キン肉マン~転生したらカナディアンマンだった件~ (やきたまご)
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Re超人オリンピック編
そして国辱マンとなった!!の巻


最弱の主人公誕生!?


 俺は、会社への通勤途中いつも通る踏切の近くまで来た。

 現在、赤信号を知らせる音が鳴り響き、踏切のバーも落ちている状態だ。

 仔犬が線路の真ん中にいる。

 電車はすぐそこまでせまっている。

 俺はとっさに踏切のバーをくぐって走り出した。

 犬の体を抱きかかえたが、もう電車はすぐそこまで迫っている。

 逃げても間に合わないと思い、犬を投げ飛ばした。

 電車が目の前まで迫った瞬間意識が途絶えた。

 

 

 

 気が付けば暗闇の世界にいた。

 俺は電車にひかれて死んだんだな。

 特に何も立派なことは成し遂げられなかった人生だが、俺の大好きなキン肉マンに出てくるテリーマンのように子犬をかばって電車の前に立った。そう思えばいい死に方を出来たと思う。

 やがて、暗闇が少しずつ明るくなり、自身のいる場所が明らかになった。まわりにはリングがたくさんあった。そして俺の知っているキャラ達が死んでいた。キン肉マン、ネメシス、五王子、ザ・マン、その他強豪の超人達……

 

「なんだこれはっ!? 俺は悪夢でも見ているのか!っ?」

 

ふははははは

 

 顔のよく分からない男達が邪悪に満ちた笑い声をあげていた。

 

「ピースは全て揃った。今こそ超人を絶滅させる時だ!!」

 

 正体不明の男達の持ったピースが宙に舞い、大きな球体となった。その球体は虹色の光線を放った。

 

「あれはカピラリア光線、うわぁあああああ!!」

 

 俺はその光の中に消えてしまい、意識がフィードアウトした。

 

 

 

 目が覚めた。はっきりとした意識や感覚がある。俺は生きているのか? そういえば周りには木々がいっぱいある。どうやら森の中のようだ。俺は電車にひかれたから、恐らく線路か病院にいるはずだよな……。手にずしりとした感触を感じる。俺は斧を持っていた。凄く重い斧のようだが、不思議と軽く感じる。そして自分の腕が赤と白のカラーリングだった。

 

「おい、嫌な予感しかしないぞこれ……」

 

 大のキン肉マンファンである俺はここまでの情報で一つの解答を弾き出した。すぐ近くに小屋があった。自分の姿を見れるの鏡はないかと小屋の中を探した。姿見の鏡があり、自分が一体何者かであるかを確かめ驚愕した。

 

「げぇ――――――っ!! カナディアンマン!?」

 

 そう、俺は死んでキン肉マンのカナディアンマンに転生したのだ。

 

 

 

 

「本当にキン肉マンの世界に来ちまったみたいだ……」

 

 今は懐かしい真空管の大きいTVをつけたら超人オリンピック特集なるものがやっており、優勝候補筆頭のロビンマスクの姿があった。小屋に合ったカレンダーの西暦を見たら1975年。つまり、キン肉マンの時代で言うと超人オリンピック第19回目間近の時である。

 

「ということは俺にも参加の知らせが?」

 

 小屋の近くにあった郵便ポストの中を見ると、超人オリンピック参加の招待状が届いていた。確かカナディアンマンは原作ではこの超人オリンピックでベスト8に残り、ロビンマスクにあっさりと敗北している。

 

「というか、この後の人生をカナディアンマンとして過ごすのかよ……また死んで良い超人に転生とかできないかな……いや、カニベースあたりとかになる可能性もあるからやめておこう……」

 

 キン肉マンファンだからこそ分かる。カナディアンマンがどんどん転落していき、挙句の果てに国辱マンとまで呼ばれる始末になることを。生みの親である横浜市の沢田君はどんな思いで自分の超人を見ていたのだろうか? まあ最近パイレートマン相手にかなり頑張ったから読者のイメージは大分良くなったと思うが、いや、そんなことはどうでもよい。

 

「今後ろくなやられ方しないし、パイレートマン相手にもぐろいやられ方したし、どうせなら超人様みたいなゆるい世界に行きたかった――――――っ!!」

 

 一人で嘆いても山の中でこだまが響くだけ、嘆いても仕方がない。こうなったらカナディアンマンとしてましな生き方をするにはどうすれば良いかを考えよう。

 

「まず火事場のクソ力を身につけるところからかな……」

 

 カナディアンマンはまずキン肉マンと対戦したことがない。だから最近のシリーズでもクソ力特有のぼわぁができなかった。ベンキマンでさえもぼわぁができたんだ。俺もキン肉マンと対戦さえできれば……でもこの時代のキン肉マンに対戦しろって言っても臆病だし怖がってまともに対戦してくれなさそうな気がするな……。

 

「そうだ!」

 

 俺は第19回超人オリンピック招待状の差出人の住所へとすぐに向かった。超人委員会である。東京にその本部があった。

 

 

 

「何? キン肉マンを超人オリンピックに出せじゃと?」

 

 委員長ハラボテが驚いた表情を表す。

 

「えぇ、確か日本代表のウルドラマンは今大会を辞退しているはず。ならばキン肉マンを出すかというところですが、キン肉マンのダメ超人ぶりの評判からして、出さない方がましといったところと委員長は判断しているでしょう」

 

「その通りじゃ、そこまで分かっているならこの話は終わりじゃ。わしは忙しいんじゃ」

 

「待ってください。今大会の注目はロビンマスク、キン肉マンを上手く使えば彼の引き立て役に使えるかもしれません。つまり超人オリンピックの盛り上げに貢献、いわば超人委員会の利益にもつながるのですよ!」

 

「ほう、そういう考え方もできるな」

 

 ハラボテの表情が変わった。先ほどまで煙たがっていたかのような感じだったが、今はこちらの話を興味深く聞いてくれている。この時代のハラボテはハラグロといっても良い感じの性格だったからな。

 

「そこで私が彼を超人オリンピックまでの間鍛え上げて、ロビンマスクの噛ませ犬になる程度まで鍛えてあげましょう」

 

 こうして俺はキン肉マンのスパーリングパートナーとなった。

 

「ふむ、まあいいがなぜそんなことするのじゃ? お前がそんなことしても何の特にもならない」

 

 うっ、なんか良い言い訳ないかな……。

 

「ふふふ、大人の事情って奴ですよ」

 

「ほう、そういうことか……」

 

 こう言えばハラボテは大方、俺がロビンマスクの関係者から金銭を頂いたと思われるだろう。俺のイメージは悪くなるが、今はそれでも良い。とにかくキン肉マンと闘うという機会が欲しいのだ。

 

 

 

 俺は東京の上空を飛びながらキン肉マンを探していた。キン肉マンハウスの方やマリさんがいる幼稚園のほうにもいったが、それらしき姿が見当たらない。

 

「待てよ、もしかして地下鉄の方に行けば……」

 

 俺の勘は当たった。原作通り、地下鉄の中にキン肉マンが潜り込んでふて腐れていたところだった。

 

「王子! 何あほなことやってんですか!」

 

「いやぁ、地下鉄で寝ていたらそのまま巨大化しちゃったみたいでのう」

 

 ミート君とキン肉マンが賑やかなやり取りをしている。今はすっかりバトル漫画と化しているが、こういう原作初期の雰囲気もファンになると良いなぁと思えてくる。どうやらあちらも俺の姿に気づいたようだ。

 

「初めまして、俺はカナダの超人カナディアンマン、君がキン肉マンだね?」

 

「そうじゃが何の用じゃい?」

 

「超人オリンピックの話は聞いていると思うが、もしかしたら君が出場できるかもしれないんだ」

 

「そ、それは本当か!」

 

 キン肉真弓が突然マンホールから飛び出してきた。マジで驚いたぞ! でもギャグ漫画だからこれぐらいは当たり前か?

 

「大王様もどこから出られているんですか!」

 

 ミートがすぐにツッコミを入れた。あ、いかんいかん、このペースに付き合いすぎてはだめだ。早く本題に入らないと。

 

「ただしキン肉マン、俺とのスパーリングを毎日続けてある程度の力をつけてもらうというのが条件だ。どうだい?」

 

「面倒じゃ、参加しなくてもいいや」

 

 キン肉マンは鼻をほじりながら面倒そうでかつ間抜けな顔をしていた。

 

(だぁ~! この当時のキン肉マンならこういうキャラだったわ! 奴との実戦経験は今後の俺のためには必要不可欠! 何とかしなければ! そうだ!)

 

「ふふふ、この近場の幼稚園でマリ先生という綺麗な女性を見かけたんだ。俺はその人をデートに誘おうかなと思っている」

 

「なにぃ!」

 

 キン肉マンが目の色を変えた。この当時はマリ先生にぞっこんだったからな。マリ先生いつのまにか消えたキャラとなったけど……。

 

「ほう、君も気があるみたいだね。どうだい? マリ先生をかけてガチンコのスパーリングというのは?」

 

「ようし! やったろうじゃねえか!」

 

 よしよし乗ってきた!

 

「では死ぬ気でかかってきな! 本当に死んじまうからな!」

 

ぐいっ

 

 俺はそういって先手でキン肉マンの身体を持ち上げて、カナディアンバックブリーカーをかけた。俺はプロレス経験はないが、身体が何となくカナディアンバックブリーカーをどうかければいいか分かっているようだ。俺は上下に揺らしてキン肉マンの背骨にダメージを与える。

 

ぐきぃ ぐきぃ

 

「のわああ!! 背中が折れるううう!!」

 

(やっぱこの時代のキン肉マン弱いな……自分で言うのもなんだがカナディアンマンごときの技でピンチになるとは……)

 

「王子! ここが踏ん張り時です! 頑張って下さい!」

 

「スグル――――――!!」

 

「踏ん張り時か、よ~~し!!」

 

ぷぅ~~~

 

「くっさ!! がはぁ!!」

 

 キン肉マンが放った屁の予想以上の臭さに俺は技を解いてしまった。

 

「今だ!」

 

 キン肉マンが俺の背中に回り込みバックドロップを放った。

 

ずだぁん

 

「くそ、まさかこんな間抜けな負け方をするなんて……」

 

 正直俺はこの初戦で勝てるだろうと思っていたが、俺はキン肉マンに負けてしまった。この一件で俺は早くも国辱マンと呼ばれるようになってしまった。前途多難な転生生活の始まりであった。




打ち切り確定の物語は今始まった!!


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超人オリンピック開幕!!の巻

運命の日は始まった!!


 超人オリンピック当日まで俺とキン肉マンは練習を欠かさなかった。キン肉マンに負けたのは非常に屈辱的であったが、同時にそれは俺のモチベーションにもつながり、キン肉マンもキン肉マンでマリさんをとられるんではないかと思って必死に練習に取り組み、いつのまにか互いに良いパートナー同士となっていた。たまにテリーマンも遊びに来て、俺達のスパーリングを手伝ってくれた。

 

 そして超人オリンピック当日の日がやって来た。

 

「や~い! 国辱超人め! キン肉マンでも勝てるなら俺達でも勝てるぞ~~!!」

 

 俺の入場時に、空き缶やらゴミやらがかなり飛んできた。予想はしていたが、やられると結構嫌な気持ちになるなぁ……。

 

「くそったれ! 今に見ていろ!」

 

 開会式終了後の第一種目ジャンケンは難なく突破した。問題は第二種目の怪獣の持ち上げである。

 

「原作通りだと、スペシャルマンが持ち上げるタイミングでキン骨マンが現れるはずだ。どうしようか? 原作通り進めた方が無難か……いや!」

 

 俺はスペシャルマンを見捨てることなんて出来ない。なぜなら性格の悪いカナディアンマンとタッグを組んでくれたからだ! それに超人様でも結構良い奴だった(ゆで先生が書いた作品じゃないけど)

 

 そして怪獣の重さが、より重量のあるものに変わった。途中までは何事もなく競技が進み、やがてスペシャルマンの出番の時がやって来た。

 

「おいキン骨マン! 全く姿が隠せてないぞ!! それでスペシャルマンの競技を妨害する気か?」

 

 俺はわざとらしく大きな声で言った。

 

「ええっ!? そんな馬鹿な! 確かに姿は隠れているはずなのに!」

 

 間抜けだ。俺のかまにまんまとひっかかったぞキン骨マン。何もないところからキン骨マンの声が聞こえたので、すぐに超人委員会のスタッフが調査に入った。

 

「そこだな!」

 

 スタッフの一人がペイント弾を打ち、キン骨マンに当たった。当然何もないところにペイントが浮かび、すぐにキン骨マンはひっとらえられた。

 

「ありがとうカナディアンマン! 君のおかげで第二種目を何事もなくクリアできた! しかしよくキン骨マンがいるなんて分かったね!」

 

 スペシャルマンが早速俺に礼を言いに来た。まじで良い奴だぜ。

 

「いやぁ、超人のカンってやつさ! あっはっは! まあお互い頑張ろうぜ!」

 

「ああ! できれば決勝で君と闘いたいね!」

 

 俺はスペシャルマンと互いに拳を合わせて、誓いをかわした。

 

 原作とは違う展開になったが、これはこれで良いな!

 さて第三種目の宇宙マラソンにて事件は起こった。俺とスペシャルマンはほぼ同じタイミングで月に到着した。

 

「ひひひ、カナディアンマンめ、今に亡き者にしてやるだわさ!」

 

 ん? キン骨マンのライフルの銃口が俺の脚をむいている? やべえ、テリーマンのフラグがまさか俺にふりかかるのか!?

 

「危ない! カナディアンマン!」

 

ズキューン

 

 スペシャルマン!? おれをかばってくれただと!? しかも脚に弾丸が当たって酷い傷だ!!

 

「ひえええ! 間違っただわさ!」

 

 キン骨マン達が逃げ出した。月にいた超人委員会のスタッフがすぐにキン骨マン達を追いかけた。あいつらのことはどうでもいい、俺はスペシャルマンが心配だ! 俺はすぐに彼のもとへと駆け寄った。

 

「すまない! 俺をかばって酷い怪我をおって……どうお詫びすれば……!」

 

 俺の目から自然と涙が出ていた。

 

「な~~に、借りを返しただけさ。本当なら僕は第二種目で脱落していたかもしれないんだ」

 

「いいや、俺の責任だ! お前を背負ってでもゴールの会場にいくぜ!」

 

「馬鹿野郎! 君がそんなことしても僕は喜ばないぞ!!」

 

 スペシャルマンが怒鳴った。珍しい場面に俺はひるんだ。

 

「し、しかし……」

 

「僕の思いも背負い、この大会のチャンピオンになってくれ! そしたらついでにキン肉マンの王位の座もかけて再び勝負しようじゃないか!」

 

「分かったぜ! 俺はお前のためにも必ずチャンピオンになる!」

 

 俺はスペシャルマンを置いて、月を旅立った。もう原作など関係ない! 俺はあいつとの友情のために優勝してやる!

 そして俺は地球まで戻り、ファイナリスト入りが確定した。既にロビンマスク、テリーマン、ラーメンマンが到着した後だった。

 

 あっ、優勝するって事はこの三人と確実に当たるよな……。やばい、さっきの闘志がなくなってきた……。というかスペシャルマンなにげに王位争奪戦で言っていた爆弾発言かましていたな。いい人そうに見えてちゃっかりしたとこあるな……超人様でもそういうところあったし。

 

 そして、7人目までゴールしたところである。

 

 あれ、キン骨マンを月で逃がしたって事は、キン肉マンに爆弾入りのうさぎを渡す奴がいない。これって原作通りキン肉マンゴールできないんじゃ。

 

ぷうううううう

 

 突如空中から巨大な屁の音が聞こえた。同時に大勢の超人が空からふってきた。

 

「ぐわああ!! くせええ!!」

 

「なんとかしろおお!!」

 

 会場はキン肉マンの屁により阿鼻叫喚であった。俺も鼻をふさいでいるのに失神寸前の状態だ。

 

「いやぁ、前日にさつまいも食いまくったら今頃になって屁が出てもうたわい」

 

 恐るべしキン肉マン、やはりどんな状況でも奇跡を起こす男だ。この後のバトルロワイヤルもキン肉マンはなんとか生き残り、ベスト8入りを果たした。

 

 

 

 そして、ついにトーナメントの組み合わせを決める日が来た。原作通りなら俺の対戦相手はロビンマスクだが、前もって委員長に進言していたことがある。

 

「えぇ~~この試合、わしが組み合わせを決めさせて貰った。異議のある者は即失格とする!」

 

 そう、原作ではくじをひいてランダムに決まったが、キン肉マンをロビンマスクの噛ませ犬にするという条件でキン肉マンを出場させた。つまり! 委員長が組み合わせを決めることになる。

 

「第一試合! キン肉マンVSロビンマスク」

 

 会場がざわついた。

 

「委員長!! これはどういうことじゃ!! さてはうちのスグルをトーナメント戦ですぐに消そうと思って前チャンピオンを当てたんじゃな!!」

 

 早速キン肉真弓が委員長に噛み付いた。

 

「そうじゃよ。それがどうした? それ以上文句があるならここでキン肉マンを失格にさせるぞ!」

 

「なあなあ、ぼてち~ん、そんな固いこと言わんといて!」

 

「昔のあだ名を出すな気持ち悪い! それにそこにいるカナディアンマンがキン肉マンをロビンマスクの噛ませ犬程度になるまで強くするという条件で出場させたんじゃ。むしろわしとカナディアンマンに感謝して頂きたい」

 

 委員長の馬鹿~~~~っ!! 批難の嵐を避けるために、俺にバトンを唐突にまわすな~~~っ!!

 

「その話本当か!」

 

 意外にもテリーマンが怒りを露わにした。

 

「委員長、あそこにいる国辱男は俺に闘わせてくれ!!」

 

「な、何を言っているんじゃテリーマン! 既に組み合わせはわしが決めておるのじゃ!」

 

「俺の親友を大舞台で笑い者にするために、ここまで友情の三文芝居を打ったあの男が許せねえ!!」

 

 流石にこれには俺も頭にきた。いや、建前としてはそうだけど、俺は俺なりにここまでキン肉マンとはガチで仲良くやっていたんだぞ。

 

「なに! 俺の友情が見せかけだったとでも言うのか! 大人をからかうんじゃねえぜボーイ!」

 

ばきぃ

 

 テリーマンが俺の顔面を思い切りぶん殴りやがった。まあ無理もない、本人が一番気にしていた事をえぐるような事を言ってしまったからな。すぐさま超人委員会のスタッフが間に入って喧嘩の仲裁に入った。

 

「それに我が友スペシャルマンの敵討ちでもある!」

 

「敵討ちだと?」

 

「そうだ! お前をかばい脚を打たれたスペシャルマンは怪我の悪化で脚を切断したんだ!」

 

「なんだって――――っ!!」

 

 会場の人達は驚いた。俺ももちろん驚いた。テリーマンの義足フラグまでスペシャルマンにふりかかろうとは……まじで申し訳なくなってきた……。

 

「第二種目でお前はスペシャルマンを救ってくれた。それには感謝している。だからお前のせいだとは言わない。だがスペシャルマンのためにもまずお前を倒す!」

 

 委員長も事情を聞いて、了解したようだった。

 

「それでは第二試合はテリーマンVSカナディアンマンとする!」

 

 だああああ!! なんでこういうことになるんだ!! この先のシリーズでも他のキャラみたいに活躍したいと欲張ったからか!! 完全に俺ヒールじゃねえかあああ!!

 

「見損ないましたよカナディアンマン、もう僕たちの元へは来ないでください」

 

 ミート君からも容赦の無い言葉を浴びせられた。俺が落ち込んでいる間に次々に試合は発表された。

 

「第三試合! カレクックVSスカイマン」

 

 あっ、いつの間にかタッグを組んでいた二人か。もしかしてこの試合で二人に友情が芽生えるのか?

 

「第四試合! ラーメンマンVSブロッケンマン!」

 

 これは原作通りだな。さらにこのブロックに残虐超人皆が固められたのも原作通りか。恐らくラーメンマンがこのブロックを勝ちあがるだろう。

 問題は俺のブロックにロビンマスク、テリーマン、キン肉マンがいることだ。後々トップファイターとなる三人が固まったのは非常にやばいことである……。

 

 

 

 その日より、俺はキン肉マンやテリーマンからも見放され、トーナメントの試合当日までカナダの山奥で一人練習に励むことになった。

 

「くそ! くそ!」

 

 俺はランニングをすることにした。原作でカナディアンマンがパイレートマン相手にスタミナ切れを起こしたことを思い出し、スタミナの強化に取り組んだ。まあ一人だからこういった一人でもできるトレーニングしかできないのもあるが……。

 

こんこん

 

 俺一人山小屋にいる時に客がやって来た。きっとろくなやつじゃないんだろうな。

 

「へい、盟友よ、元気そうだな」

 

 驚いた。目の前にスペシャルマンがいたのだ。片脚がなく松葉杖をついている。

 

「お前、スペシャルマン! 大丈夫なのか!」

 

「自分のことを一番に心配しなよ。それよりもすまないな、僕のせいでこんなことになって。君は悪者扱いされているが、僕は君を真の正義超人であると信じているよ」

 

 スペシャルマンが満面の笑顔をおれにくれた。

 

「うおおおおお!!!」

 

 俺は優しき勇者の胸で泣いた。

 

「さぁ、泣いている暇はないぞ! 片足だけになったけど寝技ぐらいなら君とも闘える実力はある! 僕の全てを君に授けよう!!」

 

 誰からも信用されずに真の国辱マンとなってしまった俺の心を救ってくれた優しき勇者に、ただただ俺は感謝した。




ビッグボンバーズ誕生!!


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米荒馬VS楓!!の巻

名勝負終了!?


カン! カン! カン!

 

『なんということでしょう! 敗北必須とうたわれていたキン肉マンがロビンマスクに勝ってしまった――――――っ!! それにしてもキン肉マン! 意外にもロビンマスク相手に互角の試合展開を見せ、さらにはロビンマスクのタワーブリッジを見事に破り、なんとなんとキン肉バスターという必殺技まで決めちゃいました――――――っ!!』

 

「キン肉マン! キン肉マン! キン肉マン!」

 

 会場からは割れんばかりのキン肉マンコールが起こっていた。

 

「王子! 皆さんがまぐれでない王子の強さを認めたんですよ!」

 

「なぁミートよ……」

 

 キン肉マンは浮かない顔をしていた。

 

「どうしましたか?」

 

「私はカナディアンマンに謝らなければならない。今日勝てたのはあいつが私に託したロビンマスク対策のおかげなんだ……なのに、私はあいつに対し酷い仕打ちを……」

 

「王子……僕もカナディアンマンさんに酷いことを言ってしまいました。次の試合終了後に二人で謝りに行きましょう!!」

 

 KOされたロビンマスクが握手を求めてきた。

 

「完敗だ。君は本当に強かった。しかし、次は勝たせて貰う!!」

 

「ああ、またどっかで再戦しよう!!」

 

 二人の握手に観客は大歓声をあげた。

 

 

 

 俺は控え室でスペシャルマンといっしょにいた。松葉杖をつきながら俺のセコンドを務めることになった。

 

「キン肉マンがロビンマスクに勝ってくれたか……良かった……」

 

「キン肉マンが勝てたのは君のおかげだよ」

 

「まあ、あいつ相手にかなりのスパーリングをしたからな。よし! おれもいくぜ!」

 

 俺とスペシャルマンはリングへと向かった。

 

ブーブーブー

 

 俺とスペシャルマンに対し容赦ないブーイングが飛んできた。

 

「帰りやがれ国辱コンビめ!!」

 

「スペシャルマン! そんな奴の肩なんか持つな! 国辱がうつるぞ!」

 

「カナディアンマンに国辱なんて言っちゃ駄目よ、国辱に失礼でしょ?」

 

「だはははははは!!」

 

 俺は心底怒っていたが、スペシャルマンがなだめてくれた。

 

「スペシャルマン、なぜそんな男と一緒にいる」

 

 先にリングインしていたテリーマンが怒りを露わにしていた。セコンドには先程試合を終えたキン肉マン、そしてミート君もいる。

 

「テリー聞いてくれ! 奴のおかげで私はロビンマスクに勝てたんじゃ! 奴は本当に心の底から私を強くしたいと思っていたんじゃ!!」

 

「ふん、大方お前を強くしすぎてしまっただけだろう。奴がお前を噛ませ犬として育てたことにはかわりない!」

 

 テリーマンは聞く耳を持たなかった。

 

「カナディアンマン! テリーは足腰がとても強い。君のパワーでも投げ倒すのは難しいだろう。あと、彼のスピニングトゥーホールドにも要注意だ」

 

「了解!」

 

カーン!

 

『さぁ因縁の試合が始まりました! テリーマンが悪者退治に名乗りをあげた――――――っ!! セコンドには先程ロビンマスクから番狂わせの勝利をしたキン肉マンがいるぞ――――――っ!!』

 

「やれやれ俺に関しては何も言ってくれないか……」

 

『まずはテリーマンが先制をしかけた!』

 

「うおおおお!!」

 

ばきぃん

 

『テリーマンまずは体重の乗った右のオーバーフックをカナディアンマンに浴びせた』

 

「ぐぅ! やはりテリーマンのパンチは効くぜ」

 

『テリーマン! カナディアンマンがぐらついたところで追撃の左だ――――――っ!!』

 

「そこだ!」

 

 俺はテリーマンが左腕を振り回したタイミングで逆襲の右のまっすぐを浴びせた。

 

バキィン

 

『カナディアンマン! テリーマンの動きを読んでいたかの如く右のストレートです!!』

 

「どうだ? 俺のパンチも効くだろう、ボーイ?」

 

「人の気持ちを逆なでするような態度! 本当にむかつくぜ!!」

 

バキィン

 

『テリーマン! 負けじとパンチを打ち返した――――――っ!!』

 

 

「おもしれえ! ナックルパート合戦といこうじゃねえか――――――っ!!」

 

バキィン バキィン ドゴォ バキィン ドボォ

 

『両者相手のパンチの連打を顔面で受けながら殴り返す! 殴り返す! 互いに倒れるまで打ち合いを続けるつもりか――――――っ!!』

 

「わあああああああ!!!!」

 

 両者の真っ向勝負に観客も盛り上がった。はじめっから全力で殴り合いをした二人は早くも息切れ状態である。

 

『両者パンチの連打で足下はふらふら! 顔面も大きく腫れ上がっています! それでもなお殴り合いをやめません! やめたら俺の負けだと言わんばかりに続けます!!』

「無駄にでかい図体だけあって、いいパンチを撃つじゃねえか。さっさと倒れやがれ!」

 

ばきぃん

 

 さすがにテリーマンのパンチを何度もくらっているので、俺は大きくぐらついた。でも足を踏ん張った。ここで倒れてはいけない!!

俺の意地のため、スペシャルマンとの誓いを果たすため、テリーマンを目覚めさせるため!

 

ぼわぁ

 

「お前こそ、テキサス魂の入った良い一撃じゃねえか! 疲れるだろ? 寝ちまえよ!」

 

ばきぃん

 

 テリーが大きく揺らぎダウンした。

 

『テリーマンついにダウン! そしてカナディアンマンの身体にも金色の発光現象が起きているぞ――――――っ!!』

 

「えっ!?」

 

 俺の身体が輝いていた。まさかクソ力を発動したというのか!? 身体はぼろぼろだが、気持ちで余裕が出てきた。

 

「ようし! 立ち上がってこいテリーマン!! 俺はお前ともっと闘いたいんだ!!」

 

 テリーマンがロープを使って立ち上がった。

 

「敵に塩を送るとは、お前もとんだお人好しの馬鹿だぜ」

 

 テリーマンの顔つきが試合開始時と違う。その顔からはもう憎しみの心は消えていた。

 

「殴り合いはお前に分があるようだが! こういうのはどうかな!」

 

 

『テリーマン! タックルを仕掛け、カナディアンマンをマットに倒した!』

 

「くらえ! テリー一家伝家の宝刀! スピニングトゥーホールド!!!」

 

ぐきぃ ぐきぃ ぐきぃ

 

『決まった――――――っ!! テリーマンの十八番のスピニングトゥーホールド――――――ッ!! 勝負あったか――――――っ!!』

 

「ぐわあああ!!」

 

 余っている片足で俺は強引にテリーマンを蹴飛ばした。

 

『カナディアンマン! なんとか技から脱出! しかし足を痛めたか!!』

 

「大丈夫か?」

 

「敵に塩を送るなと言ったのはどこのどいつだぁ!」

 

がしぃん

 

『カナディアンマン! テリーマンの身体を持ち上げてカナディアンバックブリーカーだ!!』

 

ずきぃん

 

『しかしカナディアンマン痛めた足で技を決めきれない!!』

 

「貰った!!」

 

『テリーマン! カナディアンマンをブレーンバスターでとらえ、その巨体をマットに叩き付けた――――――っ!!』

 

どがぁん

 

 これがテリーマンのブレーンバスターか。これは魔雲天もマックス・ラジアルも倒れるわけだわ……。

 

カン! カン! カン!

 

『テリーマンついに勝ちました! 終わってみれば両者正々堂々の素晴らしい名勝負でした!!』

 

「立ち上がれるか、カナディアンマン!」

 

「大丈夫だスペシャルマン。俺もだがテリーマンも心配してやれよ」

 

 

「大丈夫、あっちはキン肉マンが介抱しているさ」

 

「そうか、すまなかったな。負けちまったよ」

 

「いいや、勝利に値する敗北さ。素晴らしい試合だったよ」

 

 俺とテリーマンの試合は観客から称えられるものとなり、俺に対する国辱マンという汚名も完全払拭できた。

 その後のトーナメントの流れだが、スカイマンとカレクックは両者消耗戦となり引き分けとなり、どちらも次で闘えない状態となった。しかし、二人とも表情は清々しく何かに目覚めたみたいだった。

 ラーメンマンVSブロッケンマンは予想通りラーメンマンの惨殺で圧勝。これでブロッケンJr.との因縁も生まれた。

 テリーマンはと言うと、俺との闘いの怪我が酷くてキン肉マンとの闘いを辞退したみたいだ。もっとも、俺に対する罪滅ぼしもあってかキン肉マンに対し闘う意思も見せなかったそうだ。

 かくして超人オリンピック決勝はキン肉マンVSラーメンマン! もちろんキン肉マンの勝利に終わったが、これもまた名勝負となったのであった!

 今後はさらに厳しい闘いも待っている。だが俺はカナディアンマンとして、この世界生き延びてみせるさ!!




やきたまご先生の次回作にご期待ください!!


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Re7人の悪魔超人編
早すぎる悪魔襲来の巻!!


打ちきりではなかった?


