろ時間……って、ああ……邪魔しちゃったか?」

「いや、構わないさ。そろそろお別れも言っておこうと思ってた所だ」

 

 やれるだけの事をやったのか、グレイ達は撤収の準備を始めていた。これから先、来るのは多分無いだろうなと感傷に浸りながら、ザックも準備を済ませようと行くが……。

 

「……指揮官命令。一堂整列!」

「え……?」

 

 一体何なんだと戸惑うザックを後に、戦術人形達が駆け足で集って来た。そして、揃った所でグレイが話し出す。

 

「今日の任務はご苦労だった。ただ、もう少しだけ付き合って欲しい。こんな事を言うのも何だが、鉄血が暴走したとは言っても、そこで働いていた人間達も暴走した鉄血によって殺された。今日、ザックはその為の償いとして、弔いとしてここまでやって来た。それは俺達も同じだ」

「グレイ……」

「故に、ここで散って逝った彼等の為に弔銃を行いたい。身勝手な命令かもしれないが、彼の為にしてやって欲しいんだ」

「そういう事ね。弾も残ってるし、やるには充分じゃないかしら」

 

 HK416の後に続き、他の戦術人形達も頷いては弔銃の準備を始める。グレイなりの優しさだったのか、ザックは少しだけ嬉し泣きをしながら―――

 

「ありがとう……お前等は最高の仲間だ……」

 

 と、答えてくれた。ただ、死んでしまった仲間の前で泣くのは逃げて行った自分にはその資格が無いと己を厳しくしながら涙を拭き、真剣な顔付きで仲間の為に弔銃を始めるのであった。

 とは言ったものの、指揮官全員が弔銃の回数がどうだったかなんてのは覚えていない。寧ろ知らない方だった。少なくとも、そういう弔い行事があったというのは何となく聞いてはいたが、発砲する回数がバラバラだったりするので、正直どれが合ってるのかは分からなかった。しかし、何もしないで終わらせるつもりは無いので、とりあえずは自分なりのやり方で弔銃を行う事にした。

 

「死んで逝った彼等の為に、黙祷!」

 

 一斉に目を閉じる彼等。戦術人形達も同じく目を閉じて祈った。暫くして「止め!」とグレイの声が響き、次の段階へと移る。

 

「天に向けて弔銃!構え……撃て!」

 

 戦術人形全員の銃が天に向けて発砲される。同じくグレイ達も配属された時に渡された短い拳銃を使って天に向けて撃った。最後に―――

 

「君達の事は一生忘れない!記憶の中に留まる限り、私達は君達の為に戦う!今は少しの別れだ!敬礼!」

 

 敬礼で彼等との別れをここで示した。軍とは違うかもしれないが、こうするしか思い付かなかった。それでも彼等の元にこの気持ちが届くのならば本望だろう。敬礼を終えた後、彼等はグリフィンへと帰投した。

 

 

 

 

 

 かくしてドリーマーとアルケミストという難関とも言うべき鉄血人形を捕獲する事に成功したグレイ達だったが、鉄血には最後の親玉であるエルダーブレインが残されている。また、捕獲した彼女二人をグリフィンに引き込めるのかどうかすら難しかった。その様子をグレイ達が揃って話し合っていた。

 

「今も話し合いが続いてると思うか、担当誰がやってる?」

「ケンジとエージェント」

「人選ミスってないかそれ……?」

「いいや、ミスってない。確かに一見すれば鉄血との関わりを持った男と裏切ってしまった固有型の鉄血人形だからな。居合わせても素直に従うとは到底思ってないさ。ただし、対話ならばアイツが妥当だと考えてな。将来カウンセリングも担当するかもしれないからって自ら名乗り出たんだと」

 

 以上の理由があってか、今ではケンジとエージェントが二人の対応に当たっていた。しかし、グレイの言う通り、ドリーマーとアルケミストは中々素直に従おうとはしなかった。

 

「そろそろ選んで貰おうか。グリフィンと協力するか、それでもまだ足掻くかを。俺はせめてグリフィンの方を選んでおく方を推奨するが」

「この期に及んでまだ仲間に入れようと考えているとはな……全く、人間というのは理解出来ないな」

「脅したって無駄よ。どうなろうと私達は貴方の元には行かないわ。自分で死ぬならまだしも、ここから逃げるか、残された鉄血の皆が貴方達の所へ襲い掛かるかもしれないわよ。そうなったら……本当に人類は終わりを告げる事になるわよ」

 

 クスクスと笑うドリーマー。しかし、ケンジは表情を変えずに淡々とある話を持ち掛けた。

 

「随分と威勢と信頼があるみたいだな。だが、その時は五体満足のまま無事でいられるかな?良くも悪くも、お前達は同胞に殺される可能性が高いがな」

「何ですって……?」

「仲間に殺されるだと?そんな馬鹿な話―――」

「ありますよ。それを証言した貴女達と実際に体験した私が言えるのですから」

 

 ついさっきまで黙っていたエージェントの口が開いたが、並べられた言葉は仲間に向けて言うべき内容ではない冷徹で残酷な言葉だった。

 

「貴女達は私とこの御方と話しただけでも私を裏切者扱いとしました。それと、何もしなかったデストロイヤーに向けても。それを踏まえた上で話させて頂きますが、貴女達が幾ら攻めようとも散々グリフィンの指揮官達に返り討ちにされ、逃げ続けても捕まった挙げ句に基地を破壊されたと同時に生産プラントまで奪われた……そんな貴女達がグリフィンの情報を引き抜いた後、鉄血に戻った所であのエルダーブレインが許すと思いますか?何度も喰らった返り討ちと捕まったという情けない汚点を着せられてまで……」

「くっ……!」

「もう1つだけ言わせて貰いますと、鉄血がグリフィンに攻め込んで来た時、同胞は捕まった貴女達を見てどう思っているのでしょうかね。まあ、十中八九貴女達を哀れで愚かと蔑んではその場で撃ち殺しているでしょうね。それと、人類と戦術人形を全てを殺し終えた時、エルダーブレインは何を言うのでしょうかね。エルダーブレインも所詮は人の手で作られたモノですから、後の事を考える程の知能はありませんし。その役目を終えた際、エルダーブレインから死んで欲しいと言われた時に貴女達は素直に従う事が出来ますか?」

「………!?」

 

 ドリーマーの顔に冷や汗が流れた。あのエルダーブレインが最後にどうするかは分からないが、仮にもエルダーブレイン自身が本当に一人になりたいという理由で味方全てに自害を命令させた後、強引に鉄血達を動かそうとする展開も少なからず有り得る。暴走したAIが一体何をするかなんてのは誰にも分かる訳が無いのだから。それを追撃しようとケンジから無慈悲な言葉が投げ掛けられる。

 

「何を驚く事がある?それを言ったのは他でもないお前達だ。鉄血のルールがどういうのかは知らないが、他人の死に関しては興味が無かったり、命を軽く扱う辺りはそうなんだろう?」

「元鉄血の私ですら覚えていますよ。何かあった場合、我々鉄血はどんな事情であろうと戻らない者は見捨てる。資材がある限り、我々がそういう存在でいる限り、替えは幾らでもある……と。貴女達は私と同じ様な立場へと近付いているのですよ」

 

 何度も失敗続きなら、流石の鉄血ですら使えないと判断して処理するだろう。今更になって分かったのか、二人は絶望でもぶつけられたかの様に顔を青褪めていた。どんなに生意気な性格だったとしても、まだ生きたいという願いもあったのだろう。

 

「敗けを認めなさいドリーマー、アルケミスト。貴女達は戦う相手を間違えたのです。彼が敢えて協力を言い出したのは、貴女達が無惨に散ってしまわない様に……本当のあるべき世界に戻す為に一人でも多く救おうと考えていたのですから」

 

 その言葉を最後に二人は泣きながらも協力に応えてくれたとの事だった。敵だとしても、これまで生きてきた証を残されないまま仲間に殺されて死んで逝くのはケンジからしても悲しい事だったのだろう。

 

「ま、そういう訳でドリーマーとアルケミストを無事に歓迎したって事らしいよ」

「流石ケンジ。対話ステータス極振りしただけの事はあるな」

「極振りって……でも、確かにケンジじゃなければ出来ない芸当だったな。アレか?前にエージェントと対話したという前提があるからこそすんなりと条件呑んでくれたのかね」

「可能性としては高いな」

 

 彼等の勢いはまだ止まらない。だが、エルダーブレインをどうにかしたとしても、まだE.L.I.D.が残されている。鉄血との問題が終わり次第、次はそっちの問題に移らなければならないと思うと苦労が絶えないなと溜め息を吐くグレイ達だった。

 

 

 

 

 

「で、これをこうして……どうだ鷹山?」

「んー、問題無い。バッチグー」

 

 更に数日後。ザックはある開発の為に作業を続けていた。前回の追走作戦でハードボーラーが大破寸前まで追い込まれてしまったのだ。修復をしている最中に鷹山がその様子を見に来たらしいのだが……。

 

「それにしても、まさかお前からこんな提案を持ち掛けて来たとはな。お陰でハードボーラーを応用したイメージが次から次へとドンドン膨らんで来やがる」

「元々そういう発想をしていなかったってのが大きいんだろうけど。で、提供してくれたお礼に動かして良いんだろ?」

「まあな。悪く言ってしまえばテストプレイすらまだだからな。プレイ第一号がお前になるが……まあ、お前だからこそ問題無いだろうな」

 

 鷹山の方を見ると、鷹山は何やら機械のパーツを装着していた。鷹山が言うには、大破したハードボーラーを見た途端、某機動戦士や人形ロボットみたいなのを想像した時に自分でも装着出来ないかという考えが浮かんだのだ。これにはザックも頭に電流が走ったかの如く閃きが生まれ、その手があったか!と納得していた。要するに……。

 

「俺が戦術人形だ!!」

 

 という、ブッ飛んだ発想から出たのが「指揮官戦術人形化計画」だった。しかし、まだ実用とか必要あるのかどうかすら微妙だが、テストプレイ第一号である鷹山に任せるというのは嫌な予感しかしなかった。戦術人形化と言っても、所詮はパワードスーツの様なモノだが。

 最終チェックを済ませ、いよいよ鷹山が出撃した。動き方はまるでゼロシフトを連発して動いているかの様に気持ち悪く速く動いていた。当然ながらターゲットとなるのは鉄血人形。移動した先で出会うか、偶然基地を発見出来たらラッキー程度でついでながら破壊をしようと考えていたが、中々見付からなかった。

 

「おうっ!?」

 

 だが、下からミサイルやら銃弾の嵐やら、果てにはビットらしきものまでもが鷹山に向けて襲い掛かった。小さくて見え難いが、下には鉄血兵と固有型であるスケアクロウ、ハンター、エクスキューショナー、アーキテクトが居た。丁度良いタイミングだと思ったのか、鷹山はニヤッと笑みを浮かべながら襲撃を始めた。

 

「ちょっくら実験に付き合ってくれよ!」

 

 開幕早々取り出した銃はラグナロク3rdと呼ばれるモノで、喰らった相手はそれなりに体力をゴッソリと持って行かれるヤバい武器だった。それにゼロシフト並の高速移動で相手の隙すら与えないままとなれば、やってる事は最早一方的な殺戮(死なない程度に)と勘違いされてもおかしく無い。

 

「あの野郎!俺が相手だ!」

 

 次にエクスキューショナーが鷹山に向けて襲い掛かるが、鷹山は武器をチェンジしてスタンガンを取り出す。このスタンガンも特殊な仕様で、簡単に言うと連射する事で攻撃の威力が増える代物だが、これにフレーム単位での連射した場合となると……後はもうお分かりだろう。

 

「喰らえッ!」

 

 エクスキューショナーの太刀が振り落とされるが、寸前の所でスッと避けては至近距離まで詰め―――

 

「おりゃっ!!」

「あばばばばばばばばばば!?」

 

 こちらもゴッソリとエクスキューショナーの体力を開幕6割で減らし、間髪入れずに攻撃を続行。10秒も満たない内にエクスキューショナーがほぼ一撃で倒された事に鉄血達は驚くしか無かった。

 

「な、何だアレは!?」

「人間の動きじゃない……」

「私達はこんなのを相手にしていたのですか……!?」

「次はお前だァ!」

 

 グイッとアーキテクトの所まで近付く鷹山。アーキテクトも思わず「ひっ……!」と悲鳴を上げたが、もう遅かった。今度はナックルガンというこれもまた至近距離での武器に切り替え、連続のパンチ(弾丸)を喰らってしまう。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「うわらば!?」

 

 こっちは開幕8割。ガッツリと削られてはエクスキューショナーと同じく5秒すら満たずにKO。途中で援護しようとしていたのか、鉄血兵が割り込んで来たものの、「ユクゾッ」と呟いた後に一瞬で迫られては1発ダウン。鉄血兵すら歯が立たず、スケアクロウとハンターは恐怖に震えていたが―――

 

「撃ち合いしよーぜ!お前、的な!」

 

 スナイパーライフルでハンターを撃ち抜く鷹山。ただし、遠距離ではなくゼロ距離からの射撃。これには少し耐えたハンターも「スナイパーって近距離で撃つ為の武器だったか!?」と叫んでいた。多分スナイパーの子が見たら吃驚仰天になるだろう。スナイパーとしての意味も無いし、ゼロ距離でインファイトするなんて誰が予想出来るか。

 ハンターが驚くのも束の間、ゼロ距離で何度も撃たれた彼女もダウンし、残すはスケアクロウのみ。次に鷹山が切り替えたのはショットガンよりも強いホーネットガンと呼ばれるモノ。これもまたゼロ距離で迫っては撃つの繰り返し。銃とは思えない爆発音が轟き、たった数発でスケアクロウの体力を9割減らし、後は軽く殴って終わらせた。

 

「鷹山さん、だいしょーり!!」

「もう……いっそ殺して……」

 

 良い笑顔を浮かべる鷹山だったが、敵からすれば恐怖の対象としか見られなかった。暫くして、捕まえた鉄血達を連れて帰った鷹山だったが、その際に見掛けたM4が持っていた書類をバサリと落とし、信じられないものを見た目をしていたのは言うまでも無かった。

 特に鷹山がレイレジェンドの装甲を装着していた為か、「M16姉さん!鷹山指揮官がロボットになってます!!」と大騒ぎし、どういう事だと見たM16ですら飲んでいたジャックダニエルを吹き出す位に形が違うと言い切った程だったとか。

 

 また、捕まった鉄血達は「地獄を見た」とか「アイツ怖いアイツ怖い」と完全にトラウマ植え付けられた感じになっていた。




TASさんに連射は厳禁。言うまでもなく分かり切った結果になるし……。

・俺が戦術人形だ
某機動戦士ダブルオーの方で一時期ネタになった箱ガンダムみたいなものだったりとか。アレもまたピンと思い付く切っ掛けになりました。

・ラグナロク3rd/スタンガン/ホーネットガン/ライフル/ナックルガン
出所は全部カスタムロボBRから。このカスタムロボでさえTASが出ていた位。詳しくは「TASさんの休日 カスタムロボBR アーケードモード ハードをプレイ」を見て頂ければ分かるだろう。エアライドで虐殺してたのに、まだ足りなかったのか(白目)
最早動きはドラゴンボールかANUBISを見ているみたいな感じで、ナックルガンとスタンガンの鬼畜性を垣間見るだろう。オロチガンはそこまで目立つ要素が無かったので、書きませんでした。ドラム?何時書こうかそれ……。


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Q.これはシスコンですか? A.いいえ、ただの建築テロリストです M1911「上ですわ!」

久しぶりにメインというか、まだ出していなかった主要キャラの追加。
ドルフロのストーリーも物騒になって来たなぁ……年表見た限りだと戦い終わりそうにない雰囲気だし……公式、これちゃんと無事で終わるのかな……?
公式の方が完結したら手直しとリメイクで、ストーリーを主軸にして書こうとは思っていたが、どうなるんだろうか。


 さて、ここ暫くで鉄血人形や新しく入って来たグリフィン側の戦術人形が多くなって来ている最中、それと同時に発生したある1つの問題が出来てしまった。それはグリフィンでの個室などの住居スペースが明らかに足りない事だった。これに気付いたのは彼等の仲間であるボマーが幾度か気になっていたらしい。

 

「そういう訳だから、こっちで建築とかやって良いか?」

「んー……良いよ。ただし、それなりに覚悟しておいて。増えれば増える程、支払いとかその他諸々含めて多くなるから……」

「その辺は任せろ。つーか、俺が何の対策も無しで作ろうだなんて思うか?」

「そうだな……聞くだけ野暮だったか」

 

 そう話し終えると、早速改修工事に取り掛かるボマー。改修工事とは言っても至って簡単な作業でもあるのだが。

 そんな彼の元にある戦術人形が三人寄って来ては、さっき会話した内容を説明しては「一緒にやります!」と全員が一致し、彼と一緒にグリフィンの改修工事に参加する事となった。妙に気になったのか、UMP45が話し掛ける。

 

「ねえ、指揮官。あの人って元々居た人だっけ……?」

「あれ?45は初めてだっけ?少なくとも蝶事件の時には一緒になって暴走した鉄血人形を倒して居たんだけどね。ほら、死にたいらしいなって言ってた彼」

「あ、あー……何となくだけど思い出したわ……でも、あの人って頻繁に出る様子とは思っていなかったけど?」

「そりゃ仕方無いよ。アイツの場合は俺達にとっても必要不可欠とも言える人材だからな。アイツが居なかったら耕す事も建築する事も出来なかった位だから」

「……マジで?」

 

 45の答えにグレイは「うん、マジマジ」と答える。変に隠さない辺り本当なのだろう。それならば、彼は一体何処に行っているのだろうか、と尚更気になってしまう。

 

「何か調べたいって顔してるよ、45」

「そうね。実際、あんまり会っていない人がどうしてここに居るのか……ちょっとした理由は聞きたかったりはするけど」

「ん、分かった。まあ、俺もちょこっと覚えている範囲内なら教えるよ」

「何々、何の話?」

「うおっ!?」

「せめてノック位はしなさいよ40……」

 

 会話をしていたら、何時の間にかUMP40までもが混じって入って来た。まあ、言っても大丈夫だろうと思い、彼の生きた証を語り始めたのであった。

 

 

 

 

 

「お前なんて産むんじゃなかった」

 

 それを最後に言われたのは何時だったのだろう。少なくも、子供の頃にそう言われたのは良く覚えている。母親も父親も子供に対して愛そうとする素振りは一切無く、ずっと放置されていた。

 自分には家族も家も、大切なモノさえ何一つ無い。だからこそ、一人ぼっちだった。同時にあの日を境に変わってしまった事も。

 

「あ、お兄様。おはようございます」

「朝だよ、お兄ちゃん!おはよう!」

「兄様、朝御飯の準備が出来ましたよ。そろそろ起きて下さい」

 

 耳元から可愛らしい声が響く。ゆっくりと眠っていた目を開く。目の前にはM1911、GSh-18、G17の三人がそこに居た。

 

「あぁ……皆、おはよう……」

「あらあら、朝から元気ありませんね?あ、もしかして、お目覚めのキスがまだでしたか?」

「ちょ、ずるい!それは私の役目なのに!」

「二人して抜け駆けする方が悪いじゃない!兄様は私の―――」

「ハイハイ、ストップストップ。喧嘩しない喧嘩しない。それに、元気が無かったのは嫌な夢を見たからだよ」

「嫌な夢って?」

「……家族に見放され、世間からも見放され、耐え切れなかった俺が爆弾で殺した夢だ」

「「「………」」」

 

 何か心当たりがあるのか、それとも彼の心中を察したのか、表情が暗くなる三人。更にはこんな事を言い出した。

 

「それに、俺とお前等は血は繋がっていない。あれはあくまでもお前達を救っただけであって―――」

「それでもです!あの時……貧しかったから家族を助ける事が出来なくて、怖くて震えながらもあの賭け事から解放してくれたのは兄様です!兄様が助けてくれたから、私達は生きる希望を見付けたんです……!」

「でも、最期に私達3人にお兄様から託されたモノを受け取った後、「俺みたいになるな。立派な人として生きて行け」なんて言った後、行方不明だって聞いた時はずっと泣き続けていたんですよ?もう貴方に会えないとショックだったんですから」

「それでも、お兄ちゃんの約束を忘れずに前を向いて行こうと、生きて歩こうって皆で約束したから。だから、グリフィンに入ってまでお兄ちゃんを探そうって決めたの。絶対にお兄ちゃんは生きてるって信じていたから。戦術人形じゃなくて、生身の身体だけどさ……それでも、お兄ちゃんが傍に居るって思えば怖くなかったから」

 

 他の人から聞けば衝撃的な内容だろう。彼女達は戦術人形ではなく、正真正銘の人間で、そんな彼女にボマーは何度か出会った事があるのだ。とは言っても、それはかなり昔の話でもあったのだが。

 

「……本当に強くなったな、お前達。それにしても、あれから数年経ったのか……正直な話、あれが自分にとっても世間においても本当に良かったのかどうかは分からない。家族も俺も酷く歪んでいたし、結局の所悪いレッテルしか残らなかった。だけど、それでもお前達を救えたなら本望だったよ……」

「お兄様……」

 

 彼女達と彼との接点は一体何だったのか。それは、少なくとも彼自身に訪れた1つの出来事が全てを動かした。崩壊した世界において、この世は弱肉強食。力の有る者が全てを動かし、無い者はそれに従わなければならない。落とされ、騙され、蔑まされ、そして何もかもを奪っていく。その上に立つ者は一体どんな気持ちをしているのだろうか。人の為に何かを尽くしているのか。或いは自分の叶えるべき夢の為に後を振り返らず走り続けるのか。はたまた……他人を見下し、落ちぶれた者が絶望する姿を見ては愉しく笑っているのだろうか。

 しかしながらも、人は因果というのがある。仮にも誰かが悪事を働き、人徳的に落ちぶれたのならば、そのツケは何時しか自分に帰って来る。人はこれを因果応報と呼び、何時の時代でも語り継がれる真理でもあった。

 

 これは、その因果に巻き込まれ、耐え続け、復讐を果たした少年の物語である。

 

 

 

 

 

 世界に混乱が訪れている最中、ある家族が居た。その家族は富豪とも言える一家でもあり、周囲からの期待も厚かったと言われている。だが、それはあくまでも表向きの話。人には必ずしも裏側の事情というのがあった。

 その事情の原因の1つが彼等の家族に問題があったという。彼等は確かに優秀の塊とも言えるエリートな家族ではあったが、唯一子供だけエリートとは言い切れず、頭が良いとは言えなかった。ここに生まれたからには優秀でならなくてはいけないという概念に囚われたのか、常に厳しい教育を続けていた。だが、子供は中々覚える事が出来ず、人と会話するのも難しかったりという理由もあってか、家族は彼を心底嫌っていた。だからこそ、こう言われたのである。

 

「所詮、お前はお荷物に過ぎない出来損ないだ」

「お前なんか生むじゃなかった」

 

 物心がついた時には比較されてばかりの毎日が続いた。誰からも自分の事を褒めてくれようとはせず、兄や妹など出来る人物に対して褒めていた両親達。

 自分は何で褒められないのかと悩んでも結局は自分側に原因があると突き詰め、どんなに必死になって頑張っても、彼を褒めようとしてくれる人物は誰も居なかった。

 

 彼は何も恵まれなかった。自分の出来の悪さに一時期は鬱や不安を抱えたりはしていたのだが、それから数年経った後に家族が彼に向けて罵倒や蔑む様な言葉を平気で吐いたりする等、家族に向けてやってはいけない事を平然と行う様になったのである。

 それだけじゃなく、生みの親から虐待を受ける事もあり、その時から彼は家族を恐怖の対象と認識してしまっては死にたいと何度願った事あった。自分が悪い子だからと己を責め込み、何時しか心を閉ざしてしまったかの様に。自分の部屋に戻っては引き籠もり、彼は現実から「夢の世界」へと逃げ込んでしまった。

 

 彼は虐待を受けた日から不思議な夢を見る様になった。それは、何処もかしこも四角い世界で、生き物ですら四角い世界。目が覚めた時には変わったブロックを持っていて、それを使ってモノを作るという発想をこの時に学んだのである。最初はどうしても手作業でやる事が多かったのだが、何時しか道具も作れる様になり、生き抜く力も自然と身体に身に付いてしまっていた。

 

「えっと……ダイヤピッケルは……ちょっと微妙に足りないな。もう少しクラフトした方が良いかな?」

 

 不思議な世界を旅して、自分だけの世界を作り、誰にも邪魔されずに気ままに過ごしていく。時にはモンスターとかに襲われたりする事多々あったが、死んでも何故か自宅のベッドの上だったりと……とにかく不思議な事ばかりしか起きない。それだけじゃなく、頭の中に変わったコードとかを見たり、ありとあらゆる情報が頭の中に流れる様になってからは「MOD」と呼ばれる存在を見付けた。これさえあれば更なる試行錯誤が出来る様になったとか。

 

 しかし、夢はそんなに続かない。自分が眠っている間はその夢が見れるが、起こされたりすると夢が途切れ、現実世界へと引き戻されてしまう。

 

「あ……もうこんな時間か……」

 

 とれだけ長く掛かったのか。1秒か、10分か、それとも1時間か。夢から現実へと目が覚めた瞬間はどうしても不安と鬱になってしまう。今日もまた罵られる日が来たんだと。

 だから、出来る事ならば夢の中が永遠に続けば良いなと願っていた。その純粋な願いが彼に通じたのか―――

 

「え……?」

 

 頭の中にコードが浮かんでは、それが目を通して見えていた。更には、モノを作り出す……所謂クラフト能力さえ実現し、ついには現実世界でクラフトする事が可能となった。崩壊した世界においてクラフト能力は世界を救う唯一の手段でもあるだろう。

 

「何で夢の世界の力が……?まさか……本当に現実でも出来ちゃったのか……?」

 

 夢からリアルへと変わった事実。少しだけ混乱はしていたものの、他の誰もが使えない特技を手にした事を心の底から喜んだ。これならば、自分の思い描いたモノを作り上げる事が出来ると。

 しかし、これを狙おうとする輩は絶対に現れるだろう。ましてや、クラフト能力はいざとなれば大量の金や宝石などの高価なモノでさえ手にする事も可能で、下手したらそれを目当てに言い寄って来る人や襲われたりする可能性が高い。それこそ、自分を愛さなかった家族が一体何を言って来るのかと思うと……想像したくないだろう。今更愛そうが褒めようが、どうせ碌な事しか起きないと彼はそう悟っていたからだ。もっと言うなら、奴隷の様に扱う可能性も高かったからだ。

 

「……誰にも見せる訳には行かない。これは俺だけにしか使えない力なんだ……アイツ等に奪われて堪るか……!」

 

 だから、この力は決して人に見せない様に隠し通した。だが、決して使わない訳でも無い。既に言ってるが、彼は虐待を受けている。毎回耐え難い暴力や世間からのレッテルに縛られた日々を送っている為、自分の心が壊れるのも時間の問題だった。生き抜く為にはコレを上手く利用して生きなければならない。

 

「だったら、せめて必要な物を揃えないと駄目だな……」

 

 彼は咄嗟にある事を考えた。それは自分なりの家を作る事。その家を自分の逃げ道として使う事に。あの家でずっと虐待されるより、そこで家を作って悠々と過ごした方が余程マシだろう。MODの力さえあれば、植物も肉も、水だって確保出来る。だから、彼は親の目を盗みながら見付からない場所に自分だけの家を作る為に汚染された大地を甦らせ、そこで家や畑などを耕した。建物自体は至って簡単に作れたので後はタイミングを待つだけだった。

 

 そのタイミングが訪れたのは数年経ったある日の事だった。ここ数年で彼は親や世間の目を避けながら入念に逃げる準備をしていた。跡継ぎとか名誉だとかは最早彼からしたらどうでも良くて、親や周囲も含んで人間不信へと陥っていた。だから、例え何が起きようともドライな性格を貫いていた。彼の性格が変わると同時に、彼の家族も年月を重ねる度におかしくなり始めていた。女は金に溺れ、男は力や女に溺れ、醜悪とも言える形へと成り変わった。それでも表向きは未だに褒められたままだから性質が悪い事この上無い。ただ、彼だけは何も与えられずに育ったが、持ち前の経験で肉体的にも精神的にも強くなり、些細な事で表情が顔に出る事は無くなったのである。

 

 問題のタイミングが訪れたのは彼が一人の女性から告白された事だった。その時の彼は年齢的には高校生とも言える位までに成長し、一般常識や様々な勉強を独自に学んでは少しずつ頭が良くなった。そんな彼に一人の女性が告白したのだが、この時の彼は依然として人間不信が続いていた。ただでさえ富豪だの有名な御曹子だの嫌な肩書きがあるから、多分コイツも金目当てなんだろうなと思っていたからだ。

 とりあえず、彼女と交際する事を了承したものの、暫くは泳がせておいた。絶対に何かあると思って盗聴器やら小型のカメラ等を仕込み、その様子を毎日チェックしておいた。すると……。

 

「あー……成程ね」

 

 結論から言うと、彼の彼女は寝取られていた。彼の家族によって。最初はテンプレ通りに嫌がっていたものの、次第に調教されるにつれて従順な雌へと発展し、最後は綺麗に雌奴隷宣言堕ち。家族は何を思ったのだろうか、「これでアイツが絶望する姿が見れる」等と卑しい笑みを浮かべてながら呟いていたが、彼からすればそれもどうでも良い事だ。確かに彼女はスタイルも性格も良くて男子に人気あった女性。一方で彼自身は地味であるものの少しだけイケメンな姿をしていたが、要領の悪さが影響して今までに至っていた。反対に家族の方では父親が正に油まみれな肥満体の男で、兄と思わしき人物はチャラチャラした存在となっていたが、頭は良いというステータスを持っていた。

 

「意外と虚しいとか、怒りとか沸いて来ないのが不思議だよな……」

 

 金ではなかったものの、結果はお察しとも言えていた。彼も決してその手の知識を知らない訳では無い。成長するに至って、そういう知識も学んだのだが……自分からすればそんなのは無縁の存在だなとキッパリ言い切っていた。だから、彼女が寝取られた姿を見た時は興奮など一切起きなかった。

 思えば、小さい頃から存在意義を奪われていたのも同然だったので、唯一の救いはあの夢の世界だけだった。それで精神が図太く強くなったのだが、今ではある意味感謝とも言えるだろう。そうでなければ今頃自分は心に深い傷を残していたと思うから。

 

「そろそろ潮時かもな」

 

 ご丁寧にビデオレターを送って来る始末。きっと、何やかんやの事情で出て行けと言われそうだが、それも案の定言われた。掻い摘んで説明すると、彼の部屋を彼女の部屋と同時に調教部屋にしたいから、役立たずの彼は不必要だから要らないと宣言された。両親も元彼女も揃いも揃って卑しい笑みを浮かべながら彼が絶望する様を見届けようとしていたが―――

 

「そうですか。では、綺麗サッパリ忘れる事が出来るんですね!ありがとうございます。あ、必要でしたら縁も切らせて貰っても構いませんし、こちらとしては大いに助かります。俺とて、小さい頃からこんな家に住み続けるのは我慢の限界だったので、これで心置きなく出て行けますから!あ、財産とかはそっちで勝手によろしく使っても構いません。ただし、今後一切俺の目の前で現れないで下さいね。テメェ等と同じ様に落ちぶれた奴とは同類にはしたくありませんので。では、お世話になりました!」

 

 と、笑顔満面で言い切ってはあの家を出て行ったのである。家族もまさかの発言に理解が追い付かず、彼は彼でそそくさに出て行っては遠くの方へと逃げ続けた。

 

(もっと早めに動いておけば良かったな。どう考えた所であのクソ家族が俺を大事にしようとは思えないし……)

 

 でも、これで理想の生活が始まる。自分のしたかった夢が漸く叶うのだから。暫く逃げ続けると、少しだけ広い廃墟街へと辿り着いた。そこで形が少しだけ残っている廃墟が無いか、或いは建築スペースを確保して建てるかどうか考えていたが……。

 

「あ、ここ良いかもな」

 

 見つけたのはちょっとした古いアパート。ここを拠点にしてからアパートの修理や農業しようと考え、更には現実とあの世界を繋げる為の扉となる「ネザーゲート」も作る事にした。多分、あそこでも世話になると思うからである。

 所持金などは何も持っていないものの、ツール道具や収納箱などの必要な物を持って来ていた為、生活には何も困らないだろう。縁も切ったと同時に名前も変えておいた。当然ながら偽名に近いが、踏ん切りがついたという意味ではそれこそ本名とも言えていた。

 

 こうして、彼は孤独な人生を歩み始めた。しかし、彼がここに訪れた事により、これがまた事件に巻き込まれ、強いては世界の命運に繋がる事をこの時はまだ知らなかった……。




ちなみにM1911達を使った理由は今後書く予定で明らかにしますので。まあ、元ネタがなぁ……(白目)

解説とかは後で。ごめんなさい。それと並び替えます、後で。


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Q.これはシスコンですか? A.いいえ、ただの建築テロリストです GSh-18「中だよ!」

今回ドルフロ要素が薄くて申し訳無い……ちょっとだけ言い訳させてくれ……。
本来、この新キャラに限ってはマイクラみたいなクラフト出来る能力で良いかなって、初めてこのシリーズを投稿した段階では考えていたんだ……ただ、ドラクエビルダーズとかを見て「あ、これマイクラと同じみたいで使えそう」と思い、真っ先にストーリー全部見通してはポコポコ建築する人とかクリエーターのお姉さんのを見てしまったんや……本来の元ネタですら出てねぇし……詰め込み過ぎた。

とにかく、最後辺りで本来書くべき内容書けるかも……繋げるまでの話が長かったんや(白目)


 新たな住居で過ごし始め、修復と同時に必要な過程をしておいた後、ネザーゲート用の秘密の部屋を作り、ネザーへと向かった。相変わらずネザーは地獄みたいに暑苦しく、一歩間違えればロストするのは間違い無かった。

 今回は現実でのネザーと夢の世界で過ごしていた際のネザーまでの道を見付けるべく、道を整備しながらブロックとトロッコの線路を敷いていく。ネザーは特に足場が悪い性なのか、妙に歩き辛い面もあって、歩くよりかはトロッコで駆け抜けた方が得策だった。

 

「って、思った程近かったな」

 

 案外、そんな遠くという距離でも無かったので、現実から夢の世界へと繋げるレールは簡単に敷かれ、確認ついでに飛び込むとそこはあの時と同じ光景が見えていた。これならば大丈夫だろうと確信し、自宅に戻っては更に秘密にして隠す様にレッドストーン回路を用いた仕掛けを作り、完全に他からの侵入を防いだ。たまにネザーから豚のゾンビとかが入って来るので、そっちの意味でも防衛は必要だろう。

 

 彼がその場所に越してから1週間。E.L.I.D.の襲撃も無ければ、襲い掛かって来る輩も無く平和に過ごしていたその日の夜、彼はまた違う夢を見た。いや、この場合も正直夢と言い切ってしまって良いのか迷ったが。

 

「んぁ……?何処だここ?」

 

 目が覚めて周りが見えたのは、一面草原が広がってはいたのだが、何だか妙な感じがした。というのも、一瞬にして見えたのは四角いブロックなのだが、モンスターと思わしきものはブロックではなく、普通にそこらに居る生物と変わらない姿をしていたのだ。

 

「え?何ここ……あの世界じゃないの?」

「あ、誰か居ますね。おーい!」

「ん?」

 

 すると、遠くから一人の女性がやって来た。いかにも外国人の様だが、変わった服装にゴーグル、後はハンマーなんかを持っていた。この時点で彼は何となくだが1つの予感が頭の中に過った。

 

「生き残りの人ですね!今、町を復興させているんですけど、力になってくれませんか?」

「待って、色々待って。いきなり言われても何の事だか分からないし、そもそもアンタ達の事情さえ知らないぞ。というか、ここ何処?」

「ここはメルキドという場所なのですが、今はもう滅んでしまいました」

 

 目の前の女性である「クリエーターのお姉さん」こと通称クリ姉が言うには、この世界はかつて竜王という魔王がアレフガルドの姫を浚い、勇者の血を引く者が姫を助けるべく、世界を旅しながら竜王を倒しに行ったとか何とか。その際に竜王がある問い掛けをしたらしい。どういう問い掛けだったのかは知らないが、少なくとも散々人々に迷惑を掛けた以上碌な内容ではないと思うので、いいえと答えて倒すべきだったのだろう。しかし、勇者は最後の最後で裏切ったという話である。

 皮肉にも、勇者がやって来た行動は全て無駄となり、世界は滅びた。多少人々は生き残っているものの、知恵と物を作るという概念が消し去られ、町を復興するどころか料理すら出来ない状況にまで危機が迫っていた。しかし、精霊ルビスに導かれたクリ姉だけは物を作る事が出来るビルダーとして復興する事が出来たという。世界の復興を目指しながらも襲い来る魔物達の軍勢に立ち向かいながらも、次第に人々も増え始めたとか。

 

(んー?じゃあ、俺の場合は何なんだろうな……)

 

 自分に関しては竜王の影響も無く、普通に何か作れた。少しだけ持っていた木の原木となるブロックをクラフトすると、作業台が完成し、そこから素材を必要の数だけクラフトすると色々な道具とかが作れた。これには隣で見ていたクリ姉もおおはしゃぎ。

 聞けば、クリ姉は何故この世界に来たのかは不明だが、自分はかつてハンター、族長、村長、院長の経験があったとか。そこまで来ると、アンタ一人だけで出来るんじゃね?とツッコミを入れたかったが、敢えて言わなかった。

 

(まあ、あても無いし……こればかりは仕方無いか)

「そう言えば、貴方のお名前は何ですか?」

「あ、悪い。俺は「クラウス・ウェンジェンス」。長いからクラウスって呼んでくれても良い」

 

 当然ながらこれは偽名。しかし、本名でもあるのだ。少しでも名前だけは変えておこうと予め彼は考えていたのだ。

 そして、クリ姉と一緒に町を復興する日々が続いた。アレフガルドと呼ばれた世界は夢の世界とはまた別物とも言える世界でもあった。クラフト能力もまた別物だった。

 

「マジか……四角いブロックはあると言えばあるが、溶鉱炉とか鍛冶屋とか四角いって訳じゃないんだな……」

 

 夢の世界だと殆どの物体は四角かったものの、アレフガルドの場合は案外丸みがある物まで作れていた。更に、特殊な並べ方でアイテムを生成する概念は無く、指定されたアイテムが揃えば作れるという超生易しい楽な方法で道具とかが生み出されるそうだ。

 ただし、素材を入手するまでもが大変だったり、自分で作らないと意味が無かったりする。それでも、住民に作り方のレシピさえ教えれば、住民はそれに倣って作ってくれるという……住民ですらビルダーという事も有り得るのだ。

 

「じゃあ、俺も試しに何か作ってみるか」

 

 クラウスも初めてのクラフトに挑戦ついでに実験。それぞれの違う世界における物を作る力が果たして互いの世界にも反映されるかどうかの検証だ。

 アレフガルドでは「まほうの玉」という爆弾があり、それには「ばくだんいし」を3つ、「鉄のインゴット」が1つ、最後に「ひも」が一本必要とされる。同じく、夢の世界においても鉄インゴットという存在がある為、これも使えるとクラウスは考えた。

 結果として、違う世界同士の鉄インゴットを入れ替えても大して問題は無く作成が出来た。また、TNTブロックをアレフガルドの作業台で作ってみようと試した結果、そっちで普通にTNTブロックが作れたのであった。他にも着火させて爆破実験を行ったり、或いは別の爆発物を作ったりするなど試行錯誤を何度もやってみたが……。

 

「うん、大体行けるなコレ」

 

 そう確信した所で、彼の本領が発揮。次々と色々な道具を作り出したのであった。

 当然、世界の復興も忘れてはいけないが、それを邪魔しようと魔王軍が攻めてやって来る。その為にも頑丈な扉や防壁は作らねばならなかった。

 

「これをこうして……こうだ!」

「あ、あの……クラウスさん……私、頑丈な扉と防壁をお願いしたんですけど……これは一体何ですか……?」

「アサルトドアーとデモンズウォール」

 

 「あれれー、おかしいぞー(白目)」と何故か頼まれた物が物騒になって進化する町のセキュリティ。そして、いざ攻め込んで来た時にはクラウスが問答無用で最前線に。そして―――

 

「おら、ペンシルロケットでも喰らってろ」

『ギャーッ!!』

 

 小型サイズのロケット爆弾を発射させ、襲い来る軍勢に圧倒的な火力で葬るクラウス。他にもダイナマイトとかヤバい位に火力マシマシのTNTブロックとかを投げては爆破させての連続。

 この光景にクリ姉は唖然と見続けるしか無かった。ちなみに、剣とか作れば良いじゃんという話なのだが……彼曰く「敵をチマチマ殺るよりかは木端微塵に跡形も無くなるまで殺る方が早いだろ」と言いながら怖い笑みを浮かべていた程だった。

 これが理由な為でもあったのか、テロリストとかボマーとかそういう名称となり、以降も次々の大陸でその無双っぷりを見せつけた。

 

 尚、クラウスが現れた事はルビスにとっては予想外でもあり好機でもあった。クリ姉と一緒に復興する様子を見届けていて、最終的にクラウスは敵でないと安心していた。

 だが、最後のラダトームにおいてルビスが「あなた達は勇者ではありません。竜王を倒すことはあなた達の役割ではないのです」と言ったらしいのだが……。

 

「だったら、巻き込まれた俺は何だ?散々好き勝手に言いながら、何時やって来るのか分からない勇者を延々と待てなんて言われて待てるか。もう面倒だから竜王殺す。折角新天地で新生活始めようってのに、何時の間にか流れに流れて、最後の最後でコレか!ふざけんな!」

 

 と言い切ってしまってはルビスはぐうの音も出ずに押し黙ってしまった。そのまま竜王の居る城へとカチコミしに行った二人は玉座の間で竜王と対峙。

 

「よくぞ来た、クラウスとクリ姉よ。わしが王の中の王、竜王―――」

「煩い、黙れ。さっさと殺されて死ね」

「グワーッ!?」

「か、開幕早々容赦無し……!」

 

 「テメェの話は長ぇから、早く家に帰らせろ」と、要約という名の爆弾の嵐。途中で「せ、世界の半分と引き換えに……わしの味方にならんか……?」とプルプルしながら死屍累々な声で呟いていたが、それも即座に断った。

 そして、巨大な竜と化して襲い掛かって来るも、クラウスは余裕な笑みを浮かべながらこう呟いたのだ……。

 

「じゃあ、テメェをこのメテオシャワーTNTとかスカッターボムとか使ったらどーなるだろうなァ!!」

 

 取り出したのはある意味使ってはいけないTNTブロック。正直、クリ姉はクラウスがうっかり大陸ごと爆破するんじゃないかと不安になっていたが、その不安は見事に的中。

 爆発したかと思えば空から隕石が落ちては爆発し、果てにはここに居る城や周辺の大地を抉り出すかの様に巨大な爆発が炸裂。伝説の剣とかよりも圧倒的な威力に竜王は苦しみ、殆ど瀕死の状態で追いやられていた。

 だがしかし、現実は非情である。無慈悲にも追撃するが如くペンシルロケット20を発射。明らかにオーバーキルだった為、竜王はあっさりと倒され、世界に平和が戻ってしまったのである。

 

「ろ、ロトの剣の意味は……」

「別に魔法でもダメージ通ってるなら、爆破したって問題無いだろ?」

「えぇ……(困惑)」

 

 アレフガルドは二人のビルダーによって守られたのであった。

 

 

 

 

 

 無事に世界に平和が戻ったが、クラウスに限っては元の世界に戻れないのが不満だった為、語り掛けてきたルビスに向けてドスの利いた声で元の世界に戻せと言って何とか戻れたそうだ。

 その際、クリ姉が行かないで欲しいと泣きながらでも止められたのでどうしようかと渋った。本来ならばクリ姉も消える筈の運命でもあったが、そこでルビスがささやかなご褒美をくれた。

 クリ姉に限っては思いっ切り好きなだけ建築したり、立てたりして良いという特別な島を貰った。対してクラウスは元の世界とアレフガルドとの世界を繋げてあげるという凄い事をしてくれたとか。ただ、出来るならばネザーゲートで繋げても良かったんじゃないか?と今更に思ったが、この際深い事は気にしない方向にした。

 

「漸く家に帰れたわ……」

 

 元の世界に戻れたので、これで一安心したクラウス。幸い、これまで学んで来た知識は現実世界の方でも活かせる事が出来たので、このままクラフトしながら自室の模様替えとかを済ませておいた。

 家具も無ければ電気も台所も何にも無かった部屋に家具が一通り自分の手で作っては揃ったのである。それ以外では周辺を軽く整地しながら畑を耕しては食糧を確保。

 違う世界での交流もあった事により、これでクラウスが一人寂しく過ごせる日々は無くなったとも言えただろう。ただ、逆にクラウスは毎日クリ姉の元に来なければいけない事になった。というのも……。

 

「おーい、クリ姉大丈夫?」

「あ、クラウスさん。見て下さい!今日も信者の人達がいっぱい溢れてますよー!」

「クリ姉、それ人じゃなくて十字架の墓標だから。信者じゃないからね」

 

 クリ姉が病んだのである。心と精神の方で。

 最初は何時か賑わって帰って来るだろう人々の事を思い、たった一人で島中を町いっぱいに作り上げたクリ姉だったが……長年ずっと孤独に作り上げてしまった故の反動か、その寂しさで押し潰されそうになった彼女の心は壊れてしまい、幻覚を見る様になってしまったのである。

 これまで復興の際に見て来た人間の数の合計もざっと50程度とかそこ等しか居なかったのを覚えている。しかし、何年経とうにも現実はそう甘く無く、何時まで経っても人が来ない現状に彼女は心を病んでしまったのだ。要するに「がっこうぐらし」のあの子と同じ感じ。

 

「えへへ……今日も道という道をズビャーッと敷いて、「ハンマーとオリハルコン教団」の信者を増やしましょー!」

「はーい、クリ姉お薬だよー」

「うぴゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!キモティイイイイイ!!しゅごいきもひぃれふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「……毎回思うけど、感度3000倍とかふしぎなくすりって訳じゃないよな……?何か危ないとしか言えない……」

 

 ある意味、精神が壊れていると言えば壊れているが……それでもまだマトモに話せるだけまだマシだとは思うだろう。

 精神を病んだ以上、彼女を支えるのは自分しか居なかった為、クラフトして作った「せかいじゅの薬」という精神安定剤をこうして飲ませないといけなかった。

 彼女が壊れてしまって以降、彼女の発言にどれだけ何を言ってるんだお前は!?というツッコミを何度入れたのだろうか。とにかく、ただひたすらに建物やら道やらを延々と立てなきゃいけないという使命感を懸けだされた彼女には誰かのストッパーが必要となっていた。

 

「はあ……早くクリ姉に限っては幸せを見つけて貰いたいもんだな……」

 

 クリ姉の容態が安定したのを見ながらも、元の世界で一息入れたクラウス。正直な話、どの世界であろうとも苦労というカルマからは逃れられないのだろう。

 ほんの少しでも彼女の心を癒せるのなら、どうしたら良いのだろうかと考えていた。せめて何か物を送ったら喜ぶだろうかと頭の中で思考が駆け巡る。

 

「……決めた。最近忙しかったと思うし、ケーキの一つ位なら大丈夫かな」

 

 甘いモノの代表とも言えるケーキでも買ってあげようかと思っていたが、無一文だったのを思い出す。少し何処かで働きながらでもお金を稼ごうと家を出てから町をうろうろしていると……。

 

「ん……?」

 

 ふと、誰かが居る様な気配を感じた。周囲を見渡すと、一つの物陰でうっすらと座り込んでいる少女が一人そこに居た。

 その少女は貧相とまでは行かないが、綺麗なピンク色の服を着ては少しだけ痩せ細っていた。このご時世だから貧困が生まれるのも無理は無いだろう。何よりもE.L.I.D.による感染という驚異がある以上は平和に暮らせそうにないのだから。

 しかし、かと言って見捨てるなんて事には出来なかったのか、クラウスは彼女に声を掛けた。

 

「大丈夫か?」

「……っ!」

「あ、いや、別に不審者だとかそういう理由じゃない。ただ、さっきからそこでずっと俯きながら座っていたもんだから、ちょっと心配になってな」

 

 いきなり声を掛けられた事に少女は怯えはしたが、咄嗟の弁明によりクラウスに対する恐怖も薄れ、ゆっくりと彼女はそこに居た理由を喋り出した。

 

「おなか……すいた……」

「そうなんだ。お母さんとか居る?お母さんの方とか大丈夫だったりするかい?」

「大丈夫……だけど、私はいいから食べちゃいなさいって言ってばかりで……」

(うーん……これは母親が子供に食糧与えて、自分だけは我慢しているタイプか。良いお母さんだけど、その状況は見過ごせないな)

 

 この先、生きて行くならば自分よりも子供の方を優先するのは親の鑑として当然かもしれない。しかし、まだ幼い子供が居る中で先立たれてしまった場合、子供にはそのショックが大きいだろう。

 何とかしようと考えたが、結局クラウスはあの方法でやるしか答えが無かった。

 

「分かった。大体事情は把握したよ。それを踏まえて君に渡したいものがある」

「え……?」

「ここじゃ何だから、ちょっとついて来て欲しい。これから見せるのはちょっとした魔法みたいなものだから」

 

 そう言って、クラウスと少女は人気の無い路地裏の方へと歩いた。誰も居ない事を確認したら、いよいよ彼は懐からドンッ!とレンガ料理台を出した。

 

「これ、何……?」

「まあ、見てなって」

 

 不思議そうに見つめる少女。クラウスは何を作ろうか悩んでいたが、ここはパンとかおにぎり、小さめだが胃袋を満たすには充分な料理を次々と作り出した。穀物とか肉とか、素材を放り込んだら数秒間手を動かしては完成した料理の数々に少女はキラキラした顔をしながら見ていた。

 

「すごい……!これどうやったの……?」

「教えてあげても良いけど、あんまり人にバラしちゃいけないって事を約束出来る?」

「え?えっと……」

(大丈夫かな……?)

