1度燃え尽きた英雄が再び立ち上がるのは間違っているだろうか (レアシイ)
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レインという男

「ふっ!やぁっ!」

 

歳若い少年が目の前の怪物を相手にショートソードを降っている、その姿はまだ武器を握って日が浅い事を如実に表していた。

 

「よっと」

 

「グギャア!」

 

少年を後ろから襲おうとしていたコボルドを蹴り飛ばす

 

「もっと力を抜いて武器を振れー、あとダンジョンでソロの時に目の前の相手だけに集中するのはご法度だ、常に周りに目を向けろー」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

(何やってんだろうなー、俺)

 

同じファミリアでもない新人の面倒をダンジョンの上層で見る、嫌いじゃないが時々妙に虚しくなる、ついつい手持ち無沙汰になり手に持つ安物の武器を弄ぶ事を止められない

 

これがレイン・アスカルダ、Lv6冒険者の今の日常だった

 

 

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「今日はありがとうございました!」

 

「おう、気をつけて帰れよ」

 

少年はこちらにお礼を言って走り去って行った、きっとファミリアの仲間に報告しに行くのだろう

 

(俺もやること済ませてさっさと帰るか…)

 

気だるげに換金所に足を運ぶ、上層のモンスターの稼ぎなど上級冒険者からすれば雀の涙だが男一人で贅沢しないなら十分だと言える。換金を終えれば後は報告だけだ

 

「よう、エイナちゃん、新人のお守りが終わりましたよっと」

 

「あ!レインさん!おかえりなさい!」

 

受付嬢のエイナちゃん、声をかけると嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる姿が非常に愛くるしい

 

「いやー、今日の新人は中々見込みがあって良かったねー、ありゃ将来大物になるね、間違いない」

 

もう何回このセリフを口にしただろうか、実際には才能のあるなしなんて分からないのに

 

「あの…ありがとうございます!違うファミリアなのにわざわざ新人冒険者の指導をしてもらって!」

 

「いやいや、いーってことよ、おじさんから始めたことだしね」

 

そう、この新人のお守りは俺が始めた事だった、やることが無くて腐ってた俺が気晴らしに始めた事で新人冒険者の死亡率について心を痛めていたエイナちゃんに俺が勝手に誤解されてるだけ、エイナちゃんからしたら俺はきっとお人好しの善人なのだろう、でも本当はそんな事は無い、ただただ気を紛らわしたかっただけでギルドにいた時にたまたま右も左も分からない新人を見つけて教えてやっただけだ、

 

「あの…レインさん…こんなことこちらから頼むのも間違いなのは分かっているのですが、1つお願いがあるのですが…」

 

「んー?なになに?おじさんかわいい女の子のお願いならなんでも聞いちゃうよー」

 

「実は…この前新しい子が冒険者になって───」

 

 

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「ただいま戻りましたよー」

 

エイナちゃんのお願いを聞き終えてホームに帰ってくる、豪邸ではないがそれなりに広い家はがらんとしていて酷く物寂しい、そんな我が家をほいほいと進んでいく、あの人はきっといつもの場所だろう

 

「やっぱりここに居たんですか、イーリス様」

 

そこにいたのは白い髪に白磁のように白く滑らかな肌、白魚の様な指に美しくも儚さを感じさせる細い身体、まるで女神の様な、いや本物の女神が胸の前で手を組み祈りを捧げていた、その姿は神秘的を超えて神々しくもあり、同時に一瞬目を離せばその瞬間消えてなくなりそうな儚さがあった、そして女神が祈りを捧げていたのは古い武器だった。剣、槍、盾、弓、戦鎚、杖、雑多に積み上げられ、中には折れている物や砕けている物も存在していて傍目に見ればただのガラクタだ、だが主神様には、いや俺とイーリス様にとっては何より大切な物だった。イーリス様は祈りが終わったのかゆっくりとこちらを振り返った

 

「おかえりなさい、レイン。今日も新人冒険者の護衛?」

 

「ええまぁ、可愛い女の子に頼まれちゃ男としちゃ受けざるをえないんでね」

 

「ふふ、レインは優しいわね、ご飯にしましょうか、今日は私が作るわね」

 

「そんな!主神様に食事を用意させるファミリアがどこにあるんですか!俺がしますよ!」

 

「いいのよ、あなたは座っていて?今日は料理がしたい気分なの」

 

そう言われると反論できずに椅子に腰を下ろす、何もすることがないので少しウトウトとしてしまう

 

 

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───

 

 

『なんだよ…!これ…!』

 

目の前にあるのは真っ赤な大地とそこに横たわる人間だった、きっと誰も生きてはいないだろう、そんな事は分かっているのに必死に生存者を探し出す

 

『アスカ!ユビーシャ!ケント!ウルゴー!誰かいないのか!』

 

仲間の名前を呼びかけても誰の返事も帰ってこずただ風の音だけが耳元で大きく聞こえる、

 

『ウッ…ウゥ…』

 

『…!無事なのか!』

 

微かに動いている人間を見つけてかけより、抱き起こす

 

『っ!!!』

 

その顔の半分はひしゃげており原型を留めていなかった

 

『痛い…痛いよ…ねぇ…』

 

『『『『僕達は死んだのにどうしてレインは生きてるの?』』』』

 

 

 

 

「っつ!!!!!」

 

思わず飛び起きてしまいそして、あぁまたいつものかと落ち着く。もう何回目だろうこの夢を見るのは、あの日自分だけが生きて帰った日からずっとだ

 

「レイン?どうしました?もうご飯が出来ましたよ?」

 

「いや、ちょっと悪い夢を見ただけです、なんでもありません」

 

