猫達の恩返しは異世界放置 (黒猫黒)
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資料
設定資料


設定資料達
作者が忘れない為のまとめ


特別な月

満月の深夜0時のみ魔力を限界以上に高める、わりと何でも出来る

ただしこちらの世界は魔力持ちがとても少ない為特別な月自体が、あまり知られていない

こちらの世界では魔力を使えるのは黄金に輝く瞳を持つ者のだけ

黄金の瞳を持つ者だけが特別な月の日に魔力を使い世界を越える事が出来る

通称 魔力使い

 

実はこちらの世界の魔力使いはあちらの世界からこちらの世界に渡って来た人達の子孫である

 

 

奴隷

 

色々な種族の奴隷が居るが見た目にあまり特徴の無い

人間族は人気が無い

 

人気が高いのは 魔眼族 獣人族 幼花族

 

 

異世界の通貨

 

くず魔石と呼ばれる魔石に魔力を流し薄くコインの形に形成した物が通貨として一般的に使われる

 

仕上げに国の職人の魔力を流す

職人の魔力で加工した物は光を当てると中の模様が浮かび上がる

 

一度に大量生産出来るが国の職人の魔力が流れていないと偽物とすぐに分かる

 

偽造した者は国の労働力として一生働かされる

 

お金の価値

 

日払いの宿屋の場合

 

1食5百キラ 1日5千キラ 1月15万キラ

1キラ=1円

 

 

 

 

魔力

あちらの世界の人のみが使える

あちらの世界では瞳の色は関係なく使える、しかし黄金の瞳を持つ者は通常よりも強力な魔力を操る事が出来る

あちらの世界は魔力を使う者が多い分

世界の魔力が減り威力も弱い

こちらの世界は魔力を使う者が極僅かな為

世界の魔力が有り余り威力が強い

 

 

霊力

こちらの世界の者は魔力が使えない代わりに誰でも霊力を持つ

鍛えれば誰でも霊力を使える

妖怪と渡り合う為には霊力が必要不可欠

霊力が無ければ妖怪は見えず倒す事は不可能

通称 霊力使い

 

 

妖怪

こちらの世界は妖怪で溢れているのだが霊力を使える者が減った為

見る者も関わる者も殆ど居なくなった

今の時代に霊力を鍛える者は殆どが妖怪を倒すのが目的の為

ただ人間が好きで関わりたい妖怪達は寂しく悲しい思いをしている者が多い

 

 

大妖怪>妖怪>幽霊

妖怪から大妖怪になることを進化と言う

大妖怪と妖怪の間には越えられない壁があるが

妖怪と幽霊は立場が逆転する事もある(個体による)

妖怪が大妖怪になるには数百年の時間かかる

理由は進化には大量の霊力が必要な為

数百年かけて少しずつ集める

しかし主人公がいれば一瞬で進化可能に

進化の石

 

 

魔力と霊力の関係

基本的には

こちらの世界は魔力>霊力

あちらの世界は魔力<霊力

需要と供給の関係の為

 

 

 

主人公

一人称 俺

名前 式神 陽 (しきがみ ひなた)

身長170cm位?

生まれつき異常に霊力が強い

主人公が産まれた時は妖怪や動物が大量に集まり使用人達が家中にお札を張るも

それを破ろうと大妖怪までが集まり大変な事に

現当主(主人公の祖母)が

小さな動物に変化すれば家に入れる

と話をつけ大妖怪達は皆小さな動物になり産まれたばかりの主人公の側に侍っていた

主人公の霊力は妖怪達にとって、とても気持ちの良いもの、そして主人公から漏れた霊力だけで妖怪達は何年も存在できるレベルの力が手に入る

お守りを持たせて抑えるも一年で抑え切れなくなる

主人公の霊力を使えばレベルアップや力を強化する事が出来る

ふしぎなあめ

 

主人公は今は一人暮らし

 

 

お守り

主人公の溢れる霊力を代わりに受け入れ溜め込んでくれる物

一年で効果が切れるのでは無く、一年で主人公の霊力が満タンになる

一般人が持っていても一生満タンにならない位は霊力が入る

主人公の霊力で満たされたお守りは

とても価値があり妖怪のみならず霊力を使える者達は何としても手に入れたい

普段は屋敷に保管されている

主人公の霊力で満たされたお守りは

一部では[宝具]と呼ばれ持っているだけで霊力が倍増するチートアイテムである

宝具は大妖怪相手にも通用する取引アイテムでもあり渡すと大抵の事は叶えて貰える

 

 

実家の屋敷

霊力を使い悪い妖怪を討伐する集団の総本山

主人公の祖母が現当主

次期当主は満場一致で主人公

主人公が産まれた瞬間から屋敷が霊力で満ち皆の力が強化された

屋敷の者達は皆主人公を次期当主にしたい

主人公は祖母にスパルタ教育を受け

屋敷の皆に甘やかされて育つ

極端な飴と鞭

主人公が一人暮らしを始めた為屋敷の皆が寂しがる

 

実は主人公が産まれてからは屋敷の者の半数は人外

主人公以外は知っている




設定を考えるのが楽しい
止まらなくなる


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ヒロインの種族

魔眼族は安直すぎ

今は魔眼族
猫又
のみ


黄金の瞳を持つ者達

通称 魔眼族

 

この種族の特徴は首の何処かに宝石の様な結晶が付いて居ること

色や形は人それぞれ違う

 

見た目が美しい者も多く奴隷としても人気が高い

 

魔力を使おうとすると瞳が宝石の様に輝く事

 

この種族は10人に1人の確率で

黄金の瞳を持つ者が生まれる

瞳の色が黄金で無くても魔力が高い

他の種族よりも黄金の瞳を持つものが産まれる確率が高いため狙われ易く

(他は10000人に1人)

昔は他の種族が入り込めない森の奥深くの隠れ里に住んで居た

だが、たびたび誘拐されたり

隠れ里を襲撃され全員連行されたりしていた

昔は国ぐるみで誘拐され種族全体が奴隷にされる事も多かった

しかし国の王が変わり法が整備されてからは国に移り住み平和に暮らす

しかし国から一歩でも出ると直ぐ様拐われ売られる

有力者達は未だに欲しているものも少なくない

スラムの者達を使い国から一歩でも出るとすぐに奴隷にして買い取る契約をする者も居るほど人気が高い

 

首の宝石や瞳は魔力で加工し宝飾品として身につけると魔力を高める事が出来るため、殺して奪われる事もある

 

実は将来を誓い合った者にのみ渡す魔力を固めた魔石を産み出す事ができ、人生で一度のみ使える魔法

瞳や首の宝石よりも強力で、自分か相手のどちらかが死ぬと砕け散る

 

 

猫又

猫又の特性、特徴

 

 

猫の妖怪の霊力が増えると、尻尾が増え猫又になる

 

猫又達は尻尾にプライドを持っているらしく

一本と二本は大きく違うらしい

 

尻尾が二本の猫の妖怪

二本の尻尾が普通だが昔は三本もいた

爪や牙で鋭い攻撃をする

しなやかな体で素早く動く

霊力も高くスピードと組み合わせて敵をいたぶり遊びながら殺すのを好む者もいる

 

更に霊力が増えると人化もできる

人化出来るのは大妖怪のみ

望んだ姿に人化出来る訳では無い

元々の性質や猫の時の姿に引っ張られる

貧乳の場合は元々猫の時から…

 

猫の感性も人の感性も両方持ち合わせる

例、全裸でも恥ずかしく無いが好きな人にのみ見せたい

例、自分の主に知らない匂いが付いていると自分の匂いで上書きする

例、スキンシップが好きだが主以外には触らせない

例、強い雄(主)の子供が沢山欲しい

 

一度主を定めると生涯変えない

猫又は運命の主を追い求め、憧れ続けている

 

気に入った相手が主に相応しいか

襲いかかり殺してしまう者も後を絶たず後悔から後追い自殺をしてしまう者もいる

 

猫化している時は一本を消して見えなくしている

二本の尻尾の間を撫でられると腰が砕ける(性感体)

 

一話で主人公が黒猫の腰と思って触っていたのは丁度尻尾の間、人間にすると結構際どく

手下の猫又は過激なプレイを見せつけられざわめく

羞恥プレイ

 

