転生先が転生前よりクソだったので異世界転移してHするわ (匿名希望者)
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カルネ村にて①

ロングソード
何の変哲もない武器
数多の激戦を潜り抜け、敵を屠ってきた。
だからこそ、誰もが彼の強さを理解し、恐怖する。


 ソレが現れたのは本当に突然の事だった。

 鬱蒼と生い茂る木々を掻き分け、姿を現したのは薄汚れたボロの外套を纏った騎士だった。

 

 ――――敗残兵、逃亡兵。

 

 そんな事を考えている場合では無いことくらい、少し考えればわかる状況でありながら、エンリ・エモットは突然姿を現した騎士にそんな感想を抱いた。

 

 薄汚れた外套とは裏腹に、その下にある黒鉄の鎧は堅固な様子が見て取れる。生憎、フルフェイスの兜の下にある表情を見ることは出来ない。

しかしながら、エンリとその妹であるネム。そしてその二人を追い詰める二人の帝国兵の姿を確認した騎士は面倒な場面に出くわした、と言わんばかりに大きなため息を吐いた。

 

「お前、一体何者だ?」

 

 逃げ惑うエンリ達を森にまで追い詰めた帝国兵の片割れが完全武装した騎士に対して、警戒心を露にしながら問いかける。

 

「あまり、警戒しないでもらえるか? こちらに敵対する意思は無い。世捨て人が森を散策中に妙な所に出くわしただけだ」

 

「そんな……」

 

 悲痛な声を漏らしたのはエンリだった。

 帝国兵に村を襲われ、命辛々逃げてきた森の中で帝国兵に追いつかれ、絶体絶命の状況で姿を現した騎士に救いを求めるな、と言うのも無理からぬ事だろう。

 だが、騎士にとってエンリを救う理由が無い事は明らかだった。

 

「悪いがこちらには関係の無い話だ。貴公らがこちらへ敵対しない限りその娘達をどうしようとそちらの勝手だ」

 

 騎士を警戒する帝国兵へ言い聞かせるように呟いた騎士は踵を返し、再び森の中へ歩みを進めようとした。

 

「待ってください! お金なら払います! だからせめて、この子だけでもっ――――」

 

「悪いが既に世を捨てた身。金銭や正義感と言った物でこちらに助けを求めた所で興味無い。ましてやそちらはどうやら組織だった様子、一介の世捨て人が干渉するにはリスクが大きすぎる」

 

 エンリと騎士の交渉が上手くいっていない事にニヤつきながら見守っている帝国兵二人に視線を向け、騎士がエンリの願いを切り捨てる。

 

「こちらはそちらに干渉しない。それで良いか?」

 

「ああ、こちらとしても余計な戦闘をするつもりは無い」

 

 帝国兵の任務は王国の村を荒らす事、相手がこちらに干渉しないというのであればわざわざ負傷をする可能性がある戦闘をする理由は無い。

 

「ま、待ってください。何でもします! だから、助けてください!」

 

 騎士と帝国兵の間で進んでいく話に待ったをかけたのは当然のようにエンリだった。冒険者のように金銭で、王国兵のように正義感で、騎士に助けを求める事の出来ないエンリに出来ることはただの懇願だけだ。

 

 そもそも騎士が二人の帝国兵を倒せる確証は無い。しかし、エンリがこの状況で縋れるのは突然現れた騎士だけだった。

 

 縋るように騎士へ手を伸ばし、叫ぶエンリを舐めるように一瞥した騎士は小さくため息を吐く。

 

「この身は世を捨てたが女旱りしていた事もまた事実。二人程度なら奴隷を飼うのも一興か……」

 

「っ!」

 

「?」

 

「別に可笑しくあるまい? 命を助ける代わりにその後の人生を貰い受ける。こちらも組織と敵対するリスクがある以上、それ相応の対価だと思うが?」

 

 まだ、少女から女性に変わる年頃ではあるが、それなりに知識を持つエンリは騎士の言葉に息をのみ、まだ、純粋無垢なネムは騎士の言葉を理解出来ずに首を傾げる。王国で奴隷は禁止されている。しかし、世捨て人である騎士にその事を説いても無駄な事だ。

 

 非常時だからこそ通る無理な要求だ。だが、騎士の要求を断ればどのみちエンリ達は死ぬ事になる。

 

「わ、わかりました。あなたの奴隷になります。だから、私たちを助けてください……」

 

 震える声で俯きながらエンリは呟いた。瞳に涙を貯めながら、それでも生きてさえいればなんとかなると心に言い聞かせながら。

 

「そう……か、その契約、承った」

 

 エンリの言葉を聞いて、騎士は小さく頷くとエンリ達と帝国兵の間に移動する。

 

「すまないな、アレは私の所有物になった。手を引いてくれると助かるのだが?」

 

「――――馬鹿な奴だな。余計な死体が増えるだけだ」

 

「油断はするなよ」

 

 面白がって成り行きを見守っていた二人の帝国兵が武器を構え、戦闘態勢になった事を確認すると騎士が腰のベルトに固定した鞘からロングソードを引き抜いた。

 

「「っ!」」

 

 ロングソードを構え、戦闘態勢に入る騎士の姿を見て、絶句したのは帝国兵の方だった。

 

 それは何の変哲もない、街でよく見かけるようなロングソードだった。

しかし、よく手入れされたロングソードであり、自身がよく使うロングソードだからこそ、騎士が構えたロングソードが途方もないくらいの血を吸ってきたモノだと直感的に帝国兵でも理解出来た。これが逆に魔剣や伝説に出てくるような剣では帝国兵も目の前に立ち塞がる、騎士の“ヤバさ”を理解出来なかったハズだ。

 

「ま、待ってくれ! こちらに交戦の意思は無い! そこの二人はあんたの好きにすればいい。だから、俺たちは退かせてもらう!」

 

 直感的に騎士と自分たちとの間にある隔絶した実力を理解した帝国兵は叫び、戦闘状態を解除する。任務が殲滅では無い以上、戦えば確実に殺されるような相手と戦うのは自殺志願者のすることだ。たった村娘二人の命など自分の命に比べればどうでもいい。

 

「そうか、こちらも余計な手入れをせずに済むならそれに越した事は無い」

 

 帝国兵の言葉に頷き、去っていく帝国兵を見届けながらロングソードを鞘に納めた騎士は無言で成り行きを見守っていたエンリ達の方へ向き直るとエンリ達の横を通り抜け、歩き始める。

 

「ついてこい、今からお前たちは俺の所有物だ」

 

「ま、待ってください」

 

 騎士の進む先は森の方向で、エンリ達が逃げてきた村の方角からは未だに悲鳴や火の手、喧騒が聞こえてくる。

 

「まだ、お父さんやお母さん、村の人達が!」

 