 

 今まで人間不信だったので、いざ小さい子にそんな事を言っても約束を守れるかどうか不安だった。ただ、アレフガルドで会ったクリ姉とかは事情が事情だったから例外となっていたが。

 少女は暫く考えながらも、勇気を振り絞って答えた。

 

「教えたい子が二人いるの……そしたら、よろこぶと思って……」

「何か理由でもあったりする?」

「ずっと何もすることがなかったから……みんなで遊んでも同じ遊びでやっててもつまんなくて……」

「そっか。ちなみにその子達はどんな暮らしをしてるのかな?」

「えっと……一人は私と同じで貧しくて、もう一人はお金持ちなんだけど……だいたい毎日勉強ばっかりでつまらないから、面白いものを見てみたいって言ってた……」

 

 そこまで聞いてクラウスは成程と納得した。友達の貧しい子に対しては多分目の前に居る少女と同じ境遇だったのだろう。

 また、金持ちの子に対しては自分と同じ境遇に立たされる可能性があるんじゃないかと思ったのだ。その家族が果たしてその子を愛してあげているのかどうかは分からないが、ずっと閉じ込められたままの人生なんて嫌だったのだろう。定められたルールに従ってばかりだと、何時しか自分と同じ様に「出来損ない」だの「お前なんて生むんじゃなかった」なんて言われるのは酷だろう。そんな事を言われるのは自分だけで良い。

 だから、せめて彼女の心を少しでも癒せるなら協力は惜しまなかった。

 

「分かった。じゃあ、その二人だけな?そんでもって、その二人にも教えるけど、絶対に人には言いふらさないって約束出来る?」

「うん!」

「よし、良い子だ」

 

 少女の頭を撫でながらも、クラウスは先程作った料理を袋の中に入れては少女に渡した。また次に会う場所とかも指定してから約束して帰り、クラウスは再び働く場所を探すのであった。ちょっとだけ、また会える日を少しだけ楽しみにしながら。




今回もネタ解説は先伸ばしで。初期段階だとクラウスは爆弾系の武器を使うのは既に考えてあったりしたので。

クリ姉の人、申し訳ありません……ホントに済みません……(白目)


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Q.これはシスコンですか? A.いいえ、ただの建築テロリストです G17「下です!」

随分と時間掛かってしまって本当に申し訳ない(震え声)

いや、本当に最近ヤバくて……身体の疲れとか悪循環な時間消費とかはともかく、今は転職準備で面接とか何回も行ってるんですが、これが中々上手く行かなくて……流石に60社とか100社連続で落ちたなんて結果は避けたいのです……(白目)

後は後日談をもうちょっと書ければと。


 少女達の約束を交わし、クラウスは指定された場所へと向かっていた。少しずつ金銭の方は解決して来たので、ちょっとだけの余裕が出来た様子だ。周辺の瓦礫とかも撤去させ、人が通れたり、住める程には綺麗な場所となっていた。

 今日は自宅前のここで例のクラフト能力を見せるという約束の日。まあ、実際に自分でも驚いた力だったので、彼女達もきっと驚くに違いないと考えていると、約束通りに彼女達がやって来る。

 片方は赤い髪留めを両側に着けたツインテールの子。もう片方は正に来る場所間違えたんじゃないのか?とちょっと疑う赤いドレスかワンピースの様な服を着た金髪の少女が一緒に来たのだ。

 

「おじさん!来たよ!」

「おじさんじゃないって……これでも若い方だから、せめてお兄さんって言ってくれなきゃ困る……所で、名前は?」

「名前?私はセラ・ヴァレリアって言うの」

「セラちゃんのお友だちのディアナ・グラッツェルです」

「私はエリカ・メイフィールドって言います!よろしくお願いします!」

「全員外国人か……まあ、それぞれに特徴あるから、覚えられるかもな」

 

 ピンク色の服を着たのがセラ、髪留めはディアナ、赤いドレスはエリカと覚えれば何とか行けそうだ。早速、彼女達に物作りの過程を見せてあげる事に。

 

「良いか?物作りはただ作れば良いってものじゃない。自分が何を作りたいのかをイメージし、何処をどうすれば良いのかを何度も頭の中で試行錯誤しながら完成へと近付けるんだ。何よりも一番大事なのは作るのが楽しいという気持ちだ。楽しくなければ、自分がどう作りたいのかも上手く行かないし、形が歪になったりするかもしれない。そういう時こそ気持ちを落ち着けて、誰にあげたら喜ぶか等を考えてから作ると良い感じに仕上がったりするからな」

 

 試しに今回はケーキを作ってみる事にした。牛乳が入っているバケツを3つ、卵一つ、砂糖が2つ、最後に小麦を3つ並べてクラフトすると……何故か途中の段階をすっ飛ばしてケーキが出来上がる。

 不思議そうに見ていた少女達も何故これでケーキが出来たのかビックリした表情を見せていた。

 

「わあ、すっごい……!」

「これでモノが出来上がるというものですから、不思議です……」

「食べ物じゃなくても、作れる物なら大半は作れる。次はブロックで出来る事を説明するぞ」

 

 子供にも分かり易い方法で教え、慣れた手つきでクラフトを行うクラウス。実際に原木から作業台を作っては子供達にもクラフトするという楽しさを教えてあげていた。

 クラフトならではの力で、まだクラウスの住んでいる空き部屋の個室を使っては自分の好きな部屋を子供達にやらせたり、作った物を何かに使うなど、とにかく楽しんでやっていた。

 

「楽しめているなら結構だ。だけど、こういう力はあんまり人前に見せちゃいけないんだ。これを見た奴がこれやって、あれやってと言い寄って来たり、怖い人から金作れなんて言われたら怖いだろう?」

「やだ……こわいよ、そんなの……」

「だから、セラちゃんには事前に言わないで欲しいって約束したのはこれが理由なんだ。今回は特別だったから許したけど、次からは人に見せない事や大事な場面にしか使わない事を覚えておく様にね」

「わ、分かった……」

 

 実際、自身の体験談にも近い話でもあるので、この子達には絶対そういう道には行かせたくないし、自分と同じ末路になって欲しくもないだろう。

 そう考えていると、残りの少女達はどうしてコレに興味を持ったのか気になったので聞いてみると……。

 

 

「そう言えば、セラちゃんから少しだけ事情は聞いてはいたんだが……二人は何で俺の元に?」

「うん……家に居ても、お外で遊んでも何もする事が無くてつまんなかったから……それに、私もセラちゃんも貧しいから、漫画とかゲームとかそういう楽しいものも無いの……お母さんとお父さんも必死になって頑張ってるから、ずっとこんな日が続いて……」

「あー……まあ、このご時世だしな。そりゃ毎日ずっとぼーっとしてばかりの日なんて退屈だしな。エリカちゃんも同じかい?」

「そうですね……私は少しだけ違います。私は俗に言うお嬢様の様な立場ではあるのですが、常識が無いと言われたくなくてずっと勉強漬けの毎日が続きました。メイフィールド家の誇りある淑女として様々な事を学んではいたんですが……比較的に閉じ籠りみたいな毎日が続いたので、それが嫌だったんです。勉強も大事ですけど、面白味が欠けますから。それに、限られた外の世界で何か見つけるというのは、面白いと思いませんか?」

 

 そう言われると「分かる分かる」と同意するクラウス。見た目とは裏腹に、どうやらこの子は結構なチャレンジャー精神でもあるのだろう。

 念の為に、今回のクラフトについて面白いかどうかを聞いてみたら「凄く面白いです!だって、こんな不思議な光景は今まで見た事ありませんでしたから」と笑顔で答えてくれたそうだ。その上、丁寧な言葉遣いもしている為、しっかりとした子供である。

 

「セラちゃんから聞いた時、嘘みたいだって思いました……だけど、どうしてもお父さんやお母さんを手伝いたくて……お母さんもお父さんも無茶してばかりしてるから……本当につらいのは私なんかじゃなくて、お母さんとお父さんとかだから……もしも、病気とかになったりしたらって思うと怖くて……」

「……そうか」

「私の場合……良く分かりません。ですが、これを見て私も何か出来ないかとか色々と思う所があるんです。私のしたかった事とか夢だとか、後は……同じかもしれませんが、もしもお父様やお母様がお困りになった時、これで少しでも恩返し出来ればと思いまして」

 

 彼女らしい言葉でもあった。少々心配な面もあるかもしれないが、多分この子達はちゃんと聞き入れてくれると信じ、何時しかこの技術を受け渡す日を待ち続けた。

 それこそ、ずっと一人だったクラウスがこの子達と出会ってからも会話も楽しくなっていたのだ。悪意無き純粋な心を持った子供からこんなに喜ばれる日が来るとは思っていなかったものの、これも悪く無いと思ったのである。

 

 その為、彼女達にも生き残る為の術を惜しまなく教えたのであった。夢の世界の事や爆破すると野菜などが出現するおかしなTNTブロックの作り方を教えたり、身を守るべく武器を作ったりするが、大半がダイナマイトとか極端な方向に走ったり等……。

 時折、エリカが「こんなに楽しいのでしたら、クラウスさんを家庭教師として雇いたい位です」と、妙にませてる部分があったが、それはダメ!とセラやディアナが慌てて言ったという。二人は二人で、まるで兄の様に慕ってくれているかの様な感覚だったので、つい口から「お兄ちゃん」とか「兄さん」とか言い合う仲になっていた。

 今まで家族がアレだったので、こうも呼んでくれるとは思わなかったクラウスだったが、それはそれで悪くないと心の何処かで嬉しく感じていたのだろう。

 

 だが、最悪の事態はここからだった……。

 

 

 

 

 

 それから一か月少し経った頃、彼は新しい武装の開発を行っていた。

 爆発による威力を利用したグローブや靴などを考案してから完成し、何処かの廃墟とかで試しにやった結果では何の問題も無く発揮。一発殴っただけで瓦礫が弾け飛び、靴は爆発した瞬間に風圧によって軽々と大きくジャンプ出来た。また、これを使って蹴り飛ばすなんて芸当も可能となった。

 今までは遠距離から爆弾投げてばかりだったので、近接に持ち込まれたらほぼ意味が無かった。しかし、それをカバーする様に考えたのがこの2つ。これでまた一段と強くなったと実感した。

 

「さて、帰るか」

 

 そうして、また爆発でピョンピョンとジャンプしている最中、不意に誰かが居た様な気配を感じた。

 ゆっくりと視線を凝らして見ると、そこにはセラ達が知らない男達に囲まれては話し合い、何処かへ連れて行こうとしている光景が見えた。そして、ゆっくりと車の中へと入られてしまう。

 

「あの野郎……!何処に連れて行く気だ!!」

 

 クラウスは急いで着地し、男の一人を捕まえる。他の男達はいきなり襲撃された事にビックリしたのか、急いで車を出して彼女達を連れ去ってしまった。

 逃げ切れなかった男はゆっくりと迫り来るクラウスを見て怯えていた。それは正に鬼か悪魔の如く、恐ろしい表情をしていたからだった。

 

「おい、テメェ……教えろ……」

「な、何なんだよお前は……!一体何を―――べふっ!?」

「テメェの御託なんざどうでも良いんだよ。あの子達を何処に連れて行ったのか教えろって言ってんだよ。でねぇと、お前を縛り付けて爆破するぞ……」

 

 クラウスの手に持っていたダイナマイトを見て震える男。だが、クラウスはその前に協力していたとして男の指を数本折り、ついでにグローブによる右ストレートが炸裂。その威力はなんとミサイル並み。

 指が折れては激痛が走り、顔は殴られてはぐちゃぐちゃになって醜い姿と化した男はクラウスの落とし前を付けられたのであった。痛みに苦しむ男の汚らしい声が響くが、続けざまに「早くしないと今度は反対側の指も折るぞ。それか、口の中にダイナマイトでもぶち込むぞ?」と脅す。最早やり方が酷過ぎて怖かったのか、男は正直に事の真相を話した。

 しかし、その真実はクラウスにとっては目を見開く程の内容でもあり、苦虫を噛んだかの様に強い憎悪を向けたのであった。

 

「も、もう良いだろ……放してくれよ……俺はただ言われただけで―――」

「ああ、分かった。後はゆっくりと閻魔様と話し合ってな!!」

 

 ベコッ!!と地面を抉る様に穴が開き、その穴の中にスッポリと入ってしまった男。そして、トドメと言わんばかりにダイナマイトを置き土産として残し、数秒後には大きな爆発と共に肉塊がグチャッと飛び散ったのであった。

 一旦自宅に戻り、必要な道具を持っては完全武装の恰好のまま目的地まで飛んで行く。もっとも、その目的地ですら忘れようとしていた忌々しいあの場所でもあるのだから。

 

「あのクソ家族が……何処までも俺の自由を奪いやがって……!!」

 

 どうやら徹底的に縁を切らなければいけないと、覚悟した表情で彼は町という町を駆け抜けたのであった。

 

 

 

 

 

「博打の催し?」

「そう。クラウスが問い詰めたその男が言うにはマフィアや金持ち関係の人達が集まり、あるショーを行う事だ。お察しの通り、あまり良いショーとは言えないけどな」

「……具体的には一体どういうの?」

「対象となるのは、金に貧しい子。家族が病気になったからその治療費が用意出来ない子。何らかの借金を背負い、少しでもその借金を減らせる様に乗り出してくれた子……理由は様々だ。そんな子達を集め、大人達はあるゲームを子供達に提案した。ロシアンルーレットを……」

「………!?」

 

 衝撃の内容に45と40は言葉を失った。クラウスがあの時に問い詰めた内容というのは、主に貧しい子供や何等かの事情で金に余裕の無い子供等を誘い、ある提案を子供達に持ち掛けたのだ。それが、今話したゲームの内容だ。

 まだ未成年の子供達にロシアンルーレットさせるなど狂気を通り越して外道としか言い表せない。しかし、大人達はその子供が不安に怯える心を利用しては更なる恐ろしい事を考えていたのだろう。40は恐る恐るその内容を聞き出した。

 

「ロシアンルーレットって……もしかしなくてもアレかい……?」

「ああ。具体的なルールとして、回転式の拳銃に弾を込め、一度リールを回転させてから始める。引き金を引く事で、空だったら掛け金が増え、もしも当たった場合は……言うまでもなく頭をズドンだ。しかも、この賭け事の厄介な所は強制的に目隠しをしなければいけない事や、弾は1発だけかと思いきや2発3発混じっているパターンもあるとからしく、最悪の場合はトリガーを一番最初に引いたら弾が入ってたなんて事例も有り得る。だから、尚更性質の悪いゲームなんだよ」

 

 幸いにもゲームを降りるという権利はあるが……死ぬかもしれない恐怖と何としてでもお金を稼がなきゃいけないという焦りに心が乱れ、正常な判断が出来ずにいたのだろう。ましてや、まだ考える力とか冷静な判断力が未成熟な子供に対してこんな事をさせるのは許せない内容だ。

 

「仮に、当たりの弾を避けて、ハズレを全部引き当てた場合はどうなるんだい?」

「一度銃を取り上げられ、中身を入れ替えとシャッフルしてからまた渡される。銃弾を引き当てるまで延々とループして行くぞ」

「地獄ね……」

「このゲームは前々から始まっていたらしく、クラウスがこの事件を聞いたのは本当に奇跡とも言えるべきだったな。ただ……」

「ただ?」

「今回の事件に関してはクラウスもある意味無関係とは言い切れなかった。その事件にはマフィアや金持ちもそうだが、クラウスの元家族とも言うべきか、そいつ等もまた1枚噛んでいたそうだ」

 

 血筋か、それとも運命が引き寄せてしまったのか。ただでさえ元家族が堕ちぶれていたのに、更に人の道を歩み外した行為に対して怒りが込み上がる。

 折角見つけた僅かな幸せを、まだ夢を叶えるべく年頃の少女の人生までアイツ等は貪るつもりなのかと。真実を聞いたクラウスは元家族に対して殺意が沸き始めた。

 

「だから、彼は復讐を決意した。家族の決別もそうだが、縁を切ったとはいえ、その始末をしなければいけないと思ったんだろう。これまで犠牲になった子達の怨みも晴らすべく、彼も彼で堕ちぶれてしまった。けど、ここで見過ごすよりかは、人間として止めた方が尚更マシだと言ってね」

「彼らしいわね。きっと私も同じ気持ちかもしれないわ」

「もう同じ事を繰り返さない為にも徹底的に潰した。とは言え、御曹司なら有名企業の奴やらの集まりだったから、そりゃ事件にもなったがな。それでも、その日を境に次から次へと真実が浮かび上がったものだから人々は喜んでいたものの、殺人を犯したからな。アイツもそう簡単に捕まって堪るかって言いながら逃げてたよ。その日、幼子の死体とか全貌が明らかになった事から『ペニーガール事件』と呼ばれる様になったんだと」

 

 その日、一体何が起きたのか。彼から聞かされた内容をゆっくりとグレイは再び語り始めた……。

 

 

 

 

 

「ここだな……」

 

 道中で先程逃してしまった車を再び見つけたのは本当に運が良かったとクラウスは心の中で呟いた。

 あれから少しだけ時間が掛かったが、車が逃げた先はどうやら人気の無い場所だった。その内の一つの建物が周りのに比べ、やけに朽ちてない上に綺麗だったのを確認出来たので恐らくコレだと判断した。

 到着した頃には外も暗くなり、夜が訪れる。暗い中を走るのは丁度良いタイミングでもあったが、多分向こうも追い駆けて来ていると想定してなのか、妙に人が多いという点を見ると悪いタイミングとも言えた。だが、そんなのは関係無い。

 

「騒がれる前に殺す。ここに居る全員残らず絶対殺す。だが、それよりも救助だな……」

 

 荷物からダイヤモンド製のピッケルを取り出し、頭の中に「一括破壊」と表示されたMODがインストールされる感覚が走る。

 そのまま地面を叩くと、周囲の地面も纏めて一気に破壊されて大きな穴が出来上がる。そのまま直下掘りした後は壁に梯子を掛け、今度は正面に向けて掘り進める。

 ある程度の現在位置を確認しながら掘り進み、この辺りだろうと思った所で今度は上に向かって掘る。ここで一括破壊による事故を防ぐ為に一旦MODをストップさせ、梯子を掛けながら真上を掘り進めた。建物内の何処かの床に当たったのか、強く壊した後は身体を出すかの様にスッと穴の中から現れた。

 

「お兄ちゃん!」

 

 咄嗟にクラウスを呼ぶ誰かの声が聞こえた。クラウスが出た場所は少し薄暗い部屋。クラウスは持っていたライトを照らすと、ライトの先には恐怖に怯えていたセラ、ディアナ、エリカの三人を発見。何とか殺される前に救助出来たのであった。

 

「セラ!大丈夫だったか!?」

「大丈夫……怖かったけど、お兄ちゃんが来るって信じてたから……」

「良かった……他の皆も無事なのか?」

「うん。ディアナちゃんもエリカちゃんも一緒だから……」

 

 これで一安心と思ったが、ここで疑問が生じる。あの男は貧しい子供をターゲットにして連れ去ってはいたのだが、何故この3人だったのか?

 セラとディアナはまだ分かる範囲だが……エリカに至っては何一つ理由が無い。寧ろ金持ちの方だ。それに関してクラウスはちょっとだけ聞いてみた。すると……。

 

「……ここ数日前、お父様が仕事で失敗してしまいまして……それが理由で大きな借金を背負ったという話を聞いてしまったんです。だから、巷で噂の賭け事の話を聞いてお父様の借金を減らそうとしたのですが……今更になって怖くなって……!」

「そうか……けど、今俺が来たからには大丈夫だ。そんな恐ろしい事に命を落とす理由なんて無い。エリカちゃんが先に死ぬのは家族も望んでいないんだから。ね?」

「はい……反省しました……」

「よし、偉い子だ。所で、二人の場合は?」

「私は……一週間前にお母さんが病気になって……でも、払えるお金とかが……」

「私の方はお父さんの会社が潰れて……今はその余裕が無くて……」

「成程。その理由も分かった」

 

 これもまた仕方の無い事。少しでもその助けになってあげたいという純粋な気持ちは親からしてみれば否定出来ない気持ちだろう。しかし、それを踏み躙ろうとする輩が居る。クラウスはそれが一番許せなかった。

 

「少しここで待ってな。ちょっと取る分だけ取って来る」

 

 彼女達にそう告げると、再び頭の中でコマンドを入力する。すると、今度はクラウスの姿がスッと消えたのであった。

 クラウスは座標を入力し、短い距離ながらも建物内に居る人間達や監視カメラを物ともせずにワープしながら移動し、ありとあらゆる物を物色しては売れそうなヤツを全部掻っ攫ったのだ。今まで散々家族に奪われた分をここでと言わんばかりの仕返しをついに始めた。

 装飾品、高級品、高そうな物や目ぼしい物まで全部ひたすらに掻き集め、果てにはクレジットカードや財布なども全部奪い取った。暫くすると、エリカ達の目の前に向かってクラウスが戻って来る。

 

「ほれ、お待たせ。これなら十分だろ」

「わぁ……お金がいっぱい……!でも、良いのこれ……?」

「良いんだ。どうせここに居るアイツ等が持っても無意味なモノだ。だから、これはお前達の物だ」

 

 出来れば、そのお金はある意味使って欲しくも無かったりする。きっとそのお金も必死になって働いたモノじゃなく、臓器売買や人身売買で手に入れたお金だろうと大方予想していたから。

 先程の座標ワープの際、虱潰しで部屋を駆け巡ったが、その途中で子供の亡骸が大量に入っている地下室を偶然見つけてしまったのだ。亡骸の殆どは目が抜かれ、臓器も抉り出され、見るも無残な姿となって死んでしまった子供達の遺体が山積みとなっていたのだから。

 鼻が折れそうになる程の異臭に、虚ろな表情のまま死んだ子まで。その子供達の大半は頭部に何か撃たれたのか頭の一部が欠けては脳みそが少し出ている位にハッキリとしたグロテスクな様子が見えていた。

 

「クソが……!」

 

 一体何人の子供が命を亡くした?一体どれだけの犠牲で金を稼いだのか?吐きそうになる気持ちを堪え、クラウスの目には怒りしかもう見えていなかった。

 だから、せめて生きているこの子達はどうか無事でいて欲しい。一旦、座標を登録しておいてからクラウスは彼女達を引き連れては自宅の方へと戻って行った。一瞬の内にワープしたものだから、彼女達も一体何が起きたのか混乱したものの、これで逃げ切れたんだと一安心した。

 

「ここまで逃げて来たものの……油断は出来ないな。お前等、今日はここに泊まれ。それと、朝になるまでは絶対に家に戻るな。朝になったらそれぞれの家に戻って良いが、その際には何が起きたのか……予め手紙とか書いておく。事情もある程度知ってるかどうかは分からないが……」

「きっと大丈夫と思います……だって、お兄様がここまでしてまで助けてくれたんですもの。心配になってくれたお父様やお母様もクラウス様を信じてくれますわ」

「だと良いけどな……」

 

 事件の成り行きを書いた手紙をササッと書き、それから盗んだ金品をそれぞれに持たせる。セラ達はクラウスの言う通りに従い、今日の夜は絶対に外には出ないと約束した。そして、クラウスは最後は彼女達にこう告げる。

 

「もしも、俺が帰って来なかったなら……その時はその力をお前達に託す。決して俺みたいになるな。立派な人として生きて行け」

「え……?帰って来ないって……お兄ちゃん、どっかに行っちゃうの!?」

「平たく言ってしまえばな。どうやら世間ってのは、騒ぎが起きると何が起きたのか徹底的に調べるから、それに関連付けて俺が悪い奴だとか言いたい放題しながら追い駆けて来る可能性があるからな。一緒に居たら巻き込まれる」

 

 やっと安心したかと思えばいきなりのお別れ宣言。一か月という短い間柄だったのにも関わらず、好きだった人と別れるのはどんなに辛く寂しい気持ちだろうか。その辛さを感じては泣き出してしまうセラ達。実際、別れる宣言をしたクラウスですら心が痛みそうになる。

 

「そんな……!兄さんが行ってしまったら私、何にも出来ないよ……!」

「出来なくねぇ。お前達は俺の力を引き継いだモンなんだよ。これから先、何をどうするべきなのかは自分で考えろ。将来大人になるんだから、何時までも頼ってばかりの子供じゃダメ。強くなれ」

 

 厳しく言われながらも、その言葉は少しだけ優しさがあった様な気がした。クラウスの言葉に分かってくれたのか、代表としてエリカが泣きながら答えた。

 

「分かりました……でも、これだけは約束して下さい……必ず何年経ったとしても会いに来るって……だから、決して忘れないで下さい……!」

「ああ、絶対に忘れない。約束だ」

 

 ニカッと笑いながらエリカ達と約束したクラウス。もう一度あの場所に向かってスッとワープし終えると、さっきまで笑っていた表情から一変し、本気の表情へと変わる。

 

「全部だ……全部奪い取ってやる……」

 

 かつて、クリ姉が族長で且つノースガードの王として君臨した時、彼女は「奪い取れるものなら何が何でも奪い取る、それが我らフェンリル一族の定めである!ワン、ワーンッ!!」と叫んでいた時があった。

 そして、今クラウスは奪われる者から奪う者へと生まれ変わったのだ。残虐な奴等には自由なんてモノは生ぬるい。関わった奴等には等しく平等に死あるのみ。

 

「もう人殺しだろうが狂ってるだろうが関係ねぇ!!子供達の命を奪った時の様に、テメェ等の命も全部奪い取ってやるよ!!」

 

 吹っ切れたかの様に扉を蹴り飛ばして開けるクラウス。異変に気付いたガードマンやマフィアの手下達がクラウスの所に走って来るが、先制されまいとクラウスはペンシルロケットを投げ飛ばした。投げ飛ばされた爆発物に対処出来ず、マフィア達は爆発に巻き込まれては次々と倒れて行くが、無慈悲な鬼へと変わり果てたクラウスは直後に爆弾をセット。身体に付けられた爆発が爆発を起こし、肉片と血糊が瞬く間に飛び散る。

 一方で、未だに爆発が起きてる事に不安と焦りを見せ始める客人達。そもそも彼等もあのクソ家族に誘われては一緒に「見せ物」を楽しんでは、臓器や金目的に集められたカスの集まりみたいな存在だった。マフィア達を向かわせたのにも関わらず、まだ対処しきれてない事に痺れを切らしたのか、俺は帰らせて貰う!と逃げ出そうとする輩が次から次へと出口に向かおうとするが―――

 

「おっと、逃げられちゃ困るからな。例え蒸し焼きになったとしてもだ……!」

 

 制御室の端末を壊し、全ての防犯装置に誤作動を起こさせた。ありとあらゆる出入り口や窓といった所までにシャッターが降り、完全に逃げ道を塞いだのであった。突然シャッターが降りては出られないと絶望する一同。その猶予すら与えず、クラウスは腐るに腐った客人達も爆破させて葬った。

 

「良いぜ……もっと聞かせろ……テメェ等の苦しむ声をよォ!!」

 

 助けを求める声や、命乞いをする声まで。中には私には家族が居るんだと叫ぶ奴も居たが、それはクラウスの怒りを増大させるに過ぎなかった。散々家族の幸せを奪った者が今更命乞いした所で殺す事には変わりは無い。問答無用でクラウスは殺し続けた。

 制裁という虐殺が続く中、どれだけの時間が流れたのだろうか。気付けば周りは死体の山が出来ていて、残すはあの家族のみとなっていた。物という物は跡形も無く崩れ、炎煙が舞い上がる中でゆっくりと目的地へと近付くクラウス。最後の扉に差し掛かった時、開けたら襲われる可能性も見越しながら、クラウスは超小型のミニボムをクラフト。扉の下から僅かに空いている所に目掛けて転がす。タイミングを見計らい、起爆させると何人か悲鳴をあげる声が聞こえた。予想通り、部屋の中には護衛と思わしき人物が何人か居たのだろう。扉を開け、生死問わずに倒れた護衛達を爆弾で殺し、後は逃げ道が無くなっては部屋の隅で震えている家族に向けて冷徹な視線を向けた。

 

「お、お前は……!」

「よォ、クソ家族。相変わらず堕ちるに堕ちた人生送ってんな」

「何故お前がここに……まさか、この襲撃はお前の仕業だったのか!?」

「当たり前だバカ野郎。それに、コイツ等から一度聞いてみたが……どうやら人の命を奪ってまで金儲けしてたみたいだな、ええ?お前等は俺だけじゃなくて、他の家族を奪ってまで名誉とかそんな下らない事を掴もうとしてんのかよ」

「く、下らないとは何だ!一度縁を切ったとはいえ、お前も金の有り難みというのを知ってるだろ!お前がここを出て行くまでどれだけ育てたと思ってるんだ!」

「その割には絶え間無く俺の事を侮辱する様な発言ばっかりだったけどな。アンタ等に対する愛情だろうが何だろうが、これっぽっちも沸き上がらねぇな」

 

 寧ろ、出て行って後悔はしていないし、金が無くとも人は案外生きれる技術を知った彼からすれば、金はある意味無価値に近かった。だから、この家族に対して感謝なんてモノは必要無かった。

 

「にしても、思い出すよなぁ。出来損ないだとか一方的に決め付け、俺から彼女も何もかも奪い取っては出て行かせようと計画を企ててよ。どうだ?お前等は幸せか?無一文だった俺は何の障害も無く幸せに暮らせたぜ?それなのに……テメェ等は未だに俺から幸せを奪うつもりか?あぁ?」

「ち、違うの……そんなつもりじゃ―――」

「黙れよ、クソビッチ。家族に調教されて、男に腰を振っては毎日ヤってばかりの日を続けてやってたんだろ?俺に対する愛情すら何も見せなかったのによ」

「………」

 

 見れば、元カノは妊婦になっていて、何時しか子供が生まれそうになっていた。が、それを見てクラウスは悪魔の笑みを浮かべる。

 

「だから殺す。例えそれが家族だろうと元カノだろうとな。それこそ、腹にガキを孕んでいたとしても殺す」

「お前、何を言ってるのか分かってんのかよ!?」

「知ってるさ。だけど、放っておいても碌な事しか起きないからな。精々痛みを知れないまま殺してやる」

 

 狂っている、と怯えながら呟く腐った家族達。世間で言うなら、赤子に罪は無いと言い切るのが殆どだろう。だが、今の現状を踏まえ、碌な事しか起こさないこの者達を見て、果たして平気と言い切れるのだろうか?

 だから、クラウスは殺す事を躊躇わなかった。仮に生まれたとしても、ちゃんとした教育を施していればまだマトモな道には進めていたかもしれないが、あの家族と同じ様に受け継がれても困る。そうなる位ならば、いっそ根絶やしにしてまで滅ぼした方が人々にとって都合が良いだろう。ましてや、世界がヤバい状況になっているというのに、この家族と来たら……絶対に許せるものではない。

 

「そういう訳だから、とっとと死んでくれよ。もうこれ以上被害増やさない為にもな。なーに、人口がたった数十人減るだけだ。誰も気に掛けたりしねーよ」

「や、止め―――」

「あばよ、クソ家族」

 

 最後の別れを告げ、クラウスは持っていたダイナマイトを大量に投げつけた。瞬時に爆発が起こり、最後の家族は跡形も残らず散った。

 数え切れない程の人を殺した筈なのに、不思議と悪い気分では無かった。これまで自分が奪われたという報復が叶ったのか、それとも大切なものを守れたという達成があったが故か。どちらにせよ、死んで地獄に堕ちるのは覚悟している。因縁を断ち切るとはいえ、派手に暴れ過ぎた。同じ血が流れていた以上、ここまで狂った自分も同類なのだろう。

 

「ま、後を追って死ぬつもりは一切無いけどな。無関係だったとしても、やらかした分のツケは払わねぇとな」

 

 きっと、数え切れない罪を犯したのだろう。だから、代わりに自分が死ぬまで生きて、これまでの命を奪った分として、人々の為に最善を尽くす……それが、クラウスにとって最大の償いでもあった。

 騒がれる前にクラウスはここから逃げ出し、世間の目から逃げ続けながらも出来る限りの事をやり続けた。貧しい人には住居や食糧を与え、穏やかに暮らせる様に防衛に特化した町を作り上げたりした。

 

 流れ着いた噂では、一家の生き残りであるクラウスが爆破及び殺人の容疑者として追われてはいたものの、彼によって助けられたという証言が幾つかあった他に、殺された者達について探ったマスコミから次々と裏の顔というべき部分がバレてしまい、人々の信頼もガタ落ちし、何もかも全て失ったという。

 これによって、クラウスの罪状はお咎め無しとなったが、それでもクラウスは帰らなかった。全ての罪を償うまで自分は帰らないと心から誓ったので、無実となった今でも各地、各世界を転々と移動しながら人々の為に尽くしたのであった。彼によって助けられた人々は彼を英雄と称したが、本人はそう呼ばれるのは嫌がった。自分はそんな人間じゃないとキッパリと言っていたという。




散々引き延ばしにしてたけど、ここで一旦解説です。まずは上からです。

・夢の世界
ここで言う夢の世界というのはMinecraftの事。仮にドルフロみたいな崩壊している世界ならば、マイクラのMODとかを使えば、世界復興出来たんじゃ無かろうか。コーラップスは流石に分からんが、それでも処理出来るんじゃね?
ちなみに、MODは使い放題になってる。特に一番便利なのは一括破壊MODとかそこらかもしれない。また、ダイヤピッケルやネザーゲートはマイクラのみのアイテム扱いとなってる。多分、大体やった事のある人や聞いた事のある人ならば知ってると思う。



続いて、中から。

・クリ姉
正式には「クリエーターのお姉さん」だが、もっと正式に言うとゆっくり実況者ホタ氏のオリジナルキャラクター。ホタさん、無許可でごめんなさい……。
これまでハンターだったり、村長や族長、更には病院の院長だったりしたのは、これまで実況をやってきたそれぞれのシリーズと関連性があるからである。その為、道を敷きたいという欲望が溢れてはズビャズビャ言ったり、補助金で「んほぉぉぉぉぉ!!」と喘いだり、更にはワン、ワーンッ!!と叫んだりしていた。建築に関しては本当にプロとも言えるレベルなので、いざ建築関係となると「ワーイ、ウデガナルゼーッ」と喜びながら作っていく。お姉さんは今日も元気です(白目)

なお、クリ姉は「ドラゴンクエストビルダーズ」の主人公ではなく、あくまでも「ホタ氏のオリジナルキャラクター」というだけですので、そこは区別して頂けると幸いです。

・アレフガルド
ドラクエシリーズにおいて多分知らぬ人は居ないんじゃ無かろうか。多分。
ここでのアレフガルドはドラゴンクエストビルダーズでのアレフガルドとなっていて、そもそもビルダーズというのは簡単に言えば「ドラクエ版のマイクラ」と思って頂ければ理解出来ると思う。
時系列は初代ドラクエで、竜王の問い掛けに「はい」を選んでしまったその後の世界となっていて、大体は公式が説明してくれてる通り。ビルダーズでは意外にも大砲とかレンガキッチンとか、案外ブロックみたいな状態ではなく、ちゃんと丸みを帯びていたりしていたのが感動的だった。ビルダーズ2ではまさかのアップデートにクッキングヒーターとか追加されちゃったし。でも、しゅき(語彙力)

・アサルトドアーとデモンズウォール
ファイナルファンタジー4においてトラウマとなった人も少なからず居たとは思うだろうボス敵の1つ。何が恐ろしいかと言うと、コイツ等、即死技を持っているが為に戦闘不能になって追い込まれたのが最大の原因でもある。特にデモンズウォールなんて後のFFシリーズにおける有名なトラウマモンスターであるトンベリと同じ様にじりじりと迫って来る為、多くのプレイヤーは早く倒さなきゃと焦っていた筈。

・ペンシルロケット
現実でも作れたりするのだが、ここではMOTHERシリーズのペンシルロケットについて記載する。初代から3まで登場していたが、一番猛威を振るったのはMOTHER2から。特にペンシルロケット20はかなりの高火力を持っているので、これさえあれば大体のボス敵を葬れるので、ゲームバランスをぶっ壊すアイテムとなった。しかも、終盤で安く売られている。

・メテオシャワーTNTとかスカッターボム
マイクラのTNTブロックMODの1つ。普通、TNTは1発の威力はショボいものの、連鎖爆発が起きるので、幾つか積み重ねたり大量に並べたりすると恐ろしい兵器と化す。しかし、TNTMODはたった1個だけで殆どのフィールドを破壊出来てしまったりする他、凄い勢いで地形を破壊するものだからその処理が追い付かずにフリーズするなんて事も多々ある。絶対に荒らしたり、面白半分でやったりするのは止めましょう。やるとしても自己責任で。

・別に魔法でもダメージ通ってるなら、爆破したって問題無いだろ?
それ以前に伝説の剣じゃなくても、殴れたり、普通の呪文が効いたりした時点で「伝説の武器用意する意味あるの?」と疑問に思ったり。良くてもゼルダシリーズはちゃんと聖剣でトドメ
刺したりするけど、ドラクエとかは拳でも倒せる時代になったしなぁ……。

・ハンマーとオリハルコン教団
クリエーターのお姉さん編のパート2にて設立してしまったある意味恐ろしい宗教団体。信者と思わしき部分は何故か墓標になってるし……クリ姉が壊れてルビス様もドン引き。



最後に下の方です。

・爆発による威力を利用したグローブ
うえきの法則という漫画に登場する鈴子・ジェラードが身に付けていたグローブ。一見ただの指先に穴が開いたタイプのグローブだが、持ち前の「ビーズを爆弾に変える力」を利用した推進力を使った攻撃で、その威力はミサイル並。あの有名なシーンでは、鈴子が凄くぶちギレており、そのグローブで往復ビンタしたのだが……下手すれば、頭の部分が吹っ飛んでマミるのでは?

