特区警察警備部特別対応部隊 SRU (Jdeath0930)
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第1話 猟犬達

 初めまして、今回初投稿となります。


2025年4月22日 20時22分 飛鳥特別行政区中央区島通り

 

 夜の繁華街にパトカーや救急車のサイレンが鳴り響き、赤いランプの光が反射し、銃を装備した警官達が慌ただしく動き回っている。その光景を見ればこの街でただならぬ事態が起きていることは子供でも想像ができるだろう。

 

 この現場に到着するまでに警察無線で大方の情報は入手していた。どうやら巡回していたパトカーが不審車を止めて警察官が近づいたら、運転手が警官を撃って逃走、しばらく追跡が続いたのちに車に乗っていた奴らは車を捨て、このコンビニに逃げ込んだらしい。そしてコンビニに居合わせた運の無い民間人4人を人質に立てこもっているらしい。

 

 犯人に撃たれた警官は搬送中に死亡し、追跡中にも犯人達が銃撃してきて警官2名が被弾して重体らしい。犯人達はコンビニに立て籠もっている最中にも、ちょくちょく包囲した警官達に向けて銃撃を加えてきているとのことだ。そして事態を早く収集したい本部の決断で俺たちが投入されたというわけだ。

 

「全員整列!、現場責任者からの状況説明だ」

 隊長が俺達に命令をする、そしてスーツを着た人物が俺たちの目の前にきて、話を始める。

「現在このコンビニの半径200mを封鎖し、周辺の建物に民間人がいないか確認し、いた場合には封鎖区域外への避難誘導も同時に行っている」

「君達には周辺の安全確認と避難誘導が完了次第、立て籠もっている容疑者の制圧を行って欲しい」

「すみません、ちょっといいですか」

 

 俺の左隣にいた赤髪の女性隊員が一歩前に出て手を上げて、責任者に質問をする。

「なんだ?」

「容疑者達の人数、武装、人質の状態を教えてください」

「容疑者は4人で2人は自動小銃、残り2人のうち1人は散弾銃と短機関銃、最後の1人は拳銃で武装している」

責任者が質問に答えると「ありがとうございました」といい、隊員は一歩下がった。そして責任者が突入方法や細かい説明をして、最後に俺たちに釘をさすように言葉を投げた。

 

「いいか、人質の人命が最優先だもし犯人が人質に手を掛けそうなら、決して犯人を刺激するな。いいな!」

 

 責任者は説明を終えると、指揮テントの方に戻っていた。隊長が俺たちに装備品を準備し、配置につくように命令を出した。俺は乗ってきたバンからガスマスクと自分の使う、REC7アサルトライフルとSW1911を取り出して、各種光学機器やグリップを取り付けている最中に、俺に巨大な盾を持った茶髪の男性隊員とP90を持った赤髪の女性隊員が話しかけてきた。

「俺が前に出て守るから、敵の始末は任せたぞ」

「任せておけ、誰も死なせはしないさ」

「私たちに任せなさい」

「それは心強いな」

 

 俺と茶髪、赤髪の隊員と話していると、後ろからDSR-1を持った、白髪でロングヘアの女性隊員が現れた。

 

「…私の射線には入らないでね…」

 彼女はそれだけ言うと直ぐに俺たちの元から去っていった。そして直ぐに隊長が隊員達に指示を出した。

 

「そろそろ配置につくぞ、アルファチームは前、ブラボーチームは後ろ、チャーリーチームは狙撃位置に行け」

 

20時23分 立てこもり現場ブラボー突入位置

 俺と茶髪の隊員、赤髪の女性隊員の他3名の隊員は、コンビニの裏口に回り突入の準備を整えた。裏口で待機していると無線から隊長の指示が聞こえてきた。

 

「よし、あと2分で建物の電源が落ちる。落ちたと同時にアルファが閃光弾と催涙弾を投げ込み、正面から突入する。それに合わせブラボーは裏口から突入。ホークは犯人が妙な動きをしたら直ぐに撃て、以上だ」

隊長の指示が終わると、俺は手元の時計を確認し突入までの残り時間を数え始めた。1秒、2秒と時間が過ぎていく。そしてその時は来た。

 

20時55分 突入時刻

突如犯人が立て籠もるコンビニやその周辺の電源が一斉に落ち、暗闇に包まれる。その瞬間、正面からガラス窓が割れると同時に大きな音が鳴り響いた。

 

「今だ!行け!行け!」

 

 俺が合図すると、大きな鉄の棒を持った隊員が裏口の扉にその棒を叩きつけ、扉を破壊。そして盾を持った隊員を先頭に次々と建物に突入した。建物に入り、事務所らしきところに入ったがそこには誰も居なかった。店内の方からアルファが突入したのか、ガラスが激しく割れる音がすると同時に、数発の銃声が響いた。

 

その銃声を聞き、俺たちは店内へと突入。突入して直ぐのところには2人の銃を持った犯人がおり、彼らは閃光で少し怯んだ状態で立っていた。俺は盾を持った隊員の左横に立ち、銃を向けて大声で警告した。

 

「警察だ!武器を捨てろ!」

 

 俺が犯人にそう言うと1人の犯人が銃を俺たちの方に向けてきた。とっさに俺は持っていた銃の引き金を引いた。すると“バン”という銃声が響き、銃口から弾丸が発射された。発射された弾丸は犯人の頭に命中し、射入口から赤黒い血が吹き出した。そして犯人は地面に倒れ込み動かなくなった。もう一人の男がこちらに銃を向けたが、その瞬間。

 

“バリーン”

と、ガラスが割れると同時に男の頭に銃弾が着弾し、男はその場に倒れこんだ。外にいた狙撃チームが男を射殺したのだ。俺は無線で外にいた狙撃チームに「いい腕だ」と言った。すると「…これくらいなんともない」というクールな口調の返事が返ってきた。

 

レジの方向に目を向けると、向こうも犯人を1人射殺したようで、1人の男が横たわっていた。もう1人の男は2人の隊員の手で地面に押さえつけられ、拘束されていた。

「正面はクリア、他部隊状況報告!」

正面にいた隊長が叫んだ、すると前方、狙撃チームが無線で報告を入れた。

「こちらチャーリーチーム、ブラボー側にいた容疑者1名射殺。他に異常なし」

 

 そして最後に俺が報告を入れた。

 

「こちらブラボー、後方クリア。容疑者1名射殺、負傷者なし」

 

各チームから報告が入ると、隊長が無線を入れた

 

「本部へ、こちらアルファリーダー。状況はオールグリーン、作戦は完了。人質はすべて無事だ」

「本部了解よくやった、帰還せよ」

 

 本部から帰還命令が出ると、俺たちは現場を一般の警官や刑事達に任せて乗ってきたバンの助手席に乗り込み、事件現場を後にした。俺たちの任務は凶悪事件の鎮圧であり、後のことは彼らの仕事だからだ。

 

 俺たちはの部隊名は“特区警察警備部特別対応部隊部隊”、通称SRU。しかし俺たちのことを犯罪者は、獲物を仕留める政府の犬ということから”猟犬”と呼び、同じ警察官からは部隊章から”ケルベロス”と読んでいる。

どう呼ぶかは彼らの自由だ、なぜなら俺たちはどちらの通称も気に入っているからだ。俺は胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。

 

そしてバンは現場から動き出し、夜の街へと消えていった。

 




 今回初投稿ということもあり、構成が変だったり、読みにくいところがあるかもしれませんが。これから経験を積んで改善していきたいと思います。不定期更新になりますがこれからもよろしくお願いいたします。


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第2話 襲撃

前回までのあらすじ
中央区で起きた人質立て篭もり事件はSRUの投入により、犯人4人のうち3名を射殺1名を拘束したが、警察側も1名の殉職者と2名の負傷者を出す結果に終わった。

用語解説:SRU
正式名は特区警察警備部特別対応部隊。SRUは英語の「Special Response Unit」の頭文字を取ったもの。
警備部に所属し、通常の警察官や機動隊では対処が難しい事件の解決に投入される。平時には巡回も行い犯罪発生を防いでいる。
所属する隊員は厳しい選抜試験を通過した精鋭揃いである。また元自衛官や本土のSATやSITに所属していた人物も何人か所属している。
ワッペンにはナイフを加えたケルベロスが描かれている




2025年4月28日 深夜 飛鳥特別行政区旧港湾地区

深夜の静まり返った港湾地区の埠頭に、数人の男が海の方を眺めていた。ただ景色を見たいのでは無い、ある人物を待っているようだ。

しばらくすると、海の方から1隻のボートが男達のいる埠頭に向かってきた。ボートが埠頭に到着すると、ボートから外国人の女性が降りてきて。それに続くように彼女の護衛らしき人物も降りてきた。

 

リーダー格らしき人物が、女性に近づき話しかける。

「モノは揃ってるのか?」

「ええ、持ってきましたよ。しかしつい3日前にも同じ品を納入したのに、なぜまた同じものを?」

「3日前の立て篭もり事件知ってるか?あの時の犯人がうちの部下でな、その時に押収されてな」

「成る程ね、まぁ私は金さえ貰えればさで十分なので」

 

女性が指パッチンをすると、船に残っていた彼女の部下が次々と大きなケースを下ろし始めた。彼女が部下の一人にケースを開けるように命じると部下がケースを開けた。その中にはAK-74が入っており、彼女はそれを手に取った。

「3日前とモノは同じよ、ロシア製の最高級品で紛い物は一切なし。今回はオマケで拡張アイテムも一緒にさせてもらったわ」

彼女が商品の説明を終えると、男は彼女の護衛に2つのスーツケースを渡す。彼女がスーツケースのうち1つを開けると中には、ドル札が大量に詰まっていた。

「片方に6万ドル、両方合わせ12万ドルある」

「いつもご利用ありがとうございます」

「なあ、いつも思うんだがあんたはどこからこんな代物を仕入れているんだ?」

「それは、企業秘密ですよ。では私達はこれで失礼させていただきます」

 

彼女はそういうと護衛と共にボートに乗り込み、暗闇に包まれた海へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025年4月29日 11時12分 飛鳥特別行政区警察本部 内務調査部第1調査室

「以上が、現場で自分がとった行動です」

俺は4日前の事件に関する調査を受けていた、自分たちの行動に違法性がないかを調べるためだ。俺は調査官に現場での行動と部下に出した指示を細かく説明し、今ちょうど説明を終えたところである。調査官がレコーダーの録音スイッチを切ると、俺の方を向き口を開いた。

「では、これにて白瀬悠木巡査部長に対する聞き取り調査を終了します。なお今回の調査で我々が質問したことは外部に漏らさないようにお願いします」

「了解しました」

「お疲れ様でした、退室してください」

「失礼いたしました」

俺は調査官に一礼すると、部屋から退室した。

 

部屋から出ると、扉の横にある待合用の椅子に白髪でロングヘアーの女性が座っていた。4日前の事件の時に、狙撃で犯人を射殺し俺を助けてくれた隊員だった。

「瑠璃、次はお前の番か」

「…そうです」

彼女はボソッと俺の質問に答えた。彼女は宮野瑠璃巡査、SRUチャーリーチームに所属する隊員で狙撃を担当しており、警察の射撃記録で全国1位の実力を持っている。ちなみに元国防軍兵士でもある。

 

「チャーリーチームの聞き取りも進んでるのか?」

俺が瑠璃に話しかけると、彼女は。

「…今日は私と伊沢さんと今井さんだけです…」

「そうか、お前の判断は正しかったんだ気にすることはないさ」

「宮野巡査、聞き取りを始めます中にお入りください」

俺と宮野が話していると、さっきの部屋から調査官が出てきて瑠璃を呼んだ。俺は彼女に「がんばれ」と声をかけると、彼女は「…はい」と小さく返事をして部屋へと入っていった。

俺はそのまま部隊のオフィスへと戻ることにした。

 

飛鳥特別行政区警察本部SRU事務室

オフィスに戻り俺は自分の席に座って仕事を始めようとしたら、真向かいの席に座っている赤髪の女性が話しかけてきた。

「聞き取りはどうでしたか?」

彼女は十六夜葵巡査、俺と同じブラボーチームの所属で俺の部下でもある。

 

「特に何もかな、守秘義務で話せないのは知ってるだろ」

「そうでしたね」

そんな会話をしていると俺の左隣の席にいた茶髪の隊員が話しかけてきた。

「内務調査部の事なんて一々気にしてたら、ハゲますよ」

彼は佐々秋人巡査部長、同じくブラボーチームの所属で葵と同じく俺の部下だ。彼は元京都府警の機動隊員だったが、特区警察に誘われここにきたらしい。

 

「それもそうだな」

「そうですよ、気にしない方が楽ですよ」

「それもそうね」

3人でそんな会話をしていると。

「お話もいいが、お前ら巡回の時間だぞ」

40代前半で長身の人物が俺の後ろに突然現れた。

 

彼はこのSRUの実働部隊長の笠原佑磨警部だ。

「隊長、いきなり後ろに立たないでくださいよ」

「そんなことはいい、白瀬お前は十六夜と佐々は榊原と一緒に行け」

隊長はそう言うと、自分の席に戻っていた。

 

「また怒られる前に行きますか」

「そうしましょう」

俺がそう言うと葵、秋人も同意して、準備のために俺たちは部屋を出た。

 

俺と葵は武器保管庫から大型の銃器を受け取り、地下駐車場にある車へと向かった。そこで準備をしていると。

「なんだ、お前らも巡回か?」

「葵久しぶり〜♪」

防弾ベストを着た黒髪の男と金髪の女が、俺と葵に話しかけてきて、金髪の女はそのまま葵に抱きついている。

 

男の方は葛西翔太郎警部補で俺とは同期だ、金髪の女は浅井琴葉巡査で葵と同期だ。二人とも刑事部の機動捜査隊の所属である。

「そうだよ、今日はどこを回るんだ?」

「俺たちは東区の住宅街と学園地区の担当さ、そっちはどこを回るんだ」

「今日は、中央区の中心部と東区の境辺りだな」

「そうか、なんかあったら呼ぶからそん時はよろしくな。おい!琴葉いつまで抱きついてんだ、そろそろ行くぞ」

「え〜、私まだ葵と、いたいですぅ〜」

「え〜と、早く離れてほしいんだけど…」

 

葵が困った顔をして、琴葉は翔太郎に顔を膨らませて抵抗する。翔太郎は「はいはい」と言うと葵から琴葉を引き剥がして、彼女をズルズルと引きずりそのまま車へと押し込み地下駐車場から出て行った。

俺たちも準備を整えると、車に乗り込んで地下駐車場から出て本部を後にした。

 

12時35分 中央区延壽通り

巡回を始めてしばらく経った時に運転している葵が俺に話しかけてきた。

「4日前の事件に関する報告書見ました?」

「いや見てない、机にあったけどその前に隊長にせっつかれたからな」

「なら、少し説明した方がいいですか?」

「ああ頼む」

 

俺が説明を頼むと、葵が4日前の事件の報告書の内容を話してくれた。容疑者4人は指定暴力団八雲会の構成員だったこと、そして唯一逮捕した1人は八雲会が最近この特区に興味を持っていることを取り調べで話したそうだ。しかし俺は次に葵が話したことに恐怖した。

「押収した車に大量の武器だと!?」

「はいAK-74が10丁、AEK-918が8丁、サイガ12が5丁にMP-443が30丁。後は5.45mm弾60発入りの箱が100箱と9mm弾60発入りの箱も100箱分、12ゲージ弾も600発分も。殆どがロシア製で、粗悪品じゃなくしっかりとしたものだったそうです」

「そんなに大量の武器を所持していたとはな」

俺が驚いていると、葵は更に話を続けた。

「でも問題はここからなんです。逮捕した奴によるとまだ他にも仲間がいて、まだ大量の武器を持っているらしいんです」

「おいおい、奴ら戦争でもおっぱじめるつもりなのかよ」

俺がため息をつく、そして葵が話を再開する。

「だけど、逮捕した奴を含め仲間全てが陸路で来たらしいんです」

「おい、だけどそれなら大橋の…」

「ええ、検問所で引っかからないとおかしいんですよ。あそこは車を丸ごとX線スキャンできる装置や重量計がありますから、不審な車はそこで抑えられる」

「てことは、奴らはこの特区で武器を仕入れたことになるな」

「刑事部はそう見ているようです」

 

葵は車を右折させ、東区の方に進路を変更した。俺は逮捕された組員の身柄について気になったので葵に質問した。

「今日の12時30分ごろに拘置支所へと移送されるようですよ、もう本部をでた頃じゃないですかね」

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

12時47分 東区木津町

「本部、こちら3号車。木津町に到着、あと10分で飛鳥拘置支所に到着する」

<本部了解>

「楽な仕事ですね、容疑者の輸送だけなんですから」

「そうだな、毎日これだけならいんだがな」

 

護送車に乗っている警官が、同僚の警官と話している。しかしその時。

”ドガーン”

突如、護送車の前方を走っていたパトカーにミニバンが衝突、更に白のセダンも護送車の前に現れた。そして2台の車から武装した男女が合わせて5人程降りてきた。

「あぁ、マズイ」

警官が呟くと同時に、襲撃犯は銃の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走った時に、車載無線から応援要請が入った。

<パトロール中の各車へ、緊急応援要請。拘置所へ容疑者を輸送中の車列が襲撃を受けた、付近の車両は至急東区木津町1番地2付近へ迎え>

「こちら特警03、了解した直ちに急行する」

俺は本部に現場へ向かう胸を通達した。

<特警03こちら本部、了解>

 

<警ら22了解、5分で向かう>

<警ら13、こちらも現場へ向かう>

無線からは次々と他の車両も現場に向かうとの応答が流れて来た。

「本部、こちら特警03現場の状況は?」

俺は本部に現場の状況確認するため、無線を入れた。

<襲撃犯は6名でいずれも自動小銃やボディーアーマーで武装している、車列に同伴していた警察官4名が銃撃により負傷。警ら6と警ら24が先に到着し現在応戦中>

「本部了解した」

「護送の話をした途端にこの騒ぎとは」

「ああ、襲撃者は間違いなく捕まえた構成員の始末のために送られたな」

俺たちの乗ったパトカーはサイレンを鳴らしながら、事件現場へと向かった。

 

12時56分 東区木津町襲撃地点付近

俺と葵は、護送車が襲われた付近に到着した。車で襲撃地点まで行くと危険と判断した俺は、近くに車を止めてここからは徒歩で行くことにした。

車を降りると、まるで戦場にいるかと錯覚しそうな位の銃声が鳴り響いていた。

 

トランク開け、俺はREC7、葵はP90を取り出して準備していると、俺達の後ろに覆面パトカーが停車した。車の中から本部で別れた翔太郎と浅井が降りてきた。

「悠木、俺と浅井も一緒についてく。人は多い方がいいだろ?」

「お前が来てくれるとは、心強いな」

翔太郎はトランクからレミントンM870MCSを取り出した。俺と葵も準備を整えると、4人で襲撃地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ババババ