親しくない相手が触ろうとすると即殺す

 

 

獣人族

 

人間の姿に獣の特徴と能力を併せ持つ

 

獣と人間の割合は個体により違う

完全に動物の姿で二足歩行

頭が丸ごと動物

手足だけ動物

獣耳や尻尾だけ

牙や爪が鋭い

完全に人間だが獣の能力を持つ

それぞれ違う

 

奴隷として人気が高く

度々拐われるが仲間意識が強く種族全員で取り返しに行く

その為仲間が多い種族は狙われ難い

 

闇で牧場を作り獣人族を人工的に繁殖するブリーダーもいる

国を上げ捜索して見つけ次第破壊し

ブリーダーは死刑になる

 

人工的に産み出された個体は生命力が

弱く寿命は20年も持たない

繁殖力も弱い

 

自然に生きる獣人族は繁殖力が強く

番(つがい)を決めると子供を沢山作る

気に入った相手が出来るとマーキングし

他の獣人に自分の獲物とアピールする

 

 

幼花族

 

森の中で静かに暮らす種族

大人になっても幼く130cm程しかない

特徴は髪の毛に花や蔦が絡み付く様に生えている

力が弱くスピードも遅い

魔力が多く自然を操る

森の中や自然が多い程魔法が強くなる

 

奴隷として人気が高く

捕まえる時は土から持ち上げ鉄の檻に入れるだけで無力化出来る為乱獲されるが

望まない環境に居ると段々と萎れて行き

蕾になり種に戻る

種を植え直すとまた生えてくるが

種を燃やすと完全に消滅する

 

植物の要素が強く繁殖力が強いが

本人が望まないと繁殖出来ない

 

愛する相手には自分の花や蜜を食べさせる

相性が良いと特別美味しく感じる




エロい習性を持ってる妖怪好き


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外伝
主人公が産まれた日


主人公の眷属(自称)の話
キャットファイト(直喩)
ハーレム(雄雌混合全て人外)

自分は羨ましいです


主人公の屋敷の下には小さくか弱い消えかけの妖怪が居た

 

気がつくと知らない場所に居て

見た事の無い物ばかりの世界に居た

幸い魔力はあるが

混乱している所を襲われ

何回も死にかけたが何とか生き延びてきた

 

もうこの世界に来て何十年も経つが

霊力が体に合わなかったのだろう

小さな弱い妖怪のままだった

この世界は常に息苦しく、生き辛い

あちらの世界ではそれなりに強かったのに

こちらの世界では圧倒的弱者だ

 

またその日も悪霊に襲われ取り込まれそうになり

何とか逃げ延びた先が床下であった

 

たまたまここに来たのでは無く、まだ産まれてもいない様な微かな気配だが暖かく優しい霊力に惹き寄せられて縋るような思いでここまで来たのだ

 

屋敷に近付く頃には大量の霊力が辺りに溢れ出していた

 

その日は主人公が産まれる日

出産直前の為主人公の霊力が、大量に漏れだしていた

 

屋敷の下に妖怪が居る事を

当主は気づいていたが悪意は感じられず弱い妖怪の為見逃された

 

当主は漏れだした霊力に妖怪が押し寄せる事を予想し

屋敷に結界を張る

結界を張ったことにより屋敷の下に居た小さな妖怪も一緒に守られる事になる

 

襲ってきた悪霊が透明な結界の向こうから

床下を覗き込みこちらを見ている

結界が消えた瞬間に取り込まれ消えてしまうのだろうと恐怖で小さな体が震えていた

 

そうこうしていると屋敷の周りが妖怪に埋め尽くされる

見渡す限り妖怪だらけだ

 

辺りが一際騒がしくなる何事かと思うより先に上の方から漏れだしていた霊力が膨らみ弾ける

今まで感じた事の無い様な強大な霊力

暖かく優しいさっきの気配が産まれたのだ

 

その時玄関の方から強い意思を持つ声がする

悪意の無い妖怪のみ屋敷に入れると

条件は小動物に変化する事だった

 

普通の妖怪達は小動物なんかに変化すると力が使えなくなり周りに他の妖怪がいる所でそんな事をすれば一瞬で襲われてしまう、自殺行為だ

 

だが大妖怪達は違う身の内に秘めた強力な霊力は小動物に変化しようが使えなくなる事は無い

 

実質大妖怪だけを屋敷に入れると言っているのだろう

我先にと小さな鼠に変化し屋敷に入ろうとした大妖怪が結界に弾かれる

 

さっきの声がする、呆れたような声で

 

「悪意の無い者だけ、と言っただろう

大切な孫を良い様にしようなんて私が許す訳無いだろうに」

 

弾かれた大妖怪は目を回し配下の妖怪達が回収する

 

他の大妖怪達が小動物に変化し続々と屋敷に入って行く

何て羨ましい私も消える前に一目でも良いからこの優しい気配に会いたかった

しかし私が結界を出た瞬間にじっと私を見つめるおぞましいそこの悪霊に襲われるだろう、いっその事消える事を覚悟して玄関まで駆け抜け様か

たどり着く前に絶対に襲われるが

 

その時床板の一部が開き光が差す

玄関から聞こえた声がする

 

「どうも産まれたばかりの孫が床下を向いて泣くんだ。お前はあの子に気に入られたのかも知れない、入っておいで」

 

急いで小さな黒い猫に変化し床下から屋敷に上がる

この人間は屋敷の当主らしい

当主は私の目を見ると驚いた様だが優しく抱き上げてくれた

大人しく当主に連れられあの優しい気配の部屋に案内される

部屋に入った瞬間大妖怪達の霊力で消滅しそうになるが何とか持ち堪える

 

当主が赤子の顔のすぐ側に私を下ろす

暖かく優しいあの気配の子だ

赤子が私に手を伸ばし触れようとする

急いで私からも近づき何とか触れて貰う

 

触れた手が暖かい。この世界に来て初めて幸せを感じるこのまま消えても悔いは無い、とても幸せだ

 

触れた部分から霊力が流れ込む

何をと思っていると私の体に光が集まり弾ぜる

光が収まると身の内に感じた事の無い霊力を感じる

一瞬にして私が生まれ変わる

消えかけの小さな妖怪だったのに筈なのに

今はこの場で1番、霊力の強い大妖怪だ

驚きで固まると驚いたのは私だけでは無い様だ

 

「この子は強大な力を持っているとは思っていたが、他者にあれほど霊力を渡しても全く力が変わらない…これは…」

 

当主が考え込む

 

他の大妖怪達が話かけてくる

 

「お主何者だ、その身から霊力とは別の力を感じる…それは魔力か?どういう事だなぜ魔力が使える」

 

当主が訪ねる

 

「魔力かい、やっぱりねその黄金の瞳はあちらの世界の者だろう」

 

私はこれまでの事を話す

もともとあちらの世界の生き物だという事

ある日気がつくとこちらの世界に居た事霊力が体に合わなかった事

襲われるばかりの弱い妖怪だった事を

 

当主が納得した様に頷く

 

「そう言う事かお前は世界を越えて来たんだね、こちらの世界には極たまにそう言う者来るんだ」

 

「そんな事が本当に?

あれは伝説の類の話だと

確かに極希に魔力を持つ者は居たが」

大妖怪は首を傾げる

 

「どうだいお前はあちらの世界に帰りたいのかい?

その身はこちらの世界じゃお前の言う様に生き辛い筈…ん?

お前何か変化して無いか外じゃ無く内側の方が」

 

言われて気づく霊力が体に馴染み息苦しさは無く魔力と霊力が混じり手足の様に自由に操る事が出来る

これもこの赤子が…いやこのお方、主様が

主様を見ると私に力を渡して疲れたのかすやすやと眠っている……愛しいなぁ

 

「そうみたいですね体に変化があった様で魔力と霊力が混じり自由に操れます」

 

「何?そんな話は今までは聞いた事が無い!

確かに今のお前の力は歴代最強クラスだが

その力はとんでもないよ!」

 

「それに今までは

あちらの世界に帰りたかったですけれど

今は主様がいるこちらの世界が良いです」

 

「主様?この子の事かい!