ちなみに、鈴子はアニメの声で担当したのは何と能登麻美子さん。この人、ドルフロではUMP9の声を担当していたから、ちょっとした中の人繋がりという意味合いはあるものの……UMP9がぶちギレながらグローブでビンタするなんて光景は正に一番のキャラ崩壊起こしそうな気がしたので、止めておきました。

・ペニーガール事件
元々はフリーのゲームである「ペニーガール」が元ネタ……なのだが、内容が内容の為、ハートフルボッコなグロゲームである。只でさえ紹介文が嫌な予感しかしないし、極めつけはロシアンルーレットをミスったらどうなるか……一体少女は何回死ななければいけないのか……(白目)

ただし、まさかのTAS対応してたらしく、凄い金額ハイスコアを叩き出した。やっぱりTASは神様だったんだ!(ぇ


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Q.これはシスコンですか? A.もう問題は片付いた後でした

前回の後日談的なモノ。仕事も辞め、少しの間はちょっとだけ時間の猶予が出来ましたが……ニート生活なんてしてられない。決まるまで仕事を探さねば……!


「で、今に至る訳」

「へえ、そうだったの」

 

 クラウスの暗く壮大な過去を聞いた二人は改めてクラウスの良さを再認識した様子だった。しかし、あんまり面と向かって話した経験は薄い為、中々彼の姿は想像し難い感じだ。

 

「あれ……?だとしたら、指揮官は何時からクラウスさんと会ったの?」

「別の世界も含めて、一人で転々と移動し続けた時、偶然にも立ち寄ったのが、あの蝶事件が起きた場所なんだ。歩いていたら、暴走状態となっていた鉄血兵から襲われてな。黒曜石で壁を作って囲んでは、穴を数メートル掘った後、背後から奇襲を仕掛けるのは正にプロだったわ……あの黒曜石、どういう原理になってるかは知らないけど、爆弾だろうと何だろうとちょっとやそこらの攻撃で崩れたりしないから最強だったわ。岩盤より劣るけどね」

「そんなに……?というか、岩盤より劣るって……」

 

 その人も大概人間辞めてるなぁ、と実感すると同時にグレイ達と同じくヤベー指揮官と扱われてもおかしくない理由に納得がついた。

 

「道中、俺らも世界巡っていた様な状況だったからな。話してみると会話がまあ弾む弾む。そんで意気投合して、今もこうして同じメンバーに居るって事よ」

「そうだったんだ。あ、じゃあ、あたいからも質問。クラウスさんはともかく、例の託された子達のその後どうなったの?」

「あー……あの子達か?そうだな……あの事件が終わった後に家族にこれまでの経緯を説明したら安心して、お金の方も何とか無事に解決したらしい。後々にクラウスが元々あの家族の一人であった内容を手紙を通して驚いていたんだが、少しの間だけ娘達が世話になった事や助けてくれた事、何よりも狂った家族を止めるべく一人で立ち向かった事が一番影響していたのか、クラウスは無実だと訴えてくれたそうだ」

 

 その後、都合の良いタイミングだったのか、マスコミからの裏情報も取れ、クラウスの罪は次第に無くなり、後は彼の帰りを待つだけだったのだが……。

 

「ただ……何時まで待っても帰って来なかったという理由もあり、何処かの地で彼が建物を建ててくれたり、食糧とかも与えてくれたという噂が耳に届いたのか、居ても経ってもいられず、ついには自ら約束を破っては探しに行ったんだ」

「えぇ……(困惑)」

「当時はそれぞれの親も反対していたんだが……娘の威圧にヤバかったのか、すんなり許可してしまったんだと」

 

 彼女達はクラウスの言いつけ通りに成長はしていたものの、色んな意味で逞しくなってしまった。家族を支えると同時に彼を探すという行動は一番大変な事だっただろう。

 

「というか、それ以前にどうやって探そうとしたの?世界は広いから、決してそこに留まってるなんてケースも無いと言い切れないと思うし……」

「普通に考えたらな。だけど、1つだけ方法があった」

「方法?」

「これを両立出来る方法……それはグリフィンに入隊する事だ」

「入隊って……これまたぶっ飛んだ発想が来たもんだなぁ」

 

 女の子が軍隊関係に就職するとは誰が予想出来たか。だが、これにはある理由があるとグレイは説明した。

 

「まあ、当然の反応だよな。でも、それの方が都合良かったんだ。彼女達が行動を起こしたのも蝶事件を境に思い付いたんだと。戦術人形が登場し、人手も足りない状況の今、グリフィンや正規軍からすれば一人でも多くの人手は欲しかったんだと思う」

「具体的にはどうやって?」

「聞けば、あの子達は軍の内部とかで働くよりかは前線で戦う事を望んだそうだ。言うならば、戦術人形のフリをした生身の人間……本来ならばこんな滅茶苦茶な要求は前代未聞だ。当初はグリフィンもそれは駄目だと断ったんだが……」

「……もしかしなくても、滅茶苦茶強くて優秀だったとか?」

「お察しの通りで助かるよ……」

 

 原則として、E.L.I.D.や鉄血兵の他にテロリストとかも対応するのだが、基本は戦術人形で倒すというのが当たり前となっている。だが、この三人だけは違った。クラウスから受け継がれた力は戦術人形よりも遥か上の力を見せ付け、たった三人で鉄血の基地の1つを壊滅させたなんて噂も立っていたと聞かされている。

 彼女達は軍に入る前は必死になって勉強し、家族を支えながらも強くなる方法を編み出し、ついにはクラウスと変わらない爆弾魔へと豹変。これまでクラウスが残したクラフトレシピを参考に、ペンシルロケットやロケットボム、例のグローブまで作れるモノは全部作ったとか……。

 

「ねえ、さっき術人形のフリをしたって言ってたけど、その戦術人形って誰?」

「M1911、GSh-18、G17の三人だ。そうだな……ちょっと待ってろ」

 

 タブレットを動かし、ある写真を見せるグレイ。そこには嘗ての幼さの面影を残したクラウスとセラ達の写真が写し出されていた。

 

「これが例の三人と、その後の写真な。何となくだけど、それっぽい雰囲気残ってるだろ?」

「あ、ホントだ。この赤い髪飾りがG17?で、ちょっと丸っこいのがGSh-18?最後にM1911は……え!?変わり過ぎじゃないか!?髪の毛バッサリ切っちゃったのかい!?」

 

 最後だけ凄いビフォーアフターに驚いたUMP40。そりゃそうだ。エリカがM1911となる前は確かにロングヘアーだったのだが、グリフィン入隊を機に彼女は髪の毛を切ってはショートヘアーにしてしまったのである。だが、前よりも更に可愛く、明るくなった気がしなくも無い。

 

「クラウスも名前とか兄として呼ばれるまでは気付かなかったらしいぞ?ちなみに、クラウスが最終的に再会したのはAR小隊の救出任務。この時は俺達が初めてグリフィンの任務を引き受けた時だな」

「懐かしいね。今でもあの光景は忘れられそうに無いかも」

「初見の人から見たら鉄血以上のヤバいモノを見たって嘆いていたからな。で、俺達が暴れている様子をモニターから見ていたんだと」

 

 その時のセラ達は基地の中で命令が来るまで待機していたの事。ぶっちゃけ彼女達も最終兵器に近い位の強さを持っているので、いざという時に備えてタイミングを待っていたのだが、それも無駄に終わった。言うまでもなく、彼等が好き勝手に暴れた結果があのザマである。

 そして、彼の姿を見てハッと気付いた彼女達は間違い無くクラウスだと感じたらしい。基本、爆弾で戦う人物など相当限られていたので、確信に至ったという。

 

「後は、まあ見た目は変わってたとしても、彼の纏う雰囲気ってヤツかな?それも理由になったとか。で、任務が終わった後は真っ先に駆けつけては泣きながら抱き着いてたね。けど、お仕置きされたがな」

「ああ、何年も放置したツケが回って来たのね」

「正解。ちなみにお仕置きってのが、結婚してくれなきゃ嫌だっていう人生の墓まで持って行くという……しかも、親公認」

「自分の娘を助けてくれたし、暴走した家族を止めたりしたし、ここまで性格の良い人が不幸せになるのはおかしいからね。ていうか、そろそろ幸せになって」

 

 あまりにも人生が修羅場過ぎたので、クラウスは幸せになっても良いと思う気持ちは誰もが考えてはいた。が、肝心のクラウスに限っては「え、ちょ、待って……色々と段階とかすっ飛んで何が何やら……」と混乱していた。大方、自分を否定しながらその手の話はまだ早いと言っていたに違い無い。

 だが、既に外堀から埋められてしまっている以上、クラウスは完全に諦めてしまい、「絶対に守らねば……(使命感)」と逆に自身を追い込むというアホな形になってしまったが。

 

「これからも頑張るんだから、サポートとかストッパーが増えたと思えば良いし。アイツの場合は戦闘もそうだが、人の役に立ちたい仕事の方に熱中し過ぎてぶっ倒れないか心配」

「うん、それは何となく分かるわ」

 

 特に建築に限っては夜になっても建てて行くスタイルなので、本当に身体の方は平気なのか?と仲間が心配していた点もちょこっとあったらしい。だから、止める為にもセラ達を使った方が返って好都合だったりするのだ。

 少し休んだ所でバチは当たらないのだが、そろそろ休む時はしっかり休んで貰いたい所だ。

 

 

 

 

 

「よし、これでOKっと……」

 

 グレイ達がクラウスの過去話とかに浸っている間に、彼は彼でグリフィンの建築及び増築を行っていた。グリフィンの財政事情では、結構資金とかは貯まってはいるものの、せめて低コストで抑え、可能な限りは自分の手で解決するをモットーに活動している。

 

「この家具はどうするべきか……」

 

 まだ一人で世界を渡り歩いていた際に立ち寄った場所では様々な家具が売られており、これをじーっと見ては完全再現させた実力まで成長していた。時々、タヌキインパクトによる悲惨な出来事を垣間見た時には「その気持ち、凄く分かる……」と納得していた。

 ともあれ、こうして増築しては部屋を作ったりしてグリフィンの助けになっている。増築だけでも結構な金額を要するのだが、無限開放アイテムを存分に使った結果としてほぼゼロ円で済ませた。言うまでもなくMODの力である。

 

「流石です。ここまでグリフィンを大きくするなんて。他の皆さんが見たら驚きますね」

「とは言っても、大きくなり過ぎても問題なんだよな。資金とかもそこまで受け取っていなかったりするから、どうしてここまで大きくなったのか問い詰められる予感がする。多分、正規軍辺り黙っちゃいないだろ」

「そうですね……」

 

 正規軍の話に関しては、まだ1つもマトモな内容を聞いた覚えは無い。噂だと何処かの組織に対抗すべき為に鉄血の力が必要だと唱えているとか。

 暴走して頭が狂ったんじゃねぇの?と鼻で笑うが、仮に正規軍がグリフィンに来たとしたら……そう考えると本当に面倒になりそうだ。

 何かあったとしても、情報など一切渡さない。仲間ですら引き抜くならば、こちらはお前達の心臓を引き抜いてやろうと脅す覚悟で行く。それが彼等の生き様だ。

 

「ついでに異世界は一切教えちゃいかんがな……間違い無く今後の計画に支障が出る」

 

 クラウスはある計画を考えていた。今ここに居る世界では医者の数は圧倒的に少なく、住民も鉄血やE.L.I.D.に襲われないか恐怖の日々を過ごしているだろう。

 どうするかと考えた結果、ある方法を思い付いたのである。それは、一時的だが住民を異世界の方へと避難させ、その間にクラウス達はコーラップスの処理及び復興作業という何ともスケールが大き過ぎるプランだった。

 当然ながら、本当に大丈夫なのか?と心配する声があるかもしれない。しかし、それの方が返って好都合だ。異世界の方に連れて行けば、ある程度の住居や食糧とかも提供出来る他、お姉さんがクリエーターから院長へとジョブチェンジし、大勢の仲間達を率いて登場。ただし……。

 

「セカンドオピニオンでこの病院を選ぶとは良いセンスじゃ。じゃが、この病院を選んだが最後、もう二度と主治医が待つ病院へ戻る事は許されん。お姉さんや分かっておるな?」

「へへへ……勿論でさぁ……大きな治療費を払って頂ける大事な患者様だ。真心込めた最高のおもてなしで、この病院無しじゃ生きられない身体にして差し上げますよ」

「クックック……そうじゃ、それで良い……」

「あんたの主治医は最高のパートナーだったのかもしれねぇが、それはもう過去の話さ。俺のテクで前の奴の事なんて忘れさせてやるよ……」

「男性主治医と男性患者のカップリング……!病室のベッドを手配(ベッドメイキング)して来ます……!」

「血の汚れはプロの俺にお任せ下さい。痕跡が残らない様、綺麗に消しておきます……」

 

 一癖も二癖もあるヤベー奴等が登場。念の為に行っておきますが、決してやらしい事や惨殺現場みたいな感じだったりしませんのでご安心を。

 けど、クラウス達をドン引きさせるのは十分過ぎた。また、一時期ケンジもこちらに足を運んだ事もあり、エージェントも少しここで学びたいとそっちの方で世話にはなったらしいのだが……。

 

「毎回思うが……何故こんなにも多くの仕事やら何やらやって来たのにも関わらず、彼女の集まる人員は癖の強い奴等しか集まらないんだ……」

「私、元鉄血ですけど……何か実験とかされませんよね……?」

 

 果たして、この計画に彼女達が参加して良かったのか……ただ、腕っぷしは間違い無く良いレベルなので若干悩ましい所でもあった。

 お姉さんからすれば、これもこれで大助かりな案件でもあるのだが、やはり部屋が足りなくなったりするのがご愛敬。そこでクラウスのクラフト能力を用いてサポートしてあげるのが役目。

 たまに家の方を頼まれたりもするのだが、ちょっとしたイタズラ心でヤバい物件を作ったりした。例えば……。

 

「1つだけ注意点がございまして……くれぐれも、壁の後ろは見ない様にお願いします」

「えっ……?」

「ちなみにですね、前のここにお住まわれた夫婦なんですが、確か……旦那さんが行方不明になってしまった様で。未だに、旦那さんの方は見つかっておらずでして。奥様の方は、その確か……病院の方に入院なされたとか。まあ、お客様には関係無い話ですかね!(笑顔)」

「怖いわよ!一体何が起きたって言うのよ!?」

 

 あたかも事故物件に見立ててホラー演出を出すというエグいドッキリをした事があり、聞いた人物は気が気じゃないと思ってゾッとしたらしい。まあ、嘘なのだが。

 ちなみに、最初に巻き込まれたのは言うまでもなくWA2000。彼女がホラーや幽霊苦手という情報を何処から聞いたのか、彼女から直接リフォームとかで頼まれた時には悪い笑みを浮かべていたという。尚、壁の後ろにはリアル過ぎる白骨死体のレプリカがあったという。

 

 己の正義を貫いてる半面、人を驚かす知識は誰よりも強かった一面であった。




実際、マイクラ能力とか正規軍とかに見られてしまったら一番ヤバい気がするのは確か。あああいう奴等こそ一体何しでかすか分からないし怖い。
まあ、お帰り願うかハンマーとオリハルコン教団の一員になるか……他にも対策は考えてありますよぉ(ゲス顔)


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最終鬼畜グリフィンの入隊試験 上

M4「この1ヶ月間何をしていたんですか……?」
作者「すまんて……就職難と同時にちょっとばかしスランプとかも起きて……気分転換とかでひたすらゲーム動画見てたら1ヶ月間経ってた……。」
UMP9「ちなみにゲームは何見てたの?」
作者「デッドライジング、アンチャーテッド、トゥームレイダー、ラストオブアス、モンハン2&3G、HALO……あ、今ではホライゾンゼロドーン見てます。」
全員『見過ぎ!!もっと早くやれ!!』

そんな訳で遅れて済みませんでした……ただ、動画見てたお陰で少しだけネタが増えたので無駄じゃなかったです。海外のゲームばっかりだけど、アサシンクリードみたいな人間辞めてる系のゲームってホントにすこ。


 民間軍事請負会社「グリフィン&クルーガー」。暴走する鉄血人形をI.O.P.社と連携しながら鎮圧や阻止を繰り返し、人類最後の砦となる組織。

 だが、それは前までの話。今では指揮官たるグレイ達が前線で戦い、圧倒的で且つ理不尽な位に強く、たった数名だけで鉄血の戦力を押し返していた。当然、そこに属している戦術人形達もちゃんと戦ってはいる。

 彼等のお陰もあり、次々と解決すべき問題ですら彼等が率先してやっては働き続け、今では住民の安全や生活の他に人々の不安となる要素を除去している最中でもある。ここまで聞けば安心と思える反面油断は出来ないと思う人物も居るだろう。

 

 しかし、時折彼等は一度思うだろう。「何故彼等はあんなに強いのか?」と。

 毒を以て毒を制すという言葉がある様に、目には目を歯には歯を。そして、人間ならば人間を。相手が人形ならばこちらも人形で戦うべきだと。そういう風に思われていた。

 だが、彼等はそれに囚われない。寧ろ、臨機応変に自由な戦い方で良い。自由に生きて良いと全てを表しているかの様な姿だった。それを踏まえた上で言うと、彼等は鉄血だろうがバケモノだろうが怯える事なく普通に戦う。

 度外視した彼等の行動には疑問を持たれても仕方が無いだろう。故に誰かがそう喋ったのか、或いは気に掛けてはいたのか、誰かがこう言った。

 

「誰でも良い。とにかく、彼等について詳しい情報を一つでも多く入手して来い」

 

 そう言ったのは正規軍に勤める上官。正規軍はこれまでグリフィンとは何度か関わってはグレイ達を正規軍の所に引き入れようとしたりして、後に困らない様に戦力として確保するつもりも考えていた。

 しかし、ことごとく失敗。グレイ達側からしたらあまり良い噂を聞かないという一点張りだったが、逆にグリフィンでは「変態達が集う会社」だの「鉄血相手に普通に戦えるヤベー奴等」だの「捕まえた鉄血を正気に戻した人外魔境」と……大体合ってる噂がチラホラと囁かれていた。

 そんな所にわざわざスパイ染みた行動をしてまで調査して来いと言われて誰がすんなりと頷くか。ここに居る誰もがお前が行けだの何だの押し付け合いが始まってはざわざわと騒ぎ始める。だが、正にタイミングが悪かったとも言うべきか、さり気無いある一言によって事態は進んでしまう……。

 

「なあ、折角ならこの前入って来た新入りにやらせば良くね?」

「お、それ良いな!俺、あそこまで行って何されるか怖くて仕方ねぇし……」

「余計な仕事を増やしたり、死んだりするのは勘弁だからな……そういう訳だ、新入り。お前、1週間後にグリフィンの所に行って来い」

 

 

 

「へ…………?」

 

 

 

 いきなり話を振られ、話の筋が見えない少年は最悪な形でグリフィンに赴かなければいけなかった……。

 

 

 

 

 

「はぁ……どうしよう……」

 

 そして、ついにその日が来た。入隊なりたての少年は荷物を持ってグリフィンにやって来ていた。何故こんな事に……と嘆いているが、多分居ようが居なかろうがそうなっていた可能性が一番高いだろうと悪運を受け入れてしまった。

 昨日話を振られた少年は一体全体どういう事なのかを最初から説明して貰うと同時にグリフィンについても少々教えられた。少年もグリフィンについての噂は知ってはいたが、まさか自分がその調査をして来いと言われるなんて思いもしなかっただろう。気付いた時には顔を青褪めていて、断る事も出来ず、人生が終わったと気分が沈んでいた。

 

「自分だって好きであんな所に行きたいとか言わないのに……何でよりにもよって入隊したての俺なんだ……」

 

 少しばかりの実戦経験はあり、体力にも自信がある。だが、まだ階級が低い内は雑用をするのが手一杯だった。それも仕方無いと溜め息を吐きながら一歩ずつ前へと進む。「あ、俺身代わりなんだ……」と絶望しながら。

 しかし、辿り着いたらどうしようかと問題がまた浮かび上がる。本来はグリフィンについての調査をするつもりなのだが、変に怪しまれたりしたらどうしようと思う部分もあり、下手したら何かされると思い込んでいたからだ。幸いにも1週間という猶予があった為、少年は前以てグリフィンに来る事を連絡。そして、その内容というのが……。

 

「そ、そちらのグリフィンの方で応募……いや、め、面接をしたいのですが……」

 

 まさかの面接スタイルだった。その上、変に緊張していたのか口調も落ち着かない。ついでに言い換えてしまえば上司の許可無くしての転勤とも言えた。色々と道という道を踏み間違え、危ない橋を渡り、気付いた時には後戻りが出来ずに「どうすんだコレ!?」と言わざるを得ない状況に。

 気が重くなりそうだったが、もうどうにでもなれと諦めていた様子もあり、少年は覚悟を決めてグリフィンの元へと訪れたのであった。

 

 時間は遡ってグリフィンの方では、仕事の途中で入って来た連絡を取っていた。受話器を取ったグレイが応答に答える。

 

「はい、こちら民間軍事請負会社グリフィン&クルーガーでございます。ご用件は何でしょうか?」

『あ、あの……私、正規軍に勤める士官候補生の「フラン・レイモンド」と申します……そ、そちらのグリフィンの方で応募……いや、め、面接をしたいのですが……』

(うん?)

 

 この時点でグレイは何かあると察した。それ以前にグリフィンはグレイ達だけで十分だったりするので一人や二人が加わった所で大して変わらないだろうし、ましてや邪魔になるかもしれないと言い切った方が妥当だろう。応募とかもしていないので、既に相手が嘘であるというのはバレているのと一緒だった。

 だが、緊張して震える声から何か訳があると同時に、仮にも本当に就職したいのなら何処まで耐え切れるのかどうかも確認したかった等……様々な思考が巡る中、グレイは―――

 

「あ、ありがとうございます。では、何日がよろしいでしょうか?」

 

 と、すんなり引き受けてしまったのであった。大方話した後、即座に全員を集めて緊急会議。404の力を借りて彼の正体や関係性を全部纏め、1週間後に訪れる彼をどうするか考えていた。

 

「まさか正規軍が来るとはね……けど、この子もこの子で可哀想だ。成り行きは把握しているけど、まだ入ったばかりの子にスパイ活動させるとは」

「年齢は16歳……薄い金髪少年ね……妙な所でショタっぽい雰囲気あるけど、コレ大丈夫?」

「まあ……なんて可愛らしいの……♡」

「ヤバい、スプリングフィールドの目が野獣みたいに輝いているんだが」

 

 一体何があったんですか、とM4が声を掛ける。聞けば、ここ最近で指揮官との恋仲となるカップルが多過ぎている影響なのか、これはマズいと危機感を感じていたそうだ。勿論、恋する乙女みたいに願望を持っている人物も多数。ヘリアンに関しては同意して頷いていて、グレイ達からすればアホくさと呆れていた。

 

「秘密を探れって言われた感じの子だけど、どうするの?」

「問題そこなのよねー……電話の声だと落ち着いた雰囲気じゃなかったし、それも踏まえて確かめてみる。面接担当するなんて初めてだけど……」

「とりあえず、質問リストとか考えた方が良くね?」

 

 確信に迫る質問はなるべく避け、まともな質問を全員で考える。理想としては体力が有り余っていて、瞬時に判断が出来る人物に近ければ好条件だ。

 互いに待ってから1週間後。ついにその時が訪れたのである。グリフィンに入ったフランは警備員に面接の事について話し、警備員の方でもフランが来たら道を示す様に伝えた。

 言われた通りに進むと普段グレイ達が仕事する執務室の方に。ドアをノックしてから「どうぞ」とグレイが返事をする。フランは一呼吸落ち着いてから―――

 

「失礼します!」

 

 ドアノブに手を掛け、そっと開いた。そこにはグレイ、鷹山、ケンジ、エル、ザックが揃いも揃ってグリフィンの制服を着ながら椅子に座って待ち構えていた。

 まさかの面接官5人という圧倒的且つ圧迫面接。これにはフランも予想外だったのか内心で焦っていた。

 

(ご、5人……!?)

「初めまして。私は民間軍事請負会社グリフィン&クルーガーの指揮官を勤めているグレイ・クニクスルです。他4名の指揮官も居ますが、今日はよろしくお願いします」

(他の人達も指揮官!?)

 

 最初からクライマックス。潜入する場所間違えた感が半端無く出ていた。そんな様子を監視カメラからじっと観察して見ていたクラウスはゲラゲラと笑っている。

 

「アイツ等が丁寧語で話すとかwwwwwファーwwwww」

 

 笑い過ぎて若干引いたが、おふざけオンリーの鷹山や魔改造ばかりで開発室に引き籠りなザックが一変して真面目な性格になるというのは……どうしても気になるだろう。戦術人形達も気になっては映し出されたモニターから目を離せないでいた。

 一方でグレイ達の方では軽く自己紹介と階級を済ませた所で、いよいよ本格的に質問を問う準備が完了した。最初に切り出したのはグレイから。

 

「基本、我々の事業内容や活動内容を知ってはいると思いますが、かなり体力が必要となります。戦術以外の用途で頼まれる事があるかもしれませんが、その辺りは大丈夫ですか?」

「はい!正規軍の方で入りたてではありますが、それでも追い付けるまでの体力には自信があります!」

(体力の方は問題無し……と)

 

 そう言って貰わないと困る。グレイ達は雑務よりかは前線で戦うのと同時に畑仕事や建築なども行う為、体力が多めとなる人材を希望していた。見事にヒットしたので、次はザックが質問を投げ掛けた。

 

「君は何か細かい作業とか考える方は得意かね?」

「はい。いずれは前線で指揮を執るべくして指揮官になるつもりでもいたので、細かく考えたりするのは得意です。ちなみに作業というのは一体何ですか?」

「仮に君が捕虜として捕らえられてしまったり、或いは武器も無ければ通信手段も無いという様な過酷な状況下で遭遇してしまった際にどうするべきか……そうならない為に必要なサバイバル技術を学ぶ必要があるんだ。順応性や応用力が求められるが……行けるか?」

「大丈夫です。作る事に関しては得意ですが、出来ればこれまで何を作って来たのか見せて貰ったり、手順が書かれた紙とかあれば」

(成程……でも、言われてみりゃ経験無い奴からすれば無茶振り同然だわな)

 

 これもある程度は欲しい技能。特にサバイバルに限っては知識が多ければ多い程生存率も高くなり、戦いでも大いに役立つ。機械で作るのもそうだが、時たまに手作りで何か作らないといけない場合もある。この子は多分秘めた才能を持ってるかもしれないとザックは思っていた。

 

「次は俺からだな。戦況や仕事柄でもそうだが、コミュニケーション能力も必要だ。相手の心理を読むのもそうだが、時には優しくしたり接したりするのも大事だ」

「加えて俺からでは忍耐力や正確に敵を仕留めるだけの攻撃力……例え正規軍と言えども、これまでとは違った方法で身を守る術を学ぶ事になるぞ?」

「ま、まだ日が浅いというのもありますが……追々慣れて行くしか無いと思ってます!」

 

 ケンジとエルからのダブル質問。ケンジは持ち前のコミュニケーション能力で鉄血と話し合える事を実現し、エルはグレイや鷹山に劣らずとも敵を倒せる実力を持っている。

 これもまた必要な能力でもあるが、彼が来るまでの過程を考えたらまだまだ慣れ始めたばかり。こればかりは仕方無いので妥協。最後に鷹山の質問が……。

 

「じゃあ、最後に俺からの質問だけど……今じゃ世の中だとE.L.I.D.だとかAIの暴走だったりとか、ある意味現実じゃ考えつかなかった事がこうして今起きてる訳だよな?」

「はい……」

「誰しもあんなのだったら焦ったり驚いたりするだろう。けど、それでも慣れる為にも順応性というのが一番必要となって来る。これから先は予想外な事ばっかり起きるかもしれないが、深く考えたら駄目だからな。受け入れるんだ」

「は、はい……」

 

 最後に関してはグレイ達の異様な行動の数々だったりとかだろう。ただでさえ異世界に旅したとか、物凄い機械を作ったりとか、事実を知っているのは極僅かな人物のみ。

 そんな一体何が起きるのか全く分からないまま伊達に人外魔境と呼ばれてはいないと恐れられた場所に何も知らない人物がそこに放り込まれたらどうなるのか。無理にも程がある。

 しかし、グレイは一通り答えた質問を通して何かを感じたのか、真っ直ぐにフランを見つめながら告げた。

 

「成程……大体君の能力とか具体的な感じは良く分かった。とりあえず、この場で言わせて貰うけど……合格だ」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。ただ、それは別にもう一つ試験を受けて欲しい内容があってだな」

「もう一つ?それは一体何ですか……?」

「難しい話じゃない。簡単に言うと、1週間後にパルクールとサバイバルを用いたE.L.I.D.の殲滅と鉄血の無力化に挑んで貰いたい」

「は……?」

「ただし、武器は現地調達。武器を作るのはアリだ。ついでに俺達も参加するし、武器は何も持ち込まない前提で行く。あ、見捨てたりはしないから安心してくれ。元々俺達も行くつもりだし、同じ様に参加するつもりだったからな。新たな試みであると同時に自分がどれだけ生き延びれるか挑戦したくてな。もしもの事態に備えて習得しておいて損は無いからな」

 

 その言葉を聞いた瞬間、フランは絶望した。絶対これはダメなヤツだと感じてはいたが、既に逃げ道は閉ざされてしまった。

 まだまだ絶望はこれから始まったばかり。唐突に始まった面接ついでに死ぬかもしれない体力試験。一体、この試験の行く末はどうなってしまうのか……。




ちなみに、フラン・レイモンド君の名前の由来はそれぞれ「デズモンド・マイルズ」、「ネイサン・ドレイク」、「フランク・ウェスト」、「ララ・クロフト」を全部ミックスさせながら且つ普通に居そうな名前として考えました。

ここまで来ると絶対生き残れる強キャラ感が半端無い。後はもう分かるよな……?


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最終鬼畜グリフィンの入隊試験 中

信じて送り出した新人君がグリフィンのチートにドハマリしてゲス顔ビデオレターを送ってくるなんて……。

フラン「そこまでなりませんからね、俺!?」

まあ、どの道AK-12とAN-94と遭遇した際には顔を真っ青にする位の絶望を見せたい位。「ヤベー奴」の代名詞は俺等だけで十分だと分からせたい(ゲス顔


 最悪だ、とフランは溜め息を吐いた。何故よりにもよってこの試験を受ける羽目になったのかを。

 確かに最初はちょっとしたスパイ活動も兼ねて彼等の活動を知りたいという気持ちや、場合によってはここに就職したいという気持ちも少なからずあった。だが、現状では想像よりも遥かにヤバい場所だと悟った時点で既に遅く、後悔だけしか積み重なる。

 しかも、これから行う試験も死亡フラグ一直線と言ってもおかしくない危険な行動。流石のフランも「あ、もうコレ死んだな……」と目が死に掛けていた。しかし―――

 

「かと言って……死ぬのも真っ平ゴメンだ……」

 

 考えてみれば、人間辞めてるとは言え彼等も人間。どういう過程であれ彼等も生き抜く為に戦っている。正規軍よりもここに居る彼等の方が余程救世主とか英雄とかに見える。

 同じ人間なのに、だんだんと離れて置いて行かれるなんて情けないにも程がある。だったら死ぬ覚悟でやってやるとフランは吹っ切れた。

 

「あ~ら、何だかカッコ良くなった感じ?」

「え?あ、どうも……」

 

 いきなり声を掛けられたので驚いて振り返ったが、そこにはUMP45が居た。同時に404小隊の存在も思い出す。彼女達も噂程度でしか聞いた覚えが無かったが、まさかここに居るとは思わなかっただろう。しかし、フランは404よりかは1週間後に行われる試験とかの方で頭が一杯だった。

 反対にUMP45は彼の様子を隈なく監視していたが、何一つとしてスパイらしい行動を取っていない事に少々不満はあったものの、これはこれで弄り甲斐がありそうだと内心て小悪魔的な笑みを見せる。今でも404の存在は誰にも知らされる訳には行かないが、フランが覚醒した様子にこの子が何処までついて来れるのか期待している所もあった。

 

「何かごめんね~。私達の指揮官って何時もこんな感じだし、いきなりあんな話を振られて驚いちゃったでしょ?」

「ハハ……そうですね。けど……同時に納得も出来るんです。あそこまで言うって事は、絶対生半可な覚悟を持って行っては死ぬ……きっとあの人達は俺からでは想像も付かない出来事に何度も遭遇したんだと思います。だから、今日だけじゃなくこれからもずっと強くなれるんだと」

(間違ってもいないんだけど、若干違うというか……)

 

 これ以上強くなっても怖いから、と口が裂けても言えない。彼等は本当に何処まで強くなるつもりなのだろうか?鉄血とか諸々超えて、ついには人の手には負えない存在に……。

 

(いや……深く考えるのは止めておこう……)

 

 考えたら最悪な光景しか見られない。この前も何時しか何処かの前線で鷹山が手にガソリンとかに手をちゃぽんと突っ込んだ後、懐からライターを取り出してまさかの着火。「俺のこの手が真っ赤に燃えるゥ!!」とか叫んだ後、鉄血兵の頭を掴んで「ヒート・エンドォォォォォ!!」と叫んでいたのを覚えている。

 あまりにも狂気染みた行動にM4が発狂してから落ち着かせるまでちょっと時間が掛かった。ゴリ押しを超えた何かにこれには全員がドン引き。こんな行動を何の躊躇いも無く思いついては行動に移せる位に怖いのだ。

 

「あの……少しだけ聞いても良いですか?」

「え?あ、ああ……良いわよ。何かしら」

「今回の試験内容って……皆さんは知ってたりは……」

「してないし、知っていたとしても教えるつもりある?」

「ですよね……」

 

 普通ならば教えるつもりは一切無いのだが、今回に限っては誰もがUMP45も含め誰もが知らなかった。つまりは彼等が唐突に考えたのだろう。

 彼等が行う試験については先程聞いた限りだとかなり体力が求められる内容なのだが、それを知ろうと後からついて行っても無理な気がした。多分何処かで脱落するから。

 

「でも、やれるだけ頑張ってみようと思います。もしかしたら、俺もあの人達みたいになれたりして……」

「………正気?」

「分かってはいるんですけど、どうせなら正規軍の奴等に見返すのも一興かなって。あそこはちょっと居辛いなぁって部分も若干あったりしたものですので……」

「名誉とかお金とか要らない方?」

「従って動くより、迅速に動きながら状況を覆せるなら何とでも。何事にも囚われない生き方ってのも悪くないかもしれません」

 

 そう言ってニコッと笑みを浮かべるフラン。さっきまでの不安だった様子が嘘だったみたいに良い顔になっていた。

 この子はきっとグレイ指揮官達と同じ感覚を持っているのかもしれない、とUMP45はそう確信していた。

 

 

 

 

 

 試験までの間はグリフィンで書類仕事をしたり、空いた時間を使って体力トレーニングをメインにやり続けていた。

 走り込みだけじゃなくロッククライミングやパイプ管を使って登ったりするなど、段々とトレーニング内容がハードになりつつなっていた。

 

「凄いな……アイツ、普通じゃ考えられないルートを伝って走ってやがる……」

「まさか、指揮官達はこうなる事を想定して言ったとか……?」

「それはちょっと考え過ぎ……あー、でも考えそうね。これまで旅して来た指揮官なら危ない場所でもスイスイ行けたんじゃない?」

 

 遠くからフランの様子をAR小隊がじーっと見ていた。体力には自信があると言っていたが、ここまで運動神経が良いとは思わなかっただろう。

 しかし、これだけでは物足りなかったのか、ついには近場にある廃墟ビルや建物がある場所でも走っては忍者の如くジャンプし、空中で回転したり、ゴミ袋が溜まっている場所にイーグルダイブするなど、見ているこっちがドキッとしそうになったりした。

 

「え、エージェント……見た……?」

「ええ、見ました……あんな高い所から良く怪我も無く平気で済みましたね……」

「ひぃっ……!こんな高い所からジャンプするとか正気じゃないでしょ……!?」

 

 その時偶然徘徊任務をしていたデストロイヤー、エージェント、アーキテクトが見ていたそうだが、やはり鉄血側の人形でもその恐ろしさというのは伝わっていたそうだ。

 同時に「あ、コレ人間辞めてる子だわ」と認識が広がったのは言うまでもない。以下、それぞれの感想。

 

「まるで日本の忍者を見ている感覚でした……あれ?でも、彼は外国人ですよね……?」(一〇〇式

「何なんですかアレ!指揮官達もそうですけど、正規軍の人もあんなに野蛮なんですか!ソ連みたいにやってる事が派手です!!」(スオミ

「えええええっ!?あ、あんな高い所から落ちるなんて……!高所恐怖症の私からすれば恐怖です……!でも、あんな所から空を飛べたら……」(M1014

「最近の鬼ごっこはここまで進化したんだにゃー。え、違う?」(IDW

「あらあら……あんなに熱くて大胆に行くなんて……あそこまで頑張れる子を見ると、好きになりそう……」(DSR-50

 

 と、フランに対する警戒も何だか薄くなりつつあった。そして、いよいよ例の試験が行われようとしていた。目的地までは車で進む一同だったが、途中から段々と雰囲気が変わって来る。

 彼等が居る場所は少し離れた廃墟の街並み。丁度良い所で車を停め、朽ちたホームセンターを拠点に彼等は準備を始めた。

 

「さて、これから行う試験について改めて説明をしよう。今回の試験はこの廃墟に蔓延るE.L.I.D.の殲滅。それから数分後に遭遇する鉄血との戦闘だ」

「あ、あの……鉄血との戦闘って一体どういう事なんですか……?もしかして、予めこうなる事を予測していたとかですか……?」

「いや、違う。本来ここに来た目的というのは「ある物」を回収すべく少数でここに来たんだ。ついでに安全領域を確保する為にもな」

「ある物とは一体なんです……?」

「聞いた噂程度かもしれないが、何でも別世界に行ける装置があるんだとか無いだとか……それが遺跡か研究所だかにあるらしく、もしそれがあったなら俺達が回収しなきゃいけないと思ってな」

「変な話だろ?だが、これが鉄血の手に渡ったら大変だからな。もしも、過去に遡って変えられたりしたら……最悪なシナリオになるのは間違い無い。噂だとしても、人と人で通じたり、ネットで囁かれていたりしたら大変だ」

 

 それは確かに恐ろしい話だ。これにはフランも顔が少しだけ強張ってしまう。しかし、それならば逆に鉄血の暴走を無かった事にする為に過去に遡るというのは……?と考えていたが、それを見通したかの様にグレイが釘を差す。

 

「蝶事件を無かった事にしたいと思ってるか?そりゃ必ず誰もがそう望むかもな。でも、ダメだ」

「それは何故です……?」

「俺達は蝶事件もあってからこそグリフィンという場所で戦いながら生きている。そこで沢山の仲間に会って、沢山の思い出とかも作って来た……それで過去を変えるというのは、これまで積み重ねた幸せな時間ですらゼロに戻すというのと一緒になるんだぞ?記憶が無くなっているかもしれない恐怖にお前は耐えれるのか?」

「………!」

「そういうこった。ああいうモノって迂闊に触れないし、本当に何が起きるのかさえ全く予想がつかん」

 

 ああ、また悪い癖でやってしまったと自分を責めるフラン。どうしても怪しいと思う部分は深く追究したり、何かしら考え事をしたりしていたなど度々やってしまう事が何度もあった。それに、彼等の言う内容にも一理ある。もしも、自分が同じ立場ならきっと嫌な気持ちになっていただろう。

 

「ま、気に落とさんな。それは人間として当たり前な考えかもしれないけど、君みたいに何事も考えるって発想は俺達からも評価している。今は過去だろうがスパイだろうが関係無く頑張ろうぜ」

「はい……え?」

「言っておくけど、君がグリフィンに何しに来たかってのは知ってるから。それも踏まえた上で君を試そうとしたけど……何だかんだで君は俺達と同じ強さを持ってるかもな」

 

 ハハハと笑うグレイだったが、もう完全にバレていた状況にポカーンとなったフラン。やっぱりこの人達には敵わないかもしれないと実感したが、それでも気にせず試験を始める事にした。

 とりあえずはホームセンター内に使えるモノは全部揃えた。消火器だろうとヘルメットだろうと使えるモノは全部。こんなモノが一体E.L.I.D.殲滅に役立つのか?と不安になるかもしれないが、彼等はそれよりも遥か斜めの方向で成し遂げる。

 

「武器が無ければ作れば良い……サバイバルにおいてはこの技術は必要となる。作り方は自由」

「作るって言ってもどうやってですか……?電気とか流れていないから工具とか使えないのでは……」

「何、その為のガムテープさ」

「ガムテープ!?」

 

 「ほら、見てろ」とザックは茫然となっているフランを無視して作り始めた。素材に使ったのはスレッジハンマーと消火斧。これを組み合わせてからガムテープでベリベリと固定して作ると、凶悪な武器として出来上がった。

 

「うわぁ……」

「名付けて「ディファイラー」だ。中々イカすだろ?」

「恐ろし過ぎて何とも言えませんよ!!」

 

 殺意バリバリの雰囲気を出している武器。ハンマーに斧の刃が取り付いているなんてゾッとするとしか言い様が無い。何よりもガムテープだけでどうやって作れたんだ、とツッコミを入れたくなる。

 だが、ここで愚痴をこぼしても仕方無いのでフランもやる事に。作るにしても何か予想外なモノを作れば良いのだろうかと疑問視するフラン。すると―――

 

―――カラカラカラ……。

 

「ん?」

 

 うっかり何かを蹴った感触が。視線を追い駆けると蹴ったのは懐中電灯だった。ただのライトかと思った瞬間、その隣には宝石が転がっていた。

 

「待てよ……」

 

 ここでフランは何か閃いたのか、懐中電灯と宝石を拾って作業台に乗せる。作りたい全貌を試行錯誤しながらベリベリとガムテープを張り付け、ものの数秒で彼は初めての改造武器を開発した。

 そして、ライトの電源を入れると―――

 

―――ブォン!!