バンバンバン

俺たちは襲撃地点に続く小さな道を走った。現場に近づけば、近づく程に銃声は大きさを増していく。

俺は自分の無線機を取り、現場にいる警察官と連絡を取ろうとした。

「護送車付近にいる奴で、聞こえてる奴は応答しろ」

すると無線から声が聞こえて来た

<こちら警ら24の三橋だ、こっちは撃たれまくって身動きが取れない。弾も切れそうだ、早く来てくれ!>

無線からは助けを呼ぶ声が聞こえて来た。

「警ら24、状況を教えてくれ」

俺は無線の主に状況を教えるように求めた。

<警官4人が負傷、今は俺と大野と警ら6の武田と水樹の4人で応戦してる、ミニバンに突っ込まれたパトカーの警官は安否不明。容疑者は5人程だ>

「わかった、もうすぐで着く。それまで持ちこたえてくれ」

<了解!、急いでくれ>

 

しばらくして俺たちは襲撃地点に到着した。物陰から現場を見ると、そこはまさしく戦場だった。

応援の警官や襲撃犯はパトカーや車を盾にして撃ち合いを続けていた。応戦する警官の近くには負傷した警官もいた。

「俺と翔太郎で、あの警官たちの所に行く。葵と浅井は援護してくれ」

「「「了解!」」」

「よし、行くぞ!」

俺と葛西は物陰から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

物陰から飛び出すと同時に、葵と浅井は援護射撃を始めた。襲撃犯達もこっちに気づいたのか、何人かがこっちに向けて銃撃ってきた。

俺と翔太郎は車に隠れつつ迅速に行動して、何とか警官達の元に着くことができた。

「やっと来てくれたか」

無線に応答したと思われる警官が、俺に話しかけた。

「待たせたな、援護するから合図を出したら、負傷した警官を運び出せ」

俺はまだ無事だった警官達に、負傷した警官を運び出すように指示した。

「今だ行け!」

俺と翔太郎は、犯人達に向けて銃を撃った。それと同時に警官達が負傷した仲間を抱えて、後ろに下がって行った。

 

「おい、これからどうする?」

翔太郎が俺に話しかける。

「奴らを、始末する以上!」

「いい考えだ」

バンバン

翔太郎はショットガンから腰のホルスターにしまっていたP30に持ち替えると、襲撃犯の男に向けて2発発砲した。翔太郎の銃から放たれた2発の銃弾は犯人の胸に命中し、犯人はそのまま倒れ込んだ。

 

俺もREC7のセレクターをセミからフルオートに切り替えて、引き金を引いた。

バババババ

REC7から銃弾が複数発射され、発射された銃弾は犯人の胴体に次々と命中。着弾した箇所から血が吹き出て、そしてその犯人も地面へと倒れ動かなくなった。

 

「2人始末したが、まだ3人も残ってるのか」

「クソ、厄介だな」

俺と翔太郎が話していると、無線機から葵の声が聞こえた。

<誰かが護送車の中に入り込もうとしてます!>

車から少し顔を出して護送車の方を見ると、銃を持った女が車の中へと入って行くのが見えた。

「クソ、翔太郎突っ込むぞ!葵と浅井もこっちに来い」

<了解>

俺と翔太郎は、盾にしていたパトカーから飛び出して、護送車に向けて走った。

残った襲撃犯がこっちに向けて銃を撃って来た、俺は再びREC7の引き金を引いた。銃弾は襲撃犯の頭部に命中し襲撃犯は地面に倒れた。

翔太郎も銃弾を避けながらもう片方の襲撃犯の男へと接近した。そして近づくと、ショットガンを襲撃犯に向けて撃ち込んだ。近距離で撃った散弾は男の右腕に命中、そして襲撃犯の男の右腕を吹き飛ばした。襲撃犯は痛みからかその場に倒れ込み叫んでいる。

 

護送車に到着し俺はSW1911、翔太郎もP30に持ち替え、乗り降り口から中に入る。奥には拳銃を持った女が立っていた。

「警察だ!武器を捨て投稿しろ!」

俺が、女に武器を捨てるように言う。

「聞こえないのか!武器を捨てろ!」

翔太郎も女に、武器を捨てるように促す。

女はこちらに振り返ると、右手に持っていた銃をこちらに向けた。

バンバン

バンバン

俺と翔太郎は拳銃を2発ずつ発砲した。銃弾は女に命中、女は倒れ込みそのまま動かなくなった。翔太郎は倒れた女に近づき、女が生きているかを確認する。

「死んでる」

翔太郎が女の死亡を確認を伝える。俺は護送車の奥に進み、奥で倒れている男を確認する。

「護送中の容疑者だ、こいつも死んでる」

倒れていた男は4日前の事件で逮捕し、今日拘置所に移送される予定だった男だった。俺は本部に連絡を入れる。

「本部、襲撃犯は片付けた、だが、護送中の容疑者は死亡」

<こちら本部、了解した>

 

「2人共、大丈夫ですか?」

護送車の中に、葵と浅井が入ってきた。それと同時に応援に駆けつけたパトカーや救急車が次々と到着し、救急隊員や警官が慌ただしく動く。襲撃され、戦場となった街の中を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第3話 強制捜査

前回までのあらすじ
4日前の事件の容疑者を輸送中の車列が襲撃される。悠木と葵、機動捜査隊の翔太郎と琴葉により、襲撃犯の撃破に成功するが、容疑者は殺害されてしまう。
そして車両襲撃の前日夜に旧埠頭では武器取引が行われていた。

用語解説
飛鳥特別行政区警察 
飛鳥特別行政区の治安維持を行う組織。組織面では本土の警察組織との差異は無いが、装備面に関しては、一般の警察官でも自動拳銃や短機関銃の所持、高性能車両に加え、軍用規格のヘリコプターを保有する等の大きな差がある。
人だけでなく、AIにより管理されたドローンも活用している。

近年の凶悪事件多発により、2025年に入っただけでも既に17人の殉職者と30人を超える負傷者を出しており、依然として増加の一途をたどっている。



2025年4月29日 13時40分 東区木津町襲撃地点

襲撃発生からしばらく経過し、襲撃現場では科学捜査官やロボット、刑事達による捜査が行われていた。彼らは現場写真を撮ったり、証拠品の採取を行なっている。俺たちはと言うと、内務調査部の事情聴取を受けていた。

「現場に到着した時には、警官4人が負傷してました」

「それで、次にどうしました?」

「仲間を下がらせるために、葛西巡査部長と一緒に犯人に向けて発砲した」

「分かりました、詳細はまた本部でお聞きします」

調査官はそういうと、別の警官のところに向かっていた。

すると。

 

「お前ら派手にやったな」

スーツを着た、40代前半の男が現れた。

この人は厚木集十警視正、SRUの管理官で俺たちのボスだ。

「「警視正お疲れ様です!」」

俺と葵は敬礼して集十さんに挨拶する。

 

「挨拶はいい、お前らが必要だから連れに来ただけだ」

「俺たちがですか?」

「というよりSRUにA-2司令がさっき発令されたからな」

SRUにはA-1からA-4までの4段階の召集指令がある。

A-2は危険性が高い家宅捜索の援護要請のことで、俺たちが家宅捜査の現場で待機して何かあれば即座に行動できるようにするための招集指令だ。

 

「でもA-2が発令される家宅捜索て大概は…」

「ああ、楽しい花火合戦が待ってるな」

「勘弁してほしいわ、まったく」

そう、このA-2指令が発令される家宅捜索の大概は容疑者との間で戦闘が勃発して、容疑者側か俺達側のどちらかに負傷者か死者が発生するのが毎回のお決まりとなってる。

「ぐちぐち言うな、俺だって現場に出てお前らの指揮を執るんだから」

「でも、集十さんは安全な指揮車両から指示するだけじゃないですか」

「おいおい、この前のマフィアの手入れの時は車を貫通して大変だったんだからな」

「え!、あの時弾丸あそこまで飛んでたんですか?」

「そうだよ、奴らムキになって乱射しまくったからな!それより早く本部に戻るぞ、俺は先に戻ってるからな」

集十さんはそう言うと、乗ってきた車に戻って行き現場を後にした。俺達もパトカーを置いてきた場所に戻ることにした。戻ると翔太郎と浅井巡査が片づけをして去るところだった。

 

「よう翔太郎、今日は助かったぜ!」

「気にするな、困ったときはお互い様だ」

翔太郎はそう言うと車に乗り込んで、現場を後にした。俺達も装備品を車に積み込んで本部に戻ることにした。

 

2025年4月29日14時00分 飛鳥特別行政区警察本部第1大会議室

俺達は本部に帰り、そのまま捜査本部のある会議室へ向かった。会議室は多数の刑事や警察官が椅子に座り、SRUの隊員も部屋の後ろの椅子に座っていた、俺達が空いていた椅子に座ると、前に座っていた指揮官らしき刑事が話を始めた。

「よし全員集まったな、では今からブリーフィングを始める」

刑事が指示すると会議室に設置されていディスプレイに資料が映し出され始めた。

「今回の捜査対象は指定暴力団八雲会、今までは本土にて活動を続けていたが、去年の12月からこの特区に進出を始めたことが確認されている、主に武器密輸、不法入国斡旋、麻薬で利益を上げている、構成員規模は約680人、下部組織を含めたら役1000人規模に…」

 

「俺も警視庁時代には奴らと何度か撃ち合いをしたが、奴らは躊躇なく俺達を撃ってきやがった」

俺が隣にいた葵に話しかける。

「私も長崎に居たときは奴らと何度か戦闘に、それで同僚が1人…」

「それ以上はいい、今は話を聞こう」

 

「今回我々組対1課は、12月後半から八雲会を各都道府県警と協力して捜査を続けてきた、最近になり公安警察からの情報提供により捜査が進展した」

「質問いいですか?」

一人の警察官が質問をする。

「なんだ?」

「その、公安警察からの情報てなんですか?」

「奴らが最近になり武器を密輸したとの情報だ、2日前にリストや写真付きで送られてきた」

「ありがとうございます」

警察官はそういうと席に座った。

 

「本来ならば念入りに捜査を続けるべきだが、今日と昨日の事件を受けて本部長から早急に対処しろと命令を受けた、そのため今日奴らの事務所に強制捜査を行う!」

刑事がそう言うとディスプレイが切り替わった。

「目標は奴らの持っている武器の押収と幹部の逮捕だ」

「奴らの事務所は北区の繁華街にあるオフィスビルだ、捜査に当たり向こうの抵抗が予想される、そのため今回は緊急即応隊とSRUへ応援要請を出しおいた」

刑事がそう言うと、前にいた集十さんと第1機動隊長が立ち上がり礼をする

「緊急即応隊は事務所へ先に入り中の安全確保と、事務所周辺の警戒を行う、SRUは有事の際に備えて現場周辺で待機だ、北警察署からも応援の要請は出してある」

「ほかの者も危険に備えBレベル装備で臨むように、14時40分に地下駐車場に集合して向かうぞ、以上解散!」

会議室にいた者たちは次々と会議室から出ていき、準備に向かったむろん俺達SRUも準備のため会議室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥特別行政区北区扇町 14時10分

「あなたが直接来るとは珍しい、何かありましたかね?」

「率直に申し上げますと、あなたたちの取引について見直しをしたいと思いましてね」

「ほう、何故また」

「最近あなたたちの行動が目立ち過ぎていましてね、我々の関与が発覚するリスクを避けたいのですよ」

「善処する、ただこちらの都合も考慮していただけないかね」

「まあいいでしょう、私はこれで失礼します、ですが行動するときはくれぐれも冷静に行動してくださいな」

少女はそういうと椅子から立ち上がり、護衛と共に出口に向かった。出口につくと彼女は会話していた相手のほうを向いた。

「そうそう、もうすぐここに警察の捜査が入りますが、穏便に済ませてくださいね」

そういうと彼女は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥特別行政区北区扇町上空 15時07分

準備を終えた俺たちはブラックホークに乗り込み現場上空に到着した。

「ブラボーリーダーからコマンダーへ、現在目標の建物上空で待機中」

俺は無線で「コマンダー」つまり集十さんへ連絡を入れる。

<こちらコマンダー了解、他の部隊も報告しろ>

<アルファ、配置につきました、現在待機中>

<チャーリーも配置完了、狙撃支援いつでも可能>

<コマンダーから各員へ、命令あるまで待機せよ、以上>

今回俺たちブラボーチームはヘリで上空待機して、何かあれば即座に屋上から建物に突入できる配置を任された。

 

<飛鳥特別行政区警察だ、今からこの建物を捜査する、令状もあるドアを開けろ!>

<開けないなら、強制的に開けるぞ!>

刑事がドアに向かって叫んでいるのが無線越しから聞こえる、刑事の後ろには緊急即応隊が待機しているでも突入できるようにしている。

<仕方ない執行開始だ!ドアをぶち開けろ!>

 

<”ドカーン!”>

無線から爆発音が聞こえると、地上にいた刑事や緊急即応隊が次々と中に入っていく。しかし突如無線から怒号と銃声が聞こえてきた>

 

<刑事が撃たれた!>

<クソ、撃ってきた、撃ってきたぞ!>

<援護する!>

<バババババ>

<下がれ!、下がれ!>

<ダン、ダン>

<警官負傷!警官負傷!敵は重装備だ、援護を要請する!>

<クソ!グレネードだ、下が…」

<ドカーン!>

爆発音が無線から響くと、無線からは”ザー”というノイズ音が響いた。

 

<待機中のSRU各部隊へこちらコマンダー、本部から行動命令が出された、全部隊作戦開始!犯人制圧と中にいる警官の救助を行え>

コマンダーから作戦行動命令が出された。

「パイロット、屋上でホバリングしろ降下する!」

「了解、屋上でホバリングする」

俺がヘリのパイロットに命令すると、パイロットは旋回して屋上でヘリをホバリングさせた。そしてヘリに乗ったほかの隊員が、ロープを垂らして降下準備に入る。

「秋人、葵、河田、白峯先に屋上におりて、周辺の警戒をしろ!」

「「「「了解!」」」」

俺が秋人と葵と他2名の隊員に命令すると、ロープにカラビナをつけて降下していった。4人は屋上に降りると四方に展開し警戒体制に移った。

「よし、降りるぞ!」

俺と残った3人の隊員もロープにカラビナをつけてヘリから降下し、屋上に降り立った。

「秋人、上野先頭に立て、俺と葵、大井は秋人の後ろに、残りは上野の後ろについていけ」

俺は盾を持っている秋人と、上野に先頭に立つよう指示し、残りの隊員はその後ろにつくように指示した

「「「「「「「了解!」」」」」」」

「よし、行け!」

そして俺達は建物の中に入っていた。

 

建物の中に突入した俺たちは、部屋を一つずつ確認しながら通路を進む、今のところは敵の反応もなく順調に進んでいる。

「よし、次はこの部屋だ、葵頼む」

俺はベストのポケットからスタングレネードを取り出す、葵がドアを開けると同時に部屋の中にスタングレネードを投げる。

 

バーン!

中でグレネードが炸裂し大きな音が響く、そして俺たちは部屋の中に突入する。

中には2人の男が怯んでいて、手にはAEKを持っていた。

「警察だ!武器を捨て、両手を上げろ!」

葵が男達に武器を捨てるように言った、男達はあきらめたのか武器を捨てて両手を挙げた。その隙に大井が拘束バンドを男たちの手にはめて、地面に寝そべらせた。

「よし、次に行くぞ」

「「「了解!」」」

俺たちは部屋の制圧を終え、部屋を後にした。

 

 

「ブラボーリーダーからコマンダーへ、最上階の制圧完了、これより下に降り、5階の制圧を開始する」

<コマンダー了解、アルファと機動隊が1階と2階を制圧して、3階の制圧にとりかかっているが激しい抵抗にあっている>

「ブラボーリーダー了解、アウト」

コマンダーへ連絡を入れて、俺たちは下の階に続く階段を下りていく。

 

「秋人、上野先に行け」

俺は盾を持った秋人と上野に先に行くように指示を出す、2人が廊下に出た瞬間、銃撃が始まった。

バババババ

銃声が響き、2人の盾には銃弾が着弾し金属音と火花が散る。犯人は2手に分かれている通路の左側からでてきたようだ。

「秋人、上野そのまま押さえろ、大井、白峯先に出て2人の後ろについて、援護しろ」

「「了解!」」

俺が命令すると2人は廊下へと向かい、秋人と上野の後ろにつき手に持ったREC7で反撃を始めた。

俺と葵、河田も2人の後ろにつき、ともに反撃する。

「階段奥の部屋から更に2人出てきた!」

秋人が敵が増えたことを伝えてきた。

「河田!スタングレネードを投げろ!」

俺が命令すると、河田はスタングレネードを投擲した。敵のいる位置に着弾すると同時にバァーンと轟音と凄まじい閃光が炸裂し、犯人たちの動きが止まった。

「撃て!」

バババババ!ダン、ダン、ダダダダダダ

俺の合図で隊員全員が一斉射撃を開始し、無数の銃弾が犯人達を襲い奴らの体に穴を開けた、銃弾をまともに喰らった犯人達はその場に倒れこんだ。

「クリア!」

「よし、前進!」

敵を倒し、俺たちは再び前進を続ける。

 

しばらく前進して左右に分かれている廊下差し掛かった。俺は2手に分かれて制圧をするように指示を出した、俺は葵、秋人、河田を引き連れて右側へと進んでいった、少し歩くとドアがあり中から音が聞こえてきた

「おい、早くしろ」

「わかってるて、せかすな」

「もし奴らが入ってきたら、殺せ」

「わかった」

どうやら部屋から何かを運び出そうとしているようだ。俺は部屋の中を偵察するため、マイクロスコープをドアの隙間から通す、そしてタブレットを捜査してスコープからの映像を受信する。中には4人の男がおり、全員AEK-971で武装している。内2人が大きなケースを持ち、残りの2人はドアの方を警戒している。

「何かまずいことをしでかそうとしてやがる」

「どうします?突入して射殺しますか?」

秋人が提案する。

「いや、あの箱の中身がわからない以上銃を使うのは危険だ、ここは格闘戦で行くぞ」

俺はあの箱の中身がわからないため、銃を使うのは危険と判断した。そして俺は銃を使わず制圧することにした。

 

「葵頼んだぞ」

「了解」

彼女はそういうと警棒を取り出した。俺はドアに近づきドアノブを握り右手にスタングレネードを持つ、そして口でグレネードのピンを引き抜き、ドアを少し開けて中に投げこみ素早くドアを閉める。

 

中でグレネードが炸裂したのを確認するとドアを開ける、すると葵が部屋に飛び込みドアの正面にいた男に飛び蹴りを喰らわす、素早く左反転し別の男の足に警棒を叩きつける、男は痛さから左膝を地面につくが葵はさらに追い打ちで首に警棒を叩きつけて男を気絶させる。葵は残った男達も警棒を足、首に叩きつけて気絶させた。

