ハイスクールG×A (まゆはちブラック)
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ネタバレ注意!ハイスクールG×A大図鑑(主人公&オリジナルキャラクター編)※随時更新

目次

第1節 主人公
○高山 我夢
○藤宮 博也
○兵藤 一誠
○長野 大悟
第2節 オリジナルキャラクター(メイン)
○梶尾 克美
○石室 章雄
○四之宮 龍
第?節 ゲストキャラクター
風来坊(お友達)大好きのストーカー


第1節 主人公

 

高山(たかやま) 我夢(がむ)

◆プロフィール

・年齢:17歳

・身長:170センチ

・体重:60キロ

・種族:人間→転生悪魔(第2話以降)

・職歴:駒王学園高校生

・階級:兵士(ポーン)変異の駒(ミューテーション・ピース)4つ)

・好きなもの:地球

       和菓子(特に饅頭)

       醤油ラーメン

・嫌いなもの:平和を脅かすもの

・趣味:機械いじり

 

 

◆概要

 本作の主人公の1人で主役になることが多い。駒王学園・高等部に通う17歳の少年。

見た目はややパーマがかかった黒髪のややスマートな体型。

幼さをやや感じさせる童顔のイケメンで駒王学園の女子生徒からは密かに人気がある。

 

超古代人の末裔で、地球の大地から授けられた光を自ら作った変身アイテム『エスプレンダー』に入れ、『大地の巨人』ウルトラマンガイアに変身する。

17歳と思えないほど頭脳明晰で、現時点では10種類以上の国家資格を取得している。

 

第2話でリアスから眷属となると共に一緒に戦ってくれと勧誘を受け、グレモリー眷属の兵士(ポーン)として悪魔へ転生する。

グレモリー眷属やXIGとしての活動の際には、その優れた頭脳、素直な性格、的確な分析力で作戦のバックアップや自身が作成した発明品で仲間を手助けしている。

 

性格は他人と争うことを嫌う優しく穏やかな性格であるが、平和を脅かし、仲間や人々を傷つける存在には果敢と立ち向かう正義感を持つ。

また面倒見がよく、小猫の泳ぎ克服に付き合ったり、ギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)の特訓を積極的に行ったりしている。

だが、意外と毒舌な一面があり、スク水姿の小猫を見て、声には出してないが「体型に合ってる」、「中・小学生みたい」と失礼極まりないことを思ったりとかなりのもの。

恋には疎く、自分に寄せられる好意に全く気付いていない。

 

今は明るく人懐っこい性格だが、幼少期にその頭の良さから同級生や上級生に妬まれ、よくいじめられていた過去を持っている。その影響で人見知りをし、周りにあまり心を開かない暗い性格だったが、幼馴染みの一誠のおかげで改善されている。

 

当初は地球とそこに住む人類と悪魔をはじめとする異種族を守る為に戦っていたが、藤宮との対立や様々な出会いや戦いを通して、『本当に戦うべき相手とは何か』と悩み、苦しみながら成長していく。

 

 

◆対人関係

・藤宮 博也

 ライバル。

ウルトラマンの存在意義や地球への思想の違いから対立するが、いつか互いに手を取り合う日を願っている。

 

・兵藤 一誠

 幼馴染み兼親友。

暗かった自分を変えてくれた恩人。

彼の突拍子もない行動に振り回され心配するが、全幅の信頼を寄せている。

 

・長野 大悟

 幼馴染み兼親友。

歳は大悟の方が上だが、昔から変わらず気軽に話せる仲。

ちなみに小さい頃の我夢の愛読書であるガリバー旅行記は大悟が誕生日プレゼントとしてくれたもの。

 

・リアス・グレモリー

 尊敬すべき人。

自分を信頼してくれ、作戦の助言や発明品を嫌な顔ひとつせず取り入れる点に感謝している。

また、その家族愛に似た愛情を注いでくれる心の広さには見習うべきところがあると考えている。

 

・姫島 朱乃

 悪魔に転生した当初から仲良くしているが、彼女から過去を聞いて以降、積極的なアプローチにドキマギしている。

また、彼女とバラキエルと仲を取り持ったことで更に好感度が上がり、スキンシップの具合が上がっている模様。

ちなみに彼女が自分に異性としての好意を抱いていることには気付いていない。

 

・塔城 小猫

 ガイアと同じ格闘戦主体なので、戦闘面で一番相性が良い。

出会った当初は無口で何を考えているかわからなかったが、最近はわりとわかるようになった。

我夢の鉄拳制裁担当で、我夢が相手(主に小猫)に対して失礼なことを発言、考えていることに気付いた際には容赦なく叩きのめす。

小猫は我夢のことを異性として好きだが、当の本人は全く気付いていない。

 

・木場 祐斗

 女性が多いグレモリー眷属で一誠以外の貴重な男子で、少々小難しい自分の話を興味深く聞いてくれる理解人。

 

・アーシア・アルジェント

 初対面から仲良しで、良い友好関係を築いている。

なお、我夢にしては珍しく、彼女が一誠を異性として好きなことに気付いている。

 

・ゼノヴィア

 子作り騒動のせいで3日くらいは気まずかったが、その後はなんやかんやあって良い信頼関係を続いている。

 

・ギャスパー・ヴラディ

 自分の引きこもりを治す特訓に積極的に付き合ってくれたことで非常に懐いている。

その様子から、周りからは我夢の弟の様に思われる程であるのは余談。

 

・紫藤 イリナ

 幼馴染み。幼い頃はわんぱく振りとその容姿で本当に男の子と間違えてた。再会こそは最悪だったが、今は昔の様に仲良くしている。

自分と同じ藤宮への数少ない理解者であるので、藤宮が関わる件は彼女に任せる程の信頼を寄せている。

 

・ロスヴァイセ

 精密メカや複雑な理論を理解してくれる人がやっと来てくれたので嬉しい反面、彼氏がいないのを落ち込んでいるので、早くできる様に願っている。

 

 

 

 

 

 

藤宮(ふじみや) 博也(ひろや)

◆プロフィール

・年齢:17歳

・身長:177センチ

・体重:65キロ

・種族:人間

・職歴:ハイド・ベノン大学卒業(主席)

・階級:なし

・好きなもの:地球(特に海)

       リリー(ハムスター)

       塩ラーメン

       稲森博士

・嫌いなもの:人類

       悪魔をはじめとする異種族

・趣味:筋トレ

    ウルトラマンに関する新聞記事集め

 

 

◆概要

 本作の主人公の1人。かつて世紀の天才児と呼ばれた17歳の少年。

見た目はややロン毛かかった黒髪でスラッとした長身。

主に黒中心の服を着ている。

冷たさを感じさせる鋭い目付きが特徴のイケメン。

 

彼も超古代人の末裔で、プロノーン・カラモスに現れた光を自ら作った変身アイテム『アグレイター』に宿し、『海の巨人』ウルトラマンアグルに変身する。

本編で誰よりも一番最初にウルトラマンになっており、鍛え上げている影響もあって、我夢や一誠以上の実力を持っている。

 

また我夢以上に頭脳明晰で、僅か1歳の時に九九を、4歳の時には既に微分・積分をマスターしている。

なお、国家資格も多数所有している模様。

 

第1話から物陰から見物し、我夢がガイアであることを見抜いており、第4話ではレイナーレ率いる堕天使4人組と戦うオカルト研究部の前にアグルの姿で現れ、続く第5話では我夢を勧誘するために素顔をさらした。

 

性格は常にクールで理屈屋な性格で、相手を突き放したり冷酷な行動をするが、その信念は強く、自身が作り出した光量子コンピューター『クリシス』の地球の回避方法である『人類削除』に従って行動している。

しかし、人類に対して非情さを捨てきれないのか、人類である稲森、イリナ、更には悪魔の女の子を助けている。

 

初期は幾度か我夢を勧誘するが、地球に対する思想の違いから、我夢と彼が所属するXIGと対立する。

 

両親は既に亡くなっており、母親が持っていた未来予知の『神器(セイクリッド・ギア)』を狙った悪魔によって彼はたった5歳で孤児になっている。

その後、母親の友人である稲森に養子として引き取られ、彼女のもとでスクスクと育つ。

10歳の頃にハイド・ベノン大学に飛び級(しかも主席)で入学、その後成績トップで卒業後、ハイド・ベノン大学内の研究員となり、光量子コンピューター『クリシス』を開発、その後プロノーン・カラモスに移って研究を行った。

 

人類を憎んでいるのは、両親の葬式の際に集まった親戚が悲しむよりも遺産の相続のことしか考えてない欲望の深さ、地球の環境を土地を広げるために我が物顔で破壊する自分勝手さに失望した為である。

異種族を憎んでいるのは上述した過去に会った出来事が原因である。

 

地球を守る為に人類を滅ぼす自身の考えと地球と人類両方守る我夢の考えの違い、更には自身の考えと行動の矛盾、稲森の死によって心身共に疲弊し、我夢と死闘を繰り広げる。その後、我夢からクリシスによって導きだされた結論は破滅招来体によるものだと知り絶望、戦意喪失した藤宮は我夢にアグルの光を託して何処かと消え去った。

 

その後、生死不明となったが、第49話で生存が判明。同話の時点では破滅招来体と戦う意思は取り戻していたが、未だ罪悪感に駆られており、自爆特攻を仕掛ける等自分を省みない危険な行動ばかりを取る様になった。

 

 

 

 

 

 

兵藤(ひょうどう) 一誠(いっせい)

◆プロフィール

・年齢:17歳

・身長:170センチ

・体重:62キロ

・種族:人間→転生悪魔(第2話以降)

・職歴:駒王学園高校生

・階級:兵士(ポーン)変異の駒(ミューテーション・ピース)4つ)

・好きなもの:野球

       豚骨ラーメン

・嫌いなもの:自分を馬鹿と言ってくる奴

       誰かの夢を汚す奴

・趣味:コミックス集め

    アニメ観賞

 

 

◆概要

 本作の主人公の1人。我夢と同じ駒王学園に通う17歳の少年。

幼き頃、行方不明である父から言われた「絶対に諦めない」が己の信条としている。

口癖は「本当の戦いはここからだぜ!」、「見たか!俺の超ファインプレー!」。

 

見た目は原作と同じだが、筋肉質な身体をしている。

原作で備わっていた『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は持っていない。

最初はセクハラ行動で女子生徒達から白い目を向けられていたが、それが改善されて以降、整った顔立ちに今時ない熱血漢であることから、我夢同様に女子生徒から密かな人気がある。

 

我夢や藤宮と同じ超古代人の末裔で、ライザーとの決闘の際に現れた光を我夢が作った変身アイテム『リーフラッシャー』に入れ、『空の巨人』ウルトラマンダイナに変身する。

昔に野球をやっていたからか運動神経が抜群で、単純な体力勝負だと我夢より上、藤宮以下である。

 

第2話で盗み聞きしていたところ、リアスの勧誘により我夢と共になりゆきでグレモリー眷属の兵士(ポーン)として悪魔へ転生した。

 

初期の性格は熱血漢だが原作に同じド変態で、女子生徒からは松田・元浜と並んで『変態トリオ』と呼ばれている。

だが、これは後述する出来事が原因でやめた野球への夢が忘れられない自分をごまかす為である。

ライザーとの戦いの中でリアス、仲間の夢を守る決意をしてからは変質行為及び発言をやめ、元からある情の厚い熱血漢がより表面化されている。

 

だが、その反面お調子に乗りやすく、その隙に相手に反撃を与えてしまったり、自分や仲間をバカにされたらすぐキレてしまう欠点がある。

 

中学時代まで昔から好きである野球を熱心にやっていたが、中学生時代に野球友達を再起不能の大怪我させてしまったこと(直接の原因は一誠ではない)がトラウマで、それ以来誰かの夢を奪うかもしれない恐怖心に囚われて野球をやめている。

しかし、言葉には出さないが今でも野球は好きである。

 

当初は身体能力が高いだけで何の能力も持たない自分に力不足を感じてたが、ウルトラマンとして覚醒してからは我夢=ガイアを支える良きパートナーとして共に戦う。

 

 

◆対人関係

・藤宮 博也

 犬猿の仲。

彼と会うたびに不穏な空気が漂う。

 

・高山 我夢

 幼馴染み兼親友。

何も知らない自分に色々と教えてくれた。

無鉄砲な行動にいつも我夢に注意されるが、幅を越えた信頼を寄せている。

 

・長野 大悟

 幼馴染み兼親友。

歳が離れていても気軽に話せる仲。

我夢と同様、彼には全幅の信頼を寄せている。

 

・リアス・グレモリー

 尊敬と愛すべき人。

最初は美人なお嬢様ぐらいしか思わなかったが、ライザーとの一件で一気に距離が縮まり、異性として好意を抱かれている。

ライザーとの一件以降は居候として自分の家に一緒に暮らしている。

また、恋には鈍感な我夢とは違い、彼女の好意は気付いており、まんざらでもない様子だ。

 

・姫島 朱乃

 我夢ほどではないが、仲良くやっている。

我夢との恋を応援している。

 

・塔城 小猫

 同じ格闘戦を主体としているので、抜群のコンビネーションをとることが出来る。

怒らせた彼女はとても怖いことは我夢を通じてわかっているので、怒らせないよう言葉には気を付けている。

 

・木場 祐斗

 自分と同じ同年代の男とあり、中々の友好関係を築いている。

しかし、時たまに向けられる熱い視線に身の危険を感じている。

 

・アーシア・アルジェント

 我夢の次に一緒にいることが多く、とても仲が良い。

彼女に異性として好かれていることには薄々気付いているが、一誠自身は妹の様に思っている(と言い聞かせていた)。

だが、あることをきっかけに彼女に告白し、正式に付き合う仲になった。

 

・ゼノヴィア

 最初は嫌な奴と思っていたが、後々悪い奴ではないとわかり、早い段階で信頼した。

同じ脳筋……もとい行動気質であることから気が合い、普段の学園生活や戦闘ではわりと行動している事が多い模様。

 

・ギャスパー・ヴラディ

 我夢ほどではないが、一誠にも懐いている。

しかし、今でも女装をやめさせようと服をひっぺがそうとしたりして皆に止められるのは日常茶飯事。

 

・紫藤 イリナ

 幼馴染み。幼い頃、我夢と同様、本気で男の子と間違えてた。

悪い再会だったが、今は昔の様に仲良しで、気軽にジョークを言い合える程。

 

・ロスヴァイセ

 優秀な人だとは思ってはいるが、残念な部分を多々見ているので、半信半疑気味。

 

 

 

 

 

 

長野(ながの) 大悟(だいご)

◆プロフィール

・年齢:20歳

・身長:180センチ

・体重:70キロ

・種族:人間

・職歴:冒険家→駒王学園教師(歴史学)

・好きなもの:世界中の歴史

       味噌ラーメン

       花見

・嫌いなもの:鯖

・趣味:釣り

    読書

    冒険

 

 

◆概要

 考古学が好きな冒険家の青年。我夢、一誠、イリナとは3つ歳が離れているが、幼馴染みである。

そして、彼もまた我夢、藤宮、一誠と同じ超古代人の末裔である。

 

見た目は太陽のように明るい茶髪で水晶のように透き通った瞳を持つイケメン。イケメン度は作中一で、そこら辺を歩くだけでアイドルのように女性が集まる。

 

第三章や第七章で存在が仄めかされ、第九章にて本格登場。小学校卒業後、親の転勤で我夢と一誠とは違う中学、高校に進学した。高校卒業後は海外の教員専門学校(この世界では教員免許取得を最低2年で取得できる学校もある)に入学し、免許取得して卒業。

卒業後はしばらく世界各地を旅していたが、我夢達が訪れる前に日本の京都へ訪れた。

また、旅するうちに異種族の存在は認知しており、我夢と一誠が悪魔だという事実にも驚かず、昔と変わらずに接した。

 

その後は何者かの声に招かれ、二条城にあるティガのピラミッドに入り、巨人像と対面する。だが、曹操によって操られたゴルザ、メルバが3体の巨人像破壊しようと出現、九重を庇って爆発に巻き込まれるが、石像のうち1体と同化し、ウルトラマンティガに変身した。繰り出される技やタイプチェンジを活かした戦いでゴルザ、メルバとたて続けに倒し、英雄派を退けた。この時に自身が光の遺伝子の継承者ということを知った。

 

XIG加入後は駒王学園の歴史学の教師に配属。

イケメンなので女子生徒に凄いモテる。

 

性格は至って温厚であり、争いごとは勿論のこと、自身が戦うことすら嫌う。

わりとお茶目な一面があり、祭りごとや新しいものを目にするとはしゃぐ。本人曰く花見にはうるさい。

だが、平和を乱す邪悪には敢然と立ち向かい、自分が正しいと思ったことには意見を変えない頑固な一面もある。

 

 

◆対人関係

・高山 我夢

 幼馴染み兼親友。

彼が人間であっても無くても信頼と友情は変わらない。

ただ、恋に鈍感なところは治してほしいと思っている模様。

 

・兵藤 一誠

 幼馴染み兼親友。

彼が人間であっても無くても信頼と友情は変わらない。

ただ、もう少し頭を柔軟に使って欲しいとは思っている。

 

・リアス・グレモリー

 一応歳は大悟が上だが、立場が上なので敬語で話している。

大悟の人間性を早くもわかっているのか、時たまに相談に来る模様。

 

・姫島 朱乃

 男から距離を取りがちな彼女も大悟の人間性に信頼しており、わりと仲良くできている。

なお、リアスと違ってこちらは敬語を使っていない。

ちなみに彼女が我夢のことを好きなのを知っている。

 

・塔城 小猫

 早い段階で打ち解け、一緒にゲームをする程の仲。

華奢な体格に似合わない怪力を見て、絶対に逆らわないでおこうと肝に命じている。

ちなみに彼女が我夢のことを好きなのを知っている。

 

・木場 祐斗

 数少ない男メンバーなので仲良くやっている。

2人揃ってイケメンなので、駒王学園ではこの2人のBL本が出回っているとか。

 

・アーシア・アルジェント

 彼女の心優しさにいつも感動している。

自分も妹がいたらこんな娘がいいなと思っている。

 

・ゼノヴィア

 男顔負けのイケメンぶりにかっこいいなと憧れている。

最初は大悟の謎の力に疑惑の目を向けていた彼女だが、事情を知った今ではその疑惑も無くなっている。

 

・ギャスパー・ヴラディ

 最初は可愛い女の子だなと思っていたが一誠に男であると聞かされてショックを受ける。

特に隔たりもなく接している。

 

・紫藤 イリナ

 幼馴染み。幼い頃、我夢、一誠と同様、本気で男の子と間違えてた。

彼女の変貌ぶりに驚いたものの、昔と変わらず接している。

 

・ロスヴァイセ

 同僚。同じ学園の教師として働いていることもあり、我夢や一誠を除けば一番行動することが多い。

歳がそんなに変わらないのでタメ口でいいと言っているが、彼女は依然として変えない。

ちなみに彼女に初めて出会った時ジロジロ見てたのは、ユザレに似ているからである。

 

 

 

 

第2節 オリジナルキャラクター(メイン)

 

梶尾(かじお) 克美(かつみ)

◆プロフィール

・年齢:18歳

・身長:175センチ

・体重:58キロ

・種族:人間→転生悪魔

・職歴:駒王学園高校生

・階級:兵士(ポーン)(2つ)

・好きなもの:カレーライス(中辛)

・嫌いなもの:はしたない女

・趣味:筋トレ

 

 

◆概要

 通称「(梶尾)リーダー」。駒王学園3年生の少年で、見た目は少しロン毛気味の黒髪の長身。眼光が鋭い。

 

駒王学園の生徒会に所属しており、担当は書記。

シトリー眷属の1人で、階級は兵士。使用した駒の数は2つ。神器は持っていないが、両親が自衛隊な為かズバ抜けた身体能力を持ち、それを活かした接近戦と銃を使った戦い方をする。

 

初期の射撃の腕は下手で、絶対当たるであろう距離すらも外してしまう。それを見た我夢からも飽きられる程、ひどい。

だが、グレモリー眷属とのレーティングゲームで我夢達と対戦した時は余程悔しかったのか、射撃の腕は上達している。

 

性格は至って真面目かつ冷静で人柄が良く、忘れがちだが、学園内ではリアスや朱乃と並んで人気である(我夢もファンの1人)。

その冷静な判断力や統率力でソーナが不在の際は彼が現場指揮を取ることもある。

冷静な彼であるが、我夢に射撃の下手なのがバレると意地になって当てようとしたり、ボケをかます仲間にツッコミをいれたりとコミカルな面が多々ある。

 

黒歌に対して苦手意識を持っている。

 

 

 

 

 

石室(いしむろ) 章雄(あきお)

◆プロフィール

・年齢:58歳

・身長:176センチ

・体重:67キロ

・種族:人間

・職歴:G.U.A.R.D.日本支部機密防衛組織司令官

・階級:なし

・好きなもの:日本文化

・嫌いなもの:なし

・趣味:茶道

    書道

 

 

◆概要

 通称「コマンダー」。三大勢力発足の対破滅招来体・対テロリスト及び、G.U.A.R.D.機密防衛組織の司令官(コマンダー)。見た目は黒色の短髪に日焼けした肌、そして幾度かの戦いを切り抜けてきた様な熟練の顔つきをしているダンディーな中年。

 

元々はG.U.A.R.D.日本支部の陸上防衛隊長だったが、長い付き合いのあるサーゼクスの熱意に感銘を受け、XIGの司令官へ就任した。

 

性格は至って真面目かつ冷静で視野が広く、現在起きている状況から最善の方法を判断し、隊員達に迅速な司令を送る。

冷静で任務を淡々と行うが、決して気難しい性格ではなく、ソーナを侮辱した上級悪魔を忖度せず叱ったり、レーティングゲームで失血した我夢のお見舞いにきたりと根は優しい人物で心から隊員達を信頼している。

 

ちなみに着ている司令官服は自作で、約200万円かかったらしい(もちろん自腹)。

 

 

 

 

 

 

四之宮(しのみや) (りゅう)

・年齢:18歳

・身長:177センチ

・体重:66キロ

・種族:人間→転生悪魔

・職歴:駒王学園高校生

・階級:兵士(駒1つ)

・神器:不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)

・好きなもの:ソーナの手料理

・嫌いなもの:アスパラ

・趣味:自分の飲み物を友達にあげること

 

 

◆概要

 シトリー眷属の兵士で、駒王学園・高等部に通う18歳の少年。

見た目は周りの人曰く、平凡な顔つき。だが、それに似合わない長身の体型である。

ちなみに髪型は初期と第33話以降では異なり、初期は前髪がやや長いショートパーマ、第34話以降は左の前髪を垂らして、それ以外はオールバックにしている。

 

生徒会での役割は庶務だが、役員の仕事は杜撰そのもので、よく仕事をほっぽらかす。そのせいで、生徒会の面々の頭を悩ませている。

元々人間であったが、ソーナ達が悪魔と知り、自分も悪魔になってみたいという好奇心で転生悪魔となった。

 

性格は楽観的で常に飄々としており、几帳面な梶尾や真面目なソーナのペースをいつも崩している。

しかし、その反面に熱い仁義を持っており、一度友達と認めた相手にはとことん忠誠を尽くす。

 

梶尾とは中学時代からの友人で、生徒会に入ったのも彼からの薦め。また、熱血な匙ともうまがあうらしく、一緒に食事にいく仲である。

 

神器の『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』は、所有者の周りに落ちてあるゴミや瓦礫、排水などから色んな武器や障害物を作り出すことが出来る能力。

その反面、創造範囲は所有者の視界内で、所有者がゴミと認識していないものは素材にすることが出来ず、相手が視界内に映ってないと攻撃することも不可能。

その分、いくらでも作り出すことが可能で、一度創造したものは所有者が気絶または死、所有者自身が解除しない限り永続的に残り続ける。

使い方によっては、仲間や相手にゴミを持たせることで融合する際に強制的に引っ張る力を利用して引き寄せたり、傷口にゴミを融合させることで一時的な応急処置が可能。

 

戦い方は神器による遠距離からのサポートに、神器で作り出した武器での近距離戦が主である。

 

第33話でのカンデアとディプラスの戦いで重傷を負い、生死をさ迷うが、そこに居合わせた謎の人物と一心同体となることで死を免れる。

しかし、彼自身の意識は眠っており、この一件以降は同化した謎の人物が四之宮として生活している模様…。

 

ちなみに読者SOUR氏考案のキャラクターが元となっている。

 

 

 

 

 

 

第?節 ゲストキャラクター

○ジャグラスジャグラー

 

 『ウルトラマンオーブ』や『ウルトラマンZ』等に出てきたジャグラー御本人。

相変わらず変態染みた笑い声や仕草をしているが、今回は何かしらの目的でこの世界の地球に現れた。

 

それから数日間散歩していたところ、白岩海岸にて、カンデアとディプラスとの戦いで重傷を負い、生死をさ迷っていた四之宮と偶然遭遇した。

彼の神経の図太さを気に入ったジャグラーは彼と一心同体となることで命を救っている(これもジャグラーの計画の1つ)。

 

また、一心同体になったことで龍の記憶と性格、好みすらも全て共有しており、日常生活に困ることはない。

しかし、あまりにも四之宮がぶっ飛んだ学園生活を行っていたせいか、かなり苦労をしている模様。

 

ジャグラーは何かしら企んではいるが、現在のところ不明である。

 

 



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ネタバレ注意!ハイスクールG×A大図鑑(ウルトラマン編)※随時更新

目次

第1節 ウルトラマンとは?
第2節 登場ウルトラマン紹介
 ○ウルトラマンガイア
  ►V1
  ►V2
  ►スプリームヴァージョン
 ○ウルトラマンアグル
  ►V1
 ○ウルトラマンダイナ
  ►フラッシュタイプ
  ►ミラクルタイプ
  ►ストロングタイプ
 ○ウルトラマンティガ
  ►マルチタイプ
  ►パワータイプ
  ►スカイタイプ


第1節 「ウルトラマン」とは?

 この作品におけるウルトラマンとは、地球が遣わした化身のことである。

 その力のルーツは、大昔に宇宙からやって来たウルトラマン達が三大勢力の戦場に現れた際、壊滅状態の地球に力を分け与え、それが地球のエネルギーと混ざりあったものである。

 その後、古のウルトラマン達は地球人に自身の遺伝子を託し、それ以上文明に干渉せず、肉体を地球に残し、光となって宇宙へ去っていった。

本作品でウルトラマンに変身できる我夢、藤宮、一誠、大悟はその遺伝子を受け継いだ「光を継ぐもの」である。

 

 

 

 

 

 

第2節 登場ウルトラマン紹介

 

○ウルトラマンガイア

 プロローグ「高山我夢」から登場。駒王学園2年の高山 我夢が地球から授かった光で変身する『大地の巨人』。銀色に赤いラインが入ったボディーが特徴で、格闘戦を主なバトルスタイルとしている。また第40話で起きたあるキッカケでV2へパワーアップ、更にスプリームヴァージョンへのヴァージョンアップする力を手にしている。

ガイアの強さは我夢の強さと比例しており、我夢本人が鍛えれば鍛える程強くなる。

ちなみに変身中では、昇格(プロポーション)は不可能。

 

 

◆変身ポーズ・プロセス

 変身ポーズは、エスプレンダーを右手にはめ、左肩に当てて「ガイアァァァーー!」と叫びながら(無言、もしくは短く「ガイア」と叫ぶ場合もあり)エスプレンダーを前へつきだす、もしくは真上へ掲げる。また、第2話は赤い光を光電子管へ収納していた為、斜め上に光電子管を掲げて変身する(初代ウルトラマンの変身ポーズと同じ)。

上記の変身ポーズを取ると、エスプレンダーの発光部分(光電子管の場合は管部分)から赤い光が開放され、その赤い光に我夢が包まれて変身が完了する。

ぐんぐんカットは、握り拳を作った右腕を前へつきだす形である。

 

 

◆スペックデータ

・変身者:高山 我夢

・変身アイテム:光電子管(1、2話まで)

        エスプレンダー

       (4話~、我夢自ら作成)

・出身地:地球・大地

 

V1(ブイワン)

 プロローグから第40話冒頭まで活躍したガイアの通常形態。突出した能力は少ないが、全体的にスペックがバランスが良い。初期は我夢自身が未熟なことがあってピンチになることが多かったが、夏休みの修行の成果もあって苦戦も少なくなっている。

 

 

・身長:巨大化時 50メートル

    等身大時 2.1メートル

         (ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 4万2000トン

    等身大時 90キロ

         (ミクロ時は不明)

・活動時間:なし

 (大ダメージを受けるとライフゲージが点滅)

・飛行速度:マッハ20

(高速移動時はマッハ40)

・走行速度:マッハ5

     (高速移動時はマッハ10)

・水中速度:マッハ1

・潜地速度:マッハ1.2

・ジャンプ力:1200メートル

・握力:5万トン

    (人間換算で50キロ)

 

 

◆主な技

・フォトンエッジ

 初使用はプロローグ。

ガイア最強の必殺技で、エネルギーをため、頭に鞭の様にしならせた光の刃を形成して放つ必殺技。

威力は後述するアグルのフォトンクラッシャーと同等。

 

・クァンタムストリーム

 初使用は第4話。

フォトンエッジに次ぐガイアの必殺技。

左腕に右腕をT字に重ね、そのまま上へ持っていき、右腕の関節の上に左手を重ねてL字型に構えるというプロセスで放つ。

威力は後述するアグルのリキデイターと同等。

 

・ガイアスラッシュ

 初使用は第4話。

両手どちらからでも放つ事ができる三日月型の光弾。

威力は低めだが連射ができ、主に牽制として使用する。

 

・ガイア突撃戦法

 初使用は第6話。

体をスピンさせ、ドリルの様に頭から突撃して貫く技。

我夢曰く、「回れば何とかなる作戦」。

地中を掘り進める事も可能で、ライザーとのレーテングゲームで大いに活躍した。

初使用のガンQ戦では回転せず使用し、第8話のユーベルーナ戦から回転する様になった。

 

・ガイアフラッシュ

 初使用は第4話。

体にエネルギーをため、それを放出させ、相手を吹き飛ばす技。

威力は低めで、隙が大きいが、集団の敵相手には大いに効果がある。

本作オリジナル技。

 

・ガイアブリザード

 初使用は第15話。

両手から発射する冷凍光線。

相手を凍らせたり、消火したりすることができる。

現時点では怪獣を凍らせる程の凍結力はないが、初使用のアパテー戦で、朱乃が魔法から生み出した水流と組み合わせることで、アパテーを一瞬で凍らせた。

第30話でも黒歌相手に使ったが、避けられてしまった。

 

・クァンタムフラッシュ

 初使用は第33話。

両手を合わせて掌が放つ赤色の光球で相手を後方へ押し返す技。ゆっくりと前進して消えるのが特徴で、近くにいるカンデアを押し退けて、地中に脱出する際に使用した。

 

・ガイアパンチ

 初使用は第2話。

片手にエネルギーをためた拳で力強くパンチする技。

威力が高く、場合によっては相手の体を貫くことも可能。

 

・高速移動

 初使用は第4話。

全身を発光させ、瞬時に移動する技。

また、飛行時にも使用でき、昇格(プロポーション)では騎士(ナイト)と組み合わせれば、更に速度が増すが、変身中は昇格が不可能なので、机上の空論である。

 

・ウルトラバリヤー

 初使用は第21話。

ダイナと共に巨大なバリヤーを展開して、ディグローブの爆発から駒王町を守った。

ただ、エネルギーの消耗が激しく、使用後はライフゲージが赤に点滅していた。

 

・ウルトラスピンシールド

 初使用は第30話。

拳を作った両腕を交差させ、その場で回転して発生した風圧で敵からの攻撃を防ぐ技。

所謂、回れば何とかなるである。

本作オリジナル技。

 

・ガイアヒーリング

 初使用は第37話。

体を大きく後方へひねってから、両腕を前へ突き出すことで放つ沈静化光線。興奮して暴れ回るゾンネルⅡの闘争本能を静めた。

 

・キャプチャービーム

 初使用は第33話。

右手から放つ糸状の光線で対象を掴み取る技。掴み取った対象は近くにある建物や潜水艦の内部に転送することが可能。

 

・ガイアテレポーテーション

 初使用は第23話。

いわゆる瞬間移動で、一度行ったことがある場所ならどこでも行ける。

しかし、エネルギーを大きく消耗するデメリットがあり、使用場面は限られている。

 

・ホーリングフープ

 初使用は第23話。

壁や結界に穴を空け、相手を吸い込んで外に追放する技。

初使用の第23話では猛攻を続けるアグルをゼノヴィア達から離す為に使用した。

こちらもエネルギーの消耗が激しく、使用場面が限られている。

 

 

V2(ブイツー)

 初登場は第40話。戦意喪失した藤宮から託されたアグルの力を得てガイアがパワーアップした姿で、第40話以降はこれが基本形態となる。

外見はV1とあまり変わらないが、胸元のガイアブレスターが黒くなっており、前より引き締まった印象がある。

V1時代の必殺技等は全て引き継がれつつ強化され、アグルの光を得たことでアグルV1の必殺技も使えるようになった。

 

 

・身長:巨大化時及び等身大時はV1と同じ(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時及び等身大時はV1と同じ(ミクロ時は不明)

・活動時間:なし

(大ダメージを受けるとライフゲージが点滅する)

・飛行速度:マッハ20

・走行速度:マッハ5.5

・水中速度:マッハ1.2

・潜地速度:マッハ1.5

・ジャンプ力:1200メートル

・握力:7万トン

    (人間換算で70キロ)

 

 

◆主な技

・フォトンエッジ

 初使用は第45話。V1の時から引き続き使える技でガイアV2の中で最強の必殺技。威力はV1時よりも2倍になっている。

 

・クァンタムストリーム

 初使用は第40話。V1の時から引き続き使える技で威力も2倍になっている。初使用のゾーリム戦では飛んで接近しながら放ったが、ゾーリムの顔に傷1つ付けることは出来なかった。

 

・ガイアスラッシュ

 初使用は第44話。V1の時から引き続き使える技で威力も2倍になっている。

第44話ではミーモスが化けたニセ・ウルトラマンガイアを牽制し、捕らわれていたバラキエルを救出した。

 

・ウルトラバリヤー

 初使用は第45話。右腕を上、左腕を下に垂直に構えることで発生したプリズム状の光から、両腕を左右に開いて作り出す円形状のバリヤー。

防ぐだけでなく、バリヤーをその場で固定させたり、前進させて押し戻すことも可能。

 

・キャプチャービーム

 初使用は第44話。V1の時から引き続き使える技だが、糸状の光線だった以前とは違い、範囲が広がった光のオーラを放つ技となっている。

第44話では、ニセ・ウルトラマンガイアが怯んだ際に宙に放り出されたバラキエルを地上へ下ろす際に使用した。

 

・高速移動

 初使用は第49話。V1の時から引き続き使える技で、全身を発光させ、瞬時に移動する。

 

・全身発光

 初使用は第44話。体内のエネルギーを瞬間的に解放して、身体能力を上げる。その際、身体は赤く輝くのが特徴。

第44話ではミーモスが放った金属片の磔から脱出する時に使用した。

 

・ガイアテレポーテーション

 初使用は第47話。V1の時から引き続き使える技の1つ。一度行ったことがある場所ならどこへでも瞬間移動できる。

しかし、エネルギーを大きく消耗するデメリットがあり、使用場面は限られている。

 

・フォトンクラッシャー

 初使用は第44話。アグルから受け継いだ技の1つ。

アグル同様、頭部から青い光刃を形成して放つがら溜めポーズは異なり、右手を上、左手を下にして垂直に伸ばすアグルに対して、ガイアの場合は右手を上、左手を腰に携える。

 

・リキデイター

 初使用は第44話。アグルから受け継いだ技の1つ。

アグル同様、開いた両手の間に作り出した青い光球を放つ。これもアグルとは溜めポーズが異なり、アグルは両手を下にして広げるが、ガイアの場合は両手を垂直に広げる。

 

・アグルブレード

 初使用は第54話。アグルから受け継いだ技の1つ。

アグル同様、右手から青い光の剣を形成するが、アグルと違い、右手部分は赤く輝いている。

切れ味は抜群だがその反面、長時間使用するとエネルギーを大幅に消耗してしまう。

応用技は以下になる。

 

 ・アグルブレード・ショット

  アグルブレードから光の斬擊を飛ばす技。

 第55話では、ダイナのダイナスラッシュとの

 コンボで曹操を大きく怯ませた。

 

・アグルスラッシュ

 初使用は第45話。アグルから受け継いだ技の1つ。

指先からくさび型の青色光弾を放つ。威力は低いが主に牽制に使え、更に連射も可能である。

威力はアグルV1のアグルスラッシュよりも上である。

 

 

►スプリームヴァージョン

 初登場は第40話。ガイアV2が大地と海――2つの力を最大限開放することでヴァージョンアップしたガイア最強の形態。『歩く勝利フラグ』。

体格はダイナのストロングタイプを上回る程の筋肉質となり、両腕と両足にアグルを象徴とする青が入り、両肩にはアグルの肩にあるプロテクターに似たものが現れる。必殺技は新たに使えるものも含め、V2時の技も強化され、引き続き使える。

 ヴァージョンアップ時は両拳を腰に携えた後、両腕を頭上高く掲げ、胸の前で瞬時に合掌して一旦左右に広げてから、両腕を内側に180度回転させた後、交差させた両拳を胸から下に降ろす。(このポージングを取らなくとも変身可能)

 また、この形態になると途端に投げ技を多様することが特徴で、1回の戦闘で相手を休む間も与えずに何度も投げつけることから、『投げの鬼』の異名を誇る。

 

 

・身長:巨大化時及び等身大時はV1、V2と同じ(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時及び等身大時はV1、V2と同じ(ミクロ時は不明)

・活動時間:1分

      (便宜上)

・飛行速度:マッハ25

・走行速度:マッハ7

・水中速度:マッハ1.5

・潜地速度:マッハ2

・ジャンプ力:1500メートル

・握力:12万トン

    (人間換算で120キロ)

 

◆主な技

・フォトンストリーム

 初使用は第40話。平手にした右腕を垂直、平手にして平行にした左腕を胸に当ててからクロールの様に大きく体を反らしながら円を描き、胸の前で合掌。そのまま右手を下にずらして発射するガイア最強最高の光線。相手は死ぬ。

ただし、エネルギーの消耗が激しいことから、1回の戦闘につき1発しか放てない。

これをくらった敵は何者であろうと消滅させる。高い威力を誇っていることから、止めを刺す際やこの技を使う為だけにスプリームヴァージョンになることもある。

 

・フォトンエッジ

 初使用は第56話。V2の時から引き続き使える必殺技で、V2とは比べようにないくらい威力が増している。

 

・スプリームキック

 初使用は第49話。空高く跳躍し、赤熱化した右足から繰り出す急降下キック。

威力は光線技に匹敵する程高く、この一撃を受けたXサバーガを木っ端微塵に粉砕した。

 

・スプリームパンチ

 初使用は第49話。赤熱化した拳から繰り出されるストレートパンチ。

第49話では滑空体当たりで攻撃するXサバーガに対して使用し、顔面をぐにゃぐにゃに歪めた。

 

 

 

 

○ウルトラマンアグル

 第4話「聖女の願い」から登場。かつて世紀の天才児と言われた藤宮 博也が地球から授かった光で変身する『海の巨人』。

暗い青色に銀色のラインが入ったボディーが特徴で目付きが悪い。格闘戦や後述するアグルブレードを用いた剣術を主なバトルスタイルとしている。

また、彼の信念からか、ガイアごと攻撃しようとしたり、市街地の被害もお構い無しといったヒールな戦い方をする。

ガイア同様、アグルの強さも藤宮の強さに比例し、藤宮本人が鍛えれば鍛える程、強くなる。

 

 

◆変身ポーズ・プロセス

 アグレイターを手首に装着した右腕を下に降ろす、もしくは垂直に前へ真っ直ぐ伸ばすと、アグレイターの翼状のパーツが左右に展開し、同時に発光部が激しく点滅しながら青く発光する。無言、もしくは「アグルゥゥーーー!!」と叫びながら、握り拳を握ったまま胸の前に持っていくと本体上部が回転し、翼状のパーツの上部から上空に開放された青い光が藤宮を包み込んで変身が完了する。

ぐんぐんカットは握り拳を作った両腕を前へつきだす形である。

 

 

◆スペックデータ

・変身者:藤宮 博也

・変身アイテム:アグレイター(藤宮自ら作成)

・出身地:地球・海

 

V1(ブイワン)

 アグルの通常形態。ガイアよりも多彩な能力を持っており、藤宮自身が鍛えていることもあって当初の実力はガイアを上回っている。

 

 

・身長:巨大化時 52メートル

    等身大時 2.3メートル

         (ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 4万6000トン

    等身大時 93キロ

         (ミクロ時は不明)

・活動時間:なし

(大ダメージを受けるとライフゲージが点滅する)

・飛行速度:マッハ23

・走行速度:マッハ6

・水中速度:マッハ2.2

・潜地速度:マッハ2.5

・ジャンプ力:1300メートル

・握力:6万トン

    (人間換算で60キロ)

 

 

◆主な技

・フォトンクラッシャー

 初使用は第4話。

額にある結晶、『ブライトスポット』に両腕を交差し、頭部に形成される刃状のエネルギーを垂直に伸ばして放つ、アグル最強の必殺技。

威力はガイアV1のフォトンエッジと同等。

 

・リキデイター

 初使用は第5話。

両腕を広げ、胸の中央に形成した青い光球を放つ必殺技。

連射も可能で、その威力はガイアV1のクァンタムストリームと同等。

 

・アグルブレード

 初使用は第5話。

右手に発生させる光の剣。切れ味は絶大であるが、長時間使用するとエネルギーを大量に消耗するデメリットがある。

応用技は以下の2つになる。

 

 ・アグルブレード・ショット

  アグルブレードから光の斬擊を飛ばす技。

 

 ・アグルブレード・シールド

  アグルブレードを高速回転させ、

 盾の様に相手の攻撃を防ぐ防御技。

 

・アグルスラッシュ

 初使用は第5話。

両手どちらからでも放つ事ができる、三日月型の光弾。

威力は低めだが連射ができ、主に牽制として使用する。

威力はガイアV1のガイアスラッシュより上。

 

・スピニングクラッシャー

 初使用は第39話。体を高速回転させ、ドリルの様に頭から突撃して貫く技。所謂、アグル版ガイア突撃戦法。

 

・高速移動

 初使用は第12話で、アグルの姿での初使用は第16話。

体を発光させ、瞬時に移動するガイアの高速移動と似た技だが、あまりにも速すぎて、周りからは瞬間移動したような錯覚が起きる。

人間時でも使え、初使用の第12話ではサイコメザードによって操られ、襲いかかってきた吉岡街の住民を一瞬のうちに1人残らず気絶させている。

 

・覚醒光線

 初使用は第21話で人間時に使用した。アグレイターから青い閃光を浴びせ、怪獣を目覚めさせる。第21話では宇宙から来るディグローブから地球を守る為、美宝山の地底に眠るゾンネルを目覚めさせた。

 

・アウェイクニングインパクト

 初使用は第37話。

天高く右腕をあげ、纏った稲妻状の活性化エネルギーを地中に打ち込む技。アグルはこの能力で世界中の地球怪獣を覚醒させ、劇中ではゾンネルⅡとギールⅡを暴れさせた。

 

・反物質光線

 初使用は第25話。

ライフゲージから放つ光の塊の様な光線で、対象のバリオン数を反転させて、物質または反物質の変換を行う。

だが、自分に対して使えず、他の誰か1人のみにしかできないという欠点がある。

第25話でガイア、ダイナと共闘した際には、ガイアを反物質ウルトラマンに変えてアンチマターと戦えるようにし、撃退後には不安を煽るリアクションをとるが、何やかんやで再び発射し、反物質化したガイアを元の物質に戻した。

 

・ディメンショナルクローサー

 初使用は第25話。

損傷したバリアや結界を瞬時に直す白色光線。

アンチマター戦では、アンチマターが展開したバリアに開いてしまった大穴を塞ぐのに使用した。

 

・アグルシールディング

 初使用は第25話。

ワームホールや異空間の入り口を瞬時に閉ざす光線。

ダイナのミニブラックホールがアンチマターを吸い込んだ後で、この光線で入り口を閉ざした。

 

 

 

 

○ウルトラマンダイナ

 第9話「新たなる光」から登場。駒王学園の2年の兵藤 一誠が地球から授かった光で変身する『空の巨人』。

銀色に赤と青、金色のラインが入ったカラフルなボディーが特徴。命名はリアスで、その由来は「ダイナミック」、「ダイナマイト」。

主なバトルスタイルは名前の由来の1つであるダイナミックかつアクティブな格闘戦である。

 

ダイナの強さは一誠の強さと比例しており、一誠本人が鍛えれば鍛える程、強くなる。

(また、本作のダイナは宇宙から来た存在でなく、地球生まれのウルトラマンなので活動制限は無く、カラータイマーの名称もライフゲージとなっている。)

ちなみにガイア同様、変身中は昇格は不可能である。

また、戦闘に応じて姿を変える「タイプチェンジ」を持っており、3つのタイプ(フラッシュ、ミラクル、ストロング)にチェンジできる。ただし、一度の戦闘でしかタイプチェンジできないのが欠点。(フラッシュタイプに戻る事は可能)

 

何故、彼だけタイプチェンジできるかは謎に包まれていたが第23話にて、サーゼクスの考察したように空は宇宙に近いので、古代のウルトラマンの影響が強かったのではと考えられている。

 

 

◆変身ポーズ・プロセス

 リーフラッシャーを斜めにしながら「ダイナァァァーー!」と叫びながら(もしくは無言で)前へつきだし、リーフラッシャーの上部の金属部分が180度回転し、中に埋め込まれているクリスタル部分から白い光が開放され、一誠がその光に包まれることで変身が完了する。

ぐんぐんカットはガイア同様、握り拳を作った右腕を前へつきだす形である。

 

 

◆スペックデータ

・変身者:兵藤 一誠

・変身アイテム:リーフラッシャー

    (一誠のデザインをもとに我夢が作成)

・出身地:地球・空

 

►フラッシュタイプ

 ダイナの基本となる形態で、バランスの取れたスペックや多彩な技を持っている。

 

・身長:巨大化時 55メートル

    等身大時 2.6メートル

         (ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 4万5000トン

    等身大時 93キロ

        (ミクロ時は不明)

・活動時間:なし

(大ダメージを受けるとライフゲージが点滅する)

・飛行速度:マッハ8    

・走行速度:マッハ3    

・水中速度:マッハ2

・潜地速度:マッハ2

・ジャンプ力:1000メートル

・握力:6万トン

   (人間換算で60キロ)

 

 

◆主な技

・ソルジェント光線

 初使用は第9話。

両手を十字に構え、体内からスパークしたエネルギーを放出する必殺技。

3タイプの主力技の中でも最も威力が高く、この技を使う為だけにフラッシュタイプに戻ることもある。

 

・強化ソルジェント光線

 初使用は第59話。斜め上にした右腕と斜め下にした左腕をライフゲージの前で構えてから大きく斜めに開いてエネルギーを溜めた後、十字を組んで発射するソルジェント光線の強化版。

その威力はダイナの3タイプ中最高を誇るものの、エネルギー消耗が激しいので一度の戦闘に一度しか使えない。

 

・スペシウム光線

 初使用は第54話。ソルジェント光線同様、両手を十字に構えて放つ光線。

威力はソルジェント光線より低いが、エネルギーの消耗が低いかつフラッシュバスター以上の威力を出せる利点がある。

光線は青白い点線状なのが特徴で、本作では初代マンと同じ音声。

 

・フラッシュサイクラー

 初使用は第9話。

下に交差させた両腕に溜めたエネルギーから放つ光の刃。

隙が大きいが切れ味は抜群で、初使用のライザー戦では、彼の放つ巨大な火球を真っ二つにし、胸元を容易く切断した。

 

・ダイナスラッシュ

 初使用は第15話。

体内のエネルギーを丸ノコギリの様に変化させた刃を相手へ投げつけて、切断する技。連射も可能で、第39話ではジャグラーに対して3連続放っている。

 

・フラッシュバスター

 初使用は第16話。

体内のエネルギーを右手に集中させ、青い光線を照射する。

光線の原理自体はダイナスラッシュと同じだが、こちらの方が照射時間が長い。

 

・フラッシュ光弾

 初使用は第33話。

合わせた両手を胸の前に突き出し、掌から虹色の光弾を放つ。ポージングはか○はめ波に似ている。敵を怯ませる効果がある。

 

・ビームスライサー

 初使用は第9話。

両手どちらからでも放つ事ができる、くさび型の手裏剣の様な光弾。

威力は低めだが、連射も可能で、主に牽制として使用する。

威力はガイアV1のガイアスラッシュと同等。

 

・スパイラルバースト

 初使用は第54話。胸のダイナテクターに蓄えたエネルギーをパンチアクションで打ち出す光弾。

ダイナ本編未使用技。

 

・フラッシュパンチ

 初使用は第24話。白熱化させた拳を相手に叩き込む技。

 

・フラッシュチョップ

 初使用は第31話。エネルギーを込めた切れ味の鋭い手刀を相手とのすれ違い様に打ち込む。所謂ウルトラ霞斬り。

シトリー眷属とのレーティング・ゲームで匙との一騎討ちの際のフィニッシャーとなった。

 

・ハリケーンスウィング

 初使用は第55話。相手の頭を掴み、豪快に投げ飛ばす。曹操に対して使用した。

 

・ウルトラバリヤー

 初使用は第10話。

3タイプ共通技。両手を広げ、生み出した光の壁で相手の攻撃を防ぐ防御技。

第21話でガイアと共にディグローブの爆発から駒王町を守る為に、巨大なバリヤーを展開した。

しかし、エネルギーを多く消耗してしまい、ガイアと同様にライフゲージは赤に点滅していた。

 

・ダイナテレポーテーション

 初使用は第32話。1度訪れた場所や見た場所へ瞬間移動する。

 

・ウルトラバルーン

 初使用は第26話。

赤色の大型光球を生成する。赤色に興奮するバオーンの前で風船のように高く浮かばせて、バオーンがそれを掴もうとしてジャンプした隙に宇宙まで運ぶのに用いられた。

 

 

►ミラクルタイプ

 初登場は第11話。銀色に青いラインが入り、体格もスマートになったダイナの第2の姿。スピードが強化され、様々な超能力を駆使できる様になる。

その反面、パワーとガードが落ちてしまう為、長期戦には向いていない。

 

 

・身長:巨大化時及び等身大時はフラッシュタイプと同じ(ミクロ化も可能)

 

・体重:巨大化時 3万5000トン

    等身大時 83キロ

        (ミクロ時は不明)

 

・活動時間:1分間

     (エネルギーの消耗が激しい為)

・飛行速度:マッハ10

     (光速マッハ88万になることも可能)

・走行速度:マッハ4

     (高速移動時はマッハ20)

・水中速度:マッハ2

・潜地速度:マッハ1

・ジャンプ力:1500メートル

・握力:4万トン

    (人間換算で40キロ)

 

 

◆主な技

・レボリウムウェーブ

 初使用は第11話。

ダイナクリスタルの前で両腕をクロスし、右手に凝縮した衝撃波で敵の背後に発生したブラックホールに送り込み、次元の狭間で圧縮する技。

 

・レボリウムウェーブ・リバースバージョン

 初使用は第16話。

敵の攻撃を吸収し、それを相手へ反撃するいわゆるカウンター技。

 

・ダイナテレポーテーション

 初使用は第11話。いわゆる瞬間移動で、相手の背後に回ったり、遠く離れた場所へ瞬時に移動できる。フラッシュタイプも同様の技が使えるが、超能力に長けているこちらの方がより高度な瞬間移動を行える。

 

・ウルトラサイキック

 初使用は第16話。

手の先から放つ念力光線で相手の体の身動きを封じて空中に浮かすことができる。

初使用のネオコカビエル戦ではこれとレボリウムウェーブ・リバースバージョンのコンボで撃破した。

 

・ネイチャーコントロール

 初使用は第30話。

念力で多種多様の自然現象を操作する。

以下はその能力である。

 

 ・エネルギーヒール

  初使用は第30話。

 ネイチャーコントロールの1種。

 月や大陽等から増幅した光をエネルギーに

 変えて、自身や味方を回復させる。

 また、月の光で使用した場合は、その浄化効果

 を高めて、体内を回っている毒を解毒すること

 も出来る。

 

 ・ダイナファイヤー

  初使用は第42話。

 ネイチャーコントロールの1種。

 指先に捉えた対象に自然発火現象を起こす。

 ダイナ本編未使用技。

 

・ドリル・スピン戦法

 初使用は第59話。体を粒子化させて、ティガのランバルト光弾と一体化し、体を実体化させて突撃する。

 

・ウルトラバリヤー

 初使用は第47話。3タイプ共通の技。

念力で光のバリアを展開して相手の攻撃を防ぐ。

バリアを前進させて押し戻したり、反射させたりすることが可能。

 

・ミニブラックホール

 初使用は第25話。

時空に衝撃を与え、小型のブラックホールを作り出す。

反物質で体が構成されているアンチマターを異次元を送り返す為に使用した。

 

 

►ストロングタイプ

 初登場は24話。真っ赤な体に銀色のラインが入り、体格がマッシブになったダイナの第3の姿。強力なパワーを駆使した格闘戦と持久戦が長けている反面、スピードが落ち、光線技は必殺技のみしか使えない。

しかし、通常攻撃は必殺光線並みで、並の敵なら瞬殺してしまう。

(どうでもいいが、作者がダイナの全タイプの中で一番好きなのがこのストロングタイプである)

 

 

・身長:巨大化時及び等身大時はフラッシュタイプと同じ(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 5万5000トン

    等身大時 103キロ(ミクロ時は不明)

・活動時間:なし

(大ダメージを受けるとライフゲージが点滅)

・飛行速度:マッハ5

・走行速度:マッハ3

・水中速度:マッハ1

・潜地速度:マッハ3

・ジャンプ力:800メートル

・握力 9万トン

   (人間換算で90キロ)

 

 

◆主な技

・ガルネイトボンバー

 初使用は第24話。胸の前で両拳を合わせ、前方に赤いエネルギー球を形成し、それを右のパンチアクションで放つ技。

 

・バルカンスウィング

 初使用は第24話。敵の尻尾や足を掴み、ジャイアントスイングの様に高速で回し、豪快に投げ飛ばす技。

 

・ストロングパンチ

 初使用は第24話。赤熱化させた拳で相手を殴る。

 

・ダイナックル

 初使用は第24話。突進して相手に接近し、拳を繰り出す技。

ヴァーリ戦では、彼が力を半減させる能力を使用させる間も与えず、大ダメージを与えた。

 

・ウルトラかかと落とし

 初使用は第24話。高く上げた片足を相手の頭部に勢いよくかかとを下ろす技。

 

・ストロングボム

 初使用は第56話。高く跳躍し、全体重を乗せたジャンプキック。

第56話ではガイアのスプリームキックと同時に放った。

 

・ストロングダブルボム

 初使用は第57話。空高く跳躍し、全体重を乗せた両足キック。

ダイナ本編未使用技。

 

・ウルトラバリヤー

 初使用は第57話。

3タイプ共通技。両手を広げ、生み出した光の壁で相手の攻撃を防ぐ防御技。

第57話ではガイアと共にバリアを展開することでティガがゼペリオン光線を撃てる体勢を作った。

 

 

 

 

○ウルトラマンティガ

 第56話「光を継ぐもの」から登場。長野 大悟がティガのピラミッドに隠されてあった巨人像の1体と同化することで3000万年の眠りから覚めた『超古代の巨人』。

かつて京都を恐怖に陥れた闇の竜を倒したとされ、裏京都の妖怪からは『伝説の勇者』とも呼ばれる。

銀色に赤と青紫、金色のラインが入ったプロテクターが着いているボディーが特徴。

主に堅実かつ臨機応変に対応する戦い方を得意とする。また、他のウルトラマンに比べてスペックが1番低いが、変身者大悟は超古人の遺伝子が1番濃く、遺伝子に記憶されている先人の技術を無意識に読み取って戦っているので力量差はない。

 

また、戦況に応じて姿を変える能力「タイプチェンジ」を持っており、3つのタイプ(マルチ、パワー、スカイ)にチェンジできる。

ダイナと違って1度の戦闘で何度もタイプチェンジできる。

 

◆変身ポーズ・プロセス

 スパークレンスを前へ突き出した腕を引っ込めて平行にした別の腕とクロスさせ、大きく回して、「ティガァァーー!!」と空へ掲げながら叫ぶAパターン、腕を大きく回して無言で掲げるだけのBパターン、胸の前にスパークレンスを掲げて等身大に変身するCパターンが存在する。

このプロセスを取ることで、スパークレンス先端にあるティガのプロテクターを模したウィングパーツが左右に展開し、内部にあるカラータイマーを模したレンズが出現。レンズから放たれた目映い光に包まれることで変身する。

ちなみにティガはガイアやアグル等の地球産ウルトラマンと違い、宇宙から来た存在なので活動時間は約3分である。(エネルギーの消耗を抑えれば3分以上戦える)

ぐんぐんカットはガイア、ダイナ同様、右拳を突き出す形である。

 

◆スペックデータ

・変身者:長野 大悟

・変身アイテム:スパークレンス

・出身地:不明(宇宙)

 

►マルチタイプ

 ティガの基本となる形態で赤と青紫の体色が特徴。全体的にバランスがとれたスペックを持つほか、多彩な能力や必殺技を持っている。ダイナのフラッシュタイプに相当する。

 

・身長:巨大化時 53メートル

    等身大時 2.4メートル(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 4万4000トン

    等身大時 92キロ(ミクロ時は不明)

・活動時間:3分間(宇宙から来たので)

・飛行速度:マッハ5

・走行速度:マッハ1.5

・水中速度:マッハ1.5

・潜地速度:マッハ1.5

・ジャンプ力:800メートル

・握力:5万トン(人間換算で50キロ)

 

◆主な技

・ゼペリオン光線

 初使用は第57話で、ティガの主力となる必殺光線。

前方に突き出した両腕を交差させて大きく横へ広げてエネルギーを溜めて紫色の軌跡を描き、L字に構えて放つ。

3タイプの主力必殺技の中でも最も威力が優れており、この光線を使う為にマルチタイプにチェンジすることもある。

その反面、エネルギーの消耗が激しい為、一度の戦闘につき一度しか使えない。

 

・マルチ・スペシウム光線

 初使用は第59話。両手を十字に組んで断続的な青い光線を放つ。

威力は低いが、素早く放てるので牽制に使用されている。

 

・ハンドスラッシュ

 初使用は第57話。3タイプ共通の両手どちらからでも放つことができるくさび形の光線。威力が低い反面、素早く放て、連射も可能。

主に牽制に使用される。

 

・ティガスライサー

 初使用は第57話。両腕を交差させ、胸のプロテクターに蓄えたエネルギーを光のカッターにして放つ切断技。

切れ味は抜群であり、刀ごと宿那鬼の首を切断した。

 

・ウルトラブレーンチョップ

 初使用は第61話。前へ跳躍し、すれ違い様に手刀で相手の急所を的確に叩き込む技。第61話ではイーヴィルキックを放つイーヴィルティガとすれ違い様に放ち、自身もダメージを負いつつもイーヴィルティガをダウンさせる決定打となった。

 

・セルチェンジビーム

 初使用は第56話。手から放つ黄色の還元光線で、対象を細胞レベルまで縮小できる。第61話ではゼペリオン光線に織り混ぜて放つことで、イーヴィルティガに変身していたヴァーリを元に戻した。

その反面、エネルギーの消耗が激しいので滅多に使えない。

 

 

►パワータイプ

 パワーと持久力に特化した姿で体色が赤くなり、体格も筋肉質になる。その凄まじい怪力を駆使した肉弾戦や水中戦を得意とする。

その反面、スピードが劣ってしまう。

ダイナのストロングタイプに相当するが、必殺技以外、光線技を使えないダイナと違ってハンドスラッシュ等の必殺技以外の光線技も使える。

 

・身長:巨大化時及び等身大時はマルチタイプと同じ(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 5万5000トン

    等身大時 102キロ(ミクロ時は不明)

・活動時間:3分間

・飛行速度:マッハ3

・走行速度:マッハ1

・水中速度:マッハ1

・潜地速度:マッハ1

・ジャンプ力:500メートル

・握力:7万トン(人間換算で70キロ)

 

◆主な技

・デラシウム光流

 初使用は第56話。左右に広げた両腕を上にあげ、胸の前に超高熱の光エネルギー粒子を集約した光球を相手へ放つ必殺技。

 

・ハンドスラッシュ

 初使用は第60話。3タイプ共通の両手どちらからでも放つことができるくさび形の赤色光線。威力が低い反面、素早く放て、連射も可能。威力はマルチタイプのと変わりはない。

 

・ウルトラバリア

 初使用は第56話。手をかざすことで発生するオレンジ色の半球型バリアで敵の攻撃を防ぐ。

 

・ウルトラバックブリーカー

 初使用は第56話。相手の体に密着し、回した腕を手繰り寄せて相手の背骨を砕く技。

 

 

►スカイタイプ

 スピードや技巧に優れた姿で体色が青紫色になり、スマートな体格になる。残像を残す程のスピードを活かした攻撃や空中戦を得意とする。

その反面、パワーとガードが下がってしまうのが欠点。

ダイナのミラクルタイプに相当するが、ダイナと違って強力な超能力を使えないが、制限時間が減ることはない。

 

・身長:巨大化時及び等身大時はマルチタイプと同じ(ミクロ化も可能)

・体重:巨大化時 3万5000トン

    等身大時 82キロ

・活動時間:3分間

・飛行速度:マッハ7(高速移動時はマッハ14)

・走行速度:マッハ2(高速移動時はマッハ12)

・水中速度:マッハ1

・潜地速度:マッハ1

・ジャンプ力:1000メートル

・握力:3万トン(人間換算で30キロ)

 

◆主な技

・ランバルト光弾

 初使用は第56話。両腕を胸の前で交差させた後、素早く左右に伸ばして上にあげてエネルギーを両手に集約させて左腰に携えてから手裏剣を投げ飛ばすようなアクションで光弾を投げ付ける必殺技。

 第59話ではダイナのドリル・スピン戦法と合わせたコンビネーション技を披露した。

 

・ティガ・スカイキック

 初使用は第56話。残像を残す程の速さで高く飛び上がり、空中にいる敵を蹴りつける。

 




誤字・脱字、足りない項目がございましたら、ぜひコメントよろしくお願いいたします。


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ネタバレ注意!ハイスクールG×A大図鑑(怪獣&敵キャラクター編)※随時更新

目次

第一節 怪獣とは?
►地球怪獣
►宇宙怪獣
第二節 根源的破滅招来体
第三節 登場怪獣&敵キャラクター
◆第一章
 ○宇宙戦闘獣 コッヴ
 ○マグマ怪地底獣 ギール
 ○悪質堕天使 レイナーレ
 ○悪質堕天使 カラワーナ
 ○悪質堕天使 ドーナシーク
 ○狂人神父 フリード
 ○大海魔 ボクラグ
 ○奇獣 ガンQ
◆第二章
 ○不死鳥悪魔 ライザー
 ○フェニックス眷属
 ○自然コントロールマシーン テンカイ
 ○超空間共生怪獣 アネモス
 ○超空間共生怪獣 クラブガン
 ○超空間共生怪獣 アネモス&クラブガン
◆第三章
 ○波動生命体 プライマルメザード
 ○超空間波動怪獣 メザード
 ○超空間波動怪獣 サイコメザード
 ○狂人大司教 バルパー・ガリレイ
 ○地獄の番犬 ケルベロス
 ○金属生命体 アパテー
 ○好戦堕天使 コカビエル
 ○宇宙球体 スフィア
 ○堕天合成獣 ネオコカビエル
 ○金属生命体 アルギュロス
◆第四章
 ○地帝大怪獣 ミズノエノリュウ
 ○獣人 ウルフガス
 ○超巨大天体生物 ディグローブ
 ○甲殻怪地底獣 ゾンネル
 ○旧魔王 カテレア・レヴィアタン
 ○禍の団(カオス・ブリゲード)魔術師
 ○反物質怪獣 アンチマター
◆第五章
 ○催眠怪獣 バオーン
 ○絶対生物 ゲシェンク
 ○絶対眷属 ゲシェンクポーン
 ○無酸素怪獣 カンデア
 ○深海竜 ディプラス
◆第六章
 ○宇宙雷獣 パズズ
 ○剛腕怪地底獣 ゴメノス
 ○甲殻怪地底獣 ゾンネル(ツー)
 ○マグマ怪地底獣 ギール(ツー)
 ○醜悪悪魔 ディオドラ
 ○アスタロト眷属
 ○合成狂獣 フリード
 ○巨獣 ゾーリム
◆第七章
 ○電子生命体 クリシスゴースト
 ○悪神 ロキ
 ○神殺獣(しんさつじゅう) フェンリル
 ○終末の大龍(スリーピング・ドラゴン) ミドガルズオルム・クローン
 ○金属生命体 ミーモス
 ○自然コントロールマシーン エンザン
 ○合体魔王獣 ゼッパンドン
◆第八章
 ○守護獣 ルクー
 ○超空間波動怪獣 サイコメザードII(ツー)
 ○幻覚宇宙人 メトロン星人
 ○宇宙忍獣 X(クロス)サバーガ
 ○地殻怪地底獣 ティグリス
◆第九章
 ○肉食地底怪獣 ダイゲルン
 ○大超獣 ジャンボデューク
 ○最強超獣 ジャンボキング
 ○超古代怪獣 ゴルザ
 ○超古代竜 メルバ
 ○二面鬼 宿那鬼
 ○再生怪獣 ダイゲルン
 ○知略宇宙人 ミジー星人
 ○三面ロボ頭獣 ガラオン
◆第十章
 ○地中鮫 ゲオザーク
 ○イーヴィルティガ
 ○超古代狛犬怪獣 ガーディー


第一節 怪獣とは?

 本作品の怪獣は地球怪獣と宇宙怪獣の大きく2つに分けられる。

 

►地球怪獣

 その名の通り、地球生まれの怪獣で、人間界の世界各地に生息している。当初は大人しく地底深く眠っていたが、物語序盤のコッヴ襲来の影響で目覚め、各地を暴れ回る。だが、後にこれは必死に生きようとする為だと発覚する。

大半の地球怪獣のルーツは大昔の三大勢力による大戦で、戦いの影響で地球へ取り残された冥界生物が人間界の環境に合わせて独自の進化を遂げたとされている。

 

►宇宙怪獣

 宇宙に生息している怪獣で、後述する根源的破滅招来体が作り出したワームホールから地球へ送り込まれる。送り込まれた宇宙怪獣は暴れ回るが、これに我夢達は宇宙怪獣は破滅招来体に操られてるからだと考えている。

 

 

 

 

 

第二節 根源的破滅招来体

 本作品全般に渡って登場する謎多き敵集団。その組織図、構成は一切不明の存在で、地球及び人類を破滅へと導こうとする目的しか判明していない。根源的破滅招来体という名も人類が付けた便宜上の名称にしか過ぎない。

 ワームホールから宇宙怪獣を送り込んで人類への攻撃や文明破壊をはじめとし、クリシス等の電子機器への工作、我夢や藤宮、身辺の人物に対しての精神攻撃等、その方法は様々である。

season 1~season 2においては、クリシスの結論を『人類削除』になる様に書き換え、ガイアとダイナ、どちらかをアグルと争わせて、発生したエネルギーを利用した。

 

 

 

 

 

第三節 登場怪獣&敵キャラクター

◆第一章

○宇宙戦闘獣 コッヴ

►スペックデータ

・体長:77m

・体重:8万8000トン

・分類:宇宙怪獣

・出身地:M91恒星系

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第1話で登場した宇宙怪獣で、根源的破滅招来体によって送られた怪獣第1号。三日月の様な湾曲をしたトサカと巨大な尻尾が特徴。武器は両腕の鎌『コッヴシッケル』と頭のトサカから放つ破壊光弾。

巨大な隕石の様な物体からワームホールから駒王町へ送り込まれ、その中から現れる。この襲来によって、世界各地に眠っていた地球怪獣が目覚めることになる。

 町を半壊させるまでに暴れ回り、緊急出撃した航空自衛隊の戦闘機をも全滅させるが、地球から大地の光を託された我夢の変身したウルトラマンガイアと対峙する。

コッヴシッケルと両腕の鎌で応戦するが、ガイアにほぼ圧倒され、最後はガイアのフォトンエッジによって倒された。

 ちなみにコッヴ(C.O.V.)とは「Cosmic Organism Vanguard(前衛宇宙生物)」の略で、我夢が命名したもの。

 

 

 

○マグマ怪地底獣 ギール

►スペックデータ

・体長:84m

・体重:9万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王町地下

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第2話で登場した地球怪獣で、コッヴ襲来の影響で目覚めた。体色は灰色、ずっしりとした体格の四足歩行怪獣で、頭部から背中にかけてはダンゴムシの様な硬い皮膚が特徴。武器は硬い皮膚を駆使した突進攻撃と重い体重を利用したのりかかり、腹部の第2の口から放つマグマ弾。

 地中から突如現れ、そのまま町へ向かおうとするが、それを阻止せんと現れたガイアと対峙する。

腹部の第2の口から放つマグマ弾で倒れさせ、重い体重でのしかかってガイアを窮地に追いやるが、逆転の策を思い付いたガイアに第2の口を腹ごとパンチで貫かれ、最後はフォトンエッジで倒された。

 

 

 

○悪質堕天使 レイナーレ

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:堕天使

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第3話~第4話にかけて登場した堕天使。見た目はボンテージ服を着た黒髪の美少女だが、原作通り卑劣な性格をしている。武器は堕天使の光の力を使った光槍と魔力弾、さらにアーシアから摘出した神器(セイクリッド・ギア)を使っての回復能力。

 堕天使の総督アザゼルとその副総督シェムハザを寵愛しており、彼らに認めもらいたいという自己満足な考えから、自他回復能力を持つアーシアの神器(セイクリッド・ギア)を狙い、暗躍する。

 劇中では原作同様、町へ逃げ出したアーシアを連れ戻しにきた。その場に居合わせた一誠が対峙したが返り討ちにし、アーシアを町はずれの協会に連れ去り、摘出儀式を執り行う。

その後、仲間と共にアーシアの救出にきた我夢が変身したガイアと戦うが、終始圧倒され、分が悪いと判断して空へ逃亡しようとするが、ガイアのクァンタムストリームをくらって気絶。戦闘を終えたリアス達の前で戦意喪失したフリをして我夢へ騙し討ちを仕掛けるが、突如現れたアグルのフォトンクラッシャーを受けて死亡した。

 

 

 

○悪質堕天使 ミッテルト

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:堕天使

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第4話に登場。レイナーレの部下の1人で見た目は金色のツインテールをした青い瞳の少女。黒を基調としたゴスロリの服を着用している。ギャル口調が特徴。

レイナーレや他の仲間同様残虐非道な性格で人が恐怖で歪む顔を見るのを快楽としている。

 劇中では教会の周りを他の仲間と共に警備していた。原作の様にリアス・朱乃コンビと戦うことなく、その場を通りかかったアグルによって他の2人と仲間共々、なぶり殺される。

恐怖を歪む顔が好きな自分がその顔を浮かべるという皮肉な最後を遂げた。

 

 

 

○悪質堕天使 カラワーナ

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:堕天使

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第4話に登場。レイナーレの部下の1人で見た目は青髪のロングヘアーの美女。スタイル抜群で、それを強調するかの様な胸元が大きく開いた黒紫色のボディコンスーツを着用している。

性格はクールだが、その心はレイナーレ同様残虐非道。

 劇中では教会の周りを他の仲間と共に警備していたが、その場を通りかかったアグルに仲間共々なぶり殺される。

 

 

 

○悪質堕天使 ドーナシーク

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:堕天使

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第4話に登場。レイナーレの部下の1人で見た目は紺色のコートを着てシルクハットを被った屈強な男。

原作同様、口調は紳士風だが、その心は他の仲間同様歪んでいる。

 劇中ではミッテルト、カラワーナと共に教会の周りを警備していたが、その場を通りかかったアグルに仲間共々なぶり殺しにされる。

 

 

 

○狂人神父 フリード

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:人間・はぐれエクソシスト

・出身地:不明

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第4話、第14話~第15話、第38話に登場。フルネームは「フリード・セルゼン」。見た目は白髪の少年で言動は下品極まりなく、倫理観が狂っている。

原作同様、その性格から問題行動を起こし、教会を追放されたところをレイナーレに拾われ、彼女の協力者となる。

武器は第4話では光剣と悪魔の弱点である銀製の銃弾が搭載されている銃、第14話で再登場した時はバルパー・ガリレイから受け取った聖剣因子で聖剣使いとなり、エクスカリバーを、続く第15話では4本合体させたエクスカリバーを駆使した剣術。

 第4話の劇中では教会に殴り込みにきた我夢達の前に立ち塞がり、木場と小猫と対峙するが、分が悪いと察してレイナーレをあっさり見捨てて撤退している。その後、第14話では堕天使幹部のコカビエルの手下となり、エクスカリバーを手に再び我夢達の前に現れる。

第15話では4本合体したエクスカリバーの力で木場とゼノヴィアを圧倒するが、ゼノヴィアがデュランダルに切り替えた瞬間に形成が逆転し、最後は禁手に至った木場の聖魔剣を前に倒される。

死んでいたと思われていたが、第38話で再再登場し、今度はディオドラの仲間として我夢達の前に立ちはだかる。聖剣事件後、命からがら逃げ出したが、アザゼルに見捨てられ、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に加入したことが明かされる。そして…(その後の詳細は第六章の合成狂獣 フリードに続く)

 

 

 

○大海魔 ボグラグ

►スペックデータ

・体長:53m

・体重:4万4000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:海中

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第5話に登場。我夢の故郷『吉岡街』へ上陸した怪獣で見た目はザリガニのハサミがついた二足歩行の魚。

体組織のほとんどが塩化カリウムを多く含む海水と同じなので、体温がとても低く、レーダーやスキャナで感知されない。海水と同じ身体なので、ミサイルの火薬を無効化でき、身体を斬られようが首を吹っ飛ばされようがすぐに再生する。

武器は前述の再生能力に両腕のハサミ、更にそのハサミで対象を挟みこんで、相手のエネルギーを吸収すると共に電流を流す能力。

 劇中ではその再生能力とエネルギー吸収能力でアグルと助太刀に来たガイア共々苦戦させるが、アグルのリキデイターをくらい、その熱で蒸発した。

 

 

 

○奇獣 ガンQ(キュー)

 第6話に登場した青い瞳の目玉怪獣。生物にある熱反応がなく、その存在そのものが理解不能で、我夢曰く『不条理の塊』。

正体不明だったが、再登場となった第57話では、その正体が戦国時代に暗躍していた呪術師『魔頭鬼十朗幻州』が根源的破滅招来体の力を利用して変身した姿であることが判明した。ガンQには様々な形態があるので、それぞれ紹介する。

 

▷ガンQ コードNo.00

 

►スペックデータ

・体長:計測不能

・体重:計測不能

・分類:不条理の塊

・出身地:冥界・使い魔の森

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第6話に登場。ガンQの最初の姿で身体はなく、地中から目を出している。武器は岩を浮かす念力(本作未使用)と目に受けた飛び道具を吸収、撃ち返す能力。

リアス達が我夢、一誠、アーシアの使い魔探し中に遭遇し、森に潜む近辺の冥界生物を無惨に食い殺していた。

熱反応がないことから、我夢の解析をもってしても正体を暴けず、彼を恐怖させる。

リアスの滅びの魔力と朱乃の雷を受けるが、朱乃の雷を撃ち返し、リアスの滅びの魔力を吸収したまま地中へ逃亡した。

 

▷ガンQ コードNo.01

►スペックデータ

・体長:55m

・体重:5万5000トン

・分類:不条理の塊

・出身地:駒王石油コンビナート

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第6話で登場した。先程のコードNo.00が吸収したリアスの滅びの魔力や自衛隊のミサイル、山の岩石等を使って体を構成した。大きな目玉と青い瞳はそのままで、血管に目玉がついた様な手足が特徴。

武器は目からの破壊光弾と吸収能力で自衛隊戦闘機のミサイルだけでなく、ガイアをも呑み込んだ。

 劇中では恐怖を克服したウルトラマンガイアと戦い、ガイアを体内へ吸収して精神攻撃を仕掛けて優位に立つが、意を決したガイアのガイア突撃戦法で体内から貫かれ、爆発四散した。

 

▷ガンQ コードNo.02

 

►スペックデータ

・体長:56m

・体重:5万6000トン

・分類:不条理の塊

・出身地:(不完全体)京都市街地

     (完全体)京都・宿那山付近

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第57話に登場。以前倒されたガンQが自らの呪術によって復活した姿。

しかし、当初は前回ガイアに倒された影響もあってトマトが潰れたような不完全な姿でしか復活できなかったが、人々から奪い取った魂と九重の肉体を利用して完全体となった。

完全態はコードNo.01の体に血管が浮き出ているような姿となっており、鳴き声も低いことも相まっておぞましいものとなっている。

 武器は以前と同様に目から破壊光弾を使うだけでなく、光線を浴びた人々の魂を吸収する能力も使用した。

また、体中の目玉を自由自在に動かせる小型円盤として飛ばすことができ、そこから精神を錯乱させる物質が含まれている怪光線を浴びせることが可能。

 劇中では景竜の隙を突いて九重の体に憑依し、人々の魂を纏わせることで完全体となり、復活した宿那鬼と共に京都を焼き払おうとした。

対峙したダイナとガイアのコンビに苦戦するも、九重を人質にすることで動きを封じ、先述の怪光線を浴びせて苦しませた。

 最後はギリギリのところで駆け付けた八坂の放った解呪結界によって人々の魂と九重の肉体を吐き出して弱体化。ガイアに投げ付けられた後、ティガのゼペリオン光線で宿那鬼の胴体、ダイゲルン共々倒された。

 

 

 

 

◆第二章

○不死鳥悪魔 ライザー

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:上級悪魔

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 フルネームは『ライザー・フェニックス』。第7話~第9話にかけて登場した上級悪魔フェニックス家の三男。見た目は金髪のホスト崩れでその見た目に違わず、下品で下級悪魔である我夢や一誠らを見下している。

武器は不死鳥の再生能力と体内から放射する炎。

 当初はリアスの婚約者として現れ、それを拒否するリアスと婚約をかけてのレーティングゲームを挑み、勝利。そして、そのままリアスと結婚式をあげようとしたところで駆けつけた一誠と再戦。

圧倒的な実力差で一誠を苦戦させるが、一誠が覚醒したウルトラマンダイナに追い詰められ、最後はソルジェント光線を受けて敗北した。

 その後、無事にリアスとの婚約も破棄となった。

 

 

 

○フェニックス眷属

►スペックデータ

・初出作品:『ハイスクールD×D』

►概要

 その名の通り、ライザーの眷属。メンバー15人は全て女性で構成されている。詳しくは皆さんで調べてね♪

 

 

 

○自然コントロールマシーン テンカイ

►スペックデータ

・体長:48m

・体重:8万4000トン

・分類:不明・自然コントロールマシーン

・出身地:太平洋上

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第10話に登場。太平洋上の大型台風を発生させていた張本人で、見た目は銅鐸の様な形に『天界』という篆書体が刻印されている自然コントロールマシーン。

武器はタービンが下向き時に発生する台風、タービンが上向き時に発生させる突風と体当たり攻撃。

 劇中では地球上の大気中にあるフロンやメタンといった有害物質を取り除いて酸素濃度を高めて酸素中毒で生物を死滅させ、逆さまになって地球上の建物を跡形もなく吹き飛ばして掃除しようとしていた。それに対しては木場曰く「巨大な洗濯機」。

対峙したダイナを苦しめるが、ガイアが加勢した瞬間に形成が傾き始め、ガイアのガイア突撃戦法で地中から貫かれ、続けざまにダイナのソルジェント光線を受けて倒された。

 

 

 

○超空間共生怪獣 アネモス

►スペックデータ

・体長:47m

・体重:3万8000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王町付近ダム

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第11話に登場。46億年前の地球上に生息したとされる、現在は絶滅しているイソギンチャクのような見た目の生物。地球上の生物を滅ぼす為、破滅招来体によって蘇った。クラブガンとは共生関係にあり、身体中から撒き散らす紫色の警報フェロモンでクラブガンを呼ぶ。

 最初は意識だけの幽霊の様な状態だったが、こっそりダムの中へ入ったKCBのクルーのカメラから全国のテレビへ発信されたことによって人々の意識を受け、実体化した。

自衛隊が焼却作戦で焼き殺そうとしたが、現れたクラブガンの鎮火ガスによって失敗し、クラブガンと合体することでアネモス&クラブガンとなった。

 

 

 

○超空間共生怪獣 クラブガン

►スペックデータ

・体長:48m

・体重:5万7000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王川付近

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第11話。46億年にアネモスと共生関係とあったとされるザリガニに似た絶滅生物。破滅招来体によって蘇ったアネモスの警報フェロモンに呼応して蘇った。武器はハサミと鎮火ガス。

アネモスの警報フェロモンによって呼ばれた複数のクラブガンのうち、1体がアネモスと合体し、アネモス&クラブガンとなった。

 

 

 

○超空間共生怪獣 アネモス&クラブガン

►スペックデータ

・体長:49m

・体重:9万5000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王町付近ダム

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第11話に登場。アネモスとクラブガンが合体し、完全となった姿。クラブガンが上でアネモスが下の第1形態、逆立ちしてアネモスが上でクラブガンが下の第2形態がある。

武器はクラブガン側の堅牢な鱗とハサミ、アネモス側の毒性ガス。毒性ガスは人に対して催眠効果があり、誘き寄せた人々をクラブガンで補食する習性があるらしく、劇中では我夢の旧友の古代生物学者の未来を補食しようとしていた。

第1形態と第2形態を切り替えた戦法でガイアを苦戦させ、窒息させようとしたが、駆けつけたダイナに妨害される。ダイナのミラクルタイプのダイナテレポーテーションで翻弄され、その隙にガイアのクァンタムストリームを受けて元の2体に戻ってしまう。

その後、アネモスはダイナのレボリウムウェーブ、クラブガンはガイアのフォトンエッジを受けて倒された。

 

 

 

 

◆第三章

○波動生命体 プライマルメザード

►スペックデータ

・体長:およそ40m

・体重:不明

・分類:不明・波動生命体

・出身地:時空の狭間

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第12話登場。波動生命体と呼ばれる別空間の怪獣で、巨大なクラゲの様な見た目をしている。我夢達がいる地球とは違う空間に存在しているので、肉眼では捉えることは出来るが、我夢が作ったパイロットウェーブでなければ、こちらから干渉することは出来ない。また、人間の思考や精神に興味を持っているらしく、観察する様に頻繁に現れた。

 最初の個体はお台場に現れ、建物を砂にし、日本を砂漠に変えようとしていた。パイロットウェーブによって実体化し、攻撃をくらうことで溶ける様に燃え、メザードへ姿を変える。

 

 

 

○超空間波動怪獣 メザード

►スペックデータ

・体長:66m

・体重:3万3000トン

・分類:不明・波動生命体

・出身地:超空間

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第12話登場。パイロットウェーブを受けたプライマルメザードが攻撃を受けることで実体化した姿。粘液に覆われたクラゲの様な体に1本の首長の顔が生えており、宙に浮いている。

 お台場を始め、日本各地に複数現れ、第12話の一誠の発言から、既に7体ものメザードが出現している。

第12話の個体は出現した瞬間にダイナのソルジェント光線を受けて倒された。

 

 

 

○超空間波動怪獣 サイコメザード

►スペックデータ

・体長:66m

・体重:3万6000トン

・分類:不明・波動生命体

・出身地:超空間

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第12話登場。メザードの同種の怪獣で、見た目も手足が生えており、地上での肉弾戦が出来る様になった。

武器は蕾状の腹部から放つ光弾と滑空を利用した体当たり攻撃。更には吉岡街の電話回線を使って人々を洗脳する能力。

 プライマルメザードの姿で吉岡街上空に佇み、人々を操る実験をしていたが、危機を知ったガイアからパイロットウェーブとガイアスラッシュを受けて地上へ墜落、実体化した。ガイアに格闘戦を持ち込むが圧倒され、不利とわかるや否や操った吉岡街の人々を盾にしてガイアの動きを封じ、一方的に痛め付けた。

後一歩のところまで追い詰めるが、突如乱入したアグルのフォトンクラッシャーを受けて倒された。

 

 

 

○狂人大司教 バルパー・ガリレイ

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:人間・元教会大司教

・出身地:教会

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第14話~第15話登場。原作通り、『聖剣事件』の責任者で、特に木場と因縁深い老人。眼鏡をかけたふくよかな体型で親しみやすそうな見た目だが、その中身は残虐非道。目的の為ならば犠牲が起きようとも何とも思わない。その危険な考えから、教会本部を追放される。

 コカビエルに協力して4本のエリクカリバーを融合させ、木場に聖剣因子を不要と判断して捨てる様に渡すが、それが彼のパワーアップに繋がってしまう。木場の聖魔剣を見て、既に聖書の神が存在していないことに気付いた矢先、コカビエルに口封じの為に殺される。

 

 

 

○地獄の番犬 ケルベロス

►スペックデータ

・体長:およそ10m

・体重:不明

・分類:冥界生物

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第15話登場。異名通り、本来は冥界と人間界を繋ぐ門の番犬だが、コカビエルが駒王町へ向かう道中で捕まえ、劇中では5匹登場した。

 コカビエルが前座としてけしかける様に差し向けたが、その5匹のうち2匹はリアスの滅びの魔力と朱乃の雷、残った3匹はそれぞれガイアのフォトンエッジ、ダイナのダイナスラッシュ、そして木場とゼノヴィアの連携攻撃で倒された。

 

 

 

○金属生命体 アパテー

►スペックデータ

・体長:52.5m

・体重:5万2500トン

・分類:不明・金属生命体

・出身地:不明

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第15話、第44話に登場。コカビエルが黒フードの女から与えられた対ウルトラマン用生命体。中世の甲冑の様な姿をしている。体はその名の通り金属で出来ているが、液体金属の様に変形でき、槍を創り出したり、自身を複数の槍に分離できる。そして、武器である複数の槍から放たれる電撃は強力であり、ガイアのライフゲージをあっという間に赤ヘ点滅させた。

また、胸元にはガイアのライフゲージに似た器官があり、ファイティングポーズも瓜二つ。

 劇中ではコカビエルが召喚した瞬間、駒王学園全体に張り巡らしていた結界が消えかかるのを危惧したガイアが人気がない場所へ運び、そこで対峙する。

前述の能力に加え、ガイアの戦闘データがインプットされているのでガイアの攻撃を見切り、ガイアを苦戦させるが、駆けつけた小猫と朱乃によって妨害される。

朱乃が魔力で生み出した水流にガイアのガイアブリザードを合わせた攻撃で凍結させられ、最後はガイアのクァンタムストリームで木っ端微塵になった。

 第44話にてミーモスに召喚される形で再登場。同じく呼び出されたアルギュロスと共にダイナの足止めをしたが、ガイアの登場に気を取られた隙にアルギュロスと分断される。

その後、ストロングタイプとなったダイナのアッパーで宙に飛ばされ、リアスとダイナの合体技『豪力・滅殺球(ストロング・ルインスフィア)』によって倒された。

 

 

 

○好戦堕天使 コカビエル

►スペックデータ

・体長:不明

・体重:不明

・分類:堕天使幹部

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第14話~第16話登場。堕天使組織グリゴリの幹部で、大昔にあった三大勢力の大戦を経験した1人。原作同様、平和を謳うアザゼルとシェムハザに業を煮やし、再び三大勢力による争いを起こさせる為、エクスカリバーを教会から奪い、バルパーと共に暗躍した。

 劇中ではダイナ、リアス、木場、ゼノヴィアと戦うがダイナに終始圧倒される。しかし、それを見かねた黒フードの女が差し向けたスフィアによって更なる力を得る。

スフィアと融合した後、ダイナに倒されても尚立ち上がったが、乱入したアグルに一方的に痛め付けられ、自慢の羽も片方斬られてしまう。最後は宙に投げられたところをリキデイターをくらい、死亡した。

 ちなみにダイナのタイプチェンジを見て、かつて自分を倒したウルトラマンを思い出したのだが、そのウルトラマンとは…?

 

 

 

○宇宙球体 スフィア

►スペックデータ

・体長:不明

・体重:不明

・分類:不明

・出身地:宇宙

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第16話登場。黒フードの女がコカビエルのパワーアップの為に差し向けた謎の球体状宇宙生命体。ビームを放つことができるが、その真の力は他の生物や物質と融合することで怪獣化させることである。

 

 

 

○堕天合成獣 ネオコカビエル

►スペックデータ

・体長:6m

・体重:1万トン

・分類:スフィア合成獣

・出身地:駒王学園

・初出作品:『ハイスクールG×A』

 

►概要

 堕天使幹部コカビエルがスフィアと融合することで怪獣化したスフィア合成獣。全身が黒い岩の様な皮膚に覆われており、両腕に2本爪の大きな鉤爪、額は1本の鋭い角、尾てい骨にあたる箇所からは大きな尻尾を生やしており、10本の翼も黒い岩に侵食される様に付着している…と人間だった面影はほとんど残っておらず、最早怪獣と呼ぶのがふさわしい風貌になっている。

武器は両腕の鉤爪と伸縮自在な角、別個に意思を持つ尻尾。更に口から放つ黄色光線と白色のブレス。

また、ダイナのソルジェント光線すらも防ぐバリアを使える。

 最初はスフィアに意識を呑み込まれ、暴走状態となっていたが、ダイナ達の攻撃で意識を取り戻し始め、自身の頭部を殴打することで完全に意識を取り戻す。

それからはスフィアの力を自分の意思で動かせる様になったことでダイナ達を圧倒し、後一歩のところまで追い詰める。

だが、逆転方法を思い付いたダイナのミラクルタイプに翻弄され、ウルトラサイキックで宙に固定される。それでも意地でブレスを放つが、それをダイナに吸収され、レボリウムウェーブ・リバースバージョンで倒された。

 

 

 

○金属生命体 アルギュロス

►スペックデータ

・体長:52.5m

・体重:5万2500トン

・分類:金属生命体

・出身地:宇宙

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第17話登場。アグルの聖地プロノーン・カラモスを破壊する為に送り込まれた。

第15話に登場したアパテーと同じ金属生命体。中世の甲冑の様なデザインで胸元にはアグルのライフゲージに似た器官がある。アパテーと同じく体は金属でできており、液体金属の様に変形させることが可能で、腕をキャノン砲とサーベル、4本の槍状に変形した。

また、目元を歪ませて笑う癖がある。

 劇中では4本の槍の状態で変形してプロノーン・カラモスへ向かって飛行していたところをアグルに撃ち落とされ、人型に変形してアグルと対峙する。当初は切羽詰まっているアグルを圧倒するが、朱乃、ゼノヴィア、木場、一誠の援護によって体勢を崩したところをアグルのリキデイター連射で一時は倒されたかの様に見せかけて逃亡。

そして、再びプロノーン・カラモスに現れ、破壊工作を行おうとするが、アグルに妨害され、再び対峙する。

戦闘中にアグルがパワーアップしたのに気付いたのか、後述のニセ・ウルトラマンアグルに変身する。

 第44話にてミーモスに召喚される形で再登場。同じく呼び出されたアパテーと共にダイナの足止めをしたが、ガイアの登場に気を取られた隙にアパテーと分断される。

最後は朱乃とバラキエルが力を合わせた雷光によって倒された。

 

 

▷ニセ・ウルトラマンアグル

►スペックデータ

・体長:52m

・体重:4万7000トン

・分類:金属生命体

・出身地:プロノーン・カラモス周辺

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 アルギュロスがアグルの戦闘データを基にコピーしたアグルの偽者。姿はそっくりだが、目の色はピンク色でボディーカラーの黒はメタリックになっている他、使う光線技の色は紫色等、本物と異なる箇所がある。

ただ姿をコピーしただけでなく、アグルのフォトンクラッシャーのコピー技の『ニセフォトンクラッシャー』、リキデイターのコピー技の『ニセリキデイター』を使用可能。

また、口角をあげて不気味に笑う癖がある。

 そのコピーした力で本物のアグルを一時的に攻め立てるが、すぐに形成を逆転される。追い詰められ、ニセフォトンクラッシャーとアグルのフォトンクラッシャーの撃ち合いをするが、パワーアップしたアグルの敵でなく、押し負け、爆発四散した。

 

 

 

 

◆第四章

○地帝大怪獣 ミズノエノリュウ

►スペックデータ

・体長:111m

・体重:11万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王町龍脈

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第18話登場。『壬龍』とも呼ぶ。悪魔が移り住む前から今の駒王町付近の大地を護ってきた守護神で、見た目は8つの尾の先が龍の顔がある青い龍。

本体の額には『龍玉』と呼ばれる青い玉があり、これによってウルトラマンを軽々と吹き飛ばせる念力や尻尾の龍の頭から放つ電撃や青色破壊光弾、更には自身の体を一瞬だけ液状化させることで物理攻撃を回避する能力がある。

攻撃力だけでなく防御力も長けており、ガイアのクァンタムストリームを受けてもビクともしなかった。

 人間が都市再開発の為に自身の地脈を断ち切られたことに怒り、駒王町のライフラインを破壊して、地脈を復活させようとする。

リアスが説得しにいくが、怒り狂っているミズノエノリュウの耳には届かず、そのまま地上でリアス達と戦う。

前述した能力を前にリアス達はおろか、ガイア、ダイナさえも圧倒するが、勇気を振り絞った朱乃の説得を聞き入れて人類に再びチャンスを与える様に青い球体になり、地中へ戻っていった。

 

 

 

○獣人 ウルフガス

►スペックデータ

・体長:等身大 2m

    巨大化時 47m

・体重:等身大 130キロ

    巨大化時 3万8000トン

・分類:宇宙怪獣

・出身地:宇宙

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第19話に登場。宇宙から何者かの手によってカプセルの中に入れられて地球に送り込まれた。狼に似た等身大の怪獣で太陽光線を浴びると体がガス化する体質を持っている。梶尾が放った麻酔弾の影響で体質変化し、天然ガスを吸って巨大化する。この状態は非常に危険で、ウルトラマンの光線技で倒してしまうと大爆発が起きてしまう。

高い跳躍力を持ち、人1人を余裕で飛び越えられる。

武器は鋭い牙と素早い動きから繰り出される引っ掻き攻撃。

その凶悪な顔に似合わず気は弱く、大人しい。だが、一度攻撃を受けると防衛本能からか途端に凶暴になる。

 劇中では最初は梶尾、我夢、一誠、匙の4人による追走劇を繰り広げるが、ことごとく逃げ切る。

その後、梶尾に麻酔弾を投げ刺され、眠らされるが朝日を浴びてガス状になり、日中は付近のガスタンクの中に紛れ混む。

我夢がその性質を知り、眠っているガスタンクを突き止めるが、何者かによる爆弾でガスタンクを爆破され、漏れだした天然ガスを吸って巨大化する。

そして、現れたアグルと対峙し、怯えたフリをした手に噛みつく等して健闘するが全く構わず、逆に怒りを買って袋叩きにされる。

アグルにとどめのフォトンクラッシャーを撃たれそうになるが、割り込んだガイアがフォトンエッジを放って相殺し、助けられる。再び両者が光線を放とうとする中、一誠が放った細胞気化弾を受け、再びガス化し、近くのガスタンクに入ったところをガイアにガスタンクごとそのまま宇宙へ帰される。

 

 

 

○超巨大天体生物 ディグローブ

►スペックデータ

・体長:不明

・体重:不明

・分類:宇宙怪獣

・出身地:宇宙

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第21話登場。木星付近に出現したワームホールから現れた天体サイズの巨大生物で、太ったヒルの様な見た目をしている。青い炎を纏って移動し、地球に直撃すれば半径100kmに及ぶクレーターを伴う甚大な被害が起き、大気圏内で爆発が起きると放射熱で半径20kmもの地上を燃やし尽くすといった厄介な代物。

 当初は98時間後には地球の公転軌道を通過するだけだったが、突如として地球の駒王町へ進路を変える。

その危機を知ったアグルが目覚めさせたゾンネルのエネルギーを利用して大気圏内で爆破され、その爆発時に発生した放射熱はガイアとダイナのバリアーによって防がれる。

 

 

 

○甲殻怪地底獣 ゾンネル

►スペックデータ

・体長:89m

・体重:10万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:美宝山

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第21話登場。地球の人間界、駒王町はずれにある美宝山の地下に眠っていた怪獣。

見た目はフジツボの様な甲羅を背中にある四足歩行の怪獣で、本来は大人しい性格をしている。武器は口から放つ光弾と尻尾の叩きつけ攻撃、そして背中の甲羅から放つ照射エネルギー。

背中の甲羅は小型の大陽の様な核融合炉になっており、破壊されると、甚大な被害が起きる。

 美宝山に眠っていたところを藤宮のアグルの光によって目覚めさせられ、撃ち込まれたパーセルによって操られ、駒王町付近に誘導される。

それを阻止せんと現れたダイナ、後から駆けつけたガイアに気を取られるが、よしとせんアグルに無理やり甲羅を抉じ開けられ、ディグローブ破壊に利用される。

その後、エネルギーを使い果たして力尽きてしまうが、ガイアとダイナによって地中へ戻された。

 

 

 

○旧魔王 カテレア・レヴィアタン

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:最上級悪魔

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第23話登場。初代レヴィアタンの正統な血筋を引いているが、平和とは程遠い危険な思想を持っていることから魔王の座を下ろされた旧魔王と呼ばれる一派の1人の女性。眼鏡をかけているのが特徴。

旧魔王と呼ばれることは快く思わず、自分こそが真のレヴィアタンであると提唱する。

 長い間、冥界社会から冷遇されてきたが、原作通り、三大勢力による和平会談をきっかけに他の旧魔王と共に禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返り、ヴァーリの手引きを受けて、禍の団(カオス・ブリゲード)魔術師と共に会談場所である駒王学園を襲撃した。

アザゼルと対峙し、押され始めた頃にオーフィスから与えられた蛇の力でパワーアップするが、人工神器を纏ったアザゼルの敵ではなく、瞬殺される。

道連れにしようとアザゼルの左腕に取りついて自爆しようとするが、アザゼルに腕ごと切り離されて失敗し、光の槍を突き刺されて死亡する。

 

 

 

禍の団(カオス・ブリゲード)魔術師

►概要

 第23話登場。カテレアと共に魔法陣から現れた魔術師で人海戦術を得意とする。グラウンドだけでなく、旧校舎にも現れ、ギャスパーを拘束し、神器(セイクリッド・ギア)を暴走させて時間停止させる。

 旧校舎内のは藤宮によって全て気絶させられ、グラウンド内での魔術師はダイナ、木場、ゼノヴィア、ヴァーリ。時間停止解除後には朱乃、小猫、シトリー眷属らも合流して1人残らず全て倒され、冥界の司法機関へ送られた。

 

 

 

○反物質怪獣 アンチマター

►スペックデータ

・体長:85m

・体重:15万トン

・分類:宇宙怪獣

・出身地:反物質宇宙

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第25話登場。木星付近に漂うトロヤ小惑星付近のワームホールから出現した我夢達が住む正宇宙とは物質が相反する反宇宙からやって来た宇宙怪獣。

ヒトデの様な見た目が特徴で、二枚貝の様に身体を閉じ、バリアーを張りながら移動する。武器は身体を対象を挟み込んで流す電流。バリアーを拡大する際は頭部の角を激しく震わせ、バリアーを縮小する際は2枚貝の様に閉じる。

地球に降り立ち、地球中に反物質バリアーを広げてバリアーを解除し、正物質と反物質の大爆発による第2のビッグバンを引き起こして新しい宇宙を創造しようとしていた。

 G.U.A.R.D.の決死の作戦が失敗し、地球に降り立って駒王町を反物質化していくが、アグルの反物質光線で反物質ウルトラマンとなったガイアと対峙する。

慣れない空間での戦闘を強いられるガイアを苦戦させるが、頭部をクァンタムストリームで破壊され、身体を2枚貝にしたところをガイアによって宇宙へ運ばれる。

最後は宇宙空間へ運ばれたところをダイナ・ミラクルタイプが作り出したミニブラックホールに投げ込まれ、入口はアグルのアグルシールディングで閉ざされ、正宇宙から追放した。

 

 

 

 

◆第五章

○催眠怪獣 バオーン

►スペックデータ

・体長:53m

・体重:6万トン

・分類:宇宙怪獣

・出身地:宇宙

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第26話登場。隕石と共にふるべ村へ落ちてきた怪獣でやる気のない眠たそうな目をしているのが特徴。悪意はないが、『バ~オ~~~ン』と発するホルンに似た鳴き声を聞いた者は寝てしまう催眠効果を持っている。

その効果はウルトラマンでも眠ってしまう程絶大で、アザゼル曰く「史上最強の怪獣」。

また力も強く、軽く身体が当たっただけでガイアやダイナを吹き飛ばせる。

赤色に興奮する習性があり、その興奮はバオーンが眠たくなるまで続く。

 アラスカに運んで研究したいとムスタファ・アリ博士の依頼を受けたリアス達が催眠ガス付きのジャイアントマスクで眠らせようとするが、食べ物と勘違いして食べてしまうがガスの効果で寝てしまう。翌日、高速道路沿いに出来たスーパーのアドバルーンを見て興奮し、そのまま高速道路へ向かおうとしたところをガイアのガイアスラッシュによってアドバルーンを破壊される。

破壊したのはいいが、次にガイアを見て興奮し、ガイアに飛び付いたところをリアス達の麻酔弾によって眠らされるが、先日のジャイアントマスクの催眠ガスによって耐性が付いた影響ですぐに起き上がり、今度はアリ博士が眠るキャンプ地へ行こうとしたところをダイナに止められる。

ガイアとダイナ・ストロングタイプに興奮し、眠ってしまった彼らが遊んでくれないといじけながらも、最後はダイナのウルトラバルーンによって釘付けになった瞬間にダイナとガイアによって宇宙へ帰された。

 

 

 

○絶対生物 ゲシェンク

►スペックデータ

・体長:54m

・体重:6万2000トン

・分類:地球怪獣・絶対生物

・出身地:人間界

     冥界

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第28話登場。発見された恐竜の卵の化石に仮死状態で潜んでいたアメーバ状の生物。地球上で最も栄える生物を確実に絶滅させる絶対生物と呼ばれる存分で、かつて地球上で栄えていた恐竜等も絶滅させてきた。

相手を滅ぼす為にに最も有効な形態に変化することができ、今回の場合は怪獣型に変身した。

 増えすぎた人類と悪魔の数を減らす為に藤宮の手によって現代に甦った。恐竜の様な凶暴そうな見た目をしているが、鳴き声は相反して猫の様に可愛らしいもの。

武器は角からの赤いホーミング弾で、狙った対象が当たるまで追い続ける。威力は絶大で、一発だけでもガイアを大きく吹き飛ばす程。

 劇中では人間界と冥界にそれぞれ1体ずつ現れた、人間界の個体はガイア、冥界の個体はダイナと戦った。

角からのホーミング弾で2人を苦戦させるが、人間界の個体はハーキュリーズを支援を受けたガイアの猛攻を受け、最後はフォトンエッジで倒される。冥界の個体もダイナのミラクルタイプのスピードに翻弄され、ウルトラサイキックで都市から離れた場所へ移動させたところでソルジェント光線を受けて倒れた。

撃破後、ゲシェンクの細胞によって操られたドラゴンは正気を取り戻し、藤宮が持っていた予備の細胞も跡形もなく消滅した。

 

 

 

○絶対眷属 ゲシェンクポーン

►スペックデータ

・体長:25m

・体重:1万トン

・分類:絶対生物

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールG×A』

►概要

 第28話登場。藤宮によってゲシェンクの細胞を撃ち込まれたドラゴンがゲシェンクによって凶暴化し、操られた姿。姿は特に変化はないが、目がゲシェンクと同じものとなっており、ゲシェンクの『生物を絶滅させる』という意思に従って暴れ回る。

 ドラゴンの元々の強さとタフさに加え、ゲシェンクの細胞の影響で脳内麻薬が活性化しているので疲れを知らず、リアス達を苦戦させたが、XIGの試作機の戦闘機であるXIGウイングに搭乗した一誠と匙によって誘導され、匙が神器(セイクリッド・ギア)で捕縛している隙にリアス達が撃った麻酔弾によって眠らされた。

ゲシェンク撃破後は細胞も消滅し、無事正気に戻ったが、暴れていた時の記憶はなく、ただ呆然としていたらしい。

 

 

 

○無酸素怪獣 カンデア

►スペックデータ

・体長:78m

・体重:6万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:白岩海岸・深海

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第33話登場。酸素が存在していない頃の太古の海に生息していた無酸素バクテリアが人間の産業廃棄物による海上汚染によって突然変異した集合体。

半径1mもある青い発光体を使って、地上を自分達がかつて生きていた無酸素地帯に戻そうとしていた。

武器は顔面両脇にある突起から放つ毒素と背中から突き出た砲身の様な突起から放つ赤色破壊弾。

 水中戦ではダイナと互角に渡り合うが、リアス達の援護攻撃を受けて怯んだところをとどめを刺されそうになるが、乱入したディプラスによって助けられる。

その後はディプラスと共に水中戦に慣れないリアス達を苦戦させる。駆けつけたガイアを2匹がかりで攻めようとするが、ディプラスはリアス達が割り込むことで阻止させる。1匹となっても水中戦に慣れないガイアを苦戦させ、地中へ沈めるが、クァンタムフラッシュを受けて怯んだ隙に脱出される。最後はフォトンエッジを受けて倒され、光の粒子となって海上へと昇っていった。

 

 

 

○深海竜 ディプラス

►スペックデータ

・体長:155m

・体重:5万2000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:白岩海岸・深海

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第33話登場。海蛇に似た怪獣で、頭部にはチョウチンアンコウに似た触覚を持っている。元は普通の海蛇だったが、人間の産業廃棄物による海上汚染によって突然変異し、怪獣となってしまったという本作オリジナルの経緯がある。なので、海を汚された被害者同士としてカンデアに協力し、カンデア自身もディプラスに対して敵対意識を持たなかった。

武器は触覚から放つ赤色破壊光線と電撃、長い胴体を利用した巻き付け攻撃。触覚にはあらゆる光線を吸収する器官でもあり、ダイナのフラッシュ光弾やシグマリンのハイパーブルーレーザー、リアスの滅びの魔力すら吸収した。

 劇中ではダイナにとどめを刺されそうになったカンデアを助ける様に乱入し、触覚でフラッシュ光弾を吸収した。ダイナの身体に巻き付き、締め上げ攻撃をする。

ダイナはストロングタイプになって力ずくで脱出を図ろうとするが、電撃を流すことで妨害し、遂にはノックアウトさせた。

その後、四之宮が乗るセイレーンを破壊し、2匹がかりでリアス達やシグマリンを地中へ沈没させた。

駆けつけたガイアと戦うカンデアに加勢しようとするが、リアス達に妨害に遭い失敗。

リアス達がクァンタムフラッシュで地中から脱出したガイアに気を取られている隙に襲いかかるが、復活したダイナのガルネイトボンバーを受けて倒された。

 

 

 

 

◆第六章

○宇宙雷獣 パズズ

►スペックデータ

・体長:82m

・体重:9万9000トン

・分類:宇宙怪獣

・出身地:M91恒星系

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第35話登場。電波を乱す雷雲の中にあるワームホールから現れた宇宙怪獣で、牡羊に似た容姿をしている。

武器は口から放つ火球と巨大な頭部の角『電撃ホーン』から放つ電撃で、角を変形させて発射角度を変えることも可能。更に『特殊電波ブレイン』と呼ばれる頭脳で電波を放ち、戦闘機のミサイルの照準をずらしたり、電子機器や連絡用魔術を狂わせる。

 角の電撃で町中を火の海にし、現れたガイアを苦戦させるが、チームライトニングの援護射撃と朱乃の雷光で片方の角を折られた隙に起き上がり様のクァンタムストリームを受けて倒された。

 

 

 

○剛腕怪地底獣 ゴメノス

►スペックデータ

・体長:70m

・体重:8万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:秩父山中

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第36話登場。秩父山中に出現した怪獣で、西洋の兜の様な頭に灰色の体色が特徴。身体中の皮膚はとても硬く、ダイヤモンド1000倍の硬度を持っており、あらゆる攻撃を耐えうる強度を誇っている。腕力も強靭で、大岩を軽々と砕く。

武器はその硬い皮膚から繰り出される体当たりと口から放つ火球、両腕を高熱化させて相手を締め上げる。また相手が苦しむ姿を見て、目を歪めて嘲笑う凶悪な一面がある。

 元々は人間界におり、稲森が改良したパーセルの実験台としてG.U.A.R.D.に撃ち込まれて眠っていた。

しかし、稲森が改良パーセルを使って操り、藤宮が以前使ったポータル(元々は稲森が作った)から冥界へ送り込まれ、稲森の悪魔達に怪獣の怒りを見せることで自らの罪を認めさせる為に都市部へ向かおうとした。

だが、人間が怪獣をコントロールしようとすることは出来る訳なく暴走。自らパーセルを取り外し、稲森を殺害。

怒りに震えるガイアと対峙し、彼が冷静さを欠けていることもあって窮地に追い込むが、助けに入ったダイナに妨害され、最後はガイアのフォトンエッジとダイナのソルジェント光線の合体技で倒された。

 

 

 

○甲殻怪地底獣 ゾンネル(ツー)

►スペックデータ

・体長:86m

・体重:9万5000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:アリゾナ州・スコッツデール

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第37話登場。以前現れたゾンネルと同種の怪獣で、体色は黒かった初代と比べて青くなっている。

武器は以前の個体と同様、口から放つ火球。

 天体が歪む程巨大なワームホールの危機を知り、地球に大きな被害を持たらす前に人類を滅ぼす決意を固めたアグルによって目覚めた怪獣のうちの1体。

緊急出撃したG.U.A.R.D.アメリカの戦車部隊を全滅させ、初出撃したチームトルネイドを苦戦させるが、駆けつけたガイア、後から現れたダイナと対峙する。

アグルの力の影響でパワーアップしてるものの、2人の連携で押され、ガイアがフォトンエッジでとどめを刺そうとするが、イリナから聞いた言葉を思い出し、踏みとどまる。

最後はガイアのガイアヒーリングによって闘争本能を静め、棲み家へと帰っていった。

 

 

 

○マグマ怪地底獣 ギール(ツー)

►スペックデータ

・体長:85m

・体重:9万2000トン

・分類:地球怪獣

・出身地:駒王町付近の山

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第37話登場。以前現れたギールと同種の怪獣で、体色は赤くなっている。

武器は初代同様、腹部の第2の口から放つマグマ弾。

 ゾンネルⅡ同様、人類を抹殺する為にアグルによって目覚めさせられた。人間界にいたが、ジャグラーによって冥界へ転送され、近くにある山奥の病院を襲おうとしたが、病人の男の子の助けを聞いて思いとどまったアグルと対峙する。

満身創痍のアグルに第2の口からマグマ弾を放とうとした瞬間、アグルのフォトンクラッシャーを受けて倒された。

 

 

 

○醜悪悪魔 ディオドラ

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:上級悪魔

・出身地:冥界

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第33話~第34話、第38話~第40話に登場。『元72柱』であるアスタロト家の次期当主で、リアスと同じルーキー悪魔の1人。

優しげな雰囲気を漂わせる男だが、聖女を唆して堕とすといった歪んだ性癖を持っており、普段穏やかな我夢でさえも激しい嫌悪感を露にする程。

アーシアが教会を追い出された元凶で最低最悪の畜生。

禍の団(カオス・ブリゲード)に協力しており、協力した理由も「好き勝手できるから」と自分勝手なもの。

 劇中では原作同様にアーシアにしつこく付きまとい、レーティングゲームではアーシアを拉致し、手引きした旧魔王派勢力の悪魔達を我夢達へけしかけた。

神殿へ追ってきた我夢達へゲームと称して自分の眷属を戦わせた。

オーフィスの蛇の力でパワーアップするものの、ガイアの前には全く歯がたたず、最後はフォトンエッジをくらって気絶。その後、グリゴリによってコキュートスへ幽閉された。

 

 

 

○アスタロト眷属

►概要

 第38話登場。その名の通り、ディオドラの眷属12人。

女性全てで構成されているが、それらは全てディオドラが唆してきた元聖女達。自分達が利用されていることさえ知らない。

 ほぼ全ての眷属は我夢達の手によって倒され、残った2人はキメラとなったフリードによって食い殺された。

 

 

 

○合成狂獣 フリード

►スペックデータ

・体長:17m

・体重:160キロ

・分類:合成獣(キメラ)

・出身地:レーティングゲーム対戦エリア

・初出作品:『ハイスクールD×D 』

 

►概要

 第38話登場。以前木場に倒され、アザゼルから見捨てられて行く宛のないフリードが禍の団(カオス・ブリゲード)にスカウトされ、キメラへと改造された姿。

人間だった頃の面影はほぼなく、様々な生物の特徴を混ぜ合わせた歪な見た目をしている。

 ディオドラの本性を明かし、木場と戦おうとしたが、乱入したジャグラーの新月斬波によって真っ二つに斬られ、絶命する。

 

 

 

○巨獣 ゾーリム

►スペックデータ

・体長:測定不能

・体重:測定不能

・分類:宇宙怪獣

・出身地:ワームゾーン

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第40話登場。ガイアとアグルの激突したエネルギーを利用したワームゾーンから出現した怪獣。長い首を持った龍の様な見た目をしており、出現したのは頭部だけで全貌は謎に包まれているが、それだけでも巨大な規模であり、ウルトラマンが小さく見える程。

藤宮が開発したクリシスとパルスパターンがシンクロしており、クリシスの手引きによって冥界の首都リリスに姿を現す。

武器は口から放つ火炎で、その衝撃波だけでもサーゼクスら有力者が作り出した結界に亀裂を入れる程強力。

皮膚も強靭で、地上にいるリアス達やファイターの攻撃にもビクともせず、V2となったガイアのクァンタムストリームをも受け付けない。

 劇中では、その力の差でリアス達と助太刀に入ったV2成り立てのガイアを苦戦させるが、ワームホールの入口が弱点であると気付いた梶尾達の一斉攻撃を受けて怯んだ隙にスプリームヴァージョンになったガイアに体内へ侵入され、フォトンストリームで内側から破壊された。

 

 

 

 

◆第七章

○電子生命体 クリシスゴースト

►スペックデータ

・身長:なし

・体重:なし

・分類:不明・電子生命体

・出身地:光量子コンピューター・クリシス内部

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第42話~第44話登場。かつて藤宮がダニエルらと協力して開発した光量子コンピューター『クリシス』が根源的破滅招来体に操られていると判明し、凍結される寸前にネットワーク上に放ったゴーストプログラム。

 独立した意識を持ったコンピューターウイルスでもあり、その感染速度はワクチンプログラムすら受け付けない程強力で、劇中ではG.U.A.R.D.ヨーロッパの施設、エリアルベース、グリゴリ、ジオベースを瞬く間にハッキングした。

第42話ではその感染速度でエリアルベース内の大半を侵食、我夢達を窮地に陥れたが、ギャスパーが小猫に手渡されたジョイスティック型デバイスによって撃滅した。

続く第43話、第44話ではジオベースをハッキングし、G.U.A.R.D.の保有する無人戦闘機を操って、都市部を壊滅させようとしていた。

 しかし、その本当の目的は徒党を組んでいるロキをパワーアップさせる為の肉体を集めることにあり、グリゴリにあるアルギュロスの破片サンプル、ジオベースにあるアパテーの破片サンプルとガイアのデータを奪取し、それらごとロキと合体することで、ニセ・ウルトラマンガイアへと変身した。

 

 

 

○悪神 ロキ

►スペックデータ

・身長:不明

・体重:不明

・分類:北欧神話・悪神

・出身地:北欧

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第42話~第44話登場。見た目は若い男性だが、オーディンと同じ神。主神であるオーディンが他神話と干渉するのが附に落ちず、我夢達へ襲いかかる。

当初は自分の意思のみでの行動かと思われたが、第44話で破滅招来体と徒党を組んでいたことが発覚。クリシスゴーストが回収したアパテーとアルギュロスの破片サンプル、ウルトラマンガイアのデータと融合し、ミーモス(ニセ・ウルトラマンガイア)となり、リアス達を窮地に追いやるが、駆けつけた本物のガイアと対峙するも、最後はスプリームヴァージョンのフォトンストリームを受け、クリシスゴーストと共に消滅した。

 

 

 

神殺獣(しんさつじゅう) フェンリル

►スペックデータ

・体長:およそ10m

・体重:不明

・分類:北欧神話生物

・出身地:北欧

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第42話~第44話登場。約10m程の巨体を誇った銀の毛並みの狼で、その牙は神を殺せる程の殺傷力を秘めている。

 最初は一誠と互角の戦いを繰り広げるが、一誠がダイナ・ミラクルタイプに変身した瞬間に形成が変わり、ダイナファイヤーを身体を燃やされ、ロキと共に撤退させられる要因となった。

第44話では戦い始まって早々にグレイプニルで拘束されるが、3匹のフェンリルの子供によって解放される。

その後、親のフェンリルはヴァーリによって手懐けされ、1匹の子はアーサーの聖王剣で粉微塵になり、残った2匹はグレモリー眷属の連携攻撃で追い詰め、リアスの滅びの魔力とタンニーンが吐く火炎の同時攻撃で倒された。

 

 

 

終末の大龍(スリーピング・ドラゴン) ミドガルズオルム・クローン

►スペックデータ

・体長:およそ7m

・体重:不明

・分類:北欧神話生物

・出身地:北欧

・初出作品:『ハイスクールD×D』

 

►概要

 第44話登場。北欧の深海に眠っている蛇のようなドラゴン、ミドガルズオルムの細胞を用いてロキが作り出したクローン。本物と違って体長がかなり低く、力も本物とは比べようもないぐらい低いが、それでも実力は高い。

 劇中では5匹登場し、ダイナとヴァーリに襲いかかるが、有効打は与えられなかった。ヴァーリが抜けた後、もダイナに押され、最後はフラッシュバスターで5匹まとめて一掃された。

 

 

 

○金属生命体 ミーモス

►スペックデータ

・体長:52.5m

・体重:5万2500トン

・分類:不明・金属生命体

・出身地:採掘場跡地

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第44話に登場した金属生命体No.3。ロキがアパテー、アルギュロスの破片、ガイアのデータと盗み出した張本人のクリシスゴーストと融合することで誕生した。

溶けた金属の様な皮膚をしており、他の2体と違ってやや生物味があるのが特徴。

武器は、体に突起している金属片をブーメランの様に飛ばす投擲攻撃やさすまた状に変形させた腕を射出して拘束する能力。更には元となった金属生命体アパテーとアルギュロスを召喚することも可能。

 当初はニセ・ウルトラマンガイアの姿で戦うが、ガイアと朱乃達の攻撃を受け、徐々に肌の金属部分が露出し、完全に姿を現した。

ガイアとの戦闘では押され気味だったが、ブーメランの投擲で牽制している間にさすまた状に変形させた金属片を飛ばしてガイアを磔にするが、リアスの援護攻撃を受けて怯む間に脱出され、スプリームヴァージョンにヴァージョンアップさせる隙を与えてしまう。

スプリームヴァージョンのガイアには全く歯が立たず、計9回も投げ飛ばされてグロッキー状態になっている隙にガイアのフォトンストリームを受け、ロキごと消滅した。

 

 

▷ニセ・ウルトラマンガイア

►スペックデータ

・体長:50m

・体重:4万3000トン

・分類:不明・金属生命体

・出身地:採掘場跡地

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第44話登場。ミーモスがガイアのデータを基に構成したガイアの偽者。見た目はV1時代のガイアとそっくり。

ガイアのデータをコピーしている影響で、本物そっくりのニセフォトンエッジ、ニセクァンタムストリーム、ニセガイアスラッシュを放てる。

 劇中では神の力が合わさっていることもあってタンニーンをニセクァンタムストリームでノックアウトし、リアス達を追い詰める。その際、朱乃を庇ったバラキエルを握り潰そうとするが、駆け付けた本物のガイアに阻止される。

ニセフォトンエッジを放つも、本物のガイアのフォトンクラッシャーに押し戻され、その衝撃で次第に金属の部分が露出し始め、奮起した朱乃達の攻撃を受けて完全に正体を現す。

 

 

○自然コントロールマシーン エンザン

►スペックデータ

・体長:62m

・体重:8万7000トン

・分類:不明・自然コントロールマシーン

・出身地:T県・油田山

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第45話登場。『炎山(エンザン)』ともいう。我夢の故郷、T県の吉岡街付近にある油田山の中から現れた怪獣で以前現れたテンカイの同種。高熱を発し、周囲の気温を上昇させる。背部にはエネルギーゲージが備わっており、ゲージが最大に達すると、石版状態からクワガタムシのような姿に変形する。胸元には『炎山』にいう文字に似た篆書体が描かれている。

武器は腹部から放つ高熱の火炎弾とクワガタのような大顎から繰り出す赤色の電撃。また、表面は絶縁素材でコーティングされており、レーダーで感知されない特性も持ち合わせている。

 劇中では地球が第2の氷河期を防ぐために地球の気温を上昇させて南極、北極の氷を溶かそうとしていた。

最初は半分しかゲージが溜まってなかったが、四之宮にとある怪獣メダルを吸収させられたことでエネルギーが最大になり、怪獣形態へ変形した。

ガイアとの戦いではほぼ終始圧倒され、最後はフォトンエッジで倒された。

 

 

○合体魔王獣 ゼッパンドン

►スペックデータ

・体長:60m

・体重:4万5000トン

・分類:魔王獣(イレギュラー)

・出身地:不明

・初出作品:『ウルトラマンオーブ』

 

►概要

 第45話登場。四之宮の体に憑依したジャグラスジャグラーがとある道具と3枚の怪獣メダル(ゼットン、パンドン、マガオロチ)を使って変身した合体怪獣。

ゼットンとパンドン、マガオロチの特徴を兼ね備えた見た目をしている。

武器は口から放つゼッパンドン撃炎弾(チャージ版もあり)、パンドンの口から放つ紫色の破壊光線。

更にあらゆる光線を防ぐバリアのゼッパンドンシールドやゼットン譲りの瞬間移動、光線を吸収する能力を持っている。それだけでなく、マガオロチ由来のパワーも駆使できるので、遠近両方からも死角がない。

 第45話ではガイアの現在の実力を図る為に変身した。前述の能力でガイアを追い詰めるが、真上には展開できないゼッパンドンシールドの弱点を見破られて顔面に蹴りを食らった隙にスプリームヴァージョンになったガイアの連続投げをたて続けに食らい、フォトンストリームで倒された。

 

 

 

 

◆第八章

○守護獣 ルクー

►スペックデータ

・体長:52m

・体重:4万8000トン

・分類:不明(生物なのか幻なのか不明瞭)

・出身地:ウクバール

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第46話登場。別名ルクーリオン。自称・ウクバール出身の男、永田が住む町に突如現れた正体不明の怪獣で、頭部は目の代わりに回転する赤い部位があり、全体的にロボットと生物の中間の様な見た目をしている。歩行時にはシンバルの様な音が鳴る。

その姿は永田が生まれ育った家にあるカレンダーに描かれている空中都市(ウクバール)に一緒に描かれている怪獣と同じ。

敵意はなく、町を壊したり、立ち塞がるガイアとダイナに対して危害を加えることはなかった。ただ、その力は凄まじく、ガイア、ダイナの2人がかりの制止でも逆に押し返す程。

 劇中ではウクバール出身という永田を迎えに突如現れ、制止するガイアとダイナをもろともせず難なく進む。

最後はガイアがクァンタムストリーム、ダイナがフラッシュサイクラーを放つ前に「ウクバールでは夕方になるとみんな家へ帰る」というサイレンの音が鳴り、永田と共に忽然と姿を消した。

この怪獣は存在しているのか?それとも幻なのか?そもそもウクバールなんて存在するのか?

真相は闇の中である……。

 

 

○超空間波動怪獣 サイコメザードII(ツー)

►スペックデータ

・体長:66m

・体重:3万6000トン

・分類:不明・波動生命体

・出身地:ワームホール

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第47話登場。以前現れたサイコメザードと同種の怪獣。姿形はサイコメザードとあまり変わらないが、大きく違うのは腹部に人面があること。普段はワームホールに身を隠しており、そこから脳のシナプス神経回路を刺激して幻覚を見せる幻覚誘発粒子を降らせ、人々を操る。

武器は両手から放つ電撃。

 駒王町上空から電気系統を狂わせる特性も持つ幻覚誘発粒子を放出してリアスやそこを通りかかった飛行機のパイロットを操って墜落事故を起こさせた。

夜の遊園地でリアスを『リリア』という架空の少女の幻を見させて操り、最終的に彼女を何処かへ連れていこうとした。

リアスの母・ヴェネラテの一言でリリアが自分が過去失くした人形ということを思い出し、幻覚から解放されたことで一気に弱体化。

その後ダイナと戦うが、ミラクルタイプのスピード殺法に押され、最後はレボリウムウェーブで倒された。

 

 

○幻覚宇宙人 メトロン星人

►スペックデータ

・体長:2m(等身大時)

    50m(巨大化時)

・体重:120キロ(等身大時)

    1万8000トン(巨大化時)

・分類:宇宙人

・出身地:メトロン星

・初出作品:『ウルトラセブン』

 

►概要

 第48話に登場。遥か彼方、地球から遠く離れたメトロン星からやって来た宇宙人。

容姿はウルトラセブンに登場したメトロン星人と同じで、紳士的な振る舞い方をする。人間にも擬態できる

(人間態時の姿・声は寺田 農さん、星人時の声は中江 真司さんのイメージ)。

花粉を吸った人を幻覚と強い不安感を与える効果を持つ『コンフィグフラワー』を用い、人々を錯乱させ、世界中を混乱に陥れた。

 最初こそは侵略しようと地球にやって来て北川町のボロアパートに潜伏したが、地球人の現状に失望し、侵略をやめた。その代わり、自滅への手助けと称して日本各地にコンフィグフラワーの花粉をばら蒔いた。

我夢や瀬沼の協力で潜伏地を突き止めた一誠とリアスを部屋に招き入れ、『眼兎龍茶(めとろんちゃ)』と言うお茶でもてなし、ちゃぶ台を挟んで今回の事件を引き起こした経緯を話す。

その後、巨大化し、一誠もダイナに変身。夕焼けの情景に感動しつつも迎えに来た宇宙船に乗って、メトロン星に帰っていった。

別れ際にダイナへ手を振る、お茶をもてなしクラシック音楽をかける等とフレンドリーな一面も覗かせた。

 

(関係ないが、作者がウルトラセブンで一番好きな宇宙人がこのメトロン星人だったりする)

 

 

○宇宙忍獣 X(クロス)サバーガ

►スペックデータ

・体長:75m

・体重:8万2000トン

・分類:不明

・出身地:ワームホール

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第49話に登場。藤宮が自爆特攻で破滅招来体へ一矢報いる為に開いたワームホールから出現した怪獣でワームホールの番兵とされている。

武器は左手のドリル、翼を使っての体当たり攻撃に高層ビルを軽々と吹っ飛ばす尻尾攻撃。更には右手を巨大化させて掌の穴から小クロスサバーガと呼ばれる爆弾怪獣を放つ。

再生能力に分身能力、畳返しでガイアのガイアスラッシュを防いだり、地中を掘り進んで奇襲を仕掛けたりと『宇宙忍獣』の異名通り、多彩かつトリッキーな戦法を得意とする。

 劇中では藤宮を救いだしたガイアを追って地上に降り立ち交戦。前述の能力でガイアを追い詰めるが、分身能力のトリックを見破った藤宮が投げた爆弾で分身が消滅。

奮起してスプリームヴァージョンとなったガイアの怒涛の連続攻撃を立て続けにくらい、顔面をスプリームパンチで歪まされた挙げ句、最後はスプリームキックで粉砕された。

 

 

○地殻怪地底獣 ティグリス

►スペックデータ

・体長:90m

・体重:11万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:津村湖の地底

・初出作品:『ウルトラマンガイア』

 

►概要

 第50話に登場。白虎の様な姿をしており、武器は前足を使った踏みつけ攻撃と長い尻尾。

津村湖の地下1500メートルに生息していた怪獣だが、大勢の部下を失い、地球怪獣への復讐心に燃えるG.U.A.R.D.環太平洋部隊の柊准将が先制攻撃に地底貫通弾を打ち込まれた被害者。

致命傷を負いつつも生きており、自分を攻撃した柊に対し怒り狂い、発射基地付近に出現した。

有害物質によって汚染された黄色い血を流しながら柊がいる管制室目前まで迫るものの、自走砲台ガン・メンの集中砲火をくらい、涙を流しながら絶命。

最後は藤宮の願いを聞き届けたガイアの手によって地中に埋葬される。

 

 

 

 

◆第九章

○肉食地底怪獣 ダイゲルン

►スペックデータ

・体長:60m

・体重:8万トン

・分類:地球怪獣

・出身地:人間界地底

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第53、第54話に登場。シュモクザメのような顔をした獰猛な肉食怪獣。

武器は鋭い牙と尻尾、更には口から吐く高熱の火炎。

地底でのんびり暮らしていたが、その狂暴さに目をつけたヴァーリによって捕獲される。

 劇中では、ヴァーリチームのルフェイがヴァーリに代わり、曹操へのお仕置きとして召喚された。

元々獰猛な上に3日間エサを与えられていなかった為、我夢達を見てヨダレを滝のように流して襲いかかり、英雄派の構成員を次々と食べていった(しかし、アンチモンスターは不味かったのか、亡骸を吐き出している)。

その後、変身したガイアとダイナのコンビと戦うと思われたが、ヘビクラが変身したジャンボデュークが乱入し、そのまま戦闘。

奮闘するが超獣の力量差を前に圧倒され、尻尾も切断された。

ジャンボデュークと火炎を吐き合うが、敗北。最後は全身を火だるまにされた上にジャンボデュークが放ったミサイルによって爆発四散した。

 

 

○大超獣 ジャンボデューク

►スペックデータ

・体長:59m

・体重:2万5000トン

・分類:合体超獣

・出身地:不明

・初出作品:『ハイスクールG×A』

 

►概要

 第53、第54、第59話に登場。ヘビクラ・ショウタ(ジャグラス ジャグラー)がダークゼットライザーと2枚の怪獣メダル(カウラ、巨大ヤプール)を使って変身した合体超獣。

両腕は巨大ヤプール、それ以外はカウラの姿をしている。

武器は口から吐く高熱の火炎と無数のミサイル、巨大ヤプールの鎌常の右腕から放つレーザーに頭部の角から放つ紫色の光線を始め、合体元2体の能力を全て使える。

なお、登場時は歴代の超獣同様、空を割って現れる。

 第53話では、ダイゲルンと戦おうとするガイア、ダイナの前に突如として現れた。

第54話では、現状把握とガイア、ダイナの実力を図る為に変身した。前述の能力と超獣の持つ強力な力でダイゲルンをあっという間に倒してしまった。

続けてガイア、ダイナと戦闘開始するが、2人のコンビネーションとアザゼル達の援護攻撃に徐々に追い詰められた為、更に3枚の怪獣メダルをスキャンしてジャンボキングに変身した。

 第59話では実力を図る為、ミジー星人が操縦するガラオンと対峙するティガ、ダイナ、ガイアの前に現れる。

その場にいたガラオンを吹っ飛ばし、安全な異次元の中でジャンボキングへ多段変身する。

 

 

○最強超獣 ジャンボキング

►スペックデータ

・体長:59m

・体重:5万トン

・分類:合体超獣

・出身地:不明

・初出作品:『ウルトラマンA』

 

►概要

 第54、第59話に登場。先述のジャンボデュークに3枚の怪獣メダル(ユニタング、マザロン人、マザリュース)を追加スキャンすることで変身する合体超獣。

『ウルトラマンA』最終話に登場した個体と姿形は同じで、ヘビクラ・ショウタ(ジャグラス ジャグラー)が変身する。

武器はジャンボデューク時に使えた能力に加え、ユニタングの両腕から相手を絡みとる粘着性のある糸、マザリュースの可燃性ガス、マザロン人のパーツから放つ相手を怯ませる光線等、4体の超獣と巨大ヤプールの能力を全て使える。

更には空を割って異次元へ自由に行き来することも可能で、異次元へ逃げて相手の攻撃を避けつつ、不意打ちを仕掛けるトリッキーな戦法を披露した。

 劇中ではジャンボデューク相手に善戦するガイア達に対抗する為、強化変身した。

3体分の超獣の力が加わったことや上述の能力でガイア達を終始圧倒するが、異次元から姿を現す際は空間に僅かな歪みが生じるという弱点を見破られ、アグルブレードの一撃をくらってしまう。

それでも余裕があるのか戦闘続行しようとしたが、悪酔いしたロスヴァイセの乱入によって撤退した。

 第59話ではティガ、ダイナ、ガイアの実力を図る為に現れて間もなくジャンボデュークを経て多段変身する。

異次元へ自由に移動する能力や全身に内蔵されているミサイル等で3人のウルトラマン相手に立ち回るが、ティガとダイナのコンビネーション技によって体を貫かれる。

貫かれてもなお戦おうとするが、ティガ、ダイナ、ガイアの一大必殺技TDGスペシャルの前に倒される。

その際に吹き飛ばされた怪獣メダルは何物かの手によって回収されたので、変身不可能となっている。

 

 

○超古代怪獣 ゴルザ

◆パラメータ

・身長:62メートル

・体重:6万8000トン

・分類:超古代怪獣

・出身地:モンゴル平原

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

◆概要

 第56話に登場。太古の昔、人類と闇が争っていた時期から存在していた古代怪獣で、闇の眷属。体表は古代怪獣共通の岩石状となっている。

ユザレからは「大地を揺るがす怪獣」と呼ばれており、その異名通り、怪力を活かした戦い方を得意とする。

武器は前述の怪力と頭部から放つ「超音波光線」。

本作では、モンゴル平原の地中で眠っていたところを破滅招来体の手によって、目覚めた。その後、英雄派に洗脳され、メルバと共にティガのピラミッドに眠る3体の巨人像の破壊を行った。

3体のうち2体は破壊したが、残る1体の巨人像(ティガ)は復活し、メルバと協力してそのまま対峙する。

自慢の怪力とメルバとの連携攻撃でティガを苦しめるが、パワータイプにチェンジしたティガに押される。敵わないと否や地中を掘って逃亡しようとしたが、ティガに尻尾を掴まれて引っ張り出され、最後はティガのデラシウム光流を受けて倒される。

 

 

○超古代竜 メルバ

◆パラメータ

・身長:57メートル

・体重:4万6000トン

・飛行速度:マッハ6

・分類:超古代怪獣

・出身地:イースター島

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

◆概要

 第56話に登場。ゴルザと同じ古代怪獣で、鳥のような姿が特徴。体表は古代怪獣共通の岩石状となっている。

ユザレからは「空を切り裂く怪獣」と呼ばれており、両肩から生えている翼を使っての空襲を得意とする。

武器は両腕のカッターハンドと鋭い嘴、目から放つ怪光線。

本作では、イースター島の地中に眠っていたところを根源的破滅招来体の手によって目覚めた。

その後、英雄派に洗脳され、ゴルザと共にティガのピラミッドに眠る3体の巨人像の破壊を行った。

3体のうち2体は破壊したが、残る1体の巨人像(ティガ)は復活し、ゴルザと協力してそのまま対峙する。

飛翔攻撃とゴルザとの連携攻撃でティガを苦しめ、逃亡するゴルザの手助けをしたが、ロスヴァイセ達によって妨害され、その間にティガにゴルザを倒された。

ゴルザを倒され、上空へ撤退しようとしたが、スカイタイプにタイプチェンジしたティガのティガ・スカイキックで蹴り落とされ、立ち上がったところをランバルト光弾を受けて倒される。

 

 

○二面鬼 宿那鬼

◆パラメータ

・身長:58メートル

・体重:4万8000トン

・分類:鬼神

・出身地:京都・宿那山

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

◆概要

 第57話に登場。顔の表と裏に顔がある白の長髪を持った1つ目の鬼。

 武器は前の口から放つ光弾と裏の口から吐く突風、更に山に隠していた刀を使った剣技を得意とする。

 元々、京都妖怪の一種であったものの生まれ持つ残虐性から魔頭と共に血と暴力による世界を作り出そうとしていた。

しかし、時の剣豪『錦田小十郎景竜』によって魔頭共々成敗され、その体は刀と共に宿那山へと封印された。

だが、山中でさ迷っていた男を魔頭が操り、刀を持ち出したことで封印が解かれ、ガンQの呪術によって現代に完全復活した。

 手始めにガンQと共に京都を焼き払おうとするが、ダイナ、ガイアと対峙する。苦戦するが、ガンQの人質作戦によって動きを封じられた2人を痛め付け、刀で首をはね飛ばそうとする。

 間一髪のところで助けに入ったティガによって妨害され、そのまま対峙。刀を応戦するもティガスライサーによって刀と首を切断された。

首をはねられてなお胴体で襲いかかるがティガに投げ飛ばされ、ゼペリオン光線を受けて爆散。

頭だけとなっても不意打ちでティガの首を噛みきろうとするが、景竜が投げ飛ばした刀によって再封印された。

 

 

○再生怪獣 ダイゲルン

►スペックデータ

・体長:60m

・体重:6万トン

・分類:地球怪獣(寄生)

・出身地:京都・宿那山付近

・初出作品:『ハイスクールG×A』

 

►概要

 第57話に登場。以前倒されたダイゲルンの死骸にジャグラーが投げ入れた『サイクロメトラ』の怪獣メダルによって寄生怪獣として蘇った。所謂、ゾンビ怪獣で身体中は継ぎ接ぎの後がある。

 武器は口から吐く火炎と怪力。尻尾も武器ではあるものの、ジャグラーが面倒くさがって接着しなかった為、尻尾は斬られたままである。そのせいで尻尾が無いのに攻撃しようとするコミカルなシーンがある。

 ジャグラーがこて調べの為に送りこんだもののダイナの敵ではなく投げ飛ばされ、特に活躍しないままティガのゼペリオン光線を受けて倒された。

 

 

○知略宇宙人 ミジー星人

►スペックデータ

・体長:180cm

・体重:80キロ

・分類:宇宙人

・出身地:ミジー星

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第59話登場。地球侵略の為にミジー星からやって来た秘密工作員。宇宙人としての姿は皆共通だが、各個体によって体型は違う。劇中ではリーダー格のミジー・ドルチェンコ、口数が少ないミジー・ウドチェンコ、オネエ風のミジー・カマチェンコが登場した。

 武器はビームが飛び出る光線銃。しかし、射撃はかなり下手でカモフラージュに使用していた防御シールドを破壊してしまい、怪獣工場の存在を露呈してしまっていた。また、3人共共通して間抜けである。

 タンニーンの領地にある雪山の一角に工場を作り、表向きはソフビ工場として活動しているのを裏に侵略ロボットガラオンを製作していた。

しかし、そこをライザーに目撃されて敢えなく失敗。

最初は全長400mもの高さを持つガラオンで戦おうとするも胴体と頭を繋げる部品を着け忘れ、結局頭だけで戦うことに。

 意外と善戦するもティガのマルチ・スペシウム光線でガラオンが故障。捨て台詞を最後まで言わせてもらわせないまま、乱入したジャンボデュークにガラオン共々吹っ飛ばされていった。

 

 

○三面ロボ頭獣 ガラオン

►スペックデータ

・体長:56m

・体重:6万5000トン

・分類:ロボット怪獣

・出身地:冥界・タンニーン領地

・初出作品:『ウルトラマンダイナ』

 

►概要

 第59話登場。地球侵略を企むミジー星人が開発した特殊戦闘用メカニックモンスター。三面の異名通り、怒り顔、泣き顔、笑い顔の3つがある。頭に短い手と足が生えただけなので、かなり不恰好。

 本来は全長400メートルを誇る巨大ロボットだが、頭と胴体を繋げる部品を取り付けるのを忘れた為、頭だけで戦っている。

 武器は三面から放つ光線。そして、笑い顔は笑気ガスを発射することが可能。その威力は絶大でダイナすら抱腹絶倒させる。

 上記の兵器で3人のウルトラマンと戦い、意外と善戦するも操縦者であるミジー星人が油断した隙にティガのマルチ・スペシウム光線を受けて故障。

最後は乱入したジャンボデュークにミジー星人共々吹っ飛ばされていった。

 

 

 

 

◆第十章

○地中鮫 ゲオザーク

►スペックデータ

・体長:48m

・体重:5万3000トン

・分類:ロボット怪獣

・出身地:地球

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

►概要

 第60話登場。スパークレンスを狙うヴァーリがフェンリルのデータを基に作られた鮫に似たロボット怪獣。生物的な外見をしているがカモフラージュの人工皮膚で、その下には機械たらしめる本来の皮膚がある。

 武器は背鰭による地底潜行攻撃や尻尾による攻撃、地面を叩いての空中飛行体当たり。鼻先から放つ青色の破壊光線。口に生え揃っている歯はパワータイプのティガの皮膚を傷付ける程の鋭さと強度を誇っている。なお、眼には開発者であるヴァーリが映り、ティガにしか聞こえない周波数で話しかけることが出来る。

 ヴァーリの命令通り、遊園地の来客者をけしかけようとしたところをティガと対峙。パワータイプになったティガに地中から引っ張り出され、パワータイプにも負けず劣らずのパワーで応戦するも不得意な地上戦だけあって押される。

そのまま止めを刺されそうになるが、瞳にヴァーリが映ったことで隙を見せたティガに反撃。鋭い歯でティガの左肩に噛み付くなど痛め付けるが、最後はデラシウム光流を口に投擲されて爆散。

倒されはしたものの、元々の目的であるティガを疲弊させることには成功した。

 

 

○イーヴィルティガ

►スペックデータ

・身長:54m

・体重:4万4000トン

・分類:闇の巨人

・出身地:熊本・地下遺跡

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

►概要

 第61話「影を継ぐもの」に登場。第60話のラストでヴァーリが見つけた巨人像と大悟から奪ったスパークレンスを自ら製作した光遺伝子コンバータを使って、無理矢理一体化した結果、生まれた闇のウルトラマン。姿はティガに似ているが、隈が入った目は青く、ボディーカラーは白と黒を基調とし、声はティガより野太く、カラータイマーも低音。暴走している影響でタイプチェンジは出来ない。

 最初のうちは制御出来ていて、熊本に集まったXIG(特にアザゼル)に自慢するぐらい余裕だったが、間違った心で光になったせいで次第にウルトラマンの力を制御出来なくなり、遂には敵味方わからず暴走した。しかもアルビオンの意識も失う程にまで正気を失っている。

ひと暴れした後、舞台を市街地に移して、XIGと交戦するが、ヴァーリの元々高い実力に加え、ウルトラマンの強大な力で圧倒する。

必死に止めようと駆け付けたガーディーを必要以上に痛め付け、駆け付けたティガの目の前で殺害する。

憤怒するティガとお互いのカラータイマーが赤になるまで一進一退の攻防を繰り広げるが、ティガのウルトラブレーンチョップで大ダメージを負う。それでもイーヴィルショットを放とうとするがダメージが深くて撃てず、ティガのセルチェンジビームと織り混ぜたゼペリオン光線を受けて、光の粒子状となって消滅した。

変身していたヴァーリは無事でXIGに捕縛されるが、無理矢理ウルトラマンに変身した副作用で発狂していた。

 ちなみに劇中でイーヴィルティガは「偽者」と呼ばれているが、彼自身は元々光の巨人であり、顔はたまたまそっくりなだけである。闇の巨人や悪者扱いになってしまったのは変身者のヴァーリの問題であるのを間違えてはいけない。

 

 

○超古代狛犬怪獣 ガーディー

►スペックデータ

・体長:52m

・体重:4万8000トン

・分類:超古代怪獣(光)

・出身地:熊本・地下遺跡

・初出作品:『ウルトラマンティガ』

 

►概要

 第61話「影を継ぐもの」に登場。イーヴィルティガとなった巨人像の隣にあった狛犬に似た怪獣像に気絶した子犬の魂が合体して蘇った怪獣。胸元にはティガやイーヴィルティガ同様のカラータイマー(ガーディータイマー)があり、普段は青だが、活動時間の限界がくると、赤く点滅する。点滅音はイーヴィルティガと同じ。

大悟の発言によると、イーヴィルティガの相棒らしく、彼と一緒にかつて地球上に現れた闇の勢力と戦っていたと思われる。

 武器は鋭い牙を駆使した噛み付き攻撃と頭部の角を使った体当たり攻撃。

 劇中では、ヴァーリの邪な心のせいで闇の巨人となってしまったかつての相棒・イーヴィルティガを止めるべく復活し、都市部で暴れまわる彼と交戦するリアス達の前に現れた。涙を流しながら必死に諫めようとするが、巨人の力に飲み込まれたイーヴィルティガに一方的に痛め付けられ、駆け付けたティガの目の前で殺された。

その後はイーヴィルティガが倒したティガによって宇宙へ埋葬された。

 なお、一体化した子犬は無事であり、元気そうに走り回っていた。

 

 




足りない項目及び誤字脱字がございましたら、コメントよろしくお願いします。


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プロローグ「高山我夢」

はじめまして、初投稿の「まゆはちブラック」と申します!
私の好きなラノベ作品の1つの「ハイスクールD×D」に、好きなウルトラ作品の「ウルトラマンガイア」を合体させてみよう!という思い付きで創作しました!
文章力&語彙力皆無でにわかな点がありますが、どうぞよろしくお願いいたします!
長くなりましたが、本編をお楽しみ下さい!


目が覚めると、少年は見知らぬ場所に立っていた。

 

そこは何処なのか、本当に実在するのかわからない不思議な空間のように思え、周りを見渡すと地面から鍾乳洞にあるような剣山みたいのが生えており、よく映画や小説などにある地底世界みたいだな、と少年は思った。

そのとき、背後から地響きが鳴った。

 

少年は驚いて後ろへ振り返ると手足がなく、黄色の鋭い瞳をしたまるで蛇のような巨大な生物と、銀色と赤い体に銀色の優しそうな瞳を持ち、金に縁取られた胸のプロテクターの中央には青く輝く宝石のようなものがついた巨人が戦っていた。

 

蛇のような巨大生物は、その長い鎌首をもたげて巨人をしきりに威嚇していた。対する巨人は両腕を左右にひろげ、両腕を頭の位置に持っていきながら頭を下げ、頭に鞭のようなエネルギーを集め、それを巨大生物に射出した。

巨大生物はエネルギーが直撃したとき、全身を刃で切り裂いたようなエフェクトが入り、直後に爆発四散した!

 

少年「うわぁっっ!!!」

 

その威力に少年は吹き飛ばされそうになるが、なんとか踏んばった。危なかったなぁ、とひと安心していると、先程の巨人がこちらを正面から見下ろすように見つめていた。

 

少年「君は…一体…?」

 

そう言った瞬間、

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリ!!!!

 

 

 

 

 

 

ハッ!と少年は目覚め、スマホのアラームを止めた。

 

少年「なんだぁ~、夢か‥」

 

少年は先程の出来事が夢だと知り、ホッと少し安心した。

 

少年「(あんな出来事が現実じゃないわけないよな。それにしてもとても壮大な夢だったな~)」

 

先程の夢を思い出して少しだけ笑い、スマホを点けてみると、

 

少年「8時30分!?(しまった!昨日寝ぼけてて、休日用の時間にセットしてしまった!)」

 

何故焦っているのか。それは少年が通っている駒王学園は午前8時45分から朝のHR(ホームルーム)があり、それに遅刻すると、放課後に反省文を5枚書かされるのである。

そんなことになりたくない!と思いながら少年は急いで敷き布団をたたみ、タンスから制服を取りだして着替え、簡単な朝食を済ませると、マンションを出た。

 

 

 

 

 

 

 

今急いで走っているところけど、僕の自己紹介をしよう。

僕の名前は「高山 我夢( たかやま がむ)」。駒王学園に通う17才の高校生だ。ここ、駒王町は、去年の3月から住み始め、両親とは離れて、マンションで1人暮らしをしている。僕の将来の夢は量子物理学者になることで、駒王学園は中でも多数の有名大学の推薦があるので、その夢を叶えるために通っている。

 

しばらく走っていると、校門が見えてきた。

我夢は間に合ってくれ!と思いながら全力疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

結果は、何とかギリギリ間に合った!

自分が教室の近くに来たときは担任の先生が教室に入ろうとしていたので、とてもヒヤヒヤした…。

今回反省文は書かなくて済みそうだ…。

ホッと安心しながら担任の先生の本日のお知らせや注意事項などを聞き、朝のHR(ホームルーム)が終了した。

 

???「おはよう!我夢!珍しいな~、ギリギリに来るなんて!」

 

HR(ホームルーム)を終え、1時間目の授業の準備をしていると、前の席に座っている茶髪で熱血漢溢れている男子が椅子をそのままにしてこちらに体を向けて話しかけてきた。

 

ここで彼の紹介をしよう。彼の名前は「兵藤 一誠(ひょうどう いっせい)」。通称「イッセー」。幼稚園~高校からの付き合いで、昔から何をするのも一緒ないわば、幼馴染というものである。

 

我夢「昨日寝ぼけてて、スマホのタイマーを休日用の時間にしてちゃったんだよ。それで、遅れたんだ」

 

一誠「はは!ドジだなぁ~、俺なんか今日朝一番に学校に来たぜ!!」

 

我夢「というか、毎日でしょ」

 

一誠「お、そうだな!ははは!」

 

僕が理由を答えると、イッセーはそう答え、

その答えにツッコミをいれるととぼけていたように笑いながら答えた。

 

???「よう!我夢!」

 

???「遅かったな、何か会ったのかい?」

 

そうイッセーと話していると坊主頭と眼鏡をかけた2人組の男子が話しかけてきた。

坊主頭の男子が「松田(まつだ)」、眼鏡をかけた男子が「元浜(もとはま)」。2人とも中学時代からの友人だ。この2人とイッセーは僕の親友と呼べる存在だ。

 

僕は先程イッセーに話した理由を説明した。

 

松田「珍しいよな、俺たちより真面目な我夢が寝坊するなんて」

 

元浜「しかし、馬鹿なイッセーにそう言われるとは我夢が可哀想だな」

 

一誠「おい!俺が馬鹿って、ってどういうことだ!!」

 

松田は少し驚いたような顔をして言い、元浜はイッセーを笑いながらディスり、それを聞いたイッセーは元浜につっかかった。その日常的な光景に僕は微笑んだ。

 

我夢「まぁ、とりあえず今日の1時間目はパソコン室だから、そろそろ移動しない?」

 

一誠「そうだな!そろそろ行こうか!」

 

我夢がそう言うと、一誠、松田、元浜、我夢の4人は教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

時が経ち、放課後となった。

我夢は帰るための身支度をしていると、何やら一誠、松田、元浜の3人が円陣を組んでヒソヒソと何かを話していた。それを終えると3人はニヤニヤしながら教室を出た。

我夢はまたかぁ~、と思いながらため息をつき、彼らの後をつけた。

 

 

彼らは確かに我夢にとってはとてもいい友人たちだが、1つだけ欠点がある。

それは…

 

松田「おお!でかしたぞ!元浜!(ヒソヒソ)」

 

一誠「村山(むらやま)の胸、またでっかくなってね!?(ヒソヒソ)」

 

松田「片瀬(かたせ)の足、たまんねぇ~~~~!!(ヒソヒソ)」

 

元浜「俺の見解によると、村山が上から84、70、81、片瀬が78、65、79…(ヒソヒソ)」

 

一誠&松田&元浜「「「ムヘヘヘヘヘ(ニヤニヤ)」」」

 

そう、かなりの()がつくほどの変態である。

彼らはは日常的にセクハラ発言をしたり、女子をいやらしい目で見たり、今行っているような剣道部の部室を覗いたりするなどを毎日のように行っているので、彼らは学園の全員から「変態3人組」と言われ、男子からは別の意味で尊敬され、女子からは冷たい視線を向けられ、教師陣からはあきられている。

この駒王学園に入ったのも女子生徒の比率が高く、可愛い女の子からモテたい!というのが理由である。

が、当然そんな変態行為を毎日しているので、彼らは彼女の1人もできていない。なら、やめたらどうかと言ったこともあるが、彼らは「「「これが青春!!」」」と声を揃えて言い、反省する気が全く無いので説得するのを半分あきらめている。

 

元浜「おい!俺にももっと見せてくれ!(ヒソヒソ)」

 

一誠「お、おい!押すな!押すな!(ヒソヒソ)」

 

松田「あんまり物音立てんなって!バレるだろ!(ヒソヒソ)」

 

彼らを後ろの木から見ていたが、そろそろ止めさせたほうがいいな、と思いスマホを点け、WINEで村山と片瀬に「部室の外で例の3人組がいる」と送った。

 

数秒後、剣道場から剣道部の女子部員が出てきて、彼らは叩きのめされた。

御愁傷様です、と思っているとたくさんの剣道部員の中から茶髪で髪を左右に束ねたロングヘアの女子の「村山」と、ピンク色の髪にヘアバンドをつけた女子の「片瀬」が近付いてきた。

 

村山「高山君、今日も情報くれてありがとー♪」

 

片瀬「しかし、こいつらに振り回されているなんて大変ね。もう、こいつらと関わるのやめたら?」

 

「「「「「「「うんうん」」」」」」」コクッ

 

村山はにっこりと微笑みながら言い、片瀬は僕に同情の眼差しを送り、うつ伏せで倒れている松田の尻を蹴りながら言った。その言葉に他の剣道部員も頷いた。

 

我夢「うん、ありがとう。それでも僕の大切な友達だから関わらずにいられないんだ。

じゃあ、3人を連れて帰るから部活頑張ってね!」

 

僕はそう言いながら微笑むと、3人の制服の首根っこを掴んで引きずりながら校門の方へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

村山「高山君って相変わらずイケメンよね///」

 

片瀬「うん、可愛い系っていうか守ってあげたい系男子っていうか///」

 

「私、今度告白しようかな~?///」

 

「やめなって、木場(きば)君に並ぶくらい狙っている娘が多いから」

 

「そうか~…」

 

村山や片瀬、他の剣道部員の言う通り、確かに我夢はイケメンの部類に入っているが、本人は少し鈍感であるため、女子から人気であることに我夢は全く気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

一誠「いてて~、まだ竹刀で叩かれたところが痛むなぁ」

 

松田「今日も大分叩かれたな、いたた」

 

我夢「大丈夫?」

 

あのあと、我夢は目が覚めた3人と一緒に通学路である路地を歩いていた。3人とも苦痛の表情を浮かべていたので、心配の言葉をかけた。

 

元浜「ああ、大丈夫…って、我夢!また俺たちを裏切ったな!!」

 

そう言いながら元浜が怒りの表情で我夢をヘッドロッグした。

 

我夢「く、苦しい……。いやいや、あれは自業自得だって!ギブギブ!!」

 

そう言うと元浜はヘッドロッグを解除した。

 

松田「なんで俺たちの場所がわかったんだ?」

 

我夢「ハァーッ、ハァーッ、僕は君たちと長い付き合いだから、行動パターンぐらいわかるよ…」

 

我夢は松田の疑問に首をおさえながら息を整え、そう答えた。

 

我夢「もう、こんなことやめた方がモテると思うのに…」

 

一誠「いいや!絶対にやめない!それが俺たちの青春の1ページだからだっ!」

 

松田「イケメン君にはモテない男の辛さがわかるもんか!!」

 

我夢「い、いや!僕そんなにイケメンじゃないよ!」

 

元浜「がぁぁ~~!自覚してないだと!?この女ったらしめ!!!」

 

我夢「女ったらしじゃないって!痛い痛い痛い!」

 

3人にやめるように言ったが、反省するどころか逆に開き直り、血の涙を流しながら僕は3人にプロレス技をされた。

 

3人がそれぞれの好みのタイプ(主にスタイル)の良さについて話合い、我夢が苦笑いしなから聞いていると、いつの間に我夢の住んでいるマンションの近くに来ていた。

 

我夢「じゃあ、僕ここだから。また明日!」

 

一誠「おう!じゃあな!」

 

松田「今夜、WINEで数学の宿題とこ送ってくれよ!」

 

元浜「また、明日な!」

 

我夢は3人に笑顔で別れを告げると、それぞれが手を振りながら返事を返してくれた。我夢はエレベーターに乗り込み、自分の部屋がある階を押した。

 

 

 

 

 

 

今日も1日頑張ったなぁー、と思いながら我夢は布団を敷いて寝転がっていた。松田に宿題の写真も送り、今日も何も変わらない平和な1日だったので、我夢は喜びで頬を緩めた。

 

我夢「それにしてもあの巨人は何だったんだろう?」

 

我夢は今日見た夢の中に出てきた巨人が少し気になっていた。しばらく、その事について考えているといつの間にか深夜0時に差し掛かろうとしていた。

 

我夢「あ、いけない!もう寝ないと!」

 

我夢はスマホのアラームをセットして、寝室の電気をきった。

 

我夢「(このまま平和な生活を送れたらいいな。)」

 

我夢はそう思うと、睡魔に意識を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この時の我夢は思わなかった……。

日常を壊すものが宇宙から迫っていることに……。

 

 

 




次回予告

 駒王町に宇宙怪獣襲来!!
 町が、人が傷ついていくそのとき!
 地球が遣わした巨人が現れた!!
 
 次回、「ハイスクールG×A」!
 「光をつかめ!」
 君もヴァージョンアップ・ファイトだ!


良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第一章 旧校舎のディアボロス
第1話「光をつかめ!」


宇宙戦闘獣 コッヴ 登場!


あの巨人の夢をみてから5日経った。あれ以降、特に変わったことや刺激的な出来事はなかった。今日は日曜日でイッセー達と一緒にカラオケにいく約束で、駒王駅近くの噴水と円形状の石畳のある公園で待ち合わせていた。

 

我夢「3人ともまだかなー」

 

我夢がそう言いながら公園の中央にある時計を確認した。

今は11時50分で、集合時間は正午なのでその間の時間に来るだろうと思い我夢は持ってきていた飲料水を口に含んだ。我夢はあまり歌うのは得意の方ではないが、友人と行くとなると別で、我夢の頭の中は楽しみでいっぱいだった。そんなことを思いながら我夢は3人が来るのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

その頃、宇宙空間では地球の近くに突如巨大なワームホールが出現し、中から隕石が猛スピードで日本に向かって進んでいた。

 

 

 

 

 

 

一誠「おーい!我夢!お待たせ!」

 

あれから7分経ち、我夢は声がする方を振り向くと3人が到着した。

 

提案者である一誠が今日の流れを説明しようとしたとき、隕石が彼らのいる場所の近くに落ち、土埃と衝撃が彼らを襲った。

 

松田「ケホッ、ケホッ!な、何だ!?」

 

元浜「あ!あれ見てみろよ!」

 

土煙と衝撃が収まり、松田が咳き込みながら言うと、元浜が落ちた隕石がある方へ指を指した。指を差した方角を3人や周りの人達が視線を向けると、隕石が割れて中から三日月のように曲がっているトサカを持ち、両手が鎌のようになっていて、巨大なしっぽを持った巨大生物、「コッヴ」が姿を表した。

 

コッヴはトサカから光弾を発射すると、近くにあった建造物を次々と破壊した。同時に周りの人々はパニック状態になり、一目散に逃れるように走り去り、今まで人で賑わっていた公園も4人以外無人となった。

 

元浜「おい!俺たちも避難するぞ!」

 

一誠&松田「(コクリ)」

 

我夢「待って!あそこに男の子が!」

 

元浜が避難するように他の3人に言い、一誠と松田はその言葉に頷き、避難しようとするが、我夢が親とはぐれたのか公園の中央で泣いている男の子を見つけた。

 

我夢「あの子は僕が避難させるから3人は先に行ってて!」

 

一誠「ああ!気をつけろよ!俺たちは駒王駅近くの市民センターに行くから後で来いよ!」

 

我夢がそう言うと、一誠は納得したのか自分達がどこの避難所に行くかを告げ、松田と元浜と一緒にその方向へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人と別れた後、我夢は急いで泣いている男の子に近づいた。

 

我夢「ボク、お母さんと離れちゃたの?」

 

男の子「グスッ、グスッ(コクリ)」

 

我夢「じゃあお兄ちゃんと一緒に避難しようか?お母さんもそこにいるかも知れないし」

 

男の子「グスッ、グスッ。うん……(コクリ)」

 

我夢は腰を落として男の子との目線を合わせて、一緒に避難するように優しく話しかけた。それを聞いた男の子は返事をしながら頷いた。

それを聞くと我夢は男の子をおんぶし、一誠達が避難している避難所に向かって走っていった。

 

 

 

 

 

 

しばらく走っていると、男の子の母親と遭遇し、男の子を彼女に渡した。そのとき、母親からは涙がら感謝され、男の子からは笑顔で感謝された。我夢はそれを笑顔で返し、まだ他に避難できていない人がいないか確認するため先程の公園へ走っていった。

 

その様子を家の屋根から紅い髪の少女が眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、コッヴはほぼ焼け野原となった駒王町を移動しながら光弾や両手の鎌、「コッヴシッケル」と巨大なしっぽを駆使しながら町を破壊していた。

 

コッヴ「ガァー、キィィィーーーン!」

 

しばらく破壊していると頭にミサイルが被弾した。

コッヴは一旦破壊行動をやめ、その方角へ視線を向けると、5機の自衛隊の戦闘機がいた。

 

コッヴ「ガァー、キィィィーーーン!!」

 

コッヴは戦闘機部隊に威嚇した。戦闘機部隊は一斉にミサイルや銃弾を砲火したが、コッヴは全く無傷であった。コッヴは光弾を発射したり、その巨大なしっぽを駆使してあっという間に戦闘機部隊を全滅させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「そんな…、戦闘機が全滅するなんて……」

 

我夢は無人となった公園に戻り、他に逃げ遅れた人がいないか探していると、先程の光景の一部始終を見て落胆していた。

 

我夢「(このままこの町…、いや…、地球は滅びてしまうのか?)」

 

我夢がそう思っていると、急に公園の噴水が一時停止したように止まり、それだけでなく、コッヴ、飛んでいた鳥、雲、時計までもが止まった。

 

我夢「な、何だ?何が起きたんだ?うわーーーーーーーーーっっ!?」

 

我夢が円形状の石畳の中心まで歩くと急に石畳の外側が光だし、石畳はエレベーターのように我夢ごと地下へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「どこに繋がってんだよーーーーーーー!!!」

 

我夢はしばらく落ちていくと急に優しく赤い光が周りを包み、我夢が夢で見た景色とあの赤い巨人がこちらを見つめていた。

 

我夢「ウルトラマン!地球が危ないんだ!僕は君になりたい!」

 

我夢はなぜ巨人のことを「ウルトラマン」と言ったのか。それは本人にもわからないが、自然に頭の中に単語として出てきたからである。

 

ウルトラマンはそれを聞くと我夢の方へ両手のひらを差し出した。

 

我夢「僕を…試しているのか…?」

 

そう言うと我夢は両手のひらを巨人の手のひらへ合わせるように差し出した。

 

我夢「この光、とてもあったかくて…。僕を包んで…。違う!()()()()()()()()()()()…!!」

 

手を差し出すと、眩しいばかりの光が我夢の体を包んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では巨大生物が破壊活動を再開し、一誠達のいる市民センターの方角へ向かっていた。

 

紅髪「もう、我慢できないわ!」

 

???「部長、戦闘開始ですの?」

 

紅髪「ええ!私たちの存在がバレても構わない!戦闘開s…!」

 

しびれを切らしたのか、いても立ってもいられない様子の紅髪の少女へ後ろにいた黒髪のポニーテールの少女が紅髪の少女に確認をとるように聞くと、紅髪の少女は肯定し、「戦闘開始!」と口から言おうとしたとき、コッヴの前に地上から赤い光の柱が妨害するように現れた。

 

紅髪「あの光は…、一体!?」

 

黒髪「部長、あれは…!?」

 

紅髪「!?」

 

あまりの眩しさに目をつぶった2人だが、光が収まり、目を開けると光の柱の立っていた場所から赤色と銀色の体色をした巨人が土煙を舞わせながら着地し、その姿を表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢は自分に何が起きたかわからず周りを見渡すと、町が小さく見えた。そして動揺しながら自分の体を触ったり、目で確認すると、体は銀色と赤色の体色、胸は金縁のプロテクターにおおわれ、中央には青い宝石のようなものが青く輝いていた。

 

そう、我夢は夢の中に出てきた巨人へと姿を変えたのだ!

 

巨人がしばらく確認してると、頭の中に()()()()が浮かんだ。

 

巨人「(そうか、この巨人の名前はガイアって名前なのか…!)」

 

そのことを巨人改め、ガイアが考えていると、

 

コッヴ「ガァー、キィィィィィーーーーーン!!」

 

ガイア「…!デュアッ!」

 

新しい標的を見つけた喜びか、それとも自身の未知の存在だから警戒しているのか、コッヴはガイアに向かって特徴的な鳴き声で威嚇した。その鳴き声を聞いたガイアは右手の手のひらは軽く開き、左手は拳をつくり、左肩の位置で持っていく独特なファイティングポーズをとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を遠くで眺めていた2人の少女は、

 

黒髪「部長、どういたしますの?」

 

紅髪「まずはあの巨人と『()()』もどきの様子を見ましょう。」

 

黒髪「わかりましたわ」

 

紅髪「(巨人(あなた)が敵か味方か、見極めさせてもらうわよ…!)」

 

黒髪の少女がどうするのか聞くと、紅髪の少女はそう答えた。それを聞いた黒髪の少女は納得し、紅髪の少女はガイアが敵か味方を判断するため、コッヴとガイアの方へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コッヴ「ガァー、キィィィィィーーーン!」

 

まず、先手を仕掛けてきたのはコッヴだ。ガイア目掛けて突進した。

 

ガイア「…!グァッ、アァァァァーーー……!」

 

コッヴ「ガァーー、キィィィィィーーーン!」

 

ガイア「デヤァッ!」

 

ガイアはコッヴの体を受け止め、しばらく踏ん張った。その後コッヴを前方へ軽く押し、その隙を狙って、コッヴへストレートキックをした。それをくらったコッヴは後ろへ吹き飛んだ。

 

コッヴ「ガァー!ガァー!」

 

ガイア「グァァァァァーーー!」

 

後ろへ吹き飛んだコッヴに追加攻撃しようとすると、コッヴは巨大なしっぽで攻撃し、直撃したガイアは今度は自分がぶっ飛び、後ろにあったビルに当たり、ビルはその巨体の重さで崩れた。

 

崩れたビルの中から吹き飛ばされたガイアが起き上がった。

 

ガイア「(負けない!僕は、『ウルトラマン』なんだ!)」

 

コッヴ「ガァー、キィィィーーーン!」

 

ガイア「ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!…」

 

ガイアは心の中でそう言いながらファイティングポーズをとると、コッヴへ接近し、胴体に連続パンチを放った。

 

コッヴ「ガァー…、キィィィーン…」

 

ガイア「デュアァァーーーー!!」

 

先程の連続パンチが効いたのか、コッヴの鳴き声は弱々しくなった。ガイアはコッヴの体を持ち上げると、前方へ思いっきり投げ飛ばした。

 

ガイア「(…!これは……!)」

 

投げ飛ばした後、突然ガイアの脳内では夢の中で蛇のような巨大生物へ放った必殺技のヴィジョンが浮かんだ。

 

コッヴ「ガァー…!キィィィィィーーーン…!」

 

ガイア「デュア!アァァァァァァ……!」

 

コッヴは最後の意地と言わんばかりにガイアへ向けてトサカから光弾を発射した。ガイアはそれを両腕を使って光弾を叩き落とすと、両腕を左右にひろげ、両腕を頭の位置に持っていきながら頭を下げ、頭にエネルギーを集めた。

 

ガイア「デュアァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

上半身を持ち上げながら鞭のような刀のようなエネルギーを頭に形成して放つ必殺技、「フォトンエッジ」をコッヴへ放った!

 

直撃したコッヴは刃で切り裂かれたようなエフェクトが発生した後、爆発四散した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「やったーーーー!!!」」」」」」

 

その一部始終を緊急避難所となっている市民センターに避難していた人々は歓喜の声をあげた!

 

[ピコン]

 

一誠「(ん?あれは何だ?)」

 

一誠がガイアの胸の中央に輝く宝石、「ライフゲージ」へ視線を向けると、先程の青色から赤色へ点滅していた。

 

元浜「危険信号か何かだろうか?」

 

松田「さぁ?どうだろな?」

 

一誠と一緒に避難していた元浜と松田がそんな会話をしていると、ガイアは両腕を斜め下にクロスすると、姿を消した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「今のは、僕がなったのか…?」

 

ウルトラマンから人間へと姿を戻した我夢はコッヴとの戦いの出来事に未だに驚愕していた。そうしていると、我夢の近くに赤い光がフワフワと漂っていた。

 

我夢「この光は…。そうだ、この中に入れよう!」

 

我夢はそう言いながら懐から何故か持っていた光電子管のフタを開けると、光はその中に入り、我夢はフタを閉めた。

 

一誠「おーい!我夢!いるかーーー!」

 

松田「我夢ーーーー!」

 

元浜「いるなら返事してくれーーー!」

 

我夢が懐へ光電子管を戻していると、一誠、松田、元浜の3人の声が聞こえてきた。どうやら我夢を心配して探しに来たようだ。

 

我夢「おーい!僕はここにいるよーーー!」

 

我夢は3人に向かって大きな声で返事すると、3人は我夢のもとへ集まった。

 

一誠「我夢!無事だったか!?」

 

松田「心配かけさせやがって!」

 

元浜「しかし、無事でよかった…」

 

一誠、松田、元浜はそれぞれ我夢に安堵の表情を浮かべながら言った。

 

元浜「そういや、あの巨人は?」

 

元浜がガイアがどこにいったのかを我夢に聞いた。「実はそれは僕だよ!」と言っても信じてくれないだろうし、それに秘密にした方がいいと何故か心の中で思った。

 

我夢「飛んでった、みたいな?」

 

元浜「へぇー、そうだったのか。」

 

我夢はとぼけながらそう言うと、元浜は納得したのか空を見上げながら言った。我夢はその『巨人(ウルトラマン)』がいるんだけどなと心の中で思った。

 

一誠「とりあえず、無事で良かった!カラオケはこんな状態じゃ行けないし、とりあえず俺ん家に行くか!」

 

一誠がカラオケの代わりに提案すると他の3人は頷き、4人は一誠の家の方角へ歩いていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅髪「なるほど、そういうことね…」

 

離れた場所で我夢がウルトラマンから人間へ戻り、一誠達と合流するところまでの一部始終を見つめていた紅髪の少女は、興味深そうに言うと、足下に魔方陣を出現させると、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、紅髪の少女から離れた場所にある瓦礫のうしろで黒髪で全身黒一色の服を着、どこか悲しげな雰囲気を持った少年が我夢達を眺めていた。

 

???「()()1()()、目覚めたか…」

 

少年はそう呟くと我夢たちとは逆方向にその場を離れていった…。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

我夢「僕も一緒に戦いたいんです!」

学園の有名人の1人、「リアス・グレモリー」に呼ばれた我夢。
そのとき我夢は駒王町の秘密を知る!

次回、「ハイスクールG×A」!
「我夢入部!」
君も裏側へ潜入だ!




良かったらコメント、感想よろしくお願いいたします。


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第2話「我夢入部!」

はぐれ悪魔 バイサー
マグマ怪地底獣 ギール 登場!


松田「改めて見ると、すごい迫力だよな…」

 

元浜「ああ、でも()()()()()()()()()()のは奇跡だよな…」

 

我夢「…」

 

僕は生まれて初めて自分の目を疑っている。

今は昼休みに入り、僕ら4人は教室でイッセーのスマホでニュース映像を観ていた。

 

昨日、あの時に報道テレビ局「KCB(ケーシービー)」の撮影クルーが近くにいたらしく、ウルトラマン()が「コッヴ」を倒す一部始終までが写されていた。この話題は駒王町だけでなく、全世界でも注目されている。

 

ちなみに「コッヴ(C.O.V.)」とは「Cosmic Organism Vanguard(前衛宇宙生物)」の略で、僕がつけた名前である。

 

僕が何故疑問に思っているのか。昨日、コッヴによって駒王駅付近は破壊され、壊滅状態だった。が、今朝早く家を出て駒王駅付近を見てきたが、まるで()()()()()()()()()()()()かのように建造物が建っていた。

 

それだけでなく、ニュースやこの学園を初め、この駒王町の住民までもが元浜の言うように「町が破壊されなかった」と言っているのだ。

 

我夢「(何故みんな、僕と記憶が違うんだ…?)」

 

一誠「おーい」

 

我夢「(まさか!?コッヴの能力か?いや、そんな知能はなさそうだったし…)」

 

一誠「おーーーーい!!

 

我夢「うわっ!?なっ、何!?」

 

我夢が思考の渦にとらわれようとしたとき、一誠が大きな声を出した。それを聞いた我夢は驚いた表情をして、一誠の方へ顔を向けた。

 

一誠「いや、さっきから難しそうな顔をしてるから気になってさ。具合悪ィのか?」

 

我夢「あはは!いや、全然大丈夫だよ!今日の夕食について考えてたんだよ」

 

一誠が不安な表情で聞くと、我夢は笑いながら適当なうそでごまかした。

 

一誠「……、そうか!あんま無茶すんなよ!」

 

一誠はしばらく考えると、笑顔で我夢の左肩に手をおいて言うと、4人は再び昨日の出来事について話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子「あ、あの…!高山君!///」

 

我夢「ん?」

 

しばらく4人で話し合っていると、1人の女子が顔を赤めながら我夢に話しかけてきた。

 

女子「あの、物理のここがわかんなくて…」

 

女子は持っていた物理の教科書を開き、わからない場所に指を指した。実は我夢はいつも学年1位であり、世界でもトップクラスの成績をもっている天才である!

 

我夢「うん、わかった!教えるよ!」

 

女子「本当!?ありがとう!//////」

 

我夢は笑顔でそう言うと、女子はその笑顔で更に顔を赤め、笑顔でお礼を言った。

 

我夢「4人とも、この娘に勉強を教えないといけないから、この話は今度ね!」

 

我夢は4人にそう言うと、女子の後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「我夢…」

 

松田「くっそーー!何で我夢ばっかり!?」

 

元浜「俺たち、『モテない同盟』の裏切り者がぁぁーーーーーーーー!!!」

 

一誠は羨ましそうな表情で呟き、松田と元浜は悔しそうに涙を流しながら叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が経ち、放課後の時間になった。

我夢は帰りの支度をしていると、廊下の方が女子の声で騒がしくなってきた。

 

声はどんどん近くなっていき、教室の出入口には女子が溢れかえっていた。その中心には金髪に目の下に泣きぼくろがあり、端正な顔立ちをした美少年がいた。

 

その美少年の名前は、「木場 裕斗(きば ゆうと)」。

我夢や一誠と同じ駒王学園2年で、文武両道かつその端正な顔立ち、物腰の柔らかさから我夢と同じくらい女子に人気があるのだ。

 

木場「『高山 我夢』君って、どこにいるかい?」

 

片瀬「高山君なら、あそこの席に座っているよ!//////」

 

木場「そうか、ありがとう♪ニコッ」

 

木場が周りの女子に聞くと、片瀬が我夢のいる方へ指を指した。それを聞いた木場は爽やかな笑顔で感謝の言葉を言うと、女子の大群の中からまっすぐ我夢のところまで歩いていった。

 

木場「君が『高山 我夢』君?」

 

我夢「そうだけど…、何の用?」

 

木場が本人確認のため我夢に質問すると、我夢は何かしたのかな?と思いながら答えた。

 

木場「ぼくは3年の『リアス・グレモリー』先輩の遣いでやってきたんだよ。先輩が君に用事があるからって」

 

我夢「先輩が…、僕に…?」

 

松田「くそーーーー!ついにリアス先輩まで!!」

 

元浜「うらやま…、いや!この女たらしめーーーっ!」

 

木場が笑顔でそう言うと、我夢は疑問の表情を浮かべ、我夢の近くにいた松田と元浜は、また悔しそうに滝のような涙を流しながら叫んだ。

 

木場「一緒についてきてくれるかい?」

 

我夢「あ、ああ!いいよ!3人ともごめん!今日は先に帰っててくれる?」

 

木場についていくことにすると、我夢は4人にそう告げた。

 

「キャー!木場君×高山君よ!//////////」

 

「当然!木場君が攻めで、高山君が受けよね!」

 

「何言ってるの!?木場君が受けで、高山君が攻めよ!」

 

一誠「…」

 

何やら周りの女子たちが危ない発言をしているが、我夢は頭に入れないようにして木場の後をついていった。

その様子を一誠は後ろから真剣な表情で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく我夢は木場の後をついていくと、今は使われていない筈の旧校舎が見えてきた。

 

木場はその入口の前で止まると、振り返って爽やかな表情で我夢に説明した。

 

木場「ここが僕たち、『オカルト研究部』の活動拠点だよ。もちろん、学校には許可をもらって使わせてもらっているよ」

 

我夢「へぇ~~…」

 

「オカルト研究部」。駒王学園の多くある部活の1つだが、その活動内容は不明で、部室も存在するのかもわからない部活である。

そのオカルト研究部の部室がここにあると知り、我夢は納得したように頷いた。

 

木場は説明をし終えると、もっと詳しい話は中でしようといい、木場と我夢は旧校舎の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場「ここがオカルト研究部の部室だよ」

 

我夢「こ、ここが…」

 

旧校舎に入り、木場が案内した部屋は、電気をつけておらず、代わりにロウソクで部屋を照らしている大きな部屋だった。

 

周りには謎の言語が書かれている本が収納されている本棚や、絵画、謎の彫刻などオカルトチックな物が置かれており、床には魔方陣が描かれた布が敷かれていた。

我夢はそれを見て、ここの部長は随分とオカルトなんだなぁと思った。

 

我夢が中央にあるソファーを見てみると、白髪で小柄な体格の少女がソファーでお菓子で食べて座っていた。

 

木場「彼女は1年の『塔城 小猫(とうじょう こねこ)』さんだよ。」

 

小猫「どうも…(コクッ)」

 

我夢「よろしく!」

 

我夢は彼女の名前は聞いたことがある。

「塔城 小猫」。駒王学園の1年で、その可愛らしい容姿から学園のマスコット的な存在であることを元浜たちから聞いたことがある。

 

小猫は我夢に挨拶をし、我夢は笑顔で彼女に言葉を返した。

 

紅髪「待たしてしまったわね」

 

しばらく我夢たちが待つと、紅髪と黒髪の少女が2人、少し申し訳なさそうな表情で部室の入口から入ってきた。

 

紅髪「紹介するわ。私は3年の『リアス・グレモリー』。こちらは同じく3年の『姫島 朱乃(ひめじま あけの)』、よろしくね♪」

 

朱乃「うふふ、よろしくお願いしますわ♪」

 

我夢「あ、はい。僕は『高山 我夢』です!よろしくお願いします!」

 

赤髪の少女、「リアス・グレモリー」と黒髪の少女、「姫島 朱乃」が微笑みながら自己紹介すると、我夢も自己紹介をした。

 

我夢「ところで、何の用件で?」

 

リアス「それは今から説明するわ。と、その前に…」

 

???「うわっ!?」

 

リアス「盗み聴きは良くないわよ、2年生の『兵藤 一誠』君?」

 

我夢が何の用件か聞こうとすると、リアスはそう言いながら入ってきたドアを思いっきり押し開くと、何者かが悲鳴をあげて倒れた。それは先程教室で別れたはずの一誠であった。

 

一誠「す、すみません!どうしても気になっちゃって!それに俺と皆が記憶がおかしいのと関係があるかも知れないって思って…」

 

我夢「あれ!?イッセーも昨日のことを覚えているの?」

 

一誠「え!?我夢もなのか!?」

 

一誠はリアスに盗み聴きした理由を話すと、我夢は驚きながら一誠に問うと、お前もか!?と言った表情で一誠は言葉を返した。

 

朱乃「部長、どういたしますの?」

 

リアス「な、何故この子が()()()()()()()()()()()()()()はわからないけど、このまま帰すのも可哀想だから、彼にも説明してあげましょう…」

 

朱乃がリアスに一誠をどうするかを聞くと、リアスは記憶が書き換えられてないことに動揺しながらも朱乃に言った。

 

リアス「とりあえず、2人共。『オカルト研究部』へようこそ…、『悪魔』としてね。」

 

我夢&一誠「「え?」」

 

バサッ

 

リアスがそう言うと、部員全員の背中からコウモリのような翼が出てきた。

その光景に我夢と一誠は目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「『オカルト研究部』とは表向きのために作った私の趣味。本当は私たち、『悪魔』たちが活動するためものなの」

 

我夢&一誠「「は、はぁ…」」

 

リアス「私たち悪魔は『記憶を書き換える』ことができるの。それで、駒王町や世界中の人々の記憶を少し変えさせてもらったわ。

と言っても、あくまで書き換えるだけだから、出来事自体を無かったりすることはできないわ」

 

我夢「な、なるほど…」

 

一誠「それでみんな記憶が違っていたのか…」

 

リアス「そして、私が呼んだ理由はこれにあるの…」

 

リアスが我夢と一誠に説明すると、2人は朱乃に出された紅茶をすすり、驚きながらも説明を頷いたりしながら何故記憶が違うのかを納得して聞いていた。すると、リアスは懐から1枚の写真を取り出すと、それをテーブルに置いた。

 

我夢「こ、これは!?」

 

一誠「え!?嘘だろ!?」

 

リアス「あの時に現れた巨人はあなたよね?高山 我夢君?」

 

その写真には巨人から人間へと姿を戻す我夢が写っていた。

 

一誠「我夢が…、巨人?」

 

一誠は信じられないという表情を浮かべながら写真と我夢の顔を交互に見ていた。

 

我夢「……、確かに昨日現れた巨人、いや、ウルトラマンは僕です。ですが、それで僕たちに正体を明かしてまで呼んだ()()()()()は何ですか?」

 

一誠「本当の理由?」

 

リアス「さすが、駒王学園1の天才。鋭いわね…」

 

我夢は観念したのか、リアスに巨人(ウルトラマン)の正体は自分であると告げ、それが一体何故、自分たちに悪魔であることを明かしてまでも呼んだのかが気になり、質問をした。その質問を受けたリアスは微笑みながらそう言うと、懐に写真を戻し、再び我夢たちのほうへ顔を向けた。

 

リアス「私が呼んだ理由は、私の『眷族』になって、『怪獣』たちを鎮圧して欲しいの!」

 

我夢「『眷族』?『怪獣』?」

 

リアスは我夢に本当の理由を言うと、我夢は新しく出てきた未知の単語に困惑していた。

 

リアス「まずは私たちの歴史について話す必要あるわね」

 

そう言うとリアスは、悪魔の他に『堕天使』、『天使』という存在が居ること、それら『三大勢力』が大昔に地球で長きに渡る戦争が起きたこと、更に2体のドラゴンが戦争に乱入したことで悪魔のトップである魔王が戦死し、戦争は終結したこと、戦争の原因で三勢力とも甚大な被害が起き、多くの純血悪魔が戦死したこと、そして今はお互いの勢力が均衡状態であること、そしてこの駒王町の管理は自分が任されていることを話すと、部長席の引き出しから赤いチェスの駒のようなものを取り出し、それを我夢たちの前に置いた。

 

リアス「そして、これが悪魔を増やすために冥界が作り出されたアイテム、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)

 

我夢「『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』?」

 

リアス「これを使えば、どんな種族も使った者の眷属として悪魔に転生できるわ。ただし、これは私のような上級悪魔にしか使えないけどね。そして、これが悪魔になったときのお仕事と特典よ」

 

リアスは疑問になっている我夢に悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の説明をすると、悪魔になったとき仕事と特典についての資料を渡し、我夢はしばらく、福利厚生しっかりしているなぁと思いながらその資料を読み漁った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「なるほど、それで僕を眷属にして悪魔側にすれば、他の勢力からの奪い合いがなくなると考えたからですね?」

 

リアス「その通りだわ。あとさっき言っていた『怪獣』というのは元々、冥界や天界に住んでいた生物が戦争の影響で空間に歪みができて、そこを通って逃げ出したのが地球の環境に合わして進化していったものなの」

 

我夢は資料を読み終え、リアスに質問すると、リアスはそう答え、我夢は納得したように頷いた。

 

リアス「つい最近まで怪獣たちは眠りについていたの。でもあの宇宙怪獣が来たときに各地に眠っていた怪獣が目覚めてしまったの!」

 

リアスは申し訳無い表情で語ると、

 

リアス「そこで押しつけがましいけど、あなたにお願いがあるの!私たちの存在を人間に知られるとまずい……。だから、あなたがあの巨人になって怪獣たちを鎮圧してほしいの!」

 

リアスは座っていたソファーから前のめりになってその豊満な胸を揺らしながら我夢に頼んだ。

 

我夢はしばらく考えると、

 

我夢「わかりました!僕を眷族にしてください!

僕も一緒に戦いたいんです!」

 

リアス「よし!決まりだわ!兵藤 一誠君はどうするの?」

 

リアスは我夢が眷属になることに喜ぶと、先程から黙っている一誠の方へ視線を向けた。

 

一誠「くかー…くかー…」

 

一誠は心地良さそうに鼻ちょうちんをつけながら寝ていた。

その様子を見て、我夢とリアスはずっこけた。

 

リアス「い、いつから寝てたの?」

 

朱乃「うふふ、部長が地球での大戦の話をしてるときからですわ」

 

リアスが起き上がりながら朱乃に尋ねると、朱乃はうふふと笑いながら答えた。リアスはため息をつきながら座っていたソファーに座り直した。

 

木場「とりあえず起こさないとね」

 

我夢「木場君、待って!僕に考えがある!」

 

木場が一誠を起こそうと近付こうとすると、我夢は木場を止め、隣で寝ている一誠に近付き、耳元でささやいた。

 

我夢「『マウンテンガリバー5号』、始まるよ~!(ボソッ)」

 

我夢がボソッというと、

 

一誠「えっ!?もうそんな時間!?」

 

一誠は飛び上がるようにして起きた。ちなみに「マウンテンガリバー5号」とは、一誠が好きな特撮ロボット番組である。

 

一誠「話が長ったらし過ぎて寝ちまったよ~、ところで!もう始まってんのか!?」

 

我夢「ごめん、一誠を起こすためにうそついたんだ」

 

我夢がそう言うと、一誠はなんだぁ…と言いホッとした表情で納得した。

オカルト研究部メンバーは、そんなんで起きるのかよと心の中でツッこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、起きた一誠に我夢が簡単にリアスがした話を説明すると、自分も眷属になると言い、転生の儀式を終えた。

 

リアス「2人共、改めて歓迎するわ!ようこそ、『オカルト研究部』へ!私のことは『部長』と呼びなさい」

 

こうして、我夢と一誠はリアス・グレモリーの眷族となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスは我夢と一誠に今夜はぐれ悪魔、つまり主を裏切った悪魔の討伐があるので、時間と場所を告げ、必ず来なさいと言うと、2人を帰らせた。

 

他の部員も次々に帰り、部室にはリアスと朱乃の2人だけになった。

 

朱乃「リアス。高山君はわかるけど、『神器(セイクリッド・ギア)』すら無さそうなあの子(一誠)を眷属にしても良かったの?」

 

リアス「えぇ、私も何故眷族にしたのかわからないけど、彼は()()()()()()()()()()()()()()という気がしてね…」

 

朱乃「あらあら、うふふ…。リアスらしくないわね」

 

朱乃はその答えに微笑えんだ。

 

リアス「(何故、そんなこと思ったんだろ…?)」

 

リアスは心の中でそう言いながら、しばらく考えたが結局わからずじまいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜3時。まだ多くの人々が寝静まっている時間に数人の男女が、人里離れた、とある廃工場の前にいた…。

 

それはリアス率いるグレモリー眷属だった。

リアスがまだ悪魔になりたての2人に今夜のはぐれ悪魔討伐の内容を詳しく説明すると、一行はリアスを先頭に廃工場の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

リアス「出てきなさい!はぐれ悪魔『バイサー』!

あなたには討伐依頼が来ているわ!!」

 

リアスが廃工場の中で大きな声でそう言うと、機材の影から上半身は裸体の女性、下半身は何とも言えない醜い化け物の形をしたはぐれ悪魔、「バイサー」が姿を表した。

 

一誠「ゲッ!気色悪ィ~~…」

 

 

バイサー「ケッケッケッ…、旨そうなにおいがいっぱいだ…」

 

一誠がその姿を見ると、正直な感想を言った。我夢も同じ気持ちだった。

 

リアス「グレモリー公爵の名にかけて…、バイサー!あなたを消し飛ばしてやるわ!」

 

バイサー「ほざけぇーー!その髪のようにお前を真っ赤に染めてやるわぁぁーーーー!!」

 

リアスがビシッと指を指しながら言うと、バイサーはこちらに襲いかかってきた!

 

リアス「裕斗」

 

木場「はい」

 

部長が呼ぶと木場が腰に帯剣していた剣を抜き、バイサーの前に立ち塞がった。

我夢はまずい!と思い、懐から光電子管を取り出そうとすると、リアスは手で待ってというように制止した。

 

リアス「2人とも、今から悪魔の駒の性質について説明するわ。まず、裕斗の駒は『騎士(ナイト)』…、その性質は速度(スピード)が増すわ…」

 

リアスの説明を聞きながら、我夢と一誠はバイサーの攻撃をものすごいスピードでかわしている木場に驚いていた。

 

リアス「そして裕斗の最大の武器は――、剣」

 

リアスがそう言うと、木場は剣でバイサーの両腕を一瞬で切断した。

 

バイサー「ぎゃぁぁぁぁあああーーーーー!!」

 

バイサーの両腕からは大量に血が噴き出しており、バイサーは切断された痛みで絶叫していた。

 

バイサーがもだえている中、バイサーの足元に小猫がいた。

 

リアス「小猫の駒は『戦車(ルーク)』」

 

バイサーは小猫が近くにいることに気付き、その大きな両足で踏み潰した!

 

一誠「小猫ちゃん!」

 

我夢「部長…」

 

リアス「大丈夫、心配しないで…。小猫の駒の性質は至ってシンプル―――」

 

2人は不安な表情を浮かべるが、リアスは安心してと言い、駒の説明をすると、踏み潰されたはずの小猫は無傷で、バイサーの両足を両腕で持ち上げていた!

 

リアス「馬鹿げた力と圧倒的な防御力!あんなはぐれ悪魔ごときじゃ小猫は潰れないわ!」

 

小猫「………えい」

 

バイサー「ぐぎゃゃあぁーーーーーー!!!」

 

小猫はバイサーの巨体を持ち上げると、上へ軽く投げ飛ばし、落下してきたバイサーを我夢たちとは反対の方向へ殴り飛ばした!

 

この光景を見た2人は目が点になり、驚愕した。

 

リアス「最後は朱乃ね」

 

朱乃「あらあら、うふふ…わかりましたわ、部長♪」

 

朱乃は嬉しそうに了解すると、殴り飛ばされたバイサーに歩いていった。

 

リアス「朱乃の駒は『女王(クイーン)』。『女王』は『(キング)』を除く、全ての駒の性質が使える最強の駒よ」

 

バイサー「ぐぎゃばあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」

 

朱乃は片手をあげると、バイサーの上空に雷雲のようなものが浮かび、次の瞬間、そこから激しい雷がバイサーに降り注いだ!

 

バイサー「か…、か……」

 

朱乃「あらあら、まだまだ元気そうですわね…♪次はもっと強くいきますわよ!」

 

バイサー「ぐっぎゃっばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

朱乃はうっとりした表情でそう言うと、先程よりも激しい雷をバイサーに落とした!

 

リアス「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。彼女が特に得意なのは雷…。そして、何より彼女は『究極のS』なの…」

 

朱乃「うふふふふふ…、まだまだいきますわよ♪」

 

リアスはさらっと言っているが、2人は嬉しそうに笑いながらバイサーに攻撃を続けている朱乃の表情に青ざめていて、話が入ってこなかった。

 

リアス「大丈夫よ、朱乃は味方には凄く優しいから」

 

一誠「ほ、本当ですか……?」

 

我夢「………!?」

 

リアスが安心してと言うが、一誠は苦笑いで答え、我夢に関しては口をあんぐりと開けて固まっていた。

 

朱乃「あらあら、もう限界かしら?トドメは部長、お願いいたしますわ♪」

 

朱乃が満足そうな表情で言うと、リアスは真剣な表情で黒焦げになっているバイサーの前に歩いていった。

 

リアス「何か言い残すことはあるかしら?」

 

バイサー「……殺せ」

 

リアス「そう…、消し飛びなさい………」

 

バイサーの遺言を聞くと同時にリアスは禍々しく赤黒いオーラを纏い、とてつもない魔力の塊を放つと、バイサーは跡形もなく文字通り消し飛んだ…。

 

一誠「あ、あの部長…」

 

リアス「どうしたの?」

 

一誠「俺たちが4つずつ使った駒って…」

 

リアス「もちろん『兵士(ポーン)』よ」

 

それを聞いた瞬間、一誠は最弱の駒で転生した事でショックを受け、膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「…以上が悪魔の駒の性質についてよ。何か質問があれば………、我夢?」

 

我夢「………」

 

一誠がショックから立ち直り、2人に質問はあるかと聞くと、我夢が複雑でどこか悲しげな表情をしていることに気付いた。

 

リアス「我夢、あなたは本当に優しいのね…。でも彼らを野ざらしにすると、罪のない人々が危険にさらされるわ…」

 

我夢「部長、わかっています…。でも彼女も以前は僕らの様に生活していたと思うと悲しくて…。すみません、頭ではわかってるんですけどいざ殺すとなるとどこか辛くて………」

 

一誠「我夢…」

 

我夢がそう言うと、オカ研メンバーは複雑な表情を浮かべた。

 

我夢「でも、僕決めたんです。こn……」

 

我夢が続けて言葉を言おうとしたとき、外から大きな物音と地響きがなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一行が外に出ると、体は灰色のダンゴムシのような装甲を持ち、赤く輝く瞳を持った4足歩行の怪獣、「ギール」が地中から出現した!

 

ギール「ギシャオォーーー!!」

 

ギールは雄叫びをあげると、市街地のある方角へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「部長…、僕がさっき言おうとしたこと、ここで言っていいですか?」

 

リアス「えぇ、言ってごらんなさい…」

 

我夢「ありがとうございます…」

 

我夢はオカ研メンバーから少し前へ進むと、後ろにいるリアスに振り返らずに発言の許可を聞いた。

リアスが許可を出すと、我夢は感謝の言葉を言った。

 

我夢「僕は誰かと争うことは好きじゃありません!ですが、この光を手に入れた時から決めたんです!地球を、人類を救えるなら僕は守るために戦うんだって!」

 

我夢は懐からあの赤い光が入った光電子管を取り出しながら言葉を続けた。

 

我夢「だから、僕の戦いを見守って下さい!」

 

我夢はそう言いながら光電子管を右斜め上に掲げると、赤い光に包まれ、ウルトラマンガイアに変身した!

 

ガイアは上空で地上にいるオカ研メンバーへサムズアップすると、ギールの元へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「ダァァァーーー!!」

 

ギール「!?」

 

ガイアはギールを妨害するように前で土煙を立てながら着陸した。

 

ガイア「デュアッ!」

 

ギール「ギシャオォーー!!!」

 

ガイアはファイティングポーズをすると、ギールは雄叫びをあげながら突進してきた!

 

ガイアは避けようと思えば避けられたが、彼の後ろには市街地があるので、避けず、ギールの突進を腰を低くして真っ正面から受けとめた!

 

ガイア「グアァァァ……」

 

グググググ……

 

ガイア「デュアーー!」

 

ギール「ギシャオォーー!?」

 

ガイアは踏ん張りながらギールの上体を起こすと、赤いエネルギーを纏ったパンチでギールの顔面を殴り、ギールは仰向けに倒した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「よし!いいぞ!そのままいけるぜ!」

 

一誠がガイアの活躍に嬉しそうに言うと、

 

木場「一誠君、戦いは何が起きるかわからないよ…」

 

木場は一誠にそう呟いた時、ガイアが上空にぶっ飛び、

こちら側に仰向けで倒れた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はガイアがギールを殴り、仰向けに倒したところに遡る。

 

勢いついたガイアは仰向けでジタバタしているギールに追い討ちをかけようと思い、ギールに馬乗りになり、パンチやチョップのラッシュを仕掛けた。

 

ギール「ギシャオォーー! 」

 

だが、怒ったギールは腹にある第2の口を開くと、馬乗りになっているガイアにマグマ弾をガイア目掛けて発射した!

 

ガイア「…!?グアァァァァァーーーーー!!」

 

それをまともに受けたガイアは上空に吹っ飛び、地面に背中から落ちた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹き飛ばされたガイアは怯みながらも立ち上がった時、

 

ギール「ギシャオォーー!!! 」

 

ガイア「グアァァァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!」

 

元の体勢に戻ったギールは追い討ちとばかりにガイアに第2の口からマグマ弾を連射し、全弾命中したガイアは再び仰向けに倒れてしまった!

 

ガイア「グ、グアァ…」

 

[ピコン]

 

ライフゲージが青から赤へと変わり、点滅を始めた…。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「我夢!」

 

ギールはとどめとばかりにガイアを押し潰そうとしていた。その光景を見て一誠は叫んだ。

 

一誠「くそっ、俺にも戦う力があれば…!」

 

リアス「一誠、悔しいけど私たちは見守るしかないわ…」

 

そう、今飛び出せば、悪魔という存在が人間に知られる可能性がある。記憶を書き換えればごまかすことはできるが、永遠に隠せるとは限らないのである。なので、こうやって見守ることしかできないのである。

 

一誠とリアス、その他オカ研メンバーは不安と苦渋の表情で戦いを見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガイアは

 

ギール「ギシャオォ!ギシャオォーー!」

 

ガイア「グァ、ァァァァァァ…」

 

この状況をどう脱出するかを両腕で踏ん張りながら考えていた。

 

作戦はすぐ浮かんだが、どれも非現実ばかりで今の状況を変えられるものじゃなかった。

 

[ピコン]

 

何よりライフゲージの点滅がガイアの思考をあせらせていた。

 

こうしている間にもギールの重さにだんだん耐えられなくなってきており、体の大半はギールがのっかかっており、目前にはギールの下顎があった。

 

ガイアは完全に押し潰される数秒という中、突然ある出来事が頭の中を映像のようによぎった。それは小猫がバイサーと戦っている場面だった。

 

ガイア「グァ、ガァァァァ…!」

 

ギール「?」

 

ガイア「デュアッ!」

 

ギール「!?」

 

ガイアはこれしかないと思い、両腕と両足に力をこめ、ギールの胴体の中心に持ってくると、思いっきり力をこめて、ギールを上空へ飛ばした!

 

ギールは驚いていたが上から攻撃してやろうと思い、腹にある第2の口を開き、マグマ弾を発射しようとしていた。

 

ガイア「ダァァァァァァァァァーーーーー!!」

 

ギール「ギシャオォーーーーーーーーーーーーー!?」

 

ガイアは第2の口が開いたことを確認すると、思いっきり飛び上がり、ギールの第2の口を腹ごと拳で貫いた!

 

ガイアは貫いた拳を抜き取ると、ギールを地面目掛けて投げつけた!

 

ギールは腹を貫かれ、更に投げつけられた痛みでのたうち回っていた。

 

ガイア「ディア!ガァァァァ……!」

 

ギール「ギシャオォーー!!!」

 

ガイア「デュアァァァァァァーーーーーーーーーーーーー!!」

 

ガイアは空から降りてくると、のたうち回っているギールに向かって、「フォトンエッジ」を放った!

 

直撃したギールは刃で切り裂かれたようなエフェクトが入ると、

 

ドガァァァーーーンッ!

 

大きな爆発音を立てながら爆発四散した!

 

ガイア「デュアッ!」

 

ガイアは勝利に喜んでいるオカ研メンバーに向かって頷くと、どこか遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「あいつ行っちまったよ…」

 

木場「そうでもないみたいだよ」

 

一誠が呟くが、木場が一誠の肩を叩き、ある方向を指を指すと、

 

我夢「おーーーーい!」

 

我夢が爽やかな笑顔で手を振りながらこちらに向かって、走ってきた。

 

朱乃「うふふ、高山君。お疲れ様ですわ♪」

 

我夢「姫島先輩、ありがとうございます!あと、僕のことは『我夢』でいいですよ」

 

朱乃「あら、私のことも『朱乃』でよろしいですわ。『我夢君』、改めてお疲れ様ですわ♪」

 

我夢「はい、『朱乃さん』!改めてありがとうございます!」

 

一誠「我夢、お疲れ!」

 

小猫「………先輩、お疲れ様です」

 

木場「我夢君、お疲れ様!」

 

リアス「我夢、よくやったわ!お疲れ様!」

 

2人がにこやかな表情で話していると、朱乃に続いて他のオカ研メンバーが我夢に慰労の言葉をかけた。

 

リアス「さぁ!2人とも、私の眷属になったからにはもっと強くなってもらうわ!明日からビシバシ鍛えていくわよ!」

 

我夢「えぇ~~~~、そんなぁぁーーーー!」

 

リアスの言葉に運動が得意な一誠はともかく、運動が苦手な我夢はこの世の終わりみたいな顔をして叫んだ。

 

その様子を見た我夢除くオカ研メンバーはおかしそうに笑った。

 

ほのかに明るい朝日がそんな明るい彼らを照らしていた……。

 




次回予告

海外から赴任してきたシスター。
 
???「邪魔よ!」

天使のような彼女を狙う怪しい集団の目的は?

次回、「ハイスクールG×A」!
「癒しの聖女」!
その涙をぬぐうのは誰だ!






良かったらコメント、感想よろしくお願いいたします!


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第3話「癒しの聖女」

悪質堕天使 レイナーレ 登場!


我夢と一誠がリアスの眷属となって一週間ほど経過した。

 

我夢「面白かったな~、『劇場版 マウンテンガリバー5号 超時空の大決戦』!」

 

一誠「あぁ!特に面白かったのは、やっぱりクライマックスのマウンテンガリバー1号~5号までが集結するとこだよな!」

 

我夢と一誠は悪魔となって久しぶりの休日を楽しんでいた。

 

ここ最近は、リアスとのトレーニングに付き合わされたり、はぐれ悪魔の討伐や契約の仕事がたくさん入ったりするなど多忙であった。

今日は頑張ったご褒美としてリアスから休みをもらったのである。

 

???「きゃ!」

 

2人が談笑していると後ろから可愛らしい悲鳴が聞こえた。

 

2人は声がする方へ振り返ると、

 

???「いたた~………」

 

長い金髪に美しいエメラルドグリーンの瞳をした可愛らしい顔立ちのシスターの少女が路上で尻餅をついていた。

 

2人はそのシスターに近付き、声をかけてみることにした。

 

一誠「大丈夫か?」

 

シスター「は、はい!大丈夫です!」

 

我夢&一誠「((あ、可愛い~♡))」

 

2人は少しの間は彼女に見惚れていたが、ハッと気を取り戻すと、立ち上がるのに手を貸した。

 

シスター「ありがとうございます!」

 

我夢「いやいや特にケガしてなくて何よりだよ!」

 

一誠「そうだぜ!気にすんなよ!」

 

笑顔でお礼を言うシスターに2人は言葉を返すと、

 

シスター「あれ、私の言葉がわかるんですか?」

 

一誠「い、いや!お、俺たちは英会話教室に通ってて得意なんだよ!な、我夢!」

 

我夢「う、うん!そうなんだよ!」

 

実は悪魔になると、どんな言語も自身の国の言語に聞こえるという特典があるのだ。

彼女の疑問に、「ぼくらは悪魔だからわかるんだ!」と言ったら頭のおかしい人たちと思われるので、2人はおどおどしながらも嘘を言った。

 

シスター「私の国の言葉がわかるんなんて、すごいですね!」

 

我夢&一誠「((あ、癒される~~~♡))」

 

シスターは2人のことを笑顔でほめると、2人はまたその笑顔で少しの間、見惚れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「僕は高山 我夢」

 

一誠「そして俺は兵藤 一誠、我夢の友達だ。君の名前は?」

 

アーシア「はい!『アーシア・アルジェント』と申します!」

 

正気に戻った2人とシスター、「アーシア・アルジェント」はお互いに自己紹介した。

 

我夢「ところで、アーシアはこんなところで何してたの?」

 

アーシア「はい…、この辺りに教会はありますか?」

 

我夢「あ、もしかして町の外れにある教会のこと?」

 

我夢は町の外れにある教会を思い出し、それを言うとアーシアはそうです!という反応を示した。

 

アーシア「始めて来る場所ですし……、それに私…方向音痴で……」

 

アーシアはそう言いながら少し困ったような表情を浮かべた。

 

一誠「なら俺たちが案内しようか?」

 

アーシア「え!?本当ですか!?」

 

一誠「あぁ、困っているやつを見捨てられねぇしな!いいだろ?我夢」

 

我夢「もちろんさ、僕たち何をするのも一緒だろ?アーシア、良かったら僕たちに案内させてくれる?」

 

アーシア「はい、ありがとうございます!あぁ、これも神の御加護なのですね……」

 

一誠と我夢の提案にアーシアは満開の笑顔で感謝すると、十字をきり、祈りを捧げた。

 

我夢&一誠「「((グッ!?))」」

 

それを見た2人は激しい頭痛に襲われた。

悪魔になるメリットもあれば、当然デメリットも存在する。それは十字架やお経などといった神聖なものには、頭痛が襲うといったアレルギー反応が起きる。

なので、2人は十字を見たので、そのアレルギー反応が起きているのだ。

 

アーシア「あの……大丈夫ですか?」

 

2人が頭痛で頭をおさえていると、アーシアは心配そうな表情で声をかけた。

 

我夢「い、いや!何でもないよ!」

 

一誠「とりあえず、案内するぜ!」

 

アーシアはまだ心配そうな表情を浮かべているが、悪魔だから十字架に弱いんです、と言うわけにもいかないので、2人はぼやかして教会までの案内を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢と一誠はアーシアを案内しながら色んなことを話した。我夢と一誠はアーシアが仕事のために1人でこの日本には来たことや信仰を広げることへの誇りなどを聞き、感心と尊敬の言葉をかけると、アーシアは照れくさそうに微笑んだ。

 

男の子「うわぁぁ~~~ん!」

 

3人がそんなことを話していると、通りかかった公園から男の子が、転んだのか膝から血を出して泣いていた。

 

アーシア「あ…!」

 

それに気づいたアーシアは他の2人よりも素早く男の子の元に近付き、膝のケガに手をかざした。

すると、緑色の光が手から発し、傷がどんどん塞がっていった!

 

一誠「我夢!あれって……!」

 

我夢「あぁ…、恐らく『神器(セイクリッド・ギア)』……!」

 

2人はその光景を見ながら以前リアスから聞いたことを思い出した。

 

 

 

 

 

(リアス「いい?2人共。『神器(セイクリッド・ギア)』っていうのは、聖書の神が与えた()()()()()()()()に宿る力なの」)

 

リアスが我夢のウルトラマンの力が神器でないと呟いたので、我夢と一誠は神器とは何かとリアスに質問したので、リアスは説明を始めた。

 

(リアス「ちなみに裕斗は神具を宿しているわ」)

 

それを聞いた2人は木場の方を振り向くと、木場はにっこりと微笑んだ。

 

(リアス「話を戻すわね。世界の数々の偉人も神器を宿したといわれてるわ。その種類は数多く、中には『神滅具(ロンギヌス)』といったレアなものまで存在するわ」)

 

(我夢「『神滅具(ロンギヌス)』?」)

 

(リアス「名前の通り、神を滅ぼす力さえ持っていて、神器の中でもずば抜けた力があるわ」)

 

2人は木場の神器も凄そうなのに、それより強い神滅具とは一体どんなものかと考えた。

 

(リアス「それを狙って無理矢理悪魔に転生させ、人生をめちゃくちゃにする悪魔もいるわ。私はそんなこと絶対にしないけど」)

 

2人は、リアスは上級悪魔の中でも自分の眷属を大切にしていることを以前に木場に聞いたことがあったので、リアスの言葉に頷いた。

 

 

 

 

そんなことを思い出していると、男の子の傷はアーシアの神器によって跡形もなくなった。

 

アーシア「はい、大丈夫ですよ」

 

男の子「!?」

 

アーシアがそう言うが、男の子は何が起きたのか分からなかった。

 

すると、遠くから男の子の母親らしき女性が近づいてきた。アーシアに気味悪がるような表情を浮かべながら女性は男の子を手をとり、足早に公園を立ち去ろうとした。

 

男の子「お姉ちゃん!ありがとー!」

 

男の子が遠くからそう言うと、母親は男の子をつれて逃げるように公園から立ち去った。

 

アーシア「あの…、何と仰ったのでしょうか?」

 

2人はアーシアに近付き、日本語がわからない彼女に男の子がありがとうと言ったことを伝えると

 

アーシア「そうですか…、ありがとう…と」

 

アーシアはそう言うと、喜ばしそうに微笑んだ。

 

我夢「あの力って…」

 

アーシア「はい、治癒の力です……。神様から頂いた大切なもの……」

 

我夢「……」

 

アーシアはそう言うが、どこか暗い表情を浮かべた。

やはり先程の母親の気味悪がるような表情を見たからだ。

彼女は正しいことに力を使ったのに何故か報われない気がする。

そう思った我夢と一誠はアーシアに近付き、一誠はその肩に手を置いて言葉をかけた。

 

一誠「いや、アーシアは何1つ間違っちゃいない。現にあの男の子の傷を治したじゃないか!」

 

我夢「そうだよ、そんなこと出来るなんてすごいよ!」

 

アーシア「イッセーさん……、我夢さん……」

 

2人の励ましの言葉を聞き、アーシアは少しずつ表情を明るくしていった。それを見た2人は安心し、案内を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩き続けると、目的地の教会が見えてきた。

 

一誠「ほら、あれが教会だ。あとは道なりに進めばいいだけだから」 

 

アーシア「イッセーさん、我夢さん!ありがとうございました!」

 

一誠が教会へ指差しながら言うと、アーシアは2人へ感謝の言葉を言った。

 

アーシア「あ!お二方に教会で何かお礼をしたいのですが……」

 

我夢「い、いや大丈夫だよ!」

 

一誠「ああ、元々お礼(それ)目当てで案内したわけじゃないからな!」

 

アーシアの提案に2人は少し焦ったように断った。

その理由は、これ以上教会に近付いては行けない、嫌な予感がする、と脳と体が拒否反応を示していたからだ。

 

アーシア「そうですか…、あの…!またお会い出来ますか?」

 

アーシアは期待の表情を浮かべながら2人に尋ねたら、

 

一誠「おう!この町にいりゃあ、いつか会えるぜ!」

 

我夢「そうだよ!何より僕たち、もう友達だろ?何かあったらまた手伝うよ」

 

我夢と一誠は笑顔でそう言うと、アーシアは嬉しそうな表情を浮かべた。

 

我夢「じゃ、僕たちここまでだから」

 

一誠「じゃあな!アーシア!!」

 

2人はそう言うと、もと来た道を歩いて帰っていった。

 

 

 

 

 

アーシア「また近いうちどこかで……お会い出来るような気がします…」

 

アーシアが微笑みながらそう呟くと、教会の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「二度と教会に近づいちゃ駄目よ!」

 

次の日の放課後、我夢と一誠は険しい表情のリアスに叱られていた。

その理由はアーシアを案内するとはいえ、教会に近付いたからだ。

 

リアス「いい?我夢、イッセー。教会は私たち悪魔にとって教会は近付くだけで危険な場所なの……。いつ光の槍が飛んでくるかわからないわ……」

 

リアスはそう言うと、不安そうな表情を浮かべた。

それは悪魔の中でも眷属の愛情が深いことで有名なリアスだからこそ見せる表情である。

 

我夢「…わかりました、すみません…」

 

一誠「次から気をつけます…」

 

2人は申し訳ない表情でリアスに謝罪した。

 

リアス「いえ、私も熱くなりすぎたわ……ごめんなさい。でも悪魔払いは悪魔を完全に消滅させる…、それだけは覚えてちょうだい……」

 

リアスはそう言うと椅子に座った。

 

その後、その日は特に何もなく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスに叱られてから数日経った頃、一誠はレンタルした映画のDVDを返すため、商店街を1人で歩いていた。

 

一誠「ん?」

 

商店街をしばらく歩いていると、見覚えのあるシスターの格好をした少女が道の真ん中でキョロキョロしていた。

 

一誠「お、アーシア!」

 

アーシア「イ、イッセーさん!?」

 

一誠が話しかけると少女はアーシアだった。

アーシアは驚いた表情で一誠の方へ振り向いた。

 

一誠「よう、久しぶりだな!」

 

アーシア「はい、お久しぶりです……」

 

2人は再開の言葉をかけた。

 

一誠「ところでここで何してたんだ?」

 

一誠はアーシアが何故ここでキョロキョロしていたのか気になったので質問した。

 

アーシア「はい、今日はお休みを頂いたのでご飯を食べようかとお店を探していたのですか……」

 

そう言ったアーシアがその理由だけでなくどこか浮かない表情をしているのに気がついた一誠は

 

一誠「そうか…。なぁ、今日1日時間あるか?」

 

アーシア「は、はい…大丈夫ですが……」

 

一誠「よし!じゃあ俺と遊ぼうぜ!」

 

アーシア「で、ですが…私が居ても楽しくなんか……」

 

一誠「そんなことやってみなちゃわかんねぇだろ?よっしゃ、行こうぜ!」

 

一誠はアーシアの手をとり、一緒に歩きだした。

その行動にアーシアは頬を赤く染め、2人は近くのハンバーガーショップに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンバーガーショップに入った2人は偶然空いた席に座り、一誠はハンバーガーとドリンクのセットを頼み、アーシアも同じのを頼んだ。

 

アーシア「イッセーさん、これはどうやって食べるのですか?」

 

アーシアはハンバーガーを疑問の目で見つめながら一誠に質問した。

 

一誠「あぁ、それは…こうやって食べるんだ!」

 

一誠はそう言うとハンバーガーを持ち、口を大きく開くと、その口でハンバーガーにかぶりついた。

 

アーシア「そ、そんな食べ方があるなんてすごいです!」

 

アーシアは小さな口を開け、一誠のようにハンバーガーを上品にかぶりついた。

 

一誠「そういや、何かあったのか?なんか悲しそうな顔してたけど……」

 

アーシア「い、いえ……、別に何も……」

 

一誠の疑問にアーシアはそう答えるが、また浮かない表情を浮かべていた。

一誠は絶対に何かがあったに違いない、と心に思いながら笑顔で話しかけた。

 

一誠「そうか、じゃあ再開ということもあるし、今日1日中楽しもうぜ!!」

 

アーシア「は、はいっ!!」

 

一誠が笑顔でそう言うと、アーシアは暗い表情から明るい表情へなり、元気な声で返事をした。

 

その後、2人はハンバーガーショップを出ると、ゲームセンターや洋服屋など色々な場所を巡り、時間を忘れて一緒に楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「う~ん、今日はちょっとはしゃぎすぎたかな?」

 

2人は今、夕陽に染まっている公園の中でベンチに座っていた。

 

一誠「でも、ありがとな。今日1日付き合ってくれて」

 

アーシア「は、はい。私もこんなに楽しかったのは生まれて初めてです!」

 

アーシアは一誠に目を輝かせながら嬉しそうに言った。

 

アーシア「あの…、イッセーさん……。以前お会いしたときに見た私の神器(ちから)を見てどう思いですか?」

 

しばらく微笑んだアーシアだったが、段々暗い表情になると、顔を俯けながら一誠に尋ねた。

 

一誠「そうだなぁ~…、俺は世界一優しい力だと思うん…、ってアーシア!?どうした!?」

 

一誠が感想を話し始めると、アーシアは涙を流し始めた。

 

一誠「な、何か変なこと言ったか!?」

 

アーシア「い、いえ……、『優しい』というお言葉を聞けて…、つい涙が……」

 

一誠はその光景に動揺するが、アーシアは涙を流した訳を話すと、一誠はホッとした。

 

アーシア「私の過去、聞いてくれますか……?」

 

一誠「あぁ、いいよ」

 

一誠から了承の言葉を聞くと、アーシアは涙を拭い、自身の過去を話し始めた……。

 

「アーシア・アルジェント」。

彼女は欧州のとある地域で生まれ、すぐに教会の前に捨てられた。

 

教会に拾われ、すくすくと育っていった彼女であったが、8歳のとき、怪我した1匹の子犬を見つけたことが転機であった。

 

彼女は子犬を救いたいと思ったとき、神器を発現させ、子犬の怪我をその回復能力で治した。

 

その回復能力はどんどん教会中に広まり、いつの間にかどんな怪我や傷を治す「聖女」として崇められ、様々な名声を受けた。

 

だが、彼女は崇められたり、名声を得るのは望んでなかった。

彼女は本当は「友達」といえる存在が欲しかったのだ。

 

最初は誰かの役に立てればと思っていたが、周囲の人間の異質な目を見るうちに友達どころか、段々彼女の心は孤独になっていった。

 

そんなある日、「聖女」として崇められる日が終わる出来事が起きる。

教会の前に1人の怪我をした男が倒れていた。

その男は悪魔だったのだ!

 

彼女はすぐさま治療をしたが、悪魔をも治す力を知ると教会側はすぐに手のひらを返し、彼女を「魔女」と罵ると、教会を追放させた。

 

なので日本で堕天使の加護を受けるためにやって来たのだ。

 

アーシア「『悪魔』とか『堕天使』とか言っても、信じないですよね…。でも…、これは神様が与えて下さった試練だと思うんです…。これを乗り越えれば、きっとお友達だって……」

 

アーシアはそう言いながら自嘲気味に力なく笑った。

それを聞いた一誠は膝の上で拳を強く握ると、

 

一誠「いや、そんなの試練じゃない…」

 

アーシア「え?」

 

一誠の言葉にアーシアはきょとんとするが、一誠はそのまま言葉を続けた。

 

一誠「わざわざ辛い思いをして叶ったとしても、それは本当に叶ったと言えるのか?心の中から楽しいとかやった!とか思わなきゃそれは夢が叶ったとは言えないと俺は思う…」

 

一誠はアーシアの方へ笑顔で向くと、

 

一誠「それに夢なら叶ってる。俺たちはもう立派な『友達』だろ?もちろん我夢だって!」

 

一誠がそう言うと、アーシアは嬉しそうな表情で涙を浮かべた。

その光景に一誠は微笑んだ。

 

一誠「それに、悪魔や堕天使だって信じるぜ!だって俺は「――悪魔ですもんね」え?」

 

一誠は声がする方を振り向くと、ボンテージ姿に身を包み、背中からカラスのような翼を生やした女性…、堕天使がそこにいた。

 

???「わざわざ名乗る必要も無いけど、私の名前は『レイナーレ』。よろしくね♪」

 

一誠「…ッ!」

 

堕天使、レイナーレが笑顔でそう言うが、一誠はその笑顔は演技であるということをわかっており、その表情の裏にあるどす黒い感情にゾッとしていた。

 

レイナーレ「逃げ出したと聞いて慌てたけど、まさかそこの悪魔とデートしてたとわねぇ…」

 

アーシア「イッセーさんが……、悪魔…!?」

 

一誠「アーシア、黙っててごめん!」

 

一誠は驚愕の表情を浮かべているアーシアに謝罪した。

 

レイナーレ「アーシア、逃げても無駄なのよ…。さぁ、私達のもとに帰ってきなさい…」

 

レイナーレは怪しげな笑みを浮かべながら言うが、

 

アーシア「嫌です!人を殺めるような場所に戻りたくありません!」

 

一誠「何だと?こいつそんなことを…!」

 

アーシアの「人を殺める」という言葉に反応した一誠はレイナーレをにらみつけた。

 

一誠「レイナーレ!何が目的だか知らねぇが、アーシアを渡すわけにはいかねぇな!」

 

レイナーレ「汚らなしい下等悪魔が気安く呼ぶなっ!」

 

一誠が飛びかかると、レイナーレは怒りの表情で光の槍を手に出現させ、一誠に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイナーレ「はぁ…、はぁ…。結構手こずらせてくれたわね……」

 

あれから数分経ち、息を切らしているレイナーレの視線の先には腹から血を流し、うつ伏せで倒れている一誠の姿だった。

 

アーシア「イッ、イッセーさん!」

 

アーシアが治療しようと駆け寄るが、レイナーレはアーシアの前に立ち塞がった。

 

レイナーレ「これ以上この子を傷つけて欲しくなかったら私と一緒に来るのよ…。さもなくば…」

 

そう言うと、レイナーレはアーシアを脅すように光の槍を倒れている一誠に切っ先を向けた。

 

アーシア「わ、わかりました…!レイナーレ様のもとに戻りますからこれ以上イッセーさんを傷つけないで……!」

 

レイナーレ「そう、それでいいのよ…。あなたは今夜の()()()()で必要なのだから……」

 

涙を浮かべながら言うアーシアを体を掴み、飛び立とうとした時、

 

一誠「…だ、駄目だ……、アー…シア……。い…くな……」

 

一誠が行かせまいとレイナーレの足を掴み、アーシアに意識が朦朧としながらも言葉をかけた。

 

レイナーレ「しぶといわねぇ!邪魔よ!」

 

一誠「ごほぉっっ!!」

 

アーシア「きゃああぁぁぁーーーー!!」

 

レイナーレは鬱陶しいように言うと、だめ押しとばかしにイッセーの背中に光の槍を突き刺し、アーシアはそれを見て悲鳴をあげた。

 

一誠が薄れゆく意識の中で最後に見たのは、レイナーレに捕まれ、涙を流しながら自分の名前を呼び続け、飛び去っていくアーシアの姿だった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

アーシアを救い出すべく、教会に突入する我夢たち。
邪悪な堕天使達にガイアの闘魂が炸裂する!

次回、「ハイスクールG×A」!
「聖女の願い」!
もう1人のウルトラマンもついに登場!






アンケートの結果、ティガとダイナは本作に登場することにしました!
ただし、設定は変更しての登場ですので、ご了承ください。どのタイミングで登場するかは秘密です!

良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします!


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第4話「聖女の願い」

悪質堕天使 レイナーレ
      ミッテルト
      カラワーナ
      ドーナシーク 登場!


パンッ!!

 

リアス「……」

 

一誠「……」

 

部室に乾いた音が鳴り響いた。

リアスが怒りの表情で一誠を平手打ちしたのだ。

 

一誠はレイナーレとの一件後、血まみれで倒れていたところを我夢が発見し、リアスに頼んで治療してもらい、一命をとりとめた。

 

一誠は治療後、意識を取り戻すと何があったのかをリアス達に説明し、アーシアを救い出すと言うとリアスがやめるように言ったが、それでも救うと食い下がらなかった為、リアスに平手打ちされたのである。

 

リアス「何度言えばわかるの!?駄目なものは駄目よ、彼女のことは忘れなさい…。貴方は私の眷属なのよ?これは貴方だけの問題じゃないのよ!?もし貴方に何かあったら私達にも被害があるの!私の眷属をそんな危険なマネさせないわ!」

 

リアスは怒りの表情を浮かべたままだが、その言葉は不安で満ちていた。

 

一誠は無言で聞いていたが、真剣な表情でリアスを見つめると、

 

一誠「なら…、おれを『はぐれ』にしてください…!そうすれば誰も迷惑をかけないで済む…」

 

「「「「「!?」」」」」

 

一誠の発言に全員が驚いた。はぐれ悪魔になると、永遠に他の悪魔たちに狙われる人生を歩むことになるからである。

 

リアス「何言っているの!?そんな事できないわ!貴方は私たちにt…「そんなことわかっています!!」一誠?」

 

リアスの言葉を一誠は大声で遮ると、言葉を続けた。

 

一誠「無茶な事だって、無駄死にするだけだってわかっています!それでも俺はアーシア(あいつ)の友達だ!それにこれ以上、俺の前で夢を壊されたくない!!だから、俺は……!!」

 

リアス「待ちなさい!イッセー!!」

 

一誠はそう言うと、リアスの制止も聞かずに部室から飛び出していった。

 

我夢「部長」

 

頭を抱えているリアスに我夢は真剣な表情で話しかけた。

 

我夢「一誠を許して下さい。あいつは昔から友達や夢のことになると、熱くなってしまうタイプなので…。勝手なことを言いますが、僕はイッセーの提案に賛成です。アーシアは僕の友人でもあります。僕の友人が苦しんでいるなら助けてあげたいです、では!」

 

我夢はそう言いお辞儀すると、リアスが言葉を発する暇もなく部室を飛び出していった。

 

リアス「2人とも…」

 

リアスは不安な表情で呟いていると、朱乃が近づき、耳元で何かを囁いた。

 

リアス「裕斗、小猫。私は大事な用事が出来たから席を外すわ」

 

そう言うと、リアスは朱乃と共にドアがある方に向かうとドアの前で木場と小猫の方に振り向くと、

 

リアス「あと、2人にこれだけを伝えて置いて。―――」

 

木場「!」

 

リアス「裕斗、小猫。2人を頼んだわね」

 

伝言を伝えたリアスは朱乃と共にどこかへ出掛けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、町外れの教会の近くの木の影に一誠の姿があった。

 

一誠「(結局来たが、奇襲するか?それとも…、あぁー!面倒くせぇ!もう正面突破するか!!)」

 

一誠はそう思い、木の影から出ようとすると、

 

グッ!

 

一誠「!?」

 

何者かが一誠の肩を掴んだ。

一誠が振り返ると、

 

我夢「まぁ、待ちなって」

 

一誠「我夢!」

 

自身の肩を掴んでいる我夢がいた。

 

一誠「俺を止めに来たのか?」

 

一誠がそう質問すると

 

我夢「いや、そうじゃない。僕もアーシアを助けに来たんだ。一誠1人じゃ切り抜けられないと思ったからね。僕たちいつもやることは一緒、だろ?」

 

一誠「我夢…」

 

一誠は我夢の言葉に感激し、思わず涙が出そうになった。

 

???「僕たちも忘れないで欲しいね」

 

一誠が感激している中、2人は声のする方に振り向くと、後ろから木場と小猫が現れた。

 

一誠「俺たちを止めに来たわけじゃ…」

 

一誠は不安そうに言うが、

 

木場「いいや、違うよ。僕たちもアーシアさんの救出に来たんだ。それに、個人的に堕天使にいい感情は持ち合わせてないからね」

 

小猫は木場の意見に同じと言わんばかりに頷いた。

 

その後、2人に兵士の駒の特性である『昇格(プロポーション)』について説明した。

 

『昇格』、それは『兵士』が『王』以外の駒の能力を使えるという特殊能力である。ただし、『昇格』するには『王』が、我夢達でいうところのリアスの許可が降りなければできないのである。

 

木場「あと1つ、部長から君達への伝言だ。部長は敵地において昇格条件を出した…、つまりこの教会を悪魔にとっての敵陣地として認めた」

 

一誠「?」

 

我夢「つまり暴れていいってことだよ」

 

リアスの伝言にちんぷんかんぷんな表情をしていた一誠に我夢が簡潔に説明すると、一誠はなぁるほどと、手のひらにポンと手を当てて納得した。

 

我夢「作戦は?」

 

木場「アーシアさんはおそらく、この教会の聖堂にいるだろう。教会は大抵、聖堂で儀式を行うからね…。向こうもこちらに気づいているだろうから…」

 

小猫「正面突破です…」

 

木場に続けて小猫がそう言うと、4人は隠れていた木の影から出て、教会の扉の前まで歩いた。

 

小猫「…えい」

 

小猫が扉を蹴破ると、4人は教会の中へ侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が遡り、我夢と木場達が一誠に合流する前、

一誠が隠れている場所から離れた教会近くの森の木の上にレイナーレの部下の女堕天使、『カラワーナ』、『ミッテルト』、そして男の堕天使、『ドーナシーク』がそこにいた。

 

カラワーナ「今夜の儀式が終われば、レイナーレ様もついに認められる…!」

 

カラワーナは自分のことの様に歓喜に震えていた。

 

ミッテルト「あーあー…、いいなぁ~、レイナーレ様。私も『アザゼル』様に認められたいなぁ~…」

 

ミッテルトが羨ましそうに呟くと、

 

ドーナシーク「まぁ、そう言うな。レイナーレ様も我々にも御慈悲が貰える様にして下さるだろう。だから、私達は儀式が邪魔されぬよう見張りをすることだ…」

 

ドーナシークはそう言うと、帽子を深くかぶり直しながらミッテルトに言った。

 

カラワーナ「しかし、中々来んな…」

 

カラワーナはすぐ来ると思った悪魔が来ないことに疑問を持っていた。

 

ミッテルト「まぁどうせ来ても~、八つ裂きにするだけだし~、それに、ここの悪魔達も大したことないっしょ!きゃはははははーーーー!!楽しみだなぁ~、恐怖に歪む顔をした悪魔を見るの~~!」

 

ミッテルトの発言に他の2人も邪悪に満ちた笑みで微笑んだ。

 

だが、3人はその様子を木の影から黒一色の服を着た男が見つめていたことも、この後、自分たちが恐怖に歪む顔をすることをまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り、我夢、一誠、木場、小猫の4人はそこで待ち伏せていたはぐれ神父、『フリード・セルゼン』と対峙していた。

 

フリード「ようこそォォーー!クソ悪魔の皆様方ァ!ここから先は行かしませんぞォォ~~!」

 

一誠「おい!お前に構ってる暇は無ぇ!アーシアはどこだ!」

 

気味が悪い笑みを浮かべているフリードに一誠はアーシアの居場所を怒鳴りながら聞いた。

 

フリード「それなら、そこの祭壇の下に隠し階段がござりまする。そこを降りれば、祭壇がある聖堂に行けまするぞ」

 

あっさりと居場所を白状したフリードに一誠と我夢は驚いていると

 

フリード「でも、辿り着けないでしょう。何故ならここでぼくちんに皆殺しにされるからねェェ~~~~!」

 

フリードは右手に持っている光剣で一誠に斬りかかろうとし、我夢は懐から金色のメリケンサックの様なものを取り出そうとしたが

 

ガギィン!