 

「わぁっ!?」

「うおっ!?レーザーソード!?スゲェ!!」

「マジか……こりゃとんでもないダイヤの原石を見つけたかもな……」

 

 スイッチを入れた瞬間に光の刃がスッと飛び出た。これが自分の作った武器なのか?と驚いてはいたが、案外作れれば何ともなるんだなと納得してしまった。

 改造の味を楽しめたのか、フランの創作意欲が次々と溢れて来る。後から続く様にグレイ達もいよいよ製作へと入る。

 

「じゃあ、俺はダイナマイトと弓矢で……ブレームボウの完成。後は宝石とエイリアンマスクを使って……レーザーアイの出来上がり」

「じゃ、俺は電動丸ノコと皿で……プレートランチャー!それと、オートバイエンジンとボクシンググローブでドラゴンパンチ!」

 

 次から次へと恐ろしい手作り兵器が完成していく。威力は絶大で、E.L.I.D.じゃなくとも大怪我か死亡するレベル。

 作り上げた武器を手に市街地への方へと向かう一同。その先にはコーラップス液によって肉体が腐り、死ぬ事すら許されないE.L.I.D.達が大量に居た。これもまた人類が解決しなければいけない問題なのだが、それを食い止めるべく彼等は恐れずに前へと進む。

 

「そんじゃ……一丁やるぞ!」

 

 掛け声と同時に各々は殲滅を開始した。作ったマスクからレーザー光線が発射したり、丸ノコで皿を発射しただけなのにゾンビを切り刻んだり……とにかくやる事が派手の一言だった。

 また、壊れた車と車を修理と改造をし、凶悪な車へと変貌させては大量のE.L.I.D.に向かって突撃を仕掛けたりするなど……やりたい放題だった。

 

「ハハハ、見ろ!E.L.I.D.がゴミの様だ!」

「重火器じゃなくても、E.L.I.D.って普通に倒せたんですね……」

「フラン君は真面目だなぁ。ほら、もっと笑って笑って!」

「色んな意味で笑えませんよ!」

 

 鹿の頭部の剥製を被って突進したり、炎を纏っている剣と盾を使ってはガンガン進んでいたり、エレキギターとアンプを組み合わせた楽器で大音量のシャウトしたりする人達を見て笑える要素は何処にあるのだろうか。それでもゾンビ達は死ぬのだから何の問題も無いと言い切ってしまうのだが。

 

「所で感染とかのリスクは……?」

「大丈夫。基本、状態異常攻撃は起きない様に乱数調整してるから」

「どういう理屈ですか!?」

 

 多分こいつ等にワクチンとか要らないのではないだろうか。そんな事がありながらも1時間後には周囲のE.L.I.D.は大方全滅し、これで少しは安全領域を確保出来た。

 何とか無事に終わったフランも一息ついたが、まだ試験は始まったばかりだ。次に目指すは奪われてはならない技術が隠されている場所だ。




戦闘描写は細かく書けぬ……済まぬ……済まぬ……。
コンボ武器って凄く多くの種類あるから、その分どうやって書こうか迷うんだよね。だから、細かく書けるのはちょっと難しい……何から何までダメな私で済まない……。

・俺のこの手が真っ赤に燃える
機動武闘伝Gガンダムのシャイニングフィンガーの事。Gジェネだと流派東方不敗を習得した人がチラホラ多く居てヤバい。特にギンガナムとグラハムは。

・イーグルダイブ
アサシンクリードにおいて必須のテクニック。高所から藁が積み重なっている所に目掛けて飛ぶ。ただし、打ち所悪いとマジで死ぬ。アサシン教団は何故あんな風に飛んでまで無傷なんだ……(白目)

・ガムテープ
デッドライジング2から始まったとされる「コンボ武器」。コンボ武器を作る際、必ず作っているシーンが挟まれるのだが、どのシーンでも何故かガムテープでベリベリ引っ張ってはくっ付けて固定しているだけの光景しか無い。そんな有り得ないモノをポンポンと作り出す事から「ガムテの錬金術師」と呼ばれる伝説にもなった。ちなみにグレイ達がこれまで作った武器とかも全部デッドライジングシリーズから登場した物。3だと車と車で改造する事も出来てしまった。


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最終鬼畜グリフィンの入隊試験 下

とりあえず生存報告。生きてます。
コロナの影響で感染者が増えるわ、パニックは続くわ、死亡者数も次々と増えるわ……死亡率が低いとはいえ、まるでニーアとかドルフロ世界に似て来た気がして少しゾッとしました。

ついでに、仕事も受かりました。けど、死なない事を祈りたいのみです。この時期は色々と洒落になりませんから……電車や病院とかも怖いですし。皆さんも無事に過ごして下さいね。


 グレイ達の試験内容が個人的に気になっていた戦術人形達はこっそりとドローンを動かしながらも、グレイ達の様子を上空から観察していた。

 だが、そこで見てしまったのは何の恐れも無しにE.L.I.D.達に立ち向かい、果てには巻き込まれた正規軍から来た新人のフランでさえ逞しく戦っている光景ではないか。衝撃の内容に様々な感情が入り交じる。

 

「なあ、これどうすんだよ?ここまで変えてちゃ政府のお偉いさんも黙っていない気がするが」

「最初は私達の指揮官が強い秘訣とかを探りに来たんですよね……あれ?でも、彼がこうなったらもう正規軍は彼一人で大体解決出来るんじゃ……」

「つまりグリフィンは強化人間を育てる研究機関という可能性が微レ存……?」

「アンタ達ここを何だと思ってるのよ」

 

 ひそひそ話すAR小隊にAR-15がツッコミ。ただ、彼女自身もそう言われてしまうと何とも言い返し辛かった。何せ、実際にここに居るのは人間の皮を被ったバケモノ揃いのヤバい人達なのだ。しかも、指揮官という立場。

 そんな混沌と化した場所に知っていようが知らなかろうがホイホイと誘われて来た人物が誰であろうと逃がす訳には行かない。寧ろ、絶好のチャンスだったのだろう。

 

「彼、この後どうなるのでしょうか?」

「ここに残って仕事を続けるか正規軍に戻るかの二択だもんね。まあ、戻ってもあんまり良いとは言い切れないし、何か実験動物とか扱われてもねぇ……」

「そんな!彼がそんな酷い目に遭うなんて私は絶対反対です!フラン君を傷付けようとするならば、私が守ります!」

「うふふ……貴女だけ楽しむだなんてズルいわ。私もあの子は狙っていたんだから、じっくり楽しみましょう……?」

「DSR……!」

 

 目を合わし、ガシッと握手をするスプリングフィールド。他の皆も「出会っちゃったよ……」とか「フラン君逃げて超逃げて」と心配する声がチラホラと居て、何だか嫌なショタコン同盟が成立した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 一方で一通り街中に蔓延るE.L.I.D.を殲滅したグレイ達は山の中を進んでいた。例の装置はそこに隠されているという。

 

「よし、一旦車を停めよう。ここからは徒歩だ」

「え?奥まで行かないんですか?」

「鉄血もそうだが、ゴロツキとかそういう奴等に壊されたら堪ったもんじゃないからな。せめてまだカモフラージュ出来るここならまだ救いある」

 

 なるべくバレない様に車を茂みの中に隠し、地図と方位磁針、それとGPSを頼りに進んで行く。なお、フランはお得意のフリーランで木々を軽々と登り、周囲の様子を確認している。

 

「あの子スゲェな。正規軍に返すには勿体無い人材だ」

「どうせアレだ。どんなに正規軍が散々威張り散らしていてもマトモに動こうとはしないだろうし、鉄血の攻撃だけでも手一杯なんじゃないのか?」

「噂によると、他の企業か組織やらと抗争しているって話らしいぞ」

「あ、だから俺達を引き入れようとしてたのね。下らな過ぎる」

 

 段々正規軍とかの関係がブラックな気がしてならない。以前にゴルフと麻雀での対決の件もあったので、良い印象とは言えないだろう。一度解体された方が良いんじゃないかと考えたが……。

 

「待てよ……寧ろ俺等が正規軍乗っ取れば良いんじゃね?」

「そこに考え至るとは……お前、天才か」

「もしかしたら俺達みたいに隠された能力持った子とか居るかもしれねぇしな。ダイヤの原石だらけな予感」

 

 実際に交渉(物理)で攻め込んで行きそうな雰囲気で、何が何でも不可能を可能に実現出来そうで怖い。彼等の発言に盗聴器を通して聞いていた戦術人形達もこれにはドン引き。

 エージェント達からすれば、そんな強化人間みたいな存在がポンポン生まれるのかと思うとゾッとしてならなかった。そうなると間違い無く鉄血は終わるに違い無い。早い段階でグリフィンへ転属して良かったと心からホッとした。

 

「あ、見えて来ましたよ」

 

 話し込んでいたらフランが一つの建物を見つけた様子だった。どうやら噂通り、人知れずの山奥にひっそりと建っている立派な研究所がポツンと置かれていて、廃墟というまでには行っていない様子だった。しかし……。

 

「……鉄血が占領してますね」

 

 そこにはグレイだけじゃなく、鉄血兵達が根城にしていた様子だった。基地の1つとして作っていたのか、或いはグレイと同じく例の噂を確かめる為にここへと来たか。どちらにせよ出会ったら敵対しそうな予感は目に見えていた。

 

「呼ばれても困りますからね……俺、ちょっくら行って来ます」

「お、新人君の実力発揮見せちゃう?良いよ良いよ、見せちゃって」

 

 そう言ってフランは周りを見て確かめる。すると、近くに二人の鉄血兵が偵察して歩いているのが見えた。肉眼で確認出来る辺りでリッパーだと判明。

 すぐさま木を静かに渡り、道中でナイフと籠手をガムテープを使って改造して出来た「アサンシンブレード」を両手に装着。目標地点まで近付いた瞬間に大きくダイブし、サクッと首元を容易く突き刺した。

 

「おお……」

「ビューティフォー……」

「まるでアサシンの様だ」

 

 無駄なく動く暗殺術にグレイ達も大満足。が、ダブルアサシンをした際の音が出たのか、同じく見回りをしていたヴェスピドが近付いて来る。

 だが、フランには見えていたのか把握しているかの如く茂みの中に隠れ、通り掛かった所をガバッと乗り出してはサクッと突き刺し、殺したヴェスピドを茂みの中に隠した。

 

「次は……高台とかに見張っている奴が邪魔かな」

 

 今度は高所から監視しているイェーガー達を暗殺すべく、かれこれ作って来た投げナイフを何本も用意し、更には暗殺には打って付けの弓まで取り出した。

 攻撃出来る場所に移動し、早速弓を使ってイェーガーの頭部に狙いを定めて弓矢を放つ。頭を貫かれたイェーガーがそのままバタリと倒れ込み、ほぼ無音だった為か周りの鉄血兵は次々と味方が暗殺されている事に気付いていなかった。

 

「意外と弓矢でも倒せるんだな……まあ、硬過ぎて倒せなかったら困るし」

 

 元々人形は人間に近い形にする為に作られた様なモノなので、そこまで耐久力を上げようとかまでは深く考えてはいなかったのだろう。こればかりは唯一の救いでもあるのだが。

 

「敵襲だ!急げ!ここに人間が居る筈だ!」

「げ……」

 

 見張りを全部倒したかと思いきや、施設内で待機していた鉄血兵達が慌てた様子で出て来た。しかも、暗殺していた事まですっかりバレていた。

 誰かに見られていたのかと思うかもしれないが、鉄血兵は体内にGPSを仕込んでいるのと一緒で、反応がロストすればその対応にあたらなければいけないのだ。詰まる所、フランが鉄血兵を暗殺した影響で次々と反応がロストし、あまりにも数が減っているという異常に誰かが襲いに来たのではと勘付かれてしまったのだ。

 

「居たぞ!居たぞおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

「ヤベヤベヤベ……!大量にやって来やがった!」

 

 隠れる暇も無くすんなりと見つかってしまい、ほぼ囲まれた状態に。しかも、相手はマシンガンとかアサルトライフルを持っている分もあるので余計に性質が悪い。

 流石に被弾だけは避けようと障害物などを利用して敵の猛攻を防ぐ。隙を見ては投げナイフとかで反撃し、敵が落した武器を使って撃ち返したりしていた。

 

「分が悪いな……俺達も行くぞ」

「了解」

 

 これにはグレイ達も参戦。急いでフランの所まで近付き、これまで作ったヘンテコな魔改造武器で反撃を仕掛けた。

 

「グリフィン!?しかも、指揮官が自ら出て来るとは!だが、ここで貴様等を仕留めれば―――」

「昇竜拳!!」

「うわらば!?」

 

 ドラゴンパンチを装備した鷹山が一気に詰め寄り、それを見事なアッパーで吹き飛ばした。しかも、ショットガンとアサルトライフルを組み合わせた凶悪な武器でバンバン撃ったり、炎、雷、氷の属性を持っている信号機みたいなハンマーを使って殴ったり、カラーコーン複数とバッテリー等も組み合わせた武器で衝撃波みたいに声だけで相手を吹き飛ばしたりするなど、ゾンビ相手じゃなくてもやりたい放題だった。相手からすれば新種の武器を開発したとか疑われそうになるが、間違っていないし誰でも作れたりするかもしれない程度だが。

 

「死ね人間!!」

「おわっ!?せいっ!」

 

 フランの方では複数のブルートやガード、果てには近接武器を持った鉄血兵に囲まれてはいたものの、相手の攻撃を流してからザクッと突き刺し、敵を掴んではポイッと投げ飛ばしたり、即席で作った煙幕を真下に向けて投げてから煙に紛れて殺すの繰り返し。最早コイツだけでも十分強い雰囲気がそう示していた。

 

「この……!」

 

 盾を構えながら近接を仕掛けるガード。フランは即座にピッケルを取り出し、相手の動きに合わせて攻撃を避けながらカウンターキル。盾持ちですら状況によっては面倒な相手だというのにあっさりと倒したのだ。

 

「な、何なんだこの人間共は……!退却!退却するぞ!」

「逃がすか」

 

 何一つ情報を漏らされても後が困るので、ここは殲滅一択で鉄血兵を一人たりとも逃さずに仕留めた。

 周囲の警戒を怠らず、研究施設内を歩く一同。まだ電力も残っていたので、ロックの付いた扉を解除しながら奥地へと進む。そこには―――

 

「おぉ……」

「これは凄いな……」

 

 目の前に広がるのは様々な機械が設置され、これでもかという位に分かり易い転送装置らしきモノが。ザックが試しに電源を入れて詳しく調べると、転送以外にも何処かの通信機とか回線機器とかに繋がる事が出来る機能までもが付いていたという。

 

「ほー。また大層ヤベーものを残してくれたもんだな人類」

「偶然だったのかどうか分からないけど、これを鉄血が持ち逃げされてたり占領されたりしてたら大変だったな」

「で……これ一体どうするんですか?」

「そりゃ持ち帰るに決まってるよ」

「え……?持ち帰るって……本気ですか?これ全部解体して持ち帰るだけでも相当時間掛かりますよ?」

「んなの最初から分かってるよ。けど、俺達がそんな事してまで持ち帰るだなんて何時言った?ま、発想自体は半分合ってるんだがな」

 

 どういう事なんですかと理由を聞くフラン。その答えにクラウスが荷物からあるモノを取り出した。それは……。

 

「ここにシルクタッチのエンチャントが付与されたダイヤピッケルがあるじゃろ?」

「え゙っ、何ですかそれは……?というか、それは持って来て良いモノだったんですか……?」

「これは流石に別枠。試験の時はあくまでも現地に落ちているモノだけを組み合わせて武器にしてゾンビを倒すみたいなもんだから。その代わりとしてコレは一切使わなかったんだよ。始める前にここの場所を聞いて、もしかしたら役に立つかもしれないと思って持って来たんだが、案の定持って来て正解だったみたいだ」

「だからって何故つるはしを……」

「グレイ、ここの部屋を片っ端から撮ってくれ。完全再現したいから一ヶ所も洩らすなよ」

「ほいほい」

 

 グレイはタブレットでカメラ機能を起動させ、今居るここの部屋の様子を全部写真で撮る。そして、粗方写真が終わった後はダイヤピッケルを持って機械に向けて叩き始めた。

 

「ちょ、こんな事をしたら機械が壊れ―――」

「ほい、こんな感じにな」

「!?」

 

 突然、ブロック状へと変化した事にフランは唖然となった。グレイに続いて鷹山達もダイヤピッケルを使って機械を全部取り壊しながらブロックへ変換されていく。

 もしかして、こうする事によって安全に取り外し、それを持ち帰った後は撮った写真と同じ様な位置に置く事で完全に再現するつもりなのでは?とフランは勘付いた。そうでなければこの行動に対する理由が思い付かないからだ。

 

(やっぱりこの人達は何を探っても理解出来ない内容ばっかりだな……)

 

 正規軍に戻り、彼等の強い秘訣を伝えたしても彼等は理解なんて出来ないだろう。絶対に馬鹿馬鹿しいとか一喝されるに違い無い。

 逆にこうして学んだ自分がここまで強くなったのは、自分の中に秘めたる可能性を見つけ出し、そこから本領発揮を見せたのだろう。無茶苦茶な内容であったとしても、割と馴染めたのだから。

 転送装置を全てブロックに変換し終わった後、彼等は研究施設に手作りの爆弾を大量に仕掛けてから脱出。数分後には大きな爆発が起きた。またあそこで基地を作ったり、噂を聞きつけてやって来て面倒になっても困るので、証拠は一切出さないという形で本日の試験は終わった。

 

 

 

 

 

「よし、メンテナンス完了」

 

 後日、転送装置となるブロックを写真の通りに置き直した後、正常に動くかどうかテストした結果無事に稼働する事に成功した。

 ひとまずコレを使って過去を変えるとかそういうのはしないが、せめて過去の世界で旅行に行くという位ならまだ良いかもしれないという形で使用は留まっているそうだ。

 

「にしても、フラン君戻らなくても良かったのか?」

「はい。こっちの方がやっぱり合ってたというか、しっくり来たので」

 

 あの後フランは正規軍から戻って来る命令が届いたらしく、一旦グレイ達と別れる事となった。グリフィンで情報を掴む事が出来なかったのと相手に目的がバレていた理由もあってか向こうは相当頭を抱えていた。

 彼は再び士官候補生として地位が戻ったもの、グレイ達との経験で慣れてしまった故かたった一人で1個小隊や1個中隊レベルの敵を全部葬ったという伝説を残してしまう。当然ながら魔改造の経験が大きかったのか、ライフルやマシンガンにグレネードランチャーの部品を付与させてアップグレードするという有り得ない行動をしたそうだ。

 ついでに言うならば爆弾矢とかも作り、ハンドガンも原型何処行ったというまで強くなったとか。ちなみに基本持って行くのはハンドガン、ライフル、ショットガン、弓。ついでにピッケルと無数のナイフ。こればっかりは必ず持って行ってるとか。

 

「それが原因で上層部とかはもしかして下剋上でもするんじゃないかと焦って、ついには異動扱いになりまして。酷くないですか?これでも頑張った方なんですけど」

「その頑張ったという点の大半は貴方がたった一人で殲滅したという恐怖しか無いのですが……」

「噂だと「どうした!?それで全力か!!」と煽ったり、燃え盛る炎をバックにゆっくりと進む姿が恐怖だとか呟かれてたぞ」

「私知ってる。こういうのって人間の言葉で言うなら「一番怖いのは人間」だって」

「そこまで言います!?酷いです皆さん!!」

 

 元鉄血達からもフランの行動にはドン引きだった。鉄血側からしたら怯みもせずにただ一人で立ち向かっては殺し続ける彼は鬼とか悪魔だとか言われても仕方無い。例えて言うならば某コマンドーを相手にしているのと同類。それに挑むのは最早無謀。

 結局の所、正規軍の疑問は解消されず、グリフィンに新しくメンバーが増えたというだけで終わってしまうのであった。




MOD化したM4って何かララに似ている様な気がするんだよね……特に性格。あの豹変っぷりはマジでヤバい。
彼女の遠い祖先が実はそんな家系だったとしても妙に納得出来ちゃう。

・アサンシンブレード
ご存じアサシンクリードにおいては必須の武器。ぶっちゃけAngelBeats!の奏が使っていたハンドソニックと似た様な感じに近い。

・まるでアサシンの様だ
隠密とか暗殺とか苦手な人とかも居るんじゃないだろうか。結局の所何故かバレちゃったパターンが多く、最終的に殺せば良かろうなのだ!という感じで終わるのが多い。そうなるとダサシンと言われてもしゃーない。

・ヤベヤベヤベ
アンチャーテッドのネイトさんって必ず遺跡が崩壊したり爆発する際、脱出する時は必ずこのセリフを言う。これまで壊された遺跡の被害総額がどれだけ酷いのか……(白目)

・カウンターキル
トゥームレイダーとかアサシンクリードとかオープンワールド系のゲームでは必須なスキル。特にララ姉さんはジャガーやオオカミ相手とかでもカウンターが取れた経験がある。何故攻撃出来たんだ……。

・シルクタッチのエンチャントが付与されたダイヤピッケル
元ネタはマインクラフトから。マイクラにはエンチャントテーブルを使ってそのスキルを付与する必要があるのだが、これがまた面倒臭い。そのスキルが出るまでは全部ランダムで出現するので時間がかなり掛る。コレが無いと窓ガラスとか氷ブロックとか特殊なブロックを回収する事が出来なくなり、エンチャントしたモノ以外だと必ず壊れてしまう。

・ライフルやマシンガンにグレネードランチャーの部品を付与させてアップグレードする
トゥームレイダーだとコレが当たり前のシステムなのよね……ララさん、本来は大学を卒業したばっかりの少女だったのに、初めて人を殺して以降は銃とかに関する知識全くゼロだというのに普通に改造しちゃってるんだもん……だから、ゴリララとか呼ばれちゃったりするし、覚醒すれば怖いし……そりゃギネスに入賞されるだけの事はあるわ。


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本編終わってるかどうか知らんけど、サブストーリーはっじまるよ~♪
鷹山「勝利の女神?それなら俺の隣で寝てるけど」K5「やめて」 上


予告した通り、サブストーリーでございます。今回はK5。前々から彼女にはこの手の話でちょっと出したかった方だったりします。本編とも言える内容は下の方を投稿しなきゃ意味無いんですが……。

サブストーリーではキャラの特徴とかをメインに何か書ければ良いなぁと思ってます。


 突然だが、皆さんは運命は信じる方だろうか?

 人生何事においても運というのは最低限必要なステータスとも言える。賭け事においては「来い……!来い……!」と言っていそうなイメージがあったり、勝負事でも奇跡が起きたなんて事は有り得たりする。

 それは戦争も同じくそうだ。紛争状態で何時銃弾が四方八方から撃たれてもおかしくない状況から生還出来たり、死亡者が出るかもしれない不可能な任務を成功した挙げ句に死亡者すら出させなかったや、はたまた「もうここまでなのか……」と思った矢先で救助が来たりする等……そういう所でも幸運というのは付き物である。

 

 巷ではよく「幸運の女神」なんて呼ばれる言葉があるが、その言葉が元となった神は存在する。ローマ神話では運命の女神と呼ばれた「フォルトゥーナ(別名フォーチューナやフォルトゥナ或いはフォルトナ)」がその始まりとなっていて、タロットカードの運命の輪のモデルにもなった。

 運命の車輪を司り、人々の運命を決めると言われているが、基本的に誰かが幸せになるという認識が人々によって強い影響なのか、幸運の女神と呼ばれる様になった。しかし、必ずしも常に幸運を選んでくれる訳では無く、場合によっては不幸が選ばれてしまうリスクもあるのだ。故にそれが人々による認識の落とし穴とも言え、運命とは必ずしも絶対に幸運を選ぶとは限らないのだ。

 

 しかし、もしも常に幸運が続いている存在が居たならば。まるで誰かの運命を弄くれるかの様な存在が居たらどう思うだろうか。羨ましく思うか、妬ましいと思うか。それは誰にも分からない。だが―――

 

「鷹山さんの……バカァァァァァァァァァァッ!!!!」

「あべしっ!?」

 

 とある戦術人形によって叩かれた鷹山はそのどちらにも属する事も無く、ましてや悪用すらしなかった。

 ただ、彼女のポテンシャルと存在意義を全部奪ったのではないかと、叩かれた本人は罪悪感に溢れていた。その事情を知ってるAR小隊も「これは指揮官が悪い」「仕方無い」と複雑で何とも言えない気持ちになっていたという。

 

 一体何があったのか、それは少し遡る……。

 

 

 

 

 

 平和が続きそうなグリフィンにて、グレイ達は今日も今日で仕事をやっていた。彼等が前線で戦い、書類仕事を終わらせ、畑を耕し、民間人の住居を建築したりするなど……やってる事は相変わらずとも言えた。

 しかし、ヘリアンがそろそろ資材を使ってくれないとスペースの邪魔になると言われてしまい、グレイ達も本来戦術人形を多く確保する為の製造の存在を忘れていたのか、今更になって思い出したという。

 

「日頃から俺達前線で戦ってたからなぁ……忘れてもしゃーない」

「ただ、本当に使わなきゃ宝の持ち腐れだからな……」

 

 指揮官自体がとてつもなく強いという理由もあってか、あんまり戦術人形を増やしても仕方無いだろと思っていたのだが……今回の件で止むを得ず使わざるを得なかったという。

 とにかく、適当に使用する資材を使って製造完成まで待っていたのだが、そろそろ出来たとの報告を受けて指揮官直々に出迎える事にしたのだが……。

 

「お前等、情報入手早くね?」

「あら、404だとこの位は朝飯前でしょ?」

「新しい戦術人形が来るって言うんだ。歓迎してやらなきゃ失礼だろ」

「まあ……指揮官の行動に慣れてくれれば問題無いんですが……」

 

 何処から情報が伝わったのか、404とAR、カトレアとトンプソンが既に待ってくれていた。グレイのツッコミにHK416はドヤ顔を見せ、トンプソンとカトレアは新しく来る仲間を楽しみにしていたが、逆にM4は果たして大丈夫なのだろうか?と少し不安になっていた。

 すると、扉が開き、そこから戦術人形が現れた。薄い金髪に中々際どい服を着ている。彼女の手にはハンドガンが握られており、結果からして新しいハンドガンの子だろうとグレイ達は察した。

 

「貴方が新しい指揮官さん?」

「ああ。ただ、俺だけじゃなくコイツ等も指揮官だ。俺達は複数で指揮官やってるが、これでもそれなりに仕事をやって来た。君の信頼に応えられるかどうか……」

「へぇ……」

「な、何だ?」

 

 ハンドガンの子はじーっとグレイ達を見つめる。そんなにじっと見て、何か意味あるのか?と思いきや、次の瞬間には少し戸惑う言葉が飛び出る。

 

「数多くの兆しから見ると……指揮官さん、やはりこれは運命的な出会いです」

『………は?』

 

 これには全員がポカーン。開幕早々、一体この子は何を言ってるんだ?と言いたくなったが、言いたい意欲を我慢して何故そんな事を言ったのか聞くと……。

 

「だってそうでしょ?普段から漂う違った雰囲気にこれまで戦い続けたという兆候。何よりも貴方達が未来の勝利を導いてくれるのだと運命がそう言ったのよ!」

(『ああ……そういう性格か……』)

 

 察した。全てを察した。要するにこの子は占いとか運命とかを信じるタイプなのだと。さっきから兆しだの運命だの言っている辺りからもう彼女の性格が表れていた。

 

「安心して、指揮官。私が来たからには貴方達に幸運をもたらしてあげる。勝利の女神は間違いなく貴方達に微笑んで祝福してくれるわ!」

『………』

 

 一同沈黙。彼女は何も知らないのだ。そんな運命とかじゃなくても圧倒的な運を見せつけてくれる人物がたった一人しか居ないのだと。その人物が今目の前に居る事を知らずに。

 

(姉さん……これ、どうしましょうか……?)

(知らない方がアイツにとっても都合が良いしな……下手に刺激させるのは止めとけ)

(でも、何時かバレる時が来るんじゃない?その時、どうやって説明するのよ)

(問題はそこなんだよね~……)

(鷹山指揮官の存在そのものが幸運の塊とか歩く運命と言いますか……いや、予定調和?)

 

 AR小隊の全員がコソコソと話し合う。幸い、新しく来た子には聞かれていなかったが。

 

「つーか、名前聞いてないんだが」

「ああ、ごめんなさい。ハンドガン「K5」、只今もって着任します」

 

 これがK5との出会いである。グレイ達も当初は痛い子だなぁ……と引き気味だったものの、ここから更に異変が起きる。ある時、グレイが書類仕事をしていると……。

 

「グレイ指揮官、今日の会議は何をするか決めたの?」

「まあな。後はスケジュールを作れば無問題なんだが」

「うふふ、やっぱりそうだろうと思って必要な時間帯は全部書いといたわ」

「え……?」

 

 戸惑いながらもスケジュール表を見ると、何とそこに書いてあったのはグレイが頭の中で考えていた予定や時間帯とかがしっかりと表に書いてあったではないか。

 スケジュールの時間詳細についてはまだ誰にも言ってないし、口に溢してたりもしていなかった筈だ。それなのにK5だけが知っていた。

 

「ね、言った通りでしょ?」

「あ、ああ……」

 

 これにはグレイも固まった。また、ある時は外で戦っていたケンジに対しても……。

 

「待って、ケンジ指揮官。もう暫くしたらあの建物が爆発して瓦礫が飛び散るから、そこでじっと待っていて」

「え、何を―――」

 

 と言った直後、ケンジの近場で爆発が起きた。そして、K5の言った通りにケンジのギリギリの範囲までに瓦礫が飛び散ったが、幸い命に別状なし。K5ですら分かってたのか、見事に避けていた。

 

「危なかったわね。私が言わなきゃ大怪我していたわよ?」

「………」

 

 唖然となるケンジ。彼女がでっち上げで占いとか未来とかを言ってたのではなく、本気でそう言ってたのだと思うと震えが止まらなくなった。しかも、大体の戦術人形にも占いとかをやっているのだが、その占いすら見事に当たりを引き続けるのだ。

 ここまでドンピシャで当てると凄いを通り越して怖いと感じる様になってしまい、この事態にはグレイ達も色んな意味でマズいと感じ始めた。寧ろ、それ以降K5と親しくなりたいと思う人物も中には居るそうなので、尚更見過ごせない事態となった。

 

「別に未来予測とかしてくれる分大いに助かると言えば助かってるけどさぁ……こえーんだよ!あまりにも当て過ぎて怖いわ!死ぬ運命すらドンピシャで当てるのか!?」

「アイツは鷹山の妹か弟子か何かか?そっちだったら占いとか運命も凄く納得が行くんだが」

「生まれてからずっと妹とか弟子とか居ねーよ。居たら今頃お前等と一緒に前線で戦ってたり、旅したりしてるだろうが」

「あ、それもそうか。でも、下手したら弱味とか握られていそうで怖いな……」

「俺はこの子に逆らう事が出来ない。弱み(運命)を握られている……」

「それ一番駄目なパターンだぞ。人生終わるから」

 

 予想外な展開に頭を悩ますグレイ達。世の中知らなきゃ良かったと思う所があるかもしれないが、K5はその辺りを容赦無く伝える。ましてや、予測しながら行動を取るというのは鷹山の株が下がる様なものであった。

 

「占いも程々にしとけって言いたいんだけどね……」

「神経質な奴が居てもおかしくないからな。それに、人生必ずしもその運命を辿るのは絶対に無い。自分の運命も将来も、ましてや夢も自分で決めるものだ」

「あの子には悪いけど、一旦運命云々とか離れて貰わないと。でなきゃ、戦術人形全員が占いにハマったりしたらカルト宗教並みにヤバいぞ」

 

 出会った当初、新手の詐欺なんじゃないかとほんのちょこっと思った事があったが、K5の占いとかが影響して悪徳商法すら始める戦術人形とかが居たら大変な事になってしまう。

 故にその切っ掛けを作り兼ねないK5には一旦痛い目に合わせてやらねばいけなかった。

 

「けど、そんな都合の良い展開あるものかね……」

 

 問題はどうやってK5と絡む必要があるのかだが、現状では特にK5に話す話題も無ければ用も無く、グレイ達は半ば諦めた状態になっていた。

 しかし、数日後にある機転が訪れる。その日もまた執務室で仕事をやっていたのだが、扉をノックする音が聞こえる。

 

「失礼するぞ」

「ありゃ、ヘリアンさん?」

 

 入って来たのはヘリアンだった。仕事柄、彼女と会うのは何時もの事なのだが……。

 

「どうしたんですか、わざわざ執務室まで来るなんて珍しい。普段はこっちに来る様子なんて無かったのに」

「そうなんだがな……少々お前達にしか頼めない案件……いや、時と場合によっては申し訳無い案件でもあるのだが……」

「話の展開が見えないんですが……何があったんです?」

 

 どうも少し言い辛そうな口調になっていたヘリアン。ヘリアンは気まずくなりながらも、グレイ達にある事を伝えた。

 

「こんな事を頼むのは少し心苦しいかもしれないが、恥を承知で頼みたい。上層部のご機嫌取りを任せられないか?」

「うげっ……そういう事か……」

 

 その内そう来るだろうと思っていたが、今になって来たかと顔を少し強張るグレイ達。ヘリアンの言ったご機嫌取りというのは、グレイ達が入隊して以降グリフィンは完全に押し返しによるビッグウェーブに乗っていた。勝利を何度も勝ち取り、鉄血の勢いも弱まっている状況に喜び、何を血迷ったのか飲み会やらゴルフやら上層部のお偉い様を交えて色々しようと考えていたそうだ。

 当然ながら、ヘリアンやグレイ達にもその案内が行き届いていたのだが、飲み会はともかく、ゴルフとかはヘリアンからすれば無理だった。未だに戦争が続いてるのに娯楽に走るとは何事かと呆れる一方だが、参加しない訳には行かなかった。わざわざ相手が誘ってるのに、その誘いを断ったらどうなるか……幾ら何でもそれだけは避けたかった。

 そこで、白羽の矢が立ったのがグレイ達だった。人外染みた彼等ならば対処出来るのでは?とヘリアンは思い、こうしてグレイ達の元に来ては頭を下げてお願いしたという。

 

「自分で言うのも何だが、私も行き遅れの女だ。合コンならまだしも、私にゴルフとかを強要する馬鹿が居るか……!」

「そいつは心中お察ししますわ……んー、まあ、結論から言いますと可能ですね」

「本当か?済まない……こんな仕事はお前達にも押し付けられて欲しく無かっただろうに」

「謝り過ぎですよ、ヘリアンさん。ただ……上層部を相手にせにゃアカンのか……」

「この手のイベントに関して、絶対誰か一人は裏で賄賂とか横領とかの罪を作ってんだろうよ」

「どうせ戦術人形とパコッてんだろ。その上、油まみれなデブ上官……あるあるな展開だな」

 

 想像したら有り得そうだ……とヘリアンすら頭を抱えたくなった程。しかし、本当の問題はそこじゃない。

 

「ゴルフか……やる分なら問題無いな。だが、もしも相手が勧誘目的で俺達を連れて行く為にゲームを持ち掛けたり、グリフィンの戦術人形を目的に賭ける羽目になったらどうする?そっちの方が面倒だ」

「確かにな……グリフィンからすれば一人でも欠けたら戦力が大幅にダウンするし、そんな奴等の元に彼女達を行かせる訳にもいかねぇな」

「だったら勝てば良いじゃない!その為の勝利の女神なんだから!」

 

 バンッ!と勢い良く入って来たのは例の如くK5だった。K5も今が出番の時!と言わざる位に顔が輝いていて、表情からは「連れてけ連れてけ」と書いてあるのが丸分かりだった。まるで散歩を楽しみにしている犬みたいに。しかし……。

 

「それじゃ駄目だ」

「ええっ!?何でよ!?」

「確かに、全力を出して勝てるなら苦労はしないだろう。けど、本当に交渉紛いの事を言ってからこういう展開になった場合、全部勝利で納めるだけが良い事じゃない。相手は腐っても俺達より立場が上の奴だ。全力なんて出してみろ、相手から恨まれて逆に悪いアドバンテージ付けられるのがオチだ。かと言って、負けるなんてのは論外だ。実際にそれが起きるかどうかは分からんが……少なくとも、引き分けまで持ち込ませればいけない」

 

 要するに、上手く同点までに持ち越せという事なのだろう。これには流石のK5も全くの予想外という感じで顔に出ていた。

 

「でも、そんなのどうしたら……ああ、何とかその未来だけは避けなくては!」

「心配すんな。寧ろ、その未来は起こさせないし、絶対に起きない」

「何故そう言い切れんですか?」

「そりゃ簡単な話、俺がこうするべきという流れを既に予測していたからな。幸運とか関係無しで決められた実力でやってやるよ」

「んなぁ!?」

 

 これにはK5もカチンと来た。自分よりも鷹山の方が未来を見通していたというのは自分のプライドが許せなかった事や、何故鷹山が未来を予測出来るのかと色々と言いたい事があったが、とにかくその準備に移らねばならなかった。

 他の仕事とかをグレイ達に押し付ける形になったのが鷹山からすれば少々申し訳無い理由になってしまったが。

 

「悪いな、仕事を増やしちまったけど頼むわ」

「任せろ。こっちもなるべくはサポートしてやる」

 

 そして、ついに鷹山の本領が発揮すべく運命の日がやって来る……。




今回は早く書けた!前のに比べれば大きな成長とも言えるが、また同じ失敗繰り返しそうで怖い……。
後半の方がある意味本気というべきか、TASの本領発揮という事でお楽しみに。
え?嫌な予感しかしないって?今更何言ってんだ(諦め)


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鷹山「勝利の女神?それなら俺の隣で寝てるけど」K5「やめて」 中

前回投稿したのが……ほぼ昨日の夜?で、今日投稿?今まで遅れた分は何だったのか……(白目)
ちなみに、言うほど私はゴルフの知識ありません。ただ、ゴルフでのTASがあった為どうしてもネタにしたかったと同時に専門用語とかちょいとネットで調べた程度です……あんまり分からないので、細かい所は端折りました。

これでもか、とK5ちゃんにTASという現実を突きつけるスタイル。
運命ってこういう事なのよね、仕方無いね。


 ついにこの日がやって来た。例のご機嫌取りをする場所に向かうべく、出向く前にゴルフバッグ等の道具を揃え、服装もそれっぽい奴を使用。

 AR小隊も出来れば見てみたかったりとか、護衛とかもしたいと自ら出てはくれたのだが、あくまでも今回はなるべく一人で済ませておきたいのと、K5がどうしても鷹山の実力を知りたいという理由で彼女を連れて行くという事で渋々納得はしたのだが……。

 

「ごめんな。ただ、今回はあんまり悟られない様にしなきゃヤバいし、上層部達がお前達に何かあってからじゃ大変だしな。仮にもキモい奴だったとしてもな。まあ、そうじゃなくてもお前達が出来る事はそれなりにあるからさ。それに……」

 

 言い掛けた途端、鷹山は懐からあるモノを取り出した。それはサングラス……の様なもので、そうじゃないモノだった。

 

「ちょいと数分でザックに頼んで作って貰ったカメラ付きサングラスでこっちの状況が映し出されるし、後々グレイがドローン型ガーディアンで上空とか別方向からもカメラで見るから安心してくれ」

 

 単純に録画する為なのか、或いはスパイ的な感じで使うのか。鷹山の手元にはあったサングラスはかの有名な「Thug Life Glasses」と呼ばれるものだった。

 それをわざわざ手作りでやった辺り、かなりの拘りを感じる。ちなみに、これを選んだ理由はネットで探したら面白そうだと思って決めたとの事。グレイもグレイでドローンにステルス機能を搭載させる程、用意は既に完了していた。

 

「そういう訳だから、皆頼んだ」

「こっちは任せとけ。一人減った所で書類仕事に支障とかは影響無いしな」

「ザックリ言っちまって……んじゃ、そろそろ行くぞK5」

「うん……」

 

 鷹山と一緒に歩くK5。K5もわざわざキャディーの衣装を着ている辺り、本格的にゴルフやりますという雰囲気が漂っていたが、若干不機嫌だった。宛ら鷹山に言われたのが相当堪えたのだろう。

 

「何度も聞くけど、どうして私が見た運命が駄目だって言うのよ?引き分けをしなきゃいけないって前から言ってくれれば、私はその未来さえ予測していたのに」

「お前の言う未来の予測ってのは当たるし、何度も助かったから別に悪い所なんて申し分無い。ただな……その「未来」だけしか見えていないのが問題なんだよ」

「何ですって?」

「お前がこれまで言い渡した未来ってのはこの先○○が起こるぞ、と予め宣言している様なものだが、俺は違う。俺の場合はその○○が起きる前にどういう過程でどういう流れで起きるのか、「その未来を実現するに至るルート」も含めているんだよ。例えば、これからゴルフをやる際に何打目で且つ合計のスコアで引き分けにするかどうかってのはハッキリ分かるか?」

「そ、それは……」

 

 言葉に詰まるK5。鷹山の言った通り、結果だけを言ってしまえばそれで終わりだが、それが起きる条件というのをK5は言っていなかった。口では何度も起きると言ってる自分に対し、鷹山は正確に間違いの無いルートというのを見通して行動している。まるで本物の未来を見ているかの様に。

 自分の非力さを悔やんだK5だが、それでもまだ本当に実現出来るかどうかの疑問は解消されていなかった。寧ろ、これから起きるのだから本当かどうか見極めなければいけない。その為に自分はここに来ているんだと意気込んだ。 

 

「場所は……それなりに近いかな?」

 

 あまりにも遠い場所じゃない分良かったと思う鷹山。車で数分走った後、目的地に到着。K5には「終わるまではずっと黙っておけ。変に受け答えせずに常に俺と一緒に行動しろ」と伝えてから歩き出す。

 ゴルフ場には上層部の何人かがチラホラと立っていて、鷹山の姿を見るとニコニコした表情で近付いて来た。

 

「やあやあ、鷹山君。わざわざ来てくれて済まないね」

「いえ、こちらこそ私なんかの為に誘って頂きありがとうございます」

 

 軽く挨拶をしてから周りをチラッと見渡す鷹山。案の定、想像していた通り太った男性だったり、いかにも悪そうな事を考えている奴だったりと、エロゲにもよくありそうな男達が勢揃いで集結していた。

 

(これを相手にすんのか……面倒くせー……)

「君達がグリフィンに来て以来、我々としてもこんなに輝かしい奇跡が訪れるとは思いもしなかったよ。どうかね?君さえ良ければ我々の所で働かないか?」

「(で、お決まりのコレか……)その申し出は大変嬉しいのですが、断らせて頂きます。私……いや、私達なりにも事情がありますし、長年付き合った仲間達と離れるというのは私としても心苦しいので……」

「そうか……だが、我々としても君達ほど戦力になる人材は他には無いと思っているんだがね。それなら君じゃなく、君達の居る戦術人形の誰かならどうかね?きっと彼女達ならグリフィンよりも更に活躍出来ると―――」

「それもお断りします」

「うぐぅ……」

 

 ストレートにキッパリと断った鷹山。絶対何かしようと企む様子が顔や行動、雰囲気からしてモロバレだ馬鹿野郎と彼等を心の中で罵っていたのだが……。

 

「ならばこれはどうかね?君達が戦力を提供してくれる代わりに我々も出来る限りの範囲で提供しよう。それならばお互いの関係が平等だとは思うのだがね」

「(やっぱり交渉をして来たか……散々断って、ここでも断ったら何されるか分かんねぇしな……しゃーない)……分かりました。ですが、それをわざわざ言う必要が無かったのでは?」

「それは一体どういう事かね?」

「仮にも今の交渉でも断られた場合……多分怒りながら勝負しろとか言ったんじゃありませんか?元から私やグリフィンの居る仲間を賭けて勝負しようとしてまで。私が負けたら貴方達に従わなければならないのですが、私が勝った場合……その条件を呑んでくれるのか、或いは何をするつもりだったんでしょうかね……?」

 

 見透かされた言葉に上層部達が冷や汗を流しながら押し黙る。やはり只者じゃないと判断したのか、周りの空気が一変した。 

 

「……そこまでするつもりなど毛頭も無い。しかし、我々には君達がどうしても欲しいのだ。ずっと黙っていた事には申し訳無かったが、私にもそれなりの意地というのがあるのだよ。だからこそ白黒つける為にゴルフ場を借りたのだ」

「そうですか。ではその条件を前提に勝負という事でお間違いありませんね?」

「ああ」

 

 そう言って安心そうに笑顔を見せる上層部。対する鷹山もバッグからクラブを取り出す。ゴルフのコースによるが、なるべく最初は下手な自分を演じなければいけない。

 

「ねえ、本当に大丈夫なの指揮官さん……?」

「大丈夫。今はわざと下手な姿見せれば良いんだ」

 

 コソコソと話し掛けたK5だったが、鷹山は平気そうに答えた。しかし、ここで問題があった。

 ゴルフの知識に関しては素人で、直前まで急遽ネットで調べて漸く分かった程度。鷹山にとって一番問題なのは何処までやるかどうかの方だった。

 基本ゴルフのコースは18ホールあり、それを全て回るのが原則となっている。上層部達は18ホールについては何も言わなかったが、仮にも18ホール全て回るなら4時間弱は最低限覚悟しておいた方が良いだろう。

 今回はなるべく早く来たという理由もあってか、昼には終わらせるつもりではあるのだが……それでも絶対に帰してくれなさそうな予感がする。

 

「では、私から行こうか」

 

 最初は鷹山に話し掛けた男性がショットを打つ。動きからしてそれなりに慣れている動作で親しんでいる様でもあった。

 他の男達も次から次へと打つが、これもまた上手いプレイを魅せてくれる。最後に鷹山の出番が回って来たが、作戦通り下手な自分を演じては打数をわざと増やしていた。

 

「おやおや、鷹山君にはゴルフはまだ慣れていないのかね?」

「そうですね……長年ゴルフとは無縁な付き合いなものでして。どう飛ばせば良いか微妙な所です」

 

 アハハハと無理に笑う鷹山に対し、男達はフフフ……と怪しい笑みを浮かべていた。K5も本当に信じて良いのか不安になって来ていて、ドローンやサングラスのカメラ越しから見ていたAR小隊も男達の悪口を言っていた。ちなみにわざわざテレビとかで繋いで中継中。

 

「いけ好かない野郎だ……酒が不味くなる」

「アイツ等殺して良い?殺して良い?」

「止めときなさい。殺したら余計に鷹山指揮官の立場が悪くなるだけよ。私達は私達出来る事があるんだから」

 

 不機嫌になっているM16やSOPMODを宥めるAR-15。対してM4やROはパソコンを動かしながら作業をしていて、鷹山の代わりにやっていた。

 二人も鷹山が少しずつだが追い込まれている状況には少し焦ってはいるものの、彼が簡単な負け方をするとは思っていなかった。そうしているとドアが開き、別の作業をしていた404小隊が入って来る。

 

「お疲れ様。はい、差し入れ」

「お、良いタイミングだな。丁度ヤケになってたから何か飲み食いしなきゃ気が済まなかった所だ」

「貴女の場合、少しでも彼の助けになるなら飲みながら見てないでさっさと仕事の1つや2つやりなさいよ」

「本当にすみません……」

 

 差し入れまで持って来たのにも関わらず、相変わらず駄目な姉に苦労するM4。そんな姉に向けて怒るHK416と謝るM4。

 一方でUMP45はじっと鷹山を見ていた。少し気になったのか、M4が声を掛ける。

 

「あの……どうかしましたか?」

「ん~?別に~。ただ、負けているのにも関わらず、顔からは全く焦りとか不安とかが見えていないのよね。あ、これ重要書類ね」

「あ、どうも……」

「この際ストレートに言わせて貰うけど、絶対勝ちそうな気がする。って、今回引き分け持ち込まなきゃいけないんだっけ?ともかく、鷹山指揮官ならそれ位は出来るでしょ」

「だが、どうやってだ?聞いた話だと、あのゴルフって競技は少ない打数で競うものらしいが、そんな都合良く引き分けまで持ち込めるのか?しかも、現段階で負けてる。ここからどうやって巻き返す?」

 

 M16の問い掛けにうーんと頷きながら考えるUMP45。しかし、たった数秒で有り得そうな答えが思い浮かび、案外簡単なものだと理解した。それは―――

 

「乱数調整じゃない?」

「は?」

「だから、敢えて負け続ける事で巻き返しのタイミングを調整しながら窺ってるんでしょ。ゴルフってなるべく少ない打数で決めるんでしょ?1ホールでホールインワンかイーグルを取り続ければ何とか同点までは行けるんじゃない?」

「……有り得るな、それ」

「あ~ら、AR小隊あろう者が鷹山指揮官信じてないでどうするの~?あの人の事だから、それ位は普通にやりそうだと思う筈でしょ~?」

「いや、確かにそうだが……」

「姉さん……」

「待てM4!誤解だ!忘れてた!忘れてただけだから!そんな養豚場の豚でも見るかの様な冷たい目を向けるな!」

 

 色々と騒がしかったが、それでも彼女達は鷹山の実力を信じていた。多分奇跡起こすんじゃないかと信じているのだから。

 一方で鷹山はUMP45の言ってた通り、乱数調整を行っていた。風向きが変わる様に変なダンスを踊ったり、男達がこれまで打った合計の数を把握した上でどのタイミングで反撃を仕掛けるか何パターンか考え、着実に準備が整う。

 

「ねえ、どうするのよ鷹山指揮官……もう半分終わっちゃったわよ!」

「そうだな……幸い相手はホールインワンやイーグルは未だに出してないし……良くてもダブルイーグルが1回か……さて、そろそろ俺も本気を出すか……」

「え……?」

 

 瞬間、鷹山の雰囲気がガラリと変わる。さっきまでヘラヘラした表情から本気で狙いに行く鋭い目つきへと変わる。男達もざわつく所かカメラ越しで見ていた戦術人形やグレイ達が「キターーーーー!!」と期待が高まった。

 

(何これ……さっきまでの余裕とは違う……!本当に勝ちに行く気なの……!?)