「クリア、中に入っても大丈夫です」

「河田全員拘束しろ、秋人は武器を取り上げろ」

「「了解」」

俺は奴らの持っていたケースに近づき、中身を確認する。中にはSMAWいわゆるロケット弾が入っていた、しかもこの部屋には同じケースがまだ10ケース以上もあった。

「隊長、ちょっと来てくれますか」

葵が俺を呼んだので、葵のほうに行く。

「これを見てください」

葵が木箱をバールで開ける、中にはPKP軽機関銃が2丁入っていた。別の箱には7.62mm×54R弾が大量に入っていた。

「この部屋はどうやら武器庫のようだな」

「こんなに大量の武器を一体どこから」

「とにかく報告だ、河田報告しろ」

「了解」

俺たちは部屋の調査を終えると、部屋から出た。

 

「よし、次はこの部屋だ」

ドアノブを握るが、カギがかかっているようでドアは空かない。

「鍵がかかってるな、秋人やってくれ」

「了解」

秋人は盾を壁に置くと、背中に背負ったベネリM4を手に持ちドアの蝶番を破壊した。俺がドアをけ破り葵がスタングレネードを部屋に投げ込む、グレネードが炸裂したら直ぐに部屋に入る。

「警察だ、武器を捨てろ!」

中に入ると武装した男女3人がいた、彼らは俺の声に反応したのか怯んだ状態でもお構いなしに銃を撃ってきた。

俺は素早くドアの近くにあった棚の後ろに身を隠し、秋人も同じ場所に身を隠した。俺はホルスターからSW1911を取り出す。

「秋人、3カウントでやるぞ」

「了解!」

「3、2、1今だ!」

俺と秋人は棚から身を出し犯人達に向け銃を撃つ。

ダンダン、バァーンバァーン

俺の放った2発の弾丸の内1発は女の眉間を打ち抜き、もう一発も隣にいた男の眉間を打ち抜く。秋人も残った男に散弾の雨を浴びせた、散弾をまともに喰らった男の胴体はそこら中に穴が開き、そこから血が流れだしている。

「クリア!」

俺と秋人は部屋を見渡し誰も敵がいないことを確認すると、廊下に出た。すると無線が入った。

<こちらブラボー5、こちら側の制圧を完了、犯人を4人を射殺し、4名を拘束しました負傷者はゼロ>

<こちらブラボー1、よくやったさっきの地点で合流だ>

<了解、これから向かいます>

「よし、行くぞ!」

俺たちは先ほどの分かれ道へと向かった。

 

俺たちは分かれ道で合流し、ここからは再びチームで行動する。その前に俺は無線で制圧が完了したことを報告する。

「ブラボーリーダーからコマンダーへ、5階の制圧が完了なお5階には大量の武器がある部屋を見つけた」

<コマンダー了解、アルファチームと機動隊も3階の制圧が完了し、現在は4階の制圧にとりかかっているが大した抵抗はないようだ>

<そのまま4階で合流しろ、チャーリーチームも狙撃支援から室内制圧に移行している、但し目標人物の幹部がいまだに見つかっていないので注意しろ>

「了解、これより4階に向かう」

無線での報告を終えて、俺たちは4階への階段を下りる。

 

4階に到着して廊下に出るとアルファチームと合流した、アルファチームの隊長の笠原さんが話しかけてきた。

「遅かったな、パーティーはもう終わったぞ」

「お疲れ様です、被害状況は?」

「アルファとチャーリーともに負傷者と死者は無しだ」

その後も笠原さんは下で起きたことを報告してくれた、機動隊や警官は酷くやられたようで20人近く負傷して、1人死んだようだ。だが犯人側は半数を殺されて俺たち以上に被害を負い、武器の押収にも成功したようだ。

だがあと1つの目標が達成できていない。

「そういえば、幹部の拘束はできたんですか?」

「いやまだだ、チャーリーチーム、機動隊と他の警官が下の階から確認作業をしているが未だに見つかってない」

「そうですか」

「とにかく捜索だ、俺たちはこの階を探すからお前らは下を頼む」

「了解です」

笠原さんはそういうとアルファチームを引き連れて去っていた

 

俺たちが捜索を続けていると、無線が入った。

<エアー9から各員へ、その建物から南西に100m地点の小さな建物の前に黒のSUV2台とセダンが1台が停車、先ほどまではいなかった>

<こちら本部、ナンバーは分かるか?>

<SUVの1台目は横浜300 ゆ122-232、2台目は横浜302け837-009、セダンは飛鳥302う120-833>

<了解照合する、付近を警戒中の警官は建物に迎え>

<了解、10号車と13号車で向かう>

すると現場から2台のパトカーが去って行った、するとまた無線が入った

<こちら1階を捜索中の第2機動隊第1分隊、地下に通じる隠し通路を見つけて中に入りましたが南西に通じている模様です、今6名が地下に進んでいます>

俺がその連絡に違和感を覚えると、また新たな無線が入る

<こちら本部、セダンの登録情報から当該車両は八雲会の関係者の車両と判明、10号車、13号車警戒しろ>

<こちら10号車了解、現場に到ちゃ…>

<バババババ>

無線から銃声が消えてきた。

<こちら13号車、銃撃を受けいる!繰り返す銃撃を受けている!至急応援を!>

<現場にいる全捜査員へ直ちにお応援へ迎え!>

「クソ!行くぞ」

俺は隊員に言うと、下へ降りる階段を駆け下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




色々とあり更新が遅れました、これからもこんな調子ですがよろしくお願いします。


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第4話 追跡

前回までのあらすじ
飛鳥特別行政区警察は八雲会の事務所への強制捜査に踏み切る。しかしそこで銃撃戦となり、警察は多数の負傷者を出してしまう。
制圧のためSRUも投入され、事務所の制圧は成功し武器の押収もできたが、肝心の幹部の拘束はできないでいた。

しかし現場から少し離れた場所で動きがあり、警察はそこに警官を送り込むが突如銃撃戦が始まってしまった。

用語解説:公安警察
2013年の省庁再編及び警察改革により、公安部門を統合し内務省の外局として発足した組織。主に政治や海外勢力が絡んだ事件捜査を担当する。
しかし最近になり捜査が行き過ぎているとの世論の厳しい風当たりを受けている。


高級住宅街を黒のメルセデスベンツEクラスが走る、中には10代の少女と運転手が乗っている。

「お嬢様、どうやら奴ら警察とやりあっているようですよ」

運転手の男が後部座席に座っている少女に話しかける。

「全く、あれだけ慎重に行動しろと言っておいたのに」

少女はあきれた返答をする。

「仕方ありませんよ、この特区を任されている奴は血の気多い奴ですからね」

「それでも理性的な行動くらいできるでしょうに」

「どうします、八雲会の上に言って取引を止めますか?」

「いえ、まだいいわでも注意だけはするように伝えておきなさい」

「かしこまりました、もうすぐ着きますよ準備してください」

少女は運転席と助手席の間にあるボックスに付いているキーパッドを操作して番号を入力するとボックスの蓋が開く、中にはSIG P210と9mm弾入りのマガジンが入っていた。少女は銃とマガジンをカバンに入れる、車が目的地に着きドアが開く。

 

「ウルフ、もし奴が警察に捕まるようなら始末しなさい」

少女はそういうと車から降りて去って行った。

「かしこまりました、お嬢様」

運転手の男はSTI2011を取り出してスライドを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025年4月29日飛鳥特別行政区北区扇町

俺たちは建物から飛び出すと外では慌ただしく捜査員達が動いている。さらに街中には銃声が響き渡っている。

「おいお前ら!何ボッとしてるんださっさと応援に行くぞ」

「急げ!急げ!」

「車を出せ!早く!」

キュルルルと音を立てて、何人かの捜査員が車に乗り込んで去って行った。

 

「こちら厚木集十!、本部で待機してるデルタチームとエコーチームを急いで応援に回せ、あと北署に応援を要請し道路の封鎖を急げ!」

集十さんがパトカーの無線で本部と連絡を取り合っている、俺は集十さんに声をかける。

「集十さん!」

「白瀬か、急いで向こうの応援に行けチャーリーも急いで向かわせる、これは装甲車のカギだ使え」

集十さんは俺に装甲車のカギを投げ渡した、俺はそのカギを受け取る。

「了解!お前ら行くぞ!」

俺は部下に命ずる。

「「「「「「「了解!」」」」」」」

彼らは大きな声で返事をした。

 

俺たちは装甲車に乗り込み、銃撃戦の現場に到着した。そこでは犯人達と警官が激しい銃撃戦を繰り広げていた。

装甲車から降りて、警官たちのもとに駆け付ける。

「状況を教えてくれ」

俺は応戦している警察官に状況の説明を求めた。

「容疑者は10人、自動小銃と機関銃で武装している、警官5人が撃たれて負傷!」

説明を求めている間にもパトカーに銃弾が着弾して、金属音が響き渡る。

「よし俺達で抑えるぞ、葵、秋人、白峯は俺に付いてこい、残りは後ろから援護しろ」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

「よし行くぞ!」

 

俺と葵、秋人、白峯が物陰から飛び出ると同時に、後方から援護射撃が入り、一時的に敵の攻撃がやんだ。その隙に俺たちは敵との間を詰めた。

俺は持っていたSW1911の引き金を引く、弾丸は敵の胸に命中して血飛沫を挙げながら敵は倒れた。しかし直ぐに敵の銃撃が始まり俺は車に身を隠す。俺はその間にSW1911からマガジンを出し、腰のマグポーチから別のマガジンを取り出して銃に装填する。

俺は周りを見渡すと、奴らの近くに骨組みを積んだクレーンがあるのが見えた。

「おい、あのクレーンを狙え!」

俺がそう言うと、皆が一斉にクレーンのフックを狙って一斉射撃を開始した。するとフックが破壊され、そこに吊るさていた大量の骨組みが次々と落下して敵に襲い掛かる。1人は骨組みの下敷きになり、もう1人は骨組みが体に突き刺さった、さらに落ちた骨組みで相手のSUV1台を破壊してくれた。

 

銃撃戦を続けていると、突然向こうからの銃撃の勢いが弱まった。よく見ると残った1台のSUVとセダンに残った敵が乗り込んでいる、その中の一人は目標だった幹部も混ざっている。

「おい、奴ら逃げるぞ!」

警官の一人が叫ぶと、SUVが先頭にこちらに突っ込んできた。

「皆避けろ!」

俺が叫ぶと同時に、SUVがパトカーとパトカーの間に突っ込み道を切り開くとセダンが後ろに続いて、逃走していった。

「犯人が逃走した!追え!追え!」

警官が叫ぶと、パトカーが次々と走り去っていく。

「俺達も行くぞ、葵、秋人付いてこい」

「「了解!」」

「残った奴は装甲車で追いかけてこい」

「「「「「了解!」」」」」

俺と葵、秋人は近くにあった4ドアスポーツのパトカーのトランクからあるものを取り出して、車に乗り込む。俺が運転席で葵が助手席、秋人が後部座席に乗り込む。乗ったのを確認した俺はパトカーを発進させる。

 

<本部へこちら18号車、容疑者が現場から逃走、現在扇町通を西に逃走中>

<車種は白のX6と黒のSクラス>

無線で追跡中のパトカーからの報告が入る。奴らはどうやら西のほうへ向かっているらしい。

<容疑者がこちら向けて発砲してきた、銃撃で12号車がやられた!>

<クソ、こっちにも…ガッシャーン>

<18号車が、車に激突!>

無線からはひっ迫したやり取りが流れる。

「まずいな、急いで合流しないと被害が拡大する一方だ」

俺は車のアクセルを踏み込むと車は一気に加速しスピードメーターは100キロを超える。俺は一般車にぶつからないようハンドルを操作して走行中の車の間をスラロームして進む。すると無線が入った

<こちらエアー9、容疑者は扇町5の交差点を右に曲がり、区道1号に入り北上中>

「北に向かってるな、近道するぞ」

俺はハンドルを右に切り、区道1号と並走する道を走る。

「秋人、奴らの車が見えたら、どっちかにこれを撃ち込め」

俺は秋人に先ほどトランクから出したものを渡す、それはグレネードランチャーのような形をしていた。

「これって、V.E.C.D.Dですよね」

「使い方は分かるな?」

「大丈夫です、訓練で習いましたから」

彼は装置の安全装置を解除して、ガス圧調整バルブを捻りコッキングハンドルを引く。

 

<容疑者は尚区道1号を北上中、間もなく岸峰町に差し掛かる>

「近いぞ、準備しろ」

「「了解!」」

俺はハンドルを左に切り左折する、少し進むと大きな通りが見えてきて2台の車と3台のパトカーが凄い勢いで走り去っていった。俺はその通りに入りハンドルを右に切り、走り去っていった車達の後を追う。

 

追いつくと敵のSUVからの銃撃を受けた、俺はハンドルを左に切り回避行動をとる。しかし1台のパトカーは銃弾を浴び、運転手が被弾したのか車が右にそれて分離帯に激突して大破してしまった。

犯人達は尚もこちらに向けて銃を撃ち続けてくる。

「2人共、うるさい奴らを黙らせろ」

「「了解」」

葵は窓から少し身を乗り出すとP90をSUVに向けて撃ちめ、秋人もHK45を撃つ、俺もハンドルを持つ手を左手だけにして右手にSW1911を持ち引き金を引き、奴らの車に弾を撃ち込む。

ガチャと音を立ててSW1911のスライドが後退してロックされる、俺はマガジンキャッチボタンを押してマガジンを銃から取り出す、そしてハンドルからいったん手を放し素早くマガジンを銃に装填しスライドストップレバーを下げるとジャキンという金属音を立ててスライドが前進した。

 

「リロードします、援護を!」

葵が車内に戻ってきた。

「了解」

俺と秋人は再び銃をSUVに撃ち続ける、葵はその間にP90のマガジンを変えてチャージングハンドルを引くと、再び窓から身を乗り出して銃撃を続ける、すると相手の攻撃が弱まった。

「秋人、V.E.C.D.Dを準備しろ」

俺は秋人にそういうと、アクセルを踏み込みSUVとの間を詰める、秋人はV.E.C.D.Dの装置を構えてサイトをを覗き照準を合わせる。照準を合わせ終わり秋人は引き金を引く、すると銃口から二本の針が付いた円状の筒が射出された。

射出された筒は敵のSUVの後部ドア付近に命中、秋人は命中を確認すると装置についていた赤いボタンを押す。すると車に刺さった針から大きな電流が流れる。その直後SUVはコントロールを失ったのか、突然スピンして横転してしまった。

「これで残るは一台」

俺は無線を取り、追跡に参加しているパトカーに指示を出す。

「あのセダンはこっちで追う、そっちはあのSUVを頼む」

<8号車了解>

<2号車了解>

2台のパトカーは180度反転すると、横転したSUVのところに戻って行った。

 

俺たちは引き続き残ったセダンを追跡するが、先程V.E.C.D.Dを使ってしまったため車を止める方法を俺は考えていた。何度かPITマニューバを試したが、奴らは車を改造してるのか何度やっても車体はびくともしなかった。

「どうします、あの車には目標が乗ってるから下手に撃てませんよ」

葵が話しかける。

「考えてるよ今、あの車やたら頑丈でな」

俺は葵に返答すると、無線が入った。

<こちらエアー4、現在SRUチャーリーチームを乗せて移動中>

俺はその無線を聞きあることを閃く。

「チャーリーリーダー、こちらブラボーリーダー、そこにチャーリー4いますか?」

俺は無線でチャーリーチームの隊長の伊沢に連絡を取る。

<ああ居るぞ、何だ?>

「彼女に代わってください、頼みたいことがあります」

<分かった>

 

<チャーリー4宮野です、御用ですか?>

「お前の腕を見込んでやって欲しい事がある、できるか?」

<…内容によりますが、ぶっ飛んだことでない限りできます>

「よし、じゃあ今から説明するぞ」

俺は瑠璃にして欲しいことを説明する。

 

<それ位なら、問題ないです>

「よし頼んだぞ、車はそのまま1号線を北上してるから、先回りしてくれ」

俺が瑠璃に頼んだのは、敵が乗っている車の運転手と前輪のタイヤを撃ち抜いて車を止める手伝いをして欲しいことだ。手荒い方法だが、これなら確実に車を止めらると俺は思った。

「だが車は改造されてるから、おそらく全体が防弾仕様になってるぞ」

<大丈夫です、特殊なAP弾を持って来てます、これなら防弾でも大丈夫です>

「なら、安心だ頼むぞ」

俺は打ち合わせを終えて、再び追跡に集中する。しばらく走ると敵の車のサンルーフが開き、そこから敵が出てきた、嫌な予感がした俺は急ブレーキを掛ける、すると。

 

ドカーンと爆発が俺たちの目の前で起きて、黒煙が立ち上る。煙を抜けると敵の車が見える、するとサンルーフからGL-06を持った敵の姿が見えた。

「おいおい!グレネードランチャーかよ!」

俺はあきれた声を出す。

「クソ避けて!」

葵が叫び、俺はハンドルを右に切り車線を変更する。するとまた爆発が発生し、道に穴ぼこが出来上がる。

「クソったれが!ファッ〇ュー」

俺は思わず汚い言葉が出てしまった。また敵がこちらに向けて撃とうとしたので、俺は今度は左にハンドルを切り元の車線に戻る、するとまた爆発が起き道路に穴を開ける。

「あんなの喰らった、俺達ローストチキンになっちまいますよ!」

秋人がそう言う。

「それはいただけないな」

「隊長!運転に集中してください」

秋人に俺はそう返すと、葵はハンドガンを撃ちながら運転に集中するように言う。敵がリロードを終え、また撃ったが。

 

ドカーン

 

放たれたグレネードは俺たちの車の後ろで爆発した、敵の車を見るとサンルーフの敵が頭の半分が吹き飛んだ状態で寝そべっていた。

「瑠璃か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタバタバタというヘリの音が聞こえる、ヘリは着陸しているがいつでも飛べるようにエンジンを回している。私はヘリの中で寝そべり銃を構える。

「高脅威目標排除、次に移れ」

ボルトを後ろに引くと、薬莢が排出され地面に落ちカラーンという音を響かせる。

「目標ドライバー、左から風速5m、距離1108m」

観測手の伊沢さんが私に情報を伝える。私はスコープに映る目標を見つめる。

「修正完了」

「よし撃て」

私はDSR-1の引き金を引く、バーンという音と同時にマズルブレーキから火が吹き、338ラプアマグナム弾が発射され弾丸は回転しながら目標へ突き進む。

弾丸は目標車両のフロントガラスを突き抜けその後ろにいた運転手の眉間に命中、血と脳みそがフロントガラスにこびりつく。

 