 第20回超人オリンピックからしばらくの月日がたった。俺は原作を尊重し、しばらくは展開には手を出さないことにしていた。その間、スペシャルマンと共にトレーニングに励んでいた。

 

「カナディアンマ~ン! これ見てよ~!」

 

 スペシャルマンが慌てて持ってきたのは手紙であった。俺にはその手紙の内容が分かっていた。

 

「第21回超人オリンピックの知らせだな」

 

「その通り! 流石だねカナディアンマン!」

 

 第21回超人オリンピックにおいて、原作ではカナディアンマンはファイナリストに残れなかった。新幹線飛ばしは小倉まで飛ばして問題なかったから、恐らくスケートの競技で脱落したのだろう。

 

「原作で俺が脱落した理由が分かるまたとない機会だな。まあ肉ファンにとっては『どうせウォーズマンあたりにやられたんやろ(笑)』と適当に予想されるとこだとは思うが」

 

 そして、第21回超人オリンピック ザ・ビッグファイトの日がやって来た。原作とは違う部分がいくつかあった。

 

「カナディアンマン、お互い決勝まで残れるといいな」

 

 そう言ってくれたのはロビンマスクだった。この世界ではロビンマスクに対する扱いは優しく、やさぐれることもなかったようだ。まあキン肉マンとのグランドキャニオンでの再戦のエピソードがカットされたのは残念だが、ロビンマスクがこの大会に万全の状態で参加したら、原作よりもかなりの波乱が起きそうだ。

 

 

「カナディアンマン、僕の分も頑張ってね!」

 

「分かったぜスペシャルマン! 今回こそベルトを手にしてやるぜ!」

 

 さほど原作の流れに影響は無いと思うが、スペシャルマンは足の怪我を機に引退を決意した。だからこの大会には出ないが、今後は俺のサポートに専念し、セコンドにつく予定だ。でもそうなると、タッグ戦ではビッグボンバーズ組めないよなぁ。まあ先のことは後で考えるとしよう。

 

「コーホーコーホー」

 

 一番読めないデンジャラスな存在がいる。ウォーズマンだ。俺が原作から外れたルートを作り出したせいでウォーズマンはこの世界ではロビンマスクの弟子となっていない。でも、短編集で見た話で、確かソ連でかなり鍛えられていたみたいだから、油断は出来ない。

 

 

 遂に競技が始まった。超人ふるい落とし、恐怖の火炎地獄・50メートル力泳・恐怖の新幹線アタック競技と俺は問題なくクリアしてきた。

 ただし、ちょっと原作から外れたストーリーとなっていた。ロビンマスクとテリーマンが死のハイロード 50km耐久ローラーゲームに残ったことだ。俺が原作を変えた影響で、スペシャルマンが参加しなかった分原作より順位が一人分繰り上げになったこと、さらにタイルマンが新幹線を飛ばしたタイミングに限って子犬がいたようで、もちろんそれをかばって原作のテリーマンのように失格になったようだ。

 

 

 

 さて、死のハイロード 50km耐久ローラーゲームの時がやって来た。さて、俺をここで密かに脱落させる存在は一体何者なのか? そんなことがどうでも良くなる大事件が起きてしまった。

 

「コポコポ~! 絶好調だぜ~!!」

 

『ティーパックマン! 予想以上の快走を見せる! このまま一位でゴールか――――――っ!!』

 

 ティーパックマンがゴールまでもうすぐのところであった。空から超人が一人ふってきたのだ。

 

ガシャン

 

「コポ!?」

 

 ティーパックマンは顔を機械で挟まれる感触を感じた。

 

「ケケケ~!!」

 

『なんだこの超人は~~~~~~っ!! どっから現れたんだ~~~~~~っ!!』

 

 実況とともにモニターにその超人が誰か映し出された。その超人の姿を見てぴんときたのは俺ことカナディアンマンだけであった。

 

「ステカセキング!? なんでこんな場面で登場するんだ!? 早すぎるだろ!?」

 

「素晴らしいミュージックを聴かせてやるぜ~~~っ!!」

 

ばばばーん♪

 

「コパァ――――――ッ!?」

 

 ティーパックマンが大音量の音楽に苦しみ、やがて顔面にヒビが入った。

 

ぱりりーん

 

 ティーパックマンの顔面のティーカップが、あまりにも巨大な音の衝撃により、粉砕された。頭からこぼれた紅茶がまるで頭部の血のようだ。ティーパックマンは息絶えたのだ。

 

「きゃー―――――っ!!」

 

「うわぁ――――――っ!!」

 

 観客が慌てだした。そりゃあ無理もない。こんな惨状見せられたらたまったもんじゃあない。

 そして惨劇はこれだけではなかった。

 

 

 

がしゃん

 

「な、なんだ!?」

 

 ベンキマンの頭上から何かがふってきて、それが身体に巻き付いたのだ。

 

「ケケケ-! デビルトムボーイ!!」

 

ぎしぃ ぎしぃ ぎしぃ

 

『またも謎の超人が出現したー―――――ッ!! 今度はベンキマンがバネのような身体をした超人に締めつけられている――――――っ!!』

 

「うぎゃあああ!!!」

 

 ベンキマンが断末魔の悲鳴をあげた。

 

ぐわしゃあ

 

 スプリングマンによって、ベンキマンの身体はバラバラにされ、あの世へ送られた。

 

 

 

 そして、ファイナリストに残ろうと必死で走っている最中のキングコブラに影が落ちてきた。

 

「影? なぜに?」

 

 キングコブラが真上を見て、影の正体に気付いた。

 

「気付くのが遅いぜ~! 魔雲天ドロップ!!」

 

「うわあああ!!!」

 

どぉすん

 

 キングコブラは魔雲天の巨体により押しつぶされ即死した。

 

 

 

「ひひひぃ~~~っ!!」

 

 ウォッチマンが会場から逃げだそうとしていた。

 

「ケケケ~! 逃がさないぜ~! ウォーターマグナム!!」

 

ばしゃあああ

 

 ウォッチマンに対しどこからか大量の放水がなされた。その犯人はアトランティスであった。

 

「や、やめろ!! 俺の精密ボディが――――――っ!!」

 

 当然機械で出来たウォッチマンは水に弱く、みるみるうちに故障していった。

「い、いかん! 早くこの騒動を収めなくては!!」

 

 スカイマンが襲ってくる悪魔超人に備えて臨戦態勢をとった。

 

「マキマキ~!!」

 

 スカイマンの目の前に現れたのはミスターカーメンだった。

 

「お前ら! ここを何処だと思っているんだ!!」

 

「何処だと? それはもちろん正義超人を抹殺する場に決まっているだろ~~!! カルトゥーシュ・ストロー!!」

 

ぶす

 

「ぐわぁ! ストローだと!?」

 

「そうだ! これで貴様の水分を吸い尽くすのだ!!」

 

ちゅー ちゅー ちゅー

 

「あああ……」

 

 スカイマンはすぐにミイラのような状態となり倒れてしまった。

 

 

 

「許せん! 許せんぞ――――――っ!!」

 

 カレクックはスカイマンの死によって、その顔は憎悪と怒りに満ちあふれていた。

 

「カカカーッ!!」

 

 ブラックホールがカレクックの前に現れた。

 

「オールスパイスシールド!!」

 

 カレクックがブラックホールに激辛カレーを投げつけた。しかし、ブラックホールは顔の穴を大きくして全てかわした。

 

「なっ、顔が変形しただと!?」

 

「カーカカカ、そんな子供のお遊び技でよくもまあ残虐超人と名乗れたものだ」

 

 ブラックホールの影が分裂し、複数体に分かれ、さらにマントが鋭利な刃物に変化した。

 

「セパレートシャドウからの赤き死のマント!!」

 

スパ スパ スパ スパ

 

 複数体のブラックホールがカレクックを襲い、身体の全身を切り刻んだ。

 

「ぐわあああ!!」

 

「苦しかろう、楽にしてやるぜ」

 

スパン

 

 カレクックの首は切られ、ごろりと頭が転がった。

 

 

 

「ば、馬鹿な! 七人の悪魔超人は超人ホイホイに閉じ込められていたはずだ!!」

 

ずしん

 

 俺の後ろに巨体の男が降り立った。ここまでの展開からしてまだ姿を現していない悪魔超人に違いない。後ろを見なくてもその漢がいかに強いかを感じ取ることが出来た。

 

「バ、バッファローマン……」

 

「ほう、俺様の名前を知っていたとは光栄だな~!」

 

 

 カナディアンマン人生、最大の絶体絶命の危機が訪れた。

 




楓の熱闘にご期待ください!!


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更なる惨劇!!の巻

逃げろ楓!!


 俺の目の前にいるバッファローマンは恐ろしい男だ。闘うのは利口ではない。逃げの行為をとって、国辱と言われても死ぬよりかはましだ。

 

「あんたがえらく強く事はよく知っている。だからこそ俺みたいな雑魚よりもチャンピオンのキン肉マンを相手にした方が良いんじゃないのか?」

 

「くっくっく、確かにお前はいかにも弱そうだ。だがな、俺のカンがどうにもひっかかってな。お前とは一度闘うべきだと思っている」

 

 げぇ――――――っ!! なんだよそのカン!! まさか俺が転生者だとか、俺の中に目覚めたクソ力とかに何となく気付いているのか!? 流石バッファローマンと言いたいところだが、俺が闘いたくないという意思を尊重してくれ――――――っ!! つうかまさかこれが原作でカナディアンマンが予選で脱落した理由じゃねえだろうな!!

 

「待ったっ!!」

 

 俺とバッファローマンを遮るように一人の超人が降り立った。それは俺がよく知る超人だった。

 

「スペシャルマン!?」

 

「これ以上超人オリンピックを荒らされてたまるか!!」

 

「しかしお前は義足の身だ!! とても闘える状態じゃない!!」

 

「君は最終予選に残った男、僕は参加すらしてない男、ならば僕が優先してこの悪魔を止めなきゃいけないだろ!!」

 

 スペシャルマンがバッファローマンに突っ込んでいった。

 

「フットボールタックル!!」

 

どごぉぉん

 

 フットボールタックルはバッファローマンにまともに命中した。しかし、当のバッファローマンは顔色一つ変えていなかった。

 

「まったく効かねえなぁ」

 

がしっ

 

 バッファローマンはスペシャルマンの顔面を右手でつかみ、そのまま持ち上げた。スペシャルマンの顔面に強い握力がかかる。

 

みしし

 

「ぐあああ!!」

 

「スペシャルマン!!」

 

「俺様に刃向かったからにはそれ相応の対応をしてやんねえとな! ネックジャイアントスイング!!」

 

ミス ミス ミス ミス ミス

 

 バッファローマンはスペシャルマンの顔面を両手で掴んだまま、変形型のジャイアントスイングを行った。

 

「こんな技原作でも見たことねえ! バッファローマンのやつ何をする気だ?」

 

「うぎゃあああ!!」

 

 スペシャルマンの悲痛な叫び声で俺は恐ろしい結末を理解した。

 

「やめろおおお!!!」

 

ぶちぃ

 

 ジャイアントスイングの遠心力により、スペシャルマンの首から下がもげた。

 

ごろろろ

 

 首のとれたスペシャルマンの身体が転がった。首の部分から大量の出血が見られる。

 

「そうれ、プレゼントだ!」

 

ひゅん

 

 俺がとっさに受け止めたのはスペシャルマンの首だった。

 

「スペシャルマン……」

 

ぽろ ぽろ ぽろ

 

 友の残酷な死を間近に見て、悲しみから条件反射的に大粒の涙が出てきた。そしてすぐに怒りの感情がこみあげてきた。

 

「許せねえ!! バッファローマン!! 刺し違えてでもお前をぶっ殺す!!」

 

それまでじゃ――――――っ!!

 

 ハラボテ委員長の大きな怒号が鳴り響いた。ようやくこの非常事態に超人委員会が動いたのだ。モニターにハラボテの顔が写る。

 

「悪魔超人共よ! なぜお前らがここにいるのだ!! 宇宙の超人ホイホイに閉じ込められていたはずだ!!」

 

 バッファローマンが代表して応答した。

 

「なぁに、キン肉マンという超人のおかげで出られたのさ」

 

「なんじゃと!! こりゃあスグル!! お前はいつから悪魔超人の味方になったんじゃ!!」

 

 キン肉真弓がここまでシリアスな空気を壊すように現れた。

 

「ちょっと待てい!! こいつらに関しては私は一切知らんぞ!!」

 

 キン肉マンもキン肉真弓同様の雰囲気であった。

 

「まあ知らんのも無理ない。キン肉マンよ、いつぞやか超人を一体宇宙にぶん投げたそうじゃないか」

 

 バッファローマンの言葉に、キン肉マンははっとした。

 

「まさか、私がハワイで使った48の殺人技の一つ、宇宙旅行か!?」

 

「そう、お前のその技で投げた超人がちょうど超人ホイホイの脱出のスイッチを押したのさ」

 

 え――――――っ!? そんな展開ありかよ!! 確か原作だと、超人オリンピック終了後に、いかにも怪力ありそうなブス女がキン肉マンをぶん投げて、キン肉マンが超人ホイホイに当たったからだよな。

 

「なるほど、これは真弓君の愚息が責任をとらないといけないようじゃな」

 

 ハラボテの言った一言にキン肉マンが反応した。

 

「なにを無責任な事をいっているんじゃい! 他人事だと思ってからに!! 私はこんな恐ろしい奴とは闘わんぞ! それにまだ超人オリンピックの最中だし!!」

 

「そうか、ならば闘う理由を作ってやろうか」

 

「うわぁ――――――っ!!」

 

 ミートの悲鳴が聞こえた。いつのまにかアトランティスがミートを捕まえていた。

 

「ケーケケケ、バッファローマンよ、いくぜ!!」

 

ひゅううん

 

 アトランティスがミートをバッファローマンに向けてなげつけた。

 

「そうらぁ!」

 

 バッファローマンがミートに向かって頭突きをした。

DAAN

 

 ミート君の身体がバラバラになり、7人の悪魔超人にミート君のボディーパーツが行き渡った。

 

「ミート!!!」

 

「心配するな、10日以内に我々7人を倒し、ボディーパーツを組み合わせれば元に戻る。キン肉マン、これでお前も闘わざるを得なくなったな」

 

「ミートは私にとって弟のようなものだ……例え無茶でもこの勝負受けてやるわい!!」

 

いい加減にせんか――――――っ!!

 

 ハラボテ委員長の怒鳴り声が響いた。

 

「超人委員会を置いてけぼりで話をすすめるんじゃない! この超人オリンピック、本来ならお前達悪魔超人に参加資格はない!! しかし、このまま閉め出して納得のいくお前らでもあるまい!」

 

「分かっているじゃねえか」

 

「そこでじゃ、決勝戦はお前らを含めた正義7VS悪魔7の対抗戦マッチを提案する!! この対抗戦で最終的に勝ち残った者が超人オリンピックのチャンピオンとする!! もしもどちらかの団体だけが複数人勝ち残った場合、その中でチャンピオンを決める者とする!!」

 

 ハラボテ委員長の発表に会場がどよめいた。

 

「ただな、7人も勇気のある正義超人が出るもんか……」

 

 悪魔超人による惨事を見たせいで、ためらいの態度をとる正義超人は多かった。だからここは漢気を見せる時だと俺は思った。

 

「委員長よ、少なくとも俺とキン肉マンの2人は参加させて貰うぜ!」

 

「待てよカナディアンマン! お前達だけに良い格好はさせないぜ!!」

 

 いつの間にかテリーマン、ラーメンマン、ロビンマスク、ウルフマンといった正義超人がそろい、条件を満たす人数となっていた。

 ブロッケンJr.とペンタゴンの姿がなく疑問に思ったが、どうやらウォーズマンによって惨殺されていたようである。この当時のウォーズマンならやりかねんな……。原作では惨殺される役目、もしかして俺だったりして……

 

「決まったな。後日、互いに不平等がないようにコンピューターを用いた抽選会を行う!」

 

 改めて、とんでもないことになってきたなと思う。しかし、もう止めるわけにも逃げるわけにもいかない。俺はなんとしてもスペシャルマンの仇を討ちたいからだ!!

 

 

 

 抽選結果の発表の日、とんでもない試合の組み合わせが発表された。

 

 

ラーメンマンVSアトランティス

 

ロビンマスクVSブラックホール

 

キン肉マンVSスプリングマン

 

テリーマンVSステカセキング

 

ウォーズマンVSミスターカーメン

 

カナディアンマンVSバッファローマン

 

ウルフマンVS魔雲天

 




衝撃の組み合わせ!!


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禁断のカセットテープ!!の巻

生き残れるのは誰だ!!


「それにしてもまたすげえカードが発表されたもんだぜ」

 

 思わずそんな独り言を言ってしまった。原作では見たことのない対戦カードばかりだ。誰が生き残れるか全く予想できない。少なくとも俺は絶望的であるが……。

 

「おい、ウォーズマン」

 

 意外や意外、ブラックホールがウォーズマンに話しかけてきた。

 

「コーホー」

 

「できればお前は俺の手で殺してやりたかったんだがな。まあ対戦カードがこうだから仕方ない。健闘を祈るぜ」

 

 こうなるとミスターカーメンが黙ってはいない。

 

「ブラックホール! お前どっちの味方だ!」

 

「俺は闘いたい奴と闘いたい、ただそれだけだ。」

 

 そういえば、悪魔超人が去った後に超人委員会が超人の死体整理でペンタゴンもあったんだよな。ウォーズマンのベアークローで惨殺された痕が分かりやすく残っていたな。ブラックホールは口には出して言えないが、盟友ペンタゴンの死に対し仇をとりたいのだろう。

 

「私も良いか?」

 

 ウォーズマンのもとにラーメンマンも歩み寄ってきた。

 

「コーホー」

 

「私もブラックホール同様、お前と闘いたいと強く思っている。だから互いに頑張ろうではないか」

 

 ラーメンマンは平静を装っているが、ブロッケンJr.の惨殺でラーメンマンもまた仇をとりたい意思が強いのだろう。

 原作とは違った展開になって、超人同士の敵対関係がより複雑になってしまったな。

 

「なあみんな、俺達また生きて会えるかな?」

 

 ロビンマスクの原作通りの言葉が来た。

 

「ロビン、私は全員生きて帰ってくると信じているぜ」

 

 ロビンに反応したのはキン肉マンだった。

 

「まあ、お前以外は生き残れるだろうよ」

 

 ウルフマンが憎まれ口を叩いた。

 

「なにを――――――っ!!」

 

 予想通りキン肉マンがヒートアップした。

 

「こうやってお前に突っかかれるのもこれが最後かもしれねえな」

 

「ウルフマン……」

 

 ウルフマンがらしくない事を言った。やはり全員生きて帰れるとは心の底から思っていないのだろう。

 俺も胸に滾る熱い思いを吐き出したくなった。

 

「一つ言わせて貰う。俺が負けたら俺がそこで終わりってわけじゃねえ。誰かが仇をとると信じて俺なりに何かを託すさ」

 

 俺の発言で全員の士気が上がったようだ。ただしウォーズマンは表情を一切変えていない。まあ、今のところこいつに対し友好的な奴が誰一人いないからなぁ……。

 

「いくぜみんな!」

 

ダダダダダ

 

 正義超人皆が戦地へと向かった。その先に待ち受けるは生か死か……。

 

 

 

『ついに始まりました正義超人軍VS悪魔超人軍の団体対抗戦!! 最強のかつ最凶の悪魔超人軍に正義超人達がどんな闘いを見せてくれるでしょうか!!』

 

 最初に動きを見せた試合は、東京タワー下のリングにて行われているテリーマンVSステカセキングである。

 

「ケケケ~~~!!」

 

 ステカセキングが先に飛びかかってきた。

 

『ステカセキングしかけた!! ティーパックマンを死に追いやった悪魔のシンフォニーだ――――――っ!!』

 

「そうはいかないぜ!!」

 

がぁん

 

『テリーマン! ステカセキングへの喉元にラリアットをかました――――――っ!!』

 

 テリーマンはあっさりとステカセキングを吹っ飛ばせて少し意外だった。

 

「ようし、今度はそのランドセルだ!!」

 

『テリーマン! ステカセキングが持っているランドセルを強引に引き剥がそうとする!!』

 

「邪魔だ!」

 

がこん

 

 ステカセキングがエルボーで強引にテリーマンの拘束を逃れた。

 

「いくぜ~~~!! 超人大全集第五巻!!」

 

『ステカセキング!! カセットテープを装着した――――――っ!! 』

 

 ステカセキングの目の形が丸から細目になった。

 

「立てテリーマン」

 

 テリーマンがステカセキングの様子を見た。

 

「その声、その顔は……まさか!?」

 

「レッグラリアート!!」

 

どがぁあ

 

『ステカセキング! ラーメンマンばりのレッグラリアートを繰り出した――――――っ!!』

 

 テリーマンが強烈な蹴りでふっとばされた。

 

「こいつ、本物のラーメンマンになりやがった!!」

 

「まだまだいくぜ!!」

 

がきぃ

 

『ステカセキング! 今度はキャメルクラッチ! これは本物のラーメンマンと装飾ないファイトスタイルだ――――――っ!!』

 

「ケケケ、驚いたか? 俺は超人大全集のカセットによりあらゆる超人に変身できるのだ!!」

 

ぐききき

 

『テリーマン! このままでは身体が真っ二つだ――――――っ!!』

 

「これがラーメンマンの技か……問題ねえぜ!!」

 

 テリーマンは両手をマットにつき、腰を勢いをつけてあげた。

 

ぐわん

 

 ステカセキングの身体がテリーマンから離れた。

 

『テリーマン!! 何とかキャメルクラッチから脱出した!!」 

 

「俺は全員倒す気で超人オリンピックに出場したんだ!! ラーメンマンの必殺技だってご覧の通り破ってやるつもりだぜ!!」

 

 不忍池でアトランティスと対戦しているラーメンマンがそれを見て微笑した。

 

「ケケケ、お次はこれだ!! 超人大全集第一巻!! ロビンマスク!!」

 

 ステカセキングの顔がロビンマスクになっていった。

 

「次から次へと正義超人のトップファイターになってくれて俺は嬉しいぜ!! 俺が正義超人で一番強いと示せるからな――――――っ!!」

 

『テリーマン! ナックルパートだ! しかしステカセキング! 容易にかわしているぞ!!』

 

「無駄な攻撃が多いぜ」

 

がきぃ

 

『ステカセキング! テリーマンのパンチに合わせて脇固めだ!! テリーマンがマットに寝かされたぞ!!』

 

「お次はこれだ!」

 

『ステカセキング! 今度はボストンクラブ! 流れるように技を繰り出していくぞ――――――ッ!! テリーマン良いところがありません!!』

 

「ぐおおっ!!」

 

「ケケケ、ラストはこれだ」

 

ぐいっ

 

『ステカセキング! タワーブリッジだ!!』

 

ぐきぃん ぐきぃん ぐきぃん

 

「ケケケ、このまま真っ二つにしてお友達の元へいかせてやるぜ~~~っ!!」

 

「ぐわぁあ!!」

 

『テリーマン危ない! 正義超人第一の犠牲者はまさかのテリーマンか――――――っ!!』

 

 テリーマンはタワーブリッジから脱出する方法が思い浮かばない。死が頭に浮かんだ。

 

(流石ロビンマスクの技だ。強いぜ。本当にお友達の元へ行っちまうようだな……)

 

(テリー、君にはあの世は似合わないさ)

 

 テリーマンが聞き覚えのある声を聞いて驚いた。

 

「スペシャルマン……」

 

(カナディアンマンとの闘いで見せたガッツはどこへ行ったんだよ! 僕はあの時のテリーが大好きなんだ!)

 

「そうだな……まずは俺が勝って士気を上げないとな!!」

 

ぼわぁ

 

『これはどういうことだ! テリーマンの両腕の星のエンブレムが金色に輝きだした――――――っ!!』

 

 

「ケケケ、今更何をやっても遅いぜ!!」

 

「うおおお!!」

 

 テリーマンが身体を曲げられまいと強引に逆方向に身体を曲げた。

 

「な、なんだこのパワーは!?」

 

「俺はロビンマスクに勝つ!!」

 

ばっ

 

『テリーマン! ついにタワーブリッジから脱出した――――――っ!!』

 

「くらえ! コンドルキック!!」

 

どがぁん

 

 テリーマンの両飛び膝蹴りでステカセキングが吹っ飛んだ。

 

「ケケガ~~~ッ!!」

 

「ようしいくぜ!」

 

 テリーマンがステカセキングを掲げながら上空へ高く上昇した。

 

「いくぜテリー一族伝家の宝刀!!」

 

 テリーマンがステカセキングの後頭部に膝をセットした。

 

『あー―――――っ!! 出ました!! カーフブランディング!! これで決着か――――――っ!!』

 

「これだけは使いたくなかったが……贅沢はいえんみたいだな……」

 

 ステカセキングが新たな超人大全集をセットした。

 

 

ぐぐ

 

「なにっ!?」

 

『あ――――――っ!! ステカセキング!! テリーマンのカーフブランディングをいとも簡単に強引に外してしまった――――――っ!!」

 

「見せてやるぜ!! 悪魔超人最強のあのお方のファイトをな!!」

 

『ステカセキング! テリーマンを空中でダブルアームスープレックス! いや、その状態でジャイアントスイングだ――――――っ!! そのまま空中へ高く上昇していき、ステカセキング! テリーマンの首に膝を載せて落下!! これは今までのステカセキングの変身の中で一番テクニカルなものだ――――――っ!!』

 

 田園コロシアムにて、バッファローマンがモニターを見て驚いていた。

 

「あの野郎、あのお方のカセットなんて反則に等しいぜ」

 

 バッファローマンの言葉を聞いて嫌な予感がした。俺もモニターでステカセキングの動きを見て衝撃を受けた。

 

「まさか!? いけねえ!! テリーマン!! 逃げろ――――――っ!!」

 

 テリーマンは逃げようにも、まるで逃げられない状態である。

 

「いくぜ!! 悪魔超人最強のお方の最強の必殺技!! 地獄の断頭台――――――っ!!」

 

ずがぁぁぁぁん

 




悪魔将軍降臨!!


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血に染まりし熊爪(ベアークロー)!!の巻

テキサスの荒馬処刑される!!


「テリーマン……」

 

 テリーマンの姿に一番ショックを受けていたのはキン肉マンであった。もうテリーマンが闘える状態ではないと、誰もが分かる状態であった。

 

カン カン カン カン

 

『テリーマン! 惜しくも負けてしまいました!! ステカセキングKOまであと一歩のところで逆転されてしまいました!!』

 

「ケ~ケケケ、アイドル超人といっても大したことはなかったぜ!」

 

 鳥取砂丘で闘うキン肉マンはショックで放心状態だ、

 

「おい! よそ見している暇があるのか!」

 

ドガァ

 

「ふんぎゃ!」

 

『スプリングマン! 隙だらけのキン肉マンにドロップキックだ!』

 

「この調子じゃあ二勝目もすぐにあげちまいそうだぜ」

 

 キン肉マンの動揺も無理ない。俺だってステカセキングから悪魔将軍が飛び出してくるなんて予想だにしてなかった。

 

「お前もよそ見しているんじゃねえぞ!」

 

ばきぃん

 

『バッファローマン! カナディアンマンを豪快な右フックでぶっとばした!!』

 

「なんて重い一撃だ……流石は1000万パワーを誇る男だぜ……」

 

『あ――――――っ!! テリーマンの敗北の影響か! 正義超人軍全体の士気が弱まり不利な状態になってきた!! あ、いや、一人平常心を保つ超人がいました!!』

 

 ウォーズマンVSミスターカーメンの行われている北海道UFO発着所で試合に動きが見られた。

 

「マキマキ~!! ファラオ・カースヘッド!!」

 

『首だけの状態のミスターカーメンがウォーズマンに襲いかかる!!」

 

 ミスターカーメンはウォーズマンの肩を狙うが、ウォーズマンは巧みにスウェーでディフェンスを行っている。

 

『ウォーズマン全く動じずにミスターカーメンの猛攻を平然と避けております!!』

 

「肩が駄目なら、そのマスクを狙ってやろうか―――っ!!」

 

「コーホー!」

 

 ウォーズマンが一瞬動揺した。ミスターカーメンはその隙を逃さなかった。

 

「くらえ!」

 

がぶぅ

 

『ついにミスターカーメンがウォーズマンの左肩をとらえた――――――っ!! テリーマンに続きウォーズマンも犠牲者となってしまうか――――――っ!!』

 

しゃきぃん

 

 ウォーズマンが肩を噛まれ、出血しながらも表情を変えずに右手のベアークローを出した。

 

「コーホー」

 

ズバァ

 

 ウォーズマンの右手のベアークローがミスターカーメンの顔面をひっかいた。

 

「マギャアア!!」

 

『あ――――――っ!! これは残酷!! ウォーズマン!! 悪魔超人相手といえど、これは非道すぎます!! ミスターカーメンもダメージの影響か、顔以外の身体が現れた――――――っ!!』

 

「よくもわらわの美しい顔を傷つけたな! マキマキ~!!」

 

ぴかぁん

 

 ミスターカーメンの目が金色に光った。

 

「コーホー!?」

 

『どうしたウォーズマン! 身体が固まったかのようにマットに寝転がったぞ――――――っ!!』

 

「わらわの眼光を浴びると動けなくなってしまうのだよ!! そうらミイラパッケージ!!」

 

『あ――――――っ!! ウォーズマン!! ミスターカーメンの所持していた大きい布にくるまれていき身動きができない状態となった――――――っ!!』

 

「マキマキ、これでおわりだ! カルトゥーシュストロー!!」

 

ぐさっ

 

『ミスターカーメン! 巨大なストローをウォーズマンがくるまれたミイラパッケージに刺した!!』

 

チュー チュー チュー チュー

 

『これはなんという光景だ!! ウォーズマンの体内の水分を吸っているぞ!! 観客席からあまりの光景に倒れる方も多いようです!!』

 

 やがてミイラパッケージが大分しぼみ、ミスターカーメンは勝利を確信した。

 

「どうれ、ミイラの出来具合はと……これは!?」

 

 ミイラパッケージの中にはレフリーが詰まっていた。

 

「ま、まさか人間のレフリーを身代わりにするとは! なんて酷い奴だ!!」

 

ぎゅるるる

 

 奇妙な音を聞いて、ミスターカーメンがその方向を見た。

 

ぐしゃり

 

 ウォーズマンがスクリュードライバーでミスターカーメンの胸を貫いた。

 

「ごはぁっ!!!」

 

 ミスターカーメンが血反吐を大量に吐いて倒れた。

 

 

『あ――――――っ!! ウォーズマン! レフリーを身代わりにしただけでなく、自身のベアークローでミスターカーメンの心臓を貫いた――――――っ!!』

 

カン カン カン カン

 

『決着です! ウォーズマン! 正義超人軍として初勝利! しかし、このリングの血まみれの惨状を見て素直には喜べない状況であります!!』

 

 バッファローマンが田園コロシアムで険しい表情となった。

 

「俺達の仲間がああも酷い目に遭わされちゃあ、お礼しないわけにはいかねえなぁ~」

 

 他の悪魔超人もバッファローマン同様の気持ちを抱いていた。

 一方正義超人達はその惨状を見てとまどっていた。

 

「あいつを早く止めなければ、あのファイトスタイルでは憎しみしか生まない、奴が本当にひとりぼっちになってしまう前に……」

 

 

 

 秩父山地のウルフマンVS魔雲天の試合に動きが見えた。

 

『さあ始まりましたウルフマンVS魔雲天!! ウルフマン! 早くも張り手の嵐を浴びせていく――――――っ!!』

 

ばしん ばしん ばしん ばしん

 

「げヘヘ、これが超人横綱の張り手か!」

 

がしっ!

 

『魔雲天! ウルフマンの右手を掴んだ!』

 

「ぐっ!」

 

 ウルフマンが力尽くで手を抜こうとするが抜けない。

 

「お前も力には自信があるようだが俺も自信があってな~!」

 

びゅううん

 

『魔雲天! 一本背負いでウルフマンを投げ飛ばした!』

 

 ウルフマンが宙返りしながら体勢を治しつつ、リングロープの反動を利用して突進していく。

 

「どすこーい!」

 

どがぁん

 

『ウルフマン! 強烈なぶちかまし! 魔雲天の巨体が押されていく!』

 

ずずずず

 

「やるじゃねえか!」

 

がしっ

 

『魔雲天!! ウルフマンのまわしを両手でつかんだ! そのまま投げ飛ばそうとしているぞ!!』

 

「そうはいくかよ!!」

 

がしっ

 

『ウルフマンも負けじと魔雲天の帯を掴む!! 両者の力と力が真っ向から衝突だ!! 相撲と柔道の武道対決にふさわしい展開になっております!!』

 

「うおおお!!」

 

『ウルフマン! 力を入れて魔雲天の巨体を揺らして投げ飛ばそうとしている!!』

 

 魔雲天は身体を揺らされながらも足の踏ん張りを忘れなかった。

 

「ぬおおお!!」

 

『魔雲天も負けじとウルフマンを投げ飛ばそうとします!!』

 

 魔雲天は自身の身体を後ろに倒しながらウルフマンを投げ飛ばした。

 

ぶぉおん

 

『魔雲天! 巴投げです! ウルフマンを空中に投げ飛ばした!!』

 

「これだけじゃあ終わらないぜ!!」

 

『魔雲天宙高くジャンプし、ウルフマンの後を追い、そしてウルフマンの胴体を掴む! そしてこれはバックドロップの体勢にとらえたか!!』

 

「違うな、こいつの横綱のプライドをたたきのめすにふさわしい技だ!! 魔雲天居反り投げ!!」

 

どごぉぉぉん

 

「ぐわぁっ!!」

 

『決まった――――――っ!! 宙高くからの居反り投げ! 魔雲天の巨体の重さが載った分相当のダメージのはずです!!』

 

 ウルフマンはまだ意識はあるが、立ち上がれない状態である。

 

「なかなか頑丈な身体をしているようだが、これでけりをつけてやるぜ!」

 

『魔雲天! コーナーポストに上がり立ち上がった!! 一体なにをする気だ――――――っ!!』 

 

「ミスターカーメン! お前の墓にそえる花をつくってやるぜ。ただし超人の押し花だけどな!」

 

『魔雲天! 巨体を活かしてウルフマンにフライングボディアタックだ!!』

 

「魔雲天ドロップ!!」

 

「ぬわああ!!」

 

どぉぉぉん

 

 ウルフマンの悲鳴が魔雲天の巨体で遮られた。

 

『強烈なフライングボディアタックが決まってしまった!! 魔雲天の巨体の下敷きになってしまったウルフマン、残念ながら絶命の可能性が高いでしょう』

 

 




惨殺の運命から逃れられないか!!


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土俵の英雄!!の巻

大和魂を見せるんだ!!