 

フリード「チッ!」

 

木場が割り込んで、フリードの光剣を自らの剣で受け止めた。

 

木場「イッセー君、我夢君!ここは僕たちが引き受けた!さぁ、アーシアさんの元へ!」

 

小猫「…先輩方、ここは任せて下さい」

 

光剣を受け止め続けている木場と小猫の言葉を聞くと、一誠と我夢は祭壇を蹴飛ばし、地下の儀式が行われている聖堂につながっている階段を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リアスと朱乃は

 

リアス「こ、これは!?」

 

朱乃「ひどい有り様ですわ…」

 

2人は驚愕に包まれていた。

教会の周りにいる3人の堕天使、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークを討伐に来たが、2人の視線の先には、もはや肉片となり、堕天使の羽が散乱している件の3人の死体があり、大量に流れている血で周りの木は赤く染まっていた。

 

また、唯一顔が無事であったミッテルトの顔は、恐怖に歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、一誠達は

 

一誠「くそ!早くしねぇとアーシアが!」

 

我夢「イッセー、おそらく聖堂には大勢の悪魔払いがいると思うからそいつらは僕に任せてアーシアを」

 

一誠「わかった!頼んだぜ、相棒!」

 

2人はそんな会話をして階段を降りていくと、大きな扉が見えてきた。

 

一誠と我夢はそれを力いっぱい開き、中に入った。

 

室内には大勢の悪魔払いがおり、奥の祭壇には十字架で磔にされたアーシアの姿があった。

 

一誠「アーシア!俺だ、イッセーだ!」

 

アーシア「……イッセー…さん?」

 

一誠の呼び掛けにアーシアはぐったりしながらも顔をあげた。

 

アーシア「…どうして…ここに?」

 

アーシアは疑問の表情を浮かべると

 

一誠「俺たち『友達』だろ?理由なんかそれだけだ!!」

 

我夢「そうだよ!『友達』がピンチなら助ける、当たり前のことじゃないか!」

 

アーシアは友達だからという理由で、危険を冒してまで助けに来てくれた一誠と我夢に感激し、涙を流した。

 

レイナーレ「あらあら、美しく友情だこと。一足遅かったわねぇ、たった今儀式が終わるところよ」

 

アーシア「イヤァァァァーーーーーー!!」

 

一誠&我夢「「アーシア!!」」

 

レイナーレがそう呟くと、アーシアは体が緑色に輝きだし、苦しそうに叫び声をあげた。

すると、アーシアは力尽きた様にぐったりし、体から緑色の光が出てきた。

 

レイナーレ「これよ!これが欲しかったのよ!これさえあればアザゼル様とシェムハザ様の愛を…!」

 

レイナーレは緑色の光を体の中へいれると、喜びに満ち溢れた表情を浮かべた。

 

我夢「やはり、狙いは神器か…!」

 

一誠「野郎ォォ~、それだけのことでアーシアを……!」

 

2人は当然、神器を抜かれた人間が死ぬこともきかされていたので、我夢は苦虫を噛み潰した表情で呟き、一誠は怒りの表情で歯軋りした。

 

レイナーレ「これでやるべきことも終・え・た・し、後は邪魔な悪魔さん達を八つ裂きにするだけね!」

 

レイナーレが言い終えると同時に、周りにいた大勢の悪魔払いが一誠たちに襲いかかってきたが

 

ドガァァァーーーン!

 

「「「「「ぐわぁぁぁーーーー!!!!!」」」」」

 

後ろから一誠たちの間に割り込む様に、長椅子が飛んでき、悪魔払い達に直撃した。

 

2人が振り返ると

 

木場「一誠君たち、待たせたね!」

 

小猫「…助けに来ました」

 

一誠「お、お前ら…」

 

フリードと交戦してた筈の木場と小猫がそこにいた。

 

レイナーレ「あのはぐれ神父は!?」

 

木場「あぁ、彼なら撤退していったよ」

 

レイナーレの問いに木場は少し口角をあげて答えた。

 

レイナーレ「チッ、使えないわね!貴方達、こいつらを皆殺しにしなさい!」

 

レイナーレの言葉に悪魔払いは活気を取り戻すと、木場達を含めた4人に襲いかかってきた。

 

我夢「一誠!ここは僕たちに任せて、アーシアを!」

 

一誠「すまねぇ、みんな!」

 

一誠は我夢にそう答えると、襲いかかってくる悪魔払いの攻撃をかわしながら祭壇のほうへ進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「こいつの出番がきたか…」

 

我夢は悪魔払いの攻撃から避けながら、懐から先程、上階で使おうとしていた金色のメリケンサックの様なものを取り出した。

 

小猫「我夢先輩、それは?」

 

小猫は悪魔払いを殴り飛ばし、興味深々な表情で我夢に問うと、

 

我夢「これは『エスプレンダー』。『光を解放する』という意味で、僕が作った変身アイテムさ」

 

木場「成る程、スペイン語で輝くの意味を持つ、Esplender(エスプレンデル)から取っているね」

 

悪魔払いを切り捨てながら感心し、呟く木場に我夢は頷くと、エスプレンダーを右手にはめて、その手を左肩に持っていき、

 

我夢「ガイアァァァーーーー!!!

 

その掛け声と共にエスプレンダーを前にまっすぐつきだすと、エスプレンダーから赤い光が溢れだし、我夢は等身大のガイアへと変身した。

 

小猫「おおおお…」

 

ガイアの姿を間近に見て、小猫は普段の無表情が考えられないくらい目を輝かせていた。

 

ガイア「グァァ…、デュワーー!!」

 

「「「「「「うわぁぁーーー!!!」」」」」」

 

ガイアは素早くエネルギーを溜めて体から解放して、周りにいた悪魔払い達を吹き飛ばし、それを受けた悪魔払いたちは壁に叩きつけられた。

 

木場「相変わらず、凄まじい力だね…」

 

小猫「すごいです…」

 

その様子に木場と小猫は吹き飛ばされないようにしゃがみながら感服した。

 

祭壇のほうでは、十字架から解放されたアーシアを両腕で抱えている一誠にレイナーレが背後から光の槍を突き刺そうとしていた。

 

ガイア「!デュワッ!」

 

それに気づいたガイアは左手から三日月型の光弾、『ガイアスラッシュ』をレイナーレ目掛けて放った。

 

レイナーレ「ギャア!悪魔ごときがよくもやってくれたわね……!」

 

ガイアスラッシュが直撃したレイナーレは怒りの表情に歪むと、光の槍をもう1本作り出し、ガイアに向かって飛びかかった。

 

ガイア「デュアッ!」

 

ガイアはレイナーレの攻撃を強化されたフットワークで避けると、レイナーレの頭に回し蹴りを放った。

 

レイナーレ「ぐわぁぁーーーーーーー!!」

 

それを喰らったレイナーレは横の壁に吹き飛んでいった。

 

木場「イッセー君、今のうちにアーシアさんを上へ!」

 

一誠「…!すまねぇ、みんな!」

 

一誠は木場の言葉を聞くと、アーシアをお姫様抱っこして、入ってきた扉のほうへ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を急いで上がった一誠は、近くにある長椅子にアーシアを寝かせた。

 

一誠「ア…アーシア、しっかりしろ!安心しろ、俺の友達が絶対に助けるからな……!」

 

アーシア「イ…ッセー…さん…」

 

一誠は意識が朦朧とし、辛そうに呼吸するアーシアの手を両手で強く握った。

 

アーシア「イッセー…さん…、私…、日本に…来てよかった…。我夢…さんや…イッ…セーさん…と少しの間だけ…お友達に……なれ…て……」

 

一誠「バカヤロー!それはこれからだろ!そんな悲しいこと言うなよ!」

 

一誠は心の中でわかっていたのだ。

もうどうやっても助からないと…。

その事が悔しくて、一誠は涙を流してアーシアの言葉を否定した。

 

アーシア「イッ…セー…さん、私と…お友達に……なって……くれ………て、ありが…と」

 

アーシアは涙を流しながらか細くなった声で一誠にそう言うと、安らかな表情で息をひきとった。

 

一誠「………アー…シア…」

 

一誠は冷たくなった彼女の手をより強く握りしめながら静かに泣いた。

 

レイナーレ「あ~あ、死んじゃたわねぇ~、その娘」

 

一誠が悲しんでいると、ガイアたちと戦っていた筈の所々ボロボロのレイナーレがいた。

 

一誠「お前、あいつらをどうした…?」

 

レイナーレ「あの子たちは面倒だから、悪魔払い達に頼んだわ」

 

一誠は振り返らずに問うと、レイナーレはにやけながら答えた。

 

レイナーレ「ご覧なさい…、あのウルトラマン?だっけ?あの子や他の子たちに傷つけられた傷も彼女から奪った神器、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を使えばこの通り」

 

レイナーレは傷ついた体の部位に手をかざすと、緑色の光で傷が治った。

 

レイナーレ「これで私を馬鹿にしてきた奴等を見返せるわ!これでアザゼル様もようやく…「…おい」何よ…」

 

レイナーレは歓喜に満ち溢れた表情で呟いていると、途中で言葉を遮った一誠を不機嫌な表情で見つめた。

 

一誠「そんな…、そんなくだらねぇことでアーシアを巻き込みやがって!この娘は普通に友達が欲しかっただけなんだ!普通に生活したかったんだ!」

 

レイナーレ「ウフ♪その娘は私の大切な計画の為に生け贄になったのよ。むしろ感謝してほしいわ、はぐれになった彼女を有効活用してあげたんだから…」

 

レイナーレは激怒している一誠に薄気味悪い笑みで答えると

 

レイナーレ「じゃあ、彼女とあの世でデートできるようにしてあげるわっ!」

 

光の槍を作り出し、それを一誠に目掛けて投げた。

 

一誠「…クッ!」

 

一誠は死の覚悟をし、身を固めたが

 

ガイア「デュア!」

 

地下からレイナーレを追ってきたガイアが高速移動で一誠の前に割り込み、光の槍を腕で叩き落とした。

 

一誠「が、我夢…」

 

急に来た驚きと、助けてくれた喜びが頭のなかを駆け回っている一誠にガイアは頷いた。

 

レイナーレ「うそ!?悪魔なのに、光が効かないなんて!?」

 

レイナーレは悪魔の弱点である光の槍を触れても、何も起きないガイアに動揺していると、

 

ガイア「ダァァァーーーー!」

 

レイナーレ「は!し、しまっ…!ギャアァァァァーーー!!!」

 

ドガァァァァァァーーーン!!!

 

こちらに向かってジャンプキックしているガイアに気づかず、腹部に直撃すると、後ろへ吹きとんでいった。

 

レイナーレ「ぐっ、ぐぅ…」

 

レイナーレは口から血を流しながら瓦礫から出てくると、聖母の微笑で治す為、口元に手をかざすが

 

レイナーレ「(ち、治療速度が落ちてる!?まさかウルトラマンのせい!?)」

 

治す力が弱まっている事にレイナーレは焦った。

急に言うことを聞かなくなった神器、光が効かないガイア相手では分が悪いと思い、逃げる為、翼を広げて空へ飛んだ。

 

ガイア「デュア!ガァァァァ……、デュワァァァァァァァーー!!」

 

ガイアは逃がすまいと思い、腕をT字に組んでエネルギーを溜めると、右腕の間接に左手を乗せて、L字型の構えで放つ必殺技、『クァンタムストリーム』をレイナーレに放った!

 

レイナーレ「ぐぎゃあぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

直撃したレイナーレは黒焦げになって、地上へと落下し、その衝撃で気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイナーレから聖母の微笑を取り返したガイアは我夢の姿に戻ると、アーシアの遺体に横にそれを置き、一誠と一緒に長椅子に座っていた。

我夢は落ち込んでいる一誠に声を掛けようとしたが、

 

木場「どうやら終わったみたいだね」

 

2人が声のするほうを向くと、多少ボロボロになった木場と小猫が階段を上ってきた。

 

一誠「みんなに迷惑をかけちまったのに…、結局、俺は助けられなかった…」

 

木場「イッセー君…」

 

小猫「先輩…」

 

一誠の言葉に木場と小猫は悲しみの表情を浮かべた。

 

その後、あとからやって来たリアスと朱乃と合流し、お互いに何があったのかを報告した。

 

リアス「――そう…、残念だったわね…」

 

一誠&我夢「「…」」

 

リアスは悲しみに満ちた眼差しを2人に向けた。

 

リアス「しかし、()()()()()()()()()()()()()のは幸いだったわ」

 

我夢「え、それってどういう事です?」

 

リアスは我夢にそれは後でと言い、朱乃にレイナーレを起こす様に指示した。

 

ザッバァッ!

 

レイナーレ「けほっ、こほっ!」

 

朱乃「部長、起きましたわ」

 

朱乃は魔法で作り出した水をレイナーレにかけると、レイナーレは咳をしながら気をとり戻した。

 

リアス「こんばんは、堕天使さん」

 

レイナーレ「あ、あなたは…」

 

リアス「そう、あなたがずいぶんと可愛がってくれた眷属の主、リアス・グレモリーよ」

 

リアスはにっこりと微笑みながら言った。しかし、その顔はどこか怒りがこもっていた。

 

レイナーレ「グレモリー…、まさかグレモリー家の娘か!?」

 

リアス「えぇ、以後お見知りおきを…。まぁ、あなたはこれから消されるんだけどね」

 

リアスがそう言うと、レイナーレの顔は青ざめた。

 

レイナーレ「わ、私の部下は…?」

 

リアス「あぁ、彼らは()()()()()()()()()惨殺されてたわ…。この羽、あなたならわかるでしょ?」

 

レイナーレはリアスの手に持っている3枚の羽を見ると、そんな…と呟きながら落胆した。

 

リアス「あなた達は、私の領地で好き勝手してくれただけでなく、私の可愛い眷属に手を出した…、充分死罪に値するわ……」

 

そう言うと、リアスは全身から赤黒いオーラを解放した。

 

リアス「何か言い残すことは…?」

 

リアスは右手にこめた破滅の魔力をレイナーレに向けながら問うと

 

レイナーレ「……このまま確実に私は殺されるでしょう…、だが!」

 

レイナーレは薄気味悪い笑みを浮かべながらそう呟くと、視線を我夢の方に向けた。

 

レイナーレ「こいつだけは道連れにしてやるわっ!」

 

レイナーレは最後のあがきで両手に光の槍を作り出し、我夢目掛けて襲いかかった!

 

リアス「しまった!」

 

木場「まだ抵抗する力が残っているなんて!」

 

リアス達は我夢を助けようとするが、すでにレイナーレは我夢の目前まで近づいていたので間に合わない。

 

我夢「!」

 

レイナーレ「死ねぇぇぇぇーーーーーーー!!」

 

突然のことで動けない我夢に接近したレイナーレは、その両手の光の槍で突き刺そうとしたその時!

 

レイナーレ「ぎぃあぁぁあぁぁあーーーーー!!」

 

ドガァァァーーーーーーン!!

 

我夢の後ろから飛んできた青い光線を受けたレイナーレは爆発四散した!

我夢たちは光線が飛んできた方向を振り向くと、

 

???「……」

 

胸と両肩にある銀縁のプロテクターの中央には、青く輝くひし形の結晶体があり、青い体に銀色のラインがあるウルトラマンがそこに立っていた。

 

小猫「…ウルトラ…マン?」

 

一誠「1人だけじゃなかったのかよ…!?」

 

その青いウルトラマンを見て、リアスたちは驚いていた。

 

我夢「君は…、一体…?」

 

青いウルトラマン「………」

 

我夢が質問するが、青いウルトラマンは何も答えず、踵を返して歩いていった。

 

リアス「待ちなさい!あなたは…!」

 

リアスが何者か問おうとしたが、青いウルトラマンは振り返らず、両手を広げてそのままどこかへ飛んでいった。

 

こうして、アーシアの救出は突如現れた青いウルトラマンの謎を一同に残しながら、終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、我夢は急ぎ足でオカルト研究部の部室に入った。

 

我夢「部長、すみません。遅れました」

 

リアス「あら、いいのよ。先生のお手伝いをしてたんでしょ?」

 

我夢「さ、さすが部長…、情報が速い…」

 

朱乃「あらあら、うふふ…」

 

リアスの幅広い情報網に我夢は苦笑いをしながら感服し、朱乃はいつもの口調で微笑んだ。

 

アーシア「我夢さん、おはようございます!」

 

我夢「アーシア、おはよう!」

 

我夢は駒王学園の制服に身を包んでいるアーシアに笑顔で挨拶を返した。

 

何故、死んだはずのアーシアがここにいるのか。それは昨日、我夢が取り返した『聖母の微笑』と『僧侶(ビジョップ)』の駒を使い、リアスが悪魔へ転生させたからだ。

 

シスターを悪魔に転生させることは前代未聞だったらしかったが、無事転生し、今日から駒王学園の2年生として生活している。

 

ちなみにアーシアは住む家がないので、一誠の家に住まわしてもらっている。

 

リアス「さあ、全員揃ったことだし…!」

 

リアスは指を鳴らすと、部室のテーブルにケーキと大量のお菓子が現れた。

 

リアス「アーシアの歓迎パーティーを始めましょう!」

 

リアスの言葉と共に一同は乾杯すると、ケーキとお菓子を思う存分堪能しながらパーティーを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、どこかの薄暗い部屋の中で我夢の情報を興味深そうにパソコンで閲覧している人物がいた。

その人物は、コッヴ襲来後や昨日の夜、森の中で堕天使たちを見つめていたあの黒服の少年であった。

 

黒服の少年「高山 我夢、奴を俺の()()()にすれば…」

 

黒服の少年は意味深に呟くと、パソコンを閉じ、どこかへ出掛けていった……。

 

 

 

 

 

 




次回予告

神の使いか、悪魔の使者か!?
ガイアとアグルの強烈タッグが、深海怪獣と大バトル!

次回、「ハイスクールG×A」!
「青き巨人」!
君の熱いエールは誰に!?






あの黒服の少年は一体誰なんでしょうね?(すっとぼけ)
良かったらコメント、感想よろしくお願いいたします。


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第5話「青き巨人」

大海魔 ボグラグ 登場!


アーシアの歓迎パーティーから3日ほど経った頃、休暇をもらった我夢は、実家の両親に会いに行くため、バスに乗っていた。

 

何故、両親に会いに行っているのか。それは昨日、リアスに両親のことを聞かれ、しばらく会ってないと答えたら、今すぐ会ってきなさいと半ば強制的に言われたからである。

 

魔法陣で送ってもらおうかと考えたが、我夢は魔力がとても少ないので転送できないということを思いだし、仕方なくバスで向かうことになった。

 

我夢はリアスに言われたことを思い出していると、バスに揺られながら隣の席を見た。

 

小猫「……」

 

そこには窓ガラスから外を眺めている小猫の姿があった。

 

ちなみに服装はいつもの制服ではなく、可愛らしい猫のマークがプリントされたワンピースを着ている。

 

何故、彼女がいるのか。本人曰く、「我夢先輩のお目付け役です」だそうで、リアスに頼まれて来たそうだ。

 

我夢が来るまでバス停でずっと待っていたらしく、今日は少し暑いので、少し汗をかいていた。

 

ちなみに、もし来なかった場合は小猫が力ずくで自宅から引っ張り出すつもりだったそうだ。

彼女はその小柄な体格に似合わず、巨大なはぐれ悪魔を軽々と吹き飛ばせる力があるので、我夢はそれを想像して、ゾッとした。

 

 

 

そんなことを思いだしながら、我夢は視線を前へ戻した。

 

我夢「(母さん達、元気かな…)」

 

そんなことを考えながらもバスはどんどん先へ進んでいった。

 

この後、我夢が好きな和菓子の話を持ち出すと、小猫はそれに乗り、バスが我夢の実家がある地域に着くまでお互い熱く語り合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、海上では謎の影が真っ直ぐどこかへ進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「う~ん、やっと着いた!」

 

小猫「…着きましたね」

 

その頃、バスから降りた我夢は、左手にお土産を持ちながら背伸びをすると、小猫と一緒に実家に向かって歩き始めた。

 

我夢「ここに来るのも久しぶりだな……」

 

小猫「…いつ振りですか?」

 

通り道である浜辺を歩いている途中、小猫の疑問に我夢は少しの間考えると

 

我夢「1年と3ヶ月振りかな」

 

小猫「…そんなに!?」

 

少し苦笑いをしながら答える我夢に、小猫は驚いた。

 

我夢「まぁ、色々あってね…。それであんまり地元(ここ)、好きじゃないから……」

 

我夢はそう言いながら海を眺めると、彼が小学生の頃の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生の頃の我夢は浜辺にて、3人の上級生たちに囲まれていた。

 

(上級生A「何でも僕にはわかりますってツラしやがってよ!」)

 

(上級生B「気に入らないんだよ、ガリ勉は家で勉強してろよ!」)

 

我夢は生まれたときから天才である。

そのため、成績はいつもトップクラスだった。

だが、天才ゆえに一部の人たちからは妬まれ、そんな人に毎日いじめられていた。

 

(上級生C「本なんか持ち歩きやがって!」)

 

(幼少期の我夢「あ!返してよ!」)

 

我夢は1人の上級生に取り上げれた本を取り返そうとしたが、他の上級生たちはそれを渡さないように妨害した。

 

(幼少期の我夢「返してよぉ…」)

 

我夢は今にも泣きそうな顔になり、上級生たちはその様子にニヤニヤしていると、

 

(???「おい、やめろ!」)

 

(上級生A「いてっ!」)

 

我夢と同じくらいの歳の少年が1人の上級生の背後にタックルをかました。

 

(上級生C「あ!何すんだ、お前!」)

 

上級生は突然現れた少年を睨んだ。

 

(少年「それはこっちの台詞だ!我夢にさっさと返しやがれ!!」)

 

少年は怒りのこもった言葉を言うと、上級生たちを睨み返した。

 

(上級生A「お前、年下の癖に生意気だ!やっちまえ!」)

 

先程タックルをくらった上級生がそう言うと、少年と上級生たちは取っ組み合いのケンカを始めた。

 

 

 

 

 

 

(上級生A「おい…、もう行こうぜ!」)

 

それから数分後、1人の上級生が観念したのか他の上級生にそう言うと、我夢の近くの砂浜に取り上げた本を投げ、どこかへ去っていった。

 

(少年「いてて~…。我夢、大丈夫か?」)

 

傷だらけの少年は赤くなっている頬に手を当てながら、我夢に安否を確かめた。

 

(幼少期の我夢「大丈夫だけど……。一誠、何で傷だらけになってまで助けてくれたの?」)

 

我夢は傷だらけの少年、兵藤 一誠にそう聞くと、

 

(幼少期の一誠「俺たち、昔から何をするのも一緒だろ?それに友達を助けるのに理由がいるかよ」)

 

(幼少期の我夢「一誠、ありがとう…」)

 

その言葉に感動した我夢は涙を流しながら感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小猫「我夢先輩…」

 

我夢が少し複雑そうな表情でその出来事を思い出していると、小猫は心配そうな眼差しを送った。

 

我夢「あ、あぁ!心配しなくていいよ!さぁ、先を行こう!」

 

我夢は小猫にそう言うと、別の話題を話し始め、歩きを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は色んな会話をしながら歩いていると、いつの間にか実家の前に着いた。

 

我夢と小猫は階段をかけあがり、門を開けた。

 

我夢「(うわ~、変わってないなぁ~)」

 

小猫「(…これが我夢先輩の実家)」

 

1年という短い期間だが、今住んでいるマンションに引っ越す前と変わらない庭と家の光景に我夢懐かしさと感動をおぼえ、小猫はこういった建物を見たことないのか、興味津々な様子で庭を見渡した。

 

その後、2人は気を取り戻すと、玄関の入り口の前に来た。

 

我夢「(何を話せばいいだろう…)」

 

我夢はそんな不安な気持ちをしながらインターホンを押そうと指を伸ばしたとき、

 

???「我夢?」

 

声のする方に我夢と小猫は振り返ると、そこには驚いた表情をしている我夢の母親、「高山 重美(しげみ)」の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、我夢と小猫は家の中に入れてもらい、重美にお土産を渡すと、縁側に座り、重美から出されたジュースを手に持ちながら重美と会話していた。

 

我夢「そういえば、父さんは?」

 

重美「お父さんなら、お仕事よ。いきなり、帰ってくるからびっくりしちゃった~。連絡してくれば、夕飯をご馳走したのに…」

 

少し残念そうな表情を浮かべている重美に我夢はごめん…と申し訳なさそうに謝った。

 

その後、我夢は重美に最近の高校生活のことを話した。

重美はその話を相槌を打ちながら興味深く聞いていた。

 

重美「そうだったのね。でも、久しぶりに帰ってきたと思ったらこんな可愛い彼女さん連れてきちゃって~♪もしかして挨拶に来たの?」

 

我夢「!?」

 

小猫「///!?」

 

重美がにやにやしながらそう言うと、2人は思わず飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。

 

我夢「か、母さん!!何言ってるんだよ!小猫はただの部活の後輩だよ!」

 

我夢はあわてて言うが、重美は冗談よ♪と舌を出しながら笑みを浮かべた。

 

我夢「小猫だってそうだろ…?」

 

我夢が小猫の方に振り向くと、

 

小猫「彼女…///」

 

我夢「小猫…」

 

小猫はまんざらでもない表情で頬を赤く染めながら呟いていた。

 

重美「あら、可愛いわね♪小猫さん、我夢をよろしくね♪」

 

小猫に冗談をかける重美に我夢が母さん、いいかげんにしてよ~と言おうと口を開いた時、

 

ズシーーン!!

 

海の方から大きな地響きが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人は立ち上がって地響きが鳴った方角を見ると、そこには全身が濡れていて、魚のような頭にザリガニのようなハサミを持つ怪獣、「ボグラグ」が海中から姿を現した!

 

我夢「母さん、急いで避難して。僕は他の人たちを避難させてくるから。小猫、母さんを頼む」

 

重美「…!わかったわ」

 

小猫「…わかりました」

 

我夢は何かを察した重美と小猫が了承するのを確認すると、ボグラグのもとへ走って行ったが、

 

我夢「母さん」

 

重美「?」

 

我夢はすぐ立ち止まり、重美の方へ振り向くと、

 

我夢「僕さ…、この街ってあんまし好きじゃなかった。でもさ、今は帰ってきてすごく良かったって思ってる…」

 

我夢は笑顔でそう言うと、再びボグラグのもとへ走っていった。

そんな息子の後ろ姿を重美は快い表情で見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ボグラグはその巨体で住宅を踏み潰しながら人気のある方へ真っ直ぐ進んでいた。

 

その時、航空自衛隊の戦闘機部隊が到着し、ボグラグへ攻撃を開始したが

 

隊長「!?」

 

ボグラグ「シャアァァア…!」

 

発射した銃弾やミサイルはボグラグには全く効いていなかった。ボグラグは体の成分が塩化カリウムを大量に含む海水と同じな為、体温が低い。

 

したがって、ミサイルや銃弾などの火力も水で消され、全く通用しないということである。

 

隊長「何てやつだ…、現代の兵器がここまで通用しないとは…」

 

戦闘機部隊の隊長は今の自分たちじゃ手も足も出ないことに悔しそうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢は先程通った浜辺へ来た。

周囲を見渡し、人がいないことを確認すると、エスプレンダーを右手にはめ、ガイアへ変身しようとするが

 

我夢「!?」

 

我夢は何者かの気配を感じ、気配がある方へ顔を向けると、黒一色の服を着た少年が岩場にいた。

 

黒服の少年「…」

 

黒服の少年は右手首につけている三角形の発光体に羽が閉じているような飾りがついたブレスレット形の変身アイテム、「アグレイター」を下に下ろした。

 

すると、アグレイターの左右の羽が展開し、そのまま胸の前に持ってくると、三角形の発光体が回転し、翼の上部から発生した青い光のエネルギーに黒服の少年が包まれると、我夢の前から姿を消した。

 

我夢がどこにいったのか周囲を見渡すと、突然空から何かがボグラグの前に落ちてき、土煙が舞った。

 

土煙が晴れると、アーシア救出の際に突然現れたあの青いウルトラマン、「ウルトラマンアグル」が姿を現した。

 

我夢「あの時のウルトラマン…まさかアイツがウルトラマンだったなんて…」

 

我夢はアグルの正体があの黒服の少年だという事実に驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、街から離れた避難所では

 

一般市民A「おい、あれってウルトラマンか?」

 

一般市民B「ウルトラマンってガイア1人だけじゃなかったの?」

 

一般市民C「ウルトラマン、がんばれー!」

 

避難している人々は突如現れたアグルに各々、驚きや疑問、歓喜の表情を浮かべていた。

 

女の子「おねえちゃん、ウルトラマンガイアだよ」

 

重美と一緒に避難していた小猫に女の子が嬉しそうに話しかけるが、

 

小猫「違うよ……、ガイアじゃない」

 

小猫は真剣な眼差しで女の子にそう言うと、そのままアグルの方へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボグラグ「シャアァァアーーーー!」

 

アグル「…!ホワァッ!」

 

アグルはボグラグの方を向くと平手にした右腕をボグラグに向けて、間合いをはかった。

 

アグル「テヤッ!」

 

しばらく間合いをはかると、アグルは右手から放つ三日月型の光弾、「アグルスラッシュ」をボグラグへ放った。

 

ボグラグ「シャアァァア!?」

 

アグル「ホワァッ!」

 

ボグラグ「シャアァァアー!!」

 

アグルはボグラグがアグルスラッシュで怯んだ隙を狙って接近し、脇腹めがけて回し蹴りを放ち、ボグラグを吹き飛ばした!

 

アグル「ホワァッ!アァァァァ………!」

 

更に、アグルは吹き飛ばしたボグラグに近づき、その尻尾を掴むと、ジャイアントスウィングの要領でボグラグを街の方へ投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊長「あいつ…、住民の避難が完了しているからいいものを…!」

 

上空で待機している戦闘機部隊の隊長はアグルが街への被害を構うことも無く、投げ飛ばしたことに苛立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボグラグ「シャアァァア…」

 

先程の攻撃が効いたのか、ボグラグは吹き飛ばされた影響で壊された家を更に押し潰しながらもフラフラと立ち上がった。

 

ボグラグ「!」

 

アグル「テヤァッ!!」

 

アグルは右手から青く輝く光剣、「アグルブレード」を出現させると、そのままボグラグに近づき、首を切断した!

 

アグル「…」

 

アグルは仕留めたと思い、アグルブレードをしまった時、

 

ボコボコボコ…

 

ボグラグ「シャアァァアーー!!」

 

アグル「ドオァ!?」

 

ボグラグは頭を瞬時に再生させ、両手のハサミでアグルの首を挟み、そこから電撃を流した!

 

アグル「ドォアァァァァァーー!!」

 

[テレン]

 

苦しんでいるアグルのライフゲージが青から赤ヘ変わり、点滅を始めた。ボグラグは電流を流すだけでなく、ウルトラマンのエネルギーをも吸いとっていた。

 

我夢「ガイアァァーー!!

 

アグルに助太刀するため、我夢はエスプレンダーを前につきだして叫ぶと、ウルトラマンガイアへと変身した。

 

ガイア「デュア!」

 

ガイアは土煙を立てて着地すると共に、ガイアスラッシュをボグラグの両手にめがけて放った。

 

ボグラグ「シャアァァアー!?」

 

アグル「ドゥワッ」

 

ガイアスラッシュがボグラグのハサミに当たり、切断され、アグルは解放され、倒れこんだ。

 

ガイア「ダァァーーー!!」

 

ボグラグ「シャアァァアー!?」

 

ガイアは思いっきり力を込めてジャンプし、飛び蹴りを喰らわせると、ボグラグは後ろへ後退した。

 

ガイア「デュアアァァァァ…!」

 

ボグラグ「――!!」

 

ガイア「デュアァァァァーーーーー!!」

 

ボグラグが飛び蹴りで怯んだ隙に、ガイアはボグラグを後ろから抱えあげると、ジャーマン・スープレックスを放った!

 

ボグラグ「シャアァァア…!」

 

それをくらったボグラグはフラフラしながらも立ち上がった。

 

ガイア「デュアッ!」

 

ガイアは立ち上がった瞬間にボグラグの頭を回し蹴りで吹き飛ばした。

 

ボグラグは首から上が無くなったが、

 

ボコボコボコ…

 

ガイア「…!グァッーー!」

 

ボグラグ「シャアァァアーーー!!」

 

ボグラグは瞬時に頭とハサミを再生させ、ハサミでガイアの首を挟み、電撃を流した!

 

ガイア「グァァァァァァーーーーーー!!」

 

[ピコン]

 

電撃を与えられ、更にエネルギーを吸いとられてたガイアは膝をつき、ライフゲージが青から赤に変わり、点滅を始めた。

 

ガイアはこのままじゃやられる…!と思ったとき

 

アグル「ホワッ!アァァァァァァァ……」

 

[テレン]

 

先程倒れていた筈のアグルはある程度回復したのか立ち上がると、腕を下にしながら縦に大きく広げると、胸の中央に青い光球を作り出した。

 

ボグラグ「シャアァァアーー!」

 

ガイア「!」

 

それに気付いたボグラグは、ガイアを盾にするようにアグルの方角へ向けた。

 

アグル「……」

 

アグルは全く気にせずにエネルギーを溜め続け、ガイアは待ってくれと制止するように右手を前に出した。

 

 

 

 

 

 

隊長「まさか、ガイアもろともやる気なのか!?」

 

隊員「「「「!?」」」」

 

加勢に来たガイアごとボグラグを攻撃しようとするアグルの姿に、隊長と他の隊員は驚愕した。

 

 

 

 

 

 

アグル「――ホァッッ!」

 

エネルギーを溜め終えたアグルは両手を握り拳にして放つ必殺技、「リキデイター」を放った!

 

ドガァァァァン!!

 

ボグラグ「シャアァァア………!」

 

ガイア「!!」

 

シュウゥゥゥゥ……

 

ガイアの頭の上すれすれにボグラグに命中すると、リキデイターの熱に耐えきれず、ボグラグは蒸発した。

 

アグル「……」

 

[テレン]

 

ガイア「……」

 

[ピコン]

 

アグル「トァッ!」

 

水蒸気が晴れたガイアは、アグルとしばらく無言で見つめあうと、アグルはガイアの真横を通り過ぎて空へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

隊長「あのどちらかと戦うことになるのか……」

 

隊長は未知の存在であるガイアとアグルの力に改めて驚愕しながら呟くと、本部から帰還命令が通達され、他の隊員たちと一緒に本部へ帰還していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ハァ…ハァ…、くそっ!頭の中じゃもっと動けたのに…!」

 

ガイアから元に戻った我夢は、夕陽が差し掛かっている浜辺で、先程の戦いでまだまだ力不足だと実感し、悔しそうに呟きながら避難所の方へ歩いていた。

 

しばらく歩いていると、我夢は岩場にアグルへと姿を変えた黒服の少年が立っていることに気付いた。

 

黒服の少年「我夢、君が2番目だったんだ」

 

黒服の少年は我夢にそう言うと、我夢は何故自分の名前を知っているのかと困惑しながら少年の顔をよく見ると、7年前のとあるニュースを思い出した。

 

我夢「藤宮…、君は『藤宮 博也(ふじみや ひろや)』君だろ…?」

 

藤宮「俺の事を知ってるなんてな…」

 

我夢「…知ってるも何も僅か10歳でイギリスの『ハイド・ベノン大学』で飛び級で入学し、その後主席で卒業したって当時ニュースで毎回のように取り上げられたじゃないか!」

 

我夢の言う通り7年前日本や世界で藤宮は『世紀の天才児』と言われ、ニュースや新聞に毎日の様に報道されていた。

 

しかし、ある日を境に行方不明となり、彼の消息についての話題もあったが、次第に話されなくなり、人々からの記憶から消えていったのである。

 

我夢「どうして、どうして君がウルトラマン――」

 

藤宮「『根源的破滅招来体』、つまり駒王町に現れたコッヴ(うちゅうかいじゅう)らを阻止できるのは悪魔たち仲良しグループじゃない、ウルトラマンだけだ。地球にとって人類とはがん細胞だよ。増殖し続け、地球を汚すだけの存在!!当然、悪魔共も!!」

 

我夢「そんな……」

 

我夢の問いを遮るように藤宮はそう言い放つと、我夢に指を指し、

 

藤宮「ウルトラマンは地球を守る者だ。しかし、存在理由を持たない人間、それを治めるどころか悪化させている悪魔まで救う義理はない!グレモリー眷属なんてやめてしまえ!!俺を手伝うことが君の為すべきことだ!!」

 

我夢「違う…!絶対に君の考えは間違ってるぞ!!」

 

藤宮のウルトラマンの在り方に我夢は反対すると、夕陽に照らされた2人は睨み続けたまま何も言わず、むなしく時間だけが過ぎていった……。

 

 

 

 

 

 




次回予告

不気味な目が、悪魔を笑う…。
目が、我夢を笑う…。
目が、ガイアを…。

次回、「ハイスクールG×A」
「あざ笑う眼」
君も笑われている…。







良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第6話「あざ笑う眼」

奇獣 ガンQ 登場!


我夢「……」

 

翌日の放課後、我夢は教室で悩んでいた。

 

昨日の藤宮との邂逅後、小猫と重美に合流した我夢はまた来ることを重美に告げ、帰りのバスで帰路に着いたのだが…、

 

(藤宮「ウルトラマンは地球を守る者だ。しかし、存在理由を持たない人間、それを治めるどころか悪化させている悪魔まで救う義理はない!」)

 

我夢「………」

 

今まで我夢は純粋に人類や地球を守りたいという気持ちで根源的破滅将来体やはぐれ悪魔たちと戦ってきたのだが、藤宮の言葉をきっかけに、自分は何故人類を守るべきか、ウルトラマンとは何なのかと頭を悩ませながら、深く考えていた。

 

一誠「我夢!!

 

我夢「――ッ!」

 

あれやこれやと考えていると、突如聞こえてきた一誠の声で、我夢は思考の海から現実へと意識が戻った。

 

我夢「ど、どうしたの?」

 

一誠「どうしたも何も、今日は部長が俺たちとアーシアに紹介したい人たちがいるから来てくれって言ってただろう?アーシアは先に行かせたから、俺たちも早く行こうぜ?」

 

我夢は教室を周りを見渡すと誰もいなく、自分と一誠だけだった。

 

我夢はああ、そうだったと一誠に返事すると、すぐに荷物を鞄につっこんで、一誠と一緒に教室を出た。

 

 

 

 

 

 

教室を出た2人はまっすぐ昇降口の方角を歩いていた。

 

一誠「そういや、何かあったのか?」

 

我夢「いや、何でも無いよ。ありがとう…」

 

心配そうな表情を浮かべる一誠の問いに我夢は少し笑みを浮かべながら答えると、

 

一誠「そうか、困った時はいつでも言えよ!」

 

我夢「うん…!」

 

笑顔でそう言う一誠に我夢は半分ありがたく、半分申し訳無い気持ちで返事した。

 

実は青いウルトラマンこと、ウルトラマンアグルの正体が藤宮であることを我夢はリアスどころかオカ研メンバーの誰にも話していないのだ。

 

何故話さなかったのか。それは何故かわからないが、今はアグルの正体をばらしたらとんでもないことが起きるかも知れないと直感したからである。

 

そんなことを思いながら、我夢は歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オカルト研究部の部室に着いた2人はいつものように荷物を端の方に置き、朱乃の出した紅茶をソファーに座りながら味わっていた。

 

一誠「そういえば、部長。俺たちに紹介したいって人たちって誰です?」

 

一誠は紅茶を一気に飲み干すと、リアスに質問した。

 

リアス「ええ、今後あなたたちの悪魔としての活動するにおいて重要になるから――」

 

コンコンコン…

 

リアスが一誠、我夢、アーシアに軽く説明している途中に、扉の方からノックする音が聞こえてきた。

 

リアス「あら、来たみたいわね。入っていいわよ」

 

リアスは扉の奥にいる人物に入室の許可をすると、失礼しますと言いながら、複数の女子生徒と2人の男子生徒が入ってきた。

 

リアス「3人とも紹介するわね。彼女は私の幼なじみでこの学園の生徒会長をやっている『支取 蒼那(しとり そうな)』。ちなみに蒼那は人間社会に溶け込む為の偽名で、本名は『ソーナ・シトリー』、私と同じ上級悪魔の1人よ」

 

一誠「え、この学園って俺たち以外にもいたんですか!?」

 

リアスは眼鏡をかけたスレンダーな体型の知的な美少女に手を向けながら紹介すると、一誠はそのことに驚いていた。

 

当然、我夢とアーシアも同様の反応をした。

 

ソーナ「紹介に預かりましたソーナ・シトリーです。以後、お見知りおきを…」

 

ソーナはお辞儀をしながら3人に挨拶をすると、我夢たちも軽く自己紹介した。

 

我夢「?」

 

ソーナ「リアス、もしかして彼が例の…」

 

ソーナは我夢の顔を少しの間、興味深そうに眺めると、リアスに問いた。

 

リアス「ええ、私の兵士であり、最近現れたウルトラマンガイアである高山 我夢よ」

 

ソーナ「そう…、彼が…」

 

我夢「!」

 

リアスの言葉を聞いたソーナは再び我夢に向き直すと、突然頭を下げた。

 

ソーナ「ここに住んでいる人々や私達の為に戦って下さり、ありがとうございます…」

 

我夢「…!いやいや、頭を上げてください!僕はただ守るためにしただけですから…!」

 

我夢は自分に頭を下げているソーナに慌てながら言うと、ソーナは少し微笑むと、顔を上げた。

 

我夢「部長、今回は僕らが彼らと交流するために呼んだ、という訳ですよね?」

 

リアス「ええ、その通りよ」

 

落ち着いた我夢がリアスに問うと、リアスはさすがねといった表情で答えた。

 

ソーナ「まずは交流を深める為にも…、匙」

 

匙「はい!会長!!」

 

ソーナが後ろにいた男子生徒の1人、2年生の「匙 元士朗(さじ げんしろう)」に呼び掛けると、元気よく返事すると、我夢たちの前に来た。

 

匙「俺、匙 元士朗!生徒会書記であり、会長の眷属だ!まさか、学園一の天才が悪魔になってるなんてな!これからよろしくな!」

 

我夢「ああ、よろしく!」

 

我夢と匙はお互い元気よく挨拶すると、固い握手を結んだ。

 

匙は握手を終えると、アーシアの前に移動し、同じ様に挨拶した。

 

アーシア「は、はい。私、アーシア・アルジェントと申します。匙さん、よろしくお願いいたします!」

 

アーシアは微笑みながら挨拶すると、

 

匙「うおおおおお!」

 

アーシア「きゃ!?」

 

匙はいきなり大声をあげると、その声に驚いたアーシアの手を両手で優しく包み、

 

匙「めちゃくちゃ可愛くて、いい娘じゃねぇーかー!こちらこそよろしくなっ!!」

 

アーシア「は、はい…」

 

アーシアは苦笑いをしながらもテンションが高くなっている匙に握手をした。

 

我夢のときよりも長く握手をし終え、一誠の前に移動したが、

 

匙「はぁ…。学園一の問題児のお前が悪魔になっているとはな、兵藤…」

 

一誠「何かさっきの2人よりもテンション低くね!?」

 

先程のテンションがどこにいったのか。

冷めた表情をしている匙に一誠は思わずツッコんだ。

 

匙「お前を含めた3人組がやっている覗きやわいせつ発言に対する要望が毎日山の様にやってきてこっちは困ってんだ。高山やアーシアちゃんはまだいいが、流石にお前とは握手はしたくねぇな、変態が感染るし」

 

一誠「何だと!」

 

匙の理由を聞くと、一誠は腹が立ち、歯を噛みしめた。

 

匙「まぁ、俺は兵士の駒4つで転生したし?高山はともかく、問題児のお前とは格が――「やめんか」、いてっ!」

 

匙が一誠に見下してしゃべるのを遮る様にもう1人の男子生徒が匙の頭に拳骨した。

 

匙「~っ。何するんですか、梶尾さん!?痛いじゃないですか!」

 

匙はもう1人の男子生徒、3年の『梶尾 克美(かじお かつみ)』を涙目で見ながらそう言うと、

 

梶尾「何をするんだって、こっちの台詞だ。これから仲良くやってこうっていう会長の話を無視する気か?うちの後輩がすまなかったな。俺は3年の梶尾 克美。生徒会では書記を務めてて、眷属の階級は兵士だ。よろしくな!」

 

梶尾は匙にため息をつきながらそう言うと、一誠に謝罪し、3人に自己紹介した。

 

一誠「梶尾先輩!よろしくお願いします!」

 

アーシア「梶尾さん、よろしくお願いします!」

 

我夢「梶尾さん、よろしくお願いします!!!」

 

3人も元気よく挨拶し、梶尾と握手した。

 

我夢は梶尾のことをよく知っている。

駒王学園の男子生徒の中でもずば抜けた行動力と統率力、圧倒的な自信、誰に対しても気配りをする気持ちを持つ、人物である。

 

その姿から学園の生徒からは「リーダー」と呼ばれ、「学園の2大お姉さま」と呼ばれるリアスと朱乃と並ぶくらい人気者なのだ。

 

梶尾「お、おい…、我夢。もう手を離せよ…」

 

我夢「…あ!すみません、つい…」

 

梶尾は困惑した表情で言うと、我夢は手を離した。

 

我夢も実は梶尾のファンの1人で、憧れの梶尾に話しかけられたことが嬉しくて、つい握手に夢中になってしまったのである。

 

その後、匙はソーナから一誠と我夢がそれぞれ転生に消費した4つの駒に「変異の駒(ミューテーション・ピース)」を使ったことに驚いた。

 

「変異の駒」とは、「悪魔の駒」における本来、複数の駒を使うであろう資質を宿した転生体を一つの駒で済ませてしまう特異な駒のことである。

 

それを2つも消費したので、匙は驚いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「ところで、ソーナ。今回の用事はそれだけじゃないんでしょ?」

 

リアスはそう聞くと、

 

ソーナ「お互い、新しい眷属が仕事に慣れてきたことですし、そろそろ『使い魔』を与えたいと思って」

 

横で聞いていた我夢と一誠、アーシアは「使い魔」という単語に疑問を浮かべた。

 

朱乃「うふふ、使い魔は主への情報収集や追跡などに役立つ存在で、基本的に悪魔の誰もが持っていますわ」

 

3人の反応を見た朱乃はそう説明すると、3人は納得の表情を浮かべ、リアスたちの話へ意識を戻した。

 

リアス「そうね、私も丁度彼に依頼をしようかと思ったの」

 

ソーナ「しかし、彼はひと月に一回しか請け負ってくれませんし……」

 

ソーナはどうしようかと考えていると、

 

リアス「…じゃあ、公正を期す為にテニスで決めましょう。勝った方が彼に依頼できる権利を手にできる、どう?」

 

ソーナはリアスの提案にいいでしょうと返事すると、勝負の日程を決めると、自身の眷属を連れて部室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、冥界の「使い魔の森」にリアス達、「オカルト研究部」の面々はいた。

 

先日のソーナとのテニス対決は両者のラケットがボロボロになるまで続いた。

 

が、決着がつかなかったので、じゃんけんで決めることにし、リアスが勝ったので彼らはここにいるのである。

 

我夢「わ~…、冥界にはこんなところがあったんだ…」

 

我夢はそう呟きながら興味深々な様子で森を眺めていた。

 

朱乃「あらあら、まだ森の入口なのにお気に召したみたいですわね♪」

 

我夢の反応を見た朱乃はそう言いながら微笑むと、他の面々も笑みを浮かべた。

 

一誠「しかし、その使い魔専門悪魔ってのはいつ来るんです?」

 

一誠の疑問にリアスはそろそろ来るわ…と答えた瞬間、

 

???「ゲットだぜぃ!」

 

一誠&我夢&アーシア「「「!?」」」

 

3人はいきなり森から聞こえてきた声に驚きながら、その声の発生源に視線を向けると、帽子を逆に被り、今時いないような夏休みの小学生の着た中年の男性がそこにいた。

 

ザトゥージ「俺の名はザトゥージ!使い魔マスターだ!ふぅむ…。リアス・グレモリーさんよ、そこにいる茶髪の熱血漢と金髪の美少女、可愛い系のイケメンの3人が依頼で言っていたやつか?」

 

ザトゥージは一誠、アーシア、我夢を1人ずつ眺め終えると、テンション高めの口調でリアスに確認した。

 

リアス「ええ、そうですよ。よろしくお願いしますね。3人共、彼は使い魔に関しては冥界一よ。今日はこの方の話を参考にして使い魔をゲットしなさい」

 

一誠&我夢&アーシア「「「はい!!!」」」

 

そんなこんなでザトゥージの案内のもと、3人の使い魔捕獲が始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザトゥージ「そういや、どんな使い魔をご所望だぜぇい?速いの?それとも毒持ちとか?」

 

ザトゥージは案内しながら後ろにいる3人に聞くと、アーシアは可愛いのを、我夢は面白いのを欲しいと答えた。

 

ザトゥージ「茶髪の兄ちゃんは何だぜぇい?」

 

一誠「俺はエロイやつを!(俺はカッコいいやつを!)」

 

木場「はは…、イッセー君。心の声と言おうとしている言葉が逆だよ」

 

一誠「あ、しまった!!」

 

一誠のザトゥージへの答えに、木場から苦笑いされながら指摘されると、やっちまったという表情を浮かべた。

 

我夢「はぁ…」

 

リアス「イッセー……」

 

朱乃「あらあら、うふふ♪」

 

アーシア「イッセーさん…」

 

一誠の様子を見た我夢とリアスは呆れた様に額に手をつけながらため息をし、朱乃はいつものように微笑み、アーシアは戸惑いの表情を浮かべていた。

 

小猫「…最低です」

 

一誠「ごふっ!?」

 

アーシア「イッセーさん!?」

 

一誠は小猫の毒舌が余程響いたのか、血反吐を吐きながら前のめりに倒れた。

 

アーシア「大丈夫でしょうか…?」

 

我夢「アーシア、ほったらかしても大丈夫だよ。いつものことだし、すぐ復活するよ」

 

不安な表情を浮かべるアーシアに我夢はそう言うと

 

我夢「ザトゥージさん、少々お待ち下さい」

 

ザトゥージ「お、おう…!わかったぜぃ!」

 

数秒後、我夢の言葉通り一誠は立ち直ると、ザトゥージは案内を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ある程度歩くと、ザトゥージが少し休憩しようぜぇ!と言い、一行は近くにある草原の上で休憩することにした。

 

ザトゥージ「しかし、今日の森はやけに静かだぜぇ…」

 

朱乃「言われてみればそうですわね」

 

木場「森の中間地点くらいなのに、鳴き声が全くしないですよね」

 

いつもと違う森の様子に不思議に思いながら周囲を見渡すザトゥージの呟きに、リアスたちは頷いた。

 

ザトゥージは案内を再開するためよっこらせと立ち上がった瞬間、近くで土煙が舞い上がった!

 

ザトゥージ「な、何だぜぇ!?」

 

ザトゥージは突然の出来事に驚いていると、

 

リアス「皆、あの場所へ行くわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

リアスが土煙が立った場所に指を指しながら眷属にそう指示すると、ザトゥージ含めた全員は悪魔の羽をひろげ、目的の場所へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「な、何だこいつは?」

 

一行は地上の光景に驚いていた。

 

土煙が立った場所には青い瞳を持つ巨大な眼が姿を現していた。

 

リアス「ザトゥージ、こいつは新しい魔界生物なの?」

 

ザトゥージ「い、いや、この森には目玉の魔界生物なんかいなかった筈だぜぇ……」

 

動揺しながら答えるザトゥージの言葉を聞くと、リアスは我夢の方へ視線を向けた。

 

リアス「我夢、いつもみたいにあの眼を分析を行って?」

 

我夢「わかりました、分析します」

 

我夢はそう言うと、懐から魔方陣が書かれた札を取り出すと、魔方陣の真ん中からノートパソコンが出現し、巨大な目の分析を始めたが

 

我夢「(な、何だこいつは…!?熱反応が無い、体を形成している物質も不明……)」

 

我夢は分析を進めていくうちに、「存在理由が不明」という結果しか出ないことにプレッシャーを感じ、焦り始めた。

 

リアス「我夢…?」

 

リアスと他の部員は、いつもの様子と違う我夢に心配そうな眼差しを送ったが、

 

(リアス「ふふふ…♪」)

 

(朱乃「うふふふふ…♪」)

 

(小猫「…ふふ♪」)

 

(木場「ははは…♪」)

 

(一誠「ハハハハハハ!!」)

 

我夢「(ぐぅ~~~~……!!!)」

 

しかし、我夢の脳内では皆にあざ笑われる姿が浮かんでおり、それにより更に焦りが強くなり、額から冷や汗が溢れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「おい、あれ見てみろよ!?」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

我夢が必死に解析している時、一誠がある場所へ指を指した。我夢を除いた全員は指を指している方へ視線を向けると、全員は驚いた。

 

その視線の先には、見るも無惨に殺された使い魔の森に生息している大量の魔界生物の死体があった。

 

ザトゥージ「まさか、今日の森が静かだったのは、こいつがこの森の生物を喰っていやがったからなのかだぜぇ!?」

 

一誠「う、うそだろ…?あんなに…!?」

 

小猫「…ひどい」

 

リアス「何てことを…」

 

ザトゥージは巨大な眼に睨み付けながら呟くと、巨大な目玉が行ったことに、一誠やリアスたちは驚愕した。

 

アーシア「あ、あれは…!?」

 

何かに気付いたアーシアの指す方には、巨大な眼の近くに2匹の小型の生物が傷だらけで倒れていた。まだ息があるようで、ヨロヨロとしていた。

 

一誠「早く助けねぇと!部長、行ってきます!」

 

リアス「あ、イッセー!」

 

一誠はそう言うと、リアスの返答も聞かずに2匹の元へと降りていき、拾い上げると、すぐにリアス達のもとへ戻った。

 

ドラゴン「クゥー……」

 

羽が生えた生物「パムゥ…」

 

ザトゥージ「こりゃあ、『蒼雷竜(スプライト・ドラゴン)』に…、見たことねぇ生物だな?」

 

ザトゥージは一誠の腕に抱えられている小さな青いドラゴンと、黄色い体に顔にメガネのような模様がある羽が生えた生物を驚愕と疑問の表情で見た。

 

一誠「アーシア、早く治療を!」

 

アーシア「…は、はい!」

 

アーシアは急いで聖母の微笑で治療すると、2匹の小型生物の傷はあっという間に治り、疲れからか、2匹の小型生物はそのまま眠りについた。

 

全員が安堵のため息をついていると、

 

我夢「あの眼を攻撃してください!!

 

我夢が突然、大声でリアスに進言した。

 

我夢は脳内でリアス達にあざ笑われるだけでなく、昔自分をいじめた上級生や藤宮にあざ笑われる姿が浮かんでしまい、それに絶えきれなくなってしまったのである。

 

なので我夢は早くその鬱陶しさを消すため、リアスに攻撃するように進言したのだ。

 

リアス「わかったわ!朱乃、行くわよ!」

 

朱乃「うふふ…、わかりましたわ、部長♪」

 

我夢の言葉を聞いたリアスは、朱乃と共に少しだけ巨大な目玉に接近した。

 

リアス「消え去りなさい!」

 

朱乃「雷よ!」

 

リアスは滅びの魔力、朱乃は雷を巨大な眼に向かって放ったが

 

「「「「「「!!!??」」」」」」

 

何と巨大な眼はそのまま2人の滅びの魔力と雷を吸収した!

 

巨大な眼「ンゥ~、ヒャッ!」

 

未だ驚愕している一同を待たず、巨大な眼は吸収した雷を朱乃にめがけて打ち返した!

 

朱乃「――!きゃあぁぁぁーーーー!!」

 

驚愕していた朱乃はとっさのカウンター攻撃に対処できず、直撃した。

 

リアス「朱乃!しっかりして!!」

 

木場「朱乃さん!」

 

一誠「朱乃さん!朱乃さん!」

 

アーシア「今、治療します!」

 

負傷して気を失った朱乃に、我夢を除いた一同は不安な表情で集まり、アーシアは聖母の微笑で治療を開始した。

 

 

 

 

 

 

我夢「………」

 

我夢は罪悪感に包まれていた。

敵を解析出来ないイレギュラーな事態に焦って、冷静な判断を下せず朱乃を負傷させてしまった。

 

そのことに我夢は生まれて始めて、失意と敗北を味わった。

 

眼「ウェヒヒヒヒヒヒ!」

 

そんな我夢の失態をあざ笑うかのように巨大な眼は青い瞳を三日月のような形に動かして不気味な声で笑うと、そのまま地中の中へと消えていった…。

 

その後、リアス達は、気を取り戻した朱乃と小型の生物を連れ、使い魔の森を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、部室には朱乃と我夢の姿があった。

ちなみに、他の部員はリアスが気をきかせて帰らせたので、2人きりなのである。

 

我夢「朱乃さん、その…、すみません…。僕の判断ミスのせいで……」

 

朱乃「あらあら…、そんなに気にしなくても大丈夫ですわ」

 

我夢が頭を下げると、朱乃はいつもの様に微笑みながらなだめると、顎に手を当てて疑問の表情を浮かべると

 

朱乃「でも、我夢君。()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

我夢「…!そ、それは……」

 

朱乃の疑問に我夢はそれ以上答えられず、その日は帰路に着くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使い魔の森の出来事から4日立った頃の朝、我夢は元浜と通学路を歩いていた。

 

元浜「しかし、この3日間!こいつの話題でいっぱいだよな~。ほら、こいつ『ガンQ(キュー)』」って言うんだって!」

 

我夢「ガ、ガンQ?」

 

元浜「ああ、新聞社がつけた名前だよ。ほら、お化けみたいだろ?」

 

我夢「は、はぁ…」

 

元浜はワクワクした表情で手元のスマホに映るガンQの画像を見せると、我夢は画像のガンQに笑われた様な気がして、目を逸らしながら答えた。

 

元浜「3日間連続で、日本のあちこちに現れて何がしたいんだろうな?」

 

元浜の言う通り、この3日間、あの巨大な眼の生物は冥界だけでなく、地球上の山地や街中に出現していた。

 

自衛隊はもちろん出撃するが、眼はミサイルや爆弾を吸収すると、何故かすぐに姿を消してしまうのである。

 

我夢「元浜はこいつの存在をどう思う?」

 

我夢は何となく思い、元浜にそう聞くと、

 

元浜「まぁ、『お化けや幽霊が本当に存在したとして、その存在は物理学的生物学的には分かんないけど、その存在理由とか行動目的は理解できる』、ってどこかの偉い学者が言ってたね~」

 

我夢「!」

 

笑いながら話す元浜の言葉に我夢はハッと気付いた。

今までガンQの「存在理由」ばかりを考えていたばかりに、何の「目的」のための行動なのかを考える発想の転換を思い付かなかった。

 

我夢「………」

 

我夢はしばらく何故、リアスの滅びの魔力を何故打ち返さなかったのか?ということを考えると、1つの目的が浮かんできた。

 

我夢「そうか!わかったぞ!」

 

元浜「お、おい!どうしたんだよ?」

 

いきなり大声を出した我夢に松田は驚くと、我夢は松田の手を握り

 

我夢「元浜のおかげで悩みが吹っ飛んだよ!ありがとう!」

 

元浜「お、おう…、良かったな…」

 

自信の手を握りながらブンブンと嬉しそうに腕を上下させる我夢に、元浜はその迫力に若干引いた。

 

我夢「じゃ、僕これから行くとこあるから!」

 

元浜「学校はどうするんだよ!?」

 

我夢「病院に行ってますって先生に言っておいてーーー!」

 

我夢は困惑している元浜にそう告げると、途中でリアスに電話をかけ、目的の場所に向かって走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王石油コンビナート。いつもだと従業員がいるこの時間帯に、何故か誰もいなかった。

 

そして時刻が10時に差し掛かろうとしたとき、地中からガンQが姿を現した!

 

しかし、以前のような姿ではなく、赤い血管のような体には沢山の眼があり、その頭は巨大な眼といった不気味な外見へと成長していた。

 

ガンQ「ミギィ~」

 

ガンQは巨大な眼から紫色の光線を出すと、コンビナートの建造物や乗り物を吸収し始めた。

 

しばらくすると、自衛隊の戦闘機部隊が到着し、ガンQへ攻撃を始めた。

 

ガンQ「ミギャン!!」

 

攻撃が直撃し、吸収を中断されたガンQは眼から放つ紫色の光弾で戦闘機部隊に攻撃した。

 

戦闘機部隊も負けじとその攻撃を避け、銃火器で応戦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「やっぱり、ここに現れたか…!」

 

コンビナート近くの港に着いた我夢は、ガンQと戦闘機部隊の戦いを眺めていた。

 

我夢「(奴の目的が体を構成するためのエネルギーを集める為だったなんて…、部長に頼んで正解だった)」

 

我夢の言う通り、ガンQの目的は体を構成するために必要なエネルギーを吸収する為である。ガンQが姿が変わったのも、リアスの破滅の魔力や戦闘機のミサイルのエネルギーで体を作った為である。

 

これまで地球上で出現した場所も、全て軍用施設や発電所が近くにあるところばかりだったので、その繋がりに気付いた我夢は石油コンビナートが襲われると思い、リアスに頼み、オカ研の使い魔達で作業員を避難させたのである。

 

ガンQ「ミギャャャ~~~!」

 

しばらく戦いを見ていると、ガンQが瞳から紫色の光線を出し、1機の戦闘機を吸収しようとしていた。

 

我夢「もう怖くない…、お前を恐れる理由など何もない!」

 

我夢はガンQを見つめながら呟くと、エスプレンダーを前につき出すと、赤い光に包まれガイアへと変身した。

 

ガイア「デュワッ!」

 

ガイアは体から赤いオーラを発すると、猛スピードでガンQのもとへ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隊員「くそぉっ!」

 

ガンQの吸収光線に捕まった自衛隊の隊員は、必死に逃げようと操縦レバーを引くが、機体は離れるどころか少しずつガンQの瞳の方へ引っ張られていく一方であった。

 

他の戦闘機は彼の乗っている機体に被弾する恐れがあるので、下手に攻撃ができなかった。

 

ガンQ「ウェヒヒヒヒヒヒヒ!」

 

必死に逃げようとする隊員の様子にガンQは光線を出しながら三日月のように青い瞳を歪めて笑った。

 

隊員「くそ、ここが俺の死に場所か…!」

 

隊員は悔しそうに呟いていると、

 

ガイア「デュワッ!」

 

ガンQ「ミギャア!」

 

猛スピードで接近したガイアがガイアスラッシュを放つと、ガンQの光線から戦闘機を解放した。

 

隊員「ありがとう、ウルトラマン…」

 

隊員は微笑みながら呟くと、ガイアは隊員へサムズアップを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンQ「ウヘェ~…」

 

ガイア「!デェアッ!!」

 

ガンQが立ち上がると、ガイアは地上へ降り立つと、ファイティングポーズをとった。

 

ガンQ「ヒィアァア!」

 

ガンQはガイア目掛けて突進したが

 

ガイア「!デュアッ!!」

 

ガンQ「ミギャ!」

 

ガイアは横転で避けると、カウンターのかかと回し蹴りでガンQの背中に放つと、ガンQは前のめりに怯んだ。

 

ガイア「ダァァーー!!」

 

ガンQ「ミギャャャャャャャーーー!!」

 

更にガイアは両手の拳をガンQの背中につきだし、ガンQを吹き飛ばした!

 

 

 

 

 

 

ガイア「……」

 

ガイアは警戒しながら倒れているガンQに近づくと

 

ガンQ「ヒィア!」

 

ガンQは不自然な動きで起き上がると、ガイアに目掛けて紫色の光弾を数発放った!

 

ガイア「…!グワァァア……!」

 

ガイアは光弾から身を守るため、とっさに身を固めた。

 

しかし、それがガンQの狙いだったのである。

 

ガンQ「ヒヒヒヒ…、ヒィア!」

 

ガイア「グワァァァァーーーー!?」

 

ガンQは身を固めた隙を狙い、吸収光線を放つと、

ガイアはガンQの眼の中に吸収されてしまった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「?」

 

ガイアは気がつくと、赤い空間にいた。

ここはガンQの体内かとガイアが思っていると、足下に視線を感じ、そこを見ると

 

眼「ウェヒヒヒヒヒヒヒ…」

 

ガイア「デュワ!?」

 

足下には笑っている眼があった。

ガイアは驚き、飛び退いた。

 

ガイア「……!?」

 

周囲にも視線を感じ、見渡すと辺り一面に無数の眼が現れた!

 

眼「「「「「「ハハハハハハハハハハハハハハ!」」」」」」

 

無数の眼はガイアをあざ笑うかの様にに、一斉に笑い出した!

 

ガイア「グワァァァァーー!!!」

 

[ピコン]

 

その精神攻撃にガイアは耳を抑え、苦しみだした。

そして、ガイアのライフゲージが青から赤に変わり、点滅を始めた。

 

ガイアの脳内では、あざ笑っている藤宮やいじめっ子、そしてオカ研メンバーの姿が浮かんだ。

 

眼「ウェヒヒヒヒヒヒヒ!」

 

ガイアは苦しみながら上を見ると、他の眼よりひとまわり大きい眼を見つけた。

 

ガイア「グァァ…、デュワ!」

 

眼「!!?」

 

ガイアは脳内のイメージを振り払うと、動揺している大きな眼に向かって突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイアは眼に突っ込むと、ガンQの頭の上から突き破り、外の世界へ脱出した。

 

ドガガガァァァァーーーーーーーン!!!!

 

その瞬間、ガンQはその衝撃で爆発四散した!

 

ガイア「デュワッ!」

 

ガイアはそのままどこか遠い場所へ飛んでいった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、オカルト研究部の部室に戻った我夢は、心配していたリアス達にもう大丈夫です!心配おかけしましたと言うと、ホッとしたリアス達は一誠とアーシアの眷属ゲット記念ともかねてパーティーを開いた。

 

我夢「そういえばアーシアの眷属はどれにしたの?」

 

アーシア「はい、私は雷を操る蒼雷竜にしました!名前はラッセー君です…。イッセーさんからお名前をお借りしました…///」

 

ラッセー「ピィ~」

 

我夢の問いにアーシアはラッセーを膝に乗せ、頬を赤めながら答えた。

恋に鈍感な我夢でもアーシアが一誠に惚れていることはわかっていた。

 

我夢は思考を切り替えると、一誠に同様の質問をした。

 

一誠「俺の使い魔はこいつ、『ハネジロー』」

 

ハネジロー「パムゥ♪」

 

一誠は羽が生えた生物、ハネジローを肩に乗せ、頭を撫でると、ハネジローは嬉しそうに鳴いた。

 

我夢「ハネジロー?」

 

一誠「あぁ、こいつ背中に羽が生えてるだろ?だからハネジローって名前にしたんだ」

 

我夢はイッセーらしいネーミングだなと思っていると一誠は言葉を続けた。

 

一誠「ザトゥージさんに聞いてみたんだけど、ハネジローは魔界の生物じゃねぇらしいんだ」

 

我夢「へぇ~、そうなんだ。宇宙から来たのかな?」

 

一誠「わかんねぇ、でもまぁいいや!俺も使い魔を持てたし……」

 

一誠は、ハネジローを手で抱えると

 

一誠「よろしくな、ハネジロー!」

 

ハネジロー「パムゥ♪」

 

一誠が笑顔でそう言うと、ハネジローはまた嬉しそうな声を出した。

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪」

 

木場「良かったね、イッセー君」

 

リアス「ふふふ…、中々優秀そうな使い魔ね」

 

小猫「…可愛い」

 

アーシア「はわわ~、可愛いですね!」 

 

我夢「可愛いな~」

 

その光景を見て、朱乃、木場、リアスは微笑み、小猫はハネジローを撫でたそうにジッと見つめ、アーシアと我夢はその可愛さに夢中になっていた。

 

その後、パーティーは夜遅くまで続き、我夢達は夢のようなひとときを過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「あ!僕、使い魔ゲットしてない!」

 

我夢が使い魔を手にいれてないことに気付いたのは、家に帰り着いた時だった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

突如現れた男、ライザー。
その男の正体は…

我夢&一誠「「部長の婚約者ーー!?」」

打倒ライザーのため、我夢達は修行を開始した!

次回、「ハイスクールG×A」!
「不死鳥の男」!
君も一緒にパワーアップ!






本作品の今後のストーリーの構成についてですが、
・D×D原作ストーリー → 平成3部作の短編2~3本 → 次の章

・平成3部作の短編1本 → D×D原作ストーリー →  平成3部作短編1本 → 次の章

・D×D原作ストーリー(間に平成3部作短編1本)→ 平成3部作短編1本 → 次の章

みたいな上記の構成をランダムで更新していく予定ですので、ぜひお付き合いいただけたら幸いです。

あと、2回目のアンケートの結果、ヴァーリは登場させることに決定しました。
設定等変えるかも知れませんので、ご了承下さい。

良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第二章 戦闘校舎のフェニックス
第7話「不死鳥の男」


長らくお待たせ致しました。
私生活で色々あり、中々投稿出来ませんでした。
誠に申し訳ございません。それでは本編どうぞ!











不死鳥悪魔 ライザー
フェニックス眷属 登場!


兵藤 一誠の朝は1日は長い。

 

平日の毎朝5時に起床し、ジャージに着替えて、リアスのトレーニングの集合場所である公園へ行くため、家を出る。

 

道の途中で我夢と合流すると、一緒に公園へ向かう。

その後、公園で5時半~6時半まで死にものぐるいでリアスによるトレーニングを受ける。

トレーニングが終わった後、リアスが我夢と一誠にそれぞれ期待の言葉をかけ、解散する。

 

解散した後、一旦我夢達と別れ、自宅に戻り、シャワーを浴びる。

そして、7時に既に起きている両親とアーシアに朝の挨拶をすると、リビングで朝食をとり、7時20分にアーシアと一緒に学校へ向かう。

 

7時40分に学校に着くと、職員室で教室の鍵を取り、教室の鍵を開け、アーシアと談笑すると、後から来た松田、元浜、我夢の3人を加え、朝のHRがある8時40分まで談笑する。

 

その後、チャイムが鳴り、担任の先生が来ると、それぞれの席に座り、途中昼休みをはさみながら、1限目~6限目まで授業を受ける。

 

授業を終えると、我夢、アーシアと一緒に他のオカ研メンバーがいる旧校舎の部室に向かい、リアスから受け取った悪魔の依頼をする。

 

依頼が終わった後は、アーシアと一緒に家に帰り、夕食を食べると、アーシアが入った後に入浴する。

入浴後は、自分の部屋に戻り、明日の準備をし、松田と元浜から貰った秘蔵のエロ本を1時間黙読する。

 

読み終えたら、歯を磨き、自分の部屋の灯りを消し、明日に備える為、11時に就寝する…という繰り返しを毎日続けている。

 

こんなに長い1日だが、一誠は全く苦に思っていない。

何故なら、我夢を始め、多くの友人達と過ごす1日1日がとても心地が良いからである。

 

まだ根源的破滅招来体の驚異があるとはいえ、何も変わらない日常というものは素晴らしいと彼は思っている。

 

今日も何事もなく、部屋の灯りを消し、ベッドでくつろいでいると

 

一誠「?これって…」

 

突然、床に見知った魔方陣が現れた。

これはグレモリー家の魔方陣じゃ…と一誠が思っていると中からリアスが現れた。

 

一誠「部長?どうしたんですか、こんな夜中に――わっ!?」

 

一誠が疑問に思いながら声をかけると、リアスは曇った表情で一誠をベッドへ押し倒し、馬乗りになった。

 

一誠「ど、どうしたんですか!?何かあったんですか!?」

 

一誠はリアスにそう尋ねると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「…イッセー、私を抱いてっ!」

 

一誠「………へ?」

 

切羽詰まった様子で答えたリアスの言葉に一誠は固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、学校。

 

我夢「イッセー、アーシア。おはよう!」

 

アーシア「我夢さん、おはようございます!」

 

一誠「お、おお……。おはよう………」

 

教室に入ってきた我夢にアーシアは元気よく、一誠は力なく挨拶を交わした。

 

昨日、リアスとの出来事があったせいで一誠は寝不足だった。

ちなみにあの後、リアスは服を脱ぎ、困惑している一誠とそのまま情事をしようとしたが、突如現れたグレモリー家のメイド、『グレイフィア・ルキフグス』の介入によって事なきを得た。

 

その後、何故部長は焦っていたんだろう?という疑問とリアスがグレイフィアと一緒に立ち去る前、頬にキスされた興奮で中々寝付けなかったのである。

 

我夢「イッセー…?眠そうだけど大丈夫……?」

 

一誠「まぁ、色々あって………。心配すんな……」

 

我夢が不安そうに尋ねると、一誠は昨日の出来事をどう説明したらいいかわからず、口ごもりながら答えた。

 

その後、後から来た松田と元浜を加え、いつものように談笑すると、チャイムが鳴り、いつもの学校生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は放課後となり、我夢、一誠、アーシアは途中で会った木場と一緒に旧校舎へ向かっていた。

 

一誠「なぁ、木場」

 

木場「何だい?イッセー君」

 

一誠「部長の様子が変なんだよ。何か知らないのか?」

 

我夢「え、そうなのか?」

 

アーシア「部長さん、悩み事でもあるんでしょうか…?」

 

木場「そうだね……」

 

一誠の問いに木場はしばらく考えこむと

 

木場「……う~ん、それなら朱乃さんがよく知ってるんじゃないかな?」

 

木場は一誠達にそう答えた。

 

一誠「朱乃さんが?」

 

木場「朱乃さんは部長の懐刀だからね」

 

我夢「なるほど。部長の女王だし、同級生だからか…」

 

木場がそう説明すると、一誠達は納得した。

そんな話をしながら旧校舎の中へ入っていくと、木場は何かに気付き、部室の扉の前で立ち止まった。

 

木場「僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」

 

我夢「?」

 

疑問に思っている我夢達をよそに、木場が扉を開けると、部屋の中には不機嫌な表情を浮かべているリアス、いつも通りニコニコしているが、冷たいオーラを感じる朱乃、この場に居たくなさそうに端の方に座っている小猫、そして昨日、一誠の家に現れた銀髪のメイド、グレイフィアがそこにいた。

 

我夢「(何か、不穏な空気だな……)」

 

我夢だけでなく、オカルト研究部全員がいつもの様に話しかけられない張り詰めた空気に圧巻されていると、リアスは重苦しそうに口を開いた。

 

リアス「全員揃ったわね……。では、部活をする前に少し話があるの…」

 

グレイフィア「お嬢様、私がお話ししましょうか?」

 

リアスは大丈夫と言わんばかりに手で制止した。

 

リアス「実はね――」

 

リアスが何かを話そうとした時、床から魔方陣が出現した。

 

それは我夢達が見慣れているグレモリー家の紋章ではなかった。

 

木場「――フェニックス…」

 

ボワッッッ!!!

 

木場がそう呟くと、魔方陣から激しい炎が巻き上がった。

 

アーシア「きゃ!」

 

一誠「…!おっと」

 

一誠はアーシアに炎が燃え移らないように自身の背中に隠すと、炎の中から人影が現れ、その人影が腕を振るうと、周りの炎が振り払われた。

 

ホスト男「ふぅ、人間界は久しぶりだな…」

 

炎が振り払われると、そこには金髪に赤いスーツを着こんだ男が周りを見渡していた。

 

しかし、容姿は整っているが、どこか悪そうな雰囲気にネクタイを着けず、スーツを着崩しているため、俺様系ホストの様なイメージである。

 

ホスト男「やぁ、愛しのリアス。会いたかったぜ」

 

そのホスト風の男はリアスに気付くと、口元をにやけながら言葉をかけた。

 

リアスは半目でホスト風の男を見つめた。

歓迎どころか、むしろ会いたくなかった様子だった。

 

一誠「部長、こいつは誰ですか?」

 

一誠は疑問の表情でリアスに問うと、ホスト風の男は驚いた。

 

ホスト男「ん?リアス、まだ眷属に俺のこと話してなかったのか?おいおい、下僕の教育がなってないんじゃあないのかい?」

 

リアス「話す必要がないもの」

 

ホスト男「相変わらず手厳しいねぇ…」

 

ホスト風の男は口元をにやけながら苦笑いをした。

 

グレイフィア「兵藤 一誠様、高山 我夢様」

 

一誠「…ん?」

 

我夢「な、何でしょう?」

 

未だこの状況を飲み込めずにいない2人にグレイフィアは突然話しかけると

 

グレイフィア「この方は『ライザー・フェニックス』様。純血の上級悪魔で、古い家柄の『フェニックス家』の三男であります。そして、()()()()()()()()()()()婿()殿()でもあります」

 

我夢「!次期当主の婿って…」

 

グレイフィアがそう紹介すると、我夢が最後の言葉に引っ掛かり、まさかと思うと

 

グレイフィア「はい、リアスお嬢様の婚約者であられます」

 

一誠「えっ…!」

 

我夢「えぇ…!」

 

我夢&一誠「「ええーーーー!?部長の婚約者ーーーーーーー!?」」

 

その事実に我夢と一誠だけでなく、木場、小猫、アーシアもしばらく驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザー「う~~ん、リアスの女王(クイーン)が淹れた紅茶は美味いものだなぁ~」

 

朱乃「痛み入りますわ」

 

ライザーはソファーに座りながら、朱乃の淹れた紅茶を飲み、褒めていた。

しかし、朱乃はニコニコしながらそう言っているが、不機嫌そうなオーラを漂わせていた。

 

さらに隣に座るリアスの肩や髪、太ももをいやらしい手つきで触っていた。

当然、本人は嫌そうな表情を浮かべ、その手を払いのけているが、ライザーは全く反省する気もなく触り続けていた。

 

一誠「(本当にこいつ、貴族かよ…)」

 

ライザーの品の無さに一誠はイラついていると、

 

リアス「いい加減にしてちょうだい!!」

 

ついに我慢の限界なのか、リアスはソファーから立ち上がりながら大声で怒鳴った。

 

その声にアーシアと小猫はビクッとしたが、その原因であるライザーは相変わらずニヤついた笑みを浮かべていた。

 

リアス「ライザー!以前にも言った筈よ!私は貴方とは結婚しないわ!」

 

ライザー「あぁ、前にも聞いたよ。だがなリアス、そういうわけにはいかないだろう?キミのところの御家事情は以外に切羽詰まっていると思うんだが?」

 

睨み付けながら話すリアスに、ライザーはソファーから立ち上がると、やれやれといった表情で言葉を返した。

 

リアス「余計なお世話よ!私が次期当主である以上、婚約相手ぐらい自分で決めるつもりよ!父も兄も一族の者も皆急ぎすぎるわ!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだった――」

 

ライザー「確かにその通りだ。キミは基本的に自由だよ。大学に行ってもいい、下僕も好きにすればいい。だが、キミのお父様もサーゼクス様も心配なんだよ。御家断絶が怖いのさ。ただでさえ、先の戦争で『72柱』の純血悪魔が大勢亡くなった。戦争を脱したとはいえ、堕天使、神陣営とも拮抗状態。奴らとのくだらない小競り合いで残った跡取りが殺されて御家断絶したなんて話もないわけじゃない。純血であり、上級悪魔の御家同士がくっつくのはこれからの悪魔事情を思えば当然だ。純血の上級悪魔。その新生児が貴重なことをキミだって知らないわけじゃないだろう?」

 

リアス「――っ!」

 

リアスの言葉を遮る様にライザーは淡々と話すと、彼の言い分にリアスは言葉を詰まらせた。

 

ライザーの言う通り、『72柱』、つまり純血の上級悪魔の名門家は過去の戦争の影響により、その数が少なくなったのだ。

それを改善するために、悪魔の駒があるのだが、冥界の上層部は純粋な悪魔の血を途絶えさせたくないと考え、純血悪魔同士を結婚させ、純血悪魔を増やそうという政策に取り組んでいるのである。

 

リアス「結婚はするわ。でもライザー、貴方とは結婚しないわ。婿養子として受け入れるつもりよ!」

 

ライザーはその言葉に舌打ちを打った。

 

そんな口論を続け、最終的に一触即発な空気になろうとしたとき

 

グレイフィア「御2人方、そこまでです。落ち着いて下さい」

 

ライザー「…!やれやれ、最強の『女王』に言われちゃあしょうがないなぁ…」

 

そんな2人を見かねたグレイフィアがそう言うと、2人は大人しくソファーに座った。

無表情だが、確かに感じるとてつもない殺気を放つグレイフィアに我夢達は悪寒を感じた。

 

グレイフィア「話し合いで決着がつかないことを我々は予測しておりました。なので、サーゼクス様から提案があります」

 

リアス「提案?」

 

リアスが疑問符を浮かべると

 

グレイフィア「はい、『レーティングゲーム』で決着をつける、というのはいかがでしょうか?」

 

リアス「!」

 

我夢「『レーティングゲーム』?」

 

我夢は聞いたことがない単語に首を傾げ、一誠とアーシアも同じ様に首を傾けた。

 

木場「レーティングゲームは、成人した悪魔の眷属をチェスの駒に見立てて戦わせるゲームだよ。色々ルールがあるけど、基本はチェスと同じで(キング)がやられたら負け。そのゲームの強さが悪魔社会の上下関係に大きく関わるんだ」

 

木場は疑問に思っている我夢達にそう説明すると、各々が納得した表情を浮かべた。

しかし、我夢がその説明を聞いて、あることに気付いた。

 

我夢「――!でも部長は成人じゃないからできないんじゃ!?」

 

グレイフィア「それについてはご心配なく…。今回は非公式のゲームですので、未成熟の悪魔であるお嬢様でも参加することができます。お嬢様、どうなさいます?」

 

我夢の疑問を払拭するようにグレイフィアはそう言うと、リアスに問いかけた。

 

リアス「勿論、受けて立つわ!とことんやってやろうじゃないの!」

 

リアスは闘志に燃えた眼差しで言い放つと、ライザーはやれやれと肩をすくめた。

 

ライザー「おいおい、良いのかリアス?俺は既に成熟していて、ゲームも何度か経験している。しかも今のところは勝ち星が多い。キミの眷属で俺のところとまともにやれそうなのは女王とそこにいるウルトラマン?とかいうやつだけじゃないのか?それに……」

 

ライザーはニヤニヤした表情で朱乃と我夢を見ると、一誠の方を見た。

 

一誠「ん?何すか?」

 

ライザー「フッ…。こんな弱そうな奴を仲間にするなんて、リアスも格が落ちたな」

 

一誠「んだとぉぉーーーー!!?」

 

鼻で笑うライザーにコケにされた一誠は飛びかかろうとするが、我夢と木場に抑えられて、手足をジタバタさせていた。

 

しばらくすると、落ち着いた一誠はライザーに睨み付けながら口を開いた。

 

一誠「そういうお前はどうなんだよ、焼き鳥野郎!」

 

ライザー「や、焼き鳥…!?」

 

「「「「「ぷっ!」」」」」

 

一誠の「焼き鳥」という言葉に思わずライザーとグレイフィア以外の皆は吹き出しそうになった。

 

ライザー「焼き鳥とは何だ!俺は火と風を司る火の鳥、フェニックスだ!居酒屋のつまみと俺を一緒にするんじゃあない!!」

 

一誠「火の鳥?やっぱり焼き鳥じゃあねぇかっ!」

 

ライザー「こいつ…、言わせておけば……」

 

ライザーはグヌヌ…と歯を噛み締め、必死に怒りを抑えた。

いつもなら、すぐにでも一誠を燃やし尽くせるが、あくまで今回は話し合い。さらにグレイフィアという監視があるので、妙な行動はできないのである。

 

ライザー「ならば見せてやる、俺の眷属をッ!」

 

ライザーが指をパチンと鳴らすと、床に魔方陣が現れ、そこから現れたのは

 

我夢「全員……、女性?」

 

我夢がポカーンとしながらそう呟くと、ライザーは高笑いをした。

 

ライザー「どうだ?これが俺の選んだ最高の眷属だッッ!!」

 

ライザーはどうだと言わんばかりに一誠へ自慢をすると

 

一誠「うらやm…いや、どんな趣向…うらやm…してるん…うらやm…だよ!この、うらやまs…いや!ド変態野郎!!」

 

小猫「……イッセー先輩、心の声が所々漏れてます」

 

小猫につっこまれた一誠はやべっ!と慌てて口を塞いだ。その様子にリアスはため息をつき、ライザーはニヤリと口元を歪めた。

 

ライザー「そうだろ、そうだろ?うらやましいだろ!?」

 

一誠「…くっ!」

 

一誠は嫌みたっぷりの声でライザーにそう言われると、反撃とばかりに口を開いた。

 

一誠「うるせぇ!この種蒔き鳥が!!」

 

ライザー「なっ!?」

 

「「「「「「「「「「ププッ!」」」」」」」」」」

 

一誠の言葉にリアスと眷属一同はまた吹き出しそうになり、込み上げてくる笑いを必死に抑えた。

 

ライザー「誰が種蒔き鳥だ!何度も言うが、俺は炎と風を司る火の鳥、フェニックスだ!焼き鳥でも種蒔き鳥でもない!」

 

一誠「じゃあ、種蒔き焼き鳥野郎か!」

 

ライザー「合成させるんじゃない!!」

 

バチバチと火花を散らしながら言い争う2人に、グレイフィアはコホンと咳払いすると、2人は気を静めた。

 

ライザー「よし、リアス、ゲームは10日後だ!10日後にレーティングゲームで決着をつけよう!」

 

落ち着いたライザーはリアスにそう言うと、ソファーから立ち上がり、眷属のもとへ歩いていった。

 

リアス「あら、ハンデのつもりかしら?」

 

ライザー「今の状態でやってもいい勝負にならないからな…」

 

ライザーは不敵な笑みでそう言うと、足下に魔方陣を出現させ、眷属と一緒に姿を消した。

 

ライザー達が帰った後、グレイフィアはリアスの方に顔を向けると

 

グレイフィア「私からもサーゼクス様にゲームは10日後と伝えておきます。では……」

 

そう言ってお辞儀をすると、グレイフィアも同じ様に足下に魔方陣を出現させ、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、リアス達は10日後のライザーとの試合の為、山中にあるリアスの別荘で修行を行うことになった。

現在3日目の修行を開始していたが…

 

小猫「…えい」

 

我夢「うわっ!!」

 

ドガッッ!

 

我夢は小猫に真っ直ぐ蹴り飛ばされ、木に激突した。

 

我夢「いてて~……」

 

小猫「…大丈夫ですか?」

 

我夢「…ああ、大丈夫。ありがとう」

 

我夢は出してきた小猫の手を取り、立ち上がるとお礼の言葉をかけた。

 

現在、我夢達はそれぞれの分野に別れて修行をしていた。

 

リアスはレーティングゲームにおける戦略の勉強、アーシアは朱乃と一緒に魔力の修行、一誠は木場と瞬発力を鍛える修行、そして我夢はガイアのバトルスタイルである格闘戦を強くする為、小猫と一緒に修行しているのである。

 

我夢「はっきり言って、僕、弱いよね……」

 

小猫「…はい、弱いです」

 

我夢「はは、だよね…」

 

我夢は小猫にはっきりと言葉を返されると、ショックを受け、力なく笑った。

 

小猫「……でも、初日より反射神経や攻撃の鋭さは上がりましたよ」

 

我夢「本当!?」

 

小猫が落ち込んでいる我夢にそう言うと、我夢はガバッと顔をあげ、満面の笑みを浮かべた。

 

我夢「そうか、上達したのか~~。これも小猫のおかげだよ、ありがとう!」

 

小猫「あ!///」

 

我夢は嬉しそうに感謝すると、小猫に顔を近づけ、彼女の手を両手でガシッと包み込んで握手をした。

我夢は顔が整っており、いわゆるイケメンである。

そんな我夢にいきなり顔を近づけられただけでなく、手も握られたので、小猫は思わずドキッとなり、赤面した。

 

小猫「……先輩、顔が近いです//////」

 

我夢「あっ!ごめん」

 

赤面した小猫にそう言われると、我夢は顔を離すと同時に手を離した。

 

我夢「顔が赤いよ?大丈夫?」

 

小猫「な、何でもないです……////」

 

不安そうな表情を浮かべる我夢に、小猫はそう言うと、それよりも…と話を変えた。

 

小猫「先輩はどうして地球を守る為に戦おうと思ったんですか?」

 

小猫の問いに我夢はう~んとしばらく考え込むと

 

我夢「……僕もはっきりとした答えが出た訳じゃないけど、純粋にこの『地球が好き』、だからかな?」

 

小猫「『地球が好き』?」

 

我夢はうんと頷くと、言葉を続けた。

 

我夢「昔から自然が大好きでね、よく親に山や海に連れていってもらったんだよ。そこで生きている人や動物、植物とか見ていくうちに、いつの間にか地球そのものが好きになっちゃったんだよ」

 

小猫「…はぁ」

 

熱意を込めて話す我夢に小猫は若干引きながら相槌を打った。

すると、我夢は真剣な眼差しで小猫の顔を真っ直ぐ見ると、

 

我夢「……きれいごとかも知れないけど、この地球やそこに住む人たちを守りたいから、だから戦うんだ。地球が何でウルトラマンの力を授けたのか、それはいずれ見つけていくさ……」

 

我夢はそう言うと、遠い目で空を見上げた。

小猫は真剣な顔をしている彼を見上げると、

 

小猫「…先輩ならきっと見つかりますよ。だって、誰よりも地球を愛してますから」

 

我夢「え。そ、そうかな~~~///」

 

小猫が微笑みながら我夢にそう告げると、我夢は照れくさそうに頭をかいた。

 

我夢達は少し語った後、再び特訓を開始し、辺りが暗くなるまで続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、皆が寝静まっている中、一誠は中々寝付けず、1人廊下を歩いていた。

 

一誠「いてて~、木場のやつ。手加減なしでひったたきやがって……、ん?」

 

一誠は昼間の特訓に木刀で叩かれた箇所に手を当てながら歩いていると、テラスに誰かがいるのを見つけ、そのままテラスの方へ歩いていった。

 

リアス「あら、イッセー。こんな時間にどうしたの?」

 

リアスは一誠に気付くと、読んでいた本を閉じた。

 

一誠「あ、部長、こんばんは。あれ、目が悪いんですか?」

 

リアス「あぁ、これね。何かに集中したいときに掛けてるの。人間界にいるのが長いから、人間の風習になれちゃたのかしら?」

 

リアスは一誠の質問にそう返すと、眼鏡をはずし、苦笑いを浮かべた。

 

一誠は椅子に座すと、リアスの読んでいた本のタイトルを見て、口を開いた。

 

一誠「レーティングゲームの戦略を練ってたんですか?」

 

リアス「ええ、そうよ。といっても気休め程度だけど……」

 

リアスは視線を下げると、自信なさげに呟いた。

 

一誠「何でですか?」

 

リアス「相手は不死鳥のライザー。いくら傷つけても炎と共に復活する。彼のレーティングゲームの戦績は10勝2敗、そのうちの2敗は懇意にしている家への配慮で、実質無敗だわ」

 

一誠「そんなのチートじゃあないですか!」

 

一誠は自分たちが圧倒的不利なことに思わず驚愕の声を出した。

 

リアス「ええ、チェスで言うスウィンドル―――――、つまり詰みね。初めから私が負けるように仕組んでいるわ……、でも勝つ方法はある」

 

一誠「勝つ方法…?」

 

一誠の疑問にリアスはええ…、と頷くと

 

リアス「いくら不死身でもメンタルは無敵じゃない。だから魔王クラスの一撃で吹き飛ばすか、心が折れるまで攻撃する…、この2つよ」

 

リアスの提案した方法に一誠はどっちも厳しそうですねと呟くと、リアスもそうねと相槌を打った。

 

一誠は圧倒的に不利なのになお戦おうとするリアスに疑問が浮かんだ。

 

一誠「……どうして、あの時を止められそうな吸血鬼みたいな声をしたあいつとの縁談を破棄したいんですか?」

 

リアス「何でライザーにそう思うかは知らないけど……」

 

リアスは困惑な表情を浮かべると、夜空に浮かぶ月を眺め、淡々と話し出した。

 

リアス「私はね…、”リアス”として生きたいの…。でも誰も私を見てくれない。どこに行っても”グレモリー家のリアス”としか見てくれない……、もちろんグレモリー家の令嬢であることは誇りよ。でも、せめて私を、私として愛してくれる人と結婚したい……。でも、このゲームに勝てるか自信がないの……。もし、負けたらそんな夢も終わっちゃう……」

 

一誠は思った。彼女は家とかそんなの関係なく、ただ幸せな恋をして、幸せな結婚をしたいと思っている普通の女の子だと。

今にも泣きそうな顔をしている彼女を一誠は見てられず、彼女の手をそっと握った。

 

一誠「夢を簡単に諦めちゃダメですよ。『夢がある限り、何度でも前に進める』…だから、終わりだなんて言っちゃだめだ!」

 

リアス「!」

 

一誠は真剣な眼差しでリアスにそう言うと、ニッと笑い、懐かしげな表情を浮かべた。

 

一誠「昔、行方不明になった父さんが、落ち込んでいる俺にいつも言ってくれた言葉です。どんな時も諦めんな、頑張れって意味で励ましてくれたんです」

 

リアス「イッセー…」

 

一誠はそう言うと、再び真剣な眼差しでリアスを見つめ、その手を両手で包んだ。

 

一誠「だから俺が、部長の夢を守ります。絶対…」

 

リアス「イッセー……、ありがとう…」

 

一誠の言葉を聞くと、リアスは目尻に涙を浮かべ、感謝の言葉を告げた。

 

リアス「そういえば、アーシアの時もそうだけど、一誠はどうして夢にそこまでこだわるの?」

 

リアスの疑問に一誠は少し悲しげな表情を浮かべ、話し始めた。

 

一誠「昔、俺は野球部だったんです。小学生の時からずぅ~っと続けてて、何よりも打ち込めて、そりゃあ楽しかったです。でも……」

 

一誠は椅子から立ち上がると、月の近くに浮かんでいる雲を見て、話しを続けた。

 

一誠「中学生の時、超期待のエースがいる中学校と練習試合をしたんです。そいつは投手としても打者としても優秀で、近づく全国大会の委員会からも注目されていた…。その試合の帰りの路地でそいつを見かけて声をかけたんです。そして、気づいた彼が立ち止まった瞬間、車に轢かれてしまったんです。その車の運転手は酔っぱらいで逮捕され、轢かれた彼は、一命をとりとめたんですが、二度と野球ができない足になってしまったんです。そいつやその両親は気にするなと言ってくれたんですが、確かにそいつに見える絶望の瞳を俺は見ました。」

 

リアス「……」

 

一誠は少しため息をつき、再び話し始めた。

 

一誠「だから俺はそいつの夢を奪っちまった罪悪感から野球を辞めたんです。何にもやる気が起きず、真っ白な生活を送ってました。我夢や親も心配してくれたんですが、それでも俺は中々立ち直れなかったんです。そんな時、松田と元浜に出会ったんです。あいつらの話は最初はくだらなかったですが、段々と面白くなり、いつの間にか友人と呼べる存在になったんです。あいつらがいなかったら今の俺はいません。それ以降、俺は今でも残るこの罪悪感をごまかすため、松田と元浜と一緒に変態みたいなことばっかりしてたんです…。すみません、少ししみったれで長ったらしい話しをして……」

 

一誠は自嘲気味に笑うと、椅子に座り直した。

 

リアス「いえ、こちらこそ辛いことを思い出させてごめんなさい…」

 

リアスは申し訳なさそうに謝るが、一誠は気にしないで下さいと手を左右に振った。

 

一誠「まあ、とにかく!このゲーム、絶対勝ちましょう!いや、勝たせます!」

 

リアス「ええ…、そうね!」

 

一誠はそう言いながらサムズアップすると、リアスはいつものような自信に満ちた笑みを浮かべた。

 

リアス「それじゃあイッセー、おやすみ」

 

一誠「はい!」

 

リアスと一誠は互いに就寝の言葉を告げると、それぞれの寝室に向かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

ついに始まったライザーとのレーティングゲーム。
ガイアは勝利を導けるのか…?

次回、「ハイスクールG×A」
「激闘!ライザー」

リアス「やめてぇーーーーーーっっ!!!」







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第8話「激闘!ライザー」

不死鳥悪魔 ライザー
フェニックス眷属  登場!


時が経ち、いよいよライザーとの決戦の日がやって来た。

 

我夢達は10日間の修行で大分強くなり、皆、いつも以上に気合いが入っていた。

 

しばらくすると、部室にグレイフィアが現れ、周りを見渡し、全員いるか確認した。

 

グレイフィア「それでは、皆様方。これより戦闘フィールドに転送致しますので、この魔方陣の中にお入りください」

 

全員いることを確認し終えるとグレイフィアはそう皆に言い、それを聞くと皆は次々とグレイフィアのもとへ集まった。

 

グレイフィア「これより、皆様方を戦闘フィールドにご案内致します。それでは、ご武運を祈っております………」

 

グレイフィアがそう呟いた瞬間、魔方陣が光り、オカ研メンバーは転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢は目を開けると、そこは先程までいたオカ研の部室だった。

 

我夢「あれ?転送されてないんじゃ…」

 

木場「我夢君、外を見てごらん」

 

疑問に思った我夢は木場にそう言われると、窓を開け、つられた一誠も一緒に外の光景を眺めると、驚愕した。

 

我夢「何だ、この空は……?」

 

一誠「まじかよ……」

 

空は緑と紫色のオーロラの様に包まれ、とてもこの世のものではない光景だった。

2人が外の光景に驚愕していると、どこからかグレイフィアのアナウンスが流れてきた。

 

《グレイフィア「皆様、今回のグレモリー家とフェニックス家のレーティングゲームの審判役を任されました、グレモリー家の使用人のグレイフィアと申します。この度のレーティングゲームの会場として、リアス・グレモリー様方が通う駒王学園のレプリカを異空間に用意させて頂きました。」》

 

我夢「レプリカ!?よく出来てるなぁ~~」

 

一誠「ああ、全くだぜ……」

 

まだまだ未知である魔法の力に2人は感心していると、グレイフィアのアナウンスはゲームのルール説明を始めた。

 

《グレイフィア「これより、ゲームのルール説明をさせて頂きます。両者、転移された場所が本陣となり、リアス様は旧校舎、ライザー様は新校舎の生徒会室です。ゲームの敗北条件は『(キング)』の敗北です。なお、『兵士(ポーン)』の昇格(プロポーション)は敵陣地内に踏み込めた瞬間、可能となります」》

 

我夢と一誠はルール説明のアナウンスに一言一句聞き逃さず、うんうんと頷いた。

 

《グレイフィア「また、公平に期すために、巨大化は禁止とさせて頂きます」》

 

その言葉に我夢とうっとうなった。

 

《グレイフィア「更に今回の試合は、魔王サーゼクス様も観戦なさいますので、皆様、恥ずかしい戦いをなさらないよう、全力で挑んで下さい」》

 

リアス「お兄様も!?」

 

一誠&我夢&アーシア「「「お兄様?」」」

 

驚くリアスに3人は首を傾げた。

 

朱乃「魔王サーゼクス・ルシファー様はリアスのお兄様なのですわ」

 

朱乃はそんな3人に説明した。だが、3人はファミリーネームが何でグレモリーじゃないのかに更に疑問を抱いた。すると、朱乃は引き続き、説明をした。

 

朱乃「大昔の大戦で魔王が亡くなられたことは知っていますよね。魔王がいなくては悪魔がなり得ない、なので4人の上級悪魔に魔王に継がせたのですわ。それぞれ、レヴィアタン、ベルゼブブ、アスモデウス、そして先程仰られたルシファー。この4人の最上級悪魔が冥界で一番の権力者ですわ」

 

ニコニコしている朱乃の説明に3人はなるほどと納得した。

 

《グレイフィア「それでは、ゲーム開始時刻となりました。制限時間は人間界の夜明けまで。皆様、ご健闘を祈っております。それではゲーム開始です」》

 

そのアナウンスが終わった瞬間、試合開始を告げる様に、新校舎の鐘が鳴り響いた。

 

リアス「みんな、作戦通り頼むわよ!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

その返事と共に我夢達はリアスの作戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《木場「部長、準備整いました」》

 

《朱乃「私もですわ」》

 

《リアス「3人共、出番よ!」》

 

通信機から木場と朱乃の声が聞こえると、リアスは通信機越しに我夢、一誠、小猫の3人に指示を出した。

 

一誠「ラジャー!」

 

その指示に一誠は元気よく返事すると

 

我夢「イッセー、声が大きいよ…

 

一誠「お、すまんすまん…

 

我夢にボソボソ声で注意されると、一誠は申し訳なさそうに謝った。

 

一誠「よし、そろそろ俺達もいくか!」

 

一誠がそう言うと、我夢と小猫は静かに頷いた。

 

ちなみに作戦は、近くにあるエリアをジワジワを占領しながら陣地へ進み、ライザーに総攻撃を仕掛け、勝利するという作戦だ。

 

今回の作戦の要はガイアである。彼の光線技でライザーのメンタルをジリジリと弱らせて、最終的に降参させるというのが狙いである。

 

ちなみにこの作戦には我夢が一枚噛んでおり、この作戦を進言すると、リアスはすんなりと採用した。我夢はその器の広さに感激した。

 

そして、現在。我夢達は体育館の裏口の前に来た。そこから物音をたてぬよう、そ~っと中へ入っていった。

壇上へとあがると、体育館の中央にはライザーの眷属の女の子4人が既にそこにいた。

 

チャイナ娘「待っていたわよ!さぁ、かかってきなさい!」

 

小猫「先輩方、あの娘はおそらく『戦車』。なので、ここは私が……」

 

小猫はそう言うと、グローブを着け、チャイナ娘のもとへ向かっていった。

 

一誠「よし、じゃあ俺はあの棍を持ったやつとするか!」

 

一誠も対戦相手を決めると、壇上には我夢1人が残った。

 

我夢「じゃあ、君たちが僕の相手か…」

 

イル「『兵士』のイルで~す♪」

 

ネル「ネルで~す♪」

 

我夢は残っている相手を見て呟くと、2人は元気良さそうに挨拶をしてきた。

見た目は小猫の様な小柄な体型の双子で、特に強そうな感じはしないなと我夢は思っていると

 

イル「それじゃあ~~……」

 

ネル「解体しま~~~す♪」

 

我夢「ゑ?」

 

突然、イルとネルはチェンソーを取り出し、エンジンをかけるとバ~ラバ~ラ♪と言いながらチェンソーを振り回しながら向かってきた。

 

我夢「うわわっ!」

 

我夢は慌てて振り回してくるチェンソーを避けながら、懐にあるエスプレンダーを取り出した。

 

イル「ちょこまかしないでよ~」

 

ネル「ちょっと痛いだけだから~」

 

我夢「そんな、こと、言われても!」

 

我夢はブンブン振り回すチェンソーをバク転しながら避け、距離を取ると

 

我夢「ガイアーーー!!」

 

イル「きゃ!?」

 

ネル「まぶしっ!」

 

我夢はエスプレンダーを前につきだし、そう叫ぶと、赤い光に包まれ、等身大のガイアに変身した。

イルとネルはガイア変身時の光の眩しさで眼をくらました。

 

ガイア「デュワッ!」

 

ガイアはその隙を見逃さず、すぐさまガイアスラッシュを放ち、チェンソーを破壊した。

 

ガイア「ダッ!デュワッ!」

 

イル「ぐぁぁっーー!?」

 

ネル「きゃあーー!?」

 

チェンソーを破壊されたショックを受ける隙を与えず、ガイアは高速移動すると、イルとネルを回し蹴りでまとめて前方へ吹き飛ばした。

 

イル「…いったっー!」

 

ネル「…くぅ!」

 

イルとネルは蹴り飛ばされた衝撃に顔を歪ませながら立ち上げると、チェンソーを捨て、ガイアに向かっていった。

 

イル「やっ!このっ!」

 

ネル「くっ!やっ!」

 

ガイアは交互に襲いかかる2人の連続攻撃を修行でさらに強化された瞬発力でかわした。

 

イル「何で!?」

 

ネル「当たんないの!?」

 

2人は途切れなく繰り出さしている攻撃をかすりもせず、避けられることに苛立ちと驚きを感じ始めた。

 

ガイア「デュワッ!」

 

イル「えっ!」

 

ネル「ちょっ!」

 

ガイアは苛立ちで攻撃に乱れができた瞬間を狙い、2人の手首をつかんだ。

 

ガイア「グアァァァァ………!」

 

イル「眼がーーー!」

 

ネル「回るーーーー!」

 

ガイアはつかんだままジャイアントスイングの要領でブンブンと回し、そのまま上へ投げ飛ばした。

 

ガイア「デュワッ!」

 

ガイアは続け様にクァンタムストリームを放った。

 

イル&ネル「きゃあぁぁぁーーーーーー!!!」

 

直撃した2人は黒焦げになり、そのまま地面へと落下した。

 

イル「負ける…もん…か!」

 

ネル「まだまだぁ~~……!!」

 

イルとネルは傷だらけになりながらも闘争心を燃やし、立ち上がった。しかし、どう見ても満身創痍で、立つのがやっとだった。

 

一誠「我夢、そろそろ」

 

ガイア「…!コクッ」

 

ガイアは既に戦いを終えた一誠と小猫に頷くと、3人は素早く体育館から撤退した。

 

残ったライザーの眷属4人は何故撤退したのか疑問に思った瞬間

 

バチバチ……ドガーーーーン!!

 

体育館に激しい雷が降り注ぎ、一瞬で体育館は焼け野原になった。

 

《グレイフィア「ライザー様の『兵士』3名、『戦車』1名、リタイアです」》

 

それと同時にグレイフィアのアナウンスが流れた。

 

一誠「相変わらずすごいなぁ~、朱乃さんの雷」

 

小猫「…ですね」

 

ガイア「うん…」

 

一誠は上空で雷を作り出し、体育館を一瞬で焼け野原にした朱乃に感服の声をもらすと、2人は同感だと頷いた。

 

一誠「さぁ、先を急ごうぜ?」

 

小猫「…そうですね、早く祐斗先輩と合流しましょう」

 

一誠の提案に2人は頷き、先へ急ごうと走りだそうとした瞬間!

 

一誠「っ!?」

 

ドカーーーーーーーーーーン!!!

 

突然、爆発が起き、一誠は吹き飛ばされた。

一瞬何が起きたかわからず、周りを見渡し、ガイアと小猫がいないことに気づいた。

 

一誠「我夢ーー!小猫ちゃーーーん!」

 

一誠は必死に2人の名前を呼び掛けるが、返事は帰ってこない。まさかと不安になった時、

 

???「ふふふ、まずは2人…」

 

一誠は声のした方を見上げると、そこには妖絶な笑みを浮かべるライザーの女王、「ユーベルーナ」の姿があった。

 

一誠「お前か!2人をやったやつは!」

 

一誠を睨み付けながら指を指して問うと

 

ユーベルーナ「ええ、そうよ。戦いを終えて油断しているところを狙う…、戦いの基本よ」

 

一誠「てめぇ…!」

 

ユーベルーナは不意打ちしたことを悪びれることもなく、淡々としゃべっていることに一誠は拳を強く握った。

 

ユーベルーナ「さぁ、貴方もリタイa「それはどうかな?」――!?」

 

一誠「この声は!!」

 

突然聞こえてきた声にユーベルーナと一誠は驚愕し、爆心地に視線を向けると、煙の中から無傷のガイアと小猫の姿があった。

 

小猫「我夢先輩、ありがとうございます…」

 

ガイア「いいよいいよ!」

 

2人共無事なことに一誠は安堵のため息をもらした。

 

ユーベルーナ「どうして!?あの時、確かに吹き飛ばしたのに!!それに、あのとき気配を消したはずなのに!」

 

驚愕しているユーベルーナにガイアは視線を向けると、落ち着いた口調で説明しだした。

 

ガイア「あなたが爆発させる瞬間、地面に穴を掘って逃げたんだ。それと、僕は約数100キロ先の針の落ちた音も聞こえる程耳がいいんだ。だから、あなたの存在に気づいたんだ」

 

ユーベルーナ「!そんな…」

 

ガイアは人2人分入れそうな穴を指を指しながら説明すると、ユーベルーナはウルトラマンの力の凄さに驚愕した。

 

ガイアは説明を終えると、深く腰をさげ、右腕を前にだし、左腕のひじを曲げる独特のファイティングポーズをとった。

 

ガイア「さあ、来い!あなたは僕が倒す!」

 

ユーベルーナ「それはこっちのセリフよ!今度こそ吹き飛ばしてくれるっ!」

 

2人はそのまま戦いそうな空気になったが、その間に割り込む様に、上空から下りてくる巫女服姿の朱乃が現れた。

 

朱乃「我夢君、イッセー君、小猫ちゃん。この『女王』は私が相手をしますわ…。さぁ、早く合流を……」

 

ガイア「朱乃さん!わかりました、ありがとうございます!」

 

いつもの様にニコニコしている朱乃にガイアはそう言うと、他の2人を連れ、木場がいる運動場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア達はしばらく走っていると、運動場付近に隠れていた木場と合流し、お互い無事だったことに少しの間、喜んだ。

 

一誠「それで、これからどうする?」

 

木場「今のところ問題ないし、作戦通りに相手を引き付けよう。でも、こそこそ隠れるのもうんざりしてきたし……」

 

一誠の問いに木場はそう答えると、ガイアの方へ視線を向けると

 

木場「我夢君、何かいい案あるかい?」

 

木場がガイアにそう聞くと、ガイアは腕を組んでしばらく考えると、何かが閃いた。

 

ガイア「3人共、この作戦はどうかな?」

 

ガイアの提案に小猫、木場、一誠は耳を傾けた。

 

木場「それ、いいかもね!」

 

一誠「いいね!さすが我夢だぜ!」

 

小猫「…さすがです」

 

ガイア「い、いやぁ~~///」

 

その提案に3人は肯定の言葉をガイアに送ると、ガイアは少し照れくさそうに頭をかいた。

 

ガイア「それじゃ、3人共。よろしく頼むよ」

 

ガイアの言葉に3人は頷くと、ガイアの作戦を実行するため、それぞれ行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠は1人、運動場の中心まで来ると、大きく息を吸いこむと

 

一誠「おーーーーい!あの焼き鳥野郎の眷属達ーーーー!!出てきやがれーーー!俺は逃げも隠れもしねぇ、お前らをぶっ飛ばしてやるから出てこーーーーーい!!

 

一誠は大声でそう言い放つと、運動場に2人の女性が姿を現した。

 

カーラマイン「堂々と現れるとは正気の沙汰じゃないな――だが、私はお前の様なバカが好きだ!」

 

イザベラ「まぁ待て、カーラマイン。戦いたい気持ちもわかる。その前にこいつから聞きたいことがあるからな…」

 

鎧を身につけた女性、「カーラマイン」は闘志に満ちた眼差しで剣を構えるが、顔の半分に仮面をつけたもう1人の女性、「イザベラ」が制止すると、一誠の方へ視線を向けた。

 

イザベラ「残りの方達はどこにいる?どこかに潜んで、奇襲を狙ってるのか?」

 

一誠「さぁね?それを知ってたとしても教えるかよ。お前らだって逆の立場だったら言わねぇだろ?」

 

とぼけた様に話す一誠にイザベラはそうか…と呟くと、両拳に力をこめ、カラワーナは剣に炎を灯し、戦闘態勢をとった。

 

イザベラ「私の名は『イザベラ』!ライザー様の『戦車』だ!」

 

カラワーナ「同じくライザー様に使える『騎士』、カラワーナだ!行くぞっ、リアス・グレモリーの『兵士』よっ!」

 

2人は名乗りをあげると、そのまま一誠へ襲いかかった。

しかし、一誠は微動だにせず、そのまま突っ立っていた。

 

カラワーナ「ははは、観念したのか!そのまま倒されよ!」

 

イザベラ「(何かがおかしい…、まさかっ!?)」

 

イザベラは何かに気付いたのか、一誠が戦意をなくしたと思い、向かっていくカラワーナを止めようと口を開こうとしたその瞬間、地面から大量の剣が生え、カラワーナとイザベラに襲いかかった!

 

イザベラ「くっ―――!!」

 

カラワーナ「なっ―――!?」

 

イザベラはとっさに身を固めたので、軽傷で済んだが、カラワーナは突然のことに対処できず、身体に剣が大量に刺さると、青い光に包まれ、消滅した。

 

《グレイフィア「ライザー様の『騎士』1名、リタイアです」》

 

それと同時にグレイフィアのアナウンスも流れた。

 

一誠「くそっ~。2人共、完璧につられたと思ったのにな~!」

 

イザベラ「貴様っ、謀ったな!よくもカラワーナを!!」

 

少し悔しそうにする一誠にイザベラは怒鳴るように問いた。

 

一誠「おう、お前らを俺達の作戦にはめさせてもらったぜ!」

 

イザベラ「作戦だと?」

 

一誠「そうだ。俺が堂々とグラウンドの中心で挑発すりゃあ、お前達は俺をおとりと思って警戒する筈――、それで1~2人くらい出して、罠を発動させて確認したら安心するだろ?それが狙いだ。俺のところに木場っていう『騎士』がいて、あいつがこの辺りの地形をマッピングして、お前らがどこにいそうなのか教えてくれたよ。それで、俺が大声で注意を引いている間、ガイア…いや我夢が地中を掘って、木場は俺の真下、残りの2人は隠れているお前らの仲間へ奇襲をかけるって作戦だ」

 

イザベラ「――!」

 

その作戦を聞いたイザベラは、隠れている仲間達のもとへ向かおうと思った瞬間

 

《グレイフィア「ライザー様の『兵士』5名、『僧侶』1名、『騎士』1名リタイアです」》

 

イザベラ「―――っ!」

 

グレイフィアのアナウンスで仲間達がやられたことを知り、イザベラは一瞬、悔しそうな表情を浮かべると、一誠を睨み付け、

 

イザベラ「ならば、貴様だけでもっ!」

 

そう言い放つと、一誠に向かってきた。

 

一誠「おう!かかってこい!」

 

イザベラ「やぁっ!」

 

一誠は戦闘体勢を整えると、イザベラの放つ拳を受け止めた。

 

一誠「―――!」

 

一誠はその拳を受け止めた瞬間、感じたのだ。

このイザベラは、小猫が戦っていた『戦車』よりも強いと。

そして、もし喰らったりしたらと思うと、少しゾッとした。

 

イザベラ「ほう、私の拳を受け止めるとはな!なら、こいつはどうだ!」

 

イザベラは一誠に感心すると共に、そのままあごにめがけて膝蹴りを放った。

 

一誠「――っ、あぶね!」

 

一誠はすぐさまイザベラの拳を放し、バク転で膝蹴りを回避した。

 

イザベラ「なかなかやるな…。これがレーティングゲームではなかったら、ぜひじっくりと手合わせしたかったものだ……」

 

一誠「そうだな。なら、今度はこっちからいくぜ!」

 

一誠はそう言うと、拳に力をこめ、イザベラに向かっていった。

 

イザベラ「面白い、かかってこい!」

 

イザベラもその瞳に闘志を燃やすと、一誠に迎え撃つ為、身構えた。

 

その後、2人はキックやパンチの応酬を続けた。

 

そして――

 

一誠「おりゃあぁぁーーーー!48の殺人技、『キ○肉バスター』!」

 

一誠はイザベラの首で逆さに持ち上げ、両足を掴んだまま上空から落下し、どこかのプロレス漫画の技を放った。

 

イザベラ「グハッ!」

 

《グレイフィア「ライザー様の『戦車』1名、リタイアです」》

 

その技が決まった瞬間、イザベラは吐血し、そのまま青い光に包まれ、消滅した。

 

一誠「よし!決まったーーっ!」

 

一誠は自分が好きなプロレス漫画の技が上手くきまったことに喜んでいると、近くの森の中から小猫達が、用具室の方からは木場が歩み寄ってきた。

 

小猫「…イッセー先輩、すごかったです」

 

木場「イッセー君、お疲れ。1人仕留め損ねた時はヒヤッとしたよ」

 

ガイア「さすがだよ、イッセー!あの殺人技を再現するだけじゃなくて、そのまま相手を倒すなんて!」

 

3人はそれぞれ一誠に感激の言葉をかけた。

 

一誠「だろ~。お前ら、見たか!俺の超ファインプレー!!」

 

一誠は鼻を伸ばしながら誇らしげに言った瞬間

 

《アーシア「皆さん、大変です!部長さんが…、部長さんが1人で相手の本陣へ向かいました!」》

 

不穏な通信が4人の耳に流れた。

 

ガイア「アーシア!?どうして部長が?何があったんだ?」

 

《アーシア「それが向こうからの提案で、『屋上で決着をつけよう』って通信が!」》

 

ガイアは慌てた様子のアーシアからそう聞くと、4人はとにかくリアスのもとへ向かおうとしたが

 

《グレイフィア「リアス様の『女王』1名、リタイアです」》

 

その時、不穏な空気に追い討ちをかけるようにアナウンスが響き渡った。

 

一誠「朱乃さんが!?」

 

4人はリアスの眷属の中でも強い朱乃が倒されたことに驚愕していると

 

「ふふふ」

 

上の方から妖しげな笑い声が聞こえた。

4人は見上げると、そこには妖絶な笑みを浮かべているユーベルーナの姿があった。

 

ユーベルーナ「ふふふ、ごきげんよう…」

 

一誠「…!お前、よくも朱乃さんを!」

 

ガイア「…!待って、イッセー!」

 

一誠は歯軋りしながら今でも飛びかかろうとするが、疑問に思ったガイアに止められた。

 

一誠「とめるなよ、我夢。あいつは俺がぶちのめす!」

 

ガイア「君の気持ちはわかる。でも、このまま突っ込んでも朱乃さんと同じ目に合うかもしれない。まずはあの人から謎を解かなきゃならない」

 

ガイアは一誠をなだめると、ユーベルーナへ視線を向けた。

 

ガイア「どうして、あなたは無傷なんだ?朱乃さんはかなりの実力者だ。ダメージが全く無いなんてありえない…」

 

ユーベルーナ「あぁ~、確かにあの『女王』には手こずったわ。だから『これ』を使ったわ」

 

ユーベルーナはガイアの疑問にそう答えると、懐から小さな小瓶を取り出した。

それを見た木場は納得した表情を浮かべた。

 

木場「『不死鳥(フェニックス)の涙』か…」

 

ガイア「『不死鳥の涙』?」

 

一誠「何だそりゃ?」

 

木場の呟きに2人は首を傾げた。

木場はそんな2人に顔を向けると

 

木場「使えばあらゆる傷を治すことができるアイテムだよ」

 

ガイア「えっ!?」

 

一誠「そんなのアリかよ!?」

 

木場「ただし、ゲームでは2回までしか使えないけどね」

 

木場は2人にそう説明すると、ユーベルーナは鼻で笑った。

 

ユーベルーナ「そこの坊やの言う通り、ゲームでは2回までしか使えない。私はまだ1回しか使っていないし、何も反則じゃないわよ」

 

一誠「くそっ!」

 

それを聞いた一誠は、怒りと悔しさで満ちた表情を浮かべ、地面に拳を打ち付けた。

 

4人は次から次へと起こる状況に一瞬、気をとられていると、ガイアはアッと気を取り戻し

 

ガイア「とにかく小猫、イッセーは部長のもとへ!木場君はアーシアと合流。僕はこの『女王』を倒すから!」

 

3人にそう指示すると、それを聞き、気を取り戻した3人はそれぞれの目的地へ向かう為、走りだした。

 

ユーベルーナ「あら、ライザー様の邪魔はさせないわよ」

 

ユーベルーナは走っている3人を爆破しようとしたが

 

ガイア「デュワッ!」

 

ユーベルーナ「ちっ!」

 

ガイアがそうはさせないとガイアスラッシュで妨害した。

 

ガイア「ここから先は行かせない……、僕が相手だ!」

 

ユーベルーナ「何度も、何度も邪魔ばっかりして……。今度こそ木っ端微塵にしてやるわ!!覚悟なさい!」

 

2人は睨み合いながら言い放つと、お互いの目的の為の戦いを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リアスは屋上にてライザーとの一騎討ちが展開していた。

 

リアス「はあーーーーーーっっ!!」

 

リアスは破滅の魔力でライザーの腰から上を吹き飛ばしたが

 

ボォォォォ……

 

だが、ライザーは不死の炎で瞬時に体を再生させた。

ライザーはやれやれと肩をすくめ

 

ライザー「無駄無駄無駄ァァ~~!何度やっても無駄なんだよ、リアスゥ…。君の『女王』も討ち取られ、残りの眷属ももうじき我が最強の『女王』、ユーベルーナによってリタイアさせられるだろう…。完全に君は詰んでいる。早く投了しr「誰がっ!」」

 

ライザーは投了するように促す途中で、リアスに滅びの魔力で顔を吹き飛ばされたが

 

ボォォォォ…

 

ライザーは先程と同じ様に顔を瞬時に再生させ、ハァと呆れた様にため息をついた。

 

ライザー「リアス、せっかくハンデとして、君の『僧侶』を連れてくることを許したのに…。それも蹴って、1人で来るなんてな……。息もあがってるし、魔力も減っている。君に勝ち目は無いんだよ」

 

リアス「はぁ、はぁ…、余計なお世話よ…。私が『王』である以上諦める訳にもいかないでしょう…。それに、私が貴方の提案に100%信じると思う?アーシアを連れてきたら、即リタイアさせるつもりだったんでしょう?」

 

それを聞いたライザーはふんと鼻をならすと、両手に炎を作りだし、

 

ライザー「まぁ、そうだったかもなァ~~……。だが、君のその威勢は勇気ではなく、無謀だと言うことを身をもって教えてやるッッ!!」

 

リアス「っ!」

 

リアスは破滅の魔力を放出し、こちらへ突っ込んでくるライザーに身構えたその瞬間!

 

???「―――ぅぅぅぉおおおおおりゃあぁぁぁーーーー!!」

 

ライザー「ふげぇッッ!?」

 

リアス「!?」

 

リアスの後方から何かが奇声を発しながら飛んできて、リアスの横を横切り、ライザーの顔に直撃した!

 

直撃したライザーは大きく後方へ吹っ飛び、飛んできた何かは顔を屋根に思いっきりぶつけた。

 

???「いてて~~…小猫ちゃん、もう少し加減してほしかったな…」

 

飛んできた何かは顔に手を当てて、苦痛の声を漏らした。

 

リアス「…え」

 

リアスは普段から聞き覚えのある声にまさかと驚いた。

 

???「見たか!俺の超ファインプレー!

 

その声の持ち主は堂々とした様子で言い放つと、リアスの方へ振り向き

 

一誠「部長、お待たせしました!」

 

リアス「イッセー!」

 

微笑みながら話す彼の顔を見た瞬間、リアスは瞳に目尻に涙をためた。

 

リアス「どうして、ここに?」

 

リアスは涙を拭い、一誠に問うと

 

一誠「約束したじゃないですか。絶対にこのゲームを勝たせるって。ただそれだけですよ」

 

リアス「イッセー…」

 

一誠「それに俺だけじゃないですし、ほら」

 

リアス「!」

 

リアスは一誠が指を指す方に指を指す方に視線を向けると、そこには小猫、木場、そしてアーシアがこちらに向かって走ってくる姿があった。

 

そのまま、小猫達が合流すると、アーシアはすぐさまリアスの治療を開始した。

 

アーシア「部長さん、無茶しないで下さい…」

 

アーシアは治療を終えると、不安げな表情でリアスにそう言った。

 

リアス「ごめんなさい。戦闘慣れしてない貴女を連れていく訳にも行かなかったの…」

 

アーシア「部長さん…」

 

リアスは申し訳ない表情でそう答えると、今度はアーシア以外の3人に視線を向けた。

 

リアス「貴女達もこのゲームに巻き込んでごめんなさい…。私のわがままのせいでこんなことに付き合わせて…」

 

暗い表情で3人に謝るリアスに木場はにこっと微笑み

 

木場「部長。お言葉ですが、僕達は貴女の眷属。貴女の自由を守るのも使命じゃないですか」

 

リアス「祐斗…」

 

木場がそう言い

 

小猫「私達はいつも部長に感謝してるんです。だから私達にもお手伝いさせて下さい……」

 

リアス「小猫…」

 

小猫が続けて言い

 

アーシア「部長さんは私を救って下さいました。今度は私も皆さんと一緒にお救いします!」

 

リアス「アーシア…」

 

アーシアが更に続けて言い

 

一誠「俺達にも頼って下さいよ。部長が困ってたらどこからでもすっとんで駆けつけますから!」

 

最後に一誠が微笑みながらサムズアップすると

 

リアス「イッセー…、みんな。ありがとう……」

 

リアスは自分の事情に付き合わされたにも関わらず、嫌な顔1つもせず、むしろ誇りに思っている彼らの言葉に嬉し涙が出そうになった。

 

その様子に一誠達は微笑んでいると

 

ライザー「――感動の再会は済んだのか…?」

 

「「「「!!」」」」

 

4人はその声の方に振り向くと、傷を再生させたライザーが退屈そうに立っていた。

 

一誠「あぁ、済んだぜ!おめぇを必ずぶっ潰してやるって意味を含めてなっ!!」

 

一誠はライザーに指を指しながら言い放つと

 

ライザー「ふんっ…。無駄なことを…」

 

ライザーは鼻で笑い、身体中に炎を纏った。

 

木場「イッセー君、いつもより気合い入ってるね」

 

木場は瞳に闘志を灯している一誠にそう問うと

 

一誠「そりゃ、当たり前だろ!これで気合いが入らない方がおかしいって!」

 

木場「そうだね!」

 

一誠は気合いがこもった声で答えると、木場は不敵な笑みを浮かべ、剣を構えた。

 

小猫「はめ、外さないで下さいね…」

 

一誠「おう、わかってるぜ!んじゃあ―――」

 

小猫にそう返すと、一誠は拳をもう片方の手のひらに打ち付け

 

一誠「本当の戦いは…これからだぜ!

 

力強くそう言うと、3人はライザーへ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガイアはユーベルーナの爆発呪文に苦戦していた。

 

ドガァァァァーーーーーーン!!

 

ガイア「グァァァァーーー!!」

 

ガイアは爆発呪文で大きく吹き飛ばされ、グラウンドから森の中へと転がっていった。

 

ガイアは爆発呪文の的になるのを避ける為、得意である格闘戦に持ち込もうと様々な方法で何度も接近したが、

中々上手くいかない有り様だった。

 

ガイア「(くそっ、どうすれば…!)」

 

ガイアは思考を張り巡らして作戦を必死に考えているが

 

ドガァァァァーーーン!

 

ガイア「くっ!」

 

ユーベルーナ「私が作戦を考える隙を与えると思って?こそこそ隠れてないで出てきなさい」

 

ユーベルーナは作戦を考える隙も与えない為に、森の上からガイアが隠れている木の近くを爆破を繰り返していた。

 

ガイア「(―――森がっ!何てめちゃくちゃな攻撃だ…!!)」

 

グラウンドの周りを生い茂っていた木々はすでに半分が焼け野原となっていた。

その光景にガイアは冷や汗をかいた。

 

ガイア「(くそっ!こうなったら、困った時の()()しかない――――!)」

 

この状況を切り抜ける作戦を思い付いた瞬間、ガイアは爆風に包まれた。

 

 

 

 

 

ユーベルーナ「ふふっ…、やっと仕止めたわ…。ウルトラマンってのも噂程大したことなかったわね……」

 

ユーベルーナはガイアを仕止めたことで、歓喜にうち震えていた。

 

ユーベルーナ「(おかしいわね…。リタイアのアナウンスがそろそろ流れる頃だけど…)」

 

ユーベルーナはすぐに戦闘不能を知らせるアナウンスが流れないことに疑問を抱いたその瞬間、

 

ガイア「デュワァァァァーーーーーーー!!」

 

ユーベルーナ「!?」

 

立ち込める爆風の中から体をスピンさせ、ドリルの様に頭から突撃してくるガイアが姿を現した。

 

ガイア「ダァァァァーーーーー!!!」

 

ユーベルーナ「―――っ!!?」

 

ガイアはそのまま突進し、突然のことで動けないユーベルーナの腹を突き破った!

 

体に風穴を空けられ、致命傷を負ったユーベルーナは、地面に向かって落下していった。

 

ガイア「デュワ!グァァァァ………!!」

 

ガイアは落下するユーベルーナよりも先に地面に降り立ち、そのままフォトンエッジの体勢をとった。

 

ガイア「デュワァァァァァァァァーーーーー!!!」

 

ユーベルーナが地面に激突するかしないかの瞬間を狙い、フォトンエッジを放った。

 

ユーベルーナ「きゃあぁぁぁーーーーーー!!!」

 

ドガァァァァーーーーーーーーン!!

 

直撃した瞬間、ユーベルーナの全身は刃で切り裂かれた様なエフェクトが入り、爆発した。

 

《ライザー「ライザー様の『女王』1名、リタイアです」》

 

それと同時にグレイフィアのアナウンスが流れた。

 

ガイア「よし!『回れば何とかなる作戦』…、上手くいった!早く部長のもとへ行かないと!」

 

ガイアは新校舎の方へ向かおうとしたとき

 

《グレイフィア「リアス様の『騎士』1名、『戦車』1名リタイアです」》

 

ガイア「(そんな…、小猫と木場君が……。)」

 

絶好調の気分になっているガイアの気持ちを打ち消す様に、グレイフィアのアナウンスが流れた。

 

ガイア「――!イッセーが危ない!!」

 

ガイアは一瞬気を取られていたが、すぐに気を取り戻すと、新校舎の方へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、屋上では、木場と小猫が倒され、残った一誠はライザーとの一騎討ちを繰り広げているが

 

ライザー「おいおい、もう終わりかァ~~?」

 

一誠「くっ!まだだ!」

 

一誠は何度攻撃しても再生するライザーに致命的な精神攻撃を与えるどころか、体力を無駄に消耗するだけの不利な状況に追い込まれていた。

 

一誠はサマーソルトキックをライザーに放ったが

 

ガシッ!

 

一誠「なっ!?」

 

ライザーは左手で一誠の足を掴むと、口元を歪め

 

ライザー「おいおいィ~~……。こんなチンケな攻撃で俺に効くと思ったのか、マヌケがぁ~~~~!」

 

一誠「ぐあぁぁぁーーーーーーーー!!」

 

アーシア「イッセーさん!!」

 

ライザーは足を掴んだ手から炎を出すと、一誠は燃え盛る炎の激痛に叫び声をあげた。

その声にアーシアは悲鳴に近い声で叫んだ。

 

リアス「イッセーを放しなさい!」

 

リアスはライザーに向けて滅びの魔力を当て、一誠を解放させた。

 

ボォォォォォ…

 

ライザー「リアス、ほんの数分前よりも威力が落ちてるじゃないか。それに君の『騎士』、『戦車』、そこに転がっている『兵士』も俺の顔に傷1つ付けられなかった……。もう諦めたらどうだ?」

 

ライザーは瞬時に顔を再生させると、呆れた表情でリアスに降伏を促した。

 

リアスはまだ頼みの綱であるガイアという存在がいるが、彼は新校舎とは真反対の方角にいるので、間に合うかどうかわからない。

 

リアス「……ええ、そうね。投r「まだ…諦めたら駄目…だ……!」―――イッセー!!」

 

リアスは自分が負けそうになることよりも、眷属が、一誠がこれ以上傷つけさせたくないと思い、投了の言葉を言おうとした瞬間、アーシアに治療を受けていた一誠が待ったをかけた。

 

一誠「まだ…諦めちゃ駄目だ…!部長!約束…したでしょ…!絶対…、勝たせるって……!」

 

リアス「イッセー、もういいの。これ以上あなたが傷つくのを見たくな「いや…、駄目…だ!ここで、部長の夢を…、俺達の…願いを…終わらせたくないっ!!」――っ!」

 

リアスは自身の夢を守る為、それでも引き下がらない一誠の姿に、涙を浮かべた。

 

ライザー「おーおー…、泣かせる話だ。感動的だな」

 

一誠「つべこべ言わずかかってこいよ!ニワトリ野郎っ!!」

 

ライザー「―――っ!」

 

それを聞いたライザーはニヤニヤした表情から一変、一瞬で一誠に近づき、拳や蹴りのラッシュを打ち込んだ!

 

バキッ!ドコッ!ドガッ!ゴギャン!

 

一誠「ぐはっ!ぐあっ!ごはぁぁーーーっ!!!」

 

リアス&アーシア「「イッセー(さん)!!」」

 

滅多打ちされる一誠の姿にリアスとアーシアは泣きながら叫び声をあげた。

 

一誠「ごほっ!ごほっ!」

 

ライザー「貴様ァ~…、調子に乗るなよォ…!この俺をコケにしたことを後悔させてやるッ!そう簡単にリタイアさせると思うなよッッ!」

 

ライザーはボロボロになった一誠の胸ぐらを掴み、握り拳に炎を纏わせた。

 

一誠「…へ、へへ……。これ……なぁんだ……」

 

ライザー「?」

 

突然、一誠は不敵に笑うと、水が入った小さな小瓶をズボンのポケットから取り出した。

 

ライザー「…!まさかっ、それは!!やめろーーッ!」

 

その水の正体に気付いたライザーは一誠から離れようとするが既に手遅れで、一誠が握り壊した小瓶から出た水が、ライザーの顔や腕にかかった。

 

ライザー「GYAAAAAAーーーーーーッッ!!」

 

ライザーは水がかかった箇所の皮膚が溶けだし、一誠を解放し、苦しみだした。

 

リアス「今のって、もしかして!?」

 

一誠「はい…、部長の…思っている通り、あれは『聖水』です。アーシア…からもらったんです…。悪魔は『聖水』に弱いらしいですからね…」

 

一誠は朦朧とした意識でリアスに弱々しい声で答えると、自身を睨み付けるライザーへ視線を向けた。

 

ライザー「よくも…、よくも…この俺の顔に聖水をォォーー!!いい気になるなよォ!KUAAAーーーー!!」

 

ライザーは怒りの形相を浮かべると、右手を天高くあげ、巨大な火球を作り出した。

 

ライザー「レーテングゲームでの死は事故と見なされるッッ!つまり、こいつを殺したとしても何も咎められないッ!」

 

ライザーはそう言うと、リアスへニヤッと気味が悪い笑みを浮かべ

 

ライザー「よぉく見てろよォ!リアスゥ!君の判断ミスで死んでいく眷属の様をッッ!!!」

 

ライザーは火球を一誠に向かって投げつけた!

 

リアス「やめてーーーーーーっ!!ライザーーーーーーっ!!!」

 

一誠「(動…け…ねぇ…!)」

 

リアスの制止もむなしく、そのまま火球は一誠の方に向かっていき、衝突するかと思った瞬間

 

ボワァァァーーン……

 

ライザー「!?」

 

リアス「!?」

 

アーシア「!?」

 

一誠「…!?」

 

空から降ってきた謎の光が一誠を守るかの様に、ライザーの火球を防いだ。

 

ライザー「…何だ!今のは!?」

 

ライザーは動揺していたが、まぁいいとすぐに次の火球を作り出し、一誠に放とうとするが

 

リアス「ライザー、待って…!『投了』するわ!だからこれ以上、私のイッセーを傷つけないでっ!!」

 

リアスが涙を流しながら降伏した瞬間、

 

《グレイフィア「リアス様の投了により、このゲームはライザー様の勝利です。」》

 

グレイフィアのアナウンスが残酷な現実を伝え、その時丁度、ガイアが屋上へ到着した後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朦朧とする意識の中、一誠が最後に見たものは、涙を流しながら何度も謝るリアスの姿だった………。

 

 

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

ライザーに敗北したオカルト研究部。
リアスの夢を守るため、イッセーが挑むことに!
絶対絶命の時、光が…。

次回、「ハイスクールG×A」!
「新たなる光」!
お楽しみに!







良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第9話「新たなる光」

不死鳥悪魔 ライザー 登場!


一誠は気がつくと、砂漠の様な場所にいた。

 

しかし、その砂の色は赤く、空はオレンジ色に染まっていた。

 

一誠「ここは一体…?俺、確かあの時……」

 

一誠は周囲の景色を見渡していると、屋上の戦いで起きた出来事思い出した。

ライザーに挑むが、ことごとく返り討ちにされたこと、

ライザーに殺されそうになった時、謎の光が自分を守ってくれたこと。

 

そして、リアスが涙を流しながら謝罪していたことを…。

 

一誠「(俺、約束守れなかったな……くそっ!)」

 

一誠は悔しそうに拳を地面に打ち付けた。

 

一誠「(『何が夢を諦めるな』だ!俺は何1つ守れやしなかった!!あの時と同じで、俺は変わっちゃいねぇ!!)」

 

一誠は自身の不甲斐なさに腹を立て、更に地面へ頭を何度も何度も打ち付けた。

だが、何度打ち付けても帰ってくるのは、砂の感触のみであった。

 

一誠は自暴自棄気味に頭を打ち続けていると

 

ズシーンッ!

 

一誠「何だ!?」

 

突然、大きな地響きがなった。

一誠は頭を打ち付けるのをやめ、地響きの発信源に顔を向けた。

 

一誠「何だあれ…?怪獣?」

 

一誠の視線の先には、岩をそのまま怪獣のフォルムにしたような二足歩行の巨大怪獣、『ネオダランビア』が暴れていた。

 

ネオダランビア「…?」

 

一誠「やべっ!?」

 

ネオダランビアは一誠の存在に気付くと、頭部にある角から光弾を放とうとしたが

 

???「シュワッ!」

 

ネオダランビア「―――――!!」

 

突然、ネオダランビアの真横から青い光線が放たれ、それに直撃したネオダランビアはオレンジ色のサークルが描かれると、爆発四散した。

突然の出来事に一誠は困惑しながらも、光線が放たれた方角を見上げると

 

???「……」

 

そこには銀色のボディーに赤と青のライン、そして金色のプロテクターの中央には青く輝く結晶体があるウルトラマンがそこにいた。

 

一誠「…ウルトラ…マン?」

 

その姿は自身の知っているガイア、アグルとも似使わない、一度も見たことがない未知のウルトラマンだった。

 

未知のウルトラマン「……」

 

未知のウルトラマンは一誠の視線に気付くと、顔を向け、彼を見下ろした。

 

一誠「お前は……?」

 

一誠がそう質問した瞬間、周りが暗くなった。

 

 

 

 

 

 

一誠「…!」

 

一誠は次に視界に写ったのは、自分の部屋の天井だった。

夢を見ていたのかと思いながら、ゆっくりと体を起こすと、扉が開かれた。

 

アーシア「…!!」

 

我夢「……イッセー!!」

 

そこには我夢とアーシアの姿があり、一誠の姿を見ると、目を丸くし、嬉しそうに一誠へ駆け寄った。

 

アーシア「イッセーさん!」

 

一誠「うわっと!」

 

アーシアは瞳に涙を浮かべながら一誠に抱きついた。

心配させたんだなと一誠は思い、アーシアの頭を撫でた。

 

我夢「イッセー!良かったぁ~…、このまま目を覚まさないかと…」

 

我夢も心配していた様子で、一誠が覚醒したのを確認し、ほっとした表情を浮かべた。

 

一誠「…なぁ、他のみんなは?」

 

我夢「みんな治療を終えて、部長の結婚式に出席している。僕達はイッセーを看病するために残ったんだ」

 

一誠「そうか…」

 

事情を聞いた一誠は安堵のため息をつくと、暗い顔になり、視線を下に向けた。

 

一誠「俺達…、負けたんだよな……」

 

我夢「うん……」

 

一誠の呟きに我夢は表情を曇らせると

 

我夢「ごめん!僕がもっと早く着いてれば、君をこんな目にあわせなかった!!」

 

一誠「!」

 

頭を下げ、謝罪する我夢に一誠は気にすんなよと声をかけ、その頭を上げさせ、口を開いた。

 

一誠「それに俺は諦めちゃいねぇ…。あのいけすかねぇ種蒔き焼き鳥野郎の顔面をぶん殴ってねぇし、部長との約束を果たせてねぇ!」

 

アーシア「約束?」

 

一誠「おう、『俺が部長の夢を守る』ってな。悪いけど我夢。お前の力を借りれない」

 

一誠は再び瞳に闘志を燃やしながら我夢に言い放つが

 

我夢「わかったけど、作戦や勝機はあるの?」

 

我夢は不安げな表情で問うと

 

一誠「そんなもん無ぇ。ただこれを使うだけだ!」

 

一誠はにっと不敵に微笑むと、自身の腕をポンポンと叩いた。

 

一誠「よし、じゃあ乗り込んでくるぜ!」

 

一誠は勢いよく宣言するが

 

我夢「でも、どうやって会場に行くの?場所、わからないよ」

 

一誠「あっ、そうだった…!」

 

我夢の疑問に一誠はどうしようかと悩んでいると、床から魔方陣が現れ、中からグレイフィアが現われた。

 

グレイフィア「どうやらお目覚めの様ですね。無事で何よりでした」

 

一誠「あ、どうも…。でも、どうしてここへ?」

 

グレイフィア「兵藤 一誠様、高山 我夢様。あなた方に我が主人、サーゼクス様からお預かりしたものを渡しに来たのです…」

 

そう言うと、グレイフィアは1枚の魔方陣が書かれた招待状を手渡した。

 

グレイフィア「これは結婚式会場へと繋がっている魔方陣です。それから魔王サーゼクス様の伝言で、『妹を救いたくば、会場に乗り込んでこい』と…」

 

一誠「んなもん答えは1つ!部長を助け出す、それだけですよ!ありがとうございます!これ、使わせてもらいますね」

 

一誠は力強く言うと、グレイフィアから招待状を受け取った。

 

我夢「グレイフィアさん、ありがとうございます」

 

我夢はペコリとお辞儀すると、一誠へ顔を向けた。

 

我夢「僕達、悪魔の未来を潰すことになるけどいいの?」

 

一誠「おう、望むところだ!!」

 

一誠の返答に我夢は微笑むと、アーシアは困惑した表情で、どうしたらいいかとキョロキョロしていた。

 

一誠「アーシア、部長は必ず俺が連れ戻す。だから俺の帰る家で待っててくれないか…?」

 

一誠の頼みにアーシアはしばらく考えると、

 

アーシア「…はい!必ず…、必ず部長さん達と帰ってきて下さいね…!!」

 

一誠「ラジャー!アーシアの分まで暴れてくるぜ!」

 

目尻に涙をためるアーシアに一誠は力強くサムズアップすると、招待状の魔方陣を展開し、我夢と一誠は結婚式会場へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレイフィア「…サーゼクス様が期待されておられた理由がやっとわかりました」

 

グレイフィアは彼の後ろ姿に微笑ましそうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、木場達はスーツやドレスに身を包み、結婚式パーティーに参加していた。

 

また、パーティーには彼らだけでなく、名だたる上級悪魔の姿もあった。

 

木場「イッセー君達、来ませんでしたね…」

 

朱乃「そうですわね…」

 

小猫「…」

 

木場と朱乃は沈んだ表情で呟いた。

3人は既に終わったことだが、レーテングゲームでの自分達の力不足を感じ、納得がいかなかったのである。

 

ソーナ「…先程のゲーム、拝見させてもらいました」

 

そんな彼らにソーナが話しかけてきた。

 

ソーナ「正直、ゲームの結果に納得は行かないでしょうが、負けは負け…。それはリアス自身もよく理解しているでしょう…」

 

朱乃「あらあら、さすが幼馴染みは言うことが違いますわね」

 

朱乃はいつもの様にニコニコしながら答えた。

だが、それは無理して笑ってるように木場と小猫、ソーナは思った。

 

梶尾「会長、ここにいたんですか」

 

ソーナとそんな会話をしていると、人混みの奥から梶尾を出てきた。

 

ソーナ「ええ、今回のレーティングゲームについて話を…」

 

梶尾「そうでしたか…。お前ら、その…残念だったな……」

 

木場達に梶尾は暗い表情で言うと、木場達は気にしてないと答え、朱乃はあらあら、うふふ…といつもの様に微笑んだ。

 

梶尾「それで、イッセーの容態は?」

 

木場「はい。かなりの重症だったらしいですが、命に別状はないと…」

 

梶尾は木場からそう聞くと、そうか…と呟き、安堵した表情を浮かべた。

 

梶尾「でも、まぁイッセーや我夢は必ずやって来る…」

 

小猫「どうしてですか?」

 

小猫の疑問に梶尾はフッと笑うと、口を開き

 

梶尾「イッセーは、いつもわいせつ行為で女子どもから叩きのめされても諦めないだろ?褒められる事じゃないが、俺が思うにあいつは、()()()()()()()()()()()()だからな…。そして、いつもあいつの暴走を止めるのは我夢…、イッセーが来るなら我夢も来る。必然だろ?」

 

梶尾の言葉に木場達は確かにと呟きながら頷くと、梶尾は更に言うとだな…と言葉を続け

 

梶尾「イッセーがいつも言ってるだろ?『俺は不死身のイッセー様だぜ!』だってな」

 

「「「!!」」」

 

梶尾がニヤリと笑いながら言うと、3人はハッ!となった。

 

小猫は思った。イッセー先輩はいつだって諦めないと。

 

木場は思った。イッセー君は誰かが困ってる人を決して見捨てないと。

 

朱乃は思った。イッセー君はどんなに不利でも立ち上がり続けると。

 

梶尾は3人がそのことに気付き、心に希望が灯った事を察すると、ソーナにお辞儀し、人混みの中へ戻っていった。

 

ソーナ「(皆に活気を取り戻させることが出来るとは……。さすが『リーダー』…)」

 

ソーナはそんな梶尾を誇らしく思い、静かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

木場達はしばらく話していると、会場の床から炎が吹き上がり、中から胸元を開いたタキシードに身を包んだライザーが不敵な笑みを浮かべながら現れた。

 

ライザー「冥界に連なる皆様方ッ!本日は遠路遥々からお集まり頂き、大変嬉しく思いますッ!この度は私、『ライザー・フェニックス』と『グレモリー家』の時期当主である、『リアス・グレモリー』と婚約という歴史的瞬間を皆様方に共有して頂きたいからでございますッッ!!」

 

パチパチパチパチパチパチ……!!

 

ライザーが熱く演説を終えると、周りの上級悪魔達は一斉に拍手を送った。

 

ライザーはありがとうございますと一言言うと、少し離れた床を手で示すと

 

ライザー「では、登場して頂きましょうッッ!!我が妃、『リアス・グレモリー』ッッッ!!!」

 

その言葉を終えると同時に、魔方陣からウェディングドレス姿のリアスが現れたその瞬間!

 

バンッ!

 

???「その結婚、ちょっと待ったっーー!!」

 

大扉を勢いよく開ける音と共にそう言い放つ声が聞こえた。

周りの観衆はその声が聞こえた方へ振り向くと、そこには仁王立ちをしている一誠と、その後ろから申し訳なさそうな表情を浮かべる我夢の姿があった。

 

ライザー「誰かと思えば、あの時の負け犬小僧とウルトラマンじゃないか…。警備兵!こいつらをつまみ出せッッ!」

 

ライザーがそう指示すると、一誠と我夢の周りを警備兵が囲んだ。

一誠達は今すぐ襲いかかってくることを警戒して、身構え、ひと悶着起きそうになったが

 

紅髪男「まぁ、待ちたまえ」

 

紅い長髪でリアスとよく似た男が前に現れ、その男の顔を見た警備兵は警戒を解き、ライザーは目を丸くした。

 

ライザー「サーゼクス様!?」

 

一誠「(サーゼクスって、確か…!)」

 

我夢「(魔王で、部長のお兄さんか!どうりで風貌が似ている訳だ…!)」

 

ライザーの言葉に2人は驚きながらも納得した。

 

サーゼクス「彼らは私が用意した余興だよ」

 

ライザー「余興?一体どういうことです?」

 

ライザーがそう問うと、サーゼクスはあぁと頷き、言葉を続けた。

 

サーゼクス「今回のゲームを観させてもらったよ。実に面白かった。特に君に何度も打ちのめされながらも最後まで諦めなかった兵藤 一誠君。救援に間に合わなかったものの、奇抜な作戦とウルトラの力で奮闘した高山 我夢君。この2人は実に素晴らしかった。しかし、経験不足のリアス相手では分が悪いと思ってね……。そこであの手に汗握る戦いをもう一度みたいと思って、2人を呼んだのだよ。どうかね、ライザー君?君が嫌だと言うのなら別に良いのだがね…?」

 

微笑みながら伺うサーゼクスにライザーはフッと笑うと

 

ライザー「わかりました。サーゼクス様にそう言われて引き下がる訳にも行けませんので、この勝負、受けて立ちましょうッ!それで、私はどちらと戦うので「俺だ」―!」

 

ライザーの問いを遮る様に一誠は力強く宣言した。

 

ライザー「お前が?この俺に散々やられた癖に…」

 

一誠「うるせっ!まだ勝負は1回の表だ!」

 

鼻で笑うライザーに一誠はやる気に満ちた表情で言葉を返した。

 

その様子を見計らったサーゼクスは一誠に

 

サーゼクス「では、兵藤 一誠君。私のわがままに付き合ってくれることだし、この勝負に勝ったら何でも願いを叶えてあげよう。何が良いかね?」

 

一誠「部長を…、俺の主の『リアス・グレモリー』様を返してもらいます!」

 

リアス「イッセー…」

 

リアスは不安そうな表情を浮かべた。

 

サーゼクスは一誠の願いを聞き受けると

 

サーゼクス「よし分かった。君が勝てば、リアスを自由にするがいい。さて、勝負は成立した。場所は私が用意しよう」

 

そう言うと、2人の足下に魔方陣が出現し、転移を始めた。

 

ライザー「ふん、二度と立ち上がれない様にそのプライドをズタズタにしてやる…」

 

一誠「望むところだ!こっちがお前の精神をズタズタズタにしてやるよ!」

 

ライザーと一誠はにらみ合いながら光に包まれ、戦闘用フィールドへ転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「我夢っ!!

 

我夢「わっ!どうしたんですか!?」

 

リアス「どうしたもこうしたも、何でイッセーに戦わせるの!?あなたならともかく、今のイッセーじゃ歯が立たないのよ!?」

 

リアスは突然大声で話しかけられ、驚いている我夢に問い詰めると

 

我夢「正直言って、今のイッセーでは勝ち目はありません」

 

リアス「だったら何でなの?あなた達、『親友』何でしょ――」

 

我夢「『親友』だからです!

 

リアス「!」

 

更に問い詰めるリアスに我夢は遮る様に大声で言うと、リアスは言葉を詰まらせた。

 

我夢「彼に一体どこにそんな勝機があるのかわかりません。ですが、彼はあなたを助けたいと思ってここまで来たんです!イッセーはいつだって諦めないし、必ず約束は守ります。だから信じて下さい!彼が勝つことを…!」

 

リアス「…!我夢」

 

リアスは真剣な表情で話す我夢の手が震えていることに気付いた。

もしかしたら、このまま手も足も出せずに負けてしまう、最悪な場合は殺されるかもしれない。

本当に不安なのは我夢自信だということをリアスは理解した。

 

リアス「…ごめんなさい。そうね…私、イッセーの主だものね…。私もイッセーを信じるわ…」

 

我夢「部長…!」

 

リアスの言葉に我夢は満足げに微笑んだ。

 

リアス「(イッセー……、必ず勝って…)」

 

リアスは観客席から中央に立つ一誠を見ながら、神頼みをするように強く祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、戦闘フィールドに転送された一誠とライザーはサーゼクスの試合開始の合図と共に、戦闘を開始したが

 

一誠「熱っ!くそっ!」

 

一誠は接近戦に持ち込む為、何とか近付こうとするが、ライザーの放つ炎に避けるのが精一杯で、中々近付けずにいた。

 

ライザー「URYYYYーーーッッ!!さっきまでの威勢はどうしたァーー!?今さら怖じ気ついたかァ?」

 

一誠「んのやろっ!!」

 

しこたま炎を投げ飛ばしてくるライザーの挑発に、一誠はカチンと頭にきて、体のあちこちが黒こげになりながらも、突進した。

 

一誠「おりゃあっ!」

 

近付いた一誠は思いっきりライザーの頬へ拳を繰り出したが

 

ガシッ!

 

一誠「うっ!」

 

ライザーはその拳を簡単そうに片手で受け止め、ニヤリと口元をゆがめた。

 

ライザー「貧弱、貧弱ゥ!!そんな眠っちまいそうなパンチでこの俺に効くと思ったか、マヌケがァァ~~~!」

 

ライザーはそう挑発すると、もう片方の手を握り拳にし、炎を纏わせた。

 

ライザー「これが、本当の『パンチ』と言うものだァァーーーッッ!!」

 

一誠「ぐわぁぁぁーーーーっ!!」

 

ガァァァーーーーーーーンッ!!

 

一誠は顔面にライザーの拳をくらうと、思いっきり後方へ吹き飛び、戦闘フィールドの壁に激突した。

 

リアス「イッセーっ!」

 

「「「「(!!)」」」」

 

リアスは不安のあまり、思わず叫んだ。

他の我夢や木場達も不安な表情を浮かべた。

 

一誠「…くっ」

 

だが、一誠は額から血が流しながらもフラフラと立ち上がった。誰がどう見ても不利な状況だが、その瞳は諦めていなかった。

 

ライザー「小僧…。この場で土下座をし、『二度とライザー様に逆らいません、お許し下さい』と言えば許してやるぞ」

 

ライザーはニヤニヤしながら一誠に降参を促すが

 

一誠「…誰が降参するかよ。ごちゃごちゃ言ってねぇでかかってこい、焼き鳥野郎…!」

 

ライザー「ッ!」

 

ライザーはフッと鼻で笑う一誠の言葉を聞き、カチンと頭にくると、両腕を天高くあげ、巨大な火球を作り出した。

 

ライザー「そこまで死にたいのなら、いいだろうッ!俺に逆らったことを後悔しながらあの世へ行け―――ッッ!!」

 

ライザーはそう言うと、巨大な火球を一誠へ投げ飛ばした。

 

「「「「「イッセー(君)(先輩)!」」」」」

 

リアス達は不安のあまり、一誠の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「(くっ…、俺は…ここまでか…?)」

 

火球がどんどん迫ってくる中、一誠はこのまま自分は死ぬだろうと観念したとき、リアス達と過ごした日々を走馬灯の様に次々と思い出していた。

 

そして、最後に思い出したのは

 

(リアス「イッセー…、ごめんなさい……」)

 

一誠「(部長…)」

 

泣きながら謝るリアスの姿だった。

その姿を思い出していると

 

???『ここで諦めるのか?』

 

一誠「(――!?)」

 

突然、脳内に男性の声が聞こえた。

それは何故だかわからないが、どこか懐かしいと思える声だった。

 

???『もう一度聞く。ここで諦めるのか?それともお前は女の子1人守れない男なのか?』

 

一誠「(いや、違う!そうじゃない!)」

 

???『だったらどうする?』

 

謎の声は一誠に問うと

 

一誠「(最後まで戦う…!ただ、それだけだ…!)」

 

???『そうか…』

 

一誠がそう心の中で答えると、謎の声はどこか嬉しそうな声で呟き、それ以降、声は聞こえなかった。

 

そんな会話を脳内で繰り広げられいるうちに、ライザーな火球は目前に来ていた。

 

ライザー「ハハハハハハハハ!このまま燃え尽きるがいい―――ッッ!!」

 

ライザーは勝利を確信して、高笑いをした。

 

一誠「(こんなところで…俺は諦めないぞ…!)」

 

一誠は火球を受け止める覚悟を決め、心でそう呟き

 

一誠「絶対、諦めるかーーーーーっ!!

 

そう叫んだ瞬間、火球が。土煙が。

ライザーが。リアス達が。

それだけでなく、観客席を埋め尽くしているパーティーの参列者までもが止まった。

 

一誠「なんだこれ!?」

 

一誠が疑問に思っていると、黄色の光に包まれ、空へと登っていった。

 

 

 

 

 

 

 

一誠「うおおおおおぉーーー!!?」

 

一誠は悲鳴をあげながら雲を突き抜けると、あの夢に出てきた砂漠に着き、あの未知のウルトラマンの姿がそこに立っていた。

 

一誠「ウルトラマン…!俺に力を…俺にみんなの夢を守る力をくれっ!」

 

一誠が懇願すると、ウルトラマンは頷き、光へ変わると、一誠を優しく包み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、戦闘フィールドではライザーが勝利を確信し、高笑いをあげていた。

 

ライザー「フハハハ…!俺に逆らうからこうなるのだッ!!」

 

我夢「(イッセー…!)」

 

リアス「(イッセー…)」

 

ライザーの視線の先には巨大な煙が立ち込めていた。

誰もが一誠が死んだ。そう思った瞬間!

 

ライザー「な、何だ!?」

 

煙の中から渦巻く目映い黄色の光の柱が煙を払う様に現れた!

 

我夢「あれって!」

 

リアス「まさかっ!!」

 

朱乃「イッセー君っ!?」

 

その光景に我夢、リアス、朱乃は既視感を感じた。

 

そして光の柱が消えると、銀色のボディーに赤と青のライン、胸には金色のプロテクターがあり、その中央には青く輝く結晶を持つ等身大のウルトラマンが現れた!

 

木場「3人目の…ウルトラマン…!!」

 

小猫「イッセー先輩…!?」

 

我夢「イッセーがウルトラマンに…!?」

 

動揺しながら呟く3人の言う通り、一誠は夢に出てきたウルトラマン、『ウルトラマンダイナ』へと姿を変えたのだ!

 

ダイナ「デェア!」

 

リアス「…イッセー」

 

リアスはその勇姿を見て、動揺と感動が混ざった感情を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザー「……何が何だか知らんが、姿を変えようがそんなものこけおどしだッ!!今度こそ焼き付くしてやる―――ッッ!」

 

ライザーはそう言うと、腰を低くし、両腕を前へ出したファイティングポーズをとるダイナへ無数の炎を放った。

 

ダイナ「…!デェアッ!」

 

ダイナは右手からくさび形の手裏剣の様な光弾、『ビームスライサー』を連射し、ライザーの炎を全弾打ち落とした!

 

ライザー「くっ!なら、この攻撃は耐えきれるか!?」

 

ライザーは両拳に炎を纏い、ダイナへ飛びかかった。

 

ライザー「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァーーーーーーーーー!!」

 

ダイナは冷静にライザーのパンチのラッシュをかわし、ときに受け流しながら対処した。

 

ライザー「KUAッ!」

 

中々攻撃が当たらず、業に燃やしたライザーは、思いっきり力を込めたパンチを放った。

だが、その攻撃にできた隙をダイナは見逃さなかった!

 

ダイナ「ハッ!」

 

ライザー「何ッ!?」

 

ダイナはそのパンチを繰り出す腕を左手で受け止め、もう片方の手でライザーの腕をがっちりと掴むと

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ライザー「ぐはッ!?」

 

背負い投げの要領でライザーを思いっきり地面へ叩きつけた!

ライザーはその衝撃で、苦痛の表情を浮かべながら吐血した。

 

ダイナ「…」

 

ダイナはしばらく待つと、ライザーはヨロヨロとしながらも立ち上がった。

 

ライザー「……俺が立ち上がるのを待つとは、随分余裕の様だな…!」

 

ライザーはダイナを睨み付けながらそう言うと、口元から流れてる血を手で拭った。

それを聞いたダイナは

 

ダイナ「…ああ、全然余裕だし、まだまだ俺は本気じゃね」

 

ライザー「何だとッ!?」

 

ダイナ「言っただろ?『まだ勝負は1回の表だ』ってな…。だから――」

 

ダイナは驚いているライザーへ余裕に満ちた声でそう答えると、両拳を強く握り

 

ダイナ「本当の戦いはここからだぜ!

 

そう力強く言い放つと、ダイナはライザーへ飛びかかった。

 

 

 

 

 

そこからの戦況は完全にダイナへと傾いた。

 

ダイナ「ハッ!ハッ!デェア!」

 

ライザー「ぐはッ!ごはッ!ぐおッ!?」

 

ダイナが繰り出す鋭いパンチやキックの応酬に、ライザーの体はどんどんボロ雑巾の様になっていった。

 

しかも、再生しようとしても再生する前にすぐダイナの攻撃が繰り出されるので、その隙が全く無く、手も足も出ない状況だった。

 

ライザー「くっ!」

 

ライザーは僅かに生まれた攻撃の隙を狙ってダイナの猛攻から脱出し、炎の羽をひろげ、上空へとあがった。

 

ライザー「URYYYYYーーーーッッ!!これでもくらえーーーーッ!!」

 

ライザーは先程よりも巨大な火球をダイナへ投げ飛ばした!

我夢除くリアス達は皆、不安げな表情を浮かべるが

 

ダイナ「ハーーーーーーッ!!デェアッッ!!」

 

ダイナは両腕を下に交差させ、青白いエネルギーを両腕にためると、そのまま前方へ腕を伸ばして放つ三日月形の光のカッター、『フラッシュサイクラー』を火球に向かって放った!

 

ライザー「何ィィィーーーーッ!?俺の全力攻撃をッ!?」

 

フラッシュサイクラーによって火球は綺麗に真っ二つに切断され、切断された火球は、ダイナとは離れた箇所に落ちた。

ライザーが動揺している隙に、ダイナは再びフラッシュサイクラーの構えをし

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ライザー「ぐぁぁぁぁーーーーーーーッッ!!」

 

ドカーーーーン!

 

そのまま放つと、ライザーの胸元に命中し、ライザーはその激痛に耐えきれず、地上へと墜落した。

 

ライザー「はぁ、はぁ…」

 

地上へ墜落したライザーは、切り裂かれた胸元を再生しようとするが

 

ライザー「(な、何だとッ!?再生速度が落ちているッ!このライザーが奴に怯えているだとォォ…!?)」

 

ライザーは再生しようとするが、胸元の傷が中々治らず、明らかに再生速度が落ちていた。

 

彼らフェニックス家の悪魔は圧倒的な再生能力がウリである。

しかし、その再生能力にも弱点がある。それは精神的ダメージをくらうと、再生能力が落ちることである。

 

ライザーはダイナに押されている間、知らず知らずのうちに彼に恐怖して、それにより再生能力が落ちていたのである。

 

ライザーは自身が恐怖を抱いている事に動揺していると、遠くからダイナがゆっくりと歩いてきた。

 

ライザー「ま、待てッ!この婚約は悪魔の未来にとって大事な事なんだぞッ!!転生成り立ての下級悪魔風情がどうこうしていい問題じゃあないんだぞッッ!!」

 

ダイナ「ああ、俺には悪魔の未来がどうとかそんなもんわかんねぇ……。だけどなっ!」

 

ライザーの命乞いを聞き、ダイナは歩みを止めると、腰を下げ

 

ダイナ「()()()()()()()()!だから、2度と涙を流させない様に俺が部長の夢を守る!お前を倒す理由はそれだけだーーーーーーっっ!!」

 

ライザー「!?」

 

ダイナ「シュワッ!!!」

 

ダイナはそう言い放つと、腕を十字に組み、体内からスパークした青白いエネルギーを放出する必殺技、『ソルジェント光線』を放った!

 

ライザー「GYAAAAAAAAAーーーーーーーッッ!!」

 

ドガァァァァーーーーーーンッ!!

 

直撃したライザーの周りにオレンジ色のサークルが描かれると、叫び声と共に、大きな爆発が起きた!

 

 

 

 

 

 

ダイナ「さすがに手加減したけど大丈夫…だよな…?」

 

ダイナは不安な気持ちになったので、生存確認をしようと、ライザーの元へ歩き出すが

 

少女「お待ち下さいっ!」

 

ダイナ「?」

 

ダイナの前に金髪にツイン縦ロールの少女が立ち塞がった。

 

レイヴェル「わっ、私は『レイヴェル・フェニックス』。ライザー・フェニックスの妹です!」

 

ダイナはあぁ言われて見れば似ているなと思いながら、話を続けるレイヴェルを黙って見つめた。

 

レイヴェル「この勝負は兄の負けです!ですから、命だけはどうか…」

 

ダイナ「(生きてるか確認しようかとしただけなのにな…)」

 

ダイナはレイヴェルにそう懇願され、タジタジになった。

 

確かに第3者が見たら、とどめを刺しに行っている様に見える。それにレイヴェルを見ると、体が震えている。

兄をこんなズタボロにした相手に頼むのも勇気がいるだろうし、もうこれ以上戦う意味は無いだろうとダイナは思い、一誠の姿へ戻った。

 

一誠「…お前の兄貴が起きたらこう言っといてくれ。『文句があるならいつでも受けて立つ』ってな!」

 

レイヴェル「…!」

 

一誠はそう言い、ニッと微笑むと、レイヴェルはホッと安堵した表情を浮かべた。

それを見て安心した一誠は悪魔の羽を広げ、リアス達が座っている観客席へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

リアス「イッセー…」

 

一誠が観客席に戻るとリアスを先頭にオカ研メンバーが駆け寄った。

 

一誠「コホン…」

 

一誠は咳払いをし、深呼吸をすると

 

一誠「部長、お迎えに上がりました」

 

一誠は照れ臭そうに言うと、リアスへ右手を差し出した。

 

リアス「ええ…」

 

リアスは嬉しそうに目に涙を浮かべながら、一誠を手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「全く…、無茶し過ぎよ。こんな傷だらけになって…。あの時、ライザーに焼き殺されたかと思ったわ…」

 

一誠「はは…、心配かけさせてすみません。でも、俺は絶対に死にませんよ。だっていつも言ってるじゃないですか…、『俺は不死身のイッセー様』だって」

 

リアス「もう、何が『不死身』よ…」

 

一誠はリアスにそう言われると、苦笑いを浮かべた。

 

あの後、一誠は勝利した報酬にリアスを返してもらった後、サーゼクスが用意したグリフォンに乗って、リアスと一緒に空を飛んでいる。

一誠は木場達も誘ったが、ニヤニヤと笑みを浮かべながら遠慮し、状況が読めない我夢は小猫に引っ張られながら他の皆と一緒に帰っていった為、2人きりである。

 

リアス「貴方のおかげで今回の婚約は破綻になったけど、また別の婚約が来るかもしれないわ…」

 

一誠「そん時は、また俺がぶっ潰してやりますよ!それに…」

 

不安そうな表情を浮かべるリアスに一誠は自信満々に言うと、リアスの目を見つめ

 

一誠「俺、部長の眷属でウルトラマンですから!部長が困ってたらいつでもどこからでも必ず助けに行きます!!」

 

それを聞いた瞬間、リアスは一誠の頬を両手で包み、お互いの唇を重ねた。つまりキスである。

 

一誠「…!///」

 

リアス「…/////」

 

1分近くキスをすると、リアスはイッセーの唇を離し、お互い、頬を赤らめた。

 

リアス「ありがとう、イッセー…//////」

 

一誠「…は、はひ……//////」

 

リアスが満面の笑みを浮かべながら抱きつくと、一誠は頬だけでなく、顔全体を赤らめ、照れながらも言葉を返した。

 

 

 

 

 

 

翌日、リアスは一誠の家にホームステイすることになった。

一誠とその母はまた同居人が増えたことに驚きながらも、リアスを手厚く歓迎した。

 

こうして、兵藤家に新しい住人が増えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、どこかの森にて藤宮が望遠鏡で夜空を眺めていた。

 

藤宮「新たな根源的破滅招来体か…」

 

藤宮の眺めている先には、ワームホールがあり、中から篆書体のような文字が覗かせていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-おまけ-

 

我夢「そういや、一誠が変身したウルトラマンの名前、考えてなかった。どんな名前にするかみんなと考えてきていい?」

 

一誠「名前か…。よし、かっこいいの頼むぜ!」

 

 

 

 

3分後~

 

木場「『ウルトラマンスーパーDX』ってどうかな?」

 

一誠「う~ん…何か違うな」

 

我夢「じゃあ、『ウルトラマンジャイアン』は?」

 

一誠「直球すぎないか?」

 

アーシア「『帰ってきたウルトラマン』ってどうですか?」

 

一誠「ごめんな、アーシア。それだと、後から『二世』とか『ジャック』とか名前を付けられそうな気がするから…」

 

朱乃「うふふ…『ウルトラマン○ョーニアス』はどうですの?結構、誰もが知ってそうな名前になりそうですが…」

 

一誠「朱乃さん、作品が違いますよ!?それにその作品はマイナーってよく言われてますから!!」

 

小猫「…『ウルトラマンバカ』」

 

一誠「小猫ちゃん…。それ、ただの悪口だよ…。あ~~~何かいい名前来ないかなーーーーっ!?」

 

一誠は中々ピンと来る名前が出て来ず、頭を抱えた。

朱乃は先程から考えているリアスへ口を開いた。

 

朱乃「部長、何かいいアイディアはありませんの?」

 

リアス「……!」

 

リアスは深く考えると、何かを思いついたのかガバッと椅子から立ち上がった。

 

リアス「ねえ、『ウルトラマンダイナ』ってどう?」

 

我夢「『ダイナ』?」

 

我夢が疑問を持つとリアスはええ…と頷き

 

リアス「『ダイナ』。『ダイナミック』と『ダイナマイト』をかけたの…。いつも真っ直ぐで熱血なイッセーに相応しいと思うの」

 

リアスの出した名前に他のメンバーは成る程と納得した反応をした。

 

リアス「イッセー、どうかしら?」

 

一誠「おおっ!それ、いいですね!じゃあ、俺のウルトラマンの名前は『ダイナ』で!!」

 

一誠はリアスの出した名前に満足すると、一誠が変身するウルトラマンは『ウルトラマンダイナ』という名前に決まった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

一体こいつは何者だ?
台風?竜巻?それとも…
ガイアとダイナは立ち向かえるのか?

次回、「ハイスクールG×A」!
「地球の洗濯」!
君もワンダーゾーンへトリップだ!










3回目のアンケートの結果、ゴルザとメルバは登場確定致しました!
他に投票されていた怪獣ももしかしたら登場させるかもしれないので、ぜひご期待下さい。

良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第10話「地球の洗濯」

自然コントロールマシーン テンカイ 登場!


ズル…ズルルル…

 

ゴクゴクゴク…

 

我夢「ぷはっ、ごちそう様!」

 

その夜、コンビニから買ってきたラーメンを食べ終えた我夢は合掌すると、レジ袋の中へ容器を入れた。

 

最近のコンビニの食品は科学技術の発達により、ますます美味くなっている。特にこのラーメンは量も多いし、スープの濃さ、麺の固さもほどよくて、絶品なのである。

 

我夢はその美味しさに満足し、次はどれを買おうか考えていると朱乃がニコニコしながら

 

朱乃「あらあら、うふふ…。いい食べっぷりですわ♪食後の紅茶はいかが?」

 

我夢「あ、頂きます」

 

我夢は朱乃にそう返事をすると、朱乃はティーカップ我夢の前に用意し、紅茶を淹れた。

 

ちなみに他のメンバーは現在、不在である。リアスは冥界に戻り、自身の荷物を一誠の家へ移動させる為、一誠はそのお手伝い、その他3人は悪魔契約の仕事と、それぞれ予定が入っており、部室には我夢と朱乃の2人だけだった。

 

我夢「(ああ…美味しいなぁ……)」

 

我夢はその紅茶を飲むと、相変わらずの美味しさに舌が唸った。朱乃が淹れた紅茶は、科学的に分析しても香り、濃さ、旨み、どれをとっても完璧だ、と我夢は思った。

 

朱乃「あの、我夢君?」

 

我夢「はい?」

 

我夢がその紅茶を満足しながら堪能していると、朱乃が疑問の表情を浮かべながら話しかけてきた。

 

朱乃「イッセー君が変身したウルトラマンダイナについてですけど…」

 

我夢「あ、はい。朱乃さんにはまだ説明していなかったですね」

 

我夢はそう言葉を返すと、ティーカップをテーブルの上に置き、ダイナについての説明を始めた。

 

我夢「僕がイッセーから聞いた事なんですが…。あのウルトラマン、ダイナは地球の空から授かった力らしいですよ」

 

朱乃「空?」

 

朱乃が首を傾げて聞き返すと、我夢ははい…と言葉を続け

 

我夢「僕が夢でガイアに会った時の様に、イッセーも夢でダイナに会ったらしいんですよ。はっきりとしたことは分かりませんが、同じウルトラマンとして、ダイナは()()()()()()()だということだけははっきり言えます」

 

朱乃「あらあら、そうだったのですね♪我夢君、ご説明ありがとうございますわ♪」

 

我夢の説明を聞いた朱乃は、ニコニコしながら満足げに我夢へ感謝の言葉を告げると、空といえばと何かを思い出した様子でスマホを取り出し、あるSNSのニュースを我夢に見せた。

そのニュースサイトにはこう書いてあった。

 

『先日、東京のお台場近くの空き地に小型隕石が飛来。幸い死傷者や被害も出ず、事なきを得た。なお、飛来した隕石は駒王円谷研究所に移動され、解析される模様。』

 

我夢「…これがどうしたんですか?隕石が落ちることはそうそう珍しくないですよ?」

 

我夢はそう問うと、朱乃はうふふと微笑むと、別のニュースを我夢に見せた。

 

我夢「これって、最近発生した台風についてのニュースですよね?」

 

朱乃は我夢の問いに頷くと、話を続けた。

 

朱乃「この大型台風は中国から発生したことは我夢君も知っていますね?」

 

我夢「はい」

 

朱乃「先程の隕石が飛来してきたのはちょうどこの台風が発生したのと同じ……。これって関係があると思いません?」

 

朱乃の疑問に我夢は確かに言われてみればと頷いた。

こんな出来事が偶然重なると思えない…。

もしかしたら、新しい根源破滅将来体の前兆かも知れないと我夢は思った。

 

我夢の反応を見た朱乃は1枚の紙を取り出した。

 

朱乃「そこでリアス…、部長から我夢君へ頼みがありますの。この紙に住所が書かれていますから、円谷研究所へ行き、隕石の解析結果を報告してほしいですわ。頼まれてくれます?」

 

我夢「…はい。別にいいですけど、研究機関の関係者でも無い僕に入れるんですか?」

 

リアスの頼みに我夢が首を傾げながら問うと、朱乃は大丈夫ですわ♪と問題なさそうにニコニコしながら答えると

 

朱乃「ここの所長さんは悪魔、特に部長の息がかかっていますから、問題なく入れますわよ♪」

 

我夢「はぁ……わかりました」

 

我夢は人間界でのリアスの人脈の広さに、感服した。

我夢はその頼みに了承すると、レジ袋を持ち、ソファーを立ち上がった。

 

我夢「朱乃さん、それでは行ってきます!」

 

朱乃「うふふ…お気を付けて♪」

 

我夢はペコリとお辞儀すると、扉を開け、円谷研究所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「いやぁ~…まさか我夢と会うとはな…」

 

我夢「うん。僕も驚いたよ」

 

我夢は研究所へ行く道中、引っ越し作業を終え、コンビニで買った揚げ物を歩き食いしていた一誠とバッタリ出会った。

我夢と一誠はお互い、今日は会えないだろうなと思っていたので、尚更驚いたのである。

 

???「我夢…」

 

我夢は一誠と他愛のない話をしていると、自分を呼ぶ声が聞こえた。

我夢は声のした方へ振り向くと、そこには藤宮の姿があった。

 

我夢「ごめん、イッセー。ちょっと待っててくれる?」

 

一誠「あ、おい…」

 

我夢はどうしたんだと聞こうとしていた一誠へそう告げると、藤宮の方へ走っていった。

 

一誠「…?誰だ、アイツ?」

 

一誠は我夢が向かっている先にいる藤宮の姿を見つけると、自身が知らない人物であることに首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

我夢「藤宮?」

 

藤宮「我夢。少しは気が変わったかと思ったら、君はまだあんな仲良しグループに居るのか……」

 

おどろおどろしく話しかけてくる我夢に、藤宮はため息をつくと、冷ややかな眼差しで見つめた。

 

我夢「君こそ、どうして僕らの前に姿を現さないんだ?僕達と一緒に地球を救う手助けを――」

 

藤宮「我夢、目の前の敵を倒すだけじゃ駄目なんだよ」

 

藤宮は自身の言葉で我夢の話を遮ると、そのまま続け

 

藤宮「強欲で、自身の利益の為だけに生きている悪魔や人類に何故、加担する?もっと自分の力を有効に使うべきだよ…」

 

我夢「……」

 

我夢は藤宮の意見に言葉が出なくなった。それは我夢も間違っていないと、心で思ったからである。

藤宮はそんな我夢の肩をポンと叩くと

 

藤宮「早く目を覚ましなよ…。それに、そこにいる『3人目』の彼にもね……」

 

我夢の耳元にそう呟くと、歩き去っていった。

我夢は振り返るが、すでに藤宮の姿は無かった。

 

一誠「我夢!」

 

我夢「イッセー…」

 

我夢は困惑した表情で佇んでいると、待っていた一誠が走り寄ってきた。

 

一誠「どうしたんだよ?そんな困った顔して…。アイツに何かされたのか?」

 

我夢「いや、何もされてないさ…。イッセー」

 

一誠「ん?何だよ」

 

心配そうに尋ねてくる我夢は力弱く笑うと、再び困惑した表情を浮かべると

 

我夢「…僕達は、何故地球からウルトラマンの力を授かったんだろう?僕達はこの地球や悪魔、生きている全ての人類の為を思って、今まで戦ってきたけど、それは正しい力の使い方…なのかな…?」

 

我夢の疑問に一誠はそうだな…と顎に手を当てながらしばらく考えると、ハハッと笑いだした。

 

一誠「我夢、俺たちがやっていることは正しいかどうかわかんねぇ。でもな、誰かを救いたい、誰かを守りたい。それだけじゃ駄目なのか?」

 

我夢「……」

 

それでも考え込む我夢に一誠はニコッと微笑むと、肩をポンポンと叩き

 

一誠「まぁ、複雑なことは俺は知らん。『理由はこれから見つけていく』って、お前が言ってたじゃないか。いつかきっと見つかるから、俺達が今やれることを精一杯やろうぜ?」

 

我夢「…!そうだね」

 

我夢はそれを聞いて頷くと、一誠は早く部長のお使い終わらせようぜ!と我夢に言い、2人は円谷研究所へ歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円谷研究所に着いた2人は早速、受付係に『グレモリーの使いで来た』と伝えると、すぐに所長がいる研究室へと案内された。

 

所長「いやはや…よくおいでくださった。」

 

2人は案内された研究室に入ると、40代前半の優しげな雰囲気を持つ男性が2人を歓迎した。

歓迎を受けた2人はよろしくお願いしますと挨拶すると、所長は2人を隕石が置いてあるデスクまで案内を始めた。

 

所長「ここは軍や政府お墨付きの研究室でね…、未知の物質を解明させる為に存在しているんだ。悪魔の方、特に君たちの主のリアスさんにはいつもお世話になっていてね…。私達の研究に感心なさってね……。彼女の資金援助にとても感謝しているよ」

 

我夢「へーー、そうだったんですね!」

 

一誠「おわっ、確かにこれはすごいな~~…」

 

所長の話に2人は興味津々になりながらついていくと、件の飛来した隕石が置いてあるデスクについた。

所長はさて…と呟くと、隣に置いてあった報告書を手に持ち、解析結果を話し始めた。

 

1つは飛来した隕石は地球のものでないこと。

この隕石に含まれている物質の成分は、現在存在している物質のどれにも当てはまらない未知の物質であった。かといって焼け焦げた跡が無いので、宇宙から飛来したものでないということも判明した。

 

そしてもう1つは人工物であること。とても分かり辛いが隕石の赤い浮き出ている部分が青い石へ溶接した様な小さな焦げ跡が見つかった。

 

一誠「宇宙から来た訳でもない、地球のものでもない……。ううん?」

 

一誠は隕石の解析結果に疑問符を浮かべた。

我夢は朱乃から言われたことを思いだし、まさか…!と呟いた。

 

我夢「もしかして、今起きている台風から落ちてきたんじゃ…!?」

 

所長「…!?」

 

一誠「こいつが?そんなこと有り得るのか?」

 

我夢は首を傾げている2人に頷くと、話を続け

 

我夢「ここに来る前、朱乃さんに聞いたんだ。『隕石が飛来してきたのはちょうどこの台風が発生したのと同じ』だって。もし、その予測が合っていれば…」

 

2人にそう言うと、我夢は紙に描かれた魔方陣からノートパソコンを取り出した。

 

我夢「気象衛星からの観測データ(ハッキングして入手)と…この隕石の飛来時刻の予測数値を合致させると……」

 

我夢は2つのデータを合致させると、画面にある文字が浮かんだ。

 

所長「こんなことが…!?」

 

一誠「うそだろ…!?」

 

我夢「やっぱり、部長と朱乃さんの予想通りだった!」

 

そのパソコンの画面には、『These matched(一致した)』と表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「…以上が解析結果と僕の推測です」

 

翌日、我夢は早速部室にてリアスに報告した。

 

リアス「そう…。ご苦労様」

 

リアスは我夢と一誠にニコッと微笑みかけると、現在発生している台風の写真を数枚、テーブルの上に置いた。

 

リアス「これが台風の写真よ…。私の使い魔に頼んで、撮ってきてもらったの。それで、この台風には()()()()()()()があるの……」

 

一誠「おかしいところ…?」

 

リアス「ええ、これを見てもらいたいの」

 

リアスは数枚ある写真から1枚手に取ると、皆に見せた。

 

木場「これって、『台風の目』…ですよね?」

 

アーシア「『台風の目』?」

 

木場の言葉に疑問符を浮かべるアーシアを見かねて、我夢は説明した。

 

我夢「アーシア。台風の中心には、渦の遠心力の働きで風の穏やかな場所が円筒形にできるんだよ。その円筒形を空から見たら、台風に目が付いていように見える。それが『台風の目』って言われているんだよ」

 

アーシア「あっ、そうですね!確かによく見たらお目目の様に見えますね!我夢さん、ありがとうございます」

 

我夢「あ、いいよいいよ!」

 

小猫「…む」

 

お礼を言ってきたアーシアに我夢は少し照れながら答えた。

それを見ていた小猫は、どこか面白く無さそうな表情を浮かべた。

 

一誠「それで、その『台風の目』の何処がおかしいんです?」

 

リアス「ええ、ここを見てほしいの……」

 

一誠の質問に、リアスは台風の目の中心を指した。

 

リアス「普通、『台風の目』の中心は青空が見えるの。でも、この台風の目は下の方が暗闇に閉ざされているわ」

 

一誠「言われてみれば…」

 

木場「うん…」

 

小猫「…暗い」

 

そう言われた我夢除く、他のメンバーは写真をよく見ると、それぞれ同感の言葉をもらした。

 

リアス「しかも、すぐに現地調査してくれた我夢が取ってきてくれた台風のデータによると、台風の中心には何かが潜んでいることがわかったわ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その事実に全員は驚愕した。

 

一誠「…!何者かが台風を作っているってことなんですか!?」

 

リアスは驚いている一誠に頷くと、我夢が説明を引き継いだ。

 

我夢「しかも、この台風が通った大気は、メタンやフロンといった有害物質が急激に減少していたんだ」

 

一誠「えっ…、つまり…?」

 

我夢「このまま台風が続くことを想定すると、半年で地上の大気が浄化される」

 

木場「じゃあ、このまま何もしなくても大丈夫なんじゃないのかい?」

 

そう言う木場に我夢は首を横に振った。

 

我夢「…一見、放置してもいいかも知れないけど、このままだと最終的に地球上の酸素濃度が高くなり、全ての生命が酸素中毒で死滅してしまう……。恐らく、この台風を作った張本人は地球上にある全てのものを浄化させようとしているんだ」

 

木場「地球の大気を浄化する……。さしずめ、『地球の洗濯機』と言ったところだね…」

 

我夢の説明に木場は頷きながらそう呟いた。

そして、リアスは椅子から立ち上がり

 

リアス「今、この台風が急に駒王町へ進路を変えたわ。このまま私の領地をめちゃくちゃにされてたまるもんですか……!我夢、イッセー。至急、この台風を生み出す存在の迎撃を頼むわ!」

 

我夢&一誠「「はい(ラジャー)!!」」

 

そう命令すると、我夢と一誠は力強く返事し、リアスが用意した魔方陣に乗り、転移した。

 

リアス「(頼むわよ…2人共……)」

 

リアスは2人が転移した魔方陣を見つめながら願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢と一誠は転送されると、すぐさま、近くで暴れる台風に視線を向けた。

 

一誠「よっしゃ!いっちょ、やってやるぜ!」

 

一誠はやる気に満ちた表情で変身しようとするが

 

我夢「待って、その前に渡したいものがある」

 

一誠「ん?何だよ?」

 

我夢はそう言って制止すると、懐から金属部分が上にあり、その下にはダイナの顔が彫られた長方形の物体を取り出した。

それを見た瞬間、一誠は嬉しげな表情を浮かべた。

 

一誠「おお!俺が頼んでたやつ、出来たのか!!」

 

我夢「うん、その名も『リーフラッシャー』!君のデザインを基に作成したんだ。中々時間がかかったけど、完成度は期待していい。はい」

 

一誠「おう、サンキュー!」

 

一誠は我夢からそれを受けとると、体から黄色い光を出し、リーフラッシャーの中へと入っていった。

 

我夢「まず、僕が台風の目から敵を攻撃し、活動を中断させる。イッセーは地上で待機して、敵が正体を現したら戦ってほしいんだ。僕も合流するから」

 

一誠「ラジャー!」

 

我夢は一誠の返事を聞くと、エスプレンダーを取り出し

 

我夢「ガイア!

 

その掛け声と共に赤い光に包まれ、ガイアへと変身し、上空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

ガイア「デュワッ!グアァァァ………!」

 

台風の目の真上に到達したガイアは、腕をT字に組んでエネルギーを溜めると

 

ガイア「デュワァァァァーーーーーー!!」

 

右腕の関節に左手を乗せ、クァンタムストリームを台風の目に目掛けて発射した。

 

すると、中にいる敵に命中したのか台風は急激に静まった。

そして、雲が晴れると

 

ガイア「!?」

 

一誠「!!」

 

???「……」

 

そこには銅鐸の様な姿をし、篆書体みたいな文字が刻まれた謎の機械が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

リアス「…!何なのあの機械は…!?」

 

一誠にこっそりついてきていたハネジローの目を通し、モニターで様子を見ていたリアス達は銅鐸の様な機械の姿を見て、驚愕に包まれていた。

そんな中、朱乃が機械に描かれているのを見ると

 

朱乃「…天…界……?」

 

小猫「…てん?」

 

アーシア「…かい?」

 

疑問符を浮かべながら顔を向ける一同に朱乃は頷き

 

朱乃「天上の世界…、『天界』」

 

一同にそう説明すると、リアスは疑問の表情を浮かべ

 

リアス「朱乃、貴女には読めるの…?」

 

リアスがそう聞くと、朱乃は首を横に振った。

そして続ける様に口を開き

 

朱乃「いえ、何となく篆書体に似ている気がしまして♪」

 

ニコニコしながらそう答えると、一同は再びモニターに映る銅鐸の機械改め、「テンカイ」の姿を見た。

 

 

 

 

 

 

ガイアはよく見たら、テンカイの文字が欠けている事に気付いた。

 

ガイア「(そうか、あの隕石は()()()()()()だったのか!)」

 

そう、回収されたあの隕石はテンカイの破片だったのである。

 

テンカイはひっくり返りながら地上に降り立った。

 

テンカイ「フォォォン……」

 

テンカイはクジラの様な声を発しながら逆さの状態で風を起こし、近くにある家屋を吹き飛ばした。

 

一誠「洗濯の次は掃除か……!」

 

地上で待機していた一誠はそう呟くとリーフラッシャーを斜めにすると

 

一誠「ダイナァァーーーー!!

 

その掛け声を発しながら前へつきだすと、金属部分が展開し、それに付いているクリスタルが白く光り輝くと、一誠は光に包まれ、ウルトラマンダイナへと変身した。

 

ダイナ「フッ!」

 

ハネジロー「パムゥ♪」

 

主人であるダイナ―――一誠の勇姿を見たハネジローは嬉しそうに鳴いた。

 

ダイナ「ハッ、デェアッ!」

 

ダイナはすぐさまテンカイ目掛けて飛び蹴りをくらわせた。

 

テンカイ「フォォォン……」

 

それを受けたテンカイは破壊活動を中断され、大きく後退した。

 

ダイナ「ハァァァァーー!!」

 

ダイナは一気に攻めてやると決め、テンカイに向かって走ったが

 

ブオォォォォ……!

 

ダイナ「!?」

 

テンカイは回転させて突風を起こし、目眩ましをした。ダイナは突然目眩ましされ、気をとられていると

 

テンカイ「フォォォン……!」

 

ダイナ「グァッ!!」

 

ダイナはテンカイの体当たりを思い切り受け、後ろへ吹き飛ばされた。

 

ダイナはこの野郎…と思いながら立ち上がるが

 

テンカイ「フォォォン…」

 

ブオォォォォ……!

 

ダイナ「グァッァァァァー!!」

 

テンカイは追い討ちとばかりに突風を起こし、ダイナは再び吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がされた。

モニターから見ていたリアス達は不安になるが

 

ガイア「ダァァァァーーー!!」

 

テンカイ「!」

 

ガイアが空から急降下しながらテンカイに蹴りを喰らわし、タービン部分を破壊した!

 

ガイア「グアァァァ……、デュワァッ!!」

 

ドォォォーーーン!!

 

着地した瞬間、更にガイアはテンカイを持ち上げ、思いっきり前方へ投げ飛ばした!それを喰らったテンカイは、激しい衝撃音と共に後方の地面へ叩き落とされた。

 

ガイア「大丈夫?」

 

ガイアはダイナに駆け寄り、手を差し出した。

 

ダイナ「ああ、助かったぜ!ありがとな!」

 

ダイナは差し出された手を力強く取り、その手を借りて、立ち上がった。

 

テンカイ「フォォォン…」

 

ガイア「…!デュワ!」

 

ダイナ「…!デェアッ!」

 

2人はテンカイが立ち上がった事に気付くと、それぞれのファイティングポーズを取った。

 

ブオォォォォ……!

 

テンカイは2人に目掛けて突風を起こした。

突風は土煙をおこしながら2人に迫ってくるが

 

ダイナ「ハッ!」

 

ダイナは両手を広げ、円形状の光の壁、「ウルトラバリヤー」で突風を防いだ。

テンカイはこれ以上突風を出しても無駄だと思い、攻撃を止めた。

 

テンカイ「?」

 

テンカイは土煙が晴れると、ガイアがいないことに気付いた。

その瞬間!

 

ガイア「デュワァァァァーーー!!」

 

真下の地面からガイアがドリルの様にスピン回転しながら現れ、テンカイを下から貫いた!

 

ガイアは空から取り出したコアをテンカイに投げつけた。

 

ガイア「ダイナ、今だ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ダイナはガイアに頷くと、テンカイに向けてソルジェント光線を放った。

光線を受けたテンカイの周りにオレンジ色のサークルが描かれると

 

ドガガガァァァァーーーーーーン!!

 

激しい爆発音と共に、爆発四散した!

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「ジョワッ!」

 

ダイナとガイアは両手を広げると、そのままどこか遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「お疲れ様、2人共。よくやったわ」

 

我夢「はい、ありがとうございます」

 

一誠「部長、見てましたか?俺達の見事な連携!」

 

リアス「ええ、見てたわよ。さすがね!」

 

一誠「でしょ!?」

 

我夢「はは…」

 

その日の夕刻、リアス、我夢、一誠の3人は部室で沈みゆく夕陽を眺めていた。

リアスに自分達の連携を誉められ、一誠は満面な笑みを浮かべた。

我夢はその様子をクスッと笑い、夕陽へ視線を向け

 

我夢「それにしても夕陽が綺麗ですね~」

 

長かった様な1日も沈みゆく夕陽と共に終わりを告げる(といっても悪魔は夜が主な活動なので、これが1日の始まりと言えるが…)と感傷に浸った。

すると、リアスは我夢に視線を向け

 

リアス「我夢、テンカイは何の為に地球を浄化してたの?」

 

そう問うと、我夢は推測ですが…と呟き

 

我夢「侵略者が食料、もしくは種を植える為だと僕は思います。その為に、地球上にある建物や生き物をまとめて掃除するつもりだったんではと…」

 

我夢の意見にリアスと一誠は真剣な眼差しで一言一句聞き逃さず、頷いた。

そして、リアスは夕陽を眺め、口を開いた。

 

リアス「私はテンカイが地球を浄化していると聞いた時、貴方が反対すると思ったわ」

 

我夢「え…?」

 

突然言われた事に戸惑っている我夢をよそにリアスは言葉を続け

 

リアス「貴方にはあの機械を作った存在の気持ちが分かるんじゃないかと。例え人類が犠牲になったとしても、環境が戻った方が地球の為になるとね…」

 

我夢「それは…」

 

リアス「違うの?」

 

リアスは我夢を真っ直ぐ見つめながら問うが、我夢はそれ以上答えることが出来ず、ただ立ち尽くすばかりだった……。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

???「来る…」

ダムに川に、カンブリア紀の怪獣達が蘇る…。
これが地球の答えなのか…?

次回、「ハイスクールG×A」
「46億年の亡霊」
君には奴が見えるか?








良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第11話「46億年の亡霊」

超空間共生怪獣 アネモス
超空間共生怪獣 クラブガン 登場!


その日の朝、駒王町から少し離れた場所に位置するダムにて、作業員達がいつもの様に仕事をしようとするが

 

ミィヤォォォォオン…

 

不気味な鳴き声が聞こえ、全員が見上げると、イソギンチャクの様な触手を持つ芋虫みたいな巨大生物がうねうねと身体を揺らしていた。

 

作業員A「うわっ!!」

 

作業員B「でででで出たァァァァーー!!」

 

それを見た作業員達はパニックになって、一斉に逃げ出した!

その混乱の中、慌てた作業員の1人がスマホから電話をかけた。

 

作業員C「も、もしもし!?自衛隊ですかっ!?か、かかか……怪獣が出ましたーーーーっ!」

 

その連絡から数分後、ダム周辺は自衛隊と警察による厳重な取り締まりで封鎖された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、駒王学園は丁度昼休みの時間に入っていた。

我夢はいつもの様に、一誠、松田、元浜の3人と机を囲んで昼食を摂っていた。

 

我夢「ダム周辺が緊急封鎖?」

 

我夢は飲んでいたオロ○ミンCを机に置き、元浜へ聞き返していた。

 

元浜「ああ…。科学薬品を運んでいたトラックが事故を起こして、ダム周辺にその薬品が漏れたらしい。問題はその薬品に含まれている毒性の科学物質さ。その毒が蔓延しないように封鎖しているそうだ」

 

我夢「へえ~…」

 

松田「そりゃ大変だな」

 

一誠「コクッ」

 

元浜の説明に我夢と松田、一誠は頷いた。

 

一誠「お前がこんな真面目な話題を持ち出すなんて珍しいな?何かおかしい点でもあんのか?」

 

元浜「よくぞ聞いてくれたっ!!()()()()()()()()!」

 

一誠「裏切り者って…」

 

一誠の疑問に元浜は眼鏡をキランと輝かせながら、前のめりに一誠へ指を指した。

一誠は元浜の裏切り者という言葉にため息をついた。

 

実はライザーとの一件後、一誠は女子生徒に対するわいせつ行為、発言を一切しなくなり、我夢と一緒に変態行動を起こす松田、元浜を取り締まる様になった。

本人曰く、「新しい夢を見つけた」ということで、過去の未練が吹っ切れたそうだ。

その夢は、「リアスや仲間、生きている皆の夢を守る」という内容で、この場では我夢しか知らない。この事を知らない松田と元浜に当然反感を買っている訳である。

 

村岡「見て見て…またあのエロ眼鏡が吠えてる…」

 

片瀬「兵藤は改心したのに、あの2人は…。本当に嫌ね~……」

 

その様子を半目で見ていた村岡と片瀬は、元浜達に聞こえるか聞こえない声で、ヒソヒソと話していた。

 

女子生徒の間では、一誠の評判は良くなっている。

最近の一誠の行動に女子生徒達は最初は怪しがっていたが、段々と彼の本気が伝わり、元からの顔の良さもあいまって、今どきいない「熱血系イケメン」と、我夢と並んで密かに人気なのである。

 

松田&元浜「「ううう……」」

 

一誠「おっ、おい…」

 

我夢「えぇ……」

 

女子のヒソヒソ声が聞こえたのか、元浜と松田は泣き出した。どうやら、一誠が密かにモテ始めた事がかなりの精神的ダメージだったらしく、我夢と一誠は戸惑いながら、その様子を眺めるしかなかった。

 

 

 

 

 

松田と元浜はひとしきり泣くと、我夢に差し出されたハンカチで2人仲良く涙を拭いた。

 

一誠「それで、何がおかしいんだよ?」

 

一誠がダムの話題についての疑問を問うと、元浜は眼鏡をかけ直し、話そうとしたとき

 

???「()()()()()()()()()()という事でしょ?」

 

突然、元浜の後ろから少女の声が聞こえた。

4人は声のした方を向くと、眼鏡をかけた三つ編みの少女、「桐生 愛華(きりゅう あいか)」が立っていた。

彼女はこの学園1の情報通として有名である。

 

元浜「何だよ、桐生。俺が説明しようと―――」

 

愛華「うるさいわね、()()()()

 

元浜「うぐっ!?」

 

元浜はそう言われた瞬間、打ちひしがれた様な表情になり、自身の股関を手で隠しながら倒れた。

 

松田「元浜ぁぁーー!!」

 

その一部始終を見た松田の悲鳴が教室中に響いた。

 

愛華は情報通だけでなく、眼鏡を通して見ることで男のシンボルを数値化できる妙な特技を持っている。

そんな特技を持っていることから、男女問わず「匠」と呼ばれ、尊敬または畏怖の存在とされているのだ。

 

我夢「それで…警備のどこかおかしいの?」

 

我夢はそんな2人をよそに愛華へ質問した。

すると、愛華はふふふ…と少し不気味な笑みを浮かべながら、スマホを取り出し、1枚の画像を我夢達に見せながら疑問点を話し始めた。

 

愛華「普通、毒性の薬品が漏れたくらいの騒ぎなら、警察だけで取り締まれば充分よ。でも、今回の事故の警備は武装した自衛隊もいるのよ?しかも、かなり厳重に……」

 

愛華の疑問に我夢と一誠は確かにおかしいと呟きながら、頷いた。

愛華は更に言葉を続け

 

愛華「まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。近くを通った人の話では、お化けみたいに透けた巨大な『何か』が見えたらしいわよ」

 

我夢&一誠「「!」」

 

我夢と一誠はそれを聞いた瞬間、「怪獣」という言葉が浮かんだ。幽霊の様な怪獣は「ガンQ」という前例があるので、我夢達は全く疑問に思わなかった。

そんな事を思っていると、愛華はまぁ、噂だけどね…と呟きながらスマホをしまった。

 

愛華「信憑性がないし、そんな難しい顔しなくてもいいわよ」

 

我夢「え…そんな顔してた?」

 

愛華「してたわよ~」

 

我夢と一誠はハッとした表情で、自身の顔をペタペタ触りながら問うと、愛華はニヤリと笑みを浮かべながら言葉を続け

 

愛華「そこの2人(松田と元浜)もだけど、もうすぐで昼休み終わるし、早く食べ終わらないと間に合わないわよ~。それじゃ」

 

一誠「あ、あと5分しかねぇ!」

 

我夢「えぇ!?」

 

愛華「それじゃあね~」

 

愛華はあわてふためいている我夢と一誠をよそにそう言うと、自分の席へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ううう…」

 

木場「大丈夫かい?」

 

放課後、ソファーに座っている我夢は苦しそうに唸りながら木場に背中をさすられていた。

あの後、我夢達は何とか5分以内に昼食を食べ終わった。しかし、次の時間が急遽体育に変更になった為、胃の消化を終えてない我夢達、特に運動が苦手な我夢にとってはいつも以上の苦痛だった。

悪魔は体が丈夫でも、胃袋までは人間と変わらないのだ。

 

木場は我夢をさすり続けながら、正面でいつもの様に座り、楽しそうにアーシアと会話している一誠へ視線を向けた。

 

木場「イッセー君も同じ時間に食べ終わっていたのに、何であんだけ元気なんだろうね?」

 

我夢「あいつの胃袋が異常なだけだよ…」

 

木場「はは…」

 

木場は我夢にそう答えられると、苦笑いを浮かべた。

 

そんなこんなでしばらく会話していると、リアスと朱乃、小猫がきた。

 

リアス「4人共、待たせたわね…って我夢?貴方大丈夫なの?」

 

我夢「な、何とか…」

 

心配そうな表情を浮かべるリアスに我夢は腹を抑え、ぎこちない笑顔で答えた。

 

リアス「そ、そう…無理しないでね」

 

リアスは心配そうに言うと、部長席へ歩いていった。

我夢は未だに襲ってくる腹痛に耐えていると、隣に小猫が座ってき、カバンの中から小さな箱を取り出した。

 

小猫「先輩、良かったらこれ……」

 

小猫は取り出したその箱を我夢へ差し出した。それは市販の腹痛薬だった。

 

我夢「はは…ありがとう」

 

我夢は力なく笑いながら腹痛薬を受け取り、すぐにそれを2粒程飲み込んだ。

そんなやりとりをしていると、リアスが部長席に座った瞬間、先程わいわいと話し合っていた部員達も一斉に静かになった。

静寂の中、リアスは口を開き

 

リアス「みんな、部活を始める前に今朝のトラックの事故を知ってるわね?」

 

その話題に部員達は頷いた。

 

リアス「表向きではトラックの転倒で毒薬が漏れたってことになってるけど、やけに警備が堅かったりと妙なの。そこで今日はその件に関しての依頼が山程きているから、私達で調査しようと思うの」

 

リアスは今回の活動内容を伝えると、1枚の写真を取り出した。

 

リアス「これはダム近辺を使い魔に撮らせた写真なんだけど…封鎖の原因はこの怪獣の影響ね……」

 

その写真には今朝、ダム近くに現れたあの芋虫の様な怪獣の姿が写っていた。

その写真を見た部員達は我夢と一誠と同じ事を思っていたのか、やはりといった表情を浮かべた。

 

リアス「我夢。この怪獣の解析を任せたいんだけど―――」

 

リアスが我夢にそう頼もうとしたとき

 

ティロン♪

 

朱乃「あら?」

 

一誠「お」

 

我夢「あっ」

 

突然、我夢のズボンからメールの着信音が部室に鳴り響いた。

我夢はすみません、と申し訳ない表情でリアス達に謝りながら受信されたメールを見た。

 

我夢「(ん?)」

 

そのメールを見た瞬間、懐かしさと疑問が入り混じった表情を浮かべた。

メールにはこう書いてあった。

 

 

『近づいてはいけない

意識してはいけない』

 

 

我夢は見終わるとすぐにスマホをズボンにしまい、自身の荷物をカバンに積め始めた。

 

リアス「我夢、どうしたの?」

 

我夢「すみません、部長。今回の件で心当たりがある場所を思い出して!失礼します!」

 

一誠「あ、おい…」

 

我夢はそうオカ研メンバーにそう言い終えると同時にカバンを手に、部室から飛び出していった。

 

リアス「……どうして私の兵士は部室を飛び出したがるのかしら……?」

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪」

 

我夢が飛び出していった扉を見つめているリアスの呟きに、朱乃はいつもの様にニコニコしながら微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、我夢は駒王ダムから少し離れた場所の山道を歩いていた。

 

ゴツゴツとした路面をどこかの場所への記憶を辿りながら休まず、かれこれ3()0()()()()()()()()()()、歩き続けている。

普通の人間ならとっくに呼吸をきらしているだろうが、我夢は悪魔に転生したことに加え、記憶に新しいライザーとの戦いに備えた特訓で身体能力が常人よりはるかに高くなっているのだ。

 

我夢「ふぅ」

 

これも悪魔に転生した賜物だと思いながら山道を登っていると、研究所のような建物が見えてきた。我夢は一気に入口から700メートルぐらいの地点までかけあがった。

 

我夢「(久し振りだな…)」

 

我夢が受け取ったメールの差出人は彼の旧友からだったのだ。その旧友から久し振りに連絡が来たこともあり、どぎまぎしながら進もうとすると

 

ガンッ!

 

我夢「いてっ!?」

 

見えない透明のバリアに阻まれ、思い切り顔をぶつけた。

 

我夢「~~っ!」

 

女性「?」

 

我夢はぶつけた痛みに悶えていると、研究所の入口から白衣を着た20代半ばのロングヘアーの女性が出てきた。

その女性は不可思議な顔を浮かべていたが、我夢の顔を見た途端、満面の笑みに変わった。

 

女性「あら、我夢じゃない!久し振り~~!」

 

我夢「や、やあ、未来(みく)。久し振り…とりあえずこのバリアをどけてくれないか?」

 

我夢は旧友の古代生物学者、『浅野 未来(あさの みく)』に合掌しながら頼んだが

 

未来「駄目よ」

 

未来は先程の笑顔から一変。不機嫌そうな顔に変わり、あっさりと我夢の頼みを断った。

 

我夢「そんな…何で?」

 

未来「ダム周辺に現れた生物について聞きに来たんでしょ?まぁ…、その顔を見ると考えてはいたそうね。我夢は昔から疑問があったら首をつっこむものね…」

 

我夢はそれを聞き、ダムの封鎖はやっぱりあの怪獣が絡んでいると心の中で思った。

未来は言葉を続け

 

未来「それを聞いてどうするつもり?貴方も自衛隊(かれら)みたいにあの子を消した方がいいと?それに私の警告が届いている筈よ。我夢、貴方も例外じゃないの」

 

未来はそう淡々と告げ、研究所の中へ戻ろうとするが

 

我夢「待って!」

 

未来「?」

 

我夢に呼び止められ、未来はまだ何かあるの?といった顔で歩を止め、我夢を見つめた。

我夢は真剣な表情になり、たて続けに口を開いた。

 

我夢「確かに僕もその事については気になるし、もし害を及ぼす怪獣だったら倒した方がいいのは間違ってないとも考えてるさ!でも、その生物が何なのか知りたいんだ!君は僕に警告するのと同時に理解してほしいからメールを送ってきたんだろう?頼むよ、未来!!」

 

未来「……」

 

我夢は必死に頭を下げながら、未来に頼んだ。

未来はしばらく黙りこんでいると、我夢の熱意に負けたのか、やれやれといった感じで肩をすくめ、白衣のポケットから取り出したリモコンのボタンを押し、バリアを解除した。

 

未来「はぁ、負けたわよ。ついてきて」

 

我夢「…!ありがとう」

 

我夢は笑顔を浮かべると、未来と一緒に研究所の中へ入っていった。

 

我夢「何を知ってるんだい、あいつについて?」

 

研究室に向かう道中に我夢はそう問うと

 

未来「よく言うでしょ。浮かばれない幽霊って自分を意識してくれる人のところに出るって」

 

我夢「幽霊?あいつが…」

 

未来は前を向いたまま歩みを止めずに答えた。

その言葉から、我夢はガンQの様な不条理の塊なのかと考えていると、いつの間にか研究室に着いた。

 

未来「さぁ、入って」

 

我夢「うん」

 

未来は扉を開け、我夢を中へ招き入れた。

研究室の中は古代生物の化石やそれに関する図鑑、様々な実験器具が縦横無尽に置かれていた。

 

未来「まずはこれを見て」

 

研究室を見渡していていた我夢は未来に呼ばれ、机に置かれている小さな化石を見た。

我夢はそれを見た瞬間、目を丸くした。

 

我夢「…!これって…」

 

その小さな化石には、小さいながらもダム近くに現れたあの巨大生物と全く同じ姿だった。

我夢は驚きの声を漏らすと、未来は頷き

 

未来「うん。これは古代カンブリア紀に存在し、絶滅した生物、『アネモス』の化石よ」

 

それから未来は我夢に語り始めた。

アネモスの化石は自身が3年前に発掘したこと。

アネモスは今から46億年前の地球に生息していたこと。

必死に生き残ろうとしたが、結局絶滅したこと。

そして、現代に現れたアネモスは「生物」なのでなく、「幽霊」―――即ち、残留思念が物質化した存在だと言うことを。

 

我夢「つまり、あのアネモスは僕達に認知する為だけに存在する『幽霊』みたいなものってことかな?」

 

未来「ええ…、だから彼らを意識させないようにメールを自衛隊や我夢に送ったのよ…」

 

説明を一通り聞いた我夢の解釈に未来は頷き、そう答えた。

我夢は何で現代に現れたのだろうかと考えていると、恐ろしい事に気付いた。

 

我夢「(…!もしかして、このまま多くの人に認知されると、本当に目覚めるんじゃ!?)」

 

それに気付いた我夢は急いでスマホを取り出し、リアス達へ調査をやめるようという事と、ダム近辺に人を立ち寄らせないようにしてほしいという事を連絡した。

 

ピッ!

 

我夢「(これで、何も起きないといいけど…)」

 

連絡を終えた我夢は一抹の不安を感じながら、スマホを閉じた。

しかし、その不安は的中することをまだ我夢は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、藤宮は薄暗い部屋の中でチェストプレスという大胸筋や三角筋を鍛えるマシンで汗だくになりながらトレーニングしていた。

 

藤宮「…ふっ!」

 

藤宮は筋トレを終えると、近くのデスクに置かれている飲料水をとり、グイッと口の中へ流しこんだ。

 

藤宮「…ふぅ」

 

藤宮は飲み終えると机に戻し、その隣に置いてあったタオルで額を流れる汗を拭いた。

 

藤宮「……地球の生物を滅ぼす権利を果たして人類が持っているのか?我夢、兵藤…」

 

藤宮は、壁に貼られているガイアとダイナについての話題が書いてある新聞のスクラップを見ながら呟くと、再びトレーニングを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、我夢からアネモスの事を聞き、調査をやめる進言

されたリアス達、オカルト研究部はダム近辺に人が近寄らせない為の作戦会議をしていた。

 

リアス「祐斗とイッセーはBエリアを。私はアーシアとAエリアで取り締まるから、朱乃と小猫はこのCエリアを頼むわ」

 

木場「はい」

 

一誠「ラジャー!」

 

アーシア「はいっ!」

 

朱乃「うふふ…わかりましたわ♪」

 

小猫「…了解です」

 

リアスの指示に各々が返事した。

リアスは全員の顔を見ると、

 

リアス「いい、皆?とりあえず、ほとぼりが冷めるまで警戒を怠らないで。もし、我夢の言う通りにアネモスが本当の意味で復活したら、恐ろしい事になると思うの…。絶対に何人も通しちゃ駄目よ」

 

リアスの言葉に部員達は頷くと、さっそく指定されたエリアへ移動する魔方陣の準備をするが

 

木場「…!部長、待ってください!!大変です!」

 

木場は何気なくスマホを開くと、目を丸くし、思わずリアスを呼び止めた。

 

リアス「どうしたの?祐斗」

 

一誠「どうしたんだよ?」

 

木場「これを…」

 

リアス「!!」

 

一誠「うそだろ…、おい」

 

リアスと一誠は首を傾げながら木場のスマホを見ると、驚きの表情を浮かべた。

そこには、KCBの生中継映像に映るアネモスの姿があった。

 

木場「おそらく、警備を掻い潜ってきたんでしょうね……」

 

一誠「くそっ!何てことしやがんだ!!」

 

木場と一誠はその生中継映像を苦虫を噛み潰した様な表情で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、未来の研究室で何気なくテレビを点けた我夢と未来も驚いていた。

 

未来「……アネモス!?」

 

我夢「そんな…何で…?」

 

我夢はどうして厳重な取り締まりがしてあるのに、KCBがアネモスを撮影できてるのかと困惑していた。

すると

 

ミィヤォォォオン……!

 

我夢&未来「「!?」」

 

不気味な鳴き声がテレビから部屋中、それどころか山中に鳴り響いた。

その声に不気味に思いながら我夢はテレビを見ると、アネモスは体中に空いている穴から紫色の体液を飛ばし始めた。

 

我夢「一体…、何をしてるんだ?」

 

我夢はその行動に疑問しか浮かばなかった。

そう思っている内に、その体液の多くは近くの川に落ち、紫色へどんどん染め上げながら流していった。

 

未来「もしかして、警報フェロモン?」

 

我夢「警報フェロモン?」

 

未来「ええ、アネモスは身の危険を感じると共生仲間である『クラブガン』を呼ぶフェロモンを出す習性があったとされてるの」

 

未来はそう言うと、もう1つのザリガニの様な姿をした生物の化石―――クラブガンの化石をアネモスの化石の隣に並べた。

 

未来「46億年前、アネモスはどんな環境でも生き延びられるように完全生物を目指して進化していった…地球に選ばれることを信じて…。

でも一つの種でそれが叶わないと知り全く違う能力を持つ別の種と共に生きるという知恵を得た」

 

我夢「それがクラブガンか…」 

 

未来は我夢に頷くと、2つの化石をくっつけた。

 

未来「それでも、彼等は選ばれなかった!これって悲しいことだと思わない!?彼等は再び地球で生きたいだけなのよ!」

 

我夢「未来…それは……」

 

悲痛な表情で叫ぶ未来に我夢は反論しようとするが

 

キィシャ!キィシャオ!

 

アネモスとは違う不気味な鳴き声が再び部屋中に鳴り響いた。

 

未来「来る…」

 

未来はその鳴き声が聞こえた瞬間、研究所を飛び出した。

 

我夢「…未来!待って!」

 

我夢は飛び出した未来を急いで追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アネモスはクラブガンが来るのを待つようにくねくねと身体を揺らしていた。

すると、遠くの空から自衛隊戦闘機部隊が近づいてきた。

自衛隊もまた、アネモスがクラブガンを呼んでいることを知り、共生される前に焼却しようと考えたのである。

 

隊長「焼却作戦、開始っ!!」

 

その攻撃開始の宣言と共に、火炎弾による戦闘機部隊からの一斉射撃が開始された。

 

アネモスは着弾した火炎弾から放たれる炎に襲われ、一瞬で火だるまになった。

 

アネモス「ミィヤォォォオン…!」

 

火に包まれたアネモスは、苦しそうに鳴きながら身体を揺らしていた。

 

未来「やめて!これ以上傷付けないで!!」

 

その様子を近くの森から見ていた未来は、戦闘機に向かって悲痛の叫びを出した。

しかし、地上から声を出しても上空にいる戦闘機に聞こえるはずもなく、攻撃は続いた。

 

未来はアネモスに近寄ろうとするが

 

我夢「未来!」

 

我夢に手首を掴まれ、妨害された。

 

未来「放してよっ!」

 

未来は必死に振りほどこうとするが、彼女は人間。

転生悪魔である我夢の腕力にはかなわず、全く振りほどけなかった。

我夢は真剣な眼差しで見つめながら口を開いた。

 

我夢「君はわかってるのか?おそらく、アネモス達はコッヴ、『根源的破滅招来体』に人類の天敵として目覚めされたんだ!もし、彼らが完全生物になったら人類の脅威になるんだぞ!」

 

未来「地球ではもう5回、2600万年ごとに生物の大絶滅が起こっている……。あいつは地球に選ばれなかった!地球に愛されなかったものの悲しみを聴いてほしくて来たのよ。我夢、わからないの?地球に選ばれなかった者の悲しみが……。人類に彼らを消してしまう権利なんてないはずよ!」

 

我夢「だけど、破滅させられる理由もない!」

 

お互い言い争いを繰り広げているが、一歩も譲らない状況だった。

そんなやりとりをしていると突然、辺りは白色のガスに包まれた。

 

我夢「!?」

 

突然の事態に我夢は言い争いを止め、手を払い、未来の安否を確認したが、そこに彼女はいなかった。

 

 

 

 

 

 

時は巻き戻り、我夢達が言い争いをしていた時間に戻る。

 

自衛隊は火だるまになっているアネモスに一気に攻めていた。

 

―――――あと一歩で倒せる。誰もがそう思ったとき

 

ブシュュューーーー……

 

「「「「「!?」」」」」

 

アネモスは突然、地上から放たれた白色のガスに包まれると、身体中を襲っていた炎が消え去った。

自衛隊がガスが放たれた方へ視線を向けると、そこにはザリガニの様な二足歩行の怪獣、クラブガンがいた。

 

隊長「あのガスは消火ガスで、仲間を助けに来た訳か…!各戦闘機、現れた怪獣もまとめて攻撃!」

 

「「「「了解!」」」」

 

自衛隊隊長は悔しげに呟きながらも指示を出すと、戦闘機部隊はクラブガンにも攻撃を開始した。

 

クラブガン「キィシャオ!」

 

アネモス「ミィヤォォォオン…」

 

クラブガンとアネモスは銃弾の雨に襲われながらも駆け寄り、その距離が0距離になった瞬間、アネモスがクラブガンの腹部へ溶ける様に融合した。

 

上半身はクラブガン、下半身はアネモスといった奇妙な出で立ちをした完全生物「アネモス&クラブガン」へと姿を変えた!

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!ミィヤォォォオン!」

 

ブシュュューー!!

 

アネモス&クラブガンは完全生物へとなれた喜びの産声をあげると、アネモスの口から黄色のガスを噴射し始めた。

 

隊長「くそっ!何をする気か知らないが、全機攻撃―――!?」

 

自衛隊隊長はアネモス&クラブガンに驚きながらも、攻撃命令を下そうとした時、地上で有り得ないものが視界に映った。

 

「「「「「…………」」」」」

 

そこには地上で取り締まりをしていた自衛隊の隊員や警察官、中にはアネモスを生中継したKCBのクルーの姿があった。

しかし、それはどこか虚ろな目をしており、ゆっくりとした足取りでアネモス&クラブガンの元へ向かっていた。

 

隊長「(あの黄色いガスは人類(エサ)を誘導させるものなのか…!)」

 

そう思った隊長は、地上にいる人々に被害を与える訳にもいかないので、各戦闘機に上空で待機するように指示すると、悔しげにその様子を眺めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

我夢「やっぱり、あいつらは…」

 

我夢はアネモス&クラブガンが人々をエサとして誘導している姿を見て、確信した。

――――人類の天敵として蘇ったのだと。

 

我夢はエスプレンダーを懐から取り出して変身しようとするが、誘導されている人々の中に未来の姿があるのに気付いた。

 

アネモス&クラブガン「………」

 

未来「けほっ、けほっ!あなた達が母なる地球に見捨てられて、悲しいんでしょ?私ならあなた達を理解できr……」

 

未来は咳き込みながらも悲しげな表情で理解を示そうと語りかける途中、誘導ガスの影響で意識を失った。

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!キィシャオ!」

 

だが、未来の想い虚しく、アネモス&クラブガンは未来をエサとしか思っていなかった!

意識が朦朧としている未来をハサミで持ち上げ、そのまま口に運ぼうとしていた。

 

我夢「!!」

 

未来のピンチに、我夢は周りから正体がバレないようにアネモス達から少し離れ、エスプレンダーを真上へ突き出した。

すると、エスプレンダーから赤い光が開放され、その光に包まれると、我夢はガイアへと変身した!

 

 

 

 

 

 

未来「……」

 

未来は朦朧した意識の中、目の前の光景を見た。

そこには、美味しそうにこちらを見つめ、口からよだれをたらしているクラブガンの顔があった。

 

ゆっくりと、その口へ運ばれようとした時

 

ガイア「デュアッ!!」

 

近くからガイアが紙一重でハサミに捕らわれている未来を飛行しながらすれ違い様に手で救い出した!

 

ガイア「…」

 

ガイアは意識を失っている未来を地上へゆっくり下ろすと、アネモス&クラブガンへ振り向いた。

 

ガイア「デュワ!」

 

ガイアはファイティングポーズを取ると、アネモス&クラブガンへ走り向かっていた!

 

ガイア「ダッ!デュワ!グァッ!」

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!?ミィヤォォォオン…!!」

 

ガイアはパンチやチョップで激しく攻め立てた!

アネモス&クラブガンは次々と繰り出される攻撃にタジタジしていた。

そして、ガイアは振りかぶったチョップを繰り出すが

 

ガチィン!

 

アネモス&クラブガン「ミィヤォォォオン!」

 

アネモス&クラブガンは攻撃に出来た隙に背中の甲羅を盾にし、その攻撃を防いだ。

 

ガイア「グワッ!?」

 

ガイアは痛そうに手を振ってる中、アネモス&クラブガンは逆立ちをし、上半身をアネモス、下半身をクラブガンにした第2形態になった。

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!キィシャオォォォオン!!」

 

アネモス&クラブガンは先程よりも速いスピードでガイアへ突進した。

 

ガイア「グァ!」

 

接近してくることに気が付いたガイアはその突進を受け止めるが

 

ガシッ!

 

下半身のクラブガンのハサミがガイアの足を挟むと、アネモスの口から黄色いガスを顔に浴びせた。

 

ガイア「グァァァァーーーー!!」

 

それを喰らったガイアは、苦しげに声をもらした。

避けようと思ってもクラブガンのハサミがそれを逃さない。

ガイアはピンチに陥った。

 

 

 

 

 

 

その頃、駒王町では

 

松田「お、おい…何だアレ!?」

 

元浜「ひぃ!?」

 

どよめいている人々は、駒王川に視線を向けていた。

そこには大量のクラブガンの影がダムの方角へ泳いでいた。

 

その様子を朱乃と小猫はビルの屋上から眺めていた。

 

小猫「もし…全てのクラブガンがアネモスと共生し、人類に牙を剥いてきたら……」

 

朱乃「……」

 

2人はゾッとしながら、再びクラブガンの大群による川登り眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

ガイア「グァァァァ…!」

 

そんなガイアは何とか脱出しようと必死に身体を動かすが、もがけばもがくほどハサミの締まりが強くなり、挟まれている足首からギチギチと嫌な音がなった。

そして、ガスをだいぶ吸い込んだせいで意識も朦朧とし始めた。

 

ガイア「グァ…ァァ……」

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!キィシャオォォォオ!」

 

朦朧とする意識な中でガイアはここまでなのか…と悔しく思ったその時!

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

アネモス&クラブガン「キィシャオォォォオ!?ミィヤォォォオ!!」

 

ダイナ「見たか、俺の超ファインプレー!!」

 

空からダイナがアネモス&クラブガンに目掛けてドロップキックを放ち、アネモス&クラブガンを大きく後方へぶっ飛ばした!

着陸したダイナは誇らしげに胸を張りながらガッツポーズした。

 

ガイア「グァ…」

 

ダイナ「我夢!」

 

アネモス&クラブガンから開放されたガイアは膝をついた。ダイナは急いで近寄り、ガイアに手を差し出した。

 

ダイナ「我夢、遅くなって悪ィ!」

 

ガイア「来てくれたのか…!」

 

ダイナ「当たり前だろ?俺達、何もするのも一緒だろ?」

 

ガイア「…そうだね!」

 

ガイアは喜んだ様な声で答えると、出された手をとり、立ち上がった。

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!ミィヤォォォオン!」

 

アネモス&クラブガンは上半身がクラブガン、下半身がアネモスの第1形態に戻り、乱入したダイナへ威嚇の咆哮をあげた。

 

ガイアは身構えたが、ダイナはそんなガイアの肩を叩き、俺に任せろと呟きながらガイアの前へ割り込む様に出た。

 

ダイナは胸の前に両腕をクロスさせると、額の「ダイナクリスタル」が青く輝いた。

 

ダイナ「ハッ!!」

 

ダイナはそのまま両腕を横に広げると、青い光に包まれ、銀色のボディーに青いライン。そして、体つきも通常のフラッシュタイプよりもスマートになったダイナの第2の姿、「ミラクルタイプ」へとタイプチェンジした!

 

ガイア「!!その姿は…?」

 

ガイアは姿を変えたダイナに驚き、つい戦いの最中と忘れ、質問した。

 

ダイナ「ん?まぁ……考えんのは後だ。まずはこいつをやっつけてからにしようぜ」

 

ダイナはアネモス&クラブガンに親指で指しながらそう言うと、アネモス&クラブガンへ体を向けた。

 

ダイナ「デェアッ!」

 

右腕を前、ひっかくような形にした左手を腰の位置に持ってくる独特のファイティングポーズをとり、迫ってくるアネモス&クラブガンに身構えた。

 

アネモス&クラブガン「ミィヤォォォオン!!」

 

アネモス&クラブガンは威嚇の咆哮をあげながら、どんどんダイナへ近づいていったが

 

ダイナ「…」

 

ダイナは近づいてくるのに気付かない様にファイティングポーズを構えていた。

60、50、40m…と距離が近づいてきても、ダイナは微動だにもしなかった。

 

ガイアは一瞬不安になったが、何か策があるんだろうと思い、ダイナの後ろ姿を見守っていた。

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!キィシャオォォォオ!」

 

距離が20mをきり、アネモス&クラブガンは先程妨害された仕返しか、その強靭なハサミでダイナへ突き刺したが

 

アネモス&クラブガン「!?」

 

ダイナの姿が一瞬で消え、そのハサミは空を切った。

どこにいったのかと驚いていると

 

ダイナ「デェアッ!」

 

アネモス&クラブガン「キィシャオ!?」

 

いつの間にか後ろに回り込んでいたダイナに横腹を回し蹴りされ、その衝撃でよろめいた。

 

アネモス&クラブガン「ミィヤォォォオン!!」

 

アネモス&クラブガンはハサミを振り回すが、ダイナは先程と同じ様に消え、また横腹に回し蹴りを入れられた。

 

そして、アネモス&クラブガンが反撃してダイナが消えて反撃されの繰り返しが続き、アネモス&クラブガンの体力は確実に減っていた。

 

ガイア「(…すごい)」

 

ガイアは一方的に攻めるダイナの戦いに圧巻した。

実はダイナのミラクルタイプはパワーが下がる代わり、超能力に優れているのである。

姿が消えたのはその超能力の1つ、「ダイナテレポーテーション」で瞬間移動したからである。

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

アネモス&クラブガン「ミィヤォォォオン…!」

 

次々と繰り出されるダイナの瞬間移動攻撃にアネモス&クラブガンは遂にフラフラになった。

 

ダイナ「!」

 

ガイア「……デュワ!」

 

その間にエネルギーをためたガイアは、ダイナがバク転で離れるのを確認すると、クァンタムストリームでアネモス&クラブガン腹に目掛けて発射した!

 

アネモス「ミィヤォォォオ…」

 

クラブガン「キィシャオ…」

 

腹部に命中したアネモス&クラブガンは、融合する前の2体の怪獣に戻り、弱々しく鳴き声をあげてのたうち回っていた。

 

ガイア「デュワ!グァァァァ……!」

 

ダイナ「ハァァァァ……!」

 

その隙にガイアはフォトンエッジの体勢、ダイナは両腕をダイナクリスタルの前でクロスして、右手に圧縮したエネルギーをためた。

 

ガイア「デュワァァァァァァーーーーー!!」

 

ダイナ「デュワッ!!!」

 

ガイアはクラブガンに向かってフォトンエッジ、ダイナは圧縮したエネルギーを一度右腰に添えて、衝撃波で敵の背後に発生させたブラックホールに送り込んで次元の狭間で圧殺する技、「レボリウムウェーブ」をアネモスに放った!

 

クラブガン「キィシャオォォォオ!」

 

アネモス「ミィヤォォォオン…」

 

フォトンエッジが直撃したクラブガンは粒子の様になって消滅し、アネモスはブラックホールに吸い込まれ、跡形もなく消滅した!

 

ガイア「デュワッ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

勝利を確信したガイアとダイナは、両腕を空高く広げると、遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わったその日の夕刻。

夕陽に照らされたダム近くの川を我夢と未来が眺めていた。

 

ちなみに一誠は今回の一部始終を報告するため、一足先にリアス達の元へ帰っている。

リアスは今回の件も我夢達に頼った事を気にしているらしく、領主失格かも…と落ち込んでいるそうだ。

帰ったら僕も慰めようと我夢が思っていると、未来がこちらへ視線を向けた。

 

我夢「どうしたんだい?」

 

未来「ねえ、我夢?私が何故、古代生物達に強い共感を持ったのか…知りたい?」

 

未来の問いに我夢は頷くと、未来は川を見据えながら自身の半生を語り始めた。

 

未来「実は、私の両親も古代生物学者だったの。2人共、研究熱心でね……私の事なんか気にかけてもくれなかったわ」

 

未来は近くにあった石を手に取り、言葉を続けた。

 

未来「でも、私の小さい頃にモンゴルで行方不明になったの。待っても中々帰ってこず、ある日思ったの。『研究のために両親に見捨てられた』ってね。だから、『地球に見捨てられた』古代生物に感心と共感を持ったって訳よ」

 

未来はそう言うと、手に持っていた石を川へ投げ捨てた。

 

未来「いつか、人類もクラブガンやアネモス…それ以外の多くの生物と同様に地球に見捨てられるのかもしれないわ」

 

そう言いながら川を悲しげに見つめている未来の様子に我夢は見てられないと、口を開き

 

我夢「地球は…人類を見捨てないよ!」

 

そう言うと、未来は我夢の方へ顔を向けた。

 

未来「どうして、そう言えるの?」

 

我夢「それは…」

 

その問いに我夢は少し戸惑っていると、未来はふふっと笑い

 

未来「説明できないんじゃない。昔から我夢はそうだった…いつだって直感ね♪」

 

彼の優しさに満足したのか、満面の笑顔で研究所へ戻っていった。

どんどん離れていく彼女の後ろ姿を見ながら我夢は呟いた。

 

我夢「それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球が人類を見捨てるつもりなら、ウルトラマンはいない……」

 

我夢は自身の答えを出すと、リアス達の元へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

暗闇に電話のベルが鳴る…。
その時人間は…。
我夢の故郷を襲う怪事件!
それは新たなる招来体の襲撃なのか?

次回、「ハイスクールG×A」
「マリオネットの夜」
君も興味を持たれている…。









何か最近の回は、食事から始まることが多いような……。
そして、何気にミラクルタイプの初戦闘回!
次回はガイア屈指のホラー回の1つ!
良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第三章 月光校庭のエクスカリバー
第12話「マリオネットの夜」


超空間波動怪獣 メザード
超空間波動怪獣 サイコメザード 登場!