確かに妖怪は自分の認めた強い者を主とする事があるが人間に付くなんてお前も変わってるね」

 

「こちらの世界の常識は知りませんから、私は愛しい方と共に在りたいだけです」

 

「ははは!気に入ったよ

だがこの子を主とするなら今のままじゃ駄目だ力の強さだけじゃこの子を守れないよ

幸いこの場にはこの子を慕う大妖怪達が大勢いる力以外の事も教えてもらいな」

 

大妖怪達が此方を見ている

主様を守る為ならばどんな事でも

「はい。

皆様よろしくお願いします

主様を守る為お力を御貸しください」

 

産まれたばかりの大妖怪、黒猫の猫又は

他の大妖怪達に頭を下げる

 

・・・・・・・・

 

この時黒猫の事を妬ましく、疎ましく思う存在も居た

 

まだ主人公が母親のお腹の中に居た頃

 

妊婦を襲おうと近づくとその腹の中に眩い魂が在ることに気づく一目見て虜になってそれからはずっと側に居た

まだ人間の形にもなっていない小さな塊の時から

 

愛しい愛しいこの魂に少しでも近づきたい、あわよくば気に入ってもらい愛でて欲しい

 

居なくならない様に一時も目を離さず産まれるまでずっと見ていた

 

暖かく優しいあの魂に相応しくなるように

人も動物も妖怪も何もかも襲うのを止めた

 

血にまみれ薄汚れた体も

触れて貰える様に日々霊力で清め真っ白になった

 

そこまでしてやっと産まれて来た魂と出逢えるその時に邪魔者が入った

 

真っ黒の薄汚いあの雌猫が

妾が触れようと、近付こうとしたその時に

当主に連れられ部屋に入って来た

あろう事か薄汚い体に触れて貰いその身の力を分けて貰っていた

妬ましい

その場所は妾が居る筈の

妾の居場所の筈

 

ずっと側に居て、触れて貰う為に身を清め

殺生も止めた

なのにあいつは何事も無い様に

横から奪うつもりなのか

 

許さないそんな事を許せる筈がない

あいつを喰らいその身の力を手に入れれば

その場所は妾の物だ

 

待っていてください貴方様、邪魔な雌猫を消し必ず貴方様の元に

 

白猫の猫又は瞳を血のように紅く染め

怪しく嗤う

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

今の白猫は知らない

未来の自分が黒猫に襲いかかるも毎回片手で倒され

悔しそうにぐぬぬ顔を晒すのを

 

主人公はたまに黒猫と白猫がじゃれて居るのを見かけ微笑ましそうに

仲が良いなと笑っていた




猫又 人化可能
黒猫は黒髪ストレート
金色の瞳
体型はスレンダー
160cm Bカップ
主人公は普通の猫と思っている

通称黒

猫又 人化可能
白猫は白髪ふわふわ広がる
紅色の瞳
体型ボンキュボン
短気
怒ると髪の毛が毛先から赤く染まる
165cm Eカップ
主人公は普通の猫と思っている

通称白

体型の話の時だけは白猫は黒猫に勝てる為
頻繁に話題に出してはぼこぼこにされる


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本編
異世界転移


初めてのテンプレ
オリジナル小説風
好きな物を詰め込んだだけ
完全な趣味


気付いた時にはここに居た

 

ある日、目が覚めると眼鏡が無くても見えている事に気が付く

今までは眼鏡が無いと10cm先も見えなかったのに目が見える

いや、目が悪くなる前よりも遠くまではっきり見えている

空を飛ぶ鳥だって羽の色もはっきり分かる

………?空を飛ぶ鳥?起きてすぐに鳥?

 

そこで頭がようやく動き出す

体を勢いよく起こし辺りを見る

そこには全面に木が生い茂っていた

見上げると木々の隙間から木漏れ日

うわぁ…素敵だなぁ

良くなった目を凝らして見ても何処までも木が生えている事以外は何も分からない

何も見えない

何も無い

 

「えっ、なぁにこれ」

 

現状を把握しても理解は出来ない

意味が分からない

 

「うーん?」

 

これはあれだろうか?

この頃噂の転生して俺最強でハーレムとかを作るあれか?

でも神様とかに会って無いし

子供を庇ってトラックに轢かれてない

不思議な魔方陣も無かったし

なんだろう、なにがフラグだったんだ?

 

「あっもしかして!」

 

あれかも知れない。

昨日の夜は帰り道に猫の集会に出くわした

バレない様にこっそり見てたら、猫達にニャーニャー呼ばれて、近寄っても逃げないのを良いことに猫達が全員、全猫?でろでろになるまで撫で回したのが原因か?

それ以外は何も変わった事は無かった筈だけど

猫達の中に居た1番ボスっぽい黒猫を腰砕けにした時は周りの猫達がどよめいてたし、猫ってどよめくの?

最後にボスっぽい黒猫の目が光ってた様に見えたけど気のせいじゃ無かった?

 

「えぇ…現代版の猫の恩返しは異世界(仮)に説明も無く放置なの?」

 

異世界(仮)はまだ完全には認めて無いからだ。

まだ、ただの森に放置されてたまたま目が良くなっただけかも知れない

それに1番良いのはただの夢オチだ

 

「そうだ、現状確認の途中だった。

先ずは持ち物と、装備の確認をしないと」

 

装備と言ってる時点で浮かれている自覚はある

 

先ずは服装だけど

上半身 普通の白いシャツ

下半身 黒いズボン

上着 奮発して買ったちょっと良いコート

靴 山登り用のブーツ

 

持ち物

山登り用のリュックサック

水筒 タオル 毛布 着替え ロープ 財布 保存食 手袋

コンパス その他細々した物

 

「えっ完全に用意がしてある。

これでとりあえずは大丈夫だけど、誰の荷物なんだ?

あっリュックサックの札に俺の名前が書いてある、なんで?誰が?」

 

とりあえずコンパスを取り出す

 

「コンパスってどう使うの?

赤い方に進めばいいの?

これどこ指してるの、て言うかここどこ?」

 

そこで思い出した、夜の森は危ないよ

気温がすっごく下がって凍死するよ

夜目の効く夜行性の動物達が襲いかかって来てお前をばくりと食べてしまうよ

それだけじゃない夜の森は足元が見えなくて崖から落ちたら二度と上がって来れないよ

じいちゃんとばあちゃんに何回も聞かされた言葉だ

 

「やばい、暗くなる前に村か町を見つけないと

誰か人でもいれば何とかなりそうだけど」

 

コンパスの指す方に向かって歩き出す

夜が来る前に森を抜けたいそれだけを考えて

 

 

 

 

 

言い聞かされた言葉には1番大事な続きがあった

 

もし森で迷ったら無闇に歩き回ってはいけないよ、家の者が必ずお前を迎えに行くからね

絶対に動いてはいけないよ

お前の事を慕うあの子達が泣いてしまうからね

あの子達が泣くとお前以外は誰も止められない

 

 

 

1番大事な部分を忘れた、愚かな主人公は歩き出す

その場に大切なお守りを落とした事にも気付かないまま

 

・・・・・・・・・・

 

あれからどれ位歩いただろう

都会に住んでいた身としては大分辛い

少し歩いただけでへばってしまいそうな森の中を、コンパスを頼りにずっと真っ直ぐ進んできた。

そろそろ足が悲鳴をあげそうだ

 

「そろそろ何か見えてくれないと、辛くなって来たな」

 

そう言って側の岩に座り込み水筒の水を飲む

歩き始めてからちょこちょこ休暇の度に飲んで来たこの水は飲む度に少し元気になる気がする

そして何よりも

 

「この水筒さっきから全然重さが変わってない。

ずっと軽いままだ、いくら飲んでも無くならない」

 

不思議に思った主人公は、水筒の蓋を開け中を覗き込む

水筒の水がキラキラと輝き宝石の様に光を反射している。

底の方を見ようと目を凝らしても透明な筈なのに水の底は見えない

 

「何だこれ、もしかして俺の異世界の特典は水筒なのか?