私はすぐにボルトを引き次弾を装填する。

「目標排除確認、次は右タイヤ、風速変化なし、距離920m」

「修正完了」

「撃て」

私はまた銃の引き金を引く、ほんの数秒で弾丸はタイヤに命中してタイヤをパンクさせる。

「破壊確認、いいぞ全弾命中だ」

「…これくらい余裕です」

「そうだったな、よし車が止まったら俺達も行くぞ」

私はボルトを引き弾丸を排莢する、また弾丸が地面に落ちてカラーンという音を立てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の車が突然、右に行き分離帯に激突するして停車する、どうやら 瑠璃が狙撃を成功させたようだ。俺は車を止めて葵、秋人とともに車から降りて、銃を構えながら近づく」

「警察だ!、両手を見えるようにしろ」

俺が車内の連中に言う。車内にいた連中はあきらめたのか両手を挙げている。

「秋人、後ろのドアを開けろ、葵は助手席の奴を頼む」

2人はそれぞれドアを開けて、敵を車外に出す。そして手を拘束バンドで縛った後、跪かせる。そのタイミングで装甲車が到着して、後追うように指示していた部下たちが到着し、チャーリーチームの連中も合流した。

 

拘束したのは3人で、その内の1人は高速命令が出ていた幹部の男だった。

「浦井将司だな、お前を銃刀法違反、4件の殺人の共犯、公務執行妨害で逮捕する」

俺が罪状を伝える。

「へッ!勝手にしやがれ」

男は強がった返事をする。

「ああそうかよ」

俺は男の顔面を殴り、男は地面に倒れこむ。

「連れて行け!」

上野と河田がそいつを立たせて、装甲車へと連れていく、しかし突然男の頭から血が噴き出ると、男はその場に倒れる。

 

「狙撃だ!」

河田だが叫ぶと、全員が警戒態勢に移る。

「クソいったいどこからだ!」

チャーリーチームの隊員の一人が叫ぶ。すると拘束していた敵の2人も次々と頭を打ち抜かれて地面に倒れる。

「瑠璃、場所分かるか?」

俺は瑠璃に場所の見当がつくか聞く。

「東に650m離れたあのガラス張りのビルからです」

「本部、こちらブラボーチームの白瀬、拘束した容疑者が狙撃された、応援と救急車をよこせ」

俺は無線で本部に応援を要請する。

「撃ってこないぞ、どうしてだ」

チャーリーチームの隊員が言う。

「もしかして、目的は」

「ああ、恐らくこいつらの口封じかもな」

俺は撃ち抜かれた敵を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、奴らが警察に捕まりそうだったのでやむなく始末しました」

男が階段を下りながら電話を掛ける。

<そう、まあいいわすぐに離れなさい、時期に警察がそこにつくわ>

「ええ分かっています、今から迎えに行けばよろしいですか」

<いえ、別の部下に迎えに来させたから大丈夫よ」

「了解しました、お気をつけて」

<ええ、あなたもね>

ピッと男は電話を切る、すると警備員が男に声をかける。

「すみません、ここは関係者以外の人は立ち入り禁止で…」

パシュン、パシュンと男は腰のホルスターからサイレンサー付きのSTI2011をを取り出して警備員に向け発砲した。

銃弾を受けた警備員はその場に倒れて死体から血が流れ廊下に血だまりを作る、男は警備員の死体を跨ぎその場を後にする。

 

男は地下駐車場に着くと、止めてある黒のメルセデスベンツのトランクを開けてケースを中に入れてトランクを閉める、そして車に乗り込み駐車場を去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ビルの警備員の死体を発見、現在中を捜索中>

<周囲の聞き込みをしていますが、目立った手掛かりはありません>

俺は座り込んで無線を聞いていると集十さんが話しかけてきた。

「やられたな、まさか後始末の準備までしてたとは、これからもっと血が流れるぞ」

「その流れる血を最大限抑える、それが俺たちの存在理由じゃないですか」

俺は集十さんにそう返す。

「そうだったな、それが俺たちの存在理由だし氷川さんの思いだからな」

「自分たちは戻ります、本部に帰って報告書を書かないといけませんから」

俺は立ち上がり、装甲車のほうに向かう。

「分かった、だが報告書はしばらく後でもいい、お前事件続きだったろしばらく休め」

集十さんはそういうと去って行った。

 

「迎えのヘリ来ました」

部下の一人が、迎えのへりが到着したことを伝える、俺は隊員がそろっていることを確認してヘリに乗り込む。ヘリは夕焼けで赤色に染まる街の上空を飛び、本部へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第5話 不穏な動き

前回までのあらすじ
強制捜査中に逃走した、人物を追うべくSRUは犯人と銃撃戦とカーチェイスを繰り広げる。そして瑠璃の狙撃により、容疑者の拘束に成功するも直後に狙撃を受け、容疑者はすべて殺害されてしまう。

一方謎勢力が飛鳥特別行政区での活動を本格化させ始める。




2025年5月2日 位置不明

「ドアの前に到着、指示を待つオーバー」

俺は無線で連絡を取る、俺の真向かいには迷彩服を着た人物が8人いる。

<ブラボー及びロメオへ、突入許可が出た今すぐ突入せよアウト>

「ブラボー了解、これより突入する」

「ロメオ了解」

俺と真向いの男は手でサインを送り、突入準備に入る。

 

迷彩服の人物がドアに爆薬と導火線を仕掛けて少し離れる。秋人が俺達側、上野が迷彩服連中のところにそれぞれ立つ。迷彩服の男がボタンを押すと、爆薬が点火され爆発を起こしドアが吹き飛んだ。

 

俺たちはそれを確認すると秋人、上野を先頭に次々と部屋の中へ進む。

「武器を捨てろ!」

「全員床に伏せるんだ!」

俺と迷彩服の男の1人が大声を張り上げる。すると部屋にあったソファーから人らしきものが2つ現れた。俺は右側の目標にACOGサイトで狙いを定めて引き金を引く。ダンダンと2発弾丸が発射され目標に命中する。

 

もう片方の目標も迷彩服を着た男が構えていた23式小銃から放たれた弾丸によって倒された。俺と迷彩服の男は部屋を確認してだれもいないことを確認した。

「「クリア!」」

俺と迷彩服の男が言うと同時に無線が入る。

<よくやった、2チームともミスなし100点だ、訓練終了キルハウスから出ろ>

天井に設置されていた、照明が次々と転倒し薄暗かった周りを照らす。

 

2025年5月2日 飛鳥特別行政区東区国防軍第1演習場

今日俺達SRUは年4回行われる国防軍との共同訓練のため、東区にある国防軍基地内にある演習場に訪れていた。この演習では、室内制圧、市街地でのテロ制圧、船舶乗っ取り等を想定した訓練や、射撃大会を通じて国防軍との連携を図る目的がある。

 

俺は本部テントに戻り、ホワイトボードに書かれている予定を確認していると後ろから声を掛けられた。

「よう、白瀬元気にしてたか」

相手が握手を求めてきたので、俺も相手を握り握手をする。

「花澤二等軍曹、久しぶりだなあれから腕は上げたか」

花澤二等軍曹は国防軍に所属する軍人で、先程共同訓練を行った部隊の隊長だ。こいつとは演習の一環の模擬戦大会で何度かやりあい俺たちが勝ち越している。

 

「まあ、見てろ今回の模擬戦は俺達がもらうからな」

彼はそう言うとテントから去って行った。

「楽しみにしておくよ」

俺はそう去っていく彼に声をかけた。

予定を確認して、休憩時間に入ったことを確認した俺はブラボーチームに割り当てられた休憩室にむかった。

 

休憩室に着くと、先についていたブラボーチームの面々がそれぞれ好きなことをしている。葵は机に脚を乗っけて寝てるし、秋人は白峯、上野とポーカーをしている。

俺は椅子に座りスマホを構っていると、突然電話が掛かってきた。電話の主は”灰”だった

「灰、なんだよお前まだ学校だろ」

<今は昼休みだから大丈夫だよ~♪>

電話の主は白瀬灰(しらせかい)、俺の実の妹だ。

「で何かあったのか?」

<う~ん、特に無いけどGWに兄さん帰ってくるかなと思って>

「GWか…まだ何とも言えないな」

俺はSRUに所属しているため通常の警察官と違い、有休を申請しても中々取ることができない。そのため最後に帰ったのはもう1年前の灰の入学式の時だった。

<え~、兄さん年末年始も帰ってこなかったじゃない、だからGWぐらいは帰ってきて家族で過ごそうよ~>

「仕方ないだろ、帰ろうと思ったら事件が起きて駆り出されちまったんだから」

<でも、翔太郎さんは帰ってきたじゃない>

「あいつは部署が違うからな」

俺は言い訳を言う。

<まあ、とにかくいい返事期待してるからね、お仕事頑張ってね>

灰はそう言うと電話を切った。

 

暫く部屋で休んでいると、放送が入った。

<30分後にBブロックにて次の演習を行います、警察、国防軍関係者は5分前にBブロック前に集合してください>

(30分あれば煙草吸ってこれるな)

俺はタバコが吸いたくなったので、喫煙所に向かうことにした。

「秋人、煙草吸ってくる」

「了解です」

俺は秋人に一言掛けてから、部屋を後にした。

 

「お疲れ様です」

喫煙所に着くとそこには集十さんと瑠璃が居たので、俺は二人に挨拶する。

「お疲れ」、「…お疲れ様です」

と二人も挨拶を返してくれた。

俺はタバコを取り出し、口に咥え火をつけてゆっくりと煙を吸い込む。灰に煙りを満たして俺は息を吐くと口から煙が出てくる。

 

「そういえば、お前報告書読んだか?」

集十さんは俺に報告書のことを聞いてくる。

「一応目を通しまたよ」

報告書とは29日の強制捜査の事だ。結果的にあそこからは大量の武器や現金が押収され、組員24人が逮捕され、18人が射殺されたと記載されていた。しかし警察も18人負傷の4人死亡と手痛い被害を受けてしまった。

しかしその記載より、俺は別の記載が気になっていた。

 

「狙撃された幹部やその部下からは、検視で弾丸は粉々になった状態で摘出されたとありましたが」

「ああ、体内に入った弾丸が稀に粉々になることはあるらしいが、今回の弾丸は意図的に粉々になるようにされてたらしい」

奴らの死体から摘出された弾丸は、粉々に砕け散っており、犯人特定につながる手掛かりは得られなかったとの記載があったのだ。監視カメラもサーバーごと破壊された跡があり手掛かりはなかったそうだ。

「あとは、ビルの警備員の遺体の弾丸も、同じく粉々でこっちも手掛かりになりそうなものはなかったそうだ」

「でも、それっておかしくないですか」

「ああ、弾丸がこうも簡単に粉々になるなんて偶然にしてはでき過ぎだ」

集十さんはタバコの煙を吐きながら答える。

「科捜研はなんて言ってるんです?」

「何か特殊な加工がされてるか位しか分らんらしい、あれだけ粉々だと難しいらしい」

集十さんは難しそうな顔をして、またタバコを吸っていた。

 

「そういえば逮捕した奴の証言で、捜査前に2人謎の人物がいたそうですね」

俺は取り調べの証言にあったことを集十さんに聞く。

「ああ、10代の少女とその護衛らしき男がいたそうだ」

「10代の少女!?、なんでまたそんな子があんな場所に?」

「分らん、でも武器の提供者だと言っていたが、10代の子供にそんなコネがあるとは思えんし、それを知る幹部はもういないから確かめようがないからな」

確かにそうだ、普通10代の少女に武器を手に入れるコネやあんな連中と繋がる意味が分からない。この件にはかなり裏があると俺は思った。

 

「それで、八雲会に対する捜査はどうなるんです?」

「5日後に公安警察、大阪府警、京都府警と合同で本部に捜査に入る予定らしい、俺たちの出る幕はなさそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日飛鳥特別行政区某所

少女はパソコンを操作して資料を作成している、すると。

 

~♪~♪

 

机にあるスマホの着信音を聞いた彼女は机に銃を置くと、スマホを取る。

「ウルフ、準備はできたかしら」

<はいお嬢様、部下も配置についています>

「なら、目標が現れ次第行動に移りなさい」

<了解しました>

 

彼女は部下に命令するとスマホを切り、再びパソコンを操作する。すると部屋に数人の少女が現れた。

「書記、そろそろ授業の時間ですよ行きましょ」

「あら、もうそんな時間なのね、なら行きましょうか」

彼女はパソコンを閉じて、カバンに入れるとほかの少女と共に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日飛鳥特別行政区某所

「お嬢様から行動許可が下りた、目標は見えたか?」

男は無線で連絡を取る。

<サクリファイス1-1、目標は間もなく襲撃ポイントに差し掛かります>

「サクリファイス2-1、準備はいいか」

<サクリファイス2-1、準備完了>

部下たちは準備できたことを男に伝える。

「よし停車したら、邪魔者を排除し”荷物”をいただいてすぐに撤退だ、私はサクリファイス3-1と共に行動する」

<<了解>>

「よし始めよう」

男の部下は、SG553やMPXにマガジンを差し、チャージングハンドルを引く。

男も、R5にマガジンを差し込みチャージングハンドルを引く。そしてバラクバラとシールド付きのヘルメットをかぶり戦闘準備を整えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥特別行政区東区第1工業区

工業地区の道路を1台のトラックと、国防軍の車両が前後を挟むように走行する。

「HQこちらC-1、現在ポイント3を通過」

<本部了解、そのまま警戒しながら進め>

「了解」

 

車は交差点に差し掛かり、信号が赤だったため車列は停車する。周りは何台か車が通るだけで非常に静かである、しかし

 

ドガーンと突如車列の前方の車が爆発し、それに合わせ交差点の左右、車列の後方から黒のバンが現れ中から黒の戦闘服に身を包んだ集団が下りてきて銃撃を開始する。

「こちらC-5、襲撃だ!今すぐ応援をよこしてくれ!1号車がやられた!」

「トラックに近寄らせるな!」

国防軍の兵士も襲撃者に対して反撃を開始する。しかし敵の数に圧倒され、兵士たちは思うような反撃ができず、1人、また1人と倒されていく。

 

「クソ!本部、応援はまだか!敵に圧倒され、残りは俺と宗井上等兵だけだ」

本部と通信する兵士は無線に向かって叫ぶ。

「グワ!」

「宗井!クソ」

そしてまた一人兵士が倒されてしまう。残った最後の兵士は手に持った23式小銃で応戦するが。

「グァー!」

敵に脚を撃たれてしまい、兵士はその場に倒れこむ。その兵士に敵の一人が近づき、腰のホルスターからSTI2011を取り出し兵士の頭に突きつける。

「お前ら、何者だ!?」

「知る必要はない」

 

バァーン

 

先程まで銃声が響いていた通りは、一気に静まり返った。

 

「サクリファイス1始めろ」

ウルフが命じると、黒服の集団の何人かがトラックに何かを張り付ける。そしてボタンを押すと張り付けたものが激しい炎を上げる。するとトラックの扉がだんだんと解け始めた。

「何分かかる?」

ウルフが黒服の一人に聞く。

「1分で終わります」

「サクリファイス2-1、応援到着は何分だ?」

「5分以内には到着しますが、それまでには終われます」

「よし逃走の準備だ、必要な奴以外は車に乗れ」

そう言うとウルフを含めた6人程がトラックの近くに残り、残りは乗ってきたバンへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日飛鳥特別行政区東区国防軍第1演習場

俺たちは休憩を終えて、午後の訓練に入っていたが、突如として基地内にサイレンと放送が響き渡った。

<輸送隊が襲撃を受けた!第102中隊及び第32憲兵隊は直ちに訓練を中止し憲兵司令官の元に集まれ、繰り返す…>

「お前ら訓練は中止だ!今すぐ中央棟前に行け!」

国防軍の指揮官が叫ぶと、国防軍の兵士達は慌ただしく動き、次々と車に乗り込み始める。

「何があったんだ」

「さあな、だが大ごとなのは確かだな」

俺が秋人と話していると、集十さんがやって来た。

「おい!お前ら、今すぐ本部テント前に集まれ」

俺たちは集十さんに言われたためテント前に向かう。

 

テント前に集まると既にアルファ、チャーリー、エコーチームが集まっていた。集十さんと軍服を着たいかにも偉そうな人が俺たちの前に立ち話を始める。

 

「こちら、この飛鳥基地憲兵隊副司令官の福嶋中佐だ」

「飛鳥基地憲兵隊の福嶋です、突然ですがSRUの皆様に協力をお願いしたくここに参りました」

福嶋中佐は一歩前に出て頭を下げる。そして状況説明が始まった。

「1250時に、東区工業地帯を移動中の輸送部隊が襲撃を受けました、敵は重装備で非常に訓練されているとのことです」

俺はメモを取り出し、ペンにメモを記入する。

「そして先程、輸送部隊からの通信が途絶えおそらく全滅した模様です、本来なら国防軍で対処するべき案件ですが、この基地の部隊は市街地での実戦経験がないため不安があります」

「そこで、我々SRUに軍から応援の要請が出された。これから軍の部隊と共に現場に向かう、すでに警備部長からの了承は得ている」

集十さんはそう言うと、それぞれの部隊に役割を伝える。そして俺たちはそれぞれ車に乗り込み、軍の車列の後に続き基地を出て襲撃現場へと向かう。

 

数分後襲撃地点

俺たちは襲撃地点に到着し、車から降りて襲撃地点周辺の捜索を始める。俺たちブラボーチームは軍の部隊とともにトラックが止まっていた地点に向かった。

 

「こりゃ酷いな」

俺は爆発で丸焦げになった軍の車、殺害された兵士の遺体、そこら中に散らばった薬莢を見て俺はそう思った。

「兵士の遺体しかない、襲撃者は相当の手練れですね」

葵がそう言う。

(実戦経験が少ないとはいえ相手は国防軍の兵士だ、こいつらをいとも容易く倒すなんて、何者なんだ襲撃者は)

俺は少し恐ろしくなった、こんな集団がこの街に紛れ込んでいると考えたら、これからどれだけの血が流れるかわかったもんじゃないからだ。

 

俺は次にトラックの後部に回る、トラックの荷台のドアは人が通れるくらいの大きさに焼き切られていた。

「中に入る、葵付いてこい、残りは外で引き続き捜索を頼む」

俺と葵は穴から荷台の中に入った。

 

トラックの中には棚や箱などが積まれており、そして荷台の奥には兵士が倒れているのが見えた。

「葵、確かめてくれ」

葵はうなずくと、兵士の元に近寄り安否を確認する。

「ダメです、死んでます」

葵はその兵士の死を確認した。

「ブラボーリーダーからコマンダー、車列隊は全滅、手掛かりがないか捜索を続ける」

<コマンダー了解、アルファ、チャーリー、エコーと軍の部隊は周りを捜索してるが、今のところ有益な情報はない>

「ブラボー了解」

集十さんに連絡を入れ終えて、俺はトラックの中の捜索を始めた。

 