その夜、我夢の故郷、「吉岡街」の路地を白いコートを纏った、如何にも怪しげな2人組の少女が街灯に照らされながら歩いていた。

 

青髪「なぁ、遠く離れたこの街に来て何するつもりだ?」

 

2人組の少女の1人、青髪の少女が横に並んで歩いている栗毛にツインテールの少女に問うた。

 

栗毛「久しぶりに日本に帰ってきたし…。昔、お世話になった人に挨拶をね!」

 

栗毛の少女「紫藤(しどう) イリナ」は髪止めについている貝殻の飾りを揺らしながら、ニコッと微笑みながら答えた。

それを聞いた青髪の少女「ゼノヴィア」はフンと鼻をならし

 

ゼノヴィア「公私混同は良くないが…まあ、いい。私達が()()()()()()()()()()…、忘れるなよ」

 

そう言うと、イリナは分かってるわよと言葉を返した。

その後、しばらく歩いていると、何かに気付いたのかゼノヴィアは立ち止まり、いぶしげな顔で周囲を見回した。

 

イリナ「ゼノヴィア?どうしたの?」

 

イリナも歩みを止め、首を傾げながら問うと、ゼノヴィアは懐から懐中時計を取り出すと、言葉を続け

 

ゼノヴィア「陽が落ちたばかりの街にしては、静か過ぎるなと思ってな…」

 

イリナ「そう?みんな、寝てるんじゃないの?」

 

イリナの返答にゼノヴィアはだと良いがな…と呟き、2人は歩きを再開しようと前へ振り向いた時

 

イリナ「きゃっ!?」

 

ゼノヴィア「!?」

 

フードの少女「………」

 

いつの間にいたのか、2人の目の前に黒いフードを被った少女がそこにいた。

2人はその少女から確かに感じるただならぬ気配に身震いした。

 

イリナ「ね、ねえ…君?こんな時間にどうしたの?」

 

フードの少女「………」

 

イリナは勇気を振り絞り、無理やり笑顔を作りながら少女に問うが、無表情のまま黙りこんだままだった。返事を待つが帰ってこない事にゼノヴィアはしびれをきらしたのか、イリナの肩をポンポンと叩いた。

 

ゼノヴィア「イリナ。彼女はきっと、私達を怪しい人間だと思ってるんだろう。これ以上返事を待っても無駄だ…。先に行こう」

 

イリナ「…わかったわ。ごめんね、お嬢ちゃん。いきなり話しかけて…」

 

イリナはフードの少女に申し訳なさそうに頭を下げると、ゼノヴィアと一緒に少女の横を通り過ぎて歩き始めたが

 

フードの少女「ねぇ、お姉さん達……」

 

先程まで黙りこんでいたフードの少女が突然、口を開き、2人を呼び止めた。

 

ゼノヴィア「?」

 

イリナ「どうしたの?」

 

思わず歩みを止めた2人は疑問符を浮かべながら少女に聞くと、少女はポケットからスマホを取り出した。

 

フード「…電話…鳴ってるよ……」

 

ジリリリ…ジリリリ…

 

少女はさっきまでの無表情からニヤリと気味が悪い笑みを浮かべると、ジリリリとベルが鳴っているスマホを差し出しながら歩み寄ってきた。

 

イリナ「な、何!?」

 

ゼノヴィア「イリナ!」

 

イリナはさすがに不気味に思ったのか、後退りしていると、ゼノヴィアは突然、大きな声で声をかけた。

 

イリナ「何!?えっ……!?」

 

イリナが振り返ると、2人を囲む様に暗闇から不気味な笑みを浮かべた街の住民が着信音が鳴っているスマホやガラケーを片手にジリジリと近寄ってきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。駒王町近くの森で我夢、アーシア、一誠、リアスの4人は空中にいる怪獣と戦っていた。

 

怪獣「フォォォォ……」

 

その怪獣はクラゲの様な姿をしており、幽霊のように空中をプカプカと漂っていながら、奇妙な鳴き声を発していた。

 

リアス「我夢、例のものを頼むわ!」

 

我夢「はい!『パイロットウェーブ』、照射!」

 

リアスの指示を受けた我夢は、手元に持っていた大きな懐中電灯の様なものから放つ波状のビームで、クラゲ怪獣へ照射した。

 

何故、こんな手間が必要なのか。それはこの怪獣は超空間―――つまり、別次元に住んでいる怪獣で、『パイロットウェーブ』で位相を1つにしないと、あちらから攻撃できてもこちらからは攻撃できないからである。

 

パイロットウェーブを受けると、クラゲ怪獣は位相が1つになって実体化した。

 

リアス「はっ!」

 

クラゲ怪獣「フォォォォン……」

 

リアスはすかさず滅びの魔力を放ち、それを喰らったクラゲ怪獣は炎上して地上に墜落した。

 

リアス「みんな、気を引き締めて!」

 

リアスが我夢達にそう言うと、クラゲ怪獣は濡れた粘液に覆われた様な黒いクラゲの身体に、長い首と頭部を持つ怪獣、「メザード」へと姿を変えた。

 

一誠「ダイナァァァーーーーー!!

 

その掛け声と共に一誠は正面へリーフラッシャーを突き出すと、金属部分が回転し、クリスタル部分から発せられる白い光に包まれると、ウルトラマンダイナへ変身した!

 

ダイナ「一気に終わらせてやるぜ!シュワッ!!」

 

変身した直後、ダイナは腕を十字に組み、ソルジェント光線をメザード目掛けて放った!

 

メザード「クォォォ…!?」

 

メザードはいきなりヒーローが必殺技を使ってくるとは思わなかったのか、突然の事に対応できず、直撃した。

 

メザード「グォォォォォ……!!」

 

ドガガガァァァーーーーーン!!

 

メザードの身体の周りにオレンジ色のサークルが描かれると、爆発四散した!

 

ダイナ「ハッ!」

 

ダイナは白い光を発すると、元の一誠の姿に戻った。

 

一誠「ふぅ…」

 

アーシア「イッセーさん、お疲れ様です!」

 

リアス「お疲れ様、イッセー」

 

我夢「イッセー、お疲れ様!」

 

一誠がひと息ついていると、アーシア達が慰労の言葉をかけながら駆け寄ってきた。

 

一誠「おう、ありがとな!」

 

一誠は笑顔で言葉を返すと、はぁ…とため息をつきながら、少し疲れた様な表情を浮かべた。

 

一誠「しっかしよ…これで7体目だぜ?何度倒しても倒しても、しつこく出やがるぜ……」

 

我夢「うん、そうだよね…」

 

その言葉に我夢は頷いた。

一誠の言う通り、ここ最近はメザードが頻繁に出現していた。最初に現れた個体は一週間前で、お台場の建物を砂に変え、何もない砂漠にしようとしたのだ。

 

最初は自衛隊の攻撃を一切受け付けなかったが、本体が超空間である事を我夢が見抜き、パイロットウェーブで実体化させ、ガイアによって倒された。

 

これで解決したかに思えたが、次の日。別の場所にまた新しい個体が現れた。同じ様な手順で倒して、また新しい個体が現れたら倒して……といった、いたちごっこを一週間繰り広げていたのだ。

 

我夢「一体、何の為に…?」

 

我夢達は頻繁に出現するメザードの目的をしばらく考えるが、中々思い付かず、その日はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「失礼しまーす、あれ?」

 

次の日、放課後。

我夢はいつもの様に部室に入ると、全員揃って座っており、その中心には難しい顔をしたリアスがテレビを凝視していた。

 

リアス「あら、我夢。丁度いいところに来たわ」

 

我夢に気付いたリアスはそう言うと、我夢を手招きし、我夢は失礼しますと一言言うと、リアスの隣に座った。

 

我夢「何を見てたんです?」

 

我夢はリアスの顔を覗きこむ様に問う。

 

リアス「悪魔契約している人からの贈り物でね、我夢の地元から送られてきたの…」

 

我夢「へぇ~……って!?僕の地元にも悪魔の契約している人がいるんですかっ!?」

 

リアス「あら?言ってなかったかしら?」

 

きょとんとするリアスに我夢は初耳ですよ!と驚きの声をあげた。

 

リアス「まぁ、それはともかく。この小包の中に1枚のビデオテープが入ってたの」

 

リアスはすでに開封してある小包を手にとって見せると、テレビから今時ないビデオテープを取り出した。

 

リアス「このビデオテープに何かがあると思うんだけど、いくら再生しても砂嵐が流れるだけで、何も映らないの」

 

リアスはビデオテープを再生すると、言葉通り、テレビはザーーーーという音が流れるだけの砂嵐しか映らなかった。

我夢は成るほど。と相槌をうち

 

我夢「それで、僕にビデオテープの解析をしてほしいという訳ですね?」

 

そう尋ねると、リアスは頷いた。

 

リアス「解析にどれくらいかかりそう?」

 

我夢「このぐらいなら2時間…、最低でも1時間かかりそうですね。ここじゃ詳しく解析できないので、このビデオ、お借りしてもいいですか?」

 

リアス「ええ、いいわよ。それと貴方に届けられた依頼は全部イッセーに頼むから休んでいいわよ」

 

一誠「えっ、そんなの聞いてな―――」

 

リアス「何か言ったかしら?」

 

一誠「イエ、ナニモ!」

 

一誠は聞いてなかったのか、リアスにどういうことかと聞こうとしたが、彼女の威圧的なオーラに気負けし、言葉を濁した。

 

リアス「それじゃ、頼むわね」

 

我夢「はい、わかりました」

 

我夢はリアスに返事すると、ビデオテープを小包と一緒にカバンの中へ入れた。

 

リアス「ビデオの件は我夢に任せるとして、私達はいつも通り部活を始めるわよ!」

 

その言葉と共に、我夢以外はいつもの様に部活動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、イリナ達は街近くの森で街人達と争っていた。

昨日の夜、住民達に囲まれたがどうにか抜け出せ、一旦体勢を整える為に森へ来たのだが、待ち伏せされていた住民に見つかったので戦っているのである。

 

イリナ「やっ!」

 

街人A「ぐおっ!」

 

ゼノヴィア「はっ!」

 

街人B「うおお…!」

 

2人はゾンビの様に歩きながら追ってくる街人を徒手空拳で応戦していた。

 

ゼノヴィア「一体、何なのだ!この街の人間は!?私達を神の遣いと知って襲ってきてるのか!?正気とは思えんぞ!!?」

 

ゼノヴィアは今起きている状況に戸惑いながらも背後から忍び寄ってくる街人を裏拳で気絶させた。

 

イリナ「そんなのわかんないわよ!!正気じゃないのは確かだけど、私だって何が起きたのか知りたいわよ!」

 

イリナはゼノヴィアにそう答えると、回し蹴りで街人をまた1人気絶させた。

 

 

2人は周りにいた街人を気絶させたが

 

ジリリリ…ジリリリ…

 

プルルル…プルルル…

 

携帯を片手に持った住民達がゾロゾロと集まってきた。

それを見た2人はまたか…、いいかげんしてほしいといった表情を浮かべた。

 

ゼノヴィア「何人気絶させても、すぐに増援がくる。かくなるうえは…!」

 

ゼノヴィアは自身が持っている布に巻かれている物体をほどこうした。

 

イリナ「ダメよ、ゼノヴィア!相手は一般人なんだから!」

 

ゼノヴィア「しかし、このままだと我々がやられるぞ!!」

 

イリナとゼノヴィアが言い争っていると、イリナの近くに倒れていた1人の街人が火かき棒を片手にゆっくりと立ち上がった。

しかし、イリナは言い争うのに夢中で、背後からの襲撃

に気が付かなかった。

 

街人C「……」

 

街人はゆっくり、ゆっくりと歩み寄り、イリナの真後ろまで近付くと、火かき棒を振り上げた。

 

ゼノヴィア「イリナ!!後ろだ!!」

 

イリナ「えっ!きゃっ!?」

 

ゼノヴィアはその奇襲に気が付き、声をかけたがもう遅い。

イリナは避けられない!と思い、振り下ろされた火かき棒に殴られる衝撃に身を堅めた。

 

 

 

 

 

だが、その衝撃は彼女に来なかった。

 

イリナ「?」

 

中々来ない衝撃にイリナは不思議に思いながらおそるおそる目を開けると、黒一色の服に身を包んだ少年、藤宮が火かき棒を片手で受け止めていた。

 

藤宮「…」

 

街人C「ぐわっ!」

 

藤宮は街人から火かき棒を力ずくで奪い取ると、街人を思いきり蹴り飛ばした。

 

街人達「「「「うおおお……!!」」」」

 

藤宮「……」

 

残った街人達は新たに現れた藤宮へ一斉に襲いかかるが

 

街人D「たかっ!?」

 

街人E「のっ!?」

 

街人F「はっ!?」

 

街人G「せいっ!?」

 

藤宮は一瞬青く発光すると、猛スピードで動きながら腹部を殴り、あっという間に周りを囲んでいた街人達を気絶させた。

 

ゼノヴィア「何て速さだ…」

 

イリナ「す、すごい……」

 

藤宮「……」

 

その光景に驚いている2人をよそに藤宮は手に持っていた火かき棒を投げ捨て、服についたほこりを軽くはたくと、真っ直ぐ街の方へ歩き始めた。

 

イリナ「待って!」

 

藤宮「?」

 

呼び止められた藤宮は立ち止まり、振り返った。

 

イリナ「助けてくれて、ありがとう」

 

イリナは頭を下げて感謝の言葉をかけるが、藤宮はふっと鼻で笑い

 

藤宮「勘違いするな。俺はお前達を助ける為にコイツらを叩きのめしたんじゃない、邪魔だったからだ。俺はこの街に()があって、たまたま通りかかっただけだ」

 

そう告げると、再び歩き始めた。

イリナは待って!と慌てながら彼を再び呼び止めた。

 

藤宮「何だ…?」

 

藤宮は不機嫌そうな表情を浮かべながら、彼女の方へ振り向いた。

 

イリナ「ねぇ、さっき用があるって言ったけど、もしかしてこの街に何が起きてるのか知ってるの?教えて!!」

 

力強く彼女にそう聞かれた藤宮は勘のいい奴と思いながら観念したのか、はぁ…とため息をつくと、口を開いた。

 

藤宮「この街、『吉岡街』は『根源的破滅招来体』の実験場にされている。この街の人間は電話回線を通して操つられている。暴徒と化しているのは奴等の仕業だ」

 

ゼノヴィア「!?」

 

イリナ「え!?」

 

2人はニュースで根源的破滅招来体の事は知っているが、まさかこの暴動に関わっているとは思わず、驚きの声をもらした。

藤宮はそんな2人をよそに言葉を続けた。

 

藤宮「奴等は俺達、人類に興味を持っている。俺はそれを観察するためここに来たんだ。こんなところにいても何も無い、すぐにこの街を立ち去った方がいい…」

 

イリナ「でも、探してる人がいるの!それにこんな事が起きてるのに放っておけない!」

 

イリナはそう言うが、藤宮は再びため息をつき

 

藤宮「誰を探してるのは知らないが、無駄だよ。存在理由の無い人間はいずれ消える…。破滅招来体のモルモットとして使われるならそれでいいじゃないか」

 

イリナ「貴方、正気なの?」

 

さすがにこれはおかしいとイリナは眉間にしわを寄せて問うと、藤宮は正気さと言葉を返し

 

藤宮「人は皆救われるだの、人は神の子だのとか言った()()()()()を崇め、信仰しているお前らにはわからんだろうな……」

 

ゼノヴィア「なっ!貴様っ!!」

 

イリナ「ちょっと!その言葉、取り消しなさいよっ!」

 

それを聞いたイリナとゼノヴィアは今にも噛みつきそうな怒りの表情で睨み付けた。

藤宮はふっと鼻で笑うと

 

藤宮「じゃあ、ここでお祈りでもするんだな。存在理由の無い人間をはたして助けてくれるかな?」

 

不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、また身体が青く発光した。

 

イリナ「きゃ!」

 

ゼノヴィア「くそっ、待てっ!」

 

余りの眩しさに2人は目がくらんだ。

数秒後、2人は眼の視力が戻り、後を追おうとするが、すでに藤宮の姿は無かった。

 

イリナ「じゃあ、誰が人の存在理由を決めるのよーーーーっ!!」

 

その叫びが森の中を寂しく響き渡った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、自宅にて我夢はビデオテープの映像を解析していた。

 

カタカタカタ…タンッ

 

我夢「よし、これでいいはず……」

 

我夢は精密機器に繋がっているPCのエンターキーを押すと、機械に入っているビデオテープを取り出し、テレビに入れて再生し始めた。

 

ザーーーー…

 

しばらく砂嵐が流れていると、ある場所が映り、人々が争っている映像が流れ始めた。

 

我夢「!これって…!?」

 

我夢は流れた映像に見覚えがあった。

それは2週間程前、アメリカのリゾート地で起きた暴挙騒動のニュースで流れた映像だったのだ。

我夢は何故、地元からこの映像が送られてきたのか?と考えていると、1つの答えが浮かんだ。

 

我夢「(もしかして、吉岡街もアメリカのリゾート地みたいになっているのか?)」

 

その答えに我夢は不安になると、すぐに実家へ電話をかけたが、中々繋がらなかった。

 

我夢「くそっ!父さん、母さん!!」

 

我夢は焦りながら荷仕度すると、リアス達へ連絡もせず、エスプレンダーを天高く掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、イリナは1人、夜の街を徘徊していた。

実は彼女が探している人物とは我夢の両親であり、今回この街に来たのも、挨拶をする為だった。

藤宮とのやりとりの後、ゼノヴィアと一緒に再び街の中心部へ戻ってきたのはいいが…

 

イリナ「あーーもう!ゼノヴィアとはぐれちゃったし、どうすればいいのよ!」

 

道中でまた操られた街の住民に襲われ、その際にゼノヴィアとはぐれてしまったのだ。

 

イリナは少し自暴自棄になりながら歩いていると

 

ドガァン!

 

???「はぁ、はぁ…」

 

イリナ「っ!?だ、誰!!?」

 

物陰からゴミ箱を倒しながら人影が飛び出した。

彼女は思わず声を出した。

 

周囲に操られている住民がいるかも知れないが、突然起きた出来事なので、どうしても声に出さずにいられなかったのだ。

 

その人影をよく見ると、見覚えのあるシルエットだった。

 

イリナ「あれ?もしかして……おじさん?」

 

???「っ!もしかして……イリナちゃんか!?」

 

イリナがもしかしてと思い、声をかけると、その人物は我夢の父親「高山 雄一(たかやま ゆういち)」だった。

 

雄一「久しぶりだな~、こんなに大きくなって。いや!何故ここにいるんだ?」

 

イリナは雄一に今までの経緯を話した。

 

雄一「そうか、私達に挨拶をしにか…。しかし、大変なときにきたな……」

 

話を聞いた雄一は眼鏡をかけ直すと、言葉を続け

 

雄一「君が友人とはぐれた様に、私も妻とはぐれてね…。とても不安だよ」

 

イリナ「おじさん…」

 

イリナは不安そうな顔を浮かべるが、雄一はにこっと笑い

 

雄一「まぁ、そんな顔せんでも大丈夫!決して諦めなければ必ず助かるさ。とにかくどこかに――――」

 

ガタァン…

 

イリナ&雄一「「!?」」

 

ゼノヴィア「…」

 

雄一が促すのを遮るかの如く、物音がなった。

2人がそちらへ視線を向けると、その音を出した正体はゼノヴィアだった。

 

イリナ「ゼノヴィア!もう、脅かさないでよ!」

 

ゼノヴィア「……」

 

イリナはほっと安堵したため息をつきながらゼノヴィアに近付きながら話しかけるが、当の本人は無言のままだった。

さすがに様子がおかしいと雄一がイリナへ声をかけようとした瞬間!

 

ガッ!

 

イリナ「うっ!?」

 

雄一「!?」

 

ギチギチ……

 

ゼノヴィア「……」

 

ゼノヴィアは何と、イリナの首を両手で絞め始めた!

ゼノヴィアは力強く絞めているので、ギチギチ…と首の圧迫感と共に鈍い音が鳴った。

 

雄一「君、止めないか!!」

 

ゼノヴィア「……」

 

雄一はイリナを助け出そうとゼノヴィアの両腕を必死に引っ張るがビクともしない。

ゼノヴィアは次第に面倒になり、少女とは思えない腕力で雄一を吹っ飛ばした。

 

雄一「ぐわっ!うう……」

 

ゼノヴィア「……」

 

イリナ「おじ…さ…ん…!」

 

雄一は壁に激突すると、そのまま気絶した。

イリナは一瞬、視線を雄一が向けるが、すぐに目の前のゼノヴィアへ向けた。

 

ギチギチギチギチ……!

 

イリナ「ゼ…ノ…ヴィ…ア……」

 

ゼノヴィア「……」

 

イリナは苦痛に表情を歪めながらゼノヴィアに呼び掛けるが、彼女は言葉を返さず、より強く首を締めた。

イリナは私、死ぬのかな…と心の中で諦めかけたその時!

 

トンッ

 

ゼノヴィア「うっ!」

 

バタン!

 

ゼノヴィアは背後から来た人物に当て身をされ、気絶した。

 

イリナ「けほっ!けほっ、けほっ!!」

 

首締めから解放されたイリナはその場に座り込み、首に手を当てながら咳き込んだ。

首の圧迫感が静まったイリナはその人物を見上げると、それは夕方に出会った藤宮だった。

 

藤宮「まだここにいたのか……。いい加減聞き分けたらどうだ?」

 

藤宮は呆れた様な眼差しでイリナを見下ろした。

 

イリナ「うる…さいわね…!余計な…お世話よ!」

 

イリナは心の中で自分をまた助けてくれた事に感謝しつつも、主である神を冒涜した藤宮を許せず、立ち上がりながら睨み付けた。

 

すると、藤宮がイリナの髪止めにつけている貝殻の飾りに気付き、それを目を見開いて見つめた。

 

イリナ「…なによ」

 

藤宮「……その髪飾り、どこで手にいれた?」

 

イリナ「?…11年前、海に遊びに行ったときに男の子からもらったの」

 

先程から自分達をあれだけ煙たがっていた藤宮が急に質問してきたことにイリナは疑問符をうかべながらも答えた。

それを聞いた藤宮はそうか…と呟くと、再び無表情になってイリナに背を向け

 

藤宮「…とにかく、この街から離れろ。いいな!」

 

そう警告するように告げると、歩き去っていった。

 

イリナ「なによあいつ…」

 

イリナは去り行く藤宮の姿を見ながら、不機嫌そうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

藤宮「(あの『貝殻の髪飾り』……、まさかな?)」

 

藤宮は頭の中にイリナの髪飾りの事が浮かんだが、すぐに振り払うと、歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢はガイアに変身し、吉岡街へ向かって真っ直ぐ飛んでいた。

 

ガイア「(見えてきた!)」

 

しばらく飛んでいると、吉岡街が見えてきた。

いつもなら住宅に明かりが点いていて明るいが、今はどこの住宅も明かりを点けず、街は闇に閉ざされていた。

 

ガイア「(やっぱり、メザードは僕達を観察する為に実験してたのか…!)」

 

ガイアも藤宮と同じ、”メザードが人間を実験している”という結論にいたり、そう思った我夢は怒りで拳を握りしめた。

 

ガイア「(…!いた!)」

 

ガイアは周囲を見渡していると、街の上空にあのクラゲの様な怪獣、「プライマルメザード」がぷかぷかと漂っていた。

 

ガイア「(『パイロットウェーブ』、照射!)」

 

ガイアはあのプライマルメザードが人々を操っていると踏むと、掌に乗せたパイロットウェーブ照射装置の電源スイッチを慎重に押した。

 

プライマルメザード「フォォォン…」

 

装置からビームが照射されたプライマルメザードは位相が重なり、実体化した。

 

ガイア「デュアッ!」

 

ガイアはすかさずガイアスラッシュを放ち、プライマルメザードを炎上させながら街へ撃墜した。

 

撃墜したプライマルメザードはメザードの姿になった。

だが、その姿は手足が生えており、怪獣らしいフォルムとなった波動怪獣「サイコメザード」へ姿を変えた。

 

ガイア「デュアッ!」

 

サイコメザード「クォォォ…!」

 

ガイアは地上に降り立つと、すぐさまサイコメザードに飛びかかり、格闘戦を仕掛けた。

 

ガイア「ダッ!ダッ!ダッ!ダッ…!」

 

サイコメザード「クォォォ…!」

 

ガイア「――デュアァァァァァーーーー!!」

 

ガイアは連続パンチをサイコメザードの顔、腹、肩に放ち、サイコメザードがその猛攻で怯んだ隙を狙い、ストレートキックで蹴り飛ばした。

 

サイコメザード「クォォォォォォォォォ…!!」

 

ガイアのキックを喰らったサイコメザードは大きく後方へ吹き飛び、地面へ叩きつけられた。

 

ガイア「デュア!グアァァァァ……!」

 

ガイアはすぐさまクァンタムストリームの体勢に入ったが

 

ジリリリ……ジリリリ…

 

プルルル…プルルル…

 

トゥルルル…トゥルルル…

 

住民「「「「「「…………」」」」」」

 

ガイア「!?」

 

突然、地上にいた住民達が割り込むように倒れたサイコメザードの前に立ち塞がった。

サイコメザードは操っている人々を盾にして、ガイアに攻撃させないという卑怯な作戦をしたのだ!

 

重美「……」

 

その多くの住民の中には我夢の母、重美の姿もあった。

ガイアは住民に被害を与えるわけにもいかず、クァンタムストリームを中断した。

 

サイコメザード「…」ニタァ

 

サイコメザードはその様子を嘲笑うかの様に目を歪めると、つぼみ状の腹部から光弾をガイアへ連射した。

 

ガイア「グアァァァァーーー!!」

 

ガイアは住民を人質にされて思うように動けず、光弾の雨をまともに受け、片膝をついた。

 

サイコメザード「クォォォ……!!」

 

ガイア「グアァァッッーー!!!」

 

サイコメザードは上空に浮かぶと、おまけとばかりにそのまま体当たりを喰らわした!

 

ガイア「グァッ…アァァ…!!」

 

[ピコン]

 

ガイアは地面へ倒れると、ライフゲージが青から赤へと変わり、点滅を始めた。

 

サイコメザードは止めを刺そうと思い、ゆっくりとガイアのもとへ歩いていくが

 

ザシュ!!

 

サイコメザード「クォォォ…!?」

 

ガイア「!?」

 

突然、斬撃が放たれ、片眼を斬られた。

その痛みに叫び声をあげながらも斬撃が放たれた方角を見ると、地上で日本刀を両手で持ったイリナが嬉々とした表情を浮かべていた。

 

イリナ「どうかしら?『聖剣(せいけん)』で斬られた感想は?」

 

サイコメザード「クォォォ…!!」

 

その挑発を聞いたサイコメザードは怒りの咆哮をあげると、腹から光弾を放った!

 

ガイア「(危ない!)」

 

ガイアはイリナを助けようと必死に身体を動かすが、ダメージのせいで思うように動けず、手を伸ばすしかなかった。

 

イリナ「!!」

 

イリナもさすがに避けられないと思い、目をつぶり、身を堅めるが

 

ドカァァァァン!!

 

ガイア「!!」

 

サイコメザード「!?」

 

突如、眩しいばかりの青い光が光弾を防ぎ、イリナを守った。

段々光が収まり、イリナがゆっくりと眼を開くと

 

 

〔推奨BGM:アグル降臨〕

 

イリナ「!?」

 

アグル「……」

 

片膝をつき、両腕を俯いた頭の前にかざしたアグルが現れた。

アグルはゆっくりと立ち上がると、サイコメザードに視線を向けた。

 

サイコメザード「クォォォォォォォォォ!!!」

 

サイコメザードは突如現れたアグルに威嚇の咆哮をあげた。

そんなアグルは気にすることもなく、額の「ブライドスポット」の前で両腕をクロスした。

 

アグル「フォォォォォォォォ……!!」

 

アグルは右腕を上、左腕を下に垂直に伸ばすと、頭に青い光の刃を形成した。

 

ガイア「!」

 

アグルが住民への被害をお構い無しに必殺技を放とうとする事に気付いたガイアは、滑り込む様に自身の体で住民達の壁になった。

 

アグル「ドゥワァァァーーーーー!!」

 

アグルは頭に形成した光の刃を放つ必殺技、「フォトンクラッシャー」をサイコメザードに放った!

 

サイコメザード「クォォォ……!!」

 

ドガガガガガァァァァァン!!

 

直撃したサイコメザードはその威力に耐えきれず、爆発四散した!

その直後、サイコメザードのコントロールから外れた住民達は倒れた。

 

ガイア「グァッ」

 

ガイアは飛んでくる肉片をその背に受けながら、倒れた住民に当たらない様にした。

ガイアは立ち上がると、アグルを見つめた。

 

ガイア「……」

 

アグル「……」

 

ガイアとアグルはしばらく見つめ合うが、一言も話すこともなく、2人は遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

イリナ「あのウルトラマンは…?」

 

イリナは突如現れた謎のウルトラマン、アグルに疑問を抱いていた。

マスコミではガイア、ダイナばかり報じており、アグルはあまり報道されていないのだ。

それ故、イリナはアグルの存在を知らなかったのである。

 

雄一「終わったのか…?」

 

イリナが疑問を抱いていると、先程の一部始終を見ていたのか、倒れていた雄一がイリナに話しかけた。

 

イリナ「はい、終わりました」

 

イリナがそう答えると、雄一は疑問に満ちた表情を浮かべ

 

雄一「あの青いウルトラマン、奴も私達の味方なのか?」

 

イリナ「ええ、きっとそうですよ……」

 

それを聞いた雄一はそうだよな…と呟き、アグルが飛んでいった空を見上げた。

イリナはアグルが人類の味方がどうかはわからない。

だが、少なくともそう信じたいと思ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、イリナは我夢の両親に挨拶すると、目を覚ましたゼノヴィアを連れ、目的地へ向かった。

吉岡街の住民は全員正気に戻ったが、操られていた出来事は覚えておらず、謎の疲労感だけが残った。

 

ちなみにビデオの送り主は我夢の実家の隣に住んでいる男の子だったらしい。

異変に気付いて、リアス達に送ったらしいが、直後に洗脳され、詳細を伝えることができなかった。

 

さらにあの夜の事件後、メザードの目撃情報はめっきり出なくなった。

 

そして、我夢は単独行動したことをリアスにこっぴどく叱られた。

その内容は単独行動の危険さと心配していたというものだ。

我夢はまだまだ自分は精神的に未熟だということを思い知った。

 

それを胸にしかと受け止め、我夢はいつもの様に松田達と学校へ登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通学路を歩く我夢を藤宮は遠くから眺めていた。

 

藤宮「せっかくの力を有効に使えない。我夢、それがお前の弱さだ…」

 

藤宮は不機嫌そうに呟くと、その場を歩き去っていった。

 

 

 

 

 




次回予告

平穏なひとときを楽しむオカルト研究部に忍び寄る影。
その時、眠っていた復讐心が雄叫びをあげる…!

次回、「ハイスクールG×A」!
「復讐の(つるぎ)」!
木場に一体何が!?








この作品も遂に第2シーズンに突入!
ちなみにティガに変身するオリキャラのヒロイン投票の結果は

1.ロスヴァイセさん 10票
2.ゼノヴィア 8票
3.オーフィス 4票
4.梶尾リーダー 2票
5.ルフェイ 1票

ロスヴァイセさんとゼノヴィア、人気ですね。
それとルフェイに勝つ梶尾リーダーとは一体…?
この投票結果はあくまで参考ですので、決定では無いです。
良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第13話「復讐の(つるぎ)

サイコメザードの洗脳事件から3日程たった頃。

駒王学園は放課後となり、部活動がある生徒は学校に残って日が暮れるまで活動する。

 

もちろん、我夢が所属しているオカルト研究部も例外でなく、部室に集まっていつもの様に活動するのだが…

 

 

アーシア「わぁ~可愛い~~!これが小さい頃のイッセーさんと我夢さんですね!」

 

 

何故か一誠の家でアルバムの鑑賞会をしていた。

 

実は今日、いつも部室として使っている旧校舎が清掃の為、立ち入り禁止なのだ。

そこでリアスの提案で一誠の家で部活することになった。

最初は各々の契約件数の話や根源的破滅招来体への対策など真面目に活動していたが、それを見た一誠の母がいつも友達といっても我夢、松田、元浜ぐらいしか家に上がらせなかった事に感激し、昔の写真が入っているアルバムを取り出してき、いつの間にかアルバム鑑賞会になったという訳である。

 

 

アーシア「これが御二人が5才の頃なんですね!」

 

 

木場「へぇ~…この頃からイッセー君は野球好きで、我夢君は物理学を勉強してたんだね」

 

小猫「…こっちはイッセー先輩が我夢先輩をプロレス技の実験台にしてますね」

 

朱乃「あらあら、やんちゃな子だったのですね♪」

 

 

一同はアルバムの写真を眺めながら、興味深そうにコメントを呟いていた。

 

この様に、昔の写真を大勢の人に見られるのはさすがに恥ずかしいもので、我夢は恥ずかしげに苦笑いし、一誠は見るなよ!と顔を赤めながら叫んでいた。

 

 

リアス「小さいイッセー…小さいイッセー…」

 

 

その中でも特にリアスは何かに取り憑かれた様にぶつぶつと呟きながら、一誠の写真を凝視していた。

アーシアもその気持ち分かります!と意気投合していた。

 

 

我夢「部長…まさかメザードに操られてるんじゃ…」

 

一誠「ああ…ある意味そうかもな…」

 

 

そのどこからどうみても危ない光景に、我夢と一誠は顔を引きつらせながら頷いた。

 

 

朱乃「あらあら、こちらの写真はおねしょをした時の写真ですわね♪」

 

リアス「!…どれどれ」

 

我夢「えっ!?」

 

一誠「何っ!?」

 

 

それを聞いた瞬間、2人はその写真を必死に奪い取ろうとするが中々取れず、バタバタと部屋を忙しく動き回っていた。

 

 

木場「ははは…」

 

 

木場はその光景に苦笑いしながらアルバムのページをめくった瞬間、1枚の写真を見て、表情を変えた。

 

 

木場「ねえ、我夢君」

 

我夢「うん?」

 

 

木場に声をかけられた我夢は動きを止め、木場へ顔を向けた。

 

 

木場「この写真なんだけど……」

 

我夢「…ああ!昔、僕とイッセーが吉岡街に住んでいた時に、隣に住んでいた2人の幼馴染みと遊んだ時の写真だよ。その2人はしばらく会ってないけどね」

 

 

木場が指を指す写真は幼い頃の我夢、一誠、そして2人の男の子が写っていた。

そう説明していると、部屋中を駆け回っていた筈の一誠が我夢の後ろからひょこと顔を出してその写真を見た。

 

 

一誠「お、イリナに大悟(だいご)じゃねえか。懐かしいな~~……。で、その写真がどうしたんだよ?」

 

一誠は懐かしい幼少時代に思いをはせながら、木場に問いかけた。

 

木場「この剣だよ」

 

 

そう言うと木場は4人の背後に飾られた剣を指を指した。

我夢と一誠はそれを見て疑問符を浮かべていると、木場は言葉を続け

 

 

木場「これはね…『聖剣(せいけん)』だよ」

 

我夢「!」

 

 

我夢はその時、木場の目を見た。

 

その目は、人類と悪魔達に激しい憎悪と怒りを抱く藤宮と同じ目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があった2日後。

我夢は放課後の教室に1人、昨日の出来事について考えていた。

 

あの写真を見た後の木場の様子がおかしいのである。

常にぼうっとしており、何か深く考える事に意識を集中させていた。

それにより悪魔稼業、果てにははぐれ悪魔討伐にも支障をきたし、仲間を危険にさらしたのだ。

さすがにリアスも叱ったが、それでも様子は相変わらずである。

 

 

我夢「(木場君、もしかして…)」

 

 

その時、我夢の脳裏に”復讐”という文字が浮かんだ。

あの剣と何があったのかはわからないが、憎しみを持っていることは確かであると。

そして、そうでなければあんな鋭い目をするはずがないと思った。

 

 

我夢「(もし、木場君が復讐を考えているとしたら……)」

 

 

我夢は推測を立てながらどこかの本の内容を思い出した。

復讐者の心情、そして復讐を成し遂げた復讐者の悲しい末路を―――。

 

そんな事が脳内をよぎったが、そんな筈ないとブンブンと頭を左右に振り、考えをもみ消した。

 

 

我夢「じゃあ、何なんだよ!くそ~思いつかない!」

 

 

我夢は頭をかきむしると、壁に近付き、そのまま逆立ちをした。

 

 

我夢「(もう一度考え直そう…)」

 

 

我夢はあの目は見間違いかも知れない、もっと別な事に悩んでるに違いない。そう思った時

 

 

ガラガラ…

 

我夢「ん?」

 

一誠「あ」

 

 

教室の戸が空き、我夢が視線を向けると、いぶしげな表情を浮かべながらこちらを見ている一誠の姿があった。

 

 

一誠「何…してるんだ?」

 

我夢「ああ、こうすれば考え事が浮かぶかなって」

 

一誠「はぁ…逆に、頭に血がのぼって考えられないだろ…。お前が待っててくれって言うから俺ら乗降口で待ってたのによ…」

 

我夢「はは…ごめんごめん」

 

 

少しふてくされている一誠に我夢は逆立ちを止めて謝ると、荷物を手に、一誠達と学校を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「ところでよ、我夢。俺ん家の夕飯がすき焼きだからさ、もし用事が無かったら寄ってかね?」

 

 

太陽も沈み行く中。帰路につきながら、一誠は我夢に尋ねた。

 

 

我夢「すき焼き!?うん、ぜひお邪魔させてもらうよ!」

 

一誠「おしっ!盛大にやろうぜ!」

 

 

我夢は嬉しげに微笑みながらOKを出し、一誠はガッツポーズをとりながら微笑んだ。

 

そんなやりとりをしていると、一誠の家の前に着いた。

2人はすき焼きに胸を踊らせながら玄関の扉に近付いた瞬間

 

我夢&一誠「――!!」

 

 

ゾクッと背中に悪寒が走った。

まるで背中に氷を入れられた様な気持ちが悪い感覚――――それを感じ取ったのだ。

2人は不安になり、顔を見合わせて頷くと、急いで扉を開けて足早にリビングへ向かった。

 

 

一誠「母さん!」

 

 

一誠がそう大声で言いながらリビングの扉を開けると、そこには―――

 

 

一誠の母「あら、イッセー。それに我夢君、お帰りなさい」

 

 

いつもの様に夕飯の支度をしている一誠の母の姿に2人はホッとするが、リビングのテーブルに視線を向けると、見慣れない2人組の少女がいた。

その少女はゼノヴィア、そして一誠と我夢の幼馴染みであるイリナだった。

 

 

我夢「(えっ!どうしてここに…?)」

 

 

我夢は内心驚いた。

もう1人の少女は知らないが、サイコメザードと戦っている際に居合わせ、そしてアグルに助けられた栗色のツインテールの少女がどうしているのかと。

その視線に気付いたのか、イリナはにこっと微笑みかけ

 

 

イリナ「イッセー君に我夢君!久しぶり、変わらないわね!」

 

 

懐かしげに挨拶してくるイリナに2人は誰?といった感じで首を傾げて誰だろうと思い出していると、突然、一誠はあっ!と思い出した様に声を出した。

 

 

一誠「お、お前……もしかして………!」

 

 

思い出したのか、久しぶりに再開する幼馴染みにかける言葉にイリナ、ゼノヴィア、一誠の母はどきどきし、誰だろうかと答えが気になる我夢は期待の眼差しを送った。

 

そして、一誠のかけた言葉は――――――

 

 

一誠「もしかして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新手の詐欺師かっ!?」

 

ズコーーーーンッ!

 

 

その言葉に我夢と一誠除く全員は思わず、ギャグ漫画の様にずっこけた。

イリナは立ち上がり、違うわよ!と言うと、2人はじゃあ誰だろうと考えているとイリナは諦めた顔をし

 

 

イリナ「イリナよ、紫藤 イ・リ・ナ!忘れちゃったの!?」

 

我夢&一誠「あっ!あぁぁ~~~…」

 

イリナ「やっと、思い出したのね!」

 

 

その名前に2人は昔遊んでいたあのイリナかと思い出し、納得した表情を浮かべ、相槌をうった。

だが、あれ?と2人は疑問の表情を浮かべ

 

 

我夢&一誠「「君(お前)、女の子(女)だったんだ!?」」

 

イリナ「男だと思われてたの!?」

 

 

イリナは2人の言葉に内心ショックを受けながら、驚愕した。

 

 

 

 

 

 

イリナ「もう、酷いわ!確かに昔はやんちゃだっただけど、男と思ってたなんて!!」

 

我夢&一誠「はは……」

 

 

プンプンと怒っているイリナに我夢と一誠はイリナ達と向かい合わせに座りながら苦笑いを浮かべて話を聞いていた。

その内容はこの駒王町に用事があるということで、その用事のついでに一誠の家に立ち寄ったというものだ。

 

2人は話を聞いてるが、隣に座っている無言の少女―――ゼノヴィアの隣に立て掛けられている布に巻かれている物体に意識が向いていた。

先程から気分が悪いのは、その物体から発する嫌なオーラのせいであろうと2人は思った。

 

しばらく会話をしていると、イリナは椅子から立ち上がった

 

 

イリナ「さて。外も暗くなり始めたし、お(いとま)させてもらうわね」

 

 

2人にそう言うと、イリナとゼノヴィアは帰り支度を始めた。

 

 

一誠の母「あら?ご飯くらい食べてっていいのに」

 

イリナ「いえいえ、挨拶に来ただけですから」

 

 

一誠の母にニコッと微笑みながら断ると、玄関の方へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

一誠「なぁ、本当にいいのかよ?」

 

イリナ「うん。宿は取ってあるし、手持ち金もあるから食事も困ってないよ」

 

 

イリナとゼノヴィアを見送りをする為、我夢と一誠も外の玄関前に出ていた。

気持ちが悪い感覚があるが、久し振りに会った幼馴染みだ。一誠はせめて食事していって欲しいと思い、そう言うが、イリナはその提案をやんわりと断った。

 

そして、それに…と言葉を続け

 

 

イリナ「あんまり悪魔と仲良ししてちゃ、怒られちゃうからね」

 

我夢&一誠「「!!?」」

 

 

その言葉に2人は驚いている間に、イリナとゼノヴィアは去って行ってしまった。

 

 

一誠「なあ、我夢。もしかして、あいつら…」

 

我夢「うん、完全に教会の関係者だろうね…。さっきすれ違った時に十字架のネックレスを着けてたの見たし、あの台詞も…」

 

一誠「………なんか、昔の様に戻れない気がするな」

 

我夢「うん…」

 

 

残念そうに呟く一誠に我夢は頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

我夢達はいつもの様に扉を開け、部室に入ったのだが…

 

 

ゼノヴィア「……」

 

イリナ「やっほー、我夢君にイッセー君」

 

一誠「え!?」

 

我夢「どうしてここに…!?」

 

 

何故か部室にイリナとゼノヴィアの姿があった。

そして部室は緊迫した空気に包まれており、今にも一触即発な雰囲気だった。

 

 

リアス「それで…悪魔を毛嫌いしている教会側の人間が私達に何の用かしら?」

 

 

リアスがそう問うと、ゼノヴィアが口を開いた。

 

彼女が言うには、少し前に教会にある聖剣「エクスカリバー」が6本ある内の3本が堕天使に盗まれた。

 

そもそも、本来のエクスカリバーは大昔の地球でおこった大戦で折れてしまったが、その破片から長い年月をかけて7つに分けて作られた。しかも、偽物とかでなく全て本物である。

だが、そのうち1本は紛失し、現在残っている6本はそれぞれ3つの派閥に2本ずつ保管されていたが、何者かの手引きで堕天使にあっさりと盗まれたのだ。

 

彼女達がこの町に来たのは、その堕天使からそれを取り返しに来た為である。

そして、その堕天使はただ者ではなく、堕天使組織「神の子を見張る者(グリゴリ)」の幹部、「コカビエル」という上級堕天使である。

その強さは聖書に名を残すほど堕天使の中でもとりわけ強い存在なのだ。

 

激戦になると予想した教会はエクスカリバーを支給することを決め、ゼノヴィアは「破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)」、イリナは「擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)」をそれぞれ支給された。

 

そして、わざわざ彼女達がリアスのもとへ来た理由は…

 

 

リアス「その際に私達に一切干渉するな…と。私の領地で好き勝手にする上に要求も勝手ね」

 

 

リアスはゼノヴィアが語る要求に眉をぴりぴりと震わせ、明らかに怒りを表していた。

ゼノヴィアはそんなことを気にすることなく、口を開き

 

 

ゼノヴィア「なに、聖剣が無くなるのは君たち悪魔達だって好都合だろ?鬱陶しい存在を消すと言う互いの利害があればね…」

 

リアス「…遠回しに手を組んでいると言いたい訳?」

 

 

リアスは不機嫌そうに睨み付けながらそう問うと、ゼノヴィアは頷き

 

 

ゼノヴィア「本部はその可能性を考えている」

 

リアス「冗談じゃないわ!グレモリーの名をかけて、そんなことしないわ!」

 

ゼノヴィア「だといいがな…。話は以上だ。イリナ、行くぞ」

 

 

ゼノヴィアはイリナと一緒に我夢達を横切って立ち去る途中、アーシアに目を止めた。

 

 

ゼノヴィア「…?もしかして君は『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

アーシア「!?」

 

 

「魔女」―――かつて教会で蔑まれた言葉にアーシアはびくっと体を震わせた。

それを横から見ていたイリナも

 

 

イリナ「えっ、もしかして教会を追放されたあの元聖女さん!?行方知らずだったけど、まさか悪魔になってたなんて…」

 

アーシア「え…あの…」

 

哀れむ様な眼差しを浮かべながら呟いた。

突然の事にアーシアは狼狽えていると、ゼノヴィアは口を開き

 

 

ゼノヴィア「安心しろ、本部には報告しない…。しかし、堕ちたものだな…聖女と呼ばれた者が悪魔となっているとは」

 

一誠「!」

 

 

その言葉にカチンときた一誠はゼノヴィアに掴みかかろうとするが、小猫と我夢に止められた。

一誠は邪魔するなと言わんばかりに2人を半目で見るが、2人の堪えろとアイコントを見て、怒りを抑えた。

ゼノヴィアは更に言葉を続け

 

 

ゼノヴィア「だが、君はまだ我ら神を信仰しているみたいだな」

 

イリナ「えっ、待ってよゼノヴィア。悪魔になったのに神を信仰している訳がないでしょ?」

 

 

ゼノヴィアはいや…とイリナの言葉を否定すると、アーシアに詰め寄り

 

 

ゼノヴィア「彼女からは罪の意識を感じながらも神を信じる『信仰心』がまだ匂う。私はそういうのに敏感でね…。どうかな?」

 

アーシア「…捨てられない…だけです。ずっと、信じてきたものなので…!」

 

 

その問いにアーシアは悲しげに答えると、視線を下へ下ろした。

彼女にとって信仰とは生まれた時からずっと毎日の様に行っていたので中々止められるものでないだろう、と我夢が思っていると、ゼノヴィアは手に持っていたエクスカリバーの切先をアーシアへ向けた。

 

 

ゼノヴィア「なら、今すぐ私達に斬られるがいい…。我らが神ならば、罪深き君を許して下さる筈だ。せめて、断罪してやろう……神の名のもとにな」

 

 

そう言った瞬間、アーシアとゼノヴィアの間に一誠が割り込んだ。

一誠は額に青筋をたてながらゼノヴィア達を睨み付け

 

 

一誠「…お前ら!さっきから黙って聞いていりゃ、好き勝手言いやがってっ!!アーシアの苦しみを何も知らねぇ癖に、挙げ句の果てにゃあ断罪するだとっ!?一体何様のつもりだ!!」

 

ゼノヴィア「その方が彼女の為だからだ。それにこれはただの殺しではない、”救世”だ」

 

一誠「ふざけるなっ!何が”救世”だ!!アーシアが苦しんでる間に何もしてくれない神なんて、くそくらえだ!!」

 

ゼノヴィア「何っ!?今の発言、聞き捨てならんぞっ!!」

 

イリナ「ちょっと!?ゼノヴィア、落ち着いて!」

 

 

カチンと頭にきたゼノヴィアは一誠を斬ろうとエクスカリバーに纏っている布を取ろうするが、イリナに止められた。

すると、少し落ち着いたゼノヴィアは口を開いた。

 

 

ゼノヴィア「じゃあ、君達にとって、『アーシア・アルジェント』とは何だ?」

 

 

そう問うと、一誠も口を開き

 

 

一誠「アーシアは家族だ!友達だ!仲間だ!!お前らが手を出そうって言うんなら、俺はお前ら全員を敵に回しても戦うぜ!」

 

ゼノヴィア「その言葉、交戦の意志ありと受け取っていいのだな?いいだろう、表へ出ろ」

 

 

さすがにこれ以上はまずいだろうと思ったリアスは制止するため、口を開こうとした瞬間

 

 

木場「僕がやろう」

 

 

先程から扉の近くで黙って立っていた木場が待ったとばかりに声をかけた。

 

 

ゼノヴィア「誰だ、貴様は?」

 

木場「ふふ、君達の先輩だよ…。『失敗作』だけどね……」

 

 

ゼノヴィアの問いに木場は不適な笑みを浮かべて答えると、ゼノヴィアへ詰め寄ろうと歩きだすが

 

 

木場「我夢君?そこを退いてもらえるかな?」

 

我夢「……」

 

 

突然、我夢がそれ以上は近寄らせまいと木場の前に立ち塞がった。

 

我夢は気付いたのだ。木場の瞳はいつもの様に穏やかな輝きがなく、メラメラと燃えたぎる憎しみの炎だけが灯っていることを…。

そして、そのまま戦いでもすれば、只事じゃすまないだろう―――――そう判断し、立ち塞がったのである。

 

 

我夢「悪いけど、木場君。これ以上は通させない。今の君じゃ彼女達を軽いケガで済まさせないと思うし君も大怪我を負う…。それは君や彼女達からしても、メリットがない。だから、決闘はやらせない…」

 

木場「何を言ってるんだい?君はアーシアさんがこんなに侮辱されたのにどうでもいいっていうのかい?」

 

一誠「そうだ!こんな奴らに腹が立たないのか!?」

 

 

木場に続ける様に一誠は信じられないといった顔でそう言った。

すると、我夢は一誠へ振り向き

 

 

我夢「…正直、僕だって腹が立ってるさ。でも、自分が原因で争って、アーシアが喜ぶと思うのかい?もし、それで君達が傷付けばアーシアはもっと悲しむ…。それでもいいのか!」

 

一誠「!」

 

木場「…」

 

 

我夢の言葉に一誠はハッと思った。争ってもアーシアの為にはならないという事を。

それに気付いた一誠は怒りを沈め、我夢は未だ鋭い眼差しを浮かべる木場に顔を向けた。

 

 

我夢「それに、木場君。君はアーシアさんの事以外の事も考えてるだろう?」

 

木場「……」

 

 

我夢がそう問うが、木場は沈黙を続けた。

これ以上答えを待つのは無駄だろうと判断した我夢はゼノヴィア達へごめん…と謝罪した。

すると、ゼノヴィアは肩をすくめ、アーシアの方を振り向き

 

 

ゼノヴィア「…アーシア・アルジェント。今回はこの男の謝罪に免じて断罪しないでやる。それに…」

 

 

ゼノヴィアはそう言うと、今度は一誠と木場へ顔を向け、

 

 

ゼノヴィア「貴様らも許してやる。ここで一戦交えても、無駄に体力を消費するからな……。命拾いしたな」

 

一誠「っ!」

 

木場「……」

 

 

ゼノヴィアは不適な笑みを浮かべながらそう言うと、イリナと一緒に部室から去っていった。

我夢は足音が遠ざかるのを確認すると、はぁ…と安堵のため息をもらし、膝をついた。

 

 

アーシア「すみません、我夢さん。私のせいで…」

 

我夢「いや、アーシアのせいじゃないよ。それにしても、緊張したなぁ~…」

 

リアス「我夢、ありがとう。私が本来やるべき立場なのに…」

 

我夢「部長、頭をあげてください。僕は自分がやりたいと思ったことをやったまでですから」

 

リアス「ありがとう」

 

 

頭を下げるリアスに我夢は微笑みながらそう言うと、今度は一誠が皆に頭を下げた。

 

 

一誠「みんな、不安にさせてごめん…。俺、血がのぼってしまって……戦っても何の為にならないのにな」

 

アーシア「そんな、気にしないでください。私、イッセーさんに助けられて感謝してるんです」

 

小猫「…もう過ぎたことです」

 

朱乃「あらあら、確かに危なっかしいですが、とても男らしかったですわよ♪」

 

一誠「お、男らしい…?いやぁ、そうでしょ、そうでしょ!!はははっ!」

 

 

アーシア、小猫、朱乃の励ましを受けた一誠は先程の落ち込んでいた表情から一変、ニコニコと鼻をのばしながら笑った。

 

 

我夢「また調子に乗っちゃって…」

 

リアス「ふふっ」

 

 

その様子を我夢は半目で見ながら呟き、リアスは穏やかに笑った。

そんな談笑をしていると、

 

 

ドンッ!!

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

木場「………」

 

その衝撃音に一行は談笑をやめ、一斉に振り返ると、先程から黙っていた木場が不機嫌そうに壁を殴っていた。

いつもと違う様子に皆は不安に思うと、木場は我夢に鋭い眼差しを浮かべながら近寄り、口を開いた。

 

 

木場「我夢君、君は余計なことをしてくれたね……」

 

我夢「余計?いつもらしくない君が戦いでもすれば、大怪我―――」

 

木場「いつもらしい?ははっ、我夢君。君は僕の何がわかるんだい?()()()()()()()()()()()()()がっ!」

 

我夢「…!」

 

 

木場にそう問われた我夢は答えきれず、言葉を詰まらせてしまった。

すると、木場は部室を立ち去ろうと扉へ歩いていき、ドアノブに手をかけた。

 

 

リアス「祐斗、どこにいくの?部活は終わってないわよ」

 

 

不安そうな表情を浮かべるリアスにそう尋ねられると、木場はドアノブから手を離し、ゆっくりと振り返ってリアス達へ顔を向けた。

 

 

祐斗「部長、どこだっていいでしょ?それに思い出したんです……。僕が何の為に悪魔になったのかを……」

 

リアス「…っ!」

 

我夢&一誠「「?」」

 

 

それを聞いたリアスはまさかといった顔をし、我夢と一誠は頭に疑問符を浮かべた。

そして、木場は言葉を続け

 

 

木場「僕はあなたの為に悪魔になったんじゃない、僕は僕自身の目的の為になったんだ。()()()()()()()()()()()()の為に……」

 

リアス「祐斗…」

 

一誠「!!」

 

我夢「(やっばりか…)」

 

 

「聖剣の破壊」――――その言葉に我夢は心の中で納得した。

そして、確信した。理由はわからないが、木場君はエクスカリバーに対して並ならぬ憎しみを持っていると。

 

我夢がそんなことを考えていると、木場はリアス達の制止も聞かず、部室を飛び出す様に出ていった。

リアスはその一部始終に困ったように額に手を当てた。

 

 

リアス「大変なことになったわ…。我夢、大丈夫?」

 

我夢「はい。大丈夫ですが、木場君と聖剣に何か因縁があるのですか?」

 

 

リアスは我夢にそう尋ねられると、木場祐斗の過去に大きな影響を与えた「聖剣計画」という教会側が起こした大事件について語り始めた。

 

その計画とは教会側で聖剣、特にエクスカリバーを使える人間を増やす為、人工的に作った子供達を育成させる計画のことであった。

 

数年前まで当たり前のようにあったその計画は、悪魔にとっては究極の兵器ともいえる聖剣を扱える人間が増えることは脅威であった。

 

木場も人工的に作られた子供の中の1人で、毎日厳しい訓練を受けながらも、仲間と切磋琢磨に仲良く過ごした。

木場は「仲間と共に立派な聖剣使いになる」。

ただそれだけを願いに訓練に明け暮れていた…。

 

だが、その願いはある出来事で崩れ去った!

 

その計画には”成功者”、つまり聖剣を完璧に扱える子供は1人もいなかったのである。

それを判断した教会は木場や他の子供たちを”不良品”、”失敗作”と判断し、毒ガスが充満している独房に閉じ込め、”処分”という名目の大量殺戮を起こしたのである。

 

だが、木場は唯一仲間達によって助けられ、命がらがら施設から脱出した。

 

だが、脱出したはいいが、もうすでに身体中に毒が回っており、彼は死にかけた。

リアスはそんな彼を見かけ、悪魔へ転生させ、今に至るという訳である。

 

これが聖剣によって人生を狂わされた男、「木場祐斗」の過去である。

 

 

リアス「祐斗が自身が魔剣創造(ソード・バース)の所有者だって知ったとき、喜びにうち震えていたわ。これ以上に聖剣を破壊する復讐(ちから)はないって…」

 

我夢「そう、だったんですか……」

 

 

我夢はその壮絶な過去に複雑な心境を抱いた。

聖剣のせいで、人間のエゴのせいで多くの仲間を失い、危うく自分の命も失うところだった。

そんなものがあるから木場君は許せないだろう…と我夢は思った。

 

我夢の行動を余計だと言ったのは、せっかく目の前に聖剣があるのにそれを破壊するのを邪魔されたからである。

 

我夢は「地球」と「人類」、「悪魔」ら異種族の為に決意したが、本当に正しいのだろうかと決意が揺らいだ。

 

 

(藤宮「我夢。自身の欲望の為に他人を平気で蹴落とす人類を本当に守る価値があるのか?」)

 

 

我夢はそんな藤宮の声が聞こえた様な気がした気がした。

 

 

我夢「(もしかしたら…藤宮も何か……)」

 

 

藤宮が人類と悪魔を憎んでいるのはそういった復讐心があるからではと我夢は1人思った。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

木場を助ける為、ゼノヴィア達と密かに協力することにした我夢達!
そんな時、ついに聖剣事件の黒幕が姿を現す!

次回、「ハイスクールG×A」!
「邪悪なる陰謀」!
イリナが危ない!








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第14話「邪悪なる陰謀」

好戦堕天使 コカビエル
狂人神父 フリード   登場!


木場が部室を飛び出して翌日。彼はその行方不明となっていた。

 

そして、その昼。我夢、一誠、小猫、何故かいる匙の4人は駒王駅近くを歩きながら誰かを探していた。

 

それは当然、イリナとゼノヴィア。教会シスターコンビである。

何故、彼女らを探しているのか。それは今から数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

昨日の夜。我夢はいつもの様に自宅でくつろいでいた。

布団を敷き、いつもの様に寝転がって天井を眺めていた。

 

いつもなら明日何があるんだろうとわくわくしているが、今夜は違う。

失踪した木場のことが気になり、頭は不安な気持ちで一杯になっていた。

 

 

(我夢「木場君。君は一体どこに…」)

 

 

我夢がそう呟いた瞬間、コンコンと玄関の方から扉をノックする音が鳴った。

我夢は誰だろうと思いながら玄関の扉を開けると、そこには一誠、小猫、そして匙の姿があった。

 

 

(一誠「よう。今、あがっても大丈夫か?」)

 

(我夢「ああ、いいけど…」)

 

 

我夢はいきなり夜中に家へ来た3人に疑問を感じながらも家へあげた。

 

 

(我夢「それで、一体何の用?」)

 

 

我夢は3人へお茶を出しながら尋ねると、一誠は語りだした。

その話は木場を助ける為に聖剣を破壊しようというものだ。

 

しかし、そうなると聖剣の回収を任されているイリナとゼノヴィアが黙っていない。

聖剣を回収する前に悪魔達に破壊されたとなったら教会側のメンツが台無しになるだろうし、リアス、悪魔全体の立場が危うくなる。

それに我夢達、悪魔は今回の件に関わるなと釘を刺されているので、表立って行動するわけにもいかない。

 

それで、自分達で密かにイリナ達と協力し、聖剣を破壊しようと話になったのだ。

一誠がこの考えに至ったのは、ゼノヴィアの発言と木場の復讐に利害の一致があったからである。ゼノヴィアは聖剣を五体満足で回収しなければならないと言っていないし、木場は聖剣を破壊したい―――

ここに共通点を見出だし、もし協力して破壊できれば、お互いのメリットが大きい。

だから、この作戦にできるだけリアスに知られない様な身近な存在として、偶然話を聞かれた小猫、とりあえず連れてきた匙、そして我夢に頼みに来たのだ。

 

 

(我夢「話はわかったよ。ぜひ、協力させてくれ」)

 

 

その提案を聞いた我夢は快く返事するが、匙はそんな話を聞かされていなかったのか段々顔が青ざめていき、スッと立ち上がると

 

 

(匙「じゃ、じゃあ、俺はこれで失礼するぜ…」)

 

 

ぎこちない笑顔でそう言い、立ち去ろうとするが

 

 

(小猫「…駄目です」)

 

(匙「HA☆NA☆SE!」)

 

 

小猫にガシッと制服をつかまれ、止められてしまった。

匙は騒ぎながらジタバタと抵抗するが、小猫の馬鹿力に勝てる筈もなく、無理やり元の位置に座らされた。

 

 

(一誠「まあ、乗りかかったバスだ。1人でも助けが欲しいんだよ、頼むっ!」)

 

(匙「やだ!お前らの主のリアス部長が厳しくて優しいとしたら、会長は厳しくて厳しいんだぞ!もしバレでもしたら、どんなに恐ろしいお仕置きが待っていることか……だから絶対やらんっ!!それと『乗りかかったバス』じゃなくて『乗りかかった船』だっ!!」)

 

(我夢「僕からも頼むよ、君しかいないんだ!」)

 

(匙「俺がいなくても充分上手くいくだろっ!お前らウルトラマンだろ?何とかなるだろ!?」)

 

(一誠「それでも人手が欲しいんだよっ!!」)

 

(匙「嫌だぁぁぁーーーーー!!」)

 

 

我夢と一誠は必死に数時間にも渡る説得を続け、匙はその熱意に心が折れたのか、その作戦に協力することとなり、そして現在に至るというわけである。

 

 

 

 

 

 

匙「とほほ……」

 

小猫「しかし…そう簡単に見つかるのでしょうか?」

 

我夢「んー…彼女達はエージェントらしいし、目立つ格好でうろつかないと思うよ」

 

一誠「あんな風にか?」

 

 

一誠の指を指す方を3人は見ると、修行僧の様な格好に、「こーーーーんげーーーーん…はめーーーーーーつーーーーー…」という言葉を繰り返し唱える、いかにも怪しげな男女集団が歩いていた。

 

彼らは「根源破滅教団」といい、根源的破滅招来体を神と崇め、「破滅こそが救済」といういわゆる終末的思想の教団である。

最近、出来たばかりだが、段々とその数を増やしてきているらしい。

 

 

我夢「いや、さすがにあんな風にしてないでしょ…」

 

 

我夢はないないと手を左右に振りながら答えると一誠はそうだよな~と呟いた。

 

最近出来たといえば、人間側の国家が対根源的破滅地球防衛機構「G.U.A.R.D.」を設立したことである。

 

アメリカの代表者曰く、次々と出現する根源的破滅招来体の脅威に世界中の国家は流石に自身の国を自身の国の軍隊で防衛するのは難しいと思い、世界中に呼び掛けを行い、多くの国々が参加を表明し、設立されたのである。

 

もちろん日本も参加しており、円谷研究所も「G.U.A.R.D.日本支部ジオ・ベース」と名を変え、自衛隊と合併して大きな施設となっているのだ。

G.U.A.R.D.設立のニュースは瞬く間に世界中へ話題となり、今でも道を歩いたら、必ず1人は日常会話にその話をはさんでいる状況となっている。

 

 

我夢「…しかし、簡単には見つからないね」

 

一誠「そうだなぁ……駅近くなら人が多いし、あんな怪しいローブを着ているから見つかると思ったんだけどな。仕方ねぇ、探す場所変えるか」

 

 

一誠が諦めた様にため息をつきながらそう言うと、一行は他の場所へ歩く方角を変えた時

 

 

ゼノヴィア「えーーー迷える子羊に恵みの手を~~」

 

イリナ「天の父に代わって哀れな私達にご慈悲を~~」

 

 

いかにも怪しい白ローブに身を包み、人々に向けて募金活動しているゼノヴィアとイリナがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人を見つけた一行は場所を変えるため、近くのファミレスで話をしようと移動したが

 

 

ゼノヴィア「むぐっ、はむっ!イリナ!日本の料理はこんなに美味いとは!」

 

イリナ「うんうん、これよ!これが日本の郷土料理よっ!」

 

我夢&匙&一誠「………」

 

 

あまりの2人の食べっぷりに我夢、匙、一誠は唖然としていた。

2人は手持ち金を持っていたが、イリナが変な絵画を騙されて買ってしまってしまい、全て失ってしまったのだ。

それでまともな食事ができず、昨日の夜からずっと腹を空かせていた為、こんなにがっついているのである。

 

ちなみに彼女らへの食事は一誠のおごりである。

そうしたのは、流石に文無しの彼女らに何も食べさせないのは可哀想と思ったからである。

 

数分経つと、空腹を満たした2人は食事の手を止めた。

 

 

ゼノヴィア「ふう、まさか悪魔に助けられるとは……。世も末だな」

 

イリナ「ああ、主よ!この心優しい悪魔達へご加護を!」

 

「「「「うっ!?」」」」

 

 

イリナが十字をきって祈りを捧げると、我夢達は激しい頭痛に襲われた。

悪魔にとって、十字架等の神聖なものは苦手であるものだ。

 

 

我夢「イリナ…僕たち悪魔だからさ……」

 

イリナ「あっ、ごめーん」

 

 

我夢が注意すると、イリナはウインクしながら軽い感じで謝罪した。

 

 

ゼノヴィア「それで、私達に接触してきた目的は?」

 

一誠「ああ、実はな…」

 

 

一誠はゼノヴィア達に自分達も聖剣に破壊したい事とその理由を話した。

 

 

ゼノヴィア「…成る程、話はわかった。一本くらいなら任せてもいいだろう」

 

一誠「いいのかっ!?」

 

イリナ「ちょっと、ゼノヴィア!?我夢君達は悪魔よ!!」

 

 

ゼノヴィアの了承の言葉を聞き、匙除く我夢達は嬉しそうに微笑み、イリナはまさかOKを出すとは思わなかったのか驚愕した。

 

 

ゼノヴィア「イリナ。私達だけで正直、コカビエルを相手をし、3本の聖剣を回収するのは荷が重い…」

 

イリナ「だけど…」

 

ゼノヴィア「大丈夫だ。あくまで聖剣を回収するのは私達だ。それに、彼らは腕も立ちそうだからな」

 

イリナ「…わかった」

 

一誠「よし、話は決まったな」

 

 

イリナは納得しない様子で了承すると、一誠は席を立った。

 

 

我夢「どこにいくんだ?」

 

一誠「ああ、()()()にちょっとした連絡をな」

 

 

一誠はポケットからスマホを取り出しながらそう返事すると、トイレの方へ向かっていった。

そして、数分経って戻ってくると、近くの公園に場所を変えることを皆に伝えると、一行はファミレスを出た。

 

ちなみに会計の際、一誠が多額の金額を支払うことになり、お小遣いが全て無くなって泣いていたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わって、円形状の石畳と噴水がある公園にやって来た一行は、一誠が呼んだ人物を待つことに。

 

その人物は誰なのか。我夢は予想がついていたが、口には出さず、皆と一緒に待っていた。

 

 

???「……お待たせ」

 

 

しばらく待つと、聞き覚えのある少年の声が聞こえた。

皆が声がした方に振り向くと、そこには木場がいた。

そう、一誠が言っていたあいつとは木場のことだったのである。

 

 

一誠「よお、木場。事情は電話で話した通りだ」

 

木場「うん、僕の為にそこの2人と協力して聖剣を破壊する…。話は分かったけど、聖剣――特にエクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だね」

 

ゼノヴィア「随分と言ってくれるじゃないか。聞いたところ、君はグレモリー眷属を離れたそうじゃないか…?今すぐ、はぐれと見なして斬り捨ててもいいんだぞ…」

 

木場「っ!」

 

 

途端に2人はにらみ合い、お互いの武器を手に取ろうとしていた。

それを見て、慌てた我夢と一誠が間に割り込み、何とか静まらせた。

だが、木場は今にも噛みつきそうな殺気を漂わせていた。

 

 

ゼノヴィア「君が聖剣計画を憎む気持ちは理解できる。あの事件は、私達の間でも嫌悪されている」

 

木場「…」

 

 

木場はそう聞いた瞬間、ほんの少しだが殺気を静めた。

ゼノヴィアは言葉を続けた。

 

 

ゼノヴィア「当然、その計画の責任者は教会から追放され、今では堕天使側の人間だ。今回の件もやつが関わっていると私達はふんでいる」

 

木場「それは一体…?」

 

イリナ「バルパー・ガリレイ…。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男よ」

 

木場「バルパー…ガリレイ……」

 

我夢「……」

 

 

木場は憎悪混じりの声でゆっくりとその名前を呟く。

その男のせいで自分や仲間達の人生が狂わされたのだから許せないのであろうと我夢は思った。

 

そして、木場は決意に満ちた表情を浮かべ

 

 

木場「…分かった、僕の敵が関わっているなら協力しない理由はない……。力を貸そう」

 

一誠「おお!」

 

イリナ「話は決まりね!」

 

 

木場もこの共同作戦に協力することが決まると、ゼノヴィアは食事の借りは必ず返すと一誠に告げ、イリナと一緒に去っていった。

 

 

一誠「はぁ~…緊張した……。何とかなったなぁ~、おい」

 

 

一誠はニコニコしながらそう言い、匙の肩にポンと軽く叩くが

 

 

匙「よくねぇよ!斬り殺されるどころか、悪魔と教会側の抗争に発展するところだったんだぞぉ!!うぅぅ…」

 

我夢「まぁまぁ…」

 

 

匙は吠えるように叫んだ後、泣き出してしまった。

我夢に慰める中、

 

 

木場「イッセー君、我夢君。何でこんな事を?これは僕個人の問題なのに…」

 

 

こんな行動をした一誠達に疑問に思った木場が尋ねた。

すると、一誠ははぁとため息をつき

 

 

一誠「俺たち、仲間だろ?」

 

我夢「仲間を助けるのに理由はいらないよ」

 

木場「イッセー君…我夢君…」

 

 

助けるのがさも当然の様に答える2人に木場は気まずそうに顔を俯けた。

すると、小猫が木場の制服を掴むと、上目遣いで彼を見つめ

 

 

小猫「私も先輩がいなくなるのは寂しいです…。だからいなくならないで下さい……」

 

 

悲しげにそう言うと、木場は苦笑いをした。

 

木場「…ははっ、小猫ちゃんにそう言われると仕方ないね」

 

小猫の言葉がとどめとなり、木場は快く一誠の協力をありがたく受けることにした。

すると、何か気になった様子の匙が木場に近寄った。

 

 

匙「なあ、木場と聖剣はどんな関係なんだ?」

 

木場「ああ、それはね…」

 

 

木場は匙に尋ねられると、『聖剣計画』について―――自身に起きた悲劇を匙に話した。

すると、

 

 

匙「うぉぉぉっ!!木場ぁ!俺、お前の事いけすかないイケメンだと思ってたけど、そんな辛い過去背負ってたんだなっ!!そんな事を思っていた自分が情けねぇ!!この匙 元士郎、とことん協力させてもらうぜぇーーーーっ!!!」

 

木場「はは…」

 

 

暑苦しいテンションで号泣する匙に木場は苦笑いを浮かべた。

匙が泣き止むのを待つと、木場は我夢に頭を下げた。

 

 

木場「我夢君、先日の君に対する僕の態度を許してくれ…」

 

 

顔が見えないが、申し訳なさそうな声で謝罪する木場に我夢はゆっくりと口を開いた。

 

 

我夢「木場君、いいんだよ…何も謝ることはない。それよりも頭をあげてほしい」

 

木場「…いいのかい?」

 

 

我夢の顔を見上げながら問う木場に、我夢はもちろんさと言葉を続け

 

 

我夢「僕達は例え考えが違くても、『仲間』であり、『友達』なんだからさ…。それよりも絶対に聖剣を破壊しよう…」

 

木場「ありがとう!」

 

 

微笑みながらそう話す我夢が差し出した手を木場は笑顔を浮かべ、力強く手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、我夢、一誠、匙、小猫、木場の5人は黒い神父服に身を包んで、夜の町を徘徊していた。

 

実は木場とゼノヴィア達が集めた情報によると、エクスカリバーらしきものを持った人物が神父を夜な夜な斬り殺しているというのである。

 

それで、聖剣の試し斬りをしていると考えた一行は、ゼノヴィア達が用意した神父服を着て、聖剣を持つ人物を誘き寄せる――いわゆる囮作戦を行っていた。

 

 

匙「しかしよぉ~、作戦とはいえ悪魔が神父服だなんて…」

 

一誠「文句言うなよ。そうしねぇとひっかからないから」

 

小猫「…こんな変装でひっかかりますかね?」

 

我夢「うん、どこからどう見ても神父にしか見えないし、問題ないと思うよ」

 

 

一行が徘徊しながら、そんな会話をしていたその時!

 

 

 

 

 

フリード「神父の一団にご加護をっ!!」

 

 

アーシア救出の件で、我夢達と対峙したあのはぐれエクソシスト、フリードが上空から我夢達に襲いかかってきた。

 

 

木場「はっ!」

 

キィィーーンッ!!

 

木場は素早く魔剣を創造すると、フリードの斬擊を防いだ。

両者は激しいつばぜり合いをした後、お互い後方へ下がった。

 

 

フリード「ん?おやぁ~~…。神父集団かと思えば、この前のくそ悪魔どもじゃぁ~~ありませぬかぁ?お久しぶりでござんす!」

 

一誠「ああ、久しぶりだな…いかれ神父」

 

 

ニヤニヤとしながら呟くフリードに一誠は睨み付けながら、悪態をついた。

 

 

木場「エクスカリバーっ!!」

 

 

木場は怒りに満ちた眼差しでフリードを睨み付けると、左手にもう1本の魔剣を創造し、駆け出した!

 

 

フリード「おおっと!」

 

ガキキィィーーーン!!

 

木場「くっ!」

 

フリード「あ~らよっと!」

 

匙「木場!」

 

 

だが、フリードはとぼけた声を出しながらエクスカリバーを振るうと、魔剣を軽々と破壊した。

そして、そのまま木場へエクスカリバーを振り下ろしたが

 

 

ダァンッ!!

 

フリード「ちっ!」

 

 

突然放たれた銃撃にフリードは木場への攻撃を中断し、後方へ回避した。

銃弾が放たれた方角を見ると、我夢が銀色の銃の様なものを構えていた。

 

 

木場「我夢君、すまない!」

 

一誠「一体、それは?」

 

我夢「ああ、僕が新開発した武器『ジェクターガン』!一々変身してエネルギーを消耗するのを防ぐ為に作ったんだ。ウルトラマンの光弾を参考に作ったんだけど、威力はまだまだだね…」

 

小猫「さすがです…」

 

 

よく見ると、銃弾が当たった床はショットガンを至近距離でぶっぱなした様にへこんでいる。

相変わらずの我夢の技術力の高さに小猫達は感服した。

 

 

フリード「へいへい!そんなちんけな銃で俺っちと戦えるってぇ~~の?」

 

 

フリードはそう言うと空高く飛び上がり、今度は我夢へ斬りかかった。

エクスカリバーの斬擊が迫りくる中、我夢は素早くジェクターガンのカートリッジを操作し、赤いラベルがついたマガジンと交換して構えた。

 

 

我夢「くらえっ!」

 

ダァァーンッ!

 

 

そして、我夢は引き金をひき、射撃した。

フリードは光弾を剣で防いだが

 

 

ボォオオオオオーー!!

 

フリード「っ!?ぅあっちぃぃぃ~~~~っ!!」

 

 

光弾が突然点火すると、フリードは炎に包まれた。

そのまま地面に落下し、バタバタとのたうち回った。

我夢が放ったのは、着弾した相手を焼き殺す火炎弾だったのだ。

 

 

フリード「やってくれるじゃないっ!優男君っ!!」

 

我夢「わっ」

 

 

炎を何とか消したフリードは再度我夢へ斬りかかるが

 

 

ギィィーーーンッ!!

 

木場「お前の相手は僕だっ!」

 

 

木場が素早くフリードの前に回り込み、新しく創造した魔剣で防いだ。

 

 

フリード「お、イケメン君、ファインプレー!!しかもその殺気!!殺しがいがあるねっ」

 

木場「うおおお!!」

 

 

木場は騎士(ナイト)の特性であるスピードで次々と剣戟を繰り出すが、フリードも堂々のスピードで互角の剣戟を繰り出していた。

 

 

小猫「祐斗先輩と互角…!?」

 

一誠「速すぎて目が追い付かねぇ…」

 

匙「あぁ…」

 

 

木場と同じ速度で戦える事に、小猫達は動揺を隠せなかった。

この剣戟が拮抗するかと思われたが

 

 

ガキィィーーーンッ!!

 

木場「くっ!」

 

フリード「イケメン君の首、討ち取ったりぃぃーーーー!!」

 

 

木場の魔剣が先ほどと同じ様に破壊された。フリードは守るものがなくなった木場の脳天へエクスカリバーを振り下ろしたが

 

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

フリード「ちっ!」

 

 

我夢の銃撃に妨害され、やむなくエクスカリバーで全弾を防いだ。

そして、一旦体勢を整える為に後方へ下がろうとするが

 

 

匙「伸びろっ!ラインよっ!!」

 

ガッシィィ!

 

フリード「なっ!」

 

 

 

匙は右手から黒いカメレオンの様なデザインの神器「黒い龍脈(アブソリューション・ライン)」から黒い触手を出し、フリードの右足に絡みついた。

 

 

フリード「くそっ!何ですかぁ、これぇ!?斬れねぇんですけど!?それと段々と力が抜けていくぅぅ~~…」

 

 

フリードはエクスカリバーで触手を斬ろうとするが、何度やってもする抜けてしまう。

力が抜けていくのは相手の力を奪う黒い龍脈(アブソリューション・ライン)のもう1つの効果である。

その証拠にフリードは先ほどよりも動きが鈍っていった。

 

 

一誠「今だ!小猫ちゃん、頼むぜ!」

 

小猫「…行ってらっしゃい」

 

 

これをチャンスと見た一誠は小猫にそう言うと、思いっきりフリードへ真っ直ぐ投げ飛ばしてもらった。

 

 

一誠「うおおおおーーーー!!くらえっ、喧嘩(クォーラル)ボンバーーーーっっ!!!」

 

フリード「ぐおおぉぉぉ!!?」

 

 

投げ飛ばされた事で加速した一誠は、そのまま左腕のラリアートをくらわせると、フリードは大きく吹き飛び、近くの壁へ叩きつけた!

 

一誠は着陸して壁を見ると、瓦礫をガラガラと音を立てて落としながらもフリードはふらふらと立ち上がった。

 

 

一誠「お前、頑丈だな…」

 

フリード「くそっ、くそがっ!!このくそったれの悪魔共がっ!!」

 

 

フリードは怒りで眼を血走らせながらそう叫び、エクスカリバーを構えると共に我夢達は身構えると

 

 

???「随分と苦戦しているではないか、フリード」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

突然、中年男性の声が聞こえると、その場にいた全員はその声のした方を振り向いた。

そこには丸眼鏡をかけ、神父の格好をした小太りの中年男性が立っていた。

 

 

一誠「何だあのおっさん?どこから現れた!?」

 

バルパー「おっさんではない。私はバルパー・ガリレイだ」

 

木場「…バルパー…ガリレイっ!!」

 

 

その名前を聞いた瞬間、木場は憎しげに呟きながら睨み付けた。

 

 

木場「お前がっ!お前が聖剣計画の責任者のバルパー・ガリレイかっ!!」

 

バルパー「ふむ…懐かしい名前を出してきたがお前は何者だ?」

 

木場「僕は聖剣計画の生き残りだっ!」

 

 

バルパーは木場の顔をじっと見つめると、突然笑いだした。

 

 

木場「何がおかしいっ!?」

 

バルパー「ははははは!!いやいや…誰かと思いきや、あの時に逃げ出した小僧だったとはな!まさか生きていたとは!!」

 

 

ゲスな笑みを浮かべるバルパーに木場だけでなく、我夢や一誠達もキッと睨み付けた。

 

 

木場「お前のせいでっ!同士達はっ!」

 

バルパー「ふぅむ、今すぐにでも私を斬り殺したい様子だが、ここで死ぬわけにはいかん。帰るとするか…。フリード、いつまで遊んでいる?早く撤退するぞ」

 

フリード「いや、バルパーの爺さん。それがですね、このくそったれの紐のせいで帰ろうと思っても帰れないんですわ」

 

バルパー「そんなラインなど、聖剣の因子の力を込めて斬ってしまえばいいだろ」

 

フリード「へいへい」

 

 

フリードは言われた通りに聖剣の因子の力を込めて斬ると、ラインは豆腐を斬るように簡単に切断された。

 

 

匙「嘘だろ…」

 

 

ラインが絶対斬れないという自信があった匙は、信じられない様子で驚愕していた。

そのままバルパー達は立ち去ろうとすると、近くの影からゼノヴィア達が姿を表した。

 

 

ゼノヴィア「バルパー・ガリレイっ!覚悟しろ!!」

 

イリナ「我夢君達、遅れてごめんね!」

 

 

2人はそう言うと、バルパーへ斬りかかるが、フリードは懐から缶の様なものを取り出し

 

 

フリード「撤退するとしますか!んじゃ、バイビっ!」

 

ゼノヴィア「待てっ!」

 

ボンッ!

 

 

フリードはそのまま床に叩きつけると、そこから眩しい光が発し、全員は眼をつぶった。

しばらくして光が収まり、眼を開けるとフリード達の姿はどこにもなかった。

 

 

木場「くそっ、逃がすか!」

 

一誠「えっ」

 

ゼノヴィア「私達も追うぞ、イリナ!」

 

イリナ「うん!」

 

我夢「ちょ…」

 

 

我夢と一誠が声をかける間もなく、木場達は素早いスピードでフリードの後を追っていった。

我夢達も追おうとするが

 

 

リアス「貴方達?何をやってるのかしら?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

全員が声のした方をぎこちない動きで振り返ると、そこには眉間にしわを寄せたリアスとソーナがそこにいた。

その瞬間、我夢達は顔を青ざめて察した。「ああ、おわったな…」と。

 

 

 

この後、我夢達はそれぞれの主に尻を何千発も叩かれ(小猫は軽い力で一発)、夜の町に彼らの悲鳴が響き渡った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数分後の駒王町外れの森。

そこでゼノヴィア達とはぐれたイリナは途中、フリード達を見つけて単独で挑むことにしたが…

 

 

イリナ「きゃああぁぁぁーーーー!!」

 

 

イリナは空から放たれた光弾をくらい、地面を転がった。

最初は互角に戦えたのだが、途中から堕天使コカビエルが乱入し、一気に不利になったのだ。

 

 

イリナ「くぅ…!」

 

 

イリナは身体の痛みに顔を歪めながらも、立ち上がった。

すると、素早いスピードで気味の悪い笑みを浮かべたフリードが姿を表した。

 

 

フリード「はっは~ん…。お仲間さんとはぐれ、1人で僕ちん達を見つけたのはいいが、まさかこんな返り討ちに逢うとは思わなかったでしょ~~~う?諦めて、その手に持っている擬態(ミミック)ちゃんを渡すってんなら生かしてあげてもいいけどYO~~!」

 

イリナ「誰が!はぁっ!!」

 

フリード「やれやれぇ」

 

 

イリナは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の効果で剣を鞭の様に伸ばして、フリードに向かって連続に斬りつけるが、フリードの持つ天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)の効果であるスピード上昇で次々と攻撃をかわされた。

 

 

フリード「うひっ!」

 

イリナ「きゃあっ!!」

 

 

フリードは隙を見つけると、イリナの右腕を斬りつけた。

そこから出血し、イリナはその痛みで怯んだ。

 

 

フリード「そらそらそらそらそらぁぁぁーーー!!」

 

イリナ「うっ!くっ!うぅ!きゃあぁぁーー!!!」

 

 

フリードはそれを見逃さず、次々と彼女の身体を斬り刻んだ。

彼女が着ているボンテージ服もどんどん切り裂かれ、胸、太もも、腕、腰が露出し、そこから血がどんどん出血した。

その苦痛で、エクスカリバーも落としてしまった。

 

 

フリード「ふん!」

 

イリナ「ぐうっ!!」

 

 

フリードは既にボロボロとなり、最早戦える力も残っていないイリナを、彼女の首を絞めながら木に強引に押し付けた。

 

 

イリナ「…離し…てよ!この…廃神者!」

 

フリード「へぇ~」

 

イリナ「くっ…ああぁぁ!!」

 

 

イリナは首を絞められる苦痛に顔を歪めながらも悪態をつくが、フリードはニヤニヤしながら首を締める力をゆっくり強めていった。

 

 

フリード「旦那ぁ~。この可愛娘(かわいこ)ちゃん、どうしますぅ~?」

 

 

フリードが上空に向かってそう尋ねると、上空に10枚の羽を生やした堕天使コカビエルが姿を表した。

 

 

コカビエル「そうだな…。そのザコは奴らの見せしめにするために使える。もっと痛め付けてやれ。何なら殺しても構わん」

 

フリード「アイアイサーーー!!」

 

イリナ「っ!?」

 

 

フリードは元気よく返事すると、首を絞めたまま、エクスカリバーの切っ先をイリナの左胸に突き刺した。

 

 

フリード「ほれほれぇ~~、その綺麗なパイオツにどんどん深く刺さっていくよぉ~~」

 

イリナ「ああああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!」

 

 

自身の胸にゆっくりと深々と刺さっていく剣の痛みにイリナは大きな悲鳴をあげた。

どくどくと赤い血が身体を伝っていき、足下の地面を段々赤く染めていった。

そして、同時に強く絞めあげてくる首の圧迫感もあり、イリナは意識を失いつつあった。

 

 

イリナ「……」

 

フリード「死ね」

 

 

しばらく拷問を続けると、イリナはついに言葉も出なくなった。その様子を見たフリードはもう飽きたのかエクスカリバーを身体に突き刺そうとしたその瞬間!

 

 

ドオォォンッッ!!

 

フリード「うおっ!」

 

コカビエル「!?」

 

 

青い光がイリナを守る様にフリードを突き飛ばした。

やがて、その青い光が晴れると

 

 

〔推奨BGM:アグル降臨〕

 

アグル「……」

 

 

フリードから解放されたイリナをお姫様抱っこする等身大のアグルが姿を表した。

 

 

コカビエル「ほう、青いウルトラマンか…」

 

フリード「何、格好つけちゃって!!よくも邪魔したな、この野郎っ!!!」

 

興味深そうに呟くコカビエルとは反対にフリードは怒りを露にすると、エクスカリバーで斬りかかるが

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

フリード「うおっ!?」

 

 

アグルはフリードの近くの足下にアグルスラッシュを放つと、姿をくらました。

 

〔BGM終了〕

 

 

 

 

イリナは意識が朦朧とする中、過去に体験した出来事を走馬灯の様にかけ巡っていった。

 

我夢、一誠、大悟の3人と出会ったこと。

 

我夢、一誠、大悟の3人と遊んだこと。

 

小学生にあがる前に両親の都合で日本を離れることを悲しんだこと。

 

ゼノヴィアと出会ったこと。

 

ゼノヴィアや仲間と共に訓練したこと。

 

久しぶりに日本に帰ってきたこと。

 

そんなたくさんな思い出を彼女は見た。

そして、最後に見たのは彼女がまだ6歳の頃、日本にいたときの夏に家族と海に行った思い出だった。

 

 

 

 

 

 

――10年前

 

紫藤 イリナは昔、男勝りの女の子であった。

その為か我夢や一誠達に男と思われていたのは、当時からである。

 

その日、彼女の家族は吉岡街近くの海水浴場に行くことになった。

 

ちなみに我夢達も誘おうとしたが、あいにくその日は誰も空いておらず、イリナの家族だけで行くことになった。

 

 

(幼少期のイリナ「うみへいってくる!」)

 

(イリナの父「あまり、遠くへ行くなよ~~」)

 

 

イリナはわかってるってと元気よく返事すると、母と一緒に海へ駆け出していった。

 

海に入ると冷たくて気持ちよく、とても心地よいものである。

それにこうして家族と遊べるので、とても楽しかった。

 

しばらくは浜辺近くで泳いでいたが、ついほんのした出来心で母の目を盗み、遠くの方へ移動した。

 

遠くの方は誰もいなく、浜辺近くよりも広々としているので、解放感があった。

ちょっとだけおよいで、ぱぱとままのところへかえろう。彼女がそう思った瞬間、突如、大きな津波が彼女を襲った!

 

荒れ狂う津波に巻き込まれ、彼女は方向感覚を失い、どこへ流されているのかさえわからなかった。

次第にその疑問は恐怖へ変わり、彼女はついに口の中に海水が入ってきた。

 

 

(幼少期のイリナ「…だれか…たすけて……」)

 

 

彼女は初めて死ぬという恐怖を知り、助けを求めた。

薄れゆく意識の中、海中で手を伸ばしたその時、1人の少年がこちらへ泳いできて、自分を海上へひきあげた。

そこで、彼女の意識は失った。

 

彼女が目を覚ますと、目の前で泣きじゃくる両親の姿があった。

イリナは両親に謝り、もう二度としないと誓うと、自分を助けてくれた少年が気になった。

 

少年の事を両親や周りにいた人から聞くと、海を眺めている少年の元へついた。

その少年は自分と年が同じくらいで、背も頭1つ高く、どこか大人びた印象を持った。

 

 

(幼少期のイリナ「あの、ありがとう!」)

 

(幼少期の???「気にするな。ただ、助けただけだ」)

 

イリナがお礼を言うと、少年は海を眺めながら言葉を返した。

 

 

(幼少期のイリナ「あのう、おれいがしたいんだけど……」)

 

 

イリナはもじもじとしながらそう尋ねた。

いつもわんぱくな彼女らしくないが、何故かこの少年の前ではそうなってしまうのである。

すると、少年はしばらく沈黙すると、「お礼は何でもいい」と返事した。

 

 

(幼少期のイリナ「ほんとう!?じゃあ、あそぼう」)

 

(幼少期の???「ああ、わかった…」)

 

(幼少期のイリナ「やったー!ありがとー!」)

 

 

少年の承諾にイリナは満開の笑顔で喜んだ。

そして、2人は夕陽になるまで遊び続けた。

イリナはこの時、同年代の男の子にない頼もしさ、少し大人びた印象に惚れた…。

7年という短い人生で初めて恋をしたのである。

 

そして、夕方になり、2人はそれぞれ帰ることに。

イリナは「またあそぼう」と言うが、少年は「それは出来ない、海外へ引っ越すから」と答えた。

すると、イリナはそんなのが嫌で嫌で泣き出してしまった。

 

困った少年は砂浜に偶然落ちていた小さな貝殻を拾うと、砂を軽く払い、イリナへ差し出した。

イリナはそれを見て泣き止み、キョトンとしていると少年は口を開き

 

 

(幼少期の???「じゃあ、これを渡すよ。貝殻に耳をあてると海の音が聞こえるらしい。だからこれを付けてば、俺がいつでも傍にいるって思えるさ……。そして、約束するよ。必ず君に会いにくるって」)

 

(幼少期のイリナ「ほんとう?」)

 

(幼少期の???「ああ、もちろんさ」)

 

(幼少期のイリナ「うん、わかった!やくそくやぶったら、おこるからね」)

 

(幼少期の???「はは、約束さ…」)

 

 

少年は夕陽が沈みゆく浜辺で再会することをイリナに約束すると、お互いの家に帰った。

 

そして、少年は海外へ渡り、イリナも両親と共に海外へ渡ったが、少年はおらず、そのまま時が過ぎ去っていった。

 

 

イリナ「(こんな昔の事を思い出すなんて…私、本当に死ぬのかな?)」

 

 

イリナは諦めた様にそう心で呟いた。

 

 

イリナ「(でも…最後に……最後にもう一度だけ…あの男の子と会いたかったな…)」

 

 

イリナが意識を失おうとする中、そう願った彼女が最後に見たものは、自身を抱き抱えるアグルの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リアスのお仕置きを受けた我夢は自宅に戻り、アーシアと共に新しいジェクターガンの弾を開発していた。

 

 

我夢「よし!じゃあ、アーシア。この弾に聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の力を込めてみて」

 

アーシア「は、はい!」

 

 

アーシアは我夢から空のマガジンを受けとると、それを握り、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を発動した。

 

我夢が新開発しようとしていたのは回復弾である。もし、アーシアがその場にいなくても回復出来れば、戦闘の際、大きく役に立つからである。

緑色の光がマガジンの中に収まっていき、成功したかと思われたが

 

 

ボンッ!

 

アーシア「きゃっ!」

 

我夢「うわっ!?」

 

 

マガジンが大きな音を立てて破裂した。

神器の強力な力に耐えきれず、爆発してしまったのである。

 

 

我夢「アーシア、大丈夫?」

 

アーシア「はい、大丈夫です」

 

我夢「そうか…ごめん。失敗したみたいだ」

 

アーシア「いえいえ…お気になさらず」

 

我夢「そうか。しかし、どうすれば神器の力を込められるんだろう…」

 

 

我夢が頭を悩ませていると、玄関からピンポンとチャイムが鳴った。

誰だろう?と思いながら我夢とアーシアは玄関に向かい、扉を開けると

 

 

我夢「イリナ!!」

 

アーシア「!?」

 

 

全身傷だらけで衣服がボロボロのイリナが床に倒れていた。

 

 

我夢「イリナ!!イリナ!!」

 

イリナ「…」

 

 

我夢はイリナの身体を軽く揺するが、彼女は気絶しており、眼を覚まさない。

 

 

我夢「アーシア、すぐに治療を!」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

アーシアは返事すると、直ぐ様、イリナの治療にとりかかった。

しかし、我夢は疑問に思うことがあった。

重症であるが、誰かが応急処置をした様に包帯を所々巻かれていた点である。

一体、誰なのか?自分を知っている人物とすればかなり絞られるが、少なくともグレモリー眷属の誰でもないということはわかった。

 

 

我夢「(一体、誰だ…?)」

 

 

我夢がそう疑問に思っている内にイリナの治療は完了した。

我夢は治療を完了したイリナを布団に寝かせると、ちょうどタイミングよく電話が鳴った。

 

 

我夢「もしもし?」

 

《一誠「もしもし、我夢か!?大変だ!コカビエルの野郎が駒王学園にこの街を破壊する小細工をしやがった!!」》

 

我夢「何だって!?」

 

アーシア「我夢さん、どうしたんです!?」

 

 

アーシアが心配そうな顔で尋ねてきた。

我夢はアーシアにも聞こえる様にスマホのスピーカーをONにした。

 

 

《一誠「それを防ぐ為にはコカビエルを倒すしかねぇらしい!俺たちや生徒会長も学園へ向かっている!我夢とアーシアもすぐ来てくれ!!」》

 

アーシア「はいっ!」

 

我夢「わかった!」

 

 

そう返事すると、我夢は電話をきり、荷支度をし、急いでマンションを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢達がマンションを出る様子を藤宮は遠くから眺めていた。

 

 

藤宮「俺は…何故、あの女を…?」

 

 

藤宮は理解できなかった。地球を救うため人類を滅ぼすと決心した自分がイリナ―――人間を助けてしまった事に。

サイコメザードの時もそうだった。理由は知らないが、何故か()()()()()()()()()()()()()…と体が勝手に動いたのである。

 

 

藤宮「俺は……俺は……くそっ!!」

 

 

藤宮は理由がわからず、近くの壁を殴った。

だが、返ってくるのは拳に伝わる痛みだけであった。

 

 

 

 




次回予告

聖書に名を残す堕天使、コカビエル。
彼の野望を阻止するため、駒王学園を舞台に壮絶なバトルを繰り広げる!

次回、「ハイスクールG×A」!
「決戦、駒王学園」!
唸れ、聖魔剣!







遅いですけど、あけましておめでとうございます!
こんな駄作ですが、今年もお付き合いよろしくお願いします!
良かったら感想、コメントよろしくお願いいたします。


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第15話「決戦!駒王学園」

好戦堕天使 コカビエル
地獄の番犬 ケルベロス
狂人神父 フリード
金属生命体 アパテー 登場!


その夜。駒王学園の校門前に数人の男女生徒の姿があった。彼らはリアス率いるグレモリー眷属とソーナ率いるシトリー眷属である。

 

 

リアス「悪いわね、ソーナ」

 

ソーナ「いえ、構いません。ですが、貴方にそれ以上の役目を任せたのですから」

 

 

それぞれ、リアス達は結界内にいるコカビエル達を企みを阻止するために戦い、ソーナは周囲の被害を最小限に減らす為に学園の周りに結界を張っていた。

 

 

ソーナ「この結界はあくまで被害を最小限に留める程度…。悔しい事ですが、コカビエルが本気を出せば、この結界も容易く破壊されます」

 

 

ソーナは相変わらずの無表情でそう呟いた。

だが、幼馴染のリアスにはわかった。彼女はとても悔しがっていると。

 

そんなやりとりをしていると、一誠の連絡を受けた我夢とアーシアが到着した。

 

 

リアス「2人共、来てくれたのね」

 

 

到着した2人にリアスは嬉しそうに声をかけた。

我夢はキョロキョロと仲間達を見るが、木場の姿はどこにもなかった。

 

 

我夢「部長、一体コカビエルは何でこんなことを?」

 

 

我夢は木場の事も心配だが、疑問に思うことがたくさんあったのでリアスに尋ねた。

すると、リアスは口を開き

 

 

リアス「ええ、簡単に言うとコカビエルは再び戦争をしたいのよ。だけど、平穏を望む組織に嫌気がさし、私の首をとって、再び三大勢力の戦争を起こすつもりなのよ。私の首をとれば、魔王であるお兄様が黙ってないからね……」

 

我夢「部長…」

 

 

そう話すリアスは怒りで握り拳を作っていた。

そんな目的の為に自分の領地で好き勝手にさせるのが許せないだろう、と我夢は思った。

すると、一誠が説明を変わり

 

 

一誠「あいつはこの学園の地下深くにある地脈に細工をしやがったんだ。町を吹き飛ばすぐらいに強力なのをな……。そこで奴はこの学園を舞台にした『ゲーム』を開催すると言ったんだ」

 

アーシア「ゲーム?」

 

一誠「ああ。ルールはこの町が爆発する前にコカビエルを倒す…。それさえすれば、町が吹き飛ぶのを止められるらしいが……くそっ、俺達だけでなく町の人達も巻き込もうとするなんて!ふざけたことを考えやがる!!」

 

 

そう説明すると、一誠は腹が立ち、拳をもう片方の掌に叩きつけた。

それを見て我夢は思った。自分たちだけを戦争に巻き込むのはまだいいが、その為にこの町の人達を巻き込むのは絶対間違っていると。

 

 

梶尾「我夢」

 

 

そんな我夢に、梶尾が結界を張りながら話しかけてきた。

我夢が顔を向けると、梶尾は真剣な眼差しで彼を見つめ

 

 

梶尾「絶対に…絶対に生きて帰れよ」

 

我夢「…!はい!!」

 

 

そう言うと、我夢は力強く返事した。

我夢は話す梶尾が悔しげな表情を浮かべているのに気付いていた。

梶尾さんも本当は一緒に戦いたい……。でも、ここで自分が結界を張るのを手伝わないと、町の人々に被害が起きるから、こうして託すしかない…と我夢は察した。

 

 

我夢「(尚更、負けられないな…)」

 

 

我夢はそう深く決意した。

 

 

 

 

 

 

 

オカルト研究部の一同は、リアスを先頭にグラウンドへ続く通路を歩いていた。

 

 

我夢「あ、そういえば部長。何故、怪獣が出現した時に結界を張らないんですか?」

 

 

我夢は思い出した様に声を出し、先頭にいるリアスへ尋ねた。

すると、リアスは顔を向け

 

 

リアス「ええ。それはね、結界を張らないんじゃなくて、()()()()()()

 

我夢「え?」

 

一誠「どういうことです?」

 

 

そう答えると、我夢だけでなく、隣で聞いていた一誠も疑問の表情を浮かべて質問した。

リアスはそういえばイッセーも言ってなかったわねと呟くと、言葉を続け

 

 

リアス「根源的破滅招来体の仕業だと思うけど、怪獣が出現した時に微弱な電磁波が発生するの。その電磁波は私達の魔力を弱める効果があるらしくて、結界を張ったとしてもすぐに消えるわ。だから、結界が張れないわけよ…」

 

我夢「そうだったんですか…」

 

一誠「なるほど…」

 

リアス「2人には申し訳ないと思うわ。でも、あと少しで私達も加勢できる特殊な結界装置も完成するらしいから、もう少し踏ん張ってくれる?」

 

 

それを聞いた我夢と一誠は快く頷くと、リアスは我が子が成長したことに喜ぶ母親の様に微笑んだ。

 

 

リアス「それじゃあ、みんな!急いでコカビエルを倒すわよ!!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 

リアスがそう高らかに宣言すると、我夢達は力強く返事した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやりとりがあった後、リアス達はグラウンドに出た。グラウンドの中央には、怪しげな魔法陣を展開しているバルパー、その隣に立っているフリード。そして、その上空にはコカビエルが退屈そうに玉座に座っていた。

 

 

リアス「そこまでよ!」

 

 

リアスがグラウンド中に聞こえるような声で発すると、バルパー達はリアス達へ視線を向けた。

 

 

我夢「お前達は、何をしようとしてるんだ!」

 

 

眉間にしわをよせた我夢が続け様に問うと、バルパーは不気味な笑みを浮かべ

 

 

バルパー「何、4本のエクスカリバーを1つにしているのだよ。まぁ、その余波でこの町は吹き飛ぶがね」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

我夢「何だって!?」

 

 

そう答えると、リアス達は一斉に驚いた。

ただでさえこの学園の地脈に仕掛けられた魔法を急いで解除する為にコカビエルを相手にしなればならないのに加えて、エクスカリバーの余波を防がなければならないのである。

 

 

リアス「…」

 

一誠「くそぉ…!」

 

 

そのあまりの好き勝手振りに、リアスと一誠は拳を強く握りしめた。

 

そんな彼らの怒りをよそにコカビエルは見下ろしながら、バルパーに尋ねた。

 

 

コカビエル「バルパー、エクスカリバーの統合はあとどれくらいかかる?」

 

バルパー「あと、5分もあれば十分だ」

 

コカビエル「そうか…お前はそのまま続けろ。さて、まさかお前達だけではあるまい。大方、魔王達が来るまでの時間稼ぎといったところだろうがまあ、いい。お前達で余興を楽しむか…」

 

パチンッ!

 

コカビエルはそう呟くと、指を鳴らした。

すると、グラウンド中に5つの大きな魔法陣が現れ、中から3つの首を持った巨大な犬が現れた。

 

 

「「「「「グガァァァァーーーーー!!」」」」」

 

リアス「ケルベロス!?」

 

 

リアスは、コカビエルが冥界にいる筈のケルベロスを連れていたことに驚愕していると、ケルベロス達は一斉にリアス達へ襲いかかった。

 

 

リアス「みんな、来るわよ!」

 

 

リアスは眷属達に戦闘態勢をとるように指示をした。 それを聞いた全員は戦闘態勢に入ると同時に我夢と一誠は自身の変身アイテムを取り出し、

 

 

我夢「ガイアァァァァァーーー!!

 

一誠「ダイナァァァァーーーーー!!

 

 

その掛け声と共に我夢はエスプレンダーを前へ突きだし、一誠はリーフラッシャーを斜め上に掲げると、2人は光に包まれ、等身大のウルトラマンに変身した。

 

 

コカビエル「ほう、お前達がウルトラマンだったのか。お手並み拝見といくか…」

 

 

その様子を上空から眺めていたコカビエルは興味深そうに呟いた。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

変身した2人はすぐさま、ガイアはガイアスラッシュ、ダイナはビームスライサーをケルベロス達へ放った。

 

 

ケルベロス「「「「「キャウウン!!?」」」」」

 

 

それをくらったケルベロス達は一斉に怯んだ。

そして、その隙に朱乃は雷、リアスは滅びの魔力を放った。

 

 

ケルベロス「「ゴギャャアアーーー!!」」

 

 

3体のケルベロスは瞬時に避けたが、避けきれなかった2体のケルベロスは一瞬で消し炭になった。

 

 

小猫「!」

 

ケルベロス「グガァァァァーーー!」

 

 

残った3体のうちの1体が前足の爪で切り裂こうと小猫へ振り下ろしたが

 

 

ガシッ!

 

小猫「えいっ」

 

ケルベロス「キャウン!?」

 

 

小猫は力強く受け止めるとそのまま押し返し、反撃のジャンプアッパーをくらわせた。

 

 

ケルベロス「ガウッ!」

 

小猫「!」

 

 

その衝撃が収まったケルベロスは右の首で小猫を丸飲みし、ニヤリと口角を歪めた。

だが、ギギギ…と口が勝手に開いていくと、若干服が破れ、唾液がついているが、全く無傷の小猫が両腕と両足を使って強引に口をこじ開けていた。

 

 

小猫「ふん!」

 

ケルベロス「ギャン!」

 

 

小猫は蹴りあげてケルベロスの前歯をへし折ると、ケルベロスはその苦痛でジタバタも悶え始めた。

小猫はその隙に脱出した。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァ………!!」

 

 

ガイアは小猫が脱出したのを見計らうと両腕を広げ、フォトンエッジの態勢をとった。

 

 

ガイア「デュアァァァァァーーーーーーーーーー!!!」

 

ケルベロス「ゴギャャアアァァァァァン!!!」

 

ドガガガァァァァァン!!

 

 

そして、エネルギーを溜め終えたガイアがフォトンエッジを放つと、ケルベロスは爆発四散した。

 

 

ダイナ「ウオオオオォォォォォ………!!デェアッ!!」

 

ケルベロス「ギャン!」

 

 

ダイナは尻尾を掴み、ジャイアントスイングの要領でケルベロスを投げ飛ばした。

 

 

ケルベロス「グルルルル…」

 

 

ケルベロスは立ち上がると、ダイナを威嚇するように唸り声をあげ、睨み付けた。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

ダイナは体内のエネルギーで光の円盤状のカッターを形成し、それをそのまま右腕から放つ切断技「ダイナスラッシュ」を放った!

 

 

ザシュ!

 

ケルベロス「……」

 

 

ケルベロスは3つの首を切断されると、そのままバタンと倒れた。

 

 

ダイナ「いよっしゃあぁぁぁーーー!!」

 

 

ダイナは嬉しげにガッツポーズをとっていると、背後から最後の1体のケルベロスが牙を剥き出して襲いかかった。

 

 

ダイナ「…!やべっ!?」

 

 

ダイナはその気配にとっさに気付いたが、避けられないと判断し、身をかためたが

 

 

???「魔剣創造(ソード・バース)っ!!」

 

ケルベロス「グギャンッ!」

 

ダイナ「!?」

 

 

突然、ケルベロスの足元から無数の剣が出現し、ケルベロスの身体を次々と刺していった。

この能力はまさか…とダイナは思い、声のした方へ振り向くと

 

 

木場「待たせたね」

 

 

そこにはダイナ達が見知った人物、木場 祐斗の姿があった。

 

 

リアス「祐斗っ」

 

ガイア「木場君!」

 

ダイナ「おせぇんだよっ!全くよ!」

 

 

行方を眩ましていた木場の登場に、リアス達は嬉しげに声を発した。

 

 

ケルベロス「グルルルル…!」

 

木場「…!」

 

ダイナ「こいつ…まだ動くのかよ!」

 

 

ケルベロスは大量に突き刺されていてもなお、動こうともがいていた。

ダイナ達が身構えた、その時!

 

 

ゼノヴィア「グレモリー眷属、助太刀するぞ!」

 

 

どこから来たのか、木場だけでなく、ゼノヴィアも飛び上がって現れた。彼女は破壊の聖剣を振るい、ケルベロスを縦に切断した!

 

彼女が着地すると、ダイナとガイアは駆け寄った。

 

 

ダイナ「ゼノヴィア…無事だったのかよ」

 

ゼノヴィア「?何故、ダイナとガイアがここに?それと、どうして私の名前を知ってるんだ?」

 

 

ゼノヴィアが疑問に満ちた表情で首を傾げていると、ガイアが変わるように前へ出た。

 

 

ガイア「ほら、イッセーだよ、イッセー。彼がダイナで僕が我夢だよ」

 

ゼノヴィア「む…確かに言われてみれば、あの時の2人組の声だ。まさか君達がウルトラマンとはな……」

 

 

ガイアの説明を受けたゼノヴィアは信じられない様に呟やくが、納得した様な表情を浮かべた。

 

 

木場「…部長、すみません」

 

リアス「いいのよ、無事で良かったわ。でも、来るのがちょっと遅かったわよ。さぁ、コカビエル?貴方の可愛いペットはこれで全部かしら?」

 

 

木場にそう言いつつ、リアスはコカビエルにそう問うと、コカビエルは不気味に笑いだした。

 

 

コカビエル「ははははは!!あぁ、全部だ!余興にしては素晴らしかったぞ!まさかほぼ無傷で倒し、ウルトラマンの戦いを見れるとは…!!」

 

リアス「次は何かしら?もしかして、貴方の出番かしら?」

 

コカビエル「あぁ、その前にこいつと戦ってもらおうか?」

 

 

コカビエルが指を指す方にリアス達は視線を向けると、

見たこともない形をした光輝く聖剣を手に持つフリードと、それを吸い寄せられる様に見つめるバルパーの姿があった。

 

 

ガイア「?何だ、あの剣は?」

 

バルパー「あぁ、遂に完成したのだよ!新しいエクスカリバーがっ!!」

 

木場「っ!!」

 

ゼノヴィア「あれが…」

 

ダイナ「マジかよ」

 

コカビエル「フリード」

 

フリード「へいへい。全く、うちのボスは人使いが荒いんだから……」

 

 

驚いている一同をよそに、コカビエルに命令されたフリードは不服そうに呟きながら、そのエクスカリバーを手にゆっくりと前へ出た。

 

 

フリード「びっくらこいてる様だけど、これが俺っちが集めた4本のエクスカリバーを1つにした超サイキョーのエクスカリバーでやんす!!いやぁ~、こいつはすげ~光栄だぜ。…では、早速試し斬りといきますか!!」

 

 

フリードはそう叫ぶと木場に斬りかかった。

 

 

木場「くっ!」

 

 

木場は魔剣で防ぐが、エクスカリバーの威力に耐えきれず、すぐさま破壊された。

 

 

フリード「ざぁんねぇ~~~ん。無駄だぴょ~~~ん!」

 

木場「くそっ!」

 

 

木場は新しく魔剣を創造して、迫りくるフリードの攻撃に身構えるが

 

 

ゼノヴィア「はっ!」

 

ガギィィンッ!!

 

 

ゼノヴィアが間一髪の所で割り込んで防いだ。

2つの聖剣がぶつかり合い、火花を散らすとつばぜり合いの状態になった。

 

 

フリード「おおっと、やるねぇ~。せっかくだから破壊の聖剣(そいつ)も頂いちゃおうかな~~?」

 

ゼノヴィア「そう簡単にさせるか!はぁっ!!」

 

 

2人は火花を散らしながら、激しい剣戟を繰り広げた。

木場はその隙にもう1本の魔剣を創造し、フリードへ振り下ろすが、フリードにまたもアッサリと破壊された。

 

 

フリード「おおっと、そんなチンケな魔剣じゃ無駄だって言ったじゃんかよ~~~。引っ込んでな!」

 

木場「くっ!」

 

 

木場は持ち前のスピードでフリードの攻撃を避け、後方へ下がると、新しい魔剣を造りだした。

 

すると、その様子を見物していたバルパーの笑い声が響いた。

 

 

バルパー「はははははは!やめておけ。お前の魔剣じゃ相手にもならんわい」

 

木場「バルパー・ガリレイ…!」

 

 

木場は悔しげに歯を噛み締めながら睨んだ。

すると、バルパーは何かを思い出したかのように相づちした。

 

 

バルパー「冥土の土産に面白い話をしてあげよう。君達が処分されたのは、聖剣を扱えなかったのではない。聖剣を扱う()()が足りなかったのだよ」

 

木場「()()?どういうことだ!」

 

 

その言葉が頭にひっかかり、木場は声を荒げて問うと、バルパーは自身が聖剣計画に至るまでの経緯を話し始めた。

 

 

バルパー「私はね、聖剣に憧れてたんだよ。幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を躍らせたからだろうな。だが、私は聖剣を扱える才能がなかった。だからこそ、聖剣を扱える者を人工的に創り出す研究に没頭する様になったのだよ、君達の様な子供達を集めてな…。しかし、君達は聖剣を扱う『因子』が足りず、研究は中々苦難したよ。そんな時、気付いたんだ。聖剣を扱うには『因子』が必要。足りないのであれば、その()()()()()()()()()()()()()()()()()とね……」

 

木場「っ!まさかっ!!」

 

バルパー「そうだ!あの日、君達を処分したのは『因子』を抜き、用済みになったからだ!!使い終わったら捨てる、ただそれだけさ!ははははははははははははははは!!」

 

木場「っ!!」

 

 

不気味に高笑いをあげるバルパーに木場は込み上げる怒りと悔しさに膝をついた。

 

 

ゼノヴィア「…そうか、聖剣使いになる際のあの祝福は……」

 

 

ゼノヴィアには心当たりがあった。聖剣使いになる際に、光輝くなにかを体に投与されることを。

 

 

バルパー「……やはり誰かが私の研究を引き継いでいるのか。教会の奴らめ。私を異端者として追放しておきながら…」

 

 

それを聞いたバルパーは憎しげにブツブツ呟くと、懐から結晶の様なものを取り出した。

 

 

バルパー「これが君達から抽出した因子の結晶さ。とはいっても、フリードに使った際に余ってしまった残りカスみたいなもんだがね…。実はフリード以外にも使ったが適合せず、死んでしまってね。まぁ、いい。私の目的は達成された。これは君にやろう。私には必要ないものだからな」

 

 

バルパーはそう吐き捨てると、木場の足元へ投げ捨てた。

木場はおぼつかない足取りでそれを拾い上げると、手で優しく包み込んだ。

 

 

木場「みんな………」

 

 

リアス達がやるせない表情で見守る中、木場はそのまま結晶を握りしめると、肩を震わせて涙を流した。

 

 

木場「ごめん、僕はずっと思ってたんだ。何で僕なんかが生き残ったんだって…」

 

 

木場は謝罪の言葉を呟いた。

 

木場はずっと後悔していた。

どうして自分が生き残った事に。

犠牲になった仲間達には自分より才能や夢がある者もいた。

 

自分は仲間達の無念の為、何としても復讐を果たす。

そう誓い、今まで鍛練してきたが、自分の魔剣ではエクスカリバーには歯が立たない。

 

木場は自身の弱さに、何もできない無力さに、悔しさに涙を流しながら次々と気持ちを漏らしていった。

 

 

木場「(僕は……、僕は1人ぼっちなんだ…!!)」

 

 

木場がそう思った瞬間

 

 

《???「1人じゃないよ」》

 

木場「え?」

 

 

少女の声が木場の耳に響いた。

その声は木場だけでなく、リアス達にも聞こえた。

すると、次々と声は増えてき、木場の周りを取り囲む様に人影が現れていった。

 

 

《???「ごめんね」》

 

《???「君1人に背負わせて…」》

 

木場「そんな…謝るのは僕だっ!君達を見捨てて、許されるはずないとわかっているのに平和に暮らしていた!!なのに……なのに、何も出来なかった!!」

 

《???「大丈夫」》

 

 

木場は結晶をより強く握りしめ、泣きながら叫んだ。

すると、隣にいた少女が微笑みながら木場の腕に優しく手をおいた。

 

 

《???「僕達は君を恨んでないよ」》

 

《???「だって、君も僕達のことを大切に思ってたじゃないか」》

 

《???「私達がついている」》

 

《???「だから、受け入れよう」》

 

 

男女の霊達?は木場に微笑みかけながらそう言うと、彼の体に溶け込む様に集まっていった。

 

 

木場「……1つに」

 

 

木場がそう呟くと、結晶は砕け、体の中に取り込まれた。

その瞬間、体が光輝いた。

その光が段々静まってくると、神聖さを思わせる白色と禍々しさを思わせる黒色のカラーリングの両刃の剣が彼の目の前に出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「な、なんだありゃ?」

 

ガイア「変わった!?」

 

 

その様子を見守っていたガイアとダイナは驚きと疑問を隠せないでいた。

 

 

リアス「まさか、『禁手(バランスブレイカー)』!?」

 

ダイナ「何ですか、それは?」

 

 

自身の聞き覚えのない言葉にダイナは尋ねると、リアスは説明をし始めた。

 

 

リアス「神器(セイクリッド・ギア)は所有者の想いに答えて成長していくんだけど、それとは別に、所有者の劇的な転じ方で成長することがあるの。それが『禁手(バランスブレイカー)』と呼ぶのよ」

 

ガイア「つまり、『想定外のパワーアップ』という訳ですね?」

 

リアス「ええ、そういうことよ」

 

 

説明が終わった一同は、木場に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

木場は目の前に出現したその剣を手に取ると、剣先をバルパーへ向けた。

 

 

木場「同士達は僕に復讐をしてほしくなかった。でも、こうして目の前にいる邪悪を撃ち取らなければならない。だから、僕は誓うっ!!過去じゃなく、未来を見るとっ!!そして、みんなを、部長達を守る剣となるとっ!!!」

 

バルパー「フリードっ!」

 

フリード「ヘイヘイ!!」

 

 

バルパーの指示を受けたフリードはエクスカリバーを構えると、木場へ向かっていった。

だが、木場はなお言葉を続け

 

 

木場「そして!これが、僕や仲間達の未来を切り開く為の力っ!!『魔剣創造(ソード・バース)』の『禁手(バランスブレイカー)』!!『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』だ!!!」

 

フリード「そんなこけおどしで俺っちに勝てるかよぉーーーー!!」

 

ガギィィーーーーーンッ!!!

 

 

そう宣言する木場にフリードは斬りかかるが、木場に受け止められた。

すると、

 

 

パキッ…

 

フリード「へ?」

 

 

フリードの持つエクスカリバーの刀身にひびが入った。

フリードは何でこうなったのかわからず、目を丸くした。

 

 

木場「僕の『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)は『聖』と『魔』、異なる2つの力が同士達の想いによって合わさった剣。折れた剣を合わせた聖剣で勝てるとでも?」

 

フリード「っ!ふざっけんなよぉーーーー!!」

 

 

フリードは天閃の聖剣の力で、木場以上のスピードで木場の周囲を動き回ると、背後から斬りかかった。

だが、

 

 

木場「はっ!」

 

フリード「なっ!?――ちっ!これならどうだっ!!」

 

 

木場にあっさりと防がれ、それによりまた刀身のひびが大きくなった。

フリードは舌打ちすると、刀身を鞭の様に変化させてから透明にすると、それを木場に向けて叩くように斬りかかった。

 

 

フリード「見えない剣筋を読めるかぁっ?」

 

木場「…」

 

 

木場は眼を閉じると、意識を集中させ、迫り来る剣擊を探った。

そして、カッと目を開くと

 

 

木場「そこだっ!!」

 

ガギィィーーーーン!!

 

パキキッ…

 

フリード「にゃにぃ~~!?」

 

 

透明の剣擊を受け止めた。

それによって更にエクスカリバーのひびが大きくなった。

フリードは信じられない様子で叫ぶと、エクスカリバーを元に戻した。

 

木場は次で決着をつけよう。そう思い、聖魔剣を構えて、フリードへ歩み寄ると

 

 

ゼノヴィア「グレモリー眷属の騎士(ナイト)

 

木場「?何かな?」

 

 

ゼノヴィアに声をかけられ、返事をした。

すると、

 

 

ゼノヴィア「私と一緒にあの聖剣を破壊しよう」

 

木場「っ!?いいのか?」

 

 

ゼノヴィアの思わぬ「共闘」という提案に、木場は目を丸くして聞き返した。

ゼノヴィアは頷き

 

 

ゼノヴィア「ああ。あれは聖剣であって、聖剣でない。醜悪なものだ。あんなものをこの世に残したくないからな…」

 

木場「わかった」

 

 

その理由を伝えると、木場は共闘することに許可を出した。

 

 

ゼノヴィア「感謝する」

 

 

ゼノヴィアはお礼を告げると、エクスカリバーを左手に持ち、呪文の様に何かを呟き始めた。

 

 

ゼノヴィア「――『ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ…。この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する』!聖剣――『デュランダル』!!」

 

 

ゼノヴィアはそう唱え終えると、彼女の右側の空間が歪むと、鎖が巻かれた大剣が現れた。

ゼノヴィアはそれを力強く掴み取ると、鎖は全て粒子状になって消え去り、美しい青い刀身の大剣が姿を現した。

 

 

バルパー「馬鹿なっ!?デュランダルだとっ!?私の研究ではデュランダル使いを作れないはずっ!!」

 

ゼノヴィア「私はイリナ達と違って、天然物の聖剣使いでね。そして、私が本来使っているのはこいつだ」

 

 

ゼノヴィアがそう言いつつデュランダルを振るうと、凄まじい程の衝撃波が発生した。

 

 

フリード「ふおおお!?」

 

バルパー「ぬっ!」

 

コカビエル「ほう…」

 

アーシア「きゃ!」

 

ガイア「凄いパワーだ…」

 

 

その衝撃波にフリードだけじゃなく、上空にいるコカビエル除く全員が吹き飛ばされそうになるが、何とか踏ん張った。

素振りをするだけでこんな強い衝撃波が発生するのかとガイアは心の中で驚いていた。

 

 

ゼノヴィア「だが、こいつは触れれば何でも斬る暴れ馬でね。私でも制御しきれないんだ。だから、普段は破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を使うようにしているんだ」

 

 

ゼノヴィアはそう言い終えると、デュランダルを何度も振るうと、それから発するいくつもの光と衝撃波がフリードへ襲いかかった。

 

 

フリード「うおおおっ!?ざけんな!ざけんなぁっ!!」

 

 

フリードはそれを避けながらゼノヴィアへ斬りかかろうとするが

 

 

木場「遅いよ」

 

フリード「なっ―――!?」

 

ガァキィィィーーーーーーン!!!

 

 

ゼノヴィアに気を取られて木場に接近されていることに気付かなかったフリードは、すれ違い様にエクスカリバーごと木場に一閃された。

 

 

木場「……」

 

フリード「ごはっ…!」

 

 

木場はすれ違いの後、剣に付いている血を振り払うと、フリードの身体から鮮血が吹き出した。

 

 

パキィィンッ!!

 

フリード「…ばか…な……」

 

 

それと同時にエクスカリバーは粉々に砕け散り、フリードは倒れた。

 

 

木場「やったよ…みんな……。僕達の想いが聖剣を越えたんだ…」

 

 

木場は自身の手に持つ聖魔剣にそう呟いていると、一時始終を見ていたバルパーは信じられない表情を浮かべていた。

 

 

バルパー「あ、ありえない……『聖』と『魔』が融合することなど…………!そっ、そうか!もし、そのバランスを司る存在が大きく崩れてるとしているのなら、魔王だけでなく、k――ごほっ!?」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

何かに気付いたバルパーだったが、その瞬間。コカビエルの光の槍に身体を貫かれ、一瞬で息絶えた。

 

 

コカビエル「楽しい余興だった、バルパー。お前は非常に優秀な男だった。だが、もう用済みだ。安心してあの世に行け…」

 

 

コカビエルは冷たくなったバルパーに冷ややかにそう言うと、地上に降り立ち、リアス達に視線を向けた。

リアス達は一斉に身構えると、コカビエルはニヤッと口角をあげ

 

 

コカビエル「さあ、余興はこれまでだ!今度は俺が相手になってやろう!!全員かかってこい……と言いたいところだが、さすがにウルトラマン2人だと1人1人じっくり楽しめないのでな!どちらか()()()と戦っててもらおう!!」

 

小猫「()()()…?」

 

パチィン!

 

 

コカビエル以外に誰がいるのかとリアス達が疑問に思っているのを尻に、コカビエルは指を鳴らすと、上空にワームホールが出現した!

 

 

ガイア「まさか…!」

 

朱乃「そんな…!」

 

ゼノヴィア「コカビエルが!?」

 

リアス「破滅招来体と!?」

 

 

コカビエルの合図と共に現れたワームホールに一同は驚いていていると、中から金属の塊の様なものがゆっくりと姿が現わしていった。

 

 

コカビエル「さあ、来い!アパテー!!」

 

 

コカビエルがそう叫ぶと同時に、その金属の塊は人型の姿を変えると、地上へ土煙を立てながら降り立った。

その外見は1つ目に銀色の体。胸の中心にはガイアのライフゲージに似た結晶体を持つ、根源的破滅招来体が送り込んだ新たな怪獣「アパテー」がその姿を現した。

 

 

アパテー「パオォーーー!」

 

ガイア「っ!まずい!結界がっ!!」

 

 

アパテーの出現と共に、ソーナ達が張り巡らした結界が消えかかろうとしていた。

このままだと町に被害が起きると思った否や、すぐにガイアはアパテーに掴みかかった。

 

 

リアス「我夢!」

 

ガイア「グァ…デュアッ!」

 

アパテー「パオォーー!」

 

 

ガイアはジタバタと抵抗するアパテーを両腕で抱えあげると、アパテーを町から離れた場所へ飛んでいった。

 

リアスはガイア―――我夢が何を考えているか汲み取ると、

 

 

リアス「小猫!朱乃!2人は我夢の援護に向かって!」

 

 

2人にそう指示し、小猫と朱乃は頷くと、ガイアの後を追っていった。

リアスは2人が飛び去っていくのを確認すると、コカビエルへ視線を向け

 

 

リアス「さあ、私達が相手よ!!」

 

コカビエル「面白い!さぁ、かかってこい!!」

 

 

そうコカビエルへ言うと、リアス、ダイナ、木場、そしてゼノヴィアの4人はコカビエルへ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガイアは駒王町から離れた無人地帯上空に着いた。

 

 

ガイア「デヤッ!!」

 

アパテー「パオォォーー!?」

 

 

アパテーを地面に投げ飛ばすと、ガイアは巨大化して地上に降り立ち、戦闘態勢をとった。

アパテーも素早く立ち上がると巨大化し、ガイアと同じファイティングポーズをとった。

 

 

アパテー「パオオォォーー!!」

 

ガイア「デュアッ!!」

 

 

アパテーとガイアは身構えながら、ゆっくりと歩き周り、間合いをとっていた。

どちらかが仕掛けてくるかわからないという均衡状態。

そんな緊張の中、先に破ったのは

 

 

アパテー「パオォォォォォーーーーーーーー!!」

 

ガイア「!」

 

 

アパテーだった。アパテーは走ってくると、ガイアの胸元めがけてストレートパンチを放った。

 

 

ガイア「デュア!ダッ!」

 

アパテー「パオォーー!!」

 

 

ガイアは素早く避けると、アパテーの腕を掴み、あばらに目掛けて蹴りを入れた。

そして、そのまま背負い投げの態勢に入り

 

 

ガイア「ダァァァァーーーーー!!」

 

ドォォォーーーーン!

 

アパテー「パオォォォー!パオォォォー!」

 

 

そのままアパテーを背負い投げで凄まじい土煙が立つほどに地面へ叩きつけた。

 

 

ガイア「!」

 

 

すると、叩きつけられたアパテーは液体状に変化すると、ガイアから少し離れた場所へ移動し、再び人型の姿に戻った。

 

 

ピカーーーンッ!!

 

ガイア「っ!?」

 

アパテー「パオォォォーー!!」

 

 

アパテーは身体を発光させたかと思うと、体に騎士の様な装甲を纏わせた。

更に、アパテーは右腕を槍に変化させると、ガイアへ向かってきた。

 

 

アパテー「パオォー!パオォー!!」

 

ガイア「っ!!」

 

 

アパテーはガイアに近寄ると、素早い突きを繰り出した。

ガイアは先程とは違う動きにガイアは驚きながらも紙一重で避けていくが、攻撃はどんどん速くなっていった。

ガイアは精一杯避けていくが

 

 

ガイア「グアァァァーーー!!」

 

 

突きが胸元に命中し、火花を散らしながら後方へ吹き飛ばされた。

 

 

アパテー「パオォォォーー!!」

 

 

アパテーはこれは好機とばかりに自らを無数の細長い槍に変化させると、起き上がろうとしているガイアの周りを檻の様に囲んだ。

そして、そのまま大量の電流を流した。

 

 

ガイア「グアァァァァーーー!!」

 

 

閉じ込められたガイアは大量の電流を流され、身動きできず、次々とダメージを受けた。

 

 

[ピコン]

 

 

そして、胸に輝くライフゲージも青から赤へと点滅を始めた。

 

 

ガイア「グアァァァァーーーーーー!!」

 

 

ガイアは次々と襲いかかる電流に悲鳴の様に叫んだ。

このままだとやられる!と思ったその時。

 

 

バチーーーーィィッ!!

 

ガイア「?」

 

 

空から雷が落ちてくると、ガイアの周りを囲んでいた無数の槍に直撃し、吹き飛ばした。

槍の檻から解放されたガイアは上空を見ると、そこには悪魔の翼を広げ、ニコニコと微笑んでいる朱乃と小猫の姿があった。

 

 

朱乃「我夢君、大丈夫です?」

 

ガイア『はい、助かりました。ありがとうございます。…どうしてここへ?』

 

 

ガイアはふらふらと立ち上がりながらテレパシーでそう問うと、小猫はサムズアップし

 

 

小猫「…部長の指示で、助けに来ました」

 

ガイア『部長が…?』

 

 

そう答えると、ガイアは思った。

リアスは自分の考えを何も言わずとも理解してくれる事に感動と、自分で解決しようというのを見透かされていた事に少々驚いた。

 

 

アパテー「パオォォォォォォォーー!!」

 

「「「!!」」」

 

 

そんなやりとりをしていると、槍はアパテーの姿に戻り、今にでも襲いかかってくる雰囲気をだしていた。

 

 

ガイア「…!」

 

 

そんな時、ガイアは何かに気付くと、朱乃と小猫にテレパシーを引き続き行った。

 

 

ガイア『朱乃さん、小猫。おそらく、あいつは意思を持つ金属の集合体……金属生命体だと思うんです』

 

朱乃「金属?」

 

小猫「…生命体?」

 

 

そう驚く2人にガイアは頷くと、言葉を続け

 

 

ガイア『あいつの質感、性質、材質から考えると金属だとしか考えられないんです。金属は電気を通しやすいですからね』

 

朱乃「―!だから、私の雷が通用したのですね?」

 

ガイア『はい。ですが、あいつは僕の動きを完全にコピーしていて、僕がまともに戦っても勝ち目がないです』

 

朱乃「!」

 

小猫「そんな…」

 

 

今まで様々な敵を倒してきたガイアでも、勝てないと悟った。

この事実に2人はショックを受けていると、

 

 

ガイア『なので、頼みがあるんです』

 

 

ガイアは2人にある作戦を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

小猫はアパテーの足元を駆け回りながら、攻撃をしていた。

 

 

小猫「…こっち」

 

アパテー「パオォォォーー!!パオォーーー!!!」

 

 

アパテーは右腕の槍で足元の小猫に攻撃するが、小猫は素早く避けた。

アパテーが小猫に気をとられていると

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

アパテー「パオォォォォォーー!!」

 

ガイア「グアッ!!」

 

 

ガイアがパンチを繰り出した。

だが、アパテーはそれを受け止めると蹴りを入れて、吹き飛ばした。

ガイアは地面にぶつかりながら転がると、入れ替わる様に跳躍した小猫がパンチを繰り出した。

 

ガイアの立てた作戦とはアパテーの体を凍らせ、強力な力で破壊するという作戦である。

ガイアには相手を凍らせる技があるが、怪獣を凍らせる程の力はない。そこで、朱乃に魔法で大量の水を生成してもらっているが、1分くらい時間がかかる。

なので、今、ガイアと小猫はその時間稼ぎをしているのだ。

 

 

朱乃は意識を集中させ、魔方陣を大きく形成していった。

そして、ある程度まで大きくなると、2人に準備が整ったことを告げた。

 

 

朱乃「準備完了しましたわよ!」

 

小猫&ガイア「「!!」」

 

朱乃「はあっ!」

 

 

その合図を聞いた2人は素早くアパテーから離れると、朱乃は魔方陣から大量の水流を放射した。

 

 

アパテー「パオォォォーー?」

 

 

水を体全身に受けながらも、アパテーは抵抗して朱乃のもとへ向かおうと歩を進めた。

 

 

ガイア「デュア……!」

 

 

ガイアは一端、両腕を斜めに伸ばしてから垂直に構え直すと、胸の前でクロスさせた。

 

 

ガイア「ジョワッ!!」

 

 

そして、そのまま両手をまっすぐ朱乃の放つ水流へ向けると、冷凍光線「ガイアブリザード」を発射した。

 

 

パキキキ……

 

 

その冷凍光線は水流の流れに乗って凍っていくと、アパテーの体を一瞬で凍りつくした。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ……!!」

 

 

ガイアは素早く両腕をTの字に組み、エネルギーを溜めると

 

 

ガイア「デュアァァァァァァァァーーーーー!!!」

 

ドガガガガァァァァァーーーーーン!!!

 

 

そのままクァンタムストリームを放ち、激しい破壊音と共にアパテーを木っ端微塵に吹き飛ばした!

 

 

小猫「やった…」

 

朱乃「やりましたわ♪」

 

 

勝利の光景を見た小猫と朱乃は心から喜んだ。

だが

 

 

[ピコン]

 

ガイア「グアッ…」

 

 

アパテーからかなりのダメージを受けたガイアは、崩れ落ちる様に倒れた。

そして、赤い光に包まれると我夢の姿へ戻った。

 

 

朱乃「…!!」

 

小猫「我夢先輩!」

 

 

それを見た朱乃と小猫は我夢に駆け寄ると、小猫は彼を抱え起こした。

 

 

我夢「はぁ…はぁ…。やりましたね……小猫、朱乃さん」

 

 

我夢は額から冷や汗を流し、迫りくる痛みに耐えながら、笑顔で答えた。

 

 

朱乃「お疲れ様ですわ、我夢君。でも、少し無茶が過ぎますわ」

 

我夢「はは…。でも、無茶でもしないと勝てない事が…っ!いっつ……!?」

 

 

心配そうな表情で話す朱乃に我夢は作り笑いでそう答えるが、胸元に激痛が走り、顔を歪めた。

それを見ていた小猫は、彼の手にそっと重ねた。

 

 

小猫「…先輩、1人で無理しちゃダメです。もっと自分を大事にしてください。もし、何かあったら、私もみんなも悲しみますから……」

 

 

そう話す小猫の不安そうな表情を見て、我夢は思った。

彼女はグレモリー眷属の中でも仲間思いのある人物であると…。

そして、もし、単独行動して何かがあったら、彼女は人一倍悲しむと……。

そう思った我夢は小猫に微笑みかけると、

 

 

我夢「…小猫。わかったよ。これからは無茶はしない」

 

小猫「本当ですか…?」

 

我夢「ああ、約束だ」

 

 

我夢は小猫とそう約束すると、朱乃へ顔を向けた。

 

 

我夢「朱乃さん、部長達は今もコカビエルと戦っているんですよね?」

 

朱乃「ええ、おそらくそうですわ。私達は貴方を家に送りますから、休んでいてください」

 

我夢「そんな…僕も行きますよ!ここまで来たんですから、部長達がコカビエルを倒すのを見届けてさせて下さい!」

 

 

その言葉に朱乃は困った様にため息をついた。

 

 

朱乃「我夢君?小猫ちゃんにさっき約束したばかりでしょ?無茶しないって。それに、貴方は先程の戦いでエネルギーを消耗してますわ。アーシアちゃんの神器でも回復できませんわ」

 

 

朱乃はそう説得すると、我夢はハハッと笑い

 

 

我夢「大丈夫です。戦えなくても、頭は使えますから」

 

朱乃「あらあら、うふふ♪」

 

 

そういたずら気に微笑むと、朱乃はいつもの様に笑った。

 

 

朱乃「なら、仕方ありませんね。小猫ちゃん、我夢君をしっかり支えて下さいね」

 

小猫「…はい」

 

我夢「…!ありがとうございます!!」

 

 

朱乃は我夢を同行することに決めると、小猫に我夢を抱えてもらうことを頼むと、3人は駒王学園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…

 

 

我夢「え!?」

 

朱乃「これは…!?」

 

小猫「…!?」

 

 

駒王学園に到着した3人はグラウンドの光景に驚きを隠せなかった。

 

校舎は破壊しつくされ、瓦礫の山となっていた。

これはまだわかる。相手はコカビエルだから、学園が無傷な訳ないと。

 

しかし、問題はそこではない。

 

 

コカビエル?「……」

 

ダイナ「グアッ!アァッ……!」

 

[ティヨン]

 

 

問題なのは、異形の姿となったコカビエルが余裕の表情で、すでにライフゲージが点滅しているダイナを踏みつけている事だった。

 

 

 

 

 




次回予告

謎の球体「スフィア」と融合し、強力な力を得たコカビエル。

ゼノヴィア「そんな……」

そして、誰もが予想だにしない衝撃の事実とは!?

次回、「ハイスクールG×A」
「終焉の(つるぎ)
君はついてこれるか?









アンケートの結果、レイキュバスが登場決定しました!
どこで登場させるかはランダムですので、首を長くしてお待ちください。

良かったら、感想&コメントよろしくお願いします。


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第16話「終焉の(つるぎ)

好戦堕天使 コカビエル 
宇宙球体 スフィア
堕天合成獣 ネオコカビエル 登場!


時間は遡り、ガイア、小猫、朱乃がアパテーと戦っている頃。

リアス達はコカビエルと壮絶な戦いを繰り広げていた。

 

 

リアス「はぁぁぁーーーーっ!!」

 

コカビエル「ふんっ…」

 

 

リアスは無数の滅びの魔力を連射すると、コカビエルは鼻で笑い、それら全てを片手で弾いた。

その際にできたわずかな隙に、接近したゼノヴィアと木場が斬りかかるが

 

 

キィィィーーーーーン!

 

ゼノヴィア「くっ!」

 

木場「っ!」

 

 

コカビエルは素早く両手に光の槍を形成して、2人の剣撃を受け止めた。

2人がいくら力を込めても、コカビエルはびくともせず、あるのはギギギ…と剣同士が擦れあう音だけだった。

コカビエルは余裕の笑みを浮かべ

 

 

コカビエル「ふんっ!その程度の剣さばきでは、この俺を斬ることはできんっ!!」

 

木場「ぐあっ!」

 

ゼノヴィア「っあ!」

 

 

そう言うと、両手に持つ光の槍で2人を吹き飛ばした。

 

 

ダイナ「ダァァァーーーーー!!」

 

 

吹き飛ばされた2人と入れ替わる様に、ダイナがジャンプキックを繰り出した。

コカビエルは2本の光の槍をクロスさせて、防いだが

 

 

コカビエル「ぐおっ!?」

 

 

あまりの威力に光の槍は砕け散り、そして、その衝撃で大きく後方へ吹き飛んだ。

ダイナは着地すると、素早く右腕にエネルギーを溜め

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

すかさず、右腕から照射する青い光線「フラッシュバスター」をコカビエルへ放った。

 

 

コカビエル「ぐおおおおおおーーーーーー!!!」

 

 

コカビエルは体勢を整える間もなく直撃し、大爆発を起こした。

 

これを見て、誰もがやったか?と思うだろう。

だが、忘れてはいけない。コカビエルは堕天使の中でも最上級の存在、しかも組織の幹部である。

並の堕天使はこの攻撃で倒せるが、コカビエルはそう簡単には倒せない。

 

そう思って爆心地を警戒していると、爆煙が晴れていき

 

 

ダイナ「やっぱ、この程度じゃくたばらねぇか…」

 

 

完全に晴れると、体中に傷を負いながらも立ち上がっているコカビエルの姿があった。

その光景を見て、やはりかと思っていると

 

 

コカビエル「……フッ、フハッ、フハハッ、ファーーハハハハハハハハハーーーーーーーーー!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

コカビエルは突然、狂った様に笑い始めた。

その様子にリアス達は狂気や疑問といった感情を感じた。

 

 

リアス「コカビエル!貴方、何が可笑しいの!!」

 

 

そのあまりの狂気にしびれをきらしたリアスは、思わず怒鳴る様に問うた。

すると、コカビエルは不気味に笑いつつも、その理由を話し始めた。

 

 

コカビエル「フハハッ!何、やはり戦いは良いものだと思ったまでだ。自身がもつ力、技を全てを用い、血肉を滾らせて戦う―――それが戦いの醍醐味だ。あの大戦は俺にとって、何よりの楽しみだったのだ……だが!」

 

 

コカビエルは言うと、先程の笑みを浮かべた表情から一変、怒りに満ちた表情へ変わった。

 

 

コカビエル「だが、どうだ!!アザゼルはもう戦いを起こすつもりはないと言い、神器(セイクリッド・ギア)の研究に没頭し始めた!!下らない…!もう1度戦えば我々、堕天使の勝利は確実というのにっ!!!」

 

 

コカビエルはそう叫ぶと、ダイナへ指を指し

 

 

コカビエル「それに、何よりも憎いのはウルトラマン!貴様らだ!!貴様らが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ!!」

 

ダイナ「!?」

 

リアス「えっ!?」

 

ゼノヴィア「どういうことだ!?」

 

木場「何を言って…!?」

 

 

リアス達はどういう事だと疑問になった。

その反応を見たコカビエルはほう…と口を漏らし

 

 

コカビエル「そうか、まだ知らされてないのか?ふん、魔王共も己のメンツが大事か……。まあ、いい」

 

 

そう呟くと新しい光の槍を作り出し、ダイナへ向け

 

 

コカビエル「チャンスはめぐった。()()()が授けたアパテーと共に憎きウルトラマンをこの手で殺せるのでな!!」

 

 

そう叫ぶと、ダイナへ向かって走り出した。

身構えるダイナにコカビエルは光の槍を振り下ろした。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

コカビエル「ぐおっ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

ダイナはそれを片手で受け止めると、もう片方の手でコカビエルの腹部を殴ると、素早く持ち上げ、前方へ投げ飛ばした。

 

 

コカビエル「ぐっ!」

 

 

コカビエルは地面に叩きつけられる衝撃に顔を歪めながらも体を起こすと、光弾を放った。

 

 

ダイナ「グアッ!!」

 

コカビエル「しゃあっ!」

 

 

光弾はダイナに命中し、胸元から火花を散らして怯んだ。

コカビエルはその隙にすかさず光の槍を投げ飛ばしたが

 

 

リアス「させないわ!」

 

バチィィーー!

 

 

リアスが滅びの魔力でダイナへ向かって投げられた光の槍を破壊した。

 

 

コカビエル「ふんっ」

 

 

コカビエルは中々やるじゃないか…と言わんばかりに鼻を鳴らすと、今度はリアスへ向かって走り出した。

 

 

コカビエル「つあーーっ!」

 

 

コカビエルはリアスへ接近すると、力強く握り拳を作ると、その拳で殴りかかった。

 

 

リアス「っ!くらいなさい!!」

 

 

リアスは素早く上空へ上昇して回避すると、破滅の魔力をコカビエルへ連射した。

 

 

コカビエル「ふんっ!その程度か」

 

 

コカビエルはそれを素早く腕で払いながら上昇し、リアスのもとへ接近していったが

 

 

ダイナ「ハーーーーッ!」

 

コカビエル「なっ!?」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

コカビエル「ぐほぉっ!?」

 

 

ダイナがその間の上空に跳躍して割り込むと、コカビエルの顔面目掛けてドロップキックを放った。

それをくらったコカビエルは、鼻から大量の血を撒き散らしながら地面へ落下していった。

 

 

木場「やっ!!」

 

ゼノヴィア「はあっ!!」

 

コカビエル「ぬあぁっ!」

 

 

地面へ落下していく中、木場とゼノヴィアは跳躍すると、すれ違い様にコカビエルの体を斬った。

コカビエルはその痛みに苦痛の声を漏らしながら、土煙を立て、頭から地面へ激突した。

 

 

ダイナ「シュワッ!!」

 

 

ダイナは立て続けに腕を十字に組み、ソルジェント光線を放った。

 

 

コカビエル「ぐおおおおおおーーーーっっ!!!」

 

ドガァァァァァーーーーン!

 

 

光線はコカビエルに直撃し、激しい爆発音と土煙と共に爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が晴れると、グラウンドには大きなクレーターが出来ており、その中心には傷だらけの体を大の字にして倒れているコカビエルの姿があった。

 

 

リアス「イッセー、コカビエルは生きてるかしら?」

 

 

倒れているコカビエルを見たリアスはダイナに視線を向けて尋ねると

 

 

ダイナ「いや、あいつはまだ生きてますよ。殺さない程度に光線の威力を調節したんで。コカビエルが生きてないと部長達も困るでしょ?」

 

リアス「ええ、根源的破滅招来体とどういう関係なのか教えてもらわないとね…」

 

 

ダイナにコカビエルの生存確認をしたリアスは彼に頷くと、ダイナと一緒に地面へ降り立ち、コカビエルのもとへ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

コカビエル「ぐっ…ぐうぅ…!」

 

 

コカビエルは仰向けの状態から何とか立ち上がろうとするが、体にダメージが響いてるせいで力が入らず、すぐに倒れてしまう。

 

そんな事を繰り返していると、リアスを先頭にダイナ、ゼノヴィア、木場がこちらへ近付いてくるのが見えた。

その光景を見て、コカビエルは地面の砂を悔しげに握りしめた。

 

 

コカビエル「(このまま、俺は捕縛され、その間、“平和”という何の刺激のない生活を味わわされるのか?ふざけるな…!あの血肉踊る戦いをしたいが為、組織を裏切り、ここまで来たのだっ!…だが、奴ら…特に『ウルトラマン』っ!!まだ戦い方が未熟とはいえ、ここまで追い詰められるとは……!!)」

 

 

コカビエルは悔しかった。

自身の目的をまたウルトラマンに阻まれるということに。

ダイナ――一誠はまだ戦いの経験が浅い為、それに関してはコカビエルが上だが、ダイナはそれを補う程のパワーがある。

それ故、コカビエルはどう足掻いても力負けしているので、勝てないのである。

 

 

コカビエル「(力だっ!奴を同等…いや、それ以上の力があればっ!!)」

 

《???「ならば、与えてやろうか?」》

 

コカビエル「なっ!?お前は…!」

 

 

その願いに答えるかの様に、突然ら脳内にどこか聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

コカビエルはすぐに周りを見渡したが、どこにもその声を発した人物は見当たらなかった。

 

さらに、その声はコカビエルだけしか聞こえておらず、リアス達には聞こえていない様で、声の持ち主は自身にアパテーを授けてくれた女性の声であることがすぐにわかった。

 

 

コカビエル「与える…だと?ならば、俺にウルトラマンと同等の力をくれっ!!そうすれば、俺は絶対に負けんっ!!」

 

 

コカビエルはそう叫んで懇願すると、女性の声はしばらく沈黙すると、ふっと鼻で笑うと

 

 

《???「…わかった。その願いを叶えてやろう。空を見ろ」》

 

コカビエル「……!?」

 

 

了承してもらったコカビエルは言われるがままに空を見上げると、ワームホールが再び開き、その中から謎の班模様のUFOの様な物体が数体現れた。

 

 

ダイナ「!」

 

ゼノヴィア「新しい敵かっ!!」

 

リアス「みんな、気を緩めないで!」

 

 

新しく現れたその物体に、リアス達は立ち止まり、身構えた。

ワームホールから現れた。それだけでこのUFOの様な物体が敵であることがリアス達には直感でわかった。

 

リアス達が警戒する中、コカビエルはあれは一体何かと尋ねた。

すると、謎の女性の声は

 

 

《???「あれはスフィア」。他の生物と融合することで、強大な力を持たらす生命体だ》

 

コカビエル「ほう…」

 

 

そう答えると、コカビエルはニヤリと口角をあげた。

本当にスフィアがウルトラマン以上の力を持たらすのかといった疑問はどうでもいい!ただ、力。この不利な状況を覆す力があればいい、とコカビエルは迷いなく思った。

 

そう思っていると、上空のスフィア達はコカビエルのもとへ近寄ってき、スフィアはゼリーの様に溶けて引っ付き、融合を始めた。

 

 

コカビエル「ふはは!段々と力が湧いてくるぞぉ…!」

 

 

融合していく中、コカビエルは次々と湧いてくる力に喜びでうち震えていた。

だが、

 

 

コカビエル「うおお…!?(な、何だ!?い…意識が…!)」

 

 

突然、意識が無くなっていく感覚に襲われ、苦しみだした。

まるで、脳内を誰かに乗っ取られる…そんな感覚がコカビエルを力が湧いてくると共に襲ってきたのである。

 

コカビエルが苦しんでいる中、また彼の脳内に謎の女性の声が語りかけてきた。

 

 

《???「伝え忘れていたが、スフィアは融合する際、宿主の意識を乗っ取るのだ」》

 

コカビエル「な…ん……だと!?ふ…ふざ……けるな!!」

 

《???「意識が乗っ取られるか否かは、貴様次第だ。精々あがくがよい」》

 

 

謎の女性の声は冷酷に最後にそう告げるのを最後に、一切語りかけてこなかった。

 

 

コカビエル「ふざけるなぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

 

コカビエルは上級堕天使である自身がたった1人の女にまんまと利用された事に怒りのままに叫んだ。

その言葉を最後にコカビエルは完全にスフィアと融合し、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「何だよ、あれ!」

 

木場「合体した…」

 

 

リアス達は目の前の光景に驚いていた。

新しい敵が現れたと思ったら、コカビエルの体に次々と溶けるように融合していったのである。

 

全てのスフィアがコカビエルと融合し、形を変えていくと、その姿が露になった。

 

 

コカビエル?「フシュー……」

 

 

その姿は口から白い蒸気を吐き、全身が黒い岩の様な皮膚に覆われており、両腕に2本爪の大きな鉤爪、額は1本の鋭い角、さらに尾てい骨にあたる箇所からは大きな尻尾を生やしていた。

そして、上級堕天使の特徴である10本の翼は、所々黒い岩の様な皮膚に覆われた気味の悪いものになり、血の様に真っ赤に染まっていた瞳はスフィアと同じ斑模様になっていた。

 

その姿は人とは程遠い、最早、怪獣と呼ぶのが相応しい姿―――コカビエルはスフィア合成獣「ネオコカビエル」となったのである。

 

 

リアス「イッセー、裕斗!いつ仕掛けてくるかわからないから気をつけて!」

 

 

全員がその姿を見て驚いている中、はっ!といち早く気を取り戻したリアスはダイナと木場に指示をだした。

一向は身構えると

 

 

ネオコカビエル「ヴワァーーーッ!!」

 

リアス「来るわよっ!」

 

 

ネオコカビエルは雄叫びをあげながら、走り出した。

 

 

リアス「はっ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

リアスは滅びの魔力を、ダイナはダイナスラッシュをネオコカビエルへ向けて数発放った。

 

 

ネオコカビエル「ガウッ!!ヴワァァーーー!!」

 

 

だが、ネオコカビエルは走る速度を落とさず、両腕の鉤爪で防いだ。

全弾防ぐと、そのまま疾走し、両腕の鉤爪を近くにいた木場へ振り下ろした。

 

 

ガギィィィーーーーン!

 

ネオコカビエル「ヴワッ!!」

 

木場「…ぐっ!!何て力だっ…」

 

 

木場は素早く聖魔剣で防ぐが、そのあまりの剛腕に両腕がミシミシ…と鈍い音がした。

 

 

ゼノヴィア「理性まで怪獣と化したか!おおおお!!」

 

 

その間にゼノヴィアはデュランダルとエクリカリバーを手に取ると、飛び上がった。

そして、そのままネオコカビエルの背後から斬りかかったが

 

 

ガギィィィーーーン!!

 

ゼノヴィア「くっ!」

 

 

ネオコカビエルの尻尾がまるで意思を持つかの様に動き、デュランダルとエクリカリバーの二刀流を防がれた。

ゼノヴィアはそれでもすかさず体勢を変えて何度も斬りかかるが、その度に尻尾に防がれてしまう。

 

そんな状態が続いていると、木場を押さえつけながらぐりんっ!と首を180度回転させた。

 

 

ネオコカビエル「ヴワッ!」

 

ゼノヴィア「ぐはっ!!」

 

 

額の角が伸ばすと、そのままゼノヴィアの左肩を貫いた。

肩を貫かれた痛みでできた僅かな隙にネオコカビエルはその大きな尻尾でゼノヴィアの腹部を捉え、なぎはらった。

 

 

ゼノヴィア「ぐあっっ!!」

 

アーシア「ゼノヴィアさんっ!」

 

 

ゼノヴィアは大きく吹き飛び、地面へ何度も身体をぶつけながら転がっていった。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ネオコカビエル「ギィシャァ!!」

 

 

ダイナは吹き飛ばされた彼女と入れ替わる様に疾走すると、キックスライディングで地面を滑りながらネオコカビエルの両足をひっかけ、後ろのめりに倒れさせた。

 

 

木場「すまない、イッセー君!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

その隙に木場は脱出すると、起き上がったダイナの隣に並んだ。

 

 

ネオコカビエル「ヴワーーーッ!!」

 

 

ネオコカビエルは起き上がると、首を正面に戻し、ダイナへ向かって駆け出した。

ある程度まで近付くと、そのまま両腕の鉤爪で斬りかかった。

 

 

ダイナ「ハッ!ハッ!ハッ!」

 

ネオコカビエル「ヴガゥ!!ヴガゥ!!」

 

 

ダイナはバク転で何度も襲いかかる鉤爪を回避した。

 

 

ダイナ「ハッ!シュワッ!!」

 

 

そして、僅かに出来た隙に横転して脱出すると、頭目掛けてフラッシュバスターを放った。

 

 

ネオコカビエル「ギィシャァ!?」

 

 

それをくらったネオコカビエルは叫びながら火花を散らしながら後ずさった。

 

 

木場「はぁーーー!」

 

ゼノヴィア「おおおぉぉ!!」

 

ネオコカビエル「ギィシャァーーー!!」

 

 

更に追い討ちをかけるように、木場とアーシアに治療してもらったゼノヴィアが、ネオコカビエルの胸元をX字に切り裂いた。

 

 

リアス「みんな!下がって!」

 

「「「!!」」」

 

 

リアスの声を聞き、3人はネオコカビエルから離れると、リアスは大きめな滅びの魔力の塊をネオコカビエルへ放った。

 

 

ネオコカビエル「ガ――――」

 

 

ドガァァァーーーーーーン!!

 

 

ネオコカビエルに直撃すると、大きな爆発が起き、周囲に衝撃波が発生した。

 

 

ダイナ「やったか!?」

 

 

ダイナは立ちあがる爆煙を見ながらそう呟くが

 

 

ネオコカビエル「……」

 

リアス「…簡単にはいかないわね」

 

 

ネオコカビエルは五体満足の状態で立っていた。

しかもその皮膚は固いのか、切り裂かれた箇所の傷は浅く、体は土汚れがついているだけの状態である。

 

リアス達はいつ襲いかかってきても対処できる様に身構える。

 

 

ネオコカビエル「…」

 

 

すると、ネオコカビエルは突然、拳を振り上げた。

その動きにリアス達は更に警戒したが、次の瞬間!

 

 

ガンッ!ガンッ!

 

「「「「「!?」」」」

 

 

突然、自身の顔面を力一杯に殴り始めた。

その行動にリアス達は血迷ったのか?と思い、岩同士でぶつけ合う様な音を聞きながら警戒していると、突然、ネオコカビエルはその動きを止めた。

 

一体、何だったのか?と一行は思っていると

 

 

ネオコカビエル「フ…フハハハハハーーーーー!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

突然、ネオコカビエルが笑いだしたのである。

リアス達はその笑い声を聞いて驚いた。それは突然笑いだしたという不気味さからでもあるが、それよりもその笑い声がコカビエルがまだスフィアと融合する前の声である事に驚いたのである。

 

 

ネオコカビエル「ククク…、一時はどうなるかと思ったが何とかこいつらから意識を取り戻したぞ!あの女め……危うく意識が完全に無くなるかと思ったが、まぁいい。それよりもこの溢れんばかりの力!!実に素晴らしいっ!!」 

 

 

ネオコカビエルはあふれでてくる力に感傷しながら呟いた。

そう、ネオコカビエルは自身の顔面を何度も殴っていたのは、スフィアから体の主導権を取り戻す為の行動だったのである。

 

 

ネオコカビエル「ダイナ!!貴様の光線のおかげで俺は眠っていた意識を呼び起こせた!感謝するぞぉ!」

 

ダイナ「くっ!」

 

 

実は自身の意識がよみがえり始めたキッカケはダイナの光線を頭に受けた時からだった。

その事実にダイナは悔しげに拳を握りしめた。

 

そんな中、ネオコカビエルは両腕の鉤爪を擦り合わせ、腰を深く落とすと

 

 

ネオコカビエル「ククク…!さぁ、ここからが本当の戦いだ!!行くぞっ!」

 

 

そう叫び、リアス達のもとへ駆け出した。

リアス達は身構えるが

 

 

木場「っ!!速い!」

 

ゼノヴィア「なっ!?」

 

 

そのスピードは先程よりも速く、一瞬のうちにゼノヴィアの背後に回りこんだ。

 

ゼノヴィアは多少驚きながらもデュランダルを振り回しながら攻撃を繰り出した。

ネオコカビエルは両腕の鉤爪で何度も迫り来るデュランダルの剣撃を防ぎ、その度に火花が散った。

 

 

ネオコカビエル「さて、デュランダル使いの女よ。お前には失望したぞ」

 

ゼノヴィア「何!」

 

ネオコカビエル「デュランダルは素晴らしい聖剣…。だが、以前の使い手の方が強かったぞ。使い手が未熟では、何の楽しみにも…ならんっ!!」

 

ゼノヴィア「ぐはっ!!!」

 

 

そう冷ややかに言うと、デュランダルを鉤爪で受け止め、ゼノヴィアの腹に膝蹴りをした。

 

 

ゼノヴィア「か…はっ…!」

 

 

ゼノヴィアはその衝撃が内臓に響いているかと思うくらいに苦痛に襲われると、口から吐血し、倒れた。

ネオコカビエルはこれで1人目…と呟いていると

 

 

ダイナ「ゼノヴィアッ!」

 

木場「うおおーーー!!」

 

 

後方からダイナは飛び蹴り、木場が聖魔剣を手に向かってくるが

 

 

ネオコカビエル「ふんっ!」

 

木場「ぐあっ!」

 

ダイナ「っ!!」

 

 

ネオコカビエルはゼノヴィアの髪を乱暴に掴むと、思いっきり後方にいる木場へ投げつけ、2人は遠くへ吹き飛んでいった。

ダイナはそれでもキックをネオコカビエルの頬へくらわせるが

 

 

ダイナ「!?」

 

ネオコカビエル「フフフフフフ…」

 

 

ネオコカビエルには全く効いておらず、頬にキックをくらったまま不気味に笑っていた。

 

 

ネオコカビエル「フフフ…。ダイナ、やはりお前との戦いは楽しいものだ。だが、まずは邪魔者を消さないとなぁ!!」

 

ダイナ「グァッ!!」

 

 

ネオコカビエルはダイナの足を掴み、後方へ投げ飛ばした。

そして、倒れているゼノヴィアと木場へ向かって口から黄色の光線を放った。

 

 

リアス「させないわっ!」

 

 

リアスは滅びの魔力を光線へ向かって放つが、光線の勢いは止まらず、遂に木場達に命中した。

 

 

ドガァァァーーーン!!

 

リアス「裕斗!」

 

ダイナ「ゼノヴィアっ!!」

 

アーシア「!」

 

 

そして、大きな爆発が起こり、爆煙がそこから立ち込めた。

アーシアは急いで駆け寄り、2人の治療を始めた。

 

 

ネオコカビエル「ククク…。これで2人目だ」

 

ダイナ「てめぇ…!!」

 

 

ダイナは立ち上がると、不気味に笑うネオコカビエルへ殴りかかった。

 

 

パシッ!

 

ダイナ「グァッ…!アァァァァ!!」

 

 

ネオコカビエルはダイナの拳を片手で軽く受け止めた。

ダイナはグググ…と力を込めるがコカビエルはピクリとも動かない。

その様子にネオコカビエルはフッと笑い

 

 

ネオコカビエル「これで思う存分戦えるというものだ。さぁ、始めるぞ!」

 

ダイナ「グァッ!!」

 

 

ネオコカビエルは拳を払い除けると、ヤクザキックの要領で蹴飛ばした。

怯んだダイナはすぐに体勢を立て直すと、回し蹴りを放つが

 

 

ネオコカビエル「フッ…効かんな」

 

ダイナ「!?」

 

 

ネオコカビエルには微動だにもせず、全く効果がない様子で笑みを浮かべている。

驚いているダイナをよそにネオコカビエルは言葉を続け

 

 

ネオコカビエル「確かにお前には力がある。だが、それに見合う経験、テクニックが足りんっ!!」

 

ダイナ「グァッ!」

 

ネオコカビエル「うぉらぁぁーーー!!!」

 

ダイナ「グァァァァァーーー!!」

 

 

そう話すとダイナの顔面を殴った。

怯んでいる間にトサカを掴むと、ブンブンと大きく振り回し、そのまま投げ飛ばした。

 

 

ダイナ「グァッ…!アァァ…!!」

 

 

ダイナは空中でジタバタしながら大きく吹き飛ばされると、そのまま地面に叩きつけられた。

 

 

ネオコカビエル「ククク…!」

 

ドォン!

 

ネオコカビエル「…?」

 

 

ダイナが叩きつけられた痛みにもがいている間にネオコカビエルは両腕の鉤爪を擦りながらゆっくりと歩を進めるが、突然、背中に小石が当たった様な感覚がした。

 

振り返ると、リアスが掌に魔力の塊を形成し、何度も攻撃をしていた。

 

 

リアス「イッセーに近付けさせないわよ!!」

 

 

リアスは気迫がある声で叫びながら絶え間なく滅びの魔力を連射する。

パワーアップしたコカビエルに自身の攻撃は効かない、だが、足止めくらいは出来る。そう考えあっての攻撃である。

 

その様子にネオコカビエルは攻撃をくらいながらもフッと鼻で笑い

 

 

ネオコカビエル「ふん…、魔王の妹もこの程度か。これならスフィアの力を得ずとも勝てるぞ」

 

リアス「くっ…!」

 

ネオコカビエル「ヴワッ!!」

 

 

軽く挑発すると、口から黄色の光線を吐き出した。

その光線は次々と放たれる滅びの魔力の塊を打ち消し、リアスのもとへ到達した。

 

 

リアス「きゃあぁぁぁぁーーーーーーー!!!」

 

ネオコカビエル「ククク…3人目だ!」

 

ダイナ「部長!くそぉぉ!!」

 

 

直撃したリアスは大きな悲鳴をあげ、倒れた。

それを見て奮起したダイナは胸の中に怒りの炎を燃やして奮起すると、立ち上がった。

 

 

ダイナ「シュワッ!!」

 

 

そして、そのまま腕を十字に構え、ソルジェント光線を放った。

数多の怪獣を撃破したダイナの必殺技である。

ダイナを始め、木場やゼノヴィア、リアス、そして彼女を治療しているアーシアはこれで決まった!とこの場にいる誰もが思ったが

 

 

バチィン!!

 

ダイナ「!?」

 

アーシア「えっ…」

 

ネオコカビエル「ククク…」

 

 

ネオコカビエルの前に現れたバリアが光線を弾いたのである。

ダイナはもう一度放つが、またバリアに阻まれて防がれてしまう。

驚いているダイナ達の光景を見て、ネオコカビエルは不気味に笑い

 

 

ネオコカビエル「無駄だ。俺にお前の光線は効かん」

 

ダイナ「っ!?」

 

ゼノヴィア「何だと!?」

 

リアス「そんな…」

 

木場「ソルジェント光線が…効かない……?」

 

 

そうダイナ達に告げると、一同はショックした。

今まで強力な怪獣を何度も何度も倒してきたソルジェント光線があっさりと攻略されるという事実に。

その事実にダイナは落胆し、十字を組むのをやめてしまった。

 

 

ネオコカビエル「フッ、次はこちらから行くぞ!」

 

ダイナ「!?」

 

 

その隙にネオコカビエルは猛スピードで接近すると、両腕の鉤爪でダイナの身体を切り刻んだ。

 

 

ダイナ「グァァァァァァァァァーーー!!!」

 

 

その攻撃に対処できず、ダイナはサンドバッグの様に次々と身体から火花を散らしていった。

 

 

ゼノヴィア「おおおーーー!!」

 

木場「はぁぁぁーーー!!」

 

 

その猛攻撃の中、ゼノヴィアと木場はネオコカビエルに剣を振り下ろすが、尻尾に防がれてしまう。

ネオコカビエルはダイナへの攻撃を中断し、

 

 

ネオコカビエル「貴様ら等、相手にもならんわっ!!」

 

木場「ぐはぁっ!!」

 

ゼノヴィア「ぐわっ!!」

 

 

翼を広げて羽ばたかせると、作り出した突風で2人を大きく後方へ吹き飛ばした。

そして、再びダイナへの攻撃を再開した。

 

 

ダイナ「グァッ…!」

 

 

身体中を切り刻まれたダイナは満身創痍で、立っているのもやっとの状態であった。

その様子にネオコカビエルは不気味に笑い

 

 

ネオコカビエル「ククク…。俺は嬉しいぞっ!こんなにも憎いウルトラマンをここまで痛め付けられるからなぁぁぁーーーーー!!!」

 

ダイナ「グアァァァァァーーー!!」

 

 

そう叫ぶと、ダメ押しと言わんばかりにダイナの頭を正面から掴み、そのまま地面に叩きつける。

すると、ダイナの後頭部を中心に大きなクレーターが形成された。

 

 

ネオコカビエル「……」

 

ダイナ「グァッ!!」

 

ネオコカビエルは仰向けで倒れているダイナの腹部を踏みつけた。

ミシミシ…と嫌な音がダイナの耳に響いた。

 

 

ダイナ「グアッ!アァッ……!」

 

[ティヨン]

 

 

そして、ダイナの命の象徴といえるライフゲージが赤に変わり、点滅を始めた。

 

 

ネオコカビエル「フハハハハハーーーーーーー!!こんなにも素晴らしいのか!これがスフィアの力かっ!!」

 

 

ネオコカビエルは嬉々とした表情で叫んだ。

あんなにも力の差があったにも関わらず、スフィアと融合するだけでダイナを圧倒できる力を手にできたことに彼は喜んでいられなかったのである。

 

ネオコカビエルは不気味な笑みを浮かべ、踏みつけているダイナの顔を見た。

 

 

ネオコカビエル「さて、まずはこいつを始末してからガイアを仕留めるとするか…」

 

ダイナ「グァァ……」

 

 

ネオコカビエルはゆっくりと右腕をあげると、ライフゲージに狙いを定めた。

ライフゲージはウルトラマンの命の象徴といえるものである。もし、破壊されでもしたら、二度とダイナは立ち上がれない―――つまり、死んでしまうのである。

 

 

リアス「やめなさい、コカビエル!」

 

木場「やめろーーーーっ!!」

 

ネオコカビエル「さらばだっ!ウルトラマンっ!!」

 

アーシア「きゃあぁぁぁぁーーー!!」

 

 

リアス達の必死の制止もむなしく、鉤爪は振り下ろされた。

アーシアはこれからくる残酷な光景を見たくなく、両手で顔を覆った。

 

誰もがもう駄目か…。そう思った瞬間!

 

 

バチィィィーーー!!

 

ネオコカビエル「ぬっ?」

 

木場「?」

 

 

激しい雷が邪魔する様にネオコカビエルの頭上に直撃した。

攻撃を中断されたネオコカビエル、そしてリアス達は上空を見上げると、

 

 

朱乃「イッセー君。御無事ですか?」

 

ダイナ「朱…乃さん?」

 

小猫「助けにきました」

 

木場「小猫ちゃん!」

 

我夢「部長、遅くなってすみません」

 

リアス達「我夢!3人共、無事だったのね!」

 

 

そこには凛々しい表情をした朱乃の姿があった。

それだけでなく、小猫や彼女に支えられている我夢もそこにいた。

彼女らは傷だらけ、特に我夢がひどいが、無事な様子でいたことにリアス、木場、ダイナは安堵した。

 

 

我夢「何故、コカビエルがあんな姿に……?とりあえず、イッセーから離れろ!」

 

 

我夢は小猫に下ろしてもらうと、手に持っていたジェクターガンで連射した。

ネオコカビエルには体から火花が飛び散るだけで全く効いてはない。だが、ほんの少しだけ怯ませることはできる。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ネオコカビエル「ちっ!」

 

 

ダイナはそのわずかな隙に自身の腹部を踏みつけていた足を払いのけ、ネオコカビエルがのけぞった間に脱出した。

 

 

ネオコカビエル「ふん。アパテーにやられたと思っていたが…、面白い!!もっと俺を楽しませろっ!!!」

 

 

ネオコカビエルは嬉しげに叫んだ。その様子はまるで新しいオモチャを買ってもらった子供、いやコカビエルの場合は壊しがいのあるオモチャがきたというのが正しいのであるが、援軍がきたというほんの少しの『絶望感』よりも新しい敵を殺せる『幸福感』だけが彼の脳裏を満たしている。

 

ネオコカビエルは歩き始めると

 

 

朱乃「はぁっ!」

 

ネオコカビエル「ふんっ」

 

 

 

その瞬間に朱乃は再び雷をネオコカビエルの頭上目掛けて落とした。だが、ネオコカビエルは軽く片腕で払いのけた。

そして、朱乃を見上げると、納得した様な表情を浮かべた。

 

 

ネオコカビエル「そうか、この雷撃。どこかで見たことがあると思えば貴様、バラキエルの娘だな?」

 

朱乃「っ!私をあの者と一緒にするなぁぁーーー!!」

 

我夢「『バラキエルの娘』?」

 

 

『バラキエルの娘』―――。その言葉を聞いた瞬間、朱乃は怒りを露にし、再び雷を放った。

我夢はどういう事だと疑問に思ったが、対するネオコカビエルは口からブレスを放ち、そのまま雷とぶつかり合った。

 

 

朱乃「くっ、ううう!!」

 

ネオコカビエル「フハハハハハァァーーーーーッ!!」

 

 

バチバチと2つのエネルギーが押し合うが、徐々に朱乃の雷が押され始め、ネオコカビエルのブレスと朱乃の距離が近付いた。

 

 

ネオコカビエル「クァァァァーーーーーーー!!」

 

朱乃「!!」

 

リアス「朱乃っ!」

 

ダイナ「朱乃さん!」

 

 

ネオコカビエルは更にブレスの威力をあげると、朱乃の雷を完全に打ち消し、朱乃の目前に迫った。

リアス達は彼女を助けようと体を動かすが、間に合わない。

その時

                                               

ガイア「デヤッ!」

 

[ピコン]

 

朱乃「!?」

 

 

ガイアがすぐさま朱乃の前に現れると、両腕を広げて、そのたくましい胸筋でブレスを受け止める。

だが、ガイアはアパテーとの戦いで既にエネルギーを大きく消耗している為、ライフゲージも赤のままである。

 

 

ガイア「グァァァァァァァァァーーーーーーーー!!」

 

[ピコン]

 

小猫「先輩っ!!」

 

朱乃「我夢君っ!」

 

ダイナ「我夢っ!」

 

アーシア「我夢さんっ!」

 

 

そんな状態で攻撃に耐えられずはずもなく、ガイアはブレスを全て受け止めると、ガクンと力が抜けた様にそのまま地面へ落下した。

急いで朱乃は地上へ降り立ち、小猫、アーシア、ダイナも急いで駆け寄り、アーシアはガイアの治療を始める。

 

その光景を見て、ネオコカビエルは嘲笑った。

 

 

ネオコカビエル「フハハハハハ、そのまま見捨てれば良かったものの!!美しい‛‛友情‛‛とやらか。感動させてくれるじゃあないかっ!!」

 

木場「っ!」

 

ダイナ「てめぇ…!」

 

 

嘲笑うネオコカビエルに仲間を侮辱され、木場とダイナは睨み付ける。

そして、ネオコカビエルはひと通り笑うと、ゼノヴィアを見て、鼻で笑った。

 

 

ネオコカビエル「フッ…しかし、デュランダル使いの女よ。貴様もよく戦うものだな。既に()()()()()というのにな」

 

ゼノヴィア「何っ?」

 

 

ゼノヴィアはネオコカビエルの言葉に疑問の表情を浮かべた。

その様子を見たネオコカビエルはフッと笑うと、言葉を続け

 

 

ネオコカビエル「成る程。その様子を見ると、下の者には知らされてない様だな。ならば教えてやろう。先の大戦で死んだのは魔王だけじゃない、神も死んだのだよっ!!魔王と共になっ!!」

 

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

 

 

その衝撃の告白にリアス達は驚愕した。

神が死んだ?といった疑問がリアス達の脳内を駆け回る。

そんな中、ゼノヴィアは叫ぶようにネオコカビエルに問う。

 

 

ゼノヴィア「なっ!?嘘だっ、そんなこと!なら主の祝福を受けられるのは何故だっ!!」

 

ネオコカビエル「それはミカエル共が神の残したシステムをうまく利用しているからだ。まあ、以前よりかは祝福のレベルは下がってはいるが、奴らもよく勘づかれず頑張っているよ…」

 

ガイア「(そうか!だから反発するはずの聖と魔の力が合わさることができたのか!)」

 

 

ネオコカビエルの言葉を聞き、ガイアはバルパーが何故聖魔剣に疑問を抱いたのかを理解できた。

 

 

ゼノヴィア「そんな……」

 

アーシア「神の…神の愛は…どこに…?」

 

小猫「先輩、しっかりして下さい!」

 

 

ゼノヴィアはその真実を知り、瞳をわなわなさせながらガクンと膝をつき、アーシアはショックの余りに気絶した。

 

 

ネオコカビエル「まあ、そのせいであの大戦は終わってしまったがな。さて、とんだ茶番はさておき。次はどいつが相手だ?何なら全員でかかってきてもいいぞ?ただし、俺を満足させる戦いだけは見せてくれよ?」

 

ガイア「くっ!」

 

ダイナ「くっそぉ…!」

 

 

ダイナは悔しげに拳を握りしめた。

全員でかかってきてもいいと言ってるが、おそらく全員でかかっても倒すことはできない。

全員体力が限界、特にガイアのダメージはひどい。対する敵は全くの無傷。しかもアーシアが気絶してるため、回復もできない。

まさに絶対絶命である。

 

 

ダイナ「(あのバリアを突破するには何か、何か手はないのか!?)」

 

 

ダイナは必死に頭を悩ませて考えた。

 

いちかばちか、光線の威力をエネルギー全開で放射するか?

――いや、光線の威力をあげても突破できるとは限らないし、もっと仲間を危険にさらしてしまう。

 

なら、肉弾戦に持ち込むか?

―――力の差が埋まってる以上、戦いの経験の差で負けてしまう。

 

といったあらゆる作戦が浮かぶが、どれも望み薄であり、また白紙に戻る。

焦りが更なる焦りを生み、ダイナの冷静さを奪っていく。

 

 

ダイナ「(どうすれば、どうすればいいんだっ!!)」

 

 

どうしようもない。八方塞がり。

そんな状況に半ば諦めかけた時、脳内にとある映像が浮かんだ。

 

それはミラクルタイプのダイナが溶岩の様な怪獣を宙に浮かし、怪獣が反撃で吐いた火炎を受け止めて、撃ち返す映像だった。

 

 

ダイナ「(これしかねぇっ!!)ン"ン"ン"~~、ハッ!」

 

 

その映像が終わると同時にダイナは立ち上がると共に決心すると、両腕を胸の前で交差し、素早く両腕を広げると、ダイナの第2の姿であるミラクルタイプにタイプチェンジした。

 

 

ネオコカビエル「姿を変える能力。特に憎い()()()()()()()()を思い出させてくれるわっ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

ネオコカビエル「ウォォォォォォーーーーーー!!!」

 

ダイナ「デェアッ!デェアッ!」

 

 

ネオコカビエルはタイプチェンジしたダイナを見て青筋を立てると走り出した。

そして、ダイナへ近づくと、両腕の鉤爪のラッシュを繰り出す。

ダイナは次々と繰り出される攻撃をヒラリヒラリとかわし、反撃のキックを繰り返す。

 

 

ダイナ「ハァァーー!デェアッ!!」

 

ネオコカビエル「ぐぁっ!!」

 

 

そして、大きな尻尾のなぎはらいを回避し、クルクルと前回りに回転しながらネオコカビエルの背後へ移動すると、振り返らずそのまま後頭部に向かってドロップキックを放った。

さすがのネオコカビエルもこれには効いたのか、若干怯んだ。

 

ダイナは追撃しようとするが、体全体に痛みが走り、片膝をついてしまう。

 

 

[ティヨン]

 

ダイナ「(くっ!時間が無ぇ!)」

 

 

胸元のライフゲージを見ると、先ほどよりも点滅が速くなっている。

ミラクルタイプは多彩な超能力を扱える。ただ、その力を使うには多くのエネルギーを消費する。その為、活動できるのは1分間だけである。

しかも、ダメージを受けすぎたことでエネルギーを消耗しており、活動できる時間は残り20秒である。

 

 

ネオコカビエル「グアアアァァァーーーーーーー!!」

 

ダイナ「ッ!ハッ!」

 

 

その間に起き上がったネオコカビエルは雄叫びをあげながらこちらへ走ってくる。

ダイナは右手をネオコカビエルへ伸ばした。

すると、手先からビームが放出され、ネオコカビエルの体に纏わりついた。

ダイナは超能力の1つである念力光線、「ウルトラサイキック」を発動したのである。

 

 

ネオコカビエル「!?」

 

ダイナ「ハァァァァーー…」

 

 

 

 

ネオコカビエルは抵抗しようとするが、体は全く動かない。

その間にもダイナはゆっくりと手を上げると、捕縛したネオコカビエルは宙に浮き、ある程度まで上昇するとピタリと止まった。

 

 

ネオコカビエル「ちっ!これでもくらえーーーーーっ!!」

 

ダイナ「!」

 

 

ネオコカビエルは口が動くことに気が付くと、口からブレスを吐いた。

油断したな……。ネオコカビエルはそう心の中でほくそ笑むが

 

 

ダイナ「ハァァァァーーーーーー……」

 

ネオコカビエル「!?」

 

 

ダイナは両手で受け止め、その掌が放出されるブレスを全て吸収した。

さすがに自分のブレスを吸収されるとは思わなかったのか、ネオコカビエルは驚く。

 

 

ダイナ「デェアッ!!!」

 

 

そして右腕をつき出すと、吸収した相手の攻撃を吸収して撃ち返すミラクルタイプの逆転の必殺技「レボリウムウェーブ・リバースバージョン」を放った。

 

 

ネオコカビエル「しっ、しまっ…!!」

 

ドガァァァァァァーーーーーーーーンッ!!

 

 

ブレスは真っ直ぐ放出され、ネオコカビエルはバリアを展開する間もなく、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

一誠「はぁ…はぁっ…!」

 

 

ネオコカビエルを倒したダイナは疲労のあまりに膝をつくと、そのまま変身が解除され、一誠の姿に戻った。

一誠は前を見ると、少し離れた先にはスフィアとの融合が解除された元の姿のコカビエルが倒れている。

 

 

リアス「イッセー!」

 

木場「イッセー君!」

 

小猫「先輩っ!」

 

 

すると、背後からリアス達が駆け寄ってくる。

一誠は面々が駆け寄ってくる中、ガイア――我夢がいないことに気付く。

 

 

一誠「っ部長!我夢は無事なんですか!?」

 

リアス「ええ、彼なら無事よ。ほら」

 

 

リアスが指を指す方を見ると、意識を失った我夢の頭を膝枕しながら頭を撫でている朱乃の姿があった。

話を聞くと、一誠がコカビエルを倒したのを見届けると、安心して気を失ったらしい。

 

 

一誠「良かった………って!我夢のヤロー!ちゃっかり朱乃さんに膝枕されてるじゃねぇかっ!!俺だってされたことねぇのにっ!!」

 

リアス「はぁ…」

 

木場「ははは…」

 

小猫「……」

 

 

それを見て一誠は一瞬ほっとするが、自分の幼馴染みが美少女に膝枕されている状況に気付くと、すぐに嫉妬の表情を浮かべた。

その様子にリアス達はため息や苦笑いといった各々のリアクションをとった。

ただ、小猫はいつも通りの無表情だが、何故か気に入らないと心の中で思った。

 

 

リアス「とりあえず、イッセー。その様子だと無事な様ね」

 

一誠「はい。でも、もう戦えるほどの力は残ってないですがね。ははは…!それよりも部長、木場、小猫ちゃん!見たか?俺の超ファインプレー!」

 

木場「うん、すごかったよ。あんな一瞬で逆転するなんてね」

 

リアス「ふふ…。一時はどうなるかも思ったけど、コカビエルを倒せるなんてね。さすがよ、イッセー」

 

小猫「かっこ良かったです」

 

一誠「だろう?さすが俺様だなっ!」

 

木場「けど、そのせいで僕が禁手(バランス・ブレイカー)に至った事が影に埋もれちゃたけどね」

 

 

木場の自虐気味た発言に一同は微笑んだ。

すると、

 

 

コカビエル「これで……これで終わりと思うかっ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

突然、怒りににじんだ様な声が響いた。

一同はその声がした方を見ると、先ほどスフィアごと死んだと思われたコカビエルが体中から血を流しながらも立ち上がっていた。

 

リアス達に緊張が走り、各々が身構える。

だが、リアス達には戦える力はほとんど残っていない。

対するコカビエルは重傷を負ってはいるが、まだ余力がある様子である。

 

 

木場「まだ生きていたのかっ!」

 

コカビエル「……この俺にっ、ここまで手傷を負わせた貴様らを、貴様らを殺すまでは俺は死なんっっ!!まず、サーゼクスの妹っ!貴様の首をもらうっ!!」

 

リアス「!」

 

 

コカビエルはそう叫ぶと、光の槍を形成してリアスのもとへ走ってくる。

今度こそ絶対絶命。リアス達はそう思ったが、その時!

 

 

ドォォォォーーーーーン!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

コカビエル「!?」

 

 

上空から青い光が結界を破壊すると、コカビエルの前にたちはだかるかの様に土煙を立てて降り立った。

 

 

アグル「……」

 

 

段々と土煙が晴れると、そこには青いウルトラマン、アグルが片ひざをついた姿勢で颯爽と現れた。

 

 

コカビエル「…ちっ!貴様も血祭りにあげてくれるわ!」

 

 

コカビエルは目を血走らせながら走ると、右手に持つ光の槍で振り下ろした。

だが、光の槍が当たるギリギリの瞬間。アグルは体を青く発光させると、姿を消した。

 

 

コカビエル「っ!?消えたっ!」

 

アグル「ドゥワァァァァーー!!」

 

コカビエル「ぐおっ!?」

 

 

姿が消えたアグルに驚くコカビエルの背後からアグルの蹴りが入る。

その衝撃にコカビエルは思いっきり前のめりに倒れそうになるが、負けじと踏ん張ると、かかと回し蹴りを放つ。

 

 

アグル「ホワァッ!」

 

ガシッ!

 

アグル「フォォォォォ……!」

 

 

だが、アグルはそんな攻撃を許すはずもなく、難なくその蹴りを片腕で受け止める。そして、コカビエルの足を掴んで持ち上げた。

 

 

アグル「ドゥワァァァァーーーー!!」

 

コカビエル「ぐあぁあぁーーーーーっ!!」

 

 

そして、そのまま地面に叩きつける。

コカビエルはその衝撃に口から血を吐き出した。

 

 

コカビエル「くっそぉぉぉぉーーーーー!!」

 

 

悔しげに叫んだコカビエルは翼を広げて上昇すると、掌から光弾を連射する。

だがその軌道は乱れており、あらぬ方向へ飛んで行く。その様子から明らかに動揺している事がわかる。

 

 

リアス「っ!皆、固まって!!」

 

一誠「滅茶苦茶やりやがって!」

 

 

リアスはゼノヴィア含む全員を召集すると、結界のシェルターを作り、その光弾の嵐に耐える。

しばらく続くと、コカビエルは光弾を撃つのをやめた。

 

 

コカビエル「はぁ……はぁ…!ハッ、ハハハ…ハハハハハハ!!どうだっ!さすがにウルトラマンといえどもっ…生きてはおるまい!!」

 

 

コカビエルは息をきらしながら、達成感に満ちた表情で笑う。

辺りから土煙が立ち込める中、コカビエルの笑い声が響く。

 

 

コカビエル「フハハハハハ!!ハハ…ハ?」

 

 

だが、アグルが立っていた場所の土煙が晴れると、その笑みは崩れ去る。

そこには右手に形成したアグルブレードを高速で回転させている無傷のアグルの姿があった。

 

コカビエルの光弾が命中する寸前。アグルは冷静にアグルブレードを展開すると、それをブンブンと回転させて盾の様にして、光弾を弾いたのである。

その為、アグルは無傷なのだ。

 

 

アグル「……」

 

 

アグルはアグルブレードを回転させるのを止めると、左手をクイクイッと動かし、まるでかかってこいと言わんばかりに挑発する。

 

 

コカビエル「ぐ…!なめるなぁぁぁーーーーー!!」

 

 

その挑発にコカビエルは青筋を立てると、アグルに向かって急降下を始めた。

対するアグルはタイミングを見計らってアグルブレードを振り上げ、

 

 

アグル「ッエイッ!」

 

コカビエル「何っ!?ぐぎゃあぁぁーーーーーー!!」

 

 

そのまま振り下ろすと、そこから青い斬撃が発生し、コカビエルのもとへ飛んでいった。

剣撃は素早いスピードでグングンとコカビエルへ接近し、コカビエルの左の翼を切断した。

 

 

コカビエル「ぐおぉぉぉぉーーーーーっ!!」

 

 

翼を切断されたことで空中でバランスを保てなくなったコカビエルは何とか立て直そうとするが何もできず、そのまま地面に墜落した。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

 

アグルは高速移動で近づき、倒れているコカビエルの首を掴み、無理矢理起こす。

 

 

アグル「ホワッ!!ドゥワッ!!ホワァァッ!!ドゥワァァッ!!」

 

コカビエル「ぐほっ!ぐおっ!ぐほぅっ!!」

 

 

そして、そのままコカビエルの顔面をサンドバッグの様に何度も何度も殴り続けた。

コカビエルは逃げようと思っても、アグルに首を掴まれているので不可能であり、体もダメージが蓄積されていて身動きができない。

コカビエルは殴られる度に口や鼻から血が噴き出し、顔やまわりの地面はどんどん血まみれになっていく。

 

 

一誠「や、やりすぎだ…」

 

小猫「…怖い」

 

 

その拷問ともいえる光景に一誠達は言葉を失った。

冷酷なアグルの姿に小猫や木場、リアスは身震いすらした。

 

 

アグル「ドゥワッ!!」

 

コカビエル「ぐぽあっ!!」

 

 

何度目のパンチかわからないが、アグルは大きく振りかぶったパンチを直撃させると、その手を止めた。

コカビエルの顔は何度も殴られた影響で血まみれになっており、歯もほとんどへし折られ、別人ではというぐらいに顔がぐしゃぐしゃに潰れており、最早虫の息である。

 

 

アグル「ホワッ!アァァァァ…」

 

 

アグルはそのまま前へ投げ飛ばすと、両腕を下に広げ、リキデイターの体勢に入った。

それを見たリアスはハッ!と気を取り戻すと、アグルに向かって叫ぶ。

 

 

リアス「っ!待って、殺さないで!彼には聞きたいことが――――!」

 

アグル「ドゥワッ!!」

 

 

リアスの制止も無視し、アグルはリキデイターを発射する。

リキデイターは瀕死のコカビエルに直撃すると

 

 

コカビエル「ギィアァァァァァーーーーーーー!!!」

 

ドガガガガガァァァァァーーーーーーン!!!!

 

 

激しい悲鳴と共にコカビエルは爆発四散した。

その光景にリアス達は唖然となった。しばらくの沈黙の中、一誠はアグルに話しかける。

 

 

一誠「お前、もしかして俺達を助けに来たのか?ありがとう……おかげで町人の命が救われた」

 

 

そう感謝する一誠にアグルはフッと鼻で笑った。

 

 

アグル「勘違いするな。俺はこいつが危険な存在だと判断したからだ。町の人間の命など、どうでもいい」

 

一誠「なっ!?お前、それでもウルトラマンかよ!?」

 

アグル「俺はあくまで地球の為に戦っている。お前達、悪魔の事情など知ったことではないが、もし奴が戦争の舞台を地球にされてしまっては困るからな。君こそ力の使い方を誤っているんじゃないのか?」

 

一誠「何ぃ!?この野郎、黙ってりゃ好き勝手言いやがって!!」

 

木場「イッセー君!」

 

小猫「先輩、落ち着いて」

 

 

カチンと頭にきた一誠はアグルに殴りかかろうとするが、小猫と木場に抑えられる。

そんな中、今度はリアスがアグルに尋ねる。

 

 

リアス「ねぇ、貴方は私達の味方?それとも敵?」

 

アグル「そうだな。俺はお前達の敵でも味方でもない。言うとすれば…」

 

 

アグルは離れた場所で朱乃の膝枕で寝ている我夢の顔を見て

 

 

アグル「俺は地球の味方だ」

 

 

リアスにそう告げると、どこか遠い空へ飛んでいった。

 

こうして、上級堕天使コカビエルとバルパー・ガリレイが引き起こした聖剣騒動は幕を閉じたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。どこかへ飛んでいくアグルの姿を銀髪の少年は電柱の上に座りながら興味深そうに眺めていた。

 

 

???「やれやれ、コカビエルを殺されてしまったか。アザゼルに何と言えばいいか。まぁ、いい…」

 

 

不敵な笑みを浮かべると、少年は龍を模した白銀の鎧を身に纏った。

 

 

???「その代わり面白いものを見せてもらった。興味が湧くね、ウルトラマンってのは。ますます戦いたくなる……」

 

 

そう意味深に呟くと、白銀の羽を広げ、暗闇の空へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その光景を見ていたのは少年だけでなかった。

旧校舎の影から黒いフードを被った眼鏡をかけた少女がいた。

その顔は美人の領域に入るが、どこか不気味で人らしい暖かみが感じられない瞳をしている。

 

 

???「コカビエル。所詮、この程度か…」

 

 

少女はそう吐き捨てる様に冷たく呟くと、影に溶け込む様に忽然と姿を消した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コカビエルの襲撃後。コカビエル達によって半壊状態だった学園は遅れて到着したサーゼクス達によって何もなかったのように修復された。

ちなみに木場はあの後、リアスにお仕置きの尻叩きをされてしまい、本人曰く「もう一度逆らおうとする気がなくなる程痛かった」そうだ。

 

 

 

そして、聖剣騒動から数日後。我夢、一誠、アーシアはいつもの様に部室を訪れたが、そこには思わぬ人物がいた。

 

 

ゼノヴィア「やあ、久しぶりだね」

 

 

そこには青髪に緑のメッシュが入った少女、ゼノヴィアが女子用の制服を身に着けており、さも居るのが当然の様にソファーへ座っていた。

 

 

一誠「何でここにいるんだよ?」

 

ゼノヴィア「ああ、実は聖剣を取り戻したのは良いが、教会側に神の不在について問いただした所、異端認定されてしまってね。それで破れ被れで転生したという訳さ」

 

我夢「……」

 

 

我夢は思った。あれだけ必死に聖剣を取り戻した貢献者である彼女を神がいないと知っただけでアッサリと切り捨てる教会側もひどいものだと。

 

更に我夢達は話を聞くと、イリナはこの事を知っておらず、聖剣を回収して帰国したそうである。ゼノヴィア曰く「運がいい」そうだ。

イリナは人一倍信仰心が強いらしく、もし、神がいない事実を知れば彼女は二度と立ち直れなくなるらしいと。

 

一通り成り行きを説明したゼノヴィアはアーシアの前へ立つと、頭を下げた。

 

アーシア「えっ…」

 

ゼノヴィア「アーシア…すまない。私は君の苦しみを何もわかっていないのに『魔女』と呼んだことを……!言葉で言っても許してくれないだろう、私を罵ってもいい!だが、謝らせてくれ!すまないっ」

 

 

先ほどより深々と頭を下げるゼノヴィア。

アーシアは彼女の突然の行動に一瞬戸惑うが、柔らかに微笑むと彼女を手を取った。

 

 

アーシア「頭を上げて下さい、私は気にしてないですから。確かに私は異端認定で追放された時、悲しかったですが、教会にいたときには見れなかった新しいものやこんな素敵な人達に出会えたのですから…」

 

ゼノヴィア「…アーシア、ありがとう」

 

 

アーシアがそう言うと、ゼノヴィアは微笑んだ。

その光景を見て、我夢達も微笑む。

 

 

リアス「まあ、という訳でゼノヴィアは私の新しい眷属になったから」

 

ゼノヴィア「改めて紹介させてもらう。『騎士(ナイト)』のゼノヴィアだ。よろしく頼む」

 

 

ゼノヴィアがそう言うと、我夢達はこちらこそよろしくとそれぞれ声をかけた。

一通り挨拶をすると、リアスはいつも通りより賑やかになった雰囲気で部活動を開始した。

 

そんな中、我夢は1つ疑問に思ったことがあった。

 

 

我夢「(だけど、藤宮――アグルはどうしてあそこまで悪魔や堕天使を憎んでいるんだ?)」

 

 

我夢はあの後、一誠からアグルが必要以上にコカビエルを攻撃していた事を聞いていた。

聞いた話によると、アグルはどこか憎しみがこもった眼差しを浮かべながら攻撃していたらしいのである。

過去に何があったのか。それは自分には計りしれないものであるかもしれないと我夢は1人思った。

 

 

我夢「(藤宮、君は一体…?)」

 

 

我夢はそう心の中で呟き、窓から外の景色を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

正義の味方か、悪の使者か!?
今ベールを脱ぐ、衝撃のアグル誕生の秘密!

次回、「ハイスクールG×A」!
「アグル誕生」!
光れ、アグレイターよ…!











大変、大変お待たせ致しました!!
私生活で色々ありましたが、1ヶ月振りに投稿できました。
なので、私に「更新遅いんだよ!!」という恨みでクァンタムストリームをぶっぱなさないで下さいっ!!

良かったら感想、コメントよろしくお願いします。


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第17話「アグル誕生」

金属生命体 アルギュロス 登場!


ゼノヴィアがリアス達の眷属になってから翌日。

オカルト研究部の部室では、薄暗い部屋の中、リアス達が我夢を取り囲む様に座り、彼の話を真剣に聞いていた。

 

その話の内容とは、コカビエルとの戦いの際に現れたスフィアについてである。

因みにこの話に入る前、コカビエルと根源的破滅招来体の関連性についても議論したが、結局何も思い付かなかった。

我夢は投影された写真に指を指し、説明をする。

 

 

我夢「この球体――仮にスフィアと命名しますが、この未知の物体は意思がある、れっきとした生命体です」

 

リアス「やっぱり…」

 

木場「じゃあ、君たちが戦ったアパテーと同じ金属生命体なのかい?」

 

 

木場はこの話をする前に我夢からアパテーが金属生命体である事を聞いていたので、もしやと思い問う。

だが、我夢は首を横に振った。

 

 

我夢「いや、あの後グラウンドに散らばっていたスフィアの残骸を回収して、ジオベースで調べてもらったんだ。だけど、その体組織は金属でも生物でもない、地球上に存在しない未知の物質で構成されていたんだ」

 

木場「え?」

 

一誠「じゃあ、スフィアもコッヴと同じで、宇宙から来たって言うのかよ?」

 

我夢「うん」

 

 

そう尋ねる一誠に我夢は頷いた。

スフィアの正体に首を傾げる面々に我夢はだけど…と言葉を続け

 

 

我夢「これだけは言えます。あのスフィアはコカビエルと融合したように、自身を核――つまり『心臓部として他の生物と融合する』という事と『融合した生物の意識を奪う』という2つの性質を持っているという事です」

 

 

我夢の説明に皆はうんうんと頷いた。

だが、ゼノヴィアはハッ!と何かに気付いた様に声を出した。

 

 

ゼノヴィア「高山 我夢。心臓部として融合するなら、何故コカビエルは兵藤 一誠に倒された後でも生きていたんだ?それと奴はほぼ自力で意識を取り戻してたぞ。只者じゃないとはいえ、力づくとそう簡単に自我を取り戻せるものなのか?」

 

 

その質問を聞いた我夢は顎に手を当ててしばらく考えると

 

 

我夢「あ~多分、コカビエルの生命力がスフィアよりも強靭だったとしか思えない。それに自我を取り戻したのも精神的な面が強かったからとしか言い様がないよ」

 

 

我夢が最後に「認めたくないけどね」とボソッ呟きながら説明すると、リアス達は納得した表情を浮かべた。

説明を終えた我夢はスクリーンを閉じ、証明を点け始めた。

 

 

リアス「ありがとう、我夢。じゃあ、みんな!じゃあ…」

 

 

リアスがいつもの様に「今日も部活動を始めるわよ!」と言おうとした時、

 

 

《ピーピーピーピー!!》

 

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

 

部屋中にアラーム音が鳴り響き、皆に緊張が走る。

その音の源は、部室に新しく設置された怪獣が出現した事を伝える怪獣探知機によるものだった。

 

 

リアス「一体どこに?」

 

我夢「ここから数100km先のポイントに金属反応。構成物質はアパテーに似てます」

 

小猫「…アパテー」

 

朱乃「私達と戦ったあの金属生命体」

 

 

その報告を聞き、小猫、朱乃は各々思い深げに呟く。

それもその筈。ガイアの動きをコピーするだけでなく、その体質を利用した戦術や自分達を苦しめた強敵だったからである。

 

 

我夢「映像データ開きます」

 

 

我夢がそう言い、手持ちのノートパソコンで操作すると、怪獣探知機から映像がスクリーンの様に投影された。

 

その映像には、上空に数本の金属質な槍みたいなものがどこかへ向かってるかの様に飛んでいた。

 

 

リアス「我夢。アレはどこへ向かってるの?」

 

我夢「はい。目的は分かりませんが、5分後に東経138、北緯36の地点―――中部地方に落下する予定です」

 

リアス「わかったわ。朱乃、裕斗、イッセー。そしてゼノヴィア。今すぐ金属生命体の航路地点に向かい、迎撃して!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

そうリアスの指示を聞くと、朱乃達は元気よく返事する。特にゼノヴィアは転生したから気合いが入っていた。

 

 

朱乃「部長、行ってきますわ」

 

 

朱乃はいつもの様にニコニコしながらそう告げると、そのポイントまで魔方陣で転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔方陣で転移した朱乃達が真っ先に目に入ったのは、こちらの方角へまっすぐ飛行する金属生命体の姿だった。

各々が身構える中、一誠は制服の尻ポケットから金属の筒の様なものを取り出す。

 

それは最近、冥界が新発明した対根源的破滅招来体特殊結界―――別名「メタフィールド」を展開する装置である。

 

「メタフィールド」は今までの結界にあった人除け効果に加え、根源的破滅招来体の妨害にも耐えうる強力な結界術式が組み込まれている優れものである。

 

コカビエルの一件から3日程経った頃。研究に苦難していたが、遂に完成したという事で、冥界からウルトラマンである我夢と一誠を眷属に持つリアスへ送られてきたのである。

これにより、リアス達も堂々と戦闘に参加することができる。

 

 

一誠「メタフィールド、展開っ!」

 

 

一誠はそう叫んで天へ掲げると、筒の先から一筋の光が空高く登った。

そしてある程度の高さに到達すると、そこから光が枝分かれし、雨の様に降り注ぐと一瞬で周囲を包んだ。

 

 

朱乃「ふふ、行きますわよ」

 

木場「部長達を守ると誓った力。ここで役立ててみせる!」

 

ゼノヴィア「ふふ、木場 裕斗。はりきってるな」

 

一誠「お前も負けてねぇだろ?よっしゃ、やってるぜ!」

 

 

朱乃達が各々がいつも以上にはりきっていると、

 

 

ピカァァーーー!!

 

木場「うわっ!」

 

ゼノヴィア「何だっ!?」

 

一誠「おわっ!?」

 

朱乃「これは…!」

 

 

無数の金属の槍は突如、前面に現れた青い光に阻まれて墜落し、地面に刺さっていった。

朱乃達はあまりの眩しさから眼が奪われるが、すぐに光が収まっていった。

眼を開けると、大きな影が自分達を覆っている事に気が付いた。そして、彼女らが見上げると

 

 

一誠「アッ、アイツは…!」

 

ゼノヴィア「青いウルトラマン…」

 

 

朱乃達の記憶にも新しいあの青いウルトラマン、ウルトラマンアグルが片膝を立て、屈みこむ様な姿勢で両腕をクロスさせた状態で颯爽と現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「青いウルトラマン…?」

 

我夢「(藤宮っ!)」

 

 

モニターで戦いの様子を見ていたリアス達も突然のアグルの出現に驚いていた。

 

突然のアグルの登場に驚く一同をよそに墜落した無数の金属の槍はバチバチバチ…と電流を放ち始めると、ゲル状に変化した無数の槍が重なる様に集まり、段々と人の形へと変化していった。

 

変化が終わると、その姿の全貌が明らかになった。

その姿はまるで鎧の身につけた騎士の様な姿に横長い単眼、そして胸元にはアグルのライフゲージに似た結晶が青く輝いている。

アパテーに続く、根源的破滅招来体が呼び寄せた金属生命体No.2(ナンバーツー)アルギュロス」がその姿を現したのである。

 

 

アグル「……」

 

アルギュロス「パオォォォォーーーー!!」

 

 

アルギュロスは威嚇する様に象に似た鳴き声をあげながら身構える。

すると、アグルは青い光の柱に包まれ、姿を消した。

 

 

アルギュロス「!」

 

アグル「デヤァァァァーーーー!!」

 

 

アルギュロスは上空に気配を感じて顔をあげると、アグルがアルギュロスの胸元目掛けて急降下しながらキックを繰り出していた。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!!」

 

 

反応が遅かったアルギュロスはすれ違い様の蹴りをまともにくらい、火花を散らす。

アグルはスタッと地上へ着陸すると、追撃とばかりにアルギュロスに向かって走り出す。

 

だが、このままやられるアルギュロスではない。何といっても彼はあのガイア達を苦戦させた金属生命体である。

 

 

ピカァァァーーーーン!

 

 

アルギュロスは膝をつきながらも左腕を輝かせると、鋭い刀の様に変化させた。

 

 

アルギュロス「パオッ!」

 

アグル「ホワッ!」

 

 

そして、向かってくるアグルに振り向き様に左腕の刀を胸元目掛けて振り回すが、アグルは冷静に対処して間一髪、腕と脇で挟みこんで防ぐ。

だが、

 

 

アグル「!?」

 

 

アルギュロスは特に驚いている様子もなく、そのままアグルを左腕だけでグググ…と力強く持ちあげる。

同時に右腕を輝かせてキャノン砲の様に変化させると、その銃口をアグルの横腹へ定める。

 

 

チャキ…

 

アルギュロス「フォッフォッフォッ……」

 

 

ニヤリと眼を歪ませて不気味な声で笑うと、右腕のキャノン砲で射撃した。

 

 

アグル「ドゥワァァァァーーーーーーーー!!?」

 

 

アグルは横腹から火花を散らしながら、キャノン砲の衝撃で大きく後方へ吹き飛ばされ、そのまま背中から地面へ叩きつけられる。

 

 

我夢「!?」

 

 

それを見た我夢は目を丸くし、思わず藤宮の名を叫びそうになったが、何とかこらえる。

だが、それと同時に我夢はアグルが――藤宮がいつもと違う戦い方をしていることに気付いた。それはどこか必死に、命懸けに戦っている様に思えた。

 

 

チャキ…

 

 

アルギュロスは右腕のキャノン砲の照準をアグルに合わせながらゆっくりと歩いてくる。

アグルのピンチを感じとったリアスは現場にいる朱乃達へ指示を出す。

 

 

リアス「朱乃、裕斗、イッセー、ゼノヴィア。青いウルトラマンを援護して!」

 

朱乃「わかりましたわ」

 

裕斗「了解」

 

一誠「ラジャー!」

 

ゼノヴィア「了解」

 

 

リアスの指示を聞いた4人は返事を返すと、それぞれの戦いに適した距離までアルギュロスへ近付く。

 

 

朱乃「雷よ、はあっ!!」

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!?」

 

 

朱乃は空高く舞い上がると、雷をアルギュロスの背後に放つ。

朱乃達の気配に気付かなかったのか、アルギュロスは火花を散らしながら前のめりに怯む。

そして、アルギュロスは振り向いて彼女を見つけると、朱乃へキャノン砲の銃口を向けるが

 

 

ゼノヴィア「よそ見している暇は…!」

 

木場「…ないよっ!」

 

ジャキィィーーーーン!!

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!?」

 

 

ゼノヴィアがデュランダル、木場が聖魔剣でアルギュロスの足首をすれ違い様に一閃する。

その攻撃にアルギュロスは両膝をついた。

 

 

一誠「くそぉ!!あの野郎は気に食わねぇけど、同じウルトラマンとして助太刀するぜっ!!」

 

 

一誠はアグルの援護を嫌そうに呟きながらも、我夢から託してもらったジェクターガンで右肩を狙撃する。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーーー!!」

 

朱乃「まだまだ行きますわよ!」

 

木場「はあっ!」

 

ゼノヴィア「おぉぉぉ!!」

 

一誠「ちくしょー!どうにでもなれっ!」

 

 

見事右肩に命中すると、アルギュロスはまた火花を散らして怯む。

そして、休む暇を与えぬ様に朱乃達は次々と攻撃を繰り出していく。

 

 

アグル「ホワッ!アァァァァァ……!!」

 

 

その間に回復したアグルは立ち上がると、両腕を下に広げ、リキデイターの体制に入った。

 

 

アルギュロス「パオォォォォーーー!!」

 

 

アルギュロスは次々と繰り出されていく朱乃達の攻撃に、ただ体から火花を散らしていた。

その理由はただ1つ。彼女らの的が小さく、攻撃が当て辛いからである。

身長が自分と変わらないウルトラマンや怪獣はともかく。的が小さく、機敏な動きが可能な朱乃達はアルギュロスが攻撃しても直ぐ様避けられる。

なので、アルギュロスは攻撃が出来ないのである。

 

 

アグル「…アァァァァァ!!ドゥワァァッ!!」

 

 

朱乃達がアルギュロスに攻撃している中、エネルギーを溜め終わったアグルは、まだアルギュロスに近い場所で攻撃している朱乃達を無視してリキデイターを放った。

 

 

アルギュロス「!!?」

 

朱乃「きゃ!?」

 

一誠「うおっ!?」

 

 

アルギュロスは先程よりも大きな火花を胸元から散らして大きく後方へのけぞる。

だが、近くにいた朱乃達はその攻撃に発生した衝撃波に巻き込まれる。

 

 

リアス「!?」

 

アーシア「何で…!?」

 

小猫「…!?」

 

我夢「…(藤宮…)」

 

さすがにこの光景を見ていた我夢除くリアス達も驚いていた。

アーシアに至っては何故アグルが朱乃達ごと攻撃するのかがわからない様子である。

 

 

一誠「くそぉー!」

 

木場「何て無茶苦茶なっ!」

 

ゼノヴィア「くそっ!私達も巻き込むつもりかっ!?」

 

 

アグルが手を緩めずリキデイターを連射する中、一誠、木場、ゼノヴィアは悪魔の翼を広げると、メタフィールド限界の上空へ既に避難している朱乃のもとへ上昇した。

 

 

アグル「ドゥワァッ!ドゥワァァッ!ドゥワァァッ!!」

 

アルギュロス「パオォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!」

 

ドカァァァァーーーーーーーーン!!

 

 

アルギュロスはたて続けにリキデイターをくらうと、大きな火花を散らして大爆発を起こし、姿を消した。

 

 

アグル「アァァッ…」

 

 

その光景を見たアグルは何とか倒せたという安堵感からか、膝をついた。

実は先程銃撃された横腹のダメージが思ったよりも響いており、先程までその痛みを緊張感で押さえ付ける、

つまり「やせ我慢」をしていたのだ。

だが、「敵と戦う」という緊張が無くなった為、押さえ付けた痛みが彼の身体を襲ったのだ。

 

そして、そのままアグルは体から青い光を放ちながら、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「4人共、ご苦労様。とりあえず戻ってきて」

 

「「「「了解」」」」

 

アーシア「無事で良かったです」

 

小猫「そうですね…」

 

我夢「……」

 

 

リアスはアグルの思わぬ行動に怒りをおぼえながらも、4人が無事である事に安堵し、帰還命令をだした。

リアスと同様にアーシア、小猫も安堵する中。我夢は深く考えていた。

 

 

我夢「(何故、藤宮はここに?何故あんなに必死だったんだ………ん?)」

 

 

先程の戦いを見て、不信に思った我夢は自身のノートパソコンにアルギュロスが向かっている地点を調べると、山中にある施設の名前が画面に表示された。

 

 

我夢「(プロノーン・カラモス?もしかしてっ!?)」

 

 

その名前を見た瞬間、我夢は何か思い出した。どうして、何で気付かなかったのだろうと。

藤宮の行動理由を知った我夢は居ても立ってもいられず、ソファーから立ち上がり

 

我夢「部長!あの金属生命体に関する手掛かりがあるかも知れない場所を思い出したので、これから外へ行ってきます!」

 

リアス「えっ?ちょっ…!」

 

我夢「失礼します」

 

 

そう伝えると、リアスが返事する間もなく外へ出て、プロノーン・カラモスへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「ただいま帰りました……あれ?部長、我夢は?」

 

リアス「また飛び出していったわよ。はぁ……。どうしていつも飛び出しちゃうのかしら…?」

 

一誠「ははは…」

 

 

リアスはため息をしてそう呟くと、一誠は少し困った様に苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢は人がいない場所に隠れて変身し、プロノーン・カラモスに向かって真っ直ぐ上空を飛んでいた。

 

 

ガイア「(どうして気付かなかったんだろう…?)」

 

 

ガイア――我夢は15歳の頃。今から2年前の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

2年前のある日。

この日、我夢は両親と共にイギリスへ旅行に来ていた。

普通なら、「バッキンガム宮殿」や「タワー・ブリッジ」といった有名な観光名所を訪れるだろうが、我夢はそれにも目にくれず、イギリス1の大学「ハイド・ベノン」に見学に来ていた。

もちろんアポはとってある。

 

何故、わざわざイギリスの大学を訪れたのか?

その理由は簡単、「世紀の天才児」といわれる藤宮に会いに来た為である。

 

我夢は自分と同い年である藤宮を尊敬していた。

自分も天才であることを自負するが、藤宮はそれ以上である。特に地球のあらゆる危機を予測する光量子コンピューター「クリシス」を完成させたことは大きな話題である。

巷ではそんな予測は嘘っぱちだと批判しているが、我夢はそんなものは信じてはいない。

 

藤宮は卒業し、クリシスを完成させた今でも大学の研究室を借り、多くの同士達と共に日々研究を重ねている。

 

 

(我夢「(まだかな…?)」)

 

 

我夢は憧れの人物に会えることに期待に胸を踊らせながら、待合室に椅子に座っていると、研究室につながる扉が開き、1人の男性が姿を見せた。

 

彼の名前は「ダニエル」。

藤宮よりも年上のイギリス人で、藤宮の在校生以来の友人である。年下である藤宮をまるで同い年の様に接するその姿勢は、藤宮や多くの人達からも好かれている好青年といった感じである。

 

 

(ダニエル「君、もう入ってきてもいいよ」)

 

(我夢「あっ、はい!」)

 

 

そう聞いた我夢は直ぐ様立ち上がり、身だしなみを整え、ダニエルの後についていった。

 

ダニエルが研究室の設備や日々の活動を我夢に聞かせながら歩き続けると、クリシスをじっと見つめる白衣を着た1人の少年の姿が見えてきた。

 

 

(ダニエル「藤宮君。君に紹介したい人がいるんだ」)

 

(藤宮「?」)

 

 

ダニエルがそう声をかけると、藤宮は視線を一旦ダニエルに向けた後、すぐに彼の後ろにいる我夢に視線を向けた。

我夢はニコッと屈託のない笑顔で前に出ると

 

 

(我夢「藤宮さん!クリシスを開発した藤宮 博也さんですよねっ!高山 我夢です!貴重な研究に見学させていただいて、ありがとうございます!!」)

 

(藤宮「…」)

 

 

元気よく挨拶する。

だが、藤宮の顔は「歓迎する」ようなものでなく、「何かに悩んでいる」。そんな難しそうな顔を浮かべていた。

 

藤宮は少しの沈黙の後、口を開き

 

 

(藤宮「ダニエル、俺の力はここまでだ。俺はこの研究室を出る」)

 

(「「「「えっ!?」」」」)

 

 

ダニエルや我夢を含めたその場にいる研究員達も衝撃の言葉に驚く。

「研究室を出る」。つまりこの研究に参加するのを辞めるということと同じである。

それに何よりこの研究の企画者でもあり、誰よりもこの研究に熱心である彼が抜けるという事はあまりにも唐突すぎるのである。

一同が驚愕している中、藤宮は言葉を続け

 

 

(藤宮「安心してくれ、研究自体は続ける。()()()()()()()()()」)

 

(ダニエル「()()()()()()?どこに?」)

 

 

研究を辞めないと知った一同はほっと安堵する。

だが、続けて言った言葉が気になり、一同を代表してダニエルが問う。

すると藤宮はダニエルを真剣な眼差しで真っ直ぐに見つめ

 

 

(藤宮「そこでダニエル、君に頼みがある。プロノーン・カラモスを貸してくれ」)

 

(ダニエル「プロノーン・カラモス!?」)

 

 

その施設の名にダニエルは目を丸くした。

プロノーン・カラモスはダニエルの一家が保有している国際機関研究施設の事である。

 

 

(我夢「?」)

 

 

当然、我夢はそんなことはわからず、きょとんと首を傾げていた。

そして、なおも驚いているダニエルに藤宮は

 

 

(藤宮「俺は…残された時間を研究に没頭したいんだ…!」)

 

 

どこか使命感に満ちた表情でそう言うと、驚愕でかたまっている研究員の間を抜けて、外へ出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「(すっかり忘れてたけど、これが藤宮と僕の出会いだったな……)」

 

 

ガイアは昔の記憶に思い返していると、プロノーン・カラモスが見えてきた。

ガイアは出来るだけ目立たぬ様、赤い光の玉となって地上に着陸した。

そして、変身を解くと歩きだし、施設の出入口の前に立ち止まる。

 

 

《ピンポーン♪》

 

我夢「すみませーん、聞きたいことがあるんですがー」

 

 

 

我夢は扉の横にあるインターホンを鳴らし、声をかける。

すると、

 

 

《???「はーい、少々お待ち下さい」》

 

 

インターホンのマイクごしに女性の声がかかる。

我夢は女性に言われた通りに少し待つと、ドアが開かれた。ドアの先には、白衣を着た30代後半の知的な雰囲気を感じられる女性がドアノブを握りながら我夢の顔をジロジロと見ていた。

 

 

???「あなた…高山 我夢君?」

 

我夢「はい、そうです。お久しぶりです、稲森 (いなもり )博士」

 

 

稲森 京子(いなもり きょうこ)。彼女は地球の環境問題に関する研究の第1人者の科学者であり、藤宮と同じハイド・ベノン大学の卒業生でクリシスの開発にも参加していた。

また、2年前、我夢に大学の見学許可をしたのも彼女であり、その際に我夢と彼女は知り合いになった。

 

 

稲森「ふふ、久しぶり。何の用?」

 

 

稲森博士は目の前の人物が我夢とわかると、懐かしそうに微笑みながら握手をしながら尋ねる。

そう尋ねられた瞬間。我夢は手を離し、微笑んだ表情から真剣な表情に切り替える。

 

 

我夢「実は藤宮の事が知りたくて…。どうして人類を憎んでいるのかが気になって――」

 

稲森「っ!?あなた、もしかして彼に会ったの!?彼は平気なの!?」

 

 

藤宮の名を聞いた瞬間、稲森は目を丸くして必死に尋ねる。

我夢はその姿は、まるで家出をした子どもの心配をしている母親に思えた。

 

 

我夢「はい、アイツは無事ですよ」

 

稲森「そう、良かった…」

 

 

我夢はそうなだめると、稲森はほっと安堵した表情を浮かべた。

その様子を見た我夢は、稲森は藤宮とただの共同研究員という関係ではないことが気になった。

 

 

我夢「あの?藤宮とあなたはどういったご関係ですか?」

 

 

どうしてもその興味が湧き、今度は我夢が尋ねる。

すると、稲森は口を開き

 

 

稲森「ええ、彼は私の息子よ」

 

我夢「えっ!?藤宮があなたの?」

 

稲森「…といっても私の友人から頼まれて引き取った養子だけどね。ここで立ち話も何だから中で話しましょう?」

 

我夢「はい、お願いします」

 

 

そう言うと、稲森は我夢と一緒にプロノーン・カラモスの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、藤宮はプロノーン・カラモス近くの森林を歩いていた。

だが、その足取りはフラフラとしており、額から脂汗を流しながら苦しげに横腹を押さえている。

 

 

藤宮「はあっ…はあっ…くそっ!奴は何故ここを狙ってくるんだっ!?」

 

 

藤宮は苦しげな声で呟くと、左手に持つアグレイターを見つめた。

そして、クリシスを完成させた時を思い出す……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――4年前 イギリス 「ハイド・ベノン大学」研究室

 

 

研究室内には数人の研究員が緊張の表情を浮かべながらパソコンを慎重に操作していた。

そう、この日は藤宮が考案した光量子コンピューター「クリシス」が長年の研究を重ね、やっと完成しようとしていた。

 

 

(研究員A「第一段階、第二段階終了。各回路、異常なし」)

 

(研究員B「藤宮博士、最終段階スタンバイOKです!」)

 

 

研究員達から準備が整った事を聞いた藤宮は頷くと、ヘリコプターの操縦士がつけるヘッドセットを両耳に装着する。

 

 

(藤宮「(頼むぞ、クリシス。お前の予測が世界を導くんだ…!)」)

 

 

その場にいる全員が息を飲んで見守る中

 

 

(藤宮「クリシス!Think…go!」)

 

 

藤宮はヘッドセットについてるマイクに向かって起動する為の合言葉を言う。

すると、クリシスは起動し始めた。

 

全員が固唾を飲みながら起動音を背景にクリシスを見守る。

そして、しばらく経つと、クリシスの制御をしていた稲森博士が口を開き

 

 

(稲森「光量子回路、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軌道に乗りました!」)

 

(研究員B「やったっ!!」)

 

(研究員A「成功だっ!」)

 

 

無事にクリシスが完成したことを告げられた研究員達は一斉に喜んだ。

歓喜の声があがる中、藤宮も喜びを隠せず、頬を緩ませていた。

 

 

(ダニエル「藤宮君、やった!おめでとう!」)

 

(藤宮「ああ!」)

 

(稲森「成功おめでとう!」)

 

(藤宮「ありがとうございます。稲森博士のアドバイスも随分参考にさせていただきましたから…」)

 

(稲森「ふふ、クリシスの研究に参加できただけでも光栄よ」)

 

(藤宮「ははっ」)

 

 

ダニエルと稲森に称賛された藤宮は少し照れた様に笑う。

 

この場にいる誰もが喜びに包まれていた。

そう、幸福に。

 

だが、この空間はすぐに崩される事になる。

 

 

《ピー!ピー!ピー!》

 

(「「「「「「「!?」」」」」」」)

 

《演算速度……制御不能》

 

 

非常事態の警報が鳴り響くと共に、アナウンスが繰り返し流れる。

これを聞いた藤宮達は一瞬で不安な表情に変わる。

 

 

(研究員A「軌道制御が働きませんっ!」)

 

(藤宮「何っ!?」)

 

(藤宮「リードシンク再起動!」)

 

(稲森「うんっ!」)

 

(藤宮「ハジネルプラネットチェック!急げ!」)

 

(研究員B「イエッサーッ!」)

 

 

藤宮は研究員達にそれぞれ指示を出す。

研究員達がそれぞれ必死に原因を探ってる中、藤宮は疑問に満ちた表情で警報を響かせているクリシスを見る。

 

 

(藤宮「何故だ!?何が狂ったんだ!?」)

 

バチィバチィ!!

 

(藤宮「うわぁっ!?ぐうっ!!」)

 

 

藤宮はそう言いながら、右手をテーブルに叩きつける。

すると、机に置いてあるパソコンから電流が溢れ、キーボードを伝い、藤宮の手を上り、彼の頭部に襲いかかった。

その苦痛に表情を歪ませ、頭をおさえているとある映像が彼の脳裏に流れた。

 

それは暗雲に包まれた空。そして雷鳴響く大地を歩く青い巨人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(稲森「博也君!」)

 

(藤宮「…っ(気絶していたのか…)」)

 

 

藤宮は稲森博士に心配そうに名前を呼ばれながら肩を揺さぶられる。

自分が気絶していた事を悟り、藤宮は体を起こす。

 

 

(藤宮「(何だったんだ……今のは?)」)

 

 

藤宮は電流が頭に流れた際に見た映像が疑問に思った。

あれは幻覚?それとも夢?色々考えるが、夢や幻覚にしては鮮明なものだった。

 

 

(ダニエル「藤宮君!」)

 

 

そんな事を考えていると、ダニエルが藤宮に声をかける。

 

 

(藤宮「どうした?」)

 

(ダニエル「見ろ…」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

藤宮はダニエルに言われるまま、彼の視線の先を見た。

その先にあるモニターには、見たことがない文字が次々と書かれていた。

 

 

(稲森「クリシス、翻訳して」)

 

 

稲森博士は藤宮が先ほどまで着けていたヘッドセットのマイクにそう言うと、文字の下に翻訳した言葉が表示されていく。

藤宮はその翻訳した言葉を読み上げていく。

 

 

(藤宮「『近未来 地球と人類に破滅をもたらす

破滅招来体が襲い来る』…?っ!破滅招来体とは何だ!?異常気象?天平地位?」)

 

 

藤宮は稲森からヘッドセットを受け取り、クリシスに問う。

すると、

 

 

NO;

地球に破滅をもたらすもの

 

 

クリシスはモニターにそう表示する。

それを見た藤宮は目を丸くした。

 

 

(ダニエル「各セクション。経済、自然環境、気象、その他の全ジャンルを修正。この答えを導き出した要素を絞りこむんだっ!」)

 

(「「「「「「イエッサー!!」」」」」」)

 

 

ダニエルは周りにいる研究員達に指示すると、自らも動き始める。

稲森博士、ダニエル、数名の研究員達はデータベースを引き出し、必死に理由を探していく。

 

 

(藤宮「(本当に地球と人類が滅びてしまうのか!?クリシス、答えてくれっ…!)」)

 

 

藤宮は困惑した表情でクリシスに問いかける。

だが、

 

 

(ダニエル「どうして…!どうしてクリシスの予測は変わらないんだっ!?」)

 

 

クリシスの予測した答えは何も変化が起きなかった。

あれから時間がかなり経っており、これにはダニエルだけでなく、研究員達もお手上げ状態である。

 

すると、黙ってパソコンのディスプレイを見ていた藤宮が口を開く。

 

 

(藤宮「ダニエル…」)

 

(ダニエル「どうしたんだ藤宮君?」)

 

(藤宮「変わったよ……」)

 

(ダニエル「何だって!?」)

 

 

それを聞いたダニエルや稲森博士、数名の研究員達が驚きながらディスプレイに向かい合って座る藤宮の周りに集まる。

藤宮は椅子から立ち上がり、ヘッドセットを装着する。

 

 

(藤宮「クリシス…結果を……」)

 

 

そして、クリシスにそう指示すると、モニターには『地球の破滅回避』と表示される。

 

 

(稲森「どうやって…!?」)

 

 

稲森は藤宮にそう問う。

すると、藤宮は震えた声で言葉を続ける。

 

 

(藤宮「…試しに……削除してみたんだ……」)

 

(ダニエル「何を?何をだいっ!?」)

 

 

ダニエルがそう言うと、藤宮はキーボードのEnterキーを押す。

すると、モニターに表示された文字を見て、藤宮除いた全員が言葉を失った。

モニターには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

削除項目: 人類

 

 

と表示されていた。

そう、地球の危機を回避するには人類を犠牲にしなければいけないというあまりにも残酷な答えを告げられたのだ。

 

 

(藤宮「このままじゃ…地球も…人類も…本当に滅びる……」)

 

 

そのあまりにも残酷な回避方法に藤宮は震えた声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

その後、研究室を後にした藤宮は大学内にある自室に戻っていた。

この部屋は藤宮の頭脳に目をつけた大学側が是非、研究の為に自由に使ってくれと無条件で貸してくれた藤宮専用の部屋である。

 

 

(藤宮「(一体、俺はどうすれば……?)」)

 

 

藤宮はパソコンを置いてある机に向かって必死に頭を悩ませて考える。

すると、突然パソコンのディスプレイから光が放たれ、『AGUL(アグル)』という単語が表示されていく。

 

 

(藤宮「っ!?何だっ!?ア…グ…ル…?アグル…?何の事だ?うわっ!?」)

 

 

藤宮はディスプレイに表示された謎の単語に疑問に思っていると、光が自身の体を包みこみ始める。

その現象に藤宮はとっさに目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(藤宮「…!?」)

 

 

藤宮が目をおそるおそる開いていくと、周りの光景に驚いた。

そこは大学内にある自室ではなく、暗雲たちこめる空から雷鳴が鳴り響いている岩場の様な場所―――彼が電流が流れた際に見た映像の場所に立っていたのだ。

 

そして、あの時に目撃した青い巨人もそこに佇んでいた。

 

 

(藤宮「(アグル……お前がアグル……!?)」)

 

(アグル「……」)

 

 

アグルは藤宮に気付いたのか、彼を見下ろす様に見つめる。

 

 

(藤宮「(アグル。お前は何を伝えたいんだ…?」)

 

 

藤宮がそう心の中で問うが、アグルはただ見つめるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、森の中では、金属質な液体がどこかに向かって進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、プロノーン・カラモスでは、我夢と稲森博士が話をしていた。

 

 

我夢「…そうですか。クリシスの予測でそんな事が…」

 

稲森「ええ…始めは私達も信じられなかったけど、何度やっても人類を滅ぼすしか答えが見つからなかった…」

 

我夢「(そうか…。だから藤宮は大学の研究室から抜けたんだ)」

 

 

我夢は稲森の話を聞き、藤宮が大学の研究室を抜けた理由に納得した。

そうして話を続けていくと、稲森は突然思わぬ質問をした。

 

 

稲森「ねえ、高山君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた悪魔でしょ?」

 

我夢「っ!?」

 

 

その質問に我夢は驚きを隠せず、目を丸くした。

人間界にいる悪魔達は人間達に悟られぬ様に情報操作しているはずだが、何故悪魔の存在を知っているのか?