いや、でもこれは有難い

人間、水があれば3日は生きて行けるらしいからな、…ん?なんだこれ?」

 

主人公は座っている岩の表面に苔が生えていることに気づく

 

「苔って事は水場が近いのか、なら人が居るかも知れない!」

 

耳を済ますと微かに水音が聞こえる

 

「やった!こっちか!」

 

喜び主人公は駆け出す

水場に近付くにつれて小鳥の鳴き声の様な物も聞こえてくる

生き物がいる気配にやっと安心する事が出来た主人公は走るのを止め歩きながら草をかき分け、邪魔な木の枝をへし折り進む

開けた場所に出る

そこに広がるのは美しい湖と、木の枝に止まり毛繕いをする小鳥

小さな動物達が走り回り、水を飲む

美しい湖に倒れ込み肩の辺りまで水に浸かり、ずるずるとゆっくりと沈んで行く人影

 

「沈んで行く人影っ!」

 

主人公は急いで駆け寄り湖から引っ張りあげる

様子を確認すると、意識は無い様だが細く息はしていた

体は氷の様に冷たく青ざめ、全身が震えている

 

「息はあるからって安心は出来ない

急いで温めないと、とりあえずタオルで拭こう。

先ずはそれからだ」

 

服はどう脱がしていいのか分からず、一刻を争う為そのまま服の上から体を拭いていく

全身を拭き終わると毛布でくるむ

その頃にはまだ微かに震えてはいるものの、顔色も大分良くなった

 

「ひとまずは安心かな?

でもなにか体を温めるもの…森の中だし

通ってきた道に、木の枝は沢山落ちてたな後は火をつけるもの、何か無いかな」

 

リュックサックの中を探り、細々した物の中を探すと

すぐにライターが見つかる

 

「さっきはライターなんて無かった様な…でも都合が良い、さっさと火を起こさないと」

 

毛布の側にリュックサックを置き、なるべく風が当たらない様に壁代わりにする

ロープを取り出し木の枝を探す

 

枝はすぐに見つかった自分が歩いてきた森は通る時に草をかき分け

邪魔な枝を折って進んできたのだそれが大量に転がっている

集めた枝をロープで一纏めにし運ぶ

毛布を覗くと震えが大分収まっていた

 

「焚き火かぁ、学校でキャンプファイヤーしかやった事無いけど出来るかな、同じ様な物の筈だけど

ライターがあるし…多分大丈夫だ」

 

枯れ葉を置きその上に木を組む

木の枝の先をほぐし火をつけそのまま木の間から枯れ葉に差し込む

しばらくすると火が大きくなり落ち着いてくる

 

「おぉ…俺もやれば出来るんだな

安心したら少し疲れて来たな…こんなに沢山歩いたのは久しぶりだし…でも明るい内にもう少し枝とか……集めたいな…」

 

主人公はそう言いつつも、いつの間にか眠ってしまう

もう日がくれ夜が近付いて来ていた

 

 

・・・・・・・・

 

誰かが居るような気配に意識が浮上する、目の前に誰か居る。

至近距離で誰かが顔を覗き込んで居る様なそんな、ホラー映画の様な展開に怖がりつつも、勇気を出して目を開く

 

そこには月が2つあった

綺麗な金色に輝く瞳が主人公を見つめていた

 

「えっ何?誰?怖っ」

 

驚きのあまり単語しか話せなくなる主人公は、少し距離を取ろうと後ずさる

その時動いた事で肩にかかっていた毛布がずり落ちる

 

「あっ毛布!」

 

慌てて助けた人影の方を向くと、リュックサックだけで誰もいない。

キョロキョロと辺りを見回すと目の前に人影、と言うことはこの人が俺の助けた人なのか?

 

「もう大丈夫なのか?

体は寒かったり、痛い所は無いかな

あと毛布ありがとう」

 

立ち上がりながらそう訪ねると、目の前の人物は驚いた様に目を見開く

 

「やっぱり助けてくれたのは貴方なんですね。

こちらこそ、ありがとうございます」

 

目を細めにこりと笑う

今更ながら相手を良く見てみる

銀色の長い綺麗な髪の毛は、毛先の方に向かい水色がかっていてお尻の辺りまで伸びている

目は金色だが光を放っている様に輝いていて、宝石の様に美しい。

身長は俺の肩位だから150cmはあるだろう

中性的な顔立ちだが、綺麗な顔という事以外は男か女かは分からない

 

「くしゅっ」

 

小さくくしゃみをした目の前の人物は

恥ずかしそうにしている

 

「あっごめん

服がまだ濡れてるのかな

なら着替えがあった筈」

 

リュックサックまで駆け寄り

確かこの辺りに着替えを入れた筈だと手を入れ探る

服の感触に掴んだ手を見ると何だか小さい気がする

広げて見ると自分の服よりも小さなサイズで丁度助けた人物位の大きさだった

 

「えぇっ、最初に確認した時は絶対に俺位の大きさだった筈

さっきもライターが出て来たし

そういえばリュックサックも全然重く無いし

これも異世界の特典なのか?」

 

考え込む主人公に声をかける者が

 

「あの、大丈夫ですか?

難しい顔をして何か困り事ですか?」

 

湿った服のまま心配そうにこちらを見つめる人物に本来の用事を思い出す

 

「え?

そうだ着替えだ、ごめんね寒いよね

俺はリュックサックを整理してるから

暖かい焚き火の方で着替えて来て」

 

「何から何まで申し訳ありません

ありがたく、お借りいたします」

 

本当に申し訳無さそうに頭を下げ

タオルと着替えを持って、焚き火の方に向かって歩く後ろ姿を見て思う

病み上がりのあの人に何か食べ物を渡したい未だに顔が青白いし、今にも倒れてしまいそうだ

リュックサックに手を入れ何か消化の良い食べ物があればと思う、

そうすると指先に硬い感触が、やっぱりこのリュックサックも特典だったのかとそう確信し掴んだ物を見る

 

あか○○つね

 

馴染み深いカップうどんで確かに消化の良い食べ物だ

しかし鍋が無い

水は水筒にあるが鍋が無ければ食べられ無いどうしよう困ったな

そう思っているとリュックサックの方から、からんと音が聞こえてくる

開けっ放しだったリュックサックの口から鍋が転がり落ちている

 

「お前俺の心が読めるのか…?

手を入れなくても、離れていても望んだ物が出てくる、何て便利…もとい何て頼りになるんだ!」

 

そう言うとリュックサックから

○○いきつねがもう1つ転がり落ちてくるリュックサックにも感情や意思があるようだ

 

「えぇっ!それはどうなの」

 

「何がですか?」

 

「うわっ」

 

いきなり話しかけられ飛び上がって驚く

振り向くと着替え終わったのか俺と同じ服を来た人が

いつの間にかすぐ後ろに立っていた

 

「何でも無いよ

それよりもご飯にしようよ」

 

焚き火に鍋を置き水筒から水を入れる

あかい○つ○を見せながら話す

すると悲しそうな表情で

 

「それは食べ物にはとても見えません

もう暗いですが、

森で木の実位は見つけられるかもしれません

お望みならば探してきます」

 

森に向かおうとするのを急いで引き留めながら

食べ方を教える

あかいき○○のビニールをはがし蓋を開け中身を見せる

 

「ほら、この白い麺を食べるんだ

今はまだ硬いけどお湯と、この出汁を入れると美味しくなるよ」

 

すると驚いた表情で

 

「本当に食べ物だったのですね

申し訳ありません、こんなに豪華な携帯食糧は見たことがありませんでした」

 

「携帯食糧ってあのパサパサしてあんまり美味しくないあれの事だよね?

携帯食糧よりは美味しいと思うけど、試してみない?」

 

「?普通、携帯食糧はパサパサで不味い物ですよね?

最低限の栄養摂取が目的ですから」

 

こっちの世界も携帯食糧は不味い物で合っていたみたいだ、あまり嬉しくない一致だった

沸騰したお湯をカップ麺に注ぎ暫く待つ

その間にコップを取り出し粉末を入れスプーンで混ぜ渡す

 

「これはスープですか?