 鳥取砂丘でスプリングマンと試合をしているキン肉マンがウルフマンの試合のモニターを見ている。

 

「ウルフマン……」

 

ぐぐぐ

 

『あっ! 魔雲天の巨体が徐々に上がっていく!! やや! 魔雲天を太い腕が持ち上げている!! もしやこれは!!』

 

「どすこーい!!」

 

ぶおぉおん

 

『ウルフマン生きていた――――――っ!! 魔雲天の巨体を投げ飛ばし生還した――――――っ!!』

 

 しかし、当のウルフマンのダメージが酷かった。

 

『ウルフマン! 何とか立ち上がった! しかし立ち上がるのがやっとの状態か!!』

 

「げへへ、ダメージはでかいようだな。どうだ、凶器としてビール瓶ぐらい観客席から持ってきてもいいんだぜ?」

 

「なんだと!」

 

 ウルフマンはぶちかましをしにいった。

 

がしぃ

 

『魔雲天! ウルフマンのぶちかましを左手だけで止めた――――――っ!!』

 

「もうお前の敗北は決定的だぜ!」

 

ばああん

 

『魔雲天! 片手だけでウルフマンをマットに投げ飛ばし叩き付けた――――――っ!!』

 

 ウルフマンの目から闘志の炎が消えかけている。

 

「けっ……こんな様じゃあ、ぜい肉マンに馬鹿にされちまうぜ……」

 

「ウルフマン!!」

 

 モニター越しにキン肉マンが話しかけた。

 

「なんだよ? 俺が負けそうだからって応援してくれんのか?」

 

「誰がお前みたいなふんどし野郎を応援するもんか! 私はお前が大、大、大嫌いじゃ!! お前が無様に負ける姿をさっさとおがみたいんじゃ!!」

 

「なんだとぜい肉マン!!」

 

「こらスグル!! なんて酷いことを言うんだ!! ウルフマンはミートのために命を賭けて闘っているんじゃぞ!!」

 

 キン肉真弓もこの言動は見逃せなかった。

 

すっ

 

 キン肉マンは軽く右手をパーにして、キン肉真弓を止めた。

 

「おう! 私は酷く意地の悪い性格をしていてな! 悪魔超人を全員倒した後に、超人オリンピック優勝者を決める決勝の試合で、大嫌いな貴様をこてんぱんに負かしたいと思っているんだ――――――っ!!」

 

「キン肉マン!?」

 

 ウルフマンがキン肉マンの予想外の返答に驚いた。

 

 

「お前がこんなところで負けたら私の意地の悪い夢がかなわんだろうが――――――っ!!」

 

 そこまでキン肉マンが言うと、ウルフマンの目に闘志が戻ってきた。

 

「けっ、あいつにああ言われちゃあな、期待に答えてやんねえとなあ――――――っ!!」

 

ばしぃぃぃん

 

『あ――――――っ!! ウルフマンの強烈な張り手で魔雲天の岩で出来た身体を砕いた!! 魔雲天の胴体が大きくへこんでいるぞ――――――っ!!」

 

「ぐぇへぇ~っ!!」

 

「そうらまだまだ!!」

 

どどどどど

 

『ウルフマン間髪入れずに疾風怒濤の素早い寄り身だ!」

 

「いいぞ~ウルフマン!!」

 

どん どん どん どん

 

 与作さんがいつのまにか観客席に巨大な櫓を特設し、太鼓を鳴り響かせていた

 

ばしぃ

 

 ウルフマンは両の手を魔雲天の首にかけた。

 

「さぁ地獄の横町へご案内! いくぜ俺の十八番! 合掌捻りだ――――――っ!!」

 

ぶぉおおおん ぶぉおおおん ぶぉぉおおん

 

『あ――――――っ!! ウルフマンの合掌捻りで魔雲天の巨体が浮かび上がった――――――っ!!』

 

「ぐおお、技から抜け出せない!?」

 

「おうりゃあああ!!」

 

ずしぃぃぃん

 

 魔雲天は頭から勢いよくマットに叩き付けられた。

魔雲天の頭や顔に大きなヒビが入り、失神している。

 

カン カン カン カン

 

『やりましたウルフマン! もはや駄目かと思われましたが逆転の合掌捻りを決め、正義超人軍二勝目を揚げました――――――っ!!』

 

 俺もバッファローマンと試合中ではあるが、ウルフマンの勝利を喜びたい、そして早く警告したいことがあった。

 

「ウルフマン! 早くリングから離れろ! すぐにリングが崩れて落ちるぞ!!」

 

「なに! それはいけねえ!」

 

 ウルフマンがすぐにリングから飛び上がり、安全地帯へと避難した。

 

ばきぃん びきぃん

 

 特設されたリングを支えるワイヤーや鎖が切れて、リングは魔雲天ごと谷底の下へ真っ逆さまに落ちていった。

 

「カナディアンマン! 恩に着るぜ!」

 

 ウルフマンから礼の言葉が返ってきた。

 

「魔雲天もやられたか……なおさら俺が頑張って正義超人全員を皆殺しにしないとな!!」

 

 バッファローマンが気合いを入れ直した。

 

 

 

 ラーメンマンVSアトランティスが行われている不忍池で動きがあった。

 

「ケケケ!」

 

 アトランティスが池に潜った。

 

「ウォーターマグナム!!」

 

ドババババ

 

 ラーメンマンは素早く攻撃をかわした。しかし間髪入れずにアトランティスのウォーターマグナムが放たれた。

 

『ラーメンマン! アトランティスのウォーターマグナムに手も足も出ない! 避けるので精一杯だ!』

 

 ラーメンマンはいつしかコーナーポストに追い詰められた。

 

「もう逃げ場はねえぜ!」

 

ドババババ

 

「なんっ!」

 

『ラーメンマン! 上空へと逃げた!』

 

「馬鹿め! 空中で逃げ場はねえぜ!」

 

ドババババ

 

 アトランティスはラーメンマンめがけて空中にウォーターマグナムを放った。

 

「私が空へ飛んだのは避けることが目的ではない!」

 

しゃあああ

 

『あ――――――っ!! ラーメンマン! なんとアトランティスのウォーターマグナム上をウォータースライダーにし、滑っていった!!』

 

「なにっ!?」

 

「中国四千年の歴史を食らうがいい! 水滑蹴撃(すいかつしゅうげき)――――――っ!!」

 

がごぉぉん

 

『決まった――――――っ!! ラーメンマン! アトランティスに強烈な中国拳法が炸裂っ!!』

 

 アトランティスが池の中へ沈んでいった。

 

『これは試合が決まってしまったか!! アトランティスが池に沈んだきり浮かび上がってきません!!』

 

 

もこ

 

「むっ、これは!?」

 

 ラーメンマンの足下のマットが盛り上がった。

 

ばぁぁん

 

『あ――――――っと! 突如ラーメンマンの足下から巨大な水柱が出来上がり、リングのマットごとラーメンマンを吹っ飛ばした!! リングのマットが破壊されとても使用できる状態ではありません!!』

 

ばしゃあん

 

 ラーメンマンが水中へと投げ出された。すぐに陸へ避難しようとしたところ、身体をつかまれる感触があった。

 

どばしゃあ

 

 アトランティスが水中から出てきた。

 

「ケケケ~~~! ラーメンマン! リングがなくなったら仕方ねえ! 水中で決着をつけようぜ~~~っ!!」

 

「うわぁ!!」

 

ごぼぼぼぼ

 

『あー―――――っ!! アトランティスがまだやられていなかった! 恐らくラーメンマンを水中へ引きずり込むためにリングを破壊したのでしょう!!」

 

「おい! 水中で何が起きているんだ! 何もわからねぇぞ!」

 

 観客席から野次が飛んできた。

 

『ただいま超人委員会がセットした水中カメラの映像をモニターに映します!! もうしばらくお待ち下さい!!』

 

 モニターが映ると、ラーメンマンがやられっぱなしだった。

 

「ケケケ~~~!!」

 

どがぁ どがぁ どがぁ

 

 水中を素早く自由自在に動けるアトランティスに対し、ラーメンマンは慣れない水中故にスピードも落ちて、思った通りの闘いができない状態だった。

 

『アトランティス! 水中を縦横無尽に動き回り、ラーメンマンにエルボー、キック、頭突き等多彩な攻撃を連打!! ラーメンマン! 技をガードするのでやっとだ!』

 

「ぐむむ……」

 

 ラーメンマンは意識が朦朧としている。

 

「おっと、この技を食らってからおねんねしてもらわねえとな!」

 

がきっ

 

 ラーメンマンはアトランティスドライバーの体勢に決められた。

 

 

 




岩盤の枕で永眠を!?


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残虐超人の運命(さだめ)!!の巻

独軍人(ブロッケン)の思いに応えよ!!


 アトランティスドライバーの勢いは増し、ラーメンマンが叩き付けられるであろう岩盤までもうすぐである。

 

「ケーケケ、ラーメンマン! お前の敗北は決まった!!」

 

 ラーメンマンはアトランティスの猛攻により、頭部から出血しており意識がもうろうとしている。しかし、そんな状態でありながらもラーメンマンは笑っている。

 

「死んだブロッケンJr.が生きていたらこう言うだろうな……お前を倒すのはこの俺だ、お前が負けることは絶対許さないとな!!」

 

もわわわ

 

『なんと奇怪なことか! 何もしていないのにラーメンマンの三つ編みがほどけた――――――っ!?』

 

「闘龍極意・ネコジャラシ!!」

 

「な、な、なんだこりゃあ!?」

 

 アトランティスの身体にラーメンマンの髪の毛が絡みついた。

 

のろのろのろ

 

『あ――――――っ!! どうしたことでしょう!! アトランティスドライバーの勢いが弱くなってきました!!』

 

「はいはい、マイクを私に渡して下さいな!」

 

 突如、アデランスの中野さんが実況席に現れた。

 

『船は水中を速く進む設計になっていますが、船の動力となるスクリューに海草がひっかかると途端にスピードが落ちてしまうんですねこれが。つまりラーメンマンの髪の毛がアトランティスドライバーというスクリューの動力を弱め、スピードが落ちたというわけですねこれが』

 

 岩盤に叩き付けられる直前、ラーメンマンは容易に両手で技を防いだ。

 

「反撃に移らせて貰う!!」

 

ぐぃん

 

 ラーメンマンがアトランティスドライバーの状態ながらも岩盤を両手で押す力で、勢いよく地上へと推進していった。

 

ばしゃああ

 

『あー―――――っ!! もはや駄目かと思われたラーメンマンが水中から生きて出てきました――――――っ!!』

 

 アトランティスも技の拘束を解いてしまった。

 

「空中へ出ればこちらのもの!」

 

 ラーメンマンが空中で勢いよく脚を回した。

 

「レッグラリアート!!」

 

ばきぃぃん

 

「ケガァッ!!」

 

『決まった! ラーメンマンの十八番レッグラリアート! アトランティスに効いているぞ!!』

 

「これでフィニッシュだ!」

 

『ラーメンマン! アトランティスの両足の間に自分の頭を入れて技を決めていくぞ!!』

 

九龍城落地(ガウロンセンドロップ)――――――ッ!!」

 

「ケケケ、生憎だが俺を叩き付けるマットはもうないぜ! 俺が全てウォーターマグナムで破壊したからな! 水中に叩き付けるようじゃあ岩盤につくまでに威力は落ちてしまうぜ!」

 

「ふふふ、まだリングにはお前を叩き付けるのに十分な場所が残っている」

 

「まさか!?」

 

「そう、コーナーポストの鉄柱だ!!」

 

『ラーメンマン! アトランティスの頭をコーナーポストに叩き付けにいく!!』

 

「そうはいかねえ! 悪魔の悪あがきを見せてやるぜ」

 

ぐぐぐ

 

 アトランティスは脚に力を入れて、ラーメンマンの頭部を絞り上げるようにしていく。

 

「何をする気だ!」

 

「ケケケ~~~! 水芸セントへレンズ大噴火!!」

 

ドドドドド

 

『あ――――――っ!! ラーメンマンの頭部から大出血!! このままではラーメンマンが出血死だ――――――っ!!』

 

「ケケケ、早く技を解かねえとお前はおっちんじまうぜ?」

 

「ふふふ、私は今まで残虐超人として生きてきた。リング上で幾人もの男を殺してきたからこそ、リングで死ぬのも覚悟の上で闘っている! この試合で私の命が尽きようとも貴様を絶対倒す!!」

 

「ケケケ、大した心構えだな。しかしそう上手くいくかな?」

 

ぬるるっ

 

「なにっ!?」

 

『あー―――――っ!! ラーメンマンの頭部の出血により技のかかりが甘くなっていた! アトランティス! 血の滑りを利用し九龍城落地から脱出した――――――っ!』

 

「そんな……もう私には余力が……」

 

『ラーメンマン力尽きたか!? そのまま水中へと沈んでいった――――――っ!!』

 

「ケケケ-! これぞ悪魔の執念だ-!!」

 

 アトランティスが再度技を仕掛けた。

 

「アトランティスドライバ――――――ッ!!」

 

がぁぁぁん

 

 完全にラーメンマンがKOされた状態となった。

 

カン カン カン カン

 

『あ――――――っ!! ラーメンマン負けてしまいました!! それにしてもテリーマン同様まことに惜しい試合でした! しかしあと一歩のところで逆転負けを許してしまいました!! これで正義・悪魔共に二勝二敗のイーブンになりました!!』

 

 

 

 俺は予想外の試合展開にショックを受けた。

 

「テリーマンに続きラーメンマンまでもが……」

 

「おら! 何をよそ見してやがる」 

 

 バッファローマンが俺に迫ってきた。

 

「改めて気合い入れ直さねえとな!」

 

ぐいん

 

『カナディアンマン! バッファローマンに得意のカナディアンバックブリーカーをしかけた!!』

 

「そんな技で俺が倒せると思うなよでくの坊!」

 

ばっ

 

『しかし、バッファローマンのパワーの前にあっさりと腕のフックを外されてしまう』

 

「そう来ると思ったぜ!!」

 

がきぃ

 

「リビルトカナディアンバックブリーカー!!」

 

『お――――――っ!! カナディアンマンも負けていません!! 新技リビルトカナディアンバックブリーカーでバッファローマンに追撃だ――――――っ!!』

 

「俺はスペシャルマンと一緒にスタミナも十分鍛えてきた! お前がギブアップするまでこの状態を保つのも容易だぜ!」

 

 しかしバッファローマンが不敵な笑みを浮かべた。

 

「それがお前の最大の必殺技ってわけか」

 

 あっ、これまずいやつだ。俺が予想している展開がどんぴしゃで来るだろう。

 

「俺相手じゃなかったら決まっただろうぜ!」

 

 俺の腕に強靱な力の圧がかかる。だめだ、踏ん張りきれない!

 

がっ

 

『バッファローマン! またも1000万パワーを活かし、強引に技を外した――――――っ!!』

 

 やっぱな……だって俺ウォーズマンと同じ超人強度だぜ! ウォーズマンが原作で全く歯が立たなかったんだぞ! 国辱と呼ばれた男がここまでKOされていないだけでも殊勲ものだろ!

 よし、ここは開き直る! 死ぬこと前提で、俺なりの役割を果たしてやる!

 

 

 

『こちら、鳥取砂丘のキン肉マンVSスプリングマンですが、キン肉マン優勢のようです!』

 

「なははは! 砂の上では思うようにジャンプはできまい!」

 

『キン肉マン! スプリングマンをサンドバッグのようにパンチを連打! スプリングマン! 手も足も出ない!』

 

「ちっとも効かないぜ! 俺はバネだからお前の攻撃を和らげることができるんだぜ!」

 

びよん びよん びよん

 

「ようし! だったらこれでどうじゃ!」

 

『キン肉マン! ボディスラムでスプリングマンを叩き付けた!!』

 

「ぎゃあああ」

 

「お! 効いとるわい! そうれもういっちょ!」

 

 まずい、あの展開ではスプリングマンが有利になってしまう。

 

「やめるんだキン肉マン!」

 

 咄嗟に俺は叫んだ。

 

「なんじゃカナディアンマン! 今いいとこなのに!」

 

「奴の狙いはお前のボディスラムで砂のマットを固めて、ジャンプしやすくするようにするためだ! このままボディスラムをすればベンキマンのようにバラバラになっちまうぞ!」

 

「なにぃ!? 危ないところだったぜ!」

 

 キン肉マンがボディスラムを中止し、俺は一息ついた。

 

「ほう、さっきからおまえ他の正義超人に対しえらく良いアドバイスを出せているな」

 

 ぎくっ! やばい! バッファローマンに何か勘付かれたか。

 

「そういえば駄目超人と言われたキン肉マンをロビンマスクやラーメンマンを倒すまで鍛え上げたのもお前の助力あってこそと聞いた」

 

「ふふ、さぁて、なんのことか?」

 

「いや、良いアドバイスというよりかは、こうなることを予測できていたかのような発言が多い。お前、何か隠しているな!」

 




猛牛の野生のカンがはたらいた!!


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横綱の恩返し!!の巻

一応楓が主人公……


 げぇ――――――っ!! ピンポイントすぎる! まずい、これ俺が転生者だってバレるんじゃねえか!! いや、転生したのばれたからって問題はそこまでないだろうが。

 

「そうだな、俺に勝ったら教えてやる。それでどうだ?」

 

「残念だな、俺が勝ったらお前は死んでしまって聞くことが出来ない」

 

「なぁに、いいさ。はなっから教える気はねえからよ」

 

 俺は勢いに乗って技をしかけた。

 

『カナディアンマン! バッファローマンの足下をスライディング! そのままバッファローマンを寝転ばせて、サソリ固めだ――――――っ!!』

 

「スペシャルマン! お前との特訓で鍛えたテクニックがようやく活きそうだぜ!!」

 

「くっくっく、お前との試合、思った以上に楽しめそうだぜ」

 

 

 

 一方、キン肉マンVSスプリングマンが行われている鳥取砂丘において、試合に動きがあった。

 

「スプリングローラー!!」

 

ぎゅるるるる

 

『スプリングマン! 身体を横にし、砂の上を勢いよく転がっていきます! ターゲットはキン肉マンだ!』

 

「へっ! そんな攻撃簡単に避けられるわい!」

 

ひょい

 

『キン肉マン! スプリングローラーを簡単によけています!』

 

 スプリングマンのやつ何をしているんだと一瞬思ったが、リングの砂の状態を見て、俺は恐ろしい目的に気付いた。

 

「キン肉マン! 今すぐにその技を止めろ!」

 

 思わず俺は咄嗟に叫んだ。

 

「え? なんでじゃカナディアンマン? こんな簡単に避けられる技だし、スプリングマンのおかげで砂が良い具合に固まって動きやすいし……あ――――――っ!!」

 

「ケケケ、ようやく俺の意図に気付いたか」

 

『あ――――――っと! いつの間にか砂のリングが固まっているぞ! これでスプリングマンが有利な状態になってしまった――――――っ!!』

 

「はいはい、私が解説させて頂きますよ~」

 

 アデランスの中野さんがまたも唐突に実況席現れた。

 

『よく工事でローラーと呼ばれる転圧機を使い、柔らかい土を締め固めることができます。スプリングマンはそれと同じ事をやったわけですねはい』

 

「ケケケ、これでお膳立てはOKだぜ!」

 

「な~に、私もおかげで闘いやすくなったさ!」

 

がしぃ

 

『ついにでました! ロビンマスク! ラーメンマンを倒したキン肉バスターです! これはスプリングマンといえど、耐えきれる技ではないでしょう!』

 

「この砂のリングの上ではキン肉バスターも封じられていた! しかしお前が手間暇かけて砂を固めたおかげでこの技を出せるようになったぜ」

 

びゅーーん

 

『キン肉マン! 宙高くジャンプ! そして勢いよく落下だ――――――っ!!』

 

どぉぉぉぉん

 

『決まった―――――――っ!! スプリングマンもこれでKOか――――――っ!!』

 

「ケケケケ、ちっとも効かねえなぁ」

 

びよよ~ん

 

「なんだとっ!! 私とカメハメが創り上げた必殺技が!?」

 

「忘れたか、俺の身体はバネでできている。お前のキン肉バスターは強力といえど関節技。ゆえに俺にはノーダメージというわけだ」

 

「そんな……どうやって倒せば良いと言うんだ……」

 

 

「それじゃあこっちの番に移らせてもらうぜ!」

 

びよよ~ん

 

『スプリングマン! リング外にある近場の大きな岩までジャンプ! その岩を何やら階段の形に削っています! 一体何をする気でしょうか!!』

 

 やばい、これは流石に見逃せないぞ!

 

「キン肉マン! ベンキマンをバラバラにしたデビルトムボーイがくるぞ! 気をつけろ!」

 

「なに!? あの技がくるのか!」

 

「おい、口は災いの元だぜカナディアンマン!」

 

 バッファローマンがサソリ固めをかけられた状態で倒立した。

 

『すごい! バッファローマン! カナディアンマンにサソリ固めをかけられた状態で倒立を決めた! なんという身体能力か!!』

 

「そうらよ!」

 

ぶぉぉん

 

『バッファローマン! 脚を勢いよくふるってカナディアンマンを吹っ飛ばした』

 

 うおおお! やっぱり規格外のパワーしてやがるぜ! 

 

すたっ

 

『カナディアンマン着地! しかしここまでバッファローマンに全く技が通じていません!』

 

 できればキン肉マンのサポートをしてやりたいが、相手が強すぎて、キン肉マンがスプリングマンを倒す前に俺がまいっちまうぜ……

 

 

 

「デビルトムボーイ!!」

 

『スプリングマン! 階段状になった岩の上を落ちていく! その先にはキン肉マンがいるぞ!』

 

 キン肉マンはどこだ? コーナーポストにいるだと! あれじゃあ逃げられねえぞ!

 

がしゃん

 

『あ――――――っ! デビルトムボーイ不発! コーナーポストやリングロープが邪魔で、スプリングマンはキン肉マンを自身の螺旋の身体に取り込めなかった!!』

 

「いちかばちか試してみたが上手くいったぜ! デビルトムボーイ破れたり!!」

 

 流石キン肉マン! 技を攻略する知恵にかけてはピカイチだぜ!

 

「ケケケケ、甘いぜキン肉マンよ」

 

ぎゅるぎゅるぎゅる

 

 スプリングマンは自身の身体を回転させた。螺旋構造の身体故に、回転によりリングロープの隙間に入り込み、やがてコーナーポストとキン肉マンを同時に締めつける状態まで持っていた。

 

「し、しまった!」

 

「螺旋解体縛り!!」

 

ギシ ギシ ギシ

 

「のわぁ――――――っ!!」

 

「ス、スグル――――――ッ!!」

 

 キン肉真弓がセコンドにいた。その手にはタオルが握りしめられている。

 

「パパ! 悪いがここで試合を止めたら親子の縁を切らせて貰うぜ!」

 

「スグル! そんなこと言っている余裕あるのか!」

 

「ないわい! だがな、ここまで、ミートのために皆が命をかけてきた! それを言ったのはパパじゃないか!」

 

「そ、そうじゃが……」

 

「私がこんなとこでギブアップするわけにはいかんわい!」

 

ぎちちち ぎちちち

 

 やばい! キン肉マンは必死で抵抗しているが、バラバラにされるのも時間の問題だ! 誰かキン肉マンを助けられる奴はいないのか!

 

「やいキン肉マン!!」

 

 モニター越しに大声をあげた男がいた。ウルフマンであった。

 

「さっきはよくもぼろくそ言ってくれやがったな! ざまあみろだぜ! 今にも死にそうな状態じゃねえか!」

 

「なにを~~~っ!!」

 

「それとよ、お前は俺と決勝がどうこう言っていたが、お前となんてまっぴらゴメンだ! てめえはさっさとそのバネ野郎にバラバラにされて豚挽肉にでもなっちまいな!!」

 

「言わせておけばあの万年ふんどし男が~~~っ!!」

 

 

「そういやあ豚肉は叩くと旨くなるんだってな、そこのバネ野郎を真っ直ぐ伸ばしたらお前を叩くのにちょうど良い鉄の棒になるだろうぜ!」

 

 そうか、ウルフマンが言いたいことが分かったぞ! やっぱり……この二人の友情にはかなわねえな!

 

「そうか、鉄の棒とは良いことを聞いたぜ!」

 

 キン肉マンはウルフマンの真意を察した。ウルフマンもそれが分かりにやりと笑う。

 

「いくぞ火事場のクソ力――――――っ!!」

 

ぼわあああ

 

『あ――――――っ!! キン肉マンの身体が金色に輝いた――――――っ!!』

 

「ぬおおおお!!」

 

ぎぎぎぎぎ

 

 キン肉マンは予想通りスプリングマンの身体に手をかけて、強引に変形させている。

 

「てめえ! 何をしやがる! やめろ!」

 

 スプリングマンが焦りの態度を見せた。

 

『キン肉マン! 一体なにをする気だ! 驚異的なパワーでスプリングマンの螺旋構造を強引に曲げていく! いや、これは真っ直ぐな鉄の棒に変えていっている!!』

 

「お前の技はその螺旋構造の身体があってこそ! その構造を真っ直ぐ変えちまえば恐るるにたらんわい!!」

 

「けがぁ――――――っ!!」

 

『あ――――――っ! スプリングマンが鉄の棒と化してしまった!!』

 

「ようしいくぜ!!」

 

ぎゅーん

 

『キン肉マン! スプリングマンをつかんで上空へジャンプ! そしてスプリングマンの後頭部に膝をのせた! これはもしや!!』

 

 間違いない、キン肉マンはテリーマンの技を出すつもりだ!!

 

「見てくれよテリーマン! これが私のお前への手向けだ! カーフブランディング――――――ッ!!」

 

 俺には見える! キン肉マンの後ろにもう一人超人がいる! テキサスの荒馬がキン肉マンと一緒に闘っているぜ!!

 

ずがぁぁぁぁぁんん

 

 スプリングマンはもの凄い勢いでマットに叩き付けられた。

 

「ケケガァ……」

 

パキン ピキン 

 

 スプリングマンの身体に亀裂が入り、そのまま倒れた。戦闘不能な状態である。

 

カン カン カン カン

 

『やりましたキン肉マン! 奇跡の逆転ファイターの異名通り、劇的な逆転KO勝利をおさめました!!』




俺達のヒーローは期待を裏切らない!!


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博学なる貴公子!!の巻

奴と闘うまでは負けられない!!


『これで正義超人軍は三勝目をあげました! まだ闘っているロビンマスク! カナディアンマンも続けるでしょうか!』

 

 キン肉マンがリングを降りると、真っ先にウルフマンに挨拶をした。

 

「さっきはよくも散々言ってくれたな、この借りは超人オリンピック決勝戦で必ず返してやる」

 

 キン肉マンは一呼吸置いた。

 

「生き残れよ」

 

 ウルフマンが不敵な笑みで返した。

 

「言われるまでもねえ、お前こそ足下救われるなよ」

 

 

 

 

 ロビンマスクとブラックホールが対戦するリングに動きが見られた。

 

『ロビンマスク! ブラックホールの顔面へスピードののったハイキックだ!!』

 

すぽっ

 

『ブラックホール! 自身の顔の穴でロビンマスクの足を掴んだ!』

 

 ブラックホールはロビンをつかんだ状態で背中を反らした。

 

「フェイス・スープレックス!」

 

ががぁん

 

『ロビンマスク! マットに叩き付けられた!』

 

「なんの!」

 

『流石はロビンマスク! すぐに立ち上がってきました!!』

 

「なかなかにトリッキーな相手のようだな。ならば、ロビン戦法No.8 相手のパワーは最大限に利用せよ!」

 

『ロビンマスク! ロープの反動を利用しながらの、ドロップキック! 狙いはブラックホールの顔面だが、これは決まるのか!』

 

「カカカカ、学習能力の無い仮面の奇公子さんだぜ!」

 

すぽっ

 

『あ――――――っ!! やはりまたもブラックホールにロビンマスクが捕らえられてしまった!!』

 

「全ては私の計算通り!! くらえ!!」

 

ぐきき

 

『ロビンマスク! 脚を捕らえられながらもブラックホールの背中に回り込み脚を後ろからつかむ! これはブラックホールの背骨を折りに行く技か!』

 

「ロンドン・アイ・クラッシュ!!」

 

『お――――――っ!! ヨーロッパで最も高いとされる観覧車ロンドン・アイをモチーフにした技でしょうか! 美しき円の形を描きながらも、背骨を破壊するなかなかに強力な技です!!』

 

「ちっ、このままではまずいな」

 

すぽん

 

『ブラックホール! 流石に危ないと思いロビンマスクの脚を離した!! ロビンマスクの技は破れたものの、これで脚は自由となった!!』

 

「私の攻撃は終わらない!!」

 

がぁきぃ

 

「タワーブリッジ!!」

 

『出ました! ロビンマスクの必殺技タワーブリッジ!! これで勝負は決まったか!』

 

「カカカ、この程度容易に抜けられる! エスケープシャドウ!!」

 

ぐにゃん ぐにゃん

 

『あ――――――っ! ブラックホール! 身体を柔らかく変形させてロビンマスクのタワーブリッジから簡単に脱出した。そして影の中へと消えてしまった――――――っ!!』

 

 ロビンマスクがブラックホールがどこへ行ったか懸命に姿を探す。

 

「奴め、一体どこへ隠れたんだ!!」

 

すぅ

 

 ロビンマスクの背中の影からひっそりとブラックホールが現れた。

 

「カカカ!」

 

「しまったっ!!」

 

『ブラックホール! 背後から現れ奇襲のバックドロップだ!!』

 

ずがぁぁん

 

「ぐおっ!」

 

 ロビンマスクが後頭部を押さえて悶絶している。

 

「これで終わりじゃないぜ! セパレートシャドウ!!」

 

『ややっ! ブラックホールの影が分裂し、その影からなんと! ブラックホールがさらに現れた――――――っ!!』

 

 ロビンマスクがこの状況を見て驚くも、冷静に対応する。

 

「おそらくは、光の反射を利用して複数に見せているもの。ならば、その原理を壊せばどうと言うことはない」

 

「講釈垂れている場合じゃないぜロビンよ! 8メンブラックホールキック!!」

 

ドガガガガ

 

「ぐわぁ!!」

 

『あ――――――っと! ブラックホールが8人がかりでドロップキックだ! 通常の8倍の威力のドロップキック! これにはたまらずロビンマスクもダウンだ!!』

 

 ロビンマスクは倒れながらも勝機を見いだそうとしている。

 

「この奇術の正体は……そうか! あの透明ドームが原因か!!」

 

『ロビンマスク立ち上がった! しかしダメージはまだ抜けきっていないぞ!!』

 

「カカカカ、赤き死のマント!」

 

『今度は8人のブラックホールが鋭利な刃物と化したマントを準備! この攻撃を食らったらロビンマスク! 間違いなく死に至るでしょう!』

 

「私の考えが正しければ、ずばりここだ!!」

 

「死ねぇ――――――っ!!」

 

『8人のブラックホールが襲いかかった! しかしロビンマスク上空へ避難!』

 

「馬鹿め! 上空に逃げ場はないぞ!」

 

「私の狙いはこれだ――――――っ!!」

 

ぱきぃぃん

 

『ロビンマスク! 何を思ったのか! リングに設置された巨大透明ドームの一点をついてヒビをいれた!!』

 

「なるほど、ドームを壊すとは良い狙いだが、もはや貴様にはドームを破壊する力すらも残ってないか!」

 

 

「いいや、これで十分だ」

 

しゅん しゅん しゅん

 

「なに!?」

 

 ブラックホールの分身が次々に消えていく。

 

『あ――――――っ! ブラックホールの分身が突然姿を消し、一人の状態に戻ってしまった――――――っ!! ロビンマスク! 一体何をしたというのか!!』

 

「解説しよう。ブラックホールの技は光の学問で言うと光の反射を巧みに利用し、虚像を複数創り上げたものだ。しかし、光の集中する点、つまり焦点を破壊すれば像を作ることは出来ない! その焦点となるのがこの透明ドームの中心だった! つまりブラックホールの四次元殺法を封じることが出来るのだ!!」

 

『流石はロビンマスク!! 言葉の意味は分からないですが、とにかくすごい博学的なプロレスで窮地を脱した――――――っ!!』

 

「カカカ、流石はロビンマスク! こうもあっさり俺の得意技を見破るとはな! どうやらこの技を使わざるを得ないようだ!」

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

『あー―――――っ! ブラックホールの顔からものすごい吸引力がうまれた――――――っ!! ロビンマスク! 脚をふんばってなんとか耐える』

 

「だめだ、もう、うわぁ――――――っ!!」

 

『ロビンマスク! 耐えきれず、ブラックホールの顔の穴へと吸い込まれていく!!』

 

 ロビンマスクはブラックホールの作り出した空間へと送り込まれた。人工的なブラックホール内でロビンマスクは苦しんでいる。

 

「この空間を破るには内部から強力な衝撃を与えなければ……それには私一人の力では難しい」

 

「カカカカ、ロビンマスクよ、お前を四次元空間で始末するために来てやったぜ!!」

 

 ロビンマスクの前にブラックホールが現れた。

 

「お前が来るのを待っていたぜ!!」

 

がしぃ

 

 ロビンマスクはタワーブリッジにとらえた。

 

「カカカ、こんな何度も破られた技が通じると思うか?」

 

「そいつはどうかな?」

 

 ロビンマスクはタワーブリッジの状態でジャンプし、逆さに落下した。

 

「逆タワーブリッジ!!」

 

ズガァァン

 

「ぐはぁっ! まだまだ!」

 

 

 

ぱきん ぱきん

 

『あ――――――っ! 突如空中にヒビが入った、ますます亀裂が大きくなっていく!! 我々の見えない空間で一体何が起きているのか――――――っ!!』

 

 

 

「ロビン戦法No.1 獲物は逃すな!」

 

がきぃ

 

 ロビンマスクはブラックホールの首を脚で締めあげる。

 

「お前ほどの強者に出会えた事に心からの感謝を伝えたい。ゆえに敬意を持って温存していたこの技を使わせて頂く!!」

 

ぱきーん

 

『空間が割れ、現れたのはロビンマスクとブラックホール! ああ! ロビンマスクがブラックホールに首四の字をかけた状態で落下してます!!」

 

「ロビンスペシャル!!」

 

『でました! ロビン逆転の必殺技! ロビンスペシャル!! 首四の字で逆さに落下するという大変高難易度な技です!! 亡くなったテリーマン、ラーメンマンに報いる一撃となるか!!』

 

「くそ、俺もここまでか……皆とは地獄で再会か……」

 

 ブラックホールが敗北を覚悟した。

 

ぴたり

 

 突如会場内の時間が停止した。意識があるのはブラックホールただ一人である。

 

「一体何が起きたと言うんだっ!?」

 

ばさり

 

 ブラックホールの目の前に白い羽が舞い落ちてきた。

 

「この羽は、まさかっ!?」

 

 ブラックホールが見上げると、亡くなったはずのペンタゴンが目の前にいた。

 




友情は時空をも超越す!!


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風になった天使!!の巻

⭐️◎!?