その疑問に我夢はどう返事したらいいかわからず、おどおどしていると、稲森はふふっといたずら気に笑う。

 

 

稲森「大丈夫よ。悪魔の存在している事はわかってるけど、別に何かに利用する訳じゃないから安心して」

 

我夢「は、はあ…」

 

 

稲森にそう言われ、我夢は安心し、息を整える。

我夢が落ち着きを取り戻した事を見計らった稲森は、棚から1冊のアルバムを取り出す。

 

 

我夢「それは?」

 

稲森「これは博也君の本当の両親が持っていたアルバムよ。ここで何をしていたかというのは後で話すけど、その前に博也君が私の元に来るまでの経緯を話しておきたいの」

 

我夢「え?でもいいんですか、そんなに面識がない僕にそんな昔の事を話しても」

 

稲森「ええ。直感だけど、あなたなら信用できると思ったからよ」

 

 

稲森はそう言うと、アルバムのページを開き、藤宮の幼少期を語りだした。

 

 

 

 

 

 

藤宮の両親は、海洋学者である父「藤宮 海之(みゆき)」、元KCBアナウンサーである母「吉井 玲子(よしい れいこ)」である。

 

海之は世界に名だたる海洋学者であり、大半の海洋生物を発見し、学会に貢献した有名人であり、毎日の様に新聞やテレビの取材やラジオ番組に出演していた。

後の玲子は、KCBの人気レポーターであった。テレビの取材の際、一目惚れし、その後交際を重ねて結婚した。 

 

そして、そんな有名人2人の間に生まれたのが長男「藤宮 博也」である。

 

藤宮は幼い頃から優秀であった。

僅か1歳の頃から九九を理解し、4歳の頃には微分・積分までをマスターし、その他の文学系や理数系の知識を理解していた。

 

これには両親も驚いた。だが、その知識をひけらかしたりせず、普通の子供の様に接し、藤宮に愛情を注いだ。

藤宮はそんな両親を誇りに持ち、深く愛していた。

そして、この頃から彼は父の様に立派な海洋学者になりたいと夢を持ち始めた。

 

親子3人はとても幸せな生活を日々送っていた。

だが、ある日。その日常に異変が起き始めた。

 

 

 

それはある日の朝。玲子はいつも通り仕事へ向かう海之を玄関で見送りしようとした時、脳裏に晴天の空から突然雨雲が覆い、大雨が降り注ぐ映像が流れた。

 

それを見た玲子は何だか嫌な予感がすると思い、まさに外へ出ようとする海之を引き留め、傘を手渡した。

 

海之は晴れてるのに傘を渡す妻の行動に疑問を持ちつつも、彼女の事だから何かあるに違いないと信頼し、渡された傘を手に取り、職場へと向かっていった。

 

海之が家を出て数分が経つと、玲子が脳裏で見た通りに突然大雨が降り始めた。

 

この日を境に、彼女は次々と先の未来の事を当てる事ができた。

これには、玲子も海之、まだ幼い藤宮も理解した。

玲子には未来予知ができる力があると。

それでも海之や藤宮は彼女を拒絶することはなく、今まで通り過ごしていた。

 

そう、あの日が来るまでは………。

 

 

 

 

 

その日は休日であり、藤宮は5歳の誕生日であった。

誕生日は必ず家族揃ってお祝いする――それが藤宮家の決まりである。

藤宮はどんなプレゼントをくれるんだろうと胸を踊らせながら、ドアを開け、声をかける。

 

 

(幼少期の藤宮「ただいまー!……あれ?父さん?母さん?」)

 

 

いつもなら、すぐに「おかえりなさい」と言葉が帰ってくるが、中々返事が来ない。

妙に思った藤宮は靴を脱がず、そのままリビングの方へと向かう。

リビングに着くと、室内がやけに暗かったので電気を点ける。

すると、

 

 

 

(幼少期の藤宮「母さんっ!?父さんっ!?ううっ…」)

 

 

そこには両親が倒れており、体のあちこちから血が大量に流れ、リビングの床は血の海になっていた。

藤宮はこみ上げる吐き気をこらえ、何が起きたんだと冷静に考えていると

 

 

(???「おやぁ?まさか子供がいるなんてな?」)

 

(幼少期の藤宮「っ!?誰だ、出てこい!」)

 

 

不気味な声が聞こえ、藤宮は声をあらげる様に言い放つ。

すると、近くの物陰から大柄な男性が現れた。

だが、その背中にはコウモリの様な翼をもっており、その顔は人間とは思えない冷徹なものだった。

 

 

(幼少期の藤宮「お前、人間じゃないな!」)

 

(悪魔「ほう、察しがいいな~坊や。確かに俺は悪魔。何かを与える代わりに何かしらの代償を得る存在だ」)

 

(幼少期の藤宮「どうして父さんと母さんを殺したんだっ!」)

 

(悪魔「うむ。難しい話だが、坊や。俺達、悪魔にも人間達と同じ様に社会があってな、その社会の優劣に関わるゲームがあるのだ。それには自身の下僕を戦わせるもので、そのゲームに必要な駒がいるのだ」)

 

(幼少期の藤宮「駒?まさか、それで母さんを!?」)

 

(悪魔「そうだ!そこでお前の母親が持つ予知能力の神器(セイクリッド・ギア)に目をつけたのだ!」)

 

(幼少期の藤宮「神器(セイクリッド・ギア)?」)

 

 

藤宮は初めて聞く単語に首を傾げる。

その悪魔は言葉を続け

 

 

(悪魔「そうだ、人間どもに備わる特殊な力だ。予知できる力……そんなものがあれば、どんな奴等にも負けない!だから俺はこの女を眷属にひきいれようとしたが、抵抗してな…。邪魔しようとしたお前の父親共々殺してしまったわっ!ハハハハハハ!!」)

 

(幼少期の藤宮「(くそっ!)」)

 

 

藤宮が生まれて初めて誰かを憎いと思った。

何で、どうしてそんな力を持つだけでその生活を誰かのエゴの為に踏みにじられるのだと…。

藤宮はそれが憎くて、悔しくて、怒りに満ちた表情で悪魔を睨み付ける。

 

 

(悪魔「…ハハハハハハ。さて、坊や…俺達悪魔は人間共に認知されてはいけない。この場を見られたからには生きて返すわけにはいかんよなぁ~~?」)

 

(幼少期の藤宮「…っ!」)

 

 

ひとしきり笑った悪魔は、恐怖で動けない藤宮にゆっくりと歩み寄ろうとするが

 

 

ガシッ!

 

(悪魔「なっ!?こいつ生きていたのか!?」)

 

(幼少期の藤宮「父さんっ!」)

 

(悪魔「こいつ、離さんか!」)

 

 

辛うじて息を吹きかえした海之に足をつかまれ、阻まれる。

悪魔はガシガシと海之を蹴りつげるが、海之は離さない。

 

 

(海之「博…也っ!!に…逃げろぉぉーーー!!」)

 

(幼少期の藤宮「っ!」)

 

 

海之の血を吐きながらの必死の叫びに藤宮はいつの間にか体が動ける様になっている事に気付くと、そのままリビングに背を向けて、脇目も降らず、真っ直ぐ外へと走っていった。

 

そして、翌日。藤宮は警察に保護され、両親は殺人事件の被害者として捜索された。

だが、証拠や手掛かりが全く無いので、この事件は迷宮入りとなった。

 

その数日後。両親の葬式が行われた。多くの参列者や親戚が集まり、孤児となった藤宮を励ました。

 

だが、賢い藤宮にはわかった。励ましてくれる大人の大半は両親が残した遺産目当てであると。

 

そして、この時に藤宮は人間というものに深い失望感を覚えたのである………。

 

 

 

 

 

 

稲森「葬儀の後、玲子があらかじめ残した遺書に乗っ取り、私が彼を引き取る事にしたのよ。彼女は自分よりも、息子の事が大事だったのね……」

 

我夢「そういう経緯で、藤宮は人類や悪魔らに深く憎んだと?」

 

稲森「そうね。引き取った間もない頃は私意外の人間を常に警戒していたわ。でも、私と暮らしていくうちに、その憎しみも消えていったけど、まだ心の底に埋もれてたみたいね……」

 

我夢「……」

 

 

我夢は言葉が出なかった。

何度か協力を申し出たが、藤宮にそんな深い過去を知った今、彼にどう声をかければいいのかと悩んだ。

だが、不安そうにこちらを見る稲森の視線に気付き、我夢は気まずそうに顔をあげる。

 

 

我夢「…それで、藤宮はここで研究を?」

 

稲森「そう。彼は研究室を出た後、ここで研究をね。そして、真実を知りたがってた…」

 

我夢「真実……」

 

稲森「ええ、博也君が予言した…地球の未来……」

 

 

稲森は藤宮からプロノーン・カラモスに招待された出来事を思い出していく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2年前、プロノーン・カラモス

 

 

(藤宮「よく来てくれました」)

 

(稲森「どうして私なの?大学の研究員や他の科学者じゃなくて…」)

 

 

稲森は疑問に満ちた表情で藤宮に問いかける。

すると、藤宮は微かに笑みを浮かべ

 

 

(藤宮「同士達には俺のやっていることは理解できないからです」)

 

(稲森「そう……でもあなたが前に言っていたことは考えられないわ。地球内部に新しい粒子が発見されるのはありえないのよ?」

 

 

そう答えるが、稲森は未だ半信半疑であった。

すると、藤宮は自身の仮説を語りだした。

 

 

(藤宮「自然治癒力……どんな生き物でも病気にかかれば自然と治そうする力が働く。もし近い将来、地球に破滅が訪れるなら…」)

 

(稲森「それが働く…?」)

 

 

稲森が藤宮に続け様に言うと、藤宮は頷いた。

そして、藤宮は真剣な眼差しで観測用のプールを見下ろし、呟いた。

 

 

(藤宮「俺は本当の気持ちが知りたいんだ……」)

 

(稲森「えっ?」)

 

(藤宮「本当の地球の意思が……」)

 

 

 

 

 

 

 

 

稲森「『本当の地球の意思』……彼はそう言ったの。私たちは何ヶ月も渡って、センサーを観測したわ。でも正直、博也君の言っていることに半信半疑だったの、本当に地球は私たちに語りかけてくれるのか…。地球の心を、私たちは本当に理解できるのか…」

 

我夢「地球の心?」

 

 

我夢は稲森博士に問いかけると、稲森は頷く。

 

 

稲森「ええ、でもそれは本当にやって来た…」

 

 

 

 

 

 

 

 

(藤宮「くそっ!どうしてだ!何かしらのアクションを起こすはずなのに、何故何も起きないっ!」)

 

稲森「博也君」

 

 

藤宮は苛立ちを隠せず、机に拳を叩きつけた。

その様子を稲森は不安そうに見つめる。

 

藤宮は自身の仮説を元に何ヵ月も観測を行ってきた。

だが何も起きず、ただ時間だけが過ぎていくだけの有り様である。

その為にわざわざ育ての親である稲森を招いてまで研究をしていたのだが、結果が出ないことに業を煮やしていた。

 

 

(藤宮「(アグル…お前は地球の意思じゃないのか?どうすればいい?答えてくれっ、アグル…っ!)」)

 

 

藤宮はすがるように必死に祈ると、脳裏に再びアグルの映像が流れた。

 

前回と同様、雷鳴轟く中をアグルが静かに佇んでいた。

だが、その足元の周囲にはコウモリやカラスの羽、破壊された街が広がっていた。

 

これを見た藤宮は思った。

「地球の意思であるアグルは自らの手で人類を滅ぼす」

と…。

 

そう解釈した藤宮は恐ろしくなり、意識が戻ると、すぐさま観測機器のコードや電源を抜き始めた。

 

 

(稲森「博也君!?待って、何してるのっ!?」)

 

(藤宮「観測はやめだ!もし、地球に自らの命を守ろうとする力が生まれたとしても、それが人類を救う力とは限らない。もしも生まれ変わるとしたら煩わしい物を取り除こうとする方が自然だ……!人類はこれまで地球に何をしてきた?いざという時だけ守ろうとしてもらうなんて虫が良すぎる!!」)

 

 

そう叫びながら電源やコードを抜いていく藤宮の手を稲森は必死に止めようと手に触れたとき、その手が震えていることに気付いた。

 

 

(稲森「怖いの…?」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

その事に気付いた稲森が問うと、藤宮は一瞬驚いた様な表情を浮かべ、頷く。

そして、藤宮は口を開き

 

 

(藤宮「怖いさ……また俺が人類の不幸を発見するんじゃないかってね……」)

 

(稲森「……」)

 

 

自身が今思っている事を全て吐き出した。

黙って聞いていた稲森は話終えている今でも震えている藤宮の手をとり

 

 

(稲森「なら、観測は続けるべきよ。可能性を捨てるなんて愚かな事だわ。そうしなきゃ、あなたは自分が背負ってる苦痛から解放されないわよ」)

 

(藤宮「…っ!」)

 

 

そう叱咤すると、藤宮は改めて気付かされた。

何を恐れているんだ、まだ地球が人類を見捨てると確定した訳ではないと…。

それに気付かれた藤宮の手の震えは自然と収まっていた。

 

彼が安心したと悟った稲森は安堵の表情を浮かべ、藤宮から手を離す。

 

 

(藤宮「博士…ありがとうございます」)

 

(稲森「ふふっ…いいのよ。さぁ!観測を続けましょう」)

 

 

そう感謝する藤宮に稲森は笑顔で返す。

いざ、改めて観測の続きを始めようとしたその時。

 

 

《ビー!ビー!ビー!》

 

(「「!?」」)

 

 

突然、研究所内にアラームが鳴り響いた。

稲森と藤宮は急いでパソコンで出所を確認すると、それは観測用のプールのセンサーが何かに反応した様であった。

 

稲森は観測用プールの映像をディスプレイに表示させると、プールから青い光が溢れていた。

 

 

《藤宮「来た…」》

 

《稲森「何、この光は…?」》

 

《藤宮「来たんだっ…!地球の意思が!!」》

 

 

不思議そうに眺める稲森とは反対に藤宮は嬉しそうに眺め、まるで子供の様にはしゃぐ。

 

 

(藤宮「博士はこの光を分析してくれ!俺はこの目で確かめてくる!!」)

 

(稲森「わかった!」)

 

 

いてもたってもいられない。そう思った藤宮は稲森に口早に告げると、すぐさま観測用プールに向かった。

 

 

 

 

(藤宮「来たっ!来たんだ!!」)

 

 

藤宮は嬉しそうに呟きながら、連絡通路を渡り、光が出現しているプールへと向かう。

こころなしか、光は藤宮が近付くにつれ、ますます輝きを増していった。

 

藤宮は光の出現したプールの近くにくると、光を見下ろす。

 

 

(藤宮「(お前がアグルなのか…?地球の意思なのか…?)うぅあっ!?」)

 

 

藤宮がそう問いかけると、頭痛と共に雷鳴轟く中を歩くアグルのイメージが流れてきた。

藤宮が苦痛に顔を歪めていると、光は更に輝きを増していき、溢れんばかりになっていく。

 

 

 

 

 

一方、稲森は藤宮に言われた通りに光の観測を行っていた。

だが、解析を行っていくうちに、その光は地球上に存在する粒子では考えられない程の周波数を放っている事がわかった。

 

 

(稲森「…っ」)

 

 

藤宮の事が不安になった稲森は、モニターに映る藤宮を眺めた。

しばらく様子を見ていると、突然光がプール飛び出し、藤宮に吸い寄せられる様に包みこむ。

それを見た稲森は目を見開くと、その様子を映しているモニターを両手で掴む。

 

 

(藤宮「アグル……俺にお前の力をくれ!アグルゥゥーーーー!!」)

 

(稲森「博也くぅぅぅーーーーーん!!」)

 

 

青い光を受け入れ、歓喜の叫びをあげる藤宮に稲森は涙目でモニター越しに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稲森「彼は……その光の中に消えたわ」

 

我夢「…」

 

 

稲森はことの顛末を話し終えると、稲森は悲しげな表情を浮かべた。

更に話を聞くと、藤宮がいなくなって以降も1人で観測を続け、彼のペット(藤宮曰く恋人)のハムスターの「リリー」の面倒を見ているという。

 

まるで、藤宮の帰りを待つ様に……。

 

しかし、この話を聞いて納得したことがある。

藤宮が人類だけでなく、悪魔にも敵意を向けているのは過去の出来事と地球が見せたアグルのイメージが彼の脳裏で合致してしまったのではということだ。

もしそうだとしたら、今までの行動も全て理由がつく。

 

 

我夢「(藤宮…)」

 

 

我夢は何とも言えないもやもやとした気持ちで、稲森の座っている近くにあるデスクに置いてある幼少期の藤宮の家族写真を見た。

 

その顔は今と違い、満開な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、藤宮はふらふらとした足取りでようやくプロノーン・カラモスに辿り着くと、扉を開け、中へと入る。

その部屋はかつて粒子観測を行っていたプールであった。

 

藤宮は過去にアグルの光を手に入れた場所まで来ると、

意を決し、プールの中へ飛び込んだ。

 

 

藤宮「(アグルよ…。地球の危機が運命なら…人類の危機が運命なら…地球の意思に沿って行くことが人類に残された人類の道なのか……?それを導くのがアグルの力……)」

 

 

藤宮は自問自答すると、藤宮は手を伸ばす。

 

 

藤宮「(アグル!再びお前の力を…!!)」

 

 

藤宮は力強く願うと、それに答えるかの様に彼の前に青い光が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

《ブー!ブー!ブー!》

 

「「!?」」

 

 

その時、我夢達がいる部屋にアラームが鳴り響く。

稲森はすぐさま異変があった観測機器を調べると、目を丸くした。

 

 

稲森「これは…!あの時と同じだわっ!?」

 

我夢「えっ!?」

 

 

それを知った稲森と我夢はモニターを確認すると

 

 

我夢「藤宮!?」

 

稲森「博也君!?」

 

 

そこには観測用プールに潜り、そこに現れた光に手を伸ばす藤宮の姿があった。

数年ぶりの藤宮の姿を見た稲森は、いてもたってもいられず、観測用プールへと向かおうとする。

 

 

我夢「(…そうか!ここで藤宮は……)うわっ!?」

 

稲森「きゃっ!?」

 

 

我夢がどうやってアグルの力を手に入れたのか納得していると、突然地響きが彼らを襲う。

 

 

稲森「うっ…!」

 

我夢「博士っ!?」

 

 

稲森は頭にその衝撃で棚から落ちてきた本に当たり、気を失ってしまった。

地響きが収まると、我夢は急いで稲森に駆け寄る。

 

 

我夢「博士っ!!しっかりしてください!!」

 

 

我夢は倒れている稲森の肩を揺するが、目が覚める気配はない。

だが、息はある事に安心すると、物が落ちている床をある程度退け、博士を棚にもたれかけさせた。

それを終えると、我夢は外へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢が外に出ると、我夢は目を疑った。

そこには数本の槍が……アグルに倒されたはずのアルギュロスが地上に刺さっていたのだ。

 

 

我夢「生きていたのか…!?」

 

 

我夢が驚きの声をもらしているうちにアルギュロスはバチバチ…と電流を放ち、人型へと変形していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、プール内にいる藤宮は新たに現れた光を手に取り、体を眩ゆい光で包み込む。

そして、アルギュロスが出現したのを感じ取ると、真上を見上げ、両腕も一緒に突きだし

 

 

藤宮「アグルゥゥゥゥゥーーーーーーーーーー!!!

 

 

そう叫ぶと、彼は青く光り輝き、ウルトラマンアグルへと変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外ではアルギュロスが右腕のキャノン砲でプロノーン・カラモス目掛けて銃撃した。

最初の一撃が当たり、周辺に建物の破片が飛び散る。

我夢はこれからもっと飛んでくる破片に身構えるが、最初の一撃以降、銃撃が当たる事はなかった。

 

何と、弾丸は何かに防がれるかの様に空中で火花を散らした。

 

 

アルギュロス「!?」

 

我夢「!?」

 

 

アルギュロスと我夢は驚きながらも弾丸が防がれた位置を見る。

すると、

 

 

[推奨BGM:アグル降臨]

 

 

アグル「…」

 

我夢「藤宮…!」

 

 

そこには身を屈めたアグルが背中で施設を守る様に現れた。

アグルは透視能力でプロノーン・カラモス内を見る。

稲森博士が気を失ってはいるが、無事であることを確認したアグルは安堵したように頷く。

 

 

[推奨BGM:アグルの戦い]

 

 

アルギュロス「パオォォォォォーーーーー!!」

 

アグル「ッ!~~~~!!」

 

 

そうしていると、右腕を元に戻したアルギュロスが象に似た鳴き声でかかってこいと言わんばかりに威嚇する。

アグルは振り返りながら立ち上がると、両拳に力を込め、こちらへ向かってくるアルギュロスへ向かっていく。

 

 

アグル「デュワァ!」

 

 

アグルは左、右と交互の回し蹴り、そして右手の甲で殴りつけるが、アルギュロスの腕に防がれる。

 

 

アルギュロス「パオッ!」

 

アグル「ホワッ!ドゥワァ!」

 

アルギュロス「パオォォォーーー!」

 

 

そして、アルギュロスの反撃のハイキックを後ろへ避け、すれ違い様に右腕を振りかぶって横にチョップするが、アルギュロスはしゃがんで回避しながらアグルの背後へ回る。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

アルギュロス「パオォォォーー!!」

 

 

アグルは上体を反らして後ろへ蹴るが、アルギュロスは両手ではたき落とす。

アグルは防がれるのを察しており、右腕を振り回して殴りかかる。

 

 

アルギュロス「パオォォォーー!!」

 

 

だが、アルギュロスはそれを右腕で防ぎ、余った片方の腕で顔面へ殴りかかる。

 

 

アグル「ドォウッ!」

 

 

しかし、アグルも負けじと上体を右側に傾けさせて避け、反撃を防ぐ為、左腕でアルギュロスの右腕を押さえる。

 

そして、両者の腕が交差し、つばぜり合いの様に攻め合いながら、ゆっくりぐるぐると回る。

 

前回の時と違い、お互い一歩も譲らない

―――――正に互角。

どちらが勝つかわからない状態に我夢は息を飲みながら、見守る。

 

 

ピカァァァーーーーーン!!

 

アグル「ッ!」

 

 

しばらく拮抗状態が続いていると、突然アルギュロスの身体が輝きだした。

輝きながら、見覚えのあるシルエットへと姿を変えた。

 

 

その姿は青い体色に銀色のプロテクター、胸元に輝く巨人――――何とアルギュロスはウルトラマンアグルの姿に化けたのである。

 

だが、その眼は不気味なピンク色に輝いており、ボディーラインやプロテクターの内側にある黒い箇所はメタリックグレーと本物のアグルと相違点がある。

名付けるとしたら、「ニセ・ウルトラマンアグル」である。

 

 

[BGM終了]

 

 

ニセ・アグル「フォッフォッフォッ…」

 

アグル「!?」

 

ニセ・アグル「デ"ェア"ッ!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

ニセ・アグルは口元を三日月の様に歪めて不気味に笑うと、驚いているアグルの顔面を殴る。

それをくらったアグルは後ろへ怯みながら後退る。

 

 

ニセ・アグル「パオォォォーーー!!」

 

アグル「ドゥワァッ!?」

 

ニセ・アグル「ドォワ"ァ"ァ"ーーー!!」

 

アグル「ドゥオワァァァーー!!」

 

 

ニセ・アグルは続け様に次々と格闘攻撃の応酬を繰り出す。

アグルも負けじと応戦するが、ニセ・アグルの猛攻に翻弄される。

 

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!ドォワ"ァ"ァ"ァ"ーーーーー!!」

 

 

ニセ・アグルは怯んだアグルの首を掴むと、そのまま勢いよく前方へ投げ飛ばした。

 

 

アグル「…ッ」

 

我夢「っ!」

 

 

アグルは地面を叩きつけられながらも、片膝をついて立ち上がる。

我夢は助太刀しようとエスプレンダーを右手に装着し、変身しようとしたが

 

 

アグル「…ッ!」

 

我夢「っ?」

 

 

それを見たアグルは「手を出すな!」と言わんばかりに手で我夢を制した。

このメッセージを受け取った我夢は不安そうな表情ながらも、変身するのをやめる。

 

その隙にニセ・アグルはアグルに向かって疾走してくる。

 

 

アグル「デェアッ!」

 

ニセ・アグル「?」

 

 

だが、アグルはすぐさま立ち上がり、体を回転させながら上空へと上昇する。

それを見たニセ・アグルは走るのをやめ、空を見上げる。

すると、

 

 

ニセ・アグル「ッ!?」

 

アグル「ドゥオワァァー!!」

 

ニセ・アグル「ドォ"ッ!!」

 

 

アグルは急降下してニセ・アグルに倒れこみながら体当たりをくらわせる。

 

 

アグル「ドォワッ!」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!!」

 

アグル「デュワァァァーー!!」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!パオォォォーーー!!」

 

 

アグルはすぐさま起き上がり、ニセ・アグルを無理やり起こさせて腹部へ膝蹴りを放ち、そのまま後方へ投げ飛ばす。

アグルは未だ苦しんでいるニセ・アグルに近づき、

 

 

アグル「ドォウッ!ドァァァァーーーーーー!!」

 

ニセ・アグル「!?」

 

 

両腕で高く持ち上げると、振り向き様にニセ・アグルを大きく投げ飛ばした。

ニセ・アグルは正面から地面に叩きつけられ、苦しそうにもがく。

 

先程の劣勢から一変して、戦況はアグルに傾いていた。

アグルは余裕な様子で先程のダメージを特に効いてなさそうである。

このままアグルに軍配があがりそうだが、ニセ・アグルも負けてはいない。

 

 

ニセ・アグル「ホ"ワ"ッ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

ニセ・アグルは立ち上がると、リキデイターの構えをとった。

だが、その色は邪悪な紫色に染まっている。

 

 

ニセ・アグル「ドォ"ワ"ッ!!」

 

アグル「!?」

 

我夢「!?」

 

ドカァァァァァーーーーー!!

 

 

ニセ・アグルはリキデイターを2発発射すると、アグルに命中し、辺りに爆発が起きる。

 

その光景を見たニセ・アグルは「勝った!」と勝利を確信し、ガッツポーズをして喜びに浸っていたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグル「……」

 

ニセ・アグル「パオォォォーー!?ドォワ"ッ"!!」

 

 

煙の中から屈んでいる無傷のアグルが姿を現す。

ニセ・アグルは「ぬか喜びさせやがって!」と言わんばかりに腕を振るうと、額の前に両腕をクロスさせて、フォトンクラッシャーの構えをとる。

 

 

アグル「フォォォォォ……!!」

 

 

同じくアグルもワンテンポ遅れながら、フォトンクラッシャーの構えをとる。

 

 

ニセ・アグル「ドゥ"ォワ"ァ"ァ"ァ"ーーーーーーーー!!!」

 

アグル「ドゥォワァァァーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

ドガガァァアァァァァァーーーーーーーーン!!!

 

 

ニセ・アグルは一足先にフォトンクラッシャーを放つが、本物のアグルのフォトンクラッシャーに押し合うこともなく押し返され、そのまま爆発四散した。

 

 

我夢「パワーアップしたのか……」

 

 

我夢は以前よりも遥かに強くなったアグルに驚きながら呟く。

勝利したアグルは青い光を放つと、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、我夢はそろそろ駒王町に戻ろうとするが

 

 

藤宮「我夢…」

 

我夢「藤宮…君は僕らの為に……」

 

 

森の中から藤宮が現れる。

我夢は少し嬉しそうな顔でそう言うが

 

 

藤宮「勘違いするな。俺はアグルの聖地を守っただけだ……」

 

 

藤宮は冷たく返す。

だが、我夢はそれをわかっていたのか、特に気にせず、言葉を続けた。

 

 

我夢「アグル……それが君の力…。君のご両親の話は聞いたよ……。僕たち、悪魔のせいで人生が滅茶苦茶になったんだろう?」

 

藤宮「……」

 

我夢「信じてくれるかわからないけど、僕の(あるじ)はとても良い人だよ。君が事情を話せば、きっと親身になってくれるはずだよ」

 

藤宮「………」

 

我夢「都合の良い話かもしれない。でも、まずはウルトラマン同士、力を合わせて……僕とイッセーと一緒に戦おう」

 

 

我夢は複雑そうな表情をしながらも、手を差し出す。

藤宮はその手を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とらなかった。

藤宮は不機嫌な顔になると、我夢の手を払いのけた。

その行動に我夢は目を見開くが、藤宮は淡々と話す。

 

 

藤宮「お前は地球の意思に逆らっている」

 

我夢「…?人類を救うのが地球の意思だろ?」

 

藤宮「違うな。今の人類は自然の頂点に立つには自己中心的すぎる」

 

 

冷酷に答える藤宮に我夢はイラッとし、

 

 

我夢「ただ、破滅招来体の犠牲になればいいっていうのか!」

 

藤宮「地球がそれを望むなら―――」

 

我夢「君は人が死ぬ悲しみから目を反らすのか!?」

 

 

少し声を荒げて問うと、藤宮はそれを意に返さずに冷酷に答える。

藤宮は眉をしかめている我夢の眼を見て

 

 

藤宮「人が悲しむ?悲しむも何もそれが地球が選んだ選択肢だ。それにもし、お前が俺なら喜んで協力すると思うか?」

 

我夢「っ!そ…それは!」

 

 

そう問うと、我夢は言葉を詰まらせた。

自分が藤宮なら?そう考え込んでいると、

 

 

《心のマグマが目覚めたら~~♪大地と共~に立ち上がるぜ~~♪》

 

我夢「っ!」

 

 

スマホの着信音が鳴り、我夢は着信画面を見ると、リアスからであった。

また勝手に出ていった事を思い出した我夢は青ざめながら電話に出た。

 

 

我夢「もしもし?」

 

《リアス「もしもし、我夢?どこにいるのかしら?」》

 

我夢「中部地方です。あの金属生命体について調査してたんですけど、無事アグルが倒してくれました」

 

《リアス「あぐる?何の事かはわからないけど、無事だったのは幸いだったわ。後で詳しく聞かせてもらうから、帰ってきなさい」》

 

我夢「あっ、はい!…はぁ」

 

 

我夢はそう返事すると、電話をきった。

勝手に行動したのを咎めると思ったのでヒヤヒヤしていたが、問題ないとわかり、ほっとため息をつくと、再び藤宮を見つめる。

だが、藤宮はよりいっそう不機嫌な顔になっており

 

 

藤宮「行けよ…お前の仲間の元に……」

 

我夢「……」

 

 

そう突き放す様に言うと、我夢に背を向けて歩き出した。

 

 

藤宮「……」

 

 

藤宮は歩く途中、遠目で稲森博士と彼女が持っている篭に入っているペットのリリーを見つめた。

 

 

稲森「…っ!」

 

藤宮「…」

 

 

稲森はその視線に気付き、少し悲しげに彼に視線を返す。

だが、藤宮は足早にすぐ、その場を去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

大地の怒りはもう収まらない…!
駒王町の都市機能を完全にマヒさせて、あっちにもこっちにも龍の首が!
踏ん張れ、オカルト研究部!

次回、「ハイスクールG×A」!
「龍の都」!
君もパワフルに行こう!








良かったら、感想&コメントよろしくお願いいたします。


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第四章 停止教室のヴァンパイア
第18話「龍の都」


地帝大怪獣 ミズノエノリュウ 登場!


アルギュロスの襲撃から数日がたった頃。

我夢達が過ごす駒王町の気温も暑くなり、季節は夏に近付いていた。

 

当然、暑くなっていくこの季節。生徒の学生服も標準の冬服から夏服へと移り変わり、学園内は冷房をつける様になっていった。

 

そんな朝。自宅である神社で暮らす朱乃はいつも通り早い時間帯に目覚めると、弁当を作る。

その後、自分が作った朝食を摂り、身支度をする。

 

 

朱乃「お母様、いって参ります」

 

 

そして、朱乃に顔が似ている遺影が飾られている仏壇で合掌する。

それが終えると、荷物を手に取って玄関へ向かい、扉を開ける。

だが、玄関を出た瞬間

 

 

???『ギュウウゥゥェェェェーーーン…』

 

朱乃「?」

 

 

脳裏に奇妙な鳴き声は聞こえた。

その鳴き声は地球上どの動物にも当てはまらないものだ。

普通の人なら驚くであろうが、朱乃は特に驚かず、空を見上げ

 

 

朱乃「壬龍(ミズノエノリュウ)…」

 

 

そう意味深に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間経ち、昼の時間となった。

駒王学園ではいつも通り昼休みになり、各生徒が友人や恋人と机を合わせて、お弁当を食べながら他愛ない会話をする。

当然、我夢も一誠、松田、元浜のいつもの3人と一緒に机を合わせて食事をしながら、楽しく会話をしていた。

 

我夢と一誠はいつも通り自分達の趣味の話をしていると、いつの間にか最近の話題についての話になった。

 

 

一誠「え、またこの町が断水?」

 

 

一誠は少し驚いた表情で聞き返すと、元浜と我夢、松田は頷く。

それを聞いた一誠は「またか…」と呟いた。

 

一誠がそう思うにも無理はない。

何故ならここ最近の間、駒王町では断水事故が多発しており、水をはじめ、電気やガス、電話といったあらゆるライフラインがトラブルが発生している。

 

その緊急事態にG.U.A.R.D.は直ぐ様、水の配布や電線の復旧作業を行っているが、断水は中々収まらず、事態は収まるどころかますます増えている状況だ。

これにはG.U.A.R.D.も手一杯である。

 

 

一誠「それで原因は?まだ見つからねぇの?」

 

我夢「うん、それがさっぱりわからなくて……。でも、珍しいね。君達2人が時事問題を真剣に話すなんて」

 

松田「失礼なっ!」

 

元浜「俺たちにはそれ以上のダメージがあるから、こうして真面目に話してるんだっ!!」

 

我夢「へぇ…理由は?」

 

 

ぷりぷりとしている2人に我夢は感心した表情を浮かべて問うと、2人は瞳に涙を浮かべ

 

 

元浜「それはな…!このまま断水が続いたら…!」

 

松田「女子たちの水着を見れないまま、夏休みがきちまうからだぁ!」

 

我夢「はぁ…感心した僕がバカだった」

 

一誠「変わんねぇなぁ…お前ら」

 

 

そう悔しそうに叫ぶと、一誠と我夢は呆れた様にため息をつく。

そう、彼らが言うように、断水の被害はもちろん駒王学園にも影響がある。

水道水が使えないので、プール掃除が出来ず、学校の夏恒例のプール授業が延期している状態なのである。

 

しかし、かなりの声量だったので教室中にも響き渡り、それを聞いた男子生徒は「そうだよなぁ…」という感じで頷き、女子生徒からは冷ややかな視線を向けられている。

相変わらずセクハラ発言する松田と元浜に、我夢と一誠はいい加減にしてほしいと心から思ってはいるが、当の2人はこの様である。

 

こんな2人を呆れた表情で眺めていたが、もしやと思い、1人で考え始めた。

 

 

我夢「(今回の断水も根源的破滅招来体の仕業なのか…?いや、でもこんなまどろっこしい方法で人類を滅ぼすとは考えられないし……)」

 

 

我夢は答えを絞り込もうと必死に考えるが、ただ時間だけが過ぎて行き、いつの間にか昼休みが終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。我夢と一誠はオカルト研究部の部室へと足を運んだ。

いつもならリアスが今月の目標等を話してから始めるが

 

 

リアス「みんな。今日は駒王町で多発している断水事故についての活動をしようと思うの。私の領地でこんなのが続いたらさすがに困るからね……いいかしら?」

 

 

リアスが断水事故の調査の提案を出した。

この提案には我夢を含め、多くの部員達もこの話題が気になっていたので、誰も反対するものはいなかった。

 

よって、今日は断水についての調査を行う事になった。

 

 

リアス「ありがとう、みんな。さて、みんなの賛成を得たことだし、早速始めましょうか。普通なら地道に調査するところだけど、もう()()()()()()()()()()()()

 

一誠「えっ!」

 

木場「この断水を引き起こした犯人が?」

 

リアス「ええ、それを今から説明するわ。朱乃」

 

朱乃「わかりましたわ、部長」

 

 

リアスと朱乃を除く一同が驚いている中、朱乃はリアス

の合図を受けると、我夢達に見える様にテーブルに古ぼけた地図を広げた。

 

 

我夢「朱乃さん、これは?」

 

朱乃「これは江戸時代の駒王町の地図ですわ。私の家の倉庫から見つかりましたので、特別に持ってきましたわ」

 

一誠「この地図が今回の件に何か関係あるのですか?」

 

朱乃「そうですわ。この地図について話す前に少し私の趣味についてお話ししたいのですが、いいです?」

 

 

朱乃がこの場にいる全員に尋ねると、一同は「その趣味が今回の件に関係あるに違いない」と思い、頷く。

朱乃は皆に感謝すると、自身の趣味である「風水」について語り出した。

 

 

朱乃「私の趣味である『風水』は 、中国では宋の時代に大系化された土地の吉凶を占う吉相占術なのですわ。

風水は、大地が自然に備えているエネルギーを風や、水の流れから読み取ってその土地にふさわしい利用法を指導するのが役割なんです」

 

我夢「なるほど…。その風水で水不足の原因がわかったんですか?」

 

朱乃「えぇ、断定ではないですけど、今回の断水があった場所は全て『地脈』の上にありますの」

 

「「「「地脈?」」」」

 

 

聞き覚えがない単語に我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは首を傾げる。

そのリアクションに木場は朱乃の代わって、口を開き

 

 

木場「大地のエネルギーが流れる道筋だよ。例えるとするなら、大地のエネルギー専用の道路だね」

 

一誠「へぇ~…」

 

ゼノヴィア「なるほどな…」

 

我夢「この地図は地脈を表したものだったのか…」

 

 

そう説明すると、4人は納得した表情を浮かべ、相づちをうった。

そのリアクションを見た朱乃は納得したと判断すると、話を続けた。

 

 

朱乃「祐斗君の言う通り、地脈は大地のエネルギー……中国ではこれを『龍』に例えますわ」

 

 

朱乃はそう言うと、地図の端に筆で書かれている『壬龍』という漢字に指を指す。

その指先に示す漢字を我夢達は地図を取り囲む様な形で覗きこんだ。

 

 

一誠「じ……(じん)……読めるか?我夢」

 

我夢「いや、わからない。木場君わかる?」

 

木場「僕も沢山書物を読んでるけど、こんな漢字見たことがないな…」

 

小猫「…私もわからないです」

 

 

あれじゃない、これじゃないとにらめっこしている一同に朱乃は「あらあら、うふふ…」といつもの様に微笑み、答えを教えてあげることにした。

 

 

朱乃「これは『壬龍(ミズノエノリュウ)』と読んで、壬の方向から走る、駒王町…いやT県で一番大きな地脈。これが断ち切られると、その土地が持っている吉相(きっそう)は失われてしまいますわ。」

 

ゼノヴィア「断ち切る?どうやって?」

 

朱乃「地脈は大地の中を走ってますから、何か大きな土木工事とかで地形が変わったりすると……例えば、この辺…ですかしら?」

 

 

朱乃はそう言いながら、地脈を表した地図の上に現代の駒王町の地図を重ね合わせ、ある場所に指を指した。

それを見た一誠は目を丸くした。

 

 

一誠「…!ここって、駒王デパート近くで起きてる都市再開発現場じゃ!」

 

木場「そうだね。最近起きた断水によって工事も遅延してると聞くけど…」

 

我夢「っ!じゃあ、今起きてる断水は、この町ができる以前から住んでいたミズノエノリュウが、勝手にすみかを荒らされた人類への怒りということですかっ?」

 

朱乃「ええ、そうですわ」

 

 

今回起きている現象が結びついた我夢が朱乃に尋ねると、朱乃は頷く。

 

 

リアス「それだけでなく、コカビエルが駒王学園の地脈に細工をした際の影響もあると思うわ。結局、私達も同罪な様なものね……」

 

 

リアスが自虐的にそう呟くと、一同は言葉を失った。

そうだ、この原因を作った要因は自分たちにもある、と皆は思った。

 

 

リアス「とにかく、今夜は都市再開発現場にいるミズノエノリュウの説得をしようと思うの。相手が納得するとは思えないけど……とにかく、今夜10時に現地集合して欲しいわ」

 

「「「「「「…はい!」」」」」」

 

 

皆は少し遅れながらも返事すると、一旦帰宅することになった。

我夢は一誠と一緒に家に帰ることにしたが

 

 

朱乃「……」

 

 

部室を出る前、朱乃の表情が曇っている事を見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数時間経ち、夜10時。

オカルト研究部は集合場所である都市再開発現場の前に集まっていた。

 

 

リアス「みんな…行くわよ」

 

 

リアスがそう言うと、皆は地下洞窟へと歩き始めた。

 

 

???『ギュウウゥゥェェェェーーーン…』

 

 

地上では、リアス達全員が入り終えると同時に、透明の龍の首が彼女らを警戒する様に見つめていたことは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥へ奥へと地下道を進んでいくリアス達。

リアスを先頭に進んでいく中、最後尾にいた我夢が未だ表情を曇らせている朱乃に声をかけようと近付いた。

 

 

我夢「朱乃さん、一体どうしたんですか?部室を出る前にも見ましたが、何か困ったことでもあったんですか?」

 

朱乃「……」

 

 

我夢はコソコソと小さい声で問うと、朱乃はハッとなって我夢の眼を見ると、しばらく沈黙し、口を開いた。

 

 

朱乃「…私、自信がないの」

 

我夢「え?」

 

朱乃「この土地を守っていたのに、それを仇で返した私達が壬龍(ミズノエノリュウ)を説得できるかって……」

 

我夢「……」

 

 

我夢はいつもの様に上品なお嬢様の様な話し方でなく、年頃の女の子の様な話し方をする朱乃に内心驚きながらも、何も突っ込まず最後まで話を聞いた。

 

確かに責任は自分達だ。

勝手に荒らされたから怒りをくらうのは当然だ。

だが、それを受けて何も行動しないのはおかしい。

そう答えが出た我夢は真剣な表情で彼女を見つめ

 

 

我夢「…朱乃さん。この騒動は確かに僕達に責任があります」

 

朱乃「…」

 

 

そう言うと、朱乃は表情を更に曇らす。

だが、我夢は言葉を続け

 

 

我夢「ですが、まずは話してみることが何よりも大切だと僕は思います」

 

朱乃「話して…みる?」

 

我夢「ええ」

 

 

そう言うと、朱乃の曇った表情がわずかに緩くなった。

更に我夢は言葉を続け

 

 

我夢「友好関係を結んだり……一緒に何かをやったり……こうやって相手を説得するのも話してみなきゃ、相手を理解できないですし、何も始まりませんよ。

何もかも終わった訳ではないですし、諦めるのはまだ早いですよ。自信持って下さい」

 

朱乃「…っ///」

 

 

そう言うと、我夢がニコッと微笑む。

朱乃はその笑顔を見て、胸がドキッと高鳴った。

今まで色んな男を見てきたが、どの男子よりも我夢は眩しく思えた。

彼の顔を直視できない朱乃は顔を赤らめ、彼を見ない様にそっぽを向いた。

 

 

我夢「?どうしたんですか?」

 

朱乃「っ!何でもないですわ!/////」

 

 

 

急にそっぽを向いた朱乃を心配した我夢は彼女を覗こうとするが、朱乃は必死に彼の顔を見ないように顔を反らす。

 

 

朱乃「う、うふふ…何もないですわよ。ありがとう我夢君」

 

我夢「は、はぁ…」

 

 

朱乃は顔を見ずに感謝の言葉を告げると我夢はやや納得してないながらも、これ以上の追求をやめた。

 

 

朱乃「(こんなにドキドキするなんて……///まさか…!これが…/////)」

 

 

朱乃は息を整えながら、自分が彼に対する感情が何かを自覚した。

 

 

我夢「(朱乃さん、大丈夫かな?僕、ひょっとして気にさわることでも言っちゃったかな?)」

 

 

だが、我夢はそんな事も知らず、ただひたすら朱乃の心配をしていた。

 

 

リアス「(まさか…朱乃がね……)」

 

 

その会話を遠くから盗み聞きしていたリアスは朱乃の変化にただひたすら驚いていた。

周りの男に興味がない朱乃があそこまで乙女の顔を見せるとは彼女にとって驚くのは仕方がない。

 

そうこうしているうちに、段々と通路は掘り進めた荒っぽいものでなくなり、壁に龍を模した柱があるものへと変わっていった。

そして、更に進むと、一行は湖がある開けた場所についた。

 

 

リアス「朱乃、ここにいるの?」

 

朱乃「ええ、ここにいるはずですわ」

 

 

周りを見渡すが、どこにもミズノエノリュウがいない。

一行は別の通路で探してみようと方向を変えて、歩き出すが

 

 

???「ギュウゥゥゥェェェェーーーーン」

 

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

 

 

その瞬間、湖から青い龍が勢いよく顔を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。突然、駒王町のあらゆる場所で青い龍が出現した。

 

 

松田「怪獣だぁぁぁーーー!!」

 

「「「「「きゃーーーーーー!!」」」」」

 

「「「「「逃げろーーーーーー!!」」」」」

 

 

突然現れた龍に人々は当然パニック状態になり、一目散に逃げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた龍に一同は驚くも、朱乃は気を取り戻し、龍に近寄りながら説得を試みる。

 

 

朱乃「貴方が壬龍(ミズノエノリュウ)?」

 

ミズノエノリュウ「…」

 

朱乃「私は悪魔、姫島 朱乃と申します。今日はお話があってここまで来ました。私達や人間は貴方の守るこの駒王町に被害を与えてきた」

 

ミズノエノリュウ「……」

 

朱乃「勝手な事だとわかってはいますわ。でも、お願い!怒りを静めて!」

 

ビカァァァ!!

 

我夢「朱乃さんっ!」

 

朱乃「っ!」

 

 

朱乃は突然飛んできた衝撃波をかわした。

その衝撃波を飛んできた方向を見ると、それはミズノエノリュウによるもので、まるで「お前達に耳を貸すものか!」と言わんばかりだった。

 

一行は朱乃のもとに駆け寄る。

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーン!!」

 

ゼノヴィア「くっ、説得は失敗か!!」

 

一誠「朱乃さん!大丈夫ですか?」

 

朱乃「ええ…でも…」

 

アーシア「ミズノエノリュウさんが更に怒っちゃってます!」

 

リアス「ミズノエノリュウ…」

 

 

だが、リアスが攻撃されたというのもあるが、それ以上にリアスの必死の説得も、今のミズノエノリュウには全く通じなかったというのが衝撃だった。

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーン!!!」

 

 

ミズノエノリュウは一際大きな雄叫びをあげると、湖の水が動きだし、まるで津波の様に我夢達に襲いかかった。

 

 

木場「まずいっ!」

 

我夢「みんな、地上へ逃げろ!」

 

 

一行は追ってくる津波から逃げながら、急いで来た道を戻っていく。

そして、地上の工事現場入口に来ると、水は追ってこなかった。

 

一同は説得に失敗したことにショックを受けていると

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーン!!」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

近くでミズノエノリュウの鳴き声が聞こえた。

我夢達は声のした方を見上げると、そこには尾に8本の龍の首を持つ、額に宝玉を持つ4足歩行の怪獣、ミズノエノリュウ本来の姿があった。

その近くの地面は割れており、そこから地上へ来た様である。

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーン!」

 

ビカァァァー!!

 

 

ミズノエノリュウは口から発生させた衝撃波で町を破壊し始めた。

その破壊活動に我夢は思った。「ミズノエノリュウはライフラインを破壊して地脈を取り戻そうとしている」と…。

 

 

リアス「祐斗!急いでメタフィールドを展開して!」

 

木場「はい!」

 

リアス「他のみんなは戦闘準備!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

リアスがそれぞれ指示を出し、木場はメタフィールドを展開し、他のメンバーは身構える。

 

 

一誠「行くぜ、我夢!」

 

我夢「ああ…!ガイアァァァァァァーーーーー!

 

一誠「ダイナァァァァァァーーー!!

 

 

我夢と一誠は掛け声と共にそれぞれの変身アイテムを掲げると、光に包まれ、ウルトラマンへ変身した。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ダイナとガイアは町を壊し続けているミズノエノリュウに掴みかかる。

それにより、ミズノエノリュウは破壊活動を中断するが

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーン!!」

 

ダイナ「グワッ!?」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

8本の尻尾を器用に動かし、2人を払いのけ、地面へ叩きつける。

ミズノエノリュウは倒れている2人へ方向転換する。

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーン!!」

 

「「!!」」

 

 

すかさず、ミズノエノリュウは尻尾の先にある頭と本体の頭…計9本の顔が口を開き、そこから無数の衝撃波を放った。

ダイナとガイアはすぐさま起き上がると、バク転で次々と襲いかかる衝撃波を回避する。

 

 

小猫「いきます!」

 

木場「はっ!」

 

 

小猫と木場は飛び上がり、額目掛けて小猫は拳で殴りかかり、木場は魔剣を振り下ろすが

 

 

「「!?」」

 

 

2人の攻撃はミズノエノリュウの身体をすり抜けた。

それはまるで水に攻撃している様な感覚であり、ミズノエノリュウには全く効いていない。

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーン!」

 

小猫「ああっ!」

 

木場「うわっ!!」

 

リアス「小猫!祐斗!」

 

ゼノヴィア「はぁぁーーーーー!!」

 

 

ミズノエノリュウは額にある青い玉、「龍玉」で2人を空中で固定させると、口から衝撃波を放ち、2人を大きく後方へ吹き飛ばした。

ゼノヴィアがその2人と入れ替わる様に前へ飛び上がり、デュランダルを振り下ろそうとするが

 

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーーーーン!!」

 

ゼノヴィア「ぐああああああーーーーーーーー!!」

 

リアス「放しなさい!」

 

 

ミズノエノリュウは8つの尻尾の先にある頭から放つ青い電流をゼノヴィアに浴びせる。

ゼノヴィアの苦痛の叫びに、リアスは滅びの魔力を首もとにくらわせると、攻撃は中断され、ゼノヴィアは解放される。

 

 

ダイナ「ッ!ハッ!」

 

 

地上へ落下していくゼノヴィアをダイナは咄嗟にヘッドスライディングの様に地面を滑り、間一髪のところで右手でキャッチした。

 

 

ガイア「デヤッ!!」

 

 

リアス達が攻撃している間、エネルギーを溜めたガイアはクァンタムストリームを放つ。

ミズノエノリュウの本体の首に命中し、火花が飛び散るが、全く効いていない様子だ。

 

ガイアは「ならば」と、拳に力を込めて、ミズノエノリュウに向かって駆け出すが

 

 

ビカァァァ!!

 

ガイア「ッ!?」

 

 

ミズノエノリュウが額の龍玉を輝かせると、ガイアは身動きが取れなくなった。

どうにかしてもがこうと身体を動かすが、ピクリとも動かない。

 

 

ミズノエノリュウ「ブワァァァァァーーー!!」

 

ガイア「グアァァァァァーーーー!!?」

 

 

ミズノエノリュウは身動きが取れなくなったガイアを、念力で空中に浮かせた。

そして、8本の尾から放つ青い電流をガイアへ浴びせた。

 

 

ダイナ「ン"ゥ"ゥゥゥ~~~…!」

 

 

ダイナはガイアのピンチに、ミラクルタイプへタイプチェンジしようと胸の前で両腕を交差させるが

 

 

ビカァァァ!!

 

ダイナ「ッ!?」

 

ミズノエノリュウ「ブワァァァァァーーー!!」

 

ダイナ「ドァァァーーー!!」

 

 

ミズノエノリュウはダイナをガイアと同じ様に身体を金縛り状態にし、一旦空中へ浮かせると、そのまま地面へ叩きつける。

落ちてくるダイナの巨体に、周辺にあった建物は崩れた。

 

 

ガイア「グアァァァァァーーーーーーー!!!」

 

 

ガイアは身動きできない状態で電流を流され、苦痛の叫びをあげる。

このままだとやられる…。そう思った時

 

 

小猫「やっ!」

 

リアス「はあっ!」

 

ミズノエノリュウ「ギュウゥゥゥェェェェーーーン!」

 

 

ミズノエノリュウの頭部へ、小猫が上空からかかと落とし、リアスが大きめな滅びの魔力を放つ。

 

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

すると、その衝撃でミズノエノリュウの念力が解除され、ガイアは糸が切れた人形の様に背中から地上へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦いの光景を朱乃はただ眺めていた。

リアス達の援護しなければと頭ではわかってはいるが、

自分の不甲斐なさに落胆し、身体が動かなかった。

 

説得しようとリアスに提案したのは彼女である。

望みは薄いが、リアスに進言し、我夢に勇気付けられ、ここまでやってきた。

 

だが、結果はどうだ。

相手はやはりこちらの説得に耳を傾けず、自分を殺そうとした。

しかも、今は自分を信じた友人や後輩が傷付けられている。

 

どうしようもない……。

自分のせいで皆を苦しめている。

ならば、助けようと行動しようとも思ったが、皆を巻き込んだ自分にそんな権利があるのか…?

朱乃はそんな気持ちに心が押し潰されそうになるが、我夢の言葉を思い出した。

 

 

(我夢「何もかも終わった訳ではないですし、諦めるのはまだ早いですよ。自信持って下さい」)

 

朱乃「…!」

 

 

それを思い出した彼女はハッとなった。

壬龍(ミズノエノリュウ)は言葉がわかるし、感情もわかる。

望みはまだあるかも知れないと…!

 

 

朱乃「壬龍(ミズノエノリュウ)!」

 

ミズノエノリュウ「…?」

 

 

我夢の言葉に勇気付けられた朱乃は、未だ怒りのまま破壊を続けるミズノエノリュウに大きな声で呼び止めた。

すると、ミズノエノリュウは彼女の声が届いたのか、動きを止め、朱乃を見下ろす様に見据えた。

その声を聞いたリアス達も一斉に朱乃を見た。

 

 

朱乃「貴方がこの駒王町が生まれる前からここにいたのは知っている!貴方の怒りはわかる!貴方が護ってきたこの地を私達や人間に荒らされて許せないでしょう?でも、怒りからは何も生まれない!」

 

ガイア「(朱乃さん…)」

 

リアス「朱乃…」

 

ミズノエノリュウ「…」

 

 

必死の説得を試みる朱乃をリアス達は不安そうに眺めた。

しかし、先程と違ってミズノエノリュウは攻撃することもなく、彼女の話を黙って聞いていた。

 

 

朱乃「地に戻って…お願い……。貴方の思いはこの場にいる全員に伝わった……」

 

ミズノエノリュウ「……」

 

 

朱乃が祈る様に言う。

すると、ミズノエノリュウは彼女の言葉を受け、怒りを鎮めたのか、青く輝く光の玉となった。

 

 

ガイア「……」

 

 

ガイアは歩み寄ると、それを優しく両手を受け皿の様にして触れる。

その瞬間、青い光の玉はガイアの両手を離れ、地上へ出てくる際に使った地割れの中へ吸い込まれる様に消えていった。

 

 

ダイナ「…」

 

[ティヨン]

 

ガイア「…」

 

[ピコン]

 

朱乃「…」

 

 

ガイアは朱乃を見下ろすと、朱乃は笑顔で頷く。

朱乃が自信と笑顔を取り戻した事を確認したガイアと近くにいたダイナと共に両腕を広げ

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

空高く飛び上がり、どこか遠い空へ飛んでいった。

それと同時にメタフィールドも解除され、リアス達は遠い空へ飛んでいくガイアを見届ける朱乃に駆け寄った。

 

 

アーシア「朱乃さん、無事で良かったです~!」

 

木場「朱乃さん」

 

朱乃「あらあら、アーシアちゃん。それに皆さんにも心配おかけ致しましたわ」

 

小猫「無事で何よりです」

 

リアス「朱乃…貴方がいなかったら、万事休すだったわ」

 

 

安堵の表情を浮かべながら言葉をかけていく。

そんな中、ゼノヴィアはミズノエノリュウが消えていった地割れを眺めて、呟く。

 

 

ゼノヴィア「何が起きたんだ?」

 

リアス「我達は、自然が本来持つ力というものにもっと敬意を払うべきなのかもしれないわね…」

 

 

ゼノヴィアの疑問に答える様にリアスは彼女が眺める地割れを眺めて呟いた。

そして、他の皆と同じ様に眺める朱乃は心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

人が何を作っても、それは所詮『地球』という大きな一部に過ぎない」と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の夜。

悪魔契約の仕事が1件あることを忘れていた一誠は、急いで走り、ようやく契約者の家についた。

 

 

男「よう、今日はちょっと遅かったじゃねぇか?」

 

一誠「すいません…少し用事があったもんで……」

 

男「まぁ、いいや。とりあえず、今日もゲームで勝負しようや」

 

一誠「…はい」

 

 

一誠は「約束を忘れてたなんて言えねぇよな…」と思いつつ、ちょい悪風のダンディ男に渡されたコントローラを手に取り、ゲームの相手をすることにした。

 

 

男「悪魔くん。お前さん、前より上手くなったんじゃねぇの?」

 

一誠「どうも!おっし、これでトドメだ!」

 

男「ぐわっ、やれちまった!」

 

一誠「これで20勝20敗ですね!」

 

男「ああ」

 

 

勝利したことを喜ぶ一誠に男はフッと笑い、口角をあげる。

 

 

男「なぁ、少し疲れたから一旦休憩しねぇか?」

 

一誠「あ、はい」

 

 

男の提案に一誠は賛成すると、男はグラスに注いだジュースを一誠に手渡した。

 

 

男「いやぁ…最初はズタボロに負けてたのに、たった数日で操作方法を覚えて、俺と互角になるとはな……。さすがだな、悪魔くん。いや、ウルトラマンダイナと呼ぶべきか」

 

一誠「!?」

 

 

突然の言葉に一誠はグラスを床に落とすと、咄嗟に懐からジェクターガンを取り出し、銃口を男に向ける。

 

 

一誠「あんた、なにもんだ?」

 

男「おいおい、そう殺気立つなよ。俺は別に喧嘩をしにきた訳じゃねえ……お前さんらに興味があって、見に来ただけだ」

 

 

男はニヤニヤと笑みを浮かべ、降参と言わんばかりに両手を上げる。

すると、男の背中から12本の黒い翼がバサッと拡げられた。

 

 

アザゼル「俺はアザゼル。堕天使の総督をやってるもんだ。よろしくな?ウルトラマンダイナ、兵藤 一誠くん」

 

一誠「あんたが…アザゼル!?」

 

 

自分の目の前にいる人物こそが堕天使の総督であることに、一誠はただただ驚愕するしかなかった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

駒王町に夜が来る…。
牙をむき、爪をとぎ、危険なあいつがうろついている…!

次回、「ハイスクールG×A」
「野獣包囲網」
もう誰にも止められない…。









一誠とアザゼルがやっているゲームは「ウルトラマンFE3」のイメージです。

後、アンケートの結果ですが、朱乃さんは我夢のヒロインに加えることに決定しました!
アンケートにご協力の方、ありがとうございます。



良かったら、感想&コメントよろしくお願いします。


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第19話「野獣包囲網」

今回は皆さん大好きなあの怪獣が登場します。
見とけよ、見とけよ…!







獣人 ウルフガス 登場!


ミズノエノリュウの件から翌日。

朱乃の説得に応じたミズノエノリュウは人類にもう一度チャンスを与え、地上へと戻っていった。

 

そして、それを裏付けるかの様に、駒王町全体に起きていた断水や電気トラブル等も起きなくなった。

因みに、我夢達がミズノエノリュウと戦っている際に駒王町各地の川に現れた龍の首も、ミズノエノリュウが地上へ帰ったと同時に煙の様に消滅した。

 

これにて一件落着………なのだが………

 

 

リアス「冗談じゃないわっ!

 

我夢「ぶっ!?」

 

 

一誠のアザゼルに遭遇したという話を聞き、リアスは怒りのままに机に叩きつける。

そのあまりの大きな音に、紅茶を飲んでいた我夢は思わず口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

 

 

リアス「私の領地に勝手に入るだけでなく、悪魔……しかも私のかわいいイッセーに接触するなんて……!!」

 

一誠「ぶ、部長……。俺は別に何もされてないから――」

 

リアス「よく無いわよっ!ただでさえ、お互いの勢力が緊迫状態なのに…!『お互いできるだけ干渉しない様に』って協定を結んでいたのに、思いっきり違反してるじゃない!!」

 

 

リアスはそう言うと、頭を悩ませる。

彼女が怒るのも無理はない。

 

数日前のコカビエルの件で堕天使側には各勢力から不信感が強まっている。

 

アザゼルの主張としては、「コカビエルの件は我々の命令ではなく、コカビエル自身で行ったものだ」と言ってはいるが、まだその疑惑は消えていない。

 

ただでさえ疑惑を持たれているのに、「悪魔の領地に入り、そこの領主の眷属と接触した」なんてことが公に知れれば、大問題となる。

しかも、相手は堕天使の総督。下手にこちらから対処しようとしたらそれは逆に問題となる。

 

 

リアス「それで…アザゼルは何か聞いてきたの?」

 

一誠「はい。どうやってウルトラマンの力を手にいれた事とか、ジェクターガンの仕組みとか……。まあ、ダイナの事はともかく、ジェクターガンの仕組みはわかんないから適当に答えましたけどね」

 

 

更に一誠が「さすがにダイナについては濁しましたけどね」と付け加える様に言うと、それを聞いた一同はホッと安堵のため息をもらした。

 

 

木場「君のところには来たのかい?」

 

我夢「いや、今のところは来てない…」

 

リアス「ああー…もう、こんな時に来るなんて……アザゼルには自覚がないのかしら?」

 

 

そう呟き、頭を悩ませるリアスに我夢達は困った様に苦笑いを浮かべていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「アザゼルは昔からそういう男だよ、リアス」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

突然、部室内に聞き覚えのある声が響いた。

我夢達はその声のした方角に顔を向けると、そこにはリアスの兄であり、魔王であるサーゼクスとそのメイドであるグレイフィアがいた。

 

 

リアス「お、お兄様!?」

 

 

兄であり、現魔王のサーゼクスの突然の登場にリアスは驚く。

それと同時に我夢達は跪くが、

 

サーゼクス「おっと、頭を上げたまえ。今日は個人的な用事で来たのでね。そんな畏まる必要はない、いつも通りにして構わないよ」

 

 

それを見たサーゼクスが微笑みながらそう告げると、我夢達は顔を上げた。

 

 

リアス「……どうして今日ここに?」

 

サーゼクス「ああ、それはね…」

 

 

リアスがそう問いかけると、サーゼクスは懐から1枚のプリントを取り出し、リアス達に見える様に広げた。

それは授業参観のお知らせを伝えるプリントだった。

 

 

サーゼクス「来週、授業参観があるだろう?愛しの妹が勉学に励む姿を見たくてね。これは兄として当然の事さ」

 

 

それを聞いたリアスは恥ずかしげにワナワナと肩を震わせる。

 

リアス「で、ですがお兄様には魔王の仕事があるでしょう!?」

 

サーゼクス「ハハハ…なぁに、心配はいらないさ。妹の為とあれば、仕事なんてあっという間に終わらせるさ」

 

リアス「っ!///」

 

 

爽やかに笑うサーゼクスの言葉にリアスはより恥ずかしそうに顔を赤くした。

その光景を見ていた我夢と一誠は確信した。

「この人はシスコンだ」と……。

 

 

リアス「しかし、お兄様は魔王なのですよ!?私が魔王の妹とはいえ、1悪魔を特別扱いするのは…」

 

サーゼクス「いや、これも仕事のうちなんだ。実は数日前のコカビエルの件で堕天使側が謝罪、そして三大勢力での会談を申し込んできてね。そこで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でね」

 

リアス「それで下見を…」

 

我夢「成る程………って!?」

 

「「「「「「「「ええぇぇーーーー!?」」」」」」」

 

 

不仲である三大勢力の貴重な会談を自分達が今いる駒王学園で行う……。

その衝撃的な言葉に、リアス達は目を見開き、驚きの声をもらした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。満月の光が雲の間から差し込み、静寂に包まれた闇を犬の遠吠えだけが聞こえる中、とあるビルの屋上の物陰から梶尾、我夢、一誠、そして匙の4人がこっそりと顔を出し、屋上にある電波塔を見上げていた。

 

 

梶尾「久しぶりの出番だ…」

 

一誠「何言ってるんですか?」

 

匙「はぁ…」

 

我夢「まあまあ…」

 

 

謎の言葉を呟き、やけに張り切っている梶尾に一誠はツッコむ。

だが、反対に匙は何で俺なんだ…と言わんばかりにため息をつく。

 

何故彼等がここにいるのか?

それは数分前、謎の生命反応を怪獣探知機が探知し、急遽、手の空いている彼等に捜索を任されたからである。

匙と梶尾がいるのは、リアスがソーナに「2人だけだと心許ないから」と頼んだからである。

 

彼等の視線の先にある電波塔の頂上には、狼の様な人型の獣が遠吠えをあげている。

梶尾はその獣を見つめつつ、耳に装着しているインカムでソーナに連絡をとる。

 

 

梶尾「会長、謎の生命体を発見しました。これより捕獲作戦を開始します」

 

《ソーナ「頼みます。それと、これより作戦の全指揮は貴方に任せます」》

 

梶尾「了解。総員、ジェクターガンのカートリッジを麻酔弾にセット」

 

 

梶尾がそう指示すると、我夢達はジェクターガンを操作し、黄色のラベルが付いたカートリッジに変えた。

 

 

梶尾「グレモリー、いざとなったら対象を射殺しても構わないな?」

 

《リアス「ええ」》

 

梶尾「わかった。総員、配置につけ」

 

 

梶尾はインカムをきってそう指示すると、我夢達は物陰を移動し始めた。

狼がジェクターガンの銃口を獣へ向けた。

 

 

狼「アオーーーーーン!」

 

 

しかし狼は気付いてないのか、未だ遠吠えを続けている。

 

全員が配置に付いたのを確認した梶尾は我夢達に3…2…1…と指でカウントダウンし

 

 

梶尾「今だ、麻酔弾発射!」

 

 

その合図と共に4人は一斉に物陰から身を乗りだし、ジェクターガンの引き金を引いた。

 

 

狼「!」

 

 

麻酔弾はピュンと風がきる音を出しながら狼の方へと向かうが、狼は間一髪気付き、紙一重でかわした。

そして狼は我夢達に怯えたのか跳躍し、地上へ降り立つと、一目散に逃げ始めた。

 

 

梶尾「追うぞ!」

 

「「「はい」」」

 

 

梶尾達も地上へ降り立ち、狼を追跡し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから5分後。4人は2人組に分かれて捜索することにした。

ちなみにペアは「我夢・梶尾」、「匙・一誠」のペアである。

 

匙と一誠のペアは公園近くの路地を捜索していた。

 

 

匙「はあぁぁ~~~~…何でこんな事に」

 

一誠「文句言うなよ、これも立派な任務なんだぜ?」

 

匙「お前は前向きでいいよな……。もし、この作戦が失敗でもすれば、会長に何てお仕置きされるか…」

 

 

ますます気落ちする匙に一誠はやれやれといった様子で肩をすくめると、ある言葉をかけた。

 

 

一誠「じゃあ逆に考えてみろよ。もし成功したらよ、ソーナ会長の最高のご褒美が待ってるかもしれないだろ?」

 

匙「ご褒美?」

 

 

その言葉に匙は反応すると、一誠は頷き

 

 

一誠「ああ、例えば…膝枕とか添い寝とか……やってくれるかもしんないだろ?」

 

匙「でも、あの会長がやってくれるとは思えないんだけどなぁ……」

 

一誠「だからこそ、今を精一杯頑張ればきっと良いことが巡ってくるんだよ!ほら、ソーナ会長の役に立ちたいだろぉ?」

 

匙「役に…立つ…役に…立つ………」

 

 

難色を示す匙にささやくと、匙は繰り返し言葉を呟くと、段々表情が明るくなった。

 

 

匙「役に…立つ……うおぉぉぉーーーーーーーー!!

俺は会長の役に立つんだ!やったるぜぇぇーーーー!!

ありがとな、兵藤!目が覚めたぜっ!!」

 

一誠「おう」

 

 

闘志に火が点いた匙はそう叫ぶと、一誠と熱い握手をかわす。

一誠は微笑みつつも内心、ちょろいなと思った。

 

 

一誠「じゃあ、俺はあっちみてくるから」

 

匙「おう!任せたぜ!」

 

 

一誠がそう告げると、匙はサムズアップで答える。

2人は離れて捜索を続けることにした。

 

 

匙「(やってやるぜ…!)」

 

 

匙は意気込みながら物陰を探していく。

しばらく続けていると、背中をチョンチョンとつつかれるが、匙は一誠だと思い、無視をする。

 

 

匙「兵藤!しつこいって……!」

 

 

だが、それでもしつこくチョンチョンと背中をつついてくるので、苛ついた彼は少し声を荒げて振り返ると

 

 

狼「ガウ」

 

匙「………」

 

 

そこには首を傾げるあの狼がいた。

匙は目を見開き、しばらく沈黙ののち

 

 

匙「ギャアァァァァァァーーーーーーーーー!!!」

 

 

先程の闘志はどこにいったのか、一瞬で顔が青ざめると、悲鳴をあげた。

しかも情けない事に腰を抜かしてしまった。

 

 

一誠「匙、どうしたっ!?…って、怪獣がいる!捕まえてやる」

 

狼「ガウ!」

 

 

その悲鳴を聞いて駆けつけた一誠は狼の姿を見ると、捕獲しようとジェクターガンで狙撃する。

だが、狼は跳躍して避けると、一誠の背後に回り、再び逃走する。

 

一誠はその後を追いかけると、狼の前に匙の悲鳴を聞いた我夢が鉢合わせた。

 

 

狼「ガルル…」

 

我夢「っ!」

 

一誠「我夢!」

 

 

我夢は一瞬驚くもジェクターガンの引き金をひく。

しかし、狼はまたも跳躍して、我夢の背後の道を逃走し続ける。

 

 

我夢「何て跳躍力だ!」

 

一誠「感心してる場合かよ!行くぞ!」

 

 

狼の大ジャンプの光景に感心している我夢に一誠は軽くツッコミ、2人は夜の町を逃走する狼を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狼「ガウ…」

 

 

狼はその後も逃げ続け、橋の近くを歩いていた。

後ろを振り向き、3人の姿がいない事がわかると、ひと安心したように唸る。

だが

 

 

梶尾「ここまでだ!」

 

狼「!?」

 

 

梶尾が颯爽と物陰から現れ、狼にジェクターガンの銃口を向ける。

狼は何故ここに…?といった様に困惑していると、梶尾は説明し始めた。

 

 

梶尾「ふっ…俺の親父は自衛隊なんでね。俺もサバイバル訓練に参加させてもらったことがあるのさ。その時の感覚でお前の行動パターンを読ませてもらった」

 

狼「!」

 

梶尾「鬼ごっこは終わりだ!」

 

 

梶尾はそう言い終えると、ジェクターガンの引き金を引いた。

今度こそ捕まる…!狼はそう思い、身をかためるが

 

 

ピュン!

 

狼「?」

 

 

その銃弾はあらぬ方向に逸れた。

梶尾はもう一度射つが、銃弾は狼とは無関係の方向に飛んで行き、夜の闇に消える。

その様子におかしいと思ったのか、狼は首を傾げる。

 

そうしていると、後ろから我夢が駆けつける。

 

 

梶尾「くっ!」

 

我夢「梶尾さん、何をやってるんですか?早く!」

 

梶尾「分かってる!」

 

 

梶尾は口ではそう言うが、何度も何度も放った銃弾はあらぬ方向に飛んで行く。

その光景を見た我夢は確信した。

 

 

我夢「梶尾さん……もしかして、射撃は下手?」

 

梶尾「くっ!」

 

 

我夢にそう言われると、図星だったのか梶尾は少し恥ずかし気な表情を浮かべる。

なおも引き金を引くが、銃弾は虚空の空へと消えて行き、ついには銃弾が無くなった。

 

 

梶尾「貸せっ!」

 

我夢「あっ」

 

 

梶尾は中々当たれない事にやけになり、我夢のジェクターガンを少々乱暴に奪い取る。

そしてまた引き金を引くが、銃弾は当然当たらない。

 

 

狼「ガウッ!」

 

 

これをチャンスと見た狼は後方へ大きく跳躍すると、橋の上に着地する。

そして、そのまま逃走を再開した。

 

 

一誠「逃がすかーーー!」

 

匙「チキショー!待てーーー!!」

 

 

その後を遅れてやって来た一誠と匙が射撃しながら追いかける。

 

 

梶尾「追えっ!追えーーーーーーーーー!!」

 

 

我夢は不安でしかないこの状況にひたすら困惑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、すっかり夜が明け、朝になった。

狼を一晩中追いかけていた我夢達は…

 

 

我夢「うう…」

 

梶尾「はぁ…はぁ…」

 

一誠「ぜぇ…ぜぇ…」

 

匙「おえっ」

 

 

ヘトヘトとなり、地面に寝転がっていた。

4人はもう一歩も動けないといった感じであり、匙に至っては吐きそうな様子だ。

 

4人はあの後も追跡したが、中々捕まえれず、遂には朝になり、見失ってしまったのである。

 

その光景を見たリアスとソーナは情けない…と言わんばかりにため息をつく。

 

 

リアス「いくら捜索に慣れてないからって、基礎体力を1から鍛え直さないとね…」

 

ソーナ「匙、梶尾。帰ったらトレーニングをいつもの100倍の量で行います」

 

匙「うっぷ…そんな……」

 

 

リアスとソーナの呆れた視線に我夢達はただただ縮こまるしかなかった。

そんな彼らをよそにリアスは今後の対策に考えて始めようとした時

 

 

サーゼクス「やぁ、リアスにソーナ」

 

リアス「お兄様っ!?」

 

ソーナ「サーゼクス様!?」

 

我夢「ふえ…?」

 

 

突然彼女の背後からサーゼクスとグレイフィアが現れた。

その登場に一同は跪こうとするが、サーゼクスはそのままでいいと制止した。

 

 

サーゼクス「リアス。この状況を見ると、手こずっている様だね」

 

リアス「はい、すみません…」

 

サーゼクス「いやいや、構わないよ。侵入者を取り逃がすことなんて領主たるもの誰でもあるさ。そこで1つ提案がある」

 

リアス「提案?」

 

 

首を傾げるリアスにサーゼクスは頷き、言葉を続けた。

 

 

サーゼクス「ここから先の捜索は、特殊捜査チーム『リザード』に任せてもらえないだろうか?」

 

リアス「リザードですって!?」

 

我夢「リザード?」

 

 

「リザード」という単語に驚くリアス。

その聞き覚えのない単語に我夢と一誠は首を傾げていると、梶尾が説明し出す。

 

 

梶尾「『リザード』はサーゼクス様直属の特殊捜査部隊だ。隠密が得意なはぐれ悪魔の捜索や不正を行う悪魔の個人情報の確保などが仕事だ。最近はG.U.A.R.Dの特殊捜査チームとしての顔もあるらしいがな…」

 

一誠「へぇ~~」

 

我夢「悪魔版の特殊警察か…」

 

 

その説明を聞き、一誠と我夢は納得した表情を浮かべる。

その間にもサーゼクスとリアスの会話は続いた。

 

 

リアス「ですが、いいのですか?私などの為にお兄様の手を煩わせる訳には…」

 

サーゼクス「いいさ。それにリアス、君らだけの問題じゃない。もしかしたら、その生物は破滅招来体かもしれない……。こういう事態には私達に頼ってくれても構わないさ」

 

リアス「は、はい…」

 

 

サーゼクスに説得され、リアスはついに折れたのかサーゼクスの協力を受ける。

その返事が承諾したと受け取ったサーゼクスは指を鳴らすと、ぞろぞろとG.U.A.R.D.の隊員服を着た男達が集まってくる。

その群衆から黒いスーツを着た男が前に出て、自己紹介する。

 

 

瀬沼「『リザード』隊長の瀬沼(せぬま)です。ここから先は私達に任せて下さい」

 

 

その後、捜索はリザードに引き継がれ、狼の怪物が出現した地域の封鎖を始めた。

近くに通った住民に狼の怪物の事を隠しながらも注意喚起し、包囲網を張っていった。

 

 

隊員「隊長、ほぼ全てのエリアの封鎖を終えました」

 

瀬沼「よし、後はここの橋だな………うん?」

 

 

隊員の報告を受け、瀬沼はすぐに橋の閉鎖をしようとするが、桟橋の上で川を眺める少年がいることに気付いた。

瀬沼は彼に近寄り、声をかける。

 

 

瀬沼「あなたもすぐに避難して下さい。ここは危険です。さあ、安全な場所へ」

 

 

その警告を聞いた少年―――藤宮は瀬沼の顔を見つめ

 

 

藤宮「安全な場所なんてあるんですか、今の地球に?」

 

瀬沼「?」

 

 

そう冷たく問いかけると藤宮は去っていく。

瀬沼は遠ざかっていく彼の背中を疑問の表情で見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び訪れた夜。

我夢は瀬沼と共に車で町を捜索していた。

何故我夢がいるのか?

我夢はあの後、自分が取り逃がしたという自責の念があり、狼の怪物の捜索の協力を申し出たからである。

 

助手席に座る我夢は通りすぎる夜の町並みを見つつ、隣で運転する瀬沼に声をかける。

 

 

我夢「すみません、無理をいって」

 

瀬沼「いえいえ、問題ないですよ。私共も高山さんの冷静な分析力を是非ともお借りしたいと思ってたんですから」

 

 

申し訳なさそうに頭を下げる我夢に瀬沼はにこやかに答えると、捜査の状況を我夢に話し始めた。

 

 

瀬沼「あの後、我々は包囲網を張って捜索を続けました。狼の怪物が荒らした痕跡は多く見つかりましたが、肝心である怪物のすみかすら見つかりませんでした。まるで夜だけ現れたみたいに……」

 

我夢「夜だけ現れる……まるで狼男みたいですね」

 

瀬沼「ええ、だから我々はあなたにも捜索を要請をしようと思ったのはそういう理由があるからです」

 

 

瀬沼がそう言うと、我夢は納得する。

瀬沼と我夢は車からの捜索を続けると

 

 

「わぁーーーーー!?」

 

 

突然、恐怖に怯えた男性の悲鳴が聞こえた。

その悲鳴に我夢と瀬沼は顔を見合わせる。

 

 

我夢「今の声は!?」

 

瀬沼「ええっ、行ってみましょう!」

 

 

瀬沼はすぐさまハンドルをきると、悲鳴が聞こえた方へ車を走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

2人は悲鳴が聞こえた場所に着くと、すぐさま車を降り、悲鳴をあげた人物を捜索する。

周辺を探すと、2人は地面に倒れている男性を見つけた。

2人は男性に駆け寄った。

 

 

瀬沼「大丈夫ですか!?」

 

男性「ううっ……」

 

 

瀬沼は男性に声をかけると、気を失っているが息がある事を確認する。

瀬沼は男の腕に目をやると、獣か何かに引っ掻かれたケガをしており、そこから血が流れていた。

 

 

我夢「やっぱり、あの怪獣が…」

 

瀬沼「ええ、とりあえずこの男性を車に運びましょう。そこで応急処置を…」

 

狼「グルルル…」

 

「「っ!」」

 

 

我夢と瀬沼は男性を抱えようとした時、唸り声が聞こえた。

2人はその唸り声のした方を見ると、あの狼の怪物がいた。

狼の怪物は威嚇するように唸り声をあげながら、ジリジリと我夢達へ近付いてくる。

 

 

瀬沼「化け物めっ!」

 

狼「キャウン!?」

 

 

瀬沼は素早く懐からジェクターガンを取り出すと、連射する。

銃弾が命中した狼は火花を散らし、地面を転がっていく。

その間に我夢は男性を抱え、車の後部座席に乗せた。

 

その後も銃弾は止むこともなく、しばらく撃ち続けると、狼が動かなくなった。

瀬沼は気絶もしくは死んだと思い、ジェクターガンを懐にしまい、狼に近付く。

だが、

 

 

狼「ガウッ!」

 

瀬沼「うおっ!?」

 

 

狼は生きており、近付いてきた瀬沼の右腕を引っ掻く。

瀬沼は左腕で懐からジェクターガンを取り出したが、狼にはたき落とされた。

そして、そのまま抵抗する間も与えず、狼は瀬沼をドロップキックで蹴り飛ばす。

 

 

瀬沼「ぐっ…!」

 

 

瀬沼はそのまま後ろにある木に衝突すると、その衝撃で気絶してしまう。

 

 

狼「ガルルル…」

 

我夢「っ!」

 

 

狼の怪物は今度は我夢を標的にすると、素早いスピードで疾走する。

我夢は向かってくる敵に身構えると、物陰から1人の少年が狼の前に立ち塞がった。

その少年は藤宮だった。

 

 

我夢「藤宮っ!?」

 

狼「グルワッ!」

 

 

我夢は突然の藤宮の登場に驚く。

狼も驚いて一旦、足を止めるが、唸り声をあげて新しい標的である藤宮に襲いかかろうとするが、藤宮はニヤッと不敵に笑い、身体が青く輝いた。

 

 

狼「!?」

 

 

その現象に狼は目を見開き、足を再度止める。

青い輝きの中、藤宮の姿は一瞬だけアグルの姿に変化した。

 

 

狼「キャウン…」

 

 

それに怯えた狼は藤宮に背を向けて、一目散に逃げ出した。

助かったと一安心した我夢はその場から立ち去ろうとする藤宮に声をかけた。

 

 

我夢「藤宮、ありがとう」

 

藤宮「勘違いしないでもらおうか。俺はやつに興味があっただけだ」

 

我夢「興味?もしかして、君はあの狼の怪物について何か知ってるのかい?」

 

 

我夢がそう問いかけると

 

 

藤宮「やつは宇宙からやって来た存在だ。恐らく、破滅招来体によって遣わされたものだろう」

 

我夢「そうか……でも、もう1つだけ聞きたいことがある。アイツはどうして日が出てる内に姿を現さないんだ?夜行性の生き物なのか?」

 

 

藤宮の言葉に納得する。

そして我夢は再び問いかけると、藤宮は不敵に笑い

 

 

藤宮「我夢、『木の葉を隠すなら森に』だ」

 

 

意味深な言葉を告げると、藤宮は歩き去っていった。

 

 

我夢「木の葉を隠すなら…森に…」

 

 

我夢は彼の遺した言葉を呟きながら、ヒントともとれるその言葉の意味を必死に考えた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狼「アオーーーーン……!」

 

 

藤宮から逃亡した狼は、どこかのビルの屋上の上で遠吠えをしていた。

今度こそ撒いたであろう…そう思い、遠吠えを続けていると

 

 

狼「グルッ!?」

 

 

グサッと胸元に何かが刺さった感覚が襲った。

狼は自身の胸元に視線を向けると、ドクロマークがついた巨大な注射器が深々と刺さっていた。

中に入っているいかにも怪しいピンク色の液体が体内に注入されていくと共に、段々と意識が遠退いていく。

 

 

狼「ZZZ~~~」

 

 

液体が全て注入されると、狼はその場で死んだように眠りについた。

 

 

梶尾「ミッション完了!」

 

 

その様子を空から見ていた梶尾は嬉しげにガッツポーズを決めた。

そう、あの麻酔入りの注射器は彼が投げ飛ばしたものである。

梶尾は瀬沼に狼の現在位置を教えると、そのままどこかへ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

梶尾の連絡を受けた我夢と瀬沼は急いでビルの屋上へ向かった。

 

 

我夢「あっ」

 

瀬沼「慎重に行きましょう…」

 

我夢「はい…」

 

 

瀬沼が扉を開けると、そこには麻酔によってスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている狼の怪物がいた。

瀬沼と我夢はジェクターガンを構えながら、捕獲するために近寄る。

 

あと数センチ。

それぐらいの距離になり、丁度朝日が昇り始めた瞬間。

我夢達は目を見開いた。

 

 

我夢「えっ!?」

 

瀬沼「っ!?」

 

 

何と、狼の怪物の体は段々ガス状になった。

太陽の光が強くなっていく度に体は消えていき、最終的に朝日が完全に昇りきった時には跡形もなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その昼。我夢は瀬沼と別れた後、学校を休みを入れ、自宅で何かを調べていた。

 

それはガス状となった狼の怪物の気体の一部で、何故朝日を浴びた時に消滅したのか気になり、解析しようと思って回収したのである。

ちなみにこれらを調べる機器は全てリアスが揃えてくれたものである。

 

気体の検査結果を終えると、我夢はパソコンに表示された気体の詳細に目を通す。

 

 

我夢「アイツ…ウルフガスはガスで構成されているのか。なるほど…太陽光線を浴びると体がガスになる性質を持っているのか……。だから日が差している日中には出なかったのか」

 

 

我夢はウルフガスの正体を知り、納得していくと、ふと藤宮の言葉が頭をよぎった。

 

 

我夢「『木の葉を隠すなら森へ』……もしかして!?」

 

 

我夢はその言葉の意味を理解すると、すぐさまリアスに電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三度訪れた夜。

リアスとソーナは眷属を率い、駒王町にあるガスタンクがある工場地帯を見回っていた。

リアス達がいるのは、我夢から「ウルフガスは太陽光を浴びるとガスになる。なので日中はガスがあるところに隠れているのでは?」と連絡を受けたからである。

 

 

リアス「ここが一応最後ね。皆、あの獣を見つけたらすぐに連絡して」

 

「「「「「「「はい」」」」」」」

 

 

リアス達は手分けして捜索を開始する。

ガスタンクの回りやその近くにある機器など、1つ1つ細かく探索していく。

 

それから数分後。ウルフガスの姿は未だ見つけられておらず、一向はより念入りに捜索した。

 

 

木場「ふう、次はここかな?……うん?これはっ!?」

 

 

木場は次のガスタンクを調べようと近付くと、ガスタンクの表面には時限爆弾が取り付けられていた。

タイマーはあと3秒しかなく、取り外そうと思っても間に合わない。

 

 

木場「爆弾だーーーー!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

ならば皆に知らせるしかないと、大声で叫んだ。

その瞬間、爆弾は起爆し、木場はその爆発に巻き込まれた。

 

 

リアス「祐斗!アーシア、手当てを頼むわ」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

リアスがそう指示すると、アーシアは爆心地へ向かう。

リアスはこれからどうしようと考えていると、一誠が目を丸くしてどこかを見上げていることに気付いた。 

 

 

リアス「どうしたの?」

 

一誠「部長、あれを…」

 

リアス「嘘でしょ…?」

 

我夢「そんな!」

 

朱乃「あらあら…困りましたわね」

 

小猫「大きい…」

 

 

我夢達の視線の先には身長40mもあろう巨体に変化したウルフガスの姿があった。

ウルフガスは梶尾によって注入された麻酔で体質変化を起こし、更にガスタンクが爆発した際に漏れた天然ガスを吸収した影響で巨大化してしまったのである。

 

 

一誠「メタフィールド展開っ!」

 

リアス「みんな、戦闘準―「待ってください!」…我夢?」

 

 

一誠が周囲にメタフィールドを展開すると同時にリアスは眷属達に指示しようとするが、我夢に止められる。

どうしたんだ?と皆が我夢に視線を向けると、我夢は理由を語りだす。

 

 

我夢「ウルフガスの体はガスで出来てます!ただでさえ体質変化しているヤツに下手に攻撃でもすれば、近くにある住宅地も爆発に巻き込まれます!」

 

一誠「くそっ…何もできねぇのかよ…!」

 

 

そう聞いたリアス達は下手に手出しが出来ない事に悔しげに遠吠えをするウルフガスを見上げる。

そんな彼らの様子を物陰から藤宮が見つめていた。

 

 

藤宮「……」

 

 

藤宮は不敵に笑いながら右手首に装着しているアグレイターを下に下ろすと、翼状のパーツが左右に展開する。

そして、そのままアグレイターを胸の前に掲げると、ライフゲージに似たパーツが回転する。

そこから発生した青い光に包まれると、藤宮はアグルに変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

万事休すか…と思っていたリアス達は突如、ウルフガスの背後に青い光の柱が現れた事に気付く。

そして、光が晴れるとそこには両腕を力強く広げたアグルが現れた。

 

 

小猫「…アグルっ!」

 

我夢「(藤宮っ!)」

 

アグル「…」

 

 

またも現れたアグルに驚くリアス達を尻目に、アグルはウルフガスの肩を叩く。

 

 

ウルフガス「…!?」

 

アグル「ツォワッ!」

 

ウルフガス「キィィィン!?」

 

 

アグルはウルフガスが自分の顔を見て、驚愕するな否や、すかさずウルフガスの顔面を殴り飛ばす。

 

 

ウルフガス「グルルル…グワッ!」

 

 

ウルフガスは怯んで後ずさるが、すぐにアグルを睨み付けると、大地を蹴って跳躍し、そのままアグルへ飛びかかる。

 

アグル「ホワァァァーーー!」

 

ウルフガス「キャイン!」

 

 

だが、アグルもそれに合わせる様に飛び上がり、胸元に目掛けて蹴りをくらわせる。

直撃したウルフガスは地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

アグル「ホワッ!アァァァァァ……」

 

ウルフガス「クゥン…!」

 

 

地面に降り立ったアグルは素早い動きで近寄ると、ウルフガスの尻尾を持ち、ブンブンと回り始める。

 

 

アグル「ツォワァッ!!」

 

ウルフガス「キャウウ~~~ン!!」

 

 

そして、ハンマー投げの様に投げ飛ばすと、ウルフガスは再び地面を転がっていく。

そのあまりにも酷い光景にリアス達は何てひどいんだ…と各々呟いた。

 

アグルは追い討ちをかけようと歩み寄り、怯えているウルフガスを無理矢理起こす。

 

 

ウルフガス「グルワッ!!」

 

アグル「ッ!?ドアァァッ!」

 

 

その瞬間。ウルフガスは爪を立てると、先程のお返しとばかりにアグルの胸元を引っ掻いた。

ウルフガスはアグルを油断させる為に怯えているフリをしていたのだ。

 

その演技に騙され、油断したアグルはほんの少し怯むと、ウルフガスの顔に目掛けて拳を放つが

 

 

ウルフガス「ガウッ!」

 

アグル「ウッ…!?ドァァァ…!」

 

 

ウルフガスは口を開くと、繰り出される拳に噛みつく。

その鋭い歯が拳に刺さっていく感覚にアグルは苦痛の声をあげる。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ウルフガス「キャウン!?」

 

 

だが、すぐに自分の拳を噛まれた事に逆上すると、アグルは反対の拳でウルフガスの胸元を殴り、拳を強引に解放させる。

アグルはウルフガスを睨み付けながら、解放された手を痛そうに振るうと、ウルフガスを蹴り飛ばす。

 

 

アグル「ホワァァァァーーーーーー!!ドワッ!テェアッ!」

 

ウルフガス「キャウゥゥゥゥゥ~~~~~~~ン!」

 

 

そのまま休む間も与えず、アグルはパンチやキックの応酬でウルフガスを攻め立てる。

ウルフガスは次々と繰り出される攻撃になすすべもなく、サンドバッグの様にくらい続ける。

その様子は戦いというよりも、最早弱いものいじめである。

 

 

アグル「ツォワァッ!」

 

ウルフガス「キャウン!?」

 

アグル「ホワッ!アァァァァァ………!!」

 

 

ある程度痛め付けたアグルはウルフガスを投げ飛ばすと、額の前で両腕を交差させ、額にエネルギーを集中させ始める。

そう、フォトンクラッシャーの体制である。

 

 

我夢「っ!」

 

 

それを見た我夢はアグル――藤宮の狙いがわかった。

ウルフガスを町ごと破壊しようとしていると。

ウルフガスはガスで出来ている。

なので、かなりの火力を持つウルトラマンの光線を当たったりしたら、町はまるごと吹き飛んでしまい、大きな被害が出る。

 

不味いと思うや否や、我夢はエスプレンダーを掲げると、ガイアへ変身した。

 

 

ウルフガス「!?」

 

アグル「ホワァァァァーーーーーー!!」

 

ガイア「デヤッ!!」

 

 

ガイアはすかさずウルフガスとアグルの間に割り込むと、アグルの放つフォトンクラッシャーをフォトンエッジで相殺させた。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「……」

 

 

邪魔されたアグルはどこか怒りの眼差しを浮かべながら、ガイアを見据えると、ガイアは身構える。

正に一触即発だ。

 

 

アグル「ホワッ!アァァァァァ……」

 

ガイア「デヤッ!グァァァ……」

 

 

アグルはリキデイターの体制をとると、それに合わせる様にガイアもクァンタムストリームの体制にはいった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では2人の巨人の対立をリアス達は眺めていた。

リアスは渋い顔で呟く。

 

 

リアス「不味いわね…。このままの状況だとますますリスクが大きくなるわ」

 

 

そう不穏になるリアスの隣に1台の車が止まった。

一同は車に視線を向けると、車から瀬沼が降りてきた。

 

 

瀬沼「間に合いましたか…」

 

リアス「あなた…どうしてここに?」

 

瀬沼「ええ、高山さんに頼まれたものがようやく完成したので、届けにきたんですよ」

 

朱乃「我夢君が?」

 

瀬沼「はい。と言うものの私はXIOベースに製作を依頼したんですがね」

 

 

瀬沼はそう言いながら、懐からドクロマークのラベルがついてあるジェクターガン用のカートリッジ取り出した。

それを見て首を傾げるリアス達に瀬沼は説明する。

 

 

瀬沼「これは細胞気化弾です。これをウルフガスに撃ち込めば、元のガスに戻ります」

 

木場「それがあれば…!」

 

瀬沼「ええ、最悪の事態も回避できます。すみませんが、どなたか撃って下さいませんか?」

 

一誠「俺にやらせて下さい」

 

 

瀬沼が頼み込むと、一誠が手をあげた。

瀬沼はそれを承諾して頷くと、一誠に細胞気化弾を手渡した。

その頃、ガイアとアグルは今にも光線を発射しそうな状況であまり時間が残されていない。

 

 

瀬沼「頼みます」

 

一誠「はい!細胞気化弾…発射!」

 

 

一誠はジェクターガンに細胞気化弾を装填すると、引き金をひく。

発射された細胞気化弾は見事ウルフガスに命中した。

 

ウルフガス「アオーーーーーン…」

 

アグル「ッ!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

すると、ウルフガスの体は段々ガス状に変化し、近くのあるガスタンクの中に吸い込まれていった。

その光景にアグルとガイアはお互いの技を中断する。

 

 

ガイア「(間に合ったか…!)」

 

 

それを見たガイアは安堵した。

実はガイアは心の中でウルフガスはもしかしたら宇宙から送り込まれてきた被害者ではないかと思っていた。

だから、始めからウルフガスを殺すのではなく、救ってあげようと考えていたのだ。

 

ガイアはウルフガスが収められているガスタンクをそっと地上から引き抜くと、両手で優しく持ちながらアグルの方へ体を向ける。

 

 

アグル「……」

 

ガイア「…デュアッ!」

 

 

アグルが何かしら仕掛けてくるかと警戒していたが、何もせず、ただ見つめている。

その様子を見て何もしないと判断したガイアはガスタンクを持ちながら、上空へと飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま高く飛んで行き、大気圏を突破し、宇宙空間についたガイアはガスタンクを宇宙へ解放した。

 

 

ガイア「……」

 

 

ガイアはガスタンクが見えなくなるまで見守ると、地球へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ガイアが宇宙空間に向かって飛んで行く頃。

藤宮はアグルの変身を解き、遠ざかって行くガイアの姿を冷ややかな眼差しで見つめていた。

 

 

藤宮「ガスに戻して宇宙に返す……それでヤツを助けたつもりか…我夢。君というやつがつくづく分からなくなったよ。いつか俺のやり方を分かってもらう、必ず。そのつもりでいてくれ…」

 

 

藤宮はそう呟きつつ、暗闇に消えるように歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

プール開きだ!
夏の醍醐味を楽しむ我夢達。
白龍皇を名乗る少年、そして秘められた朱乃の血筋とは?

次回、「ハイスクールG×A」
黒白(こくびゃく)の翼」
君ならどう受け止める?







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第20話「黒白(こくびゃく)の翼」


今回はドラマパートのみです。



ウルフガスの一件から翌日。

セミが鳴り、大陽が照り付ける夏の昼。

この日、リアス達オカルト研究部は休日である駒王学園のプールに集まっていた。

 

何故ここにいるのか。

それは来週にプール授業の為、掃除をする事になったからだ。

本来なら毎年、生徒会が行うが、コカビエルの件でソーナにお世話になったので、そのお礼として掃除をリアスが引き受けたのである。

 

また、このプール掃除はもっと早く行う予定であったが、ミズノエノリュウの引き起こした断水の影響で水道が使えなかったからである。

水は悪魔の魔力を使えばすぐに出せるが、さすがに怪しまれるという恐れもあり、遅れてしまったのである。

 

 

リアス「掃除が終われば、先に使ってもいいらしいわよ。さあ、頑張りましょ!」

 

「「「「「「「オー!」」」」」」」

 

 

部員達はそれぞれデッキブラシやタワシ等の掃除道具を持つと、プールの清掃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分くらい経つと、プールの清掃も終わった。

我夢、一誠、木場の3人は一足先に水着に着替え、女子メンバーが着替え終わるのをプールサイドで待っていた。

 

 

リアス「お待たせ」

 

 

しばらく待つと、水着に着替えたリアス、朱乃、アーシア、小猫がプールサイドに姿を現した。

リアスと朱乃は布面積が少ないビキニタイプの水着で、アーシアと小猫は学校指定のスクール水着だ。

何故かゼノヴィアの姿が見えないが、後から来るそうである。

 

リアスは一誠、朱乃は我夢の前までくると、自らの水着姿をアピールする様に立った。

 

 

リアス「イッセー、どうかしら?」

 

一誠「は、はい…!最高ですっ!///」

 

朱乃「我夢君、私のはいかがかしら?」

 

我夢「あっ…似合ってますよ……///」

 

 

水着姿の感想を聞いてくる2人に一誠と我夢は恥ずかしげに答える。

彼女らは学園内でもトップクラスの美貌と抜群のスタイルを持つ。

そんな彼女らが肌をさらす水着、しかも布面積が少ないもので近寄られてきたら、目のやり場に困る。

 

この状況に2人は困っていると、アーシアと小猫が近寄ってくる。

 

 

アーシア「イッセーさん、私のはどうですか?」

 

小猫「…」

 

 

2人の胸元には平仮名で名前が書かれている。

リアスや朱乃の様なグラマラスな体型ではないが、逆に小柄な体格がスク水にマッチしており、とても可愛らしい。

 

 

一誠「おう、可愛いぜ!」

 

アーシア「そっ、そうですか?///」

 

我夢「ははっ」

 

 

一誠はサムズアップしながら答えると、アーシアは嬉しそうに笑う。

その兄妹の様なやり取りに我夢は微笑みつつ、小猫の方へ視線を向ける。

 

 

我夢「(小猫のスクール水着って、何か新鮮だな……。小柄だから中学生、いや高学年の小年生みたいで似合っているな…)」

 

 

そんな失礼極まりない事を思っていると

 

 

小猫「――我夢先輩。今、失礼な事を考えてませんでしたか?」

 

我夢「いっ、いえ!?何も考えてませんっ!!」

 

 

タイミングよく小猫が半目で問いかける。

我夢は勘が鋭いなと若干焦りながら、何故か敬語で答える。

 

 

小猫「……本当ですか?」

 

 

小猫は疑いの目を向けながら更に問いかける。

我夢は首をブンブンと縦に振り、「疑い深いんだなぁ~」とぎこちない笑顔を作りながら、冗談気味に答える。

 

 

小猫「なら、いいんですが…」

 

我夢「は…はは…」

 

 

その答えに未だ納得していない様子だが、小猫は引き下がる。

我夢は苦笑いをしながら、助かったと一安心していると、リアスが話しかける。

 

 

リアス「ねえ、我夢。あなた泳げるかしら?」

 

我夢「まあ、人並みにはできますが」

 

リアス「じゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「よし、ゆっくり。その調子だ」

 

小猫「―ぷはっ、ぷはっ」

 

 

プールで我夢は小猫の手を引っ張りながら、バタ足で泳ぐ彼女を後ろへゆっくりと誘導していた。

ちなみに隣では同じ様に一誠がアーシアの泳ぎを教えており、木場はひたすら潜水を続け、リアスと朱乃はプールサイドに立てたパラソルの下で優雅にくつろいでいる。

 

 

我夢「端についたよ」

 

小猫「ぷはっ!」

 

 

我夢がそう教えると、小猫は顔をあげて、空気を取り込んだ。

 

 

小猫「すみません、我夢先輩。私が泳げないばかりに…」

 

 

そう言うと、小猫は申し訳なさそうに顔を下げる。

 

そう、実は小猫は泳げない…つまりカナヅチなのだ。

運動神経抜群である小猫がまさか泳げない、というよりも水に入るのが苦手だと知らされた時には我夢も驚いた。

そこで、リアスは我夢に彼女の水泳指導を任せたのだ。

 

 

我夢「別にいいよ。僕は教えるの好きだし。それに誰でも苦手な事はあるさ」

 

小猫「先輩…」

 

我夢「それに最初は苦手だった水も、今は水に慣れてるじゃないか」

 

小猫「…あっ」

 

 

小猫は我夢の指導に夢中になるあまり、あれだけ入るのを怖がっていた水に、いつの間にか慣れている事に気付いた。

水に対しての恐怖心がなくなっている事に驚く小猫に我夢は微笑むと、彼女の肩に手を置き

 

 

我夢「大丈夫、君はこんな短時間で苦手を克服できたんだ。自信を持ちなよ」

 

小猫「…あ、ありがとう…ございます///」

 

 

そう褒めると、小猫はその笑顔に若干照れながらも感謝の言葉を返した。

2人がそんなやりとりをしていると、隣でアーシアに泳ぎを教えていた一誠も丁度終わった様なので、我夢と小猫もプールサイドにあがる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

小猫「すー……すー……」

 

アーシア「すぅ…すぅ…」

 

 

プールから上がってから数分後。

小猫とアーシアは泳ぎ疲れたのか、プールサイドの日陰があるところに寝ていた。

そんな2人の様子を少し離れた場所で眺めつつ、我夢と一誠は大陽の日が差す日向で談笑していた。

 

2人は他愛ない話で盛り上がっていると、我夢は何かを思い出した様にあっ!と声をもらした。

 

 

我夢「そういえば、一誠。君が変身するダイナってさ、ガイアと違ってどうして姿を変える事が出来るんだ?」

 

一誠「う~ん…」

 

 

我夢は何故ダイナがタイプチェンジ出来るのかを問いかけると、一誠は眉間にしわを寄せ、考える。

しばらくの沈黙の後、一誠は口を開き

 

 

一誠「わかんね」

 

我夢「えっ?」

 

 

そう答えると、思いもよらない回答に我夢は目を丸くした。

 

 

一誠「あの青い姿もさ、頭の中で『もっと速く!』って願ってたらさ、イメージが浮かんできたんだよ。んで、その通りにやったらあの青い姿に変えれる様になったんだ」

 

我夢「そうか…」

 

 

タイプチェンジを使う本人ですらその理由や原理がわからない。

ガイアとダイナの違いは何なのか…?

同じ地球が生んだウルトラマンなのに、どこに差があるのか…?

我夢は必死に頭を悩ませて考えるが、何も思い浮かばない。

 

 

リアス「イッセー、ちょっと来てほしいんだけど」

 

一誠「はーい!すまんな、我夢。ちょっと行ってくるわ」

 

我夢「うん」

 

 

遠くからリアスの呼ぶ声が聞こえてくると、一誠は早歩きでリアスの元へ向かった。

 

 

一誠「どうしたんです?」

 

リアス「貴方にオイルを塗ってもらいたいんだけど…出来るかしら?」

 

一誠「えっ」

 

 

リアスにオイルを塗る…つまり、ボディータッチを出来る権利を得られるのである。

女性…しかも特上の美女であるリアスに触れられるのである。

 

 

一誠「…もっ、もちろん!任せてください!」

 

リアス「じゃあ、頼むわね…」

 

 

一誠はやや興奮かつ戸惑いながら答えると、リアスは背中に結んであるビキニの紐をほどき、うつ伏せになった。

 

 

一誠「じゃあ…いきますよ」

 

リアス「…んっ」

 

 

一誠は手にオイルを馴染ませると、ゆっくりとリアスの背中に塗っていく。

背中から伝わるひんやりとした感触にリアスは気持ち良さそうに声をもらす。

 

 

リアス「んんっ…んっ…」

 

一誠「(不っ、不味い…こいつは、色々と…)」

 

 

気持ち良さそうにしているリアスとは反対に、一誠はドキドキしていた。

 

白く艶々とした肌の感触。

身体中から伝わる女性特有の甘い匂い。

そして、時々聞こえてくる(なま)めかしい声……。男性の煩悩を刺激するには充分なこの状況を、一誠は「冷静になれ」と言い聞かせ、崩壊しそうな理性を必死に抑える。

 

 

一誠「終わりましたよ」

 

リアス「ありがとう」

 

 

煩悩と理性の狭間で葛藤しつつも、一誠は背中を塗り終えた。

「何とかなった…」と安堵して、ため息をついていると、リアスは体を起こし

 

 

リアス「…じゃあ、今度は胸にもお願いね?」

 

一誠「むっ、胸!?」

 

 

胸を見せつけながら、そう言う。

さすがに冗談だろうと一誠は思ったが、リアスは恥ずかしそうに顔を赤らめつつも眼は真剣なものだ。

 

背中だけでも充分に煩悩を刺激だった。更に今度は胸となると、確実に理性が持たない。

一誠はこの状況に頭が沸騰しそうだった。

 

 

我夢「部長、すごく攻めるな~…」

 

 

その様子を遠くから眺めていた我夢は他人事の様に呟く。

どうしようかと混乱している一誠を心配しつつも、これは彼の問題であると考え、見守っていた。

 

 

我夢「っ!?」

 

 

すると突然、背中にふにゅんと柔らかい感触が伝わった。

我夢はとっさに後ろを向くと、朱乃が後ろから抱きついていた。

 

 

朱乃「あらあら、我夢君。羨ましそうに見てますわね♪」

 

我夢「え…違い、ますよ。そ、それよりも上を着てください…」

 

 

朱乃はいつもの様にニコニコしながら語りかけるが、我夢は気付いた。

胸の中心に何か固いものが当たっていることに。

そう、つまり上には何も着てないのだ。

そのあまりにも刺激に我夢は頬を赤らめ、ドキドキしながらも、朱乃に促す。

 

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪心配いりませんわ。私も我夢君にオイルを塗ってもらおうと思って♪」

 

我夢「えっ!ちょっ…それは…」

 

朱乃「あら?でしたら、もっと()()()をしてあげますわ♪」

 

我夢「イイ事っ!?な、何言ってるんですか!?////」

 

 

オイル塗りに躊躇していると、それ以上の刺激度が高い意味深な提案に我夢は更に顔を赤く染め上げる。

 

 

朱乃「どうせ、リアスはオイルを塗らせるといった()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()のですから、私がそれよりも殿方を満足させる事を我夢君にしてあげようと思いまして…」

 

リアス「朱乃?今の言葉、聞き捨てならないわね…」

 

 

2人の会話を遠くから聞いていたリアスが肩を強ばらせながら、スタスタと早歩きで朱乃の元に歩み寄る。

 

 

リアス「どういう意味かしら?」

 

 

リアスは低いトーンで笑顔を崩さない朱乃に問いかける。

リアスの眉は彼女が怒っている事を示す様に、ピクピクと痙攣させている。

 

 

朱乃「あらあら、言葉通りですわ。子供騙しの様な方法でしか殿方を喜ばせる事を出来ないって」

 

リアス「何ですって!?」

 

 

そう言って眼から火花を散らす2人には不穏なオーラが漂っている。

これには我夢と一誠はお互い、「嫌な予感がする」と思った矢先、

 

 

ドォォーーーーーーーン!!

 

 

プールの水が爆発したかと思うと、リアスと朱乃はプールでの水上バトルを始めた。

2人は悪魔の翼を広げながら、魔力弾をぶつけあう。

 

 

リアス「私が子供騙しでしか男を満足させれないって!?大体、朱乃!貴女は男が嫌いだったはずでしょ!?どうして我夢に興味を持つの!?」

 

朱乃「そういうリアスも『男なんて興味がない、全部同じに見える』って言ってたわよ!!」

 

リアス「イッセーは特別よ!!他の男と比べにもならないくらい可愛いのっ!!」

 

朱乃「私だって、我夢君が可愛いわよ!!やっと、そう思える男の子に出会えたのっ!!」

 

 

朱乃の雷とリアスの滅びの魔力がぶつかり合い、発生した衝撃波がプール中を襲う。

彼女達の喧嘩がヒートアップする度にらプールの水が波の様に激しくなり、プールサイドの外側を囲う網の塀もミシミシと鳴る。

 

この混沌とした状況に我夢と一誠はアワアワする。

 

 

一誠「我夢、これ以上は不味い!俺達も被害が来るぞっ!?こんな大変な事が起きてんのに木場のやつ、まだ潜水してんのかよ!!?」

 

我夢「とりあえず、避難させなきゃ!僕は木場君の方に行くから、イッセーは起きたばっかりのアーシアと小猫の避難を頼む!!」

 

一誠「ラ、ラジャー!」

 

 

2人はそれぞれ別の場所へ走っていき、避難活動を開始する。

 

いち早く小猫とアーシアの元に辿り着いた一誠は、状況を飲み込めない2人に手短に説明し、更衣室の方へ避難する。

 

残る我夢はなおも潜水を続けている木場に近寄ろうとするが、津波の様に荒れ狂うプールの水が邪魔してくるせいで中々近付けない。

 

 

リアス「朱乃のおたんこなすーーーーーーーー!!!」

 

朱乃「リアスのわからず屋ーーーーーーーーー!!!」

 

ドカァァァァーーーーーーーーン!!

 

我夢「うわぁーーーー!?」

 

 

そして、今までよりも一番大きな魔力がぶつかり合い、爆発する。

我夢はその爆発に巻き込まれ、用具室の方へと吹き飛ばれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「いってぇ…」

 

 

吹き飛ばされ、用具室の中にまで転がり込む様に入った我夢はうった頭を抑えながら立ち上がる。

すると、背後から

 

 

ゼノヴィア「…我夢、か?」

 

我夢「わっ!びっ、びっくりしたぁ~。ゼノヴィアか」

 

 

ゼノヴィアが話しかけてくる。

我夢はまた朱乃が来たのかと思ったが、違うとわかると、安堵する。

 

 

我夢「そういえば中々姿を見せなかったけど、どうしたんだ?」

 

ゼノヴィア「初めての水着で手間取ってね…どうかな?」

 

 

ゼノヴィアはそう言うとその場でクルリと回り、全身の水着姿を見せる。

水着は彼女の髪と同じ青いビキニタイプで、リアスや朱乃程ではないがスタイルが良く、教会時代から鍛えている為、ウエストも絞まっていて、お尻も垂れていない。

 

 

我夢「うん、似合っているよ」

 

ゼノヴィア「そ、そうか…ありがとう」

 

 

我夢がそう誉めると、ゼノヴィアは少し照れた様に笑う。

外から聞こえてくる騒音が気になったのか、ゼノヴィアが問いかける。

 

 

ゼノヴィア「ところで、先程から物凄い音が聞こえてくるが、何かあったのか?」

 

我夢「あ、ああ、朱乃さんと部長がケンカしててさ…理由はともかく今は外に出ない方がいい」

 

ゼノヴィア「そうか」

 

 

そう説明すると、ゼノヴィアは納得したのか頷く。

ゼノヴィアはそれはそれ…と話題を一旦起き、真剣な眼差しで我夢を見つめる。

 

 

ゼノヴィア「時に高山 我夢」

 

我夢「いや、我夢でいいよ。どうしたんだい?」

 

 

先程の和やかな雰囲気から一変して、真剣な表情に変わったゼノヴィアの言葉を待つ我夢。

次の瞬間、ゼノヴィアから信じられない言葉が飛び出す。

 

 

ゼノヴィア「…では、我夢。私と子作りしないか?」

 

我夢「……………………………………はい?」

 

 

そのあまりにも衝撃的な言葉に我夢は数10秒程固まった。

子作り?その言葉に思わず耳を疑ったが、

 

 

ゼノヴィア「聞こえなかったのか?私と子作りしようと言っているんだ」

 

我夢「…えええ!?ちょっ、どういう事!?」

 

 

再び答えるゼノヴィアにさすがに我夢も聞き間違いじゃないとわかり、理由と問う。

すると、ゼノヴィアはその結論に至った理由を語りだした。

 

 

ゼノヴィア「教会時代の私は神に仕えるこそが私の生き甲斐だった。だが、今は神はいない、しかも私は悪魔だ。今まで私欲など持っていなかった私はこれからどうすればいいかとリアス部長に相談した時、教えてくれた。『悪魔は自らの欲に忠実な生き物である』とね…」

 

我夢「そ、それで思い付いたのが…子作り?」

 

 

我夢は目を丸くしながら問うと、ゼノヴィアは頷く。

 

 

ゼノヴィア「実は女としての喜びや幸せに憧れを持っていたんだ。悪魔は長寿だからな、目標は長く持続できるものがいい」

 

我夢「っ!?///」

 

 

ゼノヴィアはそう言うと、ビキニを取り払った。

その行動に我夢は顔を赤くし、とっさに両手で目を塞ごうとするが、ゼノヴィアの素早い動きで両手を抑えられる。

 

 

ゼノヴィア「そう、恥ずかしがるな。ちゃんと見てくれ。リアス部長や朱乃副部長には劣るが、形や大きさは悪くないだろ?」

 

我夢「ま、ま、ま、待って!僕達、まだ高校生だろ?さすがに子供の面倒は見れないぞ!」

 

ゼノヴィア「安心しろ!基本は私が育てる。だが、父親としての愛情が欲した時に遊んでやって欲しい」

 

我夢「僕以外にも木場君とイッセーがいるじゃないか!?」

 

ゼノヴィア「木場はそこら辺淡白そうだし…イッセーは性欲が強そうだが、無計画そうな気がする。だから、誰よりも賢い君がいいんだ」

 

我夢「淡白に無計画って…。それに僕、経験ないよ!?」

 

ゼノヴィア「私だって初めてだ。上手い下手ともかく、実践あるのみだ。ほら、日本には『一膳食わねば男の恥』という言葉があるじゃないか?私にここまでさせといて何もしないのか?」

 

我夢「それを言うなら『すえ膳食わねば男の恥』だよ!…って、水着を脱がさないで!!」

 

 

我夢は彼女の胸を見ないよう両目をつぶりながら必死に説得を試みるが、ゼノヴィアには通じない。

その間にも彼女に脱がされそうな水着を上に上げて抵抗する。

 

 

我夢「何でそこまでこだわるんだよ!?」

 

ゼノヴィア「私は強い子が欲しいんだ!強力なウルトラマンの力を持つ君となら、きっと元気な子が出来る筈だ!!」

 

我夢「っ!」

 

 

その言葉を聞き、我夢は気付いた。

ゼノヴィアは自分の持つ()()()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()ことに。

それを確信した我夢はすぐに冷静になり、抑えられていた両腕を力づくで解放し、上体を起こす。

 

 

ゼノヴィア「っ!」

 

 

突然の行動にゼノヴィアは驚き、再度我夢を押し伏せようとしたが、先程とは違い、真剣な眼差しで見つめる我夢に動きを止めた。

 

 

我夢「ゼノヴィア、君は女性としての喜びが欲しいからウルトラマンの力を持つ僕とそういう事をしようとしたんだよね?」

 

ゼノヴィア「そうだ。より強く、逞しく育って欲しいか「本当にそう思ってるのか?」――!そう思ってるのか、だと…?」

 

我夢「ああ」

 

 

我夢にそう問われると、ゼノヴィアは目を見開き、問いかける。

我夢は言葉を続け

 

 

我夢「はっきり言おう。君は子供ではなくて、実のところはウルトラマンの力というものに興味があるだけじゃないのかい?」

 

ゼノヴィア「っ!?」

 

我夢「心の中では思ってないかも知れないけど、君の話し方だとそう聞こえてしまうんだ。まるで、人工的に兵士を作るみたいに…」

 

ゼノヴィア「……」

 

 

そう指摘されると、ゼノヴィアはどこか思うところがあったのか顔を俯かせ、言葉を失う。

我夢は暗い表情を浮かべる彼女の両肩に手を置き

 

 

我夢「本当に、本当に子供の事を思うなら。早まらず、ゆっくりでも良いから、相手を思いやる心が大事だ。そうじゃないと、産まれてきた子供がかわいそうだよ」

 

ゼノヴィア「…思いやる…心…」

 

我夢「今はわからなくてもいい。その内わかる日が来る筈さ。さあ、上を着て。誰かが来るとまずいし」

 

 

そう諭すと、彼女は理解したのか、力が抜けていくことがわかった。

我夢は近くの床に放り投げられていたゼノヴィアのビキニを手に取り、彼女に渡そうとした時

 

 

小猫「何…してるんですか…?」

 

ゼノヴィア「む?」

 

我夢「あ」

 

 

用具室の扉がいつの間にか空いており、入り口には半目でこちらを見つめる小猫の姿があった。

 

今の状況は上半身裸のゼノヴィアが我夢に馬乗りになっている。

そして、我夢の手には彼女が着ていたビキニがある。

誰がどう見ても、今まさに情事を行おうとしか見えない。

 

マズイと思うや否や我夢はゼノヴィアから離れ、後ずさる。

小猫は再度、我夢達に問いかける。

 

 

小猫「何をしてたんですか?」

 

ゼノヴィア「何を、って子作りだが?」

 

我夢「あっ、ちょっ!」

 

小猫「…なるほど」

 

 

ゼノヴィアがそう答えると、小猫は納得した様に頷き、我夢の元へゆっくりと歩き始める。

我夢は小猫の体から不穏なオーラが近付く度に放出している様に見えた。

 

その瞬間、我夢の顔は青ざめ、冷や汗がダラダラと流れ始めた。

 

 

我夢「ちっ、違うんだよ小猫!!これは誤解だ!」

 

小猫「誤解?この状況をどう説明するんですか?心配して来てみれば、まさか我夢先輩がこんな事をやるとは……」

 

我夢「ええ…ちょ、ゼノヴィア!何か言ってよ!!これは誤解だって!!」

 

 

迫ってくる小猫から逃げる様に後ろへと後ずさる我夢はゼノヴィアに助け船を求めた。

だが、この判断が我夢の命取りとなった。

 

 

ゼノヴィア「そうだぞ、小猫。これは誤解だ。我夢は『今の私とでは物足りん』と断ったんだからな」

 

我夢「ゼノヴィアァァァァーー!?」

 

小猫「そうですか…ゼノヴィア先輩だけでは物足りない、と…」

 

我夢「いや、違うから!!彼女の言い方が悪いから!!本当に違うから!!」

 

 

ゼノヴィアの言葉で更に疑惑が大きくなった小猫は不穏なオーラを更に放出させる。

それは助け船になるどころか、状況が更に悪化してしまった。

我夢は必死に弁明するが、もう彼女の耳には届かない。

 

 

我夢「あっ!」

 

小猫「…逃げられませんね」

 

 

そうこうして後ずさっていると、我夢はいつの間にか壁際に追い詰められた。

我夢は恐る恐る彼女の顔をのぞくと、まるで家畜を見るような蔑む目をしており、大量の不穏なオーラをひたすら放出していた。

 

 

我夢「あ…ああ…」

 

 

我夢は小猫に対する恐怖であいた口が塞がらず、身体中から冷や汗が溢れ出す。

小猫は指をポキッポキッと折り、

 

 

小猫「…覚悟はいいですか?」

 

 

その処刑宣告を告げた後、用具室からプールへ我夢の絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場「あれ?みんな?」

 

 

ちなみに木場はそんな事があったとは露知らず、プールから顔を出し、ただ1人でキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り。

プール掃除が終わった一向は家路に着こうと歩いていた。

 

 

我夢「い…いてて…」

 

一誠「な、なぁ、我夢。大丈夫かよ…」 

 

我夢「…今度ばかりは…無理……」

 

小猫「当然の報いです」

 

 

ズタボロになった我夢を心配する一誠。

その前を歩き、フンッと不機嫌そうに鼻を鳴らす小猫。

 

今日は色んな事があった。

朱乃のスキンシップ、そこから発展した2人の喧嘩、ゼノヴィアの強行子作り。

そして、勘違いから生まれた小猫のお仕置き…と非常に印象が残る出来事があり、我夢は精神的にも肉体的にも疲弊していた。

 

 

我夢「?校門に誰かいる」

 

一誠「本当だ…誰だ、アイツ?」

 

 

我夢はとぼとぼと歩いていると、校門に銀髪の少年が誰かを待つように壁にもたれかかっているのが見えた。

一行は誰だろう?と疑問に持ちながら、歩を進め、少年に近付いていく。

 

 

我夢「君は…?」

 

 

我夢が尋ねると、銀髪の少年は気付いたのか視線を向け、我夢やリアス達を品定めする様に眺める。

その行動に一行は不思議がって見ていると、銀髪の少年はその視線に気付き、「失礼」と一言呟いて不敵に笑う。

 

 

一誠「お前、なにもんだよ?」

 

ヴァーリ「俺の名はヴァーリ。白龍皇、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』だ」

 

一誠「何!?」

 

我夢「白龍皇!?」

 

 

銀髪の少年こと、ヴァーリが白龍皇である事に一同は驚くと共に警戒した。

我夢と一誠は以前、リアスから大戦の結末を聞いている。

 

戦場で死闘を始めた2匹の龍を各勢力が力を合わせて倒し、神と魔王が残り少ない命で神器(セイクリッド・ギア)にそれぞれ、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)は「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」に、そして白い龍(バニシング・ドラゴン)は「白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)」としてその魂を封印された。

 

そして、神器(セイクリッド・ギア)に封印されて尚、赤龍帝と白龍皇はいくつもの世代を越えて、何度も何度も戦い続けているのだ。

 

ヴァーリは一同に歩み寄ろうとするが、

 

 

木場「何をするつもりだい?」

 

ゼノヴィア「もし、彼らに危害を加えるつもりなら、容赦しないぞ…」

 

 

木場とゼノヴィアが首筋に剣を向ける。

だが、ヴァーリは怯える事もなく、鼻で笑い

 

 

ヴァーリ「止めておいた方がいい。変化する前のコカビエルごときに苦戦する君たちじゃ俺の相手にはならない事はわかっているだろう?現に今、切先が震えているじゃないか?」

 

 

そう指摘するように、剣を向ける2人は手がガクガクと震えていた。

リアスは2人に剣を収める様に指示すると、木場とゼノヴィアは悔しそうに剣を収める。

 

不穏な空気の中、リアスは敵意を向けながらヴァーリに問いかける。

 

 

リアス「それで、何の用かしら?白龍皇」

 

ヴァーリ「別に戦いにきたわけじゃない、アザゼルの付き添いとして付いてきただけさ。まあ、未だ現れない赤龍帝(俺のライバル)がいるわけじゃないし、乗り気じゃなかったさ。ただ、赤龍帝に匹敵…いや、それ以上に興味が湧く存在がいると知ってね……」

 

 

そう答えると、ヴァーリは我夢と一誠の顔を興味深そうに見つめた。

 

 

我夢「それが僕達って訳か」

 

ヴァーリ「そうだ。コカビエルや幾度も現れる破滅招来体に立ち向かい、倒してきた…。それで君達に興味が湧き、わざわざ会いに来た訳だ、ウルトラマンガイアにウルトラマンダイナ…」

 

一誠「そうか。だが、生憎だがサインや握手はしねぇぞ。諦めてさっさと帰れ」

 

ヴァーリ「ふふふ…」

 

 

一誠の皮肉めいた言葉にヴァーリはしばらく不敵に笑うと、我夢と一誠に問いかける。

 

 

ヴァーリ「君達は『力』とは何の為にあると思う?」

 

一誠「それは誰かを守る為だろ?」

 

我夢「僕も同じだ」

 

 

一誠の答えに我夢も同意見だと答える。

すると、ヴァーリは肩をすくめ

 

 

ヴァーリ「誰かを守る、か………いや、違うな」

 

「「!?」」

 

 

2人の意見を一蹴する。

我夢と一誠はなら何だよと言わんばかりに見つめると、ヴァーリは答える。

 

 

ヴァーリ「『力』とは、誰かをねじ伏せる為にあるものだ。強いやつと戦い、自分をより高みへと導いてくれる…それが力だ――」

 

我夢「――それは違うっ!!

 

リアス「我夢…」

 

 

すると、突然我夢は怒鳴るようにヴァーリの力の在り方を否定した。

この場にいる全員は我夢に注目を向けると、我夢は語る。

 

 

我夢「君は間違っている!!力は誰かをねじ伏せたり、自分を誇示するものじゃない!大切な誰かを、守りたい人を傷つけさせない為にあるんだ!!」

 

一誠「そうだ!我夢の言う通りだ!!」

 

 

隣で聞いていた一誠も同意見だと答える。

ヴァーリはこちらを睨み付ける2人の言葉を黙って最後まで聞くと、突然笑いだした。

 

 

ヴァーリ「面白い…実に面白い!ますます君達に興味が湧いたっ!はははっ!!おっと、失礼…つい笑ってしまった。あ、あと君達の名前を聞いていなかったな」

 

我夢「…高山 我夢」

 

一誠「…兵藤 一誠だ」

 

ヴァーリ「高山 我夢に兵藤 一誠…ふっ、覚えておくよ」

 

 

ヴァーリの奇行に2人は若干引きつつも名前を教える。

ヴァーリは覚えようと名前を繰り返す呟くと、踵をかえし、歩きだした。

すると、何かを思いだしたのか様にピタッと歩を止めると、リアスに顔を向け

 

 

ヴァーリ「リアス・グレモリー、その2人は貴重な存在だ。よく育てておけよ」

 

 

そう言葉を残すと、歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後。ヴァーリは帰路である路地を歩いてると、何者かこちらの様子を伺っている様な気配を感じた。

ヴァーリは足を止め、その気配は見覚えがあるとわかると、ニッと口角をあげ

 

 

ヴァーリ「是非、君とも戦ってみたい。ウルトラマンアグル…」

 

 

振り返らずそう答えると、ヴァーリは再び歩き始める。

彼が去った後、電柱の影からは藤宮が彼の去っていった方角を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「お邪魔しま~す」

 

朱乃「ふふ、どうぞ」

 

 

白龍皇、ヴァーリの来訪が会ってから翌日。

我夢は朱乃の自宅である姫島神社に来ていた。

 

悪魔が苦手とする神聖である神社だが、悪魔でも入れる様になっているらしいがそれはさておき。

我夢がここに訪れたのは理由があり、昨晩、朱乃から話したい事があると連絡を受けたからである。

 

 

朱乃「ごめんなさいね、急に呼び出したりして」

 

我夢「いえ、特に何も予定がなかったんで」

 

 

申し訳なさそうに話す朱乃に我夢はニッコリと笑い、問題ないと返す。

ちなみに朱乃はたまに戦闘時に見かける巫女服を着ている。

我夢はリアスとはまた違う和風美人の朱乃によく似合っているなと思いつつ、朱乃の後についていくと、境内にある彼女が日常生活に使っている部屋に着いた。

 

 

朱乃「お茶ですわ」

 

我夢「あ、ありがとうございます」

 

 

我夢は出されたお茶にふ~ふ~と息をかけると、ゴクリと一口つける。

その瞬間、我夢はあまりの美味しさに言葉を失った。

苦味、コク、濃さ…どれをとっても完璧である。

この人が淹れた飲み物は全て美味しくなるんじゃないかと思うくらい我夢は感動した。

 

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪満足してくれた様で嬉しいですわ」

 

我夢「あはは」

 

 

そのリアクションを見た朱乃はいつもの様に微笑むと、我夢も笑顔で返す。

しばらく笑うと、我夢はお茶をテーブルの上に置き、本題に入る事にした。

 

 

我夢「それで朱乃さん。話って?」

 

朱乃「…」

 

 

我夢がそう尋ねると、朱乃は先程の笑顔から一変して顔を曇らせ、黙りこんでしまう。

しばらく沈黙が続くと、朱乃は何かを決心したのか立ち上がると、我夢に背中を向けた。

朱乃は振り返らず、背を向けたまま我夢に問いかける。

 

 

朱乃「…我夢君。コカビエルが私について何か知っている様に話してた事を覚えてますか?」

 

我夢「はい、確か『バラキエルの娘』とか何とか……もしかして、それに関係する話を?」

 

朱乃「ええ…」

 

 

我夢がそう問うと、朱乃は頷く。

バラキエル。恐らく堕天使の名前であろうが、それを聞いた時、朱乃は怒りを露にしていた事を我夢は思い出す。

 

 

朱乃「…私は堕天使の幹部バラキエルと人間である母の間から生まれたものです」

 

我夢「(やっぱり、堕天使と関係があったのか…)」

 

 

朱乃は振り返りながらそう言うと、我夢は内心納得する。

朱乃は話し続け

 

 

朱乃「母はこの国のとある神社の娘でした。ある日、傷つき倒れていた堕天使の幹部バラキエルを助け、その時の縁で私を宿したそうですわ……」

 

我夢「!?」

 

 

そう言い終えると、背中から翼を広げると我夢は驚いた。

それはいつもの悪魔の翼ではなく、片翼はカラスの様な翼、堕天使の翼だった。

 

我夢が自分の翼を目を丸くして見ていると、朱乃は憎しげに堕天使の翼に触れる。

 

 

朱乃「私はこの翼、羽が嫌で悪魔になったの……。でも、生まれたのは堕天使と悪魔の翼を持つ、醜くおぞましい生き物。ふふ…こんな穢れた私にはお似合いですわ」

 

我夢「朱乃さん…どうして、僕に話してくれたんです?」

 

 

自虐気味な笑みを浮かべる朱乃に我夢は悲しげな表情で問いかける。

すると、朱乃は真剣な眼差しで我夢を見つめ

 

 

朱乃「…あなたには隠し事をしたくなかったの」

 

我夢「え?」

 

朱乃「本当の私はうす汚れた心を持っている臆病なだけ………でも、我夢君ならこんな私でもきっと受けとめてくれるじゃないかと思ったの」

 

我夢「っ!」

 

 

自分の想いを赤裸々と打ち明ける朱乃の顔はいつもの様に余裕に満ちた年上の女性ではなく、年頃の女性の顔だった。

その表情に失礼と思いながらも我夢は若干見とれつつ、黙って話を聞き続ける。

 

 

朱乃「我夢君はどう思う?アーシアちゃんを殺すだけでなく、この町を壊そうとした堕天使にいい思いを抱く筈はしませんよね?」

 

 

朱乃は弱々しく問いかける。

我夢はオブラートに包んで話しても逆効果だと思い、正直な気持ちを返そうと考え、口を開いた。

 

 

我夢「正直、僕は堕天使にはあまり良い印象を受けません。イッセーやアーシアに手をかけ、町の人の命を奪おうとしたことは許せません」

 

朱乃「…」

 

 

そう聞いた朱乃はより暗い表情になり、下に俯く。

我夢は「ですが」と付け加えると、

 

 

我夢「それは人間や悪魔と同じで、悪い人もいれば良い人もいると僕は思います。確かに出会ったのは悪い奴らだったですが、それはほんの一部ですよ」

 

朱乃「いいの?もしかしたら、私はあなたを何かしらに利用するために近付いてきただけかもしれない最低な女かもしれませんわよ。しかも、堕天使の血をひく――」

 

我夢「朱乃さん!

 

朱乃「!」

 

 

またも自虐的に話している朱乃の言葉を我夢は大声で呼び掛けて遮る。

そして、我夢は立ち上がると、朱乃に近寄り

 

 

我夢「朱乃さんは朱乃さんですよ!例え種族や血が違っても、僕たちの仲間である事には変わらないじゃないですか!」

 

朱乃「我夢君…」

 

我夢「それに…隠してたんですが僕も昔、自分の存在を憎んだ事があったんですよ」

 

朱乃「え!?我夢君が…?」

 

 

朱乃はそう打ち明ける我夢の顔を信じられないといった表情で見つめる。

それもその筈。今の我夢は笑顔が多く、とても自分を憎んでいたとは思えないからである。

我夢は頷くと、幼少期の記憶を思い出しながら話す。

 

 

我夢「僕は自慢する訳じゃないですが、頭が良くて、いつも先生や保護者に褒められていました。でも、それが気にくわない人達に目をつけられ、いつもいじめられてました。正直、僕は恨みましたよ。どうしてみんなと違うんだ、どうしてこんな目に遭うんだって…とにかく自分が嫌いでした」

 

朱乃「…」

 

我夢「でも、イッセーやイリナ達に出会って初めて僕という存在を受け入れてもらって、それまで辛かった人生観が変わったんです。だから、今でもこう思うんです。『彼等がいなければ今の自分はいない』、と…」

 

 

我夢は自分の過去の境遇を話終えると、朱乃の肩に手をおき

 

 

我夢「朱乃さんは最低な人じゃない、とても良い人です。そうでなければ、そんな悲しそうな顔をする筈がないじゃないですか」

 

朱乃「っ!」

 

 

そう言われると、朱乃はハッとなり、自分の顔に手を当てる。

我夢は真剣な眼差しで彼女の瞳をまっすぐ見つめ

 

 

我夢「例え、誰かが朱乃さんを否定しても、僕はずっと朱乃さんの味方ですよ!だって、朱乃さんを嫌う理由はどこにもないですから…」

 

朱乃「…っ!」

 

 

我夢のその言葉を聞き、嬉しさのあまり、朱乃は涙を流す。

 

 

我夢「え、ちょっ」

 

 

その様子を見た我夢は何か気に障る事でも言ってしまったのかと思い、あたふたする。

 

 

朱乃「ふふ、これは嬉し涙ですわ。我夢君、あなたは優しいですね」

 

我夢「はぁ、はは…」

 

 

涙を拭いながら理由を話す朱乃の言葉を聞くと、我夢は安堵した様に苦笑いをする。

 

 

朱乃「っ?////」

 

 

朱乃は苦笑いをする彼の顔を見ている内に頬が赤く染め上がり、また心臓が高鳴るのを感じた。

熱い。ミズノエリュウの時に感じた時よりも更に胸が熱く締め上げられる。

やっぱり、これは……。

彼に対する感情が何かを自覚すると、朱乃は我夢を押し倒した。

 

 

我夢「あ、朱乃さん?」

 

朱乃「我夢君……」

 

 

突然押し倒され、困惑する我夢の顔に触れ、愛しく見つめる。

我夢は最初は困惑していたが、段々と恥ずかしくなっていった。

 

 

我夢「すみませんっ!」

 

朱乃「あっ……ごめんなさい」

 

 

さすがにこの状況だと色々とマズイ…。

そう思うな否や、我夢は素早く彼女から離れた。

その行動に朱乃は自分が何をしようとしてたかと冷静になると、申し訳なさそうに謝る。

 

我夢は笑顔で許すと、ふと腕時計を見てそろそろ帰る時間だから帰ろうと立ち上がると朱乃も立ち上がり、玄関まで見送ってくれた。

 

 

我夢「それじゃ、僕はこれで。明日は授業参観ですから会えるかわかりませんが、また会いましょう」

 

朱乃「ええ、また明日」

 

 

我夢は玄関先で微笑みながらそう言うと、そのまま外へ歩きだした。

朱乃は彼が見えなくなるまで見送ると、ソッと胸に手を当てた。

 

 

朱乃「(我夢君…私はやっぱりあなたに……)」

 

 

体が熱くなり、胸が締め付けられる様な感覚…。

朱乃はこの時、彼に恋心を抱いている事に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

駒王学園の授業参観へやってくる魔王達。
宇宙から向かってくる危機!
その時、アグルは地底からゾンネルを復活させた!

次回、「ハイスクールG×A」!
「天の影 地の光」!







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第21話「天の影 地の光」

超巨大天体生物 ディグローブ
甲殻怪地底獣 ゾンネル    登場!


宇宙。太陽系の近くに突如、ワームホールが出現した。

その中からは胴体を球状にしたヒルの様な生物が姿を現した。

 

 

???「フォォォォ……」

 

 

その生物は青い炎を纏うと、どこかへとまっすぐ飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

その頃、ジオベースでは早くも太陽系に現れた謎の生物についての連絡を受けていた。

緊張が走る中、職員達は謎の生物の情報を探っていく。

 

 

「所長。アリシボ観測センターから未確認天体の追加データが送られてきました」

 

「ガスの構成は水素、窒素、炭素、ヘリウム。中心部に小惑星規模の質量。その構成元素は不明です」

 

樋口「小惑星規模の質量?天体の進路は?」

 

 

旧・円谷研究所の所長、現ジオベースのメインチーフである樋口(ひぐち)は職員達に問う。

 

 

「このままの進路でいけば、98時間後には地球の公転軌道を通過します。ただし、地球への直接の影響はありません」

 

樋口「そうか…じゃあ特に警戒する必要もなさそうだな。後は観測センターに任せよう」

 

 

その報告を聞き、ほっとひと安心すると、樋口は職員達に労る様に言う。

この慌ただしかった空気は彼の一言で静まった。

 

だが、後にこの天体が地球に危機をもたらすことを彼らはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間が経った後。

場所が変わり、駒王学園では授業参観真っ只中である。

 

校内をスーツに身に包んだ大人達が歩き回り、ある人は我が子の姿を見学に、ある人は校内を興味深そうに探索する。

 

そんな大人達に囲まれながら、我夢達も英語の授業を受けていたが…

 

 

教師「はぁい!皆さん、今お配りした粘土を使って自由なものを作って下さい!!ものを作ることから始まる英会話もありま~~~す!!」

 

 

何故か英語の授業なのに工作を行う事になった。

我夢と一誠は「そんな英会話あるかっ!」と内心ツッコミつつ、何とか時間内に作品を作り終えた。

 

ちなみに一誠が作ったダイナのフィギュアはクラス内で一番完成度が高く、その場にいた有名玩具メーカー「財団B」の社員があまりもの精密さに感動し、一誠をスカウトしようとしたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、お昼休み。

我夢、イッセー、アーシア、ゼノヴィアの4人は食堂で食事をとり、暇だったのでエントランスを歩いていた。

 

現在、公開授業は終わり、保護者面談の時間となっている。

一誠、そして遠くからわざわざ来てくれた我夢の母、重美は担任の先生と面談を行っている。

その間、生徒は自由行動となったので我夢達は特にやることはないが、校内を散歩することにした。

 

 

ゼノヴィア「しかし、戦いの時とはまた違う緊張感があったな…」

 

アーシア「はい、ドキドキしました…」

 

 

初めての学園生活における授業参観という行事を体験した教会コンビは感想を呟く。

教会に身を置いていた2人は学校など行けなかったので、それも仕方ないのだろうと我夢は思った。 

 

 

一誠「おい、我夢。あの人って…」

 

我夢「ん?あっ…」

 

 

エントランスにつくと、一誠が肩を叩く。

我夢は一誠の視線の先を見ると、そこにはリアスの兄のサーゼクスと彼と同じ紅髪のダンディーな中年男性が会話をしていた。

 

 

我夢「サーゼクス様、こんにちは!」

 

一誠「こないだぶりです!」

 

サーゼクス「…?ああ、君達か。こんにちは。2人共、相変わらず元気そうだね」

 

 

我夢達は駆け寄って声をかけると、サーゼクスはそれに気付き、微笑みながら挨拶をかえす。

すると、隣にいた男性が一誠がいることに気付くと、彼の目の前まで歩み寄った。

 

 

ダンディー男「はじめまして、かな?兵藤 一誠君。それと隣にいるのは高山 我夢君かな?」

 

我夢「…はじめまして」

 

一誠「こちらこそはじめまして……ところであなたは?」

 

ジオティクス「こうしてお会いするのははじめてだね。私はジオティクス・グレモリー、いつも娘がお世話になっているね」

 

我夢「えっ!じゃあ、部長とサーゼクス様のお父さんっ!?」

 

 

我夢と一誠は驚いた。

目の前にいる人物はとても2児を抱える父親には見えない。

精々、見えて30歳くらいだ。

この男前は明らかにサーゼクスに遺伝していると我夢達は納得した。

 

 

一誠「あっ!」

 

 

すると、突然一誠は何かを思い出したのかの様に声を出すと、ジオティクスに頭を下げる。

 

 

一誠「すみません!大事な娘さんの結婚式を滅茶苦茶にしてっ!」

 

ジオティクス「いや、いいんだよ。君や我夢君のおかげで大事な娘をあんなドラ息子にやらずに済んだ。私は目が覚めたよ、ありがとう」

 

 

謝罪する一誠にジオティクスは微笑みながらそう言うと、一誠は苦笑いをしながら顔をあげた。

その和やかな雰囲気に我夢達へ微笑んでいると、周りが騒がしくなってきた。

 

 

「おい、急げよ!今、体育館に美女の魔法少女コスプレイヤーがいるってよ!」

 

「マジか!?」

 

「是非とも行かねばっ!!」

 

我夢「何だ?」

 

一誠「魔法少女?」

 

 

そんな声が聞こえてきた我夢達は首を傾げる。

当然だが、この駒王学園にはそういうイベントはない。

 

 

サーゼクス「まさか…」

 

ジオティクス「うむ…」

 

 

サーゼクスとジオティクスは思い当たりがあるのか、声を唸らせる。

聞こえてきた声の通り、我夢達は体育館へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、駒王町のはずれにそびえる山「美宝山(びほうざん)」の麓を歩いている人物がいた。

 

その人物はウルトラアグル―――藤宮 博也である。

彼は手に持つ小型探知機で何かを探していた。

 

 

《チッ…チッ…チッ…チッ…》

 

藤宮「ここか…」

 

 

探知機が強く反応を示す場所に藤宮は立ち止まると、伸ばしていた小型探知機のアンテナをしまう。

 

そして、アグレイターを掲げると、藤宮は等身大のアグルに変身した。

 

 

アグル「…トアッ!」

 

 

アグルは探知機が強く示した位置を確認すると、高く飛び上がり、そのまま地中を掘り進んでいく。

 

 

アグル「フオッ」

 

 

深くまで掘り進んでいくと、アグルは地底に辿り着いた。

そこはガスが充満し、熱気が溢れた岩だらけだった。

 

アグルは変身を解除し、藤宮の姿に戻ると、再び何かを探すように歩き出す。

 

 

藤宮「…!」

 

 

しばらく歩いていると、開けた場所に出た。

藤宮は辺りを見渡すと、目当てのものを見つけたのか、ズンズンとその目当てのものに近付く。

 

 

藤宮「ゾンネル…」

 

 

そこには岩の様な一匹の怪獣が眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、我夢達は体育館に着くと、大勢の男子生徒…ギャラリーがステージの下に集まっていた。

ちなみにサーゼクス、ジオティクスの2人は途中ではぐれてしまったので、ここにはいない。

ギャラリーからは歓声や指笛、カメラのシャッター音が聞こえる。

 

 

アーシア「え…」

 

一誠「な、何だ…ありゃ……」

 

我夢「魔法…少女…?」

 

 

我夢達はギャラリーが熱い眼差しを送るステージを見上げると、唖然とした。

そこには魔法少女のコスプレをした少女がステージの上で撮影会を行っていたのだ。

おそらく誰かの保護者であろうが、学校という公共の場…しかも授業参観であんな派手な衣装を着て、撮影会。

本人はノリノリなのか様々なポーズをとっている。

 

我夢、一誠、アーシアの3人は目の前の光景が信じられず、開いた口が塞がらなかった。

 

 

リアス「一体、何の騒ぎ?」

 

一誠「あっ、部長」

 

 

声のした方を振り向くと、そこにはこの騒ぎを嗅ぎ付けたのかリアスと朱乃の姿があった。

一誠は朱乃に事情を説明している中、我夢は朱乃に声をかける。

 

 

我夢「朱乃さん、こんにちは」

 

朱乃「あら、我夢君。こんにちは」

 

我夢「朱乃さん、その大丈夫ですか…?僕、昨日の事が気になって…」

 

朱乃「あらあら、心配ないですわ♪うふふ…♪」

 

 

我夢は昨日、朱乃が突然泣き出した事が気がかりになっていた。

だが、朱乃はいつもの様に微笑んでいるので、我夢は問題ないとひと安心した。

 

 

朱乃「(ただ気遣ってもらっただけでも胸が高鳴る…。やっぱり私、我夢君のこと好きに…)」

 

 

だが、我夢は知らない。

朱乃の心はいつも通りではなく、自分へ好意が向けられている事を。

 

すると、騒ぎたてるギャラリーの中から追い払う声が聞こえてきた。

 

 

匙「おらおら、撮影会は終わりだ!こんな日に騒ぎを起こすんじゃあねぇ!ほら戻った戻った!」

 

梶尾「早く解散しろ!それと親から借りたかもしれんが、写真部以外のカメラの持ち込み、及び撮影は禁止だ。没収する!」

 

 

匙と梶尾はひったくる様にカメラを没収しながら、男子生徒達を外へ追い払う。

男子生徒は各々不満の声を出すが、さすがに生徒会相手だと分が悪いと思い、大人しく退場する。

 

ギャラリーがいなくなった後、匙と梶尾は騒ぎの中心となった少女をやや困った表情を見る。

 

 

梶尾「失礼ですが、あなたも保護者なんです。服装を弁えて下さい」

 

魔法少女?「ええ~?これ、私のお気に入りなんだもん☆」

 

匙「いや、趣味とかそういう問題じゃあなくてですね…」

 

 

少女に注意を呼び掛ける2人だが、少女の反省する気がない態度にタジタジになる。

 

この状況に我夢達は困惑していると、突然、閉まっていた体育館の出入口の扉がパーン!と勢いよく開いた。

扉の方に皆は顔を向けると、そこには生徒会長であるソーナが立っていた。

 

 

ソーナ「梶尾、匙!」

 

「「か、会長…!」」

 

ソーナ「こういった騒ぎは速やかに対処しなさいってあれだ――「ソーたん見ーーーーーっけ!!」」

 

「「「「え!?」」」」

 

 

少女はソーナの顔を見た瞬間、F1マシンの様な速さで駆け寄ると、嬉しそうにソーナに抱きつく。

その光景に我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアの4人はあまりもの行動の速さに目を見開く。

 

 

リアス「あっ…もしかして!」

 

我夢「部長、彼女の事を知っているんですか?」

 

 

リアスが思い当たりがある人物なのか大きな声をもらすので、我夢は彼女に問いかける。

 

 

リアス「ええ、あの方は冥界の四大魔王の1角を担う悪魔、『セラフォルー・レヴィアタン』様よ。それとソーナのお姉さまにも当たられるわ」

 

我夢「えっ!?」

 

一誠「会長のお姉さんっ!?」

 

アーシア「あの人も…」

 

ゼノヴィア「魔王…?」

 

 

我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは信じられない表情でソーナに抱きつくセラフォルーを見る。

セラフォルーは嬉しそうな顔でソーナに頬擦りしている。

とても、そんな凄い人物には我夢達には想像できない。

 

 

セラフォルー「ソーたぁぁ~~~ん☆会いたかったよぉぉ~~~~~!!どうして連絡入れてくれなかったの?」

 

ソーナ「その前に離して下さい。それと『ソーたん』と呼ぶのは止めてくださいとあれだけ言ってたじゃないですか?」

 

セラフォルー「ええ~~!だってその方が可愛いんだもん☆」

 

 

ソーナは鬱陶しそうな表情でセラフォルーから必死に離れようとする。

だが、いくらもがいてもセラフォルーはびくともしない。

 

 

サーゼクス「セラフォルー、そろそろ彼女を離してあげたらどうだい?」

 

リアス「お兄様!?」

 

セラフォルー「あ、サーゼクス君!」

 

 

すると、遅れてやってきたサーゼクスとジオティクスが出入口から姿を現す。サーゼクスは彼女にソーナから離れる様に言う。

 

 

セラフォルー「ええ~?だって、こうしてないとソーたんすぐ逃げちゃうし……あ、リアスちゃんやっほー!」

 

リアス「ご、ご無沙汰してます」

 

 

セラフォルーは困った様な顔をするが、リアスに気付くと、ニコニコしながら手を振る。

リアスは苦笑いしながらも手を振り返す。

 

 

我夢「部長と仲がいいんですね」

 

リアス「ええ、私のお母様とソーナのお母様が友達でね、家族ぐるみの付き合いなの。それでソーナとも知り合ったの」

 

我夢「なるほど…」

 

セラフォルー「あ、リアスちゃん!もしかして、ここにいる子達が噂の?」

 

 

我夢はリアスにそう説明されて納得していると、セラフォルーは我夢と一誠の顔を見ると、ソーナから離れ、興味津々な様子で彼らの前に駆け寄る。

 

 

リアス「はい、彼らがウルトラマンです。我夢、イッセー。ご挨拶を」

 

我夢「はい!リアス部長の兵士(ポーン)をやらせてもらってます、た、高山 我夢です!はじめまして!」

 

一誠「同じく兵士(ポーン)の兵藤 一誠です!よろしくです!」

 

セラフォルー「へえ~~…我夢君に一誠君か☆」

 

 

セラフォルーは興味深そうな顔で彼らの顔をまじまじと見る。

セラフォルーは余裕で美少女の部類に入る。

そんな美女に見られるこの状況に我夢と一誠は緊張しないはずがない。

すると、セラフォルーは両手を合わせ

 

 

セラフォルー「お願い!ここで変身してみせてっ☆」

 

我夢「えっ!?」

 

一誠「ここで!?」

 

 

そう頼まれると、我夢と一誠は困惑した。

ここは学園で、しかも授業参観で多くの人が来ている。

もし変身する瞬間を目撃されでもすれば、悪魔の記憶操作でごまかせるであろうが大騒ぎになる。

 

 

一誠「戦う理由もなく変身する訳には…」

 

セラフォルー「ええ~?お願~~~~~い☆あの姿カッコいいも~~~~ん!」

 

我夢「と言われましても…」

 

 

普通の人ならすぐに断れるが、相手は魔王だ。

下手なことは言えない。

目を輝かせながらそう懇願するセラフォルーに我夢と一誠はどう断るか分からず、タジタジだった。

 

 

ソーナ「もう、耐えられませんっ!!」

 

匙「会長っ!?」

 

梶尾「どこに行くんですか!?」

 

 

そんな時、ソーナは自分の姉の奇行の数々に遂に耐えきれなくなり、体育館から逃走した。

この状況にポカンとしていた匙と梶尾は彼女の後を追う。

 

 

セラフォルー「あっ!ソーたん、待ってぇぇ~~~~!!」

 

 

それに気付いたセラフォルーもすぐに彼らの後を追いに外へ出ていく。

次から次へと起きる出来事に我夢達は言葉を発さず、ただ唖然していた。

 

 

樋口「皆さん、お揃いで」

 

 

すると、しーんと静まった体育館へジオベースのメインチーフの樋口がにこやかな表情で入ってくる。

彼の登場に我夢達はハッ!と意識を戻した。

 

 

我夢「樋口さん!」

 

樋口「高山さん、お久しぶりです。サーゼクスさんやリアスさんもお元気そうで」

 

サーゼクス「君こそ元気そうで何よりさ」

 

リアス「ところでどうしてここに?」

 

 

挨拶を交わすと、リアスは問いかける。

すると、樋口はにこやかな表情から真剣な表情へと切り替え、本題に入る事にした。

 

 

樋口「実は……ご相談したいことがありまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地底で怪獣「ゾンネル」を見つけた藤宮は小型のロケットランチャーの様なものを取り出し、その銃口に先端がとがっている何かの装置を装填した。

 

そして、ゾンネルの眉間に狙いを定めて引き金をひくと、発射された装置はピューンと音を立てながら、ゾンネルの眉間に刺さり、装置は花の様に展開した。

 

 

藤宮「…」

 

 

装置が刺さった事を確認した藤宮はアグレイターを掲げると、ゾンネルにアグルの光を照射する。

 

 

ゾンネル「……」

 

 

しばらく照射すると、ゾンネルは重く閉じていたまぶたをあげ、眠りから覚めた。

それを見た藤宮はアグレイターの照射をやめ

 

 

藤宮「ゾンネル…来い……」

 

ゾンネル「グルォオァァァ……!!」

 

 

そう言うと、ゾンネルは地底を揺らし、その衝撃で多くの瓦礫を落としながら動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢達は場所を体育館から旧校舎のオカルト研究部の部室に移した。

そこで樋口は我夢達が今まで戦ってきた怪獣の映像をモニターで表示しながら、話していた。

 

 

樋口「最初の怪獣が地球に現れてから、それに呼応するかの様に地球の内側からも怪獣が現れる様になりました。我々はこの怪獣は元々地球にいたものが、根源的破滅招来体によって覚醒されたものだと睨んでいます」

 

サーゼクス「やはり、あれだけ大人しかった怪獣達が暴れ始めたのはコッヴの仕業か…」

 

リアス「その為に地球に…」

 

 

納得した様にサーゼクスとリアスは呟く。

 

 

樋口「あくまで仮説です…しかし、あれ以来、地球の様々な場所でそれまで観測されなかった異常が確認されているのです」

 

 

樋口はそう言うと、手に持ったリモコンのボタンを押し、モニターが怪獣の映像から世界地図の映像に切り替えた。

 

 

樋口「ジオベースではそれら、怪獣の出現の予兆かもしれない異常現象のデータを半地球的に集めていました」

 

我夢「こんなにたくさん…!」

 

 

我夢達は世界地図に次々と表示される異常現象があることを示す点に目を丸くした。

 

 

樋口「このデータはジオベースでも限られたメンバーにしか閲覧を許されてません……しかし、この数日。数回に渡って不正なアクセスを受けた形跡があるんです」

 

リアス「何ですって!?」

 

我夢「っ!」

 

 

その出来事に我夢はもしや…と思い当たる人物が頭に浮かんだ。

樋口は持ってきたノートパソコンを操作し始め

 

 

樋口「中でも集中的にサーチされたのが…ここです」

 

 

そう言いながらそのエリアを拡大した。

 

 

我夢「美宝山…!」

 

 

そこはこの駒王町はずれにあり、藤宮がゾンネルを探していた場所でもある美宝山だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンネル「グルァァァァ…!!」

 

 

同時刻。アグルの光を受け、覚醒したゾンネルは土砂を巻き上げながら地上へと姿を現した。

ゾンネルは今にも暴れだそうとする中、藤宮はスカウターの様なものが取り付いたヘッドセットを装着し、手元にある小型端末のアンテナを伸ばし、電源をつけた。

 

 

藤宮「Open(オープン) Assembler(アセンブラ).」

 

 

藤宮はヘッドセットについているマイクに向かってそう言うと、ゾンネルの眉間についている装置が起動し、電飾部分が青く点滅し始めた。

 

 

藤宮「Start(スター) to(トゥ) command(コマンド)02(ゼロツー)- 00(ゼロゼロ)- C5(シーファイブ)- 28(ツーエイト).Enter(エンター).」

 

 

藤宮がマイクに向かってそう言うと、あれだけ落ち着きがなかったゾンネルがピタッと動きを止めた。

 

 

藤宮「command(コマンド)13(ワンスリー)- C2(シーツー)- 24(ツーフォー)- 26(ツーシックス).Object(オブジェクト) Layer(レイヤー) 0(ゼロ)- 1(ワン).Enter(エンター).」

 

 

藤宮は続けてそう言うと、ゾンネルは再び動き始めた。

藤宮は自分が製作した怪獣翻訳機パーセルの出来に頬を緩ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、オカルト研究部部室ではゾンネルが出現した事を怪獣探知機がキャッチしたので、我夢、一誠、樋口は現地調査の為、美宝山へと向かっていた。

 

 

我夢「(藤宮、君なのか?)」

 

 

樋口が運転する車の中で揺られる中、我夢はジオベースの不正アクセスをした人物が藤宮ではないかと考えていた。

厳重なセキュリティを誇るジオベースも世紀の天才児と呼ばれた男の手にかかれば、容易いことだろう。

 

 

樋口「皆さん、美宝山に着きました!」

 

一誠「出やがったな~」

 

我夢「怪獣の進路を分析します!」

 

 

そんな事を考えていると、美宝山の麓についた。

車を降りた彼らが真っ先に目撃したのは、どこかへ向かって進撃するゾンネルだった。

我夢は手に持っているノートパソコンで怪獣の進路を急いで予測する。

 

 

我夢「このまま進んだ先には駒王町があります!」

 

一誠「何!!」

 

樋口「私はG.U.A.R.D.に出撃要請をしてから、ジオベースに戻ります!高山さんはここで怪獣の分析をお願いします!」

 

我夢「わかりました」

 

樋口「こちら樋口。ポイントX00-9、G.U.A.R.D.出撃要請を求む!繰り返す!ポイントX00-9、G.U.A.R.D.出撃要請を求む!」

 

 

我夢の報告を受けた樋口はすぐさま車に内蔵されている無線機で連絡すると、車に乗り込み、ジオベースに向けて走りだす。

 

残された我夢と一誠はゾンネルの分析を行おうとした時

 

 

藤宮「我夢」

 

我夢「!?」

 

一誠「誰だ!?」

 

 

崖の方から声が聞こえ、2人は見上げると、そこにはこちらを見下ろす藤宮の姿があった。

 

 

藤宮「この姿で会うのは初めてかな?兵藤…いや、ウルトラマンダイナ」

 

一誠「っ!まさか、お前がアグルか!?」

 

 

目の前にいる人物がアグルだと知り、一誠は驚きつつも敵意を感じ、身構える。

 

 

我夢「藤宮!君はあの怪獣の出現を予測していたのか!?」

 

 

我夢が問いかけると

 

 

藤宮「予測?ハッハッハッ!!」

 

我夢「何がおかしいんだ!」

 

 

藤宮は突然笑い出した。

その行動にカチンときた我夢は怒鳴る様に問う。

すると、藤宮は我夢に指指し

 

 

藤宮「我夢、1つだけ言っておく。俺に協力するつもりがないのなら、せめて邪魔だけはするな。もし妨げになるのならその時は……!お前を…いや、お前らをこの手で倒す!!」

 

そう脅迫じみた言葉を告げると、藤宮は去っていく。

 

 

一誠「あんの野郎~~~~!何が邪魔するなだ!ムカつくぜっ!!」

 

我夢「藤宮…」

 

 

青筋を立てて怒る一誠とは逆に、我夢は藤宮の過去を知っている為、少し悲しげな表情を浮かべる。

そんな彼らの近くの上空をG.U.A.R.D.戦闘機が通り過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジオベースに戻った樋口はゾンネルの戦闘の様子を見ていた。

戦闘機部隊が威嚇射撃を開始するが、ゾンネルの硬い皮膚に阻まれ、全く効かない。

 

しかも最悪な事にゾンネルは山間の民家辺りまで進行してしまい、下手に攻撃ができない。

 

 

樋口「(どうすれば…)」

 

《♪♪♪~》

 

 

その時、携帯電話の着信音が鳴った。

それは我夢からの連絡だった。

ちなみに我夢はリアス達にも同時に連絡をかけている。

 

 

樋口「もしもし?」

 

《我夢「怪獣の体内で熱核融合反応が起きています。しかも反応が加速度的に増加している…」》

 

樋口「何っ!?」

 

《リアス「ええっと…?」》

 

我夢「背中の甲羅にあるあの光には強力なガンマ線が含まれています。簡単に言えば、あの甲羅の中に小さな太陽があるってことです」

 

《リアス「大陽…」》

 

《我夢「もし怪獣の身体が破壊され、エネルギーが解放されたら……どんな被害が出るか想像出来ません…」》

 

 

我夢はその最悪な事態が起きてしまったら…と想像してしまい、固唾を飲んだ。

 

 

樋口「わかりました。君、アルファチームに上空で待機するように伝えてくれ」

 

 

そう聞いた樋口の近くにいたオペレーターは待機命令するように伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「イッセー、ダイナに変身して怪獣の進行を止めてくれ」

 

一誠「わかったぜ、我夢!」

 

 

一誠は頷くと、リーフラッシャーを斜め上にかかげ

 

 

一誠「ダイナァァァーーーーーーー!!

 

 

そう叫ぶと、リーフラッシャーのクリスタル部分が展開し、そこから発する白い光に包まれ、一誠はダイナに変身した。

そして、そのままゾンネルのいる方角へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛ぶダイナは地上を見下ろすと、山間の民家を踏み潰し、駒王町へと向かうゾンネルを見つけた。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ゾンネル「グルァッ!?」

 

 

ダイナは地上へ着陸すると、ゾンネルの尻尾を掴み、先へ行かせまいと後方へ引っ張る。

ゾンネルは驚きながらも手足でジタバタと抵抗するが、どんどん後方へ引っ張られていく。

 

 

ゾンネル「グギィィ…」

 

ダイナ「グアッ!」

 

 

ならばとゾンネルは掴まれている尻尾を力いっぱい左右に振ると、ダイナは手を離し、地面へと倒れる。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ゾンネル「グルルル…!」

 

 

だが、ダイナはすぐに立ち上がると、ファイティングポーズをとり、ゾンネルも唸り声を出して威嚇する。

 

対峙する1人と1匹の様子を藤宮は遠くにある崖から見ていた。

 

 

藤宮「やはり現れたな?ウルトラマンダイナ…。だが、俺の邪魔はさせない……command(コマンド)02(ゼロツー)- 04(ゼロフォー)-M2 (エムツー)- 41(フォーワン).Enter(エンター).ゾンネル、ダイナに構うな…!」

 

ゾンネル「ッ!……」

 

ダイナ「?」

 

 

藤宮がそう指示を出すと、ゾンネルの眉間にあるパーセルが点滅し、今にも戦いそうな雰囲気を出していたゾンネルはピタッと動きを止めたかと思うと、ダイナがいるにも関わらず、回れ右して駒王町がある方向へ歩きだす。

 

ダイナはゾンネルの急な変化に驚きつつも、跳躍して、真っ直ぐ突き進むゾンネルの前に回り込んだ。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ゾンネル「グルァァァァ!!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

ダイナは制止するように手を前に出すが、ゾンネルはそれを無視し、口から火球を放つ。

胸元に着弾したダイナは火花を散らしながら、後方へ倒れる。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナはすぐさま立ち上がると、なおも放ってくる火球を避けながら、手に持っている小さなメタフィールド展開装置を真上に掲げる。

 

装置から放たれた光は真っ直ぐ上空へと上昇すると、そこから雨の様な光が降り注ぎ、ダイナとゾンネルの周囲を囲む。

このまま結界が完成すると思った瞬間

 

 

ジビィィーーーーン!

 

ダイナ「!!?」

 

 

突然、どこからか放たれた弾丸がメタフィールドに着弾し、紫色の電流が流れたかと思うと、何とメタフィールドが一瞬で解除された。

ダイナは驚きつつも弾丸が放たれた方角を見ると、手に銃の様なものを持つ藤宮が不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

藤宮「言ったじゃないか、俺の邪魔はするなと…。そんなものが張られたら計画の妨げになるんでね。ゾンネル、そいつに構うな!早く進め!」

 

ダイナ「(あの野郎っ!!)」

 

ゾンネル「グルァァァァ…」

 

ダイナ「ッ!デェアッ、ハァァァ……!」

 

 

ゾンネルは藤宮の指示通りにまた進もうとするが、ダイナは前へ進もうとするゾンネルを受け止め、押し合いになった。

 

その時、G.U.A.R.D.本部からジオベースにあのヒルの様な天体が突如として地球へ進路を変えて、真っ直ぐ向かっている情報が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、「ディグローブ」と命名された地球に向かっていると樋口から連絡を受けた我夢はこの手詰まりな現状を打開する方法を必死に模索していた。

しかも、ディグローブはあと72分後に駒王町に直撃と時間がなく、しかも直撃した際には駒王町を中心に100kmのクレーターが出来る程の被害が出る。

 

 

我夢「地上には怪獣…宇宙から敵が……。考えろ…我夢!考えるんだ!」

 

 

我夢は自分に言い聞かせながら、パソコンのキーボードを忙しく動かす。

しばらくすると、何故、藤宮がゾンネルを必要するのかを考えると、この状況を打開できるかもしれない1つの方法が思い付いた。

 

 

我夢「これなら…」

 

 

 

これなら行けると思った我夢はすぐさま樋口とリアスに連絡を繋げた。

 

 

《樋口「どうかしました?」》

 

《リアス「何かいい案でも浮かんだの?」》

 

我夢「部長、樋口さん。ディグローブの直撃を回避できるかもしれません」

 

《リアス「何ですって!?」》

 

 

我夢はそう言うと、とある画像データを2人の端末に送信した。

その画像はゾンネルの背中から放たれたエネルギーがディグローブを破壊するのが描かれたシュミレーションだった。

 

 

我夢「戦闘機で怪獣を拘束し、発射角とタイミングを調整して甲羅を破壊すれば可能だと思います」

 

《リアス「…!じゃあ、イッセーにも「待ってください!」――っ?」》

 

 

現地でゾンネルと対峙しているダイナへ指示を出そうとするリアスに我夢は待ったをかけた。

 

 

我夢「怪獣のエネルギーをディグローブに当てた場合の被害状況をシュミレーションしてみます」

 

《リアス「お願い、我夢」》

 

我夢「はい!」

 

 

我夢はそう返事すると、すぐにシュミレーションにとりかかった。

 

 

我夢「(藤宮、君は最初からそのつもりで…)っ!?」

 

 

藤宮はあんな態度をとってはいるが、ゾンネルの目覚めさせたのはやっぱり地球や人類を救う為に行動していたと我夢は微笑ませながら、シュミレーションをする。

だが、その結果に我夢は言葉を失った。

 

 

リアス「我夢?返事して!」

 

樋口「高山さん、どうしたんですっ!?」

 

 

それと同時に我夢は2人への通信をきった。

 

 

我夢「藤宮…君はどうしてこんな残酷な計画が出来るんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンネル「グルァァァァ!」

 

 

一方、ゾンネルはダイナとG.U.A.R.D.戦闘機部隊の必死の奮闘むなしく、駒王町の目の前まで迫っていた。

 

町へ向かってくるゾンネルの姿を見た町の人々はパニック状態となり、G.U.A.R.D.の誘導に従って避難する。

 

 

我夢「僕は…僕は目の前で人々が悲しむ姿を見てはいられない!」

 

 

我夢はそう呟きながら、エスプレンダーを前につきだすと、赤い光に包まれ、ガイアへと変身した。

そして、そのまま駒王町へ飛び立つと、今まさに駒王町へ踏み込もうとするゾンネルの背後に土煙を舞いあがらせながら着陸した。

 

 

ダイナ「ハッ…!」

 

ガイア「デュアッ!グァァァァ…!!」

 

ゾンネル「ギィィィ~~…」

 

 

そして、先ほどのダイナと同じ様に尻尾を掴むと、ひきづらせて、ゾンネルを駒王町から遠ざける。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「グアッ!」

 

「「ハァァァァァーー…!!/グァァァァァァァァーー…!!」」

 

 

そして、ある程度遠ざけるとガイアは尻尾を離しガイアは胴から下、ダイナは胴から上を掬い上げる様に持ち上げた。

2人はそのままディグローブが迫っている上空へ飛び立とうと浮上するが、

 

 

ゾンネル「グルァァァァー!!」

 

ガイア「グァァァァーー!?」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

ジダバタするゾンネルの尻尾や前足があたり、2人はその衝撃でゾンネルを地上へと落としてしまう。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ゾンネル「ギィィィ~~!!」

 

 

2人は威嚇するゾンネルから距離をとると、身構えて再び持ち上げる隙を伺う。

 

 

藤宮「21(ツーワン)- 42(フォーツー)- 00(ゼロゼロ)……聞こえないのか、ゾンネル!そいつらを相手にするな!!」

 

 

藤宮は指示を出すが、ゾンネルはそれを無視してガイアとダイナに攻撃を仕掛けていく。

その様子に藤宮は苛立ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、オカルト研究部部室では皆が我夢が何故シュミレーションの結果を伝えず通信をきった事に疑問を持っていると、樋口から連絡がきた。

 

 

リアス「樋口」

 

《樋口「皆さん。今、高山さんから送られてきたシュミレーションの結果をお伝えします。確かに直接の衝突を防ぐことはできますが…しかし……」》

 

サーゼクス「しかし?」

 

 

そう尋ねるサーゼクスに樋口は説明を続け

 

 

樋口「大気圏内で爆発が起こり、その反射熱で中心から半径20kmの地上は……燃えつきます!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

その言葉にリアス達は言葉を失った。

都市部に近いこの駒王町には都市に張り合うくらいの人口がある。

半径20kmとなると、どうやっても避難が間に合わない。

 

 

リアス「っ!」

 

サーゼクス「待つんだ、リアス」

 

 

こうしてはいられないと飛び出そうとするリアスをサーゼクスは引き留める。

どうして止めるのかと疑問の表情を浮かべるリアスにサーゼクスは理由を話す。

 

 

サーゼクス「滅びの魔力ではディグローブを跡形もなく消滅できるかわからない」

 

リアス「ですが――「リアス」っ!」

 

 

反論しようとするリアスをサーゼクスは真剣な声で遮ると、言葉を続け

 

 

サーゼクス「リアス。残念だが、今の私達では何も出来ない。だから、精一杯頑張っている君の眷属達を信じるんだ」

 

リアス「お兄様…」

 

 

そう言われたリアスは思いとどまった。

そして、今も何とかしようと奮闘する2人のウルトラマンを信じて待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイアとダイナがゾンネルと対峙している中、ディグローブは地上から確認できるくらい接近していた。

 

 

ゾンネル「グルァァァァ!!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

藤宮「何故だ…!?どうして俺の言うことを聞けないんだ!お前の敵はそいつらじゃない!」

 

 

藤宮は先程まで命令通りに動いていたゾンネルが突然無視し始めたのか事に苛立ちと疑問を感じていた。

このままだと時間がない…。

そう思った藤宮は手首にアグレイターを装着している右腕を下ろす。

すると、左右のブレードが開き、青く点滅するが

 

 

藤宮「?」

 

 

ゾンネルに光を照射した影響か、光が弱まっていた。

疑問に思いアグレイターに目をやるが、すぐにいつも通りの輝きを取り戻したのを確認すると、胸の前でかざし、そこから発する青い光に包まれ、アグルに変身した。

 

 

ドォォォォーーーーン!

 

ガイア「ッ!?」

 

ダイナ「ッ!?」

 

ゾンネル「グルァァァァ…!」

 

アグル「…」

 

 

大きな音を立てながら土煙が舞い上がったと思うと、そこから片膝をついた姿勢のアグルが現れた。

その登場にダイナとガイアは驚きつつもゾンネルの前に立ち塞がる。

 

 

アグル「ホアッ!」

 

ガイア「ドワッ!?」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

アグルは立ち上がるとそのまま疾走し、立ち塞がるガイアとダイナを払いのけ、ゾンネルに接近する。

 

 

アグル「ドァァァァー!ッエイ!!」

 

ゾンネル「グギャッ!?ギィィィ~~…」

 

 

走りながら前回りに回転すると、かかと落としをゾンネルの頭部に放つ。

ゾンネルはその衝撃で気を失ってしまう。

 

 

アグル「ドアッ!フォォォォ……!!」

 

 

アグルは気を失ったゾンネルの後ろ側に跨がると、山の様な形をした甲羅をこじ開けようとする。

 

 

ガイア「止めろっ!ここでそのエネルギーを放つな!」

 

アグル「デヤァァァァ…!!フォォォォ……!!」

 

 

起き上がったガイアは制止するよう呼び掛けるが、アグルは気にせずゾンネルの甲羅をこじ開けていく。

 

 

ダイナ「おいっ!聞いてんのかよ!」

 

ガイア「止めるんだ!」

 

アグル「……」

 

 

アグルは自分を説得しようと呼び掛ける2人の声が鬱陶しく感じ、一旦甲羅をこじ開けるのを中断してスクッと立ち上がると、2人目掛けてアグルスラッシュを放った。

 

 

ダイナ「グアッ!」

 

ガイア「グァァァァ!!」

 

 

直撃した2人は火花を散らしながら、大きく後方へ吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

邪魔者がいなくなったアグルは中断していたゾンネルの甲羅をこじ開けるのを再開した。

 

 

アグル「フォォォォ……!!」

 

ゾンネル「グルァァァァ…!」

 

 

甲羅がほぼこじ開けられ、中にあるエネルギーの光が溢れだしていた。

そんな時、背中に違和感を感じていたゾンネルは目を覚まし、アグルを振り落とそうとするが、アグルは甲羅にしがみつきながらこじ開けていく。

 

 

アグル「フォ!」

 

ガイア「ッ!」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

アグルはいつでも甲羅をこじ開ける様になったのを確認すると、どこかの空を見上げた。

ガイアとダイナは彼の視線を追うと、そこには大気圏で発生する炎で真っ赤に染まったディグローブが地上へと落下しようとしていた。

 

 

アグル「フォォォォ…!」

 

ゾンネル「ギィィィ~~!」

 

 

アグルはタイミングを見計らうと、暴れるゾンネルを抑えこみつつ、甲羅を開き始める。

 

 

アグル「ドゥワァァァァァーーーー!!」

 

ガイア「ッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

そして、ディグローブがある高度まできた瞬間、アグルは一気に甲羅をこじ開け、ゾンネルに宿るエネルギーを放出した。

 

ゾンネルから放たれたエネルギーは地上へ落ちようとするディグローブに向かって真っ直ぐ向かっていく。

 

 

ガイア「イッセー!」

 

ダイナ「…ああ!」

 

 

このままだとマズイと思った2人は顔を見合わせ、考えが同じだったのか頷くと、すぐに駒王町上空へ飛ぶ。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァァァァァ…!!」

 

ダイナ「ハッ!ン"ン"ン"ン"ン"ン"ーー…!!」

 

 

駒王町上空にたどり着いた2人はディグローブ破壊時に発生する被害から町を守ろうと、町全体を覆う程のバリアを展開するためのエネルギーを溜め始めた。

 

 

ディグローブ「フォォォォ……」

 

ドガァァァァーーーーーン!!

 

 

そして、遂にディグローブはゾンネルのエネルギーが直撃し、爆発四散し、そこから発生した爆風と熱が駒王町へと降り注ごうとした。

 

 

ガイア「デヤァァァァーーーー!!」

 

ダイナ「デェアァァァァーーーーーー!!」

 

 

ガイアとダイナはその瞬間に町全体にバリアを展開すると、爆発の余波は無事シャットダウンされた。

だが

 

 

ガイア「ドアッ…!」

 

[ピコン]

 

ダイナ「グアッ…!」

 

[ティヨン]

 

 

ガイアとダイナは町全体を覆うバリアを展開するため、多くのエネルギーを失った。

それにより、ライフゲージが赤く点滅し始め、消耗した2人は背中から地上へと墜落した。

 

 

アグル「……ツォワッ!」

 

 

アグルは目の前で倒れている2人に何か言いたげな眼差しを浮かべていたが何も言わず、そのままどこかの空へ飛んでいった。

 

その後、ガイアとダイナは起き上がると、同じくエネルギーを消耗し、死んだように眠っているゾンネルを美宝山の地下深くに戻した。

 

こうして、波乱に満ちた授業参観。そして、ディグローブの脅威から町を救う事が出来た我夢と一誠だが、藤宮との心の溝は更に大きくなったことを感じたのであった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

サーゼクスの提案により、リアスは眷属を解放する。
封印された扉の先には…美少女?
かくして、引きこもりを改善する特訓を開始した。

次回、「ハイスクールG×A」!
「もう1人の僧侶(ビショップ)
その瞳に誰もが止まる!






あ、関係ない話ですけど…私、今日(4/12)誕生日です。
これからもこの作品の投稿を頑張っていこうと思います!

よかったら感想&コメントよろしくです!


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第22話「もう1人の僧侶(ビショップ)

今回もドラマパートのみです…



ディグローブの危機が去って翌日の放課後。

リアス達、オカルト研究部のメンバーは今、旧校舎にあるバリケードテープで厳重に封鎖された扉の前にいた。

 

リアスは事情を知らない我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアの4人に説明した。

 

その扉の先には我夢と一誠が悪魔に転生する前からいた、もう1人の僧侶(ビショップ)がいること。

 

だが、あまりにも強力な力で本人ですらコントロールする事が出来ないので、やむなく封印したこと。

 

そして、様々な死闘を潜り抜けてきた今のリアスの技量なら、何があっても大丈夫とサーゼクスに認められ、その封印を解禁する事にしたことを。

 

 

リアス「それじゃあ、封印を解くわね」

 

 

リアスは皆にそう伝えると、扉に張られている魔方陣を解除し始める。

 

 

我夢「どんな人だろう?」

 

アーシア「楽しみです~」

 

一誠「なあ、木場。どんなやつなんだ」

 

木場「うん、悪い子じゃないんだけど…」

 

 

封印が解除されていく中、気になった一誠は木場に尋ねると、木場は困ったように頬をかきながら言葉を続け

 

 

木場「…問題があってね、引きこもりなんだ。」

 

一誠「引きこもり?」

 

木場「うん。一応、深夜にはこの旧校舎内を徘徊できるように扉の封印が解ける仕組みにはなってるんだけど、本人が拒否しててね…。外に出たがらないんだ」

 

我夢「それって…大丈夫?」

 

木場「どうだろうね…」

 

 

その説明を聞き、我夢達はますます不安になる。

すると、前で聞いていた朱乃はあらあらと微笑みながら、口を開いた。

 

 

朱乃「でも、悪魔稼業においては私達の中では一番の稼いでますわ」

 

アーシア「えっ、そうなんですか!?凄い…」

 

我夢「充分自信を持てるのに、どうして出たがらないんだ…?」

 

 

 

我夢はそう呟くと、4人はもう1人の僧侶が外に出たがらない事に首を傾げていると、扉の封印が解除された。

 

 

リアス「みんなはちょっとここで待ってて」

 

 

リアスはそう告げると、『KEEP OUT』と書かれたバリケードテープを破り捨てると扉を開け、中に入っていった。

すると、その瞬間

 

 

「ギャアァァァァァァァーーーーーーーーーー!!!」

 

「「「「「「「「!!?」」」」」」」」

 

 

耳をつんざく様な悲鳴が響いた。

その声に我夢達は驚きながらも咄嗟に耳を塞ぐ。

 

 

「な、何ですかぁぁぁぁーーーーーー!?」

 

リアス「大丈夫よ、あなたを傷つける人はいないわ。さあ、外へ…」

 

「嫌ですぅぅぅーーーーーー!!」

 

一誠「なあ、我夢…」

 

我夢「うん…」

 

 

リアスは優しく言葉をかけるが、中にいる人物はよっぽど外に対する恐怖心を持っているのか叫んで拒否する。

不安になる我夢達だが、気になるので恐る恐る部屋の中へと入る。

 

部屋の中はカーテンを閉めきっている影響で暗く、引きこもっていることを物語っている。

辺りを見渡すと、華やかな装飾で彩られた家具が置いてあり、いかにも女の子風な部屋である。

 

我夢達は他にも気になる点はあるが、ひとまず僧侶をなだめているリアスの元に近寄る。

 

 

「ひっ!?」

 

一誠「お」

 

我夢「これは…」

 

 

我夢達はリアスの背後から覗くと、そこには金髪に赤い瞳をした小柄な美少女が怯えた目で我夢達を見つめていた。

その可愛らしい容姿に我夢と一誠は思わず歓喜の声をもらすが

 

 

リアス「この子はギャスパー・ヴラディ。見た目は女の子だけど、()()()()()()()()()なのよ」

 

「「「「え?」」」」

 

 

リアスの言葉に我夢と一誠だけでなく、アーシア、ゼノヴィアも目を丸くして固まる。

そして、後ろで聞いていた朱乃はいつもの様に微笑み

 

 

朱乃「女装趣味があるのですよ」

 

「「…………ええええぇぇぇぇーーーーーー!?」」

 

 

続ける様に言うと、我夢と一誠は絶叫する。

 

 

ギャスパー「ヒィィィーーーー!?ごめんなさいィーーーーーー!!!」

 

 

その絶叫に怯えた女装少年もといギャスパーはそそくさと我夢達から離れると、近くの物陰に隠れてしまう。

しかも、一誠と我夢はショックのあまり、ガックシと膝をつき

 

 

一誠「少しだけときめいた俺を殴りたい…」

 

我夢「同感…」

 

 

そう呟くと、リアス、朱乃、木場、小猫は苦笑いを浮かべる。

すると、一誠が落ち込んだ表情のまま、ギャスパーの方へ顔を向ける。

 

 

一誠「おい、お前。何で女装してるんだよ?」

 

ギャスパー「だって、女の子の服の方が可愛いんだもん…」

 

我夢「だもん、って…」

 

 

物陰からこっそりと顔を出しながら答えるギャスパーの言葉に我夢と一誠は更に落ち込む。

仕草や声、どれを見ても聞いても女の子にしか見えない。

 

 

一誠「はあ…金髪ダブル僧侶の夢を一瞬でも見ていたのに……」

 

小猫「人の夢と書いて、儚い…」

 

我夢「はぁ…だめだ」

 

ギャスパー「ところで、こ、この人達は、だっ、誰ですか?」

 

 

深いため息をつく2人をよそにギャスパーはリアスを見上げ、尋ねる。

 

 

リアス「紹介するわね。貴方がここにいる間に増えた眷属で、ショックを受けている子達が『兵士』の我夢とイッセー、『騎士』のゼノヴィアに貴方と同じ『僧侶』のアーシアよ」

 

ゼノヴィア「よろしく頼む」

 

我夢「よろしく」

 

一誠「よろしくな…」

 

アーシア「はじめまして、ギャスパー君。同じ『僧侶』同士仲良くしましょう」

 

 

ゼノヴィアとアーシア、ショックから立ち直った我夢と一誠も加わって挨拶するが

 

 

ギャスパー「ヒィィィーーーーーーー!!ひ、人が増えてるゥゥゥーーーーーーーー!!!」

 

 

人が増えてる事に怖がり、更に奥の方の物陰へ隠れてしまう。

それを見た我夢はリアスに問う。

 

 

我夢「部長、彼ってもしかして対人恐怖症なんですか?」

 

リアス「そうね」

 

 

リアスからそう聞くと、我夢は「外に出すのは手強いな…」と難しそうな顔で呟く。

すると、リアスはガタガタと物陰で震えているギャスパーのもとへソッと歩み寄り

 

 

リアス「お願いだから外に出ましょ?ここには誰も貴方を傷つける人はいないわ」

 

ギャスパー「嫌ですゥゥゥーー!お外に出たくないィィィーーーー!!出ても怖い目にあうだけなんですゥゥゥーー!!!僕は一生ここで過ごすんだァァーーーー!!!」

 

一誠「…っ!」

 

 

そう優しく言葉をかけるが、ギャスパーは嫌々と叫ぶ。

やってみなきゃわからないのに無理だと決めつけて否定するギャスパーを見て、いらっときた一誠は早歩きでギャスパーに歩み寄る。

 

 

ギャスパー「ひっ!」

 

一誠「おい、部長がこう言ってんだ。とりあえず外に―――」

 

ギャスパー「嫌ーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

一誠は強引気味に彼の腕を取って外に出ようとするが

 

 

一誠「!?」

 

 

掴もうとした手は空をきり、目の前にいた筈のギャスパーは奥にあるタンスの横で体を震わせて隠れていた。

この現象に一誠のみならず、他の新参メンバー3人も目を見開く。

 

 

一誠「あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!『俺はあいつの腕をとったと思ったら、いつの間にかあいつは消えていた』!な…何を言ってるのかわからねーと思うが俺もn…」

 

我夢「部長、今のは?」

 

 

遂にはパニック状態になった一誠が意味不明な事を話し出すが、それをよそに我夢はリアスに尋ねる。

 

 

リアス「ええ、今のはギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)、『停止結界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の能力よ。その効果は『時を止める』」

 

「「「「ええーーーーーーーーー!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、部室に場所を移した一同はリアスの話を聞いていた。

ちなみにギャスパーは何とか部屋から引きずり出すことには成功したが、段ボールに閉じ籠ってしまい、そのまま部室の隅で大人しくしている。

 

 

我夢「部長、その『停止結界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』って何でも止められるんですか?」

 

リアス「ええ、無機物、有機物問わず何でもね。でも、自分より格上の実力者には通用しないわ」

 

一誠「なるほど…確かに強ぇ……でも、その力を上手くコントロールできなくて、目に映ったものを止めてしまうから封印を……」

 

 

一誠がそう呟くと、リアスは頷く。

 

 

リアス「実はギャスパーは吸血鬼と人間のハーフなの」

 

我夢「えっ、じゃあ外に出たがらないのは太陽が苦手だからじゃあ…」

 

リアス「その点は問題ないわ。彼はデイウォーカーと呼ばれる太陽の下に出ても平気な吸血鬼の血を引いてるわ。でも、苦手ではあるみたいね…」

 

 

そう言うと、リアスはでもと言葉を続け

 

 

リアス「ギャスパーは私の眷属…いえ、おそらく悪魔の中ではトップクラスの潜在能力を秘めているわ。その証拠に転生させる時に使った駒は『変異の駒』よ」

 

ゼノヴィア「何っ?」

 

一誠「マジか…」

 

 

話を聞いた我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは驚き、未だ部室の隅で段ボールに閉じ籠り、怯えているギャスパーを見る。

 

 

一誠「それでこれからどうするんです?」

 

 

とてもそうには見えないけどな…と思いつつも一誠はリアスに問いかける。

 

 

リアス「とりあえず、神器(セイクリッド・ギア)をコントロールできるようにすることね。今のままだとまた暴走しかねないし…」

 

我夢「そうですよね…」

 

一誠「でも、本人はこの通りだからなぁ…」

 

 

ギャスパーの今後の目標に頭を悩ませる一同。

本当は主であるリアスがギャスパーに特訓させるべきだが、彼女と朱乃は会談の打ち合わせ、木場は聖魔剣についての話でサーゼクスに呼ばれている。

う~んと皆が考えている中

 

 

ゼノヴィア「部長!私に任せてくれ!」

 

リアス「え?」

 

 

ゼノヴィアが胸を張りながら、堂々と宣言する。

その自信ありげな声に一同は彼女に注目する。

 

 

ゼノヴィア「私は教会時代に吸血鬼と相手をした事がある。自慢じゃないが、吸血鬼の扱いには慣れていると思う。任せてくれないだろうか?」

 

リアス「…わかったわ、じゃあ頼むわね」

 

 

リアスはその自信満々に話す彼女にギャスパーの事を任せることにした。

だが、我夢と一誠はゼノヴィアに対してどこか不安な気がするのを感じられずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後。

旧校舎の前で約束通りゼノヴィアがギャスパーに特訓を行っていたのだが…

 

 

ゼノヴィア「ほ~れ!もっと早く走らないと、このディランダルの餌食になるぞ!」

 

ギャスパー「ヒィィィィーーーーーー!!殺されるゥゥゥーーーーーーー!!」

 

 

ディランダルをブンブンと振り回しながら追いかけるゼノヴィアから、ギャスパーは必死の形相で逃げ回っていた。

彼女曰く「体力作りの基本は走りこみだ!殺されるとわかったら死に物狂いで必ず逃げ回り、そのうちに体力がつく!」ということであるが、どう見ても吸血鬼狩りにしか見えず、逆効果だ。

 

 

一誠「あて身っ!」

 

ゼノヴィア「うっ!?」

 

 

見てらんないなと思うな否や、一誠はゼノヴィアの首筋に手刀を叩きこむと、ゼノヴィアは気絶し、その場で倒れこんだ。

 

 

我夢「ごめんね、ギャスパー」

 

ギャスパー「し、死ぬかと思ったァァーーーー!!」

 

 

目尻に涙を溜めながらゼェ…ゼェ…と息をきらすギャスパーに謝る我夢。

「またこれで更に外が怖くなったんじゃないか」と我夢は心配する中、気絶したゼノヴィアを木に寄りかからせた一誠は我夢に問いかける。

 

 

一誠「我夢、どうする?」

 

我夢「えっ、そうだな…」

 

 

我夢と一誠は不安が的中し、何とか止めさせることは出来たが、また振り出しに戻った2人は考え始める。

すると、小猫が挙手した。

 

 

小猫「…先輩方、私に考えがあります」

 

一誠「おお!」

 

我夢「え…」

 

小猫「任せて下さい…」

 

 

その言葉に一誠は期待に胸を膨らませるが、我夢は何故かゼノヴィアと同じ様な不安を感じた。

その間にも小猫は肩で息をするギャスパーに近寄る。

 

 

小猫「ギャー君」

 

ギャスパー「こ、小猫ちゃん…な、何……ってそれ、もしかして……!!」

 

 

ギャスパーは小猫が懐から取り出したものを見て青ざめた。

そう、それは吸血鬼が大の苦手なニンニクだった。

 

 

小猫「…ギャー君、ニンニク食べれば元気になる」

 

ギャスパー「イヤァァァァーーーーーー!!ニンニク駄目ェェェーーーー!!」

 

 

それを見て逃げるギャスパーを小猫は食べさせようと、ニンニクを見せながら早歩きで追いかける。

我夢と一誠は「さっきと変わんないじゃないか!」と心の中でツッコミつつも、追いかけ回す小猫を止める。

 

我夢は小猫、目覚めたゼノヴィアにため息をはきながら見据え

 

 

我夢「2人共、部長はギャスパーの人嫌いと神器(セイクリッド・ギア)がコントロールできるように特訓させたいと言ってたじゃないか。これじゃ、改善するどころか悪化させてる」

 

小猫「…うっ」

 

ゼノヴィア「面目ない…」

 

 

そう説教すると、2人は申し訳ない表情を浮かべて縮みこむ。

 

 

アーシア「ギャスパー君、大丈夫ですか…」

 

ギャスパー「ヒィィィィーーー!!外怖いィィィーーー!みんなやっぱり僕の事をいじめるんだァァァーーーーーー!!」

 

 

2人の無茶苦茶な特訓のせいでギャスパーはどこからか取り出した段ボールの中にまた閉じ籠ってしまった。

さて、どうするかと我夢は考えていると、

 

 

匙「おう、お前ら。張りきってんな~~~」

 

一誠「おっ、匙」

 

 

何故かシャベルを手に持つ匙が感心感心といった表情で現れる。

匙はキョロキョロを辺りを見渡すと、首を傾げる。

 

 

匙「あれ?お前ら、解放された眷属の特訓をしてるって話は聞いてるが、肝心のそいつは?」

 

一誠「ああ、それがだな…。あの段ボールの中に閉じ籠っているんだ」

 

匙「えっ…!あ、ああ、お前らも大変だな…」

 

 

一誠が指指す段ボールを見て、匙は察したのか苦笑いを浮かべる。

 

 

我夢「匙、君こそ何してるんだ?」

 

匙「おう!会長に花壇の手入れを頼まれてな!会長の眷属たるもの、学園を綺麗にしなきゃな!」

 

一誠「それって、雑用なんじゃ…?」

 

匙「まっ、まさかな!ハ、ハハ……はぁ…」

 

 

一誠にそう言われた匙は笑みを浮かべていたが、図星だったのかガックシと肩を落とす。

 

 

匙「この後もよぉ~…花壇の手入れだけじゃなくて、屋根の上に乗ったテニスボールの回収もしないといけねぇんだよ。この学園広いからなぁ…」

 

一誠「お前も大変だな…」

 

我夢「テニスボールか…うん?テニスボール!?」

 

 

我夢は匙の話を聞き、何かを閃いたのか目を見開くと、匙の肩をガシッと掴む。

 

 

匙「わっ!どうしたんだよ?」

 

我夢「匙!僕たちにもテニスボールの回収を手伝わせてくれ!」

 

匙「へ?」

 

 

唐突の提案に匙や周りのいるみんながキョトンとする。

 

 

一誠「我夢、何か考えがあるのか?」

 

我夢「ああ!」

 

 

一誠の問いかけに我夢は何か自信があるのか口角をあげて頷く。

その考えとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後。屋根に乗ったテニスボールの回収を匙と共に手伝った我夢達は再び旧校舎の前に集まっていた。

意外にも屋根には沢山のテニスボールが乗っており、ゴミバケツくらいの量だった。

 

実は我夢がボール回収を手伝ったのはギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)の特訓に使えるのでは?という考えがあったからだ。

 

ギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)は視界に映った全てのものを止める…つまり、視線を一点のもの…つまり投げられるボールなどに集中させれば、コントロールも上達する。

我夢はそれを思い付いたのである。

 

我夢はボールが山ほど入っているカゴからテニスボールを1個手に取り、目の前にいるギャスパーに見せながら、特訓の説明をし始めた。

 

 

我夢「よし、ギャスパー。今から君にボールを投げるから、ボールだけを止めてみてくれ」

 

ギャスパー「はっ、はい!!」

 

我夢「いくぞ!」

 

 

我夢は投球宣言すると、ギャスパー目掛けて投げるが

 

 

ギャスパー「ヒィィィィーーーー!!」

 

 

ギャスパーは迫り来るボールに怯え、ボールからしゃがんで回避してしまう。

 

 

我夢「ごめんごめん。今のは強すぎた。次からはゆっくり投げるから、止めてみてくれ」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

 

我夢は申し訳なさそうに謝ると、今度は穏やかなスピードで投げる。

 

 

我夢「…っ!」

 

ギャスパー「あ!すみません、すみません!!」

 

 

今度はボールを止めるには成功したが、それを投げる我夢をも止めてしまった。

ギャスパーはすぐに時止めを解除すると、我夢へ必死に頭を下げるが、我夢は微笑み

 

 

我夢「気にしなくていい…最初は誰でも上手くはできないさ。さあ、特訓を続けよう!」

 

ギャスパー「…はい!」

 

 

そう元気付ける様に言うと、ギャスパーはほんの少しだけだが、表情が明るくなった。

 

そうして、特訓を続ける2人を見ながら、匙は隣にいる一誠に小突く。

 

 

匙「まさか封印されてた眷属って、アーシアちゃんと同じ金髪の女の子だったなんてな~」

 

一誠「いや、あいつ男だぞ」

 

匙「ゑ!?」

 

 

そう聞いた匙は信じられないといった顔で、特訓しているギャスパーを目を凝らして見る。

一誠は言葉を続け

 

 

一誠「女子の制服を着てるが、ありゃあ趣味だそうだ」

 

匙「なんやて!?わいの夢…ダブル金髪僧侶はどこいったんや…」

 

 

その事実を言うと、匙は嬉しそうな顔から一変して、ガックシと膝をつく。

しかも、何故か口調が関西弁である。

 

 

ギャスパー「ひぃ…ひぃ…」

 

 

しばらく特訓を続けていると、ギャスパーは疲れたのか両ひざに手をつき、肩で息をする。

その様子を見た我夢は「一旦、休憩しよう」と声をかけようとした時

 

 

「よお、特訓頑張ってんじゃねぇか?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

突然、男性の声が響き渡る。

皆は驚きながらもキョロキョロと辺りを見渡すと、木陰から1人の男が現れる。

その男を見て、一誠は目を丸くした。

そう、その男はつい先日に出逢った堕天使の総督、アザゼルであった。

 

 

一誠「お、お前は…!?」

 

アザゼル「よお、あの日ぶりだな」

 

 

目の前にいる人物を知っている様子に皆は一誠に期待の眼差しを浮かべるが

 

 

一誠「お前は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞のジョー!!」

 

「「「「「「ズコーーーーッ!」」」」」」

 

 

 

その発言に我夢達のみならず、アザゼルもずっこける。

我夢は以前にもこんなことが合ったようなデジャヴを感じた。

 

皆の反応を見て、一誠は違ったかな?と首を傾げる。

すると、アザゼルは起き上がり

 

 

アザゼル「バカヤロー!俺はアザゼルだっ!堕天使の総督アザゼルだ!」

 

一誠「おお、そうだったそうだった……って、アザゼル!?」

 

「「「「「っ!」」」」」

 

 

そう言うと、我夢達は一斉に身構える。

その様子を見てアザゼルは

 

 

アザゼル「おいおい、俺は別に戦いにきたわけじゃねぇ…ちょいと見物したいものがあって来たんだ」

 

ゼノヴィア「見物したいもの?それは何だ」

 

アザゼル「お前らのとこの騎士が使っている『聖魔剣』だよ。ここにはいねぇみたいだが…」

 

我夢「それなら、今度の会談の打ち合わせで部長達と一緒にサーゼクス様のもとに向かっている」

 

アザゼル「何だ、留守か…いないんなら、仕方ねぇな」

 

 

アザゼルは少々残念そうに呟く。

何の目的かは知らないが、この場に木場がいなくて良かったと我夢達はホッとしていると、アザゼルは木陰に隠れているギャスパーに目があった。

 

 

アザゼル「おい、そこのヴァンパイア」

 

ギャスパー「ひっ!?」

 

アザゼル「お前、『停止結界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の所有者だろ?そいつは上手く使いこさなきゃ害悪になる代物だからな。五感から発動させるタイプの神器(セイクリッド・ギア)は所有者の力量が足りないと、ただ暴走するだけだからな」

 

一誠「やけに詳しいな」

 

アザゼル「当然だろ?俺は神器(セイクリッド・ギア)の研究をしてるんだぜ?」

 

 

さも知っていて当然の様な口調でアザゼルは言葉を返すと、次は匙に視線を向けた。

 

 

アザゼル「お前さんは『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』か…。特訓すんならこいつを使ってみろ。このヴァンパイアに接続して特訓すりゃあ、暴走のリスクが減って、ちっとはマシになるだろ」

 

匙「え、俺の『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』って相手の力を吸うだけじゃねぇのか?」

 

 

黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』を発動させ、それを見ながら匙は初耳だったのか驚く。

その様子を見て、アザゼルはため息をつき

 

 

アザゼル「これだから最近の神器(セイクリッド・ギア)所有者は……ちっとも自分の力を知ろうとしない。いいか?『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』は伝説の五大龍王の一角、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラ』を封じ込めて作られたもんだ。これぐらい知っとけよ?」

 

 

常識の様に話すアザゼルに我夢達は心の中で「いや知るかよ」とツッコミつつも、驚きのあまり声が出なかった。

 

なかでもグレモリー眷属の頭脳である我夢は一番驚いていた。

飄々とした態度をとってはいるが、豊富な知識に冷静な分析力、それを活かしての素早い提案。

その姿に我夢はアザゼルにほんの少し尊敬してしまった。

 

 

アザゼル「んじゃ、頑張れよ」

 

 

アザゼルはそう言うと、どこかへ歩き去っていった。

 

ちなみにアザゼルが提案した特訓方法を実践してみると、順調に進んだ。

ボールを完璧に止められた回数は少ないけれども、ギャスパー自信は満足そうな顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特訓が順調に進み、日も暮れ、辺りは暗闇に包まれた夜になった。

さすがに夜遅くまで学校にいるわけにもいかず、我夢達は特訓を終えることにした。

 

月の明かりが差し込む旧校舎の廊下を我夢とギャスパーの2人は並んで歩いていた。

ちなみに他のみんなは体育館にボールを返しにいったり、体育館の鍵を返しにいったり等でここにはいない

 

 

ギャスパー「あの…ありがとうございます」

 

我夢「うん?ああ、いいよ」

 

 

お礼を言ってくるギャスパーに我夢は微笑み返す。

神器(セイクリッド・ギア)をコントロールする特訓としては順調に進み、あと少し特訓を積めばある程度は自由に止められるぐらいになると期待できる。

 

 

ギャスパー「我夢先輩や皆さんのおかげで、あそこまで自分の力を制御できるなんて……僕、生まれて初めてです!」

 

我夢「そうかそうか」

 

 

嬉しそうに話すギャスパーに我夢は笑みをこぼす。

それもそうだろう。

今まで何でも意識せず止めてしまう自分の力に恐怖していた彼がここまで自信がついたというのだ。

これに喜ばない訳がない。

 

 

ギャスパー「あの、先輩?先輩ってウルトラマンガイア、なんですよね?」

 

我夢「そうだけど…どうした?」

 

ギャスパー「いえ、先輩は凄いなと思って。自分に与えられた力に怖がったりせず、怪獣達といつも戦ってる。……弱虫の僕なんかと違って。迷惑ですよね?」

 

我夢「…」

 

 

ギャスパーはそう言うと、顔を曇らせる。

我夢は事前にリアスからギャスパーの過去を聞いている。

 

ギャスパーは吸血鬼の父親と人間の母親との間に生まれた。

しかし、吸血鬼は純血を重んじる吸血鬼社会では異端で、かつギャスパーは吸血鬼の中でも名家の出身であることで周囲のみならず、親兄弟からも迫害を受ける毎日を送っていた。

 

そんな生活が嫌になったギャスパーはある日、吸血鬼の国から脱走するが、運悪く出くわしたヴァンパイアハンターに殺されてしまい、その後リアスに救われて、悪魔に転生した。

 

だが、転生してもギャスパーの受難は続いた。

今度は生まれ持った神器(セイクリッド・ギア)のせいで意図せず周りの人間を止めてしまい、気味悪がられてしまった。

 

この事からギャスパーは重度の対人恐怖症となり、自分の力を恐れ、部屋に閉じ籠ってしまったのである。

 

その話を思い出しながら我夢は口を開く。

 

 

我夢「…僕もね、実は怖がってるんだ」

 

ギャスパー「え?」

 

 

そう聞いたギャスパーは目を丸くし、我夢の顔を見る。

そんな風には見えないという目だ。

我夢は懐からエスプレンダーを取り出し、それを見ながら言葉を続ける。

 

 

我夢「この地球から与えられた光は僕自身が望んで手にいれた。でも、毎回怪獣や敵と戦って思うんだ…いつか死ぬんじゃないか?もっと大切なものを失うんじゃないかって」

 

ギャスパー「…」

 

 

ギャスパーはそう話す我夢の話を黙って聞き続ける。

我夢の表情はいつものように穏やかだが、その眼は寂しさが浮かんでいた。

 

 

我夢「この光は僕にとっては強すぎる。ギャスパーの力もそうではないと言いきれない…」

 

ギャスパー「…」

 

我夢「だけど、その力があるからこそ誰かを守れるんだ」

 

ギャスパー「誰かを守れる…?」

 

 

言葉を繰り返して問いかけるギャスパーに我夢は頷き

 

 

我夢「ああ、例えば火事かなんかでビルから降りられない人がいたら、巨大化できる僕が救助できるけど、ギャスパーにはできない。反対に、今まさに交通事故に遭いそうな人がいたら時間を止められるギャスパーが救うことができるけど、僕にはできないだろ?」

 

ギャスパー「は、はい…」

 

 

頷くギャスパーを我夢は微笑みながら見つめ

 

 

我夢「人にはそれぞれできる事とできない事がある。だけど、逆に考えれば自分にしかできないことが必ずあるってことさ」

 

ギャスパー「自分にしか…できない?」

 

我夢「そう!だからもっと自分に自信を持っていいよ。僕が保証する。それと誰も君を迷惑なんて思っちゃいない。言葉には出してないけど、みんな君を大切な仲間として信頼しているさ」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

 

そう諭す様に告げると、ギャスパーは明るい表情になり、元気よく返事する。

それを見た我夢も思わず笑顔がこぼれる。

 

 

ギャスパー「あっ…」

 

我夢「もう着いちゃったね」

 

 

そうこう話していると、いつの間にかギャスパーが生活している部屋の前についた。

しかも、そろそろ校門が閉まる時間なので、我夢は帰らなければならない。

 

ギャスパーは扉の前に行くと、振り返り、我夢へお辞儀した。

 

 

ギャスパー「我夢先輩!今日1日ありがとうございました!」

 

我夢「ああ、こちらこそありがとう!また明日」

 

ギャスパー「はい!」

 

 

ギャスパーは晴れやかな笑顔で答えると、扉の中にはいっていった。

それを見届けた我夢はクルリと背を向け、校門に向かって歩き始めた。

 

 

 

 




次回予告

遂に始まる三大勢力の和平会談!
防衛組織結成か?
その時、テロリストが…!アグルが…!
今、三つの勢力が火花を散らす!

次回、「ハイスクールG×A」!
「三つ巴の戦い」!
こいつだけには負けられない!




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第23話「三つ巴の戦い」

旧魔王 カテレア・レヴィアタン
禍の団(カオス・ブリゲード)魔術師 登場!


ヨーロッパにあるどこかの国。

夜の暗闇に包まれた路地を白いローブに身を包んだ少女、イリナがたった今任務を終え、教会本部へ向かって歩いていた。

 

 

イリナ「(どうして、青いウルトラマンは私を助けてくれたんだろ?それにあの人は…)」

 

 

イリナは帰国してからも、日本で出会った藤宮やウルトラマン…特にアグルのことが気になっており、頭から離れなかった。

 

 

イリナ「あっ!」

 

藤宮「…」

 

 

そのことについて考えながら道を歩いていると、目の前に突然、藤宮が現れた。

イリナは驚きつつも、本人に丁度聞きたいことを教えてもらおうと口を開くが

 

 

藤宮「…お前はウルトラマンはどういう存在だと思う?」

 

イリナ「え?」

 

 

藤宮に遮られる様に問われ、イリナはしばらく考えると

 

 

イリナ「…きっと私達、人類を助けてくれると思うわ。あの3人のウルトラマンは…」

 

藤宮「ふっ…」

 

イリナ「何がおかしいの?」

 

 

そう答えていると、藤宮は不敵に笑う。

イリナは少しムッとなりながらもその笑みの意味を問いかける。

 

 

藤宮「いや、君はウルトラマンに対する解釈を誤っていると思ってな。ウルトラマンは地球を守るものだ」

 

イリナ「それって、私が言っているのと――」

 

藤宮「違うな。地球を救うことと人類を守ることは同じではないんだよ。お前が考えてる青いウルトラマンもそう思ってる」

 

イリナ「えっ」

 

藤宮「彼は地球の意思に従って行動している。ただ、それだけを言いたかっただけだ…」

 

 

藤宮はそう言い、立ち去ろうとするが

 

 

イリナ「待って!」

 

 

イリナは彼を呼び止める。

こちらを振り向く藤宮にイリナは言葉を続け

 

 

イリナ「どうして私にそこまで教えるの?もしかして、あなた言いたいんじゃない?自分があの青いウルトラマンだって。あと小さい頃、あなた…海で私と会わなかった?」

 

藤宮「…」

 

 

そう問いかけると、藤宮はしばらく沈黙すると口を開き

 

 

藤宮「…お前の言う通りかもしれないな」

 

イリナ「…っ!?」

 

 

肯定ともとれる言葉を返すと、イリナは目を見開いた。

やはりと思っていた人物がアグルであることの驚きとその真実の重さにイリナは戸惑う。

 

イリナが戸惑う中、藤宮は再び背を向け

 

 

藤宮「それと、昔に出会った少年は………もうここにはいない…」

 

イリナ「っ!……」

 

 

そう告げると、藤宮は立ち去っていった。

イリナは戸惑いながらも去り行く彼の背中を悲しげに眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日本の夜。

今夜は駒王学園にて開かれる、悪魔・堕天使・天使の三大勢力のトップによる会談当日である。

 

もちろん我夢が所属するグレモリー眷属やソーナ率いるシトリー眷属も参加する。

何でも、根源的破滅招来体やコカビエルの件について報告する為らしい。

 

現在は会場である職員会議室の準備や、校内に侵入者が入らない様に厳重に結界を張り巡らしている。

それが終わるまで、我夢達はオカルト研究部に待機していた。

 

皆が会話している中、我夢は藤宮がゾンネルを操るのに使った怪獣翻訳機「パーセル」の解析をしていた。

実はゾンネルを地中に戻した際、ゾンネルの眉間に刺さっていたのを見つけ、こっそりと回収していたのだ。

一応、リアスには新兵器の開発と話は通してある。

 

我夢は机の上で分解したパーセルを見ながら、パソコンに表示された分析結果を黙読した。

 

 

我夢「(機械語デコーダーに、脳周波数変換装置………藤宮はこれで怪獣を操っていたのか)」

 

 

我夢は改めて藤宮の才能に感服しつつも、彼の言う通り、「地球は人類は不要」なのかと疑問に思った。

 

その考えは絶対に間違っている。

だが、現に藤宮は地球からアグルの光を授かっている。

 

 

我夢「(本当に…それが答えなのか…?)」

 

リアス「――みんな、行くわよ」

 

 

我夢がそう悩んでいると、準備完了したとリアスの声が聞こえた。

我夢は一旦考えるのを止め、リアスを先頭に次々と部室を出ていく一同についていく。

 

 

ギャスパー「み、みなさん!お気をつけてぇぇ!」

 

 

会談の間、ギャスパーはお留守番である。

神器(セイクリッド・ギア)は特訓の成果である程度コントロールはできてはいるが、何かの拍子で三大勢力のトップを止めてしまったら一大事である。

 

 

我夢「ギャスパー。もし暇だったら、僕が買ってきたお菓子やイッセーのゲームを置いておくから、好きに食べたり遊んだりしてくれ」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

 

そう言った我夢からゲームやお菓子を受けとると、ギャスパーは嬉しそうに頬を緩ます。

その様子に安心した一同は旧校舎を出て、本校舎を目指して歩く。

 

 

木場「前々から思ってたけど、我夢君って面倒見がいいんだね」

 

我夢「そうかな?教えるのとかは昔から好きだけど…」

 

 

歩いている途中、木場にそう言われた我夢はキョトンする。

すると、隣にいた一誠がポンと我夢の肩に手をおき

 

 

一誠「それが面倒見がいいって言うんだよ。ほら、ギャスパーもお前に懐いてるみたいだし…」

 

我夢「う~ん…そうなのか」

 

 

そう言うと、我夢は納得したように唸る。

一誠の言う通り、ギャスパーと我夢が会話している姿を一同は多々目撃している。

やはり、何か合うところがあったかも知れないと我夢は改めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス達ははじめの頃は色々話してはいたが、本校舎の職員会議室に近付くにつれ、口数が減り、最終的には誰も口を開かなかった。

そして、一行は職員会議室の扉の前に着いた。

 

 

コンコン…

 

リアス「失礼します」

 

 

リアスは職員会議室の扉をノックし、一言そう言うと、彼女を先頭に中へ入っていく。

室内にはサーゼクスやソーナ等、見知った人物やアザゼルやセラフォルー、光る光輪に金色の翼を持つ男…おそらく天使側の代表であろう人物に、あの白龍皇ヴァーリといった、そうそうたるメンバーが取り囲んで座っていた。

 

セラフォルーとアザゼルはおちゃらけた雰囲気ではなく真剣で、2人共キチンとした礼服姿であることから、いかにこの会談が重要なのかが伺える。

 

 

サーゼクス「私の妹と、その眷属だ」

 

 

サーゼクスが他勢力のトップ2人に紹介すると、リアス達は軽く会釈する。

 

 

サーゼクス「彼らは破滅招来体の迎撃や先日のコカビエルの件で活躍してくれた」

 

ミカエル「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 

 

優しげな顔をした天使側の代表、ミカエルはペコリとお辞儀をすると、リアス達もそれに合わせてお辞儀する。

 

 

アザゼル「悪かったな~、俺んとこのコカビエル(バカ)が迷惑かけちまって」

 

 

アザゼルは申し訳なさそうの態度を1つも見せず、軽い感じで謝る。

これにはリアスも腹に立ち、口元をピクピクとひくつかせる。

 

 

サーゼクス「さあ、その席に座りなさい」

 

 

サーゼクスにそう促された一同は、目の前にある椅子に座っていく。

 

そして、全員が座り終えるのを確認したサーゼクスは口を開く。

 

 

サーゼクス「さて、全員が揃ったことだが、1つ前提条件がある。ここにいる者は最重要禁則事項を『神の不在』を知っている……それを認知しているものとして話を進める」

 

 

この一言で三大勢力のトップによる会談が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギスギスとした空気での話し合いになるかと思えば、そんなこともなかった。

たまにアザゼルが余計なことを言って場を凍りつかせることもあるが、話し合い自体は順調そのもので進んでいった。

 

 

サーゼクス「さて、リアス。そろそろ先日の事件について話してもらおうかな」

 

リアス「はい、ルシファー様」

 

 

サーゼクスにそう言われると、リアス、朱乃、ソーナ、そして我夢が立ち上がり、先日の一部始終を話し始める。

 

4人は冷静に落ち着きをもって話してはいるが、やはり目の前に大物がいることにより、緊張のせいで手が微かに震えていた。

 

 

リアス「――以上が私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

サーゼクス「ご苦労。座りたまえ」

 

 

全て話し終えた4人はサーゼクスの一言に従い、ほっと心の中で安堵しながら椅子に座る。

 

 

セラフォルー「リアスちゃん達、ありがとう♪」

 

 

そんな彼らにセラフォルーはウィンクを送った。

 

 

サーゼクス「…さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 

サーゼクスがそう問いかけると、皆の視線は一斉にアザゼルへ注がれる。

だが、その目は疑惑の目である。

何しろ、様々な問題を駒王町で起こすだけでなく、幹部のコカビエルが根源的破滅招来体と協力を結んだあの堕天使の総督…疑いがかけられても仕方がない。

 

注がれる視線にアザゼルはやれやれといった様子でため息をつくと、口を開く。

 

 

アザゼル「あのなぁ…あいつは俺んとこの白龍皇(ヴァーリ)が回収して、地獄の最下層(コキュートス)に永久凍結の刑にするつもりだったって、この前渡した資料に書いてただろうが。それで合ってる」

 

ミカエル「ですが、コカビエルは先ほど説明があった根源的破滅招来体のアパテーやスフィアとつながりがあった………しかも、彼は青いウルトラマンによって殺されました。もしかしたら、あの青いウルトラマンは貴方が口封じのため雇ったのでは?」

 

アザゼル「何でそうなるんだよ。あの青いウルトラマンは雇ってねぇし、俺たちとは無縁だ。それにもし破滅招来体とグルだったら、ここに来ねぇだろ」

 

 

ミカエルの問いにアザゼルは半目で見つめながら答える。

確かに見方によってはそう見えるかもしれないと我夢は心の中で思っていると、次はサーゼクスが口を開いた。

 

 

サーゼクス「では、質問を変えよう。アザゼル、何故ここ数十年神器(セイクリッド・ギア)所有者をかき集めていたのだ?私としては戦略増強として考えていたのだが…」

 

アザゼル「神器(セイクリッド・ギア)研究の為だ。ただ、それだけだ。戦争なんて起こす気も無いし、興味無ぇよ」

 

 

サーゼクスの問いかけにアザゼルは答えると、他の勢力は嘘偽りなく正直なものと判断し、納得したように頷く。

 

 

ミカエル「…確かにその発言に嘘は無さそうですね」

 

アザゼル「ああ~、ハジメっから俺は正直に答えているって、はぁ………神や先代ルシファーよりかはマシかと思ったがお前らも面倒くさいな。チッ…わーたよ、ならさっさと和平を結ぼうぜ。お前らも鼻っからそのつもりだったんだろ?」

 

 

アザゼルのその発言に各勢力のトップ以外は驚きに包まれた。

長い歴史上、争っていた三つの勢力がここに和平を結ぼうというのだ。

 

そのアザゼルの言葉にミカエルとサーゼクスは

 

 

ミカエル「貴方から『和平』という言葉が出るとは意外でしたが…確かに貴方の言う通り、元より私たち天使もそのつもりでした。このまま三勢力ともいがみ合っても、世界の障害にしかなりません。……神はもういないのですから」

 

サーゼクス「我らも同じだ。魔王がいなくとも、種の存続の為、我ら悪魔も進まねばならない。もし、また戦争を起こせば、三勢力とも滅びるだろう…」

 

 

和平に肯定的な意見を出す。

それを聞いたアザゼルは頷き

 

 

アザゼル「俺たちだけでなく、この人間界にも影響が出て、世界は確実に終わる……。今は根源的破滅招来体なんて目的も素性もわからない存在がいるし、俺たちが争いあっても何も利益にもならねぇ。それにな…」

 

 

そう言うと、アザゼルは両腕をバッと広げ

 

 

アザゼル「神がいなくても世界は回るのさ」

 

 

その言葉でひとまずこの和平についての話し合いを締めくくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル「おい、サーゼクス。()()()()()()()があんだろが。勿体振らず話せ」

 

 

和平賛成の署名を終え、一同は出されたお茶を飲みながらリラックスしていると、突然アザゼルがサーゼクスに問いかける。

 

その問いかけに皆は驚く。

すると、

 

 

サーゼクス「さすがだね、アザゼル。その通りだ。実はこういうものを創ろうと考えてね…グレイフィア」

 

グレイフィア「はい」

 

 

そう言いながらサーゼクスはグレイフィアに指示すると、グレイフィアは皆に何かの資料を配っていく。

その資料のタイトルは『三大勢力合同防衛組織について』というものだ。

 

 

サーゼクス「人間界へコッヴが現れてから、地球に眠っていた怪獣達だけでなく、破滅招来体が送り込んだきた宇宙怪獣も暴れだした。天界にはまだ報告がないが、我々が住む冥界には既に何体か目撃されている。やがて我々にも破滅招来体の魔の手が本格的に迫り、人間界のみならず、冥界や天界を破滅に導くだろう」

 

 

サーゼクスは淡々と話すと、アザゼルとミカエルの顔を見て

 

 

サーゼクス「そこで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思う!」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

そう発言すると、皆は言葉を失った。

先程、和平協定を結んだという歴史上に残るであろうことに加え、今度は三大勢力による防衛組織を結成する…。

これには驚かずにはいられなかった。

 

 

サーゼクス「どうだ?せっかく和平を結んだんだ、これを起に結成しようではないか?」

 

 

サーゼクスはアザゼルとミカエルに話を投げ掛ける。

すると、2人は「賛成」と声を揃えて答えた。

こうして、前代未聞の三大勢力による防衛組織の結成が決定した。

 

 

サーゼクス「さて、具体的な内容は資料に書いてあるから後にして…何か名前をつけないとな……。どうしたものか」

 

我夢「あの~」

 

 

サーゼクス達はう~んと頭を悩ませていると、我夢がおそるおそる手をあげた。

 

 

サーゼクス「どうした?我夢君」

 

アザゼル「何かいい名前思いついたのか?」

 

我夢「はい、XIG(シグ)って名前はどうですか?」

 

セラフォルー「しぐ?」

 

 

その名前に一同は首を傾げていると、我夢は偶然持っていたメモ帳に名前を書き、皆に見せた。

 

 

我夢「はい、eXpanded Interceptive Guardiansの略で簡単に翻訳すると、拡張する危機を妨害する守護者という意味です。根源的破滅招来体の危機から地球や冥界を守る組織としてピッタリと思うんです」

 

アザゼル「XIGか…いいじゃねぇか。しっくりくるぜ」

 

セラフォルー「格好いいね!私さんせーい☆」

 

ミカエル「私も同じく賛成です」

 

サーゼクス「うむ。では三大勢力合同組織…改めてXIGとしよう。もちろん君たちにも加入してもらうつもりだ」

 

 

説明を聞いた4人は誰も反対する者はおらず、こうして組織名は我夢の提案した「XIG」となった。

 

 

我夢「ありがとうございます!」

 

一誠「良かったな、我夢!」

 

 

喜ぶ我夢とそれを自分の様に喜ぶ一誠を微笑ましく見ながら、サーゼクスは口を開く。

 

 

サーゼクス「こんなところだろうか…と言いたいところだが、高山 我夢君、兵藤 一誠君。君たちやこの場にいる者達に知ってほしい重要なことがある」

 

一誠「知ってほしい?」

 

我夢「重要なこと…?」

 

 

真剣な表情で話すサーゼクスに我夢達は賑やかな雰囲気から一変してキョトンとしながら問う。

それにサーゼクスは頷くと

 

 

サーゼクス「君たち、いや…正しくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()()()についてを!」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

その言葉にシトリー眷属及びグレモリー眷属一同は目を丸くした。

しかも今まで興味無さそうに聞いていたヴァーリも興味を示すかのように顔をあげている。

 

 

ミカエル「いつか明かす時がくると思いましたが、もう頃合いなのですね」

 

サーゼクス「ああ、この場にいる者なら話してもきっと問題はないだろう。”彼ら”がいたなら、きっとこのタイミングで話すさ」

 

アザゼル「そうかもな」

 

我夢「?」

 

 

3人の意味深な会話にリアスやソーナ達はどういうことだと更に疑問に思っていると、サーゼクスはリアスへ顔を向けた。

 

 

サーゼクス「リアス。大昔にこの地球で起こした大戦の結末は知っているね?」

 

リアス「はい、確か戦場に現れた二天龍が喧嘩を始め、それを阻止するために三勢力が力を合わせ、その際魔王と神が犠牲にはなりましたが、何とか神器(セイクリッド・ギア)に封印した…という結末ですよね?」

 

 

以前からその話を聞かされていた我夢と一誠はその通りではないかと思いながらうんうんと頷く。

すると、サーゼクスは

 

 

サーゼクス「そうだ。()()()にはそうだが、実は()()のだ。()()()()()()()()()()()のだ」

 

リアス「え?じゃあ、誰が?」

 

 

リアスがそう問いかけると、サーゼクスは真剣な表情を浮かべ

 

 

サーゼクス「かつての大戦にも現れたのだよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンが」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

そう答えると、皆は目を見開いた。

過去にもウルトラマンが…?何故?といった表情を各々浮かべていると、サーゼクスは昔の事を思い出しながら語っていく。

 

 

サーゼクス「大戦の最中に乱入した二天龍を何とか止めようと我々は力を合わせ、必死に戦った。だが、神や魔王の力を持っても中々止められず、死者も増え、この地球も滅ぶ寸前だった…」

 

 

サーゼクスはそう言うと、スクッと立ち上がり

 

 

サーゼクス「だがその時、宇宙から数多の光がこの地球に降りてきた。そう、ウルトラマンがね」

 

我夢「ウルトラマンが…宇宙から?」

 

 

我夢が問いかけると、サーゼクスは頷く。

 

 

サーゼクス「彼らはその力で二天龍をあっという間に倒したのだ。我々が苦戦したあの二天龍を。彼らの力の前に我々は争う気もなくなったよ。そして、神と魔王は最後の力を振り絞り、二天龍を神器(セイクリッド・ギア)に封印した…」

 

 

そう語る歴史の真実にリアス達は固唾を飲む。

まさかウルトラマンがそんな昔からおり、大戦の終結のキッカケになるとは誰も予想だにしなかった。

 

そんな空気の中、リアスはサーゼクスに問う。

 

 

リアス「なら、どうしてそれを私達に公表しなかったのですか?」

 

サーゼクス「それは彼らからの約束だからだよ」

 

一誠「約束?」

 

サーゼクス「ああ、彼らは二天龍を倒した後、この滅びかけた地球…いや人間界に自らのエネルギーを与え、地球を救った。それを見て終戦を決断した我々に彼らはこう言ったのだ、『我々の存在を後世に伝えるな』と…。そう伝えた後、彼らはこの人間界にいた古代の人類に希望を見出だしたのか僅かに残っていた光の遺伝子を分け与えた。彼らはその後、それ以上我々の文明に干渉せず、自らの肉体を残し、光となって宇宙へ飛び去っていった……」

 

 

そう語り終えると、サーゼクスは未だ話のスケールに驚いている我夢と一誠の顔を見て

 

 

サーゼクス「君達がウルトラマンになれるのは、その光の遺伝子を受け継ぐ者だからだろう。ダイナやガイアは長年蓄積されていた地球とウルトラマンの光が合わさったエネルギーによって生まれた存在と私は思う」

 

一誠「マジかよ…」

 

我夢「僕たちが…?」

 

 

そう聞いた我夢と一誠は驚くと共に納得した表情を浮かべる。

リアスやソーナ達は何故、2人がウルトラマンになれるのかと、数ヶ月にも渡って残っていた疑問が解決した。

 

 

我夢「(そうだとしたら、藤宮も…)」

 

 

我夢はこの場にいない藤宮も光の遺伝子を受け継ぐ者だということ、だからアグルになれるという事を理解した。

 

 

一誠「じゃあ、サーゼクス様。俺のダイナはどうしてアグルやガイアと違って姿を変えられるんですか?」

 

 

一誠がそう問いかけると、サーゼクスは顎に手をあて、しばらく考えると

 

 

サーゼクス「おそらく、それは宇宙に最も近いからだろう。空は宇宙に近いから。大昔に現れたウルトラマンにも姿を変える能力…名付けるならタイプチェンジを使う者がいたからね」

 

一誠「な、なるほど…」

 

 

サーゼクスの考察に一誠は納得したように声をもらすと、今度は我夢が問いかける。

 

 

我夢「その古代のウルトラマンの肉体って今どこにあるんですか?」

 

サーゼクス「いや、それはわからない。我々も必死に探したがどこにも見当たらなかった。ただ、この人間界の何処かにきっとある、それだけは言えるだろう」

 

 

その返答に我夢は納得したように頷く。

 

 

アザゼル「んじゃあ、そろそろ会談も終わりに近いから、この世界に影響を及ぼす奴等に話を聞いて終わりにしようか。んじゃあ、まずはヴァーリ。お前は世界をどうしたい?」

 

 

いつの間にか仕切ってるアザゼルが後ろにいるヴァーリに尋ねると、彼はフッと不敵に笑い

 

 

ヴァーリ「俺は強いやつと戦えればいい…それだけだ……」

 

 

そう言うと、彼は再び口を閉ざす。

それを聞いたアザゼルは「いつも通りか」と呟いているが、周りの空気は少しだけ不穏になった。

 

 

一誠「俺、あのギザ野郎気に入らねぇんだよな~」コソコソ

 

我夢「ああ…」コソコソ

 

 

それを見た一誠は隣にいる我夢に小声で不満をもらすと、我夢も同意見だと頷く。

普段、相手にあまり不満や恨みを持たない我夢もこれには同感だった。

 

 

アザゼル「んじゃあ、ダイナ。お前はどうしたい?」

 

 

アザゼルがそう問いかけると、一誠は真剣な眼差しで

 

 

一誠「守りたい人を守る。戦う理由はそれだけですよ」

 

アザゼル「ふぅむ。他人のために力を使うか……最後はガイア。お前は?」

 

 

そう返答すると、アザゼルは面白そうにうんうんと頷き、次は我夢へ問いかける。

 

 

我夢「僕はこの地球に住む全ての人々、悪魔や天使や堕天使を守る為、この世界を破滅へ導く存在と戦っていきます」

 

アザゼル「ふっ、そうか」

 

サーゼクス「さて、こんなところだろうか」

 

 

我夢の言葉にアザゼルは興味が湧いたのか、口角をあげる。

そして、全ての事項が終わり、この会談を終わろうとした瞬間――――会議室は静止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「何だ!?」

 

 

我夢は突然周りの景色が灰色になったことに驚きつつも辺りを見渡すと、朱乃、小猫、アーシアやソーナとその眷属はまるでリモコンの一時停止を押したビデオの様に固まっていた。

 

 

一誠「我夢、無事だったか!」

 

 

我夢は一誠の方へ視線を向けると彼だけでなく、三大勢力のトップ、リアス、ヴァーリ、木場、何故かデュランダルを取り出しているゼノヴィアは動けていた。

 

 

我夢「イッセー!動けるのか?」

 

一誠「ああ、はじめは何で動けるのかわかんなかったけど、ダイナの光が守ってくれたみたいだ」

 

我夢「そうか…」

 

 

一誠と我夢の近くの空間にそれぞれ黄色と赤い光が優しく輝かせながら佇んでいた。

その光を見ながら、2人は心の中で感謝すると共に懐から取り出したそれぞれの変身アイテムに収納した。

 

 

木場「それにしてもゼノヴィア。禁手に至ってる僕や魔王様達はわかるとして、どうして君が動けるんだい?」

 

リアスやサーゼクス達が動ける者を確認する中、木場は隣にいるゼノヴィアに問いかける。

 

 

ゼノヴィア「ああ、咄嗟にデュランダルを盾にしたんだ。時間を止められる感覚は身についたからな」

 

一誠「マジかよ…」

 

我夢「ありえるのか…」

 

木場「ふふ…」

 

 

ふふんと鼻を伸ばす彼女の話を聞き、一誠と我夢は信じられない様に目を大きく見開き、木場はさすがと言わんばかりに含み笑いする。

 

 

リアス「時間を止めるって…もしかして、ギャスパーの能力!?」

 

我夢「でも何で…?」

 

アザゼル「外見てみろ、犯人のお出ましだ」

 

 

リアス達は考えていると、アザゼルの言われるまま窓の外を眺める。

窓から見える校庭上空には、魔方陣から多数の魔術師が次々と姿を現していた。

 

 

一誠「何だありゃ?」

 

アザゼル「テロリストだ」

 

 

アザゼルがそう呟いた瞬間、魔術師達はこちらへ向かって攻撃をしかけてきた。

 

 

 

一誠「アザゼル、あんた…あいつらのこと知ってんのか?」

 

 

サーゼクスは時を止められた瞬間、咄嗟に張った結界で攻撃を防いでる中、一誠は問いかける。

すると、アザゼルは頷き語りだした。

 

 

アザゼル「奴等の名前は『禍の団(カオス・ブリゲード)』。知ったのは最近だが、多数の神器(セイクリッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)の所有者がいるって噂のテロ集団だ」

 

我夢「カオス・ブリゲード…」

 

ミカエル「我々も噂程度の存在だと思ってはいましたが、まさか本当にいたとは……アザゼル。貴方が神器(セイクリッド・ギア)を研究していたのは、それにそなえる為だったのですね?」

 

アザゼル「ああ、それにこの現象もヴァンパイアの小僧を引っ捕らえて、やつの持つ停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)を暴走させ、俺たちを止めるつもりだったんだろうな…」

 

リアス「よくもギャスパーを…!」

 

 

リアスはそう呟きながら歯を噛み締める。

眷属への情が厚い彼女にとっては、会談を襲撃する為に自分の眷属を利用されるのは堪らないものだ。

 

 

一誠「これからどうするんです?」

 

サーゼクス「とりあえずギャスパー君の救出が優先だ。私はこの結界を張り続けないといけないし、真の狙いは我々、各勢力のトップだろう。このまま待機していれば、首謀者がしびれをきらして現れるだろうが…」

 

 

サーゼクスの結界のおかげでこの会議室は何とか守られているが、このままという訳にはいかない。

誰が行こうかと皆が考えようとした時、リアスが真っ先に手をあげた。

 

 

リアス「お兄様、私が行きます。ギャスパーは私の眷属ですので、私が責任持って奪い返します」

 

サーゼクス「わかった。だが、旧校舎までの道のりは危険……しかも大勢の魔術師がいる以上、通常の転移も不可能だろう」

 

リアス「部室に未使用の『戦車』を保管しています。それで『キャスリング』を…」

 

サーゼクス「なるほど…その手があったか」

 

 

キャスリング。

それはレーティングゲームにおける特殊な手法の1つで、(キング)戦車(ルーク)の位置を瞬間的に変えるものだ。

 

つまり、旧校舎にある戦車(ルーク)に対してキャスリングを行えば、敵の目や罠を掻い潜り、一瞬のうちに旧校舎内に侵入出来るということだ。

 

 

サーゼクス「よし、それでいこう。しかし、1人で向かわせるのは危険すぎる。グレイフィア、キャスリングを私の魔力で複数人を転移できるか?」

 

グレイフィア「はい、お嬢様ともう一人方ならば転移可能です」

 

一誠「なら、「僕が行きます」――我夢!?」

 

 

一誠はいの一番に名乗りをあげようとしたが、我夢に遮られる。

実際、力押しのグレモリー眷属の中でも頭脳派で、作戦の指揮やバックアップが出来る我夢よりも一誠が救助に向かった方が良い。

では何故?と疑問の表情を浮かべながら顔を向ける一誠に我夢は

 

 

我夢「イッセー。実際は僕が残った方が知れないけど、彼の教育は僕に任されたんだ。わがままかもしれないけど、必ず助け出すから、ここは任せてくれないか?それに、もしも何かあった時は案外、行動派のイッセーが状況を打破できると思う」

 

一誠「わかった。気を付けろよ、我夢!」

 

我夢「ああ!」

 

 

その言葉に一誠は納得すると、健闘を祈ると共にサムズアップする。

我夢もサムズアップをすると、グレイフィアから術式を施されているリアスの隣に並び立つ。

 

 

アザゼル「おい、ガイア」

 

我夢「ん?」

 

 

リアスと同様、グレイフィアから術式を施される中、我夢はアザゼルから何かを投げ渡される。

それは特に何も変哲のない腕輪だった。

 

 

我夢「これは?」

 

アザゼル「そいつは神器(セイクリッド・ギア)の力を押さえる、いわば制御装置だ。ハーフヴァンパイアに渡してやれ」

 

我夢「ありがとう」

 

アザゼル「へっ、礼は終わった後にしろ。ヴァーリ」

 

 

我夢から感謝されたアザゼルは少々カッコつけて笑うと、ヴァーリの方へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「お前は表でドンパチやってる奴等の注意を引くんだ。殺しても構わん」

 

ヴァーリ「了解」

 

 

アザゼルから指示を受けたヴァーリは窓際まで歩くと、背中から白く光輝く翼を広げた。

 

 

ヴァーリ「禁手(バランス・ブレイク)

 

《Vanishing Dragon Balance Breaker!!!》

 

 

そう呟いた瞬間、中性的な音声が流れたかと思うと、ヴァーリはドラゴンを模した白い鎧を身に纏った。

 

 

ドガァァァン!