でもお湯と粉しか入れてませんでしたよね?」

 

ク○ール カッ○○ープ コー○クリーム味です

混ぜるだけで出来上がる

味も美味しい優秀な食品です

 

「これも携帯食糧だよ」

 

恐る恐る冷ましながら飲み目を見開く

 

「これは!お店で食べる物と…いいえ、お店の物より美味しいです!」

 

「口に合って良かったよ

それならカップ麺も大丈夫そうだね」

 

そろそろ良いかなと蓋を剥がす

麺がほぐれて食べられそうだ

 

「凄く良い香りですね、お腹が減る香りですがこんなに食糧を分けて貰っていいのでしょうか?

助けて貰った上に着替えにスープまで

これ以上はもう頂けません」

 

「でももう作っちゃったし

2つも食べられ無いから勿体無いし貰ってよ」

 

「それは…」

 

差し出したカップ麺を受け取るか否か考え込んでいる

 

「それに助けたからには出来る事はするよ、

中途半端は嫌だから

助けたからには、責任を取ってちゃんと最後まで面倒見るよ」

 

すると顔を真っ赤にしながら

俺の目を見つめ覚悟を決めた様に一度頷く

そして両手で丁寧にカップ麺を受け取る

 

「確かに貴方の考えも、気持ちもよく分かりました

しっかりと受け取りましたので

どうか最後の時までよろしくお願いいたします」

 

そうして赤い顔のまま深々と頭を下げて言い切ると

にこりと綺麗に微笑んだ

 

…………?

なんか覚悟決めた目して頷いてたけど

カップ麺の話だよな?

 

・・・・・・・

 

一方主人公の実家では

 

「あれ?」

 

肌身離さず持っていたお守りを見る

昔若から貰った霊力が満タンの若特製のお守り

それが何時もと違う気がする

 

出せる限りのスピードで部屋に戻り、パソコンを起動する。

廊下の使用人達が驚いて居たが、そんな事はどうでもいい

聞かれたら後で説明する

 

「急いで!早くっ」

 

どんなに気持ちが急いでもパソコンの速度は変わらない。

やっとの事で目当ての画面に切り替わる

 

「えっ…完全に消えてる

嘘だ、他の分はどうなってる?

……全部消えて…る」

 

何時も確認していた筈

一斉に壊れる事なんてあり得ない

データを見ると昨日の夜に家に帰る迄はしっかりと全て正常に動いている

だとすると気づかれた?

いや若は気づいても壊しはしない

外した後に返してくれる、今迄もそうだった

だとすると想定外の事態が起こったのか

若の身に危険が迫って居るかも知れない

 

「そんな事許さない、今すぐ行きます」

 

そうして駆け出そうとすると部屋の入口にご当主様が立っていた

 

「どうしたんだい?そんなに慌ててお前らしくもない

使用人達が驚いて報告に来るほどとは、何があったんだい?」

 

「ご当主様!

若に着けた発信器が全て同じ時間に消えました

こんなこと今迄ありませんでした!

若が危ないかも知れませんどうか駆け付ける許可をお願いします!」

 

当主様こと主人公の祖母は考える

 

「少し落ち着きなさい

全て同じ時間って言ったね、それはいつ頃だい?」

 

そう言われ無理やり心を落ち着ける

 

「若がご自宅に戻られたのは、

昨日の丁度深夜0時頃です」

 

「そうか昨日の深夜0時ねぇ、おまえ昨日の月はみたかい?」

 

「月ですか?いえ、ですが昨日は何時もよりもとても明るくて隠れにくくてしょうが無かったです」

 

「お前は、何時もの事ながら

仕事かあの子の事しか頭に無いんだね

昨日はね満月だよ特別な…ね」

 

「若の事しか考えたく無いですけど若の為のお仕事ですからね、全力で完璧にこなしますよ

それにしても特別な月?聞いたことがある様な」

 

「特別な月はね、

満月の0時にだけ特別に魔力を増やす月だよ

輝く黄金の様な目を持つ者のみが使える魔力

魔力が特別強くなる日

それが昨日だよ」

 

「魔力?それって空想の中のお話ですよね?」

 

「お前だって霊力を使う癖によく言うよ

それがね、極僅かな者達だけが使えるんだよ

その魔力が特別強くなる

それこそ世界を越える程の力さえあるのさ」

 

「それが昨日?

………まさか若は世界を越えて?」

 

「そうかも知れない

あの子が今住んで居る辺りの主は

黄金の瞳を持つ黒いの猫又だからね」

 

「でもそんな大妖怪、中々人前には現れない筈です」

 

「あの子の体質は知ってるだろう?

何者からも好かれる、特に人以外には強力に

人間なら嫌われにくい程度だが妖怪や動物になると…」

 

「ならどうすれば若は戻りますか!」

 

「その黒い猫又に頼みに行くしかないね

だが普通に行っても会えないだろうし

仕方無いね持ってきといて良かったよ、ほら」

 

「これは、若のお守り?」

 

「あの子のお守りは一年で新しい物と交換してる事は知ってるだろう?

交換した後のお守りはあの子の匂いや気配や霊力が染み込んでいるからね無闇に捨てると妖怪達が寄ってきて大変だから保管してあるんだよ」

 

「それがこのお守りなんですね

確かに若の匂いがしてます」

 

「それを持って行けば黒い猫又に簡単に会えるだろう

会えたら交渉の時間だよ

その辺はお前の方が今は詳しいだろ?」

 

「それでもし若が戻らなければ?」

 

「お前が行くんだよ

そのお守りを渡せばあっちの世界に送る事位はしてくれるさ、そのお守りにはそれ位の力があるからね」

 

「うぅ若の持ち物を他人、他猫に渡すなんて

なるべく交渉で解決したいですぅ」

 

「多分無理だねあの猫又は気に入った奴にしか

力を使わない、お守りを渡してあの子を迎えに行っといで」

 

当主はそう言って背中を押した

物理的に背中を押されて転びそうになりながら

屋敷から走って出て行く




当主(主人公の祖母)
黒髪 肩の上までのショート
首の後ろの結んでいる所だけ腰までのロング
見た目は凄く若く30代実年齢は60歳
式神 静

主人公専属 討伐霊力使い
主人公に害する妖怪をいち早く討伐する
黒髪 尋常じゃなく黒い
揉み上げだけ長く後ろは短い
(ARIAの灯里ちゃんの様な髪型)
海の底の様な青黒い目
主人公より年下 15歳
仕事中は沈着冷静
動き易い為忍の様な格好を好んでしている
何時もマフラーを鼻まで上げ揉み上げは出ている
主人公命 若と呼ぶ
美少女だが主人公以外には無表情
体型は仕事の邪魔になる為の何時もさらしで抑え
ているが
以外とある
影宮 奈月
150cm Cカップ 利き手は両手を使える


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都合の良い勘違い 別視点

一話の別視点
ゲスイ台詞を書くのが好き


私はあの日

たちの悪い人間に追い掛けられていた

 

私達は生まれつき黄金の瞳を持つ者が多い

それを狙い捕まえ様とする人間が時々いる

今の時代はその卑劣な行為は法で禁止され

法を犯したよる者は死ぬまで国で働かされる

 

新しく出来た法のお陰で私達は昔より安心して普通の生活が出来る

国の中で襲われた事なんて一度も無かった

 

一歩でも国の外に出ると襲われる事は分かっていた

でもどうしても昔住んで居た森をもう一度見たかった

 

国を出て暫くは何もなく

私達を狙う者は誰も居なくなり安全に生きて行ける

もう私達を害する者は居ないんじゃ無いか、そう思ってしまったのが悪かった

 

油断して無防備に歩いて居たからか、

目の前に人が現れた事に気づいた時にはもう遅かった

驚いて辺りの気配を確認すると十人程の薄汚れた男達に囲まれて居た

 

迂闊だった、目の前の男を睨み付ける

 

「おいおいそんなに睨むなよ

俺達の雇い主は奴隷には優しいらしいぞ?」

 

男がにやにやと笑い黄ばんだ歯を見せる

 

「捕まえたその日から可愛いがって

死んでもずっと腐るまで何回でも楽しんで

その後は瞳も首の宝石も無駄にせずにちゃんと全部使ってくれるらしいぜ?」

 

男は舌舐めずりをしながらげらげら笑い

嫌らしい視線を向けてくる

 

「それになぁ

お優しい雇い主様は壊さなければ

俺達も皆で楽しんで良いんだとよ」

 

もう一人の男が後ろからにじり寄ってくる

 

「そうだよなぁ

中には初物じゃなきゃ嫌だの

幼くないと起たないだのと

注文の多い奴も居るってのに今の雇い主様はなぁ」

 

「ああ、男でも女でも子供でも老人でも

魔眼族なら何でも良いんだとよ

それこそ死んでてもな!」

 

ギャハハハハッと男達は壊れた様に笑う

 

チャンスだあいつらは逃げられないと油断してバカみたいにお腹を抱えて笑い転げている

 

私は魔眼族の中でも特別に魔力が多い

一回位なら無茶は出来る

その後はどうなろうと、

こいつらに捕まるよりはましだ

怯えた振りをしてうつむきフードが顔を完全に覆う様にする

そうすれば魔力を使って瞳が輝いても誤魔化せる

 

「お?観念したか?