「ペンタゴン、どうしてお前が!? 既にウォーズマンにやられて死んだはずでは!?」

 

「僕は君の言うとおり確かに死んでいるよ。今は現世と冥界の狭間にいるところさ。ここまで君の試合を見ていたけど、危ないと思って思わず止めてしまったよ」

 

「余計な手助けは無用だ! これは俺の闘い! お前の助けは絶対借りない!」

 

「では、仮にこの勝負が、正義と悪魔の対立じゃなかった場合、同じ答えを言えるかい?」

 

「そ、それは……」

 

「そう、それが君の本音だよ。既に君は勝てないと分かっている。しかし、君は僕に気を遣って助けを求めまいとしている。違うかな?」

 

「……ふっ、大きくなっても変わらないなお前は。だから俺はお前が大好きだ。いいぜ、この試合、お前が自由に手をだしな!」

 

「そう言って貰えるとありがたいよ。ただし、勝つために一つ話さなければいけない事がある……僕と永遠に会えなくなる……それでもいいかい?」

 

「おい、それはどういうことだ!?」

 

「君が勝つ唯一の方法、僕の技を使えるようになることだ。しかしその方法は君と魂を同化させる事だ」

 

「魂の同化だと!? それはベースとなる俺の魂にお前の魂が合わさること、つまりお前の魂が消滅するということ……」

 

「そう、いわば存在事態の消滅を意味する。つまり僕そのものがなくなるということだ。君にその覚悟があるなら遠慮無くやっていい」

 

「待て! お前の意思はどうなる! お前は生き返れないどころか、お前自身を消すことになるんだぞ! それでもいいのか!!」

 

「いいさ、君の勝利は僕にとっては大きな幸福なんだ……」

 

「……全く、俺なんかみたいな下等な悪魔に献身的になりやがって……いいだろう!」

 

「了解したみたいだね、いくよ!!」

 

キュイイイイインン

 

 ブラックホールの辺り一帯が発光する。そして時はまた動き出した。

 

『これはどういう事だ!? ブラックホールが突如発光した!!』

 

 ロビンマスクはその様子を見ながらも冷静さを保った。

 

「何が起ころうと、この技は絶対外さない!!」

 

「いくぜ、ブラックホールの真の四次元殺法をな!!」

 

ごむぁ ごむぁ ごむぁ

 

 ブラックホールの顔面の穴の形が変化していった。

 

『あ――――――っ!! ブラックホールの顔の形が〇から☆へと変わった――――――っ!!』

 

 ブラックホールが顔面の星のマークを回転させる。

 

「いくぞ、クロノスチェンジ!!」

 

しゅびん

 

『な、な、なんだこれは! 技をかけられていたはずのブラックホールが技をかけているぞ!? そしてロビンマスクにまさかのロビンスペシャルがかかった――――――っ!!』

 

「そんな馬鹿な!?」

 

「馬鹿なことも起きるさ!! 一人の男が魂を燃やして起こした奇跡なのだからな!!」

 

しゅたぁん

 

「バンデットロビンスペシャル!!」

 

「ごはぁっ!!」

 

 ロビンマスクは血反吐を吐き、マットに倒れた。

 

カン カン カン カン

 

『ここに来てまさかのどんでん返しが起きてしまった――――――っ!! ロビンマスク! ここまで温存していたロビンスペシャルを繰り出し、勝利がほぼ約束されたも同然の状態でしたが、悪夢の奇跡が起きてしまった――――――っ!!』

 

 ロビンマスクが力を振り絞って言葉を出した。

 

「なるほど……お前には心から盟友と呼べる存在がいたのか……これまで一人で強さを追い求めすぎたのが私の敗因だ……」

 

ばたり

 

 ロビンマスクの息が絶えた。

 

「くそったれが―――っ!!」

 

「ロビンマスクを返せ―――っ!!」

 

ひゅーん

 

 ブラックホールに対し観客が空き缶やゴミを投げつけてきた。今のブラックホールにそれを避ける気力は無かった。

 

びゅおおおお

 

「うわぁ! 投げた空き缶が強風で返って来やがった!?」

 

パラリ

 

 白い羽がブラックホールの足下に落ちていた。顔のないブラックホールがどことなく笑っているかのように見えた。

 

 

 

 まさか、間違いない! あれはペンタゴンの力だ!? どうしてそうなったかは分からないが、ロビンマスクまで負けてしまうとは……。ここまでテリーマン、ラーメンマン、ロビンマスクとアイドル超人がことごとく負けている。悪魔超人達が原作以上にハードになっていやがるぜ!

 そして俺がトリを飾る試合かよ! まあラスボスがバッファローマンだからメタなところもあるだろうけどよお。

 

「ハリケーンミキサー!!」

 

 なんて考えている暇はなかった! 今は目の前の敵を倒すことに集中だ!

 

「俺のパワーを舐めるなよ!!」

 

がしっ

 

『カナディアンマン! 真っ正面からバッファローマンのロングホーンを受け止めた! しかしパワー負けし、どんどん押されていく!!』

 

「確かにパワーはそこそこあるみてえだが、俺には到底叶わないぜ!!」

 

 ついにコーナーポストまで追い詰められちまった! 逃げ場がもうねえ!

 

ずぶぶぶ

 

 ぐわああ! ロングホーンが徐々に俺の胸に刺さっていきやがる!

 

「ぐうう!!」

 

 あの角をなんとかできねえもんか! 角! 頭!髪の毛! ……あっ!! 少しばかしせこい手だが、今の俺にはこれしか助かる方法が浮かばねえ!

 

「バッファローマン、お前の髪型が少しずれているように見えるんだが」

 

「なにっ!!」

 

 ビンゴ! バッファローマンが慌てて頭を抑えたぞ!! ようし、横から素早く逃げて脱出成功!

 

『バッファローマンどうしたことか! 優勢だったのに技を外してしまったぞ!!』

 

 こんなしょうもない手でなんとかなっちまうとはな。確実に言えるのは、バッファローマンはこの時点でヅラを被っている! 原作で悪魔将軍と闘う前に、髪をカツラのようにとっていたからな! 原作では不評だったせいか黒歴史になっているが。

 

「てめえ、俺の髪の毛の事を何故知ってやがる!」

 

「さぁな、でも俺はお前の事をなぁんでも知っているぜ」

 

「ちぃっ! 口封じのために確実に死んで貰わんとな!」

 

 逆効果じゃねえか! 俺の馬鹿! くそ、後何かバッファローマン絡みで良いネタないのか! ……あった、もう思いついたことそのまま言っちゃえ!

 

「おい、お前は誇り高き一族の出身だったんじゃないのか?」

 

 またもバッファローマンの動きが止まった。ようし、時間稼ぎ成功だぜ!

 

「な、なぜお前がそんなことまで!?」

 

「名称はバッファロー一族だったか? 一族内の争いにより、バッファロー一族の生き残りはお前一人となった! そんな過去がありながらよ、正義と悪魔が互いに命を賭す争いに積極的に参加するなんて、滑稽じゃねえのか!!」

 

「やれやれ、痛いところをつきやがるな。確かにはたから見れば俺は馬鹿に見えるだろうぜ。俺だって一族が争いもせずに平和に暮らしていれば、悪魔超人なんぞに身を落とすこともなかっただろう。もしかしたらお前達と一緒に悪魔超人と闘っていた未来もあったかもしれない」

 

 おっ、これは良い感触だ!

 

「今からでも遅くはない。俺と一緒に闘うんだ! お前の気持ちに正直になれ!」

 

「勘違いをするな」

 

 え? もしかして駄目なパターン?

 

「俺は今の俺が気に入っている。悪魔超人として高みを目指し強者とぶつかり合うこと、闘いを愛する俺にはうってつけの生き方だぜ」

 

「やっぱ、話し合いは通じないか……」

 

「俺に通じるのは拳の語り合いだぜ!」

 

ドドドドド

 

 やばい、こっちに向かってくる! 右のフックを出してくるな!

 

ぶおおおん

 

 大ぶりなフックなもんで避けやすかったが、一発食らっただけでも失神ものの一撃だぜ。

 

ぐさああ

 

 ぐわおおお!! 顔にトゲの突いた膝で蹴られたああ!!

 

『あ――――――っ!! これは残酷!! バッファローマンの毒針ニードルがカナディアンマンの右頬をとらえた――――――っ!!』

 




勝てる気が全くしない!!


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勝利せよ楓!!の巻

期待すらしてない奴らを見返すんだ!!


『カナディアンマン! 頬を貫かれ悶絶しています!』

 

 いてえ! いてえよ! キン肉マン、こんな痛みに耐えながらバッファローマンに勝ったっていうのかよ!!

 

「おら! 起きな!」

 

どがっ どがっ どがっ

 

『バッファローマン! カナディアンマンにサッカーボールキックで追い打ちをかける!』

 

ぱきん

 

『あ――――っ! カナディアンマンの証、額のメイプルリーフが折れた――――っ!!』

 

「な、なんの――――っ!!」

 

がしっ

 

 俺はバッファローマンの蹴りのタイミングに合わせて脚をとった。

 

『カナディアンマン! ドラゴンスクリュー! バッファローマンをマットに寝かした!』

 

「ようし!」

 

しゅた

 

『カナディアンマン! バッファローマンから素早くマウントポジションをとった!』

 

「今までの分、たっぷりとお返しをしてやるぜ!」

 

ばきん ばきぃ どがぁ

 

『カナディアンマン! バッファローマンの顔面にパンチの雨嵐だ! 一気に攻勢逆転だ!!』

 

がしぃ がしぃ

 

『バッファローマン! カナディアンマンの両腕を掴み、パンチを止めた!』

 

 両腕が抜けねえ! なんて力だ! 一瞬で俺の攻撃が終わっちまったよ!

 

ぼうん

 

『バッファローマン! ブリッジでカナディアンマンを軽々と放った――――っ!!』

 

 やべえ、バッファローマンのやつ、次は何をしてきやがるんだ!

 

がしっ

 

『バッファローマン! ボディスラムの体勢にとらえて落下だ――――っ!!』

 

 受け身をとろうにも、すげえ勢いで落下していって何もできねえ! 

 

どがぁぁん

 

『バッファローマンのボディスラムが炸裂! カナディアンマンダウンだ――――――っ!!』

 

「ちっ、こいつから何か得られるとは思ったが、俺の目がどうかしていたみてえだな……」

 

 こんだけやられていれば、そろそろくそ力を発動できてもいい頃なんだが……そうだ! バッファローマンの前で、スペシャルマンが惨殺されたことを思い出すんだ! あの時の悲しみ! 怒りを思い出すんだ俺!

 

ぼわぁ

 

『カナディアンマン! 突如金色に発光した!!』

 

 流石クソ力だ、もう立てないと思ったが不思議と力が湧いてくるぜ!

 

『カナディアンマン立ち上がった――――っ!』

 

「ほう、そのパワー、試させて貰う!!」

 

がしぃ 

 

『両者リング中央で力比べ! カナディアンマンすごい! あの1000万パワーのバッファローマンに力負けしていないぞ――――っ!』

 

「ほう、今までで一番強いパワーを出しているじゃねえか! そうこねえとな!」

 

「へっ、これでお前と互角に戦えそうだぜ!」

 

「勘違いするな、お前は手加減している俺にようやく互角に闘えているんだ」

 

「え?」

 

 手加減? そうか! 原作だとバッファローマンが本気になると赤くなったな。あっ、まだ赤くなっていない!

 

『バッファローマン! 身体がどんどん赤くなっていく!』

 

「これが1000万パワーの力よ!」

 

ぐぐぐぐ

 

 うおお! 力負けするうう!! 俺がクソ力発動した状態でもバッファローマンの1000万パワーにかなわない!!

 

「そのパワー、正義超人の中でなら優れている方かもしれないが、俺の敵ではない!」

 

がきっ

 

『バッファローマン! 力比べの状態からかんぬきスープレックスだ!!』

 

どがぁん

 

「ぐはっ!」

 

『カナディアンマンまたもダウン! ここまでよく粘りましたがもう駄目でしょうか!!』

 

「あ~~あ~~、超人オリンピックファイナリストに残ったロビンマスク、テリーマン、ラーメンマン、そしてお前がこの体たらくか。アイドル超人とは大層な名前を名乗ってはいるが、俺にしてみれば全員ゴミ同然よ」

 

 バッファローマンのその言葉で、俺の中で何かが弾けた。

 

「おい……今なんて言った!」

 

「聞こえなかったか? 負け犬の正義超人はゴミ同然だと言ったのさ! はっはっは!」

 

ぼわぁ

 

『カナディアンマン! またも金色の発光を見せ立ち上がった!!』

 

「こいつ、しぶとい奴だぜ!」

 

「俺は皆大好きなんだ……バッファローマン、あんたにとっては俺は会ったばかりの相手かもしれないが、俺はあんたのことをよぅく知っている。今のお前は本当の悪魔だが、本当は仲間思いの漢気溢れる熱い奴だと知っている!!」

 

「おいおい、お前は一体何を言っているんだ? ダメージが酷くてとうとう頭がいかれちまったか?」

 

「正気も正気さ! 俺が言いたいのは、俺の大好きな正義超人、テリーマン、ラーメンマン、ロビンマスクを……馬鹿にする事は許せねえええ!!」

 

かあああ

 

『カナディアンマン! 更に身体の発光が強くなった!!』

 

 俺の身体の中から今までにないくらいのパワーが目覚めてきているだが、。今の俺は仲間を侮辱した奴に思いの丈をぶつけることしか考えていねえ!!

 

がしっ

 

「ぬおっ!?」

 

『カナディアンマン! タワーブリッジ、いや似ているが微妙に技のフォームが違う! 名付けるならカナディアンマン版タワーブリッジかっ!?』

 

 不思議だ、一度も使ったことがないのにまるでロビンマスクが乗り移ったかのようにこの技を使いこなせる。

 

「違うな! これは後々ロビンマスクが産み出すネイキッド・タワーブリッジさ!!」

 

ぐきぃ ごきぃ

 

 効いている! バッファローマンの骨が悲鳴をあげている!

 

「グワアア!! どうしてこんなパワーがっ!?」

 

「今からお前にロビンマスクの魅力を教えてやるよ。奴はとても紳士的な男さ、試合前はどんなに憎き相手でも親交的な態度を心がける。しかし試合になれば一点、熱いファイト、プライドの高さ、そして試合を通して相手をも成長させてくれる!! つまりかっこいいんだよ!!」

 

「うおおおお!!」

 

ばっ ばっ

 

『バッファローマン! 強引にネイキッドタワーブリッジを抜けた!!』

 

「そうやすやすと背骨を折られるかよ!」

 

 流石バッファローマン! この技を脱出したか! ならば次はこいつだ!

 

「レッグラリアート!!」

 

ぼきぃぃん

 

『カナディアンマン! ラーメンマンばりのレッグラリアート! なんとバッファローマンのロングホーンが折られた――――っ!』

 

「まさか、俺様のロングホーンが!?」

 

 今度はラーメンマンが乗り移ったみたいだ。心なしかバッファローマンが俺の後ろに誰かがいるような感じで見ている気がするぜ。

 

「ラーメンマンの魅力を教えてやる! 今の奴は残虐超人卒業したてのやつだが、その後は再起不能の状態になっても必ず復活してくる不屈の闘志を見せる! そして友のために自身を犠牲にもできる! さらにはお前のような強豪相手でも相手を生かす闘いを忘れないんだ!」

 

「なんなんだ! こいつから得体の知れないパワーを感じる!」

 

 もはや勝ったも同然の状態、しかし俺は全力で俺の気持ちをぶつける!

 

「そして俺が大好きなテリーマンについてだ! テリーマンはファイトスタイルは地味だ、人間でもできそうな必殺技ばかりだ! いつも負けそうになっている! おまけに不器用だ! でもな! 自分の気持ちを素直にぶつけるファイトスタイル! 自身以上の強豪相手にも絶対逆転勝利するロマンある男!! 今回は負けちまったが、バッファローマン! お前のような猛牛だって倒すくらいの力はあるんだよ!!」

 

 この技に全てをそそぐ。俺はバッファローマンの後頭部に両膝をのせた。

 

「バッファロー・ブランディング!!」

 

ずがぁぁぁん

 

『決まった―――――っ!! カナディアンマン! テリーマンの得意なカーフ・ブランディングの発展形、バッファロー・ブランディングで仕留めた――――――っ!!』

 

「うおおおおおお!! 俺は勝った!! 勝ったんだ!!」

 

ぴくり

 

 え、うそだろ、やめてくれ!

 

「効いたぜ……まさか六騎士レベルの攻撃をお前からくらうとは思わなかったぜ……」

 

『バッファローマン! もはやKO負けしたかと思いましたが立ち上がった――――――っ!!』

 

「そんな……」

 

 もう駄目だ、俺から闘志の炎がなくなった。

 

「お前ならおそらくは知っているはずだよな……仮に俺達悪魔超人が負けた後……どんな処罰(ペナルティ)があるかを!」

 

 そうか、もし悪魔超人が全員敗北したら、処刑されるんだ!!

 

「もちろん分かっている! しかしな、断っておくが手を抜くことはしない! それが強豪であるお前に対し大変失礼だからだ!」

 

「俺が言いたいのはそんなせこいことじゃねえ……俺だけでも生き残れば負けた仲間の処罰は避けられるんだ……俺だけならともかく……苦楽を共にしてきた仲間をみすみす死なせるわけにはいかねえんだ!」

 

カアアア

 

 ま、まさかバッファローマンまでクソ力に目覚めるとは……キン肉マンすまない。お前には大きな迷惑かけちまうな……」

 

 それからただ俺は一方的にやられるだけだった。バッファローマンへ仕掛けた猛攻で完全に力尽きてしまいただやられるだけであったのだ。

 

カン カン カン カン

 

『カナディアンマン! 惜しくも逆転負け! あわや悪魔超人リーダー格のバッファローマンを負かす番くるわせを起こすかと期待できる試合でしたが! バッファローマンの闘志が最後の最後で勝利を引き寄せました!!」

 

 ああ、どんどん痛みの感覚が遠くなっていく……どんどん思考もできなっていく……そうか……これが死ぬってやつか……。

 

「カナディアンマン、まだ生きているか? 俺は、お前のおかげで俺は更に強くなることが出来た。俺はお前を死ぬまで忘れないであろう」

 

 バッファローマンにこんだけ言われたんだ……悔いなく死ねる……

 

 

 

 ん? ここはどこだ? 俺は確か、死んだはずだよな?

 

「新入りかてめえ!」

 

「え?」

 

 げっ! 超人墓場の鬼がいる!? まさか、ここは超人墓場か――――っ!!

 




楓が帰ってくることをご期待下さい!!


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Re黄金のマスク編
悪魔降臨の巻!!


地獄から再スタート!!


 え? 死んだらそこで終わりかなと思っていたけど、まあキン肉マンの世界なら普通なのか?

 

「おら! さっさとてめえもあっちに行け!」

 

どがっ

 

「いでぇ!」

 

 超人墓場の鬼に尻を蹴られた! とりあえず超人墓場であっちに行けというと、巨大な石臼だよな。確かあれって、後々悪魔将軍がぶっ壊して、今は鬼達が修復作業しているんだよな。

 石臼の誰もいないスペースに入り、俺も回し始めた。

 

「お前もこっちの世界に来てしまったか……」

 

 後ろから仮面の男が声をかけてきた。

 

「ロビンマスク!」

 

「頑張ったなカナディアンマン。鬼達が持っている現世をのぞくテレビからお前の活躍は眺めていた」

 

「すまない! 頑張ったといえば頑張ったが俺も負けてしまった……」

 

 しばらくロビンマスクと会話を交えながら、石臼をまわした。休憩の時間に入り、他にも知っている奴はいないかと探した。

 

「カナディアンマン!」

 

 同じく悪魔超人に負けたテリーマン、ラーメンマンにも再会できた。

 

「いいところがあるんだ、来てくれ」

 

 案内されたのは岩穴の中。ここは確かドクターボンベがウォーズマンを手術して現世にかえしたところだったな。そして現世の今が見れるテレビも置いてある。

 

「今の戦況がどうなっているか確認しよう」

 

 TVがノイズの入った画面から徐々にはっきりと像の映ったものになっていく。モニターにはキン肉マン、ウルフマン、ウォーズマンが映った。

 

「正義超人で生き残ったのはあの三人だけか……」

 

 そして悪魔超人サイドはバッファローマン、ブラックホール、ステカセキング、アトランティスがいた。

 

 

「ん? 見かけない超人が悪魔超人側にいるぞ!」

 

 モニター内でロビンマスクが指摘されたところを見た。

 

「ふむ、悪魔超人軍の援軍か。六本腕の男、忍者風の男、巨漢の大男と手強そうな奴らがいるな」

 

 ラーメンマンが各超人の特徴を説明してくれた。

 

「ん? 六本腕? 忍者? 巨漢……げぇ――――っ!!」

 

「どうしたカナディアンマン!?」

 

「あいつらは俺達が闘った悪魔超人よりも手強い、悪魔六騎士と呼ばれる男達だ!!」

 

「なんだとっ!? そうだとしたらキン肉マン達だけでは戦力に差がありすぎる!!」

 

「こうなったらミー達がなんとしても超人墓場を脱出しなくてはならない!!」

 

 やはり超人墓場の脱出という考えに至ったか……。しかしそのためには……。

 

「皆、生命の玉なんて持ってないよな?」

 

「なんだそれは?」

 

 三人とも超人墓場に来たばかりで生命の玉を知らなかったようだ。俺は数分ほど生命の玉について説明した。

 

 

 

 さて、悪魔六騎士達の登場より少し前にさかのぼる。正義超人と悪魔超人の初日の団体戦の日より翌日。東京ドーム特設会場にて互いの団体が対峙し合っていた。

 悪魔超人側はバッファローマン、ブラックホール、アトランティス、ステカセキング。

 正義超人側はキン肉マン、ウォーズマン、ウルフマンである。

 大半の超人が激戦の末に勝利したためか、傷はまだ完全に癒えていない状態だ。

 

「闘う前にお前達に言っておきたいことがある」

 

 バッファローマンが最初に口を開いた。

 

「闘いを始めたからには全力でお前らを倒すつもりだが、俺はもう悪魔超人側としては闘わないつもりだ」

 

「なんだって――――っ!!」

 

 正義超人、悪魔超人共にバッファローマンの爆弾発言に驚いた。

 

『バッファローマンから爆弾発言が飛び出た――――っ!! これはまさかのバッファローマンが正義超人入りか――――っ!!』

 

「待ちなっ!!」

 

 ウルフマンが怒りの表情を露わにする。

 

「何を企んでいるか知らねえが、こちとら仲間が大勢殺されてんだ! そう簡単に仲間入りを認めてたまるかよ!」

 

「勘違いするな、悪魔超人として闘うつもりはないが、俺は正義超人の仲間になるつもりもない。一個人として強さを試したいんだ」

 

「おいバッファローマン、気でも狂ったのか?」

 

「狂牛病ってか? ケケケ、薬が必要見てえだな」

 

 アトランティスとステカセキングが冗談をまぜながらもバッファローマンを心配した。

 

「どういうことだバッファローマン?」

 

 ブラックホールが口を開いた。

 

「カナディアンマンとの闘いで知ったんだ。俺達悪魔超人はあまりにも狭い世界で生きすぎた。そろそろ、他の属性の超人の良さを取り入れる時期がきたのかもしれない。現に俺はカナディアンマンとの試合で負けそうになったが、同時に奴の良さを吸収し一皮むけたんだ」

 

「バッファローマン! お前! 亡くなった仲間も出たんだぞ! よくそんな口をたたけるな!」

 

「だからだよ。俺は亡くなった仲間のため、そして俺に目をかけてくれたあのお方のために、正義超人への仲間入りという選択肢は省いた」

 

「バッファローマン、本気なんだな……」

 

「ああ、二言はねえ」

 

「カカカ、奇遇だな、実は俺も悪魔超人を抜けようと思っていた」

 

『なんと!! ブラックホールまで悪魔超人脱退を表明した――――っ!!』

 

「ブラックホール! てめえ冗談でも怒るぞ!!」

 

 ステカセキング、アトランティスもとうとう怒り始めた。

 

「ふっ、誰にも分からないと思うが、俺は正義超人の力を借りて勝利してしまったのさ。ロビンマスクという男は強かった。俺は試合中に負けを覚悟したが、ひょんなことで正義超人の力を手に入れてしまった。そしてその力は永久的なものになってしまった。もう俺は悪魔超人として闘えない」

 

『これはとんでもない展開になってきた――――っ!! 悪魔超人解体の危機か!! これは断然正義超人側が有利になるぞ――――っ!!』

 

 ステカセキングとアトランティスは焦った。キン肉マン達だけならともかくバッファローマンやブラックホールと後々対立するのは分が悪いと思ったからだ。

 

 やれやれ、世話の焼ける奴らだ

 

 宙から声が聞こえてきた。先程まで日本晴れの状態であったが、暗雲が急に出始めてきた。

 

ゴロゴロ ピシャーン

 

 激しい雷が落ちてきた。そして六人の男達が出現した。

 

「どうやら、お前達だけに任せるわけにはいかないようだな」

 

『あ――――っと! 突然空から六人組が現れた――――っ!!』

 

 悪魔超人達は衝撃を受けた。

 

「まさか、悪魔六騎士達がっ!?」

 

「あわわわ、また怖そうな奴らが現れおった!!」

 

 キン肉マンは悪魔六騎士達に怯えていた。

 

「バッファローマン、ブラックホール、お前達が寝返るというなら今日から我々の敵だ!」

 

『ただいま、超人委員会より、突如現れた男達の情報を発表するとのことです!!』 

 

 会場のモニターに悪魔六騎士の顔と名前が分かる一覧図が出た。

 

「ケケケケ、こいつは嬉しい援軍だ! これでスプリングマンやカーメン魔雲天の仇をとれるってもんだ!」

 

 アトランティスが調子に乗り始めた。

 

「カカカカ、そういえばまだ知らせていなかったな。既に敗れた魔雲天、ミスターカーメン、スプリングマンは処刑されている!」

 

 アシュラマンが三人の生死を明らかにした。悪魔超人側は驚きを隠せない、そして正義超人側も非道な対応に怒りを見せる。

 

「正義超人との決着はついていないのに、あいつらを処刑しただとっ!! いくら悪魔六騎士でもゆるせねえ!!」

 

 悪魔超人の中で、バッファローマンが一番怒りを露わにする。

 

「当たり前だ。お前が仮にキン肉マンに勝ったとしても、この闘いの敗北者は処刑に相当する!」

 

「許せねえ……!」

 

 先程まで怯えていたキン肉マンに闘志が蘇った。

 

「悪魔六騎士とやら! 負けたとはいえお前達悪魔超人のためにスプリングマン、魔雲天、カーメンは全力で闘ったんだぞ!! 亡くなった彼らのためにも、私はお前達を倒す」

 

「へへっ、ぜい肉マン、珍しく気が合うじゃねえか。お前の言うとおりだ。こいつら悪魔超人を、正義超人の手で根性たたき直してやろうじゃねえか!!」

 

 ウルフマンもキン肉マンにのってきた。

 

「ぐぉふぉっふぉ、キン肉マンとかいったな?」

 

 サンシャインがキン肉マンに尋ねてきた。

 

「なんじゃい!」

 

「我々のボスがお前に興味があるといってな、是非とも顔を見たいとここに来ているんだ」

 

「ボスじゃと?」

 

ゴロロロ ドッカーン

 

 激しい音をならして会場に一つの大きな雷が落ち、砂埃が舞う。砂埃からは人影が見える。その人影が誰かと分かると、バッファローマン達が動揺した。

 

「あ、あのおかたまで……!」

 

「グォフォフォ、紹介しよう。我が悪魔超人軍の総帥、悪魔将軍様だ!!」




悪魔将軍降臨!!


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地獄から生還せよ!!の巻

急げ楓!!


 地上がとんでもない事態になっているぞ!

 キン肉マン達だけじゃあ、あまりにも負担がでかい! せめて超人墓場から誰か一人だけでも現世に戻したい!

 

「皆! 今すぐ 生命の玉を持っている超人がいないかどうか掛け合ってくれ! 四つあれば一人を現世に復活させる事が出来る」

 

 俺、ロビンマスク、ラーメンマン、テリーマンで生命の玉を持ってないかと探し回ったが、そもそも持っている奴がいなかった。正義超人の死者は悪魔超人に殺されたばかりの奴らばかりゆえに、まだ超人墓場に来て間もない。他の見知らぬ超人に関しては掛け合うことすら断ってくる。さらに原作では描かれていないようだったが、超人墓場内の秩序のため、生命の玉を合意なく強奪することは禁じられているみたいだ。

 

「くそぉ、俺達は何も出来ないのか!」

 

「こうなったら多少荒っぽい手を使ってでも超人墓場から脱出しよう!」

 

 好戦的な案を出したのはテリーマンだった。

 

「いや、お前達は知らないと思うが、この超人墓場を管理している奴は恐らくアビスマンという超人、こいつはとんでもなく強い奴だ。下手したら今のキン肉マンですら勝てないかもしれない」

 

「キン肉マンですら勝てないだって!?」

 

「な~~に! 俺達が束になれば一人ぐらいは脱出できるかもしれねえ! 少なくてもその可能性にかけてみようじゃないか!」

 

「生命の玉が欲しいなら俺がくれてやろうか? ここに四つ分はある」

 

 俺達の元に軍服を着た超人が現れた。

 

「ブロッケンマンか!? いいのか、お前が次に生き返る機会が遠くなるんだぞ!」

 

 そういえばディープオブマッスルでブロッケンマンが四つ集めた生命の玉を使わずに他の超人にやるエピソードがあったな。そのエピソードでは、最終的に鬼達の手によってウルフマンに与えられたんだっけ。

 

「元々は、超人界の危機に備え、俺が復活できるようにと集めてきたものだ。しかし、俺が復活するよりも適任な男がいる」

 

 ブロッケンマンは俺に向かって指を指した。

 

「カナディアンマン! お前が俺の変わりに復活するんだ!」

 

「げぇ――――っ!!」

 

 思わず驚いてしまった! つうか俺!? もっと適任者いるだろ!!

 

「いやいや! 俺なんかよりテリーマン、ラーメンマン、ロビンマスクの方が適任だろ!」

 

「何を言っているんだカナディアンマン、確かにお前はバッファローマンに負けてしまったが、あと一歩まで追い込んだ! 他の超人達ではまずあそこまで闘えなかっただろう」

 

「それに、お前との闘いがきっかけでバッファローマンの心に変化が出た。お前ならあの悪魔六騎士達をも変えられるかもしれない」

 

「お、おい、本当にいいのか? 本当にいいのか?」

 

 

「自信を持てよ! 相棒!」

 

 どこからかやってきたスペシャルマンが俺にエールをかけた。

 

「すまねえ皆……今度は絶対勝つからな!!」

 

 こうして俺は超人墓場を脱出することになった……とスムーズに事は進まなかった。

 

「待って貰おうか! 超人墓場に来たての奴をそう簡単に生き返らせるわけにはいかねえ!!」

 

 現世へと繋がる扉は、一人の鬼が門番をしている。どことなく他の鬼よりも風格がある。そして口調がどうも聞いたことがあるものだ。もしかしてこいつ、アビスマンか?

 

「通しては貰えないか? 仲間を助けるために現世に助っ人をよこしたいんだ」

 

 ロビンマスクがまず説得に入る。

 

「助っ人ってのはどいつだ?」

 

「俺だ!」

 

 俺はいかにも強そうに見えるように装った。

 

「ふ~~ん、そうだな、ちょいと強さを見てやろうじゃねえか! さぁかかってきな?」

 

「一つ確認したいことがある。あんたはもしかしてアビスマンという超人じゃないか?」

 

「モガガ!? なぜ下等超人が俺の名前を!?」

 

 よし、やはりアビスマンだったか!

 

バリリリ

 

 鬼のボディに亀裂が入り中からアビスマンがでてきた。

 

「ゲェ――――ッ!! オーバーボディの超人!!」

 

 他の三人は予想通りの反応をしている。

 

「なら話は早い。あんたがかなりの強豪だというのはよく分かる。まず俺では勝つ可能性はかなり低い! あんたとの組み合いは遠慮させて貰うぜ!」

 

「モガモガ、俺の実力が分かるとは大した奴だ! しかしそんなことではここを通すわけにはいかないな~~っ!!」

 

 さて、このアビスマンをどうやって説得すれば良いのか? まず実力で納得させるのは俺どころか、他の正義超人でも無理だ。時期的にそこまで皆の力はついていない。

 

「どうする気だカナディアンマン?」

 

「まぁなんとかするさ」

 

 アビスマンの心を動かせるものがあるとしたら、悪魔将軍、つまりゴールドマン絡みかもしれない。

 

「今地上では悪魔将軍が降臨している。その正体はかつてのあんたの仲間、ゴールドマンだろ!」

 

「モガモガ、お前は物知りな奴だな。いかにもあの悪魔将軍として堕ちた男はかつて完璧超人始祖の一人ゴールドマンだ!」

 

 他の三人は俺の話についていけてないようだ。まあ時期的に完璧超人すら出てきてないのに、こんな話されたらちんぷんかんぷんだわな。

 

「あの男がなぜ降臨したか分かるかアビスマン?」

 

「ふん、大方調子に乗った敵対する下等超人共をたたきのめすためだろ? 俺達完璧超人達にとっては、双方が小競り合いをしてつぶし合っていた方が都合が良いのだ。どうなろうと知ったこっちゃあない」

 

「ちっちっち、違うんだな。かつてゴールドマンは弟のシルバーマンと闘ったと聞く。結果は引き分けだった。アビスマン、お前ならゴールドマンの性格がよく分かるはずだ! あの男が弟に引き分けたらどう思うか?」

 

 しばらくアビスマンが考え、突然笑い出した。

 

「モガガガ! そうか! あいつ、シルバーマンに引き分けたことを根に持って再戦しようという気だな!! あのプライドの塊のような男なら間違いねえ! シルバーマンを呼び出すために、わざわざ大げさに正義超人に対して宣戦布告をしているわけだ!」

 

 

「その通りだ!」

 

 よし、狙い通りだ! アビスマンはゴールドマンに対して仲間意識はありながらも腹ただしく思っている節はあった。だからゴールドマン絡みでこういった話をすれば、あいつもしょうもない奴だなと思うはずだ!