「調子に乗るなよ? こちらに助ける義理は無い。奴隷の分際でアレもコレもと騒ぐようなら奴らの代わりに切り捨てても構わないのだぞ」

 

 状況を理解出来ていないのか、キョトンとしているネムと対照的に村の運命など興味なさそうな騎士の腰に縋りつくエンリ。そんなエンリの態度にイラつきを見せた騎士はエンリの髪を掴み上げ、エンリの耳元で囁く。

 

「お願いします、お願いします、お願いします」

 

 頬に涙を流しながら只々懇願するエンリの姿に騎士はため息を吐き、何かを考える素振りを見せる。

 

『やはり多少はガゼフに顔を売っておいた方がいいか? いや、ガゼフよりも法国やイビルアイにプレイヤーの存在を明かした方が面白いか……。エンリは合法的(笑)にゲットした訳だし』

 

「そうだな、今思いついた余興に付き合うなら村に向かってもいい。ただし、早く村に着くかはお前次第だ」

 

「わ、わかりました」

 

 頷いたエンリを見て、騎士は余興を口にする。

 

「今後、飽きるまで人間を辞めて、愛玩“動物”になってもらう。人間じゃないから服なんて着ないし、四足歩行してもらう。話す事も禁ずる。そうだな、返事は飼ったこと無いからワンと言え。お前は今から雌犬だ。当然、他人がいてもそのままだからな」

 

 今まで聞こえていた無機質な声から明らかに面白がっている声音に変わっていた。騎士は何もない空を見上げると右手の親指と人差し指で丸を作り、左手の人差し指を右手で作った丸に出し入れする謎の行為をしていた。

 

「っ!」

 

 エンリは弾かれたようにネムの手を取ると騎士から逃げるように走り出す。

 

――――狂ってる。今まで無機質な声音で話していたから実感が湧かなかったが目の前にいる騎士はあの帝国兵よりも異常者だった。

 

「あーあ、そこで逃げちゃうか。まあ、別にいいけど……」

 

 騎士の呟きが聞こえた次の瞬間――――。

 

「えっ?」

 

 エンリの視界が赤く染まり、生暖かい赤い雨が“何故か”全裸になっているエンリの身体を濡らしていた。

 

「所有物を壊すのは好きじゃないんだけどな~。あ、可哀想だから落とすなよ」

 

 フルフェイスの向こう側からケラケラと嗤う声が聞こえる。ネムの手を取って走り出したハズなのに何故か両手で抱えていたモノに視線を落とす。

 

 “目が合った”エンリは自分の中で何かが粉々に壊れる音がした。

 

「因みにメイン職は近接だけど蘇生魔法を使えるマジックキャスターでもあるんだな、これが。どうする? “雌犬”ちゃん」

 

「……ワン」

 

 四肢を地面に付け、お手、と差し出された手に前足を乗せる表情の消えたエンリの姿がそこにはあった。

 




主人公は一体、何者なんだ。
そしてネムは何処に行ってしまったんだ(白目)


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カルネ村にて②

 悲鳴と喧騒が鳴り響く森の中でそれに負けないような毛色の違う音が響いていた。どこか水分を含むその音を奏でるのは一組の男女だった。

 

「あっ」

 

 地面に四つん這いになり、未だに名前すら知らない相手にお尻を向け、誘惑するように軽く揺らしているエンリは発情したような熱い吐息を漏らす。村の危機が迫る中、既に何度も膣口に指が侵入を果たし、陰核の辺りを嘗め回すような優しい手付きで刺激する。

 

 びくりと身体を震わせるエンリの姿に騎士は小さく笑う。

 

「お前は“雌犬”。獣なんだから快楽を受け入れればいいんだぞ。ほら、ギャラリーもいる事だし、お前の声を聞かせてやれ」

 

 淫声を上げるエンリとそれを見守るようにピクリとも動かないギャラリーを指差して命令する騎士。

 

「ワン、ワン、ワン!」

 

 何かが壊れたエンリは気持ちよさそうに叫び、快楽に染まった表情を浮かべている。

 

 ――――頭が可笑しくなりそうだった。村が襲われるという大事件、自身に得も言われぬ快楽を与え続ける騎士、そして無表情でこちらを見ているネム。

 

 エンリという少女の情報処理能力を超えた事態に彼女が導き出した答えは単純なモノだった。もたらされる快楽と騎士の言葉に身を任せる。騎士がすべて正しく、自分は騎士の所持品でしかない。

 

 エンリはすでに壊れている心を守るために思考停止していた。

 

 エンリの膣口から溢れ出る愛液が彼女の太腿を伝い、赤い液体と混じったソレを掬い取った騎士はエンリの眼前に差し出す。

 

「舐めろ」

 

 ぴちゃぴちゃとした音を立てて姉妹の合作となったソレを騎士の指から舐めとるエンリ。

 

「そろそろいいかな?」

 

 瞳に映る色が消えていながら、与えられる快楽に頬を染めるエンリの姿に騎士は小さく呟くと自身の逸物をエンリの眼前へ見せつけるように取り出す。

 

「っ!」

 

 目の前に差し出された逸物にエンリは息を呑んだ。男性器は太く猛々しくそびえ、びくんびくんと脈打っている。彼女にはソレが大きいのかどうか、判断するような知識など存在しない。男性器など幼い頃に父親のモノを見たとき限りだ。もちろん、その時の記憶も曖昧で大きさを明確に覚えてはいない。

 それでも目前に差し出されたソレが記憶にあるソレよりも大きい事は確かだった。

 

 今からこの逸物に自身の秘部が蹂躙されるのだと察したエンリは小さく微笑む。

“雌犬”である自分を抱く為に脈打つソレが何故かわからないが妙に愛おしく思えた。

 

「ああ、それでいい……」

 

 経験の無い生娘なれど多少の知識は持ち合わせている。目前の亀頭に口づけを落とし、恐る恐る舌で舐め始める。

 

『……美味しい』

 

 ソレは脳から思考力を奪う甘美な味わいだった。喉も舌も蕩けるような、それでいて何度も口にしたくなるような癖になる、今まで経験した事の無いモノだった。

 

 初めはチロチロとしたフェラチオだったが少しずつそして大胆に口へ含むエンリの頭を騎士が優しく、愛おしそうに撫でた。

 実際に行うのは初めてなのだ。お世辞にも気持ちの良いフェラチオではなかったと思う。

 それでもこちらを優しく撫でる騎士の手付きにエンリの壊れた心が小さく揺れる。

 

『……嬉しい』

 

 ――――自分はなんて事をしてしまったのだろう。

 

 後悔の念がエンリの心を過ぎる。こんなにも自分の事を慈しんでくれる騎士から逃げ出してしまった事。【これほど愛してもらえる権利をネムから奪ってしまった事】。なにより、それほどの過ちを犯しながらやり直すチャンスを与えてくれた騎士の心の広さにエンリの感情は大きく揺さぶられる。