俺は多少抵抗してくれた方が楽しめるからもっと暴れてくれてもいいんだぞ?」

 

「お前そう言ってこの前も女のガキが

嫌がるのに無理やり突っ込んで壊してたじゃねぇか」

 

「あのガキは良かったなぁ

すげえ締め付けで血で滑りも良くてよ

最後は気が狂ったみたいに叫んで煩かったけど殴ったらすぐ大人しくなったしな」

 

何て事をっ!

思わず睨み付ける

男達が私の顔を見て騒ぎだす

 

「おいあの目を見ろっ!

魔力を使おうとしてるぞ、取り押さえろ!」

 

まずい、まだ魔力は十分じゃ無いけど跳ぶしか無い

溜めていた魔力を一気に解放する

魔力が足りない無い分は体内の何かをごっそりと持っていかれる感覚がして体が冷えていく

 

捕まえようとした男の手が体を掠めゾッとする

 

ギリギリ間に合ったのか景色が変わる

水の中にボチャンと落ちる、急いで水面に出る

もうあまり良く見えないここは?

何処かの森の…水場?

急いで岸に向かうも上半身が陸に上がった所で力尽きる

体から体温が抜けて行くのが分かる

私はこのまま死ぬのかな

それともあの男達が追い付いて来て捕まるのか

このまま溺れ死ぬか…凍え死ぬのかな

目が覚めた時に奴隷になってなければいいけれど

 

「まだ…しにたく…ない…な…ぁ…」

 

そこで意識が途切れる

 

・・・・・・・

 

暖かな温もりに包まれて目が覚める

いったいなにが?

目を覚ますと自分が毛布に包まれていることに気づく

こんなに上質な毛布は奴隷には与えない

首を触ると首輪もついていない

手にも足にも体のどこにも拘束具が無かった

側に焚き火まである

 

「逃げ切ったの?」

 

 

側の焚き火の向こうに男の子が見えた

安心した様に眠る姿を見て私を助けてくれたのは

彼かも知れないと思った

 

辺りを見回すと見覚えがあった

ここは昔は住んで居た森の中の湖だ

 

ということはある程度は安心できる

この湖は底の方に使い物にならない

誰も拾わない様な小さなさざれ石位の魔石が沢山

水底を埋め尽くす様に沈んでいる

 

小さな魔力が集まり湖から溢れる程の力がいつもここには満ちている

清い水で浄化された魔石は清浄な魔力を発する、

それを使い森自体が結界を張る事で

悪意のある者や罪を犯した者は近付く事さえ出来ない

 

この男の子がここで安心して眠れる事が

彼の身の潔白を証明していた

 

毛布を返し彼が目覚めるまで顔を覗き込み、待つ

この辺りには珍しい真っ黒な髪の毛だ

夜の闇の様で美しい

 

その後彼は跳ね起き

私に着替えとスープをくれた

粉とお湯だけで出来たスープは驚く程美味しく

この携帯食糧はとても高価な物だろう

彼は自分と同じ食糧を私に分けてくれる

とても良くしてもらい、何も返せない事に申し訳なく

なり食事を断る

 

しかし彼は私を最後の時まで責任を持って面倒を見ると言った

 

ドキッと胸が跳ねる

これはプロポーズだろうか?

そう思い確認しようと顔を上げると

彼は照れもせず真剣な表情で私を見つめていた

何て綺麗な瞳、だが視線には強さがある

ここまで想われる何てと私は決意し頷く

 

「確かに貴方の考えも、気持ちもよく分かりました

しっかりと受け取りましたので

どうか最後の時までよろしくお願いいたします」

 

最後の時までよろしくお願いしますとは

魔眼族でプロポーズの返事として使われる言葉で、これが最終確認だ

プロポーズは取り消す事が出来ない

勘違いや間違いがおきない様に出来た

決まり文句となっている

違う場合はここで否定し断る

 

しかし彼は嬉しそうに笑っていた

決まりだプロポーズに違いない

これで将来を誓い合ったのか

まだ実感は無いが胸がドキドキして顔が赤く染まる

 

頭を深く下げそれからにこりと笑う

 

絶望ばかりだった人生だけど

彼と二人なら幸せに生きて行けそうです

その証拠に彼に反応して首の後ろの宝石が

熱を持っているから




勘違いにならない
難しい
ヒロインメモ1
魔眼族のクラリス
身長 150cm位
銀髪毛先に向かい水色がかる、金目
Bカップ


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猫達の動き

現世に残された主人公の為なら命をかける、猫達の話



主様がこの世から消えたのが一瞬で分かった、取り乱しそうになるが思いとどまる。

こんな一瞬で命を奪われる筈が無い、主様は最低限の護身術が使える筈だ。

急ぎ屋敷に向かい若様の現状を確認しに行く。

 

屋敷に着くと唐突に横から何かに押し倒された、確認すると白髪の頭が見えた。

 

「白ですか、退いてください。

今から主様の現状を、確認しに行かなくてはいけないのです!」

 

「お前!よくもそんな事が言えるな!」

 

白が怒りから白い髪の毛の先から色が赤く染まって行く。

どうやら白も若様が消えたことに気が付いていたみたいだ、まぁ当たり前かあんなに大きなエネルギーの塊が消えたのだから。

 

「妾は気に食わないが、若様の監視役にお前が選ばれた時。

お前ならばと諦めたのに今回はなんという体たらく!

こんなことならば、無理矢理にでも妾が若様のお側に居れば良かったのだ!」

 

白は怒りで尻尾と猫耳が飛び出している、そのどちらも血の様な赤に染まっていた。

 

「白退いて下さい」

 

「お前!よく冷静で居られるな!」

 

「…冷静?これが冷静で居られますか!

私は白と違い堪えているだけです、急いで当主様に確認をとらないといけませんから、白いい加減にしてください」

 

よく見ると黒も尻尾と猫耳を逆立てて、冷静を装っているだけだった。

 

「…」

 

白が無言で黒の上から体を退かす、黒は駆け足で当主の元に向かい、その後を白がついて行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「お前達やっと来たのかい」

 

当主様のによると既に奈月が追いかけた後の様でどうやら一足遅く、出遅れた事を知る。

 

当主様の説明によると、主様はなんとあちらの世界に行かれた様で、どうやら何とか追いかけようとしているらしかった。

 

「それで今のところは」

 

「あそこらの猫又に頼むしかないだろうね」

 

「私の魔力を使えば何とか成りませんか?」

 

「それは無理だね、送った本人にしか正確な場所は分からない。

お前の魔力を使った所で、陽にはたどり着けないだろうね」

 

「そんな…」

 

「そこまで追いかけたいなら、奈月の後を追いかけな。

今ならまだ間に合うだろうよ」

 

「!失礼致しました」

 

その言葉を聞いた途端に白が駆けていく

 

「当主様、私も奈月と白の後を追います、失礼致します」

 

「ああ、行っといでこうなったお前達は陽にしか止められない。

あの子が御守りを持っている限り直ぐに追い付けるだろう」

 

その言葉を聞いた途端に黒も走り出す、目指すは皆同じ、私と同じ黒髪金目の猫又の所。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、どうしようか?」

 

陽の出したうどんで一息ついた後、これからの事を話し合う。

 