 

 K5でさえ戸惑いが隠せない状況だった。トップとの打数の差は5以上は離れているものの、そこからどうやって巻き返すというのだろうか。

 さっきまで動けなかった男の一人が漸く彼に話し掛けると……。

 

「た、鷹山指揮官……一体どうしたのかね……?」

「ああ、済みません。大体慣れて来たので、そろそろ本気で行きたいと思います」

「本気って……君はさっきまで手を抜いていたというのかね?」

「いえ、全くの素人ですよ?ましてや、私はプロでもありません。グリフィンに所属している一人の指揮官ですから。ただ単純にやり方とかが慣れたので、もう俺なりのやり方で通して貰っても良いですよね?」

「え?」

 

 何言ってるんだコイツ、と戸惑うのも束の間。いよいよ鷹山の番が回って来た。1ホールの全景を目で確認にし、即座に打つ回数と流れを把握した。

 

(円形の湖が無いが、代わりに川っぽいのがある……岩も少しある程度……これで行こう)

 

 3W・250Yのクラブを取り出し、位置を調整してから大きく振って飛ばす。ボールは大きく飛ぶが、勢いが良すぎたのか川に入りそうになっていた。

 

(駄目!このままじゃ……!)

「おや、これは池ポチャですかな?」

「本気というのは嘘だったのかもしれませんなぁ、ハハハハハ!」

 

 彼等が笑い、K5が不安になる中で鷹山はフッと笑った。直後、飛んだボールがガッ!と岩に当たり、なんと普通にフェアウェイまで着地したではないか。

 これには笑っていた男達も唖然となり、M16達は「ぶふぅ!?」と吹き出し、グレイ達は「やりやがったアイツ!」ゲラゲラ大笑いしていた。

 

「い、今……何が起きたのだ……?」

「飛んだボールが岩に当たってウォーターハザードを免れただと……?それでリカバリーした……?」

「ぐ、偶然だこんなの!ただの素人がこんな狙える芸当など出来る筈が無い!」

 

 きっと見間違いだと言い張っていたが、そこから更に追い討ちを掛ける光景が。再び鷹山の番になった時、次は7I・170Yのクラブで打つ。

 力を調整してスッと打ち飛ばす。ピンフラッグをギリギリ通り過ぎてしまったが、そこからバックスピンが発動。スーッと吸い込まれる様に穴に入り、イーグルを決めた。

 

「なぁっ!?」

「たった2打で決めただとぉ!?」

「初心者がイーグル取るってあるのか!?プロでも何でもないんだよなアイツ!?」

(凄い……さっきまでのプレイが嘘だったみたい……)

 

 実際嘘のプレイをしていた訳なのだが。突発的な実力を発揮した性か急に焦りを見せ始めた。一方でグレイ達は笑いが止まらず、「完全にパンヤだコレー!!」と叫んでいた。

 それからも鷹山の猛反撃は続く。次のホールでは1W・270Yのクラブでわざとラフに入った後、2打目で8I・160Yのクラブに切り替えてから打っては流れる様にまたイーグルを決める。更にはドライバーでホールインワンを決めたり、風を利用してからの再び岩でのバウンド。ちなみに、岩でのバウンドは普通に何度でも起こしていた為、「こんなん出来るかwww」とか「ねーよwww」とか言いたい放題だったが、実際にそんな人物居たら恐ろしいだろう。

 

「アイツ化物かよ……何であんな事が普通に出来るんだ……?」

「プロでもあんなの絶対無理だろ……夢でも見てるんじゃないのかコレ……」

「ん?あ、アイツの球がバンカーに入った!」

 

 見ると、鷹山の飛ばしたボールがバンカーに入った。これならば時間が稼げると確信していた男達だったが―――

 

「鷹山指揮官!ボールがバンカーに―――」

「大丈夫だ、問題無い。これも計算通り。次でイーグル決める」

「え゙っ!?」

 

 バンカーからイーグルを決める?何を馬鹿なと思った矢先、鷹山が打ったボールは高くは飛ばなかったものの、コロコロと転がって穴の中へと入った。

 

「嘘……本当に決めちゃった……」

 

 バンカーからでも決めた光景に衝撃が止まらず、次から次へとスーパープレイを見せる鷹山。「岩?ただの当たり判定だし、ルートだし」と言わんばかりに連なっていた場合でもポーンポーンと飛び越し、丁度坂の上にピンフラッグがあったとしてもバックスピンを掛けながら斜面を上るという有り得ない光景だったり、グリーンで遠い位置からのパターショットを滅茶苦茶強めに打ったのにも関わらず入ったりなど……最早やりたい放題だった。

 

(こ、このままでは私の面子とプライドが丸潰れだ……それだけは何としてでも阻止しなければ……!)

 

 焦る男達も何とか頑張ってはいるものの、鷹山の様にホールインワンやイーグルを決める事は出来なかった。

 鷹山の方ではゴルフカート用のコンクリート道路を使って飛距離を伸ばし、わざと木に当てては勢いを少しだけ殺した上で向きを調節の為に利用してから普通にイーグルを取ったりするなど……もっと酷ければ岩でバウンドしてからのホールインワンとかすら起きていたのだ。

 正に絶望的な状況。前半までも余裕が何処に行ったのか、彼等は鷹山に恐怖した。自分達はトンでもない相手と対決してしまったのだと……。

 

「ファーwwwww」

「ウッソだろお前wwwww」

「すっげぇ……あんな風に打てるモンなんだな。いや、鷹山指揮官だから出来る芸当なのか?でも、お陰で酒が良い感じに美味く飲めそうだ」

「アハハハハハ!アイツ等だっさーい!!」

「人を散々馬鹿にしたツケが回って来ていいザマね。スッキリしたわ」

「本当に巻き返しましたね……というか、合計打数はどうなりましたか!?」

 

 ああ、そう言えばそうだったと一旦笑い合っていた全員が正気に戻る。最終的に何打で終わらせたか集計した結果……。

 

「前半までは5点差以上もあったが、後半は前半でトップだった奴と同着!打数もそいつと同じく同点まで追い込ませたぞ!」

「マジか!本当にやりやがったよ!」

 

 良い意味で絶対裏切らない彼を賞賛した彼女達。鷹山の方でも何とか同点まで決着が着けた事に大満足していた。

 

「出来ちゃった……本当に実現しちゃった……」

「いや~、今回はお互い惜しかったですね~。まあ、引き分けになった以上勝負は決まらなかったという事で、今回の賭けは無しという事で良いですかね?」

「ぬ、ぬぅ……」

 

 真剣だった表情から何時も通りの笑顔に戻る鷹山。対して相手は彼の異常性にドン引きし、顔を引き攣らせていた。

 だが、男達は諦めなかった。自分達をコケにしたのか或いは策略だったのかは知らないが、このままで終わるつもりは無いと次の段階に移行しようと動き始めた……。




今回ネタは少ない方です。一応、これでも充分濃かったりする……。

・Thug Life Glasses
多分そのまま画像検索でググってみたら分かると思う。分かる人には分かるあのサングラスです。

・飛んだボールがガッ!と岩に当たり、なんと普通にフェアウェイまで着地した
ゴルフのTASにも色々あるが、やはりインパクトがあったのは「[転載TAS]アーケード版ネオジオ ビッグトーナメントゴルフ」から。岩でのバウンド、バンカーからのイーグル、坂をバックスピンで上ってからチップイン等……色々とねーよ!と言いたくなるし、こんなのと相手にしたくないのは間違い無い。

本当なら他のゴルフTASも入れたかったが、上記のゴルフだけでも充分にネタが取れましたw
下の方はゴルフとは違うTASになります。お楽しみに(嫌な予感しかしない)


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鷹山「勝利の女神?それなら俺の隣で寝てるけど」K5「やめて」 下

私は麻雀の知識(ry
麻雀パソコンとかスマホならやった事あるんですよ……どのタイミングでリーチなのか分かるけど、実際の卓でやるとリーチの際にどれを出すべきなのか分からなくて……というか、リーチすら分からない。

後、色々と無計画過ぎた。自分の会社がほぼブラック企業なものだから、休みの日に丸一日中眠気と頭痛に襲われて大変な事に……皆さんも体調には気をつけて下さいね。
麻雀の方はTASの方で見て頂いた方が早いかと。親決めとかその他諸々も含めて書くと時間が掛かり過ぎるし……(白目)


 鷹山の圧倒的な勝利を遂げた事に喜びと笑いが止まらなかった一同。例外を除いて鷹山に勝つ方法は無く、正に最強と言える強さだった。

 

「あー……面白過ぎるだろコレ。相手の実力分かってりゃ普通挑もうとは誰もしないだろうに」

「まあ、それがアイツ等の限界なんだろうな。さて、そろそろ迎えに行ってやろう。ずっと待ちくたびれているだろうし」

 

 そうだな、と言いながら必要な物を持って鷹山の居るゴルフ場に向かうグレイ達と戦術人形。もう予め仕事やすべき事を終わらせているので、さっさとあんなのからオサラバしようと誰もが思った程だ。

 一方で無事に同点まで追い詰めた鷹山。しかし、彼等はこの結果を認めたく無かったのかある事を言い出した。

 

「な、成程……どうやら私は君を見くびっていた様だ……まさか戦闘以外にもそんな実力を隠し持っていたなんて……」

「そうでもないですよ。あれは完全に運とかそこらのレベルなんで」

「実力ではなく運で勝負したと……ならば、それを踏まえてもう一戦頼みたい。このまま同点のまま有耶無耶には終わらせたくないのでね」

(うわぁ……延長と来ましたか)

「勿論、ゴルフでやっても勝てないのは目に見えて分かっている。そこで、別の勝負をしたいと思っているのだが、良いかね?」

「へ?」

 

 予想外な答えに一瞬固まった鷹山。じゃあ、何の勝負をするの?と疑問に思っていた事を男は直ぐに話した。

 

「麻雀だ。次は麻雀で勝負しようじゃないか。それならば実力じゃなくとも運で試せるのではないかね?」

(そう来たかー……まあ、多分イカサマ起きる前提の勝負だよなコレ……同点にしても良いけど、絶対監視されていそうな気がするし……というか、俺を含めて四人プレイ?うへぇ……)

 

 ちょっと難しい状況になって来たが、何らかの違和感を感じたら探るしか無いだろう。意地でも連れて行こうとする魂胆が見えまくりなので、下手に断れない。

 

「……分かりました。その代わり、これで終わりにさせて下さいね?あんまりスカウトされても困りますので」

「分かってるさ。それに関してはちゃんと約束しよう」

(本当かねぇ……)

 

 ともかく、渋々と従いながらもついて行く鷹山とK5。これで終わりじゃない事にK5がヒソヒソと鷹山に話し込む。

 

(ねえ、どうするの……?このままじゃ終わらないし、負けたら指揮官や皆が……)

(あっちがそう簡単に諦めてくれるなんてのは最初から思っていないからな。絶対何かあると心構えておいて正解でもあったけど。それに、いざという時の保険もある)

 

 その時、マナーモードにしていた鷹山の携帯が震える。携帯を開くと、そこにはグレイからのメールが届いていて、メールにはそろそろ迎えに行くと書かれていた。鷹山も「おk、待ってるわ」と本文に書き、グレイに送り返した。隣から覗いていたK5はせめて助けて欲しいと書かなかった事に驚いていた。

 

(助けとか求めないの!?イカサマとかされたら余計に出られなくなるわよ!?)

(大丈夫、もう既に書いてある。本文には書いてないけどな)

(え?)

「さあ、ここだ」

 

 話し掛けている間に目的の麻雀台がある部屋まで辿り着く。見る限りだと何処にでもありそうな至って普通の麻雀台だが……。

 

「あの……ここの機械や牌とかは全部貴方が持って来たものですか?」

「そうだ。こうして中々やる機会など無いだろうし、これを見つけるのも中々苦労したよ。牌だけは嫌という程見つかるがね」

「へぇ……まあ、確かに自分も麻雀は少し嗜む程度ならやってたのですが、ここまで本格的なのは初めてかもしれませんね」

 

 そう言って自分の心を悟られない様に嘘の言葉で男達を褒める鷹山。念の為に回りを確認するが、至って目立つ形跡は無し。だが、彼等が何も仕掛けて来ないなんてのは微塵も考えていない。

 とりあえず、椅子に座る全員。K5は鷹山の隣に立っては最後まで見届けるつもりでいた。ちなみにK5には予めルールを教えてあるので少しは分かる程度に把握していた。

 

「では、始めようか」

 

 変に探るより、まずはこれで何が起きるのか確かめるのが先決だ。試しという事で打ち込む。

 持ち牌は至って普通にランダムで選ばれたモノ……だとは思ってる。ただし、それは自分の範囲だったらの話。相手が予めほぼ役が揃いそうに細工を施していたらどうにもならないのが現状だ。

 最初にドラの牌がオープン。「東」だ。後は順々に打って行く。すると、直ぐに―――

 

「カン」

 

 筒子の9もとい「キューピン」でのカン。次のドラがオープンし、「西」が出て来る。直後―――

 

「では、私はポンで」

 

 索子の2もとい「リャンゾウ」でポン。カンした男からリャンゾウを取る。更に―――

 

「チーで」

 

 今度は鷹山の向かいにある人物がポンした男から萬子のサンワンとスーワンを取り、自牌のリャンワンでチーをする。その後、何事も無く打ってると―――

 

「ロン」

 

 カンをした男が「東」を捨てた途端にロン。ロンしたのは先程ポンをした男だった。結果、ダブ東2、26符 2翔で2900点を獲得。

 

(まあ……そこは普通だよな……。)

 

 至って普通だなと思っていたのも束の間。次の勝負で有り得ない光景が起きる。次のドラの牌が開き、「チーソウ」が出て来た。パーソウ1つでもあればドラを狙えるが……。

 

(ドラを捨てた……!?何考えてんだコイツ!?)

 

 先程、ロンした男がなんとドラを捨てたのだ。ドラを捨てる行為というのはある意味自殺モノ。ただ、ドラ関係無く高得点を狙える牌に自信があるというのだろうか。すると―――

 

「リーチ」

(はぁ!?)

 

 暫く打った後、今度はリーチ。更に一週回った後―――

 

「ツモ」

(おいいいいいぃぃぃぃぃ!!!?)

 

 たった一週回っただけでツモという早い段階に。しかも、驚くべきは相手の牌。オープンすると……。

 

(32符 4翔……満貫!?立直1、一発1、ドラ1、門前自模1……ツモでオール4100とリーチの分も含めて13300!?ふざけてんのかコレ!?)

 

 ちなみに、牌は萬子の1が3つ、萬子の2と3と4、筒子の6が2つ、索子の2と4、索子の7と8と9。ツモした牌は索子の3だった。これには流石の鷹山でも有り得ないと勘付いた。

 

(いやいやいや……初っ端からかっ飛ばし過ぎだろ!?普通、そこまで高得点狙えないっての……!)

 

 3人だけでも分が悪いのは分かっているものの、片や一人だけでもロンやツモする為にサポートされているのでは勝負にならない。

 牌は完全にランダムと思ってた考え方も消え失せ、麻雀台に何か細工でも施していると確定してチラッと見る。

 

(そう言えば……麻雀台って終わった後は牌を中央の穴に入れた後、ガシャガシャ鳴っている筈だけど……まさか……)

 

 先程鷹山は男達に向けて「全部貴方達が持って来たものですか?」と聞いてはいたが、その嫌な予感がヒットしながらも局は続く。他の男達もツモでじわりじわりとオールで鷹山の得点を減らし続けていたが、ここまで連続でツモばっかり起きているとそれもまた怪しく感じていた。

 挙句に跳満で点数を奪われ、鷹山の点数が1万切ってピンチになり始めていた。

 

「ツモ!」

(嶺上開花までやりやがった……!あー、もう滅茶苦茶だよ!)

 

 果てには亜空間リーチをしていたりと……完全に何処ぞのアカギや咲と同レベルになっていた。本格的にヤバいと感じたのか、K5の表情も不安になっていた。

 しかし、丁度その時というべきだったか。鷹山の携帯がバイブレーションしながら鳴る。

 

(来たか……遅いというか、良いタイミングというか……)

「おや、どうしたのかね鷹山指揮官?先程のゴルフとは違って調子が出ませんかな?」

「良くも悪くも、ほぼ負けが確定みたいなモノですよ。ここから巻き返せるなど早々に無理だと思い―――」

「巻き返しますよ。この時が来たんでね」

 

 と、鷹山の表情が一変。跳満や満貫をされて不安そうだった表情から、余裕の表情を見せた。これには男達も何を考えているんだ、と焦る。

 

(次の1手を決めれば、アイツはマイナス点を越えて負けは確定……なのに、何故そんな余裕そうな表情をしているんだ!?)

(国士無双や天和などの役満ならば逆転の可能性はある……しかし、それは決して不可能。何故なら元々その役ですら成立する確立が低く、揃えるだけでも苦労するというもの。挙句、我々が仕組んだアレがある限り成り立つのも不可能)

(俺達の牌は直ぐに揃う強めのヤツに比べて、アイツは最弱の牌……そこからどうやって逆転するというんだ……?)

「んじゃ、次の局始めましょうよ」

 

 言われるがままに牌を中央に入れた後、また新しい牌が出て来る。鷹山は牌を1つ1つずつ取り、綺麗に並べた。今度は鷹山が親となって打つ番が回って来た。その直後、バタンッ!!と扉から大きな音を立てて流れ込むある集団が入って来る。

 

「な、何だ貴様等は!?」

「おーっと、下手な抵抗はしない方が良いですよお偉いさん。アンタ等の裏の情報は既に掴んでいるんでね」

 

 扉から入って来たのは、迎えに来ていたグレイ達だった。しかも、戦術人形を多く連れては囲む様に銃を上層部の男達全員に向けられている。

 

「な、何故グリフィンのお前達がここに……それに、裏とは何だ!?我々は何もしていない!!」

「シラを切っても無意味ですよー?ヘリアンさんから良からぬ噂を聞いて、念の為にと思ってハッキングしてまで調べたんですが……まー、やってる事は最悪ですね」

「横領、賄賂、戦術人形に向けてのセクハラも当たり前……中には逸脱した行動まで取っていやがったとはね。そんなヤツが上層部だなんて俺達は死んでもゴメンだな」

「は、謀ったな鷹山指揮官!」

「謀るぅ~?そりゃ謀って当然でしょ。見た目からしてそんなデブな格好だったり、悪そうな顔をしている男を見れば嫌でも裏の顔があるって分かりますよ。見た目を直してりゃまだ猶予はあったが、それでも上層部と聞いて怪しまずにはいられないと思いますよ?」

 

 ある意味ごもっともと言うべきか。焦っている男達の表情からして本当にやっていたのだと察する鷹山。証拠を完全に掴まれた以上、男達は観念せざるを得なかった。

 ヘリアンが「連れて行け!」と叫んだ瞬間、鷹山が最後に「待った!」と声を掛けた。

 

「最後にもう1つだけ言いたい事がありまして。逮捕もそうだったが、この麻雀は俺の勝ちなんで」

「何が言いたい……?」

「つまり、こういう事ですよ。ツモ」

 

 と、山から1つ取った後、牌を揃えて見せた。鷹山が見せた牌に男達はギョッとビックリした表情となる。何故なら……。

 

「全牌……白だけだと……!?」

「四暗刻、大三元。13面待ち……これぞ、「ビギニングオブザコスモス(天地創世)」。オール32000なので、合計で96000貰いますね」

 

 伝説のあの一手を打ったのだ。これを実現した事にグレイ達は大笑い。本当にマジでやりやがったと。これには男達も怒りが沸いていた。

 

「ふざけるな!貴様の牌はそう簡単に揃わない雑魚同然の牌だぞ!どうやってそんな大量の牌を持っていた!?イカサマにも程があるだろう!!」

「おや、おかしな事を言いますね。何で俺の手牌が雑魚だって分かるんですか?仮にアレを打たなかったら、確実にロンやツモすら起こさせまいと言わんばかりに」

「……ッ!?」

「やっぱりか。入る前にちょっくら調べて貰ったが、お前の言う通り遠隔操作されてたぞ。イカサマの細工されてたのはその麻雀台らしいけど」

「へぇ……」

 

 そう軽く笑った後、ドンッ!!と強く叩いてから怒りの表情を見せる鷹山。彼の表情に男達はビクッと震え上がった。

 

「何が運だ!あぁ!?俺の最後の一手はともかく、テメェ等は揃いも揃って連続でイカサマか!!何が勝負だ!こんなモン負け前提かイカサマ前提じゃなきゃ無理じゃねぇかよ!!堕ちる所まで堕ちた屑野郎に俺達の仲間を奪われて堪るか!!とっとと消え失せろ!!」

 

 言い切った後、再びヘリアンが歩け!と強く言い、男達は表情を暗くしながら連れて行かれたという。

 これが切欠により、上層部による黒い一面が明るみになってからは上層部の総入れ替えが行われたりして大騒ぎとなった。当然、男達は懲戒免職となった後は刑務所に連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 その後、念の為にあの場所で一体どういうイカサマが行われたのか詳しく説明。まず、麻雀台に関するイカサマについてザックが話した。

 

「ちょっくら分解して分かったが、マジで予想外だった……あの麻雀台、別の所で動かしていたパソコンと連動してあったらしいぜ?任意に動かす事によって予めツモとかロンとか出来やすくする為に細工してあった他、鷹山の様に面子が揃ってない状態にする事も可能だったらしいぜ」

「だからあんなにツモばっかりポンポンと出た訳だ……どうりでロンが来ないと思ってたら。その上、俺の牌が雑魚だった理由も納得だ」

 

 もっと言うならば天和も可能と言えば可能なのだが、それは流石に怪しまれると思ったのだろう。実現する確立すら最も一番低いものだから、実質不可能な役をいきなり出した所でイカサマとバレて終わるのが目に見えている。

 ただし、相手がそうしなかったのが救いだったのか鷹山が最後にやった「アレ」は本当に苦肉の策とも言うべきであったが。それに関してはK5からこんな質問が。

 

「ねえ、鷹山指揮官。貴方どうやってイカサマなんて出来たの?あの白牌を大量に出すのって無理だと思うんだけど」

「簡単だ。轟盲牌を使っただけ」

「轟盲牌……?何それ?」

「元々天地創世は実現不可能なイカサマだ。麻雀だと白牌は4つしか無いのに、何故12個+ツモで1個という感じに成立出来たのか分かるか?あ、ポケットから出したとかそういうのは無理だからな。即バレる」

「じゃあ、どうやって……」

「ストレートに言うと、指の力で表面の文字を消した。ただそれだけだよ」

「はぁ!?」

 

 試しに鷹山が東と書かれた麻雀牌を取り出し、指先だけで摘む。この間たった数秒なのだが、その数秒の間に東の文字が削り取られている。

 その後、スッと指先を離すと……本当に東の文字が消え、何も書かれていない白牌となった。これには事情を知らない戦術人形やヘリアンやペルシカも驚く。

 

「嘘……!?本当に消えてる……!」

「鷹山指揮官……どんだけ力あるのよ……」

「バレない様に1個1個やった甲斐があったよ。そうして出来たのが、あの天地創世。イカサマの麻雀だとアレが世界一点数が高いらしいぜ?ただ、青天井ルールじゃない場合あの点数だったけど、あった場合908溝6519穣5024禾予3594垓8349京9283兆6857億6135万1700点まで行くぞ」

 

 一同唖然。最早イカサマの領域を超えた何かである。ともあれ、あの男達も結局はケンカ売る相手を盛大に間違えたので、自業自得とも言うべきだろうか。

 ちなみに、彼等が賄賂とかした情報を何時抜き出したかというのは、鷹山がゴルフをやっている間。実はあの時パソコンでM4やROが見ていたはその男達に関する情報で、UMP45が持って来た重要書類というのはハッキングして分かった事を完結に述べた紙だったのだ。

 これが分かった為、直ぐに彼等は上層部達を逮捕するという行動に出たのだ。

 

「というか、イカサマだって分かったのって何時?」

「最初から仕掛けて来ると薄々勘付いていたから、グレイにメール送ったんだ」

 

 チラッと見せたメールの本文には「んじゃ、よろしく」と書かれた文が1つ。だが、着眼する点はそこじゃない。件名の所を見ると、何やら文字化けみたいに書かれた文字の羅列が並んでいた。

 

「『@adp55,555/ほ,,a,,@g55,555*g,,』……?コレって何?」

「ちょっとした暗号みたいなもんだ。ヒントはスマホの文字にある特殊な文字の一部だ」

「スマホ……?何だろう……」

「……あ、もしかして……」

「お?分かったかUMP45?」

「何となく……だけど、これってアレじゃない?それぞれに何故か@とかの記号があるけど、それを前提で入力すると……「イカサマのぼうがいたのんだ」?」

「正解!」

 

 例えば、「い」を入力すると候補の中に何故か「@」が入っている。それを踏まえた前提で鷹山は地道に文字を考えていたのだ。

 特に「ぼ」は流石に入力不可だった為、文字の「ほ」の後に「,」を二つ入れる事で「ぼ」という意味合いにしたそうだ。ちなみに「の」は何故か「55,555」という文字が入っていたという。 

 

「流石に遊びで文字化けのメールを寄越すなんて考えは浮かばなかったから、何かの暗号だと思ってな。パソコンじゃなければ携帯か?と考えたら見事にヒットしたよ。で、あそこに入る前に他の部屋を回ってたら、近くに居た男がパソコンを操作していたのを発見してな。そこで妨害成功って話」

「けど、もう既に始まってた頃だったから今更妨害防いでも仕方無いから最終手段でイカサマした。良くも悪くも、イカサマしたのはアレで最初で最後だったかもな。まあ、イカサマのアレも重要な証拠にもなったから問題無かったし」

「そうだったんだ……でも、実力で勝負したと言っても最後は運に助けられたわね!認めたくはないけど、やっぱり指揮官は勝利の女神に愛されているんだわ!最後まで諦めなかったから勝負のツキが回って―――」

「そりゃ無いわ。大体俺がやると必ず確定で良い事起きる様なモノだから、勝利の女神より俺の方が幸運というか何というか……予定調和って感じだな。勝利の女神?それなら俺の隣で寝てるけどって感じ」

「なぁ!?」

 

 サラリと否定した上、寝取り発言。勝利の女神よりも鷹山が唯一幸運を呼び寄せる人物(乱数調整アリ)とは認めたく無かったのか、ムカッと怒り出すK5。

 

「そう言うなら勝負しなさいよ!幾ら指揮官でも運命を予知する私よりも優秀とか信じないから!」

「言うと思った……しょーがねーな。3本勝負で良い?」

「望む所よ!」

 

 という訳で、急遽3本勝負という形となった。1本目は某狩りゲーの「イヴェルカーナ」の剥ぎ取り素材勝負。剥ぎ取れる確立の低い素材ほど高得点という感じでプレイしてみたものの……。

 

「冰龍の零玉1個と冠角1個!これなら負ける要素は無い―――」

「あー、スマン。俺が剥ぎ取ったヤツ全部零玉だったんだが……。」

「」

 

 ちなみに、零玉の確立は本体が2%で尻尾の部位破壊から取れる確立は3%。それを一気に3個以上も入手したのだ。勿論イカサマは使ってないし、チートコードも使用していない。

 ただ、乱数調整と言って何処かしらでウロウロしてたり、わざとダメージ受けたりしてやってたとか。

 

「次の勝負よ!!」

 

 2本目、ドラ○エ6のカジノにあるポーカー。どれだけ高得点を叩き出せるかで勝負となったものの……。

 

「ロイヤルストレートフラッシュ!ダブルアップはやらなかったけど安全策!これなら―――」

「これとこれを交換して……はい、ロイヤルストレートフラッシュ」

「!?」

「で、ダブルアップ2回成功。コイン18000ゲット」

「」

 

 4500で終わったK5よりも、4倍の掛け金をゲットした鷹山。何よりも鷹山の場合、出るまで勝ち続けたK5に比べて、たった一回目でロイヤルを出した上にダブルアップを2回も成功させたのだ。これは泣かざるを得ない。

 

「だ、だったらコレで勝負よ!!」

 

 次に選んだのは「○のカービィwii」にある真・格闘王への道。ボスラッシュで且つタイムを競うというアレだ。

 K5はボスの戦い方を前提にコピー能力をコロコロと変えながらも10分近くでクリア。しかし、鷹山の場合は「ニンジャ」オンリー。操作もある意味ヤバく、画面のカービィが物凄い勢いで荒ぶり、ありえない早さで敵を爆発四散。

 多少のダメージを受けたり、乱数調整は当たり前。動きも完全にドゥエリストとなっていた。

 

「えー、結果。6分21秒85」

「そ、そんな……」

「流石鷹山。何1つ容赦しねぇな」

「剥ぎ取りでレア素材を3回連続出した時点で運とか通り越してお察しだろ」

「何か色々とゴメンな。でも、俺ってこういうのが見える!って分かってるから、どういう流れでどうするべきか頭の中で把握してるモンだから分かっちまうんだよな……」

「た……」

「ん?」

「鷹山さんの……バカァァァァァァァァァァッ!!!!」

「あべしっ!?」

 

 プルプルと震えた後、K5は泣きながら鷹山を殴った。まさかの攻撃に鷹山はモロに喰らい、ピクピクと震える。

 泣きながら去って行く彼女を全員は見届けるしか無かった。彼女の予知よりかは鷹山の予知の方が一番正確でドンピシャに当たるものだから、彼女のポテンシャルを奪っている様にも思えた。

 故に、こればかりは全面的に鷹山が悪いとしか言い様が無かった。戦術人形とTASが勝負しても比べ物にならないし、本気出し過ぎじゃない?と言われても反論出来ずに罪悪感を感じたという。ただ、K5も鷹山の実力に関しては理解しており、彼以上に予測とか出来る人物は他に居ないと認めているらしい。

 彼と彼女が組めば敵の情報とか戦況とかも網羅出来るんじゃないか?とそんな話も出たりしたが、それは別のお話……。




後半はコレがしたかっただけが故に麻雀出しました。賭け事においてTASさんを出したらマズい。

・亜空間リーチ
実際に使った事があるとか無いとか。TAS関連ではSFC「プロ麻雀・極」において「
【麻雀】ありえない手筋でプロをフルボッコしてみた【TASさんの休日】」というのがある。ちなみに、早い段階でのリーチとか満貫とかそういうのも含めてここから持って来た。細かく書くと本当に辛いとしか言えない……色々とごめんなさい。

ビギニングオブザコスモス(天地創世)
本来なら有り得ない牌の役。元ネタは「ムダヅモ無き改革」にて小泉ジュンイチローが対プーチン戦において使った技。轟盲牌と呼ばれる指の握力だけで牌の表面を削り取るという荒業でおきながら最強のイカサマ。4回槓(明槓子1回、暗槓子3回)した上で、18枚の全ての手牌を白にしたという。言うまでもなく、青天井ルールでは本編に書かれた通り、字一色(13飜)、三暗刻(2飜)、四槓子(13飜)、嶺上開花(1飜)白(1飜)×4、ドラ72であの結果だという。恐ろしい。
ちなみに、これを実現させた麻雀ゲームのTASが「【TAP】麻雀RPG ドラドラドラ (RPGモード)」。青天井ルールなのかどうかは不明だが、始まる前の得点9000から一気に105000という、正に毟るだけ毟り取れと言わんばかりの鬼畜としか言い様が無かった。総理恐るべし。

・某狩りゲーの「イヴェルカーナ」
これは今で言うモンスターハンターアイスボーン。ただ、ツールが無いのかプレステ4以降はTASが不可能となり、代わりにRTAとかやる人とかが増えた。
モンハンにおけるTASでは実質乱数調整としか言い様が無い。モンスターを仕留めるまでは素材がランダムで決まり、トドメを刺した瞬間に素材が決定される。TASだとレア素材も当たり前の如く入手出来る。

・ドラ○エ6のカジノにあるポーカー
言うまもなく、麻雀RPG同様にサムネホイホイと言わざるを得ないアレである。開始早々ロイヤルストレートフラッシュ引くとか誰が予想出来るか(白目)

・真・格闘王への道
カービィwiiのTASでは全てのコピー能力においてニンジャが一番最速だという。アイエエエエエ!?
ちなみに、実機……つまりはガチでコントローラーを操作しながらやった人がいるのだが、その人の場合だとニンジャでは6分54秒68。本当に人間か!?


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指揮官のグルメ

職場が辛くて、楽しめなくて、辞める決意と職探しに出掛けてますが、私は元気です。
受からなかったら今の職場続けながら次の職場探すしかねーわ……仕事は楽しく感じながらやり甲斐があると実感してナンボです。

今回、そんなに登場させる戦術人形活躍させてない件。しかも、飯テロ。


 昼近くの頃、彼等が何時も通りに穀物とかを育てながら収穫していた。季節問わずにマッハで栽培をしているので、食糧には何の問題も起きなかった。

 

「よし、これで終わりっと」

「お疲れさん。後はこれを貯蔵庫に入れれば今日の分は終わりだ」

「……そう言えば、あの貯蔵庫って何処まで貯まってるんだ?」

 

 と、グレイが今まで気にしていなかった疑問を告げると―――

 

「さあ?」

「さあ?って、お前……」

 

 他の全員は知らなさそうに答えていた。言い方からして、そこまで知っている訳じゃないみたいだ。

 

「しょうがないだろ。基本、貯蓄の他に人に渡してたりするのが殆どだから、細かく数えた覚えが無いぞ」

 

 鷹山の答えにグレイも「んー……それもそうだよなぁ……」と唸った後、果たして何処まで貯まっているのか個人的に気になっていた。

 そして、その夜。丁度良い暇潰しとも言えるタイミングだったのか、作業が終了した後は食糧貯蔵庫の中に入っては紙が付いてるボードみたいなのを手に持ち、もう片方の手に持っていたボールペンなんかでそれを細かく記入していた。

 

「小麦、米、トウモロコシ……あ、大豆もある。小豆、落花生、えんどう豆、ソラマメ……ソバもあるな。え?これ全部収まり切れるのか?」

 

 一通りズラーッと見た限りだと、大量に保存されていた事に気付いた。ただ、ここまで来ると流石に量産し過ぎたと思い、このままだと貯蔵庫の面積の領域を超えてしまいそうになる。その上、腐らせる訳にも行かないのでどうしたものか……と悩んでいた。

 

「あ、そう言えば……」

 

 ふと、グレイはある事を思い出した。小麦は確かパンを作るには絶対に欠かせない必要なモノ。何よりもそう言った料理を得意とする戦術人形が居た。

 

「スプリングフィールドとm45だったな……」

 

 ライフルの「スプリングフィールド」は絵に描いた様な「優しいお姉さん」とも言うべき人物。たまに「マフィンが焼けました。一緒に食べましょう」とわざわざ焼き菓子を持って来てくれた事は今でも覚えている。ちなみに、当初隣に居たUMP45がムスッとしたり、ハイライトの目がオフになっていては機嫌を直すのに少しだけ苦労したとか。

 また、それと同じ様にパンやお菓子作りが得意な戦術人形がサブマシンガンの「m45」。彼女もまた焼きたてのパンを作ってくれたりしていて、スプリングフィールドとはお手伝いをする仲でもある。彼女にはそれなりに不満は無いのだが……。

 

(シナモンロールは……な……)

 

 彼女、たまにシナモンロールを出すのが……そのシナモンロールをほぼ毎日出している。流石に代わり映えのしないメニューにはグレイ達だけじゃなく、AR小隊とかそこ等の戦術人形にも少し不満があったそうだ。言うまでもなく、栄養も大事なのだが。

 それとは別に甘いものなら何でも来いと言わざるを得ない位に食いしん坊なのがアサルトライフルの「FF FNC」。彼女がグレイ達と初めて会った時ですら何か食べながら喋っていたりしていたのは流石のグレイ達も唖然となっていた。他にも任務だろうが修復中だろうがお菓子を食べるのが止まらない彼女であって……。

 

(何処から聞きつけたのか、「グレイ指揮官様!お菓子作って!作って!作って~!」なんて言い出したからな……まあ、俺も実際料理とか作れるから問題は無いんだけどな。それに、丁度良いタイミングだったし)

 

 内心で溜め息しながらもタブレットを操作するグレイ。自分がこれまで作ったメニューの幾つかや何か良い料理は無いか調べていた。

 

「ふむふむ……あ、これ良いな。お、これも。後はこれとこれとこれと……うん、こんなモンだろう。久しぶりにやるから楽しみだな」

「何が楽しみなの、しきか~ん?」

「お、45か。お疲れ」

「……後ろから話し掛けたのに、反応が薄いよ?もうちょっと驚いても良いのに」

「もう慣れたよ。それに、わざわざこんな所にまでついて来るのってお前か404の皆しか居ないだろ?」

「まーね」

 

 そう言って話したのは404小隊リーダーのUMP45。彼女はどうやらグレイが食糧貯蔵庫に行く姿を目撃したらしく、ずっとグレイがやっていた内容の一部始終を見ていたそうだ。

 

「で、さっきから何してたの?」

「実は……かくかくしかじかで……」

「あー……成程ね。まあ、こんなに多いとちょっと収まり切れないかな~?」

「それを考えて俺は料理教室みたいなのを期間限定で出そうと思ってたんだ。ちなみに、期間限定でしか作れないヤツも作るが。参加条件は問わないし、初心者も大歓迎―――」

「出るわ」

「決断はえーよ45。ま、良いか……」

 

 という事で、期間限定で料理教室開催。ちなみに鷹山達には前もって説明したら了承し、グレイの分を引き受ける代わりに何か料理出せという条件で受け入れたそうだ。

 また、毎回お菓子くれと騒ぐFNCを拉致し、「お前が料理を作るんだよ!!」と強制的に出る羽目になった。また、料理に使う食材は全部持って来たそうだ。

 

「そんで、メンバーを呼んだ訳ですが……」

 

 一番目立つメンバーとして、404、M4とAR-15、カトレアと9A-91、後は他の戦術人形やまさかのエージェントとデストロイヤーとかも参加したりしていた。当然、スプリングフィールドとm45も強制参加。

 

「結構居るな……そんなに作りたい奴ばっかり居たのか……」

「ねえねえ、グレイ指揮官様!今日は何作るの?」

「至ってシンプルなメロンパン……と言いたい所だが、あるデータを探していたら興味深くも滅茶苦茶食べてみたいメロンパンがあってな。それを「一通り」作ろうと思う」

「そうですか。ん……?今、「一通り」って言いましたか?」

「そうだ。「一通り」だ。まさか、ただ単品でそれを作ると思ってたか?これからがもっと凄い事になるぞ……!」

 

 一体どんなメロンパンになるのか楽しみにしている一同。まず、最初はメロンパンを大量に作る方から始まる。

 調べた料理のレシピ通りにヤギのバター、きび砂糖、トリのタマゴ、タバンタ小麦を使い、最初にメロンパンのクッキーとなる生地を作る。生地を作ったら冷凍庫で冷やす。

 寝かせている間に、今度はメロンパンの生地を作る。強力粉や岩塩、きび砂糖やドライイースト等を使い、タマゴと水を入れて捏ねる。ある程度固まった後も更に捏ね続ける。ベタ付かない程度になったらボウルの中に丸めて入れ、オーブンかレンジで発酵。