 

ヴァーリ「行くぞ」

 

 

そして、ヴァーリは派手に窓際の壁を破壊すると、そのまま飛び立ち、魔術師達に攻撃を始めた。

 

対する魔術師は攻撃するが、スルリスルリとヴァーリに避けられ、次々と倒されていく。

最早ヴァーリの独壇場であった。

 

 

アザゼル「これで注意は引けてるだろうが…ったく、ちゃんと窓から出ろよ」

 

グレイフィア「御二方、術式が完了致しました」

 

リアス「わかったわ。我夢、行くわよ!」

 

我夢「はい!」

 

 

アザゼルがそうぼやく中、グレイフィアにそう告げられた2人はいざ、魔法陣で転移しようとするが…

 

 

我夢「あれ?」

 

リアス「?」

 

サーゼクス「何故だ?」

 

 

何故か転移できず、魔法陣が消えてしまった。

リアスはもう一度魔法陣を展開するが、また同じ様に消えてしまう。

どういうことだと疑問符を浮かべる一同にグレイフィアは

 

 

グレイフィア「術式は完璧です。ですが、考えられるとしたら、戦車(ルーク)の駒が電磁波によって遮断されているのかと…」

 

リアス「じゃあ、どうすれば…」

 

我夢「部長、僕に考えがあります」

 

 

その仮説を聞き、どうしようかと考えるリアスに我夢は提案する。

 

 

我夢「ガイアのテレポーテーションで旧校舎に転移できます。エネルギーは多く消耗しますが、今はそれしかありません」

 

サーゼクス「まだ敵の全貌が見えない内にエネルギーを消耗するのは得策ではないが…仕方あるまい」

 

リアス「…ええ、頼むわ」

 

我夢「ガイア!

 

 

リアスの承諾を得ると、我夢は掛け声と共にエスプレンダーを前につきだし、そこから溢れる赤い光でガイアに変身した。

 

 

セラフォルー「おおーーー☆☆」

 

ガイア「部長」

 

 

ガイアの姿にセラフォルーが興味津々に目を輝かせる中、ガイアはリアスと共にテレポートしようとした時

 

 

一誠「魔法陣!?」

 

ガイア「ハッ!?」

 

 

会議室にこの場にいる誰のものでもない魔法陣が現れた。

その光景を見たガイアは一瞬、テレポーテーションをやめようとするが

 

 

サーゼクス「我夢君!早く行くんだ!」

 

ガイア「!」

 

 

サーゼクスの今まで聞いたことのない切羽詰まった声にガイアは思いとどまると、赤い光の柱を立てながらリアスと共に転移した。

 

 

 

 

 

 

ガイアとリアスがテレポートした後、会議室では突如現れた魔法陣の中から眼鏡をかけた女性が姿を現した。

 

 

「ごきげんよう。現魔王及び天使、堕天使陣営の首領の皆様方…」

 

サーゼクス「まさか君が来るとはな…カテレア」

 

 

優雅に挨拶をする女性ことカテレア・レヴィアタンの出現に顔を曇らせる一同。

彼女は初代四大魔王の血筋などで構成されている「旧魔王」と呼ばれる一派である。

 

普通なら血筋をひく彼らが魔王を引き継ぐべきだが、あまりにも平和とは程遠い思考を持っており、そのせいで魔王の名を剥奪され、冥界中でつま弾きされている。

 

その旧レヴィアタンである彼女が襲撃の場に現れた…、もちろん良い意味で来たわけではないことである。

 

 

カテレア「今、この場を持ってお伝えしましょう。我ら旧魔王派は、禍の団(カオス・ブリゲード)に協力することに決めました」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

その言葉に皆は驚いた。

そう、反乱である。

最も三勢力のトップ達は嫌な予感が的中したのか、更にその顔を曇らせる。

 

 

セラフォルー「どうして、カテレアちゃん!?私達、魔王の立場と関係なく、仲良くしようって言ったじゃない!?」

 

カテレア「黙れ!私からレヴィアタンの座から奪った貴様と仲良くするかっ!!この女狐がっ!私こそが真のレヴィアタンだ!!」

 

セラフォルー「そんな…」

 

 

睨みつけながら叫ぶカテレアの言葉にセラフォルーはショックで肩を下ろし、言葉を失う。

すると、今度はサーゼクスが問いかける。

 

 

サーゼクス「カテレア、その言葉に間違いはないな?」

 

カテレア「ええ、この襲撃に受け持ったもの我々、そして現魔王勢力やこの世界を滅ぼし、作り直すのです!理念、法、システム全てをっ!!」

 

 

カテレアはニヤリと口角をあげながら、自信に満ちた表情で言い切ると

 

 

アザゼル「…クッ、ククク…!ハハハ、ハッハッハッ!!」

 

 

アザゼルは何がおかしいのか、突然腹を抱えて笑いだした。

その行動に皆はキョトンとしながら視線を向ける。

 

 

カテレア「…っ!何が可笑しいのです!」

 

 

カテレアもキッと睨みつけ、未だ笑い続けるアザゼルに問いかける。

すると、アザゼルは「悪ィ悪ィ」と呟きながら、笑うのを必死に抑え、息を整える。

 

 

アザゼル「いやぁ~お前さん達が考えてる事が()()()()()()()()って思ってな、つい笑っちまった」

 

カテレア「何っ!?」

 

アザゼル「世界を滅ぼして仕組みを変える?カテレア、お前さんいつの時代のやつだよ。それで今の体制が気にくわなかったからテロリストに協力する……堕ちに堕ちたもんだな」

 

カテレア「っ!」

 

 

そう聞いていく内にカテレアは怒りを露にすると、膨大な魔力を徐々に放出していく。

アザゼルはそれを気にせず立ち上がると、カテレアに近づいていく。

 

 

アザゼル「お前ら、手ェ出すなよ」

 

 

アザゼルはゆっくりと歩きながらサーゼクス達へ顔を向けてそう言うと、カテレアの目の前に立つ。

 

 

アザゼル「おい、カテレア。ちょいと付き合ってもらうぜ。お前さんには色々聞きたいことがあるんでな」

 

カテレア「いいでしょう。まずは貴方の息の根を止めてやりましょう!」

 

 

カテレアはアザゼルの挑発にのると、2人は睨み合いながらヴァーリが先程壊した窓際の壁から飛び立ち、激しい空中戦を開始した。

 

 

ゼノヴィア「裕斗。私達も周りの敵を殲滅するぞ」

 

木場「ああ!」

 

一誠「俺も行くぜっ!」

 

 

それと同時に3人は窓際の壁から飛び降りると、お互いの武器を構え、地上にいる魔術師に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ガイアとリアスは無事旧校舎内にテレポートし、中にいるであろう魔術師達に警戒していたのだが

 

 

ガイア「これは!?」

 

リアス「っ!?」

 

 

目の前に広がる光景に2人は驚いた。

その光景とは、廊下や部屋のあちこちにギャスパーを捕らえた魔術師達が1人残らず倒れていたのだ。

 

 

「ううっ…」

 

 

だが、魔術師達は気を失っているだけであり、生きている。

2人は奇妙に思いながら、地面に這いつくばる魔術師達を通り抜け、ギャスパーを捜す。

 

 

リアス「彼らを攻撃するってことは、禍の団(カオス・ブリゲード)ではないのは確かね。それに私達の勢力でもない…一体、誰が?」

 

ガイア「…ッ」

 

 

次々と扉を開けながら捜していく中、リアスの呟きにガイアは心当たりのある人物が浮かび、まさかと思った。

 

 

リアス「ここが最後ね…」

 

ガイア「…」

 

 

それから数分後。

旧校舎内を探し回った2人は、まだ調べていない部室の前に着いた。

 

 

リアス「行くわよ!」

 

 

リアスはそう言うと、扉を思いきり開き、彼女と一緒に部室の中に入る。

すると、

 

 

ギャスパー「もご…もがが…」

 

リアス「ギャスパー!」

 

 

室内には猿ぐつわを口につけられ、更に椅子に紐でくくりつけられているギャスパーと

 

 

藤宮「来たな…我夢」

 

ガイア「藤宮…」

 

 

その隣の部長席に藤宮が優雅に座っていた。

ガイアが藤宮を睨みつける中、目の前にいる藤宮と面識がないリアスはガイアに問いかける。

 

 

リアス「我夢、彼は何者なの?」

 

ガイア「…彼は藤宮 博也。ウルトラマンアグルの正体です」

 

リアス「彼が…アグル!?」

 

 

そう聞いたリアスはガイアと同様に警戒を強める。

すると、藤宮は机に置いていた機械が取り付けられた台座から戦車(ルーク)の駒を手に取ると、まじまじと興味深く眺めながら、口を開いた。

 

 

藤宮「こんな駒1つで瞬間移動が出来るなんてな……悪魔のテクノロジーも馬鹿には出来ないな。だが、ちょっとした電磁波を浴びせればそれも無効になる……ほら、これは返すよ」

 

 

リアスは藤宮から投げ渡された戦車(ルーク)の駒を受け取ると、ガイアの前に出て問いかける。

 

 

リアス「ここにいた魔術師を倒したのは貴方ね?ギャスパーを救ってくれたのは感謝するわ。でも、どうしてギャスパーを拘束したままなのかしら?」

 

藤宮「そいつは簡単だ。俺もこいつの力が欲しいからだ。有機物、無機物止められる能力…まさに地球の危機を回避するのに打ってつけじゃないか」

 

リアス「…まるでギャスパーを道具と言っているみたいね」

 

藤宮「道具?利用できるものはとことん利用する…それがお前達悪魔のルールじゃないのか?」

 

リアス「違うわっ!ギャスパーは私の家族よ!!決して道具なんかじゃない!」

 

藤宮「果たしてそうかな?さて……」

 

 

叫ぶリアスを尻目に藤宮はそう呟くと、視線を彼女からガイアへ向けた。

 

 

藤宮「我夢、相変わらずグレモリー眷属なんて仲良しグループに居るんだな」

 

ガイア「…それは僕が正しいと思ったからさ。それよりも藤宮。どうして地球の怪獣を目覚めさせたり、ギャスパーを拉致しようとするんだ?混乱を招くだけだぞ?」

 

 

ガイアがそう問いかけると、藤宮はため息を吐きながら椅子から立ち上がると、部室内をぶらぶらと歩きながら話し出した。

 

 

藤宮「地球を滅ぼす存在は破滅招来体だけと限らないからさ。そこにいるリアス・グレモリーをはじめとした悪魔。堕天使や天使といった存在、そして人類は大いにこの世界を滅ぼす可能性を秘めている」

 

ガイア「それで滅ぼすと…?」

 

藤宮「そうだ。我夢、目の前の敵を倒すだけじゃ駄目なんだ。自分の力をもっと有効に使うべきなんだよ」

 

ガイア「違う!地球がそんな方法を望むはずがない!!君は絶対に間違っている!!」

 

 

ガイアがその意見を否定すると、藤宮は冷ややかな視線をガイアへ向け、言葉を続ける。

 

 

藤宮「力には力しか無いんだよ、我夢。地球が隠していた強大なる力……それを俺は託されたんだ。この地球からね」

 

 

藤宮はそう言うと、ギャスパーの口にはめられていた猿ぐつわを外した。

ギャスパーはよほど息苦しかったのか、ゴホゴホと大きな咳をし、息を整える。

 

 

ギャスパー「部長、我夢先輩…すみません。僕、何も出来ませんでした……」

 

リアス「いいえ、1人でよく頑張ったわ。貴方を見捨てない…眷属にする時にそう言ったじゃない」

 

ガイア「そうさ、助けるのは当たり前だろ?僕達はギャスパーの仲間なんだから」

 

ギャスパー「先輩…」

 

 

その励ましにギャスパーは目尻に嬉し涙を溜める。

すると、ギャスパーの隣で聞いていた藤宮は不機嫌そうな表情を浮かべると、ガイアへ話しかける。

 

 

藤宮「もう一度聞くぞ、我夢。そいつらを見捨てて、俺のもとに来い!そいつらはお前の力を利用するだけだ!」

 

ガイア「断る!」

 

 

ガイアはそう答えながら首を横に振ると、藤宮は「そうか」と呟きながら、右手首にアグレイターを装着した。

 

 

藤宮「アグルこそ、この地球を救うものなんだ。我夢、お前もその1人だと思っていたが、あくまで敵となるのか!」

 

 

藤宮は怒りのこもった口調で叫ぶと、アグレイターを掲げた。

リアス達が身構える中、藤宮はアグレイターから発する青い光に包まれ、等身大のアグルに変身した。

 

 

リアス「ギャスパー!」

 

アグル「ッ!」

 

リアス「っ!」

 

 

それを合図にリアスはギャスパーのもとへ駆け寄ろうとするが、アグルが放ったアグルスラッシュで道を阻まれる。

 

 

リアス「邪魔よ!」

 

アグル「ホワッ!ドゥワッ!」

 

 

負けじとリアスは針状にした小型の滅びの魔力を放つが、アグルはそれを拳で打ち落とす。

そして、もう一度アグルスラッシュを彼女へ放つが

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

リアス「我夢っ!」

 

アグル「ッ!?」

 

 

ガイアが彼女の前に割り込み、光弾を身体で受け止める。

アグルは一瞬驚くが、すぐに冷静に戻り、再びアグルスラッシュを放とうとするが

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

アグル「ドゥワッ!」

 

 

ガイアがその腕を蹴りあげ、中断させるとアグルと取っ組み合いの体制に入る。

その間にリアスはギャスパーが縛られている紐を解き、彼を解放した。

 

 

ガイア「部長、これを!」

 

 

それを見計らったガイアはアザゼルから託された腕輪をリアスへ投げ渡した。

 

 

ガイア「部長!彼は僕に任せて下さい!さあ、早く脱出を!」

 

リアス「ええ、わかったわ!ギャスパー、これを着けて。行きましょう!」

 

ギャスパー「は、はいっ!」

 

 

ガイアは取っ組み合いながら2人が旧校舎から脱出するのを見届けると、目の前にいるアグルへ視線を向ける。

 

 

アグル「…話し合いで納得しないなら、戦ってわからせるしかないな!」

 

ガイア「望むところだ!」

 

 

そう言うと、2人は睨みあいながら取っ組み合いの体制で窓際の壁を突き破り、地面へ降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイアとアグルが戦っている中、アザゼルとカテレアはグラウンド上空で激しい空中戦を繰り広げていた。

 

2人の実力はほぼ互角…アザゼルは堕天使の武器である光の槍を投擲したり、振るったりして攻撃。

対するカテレアは魔力弾で応戦する。

 

 

アザゼル「おらっ!」

 

カテレア「くはっ!?」

 

 

アザゼルは攻撃の隙を見計らい、カテレアの腹部へ蹴りをいれ、大きく後退させる。

カテレアは苦悶の表情を浮かべながらも何とか体制を整え、墜落するのを防いだ。

 

 

カテレア「アザゼル。平和にうつつを抜かして腕が落ちているかと思いましたが、昔…いや、それ以上の腕前になってますね」

 

アザゼル「けっ、お褒めの言葉光栄だぜ!なら、とっとと降参してほしいんだが」

 

カテレア「ふっ…冗談を……。私がそう易々と降参する覚悟でここに来ていないことは貴方もわかっているでしょう?」

 

アザゼル「だろうな…」

 

カテレア「このまま続けても体力の無駄…ならばこれを使うときがきたようですね……」

 

 

カテレアはそう呟くと、懐から小瓶を取り出す。

そしてそれを握り潰すと、カテレアの体に黒い蛇のようなオーラが纏わりつき、莫大な魔力を放出させた。

 

その変貌にアザゼルは目を丸くする。

 

 

アザゼル「お前…!そりゃあ、まさか!?」

 

カテレア「ふふ……そうです、借りたんですよ。ドラゴン…いや、世界最強と言われる我ら禍の団(カオス・ブリゲード)のトップ、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス』の力の一部をねっ!」

 

一誠「おーふぃす?」

 

 

その名前を聞いた一同は驚く中、一誠は1人「何だそれ?」と首を傾げる。

それを見かねたアザゼルは呆れたようにため息をつくと、一誠に説明する。

 

 

アザゼル「そんなことも知らねぇのか?こいつの言った通り、世界最強と言われるドラゴンだよ。急激に魔力が上がったのは『オーフィスの蛇』…まあ、体の一部を取り込んだからだろうな…」

 

一誠「体の一部だけでこんな力が!?」

 

アザゼル「こんな奴らをまとめるには大きな存在が控えていると思ってはいたが、まさかオーフィスとはな……」

 

 

そう呟きながら鋭い視線を向けるアザゼルへカテレアは勝ち誇ったようにニヤリと口角をあげる。

 

 

カテレア「アザゼル。解説も終わったようですし、そろそろ死ぬ覚悟をしたらどうです?世界最強の力を持つ龍から譲り受けた力、お陰でサーゼクスやミカエル、セラフォルーを充分に倒せる程。貴方に勝ち目はありませんよ?」

 

 

自信満々の様子で小馬鹿にするカテレアの言葉を

 

 

アザゼル「ははっ!何言ってんだか…。他人の力を借りなきゃあ反乱を起こせねぇくせによぉ!」

 

カテレア「…っ何がおかしい!?愚かな総督がっ!」

 

 

アザゼルはそう言って笑い、一蹴する。

カテレアはその態度に怒りで顔を歪ませるが、アザゼルは一切態度を変えず、話し続ける。

 

 

アザゼル「確かに俺は愚かさ……シェムハザや大勢の部下がいなけりゃ何も出来ねぇただの神器マニアだ。だけどな、そんな俺でもこれだけははっきり言える。サーゼクスやミカエル達の方がお前らよりかは『優秀』だ」

 

カテレア「っ!!戯れ言を!良いでしょう……ならばここで、新世界創造の第一歩として、堕天使の総督である貴方を滅ぼす!」

 

 

その言葉で更に顔を歪ませたカテレアは今にも飛びかからんとするような殺気を放つ。

しかし、アザゼルはそんな彼女には気にも止めず、ズボンのポケットから1本の短剣を取り出す。

 

 

カテレア「それは…?」

 

アザゼル「…俺は神器(セイクリッド・ギア)マニアでさ、自分で作ったこともある。こいつもその1つだ。まあ、ほとんどは失敗作だけどな。そう考えたら神はスゲェよな。そこだけはホントーに尊敬できる……」

 

 

アザゼルはそう言い終えた瞬間、彼の持つ短剣が光り輝き、変形を始めた。

その光景にカテレアや一誠、魔術師達が驚く中、アザゼルは

 

 

アザゼル「…禁手(バランス・ブレイク)

 

 

そう呟くと、辺りが閃光に包まれる。

そして、光が収まると、そこにはドラゴンを模した金色の鎧を装着したアザゼルがいた。

 

 

アザゼル「こいつはドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)を研究して作り出した人工神器(セイクリッド・ギア)、『堕天龍の閃光槍(ダウンフォール・ドラゴン・スピア)』。んで、これはその擬似的な『禁手(バランス・ブレイク)』状態――――『|堕天龍の鎧《ダウンフォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》』だ」

 

カテレア「っ…」

 

 

カテレアは先程とは違う、全く強い力を放つアザゼルに言葉を失った。

それもそうだろう。自分が圧倒的有利だと思っていたのにアザゼルが放つ力はそれ以上なのだからだ。

 

アザゼルは右手に持つ槍を尚も驚くカテレアへ向け

 

 

アザゼル「かかってきな…」

 

カテレア「っ!舐めるなァァァーーー!!」

 

 

そう挑発すると、カテレアは莫大なオーラを纏い、アザゼルへ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり、時はカテレアがオーフィスの力を取り込んだ頃に遡る。

ガイアとアグルは旧校舎近くの木々の間を並走しながらお互い手から光弾を撃ち合っていた。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

そして何度目かの光弾合戦で遂にガイアのガイアスラッシュがアグルの肩に直撃する。

アグルが怯んでいる隙にガイアは飛び上がり、急降下しながらキックを見舞うが

 

 

ガシッ!

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

直撃する寸前、アグルはガイアのキックを両手で掴むと、上空へ投げ飛ばした。

アグルは体制を崩したガイアに合わせる様に地面を蹴り、ジャンプする。

 

 

アグル「ツォワッ!」

 

ガイア「グアァァァーー!?」

 

 

そしてガイアの腹部へかかと落としをくらわせると、ガイアは苦痛の声をあげながら地面へ墜落する。

 

 

ガイア「グアァ…!」

 

アグル「…」

 

 

背中から地面へ叩きつけられたガイアへ地上へ降りたアグルが歩み寄ろうとしたその時!

 

 

ゼノヴィア「はぁぁっ!」

 

アグル「ッ!?」

 

ガイア「ハッ!?」

 

 

木陰からゼノヴィアが現れ、アグル目掛けてデュランダルを振り下ろす。

アグルは驚きながらも彼女の剣撃をバク転で回避する。

 

 

ゼノヴィア「我夢に手は出させんっ!うぉぉぉぉーー!」

 

 

ゼノヴィアはすぐに構え直すと、再びアグルへデュランダルを振り下ろす。

しかし、

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ゼノヴィア「何っ!?くっ…!」

 

 

アグルの白刃取りで防がれる。

ゼノヴィアは受け止められたことに一瞬驚くが、何とか刀身を引き抜こうと力を込める。

だが、いくら力を込めてもアグルの両手から刀身は抜けることがなく、びくともしない。

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ゼノヴィア「ぐはっ!」

 

 

アグルは白刃取りの体制のまま、無防備であるゼノヴィアの横腹を蹴る。

吹き飛ばされたゼノヴィアは苦痛の表情を浮かべながらも、吐血しながら木に衝突した。

 

アグルは倒れているゼノヴィアに向かってアグルスラッシュを放とうとするが

 

 

木場「はっ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

今度は木場が飛び出し、聖魔剣を振り下ろす。

アグルは攻撃を中断し、その後も素早いスピードで繰り出す木場の剣撃を次々と避けていく。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

木場「くはっ…!」

 

 

アグルは一瞬の隙を見つけると剣撃を掻い潜り、木場のみぞおちへ拳をいれる。

木場は吐血し、襲いかかる苦痛に膝をつきそうになるが、何とか気合いでこらえ、負けじともう片方の手に魔剣を創造して地面へ突き刺し

 

 

木場「魔剣創造(ソード・バース)ッ!!」

 

アグル「ドゥワッッ!?」

 

 

そう叫ぶと木場を中心に大量の剣が地面から生える様に生成される。

さすがにアグルも予想してなかったのか、胸元から火花を散らし、大きく後方へ吹き飛ぶ。

 

 

木場「今だっ!」

 

ゼノヴィア「おおっ!」

 

 

木場とゼノヴィアはチャンスとばかりに膝をつくアグルに向かって疾走すると、お互いの武器を振り下ろす。

だが、振り下ろす直前。アグルは青い光を発すると、姿を消した。

 

 

木場「消えた!?」

 

ゼノヴィア「上だっ!」

 

 

どこかどこだと辺りを見渡していると、気配に気付いたゼノヴィアが上空へ指を指す。

すると、そこには空中に浮きながら青い球体エネルギーをためるアグルがいた。

 

 

アグル「ホワッ!!」

 

木場「くっ!」

 

ゼノヴィア「ちっ!」

 

 

アグルは地上にいる2人に向かってリキデイターを連射する。

木場とゼノヴィアは降り注いでくる光球の雨をお互いの武器で弾いたり、切断して防ぐ。

 

だが、2人は光球を捌くのは精一杯であり、防ぎもらしたリキデイターに体のあちこちがかすって血が流れており、やられるのも最早時間の問題である。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

それを見かね、復活したガイアはアグルに向かって真っ直ぐ飛んで行くと、アグルの頬に拳をくらわせる。

効果があったのかアグルは怯み、攻撃を中断させられる。

 

アグルはすぐに目標をガイアに変えると、リキデイターを放とうとするが

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「!」

 

 

ガイアが赤い光球を放ち、アグルはリキデイターを放つのを止め、咄嗟に避ける。

すると、赤い光球がアグルの近くの空中で霧散したかと思うと、人一人が入れるくらいの穴が形成された。

その穴からは住宅街や道路といった外の景色が見える。

 

 

アグル「ッ!?」

 

 

「何だ?」と思った瞬間、穴がアグルを吸い込み始めた。

これこそがガイアが放った相手を屋外へ追い出す必殺技「ホーリングフープ」である。

ガイアは充分に戦える場所へ移動させる為、結界に向けて放ったのだ。

 

 

アグル「ドゥワァッ!」

 

 

目論見通り、アグルは徐々に穴に引き寄せられ、結界の外へ追放された。

 

 

ガイア「…」

 

木場「我夢君」

 

ガイア「デェアッ!」

 

 

ガイアは木場とゼノヴィアに「後は任せろ」とアイコンタクトを送ると、穴に飛び込んでアグルの後を追う。

ガイアが通り終えた後、穴はまるで何もなかった様に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイアは先に結界の外へ出たアグルの後を追い、自身も

外へ出たのだが

 

 

ガイア「?」

 

 

どこにもアグルの姿が見えないのである。

物陰か何かに隠れているのか……そう思ったガイアは駒王町の全貌が見える位置まで高く上昇する。

 

町全体を見渡すが、やはり見当たらない。

地上に降りて探そうと思った矢先、ヌッと大きな影がガイア覆う。

 

 

ガイア「!?」

 

 

ガイアは振り向いて見上げると、そこには既に巨大化しているアグルがこちらを見下ろしていた。

 

 

アグル「ツォワッ!」

 

ガイア「グアァァァーー!?」

 

 

アグルはガイアが驚く間もなくその巨大な拳で殴り付ける。

直撃したガイアはその衝撃で変身が解け、真っ直ぐ地上へ墜落していく。

 

 

我夢「(僕は…間違っているのか?アグルの力が本当だとしたら……僕はただ、思い込んでいただけなのか?ウルトラマンは地球と人類、悪魔…みんなを救う光だって………)」

 

 

地上へ墜落していく最中、我夢は自分の行動や考えに疑問を感じていた。

今までみんなの為、地球の為と思って戦ってきたが、藤宮の言うようにそれは地球の意思に逆らっていると……

 

そう自問自答しているうちに、夜景の駒王町にどんどん迫っていく。

 

 

我夢「違う!絶対にアグルは間違っているぞ!」

 

 

我夢は頭の中に浮かんでいる迷いを振り切ると、両腕を真っ直ぐ突きだし

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーーーーー!!!

 

 

そう叫ぶと赤い光に包まれながら、そのまま地上にある廃工場へ墜落した。

 

 

ガイア「グアッ…アァッ…」

 

自分にのし掛かっているコンクリートの瓦礫を掻き分け、ガイアは地上に衝突した衝撃で飛びそうな意識を何とか正常に戻す。

 

 

[ピコン]

 

 

そして胸元を見るとライフゲージが青から赤に替わって点滅している。

ガイアはエネルギーを大量に消費する「テレポーテーション」と「ホーリングフープ」を使ったのに加え、等身大状態で巨大化したアグルの拳を受けた影響でエネルギーを消耗しているのである。

 

 

ガイア「ッ!」

 

 

上空から何かが迫ってくる気配を感じ、ガイアはその気配がする方角を見上げると、上空からアグルが降りてきた。

 

 

アグル「…」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

アグルはガイアを見つけるな否や、彼に向かって右手からアグルスラッシュを連続で放つ。

ガイアは驚きながらも廃工場の道路を次々と放ってくるアグルスラッシュを避けながら必死に走る。

 

 

ガイア「ドアァァァーーーー!!」

 

 

何度目かのアグルスラッシュが地面に当たった際の爆発に巻き込まれ、ガイアは廃工場の建物内へ吹き飛ばされる。

 

建物内に入ったガイアはこれは逆にチャンスだと思い、巨大化しようとエネルギーをこめるが…

 

 

ガイア「グアッ?」

 

 

何故か巨大化できない。

そう、ガイアのエネルギーは大量に消耗しており、巨大化する際に必要な分も残っていなかったである。

 

 

アグル「フォアァァァ…!」

 

 

一方、アグルは建物から一向に出てこないガイアを追跡する為、自身も等身大になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイアは辺りを警戒しながら廃工場内を歩いていた。

何故警戒するのか?それはもちろん、アグルが突然ピタリと攻撃の手を止めたからである。

 

どこから来るかわからない…そんな不安や緊張を感じながらガイアは廃工場を歩く。

 

 

ガイア「ッ!?」

 

アグル「…」

 

 

すると、ガイアの目の前にある通路の物陰からアグルが颯爽と現れる。

ターゲットを見つけた2人は睨み合うと、距離を取りながら間合いを図る。

 

 

アグル「…」

 

ガイア「グアッ!」

 

 

間合いを図りながらアグルが「かかってこい」と言わんばかりに手招きして挑発すると、ガイアは腰を深く落とし、ファイティングポーズをとる。

 

いつかかってきてもおかしくない空気にガイアは緊張が走る……

 

 

ガタッ……ガンッ!

 

アグル「ホワァァァァーーーー!!」

 

ガイア「ダァァァァーーーー!!」

 

 

建物内の天井を支えるコンクリートの柱が地面に落ちた瞬間、2人のウルトラマンの戦いの火蓋が切られた。

ガイアとアグルは相手に向かって駆け出した。

 

 

アグル「デヤァァァーー!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

アグルは通りすがりにかかと回し蹴りを放つが、ガイアはその下を潜り抜け、反撃のハイキックを放つ。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ガイア「デヤッ!ハッ!」

 

 

だが、アグルはそれを両手で防ぐ。

ガイアは続けて右、左とパンチを放つがアグルの両腕で防がれる。

 

 

アグル「ドワッ!ドゥワァッ!」

 

ガイア「グアァァァァーー!!」

 

 

アグルはガイアの両腕を振り払うと、クルリと両腕を回して勢いをつけた掌底をガイアの胸元に叩き込む。

ガイアは苦しげに胸元を抑えながら後退する。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ガイア「ドアッ!?」

 

 

アグルは追い討ちに顎に向かってハイキックをするが、それをガイアは即座に両腕ではたき落とす。

 

更にアグルはすれ違い様にパンチを繰り出すが、ガイアはしゃがみ、脇の間を潜って回避する。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ドォッ!?」

 

 

ガイアは直ぐ様振り返り、アグルの背中に回し蹴りを放つ。

くらったアグルはよろめきながらも段差から落ちるのを回避する為、宙返りし、段差を飛び越えて着地する。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

 

アグルはすかさず上の段にいるガイアへ足払いを仕掛けるが、ガイアは飛び上がり、空中できりもみ回転しながらアグルの背後に着陸する。

 

 

ガイア「デヤッ!ダッ!デュアァァァァーーー!!」

 

 

ガイアは振り向くアグルの腹を蹴り、右の拳で頬を殴り付け、間髪入れず飛び上がり、頬目掛けてかかと回し蹴りを放った。

 

 

アグル「ドゥォワァァァーーー!!」

 

 

アグルは宙を舞いながら大きく吹き飛ばされ、何度も体を地面にぶつけながら、転がっていく。

 

 

アグル「ウウッ…!」

 

 

衝撃が収まり、廃工場の奥まで吹き飛ばされたアグルは膝をついて何とか起き上がる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

その後を追ってきたガイアはすかさずファイティングポーズを構える。

それを見たアグルはゆっくりと立ち上がる。

 

 

アグル「ヌンッ……ツォワッ!!」

 

ガイア「ッ!?グアッ!」

 

 

そして、右腕に力を込めて振り下ろすと、右手から発する青い光剣「アグルブレード」を展開した。

その様子にガイアはよりアグルへ警戒を強める。

 

 

アグル「ッエイ!ツォワッ!!」

 

ガイア「!」

 

 

アグルはアグルブレードを平行に構えると、地面を蹴って跳躍し、肩口目掛けて振り下ろす。

ガイアは咄嗟に前転してアグルブレードの剣擊を避ける。

 

 

アグル「ホワッ!ツォワッ!ドゥワッ!」

 

 

ガイアはフィンフィンと空を斬る音をたてながら次々と繰り出すアグルの剣撃を紙一重でかわしていく。

対抗するには剣を使うしかないが、肉弾戦特化のガイアには光剣を作り出す能力はなく、こうして避けるしかない。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

ガイアは剣擊を回避しながら何とか隙を見付けると、アグルに接近し、アグルブレードを展開している右手を掴み、使わせまいと粘るが

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

アグルに背中を蹴られ、その衝撃で掴んだ手を離してしまう。

ガイアはヨロヨロと怯みながら壁へ追いやられる。

 

 

アグル「ツォワァァーーーー!!」

 

 

アグルはすかさず前方へ飛び上がり、剣先を向けながら接近してくるが

 

 

ガイア「グアァァァァ…デュアッ!」

 

アグル「ウッ」

 

 

ガイアは剣先を避けると、左手で右手首を掴んで光剣を自分から遠ざけると胸元を殴る。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

アグル「ディヤァァァァーーー!」

 

 

そして、怯んで後退した隙を逃さず胸元を蹴り飛ばす。

それにより、アグルは苦痛の声をもらしながら大きく後退し、膝をつく。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァ……!!」

 

アグル「ホワッ!」

 

 

ガイアはすかさずフォトンエッジの体制をとる。

そうはさせまいとアグルはアグルブレードを構えて疾走する。

 

 

ガイア「デュアァァァーーーー!!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

だが、ガイアの必殺技エネルギーをため終えるのが一足先早く、エネルギーをため終えたガイアはフォトンエッジを放ち、アグルブレードをへし折った。

 

 

[テレン]

 

 

その瞬間、アグルのライフゲージは青から赤に変わり、点滅を始めた。

何故あまりダメージを受けていないアグルがライフゲージが赤になったのか?

その理由は彼の使っていたアグルブレードにある。

 

アグルブレードは切れ味が鋭く、威力も高い。

だが、展開する時間が長ければ長いほど大きくエネルギーを消耗するデメリットがある。

それ故、アグルのエネルギーが大きく減り、ライフゲージが点滅を始めたのだ。

 

 

アグル「…」

 

[テレン]

 

 

アグルはアグルブレードが破壊されたことが信じられない様子で自身の右手を見るが、すぐにガイアへ視線を向ける。

 

 

ガイア「…」

 

[ピコン]

 

 

ガイアのライフゲージも先程よりも点滅が速くなっており、アグルもライフゲージが点滅している。

それはもう余りエネルギーが残されてなく、短期決着をしなければならないことを2人に知らしている。

 

 

アグル「ヌンッ…フォアァァァ……!!」

 

ガイア「デヤッ!グアァァァァ…!!」

 

 

2人は決着をつける為、アグルはリキデイター、ガイアはクァンタムストリームの体制にはいる。

 

 

ガイア「デヤァァァーーーー!!!」

 

アグル「ドゥォワァァァ!!!」

 

 

そしてエネルギーをため終えた赤の光線と青の光球が衝突し、ぶつかり合う。

ぶつかり合ったエネルギーは凄まじく、そこから発生した爆風で建物のあちこちに亀裂が走る。

 

ガイア「…デヤッ!」

 

[ピコン]

 

アグル「…ドゥォワッ!」

 

[テレン]

 

 

2人のウルトラマンもこの爆風に巻き込まれ、大きく後退する。

2人のライフゲージは更に点滅が速くなっており、エネルギーが底につきそうなのは明白である。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「ドゥワッ!」

 

 

2人は最後の力を振り絞ると、地面を蹴って真っ直ぐ向かって駆け出すと、飛び上がった。

 

 

ガイア「デヤァァァーーーーーーーーー!!!」

 

アグル「ドゥォワァァァーーーー!!!」

 

 

そして、放たれた2人の飛び蹴りがぶつかり合い、赤と青のエネルギーの嵐が吹き荒れ、建物一帯を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、廃工場だった場所は瓦礫の山となっており、辺りに建物の残骸が散らばっている。

その瓦礫の山に我夢は膝をつき、藤宮は立っていた。

 

だが、2人は満身創痍であり、額から脂汗を流している。

藤宮は意識が遠のきそうな意識を何とか保ち、口を開く。

 

 

藤宮「強くなったな…我夢。しかし、お前は倒す!俺の邪魔をする存在は排除しなきゃな!」

 

 

我夢にそう吐き捨てるように言うと、藤宮はフラフラとした足取りでどこかへ歩き去っていく。

1人残された我夢は脂汗をかき、苦痛に顔を歪めながらも遠ざかっていく藤宮を見つめる。

その心は藤宮への怒りよりもただ虚しさに満ちていた。

 

 

我夢「どうして、ウルトラマン同士が戦わないといけないんだ………どうしてなんだぁぁぁーーーーー!!!

 

 

我夢は誰かに問いかけるように叫んだ。

だが、誰も彼に答えてくれる者はなく、ただただ虚しい叫びが闇夜に響くだけだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、駒王学園でも大きな動きがあった。

人工神器(セイクリッド・ギア)を身に纏ったアザゼルはカテレアを瞬殺し、勝利した。

 

だが、カテレアは最後の足掻きでアザゼルの左腕にとりついて道連れに自爆しようとしたが、アザゼルは何も躊躇いもなく左腕を切断し、カテレアを光の槍で刺して消滅させた。

 

アザゼルの左腕が犠牲になるという痛手ではあるが、解放されたギャスパーが時止めを解除し、残りの魔術師達を撃退し、事なきを得たと思いきや…

 

 

アザゼル「……チッ。この状況下で反旗か、ヴァーリ」

 

ヴァーリ「そうだよ、アザゼル」

 

 

自身が攻撃し、負傷したアザゼルをヴァーリは静かに見下ろしていた。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返った白龍皇ヴァーリ!
強い相手との戦いを渇望するヴァーリはダイナに挑戦する。

次回、「ハイスクールG×A」!
「白の挑戦者(チャレンジャー)」!
お楽しみに!




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第24話「白の挑戦者(チャレンジャー)

前回までの「ハイスクールG×A」!

 

遂に始まった駒王学園で三大勢力による会談!

和平を結び、防衛組織XIG(シグ)の結成を宣言。

そして大昔の大戦の真実が語られ、我夢、一誠、藤宮がウルトラマンの光を託された超古代人の末裔だと知る!

 

順調に進んだと思った矢先、突如現れたテロリスト組織、「禍の団(カオス・ブリゲード)」が会談を襲撃、ギャスパーが捕らえられてしまう!

 

そこで我夢はリアスと共にギャスパーの救出へ向かうが、藤宮と対面…そして対立し、2人の戦いは舞台を変え、激しくぶつかり合い、引き分けで終わった!

 

そして現在!

時間はガイアとアグルが廃工場にて戦っている時まで遡る!

 

 

 

 

 

 

一誠「なっ…!?」

 

 

一誠達は目の前の光景を信じられなかった。

突然、ヴァーリが味方である筈のアザゼルに襲ったのである。

 

 

ヴァーリ「悪いな、アザゼル。こっちの方が面白そうでね」

 

アザゼル「…ったく、俺もやけが回ったもんだ身内がこんなものなんてな……」

 

 

アザゼルは少々傷ついた体を起こしながら、深いため息をつく。

 

 

アザゼル「おい、いつからだ?いつからそういうことになった?」

 

ヴァーリ「コカビエルを回収損ねて帰る途中だ。向こうからオファーを受けてね、それで乗ることにしたんだ。魔術師達やカテレアを結界内に手引きしたのも俺さ……まあ、本当は頃合いを狙ってカテレアと一緒に暴れるつもりだったが、うっかりタイミングが見誤ってね……しかし、俺1人でも充分だと判断してこうして寝返って訳さ」

 

 

ヴァーリは悪気がなさそうに淡々と行き先を話す。

しかし、この会話で完全にヴァーリが敵と分かり、一誠達は身構える。

だが、アザゼルは未だ信じられないのかヴァーリに問いかけ続ける。

 

 

アザゼル「おいおい、『白い龍』がオーフィスの軍門に下るってのか?」

 

ヴァーリ「勘違いするな、あくまで協力だ。オファーを受けたとき、彼らからこう言われたよ、『アースガルズと戦ってみないか?』ってね。その言葉に魅力を感じたよ。未だに現れない赤龍帝を待つより、そっちの方が腕試しも出来るし、より高みへいける………。そんなことを言ったら、アザゼルは『戦争になるからやめろ』と反対するだろうからね」

 

アザゼル「俺は『強くなれ』とは言ったが、『世界を滅ぼす要因は作るな』と言った筈だ」

 

ヴァーリ「俺は永遠に戦えればいい…理由は関係ない」

 

 

何度言っても頑なに意思を変えないヴァーリにアザゼルは残念そうにため息をつく。

 

 

ヴァーリ「…このまま一暴れしても退却してもいいが、その前に楽しみたいことがある」

 

 

そう言うと、ヴァーリはこちらを睨み付け、身構えている一誠へ視線を合わせる。

何を言うのか察したのか、一誠は依然睨み付けたまま、口を開く。

 

 

一誠「…俺と戦いたいって言いてぇのか?」

 

ヴァーリ「そうだ!君は俺と戦う価値があるのさ、ウルトラマンダイナ!…実を言うと中々現れないアグルと戦いたかったが、君でも充分だ!」

 

一誠「けっ…対戦相手の指名どうも。こちらとしては今すぐお縄にかかって欲しいんだがな」

 

ヴァーリ「ふっ、それは無理だな。さっき聞いただろ?俺にはまだやりたいことがあると………。さて、君と戦う前に改めて名乗らせて頂こう―――」

 

 

一誠の皮肉を鼻で笑って一蹴すると、自分の胸に手を当てて名乗った。

 

 

ヴァーリ「――俺はルシファー()()()()()()()()()()だ」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

その名前を聞いた瞬間、皆は目を丸くして耳を疑った。

これにはサーゼクス達も信じられない様子だ。

そんな状況の中、アザゼルが口を開く。

 

 

アザゼル「アイツは正真正銘、初代ルシファーの血を引く者だ。ルシファーと人間である母との間に生まれた混血児で、白龍皇の力は半分人間だから手にいれたんだろうな……」

 

一誠「嘘だろ…アイツ堕天使じゃなかったのかよ!?」

 

木場「しかも、旧魔王の血筋で白龍皇の力を持っているなんて…!?」

 

 

初代ルシファーの血を引く者で、13本の神滅具(ロンギヌス)の中でも強力な部類である『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』の所有者…………充分を通り越したポテンシャルに皆は驚く。

 

 

ヴァーリ「ふっ…」

 

 

一同が驚く中、ヴァーリは背中から広げている白い翼以外に黒いコウモリの様な翼を広げる。

それは間違いなく、悪魔の血を引いている証拠である。

 

 

リアス「嘘よ………。そんな話………」

 

アザゼル「いいや、本当だ。俺は色んな歴代所有者を見てきたが、コイツ程の才能を秘めたやつはいなかった。過去、現在、未来永劫において、最強の白龍皇だ」

 

 

驚愕するリアスにアザゼルは肯定する。

衝撃の事実を告白したヴァーリは驚愕で固まっている一誠へ語りかける。

 

 

ヴァーリ「兵藤 一誠……これは運命だと思わないか?戦争を始めた初代ルシファーを血を引く俺と、戦争を終わらせたウルトラマンの光を受け継いだ古代人の末裔である君。これは偶然じゃなく、定められたものなんだ」

 

一誠「……」

 

ヴァーリ「お互い因縁のある血筋だ。さあ、戦おうじゃないか……?」

 

 

そう提案するヴァーリに一誠は

 

 

一誠「誰がするか、バァーカッ!!」

 

 

そう言いながらあっかんべーと挑発して、一蹴する。

それを聞き、「ほう…」と呟くヴァーリに一誠は話し続ける。

 

 

一誠「ウルトラマンの力は自分の実力を見せ付けたり、自己満足の為に使うもんじゃねぇ……誰かを守る力だ!それに因縁とか血筋とかどうのこうの言ってるけどよぉ~~、第一!今ここでお前と戦う理由はない!!」

 

ヴァーリ「前に初めて会った時にも思ったが、やはり断ると思っていたよ。戦う理由がないなら、こうしよう――――」

 

 

ヴァーリは断られるのがわかっていたのか含み笑いをすると、次の瞬間、とんでもない言葉が彼の口から飛び出した。

 

 

ヴァーリ「―――俺が()()()()()()()()。君は復讐者になるんだ!」

 

一誠「…………は?」

 

 

その言葉に一誠は肩をピクリとさせ、聞き返す。

 

 

ヴァーリ「俺が君の母親を殺すと言ったんだ。そうすれば君は(かたき)である俺と戦わなければなくなる」

 

一誠「――いっ…」

 

ヴァーリ「君のことは色々調べさせてもらった。聞くところ、君の父親は航空自衛隊1の名パイロットで、君が小さい頃から行方不明らしいね。残された君の母親はどうせ老いて死んでゆく………。復讐劇を盛り上げる為に殺された方が父親に会うことができて、一石二鳥になるじゃないか?」

 

一誠「――おいっ…」

 

ヴァーリ「我ながらいい名案だ。そうだ、そうしよう。そうすれば君も絶対―――」

 

一誠「おいって言ってんだよ!くそ野郎っ!!

 

 

ヴァーリの言葉を遮り、一誠が怒鳴る。

その顔は怒りに歪んでいて、普段おちゃらけてる彼とは思えない程だ。

 

 

一誠「てめぇ……自分で何言ってんのかわかってんのか?」

 

ヴァーリ「ああ、わかっている。言葉通り、『君の母親を殺す』。どうしても戦いたくないなら俺は手段は選ばないのさ。そう、こんな風に」

 

一誠「何…まさかっ!?やめろっ!」

 

 

一誠が制止する間もなく、ヴァーリは掌にためた魔力弾をどこかへ向けて放つ。

放たれた魔力弾の進む軌道には木場がいた。

 

 

木場「なっ!?ぐっうぅぅぅ……ぐあっ!!」

 

一誠「木場っ!」

 

 

木場は何とか聖魔剣で防ぐがその強力な衝撃には耐えきれず、大きく後方へ吹き飛ばされた。

 

 

ヴァーリ「ハハハ……どうした?これでも戦いたくないのかい?」

 

一誠「…さねぇ」

 

ヴァーリ「ん?」

 

 

その様子を見て嘲笑うヴァーリに一誠は顔を俯けながら何かを呟く。

ヴァーリは聞き返すと、一誠は顔をあげ

 

 

一誠「許さねぇぇぇぇーーーーーー!!ヴァァァァァーーーーーーリィィィーーーーー!!!

 

 

そう叫ぶと、一誠はリーフラッシャーを前へつきだす。

すると、リーフラッシャーのクリスタル部分が展開し、そこから溢れる光に包まれ、ダイナへ変身した。

 

変身したのを見て、ヴァーリは待ち望んでいたと言わんばかりにマスクの裏で口角をあげる。

そんな彼にダイナは指差し

 

 

ダイナ「ぶっ飛ばしてやるぜ!!そのくだらない目的と一緒にっ!!!」

 

ヴァーリ「調べた通りだな!やはり黙っていられないか!さあ、来い!この俺を楽しませてくれっ!!」

 

ダイナ「ああっ、楽しませてやるよっ!!嫌と言う程になっ!!」

 

 

そう言うとダイナは大地を蹴って飛び上がり、一瞬でヴァーリの懐に忍び込むと、拳を振り上げる。

 

 

ヴァーリ「――っ!?速いっ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ヴァーリ「ぐうっ…!」

 

 

ヴァーリは顔面へ向かってくる拳を咄嗟に両腕を交差させてガードするが、その衝撃は殺しきれず、地上へ落下していく。

 

だが、ヴァーリは地面に衝突する瞬間に翼を広げて何とか立て直すと、地上へ降り立つ。

 

 

ヴァーリ「ははっ!さすがだ!そうこなくては面白くない!……じゃあ、これはどう切り抜けるかなっ!」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

ヴァーリは満足気に笑うと、上空にいるダイナに向かって両手から魔力弾をマシンガンの様に連射する。

ダイナは円形状のバリヤーを展開して、魔力弾を反射しながらヴァーリへ向かって急降下する。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

ヴァーリ「ぐあっ!」

 

 

接近したダイナはバリヤーを解除すると、ヴァーリの顔面を思いっきり殴る。

ヴァーリはマスクにひびが入り、よろよろと後ろへ後退する。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

ダイナは地上に降り立つと、追い討ちにもう片方の拳で殴りかかるが

 

 

ヴァーリ「そらっ!」

 

ダイナ「グッ…!」

 

 

ヴァーリの蹴りがダイナの横腹にささる。

ダイナが横腹に手を当てながら悶えていると、ヴァーリはその場でジャンプし

 

 

ヴァーリ「うりゃっ!」

 

ダイナ「グアッ!」

 

 

ローリングソバットをダイナ目掛けて放つ。

ダイナは地面を滑りながら大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

後方へ吹き飛ばされる中、ダイナは何とか足でブレーキをかけて踏ん張る。

 

 

ダイナ「ハッ!デェアッ!」

 

 

ダイナは負けじと右腕を突きだし、フラッシュバスターを放つ。

青く輝く光線は真っ直ぐヴァーリの向かって行くが、

 

 

《Divide!》

 

ダイナ「!?」

 

 

そんな音声がヴァーリの鎧に付いている宝玉から鳴り響いたかと思うと、突然ダイナは自分の力が抜けた様な感覚を感じると共に放たれた光線の威力も弱まっていく。

 

 

ヴァーリ「ふんっ!」

 

 

当然、そんな攻撃がヴァーリに通用する筈もなく、腕を振うと、光線は青い粒子を撒き散らしながら霧散する。

 

その光景に何故?どうしてとダイナが疑問に思っていると、アザゼルが

 

 

アザゼル「おい、兵藤 一誠!そいつの『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』は1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!おそらく、さっきの攻撃が当たった時に発動したんだろう!」

 

ダイナ「マジかよ…」

 

 

そう言われたダイナは驚きながら余裕満々の様子のヴァーリを見据える。

確かにアザゼルの言う通り、ヴァーリは力が上がった様な気がし、自分の力が抜け落ちた感覚も説明できる。

 

 

ヴァーリ「ふっ…これが『ウルトラマンの力』か!凄い…!何てパワーなんだ!」

 

『ヴァーリ、油断するな。奴は赤いのまとめて一瞬で倒したあのウルトラマンだ。用心しておけ』

 

 

ヴァーリは吸収したダイナの力に歓喜していると、彼の背中から生えている光翼から中性的な声が聞こえる。

その声こそ、神器(セイクリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』に宿る龍の魂、『アルビオン』である。

 

 

ヴァーリ「わかっている」

 

 

ヴァーリはそう一言答えると、翼を大きく広げて、真っ直ぐダイナへ向かう。

ダイナは牽制する為に両手からビームスライサーを放つが、ヴァーリは勢いを落とさず、拳で叩き落としていく。

 

 

ヴァーリ「そらそらそらァァーーーー!!」

 

ダイナ「グッ!?ハッ!」

 

 

接近したヴァーリは目にも止まらぬ速さの拳のラッシュを放つ。

ダイナは拳が当たらぬ様に必死に避ける。

 

 

ヴァーリ「半減させられないように拳を避けてチャンスを伺っているらしいが、いつまで持つかなっ?」

 

 

ヴァーリの言う通り、避けるのが必死で反撃するチャンスがない。

今はフットワークで拳を回避しているが、それも長くは続かない。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

ヴァーリ「?」

 

 

このままだといけないと意を決したダイナは咄嗟にスライディングでヴァーリの足元を潜り抜ける。

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ヴァーリ「ぐはっ!?」

 

 

すぐさま立ち上がると、背後からヴァーリの体を両腕で捕らえ、プロレスのバックドロップの様な技でヴァーリの後頭部を地面に叩きつける。

 

 

ダイナ「ハァァァァ…………デェアッ!」

 

 

続け様にダイナはヴァーリの体を両肩で抱えあげ、その場で回って回転をつけると、前方へ投げ飛ばした。

 

 

ヴァーリ「うぉあっ!!」

 

ドォォォォン!

 

 

飛ばされたヴァーリは大きな衝撃音と共に地面に叩きつけられた。

土煙がグラウンド中に舞い上がる中、ダイナは警戒を強めつつ、一定の距離を保ちながらヴァーリへと駆け寄る。

 

翼を使って立ち上がるヴァーリの鎧には少しひびが入っており、唇を切ったのか、マスクの口元には血が流れている。

 

 

ヴァーリ「ははっ!流石ウルトラマンだ!こんな楽しいとはな……」

 

ダイナ「そいつはどうも……だが、どうやらてめぇの能力は相手の力を奪うしか出来ないセコイ能力だな!当たらなきゃどうってことはないぜ!」

 

ヴァーリ「確かにその通りだ。俺の『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』は拳や蹴り等を通してでしか発動できないチンケな能力さ。しかも君は飛び道具も豊富だ……」

 

 

「だが!」とヴァーリは口元に流れる血を拭いながら言葉を続けると、鎧にあるひびが一瞬で修復した。

 

 

ヴァーリ「()()()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

《Half Dimension!》

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

彼の『神器(セイクリッド・ギア)』からそんな音声が流れ、ヴァーリが新校舎に向けて手をかざすと、新校舎のみならず、周囲に生えている木々がどんどん小さくなっていく。

 

その光景にダイナやリアス達は驚愕していると、ヴァーリは

 

 

ヴァーリ「俺の能力は別に触れなくとも発動できるのさ。しかも相手の力だけでなく、周囲にある物体やら空間を半減できる。もちろん、君のソルジェント光線だろうとね」

 

ダイナ「ッ!」

 

アザゼル「おい、兵藤 一誠!そいつの挑発に乗るんじゃないっ!いくら自慢の光線でもヴァーリには通用しねぇ!」

 

 

ヴァーリの挑発に反応を示すダイナにアザゼルは制止するように呼び掛ける。

だが

 

 

ダイナ「確かに、周りのものを半減させるのは驚いたが、そんなもんで俺がビビるとでも思っているのかよ」

 

ヴァーリ「ふっ」

 

アザゼル「おいっ!」

 

 

ダイナはその挑発に乗った。

そんな彼にヴァーリはマスクの裏で口角をあげ、アザゼルは声を荒げる。

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ダイナは両腕を十字を組み、余裕そうに佇んでいるヴァーリに向けてソルジェント光線を放った。

青く輝く光線はヴァーリ目掛けてまっすぐ飛んでいくが

 

 

《Half Dimension!》

 

ダイナ「!?」

 

リアス「そんな…!?」

 

 

ヴァーリが手をかざすと、光線はあっという間に消滅した。

ウルトラマンの光線をもっても、白龍皇の力には敵わなかったのである。

 

ネオコカビエルだけでなく、ヴァーリまでにも防がれたダイナはショックのあまり立ち尽くす。

 

 

ヴァーリ「唖然としているところ悪いが――」

 

ダイナ「ッ!?」

 

ヴァーリ「――まだ戦いに付き合ってもらう!」

 

ダイナ「グアッ!」

 

《Divide!》

 

 

ダイナは接近してくるヴァーリの拳を顔面にくらい、のけぞる。

それにより『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』の能力が発動し、ダイナはまた力の半分を奪われてしまう。

 

 

ヴァーリ「そらっ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

《Divide!》

 

 

ヴァーリは続け様に顎に向かってハイキックを放つ。

ダイナは辛うじて腕で防ぐが、また『半減』の能力がし、体から力が抜ける。

 

 

ヴァーリ「そらそらそらァァーーー!」

 

《Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!》

 

ダイナ「グアッ!アァッ!」

 

 

ヴァーリは間髪入れずパンチやキックの応酬で攻め立てる。

ダイナは避けたり、腕で防ぐが、どんどんエネルギーが『半減』されていき、『吸収』された力によってヴァーリのパワーとスピードは増していくばかりである。

 

 

ダイナ「(どうすりゃ…どうすりゃ奴をぶっ飛ばせるんだっ!……弱点が!弱点があるはずだっ!)」

 

 

ダイナは攻撃を防ぎつつ、この状況を乗り切る為、弱点を必死に探す。

だが、高すぎる戦闘センスに加え、旧魔王と白龍皇の力……それをヴァーリは持っている。

ダイナはふと、「まさか弱点がないのでは?」という言葉が頭をよぎった時、何かが彼の目にはいった。

 

 

ダイナ「?」

 

 

それはヴァーリの背中にある光翼から僅かに光が外へ放出している光景だった。

その放出活動はヴァーリがダイナのエネルギーを吸収する度にしており、まるで人の呼吸のようである。

 

それに気付いた瞬間、ダイナの脳裏にある仮説が浮かんだ。

 

 

ヴァーリ「そらっ!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

そんなことを思い浮かんだダイナだが、ヴァーリに腹を蹴飛ばされ、地面を転がる。

ヴァーリはそんなダイナを見下ろすと、ため息をつく。

 

 

ヴァーリ「はあ…楽しめるかと思ったが、所詮は一般人…相手にはならなかったか。まあ、少しは楽しめたし、そろそろ終わりにするか」

 

 

そう言うとヴァーリは追い討ちをかけるべく疾走する。

彼が接近してくる中、ダイナは立ち上がる。

だが、

 

リアス「イッセー!何してるの!?」

 

木場「早くっ!早く身構えるんだ!」

 

アーシア「イッセーさん!」

 

 

何を思い付いたのかダイナは身構えず、やる気がなさそうに立ち上がったのだ。

リアス達が呼び掛けるが、ダイナはまるで耳に入ってないのかそのままの姿勢だ。

 

 

ヴァーリ「ふんっ、俺に勝機がないと悟り、戦う気力を失ったか!まるでボクサーの前に立つサンドバッグだぞっ!」

 

アルビオン『終わったか…』

 

 

ヴァーリは不機嫌そうに吐き捨てると、右腕を振り上げ、手刀の形にする。

この様子に誰もが戦うのを諦めたと思うであろう……しかし、『ウルトラマンダイナ』…『一誠』がこの作品の主人公の1人であることを忘れてはいけない!

 

 

ダイナ「(もしも…もしも、この仮説が当たってりゃ……)」

 

 

そう、ダイナは諦めていない!

ダイナは翼が光を放出する現象を見て、思い付いた仮説から反撃の策を考えていたのだ!

 

 

ヴァーリ「そりゃあっ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

遂に近付いたヴァーリは手刀を振り下ろす。

ダイナは素早く後方へ下がって回避すると、何と既に破られた筈の必殺技、ソルジェント光線を放った!

 

 

ヴァーリ「ふんっ、バカの1つ覚えか……くだらん」

 

《Half Dimension!》

 

 

ヴァーリは手をかざすと、光線は再び消滅し、彼に吸収された。

だが

 

ダイナ「デェアッッ!!!」

 

ヴァーリ「しつこいな…俺に光線は通用せんと言っただろうが!」

 

《Half Dimension!》

 

リアス「どうして光線を撃ち続けるの?」

 

 

ダイナはそれでも手を緩めず光線を放ち続ける。

それをヴァーリはあっという間に消滅させ、ダイナは再び放って、ヴァーリが消滅させる………誰がどう見ても敵であるヴァーリを強化させるだけのいたちごっこにしか見えず、リアス達は疑問を抱く。

 

そのループを繰り返していると、ダイナは光線を撃ちながら話しかける。

 

 

ダイナ「ヴァーリ!お前の能力で肝心なのは、その翼にあるようだなっ!」

 

ヴァーリ「…っ!」

 

ダイナ「確かにお前の吸いとる力は強い。だが、どんなものも吸収したら必ず生まれる余分なものは吐き出さなきゃいけない!過剰なエネルギーは身を滅ぼすからなっ!」

 

ヴァーリ「…何が言いたい?」

 

ダイナ「わからないのか?今もこうして吸収している光線をたらふく吸いとり続けたら……!」

 

ヴァーリ「っ!?しっ、しま…!?」

 

バシュュュューーーーーーー!!

 

 

ダイナの言葉に勘づいたヴァーリはすぐに吸収をやめようとするが、もう既に遅い。

ヴァーリの翼から光の粒子のようなものが勢いよく吹き出す。

鎧の宝玉が狂った様に様々な色で点灯しだし、先程までますます強くなっていくヴァーリの力が一気に落ちた。

 

そう、ダイナが考えた策とは、わざと光線を吸収させ、排出しきれない程のエネルギーで暴発させるという作戦だったのだ。

 

その作戦は見事成功し、『神器(セイクリッド・ギア)』の機能は停止した!

 

 

アルビオン『ヴァーリッ!まずい、すぐに立て直せ!』

 

ヴァーリ「くっ、わかってるっ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

一旦距離をとろうとするヴァーリの腕をダイナは逃がすまいと掴む。

 

 

ダイナ「暴飲暴食だな!ヴァーリ!!」

 

ヴァーリ「っ!」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ヴァーリ「ぐほぉあぁぁぁーーーーー!!」

 

 

ダイナは腕を引き寄せると、白く発光化させたもう片方の手でヴァーリの腹部を思いっきり殴りつける。

ヴァーリは血反吐を吐き、鎧が砕け散りながら大きく後方へ吹き飛ばされ、小さくなった新校舎の壁へ叩きつけられた。

 

 

リアス「まさか、半減した力を吸収する能力を逆手にとるなんて……」

 

アザゼル「ああ、しかもほんの数十秒で思い付くとはな……一誠(こいつ)もとんでもねぇ戦闘センスを持ってやがるな…」

 

 

2人はダイナの行動に感服しながら呟いていると、瓦礫の山からヴァーリが姿を現す。

その体は傷ついており、口からは血が流れている。

 

 

ヴァーリ「はっ、ははは!俺をここまで追い詰めるとは!見直したぞ!それでこそ俺の対戦相手だ!」

 

 

ヴァーリがそう言った瞬間、一瞬で鎧を再生させる。

ダイナは身構えるが

 

 

ダイナ「グアッ…!」

 

 

グラッと体がふらつくと、膝をついてしまう。

ヴァーリは苦しげな様子のダイナを見据える。

 

 

ヴァーリ「暴発させる作戦はよかったが、エネルギー不足の様だな。作戦中にどれだけの光線を撃った?おそらく、7~8割ぐらいのエネルギーを消費したんじゃないかな?」

 

ダイナ「…ッ」

 

[ティヨン]

 

 

ヴァーリの言う通り、ダイナはほとんどのエネルギーを光線で使い果たしている。

その証拠に彼のライフゲージは青から赤に変わり、点滅を始めている。

 

 

ヴァーリ「このまま君を倒してもいいのだが、それだと面白くない…………おい、アルビオン。兵藤 一誠に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を見せるだけの価値はあるだろう?」

 

アルビオン『!?』

 

ダイナ「?」

 

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』?

また出た謎の単語にダイナは首を傾げる中、ヴァーリとアルビオンは会話を続ける。

 

 

アルビオン『…ふむ。しかし、我が力に翻弄されるかも知れぬのだぞ』

 

ヴァーリ「問題ない。俺なら出来る」

 

アルビオン『そうか…ならば仕方あるまい。好きにするがいい』

 

ヴァーリ「感謝するよ、アルビオン。『我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし、二天龍なり―――』」

 

《始まったな》

 

《始まりましたね》

 

アルビオンを説得したヴァーリは何か呪文のようなものを呟き始める。

それと同時にノイズかかった色んな男女の声がヴァーリから聞こえる。

 

 

「『無限を妬み、夢幻を想う―――』」

 

《全部だ!》

 

《そう、全てを捧げろ!》

 

 

謎の声が増えていくと共にヴァーリの体にオーラが纏い始め、段々と大きくなっていく。

ダイナは立ち上がり、警戒心を高める。

 

 

ヴァーリ「我、白き龍の覇道を極め―――」

 

《『『『『『汝を無垢の極限へ誘おう!』』』』』》

 

ヴァーリ「『Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)』!!!」

 

 

そう唱え終えた瞬間、ヴァーリは閃光に包まれる。

眩ゆいばかりの光にダイナ達は目を伏せる中、ヴァーリの鎧は変形しながら、巨大化していく。

 

 

ヴァーリ「…これが現時点の俺が持つ最強の姿、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』だ…」

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

光が晴れると、ダイナは目の前の光景に言葉を失う。

ヴァーリは鎧に包まれた巨大な白龍そのものになっており、パワーも先程と比べようにないくらい、格段に上がっている。

 

 

ヴァーリ「さて、楽しませてくれた礼だ。圧倒的な力でねじ伏せてあげよう」

 

 

そう言ったヴァーリは胸元と腹部の装甲を展開させ、中にあるキャノン砲を露出させると、銃口にエネルギーが集まっていく。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

《Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!》

 

 

何かまずいと感じたダイナは右腕からフラッシュバスターを放つが、ヴァーリの『半減』で妨害され、光線は霧散する。

 

ダイナは諦めず、光線や光弾で妨害しようとするが、ヴァーリには届かず、遂に銃口にエネルギーを溜め終えてしまう。

 

 

ヴァーリ「楽しかったよ、ダイナ」

 

ダイナ「ッ!」

 

《Longinus Smasher!!!!!》

 

 

別れの言葉を告げると、ヴァーリは胸元のキャノン砲から、巨大なビームを放った。

ダイナはソルジェント光線で応戦するが、弱っている今の彼では、ビームを押し返す程のパワーはなく、一瞬でかき消される。

 

ビームはダイナを覆い隠すばかりに迫り、

 

 

ダイナ「グアァァァァーーーーーーー!!」

 

ドガガガガァァァァァーーーーーーー!!!

 

 

そして、遂にビームが直撃し、辺りは大爆発した。

爆心地からは周りの建造物を吹き飛ばさんといわんばかりの爆風が発生する。

 

 

リアス「イッセェェーーーーーー!!」

 

 

爆風が収まると、煙が立ち込める爆心地に向かってリアスの悲痛な叫びが響く。

 

 

梶尾「嘘だろ…!?」

 

小猫「イッセー先輩が…!」

 

木場「死んだ…!?」

 

 

オカルト研究部や生徒会メンバーも信じられない表情を浮かべる。

あの強い一誠が死んだ…目の前の光景に驚きを隠せない。

 

 

アーシア「イッセー…さん?」

 

ゼノヴィア「おい、アーシア!しっかりしろ!」

 

 

アーシアに至ってはショックのあまり、意識が遠のきそうになる。

ゼノヴィアが咄嗟に彼女の肩を揺らし、正気に戻させる。

 

そんな彼らの様子を見下ろすヴァーリに、リアスは涙を流しながら睨み付け

 

 

リアス「……よくも…!よくもイッセーを!!」

 

ヴァーリ「彼はこの俺との勝負を受け、それで負けた。もしかしたら今の一撃で死んだかもしれないな。……まあ、いい。彼は立派に戦ったよ。主である君も誇らしく思わないか?」

 

リアス「くっ…!」

 

 

悪気がなさそうに話すヴァーリにリアスは睨み付ける。 

 

本当は今飛び出して戦いたいのだが、相手はウルトラマンを追い詰める程の強敵だ。相手にならない。

リアスはただ、こうして見るだけしかできない自分が悔しいのである。

 

用事を終えたヴァーリはリアス達に背を向け翼を羽ばたかせ始める。

 

 

ヴァーリ「さて、帰るとするか。またな、アザゼル。リアス・グレモリー、次会う時はガイアを――」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

充分に育てておけよ……そう言おうとした瞬間、爆煙の中から赤い何かが彼の頭部を地面に叩きつける。

驚いたリアス達は晴れていく爆煙の方へ顔を向けると

 

 

リアス「イッセー…!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

[ティヨン]

 

 

そこにはヴァーリの後頭部にかかと落としを決めている、見たことのない巨大化した赤い姿のダイナが勇ましく佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はヴァーリが放ったビームがダイナに直撃すれ10秒前に遡る。

ダイナは既に抵抗するのをやめ、これからくる衝撃に身構えた。

 

ダイナ「(俺は諦めない!何の為にウルトラマンになったんだ!!みんなの夢を守る為だろうが!)」

 

 

そう心で言い聞かせるが、ビームはもう既に目の前に近づいている。

避ける程の時間はない。

 

 

ダイナ「グアァァァァーーーーーーー!!(くっそぉぉぉぉーーーーーーー!!)」

 

 

そう悔しげに叫んだ瞬間、彼の脳裏にあるイメージが浮かんだ。

それは砂漠に筋骨隆々の赤いダイナが静かに佇んでいる映像だった。

 

これにかけるしかない!

ダイナは両腕をライフゲージの前でクロスさせると、額のダイナクリスタルが赤く輝き、その赤い光は体全体を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル「ははっ!アイツ、生きてたのか!」

 

ゼノヴィア「見ろ、アーシア!イッセーは生きてたぞ!」

 

アーシア「イッセーさんっ!」

 

木場「イッセー君が死ぬはずない…」

 

 

ダイナの姿を見て、一同は歓喜の声をあげる。

ダイナはそんな彼らを見て、微笑ましく思うが

 

 

ヴァーリ「ぐっ…うぅ…」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

ヴァーリが立ち上がろうとすることに気付くと、ダイナは後方へバックステップして下がる。

立ち上がったヴァーリは打ち付けられた頭を擦りながら、嬉しそうに鼻で笑う。

 

 

ヴァーリ「…ふふっ、生きていたのか。しかし、お前のその姿は……?」

 

ダイナ「これか?んなもん、頭に浮かんだら出来たんだよ。名付けるとそうだな……」

 

 

問いかけられたダイナは顎に手を当てて、しばらく考え込むと

 

 

ダイナ「ストロング、ウルトラマンダイナ ストロングタイプってとこかな?」

 

 

ヴァーリにそう答える。

これがダイナの第3の姿、『ストロングタイプ』誕生の瞬間である。

 

〔推奨BGM:FIGHTING THEME-STRONG-〕

 

 

 

ヴァーリ「ふっ、『ストロングタイプ』か…。まあ、生きていれば良い。第2ラウンドといこうかっ!」

 

 

ヴァーリはそう言うと、地面を蹴り、素早いスピードで接近すると、拳を繰り出す。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

対するダイナも合わせるように拳を繰り出し、2人の拳が衝突する。

衝撃波が拳の間から発生し、辺りが強風が吹き荒れる。

 

この拳のぶつけ合いに勝利したのは

 

 

ヴァーリ「ぐあっ!」

 

 

ダイナだった。

ヴァーリの左の拳を纏っている装甲は砕け、中から血が吹き出している。

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ヴァーリ「ぐべあっ!!」

 

 

怯んだ隙にダイナは赤熱化した拳をヴァーリの顔面を殴りつけると、ヴァーリはマスクに亀裂が入り、そこから血が吹き出しながら大きく後ずさる。

 

 

ダイナ「ハッ!デェアッ!ハッ!」

 

 

ダイナは次々と繰り出すパンチとキックの嵐にヴァーリは身動きがとれず、攻撃される度、彼らの足元に鎧の破片が落ちていく。

 

 

アルビオン『何をしているヴァーリ!早く奴を半減させるんだ!!』

 

ヴァーリ「くっ!」

 

 

ヴァーリは一旦距離を取り、翼を広げると、拳を振り上げて突進してくるダイナに半減の能力を発動しようとするが

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~~デェアッ!」

 

ヴァーリ「ぐほっ!!?」

 

 

その前にダイナの拳が胸部に炸裂し、ヴァーリは火花を散らしながら仰向けに倒れる。

 

 

ダイナ「ハッ!ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~~…!!」

 

 

ダイナは続け様にヴァーリの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領で、高速に回し始めた。

ブォンブォン…と風切り音がなりながら回させるヴァーリの脳内は混乱する。

 

 

ダイナ「――デェアッッ!!!」

 

ヴァーリ「ぐあぁぁぁーーーーー!!」

 

 

ダイナはある程度回すと、ヴァーリを思いっきり投げ飛ばす。

ヴァーリはまっすぐ飛んでいき、旧校舎周辺の森へ激突した。

 

〔BGM終了〕

 

 

 

木場「すっ、すごい…!さっきとは段違いのパワーだ!」

 

アザゼル「ヴァーリがあそこまでやられるとは……」

 

アーシア「イッセーさん…」

 

 

一同はダイナの逆転劇に驚愕していた。

先程まで不利だったダイナが一気に形成を逆転するとは誰も思わなかっただろう。

 

 

ヴァーリ「ぐっ…ぐぐっ…!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ヴァーリはふらふらとした足取りで起き上がると、同時にダイナは握り拳を作った両腕を肩より上に上げた独特の構えで身構える。

 

だが、ヴァーリの鎧はボロボロで、全体に亀裂が入っており、そこから溢れ出た血もかなりの重傷だ。

 

 

ダイナ「…ヴァーリ、降参しろ」

 

ヴァーリ「……ふふっ、もう勝ったつもりかい?そういうセリフは、相手が…完全に倒れた時に言うんだっ!」

 

 

降参を促すダイナの提案を一蹴すると、ヴァーリは胸元と腹部を展開し、中にあるキャノン砲にエネルギーを溜め始める。

 

 

ダイナ「ハァァァァ……!」

 

 

対するダイナは胸の前で拳を合わせ、両腕を左右に回しながら広げると、胸の前に赤色の光球が出現した。

 

2人はお互いに必殺技をぶつけ合い……

「この一撃で決着がつく」と、この場にいる誰もが言葉を発さずとも理解できた。

 

リアス達が見守る中、2人は必殺エネルギーを溜め終え、必殺技の発射体制に入る。

 

 

ヴァーリ「うぉあぁぁぁーーーーー!!」

 

《Longinus Smasher!!!!!》

 

 

ヴァーリは胸元のキャノン砲から巨大なビームを放つ。

しかも、それは最初放った時よりも巨大で、ヴァーリが持てる全ての力を込めている。

 

 

ダイナ「デェアッッッ!!!!!」

 

 

ダイナもヴァーリに合わせる様に、胸元に溜めた赤色の光球を右の拳で殴り飛ばす必殺技、「ガルネイトボンバー」を放った。

 

2人の強力な必殺技はぶつかり合い、接触面からスパークがほとばしり、辺りの大気は震え、風が吹き荒れる。

 

 

ヴァーリ「うおおおおおお!!!」

 

ダイナ「グッ!」

 

 

ヴァーリはビームの出力を上げ、ダイナの光球を押し返していくが

 

 

ダイナ「デェアッッ!!

 

ヴァーリ「なっ!?」

 

 

ダイナがさらに全身に力を込めて叫ぶと、押されてる光球はダイナの思いに答える様に、ビームをぐんぐん押し返していく。

 

ヴァーリは何とか押し返そうとするが、光球はビームを押し返しながら突き進んでいき、遂にはビームをかき消し、ヴァーリに直撃した。

 

 

ヴァーリ「ぐああぁぁぁーーーーーー!!!」

 

ドガガガガガガガァァァァァァーーーーーー!!!

 

 

大きな爆発と共にヴァーリは苦痛の叫びをあげた。

それは辛くもダイナがヴァーリに勝利した瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発が静まり、ヴァーリが立っていた位置からは爆煙が立ち込める。

 

 

ダイナ「…」

 

 

ダイナはそこを見下ろすと、身体中傷だらけのヴァーリが爆心地の真ん中で大の字で倒れていた。

既に彼は気絶しており、意識があったとしても、既に戦える体ではない。

 

ダイナが気絶しているヴァーリをすくいあげようとした瞬間、

 

 

「おっと!そうはさせねぇぜぃ」

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

突然、聞いたことがない男の声が聞こえたかと思うと、空から降りてきた人影が猛スピードでダイナの前を横切りながら、ヴァーリを拾い上げる。

 

ダイナが目で追うと、そこにはまるで西遊記に出てくる孫悟空の格好をした青年…『美猴(びこう)』がヴァーリを腕で抱えていた。

 

 

美猴「ヴァーリ……全く無茶しすぎだぜぃ。まさかお前っちが負けちまうとはな…」

 

ダイナ「…誰だ?」

 

 

気絶しているヴァーリに向かって呟く美猴を見て、ダイナは疑問符を浮かべていると、それを見かねたアザゼルが答える。

 

 

アザゼル「アイツは闘戦勝仏の末裔……お前らが分かりやすい名前で言えば『孫悟空』、西遊記で有名なクソ猿さ。厳密に言えば孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だがな」

 

ダイナ「ッ!」

 

美猴「まあ、そう言うこった。俺っちは仏になった先代より自由気ままに生きるつもりだけどな。よろしくだぜぃ!ウルトラマンダイナ!」

 

 

目の前で気さくに挨拶する美猴こそがあの孫悟空の末裔であると知ったダイナは驚きを隠せず

 

 

ダイナ「じゃ、じゃあ、つまりお前は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カ○ロットか!」

 

ズコーーーッ!!

 

 

そう発すると、美猴のみならず、リアスやアザゼル達もまるでコント集団の様にずっこける。

美猴は腕に抱えているヴァーリを何とか落とさない様に体制を整えると、顔を真っ赤にし、声を荒げる。

 

 

美猴「カ○ロットじゃねぇやいっ!俺っちは美猴だ、び・こ・う!○英社に謝れってんだい!!」

 

ダイナ「あれ…?じゃあ、○沢雅子か?」

 

美猴「違ーーーーうっ!!もっと違う!!まず性別が違うだろうがいっ、性別がっ!!」

 

ダイナ「じゃあ、あいだとってアイデn…」

 

美猴「だあぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

 

次々と飛び出すダイナの言葉に美猴は心が折れたのか、叫び出す。

先程のシリアスな空気から一変したこの混沌とした状況に、リアス達は苦笑いを浮かべる。

 

 

美猴「はぁっ、はぁっ…!」

 

ダイナ「悪い、悪い。俺、人の名前をよく間違えるんだ」

 

美猴「はぁ……こんな奴とまともに会話しようとした俺がバカだった…」

 

 

数秒後。先程まで取り乱していた美猴は落ち着けるように息を整えると、深くため息をつく。

彼が取り乱した原因であるダイナは全く悪気に思ってないが。

 

 

美猴「まあ、ここでヴァーリを渡すわけにはいかねぇ…俺達のチームのリーダーだからな。つうわけでここで俺っち達はオサラバさせてもらうぜぃ」

 

ダイナ「ッ!」

 

美猴「んじゃ、今度は俺っちと戦ってくれよ!じゃあなっ!」

 

 

その言葉にハッと気を取り戻したダイナは美猴を捕まえようとするが、美猴は空から飛んできた筋斗雲の様なものに乗ると、ヴァーリと一緒に夜の闇へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、各勢力のトップは改めて和平協定と対根源的破滅招来体&対テロリスト組織『XIG』の結成を誓った。

 

そして、彼らが学園を修復して帰る間際。一誠がミカエルに「悪魔になったゼノヴィアとアーシアが神に祈る際のダメージを無くして欲しい」と直談判した。

 

確かにシステムの秩序を守る為には彼女らを切り捨てなければならない。

だが、悪魔になってもその信仰心は変わらない……祈るくらいはいいだろうという思いでの直談判だ。

 

結果、ミカエルはそれを快く引き受けた。彼曰く「神を信仰する悪魔が1人2人いても問題ない」とのことである。

一誠は感謝を告げると、各勢力のトップはそれぞれの拠点へ戻っていった。

 

その後、丁度我夢が学園へ戻ってきて、皆は笑顔で迎えいれるが、

 

 

リアス「我夢?」

 

我夢「…」

 

 

我夢はどこか打ちひしがれた様に顔を曇らせていた。

その表情に皆は心配するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。しばらく落ち込んでいた我夢もすっかりいつも通り元気になり、我夢は皆と共に部室へと足を運ぶが…

 

 

アザゼル「つうわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になった。よろしくな!」

 

 

何故かスーツを着崩したアザゼルがソファーで足を交差させながらくつろいでいた。切断された片腕に義手をつけて。

一同は彼が何故いるのかと疑問に思いながら、目をパチクリさせる。

 

 

リアス「…何故、ここに?」

 

アザゼル「ん?ああ、それはな―――」

 

 

一同が驚く中、リアスが問いかけると、アザゼルがこうなった経緯を語り出す。

 

アザゼルはセラフォルーの妹…ソーナに頼んだらこの役職になったそうだ。

最初はソーナも断ろうとしたが、さもないと姉を呼ぶとせがんだら、あっさりと認めてくれたらしい。

 

「いや、それ脅しじゃん!?」と我夢と一誠はさすがにツッコんだ。

 

話は続き、真の目的はサーゼクスから学園に滞在する為の条件を出された。

それは「これから迫り来る脅威に対抗できるよう『XIG』の主な戦力であるリアス達を鍛えて欲しい」というのが条件だ。

 

 

アザゼル「これからは『アザゼル先生』と呼べ!何なら総督でもいいぞ!」

 

 

ガハハと笑うアザゼルを見て、全員は驚きつつも呆れていた。

 

 

 

だが、こうして、頼もしい顧問?が加入したオカルト研究部は外で鳴くセミに負けないくらい、更に賑わいを増した。

 

 

 

 




次回予告

地球を…太陽系を…宇宙を…!
全てを変えていく恐怖の大王アンチマター!

次回、「ハイスクールG×A」!
「反宇宙からの挑戦」!
3人のウルトラマンは、君の明日を救えるのか?








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第25話「反宇宙からの挑戦」

反物質怪獣 アンチマター 登場!


宇宙。我々が住む地球も含まれている太陽系にある木星。

木星軌道上には『トロヤ群小惑星』と呼ばれる、星にも満たない無数の物体がその周りを佇んでいる。

 

すると、ワームホールが出現し、中から球状のエネルギーに包まれた何かが姿を現した。

 

そして、小惑星がその何かにぶつかった瞬間、導火線に火を点けたダイナマイトの様にトロヤ群小惑星達は一斉に爆発した。

 

 

「フォォォ…」

 

 

爆発が静まった後、その何かはどこかに向かって回りながら進んで行く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地球では…

 

 

我夢「あぁ~~…!」

 

 

授業を一通り終えた我夢は回転椅子に座ったまま、腕を上へ伸ばし、背伸びする。

彼がいるここ、パソコン室では先程まで授業をしており、簡単なプログラミングの授業を行っていたのだ。

 

この授業は我夢にとっては小学1年生の算数に等しい難易度だが、一誠はちんぷんかんぷんでわからなかったのである。

授業後、一誠に教えてくれと頼まれた我夢は今日は部活は休みということもあって、ゆっくりと時間をかけて教えた。

 

ちなみに一誠は用事があるので職員室に行っており、パソコン室には我夢1人である。

 

 

我夢「ふぅ…暇だし、何か見るか……」

 

 

我夢はだらしなくしていた体を元に戻すと、パソコンから無料動画再生サイト『Mou tube』を開き、何かを検索する。

 

検索結果に出てきた画面を見て、我夢は微笑む。

 

 

我夢「またチャンネル登録者数が増えたな~」

 

 

我夢が検索したのは、現在爆発的人気を誇るチャンネル、『パムパムネット』である。

 

投稿内容はウルトラマンの戦いを記録した動画や商品のレビュー動画等である。

この何ともないチャンネル……実は何を隠そう、一誠の使い魔である()()()()()()()()()()()()チャンネルである。

 

ジオベースが調べた結果、ハネジローは小学2年生程度の知能はあるらしく、パソコンの使い方も我夢のを見て覚えたそうだ。

 

その見た目の可愛さや動画の面白さも相まって、人気急上昇中である。

 

 

我夢「…さて、今日はこれを見ようかな」

 

 

我夢はチャンネルを開くと、ウルトラマンの戦いを記録した再生リストをクリックし、動画を視聴し始める。

動画には今まで戦ってきた怪獣との戦いが次々と流れる。

 

 

ガイア『デヤッ!』

 

アグル『ホワッ!』

 

ダイナ『デェアッ!』

 

我夢「…」

 

 

静かに動画を眺める我夢の心は複雑だった。

藤宮とは考え方の違いでぶつかり合いながらもきっと、地球を救う者として一緒に戦ってくれるだろうと信じていた。

 

だが、藤宮とは溝が埋まるどころか深まり、数日前の襲撃で、完全に対立することになってしまった。

現在、藤宮は三大勢力間でも『禍の団(カオス・ブリゲード)』とは違うテロリストとして指名手配されている。

 

 

我夢「はあ…」

 

 

我夢は困ったようにため息をつく。

こうなってしまった以上、今後、アグルとの戦いは避けられない。

だが、アグルは強い。この前は引き分けだったが、それでもやっと引き込めたといった感じだ。

今度会ったときは前回の様な展開にさせない様にきっと、アグルはパワーアップしていることだろう。

 

 

我夢「強く…もっと強くならないと……」

 

 

そう呟いた我夢は居ても立ってもいられず、立ち上がる。

動画へ視線を向けると、丁度ガイアが怪獣に向かって必殺技『フォトンエッジ』を放とうとする場面だった。

 

 

ガイア『デュアッ!』

 

我夢「でゅあっ!」

 

 

何を思ったのか、我夢は動画に映るガイアに合わせて、フォトンエッジの体制をとり始める。

 

 

ガイア『グアァァァァァ……!』

 

我夢「ぐあぁぁぁぁぁ…!」

 

 

そして、かがんだ姿勢から額に当てた腕ごと上体を起こすプロセスを行った時、

 

 

小猫「何…してるんですか?」

 

我夢「あっ」

 

 

声がした方へ顔を向けると、いつの間にいたのか、ジト目でこちらを見つめる小猫と目が合い、我夢は固まる。

出入口への扉は開いており、そこから入ってきたようだ。

 

 

我夢「い、いつから?」

 

小猫「…我夢先輩が椅子から立ち上がったところからです」

 

我夢「あ、ああ…そうなのね。それでどうしてここに?」

 

小猫「ジオベースの樋口さんが我夢先輩を呼んでるから、部長が連れてきてと…」

 

我夢「樋口さんが?また、何かあったのかな…?」

 

 

そう聞いた我夢は必殺技の体勢を解くと、何だろうと考え始める。

また、怪獣関連でなければと心の中で願うばかりだ。

 

 

小猫「ところで…本当に何してたんですか?」

 

我夢「あっ、いや…!練習だよ!必殺技のさ!ほら、いざって時に出せなかったら困るだろ?そう、そうだよっ!そうに違いない!あ、あはは…!」

 

 

我夢は恥ずかしげに顔を赤くし、あせあせしながら答える。

いい歳した高校生なのに、まるで朝のヒーロー番組を見ている子供の様にマネをする。

見られたのが後輩…しかも女の子。これは誰でも恥ずかしいものだ。

 

小猫は呆れた様にため息をつくと、

 

 

小猫「そうですか…。見たのが私で良かったですけど、もし、事情を知らないだったら『いい歳こいた高校生なのにまだ幼稚なことしてるの?』って思われますよ。もっと周囲のことを考えてください」

 

我夢「うっ…!い、以後、気を付けます……」

 

小猫「…わかったなら、行きますよ」

 

 

小猫の毒舌混じりの説教を受けた我夢は申し訳なさそうに反省すると、小猫に連れられ、パソコン室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「失礼します」

 

小猫「失礼します…」

 

リアス「来たわね」

 

 

小猫と一緒に部室に入ると皆揃っており、壁際に投影されたスクリーンを囲って座っていた。

ちなみに職員室にいた一誠もここにいる。

 

スクリーンに映っているジオベースのメインチーフの樋口は我夢に気付くと、微笑みながらお辞儀する。

 

 

《樋口「高山さん、こんにちは。よく来てくださいました」》

 

我夢「こんにちは。ところで僕に用事って…?」

 

《樋口「はい、まず、その用件を話す前に皆さんにお伝えしなければならないことがあります」》

 

我夢「?」

 

 

真剣に話す樋口の言葉に一同は何だろうと疑問に思っていると、スクリーンに何かの地図が表示される。

 

 

《樋口「これは現在、我々が調査して判明している太陽系全体を表した地図です」》

 

リアス「ええ、わかるわ。それがどうかしたの?」

 

《樋口「…実は先日、観測センターからの知らせで、土星付近にあるトロヤ小惑星帯が一瞬で消滅しました」》

 

『!?』

 

 

小惑星が一瞬で消える……我夢以外専門知識を持ってないリアス達もこの異常事態に驚く。

 

 

一誠「それで、原因は…?」

 

《樋口「はい、原因は付近に発生したワームホールから出現した巨大物体によるものです」》

 

我夢「(また怪獣か…)」

 

 

それを聞き、破滅招来体の仕業だと一同は納得する。

我夢は自分の願いが打ち崩され、顔を曇らせる。

 

 

リアス「それで、どんな怪獣なの?」

 

樋口「はい。怪獣が出現した際に発生したガンマ線バーストの発生量から考えると、『反物質』で構成されるものだと思われます」

 

リアス「反物質?」

 

 

リアスが問いかけると、樋口は頷き、説明を始める。

 

 

樋口「我々が住むのが正宇宙だとしますと、そこ

で構成される物質は正物質。それとは質量とスピンが全く同じでありながら、真逆のバリオン数を持っているのが反物質です。反物質は正物質とぶつかると爆発を起こすと言われ、宇宙創世記に起きたビッグバンも―――」

 

『?』

 

樋口「あ…」

 

 

専門用語が次々と出てくる樋口の解説に我夢除く一同は頭の上に疑問符を浮かべる。

それを見かねた我夢は困っている樋口に変わり、リアスに問いかける。

 

 

我夢「部長。物質にある原子核はプラスである陽子、マイナスである電荷、そして中性子で構成されることは授業で習いましたよね?」

 

リアス「ええ、確かに習ったわ」

 

我夢「それで反物質は原子核が陽子がマイナス、電荷がプラス、中性子は反中性子で構成されるもので、物質の質量や見た目は同じですが、中身は違うんです。簡単に言えば、僕達が住む宇宙とは真逆…鏡合わせみたいなものです」

 

 

我夢の説明にリアス達は各々納得した表情を浮かべる中、一誠はあっ!と声をもらし

 

 

一誠「じゃあ、反物質のギャスパーはマジもんの女ってことか?」

 

ギャスパー「…っ、な、なな、何で僕を例に出すんですかぁぁーー!?」

 

一誠「そっちの方がわかりやすいって思って。それより

お前、いい加減女装やめろよ」

 

ギャスパー「い、嫌ですっ!これが僕の正装なんです!」

 

一誠「うるせっ!何が正装だ!その服、ひっぺがしてやる!」

 

ギャスパー「嫌ぁぁぁーーーーー!!!ひっ、引っ張らないで!!止めてくださいぃぃぃーーーーーー!!」

 

アザゼル「はぁ……おいおい、お前ら落ち着けよ。それにイッセー、お前の例えは間違ってると思うぞ…」

 

 

ドタバタするギャスパーと一誠にアザゼルは呆れた様にため息をつきながら、制止させる。

 

 

木場「樋口さん。反物質の怪獣は今、どこにいるんですか?」

 

《樋口「現在、反物質体は移動を始め、一週間後にはこの地球に到着します」》

 

我夢「一週間…!」

 

 

一週間…長い様だが短い限られた期間。

しかも、相手は反物質。今まで相手をしたことがない未知の存在だ。下手な対処は出来ない。

 

 

アザゼル「なあ。もしよぉ、正物質のこの地球に反物質が接触したら、どうなる……?」

 

 

部室に緊張が走る中、アザゼルが問いかけると

 

 

《樋口「…恐らく、この地球……いや、太陽系そのものが消滅する大爆発が起きます」》

 

『!?』

 

 

その衝撃的な答えに、一同は固唾を飲む。

おそらく、リアスの滅びの魔力やサーゼクスやミカエルが迎撃しても、たちまち大爆発してしまうだろう。

 

じゃあ、どうするか?一同は不安になっていると、樋口は

 

 

《樋口「今、我々は世界中から選りすぐりの科学者を集め、対反物質変換装置を開発しています。ですが、思ったよりも時間がかかっており、一週間内に間に合いそうにないんです。そこで、高山さん、ならびに皆さん。ぜひ、あなた方のお力を貸してほしいんです!」》

 

 

そう懇願する樋口に、我夢とリアスは

 

 

我夢「わかりました」

 

リアス「大丈夫よ」

 

《樋口「本当ですか!?」》

 

 

もちろんOKである。

それを聞いた樋口は目を輝かせ、問いかける。

 

 

我夢「当然じゃないですか。樋口さんにはお世話になってますし、何より…僕達、地球を守りたいという同じ気持ちを持った仲間ですよ。協力させて下さい!」

 

リアス「ええ、私も我夢と同意見よ。それに私達も対破滅招来体組織を結成したから、早速初任務といこうじゃない!」

 

《樋口「皆さん…ありがとう!ありがとうございます!」》

 

 

涙ぐみながら感謝する樋口に一同は微笑む。

こうして、人類と異種族による一週間の共同作戦が開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一週間後。

地球近くの宇宙空間には、宇宙空間でも行動できる最新鋭のG.U.A.R.D.戦闘機が迫ってくる怪獣に備え、数機滞空している。

 

戦闘機のミサイル発射口には、我夢達とG.U.A.R.D.がかき集めた科学者が協力して作成した『反物質変換装置』が備えられている。

作戦としては対反物質変換装置で怪獣のバリオン数を変換して正物質にし、その後一斉攻撃で迎撃するというものである。

 

その様子を各国のG.U.A.R.D.支部、地上で待機しているチームリザード、リアス達もモニターから息を飲んで見守る。

 

 

「フォォォ…」

 

 

そして、遂に反物質怪獣が宇宙の闇から姿を現した。

その体は二枚貝の様にピッチリ折り畳まれており、反物質であることを表しているのか、不気味な桃色のオーラを纏っている。

 

その名も反物質怪獣『アンチマター』である。

 

 

《樋口「デルタチーム、迎撃を開始せよ」》

 

『了解!』

 

 

樋口の合図と共に、デルタチームは向かってくるアンチマターへ一斉に対反物質変換装置からビームを照射する。

だが…

 

 

バチィィィ~~~ン!

 

「なっ!?」

 

『!?』

 

 

アンチマターは球体状のバリアで体を包むと、ビームを弾いた。

不測の事態に隊員達は驚きながらも、何度もビームを照射するがバリアに阻まれてしまう。

 

 

アンチマター「フォォォ…」

 

 

戦闘機部隊の奮闘虚しく、アンチマターは地球へ降りていく。

その光景をデルタチームの隊長は悔しげに歯を噛み締めながら、無線越しに本部へ伝える。

 

 

「こちらデルタチーム。対反物質変換作戦、失敗しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦失敗の知らせに我夢達やG.U.A.R.D.がショックを受けている中、アンチマターはバリアに包まれながら、地上に降り立つ。

最悪なことに、そこは我夢達が普段生活している駒王町である。

 

 

アンチマター「フゴォォォ…」

 

 

アンチマターはピッチリと閉じていた体を開くと、その正体を現す。

それはまるで目と角がついたヒトデの様だ。

 

 

ワッシッ!ワッシッ!ワッシッ!

 

 

アンチマターは角を振るうと、バリアを周囲に広げ始める。

すると、バリアが通った建造物はたちまち反物質化したていく。

 

 

『わあぁぁーーー!』

 

『逃げろぉぉーー!』

 

『わぁぁぁぁぁぁ!!』

 

『きゃあぁぁぁぁ!!』

 

 

次々と反物質化していく光景にまなま当然、人々はパニック状態になり、バリアから離れる様に逃げ出す。

 

 

瀬沼「皆さん!こちらです!」

 

「押さないで!」

 

「焦らないで、落ち着いて!」

 

 

G.U.A.R.D.の隊員とチームリザードは必死に住民の避難誘導を行うが、それでも手一杯だ。

 

 

我夢「そんな…」

 

小猫「町が…」

 

 

橋の上から眺めていた我夢達、グレモリー眷属+アザゼルはパニック状態の人々と次々と反物質の世界へと変えられていく光景を悔しげに眺めていた。

 

 

一誠「くそぉーー!」

 

アザゼル「よせっ!」

 

 

そんな中、居ても立ってもいられない一誠は懐からリーフラッシャーを取り出し、変身しようとするが、アザゼルに止められる。

 

 

アザゼル「ウルトラマンの質量を考えろ!バリアの広がりを無視して突入したら、大爆発が起きるぞ!!」

 

一誠「…っ!じゃあ、どうすりゃいいんだよっ!」

 

アザゼル「っ、それは…」

 

 

一誠の問いかけにアザゼルは言葉を詰まらせる。

総督として、数多の戦いを指揮してきた彼も流石に反物質相手に有効な案が浮かばない。

 

まさに手詰まり。絶対絶命。八方塞がり。

我夢達がそうこうしていると、

 

 

「全員、揃っているようだな」

 

『!?』

 

 

背後から明らかにこちらに向かって話しかける声が聞こえた。

一同は声のした方へ振り向くと、

 

 

一誠「藤宮!」

 

ギャスパー「ヒィィィィーーーーーーーー!!?」

 

 

そこにはウルトラマンアグルこと、藤宮がいた。

彼を見た瞬間、ギャスパーはよっぽどひどい目にあったのか、体をガクガク震わせながら、我夢の後ろへ隠れてしまう。

 

 

ゼノヴィア「藤宮 博也…!」

 

木場「こんな時に…!」

 

我夢「待ってくれ、皆!」

 

 

彼の姿が視線に入った我夢以外の全員は、一斉に身構える。

そんな一同に我夢は手で制止すると、藤宮に問いかける。

 

 

我夢「藤宮、どうして君がここに?何か奴について知っているのか?」

 

藤宮「ああ。宇宙創世の時、反物質より物質がわずかに多かった為、今の宇宙ができたと言われている。そのため、反物質は異次元に封印されてしまった。アンチマターは、地球全体を反物質にしてシールドを消す……正物質と反物質が接触した際に起きる対消滅を利用して、第2のビッグバンを引き起こそうと企んでいるだろう」

 

『!?』

 

我夢「何だって!?」

 

 

アンチマターの大規模な目的に一同は驚く。

もし、それが本当だとすれば、この世にある全ての生物、それどころが宇宙そのものが消滅してしまう。

 

 

藤宮「もう一度サイコロを振り直せば、2分の1の確率で反物質の宇宙が出来るんだ」

 

アザゼル「奴は宇宙を作る直すつもりか…」

 

 

アザゼルの呟きに藤宮は頷く。

アンチマターの野望を何が何としても阻止しなければならない。

しかし、有効策が思い付かない。未だ展開しているバリアに攻撃しようとなれば、それでこそ一貫のおしまいだ。

悩む一同に藤宮は口を開き

 

 

藤宮「方法ならある」

 

『!?』

 

我夢「その方法って?」

 

 

その言葉に一同は目を見開き、暗闇に閃光がはいる様な感覚が走った。

我夢が問いかけると、藤宮は語り出す。

 

 

藤宮「アグルのパワーでウルトラマンのバリオン数を反転させれば、反物質ウルトラマンになれる。兵藤、我夢…お前らどちらかを反物質化させ、シールド内に入って、奴と戦う。そこのヴァンパイアが『神器(セイクリッド・ギア)』でシールドの侵食を阻止してくれば尚更だがな……」

 

ギャスパー「ひぃっ!」

 

 

藤宮と目が合ったギャスパーは小さな悲鳴をあげ、更に我夢の後ろへ隠れてしまう。

確かにこの作戦なら、アンチマターを何とか出来るかも知れない。

だが…

 

 

リアス「…いい策かも知れないわ。だけど、私たちがそう簡単に貴方の言うことを信じると思うの?」

 

一誠「そうだ!罠のニオイがプンプンするぜ!」

 

 

2人の言う通り、藤宮は信用出来ない存在…ましてや三大勢力間で指名手配されている要注意人物だ。

自分達をはめる為の嘘かも知れない。

 

すると、藤宮はフッと鼻で笑い

 

 

藤宮「自分の領地をまともに管理できない領主が考えるよりも、よっぽどいい方法だと思うがな」

 

リアス「なっ!?」

 

一誠「てめぇっ!!」

 

ゼノヴィア「よせっ!ここで争っても意味がないぞ!」

 

アーシア「イッセーさん、落ち着いて下さい!」

 

 

そう不敵な笑みを浮かべながら言うと、カチンときた一誠は藤宮に飛びかかろうとするが、ゼノヴィアとアーシアに止められる。

 

 

藤宮「どうする?我夢」

 

 

不穏な空気の中、藤宮は我夢に顔を向け、問いかける。

その藤宮の提案に我夢は

 

 

我夢「…わかった。その方法でいこう」

 

『!?』

 

一誠「マジかよ、我夢!?」

 

 

承諾の返事を返すと、リアス達は目を丸くする。

一誠はそのメンバーの中でも信じられなさそうな顔をしている。

我夢はそんなリアス達に顔を向け

 

 

我夢「確かに彼のことは信じられないし、罠の危険性もある。だけど、こんなことをわざわざ僕達に話すってことは自分の力だけじゃ解決できないと知り、僕達に協力を求めているとも考えられるんだ」

 

木場「なるほど…自分で出来るならとっくにやってるだろうし…」

 

我夢「藤宮。アグルの反物質化させる能力は自分では出来ない……だから僕達に協力を頼みに来た、違うかい?」

 

 

我夢がそう問うと、藤宮は肩をすくめ

 

 

藤宮「察しがいいな、我夢。その通りだ。アグルの反物質化光線は自分じゃ出来ない。せいぜい他の1人に照射するのが限界だ。しかし、そうやって地球の危機は見過ごす訳にもいかんからな……」

 

 

藤宮の目的はあくまで地球を救う為だ。

太陽系そのものを破壊されると知っては黙ってられないだろう。

そう答えた藤宮は我夢と一誠に顔を向ける。

 

 

藤宮「作戦についてだが、反物質化したウルトラマンがどうなるかは保証できない。さあ、どっちがやる?」

 

我夢「僕がいこう!」

 

『!?』

 

一誠「我夢!?」

 

 

藤宮の提案にいの一番に我夢は名乗りをあげる。

不安な顔を浮かべるリアス達に我夢は微笑み

 

 

我夢「大丈夫さ。僕に何があっても一誠がいるから。それに彼も必ず戻してくれる」

 

藤宮「…いいのか?もし俺が気まぐれを起こし、お前を元に戻さなければ、お前は反物質の世界に留まるしかなくなる。それでもいいのか……?」

 

一誠「そん時はてめぇをぶん殴る!」

 

 

怪しげな笑みを浮かべる藤宮は一誠の言葉にフッと鼻で笑う。

そうこうしている間にも町の反物質化は進んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋の上には3人のウルトラマンがリアス達に見守られながら横一列に並び、目の前に広がる反物質空間を見据える。

藤宮は横にいる我夢に顔を向け

 

 

藤宮「反物質化したら、すぐにシールド内にワープしろ!わかったな!」

 

 

その言葉に我夢は真剣な表情を浮かべながら静かに頷く。

そして、3人は改めてアンチマターの方へ顔を向け、それぞれの変身アイテムを構える。

 

 

我夢「…」

 

藤宮「…」

 

一誠「…」

 

 

我夢はエスプレンダーを真上へ突き上げ、藤宮はアグレイターを顔の横で掲げ、一誠はリーフラッシャーを正面へ突き出す。

赤、青、白…3人はそれぞれの光に包まれ、ウルトラマンに変身した。

 

変身した3人はすぐさま、アンチマターが展開していくシールドの真上の上空に移動する。

 

 

アグル「ガイア!いくぞっ!」

 

ガイア「…ッ」

 

アグル「アァァァァ……!ドゥワッ!」

 

 

アグルは胸元にエネルギーを溜めると、それをガイア目掛けて放つ。

 

 

ガイア「グアッ」

 

 

そのエネルギーを受けたガイアは不思議な感覚に一瞬驚くが、そのまま受け止め続けると体が反物質化し、『反物質ウルトラマン』となった。

 

 

ガイア「…」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

ガイアとダイナはお互いサムズアップを交わすと、ガイアはアンチマターが待ち構えるバリア内にテレポートした。

 

 

朱乃「ギャスパー君、今ですわよ」

 

ギャスパー「はいっ!」

 

 

朱乃の合図を受けたギャスパーは意識を集中させる。

すると、侵攻を続けていたバリアはピタッと停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンチマターが展開したバリア内にテレポートしたガイアは辺りを見渡すと、反物質に包まれた町並みの空間は歪んでいて、空気が重苦しく感じる。

そして、その中央にはバリアを展開した張本人であるアンチマターが佇んでいる。

現在、バリアの展開はギャスパーが時を止めて阻止しているが、それも長くは持たない。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアは地面を蹴る様に駆け、アンチマターに接近すると、体の真ん中に右、左と拳を叩き込み、右足で脇側を蹴る。

 

 

ガイア「グアァァァァ…!デヤッ!」

 

 

続け様にアンチマターの体を持ち上げ、前方へ投げ飛ばす…

 

 

ガイア「!?」

 

アンチマター「フゴォォォ…」

 

 

が、この反物質空間の影響なのか、あまり勢いが出ず、ゆっくり飛んでいく。

当然、アンチマターは楽々と宙返りし、地面に着陸すると、2本の角から放つ光弾がガイアを襲う。

 

 

ガイア「グアァッ!!」

 

 

直撃したガイアは後方へ吹き飛ばされると、近くにあったビルに衝突する。

アンチマターが迫ってくる中、ガイアは何とか体を起こし、身構えるが

 

 

ガイア「!?」

 

 

地面に崩れ落ちる筈の瓦礫は何故かバリアの外へ向かって飛んでいく。

もし、反物質化した物体がバリア外に出たら間違いなく爆発が起きる…。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアはガイアスラッシュを連射し、瓦礫群を破壊する。

これでひと安心と思いきや、注意を逸らしていた隙にアンチマターは目の前に来ていた。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

アンチマター「フゴォォォ…」

 

 

ガイアは再びアンチマターの体の中心に拳を放つが、アンチマターはそのまま体を折り畳み、ガイアを挟み込み、電流を流す。

 

 

ガイア「グアァァァァァァァーーー!!」

 

 

ガイアの苦痛の叫びが空間に響く。

何とか体を動かして脱出を試みるが、アンチマターの挟み込む力は強く、中々抜け出せない。

 

 

ガイア「グアッ…?」

 

 

ガイアが苦戦する中、停止していた筈のバリアが動き出した。

それは遂にギャスパーの体力の限界が来たことを知らせていた。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァ…!」

 

 

時間がない…。そう思ったガイアは渾身の力を込め、体を赤く発光させながら、両腕を広げようと動かす。

すると、今までビクともしなかったアンチマターの体が開いていく…。

 

 

ガイア「ダァァーーー!!」

 

 

そして、両腕を伸ばし、アンチマターの体を完全にこじ開けると、バク転で距離を取る。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ドガガガァァァーーー!!

 

 

体制を立て直すと、直ぐ様ガイアはクァンタムストリームを放つ。

アンチマターの頭頂部にある2本の角を破壊し、飛散した肉片はバリアの一部を突き破り、外へ飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリアの外で待機しているダイナとアグルは突然、バリアの一部が破れたと同時に出てきたアンチマターの肉片に警戒していた。

爆発するだろうが、多少の被害はやむを得ない…。

ダイナとアグルが攻撃しようとしたその時!

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

アグル「!」

 

 

宇宙空間にいた筈のG.U.A.R.D.戦闘機部隊デルタチームが颯爽と上空から姿を現した。

デルタチームは「それは俺たちの仕事だ!」と言わんばかりに、反物質変換装置を次々と発射し、アンチマターの肉片をあっという間に物質に変換した。

 

 

ダイナ「…」

 

アグル「…」

 

 

通りすぎる彼らにダイナは感謝、アグルは感謝と認めたくない思いが混ざりあった複雑な気持ちで視線を送ると、ダイナはビームスライサー、アグルはアグルスラッシュで肉片を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンチマター「フゴォォォ……」

 

ガイア「デュアッ!?」

 

 

2本の角が破壊されたアンチマターは観念したのか、体を閉じ、地球に飛来したきた姿に戻る。

これを好機とみたガイアは接近しようとするが、突然空間が歪み、足がとられる。

 

何かの物音が上空から聞こえ、ガイアは見上げると、先程飛散した肉片が出ていった穴から反物質エネルギーが漏れ、段々とバリアが狭まってきていた。

このままだと、物質に触れて大爆発が起きてしまう。

 

 

アグル「ツォワッ!」

 

 

その危機に、外にいるアグルは穴に向かって左手から光線を放ち、穴を塞いだ。

 

 

[テレン]

 

[ティヨン]

 

[ピコン]

 

 

 

それと同時に3人のライフゲージが赤に変わり、点滅を始めた。

 

 

アグル「…」

 

ダイナ「…」

 

ガイア「…デュアッ!」

 

 

ガイアは2人にアイコンタクトを取ると、助走をつけてまっすぐ飛ぶと、ピッチリと体を閉じているアンチマターをバリアごと抱え上げ、3人は上空へ上昇していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「ン"ン"~~~…ハッ!」

 

 

そして、宇宙空間に到達すると、ダイナはミラクルタイプにタイプチェンジし、自分達の進行方向に小さなブラックホールを形成した。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

ガイアはその小さなブラックホールにアンチマターを投げ入れると、アンチマターはみるみる吸い込まれていき、ブラックホールの闇に消えた。

 

 

アグル「ホアッ!」

 

 

アンチマターが完全に見えなくなったことを確認したアグルは、右腕から放つ光線でブラックホールの口を塞ぎ、消滅させる。

こうして、地球をおびやかしていたアンチマターの脅威は去り、ダイナとガイアは嬉しげに顔を見合わせる。

 

 

ダイナ「やったな!」

 

ガイア「ああ!……さあ、ビームを!」

 

アグル「…」

 

 

ガイアの頼みにアグルは何故か考え込む様なしぐさを取る。

どうしたんだと2人は思う中、ガイアはバリアに突入する前に藤宮が発した言葉を思い出した。

 

 

(藤宮「もし、俺が気まぐれを起こし、お前を元に戻さなければ、お前は反物質の世界に留まるしかなくなる」)

 

 

もし、その言葉の通りにアグルが気まぐれを起こしたのなら、ガイア…我夢は永遠にこの宇宙をさ迷わなければならない。

 

 

ダイナ「おい、お前まさか…」

 

アグル「…」

 

 

ダイナもそれに気付いたのか、アグルを見据える。

そんな緊迫した空気の中、アグルが下した決断は…

 

 

ガイア「…ッ!」

 

ダイナ「!」

 

 

アグルは胸元に溜めたエネルギーをガイア目掛けて放つと、ガイアの体は元の正物質に戻る。

アグルはガイアのバリオン数を変換させ、ガイアを見捨てることなく、助けたのだ。

 

 

ガイア「…ありがとう」

 

アグル「…」

 

ダイナ「ふぅ…」

 

 

ガイアはアグルに感謝し、ひと悶着あるのではと思っていたダイナは緊張が抜け、肩を撫で下ろす。

 

アンチマターを再び宇宙へ追放することに成功した3人のウルトラマンは地球に帰還するのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球。夕暮れに包まれる駒王町の橋にリアス達がいた。

地球に帰還した我夢と一誠はリアス達と合流し、わいわいと談笑している。

 

話の内容は主に反物質空間はどうだった?という我夢に対する質問を始め、彼らを支えた影の立役者であるギャスパーを称賛するものだった。

皆に褒められたギャスパーは照れ臭そうに笑っている。

 

我夢はそんな楽しげなムードに包まれていると、橋の向こう岸に藤宮がこちらを見つめていることに気付いた。

我夢は皆から離れ、藤宮のもとへ駆け寄る。

 

 

我夢「…藤宮。もし、君がいてくれなかったら、」

 

 

我夢は感謝の言葉を告げると、頭を下げる。

我夢の言う通り、藤宮の提案がなければ、この太陽系は消滅し、自分や仲間達も助からなかっただろう…。

そんな彼に対して、藤宮は

 

 

藤宮「勘違いするな。俺は地球の危機を救っただけだ」

 

 

そう冷たく突き放す様に告げると、藤宮は我夢達に背を向けてどこかへ歩き去っていく。

リアス達が不安そうな顔で我夢を見つめる中、我夢は遠くなっていく藤宮を見て、呟く。

 

 

我夢「今は争うしかないかも知れない…。けど、僕は信じている。同じ地球の子なんだから……」

 

 

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告)

ふるべ村に現れた怪獣『バオーン』の鳴き声を聞けば、みんな眠くなる。
かくして、創設間もないXIGによる前代未聞の怪獣捕獲作戦が始まった!

次回、「ハイスクールG×A」
「遥かなるバオーン」
お楽しみに!







良かったら、感想&コメントよろしくお願いいたします。


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第五章 冥界合宿のヘルキャット
第26話「遥かなるバオーン」


催眠怪獣 バオーン 登場!


夏――蝉がひとしきりに鳴くこの季節。

都会の学生達は1学期が終わり、夏休みに突入した。

 

夏休みといえば、海や山など自然、花火大会といった夏でしか味わえない風物詩を堪能するものだ。

そして、一部の人にとっては新たな出会いや別れ、もしくは奇妙な体験を経験するだろう。

 

これは駒王町からはるか遠くに位置する、とある田舎の村に起こったひと夏の出来事である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふるべ村の乙吉(おときち)老人は、その日も大好きな畑仕事に精を出していた。

 

 

ザッ…ザッ…ザッ…

 

乙吉「えいっ、しょっと…」

 

 

麦わら帽子を被り、いかにも農夫の格好を着て、乙吉はくわを手にせっせと畑をたがやす。

暑い日差しを受け、身体中は汗まみれだが、その顔は穏やかである。

 

今日もいつも通り何も変わらないゆったりとした1日が訪れる…。乙吉はそう思いながら、畑をたやがしていると突然、裏山に空から赤い物体が墜落した。

 

その衝撃で、大地は震え、木々は揺れる。

乙吉は地響きに足元がふらついていると、近くにある木になっている柿が落ち、地面や彼の頭の上に落ちる。

 

 

乙吉「んあ?」

 

 

何だろうと一瞬思ったが、特に気にする必要もないと思考を切り替えると、畑仕事を再開する。

すると、慌てた様子の彼の孫が駆け寄ってきた。

 

 

「乙吉じいちゃーーーん!裏山に隕石が落ちてきた!」

 

乙吉「…んしょ、しょっと」

 

 

孫は大声でそう言うが、乙吉はその声が聞こえてないのか畑仕事を続けている。

乙吉は耳が遠いのだ。

孫はもっと近くに寄り、肩を揺らしながら大声で呼び掛ける。

 

 

「じいちゃーーーーーーん!」

 

乙吉「ああ?」

 

う・ら・や・ま・に!い・ん・せ・き!!

 

 

乙吉の耳元に向かって、大声でそう伝えるが

 

 

乙吉「ああ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、駒王町ではいつもの様に朝早く起きた一誠は日課であるランニングしようと身支度をしていた。

 

未だ寝ているリアスとアーシアを起こさぬ様、ゆっくりと寝室のドアを開け、廊下へ出た。

ドアをゆっくり閉め、さあ行こうかと思ったが、少し気がかりになることが彼の足を止めた。

 

 

一誠「あれ?俺の部屋ってあんな広かったっけ?」

 

 

一誠は疑問に思った。いつも、いつの間にかベッドに入ってくるリアスとアーシアと一緒に寝ている。

だが、あくまで1人用のベッドだ。3人ともなると、体を密着しなければならない。

 

だが、今日はどうだ?起きた時は2人は相変わらず自分にくっついているが、ベッドは大分余裕があり、それどころか部屋全体が広く感じた。

 

 

一誠「廊下もこんなんだっけ?」

 

 

そして今、視界に映っている廊下も自室同様、距離が長くなっており、50メートル走も余裕に出来そうだ。

一誠の家は2階建てだが、窓から見える景色はその高さで見えるものじゃない。

 

 

一誠「…っ!?ま、まさか!」

 

 

何かに気付いた一誠は何段にもなってる階段を急いでかけ降り、靴を履き、玄関を飛び出る。

そして、振り返ると驚きのあまり、目を見開いて叫んだ。

 

 

一誠「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

彼の視線に映る自宅は日頃見慣れている2階建ての一軒家ではなく、豪邸と呼ぶべきと相応しい屋敷がそびえ立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから場面は変わり、上空を飛ぶヘリ。

そのヘリは『G.U.A.R.D.』が所有するもので、機体内には何故か一誠、我夢、朱乃、アーシアの4人が乗っている。

 

実は、彼らが所属する対破滅招来体兼対テロリスト組織『XIG』は、『G.U.A.R.D.』のエリート組織ということになっている。

メンバー、装備、施設…諸々不明点が多く、G.U.A.R.D.上層部からは怪しがられたが、サーゼクスや樋口の助力もあり、何とかごまかせている。

 

4人は早速『XIG』としての依頼が届き、墜落した隕石を調査するべく、ふるべ村へ向かっている。

 

 

我夢「しっかし、驚いたよ。イッセーの家が豪邸になってるなんてさ」

 

 

ヘリコプターで上空を飛んでいる中、4人の話は兵藤家の増築についての話題に持ちきりだ。

何でも「眷属同士仲良くさせる=一つ屋根の下で生活させる」というサーゼクスの提案により、一晩で増築・改装したそうだ。

もちろん、一誠の母の承諾済みである。

 

新しくなった兵藤家は地上6階、地下3階の大豪邸で、地上階は居住スペースで、地下はトレーニングルームや巨大なスクリーンが設置されているシアタールーム、サウナ付きの大浴場等も付いている。

しかも敷地は前の倍…それ以上になっており、それに伴って、庭も一般家庭のものとは思えないスケールになっている。

 

 

我夢「そういや、お隣さんとかどうしたの?」

 

一誠「ああ、サーゼクス様が『平和的』な方法で引っ越してもらったらしい。…まあ、詳しくは教えてくれなかったけどな」

 

我夢「『平和的』って……」

 

 

意味深な言葉に我夢は不安しか感じず、苦笑いを浮かべる。

 

 

我夢「外からしか見てないけど、中は話以上に凄いんだろうな~~…あっ、今度遊びにいっていい?」

 

一誠「いいぜ!ていうか、我夢専用の部屋もあるし」

 

我夢「うそっ!?本当に?」

 

一誠「ああ、『我夢君も眷属だからね』ってサーゼクス様がわざわざ用意してくれたんだぜ」

 

我夢「そうなんだ。あぁ~…楽しみだなぁ~~」

 

 

まだ見ぬ新・兵藤家内に我夢は胸を踊らせていると、何か思い出したのか、「あっ」と声をもらす。

 

 

我夢「そういや、朱乃さん。まだイッセーの家に行ってないみたいですが、引っ越す予定はないんですか?」

 

 

実は、我夢は一誠の話を聞いている中、朱乃がそのことを初めて知った様な顔をしているのに気付いたのだ。

眷属ならば、彼女も引っ越すのが当たり前だ。

我夢にそう問いかけられた朱乃は

 

 

朱乃「ええ、今のところはイッセー君の家にお世話になる予定はありませんわ」

 

我夢「え」

 

 

その返答に更に疑問符を浮かべる我夢に朱乃は「ですが…」と言葉を続けると

 

 

朱乃「近いうちに()()()()()()()()()にお邪魔させていただく予定ですわ♪」

 

我夢「そうなんですね~」

 

 

そう言い、頬を赤く染めながら我夢をチラチラと見て答える。

一誠とアーシアは朱乃の様子を見て、彼女が我夢に好意を抱いているのがわかった。

 

 

一誠「(マジかよ。朱乃さんが…)」

 

アーシア「(我夢さん、良かったですね…)」

 

 

少々科学オタク気味な我夢にもついに春が…(今の季節は夏だが)。2人はそう心の中で我夢を祝福するが、当の本人はというと、

 

 

我夢「(()()()()って…誰だろう?)」

 

 

朱乃の好意に全く気付いておらず、彼女が言った“気になる相手”が誰なのかと考えていた。

勉強ばかりしてきた天才少年には、乙女の恋心というものはわからないのだ。

 

 

「もうすぐでふるべ村に着きます!」

 

 

そうこうしていると、操縦席に座っているヘリの運転手から到着の知らせが聞こえた。

報告を受けた4人はヘリがゆっくりとふるべ村近くの地上へ降下を始める中、身支度を整える。

 

そして、身支度を整え終えると同時にヘリは地上へ降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上へ降り立った4人は早速、調査先のふるべ村へ向かって歩いていた。

田舎特有の整備されてないコンクリート道路を歩きながら、4人は話していた。

 

 

我夢「でも、良かったですよ。落ちた場所が村外れの裏山で」

 

朱乃「ええ、そうですわね。近くに民家もなかったようですし♪」

 

アーシア「ああ、これも今は亡き神のご加護なのですね…」

 

「「「痛っ!?」」」

 

アーシア「すっ、すみません!私、つい…!」

 

 

自分とゼノヴィア以外の悪魔が聖なるものを見ると、アレルギーが反応することをうっかり忘れていたアーシアは、頭痛に苦しむ3人に謝る。

 

3人は苦笑いながら、いいよいいよと彼女をなだめた。

 

 

一誠「しっかしよ~、この隊員服。中々イカスじゃねぇの?」

 

我夢「うん。この服、ただカモフラージュに使えるだけじゃなくて、防寒・耐熱にも使えるしね」

 

一誠「アザゼル先生も粋な計らいするよなぁ~」

 

 

そう。現在、我夢達が着ているのはいつもの駒王学園の制服ではなく、アザゼルが用意した『XIG』専用の隊員服だ。

 

ちなみにそれぞれ、我夢と朱乃が着ているのは青、黄色、灰色という配色、一誠は黒とグレーを中心とした配色、アーシアは白をベースに赤、灰色の配色が入った隊員服で、4人の背中にはそれぞれの名前がローマ字で書かれている。

 

何故彼らがこの派手な服を着ているかというと、人間界では、『G.U.A.R.D.』屈指のエリート組織として名が通っている『XIG』。防衛組織であるはずの我夢達が学生服なんて着てたら、怪しまれるのが当たり前だ。

 

なので、今後『XIG』として、活動しやすくする為にアザゼルや他のニ勢力のトップも協力して隊員服を作成したのだ。

これは余談だが、我夢と朱乃が着ている隊員服はサーゼクス、一誠が着ている隊員服はアザゼル、アーシアが着ているのはミカエルがそれぞれデザインしたものである。

 

 

アーシア「あっ!あれを見てください!」

 

「「「!?」」」

 

 

そうこうしていると、アーシアが何かを見つけ、指を指す。

4人はその指の指す方角へ視線を向けると、目を丸くした。

そこには村の住民と思わしき人々が辺り一面に倒れていたのだ。

 

 

朱乃「とりあえず、異常がないかを確認しますわよ」

 

「「「はい!」」」

 

 

4人はさっそく手分けして、住民を起こすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

一誠は早速、民家で倒れている老婆のもとへ駆け寄る。

 

 

一誠「おばあちゃん!おばあちゃん!」

 

「……んあ?ふぁぁ~~…」

 

 

一誠は肩を軽く揺らしながら呼び掛けると、老婆は起き、まるで今まで寝ていたかのように目をこすりながら大きなあくびをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

「……ん」

 

 

一方、桟橋の方で倒れている釣り人の男に向かっていったアーシアも同じ様に肩を揺すって呼び掛けると、釣り人の男は目を覚ましたが

 

 

「うわっ!?」

 

アーシア「きゃっ!?」

 

 

顔を覗きこむアーシアに驚きの声を出すと、その声でアーシアも驚き、尻餅をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢も村の住民達の探索をしていると、自転車に乗ったまま、木にもたれ掛かって気絶している駐在を見つけた。

 

 

我夢「駐在さん!?ちょっ、駐在さん!大丈夫ですか!しっかりしてください!」

 

 

急いで駆け寄った我夢は傾いている自転車を起こしながら呼び掛ける。

すると、

 

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

我夢「うおぉぉぉ!?」

 

「うわぁぁぁぁあぁあぁぁ!!」

 

我夢「あっ…」

 

 

目覚めた駐在は混乱しているのか、大声を出しながら自転車にまたがるが、当然、バランスを崩して自転車ごと倒れた。

 

駐在は頭を抑えながら体を起こし、我夢の顔を見ると、目を見開き、口を開いた。

 

 

「…あっ!もしかして、あなたが最近、噂で有名な『XIG』さんっ!?」

 

我夢「はい……あぁっ、あの!?一体、何があったんですか?」

 

 

我夢は彼の様子に呆気にとられてたが、ハッとなると、駐在に問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の住民を全員起こした我夢達は、状況を確認する為、村人達と共に一誠の待つ民家へ向かったのだが、

 

 

朱乃「()()()()()()?」

 

 

朱乃は信じられない様子でそう問いかけると、駐在は頷く。

 

 

朱乃「いいですの?村中の人達が気絶をしていたんですよ?それなのに、どうして気絶したのか()()()()()()()()()んです?」

 

「いやぁ、なんとも……いやはや…」

 

 

そう呟きながら理由がわからず困る駐在を見て、我夢達も更に疑問が膨らむ。

 

 

「裏山に隕石が落っこったのまでは覚えているんだけどなぁ」

 

「そんだ!こりゃあ珍しいことだで!是非とも見に行くべと」

 

『んだんだ!』

 

 

帽子を被った老人の言葉に村人達は口々に頷く。

それに便乗して、駐在も敬礼をし、

 

 

「本官も隕石を調査せねばならんと、自転車に飛び乗りまして……」

 

我夢「で、そのまま気絶したと…」

 

「……」

 

 

続け様に言われた我夢の言葉に駐在は恥ずかしさのあまり、言葉を無くす。

そんな2人をよそに、一誠は村人達にたずねる。

 

 

一誠「ほらぁ、気絶する直前に何か見たとか…?」

 

『う~ん…』

 

一誠「じゃあ、何か聞いたとか?」

 

 

その質問に先ほど一誠が起こした老婆が何かを思い当たりあるのか、一誠の腕にちょんちょんと手を当てる。

 

 

「何か、妙な音が…」

 

一誠「妙な音?」

 

「おぉ、音がしとったな!」

 

「なぁ!」

 

 

老婆の言葉がきっかけに、村人達は思い出したのか、肯定のリアクションをとる。

 

 

朱乃「どんな音を聞いたんですの?」

 

「確か遠くでぇ…“ラッパ”の音がしたようなぁ…」

 

アーシア「ラッパ?」

 

「いやぁ~、あれは“ホラ貝”の音じゃった」

 

朱乃「ホラ貝?」

 

「いぇいぇ!ありゃあ、“太鼓”の音だぎゃあ!」

 

一誠「太鼓?」

 

「思い出した!」

 

 

村人達の証言の違いに我夢達は首を傾げていると、大きな声をもらす駐在へ皆は注目する。

 

 

「ありゃあ、“火山の噴火”の音じゃ!」

 

我夢「火山の噴火…ですか?」

 

 

確かにこの近辺の自然環境を考えれば、今まで出た証言よりも有力だが…

 

 

「駐在。裏に火山はなかろうが」

 

「ラッパなら小学校にあるでなぁ?」

 

 

またも証言の違いに皆は首を傾げ、村人達は口々にあぁじゃないかこうじゃないかと仮説を唱え始める。

 

 

一誠「我夢、ちょっといいか?」

 

我夢「ん?」

 

 

そんな中、一誠は声をかけながら我夢を引っ張ると、村人達の輪から離れる。

どうしたんだと我夢は疑問の顔を向けると、一誠はコソコソと話す。

 

 

一誠「スッゴイ真面目な話なんだけど、ひょっとしたら村人全員………なんか悪いもんでも食ったんじゃねぇのか?毒キノコとか」

 

我夢「え?でも、それで集団幻覚ってのは考えにくいし…」

 

 

じゃあ、何なんだろう?そう考えていると

 

 

「XIGさぁぁぁ~~~~~ん!」

 

 

遠くから走ってくる男性の声が聞こえ、一同は顔を向ける。

その男は先ほどアーシアが起こした釣り人である。

 

 

「見た人がおりますぅ」

 

朱乃「どなたですの?」

 

「乙吉じいさんが見たって言うて…」

 

一誠「何を見たんです?」

 

 

その問いかけに釣り人の男はにっこりと微笑み、こう言った。

 

 

「怪獣」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢達は早速、怪獣を見たと証言する乙吉老人のもとへ向かった。

事情を説明すると、乙吉は歩きだし、くわが立て掛けられている壁の前まで来ると、皆が気絶する前の出来事を語りだした。

 

 

乙吉「わしが一仕事終えてぇ…ここにぃ、立っとりますとなぁ……」

 

朱乃「ええ…」

 

乙吉「そりゃあ、大きな怪獣がのぉ…山の間を歩いておったんじゃ……」

 

我夢「おそらく、あの隕石と一緒に来たんでしょう」

 

 

乙吉の証言から考えた我夢の推測に皆は頷く。

確かにその推測通りだと隕石が落下した時の時間帯が合致する。

 

 

一誠「その怪獣は何かしませんでしたか?こう、何か妙な音なんかが…」

 

 

一誠は乙吉老人にそう問いかけるが

 

 

乙吉「はぁい。82になりますぅ」

 

一誠「え?」

 

我夢「いや、そうじゃなくて…」

 

「ちょっと失礼」

 

 

的外れな回答をする乙吉に我夢達は困惑していると、見かねた駐在が乙吉に駆け寄り、耳元で聞こえる様に大きな声で

 

 

と・く・しゅ・な・音・を・出さなんだかのぉ~~~~~!!

 

 

一誠に代わってそう問いかける。

だが

 

乙吉「わしがぁ?」

 

『いやいやいや…』

 

か・い・じゅ・う~~~~!!

 

 

またもや的外れの回答に一同はズッコケそうになるが、続けて駐在が問いかける。

すると、

 

 

乙吉「えんやぁ…ただ、大きなあくびをぉ。ほぉ、ほら、あの通り」

 

『!!?』

 

 

乙吉が指を指す方角を見ると、一同は目を見開いた。

そこには眠たそうな目をした怪獣『バオーン』が山の間から顔を覗かせていた。

 

駐在は驚いて腰を抜かし、我夢達は身構えようとするが

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

『ッ……』

 

乙吉「ど、どうなされた皆さん!?」

 

 

鼻からガスを出した後にそう鳴くと、乙吉老人以外、全員は糸が切れた人形の様に倒れ、眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「何ですって!?眠らせ怪獣……バオーン?」

 

 

その後、一誠とアーシアをふるべ村に残し、ひと足先に駒王学園の旧校舎に戻った朱乃と我夢はふるべ村に起こった出来事について報告していた。

 

 

朱乃「はい。私と我夢君、それと残してきたイッセー君とアーシアちゃんも身をもって体験しましたわ。バオーンの鳴き声を聞くと、みんな一発で眠ってしまうんです」

 

木場「じゃあ、村の人達が聞いたって言うラッパの様な音は、バオーンの鳴き声だったんですね」

 

朱乃「ええ、バオーンはまだ落下の衝撃でぼんやりしているらしく、今のところはおとなしくしてますわ」

 

リアス「やっかいね…」

 

 

バオーンの能力に皆は驚きを隠せないでいると、朱乃の報告をよそで聞いていたアザゼルは声を唸らせ、呟いた。

 

 

アザゼル「うぅ~む。ひょっとするとそいつはぁ……“史上最強の怪獣”かもしれねぇな」

 

木場「どうしてですか?」

 

アザゼル「眠っちまえば、どんな相手だろうが誰も攻撃できなくなるからな、うん」

 

リアス「はぁ…」

 

 

間違いない。そう納得するアザゼルにリアス達は各々、呆れた表情を浮かべると、バオーンの対策について考え始める。

 

 

リアス「まずは、バオーンを鳴かせないようにすることだけど…「出来たっ!」」

 

 

そんな中、先ほどまでずっと何かを作っていた我夢の嬉しげな声が部室に響く。

皆はそちらへ視線を向けると、我夢が目を輝かせながら、手に持っている配線がついたヘッドホンのようなものを皆に見せる。

 

 

我夢「新発明ですよ~!バオーンの鳴き声の周波数データをもとに製作した自動音声変換調整器―――名付けて、『声変わり』!」

 

ゼノヴィア「声変わり?」

 

我夢「うん、対バオーン用の兵器さ。使えば…わかる」

 

 

そう言いながら、我夢は半信半疑気味のゼノヴィアに声変わりを耳に装着させる。

 

 

木場「それで、一体どんな効果――「あっはっはっはっはっは!!」――ゼノヴィア!?何が可笑しいんだい?」

 

 

木場が声を出した瞬間、突然笑い出したゼノヴィアに我夢以外、全員呆気にとられる。

 

 

ゼノヴィア「あっはっはっはっははははは!!」

 

我夢「はは、よいしょっと」

 

 

我夢は未だに腹を抱えて笑っているゼノヴィアから声変わりを外し、テーブルに置いてスピーカー部分を分解し、中のスピーカーを取り出す。

 

 

我夢「つまりですね、これを付けますと…周波数が変換されて、違う声に聞こえるんです

 

『あっはははははは!!』

 

 

スピーカーに向かって話しかけた我夢の声が甲高くなり、一同は笑ってしまう。

 

 

我夢「ま!これさえあれば、バオーンの鳴き声聞いても、心配する必要ありませんよ」

 

アザゼル「すげぇじゃねぇか!」

 

朱乃「あらあら、さすが我夢君ですわ♪」

 

我夢「いやぁ~それほどでも~」

 

 

我夢が皆に誉められて照れていると、

 

 

「ウン!素晴ラシイ!」

 

『?』

 

 

突然、聞いたことがない声が聞こえ、皆は振り返ると、そこには頭にターバンを巻き、探検隊の様な服を着たアラビア人の男性が立っていた。

 

誰だろう?と皆が首を傾げていると、事情を知っているリアスが彼の横に立ち、紹介する。

 

 

リアス「紹介するわ。こちら、国際シンポジウムのため来日中のムスタファ・アリ博士よ」

 

 

そう紹介されると、アリは微笑みながらペコリと我夢達にお辞儀する。

 

※シンポジウム…聴衆を集め、あるテーマについて何人かが意見を述べ、参加者と質疑応答を行う形式の討論会のこと。

 

 

 

我夢「ムスタファ・アリってあの!?」

 

小猫「…天才動物学者のアリ博士?」

 

アリ「皆サン、ヨロシク下サイ♪」

 

 

世界でも有名な学者の登場に皆は驚く。

それもそうだろう。この日本にある1学園に突然現れたのだから。

 

 

リアス「彼は人間なのだけど、もちろん悪魔の味方だわ。動物学者としての彼の研究が今回の怪獣対策に大きく貢献していることは、皆も知ってるわよね………。そこで、彼のかっての希望もあり、今回の私達の作戦行動に同行することになったの」

 

我夢「え!?ちょっ、大丈夫なんですか!?」

 

 

これは怪獣絡みの事件である。彼は人間だ。

同行なんてすれば、安全の保証はない。

不安そうな表情を浮かべる一同にアリは

 

 

アリ「皆サン。ワタクシ、今、怪獣ノ“コミュニケーション”ヲ研究シテマス。」

 

我夢「コミュニケーション?」

 

 

その通りだとアリは指を立てると、言葉を続け

 

 

アリ「怪獣ニモ人間ト同ジク、好キナ色ヤ音楽ガアリマス」

 

『うんうん』

 

「バオーンハ暴レテナイ。バオーンハ優シイ。デモ私ハ、バオーントノ心、通ジ合ワセタインデス。デモ、村デノ研究ハ、トテモ迷惑。トテモ危険デス」

 

ゼノヴィア「当たり前だ」

 

 

そう言い放つゼノヴィアを我夢達は「やめろ」とアイコンタクトをとる。

だが、アリは「ヒ~ッヒッヒッ♪」と我夢達の不安を消し飛ばすかの様に笑うと、

 

 

アリ「デスカラ、私ハバオーンヲ、アラスカニ運ビタインデス。ソコデ友達ナリマス、研究シマス♪」

 

リアス「…と言う訳よ」

 

 

ニコニコと笑うアリに不安を感じながらも、断る理由もないので、我夢達はOKを出すしかなかった。

 

こうして、XIG始まって以来の怪獣捕獲作戦が開始されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山中でぼんやりとしながら座っているバオーンをアリは遠くから双眼鏡で眺める。

ちなみに断ったアリ博士以外、オカ研メンバーは『声変わり』を装着している。

 

バオーンの様子を観察して、今なら安全と確認したアリは木場に指示を出す。

 

 

アリ「黄色」

 

 

木場は手に持った大きな黄色の旗を左右に振るうが、バオーンは反応を示さない。

 

 

アリ「駄目ネ。青プリーズ」

 

 

その指示を受けた木場は黄色の旗を地面に置き、今度は大きな青い旗を左右に振る。

だが、これも反応を示さない。

 

 

アリ「青も駄目ネ…。次、赤プリーズ」

 

 

木場は青い旗を置き、先ほどと同じ様に大きな赤い旗を左右に振る。

すると、

 

 

バオーン「…!」

 

 

何となく赤い旗を見た瞬間、先程まで眠たそうだったバオーンの目が冴える。

牛が赤を見て興奮すると言われているように、怪獣であるバオーンもどうやら赤に興奮するようだ。

 

 

アリ「ワォ♪赤デス!赤ニ反応シマシタ!ハハハッ♪」

 

木場「我夢君、赤色だ。フックワイヤー作戦開始!」

 

《我夢「了解!」》

 

 

木場から連絡を受けた我夢は、腕に着けている腕時計型小型通信機『XIGナビ』で一誠に連絡する。

 

 

《我夢「イッセー、出番だ。赤だ」》

 

一誠「ラジャー!」

 

 

我夢からの連絡を受けた一誠は準備に取りかかる。

一誠の役割は、バオーンが反応した色の風船を持ち、特定の位置まで誘導することだ。

 

早速、赤色の風船を探すのだが…

 

 

一誠「あれ?」

 

リアス「どうしたの?」

 

 

荷物の中や近くの物陰を探すのだが、一向に見当たらない。

その様子に心配になったリアスとアザゼルは近寄る。

 

 

一誠「…いや。赤いバルーンを忘れちゃいまして」

 

リアス「えええ!?」

 

アザゼル「嘘だろ!?」

 

 

それを聞いたリアスとアザゼルは驚く。

作戦の要であるバルーンを、しかも赤色だけを忘れてしまったのだ。

ちなみに持っていくと言い出したのは無論、一誠である。

 

 

リアス「あれだけ自分で持ってくるって言うから任せたのに…!もう!」

 

一誠「す、すみません…」

 

アザゼル「しかし、どうするかね……」

 

 

リアスに呆れられ、一誠は申し訳なささに縮こまる。

それをよそにアザゼルはどうするかを考え始める。

 

 

アザゼル「赤…赤…紅……うん?」

 

リアス「え?」

 

 

アザゼルはそうぶつぶつ呟きながら考えていると、リアスと目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、1分後。

バオーンの誘導は問題なく開始したが…

 

 

リアス「もう!何でこうなるのよーー!!」

 

バオーン「バオー♪バオー♪」

 

 

羽を広げてまっすぐ空を飛ぶリアスの後をバオーンはぴょこぴょこと可愛らしい足取りで追いかけていた。

 

これに至った経緯は、バオーンは赤色に興奮する…つまり、紅い髪を持つリアスを風船代わりにして誘導すればいいのでは?というアザゼルの考えからである。

 

 

《アザゼル「ははっ!おいおい、リアス。もっとスピード上げねぇと追いつかれるぞ~」》

 

リアス「うるさいわね!アザゼル、後で覚えておきなさいよ!!」

 

《アザゼル「はいはい」》

 

 

XIGナビでバカにしてくるアザゼルにリアスは強い口調で言い返す。

アザゼルは全く悪気も感じないが。

 

だが、アザゼルの言う通り、バオーンの足は予想以上に速い。

少しでも気を抜いたら、一瞬で捕まってしまうくらいだ。

 

 

《リアス「我夢、小猫!来たわよ!早くして!!」》

 

我夢「えっ!?部長が何で……?まあ、いいか。小猫、いくよ」

 

小猫「はい…」

 

 

我夢はバオーンを誘導しているのが一誠ではなく、リアスであることに一瞬固まる。

だが、すぐに思考を切り替えると、2人は巨大なフックがついた鋼鉄製のワイヤーを手に持って身構える。

 

3km…2km…1km…。バオーンは段々近づいてくる。

そして、バオーンが彼らが隠れている木陰を通過しようとした瞬間、

 

 

我夢「今だっ!昇格(プロポーション)、『戦車(ルーク)』!」

 

小猫「えい」

 

バオーン「!?」

 

 

戦車(ルーク)』で力を強化した我夢と小猫はタイミングをあわせて、ワイヤーフックをバオーンの足下目掛けて投げ飛ばす。

ワイヤーフックは見事バオーンの両足に絡まり、バオーンは転倒した。

 

 

リアス「ふぅ…」

 

 

バオーンが転倒したのを確認したリアスは額の汗を拭いながら安堵すると、急いでその場から遠ざかる。

 

 

バオーン「バオ~…」

 

我夢「鳴くな~!」

 

 

段々遠ざかっていくリアスを見て悲しげに鳴くバオーンを我夢はなだめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場「次はジャイアントマスク作戦」

 

 

木場はXIGナビでそう伝えると、遠くから朱乃とゼノヴィアがワイヤーで吊り下げたバオーンの形をしたガスマスクの様なものを持って、バオーンへ向かって飛んでくる。

 

アリは彼女らが持っているガスマスクの様なものを指差して、木場に尋ねる。

 

 

アリ「アレハ何デスカ!?」

 

木場「マスクです」

 

アリ「ン?」

 

木場「鳴き声を封じると同時に、あのマスクからバオーンの鼻の穴に向かって睡眠ガスが噴射されます」

 

アリ「フゥ~!ナルホド!」

 

 

木場の説明に納得するアリ。

ちなみにこのマスクはジオベースが作ったものだが、こんなものすぐに作れるのかということにはツッコんではいけない。

 

 

朱乃「あらあら、うふふ……。また眠ろうとしてますわね♪」

 

ゼノヴィア「大人しくしてくれよ…」

 

 

また眠たそうにまぶたを重くするバオーンに向かって、マスクを装着させようと2人は慎重に接近する。

そして、マスクがバオーンの目前に迫った瞬間、

 

 

バオーン「…!バオ~」

 

木場「ああっ!?」

 

アリ「アッ!?」

 

ゼノヴィア「何っ!?」

 

朱乃「あら~」

 

 

ぴょこっと目が覚めたバオーンは目の前にあるマスクを食べ物か何かと勘違いしたのか、バリッボリッボリッ…と音をたてながらマスクを食べてしまった!

 

 

バオーンは不味かったのか、マスクの残骸をペッと吐き出すと、ゲップの様に睡眠ガスを出す。

そして、

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

一誠「まっ、まずい!」

 

 

ラッパの様な鳴き声を出した。

一誠が青ざめる中、バオーンの鳴き声はふるべ村や近隣の山々に響いていく…。

 

案の定、その声を聞いたふるべ村の人達は1人残らず、ぐっすりとその場で眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。すっかり夜になったふるべ村では、明日に備える為、我夢達は村にある広場でキャンプをしていたが、いつの間にか集まってきた村の人達からごちそうしてもらうことになり、ちょっとした祭り状態になっていた。

 

 

木場「どうも皆さん、すみません。迷惑をおかけしてしまって…」

 

乙吉「あん?」

 

木場「ご迷惑おかけしてしまってすみません!

 

「な~んの!うちらが勝手にやってることじゃ」

 

朱乃「渋柿ですわね♪これ」

 

乙吉「ん~、甘い甘い」

 

「あんた、男なのか?」

 

ギャスパー「は、はいっ!」

 

「全然見えねぇど…」

 

「アザゼルさん。うちで作った漬物を食べてみ」

 

アザゼル「…ん!おお、うめぇじゃねぇか!」

 

「じゃろ~?」

 

アーシア「これ、おいしいです!何ていう料理ですか?」

 

「ああ、これは茄子ときゅうりの味噌つけだぎゃあ!」

 

小猫「すみません。おかわりいいですか?」

 

「はいはい。しっかし、お嬢ちゃんすごいわね~~…もう、10杯目よ」

 

 

最初は遠慮気味だった我夢達も次々と出される村の料理の美味しさに、すっかり虜になっていた。

 

 

朱乃「マスクは食べられちゃいましたけど、睡眠ガスはお腹の中で効いてるみたいですわね~」

 

リアス「ええ。明日の昼ぐらいまでにはぐっすりでしょうね。冥界の転送班も朝までには到着するし」

 

 

朱乃とリアスは遠くでぐっすりと眠っているバオーンを見て、頬を緩ませる。

昼にドタバタしていたのが嘘のようだ。

 

 

朱乃「あらあら、こっちも盛り上がってますわね♪」

 

リアス「そうね」

 

 

朱乃とリアスは後ろでどんちゃん騒いでいる村人達を見据える。

何せ、リアス率いるグレモリー眷属は女性が多い。しかも、美女揃いだ。

村の男性からは歓声やみとれるものが、女性からは憧れやの眼差しを送られるのは当然の光景だろう。

 

 

一誠「うんめぇ~~~!これ、何すか?」

 

「裏山に生えてる松茸でなぁ」

 

一誠「ん~~~!うまい!」

 

 

一誠は松茸の美味しさに舌をうちつつ、1つ2つ…と口の中へ運んでいく。

それをよそにゼノヴィアは1人、テントを覗く。

 

 

アリ「グガァァァァァ~~~~…スピィィィ~~~~~~~…ゴォォォォォォ…」

 

ゼノヴィア「だからあれだけ『声変わり』をつけておけと言ったのにな…」

 

「はい」

 

 

いびきをかいて寝ているアリを眺めながら、ゼノヴィアは呆れた表情で呟いていると、隣に来た麦わら帽子を被った男性に串刺しにした鮭の塩焼きを手渡される。

 

 

「近くでバオーンの直撃を喰ろうたそうですな」

 

ゼノヴィア「ああ…」

 

一誠「ゼノヴィア!これうめぇぞ!!」

 

 

2人はアリの寝顔を眺めていると、嬉々とした様子の一誠がおにぎりを手に、駆け寄ってくる。

 

 

ゼノヴィア「ああ、あとでもらうとして……イッセー。1つずつ食べろ。ボロボロこぼれているぞ」

 

一誠「お"べぇぼだべろ"ぼ(お前も食べろよ)!|ぜっべぇや"み"ゅつぎに"ま"る"《絶対やみつきになる》!」

 

ゼノヴィア「はは…」

 

 

口から米粒をボロボロとこぼしながら話す一誠にゼノヴィアは苦笑いを浮かべる。

 

 

リアス「駐在さん。念の為、村の人達を今夜一晩だけ村の人たちを公民館へ避難させていただきませんか?明日の朝にはバオーンの輸送を始めますので」

 

「了解致しました」

 

 

そう言うと、2人は敬礼を交わす。

村の人達を避難させるのは危険ということもあるが、自分達が人間ではないことを悟られない為だ。

輸送というのも便宜上である。

 

 

我夢「おぉ~~~~い!」

 

リアス「来たわね」

 

 

そうしていると、段ボール箱を抱えた我夢が駆け寄ってくる。

リアスは待ってましたと言わんばかりに頬を緩ませる。

 

 

我夢「出来ました、出来ました!輸送の際、万が一に備えて」

 

 

我夢が段ボールを開くと、中には大量の『声変わり』が入っていた。

実はバオーンが寝た後、我夢は村の人用の『声変わり』を1人でずっと量産していたのだ。

 

 

リアス「さっそく皆に配ってくれる?」

 

我夢「はい!」

 

「お手伝いします!」

 

 

我夢と駐在は村の人達を集めると、手分けして『声変わり』を渡していく。

村人達は何だろうと思いながら、手渡された『声変わり』を次々と付けていく。

 

 

『ぎゃははは!!』

 

『はははははははっ!!』

 

 

村人達は『声変わり』によって、変換された声がおかしく、ゲラゲラと笑いだす。

その様子を遠くから眺めるリアスは肩をすくめる。

 

 

リアス「やれやれ、全く困ったものね…」

 

「わしら、な~んの困っておりませんがぁ…」

 

リアス「?」

 

 

そう呟いていると、いつの間にか隣に老婆が立っていることに気がついた。

リアスが疑問の眼差しを向けると、老婆は言葉を続け

 

 

「村の時間はゆっくりですけんのぉ……。いつ昼寝しても、誰も文句は言いませんがぁ…」

 

リアス「…」

 

 

老婆の言葉を聞いたリアスは、遠くで未だ笑いあっている村の人達を再び眺める。

村の人達は暖かさが感じられる笑顔で、普段学園や冥界で向けられる表面上の笑顔ではない。

都会生まれ、都会育ちのリアスも初めて訪れた田舎の良さ、そこに住む人の心の素晴らしさに次第と心が温かくなるのを感じた。

 

 

リアス「ふふっ」

 

 

そう思っていると、いつの間にかリアスは微笑んでいた。

 

村の人達とリアス達の笑い声は深夜になるまで続いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、すっかり夜が明け、翌日。

鶏が鳴き、朝日が山々の間から差し込む穏やかな1日の訪れを伝える…。

 

 

我夢「たっ、大変です!!」

 

 

そんな中、バオーンの監視をしていた我夢が慌ただしい様子でテントに駆け込む。

そのただならない様子にリアス達も一斉に目を覚ます。

 

 

リアス「どうしたの?」

 

我夢「バオーンが…!」

 

リアス「わかったわ。みんな、行くわよ!」

 

 

リアス達は急いでバオーンのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、バオーンは朝日に照らされながら足にワイヤーを引きずりながら、散歩していた。

 

 

バオーン「バオ~…」

 

 

大きく腕を上げて、あくびをする。

昨日取り込んだ睡眠ガスでぐっすり眠れたのか、とても気持ちよさそうに目を細める。

 

 

バオーン「…!バオー!バオー!」

 

 

散歩を続けていると、何かが視界に入り、目を見開く。

すると、バオーンは尻尾を左右に振り、その何かに向かってぴょこぴょこと走り出す。

 

丁度その時、リアス達は村全体を見渡せる高台にたどり着いた。

 

 

ゼノヴィア「一体、何が…」

 

アーシア「ああっ!もしかしたら、あれに…」

 

 

突然興奮し始めたバオーンに皆が疑問を抱いていると、アーシアが何かに向かって指を指す。

彼女の指指す方角には、『本日開店』と広告する赤いアドバルーンが浮いていた。

それは村外れにある高速道路沿いに新しく出来たスーパーマーケットによるものだった。

 

 

アザゼル「おいおい、ありゃあ風船じゃねぇんだぞ…」

 

リアス「また遊んでくれると思ってくれるんだわ」

 

 

高速道路…しかも朝というのは通勤の時間帯だ。

もし、バオーンが高速道路に入ったら、たちまち大混乱が起きてしまう。

 

 

我夢「部長、僕がバオーンを引き付けます!その隙にみんなは麻酔弾を」

 

リアス「ええ、頼んだわよ。みんな、行くわよ」

 

『了解/ラジャー!』

 

 

我夢の進言を聞き入れたリアスは、他のメンバーを率い、バオーンの近くの上空へ飛ぶ。

その間に我夢はエスプレンダーを懐から取り出し

 

 

我夢「ガイア!

 

 

その掛け声と共にエスプレンダーを前へつきだすと、赤い光に包まれ、我夢はウルトラマンガイアに変身した。

 

〔推奨BGM:ガイア挑む!(M-8a)〕

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアは土砂を巻き上げながら着地するや否や、バオーンが目指す赤いアドバルーンをガイアスラッシュで破壊した。

 

〔BGM終了〕

 

 

バオーン「パワワ~………」

 

 

アドバルーン破壊され、バオーンは残念そうな表情を浮かべ、帰ろうと村の方角へ振り向くと、目を見開いた。

 

 

バオーン「バオー!」

 

 

その理由はもちろん、赤の面積が多いガイアがいたからだ。

それにバオーンが興奮しないはずがなく、バオーンはガイアに向かってぴょこぴょこと走り出す。

 

 

バオーン「バオー!バオー!」

 

ガイア「デュ…グアッ!?」

 

 

ガイアは受け止めようとするが、バオーンの力に弾き飛ばされてしまい、後方へ倒れてしまう。

バオーンはガイアにのし掛かると、まるで遊んで欲しいとねだる子供の様に手足をジタバタさせ始めた。

 

 

バオーン「バオー!バオー!」

 

ガイア「部長、早く…!」

 

リアス「麻酔弾発射!」

 

バオーン「バオ!?」

 

 

リアス達はジェクターガンに装填した麻酔弾を一斉に撃ち込むと、バオーンは意識を失った。

その隙にガイアはバオーンを起こさない様にソッと体を抜き、変身を解いた。

 

 

我夢「やりましたね!」

 

リアス「ええ!」

 

 

我夢は仲間と合流し、喜び合うが

 

 

バオーン「バオ~バオ~」

 

『!?』

 

 

バオーンは何事もなかったの様にスクッと立ち上がると、どこかへぴょこぴょこと走り出した。

 

 

リアス「効いてない!?」

 

木場「もしかして、昨日の睡眠ガスで慣れてしまったんじゃ…」

 

一誠「でも、村の方へ行ってるぜ。バオーン、そうだ!そのまま戻れ!」

 

 

一誠の言う通り、遊び相手を見失ったバオーンはふるべ村の方へ戻っていく。

これで問題解決。そう思った矢先、

 

 

ギャスパー「あっ!?」

 

我夢「どうしたギャスパー?」

 

ギャスパー「テ、テントに!ムスタファ博士が!!」

 

『えええっ!?』

 

 

バオーンが向かっている先にある広場には、未だテント内でスヤスヤと寝ているアリがいる。

そのことをすっかり忘れていた一同だが、思い出すタイミングが悪く、バオーンは広場の目前に来ていた。

悪魔の飛行速度をもっても間に合わない。

 

 

一誠「いくぜ我夢!」

 

我夢「ああ!」

 

 

その危機に一誠と我夢は変身アイテムを取り出し、我夢は真上につきだし、一誠は斜め上に掲げようとしたが

 

 

アザゼル「へぶっ!?」

 

『あっ…』

 

 

リーフラッシャーを持つ一誠の右手がアザゼルの顔面に直撃し、一同は唖然とする。

 

 

アザゼル「痛ぅ~~~!!気を付けろ!総督でも痛いもんは痛いんだよ!!」

 

一誠「す、すんません!」

 

 

一誠は痛そうに鼻を抑えるアザゼルにペコペコと謝ると、仕切り直した2人はもう一度変身アイテムを掲げる。

すると、2人は光に包まれ、ウルトラマンへと変身した。

 

〔推奨BGM:ヒーロー登場!〕

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

バオーン「パオォ~!パオォ~!」

 

 

大陽の日差しを背に受けながら、2人は颯爽と地上へ降りると、広場へ足を踏み入れようとするバオーンを背後から掴み、遠ざけようと後ろへ引っ張るが…

 

 

ダイナ「デアッ!?」

 

ガイア「ドアッ!?」

 

 

カッコ悪いことに、バオーンのあまりにもの重さに体制を崩し、2人はバオーンの下敷きになってしまう。

 

だが、ダイナとガイアはパニック状態になっているバオーンから何とか抜け出し、距離を取る。

 

 

ダイナ「ヴン"ン"ン"~~~…デェアッ!」

 

バオーン「……バオッ!」

 

 

ダイナが赤き剛力戦士―――ストロングタイプにタイプチェンジすると、起き上がったバオーンはそれを見て更に目を見開く。

ガイアとストロングタイプのダイナは赤の比率が多い体色だ。しかも2体も。

これにはバオーンも興奮が止まらない。

 

 

ダイナ「プッ!プッ!」

 

ガイア「デヤッ!デヤッ!」

 

 

ダイナは手に唾を吐くような仕草をとったあと、気合いを入れるかの様に四股を踏む。

ガイアも気合いを入れるかの様に屈伸する。

 

 

バオーン「バオ~~!」

 

ダイナ「デェアッ!?」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

突進してきたバオーンにダイナとガイアは後方へ吹き飛ばされる。

バオーンは続け様に押さえ付けようと倒れこむが、2人は何とか左右に散って、回避する。

 

 

ゼノヴィア「ストロングタイプは赤だ!」

 

リアス「やっぱり、遊んでもらってるつもりなんだわ!」

 

アザゼル「ああ」

 

 

その2人のウルトラマンと1匹の怪獣の戦い?をキャンプに戻ったリアス達は困惑しながら眺める。

 

 

バオーン「バオ~~…」

 

 

バオーンは気合いを入れ直すような仕草をとると、後ろ歩きしながら背後で佇んでいるダイナとガイアに近付き、瞬時に振り向くと、相撲の取っ組み合いを始める。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

ガイア「デヤッ!」

 

バオーン「パワワワ…」

 

 

ひとしきり組み合うと、2人はバオーンを受け流す。

だが、バオーンは疲れてしまったのか、目を擦ると

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

ダイナ「ハッ……!」

 

ガイア「………!」

 

 

鼻からガスの様なものを噴射しながらそう鳴く。

当然、その鳴き声を聞いたダイナとガイアは睡魔に襲われ、クルリと回り、その場で眠ってしまった。

 

 

バオーン「パワワワ…?」

 

 

バオーンは2人が自分の鳴き声で眠ってしまったことを知らないのか可愛らしく首を傾げる。

バオーンは何とか遊んでもらおうと突然眠ってしまったダイナとガイア(遊び相手)に近寄り、体をつついたり、体を揺すったりして何とか起こそうとする。

 

 

ダイナ「…!デェアッ!」

 

バオーン「パオォォォ!?」

 

 

そして、何とか目覚めたダイナはバオーンを投げ飛ばす。

バオーンは地面をゴロゴロと転がっていく。

 

 

リアス「これは今まで以上に厄介な戦いね…」

 

アーシア「いつになったら終わるのでしょうか?」

 

 

これまでとは別の意味で苦戦するダイナとガイアの様子にリアス達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

 

小猫「…アーシア先輩。もうすぐで終わりそうですよ」

 

アーシア「え?」

 

 

小猫の言う通り、バオーンは眠たそうにまぶたを重くしている。

ダイナとガイアの決死の行動?も無駄ではなかったのだ。

 

このまま眠ってくれ!

この場にいる全員が思った矢先

 

 

[ティヨン]

 

 

[ピコン]

 

 

ダイナとガイアのライフゲージが青から赤に変わり、点滅を始めてしまった。

 

何故ウルトラマンの体力の象徴といえるライフゲージが点滅するのか?

それは至って簡単で、睡眠によって体力を消耗してしまったからである。

睡眠は回復につながると思う方も多いだろうが、実は睡眠をとるのにも体力を使っており、寝過ぎて頭が痛くなるのもそういった原理だからだ。

 

 

バオーン「バオー!」

 

 

当然それを見たバオーンは興奮状態になり、ダイナとガイアを捕まえようと飛びかかる。

ダイナとガイアは素早く前転して避ける。

 

 

ガイア「グアッ…」

 

ダイナ「ファアァァァ~~…」

 

 

だが、ダイナとガイアは目が覚めたばかりでうとうとしており、ダイナに至っては背伸びをしながら大きなはあくびをしている。

 

バオーンは再び2人を捕まえようとするが、またも横へ避けられてしまう。

 

 

ガイア「グアッ…」

 

ダイナ「グアッ…」

 

 

2人はまだ眠気が消えないのか、おぼつかない足取りでバオーンにもたれ掛かる。

バオーンはそんな2人を受け止め、無理やり立たせ、捕まえようとするが

 

 

バオーン「バオッ」

 

 

またもや避けられ、バオーンの両腕は空をきる。

バオーンは何でまともに相手してくれないんだといじけ、

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

「「!」」

 

 

鼻からガスを噴射すると共に再び鳴き声をあげる。

ダイナとガイアは咄嗟に耳を塞ぎ、何とか鳴き声が耳に入るのを防いだ。

 

 

バオーン「パオォ~!パオォ~!」

 

 

やけくそに地面を蹴ると、バオーンは地面に座り込む。

ガイアとダイナはバオーンに近寄るが、バオーンは完全にいじけており、顔を合わせようともしてくれない。

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

ダイナ「グアッ…」

 

ガイア「デュアッ…」

 

バオーン「パオッ!?」

 

 

バオーンは三度鳴き声をあげると、2人はまた眠ってしまう。

それを見たバオーンは驚き、目を丸くする。

 

 

「「ハッ!?」」

 

ダイナ「ヴン"ン"ン"~~~…デェアッ!」

 

 

だが、2人はバオーンの鳴き声に耐性がついたのかすぐに目覚め、ダイナはフラッシュタイプに戻り、立ち上がる。

 

 

バオーン「パオッ!バオォ~~?」

 

ダイナ「ハァァァ~~…!」

 

 

ダイナは両腕を広げてエネルギーを溜めると腕を前方にし、右腕を上、左腕を下にし、その掌の間に赤い球体を作る。

掌を開いて閉じて…という動作を繰り返しすると、赤い球体は大きくなっていき、ある程度大きくなった球体を風船の様に空へ飛ばした。

 

 

バオーン「バオォ~!バオォ~!バオッ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

それを捕まえようと足をジタバタさせながら跳躍するバオーンに合わせて、ダイナとガイアも跳躍すると、バオーンを抱え、宇宙へ飛んでいった。

 

 

リアス「ありがとう、2人共!」

 

 

リアス達は2人のウルトラマンに感謝を告げ、村人達は遠ざかっていくバオーンに笑顔と共に手を振る。

 

 

乙吉「お~~~~い!またこいよ~~~~~~!」

 

「またおいでよ~~~~~!」

 

「またこいよ~~~!」

 

ゼノヴィア「また来いだと!?」

 

リアス「いいのよ…。この村はどんなものでも受け入れる。私達XIGも、怪獣も………。バオーンを宇宙に返してやったのも、この村にそんな優しさがあるからよ」

 

 

村人達の呼び掛けに引っ掛かるゼノヴィアをリアスは微笑みながら諭す。

バオーンが何も攻撃されず、無事に宇宙へ帰れたのも、ふるべ村に住む人々の温情ゆえだろう。

 

 

一誠「お~~い!」

 

我夢「みんな~~!」

 

 

そう諭していると、遠くから一誠と我夢が満面の笑みで呼び掛けながら手を振って駆け寄ってくる。

仲間と無事を喜びあいながら、一誠は担架で寝ているアリに向かって手をメガホンの様にして声を掛ける。

 

 

一誠「バオーン!帰っちゃいましたね~~~!」

 

アリ「エ、アァ!?僕ノバオーン何処デスカ!?」

 

『あははははははは!!』

 

 

その声でアリは担架から飛び起きると、慌てた様子で村人達に問いかける。

だが、もう既に後の祭り。

そんな彼の滑稽さに村人達は笑う。

 

 

『あはははは!』

 

 

リアス達もそれにつられて笑う。

だが、

 

 

バオーン「バ~オ~~~ン…

 

我夢「あ…」

 

一誠「う…」

 

 

宇宙に帰ったはずのバオーンが村人達へ返事する様に鳴き声を返すと、『声変わり』を外してしまっていた我夢と一誠はまた眠ってしまった…。

 

 

 

 




次回予告

夏休みのリアスの帰省に伴い、グレモリー眷属は悪魔の故郷、『冥界』へ足を踏み入れる。
小猫に不安を感じつつも、我夢達はグレモリー邸を訪れる。

次回、「ハイスクールG×A 」
「冥界へGo!」

一誠「すっげぇぇ!!」



ちなみにオカ研メンバーが装着している隊員服はそれぞれ、

◼XIG
・我夢
・朱乃
・小猫(オペレーター服)
・ギャスパー(オペレーター服)
◼スーパーGUTS
・一誠
・リアス
・木場
・アザゼル
◼GUTS
・アーシア
・ゼノヴィア


…となっております。
良かったら、感想&コメントよろしくお願いします!


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第27話「冥界へGo!」

本編に入る前に謝らせてください!
日常生活で色々あり、投稿が遅れました!すみません!
大変、大変長らくお待たせしました!
今回はドラマパートのみです。

それでは本編!!
バ~オ~~ン!(※今回の話にバオーンは関係ありません)





バオーンの1件から2日後。

すっかり夏休みに入った我夢達は今、駒王学園の制服に身を包み、リアスの実家がある冥界行のグレモリー家専用列車の中にいた。

 

何でも、冥界へは夏休みのような長期休みでないと帰省できないらしく、毎年の夏は実家に帰っているそうだ。

我夢達がいるのは、主である彼女が行く場所には眷属も行く…という主従関係によるものだからだ。

学生服は冥界でおける正装にはうってつけらしい。

 

ちなみにこの帰省にはアザゼルも同行している。

その理由は夏休み期間の間、『総督直伝!スペシャルトレーニング』なる修行をリアス達につける為だ。

本人は疲れていたのか、今はいびきをかいてだらしなく寝ている。

 

 

一誠「しっかし、驚いたよなぁ~」

 

我夢「ああ。まさか、駒王駅の地下にこんな列車があるなんてね。てっきり魔法陣で転移するものかと思ったよ」

 

 

感服する我夢に隣に座る一誠はうんうんと頷く。

冥界行きの電車への行き方は普通に駅内にあるエレベーターに専用のカードとパスコードを通し、降りた先にある地下空洞にある列車に乗る……ただ、それだけである。

意外に簡単な方法、しかも列車という交通機関を使うとは驚くものだ。

 

そう会話していると、反対側の席に座っていた朱乃が席を立ってこちらに来る。

 

 

朱乃「その方法でも行けますが、新しく眷属になった悪魔はこのルートで手続きをしないと罰せられますわよ」

 

一誠「えっ!そうなんですか!?」

 

我夢「悪魔でも何でもいいって訳じゃないのか…」

 

 

朱乃の言葉を聞き、2人は納得する。

悪魔にも案外人間界と似ている法律が存在しているかもしれない。

 

すると、我夢と一誠の脳裏に1つだけ疑問が浮かんだ。

 

 

我夢「あれ?でも僕とイッセーはライザーの結婚式の時に、もらった魔法陣でここに来ましたけどあれは……」

 

 

確かに急いだとはいえ列車に乗らず、魔法陣で転移したのは事実である。

もしかしたら、自分達はすでに犯罪を犯しているのかもしれない…。そんな疑問に朱乃は小さく微笑み

 

 

朱乃「……時と場合によりますわ♪」

 

我夢「何で一瞬間が空いたんですか?」

 

一誠「大丈夫か?俺たち…」

 

 

その答えに我夢と一誠は不安になり、冷や汗をかく。

だが、魔法陣は魔王からもらったものだから大丈夫だとは思うが…。

そんな中、朱乃は妖絶な笑みを浮かべて我夢にそっと近寄って囁く。

 

 

朱乃「ねえ、我夢君?積極的な子はお好きですか?」

 

我夢「…?どういうことですか?」

 

朱乃「それは……こうですわ」

 

我夢「えっ!ちょっ!?」

 

 

我夢は質問の意味がわからず聞き返すと、次の瞬間、朱乃は我夢の手を自身の太ももに当てた。

 

 

朱乃「どうですか?」

 

我夢「ど、どうって…」

 

朱乃「あら?こっちの方がお好みですか?」

 

我夢「え!?」

 

 

手から伝わる艶々かつ柔らかい肌の感触、女性特有の甘い匂い…。その魅力に煩悩を刺激され我夢は戸惑う。

すると、朱乃は物足りないと思ったのか我夢の手をゆっくりとスカートの中へと誘導していく。

 

 

我夢「ええっ!?ちょっと!!朱乃さん、まずいですって!!」

 

朱乃「あらあら、恥ずかしがらなくてもいいのですよ?みんな気付いてませんから。あっ、もしかして2人っきりになれるところでじっくりと?」

 

我夢「いやいや!そういう問題じゃなくてっ!!(イッセー!………あれ?)」

 

 

我夢は目で隣にいる一誠に助けを求めるが、肝心の彼の姿がない。

何処だろうと辺りを目で探すと、一誠は反対側の席でゲームに夢中になっているギャスパーとハネジローのところにいた。

 

2人の対戦を一誠は夢中で観戦していたが、我夢の視線に気付いたのか、顔を少しだけ彼の方へ向けると

 

 

一誠「(ゴ・メ・ン♡)」

 

我夢「(えええええええ!?)」

 

 

そう舌を出してアイコンタクトで謝って我夢を見捨てると、再びゲーム画面を覗く。

親友に見捨てられた我夢は口をあんぐりと開ける。

 

 

朱乃「あらあら♪そう逃げなくてもよろしいのに♪」

 

我夢「わわぁっ!?イッセー、助けてぇぇぇ!!」

 

 

遠くの方で我夢の助けを求める声が聞こえるが、一誠は申し訳ないと思いながらも無視を続ける。

 

現在、ギャスパーとハネジローがやっているのは以前一誠がアザゼルと遊んだ3D格闘ゲームの携帯ゲーム機移植版で、2人は通信対戦中である。

 

一誠もこのゲームが得意だが、ギャスパーはそれ以上の腕前で、以前対戦した時は手も足も出なかった。

 

 

一誠「すげぇ…」

 

 

だが、そんなプロゲーマーと戦っているハネジローはどうだ。

5回目の対戦だが、2人は互角の戦いを繰り広げており、現在の勝敗はギャスパー2勝2敗、ハネジローも2勝2敗だ。

ちなみにハネジローはこのゲームをやるのは今日が始めてである。

 

2人の操作キャラの体力はもう半分以下でそろそろ決着がつくところだ。

少しでも隙を見せたら負け…。互いに一歩譲らぬ熱戦を繰り広げるが

 

 

ハネジロー「パムー」

 

《イヤァッ!》

 

《フッ!?》

 

ギャスパー「ああっ!?」

 

 

一瞬の隙をついたハネジローは自らの操作キャラ『真紅獅子』のドロップキックでギャスパーの操作キャラ『レッド7(セブン)』を怯ませると、必殺技のヌンチャク攻撃でKOした。

 

『2P Win!』と音声が流れるゲーム機を手にギャスパーは悔しげに肩を落とし、ハネジローは嬉しげに微笑む。

 

 

ハネジロー「パムパム~♪」

 

ギャスパー「あう…」

 

一誠「惜しかったなあ~…あともうちょいだったのに」

 

ギャスパー「はっ、はいぃ……。ですけど、始めてゲームするのにここまで強いなんて…」

 

一誠「すげぇよな!俺なんてギャスパーに1回も勝ったことねぇのによ」

 

ハネジロー「パムッ!」

 

一誠「いばるなって」

 

 

えっへん!と胸をはるハネジローに一誠はジト目で見ながらツッコむと、1つの疑問が浮かぶ。

 

 

一誠「でもよ~小学校2年生の頭脳ってこんな物覚えが良いのか?俺なんて全然無理だぜ」

 

我夢「…それは、簡単、だよ」

 

一誠「ん?あ……我夢…」

 

 

後ろから声が聞こえ、一誠は振り返ると、言葉を失った。

我夢の表情はくたびれおり、息も切れ切れ、服も若干乱れいることから朱乃のアプローチは中々過剰なものだったことが伺える。

 

その姿に一誠はばつが悪い表情を浮かべていると、我夢は息を整え、いたずら気に笑みを浮かべ

 

 

我夢「それはね、ハネジローがイッセーよりもよっぽど賢いってことだよ」

 

一誠「はあ!?それって、俺の頭が小学生以下ってことかよォォォ!!ぶ、ぶ、部長!そんなことないですよねっ!?」

 

 

一誠は信じられない様子で声を荒げると、リアスのもとに駆け寄って尋ねる。

彼女なら否定してくれる…。一誠がそう信じた矢先、リアスはにっこりと微笑みながら顔を向けると

 

 

リアス「我夢の言うとおりかもね」

 

一誠「…え、ええええぇぇぇぇ!?嘘だろぉぉ~~~~」

 

『あっははははははは!!!』

 

 

信じていた彼女からも『バカ』と言われた。

ショックを受けた一誠はへなへなとその場にへたり込むと、その様子に皆は笑う。

 

 

我夢「はははは……ん?」

 

 

我夢もその賑やかな空気に誘われて笑いつつ、ふと視線を逸らすと、皆から少し離れた席で憂鬱な面持ちながら車窓を眺める小猫に気付いた。

 

どうしたんだろうと思った我夢は皆から離れ、小猫の前の座席に座る。

 

 

我夢「小猫?どうしたんだ、具合でも悪いの?」

 

小猫「……いえ、何も」

 

我夢「…」

 

 

そう尋ねるが小猫はそう短く答え、再び車窓へ視線を向ける。

彼女はああは言ってるが、表情は依然と曇ったままだ。

 

一体何があったのか?我夢がそう考えていると、列車はいつの間にかグレモリー邸の前に到着した。

皆は荷物をまとめ始めたのに合わせ、我夢も降りる準備をする中、アザゼルが一向にも降りる気配を見せないのに気付いた。

 

 

我夢「アザゼル先生、降りないんですか?」

 

アザゼル「ああ、俺はこのまま魔王領に向かう予定だ。サーゼクスとの会談があるからな」

 

我夢「そうなんですか」

 

アザゼル「まあ、終わったら俺もそっちに向かうからよ、先に挨拶を済ませてきな」

 

 

いつもおちゃらけた態度をとってはいるが、アザゼルもアザゼルなりに忙しいことを我夢は改めて思った。

 

 

リアス「アザゼル。お兄様によろしくね」

 

アザゼル「おう」

 

 

見送るアザゼルを列車に残し、リアスを先頭に降りていく。

全員が降り、列車が発車したのを見届け、駅のホームへ降りた彼らを待っていたのは…

 

 

『お帰りなさいませ、リアスお嬢様!!!』

 

 

大勢のメイドや執事達が怒号のような声で出迎え、兵隊達がそれに合わせて花火を打ち上げ、音楽隊は音を奏でる。しかも、空には見たことがない変な生物に乗った騎手が旗を振るっている。

 

この光景にリアスと古参メンバーは慣れている様子で、逆に新参である我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは追い付けず、ポカンとしている。

 

 

ギャスパー「ひっ、ひいぃ!!ひ、人がいっぱい!!」

 

 

ギャスパーに至ってはそのあまりにも人の多さに怯えてしまい、我夢の背中に隠れてしまう。

我夢のおかげで教室の生徒やふるべ村くらいの人数程度なら怯えることもなくなったが、目の前にいる人数はその2倍…いや、5倍もある。

さすがにある程度は慣れたとはいえ、この人数はまだまだ厳しいものだろうと我夢は思った。

 

 

『お帰りなさいませ!お嬢様!!』

 

 

そう言うと執事及びメイド達は1コンマのズレなく、一斉に頭を下げる。

リアスは微笑みながら前に出て

 

 

リアス「ただいま、みんな。お迎えありがとう」

 

 

そう挨拶を返すと、執事とメイド達は笑みを浮かべる。

この和やかな雰囲気にリアスが彼らにどれだけ慕われているのかが新参メンバーには一瞬でわかった。

 

すると、メイドや執事の大群から誰かが前に出てくる。

それはグレモリー家のメイドであり、サーゼクスの眷属の1人であるグレイフィアである。

 

 

グレイフィア「お早いお着きでしたね。ご無事で何よりです。本邸までは馬車でご案内します。さあ、眷属の皆様もお乗り下さい…」

 

 

一同はグレイフィアに薦められるまま、用意された馬車へと乗り込んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア「はわわ…」

 

一誠「すっげぇぇ!!」

 

ゼノヴィア「これが部長の…?」

 

我夢「城だ…」

 

 

馬車に揺られながら数分後。我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアは目の前にそびえ立つグレモリー本邸に目を奪われていた。

それは豪邸というよりも城と言うのが相応しいほどの規模で、しかもこれは家の1つだと言うのだ。

 

その規模の大きさに新参メンバーの4人は驚きつつも、両脇で使用人達がズラッと並んで作った道をリアスを先頭に歩く。

ちなみに荷物はいつの間にか本邸に転送されている。

 

そして、城門の様な巨大な扉の前に歩き着くと、扉はギギギ…と音を立てながら開き、リアス達は中に入っていく。

室内も外見同様にとても豪華で、天井には綺麗な装飾がされたシャンデリアが室内を照らしている。

 

グレイフィアの案内で一向は屋敷内を歩いていると、

 

 

「リアスお姉さま、お帰りなさい!」

 

リアス「ただいま、ミリキャス!大きくなったわね!」

 

 

屋敷の奥からリアスがミリキャスと呼ぶ紅色の男の子が駆け寄り、彼女の胸に飛び込む。

リアスもその男の子を愛しげに抱き返す。

 

 

一誠「部長。その子は…?」

 

リアス「一誠達は会うのは初めてだったわね。紹介するわ。この子はミリキャス・グレモリー、私の兄の子供……つまり、甥に当たるの」

 

『え!?』

 

 

それを聞き、我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアの4人はサーゼクスが結婚していた事実に驚く。

以前彼に会ったことはあるが、全く既婚者である雰囲気が感じられなかった。しかも子供がいるなんて…。

 

人?(悪魔)は見た目によらないなと4人は思っていると、リアスはミリキャスを皆の方へ向かせる。

 

 

リアス「ミリキャス。挨拶をしなさい」

 

ミリキャス「はい、お姉さま!皆さん、はじめまして!ミリキャス・グレモリーです!!」

 

一誠「こっ、こちらこそ!はっ、は、は、はじめまして!!」

 

我夢「イッセー、落ち着いて」

 

 

目の前にいる人物が現魔王の息子…つまりグレモリー家の次期跡取りであること、堅苦しい挨拶に慣れていないのも相まって、落ち着きがない一誠を我夢はなだめる。

すると、ミリキャスは微笑み

 

 

ミリキャス「はははっ、お姉さまやお母さまから聞いてますが、一誠様って面白い方なんですね」

 

一誠「は、はは…」

 

 

そう言われると、一誠は少し申し訳なさそうに苦笑いする。

その後、我夢、アーシア、ゼノヴィアも挨拶をすませ、皆は一旦、各自の宿泊部屋の確認に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿泊部屋の確認を終えた一同は先程のロビーに集合し、屋敷内の部屋の案内を受けることになった。

屋敷内は我夢達が想定していた以上に広く、特に新参である我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアが迷子にならないようにするためだ。

 

その際、夕食の準備があるグレイフィアに代わり、執事のシンジョウが皆を案内していた。

我夢が聞いたところ、見た目こそ若々しいが、シンジョウはこのグレモリー家の使用人の中でグレイフィアの次くらい詳しいそうだ。

 

 

シンジョウ「――――――で、こちらが応接間となっております。この部屋は―――――や――――の時に使われる部屋です。私共が案内できる範囲はこの部屋で終わりです。何かご不明な点は?」

 

 

シンジョウの問いかけに皆は首を横に振る。

 

 

シンジョウ「何かご不明な点があれば、いつでも私共にお申し付け下さい。さあ、御夕食まで時間がありますので、それまで屋敷内をごゆっくりなさってください」

 

 

そう皆に伝えたシンジョウはお辞儀すると、どこかへ去っていく。

自由時間となった皆はどうしようかと思ったとき

 

 

「あら?リアス、帰ってきたのね」

 

 

声のした方を振り向くと、ドレスを着こなした美人と言える女性が歩みよってきていた。

その見た目や顔はリアスとそっくりだが、髪の色は紅色でなく、亜麻(あま)色だ。

我夢と一誠はリアスの姉かなにかと思っていると、リアスの口から予想外の言葉が出た。

 

 

リアス「ただいま戻りました。お母さま」

 

『ええっ!?お母さまっ!?』

 

 

本日は何度目になるかわからない驚愕。それどころか、今まで驚いた中でも群を抜く衝撃だ。

どこからどう見てもリアスと年が変わらない少女で、とても2人の子を産んだ母親に見えない。

 

 

一誠「い、いやっ!部長のお姉さんかと思いましたよっ!まさかこんなに若いなんて……」

 

「あら。お姉さんだなんて……嬉しいですわ」

 

 

動揺する一誠の言葉にリアスの母は口に手を当てて微笑む。

なるほど、笑う仕草や笑顔もそっくりだなと我夢は内心驚きつつも納得した。

 

そんな2人にリアスはくすりと笑い

 

 

リアス「悪魔はね、年を重ねると魔力で見た目を自由に変えられるのよ」

 

一誠「あ、なぁ~るほど!それで部長と同じくらいの年に」

 

我夢「魔力って便利なんですね~」

 

 

2人は改めて未だ把握しきれていない悪魔のテクノロジーの凄さに脱帽する。

すると、リアスの母は2人を見て何か思い出したのか、その顔を捉える。

 

 

「もしかして……貴方が兵藤 一誠さんで、隣の方は高山 我夢さん?」

 

我夢「え?」

 

一誠「俺達のことを知ってるんですか?」

 

「ええ、娘の婚約パーティーぐらい顔を覗かせますわ」

 

一誠「あ…」

 

 

リアスの母の言葉に一誠は口をあんぐりと開けて固まる。

あの時はリアスを取り戻すのに必死で周りをよく見てなかったが、確かにその場にいた様な気がしたのを思い出す。

 

 

一誠「すっ、すみませんでした!俺のワガママのせいでぶちょ…娘さんの婚約を台無しにしてっ!!」

 

我夢「僕も謝ります」

 

 

思い出したや否や、一誠は頭を下げて謝罪する。

彼についてきただけの我夢もだ。

 

そんな2人にリアスの母は「いいのですよ」と言い、顔をあげさせる。

 

 

ヴェネラテ「初めまして、私はヴェネラテ・グレモリー。娘がいつもお世話になっております。よろしくね」

 

 

そう言いつつ、ヴェネラテはにっこりと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後。夕食が出来たと知らせがきたリアス達は、屋敷内にあるだだっ広いダイニングに集められた。

広々とした空間に豪華な長テーブルにかけられた白いヴェール、天井には何百とも数えきれない程の宝石が埋め込まれたシャンデリア。そして周りには多くの使用人達が長テーブルから離れた位置で待機している。

 

そのきらびやかな光景に我夢、一誠、アーシア、ゼノヴィアの4人は驚きつつも、他の皆に合わせて、各々指定された席に座っていく。

 

 

ジオティクス「さあ、存分に楽しんでくれ」

 

 

リアスの父――ジオティクスの一声で会食が始まった。

厳かな空気の中、我夢達は目の前に用意されたいかにも高級そうな料理をナイフとフォークを使って黙々と口に運ぶ。

 

お嬢様であるリアスは当然の様に行儀よく、かつ優雅に食べている。木場と朱乃も同様に難なく食べている。

 

ゼノヴィアとアーシアは慣れていない様子だが、何とか形にはなっている。

ギャスパーは周囲の視線で縮こまってはいるが、難なく食べている。

 

 

我夢「うう…」

 

一誠「ぬぅぅ…!」

 

 

だが、この中で我夢と一誠の2人は苦戦していた。

周りの人の動きを見よう見まねでやっているが、それでも上手くできない。

これは普段、貴族が行うテーブルマナーから程遠い生活を送っているからだ。

 

こうやってやってるのは、周りに変な目で見られるというのもあるが、リアスの両親が目の前にいるからだ。

変なマネはできない。

ぎこちないが、ゆっくり確実に慎重に………料理を口に運ぶ。

しかし、緊張のあまり味が伝わらず、食べている気がしない。

 

そんな初歩的なテーブルマナーに苦戦している我夢はふと、隣に座る小猫が気になり、目をやる。

 

 

我夢「?」

 

小猫「…」

 

 

小猫は食事に一切手をつけておらず、憂鬱な表情を浮かべて座っているだけである。

いつもの彼女なら、いの一番に食事を手をつける大食いのはずなのだが……。

 

心配になった我夢は小猫に声をかける。

 

 

我夢「どうしたの?具合でも悪いのかい?」

 

小猫「……何でもありません」

 

 

少し間を開けてから小猫は答えると、プイッと顔を反らす。

何でもないと言うが、その顔は相変わらず曇ったままだ。

 

思えば彼女は冥界に入る時からこんな感じだ。

一体、何があったんだろう?

我夢は彼女の悩みのタネを考察しようと考えたが、これ以上詮索しても失礼だと思い、不安を心に残しながらも食事を口に運ぶ。

 

そんな中、ジオティクスが一誠に声をかける。

 

 

ジオティクス「ときに兵藤君……いや、一誠君と呼んでいいかな?」

 

一誠「あぁっ、はい!大丈夫です!」

 

 

突然話しかけられた一誠は両手に持つナイフとフォークを落としそうなるが、何とか持ち直し、固い表情ながらも笑顔を向ける。

何だろうと一誠は思っていると、

 

 

ジオティクス「私を()()()()()と呼んでくれたまえ」

 

一誠「…へ?」

 

 

突拍子もない発言に一誠は固まる。

お義父さん……つまり、リアスと結婚するのを前提にした呼び方だ。

それを聞いたリアスはピクリと肩が反応する。

 

 

ヴェネラテ「あなた、まだ早すぎますわ。まず、順序というのがありますわ」

 

ジオティクス「う、うむ。しかしだな、娘がこんなに熱中する相手を見つけたのだ。めでたいことではないか…」

 

ヴェネラテ「貴方……受かれるのはまだ早い、ということですわ」

 

ジオティクス「そうだな。どうも私は急ぎすぎるきらいがあるようだ。すまん」

 

 

ヴェネラテに語気を強めて言われると、ジオティクスは引き下がる。

それを見た一誠は妻に尻を敷かれているなと思った。

 

今度は夫を黙らせたヴェネラテが一誠に話しかける。

 

 

ヴェネラテ「兵藤 一誠さん……私も一誠さんと呼んでいいかしら?」

 

一誠「あっ、はい!」

 

ヴェネラテ「しばらくはこちらに滞在するのでしょう?」

 

一誠「…?そうですが?」

 

 

その問いかけに一誠は首を傾げながらも答える。

すると、ヴェネラテは真剣な眼差しで一誠を見つめ

 

 

ヴェネラテ「そう……丁度いいわ。あなたには紳士的な振る舞いも身に付けてもらう為に少しマナーのお勉強をしてもらいます」

 

一誠「えっ?それって―――」

 

 

「どういうことですか?」一誠がそう問いかけようとした時、バンッ!と誰かが机を叩く声に遮られる。

皆が一斉に音がした方を向くと、何やら苛立った様子のリアスが椅子から立ち上がっており、机に手を置いていた。

 

 

リアス「お父さま!お母さま!先程から黙って聞いてましたが、私を置いて話を進めるなんてっ!どういうことなのでしょうかっ!?」

 

ヴェネラテ「―――お黙りなさい、リアス」

 

 

リアスの発言にヴェネラテは静かに答える。

その顔は先程までの眩しいほどの笑顔ではなく、冷たい――氷の様な眼差しを浮かべている。

 

 

ヴェネラテ「あなたはライザーとの婚約を解消しましたのよ?それを許しただけでもありがたいと思いなさい。お父さまとサーゼクスがどれだけ他の上級悪魔を説得するのにどれだけ苦労したと思っているの?」

 

リアス「私はお兄さまとは―――」

 

ヴェネラテ「関係ないとでも?表向きはそうでしょうけど、周りは常にあなたを“魔王の妹”と見ますわ。三大勢力が強力体制となった今、あなたの立場は他の勢力の下々まで知れ渡り、注目を浴びるでしょう。もう、以前のような振る舞いはできないのですよ?2度目のワガママは許されない、いいですね?」

 

 

矢継ぎ早に放たれるヴェネラテの言葉にリアスは納得してない様子だがぐうの音も出ず、大人しく席に座った。

 

ヴェネラテはひと息ついて自身を落ち着かせると、

 

 

ヴェネラテ「お見苦しいところ見せて申し訳ありませんね」

 

一誠「き、気にしてませんから…」

 

我夢「…は、はは……」

 

 

ニコッと微笑み、唖然としている一誠達に謝罪する。

しかし、我夢や一誠は先程の恐ろしい程冷たい眼差しが忘れられず、固い笑顔で返す。

 

 

一誠「ところで……どうして俺なんすか?」

 

 

リアスの家族の意向はわからないが、先程からやけに一誠を話に絡めようすることに彼自身や我夢も気になっていた。

 

すると、ヴェネラテは笑みを浮かべるのをやめ、真面目な表情で

 

 

ヴェネラテ「あなたは次期当主たる娘の最後のワガママですもの。親としては最後まで責任をもちますわ」

 

 

それを聞いた我夢は納得した。

つまりリアスの両親は、一誠とリアスをくっつけさせ、結婚させようと考えていると…。

未来のグレモリー家の婿養子になる一誠には貴族としてのマナーはとても重要だ。

 

 

一誠「…?」

 

 

だが、この思惑で肝心である一誠は全く気付いておらず、頭の上に疑問符を浮かべている。

リアスは流石に気付いており、顔を赤くしている。

 

 

我夢「(この話、大丈夫かな……?)」

 

 

我夢は果たして両親の思惑通りになるのか、ただただ不安を残すばかりだった。

 

 

 

 




次回予告

遂にXIGのリーダーが冥界にやってくるぞ!
その時、冥界ではドラゴン…地球では怪獣が大暴れ!
人類も悪魔も絶滅の道を辿るのか?

次回、「ハイスクールG×A」!
「滅亡への一歩」!
行け!チームハーキュリーズ!



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第28話「滅亡への一歩」

絶対生物 ゲシェンク
絶対眷属 ゲシェンクポーン 登場!


会食が終わり、すっかり夜が更けたので、我夢達はそれぞれ用意された個室で寝ていた。

 

ちなみに冥界には本来、大陽と月はないが、魔力で再現している。空に上がっている月と周りの闇夜もその1つだ。

 

話を戻し、最初の頃はテーブルマナーに苦戦していた我夢も数分後にはある程度慣れ、冥界の料理の美味しさに酔いしれ、ついつい沢山食べてしまった。

久しぶりの満足感を残したまま、我夢は寝室でぐっすりと眠っていたのだが…

 

 

「我夢…我夢…我夢……」

 

我夢「んん……?」

 

 

我夢が寝てから数時間――おそらく人間界では深夜3時ぐらいであろうか。

外で誰かが自分を呼ぶ声が聞こえ、我夢は目を擦り、うとうとしながらベッドから立ち上がり、廊下を出る。

 

 

「我夢。ようやく会えましたね」

 

 

我夢が廊下に出ると、そこには月の灯りに照らされ、美しく反射する銀色の長髪に透き通った白い肌。そして、一際目立つ青い瞳に、北欧の古代民族のような白いローブを身に纏った美女がまるで待っていたかのように立っていた。

 

銀髪の女性で自分が知っているのは、グレイフィアしかいない。だが目の前にいる女性は我夢が一度も会ったことがない…見に覚えもない人物だ。

しかし、その立たずまいからどこか神聖さを感じさせることだけはわかる。

 

 

我夢「……君は?」

 

 

我夢が問いかけると、その銀髪の美女は胸元に手を当てて名乗る。

 

 

ユザレ「私はユザレ……。かつて、3000万年前の地球に存在していた地球星警備団の団長です」

 

我夢「…っ!というと、君は超古代人なのか?」

 

ユザレ「そうです。我が子孫…」

 

 

衝撃発言に驚きながらも問う我夢にユザレは肯定の言葉を告げる。

超古代人…それは光の巨人から光を受け継いだ超古代に存在した人類のことで我夢、藤宮、一誠の先祖だ。

聞いたところによると、今の人類じゃ考えられないテクノロジーを用い、人間界でもトップクラスに文明が栄えていた。

 

しかし、サーゼクスから新しく聞いた情報によれば、彼らは忽然と姿を消したらしいが……。

その他多く疑問が浮かぶが、とにかく何故、失踪した超古代人の彼女が今頃現れたのが優先だ。

 

 

我夢「ユザレ。君はどうして現れたんだ?何か伝えたいことでも?」

 

ユザレ「その通りです。これからも破滅招来体や異種族の争いによる災いが降り注いでいくでしょう……。しかし、どのような手段を用いても避けられない“運命”があなたに近づいているのを私は知らせに来たのです……」

 

我夢「避けられない……“運命”?」

 

 

我夢が再度問いかけると、ユザレは頷く。

 

 

ユザレ「それは……」

 

 

これから起こる『避けられない運命』が何か?

ユザレが伝える言葉に我夢が耳を傾けた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ジリリリリリ!》

 

我夢「っ!?」

 

 

突如、鳴り響くアラーム音に我夢はハッと目覚める。

我夢はスマホのアラームを切り、上体を起こして辺りを見渡すと、グレモリー邸で寝ていた自分の寝室だった。

部屋中は窓から照らされる明かりですっかり明るくなっており、とっくに夜が明けたことがわかる。

 

 

我夢「寝てたのか……」

 

 

我夢はユザレとの会話は全て夢の出来事と察する。

3000万年前の人間と現実で出会える訳がないではないかと。

しかし、夢にしてはやけにリアリティーがあり、今もユザレの姿を、彼女の言葉1つ1つはっきりと覚えている。

 

 

我夢「(あれは夢だったのか…?)」

 

 

我夢はベッドに座りながら考えようとした時

 

 

ドンドンドン!

 

我夢「っ!?」

 

 

今度はドアからの激しいノック音に我夢はビクッと飛び上がる。

我夢が何だろうとドアへ視線を送ると

 

 

リアス『我夢!起きなさーーい!今、何時だと思ってるの!?今日は魔王領で大事な行事があるのよーー!!』

 

我夢「あ…」

 

 

ドアの外から語りかけてくるリアスの大きな声に我夢は青ざめ、口をあんぐりと開けた。

 

そう、今日は魔王領で恒例行事である若手悪魔達が一堂に会する交流会があるのだ。

その参加者は冥界でも期待されているルーキー悪魔達で、もちろんリアスも招待されている。

 

 

我夢「…すっ、すみません!!今すぐ準備します!」

 

 

それを思い出した我夢はすぐさま寝巻から制服に着替え、寝癖で跳び跳ねた髪をセットする。

そして、タンスの上に置いてあるエスプレンダーを胸元にしまうと、飛び出す様に扉を出た。

 

廊下には既に準備を整えたリアス達が扉を囲む様に立っており、他のメンバーは怒っている様子だが、リアスは明らかにご立腹だ。

 

 

我夢「お待たせしまして、申し訳ございませんっ!」

 

 

我夢は謝罪の言葉を言いながらリアスに向かって頭を下げる。

それを見たリアスはふぅとため息をつき

 

 

リアス「…もう、次は寝坊しないでね。大事な行事なんだから……」

 

我夢「は、はい!」

 

 

そう答えると、我夢は更に深々と頭を下げる。

この口調だと許してくれた様だと我夢は悟った。

 

そんなことがありながらも、一同は魔王領行き列車に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢達が向かっているのは、魔王領の都市部である『ルシファード』。旧魔王ルシファーがいたと言われている旧首都だ。

その光景は多少違うなれど、人間界の首都の光景とさほど変わらない。

 

ルシファードに着くまでは3時間ぐらいかかる。

その間、暇なので我夢は隣で新聞を読んでいる木場に話しかける。

 

 

我夢「ねえ、木場君?」

 

木場「何だい?」

 

我夢「さっきから気になっているけど……イッセー、何かあったの?」

 

 

我夢がそう訊きながら反対側の席に座る一誠を指差す。

一誠は虚ろな表情で何かぶつぶつと呟いており、頭から

はエンストした機械の様に湯気がたっている。

 

 

木場「あはは…。実はね、我夢君が寝ている間、イッセー君は朝早くからミリキャス様と一緒に冥界についてのお勉強をしてたんだ。でも、悪魔に成り立てのイッセー君には覚えることが多すぎたみたいだね……」

 

我夢「そうなのね、あ…はは…」

 

 

そう苦笑しながら答える木場につられて我夢も苦笑する。

確かに冥界に関する知識で覚えることはまだまだ多いだろう。

しかし、読み込みが早い我夢ならともかく、勉強が苦手な一誠にとっては難しいだろう。

今も魂が抜けた状態の一誠を我夢は哀れと思いつつも、自分じゃなくて良かったと安堵する自分もいた。

 

我夢はしばらく苦笑しつつも、話題を切り替えようと木場が手で広げている新聞に視線を移す。

 

 

我夢「そういえば冥界にも新聞があるんだね」

 

木場「うん。この新聞は冥界の情報だけでなく、人間界で起きたニュースも最速で取り上げているんだ」

 

我夢「へぇ~」

 

 

悪魔社会のネットワークの広さ、精密さに感服する我夢。

冥界でも何故かスマホの電波が届いているのもそういったテクノロジーがあるからだろう。

 

我夢はまだまだ人類では到達していない技術力があるのではとワクワクしながらも木場が読んでいる新聞に目を通す。

 

すると、人間界に関する1つの見出し記事に目が止まった。

 

 

我夢「『行方知らず!恐竜の卵の化石!』…?」

 

木場「ああ…これはね、3日前にFKI県の山地から発見した恐竜の卵の化石が保管していた大学から今日、忽然と姿を消したんだ。しかもただの卵の化石じゃなくて、卵の中には()()()()()()()()()()らしいんだ」

 

我夢「生きた寄生生物?」

 

 

我夢がそう問うと、木場は頷き

 

 

木場「何千、何万年と昔に地球で繁栄していた恐竜が何故滅んだ理由が解明するんじゃないかって話題にもなってたらしいよ。でも、卵が消えたんじゃどうしようもないけどね」

 

我夢「…うん」

 

 

そう微笑む木場に我夢は頷くが、どこか不安な予感を感じられずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。魔王領から遠く離れた場所に位置する雪山。

そこはドラゴンの中でも特に強い部類である『六大龍王』だった『タンニーン』というドラゴンが納めている領地であり、大勢のドラゴン達が生息している。

 

当然ながら普段よほど実力がある者以外、ここに立ち寄る者はいない。

悪魔が不毛の地のはずだが、この日は黒い防寒具を身に纏った人物が白い息を吐きながら雪山を歩いていた。

その人物は――青いウルトラマンこと藤宮 博也その人である。

 

 

藤宮「……っ」

 

 

何故人間である彼がここ、冥界にいるのか?

そんな疑問はさておき、藤宮は空に何かを見つけると、岩陰に隠れ、何かの液体が入った注射の形をした銃弾をショットガンの様なものに装填し、構える。

藤宮が銃口に狙いを定めているのは、上空を悠々と飛ぶドラゴン達の群れだった。

 

 

カチッ!

 

ヒューーーーーン!

 

 

ドラゴン達の群れが藤宮が隠れている岩を通り過ぎようとした瞬間、藤宮は引き金を引く。

銃弾はまっすぐドラゴンの群れに向かって飛んでいき、1匹のドラゴンの首筋に刺さった。

 

 

「ん…?」

 

「どうした?」

 

「いや、何か刺さったような…」

 

「石とかじゃねぇの?最近飛んでくるからな~」

 

「う~む、そうか…」

 

 

仲間達に言われたドラゴンは気にする必要ないなと思い、飛行を続ける。

だが、銃弾に込められていた液体はそのドラゴンの体内に注入されていることには気がつかなかった。

 

 

藤宮「……ふ」

 

 

藤宮は怪しげな笑みを浮かべながら、遠くへ飛んでいくドラゴンの群れを見届ける。

その笑みはまるで何か目的を達成したかを物語るものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、リアス達はルシファードにある広いホールにて他の若手悪魔5名とその眷属と共に会合に参加していた。

魔王であるサーゼクスやセラフォルーはもちろんのこと、いかにも偉そうな雰囲気を醸し出す上級悪魔の老人達がホールの上段の席でサーゼクスの話を静かに聞いていた。

 

立場が低いリアス達は彼らを見上げる形で座って話を聞いている。それが当然の様に。

 

しかし、上級悪魔の面々は皆、見下す様な眼差しでリアス達を見下ろしており、我夢や一誠はとても気分が良いものではない。

 

サーゼクスが語る内容レーティングゲームの今後についてや政治についてなどで、我夢は隣で頭をカクンカクンと眠そうにしている一誠を小突いて起こしながら聞いていた。

そんなこんなで話は進んでいき、内容は『XIG』に関するものになった。

 

 

サーゼクス「今、我々は『根源的破滅招来体』と呼ばれる未知の存在、テロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』によって未曾有の危機に脅かされようとしている。それに対抗する組織として、三大勢力の各代表と協力し、『XIG』を結成した。まだまだ隊員も少ないがきっと素晴らしい組織になるだろう…」

 

 

現在の『XIG』の隊員は主にリアス率いるグレモリー眷属とソーナ率いるシトリー眷属だ。

まだまだ組織としては小規模ではあるが、戦力は申し分はないだろう。

サーゼクスは「だが」と付け加えると、

 

 

サーゼクス「…『XIG』を統率するリーダーが必要である。私やセラフォルーがやるとしても、魔王としての職務がある。アザゼルやミカエルも同様だ。しかし、どちらかの勢力の代表が選ばれたとしてもいざこざが起きるだろう……」

 

 

確かに今は三大勢力は和平こそ結んでいるが、完全に和解した訳ではない。

下手にどちらかの勢力からリーダーを選出すれば、それこそ本末転倒になる。

 

 

「では、魔王様。一体、誰を選出するのです?」

 

 

1人の初老の上級悪魔が問いかける。

それに彼だけでなく、周りの上級悪魔や若手悪魔達も気になる様子だ。

その問いかけにサーゼクスは

 

 

サーゼクス「()()()()()()()()()()

 

『っ!?』

 

 

その返答に会場は一斉にざわめき出す。

同じ魔王であるセラフォルーも初耳だったようで、目を丸くしている。

「誰だ?」「天使からか?」「他神話の勢力からか?」といった意見や考えが飛び交う中、サーゼクスは「静粛に」と一声出すと、会場のざわめきを沈静化させる。

 

 

サーゼクス「私が選んだ人材はどの勢力にも問題がなく、かつ『XIG』を支えるには充分な統率力を持った者だ……。さあ、登場したまえ」

 

 

サーゼクスがそう言うと、リアス達がいる下層ホールの出入口の扉が開かれる。

皆が一斉に注目を向けると、黒色の短髪に日焼けした肌。幾度かの戦いを切り抜けてきた様な熟練の顔つきをして、桑色(くわいろ)に茶色のラインが入った如何にも近未来的な服を着た中年男性がホール中央に向かって歩いてくる。

 

その男性がホール中央で止まると、サーゼクスは紹介をする。

 

 

サーゼクス「紹介しよう。彼は石室(いしむろ) 章雄(あきお)、私の友人だ。経験、キャリア申し分ない素養で、そして………何より人間だ」

 

『!?』

 

 

『人間』―――その単語に周りの悪魔達は再びざわめき出す。

どこかの勢力から選出するかと思いきや、まさか人間から選ばれるとは誰が思っただろう。

 

 

「魔王様!?一体何故人間なんかを!」

 

「そうですぞ!我々の未来を人間に委ねてもよろしいのか!?」

 

 

当然、上級悪魔達からそんな批判の声が上がる。

自分達の勢力を守る為にもある筈の『XIG』が関係ない存在に任せるのはお門違いと思えるだろう。

すると、サーゼクスは

 

 

サーゼクス「確かに皆がそう思うのは至極当然………ですが、我々悪魔は人間界に進出している。我々が更なる進歩を遂げる為に契約なるものを結び、やってきたではありませんか。地球が危機である今こそ我々は彼らとも協力するべきだ。それに三大勢力関係なく、地球で生きるもの同士である人間の彼こそ『XIG』を導く権利があると私は思っている」

 

 

サーゼクスの言葉を受け、批判の声をあげていた上級悪魔達は押し黙る。

サーゼクスの選出には利にかなっており、反論するポイントが何1つないからだ。

 

石室はサーゼクスからアイコンタクトを受けると、右足をタンッ!と地面を蹴って、まるで軍人の気をつけをする様に姿勢を整えると

 

 

石室「先程の魔王サーゼクス様がおっしゃった言葉に感銘を受け、『XIG』の司令官(コマンダー)をお引き受けした石室です。皆様のご期待に応えられるよう、部下と共に積極的に取り組んでいく所存です。何卒、よろしくお願い致します」

 

 

そう言ってお辞儀すると、サーゼクスを始めに会場から拍手があがる。

上級悪魔達は納得がいかない様な顔をしているが、はっきりとした反対理由もないので、拍手を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーゼクス「さて、長話にも付き合わせて申し訳なかったね。しかし、私達は君達に期待を寄せているのだよ。それだけは理解してほしい。それで、お詫びといって何だが、最後にそれぞれの目標を聞かせてはくれないか?」

 

 

会合も終盤に差し掛かり、サーゼクスは若手悪魔達に向かってそう問いかけると、真っ先に黒髪の短髪で屈強な体つきをした男が立ち上がる。

その男はバアル家の次期当主『サイラオーグ・バアル』だ。

 

彼の家、バアル家は『魔王』の次に立場が上の『大王』の名門家で、リアスの母、ヴェネラテもバアル家の出身。

つまり、リアスとサイラオーグは従兄弟の関係なのである。

 

 

サイラオーグ「俺は魔王になるのが夢です」

 

『ほう……』

 

 

サイラオーグは迷うことなく堂々と宣言すると、上級悪魔の何人かは感嘆の息を漏らす。

もし大王家から魔王が輩出するとなれば、前代未聞である。

サイラオーグは言葉を続け

 

 

サイラオーグ「俺が魔王になるしかない――――冥界の民1人1人が思えば、そうなるでしょう」

 

『おおっ…』

 

 

またも自信に満ち溢れた発言に周囲は驚きの声をあげる。

この一言一言で上級悪魔の期待はサイラオーグへ充分注がれているだろう。

それを聞いていたリアスは負けられないと息をのんで立ち上がり、

 

 

リアス「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝を納めることが将来の目標です」

 

 

そう言うと、サーゼクスや上級悪魔達も関心関心と言わんばかりにうんうんと頷く。

 

その後、他の若手悪魔も2人に続いて自身の目標や夢を口にしていき、最後はソーナにまわってきた。

 

 

ソーナ「私は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

 

「はて?レーティングゲームを学ぶ施設は既にあるはずだが?」

 

ソーナ「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行くことが許されない学校のことです。私が建てたいのは身分、才能問わず、誰でも通える学舎(まなびや)です」

 

 

ソーナは真剣な表情ではっきりと答える。

確かに分け隔てなくレーティングゲームを学べるとしたら、今後の悪魔も将来に希望を持てるだろう。

だが、

 

 

『ハハハハハハハハハハハハハハハ!』

 

 

それを聞いた上級悪魔達はそれがおかしいと言わんばかりに一斉に笑い出す。

我夢や一誠、そしてソーナの後ろで聞いていた匙は訳がわからないと困惑した表情を浮かべている。

 

 

「無理だ!無理!」

 

「これは傑作だ!」

 

「なるほど!夢みる乙女という訳ですな!」

 

我夢「っ!」

 

 

薄ら笑いを浮かべながら口々に話す上級悪魔達の言葉を聞いて我夢は改めて思い出す。

自分の主、リアスがいるグレモリー家は情愛が深く、あまり身分差別をしない…。しかし、それはグレモリー家が特別なだけだ。

実際の悪魔はこういった身分差別が激しいものだと…。

 

 

ソーナ「私は本気です」

 

 

ソーナは必死に込み上げてくる怒りをこらえ、真っ直ぐに言う。

セラフォルーも魔王という立場、応援が出来ないが「よく言った」とうんうんと頷く。

しかし、上級悪魔は依然とした態度で語る。

 

 

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能が見出だされるのが常。いくら時代が変わり始めたとはいえ、そのような施設を作りでもすれば、長年培ってきた旧家の伝統と誇りを汚すことになりますぞ」

 

「うむ。全くその通りですな。何を言うかと思えば、たかが下級悪魔に教えるなど……馬鹿げた夢を―――」

 

「「ふざけんじゃねぇっ!!」」

 

『!?』

 

 

そんな心ない発言に黙ってられないと声をあらげる者が2人。一誠と匙だ。

 

 

匙「さっきから黙って聞いてれば、何で会長―――ソーナ様の夢をバカにするんすか!?まだ叶わないと決まった訳じゃないのに!こんなのおかしいじゃないですか!?」

 

一誠「そうだ!夢は1人1人、言葉では語りきれない規模の目標だから夢なんだ!!そんなことがわかんねぇあんたらにそんな資格はねぇっ!!!」

 

 

今回は若手悪魔達の夢や目標を語る場―――内容は自由である筈だ。

しかし、そんな2人の心意に上級悪魔達は冷ややかな眼差しで見下ろし

 

 

「口を慎め。下級悪魔ごときが我々に意見を出す場ではない」

 

「立場をわきまえることが出来ない人間を眷属にするとは……。ソーナ・シトリー殿とリアス・グレモリー殿は着眼点が優れてないようですな」

 

「「っ!!」」

 

 

1人の上級悪魔の言葉に更に怒りの火がついた2人は掴みかかろうとするが、

 

 

椿姫「駄目です!」

 

我夢「2人共、落ち着くんだ!」

 

 

一誠は我夢、匙はシトリー眷属の『女王(クイーン)』かつ生徒会副会長である女性、『真羅(しんら) 椿姫(つばき)』に止められる。

 

 

一誠「止めるなよ!我夢!!あのクソジジイ共…!一旦ぶん殴ってやる!!」

 

我夢「勝手に言わせておけばいいんだ!ここで暴れたら、部長とソーナさんの評判が下がるだけだぞ!」

 

「「っ!」」

 

 

我夢の必死の言葉を聞いた2人は悔しそうな表情を浮かべながら、肩の力を抜く。

その様子を見て、更に意地汚い笑みを浮かべるの老いた上級悪魔の面々だ。

 

 

「フフ…若いというのはいかん、いかん。すぐカッとなってしまう」

 

「ハハハ!その通りですな!!もっと視野を広げてほしいものだ」

 

「悪魔社会の重鎮である我々に対してこの態度。石室コマンダー、そこのところどう思うかね?」

 

 

ふいに調子づいた1人の上級悪魔がニヤリと口角をあげ、石室に言葉を投げ掛ける。

 

 

石室「それは困りましたね…」

 

「そうだ、困ったものだよ。君にはXIGのコマンダーとしてしっかりとした教育を―――」

 

石室「待ってください」

 

「?」

 

 

石室に遮られた上級悪魔は不機嫌ながらも問いかけると、石室は言葉を続け

 

 

石室「私が“困った”と言うのは、彼らにそんな態度をとらせるような()()()()()()()()と言ったのです」

 

「何ィ?」

 

「君、我々に向かってその口の聞き方は何だね!」

 

 

そう言った石室に対して上級悪魔達は一斉にヘイトをぶつける。

だが、石室はそれに臆せず口を開く。

 

 

石室「彼らの行動は褒められるものではありません。しかし、私は何時如何なる場合でも部下を信頼するつもりです。あなた方がこの冥界を支える重鎮と仰るなら、彼らが敬える様な態度を取るべきだと思います。違いますか?

 

『……っ!』

 

 

石室が最後に睨み付け、殺気を込めながら言い放つと、上級悪魔達は一斉に顔が青ざめ、押し黙る。

静まりかえったホールで上級悪魔達がぷるぷると震える中、石室は呆気にとられている一誠と匙へ顔を向ける。

その顔は先ほどの怖いものでなく、優しい表情だ。

 

 

石室「…君達が仲間を侮辱されて悔しいのはわかる。だが、時には堪えることも必要だ。本当に仲間を大切に思うなら、怒りを抑える辛抱強さも持ってほしい」

 

「「はい……」」

 

 

石室に諭された2人はまるで父親に叱られた子供の様に顔を俯かせる。

話しにくい雰囲気にながらも、サーゼクスは若手悪魔同士のレーティングゲームの組み合わせについて発表しようとした瞬間

 

 

ドォォンッ!!

 

『っ!?』

 

 

突然、爆発音と共に地面が揺れ、ホールの照明や何やらが激しく揺れる。

突然の衝撃に我夢達は驚きながらも何とか椅子や柱にしがみついて耐える。

 

しばらくして衝撃が収まると、あの地響きは何だったのかとホールに誰もが口々に疑問を出していく。

すると、ホールの扉が勢いよく開き、1人の若い魔王軍兵士が焦った表情で駆け込んできた。

 

 

「はあっ、はあっ!ま、魔王さま…!」

 

サーゼクス「落ち着け。一体、何があったのだ?」

 

 

サーゼクスがなだめると、その若い兵士は息を整え、心を落ち着かせると、口からとんでもない言葉が飛び出した。

 

 

「ドラゴンがっ!!ドラゴンがこのルシファードを襲撃していますっ!!」

 

『!?』

 

 

皆は目を見開いた。

確かに冥界にはドラゴンが生息してはいるが、滅多に悪魔を襲うようなことはしない筈だ。

しかし、話を聞くと、元六大龍王『タンニーン』が管理している領地の方角から来たそうである。

 

何故、急に暴れだしたのか?

そんな疑問を抱きながらも、サーゼクスは行動を移す。

 

 

サーゼクス「石室コマンダー。私と魔王軍はここにいる者や市民の避難誘導を専念する。君は早速、都市部で暴れているドラゴン達の鎮圧に当たってくれ」

 

石室「はっ!」

 

 

石室はサーゼクスに敬礼すると、リアスとソーナ、そして彼女らの眷属へ顔を向け、

 

 

石室「『XIG』!都市防衛指令発令っ!

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

そう告げると、出撃の合図と受け取った彼らは敬礼し、ルシファードの都市部へ向かって走り出す。

 

 

我夢「っ!」

 

 

人々の悲鳴と爆発音が聞こえる都市部へ向かう途中、遠くの物陰が視界に入ったとき、足が止まった。

その物陰に潜んでいるものを見て、我夢は血相を変える。

 

 

我夢「すみません、部長!僕、こっちのエリアへ行ってみます!」

 

リアス「え!?待ちなさい、我夢!」

 

 

リアスが制止する間もなく、我夢は物陰の奥へと入っていく何かの後を追う。

我夢は必死に追跡をしながら、疑問を膨らませていく。

 

 

我夢「(藤宮!どうして君が…!)」

 

 

そう、我夢が見た何かとは藤宮のことである。

冥界への入国審査は厳しく、まず行き方さえ教えてもらわなければ絶対にわからない筈だ。

 

しかし、現にこうして藤宮がこの冥界にいる。

悪魔を忌み嫌っている彼がここにいるのなら、今起きているドラゴンの暴走に関わっている可能性は大アリだ。

 

しばらく追撃していると藤宮が通路の角を曲がる。

我夢も後を追って曲がるが

 

 

我夢「…っ、消えた?」

 

 

こちらに背を向けて走っている筈の藤宮の姿がどこにも見当たらない。

どこだと辺りを見渡していると、

 

 

我夢「…うぅっ!?」

 

 

突然、腹部に衝撃が走る。

我夢は視線を下ろすと、男性の拳が自分の腹部へ直撃していた。

身体が崩れ落ち、意識が途切れそうになる中、我夢は殴った張本人の足へすがり付きながら見上げると、冷ややかな眼差しをした藤宮がこちらを見下ろしていた。

 

 

藤宮「…」

 

我夢「…藤……宮……」

 

 

我夢はそう呟くと、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「何だよ……?これ…」

 

 

その頃、XIGの隊員服に着替え、ルシファードの都市部に着いた一誠達は目を疑った。美しい造形がなされた建造物の町並みは破壊され、辺りからは爆煙が立ち込めており、先程まで普通に生活していた人々は恐怖の悲鳴をあげながら逃げ回っている。

 

 

「ガァァァァ!!」

 

「グルァァァァ!!」

 

 

その上空をドラゴン達が口から吐く炎や吹雪で攻撃している。

眼はまるで5日間ろくなエサを食べれてない野生動物の様に獰猛だ。

 

そんな危機の中、石室はリアスとソーナに指示を出す。

 

 

石室「魔力が得意な者は避難エリアを結界で封鎖!攻撃が得意な者はドラゴンの進行を食い止めろ!行動の際はXIGナビで逐一報告し、現場の指揮は両主の命令を聞く様に!」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

命令を受けた一同はさっそく行動に移る。

皆、初の防衛任務に気合いが入っており、特にシトリー眷属は初めてのXIGの活動で気合い充分だ。

 

 

一誠「よっしゃ!匙、俺たちの活躍であのクソジジイ共を見返してやろうぜっ!」

 

匙「おう!」

 

 

そう言って意気込む一誠と匙はドラゴンの進行を食い止めに行こうとするが

 

 

石室「待て」

 

「「?」」

 

 

石室に止められ、2人は足を止める。

どうしたんだと疑問の眼差しを向けると、石室は言葉を続け

 

 

石室「2人には是非やってほしいことがある。これは君達だからこそ出来る大切なことだ」

 

「「???」」

 

 

意味深な言葉を告げる石室に2人は顔を見合せ、お互いに首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「っ…?」

 

 

一方、目を覚ました我夢は辺りを見渡すと、どこかの部屋に座っていた。

室内は窓のシャッターで閉められているせいで薄暗く、トレーニング器具と机、その上にあるパソコン、そして壁に大量のスクラップ記事が貼られている奇妙な部屋だ。

 

 

藤宮「起きたか」

 

我夢「っ!」

 

 

藤宮を見た我夢はすぐに立ち上がろうとするが、身体が動かない。

よく見ると自分が座っていたのは椅子ではなく、トレーニング器具で、手足を手錠の様なもので固定されている。

 

我夢は振りほどこうと体を動かすが、びくともしない。

そんな我夢を藤宮は不敵な笑みを浮かべ

 

 

藤宮「無駄だ。それは俺が作った特注品でね、悪魔でも壊すことは出来ないさ」

 

我夢「っ!」

 

 

そう告げると、我夢は振りほどくのをやめる。

 

しかし、疑問がある。

冥界の昼は紫色の空である筈だが、シャッターから漏れている光は人間界と変わらない白色の光だ。

我夢は藤宮に問いかける。

 

 

我夢「ここはどこだ!」

 

藤宮「ここは俺の隠れ家、当然人間界のな。お前を気絶させた後、ポータルで連れてきたんだ」

 

我夢「何だって!?人間界と冥界を繋いだって言うのか!?」

 

藤宮「ああ。異種族のテクノロジーを理解さえすれば、転送装置を作るのは容易いさ。今のところ、冥界しか繋げてないがな」

 

 

そう説明する藤宮が指指す方角には円形状のアーチが壁にかけられている。

世紀の天才児と呼ばれた男にかかれば、転送装置など作るのは簡単だろう。

我夢がそんな事を考えていると、藤宮が訊ねる。

 

 

藤宮「我夢。3日前、行方不明になった恐竜の卵に寄生生物がいることは知っているな?」

 

我夢「ああ、それがどうしたんだ?君が持ち出したと言うのか?」

 

藤宮「そうだ。あの卵に寄生していたのは環境により動物的にも植物的にも姿を変化させる絶対生物『ゲシェンク』がいたのさ」

 

我夢「ゲシェンク?」

 

 

藤宮が「ドイツ語で『贈り物』って意味さ」と答えると、テレビを点ける。

 

 

《「ウゥ~、ミニャア~!」》

 

我夢「っ!?」

 

 

テレビに流れる映像を見て、我夢は目を丸くする。

それは、肉食恐竜の様な姿をした二足歩行の怪獣が人間界の市街で暴れまわっている映像だった。

驚く我夢に藤宮は淡々と語り出す。

 

 

藤宮「ゲシェンクは本来不定形の姿だが、その時代に最も栄えた生命体を滅ぼす能力と本能を持っている。白亜紀の恐竜が絶滅したのは奴が原因なのさ」

 

我夢「―――っ!それを君は!」

 

藤宮「その通り。奴をこの現代に蘇らせたのは俺だ。冥界のドラゴンにゲシェンクの細胞を植え付け、暴走させたのも俺だ」

 

我夢「藤宮!どうして君はそんなことが出来るんだ!!」

 

 

藤宮の冷徹なまでの行動を聞いた我夢は彼を睨み付け、食らいつくように問いかける。

 

 

藤宮「人類と悪魔共は地球の頂点に立つには自己中心的すぎる……。ゲシェンクは地球からの“贈り物”だ。俺はその手助けをしただけだ」

 

我夢「そんな事させるか!………………?」

 

 

我夢はガイアに変身しようと念じるが、何故か変身出来ない。

困惑する我夢に藤宮は懐から何かを取り出し、我夢の目の前にある机に何かを置く。

それは我夢のエスプレンダーだった。

 

 

藤宮「我夢。君をここへ連れてきたのは余計な邪魔立てをさせない為だ。地球が望んでいる結果に抗ろうとする君がね……」

 

我夢「くっ!」

 

 

何も出来ない悔しさに我夢は歯を噛み締める。

そんな彼を見下ろしながら、藤宮はポケットから取り出したリモコンのスイッチを押すと、壁にあるポータルを起動させる。

 

 

藤宮「俺はこれから冥界へ行く。ダイナという存在がいるが、長くは持たなくなるだろう。冥界の様子を見られないのは残念だが、君は滅んでいく人類をその目でじっくりと確かめるんだな」

 

 

冷酷な言葉を告げ、ポータルへ入ろうとする藤宮に我夢は叫ぶ。

 

 

我夢「君にはいないのか!失いたくない人が誰も!」

 

藤宮「っ!」

 

 

我夢の呼びかけに藤宮は足を止め、脳裏にとある人物が浮かぶ。

それは自分を実の子供の様に育ててくれた稲森、自分のペット兼恋人ハムスター、リリー。

そして、かつて自分が助けた栗毛のツインテールの少女

イリナだった。

 

我夢は続けて呼び掛け

 

 

我夢「君は一番簡単な方法をとろうとしているだけだ…」

 

藤宮「…っ」

 

 

そう言われた藤宮はわずかに動揺する。

守りたいもの……それを言われて真っ先に彼女らが脳裏に浮かんだ。地球以外守るものがないはずなのに、他に守りたいものがあるのがはっきりと自覚したのだ。

しかし、藤宮はそれを振り払い

 

 

藤宮「……俺には地球だけだ」

 

 

そう告げると、ポータルの中へ入っていく。

我夢は悲しげな顔で彼の背中を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、冥界ではXIGや魔王軍、さらには若手悪魔の面々がゲシェンクの細胞によって暴走するドラゴン達への対処へ当たっていた。

 

 

木場「魔剣創造(ソード・バース)!」

 

「「グギャァァァ!?」」

 

 

木場がそう叫んで魔剣を地面に突き刺すと、2匹のドラゴンの足元へ魔剣の山が創造され、ドラゴンの身体へ深々と突き刺さっていく。

 

 

ゼノヴィア「うおおおお!!」

 

梶尾「くらえっ!!」

 

「「グルァァァァーーーー!!」」

 

 

そこへデュランダルを手にしたゼノヴィアと握り拳を作った梶尾がドラゴンに向かって攻撃する。

2匹のドラゴンは後ろに建物を吹っ飛ばしながらも後退していくが、すぐに立ち上がる

 

 

梶尾「くそっ!」

 

木場「やっぱりドラゴン相手にはきついね…」

 

ゼノヴィア「何てタフなんだ!」

 

 

何事もなかった様に立ち上がるドラゴン達を見て、3人は悔しそうに歯を噛み締める。

先程から攻撃しているが、ドラゴンの強固な皮膚に阻まれ、峰打ちどころか、殺傷レベルの攻撃も通用しない。

 

 

『グギャァァァ!』

 

梶尾「また新手か!次から次へと…!」

 

 

しかも、やっとこさ気絶させても増援が来るので、被害は減るどころか増えてきている最悪な状況だ。

 

 

「グギャァァァ!」

 

 

目の前にいる2匹に加え、先程来た増援のドラゴンが加わり、3人はさらに不利な状況に追い込まれる。

3匹のドラゴンは大きく鼻を広げて、空気を吸い始める。

 

 

梶尾「ブレスだ、来るぞっ!」

 

『っ!』

 

 

ドラゴン達がブレス攻撃してくる察した梶尾は指示を出すと、2人は身を固める。今まさにブレスが放たれようとしたその時、

 

 

ドガァァン!

 

「「「グルァァギィ!!」」」

 

「「「!?」」」

 

 

上空から放たれたミサイルがドラゴン達へ直撃する。

火花が散らしながら倒れるドラゴンを尻目に3人は驚きながら空を見上げると、未来的なフォルムをした黄色の戦闘機が佇んでいた。

 

すると、梶尾のXIGナビに無線が入り、梶尾は画面を展開すると

 

 

《一誠「こちらイッセー。木場、ゼノヴィア、梶尾さん、無事ですか?」》

 

『イッセー(君)!?匙(君)!?』

 

 

戦闘機のコクピットと思わしき座席で操縦桿を握る一誠と後部座席に座る匙の姿があった。

 

 

梶尾「その戦闘機は何だ!?」

 

《一誠「あ、これは『XIGウイング』って言いまして、天界が製作した『XIG』専用の戦闘機なんですよ。まだ試作段階でこれ1機しかないですけど、こいつでドラゴンを鎮圧します」》

 

木場「大丈夫なのかい?」

 

 

天界が作った最新鋭の戦闘機とはいえ、相手はドラゴン。

まともに戦えるのか3人は不安になるが、後部座席に座る匙がそれを消し飛ばす様に笑みを浮かべる。

 

 

《匙「安心しろ!こいつは本当にスゲェ機械なんだ!」》

 

《一誠「あとは俺たちに任せてくれ!」》

 

 

2人は自信ありげにそう告げると、XIGウイングを操縦し、ドラゴン達がいるエリアへ飛んでいく。

 

 

「グルァァァァ?」

 

「グギャァァァ!」

 

 

ドラゴン達は上空を優雅に飛行するXIGウイングを見つけると、翼を広げて追いかける。

XIGウイングはグルグル時計回りに飛び、ドラゴン達もその後を追いかける。

一誠の狙いは出来るだけ多くのドラゴンを引き寄せる事にあるのだ。

 

大半のドラゴンが引き寄せたのを確認すると、一誠は合図を送る。

 

 

一誠「よし!匙、今だ!」

 

匙「おう!」

 

 

一誠の合図に合わせて、匙は『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』を発現すると、上部ハッチを開く。

すると、ラインはXIGウイングのスピードに合わせて伸びていき、ドラゴン達を縛る。

その間、一誠は無線を取り

 

 

一誠「皆!今のうちに麻酔弾を!」

 

 

そう連絡すると、地上から飛び上がったリアス達が麻酔弾を発射する。

雨あられと麻酔弾をくらったドラゴン達はすぐさま眠りについた。

 

 

匙「やったぜ!」

 

一誠「見たか!俺達の超ファインプレー!!」

 

 

喜び合う2人は、XIGウイングから垂れ下がるラインに捕縛され、眠っているドラゴン達を都市部から離れた地上へ降ろす為、高度を下げようとした時

 

 

ドォン!

 

一誠「ぐあっ!?」

 

匙「何だ!?」

 

 

何かが衝突し、機体が激しく揺れ、コクピットの電子部品がショート、アラーム音が鳴り響く。

よく見ると、XIGウイングの左翼部から爆煙が立ち込めており、攻撃した方角には地球にいる筈の怪獣、ゲシェンクがいたのだ。

 

恐竜の卵に寄生していたゲシェンクは1体だけではなかったのだ!

 

 

一誠「くっそぉぉぉーーー!!

 

 

コクピット内が爆煙とアラームの嵐に鳴り響く中、一誠は渾身の叫びをあげながらリーフラッシャーを掲げると、白色の光に包まれる。

彼は空の巨人、『ウルトラマンダイナ』へと姿を変えた。

 

 

[推奨BGM:ヒーロー登場!]

 

 

ダイナ「デュッ!」

 

「何あれ!?」

 

「パパ、ママ!みてみて、カッコイイ!」

 

「敵か味方かわからないけど……頑張れーー!!」

 

 

地上へ降り立つダイナの勇姿に心奪われた悪魔の市民達(特に子ども)は、応援する。

 

 

[BGM終了]

 

 

ゲシェンク「アオ~~、ミニャア!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

ダイナは左腕に抱えているXIGウイングを地上へ降ろすと、こちらを威嚇するゲシェンクに向かって駆け出す。

 

 

[推奨BGM:光の巨人、ふたたび]

 

 

ダイナ「ダァァァァァーーー!!」

 

ゲシェンク「ウゥ~!?」

 

 

ダイナは走った勢いのままドロップキックを放つ。

ゲシェンクは呻き声と火花を散らしながら大きくのけぞり、後方へ吹き飛ばされる。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナは跳躍し、空中できりもみ回転しながら倒れているゲシェンクの頭部に回り込む。

そして、追い討ちにゲシェンクの頭部を両手で掴み上げ、

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ゲシェンク「ミニャア!?」

 

 

勢いよく地面へ叩きつける。

ゲシェンクは苦悶の叫びをあげ、手足をジタバタさせる。

こんなものは被害を受けた人々の恐怖に比べたらまだ甘い…。

 

ダイナは回り込んで、ゲシェンクへ馬乗りしようとするが

 

 

ダイナ「グアッ!」

 

 

ゲシェンクがジタバタしている足が胸元に当たり、後ずさる。

 

その間起き上がったゲシェンクに合わせ、ダイナはすぐさま体制を整える。

 

 

ゲシェンク「ミニャア~~~ォォォ~~~~!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナとゲシェンクは互いに視線を反らさず、ジリジリとすり足しながら間合いをはかる。

 

そんな2体の対峙に遠くから眺める者―――藤宮が2体を見定める様に眺めていた。

 

 

藤宮「地球が生み出した巨人と地球が生み出した絶対生物……。果たして地球はどちらを取るか?」

 

 

藤宮が呟く中、ダイナとゲシェンクは同時に駆け出す。

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

ゲシェンク「ミニャア!!」

 

 

互いに接近するとダイナは白色に発熱化した拳を、対するゲシェンクは指から生えている鋭い爪から放つ一撃を同時に繰り出した。

 

[BGM終了]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「――っ!」

 

 

その頃、藤宮の隠れ家にて拘束されている我夢は悔しそうに歯を噛み締めながら、テレビ画面を観ていた。

 

 

《「私は現在、FKI県N市に来ておりますが……ご覧下さい!突如現れた怪獣によって市街地は半壊、負傷者も多数続出しています!怪獣は現在、TK都に向かって進行していますので、近くにいる方はすぐに避難して下さい!」》

 

 

テレビに映るニュースキャスターは怪獣の恐怖で身が震えながらもしっかりと情報を伝達している。

マスコミ魂というものであろうか。

 

話が逸れてしまったが、ニュースキャスターが報じた通り、ゲシェンクはN市を破壊しながらもT都へ向かっている。

T市は日本経済を支える大都市の1つだ。当然大勢の人間が生活している。

もし、破壊されでもすれば大勢の人間だけでなく、経済的にも大ダメージがあるだろう。

 

もちろん人間側もただではやられず、G.U.A.R.D.はゲシェンクの討伐へ戦闘機部隊を派遣した。

戦闘機部隊はゲシェンクへ攻撃していくが

 

 

《「ああっ!?G.U.A.R.D.が誇る戦闘機部隊も全く歯が立ちません!!」》

 

 

ミサイルな銃弾の嵐がどれだけ当たっていてもゲシェンクには傷1つついておらず、焼け石に水だ。

 

 

《ゲシェンク「ウゥ~……ニィアッ!」》

 

 

ゲシェンクは唸ると、頭の角からポンッと小気味良い音をたてながら赤い球体が現れる。

そして、赤い球体はそのまま猛スピードで迫り、戦闘機が回避する間もなく撃墜される。

 

1機…また1機と落とされ、圧倒的な強さを持つゲシェンクの前にG.U.A.R.D.精鋭の戦闘部隊は数を減らしていく始末だ。

 

―――何とかしなければいけない。

この危機的な状況を打破するにはウルトラマンになるしかない。

しかし、我夢は現在拘束されているせいで身動きできず、変身アイテムのエスプレンダーは目の前にあるが、手足を使って届く距離ではない。

 

この不利な状況なら誰もが諦めるだろう。

しかし、我夢は我夢は諦めず、藁にもすがる気持ちで叫ぶ。

 

 

我夢「僕は人類を悪魔を……そして地球を守りたいんだ!いや、守ってみせる!!」

 

 

1人しかいない密室に流れているテレビ音声さえもかき消す程の声量の叫びが響く。

一瞬、我夢の脳裏には静寂という言葉が過るが、奇跡は起こった。

 

 

キィン!