トラックには書類や軍で使う消耗品が積まれていたが、殆どが手つかずの状態だった。

しかし俺はあることが気になったため近くにいた、国防軍兵士に尋ねる。

「少し聞きたいんだが、これだけのものに国防軍は普段からこれだけの護衛をつけるのか?」

「いえ、資料や消耗品程度ならせいぜい1台位です、よほど重要なものでない限りは」

(やっぱりな、輸送品の内容に対して護衛が多すぎると思ったらそういうことか)

俺は疑問に思っていたことの答えを得て、この車列隊は何か重要な情報を輸送していることを確信した。

 

「隊長来てください」

トラック捜索を続けていると、葵が何かを見つけたらしく俺を呼んだ。

「なんだ?」

「これを見てください」

葵が指さしたところを見ると、そこには銃弾で穴だらけにされた機械が置かれていた。

「これなんだ?」

「分りません、でもHDDらしきものが見えるのでおそらくPCかと」

(…この護衛の数に、これ以外の荷物は手付かずの状態、こいつが目的か)

俺は襲撃者の目的がこの装置に入っていた何かだと、そう確信した。そして何者かがこの街で何かをしでかそうとしていることを不安に思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日夜飛鳥特別行政区某所

「何かわかったかしら」

少女がモニターとコンピューターが並んだ部屋を訪れ、そこで仕事をする人物たちの一人に話しかける。

「はいお嬢様、彼女はやはり軍に捕まっていたようです」

男がキーボードを操作すると、モニターに女性の写真が映し出される。そこには”リアン・バレンタイン”と書かれていた。

「偽名で登録されてるわね、本名を吐いてないだけよしか、今の位置は」

「陸軍木更津基地にて拘束中、明日の14時に国防軍飛鳥基地に移送予定」

「そう、よくやったわ引き続きよろしく」

少女はそう言うと、部屋を出て行った。

 

部屋から出た彼女は、横を歩く男に話しかける。

「ウルフ、ヘンリエッタを奪還しなさい、彼女の武器入手ルートは我々に必要、けどもし彼女が警察や軍に捕まりそうなら始末して、念のためよ」

「かしこまりました、お嬢様」

「明日の護衛はホワイトに任せるわ、あなたは部下の準備に集中して頂戴」

彼女は男にそういうと、地震の部屋へと入って行った。男は階段を下りて、スマホを取り出して誰かに連絡を取る。

「レイン、明日の0600時にサクリファイスを招集しろ、お嬢様の命令だ」

<了解>

男は電話の主の返事を確認すると携帯を切り、どこかへと消えていった。

 




どうもこんにちは、相変わらず長いですがこれからもよろしくお願いします


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第6話 会遇

前回までのあらすじ
SRUが国防軍との共同演習中に、国防軍の輸送部隊が謎の部隊により襲撃され、輸送部隊の兵士は全滅してしまう。

SRUと国防軍は襲撃現場に到着するが既に敵はおらず、破壊されたサーバーが残されているのみだった。

一方謎の少女は部下のウルフに仲間を奪還せよとの指示を出していた。

用語解説
八雲会
山陰地方に本拠地を構える指定暴力団。日本一の過激組織であり、他の暴力団組織からも恐れられている存在である。

最近になり特区へと進出を始めたが、警察の厳しい追及により勢力拡大を中々進められずにいる。


5月3日 飛鳥特別行政区警察第3男性寮408号室 白瀬悠木の部屋

ピピピピピ!

部屋に時計のアラームが鳴り響き、俺は時計を叩いてアラームを止める。

「ああ、もう朝か」

俺達はあの後現場を軍へと引き継ぎ本部へと引き上げ、俺はそのまま自宅へ帰宅した。訓練や突然の出動で俺の体はすっかりと疲れていたのか、俺はそのままベッドで寝てしまっていたのだ。

俺はベッドから起き上がり、キッチンで簡単な料理を作りテレビを見ながら朝食を食べることにした。

 

「次のニュースです、国防軍は昨日の飛鳥特別行政区で起きた襲撃事件について・・・」

ニュースでは昨日の事件について報道していた。まああれだけの事が起こったから軍も報道しないわけにはいかないのだろう。

 

朝食を食べ終わった俺は風呂場でシャワーを浴びて服を着替えて、PCのメールリストを確認すると俺の個人アカウントにメールが来ていた。

 

 

『4月29日 白瀬悠木様、毎度当店をご利用いただきありがとうございます。白瀬様が注文されていた商品が入荷しましたのでご連絡いたしました、お時間のある時に当店までお越しください。飛鳥銃砲店本店』

 

メールは先月の29日に届いていたようだ、幸い今日は仕事が休みなので商品を取りに行くことにした。

俺はSW1911を腰のホルスターに入れて見えないように長袖のシャツでホルスターを隠す。そして寮の駐車場に出て、自分の駐車スペースに置いてある白のチャージャーSRTヘルキャットに乗り、寮を後にした。

 

飛鳥特別行政区北区飛鳥銃砲店

俺は店の近くの駐車場に車を止めて店の中へと入る、店の中には様々なショットガンやライフルが置かれていた。俺はレジのカウンターにいた黒髪の女性に声をかけた。

 

「理央さん久しぶり、頼んでたものが入ってたてメールが来たから取りに来たよ」

「お久しぶりです悠木さん、奥にあるので案内します」

理央さんはこの銃砲店のオーナー夫妻の娘で大学生だが、時々店の手伝いをしている人だ。

彼女はそう言うと、俺を店の奥へと案内する。奥の小さい部屋に通されると、理央さんは小さいアタッシュケースと弾薬箱3つを机の上に置いた。彼女がアタッシュケースを開くと中には、銃のバレルとグリップパーツ、スライドが入っていた。

 

「ご注文していたSW1911のパーツとGA社の45ACPタングステン弾頭弾です」

「いつもすみませんね、本当なら警察の装備係に言うべきなんですが自前で用意した武器のパーツは自分で用意しないといけないので」

「いえ、悠木さんはお得意様ですしあなたの銃をメンテできて、私もワクワクするので気にしないでください」

「早速ですが、ここで組み込んでもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

 

理央さんから許可を貰うと、俺はホルスターからSW1911を取り出して分解を始める。マガジンを引き抜き、スライドの小さな切り欠きにスライドストップを合わせ抜く。そしてフレームからスライドから外し今までのバレルを取り外して新しいバレルとスライドを組み込む、新しいバレルにはサプレッサーを着けれるようにして、スライドも強化弾使用に対応して今まで以上に強度を強めている。グリップパーツも今までよりも握りやすいものに交換する。そして逆の手順で分解した銃を組み上げて、俺のSW1911のアップグレードは完了した。

 

「試し打ちしてみますか?」

「いいですね、レンジは空いてますか?」

「悠木さんのために、1つ開けておきましたよ」

 

俺は彼女に連れられて、店の中にある射撃場へ向かう。射撃場にはほかにも何人かの人がいて、それぞれ銃を撃っていた。俺はレンジに立ち、からのマガジンに新しい弾を込めて銃に装填して、標的に向けて銃を撃つ。弾を撃ち尽くすとSW1911のスライドが後退する、俺は銃を机の上に置いてレンジ横のボタンを押すと標的が自分の目の前に寄ってきた、的の真中には銃弾の弾痕が集中しているの俺は確認した。

 

「相変わらずいい腕ですね、流石は警察のベスト3に入る人は違いますね」

「銃の腕が良ければ、助かる命が増えますからね」

「あなたのその考え、嫌いじゃありませんよ」

 

俺はその後も何回か試し打ちをして銃のコンデションを確かめた後に、代金の支払いをして店を後にした。

 

 

 

 

 

同日 飛鳥東大橋

「CPへ東大橋検問所を通過、間もなく飛鳥特別行政区に着く」

<CP了解、先の襲撃事件で情報が流れている可能性が高い、十分に注意しろ>

「了解した」

東大橋を装甲車を先頭にした国防軍の車列が走っている。

 

「じっとしていろよ、何かあれば射殺しろと命令を受けているからな」

一人の兵士が、拘束されている女性に向かって喋りかけた。

「そう・・・」

女性はそれだけを言うと、目をつむり黙り込んでしまった。

 

車列は順調に進み、間もなく特区に着くという時に先頭の装甲車が突如爆発して横転した。他の車は直ぐに停車して、兵士が車から出て警戒態勢に移る。すると橋の下からヘリが現れ兵士に向けて銃撃を始めた。

「CP!襲撃を受けた、現在応戦中!」

兵士はヘリに向けて銃を撃つが、効果は全く無い。更に他のヘリも現れ何人もの敵が降下し、激しい銃撃戦が始まった。

 

 

 

 

<通信指令から、北区でパトロール中の車両へ緊急連絡>

車の無線から通信が流れてきた、俺の車は覆面車両として登録しているため、パトカーと同じ装備を積んでいる。

<東大橋で銃撃戦が起きていると通報あり、付近の車両は現場に急行せよ。なお現場では国防軍も応戦している模様>

「こちらSRU所属の白瀬悠木、ID番号2313IUだ、休暇中だが現場から近い位置にいるため急行する」

<白瀬巡査部長感謝します、他にも応援が向かっていますが、気を付けて>

俺はサイレンを鳴らし車を急発進させ大橋へと向かった。

 

 

 

大橋を少し渡った位置に車を止め、車外へと出る外に出ると銃声や爆発音が響き渡り、一般人が車を捨てて次々と走って逃げている。俺はトランクを開けて中に入っていた防弾ベストとサイドポーチを装備。そしてトランクのガンロッカーからベネリM4とフレシェット散弾を銃に装填し残りをサイドポーチに入れ、準備を整えた俺は銃声のする方向へ向かった。

 

橋を進むと段々と銃声が大きくなっていく、俺は銃を構えて警戒しながら進むと、黒の戦闘服を着た連中が銃を撃っていたが幸いこっちにはまだ気づいていないようなので俺は静かに敵に近づいた。

「警察だ!武器を捨てろ」

俺が敵に向けて叫ぶと案の定俺は銃撃を受け、車の陰に隠れながら応戦した。

 

敵がこっちに接近してきたが、俺はベネリM4を近づいてきた敵に向けて撃つ。撃たれた敵は防弾ベストを着ていたが、ベストはフレシェッ散弾により無数の穴が開きそこから血が流れ出て敵の一人はその場に倒れこんだ。敵はマスクをかぶっていたがやられた敵を見て少し動揺しているようだったが、俺は残った敵にも同じくショットガンを打ち込み、5~6人の敵を倒すことができた。

 

ショットガンに新しいショットシェルを込めながら進むと、突然俺の目の前に敵が現れて蹴りを入れてきた。俺は吹き飛ばされベネリM4も遠くへと飛ばされてしまったため、ホルスターからSW1911を引き抜き敵に向ける。

「女!?警察だ!両手を挙げて地面に伏せろ!」

「ただ警官ごときが!粋がると痛い目見るわよ」

「ただの警官だからて、甘く見ると病院送りじゃすまなくなるぜ!」

俺はSW1911を敵に向けて撃つがその敵は素早く銃弾を避け、車を使って空中へとジャンプする。敵は左右のホルスターからステアーM9を引き抜き、俺に向かって撃ってきた。俺も走って銃弾を避け、敵に撃ち返す。銃弾を撃ち尽くしスライドがSW1911のスライドが後退し、俺は新しいマガジンを装填して、敵のほうを見るが、相手は俺から少し離れた位置にいた。

 

「これを避けれるかしら」

相手はそう言うと何本ものナイフを投げてきたが、俺は慌てず神経を集中させる。すると飛んでくるナイフがはっきりと見え、ハンドガンの照準を合わせ、飛んでくるナイフを撃ち落とす。7本撃ち落としたところで弾切れになったが、素早くマガジンを装填して残りのナイフを撃ち落とし、驚いている敵の右肩に銃弾を喰らわせる。

 

「あんた、いったい何者!?」

「ただの警官さ、少し射撃が得意なだけのな」

「あなた・・・もしかしてSRUの!?クソ”ウルフ”が言ったとおりだわ!」

「どこで噂になってるか知らないが、武器を捨てろ!次は頭を打ち抜くぞ」

「クソ!」

 

俺はゆっくりと敵に近づく、しかし敵ヘリが突如現れて俺に向けてマシンガンを撃ってきた。

「クソったれ!」

俺はたまらず敵から離れて、車の陰に隠れる。ヘリが橋の上に降り立ち、3人の敵が俺に向けて銃を撃ちつつ、残った2人が負傷した敵の女を抱えて、ヘリへ運ぶ。

 

「白瀬悠木!この借りは必ず返させてもらうわ!」

彼女がそう言うと銃撃してきた敵もヘリに乗り込み、橋から飛び去って行き、その後を追うように2機のヘリも飛び去って行った。

 

「あいつ、なんで俺の名前を知ってたんだ」

「白瀬巡査部長!大丈夫ですか?」

俺の後ろから、応援の警官や機動隊員が駆け寄ってきて俺に声を掛ける。

「ああ大丈夫だ、それよりまだ先に負傷者がいるかもしれない。行くぞ!」

俺は吹き飛ばされたベネリM4を拾い警官達と共に先へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

海の上を3機のUH-1Yが海面すれすれの位置を飛行する。そしてその内の1機では負傷した茶髪の女が部下から治療を受けながら無線で会話している。

<油断したなレイン、お前は腕が立つが慢心するのが弱点だな>

<そうよ、そうよ>

「うっさいわよウルフ!あとヘンリエッタ!あんたがへましなければこんなことにならなかったのよ!」

レインはウルフからの注意とヘンリエッタからの煽りに不機嫌そうに反応する。

<それより、お前をやったのは例のSRU隊員の一人で間違いないんだな>

「私の投げナイフを全部撃ち落とした、あの射撃の腕は間違いなく白瀬悠木よ。それに部下も5人殺られたわ」

<流石はお嬢様が目をつけた敵なだけはあるな>

「ええ、今度はヘマしないわ」

3機のヘリはそのまま低空飛行しながら、特区へと飛び去って行った。

 

 

 

 

同日夕方 飛鳥東大橋

橋の上では警察と消防、国防軍により救助と捜査が夕方になっても続いていた。その中で俺は国防軍のトラックの前に立っている、なぜならトラックには機能の襲撃事件の時のトラックと同じような穴が開いていたからだ。

「こう思ってんだろ「昨日の事件の奴が関わっている」てな」

「翔太郎!いたのか」

「人が足らないから、本部の奴らも動員されてんだよ」

「そうだったのか、てかお前昨日の事件知ってんだな」

「隊長が何かあるかもしれないて言って、あったことを話してくれたからな」

翔太郎は俺の横に立ちながら、彼のメモ帳を見せてくれた。確かにそこには機能の事件の大まかな詳細が書かれていた。

 

「翔太郎、お前はどう思う?」

「この街で何かよからぬ事をやらかそうとする連中がいる、しかも大きな力を持ってな」

「お前もそう思うか」

「だが、そいつ等を捕まえるのが俺たちの仕事じゃないのか」

「そうだな、お互い頑張ろうな」

「おう!」

 

俺は翔太郎と互いに拳をぶつけ確認する、この街を守る意思と友情を。




だいぶこちらの投稿をさぼってしまいましたが、これからも頑張っていきます。


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第7話 もう一人の隊員

「葵!しっかりしろ!井上大丈夫か!」

「俺は平気です、それよりブラボー2は?」

「誰かメディパックを!」

周りで仲間の怒号と銃声が響き渡っている、しかしその声や音もだんだんと遠ざかり、視界も暗くなっていく。私はここで死ぬのだろうか?

 

(あんたが死んだら困るのは私なのよ)

誰かの声が聞こえる、私と全く同じ声だけど私はこの声に聞き覚えがない。

(あなたは誰?)

(アンタは知らなくていい、ただ眠ってなさい)

声の主がそういうと私は完全に意識を失った。

 

(ここから先は”アタシ”の出番よ、誰にケンカ仕掛けたか思い知らせやるわ)

そいういうとアタシは起き上がった。

 

 

 

 

30分前・・・

 

 

 

 

 

5月6日 飛鳥特別行政区東区飛鳥港

「今回はなんですか?」

「港に不審者が現れ、警備員が話しかけた途端撃たれたらしい」

「成る程、昼間っから物騒だな」

私達は港で起きた銃撃戦の応援要請を受けて今ここにいる。今は先に到着して現場を指揮している緊急即応隊の指揮官から説明を受けている。

 

「相手は少なくとも10人はいて、自動小銃で武装してます」

「今奴らはどこに?」

「ドローンの偵察では今この第3ブロック付近にいます」

「コンテナが山積みの場所か、待ち伏せにはもってこいの場所だな」

「ええ、さらに悪い知らせで敵の増援らしき車両も確認できました」

「わかった、君は自分の部隊の指揮に戻ってくれ」

厚木さんがそういうと、緊急即応隊の指揮官は指揮車の方へと去っていった。

 

私は乗ってきた車から自分の装備が詰まったリュックを取り出して準備をしていると、白瀬隊長が話しかけてきた。

「葵、調子はどうだ」

「大丈夫ですよ何でですか?」

「病院行ったて聞いてな、何かあったのかと思ってな」

「記憶が途切れる原因を突き止めようと思って」

「で、どうだった」

「相変わらずですよ、何もわからず経過観察しましょうと言われました」

「そうか、長くなりそうだけど頑張れよ」

そして暫くしたら鎮圧作戦の開始が伝えられ私達は武装した連中がいるエリアへと向かった。

 

 

飛鳥港第3ブロック

私達は第3ブロックの東側から進み、敵の制圧を担当することになったがつくといきなり、銃撃を受けた。

「10時方向のコンテナ上に敵!」

「殺ったぞ!」

「秋人、井上!前に出て攻撃を防げ!」

「前に出る!」

私達は盾を持っている2人の後ろに続き前進する。

 

「正面に敵!3人いるぞ!」

「任せて!」

私はP90の引き金を引く、発射された弾丸は敵の3人に命中して敵はその場に倒れこんだ。

「始末した!」

「いいぞ進め!」

隊長の合図で私達は再び前進を開始する。

 

暫く進むと平家の建物の前に着いたが、そこから敵からの攻撃を受けて応戦したが、敵が何かをこっちに向けて投げてきた。

「何か投げてきたぞ!」

「皆、下がれ!」

隊長が命令した瞬間に、私と井上の前に小さいバックが落ちてきた。中にはタイマーと赤・青等の配線が見えていた。

 

「マズイ!井上!下がって!」

「クソ!」

私達は急いで下がったが、その瞬間バックが爆発して強烈な爆風が私達を襲った。爆発地点に近かった私は爆風で吹き飛ばされ近くにあったコンテナに激突して、そのまま気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!葵しっかりしろ!」

俺は爆風で吹き飛ばされ、気を失った葵をコンテナの陰に移し、体を揺らして彼女を起こそうとする。幸いひどい外傷はなく、擦り傷が少しあるだけだったのが救いだ。

 

「メディパックです!」

部下の一人がメディパックを持って俺のところにやってきた。

「よし目立った外傷はないが、擦り傷の治療をしてくれ」

「わかりました!」

 