 自身の行為も顧みず、浅ましくも肉棒を頬張るエンリはフルフェイスの向こうに隠された瞳と視線が合った気がして頬を赤く染めた。

 

 傍から見れば狂った光景にしか見えなかった。

それでもエンリは騎士に奉公出来る事に心を昂らせながら感謝し、恋する少女のように頬を赤らめながら肉棒を咥えるエンリの姿に言い表せぬ征服感を覚えた騎士はエンリの頭を両手で掴むと脈打つ巨根をエンリの喉奥に押し付ける。

 

「出すぞ!」

 

 騎士の言葉と共にエンリの喉に大量の精液が流し込まれた。

 

『く、苦しい』

 

 突如、喉を襲った熱い精液にエンリは呼吸出来ず、苦しさを覚えて咥えていた肉棒から逃げようとするが騎士が頭を固定している為にそれは叶わなかった。

 苦しさに顔を顰めるエンリだったが少しするとその表情は驚きに変わり、最後には愉悦の笑みに変わっていった。

 

『苦しかったけどこんな美味しいモノは初めてだわ……』

 

 本当に騎士の精液が美味なのか、壊れたエンリの心が最後の防波堤としてそう感じさせたのかどちらか分からないが、少なくともエンリには無理矢理流し込まれた精液が極上の味へと変化していた。

 

「ふぅ……」

 

 ドクンドクンと脈打つ息子が落ち着いてきた事を確認した騎士は押さえていたエンリの頭を解放し、肉棒をエンリの口から引き抜く。少し未練の帯びた表情を浮かべながら肉棒の汚れを舐めとっているエンリを見下ろしつつ、騎士は一時の賢者タイムに突入していた。

 

『何処の世界でも女の抱き心地は一緒だな』

 

 騎士は所謂、“転生者”という奴だった。ユグドラシルと呼ばれるゲームが開発される腐った世界とは別の世界の話である。その世界である程度裕福な暮らしをしていた騎士は有り体に言えばヤリチンという奴だ。見た目も悪くなければ金もある、据え膳は全て食べてきたし、気に入った女性なら人妻でもお酒の勢いを借りて喰った。案外、お酒の力やこちらが無理矢理という建前さえ作ってしまえば股を開いてくれるものだ。

 

 トラブルは御免だったので関係は一度きりが信条でそれ以降に付き合いのある相手とは普通の友人・知人として接するようにしていた。だからこそ、嫉妬に狂ったストーカーに刺されて死ぬとは思ってもみなかった。

 

 そして気付けば二度目の生を受けていた。

 

 そして、その世界では下から数えた方が早い家庭環境で生まれた為、生きるだけで精一杯だった。そんな時、一つの情報が目に入ってきた。

 

 ユグドラシルの開発が進められているというものだった。その時、彼の中で何かが壊れた。生きる最低限のお金を残し、その他は全てユグドラシルへ課金した。そしてユグドラシルのサービスが終了するアナウンスが流れると彼は歓喜した。これでようやくこの腐った世界からオサラバできると。

 

 ユグドラシル最終日頃、彼は今までのお礼参りとばかりに目をかけていた女性達を強姦した後、ゲームを起動し、展開を予測しやすい時代へ転移する為、ナザ――――。

 

「ワン、ワン!」

 

 媚の含む鳴き声で騎士の賢者タイムが終わりを告げると騎士は肉棒を綺麗にして媚びるように四肢を地面につけてお尻を振っているエンリを見下ろす。必死に肉棒をねだるエンリを見下ろしながら周囲の状況に意識を向けた騎士は村の方角から蹂躙の喧騒から戦いの喧騒になっていた事に驚く。

 

 段々と壊れていくエンリが面白かったとはいえ、愛撫の時間を長く取り過ぎたようだった。このまま続けて、ガゼフが死ぬのは少し困る。

 

 騎士は少し考えた後、小さく笑うと再び反り立たせた肉棒を手際良くエンリの肉壺へ挿入する。

 

「ワン!」

 

 淫声を上げて喜ぶエンリを無視しつつ、アイテムボックスからリード付きの首輪と巻物を取り出すと巻物を“ギャラリー”に向けて発動する。

 

「おねえ……ちゃん?」

 

 転移を見越して製作しておいた巻物は問題なく発動し、目の前に広がる光景にネムは困惑した声でエンリを呼ぶ。

 

「ワン、ワン!」

 

 【姉妹で愛してもらえる事】を喜ぶエンリは腰を振りながら嬉しそうに吠える。

 

「いいかい、この“雌犬”は俺のペットで、君は俺の奴隷だ。ペットの世話は君に任せて大丈夫かな?」

 

 困惑するネムへ言い聞かせるように頭を撫でながらペットの世話を命令する騎士。身体を恐怖でガクガクと震わせながら頷くネムは騎士からリード付きの首輪を手渡される。

 

「え……?」

 

「ペットが逃げだしたら困るだろ?」

 

 困惑したネムは騎士の意図を理解すると淫声を上げて腰を振り続ける“雌犬”へ首輪を付ける。声こそ出さないもののその表情は涙をこぼしている。

 

「さて、リードも付けた事だし、散歩にでも行くか」

 

 騎士はそう告げると喧騒が聞こえる村の方へ歩き出し、ネムはリードを持ちながら無言で騎士についていく。

 

 騎士達は歩く度に身体を痙攣させる“雌犬”の淫声を響かせながら村に向かって歩き始めた。

 




主人公はユグドラシル廃課金プレイヤーです。


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カルネ村にて③

「その処刑、少し待ってもらえないか?」

 

 王国兵の皆殺しを終え、疲労困憊のガゼフ・ストロノーフを天使が取り囲む絶体絶命の状況の中、響いた声にニグンは視線を向ける。

 

「……貴様、何のつもりだ?」

 

瞳に映る光景に一瞬、理解が追い付かなかったニグンは心を落ち着かせながら声の主に問い掛ける。

 

 ――――本当に理解出来ない光景だった。

 

 薄汚れた外套を纏い、その下に眠る黒鉄の鎧は声の主が騎士である事を察する材料ではあった。ただ、少し視線を落とせば下半身は丸出しでその傍にはリードを持った幼女と首輪を付けて、全裸で地面に四つん這いになっている少女。少女は騎士の肉棒を肉壺で受け止めながら白濁色の液体が太腿に垂れている。

 

 同じように言葉を失っているガゼフよりニグンの復帰が早かったのはひとえに先行部隊から受けた報告の中に凄腕の騎士に遭遇したという情報を受けていたからだ。可能性という意味で騎士の介入が無いとは言い切れなかった。ただ、まさかこんな光景を見せられるとは思っても見なかったが。

 

「ん~、あ~、口で説明するよりこっちの方が早いかもな」

 