「先ずは自己紹介からはいかがですか?」

 

「あっそうだったね、自己紹介がまだだったね。

俺の名前は式神 陽(しきがみ ひなた)護身術なら少しは使えるよ、よろしくね」

 

「私は魔眼族のクラリスと申します。

魔法なら得意ですので、よろしくお願いいたします」

 

「魔眼族?それって一体?」

 

「魔眼族は魔眼族ですよ?普通の街に居る様なごく一般的な」

 

「ごめんね、物知らずでそう言う事に詳しく無いんだ。良ければ説明して貰えるかな?」

 

「…?はい、喜んで」

 

クラリスは魔眼族を知らない事に首を傾げていたが、詳しく丁寧に教えてくれた。

 

「それじゃあ、クラリスの首にも宝石が有るの?」

 

「はいもちろん、本当は家族か親しい相手にしか見せないのですが。

陽さんになら…どうぞ」

 

そう言ってクラリスは髪の毛を横に分け、首の後ろの宝石を見せてくれる。

 

「うわぁ…凄く綺麗だ…こんなに綺麗な宝石初めて見たよ」

 

宝石は日の光を浴びてキラキラと光っていた、虹色に見えるがその中でも水色が強く光っている様に見えた。

陽は思わず手を伸ばし、宝石に触れていた。

 

「…んぅ!」

 

「え?」

 

「あっ!あの宝石は敏感なので、その…あの、でもどうしてもとおっしゃるのならどうぞ…」

 

「えっそんなに大事な場所だったの!ごめんね気安く触れたりして」

 

「あ、いえ陽さんならどうぞ、お好きな様に」

 

「いやいや、そんな大切な所触れないよ」

 

「…そうですか?」

 

何故かクラリスは残念そうに髪の毛を元に戻す。

 

「クラリスは暴漢達に襲われてここまで来たんでしょ?もう大丈夫なの?」

 

「はい!自己紹介もすみましたし、朝まで待ってここを出発しましょう。

私もう大分魔力が回復しましたので、あんな暴漢達にもう負けませんよ!」

 

「俺も霊力で何とか加勢するよ」

 

「えっ!霊力が使えるのですか?それなら百人力ですよ!…でも何故珍しい霊力持ちがこんな所に?」

 

「俺も気付いたらここにいて、よく分からないんだ」

 

咄嗟に異世界から来た事を誤魔化す、クラリスには悪いが、まだ完全に信用しても良いか分からないからだ。

 

「…そうですか、うーん私と同じでワープで失敗でもしたんですかね?」

 

「そっそうかもしれないね」

 

ワープの失敗で誤魔化す事にした、これからもこの誤魔化し方なら使えそうだ

 

「それじゃあ朝までもうひと眠りしようか」

 

俺がそう言うとクラリスは毛布を持ってやって来る。

 

「毛布は一つです、陽さんがお使いください」

 

「いやいや、女の子に寒い思いはさせられないよ。

クラリスが使いなよ」

 

そう言うとクラリスは何かを思い付いたのか、俺のすぐ横に密着して座る

 

「二人で使えば暖かいですから、こうしましょう」

 

言うが早いか二人で一つの毛布にくるまる、顔のすぐ横にクラリスの顔がある。

どうやら俺の肩に頭を乗せているようだった。

 

「ク、クラリス?」

 

「押し問答に成るよりは良いかと思いまして、ダメ、でしたか?」

 

「クラリスが良いならこれで、俺も暖かいし」

 

「ふふ、良かったです。それではお休みなさい陽さん」

 

「お休みなさいクラリス」

 

その時ふと何時もの癖で懐の御守りを触ろうとする、結果やっと無くした事に気が付くが時既に遅し。

猫達は既に動き出していた。

 

「不味い、かな?」

 

何処までも呑気な主人公であった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その頃の白は奈月に追い付いていた。

一人と一匹は走りながら話す。

 

「人間!」

 

「白さん?どうやら追いかけて来たようですね」

 

「若様の事ですもの」

 

「黒さんはどうしたんですか?普段なら若に何か有れば、1番早く駆けつけますよね?」

 

「あのメスは当主様にまだ話を聞いていたから、置いてきたわ」

 

「相変わらず白さんは、若の話以外はどうでも良いんですね」

 

「当たり前よ」

 

「白!追い付いたわよ!」

 

「っち!あのまま当主様と、話をしていれば良いものを…」

 

「白後で覚えてなさいよ、貴女のせいで奈月に出遅れたのだからね!」

 

「さぁ、貴女がノロマなのでしょう?」

 

「二人ともあそこです、もうすぐつきますよ。

気を引き締めて下さいね」

 

「人間に言われなくても、彼処から若様の匂いがぷんぷんするもの!」

 

「確かに間違いなさそうですね」

 

そこは確かに昨日主人公が猫達を撫で回していた、路地裏だった。

その時路地裏の奥から金目の黒猫がやって来る。

 

「おや、また人間がやって来た様だけど。

昨日の人間とは違って、食べても良さそうだねぇ」

 

「やはり若は昨日ここにやって来ていましたか、若をどうしたんですか?」

 

「人間風情が偉そうに、このまま食ってやろうか!」

 

「くぅ、これは渡したくなかったけれどそうも言ってられませんね」

 

奈月は懐から、若の霊力が貯まった御守りを取り出した。

 

「それは!人間それを何処で!」

 

「これで若を飛ばした場所まで、連れて言って下さい」

 

「良いのかい、それは対価が勝るんじゃ無いか?」

 

「若に勝る物なんて何もありません!」

 

奈月が交渉を続けている間二匹の猫達は、苛立っていた。

 

「奈月さん苦戦しているようですね」

 

「妾があんなメス猫蹴散らしてくれるわ」

 

「私にも勝てない、貴女がですか?」

 

「うぐぐ」

 

そうこうしている間に交渉は終わり、若の御守りを黒猫に渡す奈月

 

「これで人間一人と猫又二匹をあちらの世界に送るだけだなんて、儲かったわ」

 

「何でもいいですから早く、若に追い付きたいんです!」

 

「若様の御守りが!」

 

「白悔しいけれど仕方ないのよ、悔しいけれど…」

 

その後路地裏は光に包まれ、残ったのは黒猫一匹だけだった。

 

「あぁ、言って置くけれど帰りは自分達で帰ってきな。

そこまでの責任は終えないよ」

 

既に聞こえない独り言を、ニヤリと嗤いながらポツリと呟いた。




白と黒の話
黒は白のせいで出遅れる。


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冒険準備

主人公とクラリスの冒険準備


眩しい光が瞼を照らし、冷たい風が頬を撫でる。

 

「もう朝か…」

 

初めての野宿のせいか余り疲れが取れない、ふと肩口を見るとクラリスが安心仕切った顔で眠っていた。

少しずり落ちた毛布をかけてやり、思わずその美しい髪を撫でていた。

 

「…うぅん」

 

「おっと」

 

起こさないように撫でていた手を離し、二人で使っていた毛布から抜け出る。

 

「さてと」

 

湖の水面に顔を写す、そこには眼鏡をかけていない自分が写る。

 

「なんだか変な感じだけど、便利なもんだよな」

 

水でばしゃばしゃと顔を洗い、鞄を探ると歯ブラシが出てくる

 

「まさか、歯磨き粉は無いよな」

 

呟きながらごそごそと鞄を探ると、歯磨き粉が出てくる。

 

「なんて便利な、ありがとう鞄」

 

鞄にお礼を言うとコップがポロリと出てくる。

 

「明らかに鞄の意思を感じる!」

 

やはりこの鞄には意識があるのか、生きているのか?と不思議に思いながらも、歯磨きを終えた後、又鞄を探り朝食を探す。

二人分の菓子パンが出てくる。

クラリスの分のコップも出し朝の準備は完了だ。

そろそろクラリスを起こそうかと思っていると、後ろからぶつぶつと何かが聞こえてくる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

暖かい、すぐそばに誰かの温もりを感じる。

頭を撫でる誰かの優しい手、思わずすり寄るとふと温もりも優しい手の感触も消える。

 

「…陽さん?」

 