 

「そんで、出来た後はある程度の大きさに切る。で、冷やしたクッキーの生地を取り出してから潰して……さっきのパンの生地を包む」

 

 切れ目を入れた後、数十分温めて発酵。発酵が終わった後、充分に過熱したオーブンで更に数十分焼けば完成―――

 

「と思っていたのか?」

『え?』

「空いてる時間で生クリーム作りまぁぁぁぁぁす!!」

『ええっ!?』

 

 と、急遽生クリーム作りスタート。知っての如く、冷やしたボウルと冷水と氷が入ったボウルが用意され、計測しながら生クリームと牛乳を投入。

 砂糖を加えた後、とにかく混ぜる。ハンドミキサーとかを使ってある程度泡が立った後、更にゆっくりと混ぜながらクリームの硬さを調整。それと同時にメロンパンが完成する。

 

「そこから包丁でカット!」

 

 なるべく全部切らない様に切った後、さっき作り上げた生クリームを絞り袋の中に入れた後、そこからふわっと入れる。

 

「これにて、生クリーム入りのメロンパンが完成!」

「わぁ……!美味しそう!指揮官、これでメロンパンは完成なの?」

「何勘違いしてるんだ……」

『え?』

「まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!」

 

 某バーサーカーソウルを発動したのか、手持ちからどんどん出される食材の山という山。そして、またメロンパンを作るというエンドレスが続く……。

 

「ドロー!食材カード!「チョコレートとイチゴ」!これでメロンパンの全体をコーティング!更に、生クリームにはそれぞれ混ぜたクリームに!」

「な、何という贅沢……!」

「ドロー!食材カード!「カスタードとあんこ」!この二つはメロンパンの中に入れる下地代わりに!」

「はわわ……!それ最高だよぉ……!」

「ドロー!食材カード!「紅茶とキャラメル」!ホイップにアールグレイを混ぜた紅茶風味!キャラメルは溶かしたものをタラッと垂れ流すだけ!」

「お、美味しそうな組み合わせ……!」

 

 更に次から次へと出て来るメロンパンの中に入れるモノの数々。ただひたすらに延々と作っていたら大量に出来上がったのだが……余りにも作り過ぎた為か全ての戦術人形に提供。

 それを食べてからか、とても美味しかったと評判を受け、また作って欲しいとの声が続出。とは言え、食材を一気に使った影響かそこまで多く作れなかったというのが一番の原因らしく、直ぐにそのメロンパンが作る事は無かったという。

 ガックリする戦術人形も居たが、少し経った後にローテーションでそれぞれのメロンパンを出すという形で再び熱狂したとか何とか。

 

「えへへ……お菓子のパンだーいすき♡」

「ま、それで満足したなら良いけどな」

 

 料理教室終了後、これまで作ったメロンパンに大満足なFNC。ここまで作ってあげればもう文句など言うまでも無かろう。

 スプリングフィールドにも新しいレシピを提供しては満足しているが、「指揮官がここまで作れるのは私としてのプライドが許せません!」と何だかライバル視される様になったりした。これにはグレイも「どないせえちゅーねん……」と突っ込まざるを得なかったが。

 

「指揮官!パンが焼けましたよ!」

「おお、済まんな―――って、またシナモンロールゥ!?お前、この前渡したレシピはどうした!?」

「あるんですけど……私ったら、あんまりにも集中し過ぎてついうっかりシナモンロールを作っちゃって……」

「……今後、シナモンロールは禁止な」

「そんなぁ!?」

 

 ただし、m45はちょっとパンのバリエーションを考えた方が良いと、シナモンロール禁止令にショックを受けていたとか。

 しかし、決して菓子パンだけじゃなく至って普通のサンドイッチ等のシンプルなパンも作れたりしたので、後々レシピも幾つか渡したとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、作った作った」

「お疲れ様、しきかーん」

 

 時刻は既に夕方近く。美味しいパンブームが始まって以来で作り過ぎた性か、身体が少々クタクタな身体になっているグレイ。たまに手伝いとして404やM4が来たりするなど、差ほど苦では無かった。

 このまま終わりにしても良かったのだが、彼にはまだすべき事がちょっとだけ残っていた。

 

「45ー。悪いけどもうちょっとだけ一緒に居てくれ。もうちょっとだけ作りたいのがあるから」

「どうしようかなー。私も結構疲れてんだけど」

「プレーン、イチゴ、ハチミツの三種類のクレープ作ってあげるけど」

「乗った」

 

 このUMP45、愛する人の作る甘いモノにはチョロい。しかし、これはあくまでもUMP45に向けた対価。本当にすべき事はここから。

 とりあえずフレッシュミルク、トリのタマゴ、タバンタ小麦、きび砂糖で簡易式の方法でクレープを作り、同じ食材に+イチゴと+ハチミツで各々のクレープも作り上げては満足したUMP45。

 

「で、今度は何作るの?」

「アイツ等に仕事を殆ど頼んだみたいなものだからな。そのお礼としてちょっと贅沢品をな。あ、一応食わせてあげるぜ?」

「何それ~ちょっと楽しみなんだけど」

「まあ、作ってからのお楽しみって事で。とりあえず、この順番で頼むわ」

「はーい」

 

 早速料理開始。まずは黒白胡椒とローリエを混ぜ、大きい肉の表面に掛ける。土鍋に先程の牛肉、玉葱、じゃがいも、人参を入れて2時間近く焼く。

 その間、UMP45は玉葱とキノコの微塵切りにし、フライパンを温めてからバターを溶かし、玉葱を炒めながらキノコを投入。暫くしてやわらかくなったら別の鍋に移した。さっき使った鍋に再びバターを入れて溶かし、更に薄力粉を加えて混ぜながら加熱する。

 

「そっちは出来てるー?」

「ああ、丁度終わった所だ」

 

 グレイは土鍋の焼き上がりが終わるまでは豚骨スープを作っていた。今UMP45が作っている鍋の中に豚骨スープと牛乳を入れて更に混ぜながら加熱。

 出来たスープを先程移し変えた鍋の中に入れ、弱火で30分間ゆっくりと混ぜる。これでブールマニエの完成。

 その間、グレイはジャガイモとひき肉を入れて混ぜ、パイ皿に詰めてチーズを乗せる。200℃のオーブンで10分焼いてポテトパイの完成。

 

「さて、そろそろ出来上がるかな?」

 

 オーブンに入れた土鍋が焼き上がり、鍋から大量のスープが溢れていた。その鍋から半分位のスープを取り出し、トマトペーストと赤ワインを入れる。

 アルコールを飛ばした後、ローズマリーを入れてから再び鍋に移し入れる。カリフラワーを入れた後、弱火で1時間煮込み、液状の生クリームを掛けてシチューの完成。

 

「うーん、良い匂い」

「これぞ、「セリエナのモンハン料理」完成!!」

 

 完成したシチューとかは正にあのシーン完全再現したアレと同じだった。これを持って彼等の所に運びたい所だったが、うっかり落としたら怖いので敢えて彼等を呼ぶ事にした。一体何が完成したのか知らない鷹山達が食堂の方へと向かって来ると……。

 

「おーす。何作ったの―――って、うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!?」

「ちょ……マジかコレ……マジで作ったのかコレ!?」

「これが何日も待たせた分の飯だぜ。これで文句は無いだろ?」

 

 生まれて初めてゲーム飯というのを味わえるのだ。寧ろ、大満足と言い切った彼等の表情は笑顔で溢れていた。

 その後、食べてみた結果……トロトロに煮込んだ肉がシチューの旨みとマッチングし、ブールマニエやポテトパイも滅茶苦茶美味しかったと高評価を得た。

 長年料理を続けたこの男に不可能という文字は無いだろう。一緒に食べているUMP45や鷹山達の作業を手伝っていた戦術人形でさえ美味しそうに食べていたのだから。

 

「えーと、レシピを保存っと……」

 

 今回のレシピをタブレットに保存するグレイ。何時しかこのレシピが使う機会がまたあるかもしれないし、また作る日が来るのを楽しみにしている。

 次はどんな料理を作ろうか、と考えながら仲間達と一緒に夜を過ごしたのであった。




なお、登場したパンやシチューとかは実際に作れるレベルです。

・これまでグレイ達が作ったメロンパン
実はね……これリアルであるんですよ。多分、関東限定かな?私、何度かそのメロンパン食べてはとても美味しかったので、期間限定でオープンしている時は毎回そのメロンパン買ってますw
ネーミングセンスも凄く、「上司の話は聞きたくない」という商品名に……こりゃ予想外だ。

・セリエナのモンハン料理
モンスターハンター:アイスボーンに出て来るセリエナ料理長に料理を頼むと見られるあのシーン。実はあれを再現した人が本当に料理したという動画ありました。食べてみてぇ……。


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クッソワロタわーちゃん

ツンデレの中でも一際人気のあるわーちゃんのお話。ハロウィンスキンで彼女が幽霊苦手と聞いて、思い付いたのはこれしか無くて。元ネタも結構昔だよな……何であんな劇団四季みたいなミュージカルになったんだっけ?え?ホラゲー?(白目)


 面倒臭い奴とは何だろうか?ちなみにグレイ達はある意味当たり前となっているので省かせて貰う。

 謎に包まれたかの様なミステリアスな人物とかだろうか。それとも、男性を誘惑する様な女性みたいなタイプだろうか。

 どちらにせよ、そういう認識については多種多様とも言えるだろう。しかし、この世で一番面倒なのは「性格」とも言えるだろう。

 

「私の名前はワルサーWA2000。指揮官、私の足を引っ張ったら承知しないわよ」

 

 例えば、スーツみたいなのを着込んだこの戦術人形―――ライフルの「WA2000」は自分は殺しの為だけに生まれて来た、と自分を卑下するかの様な事を言いながらも、言葉の通り敵を皆殺しにする実力は兼ね備えてある。

 しかし、基本ネガティブ発言が多い故かグレイ達に対して「気安く私の名を呼ばないで」だの「汚らしい手で私の銃に触れるのも止めて頂戴!!」と言い切る事があり、こりゃ完全に嫌われたな……と思っていた。しかし―――

 

「え、顔が赤い?だって、今日は暑いから……か、勘違いしないでよね!」

 

 この一言で全て察したグレイ達。そう、彼女は紛うことなくテンプレートなツンデレ娘なのだ。これにはグレイ達も―――

 

(『ツンデレかよッ!!滅茶苦茶面倒臭ぇなオイ!!』)

 

 と、頭痛の種となっていた。コミュニケーションを取る以上、正直回りくどい事されても困るし、素直に言ってくれないとこちらとしても困るのが目に見えていた。

 だが、それを分かっててフォロー(?)してあげたのか、UMP45やM4がWA2000に向けてこう言っていた。

 

「大丈夫よ、WA2000。誰も貴女に触れようとしないし、ましてや貴女の足を引っ張ったりしないわ」

「寧ろ、足を引っ張るのは貴女だと思うんですけどね」

「え?」

 

 二人の言葉に他の戦術人形ですらうんうんと頷いていた。頷いた理由も大方グレイ達の動きや前線で戦っている光景など……とにかく沢山見て来たのか、慣れてしまっていたからだ。

 WA2000は一体どういう事なのか分からなかった。しかし、いざ出撃となった瞬間に二人が言っていた事を瞬時に理解してしまう。

 

「何よ……これ……!」

 

 当初、指揮官達が前線に出ると言った時には「はぁ!?アンタ達、正気なの!?」とツンツンした言い方をしていたのだが、数分後には、これでもかと現実を嫌でも見せられた。

 グレイ達は持ち前の武器と力で鉄血達を倒し、大型の装甲機械ですら容易く倒せている光景にWA2000は開いた口が塞がらなかった。そして、先程UMP45やM4から言われた事を思い出しては悔しがったり、自分が役立たずじゃないのかと不安になったりしていた。

 

「こんなの……知らないわよ……!足引っ張ってるの……私じゃない……!」

 

 さっきまでの威勢は何処へ行ったのか。そこには力を持ってないだけのか弱い少女の様に見えても仕方無かった。たまにグレイ達の方を見ると、人間とは言い難い様な動きに若干引き気味だったりしたのだが、自分とアレとは比べ物にならないと理解する。

 それ以降、彼女はグレイ達の事を悪く言ったり、ツンツンした軽率な発言は控える様になった。だが、彼女には意外な弱点が1つだけ存在していた……。

 

 

 

 

 

 それは数日経ったある日の事だった。グレイが執務室で作業をしながらも何か悩んでいた様子だった。

 

「むぅ……」

「どうしたんだ、そんな真剣な顔付きで?」

「いや、そんな大した問題って訳じゃない。ただ、ここ最近で鉄血の大型の装甲機械が大量に出たり、相手の防御が硬いと弓や爆弾矢だけでは威力が物足りなくてな。なるべく一撃で粉砕出来る様なずば抜けた能力を持った弓とか無いだろうかと思ってな」

「アレだけ好き勝手に戦って、まだ戦い足りないの……?」

 

 グレイの言い分にWA2000は引き攣った。聞いていた鷹山もWA2000には同情するものの、確かにここ最近で鉄血達が重装甲で攻めて来ている事を思い出す。グレイ達が常識の通用しない相手だと理解している前提であんな行動を取っているのだとしたら、少しばかり面倒になりそうだった。

 それ以前に、どんな弓を使おうとも弓矢も何時か枯渇する。その為、補給をしなければならないのだが……それまで矢を最大まで貯める作業が面倒なのだ。

 

「俺としてはインデペンデンスデイクラスの威力を誇る弓とか弓矢とかでも良いからそれが欲しいんだ。じゃないと、また攻めて来たら迎え撃つのが面倒だ」

「ガーディアンを大量配置しているからまだ良いけど……まあ、大量に攻められても困るしな」

「いやいや、色々と待ちなさいよ!そもそも、インデペンデンスデイって……空からレーザーみたいなのが降って来るアレじゃない!?あんなの何度も使われちゃ困るわよ!!」

「「ですよねー」」

 

 鉄血よりも性質の悪い扱いと認定されてしまう。鉄血を葬るならその手の方法が一番かもしれないが、後々の事を考えれば最終兵器に近い何かだ。下手すればE.L.I.D.ですらジュワッと消し炭になる可能性が高かった。

 

「そもそも、そんな弓矢がある訳が―――」

「いや、もしかしたらあるかもしれんぞ」

「「「え?」」」

 

 不意に振り返れば、扉から入って来たエルとカトレア、そしてトンプソンの三人が。エル達は別枠で仕事をしていたが、グレイ達の話を聞いて興味があったのか、会話に割り込んで来た。

 

「もしかしたらあるかもって……マジで?」

「そこまでは分からん。ただ、俺が聞いた覚えがあるヤツなら心当たりがあるんだが……」

「どんなのだ?」

「大昔、古代から生き続ける魔となりし存在を退治すべく、戦い続けて来た戦士の一族があった。その一族はヨーロッパの各地に存在し、一族に秘められた能力を親から子へと代々伝わっていたそうだ。これらの一族を「ルーダー」って呼んでいたらしい」

「ルーダー……」

 

 まるであの世界の姫様の事だとでも言うのだろうか。いや、流石に魔王とかそこ等のレベルでタメを張れる程度じゃないのは分かっていた。

 

「精霊のビンという入れ物に水を注げば、精霊の弓に変化するらしい。ただ、この弓にはちょっと問題があってだな……」

「何だ?」

「その弓、基本女性にしか使えないらしい。正確にはルーダーとしての能力を開花した女性とか10歳位の少女に限られるんだと。ただ、力の最大は15歳までで、20歳になると力は完全に失うんだと」

「えー、何だよそれー。つーか、その力って役立つの?」

 

 20歳で枯れてしまう力とは。つまりは魔法少女から魔女へ変わるみたいに幼女から大人へとジョブチェンジか!と何気に失礼である意味言っちゃいけない事を言った鷹山。ただ、間違ってもいないのがまた。

 

「それに、ルーダーは魔の存在に殺された被害者の思い出の品を集める事で、被害者の無念の心をパワーに変換し、精霊の弓矢を召喚して戦うんだと。逆を言えば被害者の遺留品が一切無ければ力を発揮する事が出来ないそうだ。」

「劣化版の光の弓矢じゃねーか。でも、威力は絶大なんだよな……」

「何を言ってるのか分からないけど……さっき、その弓矢って女性にしか使えないって言ってたじゃない。話聞いてたの?」

「まあな。でも、もしかしたら使えたなんてオチがあったりして」

 

 そんなオチあって欲しくないわ……と呟くWA2000。しかし、本当の悪夢はこれからだった。

 

「とりあえず、それがあるかどうか探してみるわ。お宝探しと思えば良いし」

「賛成。ついでに俺も行くわ。そんな面白そうなの見過ごせる訳には行かないだろ」

「言っとくが、場合によっては廃墟だったりとか異界とかに巻き込まれたりする可能性があるからな。何でも長年からの因縁とも言うべきか、幽霊とか居てもおかしくないし」

「ゆ、幽霊……!?」

 

 幽霊というワードを聞いてビクッとするWA2000。実は彼女は幽霊とかそういうのが苦手なタイプらしく、唯一の弱点でもあった。これを聞き逃さなかったのか、両サイドからガシッと掴むグレイと鷹山。

 

「行こうぜ、わーちゃん!幽霊が俺達を待ってるぜ!」

「わーちゃん言うな!って、行くって本気で言ってるの!?」

「そうまでしなきゃ確かめる意味が無いだろ。見つけたら見つけたでラッキーだと思えば良いし」

「べ、別にそこまでしなくて良いわよ!わ、私は最初から行こうだなんて思っても……って、ちょっと離しなさいよ!行かないし行きたくもないから!ねえ、聞いてるの!?」

 

 ずるずると若干涙目になりながらも引き摺られては連れて行かれるWA2000。あの子、とばっちりを喰らったなと全員は合掌しながら見送ったという。

 そして、例の弓があるとされるヨーロッパで転々と移動しては探し続け、何時しか扉を開けた先が過去の世界での異界だったり、魔法陣が起動しては怨霊など蔓延る異界に迷い込んでいた。

 

「もう!一体何なのよォォォォォ!!」

「わーい!たーのしー!」

「楽しくないわァァァァァ!!」

 

 アハハハハと笑うグレイと鷹山。その真後ろからハンマーを持った男や硫酸で人を殺す殺人鬼だったり、斧で襲い掛かって来る奴、巨大なハサミを持った兄妹で切り殺しに来た。

 大体の奴等が過去に大量殺人をやった人物しか居なかったおらず、これにはWA2000もガチ泣き。それに比べて、グレイと鷹山は恐怖に屈せずに殴り返してばかりの連続。

 

「アンタ達は幽霊とか苦手じゃないの!?」

「これでも苦手な方だぞ。ただ、目の前で現れたら「わぁぁぁぁぁ!」と驚いた後に殴る事が多いかな。こういう奴等に追われているとかの場合は不思議と怖くなかったりするんだが」

「この前なんてゲームやってたら、いきなり井戸から貞子が出て来るシーンが出てさ。あ、これアカン奴やと思った時に全員が急いで銃取り出してさ。貞子は貞子で命の危険を感じたのか、井戸に逃げたんだぜwww」

「で、そのままガトリングとかロケランでぶっ飛ばして除霊完了。それ以降何も起きてない」

「嘘でしょ!?貞子存在してたの!?」

「ちなみにDVD経由で存在してやがったアイツ」

「DVD!?」

 

 もうビデオテープは時代遅れだから……主流はCD媒体だから……。

 それでも呪いのビデオだろうがDVDだろうが傍迷惑な話なのは変わらない。呪われて死ぬのはゴメンだったので、除霊(重火器)で攻めた訳だったのだが。

 

「ってか、話し合ってる暇があったらコイツ等何とかしなさいよォォォォォォォォォォ!!!!」

「だそうだけど、どうする?」

「延々と追われてばっかというのも面倒だしな。そろそろシバくか」

 

 ぐるっと振り返り、ボウガンを二つ取り出したグレイと指をポキポキとならしながら本気で殺しに行く雰囲気を出す二人。

 何か仕掛けるのかと殺人鬼達が止まった瞬間、弓を撃たれ、ボコボコに殴られ、果てには「光りあれ!」とか叫びながら十字架みたいなオーラを出していたりなど、亡霊系の敵には正しく効果抜群とも言える酷さだった。

 その内、異界を彷徨っていたらルーダーの素質を持った少女と幼馴染の少年と出会い、黒幕とされる侯爵を容赦無しでフルボッコ。事件が解決した後は鷹山がこっそりと妖精のビンを練成して増やし、デバッグモードで男にも使える様に変えたりしたそうだ。矢も大量に練成しながら。

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ攻めようじゃないか」

 

 そう告げては大量の大型装甲機械を連れて歩くのは「ウロボロス(別名:尾を噛む蛇)」と呼ばれる戦術人形。彼女は言ってしまえば某サイヤ人の王子に近い様なプライドの高さを持っており、それなりに味方からも反感を買い易い性格をしていた。

 そんな彼女と共に来ていたのはイントゥルーダー(別名:侵入者)とゲーガー(別名:計量官)とジャッジ(別名:法官)の3人である鉄血人形。ここ最近でグレイ達に大量の装甲機械を連れては攻撃を続けている張本人達でもある。

 

「例えあの人間達でもこの装甲機械の数では長く耐えられるとは思えまい。我等を散々惨めにしてくれた分、今ここで返してやる……!」

「それで通用すればの話なんだけどね。絶対これ私達の方が負けるの見えてるって」

「何だと……?イントゥルーダー、貴様この期に及んで腑抜けた真似を言うつもりか?」

「事実だからしょうがないでしょ。これまで私達が何度戦って何度負けたの?今まで勝ったの?どんなに挑もうと、あのバケモノ達は進化し続けている。それだけじゃない。アイツ等は私達鉄血を殆ど殺さずにグリフィンの仲間として引き入れようとしている。洗脳なのかそれともただ単に言い聞かせたのか知らないけど……もう抵抗するだけ無駄だと思うわ」

「くっ……!」

 

 あの人間達には全く歯が立たず、勝てない日々が続く。何時かきっとアイツ等に勝てる筈だと信じていても、また負けて終わる。

 奴等が一体何を考えているのか全く想像は付かないが、それでも自分達は与えられた役目を果たすまで戦うしか無いと自身にそう言い聞かせていた。

 

「ん……?おい、何だあれは……!?」

 

 ゲーガーが何かを見つけたのか、叫ぶ様にして指を差す。ウロボロス達も同じく上を見たが、その異様さに言葉を詰まる。

 

「空が……輝いているだと!?」

 

 渦を巻くかの様に雲が動き、そこを軸にして巨大な魔法陣が輝きながら回っている。そして、中央から一際強い光が雷の如く落下し、放たれた光は地を切り裂き、ありとあらゆるものを破壊し、大きな爆発が起きた。

 爆風によって一瞬は怯むウロボロス達。風が収まると、目の前には破壊尽くされた後だったのか、巨大なクレーターが出来上がっていた。そのクレーターの中には先程の爆発によって巻き込まれた数多くの装甲機械の瓦礫の山が。

 

「何なんだ……今のは……!?今のはグリフィンが開発した新たな兵器だというのか!?」

 

 だとしたらここに留まっているのは危険だ。そう感じたウロボロスは急いでその場から離れ態勢を立て直そうとしたが、直後にまた魔法陣が空から出現する。

 今度はウロボロス達が居る真上の方からで、この時に彼女達は理解してしまった。例え今から逃げても絶対に間に合わない。あの巨大なクレーターを見た限り、絶対に巻き込まれる可能性が高いと。

 そうなると方法は1つ。ここは装甲機械を利用して攻撃の余波やダメージを少なくするしか無いと。死のうが生き残ろうが、もう壊滅的な状況に追い込まれたのだ。イントゥルーダーの言う通り、鉄血は相手を間違えた時点で負けていたのだと。

 

「こんな馬鹿な事……あってたまるか……!」

 

 出来るなら昔の自分を殴りたい気持ちだった。ドリーマー共々、グリフィン側に着いていたらこんな苦労も絶対しなかっただろう。考えている間に再び光がそこに落下しては巨大な爆発が起きた。

 一方で、あの魔法を放った張本人達はその威力を遠くから見てはテンションが上がっていた。

 

「やっべぇ……テンション上がるわ、コレ」

「魔法陣とか中二病あるあるな気持ちにさせる気満々じゃんか。こんなの良く代々から受け継がれたもんだな。ルーダー恐るべし」

「これアレだな「天光満つる処に我は在り 黄泉の門開く処に汝在り 出でよ神の雷!インディグネイション!!」って奴」

「何か分かるわー」

 

 アハハハハハと笑う二人にWA2000は顔を引き攣った。重火器を使う世界だというのに、何で魔法なんか存在しているのかと。そんでもって、あの弓矢は女性にしか扱えないんじゃなかったのかと。

 強引に異界に連れて込まれては泣く破目になったという事には一生許さないでいたが、ここまで来ると幽霊とかも何だか可哀想に思えて仕方が無かった。あんなデタラメな男達によって成仏とかされたのだから。

 

「私、仕事場間違えたかしら……」

 

 殺しの為としての存在意義とは一体何だったのか。彼等が結構倒してくれている以上、やる意味はあったのか。そんな風にWA2000は現実逃避してしまった。

 また、この日を境に本当に正直な気持ちで伝えようと決意した。そうじゃなければ、多分これからも彼等に振り回されそうな気がしてならないから。

 

「良かったわね、新しいツッコミ要員よ」

「ツッコミ要員言うなッ!!」

 

 最後にUMP45に弄られたが、それでもご丁寧に突っ込んでくれた彼女はまさしくその素質を持っていた。




わーちゃん可愛いけど、リアルでコミュ取ろうとしても仲良くなるまでが一苦労しそう(小並感)

・ルーダー/精霊のビン
元ネタは「クロックタワー3」から。ルーダーは本編の説明にあった通り、魔を倒すべく特殊な力を持った一族。精霊のビンはその為のキーアイテムでもあり、武器。何度でも言おう、武器である。ストーリーが進むと何故か水の入ってたビンが弓に切り替わり、殺人鬼とかを倒すという超展開に。あれ、クロックタワーってこんなデビルメイクライみたいな感じだったっけ!?

・魔法少女から魔女へ変わるみたいに幼女から大人へとジョブチェンジ
魔法少女まどか☆マギカから。キュウべぇに騙され、知らぬ間に絶望した魔法少女は何時しか魔女になる。そんな魔女を打ち倒すのが魔法少女とはある意味皮肉なものである。というか、キュウべぇが許さねぇ。

・劣化版の光の弓矢
個人的に印象に残っていたのは「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」から。ラスボスのガノンを倒す前にちょっとした騎馬戦が行われるのだが、その時ムービーで見た光の矢は3本のみ。それ以降は一体何処から持って来たんだ。また、スマブラでもその実力を発揮するのだが……モーションが何かショボい。クロックタワーの弓矢は光の弓矢よりかは威力は多分落ちてる方だと思うが、例の特殊技だと光の弓矢以上の攻撃を発揮。アリッサ、君は絶対FGOに出て来るアーチャーのサーヴァントとして喚ばれても納得出来るよ。

・いきなり井戸から貞子が出て来るシーン
元は「リング」なのだが、もっと言うと「貞子VS俺【RATE先生】」が元ネタ。貞子に向けてガトリングとか正気の沙汰じゃない(褒め言葉)

・インディグネイション
歴代テイルズにおいて有名な技。あれが全ての始まりと言っても過言じゃない。モーションもそれなりにカッコ良かったりするのだが、一部では秘奥義扱いとされていたり、その条件が結構辛かったりと何気にマゾ要素がある。


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ウェルロッドMkII「パンジャンドラムはヨコハマタイヤではありません」

ウェルロッドちゃんを書こう!

詳しく調べたら、英国出身で紅茶が好き。

英国……紅茶……。

パ ン ジ ャ ン ド ラ ム

どうしてこうなった……まあ、英国キチのアカネチャン思い付いてしまったので、もう書くしか無いと思った。


 グリフィン開発室にて、グレイ達が何か考え事をしながら話し合いと作業を続けていた。時たまに工具とか材料とかを取っては組み立てている様子が窺える。以前に同じ様な光景が思い出されるが、今回は違う。

 

「この前ロボット作ったばかりなのに、今度は何を作るんだ?」

「戦車を作ろうと思ってな。ただ、完全に作れた経験は無かったし、ある意味これが初の試みになる。基本中の基本として、まずは土台からだ」

「お、おう……良く分からないが……最終的に動かせれば良いって事か?」

「まあな」

 

 全く作る物が想像出来ないグレイ達。唯一ぶっ通しで思い付きながらも作業の手を休めないザックの顔付きは真剣そのものだった。そうしている間に扉を開く音が聞こえ、一人の戦術人形が入って来る。

 

「指揮官、紅茶を淹れて来ました。一休みにどうぞ」

「おう、済まないなウェルロッド」

「いえ、これも仕事ですから」

 

 ウェルロッドと呼ばれた彼女は相変わらず表情を崩さずに真顔のままで紅茶を運んで来た。彼女はハンドガンの「ウェルロッドMkII」という名前で、自らを闇に生きる者と言っていた。

 最初に出会った際には中二病か何かだろうかと不安になっていたものの、後々になって確認したら情報機関や特殊部隊を対象に作られた武器らしく、言ってしまえばエージェントやスパイが使っていた武器として扱われていたそうだ。

 

「ウェルロッドMkII着任します。歓迎会は遠慮します。闇に身を置く私にとって祝いの花など必要無いですから……」

 

 その為、出会って早々にこの台詞を言ったものだから、余計コミュニケーションがやり難い相手と思われた。しかし、彼女は紅茶好きらしく、グレイが作った菓子パンと一緒に紅茶があったのを見たらしく、所々で彼女が紅茶を飲んでいた光景にはそんな可愛らしい所もあるんだなと思っていた。

 

「うん?紅茶……?」

「どうかしましたか、ザック指揮官?」

「もしかして……君って英国出身の銃?」

「はい、そうですが。それがどうかしましたか?」

 

 丁度ある日、ザックが少し歩いていた時に紅茶を飲んでいたウェルロッドを見掛けたそうだ。この時のザックは新しい兵器開発に何かアイデアが無いか模索していたのだが、偶然ウェルロッドと話した時、彼の頭に電流が走る―――

 

「よっしゃあコレだァァァァァァァァァァ!!!!」

「!?」

 

 唐突に叫んではダダダダダッと開発室へと走って行くザック。お前等も手伝え!と半ば強引に参加させられたグレイ達も渋々手伝ったのだが、やる時には真面目な顔付きになっていたという。

 ウェルロッドも一体何をするつもりだったのか気になっていたらしく、紅茶を持って来るのも兼ねて視察しようとしていたが……。

 

「うっし!完成した!」

 

 作り上げた物を見たウェルロッドは思わず唖然となってしまう。それもそうだ、何故ならそれは英国出身ならば知っているだろうあの兵器を見たのだから……。

 

「お前、これ……パンジャンドラムじゃねーか!!」

「だから、思い付いたのがコレなんだよ!コレを大量に作れば負担は軽く減らせるし、ラジコンみたいに操作出来れば問題無い筈だ!」

「問題しかねーよ!元々コイツ実用性が悪くて失敗作だったじゃねーか!しかも、自爆タイプだろ!?特に車輪部分はどうするんだよ!安定するの!?」

「大丈夫。車輪を少しだけ太くして、側面にはヨコハマタイヤの顔にしたから。ついでに真正面と後ろからの攻撃で壊れない様に盾を作ったし、その盾にもヨコハマタイヤの顔を描いてあるし、後は方向転換出来る様にミニサイズの車輪も付けた。オマケとして錆び付いた顔の方にメイクアップもしておいた」

「こえーよ!あんなのを何十何百に追われるとかどんなホラーだ!」

 

 まさかの作り上げた兵器がパンジャンドラム。しかも別の悪い意味で改造されていた。酷いゲテモノを作り上げてしまった事にグレイのつっこみが炸裂。ウェルロッドもまさかパンジャンドラムを目にするとは思っていなかったが、ヨコハマタイヤみたいに改造されていたのは流石に顔が引き攣ったらしい。

 

「誰だコイツにパンジャンドラムなんて案を出したの!」

「誰でもねーよ。ただ、ウェルロッドが紅茶飲んでたから、それを連想してパンジャンドラムが思い付いただけだ」

「頭茜ちゃんじゃねぇか!ついにお前も英国のダークサイドに堕ちたか!」

「何を言ってるのか分かりませんが……指揮官、これ以上祖国を馬鹿にするのなら私でも容赦しませんよ」

「じゃあ、お前あの馬鹿の暴走止められるのかよ!本来のパンジャンドラムよりも色んな意味で凶悪に作り上げたんだぞ!そういうお前がコイツを止めてみろよ!」

「………」

「ウェルロッド、目を逸らすな」

 

 ウェルロッドですら無理だと察したのだろう。彼女の顔に若干冷や汗が流れていたのが見えた。

 想像してみて欲しい。大量のヨコハマタイヤが追って来る光景を。機銃を放ち、自爆して大打撃を与える動く爆弾には恐怖と絶望しか無い。迫り来る錆び付いた笑顔は見た本人の心を震えさせるには充分過ぎる精神的なダメージを与える筈だ。

 

「つーか、ちゃんと機能するの?さっき方向転換出来るって言ってたけど……」

「それをちょっと試す感じ。悪いけど、外まで運んでくれ」

 

 実物大に作ったので、わっせわっせと手押しで押すグレイ達。数分後に広い場所で試運転を行うのだが……。

 

「十字キーで自由に動かせるんだ。で、こっちのボタンが機銃。こっちのボタンが自爆用のボタン。操作は簡単だろ?」

「パンジャンドラムの動かし方が完全にラジコンだった件について」

 

 まあ、勝手に別方向に曲がったりしない分よりマシだろう。それでも、顔の部分だけがどうしてもホラーチックになるのだが。とりあえず、スイッチを入れてから動かすと……。

 

「お……?動いた動いた動いた!」

「意外と速くて草。しかも安定した動きだし」

 

 フラフラした様子も無く、綺麗に動く魔改造パンジャンドラム。更にスピードを上げると、人間が全力出しても追い付かれる速さまで到達していた。機銃の方も順調に作動していて、恐らく自爆の方も起動するだろう。だが、ここは敢えてやらない事にした。寧ろ、ここで爆発させるのはマズい。グリフィンの本部にとばっちりが喰らう。

 

「よし、上手く動かせたから大量生産に入るぞ」

「嘘だろお前……」

 

 まだまだザックの暴走は止まらない。それからパンジャンドラムを大量に作って1週間。グリフィンには数千台のパンジャンドラムが大量に作られていた。もう良いんじゃね?と全員に止められたし、ヘリアンから作り過ぎだとこっぴどく怒られたらしい。

 動けたのは分かったので、今度は実戦も含めて動かした。今回のターゲットはテロリストを殲滅とした目的だが、果たして魔改造パンジャンドラムは何処まで通用するのか。

 

「ちなみに、作戦名はトライピオで行きたいと思います」

「その作戦名止めろ。フラグとしか言い様がねぇ」

「じゃ、行くぞ~」

 

 実験開始。とは言ってもパンジャンドラムがオート操縦するのはまだ先の話なので、同じくコントローラーを持ったグレイ達や他の戦術人形が操縦するという至ってシュールな光景が広がった。目となる部分はパンジャンドラムに取り付けられたカメラのみ。それを頼りに敵を探るしか方法はこれ以降は何一つ出なかったという。

 

「ちょ……!動かし辛い……!」

「あっ!ちょっと誰よ!私の機体にぶつけた奴!」

「あ、横転しちゃった。あー……あー……」

 

 車輪を太くした分、スムーズには進んでいた。しかし、ちょっとの段差だったり、横幅の感覚やカメラの見え難さもあってか、中々進めずに倒れてしまうのもチラホラとあった。これはこれでまた改良の余地がありそうだな、と納得するザック。すると……。

 

『ひぃっ!?な、何だ!?』

 

 画面に映っているテロリストがパンジャンドラムの顔に驚いては後退りしていた。そりゃ、直接目の前に現れてたりなんかしたら恐怖の一言に過ぎないだろう。だが、恐怖よりも更なる事態に。

 

「ほい、スイッチオン 」

 

 機銃のボタンを押すと、一部から機銃が放たれる。上手い具合に方向転換で向きをコントロールし、一人ずつ確実に仕留めて逝く。死んだのを確認すると、そこから離れてはまだ潜んでいるテロリストの元へと移動する。

 

『な、何だあの顔みたいなモノは!?』

『ば、バケモノなのか!?E.L.I.D.の仲間なんじゃ……!』

『分からねえ!けど、こっちに迫って来てるぞ!襲うつもりなら早めに倒せりゃ問題ねぇ!撃て!』

 

 丁度その先には結構な数で集まっているテロリスト達が。テロリスト達がパンジャンドラムに銃を撃ち続けるが、硬い防御に守られたパンジャンドラムは傷1つ付かず、止まる事なく物凄い速さで駆け抜ける。

 

「鷹山、ケンジ、ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」

「「了解!」」

 

 タイミングを見極め、中心地点にまで動いた所で自爆のボタンを押す。その威力は半径50m以内の敵を一撃で葬れる。錆び付いた笑顔からの爆発四散は敵からすれば何とも恐ろしい光景だろう。その考える余地すら与えずにパンジャンドラムは次々と敵を倒しては自爆で周囲を巻き込んだ。

 

「………」

 

 ウェルロッドはただただ茫然として見ていた。確かに世間では失敗作として伝えられたパンジャンドラムだったが、今になってこんな風に使われるとは考えていなかっただろう。元だけでも変態兵器の部類に入るのに、更なる改良とも言えない改造で恐るべき兵器と化したパンジャンドラムにはウェルロッドも正直認めたくないという気持ちがいっぱいだった。

 ともあれ、試運転としては上出来とも言えるレベルだったので、何時しかまた使う機会が来るのでは無いかと、とりあえずは残しておこうと最終的に決定された。

 

 

 

 

 

 だが、それも束の間。パンジャンドラムの悪い点を見直したザックは何かもう1つ代わりとなる物が作れないか模索していた。パンジャンドラムの問題点として、段差で倒れたり、距離間隔を掴めずにぶつかってしまう問題をどうにか出来ないか悩ませていた。

 

「車輪はスピードは速いが、悪路走行にはまだ向いていない……安定した動きとなると、ロボットみたいに足を付けた方が安定するかもしれないな……いや、待てよ……?2脚だからこその芸当があれば……」

 

 更なるアイデアを考察し、また作り上げる作業を続けた。たった数分で完成したが、その結果……。

 

「出来た……!」

「いやさ……お前、ホントに何作ってるの……?パンジャンドラム何処行ったの……?」

 

 ザックの報告を受けて来たグレイ達だったのだが……完成したのは車輪ではなく2脚が付いた変態兵器だった。最早、パンジャンドラムの形ですらない別物と化していた。何気に足の部分が妙に生々しいデザインになっている。

 

「これ、メタルギア月光やん……どうしてこうなったし……」

「パンジャンドラム要素何処よ?」

「そりゃ、あの機銃が付いてる頭部だよ。車輪だとどうしても安定性がちょっと欠けるから、もう少し安定性を上げたらどうなるか考えたらこうなった」

「ただ交換しただけじゃねーか!というか、まだヨコハマタイヤの顔付けてるの!?」

 

 要するに、パンジャンドラムの車輪だけを外し、月光の足を取り付けただけの完成品だった。生足みたいなパーツの影響で更なるキモさが浮き出ている。が、車輪には出来ないジャンプや簡単に横転しないケースを考えれば妥当な方ではあるのだが……。

 

「車輪から2脚に取っ替えただけで、武装とか変わってないだろ。ホントに大丈夫かそれ?」

「平気だろ。それに、機銃だけじゃなくてロケランとか積めるからこれでも改善されてるぜ?まあ、悪かったら足を替えれば良いだけの話だし」

『違う、そうじゃない』

 

 全員の思考が「とりあえず、その頭部を外せ」と一致しているのだが、意地でもその頭部にしたいのか、中々言い出せない状況。再び外で軽い試運転とテストを行ったが……。

 

「パッと見……普通だな」

「普通だね」

「結局オリジナルの月光と変わらない戦闘パターンだな」

 

 跳躍して銃を撃ち、動物の鳴き声とかで鳴いては時折自爆もする月光。たったそれだけが故か代わり映えしない結果となってしまった。ちゃんと銃が撃ててる分には問題無かったのだが。

 

「クソッ!何がいけなかったんだ!!」

「いや、もう全部だろ。何で惜しい所まで作るんだよお前は」

「単純にパンジャンドラムとメタルギア月光を合体させただけやん」

「そう言うだろうと思って、もう真っ先に作ってあったりしたんだよ畜生ッ!!」

「うわ、キモッ!ヨコハマタイヤの顔だけでもヤバいのに、組合わさったら尚更キモくなりやがった!」

「何か、どっかのゆるキャラにこんなの居たよな……」

「デルタルーンにも出ていた気がするぞ」

 

 開発の末にもう1体別の奴を作っていたらしいのだが、今度はパンジャンドラムそのものを頭部として扱い、車輪の下から足が出ている異様さが漂っていた。彼等が言ってた通り、デザインは何処か見覚えのある姿だった。

 

「完全に合体事故だな」

「パンジャンドラムとメタルギア月光を合体させてコレとか嫌がらせにも程があるわ。笑顔だけでもホラーなのに」

「二つだけでも変態兵器なんだから、何体合体しようが無駄に終わるだけだけどな。これ以上やったって姿や形が変わる訳じゃ無さそうだし」

「何体も合体だと……?」

 

 あっ、と気付いた時には既に遅かった。ザックの頭にイメージが沸き上がり、それを実行しようと悪魔の儀式が始まる……。

 

「では、ここに最速で作った2脚パンジャンドラムを8体用意します!」

「え?何?更に合体させる気なの?」

「4体配合じゃなくて8体……?」

「そして、これら全ての2脚パンジャンドラムを純血合体!!」

「あっ……(察し)」

「光差す道となれ!シンクロ召喚!」

「いや、どっちだよ」

 

 2脚パンジャンドラムが1つの光となって集まる。強い光を放った後、ゆっくりと光が収まってはその全貌が窺える。

 

「現れよ、ダンロップタイヤ!!」

 

 ヨコハマタイヤよりも更に不気味な顔で現れ、予想外な事に腕まで生えていた。そして、開幕の一言が―――

 

「オレサマ オマエ マルカジリ」

 

 絶対殺すだろうと思い、今年一番の絶叫が響いたのは言うまでも無かった。




ちなみに、英国キチアカネチャンの存在を知ったのは、某ホビーの動画を投稿しているためにならない人。あれからです。

・パンジャンドラム
イギリスの変態兵器。これが無ければ多分色んな意味で応用とか無かったかもしれない。大体はお察しの通り、制御が効かずに失敗に終わったが、近年では改良した結果普通に動かせていた。何故動けた。そして、何故昔の英国はもうちょっと考える余地が無かったのか。

・ヨコハマタイヤ
ご存じ、かつて昔の看板ではこれが主流となった不気味なロゴ。錆び付いた笑顔は正にホラーと言えるレベル。

・頭茜ちゃん
パンジャンドラムを愛し続けたヤベー人。これまでヤバいパンジャンドラムを作っては動画投稿してて、「パンジャンドラムは子宮にいるころから知ってました。前世はネビル・シュートです」等というパワーワードを残した。

・トライピオ
ベイブレードのコマの1つなのだが、コイツは見た目通り普通のベイより横幅が2倍デカく、元々はプロペラみたいに飛ばすのがメインだが、防御力は完全に弱い。どうしてこんなのを作った……。