 ニグンの問い掛けにそりゃそうだ、と笑う騎士は一人頷くと右手を挙げて指を鳴らす。

 

――――瞬間、世界の時が止まる。

 

「き、貴様――――「スレイン法国陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーイン君で良いよね?」

 

 周囲の動きや音が消え、明らかな異常事態に警戒を強めるニグンを余所に、騎士は悠然と肉棒を少女から引き抜き、ズボンの中へしまうとニグンの方へ歩き出す。

 

「と、止まれ! 止まらなければ貴様を――――」

 

「まー、まー、落ち着けよ。陽光聖典隊長の君なら俺の正体がわかるんじゃないか? ヒントはそうだな。“六大神、八欲王、十三英雄”、君の理解を超えた存在は世界にたくさんいるじゃないか」

 

「ま、まさか貴様――――いや、貴方様は」

 

 世界の時が止まる明らかな異常、そして騎士が告げたキーワード、ニグンの思考は高速で駆け巡り一つの仮説を導き出す。

 

「君にはこう名乗った方が早いだろ。君達、スレイン法国が待ち望んだ存在、カンスト“プレイヤー”だよ」

 

 ――――“プレイヤー”

 

 その言葉を騎士が告げた瞬間、ニグンは即座に跪き、騎士へ頭を垂れる。ニグンを襲う明らかな異常が騎士の言葉を証明していた。

 

「君の意見や法国の意思に興味は無い。ただ、少しばかりこちらのお願いを聞いてくれないか?」

 

「ね、願いとは?」

 

「俺は八欲王側のプレイヤーだ。ただし、こちらの世界を乱すつもりは無い。それにどちらかと言えば人類に貢献する欲があるだけだ」

 

 平伏し、言葉を待つニグンを見た後、白濁液を流すエンリへ視線を向ける。

 

「俺が気の向くままに行動した結果として“神人”がたくさん生まれるかもしれないな。多少、立場のある人間を襲うかもしれないが“人類”という観点から見ればプラスだろう?」

 

 騎士の言葉につられてエンリの方へ視線を向けるニグンは騎士の意図を理解する。

 

「ええ、ええ! それだけでも十分です! よろしければスレイン法国にもいらしてください! ニグン・グリッド・ルーインの名に懸けて、美女を用意致します!」

 

「そうか、ニグン君。君が賢い人間で安心したよ。ただ、上の連中にも伝えておいてくれないか、ケイ・セケ・コゥクは俺には効かない」

 

「勿論です!」

 

 法国の情報が筒抜けである事に戦慄しつつ、プレイヤーの偉大さを感じたニグンは何度も頷く。

 

「それと番外席次にも伝えておいてくれないか。“お前より強い男がお前を孕ませに行くぞ”と」

 

「わかりました、必ず伝えます!」

 

 帯びた使命の重さに身体を震わせるニグンを見て、満足そうに頷く騎士はニグンから離れるとガゼフに近づく。

 

「彼については俺に任せてくれないか? 少し面白い事になりそうだ」

 

 顔から感情が消えていたネムの瞳に色が戻るのを見逃さない騎士は予想される展開に嗤う。当然のように頷くニグンを見た騎士は指を鳴らす。

 

「一体、何が――――」

 

「全員、包囲を解除! あの御方に失礼は許さんぞ!」

 

 再び動き出した時の中で突如、包囲のど真ん中に現れた騎士に困惑するガゼフと陽光聖典の隊員達。一人、事態を把握しているニグンが隊員に号令を飛ばし、困惑しながらもニグンの号令に従い、天使を退いて包囲を解除する隊員達。

 

「ガゼフ・ストロノーフ! 状況が変わった、今は貴様に割く時間は無い」

 

「貴様、何を言って――――」

 

 騎士が現れた瞬間、今までの行為をすべてひっくり返すような言動をするニグンに困惑するガゼフ。

 

 そんな中、一つの願いが戦場に響き渡る。

 

「騎士様! 助けて、その人がお姉ちゃんを――――」

 

「調子に乗るな、小娘」

 

 王国の鎧を纏ったガゼフに感情の戻ったネムが助けを求めた瞬間、瞬く間にネムへ近付いた騎士が容赦なく引き抜いたロングソードを振るい、鮮血が地面と近くにいたエンリを汚す。

 

「貴様、何をしている!」

 

 ガゼフの絶叫が響き渡り、再び身体を赤く染めるエンリは声すら出さず、呆けた様子で頭部と胴体が別れたネムを見守る。

 

「アハ、アハハハハ!」

 

 狂った嗤いがエンリから飛び出し、周囲が混乱のどん底に落とされる中、騎士が口を開く。

 

「ニグン君、この“雌犬”は俺の所有物だ。もし良ければ法国で世話をしてくれないかな? 見ての通り、既に種は出してある」

 

「勿論ですとも! 全員、彼女を丁重に持て成しながら撤退しろ! 反論は許さん!」

 

 騎士から差し出されたリードを慌てて受け取り、状況を理解出来ていない隊員へ指示を飛ばすニグン。数分もしないうちに撤退していく陽光聖典を見届けた騎士は満足そうに頷くと瞳に怒りの炎を宿しながら下手に暴れず体力回復に努めていたガゼフへ向き直る。

 

「貴様、一体何者だ!」

 

「そう怒るなよ。飼い主に逆らった奴隷を処分しただけだろ」

 

 闘志を燃やし、戦う姿勢を見せるガゼフの態度に騎士は肩を竦める。

 

「なんか、色々と言いたそうだけど、俺のお願いを聞いてくれよ。蒼の薔薇のイビルアイに伝えてくれないか? “カンストプレイヤーが人類の為に神人作りに励んでる”って。それで多分、意味は通じる筈だ」

 

 フルフェイスの向こう側で嗤う騎士に我慢の限界を超えたガゼフが瞬く間に接近すると速度を乗せた一撃を振るう。ガゼフの腕に鈍い衝撃が奔る。避ける事すらせず、ガゼフの一撃をまともに受けた騎士は特に気にした様子もなく、口を開く。

 

「ちょっと気になったんだけど、王国戦士長ほどの人が滅茶苦茶弱くなったら、王国の王派閥はどうなるんだろうな? まあ、気にするな、“最終的”に生きて返してあげるからさ」

 

 次の瞬間、絶望がガゼフを襲った。

 




エンリの心、完全に壊れる(キリッ)


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幕間

『ええ~、あの人何してんの!』

 

 ナザリック地下大墳墓にあるモモンガ専用の一室で遠隔視の鏡を使用して騎士の行動を監視していたモモンガは心の中で絶叫していた。傍に控えていたセバスは遠隔視の鏡に映る光景に多少険しい表情を浮かべている。

 

「やはり、彼と同盟を結んだ事は不服か?」

 