 

 

机に置いてあるエスプレンダーは我夢の思いに呼応するのか様に眩しい程の赤い閃光を放った。

 

我夢はエスプレンダーから放つ赤い光に包まれていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲシェンクの猛攻に町並みは破壊しつくされ、13機ほどいたG.U.A.R.D.戦闘機部隊は残り1機のみだ。

しかし、それでも残った戦闘機は戦うのを止めず、懸命に攻撃し続ける。

 

だが、孤軍奮闘虚しく、ゲシェンクには全くといって通用しない。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~…ニィアッ!」

 

 

非情にもゲシェンクは残った戦闘機目掛けて角から赤い球体を放つ。

戦闘機は赤い球体から逃げるが、どれだけ複雑な回避方法を持ってしても赤い球体は追尾し続ける。

 

 

ドォンッ!

 

「うわあっ!」

 

 

遂に直撃してしまい、コクピットの機械部品はショートし、機体から爆煙があがる。

コントロールが効かなくなった戦闘機はどんどん地上へ墜落していく。

 

もう駄目だ…。パイロットがそう絶望した瞬間、目の前に赤い光の柱が現れる。

あまりもの眩しさに目を瞑っていると、機体を何かにガシッと捕まれる。

 

 

「?」

 

 

不思議に思いながらパイロットは見上げると、収まっていく光の柱から現れたのは……

 

 

「ウルトラマン!」

 

 

大地の巨人、ウルトラマンガイアだった。

ガイアの光が我夢の思いに答えてくれ、彼をウルトラマンに変身させてくれたのだ。

 

ガイアは両手で抱える戦闘機を優しく地上へ降ろすと、ゲシェンクへ体を向ける。

 

 

ゲシェンク「ミニャア!ミニャア!」

 

 

ゲシェンクは現れたガイアに向かって猫のような叫び声をあげて警戒する。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアもファイティングポーズをとって気合いを入れると、ゲシェンクに向かって疾走。

接近して右のストレートパンチを繰り出すが、ゲシェンクにしゃがみこんでかわされる。

 

 

ゲシェンク「ミニャア!」

 

ガイア「グアッ!」

 

 

ゲシェンクはその体勢まま頭突きをくらわせる。

ガイアは少しのけぞりながら後退する。

 

しかし、ガイアはすぐに体勢を整えると、ゲシェンクの大きな頭を脇に抱えて締め上げる。

 

 

ガイア「グアァァァ…!」

 

ギチギチギチ……

 

ゲシェンク「ミィア!?ミニャア!!」

 

 

小気味悪い音を立てながら頭蓋骨が折れると錯覚するような締め付けに、ゲシェンクは苦しみ悶える。

 

ある程度痛め付けるとガイアは頭への締め付けをほどくと、ゲシェンクの体に背中を密着させ、両手で頭を自分の右肩に固定させた体勢へ切り替える。

 

 

ガイア「デュアァァァァァーーー!!」

 

ゲシェンク「ニィアッ!!」

 

 

そのまま、一本背負いの要領でゲシェンクを前方へ投げ飛ばす。

ゲシェンクは地面に叩きつけられ、その周囲からは土砂が巻きあがる。

 

地面で悶えているゲシェンクに追い討ちをかけようと、ガイアは接近しようと駆け出すが

 

 

ゲシェンク「ウゥ~…ミニャアッ!!」

 

ガイア「グアァァァッ!?」

 

 

ゲシェンクの角からポンッと小気味良い音を立てながら放たれた赤い球体をくらい、ガイアは火花を散らしながら大きく吹き飛ばされる。

 

後方にあったビルを破壊しながら、ガイアは地面へ叩きつけられる。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~…ミニャアッ!ウゥ~…ミニャアッ!」

 

 

これを好機と思ったゲシェンクは起き上がると、頭部の角から次々と赤い球体を放つ。

 

 

ガイア「グアァァァァァァーーーーーー!!」

 

[ピコン]

 

 

赤い球体の嵐にガイアは身体中から火花が散り、苦痛の叫びをあげる。

ライフゲージも青から赤に変わり、点滅を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、冥界で戦っているダイナもピンチに陥っていた。

 

 

ダイナ「グアァァァーーー!!」

 

 

赤い球体が直撃し、大きく後方へ吹き飛ばされる。

彼も赤い球体攻撃の前に劣勢を強いられているのだ。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~…ミニャア!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナは再び放たれた赤い球体を横転して避ける。

発射させない為に何とか近付こうとするが、追尾する赤い球体が厄介で中々近付けない。

 

そんなダイナの戦いに藤宮は市街地から冷ややかな眼差しで眺めながら呟く。

 

 

藤宮「悪魔も人類も……地球のために淘汰されるべきなんだ」

 

 

地球は人類と異種族というバイ菌を排除するためにウルトラマンという存在を現在に生み出した。

ゲシェンクは過去の地球で栄えていた恐竜を滅ぼした……それは地球にとって負担がかかる存在だからだろう。

そう考えると、3日前にゲシェンクが寄生した恐竜の卵が発見されたのも偶然ではなく、必然だ。

人類もその絶滅のサイクルに入ったから、こうして地球がゲシェンクを遣わしたのだ。

 

しかし、目の前に戦うダイナ……おそらく自力で脱出して地球で戦っているガイアはどうだろう?

もう人類と異種族が地球にとって不要という結論が出ている筈なのに、抗っている。

藤宮にとってそれは“愚か”以外、何ものでもないのだ。

 

 

「……えぐっ、ぐすっ…」

 

「…?」

 

 

そんなことを考えていると、ふと耳に幼い女の子の声が耳に入った。

 

藤宮が声のする方へ顔を向けると、黒髪のツインテールに可愛らしいワンピースをきた女の子がその場で塞ぎこんで泣いていた。

おそらく、避難しているうちに親とはぐれてしまったのであろう。

 

 

「ぐすっ、ぐすっ、おかあさ~~~ん!どこにいるの~~?」

 

(藤宮「父さんっ!母さんっ!」)

 

藤宮「…」

 

 

藤宮はその泣き崩れる少女を見て、幼い頃、悪魔によって殺され、涙を流す自分の姿と重ねた。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~……ミニャアッ!!」

 

ドガァァン!

 

 

その時、ゲシェンクが放った赤い球体が女の子の近くにある高層の建造物に直撃した。

当然、爆発した高層の建造物から大量の瓦礫が落ちてくる。

 

 

「ううっ……ぐすっ、おかあさ~~ん…」

 

 

しかし、真下にいる少女は気づいていないのかその場で泣き続いている。

その間にも瓦礫群は少女に向かってどんどん迫ってくる。

 

 

藤宮「――っ」

 

 

その時、藤宮は何を思ったのか血相を変え、素早く少女のもとへ向かって駆け出す。

 

藤宮は少女を抱き抱えると、落ちてくる瓦礫を避けながら、安全な場所へ彼女を降ろした。

 

 

「マハちゃ~~んっ!」

 

「…っ!」

 

 

すると、遠くから母親らしき人物が焦った様に向こう側の通路から呼び掛けながら現れた。

それを見た女の子はパァッと表情が明るくなると、母親らしき人のもとへ走り出す。

 

 

「ママッ!」

 

「マハちゃん!」

 

藤宮「…………、っ!?」

 

 

母親の胸へ飛び込み、母親もまた愛おしく抱き締める再開の抱擁に藤宮は何故か一瞬安堵した自分に驚いた。

『人類も悪魔も地球のために淘汰されるべき』―――と頭の中では既に答えが出ている。

 

しかし、現に今、淘汰されるべき対象の悪魔である少女を助けてしまった。

考えるより先に自然と体が動いたのだ。

 

藤宮は自分の理念に反する行動をした自分に愕然としているのだ。

 

 

「娘を助けて下さってありがとうございます!」

 

マハ「ありがとー」

 

 

驚愕する中、母親と少女マハは先程から泣き顔から一変して満開な笑顔で藤宮へお礼を告げると、避難所へ向かって歩き出す。

 

 

藤宮「……」

 

 

藤宮はマハや彼女の母に言われた言葉が心に響いたのか、未だに驚きつつも、彼女達の後ろ姿が見えなくなるまで眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「グアッ…!」

 

[ピコン]

 

 

その頃、人間界で戦っているガイアはゲシェンクの赤い球体攻撃になすすべなく、地に倒れ伏していた。

何とか立ち上がろうとするが、身体中から響く痛みで中々立ち上がれない。

 

 

ゲシェンク「ミニャア!ミニャア!」

 

ガイア「……」

 

 

ゲシェンクはそんなガイアを嘲笑うかの如く、止めを刺す為にゆっくりと歩を進める。

ガイアは悔しげに見上げていた。

 

―――このままじゃ、やられてしまう。

ガイアがそう思った瞬間

 

 

ドォォン!

 

ゲシェンク「ウニャアッ!?」

 

ガイア「ッ!?」

 

 

突如、地上から放たれた無数のナパーム弾にゲシェンクは頭部を攻撃された衝撃で倒れる。

 

ガイアは驚きつつも攻撃が放たれた方向へ顔を向けると、そこには赤とグレーでペイントされ、全体的に6角形のシルエットが特徴の戦車が堂々と佇んでいた。

 

あれは何だとガイアが思う前に、謎の洗車から彼に向かってスピーカーで話しかけてくる。

 

 

《「大丈夫か?坊主」》

 

《「聞こえるか!?」》

 

ガイア『はっ、はい!あなた達は?』

 

 

ガイアはテレパシーで戦車内にいる男達に向かって問いかける。

彼らはコホンと咳払いすると、

 

 

《「俺達はアザゼル様の直属の精鋭部隊、『チームハーキュリーズ』!!休暇中だったが、何やら騒がしいと思って駆けつけてみれば怪獣騒ぎだったんで、こうして助太刀に来たぜ!!」》

 

 

チームハーキュリーズ……。彼らが言う通り、堕天使の総督アザゼルが選出した3人の男達による精鋭部隊の1つであり、主に陸戦を分野としている。

 

 

《「こんな恐竜もどきに苦戦するなんて、鍛え方がなってないんじゃないか?」》

 

ガイア『す、すみません……』

 

《「ま!これが終わったら鍛えてやっからさ、頑張ろうぜ!」》

 

ガイア『は、はあ……?』

 

 

共闘とトレーニングの約束にガイアは彼らのノリに唖然となりながらも曖昧に答える。

 

 

ゲシェンク「ミニャアッ!」

 

「「「「!」」」」

 

 

そんな会話をしていると、倒れていたゲシェンクは起き上がった。

不意討ち気味に攻撃をくらったおかげで相当頭にきているのか、ハーキュリーズが乗る謎の戦車を睨み付けている。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~…ミニャアッ!」

 

 

ゲシェンクは頭部の角から赤い球体を謎の戦車に向かって放つ。

 

 

ドォォン!

 

ガイア「ッ!」

 

 

 

重厚な見た目通り、謎の戦車は機敏に動けず、攻撃をまともに受けてしまう。

火花を散らす戦車の姿にガイアは一瞬不安になるが、

 

 

《「こんなへなちょこ攻撃に負けてたまるか!!」》

 

《「ハーキュリーズの意地を見せてやる!」》

 

《「アルティメットナパーム、発射っっ!!」》

 

 

ハーキュリーズは攻撃に怯むどころが、逆に戦意を高めており、戦車上部の4つのキャノン砲からナパーム弾を連射する。

対するゲシェンクもそれに応戦して赤い球体を連射する。

 

彼らをひと言で表すと、“タフ”。戦車と怪獣では明らかに不利ではあるが、武装ではなく、屈強な精神で戦う彼らにガイアは頼もしいと思った。

 

 

《「くらえぇぇーーーー!!」》

 

ドガァァァン!

 

 

飛び道具の応酬を続ける中、1発のナパーム弾がゲシェンクの角を木っ端微塵に破壊した。

 

 

ゲシェンク「ミィアァァァ~~~!!」

 

 

ゲシェンクは苦痛の叫びをあげながら、角があった額を手で抑える。

その間、ハーキュリーズはガイアに向かって叫ぶ。

 

 

《「今だっ!!」》

 

ガイア「――ッ!」

 

[推奨BGM:ウルトラマンガイア!(instrumental)]

 

 

ハーキュリーズの言葉を受けたガイアはゲシェンクに向かって駆け出す。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ゲシェンク「ウニャアッ!」

 

 

接近すると、深く腰を落として正拳突きを腹部へ繰り出す。

ゲシェンクが怯む中、ガイアは休む間も与えず、次々と

パンチとキックのコンボを繰り出す。

 

 

ゲシェンク「ミィアッ!」

 

 

ゲシェンクは仕返しに尻尾をガイアの頭部に目掛けて振り回すが

 

 

ガシッ!

 

 

とガイアの手に掴まれる。

振りほどこうと必死に足を動かすが、びくとも動かない。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

ゲシェンク「ウニャアッ!?」

 

 

ガイアは左手の拳を赤く発光化させると、掴んだ尻尾に殴り付ける。

ガイアの渾身の一撃に尻尾は傷がつくどころかもげてしまい、前へ重心を乗せていたゲシェンクはバランスを崩して前のめりに倒れる。

 

ガイアは倒れたゲシェンクの傍に近寄って、両腕に力を込めて背中を掴むと、重量挙げの様に高く持ち上げる。

 

 

ガイア「ダァァァーーー!!」

 

ゲシェンク「ウニャアッ!!」

 

 

そのまま勢いよく前方へ投げ飛ばす。

ゲシェンクは地面に叩きつけられた衝撃でのたうち回る。

 

 

 

 

 

 

 

ガイアが優勢に立って戦う中、冥界で戦うダイナも優勢に立っていた。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

[ティヨン]

 

ゲシェンク「???」

 

 

ミラクルタイプへタイプチェンジしたダイナは超スピードでゲシェンクを取り囲む様に走る。

ゲシェンクは何とか眼で追おうとするが、右、左、前、後ろ……脳で処理しきれない程のスピードで動き回るダイナに混乱する。

 

 

ゲシェンク「@?/○☆#$?~~~?」

 

 

あまりものスピードに遂に追いつけなくなったゲシェンクは言葉にならない声を出し、目を回して倒れる。

 

 

ダイナ「フッ!ハァァァァ………!」

 

 

ダイナはウルトラサイキックで悶絶しているゲシェンクを市街地から離れた上空へ移動させる。

 

 

ダイナ「…ハッ!グアッ!!!」

 

 

誰もいないことを確認したダイナは素早く両腕を胸の前でクロスさせ、フラッシュタイプへ戻ると、両腕を十字に組んで放つ必殺技、『ソルジェント光線』を放った。

 

 

ドガガガァァァァーーーーーン!!

 

 

ソルジェント光線を受けたゲシェンクはその威力に耐えきれず、オレンジ色のサークルが描かれると共に爆発四散した。

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「ハッ!グアァァァァァァァァァ………!」

 

 

同時刻。人間界で戦うガイアは両腕を広げ、必殺技の『フォトンエッジ』の体勢へ移る。

 

 

ゲシェンク「ウゥ~、ミィア~~~…」

 

 

ゲシェンクは何とか避けようとふらふらと体を起こすが、最早回避する程のエネルギーは残っていない。

残っていたとしてももう既に遅く、ガイアは頭部に光の鞭のようなエネルギー刃を形成し終えていた。

 

 

ガイア「デュアッ!!!」

 

 

ガイアは深く腰を前方へ落として頭部をつきだす。

頭に形成されたエネルギー刃はまっすぐゲシェンクに向かって飛んで行き

 

 

ゲシェンク「ウゥゥゥ~~~!?」

 

ドガガガガガガガァァァァーーーーーーン!!!

 

 

ゲシェンクに直撃すると、全身が刃で切り刻まれたようなエフェクトが走り、木っ端微塵に爆発した。

 

ガイアはふらふらとしながら体勢を整えると、全身から赤い光を発しながら、変身を解除した。

 

ゲシェンクによって破壊された町の地に立つ我夢は脂汗をかき、苦しそうに息も切らしている。

この彼の状態によほどゲシェンクが強敵だったのを物語っている。

 

そんな状態ながらも、我夢はエスプレンダーを眺める。

エスプレンダーの青い液晶から赤い光が我夢に語りかけるかのようにほのかに輝く。

それを見た我夢は安堵した笑みを浮かべ

 

 

我夢「心が、ガイアの光に通じた……!」

 

 

そう呟くと、緊張が解けたのか我夢はその場で倒れた。

 

 

[BGM終了]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナとガイアの活躍によって地球が産んだ絶対生物ゲシェンクは倒された。

計画が潰された藤宮は人間界に繋がるポータルがある場所へ歩いていた。

 

腑に落ちない場面も会ったが、次こそは必ず…。

藤宮は帰りの道中でそう思いながらポケットに入れていたゲシェンクの細胞が入っているカプセルを取り出すが、カプセルに入っている筈の細胞は跡形もなく消滅していた。

 

地球が人類らを絶滅させる為に遣わした怪獣は同じく地球から遣わしたウルトラマンによって倒された。

その結果から、地球はまだ人類や異種族を見放してないのは明白である。

 

 

藤宮「……」

 

 

藤宮はその空のカプセルを複雑そうな表情を眺めながれ、歩き去っていくのだった………。

 

 

 

 




次回予告

修行開始!迫りくるレーティングゲームに備えるが、小猫が倒れてしまった!
リアスの母、ヴェネラテが語る衝撃の『塔城 小猫』誕生の秘密とは!?

次回、「ハイスクールG×A」
「小猫の秘密」
力の強さは心の強さ!










XIGウイングのデザインはまんまガッツウイング1号で、ハーキュリーズが乗っている謎の戦車もまんまGBTスティンガーです。
良かったら、感想&コメントよろしくお願いします。


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第29話「小猫の秘密」

ゲシェンク及び操られたドラゴンによって襲撃を受けたルシファードは建造物の破壊はされたが、『XIG』と魔王軍、若手悪魔達の活躍によって死傷者は避けられ、現在復興作業が進められている。

ちなみにゲシェンクに操られたドラゴン達は全員正気に戻った。

 

同様の被害を受けた人間界のFKI県N市は重傷者こそ出たが、奇跡的に死傷者は出なかった。

 

ゲシェンクを倒した後、我夢はハーキュリーズ達によって冥界へ送ってもらった。

無事、仲間のもとへ帰れた我夢はお礼を告げようとしたが、「礼はいらない。今度会ったときに言ってくれ」と意味深な言葉を告げ、石室コマンダーと一緒にどこかへ去っていった。

 

さて、そんな事がありながらも翌日。

我夢達オカルト研究部はグレモリー家の広い庭の一角に集まっていた。

 

実は若手悪魔同士でレーティングゲームを行うことになり、リアスはソーナと対戦することになった。

幼馴染み同士の対決とあり、両者は燃えており、さっそくきたるべきレーティングゲームに備える為に修行をすることになったのだ。

 

アザゼルは手元にある資料を見ながら、自身が考案した修行内容をリアスから順に発表していく。

 

 

アザゼル「まずはリアス。お前は最初から才能、身体能力、魔力といったステータスが高い。このまま特に修行しねぇでも確実に強くなる。しかし、お前さんは明日よりも今強くなりたいんだろ?」

 

リアス「ええ」

 

アザゼル「んなら、この紙に書かれているメニューで決戦日直前までこなせ」

 

 

そう言うとアザゼルはリアスに手渡す。それを受け取ったリアスは首を傾げる。

 

 

リアス「……これって、見たところ普通の基礎トレーニングみたいだけど?」

 

アザゼル「さっき言っただろ?“このまま特に修行しねぇでも強くなる”って。全てにおいて総合的にまとまった力を持っているからこそ、基礎的なトレーニングで充分強くなれる。今回のお前の課題は『(キング)』としての資質だ。いくら力が強くても、機転の良さや判断力が欠けていれば司令塔失格………これは『XIG』の活動でも同じだ。だから、過去のレーティングゲームの記録映像や記録データ、余裕があれば『パムパムネット』の怪獣との戦いの記録を全て頭に叩き込め」

 

リアス「わかったわ」

 

 

アザゼルにそう説明され、リアスは納得したように頷く。

それを見たアザゼルは朱乃へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「次に朱乃」

 

朱乃「……はい」

 

我夢「…」

 

 

アザゼルに呼ばれた朱乃は少し不機嫌そうに返事する。

我夢は以前、朱乃から堕天使を誰よりも忌み嫌っていることを聞いているので、アザゼルも苦手なんだろうと不安に思った。

 

不穏な中、アザゼルはまっすぐ朱乃の瞳を見つめ

 

 

アザゼル「お前は()()()()()()()()()()()()()()()

 

朱乃「…っ!」

 

 

そうはっきりと言うと、朱乃は顔をしかめる。

忌み嫌っている堕天使の力を使う……それは彼女にとって何よりも嫌なことだ。

アザゼルはそんな彼女に構わず、話し続ける。

 

 

アザゼル「フェニックス家とのゲーム、見せてもらったぜ。はっきり言うぜ、“何だありゃ”。何故、堕天使の力を使わなかった?お前が本来持つ堕天使の光を雷に乗せれば、相手の『女王(クイーン)』も難なく倒せた筈だ」

 

朱乃「…私は、あのような力に頼らなくても―――!」

 

アザゼル「否定するな。今までうまくやってこれただろうが、これからもそうとは限らない。辛く、苦しいかもしれねぇが、自分の全てを受け入れろ………。そうでなきゃ、一生弱いままだ。お前もわかっているだろう?」

 

朱乃「……」

 

 

アザゼルにそう言い切られると、朱乃は複雑そうに顔を俯ける。

堕天使を力を使えば、大きな進歩になることは朱乃自身もわかっている。

しかし、それをどうしても拒絶する自分がいる。

 

 

我夢「(朱乃さん…)」

 

 

自分の力に葛藤している朱乃を見て、我夢は顔を曇らせる。

 

そんな2人を尻目にアザゼルは木場とゼノヴィアへ顔を向ける。

 

 

アザゼル「木場、お前は『禁手(バランス・ブレイカー)』の状態維持が課題だ。剣術の方は師匠に鍛え直してもらうんだったな?」

 

木場「ええ、1から指導してもらう予定です」

 

アザゼル「よし。ゼノヴィアはデュランダルを充分に使いこなせるようにすることだ」

 

ゼノヴィア「わかった!」

 

 

2人は今回の特訓は相当意気込んでいるのか、気合い充分だ。

アザゼルはそんな2人を見つつ、今度はギャスパーへ視線を向ける。

 

 

アザゼル「そんで、ギャスパー」

 

ギャスパー「はっ、はいぃ!!」

 

アザゼル「…お前はその対人恐怖症を治せ。元々持っている素質を活かしきれないのはそれが原因だ。俺がメニューを組んどいたから、完全にしろとまでは言わないが、人前に出てもまともに動けるようにはなれ」

 

ギャスパー「わっ、わかりましたぁぁ!!!」

 

 

ギャスパーはビクビクしながらもアザゼルから渡されたメニュー表を受け取る。

以前よりかはわりとマシになったがそれでもギャスパーは人見知りが激しい。

一般市民がいくら強力な銃を持っても、実弾射撃の経験が未熟だったら意味はないのと同じだ。

 

怯えるギャスパーにアザゼルは大丈夫かと不安そうに顔をひきつらせながらも、今度はアーシアに声をかける。

 

 

アザゼル「アーシア。お前もリアスと同じで基礎的なトレーニングで身体能力と魔力を鍛えろ」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

アーシアは気合いが入ってるのか、元気よく返事する。

彼女がこうして気合いが入っているのは、前々から悩んでいた自分の力不足が解決するのではと期待しているからだ。

アザゼルは内容を話し続け

 

 

アザゼル「…んで、本題の『神器(セイクリッド・ギア)』の強化についてだが、回復力は申し分ない。だが、“触れなければ発動しない”のがネックだ」

 

一誠「それが何か問題あるんすか?」

 

 

どこにもアーシアの能力には欠点が無さそうに思った一誠は思わず問いかける。

その問いかけにアザゼルは呆れたように肩をすくめ

 

 

アザゼル「アホか。触れなければ発動しないってことはケガした相手にわざわざ近付かなければいけないってことだ。敵がわざわざ回復に向かうのを待ってくれると思うか?」

 

一誠「あっ、そうか…!」

 

 

アザゼルの解説を聞き、一誠は納得したように相槌を打つ。

 

 

アザゼル「話を続けるぞ。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の出したデータによると理論上、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は回復の範囲を広げることが出来る」

 

一誠「おおっ!すげぇじゃん!!」

 

アザゼル「ああ、しかし1つだけ問題がある」

 

我夢「問題?」

 

 

首を傾げる我夢の問いかけにアザゼルは頷き

 

 

アザゼル「アーシアは優しすぎるんだよ…。傷ついた人がいれば、それが例え敵だろうが味方だろうが関係なく無意識に回復させてしまう可能性がある。敵と味方が判別できれば理想なんだが、実現するには難しいだろうな」

 

 

アザゼルは難しそうな顔でそう語る。

慈愛にも近いアーシアの優しさがまさか()()()()()()()()()()()()という欠点を作ってしまうとは…。

しかし、アザゼルはいつものようにチョイ悪そうな笑みを浮かべ

 

 

アザゼル「だが安心しろ!範囲回復が無理だとしても回復のオーラを飛ばすことは理論上可能だ。これなら回復力は落ちるだろうが直接触れずに回復でき、味方だけを回復できることが出来る。アーシア、お前にはこの特訓を基礎トレーニングと一緒にやってもらう」

 

アーシア「は、はい!頑張ります!」

 

 

アザゼルの代案策にアーシアは更に気合いをこめて返事する。

もしこれが出来れば、火力重視のグレモリー眷属にとっては大きなアドバンテージが得られる。

皆がアーシアへ期待を寄せる中、アザゼルは小猫へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「次は小猫」

 

小猫「…はいっ」

 

 

返事する小猫がいつも以上に気合いが入っていることを我夢は察した。

我夢がそうわかるのも、最初こそ何を考えているかわからなかったが、最近になってある程度考えていることがわかってきたからによるものだ。

冥界に入ってから元気が無かったので、我夢は内心心配してたが、妙に張り切っているのでその不安も杞憂だった様だ。

 

 

アザゼル「お前は『戦車(ルーク)』としての素養は申し分ない。………しかし、リアスの眷属にはウルトラマンの我夢とイッセー、聖魔剣を持つ木場、聖剣デュランダルを持つゼノヴィアといったお前以上に火力が高い連中が多い」

 

小猫「………わかってます」

 

 

アザゼルにはっきりと言われた小猫は悔しそうに唇を噛み締める。

確かにグレモリー眷属にはどれもかれも強力な能力を持っている。アーシアは非力ながらも強力な回復能力がある。

 

――しかし、小猫にはバカ力以外何も無いのだ。

ただ純粋な格闘しか出来ないのが現実である。

それを何よりも本人がわかっているのが、悔しいのだ。

 

アザゼルはそんな彼女に構わず話し続け

 

 

アザゼル「小猫、お前も朱乃と同じだ。もっと強くなりたければ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

小猫「…っ!」

 

我夢「?」

 

 

アザゼルの言葉に小猫は大きく目を見開いた後、顔を俯かせてしまう。

先程あれだけ入っていた気合いも一気に消えた。

 

朱乃さんと同じ…?自分を受け入れろ…?

そんな疑問が我夢の頭によぎる中、アザゼルは一誠と我夢に顔を向ける。

 

 

アザゼル「さて、最後はお前ら2人だ。我夢はより体力を鍛え、イッセーは各タイプで使える能力の発見だ。最初は同じウルトラマン同士、トレーニングを行ってもらおうかと思ったがリクエストがあってな。我夢と一誠はそれぞれ別の特別講師に鍛えてもらう」

 

我夢「特別講師?誰なんですか?」

 

アザゼル「ああ、ちょっと待ってろ。そろそろ来る頃ただが……」

 

 

アザゼルはそう呟きながら空を見上げる。

つられて他の皆も一緒に見上げる。

何だろうと皆は怪訝に思っていると

 

 

ドォォォォォォォォンッッ!!!

 

一誠「のわっ!?」

 

 

空から急降下してきた巨大な影が大きな物音を立てながらリアス達のもとへ着陸する。

その物体が着陸した影響で発生した地響きで地面は揺れ、土煙は舞い上がる。

 

我夢達は地響きの衝撃でバランスを崩しながらも何とか耐え、土煙が晴れると、そこには全長15メートルほどある巨体にサメのように鋭利な歯が並んだ大きな口。巨木のように太い両腕と両足。背中から生える大きな翼……そう、それはつい昨日見たあの生物…!

 

 

一誠「ドラゴン!?」

 

アザゼル「そうだ、イッセー。こいつはタンニーン、『六大龍王』っていうドラゴンの中でも最上位の存在だったドラゴンだ!まあ、今は悪魔に転生して、『五大龍王』になっちまったがな」

 

我夢「これが……ドラゴン……?」

 

 

アザゼルがそう説明するが、あまりものインパクトに一誠と我夢は唖然としており、耳に入ってこない。

特にドラゴンと会うのが初めてな我夢はその衝撃は凄まじく、自分でも信じられないくらい口をあんぐりと開けている。

 

そんな2人を尻目にタンニーンはアザゼルを見下ろしながら語りかける。

 

 

タンニーン「アザゼル。よくもまあ、堂々と悪魔の領土に入れたものだな」

 

アザゼル「はっ、ちゃぁ~~~~~んと魔王様から直々に許可をもらって入国したぜ?それにお前さん、文句言える立場か?昨日、留守にしていた間、お前んとこのドラゴン達の暴動を静めたのは俺も関わってるんだぜ?」

 

タンニーン「…ちっ!確かにお前の言う通りだ。その件については深く感謝している……。他ならともかく、お前に礼を言うのは気分が良くないものだ」

 

アザゼル「はっ、こっちも同じだ。お前に言われても気持ち悪いだけだしな」

 

 

お互いに毒を吐くタンニーンとアザゼル。

しかし、忌み嫌っているというよりも、喧嘩友達に近い雰囲気であまり不穏な感じはしない。

そんな会話をしていると、タンニーンは我夢と一誠を品定めするように顔を覗く。

 

 

タンニーン「それで、アザゼル。どちらを鍛えればいいのだ?」

 

アザゼル「ああ、こっちの兄ちゃんだ」

 

一誠「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

アザゼルは一誠へ指を指す。つまり一誠の特別講師はタンニーンである。

当の一誠は信じられない様子で、アザゼルを問い詰める。

 

 

一誠「ちょっ、ちょちょ!!先生、マジですか!?こんな怪獣みたいなおっさんと数日間特訓するんですか!?」

 

アザゼル「当たり前だろ?ウルトラマンなんだからそこら辺の奴らよりも特別強いのが良いだろ?何だ、ビビってるのか?」

 

一誠「いやいや、ビビってるとかどうとかの話じゃないすよ!いくら何でも無茶苦茶ですよ!!死ぬかもしれないんすよ!?」

 

アザゼル「問題ねぇだろ?いつも言ってるじゃねえか、『不死身のイッセー様』って」

 

一誠「それとこれとは違いますよっ!!」

 

 

一誠がアザゼルにギャーギャー喚くのをリアス達は苦笑いで眺める。

そんな中、タンニーンは

 

タンニーン「俺の仲間を救ってくれた事、感謝する」

 

一誠「っ!いやいや、こちらこそ!」

 

 

 

一誠に向かってお辞儀すると、一誠は喚くのをやめ、タジタジになりながらもお辞儀をする。

だが、一誠の内心は「恩人である自分にきつい特訓をする筈がない……」。そうたかをくくっていたが

 

 

ガシッ!

 

一誠「え?」

 

 

と一誠はタンニーンの手に掴まれる。

何故?どうして?と一誠はポカンとしていると

 

 

タンニーン「だが、特訓は別だ。ドラゴン伝統の実戦特訓でビシバシ鍛えてやろう」

 

一誠「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

逃れたかと思ったのにこの結果。

一誠は何とか逃げようとするが、タンニーンは力強く、中々逃げられない。

 

 

タンニーン「リアス嬢。あそこにある山を貸してもらえるか?」

 

リアス「ええ、鍛えてあげてちょうだい」

 

タンニーン「任せてくれ。死なない程度に鍛えてやるさ」

 

 

リアスの承諾を得たタンニーンは翼を大きく広げ、羽ばたき出すと、どんどん地上から離れていく。

 

 

一誠「我夢!部長!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

一誠は今まで聞いたことがない悲痛な叫びで助けを求めるが、リアスは笑顔で手を振り、我夢は申し訳なさそうに合掌している。

 

 

一誠「嫌だぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

悲痛な叫びも虚しく、一誠はタンニーンと共に遠くにある山へと飛んでいった。

我夢は哀れむ様な眼差しで見送ると、自分の特別講師がまだ来てないことに気付いた。

 

 

我夢「先生?僕の特別講師は――」

 

『よっ!!!』

 

 

いつ来るんですか?―――アザゼルにそう問いかけようとした時、後ろから呼びかけられながら肩に手をかけられる。

我夢は恐る恐る振り返ると、そこには3人の屈強な男がニコニコしながら立っていた。

 

 

吉田「昨日ぶりだな!」

 

桑原「元気にしてたか!?」

 

志摩「おっす、チューインガム!」

 

我夢「あ、どうも……」

 

 

ひげ面でワイルドな印象を受ける『吉田(よしだ)』、鋭い眼差しを持つ青年『桑原(くわばら)』、そして小太りの中年『志摩(しま)』。

彼らこそアザゼル直属の精鋭部隊の1つ、『チームハーキュリーズ』のメンバーだ。

 

何故、彼らがいるのか?

我夢は色々なパターンを考えるが、答えはどっちみち1つしか浮かばない。

―――彼らが“自分の特別講師”だと。

 

しかし我夢は違うことを信じて、アザゼルに問いかける。

 

 

我夢「…アザゼル先生?」

 

アザゼル「ん?」

 

我夢「僕の特別講師って、もしかしてハーキュリーズの皆さんではないですよね?」

 

 

「違う!」そう返事が来ることを我夢は切に願うが

 

 

アザゼル「いいや、お前の特別講師はハーキュリーズだ」

 

我夢「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

あっさりと望みは消え、我夢は叫ぶ。

叫び声は先程の一誠以上だ。

 

我夢が動揺していると、志摩と桑原に両腕をガッシリと掴まれる。

いわゆる連行の体勢だ。

 

 

吉田「総督!ここからは俺たちに任せておいて下さい!!」

 

アザゼル「おう。立派な漢にしてくれよ」

 

我夢「えっ!?待って、待って!!」

 

 

我夢は驚く間もなく、志摩と桑原に掴まれながらどこかへと連行され始める。

吉田を先頭に歩き出す一同に我夢は訊ねる。

 

 

我夢「どこに行くんですか!?」

 

吉田「拓けた荒野に行く。安心しろ、狂暴な生物が棲んでいるだけの何もない土地だ」

 

我夢「いや!?何かいるじゃないですか!!」

 

桑原「大丈夫だって。半殺し程度になるくらいに鍛えるだけだから」

 

我夢「半殺し!?それって、特訓じゃないですよね!?」

 

志摩「ガタガタうるせぇぞ、チューインガム~。こうやって約束通りに鍛えに来たんだから仲良くしようぜ~~」

 

我夢「約束しましたけどぉ~~~」

 

 

ニコニコと微笑みながら答える3人に段々我夢は青ざめていく。

自分はどうなるのか?はたして生きて帰れるのか?

そんな恐怖心に我夢は

 

 

我夢「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!」

 

 

一誠と同じように悲痛な叫びで助けを求める。

しかし、誰も答えるものはおらず、我夢はハーキュリーズに連行されていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒野へと連行された我夢は数日間に及ぶハーキュリーズの地獄の特訓が始まった。

 

 

―1日目

 

 

我夢「うわぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 

黒い道着に着替えた我夢はものすごい形相で死に物狂いに走っている。

そのスピードは凄まじく、腰に巻き付けてある朱色の旗がバタバタと激しい音を立てながらなびかせている。

 

遠くからは吉田達ハーキュリーズが見守っている。

 

何故、彼が必死に逃げているのか?

それは彼の後ろの光景を見ればよくわかるだろう。

 

 

「ガルル…!」

 

「グルァァ!!」

 

「ガァァァ…!!」

 

 

牙を持つ狼やら虎に似た多数の魔界生物がよだれを垂れ流しながら追いかけてきている。

その距離は我夢に追い付くか否かといったギリギリの間隔だ。

この生物達は我夢の腰に着けている朱色の旗に興奮している。

 

この日の特訓とは、魔界生物に追われながら100キロを走るというものだ。

提案した桑原曰く、体力トレーニングの基礎であるランニングで持久力を高めるものらしい…。

 

 

「グルァァ!」

 

吉田「あっ」

 

我夢「痛ぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!?」

 

 

1匹の狼のような生物に尻を噛まれ、我夢は悲鳴をあげる。

 

 

 

―2日目

 

 

この日の特訓は重さ50キロ以上の岩を腕で支えながら山を登るというものだ。

非常にシンプルだが、30分ごとに岩を追加してくるので

速く登りきらなければ押し潰されてしまう恐ろしい時間制限がついている。

 

 

志摩「おらっ!頑張れよ、チューインガム!!」

 

桑原「音をあげるのはまだ早いぞ!」

 

我夢「ひいっ…!ひいっ…!そう言われましてもぉぉ~~~……」

 

 

しかも筋肉ムキムキの2人の男が隣で同じように岩を支えながら歩いている。

励ましの言葉を送ってもらっても暑苦しいだけだ。

 

 

吉田「30分。追加だ」

 

我夢「ぐあっ!?」

 

『あっ…』

 

 

更に岩を追加した瞬間、我夢は支えきれず、岩の下敷きになった。

 

次の日も、その次の日も、我夢は次々と行われるハーキュリーズ監修の特訓に死にかけながらも必死に取り組んだ。

この地獄はいつ終わるのか?

我夢はただそれだけを考え、逃げることなく特訓を続けた。

しかし、特訓は日を重ねるごとにヒートアップしていく……。

 

 

―7日目

 

 

我夢「はあっ!はあっ!はあっ!」

 

 

我夢は荒野を走る。ひたすら走る。

途中で魔界生物に襲われようが、行き止まりだろうが構わずとにかく走り続ける。

その形相は必死そのもので、血眼になっている。

 

後ろからは車のエンジン音らしきものが聞こえる。

そう、我夢はハーキュリーズが運転するジープに追いかけ回されているのだ。

 

 

吉田「我夢っ!逃げるなぁぁーーーーーー!!逃げるんじゃなぁーーーいっっ!!」

 

我夢「ひぃぃぃぃ!!!」

 

 

後ろからジープを運転する吉田が声をかけるが、我夢は情けない声をあげながら必死に逃げる。

この特訓は確実な殺意を持った敵に立ち向かう為の勇気を鍛えるものである。

 

 

志摩「向かってこい!チューインガムっ!!」

 

桑原「車に向かってくるんだ!!」

 

我夢「無理ーーーーーーー!!」

 

 

後部座席に乗る志摩と桑原も声をかけるが、我夢は首を横に振り、必死に逃げ続けていると、途中で転んでしまう。

 

 

我夢「皆さん!やめてくださぁぁーーーーーーーいっ!!!」

 

 

我夢は転がりながらそう呼びかけるが、吉田は無視してジープの運転を続け、我夢目掛けて突進する。

 

 

我夢「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

 

我夢は盛大に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

ハーキュリーズはジープを降り、うつ伏せで倒れている我夢に駆け寄る。

 

 

吉田「我夢、そろそろ休憩にするぞ」

 

我夢「…は、はひ……」

 

 

我夢は何とか顔を動かして見上げながら答える。

もうかれこれ6時間ぶっ続けで追いかけ回されており、肉体的にも精神的にも限界だったのでありがたい。

 

 

アザゼル「おっ、休憩か。ちょうど良かった」

 

 

そんな声がかかり、振り返ると、何やら大きな包みを手に持ったアザゼルがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『美味い!美味い!』

 

 

我夢はアザゼルから手渡された包みに入っていたおにぎりを遠くにいるハーキュリーズと一緒にむしゃむしゃとがっついて食べていた。

ここ数日間、我夢は野宿のせいであまり食べられなかったこともあり、やっとまともなものを食べれた感動のあまり、涙すら流している。

 

我夢は一旦、お茶で口の中にある米を流し込むと、アザゼルに問いかける。

 

 

我夢「そういえば、このおにぎりって誰が作ったんですか?もしかして、アザゼル先生が?」

 

アザゼル「んな訳あるか。俺に料理ができそうな奴に見えるか?そのおにぎりは全部朱乃が作ったんだぜ」

 

我夢「え!?朱乃さんが全部!?」

 

アザゼル「ああ、朱乃がお前の為にと朝早くからせっせと作ったんだぜ?」

 

我夢「なるほど…」

 

 

どうりで美味い訳だと我夢は思った。

彼女が淹れるお茶や紅茶が美味しいのは知ってたが、まさか料理も美味いとは…。

容姿、頭脳、家事……どれをとっても完璧な彼女に我夢は感嘆する。

 

しかし、我夢は少し気がかりになることがあった。

 

 

我夢「今回の差し入れもそうですけど、最近の朱乃さん、僕にやたら積極的に近づいてくる気がするんです。別に嫌ではないんですが僕だけを特別扱いしてるような…」

 

アザゼル「は?お前、気付いてないのかよ?」

 

我夢「気付く?何を?」

 

アザゼル「はぁ、もういいよ…」

 

我夢「?」

 

 

我夢の鈍感さに呆れてため息をつくアザゼルに我夢は首を傾げる。

恋愛とは無縁の勉強ばかりしてきた我夢には仕方がないことだろう。

 

 

我夢「そういえば、イッセーはどうなんですか?」

 

アザゼル「おう。ここに来る前に立ち寄ったが、案の定今のお前と同じくらいボロボロになるまでしごかれてたぜ」

 

我夢「そ、そうですか…。ははっ…」

 

 

タンニーンのもとで特訓している一誠の安否が気になり、我夢は苦笑いする。

かつて『六大龍王』の1角であったドラゴンの元で実戦訓練となればただじゃすまないだろう。

 

 

アザゼル「だが、大きな進歩はあった。アイツは今ストロングタイプでできる全ての能力を把握した」

 

我夢「っ、本当ですか!?」

 

アザゼル「ああ。嫌々言ってるが、マジメに取り組んで()()()3()()で熟知して、今はミラクルタイプの方に取り組んでるらしい。俺の予想じゃあ、最低7日ぐらいかかると思ったが、それを越えるとはな……。アイツの素質は異常だぜ」

 

 

アザゼルはそう言いつつ、一誠の底知れない伸び代に感嘆する。

それもそうだろう。長年戦ってきた戦闘のプロであるアザゼルが7日かかると予想したのをたった3日で完了させたのだから。

 

我夢は自分も負けてられないと心の中で意気込んでいると、ふいにアザゼルが改まった口調で問いかける。

 

 

アザゼル「ところで話は変わるが……お前は朱乃のことをどう思う?」

 

我夢「朱乃さんですか?まあ、ちょっと怖いところもありますけど、良い先輩だと思いますよ?」

 

アザゼル「そうじゃない。1人の女としてだ」

 

 

アザゼルに訂正されると、我夢はう~んと顎に手を当てて考えると

 

 

我夢「…まあ、女性としてこれ程素敵な人はいないと思いますよ。品行方正ですし、料理も美味しくて……それに綺麗ですし!どうしてそれを?」

 

 

次々思い浮かぶことを言い終えると、我夢は何故唐突にそんなことを訊いてきたのか気になり、問いかける。

すると、アザゼルはふぅと軽くため息をすると、口を開く。

 

 

アザゼル「…俺は朱乃が心配なのさ。アイツは()()()()()()()で心に大きな傷が出来ちまって、自分に流れる堕天使の血を拒んでいる……。心の傷は早々治せるもんじゃねえからな………。―――かといって、見捨てる訳にもいかねぇ。何てったって俺のダチの娘だからな」

 

我夢「心の…傷…」

 

 

悲しげな表情を浮かべながら語るアザゼルに我夢は顔を曇らせながら呟く。

朱乃から以前に堕天使を嫌っていることは聞いてる。

その原因は自分に堕天使の血をひいていることもあるだろうが、その大元となる出来事があるのは初耳だ。

 

―――その出来事がどれだけ彼女の心を痛めたのか。

前に仲間だから気にしないとは言い、本人は喜んではいたが、自分は彼女のことを100%知っていない。

それが本人の為の言葉だったのか?

 

我夢は複雑そうに頭を悩ませていると、アザゼルはニコッと綺麗に並んだ白い歯が見えるほど微笑みながら我夢の肩をポンポンと叩き

 

 

アザゼル「まあ…ともかく俺はお前なら朱乃のことを救えるんじゃないかと思ってるんだ!」

 

我夢「僕が?」

 

アザゼル「ああ、お前は種族とか血筋とか関係なく接せれる。そんな心を持つ我夢、お前だからこそできるんだよ」

 

 

怪訝そうにする我夢だが、アザゼルの言葉通り、もし自分が彼女を救えるとしたら……。

そう思ったら、返答は決まっている。

 

 

我夢「わかりました!僕で朱乃さんを救えるなら、是非任せて下さい!!」

 

アザゼル「よし!そう言ってくれると思ったぜ!朱乃のことにはお前にも任せる。―――となれば、後は小猫か……」

 

我夢「?彼女に何かあったんですか?」

 

 

我夢が問いかけると、アザゼルははぁと困ったように息を吐く。

 

 

アザゼル「どうにもな……ここ最近焦っている。自分の力に疑問を感じているようでな。俺が与えたトレーニングを本来よりも過剰に取り組んだせいで今朝、倒れた」

 

我夢「倒れたっ!?彼女は大丈夫なんですか!?

 

 

小猫が倒れた報せを聞き、思わず大声で訊ねる我夢にアザゼルは落ち着けと手で制する。

最近様子が変だとは思っていたが、まさかこんなことになるとは……。

我夢は心を落ち着かせ、アザゼルの話に耳を傾ける。

 

 

アザゼル「とりあえず、命に別状はない。今はグレモリー家の本邸の寝室で休ませてある。ケガはアーシアに治療してもらったが、体力だけはそうはいかん。特にオーバーワークは確実に筋力を痛めるだけで逆効果だ」

 

 

我夢は命に関わる問題ではないとわかり、ひと安心する。

しかし、何故ここまで焦っているのか?という疑問が浮かぶが…

 

 

我夢「(僕って、明らかにオーバーワークしてるよね……?)」

 

 

我夢はハーキュリーズの特訓が過剰ではないのかという疑問が新たに浮かんだ。

確かに強くなってる気はするが、冥界生物と追いかけっ子したり、岩をおぶって登山、ジープに追いかけ回される等、明らかに異常だ。

恐らく、アザゼルに言っても「ウルトラマンだから大丈夫だろ」と返されるのがオチだと我夢はわかっているので、そのことについては言及しない。

 

そう思っていると、アザゼルがよっこらせと言いながら立ち上がった。

 

アザゼル「さて、我夢。今さっき、お前を連れ戻せと言われたんでな。一度グレモリー邸に戻るぞ」

 

我夢「え?特訓はどうするんですか?」

 

アザゼル「安心しろ、明日の朝には戻す。お前たち、いいよな?」

 

『問題ありませーーーんっ!!!』

 

 

ハーキュリーズの3人は仲良く声を合わせて返事すると、アザゼルはうんうんと頷く。

 

 

我夢「それで、誰からのです?」

 

アザゼル「リアスの母上殿からだ」

 

 

特訓を中断させて自分を呼び出す程の用件って何だろう?と我夢は疑問に思いながら、アザゼルと一緒にグレモリー邸へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェネラテ「1、2、3…はい、そこでターン。駄目ね、キレが悪いわ。一誠さん、もう一度」

 

一誠「は、はいぃぃ!」

 

我夢「……」

 

 

グレモリー邸から少し離れた場所に位置する別館。そこにある一室に呼び出された我夢は、何故か一誠とヴェネラテがダンスの練習に取り組んでいた。

 

アザゼルに聞いた話によると、どうやらこれも両親の企みの1つで、いずれ次期グレモリー家の婿養子になる(と勝手に決定されている)一誠に社交的なマナーを身に付けさせる為だ。

 

当然、今までこういったマナーに馴染んでいない一誠はこういった社交ダンスは全く出来ない。

しかし、ヴェネラテによるスパルタ指導によるおかげか、まだぎこちない所もあるがそれなりに出来ている。

 

 

ヴェネラテ「少し休憩しましょうか」

 

一誠「は、はい……」

 

 

15分後、ヴェネラテから休憩を許可してもらった一誠は壁側にある長椅子にどっしりと座り、床に置いてあるペットボトルの蓋を開けると、中にある飲料水を口へ流し込む。

慣れない動きをした為か、一誠は汗だくで息をきらしている。

 

 

 

ヴェネラテ「すみません、我夢さん。つい指導の熱中してしまいまして」

 

我夢「あの?どうして僕を……?」

 

 

その間、ヴェネラテが部屋の隅で待っていた我夢のもとへ来たので、さっそく我夢は自分を呼んだ理由を訊ねる。

すると、ヴェネラテは

 

 

ヴェネラテ「ええ、あなたなら自分の存在と力で悩み、苦しんでいる彼女への助力になると思ってお呼びしましたのです」

 

我夢「存在と…力……?」

 

ヴェネラテ「あなたはリアスの眷属になった日が浅かったですわね。では、少しお話をしましょう」

 

 

疑問に感じている我夢にヴェネラテはとある2匹の姉妹猫の話を語りだした。

 

姉妹の猫はいつも一緒だった。

寝るときも食べるときも遊ぶときも。

親と死別し、帰る家も頼る者なく、2匹はお互いを頼りに懸命に1日1日を生きていった。

 

そんなある日、2匹はとある悪魔に拾われた。

お互いを支えあっていたものの、生活は苦しいことには変わらないので、姉の方が眷属になることで2匹はやっとまともな生活を手に入れたのだ。

 

2匹は幸せに暮らせる―――――。

そう信じていたが、ある出来事がきっかけに崩れ去る。

 

姉の猫は悪魔になったことで隠れていた才能が開放され、急速に力をつけていった。

2匹は普通の猫でなく、元々妖術の類いに秀でた種族だったのだ。

 

急速に力を身につけていった姉猫は主の悪魔をも上回り、遂には力に呑み込まれ、主を殺害した。

姉猫はその後、主を殺した邪悪かつ危険な『はぐれ悪魔』として冥界中に指名手配されることとなった。

 

そして、上級悪魔達は残された妹猫については姉と同様に暴走するリスクがあるため始末しようとしたが、サーゼクスが「妹猫までには罪はない」と説得し、監視という名目で事態は収まった。

 

だが、打ちひしがれ、生きる意味と笑顔を失った妹猫はリアスのもとへ預けられた。

彼女と触れあうことで妹猫は徐々に感情を取り戻し、生きる希望を持つようになった。

 

そして、リアスはその妹猫に名を与えた。

―――――『塔城(とうじょう) 小猫(こねこ)』、と。

 

 

我夢「………」

 

 

我夢はその話の壮絶さに言葉を失っていた。

信頼していた姉に裏切られ、周りから批難される……そんな悲惨な過去があるとは想像出来なかっただろう。

 

また、感情表現をあまりしないのは、今でもその過去を引き摺っているからかもしれないと我夢は思った。

 

しばらくポカンとしていた我夢だが、気を取り戻すと、ひょっとしてと思ったことをヴェネラテに問いかける。

 

 

我夢「もしかして、彼女は……」

 

ヴェネラテ「ええ、彼女は元妖怪。猫の妖怪の猫又で、その中でも最上位とされる種族、『猫魈(ねこしょう)』の生き残りなのです。妖術だけでなく、それより強力な仙術を使いこなす上級妖怪の一種です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェネラテから小猫の過去を聞いた我夢はすぐさま小猫がいる本邸へと向かった。

どの部屋だと捜している途中、見知った人物と出会った。

 

 

我夢「部長!」

 

リアス「我夢!どうしてここに?」

 

 

我夢は驚くリアスに事情を説明した。

すると、リアスは納得した表情を浮かべ

 

 

リアス「…なるほどね。わかったわ、こっちよ」

 

 

そう言うと、我夢は先導するリアスの後をついていく。

2分くらい歩き続けると、小猫が休んでいる部屋の前に着いた。

 

ちなみにリアスは既に話を済ませているので一緒には入らない。といっても我夢は2人っきりで会話するつもりなので、どっちみちリアスには外にいてもらう。

 

我夢はドアを軽くノックする。

 

コンコンコン…

 

朱乃『どなたです?』

 

 

すると、中にいる朱乃から声がかかる。

 

 

我夢「僕です。我夢です」

 

朱乃『っ、我夢君!?小猫ちゃん、部屋にいれても大丈夫……?』

 

小猫『っ……』

 

 

朱乃は思わぬ面会者に驚きつつも、小猫に訊ねる。

そして、しばらく間が空いた後、朱乃から許可の声が聞こえてきた。

我夢はドアを開け、入室する。

 

中はやはり広々としており、高価そうな家具や何やらが配置されている。それはさておき、我夢は寝室へ向かうと、朱乃がベッド脇にある椅子に座っており、ベッドには小猫が横になっていた。

 

 

我夢「…!」

 

 

我夢は小猫を見ると、目を丸くする。

小猫の頭部には髪色と同じ白い猫耳が生えていたのだ。

カチューシャとかではなく、本物であり、彼女が本当に猫の妖怪であることを裏付けている。

 

 

朱乃「我夢君、これは―――」

 

我夢「大丈夫です。事情は大体聞いてますので。ところでお願いなんですが、しばらく彼女と2人っきりにしてくれませんか?」

 

朱乃「…ええ、終わったら声をかけてくださいね」

 

 

朱乃は我夢の考えに察したのか一言そう言うと、朱乃は席を外す。

遠くからドアが閉まる音が聞こえたのを確認した我夢は朱乃が座っていたベッド脇の椅子に腰掛け、声をかける。

 

 

我夢「体は平気かい?」

 

小猫「……何しにきたんですか?」

 

 

小猫は半目でこちらへ見ながら暗い声で訊ねる。

その態度から明らかに不機嫌なのがわかるが、だからといって会話をやめる訳にはいかず、我夢は話し続ける。

 

 

我夢「…アザゼル先生から倒れたって聞いたからさ、心配になってお見舞いにきたんだよ。駄目だったかな?」

 

小猫「……」

 

 

そう訊ねるが、小猫は顔を俯かせ、何も答えない。

しかし、その反応からは拒絶といった雰囲気は感じられないので、我夢は話し続ける。

 

 

我夢「小猫、色々聞いたよ。どうしてそんなに焦ってるかわかんないけど、過剰なトレーニングは駄目だ。変に体を痛めるだけだ………と言っても、魔界生物と鬼ごっこしたり、ジープで追いかけ回されている僕が言えたことじゃないけどね」

 

小猫「…なりたい」

 

我夢「え?」

 

 

最後は冗談っぽい口調で話していると、小猫は何か呟く。

声量が小さかったので、我夢は聞き直すと、小猫は目尻に涙を浮かべ

 

 

小猫「強くなりたいんです……。部長、祐斗先輩、ゼノヴィア先輩、朱乃さんにイッセー先輩……そして、我夢先輩のように心と体を強くしていきたいんです。ギャー君の時を止める能力やアーシア先輩のように回復の力もありません。……このままでは私は役立たずになってしまいます……。『戦車(ルーク)』なのに、私が一番弱いから……。だからといって、猫又の力は使いたくない……。使えば、私も姉様のように………。もう嫌です……あんな力は嫌………」

 

我夢「……!」

 

 

ポロポロと涙を流しながら自分の気持ちを吐露する小猫を見て、我夢は内心驚く。

今まであまり感情を表に出さなかったので、今の彼女の姿は衝撃的だ。

 

だが、同時に焦っていた理由がわかった。

他の皆が急速に強くなっていく中、自分だけが一向に強くならないのに焦っていたのだ。しかし、猫又の力を使えば暴走してしまう恐れがあるから、それに頼らずに強くなる為にオーバーワークをしてしまったという訳だ。

 

しかし、このままではいけない。

この先もずっと自分の力を使うのにためらっていては、強くはなれない。

何故、ヴェネラテが自分に彼女の助力を求めたのかがわかった気がした。

 

――――怒らせてしまうかもしれない。

我夢はそう胸に秘めながらも自分の意見をはっきり主張する決意をすると、閉ざしていた口を開く。

 

 

我夢「……小猫。君が今まで何を思って生きてき、必死に強くなろうとしたことはわかった」

 

小猫「……」

 

我夢「…だけど、はっきり言わせてもらう。いつまでも自分が持つ力を最大限使わない人がどれだけ頑張ろうと絶対に強くはなれない」

 

小猫「…っ!」

 

 

そうはっきりと言われた小猫は肩をピクッと震わせ、悲しげな顔を浮かべる。

我夢は言葉を続ける。

 

 

我夢「姉と同じっていっても君が暴走するかはわかんないじゃないか。その様子だと、試したことがないんだろう?だから、1回自分を受け入れて、今からでも――」

 

 

―――やってみよう。そう我夢は言おうとしたが、遮られてしまう。

その理由は怒りの形相の小猫が我夢の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せた為である。

 

 

小猫「あなたに何がわかるんですか!!何も知らないくせにっ!私はもう何も傷付けたくない、失いたくないからこの力を封印してきたんですっ!!」

 

我夢「僕は確かに君のことを全部は知らない。生まれ持った強い力に恐れるってのは誰しもある!だからと言って、いつまでも逃げるのは間違っている!」

 

小猫「私は我夢先輩とは違うんです!先輩はいいですよね!頭が良いから、ウルトラマンっていう恵まれた力を持っているから!!苦労も何もない人生を送ってきたんでしょうねっ!!」

 

 

苦労も何もない……その言葉にカチンと頭にきた我夢は自分でも信じられないくらいの怒鳴り声をあげる。

 

 

我夢「僕だって、生まれ持った能力のせいで傷付けたり、傷付けられたりしたさっ!!ガイアの力は自分からのぞんで手に入れた!!でも、ウルトラマンの力だって使い方を間違えれば、被害を与える危険なものなんだっ!!だけど、僕は信じている!!この光は皆を守る為にあると信じて戦っているんだ!!要は“心”の問題なんだ!!心があるから、力は悪にも正義にもなれるんだっ!!自分を受け入れてみようと思ったことないのに、強くなろうとするなんてできっこないんだ!!!」

 

小猫「黙れぇぇぇーーーーー!!!」

 

 

小猫は我夢の声を解き消すように叫ぶと、我夢の左の頬を殴り付ける。

戦車(ルーク)』の腕力から繰り出される拳に当然、我夢は吹き飛ばされ、ベッドの横の壁にあるタンスを豪快に破壊しながら壁に叩きつけられる。

 

 

小猫「はぁーーーー…はぁーーーーー………っ!」

 

 

小猫は壁際の床に倒れている我夢を見ながら荒い呼吸をして落ち着かせていると、自分がしたことに絶句する。

いくらイラッときたとはいえ、自分に勇気を持たせようとした先輩を殴ってしまった。

 

 

小猫「……あ………ああ…………」

 

 

――人を傷付けてしまった……。

猫又ではない悪魔の力で傷付けた恐怖に小猫は涙を流し、体を震わせる。

 

そんな中、タンスの破片を手で払いながら我夢が立ち上がる。

左の頬は赤く腫れており、口の中を切ってしまったのか、口の端からは血が流れている。

 

 

我夢「…小猫、僕はもう外に出るよ。1人にした方が君の為だろうしね」

 

小猫「……」

 

我夢「だけど、これだけは覚えておいてくれ」

 

 

そう言うと、我夢は口元の血を拭うと小猫を見据え

 

 

我夢「怖がるってのは別に恥ずかしいことじゃない。僕だって怖いと思う事はある。ただ大事なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ。それが本当に“強くなる”って事なんだ」

 

小猫「…っ」

 

 

一言そう告げると、未だ怯えている小猫を背を向け、我夢は部屋の出入口へ歩き出す。

 

歩いている途中、廊下からこちらに向かってドタバタと物音が聞こえてくる。

――――おそらく壁に衝突した音に心配した部長と朱乃さんが向かってくる音だろうな、と我夢は思っていると、案の定リアスと朱乃に遭遇する。

 

 

リアス「何があったの?…って、そのケガどうしたの!?」

 

朱乃「すぐに手当てを――」

 

我夢「大丈夫です、何でもないですから」

 

 

左の頬が赤く腫れている我夢を見て、驚いたリアスと朱乃。

心配した朱乃はすぐさま手当てしようとするが、我夢は断る。

 

それでも不安そうにする2人の横を通り過ぎ、我夢は出入口のドアを開けると、2人に向き直り

 

 

我夢「僕が出来ることはしました。あとは彼女自身の問題です………。それと部長、タンスを壊してすみません…」

 

 

そう言って頭を下げると、我夢は部屋を出る。

 

 

我夢「はぁ……」

 

 

廊下に出た我夢は深いため息をつくと、ドアにもたれかかる。

彼女の為に色々と言ったが、つい感情的になってしまったことは否めない。

我夢は廊下の窓に近寄ると、天高くあがっている月を見上げ

 

 

我夢「……僕、嫌われちゃったかな?」

 

 

そう自嘲気味な笑みを浮かべながら呟くと、自分の部屋に向かって歩き去っていくのだった。

 

 

 




次回予告

黒歌「久しぶりね」

禍の団(カオス・ブリゲード)』に誘う小猫の姉、黒歌。
小猫は『禍の団(カオス・ブリゲード)』の軍門に下ってしまうのか?

次回、「ハイスクールG×A」!
「再会の姉妹」!
我夢!彼女を救えるのは君だ!








よろしければ、感想&コメントよろしくお願いします。


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第30話「再会の姉妹」

小猫と我夢が喧嘩してから2週間。

普段、喧嘩するような仲ではない2人に後から事情を聞いたリアスと朱乃、一誠は困惑していたが、迫り来るレーティングゲームに備える為、それぞれ修行に戻った。

 

そして、レーティングゲーム開始まであと5日に迫っていた…。

 

 

吉田「いくぞっ、我夢!」

 

我夢「はいっ!」

 

 

修行場である荒野にボロボロの黒い道義に着替えた我夢は真正面から突進してくるジープに向かって走り出す。

最初のうちは常識を超えた特訓内容が恐ろしくて逃げ回っていたが、度重なる特訓によって、我夢は心身共に鍛えられ、よっぽどのことでない限り動揺することがなくなった。

 

10メートル…8メートル…6メートル……。

ジープは我夢に近づくつれ、どんどん速度が増していくが、我夢は足を止めない。

 

そして、2メートルをきり、我夢がジープに衝突しようとする危機一発の瞬間、

 

 

我夢「でやっ!!」

 

吉田「おおっ!」

 

 

我夢は前へ飛び込むように跳躍すると、そのまま前回りに宙返りし、車体にかすりもせずに向こう側の地面に着地する。

 

その一瞬の出来事を見た吉田はそのまま我夢とは反対方向に走らせていたジープを止め、搭乗していた他の2人と一緒に降りると、我夢のもとへ駆け寄る。

 

 

吉田「よし、この数週間あまりの特訓によく耐えてきた!!俺たちは途中で逃げ出すのかと思っていたが、それもせず!必死に取り組んで、最後のトレーニングメニューまでこなした!!」

 

我夢「(いやいや……()()()()()()()()んじゃなくて、()()()()()()()()んだけどな……)」

 

 

吉田の称賛に我夢は内心苦笑いしつつ、ツッコむ。

特訓に使っている荒野は凶暴な冥界生物でウヨウヨいるだけでなく、荒野の周囲を囲んでいて、外へと繋がっている岩山に発生する特殊なガスのせいで出たくても出られないのだ。

 

ガスは岩山の上へと登ろうとする度に地球以上の重力がかかる危険なもので、空を飛んでも岩山に近寄るだけで重力がかかる。ハーキュリーズによると、岩山を通って外へ出たものは1人もいないらしい。

つまり、我夢はここに連れてこられた時点で『逃げる』という選択肢ははじめから存在しないのだ。

 

そんなことを考えつつも、吉田は最後に

 

 

吉田「……という訳だ!高山 我夢!!これにてお前の修行を完了とするっ!!!」

 

我夢「…っ!」

 

 

そう言われると、我夢は心の中から感動が込み上がってくる感覚を実感した。

長く…苦しく…厳しく…。さらに野宿のせいでろくな食事も取れなかったこの数日間のサバイバル生活にピリオドを打つ『完了』の一言に、我夢は感動のあまり、涙が溢れてきた。

 

そんな我夢にハーキュリーズの3人は優しく微笑みながら、称賛の言葉をかける。

 

 

吉田「最初は特訓についてこれるか不安だったが、この短期間のうちに慣れ、心身共に成長した。お前は本当に凄いやつだ」

 

我夢「吉"田"さ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"…」

 

桑原「ははっ、本当に頑張ったよ。堕天使1厳しいといわれる俺たちのしごきに耐えてきたんだ、自信を持てよ」

 

我夢「桑原さ"ぁ"ぁ"ん"。うぅっ…もうこれで終わりとなると……うれ、悲しくて………」

 

志摩「そうだぜ、泣くなよチューインガム。ほら、このハンカチで涙を拭け」

 

我夢「志"摩"さ"~~ん"。すみません……皆さん!本っ当にありがとうございますっっ!!」

 

 

3人の言葉にもっと感動した我夢は志摩から手渡されたハンカチで更に溢れでる涙を拭いながら、感謝を告げる。

ハーキュリーズの3人は「いいってことよ」と言いながら穏やかに微笑み返す。

 

 

吉田「よしっ、お前ら!チューインガムをグレモリー邸へ送りに行くぞ!!」

 

「「了解!」」

 

 

吉田の一声に志摩、桑原は賛同すると我夢をグレモリー邸に送ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ふぅ~…」

 

 

それから数分後。グレモリー邸に着いた我夢はシャワーで火照った体で満足げに廊下を歩いていた。

何せ2週間振りのシャワーだ。つい昨日まではハーキュリーズ特製五ェ門風呂(もの凄く熱い)で入浴していたので、こんなに身も心もスッキリするお湯浴びは久しぶりである。

 

なお、現在我夢が向かっているのはリアスの部屋である。

その理由はゲーム開始まで5日前となった今、全眷属が集まり、修行で得られた成果を各々報告する報告会があるからだ。

 

ゲーム前日にやればいいのでは?と思う方もいるかもしれない。

しかし、前日では修行で疲れた体を充分に休めず、レーティングゲームに支障が出るリスクがある。

それだけでなく、明日からはゲーム前の若手悪魔達を健闘する魔王主催のパーティーがあるので、修行は今日で切り上げになったのだ。

 

 

一誠「よお、我夢!」

 

我夢「イッセー!久しぶり!」

 

 

道中、我夢は廊下の曲がり角で一誠と鉢合わせる。

久しぶりに会った親友の姿に2人は頬を緩ませる。

 

 

我夢「元気にしてた?」

 

一誠「おう、この通りピンピンしてるぜ!お前も部長のところに行くんだろ?一緒に行こうぜ?」

 

我夢「ああ」

 

 

一緒に行くことにした2人はリアスの部屋へ向かう道中、近況を報告し合う。

 

 

一誠「マジかよ!?地雷原の50m走にジープに追いかけ回されたって!?我夢……大変だったんだな」

 

我夢「ああ…死ぬかと思ったよ。イッセーの方は?」

 

一誠「こっちもな、火炎や吹雪を吐いてくるドラゴンに追いかけ回されたり、タンニーンのおっさんと日が暮れるまでスパーリングしたり………とにかく“早く終わってほしい”としか考えてなかったな…」

 

我夢「は…ははは……。イッセーもそうだったのか……。僕もそれしか考えられなかったよ」

 

 

お互いの無茶苦茶なトレーニングメニューに2人は苦笑いを浮かべる。

思い返せば、よくこんな過酷な内容で生きて帰れたなと2人はしみじみと思う。

 

そして、2人がリアスの部屋の目前まできた時

 

 

我夢「あ…」

 

小猫「…!」

 

 

小猫と鉢合う。

一瞬で気まずい空気が両者の間に流れる。

 

 

小猫「…っ、……」

 

 

そんな中、小猫は何かを話そうとほんの僅かに口を動かそうとするが、すぐに閉ざし、顔を俯かせながらひと足先に部屋に入っていった。

 

 

一誠「我夢…」

 

我夢「いいんだよ、イッセー…」

 

一誠「…」

 

 

心配そうに声をかける一誠に我夢は振り返らず、そう短く答える。

しかし、一誠はほんの一瞬だけ我夢の顔が見えた。

その顔は曇ったものだった。

 

その後、2人はリアスの部屋に入り、報告会に参加した。

各々が修行で得られた成果や新たに出来た課題点を報告し、皆は驚いたり、喜んだりと様々だ。

 

その中でも木場とゼノヴィアの報告は我夢や一誠も耳を疑った。

彼らも外で修行していたらしいが、山小屋や近くにあるグレモリーが所有する別荘で寝泊まりしていたのだ。

 

 

「「アザゼル先生っ!!」」

 

アザゼル「何だよ?」

 

一誠「何だよじゃねぇっすよ!俺達、あんな過酷な生活してたんですよ!?何で教えてくれなかったんですか!?」

 

我夢「そうですよっ!」

 

 

当然、野宿していた我夢と一誠は納得いかず直談判する。

過酷な生活していた自分達なら尚更紹介するべきであるはずだ。

しかし、アザゼルは

 

 

アザゼル「あっ、ごめん。忘れてた。でも、いいじゃねぇか!!おかげで心身共に強くなったんだしよ!ハハハハハ……!!」

 

「「はぁ…」」

 

 

そう言いながら豪快に笑う。

反省する気も全く感じさせない態度に我夢と一誠は怒りを通り越して、呆れてため息をもらす。

 

その後、特に何もなく、リアス達は明日のパーティーに備えて解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の夜。沈んだ陽の灯りが微かに夜闇を照らす頃、タンニーンに乗せてもらったリアス達グレモリー眷属はグレモリー領の端にあるパーティー会場となる高層ホテルにいた。

さすがグレモリーが所有するホテルということもあり、豪華な仕様となっており、ホテル内や外はしっかりとした礼装やきらびやかなドレスを着た数多の悪魔が談笑している。

 

ちなみにアザゼルはサーゼクス達と合流してから会場に向かう為ここにはいない。

 

そうしてパーティーに参加したリアス達だが、期待のルーキーの登場とあり、当然たくさんの悪魔から次々と声をかけられる。

その都度リアス達は1人1人丁寧に対処し、50分後……。

 

 

一誠「あ"ぁ"ぁ"~~~~……疲れたなぁぁ…」

 

我夢「そうだね~~」

 

アーシア「こういったパーティーって初めて参加しましたけど、こんなに沢山の方がいるものなんですね」

 

ギャスパー「ド、ドキドキしましたぁぁ……」

 

 

フロアの端に用意された椅子にぐったりと腰掛けながら一誠は背を伸ばし、我夢、アーシア、ギャスパーもぐったりと座っていた。

ギャスパーは人見知りは未だ慣れてない様子だったが、修行のおかげで前より取り乱すことはなくなった。

 

遠くではリアスと朱乃、木場が女性悪魔達の輪に入って談笑している。

 

 

一誠「こうして見ると、部長達さすがだなぁ~って思うよなぁ~~…」

 

我夢「慣れてるよね」

 

 

リアス、朱乃、木場は休む間もなく次々と話しかけられているが、特に疲れている様子もなく、むしろ楽しんでる様子だ。

1つ1つ対処するのに精一杯だった我夢達4人は悪魔社会における経験の違いを改めて思い知った。

 

そんなことを思っていると、

 

 

ゼノヴィア「料理をゲットしてきたぞ!」

 

 

両手いっぱいに大量の皿を持ったゼノヴィアが嬉々とした様子でくると、テーブルの上にドンッと乗せる。

その皿の上にはいかにも豪華そうな料理の山々だ。

 

 

一誠「悪いな、ゼノヴィア」

 

我夢「助かったよ」

 

ゼノヴィア「何、人混みの中を通るのも修行の一環だからな。さあ、私に気にせず食べてくれ!」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

アーシア「ゼノヴィアさん、ありがとうございます!」

 

 

我夢達4人はゼノヴィアに感謝しつつ、持ってきた料理や飲み物に手をつける。

どれも美味しい数々の料理は、慣れない環境に置かれた4人の疲れをあっという間に消し飛ばした。

 

豪華な料理に4人は心が満たされていると、

 

 

匙「よお、兵藤に高山」

 

梶尾「久しぶりだな」

 

一誠「匙!」

 

我夢「それに梶尾さんも!」

 

 

人混みの中から匙と梶尾が現れる。

約2週間振りの再会に我夢と一誠は頬を緩ますが、4人は“レーティングゲームで戦う相手だ”とすぐに気持ちを入れ替える。

 

 

匙「対戦相手はお前らだな」

 

一誠「そうだな。だけど、俺達は負けねぇ…死ぬほど修行したんだからな」

 

梶尾「死ぬほど?」

 

我夢「はい。僕は冥界生物と鬼ごっこしたり、ジープに追いかけ回されて、一誠は山でドラゴンと追いかけ回されたんです」

 

匙「は…はは…」

 

梶尾「お前らも大変だったんだな…」

 

 

あまりもの異常なトレーニングメニューに匙と梶尾は頬をひきつらせる。

すると、我夢は梶尾の言葉が気になり、問いかける。

 

 

我夢「ん?“お前ら”ってことは梶尾さん達も?」

 

梶尾「ああ、お前達に負けない程な。今回のレーティングゲームは沢山の悪魔が注目している。このゲームを勝ち取れば、会長の夢へ一歩近付ける。俺達は会長の夢を叶えたい――その一心で今日まで鍛えてきたんだ」

 

匙「もし、このゲームに負ければチャンスがいつ来るかわかんねぇ……俺達は会長の期待に応えたいんだ。悪いが、今回のゲームは勝たせてもらうぜ」

 

 

2人は不敵な眼差しを向けながら、言い放つ。

我夢と一誠、匙と梶尾……主は違えど、お互いに背負っているものは同じだ。

その揺るぎない信念は匙と梶尾――2人の瞳からわかる。

だが、その信念は我夢、一誠とて同じだ。

 

 

一誠「そうか……でもこっちも同じ気持ちだ。俺も部長の願いを叶えたいからな。簡単には勝たせねぇぞ?」

 

匙「へへっ、それはこっちの台詞だ。」

 

我夢「ソーナさんがどんな策を練ってこようと、僕達はそれを打ち破って見せます。梶尾さん、もちろんあなたにも…」

 

梶尾「ふんっ、挑むところだ。お前がどんなに強い力を持っていようと、全力で戦うつもりだ。覚悟するんだな」

 

 

お互い目から火花を散らし、不敵な笑みを浮かべながら握手を交わす。

お互いの健闘を祈りを込めてだ。

 

握手を交わした後、匙と梶尾は遠くにいるソーナのもとへ向かう為、再び人混みの中へ消えていった。

彼らを見て、絶対に負けられないと2人が意気込んでいると、

 

 

「お久しぶりですね。ガイア、ダイナ」

 

我夢「ん?」

 

一誠「あ?」

 

 

後ろから声をかけられ、2人は振り返る。

そこには金髪縦ロールの少女がこちらを睨みながら立っていた。

 

 

我夢「あっ」

 

「そちらのお方はわかられたようですね」

 

我夢の思い出した反応を見て、金髪の少女は口角をあげる。

彼女はリアスの元婚約者ライザーの妹の『レイヴェル・フェニックス』だ。

こちらを睨んでいるのは、兄の婚約を解消されたからだろう。

彼女のことは婚約を解消させた当人である一誠も忘れるはずもないが……

 

 

一誠「あれ?お前誰だっけ?」

 

ズコッ

 

 

そう言って首を傾げる一誠に我夢とレイヴェルはずっこける。

この中で一番会話したはずなのに忘れているとは……。

そんな彼にレイヴェルは素早く立ち上がり、

 

 

レイヴェル「レイヴェルです!レイヴェル・フェニックス!あなたのおかげで、リアス様との婚約を解消されたライザー・フェニックスの妹ですっ!!」

 

一誠「あ…ああ!あの焼き鳥野郎のか!久しぶりじゃん!」

 

レイヴェル「もう、全く……これだから下級悪魔は教養が悪くて嫌になりますわ」

 

 

顔を真っ赤にして言うと、やっと思い出して相槌を打つ一誠にレイヴェルは呆れた様子で毒づく。

この時、我夢は一誠の人の名前や顔を忘れやすい欠点をどうにかしてほしいと切に願った。

 

 

一誠「ところでさ、お前の兄貴。元気してるか?」

 

レイヴェル「お兄さまなら、あなたのおかげですっかり自信を無くして部屋に引き籠ってしまいましたわ。よほど敗けたことと、リアス様をあなたに取られたことがショックだったみたいですわ」

 

一誠「ええ…マジか…」

 

 

ライザーの現状に2人は唖然とする。

傲慢を体現したようなイメージしか浮かばないあのライザーがだ。しかも、実の妹が言うのだから尚更だ。

 

 

我夢「そのっ、何かごめん」

 

一誠「何か悪いことしちまった気がするぜ」

 

 

その現状にどこか申し訳なくなった2人はレイヴェルに訊ねる。

怒鳴られるのを覚悟の上でだ。

しかし、レイヴェルは肩をすくめ、

 

 

レイヴェル「別に良いですわ。お兄さまは才能に溺れて天狗になっていたところもありますから、良い薬になったと思いますわ」

 

「「は…はは……」」

 

 

 

そうバッサリと吐き捨てる。予想外の発言に我夢と一誠は内心驚きつつも、苦笑いを浮かべる。

 

 

我夢「でも、君は一応ライザーの眷属なんだろ?(あるじ)の兄がそんな状態で…」

 

レイヴェル「それなら、現状トレードを済ませて、今はお母さまの『僧侶(ビショップ)』になりましたので問題ないですわ」

 

一誠「とれーど?」

 

 

聞き覚えがない単語に一誠は疑問で眉間にしわを寄せると、

 

 

我夢「『トレード』はレーティングゲームのルールの1つで、『(キング)』の悪魔が同じ種類の駒をお互いに交換することが出来るんだ」

 

一誠「へぇ~……そうなのか。それにしても我夢、よく知ってんな」

 

我夢「まあ、修行の合間にレーティングゲームや悪魔社会について自主勉したからね」

 

 

我夢の説明に一誠は納得しつつ、きつい修行の中でも勉強できるなんて器用だなと感嘆する。

思い返せば、1年前の夏も期末考査で学年1位をキープしつつ、2種類の工学系の国家資格を取得していたことがあった。

これが天才少年と言われる男の器用さである。

 

 

レイヴェル「と、ところでダイナ――」

 

一誠「なあ、そのダイナってのやめてくれよ。俺には『兵藤(ひょうどう) 一誠(いっせい)』って名前があるんだからさ。普通に『イッセー』って呼んでくれよ」

 

レイヴェル「わ、わかりましたわ。イッセー様」

 

一誠「“様”?俺達、同い年ぐらいだろ?堅苦しいから呼び捨てでいいって――」

 

レイヴェル「いいえ!これは大事なことなんですっ!」

 

 

一誠はそう言うが、レイヴェルにやや強引に言いくるめられる。

レイヴェルの様子に一誠は困惑し、

 

 

一誠「別に気軽に呼べばいいのになぁ~…」

 

「レイヴェル。旦那様のご友人がお呼びだ」

 

一誠「ん?あんたは…」

 

 

そう呟いていると、一誠の見知った女性が現れる。

半分だけ仮面をつけているのが特徴的なライザーの眷属の1人、『イザベラ』だ。

かつて、リアスとライザーの婚約をかけてのレーティングゲームで、一誠と死闘を繰り広げた相手である。

 

 

レイヴェル「わかりましたわ。イッセー様、今度お会いできたら、お茶でもいかがかしら?わ、わ、私でよろしければ、手製のケーキをご用意をしてあげてもよろしくてよ?いえ、絶対ですわ!」

 

 

一方的に一誠へ約束を告げると、レイヴェルはドレスの裾を優雅に上げて一礼すると、早歩きで父親の友人の元へ去っていった。

一誠と我夢はポカンとしながらレイヴェルを見届けていると、イザベラが一誠に話しかける。

 

 

イザベラ「やあ、兵藤 一誠」

 

一誠「イザベラ…だっけ?久しぶりだな」

 

 

一誠とイザベラは挨拶を交わす。

すると、イザベラは不思議そうな表情を浮かべる。

 

 

イザベラ「おや?私のことは覚えているのか?」

 

一誠「そりゃあ、あんだけやりあえば嫌でも覚えてるぞ。あんた、中々強かったからな」

 

イザベラ「ははっ、お褒め頂いて光栄だよ。聞いたところによると、また強くなったそうじゃないか。もう、私が敵う次元じゃないな」

 

一誠「そんなことないだろ」

 

 

自嘲気味に話すイザベラに一誠は否定する。

ウルトラマンと1人の悪魔の力は天と地ほどの差があるのは明確だが、それを自分が鼻にかけているような気がしたからだ。

しかし、イザベラはふふっと笑い

 

 

イザベラ「いや、良いんだ。今の君と戦っても敵わないのは私自身わかっている。私は誇りに思っているんだ、君と真剣に戦えたことに。そうやって否定されると、余計キズつくんだ」

 

一誠「…っ、わかった」

 

 

そう言われた一誠はさすがに折れ、この話題にツッコむのをやめた。

少し気まずくなったので、話題を変えるべく、一誠は気になることをイザベラに訊ねる。

 

 

一誠「ところでさ、レイヴェルのやつ。いっつもあんな調子なのか?」

 

イザベラ「あぁ、素直になれないところがあってね…つい強く言ってしまうことがあるのさ。あんな風にツンツンしているが本当は君と話せて嬉しいのさ」

 

一誠「え?そうなのか?」

 

 

一誠は怪訝そうにするが、イザベラは頷き

 

 

イザベラ「そうだ。実は婚約パーティーでの一戦以来、レイヴェルは君の話ばかりしているよ。あの時の戦いがとても好印象みたいだったようだ」

 

「「へぇ~」」

 

 

そう聞いた一誠は我夢はそうなんだと呟く。

あの時の一誠はリアスと取り返すのに必死で周りをよく見てなかったが、不満を持つ人もいれば、案外好印象を抱く人もいるんだなとつくづく思った。

 

 

イザベラ「まだ話したいことがあるが、今日はレイヴェルの付き添いで来てるんでね。じゃあ、私はこれで失礼するよ」

 

一誠「おう、また会おうぜ」

 

 

一誠とイザベラは互いに別れの言葉を告げると、イザベラはそのまま手を振ってレイヴェルが向かった方へ去っていった。

 

 

我夢「相変わらず思うんだけど、イッセーって交友関係築くのが上手いよね」

 

一誠「そうか?俺は普通にやってんだけどな~」

 

 

レイヴェルとイザベラとの会話が終わった2人がそんな会話をしていると、ギャスパーとゼノヴィアがやってきて

 

 

ギャスパー「…そ、そうですよ。我夢先輩の言う通り、上手いですよ。だから、いつも話しかけてくる人が多いじゃないですか」

 

ゼノヴィア「うむ。私もそう思うぞ」

 

 

そう褒める。

こう言えるのも、彼らが一誠がコミュニケーションに長けていることは普段から見てわかるからだ。

それを聞いた一誠は

 

 

一誠「そ、そうかなぁ~?いやぁ~~…参っちゃうな!やっぱり俺は何をやってもトップクラスって訳か!あはははは!!」

 

アーシア「流石です!イッセーさん!」

 

我夢「また調子に乗っちゃって……」

 

 

鼻を伸ばして愉快に笑う彼を我夢は半目で見ながら呟く。

しかし、この和やかな雰囲気に我夢も心の中では楽しんでいた。

このまま何事もなくパーティーが終わるだろうと思った矢先、

 

 

我夢「?」

 

 

我夢の視界に急ぎ足でどこかへ向かっている小猫が映った。

その顔はどこか必死で、何かに焦っている様子だ。

 

 

我夢「ごめん、みんな。ちょっと用事が出来た」

 

ギャスパー「え、どうしたんですか?もうすぐで魔王様の挨拶が始まりますよ?」

 

我夢「ごめん、どうしても急ぎの用事なんだ!すぐに戻ってくるから待ってて!」

 

 

我夢は早口で皆に伝えると、駆け足で彼女の後を追い始める。

すると、

 

 

一誠「おい、どうしたんだよ?」

 

我夢「イッセー…!」

 

 

心配になって後をつけてきたのか、頭に疑問符を浮かべた一誠が隣にいた。

 

 

我夢「小猫が血相を変えて、どこかに行こうとしてるんだ。何か胸騒ぎがしてね」

 

 

我夢は走るスピードを落とさず、隣で走る一誠に事情を話す。

すると、一誠は我夢の肩をポンと叩き

 

 

一誠「…わかった!俺も一緒に行く!我夢がそう思うんなら間違いないぜ」

 

我夢「ありがとう!助かるよ」

 

 

そう告げると、ここぞという時に見せる親友の頼もしさに我夢は感動する。

そんな会話をしつつ、改めて2人は小猫の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテル外にある噴水の広場に出た我夢と一誠はその後、バッタリ出会ったリアスも加えて、行方がわからなくなった小猫の捜索を始めていた。

 

 

リアス「帰ってきたわね」

 

 

しばらく経つと、遠くの空からリアスの使い魔のコウモリが飛んでくる。

リアスは指に停まらせたコウモリに耳を傾け、何かを聞く。

 

 

リアス「2人共。小猫はホテル周辺の森に行ったそうよ」

 

一誠「そうとわかったら――!」

 

我夢「――すぐ行きましょう!」

 

 

3人は頷くと、リアスを先頭に近くの森の中へ駆け足で入っていく。

パーティー会場から聞こえる話し声が段々遠ざかり、夜の闇で暗い中、道に生えている木々の間を駆け抜けていく。

 

 

リアス「待って、誰かいる」

 

 

しばらく走ると、リアスは足を止め、小声で後ろにいる2人に待つように声をかける。

2人は足を止めて、耳を澄ませると、近くから足音が聞こえる。

 

3人は近くの木陰に身を隠しながら少しだけ顔を覗かせる。

彼らの視線の先には、小猫が切羽詰まった様子でキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

 

「久しぶりね」

 

小猫「!」

 

 

突然、話しかける女性の声が聞こえた。

近くの木を見上げる小猫に合わせて我夢達もそちらへ視線を向ける。

そこには、黒い着物を胸元まではだけさせ、長い黒髪に猫耳。二又に分かれた尻尾を持っている妖艶な雰囲気を漂わせる女性が木の上から小猫を見下ろしていた。

 

 

小猫「っ、あなたは…!『黒歌(くろか)』姉さま!」

 

 

彼女の姿を見て、小猫は驚愕する。

それを聞いた我夢は黒歌と小猫が何となく似ているのは姉妹だからと納得する。

 

だが、小猫は余程彼女を恐れているのか、身体がびくびくと震えている。

そんな小猫に黒歌は

 

 

黒歌「にゃはは♪そんな怯えなくてもいいじゃない、『白音(しろね)』。お姉ちゃんが会いにきたのよ?」

 

我夢「(白音?……ということはこれが小猫の本名?)」

 

 

そう笑いながら話すが、小猫の顔は以前暗いままだ。

我夢は彼女が言う『白音』というのが、小猫の本名であることを悟った。

 

そう思っていると、1匹の黒猫が黒歌の足下にすり寄る。

黒歌が頭を撫でると、黒猫は気持ち良さそうに喉を鳴らす。

 

 

黒歌「ちょっとこの子を会場に紛れ込ましただけで、すぐ気付いてここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃー」

 

 

陽気そうに笑みを浮かべる黒歌に小猫は込み上げる恐怖心をおさえて、訊ねる。

 

 

小猫「……姉さま。これはどういうことですか?」

 

黒歌「どうもこうも、あなたを迎えにきたのよ。私達が入っている組織、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員としてね♪」

 

小猫「っ!?」

 

『!?』

 

黒歌「どう?」

 

 

黒歌の衝撃発言に小猫のみならず、隠れていた我夢達も出そうな声を圧し殺して驚く。

その言い方から、黒歌は今、テロリスト集団に所属していることがはっきりとわかった。

彼女の誘いに小猫は

 

 

小猫「嫌ですっ!いくら姉さまの頼みだからといえ、みんなを裏切りたくないです!」

 

 

 

当然はっきりと断る。

自分を育ててくれたリアスを初めとした信頼してくれる仲間達をそう易々と裏切る訳がない。

しかし、黒歌はその返答が想定内だったのか妖しげな笑みを浮かべ、こう訊ねる。

 

 

黒歌「白音。じゃあ、どうして()()()()()()()()()()()()()()のにゃん?」

 

小猫「……っ!」

 

 

そう訊ねられた小猫は目を見開き、先ほどまであった“ついて行かない”という決心が揺らぎ始める。

立て続けに黒歌は語りかけ続け

 

 

黒歌「白音。あの日、あなたを置き去りにしたことは悪かったにゃん。でも、グレモリー眷属になってから(あるじ)の役に立てたことがある?この黒猫から聞いた話によると、随分と迷惑をかけたらしいじゃないかにゃ?しかも、仲良しの男の子を殴ったそうじゃない?」

 

小猫「……っ、そ、それは…」

 

黒歌「嘘じゃないでしょ?あんなに心配してくれていたのに仇で返すなんて………その男の子もさぞ憎たらしくてしょうがないだろうにゃー」

 

我夢「……」

 

 

小猫が困っていること、ありもしないことをわざと誇張して話す黒歌に我夢は怒りで拳を握りしめる。

当然だが、我夢は小猫のことを全く恨んでない。

 

 

小猫「あ…あぁ…」

 

 

しかし、精神的に追い詰められている小猫には効果覿面(てきめん)で、次第に動揺し始める。

黒歌はとどめにこう告げる。

 

 

黒歌「グレモリーにとって、あなたはね……()()()()()()()()()()なのよ。つまり、()()()()()ってことよ」

 

小猫「っ!?」

 

 

そのはっきりと言われた小猫は目を見開き、体を震わせる。

小猫は思った。皆は信頼してくれてはいるが、実は声を出していないだけで、迷惑だと思っているんじゃないかと…。

 

動揺している小猫に黒歌はもう一度誘いかける。

 

 

黒歌「どうかにゃ、白音?お姉ちゃんと一緒にくれば、あなたは今以上に生き生きとした生活ができるにゃん」

 

小猫「……わ、私は……」

 

 

グレモリー眷属を信じたい自分とそうじゃない自分。

その板挟みに小猫は返答を渋っていると、

 

 

美猴「黒歌ぁ~~、いつまでそいつに構ってるんだ?早くしねぇと魔王達にばれちまうぜ~」

 

 

黒歌の隣からヴァーリの仲間である初代孫悟空の末裔、美猴が早くしろと言わんばかりの態度で現れる。

 

 

黒歌「ちょっと待ってにゃー、あと少しなんだから♪白音は何が何でも連れて帰るから」

 

美猴「おいおい、大丈夫なのか?勝手に連れ帰ったら、ヴァーリ、カンカンになるぜ?」

 

黒歌「私と同じ力が流れていると説明すれば、ヴァーリやオーフィスも納得するにゃん♪戦力増加にもなるしね♪」

 

 

黒歌はそう言うが、美猴はううむ…と声を唸らせる。

どうも納得がいかない様子だ。

 

すると、美猴は何か名案が思い付いたのか手をポンと叩くと、

 

 

美猴「んじゃ、コソコソと俺達の会話を盗み聞きしている奴らの意見を聞いてみるか!」

 

『っ!?』

 

 

我夢達が隠れている木陰へ顔を向けてそう提案する。

我夢達は自分達がいるのがバレているのに驚いていると、黒歌もそれに便乗し、

 

 

黒歌「そうね。まずはお仲間さんの意見を聞いてみるのもいいかもにゃ。出てくるにゃ。仙術の心得を持っている私達には気の流れでどう息を潜めようがわかるにゃん♪」

 

 

美猴と同じ方角に向かって話しかける。

これ以上、隠れても無駄と判断した我夢達は木陰から姿を現す。

 

 

小猫「…っ!?」

 

 

後をつけられていた事を知らなかった小猫は驚く。

更に、2週間前に自分と喧嘩した我夢がいるから尚更だ。

そんな中、我夢は美猴に問いかける。

 

 

我夢「どうしてここにいるんだ?小猫を連れて帰るのが本来の目的じゃないだろ?何かテロでも起こそうとしているのか?」

 

美猴「いんや、俺っち達はただ冥界で待機するようにだけ言われただけでねぃ。今日はテロを起こす気はないさ。ただ、黒歌がどうしても悪魔のパーティーを見学した言うから待ってたけど、中々帰ってこねぇからこうして迎えにきただけだ」

 

『……』

 

 

その言葉に我夢達は半信半疑の様子で美猴達を睨み付ける。

すると、黒歌がちょんちょんと美猴の肩をつついて訊ねる。

 

 

黒歌「ねぇ、どっちがヴァーリを倒したウルトラマンなの?」

 

美猴「ああ、左の茶髪の兄ちゃんがそうだぜぃ」

 

黒歌「へぇ~~…」

 

 

そう聞いた黒歌は興味深そうに声をもらしながら、一誠をまじまじと見つめる。

 

 

一誠「…な、何だよ?」

 

黒歌「んにゃ、バカそうだなって♪」

 

一誠「はぁっ!?誰がバカだと、こるらぁっ!!!」

 

リアス「イッセー落ち着きなさい」

 

 

そう言ってケラケラ笑う黒歌にカチンときた一誠は飛びかかろうとするが、リアスに止められる。

そんな様子を見てひとしきり笑った黒歌は次に我夢へ顔を向ける。

 

 

黒歌「…ということは、坊やがウルトラマンガイアなのね?へぇ~~…意外と可愛い顔してる。タイプかもしれないにゃん♪」

 

我夢「黒歌。君はどうしても小猫を連れていくのか?」

 

 

黒歌の言葉を無視して、我夢はそう訊くと、黒歌はふっと笑みを浮かべ

 

 

黒歌「当然でしょ?どこにも居場所がない妹を助けるのは姉として当たり前でしょ?あなた達もいなくなった方が楽じゃないかにゃ?」

 

小猫「…っ!」

 

 

黒歌の言葉に小猫は顔を俯かせる。

自分が居なくなれば、みんな良いんじゃないかと…。

 

だが、さもそれが最善だと主張する黒歌にリアスは反論する。

 

 

リアス「何言ってるのかしら?この子は私の眷属、『塔城(とうじょう) 小猫(こねこ)』よ。あなたのせいで苦しみ、悲しんだこの子にたくさん楽しいものを見せるって約束したの。だから、この子は渡さないわ」

 

黒歌「んにゃ?でも、現にその子は仲間に手をだしたにゃ。そんな子をいつまでも隅に置いておくの?私なら正しく導ける存在に手渡すのが良いと思うけどね」

 

 

とぼけた口調で話す黒歌にリアスは

 

 

リアス「いいえ、渡さないわ。彼女は私にとっての家族の一員なの。家族ならずっと見守るわ、いつか自分で答えを見つける日を。たとえ、それがどんだけ時間が流れたとしても……。そんな当然のことがわからない時点で小猫の姉を名乗る資格はないわっ!!」

 

一誠「そうだ、そうだ!お前らなんかに渡してたまるかよっ!!」

 

 

一誠も同意見だと声を荒げる。

我夢も声には出してないが気持ちは同じだ。

 

そんな彼らに黒歌はうざったそうな顔を浮かべ

 

 

黒歌「あぁ~…もういい。殺しちゃお」

 

『!』

 

 

そう低い声で呟いた瞬間、辺りの空気が一変した。

まるで、倉庫に閉じこめられた様な感覚である。

 

 

我夢「これは一体……」

 

黒歌「この森一帯の空間を結界を覆って遮断したにゃ♪ここでド派手なことをやっても外には漏れないし、外からも侵入されることもない」

 

一誠「つまり、俺達は今、大きな鳥籠にいるってことかよ…」

 

黒歌「そ♪だから私達にここで安心して殺されるにゃん♪」

 

 

ニコニコと黒い笑みを浮かべる黒歌に我夢達は睨み付ける。

相手は2人、こちらは4人。数はこちらが有利だが、相手はテロリスト、油断できない。

 

睨み付け合う中、今まさに、戦いを始めようとした時―――

 

 

タンニーン「リアス嬢と兵藤 一誠、高山 我夢がこの森に行ったと報告を受けて来てみれば、まさか結界を張ってるとはな…」

 

一誠「タンニーンのおっさん!」

 

 

上空に大きな影が通り、渋い声が聞こえたかと思うと、そこにはタンニーンが颯爽と現れた。

その登場に一誠は嬉しそうに声をあげる。

 

タンニーンは上空からキョロキョロと地上を見下ろすと、黒歌達に目を止める。

 

 

タンニーン「それだけなく、このパーティーにふさわしくない来客がいるようだな」

 

 

そう目を細めて呟くと、指をポキポキ…と鳴らし、臨戦体制を始める。

そんな時、タンニーンの登場に喜んだのは一誠だけでない。

 

 

美猴「おうおうおう!ありゃあ、元龍王のタンニーンじゃないかぃ!ウルトラマンに元龍王……こりゃあ、もう大問題だ!黒歌!やるしかねぇって!」

 

黒歌「嬉しそうね、お猿さん。いいわ、纏めて片付けてやりましょう」

 

美猴「OK!んじゃあ、俺っちはさっそくタンニーンと戦わせてもらうぜ!筋斗雲っ!」

 

 

黒歌の了承を得た美猴はそう叫ぶと、どこかから現れた金色の雲、『筋斗雲』の上に乗り、上空にいるタンニーン向かって上昇していく。

 

美猴は手元に長い棍を取り出すと、先の方をタンニーンに向け

 

 

美猴「伸びろっ、如意棒っ!」

 

 

そう叫ぶと、棍はそのままタンニーン目掛けて伸びていく。

 

 

タンニーン「ふんっ!」

 

 

しかし、タンニーンはその攻撃をその巨体から想像できない速度で回避すると、お返しに大きく開いた口から火炎を放つ。

 

 

美猴「うおっと!危ねぃ」

 

 

美猴は筋斗雲を巧みに操って間一髪横へ回避すると、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

美猴「ははっ!やっぱり面白いな!さすが元龍王だぜぃ!もっと全力出してきな!」

 

タンニーン「フン!そう言って後で後悔するなよ、猿」

 

美猴「へへっ、とことんやりあおうぜぃ!」

 

 

そう会話した後、美猴とタンニーンは壮絶な空中戦を始める。

どちらも素早く動いているせいで、目で追うのもやっとである。

 

 

 

 

 

 

 

その間、地上では黒歌が吐いた霧が我夢達を取り囲むように立ち込めている。

視界が遮られる。ただ、それだけならいいのだが…

 

 

リアス「うっ…」

 

小猫「……あぁっ」

 

一誠「部長、小猫ちゃん!?……ぐっ!?」

 

我夢「これ…は……」

 

 

突然、4人は苦痛の表情を浮かべてその場で膝をつく。

顔は真っ青で、息も荒くなっており、体も思うように動けない。

その様子を黒歌はクスクスと嘲笑う。

 

 

黒歌「あらら?力が強いから、ウルトラマンには効かないと思ったけど、変身前なら効くみたいね」

 

我夢「何を……した……?」

 

黒歌「この霧はね、悪魔や妖怪だけに効く猛毒にゃん。毒を薄くしてるから全身を回るのは時間がかかるけど、じわじわと殺すには充分にゃん♪」

 

一誠「て……めえ……!」

 

リアス「…黒…歌っ!!」

 

黒歌「にゃはは!恨むんなら、白音をさっさと明け渡さない自分達の判断を恨むにゃ♪さて…」

 

 

黒歌は地面に顔を付けながらこちらを睨み付ける一誠とリアスを嘲笑うと、同じように苦しんでいる小猫へ顔を向ける。

 

 

黒歌「白音♪お友達が苦しんでいるわよ?助けたかったら、お姉ちゃんの元へくるにゃん♪」

 

小猫「…っ」

 

一誠「い……行く…な!小猫ちゃん!」

 

 

一誠は苦しみながらも小猫に黒歌の誘いに無視するように呼びかけるが、小猫は

 

 

小猫「……わかりました。私が行けば、助けてくれるんですね?」

 

『!?』

 

黒歌「ふふっ、ええ…」

 

 

ゆっくりと体を起こしてその誘いを受け取ると、黒歌はほくそ笑む。

思わぬ判断に驚く我夢達が驚く中、小猫はふらふらとした足取りで歩き始める。

 

 

リアス「小猫!?何言ってるの!あなたは私の眷属なのよ!そんな勝手なこと許さないわ!」

 

一誠「そうだ!俺達は仲間なんだ!こんな毒なんて何てことはねぇ!だから、姉ちゃんのところへ行くなっ!!」

 

 

リアスと一誠は必死の形相で彼女を呼び止めようとするが、小猫は首を横に振る。

 

 

小猫「…すみません。部長、イッセー先輩。いくら3人がかりでも、姉さまの力には及ばないです………姉さまの強さは一番知っているからです。……毒に侵されている体で太刀打ちできるとは到底思えません………」

 

一誠「…だ、だからって……」

 

小猫「……最後くらい皆さんのお役に立ちたいです。私が行けば、全て解決するんです」

 

 

我夢達へそう告げると、小猫はゆっくり…ゆっくりと姉のもとへ歩を進める。

 

その道中、小猫はとあることを思った。

 

――今まで頑張ってきたが、所詮自分は弱いまま……皆の足かせになっている。自分さえいなければ、皆は救われるんだと……。

 

姉のもとへ向かえば、もう2度と仲間には会えないだろう。孤独で辛い人生の歩んでいた自分に仲間がくれた今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。

 

自分に家族の同じような愛情を注いでくれたリアス。

 

おしとやかな雰囲気で安心させてくれる朱乃。

 

博識でいつも明るく接してくれる木場。

 

ビビりで頼りないが、いつも優しいギャスパー。

 

優しく、いつも心を和ませてくれるアーシア。

 

ちょっぴりバカだけど、いつも楽しませてくれる一誠。

 

抜けてるところがあるけど頼りがいがあるゼノヴィア。

 

そして――

 

いつも穏やかで、心優しく。自分が何者であろうと怖がらず、信じてくれる我夢……。

 

喧嘩したあの日。小猫はつい殴ってしまったこと、心にもないことを言ってしまったことを後悔しており、昨日謝ろうとした。

しかし、自分が彼を傷つけたという罪悪感のせいで踏み込めず、声に出すことが出来なかった。

 

 

小猫「(……我夢先輩)」

 

 

今からもう仲間とは会えなくなるが、我夢に謝れなかったこと。それだけが心残りだった。

だが、自分が一緒に居ても意味はない。むしろ邪魔な存在である。

小猫はそう心の中で言い聞かせると、重たい体を必死に動かし、歩くペースを早める。

 

 

黒歌「ふふっ♪そうよ、そのままお姉ちゃんのところへ来なさい…」

 

 

黒歌は最早、小猫は自分が手にしたとばかりにニヤリと妖しげな笑みを浮かべる。

黒歌までの距離があと10歩をきりそうな時、

 

 

我夢「小猫……!」

 

小猫「…っ!先輩………」

 

 

いつの間にか後ろにいた我夢に肩を掴まれ、小猫は思わず足を止め、振り返る。

どうやら無理に体を動かしてついてきたらしい。

我夢は血色が悪い顔をあげ、小猫に訊ねる。

 

 

我夢「小猫……このまま黒歌についていくのか…?」

 

小猫「……はい」

 

我夢「そうか………君が本当にそう望むんなら、僕は止めない。君の人生は君が決めるんだからね……」

 

 

小猫は内心驚いていた。てっきり他の2人同様に止めるものかと思ったからだ。

我夢は「だけど」と付け加えると、

 

 

我夢「…その前に言っておきたいことがあるんだ……。小猫、僕は君に対して叱ったことがなかったね。正直、先輩としてしっかり気にかけてやれてたか不安だったからさ」

 

小猫「…」

 

我夢「だから、言わせてもらう……」

 

 

そう言うと、我夢はごほごほと咳き込んでから真剣な眼差しで小猫を見据えると

 

 

我夢「本当は寂しいんだろ?部長達と離れることが。……いつも無表情で口数が少ないから考えてることがわからない時もある。けど……寂しい時ぐらい、黙ってないで、はっきり寂しいって言うんだ!

 

小猫「…っ!」

 

 

説教を受けた小猫は目を見開くと、涙をポロポロを流し始める。

それは彼女が必死に圧し殺そうとした“寂しさ”という感情が溢れた証拠だ。

我夢は言葉を続ける。

 

 

我夢「…寂しい時に寂しいって言えない人は、誰も信用しない、痛みを知らない最低な人になってしまうぞ。君が真に仲間を思ってるならね…」

 

 

小猫は溢れ出る涙を手で拭いながら、うんうんと頷く。

 

 

我夢「小猫、君はどうしたいんだ……?」

 

 

我夢は目眩がし、重たい体ながら必死に立つ姿勢を保ちながら問いかける。

彼女は本当は黒歌についてきたくないことがこの様子でわかるが、我夢はあえて思いを口に出させることで、はっきりと気持ちを表せさせたいのだ。

 

小猫は嗚咽混じりの声で心の底から声を発する。

 

 

小猫「……私は、私はみんなと別れるのは嫌です…!もっとみんなと笑いたい!怒りたい!悲しみたい!!…もっと、もっとお役に立ちたい!だから……私は行きたくありませんっ!!」

 

 

普段無表情の小猫が初めて感情的な声で意思を表したのだ。

これでやっと動ける。我夢はそっと優しく小猫の頭を撫でると、彼女の前に出る。

 

 

我夢「黒歌!小猫は君と一緒に行きたくないって言っている!僕達は小猫を何が何でも守り抜く!」

 

 

我夢は黒歌に向かって言い放つ。これは自分達が勝手に行動したものでなく、小猫が望んだ行動だ。

だが、黒歌は一旦キョトンとすると、クスクスと笑い始める。

 

 

黒歌「けど、毒はもうほぼ全身に回っているのよ?そんな体で私の猛攻から守り抜けるかしら?」

 

 

確かに毒は体のほとんどを蝕んでおり、今の我夢達は動けるのがやっとだ。

けれど、我夢は不敵な笑みを浮かべ

 

 

我夢「それなら問題ない。イッセー!」

 

一誠「…っ!おう!!」

 

 

 

一誠の名を呼ぶ。彼は我夢が思ってることをすぐに察すると、懐から取り出したリーフラッシャーを前方へ突きだす。

そして、リーフラッシャーのクリスタル部分が展開すると、そこから溢れる光に包まれ、一誠は等身大のウルトラマンダイナに変身した。

 

 

[ティヨン]

 

 

しかし、毒を受けている状態なので、胸元にあるライフゲージはいつもの青色ではなく、危険を知らせる赤色だ。

 

 

ダイナ「ヴン"ン"ンンン~~~~……ハッ!」

 

 

だが、ダイナはそれに焦らず、胸元の前で両腕をクロスすると、額のダイナクリスタルから溢れる青い光に包まれ、ミラクルタイプへとタイプチェンジした。

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ダイナはすぐさま地上を飛び立つと、真っ直ぐどこかに向かって行く。

ダイナが向かっているのは、夜空を天から照らす月である。

 

月の明かりが全身を照らす程、近付いたダイナは両腕を広げる。

すると、月から光が放射され、ダイナに降り注ぎ、みるみる体の毒が消えて行く。

 

ダイナは新しく発見したミラクルタイプの超能力の1つ、『ネイチャーコントロール』を用いて、月の浄化効果を高めたのだ。

その証拠にライフゲージが平常を表す青色になっている。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

解毒したダイナはその場でクルリと回れ右すると、月から得たエネルギーを両手から地上へいる我夢達へ放つ。

すると、我夢達を囲んでいる毒霧は一瞬で霧散し、我夢達の顔色が良くなっていく。

 

 

黒歌「なっ……!?」

 

 

当然、黒歌はこんなにあっさりと解毒されたことに驚く。

この場では自分しか解毒できないから尚更である。

 

そんな中、我夢は懐からエスプレンダーを取り出すと、あることを問いかける。

 

 

我夢「黒歌。君は本当に妹を愛しているのか?」

 

黒歌「…っ!」

 

 

そう問いかけれた黒歌は驚いた顔を浮かべる。

相手はテロリストとはいえ、黒歌は小猫の姉だ。

元・主の悪魔を殺したのも何かしらの理由があるかもしれない。

そんなに戦力増加したいのなら、力づくで拐うチャンスは何度もあったはずだ。考えすぎかもしれないが、彼女はどうも力に溺れたようには我夢には見えなかったのだ。

 

黒歌は一瞬こそ驚いた表情だったが、すぐに元の妖しげな笑みを浮かべた表情へと変わると

 

 

黒歌「さぁね?でも、そんなことどうでもいいじゃない?あなた、今すぐここで死ぬから」

 

我夢「いいや、僕は死なない……。小猫を絶対に守ってみせる!」

 

 

とぼけた口調で話す黒歌に我夢はそう返答して自分を奮い立たせると、エスプレンダーを前へ突きだし、光の巨人の名を叫ぶ。

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーー!!!

 

 

かけ声に呼応して、エスプレンダーから赤く眩しい光が放たれると、我夢は等身大のウルトラマンガイアへと変身した。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

黒歌「よっと」

 

 

ガイアはすぐさま黒歌に向かって『フォトンエッジ』を放つ。

黒歌はひらりと回避し、『フォトンエッジ』は虚空へと飛んでいく。

地上へ降り立った黒歌はガイアを嘲笑う。

 

 

黒歌「あははっ!そんな鈍い攻撃が当たると思ったの?」

 

ガイア「それはどうかな?」

 

黒歌「えっ…?」

 

ドガァァァーーーーーーン!

 

 

ガイアの返答に黒歌は疑問に思った矢先、ものすごい爆発音が後方から聞こえる。

黒歌は爆発音が聞こえた方角を振り向くと、それは先ほど避けた『フォトンエッジ』が黒歌が張った結界に衝突した音だった。

 

当たった箇所は貫通しており、結界はみるみるひびが入っていくと、一瞬で霧散した。

 

 

黒歌「はっ、なるほどね!最初から狙いは私じゃなくて、結界だったわけね!」

 

ガイア「そうだ。隙が大きい攻撃がくれば、絶対避けるだろうとよんだからだ」

 

 

淡々と解説するガイアに黒歌は不気味に笑うと

 

 

黒歌「あはは!面白いじゃないっ!私を欺いたことを後悔させてやるわっ!!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

黒歌は大気が震える程のオーラを全身に纏い、ガイアは軽く開いた右手を前、左の握り拳を顔の横へ構えると、両者は地面を駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、タンニーンは美猴と空中戦を繰り広げていた。

戦況はお互い一歩も譲らない状況で、中々決め手が繰り出せない状況だ。

 

タンニーンは巨木といわんばかりの豪腕から拳を繰り出すが、ギリギリのところで美猴に避けられる。

 

 

タンニーン「ちっ!ちょこざいな猿め……!」

 

美猴「へへっ!どうしたぁ、こんな程度じゃねぇだろぃ?」

 

 

いじわる気な表情を浮かべる美猴にタンニーンはキッと歯を噛み締める。

タンニーンも巨体に似合わず素早いが、対する美猴も素早く、しかも的が小さいせいで中々攻撃が当てずらいのだ。

と、そんなところに

 

 

ダイナ「フッ!」

 

タンニーン「っ!兵藤 一誠!」

 

美猴「待ってたぜぃ!」

 

 

タンニーンの目の前にテレポートしたダイナが颯爽と現れる。

相手が増えて不利のはずなのに、美猴は嬉しそうに声をあげているが、そんな彼を尻目にダイナは振り向き、

 

 

ダイナ「タンニーンのおっさん、こいつは俺にやらせてくれ」

 

タンニーン「…わかった」

 

 

一言そう告げると、タンニーンは察したのか、彼らから離れていく。

ダイナは再び美猴へ顔を向けると、彼はニッと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

美猴「ふぅ~…いいねいいね!お次はウルトラマンダイナが相手ってか!今日はツイているぜぃ!」

 

ダイナ「うるせぇよ。黙ってかかってこい」

 

美猴「へぇ、今回は真面目モードって訳かい!んなら、いくぜっ!」

 

 

美猴は筋斗雲で接近し、手元に持つ如意棒を横へ振り回すが、ダイナは素早く上へ回避する。

美猴は避けられるのを見越していたのか、すぐに如意棒を持ちかえ、先端をダイナへ向ける。

 

 

美猴「伸びろっ、如意棒っ!!」

 

ダイナ「グッ!」

 

 

突然、迫ってきた棍の先端は真っ直ぐダイナへ向かうが、それを紙一重で回避する。

 

 

美猴「おらおらおらっ!」

 

ダイナ「ハッ!ハッ!」

 

 

美猴は攻撃の手を緩めず、伸縮自在の如意棒で素早い連続突きを繰り出す。

ダイナは上下左右に避けていたが

 

 

美猴「()()()()()、如意棒!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

美猴のそう一言呟いた瞬間、如意棒は途端に人を覆うぐらい面積になると、ダイナは大きく後方に突き飛ばされる。

 

吹き飛ばされたダイナは驚きつつも、何とか空中で立て直す。

美猴は元の大きさに戻した如意棒を右手でくるくると回し

 

 

美猴「その様子だと驚いているようだな。俺っちの持つ如意棒は伸びるだけでなく、大きくすることも出来るんだぜ」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

そう言って挑発するような笑みを浮かべる。

ダイナは如意棒にはまだ隠された能力があることを危険視しつつも、猛スピードで飛び出す。

 

 

美猴「伸びろ、如意棒!」

 

 

美猴は如意棒をダイナに向かって伸ばす。

伸びた棍の先端はダイナへ襲いかかるが

 

 

スカッ

 

美猴「なっ!?」

 

 

当たる直前にダイナはフッと姿を消し、如意棒は真っ直ぐ虚空へ伸びていく。

美猴は思わず驚愕するが、すぐに冷静になると、周囲の気を探り始める。

 

 

美猴「そこだっ!」

 

 

ダイナの気を探知した美猴は背後の虚空に向けて如意棒を振り回す。

その瞬間、テレポートしたダイナが現れ、美猴は当たったと口角をあげるが

 

 

スカッ

 

美猴「嘘だろっ!?」

 

 

またもやフッと姿を消し、その攻撃は虚しく空を切っただけだ。

美猴は再び気を探ろうとするが

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

美猴「うごっ!?」

 

 

左横に現れたダイナの右ストレートが左の頬に炸裂。

ダイナは続け様に脳天にチョップ、両脇腹を右、左の順番で蹴ると、深く腰を落とし

 

 

ダイナ「ダアッ!!」

 

美猴「ぐはぁっ!!!」

 

 

一瞬だけ光速状態になると、その勢いを利用した掌底を美猴の腹へ繰り出す。

その一撃に美猴は苦悶の表情を浮かべて、血反吐を吐く。

何せミラクルタイプは光速マッハ88万で移動できる。そこから繰り出される一撃は誰も耐えられないだろう。

 

その衝撃で美猴は筋斗雲から落ち、体がくの字の状態で後方へ吹き飛ばされる。

 

ダイナはまたもや光速になって飛行すると、一瞬で美猴が飛んでくる位置に回り込み、

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

美猴「うがっ!!!」

 

ドォォォーーーーーン!!

 

 

両手を握って拳を作ると、向かってきた美猴へ振り下ろし、美猴は爆音と共に土煙をたてながら地上へ墜落していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上でも激しい攻防が続いていた。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「ふっ!」

 

 

ガイアの放つガイアスラッシュと黒歌が放つ魔力弾が空中でぶつかって、相殺される。

その隙にガイアは距離を詰めようと駆け出すが、

 

 

ガクンッ!

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

黒歌まであと一歩のところで足下がすくわれ、腰の高さまで地面に埋まる。

ガイアは腰元を見ると、自分の周りの地面が泥沼の様にぬかるんでいた。

 

 

 

黒歌「にゃはは♪仙術で地面を泥沼へ変えたにゃ♪」

 

ガイア「グワァァ~~ッ!」

 

 

黒歌の説明に「そんなことが出来るのか!?」とガイアは驚愕しながらも何とか抜け出そうともがくが、逆に沈んでいくばかりだ。

その間に黒歌は間合いをとって、大きな魔力の塊を作り出し

 

 

黒歌「死ね」

 

ガイア「ッ!」

 

 

そのまま地面に埋まっているガイア目掛けて放つ。この状況だと確実に逃れることが出来ない。

だが、

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「っ!」

 

 

ガイアは力を込めて全身を赤く発光させ、何とか上空へ飛翔して避けると、先程までいた場所は大爆発が起きる。

まさか抜け出せると思わなかったのか、黒歌の顔は動揺の色を見せる。

 

ガイアはすぐさま地上へ降り立つと、両腕を斜めに広げる。

すると両腕に冷気が集まっていき…

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

黒歌「ちっ!」

 

 

そのまま両腕を突きだし、冷凍光線『ガイアブリザード』を放つが、黒歌は動揺したせいで反応が遅れるも間一髪側転で避ける。

 

 

黒歌「くらえっ!」

 

 

黒歌は両手から何発も魔力弾を連射する。

ガイアは冷静に両腕を駆使していなしたり、叩き落としながら、走って間合いを詰めていく。

 

 

ガイア「ダッ!!」

 

黒歌「っ!」

 

 

そして、接近したガイアは走った勢いのまま、手刀を黒歌の肩元目掛けて振り下ろしたが

 

 

スカッ!

 

ガイア「ッ!?」

 

 

命中した瞬間、黒歌の体は霧の様に消える。

ガイアが驚いていると

 

 

黒歌「ざぁんねん♪それは幻術で作った分身」

 

ガイア「ッ!」

 

 

ガイアは周囲を見渡すと、いつの間にか6人に分身した黒歌が囲んでおり、彼女らの両手には魔力弾が溜まっていた。

黒歌達は

 

 

『バイバイ♪』

 

 

一斉にそう告げると共に魔力弾を発射する。

 

 

ガイア「グアァァァァァーーーー!!」

 

ドガガァァァァーーーー!!!

 

 

襲いくる魔力弾の嵐にガイアは苦悶の声をもらし、体は火花を散らし、大爆発を起こす。

あまりものダメージにガイアは思わず膝をつきそうになるが

 

 

小猫「…先輩っ!!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

後ろから悲鳴にも似た小猫の声が耳に入った。

ガイアは思った。

そうだ、自分は小猫を絶体に守ると決めたのではないかと。そして、こんなところで倒れる訳にはいかないと。

 

 

ガイア「…グアッ!!」

 

 

ガイアは倒れそうになりながらも何とか踏ん張って、体制を保つ。

そんな彼を見て、黒歌達は嘲笑う。

 

 

黒歌「あははは♪もう諦めばいいのに、しつこいわねぇ~…」

 

ガイア「諦めないさ。だって、大切な仲間を守る為なら何度だって立ち上がるさ」

 

黒歌「そう、なら2度とそんな口が訊けなくしてやる」

 

 

ガイアからそう言われた黒歌はより殺意を漲らせると、更に分身4人を追加し、両手に魔力弾を溜めると、一斉に発射する。

計10体の黒歌から放たれる無数もの魔力弾がガイアに襲いかかる。

 

だが、ウルトラマンである前に天才少年であるガイア、いや我夢には同じ手は通用しないのを黒歌は知らなかった。

 

 

ブオッ…ブオッ…ブオッ、ブオッ!ブオッ!ブオッ…!

 

 

魔力弾の雨が迫りくる中、突然ガイアは握り拳を作った両腕を胸の前で交差させると、その場で回転し始めた。

土煙が立つぐらいの回転風圧に、襲いくる魔力弾が次々と弾かれていく。

これぞ、回れば何とかなるという伝統戦法である。

 

 

黒歌『何っ!?』

 

 

これには黒歌達も口を揃えて、驚愕する。

そんな物理的な方法で防ぐとは予想外だったからであろう。

 

 

ガイア「グアァァァ~~…デュアッ!」

 

黒歌『しまっ…!?ギャアッ!!』

 

 

その隙にガイアは回転をやめ、体に溜めたエネルギーを一気に解き放つ。

動揺して気をとられていた黒歌はすぐに対応できず、まともにくらい、分身が消滅していく。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

黒歌「くっ!」

 

 

残った本体に向かってガイアは右腕の関節に左手を差し込んでL字に構えると、『クァンタムストリーム』を放つ。

黒歌はすぐさま前方に防御用の魔法陣を展開して防ぐが、予想以上の威力に段々押されていき、

 

 

黒歌「きゃあぁぁぁぁっっ!!」

 

 

魔法陣が粉々に粉砕されると、赤色の光線が直撃し、黒歌は苦悶の声をあげる。

あまりもの激痛に黒歌は遂に地に膝をつく。

 

 

ガイア「黒歌、僕は小猫を守る!わかったなら、早く帰れっ!!」

 

 

ガイアは膝をついている黒歌に向かって逃走を促す。

ガイアは手加減したとはいえ、黒歌の身体は傷だらけで着ていた和服もボロボロだ。

更に

 

 

ドォォォーーーーン!!

 

ガイア「?」

 

黒歌「っ!?」

 

 

黒歌とガイアの近くから凄まじい衝突音が鳴り響く。

2人はそこへ顔を向けると、そこには苦悶の表情を浮かべながら地に倒れ伏している美猴、そしてぶっ飛ばした張本人であるダイナが彼を見下ろしていた。

 

この状況は誰がどう見ても黒歌の敗色が濃厚……。

既に軍配はガイア達にあがっていたのだ。

 

しかし、黒歌は手に膝をつきながらも立ち上げると、ガイアを睨み付け

 

 

黒歌「ふざけんじゃないわよっ!!いくら力が強いからって調子にのるんじゃないわよっっ!!」

 

ガイア「…ッ!」

 

 

ガイアの提案を一蹴すると、両手に先程よりも強力な力が集中し始める。

ガイアは身構え、第2ラウンドが開始しようとするその時、

 

 

「そこまでです」

 

『!?』

 

 

突然、ここにいる誰のものでもない男性の声が響く。

皆は声のした方を見上げると、メガネをかけ、背広を着こなした男性が木の枝に立っていた。

しかし、服装に似合わず、腰に帯剣された1本の剣、手には美しい装飾がなされた剣を持っていた。

 

男はスタッと地上へ降り立つと同時に、黒歌は先ほどまで溜めていた気を解除する。

この様子から彼が『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員であることがわかったガイア達は警戒する。

 

 

黒歌「ちょっと、何でとめるのよ…」

 

美猴「そうだ!もうちょっとやらせてもいいじゃねぇかぃ!」

 

 

そんな中、黒歌と倒れていたはずの美猴は訊ねる。

あれだけダイナにやられたのに平気なのは、異常なまでの闘争心ゆえだろうか…。

 

男はクイッと眼鏡の鼻をあげると、

 

 

「撤退ですよ。黒歌が遅いから迎えに行くと言ったはずの美猴もいる。全く何をしてるんだか……」

 

 

そう言うと、呆れた様子でため息をつく。

どうやら、彼の言動や様子を見るに、加勢にきた訳では無さそうとわかったガイア達は僅かに警戒心を解く。

 

しかし、2人は納得してない様子だった。

 

 

美猴「でもよぉ~…もう少しだけ!もう少しだけ、戦わせてくれよぉ!」

 

「会場にいる悪魔に気付かれているのに、ですか?」

 

『!?』

 

 

ねだる美猴に男が付け加えて言うと、皆は驚く。

いつ?どうやって気付いたのか?と。

 

男はガイアの方を向き

 

 

「そちらのウルトラマンが最初に放った光線の爆発音ですよ」

 

『っ!』

 

黒歌「あの時の…!」

 

 

皆に聞こえる様に説明すると、黒歌は思い当たりあるのかハッとした表情を浮かべる。

そう、それはガイアが初手に結界を破壊する為に使った『フォトンエッジ』によるものだ。

ガイアは最初っから、黒歌達を撤退させようと考えていたのだ。

 

 

黒歌「はあ……見事に騙されたわ。はじめからこうなることを予測していた訳ね」

 

ガイア「…」

 

 

一杯食わされた。

黒歌は怒りを通り越して、敵ながら感服する。

 

 

「さて、そろそろ退散といきましょうか」

 

 

男は黒歌と美猴にそう呼びかけると、手に持つ剣で2、3回虚空を斬ると、空間に人が数人入れるぐらいの裂け目が出現した。

 

 

ダイナ「お、おい!その剣は何だよ!?」

 

 

この光景にガイア達が目を見開く中、ダイナが前に出て訊ねる。

すると、男は手に持つ剣を見ながら

 

 

「ああ?これですか。この剣は聖王剣『コールブランド』、別名カリバーン。地上最強と言われる聖剣ですよ」

 

 

そう説明すると、ガイア達は地上最強の聖剣を持つ者が『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属する事実に戦慄する。

 

 

ダイナ「んじゃあ、もう1本腰に差してんの何だよ?」

 

「こっちは行方不明とされていた最後のエクスカリバーにして、7本中最強の1振り。『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』です」

 

リアス「何ですって…!?」

 

 

思わず、ガイア達は耳を疑った。

以前、ゼノヴィアから7つに分断されたエクスカリバーのうち1本が行方不明となったと聞かされていたので、まさかその最後の1本が敵対組織の手に渡っていたとは…。

 

 

「さて、長話もこれまでにしましょう。そうしないと、五体満足に帰させてくれなさそうなのでね…」

 

 

男がそう呟くと、黒歌と美猴は空間の裂け目の中に入る。男もその後に続いて入ろうとしたが、「あっ」と何か思い出したかのように声をあげると

 

 

「あと、ウルトラマン殿。あなたのお仲間の聖魔剣使いとデュランダル使いの方によろしく言っておいてくださいますか?いつかお互いいち剣士として相まみえたい――と。それでは」

 

 

去り際にそう言い残して空間の裂け目に入ると、裂け目が何もなかったの様にピッタリ閉じ、黒歌達は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒歌達が撤退してひと安心したガイアとダイナは変身を解除する。

 

 

一誠「部長、大丈夫すか?」

 

リアス「ええ、ありがとう」

 

 

一誠は駆け寄ると、膝をついているリアスに手を貸す。

その向こうでは我夢が小猫の安否を確認していた。

 

 

我夢「小猫、大丈夫か?」

 

小猫「……は、はい。あの!」

 

我夢「うん?」

 

小猫「…すみません。あの時、先輩が私を勇気づけようとしたのに心無い言葉を言うばかりか、殴ったりして……」

 

我夢「…」

 

 

そう謝ると、小猫は今にも消え入りそうな面持ちで顔を俯かせる。

確かにあの喧嘩は我夢にとって少しも心が傷ついてないと言えば嘘である。

だが、我夢は優しく微笑むと、小猫の両手をそっと手に取り、包むこむ。

 

 

我夢「いや、いいよ。これでようやく君が前へ進めたんだ」

 

小猫「……私が、ですか?」

 

 

聞き返す小猫に我夢は頷く。

そんな自覚が全くない小猫は首を傾げていると、我夢は言葉を続け

 

 

我夢「君自身はわかってないかもしれないけど、君はようやく自分の気持ちをハッキリと口に出したんだ。それだけでも、充分自分の心と向けあうことが出来たと言える」

 

 

今まで恐怖や不安、マイナスの感情を圧し殺していた彼女が“嫌だ”と、感情を露にしたのだ。

たったそれだけでも立派な成長である。

しかし、小猫は顔を曇らせ

 

 

小猫「……でも、私まだ怖いです。姉さまのみたいに暴走して、部長やみんなを………」

 

 

そう呟くと、体をビクビクと震わせる。

前へ踏み出したいが、やはり黒歌のことが気になってしまう様子だ。

我夢はその思いを汲み取ると、手をギュとより強く包みこみ

 

 

我夢「いや、それはないよ」

 

小猫「……え?」

 

我夢「僕が前に言っただろ?“怖れを恥じることはない。大事なのは自分自身の怖れと向き合う事だ”って。自分の弱いところを認めた君はもう強くなったんだ」

 

 

我夢はそう言うと、一旦手を離してズボンのポケットから何かを取り出すと、小猫の掌に乗せる。

 

 

小猫「?これって…」

 

 

何だろうと小猫は見ると、それは我夢がエスプレンダーを作成するまでガイアの光を入れていた光電子管だった。

 

 

我夢「小猫を勇気づける為の御守り代わりだよ。もし、ギリギリまで頑張って……ギリギリまで踏んばって……どうにもこうにも、どうにもならないそんな時。こいつに祈るんだ。そしたら、いつでも駆け付けるから……。何せ、君は大切な人だから」

 

小猫「…っ!?//////」

 

 

微笑みながら話す我夢に思わず、小猫はドキッと胸が高鳴り、顔を紅くする。

若干告白めいた発言のせいでもあるが、それ以前に彼の事が愛おしくて仕方がない。

 

 

我夢「どうした?」

 

小猫「…っ、な、何でもありません!!(どうしよう………/////)」

 

 

不思議に思ったのか、我夢が顔を覗こうとするが、小猫はプイッと顔をそむけてしまう。

ついさっきまで彼の顔が見れたのに、今は見ることすら恥ずかしい。

 

この胸の高鳴り……身体中の暑さ……。今まで実感したことない体験に小猫の脳内は混乱する。

 

 

我夢「?」

 

 

反対に我夢はそんなこと露知らず、キョトンとしていた。

 

その後、騒ぎを嗅ぎ付けた悪魔達に保護された我夢達は何があったのか話すと、魔王主催のパーティーはすぐに中止となった。

 

こうして、我夢達の長い1日が終わった。

しかし、彼らは休んでいる暇はない。

ソーナとのレーティングゲームまであと3日だ。

進め!我らがグレモリー眷属!!

 

 




次回予告

レーティングゲーム開幕!!
2人の少女に芽生える勇気!そして、匙の覚悟!
一歩も譲らない戦いが今、始まる!

次回、「ハイスクールG×A」
「ぶつかり合う理想(前編)」





今回の我夢が小猫を叱るシーンはわかる人ならわかる、とある特撮作品のオマージュです。



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第31話「ぶつかり合う理想(前編)」

黒歌達の襲撃があってから3日。

遂にシトリー眷属とのレーティングゲーム本番を迎えた我夢達はグレモリーの居城地下に設置されたゲームエリアへ移動する巨大な魔法陣に集まっていた。

そこにはリアス率いるグレモリー眷属だけでなく、リアスの両親のジオティクスとヴェネラテ、甥っ子のミリキャス、そしてアザゼルが見送りに来ていた。

 

 

ジオティクス「リアス、一度負けているのだ。勝ちなさい」

 

ヴェネラテ「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい」

 

ミリキャス「皆さん、頑張って下さい!!」

 

アザゼル「まあ、教えるところは教えた。後は気張れ」

 

 

彼らからの激励にリアス達は力強く頷く。

 

ちなみにこの場にいないサーゼクスとグレイフィアは既に要人専用の観戦会場にいる。

この試合は三大勢力だけでなく、他の勢力の上級階級の御要人が観戦している。

何でも、魔王の妹同士が戦うということで注目しているらしい。

 

―――――この戦い、絶対に負けられない。

 

そう改めて気合いを入れると、リアス達は魔法陣の上に乗ると、魔法陣が輝き出し、転送を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…?』

 

 

眩しかった光が晴れ、リアス達は目を開くと、地下とはうって変わったテーブルがズラリと並んだ場所にいた。

 

転移したとすぐに理解したリアス達は辺りを見渡すと、そこはどこかの施設の飲食フロアらしく、左右にはファーストフードの店が連なっている。

 

更に皆がフロアから少し出て奥を見渡すと、リアス達は驚く。

 

 

我夢「え?」

 

アーシア「ここって…!」

 

一誠「学園近くのデパートじゃねぇかっ!?」

 

 

広大なホールにズラリと並ぶ見知った店…。特に印象がある天井の吹き抜けのアトリウムからは光が床を照らしている。

そう、ここはリアス達がよく通うデパートだった。

 

 

リアス「まさか、ここがゲームの舞台になるなんて予想外だったわ…」

 

 

さすがにリアスも驚愕の色を隠せない。

普段、生活で使っているデパートが戦いの舞台になるとは誰が予想出来たであろうか。

 

この状況に皆は口々に驚きの声を漏らしていると、アナウンスがホールに響き渡る。

 

 

《グレイフィア「皆さま……今回のグレモリー、シトリー両家のレーティングゲームの審判役のルシファー眷属『女王(クイーン)』のグレイフィアでございます。どうぞ、よろしくお願い致します」》

 

 

前回のライザー同様、審判のグレイフィアは挨拶をする。

しかし、前回と少し違うのは前回は()()()()()()()使()()()、今回は()()()()()()()と名乗っている点だ。

この僅かな違いからも、今回のゲームは前回とは訳が違うことを表していることを我夢は悟った。

 

挨拶を終えると、次はゲームで使うバトルフィールドについての説明を始める。

 

 

《グレイフィア「さっそくでございますが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様が通われている『駒王学園(くおうがくえん)』の近隣に存在するデパートをご用意致しました。二階建てのこの建物の一階と二階は吹き抜けの長いショッピングモール、屋上には立体駐車場となっており、他にも立体駐車場も存在しております…」》

 

 

説明を聞いたところ、本物と作りは全く変わらない。

ということは、普段使っているリアス達にとってはどこに何があるのか大体頭にインプットされているので動きやすいが、それは相手とて同じである。

 

グレイフィアの説明は続き、今度はゲームのルールについて語り出す。

 

 

《グレイフィア「両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様は二階の東側、ソーナ様は一階西側でございます。また、『兵士(ポーン)』の方の『昇格(プロモーション)』は、相手の本陣内で使用可能となります。なお、今回のゲームには()()()()()()がございます」》

 

我夢「特別なルール?」

 

《グレイフィア「特別なルール及び支給品は各陣営に資料が配られていますので、ご確認ください。なお、作戦時間は30分です。この時間に相手との接触は禁じられています。30分後にゲーム開始予定です。それでは、作戦時間です」》

 

 

グレイフィアのアナウンスが終わった瞬間、リアス達はさっそく作戦を決める為、一気に集まる。

リアスは飲食フロアの壁に描かれたデパート内の案内図と手元にあるチェスのマス目に区切られたレーティングゲーム専用の図面を見比べる。

 

 

リアス「舞台は駒王学園の近くにあるデパートを模したもの………つまり、屋内戦ね」

 

一誠「屋内戦ですかー…。レーティングゲームにも色々種類があるんすね」

 

リアス「ええ。ライザーの時の屋外戦や今回の屋内戦、他にも特殊なルールで勝敗を決めるのもあるわ。ただ力が強いから絶対に勝てるんじゃなくて、いかにどうやって勝つかがレーティングゲームの本筋なのよ」

 

 

リアスの話に我夢、一誠、アーシア、おまけに初参加のゼノヴィアはそうなのかと相槌を打つ。

てっきり、ライザーの時のような屋外フィールドを駆け回るものと思った我夢、一誠、アーシアは尚更である。

 

そんな話をしていると、支給品をチェックし終えた朱乃がリアスに報告する。

 

 

朱乃「部長。支給品はフェニックスの涙1つ、ジェクターガン1丁。それにジェクターガン専用の通常弾のカートリッジが2個ありますわ」

 

リアス「そう、ありがとう。フェニックスの涙が1つ…慎重に使わなきゃね。ジェクターガンは武器を持ってない人へのハンデってことかしら?」

 

朱乃「ええ、ありえますわ。こっちには回復能力はありけど戦闘向きじゃないアーシアちゃん。向こう陣営では特殊能力を持たない梶尾君がいますから」

 

 

朱乃の言葉にリアスは頷く。

確かに能力があるのが当たり前のレーティングゲームにおいては、能力無しの悪魔にとっては不利なものだ。

その不公平さをなくす為の公平にするためのものが我夢が作成したジェクターガンだろう。

 

支給品を確認したリアスは特殊ルールの内容が記された書類に目を通すと、目を細める。

 

 

リアス「『バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽くさないこと』―――つまり、ド派手な戦闘は行うなってことね」

 

朱乃「これは困りましたわね……」

 

ゼノヴィア「…私や副部長、我夢、イッセーにとって不利な戦場だな」

 

 

ゼノヴィアの言う通り、彼女のデュランダル、朱乃の雷、ウルトラマンの光線技は高威力ではあるが、その高すぎる威力故に周囲の建造物に被害が出ることは明白だ。

なので、必然的に威力を抑えつつ戦わなければならないのだ。

 

 

リアス「この特殊ルールに地形………高威力で相手を押しきる私達にとっては不利だわ…。それにギャスパーの眼を使えないのもネックだわ」

 

木場「そうなのですか?」

 

 

木場の問いかけにリアスは頷き

 

 

リアス「運営から最初から使うなと言われたわ。理由は単純で、ギャスパーがまだ完全に『神器(セイクリッド・ギア)』を使いこなせてないからよ。もし、暴走でもしたら、ゲームどころじゃなくなってしまうからね」

 

 

そう語るリアスに我夢は納得する。

ギャスパーはある程度人見知りも慣れ、眼の能力もどれだけを停止させるかぐらいのコントロールは出来てきてはいるが、まだまだ不完全だ。

 

それにもし、使用許可が降りたとしても、このデパート内では遮蔽物が多すぎて、相手の動きを止めることは難しいだろう。

 

 

一誠「でも、使うなって言ってもギャスパーはどうすればいいんです?ちょっとしたアクシデントで勝手に発動してしまうかもしれないですし…」

 

リアス「それについては問題ないわ。アザゼル開発のこの『神器(セイクリッド・ギア)封印メガネ』を装着するように言われているから安心よ。はい、ギャスパー」

 

ギャスパー「は、はい…!」

 

 

一誠の疑問にリアスは近くにあった耳かけのない赤いメガネを持ちながらそう答えると、それをギャスパーに手渡す。

そして、ギャスパーは封印メガネを右手に持つと

 

 

ギャスパー「デュワッ!」

 

 

と謎の掛け声と共に目元に装着する。

耳かけがないにも関わらず、封印メガネはギャスパーの顔にピッタリとはまったが、

 

 

『……………』

 

 

謎の静寂がリアス達の間に訪れる。

普段大人しく、割と常識人のギャスパーが突然奇行に走ったからだ。

しばらく誰もが口が開かずギャスパーを見つめる中、我夢がおずおずと尋ねる。

 

 

我夢「………えっと、ギャスパー?その掛け声って、何…?」

 

ギャスパー「…え?あっ、何かメガネを着ける時にはこう言わないといけないって気がして………もしかして変でしたか?」 

 

我夢「い、いや大丈夫だよ。何も問題ない…」

 

 

困った表情を浮かべるギャスパーに我夢は苦笑いを浮かべながら答える。

大丈夫と言いながらもその顔は若干ひきつっていた。

 

その後の作戦会議は順調に進んでいき、木場とゼノヴィアは立体駐車場から、我夢と一誠と小猫は店内の中央から進行。残ったリアス、朱乃、アーシアは戦況で判断したどちらかのルートでシトリー眷属の本陣である西側の一階を目指すという作戦に決まった。

 

一誠が途中で「ミラクルタイプになって突っ切れば?」という意見を出したが、『タイプチェンジは昇格扱いする』という条件が提示されているので、敵の本陣に入るまでは使用不可だ。当然だが、巨大化は禁止だ。

 

話を戻すが、ギャスパーはコウモリに変化してデパート各所の偵察をし、デパート内の現状を逐一報告してもらうことになった。

神器(セイクリッド・ギア)』が使えずとも、コウモリに変化できるギャスパーにとってはうってつけの役割だろう。

 

作戦はまとまり、リアスは手首にはめてるXIGナビで時間を確認すると、皆の顔を見合わせ

 

 

リアス「みんな。ゲーム開始まではまだ15分ぐらいあるから、各自、それまで自由にリラックスして待機しておいて。10分前にはここに集合してちょうだい」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

彼女の言葉に皆は返事すると、ゲーム本番まで一度解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ん~…」

 

 

解散してから1分後。我夢は手に持つ小説とにらめっこしていた。

解散し、各々がくつろげる場所へ移動する中、我夢はすぐさま本屋へ駆け込んだ。

その理由は簡単で、昨日発売された小説がどうしても欲しいからだ。

 

ちなみに他の皆はどうしているかというと、リアスは飲食フロアにある椅子に座って、優雅に紅茶を楽しんでいる。

ギャスパーはドーナツ店のドーナツを食べようか食べまいか悩んでおり、アーシアとゼノヴィアはハンバーガー屋の前で談笑。

木場は飲食フロアの手前にあるドラッグストアで物色中で、一誠は特にすることもないのかドラッグストアと飲食フロアの間にあるベンチで涎を垂らしながらだらしなく寝ていた。

 

逸れてしまったので話を戻すが、我夢が手に持つ小説とにらめっこしているのはその本をこっそり持ち出そうか悩んでいるからだ。

その小説は意外と高額で、我夢の現時点持っているポケットマネーでは全然足らないのだ。

 

今回用意されたデパートは建物だけでなく、店内の商品すらもそっくりそのままコピーしている。

なので、このまま持ち出しても問題にならないのでは?という悪心と、それは万引きと同じではないか?という良心に板挟みされて迷っているのだ。

 

そんな時、

 

 

むにゅうぅ……

 

我夢「っ!?」

 

 

柔らかい感触が我夢の背中に伝わる。驚いて振り返ると、後ろから朱乃が自身の豊満な胸を当てて抱きついていた。

 

 

我夢「あっ、朱乃さん!いつの間に……っというか、何してるんですかっ!?」

 

朱乃「あらあら、何を見ているか気になったからこうやって覗いているだけですわ♪」

 

我夢「い、いや、そうじゃなくて……その…えっと、胸が…当たってるんですが……」

 

朱乃「あらあら、ごめんなさいね♪胸が大きいから覗きこむと、どうしても当たってしまうんですの♪」

 

我夢「…/////」

 

 

妖艶な笑みを浮かべながら朱乃は謝るが、一向に離れる気配がない状況に我夢は恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

美人でスタイルも良く、頭も良い朱乃。

そんな学園の憧れの彼女とこうして密着しているだけでも我夢の煩悩を刺激するには充分だ。

 

我夢としては理性が爆発する前に早く離れて欲しいのだが……。

 

しかし、最近の彼女はこんなアプローチが多く、離れる様に言ってもすぐには止めないだろう。

さて、どうやって上手く離れてもらおうかあたふた考えていると、朱乃は我夢の肩に両腕を回してより密着させた。

 

 

我夢「どうしたんですか?」

 

朱乃「…我夢君から勇気を貰っているんです」

 

 

先程の余裕がある態度から一変して、切なそうにする朱乃の変化に我夢は冷静になると、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

朱乃「…戦う勇気がありますわ。でも、今回のゲームで私に流れるもう1つの力を使うかもしれないから………それが怖いの。だから、こうやって我夢君から勇気を貰うの」

 

我夢「…」

 

 

そう言って朱乃は顔を我夢の背中に顔をつける。

以前に彼女自身やアザゼルから聞いたが、彼女は過去の悲惨な出来事があって以来、堕天使の力を使うのに抵抗を示していた。

過去に何があったかまでは聞いてはいない。だが、今まで嫌悪していたものを使うのはそう簡単にいくものではないだろう。

 

 

我夢「わかりました。僕で良ければ…」

 

 

我夢は朱乃にそう短く告げると、彼女が離れるまでじっと待つことにした。

我夢と朱乃。2人きりの空間に静かな時が流れる……。

 

そして、しばらく経つと、朱乃は我夢の背中からゆっくりと身を離す。

 

 

朱乃「ありがとう、我夢君」

 

我夢「いえ、これで勇気をつけてくれるなら全然大丈夫ですよ」

 

 

そう感謝を告げる朱乃に我夢は微笑む。

我夢が安心しているのも、朱乃が先程よりも顔色が明るくなっているからだ。

すると、朱乃は両手で我夢の右手を包むと、見上げ

 

 

朱乃「…私が堕天使の力を使うのを見守ってくれますか?我夢君が見守ってくれるなら、私は何も怖くありません」

 

 

真っ直ぐな紫の瞳で我夢を見つめて願う。

それはまるで子が親にお願いするように…。

彼女の願いに我夢はもう片方の手で彼女の手を包むと

 

 

我夢「わかりました。朱乃さんがそれで安心するなら、僕は必ず見届けますよ」

 

朱乃「……嬉しいっ!」

 

我夢「うわっと!?」

 

 

そう優しく約束すると、歓喜した朱乃は握った手を離すと、我夢の胸元に抱きつく。

その行動に我夢はまたもやあたふたしそうになる中、朱乃は我夢の耳元に口を近付け

 

 

朱乃「我夢君。優しいあなたならと一緒ならきっと………。だから…………」

 

 

聞こえるような聞こえないような声量で呟くと、朱乃は潤んだ紫色の瞳で我夢を見つめながら、ゆっくりと顔を近付けていく。

 

 

我夢「(えっ…!?)」

 

 

我夢は内心焦っていた。

この空気、謎の緊張感。そして、近付いてくる朱乃の顔。避けようと思えば避けれるが、何故か身体が石になったように動けない。

そんな内に、我夢と朱乃はお互いの息がかかるぐらいの距離まで近付いていた。

 

この時、我夢はもう考えるのをやめ、まぶたを閉じ、本能に身を委ねた。

そして、お互いの唇が重なろうとした瞬間、

 

 

小猫「……我夢先輩、朱乃さん。そろそろ集合です」

 

「「っ!?」」

 

 

いつの間にかいた小猫の呼びかけにハッとなった2人はすぐさま離れる。

さっきまでの出来事を見られた恥ずかしさを紛らわそうと我夢は顔を逸らしながら制服を整えるようなジェスチャーをし、朱乃は名残惜しそうな表情で息を吐く。

 

どうやって説明しようか……。我夢は焦りながらも言い訳を必死に考えていると、朱乃はいつものニコニコした表情に切り替え

 

 

朱乃「あらあら、小猫ちゃん。見られちゃいましたわ♪うふふ……我夢君、ありがとう。もう大丈夫ですわ♪」

 

 

そう2人に告げ、その場から立ち去ろうと歩き出す。

そして、我夢とすれ違う瞬間、

 

 

朱乃「……次は必ず………あなたと……」

 

 

我夢に小声で意味深に呟くと、その場から去っていった。

 

あの時、小猫が来なかったら自分と朱乃さんはあのまま……?

我夢がそう考えていると、突然小猫が我夢の右手を握ってきた。

 

 

我夢「…?どうしたんだ?」

 

 

我夢が優しく問いかけると、小猫は恥ずかしそうに頬を赤く染めながら告げる。

 

 

小猫「……私にも……勇気を下さい………。猫又の力を使う勇気を………」

 

我夢「…っ!」

 

 

彼女の発言に我夢は若干驚く。

小猫も朱乃同じく、今まで恐れて封じていた力を使おうとしているのだ。

しかし、暴走してしまうかもしれない恐怖はそう易々と消えるものではない。だが、今の彼女は前みたいにただ怖がっているのではなく、心にある恐怖と必死に戦おうとしている。

 

 

我夢「いいよ…」

 

小猫「……ありがとうございます」

 

 

小猫の意思を汲み取った我夢は快く承諾すると、握っている彼女の手にもう片方の手を添える。

我夢は彼女が満足するまでずっと握り続けた。

 

 

小猫「……もう大丈夫です」

 

我夢「あ、うん」

 

 

そして、しばらく経つと小猫は手を離す。

頬は以前赤いままだが、顔の緊張がほんの少しほぐれたように見えた。

 

 

小猫「……我夢先輩。私、猫又の力を使います。皆さんの役に立てるように……もっと先に進む為に……」

 

我夢「そうか。小猫、僕は応援するよ」

 

小猫「……はい!」

 

 

彼女の瞳に確かにある決意を見た我夢は心の底から応援する。もう彼女は以前のように弱くはない。

すると、小猫は話題を変え

 

 

小猫「……ところで、さっき朱乃さんと何しようとしてたんですか?」

 

我夢「ぶっ!?」

 

 

ふいに問いかけると、我夢は吹き出す。

あの状況、あの距離、あのムード。はたから見てもあれはつまり……そういうことをしようとしか見えない。

 

 

我夢「いっ、いや!あれは……その、何だろう?一種のコミュニケーションっていうか……」

 

小猫「…ふふっ、いいですよ。別に怒ってませんから」

 

 

どうやって弁解しようとあたふたする我夢を見て、小猫は可笑しそうに笑う。

この様子にどうやら弁解しなくても良さそうだと察した我夢は肩を撫で下ろす。

だが、小猫は顔を赤くすると小さく呟く。

 

 

小猫「……やっぱり優しいですね。私、先輩のこと……」

 

我夢「ん?」

 

 

その呟きに我夢は聞こえなかったので、何を言ったのか訊ねようとしたが、集合時間まで30秒をきろうとしているのに気付いた。

 

我夢は追及するのをやめ、小猫と一緒に集合場所へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合した後、作戦の再確認を終えた我夢達は刻々と迫るゲーム開始のアナウンスを待っていた。

飲食フロアにある時計の分針が12時を指した瞬間、店内にグレイフィアのアナウンスが流れる。

 

 

《グレイフィア「ゲーム開始のお時間となりました。なお、このゲームは3時間の制限時間付きです。それでは、ゲーム開始です」》

 

リアス「みんな、作戦通りにお願いね。さあ、勝つわよ!」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

リアスの声に皆は気合いが入った返事を返す。

一度負けていて、今回は短期決戦をしなければならない。尚更、負けられないだろう。

 

そして、本陣に残るリアス、朱乃、アーシア以外はそれぞれ指示された場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム開始から2分。デパート内のホールを抜き足差し足といった足取りで歩いている人影が3つ。

それは中央からの突破を任された我夢、一誠、小猫の3人だ。

彼らは相手から気付かれないようにできるだけ物音を立てずに歩いているのだ。

 

ちなみに小猫はゲームが始まった瞬間に猫耳としっぽを生やした猫又の力を解放している。

何でも、仙術を扱える猫又の力なら気を探知できるかららしい。

その姿を初めて見た一誠が驚いたのはまた余談である。

 

しばらく警戒しながら歩き続けると、小猫が何かを探知したのか、猫耳をピクピクとさせて前にいる2人に声をかける。

 

 

小猫「……先輩方、4つの気が真っ直ぐこちらへ向かって来てます」

 

我夢「小猫。いつ、どこから来るのかはわかるか?」

 

小猫「…はい。詳しくはわかりませんが、あの方角から大体10分程度かと」

 

 

そう言うと、小猫は指を指す。

彼女の報告を受けた2人は頷くと、いつかかってきてもいいように懐から変身アイテムを取り出し、警戒を強める。

 

未だ現れない相手に焦りを感じながらも神経を途切らすことなく張り巡らせて警戒していると、我夢は先程から小猫がジーっと顔を見上げているのに気付いた。

 

 

我夢「…何?」

 

小猫「……いえ、我夢先輩って普段頼りない感じなのに、いざって時はキリッとした顔つきになりますね」

 

我夢「え?僕のことそんな風に思ってたの?イッセー、どうかな?」

 

一誠「おう。確かに言われてみりゃあ、頼りない感じがするな」

 

我夢「嘘~~…」

 

 

そう言われた我夢は軽くショックを受ける。

時々頼りない、情けないとは自分でも思うが、まさか周りからも思われていたとは……。

それと、心なしか小猫の頬が赤くなっているような気が……。

 

そんな会話をしていると

 

 

小猫「上っ!」

 

「「!?」」

 

 

突然、見上げた小猫の声に反応した2人は視線を追うと、天井から伸びるロープでターザンの様にこちらへ急降下してくる人影が見えた。

3人は咄嗟に後ろへ跳び跳ねて回避する。

 

スタッとホールの床へ降り立ったのは

 

 

匙「あちゃ~~…失敗しちまったか~~」

 

一誠「匙っ!」

 

 

少々残念そうに呟く匙。それに背中にはツインテールが特徴のシトリー眷属・『兵士(ポーン)』の『仁村(にむら) 留流子(るるこ)』の姿があった。

更に、

 

 

梶尾「やはり簡単には奇襲させてはくれないか………って、いつまで食ってんだ!」

 

「まあまあ~~、そうカリカリすんなって。“腹が減っては(いくさ)は出来ぬ”って言うだろ?」

 

 

奥から飄々とした態度でポテチを頬張る男子生徒とその隣で彼を叱る梶尾も姿を現す。

梶尾は前から面識があり、つい最近会ったばかりなのでわかるが、隣にいる男子生徒は我夢達にとって初めて見る顔だ。

 

 

「おっ?」

 

 

疑問に思っている彼らの反応を見て、その男子生徒は察したのか、ポテチが入っている袋を逆さにしてポテチを全て口の中に流し込むと、バリッ…ボリッ…と小気味の良い咀嚼音を鳴らす。

そして、ゴクッと飲み込んでから空のポテチの袋をそこら辺の床に放り投げると、我夢達を見据えると

 

 

「会うのは初めてだな。俺の名前は『四之宮(しのみや) (りゅう)』。駒王学園3年で、シトリー眷属の『兵士(ポーン)』をやらせてるもんだ。よろしくな!」

 

「「「……」」」

 

 

戦いの場に似使わない調子で自己紹介をする彼に我夢達は一瞬、ポカーンとなった。

今から勝利の為に戦うのに、この飄々とした態度はどこから湧いてくるのか…。

しかもニコニコしながら手まで振ってる。

 

しかし、彼が何者かは我夢達にはわかった。

駒王学園で年中、ほぼ毎日学校をサボる男子生徒がいると噂で聞いたことがあるが、恐らくそれが目の前にいる四之宮だろう。

 

何とも言えない気持ちになった我夢達は四之宮から匙へ意識を傾ける。

すると、彼の右手を見て、一誠は目を丸くする。

 

 

一誠「匙っ!?それって……」

 

 

匙の右腕にある『神器(セイクリッド・ギア)』は以前とデザインが変わっており、黒い蛇の頭部のみがついていたのが、何匹もの黒蛇がとぐろを巻いて腕に纏わりついている。

 

一誠の反応に匙は不敵に笑い

 

 

匙「へへっ…まあ、こいつは修行の成果ってことさ。天井にラインを引っ付けて上を移動してたら、遠くの物陰にお前らが隠れているのを見つけて、奇襲を仕掛けたんだ。まあ、避けられたけどな」

 

梶尾「ふん。こんな奇襲攻撃に引っ掛かる程度じゃつまらないがな……。お前達とは正々堂々と戦いをつける!」

 

 

梶尾は自嘲気味に話す彼をフォローするように言いながらも宣戦布告すると、梶尾達は一斉に身構える。

対する我夢達も

 

 

我夢「はい!こっちも死に物狂いで修行をしたんです!全力で行きますよ!」

 

一誠「おおっ!やってやるぜ!!」

 

 

そう不敵に返答すると、我夢と一誠は変身アイテムを掲げ、ウルトラマンに変身する。

ガイア、ダイナが臨戦態勢に入ると、それに合わせて小猫も身構える。

 

睨み合う両陣営………。

どちらからも動かず、様子を伺っていると

 

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイアです」》

 

「「「!?」」」

 

 

思わず耳を疑うアナウンスが流れる。

ギャスパー、それともアーシア…?3人はどちらなのか不安になっていると、梶尾がにやける。

 

 

梶尾「…やられたのはギャスパーだ。俺達の罠にひっかかってな」

 

ガイア「ギャスパーがっ!?一体、どうやって?」

 

梶尾「ああ。ルール上、『神器(セイクリッド・ギア)』を使えないアイツが出来ることは、コウモリになって偵察することだ。そこで、俺達が不審な動きを見せて本陣の食品売り場に誘き寄せたところで苦手なニンニクを浴びせる。そして、弱った瞬間に畳み掛けた……という訳だ」

 

ダイナ「嘘だろっ!?」

 

 

梶尾の説明にガイア達は驚く。

まさかこんなあっさりと撃破されるとは予想だにしなかっただろう。

 

そんな中、梶尾はジェクターガンの銃口をガイアへ向け

 

 

梶尾「まあ、長々と説明したことだ…。今度はお前達に退場してもらう!」

 

ダァンッ!

 

 

そう言い放った瞬間、梶尾は引き金を引く。

放たれた銃弾はガイアに腕で振り落として防がれたが、その銃撃音が戦闘の合図となった。

梶尾と匙はガイアとダイナ、仁村と四之宮は小猫と対峙する形だ。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

ガイアとダイナは距離を詰める為に床を蹴って、走り出す。

近距離戦は2人が最も得意とするからだ。

 

 

匙「そうはさせるかっ!伸びろっ、ラインッ!!」

 

 

その接近を許さない匙は右腕を前へ突き出すと、籠手から無数の黒蛇を模した触手がガイア達に襲いかかる。

匙の『黒い龍脈(アブソブーション・ライン)』は籠手から伸びるラインに接続した相手の力を奪うことが出来る。

その厄介な能力を知っているガイアとダイナは触手が届いていない上へ跳躍するが

 

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

ガイア「ドアァァーーッ!?」

 

ダイナ「グアァァァッ!?」

 

 

匙の後ろから放たれた4発の弾丸がガイアとダイナの胸元に命中して火花を散らすと、体勢を崩した2人は地面へ落ちる。

2人は体勢を起こして弾丸が放たれた方角を見ると、それは梶尾が放ったものだった。

 

 

ガイア「梶尾さん!射撃上手くなったんですか!?」

 

梶尾「ふっ…あの時以来、会長に死ぬほど鍛えられたからな……」

 

 

梶尾はまるで遠い出来事のように語る。何よりもその目が困難な修行だったことを物語っている。

だが、今は戦いの時である。一瞬足りとも隙を見せてはならない環境だ。

しかし、ほんの僅かな隙……ガイア達は既にその隙を狙われた。

 

 

匙「捉えたッ!」

 

「「ッ!?」」

 

 

いつの間にか匙のラインがガイアの左腕、ダイナの右腕に接続されている。

「しまった!」と内心思いつつも、2人はラインを何とか切り離そうとするが、一向に傷1つつかない。

 

 

匙「そいつはなぁ~そう簡単には切れねぇぞ。俺の()()()()をかけてるんだから、よっ!」

 

「「ッ!」」

 

 

匙はグイッと腕を引き寄せると同時に、ラインに繋がれたガイアとダイナは引っ張られようとする。

当然、2人は引き寄せられまいと踏ん張るが

 

 

梶尾「無駄だっ!」

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

 

匙の後方に控えている梶尾の援護射撃が襲いかかる。

しかし、それを予測してない2人ではない。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナはガイアの前に出ると、ウルトラバリヤーを展開して銃弾の嵐を防ぐ。

だが、

 

 

カッ!

 

「「ッ!?」」

 

 

突然のホール中の閃光に襲われ、ガイアとダイナは目を奪われる。

実は先ほど匙がガイア達に向かってラインを伸ばした際に近くの店にある電灯に接続し、梶尾が援護射撃している間に魔力を送り込んで一瞬だけ光を弾けさせたのだ。

匙の引き寄せようとした行動は電灯から自分へ意識を向かせる為のフェイクだ。

 

 

匙「おぉぉーーーらっ!!」

 

「「グアァァァッ!?」」

 

 

視力を奪われて動揺する2人を匙は渾身の力を込めて、近くの壁に叩きつける。

壁にぶつけられた衝撃に苦しみながらも、2人は立ち上げるが

 

 

梶尾「くらえっ!!」

 

ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!

 

ガイア「ドアァァァァァァーーーーーー!!」

 

ダイナ「グワァァァァァァァァーーーーーー!!」

 

 

梶尾が間髪入れず放った銃弾にガイアとダイナは苦悶の声をあげ、体から大量の火花が散ると、その場で倒れ伏せる。

 

匙のラインにそれをフォローする梶尾の射撃―――息をつかぬ連携にガイアとダイナは予測以上に苦戦を強いられていた。

 

しかし、それは隣で戦う小猫も苦戦していた。

 

 

小猫「…えいっ!」

 

 

お得意の格闘戦に持ち込もうと、仁村に向かって飛び蹴りを繰り出すが

 

 

ズザァァァ!!

 

小猫「…っ!」

 

 

突然、仁村の目の前に現れたゴミの塊で出来た長方形の壁に阻まれる。

心の中で少し苛立ちながらも追撃をもらわないよう、小猫は急いでバックステップで下がって身構える。

 

 

パチンッ!

 

 

仁村の後ろにいる四之宮が指を鳴らすと、彼女の前に出来た長方形のゴミの壁が一瞬で崩れ落ち、ゴミが床に散らばる。

ポテチの袋や弁当箱のゴミが。

四之宮は自分の右指に填めている歯車の造形がなされた指輪をまじまじと見ると、ニッコリとした笑顔で小猫を見る。

 

 

四之宮「いやぁ~~…さっきは凄い一撃だったよ。うん、本当に。俺の『神器(セイクリッド・ギア)』、『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』で作った壁も壊れるかと心配だったな~」

 

小猫「……」

 

 

そう言いながら、拍手する四之宮に小猫は苛立ちがこみ上げる。

 

この男、四之宮が持つ『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』は指輪の形をした『神器(セイクリッド・ギア)』で、その能力は所有者の半径10m内にあるゴミを操って、壁や武器を作ることが出来るサポート系能力である。

 

戦い始めてから小猫は仁村と激しい格闘戦を繰り広げていたが、1回も彼女に有効打を与えられてない。

というのも、重い一撃を与えるすんでのところで、毎回四之宮が作り出した遮蔽物に妨害されるからだ。

 

よって、小猫は有効打を与えられず、体力だけが消耗されていく最悪な状況に陥っているのだ。

 

 

四之宮「さぁ、お嬢さん?もう1度かかってきな」

 

小猫「…っ!」

 

 

四之宮が人差し指をクイクイッと動かして、かかってこいと挑発すると、小猫は拳に力をいれて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、立体駐車場を進んでいる木場とゼノヴィアも相手と遭遇し、戦っていた。

木場は椿姫、隣ではゼノヴィアが日本刀を持つ細身女性、『騎士(ナイト)』の『巡 巴柄(めぐり ともえ)』、長身の女性、『戦車(ルーク)』の『由良 翼紗(ゆら つばさ)』と対峙している。

 

 

木場「はぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

椿姫「はっ!」

 

ガキィィィーーーーーーーーーン…!!

 

 

木場の聖剣と魔剣の2刀流と椿姫の薙刀の刃がぶつかり合い、火花が散る。

グギギ…と刃から金属音を出しながら、両者は押し合う。

 

 

椿姫「木場祐斗、流石です」

 

木場「それはお互い様です……よっ!」

 

 

2人はそう短く会話すると、バックステップで距離をとり、再び剣撃を始める。

両者の間からはギィンッ!と鋭い金属音が鳴り響き、刃の軌跡が舞う。

 

 

ゼノヴィア「フンッ!!」

 

巡「やあっ!!」

 

ギギィィンッ!!

 

 

ゼノヴィアも巡と剣撃戦を繰り広げている。

両者とも相手にひけをとらない技量を持っているが、ゼノヴィアの持つ聖剣デュランダルと彼女自身のパワーとスピードに巡は徐々に追い詰められていく。

 

 

ガキィンッ!

 

巡「っ!?」

 

 

その猛攻に巡は日本刀を弾かれ、大きく体勢を崩す。

 

 

ゼノヴィア「もらった!」

 

 

ゼノヴィアはその隙を逃さず、デュランダルを振り下ろすが、その間に由良が割り込む。

彼女は両手を前に出し

 

 

由良「反転(リバース)!」

 

 

そう叫ぶと、振り下ろされるデュランダルは悪魔の天敵となる聖の力が消え、悪魔が得意とする魔の力へと変換された。

 

 

パシッ!

 

由良「はっ!」

 

 

魔の力となったことで悪魔でも触れられるようになったデュランダルを由良は白刃取りすると、そのまま力一杯に横へ投げ飛ばす。

 

 

ゼノヴィア「くっ…!」

 

由良「はぁっ!」

 

 

起き上がろうとするゼノヴィアに追い討ちとばかりに由良は助走をつけた蹴りを放つ。

だが、ゼノヴィアはそのまま横転して、間一髪回避する。

 

 

ドガッシャアァァァァンッ!!

 

 

由良の蹴りはその勢いまま、ゼノヴィアの後方に並んである車両数台を遥か彼方まで蹴り飛ばす。

もし、あれをくらったらひとたまりもない……その光景を見た木場は戦慄すると同時に由良が使った能力が気になった。

 

 

木場「(由良さんが『反転(リバース)』と叫んだ瞬間、デュランダルの聖の力は魔の力に変わった………まさか、あらゆる効果を反転させる能力かっ!?)」

 

 

デュランダルは聖剣が苦手な悪魔にとって有効だ。

しかし、それを反転させてはただの剣にしかならない。

このままではまずい―――!

 

 

木場「ゼノヴィアッ!チェンジだ!」

 

ゼノヴィア「…っ、ああっ!」

 

 

そう思うな否や、木場はゼノヴィアへ指示すると、お互いの相手を交換した。

この行動に出たのも、聖と魔、両方の力を持つ聖魔剣を使える自分が相手なら、反転させても効果がないだろうとふんだからである。

 

 

木場「はっ!」

 

 

木場は魔剣と聖剣を投げ捨て、聖魔剣に持ちかえると、自慢のスピードから繰り出す剣撃で2人を次々と攻め立てる。

 

 

巡「くっ!」

 

由良「うっ!」

 

 

あまりものスピードに2人は対処が追い付けず、体のあちこちから切り傷が刻まれる。

何とか致命傷を避けるのがやっとだ。

 

 

ゼノヴィア「おおおおおおーーーーーーっっ!!」

 

椿姫「…っく!」

 

 

隣で戦うゼノヴィアも烈火の如く攻め立てており、その猛攻に椿姫は薙刀でいなすのがやっとだ。

そして、遂には壁際に追い詰められた。

 

 

ゼノヴィア「一気に決めるっ!!」

 

 

今が好機と見たゼノヴィアはデュランダルを天高くあげると、一気に振り下ろす。

―――逃げ場がなく、迫り来るデュランダルの一撃にゼノヴィアの勝ちだ。

木場がそう思った瞬間、椿姫は

 

 

椿姫「……『追憶の鏡(ミラー・アリス)』」

 

ゼノヴィア「っ!?」

 

 

そう呟くと、彼女の前に装飾された巨大な鏡が出現する。

ゼノヴィアは一瞬驚いたが、今さら攻撃をやめる訳にもいかず、そのまま鏡を粉砕する。

その瞬間、

 

 

ズォオオオオオオンッ!!!

 

ゼノヴィア「ごふっ…!?」

 

木場「っ!?」

 

 

割れた鏡の破片から波動が放出され、ゼノヴィアに突き刺さる。ゼノヴィアは血反吐を吐き、体からは血が吹き出す。

 

一体、何が?ゼノヴィアと木場が困惑していると、椿姫が冷笑を浮かべ

 

 

椿姫「私の『神器(セイクリッド・ギア)』…『追憶の鏡(ミラー・アリス)』は破壊された時、衝撃を倍にして相手に返します。木場 祐斗君、ゼノヴィアさんに私をぶつけたのは失策ですね」

 

木場「くっ…!」

 

 

そう指摘されると、木場は悔しげに歯を噛み締める。

カウンターを使う相手がまさか2人も投入するとは完全に予想外だった。

足が速く聖剣を扱える木場とゼノヴィアは脅威であり、本陣に近付かせる前にここで潰す算段であろうと木場は思った。

 

 

椿姫「残るは木場 祐斗。あなただけです」

 

 

椿姫は薙刀の切っ先を木場へ向けると、彼女を筆頭に他の2人も詰め寄る。

あの一瞬でゼノヴィアが倒れ、1対3の不利な状況に追い込まれてしまった。

 

 

ゼノヴィア「ぐっ……あぁぁ…!!」

 

 

床で倒れ伏しているゼノヴィアはリタイアこそしなかったがかなりの重傷だ。

治療をしようとしても『フェニックスの涙』はリアスが持っており、ゲーム開始前にドラッグストアから持ってきた医療キットも役には立たないだろう。

 

 

木場「(……どうする?考えろ…!考えるんだっ!)」

 

 

木場は後退りしながらゼノヴィアを救い、かつ相手を倒す策を必死に考える。

しかし、思い付いた策も今の状況を打破するには望みが薄い。

その間にも椿姫達が詰め寄ってき、木場は焦りすら感じ始めたが

 

 

ゼノヴィア「木…場っ!!」

 

木場「っ!ゼノヴィア」

 

 

遠くで倒れているゼノヴィアの声が聞こえ、木場は耳を傾ける。

ゼノヴィアは苦しげな声で話す。

 

 

ゼノヴィア「私を、助けようとするのなら、やめておけ……。どのみち私は助からん……!お前が同じグレモリーの『騎士(ナイト)』ならば……目の前の敵を倒すのに優先しろっ!!」

 

木場「っ!」

 

 

ゼノヴィアの激を受け、木場はハッとなる。

このゲームは誰がいつ倒れてもおかしくない。

目の前で助かりなさそうな仲間を構うよりも、主を勝たせることが最優先だと…。

 

しかも、ゼノヴィアは重傷にも関わらず、大声をあげている。おそらく、声を出すのも精一杯なはずだろう。

彼女の激に木場は

 

 

木場「分かったよ、ゼノヴィア。僕はリアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』として、ここで立ち止まる訳にはいかないっ!!」

 

ゼノヴィア「ふふっ、そうだ…。それでいい……」

 

 

決意した木場を見て、ゼノヴィアは満足げに微笑むと、何かをぼそぼそと何かを呟き始める。

その行動を見た木場は何をしようとしているのかすぐに察すると、後退りをやめ、聖魔剣を構える。

 

 

椿姫「覚悟を決めましたか?」

 

 

後退りをやめた木場を見て、椿姫は観念したと思い、薙刀を構えて近付いていく。

だが、木場は諦めてなどいない。

彼とゼノヴィア――リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』2人による逆転技を狙っているのだ。

 

近付く椿姫達と木場の距離があと5mまで迫った瞬間、木場は

 

 

木場「デュランダル・バースッ!

 

「「「っ!?」」」

 

 

そう叫んで聖魔剣を地面へ突き刺すと、立体駐車場一帯に聖魔剣の山が生えていく。

しかし、これはただの聖魔剣ではない。彼の背後にある小さな空間の裂け目から流れるゼノヴィアのデュランダルのオーラが籠っている強力な一撃だ。

 

 

巡「…っ!?」

 

由良「がっ…!?」

 

 

木場とゼノヴィア―――グレモリーの『騎士(ナイト)』が創りあげた技に、巡と由良は体を貫かれ、とたんに光の粒子になると、消滅した。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『騎士(ナイト)』1名、『戦車(ルーク)』1名、リタイアです」》

 

 

それと同時に2人がリタイアしたことを知らせるグレイフィアのアナウンスが流れる。

アナウンスから、『女王(クイーン)』である椿姫がやられてないことを知った木場はすぐに辺りを見渡すが、既に彼女の姿はなかった。

 

「一旦、引いたか」とひと安心した木場は倒れているゼノヴィアのもとへ向かうと、上体を抱え起こす。

彼女はかなり出血していたので、リタイア時に現れる体の粒子化が始まっていた。

ゼノヴィアは木場は見据えると、満足そうに微笑む。

 

 

ゼノヴィア「木場。いい一撃だったな…」

 

木場「ああ…君がいてくれたからこそだ。君とならまた聖なる剣が咲かせられる。だから見ていてくれ。このゲームに必ず勝つ」

 

ゼノヴィア「ああ……私の分まで頑張ってくれ……」

 

 

木場の宣言にゼノヴィアは激励すると、光の粒子となり、木場の腕から消えていった。

 

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『騎士(ナイト)』1名、リタイアです」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。

匙達の連携に苦戦していたガイア達も押し返していた。

 

小猫は四之宮の妨害をスルリスルリと掻い潜りながら、2人を攻めていた。

 

 

小猫「…はっ!」

 

四之宮「ぐっ…まいったなぁ~」

 

 

四之宮の背後に回り込んだ小猫は脳天目掛けてかかと落としを繰り出すが、四之宮は間一髪ゴミで作った障壁で防ぐ。

しかし、四之宮には先程までの余裕がなかった。

これは小猫が戦ううちに彼の能力の弱点を見つけたからである。

 

不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』は半径10m内のゴミを自由自在に操る能力だ。

しかし、半径10mで操れるといってもそれは()()()()()()()()()()()()無意味なのだ。

 

人間の両目で同時に見える視野は約120度と言われており、360度を一変には見れない。四之宮はその範囲内なら操れ、死角には効果を発動できない。

これに気付いた小猫は死角から攻め、四之宮と仁村を追い詰めていたのだ。

 

 

仁村「やあっ!」

 

小猫「っ!」

 

 

横からきた仁村の飛び蹴りを小猫は両腕をクロスさせて防ぎ、そのまま後ろへ飛び下がる。

仁村は追い討ちにと小猫へ駆け寄り、格闘戦の応酬を始める。

 

隣で戦うガイアとダイナも徐々に押し返していた。

 

最初はラインに繋がれているせいでむやみやたら光線技を使ってエネルギーを吸われないように何とか接近戦を仕掛けようとして苦戦してたが、そうも言っても戦闘が長引いて逆に体力を消耗するので、光線技も積極的に使って戦う作戦へシフトチェンジした。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ……!」

 

 

ガイアは立てた左腕に右腕をクロスさせ、クァンタムストリームの体制に入る。

狙いは匙だ。

匙は何故かこの短時間で異常に疲労の色が見え始め、顔色も悪く、息も乱れていた。

 

 

梶尾「させるかっ!」

 

 

そうはさせまいと、赤色の光の軌跡と共に円を描くように腕を動かすガイアへ梶尾はジェクターガンで妨害しようとするが

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

梶尾「っ!くそっ…!」

 

 

ダイナが真上からの急降下蹴りが入り、梶尾は射撃を中断しバク転で回避する。

 

 

ドゴォォン!

 

 

ダイナが蹴った床はあまりもの威力で大きなクレーターが出来る。これをまともにくらったら梶尾の命はなかっただろう。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

梶尾「うおっ!?」

 

 

ダイナは右手から丸のこ状の光輪、ダイナスラッシュを放つ。

梶尾は左腕を掠めながらも何とか避け、背後にあった柱は真っ二つに切断される。

 

ダイナが梶尾の妨害している中、ガイアは光線のエネルギーが完了した。

 

 

ガイア「デュアァァァァーーーーーー!!!」

 

匙「うおぉぉらぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」

 

 

ガイアは左腕を曲げた右腕の関節に挟んでL字のような構えでクァンタムストリームを匙目掛けて放つ。

それに合わせて匙も右手から膨大な魔力弾を発射する。

 

まっすぐ飛んで行く魔力弾は光線にぶつかる。だが、光線は魔力弾を解き消すと、匙の胸元に直撃する。

 

 

匙「ぐあぁぁぁぁーーーっ!!」

 

 

衝撃で倒れた匙は苦痛の叫びをあげながら、手で胸元を抑え、もがく。

匙の胸元は服ごと光線によって焼け焦げ、血が溢れ出ている。

 

 

ガイア「…」

 

 

ガイアは今は敵であっても仲間である彼に罪悪感を感じつつも、静かにその様子を伺っていた。

追い討ちをかけようと思えば出来るが、今、苦しんでいる匙の姿にそれを起こす気は起こらなかった。

 

 

ガイア「…!?」

 

 

ガイアは様子を伺っていると、彼の胸元に異変があるのに気付き、驚いた。

自分の光線によって焼け焦げた皮膚ではない。それは匙の『神器(セイクリッド・ギア)』から伸びるラインが彼の左側の胸部―――心臓の位置に接続されていたからだ。

 

それを見たガイアは先程の魔力弾と考えが結びつき、まさか…と思うな否や、やっと息を整い始めた匙に問い掛ける。

 

 

ガイア「匙っ!もしかして、君は()()()()()()()()()()()のかっ!?」

 

『…っ!?』

 

 

この思いもよらない問い掛けにダイナと梶尾、隣で戦っている小猫、仁村、四之宮も攻撃の手を止め、匙へ視線を向ける。

皆がどういうことだと思う中、匙はゆっくりと立ち上がり

 

 

匙「……ああ。そうだよ、高山。お前の言う通り、俺は命を魔力に変換している。()()()でな…」

 

『!?』

 

梶尾「匙!一体、どういうことだ!?」

 

 

不敵な笑みを浮かべながらガイアの考えを肯定すると、その場にいる皆は驚愕する。

梶尾達、シトリー眷属は聞いていないのか特にだ。

梶尾の問い掛けに匙は言葉を続ける。

 

 

匙「梶尾さん、言葉通りですよ。俺は魔力が低い……。だから、高山達を相手にするにはこの方法でしか魔力を高められなかったんです」

 

梶尾「何だと…っ!?」

 

仁村「匙先輩っ!」

 

 

命を魔力へ変換する……それは自殺行為にも等しい方法。生命エネルギーから作り出す魔力は威力は絶大だが、それを続けると確実に寿命は減り、最悪死に至ってしまう。

 

 

ダイナ「匙っ!お前、死ぬ気かよっ!?」

 

匙「ああ、死ぬ気だよ。死ぬ気でお前達を倒すつもりだ。……お前らに夢をバカにされた俺達の悔しさがわかるか?夢を信じる俺達の必死さがわかるか?この戦いは冥界全土に放送されてる。俺達をバカにした連中どもを見返してやるんだっ!」

 

ガイア「そんな…っ!」

 

匙「高山、俺には夢がある。会長が建てた学校の先生になるって夢が!だから、何が何でもお前達を倒すっ!!この命を引き換えにしてもなっ!!」

 

 

匙がそう言い放ってガイアに向かって走り出すと共に、梶尾達とガイア達は匙を内心心配しつつ、戦闘を再開する。

 

小猫は四之宮を牽制しつつ、仁村と激しい格闘戦を繰り広げる。

仁村も四之宮も匙の覚悟を聞いたからか先程よりも動きを激しくしている。

しかし、小猫は負けじと冷静に2人を相手をする。

 

 

小猫「…やっ!」

 

 

そして、遂に小猫の拳が仁村の頬を掠める。

この数分間、まともに与えられなかった攻撃が掠っただけだがやっと通ったのだ。

仁村は体勢を整る為にバックステップをしようとするが

 

 

グラッ…

 

仁村「…っ!?」

 

 

体がいうことを聞かず、少し揺らぐだけで目も異常に泳いでいた。

仁村が困惑する中、小猫は両拳に薄い白色のオーラを纏って懐に飛び込み

 

 

バンッ!

 

 

と小気味が良い音が鳴り響く一撃を彼女の胸元に打ちこむと、仁村は力が抜かれたように膝を落とした。

困惑する彼女を小猫は見下ろして告げる。

 

 

小猫「……気を纏った拳であなたに打ち込んで内臓に損傷を与えました。同時に体内に流れる気脈にも損傷させたので、もう魔力は練れませんし、動くことも出来ません」

 

 

ガイアは以前にアザゼルから仙術について聞いていた。仙術は相手の外部にダメージを与えられるが、その真骨頂は内部へダメージを与えることだと。

いかに強力な生物だろうが、内部に損傷を与えられればひとたまりもないだろうとガイアは頼もしいと思いつつも戦慄する。

 

 

仁村「…先輩方、ごめんなさい……」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

仁村は悔しそうに一言漏らすと、体が粒子となってこの場から消滅する。

 

 

四之宮「うぉぉぉーーーー!!」

 

小猫「っ!」

 

 

四之宮は目の前で仁村が倒されたことで先程の飄々とした態度から一変して、怒りに駆られた表情になると、ゴミから作り出した円錐状の槍を小猫に向けて突進する。

普段は飄々とはしているが、実は仲間思いの熱い男なのだ。

 

しかし、その攻撃は作戦から考え出された冷静なものでなく、感情的と判断した小猫は右足に白色のオーラを纏う。

 

 

小猫「…はあっ!」

 

四之宮「なっ、ぐあっ!?」

 

ドォォォン!

 

 

そして、突進してくる四之宮に合わせてその場で跳躍すると、気を纏ったキックを四之宮の胸元に目掛けて放つ。

四之宮は突進していたので走るスピードを落とせず、そのまま炸裂すると、円錐状の槍を落としながら大きく後方へ吹き飛ばされ、壁に激突する。

 

 

小猫「……あなたももう動けないです」

 

 

その場で着地した小猫は遠くで倒れている四之宮に向かってそう告げる。

それを聞いた四之宮は苦しみながらも自嘲気味に笑い

 

 

四之宮「ふふっ。そうか……なら、爪痕ぐらいのこさねぇとな!」

 

小猫「……?何を――」

 

グサッ!

 

 

小猫は意味深に話す四之宮に訊ねようとした瞬間、横腹に鋭い痛みが走る。

そこへ視線を向けると、蹴り飛ばした際、四之宮が落とした円錐状の槍が横腹に深々と突き刺さっていた。

 

何故?どうして?と困惑すると同時にあまりもの激痛に小猫は大量に血が流れる横腹を抑えながら、膝をつく。

そんな彼女の疑問に光の粒子になり始めた四之宮は答える。

 

 

四之宮「…確かにお嬢ちゃんの思うように、俺の能力は視野の中でしか発揮できない。……けどな、視界内ならこんな風に作り出した武器を……遠隔操作できるっ!」

 

小猫「…かほっ!」

 

 

四之宮な最後の力を振り絞り、小猫の横腹に突き刺さっている槍を操作して更に深々と刺す。

 

 

ガイア「小猫っ!!」

 

匙「させるかよぉっ!!!」

 

 

ガイアはすぐさま小猫の救援に向かおうとするが、匙が進行方向を魔力弾で連射して妨害する。

両陣営とも仲間が倒れて、更に戦いが激化する中、四之宮は

 

 

四之宮「悪ィ~~梶尾。俺、やっぱ無理だわ」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

最初の時のようにニコニコした笑顔で梶尾に告げると、粒子となって消滅する。

 

 

梶尾「四之宮……っ、!」

 

 

梶尾は四之宮が消えた場所を見て一瞬悲しげな表情を浮かべるが、すぐに切り替え、目の前のダイナへ攻撃を続ける。

 

その隣で戦うガイアは倒れている小猫を何とか救援しようとするが、匙の妨害で一向に近付けない。

しかも、今は匙の『神器(セイクリッド・ギア)』のラインに繋がっているせいで下手に高速移動も出来ない。

 

 

ガイア「ダイナ!」

 

ダイナ「ッ!デェアッ!」

 

 

ならば、自分の代わりに戦ってもらおうとガイアは隣で戦うダイナを呼ぶ。

ダイナはガイアの考えを察したのかその場で跳躍すると、匙の前に立ち塞がる。

 

 

ダイナ「ここは行かせないぜっ!ガイア!小猫ちゃんを頼んだぜ!」

 

ガイア「すまないっ!」

 

匙「邪魔だっ!」

 

 

そうはさせまいと匙と梶尾は小猫のもとへ走るガイアへ妨害射撃をするが、

 

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

素早く回り込んだダイナがウルトラバリヤーを展開して、銃弾と魔力弾を弾く。

その隙にガイアは小猫を拾い上げ、遠くの物陰に隠れた。

 

それを見た2人は射撃をやめ、ダイナもバリヤーを解除する。

すると、

 

 

匙「うおぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

匙がけたたましい程の雄叫びをあげながら左手に直径20mもあろう巨大な魔力弾を作り出す。

心臓に接続しているラインから限界以上まで命を魔力へ変換しているのだ。

その証拠に体のあちこちに浮かんだ血管から血が吹き出し、顔も苦痛に歪んでいる。

 

 

梶尾「よせっ、匙!本当に死んでしまうぞ!」

 

ダイナ「そうだ!やめろ、匙!」

 

匙「……勝つんだっ!ここでお前を倒して、先に進むっ……!その為ならこの命、惜しくないっ!!」

 

 

心配する2人の忠告に耳を傾けず、匙は更に魔力弾を大きく形成していく。

匙の鬼気迫った様子と確固たる覚悟を固めた眼差し……。ダイナもここで匙を倒す決意をすると、腰を下げて腕を十字に組む。

 

 

匙「うおらぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」

 

ダイナ「デェアァァッッ!!!」

 

 

そして匙の放たれた巨大な魔力弾とダイナのソルジェント光線がぶつかり合う。

接触面からスパークがほとばしり、そこから発生した風圧で瓦礫や四之宮が持ってきたゴミが踊るように宙に浮かぶ。

 

しばらく押し合っていたが

 

 

ダイナ「ハァァーーーー!!」

 

匙「っ!?」

 

 

ダイナが気合いを込めると、光線の威力が上がり、匙の魔力弾を押し返し始める。

匙は更に魔力を込めるが、光線の威力には敵わず、魔力弾ごとグングン押し返していく。

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

 

ダイナがより気合いを込めると、光線は遂に魔力弾を弾き飛ばし、真っ直ぐ匙に向かっていく。

匙はひどく疲弊し、重傷を負っているせいで身動きが取れず、避けられない。

迫りくる光線に身を固めるが

 

 

梶尾「匙っ!ぐあぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

ドガァァァーーーーーーーーンッ!!

 

匙「梶尾さんっ!」

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

梶尾が匙を横へ押し飛ばし、光線をまともにくらい、爆発が起きる。

突然のことに尻餅をついている匙とダイナは驚愕する。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

匙「くっそぉぉぉ………!」

 

 

梶尾がリタイアしたことを告げるアナウンスがホールに鳴り響くと、匙は悔しさのあまり、床を殴りつける。

ガイア達を倒すばかりか、次々と仲間がやられていく現状に何も出来ない自分が悔しいのだ。

 

そして、匙は叫ぶ。

 

 

匙「…どうしてっ!どうしてお前らに勝てねぇんだよ!俺は先生になるって夢を叶えちゃいけないのかっ!?俺にはそんな資格がないと言うのかっ!?どうして俺達は笑われないといけないんだっ!?」

 

ダイナ「…」

 

 

そう叫びながら悔し涙を流す匙をダイナはいたたまれない気持ちで聞く。

匙はダイナ……否、このゲームを観ている全ての悪魔に向かって訴えているのだろう。

 

 

匙「兵藤…!俺達の夢は笑われる為に掲げた訳じゃねぇんだっ!」

 

ダイナ「俺は笑わねぇよっ!それに我夢や部長達も!夢の為に命をかけてまで戦うお前を笑うわけないだろっ!」

 

 

吠えるように叫ぶ匙をダイナは肯定する。

夢をバカにされるのはその人の意思をも否定する……それはウルトラマンダイナである一誠も同じだ。

夢を情熱をかける男が命をかけてまで戦う……だからこそ、1人の友人として…1人の好敵手として正々堂々と戦うとダイナは改めて決心する。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

匙「兵藤ォォォーーーーー!!」

 

 

決心を固めたダイナが疾走すると同時に匙もズタボロの体に鞭を打って駆け出す。

 

その最中、ダイナは刀を帯刀するように腰に添わせた右の手刀にエネルギーを込め、匙は右の拳にありったけの魔力を纏わせる。

匙にとっては恐らく、これが正真正銘……最後の攻撃だ。

 

両者はあと一歩のところまで接近すると、すれ違い様の一瞬に匙の拳がダイナの左胸に、ダイナの手刀が匙の脇腹に炸裂し、通り過ぎる。

 

 

「「……」」

 

 

そして、訪れる静寂。

2人ともそのまま体勢を崩さずピタリと止まり、周囲の空間はまるで時が止まったようにも思えた。

そして、何分も、何時間も経過している錯覚が起きる空間で先に倒れたのは…

 

 

匙「…ごほっ!?」

 

 

匙だった

匙は血反吐を吐きながら膝をつくと、その場でバタンと倒れる。

 

対するダイナは胸元を覆うダイナテクターの左側が負傷してはいるが、傷は浅い。

その理由は、匙の拳が当たるより先に必殺の『ダイナチョップ』を叩き込んだおかげで匙の体勢が僅かに崩れ、重傷に至らなかったのだ。

 

 

ダイナ「…」

 

 

ダイナはゆっくりと振り返ると、反対側で倒れている匙を見下ろす。

匙は意識を失っており、もうピクリとも動かない。

急所を突いたので立ち上がることすら出来ないだろう。

その証拠に彼は段々と光の粒子になっていき…

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

完全にその場から消滅すると、グレイフィアのアナウンスが響き渡る。

それと同時にダイナの腕に接続されていた匙のラインも消滅する。

 

4人による攻撃対策や連携に長いこと苦しめられたガイア、ダイナ、小猫だが、ようやく倒すことに至った。

リタイアしてしまったゼノヴィア、ギャスパーの無念も晴れ、ゲームも有利になるだろう。

 

 

ダイナ「…」

 

 

しかし、勝利したダイナの心は喜びよりも虚しい悲しさだけが残った。

それは遠くの物陰に隠れているガイアと小猫も同じ気持ちだろう。

 

夢への情熱を持った男を叩き潰したダイナ――――夢を誰よりも大事にする彼にとっては辛く苦しく、しばらくその場で立ち尽くすのだった。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

ソーナ「決着を着けましょう」

リアス「臨むところよ!」

白熱するゲームも遂にクライマックス!
勝利を手にするのはリアスか?ソーナか?

次回、「ハイスクールG×A」
「ぶつかり合う理想(後編)」
お楽しみに!




今回初登場したオリジナルキャラクターの『四之宮 龍』は、本作品の読者さん『SOUR』さんのリクエストを採用して登場させました。
『SOUR』さん、ありがとうございます!!

少しネタバラシしますが、四之宮は今後のストーリー展開に関わってくる重要なキャラクターですので、目を離さないように…w

良かったら、感想&コメントよろしくお願いします!


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第32話「ぶつかり合う理想(後編)」

匙との戦いを終えたダイナは小猫の治療を終えたガイアと合流していた。

 

まず最初にダイナが匙、梶尾との戦いの結末を語った。

ガイアは語るダイナの無機質な表情がどこか悲しんでいるのを感じられずにはいられなかった。

そして、次は小猫のケガについての話になった。

 

 

ダイナ「我夢。小猫ちゃんの容態は?」

 

ガイア「うん、傷は深かったけど回復光線で治療したから大丈夫だよ」

 

ダイナ「そうか………あれ?ところで小猫ちゃんは?」

 

 

ダイナはキョロキョロと辺りを見渡しながら訊ねる。

話の当人である小猫の姿が一向に見えないのだ。

その疑問にガイアは

 

 

ガイア「ああ。彼女は傷口は治療できたけど、大量に血が出ててね……今は休ませている。後から合流できると思うから心配ないよ」

 

 

そう答えると、ダイナは納得する。

四之宮が放った一撃で倒れた小猫をガイアが救助するまで匙達の妨害もあって、5分ほどかかった。

5分という短い時間でも、傷口から血が大量に出るのには充分だ。

 

ひととおり話し終えたガイアは近くの店の掛け時計を見る。

戦い始めてからかなりの時間が経っており、残り時間は1時間半をきろうとしていた。

 

 

ガイア「…ゲームの残り時間も半分をきりそうだ。早く行こう」

 

ダイナ「ああ」

 

 

ガイアの言葉にダイナは頷くと、2人は本陣へ向かって移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警戒しながら移動を続けて3分。ガイアとダイナはショッピングモールの中心部にある広場に来ていた。

そこは普段買い物に疲れた客がひと休みする為の円形状のベンチがあり、中央にある柱時計を囲むように配置されている。

 

普段、気を緩められる場所をガイアとダイナは慎重を進む。そして、中央にある柱時計を通り過ぎようとした時、視界に映ったものを見て、足を止める。

 

 

ソーナ「ごきげんよう、高山 我夢君、兵藤 一誠君」

 

 

誰でも足を止めるだろう。

そう、目の前にゲームの標的であるソーナが何食わぬ顔で2人の女子を連れて立っているからだ。

しかし、さすがにそのまま立っているのでなく、ソーナは結界で覆われている。

ガイアから見て右にいるお下げの髪型が特徴の『僧侶(ビショップ)』の憐耶(れや)、左にいる黒髪で同じく『僧侶(ビショップ)』の(もも)が作り出しているのだろう。

 

 

ソーナ「なるほど……以前見たことありますが、より強い力を感じますね」

 

「「…」」

 

 

ソーナはまじまじとガイア達を見ながら、感想を漏らす。

目の前に敵がいるのにも関わらず、普通に会話するような口調で話すソーナにガイアとダイナは更に警戒を強めていると、

 

 

リアス「……ソーナ、大胆ね。まさか最前線に出てくるなんて」

 

ソーナ「…っ」

 

ダイナ「部長っ!?」

 

 

ガイア達の後ろの通路からリアスが堂々とした態度で現れる。朱乃、アーシア、そして合流したであろう木場も一緒だ。

リアスの登場があまりにも早かったのかソーナは一瞬目を見開くが、すぐに冷静な顔に切り替える。

 

 

ソーナ「…そういうあなたも自ら表へ出ているではありませんか、リアス」

 

リアス「ええ。でも、どちらにしてもゲームは終盤―――残された時間も少ないから、出てくるのは当然というのはあなたも同じでしょ?」

 

ソーナ「そうですね。ですが、あなたの作戦通りに事は運ばなかったようですね」

 

リアス「…っ」

 

 

ソーナにそう指摘されたリアスは顔をしかめる。

実はリアスの考えた作戦は、今回一番警戒されているであろうガイア達は囮で、その間に木場とゼノヴィアはソーナを倒す作戦だった。

しかし、実際は思った以上に苦戦した。特に偵察係のギャスパー、悪魔にとって厄介なデュランダルを持つゼノヴィアがやられたのは痛手だ。

 

若手悪魔で火力重視のリアスに対して、ソーナは知能派と言われる。

作戦を立てるのはリアスより1枚上手であることをガイア達は思い知った。

そんな空気の中、リアスは

 

 

リアス「…とにかく、この場で決着をつけましょう」

 

 

そう言うと同時にガイア達も臨戦態勢に入る。

だが

 

 

ガイア「…グアッ?」

 

 

突然ガイアは力を吸われたような感覚に襲われると、その場で膝をついた。

意識は朦朧としており、肩で息をするほど呼吸も苦しい。しかも変身も解けてしまった。

 

 

リアス「我夢?」

 

ダイナ「おいっ、どうしたんだよ?我夢!!」

 

アーシア「治療しますっ!」

 

 

様子がおかしいのに気付いたリアス達は血相を変えて声をかける中、アーシアが回復のオーラを我夢へ飛ばす。

アーシアの能力で我夢は淡い緑色の光に包まれ、今まで受けた傷の痛みは治った。

しかし、朦朧とする意識だけは依然そのままである。

 

 

リアス「だったらこれで………っ!」

 

 

一向に治らない我夢の症状に、リアスは懐から取り出したフェニックスの涙を使おうとしたが、踏みとどまる。

アーシアの『神器(セイクリッド・ギア)』で治らないということは原因は外傷ではないことだと気付いたからだ。

 

我夢の症状にリアス達が困惑する中、ソーナは小さな笑みを浮かべ

 

 

ソーナ「アーシアさんの『神器(セイクリッド・ギア)』でも、フェニックスの涙でも治りませんよ」

 

リアス「何をしたの?」

 

 

そう話すとリアスは問いかける。

すると、ソーナは淡々と話し始める。

 

 

ソーナ「…優れた頭脳を持つ高山 我夢君、根性で立ち上がる兵藤 一誠君。それに加えてウルトラマンの力を持っている2人は非常に危険なので早めに倒すべき存在です。ですが、私達の力では、真正面で立ち向かっても勝ち目がありません。なので、違う方法であなた達2人を倒すしかなかったのです……」

 

 

ソーナが言い終えると、桃は抱えていたバッグから何かを取り出す。

それは点滴等に使われる医療用のパックだった。

パックの中身は血の様な赤い液体が入っており、チューブを接続する箇所は赤い液体が流れる薄く透き通ったラインが繋がれており、それは我夢とダイナの腰に繋がっていた。

 

 

ダイナ「それは……」

 

ソーナ「これはあなた方、2人のです。いくら強い力を持っているでしょうが、元が人間であるあなた達が体内に通う血液を半分以上失えば致死量です」

 

我夢「そうか…!あ、あなたは…これを狙って……」

 

ソーナ「その通りです。レーティングゲームのルールでは、戦闘不能状態になると、強制的に医療ルームへ転送される………それは失血も例外ではありません。サジの『神器(セイクリッド・ギア)』のラインを魔力で細工して気付かれないようにし、それを通して少しずつ少しずつ血を吸いとっていたのです」

 

 

ソーナの言葉を聞き、我夢とダイナは思った。

匙の狙いはラインによってエネルギーを吸収するのではなく、致死量まで失血させてリタイアさせる為だと。

完全に裏をかかれたリアス達は焦りを見せ始める。

 

ソーナはダイナを見て

 

 

ソーナ「あなたはまだ倒れていないようですが、私の計算によると、あと7秒で彼と同じ様になるでしょう」

 

ダイナ「ッ!」

 

ソーナ「5…4…」

 

 

余命宣告みたいな言葉を告げると、ソーナは左手首に着けているXIGナビで秒読みを始める。

ダイナは腰のラインを引きちぎって床に投げ捨てたが、既に血は大分吸われており、どうしようもない。

そして、

 

 

ソーナ「…2…1…0」

 

 

秒読みが終わり、ダイナは襲いくるであろう失血症状に身を固めるが…

 

 

ダイナ「……?」

 

ソーナ「…何故、倒れないのです?」

 

 

…一向に倒れる気配がない。

これにはソーナやこの場にいる皆、ダイナ本人ですらわからない様子だ。

両陣営とも困惑している中、1人だけ回答を提示する者がいた。

 

 

我夢「…それは僕が少しだけ細工をさせてもらったんですよ」

 

『!?』

 

 

それは苦しみつつもうっすらと笑みを浮かべている我夢だった。

皆が注目すると、我夢は語り続ける。

 

 

我夢「あなた達がウルトラマンの僕とイッセーに対して何かしらの対策を講じてくることは僕達もわかっていました。だから、エネルギーを吸収できる匙を必ずぶつけてくることも必然的にわかる。最初はラインを使ってのエネルギー切れを狙っているかと思いましたが、仲間を救助した時に透明なラインが腰に繋がっていることに気付いたんです、それを使って失血させることが本当の狙いということも………だから細工をしたんです」

 

ソーナ「一体、何をしたのです?」

 

我夢「一旦、僕のラインを切り離して、漏れた血を負傷した仲間の献血に使いました。献血した後は再び僕自身に繋ぎ、イッセーに繋がれているラインをこっそり穴を開けて、僕の血を入れた後、中に仕切りを作る為にコインを入れました。塞がれても、遠くからじゃわかりませんからね。これがイッセーが僕と同じ症状にならなかった理由です」

 

 

彼の事の顛末にソーナ達は驚く。

我夢は作戦を考えた本人ですら気付かなかった欠点をこの短時間で見抜き、対策を実行する……ソーナは改めて彼が危険であることを知った。

 

 

ダイナ「嘘だろ……我夢!どうしてそんなことを…!」

 

我夢「ごめん、イッセー。君に言ったら絶対に止めると思ったから……。それに僕と部長しか知らない“()()()()()”を勘づかれる訳にもいかなかった」

 

『?』

 

 

“本当の作戦”とはどういうことだ?と首を傾げた一同はリアスへ顔を向けると、彼女は口を開く。

 

 

リアス「ええ、我夢の言う通り、実は私とこの子しか知らない作戦があったのよ」

 

ダイナ「ッ!どうして、俺達に知らせてくれなかったんですか?」

 

リアス「ごめんなさいね。敵を欺くには味方から……そういう日本のことわざがあるから、それを実行したのよ」

 

 

ダイナにそう言ったリアスは「話を戻すわ」と本題に戻る。

 

 

リアス「どんな生物でも上手くいったら必ず隙を見せる……前回のレーティングゲームでそれを教わったわ。我夢があえてあなたの作戦に乗ったフリをしたのは、その隙をあなたから出させる為なのよ…………あと、この場に誰かいないと思わない?」

 

ソーナ「……まさかっ!?」

 

リアス「そう、我夢だけじゃなくて私も囮なのよ。()()()を進軍させる為のね」

 

 

リアスの問いかけにハッと気が付いたソーナにリアスは左耳につけているインカムをはずし、皆に聞こえる様に魔力でスピーカーの様に音量をあげる。

そこから聞こえる声は…

 

 

《小猫「……部長、本物のソーナ会長は屋上にいます」》

 

 

その声を聞いた瞬間、皆は驚く。

そう、リアスが言うあの子とは小猫のことだったのだ。

リアス達が囮になっている間に小猫が本陣付近を偵察していたのだ。

 

 

ソーナ「リアス…」

 

 

ソーナは悔しげに歯を噛み締める。

相手の作戦の裏をかいたと思ったら、更にその裏をかかれていたことに気付かなかったのはショックだろう。

 

そんな中、遂に我夢は膝をつけなくなり、その場で倒れ込んでしまう。

 

 

『我夢(君)!』

 

 

それを見たリアス達は思わず大声を出して、倒れている我夢に駆け寄る。

我夢の体は光の粒子になり始めていた。

 

 

我夢「…すみません。僕はここまでです……」

 

リアス「あなた自身が犠牲になるなんて聞いてないわ……。でも、ここまでやってこれたのはあなたのおかげよ?ありがとう…」

 

我夢「はい…」

 

 

我夢はリアスから感謝を受けると、我夢はダイナへ顔を向け

 

 

我夢「後は任せたぞ……“親友”…!」

 

ダイナ「…ッ!」

 

《グレイフィア「リアス・グレモリー様の『兵士(ポーン)』1名、リタイアです」》

 

 

一言そう告げると、我夢はその場から消滅し、同時にグレイフィアのアナウンスがホール中に響く。

我夢のリタイアにリアス達は悔しがりつつも、すぐさまゲームへ勝利することへ思考を切り替える。

 

 

リアス「みんな!ここは任せたわよ!!」

 

『了解!/ラジャー!』

 

リアス「アーシア!」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

リアスは先導を切ってそう言うと、アーシアを連れて、ソーナがいる屋上に向かって走り出す。

 

 

椿姫「そう簡単には行かせませんよ」

 

 

だが、そうはさせまいと物陰から颯爽と現れた椿姫と結界の展開及び、ソーナの立体映像の投影を止めた憐耶と桃が立ちふさがる。

 

 

木場「こっちも邪魔させてもらいますよ!」

 

 

それに対して木場、ダイナ、朱乃がリアスらを先に行かせる為に対峙する。

3人共、ここへくるまでにやられた仲間の無念を晴らそうと、気合いが入っている様子だ。

その間にリアスとアーシアは屋上へ向かって行った。

 

残されたグレモリー眷属3人、そして対するシトリー眷属も3人。人数は同じ3対3―――1人が1人と戦える五分五分の状況だ。

 

 

椿姫「さて、木場 祐斗君。刃を持つ同士、刃で決めますか?」

 

木場「それもいいですね。僕もあなたには借りがあるので」

 

ダイナ「んじゃあ、俺はこの子と戦うとするか」

 

朱乃「…」

 

 

椿姫と戦うことに決めた木場に続いて、ダイナは桃、朱乃は憐耶と対戦相手を決める。両陣営はそれぞれ身構えて、いざ、戦おうとしたその時

 

 

バチバチバチィィーーーーーッ!!

 

『っ!?』

 

 

と辺りを照らす程の雷が鳴り響く。

木場、ダイナ、それにシトリー眷属達は目の前に相手がいるのにも関わらず、思わずそちらへ振り向く。

雷の発生源は瞳が涙に濡れ、冷たいまでの殺気を放ちながらバチバチ…と黄金のスパークを放つ朱乃だった。

 

 

朱乃「…」

 

 

朱乃はふらふらとおぼつかない足取りで前へ出る。その言葉には形容しがたい威圧に、対戦相手の憐耶だけでなく、木場達もゾッと背筋が凍る。

 

 

朱乃「……我夢君に私の決意を見てもらおうとしたのに…………この嫌な力を我夢君の前で使うことで……乗り越えようとしたのに………」

 

 

朱乃は低い声でそう呟くと、ゆっくりと手を前へかざし

 

 

朱乃「許さないっ!!」

 

 

ホールを飲み込む程の大出力の雷を憐耶へ向けて放つ。その雷は我夢を失った怒りが含まれており、未だかつてない威力だ。

 

 

憐耶「反転(リバース)!」

 

 

襲いかかる雷が直撃する瞬間、憐耶は両掌を前へ突きだし、反転させようとするが

 

 

ビガガガガガガガガガガァァァァーーーーーッッ!!

 

憐耶「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーー!!」

 

 

反転できず、そのまま直撃する。

憐耶は苦痛の叫びをあげると、そのまま地に倒れ伏せる。

朱乃はリタイア時の光に包まれ始めた彼女を見下ろし

 

 

朱乃「無駄よ。雷を反転させようとしたのでしょうけど、今のは雷光。反転させるには光の部分が足りなかったわね」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイアです」》

 

 

そう一言言い終えると同時に憐耶はその場から消え、グレイフィアのアナウンスが流れる。

この一瞬の出来事に彼女以外、この場にいる全員が圧巻する。

朱乃の雷光の威力もだが、それよりも彼女がこれほどまで怒り狂うぐらい、我夢の存在は大きいものになっていることだった。

 

 

椿姫「…くっ!」

 

桃「…っ!」

 

 

しばらく気をとられていた椿姫と桃だがすぐにハッとなると、身の危険を感じて、ダイナ達とは反対方向へ走り出す。

雷だけでも強力な上に悪魔の弱点である光が合わさっているのだから、恐ろしいのは当然だ。

 

だが、それを易々と逃がす程、ダイナ達は甘くない。

木場は2人を追跡する為、得意のスピードで駆け出す。

 

 

ダイナ「ハァァァァァ~~~~……デェアッ!」

 

 

木場が後を追っている中、ダイナは力強く両腕を横に広げると、足先から全体にかけて網目状の粒子になって姿を消す。

そして、次の瞬間。ダイナは逃走する椿姫達の前に姿を現した。これぞ、ダイナテレポーテーションだ!

 

 

「「!!?」」

 

ダイナ「ダァッ!」

 

 

突然目の前に現れたことに驚く椿姫達にダイナはすぐさま拳を繰り出す。

 

 

桃「はっ!」

 

 

桃が前に出て、結界を展開。ダイナの拳は強固な守りに防がれる。

しかし、彼女らは休んでいる暇はない。

 

 

木場「はぁぁぁぁーーーーー!!」

 

椿姫「くっ!」

 

 

後ろから追い付いた木場が新幹線の様な勢いのまま、椿姫の腹部目掛けて斬りかかる。

椿姫は何とか薙刀の柄部で防ぐが、あまりもの衝撃に後ずさる。

状況は木場とダイナに挟まれ、かつ彼らの後ろには朱乃がいる不利なものだ。

 

しかし、彼女らは負けられない。

必死に戦い、そして散っていった仲間を思えば、不利な状況でも戦意は決して失わない。

 

 

ダッ!

 

木場「!」

 

 

椿姫は身構えながら横へ向かって駆け出すと同時に木場は並走すると、そのまま近くの服屋の中へと入っていった。

お互い、目の前の相手と決着をつけるつもりだろう。

 

残されたダイナと桃はどちらとも飛びかからず、ゆっくりとした足取りで間合いをはかっていた。

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"ン"~~~~…デェアッ!!」

 

 

ダイナは立ち止まり、両腕を交差すると、額のダイナクリスタルが赤く輝き、ストロングタイプにチェンジした。

 

たくましい両腕を振り上げたファイティングポーズで己を鼓舞すると、そのまま桃に向かって駆け出す。

その道中、右腕を勢いよくブンブンと回し、遠心力を高める。

 

 

ダイナ「ダァァァァァァーーーーーー!!」

 

桃「…っ!」

 

 

接近したダイナは遠心力を利用した強力な拳を繰り出す。桃は先程のように結界を展開して防ごうとするが

 

 

バリィィンッ!

 

桃「うあぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

ドォォォンッ!!

 

 

ストロングタイプの剛力に結界は耐えきれず砕け散り、拳が腹部に炸裂する。その衝撃に桃は苦悶の表情を浮かべながら大きく後方へ吹き飛ばされ、爆発した。

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『僧侶(ビショップ)』1名、リタイア」》

 

ダイナ「…よし、木場のところへ行くか」

 

 

アナウンスから桃がリタイアしたことを知ったダイナはひと安心すると、すぐに木場のもとへ向かおうとするが

 

 

ガッシャアァァァァァーーーーーーーン!!

 

ダイナ「!?」

 

 

木場が戦っている洋服屋からガラスや木材の破片と共に何かがものすごい速度でダイナを横切る。

ダイナは驚きつうもその何かが飛んで行った方を振り向くと、そこには右肩から左の脇腹にかけて斬られた椿姫が倒れていた。

 

 

椿姫「……ソーナ。危険なのは兵藤君や高山君だけではないわ……!」

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様の『女王(クイーン)』、リタイア」》

 

 

椿姫は一言そう呟くと、光に包まれ、この場から消滅した。

一体、何があったんだ?とダイナが思った矢先

 

 

木場「そっちも終わったようだね」

 

ダイナ「…ッ!」

 

 

声がする方へ振り向くと、爽やかな顔をした木場が洋服屋からこちらへ向かって歩いてきていた。

体のあちこちが切り傷だらけで、いかに激しい死闘を繰り広げていたかを物語っている。

 

しかし、ダイナは彼のある一点を見て驚く。体の傷ではなく、彼の持つ剣にだ。

それはゼノヴィアが使っている聖剣デュランダルだった。

ダイナは彼の持つデュランダルに指を指して訊ねる。

 

 

ダイナ「なあ、それどうしたんだよ?」

 

木場「ああ、これはゼノヴィアの提案だよ。『もし、自分が動けなくなった時にデュランダルの所有権を一時的に僕へ譲る』ってね」

 

ダイナ「何でもありだな………って!?お前、聖剣使えんのかよ!?」

 

木場「昔はね。でも、今は『禁手(バランス・ブレイカー)』のおかげで扱えるようになったんだよ」

 

 

すげぇなそれ……とダイナは感嘆しつつ呟く。

神が作った『神器(セイクリッド・ギア)』は研究はされてはいるが、未だ解明されてない謎も多い。

木場のもその1つかも知れない。

納得したダイナは天井を見上げ

 

 

ダイナ「ま、後は俺達の主の勝利を祈るか」

 

木場「そうだね」

 

 

そう言うと、木場は頷き、同じく天井を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、リアスとアーシアは道中に偵察していた小猫と合流し、ソーナが待つ屋上に来ていた。

現実では見える空や見渡せる町並の景色はなく、ゲーム空間であることをわからせる真っ白な空間だけがある。

そして、何もない空間に囲まれている屋上にソーナが静かに佇んでいた。

 

 

ソーナ「…来ましたか」

 

リアス「ソーナ。私達を罠にはめるとはわかってはいるけど、どうして屋上に?」

 

ソーナ「あなた達に私の立体映像を攻撃させて、少しでも疲弊させるのが狙いでした。それに『(キング)』が最後まで生きれば、ゲームは終わらない。遮蔽物が何もない屋上にあえて隠れることで、あなた達を欺くことが出来るからです……。しかし、高山君には何から何まで見破られていましたが……」

 

リアス「…」

 

 

淡々と話すソーナを見て、リアスは複雑そうな表情を浮かべる。

いつもの様に冷静な顔だが、長い付き合いのあるリアスには彼女が悔しさと悲しみがこみ上げているのがわかった。

 

状況は3対1……それに下層にいるダイナ達を加えれば6対1と、どう見てもソーナに勝機がないのは一目瞭然だ。

上手くいったと思った作戦は早い段階で見破られ、仲間も次々と失う。これに悔しく思わないのは誰もいないだろう。

 

 

ソーナ「けど、リアス。私は諦めません。必死なのは私達も同じなのです。私の夢に懸命に戦い、倒れていったサジや多くの眷属に報いる為、最後まで戦うつもりです」

 

リアス「…っ!」

 

 

しかし、ソーナはその言葉通り、諦めていない。何よりも眼鏡のフレーム越しに見える瞳がそれを物語っている。

例え、どんな結果になろうが最後まで戦うつもりだ。

 

ソーナは「さて…」と呟くと、周囲を魔力で膨大な水を作り出していく。シトリー家は水の魔力を得意をする。さすが次期跡取りと言えようか。

それに合わせてリアスも滅びの魔力をその身に纏わせていく。

 

 

ソーナ「決着を着けましょう」

 

リアス「臨むところよ!」

 

 

そう言うと、2人はその場から駆け出し、魔力をぶつけ合う。

そして、長いとも短いとも言える時間での激闘を制したのは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《グレイフィア「ソーナ・シトリー様、リタイアです。これによって、リアス・グレモリー様の勝利です」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「う…ん……?」

 

 

我夢が目を覚ますと、ベッドの上に横になっていた。

辺りを見渡すと、腕には点滴がついており、真っ白い壁やカーテンがあることから、どこかの医療施設であることがわかった。

 

 

我夢「(ゲーム、どうなったのかな?)」

 

 

上体を起こした我夢がそんなことを考えていると、

 

 

コンコン…

 

我夢「!」

 

 

病室のドアがノックされる。

我夢は誰だろうと思っているとドアは開かれ、リアス達オカルト研究部が入ってくる。

その中には、同じくリタイアしたゼノヴィアとギャスパーの姿もあった。

 

 

我夢「あ、部長」

 

リアス「我夢。あなたが起きるのが一番遅いから心配だったけど、その様子じゃ心配ないわね。はい、これでも飲みなさい」

 

我夢「ありがとうございます………」

 

 

我夢はリアスからペットボトルの飲料水を受け取ると、キャップを外し、グイッと口の中へ流し込む。

ゲーム中は常に緊張や危機感があった為、水分補給を取る気は起きず、喉が渇いていたのだ。

 

喉を潤し、ホッとひと息ついた我夢はリアスに訊ねる。

 

 

我夢「…部長。僕達は勝ったんですか?」

 

リアス「ええ、勝ったわ。でも、ゲーム序盤にギャスパーがやられたのとウルトラマンであるあなたを犠牲にしたことが評価を下げてしまったけどね」

 

我夢「そうですか…」

 

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるリアスに我夢は喜んでいいのか悔しがったらいいのかわからず、複雑そうに顔を浮かべる。

そうしていると、我夢は朱乃に目が合った。

 

 

我夢「朱乃さん、すみません!見守るって言っておきながら、勝手にリタイアしてしまって!」

 

 

我夢は深く頭を下げる。

自分の血を受け入れようとする彼女と約束しておきながらも自分はゲームの勝利の為とはいえ、それを破ってしまった。

その事実に我夢は心から謝罪すると、朱乃は

 

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪良いのですよ。こうしてあなたが無事でいてくれるなら………さあ、頭を上げて下さい♪」

 

我夢「朱乃さん…」

 

 

そう言っていつもの様に微笑むと、我夢は申し訳なさも残しつつ微笑む。

すると、一誠が何かを思い出したの様に「あっ!」と声をあげる。

 

 

一誠「そういえばよ、匙がサーゼクス様から勲章を貰ったんだよ!」

 

我夢「勲章?」

 

一誠「そう!レーティングゲームで優秀な戦いをしたやつが貰える勲章さ!何でも、作戦を読まれていたけど結果的にガイアを倒したかららしいぜ!」

 

我夢「そ、そうなんだ……」

 

一誠「俺さぁ、その後に言ったサーゼクス様の『何年、何十年とかかってもいい。レーティングゲームの先生になりなさい』って言葉に感動してよぉ~~。ううっ、思い出しただけで涙が出るぜ……!」

 

 

そう言っておいおいと泣く一誠に我夢は困ったように笑みを浮かべる。

“自分が結果的に倒されたこと”が引っかかり、素直に喜んでいいのかわからないが

 

 

我夢「(匙、おめでとう…)」

 

 

とりあえず…とりあえず今は匙を祝うことにした。

ゲームの結果は匙達シトリー眷属の負けだが、理想を叶えようと必死に戦ったのは決して無駄では無かった。

悪魔のトップである魔王に認められたのだから…。

我夢はそんな微笑ましい気持ちに浸っていると

 

 

コンコン…

 

『?』

 

 

病室のドアがノックされる。

看護師さんかなと思った我夢が「はーい、どうぞ」と返事すると、ドアが開かれ

 

 

石室「久しぶりだな、我夢。元気そうで何よりだ」

 

『!?』

 

我夢「っ、コマンダー!」

 

 

XIGのコマンダーである石室が微笑みながら入ってくる。思わぬ登場に我夢だけでなくリアス達も驚くが、入ってくるのは彼だけではない。

 

 

「失礼するぞい」

 

 

次に入ってきたのは西洋の偉人が被ってそうな帽子を被り、高価そうなローブを身に纏った隻眼の高齢と思われる老人だ。

しかし、この老人は我夢どころかオカルト研究部全員も見たことがない様子だった。

 

 

一誠「あのぉ~、誰っすか?」

 

 

一誠が怪訝そうに訊くと、老人は長く生やした真っ白な髭を擦りながら「ホッホッホッ」と愉快に笑い

 

 

オーディン「わしはオーディン。名前くらいは聞いたことはあるじゃろ?北欧神話『アースガルズ』の主神じゃ。……と言ってもただの北の田舎ジジイじゃがな」

 

『……』

 

 

アースガルズといえば、ヴァーリが以前戦おうとしていると聞いている。その主神が目の前で愉快に笑う老人であることにリアス達は唖然とする。

サーゼクスの様な高貴かつ強そうなオーラを微塵も感じない…。

 

そうしていると、オーディンは我夢と一誠の顔を交互に見る。

 

 

一誠「…?」

 

我夢「何でしょう?」

 

オーディン「いやいや、お主らが現代に誕生したウルトラマンじゃな。力は申し分ないが、意外なところで苦戦しておったの。まだまだ修行が必要じゃな。ホッホッホッ……!」

 

「「……」」

 

 

そう言ってまたも愉快に我うオーディンに我夢と一誠は何とも言えない気分になる。

確かにこの老人はオーディンだが、どう見てもただのオッサンしか見えない。

 

オーディンはひとしきり笑うと、今度はリアスへ顔を向ける。

自分へ何かを話そうとしていると察したリアスはペコリとお辞儀すると、挨拶をする。

 

 

リアス「オーディン様、お初にお目にかかります。私、リアス・グレモリーと申します」

 

オーディン「うむうむ……サーゼクスの妹じゃな。試合、見ておったぞ。まあ、ああいうこともある。精進あるのみじゃな……………しかし、デカイのぉ。観戦中、こればかり見とったぞい」

 

リアス「…///!」

 

 

オーディンの卑猥な目が自分の胸に注がれたリアスは顔を赤くして、すぐさま胸元を手で隠す。

しかし、オーディンは手指をワキワキと動かしながら、リアスの胸を見るのを止めない。

 

 

一誠「やっぱり、ただの変態ジジイじゃねぇか…」

 

我夢「うん…」

 

 

呆れた一誠の呟きに我夢は頷く。

これにはグレモリー眷属だけでなく、石室コマンダーも呆れた様子で額に手を当てている。

 

さすがにこのままだといけないので、一誠が止めに入ろうとした時、

 

 

バチィンッ!

 

『!?』

 

 

誰かが後ろからハリセンでオーディンの頭をひっぱ叩く。皆はそちらへ顔を向けると、いつの間にか入室していた鎧を着た銀髪の美女がハリセンを持っていた。

 

 

「もうっ!ですから、卑猥な目はあれほど禁止だと申したではありませんか!これから大切な会談なのですから、北欧の主神らしく振る舞って下さい!」

 

オーディン「……ロスヴァイセ、そう怒らんでも分かってるわい。全く隙のないヴァルキリーじゃて」

 

 

ぷりぷりと怒る銀髪の美女―――ロスヴァイセにオーディンは半眼でぼやきながらずれた帽子を戻す。

この会話からロスヴァイセがオーディンの従者であることがわかると同時に彼女が苦労しているんだなとリアス達は察し、苦笑いを浮かべる。

 

だが、ただ1人―――我夢だけはロスヴァイセの登場に目を丸くしている。

そして、次の瞬間。無意識に彼女をこう呼んだ。

 

 

我夢「ユザレ…?」

 

ロスヴァイセ「…え?」

 

『?』

 

 

突然自分ではない名前で呼ばれたロスヴァイセは頭の上に疑問符を浮かべる。

それはこの場にいる石室やリアス達も同じ反応だ。

  

我夢は自分でも目の前にいる人物が別の人物だとはわかっている。

しかし、そう言ってしまった…否、そう言わずにはいられなかった程に似ていたのだ。

顔、髪色、体型、声……何もかも。

そう、我夢の夢に出てきた超古代人のユザレに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、すっかり夜になった人間界では、日本のとある森林に異形の生命体が降り立った。

その異形の生命体は人型のシルエットをしていながらも、皮膚はゴツゴツとしており、怪人と言える見た目だ。眼は緑色に輝き、手には妖しいオーラを放つ日本刀の様な刀を持っていた。

 

異形は辺りを見渡すと、自分の目的地であることがわかったのか空に昇る三日月を見上げ

 

 

「ンッフッフッフッフッ…」

 

 

と怪しくに笑った。

空に浮かぶ三日月と同じ形をした胸元の傷が真っ赤に輝きを放ちながら………。

 

 

 

 

 




次回予告

酸素がなくなる…!みんな窒息してしまうのか!?
その時!海は光り、奴が襲って来る…!!

次回、「ハイスクールG×A」!
「妖光の海」!
出撃だ、セイレーン7500!!





ロスヴァイセさんをユザレと勘違いしてしまう我夢君。
そして、ラストに現れた謎の怪人の正体は…?
今後の展開を楽しみにして下さいw

良かったら感想&コメントよろしくお願いいたします!


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第33話「妖光の海」

無酸素怪獣 カンデア
深海竜 ディプラス  登場!


人間界。

すっかり夜が更け、駒王町近くにある海岸にて海を眺める者が2人いた。

それは我夢、一誠の友達である松田と元浜であった。

 

 

「「はあ…」」

 

 

2人は深くため息を吐く。

彼らがここまで落ち込んでいる理由は最近、女子と交際している学園の男子が多くなっているので自分達も彼女を作ろうとナンパした。しかし、皆様のご覧の通り、見事玉砕した。

 

 

松田「なあ、松田。俺達って何でモテないのかね…」

 

元浜「さあ?女体に興味があると堂々と言ったら気持ち悪がられるし、それを隠そうとしたら疑われるし……はあ…」

 

松田「我夢とイッセーに慰めて欲しいけど合宿で忙しいからな………くっそぉぉぉーーー!!今頃、リアス先輩や姫島先輩とあんなことやこんなことをやってるだろうなぁぁーーーーー!!悔しいィィィーーーーー!!」

 

元浜「ああ、愛しの小猫ちゃんも今頃…ううう~……!!」

 

 

そう言いつつ、松田と元浜は滝のような悔し涙を流す。

この2人。モテるモテない以前に変態的な性格を治すべきと思うが、本人達は全く理解していない。

 

2人がしばらく夜の海が眺めながら泣いていると、

 

 

キラキラキラキラ……

 

「「…?」」

 

 

突然、青く煌めく巨大な光球が海から現れた。

それを見て疑問に思った2人は自然と泣くのを止め、それに目をやる。

 

 

松田「何だあれ?ロケットか?」

 

元浜「いや、この場所に実験施設があるはずが――うわぁぁ!!?」

 

 

光球の正体について考察していると、次の瞬間。青い光球は2人の頭上スレスレを通り過ぎ、どこか遠い空へ飛んで行った。

2人は頭を押さえていた手を離し、青い光球が飛んで行った空を不思議そうに見上げる。

 

 

元浜「何だったんだ?」

 

松田「さあ?」

 

 

松田と元浜が目撃した謎の青い光球。これが後に世界中で大問題を起こすとは、この時の2人には知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、冥界にいる我夢達はグレモリー邸の庭の一角にある露天風呂にお邪魔していた。

一誠と木場は身体の洗い合い、アザゼルと我夢は湯に浸かっていた。

 

 

アザゼル「変~われ~~ジャック♪大きく~強~く~~♪」

 

 

アザゼルは温泉にドップリと浸かりながら満足そうな様子で鼻歌交じりに歌っている。

普段、堕天使の総督として色々忙しいことがあって、相当疲れが溜まっていたのだろう。背中から12枚の黒い堕天使の翼を広げている。

 

 

アザゼル「ハハハハ、やっぱ冥界とはいえば温泉だよな~~!しかも冥界屈指の名家、グレモリーの私有温泉となれば名泉も名泉だろう!」

 

 

満足そうに顔を緩めるアザゼル。

基本的に冥界は西洋に似た暮らしなので、アザゼルはあまり日本の風習には慣れてないと思っていた我夢だが、自然に出来ているのでそうではないとわかった。

そう思った我夢はふと気になったことをアザゼルに訊ねる。

 

 

我夢「アザゼル先生って、日本文化が好きなんですか?」

 

アザゼル「おお!生活風習に文化、礼儀作法やその他諸々、冥界にはない奥の深さがあるからな!ガッハッハッハッ!」

 

 

そう答えて豪快に笑う我夢はやっぱり好きなんだなと確信する。

アザゼルの趣味嗜好と日本の文化はマッチしているのだろう。その証拠に初めて会った時、アザゼルは浴衣を着ていた。

 

湯に浸かっている2人がそんな会話をしている中、木場の身体を洗い終わった一誠は次は彼に身体を洗ってもらおうと、背を向けるが…

 

 

木場「イッセー君ってゴツゴツしてて、逞しいね…///」

 

一誠「――いっ!?」

 

 

と、頬を赤くし、何とも気持ちが悪いセリフを言いながら身体をベタベタと触るものだから、悪寒がした一誠はその場から飛び退く。

 

 

木場「…?どうして避けるんだい?」

 

一誠「バカっ!!俺にはそういう趣味は無ぇんだよっ!」

 

 

不思議そうに首を傾げる木場に一誠は顔を真っ赤にし、声をあらげて答える。

当然、一誠はそういった性癖を持ち合わせてはいない。

あと一歩遅かったら、貞操が危なかったかも知れないと一誠は危惧した。

 

 

ギャスパー「う…うぅん…」

 

 

そんな時、一誠は入り口で困った様子でうろうろしているギャスパーの姿を捉えた。

その様子から男同士で温泉に入るなんて初めてで、このまま温泉に入っていいのか躊躇っているのがわかった。

 

このままだといけない。そう思った一誠は「仕方がないな…」と呟くと、ギャスパーの元へ歩み寄り、左手首を掴んだ。

 

 

ギャスパー「きゃっ!?」

 

一誠「お前なぁ~~…何が『きゃっ!?』だ!変な声を出すなっ!」

 

 

可愛らしく悲鳴をあげるギャスパーを一誠は嗜める。

元から女の子と見間違うほどの容姿、更にはタオルを胸の位置に巻いているのも相まって、より女の子に見えてしまう。

そのせいではたから見れば、まるで一誠が女の子を無理矢理拉致しているようにしか見えないのだ。

 

すると、一誠と目を真っ直ぐ見ていたせいか、ギャスパーは頬を赤く染め、顔を俯かせながらボソボソとこう言う。

 

 

ギャスパー「……あ、あの…あまりこっち見ないで下さい……」

 

一誠「お、お前な!男なら腰でタオル巻けよっ!胸の位置まで巻いてるから、普段の女装以上に戸惑っちまうって!」

 

ギャスパー「…そ、そんな!?イッセー先輩は僕のことをそんな目で見ていたのですか…!?身の危険を感じちゃいますぅぅぅぅーーー!!」

 

一誠「うるせぇぇぇーーーー!!ウルトラハリケーン!!」

 

 

このまま話しても、自分が禁断の世界へズブズブはまっていっていくだけだ……。そう危惧した一誠はギャスパーを両腕で抱えあげると、どこぞの夕陽が似合う巨人が使う技のようにひねりを加えて、前方へ投げ飛ばす。

 

 

ギャスパー「ギャアァァァァ~~~~~!!」

 

 

ギャスパーは悲鳴をあげながらグルグルと左回転しながら上昇していく。そして、我夢達が入っている温泉の真上までくると、ピタッと回転が止み

 

 

ドッパァァァァーーーーーーーンッ!!