隣に居る筈の彼の温もりを手探りで探すも、そこに有るのは冷たい地面の感触だけ。

…夢だったのかも知れない、もしかしたら昨日の触れ合いや出会いは夢だったのかも知れない。

 

「そうですよね、私なんかにそんな都合の良い事なんて起こりませんよね。

陽さんと出会った事も夢で、今も夢の中なのかも…」

 

そう思うと怖くて体か動かせない、起きてしまうと昨日の事が全て夢だったと分かってしまう。

陽さんは居なく、一人寂しく追っ手から逃げて居るそんな現実に気がついてしまう。

 

「クラリス?」

 

その時陽さんの声が聞こえた気がした。

私はまだ自分に都合の良い夢を見ているのかも知れない。

 

「クラリス?起きたの?」

 

まだ声が聞こえる、もしかしたら本当に陽さんが居るのかも知れない。

怖いけれど、思いきって目を開いてみる。

そこには朝の光に照らされた陽さんが居た、夢じゃなかった…ここに手を伸ばせば届く距離にちゃんと居てくれた。

 

「陽さん!」

 

嬉しくなって思わず抱きつく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クラリスを起こしに近付くと、クラリスは夢なのかも…とか何とかぶつぶつと呟いていた。

少し怖いが起こしに声をかける。

 

「クラリス?起きたの?」

 

「陽さん!」

 

クラリスが目を開いていきなり抱き付いてくる。

 

「クラリスどうしたの?何か怖い夢でも見たの?」

 

そう聞くとふるふると頭を振る。

 

「違います、夢だったら怖かったんです」

 

「?」

 

よく分からないが怖かったんなら、取り敢えず頭を撫でて慰めておこう。

頭を撫でる手にクラリスはすり寄ってくる。

 

「あっそうだ、おはようございます陽さん」

 

「おはようクラリス」

 

ふふっとクラリスが嬉しそうに笑い、何かを思い付いたようだ。

 

「陽さん次からは、陽さんが起きる時に一緒に起こしてくれませんか?」

 

「良いけどどうして?少しでも長く休めた方が良いんじゃないの?」

 

「その、私どうしても陽さんに置いていかれたく無いんです、少しの間でも離れて居ると不安で…」

 

「俺は置いていかないよ」

 

寝ている間に女の子を一人で置いていくなんて、そんな酷い事は出来ない。

 

「約束してくれますか?」

 

「ああ、約束するよ」

 

「安心しました、陽さんと出会えて良かった」

 

クラリスは尚更きつく抱き付いてくる、どれだけ怖い夢を見たんだろう。

背中を撫でながらクラリスが落ち着くのを待つ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ご迷惑をおかけしました、お陰様で落ち着きました」

 

「そう?それなら良かったよ。クラリスの分の朝食も用意してるから、一緒に食べようよ」

 

抱き締めていた手を背中からゆっくりと離す、クラリスは何か言いたそうな顔をしていたがゆっくりと離れていく。

 

「うぅ、何から何まですみません。何か返せる物が有れば良いんですけれど。

私の身も心も既に陽さんの物ですし」

 

「タダで貰えるものは、ラッキーだと思って貰って置けば良いんだよ」

 

「はい、陽さん。このご恩はいつか、何倍にもしてちゃんと返しますね」

 

「あれ?話が噛み合って無い…」

 

あげる本人がタダで良いと言っているのだから、そうすれば良いのに律儀な性格だ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、森を抜ける方向はこっちで良いのかな?」

 

「はい、こちらをまっすぐ行くと、街まですぐです。

でも…」

 

「でも?」

 

「私を襲った者達が居るかも知れません」

 

クラリスが不安そうな顔でおずおずと告げる。

 

「それなら俺の霊力で、何とかならないかな?」

 

「そうでしたね!陽さんの霊力が有れば百人力です!

ですが、霊力が強いものとは聞いていますが、一体どう言う方法で戦うのですか?

魔力と同じ様に詠唱をして、効果を指定する方法でしょうか?」

 

成る程魔力は詠唱をして効果を発動するのか、何だかますます異世界じみてきたが、霊力はそんな仰々しい呪文なんて無い。

 

「詠唱?霊力で戦うのには御札を使ったりするみたいだよ?俺は無くても大丈夫だから、やりたいことを念じると出来るよ」

 

霊力を使う者は補助として御札を使ったり、数珠や錫杖など人それぞれ自分に合った物を使う。

その中でも霊力の多い者は補助を必要としない。

 

「成る程…陽さんは霊力使いの中でも特別なのですね。流石です!」

 

「そんな事は無いよ、霊力が多すぎると体から漏れ出した霊力に悪い物が寄って来るから、普段は御守りを持ってるんだけど…」

 

「?どうしましたか?」

 

「その大切な御守りを落としちゃって…少し大変な事に成るかもって…」

 

「えぇ!どうしましょう!」

 

「まぁ、無くしてしまった物は仕方無い…かな。

何か御守りの代わりに、霊力を貯められる物が有れば良いんだけど…」

 

けれども生半可な物では俺の霊力に耐えきれずに直ぐに壊れて、使い物にならなくなってしまう。

 

「そうですねぇ、大量の力を貯めておける物…」

 

「出来れば必要に応じて、霊力を取り出せると良いんだけど。そんな都合の良い物は無いよねぇ…」

 

う~んと二人して悩んで居ると、クラリスが「…あっ!」と何かを思い付いた様だった。

 

「…有りましたよ、その一つだけ思い付いたのですが…あの」

 

「どうしたの?何だか言いづらそうだけど、もしかしてとても高価とか、手に入れにくい物なの?」

 

「そうですね、とても手に入れにくいのは間違い無いです、値段はその…付けられる様な物では無くて…」

 

「それじゃあ止めておいた方が、良いんじゃないかな」

 

そんな手に入れにくくて、高い物は到底無理だ。

クラリスはどうして今その話題を出したのだろう?

 

「でも、それでももし私が今それを陽さんに渡せると言ったら、どうしますか?」

 

「え!クラリスが俺に?でもそんな高価な物…」

 

「陽さんには命を救われました、私には陽さんよりも大切な物は有りません。

物は所詮物、陽さんには変えられません」

 

「クラリス…」

 

「それであの、それを取り出すにはどうしてもその、陽さんにやって貰いたい事が有りまして…」

 

「俺に?」

 

「はい、お願いします」

 

そう言うとクラリスは、その長い髪の毛を纏めて肩にかける。

首の後ろの宝石が露出し、まばゆい輝きを見せる。

 

「陽さん嫌かも知れませんが、首の宝石にキスしていただけませんか?」

 

「え?別に嫌じゃ無いけど、その宝石は敏感なんじゃ無いの?」

 

「はい、そうです陽さん以外には触れさせません。

ですが陽さん、貴方にならば触れて欲しいのです」

 

顔を赤らめ耳までも赤くなっているクラリスにそう言われては、触れても良いのだろうかという葛藤は消えていく。

クラリスは宝石を露出したままもじもじと、俺に触れられるのを待っていた。

 

「それじゃあ、キスするよ?」

 

「はい、どうぞ」

 

おずおずとクラリスの宝石にキスをすると、一瞬眩しく光り、光がおさまると両手には一つの綺麗な宝石があった。

 

「綺麗だ…」

 

「あっありがとうございます」

 

クラリスが照れながら返事をする。

 

「クラリスこの宝石は一体何なの?」

 

「その…えっと大切な物なのですが、沢山の魔力を貯める事が出来るので、多分霊力でも大丈夫では無いかと…」

 

クラリスは答えにくそうにあえてずれた回答をする、言いたくないのならば触れ無い方が良いのか。

 

クラリスに貰った宝石はアクアマリンの様に綺麗な水色をして透き通っている、試しに霊力を入れてみるとスルスルと簡単に入り相性が良いようだ、容量も全く問題ないように思う。

 

「クラリスありがとうこれなら、俺の霊力にも平気で耐えてくれそうだよ」

 

「それは良かったです、その宝石は本当に大切な物はなので割れたり無くしたりしない様に、気を付けて下さいね」

 

「ああ一生大切にするよ」

 

クラリスは何故かぼふっと赤くなると

 

「はい!是非末永くお側に置いてくださいね」

 

と嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 



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