 

「なかなかに面白い話を聞けた。いいだろう、カナディアンマン、お前が生き返ることをこのアビスマン様が許可してやる! ただしだ!」

 

 うおっ!

 ただしだ! ってなんだ? 

 なんか変なリクエストつけないだろうな!

 

「ゴールドマンには勝てねえだろうが、あいつが育てた弟子の一人ぐらいは倒せよ!」

 

「分かったぜ!」

 

 ふぅ~~、何とかなったみたいだ。

 

「カナディアンマン、あの世で応援しているぜ!」

 

「我々もすぐに生き返れるように善処する!」

 

 仲間のエールを受けて、俺は現世へと生き返るのであった。

 しかし生き返ったら悪魔騎士との闘いが待ち受けている。流石に悪魔将軍とは闘わないとは思うが……。悪魔録騎士の誰かに勝つにしても大苦戦必須だろうな……。

 不安を胸に抱きながら、俺は現世へと復活した。

 




なんとか生還!!


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金銀揃う!!の巻

最強の漢にどう立ち向かう!!


 一方、現世の方でも動きがあった。

 悪魔将軍が口を開く。

 

「やはり、あの三人程度では力が足りんな」

 

 バッファローマンが悪魔将軍の言葉に勘付いた。

 

「まさか、将軍様! 魔雲天、スプリングマン、ミスターカーメンを自身の力を蘇らせるために使ったのでは!?」

 

「鋭いなバッファローマン、その通りだ。敗北し処刑された悪魔超人は、私の力として活用させて貰っている! もっとも奴らだけでは私のフルパワーを復活させるにはほど遠いがな。さて、裏切り者二名には後々悪魔の制裁をくわえるとしてだ。アトランティスにステカセキングよ!」

 

「はっ!」

 

 ステカセキングとアトランティスが悪魔将軍に跪いた。

 

「よくぞ正義超人に勝利した。褒めてつかわす」

 

「はっ! ありがとうございます!」

 

「祝いに私からプレゼントをやろう」

 

しゃきーん

 

 悪魔将軍は剣を二つ取り出し、ふたりの足下に投げた。

 

「こ、これは!?」

 

「お前達の試合を見せて貰ったが、そこにいるキン肉マンを倒せるほどの力がないことはよく分かった! よってお前達はもう闘う必要はないっ! お前達も破れた三人同様私の力となるが良いっ! その剣は私からの慈悲、この場で無様に処刑されるか、それとも潔く自害するかを選ばせてやる!」

 

「そんな、将軍様! あまりにも酷い!! どうか我々にチャンスをっ!!」

 

「そうか、チャンスか。ならば、この私と一戦交えてみるか?」

 

「将軍様相手にっ!?」

 

「私はまだ100%の力は取り戻せていない。運良ければお前達でも勝てるかもしれんぞ?」

 

「な、ならば……」

 

 バッファローマンがステカセキング、アトランティスの前に立つ。

 

「二人とも! 将軍様がフルパワーを取り戻していないとはいえお前達が挑むには無謀すぎる! 俺達と一緒になれば守ってやれる!」

 

「うるさい! いくらお前でも裏切り者の指図は受けん! 生き残るために俺達は将軍様を倒す!」

 

 アトランティスが先手をとった。

 

「ウォーターマグナム!!」

 

 悪魔将軍に大量の水が浴びせられた。

 

すた すた すた

 

 悪魔将軍はウォーターマグナムの勢いをなんとも思わずに、前進していく。

 

「なにっ!! 俺のウォーターマグナムを真っ正面から受けているのに!?」

 

「アトランティスよ、この程度の水鉄砲ではかすり傷すら与えられんぞ」

 

がしっ

 

 悪魔将軍はアトランティスの頭をつかんだ。

 

「魔の将軍クロー!!」

 

 悪魔将軍は握力をこめ、アトランティスの顔面を潰しにかかった。

 

「ケギャ――――ッ!!」

 

ぐしゃっ

 

 アトランティスは頭部を潰され、首のない状態で地面に倒れ込んだ。

 

「ア、アトランティス!!」

 

 ステカセキングは思わず叫んだ。

 

「こうなったらいくしかねえ!!」

 

 ステカセキングがカセットテープを入れて悪魔将軍に向かった。

 

がしっ

 

 ステカセキングは悪魔将軍をダブルアームスープレックスの状態でジャイアントスイングし、そのまま空中へ高く上昇した。

 

「ほう、これがお前流の私というわけか?」

 

「いくら将軍様でもこれで無傷とはいかねえはずだ!!」

 

 その様子を眺める悪魔六騎士に全く焦りは見えない。むしろ余裕の表情を見せている。

 ステカセキングは悪魔将軍首に膝を載せて勢いよく落下していった。

 

がきぃぃぃん

 

 悪魔将軍に地獄の断頭台が決まったが、悪魔将軍は表情を一切変えていない。

 

「ぐがっ!?」

 

 ステカセキングのボディにひびが入り、放電しショートしている。

 

「落下前に私の体を硬度10のダイヤモンドボディに変えた。私はお前の技に耐える耐久力を身につけ、逆にお前にダメージが跳ね返る!」

 

ばきぃ ぱきぃん

 

「ガガガ……」

 

 ステカセキングの目から光が消え、その場に倒れこんだ。悪魔将軍は何事もなかったかのように立ち上がった。そしてステカセキング、アトランティスの力を吸収した。

 

「ふむ、幾分か力が増したようだ。といっても今の状態でやっと5割ほどの力を取り戻したというところだな」

 

 その事実に正義超人達が驚いた。

 

「なにぃ!? あれだけ強い奴が力を吸収してなおも5割の力じゃと!?」

 

「こいつは余計なプライド捨ててさっさとあいつを倒した方が良いんじゃねえか?」

 

 悪魔将軍がバッファローマン、ブラックホールの方を見た。

 

「さて、そろそろ裏切り者含めて正義超人達を地獄に送り込むとするか、何か遺言はあるか? 私からのせめてもの慈悲だ」

 

「待ちな!」

 

 どこからか大きな声が聞こえ、その場をおさえようとする人が出てきた。

 

「昨日激戦をくりひろげ傷だらけになった超人達相手に勝利してもなんの自慢にもならんづらよ!」

 

すたっ

 

 一人の男が皆の前に飛び出してきた。

 

「おらはジェロニモ! 1000年に一度あるかどうかの超人界の危機に立ち上がらせて貰うだ!」

 

 ジェロニモが有無を言わさずに悪魔将軍に攻撃をしかけた。

 

「トマホークチョップ!!」

 

がきっ

 

 悪魔将軍はいとも簡単にジェロニモの手刀を受け止めた。

 

「なんだこの腰砕けチョップは? トマホークチョップとはよくいったものだ。私が手本を見せてやろう」

 

ごきぃん

 

 悪魔処軍が両方の手刀でジェロニモの首に攻撃をくらわせた。何かが砕けたような音も聞こえた。

 

「ぐああああ!!」

 

 ジェロニモが悲鳴をあげ、首をおさえて地面にうずくまった。

 

「これこそが本当のトマホークチョップだ。お前は運が良い。フルパワーならお前の首ごとふっとんだからな。しかし、お前の体、超人にしてはやわすぎる。貴様人間だな?」

 

「お、おらが弱いからって人間だなんてなめて貰っちゃあ困るぜ」

 

 ジェロニモは右手を口の右側にかまえた。

 

「やめんかジェロニモ! お前の勇気は皆が分かった! ここは私達正義超人に任せろ!」

 

 キン肉マンがジェロニモを止めようとした。

 

「キン肉マンさん、そして先輩方、まだおらはとっておきを出していないだ。アパッチのおたけび!!」

 

ウラララ~~~~!!

 

 ジェロニモの巨大な声により、悪魔将軍、そして六騎士達にもの凄い音波がふりかかった。流石の悪魔超人達も表情に変化が出た。

 

「もう我慢できねえ!」

 

 飛び出したのはジャンクマンであった。

 

「ジャンククラッシュ!!」

 

ぐしゃあ

 

「うぐぅ……」

 

 ジェロニモの体に穴があき、大量出血した。

 

「もう我慢できねえぜ! このウルフマン! このならず共をぶったおしてやる!!」

 

 他の正義超人、そしてバッファローマンやブラックホールもウルフマン同様に覚悟を決め、身構えた。

 

「お待ちなさいっ!!」

 

 天から声が響いた。澄み切った声ながらも威厳のあるものだった。天より一人の男が階段もないのに、階段を降りるようにやってくる。

 

「あいつは!?」

 

 悪魔将軍がその男の正体に真っ先に気付いた。

 

「兄さん、これ以上はもう見過ごせませんよ」

 

 悪魔将軍以外にも会場に居合わせたキン肉真弓がその正体に気付いた。

 

「あれは銀のマスク!? いや、体があるということは、我々正義超人の開祖であられるシルバーマン様かっ!!」

 

 皆が黙ってシルバーマンの動向に注目している。

 

「兄さん、この闘いは平等な条件の下行いましょう。正義超人達は昨日の闘いであまりにも傷つきすぎている。一週間後、また日を改めて対抗戦を行いませんか?」

 

「カカカカ、将軍様、こんな奴かまうことはないです! 将軍様の兄弟だか、正義超人の開祖だか知りませんが、我々悪魔六騎士で地獄に送ってやります」

 

 アシュラマンがシルバーマンに対し戦闘態勢をとった。他の五人の悪魔騎士も続いた。

 

「やめろ!!」

 

 悪魔将軍が一喝し、悪魔六騎士が泊まった。

 

「目の前にいるシルバーマンという男は強い。かつては虐殺王と呼ばれた男、まずお前達では勝てんだろう。私でさえ全力を取り戻しても少々骨が折れる相手だ。ましてやこの半端な状態で闘ってはまず勝ち目はない」

 

「しょ、将軍様にそこまで言わせるとは……」

 

 悪魔六騎士がヒートダウンし、悪魔将軍がシルバーマンとの会話を再開しはじめた。

 

「分かった。正義超人達へのせめてものハンデだ。一週間待ってやろうではないか!!」

 

「兄さん、できればこの子も蘇らせて頂けませんか?」

 

 シルバーマンがキン肉マンが持っているミートのボディパーツに指さした。

 

「全く、注文の多い弟だ。いいだろう! 悪魔六騎士と正義超人とでは戦力には差がありすぎる! そのメガネ小僧の生還を許そう!!」

 

 ミート君のボディパーツがキン肉マンのもとに全てわたされた。

 

「あ、あのシルバーマン様ですか、どうもどうもありがとうございます!!

 

 キン肉マンが腰を低くしながらシルバーマンに礼を言った。

 

「礼は良いです。早く君の可愛い弟分を蘇らせてあげてください」

 

かちっ

 

 ミート君のボディパーツが全てくっつき、ミート君が目を開けて起き上がってきた。

 

「ふわぁ~おはようございます王子~」

 

「ミート!」

 

 キン肉マンが泣いてミート君に抱きついた。

 

「うわぁ! 王子にんにく臭い! それにどうしたんですかその体の傷は!! あっ、なんですかこの恐ろしい人達は!?」

 

「ミートよ、説明は後でする。まずはおかえりの挨拶だ……」

 

 キン肉マンが優しい表情をミートにむけた。




おかえりミート君!


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楓の帰還!!の巻

ひとまず休戦にほっと一息!!


「ひきあげるぞ皆!!」

 

 悪魔将軍の号令の元に、悪魔将軍の一声で悪魔六騎士達が闇へと消えていった。

 

「シルバーマン様、あなたが来てくれなかったら、スグル達は今頃悪魔将軍によりやられていました。是非ともお礼を言わせて頂きたいです」

 

 キン肉真弓がシルバーマンの前に膝をついて、かしこまった。

 

「いえ、僕は礼を言われるような立場ではありません。そもそも悪魔将軍が出てきた発端は僕にあるのです」

 

「シ、シルバーマン様に非は全くありませぬ! なぜにそのようなことをおっしゃられるのですか?」

 

「それについては……」

 

 シルバーマンがキン肉マン達に説明を始めた。過去にゴールドマンであった悪魔将軍と一騎打ちをし引き分けたこと。プライドの高いゴールドマンがシルバーマンとの再戦のために、ここまでのおおごとにしたということ。

 

「そ、そのようなことがかつてあったのですか……?」

 

「本来なら私が対処すべき事態であります。しかしながら兄さんに正義超人への尊敬の念を持って頂きたい。正義超人と悪魔超人の更なる発展のために、キン肉マン、あなたに悪魔将軍と闘って頂きたいのです!!」

 

「わ、私がっ!? ごほっ! ごほっ! 急に寒気がしてきたのう! この体調では一週間後になっても闘えんだろうな……」

 

 キン肉マンが仮病を始めたので、周りが呆れかえり、ミート君やキン肉真弓がキン肉マンへの説教を開始し始めた。

 

「全ては私達二人がかつて目指した夢のために……すみません、余計なことを話してしまいましたね」

 

 シルバーマンから意味ありげな発言が出たが、園井とを分かる者はいなかった。

 

 

 

 さて、会場はここだな。なるべく急いできたが、皆持ちこたえているか!!

 

「皆! 無事だったか!」

 

 俺は会場へ入ると思わず叫んだ。周りを見回すと、キン肉マン達はいる、バッファローマンにブラックホールに……あれ、シルバーマンまでいるだと!?

 

「カナディアンマン! お前生きていたのか!?」

 

 キン肉マンが真っ先に俺のことに気付いてくれた。

 

「いいや、一度死んだけどな、仲間のサポートがあって何とか地獄から蘇ることが出来たぜ! とりあえず今どんな状況か説明してくれないか?」

 

 俺はこれまでの経緯を皆に説明してもらった。

 

「分かった! 戦力になるかどうか分からんが、俺もこの闘い参戦させてもらう!」

 

 そして、皆の話を聞いて気になったところがある。俺は、ここはハッキリさせておかなくちゃあいけないと思った。

 

「バッファローマン、ブラックホール、改めて言おう。俺達の仲間になってはくれないか?」

 

 俺の意外な発言に二人は少し驚いたみたいだ。しかし予想通りの反応が返ってきた。

 

「俺達は正義超人と戯れる気はねえ。それに俺達はお前らの仲間を殺した男でもあるんだぜ?」

 

「確かに仲間はお前達に殺された! しかしそれは互いに全力でぶつかりあったからこその結果だ! 試合が終わればノーサイドだ! むしろ俺達はリスペクトの気持ちすら湧いている!!」

 

「リスペクトだと?」

 

「そう、お前達が強いという敬意の念だ!! お前達二人は悪魔六騎士相手でも勝利をあげられる男だ!!現にバッファローマンに関しては俺が闘ったからよく分かる! いずれは悪魔将軍やシルバーマンだって超える力を持つ男になるってな!!」

 

 バッファローマンとブラックホールがしばらく沈黙した。迷いを見せている。頼む、俺の思いよ伝わってくれ!!

 

「おい、俺は悪魔超人側に賛成だ! 仲間を殺した奴らと馴れ合うなんざまっぴらゴメンだ!」

 

 ってお――い!! ウルフマン!! お前なんつう事言うんだ!! 空気読めえええ!!

 

「ウルフマン! お前せっかくカナディアンマンが話を上手くまとめようとしていたのに!」

 

 いつもはへたれやボケをかますキン肉マンですら、ウルフマンにツッコミを入れてきた。

 

「話は最後まで聞けっ!!」

 

 ウルフマンが一喝し、キン肉マンが黙った。

 

「俺は仲間を殺したお前達を今すぐにでもぶちのめしてぇ。だからといって、お前ら悪魔超人のように無闇な殺戮は絶対したくねえ! そこでだ、この一週間ガチンコのスパーリングでお前達とやり合う事を提案したい!」

 

「ガチンコのスパーリングだとっ!?」

 

 ウルフマンの突然の提案に皆が驚いた。

 

「お前らも俺達も困ったことに、仲間の大半がいなくなってスパーリングパートナーが限られている。互いの不足を補うために、悪魔六騎士と闘う日までの間、ガチンコのスパーリングをやりまくろうじゃねえか! さっきも言ったとおり、俺は馴れ合いはゴメンだ! お前達をぶち殺す気で遠慮なくいく! 怖じ気づいたなら俺の提案を断っても良いんだぜ!!」

 

 ブラックホールとバッファローマンが互いを見つめて、微かに微笑みながら、顔を縦に小さく振った。

 

「ようし! その話のったぜ!」

 

「もっとも俺達がお前らを殺さないか心配だがな」

 

 ウルフマンが俺やキン肉マンをみた。

 

「これでいいだろ?」

 

 ウルフマンナイスだぜ!! この世界のウルフマンめっちゃかっこいいぞ!! 無印原作ではキン肉マンに命を賭してパワーを与えたぐらいしか見せ場がなかったからな~~。

 

「私も闘いに参戦したいところですが、できれば少し調べ事をしたいのです」

 

 シルバーマンの発言に皆疑問マークを頭に浮かべた。

 

「どうもひっかかるところがあります。兄さんが急にこのようなアクションを起こしたのには何か裏があるに違いない。私は裏の方で少し動きます。しかし、あなた方のピンチにすぐ駆けつけられるようにします」

 

 シルバーマンがそう言って立ち去っていった。

 

「シルバーマン!」

 

「なんですかカナディアンマン?」

 

「俺の勝手な予測なんだが、恐らくサタンが悪魔将軍に介入しているんじゃないかと見ているんだ!」

 

「サタン、なぜにお前がそいつの名前を……」

 

 やっぱりバッファローマンが反応を示した。原作では少し解説がふわっとしているところはあるが、ゴールドマンはサタンによって体を用意して貰った。一方バッファローマンもサタンによって1000万パワーを授かった。後にキン肉マンに敗北して制裁を受けたわけだが、この世界だとどういう流れになっていくのだろうか?

 だめだ、ゆで先生のアイディアは来週のゆで先生が考えてくれるって思考だから読めねえ!!

 

「ごほん、今晩中にお前達用のスパーリングの施設超人委員会で用意する! 皆、ひとまず解散して落ち着こうじゃないか!」 

 

 おっ、忘れた頃にハラボテがやってきた。ハラボテって時々聖人になるよなって思っても油断していると……。

 

「真弓君、君から金を出してくれ」

 

「こらっ委員長!」

 

 やっぱりこうなるか。まあキン肉族は金があるからな。

 こうして、一週間の間、属性を問わないスパーリングが始まった。これでなんだかんだ皆がキン肉マンと対戦できるわけだから、全員にクソ力がつくわけだ。ウルフマンの提案は皆の力の底上げにもなった。

 

 

 

 そして試合当日の日がやってきた!

 悪魔超人側が六つの洞窟を用意していたのだ。洞窟には何とか地獄だのと書かれていない。

 

「対戦相手はランダムか……」

 

「皆、恨みっこなしだ!」

 

 各々が自身の勘に任せて洞窟を選択した。さて、どれくらい走るかなと思ったが、意外と短いな。もしかして俺が最初に到着かな?

 目の前に光が見える。出口だ!

 

たったったった

 

 おっ、リングだ! そして天井は開いて、山がいっぱいあるな。あれ、この風景確かキン肉マンとアシュラマンが闘った場所じゃ……。もう嫌な予感しかしない……。

 

「カーカカカ! 期待して待ったらバッファローマンごときに倒された超人か! 確かカナディアンマンとかいったな! 私の対戦相手になったことを光栄に思え!」

 

「ゲェ――――ッ!!」

 

 なんということか、俺の対戦相手はまさかのアシュラマンだった!?




前世からの因縁の相手と激突!!


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血戦のゴング!!の巻

汚名国辱マンの返上のために!!


『早くも対戦カードが一つ決まりました! カナディアンマンVSアシュラマンです!!』

 

 これは運命のいたずらか? 六騎士の中で俺、いやカナディアンマンにとって因縁のある相手とぶつかる可能性は少なくはないと思っていた。よもやこんなに早く決まってしまうとは……

 

「カカカカ、どうした! 怖じ気づいたか?」

 

「誰が怖じ気づくかってんだ!」

 

 俺は対抗心を燃やしながらリングにインした。

 

「ほう、さっきとはうってかわっての闘志だな。特にお前に対し恨みを買ったつもりはないが……」

 

「お前と俺は今日が初対面! 全く因縁も何もない。だがな、前世からの因縁が俺にはある!!」

 

「何を訳の分からないことを言っているのだ?」

 

「そう、お前には全く理解しがたい因縁なんだよなぁ」

 

 そう、原作ではタッグトーナメント編で俺とスペシャルマンのビッグボンバーズがアシュラマンとサンシャインのはぐれ悪魔超人コンビにあっさり間引きされ、二世の世界では国辱とまでののしられるようになってしまった!

 今回はそんなことも起きる前に対戦することになったが、そもそもこのカナディアンマンが本格的にネタキャラ扱いされ始めたのは悪魔六騎士が絡み始めてからだ! まぁ命を賭して闘ったキン肉マンに対し「うすのろ」発言したことはフォローしようがないが……。

 

「アシュラマン、あんたが六騎士の中でも別格の強さを誇ることはよ~~く知ってんだ。でもな、この闘い、必ず勝たせてもらうぜ!!」

 

『あ――――っ!! 他の会場でも対戦カードが決まっていっているようです!!』

 

 俺とアシュラマンはモニターに目を向けた。

 

「私も仲間がどんな奴と闘うか気になる。試合開始は対戦カードが決まってからでも遅くはないだろう」

 

 やばい、アシュラマンなんか大物感あるわ。流石は魔界のプリンスだ。

 さて、モニターに現れたのはブラックホール、リングの設置場所の付近には観覧車がある。遊園地に設置のリングか、ということは相手はあいつだな。

 

「ほう、俺の相手はブラックホールか」

 

『こちらの会場ではブラックホールVSプラネットマンが決まりました!!』

 

 これは、言うなれば宇宙(コスモ)デスマッチといったところだな。これはなかなかに面白くなりそうなカードだ! って、俺も闘うんだから呑気に観客目線になっている場合かよ!!

 

「プラネットマン、あんたとはスパーリングで大分世話になったが、今日こそは勝たせて貰う!!」

 

「元同胞といえど容赦はせんぞ俺は」

 

『こちらの会場にはウルフマンが到着しました!!』

 

 

 ウルフマンのリングは高台に設置のリングか。こんなリング原作で出てないけど誰だったかな?

 

「ニシシ、なかなかに鍛え抜かれた体だ。ジャンクしがいがあるぜ」

 

『こちらではウルフマンVSジャンクマンが実現しました!!』

 

「とんでもない手をしてやがるな。でもな、俺は真っ正面から相手を受け止めるスタイルだからな、逃げはしないぜ!!」

 

 うわぁ~~、これウルフマン大丈夫か? ウルフマンの真っ向勝負の猪突猛進なファイトスタイルじゃ、ジャンククラッシュされるのが目に見えている!

 でも、ジャンクマンって他の六騎士に比べるとジャンククラッシュを除けばギミックじみたものはなく実は正当派より。他が砂になったり、忍術使ったり、変身したり、チートじみたところがあるからな。

 意外と正統派同士でウルフマンとかみ合いそうだな。

『こちらの会場にはキン肉マンがやってきました!』

 

 

 ん? この会場、どうも和風な雰囲気があるな。見たことはないリングだが、悪魔六騎士で和風といえばやっぱあいつだよな……

 

「ん? 対戦相手がいないではないか? どこじゃ~~い?」

 

 キン肉マンがマットにあがり、対戦相手がいないかどうかを見回している。

 

「やったぞミート! 悪魔超人は私に恐れをなして逃げたのだ! な~っはっはは!!」

 

 あ~~、ミート君もあきれ顔でキン肉マンを見ているな。いつも通りって感じで安心はするけど。

 

ぼわぁん

 

 あっ、キン肉マンの影から何かが出てきた!?

 

「闇に現れ闇に消える。ザ・ニンジャ!!」

 

「おわ~~っ!! お前どこから出てきとるんじゃ!!」

 

「いわんこっちゃないですよ王子!!」

 

『こちらではキン肉マンVSザ・ニンジャと決まりました!!』

 

 早くもキン肉マンがびびりぎみだが、キン肉マンの勝利は固いだろうな。

 それにしても、ザ・ニンジャとの試合か~~。キン肉マンは比較的ギミックの多い敵と戦うことは多いが、ニンジャだとどんな闘いになるか? これ、面白そうなカードだな。

 あっ、ニンジャって串刺しとか真っ二つとか顔を剥がれるとか、大体酷い死に方して負けること多いからな。キン肉マンどんな風に倒すんだろうか?

 

『こちらの会場にはウォーズマンが到着しました!!』

 

 リングのまわりにたくさん椅子がある! これは原作でも見たぞ!

 

「一番得体の知れない奴がやってきたな」

 

 やはりスニゲーターか!

 

『ウォーズマンVSスニゲーターが決まりました!!』

 

 

 う~~ん、予想つかない! この世界のウォーズマンいまだに残虐超人だからな~~。一週間スパーリングはしたけど、ウォーズマンが残虐スタイルを貫き通して、マジで俺百回は死にかけた。よく俺あいつとスパーリングやって生きていたな。

 あっ、スニゲーターってキン肉マンのパワー全部吸って死なせたからかなり要注意じゃないか! ウォーズマンどう対処するんだろう?

 

『こちらの会場にバッファローマンがやってきました!!』

 

 もう悪魔六騎士は一人だけ、奴しかいない。

 

「グォッフォッフォ!」

 

 突然リングに砂煙が舞い降りてきた。やはりあいつだな!

 

『ラストのカードはバッファローマンVSサンシャインです!!』

 

 おぉ! これは分かりやすいパワー対決じゃないか!! めちゃくちゃ迫力ありそう!! 7人の悪魔超人リーダー格、そして悪魔六騎士首領格の激突!! まさに女房を質に入れてでも見に行きたいカードだ!!

 

「グォッフォフォ、運が悪いなバッファローマンよ、俺以外の相手なら少しは勝機はあったのにな~~!」

 

 

「勝機? 少し? 俺は俺が勝つ姿しか想像できてないぜ!!」

 

カ――ン

 

『さぁ各会場一斉にゴングが鳴らされました!! 生き残るは正義か! 悪魔か! 互いの生存とプライドをかけた闘いが今始まります!!』




どうなるんだ!!


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赤く染まる土俵!!の巻

手ごわい敵でも手助け無用さ!!


 最初に動きを見せたリングはウルフマンの試合からだった。

 

ドドドド

 

『ジャンクマン! まずは先手をしかけました!』

 

 ジャンクマンがジャンクハンドをひろげてウルフマンに向かった。

 

「ジャンククラッシュ!!」

 

 ウルフマンはそれに対し、逃げずに逆に突進をしかけた。

 

ドドドド

 

「うおおおお!!」

 

『あ――――っ!! ウルフマン! なんとジャンクマンに対し突っ込んだ!! これはウルフマンといえでもあまりにも無謀か!!』

 

がしぃん

 

 ウルフマンはジャンクハンドを両手で受け止め、ジャンククラッシュを真っ正面から止めた。

 

『ウルフマン!! なんとジャンククラッシュを止めました!!』

 

「ぐっ! ジャンククラッシュを正面から受け止めたのはお前が初めてだぜウルフマン!」

 

「けっ! お前はよほどビビりの超人としか闘ってなかったみてえだな!」

 

「褒めてやると言いたいところだが」

 

グササ

 

 ジャンクマンのボディから数本の針が現れ、ウルフマンの体に突き刺さった。

 

「ぐわあああ!」

 

 ウルフマンは悲鳴を上げ苦悶の表情を浮かべた。

 

『あ――――っと! ジャンクマンのボディから突然針が生えた!! ウルフマン早くも流血だ――――っ!!』

 

「俺の闘い方は通称『血の池地獄』! 対戦を終える頃にはお前の血は全てなくなっているというわけだ!!」

 

がしっ

 

 ウルフマンが両手でジャンクマンの後頭部をつかんだ。

 

「これぐらいのこと、どうってことはねえよ!!」

 

どごぉっ

 

 ウルフマンはジャンクマンの顔面に勢いよく頭突きを食らわせた。

 

「ぐほぁっ!」

 

 思わずジャンクマンが後退した。

 

『ウルフマン! 負けじとジャンクマンに強烈な頭突きだ!』

 

「まだまだいくぜ!」

 

がしっ

 

 ウルフマンは右手でジャンクマンの喉を掴んだ。

 

ずがぁぁん

 

 その状態でウルフマンはジャンクマンをマットに叩き付けた。

 

『ウルフマン追撃! のど輪落としでジャンクマンをマットに叩き付けた!!』

 

 ジャンクマンはダメージがありながらも、たちあがってきた。

 

「次こそはジャンクしてやるぜ!!」

 

どどどど

 

『ジャンクマン! またもジャンククラッシュをしかけにいく!!』

 

「二度も同じ技が通用するかってんだ!!」

 

 ウルフマンが再度ジャンクマンに向かっていった。

 

すっ

 

 ジャンクマンがウルフマンとの距離が近くなったタイミングで上半身を丸め、ウルフマンの両手をかわした。

 

「シャープネスジャンクアッパー!!」

 

がこぉん

 

 ジャンクマンのジャンクハンドがコの字型になり、ウルフマンの顎に命中させた。

 

「ぐっ! 意外と器用な事しやがる!」

 

「当たり前だ! 俺は日夜このジャンクハンドで生活しているんだ! これぐらいの動作なんてことはねえ!」

 

 ジャンクマンがジャンクハンドでウルフマンを持ち上げた。

 

「そうらよっ!」

 

ずがぁん

 

 ジャンクマンが勢いよく投げて、ウルフマンはマットに叩き付けられた。

 

『ジャンクマン! ジャンクハンドで器用にボディスラムを決めた!!』

 

すたっ

 

 ジャンクマンはウルフマンに馬乗りになった。

 

「おっとそうはいかねえ!」

 

がしっ

 

 ウルフマンは両手でジャンクマンの両腕を掴んだ。

 

「マウントからのパンチを防ぎにいったか。しかしお前が怪我をしている状態では防げまい」

 

ぬるっ

 

『ウルフマンの手からジャンクマンの腕が抜けた!』

 

 

「悪魔は計算高い! 俺がただ単に流血を狙ったと思うか! お前の流血が俺の腕にもかかってな! お前の馬鹿力で掴んでもスリップして抑えきれないというわけだ!」

 

ガゴン ガゴン ガゴン ガゴン

 

『ジャンクマン! 倒れているウルフマンにマウントポジションの状態からジャンクハンドで鉄槌を落としにかかる!!』

 

ぴちゃ ぴちゃ ぴちゃ

 

 ウルフマンの血があたりに多く飛び散った。

 

「ウルフマン! ジャンクハンドで顔面が流血で真っ赤になっています!!」

 

「流血はお前にばかりいいわけではねえみてえだぜ!!」

 

するっ

 

 ウルフマンが背中を向けつつ、ジャンクマンの体を振り払った。血の滑りでジャンクマンもふんばりがきかずにバランスを崩した。

 

すたっ

 

 ウルフマンがすぐにスタンディングの体勢をとった。

 

『ウルフマン! 大流血しながらもまだまだ試合を諦めてはいません!!』

 

 他の正義超人もウルフマンの劣勢の状態が気になるが、悪魔六騎士との対戦宙では流石にウルフマンに対しアドバイスも贈れない。

 

「ウルフマン、確かにお前は俺のマウント地獄から脱出した。しかしその血まみれの手で俺のジャンククラッシュを受け止めきれるか?」

 

「ぐっ!」

 

どどどど

 

『ジャンクマン! 再度突撃! ウルフマン危うし!』

 

「超人横綱たるもの、誰が相手でも横綱相撲をとるまでだあああ!!」

 

『ウルフマン! 無謀にもジャンクマンに突撃していく!!』

 

「ジャンククラッシュ!!」

 

がしぃぃん

 

『ついにウルフマンにジャンククラッシュが決まった!! あ、いやっ!!』

 

 ジャンクマンの顔面にウルフマンの渾身の右の張り手が届いていた。

 

「うぐぐ、まさか相打ち覚悟で俺のジャンククラッシュに張り手を決めるとは……しかしお前のダメージの方が大きいんじゃないのか……」

 

 ウルフマンがジャンクハンドに挟まれた状態で大量に流血していた。

 

「けっ、部屋でのしごきに比べれば、これぐらい可愛げがあるもんさ! ドスコ――イ!!」

 

ばしぃぃん

 

『ウルフマン! ジャンククラッシュが決まったというのにもう片方の左手で張り手を決めた!!』

 

よろっ

 

 ウルフマンが出血多量により少しよろめいた。

 

ばしぃん

 

 ウルフマンは両手で自分の頬を叩いて意識をはっきりさせた。

 

「さぁ地獄の横町へご案内だ――――っ!!」

 

がしっ

 

 ウルフマンが両手をジャンクマンの首にかけた。

 

ぶぉおおおん ぶぉおおおん ぶぉぉおおん

 

『出ました――――っ!! ウルフマン! 一発逆転をかけての合掌捻りだ――――っ!!』

 

「馬鹿め! 自分で自分の首を絞めおって!」

 

ぐしゃあん

 

 ジャンクマンが合掌捻りの回転に勢いがつく前にジャンククラッシュを決めた。

 

「ぐわぁぁ!!」

 

『あ――――っ! ジャンクマン! 合掌捻りを阻止しようとジャンククラッシュを決めた!』

 

 ウルフマンの動きが止まってしまった。

 

「なかなかにしぶとい奴だったが流石にくたばったか」

 

 ジャンクマンが表情に余裕を見せた。

 

ぶおぉおん

 

「なに、こいつまた再開しやがった!!」

 

ぴちゃ ぴちゃ ぴちゃ ぴちゃ

 

 ウルフマンがリング外に血をまき散らしながらも合掌捻りをやめなかった。

 

『ウルフマン! もはや立っているのもやっとの状態ながらも!! 合掌捻りをやめません!』

 

「なぜだ……なぜこいつは立っているんだ!?」

 

 ジャンクマンが焦りの表情を見せた。

 

ぼわぁ

 

 ウルフマンの後ろに魔雲天の亡霊の姿が見えた。

 

「な、なぜこいつがウルフマンの後ろに!?」

 

「教えてやるよ、俺は亡くなった仲間のためだけじゃねえ! 命を賭して闘いあったライバルの分まで闘っているからだよ!!」

 

ぶおぉぉん ぶおぉぉん

 

『ついにウルフマンの合掌捻りでジャンクマンの体が完全に宙に浮いた!』

 

「地獄の横町へご案内だ!! 合掌捻り――――っ!!」

 

どしぃぃぃん

 

 ジャンクマンは勢いよくマットに叩き付けられ失神した。

 

「ぐほっ!」

 

 ウルフマンもジャンクマンとほぼ同じタイミングでマットに倒れた。

 

ワ~ン ツ~ スリ~

 

 カウントが進むが両者が立つ気配がなかった。

 

カン カン カン カン

 

『あ――――っ! 両者ノックダウンで試合終了! ウルフマン! 勝利かと思いましたが、流石にダメージが大きく倒れた――――っ!! しかし、悪魔六騎士ジャンクマン相手にからくも引き分けました――――っ!!』




後は頼んだぜ皆!!