「いえ、かの御仁は人間でありながらアインズ・ウール・ゴウンと同盟を結んだ実力者。この世界の状況が分からない状況ではモモンガ様の選択肢は最善だと思います」

 

 モモンガの問い掛けにセバスは首を横に振って否定するがその内心は隠しきれていない。

 

『まあ、セバスなら顔を顰めても仕方ないよな』

 

 製作者であるたっち・みーの影響を受けてナザリック内では珍しくカルマ値がプラスのセバスにとって、騎士の行動は到底受け入れられるモノでは無かったハズだ。

 

 音が入ってこない事は幸いだったが映像だけ見れば幼女をぶち殺し、その姉を犯し、その後復活させた幼女を再びぶっ殺し、正義の怒りに燃える戦士を相手に四肢を切り飛ばして殺してみたり、巻物で復活させてから部下の遺体からグールを作り出して殺し合いをさせてみたりと戦士の心と命を弄びながら何度も蘇生と殺害を繰り返す。正しく狂人の狂気を体現した行為だった。

 

「とはいえ、彼からもたらされた情報は貴重なモノだからな……」

 

 モモンガは呟き、小さなため息を吐きながら騎士と初めて出会った時の事を思い出す。

 

 

 

 

 彼と初めて出会ったのはユグドラシル最終日だった。

 話したい事がある、と言ってナザリック地下大墳墓を訪れた彼にモモンガは最初、サービス最終日とはいえ、警戒心を覚えたが“鈴木悟”の名前を出されたので会わない訳にはいかなかった。

 

 ナザリックの外で彼と対面したモモンガは彼から気の狂った話を聞かされたのだ。

 この世界は物語の世界であり、主人公はモモンガである自分。ユグドラシルのサービス終了と共に異世界転移してアレコレとトラブルが起きると。明らかに気の触れた言動の彼に会った事を後悔したモモンガだったが、彼が触らない方が良い狂人であると確信したのは現実世界で女性を強姦している写真や動画を見せてきた時だった。データとして持ち込む事すらヤバイそれは勿論、運営による巻き込まれバンを恐れたモモンガが速攻で止めさせたが。

 

 サービス終了と共に異世界転移するから現実世界を満喫しましたよ~、と笑う彼が完全に壊れた人間である事をモモンガに印象付けた。

 

 もし、モモンガが興味本位で動画を見ていた場合、モモンガも聞き慣れた、さる人気声優が強姦されている動画もあったりして、転移後の世界で全力の殺し合いに発展したりする可能性もあったが、そうはならなかった。

 

 彼からの提案は簡単なモノだった。転移後の世界の情報が入ったデータを渡す代わりにアインズ・ウール・ゴウンのギルド紹介欄に彼と親密な同盟関係であると記す事や他にもいくつか提案があった。

 

 正直、狂人である彼の言動に付き合いきれないモモンガは運営に連絡してバンの要請をするつもりだったが、“鈴木悟”以外の名前をいくつか出されてしまい、モモンガは彼をバンする事が出来なかった。もし、彼の話が事実だったとして、転移する前に女性へ強姦するような奴がバンされて異世界転移しなかった場合、何をするか予測もつかない。

 

 “鈴木悟”に被害があるだけならまだ良い。ほかのギルメンに彼の手が伸びた時の事を考えると転移させた方がマシである。下手に刺激しないように彼の提案を受け入れ、サービス終了と同時に警察へ連絡しようと心に誓ったモモンガは彼をナザリックに招き入れ、そしてサービス終了と共に異世界転移してきたのだ。

 

 

 

 サービス終了と共に異世界転移した直後、モモンガは混乱を極めた。彼を刺激しない為にすべての提案を飲んでいたがそもそも彼の話を信じていなかった為、受け入れた提案によって何が起きるのか、予想もつかない。

 

 内心ではヤバイと思いつつも本当に動き出した階層守護者達の対応に追われ、彼の紹介もそこそこに彼はナザリックに何かする訳でもなく、守護者達の反応を確認すると約束通りこの世界の情報をモモンガに渡すとナザリックから去っていった。

 

 現在は明らかに気付いているが彼の行動の監視と彼からもたらされた情報の精査確認、情報による思考誘導の可能性、“原作”との差異による周囲の行動予測などのあらゆる処理をナザリックの総力を挙げて行っている。

 

 “原作”という観点からも彼はやりたい放題である。

 

 現在、彼の目的を聞いてナザリックの女性陣には彼と個々で接触しないように厳命している。

 

 いつか確実にナザリックの女性陣へ魔の手が伸びると確信しながらも“情報”という絶対的優位性を彼に握られているモモンガは彼を排除する事が出来なかった。既にアルベドから彼とセックスする事でナザリックに利益を生むなら彼の篭絡を自分に命令してくれと、提案すらきている。勿論、速攻で却下したがアルベドのビッチという特性と彼の相性の良さに内心では頭を抱えている。

 

 ――――必ず来るであろう彼との衝突にギルメンの子供である彼女達を捧げるか、“情報”という絶対的優位性を握られたまま、全面衝突するか。

 

 どちらにせよ、ろくな事にならない未来を予想したモモンガは深いため息を吐いた。

 




Hに関係ない所はザクザクカットしていきます。(余計な情報を出しちゃうとナザリックの面々とチョメチョメする際に都合が悪いので)


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王国にて①

Q.天才×天災は?


 ガゼフ・ストロノーフの率いる部隊が彼を残して全滅した、という情報は瞬く間に王都中へ広まった。王国の辺境地ではまだまだその情報の信憑性に欠ける為、法螺話だと思われているが王都では公然の事実として受け入れられていた。この事実を切っ掛けに王国の貴族派閥は着実に発言力を増している。当然、市井にこの情報を流したのは貴族派閥なのだが。

 

 しかし、部隊を全滅へ追い込んだ下手人がスレイン法国である、という事実は双方の派閥を含めて限られた人物しか知らない。帝国との戦争中に法国の相手など出来ないという見解が双方で一致した為の処置である。

 

 騒がしく勢力図が動いている王宮の片隅にある一室にアダマンタイト級冒険者【青の薔薇】の面々は呼び出されていた。

 

「まずは本来、貴公達のように王国の平和に貢献してもらっている者達をこのような場に招いた事、謝罪しよう」

 

 王宮の中でも下働きする人々が過ごすような飾り気のない、少し薄汚れた一室で安っぽい木造の椅子に腰かけた初老の男性――――ランポッサⅢ世は深々と頭を下げる。

 

「いえ、私達は己の正義に従って行動したまでの事、頭をお上げください」

 

 自身も王国の貴族であり、【青の薔薇】のリーダーを務めるラキュースは狭い室内を見渡しながら答える。

 