神に嘘はつけない、だが濁すことは可能だ。でもイーリス様は俺の夢に気づいている、だが気づかないフリをしてくれている、そして俺もそれに乗っかるどこかおかしな関係

 

 

この関係はあの日、俺以外のファミリアが全滅した日からずっと続いたままだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




強キャラのおじさんキャラ好き


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出会い

評価してくれた人がいてウレシイ…ウレシイ…遅れてゴメンナサイ…ゴメンナサイ…


「ベル・クラネル、白髪赤目で歳若いヒューマン…戦闘経験無し、オラリオに来た理由は英雄になりたいから……ねぇ」

 

昨日エイナちゃんから教えて貰った新人の情報を反芻する、ダンジョン前での待ち合わせになっているがそのような姿は未だに見当たらない

 

(ま、俺が早く来ただけなんだけどね)

 

俺はいつも待ち合わせには早く来るようにしている、早く来ている先輩を目にした時の反応で大体その新人がどんな性格か分かるからだ。

 

(ま、どんな奴が来ても面倒は見るけどね)

 

とはいえその辺は心配していない、エイナちゃんの紹介でもあるし彼女がめちゃくちゃ心配していたので歳は10代くらいだろう、それに横柄な態度も多分ギルドでは見せなかったことも伺える。

そう思いながら待っていると1人のヒューマンの男が人混みを掻き分けてこちらに向かっていた、白髪に赤目、恐らく彼がベル・クラネルだろう

 

「お前さんがベル・クラネルかい?おじさんがレインだ、よろしく」

 

(ふん…体幹もブレブレ、足音を殺す癖もなし、かといってヒョロヒョロな訳でもなく筋肉はしっかりついてるな…普通の農村出身って感じかな)

 

「あ、べ……ベル・クラネルです!今日からよろしくお願いします!」

 

(性格も特に問題なさそうだな、純朴で優しそうな少年だ)

 

「おう、じゃあさっそくダンジョン行こうか、どれくらい動けるのかも見てみたいしね」

 

「はい!頑張ります!」

 

そして2人はダンジョンへと足を進めた

 

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───

 

「ふっ!はぁ!」

 

視線の先ではベルがコボルト相手にナイフを振るっていた

 

(あれはギルドで支給された1番最初のやつか、ナイフはベルのファイトスタイルとよくあっているな)

 

通常ヒューマンは軽い武器を選ぶ傾向がある、俺もロキファミリアのアイズも槍とレイピアだが比較的軽い得物だ。というのも重い武器をヒューマンが持っても力と耐久が伸びやすいドワーフには敵わない、杖を持っても魔力が伸びやすいエルフには敵わない、素早さも獣人やアマゾネスには敵わないだろう、だからヒューマンは軽い武器で臨機応変に対応できる武器に落ち着く事が多いしそれは間違っていない

 

それにベルは特に素早さを活かしたヒットアンドアウェイを徹底している、恐らくダンジョンに潜るのは初めてだが武器の特性と自分の得意な事が噛み合った戦い方をダンジョンに潜って数10分で身につけていた

 

(だが…あれは頂けないな…)

 

「ベル!モンスターが攻撃してくる時目を瞑ってるぞ!ちゃんと目は開けとけ!」

 

「はい!」

 

これは珍しい事じゃない、特にベルの様な元一般人には多い事だ、人間は危害が加えられそうになると反射的に身を竦ませ目を瞑ってしまう、これは人間の本能の一つだ。だがそんなことをダンジョンでしてしまえば当然のことだが攻撃を避けられずに食らってしまう、その上ベルはモンスターの攻撃モーションが見えた瞬間からモンスターから離れてしまう、あれではヒットアンドアウェイでは無くただのビビりだ

 

(センスはいいんだがなぁ…痛みを怖がるのも初心者はよくあるしこの辺は直していかにゃならんなぁ)

 

今まで見てきた新人にも同じような奴はいたがそいつは今も生きて冒険者をしているから多分大丈夫だと思うが

 

「せやぁ!」

 

観察して悪い点を洗い出しているとベルがコボルトに突進を喰らわせ怯んだ所にナイフで一撃与えコボルトを倒した

 

(攻撃することに躊躇しないのはいい事だな)

 

偶にいるのだ、ダンジョンのモンスターといえど傷つけることを躊躇ってしまう優しい人間が、ダンジョンのモンスターも斬られたら血が出るし傷を痛がりもする、それを可哀想と思ってしまうのだ。

 

「ベル!そろそろ疲れたか?」

 

「い…いえ!まだいけます!」

 

(嘘だな、ダンジョン初日で相当緊張しているはずだ)

 

それに声音の端々から疲労が滲んでいる

 

「ベル、体調は正直に言え、不調を隠すことはお前だけじゃなくてパーティーメンバーにも迷惑をかける」

 

これは本当のことだ、パーティーメンバーが疲労で肝心な時にぶっ倒れて全滅したパーティーを知っている、コンディションの共有はダンジョンで最も重要な事の一つだ、これはしっかり言い聞かせないと変な責任感や遠慮で不調を隠されては堪らない、今はまだいいがこれから下層に潜る際には体調1つで仲間の生死をも左右する場面に遭遇するだろう

 

「は…はい…すいません、実は少し疲れました…」

 

「おう、だと思った。じゃあもう1つ下の階に行くか」

 

「え?」

 

「疲れてる時にいかに実力を発揮できるかも大切だぞ、さぁ行くぞ」

 

そう言ってベルの腕を掴んでズルズル引きずっていく

 

「え?え?ちょっ!ちょっと待ってくださーい!」

 

ベルの悲鳴はダンジョン内に響いて誰の耳にも入ること無く消えていった。

 

 

 

 




短いし話進まないけど許してクレメンス


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