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前世からの因縁!!の巻

どう立ち向かう楓!!


 カナディアンマンは考えていた。

 

(この勝負、他の仲間にかまっている余裕はねえが、できれば犠牲は少なくしたい! ならば、俺がなるべく早く試合の決着をつける必要がある。しかし目の前のアシュラマン、原作ではそこまで勝ち星に恵まれていないが、まず普通にやっては勝てない!!)

 

「カーカカカ!!」

 

『アシュラマン! 六本の腕でパンチのラッシュをしかけた! カナディアンマンガードを固めて防戦一方だ!』

 

「どうやら手も足も出ないようだな!」

 

 カナディアンマンがにやりと笑った。

 

「いいや、出るんだなこれが」

 

ばきん

 

『まずはカナディアンマン! 左ジャブでアシュラマンの顔面をとらえた!!」

 

「その程度のパンチでこの私がひるむと思うか!!」

 

 アシュラマンは強引にカナディアンマンとの距離をつめてきた。カナディアンマンはサイドステップワークを巧みに使いながら、アシュラマンに攻撃を当てさせない。かつ、自身のリーチをいかし、距離をつめるアシュラマンにジャブを次々とヒットさせた。

 

バキ バキ バキ

 

 ジャブの連打で、ついにアシュラマンがよろめいた。

 

『おおッ!! 意外や意外!! カナディアンマンが悪魔六騎士の一人アシュラマン相手に自分の試合をしています。』

 

「それならばこれでどうだ!」

 

 アシュラマンが六本の腕でガードを固めて距離をつめてきた。

 

「そう来ると予想していたぜ!!」

 

どごっ

 

『カナディアンマン! ムエタイ式の前蹴りでアシュラマンの太もも、ボディを強烈に押すように蹴っていくぞ!! それでも距離をつめようとするアシュラマン!! カナディアンマン!! 前蹴り、ジャブ、ステップワークを巧みに使い、距離をつめさせない!』

 

 アシュラマンもこのままでは展開が変わらないと思い、一端足を止めた。

 

「ぐっ! こいつめ! 姑息な戦法を!!」

 

(もしかしてこの闘い方いけるのでは? と思ったが、こうも面白くはまるとは思いもしなかったぜ。まだこの時代では頭角を現していない格闘家セーム・シュルトが実際にK−1で使った戦法、俺のリーチならできると思ってやってみたが、あのアシュラマン相手に優勢に闘っているなんて信じられないぜ!!) 

 

カコン

 

 リングに空き缶が飛んできた。それと同時に観客から大ブーイングもあめあられのごとく降りかかってきた。

 

「カナディアンマン! なにつまんねえ闘い方してんだ!」

 

「逃げ回ってちょこちょこ当てるなんざ見てて面白くねえんだよ!!」

 

「お前なんか死んだままの方が良かったんだ!!」

 

「アシュラマンも情けねえぞ! それでも悪魔六騎士かよ!!」

 

(やっぱりそうなるわな……セーム・シュルトは強すぎたけど闘い方つまらなかったし……)

 

『観客から容赦ないブーイングがカナディアンマンに飛んできました!! これは幾分か仕方ないかもしれません!! 私も公平に実況する立場ではありますが、アシュラマンの方を応援したくなってきました!!』

 

(実況、てめえもかよ!)

 

「よそ見するとは舐めているのか!」

 

『アシュラマン! カナディアンマンに高速のタックルをしかけた』

 

 

ズゴォ

 

『カナディアンマン! アシュラマンのタックルにあわせてカウンターの膝蹴りだ!! アシュラマンの笑い面が潰されました!!』

 

(リーチのある選手には打撃戦より寝技戦の方が良い。これも闘いの鉄則だからな。タックルをしかけるとよんでいたぜ)

 

「カカカ、そんな貧弱な膝蹴りで私は倒せないぞ!」

 

「うおっ!」

 

『アシュラマン! カナディアンマンからマウントポジションをとることに成功した!!』

 

「さぁ、この六本の腕で痛めつけてやろう!! 怒り面!!」

 

『アシュラマン! 3つの顔のうちの一つ、怒り面に変えてカナディアンマンに鉄槌を食らわせていく!! 六本の腕の雨嵐にカナディアンマン上手く対抗できない!』

 

(流石、アシュラマン、一撃一撃が重いぜ!)

 

「カーカカカ! 私は人の三倍の腕が多い。だからこのパンチの威力も三倍となるのだ!!」

 

「つうことは、ダメージも三倍になるってことだよな!」

 

 カナディアンマンが両脚をアシュラマンの右腕三本にからめた。

 

『上手い! カナディアンマン! アシュラマンの一瞬の隙をつき、下から腕十字だ! なんとアシュラマンの三本の腕を一気にしめあげているぞ!!』

 

(軽々とダメージが三倍になると言ったが、アシュラマンの抵抗を抑えながら三本も同時にしめつけるのはきついぜ。やっぱ、ジャスティスマンすげえんだな)

 

 アシュラマンは三本の腕の関節を痛めつけられ。顔をゆがめた。

 

「ぐがが!」

 

「これが俺の盟友、スペシャルマンより教わったグラウンドテクだ! それプラス俺のグレイシー柔術の雑学だ!」

 

「ぬかせ、これしき!」

 

ぐいっ

 

『なんとアシュラマン! カナディアンマンに腕十字をかけられた状態で持ち上げた!!』

 

みしし

 

「おいおい、俺の巨体をもちあげたら余計に腕が痛むぜ!!」

 

「それがどうした!」

 

 アシュラマンは自分の頭までカナディアンマンの体を持ち上げてから、カナディアンマンを後頭部からマットにたたきつけた。

 

ずがぁぁん

 

『アシュラマン! 腕十字をかけられながらも強烈なパワーボムでカナディアンマンをたたきつけた!!』

 

(やばい……意識が遠のく……アシュラマンもバッファローマンと同じ1000万パワー……強烈だぜ……俺としたことがジャクソンのパワーボムネタでやられるとは……)

 

『アシュラマンダウン! ここまで優勢に進めていましたが、これでおしまいかっ!!』

 

「さて、ここいらでこの技でとどめといこうか」

 

『アシュラマン! カナディアンマンを自身の頭部まで持ち上げ技を決めていくぞ! あああこれはまさか!!』

 

 アシュラマンがアシュラバスターの体勢にとらえた。

 

『キン肉マンとやら! とくと見るが良い! これがお前のキン肉バスターを上回るアシュラバスターだ!!』

 

 キン肉マンがモニター越しにそれを見るが、あまり驚いていなかった。

 

『このアシュラバスター! キン肉バスターに比べ、両腕、両脚のフックが強くなり、ダメージも大きくなり、さらに脱出も難しい物になっております!! これはキン肉バスターを越えるバスター技だああああ!!』

 

「ふん、お前のぱくり技の情報なんざ、カナディアンマンからとっくの昔に教わっていたわい!」

 

 キン肉マンのまさかの発言にアシュラマンが驚いた。

 

「なに! なぜこいつが知っているんだ!」

 

 とうのカナディアンマンはグロッキー状態で、話せない。亜種漫画上空まで持ち上げられた時点でようやく意識を取り戻した。

 

『アシュラマン! カナディアンマンに必殺のアシュラバスターを決めに入ったああ!!』

 

(え? あああ、やばいやばい!! これ決まったら俺死ぬ!! ウォーズマンの体内じゃないからクッションなんてねえよ!! 落ち着け落ち着け! このアシュラバスターは初期の形のやつだから、これだ!!)

 

すっ

 

 カナディアンマンは首を後ろに抜けさせ、すかさずアシュラマンの後方に体を移した。

 

「なにっ! 私のアシュラバスターが!!」

 

「悪いがこの技の弱点も見えているんだよ!!」

 

『カナディアンマン! すかさず技の体勢を入れ替え、変形ツームストーンドライバーの体勢に決めた!!』

 

「貴様! 自分がやったことを理解しているのか! 私の技を破ることはキン肉マンの技を破るに等しい行為なのだぞ!!」

 

「そんなこととっくの昔に了解とっているぜ! いくぜ、キン肉、もとい、カナディアンドライバアアア!!」

 

ずがぁぁぁん

 

『あああああ!! カナディアンマン! 新技カナディアンドライバーでアシュラマンをマットに叩き付けたあああ!!』

 

 キン肉マンがカナディアンマンを見て喜ばしそうに見ている。

 

「やったぞカナディアンマン! 私のキン肉ドライバーには及ばないが良い感じだったぞ!!」

 

「へへ、お前の特訓に付き合ったから、それなりに良いキン肉ドライバーは出来たと思うぜ! さぁゴングはまだか!」

 

「カカカ……」

 

 カナディアンマンの後ろからアシュラマンの笑い声が聞こえてきた。驚いた。

 

「まさか、私にこれほどのダメージを負わせるとはな……」

 

『あ————っと! アシュラマンの六本の腕が千切れています! しかしそれでもなお立ち上がってきます!!』

 

「流石アシュラマン、大分タフなようだな!」

 

(ん? なんか俺の腕に違和感を感じる。まるで腕がないかのような感覚が、げぇ————っ!!)

 

『なんだこれは! カナディアンマンの腕がどす黒く変色しているぞ!!』

 

「お、俺の腕がっ!? まさかアシュラマンてめえ!!」

 

「私の六本の腕はなくなった、しかし私は亡くなった超人の腕を奪うことが出来る」

 

 アシュラマンの胴体から、ステカセキング、魔雲天、ミスターカーメン、アトランティスの腕が生えてきた。

 

「そして対戦相手の腕も同様にな!!」

 

『アシュラマン! なんとここまでの闘いで亡くなった悪魔超人、そしてカナディアンマンの腕を自身のものとした————っ!!』

 

「うわああああ!!」

 




もはや絶対不利!!


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なにもしない友情!!の巻

またもや超人墓場いきか!?


(原作のテリーマンみてえに俺の両腕まで奪われてしまった……もう駄目だ……いや!)

 

「確かに俺の両腕はなくなっちまったが、今のお前のダメージは大きい! それなら例え両腕がなくなっても十分勝機はある!!」

 

ぽつ ぽつ

 

 リングに雨が降ってきた。それを見るとアシュラマンが何か案を思いついた顔をした。

 

「貴様には散々酷い目に遭わされたからな、少し遊んでやるか」

 

べりりり

 

 アシュラマンはリングのマットをいとも簡単にはずした。特設の高所のリングのため、床が完全になくなってしまった。

 

「こら! 両腕がなくなっているから落ちないようにするの大変なんだぞ! さっさと口から糸でもはいて足場をつくりやがれ!!」

 

「やれやれ、驚かせてやろうと思ったのにネタバレしおって。まぁいい、私は蜘蛛の化身でもある。ゆえにこのような芸当もできるのだ」

 

ぴゅうう

 

 アシュラマンが口から何本も糸を吐き出し、マットの代わりに頑丈な蜘蛛の巣を張った。

 

(さて、原作でもあった勝負展開だが、今の俺には両腕がない。うかつに動くとアシュラマンの攻撃をうけるだけだ)

 

「いかぬのか? ならばこちらからしかけるぞ!」

 

『アシュラマン! リングロープを使い勢いよくカナディアンマンのもとへ飛んでいく!!』

 

(足だけでなんとかこの男を倒す方法……これだ!)

 

『カナディアンマン観念したか!! ロープを背にして逃げません!!』

 

「カカカ、その体じゃあこの蜘蛛の巣リングは満足に動けまい!」

 

「そいつはどうかな?」

 

『カナディアンマン! 突撃してきたアシュラマンにタイミングを合わせて両脚をあげてヘッドシザース、いや、首四の字か! そのままリング外に出て落下だ!! カナディアンマンなにをしているんだ!!』

 

「貴様! 両腕がなければ頭からしか落下できないぞ!! いますぐ私の首四字を解かなければ死ぬぞ!!」

 

「馬鹿言うな、この技はロビンマスクのロビンスペシャルそのものだ。決まれば一撃で決まる。もっとも、俺も死を覚悟しなきゃいけないけどな……」

 

(テリーマンも両腕を奪われた状態では引き分けを狙うのがやっとだった。ならば俺もそれを見習わねえとな)

 

『カナディアンマン! 道連れ覚悟でロビンスペシャルをしかけた!! しかしカナディアンマンは頭でしか受け身をとれない状態です!!』

 

「なるほど、アイドル超人の一人ロビンマスクの開発した技だけあるな。これは私でもまともにくらってしまうと危ない。しかし先程お前は良いヒントをくれた。首のフックの大事さをな」

 

 アシュラマンが口を大きく開けた。

 

(え? まさか、これってアシュラマンがアルティメットスカーバスター破った時の奴をやる展開?)

 

「頭寸尺変え!」

 

がこん

 

『これは残酷な光景! お子様や心臓の弱い方はこの場面だけは目を背けて下さい! アシュラマン口を勢いよく閉じて自身の歯を砕いて顎の形を変えました!!』

 

(うわっ、俺の方にアシュラマンの歯や血が飛んできた! これグロイから苦手なのに……そしてここでまさかの二世ネタがきたか)

 

「私の顔の寸尺を変えることにより、わずかな隙間ができた」

 

すっ

 

『アシュラマン! カナディアンマンの両脚のフックより脱出した! そして空中でアシュラバスターをかけなおした!!』

 

「カカカ、名付けて改良アシュラバスター! 六本中二本の腕をお前の首のフックに使う。これで脱出はできまい!」

 

ぶちん ぶちん

 

 アシュラマンがカナディアンマンのどす黒くなった両腕をとらえるといとも簡単に千切れた。余った両腕をアシュラマンの両脚にかけ直した。

 

『カナディアンマン万事休す!! これでフィニッシュとなるか!!』

 

(だめだ、今の俺に脱出する手段が思いつかねえ……クソ力でなんとか出来るレベルでもねえ……)

 

ずがぁぁぁん

 

 両者の落下と共に、あたりに砂煙がたちこめた。やがて両者の姿が明らかになっていく。

 

(あれ、意識がある。思ったよりもダメージがない、これはどういうことだ?)

 

「まさか、なぜそんな!?」

 

『カナディアンマンが奇跡を起こしました!! なんとなくなった両腕がはえております!! なくなった両腕でアシュラマンの首のフックをはずし、さらにその両腕でダメージを最小限に抑えています』

 

(頑張るんだ、カナディアンマン)

 

 カナディアンマンの頭に聞き覚えのある声が響いた。

 

「まさか、お前が助けてくれたのか……」

 

 カナディアンマンが両腕を見ると、それはスペシャルマンの両腕であった。

 

「命拾いしたなカナディアンマンよ! しかし次はそうはいかん!!」

 

『アシュラマン! カナディアンマンをリングに放り投げ、再度自分もリングインしたぞ!!』

 

(冷たい! なんだ、リングのマットがいつのまにか新雪で覆われているぞ!! たしか原作でも天候が変わりやすいからリングの形状も度々変わっていったな!)

 

「この新雪の上で私の竜巻から逃げ切れるかな?」

 

 アシュラマンが六本の腕を勢いよくふった。

 

「くらえ! 竜巻地獄!!」

 

ヒュゴオオ

 

『アシュラマン! 再度六本の腕で巨大な竜巻をつくりあげた!! 竜巻がカナディアンマンに襲いかかるぞ!!』

 

「逃げるも戦法のうち、ってこの新雪じゃあ動けねえ!!」

 

「それを分かっての竜巻地獄だ! 大人しく餌食になるが良い!!」

 

 

(どうする? もしもキン肉マンの世界であれば、突拍子もない発想をすればもしかしたら乗り切れるかもしれねえ。ようし!)

 

ぐるん ぐるん ぐるん

 

『カナディアンマン血迷ったか!! 突然その場で両足を軸にして、勢いよく体を回転させはじめた!!」

 

「血迷ってなんかいねえ! 見るが良い! これぞカナディアンブリザードだああ!!」

 

びゅうんびゅうん

 

『これはすごい! カナディアンマン! なんと自身の巨体を勢いよくふりまわして巨大な竜巻となった!! 雪もまじりまるでブリザードだあああ!!』

 

ひゅごごごご

 

 カナディアンマンと竜巻が激突した。カナディアンマンのパワーが竜巻と釣り合う状態となった。

 

「カカカ、私の竜巻を止めただけでも大したもんだ。しかしもう一つはさばけぬようだな」

 

 カナディアンマンにもう一つの竜巻が迫り来るが、自身と対峙している竜巻を止めるので精一杯の状態である。

 

「ぐっ! 持ちこたえられねえ! うわぁ〜〜〜〜!!」

 

『カナディアンマン! 耐えきれず竜巻によって上空へ吹っ飛ばされた!!』

 

がしっ

 

 アシュラマンは空中でカナディアンマンを再び改良アシュラバスターにとらえた。

 

「カカカ、まさかアシュラバスターを三回も出すことになろうとはな。それだけでも大した物だ」

 

(思った以上に技が決まっていて外れねえ! ジャスティスマンは脚のフックが緩いと言っていたが俺の力では無理だ。何か、何かこの技を抜ける方法はないのか?)

 

「ぬおおお!!」

 

『カナディアンマン! 改良アシュラバスターから逃れようと懸命に抵抗しています!』

 

「無駄だ! 潔く私の技を食らうが良い!!」

 

(やっぱり駄目なのか……そうだよな……この世界でカナディアンマンとして俺は生まれ変わろうと思ったが駄目だった……そもそも前世の俺は凡人そのもの、でも夢だけは見ていた……大学で立派な研究者になりたいと思ったが努力したことで俺の地頭の悪さが分かり挫折……料理人なってみたいと思ったが、親方の厳しさに挫折……歌が好きだったから、仕事しながら歌手を目指そうかと思い合唱やったりヒトカラで鍛えたが、そもそもカラオケ大会では俺以上に上手い歌を歌えるごろごろといた。しかも俺の声質もそこまで良くなかった……もう夢を諦め凡人として生きようと思っていたら、ある日、俺のよく知っている女の子の同級生が宝塚で活躍していることを知った……中学生の頃、俺と同じ目線でいた子がずっと夢を追いかけ今やスーパースター、そして俺は夢をおいかけたが凡人のまま……現にこの世界でも連敗しまくり……悔しい……なんて悔しい人生なんだよ……)

 

 いつしかカナディアンマンは涙を流していた。

 

「なんだ、泣き虫な奴だな? 一度死んだのに死にゆくのが怖いのか? 貴様のような奴相手に苦戦したと思うと私はとても腹ただしくなる!! だがこれでおしまいだ!! 改良アシュラバスター!!」

 

ずさぁ

 

(なんだ、思ったよりも体の衝撃が少ない。というより改良アシュラバスターの威力ってこんなものなのか?)

 

『ああっと! 改良アシュラバスターの着地点が雪上だった!! 技の威力が思った以上に出ず半減されたか!』

 

「ちっ、貴様に調子を狂わせられたせいで着地点を誤ったか! まぁいい! 技のフックはまだ完璧、このままリング下の地上まで落下すれば私のKO勝ちだ!!」

 

『アシュラマン!! 技の体勢を崩さずに地上に向けて四度目のアシュラバスターだ!! これでようやく試合が決まるのか!!』

 

(だめだ……今の俺じゃあ誰かのために闘おうなんて気にならねえ……おれからすればクソ力もマグネットパワー同様人様から貰った力……俺自身が強くなったというより強い武器を身につけただけだ……使えば勝てる可能性も出てくるだろうが……どうして俺は凡人のくせに無駄にプライドが高いんだろうな……)

 

(そんなに自分を卑下することはないよ)

 

 カナディアンマンの脳内に聞き覚えのある声が響いた。その目にはありえないはずの存在が映っていた。

 

(スペシャルマン……)

 

(君は何か違うなと思っていたけど、本当はこの世界の超人ではなかったんだね)

 

(騙すつもりはなかった。ただ信じて貰えないと思って……)

 

(そんなことは良いさ。僕も君同様努力はしてきたが、一流になれる素質はなかった。誰だって基本凡人さ。恥じることはない。いや、基本凡人ではあるが、才能は誰にだってある)

 

(お、俺には才能なんて一切ないんだ……)

 

(才能に関しては個人個人が苦労して見つける物だと僕は思う。でも僕はこうやって君と出会って才能を見つけた。誰よりもカナディアンマンという超人のピンチを助けられる才能をね)

 

(スペシャルマン……)

 

(あとは君自身の人生に答えを聞くんだ。君が自分一人でいきたいのであれば僕はそれを信じて何もしない。それも一つの友情の形だと思うんだ……)

 

 スペシャルマンの魂がカナディアンマンのもとから離れた。同時にカナディアンマンの中に闘志の火種が産まれた。

 

ぬるっ

 

 カナディアンマンの頭がアシュラマンの手の中から抜けた。

 

『カナディアンマン! なんと、アシュラマンの頭のフックを外した!』

 

(どういうことだ? なぜ外れたんだ?)

 

「ちっ、泣き虫野郎め! 貴様の涙で手が滑ったぜ!」

 

「見つけた……たった一つの……俺の良さを今見つけたぜ!!」

 

ぼわあ

 

 カナディアンマンの体が金色に光り始めた。

 

『カナディアンマン! 首からエスケープし、空中で素早く技を決めていくぞ!!』

 

「なにっ! 今までにないパワーがこいつから産まれてきている!?」

 

「俺の良さ! どんなに挫折、困難が俺の前に立ちはだかろうとも、またチャンスを狙うしぶとさだ! 泣き虫涙で脱出とは情けねえ話だが、このチャンスを逃さねえ!!」

 

がしっ

 

『カナディアンマン! 空中でリビルトカナディアンバックブリーカーの体勢に決めた!!』

 

 アシュラマンが苦悶の表情を浮かべた。

 

「な、なんだこの技はっ!? 体にすさまじいGがかかり、折り曲げられるかのようだ!!」

 

「うおおおおお!!!」

 

 カナディアンマンは気合いをこめ、全身のパワーをフルに稼働させた。

 

「カナディアンバスター!!」

 

ずがああああん

 

 技が決まった瞬間、アシュラマンの体の力が抜けたのを、カナディアンマンは感じた。もう勝負は決したと思い、技を外した。

 

カン カン カン

 

『決まりました! カナディアンマン! リビルトカナディアンバックブリーカーを発展させたカナディアンバスターで悪魔六騎士の一人アシュラマンをマットに沈めました!! 大逆転勝利です!! そしてこれがカナディアンマンの念願の初勝利でもあります!!』

 

「ありがとう……」

 

 カナディアンマンは空を見上げながら拳を突き出し、スペシャルマンに礼を言った。

 




祝!初勝利!!


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慈悲の否定!!の巻

まだまだ地獄は続く!!


 念願の初勝利、しかも相手はアシュラマンだ! すっげえ嬉しいぜ!! おっ、いつの間にか俺の腕が自分のものになっていたか。スペシャルマンにはいつも助けられるな……。

 

「そうだ! 今の戦況はどうなっているんだ?」

 

 俺はすぐに全試合を写しているモニターを見た。ちょうどウルフマンとジャンクマンの試合が引き分けで決着したところだった。

 

「ウルフマンがジャンクマンと引き分けたか……もっと俺が早く試合を決められれば……いや、アシュラマン相手に勝てただけでも奇跡か……」

 

「カカカ……」

 

 アシュラマンが弱々しい笑い声を出した。

 

「魔界のプリンスたるものがこんな雑魚に負けてしまうとはな……死んだ悪魔超人の腕も使ったというのに……」

 

「アシュラマン、今のあんたじゃ分からないとは思うが、俺は死んだ仲間のためにこの試合勝とうと思った。一方お前は死んだ仲間を試合を有利に進めるための道具としてしか思っていなかった。そこが勝敗の差だよ……」

 

「何を訳の分からない事を言ってやがる……」

 

 駄目か、俺が一回闘ったぐらいじゃあ正義に目覚めなかったか。

 

「いつでもリベンジは受けてやる! お前の捲土重来を期待するぜ!!」

 

「けっ、生意気ぬかしおって……いわれずとも、貴様に必ずリベンジしてやる!!」

 

ばたん

 

 それだけ言ってアシュラマンは倒れた。

 

「よし、俺の試合は終わった! ここからは皆のために俺が全力でアドバイスしてやるぜ……といっても、一部俺のアドバイスなんか受けなさそうなプライドの高そうな奴らもいるからな……」

 

『あ――っと武道館で行われているウォーズマンVSスニゲーターの試合で動きが見えました!!』

 

 俺はすぐに二人の試合を注目した。

 

ガブ

 

『あ――――っ! ウォーズマンがスニゲーターに右肩を食いちぎられた――――っ!!』

 

「ククク……これはまだほんの序章にすぎん。地獄はこれからだぜ。そりゃあ地獄の宇宙遊泳!!」

 

ドガッ

 

『あ――――っと! スニゲーター! ウォーズマンをスニーカーキックで空中高く蹴飛ばした!! 落下するウォーズマンに対し大きな口を開けて待ち構えているぞ!!』

 

ガブ

 

『ウォーズマン! 今度は脇腹を食われた――――っ!!』

 

 おいおいまさか、ウォーズマンここにきて噛ませ犬化しねえよね……。

 

「ケケケ、まだおねんねするなよ。ミスターカーメンが酷い死に方をしたからな。お前も相応の苦しみを味わってもらわないとな!」

 

ドガッ

 

『スニゲーター! またもウォーズマンをスニーカーキックで宙高く蹴飛ばした!! いや、ウォーズマン! 空中で体勢を整え、体を回転させる!!』

 

ぎゅるるる

 

『でました! ウォーズマン! ベアークローでスニゲーターへ突撃だ!! スニゲーター咄嗟によけたが、腹部をかすめて出血したようだ――――っ!!』  

 

「やれやれ、ワニ地獄と聞いて期待してお前の技を受けてやったが、がっかりしたな」

 

 ウ、ウォーズマンが喋った!! この闘いの前でもコーホー貫いていたのにようやく喋ったぞ!!

 

「なんだと!?」

 

「今から戦争地獄をおみまいしてやるぜ!!」

 

『ウォーズマン! スニゲーターの素早くスニゲーターの背後にまわり、両肩にのった!!』

 

がん がん がん がん

 

『ウォーズマン! スニゲーターにエルボースタンプだ!! ウォーズマンの肘が容赦なくスニゲーターの頭蓋骨を破壊しにいっているぞ!!』

 

「これぐらい、屁でもねえぜ!」

 

 スニゲーターが流血しながらも劣勢の様子を見せない。

 

「こいつはまだ地獄の入り口ってところだぜ。くらえ! 地獄のフィンガージョイント!!」

 

 ウォーズマンが右手のベアークローをスニゲーターの口の上から、左手のベアークローを口の下から貫通させるように刺した。

 

ざしゅ

 

『なんと残酷な!! ウォーズマン!! 自身のベアークロー両方でスニゲーターの口に刺してワニの口を封じた!! しかもベアークロー同士がかみ合って容易に外せない状態だ――――っ!!』

 

「ぐぐがぁ――――っ!!」

 

 スニゲーターが声にならない悲鳴をあげた。

 そして実況席から突然タザハマさんが現れた。

 

『フィンガージョイントとは橋と道路を繋ぐ際に使われる鋼鉄の部材ですね。右手と左手の指同士をはめあわせたような形です。まさにベアークロー同士をかみ合わせた様子にも似ています。この技はダメージ性もさることながら、ワニの弱点である口を開く力の弱さもついています』

 

「くくく、その口が使えなきゃただのスニーカーだな」

 

「あ、悪魔を、舐めるんじゃねえぞ!!」

 

ビリッ

 

『あ――――っ!! スニゲーター!! 自ら自身の口を引き裂いたぞ!! これは自殺行為だ――――っ!!』

 

「いや、これは脱皮に近い物だな」

 

 ウォーズマンが冷静に観察した。スニゲーターの裂け目から新たな生命体が飛び出した。

 

『スニゲーター! なんと巨大な亀に変身しました!!』

 

「ケケケ!! さっきのおかえしはたっぷりとしてやるぜ!!」

 

 スニゲーターが大ぶりのフックのラッシュをしかけるがウォーズマンはスウェー、ウェービングで容易によけていく。

 

『ウォーズマン! 冷静にスニゲーターの攻撃をよける!!」

 

ばしん

 

『ウォーズマンの強烈なローキックで亀となったスニゲーターを転ばせました!!』

 

「ま、待て! お前は強い! だから最期の変身をしよう!」

 

『スニゲーター! みるみる間に巨大スニーカーへと変身しました!!』

 

 早いっ!? 亀の次は蛇になってエリマキトカゲになってカメレオンになるはずなのに! ウォーズマンが強すぎたから最終形態である恐竜の足への変身を早々に決めたか!! 

 

『ウォーズマン! ベアークローで一気に巨大スニーカーの紐を切った! あ――――っ!! スニーカーから巨大な足が出てきたぞ!!』

 

待てよ、確か原作だとキン肉マンが……ウォーズマンが危ないっ!!

 

「ウォーズマン! お前は聞かないと思うが忠告をさせて貰う!! そいつは負けると分かった瞬間相手のパワーを全て奪い取る戦法に出るはずだ!! スニゲーターはもう負け戦を承知している!! このまま闘うとお前は死ぬぞ!!」

 

「ケケケ――!! カナディアンマンとやら博識じゃねえか!! まぁ今更それを言ったところでこいつに対処の方法はないだろうぜ!!」

 

 スニゲーターは俺の話を聞いているが、ウォーズマン、聞いてくれるかな……。

 

「カナディアンマンよ、一応礼は言っておくぜ」

 

 おぉ! ウォーズマンに俺のアドバイスが届いたぞ!!

 

「正直こいつは余裕で倒せそうだから少しばかし遊んでやろうと思った。だが遊んで闘いを長引かせるとパワーを吸収される可能性がでる。ゆえにこれより一撃必殺で勝負を決めることにした!!」

 

「一撃だとっ!?」

 

「そうだ、まずはここだ!!」

 

すぱ すぱ すぱ

 

『ウォーズマン!! ベアークローでスニゲーターの足の爪を全て切った!!』

 

 スニゲーターが焦りの態度を見せた。

 

「やはりな。お前の爪から超人強度を吸収できると俺のファイティングコンピューターが計算結果を出したがずばり正解だったか」

 

 えっ? そんなの原作でも出てねぇぞ!! つうかウォーズマンすげええ!! 大体結果のともわないファイティングコンピューターがこの試合でまともに仕事をしているぞ!!

 

「ケケケ、だからなんだってんだ!! 爪ぐらいものの数分で生える!! それに俺の本体はすぐには分からねえぞ!!」

 

 スニゲーターの四本の指がそれぞれ顔を現した。

 

「そんなもの、これですぐに分かる」

 

 ウォーズマンがマットに何かを転がした。それを見てスニゲーターの人差し指の表情が変わった。

 

「本体はお前か」

 

ぎゅるるるる

 

『ウォーズマン!! 電光石火のベアークローでスニゲーターの人差し指をねらった!!』

 

 スニゲーターがウォーズマンの攻撃に気付くタイミングが遅れた。

 

 

ぐしゃあ

 

『ウォーズマン!! スニゲーターの右人差し指をもぎとった!! ああ!! スニゲーターの本体の足が途端に動かなくなりました!! これはスニゲーターこれ以上の試合は続行不可か!!』

 

カン カン カン カン

 

『決まりました!! ウォーズマン!! 序盤はスニゲーターに苦戦も見られましたが終わってみれば実力の差を見せ付けての圧勝でした!!』

 

 ウォーズマンの奴、何をマットに転がしたんだ? あれは……蛇……掌サイズの蛇だな……なんか誰かの頭についていた記憶が……あっ! 分かった!!