俺と部下で葵の治療をしようとした瞬間だった。

 

「・・・・・」

「葵!?」

葵が突然起き上がり、周りを見渡し始めたのだ。しかしよく見ると彼女の目つきは何時もより鋭く、普段は青色の目が紫色に変わっていたのだ。

 

「葵!大丈夫か!?」

「・・・・、・・・コ」

「何だ?、もう一回言ってくれ」

「タバコ持ってるでしょ、頂戴」

「あぁ、分かった」

 

俺はタバコとライターを渡す、彼女はカプセルを潰してタバコに火をつけた。葵は普段タバコを吸わない、葵がタバコを吸うのは”アイツ”が出てきたときだけだ。

 

「”奏”、久しぶりだな」

「そうね、最後に会ったのは1ヶ月前かしら」

「お前が暴れ回ったおかげで、葵大変だったんだからな」

「そこまで散らかした、覚えはないのだけどね」

奏はそう言うと吸っていたタバコを捨て、靴で踏み潰す。

 

「で、アタシに喧嘩吹っかけてきたアホはどこ?」

「すぐそこさ、今仲間が応戦してる」

「ふ〜ん、殺しても問題ないのよね」

「攻撃されてるからな、一応殺害しても問題ない。だけど限度てもんがあるからな」

「はいはい、わかりましたよ」

奏はそう言うと,コンテナの物陰から出て行った。

 

「葵!大丈夫なのか?」

コンテナの物陰から出た奏でに、秋人が声をかけるがまだ奏でだとは気づいていないようだ。

「奴らはアタシがやるわ、アンタは邪魔しないでよね」

「「アンタ」て、お前奏か?」

「あと、ハンドガンのマガジン3つ寄こしなさい」

「ハイハイ、後でお前に蹴飛ばされるのは勘弁だからな」

 

秋人は奏にマガジンを渡す、それを受け取った奏は犯人達に突撃しようとしたので俺は奏での腕を引いて止める。

 

「おい、俺も付いてく。お前が無理して葵に何かあっら困るからな」

「いいけど、アタシの邪魔だけはしないでよ」

「分かってるよ、お前に後から殴られるのは勘弁だからな」

「分かってるならそれでいいわ」

奏がそう言うと、俺と奏は敵に突撃した。

 

「奏、正面に3人、左右のコンテナ上に2人!」

「コンテナ野郎はアンタに任せるわ、正面の奴はアタシのよ!」

「OK、仰せのままに」

 

俺はREC7を構え、まず左の奴の眉間に、右の奴に5発撃ち込みコンテナ上の敵を倒した。

 

奏は正面にいた3人の敵に真正面から突っ込み、一人目の敵はスライディングで相手の股下を通り抜けるときに、HK45を引き抜き銃弾を撃ち込んで倒した。

 

奏は直ぐに反転して、2人目の敵に飛び蹴りを喰らわせ吹っ飛ばした。

 

3人目が奏に向けて銃を撃ったが、奏は銃弾を避け相手に接近し、腹に1発パンチを、顔面に向けて回し蹴りを喰らわせ、最後に4発ほど撃ち込んで敵を倒した。

 

「この、クソアマが!」

吹っ飛ばした2人目が銃を持って奏を撃とうとしたが、奏は相手の肩を撃ち抜く。

「グワァ!」

「アタシに喧嘩売るとはいい度胸してるわね、その度胸だけは褒めてやるわ」

奏はリロードしながら敵に近づく。

「褒美にあの世への旅行をプレゼントしてやるわ」

「ま、待ってくれ!助け・・・」

ダァン、ダァン、ダァン

奏は容赦無く引き金を引き、敵を射殺した。

 

「奏、無事か?」

「ええ、それよりこれで全員?」

「いやまだだろうよ、この建物の中にもいると思うぜ」

「ならさっさと、片付けるわよ」

 

奏はそう言うと、建物扉を蹴破り建物へと突入、奏は直ぐにHK45を取り出して敵を2人始末し、俺も後に続いて中に入り3人を始末した。

 

生き残っていた2人の敵が反撃をしてきたので、俺と奏は柱の後ろに隠れる。

「あの2人はアタシがやるわ」

そう言うと、奏は折りたたみナイフを取り出す。

「了解、援護する」

 

俺は敵に向けてREC7を撃ち、相手の動き止める。その隙に奏が物陰から飛び出して一気に敵との距離を詰める。

 

奏が敵のところに着くと、一人目の首にナイフを突き刺して頚動脈を切り裂く。切り裂かれた敵の首から蜂が噴水のように吹き出して辺り一面を血の池にする。

 

2人目も、わき腹にナイフを突き刺してナイフを捻り傷口を広げ、最後はHK45を敵に押し当てて4回ほど発砲して完全に息の根を止めた。

 

「2人共大丈・・・夫そうだな」

「う〜わこりゃひでぇ」

建物を制圧すると、秋人達が建物に入ってきたが中の様子を見てドン引きしていると無線が入った。

 

<コマンダーからブラボーリーダー聞こえるか>

「こちらブラボーリーダー、どうしました」

<アルファ、チャーリー、デルタ、エコーは該当地域を制圧したが、そっちは終わったか?>

「いえ、今管理棟らしき建物を確認中ですが・・」

 

ブォン、ブォン

俺が無線で連絡をしていると、扉奥からエンジンの音が聞こえてきた。

「コマンダー、ちょっと待ってください」

 

俺はそう言うと、奥の部屋に続く扉を開けると同時に、2台のバイクが逃走して行った。

 

「悠木、追うわよ!」

奏ではそう言うと、止めてあったGSX-S1000に跨り、俺は後ろに乗る。

「秋人!他のやつらを連れて車を止めてあるところに戻れ」

「分かった!」

「奏、出せ!」

奏は俺が合図すると、スロットルを回してバイクを発進させた。

 

逃走したバイクに追いつくと、相手の一人が片手でUZIらしき銃を撃ってきた。

俺もREC7で反撃し、撃った弾が敵に命中して敵がバイクから転げ落ち、バイクは鉄柱にぶつかり炎上した。

 

「あと一人だ!」

「あいつはアタシが貰うわ」

奏はそう言うと、バイクを加速させて一気に相手のバイクとの距離を縮める。

すると相手のバイクが左の通路に入った、奏もバイクを左に傾け、同じ通路に入る。

 

奏は再びバイクを加速させ急接近し、相手のバイクと並走する。

相手が銃を構えて撃ってくると、かなではブレーキを掛けて攻撃を回避。直ぐにバイクを加速させてまた敵と並走する。

 

「奏!何考えてるんだ!?どうせロクでもないことだろうが」

「この先何があるか分かる?」

「海だろ・・、お前まさか!」

「ご名答様!」

 

奏はHK45で相手のブレーキレバーを打ち抜き、ブレーキを掛けれないようにしつつ。敵がスピードを落とさないように、弾が当たらない程度に攻撃する。

 

少しすると海が見え、なだらかなスロープも見えた。奏は敵のバイクと並走し、相手がスロープに向かうように進路を妨害した。

 

「しっかり掴まってなさい!」

奏はそう言うと、バイクを横にしてブレーキを掛けて停車させる。敵のバイクはそのままスロープを駆け上り海へとジャンプして行った。

 

「ちょっと銃借りるわよ」

奏は俺のREC7を奪い取り、敵のバイクの燃料タンクに向けて2・3発撃つ。弾が燃料タンクに命中して相手のバイクは空中で爆発し、乗っていた敵も爆発に巻き込まれ、肉片と残骸が海へと落下して行った。

 

「汚い花火だわ!」

「お前なぁ・・・」

「あら、ちょっとした芸術じゃない。もっと喜んだら?」

「バ〜カ、お前みたいなサイコじゃねぇんだぞ」

「何よ!アタシがイカレ野郎とでも言いたいの!」

 

そんなやりとりをしていると、秋人や応援の警官が乗ったパトカーに救急車が到着した。俺はと言うとキレた奏の攻撃をかわすことに必死になっていた。

 

 

 

その後無線で港の制圧が完了した事が伝えられ、俺達も周囲を一通り回って、誰もいない事を確認してからそれぞれが撤収の準備をしていた。

 

奏はそんな中、海の方を眺めて立っていた。

「おい、タバコ吸うか?」

「ええ、貰うわ」

 

奏は俺からタバコを受け取ると、火をつけてタバコを吸い始めた。

 

「葵はいつ目覚める?」

「アタシが引っ込んだら直ぐに葵よ、だけど疲れはそのまま残るからしばらくは眠ってると思うわ」

「そうか、起きたらなんて言っとけばいい?」

「気絶してたとでも言っておいて」

 

奏はそう言うとタバコを海へと投げ捨てた。

 

「じゃアタシはここで失礼するわ、また会いましょう」

「ああ、今度会う時は普通の時がいいな」

「フフフ、そうね」

奏が笑った瞬間彼女は意識を失い姿勢を崩す、俺は怪我をしないように彼女の体を支える。

 

暫くしたら意識を取り戻したのか、彼女の目がうっすらと開き、俺に話しかけてきた。俺は彼女の目を除くと、目の色は紫色から青色に戻っていた。

 

「隊・・長・・・」

「葵、大丈夫か」

「何があったんですか?」

「吹き飛ばされて気を失ってたのさ。大丈夫、もう終わった」

「そうですか・・、すみません手間とらせて」

「気にするな、家まで送ってくから今日はゆっくり休め」

 

俺は秋人に仲間を連れて本部に戻れと伝え、パトカーの助手席に彼女を乗せて港を去った。

 



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第8話 東京前編

飛鳥特別行政区中央区
飛鳥特別行政区のちょうど中心地にある地区。特区機能の中心となる場所であり、区役所、警察本部等もこの地区にある。


2025年5月7日 飛鳥特別行政区警察第3男性寮408号室

 

俺は自宅で泊まりに必要なための道具をボストンバックに詰める。そしてクローゼットから黒色の特区警察の制服を取り出して、シワがないかを確認する。

 

「そういえば、この制服もう1年半も着てなかったな」

俺は特区警察に来て直ぐにSRUに配属されたため、制服を着る機会が全くなかったのでクローゼットにずっと置いてたままだった。俺は制服をカバーに入れて折り畳んだ。

 

俺は今から兼ねてから予定にあった内務省で開かれる対テロ検討委員会に集十さんと出席するために準備していた。

 

準備が終わって寛いでいると集十さんから連絡が入り、外で待っているとの事だったので俺は荷物を持って部屋を後にした。

 

外に出ると駐車場にグレーのM5が止まっており、運転席にはサングラスを掛けてタバコを吸っている集十さんがいた。俺は車のトランクに荷物を入れ、助手席に乗り込み東京へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「ヘンリエッタは何も話していないのね」

<はい、我々の尋問でも嘘は言っていません。彼女は取り調べで何も話してはいません、ですが>

「何かしら?」

<どうやら、ヘンリエッタの情報は内務省から国防省、海保に提供された可能性が>

「つまり?」

<内務省に我々に関する情報が少しある可能性があります>

「ハッキングでデータを消すことは?」

<外部からは無理です、内務省はこの国の省庁の中では一番ガードが堅いので。直接出向いて削除する必要があります>

「分かったわ、そのまま対策を続けてちょうだい」

 

少女は電話を切って、別の相手に電話をかける。

 

「ウルフ、内務省のデータ削除をお願い。どうやるかはあなたに任せる」

<分かりました、直ぐに取り掛かります>

 

少女は電話を切ると、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

同日 首都高速都心環状線

特区を出て1時間程で俺達は東京へと入った。神奈川を出る前に俺は集十さんと運転を交代し、今は俺が運転をしている。

 

「お前確か東京の出身だったよな」

「渋谷区出身です、機捜の葛西も同じです」

「最後に家族にあったのはいつだ?」

「1月にちょっと野暮用で東京に行った時に妹と会いました」

 

俺は特区警察に移ってからの2年間は忙しく一度も実家へと帰ることができなかった。何回か帰ろうとはしたが、その度に事件が起きて結局は帰れずじまいということがしょっちゅうだった。

 

「なんだったら東京にいる間に会って来たらどうだ?」

「いいんですか?」

「構わんさ、最終日の委員会は昼過ぎで終了だらな。その時にでも行って来たらどうだ」

「じゃあお言葉に甘えて」

 

そんな会話をしている内に目的の料金所に到着し、下道に降りて目的のホテルに着いた。俺はホテルにつくと明日の準備だけして眠りについた。

 

 

 

5月8日 内務省1階エントランス

翌日になり俺と集十さんは内務省に到着した。地下駐車場に車を止めて、正面玄関に回りそこでセキュリティチェックを受ける。

 

「白瀬悠木さんと厚木集十さん…飛鳥特別行政区警察の方ですね。身分証はありますか?」

 

警備員が身分証の提示を求めたので、俺と集十さんは自分の警察手帳を警備員に渡す。

 

「申し訳ございませんが、規定により館内には警察関係者の方でも銃の持ち込みが禁止されていますので、こちらのトレーに出していただけますか」

「分かりました」

「了解です」

 

俺はSW1911、予備マガジン、バックアップ用のグロック26をトレーに置き、集十さんもトレーにSIG Sauer1911を置く。

 

「銃は外に出る時にお返しします、本人確認もできましたので入館証をお渡しします」

 

警備員は首から下げるタイプの入れ物に入った入館証を渡してくれた。

 

「入館証は部屋のドア解除に必要になりますので館内にいる際は常に携帯しておいてください、ですがこの入館証では入れない部屋もございますので注意してください。委員会は10階の会議室で待合室は1006号室です」

 

警備員から説明が終わると、俺達はエレベーターに乗り10階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

同日同時刻 内務省地下駐車場入り口

内務省の地下駐車場入り口に1台の運送会社のトラックと白色のバンが停車し、警備員がトラックとバンに近づく。

 

「すみません、許可証はお持ちでしょうか?」

「ええ、ありますよ」

 

トラックに乗っていた男はそう言うと、サプレッサー付きのグロック17を取り出して、警備員を射殺。バンの方にいた警備員も同じく射殺された。警備所にいた警備員も異変に気付き銃を抜いて車の方に行こうとしたが、背後にいた女性に首を折られてしまった。

 

バンから警備員の制服を着た人物が降りて着て、警備員の死体を片付け、警備所にいた女がゲートの操作盤のスイッチを押してゲートを開けてトラックと版を駐車場内に入れる。

 

駐車場に入るとトラックの荷台やバンから配達員、警備員、職員の姿をした者達が出て来て、装備品を準備する中、スーツに眼鏡をかけたウルフが皆に向けて指示を出す。

 

「よし、チーム1は電源室、チーム2は中央警備室、チーム3は俺とサーバールーム、チーム4はここで待機しろ」

 

ウルフがそう言うと侵入者達はそれぞれのチームに分かれて行動を開始した。

 

 

 

 

内務省10階B会議室

「次に飛鳥特別行政区警察からお越しくださった厚木集十さんと白瀬悠木さんから、特区で発生している事件についてお話しいただきます」

 

司会の人物が俺と集十さんの名前を呼び、俺達2人はモニターの操作盤のある机に移動して、説明を始める。

 

「我々飛鳥特区警察管内では去年の11月から凶悪事件が頻発しています。特に銃器犯罪は全国平均の約6倍、押収数も9倍近い数です」

 

画面が切り替わるとそこには犯罪現場の写真が映し出され、中には俺が関わった事件の写真もあった。

 

「犯罪増加に伴い特区警察も被害が拡大しており、今年だけで既に15人が殉職、53人の警察官が負傷しており…」

 

集十さんはその後も特区で起きている事件概要に関するデータの説明を続け、特区で今何が起こっているかを委員会に参加している人達に伝える。集十さんが話し終える部分が終わると、俺に現場がどのような状況にあるのかの説明をするように促すが、突然部屋の照明やモニターが落ちてしまった。

 

「何だ、停電か?」

「すぐに予備電源に切り替わると思いますので、暫くお待ちください」

 

すると30秒たったら電源がつき始めた直後に館内放送が流れた。

 

「館内にいる皆様にお知らせします。地下2階の電源室にて火災が発生しました、安全のため館内にいる人はすぐに避難してください。繰り返します…」

「警備室から避難指示が出ました、誘導しますので私に付いて来てください」

 

職員がそう言うと会議室に居た人々は職員の後に続いて部屋から出ていき、俺と集十さんも皆の後に続いて廊下に出る。廊下は避難する職員で溢れており、俺と集十さんも人の流れに従って非常階段を下るが、俺は何人かが何故か階段の途中で別の階の扉に入るのを目撃してそれが気になっていた。

 

「集十さん、さっき6階に職員が入って行ったんですが」

「誰かいないかの確認だろ、特に気にする必要ないだろ」

「ですがその内の1人が何かデカイバックみたいなのを持ってました、それに歩き方が一般人の歩き方には…」

「つまりこうか、「職員の格好はしているが正規の職員じゃない」と」

「絶対ではありませんが、自分の感がそう言ってます」

 

集十さんは一旦立ち止まったが、すぐに階段を登り始め他ので俺はその後を追う。それを見た誘導中の職員が止めに入る。

 

「すみません、避難指示が出ているのでこのまま降ってください」

 

集十さんは警察手帳を取り出して職員に見せる。

 

「飛鳥特別行政区警察の厚木です、我々も避難誘導をお手伝いします」

「いえ、しかし」

「先程私の部下が、6階に職員が入っていくのを見たのですが」

「え?6階は既に避難が完了したとの報告を受けて、今は中央警備室に警備員が少数残っているだけですが」

 

職員は驚いた表情をしている、やっぱり俺の予想は当たっていたようだ。

 

「そうですか、私たちがその職員を探してきます」

「しかし」

「これも警官としての務めですから」

 

集十さんはそう言うと職員の制止を振り切り、階段を上っていったので俺も後を追った。

 

内務省6階

俺と集十さんは非常階段の入り口から6階へと入った。周りには誰も居らず静まり返っている。暫く進むと、オフィスの一角から女性の話し声が聞こえてきた。

 

「6階には誰もいません、中央警備室も完全に制圧しました」

<了解、チーム3の仕事が終わるまでそっちで待機して誰かこないか確認しろ>

「了解」

 

「すみません、私飛鳥特別行政区警察の厚木です。避難指示が出ていますが大丈夫ですか?」

「ここに居ては危険ですよ、自分たちも非難するので一緒に行きましょう」

 

集十さんと俺は、無線で会話していた職員に近づく。すると職員らしき女性は振り返るやいなや手に持っていたサプレッサー付きのB&T MP9をこっちに向けて撃ってきた。俺と集十さんは急いで机の陰に隠れる。

 

「お前の予感的中だな!」

「できれば当たりたくなかったですよ!」

 

「クソ、まだ人が残ってたわ、しかも猟犬よ!今すぐ応援に来て!」

 

女は無線で応援を呼び、さらに俺たちに向けて銃を打ちまくって来た。

 