・ジェットストリームアタック
初代ガンダムのドム3体がやってたアレ。今回はヨコハマタイヤだったが、あんなのに3体追われるとか恐怖。

・メタルギア月光
メタルギア4に出て来た敵の1つ。性能は今回書いた通りの内容で、それなりの頻度で出て来る。

・4体配合/純血合体
4体配合はドラゴンクエストモンスターズで、純血合体は女神転生デビルチルドレンとかで出る。両方とも同じモンスター同士で合体すると違うモンスターとなって生まれる事がある。

・どっかのゆるキャラ
国分寺のマスコットキャラクターにしこくんの事。デルタルーンでもそれっぽい敵がいた。

・ダンロップタイヤ
大正時代、ダンロップタイヤもヨコハマタイヤ並みのキモいデザインだったらしい。途中まではヨコハマタイヤと同じだが、ダンロップタイヤは手足も生えていて、自転車に乗ってる姿が。怖いわ。

・オレサマ オマエ マルカジリ
女神転生でケモノ系の悪魔を作った際に言われる挨拶。でも、かわいい。


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TMPは頑張りたい

Windows7が終了する直前に何とか書けたヤツ。しかし、Windows10買ったが故の本文ェ……俺もパソコン組み立てダメダメじゃねーか。
しっかし、如何せん忙しいし、履歴書作るわで結構大変な目に……早く受かる事を祈りたい。


「女の子とのコミュニケーションを円滑に進めるにはどうしたら良いんでしょうかね、45さん」

「は?」

 

 とある日にて、唐突にグレイから予想外な言葉を喰らったUMP45は一体何言ってるんだコイツと反応に困っていた。

 一歩間違えたら浮気と誤解されてもおかしく無い言い方だった為、仮にそうだったとしても彼を奪うヤツを殺し、彼を束縛し、一生自分達にしか愛せない身体にしようと調教染みたプランも考えてはいた。

 逆にグレイ自身は愛されたからには一生愛すけど、支え切れるかどうか分からないよ?生活費とかその他諸々で問題あるけど……大丈夫?という感覚で相手側の気持ちを優先にして考えては浮気などは一切しない逞しい男であった。まあ、重婚(この場合、404が一方的だったが)の時点で言える立場ではないのだが。

 

「話の内容が全く見えないんだけど、何?」

「うん、まあね……グリフィンってさ、鉄血だの戦術人形だの色々問わずして色んな性格がある子達居るじゃん?そりゃ指揮官サマもちゃんと指示出来る様にコミュニケーションは取ろうとは思ってるよ。ただね……」

「ただ?」

「……俺達を見て完全に怯えていたりすると正直こっちとしてもどうしたら良いのか分からないの……」

「あー……」

 

 何となくだが察したUMP45。そして、それに該当する人物は極僅かではあるものの、あの子しか居なかった。

 

「大方、TMPの事でしょ?」

「イエス」

 

 彼女が言ったTMPというのは「ステアーTMP」という戦術人形を示していた。

 TMPはサブマシンガンの戦術人形で、黒いコートに猫耳と尻尾のアタッチメントを装着している変わった子だった。しかも、コートの中はハイレグレオタードみたいなボディースーツを着こんでいる為、一時期彼女を他のメンバーと一緒に出撃させてはちょっとだけ怪我して帰って来た事があったのだが、その際に彼女の衣装がソレだったのを直に見てしまったグレイ達は恥ずかしくなりながらも「は、早く行って来て!風邪とか引いちゃったら大変だから!」とテンパりながらもそう伝えていたのは覚えていた。

 その際、45達から笑われては幾度かからかわれたのもお約束とも言えていた。しかし、問題はそっちじゃない。本当の問題というのは……。

 

「し…指揮官、ステアーTMPです……そ、そんな見ないで下さい!お願い……」

『え……?』

 

 彼女、極度の気弱で引っ込み思案な性格をしているからである。その上、会っても大体は俯いては中々喋れなかったり、或いは距離を取っちゃったりしてコミュニケーションが取れず、後はちょっとした妄想癖もあるが故に、グレイ達も非常にどう答えたら良いのか困ったちゃんなのである。

 

「流石に鷹山も『おふざけ出来ないな……寧ろ、俺等が基本戦っているとか言っちゃってたら怖がって話し掛けて来なかったりするんじゃね……?』と危惧していたらしくてな。前回も挨拶だけしようと思ってたのに、遠くに逃げられたのがショックで落ち込んでいたからな」

「あら、中々見かけないTASさんの敗北ってヤツね」

「どっからどう見ても、そのシチュエーションって如何にも怪しいオッサン相手に怖がって逃げる構図しか見えないしな……それでアリコン言われて誤解生まれても嫌だし」

「アリコン?ロリコンの間違いじゃなくて?」

「ケンジ曰くロリコンは12歳から15歳までの少女が定義らしく、一般で言う中学生女子がそれなんだと。逆にアリコンは7歳から12歳までの間で、小学生女子がそれに該当するらしいぞ。ちなみに、何故アリコンなのかはTMPのスキンにランドセルがあったらから、そこから推測出来たんだと」

「何でそこまで詳しいのよ……」

「精神医学だとコレがデフォの基準らしいぜ?それを一括りにしてロリコンって言う勘違い野郎が居るらしいが、どっちにしろ手を出したら犯罪って事で」

「まあ、言えてるわね」

 

 しかし、肝心のコミュニケーションをどうするか決めてはいない。まあ、そこは追々時間が解決してくれるかもしれないが……慣れるまでは相当な道のりになりそうだ。だが、そう思っていたのも束の間に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別の日。今日は珍しく全員がオフだった為、遊びに費やしたり、仲間と話し合ったりと各々がゆったりと過ごしていた。それはグレイ達もTMPもまた然り。

 今日も今日とて、一人寂しくトコトコと可愛らしくも未だに俯いた表情のまま歩くTMP。すると……。

 

「ほら、歩け歩けー」

「えー、重たいよー」

「何言ってんだ。道中まではバイクで運んでいただろうよ。開発室までそう遠くはないんだからさっさと運ぶぞ。直したら自分のモノにしちゃって良いんだから」

「はーい」

 

 目の前を歩いていたのはザックとアーキテクト。何処かでフラついていたのか、たった今帰って来てばかりは疲れていそうな雰囲気を出している。

 ここでのグリフィンにおける事情はTMPも既に知ってはいたものの、こうして鉄血の誰かと歩いている姿を見たのは何気に初めてだったりした。

 不意に誰かの視線を感じたのか、二人一緒になって後ろを振り向く。まさか気付いていたとは知らなかったのか、身体が咄嗟に反応しては通路の角に隠れてしまった。

 

「あら、可愛い仔猫みたいに怯えちゃってー」

「あんまり弄るなよ。それに、何もしないから安心しろ。別に怒ったりしねーって」

 

 ホントに……?と言いたいのか、角からひょこっと隠れながら覗くTMP。本当に猫っぽい行動だから仕方無いのだが。ビクビクしながらも、TMPはザックとアーキテクトに声を掛けた。

 

「こ…こんにちは……ザック指揮官……あの、それって一体何なんですか……?」

「ああ、コレか?言うならゴミだ」

「ゴミ……ですか?」

 

 ザックとアーキテクトの手には大きめのゴミ袋が幾つかあり、それを台車で運んでいた様子だった。その中には何やら四角い物体とかが殆ど見えていて、決して生ゴミとかそういうモノじゃないとTMPは判断出来た。

 

「正確には粗大ゴミとか機械関係のゴミだ。使い物にならなくなった電子機器を回収して、何とか修復出来ないか試す所でな。俺はDIYとかそういうのが趣味なんだ。今日は久々の休日だから同じDIY仲間を呼ぼうとしたんだが、生憎居なくてな。だから、今日はアーキテクトを呼んだんだ」

「だからって、わざわざ私を呼ぶ事なんて無いじゃん。そりゃ、名前に基づいて作れると言えば作れるんだけどさぁ……」

「一応、今日回収したブツの中にタブレットとかスマホ入ってただろ?それ、完全に直したらお前のに使っちゃっても良かったんだからよ」

「マジで!?やるやる!アーキテクトちゃん、テンション上がっちゃう!」

「やれやれ……」

 

 コイツは物を垂らせば見事に釣り上げるタイプだな、と心の中で呆れながらも腕前は侮れない。きっちり作ってくれる分、ちゃんと指示には従ってくれるから決して悪い子とは思えないとアーキテクトをそう評価している模様だ。その会話が気になったのか、TMPがおずおずとしながら喋る。

 

「あ、あの……見学しても良いですか……?」

「え?あ、ああ……良いけど……何だ?そういう技術関係とかに興味があるのか?」

「はい……わ、私……こういうのが得意で……今も着いてる尻尾とか耳とかは、私が独自に開発して作ったんです……」

「「マジで!?」」

「ひゃ、ひゃい!!」

 

 意外な所でダイヤの原石を掘り出したかもしれないと二人は確信してはTMPに喰い付く二人。それとは逆にTMPは驚いてヒュッと屈んでしまう。そんな怯えているTMPを余所に、二人は「この子、技術の方で鍛えればきっと大いに役立つかもしれない」と考えていた。

 しかも、本来頭の耳や尻尾などは予め人形の素体共々最初から作る必要性があるのだが、この子は自身でネコ耳と尻尾を作っては物理的に装着して完全に接合したのだ。これで驚かない訳が無い。

 

「そうとなれば、善は急げだな!行くぞ、アーキテクト!TMP!」

「はいはーい!」

「え、ええっ!?私もですか……!?」

「是非ともその腕前を見せて欲しい!俺としてはそういう技能持ってる子大歓迎だからな!君の腕前で復活出来る機械とか作れたりするモノとか出来るかもしれないからな!どうかね!?」

「え、えっとぉ……じゃあ……よろしくお願いします……」

 

 ひゃっほーい!とテンション上げながら、それぞれの腕をガシッと掴むザックとアーキテクト。「ふぇっ!?」と半ば混乱しながらもTMPは開発室へと連れ込まれ、早速捨てられた機械の修復をやる事に。

 

「あ、あの……今日は一体何を修理すれば良いんですか……?」

「今日は何気に大量だった携帯端末とタブレットの修理だ。種類とかはバラバラだが、使えれば結構役に立つ。滅茶苦茶サビ付いていようが完全修復だ」

「イェーイ!」

「あ、ちゃんとTMPの分まであるから安心してくれ。TMPは携帯の修理の方は経験あるか?」

「は、はい……使い続けて壊れちゃった物は自分で直しているんですけど……原型が酷くなる位に使えなくなった物を修理するのはこれで初めてだったりします……」

「良い心掛けだな。今も昔も変わらないが、壊れたと分かった途端にポイ捨てするとか何考えてんだって言いたくなるわ。修理とかすれば使えるのに、それを全くしねぇからゴミ問題だって増えるだっての」

 

 ザックの言い分に納得するTMP。確かにそういうのは大事かもしれないが、それはあくまでも自分達がその分野の知識があるからこそ得意とする訳であって、一般人からすればどう修理して良いのか分からないと判断に困るだろう。

 修理に出そうとしても金を取られたり、自ら修理しようとしても素材も必要となって来る上に金もまた必要となる。だからこそ、捨てて新しいモノへと乗り換えるという人間として当たり前な悪い癖は最早直せそうにはならないのだ。ザック達みたいに修理してまた使えば良いという人物像は極僅かではあるものの、大変希少な存在でもあるのだ。

 

「さて、始めるぞ」

 

 彼等の手元には軽く10台は越えているタブレットやスマホの量が。色が変色して画面がクモの巣みたいに酷く割れている物や、中身が見えてる位に酷く壊れた物。中には丸ごと全部サビ付いて使い物にならなくなった物まで……とにかく酷いのオンパレードだった。

 まずは、お手本という意味合いも込めて、良くありそうな壊れ具合をしたスマホからの修復が始まった。最初に部品を分解する作業から始まる。ネジがある箇所はドライバーで外しながらも何処に着いてあったのかをメモし、各々のパーツもピンセットで丁寧に外す。センサーやモジュール、配線等は端末を動かす為には絶対に必要なモノである為、絶対に無くしてはいけないし、ちゃんとした手順で直さないといけない。誤った方法だと結局直らなかったりするパターンも多いからだ。

 

「よし、細かく分けたな。次は本体のカバー部分や汚れた箇所を研磨する。それが終わったら次は電流チェックだ」

 

 廃棄された電子機器の殆どは表と裏が壊滅的に汚い。その為、裏側の方は研磨する必要がある。ロゴや名前が消えてしまうかもしれないが、捨てられている以上気にする必要は無い。

 また、表面の割れたフロントパネルとかは手で修理するのは無理があるので、コレばかりは市販とかで売られている交換用のフロントパネルを購入して接続しなければならない。ついでに電池のバッテリーも完全に使い物にならない為、それも購入。

 

「ねぇねぇ、中身はどうするの?」

「あー、基盤の方か?そっちは一旦ブラシとかで軽く擦った後、専用のスプレーで更に擦っとけ」

「あ、あの……外れたパーツはどうしたら良いんでしょうか……?」

「そっちも専用の接着剤で固定。念の為に電圧計で流れるかどうか確認してからバッテリーのパーツも繋げるぞ」

 

 大方の作業が終わったら、最後にパーツを組み直す。最初に分解した手順を逆から順々に取り付け、ドライバーでネジを再び固定。回路を付け直し、新品のフロントパネルを接続し、残った部品を取り付けて修理は完了。

 直ったスマホは新品みたいに綺麗になっていて、傷も無ければ汚れも無い完全な仕上がりとなった。そして、ついに電源を入れる時が。

 

「さて、起動するか……?」

 

 電源ボタンを長押しすると、パッと画面が点灯。暫く待ってから動かすと何の不具合も起きず、スムーズに動かせていた。

 

「やった……!」

「ヒャッホー!かんせーい!」

「良く頑張ったな。ここまでやれてれば上出来だろ。今回作ったヤツはお前等の携帯として使って良いからな」

「あ、ありがとうございます!」

「最高!指揮官愛してるぜぇ!」

「何処ぞのカラスみたいな言い方すんな。オッサンじゃねぇだろ。さて……残りもやるぞ」

 

 そんな感じで三人は一日中電子機器の修理を続けていた。たまに知らない分野の方を学んだり、意外な修理をしたりするなど……TMPは心の底から楽しんだ。何時の間にか人に対する不安とかで怯えたり緊張してたりするのも忘れたままで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の任務は以上だ。後はこっちでやっておくからな」

「は、はい!お疲れ様でした!」

 

 任務が終了し、元気良く挨拶してからパタパタと出たTMP。未だにちょっとだけ言葉がすんなりと出ない事があるものの、彼女の変わり様にグレイはちょっとだけ驚いていた。逆にUMP45は何かと知っていたのか、そんなに驚いた様子は見せていなかったが。

 

「……最近、あの子変わったな」

「そうね。きっと何処かの誰かさんがあの子の趣味を惹き付ける様な事をしたんじゃない?」

「マジでか。にしても、こんなにビフォーアフターで進化するなんてな……」

 

 以前のTMPと比べ、前よりかはマシになっていた。人前で話せている辺り、かなりの進歩だろう。その姿は一人の女の子という感じに。これでまた一歩コミュニケーションの方を解決したグレイだが、まだまだ性格に難ある戦術人形は多く居る。それは追々対処するしか無いだろう。

 

「何か安心して良かったよ。いやー、疲れた疲れた。ちょっと軽く飲めるヤツ買おうかな」

「あ、私も行くわ」

 

 執務室を後にして、近場の自販機に向かう二人。すると……。

 

「ふふ……ふふふ……今日もザック指揮官頑張ってるね……」

「「ん……?」」

 

 角に差し掛かった辺りでTMPの姿を見た。だが、様子が若干おかしかった。耳を澄ませてみると、彼女は小さな声で何かを呟いている。

 

「今日もまたゴミ捨て場で廃材探してるんだね……毎日大変ですけど、そんな指揮官が大好き……もしも、私が壊れた時はザック指揮官に直して貰いたいなぁ……私のあんな所やこんな所まで、隅から隅まで触られて、弄られて、彼に染められる……ああ……待ち遠しいなぁ……!」

 

 「聞こえ間違えだったかなーwあの子がそんな事言うなんてあり得ないよねーwww」と無理矢理にでも現実逃避するものの、現実は許してくれなかった。

 

「昨日は夜の1時まで起きていたから、コーヒーを差し入れしなきゃ……!疲れた時は私がシてあげなきゃ駄目だもん……パスワードも知ってるし、何時でも指揮官の事を見てるからね……指揮官、指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官……」

((アカン))

 

 知らぬ間に彼女が病んでた光景にグレイとUMP45は指を十字に切って立ち去った。

 

「ザック……骨は拾っといてやるぜ……」

「404は存在は消しても、貴方のメモリーは決して消えないから安心してね……」

「ねえ、それって一体何の事なのかな?」

「「………」」

「ねえ、教えてよ。私の事を言ってるのかな?どうしてザック指揮官の骨を拾うの?ねえねえ、教えてよ。ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねねえねえねえねえねえねえねえねえねえねええねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ(ry」

 

 その狂気に耐えられず、全力で逃げたのは言うまでも無かった。グレイ曰く「絶対振り返ったらヤバいと思った!こえーよ!振り向いてはいけない小道か九十九里浜で机焼くシーンの間違いじゃねぇのか!?」と言い、UMP45は「出来る事ならあんな恐怖消したい……」と涙目になっていたとか。




ヤンデレTMP可愛いよね……偶然バグで起きたとはいえ、そんな可愛い子に言い寄られたら受け入れるしかないじゃないかッ!!(おまわりさんこっちry)

・愛してるぜぇ!
テイルズオブヴェスペリアのレイヴンが愛の快針を放った時の台詞。

・振り向いてはいけない小道
ジョジョ四部のダイヤモンドは砕けないに出た七不思議的な存在。振り返ったら最後、魂があの世に持っていかれるとか。

・九十九里浜で机を焼く
ほんとにあった怖い話から「机と海」。最後近くの「ねぇねぇ」という声は正にそれでした。


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素敵な出会いに祝福を

バレンタインの日という事で何とか間に合った。今回404に絞った上で45姉視点でちょいと書きました。

私はもうバレンタインはどうでもいいと思ってるので、その日はドラクエ5を3つ同時にプレイする人の動画を見ている最中です。ちなみにビアンカ派。フローラは金持ちというハードル高くて恐れ多いし、デボラは……すまぬ、私はまだノーマルで居たいのだ……可愛いんだけどね……。

リア充爆発しろとか相変わらず騒がれたりしてますが、幸せならそれで良いんですよ。
ただし、NTRテメーはダメだ。NTRは下手すると記憶に結構残るしダメージは大きいし、報われないというか何というか……そういう感情移入が出来てしまうからかね。だから好きになれんのよ……絵はエロくて良い同人とかあるのに、何故NTRなんだ……救いは無いんですか!?


「お疲れさまー。今日も頑張ったね、しきかーん」

 

 そう言って、彼のテーブルの上にコーヒーを渡す。彼も相当疲れたのか身体を動かしてはバキバキと骨を鳴らし、リクライニングが出来るモフモフした椅子で寄り掛かっていた。

 何気に今日はやる事がいっぱいあったと言っているけど、確かにそうかもしれない。だって、今日はちょっとした都合で他の指揮官達は居ないから。その代わりとして私達404小隊が手伝ってあげたんだけど、それはあくまでも建前。

 

「今日に限ってアイツ等どっか行っちまうしよぉ……デートやら何やらお察しの身ですけどね」

「随分と不満そうだけど、私じゃ不満~?それとも、416とか9とかの方が良かった?」

「え?何で二人が出て来るの?何か関係あるの?」

「指揮官……幾ら貴方でもそこまで鈍感なのは許せないわ」

「え、だって今日ってそんな特別な日じゃ……あー……悪かった。すっかり忘れてた」

 

 どうやら嘘でもなく、本当に自覚無しで今日が何だったのか忘れていたらしい。彼が言うには「これまで旅とかしてた癖で、カレンダーとか見ないタイプだから」とか言ってたけど、正直それはそれでどうかと思った。

 

「そっか……今日はバレンタインデーか」

 

 そう。今日は世間だと有名なあのバレンタイン。今日という日に限って友チョコだったり、好きな人に渡したりと色々と騒いでいたらしい。その為、AR小隊が鷹山指揮官を連れて行ったり、エージェントがケンジさんにチョコを渡すのを見ちゃったり……ともかくそういう日。

 ちなみに私は言うまでもなくグレイ指揮官に渡すつもり。彼には色々と感謝はしてるし、何よりも好きだって事には変わり無い。それは404の全員も同じ気持ち。少しでも彼に対する感謝とか気持ちとか、そういうのを形で変える為のチャンスだと思って、一週間前から他の戦術人形達も交えてチョコ作りに挑戦していた。だけど……。

 

「わぁっ!?粉入れ過ぎちゃった!」

「……なあ、M4。必ずしもバーボンじゃないとダメなのか?ジャックダニエルは?」

「変にトライするより、ちゃんと作った方がマシですよM16姉さん!!だから、ジャックダニエルはダメです!!」

「えっと……バニラエッセンス……って、これ洗剤じゃない!?」

 

 多少、グレイ指揮官と一緒に料理した経験があるからマシな方かもしれないけど……やっぱり難しい。

 私達戦術人形は戦う事しか知らない。どんなに知っていても所詮は情報に過ぎず、生きる為にも任務を遂行する為にも余計な事は要らないと見向きもしなかった。まあ、スプリングフィールドやm45の様に予め料理作れる人形だったらマシだけど。

 ただ、実際にこうしてやると誰もが料理経験とかした事無いのか、慌てふためく様子が次々とその目に留まる。きっと、彼が居なければ戦術人形が料理を好きになるなんて事は滅多に無いだろうし、ましてや彼の料理が無ければ今の生活が続くなんて事も無かっただろう。

 

(やっぱり敵わないなぁ……)

 

 たまに指揮官をからかう時もあるけれど、それでも私は彼に弱い。何か、こう……手懐けられた猫みたいな感覚で、あろう事かありのままの姿を見せている気がする。

 きっと404として情けない姿かもしれないが、その辺り416は同情していた。彼女も「私が完璧じゃなかったら私の存在意義が無くなる……ああ、だけどそんな指揮官に愛されている以上なら何も文句は言わないわ……」とビクンビクンしてたけど。どう反応すれば良いのよ……。

 とにかく、当日になるまではドタバタしてたけど、何とか作り上げる事は出来ていた。折角の機会を逃す訳にも行かない。だから、私は意地悪そうな顔を浮かべて指揮官に話した。

 

「あら~?もしかして、指揮官もチョコが欲しいの~?」

「チョコねぇ……良くても義理とかじゃね?ってか、そもそも俺等の関係既に知ってるの殆どだろ?渡すヤツ居る?」

「居るんじゃないかしら。だって、貴方は完璧を超えた完全無欠の指揮官よ。貴方によって頑張れた子は他だって居るわ。それこそ、日頃の感謝という気持ちを込めてまで」

「感謝要素あるかなぁ……?そりゃ、たまに仮面被りながらパンツ一丁で走ってたりとかした経験あるけど」

『…………』

「無言止めてよ!どう言ったら良いのか分からないじゃん!!」

 

 だって、そう言われてしまうとどう言ったら良いのか本当に分からないんだもん……これまで散々ヤバい案件しか起きてないから、正規軍とか鉄血なんかじゃ「変態の集うグリフィン」だとか「あそこの指揮官はヤベー奴」だとか言いたい放題なんだもん。否定しないけど。

 このまま気まずい空気が流れ続けるのも嫌だったから、とりあえずは指揮官にチョコを渡してあげる事にした。

 

「はぁ……もうムードも何もかも台無しだから、あげちゃう。はい」

「あ、45姉が渡すなら私も!」

 

 後から9達が次々と指揮官にチョコを渡す。その際、ちょっとだけ指揮官の表情が明るくなった気がした。

 

「あ、くれるんだ。ありがと」

「別に要らないなら良いよー?」

「仮にチョコが無かったとしても、愛してくれるんだろ?別にそれがバレンタインじゃなくても、一緒に居てくれるだけで嬉しいから」

 

 予想外な答えに私のメンタルモデルが大破しそうになった。これに釣られて9達も同じ反応をしている。9なんて「ハァアアアアアアアアアアン!!」なんて声上げてるし、40に至っては「ぬおおおおおぉぉぉぉぉ……!」と荒々しい声を上げている。G11なんてソファで顔を埋めて「うぅぅ……」と唸っていた。

 きっと私の表情もニヤニヤしているに違いない。何これ……すっごい恥ずかしい……そんな台詞を言うのは正直卑怯。何時の間にか私はからかわれていたのか。

 

「ヒュー!言ってくれるじゃん、色男!」

「9、貴女別の意味でテンション上がって壊れてるわよ……指揮官も指揮官だよ?そういうのは二人きりとか、こう……カップルが仲良くというか……」

「おや、何だ45ー?もしかして嫉妬かー?モヤモヤしちゃったりしてるのかー?」

「う、煩いわよ40!」

 

 ああ、こんなのは私らしくない。40からも笑われたし、今すぐにでも死にたい気分だ。でも、指揮官がこうしてまで正直に言ってくれているという事は、そこまでして私……いえ、私達の事を愛してくれているんだと思う。

 だからこそなんだろうか。たまにこういう疑問が沸いて来てしまう。

 

「ねえ……もしもさ。もしも、グレイ指揮官が私や皆に出会う事なんて無かったら……その時、貴方は他の好きな女の人とかにそういう口説き文句とか言えてたのかな?」

「な、何だ?今日はさっきから大人しかったり荒げたりして情緒不安定になってるが……というか、その質問ってif的なものか?んー……」

 

 ちょっとだけ考える指揮官。だけど、数秒後には何事も無かったかの様に笑顔に戻り―――

 

「無いな、絶対!」

 

 と、答えた。正直そこまで割り切れる上に清々しく言えるのは他に居ないと思うが、念の為聞いてみた。多分、自分がバケモノだからとかそういう理由があるんだろうなと私は思っていた。

 

「まあ、ずっと前に答えただろうバケモノ云々の話もあるんだが、女性が好きだとかそういう概念すっぽかして一生旅してたなんて可能性も否めないからな。だって、必ずしも運命的な出会いだーとかそういうのってあんまり見ないだろうし、あのイイ女はあの場所に住んでいるって感じのストーカー紛いな事はしたくねーよ?まあ、言うならば気ままに流れるだけの人生に従ってばかりになるかもしれないけど、本当に成さねばならない人生だとか出来事に関しては自分の力で切り拓くつもりだよ?」

 

 けど、それは意外な答えだった。これには私を含めて皆が唖然となった。でも、よくよく冷静になって考えれば当然だったかもしれない。

 彼は自分の将来とか興味が無くて、何もかもハッキリとしない人生を送っていた。だけど、旅をきっかけに自分のしたかった事とか将来の夢だとか、それらも含めて何かが見付かるかもしれないと決心し、鷹山指揮官やエル指揮官だけじゃなく、彼を中心にして集まっていていた。

 そうして気付いた頃には語り合えては協力し合える仲間が居て、楽しく過ごしながらも時には厳しい場面に遭遇したり、決して彼女とかそういうのを作らないまま過ごしていた。

 

(いや、多分それだけじゃない……)

 

 この質問が必ずしもグレイ指揮官だけに向けた質問という訳じゃない。

 趣旨がズレているかもしれないが、例えばエル指揮官とケンジ指揮官がこうしてグリフィンに出会う事が無ければ、トカレフもといカトレアは今こうして生きてはいなかっただろうし、コミュニケーションが得意なケンジさんが居なければ鉄血と会話するなんて展開も絶対に見られないなんて事態が頭に過る。

 

(そして……私や40も……)

 

 きっと出会っていなければ私は復讐の憎悪が尽かないまま殺し尽くしていたのだろう。鉄血を殺すと誓いながら。

 ちょっとしたズレでこんなにも違って来るんだなと思うと嫉妬とは別の心苦しさというのがあってか、それが余計に辛い。何で私はそんな余計な質問をしちゃったんだろうか。

 それでも、指揮官は出会っていなかったとしても幸せだったのだろうか。出会っていなかった私達は一体何処まで狂っていたのだろうか。もう何が何やら分からなくて、怖くて、不安になってしまいそうだった。だけど―――

 

「大丈夫」

「え……?」

「絶対に見捨てたりはしないし、離したりなんかしないから。だから、そんな顔するな」

「あ……」

 

 不安になっていた私の顔を見て察してくれたのか、私の頭を撫でてくれた。指揮官からすれば、人形だから人の体温とかそういうのが分からなくて冷たいだけなのかもしれない。

 けど、私からすれば凄く温かくて心地が良い……いや、彼の事だから温かいとかそういうのは気にしないかもしれないけど。

 

「人生楽しんだもん勝ちだ。暗く考えたりしてちゃどうしようも無ぇし、そんなもしもの話をした所でどうにかなるって訳じゃないだろ。らしくないぞ」

「……そうよね。ごめん、深く考え過ぎてたみたい」

「うん、お前はそうやって笑ってるのが一番似合ってるわ」

「そういう指揮官も今の人生とかが一番合ってると思う。という訳で、抱っこして頂戴」

「え、何で!?」

「あ、ずるい45姉!」

「指揮官の抱き枕は私だけ……」

 

 皆に抱き着かれてあたふたしている指揮官だけど、やっぱり私は彼が居ない世界じゃないと幸せと感じない。私は貴方に出会えて良かったと心から思ってる。

 

「ふふ、大好きだよ、しきかーん」

 

 だからこそ、一生貴方を離さないし離したくない。貴方が私の幸せを叶えてくれた分、私も皆と一緒に貴方の幸せと夢を叶えてあげるから。

 面倒掛けちゃうかもしれないけど、これからもよろしくね。私の旦那様。




本当ならばAR小隊だったり、他のキャラ書きたかったりしたかったが、リアルタイムに合わせて間に合わせたい気持ちが強かった。だから、期待していた人には申し訳無い……済まぬ……済まぬ……!

そんな事より、早く他のキャラについての話とか書けと言わざるを得ないのだがね……遊び過ぎにも程あるが。


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ささやかなお返しに

短くてすまんな!!ホワイトデーに間に合わせたかったから!
同時にウチは誕生日……これで25歳のオッサンか……悲しいなぁ……(白目)


 一か月前、バレンタインチョコを貰ったグレイ。そのお返しとしてホワイトデーに何を作ろうかと考えていた。

 単純に安っぽいモノで返すのも失礼だし、ここはせめて豪華に行っちゃおうと決め、予めチョコレートとかの材料を全て集めた。

 

「それにしても、ホワイトデーに誰かにお返しするなんて事すら今まで無かったもんなぁ……」

 

 女子から受け取ったなんて回数はほぼゼロ。何気に404の全員から貰ったのが初めてでもあった。渡された時は凄く嬉しかったが、逆にお返しを一体何で返そうかと不安になり、急いで調べたのはご愛敬。

 しかも、渡すモノによって意味も違って来るという情報もあり、下手に選べない。基本、外れの意味以外では好きだとか特別な人という意味合いが示している。が、正直そこまで神経質になってもキリが無いだろうし、変に考えないで日頃のお礼だと思えば良いかと言い聞かせながらグレイはお返し用のお菓子を作り始めた。

 

「チョコにはチョコで返す……?いや、それもまたつまんないな。じゃあ、いっその事でチョコレートケーキにするか……あ、チョコレートパフェというのも捨て難いな!」

 

 だが、彼女達の作ったチョコレートに比べ、グレイはそれよりも遥か上を超えて行く。女性の心を確実に鷲掴みにする目利きを配らせ、これまで培った経験を活かしながら手を動かしていく。

 何時もの料理方法でやれば良いじゃないかと思うかもしれないが、わざわざ手料理で作ってくれた彼女達に向けてそれは失礼だ、とグレイのプライドが許さなかった。だから、出来る事ならば手で一から作った方が良い。

 

「出費が少し多くなっちゃうけど、今回ばかりは奮発しちゃおう」

 

 気付けば、丸一日でずっと作り続け、後は仕上げたケーキやパフェを冷やして終わった。

 

 

 

「で、その為に今日まで取っておいたって訳ね。別に気にしなくても良かったのに」

「ダメ。わざわざ皆から貰ったんだから、受け取ってばかりじゃ気が済まない」

 

 そして、翌日には時間が空いた彼女達を呼んでは完成したケーキとパフェを彼女達に振る舞っていた。ちょっとばかし畏まったUMP45だったが、無駄にするのも悪い気がしたのでそのご厚意を受け取った。

 しかし、いざケーキとかパフェを出されると、自分達がバレンタインで作ったチョコが凄くちっぽけに見えてしまった。

 

(指揮官って、さり気無く女子のプライド折るの上手よね……)

 

 別に悪気が一切無い。それこそ、あんまり料理とか慣れていない戦術人形にも料理を教えている方だ。だが、彼を超えるのは今の時点では無理だろう。でも、何時かは彼を超えたい。そんな気持ちも湧き上がる。

 

(あ、美味しい……)

 

 一口入れるだけでも広がる甘み。ちょこっとだけほろ苦さも混じって。冗談でもなく、お世辞でもなく、彼の作るお菓子は誰よりも一番かもしれない。

 それだけ愛しているか、愛されているか示している。それが積み重なった経験という理由だけだったとしても。

 

(変に考えるのは野暮……か。らしくないなぁ)

「あら、そんなに指揮官から貰ったお返しが嬉しかったのかしら」

「何言ってるの416。貰って嬉しいのは当たり前じゃないの」

「そう言っておきながら、顔がニヤけているの見えてるわよ」

「………っ!」

「あ、45姉が真っ赤になってる!」

「う、煩いわよ!」

「えーと……45、ケーキとかダメだったか……?」

「あ、いや、そうじゃないの指揮官!そうじゃなくて……!」

「45は嬉しいんだよ。でも、素直に言えないからこんな風に顔を隠せてないんだよ」

 

 HK416、UMP9、果てにはUMP40にまで追撃を喰らい、顔を真っ赤にするUMP45。これまでポーカーフェイスだった彼女にあれやこれやと言われてしまっては恥ずかしさについに耐え切れず―――

 

「いじわる……」

『ん゙ん゙っ゙!!』

 

 涙目になって訴えるその姿に思わず全員の心が撃ち抜かれた気分だった。普段表情を表さない女の子が泣き顔を見せるとここまで破壊力が高いのかと。

 何にせよ、彼と彼女達は互いに愛しているのは変わらず、幸せな一日を過ごしたのであった。




バレンタインでは45姉かM4からのチョコを貰いたい人生だった……。
仮に本命だったら、私はその倍でお返ししたい。そんな性格です。


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嘘を嘘だと見抜くよりも、報連相が一番大事

次の日がエイプリルフールという事で、カルカノ関係の話を。
皆さん、嘘とかデマとかに踊られない様にしましょう。今のご時世ホントにヤバいですからね……もう混乱とか起きて危機迫ってます。とにかく落ち着く事が大事。不用意に外には出ない事を心掛けましょう。
そんな私も仕事とかに行かなきゃいけないのですが……安心して行ける自信がありませんよもう……電車でも怖いですから。


「指揮官、大好きです。結婚して下さい」

「うん」

「嘘ですよ。本気になっちゃいましたか?」

「うん、それも知ってた。んじゃ、仕事始めようか」

 

 「ウェ~イ」と指揮官全員がだらしなさそうに呟き、各々の仕事に取り掛かる。反対にグレイ達に向けて嘘を言った彼女は何事も無かったかの様にちょこんとソファに座っている。

 傍から見れば、え?何これ?どうなってるの?と思うかもしれないが、それは全部彼女の性格を知っているからこそ変に気にしない訳で。

 

「指揮官のあしらい方がナチュラル過ぎるんだけど」

「初期の頃に比べれば大分マシになったらしい方ですけど……」

「あはは……ごめんなさい、妹が迷惑を掛けてしまって」

 

 UMP45とM4の言葉に彼女「カルカノM1891」は頭を下げる。そして、その妹というのが「カルカノM91/38」であった。

 

 

 

 

 

 彼女達の出会いは微妙と言わざるを得なかった。特に妹の方では。

 今回もまた有り余った素材を使って製造を行っていたのだが、その時に来たのがこの姉妹である。姉の方はとても元気が良くてハキハキと喋る良い子なのだが―――

 

「初めまして、指揮官。見てのとおり、ワタシは明るい人形です。仲良くやりましょうね」

 

 妹の方は何というか、まるで仮面でも被っているかの様な変わった人物だった。彼女の言葉に何て返したら良いのか迷ったらしいが、その日は案内とか済ませて終わらせた。

 戦闘の方では何も文句も無くちゃんと頑張れてはいる方なのだが、時折無線から「初めまして。ワタシはもうグリフィンにはうんざりなんです。貴女達に加わっても良いですか?」と、若干焦ったらしい。

 そんな堂々と宣言する奴があるかと突っ込んだが、多分これが妹の魅力……(?)なのだろう。だが、迷惑である。その性で真っ当なコミュニケーションすら取れない状況に。以前も……。

 

「グレイ指揮官。鉄血の2個中隊がこっちに来るそうです」

「ん、分かった。じゃあ行って来る」

 

―――10分後……。

 

「来ねーよアストラル!」

「嘘に決まってるじゃないですか。それと、誰ですかアストラルって。ワタシはカルカノです」

 

 とかだったり……。

 

「クラウス指揮官。裏手にある畑が燃えているのですが」

「え゙っ?」

「ただいま戻りました!畑の水やり完了です!今日もいっぱい小麦が取れましたよ!」

「………」

「カァァァルゥゥゥカァァァノォォォォォ……(CV:安元)」

「ごめんなさい、嘘です」

 

 元気そうに駆け付けてくれたM1911のお陰で咄嗟に嘘だと見抜いたクラウスは即座に冷静さを取り戻し、逆に怒りが湧いてた。

 尚、この時は強烈な拳骨一発で済んだ模様。女子には手を出さない彼だが、今回ばかりは洒落にならない。育てている物も生きていくには必要は食糧とかだったりするので、この手の嘘にはもう二度として欲しくない程。

 これには姉も一緒になって謝り、その後も姉に説教され、以降嘘はそんなに吐かなくなったが……天邪鬼な彼女だからこそ油断出来ない。なので、言われても適当に聞き流せと全会一致で決まった。

 

「結局アレだな。所詮は他人が言ってた言葉に騙されず、自分が直接見た真実しか答えは無いんだって」

「心理学と精神分析、図書館の技能は必須だな」

「何故クトゥルフ……にしても、懐かしいなそれ。暇な時遊んだ記憶あったわ」

「あったあったwww狂人プレイだったり、GMの言う事逆らってたり、ゲスいプレイとか、ドン引きさせる行動ばっかだったしなwwwww」

「大体はオメーが原因だろ鷹山ァ!何で気を失ってる幼女のスカートをヒャッハーして覗いたりとか、筋肉で会話したり、変な所でクリティカルとファンブル出してGMとPL泣かせにも程あっただろうが!!」

「男同士でウホッ…な展開だったり、即座にNPCとかラスボスとかを何の躊躇いも無しで殺したり、丸太で殴ったりオカマプレイで神話生物にキスしたり掘ったりして腹筋崩壊した俺等の身にもなれ」

 

 グレイ達の会話を聞いていたのか、ブッ!と吹き出す人形達。え?何それ面白そうとか聞かせて欲しいだとか、気付けばその話中心となっていて、カルカノM91/38の嘘に関しては蚊帳の外だった。しかし、数日後にある切欠が……。

 

 

 

 

 

 それから次の日。一通り担当の戦術人形達を偵察に向かわせた後の数時間後、その報告を受けている最中だった。

 

「以上が報告の内容となります。それと鷹山指揮官」

「ん、どしたの?」

「カルカノM91/38が偵察ルートの途中で不審な人影を見たという報告がありましたけど……如何致しましょうか?下手したら謎の宗教だとかマフィアとか居るかもしれないと彼女が申し出ているんですが……」

 

 M4がそう答えてくれたが、一同は微妙な顔付きになった。何せ、あの彼女だから信憑性がハッキリ言って薄い。良くても見間違いか人違い。悪くて嘘でしたと言われる可能性が高いだろう。

 かと言って、その程度なら戦術人形達がわざわざ煩わせる必要も無いし、直接確認すれば良いんじゃね?と決まったので、一応そこまで行くとした。ちなみに、その偵察ルートの途中というのが別地区にある廃墟エリア。辛うじてそこで住んでいる人も少なからず居るとか。

 

「しょうがないか。M4、悪いけど今日の分の仕事も粗方片付けておいたから、書類纏めといてくれ。俺達は現地に向かって来る」

「あ、はい。分かりました」

 

 後の仕事はM4に任せ、グレイ達が現地へと出発。途中で入って来たAR-15とHK416も一緒に書類整理に加わったが、15分後にカルカノM91/38が執務室へと入って来た。

 

「失礼します。指揮官達は?」

「指揮官は貴女の報告にあった不審な人物を確認すべく、例のポイントまで進んでいるそうです」

「そうですか。入れ違いとなりましたか……」

「何か用なの?」

「ええ。先程申し上げたワタシの報告なのですが、もしかしたら早とちりだったのかもしれません」

 

 サラッと伝えられた言葉に3人は頭を抱えたくなった。これにはHK416も怒った。

 

「貴女ねぇ!さっきから何なのよ!本当なのか嘘なのか全く予想も付かない事ばっかり言って!そんなに指揮官の事を困らせたいの!?」

「いえ、もう嘘を吐くのはクラウス指揮官の時を境に止めました。今はもう嘘は吐いていませんよ」

「じゃあ、何で今になって早とちりとか言いに来たのよ!」

「……正直、ほんの一瞬でしか見えなかったのです。確かに人影らしきものは見えたのですが、かと言ってその人影が怪しい行動をしているとは考えなかったのです。それに、あの場所は少なからず住んでいる人も居ますし、廃墟の街並みが並んでいるんですよ?追い駆けた所で見失うか、或いは人違いか。仮に人を見つけても住人に生活事情を詳しく聞くまでする事でしょうか。プライバシーというのもありますし」

「ああ言えばこう言って……!」

 

 狂犬の如く唸るHK416。対してカルカノ妹の方は依然としてすまし顔をしていた。捻くれた内容ではあるが、正論でもあった。

 このままじゃ埒が明かないなぁ……と取り残された二人が思っているとドタバタと走り込む音が。バタンッ!!と勢い良くドアから現れたのはカリーナとヘリアンだった。

 

「ああっ!まだ居ましたか!作業は一旦中止して早く指揮官サマの所に向かって下さい!」

「え……?何?一体どうしたのよ?」

「……先程、アイツ等から連絡が入った。あの地区で潜伏していたテロリスト、カルト教会及びマフィアとの遭遇し、交戦中だ。しかも、別々の地点から鉄血とE.L.I.D.が来ている……!」

『!?』

「現在ガーディアンも緊急出動させていますが、まずは現場の方へ!!全戦術人形出動です!!」

『りょ、了解!!』

 

 まさかの事態にM4達は作業を止め、急いでグレイ達の方へと向かって行った。一方でグレイ達は大量の敵を相手に苦戦を強いられていた。

 

「ええいクソがァ!!嘘よりも性質の悪い奴等しか居ねぇじゃねぇかコレ!!」

「オマケにサイコパスまで居るぞあそこ……どーすんだコレ……?」

「これでも大体はやっつけた筈なんだけど……大丈夫?体力的にまだ行けるか?」

 

 既に彼等の周りには100人以上の人間が横たわっていた。気絶している者や死んだ者、果てには怪我をして動けない人物までもが。

 

「まだ残ってるし、後から鉄血とかE.L.I.D.来るんだっけ……メンドくさ……」

「応援は?」

「流石に呼んだ。まだ戦ってでも大丈夫なんだけど……結構長丁場で戦ってんぞコレ……スタミナ切れそう……」

 

―――ザザッ……。

 

『聞こえますか、グリフィンの指揮官様』

「あー……?エージェント。そっちは?」

『後5分で合流出来ます。そちらは?』

「大丈夫……って言いたいけど、喉渇いた。下手したら30分以上だぞコレ」

『愚痴れるだけの気力が残ってますね。まあ、心配するだけ野暮ですけど』

「オイコラ」

 

 無線からエージェントの声が聞こえ、今の状況を伝えた。辛辣そうなコメントが返されたが、「フフ、冗談ですよ」と軽く笑い返す。ともあれ、味方が駆け付けてくれたのは大いに助かった。

 

『もう少しだけ耐えて下さいませ。到着した頃にはスプリングフィールドがコーヒーを、ウェルロッドが紅茶を持って来ているので』

「青汁じゃねーのか」

「ドクターペッパーにして欲しかった……」

「リポDがあれば……」

「ボコボコーラ無いのか」

「胡椒博士NEOは?」

「ハイポーションがあったらまだワンチャン行ける」

『何故皆さんのリクエストが極端なんですか。それと、後半辺りは絶対見当たらないと思うのですが』

 

 特にハイポーションなんて昔のアーカイブで見たヤツなので、決して真似してはいけない代物でもあるが。とにかく5分程度ならば何とか耐えられるので、ここらで一発気合を入れ直して敵との迎撃を続けた。

 5分後に駆け付けてくれた戦術人形達と交代し、軽めの休憩を入れた後に再び前線へと復帰。後から来た鉄血とE.L.I.D.を纏めて相手になり、無事全て殲滅し終わったという。後に「制圧迎撃事件」と呼ばれ、少し間だか騒がれる様になった。

 

 

 

 

 

「クッソ疲れた……」

「皆さん、本当にお疲れ様でした……」

 

 事件終息後、グリフィンに戻った彼等は後始末という報告書の作業を行っていた。今日は早めに終わらせた筈なのに、追加でドサッと渡された気分だった。が、文句も言っていられないので我慢。

 

「にしても、ここまで遅く付き合う必要は無いんだぞ?明日もあるし」

「いえ、今回だけはワタシの責任でもありますので」

 

 隣にはカルカノM91/38が一緒になって書類仕事をしている姿が。あれからカルカノM91/38はM4達と一緒に現場へ向かい、グレイ達の援護に回っていた。

 辿り着いた頃には殆ど彼等が全部倒していた様なもので、これには彼女も驚いていた。しかし、今回の事件を通して中途半端な報告を出してしまった事で自分の指揮官を危険に晒してしまったのを深く反省している様子だった。

 

「……カルカノ」

「ッ!」

「あんまり細かい内容は言いたくないけど、せめて今後はちゃんと報告してくれ。確かに前まではお前の嘘に踊らされたりはしたけど、見間違えだとか、嘘だったとしても、それでも報告してくれ。今回みたいに二次被害は少なくて済んだけどな」

「申し訳ありません……」

「後は、なるべくデマを流さない様に。人形だって嘘を吐けるかもしれないが、それと同時に人間と同じ様に心も脆いんだ。たった一言の嘘で不安にさせたら嫌だろう?それも控えてくれよ」

「はい……」

 

 それだけ理解してくれれば十分だとグレイは彼女の頭を撫でた。本当ならばもっと厳しく叱られてもおかしく無かったのに、彼等は敢えてしなかった。

 本当に自分達の事を嫌っていたのか、それとも別の理由でもあったのか、真相は分からない。しかし、彼女も今後は真面目に取り組んでくれるそうなので、これを機に彼女と仲良く出来れば良いかと彼等は思った。

 

「だから、頑張ってくれよ。お前はやれば出来る子なんだから。カルカノM91/38だからこそ頑張れる実力を見せてくれ」

「……はい!」

 

 彼等には正直でいようと彼女は誓った。彼等だからこそ、自分を変えてくれるかもしれないと信じて。




ホントにコロナ終わって欲しいですよね……志村けんさんだけじゃなく、何人感染して何人死んだか……恐ろしいし、悔み切れないですね。

・来ねーよアストラル!
遊戯王ZEXALではお決まりの台詞。視聴者ですら何か見慣れてテンション上がって同じ事言ってたとか。

・気を失ってる幼女のスカートとかの以下の下り
元ネタは「TRPGセッションで聞いたもっともひどい台詞」。とにかく酷い場面しかねぇ。

・ボコボコーラ
モンハン3rdに登場するパワーアップドリンク。所謂アイルーキッチンに近い何か。温泉に入る必要がある。

・胡椒博士NEO
ペルソナ4及びペルソナ5に登場した謎の回復アイテムドリンク。炭酸系の飲み物と書かれているが、何故胡椒……?