 

「てめぇ……なんで俺がミスターカーメンにくれてやった蛇を持っていやがるんだ……」

 

 えっ? まさかミスターカーメンのあの蛇はスニゲーターがあげたものだったの!? 初耳だ!! てっきり俺はミスターカーメンの所持品かと思っていたぞ。

 

「この蛇はあの雑魚のカーメンには不釣り合いな不思議な力を持った物だった。カーメンよりも強い奴がこれをくれたと睨み、これさえあればさらに強い奴にであえると予想した。そして爬虫類のスペシャリストであるお前と出会った。それだけでも答えは導き出せたが、お前からカーメンに対する発言があった。それで俺は確信を得たと言うことさ」

 

「ちっ、お前の言うとおり、そいつは教官として俺が鍛え上げたたよりない弟子に餞別としてやったものだ・・・・・悪魔六騎士という立場上処刑したが・・・・・・あいつのためにもこの試合勝とうと思った・・・・・・」

 

「はっはっはっは!!」

 

 ウォーズマンが突然笑い出した。

 

「今更ながら、カナディアンマン達とスパーリングして良かったと思うぜ。俺はあいつらから誰かのために闘おうと思う慈悲の心が、感情に動きを出すと学んだ。スニゲーター、それがお前の本体を見抜くきっかけとなった」

 

「・・・・・・弟子の遺品による動揺が敗因か・・・・・・しかし弟子の死をなんとも思わないなんて・・・・・・俺には到底できねえな・・・・・・」

 

 スニゲーターは息をしなくなった。ウォーズマンがそれを確認し、モニターの方を見た。

 

「今こそ正義超人達に言う! お前らの慈悲の心、つまり友情パワーはいずれ自身の敗北につながる!! 現に俺と闘ったスニゲーターが慈悲の心を持ったがために敗北した!! こんなものは早々に捨ててしまえ!!」

 

「なんだとっ!!」

 

「お前!! 私達正義超人の思想を否定するつもりか!!」

 

 試合の終わったウルフマン、そして交戦中のキン肉マンがウォーズマンに怒りを露わにした。もちろん俺もウォーズマンに対して思うところがある。まさかロビンマスクと出会ってないウォーズマンの心がここまで荒んでいたとは・・・・・・。俺はウォーズマンが強いからここまでこいつの性格を見過ごしてきたが・・・・・いずれあいつとぶつかりあわなきゃいけないかもしれねえ・・・・・・。




氷の精神を溶かす時は来るのか?


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暗黒穴(ブラックホール)の奇術ショー!!の巻

イッツザショータイム!!


「おっと、これ以上の内輪もめは互いにとっても得ではない。今後の俺達の対戦相手を左右する闘いがまだ三つも残っているからな。と言っている内に動きがでてきたようだ」

 

 ウォーズマンがそう言うと、ブラックホールとプラネットマンの対峙する豊島園の遊園地内の特設リングに注目が集まった。ブラックホールとプラネットマンの両者がにらみ合っている。

 

「まさか、お前とこうやって敵対するとはな。良い悪魔超人に育つと思っていただけに残念なこった」

 

「こっちとしては真逆の気持ちだ。本気で六騎士のあんたとぶつかり合えることにわくわくしている」

 

「その余裕、いつまで保っていられるかな!」

 

『悪魔VS悪魔の禁断の闘い! 先手をとったのはプラネットマンだ!!』

 

「プラネットリング!!」

 

バッ

 

『プラネットマン! 装備していた大きなリングをブラックホールに投げた!!』

 

 呑気に観戦せずに、一応アドバイスした方がいいよな。

 

「ブラックホール!! そのプラネットリングは地獄の果てまでおいかけるホーミング機能付きだ!!」

 

「それぐらい知っている! 余計な口出しはするな! 集中力が切れる!!」

 

 やっぱりブラックホールはプラネットマンの技を知っているか。しかしどうやって対処するんだ?

 

「これぐらいは難なく対処できる!! 吸引ブラックホール!!」

 

しゅごごごご

 

『ブラックホール! 文字通り強力なブラックホールで吸引をはじめた!! あたりのものがどんどんすいこまれていくぞ!! まさかこのまま巨大なプラネットリングまで飲み込む気か!!』

 

しゅごぉ

 

『なんと!! ブラックホール!! プラネットリングを吸い込みました!!』

 

「ケケケ、まさか俺様のプラネットリングまで吸い込むとはな……」

 

 こ、こんな対処方法ブラックホールにしかできねえぜ。俺がやるとしたら原作のキン肉マンみたいに逃げ回ってプラネットマンの後ろに隠れるぐらいだ。

 

「おかえしだ! 排出ブラックホール!!」

 

しゅぽん

 

『ブラックホール! 勢いよくプラネットリングを吐き出した!!」

 

ざくっ

 

『プラネットマン! 咄嗟に避けましたが胴体にヒット!!』

 

「ぐっ! まさか自分の技でダメージをくうとはな……」

 

「では、そろそろブラックホールの奇術ショーといこうか」

 

 ブラックホールが腰を落としてふんばれる体勢をとった。

 

「ブラックホール流! ウォーターマグナム!!」

 

バババババ

 

『ななななんと!! ブラックホールの顔から大量の水が勢いよく飛び出した!! これはまさかアトランティスのウォーターマグナムを模した技か!!』

 

 ブラックホールの思わぬ技にプラネットマンも驚く。対処しきれずにまともにウォーターマグナムをくらってしまった。

 

「ぐわあああ!! どうしてアトランティスの技をっ!?」

 

「試合前に俺はたらふく水を自分の四次元空間にためこんでいたのさ!! この勝負、あんたを越えるための試合でもあるが、志半ばで死んだ仲間のための闘いでもあるんだよ!!」

 

「こ、これしきの技っ!!」

 

 プラネットマンはウォーターマグナムからの脱出をはかるために宙へと飛んだ。

 

「逃がすかっ!」

 

 ブラックホールが軽やかに飛び、宙でプラネットマンの耳のあたりを両足で勢いよく挟んだ。

 

がぁん

 

「ぐわぁ!」

 

『ブラックホール! 今度はステカセキングの悪魔のシンフォニーをくりだした!!』

 

「カカカ! 流石にステカセキングみたいに爆音は出せないがこれはこれで効くだろ?」

 

『ブラックホール! 間髪入れずにヘッドシザースでプラネットマンをマットにたたきつけた!』

 

「お次は魔雲天ドロップ!!」

 

ずしぃ

 

「ぐはぁっ!」

 

『ブラックホール! 今度はプラネットマンのボディへ向かって宙高くからのフライングボディアタックだ!! これも悪魔超人魔雲天の必殺技そのままです!!』

 

 バッファローマンもサンシャインと交戦しながらブラックホールの優勢を嬉しそうに見ている。

 

「流石はブラックホール、俺達7人の悪魔超人の中でずばぬけたテクニックを持っているだけのことはある。難なく自分の仲間の技をくり出しているぜ!」

 

 プラネットマンが負けじと、自分の体の上にのったブラックホールをはねのけた。

 

「お次はコレだ!」

 

ぐね ぐね ぐね

 

『ブラックホール! 自身の体を変形させ、蛇の形となった!! そのままプラネットマンの体に螺旋状に絡みついた!!』

 

ぎち ぎち ぎち

 

「こ、こいつはスプリングマンの技か?」

 

「そう、ブラックホール流螺旋解体縛りだ!!」

 

 すげえ! プラネットマン相手に圧倒的な試合をしている!! この日までのスパーリングでブラックホールともやりあったが、あいつは本当に何でもできるテクニックとトリッキーさがあった!! こいつはこの試合も勝てるかもしれねえ……あれ、もしかして俺フラグを立ててしまったか?

 

「とどめはこいつだ」

 

 蛇となったブラックホールが顔の部分だけ穴のあいた顔に戻した。そしていつの間にか巨大なストローを咥えている。

 

「ミスターカーメンのストローに俺のブラックホールの吸引力をあわせればどうなるか分かるよな?」

 

『ブラックホール! ミスターカーメンのストローを用いてプラネットマンの体液を吸い尽くすつもりだ!! 早くも勝負が決まるか!!』

 

ぐわしぃ

 

 プラネットマンが力尽くで蛇となったブラックホールの拘束をほどいた。

 

「なっ!?」

 

 慌ててブラックホールは元の体に戻った。

 

「ハンデはこのくらいで十分か?」

 

 おい、プラネットマンのあの口の言い方からすると、わざとブラックホールの攻撃をくらいまくっていたというのか!? 原作ではあんな強キャラ感一切出していなかったぞ!!

 

「その油断、命取りになるぜ!」

 

『ブラックホールの影が8つの影に分裂していき、8人のブラックホールが現れた!!』

 

「俺にはそんな奇術はきかないな」

 

 プラネットマンが赤くまばゆく輝く惑星の一つを産み出した。

 

『プラネットマン! 太陽と思われる惑星を出しました! 一体何をする気でしょうか?』

 

「アポロンダイナマイト!!」

 

『プラネットマン! 太陽惑星を宙に向かって投げた!!』

 

「何処を狙っているんだ、あんたらしくないミスだぜ?」

 

ぴかああ

 

『あ――――っと! リングがプラネットマンの産み出した太陽によって明るく照らされる!!』

 

 ブラックホールは自身の異変に気付いた。

 

「しまった! 影が消えていく!」

 

『プラネットマンの出した太陽の強烈な日光により、ブラックホールの奇術の源となる影が消えてしまった!! 八人いたブラックホールの姿が続々と消えていき一人だけとなった――――っ!!』

 

「どうした? もう奇術ショーは終わりか?」

 

「くっ! ロケーションムーブ!」

 

しゅん

 

『なんとブラックホール! 突然リングから姿を消した!! これはまさかの逃走か!?』

 

 プラネットマンはこの状況でも平然としていた。

 

「突然姿を現して奇襲をしかけるといったところか。並の超人だったら通用するかもしれんが」

 

 プラネットマンが右手でバックハンドブローを自身の後方に放った。

 

がん

 

『プラネットマンが空に放ったバックハンドブローが何かに当たったようだ! しかし実際には何もない! どういうことだ!!』

 

 プラネットマンの拳付近から徐々に何かが形となって現れた。それはブラックホールであった。体重の載ったバックハンドブローをまともにくらったブラックホールはその場で倒れた。

 

『すごい! まさかプラネットマン! カンで消えたブラックホールの位置を当てたというのか!!』

 

「さわぐな、悪魔六騎士たるもの、これぐらいできて当たり前だ」

 

 え? プラネットマン思ったよりも強いぞ! てっきりトリッキーな技だけでブラックホール相手に応酬しあうかと思ったが、正統派ファイトでもプラネットマンいけてるじゃねえか!

 

「こいつでとどめを刺そうか」

 

『プラネットマン! ブラックホールに首四の字を決めた!!』

 

 やばいやばい! 氷点下の首4の字だ! ブラックホールが凍らされちまう!!

 

「ブラックホール! いますぐ逃げろ! 凍らされて死ぬぞ!!」

 

 ブラックホールもカナディアンマンの声を聞いてすぐに脱出しようと力を込めてあばれる。しかし徐々に体が凍り付き身動きがとれなくなる。

 

かきん かきん

 

『あ――――っと!! ブラックホールの体が首4の字で凍り付いてしまった――――っ!!』




熱き闘志が氷のごとく砕け散るか!?


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魂を貫いた拳!!の巻

どうやって脱出する!?


 ブラックホールが凍っちまった……。歴代の凍った超人の脱出方法って確か、①小便による排熱②強烈な張り手③人一倍優れた握力④だな。①はブラックホールがそんな事やるとこ見たくねえし、②はウルフマンの十八番③はサイコマンレベルの握力がないと無理。一見無理そうに見えるが、ブラックホールもそれなりの実力者、何かしらの方法で脱出するとは思うんだが……。

 

「ケケケ、流石のお前でも凍った状態からの脱出は難しいか」

 

『プラネットマン! コーナートップに立ち、ニードロップを落とそうとしています! 膝を凍ったブラックホールに激突させて、バラバラにする考えのようです!!』

 

 まずい、ブラックホールがうんともすんともいってない。あいつ自身で駄目なら誰か助けられる奴が……

 

「ペンタゴン! お前の盟友がピンチだ!! 助けてやってくれ!!」

 

 俺の突然の大声に周りの皆はきょとんとした。当然の反応だ、でもペンタゴンならどこにいてもブラックホールの応援に駆けつけてくれそうな気がするんだ!

 

「何をいっておるんじゃカナディアンマンの奴は?」

 

「ケケケ、なるほど。素っ頓狂なことを言って気をそらして時間を稼ぐ作戦か。悪くないアイディアだがこの氷はそう簡単にとけないぜ!!」

 

しゅたん

 

『プラネットマン! 宙高くジャンプしブラックホールへニードロップだ!!』

 

ぴし ぱきん

 

 ブラックホールを包む氷の背中部分からヒビが発生した。そのヒビはすぐに大きくなっていく。

 

『あ――――っと!! ブラックホールを包む氷からヒビが発生した!! ブラックホールも脱出を頑張っているようです!!』

 

「ならば脱出前にこの膝を落とすまでよ!!」

 

ぱりーん

 

 ブラックホールを包む氷が完全に割れた。

 

ばさぁ

 

 それと同時にブラックホールの背中から巨大な羽が出てきた。顔のマークも〇から☆へと変化している。

 

『あ――――っと!! ブラックホールが脱出した!! さらに羽の生えた姿に変身までしてしまった――――っ!!』

 

「なっ、そんな馬鹿なっ!?」

 

 ブラックホールはすぐにその場を離れ、目標を失ったプラネットマンがニードロップをマットに勢いよくたたきつけ自爆してしまった。

 

「ぐっ! 膝を痛めたか!」

 

 ブラックホール! 何があったか知らないがペンタゴンに変身できたみたいだ! 漆黒の体はそのままだが羽や顔の☆の形は間違いなくペンタゴンだ! ブラックホールのスペックだけでも強いのに、ペンタゴンの技まで入れたらとんでもないことになるぞこれは!!

 

 ブラックホール自身、無意識の内に脱出し自身の変化にようやく気付いたようだった。

 

「お、俺の体は一体どうなったというんだ?」

 

 黒い羽がブラックホールの足下に落ち、自身の変化に気付くきっかけとなった。同時に、自分の顔をなでて形も確認した。

 

「また助けられたようだな」

 

ばさぁ

 

『ブラックホール! 羽を動かしてロープの上に乗った!』

 

「俺と一緒に暴れようか!! スペースシャトル!!」

 

ドガッ ズガッ ガシィ

 

『ブラックホール! 宙に縦横無尽に飛びながらプラネットマンのドロップキックの連打だ!! プラネットマン手も足も出ない!!』

 

「スペースファルコン!」

 

ガゴォ

 

『ブラックホール! さらにひときわ強めのドロップキックを放ちプラネットマンをふっとばした!!』

 

「調子に乗るなよ!!」

 

バリィ

 

『プラネットマン! 自分のプラネットリングをかじった! 一体なにをする気だ!!』

 

「くらえ、リングストーン!!」

 

『プラネットマンの口から無数の小石が勢いよく飛んできた! ブラックホールよけられるか!!』

 

 ブラックホールは背中の羽を強くあおいだ。

 

「エンジェルウイングクローズ!!」

 

バサァ

 

『ブラックホール! なんと羽で強い風を起こしてリングストーンをはねかえした!!』

 

 プラネットマンの体に自身の放ったリングストーンが跳ね返ってきた。

 

ボッ ボッ ボッ

 

「ぐわぁっ!」

 

『プラネットマンとうとうダウンだ! しかし、悪魔六騎士の意地ですぐにたちあがってきた!』

 

「俺を本気にさせるとはたいしたもんだぜブラックホール!」

 

 プラネットマンが宙に飛んでいるブラックホールに、勢いのついた蹴りを放った。

 

バシ

 

「まだまだこれで終わりじゃないぜ!! 超人ボール!!」

 

ポーン ポーン

 

『ブラックホール! プラネットマンに蹴られる度に徐々に球体に近づいていく!!』

 

「そうはいかないぜ、クロノスチェンジ!!」

 

ひゅん

 

『これはどういうことだ!? 一瞬でブラックホールがプラネットマンを蹴り上げている構図となってしまったぞ!!』

 

「ば、ばかなっ!?」

 

ポーン ポーン

 

『ブラックホール! 逆にプラネットマンをボールにしてしまったぞ!!』

 

 

 

 

「仕上げはこれだ!!」

 

『ブラックホール! 顔の形が☆から元の〇へと変化した!!」

 

「吸引ブラックホール!!」

 

しゅごごごご

 

『ブラックホールの顔からすさまじい吸引力が発生した!! ボールとなったプラネットマン! なすすべもなく吸い込まれていく!!』

 

しゅご

 

『プラネットマン! 完全にブラックホールに吸い込まれてしまった!! プラネットマンがこのまま戻らないと20カウントダウン負けなりブラックホールの勝利が決まります!!』

 

「20カウント? 10カウントもいらないぜ?」

 

ぴしぃ

 

『なんだこれは! 空中に突然大きなヒビが発生したぞ!!』

 

ぱりーん

 

『あーーーーっと! 空中から突然9つの惑星が直列してブラックホールに襲いかかってきた!!』

 

「魔技惑星直列!!」

 

キィィン

 

「そうはいくか!」

 

 ブラックホールがすぐに顔を☆のマークに変えてクロノスチェンジをしかけた。

 

「……何も起きないだとっ!?」

 

『ブラックホール! クロノスチェンジをしかけたようですが不発のようだ!!』

 

 プラネットマンの惑星直列がブラックホールの体に深く刺さった。

 

グサァ

 

「ごはぁ!」

 

 ブラックホールが血反吐を吐いて苦しそうにした。

 

「な、なぜクロノスチェンジが……」

 

「ケケケ、確かにお前の技はとんでもないもんだ。しかし、俺からすれば凡庸な技だ。すぐに弱点は見つけたぜ。ブラックホール、お前に惑星直列は真似できるか?」

 

「うっ……」

 

「その技は自分のスペックを越えた技には発動できない! 使用者のお前がそれを見抜けないとは失格だな!!」

 

ばらぁ

 

『プラネットマン! またも惑星を分裂させ、今度は十字型に変化した!!』

 

「魔技グランドクロス!!」

 

『プラネットマン! 十字型でブラックホールに勢いよく突っ込む!! ブラックホール! ダメージが大きいのか! 動きがにぶい!!』

 

バァアン

 

 フライングボディアタックのように、ブラックホールはプラネットマンに押しつぶされた。

 

「ぐほぁっ!!」

 

『ブラックホールに魔技グランドクロスが命中!! これは流石にもうたてないか!!』

 

 プラネットマンが元の形態へと戻った。

 

「並の超人なら立つのは無理だ。生きていることすら難しいからな」

 

 

がっ

 

 ブラックホールの手がロープを掴んだ。

 

『ブラックホール! 瀕死の状態ながらもなお立ち上がってきた!!』

 

 プラネットマンが感心の顔を見せた。

 

「流石だな、スニゲーターがお前ら七人をしごいていた時も、いつもお前とバッファローマンだけが最後まで立っていたからな」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ブラックホール、もう息も絶え絶えじゃねえか……プラネットマン強いじゃねえか……サイコマンが普通に圧勝していたけどあいつが強すぎたのか?

 

「ここまで俺と闘いあえたお前にプレゼントをやろう。魔技、人面プラネット!!」

 

『なんだ、突然5つの球体がプラネットマンに入り込んだぞ!!』

 

「あっ、あ――――っ!?」

 

 ブラックホールが驚愕の表情を見せた。

 

『なんとプラネットマンの惑星に顔が現れた!! 右肩にはステカセキング、左肩にはスプリングマン、右脚にアトランティス、左脚にミスターカーメン、胸には魔雲天だ――――っ!!」

 

 プラネットマンの体に現れた悪魔超人達もとまどっていた。

 

「お前達に朗報だ。この中で一番良いとどめの刺し方を提案した奴だけ生き返らせてやろう」

 

「!?」

 

 プラネットマンめ、なんて残酷な提案をしやがる! 死んだ仲間に生きている仲間を殺す方法を考えさせるなんて!

 そういえば俺もあの人面プラネットに選ばれたけどよりによって股間だったな……当時ネットがあったら「股間を狙え!」が大半の意見を占めただろうな……。カナディアンマンはキン肉マンに「うすのろ」とか抜かしていた後だったからな。

 しかしこれはブラックホールにとっては千載一遇のチャンスでもある! 結論から言えばブラックホールが魔雲天の顔面にパンチを入れればプラネットマンは倒れる。しかし……俺からはとてもそんなこと言えねえ……。それにプラネットマンの一部になってしまった悪魔超人達も葛藤した表情をしているじゃねえか……。

 

「グヘヘ、プラネットマンよ、良い提案があるぜ」

 

 魔雲天が最初に口を開いた。

 

「ひと思いに殺すのは面白くねえ、まずは右腕、左腕、右脚、左脚と潰していく」

 

「ほう、悪くないな。そして仕上げはブラックホールの拳で俺の顔面をプラネットマンの心臓ごと貫くことだ!!」

 

「なにっ!?」

 

 ブラックホールもプラネットマンも驚いた。

 

「貴様! 生き返れるチャンスをふいにする気か?」

 

「俺達の意見も同じだ!!」

 

 他の四人も覚悟を決めた態度を見せた。

 

「し、しかし……」

 

「やれブラックホール! もうお前が勝つ方法はこれしかねえぞ!」

 

「勝つために手段をえらばねえのが悪魔超人だろ!!」

 

「心配すんな! てめえが殴った分はあの世できっちり返してやるからよ!」

 

「お前の勝利のために俺達はこの命をくれてやるぜ!!」

 

 しかしブラックホールは決心がつかなかった。

 

「ケケケ、ウォーズマンが慈悲の心などいらないといっていたがまさにその通りだな。ブラックホール、千載一遇のチャンスが消えるぜ!」

 

『プラネットマン! ブラックホールにとどめをさしにいった!!』

 

「ブラックホール!」

 

 モニターからサンシャインと交戦中のバッファローマンの大きな声が聞こえた。

 

「七人の悪魔超人のリーダーとして命令する! 魔雲天の言う通りに動け! でなければ俺は命令違反としててめえを悪魔超人から追放するぜ!!」

 

 よく見ると、バッファローマンの拳、いや、強く握りしめているから手の内側から出血しているんだ。……そうか、あれがバッファローマンの気持ちか……。

 

「バッファローマン! 俺は決めたぜ!」

 

グワシャァ

 

『ブラックホール! 右のストレートで右肩のステカセキングを貫いた!!』

 

「やっぱお前のパンチは強いな……」

 

 ステカセキングがそういうと、顔が消えて、プラネットマンは右肩にダメージを負った。しかし、その一撃だけでもブラックホールは酷くふらついた。

 

「ぐっ、ここにきて勝利のために手段をえらばぬ悪魔の心に目覚めたか!」

 

「そうじゃねえ! 仲間の気持ちに応えるために仲間を犠牲にする! そういう友情だってあるんだ!!」

 

ぼわぁ

 

 ブラックホールの体が金色に輝いた。

 

「次はお前だスプリングマン!!」

 

グワシャァ

 

『ブラックホール! フロントキックでスプリングマンの顔面を破壊しにいった!!』

 

「あの世で待っているぜ……」

 

 スプリングマンがその言葉と共に消えた。

 

「もうグロッキー寸前のブラックホールからどうしてあんな力が!? まずい、逃げなくては!」

 

 ブラックホールは逃げるプラネットマンに素早くおいつき、ローキックでアトランティスの顔面部分を破壊した。

 

「お前のウォーターマグナム、見事だったぜ……」

 

 アトランティスの顔が消え、プラネットマンがよろついた。

 

「魔雲天、ミスターカーメン! 今ならまだ生き返れる! さぁ早くこいつを倒す手段を考えるんだ!」

 

「うるせぇ!」

 

 ミスターカーメンの顔が出た左脚がリングのコーナーポストを蹴った。それはミスターカーメンの顔面部分を破壊する蹴りでもあった。

 

 

「ぐわぁぁ!!」

 

 プラネットマンはとうとうたてなくなり大の字となった。

 

「や、やめろ! くるな!!」

 

 魔雲天は心安らかな表情でその瞬間を待った。

 

グワシャァ

 

『ブラックホール!! プラネットマンの心臓を貫いた!!』

 

「ぐほぁ!」

 

 プラネットマンが大量の血反吐を吐いたと共に息絶えた。

 

カーン カーン カーン

 

『試合終了です!! ブラックホールVSプラネットマン! 逆転、また逆転の白熱の超人宇宙戦争でしたが、最後にたっていたのはブラックホールです!!』




勝者! 七人の悪魔超人!


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名セコンド楓!!の巻

予測不可能の戦いが始まるぞ!!


 試合が終わり、ブラックホールは片膝をついた。

 

「流石にタフな俺でもつかれてしまったぜ……」

 

 ブラックホールは亡骸となったプラネットマンのそばによった。

 

「プラネットマン、これだけは言っておきたい。俺そのものの強さは完全にあんたに負けていた。6人、いや7人の仲間の力があったからこそ、俺は勝てた。修行のし直しをしてくるぜ」

 

 

 

 一方、キン肉マンとザ・ニンジャが闘うリングである。二人のそばにミート君もいた。

 

「ふふふ……」

 

「どうしたんですか王子?」

 

「ミート、こうやってお前をセコンドにつけるのも随分久しい気がしてのう」

 

「王子……」

 

「ケケケ」

 

 ザ・ニンジャはキン肉マンに向かって手裏剣を投げた。キン肉マンは間一髪でそれをかわした。

 

「そんな凶器をリングに持ち込んで危ないじゃろうが!!」

 

『キン肉マン! 手裏剣を投げたザ・ニンジャに怒りを露わにする! すばやくザ・ニンジャの背中にまわり、バックドロップだ!』

 

「これしきの技、順逆自在の術!」

 

ずだぁん

 

 ザ・ニンジャの術で、瞬時に二人の体勢が入れ替わった。

 

「のわぁ!」

 

『なんと! 逆にキン肉マンがバックドロップをかけられた!! 悪魔六騎士ザ・ニンジャ! まさに忍者らしい技を使っております!』

 

 

「ふふふ、拙者の忍術はお前のような豚男には到底破れるものではないわ」

 

「誰が豚男じゃ! デカプリオと呼んで貰いたいものじゃ!」

 

『キン肉マン! 今度はザ・ニンジャにコブラツイストだ!』

 

「駄目です王子! うかつに技を出しては破られるだけですよ!」

 

「馬鹿な奴め、順逆自在の術!」

 

がきぃ

 

『またもザ・ニンジャ! キン肉マンの技を返しました! 今度はキン肉マンが逆にコブラツイストをかけられています!!』

 

「王子! 強力な技を出さないようにしてください! ザ・ニンジャに返されてしまいます!」

 

「そんなこといっても弱い技で勝てるわけないだろうがっ! くそっ! まるでジェシーメイビアと闘った時のようなやりにくさだ!」

 

 ジェシー・メイビア戦か……そうだ!

 

「キン肉マン! どうせ技をくらっても返されるんだ! いっそのことそのまま相手の技をくらっておいた方がいいぜ!!」

 

「何を言うんだカナディアンマン! そんなことしたら負けるではないか! このままコブラツイストをくらったままでは私の関節が壊れてしまう! 一刻も早く脱出を……そうか、そういうことか!」

 

ばたん

 

『キン肉マン! わざと後方にバランスを崩し、ザ・ニンジャを背中からのしかかりだ! キン肉マンがコブラツイストから脱出した!!』

 

「カナディアンマン、感謝するぜ。技が返されるなら相手の技をくらった上で返せばいいまでよ! ジェシー・メイビアとの闘いでもそうやって勝った!」

 

「はっはっは、素人考えだぜそれは。ではこの技を返してみな」

 

サッ バーン バーン バーン

 

『ザ・ニンジャ! 瞬時にリングロープをキン肉マンの首にひっかけた、続けて一本、また一本とキン肉マンの体にリングロープをひっかけていく!』

 

「王子! 早く逃げて下さい!」

 

「そ、そんなこといっても体が動かないのだ!」

 

バァァン

 

『ザ・ニンジャ! 全てのリングロープをキン肉マンにひっかけた!! まるで蜘蛛の巣にかかった蝶のようにキン肉マンの体がリング中央に固定された――――っ!!』

 

「忍法クモ糸縛り!」

 

「のわぁ~~~~っ!! 苦しい!!」

 

「キン肉マンよ、やがてお前の体は耐えきれなくなり、リングのロープによってばらばらとなるのだ!」

 

「そんなの嫌じゃあ~~誰か助けて~~!!」

 

「しかしそれだけでは面白くない。そこで拙者が楽しいショーを見せてやろう」

 

グワ ボッ ボッ

 

『あ――――っと! ザ・ニンジャの口から火の玉が飛び出した――――っ!!』

 

「こんなことして一体何のつもりじゃい!」

 

「そうか!」

 

 ミート君が炎天下での動物の皮のしばり首、ロープが蛇の皮で出来ていること、焦熱地獄の内容を瞬時に理解し説明した。

 

「ふふふ、そこのめがね坊主は賢いようだな」

 

『火の玉がますますキン肉マンの体をよりきつくしめつけています!!』

 

 あの火の玉キン肉マンに直接ぶつけた方がダメージになるんじゃね? いや、そんなツッコミはさておきとしておこう。

 この状態はまずいぞ! かつてあの技から抜け出したブロッケンJrは順逆自在の術を真似るという器用さを見せ付けた。カラスマンはニンジャ同様の技を使ってあの技から脱出した。しかし、キン肉マンではそういった事は出来ないだろう。キン肉マンがパワー全開にして力尽くでリングロープ引きちぎったりって出来ねえかな……何か刃物でもあればたやすく脱出できるんだが……あっ!

 

「ようキン肉マン! お前の頭についているのは飾りか! 鶏のとさか的な物か!」

 

「何を言うんだカナディアンマン! 私の頭のこれは怪獣退治のためにだな……!!」

 

 キン肉マンがはっとした表情になった。すぐに手を力尽くで動かして、自分の頭に持って行こうとする。

 

「はっはっは! もがけばもがくほどよりロープが体にくいこむぞ!」

 

「私の狙いは、これだ――――っ!!」

 

 キン肉マンが頭のキン肉カッターをとった。

 

「そうか! それがあった! 僕もすっかり忘れていました!」

 

「そりゃあ――っ!! ウルドラセブン並の切れ味をとくとみよ!!」

 

スパン スパン スパン

 

『キン肉マン! 自身のキン肉カッターを用いてリングロープを切断し忍法クモ糸縛りから脱出した――――っ!』

 

「くそっ、お前に関しては原作コミックを読んで十分に研究したが、そいつを出すとは思いもしなかったぜ!」

 

「助かったぜカナディアンマン、私もミートもすっかり忘れていたよ。こいつを使うのはシシカバ・ブーの時以来だったな」

 

 俺も咄嗟によく気付けたもんだぜ。そういえばシシカバ・ブー戦でもキン肉カッター使っていたな……なにげにシシカバ・ブーって48の殺人技を覚えたキン肉マンを破っているし、実は強いんじゃ……さっき名前だけ出たウルドラマンも版権の都合で厳しいけど超人オリンピック二大会連続ファイナリストだし実力はありそうなんだよな…二人とも助っ人に来てくれないもんかなぁ……。

 

「ようし! フライングボディアタック!!」

 

「やれやれ拙者がまた順逆自在の術を使うとでも思ったのか?」

 

ずぼぉ

 

『ザ・ニンジャ! フライングボディアタックをしかけるキン肉マンに対しボディーへのアッパーでカウンターだ!!』

 

「ぐはぁ! 腹が!!」

 

「順逆自在の術を使うとでも思って破りやすい技を使ったのだろうが、だったらそれを逆に利用するまでよ。さて、この辺でまた新たな忍術をお見せしようか! 転所自在の術!」

 

バサ

 

『ザ・ニンジャ! 着物をキャンバスに広げ、なんとマットを水面にしました!! さらに黒帯もマットに沈め、どす黒い液体にした!!』

 

ばしゃあ

 

「のわぁ! 本当にリングが水面になったぁ! 私はかなづちなんだ! 助けて――――っ!!

 

「安心しろキン肉マンよ、足をつけるぐらいの深さだ。お前を溺死なんてつまらない死に方をさせるわけがないだろう」

 

「あっ、本当だ。驚かせやがってもう! でもなんじゃ、いやにどろどろしているし変な匂いもするな」

 

「王子! それは重油です!」

 

「そう、重油だ、これより焦熱地獄パート2をお見せしよう!!

 

ボァァ

 

『ザ・ニンジャ! またも口から火の玉を吐き出した! リングが一面が火の海と化しキン肉マンに襲いかかった――――っ!!』

 

「のわぁ! あっちっち! 死んでしまう!」

 

「王子! 早く脱出しないと死んでしまいますよ!」

 

「そんなこと言ったって、うわぁ~~!! 誰か助けて~~!!」

 

 またこのパターンか!! う~~ん、原作だったらブロッケンJrがウォーズマンの肺を破壊して風を起こしたが、この状態で風をおこすなんてできねえし……あっ! 風なら起こせる!