 椅子に座るランポッサⅢ世に傍に控える彼の懐刀で最近、悪い意味で話題の人物であり“見る人が見れば”明らかに以前より弱くなっているガゼフ、心配そうにこちらを見つめている友人であるラナー、薄い木造の扉の外側ではラナーのお気に入りの騎士見習いクライムが人払いを兼ねて控えている。

 

 ランポッサⅢ世の言葉通り、一国の王がアダマンタイト級冒険者を招くには明らかに不釣り合いな場所と面子なだけに【青の薔薇】の面々も今後の展開を邪推して表情が硬い。

 

「本来なら手厚い歓迎をしたい所だが、そもそも王がこのような場所にいる事自体、あまり知られたくないので率直に要件を伝えさせてもらいたいが構わないか?」

 

「ええ、それは勿論」

 

 少し険しい表情を浮かべるガゼフの言葉にラキュースは頷き、話を促す。

 

「既に聞き及んでいると思うが私の部隊が全滅した。その相手は帝国兵に扮したスレイン法国の者だった」

 

「そんな、法国が……」

 

 務めて冷静に話そうとしているガゼフだったがその表情と態度から深い悲しみが容易に見て取れた。

 

「勿論、法国に対する対処も必要だが要件はそこじゃない。貴殿達なら私の状況を見て理解していると思うが私は法国の部隊を指揮する指揮官が異常なまでに気を使う謎の人物によって殺害と蘇生を繰り返され、このような状態になっている」

 

「っ!」

 

 最善の装備ではなかったとはいえ、王国戦士長を蹂躙する実力と高度な蘇生魔法を操る知性、どちらも並外れた人物でなければ成し得ない行為に【青の薔薇】の面々は息を呑む。そんな中、イビルアイだけが仮面の下で“神人”の介入を考慮して表情を顰める。

 

「その人物が私を通じて、【青の薔薇】のイビルアイ殿に伝言を頼まれた。彼女なら自分の正体がわかるだろうと」

 

「なに?」

 

 思わぬ指名に反応するイビルアイ。

 

「イビルアイ殿。何故、貴殿が彼と関わりがあるのか、その素性は問わない。ラナー様からも貴殿が王国に仇なす人物ではないと聞いているし、私自身もそう思っている」

 

 王国戦士長を殺して遊ぶような人物の関係者。状況だけ見れば、イビルアイに対する危険度が跳ね上がっているがこれまでの【青の薔薇】としての功績により相殺された状況だ。

 

「“カンストプレイヤー”を名乗る人物が『人類の為に神人作りに励む』と言っていた。貴殿にはその意味が理解出来るか?」

 

 ――――カンストプレイヤー。

 

 ガゼフの口から飛び出した言葉にイビルアイは足元がガラガラと音を立てて崩れていく気がした。“神人”なんて可愛げのあるモノじゃない、そんなモノを遥かに超越した存在が動き出した。

 

「ちょ、イビルアイ!」

 

 腰砕けのように無言のままへたり込んだイビルアイの姿にラキュースが慌てて駆け寄り、肩を貸す。

 

「それほどの人物なのか?」

 

 歴戦のアダマンタイト級冒険者が無言で崩れ去る様子にガゼフの表情が険しさを増す。

 

「ああ、済まない。お前達に分かりやすく言えばカンストプレイヤーって言うのは」

 

 ――――神様だ。

 

 

 

 

 月明りが部屋を照らし、優しい静寂が部屋を包み込む中、突如現れた人の気配にラナーはベッドから身体を起こす。そこには昼間、ガゼフの報告とイビルアイの知識によって正体が判明した全身鎧の騎士――――カンストプレイヤーが立っていた。

 

「初めまして、さあ、どうぞ」

 

「あれ、反応が薄いな」

 

 少しだけ騎士の登場に驚いたラナーだったが自分の運命を悟り、淡々とベッドの上で股を開く。そんなラナーの反応に騎士は小さく首を傾げた。ラナーの性格は知っているので暴れたりしないとは思っていたがこうも淡々と股を開かれては興醒めだった。

 

「彼女から聞きました。“神人”とはプレイヤーと現地人の間に出来る子供の中でプレイヤーの力に近い才能を持つ者だと。つまり、セックスがお望みなのでは?」

 

「まあ、その通りだけど……」

 

 わざわざ夜這いしたにも関わらずいまいち盛り上がりに欠けるラナーの態度に騎士が小さくため息を吐く。

 

「直接、私の部屋に移動する事が出来る人物で王国戦士長ですら止められない武力を持つ人物にどのような抵抗をしろと?」

 

 結果が同じなら無駄な抵抗などせず、淡々と騎士からの辱めを受けて早く満足してもらった方が手っ取り早い。そりゃ、そうか。と笑う騎士は納得した様子でズボンを下ろし、ベッドに乗り込むと横になったラナーの上に覆いかぶさり、広げた内腿に指を添わせ、白い純情を連想させるフリルが印象的なガーターベルトに手を掛けた後、なにか思い付いた様子でラナーから離れる。

 

「?」

 

「このまま俺に犯された場合、君は確実に俺の子供を孕む。けれど、もし、もし俺が犯した後に“誰か”が君とセックスした場合、その子供は“誰”の子供なんだろうね」

 

 騎士の言葉を聞いて、ラナーの思考が回転を始める。愛しの姫君が強姦魔に中出しされて、そのままだと妊娠した場合、確実にその子供は強姦魔の子供となる。もし、強姦魔に犯され、弱っている姫君が強姦魔の子供を孕みたくないと泣き付いた場合、彼はどんな行動をするだろうか。

 

「クヒ」

 

 ラナーは小さく嗤った。

 

「何故、そのような提案を?」

 

「だって、その場合、君は強姦魔に犯される心優しい姫君を演じるだろ? マグロを抱くよりそっちの方が興奮するからね!」

 

 それはまごうこと無き騎士の性癖だった。

 




A.一人の青少年が狂う。


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王国にて②

若干の独自解釈が入っています。


 太陽が姿を隠し、月が顔を覗かせる時間帯。

 

自室にて本日の役目を終えた鎧を脱ぎ、楽な恰好で過ごしていたクライムの下に一つの連絡が入った。ラナー様が自分の事を呼んでいるという事だった。夜という事で少々面食らったクライムは脱いだ鎧を再び着込み、ラナーの部屋へ向かった。

 

「ラナー様、失礼します」

「――ええ、どうぞ」

「?」

 

 ラナーの部屋の前に控えるメイド達に頭を下げながら部屋の扉をノックして声を掛けると返事が聞こえてくる。控えているメイド達は気付いていないようだが、ラナーの声音が普段と少し違う事に気づいたクライムは不思議に思いながら入室する。

 

 月明りが照らす部屋の中には誰もいない。窓際に設置されたテーブルとイスに座っていると思っていたクライムは天蓋の下がったベッドの向こう側に人の気配と漏れ出す吐息に気付き、視線を向ける。