「マズイな、さっさと倒さないと」

「俺が囮になります、集十さんはその間にアイツを倒してください!」

「分かった!」

 

俺は目立つように物陰から飛び出ると女は俺に向けて銃を撃って来た、銃弾がそこら中に命中して物が破壊され、部屋の中はめちゃくちゃだ。女はマガジンをリロードすると再び、俺に近づきながら銃を撃って来たので、俺は素早く隠れながら移動する。

 

女が俺に意識が完全に向いていたためその隙に接近した集十さんに気づかず、集十さんが女に飛びかかり、体勢を崩した所を数発殴り、女を気絶させた。その直後に応援の敵が2人来たが、集十さんは女からMP9を奪い取り入ってきた敵に向けて銃撃して2人の敵を倒した。

 

俺は集十さんが倒した2人の敵は女の敵と同じくMP9を持っていたが、サプレッサー付きのグロック17も持っていたので、俺はMP9とグロック17、それぞのマガジンを奪った。グロックは2丁あったので1丁を集十さんに渡した。

 

「次はどうするよ?」

「奴ら中央警備室を抑えたて、言ってましたね。そこに行きましょう」

「よしならさっさと、行こう」

 

俺と集十さんは部屋を出て、中央警備室へと向かった。

 

フロアを進み暫く進むと、中央警備室と書かれたプレートが掲げられた部屋に到着した。俺が少し扉を開けると、中から銃撃を受けたので俺は直ぐに扉を閉じた。

 

「どうするよ?」

「いつも通りに、敵を殺して済ませるだけだ」

「了解!」

集十さんが扉を開け、俺は警備室に飛び込み机の裏に隠れる。手を少しだけ出して片手でMP9を撃ちまくる。銃弾が部屋中に飛び交い部屋の中の物を破壊しまくる。

 

「奴らに接近します、集十さん援護してください!」

「任せろ!」

集十さんが制圧射撃を行い敵の攻撃を止めている隙に、俺は一気に敵との距離を詰めて、敵の真横に回りこみMP9のマガジンが空になるまで敵に弾を浴びせる。弾を喰らった2・3人の敵は身体中から血を流して倒れていた。

 

「他に誰もいないな?」

集十さんが近づいてきて俺に話しかける。

「ええ、大丈夫です」

「どうなってるか状況を確認しよう」

警備室のモニターを操作して、監視カメラの映像を確認する。

 

「殆どの階は避難が完了したみたいだな」

「集十さん3つ前の映像に戻してください」

キーボードを操作して映像を戻すと、映像には数人の人が写っていた。

 

「これどこの映像ですか?」

「内務省地下5階のサーバールームらしいな」

 

<チーム2応答しろ、猟犬は片付けたか?>

映像を見ていると、敵の持っていた無線から声が流れてきた。

 

「残念だが連れは死ぬほど疲れてるぞ、代わりに俺が用件を聞こうか?」

<お前…猟犬部隊の白瀬だな>

無線の相手は何故か俺の名前を知っていた。

「何故俺達の名を知ってる?」

<お前らは俺達の界隈じゃ有名だからな>

「ああそうかい」

俺は少し不機嫌な返答をする。

 

<それにしても今回は精鋭を連れてきたのに全滅させるとは、さすがは猟犬部隊に所属してるだけはあるな>

「悪人共から褒められるとはな」

<まあいい、もうすぐ目的は達成できる>

「逃げるつもりか?直にここは消防や警察で溢れかえるぞ」

<本土の警察は緩いからな、逃げることはたやすいさ」

「その前に、俺が行って地獄への片道切符を送ってやるよ」

<フフフ、楽しみにしてるよ>

相手はそういうと無線を切ってしまった。

 

「集十さん、行きましょう。奴らを逃すわけには行きません」

「そうだな、行こう!」

 

俺と集十さんは警備室を出て、敵が残っているサーバー室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

内務省地下5階サーバールーム

「あとどのくらいで終わる?」

ウルフは部下に作業がどれくらいで終わるかを尋ねる。

「あと10分もあれば完全に終わります」

PCを操作している部下は10分で終わると告げる。

 

「よし、そのまま続けろ」

「了解です」

 

「チーム1リーダー聞こえるか?」

<なんでしょか?>

「猟犬部隊の方がお見えになるぞ、お迎えの準備をしろ」

<了解です>

「俺も今からそっちに行く」

ウルフはそう言うとSTI2011のスライド引き、サーバールームから出て行った。

 

猟犬部隊の2人を迎え撃つために。

 

 



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第9話 東京後編

用語解説:内務省
2013年の中央省庁再編で総務省、国家公安委員会、警察庁、公安調査庁を統合して発足した組織。業務内容としては都道府県警察の監督、地方自治、通信・郵便、選挙制度等を所管し、外局として公安警察が存在する。
日本の政府機関の中でも特に強い権力を握っており、財務省ですら内務省相手には強気に出られない。


2025年5月8日 内務省1階エントランス

階段を降りて1階のエントランスに到着すると、警察官が内務省の警備員から状況説明を受けていた。彼らは銃を持った俺と集十さんを見て、銃を向けてきた。

 

「け、警察だ!武器を捨てろ!」

警官は銃を向けながら決まり文句を言ってきたが、その声は震え、銃を持つ手は震えていた。

「俺達は飛鳥特別行政区警察の者だ!武器を置いて、警察手帳を今から出す」

俺と集十さんは武器を地面に置いて、ポケットに閉まっていた警察手帳を警官達に見せる。警官達はそれを確認すると銃を納めてくれた。

 

「一体何があったんですか?」

警官の一人が俺に何があったかを聞いてきた。

「武器を持った奴が省内に入り込んでる。上にいた奴は倒したが、まだ地下に仲間が残ってる」

「何ですって!」

警官は驚きの表情をしていた。

「俺達は今から地下に行って、残りを制圧してくる」

「応援を待つべきでは?」

「いや奴らはプロだ、もたもたしてるとに逃げられちまう」

「悠木のいう通りだ、早く行かないと逃げられてしまうからな」

「だけどその前に」

俺は内務省の警備員に話しかける。

 

「入館前に預けた銃を返してもらいたい、あと地下に行くにはどうすればいい?」

「此方に」

警備員がそう言うと入館者物保管のための金庫から俺と集十さんの銃を出して、返却してくれた。

「あと、何でもいいから銃か防弾ベストみたいなものはないか?」

「銃はありませんが、防弾ベストなら」

「構わない、それを貸してくれ」

警備員は警備所のロッカーから防弾ベストを出して渡してくれた。防弾ベストを着用して準備を済ませる。

「地下5階はエレベーターが止まってるので、階段で行くしかありません。途中職員しか通れない場所があるの私も同行します」

「我々も同行します、人は多いほうがいいですからね」

エントランスにいた警官の何人かも共に同行すると言ってくれ、俺達はサーバーフロアに向かった。

 

 

 

内務省地下5階サーバールーム

警備員の案内でサーバールームに到着した。中は大型のサーバー機器が並び、冷却のためか気温は低かった。そして中に入ってすぐに俺達は敵の攻撃を受けた。

「コンタクト!正面に4人!」

 

すぐに俺達も反撃し、敵に向けて銃を撃ちまくる。

「弾切れです!」「自分もです!」

同行していた警官が次々と弾切れを起こし始めたので、俺と集十さんは持っていた銃を警官達に渡して自分の銃に持ち替えた。

照準定め次々に敵を倒し、4人の敵を制圧した。

「行くぞ、進め!」

 

その後も襲ってくる敵を倒しつつ、俺達はサーバールームを制圧する。しかし後ろにいた警官達から叫び声が聞こえた。そこにはだいたい180cm以上でスーツにメガネをかけてSTI2011を右手に構えた男が警官達を次々と撃っていた。

「集十さん、彼らを援護してください。俺は奴を」

「気をつけろよ」

 

男は残っていた警官を撃とうとしいたが、俺は銃を男の足元に向けて2・3発撃って自分に注意を向ける。

「おい、コッチだ!」

また2発男に向けて撃つと、男は俺の方向に向けて走ってきて、こっちに撃ち返してきた。互いに攻撃しつつ部屋の奥へ向かい途中で弾切れになったので、サーバー機器の後ろに隠れる。

 

「お前が、さっきの無線の相手か?」

「白瀬悠木、初めましてだな」

「おいおい、お前は俺の名前知ってるのに、自分の名を名乗らないのは礼儀としてどうなんだ?」

空マガジンを銃から出して、新しいマガジンを装填する。

「これは失礼、お嬢様も言ってらしたな「敵であれ礼儀は忘れるな」と。俺はウルフだ」

「なんだ、コードネーム かよ。しっかり本名教えろよ」

スライドストップを下げて、スライドを前進させる。

「アルバートとだけ伝えておこう」

俺は声のする方向に向けて銃を撃つ、銃弾はサーバーに命中し、サーバーから火花が飛び散る。ウルフも撃ち返してきて俺の近くにあったパイプに命中してスチームが吹き出した。

 

「この前、うちのレインが世話になったな」

「レイン?、、ああ大橋の事件で肩を撃ち抜いた女か」

俺は大橋で戦った女の敵のことを思い出す。

「あいつ「この傷の借りは必ず返す」て言ってたぞ」

「今度は頭を撃ち抜いてやるて、伝えといてくれ」

また声の聞こえた方向に向けてマガジンが空になるまで撃ち続け、スライドが交代したので物陰に隠れリロードする。

 

「特区で最近事件が頻発してるが、それもお前らの仕業か?」

「だったどうする?」

「勿論、叩き潰す。元凶を放置するわけにはいかないからな」

「出来るかな?我々はそこらのチンピラとは違うぞ」

「それはやってみないと分からないだろ」

 

隠れていた所から出て再び、ウルフに向けて銃を撃つ。しかしウルフは撃ち返してこなかった。

「どうした?撃ち返してこないのか?」

「そろそろ時間切れだ、あまり長居すると捕まるリスクが上がるからな」

ウルフがそう言うと、俺の目の前にグレネードが投げ込まれた。

「ヤバ!」

直後にグレネードが爆発し爆風と破片が飛び散って物を破壊する。そしてウルフはそのまま走ってサーバールームの入口へと向かった。

 

 

「逃がすかよ、クソッタレが!」

悠木はウルフを追いかけて、同じ方向へ向かう。途中で負傷した警官の手当てをしていた集十さんも俺に気づいたのか、俺の後を追ってきた。

「悠木、どうした!?」

「敵が逃げました!恐らく地下駐車場に行くつもりです」

「俺も付いてく!」

俺と集十さんはウルフの後を追って、サーバールームを出て階段を駆け上った。

 

 

内務省地下駐車場

「車を出せ!」

俺達がウルフに追いつくと、奴は地下の駐車場に止めていたバンに乗り込んだ。

 

俺と集十さんはバンに向けて銃を撃ったが、バンはそのまま他の車と共に地下駐車場を出て行った。

「俺の車で追うぞ!」

集十さんがそう言い、同じく地下駐車場に止めてあったM5に向かう。

 

車に着き、集十さんがエンジンをかけて、俺が乗り込もうとすると集十さんが俺に声をかけた。

「悠木、トランクにいいもんが積んであるぞ!」

集十さんに言われた通りにトランクを開けると、中にはホロサイトが付いた89式小銃、ダブルマガジンクリップのついたマガジンが数個置かれていた。

マガジンを装填しチャージングハンドルを引いて、車に乗り込むと集十さんがアクセルを踏み込み、サイレンを鳴らして車を発進させた。

 

 

東京霞が関

敵の車列に追いつくと、警視庁のパトカーが車列を追跡していた。すると敵のSUVのルーフが開き、MG4を持った敵がパトカーや一般車に向けて銃撃を始めた。

攻撃を受けたパトカーや一般車は歩道の柵や攻撃を受けて停車した車に激突したりしていた。集十さんはその間をハンドルを巧みに操り掻い潜る。敵も追ってくる俺達に向け銃撃してきた。

 

「悠木!あの車を片付けてくれ!」

「了解!」

窓から身を乗り出して、俺はSUVのLMGを持った敵に89式小銃を撃つ。銃弾は敵に命中して、まずは攻撃を仕掛けてくる敵を倒すことができた。集十さんがスピードを上げて、一気に車の横につけると、マガジンが空になるまで撃ち、助手席の敵と運転手をまとめて始末し、SUVは歩道の柵に激突した。

 

一台片付けたと思ったら、車列の先頭を走っていたセダンが後ろに下がり、俺達の車と並走してきて、敵が攻撃してきた。俺は今度は、セダンの燃料タンク目掛けて撃ちまくると、銃撃による火花で燃料に引火したのか、トランクが爆発して横転した。これで残るはウルフが乗ったバンのみだった。

 

暫く追跡して広い大通りに出る。ふとバックミラーを見ると、オスプレイとMQ-9に形状が似ている無人機が写っていた。

「あー、、集十さん、、凄く嫌な予感がするんですが」

「奇遇だな、俺もちょうどそう思ってた所だ」

またバックミラーを見ると、光る何かがこっちに向かって飛んできていた。互いの嫌な予感がどうやら当たったようだ。

 

「ミサイルだ!避けて!」

「クソッタレ!やっぱりか!」

ミサイルが少し離れたところで着弾し、爆発が起きる。一般車も巻き添えを喰らい、俺達の車は爆風に揺られる。その上をオスプレイと無人機が超低空飛行で真上を通り過ぎ、6〜700m離れた場所にハッチを開けて着陸した。バンはそのまま機内へ入り、オスプレイはハッチを閉めて上昇を始めた。

 

「悠木、逃すなよ!」

「分かってますよ!」

俺はオスプレに向けて89式を撃ちまくるが、アサルトライフルの攻撃ではオスプレイはビクともしない。オスプレイはそのまま上昇し、一定高度まで上がると回転翼を水平に戻して飛び去った。

 

オスプレイは去ったが、残った無人機が俺達を攻撃するため旋回して真正面から向かってきていた。

「悠木!」

「分かってますよ、撃ち落とせってんでしょ!」

「分かってるなら結構」

 

集十さんが横向きに車を停車させ、俺は車外に出て89式のバイポットを展開してボンネットに置き、セレクターを”タ”にセットし、無人機に狙いを定める。

(銃は女と一緒、強く握ると女は嫌がる、だから優しく握る。息を整え身体を安定させ、ベストなタイミングで引き金を引く)

俺はゆっくりと息を吸いそして吐く、そしてベストなタイミングになった瞬間俺引き金を連続して引く。

 

ダン、ダン、ダンと次々に銃弾が発射され、発射された弾丸は無人機のハードポイントに取り付けられていたミサイルに次々と命中する。ミサイルが爆発し、無人機は東京の空で爆散した。

 

 

 

 

1時間程経ち、周りはパトカーに救急車、警官に消防士・救命士が慌ただしく動いていた。俺達はそんな彼らを尻目にタバコを吸っていた。

「せっかくの東京出張が台無しだな、内務省もあの騒ぎで暫く閉鎖されるだろうから委員会は延期だな」

「・・・・・・」

「何考えてる?」

「敵は俺の名前を知ってました、前に大橋で戦った敵もそうでした」

 

大橋の敵そして今回遭遇したウルフ、いずれも俺の名前を知っていた。そしてウルフは特区で起きる事件の関与を肯定も否定もしなかった。

 

「集十さん、敵は特区で起きる事件に関与してますよ。それに俺達警察は出遅れてる、早急に対策しないと手遅れに」

「ああ、そうだな。だが今は休もう。考えるのはそれからだ」

 

集十さんはそう言って車に乗り、俺も車乗ってこの場を去る。さらに大きくなった不安を持って。

 



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第10話 過去

2025年5月9日 警視庁本部

「で、あなたは自分たちに飛んでくるドローンを銃で撃ち落としたと?」

「だからそうだってさっきから言ってるだろが!もう何回目だよ!」

 

俺は昨日の事件の後に警視庁から呼び出しを喰らい、集十さんと共に警視庁の本部を訪れていた。

さっきから警官にどうやってドローンを落としたかを聞かれて、銃で撃ち落としたと言ってるのに一向に信じてもらえず何度も同じやりとりをしていた、すると。

 

「そいつの言っていることは事実さ、そいつにはそれだけの腕があるからな」

 

部屋に30代半ばの男性が入って来て、俺の言ったことを肯定してくれた。

 

「航さん!お久しぶりです」

「悠木久しぶりだな」

 

彼は三木航(みきわたる)俺がSATにいた頃の上司だ。

 

「こいつを借りてくぞ、特に何も問題ないだろ?」

「ええ、まぁ構いませんが」

「よし、ならいいな悠木行くぞ」

俺は航さんに連れられて部屋を後にした。

 

「向こうはどうだ?、こっちより忙しいだろ」

「全くですよ、先月だけでもう何回出動したか覚えてないくらいですからね」

航さんに連れられて喫煙室に向かい、そこでタバコを吸いながら航さんと話をする。

「航さんはどうです?」

「全く出動の機会はないな、最後に出たのは去年の10月だったかな」

「いいですね、そっちは平和で」

 

俺がSATにいた時もそうだったが、基本的に本土は平和だ。SATが出る凶悪事件なんて本当に年に1度あるかないかだった。

 

「でも俺が知ってる中で一番、激しかったのはお前がSATで最後に関わった事件だな」

「ああ、あの事件ですか」

 

俺がSATで最後に関わった事件、それは新宿のオフィスビルで起きた事件だった。

 

 

 

2年前 2023年2月24日 東京都新宿区

当時俺は既にSRUの試験に合格して3月に特区警察へ移動することになっていた。そんな2月の終わり頃に新宿の病院で人質の立てこもり事件が起きたのだ。

 

「全員整列!これから現場指揮官から説明がある注意して聞くように」

 

当時俺は第1小隊に所属し、航さんはその第1小隊内のチーム2リーダーだった。

「銃器で武装した集団が病院を占拠した。犯人は身代金として100億円と逃走用の飛行機を要求し、8時間の期限を提示した」

要求内容はまさしく人質事件の典型的な要求だった。

 

「交渉人が時間を延ばす事を試みたが、犯人は人質1名を殺害し、交渉には応じない姿勢を見せ、更に期限の8時間になり準備が終わってないことを伝えたら、更に3名の人質を殺害し、今後30分ごとに2名を殺害すると予告した」

犯人連中は容赦なく人質を殺す、早く対処しないといけないと思った上層部がSATの投入を決めたようだ。早期に俺達を投入すれば人質は死なずに済んだかもしれないのに。

「君達の任務は犯人を制圧し、人質の安全を確保する事だ。ただし犯人とはいえ基本的には生け捕りにしろ、射殺は最後の手段と心得るように」

(またかよ)

 

これだ、俺はこの命令がいつも納得いかなかった、凶悪犯でも警察は生け捕りが基本方針となる。多分世論やらうるさい人権団体からの批判を避けるためだろう。そのために俺達現場の人間や巻き込まれた人は常に危険にさらされる。

 