 

「キン肉マン! 風林火山だ! 風林火山を出せ!!」

 

「ばかもん! 今はザ・ニンジャに技をかけられる状態ではない!」

 

「王子! カナディアンマンの言うとおりにしてください! 一人で風林火山をやってください!」

 

「一人で? そうか! 速きこと風の如く!」

 

 キン肉マンが重油内で素早く動きまわる。

 

『キン肉マン! リング内を素早く動き回る! 竜巻が発生し、徐々に巨大なものになっていくぞ!』

 

「なにっ! 竜巻だと!? まずいっ!」

 

「もう遅い! くらえ! 灼熱地獄返し!!」

 

『キン肉マン! 竜巻を操りザ・ニンジャに炎をかぶせた!!』

 

ゴオオオ

 

「ハハハハ! 拙者は不死身よ、これしきの炎なんてことはないわ!!」

 

『なんと! ザ・ニンジャ! 燃えさかる炎に包まれて平然としています!!』

 

「そ、そんな!?」

 

「焦熱地獄の仕上げはこれだ! 転所自在の術!」

 

バサッ

 

『ザ・ニンジャ! またもリングを変えました! 今度は火山の俯瞰図だ――――っ!!』

 

「のわぁ~~っ!!」

 

『キン肉マン! 火口へと真っ逆さまだ! いや、かろうじて火口途中の崖につかまっています!』

 

「ちっ、しぶとい奴め」

 

 ザ・ニンジャが重油の残りを火口に流した。

 

「おいやめろ! それでは私の手が滑って落ちてしまうではないか!!」

 

「なんとでもいえ、悪魔超人は勝つことが全てだ!」

 

 あれ落ちても大丈夫っちゃ大丈夫だけど、先手はうっておくか。

 

「ウルフマン! 今動けるか! キン肉マンが火口に落ちたらジャンクマンの死体に真上に落ちて串刺しになる可能性が高い!! すぐにジャンクマンを別の場所に退避させてくれ!!」

 

「ほう、あの火口がここにつながるとはな……お安いご用だぜカナディアンマン!」

 

 ウルフマンがジャンクマンをリングの外に動かしてくれた。これで串刺しは避けられる!

 

「カナディアンマンという男、まさかこの火口の先を見抜くとは!? こうなったら予定変更だ!」

 

『ザ・ニンジャ! 自身も火口に飛び込んだ!! そしてキン肉マン事ひきずりおろすぞ!』

 

「どういうつもりじゃ貴様!」

 

「なぁに、すぐに分かるさ!」

 

『二人とも火口の最深部へと落ちていった――――っ!!』

 

「お、王子――――っ!!」

 

どたっ どたっ

 

「いたたた、変なところに落ちたな、ここはどこじゃ?」

 

 キン肉マンが見回すと二人の超人が闘っていた。 

 

「バッファローマンにサンシャイン!?」

 

『あ――――っと! 突然サンシャインとバッファローマンの闘うリングにザ・ニンジャとキン肉マンが落ちてきた――――っ!!』

 

「こりゃあ一体どうすれば……」

 

 バッファローマンも困惑の表情を見せてる。

 

「サンシャイン、どうやらお前の方もなかなか決着がつかんようだな」

 

「グォッフォッフォ、ザ・ニンジャ、お前もそのようだな。気のせいかどうも試合が動かなくてな」

 

「ならば話が早い。キン肉マン! バッファローマン! これよりシングルマッチからタッグマッチへの変更を提案する!! つまり、拙者とサンシャイン、キン肉マンとバッファローマンのタッグで闘うのだ!!」




牛と肉のドリームコンビ結成!?


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波乱のタッグマッチ!!の巻

正悪最強の二人が組んだ!!


『なんと悪魔六騎士側からまさかの提案だ――――っ!! これが実現すればまさかのキン肉マンとバッファローマンの正悪最強コンビが生誕だ――――っ!!』

 

「いいぞいいぞ!! 俺達はそういうのが見たいんだ!!」

 

「悪魔超人達も良い提案するじゃねえか!!」

 

 アナウンサーの煽りで観客も大いに盛り上がる。

 その様子を見たサンシャインとザ・ニンジャが怪しげに笑っていた。

 

「ラッキー♪ バッファローマンと組めば楽勝じゃわい!! 悪魔六騎士よ、その提案乗ったぜ!!」

 

「キン肉マン、お前なら乗ってくれると思ったぜ」

 

『決まりました!! ただいまより、サンシャイン&ザ・ニンジャの変幻自在のデビルタッグとバッファローマン&キン肉マンの最強牛肉コンビのタッグマッチを始めます!!』

 

(ど、どうなるんだこの闘い、俺も一キン肉マンファンとしてこの二人のタッグは見てみたいが、今のバッファローマンは完全に正義超人ではない、裏切りによって3VS1の闘いになることも考えられる。ならば俺はすぐにあの二人のもとへかけつけよう!!)

 

カーン

 

『さあ悪魔六騎士との闘いも大詰め、ファイナルは誰もが全く展開の読めないタッグマッチとなりました!! まずは悪魔超人の先手はサンシャインのようです!!』

 

「グォッフォフォ、バッファローマンよ、好機(チャンス)だ、今なら容易に正義超人最強の男をあの世へ送れるぞ!!」

 

「何を言っておるのだあの砂男は?」

 

「キン肉マン、つくづくお前は間抜けな奴だぜ」

 

ぐいっ

 

『バッファローマン!! いきなりキン肉マンを持ち上げてサンシャインに投げつけた!!』

 

「バ、バッファローマン!! 裏切ったのか!?」

 

「勘違いするなよキン肉マン、俺は一度たりとも正義超人を味方と思ったことはないからな」

 

どがっ

 

『サンシャイン!! 巨大な右腕のラリアートで飛ばされたキン肉マンをはじき返した!!』

 

「ごはっ!! なんというパワーなんじゃあの砂男!!」

 

「グォッフォッフォ、バッファローマンよ、このまま仲良くドッジボールでもしようか」

 

『キン肉マンが飛ばされた先には、またもバッファローマンがいるぞ!! バッファローマン!! ハリケーンミキサーの構えに入った!!』

 

 この時、キン肉マンとバッファローマンの間でわずかな瞬間のアイコンタクトがあった。

 

「ハリケーンミキサー!!」

 

『キン肉マン!! 勢いよく回転しながらまたもはじき飛ばされた!!』

 

「ありがてえ、この威力を使わせて貰うぜ!!」

 

 キン肉マンは回転しながらも肉のカーテンの構えをとり、サンシャインに頭からつっこむ体勢となった。

 

「い、いかん!!」

 

「遅いぜ!! くらえ、火事場の牛肉大砲!!」

 

ズン

 

『これは凄い!! バッファローマンのハリケーンミキサーとキン肉マンの肉のカーテンが合わさり凄まじい威力の大砲となった――――っ!! サンシャインの巨体がリング外まで吹っ飛んだ――――っ!!』

 

ずしぃん

 

「サ、サンシャイン、大丈夫か? バッファローマン!! お主どういうつもりだ!!」

 

「どうもこうもねえ、悪魔の教えに従ってお前達を騙しただけさ。確かに俺の最終目標は正義超人最強のキン肉マンを倒すことだが、俺にも勝ち方の美学ってのがあるのよ」

 

「まったくもうバッファローマン驚かせおってからに」

 

 キン肉マンが緩んだ顔をしてバッファローマンに近づくが、バッファローマンの表情は悪い笑みである。

 

「勘違いするなよ。たまたま同じ敵がいるから、組んでいるだけだ。お前と協力するのはこの試合が最初で最後だ」

 

ぱん

 

『バッファローマン、タッチをしてキン肉マンと変わりました!! 』

 

「バッファローマンよ、貴様には裏切りの礼をせんとな」

 

『あ――――っと!! サンシャインの身体が砂となり、何やら球体のような形となりました!!』

 

 すかさず、球体となったサンシャインの上にザ・ニンジャが乗っかった。

 

「地獄の玉乗りショー!!」

 

ドドドドド

 

『ザ・ニンジャ!! まるでサーカス団員のごとく器用に球体となったサンシャインで玉乗りだ!!』

 

「面白え!!」

 

『バッファローマン!! なんと正面から巨大な球体を受け止める気か!!』

 

がしぃん

 

『バッファローマン!! なんとか受け止めたが、球体の勢いが止まらない!! このままではコーナーポストの鉄柱に激突だ――――っ!!』

 

「バッファローマンよ!! 私がいることも忘れるなよ!!」

 

『キン肉マン、バッファローマンの背後に回り込み、その背中を支えた!!』

 

ずずずずず

 

『止めました!! キン肉マンのサポートでバッファローマンが救われました!!』

 

「馬鹿め、それが狙いだ!!」

 

『サンシャインまたも砂となり、なんとキン肉マンとバッファローマンに覆い被さった!!』

 

「のわ~~っ!!」

 

「しまった!!」

 

『あ――――っと!! サンシャイン、キン肉マンとバッファローマンを体内に取り込んでしまった――――っ!!』

 

「グォッフォッフォ、キン肉マンよ、お前なら確実にくると思っていたさ。おかげで楽に二人同時に閉じ込めることができたぞ」

 

「バッファローマン、お主の言っていた裏切りという考えは正解だったようだな。現に、正義超人が裏切りの反対のことをやって今のピンチを招いているのだからな」

 

 一方、砂の中でのキン肉マンとバッファローマンの状況。

 

(く、苦しい、息が出来ん、身体も動かせん、このままでは窒息死してしまう!! ザ・ニンジャの言うとおり、私のサポートでこんなことになってしまったのか……)

 

(馬鹿野郎、今のザ・ニンジャの言葉は俺とお前のチームワークをつぶすための言葉だ!! てめえが足を引っ張ったのは事実だが、気に病む前に、この状況からの脱出法法を一緒に考えやがれってんだ!!)

 

(そんなこと言ったって、身体を動かせないし、どうすれば……そうか、バッファローマンよ、私の呼吸に合わせてくれないか!!)

 

(待っていたぜ、お前の土壇場でのその対応力!!)

 

『さぁ、キン肉マンとバッファローマンが閉じ込められてから大分時間が経ちました!! このままでは二人とも窒息死してしまいます!!』

 

「グォッフォフォ、あともう少しで二人の死体が拝め、っ!?」

 

ばきっ

 

 サンシャインが突然ザ・ニンジャを殴りつけた。

 

「サンシャイン、いきなりなにをするか!! 親しき仲にも礼儀ありだぞ!!」

 

「わ、分からねえ、身体が勝手に動き出しやがって」

 

がしっ

 

『どうしたことだこれは!! サンシャインが味方のザ・ニンジャに攻撃をしているぞ!! 今度はカナディアンバックブリーカーにとらえた!!』

 

「いい加減にしろ!!」

 

ばきっ

 

『ザ・ニンジャ!! 技から脱出し、重さとスピードの乗った延髄蹴りをサンシャインにくらわした――――っ!!』

 

ずしぃん

 

 サンシャインの巨体が倒れると、その身体が盛り上がっていった。

 

 

ざばぁ

 

『あ――――っ!! キン肉マンとバッファローマンがサンシャインの砂地獄から脱出した――――っ!!』

 

「き、貴様ら!! 一体なにをした!!」

 

 キン肉マンが抜けた顔をしている。

 

「んんと、何とか脱出した感じじゃのう」

 

「このアホな豚の代わり俺が説明しよう。サンシャインの体内で身体を動かせないと思っていたが、厳密には俺達の動きに合わせて砂が移動していて身体を動かせない状況と錯覚していたんだ。外から見ればそれはサンシャインが動いている状態となる」

 

 セコンドにいたミート君がなにかわかったような表情をした。

 

「そうか、電車内の人は止まっているように思えても実際には電車と同じ速さで動いている、力学で言う相対速度のことですね!!」

 

「ソーダソフト? 良く分からんが旨そうなお菓子じゃのう」

 

 バッファローマンがまわりを気にせずに説明を続けた。

 

「だが、サンシャインのパワーでは俺だけが身体を動かそうとしても思う通りにいかなかった。そこでこいつと一緒に呼吸を合わせて同じ動きをしてサンシャインを動かしたというわけさ」

 

「しまった!! そうとは知らずにサンシャイン!!」

 

 サンシャインが起き上がり、ザ・ニンジャを睨み付ける。

 

「ザ・ニンジャよ、お互いにシングルマッチとしてやったほうが上手く闘えそうだな」

 

 険悪なムードになった二人に対し、真逆の二人もいた。

 

「一時はどうなるかと思ったが、お前とのタッグなかなかに楽しめそうだな」

 

「ああ、私もな」

 

 キン肉マンとバッファローマンが互いに片腕を触れ合わせて意気投合の意思を見せた。




まだまだ読めぬこの戦い!!


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命を賭した出血大サービス!?の巻

今がチャンスだ!!


 バッファローマン、キン肉マンはサンシャインとザ・ニンジャがまだ口論の最中であることを確認し、互いにアイコンタクトする。

 

ダダダダ

 

『あ――っと! バッファローマン! キン肉マン! サンシャインとザ・ニンジャの隙をついて向かっていった!!』

 

「し、しまった!!」

 

 キン肉マンはザ・ニンジャをキン肉バスターの体勢にとらえ空中にジャンプした。バッファローマンも同様にサンシャインをハリケーンミキサーで宙へと吹っ飛ばした。

 

『出ました――っ!! キン肉マン! バッファローマン! お互いにフィニッシュホールドで決めにいった――っ!!』

 

「馬鹿め、拙者があの技をつかえることを忘れたか!! 順逆自在の術!!」

 

「おわぁ~~!!」

 

『なんということだ――っ!! 技のかけ手が入れ替わり、ザ・ニンジャがキン肉マンにキン肉バスターをかけてしまった――っ!!』

 

「くらえ――っ!!」

 

ずしぃん

 

『決まってしまった――っ!! キン肉マン!! まさかの自分のフィニッシュホールドをくらってダウンだ――っ!!』

 

「グォッフォフォ、バッファローマンよ、俺がこのままお前の技を食らうと思うか?」

 

「なに!?」

 

ザザザザザ

 

『サンシャイン!! 宙で砂となってバッファローマンに降り注ぎにいくぞ!!』

 

「くらえ、地獄のコマ落とし!!」

 

『サンシャイン!! 自身をコマの形に変えてバッファローマンの頭上に落下だ――っ!!』

 

どごぉん

 

「ぐほぁ!!」

 

『バッファローマン!! 頭からまともにサンシャインの技を食らってしまった!! バッファローマンもダウン!! 悪魔六騎士コンビ

! 劣勢でしたが逆転しました!! まさか最強のコンビがここで敗北するのでしょうか――っ!!』

 

スリ~ フォ~ ファイブ~

 

 キン肉マンはリングのロープを使い何とか立ち上がろうとしてきながらも、攻略法法を考えていた。

 

(駄目だ……ザ・ニンジャに攻撃を仕掛けても、あの順逆自在の術で逆転されてしまう……かといって私にはあのような技を真似する器用さもない……私の技は全て返される……私の技……そうか!! 私だけだからだめだったんだ!!)

 

 同様にバッファローマンもよろよろながらも立ち上がり、キン肉マン同様攻略法を考えている。

 

(普通に技を仕掛けても、サンシャインが砂になってしまったら、どんな技も無意味だ……砂にならなくなる方法はねえか……奴を固めちまうような方法は……あった!! だが、この方法は……)

 

『お――っ!! キン肉マンとバッファローマン!! 何とか立ちあがってきました――っ!!』

 

「バッファローマン、ザ・ニンジャを攻略する術を見つけたぜ」

 

「奇遇だな、俺もサンシャイン攻略の方法を見つけたぜ」

 

「そうか、これであの二人を倒せるぞ!!」

 

「……キン肉マン、この闘いの結末がどうなろうと勝ちたいか?」

 

「ど、どうしたんだバッファローマン?」

 

「勝ちたいかと聞いている!!」

 

「そりゃあもちろん勝ちたいに決まっておるじゃろ!!」

 

「そうか、だったらおまえはザ・ニンジャを足止めしといてくれ。そして俺のやることは黙って見届けてくれよ!!」

 

「わかったぜ!!」

 

『キン肉マン!! ザ・ニンジャを羽交い締めにした!!』

 

「こら、はなせこのぶた面男! ニンニク臭いではないか!!」

 

ばりりぃ

 

『あ――っと! バッファローマンも自身の皮膚を破り傷だらけの身体を露わにした――っ!! 一体どういうつもりなんだ――っ!!』

 

「うおおおお!!」

 

『バッファローマン!! サンシャインをタックルで倒しにいき、そのまま正面からサンシャインの首を決めにいく!!』

 

「これしきのパワー、はじき返してくれる!!」

 

ばぁん

 

『サンシャイン強引にバッファローマンをはがしにいった!! しかしバッファローマン今度はベアハッグでサンシャインの身体をしめつけにいく!!』

 

「グォフォフォ、貴様の1000万パワーもそんなもんか? 全然痛くないぞ~~!!」

 

がしん がしん がしん

 

『サンシャイン!! ベアハッグを駆けられた状態でエルボーをバッファローマンの頭部に連打!!』

 

たらたらたら

 

「バッファローマン!! さっきお前がサンシャインにくらった頭部の傷が開いて大量に出血している!! 早くサンシャインから離れろ!!」

 

「黙って見ておけと言ったはずだ!!」

 

 気がつけばバッファローマンは頭部だけでなく、全身の傷からも血が噴き出している。

 

「つまらん意地をはらん方が良いぞバッファローマン、俺から見ても今のお前は狂牛病にでもなったかと思うくらい頭がおかしいぞ」

 

「どうやら、気付くのが遅かったみたいだな」

 

ぱき ぱき ぱき

 

『あ――っと! サンシャインの金色の身体が赤黒くなっていった――っ!!』

 

「ま、まさかお前っ!?」

 

「そうとも、お前が砂になって技から脱出なできないように、俺の血をたっぷり吸わせてやったのさ!! 血は空気に触れれば固まるんだよ!!」

 

ばぁぁぁん

 

『バッファローマン!! サンシャインとともに宙高く飛んで技の体勢に決めに行った――っ!!』

 

「くらえ、超人十字架落とし――っ!!」

 

「ぐぅっ!! 砂になれん!!」

 

「いかん、サンシャイン――!!」

 

『ザ・ニンジャがすかさずカットに入りに行った!!』

 

「おっと、私の事を忘れて貰っては困るぞ!!」

 

「しまった!!」

 

『キン肉マンも同様に宙でザ・ニンジャを技の体勢にとらえた!! だが、この技は――っ!!』

 

「馬鹿め、先程拙者に破られたキン肉バスターを繰り出すとは!! また返してみせる!!」

 

「確かに私一人のキン肉バスターなら破られるだろう、だが!!」

 

 キン肉マンが落下速度を高めると、そこには超人十字架落としをかけているバッファローマンがいた。

 

がっきん

 

 バッファローマンとキン肉マンの技が合わさった。

 

「いくらお前でも、私とバッファローマン二人の技を同時に返せないだろ!!」

 

「しまった!! まさかそこに気付くとは!!」

 

『こ、これは、バッファローマンの十字架落としとキン肉マンのキン肉バスターの合体技だ――っ!!』

 

牛肉の奇跡の共演(バッファローマッスルミラクルプレイド)!!」

 

ずがぁぁぁぁぁぁんんん

 

 キン肉マン、バッファローマンが技をとくと、サンシャインとザ・ニンジャは誰の目にも明らかな状態で戦闘不能の状態となっていた。

 

 

カン カン カン カン

 

『決まりました――っ!! 急遽決まった最強の牛肉コンビVS悪魔六騎士コンビはキン肉マンとバッファローマンの奇跡のタッグ技でフィニッシュしました――っ!!』

 

「うおおおいいい!! やったぞ――っ!! バッファローマン!!」

 

 キン肉マンが笑顔でバッファローマンを抱きにいくが様子が変だった。

 

ばたん

 

「バ、バッファローマン!? 今すぐ超人病院に運んでやるぞ!! 待ってろ!!」

 

「無駄だキン肉マン……勝つためとはいえ俺は無茶をしすぎた……許容範囲の出血をしてしまいもう助からねえ……」

 

 キン肉マンの目には涙が浮かんできた。

 

「短い間だったが、お前達正義超人と一緒になれて楽しかったぜ……ブラックホールにも、先に地獄で待っていると伝えてくれ……プラネットマン戦の時には仲間を遠慮無く倒せといったからな……後であいつらに痛い目合わされるだろうな……」

 

「バッファローマン……」

 

 バッファローマンの身体から力が抜け、そのまま息を引き取った。

 

 

「うぅぅ、バッファロ――マ――ン!!」

 

 突如、空に暗雲が立ちこめ、辺りが騒然となった。

 

(礼を言うぞキン肉マン、それにその仲間達よ。悪魔六騎士が倒されたことによって、私のエネルギーとして吸収しやすくなった)

 

「なに!? つまり悪魔六騎士はお前のために死ぬということだったのか!!」

 

(そういうことだ、おまけにお前達も消耗している状態だ。もはや私を邪魔する者はいない)

 

バリリリリ

 

 日本各地にいる悪魔六騎士そしてバッファローマンにも光が降り注いだ。

 

「ギャアアアア!!」

 

「あ、悪魔将軍様――っ!!」

 

 サンシャイン、ザ・ニンジャ、他の息のある六騎士も悲鳴をあげながら暗黒の雲へと吸収されていった。

 

(これで、私は完全復活した!! 正義超人達よ!! 今から駆逐してやる!!)

 

 暗雲かに光が刺し、そこから悪魔将軍が地上へとゆっくり着地していった。一方、カナディアンマンもこの状況を見てどうしたもんかと非常に悩んだ。

 

(ぐっ!! どうすればいいんだ!! 原作ではキン肉マンが闘うが、今闘ったばかりで闘える状況じゃねえ!! 俺やウォーズマンあたりはまだ闘えるが、時間稼ぎがやっとだろう、確実に死ぬ!! もう俺は地獄には行きたくねえよ!!)

 

(私の出番が来たようですね……)

 

 気がつけばキン肉マンの目の前にシルバーマンのマスクがいた。

 

(本来であれば、あなたに闘って頂く予定ではありましたが、兄さんは急な動きを見せすぎている……あなたの回復は待ってはくれないでしょう……)

 

「な、なぜ悪魔将軍、いや、ゴールドマンといえばいいのか、そんなにも急ぐのか、ちょっとは待ってくれてもいいのにのう……」

 

(長くなりますので割愛しますが、恐らく兄さんがどんな犠牲を払ってでも僕との闘いを実現したいという邪心にサタンがつけこみ、操られているのでしょう。そしてサタンの目的は正義超人、悪魔超人を殲滅することによる神の座席の取得!!)

 

「待て待て!! どうしてそういう話になるのか全く分からんぞ!!」

 

(申し訳ありませんが、詳細を説明する暇はありません。今は兄さんを止めることが優先です! そこでキン肉マン、あなたに頼みがあります!!)

 

「わ、私に??」

 

(私はこれから兄さんと闘いにいきます。しかし、身体の実体化が不完全で長く闘える身体ではありません。よりしろとなる超人が必要なのです)

 

「ま、まさか……」

 

(キン肉マン、あなたの身体をよりしろにしたいのです)

 

「ちょっと待ってくれ! 私以外にも闘えるのがおるじゃろう! カナディアンマンやウォーズマンやブラックホールもおる!!」

 

(申し訳ありませんが、私の系譜を継ぐ者にしかよりしろにできないのです。私の系譜を継ぐのはキン肉マン、あなただけなのです、それに、バッファローマンもあなたを信じて命を賭したのですよ)

 

「はっ!!」

 

 キン肉マンはその一言で気持ちを一気に切り替えた。

 

「分かったシルバーマン、このキン肉マンの身体を遠慮無く使ってくれ!!」

 

(ありがとうキン肉マン)

 

キィィィン

 

 あたりが光に包まれ二人は消えていった。

 そして日本の某所にていつの間にか多くの観客が集まり、リングには悪魔将軍が待っている。

 

「待たせました兄さん」

 

「あぁ、大分待ちくたびれたぞ」

 

「今こそ兄弟対決の決着を付けましょう!!」




至高の対決実現!?


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Re夢の超人タッグ編
新たな戦いの幕開け!!の巻


読者の諸君!! 夢のタッグチームを予想してくれたまえ!!


 原作で言う黄金のマスク編が終了し、カナディアンマンである俺はカナダの自分の家ででのんびりとしていた。

 

「ふぅ~~!! なんか怒濤の展開の連続で本当疲れたけど近頃は平和でいいなぁ~~どぅれ、トレーニングがてら木こり作業やってくるか!!」

 

 つけていたTVから富士山頂、トロフィー、一億云百年ぶりというワードが出てきて、俺はすぐにTVに釘づけとなった。

 

「間違いない、夢の超人タッグ編の始まりだぞこれは!!」

 

 原作でも大分面白いところだったので俺はわくわくしている。しかし、結構原作からずれてきているし、どうなるんだ? まさか時間超人出てこないよな、キン肉マンファンの俺ですら「時間超人の最期には泣けた」としか褒める点がない。また、原作ではタッグを組むスペシャルマンも、悪いが、今の状況では実力的に俺と釣り合わない。やはりやるからには優勝を目指さないと! まあ、今の俺なら組んでくれる相手には困らないだろう。

 

プルルルルル

 

 電話がなったので俺は受話器をとった。どうやら知っている超人一同をキン肉ハウスに集めて話があるとのことで、俺は原作では死に設定である空を飛べるを利用して日本までかけつけた、いや、とんできたかな?

 キン肉ハウスには悪魔六騎士と闘ったメンバーの大半が揃っている。これは確か、誰もキン肉マンと組んでくれなくてタッグパートナーに困る展開だったよな。

 ロビンマスクが最初に言葉を発した。

 

「まずは改めて悪魔超人達との闘い、皆ご苦労だった。私はふがいない結果になってしまったが、仲間達が頑張ってくれたおかげで超人界にまた平和が訪れた。だが、いつまた難敵が襲ってくるか分からない。特に悪魔将軍とシルバーマンとの闘いは我々がついていけるレベルでなかったと感じた超人は多いかと思う。そこで、今度富士山頂で発見されたトロフィーをかけた超人タッグトーナメントに参加し、各々が優勝をかけて切磋琢磨し合うという結論に至った」

 

 ふむ、もっともらしい意見だ。さて、まずは傍観してキン肉マンがタッグパートナーに困ったタイミングで俺が出るかな?

 

「俺は既に決まっている。盟友のブラックホールとだ」

 

 おぉ、バッファローマン&ブラックホールの悪魔超人のタッグか。パワーとテクニックを備えた良いコンビになりそうだな。命名するなら地獄の盟友コンビといったところかな?

 

「私は、ブロッケンJrと組むことになった。地獄でいっしょになってから、意気投合してな」

 

 ラーメンマン&ブロッケンJrのコンビだと!! これは原作でも見たかった人はおおい、名前はかぶるが命名するなら超人師弟コンビといったところか!

 

「私はテリーマンと組む。同様に地獄で意気投合してな」

 

 えっ? 俺は見てないけど、この世界戦でも一応テリーマンとキン肉マンがアメリカでタッグを組んでいたよね? テリーマンいいのかそれで? 命名するなら米英同盟かな??

 

「ここには来てないが、実はハワイ巡業に行った時にジェシーメイビアと意気投合してな」

 

 ウルフマン&ジェシーメイビアって王位争奪戦の時のコンビか! このタイミングで原作の要素拾ってくるか! 相撲のパワーと返し技テクニックの二人で真のモーストデンジャラスコンビになりそうだ。よし、残っているのはキン肉マンだな。

 

「実は私も確定ではないが、すでに相手の目星がついていてな。これから誘いに行くところだ」

 

 え? まさか俺だけ誘いなし!? おい、まさかとは思うが、アシュラマンとサンシャインが例の人形の入った箱を利用して、俺を狙いうちしているのか!? 確かにアシュラマンにも勝ったし、アドバイスもとばしたり要所要所で活躍はしたが、いやいやキン肉マンじゃねえのか!?

 

「カナディアンマン、言っておくがここにいる連中はお前を警戒している」

 

 ロビンマスク!? いや、大分評価されているから喜ぶとこだが、喜べねえよ! 

 

「まさかお前組んでくれる奴がいないってか?」

 

 ウルフマンが冗談半分で言っているが、本当にその通りなんだよ!! あわわわ、どうしよう、今の展開は原作から少しずれているが、ここは原作の知識を活かして……。

 

「そ、そういえば、悪魔将軍倒した後に、アシュラマンとサンシャインだけいなくなっていたな! あいつらも参加する可能性あるんじゃねえか?」

 

「なるほど、悪魔超人は執念深い、ましてやあの二人なら俺や正義超人達へのリベンジを考えるだろう」

 

 よし、バッファローマン、良い流れに持って行った! ここからあの人形の話をどうもっていくか……よし、はったりきかせてやるぜ!

 

「実は皆に言ってなかったんだが、あの後二人を見かけてな、すぐに逃げちまったが、なにやら人形をつめた箱を見られたくないような態度をとっていってな……」

 

「人形をつめた箱? 俺はそれについては分からんな」

 

 う~ん、バッファローマン分からんか、なら頼みはやつだけだ。

 

「そういえば聞いたことがある。悪魔超人は超人の友情を操るのろいの人形を持っていると……。これは俺の仮説ではあるが、我々に急に芽生えた競争心、もしかしたら悪魔超人二人が打倒正義超人をもくろみ、使っている可能性がある」

 

 よしよし、テリーマン、それを待っていた!! それで俺へのフォローの流れにしてくれ!!

 

「そう、そういうところだカナディアンマン」

 

「へ?」

 

「まるで今後の流れを知っているのかのような発言がこれまで多々あった。それがどうしてかは分からんが、下手をすれば俺達全員が足をすくわれかねない恐ろしさがお前にはある」

 

「そのおかげで悪魔超人との闘いでは俺達は救われたが、お前も敵になるトーナメントとなれば話は別」

 

「俺達はもしかしたら悪魔超人の企みにまんまとひっかっているかもしれない。だったらそれでいい。その上で全員が一番を目指すなら今後の超人界のためになる」

 

 ど、どうしてそういう流れになっちまうんだ! 皆して俺を敵として見てやがる!? まるで、原作のキン肉マンはおれじゃねえか!

 

「ここらでお話はおひらきといこう。皆、トーナメントでの健闘を祈る」

 

 俺は何も言えなかった……。自分では上手く動いていたつもりがこう思われているなんて……。俺はなにか訳の分からない惨めな気持ちでカナダへと帰った。

 

「組んでくれる相手、スペシャルマンだけかなぁ……」

 

 ウォーズマンは悪魔超人との闘い以降行方不明になっていると聞き、俺も居場所は分からない。カメハメに関しては俺はこの世界では全くのノータッチだから、もしかしたら原作同様キン肉マンと組んでいる可能性が高い。他に俺と少しでも交流している超人なんてあのメンバー以外ではいやあしない……。

 

「くそっ!! いねえのか!! 見ず知らずの俺に対してタッグを組んでくれる強豪の超人は!! 灯台もと暗しっていうんだから近くにいてもいいだろうが!!」

 

 その瞬間、俺はある超人の姿が思い浮かんだ。

 

「もしかしたら……あいつなら!!」

 

 それから数日後、超人タッグトーナメントの日となった。

 

『会場にお集まりいただいた皆様!! お待たせしました!! 栄光のトロフィーを手にするのははたしてどの二人か!! 出場選手達の入場です!!』

 

ワー ワー ワー

 

『エントリーナンバー①! バッファローマン&ブラックホールの地獄の盟友コンビです!!』

 

バッファローマ~ン!! ブラックホ~ル!!

 

『おぉ~~、観客からも 人気の高い二人、それもそのはず、互いに悪魔超人ながらも高い実力で強豪の超人達を倒してきています!! 優勝候補の一角としても評判が高いです!!』

 

 二人がしばらく歩くと、次のチームに注目が集まった。

 

『続きましてエントリーナンバー②!! テリーマン&ロビンマスクの米英同盟!! 正義超人界で人気実力共に高い二人!! 悪魔超人との闘いでは敗れ去りましたが、このトーナメントに向けてかなりの特訓を積んできたと言うことです!!』

 

キャ~テリ~!! ロビ~ンこっちみて~!!

 

『エントリーナンバー③ ブロッケンJr&ラーメンマンの真・超人師弟コンビ!! かつては二人の血で血を洗う因縁関係に注目が集まっていましたが、現在はその因縁を乗りこえて和解し、どこの師弟よりも硬い絆で結ばれた真の師弟関係といえるでしょう!!』

 

ラ~メンマ~ン!! ブロッケ~ン!!

 

『エントリーナンバー④!! ウルフマン&ジェシーメイビアのモーストデンジャラスコンビ!! 超人横綱とハワイチャンピオンの異色の王者コンビ!! かたや相撲の名手!! かたや返し技の名手とどんなことになるでしょうか!!』

 

ウルフマ~ン!! ジェシー素敵よ~!! 

 

 

 

 ふぅ、余裕持ってとまではいかないが、大会には間に合ったみたいだぜ!! いまのところ4チームの参戦が告げられたところか。超人委員会のスタッフに俺とパートナーの名前とタッグ名を記し、会場へと向かった。

 

「改めて礼を言うよ。俺がいきなりタッグパートナーになってくれなんて無茶なお願いしたのにOKしてくれて」

 

「もう他人みたいな口はよせよ。俺達はカナダの同胞だろ?」

 

「そうか、じゃあいくぜ相棒!! 他の奴らを驚かせてやろうぜ!!」

 

『エントリーナンバー⑤!! カナディアンマン&ビッグボディのカナディアンプラウド!! 正義超人おなじみの一員として悪魔超人アシュラマンに勝利し、超人達の援護射撃を得意としたサポートの鏡ともいえる男!! その男の隣にはなんと巨漢のカナディアンマン以上の身体を思ったマスク超人ビッグボディ!! 一体こいつは何者なんだ――――っ!! 』




剛力男(ビッグボディ)!!一足早く電撃参戦!!


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