 

我夢「うっぷ!?」

 

アザゼル「どぺっ!?」

 

 

そのまま豪快に水柱を立てながら湯に墜落した。

辺りに大量の水しぶきが飛び散り、近くにいた我夢やアザゼの顔面にぶっかかる。

 

 

ギャスパー「いやぁぁぁぁぁん!あっついよぉぉぉーーー!!溶けちゃうよぉぉぉーー!!我夢先輩助けてぇぇぇーーーーーー!!」

 

我夢「あ、うん。わかったから、まず離れようか…」

 

 

湯加減が合わないのかギャスパーはすぐに立ち上がって悲鳴をあげると、紅潮させた体で我夢にすがり付く。

我夢はギャスパーの悲鳴に若干引きながらも、落ち着く様に呼び掛ける。

というのも、隣の女湯からはクスクス…とリアス達の笑い声が聞こえてきて恥ずかしいのだ。

 

それから何とか我夢はギャスパーを呼び掛けて落ち着かせた。

だが、ギャスパーは依然我夢にくっついたままで、広げた両足の間にちょこんと座っている。これで安心できるならいいが…と我夢は思いつつも、女の子と間違う容姿をしているギャスパーを危険な目で見てしまう自分と葛藤していた。

 

ふいにアザゼルは我夢に話しかける。

 

 

アザゼル「ところで我夢」

 

我夢「はい?」

 

アザゼル「お前、昨日オーディンのクソジジイの付き人のヴァルキリーを『ユザレ』って呼んだらしいじゃねぇか?どうしてそう呼んだんだ?」

 

我夢「…っ」

 

 

アザゼルの問いかけに、我夢は昨日、ふいにロスヴァイセをユザレと呼んだことを思い出す。

確かにあの時、彼女のことをそう呼ばずにはいられなかった自分がいたのは紛れもない事実だ。

 

 

一誠「気になるなぁ~~」

 

ギャスパー「興味ありますぅぅ」

 

木場「僕も気になるね。誰だい、ユザレって?」

 

 

アザゼルの話題に一誠とギャスパー、それにいつの間に湯に浸かってきていた木場も興味深そうに我夢に訊ねる。

どう話そうかと我夢は悩んでいたが、4人の向けられた興味の眼差しに負け、正直に話すことにした。

 

 

我夢「……実は2週間前に失踪した超古代人に会う夢を見たんですよ。それがユザレです…。最初は夢だから自分の妄想だろうと思ってましたが、彼女の気配からそうでないとわかったんです。そして、何よりも驚いたのは――」

 

木場「――ロスヴァイセさんに似てた、からかな?」

 

 

言葉を続けるように訊く木場に我夢は頷き、

 

 

我夢「顔だけでなく、声や体型すらも瓜二つだったんだよ」

 

 

そう続けて話すと、皆は彼の言っていることは嘘ではないと納得する。

といっても我夢は変な嘘をつくような男でないことはここにいる皆は知っているが。

 

 

一誠「へぇ~~マジか……。アザゼル先生はユザレのこと知ってるんですか?」

 

アザゼル「ああ……といっても名前だけだがな。あの大戦後、俺達はしばらく人間界へ干渉しなかった。自分の種族保持が先決だったからな」

 

 

隣で浸かっている一誠に訊ねられたアザゼルは頷きながら答える。

この中で古のウルトラマンに会った当事者であるアザゼルでさえも彼女のことは詳しく知らないようだ。

 

 

木場「それで何か言っていたのかい?」

 

我夢「うん、『どのような手段を用いても避けられない“運命”があなたに近づいている』って。でも、肝心なとところで目が覚めたから、聞けずじまいだったけどね」

 

 

我夢の話に皆は「ううん…」と唸る。

ユザレは一体何を忠告しようとしていたのか?疑問が深まるばかりだ。

皆が考える中、ふいにニタニタといやらしい顔つきをしたアザゼルが一誠に近寄り、口を開く。

 

 

アザゼル「なあ、イッセー」

 

一誠「はい」

 

アザゼル「お前は女の胸を揉んだことはあるか?

 

「「ぶっ!?」」

 

 

いきなりのド直球の質問に一誠だけでなく、我夢も思わず驚いて吹き出す。

先程まで我夢達の脳裏に漂っていたシリアスな空気はアザゼルの質問によって吹き飛んでいった。

 

一誠はあたふたしながらも訊ねる。

 

 

一誠「いきなり何を聞くんすかっ!?」

 

アザゼル「いや、ちょっとした興味本位だ。んで、どうなんだ?」

 

一誠「……まあ、一応1回だけ触ったことなら…」

 

 

一誠が正直に答えると、アザゼルは「なるほど…」と呟きながらニヤリと口角をあげる。

一誠はリアスがライザーとの婚約を迫られた際に彼女自らが胸を触らせたことを思い出した。

自分からやった訳ではなくとも触ったのは事実である。

何を考えているのかアザゼルはうんうんと頷くと、今度は我夢へ顔を向ける。

 

 

アザゼル「我夢は?」

 

我夢「無いですね」

 

アザゼル「そうか…」

 

 

その質問に我夢はキッパリハッキリと答えると、アザゼルは少しつまんなげそうに呟く。

朱乃、ゼノヴィア…2人から大胆なアプローチを受けたことがあるが、辛うじて胸を触るまでには至っていない。

2人から確認したアザゼルは何か考えをまとめたのか、更にニヤニヤとした顔つきで2人を見据え

 

 

アザゼル「…わかった。お前ら2人がいか~~に人生を損しているかがわかった!女の胸を触っただけとそれすらしたことないじゃあ、人生を充分楽しんでいるとはいえねぇ……。いいか、女の胸は無限だ。“揉み”、“吸い”、“つつく”……それでこそあのオーフィスをも越える無限の可能性を秘めいているんだぜ?俺はその神秘の魅了され、堕天したんだ…!」

 

「「はぁ…」」

 

 

アザゼルは目をキラキラと輝かせながら熱く語っているが、2人にとってはただのエロ親父のセクハラ演説にしか聞こえない。というか、誰が聞いてもそうしか聞こえない。

アザゼルはしばらく語ると、「さて…」と呟きながら話に一区切りつけると、

 

 

ガシッ!

 

我夢「ん?」

 

ガシッ!

 

一誠「おっ?」

 

 

突然、我夢と一誠の両腕を掴んだ。

その行動に2人は疑問に思っていると、アザゼルは

 

 

アザゼル「つう訳で若いお前らには1流の悪魔になるための経験を積んでもらう。混浴という形でな!!」

 

「「っ!?待っ―――」」

 

アザゼル「そうらぁっ!!」

 

 

そう言うと、2人が拒否する間も与えず、女湯に向かって空高く投げ飛ばす。

我夢と一誠は男湯と女湯の境目の仕切りを飛び越え、真っ直ぐ綺麗な放物線を描きながら飛んで行き

 

 

ドッパァァァァァァァァーーーーーンッッ!!!!

 

 

そのまま女湯の温泉に墜落し、ギャスパーが投げ込まれた時よりも大きな水柱が立ち、大粒の水しぶきが辺りに飛び散る。

 

 

一誠「ぶはっ…!!」

 

 

一誠は湯の中でもがきながらも何とか湯から顔を出す。

水滴が滴り落ちる前髪を払いながら辺りを見渡すが、湯煙が大量に立ち込めているせいで近くにも遠くにも我夢の姿は見えない。

 

 

一誠「(我夢の奴、大丈夫かよ…)」

 

 

一誠が姿が見えない親友に心配していると

 

 

リアス「イッセー!?」

 

アーシア「イッセーさん!?」

 

一誠「!?」

 

 

湯煙の中から目を丸くしたリアスとアーシアが現れる。

当然、一誠は驚いた。それは彼女に女湯に入っているのを見られたからでもあるが、何よりも彼女達が何も身につけていない…生まれたままの姿だったからだ。

 

 

一誠「ぶほっ!!?」

 

 

出るところは出ている所謂、ボン!キュッ!ボン!のリアスに、彼女ほどではないがスタイルが良いアーシア…。思春期の少年にとって刺激が強すぎる女体美に一誠は鼻血を盛大に吹き出した。

 

 

リアス「イッセー、どうしたの!?」

 

アーシア「しっかりしてください!今、治しますっ!」

 

一誠「い、いや、平気ですよ…」

 

 

それを見て心配して近寄ろうとするリアスとアーシアに一誠は鼻血が流れている鼻を手で抑えながら、こっちへくるなと手で制する。

ただでさえ刺激が強すぎる女体が傍にくると、色々と抑えきれなくなり、逆効果だ。

 

 

アーシア「え?でも血が…」

 

一誠「ウルトラ大丈夫だ!!

 

リアス「…?」

 

 

それでもなお近寄ろうとするリアスとアーシアに一誠は必死に大声で止める。

当の2人はわかってはいないようだが。

 

 

一方、我夢は

 

 

我夢「……や、やあ……」

 

小猫「……」

 

 

冷や汗をダラダラと流しながら、苦笑いで胸元にタオルを巻いている小猫に挨拶をしていた。

実は我夢が温泉の中をさ迷っていると、偶然小猫に会ってしまい、一瞬だけだが彼女の全てを見てしまったのだ。

小猫はこちらを半目で見据えていて、言葉を発さなくても怒っていることが我夢にはわかった。

 

どう弁明しよう…我夢が必死に考えていると

 

 

朱乃「あらあら、うふふ…♪我夢君ったら、大胆ですわ♪」

 

我夢「…へ?」

 

 

反対方向から朱乃が現れる。

当然だが、彼女も生まれたままの姿だ。

我夢は慌てて目を瞑り、その上から両手で目元を隠す。

 

 

我夢「あ、朱乃さん!!前を隠して下さいよぉぉ!!」

 

朱乃「うふふ、そんなに照れなくてもいいじゃない。私の身体を好きに見ても触れても何も言いませんわ。ほら、捕まえた♪」

 

我夢「あっ…!?」

 

小猫「っ!」

 

 

我夢の言葉を無視し、朱乃は彼に真正面から身体を密着させる。

胸元に当たる2つの大きな柔らかな果実、そして全身に伝わる彼女の柔らかい肢体―――その妖しい魅惑に我夢は顔を赤くする。

 

朱乃のアプローチはこれまでに何度もあったが、今回は服という遮るものがないので、これまで以上に危なく、妖艶だ。

しかも近くには朱乃の抱擁で更に怒りのボルテージをあげている小猫がいる。

 

 

我夢「…すみませんっ!朱乃さん!」

 

朱乃「あっ…」

 

 

このままだと理性が陥落し、かつ小猫への弁明が出来なくなる――――そう判断した否や我夢は名残惜しそうな顔をする朱乃を引き剥がして距離を取ろうと後退るが

 

 

ツルッ!

 

我夢「ぐあっ!?」

 

小猫「っ!?」

 

 

床で足を滑らせ、小猫の胸元に飛び込む。

小猫は咄嗟であったが、キャッチし、我夢が頭を打つのを阻止できたが…

 

 

むに…

 

小猫「~~~~~~~!!//////////」

 

我夢「……っ!!?」

 

 

ラッキースケベと言うのであろうか。我夢の両手が小猫の慎ましい胸に当たっていたのだ。

恥ずかしさと怒りで顔を耳まで真っ赤にさせた小猫は猫又モードになると、拳に気を纏い始める。

 

 

我夢「小猫!聞いてくれっ!!これは――」

 

 

これには我夢は顔面蒼白となり、すぐさま離れて許しを請うが…

 

 

小猫「…最っ低ですっ!!」

 

我夢「マガジャッパッ!?」

 

ドッポォォォォンッッ!!!

 

 

時既に遅く、小猫の鉄拳が脳天に炸裂し、我夢は水柱を立てながら、温泉の床にめり込む勢いで叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

我夢達は訪れた石室コマンダーによって、グレモリー邸にある1室に急遽集められた。

 

 

石室「レーティングゲームで疲れている君達には悪いが、さっそくXIGの任務に当たってもらうが………我夢?どうしたんだ、そのケガは?」

 

我夢「…い、いえ!大丈夫です!ちょっと転んだだけですから!」

 

小猫「……ふんっ」

 

石室「?」

 

 

ミイラの様に包帯を我夢に不機嫌そうに鼻を鳴らす小猫。我夢は「女の子の胸を触ってケガしました」なんて死んでも言えないので、ごまかしつつ元気そう取り繕う。

さすがにおかしいと思った石室は怪訝そうにするが問題ないと判断し、さっそく本題に入ることにした。

 

 

石室「本題に入ろう。実は人間界では昨日ら()()9()()()()()()()()()()()()()()()()()()怪事件が発生した。もちろん日本もそうだ」

 

『!?』

 

リアス「何ですって!?」

 

 

石室の報告にリアス達は目を見開く。

世界中で酸素が消失する。しかも一気にだ。

この不自然な現象に我夢達は違和感をも感じた。

石室は続け

 

 

石室「ジオベースの情報によると、酸素が消失した地域には海から現れた青い発光物体があったそうだ」

 

一誠「えっ…!?まさか、アグルっすか!?」

 

 

青い光と聞き、思わずアグルを連想した一誠は石室に問いかけるが、石室は「それはわからない」と首を横に振る。

 

人類を削除する為にはどんな手段も選ばない彼なら確かにやりかねないが、ウルトラマンといえどそんな芸当ができるのか…?

我夢はそう内心考えていると、話は進み

 

 

石室「日本の森林地帯にもその発光現象が目撃されている。そこで我夢、木場。君達には至急人間界に戻ってもらい、G.U.A.R.D.の隊員との合同調査に当たってほしい。その他の全員は調査結果が出るまで待機するように」

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

石室の司令に皆は快く返事すると、我夢と木場はXIGの隊員服を着用し、さっそく人間界へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間界に戻り、G.U.A.R.D.の所有するヘリに同乗させてもらった我夢と木場は発光現象が目撃された森林地帯へと向かっていた。

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

我夢「本当に酸素が……!半径1キロ以内の酸素が消失しているっ!」

 

木場「何だって!?」

 

 

我夢と木場は手元にあるパソコンの観測結果に驚愕する。本来、空気中を漂っているはずの酸素が森林地帯近辺にだけ全く無いのだ。

人間や他の生物は一定の酸素がなくては生きていけない。それが全く無いとなると、森林地帯近辺の生物は息絶えているだろう…。

 

 

我夢「(藤宮…君じゃないよね?)」

 

 

ヘリで上空を飛びながら、我夢は今回の事件が藤宮のしわざではないことを内心願っていた。

そう信じるのも地球を守る為に非情な行動に徹するが、彼も優しい心を持っていて、何より同じ地球の子だからだ。

 

 

「あれは…?前方に光る物体!」

 

「「!?」」

 

 

そんなことを思っていると、操縦席のパイロットから声がかかり、2人は前へ視線を送る。

 

 

キラキラキラ…

 

 

森林の中央には、青い球体が怪しい光を放ちながら佇んでいた。

それは松田と元浜が海岸で目撃したあの光球だった。

我夢はすぐさまXIGナビで石室に連絡する。

 

 

《石室「どうした我夢?」》

 

我夢「コマンダー、発光現象の正体を思われる球体を発見しました。アグルのしわざではありません。…ただ、まだ推測ですが、球体の光と酸素の消失には何らかの関係があると思います。無酸素エリアはゆっくりとですが広がって……このままでは危険です」

 

《石室「わかった、球体を破壊しろ」》

 

「了解!これより攻撃を開始します」

 

 

石室の攻撃命令を聞いたパイロットはヘリに備え付けられているミサイルや銃機砲で攻撃する。

 

 

ドガァッッッン!!

 

 

ヘリからの一斉攻撃に球体は木っ端微塵に爆発し、辺りに破片が飛び散った。

それによって、森林地帯の酸素が蘇った。

我夢達はその後、球体の正体を知る為、破片を回収し、ジオベースへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「破片を調べてみたけど、確かにレスフェリン・レスフェラーゼ反応で発光している光だよ」

 

我夢「ということは、海で光ってる夜光虫や海蛍と同じものなんですね」

 

「ああ」

 

木場「やっぱり、あの光は海から飛来したものなんだね…」

 

 

ジオベースの海洋学者の報告を聞き、我夢と木場は納得する。

海からきた光とは言ってもアグルとは無縁であることが証明された。

我夢は少しホッとしていると、海洋学者はビーカーに入っている破片を手に持ち

 

 

「…確かにこの光は海から来たものと考えていいかもしれない。そして…光と酸素の消失も結び付けて考えていいと思うんだ」

 

我夢「本当ですか!?」

 

「ああ、それはね――――」

 

 

その後、海洋学者からの推測を長々と聞いた我夢と木場。

2人はその推測に驚きを隠せないでいた。

話が終わった後、我夢は石室に連絡をしていた。

 

 

《石室「攻撃兵器?あの球体がか…?」》

 

我夢「はい。飛躍した考えかもしれませんが……“何者か”があの球体を使い、地球から酸素を消し去ろうとしているんじゃないかと…」

 

《石室「“何者か”…とは?」》

 

我夢「海洋学者さんと僕の考えですが、海底の何処かでひっそりと暮らしていた無酸素生命体が()()()()()()()()で変異して、攻撃性を持ったものと考えています」

 

《石室「そうか…」》

 

 

壮大な話に石室は頷きながらも驚いていた。

敵は宇宙だけでなく、地球からも攻撃の手を伸ばしてしたことに…。

しかし、()()()()()()()()とは何か?石室は考えていると、彼の前に割り込んでくる影が映った。

それは一誠だった。

 

 

《一誠「しかしよぉ~~…この広い海の中でどうやって探すんだよ?球体は日本だけじゃなくて、世界にも現れてるんだぜ?」》

 

 

一誠の疑問は的を射ている。

海といっても、地球の7割を占めている広大な世界で、陸上よりも捜索は困難だ。

それに対して我夢は

 

 

我夢「うん、だから少し聞き込みを行おうと思うんだ。コマンダー、少し時間をくれませんか?」

 

《石室「わかった。頼むぞ…」》

 

我夢「はいっ!」

 

 

石室の承諾を得た我夢と木場はさっそく調査へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから木場と我夢は手分けして、青い光球の目撃した人の聞き込みを行っていた。

ちなみに2人は他人から別人に見える効果を持つ『シグメット』を装着しているので、自分達を知る人達に怪しまれることはない。

数時間かけて、球体が放たれる場所を絞りこんだ我夢と木場はXIGナビで連絡する。

 

 

《木場「―――以上のことから、球体は駒王町近くの海岸――『白岩海岸』の海底、ポイント2(ツー)1(ワン)6(シックス)S(エス)9(ナイン)から送り込まれているのではと思われます」》

 

石室「わかった。2人共、よくやってくれた」

 

 

石室は2人に労いの言葉をかけると、XIGナビを閉じると、グレモリー眷属及び後で集合した匙除くシトリー眷属の方を振り向き、指示を出す。

 

 

石室「リアス!一誠!アーシア!ギャスパー!ソーナ!四之宮!草下!ポイント216S9に出撃せよ!都市防衛指令、発令っ!!

 

『了解!/ラジャー!』

 

 

7人は(ギャスパーは少々ビビリながら)敬礼すると、XIGの隊員服に着替え、人間界へ出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調査を終えた我夢と木場は我夢の母、重美の親戚が教授をしている大学へと歩いていた。

―――どうして海の生物が地上を無酸素の世界にしようと動き出したのか?我夢にはその理由が気になった。

なので、回収した白岩海岸の海水を重美の親戚に解析してもらおうと歩いていた。

 

その道中、横断歩道を渡ろうとした時

 

 

『こーーーーんげーーーーん…はめーーーーーーつーーーーー…』

 

シャン…シャン…

 

「「…」」

 

 

修行僧の様な格好をした怪しげな男女の集団が錫杖を地面につく教祖と思われる男を先頭にこちらへ歩いてくる。

この集団は『根源的破滅招来体』を神と崇める宗教団体、『根源破滅教団』だ。

我夢は以前、イリナとゼノヴィアと探す際に彼らを目撃したが、その時よりも団員が増えており、ますます薄気味悪くなっている。

 

我夢と木場は通り過ぎる集団の薄気味悪さに固まっていると、集団の中から沢山のビラを腕一杯に持った1人の男が出て、2人に近寄り

 

 

「破滅こそが救いなのです。あなたも我らと共に崇めましょう…」

 

 

そう言って木場にビラを手渡すと、そそくさと集団に戻り、再び「こーーーーんげーーーーん…はめーーーーーーつーーーーー…」と連呼する。そのまま集団は呆然としている我夢と木場を置いてどこかへ立ち去っていった。

 

木場と我夢は手渡されたビラを見ると、『根源破滅こそ真の救済』とでかでかと赤筆で書かれていた。

それを見て木場は困ったようにため息を吐き

 

 

木場「…『根源破滅こそ真の救済』、か……。勝手なことばっかりやってきたもんだからね、僕たちや人間はさ………。何かに滅ぼされたって自業自得ってところか。そうなってしまったほうが案外、地球のためかもしれないね」

 

 

と、冗談混じりに呟く。

しかし、これを聞いた我夢は

 

 

我夢「本気で思っているのかっ!!

 

木場「えっ…?」

 

 

怒りを露にし、自分でも信じられない声量で怒鳴る。

今は夜で周りに人がいないが、もし、いたら注目を浴びるくらいの声量だ。

 

 

我夢「…っ!ごめん、ついムキになっちゃった…」

 

木場「いや、いいよ。こっちにも非があるしね。さあ、先へ進もう」

 

 

 

いつもの彼らしからない行動に呆然とする木場を見て、我夢はハッとなった我夢は謝る。

木場はそれを許すと、2人は再び歩き出す。

 

その途中、我夢は

 

 

我夢「(僕は…焦っているのか……?)」

 

 

と、先程の発言から自分に対して疑問を抱いていた。

『根源的破滅招来体』、『禍の団(カオス・ブリゲード)』、そしてアグル。

様々な相手をしているうちに本当に自分がやっていることは正しいと証明することに焦りを感じていたのかもしれない。

そんな自分に自問自答しながら、我夢は大学へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、暗闇深い海底では2隻の潜水艦が光で前方を照らしながら進んでいた。

それはXIGが開発した青色の潜水艦『シグマリン』、そして黃色が特徴の潜水艦『セイレーン7500』だ。

 

シグマリンにはリアス達、セイレーン7500にはソーナ達が搭乗しており、ポイント216S9へと進んでいく。

ちなみにこの潜水艦には運転技術がない人でも扱える補助装置がついているので、座礁する問題はない。

 

 

一誠「ギャスパー。もうすぐでポイント216S9だ」

 

ギャスパー「はっ、はい!」

 

 

壁際のモニターを見ていた一誠から報告を受けたギャスパーは気を引き締めて舵をきる。

最初こそリアスや一誠、アーシアも初めての海底世界に感動していたが、今は真剣な顔になっており、必要なこと以外何も話さない。

 

そうして進んでいると、一際大きな裂け目がある岩肌の前についた。

リアスは腰に携えているアルファベットの『G』の形をした超小型コンピューター『W.I.T.(ウィット)』を開く。

 

 

リアス「シグマリン及びセイレーン、これより岩肌の裂け目に入ります」

 

《石室「わかった。ギャスパー、四之宮。慎重に行け…」》

 

「「了解っ!」」

 

 

連絡した2隻の潜水艦は岩肌の裂け目の中へ入っていく。

すると、

 

 

「プオォォォォォーーーーー!」

 

『!?』

 

 

地中からおぞましい鳴き声と共に岩肌のようにゴツゴツした皮膚をもつ四足歩行の怪獣が勢いよく飛び出した。

それこそ、地上中を無酸素にしようとした元凶『カンデア』である。

 

 

四之宮「アイツが無酸素生命体か…」

 

憐耶「突然変異って言っても…」

 

ソーナ「信じられない……無酸素のバクテリアの集合体というのですか?あんな巨大に……!」

 

カンデア「プォオォォォォォーーーーー!!」

 

 

皆が口々に驚きの声を漏らす中、カンデアは背中から突き出た砲身のような2つの突起から赤色の光弾で攻撃してくる。

 

 

ギャスパー「わわっ!?」

 

四之宮「っ!マーリンブラスト、発射!」

 

 

ギャスパーと四之宮は急いで舵をきって回避すると、操縦席にある赤いスイッチを押す。

シグマリンに装備されている銃口から青色のレーザー、セイレーンからは緑色のレーザーが放たれる。

 

 

カンデア「パォオオオオ~~~…ピィィィ~~~…!!」

 

 

レーザーが直撃し、体から火花が散りながら怯むが、それでもカンデアは背中の砲身から赤色の光弾で応戦する。

 

 

四之宮「会長!このままだとラチがあきません!」

 

 

四之宮は舵をきりながら、後ろにいるソーナに呼び掛ける。確かにこのままヒットアンドウェイを続けても無意味に神経をすり減らすだけだ―――そう考えたソーナの判断は早く、W.I.T.でリアスと回線を繋ぐ。

 

 

ソーナ「リアス、海底戦用結界を使いましょう。効き目は2分45秒しかありませんが、出し惜しみしている場合ではありません。セイレーンの操縦は四之宮に任せるつもりなのであなた方も海中に出て、戦いましょう」

 

《リアス「わかったわ!ギャスパー、運転頼むわよ!」》

 

《ギャスパー「はっ、はいぃ!」》

 

 

通信を終えた後、リアス、ソーナ、憐耶、アーシアは海底戦用結界を纏うと、転移用の魔法陣を通って外へ出る。

 

 

一誠「ダイナァァァァーーーーーー!!

 

 

遅れて一誠は掛け声と共にリーフラッシャーを斜め上に掲げると、光に包まれてウルトラマンダイナに変身し、光を纏ったままシグマリンを透過して外に出た。

 

 

「「行くわよっ!/行きましょう」」

 

「「はいっ!」」

 

 

2人の『(キング)』が先陣をきると共に、ダイナ達も駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、大学に着いた我夢と木場は石室に白岩海岸の海水の解析結果についてをXIGナビで通して報告していた。

 

 

我夢「白岩海岸の海水を知人に調べてもらった結果、多くの産業廃棄物に含まれる成分が検出されました。8年前、極秘に海底に産業廃棄物が捨てられ、それが海流の影響を受けたものが怪獣の正体かと…。廃棄物の窒素、リンの影響で大量に発生した微生物が酸素を吸収して海底に無酸素空間が出来てしまった………。彼らを変異させるきっかけを作ったのは我夢、人間の作った環境かもしれません……」

 

石室「人間が自ら招いた災厄………ということか」

 

 

我夢の報告を聞いて石室は何とも言えない顔で呟く。

敵は来るものだけではなく、自らが作り出してしまうことであることを石室や我夢、木場は改めて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海底ではダイナ達とカンデアが激しい水中戦を繰り広げていた。

ダイナは勢いよく駆け出して助走をつけると、両足をつきだす。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~~…」

 

 

ダイナのドロップキックがカンデアに命中し、前足をバタバタしながら仰向けに倒れる。

ダイナはすかさず馬乗りになると、パンチやチョップの嵐を叩き込む。

 

 

カンデア「プォオォォォォォ~~~!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

しかし、カンデアの顔面両脇にある突起から噴射される毒素をダイナは顔面に真面に受け、怯む。

その隙にカンデアが起き上がると共に前足で蹴り飛ばされ、ダイナは海底に叩きつけられる。

 

 

リアス「くらいなさいっ!」

 

ソーナ「はっ!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~~…」

 

 

ダイナと入れ替わるようにリアスは滅びの魔力を、ソーナは水の魔力でカンデアに攻撃する。

2人の魔王の妹の強力な攻撃にカンデアは苦しげな声を出しながら怯む。

 

 

四之宮「くらえっ!」

 

ギャスパー「え、えいっ!」

 

カンデア「プォオォォォォォーーー!」

 

 

これを好機に四之宮とギャスパーも加わり、レーザーで攻撃する。

リアス達の集中砲火にカンデアは身動き出来ず、体から火花を散らすだけだ。

 

 

リアス「今よっ!決めなさいっ!」

 

ダイナ「ハァァァァ~~…デェアッ!」

 

 

リアスの指示に反応したダイナは素早く立ち上がると、両手を胸の前に合わせてそのまま掌を突きだし、虹色の光球『フラッシュ光弾』を放つ。

フラッシュ光弾は怯んでいるカンデアに真っ直ぐ向かっていく。

だがその時、

 

 

「ガァヒィィィーーーー!」

 

ダイナ「フッ!?」

 

『!?』

 

 

近くの岩肌から触角が着いた海蛇のような怪獣『ディプラス』が勢いよく飛び出すと、カンデアの前に立ち塞がる。

突然の出現にダイナ達は驚くが、フラッシュ光弾は既に直撃する寸前で、このまま2体ともまとめて爆発するだろう。

しかし、

 

 

ビシシシィウゥゥゥゥン……

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

フラッシュ光弾は大口を開けたディプラスの口へ吸収される。

そのままディプラスはオレンジ色に光る触角を動揺しているダイナに向けると、吸収したエネルギーで強化した赤色の光線を撃ち返す。

 

 

ダイナ「グアァァァァーーーーッ!!」

 

ディプラス「ガァヒィィィィィーーー!ガァヒィィィーーー!」

 

 

ダイナは胸元から火花を散らして、その場で膝をつく。

ディプラスは間髪入れずダイナに接近すると、彼の体を長い胴体で巻きつける。

 

 

ギシギシギシ…

 

ダイナ「グアァッ!!グアァァァァーーー!!」

 

 

長い胴体で体中を締め付けられ、ダイナは苦悶の叫びをあげる。

 

 

リアス「イッセー!」

 

アーシア「イッセーさんっ!」

 

ソーナ「…っ、助けようにもあんなに密着されてたら、兵藤君にも当たってしまう……!」

 

 

ソーナは目の前で苦しむダイナを見ながら悔しげに歯を噛み締める。

彼女の言う通り、このまま攻撃してはダイナを巻き込んでしまう。

 

 

カンデア「プォオォォォォォ~……!」

 

『っ!』

 

 

そんな時、立ち直ったカンデアが背中の砲身に似た突起から放つ赤色の光弾を放つ。

すかさずソーナ、憐耶の2人が前に出て、防御結界を展開するが

 

 

憐耶「きゃあっ!!」

 

ソーナ「くっ!」

 

アーシア「ああっ!」

 

リアス「うぐっ!」

 

 

光弾は防いだが勢いを殺せず、4人は砂を撒き散らせながら、まとめて後方へ吹き飛ばされる。

 

 

ダイナ「…ッ!ハァァァァァァァァーーーー……ン"ン"ン"ン"ン"ン"ン"ンンーーーーー……!!」

 

 

その光景を見て奮起したダイナは額のダイナクリスタルを赤く輝かせ、ストロングタイプにチェンジすると、強引に脱出しようと試みるが

 

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーー!!」

 

バチバチバチッ!!

 

ダイナ「グアァァァァァァァァーーーーーーッ!!」

 

 

ディプラスが身体中に電撃を走らせ、ダイナは先程よりも大きな苦悶の叫びをあげる。

締め付けと電撃という逃れようのない攻撃にダイナの体力はみるみる削られていく。

 

 

ダイナ「グアァァッ……」

 

[ティヨン]

 

 

ディプラスが離れた頃にはダイナは両膝をつき、遂にその場で倒れこんでしまった。

胸元のライフゲージも青から赤に点滅し始めた。

 

 

四之宮「くっそぉぉぉーーーー!!」

 

ソーナ「四之宮、おやめなさいっ!」

 

 

倒れる仲間達を見て激昂した四之宮は制止しようとするソーナの声を無視し、ディプラスに向かっていきながらセイレーンの武装で攻撃していく。

だが、

 

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーー!!!」

 

四之宮「…なっ!?」

 

ドガァァァァンッ!!

 

 

ディプラスの触角から放たれる赤色光線を避けきれず、まともに受けてしまい、セイレーンごと爆発四散した。

 

 

ソーナ「四之宮っ!!」

 

 

ソーナは海中でセイレーンの破片を見ながら悲痛の声をあげる。

四之宮は海中戦用結界を纏っていないので、恐らく助からない…。

目の前で眷属を失ったソーナはショックのあまり、その場で膝をつく。

 

 

リアス「許さないわ……!はあぁぁぁーーーー!!」

 

ギャスパー「ハイパーブルーレーザー、発射っ!!」

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーー!!」

 

 

幼馴染みの眷属の命を奪ったディプラス、カンデアに怒りを露にしたリアスは滅びの魔力を、ギャスパーは青色のレーザーを放つ。

しかし、この2つの攻撃でさえもディプラスの口に吸収されてしまう。

 

 

ディプラス「ガァヒィィィイーーーーーー!!!」

 

カンデア「プォオォォォォォ~~~…!」

 

リアス「ぐあぁっ!」

 

ギャスパー「きゃあっっ!!」

 

 

そのまま2体の反撃をくらい、リアスはまたもや後方へ吹き飛ばされ、ギャスパーのシグマリンは操縦不能となり、地中へ埋もれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上でもリアス達のピンチが迫っていることが伝わっていた。

 

 

《石室「どうしたっ!?リアス!ソーナ!応答しろっ!!」》

 

「「っ!」」

 

 

突然、応答不能となり、危機迫った石室の呼び掛けをXIGナビで聞いていた我夢と木場はリアス達の危機を察すると、XIGナビを閉じ、急いで大学の施設から出る。

 

我夢は走りながらエスプレンダーを取り出し、そのまま変身しようとしたが

 

 

我夢「…藤宮っ!?」

 

藤宮「…」

 

木場「くっ…!」

 

 

その道中、目の前に現れた藤宮に我夢と木場は思わず足を止めた。

木場は素早く聖魔剣を作り出すと、剣先を藤宮に向けながら身構える。

藤宮は『禍の団(カオス・ブリゲード)』並、もしくはそれ以上に危険視されているテロリスト。そんな人物が目の前にいるのだから、2人は警戒する。

 

 

藤宮「そんな顔をするなよ、我夢。お前達が本気であの生物を倒すつもりか…確かめに来ただけだ」

 

 

藤宮は2人にそう言うが、一向に警戒を解かない。

藤宮は気にも止めず、そのまま我夢へ問いかける。

 

 

藤宮「アイツが急に現れたのは誰のせいか……お前ももうわかっているだろう?」

 

我夢「アイツは……あれは進化の方向を間違った、地球の生態系を守るためには仕方のない―――」

 

藤宮「笑わせるなっ!」

 

 

そう言って、問いかけに答えようとする我夢の意見を一蹴する。

藤宮は不機嫌そうな声色で言葉を続ける。

 

 

藤宮「さんざん生態系を狂わせたのは誰なんだ? 進化の方向を間違えたのは人類だ。お前もそれがわかってるだろ? ただ、認めたくないだけのくせに…!」

 

 

藤宮の言う通り、カンデアは人類自らが招いた災厄だ。

進化の方向を間違え、発展の為にと海を汚した人類が受けるべき復讐かもしれない。

しかし、我夢にはだからと言ってこのまま見過ごす訳にはいかないという気持ちが勝っていた。

 

藤宮は我夢へ冷ややかな眼差しを向け

 

 

藤宮「行って勝て、我夢。人の愚かさを隠す戦いに……後で面白いものを見せてやる」

 

我夢「…」

 

 

そう告げる藤宮の瞳を我夢は見据えると、そのまま彼の隣を走って通り過ぎ、近くの物陰で赤い光を発しながらガイアへ変身した。

 

 

藤宮「俺にはもう迷うものはない。我夢…」

 

 

 

藤宮は海へと飛んでいくガイアの赤い光を見上げながらそう呟き、そのまま立ち去ろうとするが

 

 

木場「このまま帰れると思うかい?」

 

藤宮「…」

 

 

木場が首もとに聖魔剣の切先を立てる。

目の前にいるテロリストを易々見逃すほど、彼は甘くない。

 

 

カッ!

 

木場「!?」

 

 

しかし、次の瞬間。藤宮は青い光を発し、あまりの眩しさに木場は思わず目を奪われる。

 

 

木場「逃げたか…」

 

 

次に目を開けた時には既に藤宮の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「どっ、どうしよう……!」

 

リアス「くっ…!」

 

 

海底では、ギャスパーはパニック状態になっていた。

仲間は倒れ、殺され、更には自分が操縦するシグマリンも地中にすくわれ、身動きが取れない。

しかも、カンデアとディプラスは未だピンピンしており、自分達を殺そうと一歩一歩と迫ってくる。

 

そんな絶対絶命のピンチの時、

 

 

キィンッ!

 

ギャスパー「…っ!?…………ああっ……」

 

 

眩い赤い光が光を通さない暗闇の世界の深海を照らす。

思わず、ギャスパーは目を塞ぐが、段々光が晴れてくると、絶望だった顔は希望へと変わる。

それは自分が誰よりも尊敬するウルトラマンガイアだった。

 

ガイアは地中に埋まっているシグマリンをすくいあげると、海中へ解き放つ。

 

 

ギャスパー「我夢先輩…」

 

ガイア「…」

 

 

嬉しさのあまり目尻に涙を溜めるギャスパーの呟きにガイアは優しく頷く。

 

 

ガイア「…デュアッ!」

 

 

そして、次にガイアは地面で倒れているリアス達へ右手を向けると、黄色の糸状の光線が彼女達を包む。

黄色の光線で掴んだガイアはそのままシグマリンへ右手を向けると、彼女達はシグマリンの内部へ転送された。

 

 

カンデア「ピィィィィ~~~~…!」

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーー!!」

 

ガイア「…ッ、デュアッ!」

 

 

ガイアを威嚇する2匹の怪獣の鳴き声にガイアは振り向くと、ファイティングポーズを取る。

お互い間合いを取って身構えながら、様子を伺う。

ディプラスにいたってはとぐろを巻いて、様子を伺っている。

 

 

 

カンデア「パァアァァァァ~~~~~…」

 

ガイア「グアァァァァーーー!」

 

 

そして、次の瞬間。カンデアとガイアは同時に飛び出し、海底の地面を駆け抜ける。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~…ピィィィィ~~~…」

 

 

その勢いのまま、ガイアは右足を振り上げ、かかと落としをカンデアの脳天にくらわせる。そのままガイアは間髪入れず頭を掴んで、右手でチョップを叩きこむ。

 

 

ガイア「グオッ!?」

 

 

このままやられるカンデアではなく、反撃にとガイア頭突きで突き飛ばす。

相手は深海に慣れているからか威力はガイアの予想以上に強く、大きく吹き飛ばされる。

怯んでいる隙にカンデアは突進攻撃を仕掛ける。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~…」

 

 

ガイアは負けじとすぐさま体制を整えると、突進してくるカンデアを横へ避けて回避すると、左の回し蹴りを横腹を蹴りつけ、後ろへ回り込む。

 

カンデアも方向転換すると、上体をあげてガイアへ突進するが

 

 

ガイア「グアッ!ダァァァァァーーーー!!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~………」

 

 

ガイアは体全体を使ってカンデアを受け止めると、受け流すように後ろへ投げ飛ばす。

カンデアは地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーーー!!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

と、そこへ様子を見ていたディプラスが助太刀に入ろうと押し潰していたバネが跳び跳ねる様に飛び出す。

そのまま大口を開け、強靭な牙でガイアへ襲いかかろうとするが

 

 

ドォォンッ!

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーーー!?」

 

ガイア「?」

 

 

横から放たれたミサイルが胴体に直撃し、ディプラスは怯む。

ガイアはミサイルの放たれた方へ視線を送ると、それは先程助けたシグマリンによるものだった。

 

 

《リアス「我夢。この怪獣は私達が相手をするから、あなたは気にせず戦いなさい!」》

 

ガイア「…ッ、ダッ!」

 

 

シグマリンのスピーカーから聞こえるリアスの指示にガイアは頷くと、カンデアの方へ体を向ける。

一旦らファイティングポーズをとると、側転でカンデアの真横へ接近する。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ…!」

 

 

そして、そのままカンデアに飛びつくと、尻尾を掴んでズルズルと地面をひきずりながら後ろへ引っ張る。

 

尻尾から手を離したガイアは右の回し蹴りで蹴ると、

 

 

ガイア「デュアァァァァーーーー!!」

 

カンデア「パァアァァァァ~~…!ピィィィィ~~~…!」

 

 

その場で前転宙返りし、左のかかと落としをカンデアの脳天へ蹴りつける。

あまりもの激痛にカンデアは前足をジタバタさせながら、苦痛の悲鳴をあげる。

 

 

ガイア「ダッ!デヤッ!ダッ!」

 

 

ガイアはカンデアに休む間も与えず、右、左、右と回し蹴りとかかと回し蹴りを織りまぜたコンボで攻め立てる。

 

 

ガシッ!

 

ガイア「デュアァァァァーーーーーー!!」

 

 

そして、そのまま両手で頭を掴むと、思い切り後ろへ投げ飛ばす。

カンデアはまたもや地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

勢いついたガイアはカンデアの頭に掴みかかる。

だが、

 

 

ブシュュューーーーーー!!

 

ガイア「グアァァァーー!?」

 

 

カンデアの頭の両脇にある突起から噴射される毒素を顔面にくらい、ガイアは体制を崩して後ずさる。

そのチャンスにカンデアはすかさず背中の砲身から赤色の光弾を連射する。

 

 

ガイア「デュアッ!?グアッ!!」

 

 

光弾の嵐にガイアは体から火花を散らし、大きく後退していく。

あまりもの猛攻に体制を立て直す隙もなく、遂には足下の地面がぬかるんでいる場所まで追いやられた。

 

ガイアを追い詰めたカンデアは今までより強力な光弾を発射する。

 

 

ガイア「グアァァァァァァァァーーーー!!」

 

 

ガイアは体をくの字に曲げながら大きく後方へ吹き飛ばされると、そのまま頭以外、ぬかるんでいる地面へのめりこんでしまう。

 

 

カンデア「ピィィィィ~~~!!」

 

ガイア「ジョワッ!?グアァァァ…!」

 

 

カンデアは毒素を撒き散らすと、大きくジャンプし、ガイアを沈めようとのし掛かる。

ガイアはそうなってたまるかと両腕で必死に押し返すが、体の大半が地中に埋まっているせいで力が足りないのとカンデアの重さもあってどんどん地中へ沈んでいく。

 

 

ガイア「グアァァッ…」

 

ギャスパー「我夢先輩っ!!」

 

『!!』

 

カンデア「ピィィィィ~~~…」

 

 

終いにはガイアは完全に地中へ沈んでしまい、ギャスパーの悲鳴が響く。

カンデアは勝利を確信したのか、前足をバタバタとさせながれ鳴き声をあげる。

だが、

 

 

キィンッ!

 

カンデア「!?」

 

 

突如、地中から出てきた眩い赤い光がカンデアを後ろへ押し返す。

それは間違いなく、ガイアが放った起死回生の必殺技『クァンタムフラッシュ』だ。

 

 

カンデア「パァアァァァァ~~……!」

 

ガイア「デュアッ!!」

 

 

カンデアはすかさず背中の砲身でガイアが埋まっている地面を攻撃するが、ガイアは勢い良く上へ飛び出して回避する。

 

 

ギャスパー「よかったですぅぅーー!!」

 

リアス「ええ…」

 

 

地面へ降り立つガイアを見て、リアス達は安堵の表情を浮かべる。

しかし、彼女らが相手をしているディプラスはその隙を見逃さなかった。

 

 

ディプラス「ガァヒィィィィィィーーーーー!!」

 

『!?』

 

ガイア「ッ!?」

 

 

ディプラスは地面でとぐろを巻いて、バネの要領でリアス達の乗るシグマリンに襲いかかる。

ガイアの復活に気をとられていたリアス達は回避する時間もなく、ガイアも光線を撃っても間に合わない。

 

このままリアス達がディプラスの牙の餌食になろうとした時

 

 

ダイナ「…デェアッ!!」

 

[ティヨン]

 

ドガガガガガガガガガァァァァァァーーーーーーンッ!!

 

 

意識を取り戻したダイナが放ったガルネイトボンバーが炸裂し、ディプラスは声を出す間もなく爆発四散した。

 

 

ガイア「デュアァァァァーー…!!」

 

 

その光景を見て安心したガイアは目の前のカンデアへ顔を向けると、クァンタムストリームの体制に入るが

 

 

(藤宮「行って勝て、我夢。人の愚かさを隠す戦いに……」)

 

ガイア「…ッ!」

 

 

先程の藤宮の言葉が頭を過り、思わず手を止めてしまう。

カンデアを倒しても、それは人類が招いた“不都合”を抹消するだけでは…?そのことがガイアの脳裏に流れ、思わず倒すのをためらってしまったのだ。

 

 

カンデア「パァアァァァァ~~~~~…!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

ためらっている間にもカンデアは背中の砲身から赤色の光弾を放ち、ガイアを攻撃してくる。

ガイアは咄嗟に両腕を交差させて光弾を防ぐと、両腕を広げて、頭に赤い鞭状の光刃を形成すると、

 

 

ガイア「デヤァァァァーーーーッ、デュアッ!」

 

カンデア「ピィィィィイィィイ~~~~!!」

 

ドガガガガガガガガガァァァァァァーーーーーンッ!!

 

 

フォトンエッジを放ち、カンデアは体中が刃で切り刻まれた閃光が走ると、たちまち爆発四散した。

 

 

キラキラ…

 

 

飛び散ったカンデアの肉片は青い光の粒子となり、淡い光を放ちながら消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ひと足先に地上へ戻った我夢は海上を照らす町の明かりを1人眺めていた。

ちなみにG.U.A.R.D.の報告によると、カンデアが消滅した瞬間、全世界にある青い球体も消滅したそうだ。

これで、地上が無酸素になる危機は回避された。

 

 

藤宮「我夢」

 

我夢「っ、藤宮!」

 

 

そんな時、遠くから藤宮が近寄ってくる。

藤宮は我夢が眺めている町の明かりを一目見ると、我夢へ視線を向け

 

 

藤宮「残ったのは悪魔の光だ。地球の資源を奪い、傷付けながら作られた、愚かな光…。お前が守りたいのは本当にこんなものなのか?」

 

 

藤宮は冷ややかな眼差しでそう問いかけると、どこかへ歩き去っていく。

我夢は遠くなっていく彼の背中を見つつ、こう呟いた。

 

 

我夢「それでも…それでも僕はこの光を守り続ける」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、20分後。リアス達も地上へ降り立った。

初めての水中戦で苦戦しつつも何とか勝利を収めたが、彼らの空気は暗かった。

 

 

憐耶「四之宮先輩…」

 

『……』

 

 

その理由は四之宮が戦死してしまったことだ。

不登校気味で生徒会の仕事や悪魔契約の仕事をまともにやらない彼だが、ソーナ達、シトリー眷属やグレモリー眷属にとってもかけがえのない存在には変わらない。

 

 

リアス「ソーナ…辛いなら私が―――」

 

ソーナ「…いえ、リアス。四之宮は私の眷属なのです。彼の死は私で報告します。それが…主人である私のやるべきことなのです」

 

一誠「会長さん…」

 

 

悲しげそうに話すソーナを見て、皆はますます気持ちが沈む。ソーナはXIGナビで石村に連絡しようとしたその時

 

 

四之宮「おーーーーーいっ!!」

 

『!!?』

 

 

遠くから呼び掛ける声が聞こえ、皆はその方角を振り向く。すると、そこには死んだはずの四之宮がニコニコしながら駆け寄ってくる姿が見えた。

それを見た皆はいてもたってもいられず、一斉に四之宮に駆け寄る。

 

 

ソーナ「四之宮っ、あなたどうやって…!?」

 

四之宮「はい!実は怪獣の攻撃に当たった時、近くにあった海中戦用結界が起動して、俺を守ってくれたんですよ」

 

 

あの時、セイレーンには防御用結界のストックが余っていたことをソーナは思い出した。

 

 

一誠「でも、あの爆発で無傷ケガは無いんですか!?」

 

四之宮「おん?俺を誰だと思ってる?“不死身の龍様”だぜ?」

 

一誠「ああっ!?それ、俺の名セリフ!!」

 

四之宮「お前、そんなこと言ってるけど、あんまりこの作品で使ってねぇだろ?」

 

一誠「いや、メタいな!?」

 

 

そう言ってギャーギャー騒ぐ一誠といつものように飄々とした態度の四之宮。

あまりの出来事にしばらくポカンとしていたリアス達だったが、ソーナは目尻に涙を溜めながら静かに笑い

 

 

ソーナ「…本当に生きていて良かった……」

 

 

誰にも聞こえない声量で呟いた。

厳しいことで有名なソーナがあまり表で見せない優しさの気持ちそのものが現れたのだ。

 

 

リアス「イッセー、アーシア!祐斗と我夢と合流して冥界へ帰りましょう!」

 

「「おおーーー!」」

 

 

そうしているうちにリアスは一誠とアーシアを連れて去っていった。

 

 

憐耶「会長、私達も帰りましょう」

 

ソーナ「そうですね。行きましょう」

 

 

リアスの後を追うようにソーナ、憐耶、遅れて四之宮も帰路へと歩き始める。

その道中、四之宮が

 

 

四之宮「面白ェ…」

 

 

と呟きながら、妖しげな笑みを浮かべていたことは誰も気付かなかった。

その瞳が一瞬、いつもの黒色から禍々しい緑色になったことさえも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何事もなく、我夢達は冥界を満喫し、気付ければ夏休みも終盤に差し掛かっていた。

我夢達、グレモリー眷属はリアス一家からの見送りを受けた後、人間界行き列車に乗っていた。

 

 

我夢「驚いたよね~まさかグレイフィアさんがサーゼクス様の奥さんだったなんてね」

 

 

我夢の言葉にうんうんと頷くゼノヴィアとアーシア。

実は帰り際、ふとリレンクスの母親が誰か気になった我夢はサーゼクスに訊ねると、母親がグレイフィアだったことが発覚したのだ。

 

我夢自身、いつもグレイフィアを呼び捨てにするリレンクスが時折、『お母様』と呼び間違えたことを覚えている。

時々学校で先生をお母さんと間違えて呼んでしまうあれかと思ったが、間違いではなく本当だったとは思わなかった。

 

そんなことを思い出しながら、我夢はふと視線を隣の座席に座っている一誠の方へ向ける。

 

 

一誠「があぁぁぁぁ~~~!!」

 

 

一誠は目の前の椅子に置かれている大量の宿題を見ながら絶叫に近い声を出しながら頭を抱えている。

冥界に来てから色々戦ったり遊んでたりしたが、すっかり夏休みの宿題の存在を忘れていたのだ。

ちなみに他の皆は夏休みに入ったすぐに終わっており、終わってないのは一誠のみであり、現在リアスと木場が隣で教えている。

 

 

木場「イッセー君。ここの二次方程式間違ってるよ」

 

一誠「マジかぁ~~~……。部長。終わりそうにないんで、我夢に答え見させてもらってもいいっすよね?」

 

リアス「こら!宿題くらい、ちゃんと自分でやりなさい!」

 

一誠「勘弁してください~~~~~!!」

 

 

最後の望みを砕かれた一誠は悲痛な叫びをあげる。

我夢も最初は去年と同じように答えを見せようと思ったが、リアス達の様子を見て、あえて助け船を出さず、見守ることにした。

 

さて、ここから1時間以上かかるので暇である。

各々暇潰しが出来ており、ギャスパーはハネジローとゲーム対戦、前に座るアーシアとゼノヴィアは他愛ない会話をしており、朱乃は車窓から景色を眺めている。

 

 

我夢「(どうしようかな~…)」

 

 

暇潰しのアイデアが思いつかない我夢は悩んでいると、

 

 

小猫「……失礼します」

 

我夢「え?」

 

 

近寄ってくると思うな否や、小猫はいきなり向かい合う形で我夢のひざに座る。

突然のことで状況が飲み込めない我夢だったが小猫を見ると、彼女はいつの間にか出した猫耳をピクピク動かせ、尻尾を気分よさそうにフリフリを動かしている。

行動の意味がわからない我夢に小猫は見上げると

 

 

小猫「にゃん♪」

 

我夢「っ!?////」

 

 

と、可愛らしい満面の笑みを送る。

今まで彼女に対してそんなに異性の目を向けていなかった我夢だが、この笑顔を見て不覚にもドキッと胸が高鳴り、頭が真っ白になった。

 

これを見ていた一同は

 

 

『小猫ちゃんは我夢(君)のことが好きなんだ』

 

 

と一瞬で察し、微笑ましい気持ちに包まれる。

ただ、

 

 

朱乃「…」

 

 

この状況を好ましく思わない者もただ1人いるのは余談である…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数時間経ち、人間界の地下ホームに到着した一同は帰路に着こうと歩いていた。

久しぶりの人間界に一誠は大きく背伸びする。

 

 

一誠「う~~ん、着いた着いた」

 

我夢「色々あったけど、案外楽しかったね」

 

一誠「そうだな!さて、俺ん家に帰ろうぜ、アーシア―――」

 

 

と振り返りながらアーシアを呼び掛けようとした時、彼女は見知らぬ男に詰め寄られ、たじたじになっていた。

 

 

「アーシア・アルジェント……やっと、会えた」

 

アーシア「あ、あの……」

 

一誠「ちょっと待てよ」

 

 

ニコニコしながら詰め寄る男の前に割り込む一誠。

男は彼女を知っている様子だったが、当のアーシアは思い当たりがない様子だったので変質者か何かと思ったのだ。

しかし、男は笑顔を崩さず、アーシアに語り続ける。

 

 

「僕を忘れてしまったのかな?僕達は()()()出会ったはずだよ。ほら、この傷を見れば思い出すかな…?」

 

アーシア「…あっ!?」

 

 

そう言って、男が服の胸元を開いて大きな傷痕を見せた瞬間、アーシアは驚きの声を漏らしながら目を見開いた。

 

 

アーシア「その傷はもしかして……」

 

 

何か思い出したアーシアが問いかけると、男は頷き

 

 

ディオドラ「そう、僕はディオドラ・アスタロト。あの時は顔を見せられなかったけれど、僕は過去に君の『神器(セイクリッド・ギア)』に助けられたあの悪魔さ」

 

『っ!?』

 

 

その一言にアーシアのみならず、我夢達までも言葉を失う。

過去にアーシアは偶然倒れていた悪魔を助けたせいで“魔女”と忌み呼ばれ、協会を追放された。ディオドラはそのきっかけとなった悪魔だった。

 

 

リアス「…ディオドラ?ディオドラね」

 

一誠「部長、知ってるんすか?」

 

リアス「ええ、あなたも1度あったことあるわよ。若手悪魔の会合で…」

 

一誠「あっ!あの時にいた…」

 

 

リアスの話を聞いた一誠は6人の若手悪魔の中に確かにディオドラがいたことを思い出した。

 

 

リアス「それで、ディオドラ?一体何しに来たの?」

 

ディオドラ「はは、何しに来たってただお遊びで来た訳じゃないさ。僕と彼女にとって、()()()()()でね……。アーシア―――」

 

 

リアスの問いかけにディオドラはニコニコしながら答えつつ、アーシアを真っ直ぐ見つめると、次の瞬間、衝撃の言葉を告げる。

 

 

ディオドラ「―――僕の妻になってほしい。突然で困惑するかもだけど、僕は君を心から愛しているんだ」

 

アーシア「!?」

 

『!?』

 

 

夏が終わろうとする頃、ディオドラはアーシアに求婚したのだった。

暑かった夏から秋に移り変わろうとしている。

 

しかし、この瞬間の出来事に我夢は何か良からぬ波乱が始まろうとしたことを感じられずにはいられなかった……。

 

 

 




次回予告

2学期突入!
XIGの拠点『エリアルベース』が遂に登場!
懐かしき転校生と共にディオドラがアーシアに忍び寄る……。


次回、「ハイスクールG×A」!
「過去からの来訪者」
その笑顔に気をつけろ……!




今回、アザゼル先生が歌っていた歌は何の曲かわかるでしょうか?
それと四之宮はカラコンでも始めたんですかね?(すっとぼけ)

良かったら感想&コメントよろしくお願いいたします!


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第六章 体育館裏のホーリー
第34話「過去からの来訪者」


ドラマパートのみっす……はい


9月―――多くの学生、会社員諸々は夏休みが終わり、気持ちを新たにして、学業や仕事に取り組む季節。

大抵の人は以前よりも少し変化がある。

この少年もその変化があった1人だ。

 

 

我夢「……んにゅ?」

 

 

朝。カーテンの隙間から洩れる朝日を浴びて、我夢はパチリと目が覚める。

我夢は目を擦りながら近くに置いてあるスマホを見ると、『6時30分』と表示されていた。

まだ余裕がある時間であることを把握した我夢はまだ早いので2度寝しようとしたが、周りの景色を見て、違和感を覚えた。

 

我夢は起き上がって布団を畳むと、辺りをキョロキョロ見渡す。

 

 

我夢「あれ…?こんな綺麗だったっけ?」

 

 

我夢の部屋はお世辞とも言えない程掃除が下手で、周りはいつも私服や実験器具や何やらが散らばっており、この寝室も例外なく汚い。

しかし、今の寝室はどうだろうか?辺りに散乱していた私服はいつの間にか設置されているタンスに収納され、寝る前に読んでそのまま床へ放り投げていた参考書の山も本棚へ綺麗に収納されている。

まるで最初からこの状態であったように。

 

 

トントントン…

 

我夢「?」

 

 

整理整頓された寝室の景色に我夢は首を傾げていると、台所の方から包丁を切る音が聞こえる。

我夢は恐る恐る寝室のドアを開け、リビングに出ると、テーブルの上には出来立ての味噌汁、ご飯、焼き魚など、美味しそうな日本定番の朝食の数々が並んでいた。

 

我夢は目の前のごちそうに目を奪われていると、台所で調理している割烹着姿の朱乃から呼び掛けられる。

 

 

朱乃「あら、我夢君。おはよう」

 

我夢「おはようございます…」

 

朱乃「朝ごはんもうすぐで出来ますから、椅子に座って待ってて」

 

我夢「はーい…」

 

 

ニコニコ笑う朱乃に促され、我夢はいつものように椅子に座って待つ…………

 

 

我夢「――じゃないっ!?朱乃さんっ、どうしてここにいるんですか!!?」

 

 

ハッとなった我夢は目を見開き、椅子から転げ落ちそうな勢いで飛びはね、朱乃に問いかける。

すると、振り向いた朱乃は微笑み

 

 

朱乃「あらあら、うふふ……♪()()、昨日から一緒に住むことにしましたの♪」

 

我夢「あ、そうだったんですね…………いや!?聞いてないですよ、そんなこと!?」

 

 

彼女の話にうんうん頷いていた我夢だが、またもやハッとなり、思わず大声をあげる。

その反応に朱乃は人差し指を口元に当てながら首を傾げる。

 

 

朱乃「あら?昨晩、入居書とお手紙をお送り致しましたけど」

 

我夢「…っ、あの時のか…」

 

 

朱乃の言葉を聞き、我夢は昨日の夜、ポストに手紙か何かが入っているのを思い出した。

しかし、その時の我夢は一誠の無茶苦茶な遊びに付き合わされて疲労困憊だったので、取りはしたが中身を見ず、そのまま寝室で寝てしまった。

 

 

我夢「はあ…」

 

 

手紙を見なかった自分が悪かったが、突然の同居に頭を抱える。

こうやって食事や掃除をやってくれるのはありがたい。

しかし、彼女のアプローチは日を増すごとにきわどくなっている。普段の学校生活でもドキドキするのに、唯一落ち着ける場所である家に同居となれば、色々と理性が持たない。

 

そうして頭を悩ませていると、我夢は朱乃の言葉の中に何か引っかかることがあるのを思い出す。

 

 

我夢「そう言えば、朱乃さん。()()って言ってたんですけど、他に誰が―――」

 

小猫「…おはようございます」

 

 

朱乃に訊ねる最中、リビングへ誰かが入ってくる。

我夢は振り向くと、それは小猫だった。

 

 

小猫「……これからよろしくお願いします」

 

我夢「ああ……」

 

 

小猫にペコリとお辞儀をされ、我夢は苦笑いで答える。

夏から秋に移り変わって2人の同居人が増え、我夢は嬉しさと共に色々と問題が発生しそうと頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王学園。夏休みが終わったこの学校も既に始業式が終わり、2学期を迎えていた。

この時期は夏休み明けで色々イメチェンする―――所謂夏デビューする学生が大半を占めている。ある人は容姿が、ある人は性格が、更には大人の階段を上るなんて人もいる。

 

 

「「くぅ~~~~~っ!!!」」

 

 

当然何も変化がなく、ただ机に突っ伏して泣きわめく者もいる。言わなくてもわかると思うが、松田と元浜だ。

彼らは夏休み中に自分を変えようとナンパしたのはいいが、見事玉砕されたのは皆、ご存知であろう。

その様子を近くに座る我夢と一誠は苦笑いを浮かべる。

 

 

我夢「…ま、まあ、いいじゃないか。夏休みで変わる必要はないんだし……」

 

一誠「そ、そうだぜ?そのままだと安心するっていうか……」

 

 

慰める我夢に合わせて一誠も相槌を打つが、この2人の耳には全く届かない。

ガバッと立ち上がると、松田は一誠を羽交い締めにし、元浜は後ろから我夢を首絞めする。

 

 

一誠「痛っ!?何すんだよ!?」

 

松田「お前達にわかるかっ!!夏休み中、リアス先輩やアーシアちゃん達ときゃっきゃっうふふしてたお前達にっ!非リアの悔しさを味わえぇぇーーーー!!」

 

一誠「はぁっ!?俺達だって忙しかったんだぞ!」

 

元浜「()()()()()?さぞ、楽しくて忙しかったんだろうなぁぁぁーーー!!」

 

我夢「……誤解だって!ぐっ、苦しいぃぃぃー!!」

 

 

血の涙を流す2人の絞め技に我夢と一誠は「ギブ!ギブ!」と言いながら手でポンポンと叩くが、2人は緩めるどころか更に強くする。

すると

 

 

愛華「やれやれ、全く……。うるさいわね、童貞共」

 

 

と、言いながらニヤニヤ笑う愛華が現れる。

彼女の登場にムッとなった2人は我夢と一誠を解放する。

 

 

松田「何だよ、桐生。俺達を笑いにきたのか?」

 

愛華「ふふふ…どうせあんた達のことだから、意味のない夏を過ごしたんでしょ?負け犬の遠吠えなんて、みっともないわよ」

 

元浜「うっせ!」

 

 

嘲笑われてギャーギャー喚く2人を尻目に愛華は一誠に訊ねる。

 

 

愛華「ところで兵藤。最近、アーシアがたまに遠い目になるんだけど、何か合ったの?」

 

「「…っ」」

 

 

その質問に一誠のみならず、近くにいた我夢も顔を強張らせる。

理由はディオドラの求婚の件であることは2人にはすぐわかった。

あれからというものの、ディオドラは毎日の様にアーシア宛にラブレターが送られてきており、その度にアーシアが皆に謝り、リアスが処分している。

そのせいでアーシアは精神的に参っており、つい最近には学校の階段から落ちそうになった時もあった。

 

しかし、自分達が悪魔であることはバレてはいけない。

我夢と一誠は誤魔化すことにした。

 

 

一誠「あ、それがなぁ~~…俺にもわかんねぇんだよ」

 

我夢「そうそう!女の子特有の悩みなんじゃないかな?」

 

愛華「…そう」

 

 

とぼけた演技をする2人に言われて、愛華はそう呟くが、その顔は納得いかない様子だった。

半信半疑の愛華に2人はタジタジになりながらも、横目でアーシアへ視線を送る。

 

 

アーシア「えへへ…」

 

 

今、アーシアは楽しく女子生徒達と談笑しているが、その顔はどこかぎこちないのが我夢と一誠には感じられた。

彼女をここまで執拗に迫ってくるとなれば、最早ストーカーである。一誠達は日々、ディオドラへの怒りを募らせているのが実感できた。

 

 

キーンコーンカーンコーン…

 

 

そんなことを考えていると、始業を告げるチャイムが鳴り響く。我夢や一誠、席を離れていた他の生徒達も一斉に着席する。

しばらくすると、教室の扉が開かれ、担任の先生が入ってくる。

担任の先生はいつもの様に教卓に着くと朝礼をし、1日の流れを軽く話すのだが、今日は少し違かった。

 

 

「えー、このような時期に珍しいかもしれませんが、このクラスに新たな仲間が増えます」

 

『えええっ!?』

 

 

その言葉に皆は一斉に驚きの声をあげる。

学校となれば『転校生がくる』というイベントはあるかもしれないが、まさかこの時期、このクラスにくるとは誰もが思わなかったことだろう。

 

「男子?女子?」やら「どんな子だろう?」と期待を膨らませる声があがる中、担任の先生は教室の入口で待っているであろう転校生に入室を促す。

 

 

「失礼します」

 

 

扉の奥からそう一言聞こえると扉が開かれる。

そして、転校生が教室に入ってきた瞬間、

 

 

『うおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!』

 

 

クラスの男子生徒から歓喜の声が湧きあがった。

女子生徒は男子生徒の反応に呆れている様子だが、彼らがそうなるのも無理はない。

栗毛のツインテールにスタイル抜群の美少女だったからだ。

 

 

我夢「へ!?」

 

一誠「っ!?」

 

アーシア「え!?」

 

ゼノヴィア「どうして…?」

 

 

当然、我夢達も驚いて目を丸くしている。しかし、その反応は彼女の容姿にではなく、彼女が何故ここにいるかという驚きだ。

 

忘れるはずもないだろう。それはコカビエルが引き起こした聖剣の際、深く関わった……ゼノヴィアにとっては縁の深い人物だったからだ。

 

我夢達が呆気にとられ、クラスの男子生徒が歓喜の声をあげる中、その転校生はお辞儀をし、こう自己紹介した。

 

 

イリナ「紫藤 イリナです!皆さん、よろしくお願いします!」

 

 

転校生――紫藤 イリナはそう言ってニッコリと微笑む。

そう、彼女はあの聖剣事件の際にゼノヴィアと共に来日したあの紫藤 イリナだったのだ。

 

 

 

 

そして、3年生のクラスでも負けないくらい驚きの声があがっていた。

ここ、3年4組ではある1点に注目が注がれていた。

 

 

「嘘でしょ、あの四之宮が…!?」

 

「生きてたんだな…!」

 

「あれ…?これって現実か?」

 

四之宮「(俺はシーラカンスかよ……)」

 

 

クラスの生徒達のこそこそ話に四之宮は呆れた様子で内心ぼやく。

そう、この2学期になって今まであまり学校にきてなかった四之宮が登校したのだ。

 

学校行事をよくサボり、テストや課題の時にしか顔を見せないが、何故か進級は出来ている彼。

しかし、あまり周りとも面識が会わないせいでいつの間にか“行方不明説”やら“死亡説”、はたまた“M78星雲に帰っていった説”など生徒、教師含め、散々囁かされているのだ。

 

だが、こうして登校している。しかも特にイベントがない日に。そのせいで生徒はおろか、学園中の教師から本人確認される始末だった。

 

 

四之宮「はあ……」

 

散々な出来事の連続に四之宮は深くため息をつくと、胸元から学生証を取り出し、眺める。

 

 

四之宮「(…こいつ、どんだけ学校に行ってねぇんだよ。こんな目に会うなんて初めてだぞ!?……こいつに取り憑いたのは失敗だったか?)」

 

 

四之宮―――否、四之宮に憑依している人物は内心、呆れながら後悔する。

憑依した先でこんなこと出来事に巻き込まれるとは想定していなかったようだ。

 

 

四之宮「やれやれ…」

 

 

四之宮(に憑依した存在)はそう呟きながら肩を竦めると学生証を胸ポケットに入れると、窓を眺め、四之宮に憑依した出来事を思い出していく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月前、白岩海岸付近。

この日、四之宮はリアスやソーナ達と共に海底でカンデア、ディプラスと戦っていた。

 

しかし、次々と倒れていく仲間の姿を見て激昂した四之宮はディプラスに猛攻を仕掛けようとしたが、反撃に遭い、乗っていたセイレーンごと爆破されてしまった。

海底で爆破され、海中戦結界を纏っていない四之宮は確実に死んでいるだろう。

 

しかし、四之宮は幸運にも生きており、白岩海岸の浜辺に流されていた!

セイレーンが攻撃された瞬間、近くにあった海中戦結界が偶然誤作動して四之宮の体を纏い、爆発した衝撃で吹き飛ばされ、近くの海流に乗って浜辺に流されて助かったのだ。

 

 

(四之宮「かっ……はっ…!」)

 

 

仰向けの四之宮は苦しげに口から血を吐く。

四之宮の体はディプラスの攻撃やセイレーンの爆発の際の火傷にやられて深く傷ついており、最早虫の息だった。

 

――――このまま死を待つばかりか。段々血の気が冷めていく中、四之宮がそう諦めていると、

 

 

(「よお」)

 

(四之宮「……?」)

 

 

突然自分を呼ぶ声が近くに聞こえ、四之宮は一旦思考を止めた。

声のした方を見上げると、ゴツゴツとした皮膚に禍々しく光る緑色の眼。胸元には三日月のような形をした赤い傷痕。更に右手には日本刀の様な刀を持っている人型の怪人がこちらを見下ろしていた。

 

 

(四之宮「誰だ……あん、た……?」)

 

 

四之宮がそう問いかけると怪人は「ンッフッフッ…」と不気味に笑うと、紳士の振る舞いの如く、深くこうべを下ろし名乗った。

 

 

(ジャグラー「お初にお目にかかる。俺の名はジャグラスジャグラー、通りすがりの“風来坊”だ。以後、お見知りおきを」)

 

 

怪人――――ジャグラーはわざと腹立たせるような口調で話す。もうじき四之宮が死ぬのをわかっている上でだ。

 

 

(四之宮「…ふふっ、風来坊か……」)

 

 

しかし、対する四之宮は腹が立つどころか何故か心が安らいでおり、笑みすらこぼしていた。

これから訪れる“死”。それが彼の思考を麻痺させていたのかもしれない。

 

そんな彼の様子を見て、ジャグラーは可笑しそうに首を傾げる。

 

 

(ジャグラー「おいおい、これから死ぬってのに何がおかしいんだ?」)

 

(四之宮「……このまま死んだら、会長のうるさいお説教を聞けなくなるからいいかなって………。まあ、会長の料理…食えなくなるのが心残りだけどなぁ………」)

 

(ジャグラー「ハハッ!死ぬ寸前まで食い物の心配か…!面白ェ!」)

 

 

彼の話を聞いて興味を持ったジャグラーは可笑しそうに笑うと、四之宮の傍で跪き、提案をする。

 

 

(ジャグラー「…中々、面白い奴だ。このまま見殺しにするにはもったいねぇ…。なあ、俺と“一心同体”にならねぇか?そうすればお前の命は助かる……どうだ?」)

 

(四之宮「…ああ、お前に俺の命を託すよ。頼む…」)

 

(ジャグラー「お前の体を使って好き放題するかもしれねぇんだぞ?それでもいいのかぁ~?」)

 

 

瞳を怪しく歪めながら挑発するような口調で忠告するジャグラーだが、四之宮は首を縦に振る。

四之宮の揺るぎない信念を確認したジャグラーは立ち上がると、右手に持っている刀『蛇心剣(じゃしんけん)』を逆手に持ち替え、その切っ先を四之宮の体へ向ける。

左手を持ち手に携えながら、ジャグラーは呪文の様な詠唱を始める。

 

 

(ジャグラー「星の瞬く狭間の闇よ……。暗黒に染まりし我を小さき器と1つにしたまえ………ハァァァーーーーーッッ!!」)

 

 

詠唱を唱え終えたジャグラーは蛇心剣を勢いよく天へ掲げる。

すると、掲げた切っ先の空間から霧状の闇が溢れ、ジャグラーはその闇に包まれると、霧と同じ色の球体になり、四之宮の体の中へ飛び込んだ。

 

 

(四之宮「っ!?」)

 

 

球体になったジャグラーが体内に入り込んだ衝撃で四之宮は一瞬ビクンと体を反らすと、再び倒れる。

 

そして、1秒後には意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がると自分の体をまじまじと見る。

憑依した影響なのか、重傷だった体の傷は塞がっており、先ほどまで流れていた血も止まっている。

四之宮――いや、ジャグラーは体が無事であることを確認すると、ジャケットのファスナーを開き、胸元の学生証を取り出して中身を見る。

 

 

(四之宮「駒王学園3年4組、四之宮 龍……くっ、ハハハ…ハッハッハッ…ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハァァァァァーーーーーッ!!」)

 

 

四之宮と一心同体となったジャグラーは何が可笑しいのか、高らかに笑い出す。

まるで、自分の目的が達成出来たかのように…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四之宮「(―――と、思っていた時期があったが…)」

 

 

思い返した四之宮はうんざりすると、窓から視線を自分の机の上へ向ける。

 

 

四之宮「(こいつが思ってた以上にぶっ飛んでいる奴だったのは予想外だったが、()()()()()()()()()()だけでも良しとしよう。…まあ、記憶も共有しているから生活に困ることは無いしな……)」

 

 

四之宮は内心少し後悔しつつも自分をフォローする。

そう、全ては自分の思惑の為に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「紫藤 イリナさん、私達はあなたの来校を歓迎するわ」

 

 

場面は変わり、放課後。

旧校舎にあるオカルト研究部の部室では、オカルト研究部はもちろん、アザゼル、ソーナが集まり、イリナを歓迎していた。

 

イリナの話によると、彼女は天界側の支援メンバーとしてミカエルに派遣され、この学園に転校してきたという訳だ。もちろん、XIGの隊員としてだ。

イリナは一礼して、

 

 

イリナ「はい、皆さん!初めての方もいらっしゃれば、再びお会いした方のほうが多いですね!紫藤 イリナと申します!天使様の使者として、XIGの隊員として精一杯頑張りたいと思います!これからよろしくお願いします!」

 

パチパチパチパチ…!

 

 

そう挨拶すると、皆は歓迎の拍手を贈る。

聖剣事件の時は色々あったが、今こうして破滅招来体と戦う仲間として来てくれるのは心強いと我夢は思った。

 

 

ゼノヴィア「イリナ、元気そうで何よりだよ」

 

イリナ「ゼノヴィアこそ!お久しぶり~!ごめんね、酷いこと言って…」

 

ゼノヴィア「いや、あの件については私も悪いさ。でも、こうして再び会えただけで嬉しいよ」

 

 

2人は再会の握手を固く交わす。

最後に会ったのが半ば喧嘩気味に別れた時と聞いたので我夢達は心配してたが、それも杞憂な様である。

 

2人は微笑み合うと、イリナは近くにいたアーシアに目が合い、頭を下げる。

 

 

イリナ「アーシアさん!この間は『魔女』だなんて言ってごめんなさい!」

 

アーシア「気にしてません。これからは同じお友達、同じ主を敬愛する同士として仲良くできたら幸いです」

 

「「「ああ、主よ!」」」

 

 

和解した3人は喜びのあまり神へ祈りだした。

お互い色々とあったわだかまりが消え、嬉しそうに笑う3人を見て、我夢達は自然と笑顔になる。

 

笑っていた我夢だが、ふいに何か思い出すと、隣にいた一誠に耳打ちする。

 

 

我夢「イッセー

 

一誠「ん?

 

我夢「イリナって神が死んだことを知らないんだよね?

 

一誠「ああ、それがどうしたんだよ………はっ!?

 

 

小声で話す我夢の言葉を聞いて、一誠は彼が何を言おうとしているのか察した。

イリナは人一倍信仰心が強い……。ゆえにもしそれがバレたりでもしたら、精神が崩壊して大変なことになってしまう。

 

 

我夢「だから、イリナの前では神がいるってことにしよう

 

一誠「それがいいかもな…

 

 

2人はこれが彼女の為だと思い、口裏を合わせる。

だが、

 

 

アザゼル「お前さん、『聖書に記されし神』の死は知っているんだろう?」

 

我夢「ええっ!?」

 

一誠「せ、先生っ!?そりゃ、ねえっすよ!?」

 

 

そんな心配をお構い無しにイリナへ訊くアザゼルに我夢と一誠は目を丸くしながらツッコむ。

そんな2人の反応にアザゼルは嘆息すると、

 

 

アザゼル「…アホか。ここに来たということは、そういった情報も頭に入れているのも承知のはずだ。この周辺の土地は三大勢力の協力圏内でも特に重要視されている場所の1つだ。ここに関係者が来るってことは、そういった情報の差違がないように事前に知ってるのは当然だろ?」

 

「「なるほど…」」

 

 

アザゼルの説明に我夢と一誠は納得した様に掌にポンと相槌を打つ。イリナもうんうんと頷いている。

そして、彼女は口を開き

 

 

イリナ「2人共、安心して。主の消滅は認識してるから……。でも、ミカエル様に知らされた時にはそれはそれはショックで、7日7晩寝込んでしまったけどね…」

 

 

と、遠い目を浮かべながら話す。

今は平気であるが、この様子から余程立ち直るのは苦難であったことが伺える。

 

 

アザゼル「…んで、それからは教会からミカエルの遣いになった訳か」

 

イリナ「はい。その際に天使にさせてもらったんです!」

 

アザゼル「…?天使だと…?」

 

 

天使になる。その言葉が気になり、怪訝そうにするアザゼルを見て、イリナは「見ててください」と言ってその場でお祈りのポーズをする。

すると、彼女の体が輝き、頭上には天使の輪っか、背中からバッと勢いよく白い翼が生えた。

 

これには皆驚き、唖然とするが、アザゼルは顎に手をやりながら冷静に質問する。

 

 

アザゼル「…お前、天使化したのか?」

 

我夢「天使化?天界にもそんなテクノロジーがあるんですか?」

 

アザゼル「いや、実際にはなかったはずだ。理論的なものは天界と冥界の科学者の間で話し合われてはいたが……」

 

 

じゃあ何だろうと考え込むアザゼルと我夢の疑問にイリナが答える。

 

 

イリナ「実はセラフの方々が悪魔や堕天使の用いている技術を転用して、ミカエル様の転生天使になったんです」

 

アザゼル「なるほどな……『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の技術を使った訳か」

 

 

アザゼルは興味深そうに呟く。

ちなみに悪魔がチェスの駒に対して、天使はトランプに例えているらしい。

転生天使とはいえ、神の消滅で天使は誕生出来なくなっているので、これで天界側の人員問題も解決するだろう。

 

 

我夢「それで、イリナはどの札になったんだ?」

 

 

トランプといってもカテゴリー、スート…色々種類がある。

どうでもいいかも知れないが、気になった我夢は問いかけると、イリナはえっへんと胸を張り

 

 

イリナ「私はA(エース)よ!ふふふ、ミカエル様のエース天使として光栄な配置を頂いたのよ!」

 

 

と目を輝かせながら言うと、左手の甲を見せる。

そこには「A」の文字が浮かび上がっていた。

 

 

一誠「新たな人生の糧はミカエルさんかぁ…」

 

ゼノヴィア「うん。でも、自分を見失わないよりかはマシさ」

 

木場「そうだね。まあ、『A(エース)』といったらギロチンばっかり使いそうな気がするけどね」

 

 

誇らしげに語る彼女を見て、一誠達は各々呟く。

その中で木場が意味不明なことを言っているが、それは無視しておこう。

 

 

ソーナ「その辺りの話は後にして、今日は紫藤 イリナさんの歓迎会としましょう」

 

リアス「ええ、そうね!」

 

ピピッ…!

 

 

ソーナの提案にリアスは賛成した瞬間、リアスの左手首に着いているXIGナビの通知音が鳴る。

リアスは突然何だろうと思いながらXIGナビのモニターを開くと、それは石室からだった。

 

 

《石室「リアス。今、そっちにはイリナとソーナがいるか?」》

 

リアス「はい、いますけど……何か御用で?」

 

《石室「ああ、実は“例のやつ”が完成したんだ」》

 

リアス「えっ、本当ですか!?」

 

『?』

 

 

嬉しそうに頬を緩ませるリアスに石室は頷く。

事情を知っている素振りを見せる我夢、朱乃、ソーナ、アザゼル以外の皆は首を傾げる。

 

 

《石室「とりあえず、来てくれ。他の皆にも説明する。話はそれからだ」》

 

リアス「了解」

 

 

リアスは石室に短く返事すると、XIGナビのモニターを閉じる。

そのままリアスは歩き出すと、部室に出入りする扉の前に立つと、ドアノブに手をかける。

 

 

リアス「確か…こうだったかしら?」

 

 

リアスはぶつぶつ呟きながらドアノブを右2回→左1回→右3回の順に回す。

そして、最後にドアノブの鍵穴を押すと、扉は自動的に開いた。

 

 

一誠「なんじゃ、こりゃ…」

 

 

扉の先はいつも見ている旧校舎の廊下ではなく、何もない真っ白な一本道の空間が広がっていた。

事情を知らない一誠達が驚愕していると、リアスは皆に振り向き

 

 

リアス「みんな、ついてきてちょうだい」

 

 

そう告げると、我夢、ソーナ、朱乃、アザゼルは中へ入っていく。

呆気にとられていた一誠達もすぐに気を取り戻すと、恐る恐る後に続いて入ると、一同はリアスを先頭に歩き出した。

 

 

イリナ「リアスさん?これからどこに行くんですか?」

 

 

その道中、どうしても気になったイリナが不思議そうに訊ねる。その疑問は一誠、木場、小猫、アーシア、ゼノヴィア、ギャスパーも同じだ。

すると、リアスは歩きながらイリナを横目で見て、答える。

 

 

リアス「ええ、これから行くのはやっと完成したばかりのXIGの本拠地よ」

 

『!?』

 

 

彼女の返答に事情を知らない一同は驚く。今までXIGは基地と呼べる場所は存在しなかった。

それが完成したとなれば、XIGはより連携がとれる組織として成長できるだろう。

 

事情を知らない一誠達がどんなところだろうと胸に期待を膨らませていると、いつの間にか真っ白い金属質の扉の前に着いた。

 

 

リアス「開けるわよ」

 

 

リアスがそう言って扉を開けて先へ進むと、皆は後に続く。

真っ白い空間から抜けた扉の先は……

 

 

アーシア「わあぁ……」

 

一誠「すっげぇぇ~~~~……!!」

 

 

無線や何かの機械類が置かれているいかにも防衛軍の指令室っぽい1室に着いた。

しかも窓から見える景色は青空が広がっており、見たことがない形をした輸送機がこの基地へ行き交いしている。

それを見たゼノヴィアはハッと気付いた。

 

 

ゼノヴィア「もしかすると、ここは空の上なのか?」

 

『え!?』

 

石室「そうだ」

 

 

ゼノヴィアの仮説にその通りだと答える人物が1人。

皆は声のした方を向くと、石室がいつの間にか立っていた。

石室は口を開き、

 

 

石室「よく来てくれた。ようこそ、XIGの前線基地『エリアルベース』へ。完成したばかりここの船への搭乗を心から歓迎する」

 

 

と我夢達へ歓迎の言葉をかける。

ここは赤道上に浮遊している全長600mの空中母艦、エリアルベースだ。

天使、堕天使、悪魔の3種族に加えて、人間の技術力を結集して密かに作り上げたXIGの基地で、職員は種族問わず働いている。

 

石室の話によると、我夢達がいるこの部屋は『コマンドルーム』と呼ばれる指令室で、ここではXIGの最前線を担っている。

この船にはもちろん戦闘機も配備されており、『XIGファイター』、『XIGイーグル』、『XIGウイング』といった戦闘機や輸送機、戦車等多くある。

 

他にもカフェテリアやトレーニングルーム等の娯楽施設、整備場や格納庫、更には隊員全員の私室もあるらしい。

 

ちなみにエリアルベースの設計には我夢も関わっており、この船を浮遊させている反重力浮遊装置『リパルサーリフト』は彼が開発したもので、XIGの戦闘機にも搭載されている。

リパルサーリフトは我夢が夏休み中に量子物理学と三大勢力の技術力を組み合わせ、応用したものだと聞き、リアス達が感服したのは余談だ。

 

長々と話し終えた石室は「さて…」と呟くと、遠くのデスクに置いてある白い大きな四角形の紙箱を我夢達がいる中央のテーブルまで持ってくる。

そしてその紙箱を開くと、中に入っていたのは「紫藤 イリナ これからよろしく!」と書かれたチョコプレートが乗ったショートケーキだった。

 

石室は職員に持ってきたもらったジュースが入ったグラスを後からやって来た生徒会含め、皆に手渡し、

 

 

石室「紫藤 イリナの駒王学園の転入、そしてXIGへの入隊を記念して、乾杯っ!」

 

『乾杯っ!』

 

 

その合図と共に皆はグラスで乾杯し、イリナの歓迎会を快く行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから我夢達は迫る2学期の大イベントの1つ、体育祭に備え、練習に励んでいた。

ちなみに一誠はアーシアとペアで2人3脚、我夢とイリナは借り物競争に出る。一誠は当初、別の競技に出ようとしたが愛華の(無理矢理な)計らいがあって、アーシアと2人3脚に出ることになってしまった。

 

その間に色々ありながらも我夢達は学園生活を順調満帆に送っていたが、3日後の放課後。招かねざる客がオカルト研究部の部室へやって来た。

 

朱乃はその客の前に淹れたての紅茶を出す。

 

 

ディオドラ「ありがとう」

 

朱乃「いえ…」

 

 

招かねざる客―――ディオドラは軽く会釈すると、朱乃も軽く会釈する。しかし、その顔はいつもの様にニコニコしてなく、ディオドラを軽蔑するような冷たい眼差しだった。

彼に対する不快感はこの場にいる我夢達も同じだ。アーシアを散々困らせ、私生活にまで悪影響を及ぼしている張本人が悪気もなく、ノコノコとやって来たからだ。

特に一誠は苛立ちのあまり、血が滲むほど拳を強く握りしめている。

 

 

リアス「…それで?アポもなしに何の用かしら?」

 

 

リアスは眉間にしわを寄せながら正面のソファーに座るディオドラに問いかける。ディオドラはカップに注がれている紅茶を1口飲むと、話を切り出す。

 

 

ディオドラ「リアスさん、単刀直入に言います。あなたの『僧侶(ビショップ)』アーシア・アルジェントと、僕の『僧侶(ビショップ)』とトレードをお願いしたいのです」

 

 

それを聞いたリアスはやはりと言った表情を浮かべる。

トレード――それは『(キング)』同士で同じ駒を交換できるレーティングゲームのシステムである。

ディオドラはアーシアに求婚するまで執着しているのだから、当然トレードを用いて我が物にしようとするのは想定できる。

 

 

アーシア「…」

 

ゼノヴィア「…っ」

 

 

アーシアは困惑した表情を浮かべ、我夢達は更にディオドラへの怒りを募らせる。

 

 

ディオドラ「こちらが用意するのは―――」

 

リアス「待って」

 

 

そんな彼らを尻目にディオドラはトレードをする前提で自分の眷属が乗っているカタログを取りだそうとした矢先、リアスが制止する。

爽やかな笑顔のまま首を傾げるディオドラにリアスは

 

 

リアス「あなたが()()()()()()()()()()()、彼女への愛情は確かにわかったわ………でも、ごめんなさい。私はトレードを受ける気はないの。それはあなたの眷属が釣り合わないとかじゃなくて、純粋にアーシアを手放したくないから。私にとって、大事な眷属であり、もう1人の家族だから」

 

 

と若干ディオドラへの怒りを見せつつ、はっきりと断る。

リアスは他の悪魔に比べて、眷属への愛情が深い。眷属を家族のように接する彼女にとっては眷属を手放すなんてマネは決してしない。

それにアーシアを困らせる原因であるこの男に引き渡すなんて絶対に許さないだろう。

 

 

ディオドラ「それは能力?それとも彼女自身の魅力?」

 

 

普通ここまで言われたら誰でも食い下がる。しかし、この男、ディオドラは執念故か、それでも尚食い下がらず、問いかける。

その問いかけにリアスは考えるまでもなく、はっきりと言い放つ。

 

 

リアス「両方よ。私は彼女を妹のように思っているわ」

 

アーシア「部長さんっ!」

 

 

依然譲らない姿勢のリアスの言葉にアーシアは口元に手をやり、嬉しそうに瞳を麗わせる。

リアスが妹として思われているのが嬉しいのだろう。

 

 

ディオドラ「……わかりました。今日はこれで帰ります」

 

 

この様子を見て、さすがにこれ以上食い下がっても無駄だとわかったのかディオドラは立ち上がる。

このまま帰ると思ったが、「けれど…」と呟くとアーシアに近寄り、その場で跪くと、彼女の手を取る。

 

 

ディオドラ「アーシア、僕は諦めない。大丈夫、誰が何と言おうと運命は決して僕たちを裏切らない。必ず君を迎えにくるから」

 

アーシア「あっ…え…!」

 

 

困惑する彼女に愛を誓うように告げると、ディオドラは手の甲に接吻しようと口を近付ける。

あたふたするアーシアだが、ディオドラの唇は徐々に近付いていき、あと数ミリの距離に近付いた瞬間、

 

 

一誠「おい……いい加減にしろよ」

 

 

額に青筋を立てた一誠が怒りが籠った声で言いつつ、彼の肩をグイッと力強く引っ張ってアーシアの手から離していた。

だが、ディオドラは依然とした爽やかな笑顔を浮かべたまま一誠を振り向くと、見上げた姿勢のまま言う。

 

 

ディオドラ「放してくれないか?救世主気取りの薄汚い化け物くんに触られるのはちょっとね。回れ右してお座りしてくれないかな?」

 

一誠「…っ!てっめぇぇぇぇーーーーー!!」

 

 

ディオドラの軽蔑の言葉にカチンと頭にきた一誠は左手で胸ぐらを掴んで無理矢理立ち上がらせる。

その行動に我夢達は切羽詰まった表情で止めにかかる。

 

 

リアス「よしなさい!イッセー!」

 

我夢「ここでコイツを殴っても意味がないだろう!」

 

ディオドラ「ははっ!これが本性さ!ウルトラマンも所詮、破滅招来体と変わらない汚わらしい侵略者なんだよっ!」

 

一誠「っ、言わせておけばぁぁぁぁーーーーーーー!!」

 

 

なおも嘲笑うディオドラに更に怒りを爆発させた一誠は仲間達の制止を振り切り、拳を振り上げた。

その時、

 

 

パチンッ!

 

『っ!?』

 

ディオドラ「…」

 

 

誰かの手がディオドラの頬をひっぱたく。皆がひっぱたいた張本人へ顔を向けると、今までにないくらい眉間にしわを寄せたアーシアが平手打ちした姿勢になっていた。

アーシアはぶたれた頬が赤くなっているディオドラに続けて

 

 

アーシア「そんなこと……言わないで下さいっ!!」

 

 

と言い放つ。穏やかで敵・味方問わず優しく接する彼女が今まで見たことがない怒っている姿に、いつの間にか一誠は怒りを鎮め、辺りはシーン…と静まっていた。

 

 

ディオドラ「…ふふっ、そういったところも気にいったよ」

 

 

しかし、ディオドラはひっぱたかれて痛いはずなのに笑みを止めず、反省するどころか逆にご褒美と言わんばかりに嬉しそうにする。

ここまでされても笑みを浮かべて嬉しそうに笑みを浮かべ続ける彼に我夢達は最早病気と言える狂気を感じた。

 

 

一誠「…おい、いいからさっさと帰れよ」

 

ディオドラ「君に言われなくてもそうするさ」

 

 

薄気味悪いと思いながらそう促す一誠にディオドラは冷たく返すと、足下に魔法陣を展開しようとしたその時、

 

 

ピピッ!

 

アザゼル「おっ」

 

 

とアザゼルのスマホから着信音が鳴る。

アザゼルはスマホから送られたメールの内容を確認すると、リアスとディオドラの顔を見合せ、口を開く。

 

 

アザゼル「リアス、ディオドラ、丁度いい。5日後に行われるゲームの対戦相手が決まった。次の対戦相手はお互い、目の前にいるやつだ」

 

『っ!』

 

 

アザゼルにそう告げられ、我夢達に緊張が走る。我夢達もいつかゲームでディオドラを完膚なきまで叩きのめそうとは考えてはいたが、まさかこんな早く望みが叶う機会がくるとは思わなかった。

 

一誠とディオドラは不敵な笑みを浮かべながらお互い睨み合い

 

 

ディオドラ「ウルトラマンダイナ、兵藤 一誠。次のゲームで君を倒すよ」

 

一誠「それはこっちの台詞だ。その言葉、後で後悔させてやるからな!」

 

 

そう宣戦布告すると、ディオドラはそのまま帰っていった。

こうして、我夢達はアーシアを渡さない決意を固めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の帰り、一誠とアーシアはすっかり夕暮れになった町中を歩き、帰路についていた。

ちなみにいつも一緒に帰っている我夢はXIGのメカの微調整があるので、ここにはいない。

今日は兵藤家にお邪魔することになっているのだが、遅くとも夕飯が出来るまでには帰るそうだ。我夢の頭脳明晰さにかかれば、遅くなる心配もないだろう。

 

2人は横に並んで歩いていると、アーシアはチラッと横目で一誠の顔を見ると、声をかける。

 

 

アーシア「…イッセーさん」

 

一誠「ん?」

 

アーシア「私のこと、どう思っています?」

 

一誠「そりゃあ、友達として―――」

 

アーシア「いえ、私のこと、異性としてどう思ってます?」

 

 

当たり前の返答をする一誠だったが、アーシアにそうじゃないと言われ、更には問いかけられた内容に呆気にとられる。一誠は顎に手を当てて、考えて始める。

 

 

一誠「(どうすりゃいいんだ…!)」

 

 

一誠は彼女が自分に1人の男として好きなのは理解はしている。正直なところ、嬉しい。

しかし、“交際相手に自分が本当に相応しいのか?”という疑問が頭にのし掛かり、迷っているのだ。

天使のような優しさを持つアーシアと短期な自分――それを比べると、付き合ったとしても彼女自身を不幸にさせてしまうかもしれない。だから、彼女のことを“妹”のように思うことで迷いを振り切り、今まで誤魔化していたのだ。

 

散々考え、答えを絞りだした一誠は返答を待つアーシアに向かって口を開く。

 

 

一誠「…その、俺も部長と同じようにアーシアのことを妹と思っている」

 

アーシア「っ!?」

 

 

顔をそむけながらそう答えると、アーシアは目を見開く。

――これでいい。これが最善だ。こう言えば明日も今まで通り過ごせる…。

一誠は内心そう思ってアーシアへ顔を向けると、動揺する。

 

 

一誠「…っ!?」

 

アーシア「…」

 

 

アーシアは悲しげに瞳から涙をポロポロと流していた。ドラマとかで見る告白して振られた女の子のように。

アーシアは「あっ…」と気付いて声を出すと、涙を手で拭う。知らず知らずのうちに流れていたようだ。

 

 

アーシア「…そう、ですよね……。弱くて、部長さんみたいにカッコよくない私なんて、“妹”にしか見えませんよね……」

 

一誠「ア、アーシア…」

 

アーシア「すみません、イッセーさんっ!私、先に帰りますので!」

 

 

動揺する一誠を置いてアーシアは足早にその場から駆け出した。悲しげな表情で涙をポロポロ流しながら…。

その顔を一瞬だけ見た一誠は彼女が走っていった方を見ながら前髪をくしゃっと手で掴み

 

 

一誠「俺に、俺に何が出来るって言うんだ…!」

 

 

悲痛な表情で弱々しく呟くが、誰1人答える者はおらず、ただ、カラスの鳴き声が虚しく聞こえるだけだった…。

 

 

 

 




次回予告

少年の住む町にある謎の遺跡。
襲来する宇宙雷獣!
破滅招来体は人々の心まで閉ざしてしまったのか?

次回、「ハイスクールG×A」
「石の翼」
その時、石室コマンダーは!?


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第35話「石の翼」

宇宙雷獣 パズズ 登場!


―――僕たちの街には昔、空から落ちてきたと言い伝えられている不思議な石がある。

僕たちはその石を『石の翼』と呼んで、遠い星から来た宇宙船の翼だったんじゃないかと想像したり、石の翼を持つ船が宇宙へ旅することを考えながら、いつまでも空を眺めていたりした。

 

――――でも、もうそんな子供の時間は、終わってしまったんだと思う……。

 

 

「さようなら…」

 

 

少年は悲しげな表情で『石の翼』の傍の地面に掘った穴に入れた何かに別れを告げ、上からスコップで土をかけると、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場面が変わって翌日。

現在、我夢はエリアルベースにある自室にいた。

何故エリアルベースにいるのかと言うと、我夢が所属するXIGは最低でも1人週に2回への滞在が義務付けられているからだ。

 

我夢はデスクに置いたパソコンに向かい合って何かを作っていた。

 

 

カタカタ……タンッ!

 

我夢「…これでよし!」

 

 

素早いタイピングでキーボードのキーを打ち込むと、我夢は達成感に満ちた表情を浮かべる。

すると、

 

 

小猫「……先輩?何してるんです?」

 

我夢「あ、小猫。丁度よかった。見せたいものがあったんだ」

 

 

そこへ部屋に入ってきた小猫が興味深そうに訊ねてくる。我夢は椅子に座ったまま彼女の方へ体を向けると、先ほどタイピングを打ち込んでいたパソコンの画面を彼女へ見えるように動かす。

小猫はパソコンへ覗くように見る。

 

 

小猫「?」

 

《「zzz…」》

 

 

パソコンの画面には、近未来的な戦闘機をデフォルメして、目と足とつけた可愛らしい3Dモデルのキャラクターが鼻いびきがかきながら寝ていた。

 

 

小猫「…何ですか、これ?」

 

我夢「ああ、僕が作った人口知能さ……名付けてPAL(パル)!今後のXIGの活動に役立てるかもと思って昨日から徹夜で作ってたんだ」

 

小猫「おお~~!」

 

 

我夢の説明を聞いた小猫は目をキラキラと輝かせる。

小猫は見た目の無表情さに反して、案外こういうメカやヒーローものが好きだったりする。

彼女の好奇心満々な顔を見て微笑んだ我夢はパソコンの画面に目をやり、PALへ声をかける。

 

 

我夢「PAL、起きて」

 

《PAL「・・ン?」》

 

 

 

我夢の呼び掛けにPALは反応すると、パチリと目を覚ました。

PALはキョロキョロと辺りを見渡すと、我夢に問いかける。

 

 

PAL「オハヨウゴザイマス。アナタガワタシヲセイサクシタ、ガムデスカ?

 

我夢「そう、そうだよ。よろしくPAL!そして、こちらが僕の後輩の小猫」

 

小猫「…よろしくお願いします」

 

PAL「・・・?

 

 

小猫が挨拶すると、PALは考え込むような仕草をする。

その様子に我夢と小猫は首を傾げていると、PALは

 

 

PAL「コウハイ?シカシ、ドコカラドウミテモ、ショウガクセイ、トシカミエマセンガ?

 

我夢「あぁっ!PALッ!?」

 

 

と、とんでもない発言に我夢はぎょっと青ざめ、飛びはねる。

小猫は自分の体型にコンプレックスを持っており、それを馬鹿にされると問答無用で鉄拳制裁を下す。我夢自身、体験しているのでその恐ろしさを理解している。

 

 

小猫「……」

 

 

自身のコンプレックスに触れられた小猫は当然、カチンと頭にきて、パソコンごとPALを破壊しようと拳を振りあげる。PALのせいとはいえ、自分のパソコンを壊されるのは嫌なので、我夢は必死に止める。

 

 

小猫「……離して下さい。このポンコツを分解します…!」

 

我夢「ごめん!悪気はないんだっ!まだ色々教えてなくて……パソコンを壊さないでっ!」

 

小猫「…大丈夫です。砂嵐になったテレビをチョップして直す感覚と同じですので」

 

我夢「絶対違うでしょ!?待って、待ってくれ!」

 

小猫「…言い訳は後で聞きますので」

 

我夢「やーめーろー!」

 

 

制止も虚しく、小猫は遂にパソコンに手をかける。

狭い室内で2人がドタバタしていると、ピピッと我夢のXIGナビに通知音が鳴る。

 

緊急の用事かと思った2人はドタバタするのをやめ、我夢はXIGナビを開くと、朱乃からによるものだった。

 

 

《朱乃「我夢君。今からコマンドルームに来れます?」》

 

我夢「はい、大丈夫です。これから小猫と向かいます」

 

《朱乃「お願いしますね」》

 

 

朱乃の頼みを聞いた我夢はXIGナビを閉じると、小猫と一緒にコマンドルームへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢と小猫は長い廊下を歩いていき、重厚な扉の前にたどり着いた。

扉の前に立つと、扉は自動的に左右へ開き、2人はコマンドルームへ入っていく。

コマンドルームには難しそうな顔を浮かべる朱乃とアザゼル、数人の女性オペレーターがいた。

 

 

我夢「何かあったんです?」

 

朱乃「ええ、実は…」

 

 

来て早々の我夢に朱乃は呼び出した訳を話す。朱乃が言うには、通信機器に軽い電波障害があるので、我夢に原因なんなのかという相談だ。

それを聞いた我夢は心当たりあるのか、「ああ…」と声を漏らし

 

 

我夢「それはちょっと空の状態が悪いんですよ」

 

朱乃「空の状態?」

 

我夢「はい……多分、この雷雲のせいじゃないかと」

 

 

訊き返す朱乃に我夢は答えつつ、オペレーターが使っている通信機器を拝借して操作すると、中央のモニターに日本列島付近の気象状況を表した地図が表示される。その地図には、現在の日本列島の南端には雷雲があることが記されている。

我夢は言葉を続け

 

 

我夢「さっき調べてみたんですけど、雷雲自体に妙なところはないですけどね」

 

 

そう話すと皆は納得した表情を浮かべる。確かに原因が自然現象によるものなら説明がつく。

 

 

アザゼル「しかし、この季節とは雷雲とは珍しいな……。おい、一応気象状況を監視しておいてくれ」

 

「了解」

 

 

ただの雷雲だとは思うが用心に越したことはないと思ったアザゼルは1人のオペレーターにそう命令する。

オペレーターがさっそく監視作業に入っていく中、我夢は何か気付いたことがあったのか、キョロキョロ辺りを見渡す。

 

 

アザゼル「どうした?」

 

我夢「いえ…最近、石室コマンダーの姿を見ないんで、どうしたのかと…」

 

 

アザゼルが忙しいのはもちろんだが、イリナの歓迎会を開いて以来、石室の姿をこのエリアルベースや地上ですら見かけていない。

すると、アザゼルはニヤリと口角をあげ、

 

 

アザゼル「ああ、奴ならT都で開かれている各国首脳会議に出席している」

 

 

と、「きっとお偉いさんからガーガー言われているんだろうな」と小バカにするような口調で付け加えて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。石室はG.U.A.R.D.上層部が保有するビルの一室にて、とある国との首脳とテーブルを挟んで会談していた。

 

 

「世界各地で異変が続発してるんですよ。それなのに、あなた方G.U.A.R.D.は破滅招来体の全貌を掴むことが出来ない!一体、いつになれば敵の全貌を解明出来るんですか?」

 

石室「“いつ”とは、申し上げられません。しかし、今、国際的な協力体制が崩れれば、G.U.A.R.D.の活動は大きく後退します……もし、そうなれば破滅招来体を防ぐことは事実上不可能です」

 

 

石室は目の前に座る首脳の目をまっすぐ見てハッキリと答える。

だが、首脳は嘆息し、

 

 

「しかし、石室さん。このままG.U.A.R.D.を信用して、本当に破滅を避けることが出来ますか?我々はどうなるんですか?」

 

石室「……」

 

 

藁にも縋る気持ちの問いかけに石室は思わず難しい顔で口を閉ざしてしまった。

その後、特に語ることはなく、会談は終了した。

 

 

「石室、久しぶりだな」

 

石室「…?権堂(ごんどう)参謀」

 

 

それから会談部屋から出て廊下を歩いていると、遠くからふくよかな体型をした水色の軍服を着た嫌味たらしい顔つきをした男に呼び止められる。

この男はG.U.A.R.D.上層部の幹部の1人、権堂参謀だ。

 

権堂は石室に歩み寄ると、口を開き

 

 

権堂「聞いたぞ?お前、まだG.U.A.R.D.を信用していない各国の首脳への説得を続けてるんだってな?ははっ、いい加減諦めたらどうなんだ?俺達に協力しない国なんてほったらかして、勝手に自滅させりゃあいいじゃないか?」

 

石室「…」

 

 

と言いながら嘲笑う彼に石室は腹の底から込み上げる怒りを抑える。

この男、権堂は武力による地球防衛を望む所謂“タカ派”の人間だ。協調・平和的な防衛を望む石室や樋口とは考えが真反対で、組織内で対立している。

 

権堂は肩をすくめ、話を続け

 

 

権堂「…まあ、国同士の力を合わせて地球を守ろうなんて夢話なんだよ。それよりも俺達がやることはより強い兵器を作り、破滅招来体に知らしめしてやることだ。お前も、さっさとXIGなんて身分もわからない怪しげな集団とG.U.A.R.D.のパイプラインを辞めちまって、俺と一緒により強い武力を持った集団を―――」

 

石室「下らない話はそこまでにするんだな」

 

権堂「何ィ!?下らないだと?」

 

 

石室を誘おうとしたが彼にバッサリと一蹴され、権堂は先程の人を嘲笑うような顔から一変して、怒りの形相に変わると、彼を睨み付ける。

石室は言葉を続け

 

 

石室「…権堂。しばらく会ってなかったから考えも少しは変わると思ったが、それは間違いだったようだ。相変わらず武力で全てを解決しようという愚かな考えしか思い付かないらしいな」

 

権堂「貴様っ!上官に向かって―――!」

 

石室「上官であろうがなかろうと、私は今、1人の人間としてあなたに話している!人の願いを嘲笑うあなたに地球を守るものとして、組織の人間としての誇りは無いのかっ!」

 

権堂「――っ!?」

 

 

そう言い放つと、権堂は石室のあまりもの迫力に目を若干見開き、言葉を失う。

石室は権堂を一目睨み付けると、

 

 

石室「…そんな暇があったら、今後の体制について少しは考えるんだな…」

 

 

去り際にそう告げると、石室は権堂の真横を通り過ぎ、下の階へ降りるエレベーターに乗り込んだ。

 

 

権堂「ちっ!相変わらずムカつく奴だ!」

 

 

石室が乗り込んだエレベーターを睨み付けながらそう吐き捨てると、権堂は不機嫌そうな足取りでどこかへ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り。石室はタクシーに乗ってどこかへ向かっていた。

――今日も色々上手くいかなかったが、着実にゆっくりとやっていこう。石室がそんなことを考えていると、ふいに運転手が話しかける。

 

 

「最近、G.U.A.R.D.に不満を持つ要人が増えてますねぇ……1人1人、説得するには時間がかかりますよ」

 

石室「…」

 

 

転手のため息混じりの言葉に石室は顔を曇らせる。彼の言う通り、破滅招来体を中々根絶できないどころか正体さえも掴めない状況に各国の国々はG.U.A.R.D.に不審感を募らせている。先程、会談したとある国の首脳もその1人だ。

 

それに対して石室は神妙な気持ちになり

 

 

石室「彼らも不安なんだ。根源的破滅招来体が現れて以来、おそらく誰もが…未来の見えない不安を抱え込んでいる……」

 

「……」

 

 

そう言いながら、彼は思った。世界各国の1人1人が得体の知れない恐怖に脅かされながらも必死に生きようとしていることを。

不満を持っている世界各国の首脳達もG.U.A.R.D.に対して非難や不平不満を言っても何もならないことは既に分かっている。しかし、その不安や恐怖を誰にぶつければいいのかわからないのだ。

人の心理なら当然のこと――石室はそれを承知の上、説得をしているのだと思った。

 

運転手は石室の話を聞き終え、心の中で共感する。そして、話が少し暗くなった運転手は話題を切り替え、提案する。

 

 

「夜の会合までには少し時間があります。どこかで休まれてはいかがですか?」

 

石室「すまないが、ちょっと停めてくれないか?」

 

「…はい!」

 

 

石室の頼みに運転手は承諾すると、車道の端にタクシーを停める。

 

 

「何か?」

 

 

車を停めたや否や、すぐさま運転手は振り返り、何の用事かを石室に訊ねる。

その問いかけに石室はニッコリと笑い

 

 

石室「『ボイジャー2号』を買いにな」

 

 

そう答えると、石室は座席から降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから40分後。とある町の一軒家の前へタクシーに送り届けてもらった石室は左腕に大きな長方形の段ボールを抱え、玄関の扉の横にあるインターホンを指で押す。

 

 

ピンポーン……

 

ガチャ!

 

「…!?」

 

 

すると、1秒も経たないうちに扉は開かれ、中から小学校4年生くらいの男の子が顔を見せる。

男の子は石室の顔を見て目を丸くしていると、石室はにこやかな笑顔で挨拶する。

 

 

石室「よお、ただいま」

 

「父さん…!母さーん、父さん!父さんが帰ってきたよ!」

 

 

その男の子は嬉しそうに笑顔を浮かべると、リビングにいる母親へ呼びかける。

そう、ここは石室とその家族が住んでいる家だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたお帰りなさい。2週間振りかしら?はい、お茶」

 

石室「ああ、ありがとう」

 

 

石室は妻に感謝の言葉を告げると、出された湯呑に入っているお茶を1口飲む。

久しぶりに我が家のお茶を飲んだからか、今までの体の奥底に溜まっていたストレスやら何やら吹っ飛んでいく感覚がした。

 

 

「それで?もうお仕事終わり?」

 

石室「いや、これから3時間後にある会合に出席しなきゃならない」

 

「そう…」

 

石室「すまない。ここ最近、仕事ばかりで構ってやれなくて」

 

 

まだ仕事があると知って落胆する妻に石室は申し訳なさそうに頭を下げて謝る。

しかし、妻はすぐに笑顔になると、石室を見つめ

 

 

「大丈夫よ。そんなの嫁いだ時から覚悟していたから。私、XIGの司令官の妻だって、誇りに思ってるから」

 

石室「ありがとう。…ああ、全く君には敵わないな」

 

 

そう励ます妻に石室は照れ臭そうにしながら感謝しつつ、彼女には一生頭が上がらないなと改めて悟った。

 

石室は妻の心広さに感服すると、自分の隣に座る息子の頭を愛おしそうにポンポンと撫でる。

 

 

石室「弘希(こうき)!前より大きくなったんじゃないか~?」

 

弘希「またそうやって子供扱いする~!僕はもう大人だよ」

 

 

頭に乗せられた手を払いのけ、照れ臭そうにする弘希を見て、石室と妻はクスクスと笑う。

石室は「そうか…大人か…」と呟くと、ソファーに置いていた大きな長方形の段ボールを弘希の前に出す。

 

 

石室「よし、プレゼントだ」

 

弘希「わあ~~すっげ!開けてもいい?」

 

石室「ああ」

 

 

あまりにも大きいプレゼントに目をキラキラと輝かせながら訊ねる弘希に石室は頷く。

石室の許可を得た弘希は何だろうと胸躍らせながら段ボールを開けていくと、それは大きな黄色の望遠鏡だった。

 

 

石室「ボイジャー2号だ。3年前にあげた時はレンズが小さかったからな……こいつを付けると、オリオン大星雲まで見れるぞ」

 

弘希「……」

 

 

微笑みながら話す石室とは逆に弘希は先程までの笑顔が消え、顔を曇らせる。

その表情はいらないプレゼントを貰ったというよりも、石室に対して申し訳なさから出たものだった。

弘希は口を開き

 

 

弘希「ありがとう、父さん。でも……もういらないんだ」

 

石室「いらない?もう、空を見ないのか?」

 

 

弘希の言葉を聞き、真剣な表情になった石室はそう訊き返す。

弘希はこちらを見つめる石室へ顔を向け

 

 

弘希「父さん……空を見ても、空にはもう恐ろしいものしか現れないよ。地球を滅ぼそうとするもの――『根源的破滅招来体』しか、現れないじゃないか……」

 

石室「…」

 

 

悲しげにそう言うと、弘希は逃げるように階段を上っていった。

石室は顔を曇らせながら、思った。破滅招来体は空からワームホールを出現させ、町を破壊するだけでなく、1人の子供の夢や希望すらも壊していると。

その現実に石室は強い憤りと悲しみを覚えた。

 

弘希は階段を駆け上がって自分の部屋に辿り着くと、駆け込むように入り、扉を閉めた。

弘希はせっかくプレゼントを持ってきてくれた父への申し訳なさに思わず、扉へ体を寄りかかせる。

 

 

弘希「……」

 

 

弘希は3年前、初めて天体望遠鏡を貰った時を思い出していく。

 

その晩に父さんと2人で『石の翼』の丘に天体望遠鏡を立て、一緒に星を眺めたこと。

 

まだ見ぬ太陽系の向こう側に生命体がいる星があるのではないかと話し合ってロマンを膨らませたこと。

 

そして、父さんから太陽系へ旅立った2機の惑星探査機『ボイジャー』についての話を聞いたこと……。

人類からのメッセージを乗せ、宇宙を旅する『ボイジャー』の話を聞いて、夢と希望を貰った僕は父さんから貰った天体望遠鏡を『ボイジャー1号』と名付けることにした。

 

 

 

 

――でも、僕はもう空を見ない。

『ボイジャー1号』を石の翼のところに埋めた。宇宙への夢と希望も一緒に……現実に向き合うことにしたんだ……。

 

 

石室『弘希、話してもいいか?』

 

弘希「…?」

 

 

弘希が感傷に浸っていると、扉越しに石室から話しかけられる。

弘希は扉へ耳を傾けると、石室は話し始めた。

 

 

石室「根源的破滅招来体は確かに存在する。それが……俺達の現実だ」

 

弘希「っ!……」

 

 

父親から現実の残酷さを告げられ、弘希はより一層顔を曇らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エリアルベースのコマンドルームでは、雷雲が急激に大きくなりながらどこかへ向かっていることをキャッチした。

 

 

アザゼル「雷雲の現在位置は?」

 

「ポイント365K7上空」

 

我夢「!」

 

 

オペレーターの報告を聞き、まさかと思った我夢はデスクに備え付けられているパソコンで雷雲の状況を調べる。

そして、出てきた雲の映像に我夢は息を吞んだ。

 

 

我夢「これは……」

 

朱乃「どうしましたの?」

 

我夢「雲の奥に時空の褶曲が起こり始めています」

 

アザゼル「まさか…!雲の奥にワームホールがあるって言うのか!?」

 

 

訊き返すアザゼルに我夢は頷く。

ポイント365K7は町があり、おそらく怪獣を送り込んでくる――――。危惧したアザゼルはすぐに指示を出した。

 

 

アザゼル「オペレーターは当該付近の住民に避難勧告を。我夢は『チームライトニング』と出撃。小猫と朱乃も同行してくれ」

 

『了解!』

 

 

そう言って敬礼し合うと、我夢達はコマンドルームを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリアルベースの格納庫。多くの戦闘機が格納されているこの場所に出撃のアラームが鳴り響く中、六角形のコンテナの形をした乗り物が3機、発進エレベーターに乗って降りてくる。

これこそ、XIGが開発した最新鋭の戦闘機『XIGファイター』で、乗っているのは梶尾、四之宮、匙のシトリー眷属3人からなる空戦部隊の1つ、『チームライトニング』だ。

 

 

匙「遂に俺達の出番ですね」

 

四之宮「ああ、そうやってヘマはすんなよ」

 

梶尾「お喋りはそこまでだ、行くぞ」

 

 

梶尾が左右のファイターに乗る仲間を軽く叱ると、3人は座席の横のレバーに手をかけ、

 

 

梶尾「チームライトニング、シュート!

 

 

その掛け声と共にレバーを一気に前へ倒す。

すると、3機のファイターは後部のブースターを噴かせながら前進し、発進ゲートを潜り抜けて外へ飛び出す。

 

そして、飛び出したファイターはそのまま空中で変形すると、梶尾は青い戦闘機『XIGファイターSS』、四之宮と匙は赤い戦闘機『XIGファイターSG』となった。

 

更にエリアルベースの後部ハッチからは我夢、小猫、朱乃が乗る大型輸送攻撃機『ピースキャリー』が飛び出し、エリアルベースの真上を通って飛行する。

3機のファイターとピースキャリーは目的地に向かって発進していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、雷雲の中にあるワームホールが遂に開き、1匹の怪獣が大地を震わせながら降り立った。

 

 

「!」

 

石室「何だ!」

 

 

丁度その頃。近くには家を出て、タクシーで会合場所へと向かっていた石室がいた。

その衝撃の揺れに石室とタクシーの運転手も驚き、タクシーを停めて外へ出ると、衝撃音が鳴った方を見上げる。

 

そこには2本の牛のような逞しい角を持った牡羊のような二足歩行の怪獣『パズズ』が獰猛な雄叫びをあげていた。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

町へと降り立ったパズズは頭に生えている2本の角『電撃ホーン』を牡羊の角のような形に変形させると、そこから電撃を放ち、付近の建物を破壊し始める。

火の海となり、瓦礫の山となった町を踏み歩き、パズズは人気が密集している方角へ前進する。

 

そこへチームライトニングの3機のファイター部隊が到着し、3人はコクピット内にあるターゲットスコープを展開する。

 

 

梶尾「発射!」

 

パズズ「!」

 

 

照準を捉えた梶尾達は手元の操縦桿のトリガーを引く。ファイターから放たれた銃弾状の魔力弾を受け、パズズは体から火花を散らす。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

パズズは電撃ホーンを元の牛のような形に変えると、お返しに上空にいるファイター目掛けて直線上の電撃と口からの火炎弾を放つ。

梶尾達は横回転しながら旋回して回避する。

 

その後もチームライトニングは逃げ惑う人々を追うように前進するパズズへ攻撃を加えていくが、あまり効果がなく、パズズは進撃していくばかりだった。

 

 

《匙「梶尾さん!このままじゃマズイっすよ!」》

 

梶尾「慌てるな!そんなことはわかっている!……ジオベースの避難誘導部隊は一体、何してるんだ?」

 

 

ぼやく梶尾の言う通り、地上の避難誘導部隊は住民の避難が遅れていた。その原因はパズズが持つ『特殊電波ブレイン』から放たれている電波のせいで通信障害が発生しており、連絡のやり取りが上手く出来ていなかったからだ。

その影響で梶尾達は住民に被害が及ぶ危険性を考慮し、あまり強力な攻撃を出せずにいた。

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では住民達が一目散に逃げており、その中には石室の妻とその息子の弘希の姿もあった。

そう、彼らがいるということは石室一家が住んでいる町だったのだ。

 

2人は避難誘導に従って一緒に逃げていた。

しかし、4方向に分かれた広い路地に出た瞬間、逃げ惑う住民の海に呑まれ、離れ離れになってしまった。

 

 

「弘希ーー!弘希ーーー!」

 

 

石室の妻は必死に見えなくなった我が子の名前を叫ぶが、虚しくも弘希も彼女も人混みに押され、どんどん距離が離れていくばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ジオベースの避難誘導部隊も必死に避難誘導を行っていた。

その内、1つの部隊はすぐさまジープを降りると、蛍光灯を手に、避難場所とは反対のこちらへ来る住民達を止める。

 

 

「こっちじゃなーい!戻れーーー!」

 

「下がって…下がって下さい!」

 

「本部へ連絡を!」

 

「はい!……本部、応答願います!こちらD班!後方避難経路の指示、願います!」

 

 

指示を受けた隊員の1人は耳に付けているインカムで連絡を取る。

だが…

 

 

《「こちら本部。D班は付近住民………北緯2号s…と…いhv`fd^$#@――――!」》

 

「本部…?本部っ!!」

 

 

パズズが発生させた電波障害のせいでノイズが走って音声が上手く聞き取れず、最終的には通信すらも出来なくなってしまった。

D班は突然の電波障害に困惑していると、別の部隊の2人の隊員が焦った様子で駆け寄ってくる。

 

 

「西ブロックの住民が逆流してくるぞ!」

 

「A班の誘導はどうなっているんだ!?」

 

「無線が……通じない!状況がわからないんだ!」

 

 

電波障害のせいで避難指示や連携が取れず、隊員達は混乱を極める。

あれよこれよと言っている間にも避難出来てない住民の対処に追われ、遠くからはパズズが迫ってくる。

まさに八方塞がり――。どうすればいいんだと隊員達が頭を悩ませていると、

 

 

石室「…どうやら、かなり状況が苦しいらしいな」

 

『石室コマンダー!?』

 

 

後ろから苦い顔をした石室が颯爽と現れた。

彼の思いもよらぬ登場に隊員達は驚く中、石室は近くに停めてあったジープのボンネットにこの地域近辺の地図を広げる。

 

 

石室「旧21号線は全面車両通行止め、新町交差点に隊員を配置。西ブロックの住民を菊池方面に迂回させてくれ…」

 

 

冷静に指示を出しつつ、石室は先程インカムで連絡を取ろうとしていた隊員を見て

 

 

石室「君は伝達要因として、各ブロックを回ってくれ」

 

「はい!」

 

石室「各自、避難終了時には信号弾を撃って報せろ」

 

『了解!』

 

石室「さあ、急げ!」

 

 

石室が指示を出し終えると同時に隊員は解散し、早速作戦を実行し始める。

 

1人残った石室はボンネットに広げた地図に手を置きつつ、ふと後方を振り返る。

遠くの方では、こちらへ進撃しながら暴れまわるパズズとチームライトニングのファイターが交戦していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梶尾「サイドワインダー、発射!」

 

 

梶尾達は操縦桿のボタンを親指で押すと、ファイターの両脇からミサイルが射出される。

ミサイルはパズズを捉え、真っ直ぐ向かっていくが、

 

 

梶尾「何っ!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

 

着弾する直前、何故かミサイルはひとりでに横に逸れ、地上で爆発する。

動揺する梶尾達だったが、気を取り戻してもう一度ミサイルを放つが、またもパズズから逸れてしまう。

 

この異変はすぐさま四ノ宮を通して、ピースキャリーにいる我夢に届いていた。

 

 

ピーピーピー…

 

我夢「ライトニングのミサイル命中率が低下しています」

 

朱乃「どういうこと?」

 

我夢「あの怪獣のせいで、レーダーによるミサイルの誘導システムに誤差が生じているんです。魔力を通じての無線も出来ません。誘導システムを解除して、オールマニュアルで攻撃するしかありません」

 

小猫「…では、どうやって?」

 

 

思い悩む小猫がそう問いかけると、我夢は突然立ち上がる。

朱乃と小猫が疑問に思っていると、我夢は口を開き

 

 

我夢「僕に任せて下さい。最近覚えたことを使うチャンスですから」

 

「「?」」

 

 

そう意味ありげに告げると、2人に疑問を残したまま、我夢はピースキャリーのコクピットから出ていく。

我夢はピースキャリーに乗せている灰色のコンテナモードのファイターに乗り込むと、コクピットの電源を点けていく。

 

 

我夢「出撃します」

 

 

我夢は一言そう言うと、横のレバーを倒す。

すると、ファイターが乗っている床が開き、そのまま落ちていく。

空中で変形し、灰色の戦闘機に変形していく。これこそ、我夢専用機の『XIGファイターEX』だ。

 

ファイターEXは後部のジェットブースターを噴かせて飛行すると、パズズに苦戦するチームライトニングのリーダー、梶尾が乗るファイターSSの横に並ぶ。

 

 

梶尾「我夢?」

 

 

疑問に思う梶尾に我夢はハンドシグナルを送る。

それは「ミサイル誘導システムを解除して、オールマニュアルで攻撃」というメッセージだった。

 

 

梶尾「なるほど……了解だ!」

 

 

我夢のハンドシグナルを読み取った梶尾は我夢へサムズアップすると、ファイターEXから離れて、四ノ宮、匙の2人にも同様に伝える。

3人は我夢の言う通り、オールマニュアルへ切り替えると、パズズへ照準を定める。

 

 

梶尾「ミサイル、発射!」

 

パズズ「ゴォガ!?ゴォガ!?」

 

 

チームライトニングは操縦桿のボタンを押してミサイルを放つと、今度は逸れず、パズズに命中する。

パズズもまさか命中するとは思わなかったのか、苦痛の声をあげながら動揺の色を見せる。

形成は確実にライトニングへ傾き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上では、石室の冷静な指示によって息を吹き返したジオベース誘導部隊は連携がとれた避難活動が行われていた。

逃げ惑い、混乱する住民を確実な対処で避難させていく。

 

 

弘希「…っ!?」

 

 

母親とはぐれ、逃げ惑う別の群衆にいた弘希はつまずき、転んでしまう。

住民が次々と横を通り過ぎる中、弘希は転んだ痛みに顔を歪めながら立ち上がろうとしていると、聞き覚えのある声に耳が止まった。

 

 

石室「A班の1名は救急車の援護に回れー!君は東ブロックをチェック!君は住民の誘導を!」

 

「「はい!」」

 

石室「急いでくれ!」

 

弘希「…」

 

 

それは冷静に隊員達に指示を出して奮闘する父の姿だった。

弘希は防衛組織として前線に立っている姿を見たのは初めてのことだったが、家で見かける時以上に頼もしい父に微笑ましく思いつつも悲しげに思っていた。

 

破滅招来体のせいで仕事に追われ、家に帰ってこれないのはしょっちゅう。

父がXIGのコマンダーであることは尊敬しており、みんなの生活を守ってもらっていることにはすごく感謝している。

しかし、そのせいで以前のように遊んでもらえず、寂しさがあるのもまた事実だ。

 

弘希は立ち上げって振り返り、遠く後方でチームライトニングと戦闘しているパズズを見上げる。

パズズが通った場所の建物は破壊しつくされており、辺りは火の海になっていた。

 

 

パズズ「ガァーーー!」

 

 

パズズは牡羊のような形の角から電撃を放ち、町を破壊していく。

自分が生まれ育った思い出のある町並みは壊され、火の海となっていく。

 

 

弘希「…」

 

 

弘希はその光景に恐怖と失意を感じていくが、2時間前、扉越しに聞いた石室の言葉を思い出す。

 

 

(石室「根源的破滅招来体は確かに存在する。それが……俺達の現実だ。そのことを受け入れる為にお前は、空を見るのをやめたのかもしれない…。現実を受け入れ、大人になっていこうと考えている」)

 

弘希「…」

 

パズズ「ガァーー…ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

弘希は思い出した言葉に困惑した表情を浮かべながら見上げ続ける。

パズズが鋭い爪を持ったその手でビルを叩き壊し、瓦礫となった建物を踏み歩く残酷な光景を…。

しかし、それでも弘希は石室に言われたことの続きを思い出していく。

 

 

(石室「だがな、弘希。お前が空を見るのをやめた時、お前が無くしたもの……本当に失ったものは何だ!」)

 

弘希「…」

 

 

――本当に失ったものは何だ!

その言葉が胸の奥に響いた弘希はある決意をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数十分後。

各ブロックから避難が終了したことを伝える信号弾が、勢いよく黄色の煙を立てながら空へあがる。

 

 

石室「よし、全ブロック避難完了だ。撤収するぞ!」

 

『了解!』

 

 

石室の指示に従い、隊員達はジープに乗り込んでいく。

 

 

石室「……っ?弘希!?」

 

 

石室も乗り込もうとドアを開き、助手席に座ろうと足を入れた時、遠くの路地を誰かが走っていくのが見えた。

それは息子の弘希がパズズがいる方面へ走っていく姿だった。

弘希を見たや否や、すぐさま石室はジープから足を下ろすと、走って後を追い始める。

 

 

「石室コマンダー!」

 

石室「心配ない。先に行っててくれ」

 

 

どうしたんだといった表情で呼びかける隊員達にそう告げると、石室は後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室「弘希!弘希!」

 

 

石の翼がある丘まで追跡した石室は走る弘希の肩に手をかけて制止すると、そのまま振り向かせる。

 

 

石室「何やっているんだ!?早く避難しないと―――」

 

弘希「ボイジャー1号を取り戻すんだ!石の翼のところへ埋めたんだ!」

 

石室「…っ」

 

 

必死な形相でそう話す弘希に石室は驚く。

弘希の眼差しは真剣な大人の顔つきそのものだった。

 

 

弘希「ボイジャー1号が僕に見せてくれたのは空だけじゃなかった!もっと大事なものがあったんだ!」

 

石室「っ、弘希!」

 

 

そう言って肩に乗せた手を振り払って石の翼へ駆け寄ろうとする弘希を鬼気迫った顔で石室は追う。

確かに彼の瞳の奥には『夢』が戻っている。しかし、今は危ない。

こちらに気付いたパズズが今にも電撃ホーンから電撃を放とうとしていたからだ。

 

 

パズズ「ガァーーー!!」

 

弘希「!?」

 

石室「危ないっ!!」

 

我夢「…っ!?」

 

 

遂にパズズが電撃を弘希目掛けて放ち、石室は咄嗟に駆け寄って弘希を押し倒すと背中で覆い隠す。

空中で彼らを見つけた我夢も目を見開く中、電撃は彼らに向かって放たれる。

 

絶対絶命―――そんな時!

不思議なことが起こった!

 

 

ピヤァァァァーーーーー!!

 

パズズ「!?」

 

 

彼らの近くにある石の翼が金色に輝くと、光を放射し、パズズの電撃を打ち消した。

石の翼は石室達を救ったのだ。まるでそれが意思を持っているかのように。

 

 

サァァァ……

 

弘希「…っ」

 

 

しかし、石の翼は力を使い果たしたのか、そのまま灰となって崩れる。

その光景を見ていた弘希は驚きのあまり、声が出なかった。

 

 

石室「大丈夫か?」

 

弘希「…うん」

 

パズズ「ゴァァーーーー!」

 

「「!?」」

 

 

お互いの安否を確認しているのも束の間、パズズは2人に再び電撃を放とうとしていた。

2人は迫りくる電撃に身構えていると

 

 

キィンッ!

 

 

と空から来た赤い光が2人からパズズの電撃を防いだ。

その光は片膝をつき、両手を前へ突き出した透明な巨人の姿になる。

段々光が晴れ、色がついていくとその巨人の姿ははっきりとなった…。

 

 

弘希「ウルトラマンガイア…」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

赤き大地の巨人―――ウルトラマンガイアだ。

ガイアは立ち上がると、ファイティングポーズをとる。

 

 

パズズ「ゴォガァァァーー!」

 

 

パズズも本能的に倒すべき相手とわかったのか雄叫びをあげると、ガイアへ向かって走り出す。

それに合わせてガイアも走り出すと、両者は中央で組み合う。

 

 

ガイア「!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

 

しかし、パワー比べではパズズに分があるのか、組み合ったままガイアを押していく。

パズズはある程度押すと、ガイアの両肩に置いてある手に力を込め、振り向かり様に投げ飛ばそうとするが、ガイアはすぐさま手を払いのける。

 

 

ガイア「ダッ!グアッ!」

 

パズズ「ゴォガ!?」

 

ガイア「デュアァァァーーーーー……!」

 

 

ガイアは頭部にチョップ、怯んだところを続けて横腹を蹴りつける。

怒涛の攻撃にパズズは苦痛に悶えていると、ガイアは電撃ホーンをガシッと掴む。そのまま助走をつけて投げ飛ばそうとするが

 

 

パズズ「ガァーーーーーー!」

 

ガイア「ウワッ!?」

 

 

パズズに跳ね飛ばされ、宙で一回転して背中から地面に叩きつけられる。

しかし、ガイアは負けじとすぐさま立ち上がって、こちらへ前進してくるパズズへ身構える。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「ダァァァーーーー!」

 

 

ガイアは気合を込めて真っ直ぐ、カウンターの蹴りを入れて後退させる。

そして、怯んだ隙に飛びかかって掴みかかると、巴投げの要領で大きく後方へ投げ飛ばすと、パズズは地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

パズズ「ガァーーーー!」

 

 

パズズは起き上がると猛牛のように電撃ホーンを突き立て、ガイアへ突進する。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァーーー…!」

 

 

ガイアは両手で掴んで電撃ホーンを受け止める。

突き刺そうとするパズズとそうはさせまいとするガイア…。両者は組み合ったまま体制をクルクルと替えていく。

 

 

ガイア「ダッ!グアッ!」

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

 

体制を入れ替え、隙を見つけたガイアはパズズの脇腹に膝蹴り、首元に手刀を叩き込む。

パズズは怯みながらもすれ違い様に爪で引き裂こうとするが、ガイアは屈みながら避け、背後に回り込む。

 

振り向くパズズの胸元を蹴り、タックルで大きく後退させると、腹部へ1、2とパンチを叩き込む。

そして軽く助走をつけた飛び蹴りを食らわせる。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

パズズはお返しにと尻尾で薙ぎ払いにいくが、ガイアは前転して避ける。

ガイアは起き上がって掴みかかろうとするが、

 

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

ガイア「ドアァァッ!?」

 

 

パズズの尻尾の薙ぎ払いに足をすくわれ、前へ倒れてしまう。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

負けじとすぐに立ち上がったガイアはドロップキックを放つ。

ガイアは休む間も与えず、吹き飛ばされながらもフラフラとした足取りで立ち上がろうとするパズズの尻尾を両腕でガッチリ掴むと

 

 

ガイア「デュアァァーーッ!」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「デュアッ!ダァァァーーーー!」

 

 

体に捻りを加えて倒れると、尻尾を通してパズズも一緒に回転しながら倒れる。

更にガイアは追い打ちにと、苦痛に悶えるパズズの電撃ホーンを掴んで無理やり立たせると、背負い投げの要領で投げ飛ばす。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「トアッ!」

 

 

パズズはフラフラしながら立ち上がりつつ電撃ホーンから電撃を放つが、ガイアは空高く跳躍して回避する。

そして、急降下しながら左足でパズズへ狙いを定め…

 

 

ガイア「デュアァァァーーーーーーッ!!」

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

 

ガイアはパズズの頭部へ急降下キックを放つ。強力な蹴りが決まり、パズズは大きく後ろへ倒れると、苦痛の悲鳴をあげる。

ジタバタと悶絶しているパズズにガイアは飛びかかりながら倒れ込むと、両者はゴロゴロと地面を転がっていく。破壊された町中をある程度まで転がると、両者は間合いを空けながらスタッと起き上がる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

またもや角で突き刺そうとするパズズの突進をガイアは間一髪避け、右腕でヘッドロック、左手で角を抑える。

しかし、パズズも知能はある。同じ手を何度も使うほど馬鹿ではない。

パズズはガイアに密着されたまま、電撃ホーンから電撃を放つ。

 

 

ガイア「グアァァァーー!?」

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「ドアァァァーーーーー!!」

 

 

当然、角に触れていたガイアは身体中に電撃が流れ、苦しみのあまりヘッドロックを外してしまう。

これを好機と見たパズズは更に電撃を浴びせ、ガイアは苦痛の叫びをあげ、地に片膝をつく。

 

 

パズズ「ゴォガ!」

 

ガイア「グオッ!」

 

 

パズズは電撃を放つのを止めると、片膝をついているガイアを背中から叩きつける。

更に追い打ちとばかりにその強靭な足でガイアを蹴り飛ばし始める。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

ガイア「ドアァァァー!デュアァァ…!」

 

 

パズズに何度も蹴られ、地に転がるガイア。

蹴られた箇所からの激痛に脳内はかき乱されそうになる。

そして、パズズが締めとばかりに今までよりも強力な蹴りを放ち、ガイアは大きく吹き飛ばされる。

 

 

ガイア「…グアッ!」

 

 

ガイアはやや満身創痍ながらも立ち上がり、身構える。

例え不利な状況に追い込まれても、必ず立ち上がらなければならない。それがウルトラマンとしての自分の為すべきことだ。

 

 

パズズ「ガァーーーーー!」

 

ガイア「グアァァァーー!ドアァァァーーーーー!!」

 

 

パズズは電撃ホーンから電撃を周囲の建造物ごとガイアへ放つ。

ガイアはパズズの猛攻でやや満身創痍だったせいで避けられず、まともに食らってしまい、背中から倒れてしまう。

 

 

ガイア「グッ、グアッ…!」

 

[ピコン]

 

 

周囲が燃え盛る火の海に包まれた地面でガイアは苦しみ悶える。

ライフゲージも正常な青から危険を知らせる赤に変わり、点滅を始めていた。

 

 

パズズ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

 

このまま勝てると思ったパズズは追い打ちを掛けようと、ガイアのもとへ歩を進める。

しかし、パズズは忘れていた。自分が戦っているのはガイア1人だけじゃないと。

 

 

梶尾「ガイアを援護する!全機、一斉攻撃!」

 

「「了解!」」

 

パズズ「ゴォガ!?」

 

 

そう、梶尾達チームライトニングだ。

ライトニングはファイターに搭載されているミサイルや銃弾状の魔力弾を浴びせる。パズズはその小さな存在を忘れていたのでまともにくらい、身体中から火花が散る。

しかし、攻撃はまだまだ終わらない。

 

 

ビカァァァァァーーーーーーー!!

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

 

突然、パズズの頭上からけたたましい落雷が降り注ぐ。

雷光のあまりの威力に左の角が焼き切れたパズズは悲鳴をあげる。

その雷はピースキャリーに乗っている朱乃から放たれたものだった。

 

 

朱乃「あらあら、いい悲鳴をあげますわね♪あまり光の力を使いたくはありませんが、我夢君の為なら別です。さあ、もっと聴かせて下さいな!」

 

パズズ「ゴァーーーーーーーーー!!」

 

小猫「…」

 

 

恍惚とした表情を浮かべる朱乃はそう言いつつ、またもや雷光をパズズへ放つ。

久しぶりにドSの面を覗かせる朱乃に小猫は固まるが、すぐに気を取り戻すと、手元のスピーカーで地上に倒れているガイアに声をかける。

 

 

《小猫「今ですっ!」》

 

ガイア「…ッ!グアッ!」

 

パズズ「!?」

 

ガイア「デュアッ!デヤッ!」

 

 

小猫の声を聞いたガイアは跳ね起きると、パズズにリアクションを与える間も与えず、素早く腕を十字に組み、左手を立てた右腕の関節に入れた体勢に移行し、クァンタムストリームを放つ。

ガイアの腕から放たれる赤色の破壊光線はパズズをどんどん後方へ押していき、

 

 

パズズ「ビィ~~!?」

 

ドガガガガァァァァァァーーーーーーン!!

 

 

刃で切り刻まれたようなエフェクトが身体中に入ると、パズズは断末魔と共に爆発四散した。

 

 

ガイア「トアッ!」

 

[ピコン]

 

 

勝利したガイアは天高く両腕を上げながら跳躍すると、雷雲によって暗くなった空の中を飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。石の翼のあった丘に石室と弘希が芝生の上に座りながら夜空を眺めていた。

町は半壊してしまったが、石室の指示のおかげで死傷者は1人も出ず、今はG.U.A.R.D.によって、復興作業が行われている。

 

弘希は灰になってしまった石の翼をふと見ると、隣にいる石室に話しかける。

 

 

弘希「ねえ、父さん」

 

石室「ん?」

 

弘希「石の翼は…本当にどこかの宇宙船の翼だったかもしれないね」

 

石室「ああ」

 

 

弘希の言葉に石室は頷く。石の翼は光を放ち、自分達をパズズの攻撃から守ってくれた。

今まであくまで空想にしか過ぎなかったが、この出来事を目撃したので、「それは空想だ」とは言えないだろう。

 

弘希は膝下に置いてある、掘り返した『ボイジャー1号』をそっと撫で

 

 

弘希「僕…僕が本当に無くしかけていたもの…何だかわかった!」

 

石室「っ!そうか…!」

 

 

そう言いながらこちらへ笑顔を向ける弘希を見て、石室は嬉しさのあまりに頬を緩ませる。

 

 

弘希「ねえ、父さん。『ボイジャー』の話、してくれないかな?」

 

石室「ああ、いいだろう」

 

 

自分の息子のお願いに石室は夜空を見つつ、語り始めた。

 

 

石室「――1977年、ケープ・カナベラルから2機の惑星探査機『ボイジャー』が打ち上げられた。『ボイジャー』には未知の生命体に向けて、地球からのメッセージが乗せられていた。風の音や動物の鳴き声など、地球の声を録音した金メッキのディスク……それから、農夫や子供、宇宙飛行士など、人類を紹介した120枚の写真。『ボイジャー』は今もそのメッセージを乗せて、この広い宇宙を旅してるんだ」

 

 

そう語る石室と弘希は顔を見合わせると、微笑んだ。

2人は久しぶりに訪れた親子の時間を心ゆくまで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、あの晩。父さんは、「ボイジャーを夢を継ぐのは君たちだ」と言った。

 

僕はこの空を見続けようと思う。

例え今は、根源的破滅招来体しか現れないとしても。

 

この空に2機のボイジャーを送り出したのは、人間が未来を夢見る力と思うから――――――。

 

 

 

 

 

 

その時、1筋の流れ星が落ちた。少年の夢を願うように……。

 

 

 

 

 

 




次回予告

怪獣出現!
暴走する稲森博士!
その時、藤宮に最大の悲劇が襲いかかるっ!!

次回、「ハイスクールG×A」!
「招かねざる悲劇」!

我夢「うわぁぁぁーーーーー!!」




次回からシリアス回が続くので、今回は箸休め回として、ウルトラガイア第22話より「石の翼」でした。
良かったら、感想よろしくお願いします。


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第36話「招かねざる悲劇」

剛腕怪地底獣 ゴメノス 登場!


パズズ襲来から翌日。

ジオベースでは、我夢が以前、ゾンネルから回収した機械語デコーダの解析を稲盛博士を招いて行っていた。

 

我夢、樋口が眺める中、稲盛は手元のキーボードで操作して、中央にある大型のモニターに解析結果を表示させる。

 

 

稲盛「高山君が回収してくれた機械語デコーダは、怪獣のサンプリングデータが不足していたの。その為にアセンブラの効率が悪かった」

 

我夢「それが怪獣の暴走を招いた…?」

 

稲盛「ええ…」

 

 

訊き返す我夢に稲盛は頷くと、またもキーボードを操作し、エンターキーを押す。

すると、モニターはパーセルの詳細なデータに切り替わる。

 

 

我夢「これがパーセル?」

 

稲盛「ええ…」

 

樋口「博士はG.U.A.R.D.に保管された怪獣データを基に、あのデコーダをバージョンアップさせたんです」

 

我夢「じゃあ、これで怪獣を思い通りに動かせるんですか?」

 

 

微笑む樋口の説明を聞いた我夢は稲盛に訊くが、彼女は首を横に振る。

 

 

稲森「いいえ…パーセルは怪獣の闘争本能を鎮めるプログラムしか入っていないの。あくまで怪獣被害の回避と捕獲・分析が目的だから…」

 

我夢「…」

 

 

そう言って説明する稲盛はどこか遠い目をしているのを我夢は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明が終わり、稲盛はジオベースの外へ出ていた。

軍事施設に似つかわない芝生があり、港が見渡せるこの場所の一角に白い木の十字架の足元に白い砂利が敷き詰められた小さな墓があった。

 

その小さな墓には『リリー ここに眠る』と刻印された木製のネームプレートが立て掛けられている…。

そう、この小さな墓に埋葬されているのは、藤宮の飼っていたハムスター(彼曰く恋人)のリリーである。

 

 

稲盛「…」

 

 

稲盛はその場で膝をつき、リリーの墓にそっと花を添える。

それと同時に藤宮、リリー…2人と1匹でプロノ―ン・カラモスでの共同研究の日々を思い出していく…。

 

中々成果が出ず、焦り、苦しんだ日々。

しかし、それに負けないくらいの楽しさや喜びがあった…。

 

だが、そんな日々ももう戻らない。本当の親子のように過ごしていた楽しいあの時に…。

 

稲盛が感傷に浸っていると、横から我夢が歩み寄って話しかけてくる。

 

 

我夢「驚きました。稲盛博士がパーセル開発の担当だったなんて…」

 

稲盛「不思議な巡り合わせね……。博也君の作ったパーセルを私が引き継ぐなんて……」

 

我夢「…」

 

 

複雑そうな表情で話す彼女に我夢は口を閉ざす。

藤宮は現在、三大勢力のみならず、この人間界でもG.U.A.R.D.に追われる身である。

彼を養子として育てた稲盛にとっては、辛く苦しい現実…。それに彼が人類を滅ぼす手立ての為に作ったものを養母である自分がそれを改良するとは思いもよらなかっただろう。

 

そんなことを考えながら、我夢はふと視線を変えると、稲盛の膝下にリリーの墓があることに気付いた。

 

 

我夢「…!それはリリーの……」

 

稲盛「寿命だったの……情が移ると、悲しいものね」

 

 

寂しげな眼差しで墓を見下ろしつつ、稲盛は話す。

その瞳はペットを失ったというよりも、また1人大切な存在が亡くなってしまったという悲しみがこもっていた。

 

 

我夢「あれから、藤宮からの連絡は?」

 

稲盛「無いわ………」

 

 

稲盛の返答に我夢はやはりと思った。

我夢がそう思ったのも、人類を滅ぼそうと躍起になっている藤宮だが、指名手配されている手前、育ての母親である稲盛に危害が及ばないようにコンタクトを取っていないと踏んでいたからだ。

我夢がそう思っていると、稲盛は顔を上げ、遠い目を浮かべながらふいにこんなことを問いかける。

 

 

稲盛「……高山君は…何故、地底から怪獣が次々と現れるのか…考えたことがある?」

 

我夢「え?」

 

稲盛「今度の研究でずっとそれを考えてた……”地球の生物達が人類の自分勝手さに怒っているんじゃないか”って。きっと、人間1人1人の意識が変わらない限り、その怒りは鎮められない」

 

我夢「…」

 

 

稲盛の話を聞き、我夢は考え込む。

地上の怪獣は根源的破滅招来体によって目覚めさせられているのはわかっているが、何故こうも次々と出現して暴れるのか?という行動理由は考えたことはなかった。

破滅招来体の洗脳?それとも、元々冥界に住んでいた生物が地球の環境に合わせて進化した存在なので、冥界生物の遺伝子が何かしらの影響で暴れさせているのか?

我夢はそんな色々な説を考えていると、

 

 

ピピッ!

 

我夢「…!」

 

 

左手首に着けているXIGナビから着信音が鳴る。

その音に我夢は一旦考えるのを止めると、XIGナビを開く。小型の液晶画面に映る送信者はリアスだった。

 

 

《リアス「我夢。そろそろ、昨日言ってた冥界のテレビの取材に行くわよ」》

 

 

リアスの言う通り、実は我夢達、グレモリー眷属は冥界のテレビ番組に出演することが昨日決定したのだ。

何でも、『若手悪魔特集』だそうで、冥界で期待されている若手悪魔とその眷属をテレビ局に招いて、今後の意気込みやら何やらを取材するそうだ。

 

我夢は「はい」と短く返事してXIGナビの通信を切ると、稲盛へ顔を向ける。

 

 

我夢「博士、僕はこれで失礼します。それと藤宮の行方がわかったら、必ず連絡を」

 

稲盛「ええ…」

 

 

稲盛が頷くと、我夢は滑空場へ走っていく。

そして、そこに置いてあるファイターEXに搭乗して機体を透明化させると、一誠の自宅がある方角へ飛んでいった。

 

 

稲盛「…」

 

 

遠い空へと飛んでいくファイターEXを見届けながら、稲盛は1人、何かを決意するように目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス達と合流した我夢は専用の魔法陣で冥界の都市部にあるテレビ局のビルにいた。

皆が見渡すと、広々とした空間で人が行き交い、近くには受付カウンターらしきものがあることから、ここがロビーだということがわかった。

 

現実世界のテレビ局と遜色ない景色に我夢や一誠は内心驚いていると、遠くからスタッフらしき人が駆け寄ってくる。

 

 

「お待ちしておりました。ささっ、こちらへどうぞ」

 

 

案内するスタッフに連れられて、リアスを先頭に我夢達はエレベーターを使って上の階に上がっていく。

 

皆、緊張しているのか、誰1人として喋ろうとしない。

上へ上へと上っていく階層表記ランプを見上げている中、我夢はお互い顔を合わせず、気まずそうにしている一誠とアーシアに目が止まった。

我夢は隣にいる一誠へ小声でそっと話しかける。

 

 

我夢「イッセー、アーシアと何かあったの?

 

一誠「…ん。あ、ああ……ちょっと色々あってな。後で話すよ

 

我夢「そうか……わかった

 

 

我夢は頷くと、エレベーターの階層表記ランプへ視線を戻す。

ここ最近、一誠とアーシアは会話の口数が少なく、顔合わせるなり、挨拶だけしてそそくさと立ち去っている等、どこか気まずそうにしている。

ゼノヴィアによると、学校だけでなく、家でもこんな調子だそうだ。

 

 

我夢「(どうにかしてあげたいな……)」

 

 

長い付き合いで色々相談を訊いてきたが、我夢には今回の問題は難しそうな気がした。

しかし、だからと言ってこのまま見捨てる訳にはいかない。

一誠は親友であり、仲間である…。彼の悩みを訊き、解決へ導くことが、親友である自分の本心であるからだ。

 

 

我夢「………?」

 

 

そんなことを思いつつ、我夢は階層表記ランプを見ていたが、この場にイリナがいないことに気付いた。

忙しいアザゼルは別として、和気あいあいするのが好きな彼女がいないのは不自然だ。

我夢はゼノヴィアに近寄り、小声で話しかける。

 

 

我夢「ゼノヴィア、イリナは?

 

ゼノヴィア「ああ、イリナなら用事があるらしい。何でも、稲森博士に会うとか言ってたな…

 

我夢「(稲森博士…?)」

 

 

この場にいないイリナの行動に我夢は首を傾げる。

イリナは正直言って、あまり科学に興味がない。何故なら、神を信仰する彼女にとっては、科学は根本的な考えが違うからだ。

 

だが、現にその彼女が稲森に会おうとしている。

イリナと稲森は何も接点が無いにも関わらずにだ。

イリナと稲森博士――――2人を繋ぐ共通点は何かと我夢は考えていると

 

…チンッ!

 

《「1966階に着きました」》

 

 

いつの間にかスタジオがある階へ到着し、我夢は思考を振り払った。

我夢達はエレベーターを降りると、プロデューサーの案内に従って、細長い廊下を歩いていく。

 

我夢は壁に貼られているポスターや壁際に置かれている小道具を興味深く眺めながらリアス達の後をついていくと、廊下の先から見知った男性を筆頭をした数十人の男女の集団に遭遇した。

 

 

リアス「あなたも来たのね。サイラオーグ」

 

サイラオーグ「…リアス」

 

 

そう、男女集団を引き連れるこの男は以前、我夢達が冥界で出会ったバアル家の代表であり、リアスの従兄弟でもあるサイラオーグだ。

 

 

サイラオーグ「そっちもインタビュー収録か?」

 

リアス「ええ、これから。サイラオーグはもう終わったの?」

 

サイラオーグ「これからだ。おそらく、リアス達とは別のスタジオだろうな…………。後、試合、見させてもらったぞ」

 

リアス「…っ!」

 

 

サイラオーグのその一言にリアスは顔を少ししかめる。

確かに苦戦しつつも勝ちはしたが、実質ほぼ我夢のおかげで勝ったようなものだ。あのゲーム以降、采配をとるべき『(キング)』である自分の力量不足をリアスは実感していた。

 

反対にサイラオーグは先月のレーティングゲームで対戦相手のグラシャラボス家の代表を特に苦戦もせず、圧勝している。しかも、()()()()()()でだ。

 

リアスの母であるヴェネラテもだが、サイラオーグの出身のバアル家の出身者は皆、滅びの力を持っている。リアスとサーゼクスにもそれが受け継がれている。

しかし、バアル家であるサイラオーグはその才能を持っていなかった。そのせいで当時のバアル家では、”出来損ない”と蔑まざれていた。

 

だが、サイラオーグはその代わりに”己の肉体”を鍛え上げることによって強力な力を得た。自分がバアル家の代表になることを反対する者を追い出し、代表の座を実力で勝ち取り、若手悪魔ナンバーワンと呼ばれるようにまでなったのだ。

 

しかし、そんなサイラオーグは自責の念に駆られるリアスに苦笑し、

 

 

サイラオーグ「…お互い、素人臭さが抜けないものだな。どうしても力任せになってしまう時がある。俺達の課題点だな」

 

 

と、リアスを励ますように言葉をかける。

我夢達が冥界で見てきた悪魔はこの場合、大抵は見下すのだが、このサイラオーグは逆に同じ目線に立って励ましている。

「実力だけでなく、心の広さも若手悪魔ナンバーワンと呼ばれるだけあるな」と我夢は思った。

 

 

サイラオーグ「…おっと!もう2分も経ったか。そろそろスタジオ入りの時間なのでな、これで失礼する」

 

 

サイラオーグは廊下にかけてある時計を見てそう言うと、眷属と共に早歩き気味に歩き始める。

やや狭い廊下を1列に歩く中、サイラオーグは一誠の横を通り過ぎる瞬間

 

 

サイラオーグ「お前とは正々堂々、勝負をしたいものだよ」

 

一誠「っ!」

 

 

たった一言告げると、サイラオーグは歩き去っていった。

期待を持たれるかのような口調に思わず、一誠は重みと緊張感を感じたのは余談だ。

 

その後、我夢達も案内されたスタジオに入り、初のテレビ収録に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、人間界ではジオベースの樋口達が早速、秩父山中に現れた怪獣に稲森が改良したパーセルの打ち込みを行っていた。

 

 

ゴメノス「ギシィィィィーーーー!!」

 

 

灰色の体色に丸々とした西洋の兜の形をした頭を持つ怪獣『ゴメノス』は地を踏み歩き、その硬い頭で山肌を崩していた。

 

雄叫びをあげながら暴れるゾンネルの元にG.U.A.R.D.の戦闘機とXIGが開発したプロペラが左右に着いている黄色の移動機『シーガルフローター』が到着する。

 

 

「発射!」

 

ゴメノス「!?」

 

 

戦闘機に乗るパイロットはその掛け声と共に操縦桿の引き金を引くと、パーセルが発射され、ゴメノスの額へ綺麗に刺さった。

 

 

樋口「パーセル、作動!」

 

「了解!パーセル、作動」

 

 

シーガルフローターに乗る樋口の合図に同乗している隊員は手元の小型端末のスイッチを押すと、パーセルを起動させる。

 

 

ゴメノス「ゴアッ―――!?」

 

 

その瞬間、ゴメノスは糸が切れた人形のようにバタリと倒れ、眠り始めた。

 

 

樋口「よしっ!」

 

「やりましたねっ!」

 

 

怪獣と争わず、人類の思うように動かして被害を回避できる…。パーセルのあまりの出来に樋口達は喜び合う。

樋口達は後の処理はジオベースの増援に任せることにし、ゾンネルの傍に監視することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ほぼ同時刻。1台の車がジオベースを後にしていた。

その車を運転しているのはパーセル改良に携わった稲森だ。

 

稲森は何か決意した顔を浮かべながら運転しつつ、車内スピーカーから聞こえる音声に耳を傾ける。

 

 

《樋口「…こちら、シーガルフローター1(ワン)、樋口。ポイント2(ツー)1(ワン)5(ファイブ)M9(ナイン)、怪獣運搬の応援を要請します」》

 

稲森「…」

 

 

スピーカーから聞こえる音声はゾンネルの元にいる樋口の無線だった。

作戦自体には関係ない筈の稲森が何故、この無線を聞けているのか?それは簡単で、無線を傍受しているからだ。

内に秘める目的……ただそれだけの為にだ。

 

 

イリナ「ストーーーーーープッ!!」

 

稲森「っ!?」

 

 

しばらく運転していると、目の前の車線上にイリナが大きく手を広げながら立ち塞がる。

突然の目の前に現れた彼女に稲森は目を丸くして驚きながらもイリナを轢くまいとハンドルを切り、車を停車させる。

稲森は車の窓を開くと、顔を出して、こちらへ近寄るイリナへ注意する。

 

 

稲森「危ないじゃない…!突然、飛び出したりしてっ!」

 

イリナ「すみません!でも、どうしても稲森博士に聞きたいことがあって…!」

 

稲森「()()()()()()?」

 

 

訊き返す稲森にイリナは頷き

 

 

イリナ「藤宮 博也君を捜してるんです」

 

稲森「っ!?」

 

 

その言葉を聞いて、稲森は目の色を変えた。

彼に純粋な気持ちで会いたいと思っているのは自分だけかと思っていたが、自分以外にも会おうとしている人物に巡り合った。しかもその真剣な表情から、嘘ではないことがすぐにわかった。

 

 

稲森「わかったわ。着いてきて」

 

イリナ「…っ、はい」

 

 

稲森はイリナを車の後部座席に乗せると、近くの海が見渡せる港に車を停めた。

2人は車を降りると、ウミネコが鳴き声が聞こえる港を歩きながら話し始める。

 

 

イリナ「博士なら何かご存知かなって思って。失礼ですけど……調べさせてもらったんです」

 

稲森「彼にもあなたのような友達がいたのね……いえ、イリナちゃんなら当然かもね」

 

イリナ「何度かたまたま会っただけですよ………え?どうして私の名前を?」

 

 

きょとんと不思議そうにするイリナに稲森は彼女が髪をとめる貝殻が着いた髪止めを指差し、

 

 

稲森「それ、吉岡街の海水浴場で彼から貰ったんでしょ?私もそこにいたから、よく覚えているわ。もう、10年も前だから、忘れているかしら?」

 

イリナ「え?じゃあ、あなたはあの時のおばさん!?」

 

 

目を丸くして訊き返すイリナに稲森は頷く。

イリナが普段着けている貝殻が着いた髪止めは昔、溺れてしまった時に助けてもらった少年からの貰ったものである。

おぼろげな記憶を探ると、確かにその少年に母親らしき人も一緒にいたが、まさかこの稲森とは思わなかった。

 

しかも、彼があの時の女性だとすると、あの時の少年は間違いなく――――。

そんなことを考えていると、稲森は感嘆するように息を吐き

 

 

稲森「あの時のあなた達が出会うなんて……これも運命なのかもね…」

 

イリナ「いえ、偶然だとは思いますけど」

 

 

そう話す稲森にイリナは逆の意見を答える。

以前の彼女ならば、「ああ…!これも神のお召し」なんて台詞を言うのだろうが、藤宮と交流する内、次第にその考えも変わっていっているのだ。

 

会ったのは10年前だが、彼女が少なくとも以前とは違うと感じつつ、稲森は水平線を見渡し

 

 

稲森「けど、話すことは何も無いわ……随分会ってないもの…」

 

イリナ「そうですか…」

 

 

稲森の返答にイリナはしょぼんと顔を俯く。

そんな彼女の反応を見て、稲森はあることに気付いた。

 

 

稲森「惹かれているのね……彼に」

 

イリナ「っ!?/////」

 

 

そう言った瞬間、イリナは目を丸くし、恥ずかしそうに頬を赤くする。稲森の読み通り、彼女は藤宮に惚れているのだ。

 

危険な思想を持つ彼を個人的に、純粋な気持ちで会いたいと願うイリナ…。そんな彼女の想いを察した稲森は彼のことをどこか託せると思う伏があるのか、イリナの瞳を見つめ

 

 

稲森「彼に会うことがあるなら伝えて?私の”最後の研究”の成果をよく見て欲しいって」

 

イリナ「…?」

 

 

そう伝言を残すと、稲森はイリナを置いて、車でどこかへ去っていった。

イリナは何故かその言葉に不吉な予感がしたのを感じられずにはいられなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「あぁ~~っ、疲れたぁ~~!」

 

 

収録が終わり、楽屋に戻った我夢達はぐったりしていた。

皆、緊張していたのか一誠のように背筋を伸ばしたり、テーブルに突っ伏してたり、壁にもたれかかったりしていた。

 

番組中のインタビューは終始リアスに向けられ、主にレーティングゲームや将来図、XIGについての質問ばかりだった。

皆が緊張している中、リアスは笑顔を忘れず、淡々と答えられていた。そういった教育を受けているのか、冷静でいられるのは流石お嬢様といったところだろう。

 

各々がぐったりしていると、机に突っ伏していた我夢は顔をあげ、一誠に話しかける。

 

 

我夢「でも、意外だったよね。僕達、ウルトラマンが子供達に人気だったなんて」

 

一誠「おお、そうだな。ああいうのに憧れるってのは冥界でも変わんねぇんだな」

 

 

我夢の話に一誠は相槌を打つ。

我夢の言う通り、ガイアとダイナは現在、冥界の子供達の注目を浴びている。

何でも、先月のソーナ率いるシトリー眷属とのレーティングゲームの中継を子供が観た際、映像に映るガイアとダイナがヒーローショーの着ぐるみに見え、その見た目のかっこよさに心を引き付けられたとか。

 

その証拠に収録中に我夢や一誠にインタビューが回ってきた時は子供達から「ガイアーー!」とか「ダイナーー!」と目をキラキラと輝かせながら声をかけられたり、収録が終わった瞬間にサインや握手をせがまれたりした。

子供達にそこまで夢中にさせるとは、人気というのは嘘ではないだろう。

 

我夢や一誠はそんなことを思い返していると、椅子でくつろいでいるリアスが楽屋のお菓子をつまみながら訊く。

 

 

リアス「ところでイッセー、我夢。別のスタジオで何を撮ってたの?」

 

 

実は収録が終わった後、子供達に囲まれている時に我夢と一誠はスタッフの1人に呼ばれ、別のスタジオに案内されたのだ。しかも、専用の台本も渡されてだ。

他の皆もリアスと同じ様に気になる様子で2人へ視線を向ける。

すると、我夢と一誠は顔を見合わせてニヤリと含み笑いをし、

 

 

我夢「内緒ですよ。放送されるまで誰にも情報を教えるなってスタッフの人達に言われたんで」

 

一誠「そうそう!でも、期待は出来ますよ!」

 

 

と、少し悪戯っぽく答える。

その返答に皆はもっと気になるが、待つのも悪くないと思い、代表してリアスが「わかったわ。楽しみにしましょう」と返した。

 

その後、他の皆も疲れがなくなってきたのか、様々な会話をしていた。

すると、コンコン…と、入口の方からノック音が鳴る。

 

 

一誠「俺が出るっすよ。はーーーい!」

 

 

扉を開けようとするリアスを制止し、一誠はよっこらしょと言いながら立ち上がると、扉に近付く。

ドアノブに手をかけて、そのまま扉を開けると、そこには縦ロールのかかった金髪の美少女――レイヴェルが手にバスケットを持って立っていた。

 

 

レイヴェル「っ、イッセー様!」

 

一誠「あれ?お前、どうしてここに?」

 

 

一誠の顔を見た途端、レイヴェルは嬉しそうにパアッと満開の笑顔を浮かべる。だが、すぐにその喜びを振り払う様に頭を左右に降って不機嫌な顔に切り替えると、手に持っていたバスケットを一誠へ突き出す。

 

 

レイヴェル「こ、これ!私が作ったケーキですわ!この局に予定があるものですからついでです!是非、リアス様達と一緒に食べてくださいまし!!」

 

一誠「お、おおっ…サンキュー」

 

 

やや強引に手渡され、一誠はタジタジになりながらも受け取る。受け取ったバスケットの包みを広げると、甘い香りを漂わせ、見てるだけでも美味しそうなチョコレートケーキが入っていた。

 

 

一誠「しっかし、悪いな。わざわざこんな豪華な差し入れをくれて…」

 

レイヴェル「い、いえっ!ケーキぐらいなら余裕で作れますわ!そ、それにケーキをご馳走すると約束しましたし!」

 

一誠「お茶会…、だっけ?そん時にしてくれても良かったのに」

 

レイヴェル「ぶ、無粋なことはしませんわ!アスタロト家との一戦も控えていますし、お時間はとらせませんわ!それではこれで失礼します!感想は後で教えて下さいな!」

 

一誠「おっ、おい!?」

 

 

レイヴェルは頬を赤く染めてたて続けにそう言うと、一誠が制止する間もなく、そそくさと立ち去っていった。

彼女のあまりもの理解し難い行動と発言に一誠は唖然としていたがすぐに気を取り戻すと、怪訝そうに木場に訊く。

 

 

一誠「なあ、木場?俺、あいつに何かしたっけ?」

 

木場「……さあ?」

 

 

木場はわかっているのか含み笑いを浮かべつつ、とぼけた様子でお手上げする。木場だけでなく、ギャスパーや女性陣はわかっている様子で、リアスとアーシアはほんの僅かだが機嫌を悪そうにしている。

 

 

「「?」」

 

 

しかし、如何にもなリアクションを見ても尚、一誠と我夢にはわからないのか、2人そろって首を傾げている有り様だ。

我夢はともかく、一誠までもわからないとは……。

 

一誠はいくら考えてもわからないので思考を切り替える。

 

 

一誠「…?ま、いいや。とりあえず、これ食いましょう」

 

リアス「そうね。せっかくだから頂きましょう」

 

 

一誠の提案にリアスが賛成する。他の皆も聞かずとも同じ意見である様だ。

さっそく、皆がレイヴェルのケーキに手をつけようとした時、《ピピッ》と皆のXIGナビに通知音が鳴る。リアスが代表して出ると、それは石室からだった。

 

 

《石室「…」》

 

リアス「…?どうしましたか?」

 

 

苦い顔をして口を固く閉ざして一向に話さない石室にリアスは不思議に思い、訊ねる。

すると、次の瞬間。石室の口から予想外の言葉が出た。

 

 

《石室「先程、稲森博士がパーセルを撃ち込んだ地球怪獣を操って、共に姿を眩ました。ジオベースにあるパーセルのデータも一緒にだ」》

 

『!?』

 

 

そのあまりにも信じられない事態に我夢達は言葉を無くす。種族は違えど、地球を守る為にG.U.A.R.D.及びXIGに協力した筈の稲森がこんな形で裏切るとは…。

数時間前に会ったばかりの我夢は特に信じられなかった。

 

 

我夢「そんな……一体、どうして!?」

 

《石室「わからない。ただ、わかることは博士は最初から怪獣を操れる様にパーセルに独自の改良をしていたことだけだ」》

 

我夢「…っ」

 

 

そのことを聞き、パーセルの改良は稲森自ら率先して参加したと樋口から聞いたことを思い出す。

その時は何も疑問に思わなかったが、まさかこれが狙いだったとは思いもよらなかった…。

 

 

リアス「怪獣の現在地は?」

 

《石室「怪獣は現在――」》

 

ドォォォォンッ!!

 

『!?』

 

 

石室が怪獣の現在地を知らせる最中、突然、近くで衝撃音が鳴り響く。その衝撃でほんの少し楽屋が揺れ、足下が不安定になるが、すぐに収まった。

幸い尻餅やケガはしなかったが、その衝撃で皆は一斉に心の中で「まさか…」と嫌な予感がした矢先、1人のスタッフが扉を開け、部屋へ駆け込んでくる。

 

男は急いでいて乱れた呼吸を整えると、顔をあげると、我夢達の予想通りの言葉を発した。

 

 

「た、大変ですっ!この町の郊外に怪獣が現れましたっ!!」

 

 

最悪な予想が的中した我夢達は疑問が未だ残ってはいるが、とにかく目の前の問題を解決すべくXIG隊員服に着替えた。

ちなみに着替えはXIGナビにあるボタン1つ押すことで瞬時に出来るので、時間は1秒もかからない。

 

 

リアス「皆、行くわよっ!」

 

『はいっ!』

 

 

身支度を整えた皆は先陣を切るリアスに連れて、移動し始める。我夢も同様についていこうとするが、そんな彼をリアスは制止する。

 

 

リアス「待って、我夢。やってほしいことがあるの」

 

我夢「?」

 

 

やってほしいこと…?首を傾げる我夢にリアスは続けて

 

 

リアス「先程、コマンダーからあなたへの指令が来たわ。このビルの地下ロビーにいるリザードと一緒に向かってほしいの」

 

我夢「わかりました!」

 

リアス「頼むわね」

 

 

とりあえず自分にしか出来ないことだろうと察した我夢は承諾すると、皆とは別の方向へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チームリザードと合流した我夢は瀬沼が運転する車に乗り、怪獣が出現した地点へと向かっていた。

 

瀬沼から聞いた石室の伝達によると、我夢は現場の近くにいるであろう稲森を説得してほしいとのことだった。

我夢は何故自分なのか?と思いつつも、真剣な面持ちで前方の景色を眺めていた。

 

 

瀬沼「高山さん、これを」

 

 

瀬沼は運転しながら、助手席に座る我夢に分厚い黒のファイルブックを渡す。

 

 

我夢「何ですか、これ?」

 

瀬沼「稲森博士が過去に提出した案です。我々が魔王様の命令で調査していたところ、偶然発見したんです」

 

我夢「『地球環境改善安全プラン』…?」

 

 

そう大々的なタイトルで綴られたレポートの下の方には、確かに『稲森 京子』の名があった。

続けてページを捲ると、それだけでなく、地球環境に対するいくつものレポートが収納されていた。

 

どれも素晴らしい案だと我夢は思ったが、目を通したレポートの全てに『保留』の烙印が押されている。どういうことだと怪訝に思っていると、瀬沼は我夢を横目で見ながら話す。

 

 

瀬沼「そのファイルブックだけでなく、他にも多数の案が提出されましたが、地球改善よりも破滅招来体との戦いが優先され、全て却下……その代わり―――」

 

我夢「――パーセルの担当をさせられた…」

 

 

瀬沼の言おうとしていることを我夢が続けて呟くと、瀬沼は頷く。

我夢はジオベースでの稲森の会話を思い出す…。

 

 

(稲森「”地球の生物達が人類の自分勝手さに怒っているんじゃないか”って。きっと、人間1人1人の意識が変わらない限り、その怒りは鎮められない」)

 

我夢「…!」

 

 

地球環境に対する思い、地球怪獣の存在意義……色々な要素を掛け合わせて考えると、我夢の脳裏に1つだけ答えが浮かんだ。

 

 

瀬沼「稲森博士の目的は何でしょうか?」

 

我夢「多分……怪獣の怒りを見せつけることで人間、いやこの地球に住む種族の意識は変わる―――博士はそう信じています」

 

 

稲森は怪獣を操り、暴れさせることで人々に意識させ、地球環境の改善を考えさせる…。そうすることで、人々の地球の環境に対する姿勢は変わるかもしれない。

 

――しかし、だからといって好き放題させる訳にはいかない。多くの血を流してまで行うなんて、解決策じゃない。自分も同じ地球を愛する者として黙ってはいられない…。

それと同時に石室が何故、自分にこの役割を与えた理由を理解した。

 

 

瀬沼「…っ!?パーセルの反応が!」

 

我夢「瀬沼さん、停めてください!」

 

 

瀬沼は我夢の指示に従い、車を近くの木々に停める。

我夢は車が停まったや否や、すぐに外へ飛び出た。

 

 

我夢「ありがとうございます。ここから先は僕1人で行きますので、瀬沼さんは都市の住民の避難を!」

 

瀬沼「わかりました。お気をつけて」

 

 

我夢は力強く頷くと、森の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴメノス「グワァァァァ~~~!!」

 

 

その頃、都市部郊外にいるゴメノスは口から放つ火球で都市部を攻撃しつつ、ゆっくりと進軍していた。

都市部は幸い、自動防衛結界によって守られてはいるが、破壊されるのも時間の問題だ。

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

 

ゾンネルの額には撃ち込まれたパーセルが心臓の鼓動の様に赤く点滅しており、稲森の従順な存在となっていることを表している。

 

 

稲森「…」

 

 

その様子を遠く離れた岩山から見下ろしていた稲森は機械語デコーダを手に、眺めていた。

 

 

我夢「もういいでしょ、博士」

 

稲森「…!?」

 

 

すると、そこへ我夢が声をかけ、現れる。稲森は最初こそ驚いた表情でいたが、すぐに冷静さを取り戻し、冷めた表情に変わる。

 

 

我夢「何故、冥界(ここ)にいるのかとか聞きたいことはありますが、まずは怪獣の怒りを鎮めて下さい」

 

稲森「それは出来ないわ」

 

我夢「何故です?博士はリリーの様な小さな生き物の死を、悲しんでたじゃないですか?なのに――」

 

稲森「――人類は急激に進化し過ぎたわ…」

 

 

自分の頼みを一蹴した稲森に我夢は問い詰めると、稲森は言葉を遮って口を開く。

思わず口を閉ざす我夢に稲森はそのまま話し続け

 

 

稲森「…異種族だって同じよ。このままなら、人間も悪魔も、地球を自らの手で破滅に追い込んでしまう」

 

我夢「だとしても、どうしてこんな方法で人々の意識を変えようとするんです?」

 

稲森「時間がないのっ!」

 

 

尚も問い続ける我夢に稲森はそう言い放つ。

彼女の強い口調に押されそうになるが、それでも我夢は疑問の眼差しを向け続ける。

稲森は話し続け、

 

 

稲森「…人類が、悪魔が緩やかに意識を変える時間なんて、もう残されてないわ。人間よりも遥かに優れた力を持っている筈の悪魔がどうして住んでいる地球の環境に対する行動を起こさないの!?どうして自分達が悪化させている事実に目を背けるの!?どうして身分を競うゲームの方が大事なの!?」

 

我夢「…っ」

 

稲森「だったらもう残された手段はないわ!藤宮君が使ったポータルで怪獣を冥界へ連れてきて、残酷な事実を目の前に突きつけるしか、方法はないの!」

 

 

稲森の言葉に我夢はほんの一瞬だけだが、共感してしまった。確かに地球のピンチだというのに、上級悪魔は自分の地位ばかり目を向けて、後は知らんぷりしている。

それは事実だが、やはり…

 

 

我夢「それは違う!きっと人は変われる筈です!どうして、僕達や人間の可能性から目を背けるんです?」

 

 

否定しつつも、我夢は問いかける。どうしてそこまで焦っているのか?それが気がかりだった。

すると、稲森は顔を俯け、静かに答える。

 

 

稲森「…巡りあってしまったからよ。地球の運命を背負った人――――『青い巨人』に」

 

我夢「っ!?知っていたんですか?藤宮が『青い巨人』だって…」

 

 

彼女の口から出た言葉に我夢は目を丸くして問いかけると、稲森は頷く。

その事実を知った我夢は稲森の一連の行動を見て、何かに気付いた。

 

 

我夢「っ、まさか…!?博士は自分の手を汚せば、人々の意識は変われば、藤宮が思い直すと?」

 

 

そう、今回の事件は全ては藤宮の為だったのだ。

両親を悪魔のせいで亡くし、人間に失望し、苦しんだ我が子同然の彼を救ってあげたいという義理の母である愛情故の行動だったのだ。

これに対して稲森は

 

 

稲森「…今の人類、悪魔達と同じ様に、彼も…簡単には変われないのよ」

 

我夢「博士……」

 

 

肯定と言える返事をする彼女はその顔は、我が子を心配する母親の表情そのものだった。

 

 

キィィィィ――――――ン

 

 

ちょうどその時、編隊を組んだ2機のXIGウイングと1機のXIGウイング2号、それに魔王軍と思わしき武装した悪魔達が我夢達の真上を通り過ぎ、ゴメノスへ向かっていく。

それを見て、血相を変えた稲森はその場から駆け出す。

 

 

我夢「博士!」

 

 

我夢も急いで後を追う。

稲森は走りながら息を切らしつつ、耳に着けてあるヘッドセットのマイクにコマンドを音声入力していく。

 

 

稲森「Start(スター)to(トゥ) command(コマンド)09(ゼロナイン)- 02(ゼロツー)- G3(ジースリー)- 00(ゼロゼロ).Enter(エンター).」

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~~!!」

 

 

稲森がそう呟くと、ゴメノスの額のパーセルの点滅は速くなると、彼女のいる方角へ顔を向ける。

すると、次の瞬間、ゴメノスは口を大きく開き、火球を我夢目掛けて放った。

 

 

我夢「うわぁぁぁーーーーー!!」

 

 

突然の攻撃に我夢は対処が間に合わず、爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる。

着弾時の爆風に稲森は倒れるが、すぐに上体を上げて我夢のいた方角を見る。

 

 

稲森「……誰にも邪魔はさせない…!」

 

 

そう呟く彼女の目は以前の様な優しく穏やかなものでなく、目的の為に徹する決意をした冷たいものだった。

 

そうこうしているうちにXIGウイング部隊と魔王軍、リアス達はゴメノスに対して集中攻撃を開始していた。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!」

 

 

彼らの集中攻撃にゴメノスの注意は確実にXIGへ逸れていた。

稲森はすぐさま立ち上がると、応戦とばかりにコマンドを音声入力していく。

 

 

稲森「 command(コマンド)44(フォーフォー)- C5(シーファイブ)- 71(セブンワン)- 00(ゼロゼロ).Enter(エンター).そいつらに構わず、町へ向かうのよ」

 

 

だが、パーセルを通して入力したのにも関わらず、ゴメノスは無視して、XIGや魔王軍と応戦している。

 

 

稲森「37(スリーセブン)-41(フォーワン)-02(ゼロツー)……!」

 

 

その様子に稲森は焦り、コマンドを再度入力していく。

しかし、ゴメノスは何か気付いたのかジッ…と稲森の方を見下ろし、その動きを止めた。

 

 

稲森「どうしたの?言うこと聞いて…!」

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!!」

 

 

突然の静止に稲森は困惑し、何度も呼び掛ける。

コマンドを入力する度、激しく点滅するパーセル。

不穏な空気が立ち込め始めていた次の瞬間、ゴメノスは雄叫びをあげると額のパーセルをその左手でもぎ取った。

 

 

稲森「そんな…!?所詮、人には操れないと言うの…?」

 

 

完璧に操れると自負していたパーセルが意味をなさず、命令に逆らって、遂にはもぎ取ってしまった。その光景に稲森は唖然となる。

ゴメノスは呆然と立ち尽くしている稲森が自分を今まで操っていたのがわかっていたのか、口を大きく開け、彼女へ狙いを定める。

 

 

我夢「博士ーーっ!!離れてーーーーー!!!」

 

 

そこへ復帰した我夢が彼女を守ろうと走りながらエスプレンダーでガイアに変身しようとしたが、もう遅い。

無慈悲にもゴメノスの火球は稲森のもとへ一直線に放たれた。

 

 

稲森「きゃあぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

ドォォォォーーーーーーンッ!!

 

 

火球が直撃し、爆発で稲森は勢いよく吹き飛ばされ、地面に頭をぶつける。

我夢は血相を変えて、倒れている稲森へ駆け寄る。

 

 

我夢「博士!博士!博士ぇぇーーーーー!!」

 

稲森「…」

 

 

我夢は必死に稲森の肩を揺すって呼び掛けるが、稲森は意識を失っており、返事はない。

悪魔である我夢は体をぶつけるぐらいで平気だが、人間である彼女はそうではない。かなり吹き飛ばされたので重傷だろう。

 

 

ゴメノス「ゴワァッ!ゴワァァァ~~~!!」

 

我夢「っ!」

 

 

我夢は口から血を垂らしながら気絶している彼女を不安そうに見つめていたが、束縛から解除されて嬉しそうに雄叫びをあげるゴメノスへ視線を向ける。

ゴメノスは次の標的を近くにいるXIGでなく、仕留め損ねた我夢へ向けると、一直線に走り出した。

 

 

我夢「ガイアァァァァーーーーーーーーー!!

 

 

人を殺して喜ぶ怪獣に我夢はこれほどまでにない怒りと殺意を覚えた我夢は意を決して立ち上がる。掛け声と共にエスプレンダーを前へ突き出すと、赤い光に包まれ、ウルトラマンガイアへ変身した。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

 

ガイアは怒りを現すかの如く、その身に烈火を纏って着地すると、その勢いのまま滑り込む様に接近する。

 

 

ガイア「トアッ!」

 

ゴメノス「グワァァ!?」

 

ガイア「グアッ!」

 

ゴメノス「ギシィィーーー!?」

 

 

近付くとガイアは回りながら左足の蹴りあげ、かかと回し蹴りを繰り出す。

ゴメノスが怯んでいると、ガイアは続け様に跳躍してゴメノスの後ろへ回り込む。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァァ………ダァァーーー!!」

 

 

ガイアは尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領でブンブンと3回その場で回ると、ゴメノスを町から離れた岩山へ投げ飛ばす。

 

 

ゴメノス「ギィィ~~~!!」

 

 

岩肌に体をぶつけたゴメノスは破片の雨が降り注ぐ中、苦悶の声をあげ、ジタバタとその場で苦しむ。

 

 

ガイア「…」

 

 

それをよそにガイアは先程、自分と稲森がいた岩山へ視線を向ける。

そこには倒れている彼女の上体を抱える藤宮の姿があった。

 

 

藤宮「何故、こんなことを……」

 

 

藤宮は困惑した表情を浮かべながら朦朧とした表情を浮かべる稲森へ問いかける。

すると、稲森は意識が朦朧としながらもゆっくりと口を動かし、話す。

 

 

稲森「…本当は……見たかった。あなたの……笑顔を……」

 

藤宮「…っ!」

 

 

その言葉に藤宮は悲痛な表情になり、思わず涙を流し始める。彼女の言葉の意味……それはもう既に命は助からないということだ。

その悲しさに両親が殺されて以来、ずっと流したことがなかった涙を久しぶりに藤宮は流した。

 

 

稲森「…これ……を…」

 

藤宮「…ああっ」

 

 

稲森は重たい手を必死に動かし、ポケットから取り出したUSBメモリを藤宮へ差し出す。

それは彼女がジオベースから奪取したパーセルのデータが入ったUSBメモリだった。

 

 

藤宮「…そんな!俺のせいで……あなたをこんな、こんなことをさせて……!」

 

 

意図せずとも自分のせいで彼女が暴走してしまった。その事実を察した藤宮は嗚咽混じりの声で謝罪する。

どんなに謝っても許されない…。しかし、この時ばかりの藤宮はいつものクールさはなく、1人の人間の死を悲しむ少年だった。

 

 

藤宮「……!」

 

 

罪悪感に駆られる藤宮の頬を稲森は子供をあやすように愛しく撫でる。その行動に藤宮はハッとなり、涙を流しながら彼女を見つめると、稲森は

 

 

稲森「…こんな…お母さんで…ごめん……ね」

 

 

微笑みながら一言告げると、稲森の体は冷たくなり、手に持っていたUSBメモリはカタッと音を立てて落ちた。

 

 

ガイア「…!?」

 

 

彼女の死にガイアは動揺の色を隠せなかった。

 

 

藤宮「う"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーーーーーーー!!」

 

 

そして、目の前で育ての親を失った藤宮のショックは言葉に出来ぬほど悲しみに溢れた。彼から出た悲痛な叫びはこの場にいるガイアのみならず、遠くにいる魔王軍やリアス達の耳にまで響いた。

 

 

ゼノヴィア「この声は……藤宮 博也か!」

 

アーシア「でも、凄く悲しい声です…」

 

朱乃「……」

 

 

藤宮の叫びに一同は立ち尽くし、悲しそうに声をもらす。朱乃はその叫びに何か思い返す伏があるのか、特に悲しそうな表情を浮かべていた。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァ~~~!!」

 

 

ゴメノスは稲森が死んだことを祝うように落ちてあった岩を両手で砕いた。まるで「この岩のように儚い命だったな」と言わんばかりに……

 

 

ガイア「グアァァァァァーー……アァッ!!」

 

 

ゴメノスに確実といえる殺意を覚えたガイアは怒りに震えると、その場から駆け出す。

ゴメノスはこちらへ向かってくるガイアへ口から火球を何発も放つが、ガイアは両腕で叩き落としながら接近する。

 

 

ガイア「デュアッ!グアッ!!」

 

ゴメノス「ギシィィ~~~!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ガイアは走った勢いのまま前回転しながら跳躍すると、かかと落としを脳天にくらわせる。

怯んだゴメノスにガイアは額を掴んで無理矢理顔をあげさせると、左の拳で2発殴り、

 

 

ガイア「ダッ!」

 

ゴメノス「ギシィ!!?」

 

 

頭をひいて、勢いよく頭突きをゴメノスの顔面へくらわせる。

ゴメノスは苦悶の声をあげながら大きく後ろへ後退るが、ガイアの猛攻はまだ終わらない。

 

 

ガイア「デヤァァァーーー!!」

 

 

ガイアは前へ飛びかかって体当たりすると、ゴメノスと一緒に倒れこむ。

そして、すぐさま立ち上がると、馬乗りになってゴメノスの顔面を執拗に殴り始めた。

 

 

小猫「……我夢先輩、怒ってる」

 

ギャスパー「す、すごい…!」

 

 

その光景を遠くから見ていた一同からは期待混じりの驚愕の声があがる。しかし、

 

 

木場「……駄目だ」

 

「「?」」

 

 

と、期待とは裏腹に否定的な声をもらす木場に小猫とギャスパーは不思議そうに顔を向ける。

そんな2人に木場と同じ意見なのかリアスが彼に変わって説明する。

 

 

リアス「我夢はね、怒りのあまり、冷静さをかけてるのよ。今は圧倒的にねじ伏せてるけど、精神が不安定だから、隙が多すぎる。このままじゃ、危険すぎるわ…」

 

一誠「我夢…」

 

 

リアスの説明を聞き、皆は苦い顔でガイアを見守る。

流れに乗ったガイアは次々と拳を打ち込んでいくが、次の瞬間――その不穏な予感は的中した。

 

 

ゴメノス「ギィ~~~!」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

ゴメノスに脇腹を殴られ、ガイアは横へ吹っ飛ばされ、地面へ倒れる。

ガイアが離れて自由の身となったゴメノスは立ち上がると、続け様に倒れている彼を蹴っ飛ばす。

ガイアはまたも後方へ吹き飛ばされ、地面に大きく体をぶつける。

 

 

ガイア「グアッ…」

 

ゴメノス「ゴワァァァーーー!!」

 

ガイア「グアァァァァァーー!!!」

 

 

ガイアは怯みながらも何とか立ち上がるが、ゴメノスはその硬く丸々とした頭を向けて突進。

ガイアは大きく後方へ吹き飛ばされ、岩肌に体をぶつける。ガイアはそのあまりもの激痛に中々立ち上がれず、膝をついている。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァーーー!!」

 

ガイア「デュアッ!?」

 

 

その隙にゴメノスは近付くと、その図太い両手でガイアの首を締め上げる。

更に駄目押しとばかりにゴメノスは体内の熱エネルギーを両手に集中させ、皮膚を焼き始めた。

 

 

ガイア「ドアァァァァーーーー!!」

 

ゴメノス「…ニヤリ」

 

 

手から伝わる熱で皮膚が焼かれる感覚にガイアは苦痛の叫びをあげる。ゴメノスは苦しむガイアを見て嬉しいのか、目元を歪めて邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

[ピコン]

 

 

その拷問の様なむごたらしい所業にガイアは耐えきれず、ライフゲージも危険を知らせる赤色に点滅し始めた。

 

逃れようにもゴメノスの怪力を振りほどくことは出来ず、ジワジワと体力を削られていく。

まさに絶体絶命……。そんな時、

 

 

ダイナ「ダアァァァァァーーーーー!!」

 

ゴメノス「ゴワァァァーー!!?」

 

 

いつの間にか一誠が変身したウルトラマンダイナが上空から登場すると共に急降下キックでゴメノスを蹴り飛ばし、ガイアから引き剥がした。

解放されたガイアは後方へ倒れ、尻餅をつく。

 

ダイナは尻餅をついたガイアを助け起こすと、

 

 

ダイナ「我夢、冷静になれ。何があったかわかんねぇが、とにかく冷静になってアイツを倒そう」

 

ガイア「ごめん、わかった…」

 

 

叱咤されたガイアは反省すると、心を落ち着けて、いつもの感覚を取り戻す。

 

 

ゴメノス「ゴワァァァーーーー!!」

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァーーー……!!」

 

ダイナ「ハッ…!」

 

 

立ち上がったゴメノスはダイナに邪魔され、怒りを露にした雄叫びを放つ。そんなゴメノスを前にガイアは両腕を広げてエネルギーを溜め始め、ダイナは腰を低くすると、

 

 

ガイア「デュアッッ!!!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ガイアはフォトンエッジ、ダイナはソルジェント光線を放つ。2人の光線は途中で重なり合い、赤と青白いエネルギーが混ざった破壊光線となってゴメノスを襲う。

 

 

ゴメノス「ギィ~~~~~!!!!!」

 

ドガガガガガガァァァァーーーーーーーーン!!

 

 

まともに受けたゴメノスは身体中を刃で切り刻まれた様なエフェクトが走り、オレンジ色のサークルが描かれると、爆発四散した。

 

 

ガイア「…」

 

ダイナ「?……ッ!?」

 

 

倒し終わったガイアは岩山で稲森の遺体に寄り添う藤宮を見下ろす。ダイナもそれにつられて顔を向けると、何があったのか理解した。

 

 

藤宮「…」

 

 

藤宮は涙で濡れた目でガイアを見据えると、どこかへ立ち去っていった。

その表情はどこか虚しく悲しみに満ちたものだった…。

 

その後、戦いの後始末は魔王軍に任せ、稲森が世界各地に設置していたポータルはチームリザードによって全て除去され、地球怪獣が冥界に現れる危険は去った。

 

そして、兵藤邸。すっかり夕焼けになり、辺りが暗くなり始める頃、我夢はリアス達を集めた。

駒王町の町並みを見渡せる屋上で我夢が皆に事の顛末を話した。

稲森の行動の経緯を……そしてゴメノスによって殺されてしまった事を…。

それを聞いた皆は各々、何とも言えない表情を浮かべた。

 

 

リアス「結局、藤宮はパーセルのデータを持っていかなかったのね」

 

我夢「無駄だとわかったんです。怪獣を操ることで地球は救えないって……」

 

 

パーセルのデータが入ったUSBメモリは、稲森の遺体の近くに残されていた。それが藤宮の結論なのか、それとも巻き込んでしまった彼女への僅かながらの謝罪なのか……その真実は彼本人のみしかわからない。

 

稲森の死に悲しむ者もいれば、彼女が死ぬキッカケを与えた人物に怒る者もまたいた。

 

 

一誠「藤宮のやつ!ゆ、許さねぇ……!博士は自分の為に死んだのに考えすらも変えねぇ…!次に会ったら、絶対にぶちのめすっ!!」

 

 

怒りを露にした一誠は歯を食いしばり、血が滲むくらい拳を握りしめていた。

前々から特に藤宮に対して良い印象を持たなかった彼だが、今回の一件で更に悪化した。

そう叫ぶ一誠の目は本気で、藤宮が目の前に現れたらすぐに襲いかかりそうな迫力を放っている。

 

 

イリナ「…」

 

 

そんな彼を見て、イリナは顔を曇らせる。

育ての親を失った藤宮を助けたいという純粋な気持ちと、XIGとして藤宮の前に立ち塞がらなければならないという正義感の板挟みになり、心が大きく揺らいでいた。

 

 

我夢「…」

 

(稲森「今の人類、悪魔達と同じ様に、彼も…簡単には変われないのよ」)

 

 

そんな彼女の異変に気付いた我夢は1人、稲森の言葉を思い出した。

 

―――彼女の言うように人類、異種族と藤宮は簡単に変わることは出来ないのか?

 

―――自分はどうすればいいのか?

 

そんな不安を胸に我夢は水平線に消え行く夕陽を眺めるのであった……。

 

 

 

 




次回予告

ウルトラマンアグルは世界各地で次々と怪獣を呼び覚ました!
もう誰も彼を止められないのか…?

次回、「ハイスクールG×A」
「アグルの決意」
ガイア、アグル、ダイナの三大バトルだ!


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第37話「アグルの決意」

甲殻怪地底獣 ゾンネル(ツー)
マグマ怪地底獣 ギール(ツー) 登場!


ジリリリリ…!

 

 

稲森が命を散らしたその日の夜。G.U.A.R.D.日本支部ジオベースはけたたましい警報が鳴り響いていた。

それもその筈、突如現れた侵入者が正面突破を仕掛け、次々と警備網を潜り抜けているからだ。

 

 

「止まれっ!」

 

「それ以上近付くと、撃つぞ!」

 

 

またも警備網を突破した侵入者に向けて、隊員達は立ち塞がり、銃火器を向ける。

すると、次の瞬間。侵入者は一瞬体を青く発光させると、目にも止まらぬ速さで近付き、隊員達を気絶させていった。

 

 

「かっ、はっ…!」

 

 

最後の1人を気絶させた侵入者は堂々とした態度で進んでいくと、とある一室へ入っていった。

そこはジオベースが極秘にしているデータが保管されているデータベースルームだった。

 

侵入者は入るや否や、近くにあるデスクの上のパソコンに近付くと、パソコンから発する光で顔が露になる。

その侵入者は藤宮 博也、その人だった。

 

藤宮はさっそくハッキングしてログインすると、手元のキーボードを操作して、何かを探し始める。

 

 

藤宮「…これだっ」

 

 

何回かクリックした後、お目当てのデータを見つけた藤宮は筐体にUSBメモリを挿し、データをコピーし始める。

 

画面にコピーの進行度が表示され、1分も経たないうちにコピーが完了した。藤宮はUSBメモリを抜き取り、すぐさま立ち去ろうとしたが

 

 

「藤宮 博也!外は完全に包囲されている!大人しく投降しろ!!」

 

藤宮「…っ!」

 

 

出入口からジオベースの隊員の警告が聞こえる。藤宮は気配を探ると、扉の先には何十もの武装した隊員が待ち構えている。

ここは機密情報を扱っているので窓などはなく、この扉1つか出入りは出来ない。まさに八方塞がりだ。

 

 

藤宮「仕方ない…」

 

 

人間の姿では強硬突破は難しいと判断した藤宮は諦めたかのように呟くと、右手首のアグレイターを顔の横で掲げ、青い光に包まれた。

 

 

 

 

 

その頃、ジオベースの外では藤宮の侵入したことを知らされたチームリザードの瀬沼とその部下が駆け付けていた。

 

 

瀬沼「遅かったか…」

 

「隊長!」

 

瀬沼「ん?くっ…!」

 

 

瀬沼達が倒れているジオベースの隊員の安否を確認していると、ジオベースの建物から青い閃光と共にアグルが現れた。

 

 

アグル「……トゥアッ!!」

 

 

瀬沼達がいることに気付いたアグルは彼らを見据えると、何もせず、夜空へと飛んで行った。

 

 

瀬沼「…くそっ!してやられたっ!」

 

 

アグルを取り逃がした瀬沼は悔しげに歯を噛みしめながら拳を振り下ろした。

 

ジオベースでの一連の出来事は、すぐにエリアルベースに知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

エリアルベースのコマンドルームではほぼ在中している石室、アザゼル、それに珍しくサーゼクスの姿もあった。どうやら、防衛組織の前線基地の視察という魔王の職務で来たそうだ。

3人はモニターに映るジオベースのメインチーフ、樋口からの報告を真剣な面持ちで聞いていた。

 

 

《樋口「―――藤宮はデータベースルームにあるデータファイルを盗むだけで、死傷者は誰1人出ませんでした」》

 

石室「…わかった。それで、奴が盗んだコンピューターのデータファイルには何が?」

 

《樋口「世界各地で目撃された怪獣によるものとされる異常現象を集めたデータです」》

 

アザゼル「何?」

 

 

樋口の言うそのデータはサーゼクスは授業参観の時に見たが、石室、アザゼルもXIGが創設間もない頃に見させてもらったことがある。以前、美宝山に現れたゾンネルもそのデータに記録されていた。

樋口の話は続き

 

 

《樋口「根源的破滅招来体によって目覚めさせられ、未だ地中に潜伏している地球怪獣達………盗まれたデータにはその正確な位置が記されています」》

 

アザゼル「おいおい?そんなもん盗んでどうすんだ?また怪獣を操るつもりか?」

 

サーゼクス「…わからない。ただ、何かしら不穏なことが起こりうるということだけは明確に言えるだろう……」

 

石室「……」

 

 

藤宮の行動に不審に思いつつも、皆はサーゼクスの言う

通り、嫌な予感がするのを感じられずにはいられなかった。

稲森博士という大切な存在を失った今、藤宮の精神は異常なまでに危険であり、歯止めがますますきかなくなるだろう。

 

 

石室「サーゼクス。お前のリザードを藤宮の捜索にあたらせたい。構わないか?」

 

サーゼクス「ああ、構わないよ。瀬沼も躍起になっているからね………あと、アザゼル。リアス達には連絡を入れるつもりかい?」

 

アザゼル「いいや。あいつらにはレーティングゲームが近い。変に情報を入れて、集中を削ぐ訳にはいかないからな」

 

サーゼクス「それがいいだろう。この件は極秘とし、ミカエルやセラフォルーに伝えて、ソーナや天界にも協力をあおごう」

 

石室「わかった」

 

 

話が纏まり、サーゼクスはアザゼルと共に冥界へと戻っていった。残された石室は窓から夜空を眺め

 

 

石室「何も起きなければいいが…」

 

 

そう不安に思いつつもただ切に願うばかりだった。例えそれが現実的でないにしろ、ただ単純に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本から遠く離れたアメリカのアリゾナ州。広々とした赤茶げた高地には、峡谷『グランド・キャニオン』が並び立つ。

この広大な場所には若い男女が焚き火を囲い、和気あいあいとした様子で踊っていた。俗に言うキャンプファイヤーだ。

 

 

ドォォン!

 

『!?』

 

「What!?」

 

 

そんな中、突然空から地響きと共に何かが降りてくる。

若者達は足元をすくわれながらも地響きがなった方へ視線を向けると、夜空の月を背景にアグルが立っていた。

 

 

「Ohhhhー!Blue giant!!」

 

「Fuuuuーーー!!」

 

アグル「ホワッ!フォォォォォ……!!」

 

 

アグルの登場に若者達が歓喜の声をあげる中、アグルは右の拳を天高く上げた。すると、青白い稲妻状のエネルギーが彼の右腕に集まっていく。

 

 

アグル「ドォアッ!!」

 

 

そして、アグルはエネルギーを纏った右腕をそのまま地面へ叩きつけると、エネルギーは地中に波紋の様に広がりながら流れていった。

アグルはそれを終えると、またどこかへと飛び立っていった。

 

 

 

その後もアグルはアリゾナだけでなく、世界各地に現れた。G.U.A.R.D.の追跡を振り切り、エネルギーを流し込んでは消えを繰り返していた。

 

 

「南太平洋の堕天使部隊の攻撃、効果なし。ターゲット、北東へ飛行続行」

 

アザゼル「ちっ、また逃げられたか…!」

 

 

オペレーターの報告を聞き、エリアルベースに戻ったばかりのアザゼルは頭を抱える。

サーゼクスやアザゼルはさっそく部下を派遣し、G.U.A.R.D.と連携してアグル捕獲作戦を決行させているのだが、虚しくもウルトラマンの力の前では全く無意味であり、こうして手を焼いていた。

 

アザゼルやサーゼクスといった実力者が出撃すれば、何とかなるのかもしれないが、目撃者の記憶操作や戦う場所を考えなければいけないので、中々出るにも出られない状況である。

苦しい状況の中ではあるが、アザゼルは冷静に思考を切り替えると、今回の状況を纏め始める。

 

 

アザゼル「…藤宮はジオベースから怪獣の場所を示すデータを盗み、怪獣の眠りを覚ます………しかし、奴は何を考えてやがる?パーセルでも怪獣を自由に操れなかった……なのに、何故だ?」

 

 

アザゼルはずっと気になっていた。藤宮が怪獣を目覚めさせようとしているのは怪獣のデータが盗まれたと聞いた時からわかっていた。

しかし、同じ様にしようとしたであろう稲森でもコントロールは出来なかった。なのに、パーセルを無意味と判断した彼が怪獣を目覚めさせようとしているのかわからなかった。

 

アザゼルは顎に手を当てて考えていると、石室は口を開き、

 

 

石室「アザゼル。これは俺の仮説だが、もし、藤宮が怪獣を操ることを前提にしていなかったとしたら……」

 

アザゼル「っ!?まさか!」

 

石室「そうだ。考えられるのはたった1つ。怪獣を暴走させることだ…」

 

アザゼル「っ、最悪だな…」

 

 

石室の言葉を聞き、この場にいる皆は息を飲む。

藤宮の目的は“怪獣を暴走させ、人類を滅ぼす”――――それしか考えれない。

 

 

アザゼル「何とか食い止めねぇとな…」

 

石室「ああ。現在、日本にある怪獣の潜むポイントにはソーナ達に警戒してもらっている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、6時間後。アグル―――藤宮は休む間もなく飛び続け、日本の駒王町近くの山へと降り立った。

辺りはまだ薄暗いが、東の空から朝日が見え始めていた。

藤宮は前方を阻む草木を掻き分けながら、手に持つ探知機を頼りに目的地へ歩いていく。これも彼の信念によるものだからである。

 

 

藤宮「はあっ…はあっ…はあっ…」

 

 

しかし、藤宮は疲労困憊だった。体中脂汗を流し、足元はフラフラしていて今にも倒れそうな状態だ。

世界各地を飛び回って地中にエネルギーを流すだけでなく、G.U.A.R.D.にも追われている。彼には休む暇などどこにもなかった。

 

 

藤宮「…っ」

 

 

その道中、藤宮は苦しげな顔を浮かべながら、ふと空へ目を向けると足を止めた。

彼の視線の先にある夜空は渦を描くように歪んでいた。

 

 

藤宮「もう……時間がない…!」

 

 

血の色を変えた藤宮は焦った様に呟きつつも、冷静に手元の探知機へ視線を下ろす。

探知機は藤宮が求める場所を示す様に赤いランプがチカチカと点滅していた。

 

 

藤宮「ここか…」

 

 

確認した藤宮は気持ちを切り替えると、右手首にはめているアグレイターを掲げる。アグレイターのブレード部分から発する青い光に包まれ、藤宮は本日、何度目かもわからないぐらい変身したアグルへと姿を変えた。

 

丁度、その頃。近くをパトロールしていたファイターチーム・『チームライトニング』が山中を歩く青い巨人の姿を捉えた。

 

 

梶尾「こちら、ライトニング。ウルトラマンアグルが現れました!攻撃の許可を」

 

 

梶尾は無線でコマンドルームにいる石室へ攻撃許可を求める。アグルは梶尾達に気付いてはいるが、無視して歩を進める。

 

 

石室「…」

 

 

石室は悩んだ。確かに彼は人類に脅威をもたらしているが、正体は自分と同じ人間である。彼は信念を持って行動している……攻撃には抵抗がある。

 

―――しかし、彼を今止めなければ多くの犠牲者が出る。そう言い聞かせた石室は心を鬼にすると、攻撃の許可を下ろす。

 

 

石室「…Go a head」

 

梶尾「了解!攻撃…開始!」

 

 

攻撃の許可を得た梶尾達、ライトニングは照準をアグルに定める。アグルは右拳を天高く上げ、またもエネルギーを溜めるのに集中していて無防備である。

ロックオンした3機のファイターは操縦桿の引き金を引き、アグルへの一斉攻撃を始めた。

 

 

ドカカカァァァーーー!!

 

アグル「ウゥッ!?」

 

 

背後からの魔力弾の嵐にアグルは火花を散らし、前へよろめく。

 

 

アグル「アァァーーー…ドゥアァァァーーー!!!」

 

梶尾「っ!攻撃を…まともに…?」

 

 

だが、それでもアグルは反撃せず、再び右拳を天高く上げ、青白い稲妻状のエネルギーを集約し始める。

その反応に梶尾は一瞬驚いて、思わず攻撃の手を止める。だが、アグルの行動の危機感に気持ちを切り替え、攻撃を続ける。

 

 

ドカカカァァァーーーン!!

 

アグル「ウ"ゥ"ゥ"ゥオ"ァ"ァ"ァァァーーー!!」

 

 

夜闇を照らすぐらいの火力攻撃にアグルは苦痛の叫びをあげ、周囲に爆煙があがる。アグルはその攻撃の苦痛と疲労も相まって遂には仰向けに倒れてしまう。

 

 

匙「よっしゃ!!」

 

四之宮「…」

 

 

倒れたアグルを見て、ガッツポーズを取る匙と難しい顔で見下ろす四之宮。

匙は自分達の脅威を倒したという喜びからであるが、四之宮はどこか共感めいた様な心情からである。まるで、かつての自分を見る様に……。

 

 

アグル「フォォォォォ……!ディアァァァァーーーーーー!!」

 

「「「!?」」」

 

アグル「デュアァァァァーーーーーーー!!」

 

 

各々が様々な心情を浮かべていると、アグルはふらつきながらも立ち上がった。執念とも言うべきタフさに梶尾達は目を奪われていると、アグルは最後の力を振り絞り、エネルギーを込めた右拳を地面に打ち付ける。

地面に打ち付けられたエネルギーは水面に伝わる波紋周囲に伝わっていった。

 

 

アグル「…ッ」

 

 

エネルギーを消耗しきったアグルはふらつきながら立ち上がると、青い閃光を放ちながら消えていった。

 

 

梶尾「ターゲット消失。これより地上に降り、近辺の捜査を開始します」

 

《石室「わかった。だが、殺しはするな。確保するだけだ」》

 

「「「了解!」」」

 

 

3機のファイターは山中に降り立つと、消えたアグル―――藤宮の捜索を開始した。

その時、既に駒王町は朝日に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝7時。辺りはすっかり明るくなり、心地よい小鳥のさえずりが聞こえるこの時間。

我夢、一誠、ゼノヴィア、イリナ、そしてギャスパーの5人は学校指定のジャージに着替え、まだ出歩く人が少ない路地でジョギングしていた。

 

 

ゼノヴィア「朝早くから体を動かすとは気持ちがいいなっ」

 

一誠「そうだなー…ま、これでも物足りないけどな」

 

 

ちなみに先頭を走るのは脳筋…もとい体力自慢の一誠とゼノヴィアで、その後ろを我夢、ギャスパー、イリナが追う形で走っている。

 

 

ギャスパー「ぜぇっ…ぜえっ…先輩方、少しペースを落としましょうよ~」

 

我夢「これでも遅めなんだけどな……そういや、朝苦手なのにどうして着いてきたの?」

 

ギャスパー「ぼ、僕、前回のゲームですぐにやられちゃって…!それで、今回は、少し、でもお役に立ちたいですっ…!」

 

 

ギャスパーは息を切らしながら真剣な顔で答える。確かにギャスパーは前回のシトリー眷属とのゲームで一番最初で、しかも序盤にやられた。相手にギャスパーの行動を読まれてたからではあるが、それでも悔しいものは悔しい…。

そう訴えるギャスパーの瞳はいつもの弱気で頼りなさそうなものでなく、信念が強い男そのものだった。

 

そんな彼の成長に我夢は我がことの様に微笑むと、

 

 

我夢「大丈夫、ギャスパーはきっと活躍できるさ。僕も前回リタイアしちゃったし、お互い、頑張ろう」

 

イリナ「そうよ、そうよ!私の分まで頑張ってよ!」

 

ギャスパー「は、はいっ!僕、もう怖がったりしません!一生懸命頑張ります!!」

 

 

激励を受けたギャスパーは嬉しそうに微笑みながら答える。微笑ましい光景に我夢は皆と一緒に微笑みつつ、横目でイリナの様子を伺う。

 

 

我夢「(見たところ、大丈夫そうだな)」

 

 

和気あいあいとする彼女を見て、我夢はほっとする。実はここ最近、イリナは藤宮や稲森のことがあって思い悩むことが多々見受けられたからだ。

周りも心配していたが、この様子だと心配はいらないと我夢は安心した。

 

そんなこんなしていると、一行は森の中へと入っていく。森ではあるが、道は人が通れる様に舗装されているので気軽に足が運べる様になっており、多くの人がジョギングコースとして利用している。

…と、いっても悪魔や天使である我夢達にはそんな問題はいらないが……。

 

5人は談笑しながらしばらく走っていると、前方に見知った人物に出会い、足を止める。その人物は藤宮の捜索中である梶尾であった。

 

 

一誠「梶尾さん!」

 

梶尾「…ん?おお、お前達か。どうしてここに?」

 

我夢「朝のジョギングですよ、ゲームに備えての。それより梶尾さんこそどうしたんです?隊員服なんか着て…」

 

梶尾「っ!」

 

 

我夢の問いかけに梶尾はギクリとなる。今回の任務は藤宮を捕らえるのが本題だが、リアス達、グレモリー眷属に知られない様にするのが大前提だ。ここで本当のことを話す訳にはいかない。

 

 

梶尾「ひっ、久しぶりに自主練でもしようと思ってな~~……隊員服着れば、モチベーションがあがるから…」

 

イリナ「本当です?」

 

梶尾「ほ、本当だ!」

 

ゼノヴィア「目が泳いでないか?」

 

梶尾「気のせいだ、気のせいっ!」

 

 

ゼノヴィアの指摘通り、梶尾の目は泳いでおり、如何にも嘘をついているとアピールしている。これでは逆効果だ。

 

 

我夢「梶尾さん。本当のことを言って下さい」

 

梶尾「く、うぅ…」

 

 

怪しさが濃厚となり、我夢達が梶尾を問い詰めていると、

 

 

ガサガサ…

 

『!?』

 

 

と草影から物音が聞こえ、皆がそちらへ顔を向けると、目を丸くした。

そこには冥界や人間界を騒がせているお尋ね者――ウルトラマンアグルこと藤宮が疲労困憊の様子で木に寄りかかっていた。

 

 

ギャスパー「ひぃぃぃぃーーーーーーー!!」

 

ゼノヴィア「!」

 

梶尾「くっ!」

 

 

先程の勇気はどこへやら…。ギャスパーは藤宮を見るなり、怯えた声をあげ、我夢の後ろへ隠れる。

ゼノヴィアはデュランダル、梶尾がジェクターガンを構えて警戒する中、我夢はギャスパーを一誠に託し、慎重な足取りで近付きつつ、藤宮に訊ねる。

 

 

我夢「藤宮、君はクリシスの解答が正しいって…人類を消し去ることでしか地球は救えないって…本当に信じているのか?」

 

藤宮「……」

 

我夢「稲森博士の死をどう思っているんだ……?答えろ、藤宮っ!!

 

梶尾「説得は無駄だ!こいつは力ずくで止める!お前達は下がってろ!」

 

 

我夢が語気を強めて訊ねても一向に答える気配のない藤宮にしびれを切らした梶尾は今にも撃つ勢いで我夢の前に出る。

 

 

イリナ「やめて!」

 

『!?』

 

 

すると、その瞬間。イリナが藤宮を庇う様に梶尾の前へ立ち塞がる。彼女の思わぬ行動に皆は驚く中、梶尾は怪訝そうに声をかける。

 

 

梶尾「どけ!そいつは危険なんだ!!捕らえるなら、弱っている今がチャンスだ!」

 

イリナ「やめて下さい!おかしいですよ!人と人が争うなんて…!」

 

ゼノヴィア「イリナ、気持ちはわかる!だが、藤宮 博也を野放しにしたら、それこそ多くの人が犠牲になるんだぞ!」

 

イリナ「わかってる……でも、やっぱりおかしいよ!憎しみでしか解決できないなんて!悲しすぎるよ!」

 

 

仲間の説得にイリナは反発し、一歩も譲らない。いつものどこか能天気なキャラとは大違いだ。

 

そういったやり取りをしていると、藤宮は遂に限界がきたのか、バタリと倒れてしまう。

 

 

我夢「藤宮!」

 

藤宮「……聞こえる。…………地球の……命の…叫びが……」

 

イリナ「藤宮君!」

 

 

藤宮は意味深に呟くと、そのまま気を失った。

イリナを筆頭にゼノヴィア、我夢が駆け寄って藤宮を介抱する中、一誠は梶尾に

 

 

一誠「梶尾さん。事情を話してくれますか?」

 

梶尾「…ああ」

 

 

真剣な眼差しに梶尾は観念し、この場にいる皆に一連の出来事を話すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンネルⅡ「ゴアァァァァーーーーー!!」

 

丁度、その時。アリゾナ州・スコッツデールの地中から土砂を巻き上げながら、怪獣『ゾンネル(ツー)』が現れた。

 

この出現はエリアルベースでもキャッチしていた。

 

 

アザゼル「遂に始まったか…!」

 

石室「出撃可能な部隊は?」

 

「グループD、チームトルネイドが出撃出来ます」

 

石室「わかった。チームトルネイド出撃!」

 

 

石室が出撃命令を出すと、エリアルベースの前方のハッチが左右に開く。すると、そこから赤青黄色と派手なカラーリングの戦闘機、XIGイーグルが発進ゲートと共に現れる。

 

このXIGイーグルに乗るチームトルネイドのメンバーはシトリー眷属の椿姫、巡、由良の3人だ。

 

 

椿姫「チームトルネイド、シュート!」

 

 

椿姫が勢いよく横のレバーを引くと、XIGイーグル後部のブーストから炎が吹き出し、そのまま上空へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。後からやって来た匙と四之宮、我夢達に事情を話した梶尾にも怪獣出現の報告が来ていた。

 

 

《アザゼル「――つう訳でアメリカに怪獣が出現した。早く戻ってこい」》

 

梶尾「了解!……我夢、俺はエリアルベースに戻り、出撃体制を取る!」

 

我夢「僕は――」

 

梶尾「とにかくこいつを病院へ運べ。俺のツテがある冥界の病院へ転送出来る魔法陣を渡すから」

 

 

怪獣の出現に居ても立ってもいられない我夢を梶尾はなだめると、ポケットから出した魔法陣が描かれた紙を手渡す。

 

 

梶尾「後の判断はお前達に任せる」

 

我夢「はい!」

 

梶尾「行くぞっ!」

 

匙「はい!」

 

梶尾「……?」

 

 

梶尾は仲間を引き連れ、エリアルベースへ向かおうとするが、違和感に気付き、足を止める。

 

 

梶尾「匙。四之宮は?」

 

匙「あ、はい。四之宮さんなら腹痛でトイレに…。あと、『長引きそうだから先に行っといれ』と」

 

梶尾「ちっ!呑気なやつだ。仕方ない、俺達だけでも行くぞ!」

 

匙「うっす!」

 

 

梶尾は四之宮のマイペースさに呆れながらも匙を引き連れて、走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アメリカ・アリゾナ州で目覚めたゾンネルⅡはG.U.A.R.D.アメリカの戦車部隊と交戦していた。

しかし、人間の作り出した兵器をもってもゾンネルⅡには傷1つも付けられなかった。

 

 

ゾンネルⅡ「グルルォォアァァァァァ…!!」

 

ドガガガァァァァーーーーーン!

 

 

ゾンネルは大きく口を開くと、火球を放つ。

たったその一撃だけで戦車部隊はあっという間に全滅してしまった。

 

 

椿姫「ターゲット確認。これより戦闘を開始します」

 

「「了解」」

 

 

丁度、その時。チームトルネイドが駆けつけ、ゾンネルⅡとの交戦を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――冥界

 

我夢達は梶尾からもらった魔法陣を使って彼のツテがある病院にきていた。

病院は人里から離れた山奥に位置しており、自然と多く触れあえ、外界からの影響が少ないので、ここを利用する患者は多い。

 

藤宮は現在、担架に乗せられて緊急治療室へと運ばれていき、我夢、ゼノヴィア、イリナの3人は大広間で彼の回復を待っていた。

ちなみに一誠とギャスパーは駒王町に残り、独自で警戒に当たってくれるとのことでここにはいない。

 

 

「「「…」」」

 

 

3人はただ何も言わず、大広間で待っていた。次から次へと起こる事態に何を話していいのかわからないのだ。

 

我夢は変装用に買ったキャップ帽とマスクを深く被り、ゼノヴィアは腕を組んで柱に寄りかかり、ベンチに座っているイリナはため息をつきながら通りすぎていく人達を眺めていた。

 

 

《「アリゾナ州・スコッツデールは今、完全に戦場と化しました」》

 

我夢「…?」

 

 

そうしていると、我夢は大広間の一角で患者達が観ているテレビニュースがふと耳に入る。

気になった我夢は患者達が囲うテレビへ近寄ると、それは人間界で起きているゾンネルⅡについてのニュースだった。

 

 

《「G.U.A.R.D.戦車部隊は90%が壊滅。XIGの攻撃も全く効果がなく、怪獣の進行は全く衰えを知りません。死傷者もかなりの数に登っている模様ですが、大規模な火災の為、全く進んでおりません。このままでは、スコッツデールの壊滅も時間の問題です」》

 

 

キャスターが報じる人間界の悲惨な状況に患者の悪魔は「自分達もこうなるのかも知れない」という危機感を感じる声や「冥界には関係ないだろう」という問題を度外視している声など、様々な声でざわついていた。

 

 

我夢「…」

 

 

我夢はこの現状に憤りを感じていた。その理由は梶尾から事情は聞いたが、手出しはしないようにと釘を打たれたからだ。

そう言うのも、自分達にレーティングゲームが迫っているからだというのはわかっている。しかし、動ける自分が何も出来ないこの状況、しかも大好きな人間界がピンチになっているのに駆け付けられないことへの怒りで胸が一杯だ。

 

 

「きっとウルトラマンが来てくれるよ」

 

我夢「…っ」

 

 

我夢が憤っていると、前にいる車椅子の男の子が言った言葉が胸に響く。そして、我夢は自問自答をした。

 

―――君は僕に力をくれた。でも、それは本当に意味のあることだった。教えてくれ―――と…。

 

 

ゼノヴィア「我夢?」

 

我夢「…っ!」

 

 

話しかけるゼノヴィアの声に我夢はハッとなった。辺りを見渡すと、病室だった。横には不思議そうにこちらの顔を覗くゼノヴィアがおり、ベッドには藤宮が眠っており、イリナがその隣で彼の流れる汗をタオルで拭き取っていた。

どうやら考え込むうちに無意識に病室に来ていたと我夢は理解した。

 

 

イリナ「私、今は信じたいのかな?」

 

我夢「え?」

 

イリナ「藤宮君と出会ったのは偶然かも知れない………でも、出会ったことにはきっと意味があるって。人は分かりあえるって」

 

我夢「出会ったことの…意味が…」

 

 

我夢はそう呟きながら、ガイアに出会った意味を考えた。地球が力を授けてくれたのは、自分が超古代人の末裔以外に何かあるのではと…。

イリナは悲しげに眠っている藤宮の顔を見ながら、言葉を続け

 

 

イリナ「そうじゃなきゃ、何も変えられないもの…」

 

 

そう話す彼女を見て我夢だけでなく、ゼノヴィアも目を点にしていた。それもそのはず、全てが全て己の信じる神のおかげと言っていた以前の彼女からは考えられないからだ。

 

 

ゼノヴィア「(イリナをここまで変えたのは、彼の影響か…)」

 

 

ゼノヴィアは驚きつつも眠っている藤宮を見て納得する。理想主義だったイリナにとっては現実主義である藤宮との出会いは大きかったと…。

 

 

我夢「イリナ、ゼノヴィア。藤宮の傍に居てくれるかい?」

 

イリナ「うん」

 

ゼノヴィア「ああ。我夢、君はどこへ?」

 

 

病室を出ようとする我夢をゼノヴィアが呼び止める。

その問いに我夢は

 

 

我夢「ちょっと外の空気を吸いに」

 

 

と言って微笑むと、我夢は病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室を後にした我夢はそのまま早歩きで移動し始めると階段に足をかける。ロビーがある下へでなく、上へ上へ上っていくと、屋上へ出た。

我夢は帽子とマスクを脱ぎ捨てると、エスプレンダーを取り出し

 

 

我夢「藤宮!僕だってウルトラマンなんだ!」

 

 

そう言ってエスプレンダーを前へ突き出し、ガイアへと変身した。そのままガイアは赤い光の球体となってアメリカ・アリゾナ州へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――アメリカ・アリゾナ州

 

ゾンネルⅡとチームトルネイドは激しい攻防を繰り広げていた。すっかり夕陽に染まったこの地を舞台に攻撃を繰り返していたが、アグルの力を受けた影響かゾンネルⅡには全く効果がなかった。

 

 

椿姫「分離!」

 

「「了解!」」

 

 

次の瞬間、XIGイーグルは椿姫の掛け声と共に3機の小型戦闘機に分離し始める。

由良が乗るイーグルの先端部だった赤い機体はイーグルα、椿姫が乗るイーグルの中央部だった青い機体イーグルβ、巡が乗るイーグルの後部だった黄色い機体イーグルγへ分離した。

 

分離した3機はゾンネルⅡへ攻撃していったが

 

 

ゾンネルⅡ「ゴワァ!」

 

由良「うわぁっ!?」

 

 

ゾンネルⅡは旋回を終えた瞬間を狙い、由良の乗るイーグルαへ向かって口から火球を放つ。

回避不可能の攻撃に由良は目を瞑って悲鳴をあげる。

その時、

 

 

キィン!

 

由良「………?」

 

 

横から飛んできた赤い光が火球をはね飛ばした。由良は何が起きたのかわからず、目を開けると、地上には赤い大地の巨人―――ウルトラマンガイアが勇敢に佇んでいた。

 

 

巡「ウルトラマン…!」

 

椿姫「ガイア!」

 

 

彼の登場に椿姫達は喜びつつも何も出来なかった自分達の自負の念を抱いた。

 

 

ゾンネルⅡ「グルルォォアァァァァァァ…!」

 

ガイア「グアッ……!トアッ!」

 

 

ガイアは素早く身構えると、その場から駆け出して威嚇するゾンネルⅡへ近付くと、そのまま勢いで真っ直ぐ顎を蹴る。

 

 

ゾンネルⅡ「グルルォォ…」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

間髪入れず、怯んでいるゾンネルⅡの横顔を蹴飛ばす。

こうして、日本から遠く離れた地で怪獣との対決が幕をきったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。腹痛と称し、梶尾達と別れた四之宮は1人駒王町の山中で地面を見ながら何かを探し歩いていた。

 

 

四之宮「お?ここか」

 

 

しばらくして、四之宮は探し求めていたものを見つけると、禍々しいオーラを纏い、本来の姿であるジャグラス・ジャグラー魔人態に変身した。

 

 

ジャグラー「お前の真意、確かめさせてもらうぜ。ハアッッッ!!」

 

 

ジャグラーはエコーかかった声でそう呟くと、足下の地面に蛇心剣を突き立てる。

すると、蛇心剣を中心に闇のオーラが地面に広がるが、次には消滅した。

蛇心剣を地面から抜き取り、ジャグラーは四之宮の姿に戻ると、「ンッフッフッ…」と怪しく笑い

 

 

四之宮「…さて、()()()()()藤宮 博也。お前は光か?はたまた闇か?」

 

 

そう1人で問いかけると、四之宮はどこかへ歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――冥界

 

藤宮「何故、お前は地球の意思に逆らおうとする!」

 

イリナ「っ!?」

 

 

我夢がガイアとなってゾンネルⅡと戦い始めたことを気付いた藤宮は目を開けて怒りの声をあげると、起き上がる。気付いたイリナはどこかへ行こうとする彼を必死に止める。

 

 

イリナ「待って!これ以上何するつもりなの!?」

 

藤宮「地球を滅びに導くのは人間の愚かさだ!それを知りながら邪魔する奴を俺は倒さなければならないっ!」

 

イリナ「そんな愚かな人間をどうして助けたりしたのよ!!」

 

藤宮「…っ!」

 

 

イリナの反論に藤宮は思わず病室を出ようとする足を止める。イリナを始め、憎しみの対象でしかない筈の悪魔の女の子を幾度も助けてきた。

その行動に藤宮本人も矛盾を感じている。しかし、彼はそれを振り払い

 

 

藤宮「俺が救うのは、この地球だけだっ!!

 

 

そう言い放った瞬間、外では地中から怪獣が現れた。

しかも、それは冥界にはいない筈の地球怪獣『ギール(ツー)』だった。

以前の個体の違いは体色が灰色から赤紫色というだけだ。

 

 

 

 

 

 

このイレギュラーな出現にはエリアルベースのコマンドルームも慌ただしくなっていた。

 

 

アザゼル「おい、マジかよ!?石室!!」

 

石室「何故、地球の怪獣が冥界に…?チームライトニングは戻ったのか?」

 

「いつでも発進出来ます」

 

石室「よし、さっそく迎撃に当たらせてくれ」

 

 

石室の指令を受けたチームライトニングは冥界へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギールⅡ「ギィガァァァァーーー!」

 

 

冥界の山奥に突如現れたギールⅡは人の気配がする病院へと真っ直ぐ向かってくる。

 

 

ジリリリリ…!

 

「早く逃げてーー!」

 

「落ち着いて、避難誘導に従って下さい!」

 

 

怪獣がここに迫ってくると知った患者達は当然、パニック状態となり、一斉に逃げ始める。

医師や看護師の誘導に従い、歩ける患者は手を繋ぎ、歩けない者は抱えて出口へ向かっていく。

 

 

ゼノヴィア「イリナ!」

 

 

藤宮とはぐれたイリナは逃げ惑う人混みを掻き分けて探していると、ゼノヴィアがこちらを見つけて駆け寄ってくる。

 

 

イリナ「ゼノヴィア!どこにいたの!?」

 

ゼノヴィア「ああ、イッセー達に連絡をな。それより、何の騒ぎだ?」

 

イリナ「怪獣がここに来るの!」

 

ゼノヴィア「何!?」

 

イリナ「とにかく!私は藤宮を探すから、ゼノヴィアは避難誘導を手伝って!!」

 

ゼノヴィア「お、おい!?イリナ!」

 

 

ゼノヴィアが承諾する間もなくイリナはその場から駆け出し、藤宮を捜索する。

―――体力が完全に回復していないことから、まだ遠くへは行っていない。そう考えたイリナは今いる階の物陰から隅々まで探していく。

 

 

イリナ「見つけた!」

 

 

しばらく探していると、藤宮らしき後ろ姿を発見した。藤宮は苦しそうに肩で息をしながら片足を引きずって歩いている。

イリナは駆け寄ろうとするが

 

 

「うあっ!?」

 

イリナ「!?」

 

 

藤宮の前を松葉杖で歩く老婆がバランスを崩したのか倒れてしまう。イリナは目の色を変えてその場から駆け出す途中、藤宮が老婆の隣を通るが

 

 

藤宮「…」

 

イリナ「…っ!」

 

 

藤宮は目の前の老婆にも目もくれず、足を引きずって通りすぎていく。

そんな藤宮にイリナは怒りを募らせつつも、老婆に駆け寄る。

 

 

イリナ「お婆さん、大丈夫!?掴まって!」

 

「ああ、ありがとう…」

 

 

イリナは老婆を助け起こすと、彼女を近くにいた看護師に託し、藤宮の後を追う。

 

藤宮はおぼつかない足取りで歩きながら自分に言い聞かせていた。

―――自分は人間なんか救わない。滅ぼす存在を救う必要はない。この場にいる全ての悪魔が、冥界がどうなろうと知ったことではない―――と。

藤宮はただそれだけを考え、歩いていると

 

 

「ウルトラマーーン!助けてよ!ウルトラマーーン!」

 

藤宮「…」

 

 

通りすぎようとした隣の病室から男の子が悲鳴が聞こえ、藤宮は足を止める。

そのまま病室へ顔を向けると、そこには車椅子から落ちてしまった男の子が泣きながら自分で描いたであろうイラストを手にして助けを求めていた。

 

 

「はやくきてーー!ウルトラマン、助けて!ウルトラマン!!」

 

藤宮「…」

 

 

藤宮は思わず病室に足を運び、その男の子の手に持つイラストに目を通す。

その画用紙に描かれたイラストは青空の下でガイア、ダイナ、そしてアグルが()()()()()()()()()姿だった。

そのイラストを目にして、藤宮は何故か心を痛め、固まってしまう。

 

 

イリナ「大丈夫!?しっかりして!」

 

 

固まっている藤宮の脇を追い付いたイリナが通り、男の子を抱えあげる。

 

 

藤宮「(俺は…どうしてこんなにも心が痛むんだ…?)」

 

 

藤宮は手を取り合うイラストを見てこんなにも胸が締め付けられるのかがわからず、困惑していた。

何故?何故?と自問自答するが一向に答えが出ない。

 

 

ゼノヴィア「……」

 

 

そうこうしていると、ゼノヴィアがやってくる。

ゼノヴィアはイリナと男の子、そして藤宮の順で見ると

次の瞬間、藤宮の胸ぐらを掴んだ。

 

 

イリナ「ちょっと!?」

 

 

突然のことにイリナは驚く中、ゼノヴィアは藤宮を睨み付けると、口を開き

 

 

ゼノヴィア「地球だけを救いたいんだろ!?愚かな人間は関係ないんだろ!?…さっさと行けっ!!」

 

 

そう怒りの声をあげて、藤宮を突き放す。

そう言われた藤宮は何も言わず、どこかへ歩き去っていく。

 

 

 

 

 

 

その頃、アメリカ・アリゾナ州。

 

 

ガイア「ドアァァァァーーー!?」

 

 

ガイアは苦戦していた。ゾンネルⅡの雨あられの火球攻撃をくらい、体中から火花が飛び散る。

これもアグルの力を受けた影響だろうか、以前のゾンネルよりも遥かに強い力をこのゾンネルⅡは持っている。

 

 

ガイア「グアッ…」

 

ゾンネルⅡ「ゴォアァァァァ……!!」

 

 

ふらふらと立ち上がるガイアに向かってゾンネルⅡは突進攻撃を仕掛ける。

だが、その時

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ゾンネルⅡ「グルルォォ…!?」

 

 

遠くの空からダイナが颯爽と現れ、空中から頭部目掛けてビームスライサーを放ち、ゾンネルⅡの突進を中断させる。

ゾンネルⅡがもがいている中、ダイナは地上に降り、ガイアを助け起こす。

 

 

ガイア「ありがとう…どうしてここが?」

 

ダイナ「ゼノヴィアから連絡を受けてな。こうして助けにきた訳だ」

 

ゾンネルⅡ「グルルォォァァァァ…!!」

 

 

会話を終えた2人は夕陽を背に雄叫びをあげるゾンネルⅡへ身構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィアから突き放された藤宮は病院の屋上にいた。

ふらふらとした足取りで歩きながらこちらへ向かってくるギールⅡへひと目見ると、右手に持つアグレイターに目をやる。

アグレイターの液晶パネルの奥に光る青い光はエネルギーをほとんど使い果たした影響で弱々しく輝いていた。

 

 

藤宮「無駄だとわかっていて…それでも守るのか、人間を!」

 

 

そう呟いた藤宮は雄叫びをあげながら近付いてくるギールⅡへ再び目を向ける。

大地を、木々を踏み荒らし、破壊の限りを尽くさんとばかりの勢いで迫ってくる怪獣。

当初はどうでもいいと思っていた藤宮だが、あの男の子のイラストを見てから、どうにも立ち去れない…。

 

 

藤宮「それが…ウルトラマンだと言うのかっ!!

 

 

藤宮は自分の心情に戸惑いつつも、腕に着けたアグレイターを掲げる。

すると、ブレード部分が展開し、そこから発生する青い光に包まれ、アグルに変身した。

 

 

ドォォォォン!