そんな事を思いながら準備をしていると、三木さんが話しかけて来た。

「何を考えているかは分かってる、俺も同じ気持ちさ」

「上の奴らは現場のこと考えず、自分たちの体裁守る事に必死、俺達は奴らの駒じゃないのに」

俺は三木さんに思っていた事を言う。

「今は我慢しておけ、負の感情は作戦に支障が出かねないからな。おっと、時間だな行くぞ」

「はい」

MP5A4のハンドルを叩いて、俺は三木さんの後を追う。

 

 

 

オフィスビル1階

俺達チーム2は東入口から1階東側に侵入し俺と三木さんが先頭で院内へと入る。

「クリア!」

俺が合図すると残りの隊員も中へと入る。途中の部屋の中を確認しながら、反対側から進むチームとの合流地点へ素早く向かう。

 

合流地点半ばの地点で敵の一人が巡回していたのを発見する。敵は俺たちに背を向けていたので、警告して投降させることにした。

「警察だ!武器を捨てろ!」

三木さんが敵に向けて響かない程度に声をかける。

「変な真似したら頭に穴が開くぞ」

俺はレーザーサイトを敵の頭に合わせ、本気だと言う事を伝える。他の隊員もレーザーを向けていたので敵は銃を捨てて降伏し、敵をうつ伏せにして両手両足を動かせないように拘束してから俺たちは先へと進んだ。

 

L字路に差し掛かり、隊員の一人が角を見る。

「こっちに敵が2人」

隊員が敵がいることを伝える。

「俺がやる、他は援護してくれ」

三木さんが特殊警棒を取り出して、敵に向けて突撃した。

 

三木さんはまず2人のうち一人を警棒で殴り倒す、もう一人に警棒を連続で叩きつけて倒す。倒れた敵が起き上がり三木さんに向けて銃を撃とうとしたが、三木さんは相手の股間を蹴り上げ、右左と連続でパンチを敵の顔面に叩き込み、最後に右フックをくらい完全にノックダウンされた。

「よしいいぞ」

俺達は倒された敵に近づき、両手両足を拘束して動きを封じた。

「チーム1だ、撃つなよ」

俺たちは順調に進み、そのあとは敵にも遭遇せずに無事に他のチームと合流ができた。

「こっちは敵2人を拘束したが人質は見つからなかった。三木、そっちはどうだった?」

相手チームのリーダーが三木さんに話しかける。

「敵3人を拘束した、だがこっちも人質はいなかった」

「だったら、残りの敵と人質は上階か」

「4階に大きな部屋があります、恐らくそこかと」

「よし、なら行こう」

 

合流したチームと共に階段を駆け登る。4階に到着して廊下に出ると、敵2人がAK-47を発砲して、隊員2人が被弾してしまった。

「2人被弾!」

「援護するからそいつを下がらせろ!」

俺はMP5を敵に向けて威嚇射撃を始め、他の隊員も持っている銃を撃つ。

 

「三田が撃たれた!」

また一人隊員が撃たれた。

「容体は!」

「足の動脈を撃たれて出血が酷い!早く運ばないと!」

撃たれた隊員の足から大量に出血しており、他の隊員が傷口を押さえても勢いよく血が流れていた。

 

「膝を打ちます!」

隊員の一人が敵の1人の膝を撃ち抜き、敵はよろめかせる。しかし相手はすぐに立ち上がり銃を撃ち始めた。

「クソ、薬物でもキメてるのか!?」

「仕方ない、頭を撃ち抜く」

そう言うと俺はホロサイトのレティクルを敵の額に合わせ、引き金を引く。

銃から発射された9mm弾は敵の額から入り脳を破壊しながら反対側から飛び出した。脳を破壊された敵は地面倒れ動かなくなった。

残ったもう一人の敵も他の隊員からの一斉射撃で大量の銃弾を浴びて沈黙した。

 

倒した敵に近づいて銃を蹴り飛ばし、体を足で蹴って反応がないか確かめる。

「死んでる、大丈夫だ」

「急ぐぞ、今の銃撃戦で敵が何をしでかすかわからん」

俺達は急いで先へと進む。

 

 

 

 

人質や残りの犯人がいると思われる部屋の前に到着して、ハンマーを持った隊員が扉をぶち壊す。

扉が破壊された瞬間に中にいた敵が一斉射撃をしてきた。

 

「来るんじゃねぇ!人質をぶっ殺すぞ!」

扉が壊れた瞬間に中の様子が一瞬見えたが、中には10人の人質と3人の銃を持った犯人がいるのが見えた。

「この建物は完全に包囲されている、抵抗せずにさっさと降伏しろ」

三木さんが犯人に向け投稿を促す。

「だったら派手に撃ち合ってやる、サツも人質も皆殺しにしてやる」

犯人は興奮しており、全く話が通じていないようだ。

 

「ダメだな、さっさと片付けるか」

「賛成です、フラッシュ投げ込みますか?」

「よし、やれ」

俺はフラッシュバンを取り出して、ピンを引き抜き部屋の中に放り投げる。すぐに轟音と強烈な光が炸裂し、人質がそれに反応して叫ぶ。

 

「ゴー!ゴー!」

三木さんの合図で俺を先頭に部屋へとなだれ込み、犯人達の膝を打ち抜き行動不能にさせて、他の隊員が素早く手を結束バンドで縛り上げ、残った隊員も人質の安全を確保して外へ連れ出す。

「ま、まだそこに」

しかし連れ出そうとした人質の一人が部屋の片隅にあった部屋の扉を指差した瞬間、中から女性を抱えた犯人の残党が出てきた。

「下がれ!こいつを殺すぞ!」

「他のお仲間は拘束した、もう逃げられんぞ!」

「ビルも包囲してる、投降した方が身のためだぞ」

俺と数人の隊員が犯人に銃を向ける。しかし犯人は興奮しており耳を貸さない。

「それはどうかな?」

犯人は片手に持っていたドラムマガジン付きのガリルを発砲した。

 

放たれた銃弾は包囲していた隊員2人に命中し一人は足、もう一人はアーマーを貫通して胴体に命中し撃たれた隊員はその場に倒れこんでしまった。

「そいつを下がらせろ!」

俺が命じると他の隊員が2人を抱えて部屋の外へと出て行き、部屋の中には俺と三木さん、犯人、人質の4人だけが残った。

 

「これで分かったろ!さっさと下がりやがれ!」

「で?」

「は?」

「言っただろうが、ビルは包囲され逃げ場は無い。仮に人質を外に連れて出ても、背中を見せた瞬間に撃たれてお前の人生ゲームオーバーだ」

「お前に残された選択肢は、今ここで降伏するか、穴だらけにされて死体安置所に行くかの2択だ。好きな方を選びな」

「ググググ、、」

俺達2人から言われた事に犯人はうねり声をあげる。

 

「それに女を人質にするなんて飛んだ腰抜け野郎だなw、ねぇ三木さん」

「ああ、そうだな人質がいないと何もできないカマ野郎だなw」

「な、、なんだと!」

犯人に挑発するような言葉を浴びせると、犯人はさらに興奮し始めた。

「どうしたカマ野郎手が震えてるぞ、そんなんじゃあ銃を撃っても当たらねえぞ」

「まさか怖いのか?だったら家に帰ってママにでも慰めてもらいなw」

「て、テメェらなめやがってぇぇぇぇぇぇ!!!」

さらに挑発を加えると、何を思ったのか人質を放り投げて両手で銃を握る。

「安置所がいいらしいですよ、三木さん」

「お望み通りにしてやるか」

 

俺はMP5、三木さんはUSPの引き金を引き、マガジンが空になるまで撃ちまくる。

撃たれた犯人は何発も銃弾を浴びて後ろ後ろへと下がって行き、最後はガラス窓を突き破り建物の外へと落ち、パトカーのボンネットの上に落下した。外では突然上から人が落ちてきたので警官や救急隊員が慌ただしく動いていた。

 

 

 

 

現在 警視庁本部喫煙室

「あの後2人とも減給処分喰らったけな、お前は直ぐに移動したから関係なかったが」

「すみません、処分受けたのに自分だけ何もなく、、」

「気にするな」

三木さんはタバコを灰皿へと捨て、外へ出て行こうとしたところで俺の方を振り向いた。

 

「最近噂で特区でよからぬことをしでかそうとする奴らがいると聞いた、お前なら心配ないと思うが気を付けろ」

「はい、三木さんも気をつけて」

三木さんは部屋を後にし、俺も部屋を出てエントランスへ向かった。

 

 

「終わったか?」

「ええ」

エントランスに行くと、先に聞き取りが終わった集十さんが既に待っていた。

「どうする、家族のとこ行くか?」

「いえ、帰りましょう、俺達の街に」

「そうか、なら行くぞ」

 

エントランスを出て集十さんの車に乗り東京を後にした。



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第11話 少女

2025年5月13日 飛鳥特別行政区碧ヶ丘区 

「止まれ!」

高級住宅街を逃げる男を2・3人の警官が追いかける。

「容疑者は北へ逃走、まずい!この先は飛鳥学園があるぞ!」

<容疑者を何としても止めろ!学園に近づけさせるな!>

「73号車犯人の前に回り込め!」

<了解>

パトカーが男の前に回り込むが、男はパトカーのボンネットをスライディングして逃走す。そして男は学園の正門前に到達、まだ朝の登校時間のため正門前には多数の生徒がいる状態だった。

「君!止まりなさい」

学校の警備員が男を止めようと前に出る。

 

バン

 

男は隠していたブローニングBDMを警備員に向け発砲、撃たれた警備員はその場に倒れ込んでしまった。

「キャーー!」

「何だ!何だ!」

「あの人銃を持ってるわ!」

学生達が慌てて学園の奥へ逃げていくが、男は近くにいた女子生徒を引っ張って追って来た警官達の方を振り向く。

「近くな!近づいたらこいつを殺すぞ!」

男は女子生徒の頭に銃を突きつる。しかしその女子生徒の表情は異常なまでに落ち着いていた。

 

 

同日 飛鳥特別行政区警察本部 2F休憩室

俺と秋人は夜中の巡回から戻って来て休憩室で食事をしていた。

「そういえば聞いたか、東区で殺人事件あったの」

「殺人事件なんて特に珍しくもないだろ、特にこも街ならな」

秋人の話を聞きながら俺はうどんをすする。

「事件現場でお前が大橋の事件で見た連中と同じ服装の奴がいたと聞いてもか?」

俺はそれを聞き食事の手を止める。

「それは本当か?」

「ああ、MIUSATの報告書で現着した時に、奴らと少しやりあったそうだ。お互いに被害はなかったらしいがな、確か報告書は葛西て人が作成してたな」

(後で翔太郎に聞いてみるか)

「葛西なら知ってるよ、俺の幼馴染だからな。後で聞いてみるよ」

「そうか」

 

食事を進めていると突然館内放送が響いた。

<碧ヶ丘区飛鳥学園で立てこもり事件発生、館内の職員で出動可能な物は直ちに応援に迎え>

その放送と共に、仕事用のスマホにメッセージが届いた。

”A-1指令が本部長より発令、ブラボー、デルタ、チャーリーチームはB装備受領の後、直ちに準備を整え地下駐車場に集合せよ”

俺と秋人はそのメールを見ると、食堂を飛び出して地下にあるSRUの装備管理室へと向かった。

 

装備管理室には既に葵に瑠璃、召集がかかったチームの隊員が集まっていた。装備を受領して地下駐車場に止めてある装甲車や車に乗り込み、本部を出発した。

 

 

碧ヶ丘区 飛鳥学園

現場に到着すると既に周囲は警官や機動隊によって完全に封鎖されていた。車を降りて移動指揮車の前に集まると、先に来ていた集十さんが指揮車から降りて来た。

「全員集まったな、ブリフィーングを始める」

外につけられたモニターに情報が表示される。

「今日の0722時に碧ヶ丘の住宅で忍び込みがあった。気づいた住人が通報して警官とドーロンがすぐに周囲の捜索を始めたら怪しい男をドローンが発見した」

モニターの画面が切り替わり、黒づくめでマスクで顔隠した男が映し出された。

「マスクをしているが、警察のデータベースに登録された虹彩や身体情報で身元が割れた。木場大和、強盗と傷害で2度の逮捕歴、現在は仮釈放中」

「典型的な犯罪者の経歴だな」

「だな」

俺と秋人は犯人の経歴を見て思ったことを言う。

「警官が職質しようとしたが奴は逃走、この学園まで来て止めようとした警備員を隠していた銃で撃ち、女子生徒を一人を人質にグランド側のカフェテリア2階に立て籠もっている。」

「人質の情報は?」

またモニターが切り替わり、ピンク髪の少女の学生情報が表示される。

「櫻井ルカ、飛鳥学園高等部2年生。この学園で生徒会書記を務めている。親御さんは海外にいてすぐには戻れないとのことだ」

モニターには立てこもっている場所の見取り図が表示される。

 

「犯人と人質がいるのはカフェテリア2階西側の自習室、入口は一箇所だけだ」

「見た感じガラス張りの建物ですよね、チャーリーの狙撃で終わるんじゃないですか?」

隊員の一人が見取り図を見て言う。

「犯人が窓のところに出てくればな、すぐに壊されたが監視カメラの映像で犯人と人質はこの円形の机の裏に隠れてる」

集十さんが自習室の真ん中にある円形の机を指す。

「撃たれると分かってスナイパーの射線に入るバカはいないからな。メインはブラボーとデルタでの突入で、チャーリーは100%ないと思うが、犯人が姿を見せた時には直ぐに撃て。配置を教える」

モニターが切り替わりそれぞれのチームの配置位置が表示される。

「ブラボーは自習室入口に待機、デルタは自習室の隣部屋で壁に爆薬を設置して壁を爆破し突入。ブラボーもそれに合わせて入り口から突入しろ。チャーリの配置はこの緑の点だ。確認したら配置につけ!」

「「「了解!!」」」

 

 

 

 

カフェテリア2F 自習室

「クソクソクソクソ、何でこうなっちまったんだクソが!」

男は頭を抱えてパニック状態に陥っていた。

「だが、まだ生き残る方法があるはず。考えろ、考えるんだ」

ここに立て籠もってから一言も発しなかったルカが言葉を発した。

「無駄よ、いくら考えてもあなたは死ぬ。3つの事のどれかでね」

「何だと?」

ルカは男の方を向いて彼の顔を見る。

「もう既にここは警察によって包囲されてる。さらにこの飛鳥学園は資産家・政治家の息子や娘が通っているから警察は早期解決を迫られる。既に猟犬が突入準備に取り掛かっている頃ね、貴方みたいな小者の犯罪者でも猟犬の恐ろしさは知ってるでしょ」

「猟犬、、、特区警察の特殊部隊。犯罪者を容赦なく排除する地獄の猟犬」

「1つ目は突入。猟犬は犯罪者の即時殺害を基本方針にしている、猟犬が突入した瞬間にあなたは射殺される」

 

 

 

カフェテリア2F自習室前廊下

「こちらブラボーリーダー、配置完了デルタの行動に合わせて突入する」

<こちらデルタリーダー、現在壁破壊用の爆弾を設置中。あと3分で終わる>

<コマンダー了解、デルタリーダーへ俺の合図で爆破して突入。犯人を視認したら射殺して構わない>

 

 

 

「2つ目は狙撃ね。私を盾にして外に出ても、猟犬のスナイパーが四方に配置されてるから外に出ても射殺される。下手したら廊下に出た瞬間撃たれるかもね」

「くっ、クソ」

 

 

 

飛鳥学園西校舎3階教室 瑠璃の狙撃ポイント

「チャーリー4配置完了、2Fの自習室前廊下をロック」

<チャーリーリーダーからコマンダーへ全チャーリー隊員は配置完了>

<了解、チャーリー各員は犯人を狙撃できそうなら任意で撃て>

 

 

 

「3つ目は今ここで私に殺される。あなたが死ぬとしたらこの3つ目ね」

「あ?何言ってんだお前。お前みたいな少女が俺を殺すだと?」

「そう言うことよ」

ルカは男の手首と銃を握り、男の手首をひねり骨を折って力が弱まった瞬間に銃を奪い取る。

「本当は私の銃で殺してもいいのだけど、後が面倒だからあなたので殺らせてもらうわ」

「お、お前何者なんだ」

男の顔はどんどんと青ざめていく。

「私の運転手が元軍人でね、仕込んでもらったのよ」

「や、やめてくれ」

「私じゃなくて他の子を人質にすればよかったのに、運のない人」

 

 

バン、バン

 

 

「中から銃声が!」

「コマンダー中から銃声、突入する!」

<デルタ、爆破して突入しろ!>

<了解爆破する>

 

ドカーン!

 

爆発音と同時に俺達も入口の窓を破壊して、盾を持った秋人と上野を先頭に自習室へ突入する。壁に空いた穴かあらデルタチームも雪崩れ込み、円形の机を取り囲む。

「警察だ!両手を見えるようして立て!」

俺がそう言うと、片手に銃を持った人質の女子生徒が立ち上がった。

「男の人は死んでます」

「葵確認を、俺は彼女から銃を貰う」

俺と葵が円形の机の中に入り俺は少女から銃を受け取り、葵は倒れている男に近づく。

「死んでます」

葵が死んでいるのを確認すると、デルタチームのリーダーが無線で報告する。

「コマンド、犯人は人質が射殺、人質に怪我はないが救急隊員を待機させてください」

<了解>

「葵、大井その子を外に連れて行ってくれ」

「了解」

葵と大井は少女を連れて部屋を出て行った、残った隊員達で部屋を捜索した後に他の警官に引き継いで外へと出て行った。

 

外に出ると、救急隊員に診断されている少女とそれに付き添う葵と大井が見えた。

「話してもいいかな?」

少女は首を縦にふる。

「どうやって相手から銃を奪った?」

「私の運転手が元軍人で、身を守る術を教えてくれたんです」

「そうか、状況が状況だったから罪には問われないと思うが。聞き取りのため呼び出しを受けるかもしれないから、それだけは覚悟しておいてくれ」

「はい」

「親御さんは海外にいるけど迎えはあるのか?もいいなければ警官に送らせるが」

「いえ大丈夫です、既に迎えは呼んであるますから」

少女がそう言うと黒のメルセデスベンツEクラスが規制線の外に停車した、あれが呼んだ迎えだろう。少女はそう言うと立ち上がって車に乗り込んで、そのまま去って行った。

 

 

 

 

「お嬢様大丈夫でしたか?」

「大丈夫よ」

「猟犬に任せれば、聴取を受けずに済んだのでは?」

「殺したくなったのよ、私を危険な目に合わせたのがムカついたからね」

少女は窓の外を眺めながらウルフに語る。

「前殺した時もそんな理由でしたね、あなたを怒らせないようにしないと」

ウルフは笑う。

「フフフ、まあ気をつけてね。今日の他の予定は?事件で学校は暫く休みになるから、予定を早く片付けるわ」

ウルフとルカの乗った車はそまま特区の街中に消えて行った。



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