・ハイポーション
ニコニコ動画で伝説を残したあのゲロマズポーションである。良い子は絶対真似しないように。そして、飲んだりしないように。


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リングフィットライン 上

一か月ぶりですが遅れました。
理由としては別サイトの方で小説書いてたので、そこが一旦落ち着いたのでこっちの方も少しずつですが書こうと思ったのと、介護病院の職の方で仕事を就けたのでちょっと中々書けなかったりしました。コロナで騒がれている中、それでも行かなければいけないのは中々恐怖です……皆さんも気をつけて下さい。



 どの職場においても健康診断というのは欠かせないものである。それはグリフィンで働いている彼等もそうだ。

 グリフィンでは大半が病気とかならない人形というのが多いのだが、指揮を執る者や彼女達を修理してサポートする者、書類を纏めたりカリーナみたいに購買担当となっている等……それなりに重要なのだ。

 故に誰か一人でも欠けたらその分の仕事が増えて大変な事になるのも珍しい事では無い。だが、そんな事態はさせまいと人間側の医療担当であるケンジと健康的な料理ならお任せなグレイから徹底された生活環境によってグリフィンの職員が病気になったりするのはほぼ無いと言い切っても良いだろう。

 

 しかし、油断は出来ない。中には見た目で判断出来ない事情も含まれたりはするのだ……。

 

 

 

 

 

 ある日の事、医務室で仕事をしていたケンジはグレイ達も含む全員の診断結果のリストを確認していた。隣では一緒になってリストを軽く見通していたエージェントも手伝っていて、傍から見れば夫婦っぽくはあるのだけれど、仕事としてのパートナー感が出ている。

 

「では、次の方の診断結果です」

「ああ……って、よりにもよってこの人か……」

「どうかなされましたか?って、ああ……」

 

 どうかしたのかとエージェントも覗き込む様にして診断結果を見た。そして、名前を見た瞬間「ああ……また何時もの人ですか……」と呆れた様子で呟く。

 ケンジも頭を抱える程だった。何せリストの人物は表向きはまだ良かったものの、裏では事ある度にケンジにとっては許し難い行為を幾度も繰り返していたからだ。診断結果の方でも危険ゾーンとなっている項目に色が塗られており、そろそろ言わないとマズいだろうとついに危惧し始めたので……。

 

「エージェント、至急ヘリアンさんを呼んで」

「畏まりました」

 

 即座に彼女を呼び出したのであった。数分後、エージェントと一緒に連れて来られたヘリアンが医務室へと入って来た。ヘリアンは一体何の用だ?と何故呼ばれたのか分からないという顔をしていた。

 

「三和葉、何か私に話でもあるのか?」

「ええ、大いに大有りですよヘリアンさん……ぶっちゃけこの話は貴女にしか言えない内容なので……」

「わ、私にか?」

「はい。この際ストレートに言わせて貰いますが……健康診断の結果、貴女の血圧が異常な位に酷かったらしく、このまま改善されないままですと近々貴女死にますよ。というか、ヘリアンさんこの状態のまま良く生きていましたね」

 

 ピシッ!!と空気が凍る。ヘリアンも最初は敵関する内容か!?と疑ってたがそんなんじゃない。もっと現実的にヤベー方だった。しかし、ヘリアンはここで上官たる私がそんな情けない姿を見せる訳には行かない!と変な意地を張った性か平常心を保とうとしていた。

 

「そ、そんな事か……何、日頃から生活習慣を見直せば―――」

「嘘だッ!!!(CV:中原麻衣)」

「………ッ!?」

「ヘリアンさん……嘘はいけませんよ。知ってますか?血圧が高過ぎるとドロドロになるのって。その原因は脂身の多い肉やアルコールの摂取、野菜をあんまり取っていない事や魚介類とかの摂取も一切してない事、更には血糖値を下げる効果のあるお茶を飲んでいなかったり、日頃から適した運動をしていなかったりと……とにかく要素が多いのです」

 

 マジで真剣な表情で迫るケンジにヘリアンも思わず後退りする。そして、彼女に追い討ちを掛ける言葉が……。

 

「これまで月一で健康診断を何度も行っていましたが……改善される様子は見受けられず、どんどん悪化しています。グリフィンに居る間の貴女は健康とかには気遣っているみたいだと俺はそう思っていましたが、それならばグリフィン以外の何処かでもしかしてと思いまして……失礼ですが、今月何処か出掛けたりされましたか?例えば食事とか……」

「も、黙秘権を行使する……」

「では、俺からは404を使った捜査を前提に発言権を行使させて頂きます。彼女達の話によれば―――」

「や、止めろおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

「独身であるが故に結婚出来ていない女性となってしまう運命に危機感を感じ、毎回合コンに行っては玉砕され、最終的にヤケ酒の連続……現時点で2桁を超えていると……」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!!」

「汚い声出すなよ……それに何故泣く……」

 

 もう上官としての面影は無く、そこには哀れな道を突き進んでしまった愚かな女性が泣いているだけの姿だった。

 ケンジはきっと彼女の事だから黙っていたりするだろうなぁ、と性格からしてそうなると見越していたのか404にヘリアンの調査を依頼した。その結果として彼女は黙ろうとした上に、バラされたら見事に泣き崩れてしまった。良い歳した人が何で合コンなんかに出掛けるんだ……と流石のケンジも呆れて何も言えない。

 

「言っておきますけど、改善されなきゃ合コン行く以前に死ぬ可能性もありますからね?冗談抜きで」

「うぐっ……うっ……どうせ貴様も私の事をだらしない女だと思っているんだろ……」

「はい。顔とかは綺麗なのに、未婚だとか行き遅れだとか面倒臭い思考を覗けば完璧なんですけどね」

「もっとオブラートに包めないのかお前は!!」

「今の貴女をオブラートに包む必要なんてあるんですか?」

「うぐっ!?」

 

 見事なカウンターをヒットされ、再び撃沈するヘリアン。医療に強いケンジから言わせればそんなのただの言い訳に過ぎないとキッパリ言い切れてしまうのが現実だった。

 しかしながら、これまでヘリアンの血圧が高い理由も判明し、後は改善をするだけだと思うのだが……ケンジを含む指揮官達もヘリアンも互いに仕事が多くて簡単に取り組むのは難しいだろう。

 

「生活習慣病を治さない限りはどうにもならないが……今からでも簡単に始められる方法ならある」

 

 そう言うとケンジは長時間のデスクワークとかで使うかもしれない冷蔵庫から緑色の液体が入ったペットボトルを取り出した。が、中身はかなり深い緑色をしていて、カビでも生殖しているんじゃないかと勘違いされそうなヤバさだった。

 

「み、三和葉……それは一体何なんだ……?」

「これですか?これはグリフィンの裏で取れた野菜を牛乳と一緒にしてスムージーにした奴です。ブロッコリー、ピーマン、セロリは当然入っていて、小松菜、ほうれん草、ゴーヤ、緑茶、青汁等々……数え切れない程の緑の野菜をギュッと凝縮させた俺オリジナルの健康食品です。今日からこれを始めればヘリアンさんの血圧も改善されると思いますし……さあ、飲みましょう」

「私に飲ませるのか!?というか、ゴーヤとか青汁とか入っている辺り絶対苦い筈じゃないか……!」

「嫌いですか野菜?」

「いや、嫌いじゃないが……し、しかし、私にも心の準備というのが―――」

「エージェント、ちょっとこの人抑えて」

「はい」

 

 サッとエージェントがヘリアンに近付き、逃げられない様に両腕で止めた後、スカートの下から出たアームからも足をガッチリと固定される。

 人形とは思えない握力で腕も足も封じられたヘリアンは謎の恐怖を感じ、ペットボトルを持ったままじわりじわりと近付いて来るケンジが余計怖く思えていた。

 

「き、貴様!こんな事タダで済むと思っているのか!!」

「いい加減にしろよメスガ……ん゙ん゙っ!メスババア……日頃からギャップ萌えだの男を悦ばせるテクニックすら身に付けていないお前が合コンで彼氏を作れる等とほざくとは笑止。女を磨いていない証拠だ」

「何故言い直した!?ババア呼ばわりされるよりかはメスガキの方がまだ良い!!」

「お医者さんの言う事を聞かない子はちょっと分からせないといけないな……ほら、怖くないよ。気持ち良くなれるお薬だよ」

「台詞ゥ!!止めろ!私に乱暴するつもりか!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」

 

 何処からそんな言葉を知ったんだと疑問に思うかもしれないが、現状だけでも何だか同人誌とかにありそうないやらしい雰囲気を作り上げている時点で諸々アウトだったりするが。そのままケンジはペットボトルの蓋を開け……。

 

「あ、やべ、手が滑っちまった(棒)」

「んぅっ!?」

 

 グイッとヘリアンの口に目掛けてペットボトルを突っ込ませた。野菜の味が舌を通して感じたのか苦くて嫌な表情を浮かべてしまうヘリアン。睨んだ顔も高飛車な女性とかを連想させる位だ。

 

「オラッ、溢さず全部飲めよ!しっかりとマーキングしてやらなきゃな、ヘヘヘ……」

「全く……表現がいやらしいですよ。今夜お仕置きしますので覚悟して下さいね」

「どうやらもう一人治療(意味深)が必要っぽいな……なら、ついでに分からせてやる」

「おごっ……ごっ……!」

「それは私も同じです。貴方の精子が空になるまで全部搾り尽くしてあげます」

「言ったな。なら、俺は他の男に奪われない様にじっくりと雌奴隷になるまで調教して、ご主人様って呼ばせてやるからな」

「がっ……お゙っ……ぶへぇっ!!」

「「あ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ただ今、映像が乱れております。しばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お゙ぇ゙っ……に、苦い……」

「そんなに苦かったですかね?牛乳が入っている分、まだマイルドになった方だと思っていましたが」

「いきなり上官に向けて飲ませようとしている方が神経疑うぞ!!」

 

 あの後、ヘリアンはあまりの苦さにダウンし、口から野菜ジュースの残り汁が垂れていた。逆にケンジは冷蔵庫からもう一本取り出しては自ら飲み始め、満足そうな顔を浮かべながらコップ一杯分を完全に飲んだのである。

 

「な、何故貴様は平気なんだ……」

「医学の身としては当たり前の行動だぞ。それに、運動代わりに俺はグレイ達と一緒に前線に出たり、農業手伝ったりしてるけど、ヘリアンさんは一切してないし」

「くっ……なら、私にも何か出来る方法があるというのなら言ってみろ!ちなみに貴様等と同じ基準で扱われるつもりは勘弁だからな!!」

「えー……」

 

 だがごもっともである。グレイ達のペースに合わせていたら自分の身体が崩壊するイメージしか湧かなくなる未来しか見えないので文句は言えない。ならばどうしようかと悩んでいた瞬間……。

 

「あ」

「どうかされましたか?」

「そう言えば昔のアーカイブに絶対痩せれたり運動には持って来いのアレがあったが……でも、まずは専用のコントローラーが必要なんだよな……」

「「?」」

 

 ヘリアンもエージェントも一体何の事なのかさっぱり分からないという表情を浮かべていたが、ケンジだけは開発室に居るザックに要件だけ軽くメールで伝えた。その翌日に……。

 

「出来たぞケンジ。例のブツだ」

「お、出来たのか」

「何々?また何か作ったのか?」

 

 一旦手を休めてザックの方へ集まる一同。一緒に業務を手伝っていた戦術人形達も気になったのか近寄って見ていた。彼の手にはリング状の何かを掴んでいる様子なのだが……。

 

「何これ?」

「昨日、ケンジからヘリアン殿の生活習慣改善の為に手伝ってくれってメールで伝えられてな。俺達はまだしも、ヘリアンは一般人だ」

「一般人……?」

「軍人とかじゃなくて?」

「あのな、普通前線でたった少人数だけで戦っているって時点でおかしいのに、それでも100体だとか累計で5000千超えたとかの範囲になると人間辞めてる領域だと思うんだが」

 

 自覚はあったのかそう修正して言い直すザックに人形達は若干ドン引きした。とにかくコレが一体何なのかザックが軽く説明を始めた。

 

「こいつはリングコンと言ってな。ほら、アーカイブとかで見た事あるだろ?」

「リングコン……ああ、あの冒険もトレーニングも出来るアレか?」

「そう、アレだ。それをヘリアンにやらせれば効果は絶大だと思うからな」

 

 確かにコレならばヘリアンでも楽しくやれそうだし、彼女がそれに夢中になってたり苦痛の声を上げたりする光景が目に浮かぶ。するとTMPがおずおずと静かに手を上げる。

 

「あの……それってどういう事ですか……?」

「……実際に見せた方が早いんじゃね?」

「だな。あ、じゃあ俺はゲーム機の方起動させるから、お前等はリングのセットよろしく」

「はいよ」

 

 テキパキと動きながらもモニターと接続し、ゲームを起動させ、タイトル画面が移り出す。その名は「リングフィットアドベンチャー」。

 かつて戦術人形とかが栄えていなかった時代ではテレビでも携帯しながらでも出来るゲームというのが流行り、今回のゲームもその一つ。実際にこれをグレイ達が試した結果……。

 

「ぐぉぉぉっ……!あっ……!やべっ……!結構鍛えている筈なのに……ゆっくりやられるとこれはこれでキツい……!!」

「これ、何時までキープしなきゃいけないんだよ……!俺、そんな握力持っていねぇのに……!!」

「え!?何これ!?見ないままこの体勢でストレッチしろって何考えてんだよ!うわ、辛ッ!!」

「はぁ……はぁ……フィールドは基本走り……ミニゲームも身体動かすって何……?」

「回復技もストレッチなの……?え、でも、基本スムージーとかで良い様な……ま、良いか」

「これ何ステージまであるんだ……え?23まで……?嘘だろ……」

「……スポーツドリンク持って来れば良かったな……」

 

 と、阿鼻叫喚の数々。戦術人形達も「え?どうしようか……やる……?」とか「でも、指揮官があんなにぐったりしてるけど大丈夫なのかな……?」とか心配そうに見ているが、それでもやってみようとする戦術人形も後が絶たず……。

 

「駄目……死ぬ……」(イングラム

「良いトレーニングになると聞いてはいたものの……まさかこれまでとは……」(ブレン

「お、お水……」(FAL

「足が痛いよぉ……熱いよぉ……」(Five-seven

 

 あーりゃりゃ……これは効果絶大だな、憐れんだ表情を見るグレイ達。自分達もまた体験しているので人の事は言えないが、どうやら戦術人形達においてもコレは苦痛だったらしい。

 「ならば、尚更コレをヘリアンにプレゼントするしか無いだろう!プロテインを添えて(嫌がらせ)」と思う心は一致したのか早速ヘリアンにやらせようと行動に走った。

 

「ヘリアンさん!!」

「な、何だお前達……もしかして、例の食生活改善に関してか……?」

「当然それも含めてです。とりあえずヘリアンさんは今後合コンとかは控えて下さい。それと過剰な摂取とかは脂肪とかを増やす要因にもなるので、なるべく野菜が多かったり、魚や豆といった部類の食事に変えさせて貰いますから」

 

 ヘリアンにとってはかなり衝撃的だろう。合コンはほぼ無し、間食や酒とかも制限され、非常にバランスの良いメニューのみ食べさせられる毎日。トドメには野菜ジュースとプロテインとリングフィットのトリプルコンボ。もしかしたら近い内に筋肉とか付き、女らしさが無くなるんじゃないかと絶望染みた顔になり始めていた。

 

「そ、そこまで!?横暴だ!!そこまでしたら私には女らしさというものが無くなる……!」

「何処まで拘るんだアンタ!そんな事言ってるのは甘えだぞ!それにアンタじゃなくてもモテない男子とかってのは居るんですよ!中にはチャラ男とか間男とかによって脅されたりして肉体関係築いて、断らないといけないのに断れずに無責任中出しされては快楽の波に抗えずにそのまま寝取られて、ビデオレターとかで送られてはさよなら言われて絶望して鬱勃起する男だって居るんですよ!!」

「生々し過ぎるぞグレイ」

「まあ、でも一理あるんですわコレ。恋愛とか色々とウジウジ悩むよりかは自分を鍛えた方がマシですし、意外とそっち方面でモテたりする可能性ありますよ?パーフェクトボディーになって男子からモテたくありませんか?」

「『筋肉は裏切らない』……正に摂理……!」

 

 あれやこれやと言い包められた感じだったのか、ヘリアンは渋々納得した。「これでモテなかったら貴様等を殺すからな!」と涙目で釘を差されたが、その内時間が解決するでしょという精神で恋愛関係に関してはフォロー無しだった。その後、彼女がどうなったのかは別のお話……。




ちなみにちゃんとネタ探しもしてましたよ?今回のリングフィットも滅茶苦茶使えそうなネタが幾つかあったので……まあ、内容が18禁スレスレとなる様な表現ばかりですが。

・嘘だッ!!!(CV:中原麻衣)
ひぐらしのなく頃にで登場する竜宮レナが豹変した際のトラウマな台詞。当時見ていた人は滅茶苦茶驚いただろうし、中の人の迫力もあってか一時期有名に……にしても、何故中の人が演じるキャラの大半は何かと問題ばっかりあるのだろうか(白目)

・いい加減にしろよメスガ……ん゙ん゙っ!メスババア……
ヘリアンさんが「ざーこ♡ざーこ♡」とか言っている場面を見ても「うわきつ」の一言しか言えぬ……。

・止めろ!私に乱暴するつもりか!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!
ああそうだよ元ネタですら同人誌からだよ!!所で、ヘリアンさんが好きという読者っているんですか……?いるのでしたらどうか彼女の為に結婚してやって下さい……!

・オラッ、溢さず全部飲めよ!しっかりとマーキングしてやらなきゃな
○ーメンではないのでご安心を。野菜ジュースです(真顔)

・リングフィットアドベンチャー
皆も知ってるだろうあの運動ゲーム。この時やけにVTuberも多くやってたよね……途中でリタイアして辞めた人もいれば、最後までやれた人とかゴリラ並みに握力あったりする人とかも居たし。

・パーフェクトボディー
ケインコスギの代名詞。

・筋肉は裏切らない
色んな意味で正にその通りだと思います……!


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リングフィットライン 中

下ネタたっぷりの中編です。なお、リングコンはあんな使い方はしないのであしからず。
これでもまだスランプの領域なんだけどね。ネタを探さねば話は続かない……!


 かくして、ヘリアンの生活習慣改善の為のトレーニングが始まった。

 1日3食は必ずとし、栄養に良いメニュー+一工夫を入れたアレンジメニュー+野菜ジュースorプロテインorお茶という様に決められた一定量で食べた後、仕事の合間とかでリングフィットアドベンチャーで軽く燃焼。動かす事には慣れているヘリアンも序盤は良かったが、キープする運動とかはキツかったらしい。

 

「ぜぇ……ぜぇ……こ、これがトレーニングなのか……」

「結構身体に来るみたいですよコレ。常日頃から身体を動かしていた俺等でも限界あるみたいで」

「無理せず一定のペースで良いですからね。水分補給しないでやるとか自殺行為以外の何物でも無いですから」

 

 隣で応援してるグレイ達に向けて鋭い恨みの眼光を突き飛ばすが、あんまり文句も言ってられない。彼女自身も確かに思い当たる節があった為、そのツケが返って来たのだと受け入れた。

 だが、実際にやってみると効果あるのは間違い無いらしく、これも自分を変える為だと思えばそこまで苦ではなく、次第に動きも慣れたそうだ。

 

「ん……俺達もそろそろ時間だな」

「え?もう出撃か早いな」

「済みませんがヘリアンさん、俺達は先に仕事の方へ行って参ります」

「ああ、フンッ!気を付けて、フンッ!行って来いよ、フンッ!」

「もう受け入れてるし……」

 

 中々悪くないトレーニングなのかご満悦のヘリアン。その間にグレイ達はデイリー任務の方へ出撃。鉄血人形及びE.L.I.D.の殲滅を開始した。そんな最中で先程のリングフィットを見た鷹山がポツリと一言。

 

「にしても、個人的に気になってはいるんだけど……リングコン使った攻撃方法って俺等でも出来ないか?」

「いや、無理だろ……やる度に腹筋の形をしたモノが上とか下から攻めて来るって魔法か何かじゃないと再現出来ないって」

 

 そっかー、残念だなぁとガッカリする彼。だが、興味はある。

 ゲームを見れば分かる通り、攻撃方法が全部トレーニングで、やる度に謎の腕とか足とかボディーとかが殴り掛かって来る光景はかなりシュールだろう。だが、それが現実でも出来る様になったら一体どうなるのか?それに応えるかの様にザックがフフフと待ってましたと笑みを浮かべた。

 

「そう言うだろうと思ってコッソリと開発して来たぜ。ほらよ」

「え?何?マジで作って来たの?持って来たにしても、謎の腕とか足とか胴体とかどうやって出すの?」

「その辺は大丈夫だ。クラウスのエンチャントが仕込んであるから何時でも再現出来る」

「エンチャントパネェ」

 

 まさかのエンチャントで完全再現を果たしてしまった。ちなみにだが、リングフィットアドベンチャーは基本銃とかナイフとかの攻撃方法は一切使用せず、攻撃出来るのはリングコンを持った状態(マウンテンクライマーなどの例外アリ)でのトレーニングのみ。つまりは己の肉体で戦えと言っている様なモノ。

 折角だからやろうぜ!とその場に居た全員がその気になってしまい、何処かに鉄血やE.L.I.D.居ないか探してボコしてみようと決行に至った。

 

「全種類のトレーニング揃っているから、何処からでも始められるぜ。流石にターン制バトルとかは無理あったが」

「そりゃそうだろうよ。敵もそこまでマヌケじゃないし、良くてもリアルタイムで進むだろ」

 

 そんな感じで話を進める彼等だが、だからこそ改めて考えて欲しい。ほぼ荒廃したこの世界で筋トレしながら倒すなんて無理ゲーにも程あるんじゃないかと。

 一般人ならばそんなモノでどうやって戦えば良いんだ、と思われるのがオチ。それでもやってしまい兼ねないのが彼等である。

 

「ん……?居たぞ!人間だ!!」

「うおっ!?」

 

 と、歩いている間に何時の間にか鉄血兵に見つかり、ゾロゾロと次から次へと現れて来た。囲まれたらマズいが、同時に試すには丁度良い相手でもある。迫り来たのはリッパー5体。ならば丁度良いとグレイは例のアレを試し始めた。

 

「リングアロー!!」

 

 グイッと弓の様に引っ張ると、リッパー達の頭上から腕らしきものが現れた。異変に気付いたリッパー達は「何だこれは!?」と驚いていたが、直後にズドンッ!!とキープしていたムキムキの拳が彼女達に襲い掛かる。

 

「な、何だ今のは!?」

「グリフィンの新たな兵器か!?ええい!アレを撃て!」

 

 サブマシンガンで攻撃しようにも、攻撃は通らず。逃げても拳はピッタリと彼女達の頭上に留まり、18回分の攻撃が終わるまで延々と殴られ続ける。そんな間にグレイは……。

 

「ふんっ……!ぬぬぬっ……!」

 

 リングコンで引っ張っては戻す作業を繰り返しやっていた。これにはグレイ自身も相当驚いている。まさか筋肉で攻撃出来たとは想定していなかったのだから。

 

「何をしている!あいつ等を殺れ!!」

「数多っ!これにはバンザイコシフリ!!」

 

 迫り来るブルートだろうがストライカーだろうが全て同じ。彼女達の頭上からムキムキな胴体がガツンガツンとリズムに乗ってドンドン殴る音が響く。殴られている間にグレイの方はリングを持って腰をフリフリしていた。

 敵の何人かは気付いたらしいが、それでも筋肉攻撃の前では通用しない。正にシュールとはこの事。

 

「なあ、次は俺!俺やる!」

「へいへい。所で、これって他に何か追加機能とかあるのか?」

「お、良くぞ聞いてくれた。実はトレーニングじゃなくともリングを使った別の攻撃方法はそれなりにあるぞ」

「例えば?」

「そうだな……なら丁度良い相手が向こうからやって来たな」

 

 すると、向こうから更に鉄血兵がやって来た。もっとも、彼女達は固定型の鉄血人形なのだが。

 

『やはり来ましたか……私のダミーが』

 

 通信機からグリフィンで待機していたエージェントの声が耳に入る。今、彼等の目の前に現れたのは彼女の代わりとなるストック―――即ちはダミー人形だった。だが、ダミーと言えどもその実力は本物と変わらない。

 そして、エージェントのダミーを中心にアルケミストやドリーマー、アーキテクトにデストロイヤー等々……ちょっとばかしピンチの状況を迎えようとしていた。

 

「見つけましたよグリフィンの指揮官の皆様。貴方達に散々手を煩わせた分、ここで果たさせて頂きますよ」

「ここから逃げようだなんて思わない事ね。ま、逃げた貴方達を追い駆けてグリフィンごと全部滅ぼすには丁度良いんだろうけど……」

「何にせよ、私達を楽しませてくれよ。薄汚い悲鳴を上げて、哀れなまま死んで逝く姿を見せてくれ」

 

 ニヤニヤと彼等を見下す様な笑みを見せる鉄血工造。何だか前に同じ事を体験した様な気がするが、深く気にはしなかった。銃口は全て彼等に向けられており、即座に殺せる雰囲気が周りを包んでいた。

 

「武器を下して地面に跪きなさい。どうせなら命乞いをしても良いのですよ。ただし、貴方達の情報と引き換えに……さあ、どうします?」

「これを一体どう見たら武器だと判断出来るんだ……」

『それ、ただのリングですよね?』

「ただのリングな筈なんだが……筋肉の加護が付いてるみたいな……」

『もしかしたら妖精でも居るんじゃないんでしょうかね。「ホイホイチャーハン」とか言いそうな妖精が』

「ちょっと待て、それ一体何処から聞いたんだ!?」

 

 彼女の口からそんな言葉が出るなんて……!ある意味知って欲しくなかった。いや、実際間違ってもいないのだが。

 彼等のやり取りにポカーンと放置されていた鉄血人形達だったが、痺れを切らしたエクスキューショナーが銃弾を一発グレイに向けて放たれた。が―――

 

「腹筋ガード!!」

 

 危険を察知した鷹山がグレイの前に立ち、ムキムキな胴体をした盾が目の前に出現。そのままエクスキューショナーが放たれた弾丸はキンッ!と弾かれた。

 

「は?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?な、何だ今の!?」

「銃弾が弾かれるだなんて……まさか、グリフィンの新兵器?」

 

 あまりの衝撃な光景に鉄血人形達は思考がフリーズし、ざわ…ざわ…と戸惑いが隠せない。ダミーのエージェントは警戒しながらも銃口をグレイ達に向ける。

 

「答えなさいグリフィン。今のは一体何なんです?」

「何って……筋肉としか言えないけど」

「ふざけているのですか?」

「それ以外にどう答えろと!?」

 

 嘘は言ってない。元々そういう技だし、お前達も目の前で俺達が何してるのか見たじゃねーか!と反論したいが、全てが筋肉とかで解決出来ると思ったら大間違いだとか言われそうである。しかし……。

 

「なあ、どうするんだよアレ……?」

「また何か仕掛けるんじゃないのか……?」

「というか、あのリング持った奴以外の人間殺せば良いんじゃない?」

「けど、これまで誰一人として勝てなかったって言われているのよ……?」

 

 これまで散々返り討ちされてボロ負けが続いている鉄血。グリフィンや人類全てを殺し尽くす為に幾度も策を考えてはいるものの、一度も成功した試しは無い。しかも、日増しに成長と進化を遂げているので最早勝てないのではと思い始めていた。これを聞いたエージェントは彼女達を厳しく叱咤した。

 

「何を愚かな事を言っているのです!私達は人類を滅亡まで追い詰めたのですよ!あの方の願いを成就するまで動けるのは私達だけ!人類だけじゃなく、私達から離れた鉄血の裏切り者も殺せば良いだけの話です!」

『随分と恐ろしい事を言いますねダミーの私は。それだけ鉄血に心酔しているか、或いは最初からそう作られたか……愚かですね。何度挑んでも結果は同じだというのに』

「さあ、武器を下しなさいグリフィン!さもなくば貴方達をこの場で殺します!」

 

 通信機越しのエージェントも溜め息を吐いて呆れていた。あれが自分をベースにしたダミー人形とは。

 目の前の彼女は冷静さが無くなり、焦っている感じに近かった。どんなに束になろうが勝てる相手じゃない―――それは誰もが既に分かっている事。だけど、彼女なりの信念があるのか諦めた表情は何一つしていなかった。

 一触即発なこの空気の中、鷹山は空気を読まずにリングコンを腰までスーッと下したが……。

 

「コシフリズコバコ!」

『は?』

「リングコンを腰まで持っていき、手はバック突きの様に軽く添えるだけ!女性の尻をもちっと触っているみたいに掴みましょう!」

「……とうとう頭がおかしくなりましたか。何を企んでいるのです?」

 

 いきなり堂々とセクハラ発言をした鷹山にグレイ達は唖然となる。こんな時に何言ってんだ!?と心の中で突っ込んだ。しかし、その理由は次の瞬間明らかとなる。

 

『ん……!?』

 

 違和感に気付いたグレイ達が鉄血人形達をじっと見ながら目を凝らした。

 言葉では伝えられないが、彼女達の真下に逞しくて大きな「アレ」が生える様に現れたのだ。故に鷹山が何故あんな事を言ったのかも辻褄が合い、この後何が起きるのかも大体察した。

 

「そして、リングの中心部分に目掛けて腰を振ります!はい、1!2!1!2!」

 

 直後、彼女達の下にあった「アレ」が急上昇し、彼女達の「リング」に「フィット」し―――

 

『ひぎぃっ!!!?』

「アッー!アッー!」

『い、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ただ今、再び映像が乱れております。しばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬふぅ……」

「うわぁ……そう来たか……」

『最低ですね、貴方』

 

 なんということをしてくれたのでしょう。先程まで撃つ気満々だった鉄血人形達がアヘ顔晒してビクビクしているではありませんか。

 さっきまで怒っていたダミーのエージェントも顔を真っ赤にしながら生まれたての小鹿みたいに倒れながらも震え、濡れている個所が大きく見受けられた。

 

「どうしてこうなったんだお前……」

「いや、リングを使った別の攻撃方法ってのを想像して、真っ先に浮かんだのがコレだったんだよ。だって、腕とか足とかってどうやって具現化してんだよ?筋トレパワーでなら納得出来るけど、それ以外だったら多分想像を具現化する際のエネルギーとして使えば行けるんじゃね?と思って試したらマジで出来てさ」

「で……想像したのがムキムキの「アレ」で、その場に居た鉄血人形全ての「リング」に目掛けて「フィット」させたのかお前……」

「そゆこと♪」

「最悪な攻撃方法だなオイ!オマケに賢者タイムまでして確信犯じゃねーか!これそういうゲームじゃねぇからコレ!!」

 

 緊張感とか何もかもが全部台無しになった気分だった。こんな事をしてしまった性なのか、通信機越しから「鷹山指揮官……後でお説教です……」とM4のドス効いた声がゾクッと伝わった。

 とは言え、鷹山がやってくれた行動のお陰で具体的にリングを使った攻撃の際にどうするべきなのか少しだけハッキリした気がした。まだまだ試す価値はありそうだ。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ふぅ……少しこのゲームにも慣れて来たか……?」

 

 一方、未だにトレーニングをしていたヘリアン。自分なりのペースで頑張っていた為、身体の方も少しずつ鍛えぬかれた身体へと化していた。しかし、まだまだ理想の自分となるには程遠い。

 

「筋肉は絶対に裏切らない……その言葉を信じてやって来たが……本当に私は男が作れるのか……?」

 

 もしかしたらそれも無駄に終わってしまう―――そんな不安がヘリアンに襲い掛かる。だが、それを打ち消すかの様に何処からか言葉が投げ掛けられた。

 

「その程度で音を上げるのかい?筋肉が足りてないよ」

「ッ!?だ、誰だ!」

「そう警戒しないでくれたまえ。何、私は君と同じ筋肉仲間さ」

「き、貴様等は一体……!?」

 

 ヘリアンの目の前に現れた人物とは……!?そして、筋肉仲間とは何なのか……!




・リングアロー
攻撃範囲ほぼ全体の腕系統の技。名前の割には矢を引いてる感はせず、ただ腕みたいなモノが殴るだけ……。

・「ホイホイチャーハン」とか言いそうな妖精が
こんな事を言う人なんてビリー・ヘリントン兄貴しかおらんよ。歪みねえな♂

・腹筋ガード
敵のターンが回って来て、攻撃を仕掛けて来た際にリングを押し込む様に防御すればダメージを最小限に留まらせる事が出来ると言われているが、防御をキープするという点では腹とかにリアルダメージ喰らったり、手が滑ったりして大惨事に。

・コシフリズコバコ
つまりはそういう事です。察して下さい。

・ひぎぃ
そっち系の表現の方が大半示す。アニメ版ドルアーガの塔ではこのセリフをマジで言ってたらしいが。

・ぬふぅ
漫画「シグルイ」のアレである。元々時代劇でありながらもホモ要素が濃く、何よりも報われなかったりする点があったり。

・なんということをしてくれたのでしょう
別名:悲劇的ビフォーアフターとも。


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リングフィットライン 下

リングコンはそんな使い方しません編。また、一番最後辺りは完全にヘリアンさんが別人と化します。何か済みません。



 最低な阿鼻叫喚も終わり、さっさと次の人にリングコンを渡した。鷹山がアレだったのに対し、グレイだけ普通に腕と足と腹筋の胴体だけだったというのが地味に嫌でもあったが。

 

「さっきのアレは何だったんだ?実物じゃないんだよな?」

「ちゃうちゃう。良くても大人のオモチャ程度。具現化出来たのは多分巨根湖の力が奇跡を齎してくれたんだと思う」

「何なの?根元にミサンガでも巻いてるの?」

「別に巨根でも何でも無いのにどういう流れでこうなるんだよ」

 

 ただただ呆れしか出なかった。

 鷹山の次はケンジの番が回って来たが、リングコンを使った別の攻撃を想像しろと言われてもパッと思い付く事など簡単とは言い切れない。

 

(この形状で考えろと言ってもな……想像した力が反映されるなら、浮かせる事も可能か?)

 

 悩むケンジだったが、やれるだけやってみるかと目を閉じてイメージを浮かべる。頭の中にイメージキープさせながら掴んでいたリングコンをゆっくりと放す。すると……。

 

「う、浮いただと!?」

「うおっ!?マジか!」

 

 フワッとリングコンが宙に浮き始めたのだ。念の為に糸とか付いていないか確認したが、それっぽいモノは一切見当たらず。言うならば、ケンジは念動力みたいな何かで浮かせているのだろう。

 

「へぇ~……やっぱり想像力とか無いと動かせないものなんだな。逆にマッスルパワーとかそういうのは一体何処から湧いて来るのか……」

「深く考えたら負けだ。今の時点でトレーニングもクソも関係無くなって来たからな。で、ケンジはそれをどうやって使うんだ?」

「そうだな……」

 

 宙を浮いているリングコンをじっと見た後、そのままケンジはリングコンを上に浮かばせながらもグッと込める様にエネルギーを流す。エネルギーを注入されたリングコンはカッ!と黄色いオーラを放つ。

 そして、そのまま頭上に浮かせ、何処かで見た事ある様なポーズをした。それを見た一同は……。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

「え、ちょ、嘘だろ!?」

「一旦離れろ!危ねぇぞ!」

 

 これ全力でやるパターンだと察したグレイ達は少しだけケンジから離れる。ある者は物陰に、ある者は伏せたままじっと見つめる。ギュルギュルと回りながらオーラを纏ったリングコンを―――

 

気円斬(このハゲー)!!」

 

 思いっ切り大きく投げ、目の前のビルや瓦礫とかを次々とスパッと切り落とした。ケンジ、まさかの人気だったとされるアレを再現させちゃったのである。先程のグレイや鷹山に比べて、こっちの方は段違いだった。

 

「マジかよ……」

「や、確かに円形だけどさ……ドラゴンボールも出来るとか誰が想像したよ!?」

「ケンジ……まさかとは思うけど、そういうのを想像してたのか……?」

「あ、ああ……自分でもかなり驚いている方だけど……まさかの再現の高さにビックリした。もしかしたらコレも行けるかな……?」

 

 今度はリングコンを持ったまま天を掲げる様なポーズをした後、グッと前へと向けた。そして、リングコンの中心から青白いエネルギーが集束する。

 

「今度はあの技やんの!?」

「止めて下さーい!地球がー!地球そのものがー!!」

「ケンジ!上に傾けろ!じゃないと何もかも崩壊する!」

「言われなくとも自重するつもりだ!ファイナルフラッァァァァァァァァァァシュ!!」

 

 地響きと共に強烈なエネルギーの光線が斜めに向けられながら一直線に放たれる。その威力は途中で立ち塞がる様に建っていたビルをいとも容易く崩せる程。放たれた光線は次第に小さくなり、スッと消え失せた。放った後だったのか地面が少し抉られているのが現実味を帯びている。

 

「……コレで何もかも壊せるならさ、戦術人形要らないのでは?」

「戦術人形をサイヤ人と比較しちゃアカン。レベルが違い過ぎる」

「何だか色々と可哀想な気がして来た……そう言えば、これってフィールドでジョギングしている時は空気砲が撃てるんだったか?押し込むとどうなるんだろうな」

 

 気になったので押し込んで見ると、ポーヒーという音を出しながら緑色の弾が発射された。弾は着弾した瞬間大きな爆発を起こし、煙が晴れた時には巨大なクレーターが出来ていた。

 

「………え?」

「何だ……今の……イレイザーキャノン……?」

「今のが空気砲って言いたいのか……?どう見ても破壊砲じゃねぇか……」

「空気とは一体何だったのか……」

 

 明らかにこれまでのタイプとは桁違いの攻撃力だったし、下手すれば本当に世界が終わる。とりあえずコレは封印しておこうと一同は決め、今度はザックの方へとリングコンが渡される。

 

「俺の場合、どうなるんだろうな?工具?」

「あながち否定出来ないのがな……基本、開発で籠りっきりのお前が何をイメージするんだ……?」

「分からん。俺だって何も思い付かないし、適当に何か出てくれれば良いよ」

「適当って……」

 

 どうせ自分のヤツなんて大した事無いよ、と自虐染みた内容を呟くザック。しかし、この流れを断つのもまたどうしようかと思ったので、軽くスクワットをしてみた。すると……。

 

―――ゴンッ!!

 

「アレェ!?」

 

 なんということでしょう。スクワットしたら、何故かパンジャンドラムが空から降って来たではありませんか。

 いや、それはおかしいとザックもこれはノーカンだと言い、今度は腹筋をやってみたが……またしてもゴンッ!!という音と共にパンジャンドラムが現れた。じゃあ、空気砲も……?と恐る恐るやったら、案の定パンジャンドラムがボンッ!と前から飛び出して来た。

 

「どうしてこうなった……」

「お前絶対英国面に呪われてるよ。或いはズルズルとゆっくり引き摺り込まれてる」

「ヤバいな……今後、製造した人形が全部パンジャンドラムとかなってたら悪夢だ……或いは非常食とか