 

「ラナー様?」

 

 クライムはベッドの傍に控えると中に居るであろうラナーに声を掛ける。

 

「クライム……、静かにこちらへ来てくれませんか?」

「ええ、失礼します」

 

 内心で少しだけ不敬な妄想が頭を過ぎり、息を飲んだクライムはそんな筈がない、と自分を戒める。

 

「なっ――」

 

 天蓋に手を掛け、ラナーの姿を確認したクライムは別の意味で息を飲んだ。

 

 清楚を思わせる白を基調としたネグリジェは胸元を切り裂かれ、豊満ではないものの美しい乳房が顔を覗かせる。ボロボロに切り裂かれた襟下から染み一つない生足が見て取れた。

 

 ――――そしてなにより、片側の乳房を刺激されて頬を赤らめるラナーと片手で乳房を刺激して、もう一つの手でラナーの喉元に短刀を添える不審者の姿。

 

「それで? その剣を抜いてどうするつもりだ? その剣が俺に届くのとこの短刀が喉を切り裂くの、どちらが早いだろうな」

 

 反射的に、腰に下げた剣の柄に手を伸ばしたクライムの姿に不審者――プレイヤーが声を掛ける。

 

「……何が望みだ」

 

 ラナーの瞳に映る恐怖の色を確認したクライムはゆっくりと剣の柄から手を放し、戦闘態勢を解除して、プレイヤーに要求を問う。

 

「いや、なに、こいつに一番見られたくない奴は誰か、と聞いたら君の名前が出てきてな。折角だからこれから起こる事を君に見てほしかった。先に言っておくけど顔や視線を少しでも逸らしたら“殺す”からな。ちゃんと見ていろよ」

 

「ラナー様……」

「ごめんなさい、クライム。貴方を巻き込んでしまって……」

 

 クライムとて、自分が選ばれた意味を察する事が出来ないような唐変木ではない。顔を背けるラナーの言葉を理解したからこそ、クライムは何も言えなかった。

 

「んー、なんか気に食わないな」

 

 二人の間に流れる妙な空気に反応したプレイヤーはラナーの喉元に添えた短刀をクライムへ向ける。

 

 ――――六光連斬。

 

 突如、放たれたクライムにとって見覚えのある武技は腰に下げた剣を吹き飛ばし、クライムの頬に五つの切り傷を刻む。恐ろしい精度と反応すら出来ない速度で放たれたソレに呆然とするクライム。ガゼフの武技を放ったプレイヤーはその精度を見て、満足そうに頷いている。

 

 プレイヤーである彼がモモンガにすら教えなかった“裏技”。自キャラのプロフィールに書き込んだ“設定”による“中の人の強化”。『全ての武技が習得可能』という“設定”はきちんと効果を発揮して身体に馴染んできた様子だった。

 

「今日の気分は売女のように淫乱な奴を抱きたい気分だ。満足出来なかったら、腹いせに誰か“殺す”かもな」

 

 わざわざクライムへ聞こえる声量でラナーの耳元に囁く。

 

「なっ!」

 

 互いが人質に取られた状況の中、頬を涙で濡らしたラナーがそれでも覚悟を決めて、自分の手でネグリジェを捲り上げ、クライムに見えるように股を大きく開く。

 

「わ、私の事を抱いてください!」

 

 男に劣情を抱かせる卑猥な言葉など“知る筈”の無いラナーは精一杯の言葉でプレイヤーを誘惑した。

 

 

 

 

 ベッドの上で胡坐をかいたプレイヤーの上にラナーが座り、イスに座ったクライムによく見えるように背後からラナーのおっぱいを揉みしだき、反り立つ肉棒は血を付けながらラナーの膣内を鼓動する。

 

「どうした? お前の方から誘ってきたからには動いてくれないとな」

「クライム……」

「ラナー様……」

 

 前戯も無しに挿入された肉棒から与えられる痛みにラナーは顔を顰め、ラナーを手荒に扱うプレイヤーを睨むクライム。その視線を飄々と受け流したプレイヤーはラナーに行為を催促する。

 

 痛みに耐え、ぎこちなく腰を振るラナーの姿にプレイヤーはまあ、こんなもんかと内心でため息を吐く。はっきり言って、膣内自体は気持ちいいが技術が足りない。ずば抜けた頭脳を持っていたとしても性行為自体は初めてのようだった。経験豊富なプレイヤーですら無茶な態勢での行為だと思っているセックスはラナーが腰を振る度に肉棒がラナーの膣内から外れ、上手く出来ない事に動揺しながらラナーが肉棒に手を添えて膣内に挿入するという行為を繰り返している。そもそもプレイヤーの肉棒が巨根だからこそ挿入出来ているが普通の人間なら挿入する事自体、困難だろう。

 

 性行為に不慣れな少女である事をこれでもか、というほど表現出来ているし、肉棒が外れて再びラナーの手で挿入する度にクライムの顔が曇るのでこれはこれで面白いのだが、これではいつまで経っても射精に至らない。

 

「もういい、ベッドの上で四つん這いになれ」

「っ~!」

 

 プレイヤーは肉棒を一度引き抜き、ラナーの態勢を無理矢理四つん這いに変更すると再び肉棒を挿入する。すると今まで届いていなかった位置まで入った肉棒に身体を痙攣させるラナー。

 

 ネグリジェを捲り上げ、柔らかい腰に両手を添えて腰を振る。パンパン、とリズムよく出したり挿れたりの繰り返しに少しずつラナーの膣内から愛液が溢れ出す。段々と滑りが良くなってきたラナーの膣内にプレイヤーは前後の動作だけではなく、左右の動きも織り交ぜながら腰を振る。

 

「ひゃっ!」

 

 腰を振り始めて数分、突如ラナーから漏れ出た声にプレイヤーはピクリと反応する。クライムは終始表情を顰めていたが漏れ出た声が演技かそうでないか、歴戦のプレイヤーには簡単に分かった。演技ではない、本当に感じた声音と背後から犯す征服感。少しずつ気分の乗ってきたプレイヤーはラナーが“本当に”反応した近辺を重点的に攻め始めるとラナーの声音が少しずつ変わっていく。

 

「い、いや!」

 

 バレた、と直感的に理解したラナーは片手で口を押え、演技ではなく勝手に漏れ出す吐息を隠そうとするがそもそもの経験値が違う。巧みにラナーの両手はプレイヤーに掴まれると腰の動きが段々と激しさを増す。

 

 せめてもの抵抗に下唇を噛んで喘ぎ声を隠すラナーはプレイヤーの腰がピストンする度に身体を痙攣させる。

 

「んっ」

 

 唇を結んだまま、漏れ出す声に加虐心を刺激されたプレイヤーは笑みを浮かべ、クライムへ視線を向ける。

 

「恥じるなよ、異性の痴態を目前に興奮しない奴は同性愛者くらいだぜ」

 

 股間にテントを張るクライムにプレイヤーは声を掛け、喘ぎ声を必死に抑えるラナーを見せつける。

 

「いや、いや! 見ないで、クライム!」

「ラナー様!」

 

 幾度となく身体を痙攣させるラナーはクライムの張ったテントに気付き、本気で嫌がり、身を捩る。

 

「ほら、これで孕めよ!」

 

 トドメ、とばかりに大きく挿入した肉棒がラナーの膣内で脈を打ち、射精する。

 

「っ~!」

 

 大きく身体を震わせたラナーはプレイヤーが手を放すと同時にベッドへ倒れこむ。

 

「良い事を教えてやろう。エ・ランテルの墓地区画、【青の薔薇】にしっかりと調べさせた方がいいかもな」

 

 ラナーの膣内から肉棒を引き抜き、血と愛液と精液で汚れたソレを当然のようにラナーの美しい金髪で拭き取り、髪を穢すプレイヤーはそう言い残すと魔法で転移門を開き、姿を消す。

 

「ラナー様!」

 

 プレイヤーが立ち去った事を理解したクライムは慌ててラナーに近付くと犯されている時は見せなかった涙を流している事に気付く。

 

「クライム……、私はあんな人の子供を孕みたくありません」

 

 弱弱しく、縋るようにクライムの手を取るラナーの姿にクライムは生唾を飲んだ。

 




主人公の設定には【感度3000倍】や【幸せスイッチ】とか色々と書いてあります。


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王国にて③

人の話を聞かない強者はラナーやジルクニフが最も苦手とするタイプだと思う。


「エ・ランテルの墓地区画の調査?」

 

 プレイヤーの存在が確認されて、その対処の方向性が決まった翌日、ラナーの部屋に呼び出された【青の薔薇】であるラキュースはラナーからの提案に首を傾げる。プレイヤーの動向は当然であるが八本指の動きが気になる中、王都を空席にする意図が読めない。

 

「ええ、貴方達にしか頼めない事なの」

 

「っ」

 

 少し躊躇い、儚い笑みを浮かべて告げるラナーと悔しそうに表情を浮かべ顔を伏せるクライム。

 

「どうかしたの?」

 

 ラナーとクライムの態度に何かを感じ取ったラキュースは怪訝そうな視線をラナーに向ける。

 

「――――何も無かったわ」

 

 ラキュースの言葉にラナーは子宮がある腹部を軽く撫で、クライムに視線を送ると“何も無かった”と否定する。

 

 どうかした、という質問に対して、何も無かった、という返答。不可解なラナーの動作、そしてこの脈絡のない会話をわざわざラキュース自身だけではなく【青の薔薇】のメンバーを呼び出して、この会話を聞かせる意図にラキュースは思考を巡らせる。

 

 つまり、エ・ランテルの墓地区画の調査を決めた“何か”がラナーに起きた。しかし、ラナーは自分の意思で何も無かったとしている。ラナーの口から口外出来ないがラナーの身に起きた“何か”。そして、不可解なラナーの動作とクライムの反応。

 

「ラナー! 貴方、もしかして――――」

 

 一つの仮説を思いつき、目を見開いたラキュースの言葉を遮るように微笑し、首を横に振るラナー。

 

「でもっ!」

 

「止めろ、ラキュース。姫様が何も無かったと言う以上、何も無いんだ」

 

 同じ答えを導き出したイビルアイはラナーに追及しようとしているラキュースを止める。

 

「エ・ランテルの墓地区画の調査だったか? 【青の薔薇】として引き受けるかどうかは別にして、私が行こう。そちらの方が“被害は少ない”だろうからな」

 

 イビルアイは自分に待ち受けているであろう“被害”を予想してため息を吐いた。

 

 

 

 

「そう不貞腐れるな、姫様達の覚悟を無駄にするつもりか?」

 

 【青の薔薇】の面々は贔屓にしている宿屋の一室に集まり、ラナーの提案についての話し合いをしていた。露骨に不機嫌なラキュースにイビルアイが言い聞かせる。

 

「姫様、絶対にヤられてる」

 

「部屋に匂いが残ってた……」

 

 “何が”とは言わないがラキュースの予想を裏付けるようにティアとティナが口を開く。

 

 プレイヤーによってラナーが強姦された事は理解した。その上でラナーが何も無かったと口にしなければならない事にラキュースは怒っているのだ。

 

 ラナーの強姦被害が彼女を可愛がっている父親のランポッサが知った場合、彼は怒り、プレイヤーと敵対する事になる。その時、王国に齎される被害は想像もつかない。だからこそ、ラナーは王国の事を想い、“何も無かった”と告げるしかないのだ。

 

 そしてもし、最悪の場合が起きた時、その子供は誰の子供なのか。ラナーとクライム、王国の為にした二人の覚悟に何も言えないもどかしさがラキュースを憤慨させる。

 

「それでどうする? 向こうは【青の薔薇】を要望しているようだが、はっきり言うぞ。この戦力では戦っても絶対に勝てないし、行けば確実に犯されるぞ。だが、向こうの事情を一番理解出来る私が行けば“話し合い”が可能かもしれない。余計な被害を出す必要もないだろう」

 

 そもそもプレイヤーを対話の席に引きずり降ろさなければ、プレイヤーの強姦行為は止まらないだろう。誰にも止められず、対話もしない強姦魔を放置すれば被害者が増えていくだけだ。

 

 確実にわざとである。彼の強姦行為を力で止められない以上、そもそも彼には対話の席に着く理由が無い。彼の一番厄介な所が“対話をしない”事であり、【青の薔薇】は彼が要求した“対話の席”に着く条件だろう。

 

 だからこそ、ラナーは躊躇い、それでも【青の薔薇】にエ・ランテルの墓地区画の調査を依頼した。良心として、【青の薔薇】の面々がその事実に気付くような態度での提案だったが。

 

「いいえ、イビルアイ。私も行くわ。リーダーの私が行かないのは向こうも納得しない筈。だけど、三人は――――」

 

「鬼ボス」

 

「鬼リーダー」

 

「ようはそいつを満足させればいいんだろ? なら、この中で私が一番適任だな。そもそもお前ら、男を満足させる術を知らないだろうし」

 

 ラキュースの言葉に咎めるような視線を送る二人と唯一、経験者であるガガーランが笑う。

 

 三人の表情を見て、何を言っても無駄な事を察したラキュースは大きなため息を吐く。

 

「それじゃあ、全員で行きましょうか。――――絶対に“対話の席”まで引きずり下ろすわよ」

 

 ラキュースは覚悟を決めた表情で呟いた。

 




【青の薔薇】の面々は赤面しながら移動中にガガーランから男を満足させる術を教わっていると思います。


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