 

ギールⅡ「ギィィィ~~~!!」

 

アグル「ホワッ!フォォアァァ……!!」

 

[テレン]

 

 

土砂を巻き上げて豪快に着地したアグルはギールⅡの前に立ち塞がると、突進を受け止める。

アグルはエネルギーが充分に回復していない影響でライフゲージは変身して間もないのに赤に点滅している。

それでもアグルは残り少ないエネルギーをフルに使い、必死に踏ん張る。

 

 

「あ!お姉ちゃん、見て!」

 

イリナ「!」

 

ゼノヴィア「…アグル」

 

 

必死に守ろうとするアグルの姿は病院にいるイリナ達にも見えていた。

男の子はやっぱり来てくれたと嬉しそうに微笑み、イリナとゼノヴィアはまさかの行動に驚いていた。

 

 

アグル「テアッ!」

 

ギールⅡ「ギィィィ~~~」

 

アグル「ドゥアッ!」

 

 

アグルは思いっきりギールⅡを上体を跳ね起こすと、顔面を回し蹴りで蹴飛ばす。

ギールⅡは手足とジタバタさせながら、倒れる。

 

 

アグル「…ッ」

 

[テレン]

 

 

それと同時にアグルも苦しげに片膝をつく。体力が万全でない彼にとってはただの蹴りを放つだけでも精一杯だった。

 

丁度、その時。梶尾達、チームライトニングが乗る3機のXIGファイターが駆けつけた。

 

 

梶尾「青い巨人が…何故?」

 

 

アグルがとった行動の一部始終を見ていた梶尾は信じられない様子だった。人類と同じで悪魔を憎んでいるアグルが病院にいる多くの悪魔を救ったのだ。

 

 

梶尾「…各機、ウルトラマンを援護する」

 

 

梶尾は何か目的が違ったのか?等、色々考えが浮かぶが、とにかく今にも倒れそうなアグルを援護することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ゾンネルⅡと対峙しているガイアはダイナが加勢にきたことで戦況が有利になっていた。

 

 

ダイナ「ハァァァァーー………デェアッ!」

 

ゾンネルⅡ「グルルォォァァァァ…!!」

 

 

ダイナは尻尾を掴んでハンマー投げの様に振り回すと、ゾンネルⅡを投げ飛ばし、岩肌に叩きつける。

岩肌に叩きつけられた衝撃でゾンネルⅡは動けない様子だ。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ……!!」

 

 

このチャンスにガイアはフォトンエッジを放とうと頭部にエネルギーを集中させるが…

 

 

ゾンネルⅡ「ゴォアァァァァー!!」

 

ガイア「…ッ」

 

ダイナ「?」

 

 

ゾンネルⅡの苦悶の叫びがふと耳に入り、ガイアは攻撃を中断する。突然、攻撃の手をやめたガイアにダイナは何してるんだ?と首を傾げている。

 

 

ガイア「…」

 

 

ガイアは今まで倒してきた怪獣のことを思い出していた。地球を守る為、仲間の為と思って倒してきた数多の怪獣達。

しかし、それは本当にすべきだったのかとガイアは思いとどまったのである。

 

 

(イリナ「憎しみでしか解決出来ないなんて!悲しすぎるよ!」)

 

 

イリナが梶尾達に言った言葉を思い出すとガイアはこちらへ向かって突進してくるゾンネルⅡへ顔を向ける。

ゾンネルⅡは死にもの狂いで向かってきており、ガイアの隣にいるダイナは親友の突然の行動に戸惑いつつも迫りくる攻撃に身構えている。

 

そんな中、呆然と立ち尽くすガイアは思った。

今まで怪獣達は破滅招来体に操られているから暴れてると考えていたが、それはこちらの認識違いによるものだったと。

 

 

ガイア「ッ、グアァァァァ……!!」

 

 

ガイアは考えを改めると、フォトンエッジの体制に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界では、疲労で身動き出来ないアグルにギールⅡが突っ込もうとしていた。だが、

 

 

ドカカカカァァァァーーーーー!!

 

ギールⅡ「ギィィィ~~!!」

 

アグル「!?」

 

 

上空から3機のXIGファイターがアグルの援護射撃を行う。予期せぬ援護にアグルは一瞬驚くが、この好機に悲鳴をあげる体に鞭打ってすぐさま立ち上がる。

 

 

ギールⅡ「ギィィィ~~!!」

 

 

そうはさせまいとギールⅡは二足歩行で立ち上がると、腹部の第2の口を開き、アグルへ照準を定める。

ギールⅡの第2の口は前に現れた個体同様、必殺技であるマグマ弾の発射口だ。

 

 

アグル「…ホワッ!ハァァァァ……!!」

 

[テレン]

 

 

ライフゲージは先程よりも点滅が速くなっており、残された時間はあと僅かだ。

アグルは最後の力を振り絞り、フォトンクラッシャーの体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「――アァァァ…!デュアァァァーーーーー!!」

 

 

アメリカ・アリゾナ州にいるガイアはフォトンエッジを放つ体制から両腕を後ろ向きに回してから両手を揃えて前へ突き出すと、淡い優しい光がゾンネルⅡへ放たれる。

 

 

ゾンネルⅡ「!?…………?」

 

 

放たれた光は驚くゾンネルⅡを優しく包み、全身へ入っていく。

すると、先程まで闘争本能を剥き出していたゾンネルⅡの眼は穏やかなものとなり、戦意は全く感じられなくなった。

 

 

ダイナ「ッ!」

 

 

これには倒すとばかりでいたダイナも驚いていた。以前彼から聞いたことがあるが、ガイアが放ったあの光線は対象を沈静化させる『ガイアヒーリング』だった。

使い道がないと言っていた本人がまさか怪獣相手に使うことになるとは誰も思ってなかっただろう。

 

 

ゾンネルⅡ「……」

 

ガイア「……」

 

 

大人しくなったゾンネルⅡはガイアを見据える。それは疑問なのか?憎しみなのか?はたまた……?

ゾンネルⅡは踵を返すと、棲み家がある方向へ帰っていった。

 

2人はその後ろ姿が見えなくなるまで、見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグル「ドゥアァァァァァーーーー!!」

 

 

そして、冥界で戦うアグルはギールⅡの第2の口目掛けてフォトンクラッシャーを放った。

 

 

ギールⅡ「ギィィィーーーーーー!!?」

 

ドガガガガガガガァァァァァァァァーーーーーーン!!

 

 

まともにくらったギールⅡは断末魔をあげると、体中が刃で切り刻まれた様なエフェクトが入り、爆発四散した。

 

 

アグル「…」

 

イリナ「…」

 

 

戦いを終えたアグルは満身創痍ながらも病院にいるイリナへ顔を向ける。

アグルのつり目かつ無表情の顔からはわからないが、イリナはこの時、彼が何を思っているのかがわかった気がした。

 

アグルは青い光に包まれると、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いを終えたガイアとダイナは戦いの後始末をG.U.A.R.D.に任せ、急いで藤宮がいる冥界の病室へ向かった。

 

しかし、病室はもぬけの殻目だった。後で合流したゼノヴィアによると、自分たちが目を離した隙に藤宮はイリナと共に逃亡したという。

 

 

我夢「…」

 

 

誰もいない病室で我夢は立ち尽くすと、複雑な思いで窓から差し込む夕陽を眺めたのだった…。

そんな彼を四之宮は廊下からこっそり覗くと、顔を引っ込めて壁にもたれかかり

 

 

四之宮「それがお前の真意か…」

 

 

誰に向かって言っているのか?そう呟くと、四之宮はどこかへ歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この時。我夢達は知らなかった。

G.U.A.R.D.ヨーロッパが怪獣が潜伏する地中へ向けて、地中貫通爆弾を使用することを決定したことを…。

 

そして、それが新しい悲劇を生み出すことも……。

 

 

 




次回予告

ディオドラとのレーティングゲーム!しかし…


ディオドラ「アーシア・アルジェントは頂いたよ」


本性を表したディオドラにアーシアが拐われた!
救え、グレモリー眷属!!

次回、「ハイスクールG×A」!
「醜悪の塊」!


「惚れ惚ぉれするぅ…♪」


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第38話「醜悪の塊」

醜悪悪魔 ディオドラ
アスタロト眷属   
合成狂獣 フリード 登場!


ウルトラマンアグル――藤宮 博也は世界各地で怪獣を呼び覚ました…。

 

ウルトラマンガイア、ウルトラマンダイナはアリゾナのゾンネルⅡを棲み家へ戻してやるが、ウルトラマンアグルは自ら呼び覚ましたギールⅡを葬り去る。

 

藤宮に何が起きたのか!?3人のウルトラマンは永久にわかりあえないのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わって冥界の病院に立ち寄った後、一誠は我夢、ゼノヴィア、ギャスパーと共にリアス達へ事の顛末を説明した。

当然、知らせてくれなかったリアスは不服だった。後で一誠が石室に聞いたことだが、どうやらサーゼクスが駒王町にはニュースが伝わらない様、情報操作していたようだ。

 

レーティングゲームが控えているということはわかるが、それでもどうして頼ってくれなかったのかがリアスには納得出来なかった。

 

藤宮と共に行方を眩ましたイリナのことは皆(特にゼノヴィア、アーシア)は不安に思いつつも、サーゼクスらに任せることにした。

 

リアス達による1時間の質問攻めが終わると、一誠は自室へ戻り、ベッドで横になっていたのだが…

 

 

一誠「…!?」

 

 

どういう訳か一誠は今、砂塵が舞うだだっ広い砂漠に1人立っていた。

辺りを見渡すと、古びたステンドグラスがある教会だったであろう廃墟がポツンとあるのみで、後は砂漠一面だ。

世界の終末―――いかにも世紀末の光景を目の前にして唖然とする一誠に渇いた横風が髪を揺らす。

 

一誠はとにかく歩こうと一歩右足を前へ出した時、何か固い物が足下にぶつかった。

よろめきながら何だろうと足下を見た瞬間、一誠は驚愕した。

 

 

一誠「っ!?嘘だろ…!?」

 

 

その物体を見た瞬間、一誠は驚愕した。それは親友である我夢――ウルトラマンガイアのライフゲージだった。目の色を変えた一誠は足下周辺を見渡すと、自分は土像の様に朽ち果て、砂漠に横たわっているガイアの上に立っていた。

しかも、砂塵が晴れた遠くの方にはガイア同様に生気を失ったアグルが埋まっていた。

 

 

ユザレ「一誠…。ようやく会えましたね」

 

 

一誠が目の前の光景に驚愕していると、背後から突然現れたユザレが声をかけてくる。

 

 

一誠「あんたは…?」

 

ユザレ「私は地球星警備団団長ユザレ。我夢からは話は聞いてますね?」

 

一誠「お、おお…(うわ~…マジでロスヴァイセさんそっくりだ…!)」

 

 

一誠は目の前にいるユザレを見て、以前、我夢がロスヴァイセと見間違えたことを思い出す。

会った時間は少ないが、顔、声、容姿…どこをどう捉えてもそっくりであり、間違えても無理ないなと納得する。

 

 

一誠「っ、そうだ!ユザレ!これは何だよ!どうして我夢と藤宮がっ!?」

 

 

そんなことを思っていると、一誠はハッとなり、目の前に広がる光景についてユザレに問いかける。

すると、慌てた様子の一誠とは逆に冷静なユザレは口をゆっくりと開き

 

 

ユザレ「…これは避けられない運命―――ガイアとアグル、()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

一誠「何だって!?」

 

ユザレ「それだけでなく、2人やこの世界に住む人々が死に絶えるでしょう…」

 

 

彼女の言葉に一誠は言葉を失う。

2度は戦ったことはあるらしいが、基本的に穏やかな我夢が藤宮を憎み、戦うなんて想像がつかない。しかも、地球を救いたい2人が破滅へ導く原因とは皮肉だろうか。

 

 

一誠「あいつらの戦いはどうしても避けられないのか?」

 

ユザレ「近いうちに確実に……。一誠、あなたに頼みがあるのです」

 

一誠「頼み?」

 

ユザレ「2人を止めてほしいのです…。光の巨人が争う―――それこそ世界は終わる……未来は変えられないかも知れませんが、キッカケは与えられるやも知れません……」

 

 

ユザレの顔はほぼ無表情だが、頼み込む姿勢からその必死さが伝わる。それを読み取った一誠の答えは

 

 

一誠「わかった。任せてくれ」

 

 

サムズアップして承諾する。気に食わない藤宮はともかく、親友の我夢が危機に晒されているのだとしたら黙っておく訳にはいかない。

彼の承諾にユザレは静かに微笑み

 

 

ユザレ「頼みましたよ」

 

 

そう一言お礼を言われると、一誠の意識は段々遠ざかっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「…?」

 

 

意識が戻り、パチリと目を開いた時、一誠は自分の部屋のベッドに横になっていた。

見渡すと砂漠やユザレの姿はなく、何も変わらないいつもの自分の部屋だ。先程の出来事は全て夢だったと察した。

 

 

一誠「(あれは…)」

 

 

一誠は上体を起こして先程の夢のことについて考える。

確かにあの砂漠や3000万年前の人間が話しかけてくるなんて夢以外あり得ないことだろう。

しかし、ユザレの言葉には現実味があり、自身が体験した砂漠の触感や風が当たった感覚は今でもハッキリ覚えている。

 

 

一誠「そうだ!こうしちゃいられない!」

 

 

ユザレの言葉を思い出した一誠は我夢の安否を確認しようと軽い身支度を整え始める。すると、

 

 

アーシア「イッセーさん?」

 

一誠「アーシア…」

 

 

そこへ寝巻き姿のアーシアが部屋に入ってきて、2人は思わず目を合わせて固まってしまう。

わだかまりがあって以降、前の様に一誠のベッドで一緒に寝ることはなかったが、こうして部屋に赴いたということは何か話すことがあってきたのだろう。

 

お互い話を切り出せずしばらく沈黙していたが、我夢の事で頭をすぐに切り替えた一誠は話を切り出す。

 

 

一誠「アーシア、我夢は部屋にいるのか?」

 

アーシア「いえ、お外に出られてます。稲森博士のお墓参りへ」

 

一誠「わかった、ありがとう!」

 

 

一誠は短くお礼を言い、そのまま部屋を出ようとアーシアの横を通ろうとした時、アーシアに裾を掴まれて止められる。

 

 

一誠「…?」

 

 

どうしたんだと一誠が不思議そうに思いながら顔を俯けているアーシアを見る。

すると、顔を俯けていたアーシアは視線に気付いたのか顔をあげ、一誠の顔を見つめると、口を開き

 

 

アーシア「イッセーさん…あの、私のこと、どう思ってます…?私は…イッセーさんのこと!そのっ、お友達とかじゃなくて、男の人として、だっ、大好きです!」

 

一誠「っ!」

 

 

不安で顔を曇らせながらもしっかりと告白するアーシアに一誠は胸を痛める。

人生で初めての告白で心踊らせる自分もいるが、それよりも悲しさが勝った。

 

―――自分はどうしようもなく、馬鹿で、女心もわからない。そのせいで自分を愛してくれる女の子を不安にさせ、泣かせてしまった…。

 

 

一誠「(バカ野郎…俺、最低だな…)」

 

 

一誠は自分の覚悟のなさで、こんなにも健気で優しい女の子の笑顔を奪い去ってしまったことに自分への憤りを感じた。

 

だが、答えは未だ決まっていない。

早く出した方が彼女も楽になるが、早まった決断でもし返答したらそれはそれで自分への後悔に繋がる。

 

 

アーシア「あの…?イッセーさんは?」

 

 

一誠は自分が考えている中、返答を待つアーシアを見ると、申し訳なさそうに両肩に手を置き、

 

 

一誠「アーシア、ありがとう。初めての告白だったから凄く嬉しいよ。…でも、ごめんな。まだ答えが決まってないんだよ。ちょっと気持ちの整理が出来てないことがあってて…」

 

アーシア「…」

 

一誠「けど、今度の体育祭が終わるまでにはきっと答えを出すから。こんな情けない俺だけど、それまで待っててくれるか?」

 

 

一誠の頼みにアーシアは不安が残りつつも僅かに笑みを浮かべ

 

 

アーシア「…わかりました。私、待ってますから」

 

一誠「ありがとう、アーシア!んじゃ、行ってくる!」

 

アーシア「はい!お気をつけて」

 

 

一誠は見送りに手を振ってくれるアーシアにサムズアップすると、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、駒王町にある墓地では我夢が稲森の墓の前で花を供え、手を揃えて深くお辞儀していた。

ゴメノスとの一件後、稲森の葬儀はすぐに関係者のみで行われた。稲森の関係者曰く、「今でも死んだのが信じられない」とのことで、動揺の色を見せていた。

 

 

我夢「博士…。博士は本当に藤宮の考えが正しいと思いますか…?」

 

 

我夢は頭をあげると、ふいに稲森の墓に向かって問いかける。しかし、当然ながら死者から返ってくる答えはない。

それでも我夢は教えてほしかった。未だ人類を滅ぼそうとする藤宮を止めてはいけないのかと…。

 

 

一誠「我夢!」

 

我夢「っ、イッセー…!」

 

 

どうしてここに?と驚く我夢に一誠はホッと安堵のため息をつくと、口を開き

 

 

一誠「今日はもう遅い。明日のゲームの前に風邪でもひいたら大変だぞぉ?」

 

我夢「ははっ!そうだね」

 

一誠「(…大丈夫そうだな)おしっ!んじゃ、俺も稲森博士の墓参りするから、待っててくれ!」

 

我夢「ああ」

 

 

冗談を聞いて笑う我夢を見て、今のところ問題ないなと安心した一誠は稲森の墓へ手を揃えて深くお辞儀する。

一誠がお祈りしている間、我夢は夜空に浮かぶ星を眺めていた。

 

 

我夢「…?」

 

 

だが、ある一点を見て、目を細める。

そこに浮かぶ星々は円を描く様に歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エリアルベースのコマンドルームでは、アグルがギールⅡを倒す一部始終を収めた映像を石室、アザゼルは怪訝そうに観賞していた。

 

 

アザゼル「アグルの目的は地球に棲む怪獣を呼び覚ますことではなかったのか?」

 

石室「奴にはギールを倒す気がなかった筈……。一体、何があったんだ…?」

 

 

アザゼルと石室はアグルの突然の心変わりを不思議に思い、考えて込む。

すると、1つの通信がオペレーターの耳に入る。

 

 

《ピピッ!》

 

「章雄…お父さん…?」

 

石室「?ああ、俺だ。すまない」

 

「弘希君から電話がかかってます」

 

石室「ありがとう」

 

 

石室は軽く会釈すると、オペレーターから手渡されたヘッドセットを顔に近付ける。

ちなみに弘希とは、石室の息子である。

 

 

石室「どうだー?調子は?」

 

 

久しぶりに話す親子の会話にオペレーターは微笑ましく見守り、アザゼルはニヤニヤしている。

だが、息子から返ってくる言葉は予想外のものだった。

 

 

《弘希「変だよ」》

 

石室「…変?」

 

《弘希「空を見てよ。どの恒星も配列がめちゃくちゃなんだ」》

 

石室「空の配列がめちゃくちゃ?」

 

 

それを聞いた石室とアザゼルは不思議そうに窓に集まり、夜空を眺める。

しかし、上空からは見えないのか、窓からはその異変は全く見えない。

 

 

アザゼル「そういう報告は入っているのか?」

 

「はい。天文科学セクションが現在調査中です」

 

石室「…」

 

 

天体の異変に石室は何かしら悪い予感がするのか空を見据える。

すると、またも次の通信が別のオペレーターの耳に入る。

 

 

《ピピッ》

 

「コマンダー。冥界のサーゼクス様から連絡が入っています」

 

石室「よし、モニターに繋いでくれ。…弘希、お休み」

 

《弘希「お休みなさい」》

 

 

石室はそのオペレーターにそう指示しつつ弘希にお別れの言葉をかけると、通信を切り、オペレーターに返す。

オペレーターが操作すると、1秒も経たず、モニターにサーゼクスが映し出される。

 

 

石室「サーゼクス、例の件はどうなった?」

 

《サーゼクス「ああ。リザードに調査させたところ、やはりディオドラは限りなく黒だ」》

 

アザゼル「やっぱり、グラシャラボラス家次期当主の不審死とディオドラの突然の魔力増大の件は『禍の団(カオス・ブリゲード)』が裏で手を引いていると?」

 

《サーゼクス「ほぼ、確実だろう。ディオドラとそれらしき組織の人物とコンタクトをとっている情報も掴んでいる」》

 

 

それを聞いた石室とアザゼルは顔を曇らせる。ただでさえ今はアグルへの対処で忙しいというのに、禍の団が、しかも明日のリアスとの対戦相手と絡んでくるということは非常に厄介である。

 

 

アザゼル「話変わるけどよ、藤宮と連れ去られた紫藤 イリナの行方はどうなんだ?」

 

《サーゼクス「未だ行方は掴めていない。現在、リザードに捜索させているところだ」》

 

アザゼル「そうか。ハッ、リザード(あいつら)も大変だな…」

 

 

アザゼルはニヒルに笑いながら同じ苦労人として、リザードの過労に同情する。

そんなことを言いつつも、アザゼルはリザードの捜査網を信頼してることもあり、イリナ達の捜索は問題ないと安心している。

 

 

《サーゼクス「『禍の団』が裏についているということは今度のゲームはただ事では済まないだろう…。アザゼル、今度のゲームは我々総出で迎え撃つしかあるまい」》

 

アザゼル「ああ、そうするしかねぇだろうな。あいつらにはちょいと悪いことをするがな…。石室、お前も戦場に出るか?」

 

石室「ああ」

 

「「…!?」」

 

 

石室の返答にアザゼルとサーゼクスは驚く。アザゼルはほんの冗談で言ったのだが、司令官という役職とあって、普段あまり前線に立って戦わない石室が承諾したからである。

 

 

《サーゼクス「珍しいな。戦いを退いた君が再び前線へ出るとは…」》

 

 

サーゼクスは物珍しそうに呟く。そう言うのも、彼とは種族を越えての長い付き合いだからである。

それを聞いた石室は窓を見据え

 

 

石室「…嫌な予感がするからな。テロリスト以上に、もっと強い脅威の……」

 

「「…」」

 

 

そう重々しく呟いた。『禍の団』以上の厄介な脅威―――その言葉は果たして思い過ごしか…?それとも現実となるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な葛藤、不安、陰謀が渦巻く中、日は流れ、遂にディオドラとのレーティングゲーム当日を迎えた!

 

 

リアス「そろそろ時間ね」

 

 

XIGナビで時間を確認したリアスはそう言い、部室のソファーから立ち上がる。

時刻は深夜を回り、生徒も教員も誰もいない駒王学園のオカルト研究部の部室に集まった我夢達。

今日こそはあの因縁深いディオドラとの対戦であり、皆(特に一誠とゼノヴィア)は気合いが入っていた。

 

 

リアス「さあっ!私達の力、見せつけてやりましょう!」

 

『はいっ!』

 

 

リアスの檄に皆は力強く答えると、足下に用意された転送用魔法陣の上に乗り、転送を始める。

 

そして、ピカッと魔法陣に光が走った時、我夢達の視界は眩い輝きに包まれた――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「……着いたのか?」

 

 

眩んでいた視力が戻り、皆は恐る恐る目を開けて辺りを見渡す。そこは虚空の空間が広がっており、足下は古風な石造りの床で出来ていた。

 

 

我夢「イッセー、後ろ見てよ!」

 

一誠「…ん?おあっ!?」

 

 

隣にいる我夢に言われるがまま、一誠が後方に振り返ると、そこにはギリシャの彫刻家が作った様な巨大な神殿がそびえ立っていた。荘厳で古風な雰囲気を醸し出してはいるが柱や建物にはひび1つ入っておらず、まさに出来立てと言わんばかりの様相を見せていた。

 

 

木場「…ということは、ここが僕達の陣地ですね」

 

朱乃「ええ、そうみたいですわね」

 

一誠「よっし!俺達の実力を見せつけてやりましょうぜ!!」

 

『おーーーー!』

 

「「お、おー…?」」

 

 

一誠の気合いの言葉に皆は掛け声と共にノリノリで拳を掲げる。リアスを差し置いていつの間にか仕切っている一誠に、我夢とリアスは困惑しつつも拳を掲げる。

 

そんなことをして勇んだ皆は、ゲーム開始のアナウンスがなるのを待っていたのだが…

 

 

リアス「………おかしいわね」

 

我夢「そうですね…」

 

 

いつまで待ってもアナウンスが流れず、リアスは怪訝そうに呟くように、皆も訝しげに思う。

ゲーム開始時刻はとっくに過ぎており、本当ならもう作戦タイムは終わり、ゲーム本戦に入っている頃だ。

 

 

ブゥゥゥゥゥン…

 

『?』

 

 

運営に何かトラブルがあったのか?と皆が首を傾げながらあーだこうだ言っていると、我夢達の周りを囲むように大量の魔法陣が次々と現れ始める。

やっとゲームが始まると思った一同だが、

 

 

木場「アスタロトの紋様じゃない!」

 

『っ!』

 

 

木場の一言に皆は緊張が走り、一斉に身構える。

その間にも彼らを囲う魔法陣は次々と増えていき、100か1000…否、それ以上になっていく。

 

そんな中、朱乃が雷を纏わせながら言う。

 

 

朱乃「…魔法陣全てには共通点はありませんわ。ただ、この紋様……記憶が確かなら―――」

 

リアス「ええ、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の旧魔王派に傾倒した者ね」

 

『!?』

 

 

リアスが朱乃に続けて話した言葉に皆は驚愕する。

レーティングゲームのゲームエリアは冥界でも凄腕の術師によって厳重な結界が張られている。なので、関係者以外誰も侵入できない筈だが、まさかこう易々と襲撃してくるとは予想だにもしなかった。

 

 

我夢「(誰かが手引きをしたのか…?)」

 

 

我夢は魔法陣から次々と現れる悪魔達を見据えながら思った。関係者以外立ち入りは出来ない……つまり、運営側の者しか抜け穴を知らない。そう、()()()()()()()()()()()()()()()と…。

 

魔法陣の光が消え、すっかり悪魔達に囲まれた我夢達。

すると、首謀格らしき悪魔が前に出て、リアスを見据え

 

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリー。ここで散ってもらう」

 

リアス「(やはり、旧魔王派の者ね…)」

 

 

と敵意を剥き出しにして挑発的な物言いをかける。

この発言から我夢達はこちらを取り囲んでいる集団は旧魔王支持派であると断定した。

だが、その時

 

 

アーシア「きゃっ!」

 

一誠「アーシア!?」

 

 

アーシアの悲鳴が聞こえ、皆は振り向くが彼女の姿はない。

 

 

ディオドラ「こっちさ」

 

アーシア「イッセーさん!」

 

 

一同はどこだどこだと辺りを探す中、空から声が聞こえ、上を見上げる。

そこにはアーシアは捕らえ、勝ち誇った様に笑みを浮かべるディオドラの姿があった。

 

 

ディオドラ「やあ、リアス・グレモリー。それとウルトラマン君。アーシア・アルジェントは頂いたよ」

 

一誠「てめぇ、ふざけたことを言ってんじゃねぇっ!!アーシアを放せ!!」

 

 

剣幕立てる一誠にディオドラは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディオドラ「やだね」

 

『―――っ!』

 

 

と初めて見せる醜悪な笑みを浮かべながらあっさり拒否する。

元々、彼に良い印象を持っていなかった我夢達だが、これがディオドラの本性であるとわかった。

 

 

リアス「この状況はどういうことかしら?アーシアはゲームをして手にいれるって言ってたじゃない?」

 

 

リアスは込み上げる怒りで口を震わせながら、ディオドラに問いかける。確かにディオドラは5日前にゲームで必ず手に入れる……そう言ったのは記憶に新しい。

すると、ディオドラはハッと鼻で笑い

 

 

ディオドラ「何言ってるの?ゲーム?そんな馬鹿馬鹿しいものなんてしないさ。君達はここで『禍の団(カオス・ブリゲード)』のエージェントに殺されるんだからさ」

 

リアス「あなたっ、裏切るというの!?冥界の未来を決めるゲームを汚すだけでなく、アーシアを奪い去ろうだなんて!!それでもアスタロト家の悪魔なの!?」

 

ディオドラ「アスタロト家の悪魔?ハハハ!そんなもの、何の役に立つんだい?彼らと行動した方が自由気ままにできるからね。そっちに着く方がいいだろう?それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()?どんな手を使ってでもね。ハハハハハハーーーーーー!」

 

ゼノヴィア「貴様ーーっ!!」

 

 

嘲笑するディオドラにゼノヴィアは飛びかかり、デュランダルで斬りつけようとするが、

 

 

ディオドラ「おっと」

 

ゼノヴィア「ぐあっ!」

 

我夢「ゼノヴィアッ!」

 

 

ディオドラにひらりと横へかわされ、横腹に魔力弾をくらい、地面へ叩きつけられる。

我夢がゼノヴィアに駆け寄り、介抱する中、ディオドラは親指でクイッと神殿を指差し

 

 

ディオドラ「アーシアを追いたければ神殿の奥まで来てごらん?来れるものならね」

 

 

そう言って挑発すると、ディオドラとアーシアがいる空間がぶれ始める。

 

 

ディオドラ「さて、そろそろ失礼させて貰うよ。彼女と大切な契りを交わすからね」

 

一誠「アーシアッ!!」

 

アーシア「イッセーさんっ!ゼノヴィアさ――」

 

 

助けを求めるアーシアの言葉を最後に、2人はフッと姿を消した。

 

 

一誠「くっそぉぉぉぉーーーーーー!!」

 

木場「待つんだ、イッセー君っ!」

 

 

アーシアが消えた後、一誠は悔しげに叫びながら後を追おうとするが、木場に止められる。

 

 

一誠「放せよっ、木場!」

 

木場「冷静になるんだ!今は目の前の敵に集中しよう!」

 

我夢「そうさ。どんなに悔しくても頭を冷やないといけないって前に教えてくれたじゃないか。そうじゃないと、救える者も救えないだろ?」

 

一誠「…っ!」

 

 

抑える木場に加えて我夢にも説得され、一誠は「ここで無茶してもアーシアは取り返せない」と落ち着きを取り戻す。

 

 

朱乃「さて…」

 

リアス「どう突破しましょうか…」

 

 

一誠が冷静になるのを見て安堵した朱乃とリアスは周りを取り囲む敵の軍勢を見渡しながら困った様に呟く。

現在、我夢達を取り囲む旧魔王派の悪魔達は数が多いばかりでなく、魔力の高い上級悪魔もチラホラ見える。

 

この軍勢から放たれる攻撃から身を守りつつ突破するのは体力を多く消耗してしまうので、まず強硬突破は論外だ。出来たとしても、待ち構えているであろうディオドラの眷属を相手をしなければならないので、ここで体力を不必要に消耗するのはナンセンスだ。

それは例え2人のウルトラマンがいてもだ。

 

――どうすればいいのか?リアスが必死に考える内にも敵は魔力を高め、今にも一斉砲火してこようとしてくる。

そんなピンチの時、

 

 

ドガァァァァァーーーーーンッ!!

 

『ギャアァァァァーーーーーーー!!』

 

『!?』

 

 

空から巨大なエネルギー波が目の前に降り注ぎ、それをくらった数100人の悪魔達は絶叫しながら消滅した。

我夢達が突然の出来事に驚愕していると、

 

 

「ホッホッホッ…」

 

 

空から笑い声が聞こえ、見上げる。そこには髭を擦りながら愉快に笑う老人がいた。

その老人を見た我夢達は目を丸くして、口々に言う。

 

 

我夢「あっ、あれは!?」

 

木場「北欧の主神!」

 

一誠「オコリンボール!!」

 

オーディン「違うわっ!!わしはオーディンじゃわい!『オ』しか合っとらんわっ!」

 

 

オーディンは名前を間違えた一誠にツッコミを入れつつ、ゆっくりと空から地上へ降り立つ。

突然の北欧の主神の登場に我夢達のみならず、旧魔王派の悪魔達も驚いている様子だ。

 

 

リアス「オーディン様!どうしてここへ?」

 

オーディン「うむ。その前にこの状況を説明するとな、()()()()()()()、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に乗っ取られたんじゃよ」

 

我夢「やっぱり…」

 

 

オーディンの話を聞き、我夢は納得する。

つまり、ディオドラは『禍の団(カオス・ブリゲード)』を手引きしてゲームエリアに侵入させるだけでなく、運営や顧客の悪魔達を襲撃させているのだ。

 

 

オーディン「今、運営側と各勢力が協力体制で迎え撃っておる。向こうのことは心配せんでよい」

 

リアス「は、はい…」

 

オーディン「それでの、わしがここに来た理由じゃが――」

 

「相手は北欧の主神だ!討ち取れば、名が揚がるぞっ!」

 

 

オーディンが今まさに説明しようとする最中、旧魔王派の悪魔は魔力弾による一斉攻撃を仕掛けてくる。すると、オーディンは杖をトン…と1度地へ軽く叩くと

 

 

ボボボボボォォォォン!!

 

『!!?』

 

 

向かってきた無数の魔力弾は一瞬で弾け飛び、宙で爆発した。これにはこの場にいるオーディン除く皆が敵味方関係なく驚く。

オーディンは「ホッホッホッ…」と髭を擦りながら愉快に笑いながら、旧魔王派の悪魔達を見据え

 

 

オーディン「焦るでない、小童が…。相手なら後でたっぷりとしてやるわい」

 

『っ…!』

 

 

と、低い声で威圧すると、そのプレッシャーの前に敵はぐうの音も出ず、たじろぐ。

それを見て我夢は以前はただのエロジジイと思っていたが、先程の迫力といい、実力といい、伊達に神様を名乗ってないなと改めて思った。

 

そんな中、オーディンは「あっ、話を戻すとな…」と言いながら、先程の陽気な感じに戻ると

 

 

オーディン「わしはアザゼルの小僧にお主らの手助けをしてこいと言われてのぉ、それで来たわけじゃ……ったく、年寄りを使いに出すとは何考えおるのか……。ああ、そうじゃ!これを渡しておかねば」

 

 

そう言ってぶつくさ文句をぼやきつつも、オーディンは

懐から取り出した小袋をリアスに手渡す。

 

 

リアス「これは?」

 

オーディン「アザゼルの小僧が作った通信機の全員分の改良チップが入っておる。占領されている今、このエリアは通信が効かん……それをお主らが使っているしぐなび?じゃったかな?それに入れると使えるようじゃ」

 

リアス「オーディン様、ありがとうございます!ありがたく使わせて頂きますわ!」

 

オーディン「うむ。さて、ここはこの老いぼれに任せて、お主らは神殿に行けい」

 

リアス「はいっ!」

 

 

この場をオーディンに任せることにした我夢達は駆け出し、神殿の中へ入っていく。その道中、旧魔王派の悪魔達はオーディンの気迫に負け、誰1人として攻撃を仕掛ける者はいなかった。

 

神殿の中へ入り、我夢達の姿が見えなくなるのを確認したオーディンは「ホッホッホッ…」と笑い

 

 

オーディン「…さて、久しぶりに大暴れするかのぅ」

 

 

と不敵に呟くと、地が震える程のオーラを纏いら旧魔王派の悪魔達に挑んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後方をオーディンに任せた我夢達は神殿の入口に入るなり、オーディンから渡された改良チップをXIGナビに取り付けていく。

 

後ろから戦いの爆撃音が聞こえる中、XIGナビからピピッと通信音が鳴る。

皆は一斉にXIGナビを開くと、そこにはアザゼルが映っていた。

 

 

《アザゼル「あー…あー…こちらアザゼル。お前達の顔が見えるってことはとにかく無事みたいだな」》

 

一誠「先生!アーシアがっ…!」

 

《アザゼル「――っ!そうか。色々話したいことがあるだろうが落ち着いては話を聞いてくれ。リアス、オーディン(爺さん)から何が起きているのか聞いているな?」》

 

リアス「ええ、このゲームは『禍の団(カオス・ブリゲード)』に襲撃されているのよね?」

 

《アザゼル「ああ、そうだ。ディオドラが『禍の団(カオス・ブリゲード)』と繋がっているのは前々から予測は出来ていた。だが、他の勢力には決定的な証拠を示す必要があった」》

 

リアス「…そこで私を囮に使った訳ね」

 

《アザゼル「…」》

 

 

リアスが低い声で言うと、アザゼルは申し訳なさそうに黙り込む。我夢達は今回の襲撃対策はやけに準備が出来ているなと薄々思ってはいたが、まさか本当だとは…。

 

 

一誠「…っ、じゃあ!アーシアが危険な目に合うこともわかってて、見殺しにしたんですかっ!?最低っすよ!!」

 

我夢「イッセー、よせよ」

 

 

それを聞いて、怒りの声をあげる一誠を我夢は嗜める。

自分達に黙っていたことも許せないが、それよりもアーシアを連れ去られることをわかっていながら何をしなかったアザゼルを許せないのだろう。

これに対して、アザゼルは顔を曇らせ

 

 

《アザゼル「……我夢。イッセーの言う通り、俺は最低だ。戦わせてばかりでいたお前達に羽を伸ばしてもらおうと思ったゲームも敵を炙り出す為に戦場のど真ん中に放りこんじまって、挙げ句の果てにはお前らの大切な仲間を連れ去られてしまった。……すまない」》

 

一誠「…!」

 

 

そう謝罪すると、一誠は怒りを鎮めた。

いつものお茶らけた雰囲気ではない心痛な表情をするアザゼルに対してこれ以上怒りが湧かなかった。

 

 

リアス「…それで、私達はどうすればいいの?」

 

《アザゼル「ああ、とにかく神殿を真っ直ぐ突き進め。ゲームエリアが敵の拠点に塗り替えられた以上、何が起こるか分からないが、ジッとしておくよりかは危険は少ない」》

 

朱乃「―――存分に暴れていい、ってことですわね?」

 

《アザゼル「その通りだ。神殿の外にいる連中は俺達に任せて、とにかくディオドラのもとへ行けっ!……黙っていた俺が言うのも何なのだが、とにかく指示を出すぞ。存分に暴れてこいっ!そして、アーシアを救ってこい!」》

 

『了解!!/ラジャー!!』

 

 

アザゼルの指示を受けたリアス達は気合いの籠った返事をする。やられっぱなしでいるのはグレモリー眷属の性に合わない。

アザゼルの通信を切れた事を確認すると、リアスは我夢達、眷属の顔を見合わせると

 

 

リアス「さあ、みんな!私達を敵に回した恐ろしさをディオドラに見せつけてやりましょう!」

 

『はいっ!』

 

 

そう檄を飛ばすと、我夢達一同は神殿の奥へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢達は柱が並ぶ通路を進んでいくと、広々とした空間に出た。そこにはディオドラの眷属らしきフードを深く被った女性10人が横1列で待ち構えていた。

 

それを見て我夢達が臨戦態勢を整えていると、

 

 

《ディオドラ「やあ、リアス・グレモリーとその眷属の皆さん」》

 

一誠「ディオドラッ!?どこだっ!出てきやがれっ!」

 

 

どこからか聞こえてくるディオドラの声に一誠はキョロキョロ辺りを見渡しながら声を荒げる。

そんな彼をどこからか見ているのか、ディオドラはクスクスと嘲笑い

 

 

《ディオドラ「そんなことしても僕は見つからないさ。言ったじゃないか、僕は神殿の奥にいるって」》

 

一誠「ちっ!」

 

《ディオドラ「…まあ、折角来てくれた訳だし、ここらで1つゲームでもしようじゃないか?」》

 

ゼノヴィア「ゲームだと?」

 

 

ディオドラの唐突の提案に我夢達は目を細めて疑問に思っている中、ディオドラは話を続ける。

 

 

《ディオドラ「ま、ルールを説明すると、お互いの駒同士を出しあって試合をするんだ。相手の数に合わせて出す必要はないから心配はいらないよ。ただ、1度使った駒は僕のもとへ来るまでは使えない。それだけは注意してね」》

 

一誠「ふざけんなっ!何がゲームだっ!今なら顔面1発殴るだけで許してやるから、アーシアを返せっ!!」

 

《ディオドラ「ハハッ、そうカッカしないでよ。無くなったレーティングゲームの代わりと思って楽しもうじゃないか。第1試合、僕はそこにいる『兵士(ポーン)』8名、『戦車(ルーク)』2名を出すよ。ちなみに『兵士(ポーン)』達は全員『女王(クイーン)』に昇格してるけど、大丈夫よね?何せ、強力な眷属を持っていることで有名なグレモリー眷属だから。じゃあ、楽しんでね」》

 

 

吠える一誠を無視してディオドラはそう言い残すと、我夢達が承諾する間もなく、聞こえなくなった。

その直後、一誠はリアスが自分達の顔を選ぶように見ているのに気付いた。

 

 

一誠「部長!あいつの提案を呑むつもりですかっ!?」

 

リアス「ええ、その通りよ。イッセー、ディオドラはアーシアを人質に取っているのよ?下手に刺激するようなことをすれば、アーシアの身に何が起こるかわからないわ」

 

一誠「っ!は、はい…」

 

 

リアスに嗜められ、一誠は大人しくなる。

確かに人質を取られている以上、ここで相手の要求を呑まなければただでさえ厄介な事態は更に悪化してしまうことになるだろう。

 

それから10秒程経つと、リアスは

 

 

リアス「じゃあ、小猫、ギャスパー、ゼノヴィア。そして、我夢。頼むわね」

 

『はいっ!』

 

 

そう返事すると、指名された4人はディオドラの眷属が待ち構えている中央へ向かう。

中央に辿り着いた我夢達は目の前にいる相手を見据えつつ、小猫は猫耳と尻尾を出し、ギャスパーは意識を集中させ、ゼノヴィアはデュランダルを構え、

 

 

我夢「ガイアッ!!

 

 

我夢はその掛け声と共に取り出したエスプレンダーを前へ突き出すと、赤い光に包まれ、等身大のウルトラマンガイアに変身した。

 

 

カァァァンッ!!

 

 

その瞬間、どこからかゴング音が鳴り響くと、両陣営は駆け出した。

 

始まって早々、ゼノヴィアは立ち止まり、デュランダルを天高く掲げ、デュランダルの力を集中させる。

そんなことを敵が許す筈もなく、ディオドラの『戦車(ルーク)』2人はゼノヴィア目掛けて飛びかかるが

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

「「ぎっ!?」」

 

ガイア「グァァァッ…!」

 

 

先陣にいたガイアが右手から出した糸状の光線に後ろから体を捕まれる。2人を捉えたガイアは右腕に万力の力を込めて前方へ引っ張り、

 

 

ガイア「ダァァッ!」

 

ドォォォンッ!

 

「「かはっ!」」

 

 

そのまま思いっきり地面に叩きつける。叩きつけられた床は砕け散り、2人は苦しげな顔で吐血する。

 

 

「隙ありっ!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

糸状の光線をガイアが解いた瞬間、3人の『兵士(ポーン)』が左側から襲ってくるが、

 

 

ピタッ…!

 

 

3人の『兵士(ポーン)』は時が止まったかの様にその動きを止めた。ガイアは後ろへ視線を送ると、ギャスパーが瞳の『神器(セイクリッド・ギア)』の時間停止能力を発動させていた。

 

 

ガイア「ナイスだ、ギャスパー!」

 

ギャスパー「はいっ!」

 

 

ガイアはギャスパーにサムズアップを送ると、時を止められて動けない3人の『兵士(ポーン)』を左回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

 

小猫「やっ、はあっ!」

 

 

猫又の力を解放した小猫は仙術を纏った拳で別の『兵士(ポーン)』3人の動きを止め、次々と倒していく。

すると、3人を倒した小猫は一瞬クラっと目まいがする。

 

 

小猫「…(…張り切りすぎたかな?)」

 

 

小猫はまだ猫又の力を解放して日が浅いことがあって、そんなに慣れていなかった。

前回のゲームの時は力を抑えつつ戦っていた為、長時間戦えたが、今回は少し張り切りすぎた様だ。

 

 

「はっ!」

 

「お命頂戴!」

 

小猫「っ!」

 

 

そんな彼女にいつの間にか接近していた2人の『兵士(ポーン)』が襲いかかる。

不意を突かれた小猫は咄嗟に身構えることが出来ず、身を固めるが

 

 

「「がっ!?」」

 

小猫「…?」

 

 

小猫の後方から飛んできたくさび形の赤い光弾が炸裂し、敵は大きく体制を崩して倒れる。

小猫は不思議に思っていると、

 

 

ガイア「大丈夫?」

 

小猫「…先輩」

 

 

後ろからガイアが優しい言葉をかけてきながら駆け寄ってくる。

小猫は助けに来てくれたガイアの頼もしさに一瞬見惚れるが、『兵士(ポーン)』の2人は立ち上がるのを感じると、ガイアと共に身構える。

 

 

ガイア「ギャスパー!コウモリに変身してゼノヴィアを狙う敵を撹乱させるんだっ!」

 

ギャスパー「は、はい!」

 

 

ガイアは目の前の敵を見据えつつ後ろにいるギャスパーに指示を出す。そして、隣にいる小猫に話しかけ

 

 

ガイア「小猫。戦えるな?」

 

小猫「……勿論。先輩こそ大丈夫ですよね?」

 

ガイア「ああ!行くぞっ!」

 

 

戦えることを確認し合った2人は一斉に駆け出す。2人は2人の『兵士(ポーン)』へそれぞれ得意の格闘戦を仕掛ける。

いくら『女王(クイーン)』に昇格して強靭な力を得ても、流石に格闘戦のエキスパートであるこの2人相手には通用せず、押されていく一方だ。

 

 

小猫「…先輩っ!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

小猫が声をかけると、ガイアと小猫は側転して対峙する相手を入れ替え、戦いを再開する。

こうして途中途中に相手を入れ替えるせいで敵は小猫とガイアのパターンを読めず、ただただ圧倒されていく。

 

ある程度攻めた小猫とガイアはバク転で距離を取る。その間に敵は魔力を溜め、今にも魔力弾を放とうとしてくる。

 

 

ガイア「失礼っ!」

 

小猫「…え、きゃっ!?」

 

 

咄嗟にガイアは小猫をお姫様抱っこすると、宙に高く放り投げる。突然の事に困惑している小猫だが、どんどん上へ上がっていき、下にいるガイアが小さくなっていく。

 

 

「くらえっ!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

そして、『兵士(ポーン)』2人が限界までに溜めた魔力のエネルギー波がガイアに襲いかかる。莫大な魔力のエネルギー波はガイアを簡単に呑み込む程の規模を形成している。

ほぼ回避不可能なこの攻撃を前にガイアは

 

 

ガイア「ダァァァーーーーー!!」

 

「「!?」」

 

ドガァァァーーーーーン!

 

 

軽く跳躍すると、そのまま腕を足を一直線に伸ばすと、体をドリルの様に高速回転させ、エネルギー波に突っ込むと衝突し、爆発した。

その行動に敵2人は驚くが、「バカなやつ」と自滅したと嘲笑うが、その笑みはすぐに消える。

 

 

ガイア「―――――ダァァァァァーーーーッ!」

 

「「っ!?」」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

何と爆風の中から無傷のガイアが回転を止めず、突っ込んでくる。

目の前の結果に2人は目を丸くするが、声をあげる間もなく、衝突し、後方の柱へ叩きつけられる。

 

 

ガイア「…」

 

小猫「…わっ」

 

 

地へ降り立ったガイアは上にいる小猫見上げると、落ちてくる位置を確認して腕でキャッチする。

 

 

小猫「……はっ、早く下ろして下さい!!/////」

 

ガイア「?」

 

 

キャッチされた小猫は頬を赤く染めながら、ガイアに下ろす様に急かす。現在、小猫はガイアにお姫様抱っこされている状況だ。人が沢山いるこの場でされたら、恥ずかしいったらあらしない。

ガイアは何で小猫が恥ずかしがっているのか不思議に思いつつも、素直に小猫を地へゆっくりと下ろす。

 

 

小猫「……だ、大胆!嬉しいけど、もう少し場所を考えてくれたら……

 

ガイア「…?ハッ!」

 

小猫「…え?」

 

 

照れながら何やらぶつぶつ呟く小猫にガイアは首を傾げていると、先程地面に叩きつけた2人の『戦車(ルーク)』が迫ってくることに気付いた。

ガイアは小猫の両手を持ちながら後ろ回し蹴りで敵を怯ませる。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

小猫「…あぁっ!?」

 

「「ぐえっ!?」」

 

 

そして、手を繋いだまま小猫を横へ振り回すと、宙に浮いた小猫の足が敵の顎に炸裂し、大きく吹っ飛ばす。

 

ガイアは「ごめんね…」と小猫に謝りつつ、地に足がついた小猫から手を離すと、ガイアブリザードの体制に入る。

 

 

ガイア「ジョアッ!!」

 

パキキ……

 

 

ガイアの揃えた両手から放たれる冷凍光線は吹っ飛んだ『戦車(ルーク)』のみならず、ギャスパーと戦っていた3人の『兵士(ポーン)』も凍りつく。

 

 

ゼノヴィア「溜まったぞ!!みんな、しゃがめーーーっ!!」

 

「「「!!」」」

 

 

 

丁度その時、ゼノヴィアの声が響く。ゼノヴィアが持つデュランダルは充分にエネルギーが溜まっており、その溢れ出るオーラはこの建物一帯を破壊するまでの迫力を放っている。

デュランダルの力の凄さを察したガイア達は一斉にしゃがむ。

 

 

ゼノヴィア「くらえっーーー!!これが私達の親友を助ける為の力!聖剣デュランダルの力をーーーー!!!」

 

 

そう叫んだゼノヴィアは莫大なオーラを纏ったデュランダルを振り回す。聖なる力を纏った強力な一撃は建物ごとディオドラの眷属を捉え、彼らを呑み込んだ。

 

攻撃が終わり、次にガイア達が目にしたのはゼノヴィアの前方から真上の天井が消え去った神殿と、床で気絶しているディオドラの眷属の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利を確信したガイアは変身を解くと、小猫達と一緒にゼノヴィアに駆け寄る。

 

 

我夢「みんな、お疲れ!ゼノヴィア、さっきの一撃凄かったよ!」

 

ゼノヴィア「ふふ、何。我夢の指示やギャスパー達のおかげさ」

 

ギャスパー「す、凄い迫力でしたぁぁーー!!」

 

小猫「…お疲れ様です」

 

 

4人が労いの言葉を掛け合っている中、我夢は

 

 

我夢「しっかし、驚いたよ~。小猫って意外と可愛い声出せるんだね」

 

小猫「……!////」

 

 

その話に小猫は咄嗟にお姫様抱っこされ、高く放りあげられたことを思い出し、顔を赤くする。

突然の事とはいえ、自分らしくない声を聞かれてしまった事実を。

 

 

ゼノヴィア「…?どういうことだ?」

 

我夢「ああ、僕が小猫を腕で抱えあg―「ふんっ!」がっ!?」

 

 

ゼノヴィアに説明しようとする我夢の横腹を小猫は肘打ちで刺す。唐突な攻撃でもろにくらった我夢はその場で踞り、悶絶する。

 

 

ギャスパー「えっ!?小猫ちゃん、どうして!?」

 

小猫「……うん、ちょっと小突いただけ」

 

ゼノヴィア「ちょっとにしては苦しそうだが…?」

 

小猫「…さあ?とにかく、先へ進みましょう」

 

 

戸惑う2人に小猫は強引に話を進めると、先へ進む様に促す。

悶絶する我夢を後ろから見ているリアスはため息をつき

 

 

リアス「まずは女の子の接し方を教えないとね…」

 

朱乃「あらあら、困りましたわね…」

 

 

呆れたリアスといつもの様にニコニコ笑う朱乃は今後の我夢の教育課題を考えるのだった。

 

 

第1試合――――グレモリー眷属の勝利。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから回復した我夢はリアス達と共に神殿の奥へと進んでいく。

そして、次に開けた場所に出ると、今度は3人の女性が待ち構えていた。

 

 

木場「…僕の記憶が正しければ、あの3人は『僧侶(ビショップ)』2名に『女王(クイーン)』です」

 

我夢「ここでくるのか…」

 

 

木場の冷静な分析を聞き、皆は気を引き締める。

僧侶(ビショップ)』はともかく、膨大な魔力が売りの『女王(クイーン)』は厄介だ。投入してくるのは『騎士(ナイト)』かと思っていたが、まさかこの2戦目にくるとは思ってもいなかった。

 

 

朱乃「あらあら、では私が出ましょうか」

 

我夢「朱乃さんっ!」

 

 

そんな緊張の中、我先と前へ出たのは朱乃だった。

相手に『女王(クイーン)』がいるならば、同じ『女王(クイーン)』である朱乃が出るのは必然だ。

更に

 

 

リアス「後の『騎士(ナイト)』2人は祐斗がいれば問題ないわね。私も出るわ」

 

一誠「部長!」

 

 

ならばとリアスも前へ出る。滅びの力を持つリアスと雷光の力を持つ朱乃―――最強のお姉さまタッグが戦場に並び立つ、これ以上にない頼もしさだが…

 

 

朱乃「あら、部長。私だけでも十分ですわ」

 

リアス「何を言っているの?いくら雷光を扱える様になったからって、油断は禁物よ」

 

朱乃「あらあら、部長。いくら最近、戦う場面が少ないからって便乗はいけませんわ」

 

リアス「うっ、痛いところ突くわね……。確かに出番は最近少ないけど、それは関係ないわ。ここでダメージを最小限に抑えつつ前へ進むことが今回の戦いで重要なのよ?」

 

朱乃「大丈夫ですわ。私の実力を甘く見ないで欲しいですわ。ここは大人しく私に」

 

リアス「いいえ、下がらないわ!」

 

 

当の2人は口論し始め、期待どころかますます不安になっていく。

これには我夢達だけでなく、目の前にいるディオドラの眷属達もいつ戦いを始めていいのか戸惑っていた。

 

 

一誠「喧嘩始めちゃったよ…」

 

我夢「このままだと一向に終わらない!ど、どうすれば…?」

 

一誠「…う~ん、そうだっ!」

 

 

この不安な状況に何かを閃いた一誠は手をポンと叩くと、朱乃へ顔を向け

 

 

一誠「朱乃さーーーーーーん!!我夢がその人達に完勝したら、今度の日曜日にデートしてくれるって!!」

 

朱乃「…」ピクッ

 

 

そう叫ぶと、朱乃はその言葉を聞いて耳をピクッと反応させると、口論を止める。ちなみに我夢はそんな約束は考えていない。

 

 

我夢「ええええぇぇぇぇーーーーーーーー!!?ちょっと、ちょっと!?イッセーーーーーー!?」

 

 

当然、唐突に投下された爆弾発言に当の本人は納得出来ず、目の大きく見開いたまま、一誠に詰め寄る。

一誠は朱乃達に背を向ける形で我夢と肩を組むと、こそこそと話す。

 

 

我夢「何勝手に約束取り付けてるの!?デートなんかしたことないよっ!

 

一誠「まあいい機会と思えばいいじゃないか

 

我夢「何でだよっ!後でどう説明すればいいんだ!?

 

一誠「だからよ、後でどうにかすればいいだろ?それにこう言ったら、朱乃さんがパワーアップするしよ

 

我夢「はぁ?パワーアップ?そんな言葉1つでまさか―――」

 

バチッ!バチバチバチッ!

 

我夢「え!?」

 

 

突然、背後からけたたましい電撃音が聞こえ、我夢は何事かと振り替えると目を疑った。

雷光を纏い、激しいばかりの稲妻を辺り一面に放出する朱乃の姿があった。

 

 

朱乃「…うふふ!うふふふふふふふふふふ!我夢君とデート出来る!!」

 

我夢「……」

 

 

最早、病的にも見える迫力の笑みを浮かべた朱乃の雷光は更に強くなっていく。

当の本人の我夢はその光景に何も言えず、固まっていた。

 

 

リアス「ちょっと、朱乃!危ないわよ!デートの約束ぐらいで馬鹿みたいにテンションあげて!」

 

朱乃「うふふ、リアス。あなたにはわからないでしょうね。この喜びが。異性と1()()()()()()()()()()()()()()()()()()のあなたには」

 

リアス「何ですって!?小心者!?聞き捨てならないわ!たかがデ、デートぐらいで雷を迸らせるいやらしい朱乃なんかに言われたくないわっ!!」

 

朱乃「何ですって?」

 

我夢「イッセー、何か不味くない?」

 

一誠「~~」

 

 

混沌とした目の前の状況に我夢は一誠に訊ねるが、一誠は冷や汗をかきながら知らん振りをする。

不安な状況を覆すどころか再び口論を始め、ますます収拾がつかない状況に陥っている。

 

 

朱乃「未だ抱かれる様子もないあなたに言われたくないわ。その体、魅力ないのではなくて?」

 

リアス「朱乃!それはあなただって同じじゃない!我夢にベタベタくっつくことでしか愛情表現出来ないじゃない!見てるだけでみっともないわ!」

 

朱乃「あらあら、心がうぶなリアスには早すぎましたかしら?それにベタベタくっつくんじゃなくって、“スキンシップ”って言いますのよ?わかります?」

 

リアス「いいえ、わからないわ!大体、朱乃!あなた調子に乗りすぎよ!私には私なりの愛情表現がある!いくら年が同じだからって、下僕のあなたが私のどうこう指図する権利はないわっ!」

 

朱乃「あら?私は事実を申したまでですわよ?大体、リアスもいい加減意中の相手をものにしたらどうなの?」

 

 

白熱した口論はエスカレートしていき、2人から迸る魔力がぶつかり合い、神殿そのものが崩れるのではと思うぐらい震える。

しかし、この混沌とした空気にしびれを切らしたディオドラの『女王(クイーン)』が

 

 

「あなた方!いい加減になさい!私たちを無視して、そんなどうでもいいことを――――」

 

「「うるさいっ!!」」

 

 

異を唱えた瞬間、リアスと朱乃の容赦ない一撃が放たれた。その特大の魔力は前方の建物ごと3人の眷属を包み込んだ。そして

 

 

シュ~~~…

 

我夢「…!?」

 

 

立ち込めた煙が晴れると、我夢は口をあんぐりと開け、固まった。すっかり後片もなくなった建物の残骸には、黒こげになった『女王(クイーン)』と『僧侶(ビショップ)』が倒れていた。

ただ、正論を言っただけなのに…。

 

 

リアス「朱乃!今度こそ今度は許さないわ!」

 

朱乃「それはこっちのセリフよ!大体、リアスは――」

 

 

しかし、それでも2人の口論は止まらない。

もうすでに倒す相手を倒してしまっているにもだ。

 

 

一誠「だ、駄目だこりゃ…」

 

我夢「あ、あはは…」

 

 

困った様に呟く一誠と苦笑いを浮かべる我夢。

勝敗は決したが、この混沌とした状況に我夢達は傍観するしかなかった。

 

第2試合 グレモリー眷属の圧勝?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分が経ち、やっと落ち着いたリアスと朱乃は口論をやめた。

そんな困難?がありながらも一同は先へ進んでいくと、広々とした空間に出た。

 

木場の分析によれば、次の相手は『騎士(ナイト)』2人が待ち構えているはずだが、見覚えがある人物を目撃し、我夢達は足を止める。

 

 

フリード「や、お久さ~!」

 

一誠「フリード!?」

 

 

見覚えがある人物とは、レイナーレや聖剣騒動の一件で散々我夢達の前に立ちはだかった白髪の狂人神父、フリードだった。

聖剣騒動で駒王学園で戦った際、木場に致命傷を負わされ、そのまま行方を眩ましていたが、まさかここで再会するとは思わなかった。

 

 

木場「まだ生きていたんだな…」

 

フリード「感動の再会にかける言葉が“まだ生きていたんだな”ってひどいなぁ~~。僕ちん、ご覧の通りキッチリキッカリ生きてござんすよぉ~?」

 

 

そう言って相変わらず吐き気がする笑みを浮かべるフリード。

何故フリードがここにいるのかはともかく、ディオドラの2人の『騎士(ナイト)』が一向に姿を見せないことに不審に思っていると、

 

 

フリード「おんや~?もしかして『騎士(ナイト)』のお2人をお捜しで?それならいませんよ……()()()()()()()()()から」

 

『!?』

 

 

衝撃の言葉を告げるフリードに皆は驚いていると、何かに気付いた小猫は汚物を見るような目でフリードを見て

 

 

小猫「……その人、人間を辞めてます」

 

我夢「何だって!?」

 

フリード「ヒャハハハハーーーーーー!!」

 

 

そう忌むような呟きに皆が疑問に思っていると、フリードは人間と思えない狂った笑い声をあげる。

すると、フリードはボコッ!ぐにゅう!と異様な音を立てながら身体が膨れ上がる。神父の服を突き破り、身体が巨大化していくと、コウモリやらドラゴンやら色々な生物を掛け合わせたような得体が知れない怪物へと変貌した。

 

 

フリード「ヒャハハハハッ!!この姿か?てめぇらに恥をかかされ、命からがら逃げ出した後、アザゼルからリストラされちまってよぉ!!行き場をなくした俺に『禍の団(カオス・ブリゲード)』が力をくれるっていうから乗ったらこの様だよっ!!合成獣(キメラ)だってさ!ヒャハハハハーーーーーーーー!!!」

 

木場「何て醜い……」

 

 

木場は狂い叫ぶフリードの成れの果てを見て吐き捨てるように呟く。

元から狂っていたものの、以前はまだ人間としての面影があった。しかし、その姿はもう無く、ただの本能のままに喰らい殺す…ただの狂った猛獣となってしまった。

 

 

フリード「あっ!そうそう、面白い話をしてやるよ。ディオドラはんの女の趣味をよ!」

 

一誠「それが俺達に何か関係あんのか?」

 

フリード「ああっ!そう睨むなって!大有りさ!今から教えてやるから、よぉ~~~~く聞きなすって!」

 

 

フリードは睨む一誠を宥めると、ディオドラの女の趣味を長々と語り出した。

 

 

フリード「ディオドラはよ、教会に通じた女が好みなんだよ!しかも狙うのは全て熱心な信者や教会本部に馴染み深い女ばかりだ!さっきイッセー君達が倒してきた眷属悪魔は女ばかりだろ?そいつらは元々は教会の信者ばかりなんだよ!自分の屋敷に囲っている奴らも同じさ!……いやぁ~スゲーよな!()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだからよぉ!まさに悪魔の囁きだ!」

 

我夢「…!?待て。じゃあ、もしかしてアーシアも――」

 

 

熱心な聖女様を言葉巧みに操って堕とす―――。その言葉を聞いて感付いた我夢は声をあげると、フリードはニヤリと口角をあげ

 

 

フリード「その通りさ、優男君っ!アーシアちゃんが教会から追放されるのも全てあのお坊ちゃんの()()()()()()さ!」

 

一誠「何だとっ!?」

 

 

フリードの言葉に他の皆も大体察したが、一誠はただ1人どういうことだと疑問に思う。

すると、フリードはやれやれと肩を竦め

 

 

フリード「イッセーくん、相変わらず鈍いんだから…。まあ、詳しく教えてやるよ。ある日、シスターを手篭めにするのが好きな悪魔のお坊ちゃんは好みの美少女聖女様を見つけました。会ったその日から手にいれたいと思ったけど、警備が強くて中々上手く出来そうにありません。そこで、“ある方法”を考えました」

 

一誠「ある方法?」

 

フリード「その聖女様は誰に対しても分け隔てなく優しいお方です。知り合いから、“彼女の神器(セイクリッド・ギア)は種族関係なく傷を治す力”というアドバイスを受けたお坊ちゃんはそこに目をつけ、実行に移しました。わざと自分を傷つけて聖女様の前に現れれば、優しい聖女様はきっと悪魔である自分でも治してくれる……。そして、それを他の奴に目撃されれば教会を追放されるってね!!ギャハハハ!!」

 

 

その事実を聞いた皆は一瞬血の気が凍り付いた感覚を覚えた。アーシアがディオドラを治療して教会を追放された後、散々な人生を歩んだきたことは知っている。

まさか、人生を狂わせたのも初めからディオドラの企みだったとは予想もつかなかった。

 

 

フリード「そして、信じていた教会から追放され、信仰していた神も信じられなくなって人生滅茶苦茶になれば、簡単に自分のもとへ転がり込んでくるってね!!!ヒャハハハハーーー!!馬鹿だね~~そのまま見殺しにしておけばこんなことに会わなかったのによぉぉ~~~!!」

 

一誠「っ、てめぇ~~~!!」

 

木場「待って」

 

 

腹を抱えて笑うフリードに一誠は怒りを堪えきれず、前へ出ようとしたが、木場に止められる。

 

 

一誠「木場…」

 

木場「イッセー君、気持ちはわかる。だが、ここは僕に任せてくれ。その怒りはディオドラにぶつける方がいい」

 

一誠「……わかった」

 

 

一誠は納得がいかない様子だったが、木場の気迫を感じ、大人しく引き下がる。いつも爽やかなその瞳は自分に負けないぐらいはらわたが煮え繰り返ったものだったからだ。

 

木場は最早異形の怪物となったフリードの前に立つと、1本の聖魔剣を造り出す。

それに気付いたフリードは笑うのを止め、木場をジロリと見下ろし

 

 

フリード「やあやあやあ!てめぇはあの時、俺をぶった斬りやがったクソイケメンじゃーーーあーりませんか!んだけど、あの時とは違いますぜ?ディオドラの『騎士(ナイト)』を食って、パワーアップしたんだからよぉぉぉーーー!!」

 

木場「御託を言ってないでかかってこい」

 

フリード「何をぉぉーー!?調子に乗ってんじゃ―――」

 

ズシャッッ!!

 

『!?』

 

 

――ねぇぞ!と叫ぶ前にフリードの声はかき消される。

フリードの背後から飛んできた禍々しいオーラを纏った斬擊が体を縦真っ二つに切断したからだ。

木場達が驚く間もなく絶命したフリードは真っ二つに別れ、左右に倒れた。

 

一体、何があったのか?と皆が疑問に思っていると、木場の前に刀を持ち、ゴツゴツとした異形の怪人―――ジャグラスジャグラーが現れる。

 

 

木場「誰だ!『禍の団(カオス・ブリゲード)』の者か?」

 

ジャグラー「おいおい、よしてくれよ。俺はまだ敵か味方すらも言ってねぇぜ?」

 

 

その姿、雰囲気から警戒して聖魔剣の切っ先を向ける木場にジャグラーは呆れた様子で肩を竦め、宥める。

それを聞き、切っ先を下ろす木場にジャグラーは安堵すると、我夢達を見て自己紹介する。

 

 

ジャグラー「俺はジャグラスジャグラー。自由気ままに生きる風来坊さ。愛称込めて、『ジャグジャグ』って呼んでもいいぜ?惚れ惚ぉれする…♪名前だろ?」

 

 

若干ふざけた口調で話すジャグラーに皆は呆気にとられる。見た目から凶悪な奴かと思っていたが、こんなフレンドリーなキャラとは思わなかったからだ。

 

皆が調子が狂う中、リアスは

 

 

リアス「それで?風来坊さん、ここに何の用?ディオドラの命令で私達を始末しに来た訳?」

 

ジャグラー「フッ、いーや。俺は奴とは関わりがないし、そもそも『禍の団(カオス・ブリゲード)』なんていう小物組織とも繋がっちゃいない。それに俺はお前達と争う理由も無いから、好き勝手に先へ進めばいい」

 

 

ジャグラーの返答に皆は目を丸くする。てっきり自分達の足止めに来たのかと思ったが、予想とは180度も違う返答が来たからだ。

それを聞いたリアスは皆を引き連れて先へ進もうと動き出すが、「ただし…」と付け加えるジャグラーに止められ

 

 

ジャグラー「兵藤 一誠。そいつと戦わせてくれれば、先へ進ませてやる」

 

一誠「へ?」

 

リアス「待ちなさい。あなた、私達の敵じゃないんでしょ?どうしてイッセーと戦わせる必要がある訳?」

 

 

突然提示された条件にリアスは詰め寄る様に訊ねるとジャグラーは鼻で笑い

 

 

ジャグラー「おいおい、俺は()()()()()()()()()風来坊だぜ?敵じゃないとは言ったが、()()()()()()()()()ぜ?」

 

リアス「くっ…」

 

 

そう話すと、リアスは納得いかないながらも言い返せなかった。

確かに敵対する意思はなくとも味方とは言っていない…それは紛れもなく会話から得られる事実だ。

 

この事にリアスが苦虫を噛んだ表情を浮かべていると、一誠がポンとリアスの肩を叩き

 

 

一誠「部長。俺に任せて下さい」

 

リアス「イッセー…」

 

一誠「大丈夫です!ここは俺に任せて、先へ進んで下さい」

 

 

リアスをそう諭した一誠はジャグラーを見つめ

 

 

一誠「おい、トゲトゲ星人。俺が戦えば、部長達を先に進ませてくれるんだろ?」

 

ジャグラー「ちっ、誰がトゲトゲ星人だ!…まあ、その通りだ。約束してやる」

 

一誠「わかった……みんな!アーシアを頼むぜっ!!」

 

 

ジャグラーの条件が嘘偽りないことを確認した一誠は皆にそう言うと、我夢達は彼らを横切り、先へ向かって走り出す。

 

 

リアス「頼むわよ!」

 

一誠「ラジャー!」

 

小猫「…無理はしないで下さい」

 

一誠「わかってるぜ!」

 

木場「危なくなったら助けを呼んでくれ!」

 

一誠「おう!」

 

ゼノヴィア「死ぬなよ!」

 

一誠「当たり前さ!」

 

 

その途中、皆にエールを送られ、一誠は笑顔を浮かべながらサムズアップで答える。そして殿の我夢が通った時

 

 

一誠「我夢!俺の分までディオドラをぶん殴ってくれ!頼んだぞ!」

 

我夢「ああ!そっちこそ、調子に乗って油断するなよ?」

 

一誠「おう!」

 

 

2人は励まし合いながらサムズアップを交わすと、我夢達はあっという間に神殿の奥へ進み、姿が見えなくなった。

 

一誠は目の前にいるジャグラーに向き合うと、懐からリーフラッシャーを取り出し

 

 

一誠「ダイナァァーーーーーッ!!

 

 

そう叫ぶと、光に包まれ、等身大のウルトラマンダイナに変身した。

 

その姿を見たジャグラーは毒々しい口調で呟く。

 

 

ジャグラー「ちっ、嫌な姿だ…!」

 

ダイナ「何か言ったか?」

 

ジャグラー「…何でもない。さあ、本気でかかってこい」

 

 

ジャグラーは左手で招く様にクイックイッと指を動かして挑発する。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

それを見たダイナは意識を集中させて深く身構えると、その場から駆け出したのだった。

 

 

 

 

 




次回予告


藤宮「俺が本当のウルトラマンだ!」

我夢「僕が本当のウルトラマンだ!」


これがガイアとアグルの最終決戦!

次回、「ハイスクールG×A」
「明日なき対決」
これが運命なのか…!?


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第39話「明日なき対決」

醜悪悪魔 ディオドラ 登場!


待ちに待ったディオドラとのレーティングゲームは、テロリスト組織『禍の団(カオス・ブリゲード)』による罠だった!

 

その際、連れ去られたアーシアを救うべく、ディオドラの待ち構えている神殿の奥へと足を運ぶ。

 

立ちはだかる数々の壁を乗り越えたが、突如ジャグラス・ジャグラーがリアス達の前に立ち塞がる。

ジャグラーの相手をダイナに任せ、我夢達は先へ進む!

 

ダイナはジャグラーを倒せるのか!?果たして、我夢達はアーシアを救えるのだろうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り、我夢達がレーティングゲームに向かう前日。

人間界では深夜となり、人通りも少なくなったこの時間。冷や汗をかいてフラフラと歩く少年とそれを支える少女が足音しか聞こえない、沈黙に包まれたトンネルを歩いていた。

 

その2人は行方不明となっている藤宮とイリナ、その人であった。

 

 

藤宮「はぁ……はぁ……」

 

イリナ「大丈夫?」

 

 

イリナは足元につくまで長いロングコートを羽織らせた疲弊している藤宮の肩を支えながら、労りの言葉をかける。

藤宮はギールⅡとの戦いから体力は大分マシになった方だが、それでも苦しい様子は変わらず、足取りも不安定だった。

 

 

藤宮「はぁ……はぁ……」

 

 

それでも藤宮はイリナに返事をせず、冷や汗を流しながらひたすら歩く。人間―――ましてや天使となった彼女に心を開く気にはなれないのだろう。

そんな彼をイリナは横目に見つつ、ふと思う。

 

 

イリナ「(勝手に着いてきちゃったけど、みんな大騒ぎにさせちゃってるんだろうな~~…)」

 

 

そんな事を頭の中で思いつつ、イリナは上司のミカエルや友人のゼノヴィアの顔が浮かぶ。

藤宮が自分を拐ったと思い、心配しているだろう。きっと迷惑をかけてしまっているだろうと申し訳なく思った。

ちなみにXIGナビは位置情報を知らされるので、電源は切っている。

 

 

「いけねぇなーー?こんな時間にブラブラ歩いてぇ」

 

 

しばらく歩き、トンネルの出口に差し掛かると、前から男がこちらへ話しかけてくる声が聞こえた。

イリナはそちらへ視線を送ると、3人組の男がいた。

男達はジャージやジャケットをだらしなく着ており、髪は染め、耳にはピアスを着けている。所謂不良だ。

 

それを見てイリナは「わぁー最悪」と思っていると、男達はニヤニヤしながら近寄ってくる。

先頭にいる銀髪の男がニヤニヤしながらイリナを品定めする様に体中を見ると、口を開け

 

 

「へぇ~結構可愛いじゃん。なぁ、いい提案があるんだけど、これから俺達を遊ばね?そんな死にかけの老害みたいなガキをほっといてよぉー。楽しいぜ?」

 

イリナ「どいて下さい。私、これから用事があるので」

 

「連れねぇなぁ~~…」

 

 

イリナはナンパを拒否するが、男はふて腐れた様に呟くがまだ諦めていない様子だった。

すると、イリナはその男の後ろにいた青髪の太った男が自分の隣にガンを飛ばしているのに気付いた。

 

 

「おい。何か文句あんのかよぉ?」

 

藤宮「…」

 

 

藤宮は青髪の太った男に訊ねられても答えず、顔をあげて睨み付けている。まるで地に吐き捨てられた汚物の様にだ。

 

 

「何か言えやっ!こらぁ!!」

 

「まあまあ…落ち着いて。暴力はダメよ☆そんな奴、無視して、ね♪」

 

「…ちっ!」

 

 

青髪の太った男は沸点が低いのか青筋を立てて藤宮に掴みかかろうとするが、その隣にいた金髪のヒョロヒョロの男にふざけた口調で宥められる。

その言葉に耳を傾けた青髪の太った男は舌打ちしつつも、気を鎮める。

 

銀髪の男はそれを見てやれやれと肩を竦めると、再度イリナの方へ顔を向け

 

 

「ま、とにかくよ。俺達と来いよ」

 

イリナ「あっ、ちょっ!?」

 

 

そう言いながら、強引に連れていこうとイリナの右手首に手をかけた瞬間

 

 

バキッ!

 

「ぐへっ!?」

 

イリナ「!?」

 

 

突然藤宮が身を乗り出すと、銀髪の男の顎目掛けてアッパーを繰り出す。

もろに顎への不意打ちを食らった銀髪の男は苦しそうに顔を歪めながら後ずさる。

 

 

「この野郎ぉぉ~~!やっちまえっ!!」

 

 

藤宮を睨み付けながら銀髪の男がそう言うと、3人は藤宮の周りを取り囲む。

 

 

「おらっ!」

 

藤宮「がっ!?」

 

「このやろっ!このやろっ!」

 

ドガッ!バキッ!ボコッ!バキッ!

 

 

ヒョロヒョロの金髪の男が背中を殴りつけて藤宮を倒れさせると、それを期に男達は倒れた藤宮の顔や腹目掛けて蹴りつける。

 

 

イリナ「ちょっと、止めて!!」

 

「うっせぇな!!」

 

イリナ「あっ!」

 

 

イリナは止めさせようと銀髪の男の肩に手をかけるが、振り払われ、イリナは少し体制を崩しながら、後退る。

 

平和的に解決しようとしたのに無視し、大切な人を傷付ける彼らにイリナはカッチーーンと頭に来ると、藤宮へのリンチに夢中になっている銀髪の男に近寄り

 

 

イリナ「はっ!!」

 

「どべあっ!?」

 

「「!?」」

 

 

思いっきり後頭部へ正拳突きすると、銀髪の男は眼球が飛び出すぐらいの勢いで顔を前へ突き出すと、バタリとその場に倒れる。倒れた男の後頭部からは僅かだが血が流れており、白目を向いている。

2人の男はその光景に思わず藤宮へのリンチを止め、驚愕していると

 

 

イリナ「あなた達も同じ目に会いたい?」

 

「ひぃぃぃーーーーー!!」

 

「ごめんなさいぃぃぃーーー!!」

 

 

イリナが睨み付けながら低い声で脅すと、残された2人の男達は気を失った銀髪の男を抱え、一目散に逃げ出した。

イリナは情けないなと男達に呆れるが、すぐに痛め付けられた藤宮のことが気になり、倒れた彼のもとへ駆け寄る。

 

 

イリナ「大丈夫?」

 

 

イリナは膝をついて藤宮の体を軽く揺する。すると、藤宮はゆっくりと顔をあげて立ち上がろうとする。体中アザだらけだが命に別状はない。

だが、

 

 

藤宮「人間は汚いっ…!こほっ…!人間は醜いっ…!人間も…!悪魔も…!全部っ!この地球から吐き出してやるーーっっ!!」

 

イリナ「…っ」

 

 

藤宮は咳き込みながら険しい顔で絶叫する。更に人間や悪魔達への憎悪を募らせながら…。

そんな彼にイリナは悲しい目で見るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、エリアルベースのコマンドルームではG.U.A.R.D.の天文科学セクションから空の異常についての調査結果が送られてきていた。

 

 

「マグナケアの光学赤外線が捉えた映像です」

 

 

オペレーターがそう言うと、中央のモニターに天体図が表示され、各恒星の位置が事細かに表示される。

もう1人のオペレーターが続けて

 

 

「恒星の配列は“正常”です」

 

アザゼル「なのに、どうして地上からは歪んで見えるんだ?」

 

石室「ミカエルからも同じ報告だったな…」

 

 

報告すると、その観測結果にアザゼルや石室は疑問を抱く。天界もそうだが、G.U.A.R.D.も負けないぐらいの最新鋭の設備があるので結果は間違いないだろう。

しかし、何故地上からは異常に見えるのかという点が納得いかない。

 

考えていると、何やら通信を受けたオペレーターが石室へ振り向き

 

 

「コマンダー。G.U.A.R.D.ヨーロッパ技術顧問のダニエル氏から通信が入ってます」

 

石室「出してくれ」

 

「はい」

 

 

石室に頼まれたオペレーターは手元のキーボードを操作すると、モニターに茶髪の西洋人の男性が映る。

 

皆、この人を覚えているだろうか?

この人は昔、大学時代に藤宮と共にクリシスの研究をした同志、あのダニエルだ。

 

藤宮がいなくなった後、研究を引き継いだダニエルは仲間と共にクリシスの改良を重ねた。

その後、破滅招来体の襲来をクリシスが言い当てたことで世界中から評価され、現在はクリシスと一緒にG.U.A.R.D.ヨーロッパの技術顧問となっている。

 

 

《ダニエル「コマンダー。外気圏の位相が歪んでいます。だから、地球には屈折した恒星の光しか届いてこないのです」》

 

石室「その情報は確かなのか?」

 

《ダニエル「ええ…」》

 

 

石室の問いにダニエルは頷く。

この情報が本当なら、空ではなく、()()()()()()()()()()()()となる。

 

 

石室「わかった。こちらでも調査を進めておく。それと、クリシスには異常が観測されてないのか?」

 

《ダニエル「はい。今のところは何も……。何かあれば、すぐに知らせます」》

 

石室「わざわざすまないな」

 

《ダニエル「はい。では…」》

 

 

ダニエルは一言告げると、石室との通信を切り、座っていた椅子の背に体重を乗せる。

選りすぐりの技術者と提携しても、旧友の藤宮が作った最高傑作の光量子コンピューター、クリシスを持ってしても原因が掴めない状況に頭を悩ませていた。

 

ダニエルは遠い空を見るように天井を眺め

 

 

ダニエル「藤宮君…。こんな時こそ力が欲しいのに……君は一体、どこで何をしてるんだ?」

 

 

かつて共に同じ志を持って研究に励んだ旧友の名を呟く。彼の安全を願う様に…。

 

しかし、彼を見下ろす夜空は怪しく円を描いて歪んでいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は進み、現在。

レーティングゲームを行われる筈だった空間にある神殿のとあるエリアでは、ダイナとジャグラーが白熱のバトルを繰り広げていた。

 

 

ダイナ「デュッ!ダァァッ!!」

 

ジャグラー「フッ!ハッ!」

 

 

駆け出したダイナは拳と蹴りの攻防で激しく攻め立てる。

対するジャグラーは右手に持つ蛇心剣を駆使して防ぎ、適切に剣擊で攻めるが、ダイナに間一髪避けられたり、腕で防がれる。

 

 

ズジッ!!

 

ジャグラー「!?」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ジャグラー「ウッ!」

 

 

両者一歩も譲らない攻防を繰り広げていたが、隙を見たダイナは振り下ろされる蛇心剣を両腕を頭上でクロスして防ぐと、がら空きの胴体目掛けて蹴り飛ばす。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

続け様にダイナは後退るジャグラーへダイナスラッシュを3発放つ。放たれた3つの丸のこ状の光輪はジャグラーに向かっていくが

 

 

ジャグラー「フッ!」

 

パキンッ!パキンッ!パキンッ!

 

 

体制を整えたジャグラーは素早い剣捌きで光輪を斬り落とす。斬り落とされた光輪は粉々になると、粒子状になって霧散する。

 

 

ジリッ……ダッ!

 

ダイナ「!?」

 

 

ジャグラーは蛇心剣を腰に携えて深く腰を落として、跳躍すると、姿を消した。

どこだとダイナがキョロキョロ辺りを見渡していると

 

 

ジャグラー「こっちだ」

 

ダイナ「ハッ!?グアッ!」

 

 

背後から声が聞こえ、ダイナは驚愕しながらも振り向くが、避ける暇はない。

ジャグラーの横払いの剣擊をくらい、胸元から火花を散らしながら、大きくのけ反りながら吹き飛ばされる。

 

 

ダイナ「…グッ」

 

ジャグラー「シャッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ジャグラーは追い討ちにと前へ跳躍し、膝をつきながらも立ち上がろうとするダイナ目掛けて蛇心剣を振り下ろす。

刀は助走の勢いもあって素早く、真っ直ぐダイナの脳天目掛けて振り下ろされるが

 

 

パシーーーーーンッ!!

 

ジャグラー「ッ!」

 

 

ダイナは紙一重で白刃取りして、防ぐ。ジャグラーは今の一撃を受け止められたのが意外だったのか、少し驚いた様な声を漏らした。

 

 

ダイナ「ハァァァーーー……!!」

 

グググ……

 

ジャグラー「ヌッ!オォォォ……!」

 

 

ダイナは白刃取りしたまま力を込めて立ち上がろうとする。ジャグラーは負けじと蛇心剣に力を込めて抑え込もうとするがダイナの力を前にグングン押し返されていく。

 

そして、立ち上がったダイナは頭を大きく後ろへ引くと

 

 

ゴチンッ!!

 

ジャグラー「ガッ!?」

 

ダイナ「グアァッ!!」

 

 

思いっきり勢いをつけた頭突きをジャグラーの額にぶつけると、ジャグラーとダイナは大きく後退る。食らったジャグラーは勿論、食らわしたダイナも痛そうに頭を抱える。

 

 

ジャグラー「おいっ!もっとマトモな攻撃しろよ!痛ぇじゃねぇかっ!馬鹿なのかっ!!」

 

ダイナ「うるせっ!誰が馬鹿だ!!これが俺の戦い方なんだよっ!」

 

 

額の痛みを堪えながら激しく吠えたてるジャグラーとダイナ。生きるか死ぬかの戦いにマトモも卑劣もないと思うが…。

 

 

ジャグラー「まあ、それにしても思ったよりやるじゃねぇか」

 

ダイナ「へっ、そっちもやるじゃんか!トゲトゲ星人」

 

 

不敵に笑うジャグラーとダイナ。

両者の攻防は互角で、戦い始めてから5分経つが、まだどちらも深手を負っていない状況だ。

 

そう言ったジャグラーは額の痛みが引いたのか、「さて…」と呟きながら身構えると、

 

 

ジャグラー「続きを始めようか?」

 

ダイナ「ああ」

 

 

そう招く様に言うと、ダイナも痛みが晴れたのか不敵に返すと、両者は再び戦い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、人間界では―――

 

 

藤宮「………?」

 

 

藤宮が目を覚まし、体を起こす。辺りを見渡すとどこかの廃屋にいることに気付いた。下へ視線を送ると、かけ布団代わりなのかロングコートが腰元にかけられており、近くの床には熱冷ましの代わりであろう四方形に折られた僅かに湿っている白いハンカチが落ちていた。

 

 

藤宮「…」

 

 

次に右手首に装着してあるアグレイターに目をやると、液晶に青い光がほんのり灯る。

まだ完全な輝きに戻ってはないが、休んだおかげで本調子ではないがある程度回復できたことがわかる。

 

 

ザザァ…

 

 

さざ波の音が耳に入った藤宮は扉へ顔を向ける。ほんの少しだけ開いている古びた扉から見える外の景色から得られる情報―――それは、自分が愛してやまない海がある浜辺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザァ…

 

 

さざ波が流され、浜辺に打ち上げた漂流物を見下ろしつつ、イリナは藤宮が起きるのを待ちわびながら散歩していた。

 

 

イリナ「あ」

 

 

歩いていると、砂浜に打ち上げた漂流物の中に白い大きな巻き貝を見つける。小さい頃、(藤宮)がくれた貝殻よりもひとまわりも大きいが、似ているその貝殻を柔らかい手つきで拾い上げる。

 

イリナは思い出す……。

小さい時に海で出会った少年に初めて恋をしたこと…。

その少年を前に初めて女の子口調になったこと…。

別れ際に泣いたこと…。

そして、今も着けている貝殻の髪飾りを初めてもらったことを…。

 

短く、ほんの数時間の思い出だが、イリナにとってはかけがえのない楽しいひとときだったことは忘れない…。

 

 

イリナ「……!」

 

藤宮「…」

 

 

追憶に浸っていたイリナだが、後ろに気配を感じて振り返ると、そこには遠い目で海を眺める藤宮がいた。

イリナは貝殻を両手に包みながら、藤宮に歩み寄る。

 

 

イリナ「駄目よー、また寝てなくちゃ…。元気になんないよ?」

 

 

藤宮が自力で立てる感じを見ると、ある程度は体力が回復したことが分かるが、また無茶をして倒れるかもしれない。

念には念を押しておこうと思い、促す。

すると、藤宮はただ海を眺めながら口を開き

 

 

藤宮「…人間は地球のバイ菌だ。バイ菌は殺菌しなきゃ……地球は破滅する」

 

 

と、最後にイリナを見つめながら話す。

彼の瞳は増悪、恨み、絶望…あらゆる負の感情が込み上げられている。

藤宮は何としても地球を守らなくては…。その使命を果たさなくてはと必死に思っていると

 

 

イリナ「…ぷっ、あははは!」

 

藤宮「何が可笑しい!」

 

 

唐突にイリナは噴き出すと、そのまま笑い出す。

自分を嘲笑っているのかと少し頭にきた藤宮は険しい表情で問いただすと、イリナは

 

 

イリナ「まるで自分が地球になった様に話すんだもの」

 

藤宮「当たり前だ!俺はその為にウルトラマンの力を授かった!」

 

 

可笑しそうに話す彼女に藤宮は語気を強めて言い返すと、藤宮は彼女の隣を通って一歩、二歩と歩き出す。

すると、イリナは笑うのを止めると、藤宮をもの悲しそうに見つめ

 

 

イリナ「可哀想…」

 

 

と、哀れむ様に呟く。

その呟きが耳に入った藤宮は足を止める。

 

 

藤宮「……人間が?」

 

イリナ「藤宮君がよ。地球から選ばれて…選ばれたが為に苦しんで……自由を無くしてる」

 

 

その言葉に頭にきた藤宮は振り返ると、イリナを見据え

 

 

藤宮「俺にウルトラマンになるなと言うのか!?他の人間の様に!身勝手に生きろと!」

 

イリナ「自分を大切にしてって言っているの!地球を思う前に、まず自分を大事にしてよ!自分を大事に出来ない人に地球を守れる訳ないよっ!」

 

藤宮「…っ」

 

 

イリナの懇願に藤宮は藤宮は言葉を詰まらせる。

いつもだったら「お前に何がわかる」と冷たく言い返すが、何故かこの時ら彼女の前では何も言い返す気が起きなかった。

――自分を大事に…?その言葉が心に響いた藤宮は海を眺め考えていると、イリナが微笑みながら顔を覗き込む。

 

 

イリナ「ねえ?藤宮君のこと知りたい。ずっと一緒にいるのに私…何も知らないもの。小さい頃、私を助けてくれたでしょ?」

 

 

訊ねる彼女に藤宮は幼い頃、溺れた女の子を助けたことを思い出す。あの時の女の子が目の前にいるイリナだということはもう既にわかっている。

だが、

 

 

藤宮「…知らない。話すことは何も――」

 

 

藤宮は頑なに否定し、依然として心を開かない。

いくらイリナが出会った人でまともな部類だとしても、相手は憎むべき元人間であり、天使。

自分を語っても無駄だと…。そう判断したのだが、イリナには見透かされていた。

 

 

イリナ「嘘。私、調べたんだからね!それと、藤宮君にだって、昔は色んな夢があったでしょ?」

 

藤宮「……ない」

 

 

藤宮は否定すると、苦し紛れに顔を背ける。

すると、視線の先にあるものを見て、顔を険しくする。

 

 

イリナ「?……っ!」

 

 

イリナもつられて藤宮の視線の先を見つめると、そこには1人の部下を引き連れてこちらへ歩み寄ってくるチームリザードの瀬沼の姿があった。

 

 

瀬沼「藤宮 博也。我々と一緒に来てもらおうか?」

 

藤宮「…」

 

 

ジェクターガンを突き立て、迫り寄ってくる瀬沼達。

藤宮はイリナに危害を加えない様、彼女を手で制して下がらせるが

 

 

イリナ「藤宮君!瞑って!」

 

「「!?」」

 

 

突然イリナがそう叫ぶと、どこかから取り出した手榴弾の様なものを瀬沼達の前の地面へ投げつける。

すると、カッと地面から閃光が走り、瀬沼達は目が眩む。

 

 

「閃光弾かっ!」

 

瀬沼「くっ、くそっ!」

 

イリナ「ごめんなさい!」

 

 

藤宮を連れたイリナは苦しむ2人に謝りながら横切ると、坂をかけ上がって道路に出る。

近くにあった瀬沼達が乗ってきたであろう黒い車に乗り込む。

 

 

藤宮「運転できるのか?」

 

イリナ「ゲ、ゲームでねっ!」

 

 

助手席で困惑する藤宮にイリナは苦笑いを浮かべながら返すと、エンジンをかけ、そのまま車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢達は遂にディオドラが待ち構えているであろう神殿の最奥にたどり着いた。

 

 

リアス「開けるわよ」

 

 

リアスは皆が頷いたことを確認すると、目の前にある大扉を思いっきり開け、皆は警戒しながら内部へと入っていく。

 

部屋の内部は今まで戦闘場で使った広間同様、広々としている。だが、今までと違う点は明かりがあまりないのか薄暗く、壁には何かの装置の部品なのか、巨大な宝玉があちこちに埋め込まれている。

そして、部屋の奥には

 

 

ゼノヴィア「アーシアッ!!」

 

 

何かの装着に磔にされているアーシアの姿があった。

見たところ外傷はないが、目元が腫れていたことに皆は気付いた。

すると、

 

 

ディオドラ「やっと来たんだね。待ってたよ」

 

 

アーシアと隣へ不気味な程ニコニコと優しげな笑みを浮かべるディオドラが現れる。

その顔を見た瞬間、皆は敵意を燃やして身構える。

 

ディオドラはそんな我夢達に嘲笑う様に笑みを浮かべたまま見渡すと、一誠がいないことに気付いた。

気付いたディオドラはククク…と笑い

 

 

ディオドラ「…あれ?ダイナがいないじゃないか?まさか、尻尾巻いて逃げ出しちゃったのかな?」

 

リアス「イッセーなら用事が出来たからいないわ。それに、()()()()()()()()()に戦わせるまでもないわ」

 

ディオドラ「ハハッ、言ってくれるじゃないか」

 

 

挑発を含めたリアスの言葉にディオドラは眉1つ顔の変化をさせずに軽やかに笑う。

それは感情を表に出さない為なのか、それとも気が長いのか…。どちらにしても不気味だ。

 

 

ゼノヴィア「ディオドラッ!貴様っ、全てアーシアに話したな!」

 

 

そんな中らゼノヴィアはディオドラを睨み付けながら問うと、ディオドラはニヤリと口角をあげながら頷き

 

 

ディオドラ「うん、全部話したよ。フフフ、いやぁ~~君達にも見せてあげたかったな。彼女が嘆き悲しむ様をっ!僕の手のひらの上で転がされていたことをっ!ハハッ、教会の女が堕ちる瞬間の顔は何度見ても堪らないね」

 

『っ…』

 

 

愉快に話すディオドラに皆は怒りを募らせる。悪魔を助けたことを後悔していないとアーシアは皆に言ったことがあるが、その助けられた張本人がまさか自分の人生を滅茶苦茶にした黒幕だと知らされたら悔しいものだ。

その証拠にアーシアは声にならない音ですすり泣いている。

 

ディオドラはすすり泣くアーシアを横目で楽しそうにニヤニヤと見ると、我夢の方を向いて指指し

 

 

ディオドラ「そこの君。君がレイナーレを倒してしまったせいで僕の計画が台無しになってしまったよ。本当なら、レイナーレにアーシアを一旦殺させてから颯爽と僕が現れてレイナーレを殺し、その場で僕の眷属にする予定だったんだ。まあ、ちょっとした手違いが発生したけど、やっと僕のもとに帰ってきたよ」

 

我夢「……」

 

 

そう自白すると、我夢は静かに怒りを覚える。

――アーシアや一誠が受けた苦しみ、悲しんだレイナーレの一件も全てコイツのせいだと……。

そう怒りに震えていると、我夢は自然に一歩二歩と前へ出ていく。

 

 

ゼノヴィア「手を貸すぞ」

 

我夢「いや、平気さ。こんなヤツ、君の手を借りるまでもない…」

 

 

途中、ゼノヴィアから助太刀を受けるが、我夢はそう答えると、懐からエスプレンダーを取り出す。

エスプレンダーをはめた右手を一旦左肩につけてから、まっすぐエスプレンダーを突き出すと、我夢は赤い閃光に包まれ始めるが

 

 

ディオドラ「先手必勝っ!!」

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

ドォォォォンッ!!

 

 

ディオドラは変身中の隙を狙い、魔力弾をしこたま我夢へぶつける。

次々と放たれる強大な魔力弾は我夢に直撃すると大爆発を起こし、爆心地から煙があがる。

 

 

ディオドラ「ハハッ、油断大敵だよ!いくら君が凄くても、オーフィスからもらった『蛇』でパワーアップした僕の敵じゃないっ!!ハハハハハハハハ………ハ?」

 

 

不意打ちし、勝ったと思ったディオドラは高笑いをあげるが、すぐにその笑みは消え去る。

その理由は爆煙から無傷のガイアが平然と佇んでいたからだ。

 

 

ディオドラ「ばっ、馬鹿な!?あれだけの攻撃を受けて無傷なんて……!」

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ………!」

 

 

戦慄してディオドラは思わず固まっていると、ガイアは両腕を広げて深く腰を下ろしながら頭部にエネルギーを集中させていく。必殺技、フォトンエッジの体制だ。

 

 

ガイア「デュアァァァァーーーーーーーッ!!」

 

 

頭部に鞭の様にしなるエネルギーを形成したガイアは頭を前へ突きだし、エネルギー刃を真っ直ぐ飛ばす。

これこそ、必殺のフォトンエッジだ。

 

 

ディオドラ「…はっ!?くそっ!」

 

 

呆気にとられていたディオドラだが、ガイアの光線が迫り来ることに気付いて気を取り戻すと、両手を前へ出し、魔力の壁を形成する。

形成したバリアは分厚く、ガイアのフォトンエッジを容易く防ぐ。

 

 

ディオドラ「ハッ、どうだっ!お得意の必殺技もこの防御障壁は破れないだろっ!!僕は上級悪魔だ!ウルトラマンとはいえ、転生なりたての悪魔ごときが敵う筈ないんだっ!!」

 

 

勢いに押されていたディオドラだが、ガイアの光線を防いだことで自信を取り戻したのか、余裕の笑みを浮かべる。

だが…

 

 

ガイア「デュアッッ!!」

 

パキパキ…!パリィィィンッ!!

 

ディオドラ「…っ!?」

 

 

ガイアがほんの少し光線の威力を上げると、バリアはひびが入ると、儚い音を立てながら消滅した。

バリアを突破した光線は驚愕するディオドラを真っ直ぐ捉え、

 

 

ディオドラ「ギィアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

ドォォォォン!!

 

 

直撃し、全身が刃で切り刻まれた様なエフェクトが入ると、ディオドラは苦痛の叫びをあげながら大爆発を起こした。辺りには爆風が吹きすさび、リアス達は思わず吹き飛ばされそうな感覚に陥るが、何とか踏ん張る。

 

 

シュウゥゥ……

 

 

爆風が静まると、爆心地には全身傷だらけかつ黒焦げのディオドラが白目を剥いて倒れていた。端正な顔は原型を留めてない程恐怖に歪んでおり、誰がどう見ても再起不能である。もう2度と我夢達に立ち向かおうとはしないだろう。

 

 

ディオドラ「はー…はー…はー…」

 

 

しかし、ディオドラはそれでもしぶとく生きていた。意識を失っていながらも微かに動かせる肺を精一杯動かして呼吸をしている。

実はガイアは殺さない程度にフォトンエッジの威力を抑えていたのだ。ディオドラはテロリストに加担したとはいえ、現魔王ベルゼブブの血筋である。

もし、殺しでもしたら、それはそれで大問題に発展してしまうからだ。

 

ディオドラに近づき、生存確認したガイアは後ろに控えている仲間達へ振り向くと

 

 

ガイア「朱乃さん、木場君。コイツを拘束しておいてくれませんか?」

 

朱乃「わかりましたわ」

 

木場「うん。君はアーシアさんを頼むよ」

 

 

2人が承諾して、早速ディオドラの拘束にかかるのを確認したガイアは装置に磔にされているアーシアのもとへ向かおうとするが

 

 

ガイア「おっと!忘れ物!」

 

ゴスッ!

 

 

何かを思い出す仕草をして、気を失っているディオドラのもとへ戻ると、その頬を殴りつける。

 

 

木場「我夢君。今のは?」

 

ガイア「うん。イッセーとの約束をね」

 

木場「あ、ああ…」

 

 

木場は一誠が我夢に自分の分までディオドラを殴ってこいと約束したのを思い出す。

この最低最悪の畜生(ディオドラ)に同情する気は全くないが、約束とはいえ、気絶した相手を容赦なく殴る我夢に木場は「怒らせては駄目だ」と悟った。

 

満足したガイアは今度こそ磔にされているアーシアのもとへ向かった。

 

 

アーシア「我夢さんっ!」

 

ガイア「待たせたね、アーシア。ごめん、ちょっと顎引いてて?」

 

 

助けに来てくれたことに感激するアーシアにガイアはそう頼む。ガイアの言う通り、アーシアは顎を引くと

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

バギンッ!

 

ガイア「トアッ!」

 

バギンッ!

 

 

ガイアはその場で2回跳躍すると、右左交互の回し蹴りでアーシアの手首を固定する金属具を破壊した。

解放されたアーシアはガイアにペコリと頭を下げる。

 

 

アーシア「我夢さんっ!ありがとうございます!」

 

ガイア「いや、こんなのへっちゃらさ。さ、僕はこの部屋の装置について調べるから、アーシアは部長達のもとへ行きなよ」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

元気よくリアス達のもとへ駆け出すアーシアを見送るガイアは変身を解除すると、我夢の姿に戻る。

我夢は装置を調べながらアーシアとリアス達が和気あいあいと安否を喜び合う姿に目をやる。特にゼノヴィアに至っては号泣しながら抱きついていた。

出会いこそ最悪だったが、同じ神を信仰する者同士として共感できることが多く、今では新友と呼べるまでに成長した2人の姿は微笑ましいものだ。

 

 

我夢「(この光景をイッセーに見せてやりたいな…)」

 

 

仲間達の微笑ましい輪を見て、ほっこりした我夢は今なお戦っている親友のことを思った。

 

そして、同時に願った。この幸せが続きますようにと―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、神殿の外では、上空にワームホールが広がろうとしていた。その迫り来る危機を我夢達は知らなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤宮「……海を探検したかった」

 

イリナ「え?」

 

 

車を走らせること数十分。瀬沼達からかなり離れたところまで来たところ、突然、藤宮は呟く。イリナは首を傾げていると、藤宮は

 

 

藤宮「俺の夢さ…」

 

 

と言って、補足する。

先程の浜辺での質問の返答なのだろうか?

イリナは運転しつつ、藤宮に訊ねる。

 

 

イリナ「どうして海なの?」

 

藤宮「人間は海のほんの上っ面しか知らない……地球の7割は海だというのに。どの国も、自分のとこの優秀さをひけらかそうと宇宙ばっかり行きたがる……」

 

 

世界情勢に呆れた様に語りつつ、藤宮はチラリと窓から見える海の景色を眺め

 

 

藤宮「誰も海の本当の姿を知ろうとしない。だから、俺は……」

 

 

海を愛しく眺めて話すと、言葉をとぎらせた藤宮はうっすらと笑みを浮かべながら視線を前へ向け

 

 

藤宮「あそこは俺達の生まれ故郷なんだ」

 

イリナ「素敵な夢ね…。」

 

 

楽しそうに話す彼を横目で見て、イリナもつられて笑みを浮かべる。今まで冷酷な無愛想な顔をしていながらも心は優しいと人かなと考えていたが、この笑顔を見るとそれは本当であり、笑うと意外と可愛いとイリナは思った。

 

イリナは彼の優しさに触れていると藤宮は

 

 

藤宮「…さっきは知らないって言って悪かったな。俺も覚えているさ……10年前のこと…」

 

イリナ「あ、うん」

 

藤宮「あの時、出会ったことは忘れられない。両親を失って、悲しみ、人の優しさの意味を見失っていた俺を君は救ってくれた。そして、今も…」

 

 

そう語ると、藤宮は真剣な眼差しでイリナを見て

 

 

藤宮「ありがとう、イリナ…」

 

イリナ「…っ!」

 

 

そう真っ直ぐと感謝を告げると、イリナは嬉しさと恥ずかしさが混ざった様な感覚に陥り、思わず頬を赤らめる。

心を開いてくれたこと、約束を覚えてくれたこともあるが、何よりも名前で呼んでくれたことが嬉しく、恥ずかしかった。

その声のトーンはまるで恋人の名を呼ぶように…。

 

その時、藤宮が閉ざしていた心に光が灯るように、右腕のアグレイターも美しい青い輝きを取り戻していた。

 

 

ブゥゥン…!

 

イリナ「!?」

 

 

和やかな雰囲気に包まれていると、イリナはバックミラーを見て、後ろから1台の車が猛スピードでつけてきていることに気付いた。

その車に乗る人物は先程追跡を振り払った筈の瀬沼とその部下だった。

彼らを目撃するなや否や、イリナは思い切りアクセルを踏んでスピードをあげる。

 

 

藤宮「っ!ここで俺を降ろせ!奴らを追っているのは俺だけだ!」

 

 

突然の加速に藤宮も瀬沼達が追ってきていることに気付き、車を止める様に促すが、イリナは断固として車を走らせ続ける。

 

 

藤宮「止めろっ!」

 

イリナ「やだっ!」

 

 

促し続ける藤宮だが、それでもイリナは頑なに拒む。

その間にも後ろにいる瀬沼達の車はどんどんスピードをあげ、あと2mくらいの距離まで近付いてきていた。

 

 

藤宮「止めるんだっ!」

 

イリナ「絶対にやだっ!守りたいの!今度は私があなたとあなたの夢を守りたいのよっ!!」

 

藤宮「…」

 

 

イリナの必死の叫びに藤宮は呆然とする。

藤宮は今まで多くの人を見てきたが、ここまで相手のことを真剣に考え、必死に誰かを守ろうとする人は誰1人としていなかったからだ。

 

加速し続ける2台の追走劇は曲がり角が崖となっている道路まで続いた。

 

 

瀬沼「前へ出ろ」

 

「はい!」

 

 

瀬沼の指示を受けた部下は急加速して車をイリナ達の車の前へ出ると、バリケードの様に車体を横にして立ち塞がる。

 

 

イリナ「っ!?」

 

ガッシャァァッ!!

 

 

突然、目の前に出られたイリナは当然のことながら衝突しないようにハンドルを横にきる。だが、運が悪く、車は崖っぷちのガードレールを破壊し、そのまま崖下へと落下してしまった。

 

 

「「!?」」

 

 

思わぬアクジテントに瀬沼達は目の色を変えると、車から降り、崖下を覗こうと駆け寄る。

――紫藤 イリナは天使なので空は飛べるが、人間である藤宮の場合は違う。ウルトラマンであろうとも体力を消耗しており、あの一瞬で変身することもままならないだろう。

そう思って、不安に駆られていた矢先、

 

 

キィンッ!

 

「「っ!?」」

 

 

突然、崖下から青い光の柱が立ち上り、瀬沼達は後退る。すると、その青い光の柱から右手にイリナを乗せているアグルが現れた。

 

 

アグル「…」

 

 

アグルは左手を瀬沼達の方へ突き下ろすと、指先からアグルスラッシュを放つ。

 

 

ドォンッ!ドォンッ!

 

瀬沼「うわっ!?」

 

 

空中からの攻撃に瀬沼達があたふたしている隙に、アグルは遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瀬沼達の追撃から逃れたアグルは見渡せる海の絶景を上に、イリナを右掌に乗せて空を飛んでいた。

その行動に至ったのも逃走という意味もあるが、何よりも1人の人間の気持ちとして、イリナに海を見せたかったからだ。

 

 

イリナ「きゃっ!」

 

 

イリナは立ち上がって風を感じようとしたが、強い風の抵抗を受けて体勢が崩れ、アグルの大きな指にもたれかかる。

何せ、アグルの飛行速度はマッハ23だ。速すぎる速度から発生する風の抵抗は天使であるイリナとて、立ってられないだろう。

 

 

イリナ「わぁ~…きれ~~い……」

 

 

とはいえ、ウルトラマンから見渡す自然の景色は見事なものだ。空、山、そして広がる海。イリナも空を飛べるが、ここまでの速度は出せず、こんなにも美しく感じられる様な眺め方は出来ないだろう。

 

心を開いてくれたアグル―――藤宮と自分。束の間に訪れた空中デート。いつまでも続く……そう思っていたが、アグルは突然、空中で停止した。

 

 

イリナ「どうしたの?」

 

アグル「…」

 

 

イリナは覗き込む様に見上げながら訊ねるが、アグルは沈黙したまま、空のある一点を見上げていた。

 

アグルが見据える先―――そこには小規模ながらもワームホールが存在していた。

根源的破滅招来体が地球を滅亡させる為に数多の宇宙怪獣を送り込んできたゲートだ。

いつもならやってくる宇宙怪獣に備えて身構えるが、アグルはそうしようとは思わなかった。

 

 

アグル「…」

 

 

ウルトラマンの発達した耳から聞き取れる音。ワームホールからはリアス達やダイナ、更にはガイアの戦う声が

聞こえていた。

 

 

イリナ「?」

 

 

当然、人であるイリナにはそんな音1つも聞き取れず、ただ首を傾げていた。

そんな中、ガイアの声を聞いたアグルは“何か”を決意すると地上へ降り立ち、近くの浜辺にイリナを降ろそうとする。

だが、

 

 

イリナ「えっ!?駄目っ!私と一緒にいれば、誰もあなたを傷つけられない!」

 

アグル「ッ!」

 

 

嫌な予感を察したのか、降りまいと掌にしがみつくイリナの言葉にアグルは一瞬、思いとどまった。懇願するイリナの目尻は涙を浮かべており、悲しいものだった。

だが、アグルはすぐにそれを振り払うと、イリナを左手でそっと掴み取り、優しく浜辺へ降ろした。

 

 

イリナ「藤宮君!連れてってよ!ねぇ!」

 

アグル「……ツォワッ!」

 

イリナ「きゃっ!」

 

 

アグルはそれでも着いてこようとするイリナへ何も答えず背を向けると、そのまま地上を飛び立つ。イリナはその風圧にバランスを崩す中、アグルは上空にある小型のワームホールへ突入していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、無事アーシアを救出したリアス達は我夢が装置がアーシアの神器を使っての回復装置であると解明した後、捕縛したディオドラを連れていこうとしていた。

 

 

アーシア「部長、皆さん!私の為にありがとうございましたっ!」

 

リアス「ふふっ、いいわよ。さあ、イッセーの援護へ向かいましょう。心配はいらないだろうけど」

 

 

アーシアにすっかり笑顔が戻り、元凶のディオドラを倒して一件落着となった我夢達は未だ戦っているだろう一誠のもとへ向かう為、その場を後にしようと扉へ振り返った瞬間

 

 

ドォォォーーーーーーンッ!!

 

『!?』

 

 

後ろの天井から激しい音が聞こえ、我夢達は振り返る。

天井の一部は崩れ、何かが落ちてきたことがわかる。

瓦礫が落ち、先程までアーシアが磔にされていた装置の近くには

 

 

我夢「藤宮っ!?」

 

アグル「…」

 

「かっ、はっ…」

 

 

消息を絶っていた等身大のアグルの姿があった。アグルの足下にはひびが入りながらも豪華な装飾をされた軽装の鎧にボロボロのマントを羽織った血だらけの茶髪の男性が苦しそうに息をしていた。

皆は突如として現れたアグルに警戒する中、

 

 

ディオドラ「…シャ、シャルバッ!!」

 

リアス「…シャルバ?シャルバって確か、旧ベルゼブブの…!」

 

 

いつの間にか目を覚ましたのか、捕縛された身で動揺するディオドラの叫びを聞いて、リアスは思い出した。

禍の団(カオス・ブリゲード)』に傾倒した旧魔王派の1人で、その筆頭格である。今回も含めて、旧魔王絡みの事件の首謀者でもある。

 

動揺するディオドラに気付いたアグルは彼を見据えると

 

 

アグル「お前の仲間だったか。ここへ来る途中で邪魔をしてきたからな、返り討ちにしてやった」

 

ディオドラ「嘘だ!?」

 

アグル「…本当だ。お前、助けてもらおうと思っていたらしいが、そいつは無駄な考えだ。コイツはお前を助ける気など更々ないと言っていたぞ」

 

ディオドラ「そ、そんな…」

 

 

アグルから告げられるシャルバの本音にディオドラは落胆する。

そんな彼をよそにアグルは藤宮の姿に戻ると、我夢を見据える。

 

 

藤宮「我夢…」

 

我夢「藤宮っ、どうしてここへ?」

 

藤宮「簡単なことさ。地球に出来たワームホールが導いてくれたんだ」

 

我夢「何だって!?」

 

 

帰ってきた藤宮の言葉に我夢のみならず、リアス達も目を見開く。

ワームホールが地球とこのゲームエリアと繋がっている……つまり、『禍の団(カオス・ブリゲード)』だけでなく、目的は不明だが、根源的破滅招来体がいることを悟った。

 

未だ脅威が去ってないことを知った我夢に対して藤宮は問いかける。

 

 

藤宮「我夢。人間界から見た星々に異常があるのは知っているか?」

 

我夢「ああ、昨日わかったよ」

 

 

我夢はレーティングゲーム前日の夜に行った稲森の墓参りの際、夜空が歪んでいることを思い出す。

その我夢の答えに藤宮は目を細め

 

 

藤宮「昨日?相変わらず鈍いな!」

 

我夢「鈍い?何が鈍いんだ!?大変なことが起きようとしてるんだぞ!?」

 

 

藤宮の言葉に少し頭にきた我夢は語気を強めて問いかける。藤宮は話し続け

 

 

藤宮「言葉通り、もう遅い!“奴”が来る前に俺は全ての怪獣を目覚めさせるつもりだった!!」

 

我夢「君は知ってて…!?」

 

藤宮「お前が鈍すぎるんだっ!」

 

我夢「最低だぞ、藤宮!怪獣だって何も臨んで出てきた訳じゃない!それに多くの人が傷付き、犠牲になって死んだ人もいるんだぞっ!!」

 

 

我夢は未知の脅威を知りながらも人々を助けず、犠牲にしようとする藤宮のやり方に怒りで拳を握りしめ、批判する。

そんな我夢に藤宮は眉間にしわを寄せ

 

 

藤宮「いずれは目覚める。人間や悪魔なんて知ったことじゃない!!地球を最優先で救うことが俺達、ウルトラマンの“使命”なんだっ!!!」

 

我夢「君はウルトラマンの力の使い方を間違っているっ

!!」

 

藤宮「俺が本当のウルトラマンだ!」

 

我夢「違う!僕が本当のウルトラマンだ!」

 

 

相手の意見を真っ向から否定する我夢と藤宮。

過激していく2人の口論にリアス達は不安な気持ちになるのを感じられずにはいられなかった。

 

だが、次の瞬間。その不安は的中した。

睨み合う2人は遂にお互いの変身アイテムを取り出した。

その意味が指すことはつまり、対決ということだ。

 

 

藤宮「話し合っても無駄か…!こうなれば、我夢!実力でお前を屈服させるしかなさそうだな!!」

 

我夢「ああっ!!もう僕も手加減しないっ!全力で倒すっ!!」

 

 

藤宮にそう言い放った我夢はエスプレンダーを手にゆっくりと藤宮のもとへ歩き始める。

 

 

リアス「ちょっと、我夢!止めなさい!ここで戦っても意味はないわ!」

 

朱乃「部長の言う通りですわ!まずはイッセー君の援護が優先ですわ!」

 

木場「落ち着くんだ!」

 

ギャスパー「せっ、先輩らしくないですぅぅ!」

 

ゼノヴィア「我夢!」

 

アーシア「我夢さんっ!」

 

小猫「…我夢先輩っ!」

 

リアス「これは“主”としての命令よ!今すぐ引き返しなさい!」

 

 

藤宮のもとへ向かおうとする我夢をリアス達は声をかけて必死に引き留める。今の我夢は完全に怒りに囚われ、本来の自分を見失っている―――つまり、我夢の身が危険ということだ。

しかし、それでも歩みを止めない我夢は顔を横にして、リアス達を見据えると

 

 

我夢「これは藤宮と僕の問題なんですっ!!部長達は下がってて下さいっ!!」

 

『っ!?』

 

 

彼の口から出た言葉にリアス達は驚きのあまり言葉を失う。いつも穏やかで優しく、仲間想いの我夢が拒絶するとは思えなかったからだ。

リアス達が口を閉ざしている間にも我夢はとうとう、藤宮の前に来た。

 

 

我夢「人間や悪魔を捨て駒にしようとするお前を…!僕は絶対に許さないっ!!」

 

藤宮「来い!その甘ったれた考えごと排除してやるっ!」

 

我夢「藤宮!お前はウルトラマンじゃないっ!」

 

 

怒りを爆発させた我夢と藤宮はお互いの変身アイテムを掲げて変身しようとするが、

 

 

「「――っ!?」」

 

 

両者の脳裏にあるビジョンが流れ、思わず動きを止める。それは一誠が夢で見た荒廃した地球で死に絶えるガイアとアグル―――自分達の末路だった。

 

そのビジョンに我夢と藤宮は一瞬躊躇うが、目の前の敵を倒さなければならないとその不安を振り払い、変身アイテムを掲げた。

 

 

キィンッ!

 

 

両者の変身アイテムから溢れる赤と青の光に辺りは包まれ、輝きと共に突風が吹きすさぶ。神殿中を照らす輝きと突風にリアス達はこらえながら見続ける中

 

 

ゴゴゴゴゴ…!

 

リアス「っ!」

 

 

神殿が大きく揺れ、壁や天井中にひびが入って、瓦礫が落ちてきており、今にも崩れ落ちそうになっていることに気付いた。2人から発する強大なエネルギーに神殿が耐えきれなくなっているのだ。

 

 

木場「部長!一旦、退却しましょう!このままだと巻き込まれてしまいますっ!!」

 

リアス「…はっ!?そ、そうね!みんな、急いで外に出るわよっ!!」

 

 

木場の進言を聞いて、我夢と藤宮の迫力の前に立ち竦んでいたリアスは気を取り戻すと、我夢と藤宮を残して急いで神殿の外へ出る。

すぐに外に出た一同は木場が円形状に幾重にも重ねて創った聖魔剣に朱乃の結界を加えたシェルターの中へ避難した。

 

やがて、2人の膨大な光は今いる神殿のみならず、今まで通ってきた神殿、そしてダイナとジャグラーがいる神殿までを包み込むと、爆発し、跡形もなく消え去った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿の崩壊音が去り、木場と朱乃は自分達を囲うシェルターを解除すると、リアス達は辺りを見渡す。

爆発によって先程までいた神殿の景色は綺麗さっぱりなくなっており、地面には瓦礫の山が広がっていた。

ちなみにディオドラはシェルターまで抱えられている途中で落ちてきた瓦礫に頭をぶつけてまた気を失っていた。

 

 

ガイア「…」

 

アグル「…」

 

 

そして、遠くには巨大化し、睨み合うガイアとアグルの姿があった。両者は沈黙したまま一度も目を背けず、摺り足で間合いを取っている。

 

すっかり更地となった地に流れる風によって舞い上がる粉塵……。その中を間合いをとりながら動いていたガイアとアグルだったが、しばらくすると、ピタリとその動きを止める。

アグルはガイアを指差し

 

 

アグル「どちらが本当のウルトラマンか……決着を着ける時が来たようだな!」

 

ガイア「挑むところだ!」

 

 

ガイアはその宣戦布告を受けると、両者は身構える。

スタートダッシュを踏み出そうとジリジリと足に力を込めている。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「ドゥアッ!」

 

 

そして、体勢を整えた2人は一斉に駆け出す。

大地と海―――地球を構成する2つの化身による戦いの火蓋が切って下ろされた!

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

幸先良く、アグルは走りながらガイアの前方の地面に目掛けてアグルスラッシュを連射して牽制する。

足下が爆発し、不意を突かれたガイアは視界が爆煙に包まれ、足下をすくわれる。

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ガイア「!?」

 

 

ガイアが足下をすくわれていると、立ち込める爆煙の中から真っ直ぐ前方へ跳躍したアグルが飛び込んでくる。

アグルはその勢いのまま、バタ足でガイアの胸元を連続で蹴りつけると、顎を蹴り上げる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

吹き飛ばされたガイアは怯みながらも立ち上がる。

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

 

アグルは休む間も与えず、右の回し蹴りで追撃するが、ガイアはバク転で回避する。

それでもアグルは休まず、左のかかと回し蹴り、右の回し蹴り…と蹴り技の応酬を続け、ガイアはバク転で回避し続ける。

 

 

アグル「ホワッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

アグルは大振りなストレートキックを放つが、隙を見極めたガイアに両手で止められる。

 

 

アグル「!?」

 

ガイア「ダァァァーーー!!」

 

 

ガイアはアグルの足を掴んだまま、腕に力を入れてアグルを持ち上げると、そのままアグルを遠くへ投げ飛ばす。

投げ飛ばされたアグルは手足をジタバタさせながら背中から地面に叩きつけられる。

 

 

リアス「どうしてこうなるの…!?」

 

 

リアスは2人のウルトラマンの対決を見て叫ぶように呟く。

アーシアが拐われながらも救い出し、やっと終わったと思いきや、突如現れた藤宮と我夢が口論となり、決闘を始めてしまう…。何故こんなことが起きてしまったのか、止められなかった自分をリアスは悔やむ。

 

 

木場「早く止めないとまずいな…」

 

ゼノヴィア「しかし、あれでは力が強すぎて近付けもできん…」

 

 

苦い顔で呟く木場にゼノヴィアは困った様に呟く。

ゼノヴィアの言う通り、ガイアとアグルが戦っているせいで辺りに2人のエネルギーが飛び交っており、近付こうにも近付けず、リアス達はただ見守るしか出来ない。

 

 

小猫「……先輩」

 

 

怒りに囚われ、アグルを倒すのに躍起になっているガイアを見て、小猫は不安そうに呟く。

一歩も退かぬ2人の攻防は収まるどころか、更に加熱していく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「おっ、おい!あれは!?」

 

ジャグラー「うん……?あ?」

 

 

一方、神殿の爆発から逃れ、突然の爆発に疑問に感じていたダイナとジャグラーは遠くで戦っているガイアとアグルの姿を目撃した。

 

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

それを見たダイナは夢でユザレに言われたことを思い出す。2人が戦うと世界が滅びると―――。

焦ったダイナは居ても立ってもいられず、すぐに止めようとその場から駆け出そうとするが

 

 

ジャグラー「おい、どこにいく?俺との勝負はどうなる?」

 

 

ジャグラーはダイナの喉笛に蛇心剣を突き立て、制止させる。一旦ダイナは動きを止めるが、すぐに剣を払い退けると

 

 

ダイナ「それどころじゃないんだっ!!早く、あいつらを止めねぇとまずいことになるんだっ!」

 

ジャグラー「ほぉう?余程、重要なことらしいな」

 

 

ダイナの必死さを見たジャグラーは察したのか、緑色の瞳を歪める。その反応にダイナは

 

 

ダイナ「わかったんだろ!?だったら――」

 

ジャグラー「じゃあ。尚更邪魔しねぇとな」

 

ダイナ「ッ!?」

 

 

ジャグラーの答えにダイナは耳を疑う。事情を詳しく言ってなくとも、この必死さを見ても尚、邪魔しようとするのかと。

ほんの少しだが、話がわかると思った自分が間違っていたとダイナは後悔する。

 

 

ダイナ「…!」

 

 

こいつに構ってる暇はない―――!そう決断したや否やダイナはソルジェント光線を放とうと腕を十字に組もうとした瞬間、ジャグラーは居合い切りの様な体勢を取ると、神速でダイナの懐に忍び込む。

 

 

ダイナ「ッ!?」

 

ジャグラー「―――新月斬波

 

 

ダイナが驚愕する間もなく、ジャグラーはぼそりと呟くと、構えていた邪心剣を一気に振り上げ、赤黒い闇のエネルギーで出来た三日月型の斬撃を放つ。

 

 

ダイナ「グアァァァァーーーッ!!」

 

ドォォォンッ!

 

 

斬撃をくらったダイナは胸元を切り裂かれながら大きく後方へ吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 

[ティヨン]

 

一誠「がはっ…!」

 

 

倒れたダイナは胸元のライフゲージが激しく赤に点滅すると、そのまま変身が解除され、一誠の姿に戻る。

胸元は左肩から右の腰の斜めに切り裂かれて血が吹き出し、一誠は苦しげに顔を歪ませながら吐血する。

 

 

ジャグラー「悪いな。これが俺の本気だ。お前との勝負、楽しかったが()()()1()()()()()()()()()()()()()()

 

一誠「何っ!?ぐっ、そぉぉ!!がっ!?」

 

 

ジャグラーの言葉を受け、一誠は痛む体を必死に力を入れながら立ち上がろうとするが、また吐血して倒れる。

そんな彼をジャグラーはやれやれを肩を竦めながら近寄ると、一誠を肩に担き上げ

 

 

ジャグラー「安心しな。これでも致命傷にはならないように手加減している。手当てすれば、すぐに助かる」

 

 

ジャグラーは肩でぐったりとしている一誠にそう耳打ちするように告げると、闇のオーラを纏うとその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ガイア「ダッ!」

 

 

体勢を整えたアグルはガイア目掛けて駆け出す。

ガイアは勢いをつけた右の回し蹴りを放つが、アグルは飛び越えると、ガイアの後ろに回り込む。

ガイアとアグルは正面を向いて素早く身構える。

 

 

ガイア「ダッ!ダッ!」

 

 

駆け寄ったガイアは右、左、右と拳のコンボを放つが、アグルは冷静に肘を駆使して防ぐ。

ガイアは勢いを止めず右のストレートパンチを放つが、アグルは横へ避けて、右腕を叩き落とす。

 

 

アグル「テェアッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ドゥワッ!?」

 

 

アグルは反撃の左腕から繰り出すラリアットを見舞うが、ガイアはくぐって回避すると、アグルの延髄を後ろ蹴りで蹴りつける。

アグルは頭を揺さぶられ、前へよろめくが、何とか体勢を整える。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「ホワッ!」

 

ガイア「ッ!?」

 

 

ガイアは回し蹴りを放つと、アグルも合わせて回し蹴りを放って相殺させる。続けてアグルはガイアの頬を手の甲で殴り付け、怯ませる。

 

その隙にアグルはガイアの頭部目掛けて回し蹴りを放つが

 

 

ガイア「ダッ!」

 

アグル「ッ!?」

 

 

ガイアにしゃがんで回避され、その際に放たれた足払いに足をすくわれ、アグルは前へ転倒する。

アグルは地面に体をぶつけながら転がっていく。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

ガイアは膝をついているアグルに飛びかかり、その勢いのまま蹴りあげようとする。アグルは間一髪立ち上がってバックステップで避ける。

だが、ガイアはその回避は読んでおり、飛び込んだ後、すぐに体勢を入れ替えて左の回し蹴りでアグルの背中を蹴る。

 

 

アグル「…!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

前へよろめきながらもこちらへ体を向けるガイアは怒涛の拳の応酬を繰り出す。その猛攻にアグルは防御反応が追い付かなくなる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「ッ!」

 

 

猛攻を続ける中、ガイアの拳が顔面に炸裂し、アグルはきりもみ回転しながら大きく浮き上がるが

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ガイア「ッ!?」

 

 

アグルは倒れ込みながら右の拳をガイアの胸元へ叩き込む。ガイアは後退り、アグルは倒れ、両者の体勢は体に走る激痛で乱れる。

 

しかし、それでも2人は痛みを堪えて立ち上がる。

アグルは走り出し、その勢いで蹴りあげようとするが

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「!?」

 

 

ガイアがその足を両腕でちゃぶ台返しの様にひっくり返される。体勢を崩したアグルはその場で1回転して地に頭をつける。

 

ガイアはふらふらとしながら立ち上がろうと膝をつくアグルを無理矢理立ち上がらせると、腹へ拳を叩き込む。

 

 

アグル「ウッ…!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

腹部の痛みによろめきそうながらもアグルは拳を振って抵抗するが、ガイアはそれをかわし、次々と拳を叩き込み続ける。

 

 

アグル「ツォワッ!」

 

ガイア「グアッ…!」

 

アグル「ホワッ!」

 

 

だが、アグルも負けてない。隙を狙って拳を繰り出すガイアの腕を掴んで脇を絞めて固定させると、腹部へ1、2

と拳を打ち込むと、そのまま前方へ投げ飛ばす。

 

両者一歩も譲らない―――まさに互角だ。

リアス達は2人がぶつかり合う度に来る衝撃波に身を守りながら、どちらが勝つのかと見守っていると、

 

 

ジャグラー「よお」

 

『!?』

 

 

ひょっこりといつの間にか後ろにジャグラーが現れ、皆は驚愕する。どこから来たんだと皆が動揺しながら身構えていると、

 

 

アーシア「きゃあぁぁーーー!?イッセーさんっ!!」

 

一誠「…」

 

 

ジャグラーの肩に担いでいるものを見てアーシアは悲鳴をあげる。当然だろう。血塗れの一誠がぐったりとしているのだから。

 

 

リアス「あなた…っ!!よくもイッセーをっ…!」

 

ジャグラー「おい、待て。コイツはまだ生きている。手当てしてやれば助かる。おい、そこの女。お前の『神器(セイクリッド・ギア)』とかで治してやれ」

 

アーシア「は、はいっ!」

 

 

それを見て、魔力を迸らせ、怒りの矛先を向けるリアスにジャグラーはなだめさせると、気を失っている一誠をアーシアに託す。

 

アーシアが一誠の治療をしている中、リアスはジャグラーを疑惑の目を向ける。

 

 

リアス「あなた、どういうつもり?イッセーを殺さず、生かすなんて…。それにアーシアの『神器(セイクリッド・ギア)』のことも知ってるなんて…随分詳しいものね」

 

ジャグラー「なぁに、コイツにはまだ死なれちゃ困るからな。後、『神器(セイクリッド・ギア)』の情報なんて知ってても今さら珍しくないだろ?」

 

 

ジャグラーはとぼけながらも答える。『神器(セイクリッド・ギア)』の情報は憑依先である四之宮の記憶から読み取ったものだが、それを言ったら正体がバレてしまうので伏せている。

 

 

ジャグラー「仲間は返してやった。んじゃ、俺はこれで―――」

 

 

 

そう言ったジャグラーは帰ろうと踵を返す。一誠も気は失っているが治療が終わり、()()()()()()()()も終えた。

ところが、ある1つの視線が自分を見つめているのに気付き、足を止める。

振り返ると、それは不適な顔を浮かべる木場のものだった。

 

 

ジャグラー「何だ?用でもあるのか?戦ってくれって頼みなら聞かないぞ」

 

木場「いや、失礼。僕は剣技に流通してるものでね…つい剣士と合うと、自分でも止められないぐらい興味深々になってしまうんだ。……その刀、見たところ、中々の上物だね」

 

ジャグラー「ふっ、お目が高いな。コイツは『蛇心剣』……俺の愛刀だ。世界に1つしかない俺だけの刀だ。…ま、それはいいとして、お前も剣の腕も中々なもんだな…」

 

木場「それはどうも…。師匠から受け継いだ伝統ある流派なんでね。失礼だが、良ければ君の流派を教えてくれないかい?」

 

 

木場が訊ねると、ジャグラーはふっと鼻で笑うと、蛇心剣を鞘からそっと引き抜いて刀身を見せ

 

 

ジャグラー「…邪心剣・邪心流剣術。それが俺の流派だ。ちなみにこれは自己流だ」

 

木場「そうか…。次、相まみえる時は是非ともお手合わせ願いたい」

 

ジャグラー「ふっ、時間がありゃあな」

 

 

その挑戦を聞き受けたのかジャグラーは不適に笑って返すと、闇のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さでどこかへ立ち去っていった。

 

 

ゼノヴィア「は、速いっ!?」

 

木場「僕の目にも捉えきれないなんて…」

 

 

その速さに皆は目を丸くする。特にスピードに自信がある木場は信じられない様子だった。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

アグル「ドゥワッ!」

 

『っ!』

 

 

呆気にとられていたリアス達だったが、ガイアとアグルの声を聞き、再び2人の方へ視線を向ける。

ガイアとアグルは互角に繰り広げており、同じくらい疲弊している。

 

 

ガイア「ダッ!デュアッ!」

 

 

腰を深く沈めて拳で腹部を連続で殴り付けてから、両手で突き入れるガイアの猛攻。

 

 

アグル「ドゥオァァァーーー!!」

 

 

倒れ込みながら首筋に叩き込むアグルの回転蹴り。

 

 

ガイア「ダァァァーーーー!!」

 

 

ガイアの背負い投げ。

 

 

アグル「ドォアッ!」

 

 

手を払いのけながら、腕をクルクルと回しながら肩に叩き込むアグルの掌底。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

アグル「ドゥワッ!」

 

 

足で頭を挟みこんで投げ飛ばすガイア。お返しに足でガイアの足を挟みこんですっ転ばせるアグル。

2人の攻防は果てしなく続く…。

 

 

アグル「ヌンッ…!」

 

ガイア「グアッ…!」

 

「「ドゥワァァァーー!/トアッ!」」

 

 

間合いを取った2人はその場から駆け出すと、跳躍し、すれ違い様にお互い蹴りを繰り出す。交差した蹴りから発生したエネルギーは空へと昇っていく…。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

アグル「…!」

 

ガイア「グアァァァァ……!」

 

 

ガイアはアグルに掴みかかると、両腕を掴んでその場でハンマー投げの様に回り始める。回転の勢いは増していくと、アグルの体は浮かび上がり、ガイアは腕1本を掴んで回していく。

 

 

ガイア「…!?」

 

アグル「ホワァァァァ……!」

 

 

だが、アグルはタイミングを見計らって地に降り立つと体勢を入れ替え、逆にガイアをブンブンと回していく。

 

 

アグル「ドゥワァァァーーー!!」

 

ガイア「ドアァァァァーーーー!?」

 

 

そのまま勢いをつけたアグルは思いっきりガイアを投げ飛ばす。投げ飛ばされたガイアは空中で手足をジタバタしながら、地面へ叩きつけられ、後ろへ転がっていく。

 

 

ガイア「…ッ!」

 

アグル「…ッ」

 

 

肩で息をしながら起き上がるガイアにアグルも肩で息をしながら、「かかってこい」と挑発する様に手招きする。しかし、両者共、長い時間戦い続けたからか満身創痍で、残された体力も後僅かということがわかった。

 

 

アグル「ドゥワァァァーー!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

アグルとガイアは体に回転をつけながら同時に跳躍すると、手を突きだし、ドリルの様に回転しながら空へと昇っていく。

 

そして、ある程度の高度に辿り着いた両者は進路を変更して、向き合う様にすると、そのまま突撃していく。

 

 

キィンッ!バチチチ……!!

 

ガイア「ドアッ!?」

 

アグル「ドゥワァァァーー!?」

 

 

ぶつかり合った2人の間に閃光が走り、スパークが迸る。ガイアとアグルは体勢を崩して地上へまっ逆さまに落下する。

 

その発生した強力なエネルギーはまた空へと昇っていく…。

 

 

ガイア「…ッ」

 

[ピコン]

 

アグル「…ッ」

 

[テレン]

 

 

ガイアとアグルは満身創痍ながらも起き上がる。その時、胸元に光るライフゲージが青から赤ヘ点滅を始めていた。

それは2人に残された体力はもう僅かしかないことを告げている。

 

 

ガイア「…」

 

アグル「…」

 

 

次で決着を着ける―――。残り少ない体力からそう決めた2人は中央に集まると、アグルは右腕、ガイアは左腕を合わせる。

 

 

アグル「ドゥワッ!フォォォォ……!!」

 

ガイア「グアッ!グアァァァァ……!!」

 

 

 

そして、2人は素早くバックステップで下がると、アグルはフォトンクラッシャー、ガイアはフォトンエッジ……一気にケリをつける為、お互いの得意とする必殺技の体勢に入ったのだった…。

 

 

 

 

 

 




次回予告

勝利するのはガイアか?アグルか?
その時、最大の敵が地球を襲う…!


我夢「大事なものなんて、いくらでもあるじゃないかっ!!」


次回、「ハイスクールG×A」
「決着の日」


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第40話「決着の日」

巨獣 ゾーリム 登場!


時は遡り、ガイアとアグルが丁度戦い始めた頃。石室、アザゼル、そしてサーゼクス達はピースキャリーに乗り、XIGウイングや羽を広げて飛ぶ部下を連れて旧魔王派の悪魔達を蹴散らしていた。

悪魔、天使、堕天使に加えXIGの最新鋭の戦闘機部隊を前に旧魔王派は次々と倒されていった。

 

 

サーゼクス「始まったか…」

 

石室「ああ…」

 

アザゼル「…だな」

 

 

遠くを見据えるサーゼクスに石室とアザゼルは頷く。遠くには巨大化したガイアとアグルが戦う光景があった。

ガイアとアグル―――いずれは争うことは前々からわかってはいたが、戦いの衝撃は遠く離れたここにまで伝わってくる。

 

 

サーゼクス「……(()()()と同じか…)」

 

 

その光景にサーゼクスは苦い顔をしながら心の中でぼそりと呟く。サーゼクスはただ1人、過去に目撃した出来事と今回の戦いを重ね合わせていたのだ。

3000万年前、自分が目撃した衝撃の出来事と…。

 

 

アザゼル「石室、我夢を援護するか?」

 

石室「いいや、今は手を出すな…。これは巨人同士の戦いだ。2人共、ミカエルや部下にも全員待機するように言ってくれ」

 

アザゼル「りょーかいっ」

 

サーゼクス「…ああ」

 

 

石室はそう頼むと、アザゼルとサーゼクスは通信を使って部下や天使側にも待機命令を伝達する。

旧魔王派の悪魔を拘束した一同は空中で戦いの行方を見守る。

ガイアとアグルは一歩も退かぬ互角の戦いを繰り広げており、長引けば長引くほど戦いは加熱していく。 

 

 

「「「?」」」

 

 

石室達は固唾を飲んで見守っていながらふと視線を変えると、ピースキャリーの窓に細い足が乗っかっていることに気付いた。

それを見たアザゼルは代表してピースキャリーから降りて外へ出ると、丁度コックピットがある天井部を見て目を細めた。

 

 

アザゼル「…まさか、お前自身が出張ってくるとはな。オーフィス

 

 

アザゼルが静かに呟くと、その声に気付いた少女は振り返る。そこには、腰まである真っ黒な長髪に胸元をはだけさせた黒いワンピースを着用した小柄な少女だった。

 

しかし、オーフィスという名前に皆は聞き覚えがないだろうか?そう、彼女こそが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の統率者で、『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』の異名を持つドラゴンのオーフィスだ。

 

振り返ったオーフィスはアザゼルをその虚ろな目で見つめながら薄笑いを浮かべ

 

 

オーフィス「アザゼル。久しい」

 

アザゼル「前はジジイの姿か?今度は美少女の姿とは恐れいるな……。何しに来たんだ?」

 

 

アザゼルは警戒しながら慎重に訊ねる。すると、オーフィスは遠くで戦うガイアとアグルへ視線を向け

 

 

オーフィス「見学。ただ、それだけ」

 

アザゼル「ははっ、高みの見物って訳ね……。クルゼレイや部下も俺たちが倒し、俺の教え子によると、シャルバもやられたそうだ。つまり、旧魔王派は全滅って訳だ…」

 

 

そう短く答える彼女にアザゼルは苦笑しながら現状を話すと、オーフィスに光の槍の矛先を首もとに突きつける。

 

 

アザゼル「まあ、ここでボスであるお前を倒せば、一件落着かな?」

 

 

アザゼルはそう言いながら槍の矛先を1ミリ足りとも動かさず突きつける。確かにここでオーフィスを倒せば、『禍の団(カオス・ブリゲード)』は実質的に壊滅となる。だが、オーフィスは人差し指で槍を軽く払うと、

 

 

オーフィス「無理。アザゼルでは我を倒せない」

 

アザゼル「ははっ、ハッキリ言ってくれるね…」

 

 

そう告げられたアザゼルは苦笑いを浮かべ、光の槍を引っ込める。アザゼルも勝てる見込みはないとわかっていた。しかし、この絶好のチャンスを見逃せなかった。

 

 

アザゼル「なら、オーフィス。1つだけ聞かせてくれ。何故テロリスト集団に力を貸した?お前の目的は何なんだ?」

 

 

アザゼルは問う。アザゼルは以前から気になっていたのだ。『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』と言われ、恐れられる程の存在が何故、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力したのかと。

それを聞いたオーフィスは人差し指を空へ向けると、ひと言答える。

 

 

オーフィス「――静寂」

 

アザゼル「……は?静寂?」

 

 

その予想外の返答にアザゼルは耳を疑う。そう反応するのも世界征服とか力を見せしめる為とか、そんな有りがちなものかと思っていたからだ。

もう一度問い返すと、オーフィスは底が見えない黒い瞳でアザゼルを見据え

 

 

オーフィス「…故郷の次元の狭間に戻り、静寂を得たい。ただ、それだけ…」

 

アザゼル「…」

 

 

そう答えるオーフィスにアザゼルは呆気にとられていた。強力な力を持つドラゴンの目的がただ平穏を望む……その意外な答えに驚かざるを得なかった。

オーフィスは言葉を続け

 

 

オーフィス「でも、かの地にはグレートレッドがいる。グレートレッド手強い。だから――」

 

アザゼル「なるほど…。グレートレッドを追い出すのを条件に『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力した訳ね」

 

 

アザゼルが続けて言うと、オーフィスはコクリと頷く。

グレートレッドとはオーフィスと同じ次元の狭間に巣食う最強のドラゴンで、その実力はオーフィスに並ぶ存在である。

 

――確かに禁忌の技法に詳しい『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力すれば、いずれ追い出す方法が見つかるのだろうが…。

アザゼルはそう考えていると、オーフィスは空をおかしそうに見上げ

 

 

オーフィス「…でも、今の空じゃ無理。宇宙から強い力感じる……」

 

アザゼル「宇宙から…強い力…?」

 

ピピッ

 

 

オーフィスの呟きにアザゼルは首を傾げていると、腕に着けてあるXIGナビから通知音が鳴る。

アザゼルはXIGナビを開くと、石室が難しい顔をしていた。

 

 

《石室「アザゼル、聞いてくれ。今さっき、G.U.A.R.D.ヨーロッパのダニエルから連絡があった。今、星が歪む程、空間の位相が捻れているらしい」》

 

アザゼル「何?」

 

《石室「この現象は遥か彼方のどこかの宇宙とこの地球――いや、冥界とが繋がろうとしていることが原因だったんだ」》

 

アザゼル「どういうことだ…?」

 

 

眉をひそめながらアザゼルは訊ねると、石室は語り続ける。

 

 

《石室「コッヴやパズズはワームホールを外気圏に作り、何者かが送ってきた……。だが、今起きようとしていることはその規模に収まらない―――直接巨大な穴に繋がっている」》

 

アザゼル「…っ!?じゃあ、それは根源的破滅招来体そのものが来るということか!?」

 

《石室「いいや、わからない。ダニエルも今、クリシスで解析を急いでいるところだ。ただ、おかしい点はすぐにワームホールが開かないことだ」》

 

アザゼル「…」

 

 

それを聞いたアザゼルは通信を閉じる。

そして、ガイアとアグルの方へ目をやると、2人は空中で激突していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室「何故だ…?何故、この時に…?巨人同士が戦っているこの時に…?」

 

 

石室は疑問に感じていた。いつもならすぐに怪獣を送り出すワームホールは宇宙で開いたままでいることに。地上でガイアとアグルが戦っている今、まさにこの場所、この時に…。

偶然かと思っていた状況だが、この奇妙な重なりあいに石室は疑問に感じていると

 

 

サーゼクス「石室」

 

石室「…っ!」

 

 

サーゼクスに声をかけられ、石室は視線を前へ向ける。

視線の先にはガイアとアグルが腕を重ね、バックステップで下がり、お互い必殺技の体制に入ろうとしていた。

 

 

アグル「ドゥワッ!」

 

ガイア「グアッ!」

 

 

身構える2人の頭部にはエネルギーが集中していき、ガイアは赤色、アグルには青色のしなるエネルギー刃が形成されていく。

 

 

アザゼル「…おいっ!?あれ!」

 

サーゼクス「…っ!?」

 

石室「何っ!?」

 

 

アザゼルがコックピットに戻り、今まさに起ころうとする激突を見守っていると、石室達は2人に近付こうとする小さな人影を見て目を見開いた。

それはどこから現れたのか、イリナが白い天使の翼を羽ばたかせながら急降下で近付こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「グァァァァァ………!!」

 

アグル「フォォォォォ………!!」

 

イリナ「やめてぇぇーーーー!やめてよぉぉーーーー!!」

 

『!?』

 

 

2人が必殺技の体制に入る最中、空を飛びながらイリナは止めようと目に涙を浮かべながら必死に叫ぶ。だが、今近付くことは危険行為そのものだ。

彼女の存在に気付いたリアス達から木場とゼノヴィアが『騎士(ナイト)』のスピードを活かして接近すると、イリナを止める。

 

 

ゼノヴィア「待てっ!危険だっ!」

 

イリナ「離してっ!離してよぉぉーーー!!」

 

 

木場とゼノヴィアが掴んで止めても尚、イリナはジタバタもがいて抵抗する。

イリナに何があったのか…?2人がそう思いながらイリナを掴んだままリアスのもとへ降り立つと、ガイアとアグルはエネルギーを溜め終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーゼクス「これで決着がつく…!」

 

アザゼル「ああ…」

 

 

サーゼクスとアザゼルは固唾を飲んで戦いの行く末を見守っていた。

ただ、石室は1人、今、起きている状況について考えていた。

 

 

石室「ワームホールは開かない……。もし…もし、何かを待っているのだとしたら……?」

 

 

呟きながら、考えを纏める。ワームホール、ガイア、アグル……その要素を纏めると、1つの結論が脳裏に浮かんだ。

 

 

石室「…!そういうことだったのか…!そうだったのか…!」

 

サーゼクス「…!石室、君も気付いたのか!?」

 

 

石室の呟きに反応したサーゼクスと石室、そしてアザゼルは顔を見合わせると頷く。どうやら、3人共同じ結論に至ったようだ。

 

 

石室「ウイング各機、即刻退避!」

 

サーゼクス「魔王軍、速やかに退避!天界軍もだ!」

 

アザゼル「おい、何ですってじゃねぇよ!速く撤退しろって!やべぇことが起きるんだよっ!!」

 

 

そう考えつくなや否や、3人は全部隊に退避命令を下す。それと同時に石室はピースキャリーの操縦桿をきって、ガイアとアグルから離れ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、リアス達は固唾を飲んでこの戦いの結末を見届けていた。ガイアとアグル―――どちらが勝ち、どちらが死ぬのか……その行く末を見守っていたのだが、リアスのXIGナビにアザゼルの通信が入る。

 

 

《アザゼル「おい、リアス!さっさとそこを離れろっ!」》

 

リアス「っ、でも!我夢が――」

 

《アザゼル「死にてぇのか!?今すぐ離れないと取り返しのつかないことになるぞっ!!」》

 

リアス「わ、わかったわ!みんな、退避するわよ!!」

 

 

切羽詰まったアザゼルの様子に圧巻されたリアスは戸惑いつつも承諾すると、眷属達やイリナに撤退するように指示する。

 

 

ガイア「―――ァァァァァァ!!デュアァァァァァーーーーーーーーーッッ!!」

 

アグル「ドゥワァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!」

 

 

その瞬間、ガイアはフォトンエッジ、アグルはフォトンクラッシャーを放つ。

放たれた赤と青の光線は中央でぶつかり合い、激しい閃光と共に突風が吹き荒れる。

 

 

ガイア「―――!?」

 

アグル「―――!?」

 

リアス「伏せてっ!」

 

 

エネルギーがぶつかり合うことで発生した強力なエネルギーの嵐にガイアとアグルは呑み込まれ、吹き荒れる突風に吹き飛ばされないよう、リアス達はその場でしゃがむ。

そのエネルギーの嵐から発する突風は近くにいた彼らだけでなく、遠くで退避していた石室達をも巻き込む。

 

 

アザゼル「何てパワーだっ!?」

 

石室「これを待っていたのか…!」

 

 

石室はそう呟きながら暴れ回る操縦桿を力を込めて抑え、何とか吹き飛ばされないように堪える。

 

2つの巨人が放った膨大なエネルギーはそのまま空へと昇っていく。

その最中、エネルギーがぶつかり合った影響なのか、我夢と藤宮は光に包まれた精神内で出会う。

 

 

藤宮「強くなったんだな、我夢」

 

我夢「…僕が強いんじゃない……やっとわかったんだ。僕は地球の力を借りているんだ。君だってそうだろう?」

 

藤宮「そうだ……地球は慈悲深い母の子ではない。こんな破壊的の力を俺に授けてくれた。俺がしようとしていることは地球が願っていることだ…。それを我夢!お前はっ!!」

 

 

藤宮が指差して糾弾すると、2人の意識は弾ける様に遠のいていった。

 

空を突破した膨大なエネルギーは昇っていき、宇宙にあるワームホールに吸い込まれていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突風が止むと、エネルギーのぶつかり合いの影響で瓦礫が跡形もなくなり、中心には大きなクレーターが出来ていた。

地形が大きく変わったそのクレーターには我夢と藤宮がそれぞれ離れた位置で横たわっていた。

 

 

我夢「う、うう…!藤宮っ…」

 

 

仰向けで横たわっている我夢は苦悶の顔を浮かべながら藤宮の名を呼ぶ。我夢の身体は傷口から溢れ出る血でほぼ真っ赤に染まっており、額からは脂汗が流れ落ちていて、意識も朦朧としていた。

 

 

藤宮「うぅっ…!力を……!俺に……力を…っ!」

 

 

うつ伏せで横たわっている藤宮は目の前に落ちている砂利を拾い、握りしめる…。彼も我夢同様血塗れで、額から溢れる脂汗は地へと落ちていく。

 

その時、藤宮は朦朧としながらも、何人かの人影が自分のもとへやって来ることに気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我夢!/君!/先輩!』

 

 

ウルトラマンが消えた後、我夢達を捜索していたリアス、朱乃、小猫、ギャスパー、アーシア。そして一誠は重傷を負っている我夢を見つけると、目の色を変えて駆け寄る。

 

 

一誠「こいつは酷ぇ…」

 

ギャスパー「あ…ああ…」

 

小猫「…っ」

 

アーシア「我夢さん…」

 

 

血塗れになっている我夢を見て、一誠は顔を歪める。これまで幾多の戦いを繰り広げてきたが、ここまで戦いの後が酷かったのは見たことがない。しかもギャスパー、小猫、アーシアはあまりにも刺激が強かったのか、見てられない状況だ。

 

 

リアス「我夢!大丈夫っ!?」

 

朱乃「我夢君!しっかりしてっ!」

 

 

リアスと朱乃は横について必死に呼び掛ける。朱乃に至っては今にも泣きそうに瞳を潤わせていた。

すると、2人の声が聞こえたのか、我夢は虚ろながらもゆっくりと目を開ける。

 

 

我夢「…朱…乃さん…。ぶちょ…う…。う"ぅ"あ"っ"っ"!?」

 

朱乃「あっ、無理しないで!」

 

リアス「アーシア、小猫!我夢の手当てを!」

 

アーシア「はいっ!」

 

小猫「…はい!」

 

 

我夢は起き上がろうとするが、傷に響き、顔を歪ませる。それを見た朱乃は不安そうながらも優しく制止していると、リアスの

 

 

我夢「待って…くだ…さい…」

 

『!?』

 

 

我夢は力なくぷるぷると震える手を必死に動かして、リアスの手首を掴み、待ったをかける。

その声に動きを止めた皆は、どうしたのかと疑問に思っていると、我夢は虚ろな目でリアスを見つめ

 

 

我夢「ふ…藤…宮を…。藤宮を先に…助けて…くだ…さい……」

 

リアス「我夢っ!?」

 

 

そう懇願した我夢は意識を手放す。皆は心配して近寄るが、息はしていることを知って安堵する。

 

 

リアス「小猫。仙術で応急処置をお願い。私はアーシアを連れて藤宮のもとへ行くわ」

 

小猫「わかりました!」

 

リアス「行くわよ」

 

アーシア「はいっ!」

 

 

そう指示したリアスはアーシアを連れて藤宮のもとへ走っていく。小猫は猫又の力を開放すると、我夢の胸元に手を当てて、さっそく気を流し込む。

仙術には相手に気を流し込むことで、著しく減った生命力を徐々に回復させる効果があるのだ。

 

 

小猫「(先輩!絶対死なないで…!)」

 

 

小猫は気を失っている我夢の顔を見ながら必死に気を流し込む。死ぬかもしれないという不安に押し潰されそうになりながらも、小猫は懸命に仙術を使って治療する。

今度は自分が助ける番だと、強く思って…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、倒れた藤宮に群がるイリナ、木場、ゼノヴィアののもとへリアスと共に着いたアーシアは『神器(セイクリッド・ギア)』の力を使い、藤宮を治療していく。

淡い緑色の光に藤宮が包まれて治療されていく中、イリナは涙ぐみながら共に見守るゼノヴィアの胸元に寄りかかっていた。

 

 

イリナ「……うっ、ううっ……藤宮君っ…」

 

 

せっかく彼と心を通わすことが出来たのに、こんな結果になってしまったイリナは嘆き悲しむ。そんなイリナのすすり泣く声をゼノヴィア達は静かに聞くしかなかった。

 

その後、石室達が到着した。リアス達が事の顛末を告げる中、我夢は魔王領の病院へ。藤宮は堕天使の保有する医療施設へ運ばれることになった。

ディオドラはというと、その場で堕天使の保有する永久凍土の牢獄、コキュートスへの収監が決定した。

 

執着が怒りを呼び、憎しみが悲しみを呼んだこの一連の出来事はこうして幕を閉じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その惨劇を悲しむ者もいれば、逆に楽しむ者もいた。

リアス達から遠く離れた場所では、ヴァーリ、美猴の姿があった。

 

 

ヴァーリ「ははははっ!!いいじゃないかっ!素晴らしいっ!!これだ、この力を求めていたんだっ!!」

 

 

一部始終を見ていたヴァーリは愉快に笑う。ぶつかり合うガイアとアグルの死闘の凄まじさの前にヴァーリはすっかり虜になっていた。

そんな彼を美猴はジト目で見据えていた。

 

 

美猴「なあ、ヴァーリ?早く帰ろうぜぇ?早いとこオーフィスを回収して、アーサーの奴を呼んで帰ろうや」

 

ヴァーリ「ん?ああ、悪いな。今、連絡する」

 

 

ねだる美猴にヴァーリは頷くと、小型の水晶型の連絡機を取り出して、水晶に映る人物に事情を話すと、ヴァーリ達の近くの空間に裂け目ができる。

 

そして、その空間の裂け目からエクスカリバーを手に眼鏡をかけた紳士風の男、アーサー・ペンドラゴンが現れる。

アーサーは深くため息をつくと、呆れた様にヴァーリを見据え

 

 

アーサー「ヴァーリ。随分、帰りの連絡が遅れましたね?もう少し連絡が遅れていましたら、オーフィスを連れ出して好き勝手に出歩いていることがバレていましたよ?」

 

ヴァーリ「仕方ないだろう?オーフィスが出たがっていたのだから」

 

アーサー「はぁ…。あなたがオーフィスのことを気にかけているのはわかりますが、これ以上好き勝手に行動するのは控えて下さい。私達の立ち位置が危うくなりかねますから…」

 

 

ヴァーリの言い分を理解しつつも、アーサーを嘆息しながら指摘する。アーサーもこういった気配りができ、向上心の塊である彼を気に入って行動を共にしているが、この破天荒な一面はどうやっても頭を悩ませるものだ。

 

アーサーが呆れていると、ヴァーリは話を切り替える様にすっかりさら地となったゲームエリアを見渡すと、

 

 

ヴァーリ「…まあ、見学は無駄じゃなかった。おかげで新しい“目標”が出来たよ」

 

アーサー「目標…?」

 

美猴「目標ってお前。この戦いを見て何の目標を?」

 

 

アーサーと美猴はその言葉の意味を理解できず首を傾げていると、ヴァーリは口角をあげ、

 

 

ヴァーリ「ああ、立派な目標さ。古代のウルトラマンの力をね…

 

 

そう言って不敵な笑みを浮かべるヴァーリ。掲げた目標が指す意味とは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後。宇宙に佇む巨大なワームホールは2人のウルトラマンから放出した膨大なエネルギーを得て、稲妻を迸らせながら、その規模を広げていた。

 

この現象はエリアルベースのコマンドルームにまで届いていた。

 

 

「ワームゾーン!400%拡大!」

 

「層褶曲係数180%!何が来るのよ!?」

 

石室「…」

 

 

どんどん大きくなっていくワームホールの現状にオペレーター達は動揺を隠せないでいた。

石室は迫り来る危機に苦い顔を浮かべていると、ダニエルからの緊急の通信がきた。

すぐに中央のモニターに映ったダニエルの顔は危機迫ったものだった。

 

 

石室「何があった?」

 

《ダニエル「全ての軌道衛星及び迎撃システムがいきなり、暴走したクリシスによって乗っ取られました」》

 

アザゼル「何っ…!?」

 

 

その報告を聞いた石室達は目を見開く。この最悪な事態に頼みの綱である光量子コンピューターが突如、暴走したからだ。

ダニエルは話し続け

 

 

《ダニエル「今、仲間が必死にネットワークからクリシスを遮断する試みをしています」》

 

石室「光量子コンピューターが…?」

 

《ダニエル「はい。今まで1度も暴走なんて起こったことがないですが……。奇妙なことにワームホールは地球の外気圏に勢いを伸ばしていますが、この地上に現れる気配がしないのです」》

 

アザゼル「何っ!?じゃあ、どこへ向かおうとしてるんだ?」

 

ピピッ!

 

 

アザゼルがそう訊ねた瞬間、アザゼルの腰に着けてあるW.I.T.から着信音が鳴る。

アザゼルはW.I.T.を開くと、

 

 

《「総督!大変です!冥界にワームホールがっ!!」》

 

アザゼル「!?」

 

石室「…何だと?」

 

 

アザゼルの部下の報告に石室達は一瞬耳を疑った。ワームホールはてっきり人間界にやってくるものだと思っていたが、まさか冥界に来るとは予想だにしなかった。

 

 

アザゼル「んで、冥界のどこに現れた?」

 

《「冥界の首都、リリスですっ!」》

 

『っ!?』

 

アザゼル「っ、最悪だな…」

 

 

ワームホールの現在地にアザゼルは毒つく。リリスは首都とあって人口も多く、未知の敵の前に避難誘導は難しいものだろう。しかも、リリスにある病院には現在、我夢が入院している。

 

このままだとまずい…。かつてない程の危機に石室は冷静に判断すると、アザゼルにこう頼む。

 

 

石室「アザゼル。即刻、リアスとソーナ達をコマンドルームに召集してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、首都リリスでは、いつものように人々が生活をしていた。だが、空はワームホールによって暗雲に包まれ、ゴロゴロを稲光りを起こしていた。

 

 

我夢「…はっ」

 

 

その首都の一角にあるセラフォルー記念病院の1室では、ベッドで横になっていた我夢が目を覚ましていた。

体を見ると病人服を着ており、部屋中真っ白い壁や天井であることを見て、病院に運ばれたのだと我夢は瞬時に理解した。

 

とにかく動こう…。我夢はこのままじっとしてても仕方ないと思い、ベッドから出ようと体を動かすが、柔らかく、そして暖かい物体に足が当たる。

 

 

我夢「?」

 

小猫「…すぅ…すぅ…」

 

 

疑問に思った我夢はかけ布団をめくると、そこには体を丸くした小猫が猫又状態のまま、すやすやと寝息を立てながら眠っていた。

 

どうして添い寝を…?と我夢が思っていると、病室のドアが開く。

我夢がドアの方へ視線を向けると、にこやかな笑みを浮かべたサーゼクスが立っていた。

 

 

サーゼクス「やあ、我夢君。目覚めたようだね」

 

我夢「サーゼクス様…」

 

サーゼクス「見たところ、元気そうで何よりだ…。その子は君が搬送されてからも付きっきりで看病してたんだよ?」

 

我夢「小猫が?」

 

 

サーゼクスにそう言われた我夢はもう1度小猫の方へ視線を向ける。看病――猫又の状態のまま寝ていることから、仙術で気を流し込みながら看病していたことを我夢は察する。

 

 

我夢「(…心配かけさせたんだな)」

 

 

我夢は小猫の寝顔を見ながら、彼女に大変な思いをさせたんだと反省する。小猫はグレモリー眷属の中で一番仲間思いが厚い。それ故、大切な仲間が危機に会うと、ひどく精神に負担をかけてしまうのだ。

 

 

我夢「(ありがとう…)」

 

 

我夢は心の中で感謝しながら、そっとかけ布団をかけ直してあげる。

 

 

サーゼクス「起きたばかりで悪いが、君に伝えたいことがある。彼女の眠りを妨げる訳にはいかないから、廊下に出て話さないか?」

 

我夢「あっ、はい」

 

 

促された我夢はそう返事すると、小猫を起こさない様にそっとベッドを抜け出し、近くの棚にかけてあった駒王学園の制服の上着を着て、サーゼクスと共に廊下へと出る。

 

ドアを閉め、廊下に出るなり、突然我夢はサーゼクスに頭を下げる。

 

 

サーゼクス「…?」

 

我夢「すみません…僕のせいで…。憎しみとか…怒りとか……そんな思いのままでウルトラマンが戦っちゃいけないのに……。そんなこと、わかっていた筈なのに……どうして……どうしてウルトラマン同士が戦うことなんてに……」

 

 

頭を下げながら懺悔の言葉を呟く我夢。リアスや仲間達から制止させたのにも関わらず、突き放してアグルと戦い、その結果多大な迷惑をかけてしまった。

顔を曇らせる我夢にサーゼクスは肩をポンと優しく当てると、顔を上げさせると、

 

 

サーゼクス「いや、もう過ぎたことだ。君はウルトラマンである前に1人の人だ……そのことを忘れてはいけない」

 

我夢「…っ」

 

 

労りの言葉をかけると、我夢はハッと気が付く。ウルトラマンとして戦う中で、力と存在の重さに我夢は自己を見失っていたことを。

サーゼクスは「それと…」と付け加えると

 

 

サーゼクス「2人の巨人の対決――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

我夢「!?」

 

 

その言葉を聞き、我夢は目を見開く。

意図して望んでいた者…?我夢が疑問で眉間にしわを寄せると、サーゼクスは話を続け

 

 

サーゼクス「2人のウルトラマンが激突した時に生じた膨大なエネルギー―――それを待ち望んでいた存在がどこかへいた…。その首謀者がここに映っている」

 

我夢「………そんなっ!?」

 

 

サーゼクスから受け取ったタブレットに映る映像を見て、我夢は絶句する。意外なもの…というよりも信じられないといった様子だった。

 

 

サーゼクス「もうすぐそれがここ、首都リリスへ降りてくる。住民の避難はほぼ完了したから、君達も早く避難するんだ」

 

我夢「…はい」

 

 

サーゼクスの言葉に我夢は渋々頷く。傷は治ったが、アグルとの戦いでエネルギーを消耗しきっており、今出ても足手まといになるだけだとわかっていたからだ。

 

 

我夢「サーゼクス様は?」

 

サーゼクス「私はその脅威から首都を守る為の結界を張る準備にいかねばならない。敵が来るのは約30分後だ…。その間に避難していてくれ」

 

 

サーゼクスはそう言うと、そのまま立ち去ろうと我夢に背を向けて歩き出すが、何か思い出したのか「あっ」と声をあげて振り返ると、

 

 

サーゼクス「リアスが言ってたよ。『早く体力を戻しなさい。お仕置きをそれからよ』っとね」

 

我夢「はっ、はい!」

 

 

リアスのジョーク混じりの伝言に我夢は苦笑しつつも答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うわあっ!?」」

 

 

その頃、堕天使の保有する医療施設では警備の堕天使を次々と吹き飛ばし、藤宮が脱走していた。

 

 

藤宮「……我夢っ!」

 

 

藤宮は憎しげに名を呟きながら、外へと歩いていく。目に執念という名の炎を滾らせて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、エリアルベースのコマンドルームではXIGの隊員服を着たリアス、ソーナ、そして我夢、小猫除く彼らの眷属が一同に集まっていた。

ちなみにイリナは藤宮のことが余程ショックだったのか、今は自室で塞ぎこんでいて、この場にいない。

 

 

石室「ワームゾーンの中はどうなっているのか……探ろうとしたクリシスは暴走した」

 

ソーナ「天界の捜索隊は?」

 

石室「いや、ワームホールの力が予想以上に凄まじく、調査しようにも出来ない状況だ」

 

一誠「じゃあ、どういうバケモンが現れんのかわからねぇって訳ですか?」

 

リアス「敵がわからなけば、戦略は組めない……私達の火力で倒しきる可能性は少ないわね……」

 

 

敵の全体が把握できない現状に石室達は困った様に唸る。すると、

 

 

匙「コマンダー。皆で一気に迎え撃つのではなく、まず俺を先行させていただけませんか?」

 

 

匙が手を挙げ、我先にと出撃を申し出る。敵の全体を把握できないのであれば、誰か1人先陣をきれば、相手の方から全貌を露にするかもしれないが、突然ソーナは納得いかなかった。

 

 

ソーナ「サジっ!単独で突っ込むつもりですか!?そんなこと、私が許しませんっ!」

 

匙「ですが、会長――!」

 

石室「…残念だが匙、ソーナの言う通りだ。君1人を易々と危険に晒す訳にはいかない」

 

匙「…っ、わかりました」

 

 

ソーナに続き、石室に説得された匙は渋々大人しく引き下がる。

 

 

仁村「…」

 

 

そんな匙の横顔を仁村は心配そうに見つめる。夏のレーティングゲームの時からそうだが、ここ最近、匙はやたらと死に急いでいる様に見受けられるのだ。

 

張りつめた緊張の中で石室は皆の顔を見渡すと、

 

 

石室「これまで戦ってきた相手はいずれも常識を越えた存在だった…。今、降りてこようとするものは何であれ……我々が後に退く訳にはいかないっ。君達、若い者の力が最も必要とされている時だ」

 

 

そう言って立ち上がると、皆も合わせて勢いよく立ち上がる。

 

 

アザゼル「ライトニング、トルネイドは空中で迎撃。俺とソーナはピースキャリーに乗り前線で指揮。その他は地上に回り、リアスはそこの指揮を頼む」

 

「「了解!」」

 

石室「全チーム、get glory」

 

 

石室の掛け声に皆は敬礼すると、次々とコマンドルームを飛び出していく。

 

 

匙「さて、行くか…」

 

 

匙も皆に続いて気合いをいれながらコマンドルームを出ようとすると、

 

 

仁村「元士郎先輩」

 

匙「?」

 

 

仁村に呼び止められ、匙は何だろうと足を止めて振り向く。

仁村は匙を見据えると、顔を曇らせ

 

 

仁村「どうして?どうして命を無駄にするようなことばかりやるんです?あの夏から先輩は変わりました……前なら絶対にしなかったのに…」

 

 

そう訊ねる。本当なら後で聞こうと思ったが、今、聞きたい…否、聞かなければならないと思ったからだ。

そんな彼女に匙はニッと笑みを浮かべ

 

 

匙「ははっ!心配症だな、仁村はぁ~!俺はそう命を安売りしているつもりはないって!」

 

仁村「ですが…」

 

 

そう笑う匙を仁村は納得いかず、再度問いかけようとするが

 

 

四之宮「匙?行くぞー」

 

匙「あ、はい。すまねぇ、この話は後で頼むわ」

 

仁村「…はい」

 

 

現れた四之宮に呼ばれ、匙は彼と共にコマンドルームを出ていった。

仁村はこれ以上の追及ができず、不安は消えないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝ている小猫を避難誘導部隊に預け、我夢は1人リリスにある高台に残った。

活気溢れているだろう町は人々が避難した為、人っ子1人居らず、すっかり疑似大陽が昇る時刻なのに、空はすっかり暗雲に閉ざされている。

 

 

我夢「…っ!?」

 

 

我夢はその上空にある巨大なワームホールを見て、驚愕する。ワームホールから一本筋の青いクリスタルがついた突起物が現れたかと思うと、それは角であり、どんどんとその姿を現す。

 

 

ゾーリム「ヴォォォォ…!」

 

 

それは青いクリスタルの角がついた巨大な竜の頭が現れる。これこそが破滅招来体が冥界を滅ぼす為に遣わされた巨獣『ゾーリム』である。

ゾーリムは未だ頭しか現れず、長い首はまだワームゾーンの中へ埋まっているが、頭だけでも充分巨大なのにまだ全身が埋まっていると知り、我夢は戦慄する。

 

 

藤宮「我夢…」

 

我夢「…っ!」

 

 

そこへ声が聞こえ、我夢が振り返ると、藤宮が立っていた。どうしてここがわかったのか疑問があるが、今はそれどころではない。

 

 

藤宮「まだ決着はついていないっ!」

 

 

そう言って藤宮はアグレイターを下に下ろし、両脇のブレードを展開させる。あれだけ傷付いたにも関わらず、未だ戦意を失っていない。

そんな彼に我夢は待ったをかける。

 

 

我夢「まだわかんないのか?」

 

藤宮「何が?」

 

我夢「アイツは…僕達のパワーを使って、ここまでやって来たんだ」

 

藤宮「何だって…?」

 

 

我夢の言葉を聞いた藤宮は疑問に思うと、変身するのをやめ、耳を傾ける。

我夢はワームゾーンからゆっくりと出ようとしているゾーリムへ一旦、見上げてから藤宮を見据え

 

 

我夢「僕達…いや、()()()()()()()()()のを……アイツはずっと待っていたんだ」

 

藤宮「!?」

 

 

そう言われた藤宮は驚愕しながら空に佇むゾーリムに目を向ける。どちらか戦うのを待っていた…?そんな疑問が脳裏に浮かんでいると、我夢は神妙な面持ちで

 

 

我夢「今、君が設計した光量子コンピューターが……暴走している…」

 

藤宮「クリシスが暴走……!?そんな馬鹿なっ!」

 

 

我夢の言葉に藤宮は訝しげに呟く。クリシスは当時の最高技術を結集して作った最高傑作。暴走するなんてことは有り得ず、開発者である自分がそれをよく知っている。

 

怪訝な顔を浮かべる彼に我夢は手首からXIGナビを外し、数回横のスイッチを操作してから、見せるように藤宮の前へかざす。

 

 

藤宮「…っ!?」

 

 

藤宮は覗くようにXIGナビを見ると、その画面に映る映像を見て驚愕する。

そこには紫色の電撃走るクリシスが狂ったように光を放ち続ける―――暴走した姿が移っていた。

 

 

藤宮「……有り得ない!」

 

我夢「この光のパルスは……アイツとシンクロしているんだ」

 

 

そう説明した我夢につられた藤宮は空に佇み、咆哮をあげているゾーリムを見上げる。天才児である我夢、藤宮にはゾーリムの首もとにあるワームゾーンから迸る電撃を見て、先程のクリシスと同じ波長を放っていることが一目でわかった。

 

藤宮はこの動かぬ証拠に狼狽えながら、とぼとぼとした足取りで我夢の横を通りすぎ、数歩前へ出る。

 

 

藤宮「どういうことだ!?クリシスが何故、破滅招来体とシンクロを!?」

 

我夢「…多分、システムの奥深いところに何かが紛れていたんだ……。君のせいじゃない…」

 

 

藤宮は昔、クリシスが人類排除こそが地球が助かる方法と結論付けた日のことを思い出す。未知の脅威を回避する為、稲森、ダニエルら共に奔走した日々のことも…。

 

 

藤宮「じゃあ…!じゃあ、俺の得た結論はっ!」

 

我夢「根源的な…破滅を持たらす者の意思に書き換えられていたんだ。両親を悪魔に殺された君が、奴らの思い通りになる様に…」

 

 

我夢から出た結論に藤宮は体験した出来事全てが頭の中を駆け回る。

両親の死、異種族への憎しみ、人類への失望、クリシスの結論、稲森の死――――。今まで地球を守る為に起こした行動理念そのもの全てが、破滅招来体の掌の上で転がされていた?

導き出した事実、結論に藤宮は目を見開き、両手で頭を抱えながら身震いを起こし

 

 

藤宮「わ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーーーーーっ!!!」

 

 

絶叫する。暗雲に包まれ、稲妻によってチカチカと照らされる地上で、ただ叫ぶ。

その絶望の叫びを我夢は悲痛な顔で眺めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度、その頃。リアス達地上部隊とソーナ率いる空戦部隊は首都リリスの入口に到着した。

首都リリス自体はサーゼクスらによって強固な結界が張られており、リアス達は首都を守る形となっている。

 

 

匙「まだ頭部が出ているだけなのに…!?」

 

椿姫「なんて……規模…!?」

 

 

空中で各戦闘機に乗っている匙達はゾーリムの迫力に言葉を失っていた。それはそうだろう、ただでさえ巨大なのにこれはまだ全長のたった一部なのだから。

その迫力は地上にいるリアス達にも伝わっていた。

 

 

朱乃「部長、これまでで一番苦しい戦いになりそうですわね…」

 

リアス「ええ…」

 

 

朱乃の呟きにリアスは苦い顔で頷く。今まで出会った中でドラゴンのタンニーン、更に巨大なガイアやダイナが小さく見える程に巨大だ。

 

すると、

 

 

タンニーン「俺も着たぞ」

 

一誠「タンニーンのおっさん!」

 

 

そこへ翼を羽ばたかせ、タンニーンが颯爽と地上へ降り立つ。

タンニーンの登場に特に一誠は子供がはしゃぐ様に喜んでいると、

 

 

小猫「……遅れてすみません」

 

リアス「小猫!」

 

 

タンニーンの背中から小猫がひょっこり顔を出すと、地上へ降り立つ。到着した彼らのもとへ皆は集まる。

 

 

朱乃「来てくれて良かったです。我夢君は?」

 

小猫「…我夢先輩なら平気です。避難したと誘導部隊の方が言ってましたから。……今回の戦いに私がお役に立てるかわかりませんが」

 

木場「…いや、こうしているだけでも心強いよ」

 

 

木場は微笑みつつ、ポンポンと小猫の肩を叩きながらフォローの言葉をかける。2人だけかもしれないが、こうして仲間が増えるだけでも心強いのは変わらないものだ。

 

 

一誠「来てくれたんだな!おっさん!」

 

タンニーン「ああ、冥界の危機だと言うからな…。しかし、アレが相手となると、かなり厳しいものだな…」

 

 

タンニーンは空に佇むゾーリムを見上げ、珍しく弱音を吐く。ドラゴンの中でも特に強い『六大龍王』の一角であった彼でさえも、ゾーリムの恐ろしさが伝わってくるのだろう。

 

そんな会話をしていると、アザゼルから通信が入る。

 

 

《アザゼル「お前ら、準備は出来ているな?いくぞ!3…2…1…攻撃開始っ!」》

 

リアス「攻撃開始っ!」

 

ソーナ「攻撃開始っ!」

 

 

その合図と共にリアス達は地上と空中からゾーリムへ一斉攻撃を放つ。空中からはファイターとイーグル、ピースキャリー、地上からはリアス達が魔力や斬撃を飛ばして攻撃していくが…

 

 

ゾーリム「ヴォォォォ…」

 

 

その猛攻にもゾーリムには傷1つ付かず、依然として佇んでいた。タンニーンのブレスやリアスの滅びの魔力等といった強力な攻撃を前にしてもだ。

 

 

リアス「全く応えてない…!」

 

梶尾「くそぉ!あんなデカイ奴、撃つだけ無駄だ…!」

 

ゾーリム「ヴォォォォ…!」

 

 

この現状に苦虫を噛み締めるように苦い顔をする一同にゾーリムは何千、何百とある舌をチロチロさせている口を開くと、火炎を吐く。

空中にいるソーナ達はXIGの最新鋭の技術を盛り込んだ戦闘機に乗っているので、辛うじて回避できたが、

 

 

ドォォォンッ!

 

『きゃっ!』

 

『うわっ!』

 

 

地上にいたリアスはその火炎を必死に避けるが、爆発の衝撃で吹き飛ばされる。火炎の威力は凄まじく、後方にあるサーゼクスやミカエル等、アザゼルを除いた各勢力の実力者達が都市中に張った結界は亀裂が入っていた。

 

 

リアス「うぅ…!くっ…!」

 

一誠「(くそっ!俺に変身できるエネルギーが残っていればっ!)」

 

 

一誠は地を這いつくばりながら悔しげに歯を噛み締める。ジャグラーとの戦いの影響で一誠はダイナへ充分変身できる程のエネルギーが回復しきっていなかったのだ。

 

リアス達はたった1度の攻撃で、不利な状況に追い込まれてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、高台にいる我夢と藤宮は――

 

 

藤宮「何の為にウルトラマンになったのか…!?地球の意思じゃなかったのか…!?」

 

 

疑心暗鬼に陥った藤宮は震えた声で呟く。

信じていたものに裏切られた藤宮は絶望し、アグルの力の存在意義を見失っていた。

そんな彼に我夢は

 

 

我夢「…わかんない。わかんないけど行くしかないじゃないかっ!戦うしかないじゃないかっ!!大事なものを……守る為に…っ!!」

 

 

そう答えると、我夢は変身しようと右手にはめたエスプレンダーを前へ突き出そうとするが、その手を藤宮は止める。

 

 

藤宮「いくらウルトラマンの力を借りても、その体でどれだけ戦える?」

 

我夢「…っ」

 

 

藤宮の言葉に我夢は顔をしかめる。確かに今の自分は傷はすっかり治ってはいるが、エネルギーは充分に回復しきれておらず、ウルトラマンになれることすら怪しい。

なれたとしても、精々1分にも満たない時間でしか戦えないだろう。

しかし、仲間が苦しんでいるのを黙って見てはいられない。我夢はその板挟みで悩んでいると

 

 

キィンッ!

 

我夢「?」

 

 

手を離した藤宮はアグレイターを肘を曲げて掲げると、我夢の手前へ青い球体の光―――アグルの光を差し出す。

突然の行動に我夢は疑問に思っていると、藤宮は

 

 

藤宮「アグルの力を一緒にしろ……少しはマシに戦える」

 

我夢「藤宮…」

 

 

――アグルの力を一緒に。その言葉、行動が指すことは

戦意喪失したということだ。

唖然とする我夢に藤宮は虚ろな目で見据えながら力なく笑みを浮かべ

 

 

藤宮「信じていたものに……大事なものに裏切られた気持ちがお前にはわかるか?」

 

我夢「…っ」

 

藤宮「俺にはもう、守るものなんて何もない……」

 

 

そう言って踵を返して歩き出す藤宮の後ろ姿を我夢は心痛な面持ちで見つめていると、藤宮は

 

 

藤宮「光をとれっ!我夢!!」

 

ドォォォンッ!

 

我夢「っ!?」

 

 

そう言い残した瞬間、ゾーリムの火炎が藤宮へ降り注ぐ。目を丸くした我夢だが、炎が静まり、藤宮のいた場所を見ると、藤宮の姿はもうそこにはなかった。

 

 

我夢「大事なものなんて、いくらでもあるじゃないかっ!!

 

 

大事なものなんてない――そう答えた藤宮へ返すように我夢は叫ぶと、エスプレンダーを前へかざし、目の前にあるアグルの光を収納する。

そして、1度エスプレンダーを見つめ、右肩に当て

 

 

我夢「ガイアァァァァーーーーーーーーーッッ!!

 

 

その掛け声と共に前へ突き出すと、エスプレンダーから赤と青の閃光が溢れる。その2色の光に包まれたガイアはウルトラマンガイアへと変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「くそっ…!」

 

木場「万事休すか…」

 

 

ゾーリムの力を前に手も足も出せず、リアス達は膝をついていた。そんな彼らをゾーリムは嘲笑うかのように見下ろしていた。

そんな絶望的な状況に陥っていると、

 

 

キィンッッ!!

 

『!?』

 

 

立ち上る青い光の柱が彼らの前へ現れる。その光にリアス達はおろか、ゾーリムも警戒していると、光が晴れ、1体の巨人が姿を現した。その名はウルトラマンガイアだ!

 

 

ガイア「…?」

 

 

しかし、ガイアは自分の変化に気付き、手や胸元をまじまじと見つめる。胸元のガイアブレスターの内側は赤から黒くなっており、アグルを象徴する青い光が一瞬だけ仄かに灯る。

そして、以前よりも遥かに越える自身の力に驚いていた。

 

ガイアはアグルの力を得ることで、『ウルトラマンガイアV2(ブイツー)』へパワーアップしたのだ!

 

 

朱乃「我夢君…!良かった!」

 

ゼノヴィア「来てくれたかっ!」

 

リアス「ふふっ」

 

一誠「おせぇーよ!全くよぉ!」

 

ギャスパー「無事で良かったですぅぅーーー!!」

 

小猫「先輩っ…」

 

アーシア「ああ…」

 

 

ガイアの登場にリアス達は一斉に希望が沸き上がる。

朱乃、ギャスパーは喜びで目尻に涙を浮かべ、リアス、一誠は嬉しそうに笑い、小猫、アーシアは静かに微笑む。

 

 

四之宮「やっと主役が来たか…」

 

 

ガイアの登場を空から見ていた四之宮はボソリと呟くと、ニヤリと口角をあげる。それは仲間が来てくれた喜びというよりも、待ち望んでいたものが来たという喜びに近かった。

 

 

ゾーリム「ヴォォォォ…」

 

ガイア「ジュアッ!!」

 

 

ガイアは上空からこちらを見下ろすゾーリムを見据えると、地面を蹴ってゾーリムのもとへ飛んで行く。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァァ……ァァァァーーーッ!!」

 

 

ガイアは接近しながら素早く立てた左腕に右腕を添えてL字に構えてから変形させると、クァンタムストリームをゾーリムへ放つ。

赤色の光線はゾーリムの角を直撃するが…

 

 

ガイア「ッ!?」

 

 

ゾーリムには傷1つ付かず、苦しむどころか依然変わらずピンピンしている。ガイアは動揺で光線を打つ手をやめていると、ゾーリムは口から火炎を吐き出す。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

ガイアは横へ逸れて回避するが、間髪入れず放たれた2発目の火炎はかわしきれず、直撃した。

 

 

ガイア「ドアァァァァァーーーーー!!」

 

 

ガイアはのけ反り回りながら地上へと落ちていく。

その彼と入れ替わる様に梶尾達チームライトニングが乗ったファイター3機がゾーリムのもとへ近付く。

 

梶尾はふと、ゾーリムが飛び出しているワームホールの入口を見て、何かに気付いた。

 

 

梶尾「…っ!?そうか!あの螺旋の渦に軌道を沿わせれば…!会長っ!」

 

《ソーナ「ええ。空戦部隊は螺旋上にワームホールに入り、全ミサイルでワームゾーンへ攻撃。リアス、地上部隊も合わせて一斉攻撃を」》

 

リアス「了解。開けたドアは閉めるってことね…」

 

 

敵の弱点を見つけたリアス達は不敵な笑みを浮かべる。

この通信から、リアス達の反撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上へ叩き落とされたガイアは痛みを堪えながら立ち上がる。

 

 

ゾーリム「ヴァァォォォォ…!!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

ゾーリムは立ち上がって間もないガイアに火炎を連射する。ガイアは前や横へ転がりながら全て避けると、奮い立たせる様に拳を振るって立ち上がり

 

 

ガイア「アグルの力を貰ったんだ…!!このまま、終われるかっ!!」

 

 

そう鼓舞したガイアは両腕を天高くあげると、両手の間に赤と青に輝く光が現れる。

そのまま胸の前で合掌すると、ガイアは目映いばかりの赤い光に包まれる。

そして、一旦左右に両腕を広げてから両腕を内側へ回し始める…。

 

 

小猫「ガイアが…っ!ガイアが変わるっ!」

 

『!?』

 

 

驚きの声をもらす小猫を筆頭にリアス達は変化していくガイアに驚愕する。

赤い光に包まれたガイアが拳を振るい、光を振り払うと、そこには体に赤と青のラインが入った銀色の戦士が勇敢な出で立ちで佇んでいた。

 

ガイアを象徴する赤の面積が広くなり、両肩にはアグルを彷彿させる肩プロテクター、両腕と両足には青のラインが入っており、体格も筋骨粒々で強く逞しいものになっている。

大地と海。地球から授かった2つの力を開放させたガイア最強の形態―――『スプリームヴァージョン』だ!

 

 

ガイア「グアッ!!」

 

 

ガイアは深く腰を下ろしながら身構え、ゾーリムを見上げる。そこには3機のファイターと3機に分裂したイーグルがゾーリムの攻撃を避けつつ、ワームホールの軌道に沿いながら、ゾーリムの首もとへ向かっていた。

 

 

梶尾「3…2…1…Fire!」

 

 

梶尾の合図に合わせて、全戦闘機は一斉に全てのミサイルをワームゾーンに射出する。

 

 

梶尾「離脱っ!」

 

ゾーリム「ヴォォォォ…!?」

 

 

ミサイルを撃ち込んだ後、戦闘機はすぐに退く。

首もとでミサイルが爆発し、ゾーリムは目を前後させて苦しみの叫びをあげる。更に

 

 

リアス「くらいなさいっ!」

 

朱乃「雷よっ!」

 

ゾーリム「ヴァァォォォォ…!!」

 

 

地上にいるリアス達が追い討ちをかける様に魔力や斬撃での一斉攻撃がワームゾーンに直撃し、ゾーリムは長い首を上下に動かし、大きく口を開けて苦悶の叫びをあげる。

 

その隙に空を真っ直ぐ飛ぶガイアが大きく開いたゾーリムの口から体内へ侵入する。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァァ……!!」

 

 

体内へ侵入したガイアは平手にした右腕を垂直、平手にして平行にした左腕を胸に当てると、クロールの様に大きく体を反らしながら円を描き、胸の前で合掌。

 

 

ガイア「デュアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

そのまま右手を下へスライドさせて生まれた隙間から赤、青、白が混ざりあった極大の光線を発射する。

これぞ、大地と海の力を最大限に開放したスプリームヴァージョンの最強必殺光線『フォトンストリーム』だ!!

 

 

ゾーリム「ヴァァォォォォ…!?」

 

ドガガガガガガガガガガガァァァァァーーーーーン!!

 

 

体内から攻撃されたゾーリムはフォトンストリームの威力に耐えきれず、目を激しく前後に動かすと、木っ端微塵に爆発した。

 

 

ガイア「…」

 

[ピコン]

 

 

爆風と肉片が舞う中をライフゲージを赤に点滅させたガイアが悠然と飛行しながら現れる。

ガイアの活躍によってワームホールとゾーリムは消滅したことによって冥界は元の青空を取り戻す。

 

こうして、最大の危機から冥界は救われたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「行けーー!イッセーー!アーシア!」

 

リアス「1番取りなさい!」

 

アザゼル「負けたら承知しねぇぞっ!」

 

 

それから1週間後。駒王学園では体育祭が執り行われていた。

待ちに待った体育祭にグラウンドは見物者が溢れかえっており、先生や生徒はいつもより気合いが入っている。

プログラムは進み、現在は一誠とアーシアが出場する二人三脚が行われていた。

 

 

パンッ!

 

 

一誠はアーシアと共に走り、ゴールテープを切ると、空砲の音が鳴り響く。2人は抜群のコンビネーションで快走し、見事1位を取ったのである。

 

 

一誠「よっしゃぁぁぁーーーー!!やった!アーシア、やったぞ!」

 

アーシア「はい!やりました、イッセーさんっ!」

 

 

一誠とアーシアは手を取り合ってピョンピョンと飛び跳ねて喜び合う。1位を取れたのも実力だけでなく、母や親友、仲間からの声援が後押ししたからである。

 

 

一誠「おわっと!?」

 

 

だが、跳び跳ねる際に足は繋がれたままということを一誠とアーシアは忘れていた。着地した際、一誠は体制を崩すと、足を固定していた紐が外れ尻餅をつく。

 

 

アーシア「大丈夫ですか?」

 

一誠「ああ、ちょっとはしゃぎすぎちまった」

 

 

心配そうに顔を覗くアーシアに一誠はそう答えながら痛む尻に手を当てながら立ち上がる。

すると、そこへリアスが現れ

 

 

リアス「2人共、よく頑張ったわ。おめでとう!」

 

一誠「ありがとうございますっ!」

 

リアス「でも、お尻が痛んだままじゃ、今後のプログラムに響くわ。アーシア、体育館裏なら人気もないし、回復させてあげなさい」

 

アーシア「は、はい!」

 

 

そう言われたアーシアは一誠の手を引くと、体育館裏の方へ歩き出す。アーシアが横切る際、リアスは

 

 

リアス「頑張りなさい」

 

アーシア「っ!」

 

 

と呟いてウィンクされると、アーシアは頬を赤く染める。一誠が何だろうと疑問に思いつつも、2人は体育館裏へと移動した。

 

体育館裏に着いた一誠はさっそくアーシアに回復してもらっていた。淡い緑色の光に照らされ、痛みが安らいでいく感覚を一誠は実感する。

治療は数秒経たないうちに終わり、一誠は尻から伝わる痛みはすっかりなくなっていた。

 

 

一誠「ありがとな、アーシア」

 

アーシア「いえ…」

 

 

感謝され照れくさそうに笑うアーシア。この数週間あまり、ディオドラのせいで曇っていた顔もすっかりなくなっていた。

そんな彼女を見て、一誠はある話を切り出すことを決意する。

 

 

一誠「あのさ…アーシア?告白の返事、この体育祭までにはきっと答えを返すって約束、覚えてるか?」

 

アーシア「はい」

 

一誠「俺さ、いつも強かってるけど……本当は自信ない情けない男なんだよ。昔から後一歩のところで悩んで、そして諦めて後悔する……そんな繰り返しばかりで生きてきた。アーシアのこと、本当は1人の女の子として好きだったよ。でも、そのまま付き合っていいのか…自分は幸せにできるのか…って悩んで誤魔化し続けてたんだよ」

 

アーシア「…」

 

 

真剣に話す一誠にアーシアは目を逸らさずしっかりと見据え、黙々と話を聞き続ける。一言一句、漏らさず。

 

 

一誠「…でも、もう誤魔化すのはやめにする。色々考えた俺の答え。改めて言うよ…」

 

 

そう言って一誠はアーシアの手を取って、彼女の緑色の瞳を見つめ

 

 

一誠「俺、兵藤 一誠はアーシア・アルジェントがす、好きです!不甲斐ない俺ですが、どうかお付き合いお願いしましゅっ!」

 

 

頬を赤く染めてそう告げると、一誠はペコリと頭を下げる。最後の方は噛んでしまい、恥ずかったが、もうすぎたことなので仕方ない。

しばらく頭を下げていると、アーシアから顔をあげる様にポンポンと軽く肩を叩かれる。

 

 

一誠「ん?どうし――」

 

 

一誠が顔をあげて口を開いた瞬間、一誠の唇は塞がれる。そう、アーシアの唇とだ。

突然のキスに一誠は顔を赤くして混乱していると、アーシアは頬を赤く染めながら

 

 

アーシア「はいっ!喜んでお引き受けします!大好きです!ずっとおそばにいさせて下さいっ!」

 

 

目尻に涙を浮かべ満開の笑顔を浮かべるアーシア。その涙は喜びからくるものだ。

 

人気がない体育館裏で2人の人生の歯車はゆっくりと並んで歩き始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「上手くいったかしら?」

 

我夢「多分、大丈夫でしょう」

 

 

観客席のテントからリアスと我夢は体育館の方を眺める。一誠もイエスと答えるだろうから心配する必要はないだろう。

我夢は安心しきっていると、隣に座るイリナへ視線を向ける。

 

 

イリナ「藤宮君…」

 

 

イリナは顔を俯かせ、瞳から涙をポトポトと落とす。藤宮のことで未だ悲しんでいた。これでも大分回復した方であり、最初の方は部屋から一歩も出ない状態だったのだ。

何とかなだめて部屋からは出したが、イリナは生死不明となった藤宮のことがやはり不安の様だ。

 

 

我夢「イリナ」

 

イリナ「…?」

 

 

落ち込んでいるイリナに我夢は声をかけて振り向かせると、ズボンのポケットにしまっていたエスプレンダーを彼女の前へ見せる。

エスプレンダーには赤い光。そして受け取ったアグルの青い光が美しい輝きを放っていた。

 

 

我夢「この光が灯り続ける限り、藤宮は死なない…。僕は信じているんだ、アイツはきっとどこかにいるって。元気出しなよ」

 

イリナ「我夢君……そうねっ」

 

 

我夢に励まされたイリナは溢れる涙を手で拭うと、うっすらと笑みを浮かべる。

彼女に僅かだが元気を戻ったことを確信した我夢は安堵すると、テントから見える青空を見上げ

 

 

我夢「(生きてるよね、藤宮。いつか一緒に闘える日が来ると、僕は信じている…)」

 

 

広々とした青空の下で願う。いつか、またどこかで会える日を―――――。

 

 

 

 




次回予告

スプリームヴァージョンの力を得たウルトラマンガイア。
藤宮がいない今、我夢は一誠はどう戦うのか?

次回、「ハイスクールG×A」
「新たなる迷い」
朱乃と我夢のデートを見逃すな!









はい、という訳で今回の話でseason 2は終了となります。
アグルの光を捨て、表舞台から姿を消した藤宮ですが、我夢が願うようにいつかまた出会い、手を取り合う日が来るのでしょうか?

次回からseason 3が始まりますので、是非お楽しみに…。

今回の昭和怪獣のアンケート結果は、メトロン星人が当選しました。彼もいつどこで現れるかは秘密ですので首を長くしてお待ちいただけたら幸いです。

感想&コメント良かったらよろしくお願いします。


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第七章 放課後のラグナロク
第41話「新たなる迷い」


season 3の始まり始まり~~~!!!


光量子コンピューター『クリシス』の暴走により、絶望の淵へと追いこまれた藤宮 博也は、アグルの光を我夢に託して姿を消した。

 

ヴァージョンアップしたウルトラマンガイアはワームゾーンから出現した巨大なる敵、ゾーリムを撃退した。

 

原因であるクリシスは凍結され、地上にはつかの間の平和が訪れていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜。すっかり暗くなり、静寂に包まれたビルの階段を我夢は上っていた。

 

 

我夢「はっ、はっ」

 

 

カッカッカッと足音を響かせながら、ジェクターガンを構えながら、XIGの隊員服を着た我夢は短く息をきらせながら上へと上がっていく。

 

そして、屋上へ辿り着いた我夢は扉を勢いよく開け、身を出すと

 

 

我夢「行き止まりだ!今度こそ逃げられないぞっ!」

 

 

と警告し、目の前にいるフェンスから外を眺める男へ銃口を向ける。

その声に気付いた男は特に臆することなく振り返る。その男の顔は木場に似てる―――否、木場そのものだった。

 

 

木場?「やあ、よくここまでこれたね…高山 我夢。無事で何よりさ」

 

我夢「このビルにいる手下は全て倒した!後はお前だけだ!」

 

木場?「()()()()?ククッ、ハッハッハッハッハッハッ…!!」

 

 

そう叫ぶ我夢の言葉に木場?は、嘲笑うかの如く笑いだす。

 

 

我夢「何がおかしい!?」

 

木場?「君は勘違いしている。僕は怪獣を捕らえているんじゃない……自らの手で()()()()()()()()()

 

我夢「何…?」

 

 

我夢は疑問で眉間にしわを寄せていると、木場?はパチンと指を鳴らす。

すると、空から青い巨大な球体がゆっくりと降りてくる。

 

 

パァン!

 

我夢「!!?」

 

 

地上へ降り立った瞬間、青い球体は風船が破裂するかの様に弾け飛ぶ。

破裂した球体から立ち込める黄色の煙に我夢は目を伏せる。そして、煙が晴れ、そこに立っていたのは

 

 

「ピポポポポ……グオー…!」

 

 

灰色に近い黒色の体色に垂れ下がったカマキリ虫の様な角、顔は無機質で表情は読み取れず、顔の縦筋と胸元はオレンジ色の発光体が怪しく光る。

生物感溢れる肥満体のボディーから売ってかわって聞こえる電子音の様な異質な音と牛の様な唸り声が聞こえ、見るものの恐怖心を引き立てる…。

 

木場?はその怪獣に飛び乗ると、戦慄する我夢に

 

 

木場?「ハハッ…!怯えているね?君は弱い人間さ。何も出来ない、ノミ以下の存在さ………もうじき、この世界は滅ぶ!防ぐことなど出来はしないっ!」

 

我夢「僕は防ぐっ!その為にガイアの光を手にしたんだ…!」

 

 

そう言いながら我夢は懐から取り出したエスプレンダーに目をやる。エスプレンダーはガイアの赤、アグルの青、2つの光が美しく輝いている。

 

 

木場?「光?笑わせないでくれるかな?闇に包まれるこそが“究極の救い”なのさっ!やれ!」

 

「グオー!」

 

 

木場?の指示を受けた怪獣は左手を高々に上げると、そのまま我夢のいるビルの屋上目掛けて振り下ろした。

 

 

我夢「うわぁぁーーー!?」

 

 

怪獣の一撃を受け、半壊するビルの瓦礫と共に宙に放り投げ出される我夢。

地上へと落ちていく中、我夢はビルから飛び出した鉄骨へしがみつく。

ギシギシと唸る鉄骨から何とか落ちない様に体制を整えるが

 

 

我夢「うっ、ぐっ…!エスプレンダーがっ…!」

 

 

しがみついている鉄骨の遠く先にエスプレンダーが落ちていた。半壊したビルから飛び出した鉄骨は安定しておらずゆっくりと揺れ、エスプレンダーはカタカタと左右へとあっちへこっちへ動いていた。

 

木場?はそんな我夢を嘲笑いながら見下ろす。

 

 

木場?「フフッ、そこで世界が滅びる様を見届けるがいい…。さあ、怪獣よ!この町を焼き払えっ!」

 

「ピポポポポ……!」

 

 

我夢を置き去り、木場?は怪獣に指示を出す。

怪獣は顔のオレンジ色の発光体から火球を放って、町を破壊し始めた。

 

 

我夢「…っ」

 

 

町が火の海に変えられようとする中、何とか鉄骨の上によじ登った我夢は平衡感覚を保ちながら立ち上がる。

我夢は奥にあるエスプレンダーへ意識を集中しながらゆっくりと横歩きで歩いていく。

 

 

我夢「この世界は……この世界は……絶対に滅んだりしないっ!」

 

 

歩きながらそう言った矢先、鉄骨は遂に耐えきれなくなったのか、ガクッと下がる。

我夢は驚きつつも腰を低くして踏ん張るが、エスプレンダーはその衝撃で激しく揺れ、そのまま落ちそうになる。

 

 

我夢「っ!」

 

 

―――行くしかない!覚悟を決めた我夢は息を呑むと、その場から駆け出し、エスプレンダーを拾いあげる。

その勢いのまま鉄骨から宙へ飛び上がり、エスプレンダーを素早く右手にはめ

 

 

我夢「ガイアァァァァーーーーーーッ!!!

 

 

エスプレンダーを前へ突き出すと、赤と青の閃光に包まれ、我夢はウルトラマンガイアに変身した。

 

 

木場?「っ!」

 

「グオー?」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

振り返る怪獣にガイアは身構える。

両者は深く身構えると、その場から駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア『デヤッ!』

 

『ピポポポポ……グオー…!!』

 

一誠「しっかし、良く出来てんな~…」

 

 

巨大なモニター越しに映るガイアと怪獣の戦いを一誠は感嘆する。

 

現在、グレモリー眷属にイリナ、アザゼルは兵藤家の地下一階にある大広間のスクリーンシアターにて、冥界で始まったばかりのテレビ番組の観賞会をしていた。

 

この作品の名は『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』という特撮番組で、冥界で始まった子供向けヒーロー番組だ。

今の映像を見た皆さんならもうお分かりの筈だが、登場するメインヒーローは勿論、我夢や一誠が変身するウルトラマンだ。

とはいっても画面に映る我夢や木場達がその役をやっている訳でなく、背格好が同じ役者に合成で顔を当てており、ウルトラマンはスーツアクターが本物そっくりに出来たスーツを着て演技している。

 

 

小猫「……始まってすぐ冥界で大人気みたいです。『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』」

 

 

我夢の膝上で座っている小猫は尻尾を機嫌よさそうに振りながら言う。

小猫の言う通り、冥界ではこの番組は老若男女問わず人気であり、放送開始されて間もないというのに視聴率50%を超える、文字通り“化け物番組”となった。

 

番組のストーリーとしては、リアスをリーダーとする防衛組織『XIG 』の隊員、高山 我夢と兵藤 一誠は地球から授かった光でウルトラマンに変身する。

2人は正体がウルトラマンであることを隠しながら、世界を滅ぼそうとする根源的破滅招来体に立ち向かう――という有りがちなヒーローものの内容だ。

 

 

木場「番組も凄いけど、グッズ展開も凄いよね」

 

ギャスパー「再現度が高いですね~…」

 

 

木場とギャスパーは手に持つオモチャのリーフラッシャーとエスプレンダーをまじまじと眺める。商品名は『D(デモニッシュ)・レプリカ リーフラッシャー』、『D(デモニッシュ)・レプリカ エスプレンダー』という変身アイテムのオモチャだ。

子供向けの玩具にしては精巧に作られており、色や艶、音声等もしっかり再現されており、我夢や一誠のボイスも収録されている。

 

これだけでなく、様々なグッズ展開がされているがあっという間に売り切れが続出し、冥界の社会現象となり、ニュースや新聞にも取り上げられた。

なお、著作権や商標などはグレモリー家が管理しており、この番組が開始してからかなり儲かっている様である。

 

 

ガイア『グアッ!?』

 

《ドガガァァン!》

 

 

その頃、画面に映るガイアは怪獣に吹き飛ばされてビルに叩きつけられ、ピンチに陥っていた。

倒れるガイアに怪獣は一歩ずつ近付いていくが

 

 

ダイナ『ダァァァァーーーーー!!』

 

『グオー!?』

 

 

空から突如、白い閃光を纏ったダイナの蹴りが怪獣の胸元に炸裂し、怪獣は火花を散らしながら大きく吹き飛ぶ。

ダイナは着地すると、ガイアへ駆け寄る。

 

 

ダイナ『立てるか?』

 

ガイア『ああ…!』

 

 

頷くガイアは差し出すダイナの手を取ると、立ち上がり、怪獣へ視線を変えて身構える。

フラフラと起き上がる怪獣。そして

 

 

ダイナ『シュワッ!』

 

ガイア『グアァァァァァ……!デュアァァァァーーーーーー!!』

 

『ピポポポポ……グオーーー!!?』

 

ドガガァァーーーーーーンッ!!

 

 

ダイナはソルジェント光線、ガイアはフォトンエッジを放つ。2人の合体光線を前に怪獣はなすすべなく、爆発四散した。

 

 

ダイナ『ハッ!』

 

ガイア『チクワッ!』

 

 

戦いを終えたダイナとガイアは天高く腕をあげ、空を飛んでゆく。彼らを背景にプロの歌手が歌うエンディングテーマが流れ始め、番組は終了した。

 

ちなみにオープニングテーマは『ウルトラマンガイア!』と『ウルトラマンダイナ』の2つあり、前者は我夢とプロ歌手のデュエット、後者は一誠自らが歌っている。

まさか2人に歌の才能があるとはリアス達は思いもよらず、オンエア時には驚かれたのは余談だ。

 

 

一誠「あの時、撮影したのがここまで人気なるなんて思わなかったな~…」

 

 

一誠はエンディング流れるスクリーンを眺めながら嬉しい様な恥ずかしい様な複雑な顔で呟く。

 

一誠が言うあの時とは、冥界のテレビ番組のインタビューの後、スタッフに呼ばれた時のことだ。

リアス達にはオンエアまで内緒にしてたが、我夢と共にサーゼクスがメガホンを取るこの番組のパイロット撮影をしたのだ。

最初は流されるままやったが、まさかここまでの規模になるとはその時は思いもしなかった…。

 

 

イリナ「でもでも、幼馴染みがこうやって有名になるのは鼻高々でもあるわよね~!テレビのヒーローに憧れて、4人一緒にヒーローごっこをしたものね!」

 

 

嬉々と様子で言うイリナ。藤宮のことで落ち込んでいた彼女も少しずつ元気を取り戻していき、今ではすっかり元の元気な調子に戻っている。

それに対して一誠は

 

 

一誠「そうだなぁ。あん時のイリナは男っぽくて、やんちゃばかりしてた記憶があるな。ヒーローごっこだって、いつも俺達に悪役ばかりさせてて、年上の大悟(だいご)だって尻にひいてたもんな」

 

イリナ「もう、そんな昔のこと言わないでよっ!恥ずかしいわっ!自分で言うのも何だけど、すっかり女の子らしくなったわよ!」

 

一誠「おお。でも、案外、見た目だけかもしれないな!はははっ!」

 

イリナ「中身も変わってるって、もーうっ!」

 

 

からかう一誠にイリナは肩を前後へ軽く揺する。

そんな様子をリアス達は微笑ましそうに見ていると、木場は隣にいるゼノヴィアに訊ねる。

 

 

木場「大悟って誰だい?僕も以前名前しか聞いてなかったけど…」

 

ゼノヴィア「ん?ああ、前に我夢から聞いたことだが、どうも彼もイリナ達の幼馴染みで、年は3つ上だったらしい。昔、住んでいた町にいた子でよく一緒に遊んでらしいが、中学時代に他県へ引っ越したらしい。それ以来も連絡してたらしいが、今はめっきり…」

 

木場「なるほど」

 

 

 

ゼノヴィアの説明を聞いて木場は納得する。

以前、彼は改築前の兵藤家で大悟の写真を見たことがあるが、見かけたエクスカリバーの写真に夢中になっていたので頭に入っていなかったのだ。

 

 

一誠「ははっ、お前もそう思うだろ?我夢…………あれ?」

 

イリナ「?」

 

 

ひとしきりにイリナをからかった一誠は隣にいる我夢に話を振ろうとするが、座っていた筈の我夢の姿はどこにもなく、代わりに小猫は座っていた。

どこにいったと皆が首を傾げていると、小猫は

 

 

小猫「……我夢先輩なら、エリアルベースのトレーニングルームに行ってます」

 

アザゼル「はっ?またか~…。アイツ、つい1時間前にしたばかりなのに」

 

リアス「ここ最近、トレーニングルームにいることが多いわね。何か悩みでもあるのかしら?」

 

 

話を聞き、またかと肩を下ろす一同。

リアスの言う通り、最近我夢はエリアルベースのみならず、兵藤家にあるトレーニングルームにいることが多く目撃されている。

リアスの呟きにアザゼルは

 

 

アザゼル「他所で好きな女でも出来たんじゃねぇの?」

 

ピキィィィィーーーーーーーー!

 

 

冗談っぽく呟くと、和気あいあいとした空気が一瞬で凍りつく。寒気がしたリアス達は殺気を放つ方へ振り向くと、2人の恋する乙女の怒りによるものだった。

 

 

小猫「……他所で?」

 

朱乃「好きな女?」

 

ギャスパー「ひいいっ!?」

 

 

小猫は眉間にしわをよせ、血が滲むぐらいの力に握りしめ、朱乃はいつもの様にニコニコしてはいるが、目は笑っていない。

両者から漂う不気味なオーラに皆はタジタジになっていると

 

 

一誠「…いや、きっと別なことに悩んでいるんすよ」

 

小猫「!」

 

朱乃「…っ、別なこと?」

 

 

一誠の呟きに2人は気を取り戻し、意識をそちらへ向ける。

皆がホッとする中、朱乃が訊ねると、一誠は頷き

 

 

一誠「アイツ、昔から悩んでることがあったら急に運動ばかりし始めるんですよ。運動苦手なのに…。でも、そういうことをする時は大抵、()()()()()()()()()()()()()んですよ」

 

『っ!』

 

 

一誠の話を聞き、皆はそれで間違いないと納得する。

一誠と我夢は幼馴染みで親友であり、付き合いも長い……従って、この中でも最も我夢の心情を理解している彼の言葉には嘘偽りないのだ。

 

 

リアス「じゃあ、何の悩みか詳しくわかる?」

 

一誠「う~ん……」

 

 

リアスの問いに一誠は顎に手を当ててしばらく唸ると

 

 

 

一誠「多分、藤宮のことじゃないですかね…」

 

『っ!』

 

一誠「ウルトラマンとしての俺の考えなんですけどね」

 

イリナ「藤宮君…」

 

 

飛び出した藤宮の名前に皆は神妙な顔を浮かべる。特にイリナは一番顔を曇らせていた。

藤宮 博也―――我夢、一誠と同じく地球に選ばれた超古代人の末裔で、光を授かった1人。

かつて、ウルトラマンアグルとして戦った彼は我夢達と幾度も対峙、時には協力してきた。

だが、その彼も今はいない…。

 

 

ゼノヴィア「どうして、藤宮を?」

 

 

ゼノヴィアの問い掛けに一誠は

 

 

一誠「藤宮のことは気に食わねぇが、アイツがいねぇとヤバかったことあったろ?今までピンチの時に助けられてきたから良かったけど、今後そう上手くいくとは限らねぇ……藤宮っていうバックアップがいねぇから悩んでるんじゃないかな?」

 

ゼノヴィア「そうか…」

 

リアス「対立こそしてたけど彼がいなかったら、今頃、私達はここにいなかったでしょうね……」

 

『……』

 

 

リアスの呟きに皆は深刻な顔をしながら口を閉ざす。

リアス達は何やかんやありながらも藤宮に生かされていたのかもしれないと実感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その頃。エリアルベースでのトレーニングを終え、自分のマンションに戻ってきた我夢も寝室で藤宮のことを考えていた。

 

我夢は手に取ったエスプレンダーを見つめると、呼応するかの様に赤と青の光が灯る。

それを見つつ、我夢は心の中で呟く。

 

 

我夢「(本当にピンチの時はいつも助けてくれた……。あの時も…。あの時も…。アグルがいなければ、勝てなかった……)」

 

 

レイナーレ、ボグラグ、サイコメザード、コカビエル、アンチマター……これらの強敵からピンチを救ってくれたのは全て藤宮―――アグルのおかげだった。

だが、

 

 

(藤宮「俺にはもう、守るものなんて何もない……」)

 

 

あの日の出来事。戦意を失い、アグルの光を自分に託し、闇の中へ消えていった彼の最後の姿。

その悲しい後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。

 

 

我夢「……藤宮。これからはずっと君無しで戦わなければならないのか?」

 

 

エスプレンダーに灯る青い光を見て我夢は弱音を吐く。

他人にすがって情けないとは思うが、弱音を吐く程、彼の存在は大きかったのだ。

そんな時

 

 

コンコン…

 

我夢「…?はい」

 

 

扉からノック音が聞こえ、我夢は机にエスプレンダーを置くと、寝室の扉へ歩み寄る。

ドアノブを捻って扉を開けると、そこにはいつもの様にニコニコと微笑む朱乃がいた。

 

 

我夢「…どうしたんです?」

 

朱乃「我夢君、そろそろ“約束”を果たしてもらわないと困りますわ」

 

我夢「約束?」

 

 

何のことだと頭を捻って聞き返す我夢に朱乃はより一層満面の笑みを浮かべ

 

 

朱乃「デートの約束ですわ。ほら、ディオドラとの戦いで…」

 

我夢「あ、ああ~」

 

 

朱乃に言われて我夢は確かにそんな約束をしたことを思い出した。とはいっても、一誠が勝手に約束を取り付けたのだが。

その後のアグルやゾーリムとの戦いがあって、すっかり忘れていた。

 

 

我夢「(どうする…)」

 

 

我夢は頭を悩ませる。

約束はした事実があったとはいえ、あれは一誠の口から勝手に出たものであり、我夢自ら望んだものではない。

朱乃のことは嫌いではなくむしろ好き(異性としてではない)だが、ここで下手に断ったら傷付くだろう。

 

どう上手く言えばいいか言葉を選んでいると、

 

 

朱乃「…あれは嘘なの?」

 

我夢「あっ!ち、違います!本当!本当ですから!」

 

 

悲しげに瞳を潤ませてこちらを下から覗く様に見つめる朱乃を見た我夢はあたふたしながら答える。

すると、それを聞いた朱乃はパアッと明るい笑顔に変わると、我夢に抱きつく。

 

 

朱乃「本当?嬉しいっ!じゃあ、今度の休日にデートね♪」

 

我夢「は、はい…」

 

 

苦笑いを浮かべながら我夢は首を縦に振ると、朱乃は上機嫌な様子で「我夢君とデート♪」と口ずさみながら自室へと入っていった。

 

 

我夢「は…はは…」

 

 

朱乃が去った後、我夢は1人廊下を見ながら力なく笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時が経ち、デート当日。

我夢は待ち合わせ場所である駒王駅近くの円形状の石畳がある公園の噴水近くにいた。

 

 

我夢「(緊張するな~)」

 

 

とはいえいざ、デートとなるとやはり緊張するものだ。しかも、我夢にとっては人生初だ。

服装はイリナに選んでもらったもので、いつもよりも気を使ったものにしており、特に問題はない筈だ。

 

込み上げる不安や高揚感でソワソワしていると、

 

 

朱乃「お待たせ」

 

我夢「あ。朱乃さ―――?」

 

 

朱乃の声が聞こえ、我夢は振り返ると思わず目を奪われる。

視線の先にいる朱乃は髪を下ろしており、フリル付きのワンピースといった年頃の女の子が着ている服装をしていた。

てっきり、年上のお姉さんが着るような落ち着いた服を着てくるものだと思っていた我夢。しかし、目の前にいる朱乃は年頃の女の子そのもので、いつもとのギャップにすっかり魅了されてしまったのだ。

 

固まっている我夢を見て、朱乃は怪訝そうに

 

 

朱乃「…どう?今日の私、変?」

 

 

と訊ねると、我夢はハッと気を取り戻すと、

 

 

我夢「いえ、そんなこと無いですよ!その…よく似合ってます!」

 

朱乃「ふふっ、嬉しい。ありがとう」

 

 

そう返すと朱乃は照れくさそうに笑う。

普段ならあらあらうふふ…と上品なお姉さんらしくなく、年頃の女の子らしい反応に我夢は思わず胸が高鳴る。

 

 

我夢「じゃ、じゃあ行きましょうか…」

 

朱乃「ええ♪」

 

 

照れてばかりじゃ始まらない…。我夢は込み上げる高揚感を抑え、歩き出そうとした時、朱乃はスッと我夢の腕に抱き付くと

 

 

朱乃「ねえ?今日1日だけ、我夢って呼んでもいい?」

 

我夢「へ?」

 

朱乃「私、こうして男の子とデートするのを始めてで……駄目?」

 

我夢「い、いえ!どうぞっ!」

 

 

突然の頼みに呆気にとられる我夢だったが、いつもと違う朱乃の魅了を前にすっかり平常心が揺らいでいた我夢は特に断る理由もないので首を縦に振る。

それを聞いた朱乃は満開の笑顔を浮かべると

 

 

朱乃「やった!ありがとう、我夢!」

 

我夢「は…ははは…」

 

 

より一層腕に身を寄せる。腕に伝わる2つの柔らかい感触に込み上げる煩悩を紛らわせる様に我夢は照れくさそうに笑う。

 

照れる我夢に寄り添いながら朱乃は横目で近くにある電柱へ目をやる。

電柱の陰には変装したリアス、木場、小猫、一誠、アーシア、ギャスパー、ゼノヴィア、イリナが隠れながらこちらを観察していた。

変装こそはしてはいるが、それが逆に目立っていて全く隠せていない。ちなみに我夢は彼らがいるのは気付いていない。

 

朱乃はそんな彼らを見ながら

 

 

朱乃「ふふっ…」

 

リアス「~~っ!」

 

小猫「…っ!」

 

 

挑発する様に笑うと、リアスと小猫は怒りで体を震わせる。リアスには「こんなこと出来ないだろう」という優越感、小猫には「あなたには渡さない」という対抗心を込めてだ。

それをすぐ理解した2人は怒りのあまり、電柱にヒビが入る程手に力を込めていた。

 

 

我夢「どうしました?」

 

朱乃「いえ。行きましょ♪」

 

我夢「…?はい」

 

 

朱乃の視線が気になったのか、こちらを覗く我夢に朱乃はそう答えると、2人は町へ歩き出した。

 

 

リアス「こっそり後をつけるわよ…」

 

 

リアス達も2人から距離を取りつつ、ストーキングを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3時間。我夢と朱乃は手を繋ぎながらデートを満喫した。

ゲームセンターで遊んだり、露店で買ったクレープを一緒に食べたり、ブランドショップに行っては朱乃が洋服を比べては「これ似合う?」「それともこっち?」と我夢に訊いたりしていた。

終始年頃の女の子の顔を見せる朱乃に我夢はすっかりデレデレになっていた。

 

我夢と朱乃は歩く度に周りから視線を集めていた。スタイル抜群の美少女である朱乃は勿論だが、我夢も童顔だがイケメンの部類に入っている。

この美男美女のカップルにすれ違う男女の妬みや憧れの注目を集めていた。

最初こそ我夢はその視線が気になっていたが、朱乃とのデートの楽しさで気にならなくなった。

 

それから更に1時間後。2人は映画館から出ていた。

 

 

我夢「面白かったですね!」

 

朱乃「ええ♪」

 

 

訊ねる我夢に朱乃は満足そうに答える。

ちなみに2人が見た映画は輝く銀河の彼方から地球にやってきた銀と赤の巨人が首長怪獣とそれを操る侵略宇宙人と戦うSFものだ。

我夢は元からSFに興味があったが、そんな話がない朱乃が満足してくれるのかと最初は不安してたが、なんやかんやで朱乃も自分の趣味と意外とマッチしたらしく、終始楽しんでいたのでその不安も杞憂だと安堵した。

 

2人は映画の感想で談笑しつつも近くの本屋に入っていく。立ち並ぶ本棚にズラッと収納されている本を2人は見ながら中を歩いていく。

 

 

 

我夢「あっ」

 

 

幼児向けのコーナーに差し掛かった時、我夢はとある1冊の絵本に目が止まると、その絵本を手に取る。

突然吸い寄せられる様に絵本へ向かっていった彼に朱乃は後に着いていく。

 

 

我夢「懐かしいな~」

 

朱乃「どうしたの?」

 

我夢「ん?ああ、『ガリバー旅行記』ですよ」

 

 

我夢の言葉を聞いて朱乃はおぼろげながらも大まかなあらすじを思い出す。

ガリバー旅行記……船で仕事をしていたガリバーが嵐に巻き込まれ、漂着先の小人の国で大活躍するというお話だ。

我夢はガリバー旅行記の本を懐かしそうに眺めながら

 

 

我夢「僕、小さい頃に不思議な世界をいくつも旅した時空旅行者といえるガリバーに強い憧れを抱いていたんです。何度も何度も本を読み返しては、こう願ったんですよ。自分もその世界を旅してみたいって……」

 

朱乃「それで量子物理学に?」

 

我夢「ええ。それで、小さい頃からずっと、自分もきっとガリバーみたいに時空旅行者になるって夢を持つ様になったんです」

 

 

夢を語る我夢の目は夢と希望で輝いており、その顔は子供の様に純粋で爽やかなものだった。

朱乃はそんな真っ直ぐな彼を好きになったんだなと改めて自覚すると、ふふっと微笑み

 

 

朱乃「素敵な夢ね…きっとなれますわ。我夢なら」

 

 

そう応援すると、朱乃は思った。この先ずっと、彼のそばで応援し続けると…。

それを聞いた嬉しそうに笑う。

 

 

我夢「はははっ、ありがとうございます。それじゃ、デートを続けたいところですが……」

 

朱乃「?」

 

我夢「…あれって、部長達ですよね?途中から気付いたんですけど、気になって……」

 

 

困惑する我夢が指差す本棚の陰には相変わらず追跡中のリアス達がいた。気付いた時から今まで気付かないフリをしていたが、小猫から悪寒がする程の眼差しが背後から突き刺さり、気になってしょうがなかったのだ。

 

それを聞いた朱乃はクスッと悪戯気に笑うと、

 

 

朱乃「じゃあ、リアス達を撒いちゃいましょう!」

 

我夢「えっ、おあっ!?」

 

 

そう言うと、次の瞬間。朱乃は我夢の手を取ると、リアス達から逃げる様に走り出した。

当然、突然のことに我夢は引っ張られて戸惑うが、今さら足を止める訳にもいかず、朱乃につられるまま足を動かす。

 

 

一誠「あっ、逃げた!」

 

リアス「逃がさないわ!みんな、追うわよっ!」

 

 

それを見て逃げると察したリアス達も急いでその場から駆け出す。

一行はそのまま本屋から外へ出ると、小さな追跡劇が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、数分後。我夢は朱乃につれられるまま、町中の角という角をあっちこっちへ曲がり、近くにある小路に身を隠す。

息を潜め、物陰からリアス達が通り過ぎるのを確認してから、2人は道路に出た。

 

 

我夢「はぁ…突然走り出すから驚きましたよ…」

 

朱乃「うふふ、ごめんね。でも、リアスを撒けたみたいね」

 

 

くたびれた様に膝に手をついて安堵のため息をつく我夢にペロッと舌を出しながら小悪魔な笑みを返す朱乃。

我夢は「後で部長達に何を言われるかわからないな…」と不安に駆られる。朱乃に引っ張られたとはいえ、止めるどころか協力したのは事実だ。

けれど、

 

 

我夢「(…まあ、朱乃さんが楽しんでくれたらそれでいいか……)」

 

 

朱乃の笑顔を見て、我夢は前向きに考える。

今回、デートに乗ったのは一誠の出任せとはいえ、約束を破ってしまうという罪悪感もあるが、いつもお世話になっている朱乃への恩返しや気分転換の機会という考えもあったからだ。

結果、思ってたより順調にデートは進み、朱乃も自分も随分楽しかった……なので、結果オーライということにした。

 

 

我夢「?」

 

 

しかし、あっちこっち走り回ったせいで現在位置が分からず、辺りを見渡す。

視界に映る景色はどれもこれも『休憩313円~』や『宿泊1999円!』といった、ネオンライトが点いた宣伝の看板ばかりが立ち並ぶ建物ばかりだった。

 

 

我夢「こ、ここは…」

 

 

この光景を前に我夢も流石にわかった。そう、ここは男女の営みが盛んに行われる…所謂ラブホ街と呼ばれる場所だ。

年頃の若い男女がいるべき場所ではない。

 

 

我夢「あ、朱乃さん!ここにいたら流石に勘違いされそうですよ!は、早く出ましょうっ!」

 

 

身の危険を感じた我夢は朱乃の手を取り、そそくさと立ち去ろうとしたが、朱乃は一向に動かない。

 

 

我夢「朱乃さん…?」

 

 

我夢は振り向くと、朱乃は耳まで顔を真っ赤にし、顔を俯けながらもじもじしていた。

 

その様子に我夢が訝しげに思っていると、朱乃は顔を真っ赤にしたまま、ぼそりと呟く。

 

 

朱乃「……いいよ」

 

我夢「…………ゑ?」

 

 

一瞬、我夢は耳を疑った。その言葉の意味を。

固まっている我夢に朱乃は恥ずかしながらも意を決したのか、顔をあげると、

 

 

朱乃「…我夢が入りたいなら、いいよ。大丈夫だから………」

 

我夢「………え、えええええーーーーーーー!!?」

 

 

そう真っ直ぐ伝えられた我夢は思わず人目を気にせず、大声で驚愕の声をあげる。

いいよ――つまり、ラブホテルに入って()()()()()()()()()()()って捉えるのが自然だ。

彼女はいつもの余裕ある表情が消え、うぶな反応を見せながらも決心した目を浮かべていることから嘘ではないのは確実だ。

 

しかし、勉強一筋で生きてきた我夢にはそういった経験は勿論ない。それも相手は恋人でもなんでもない知り合いの女の子だ。

だが、女の子がここまで勇気を振り絞って誘っているのだから、ここで食わねば男が廃るような気がしてならない…。

 

 

我夢「(ど、どうすれば…)」

 

 

ここでOKを出せば朱乃は喜んでくれるだろうが、その後が大変だ。かといってNOと言えば、朱乃の心を傷付けることになるだろう。

我夢が理性と煩悩の板挟みに苦しんでいると、

 

 

「ふぅむ……。昼間っから女を抱こうとはやりおるのう、ウルトラマンガイア」

 

「「っ!?」」

 

 

そんな話しかける声が聞こえ、我夢と朱乃はハッとなり、そちらへ振り向く。

すると、そこにはラフな格好をした老人が長い髭を擦りながらニヤニヤとこちらを見ていた。その後ろにはパンツスーツを着た長い銀髪の女性と屈強な体格をした大男が立っていた。

 

けど、我夢にはわかった。手前の老人は北欧の主神オーディン、後ろにいる女性がその付き人である戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセであると。

しかし、後ろにいる男性は見覚えがない。別の付き人だろうか…?そんなことを疑問に思いつつも、我夢はオーディン達にペコリと一礼する。

 

 

我夢「オーディン様。ディオドラの件ではお世話になりました」

 

オーディン「ほっほっほっ…良き良き」

 

我夢「それと、ロスヴァイセさん?ですよね?あの時、いきなり声をかけてすみません。人違いしてしまって…」

 

ロスヴァイセ「いっ、いえいえ!人違いなんて誰でもありますよ!頭をあげて下さいっ!」

 

 

突然謝れると思ってなかったのか、ロスヴァイセは我夢に頭をあげる様に促す。

我夢は頭をあげると、さっそく本題に入る。

 

 

我夢「どうしてここに?」

 

オーディン「うむ。ある件で訪れるこ――「オーディン様!こ、このような如何わしい場所で話すべきではありません!うろうろされてはこちらも困ります!神としての自覚をお持ち下さいっ!」…あ~、うるさいのぅ」

 

 

何かを答えようとするオーディンだが、注意を促すロスヴァイセの声で遮られる。

オーディンは手で耳を抑えながら鬱陶しそうにジト目で見ながら

 

 

オーディン「…相変わらず固いの。たくっ、それだから()()1()()()2()()()()()()()()()()()()

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

オーディンがそうぼやいた瞬間、ロスヴァイセは頭から電流が走ったかの様に顔が真っ白になると、次の瞬間。肩からガクリと地へ崩れ落ちる。

 

 

ロスヴァイセ「どーせ、私は色気がないヴァルキリーですよ…。年齢=彼氏いない歴の残念女ですよ……」

 

我夢「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

オーディン「心配いらんよ。いつものことじゃ」

 

 

膝をつき、ブツブツと念仏を唱える様に呟いて落ち込むロスヴァイセを心配する我夢だが、オーディンは心配ないと言う。

だが、余程ショックなのか、しばらく立ち上がれそうにない。

 

 

我夢「ははは………んっ…!」

 

 

目の前の状況に我夢は苦笑いを浮かべながら、隣にいる朱乃の方へ目をやると、鋭い顔つきに変えた。

その訳は、朱乃がオーディンの付き人であろう屈強な男に詰め寄られ、動揺していたからだ。

 

 

朱乃「あ、あなたが、どうしてここに…?」

 

「朱乃。これはどういうことだ?」

 

 

動揺している朱乃の問いに男は静かに質問を返す。その声音は怒りが籠ったものだ。

それを聞いた朱乃はキッと男を睨み付け

 

 

朱乃「何でここにいるのよっ!それに私がどこで何をしようがあなたには関係ないでしょ!」

 

「いいや、大いに関係ある!だが、そんな事情は後だ。とにかく、ここから離れるぞ」

 

朱乃「嫌っ!離して!」

 

 

男は彼女の疑問を一蹴すると、その鍛えぬかれた太い手で朱乃の腕を掴むと、どこかへ連れ去ろうとするが、嫌がる彼女の声を聞いた我夢がその腕を掴む。

 

 

我夢「待って下さい!嫌がってるじゃないですかっ!」

 

「その手を離せ。お前には関係ないことだ!」

 

我夢「断るっ!」

 

 

男の圧に我夢は屈せずそう言い放つと、強引に男の手から朱乃の腕を引き剥がし、彼女を自分の後ろへ隠す。

 

 

我夢「いきなり何をするんですか!?あなたこそ朱乃さんの何なんですかっ!?」

 

 

我夢は男を警戒しながら問いかける。男は一拍あけて息を整えると、

 

 

バラキエル「俺は堕天使組織グリゴリ幹部のバラキエル。今日はオーディン殿の護衛として来ている」

 

我夢「バ、バラキエル!?もしかして…」

 

バラキエル「知っている様だな。そうだ。俺はそこにいる姫島 朱乃の父親だ」

 

我夢「っ!?」

 

 

 

それを聞いた我夢は目を丸くする。

――堕天使幹部バラキエル。

そう、目の前にいるこの男こそが朱乃の父であった…。

 

 

 

 




次回予告

再会する親子。だが…


朱乃「気安く呼ばないで!」


朱乃に何が…?
その時、会談を良しとしない悪神・ロキが襲いくる!

次回、「ハイスクールG×A」
「親子と神」
セクハラ親父に気をつけろ!





冒頭のシーンはとある映画のオマージュで、その映画に出てくる敵の代わりに昭和ウルトラマンのとある有名な怪獣を登場させました。
後、朱乃と我夢が見た映画やラブホ街の金額もウルトラシリーズに関する小ネタが入ってます。わかるでしょうか?

よろしければ、感想&コメントよろしくお願いします!


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第42話「親子と神」

悪神 ロキ
神殺獣(しんさつじゅう) フェンリル 登場!


オーディン「――という訳で訪日したぞい」

 

 

現在、兵藤家の最上階にあるVIPルームに集合した我夢達はオーディンとその護衛を招き、事情を聞いていた。

何でもこの日本で重要な用事で来てそうで、この駒王町に来たのも三大勢力の強力体制が強いからだ。

 

大物の登場に当然ながら我夢と朱乃のデートは中断。その後、オーディンを連れてリアス達と合流し、兵藤家に招き入れ、現在に至るということだ。

 

 

朱乃「…」

 

 

だが、帰ってきたからの朱乃は不機嫌だった。デートが中途半端に終わってしまったということもあるだろうが、それ以上に父親であるバラキエルとの再会が気がかりになっているのだろう。

その証拠にいつものニコニコ笑顔は消え去っており、我夢が話しかけても一言二言答えるだけで、それ以外口を閉ざしたままだ。

 

 

リアス「どうぞ、お茶です」

 

オーディン「ほっほっ、すまんの。しかし、相変わらずでかいのぅ」

 

ロスヴァイセ「オーディン様!駄目です!こちらは魔王の妹君なのですよ!」

 

 

そんな状態の朱乃に代わり、リアスは軽く会釈すると淹れたての紅茶を前へ出す。リアスの胸を見ながらさらっとセクハラ発言するオーディンにロスヴァイセが注意を促す。

 

その後、ロスヴァイセ、バラキエルが軽く自己紹介を終えると、さっそく一同は本題に入ることにした。

オーディンは先程のだらしない顔から真剣な顔に切り替わっていた。その面持ちから伝わる威厳さに彼の我夢達は息を呑んでいると、リアスは話しかける。

 

 

リアス「オーディン様。どうして突然、訪日を?」

 

オーディン「うむ、今回の来日した目的はわしら北欧神話と日本神話の神々と友好を築くことと、お主らの防衛組織XIGに本格的な加入をする為じゃ。最近、『禍の団(カオス・ブリゲード)』やら破滅招来体やらが勢いを増してきて物騒だからのぅ………じゃから、急いでやってきたのじゃ」

 

アザゼル「…くくっ、そんなマトモなこと言ってるが、本当は風俗に行く時間が欲しいからだろ?」

 

 

鼻で笑うアザゼルにオーディンは真面目な顔から一変して焦った顔になると、「せっかく真剣に話しとるのに余計なことは言わんでいいっ!」と叫ぶ。

その様子からアザゼルの言っていることが本命だということが我夢達は察し、白い目を送る。先程の威厳さはどこへやら……。

 

そんな中、アザゼルは

 

 

アザゼル「まあ、爺さんが日本にいる間、俺達はその護衛をすることになっている。俺も最近忙しくて、ここにいるのも限られているからな。バラキエルはその応援だ」

 

バラキエル「よろしく頼む」

 

 

バラキエルは一歩前へ出て短く挨拶すると、再び壁際近くに下がる。皆がオーディンの護衛につくのかと自覚している中、ただ1人朱乃は冷たい眼差しでバラキエルを見ていた。

 

 

オーディン「…コホン!と、という訳でのしばらく日本に滞在することになった。よろしく頼むの」

 

リアス「は、はいっ!こちらこそ!」

 

 

ペコリと頭を下げるオーディンに合わせて、我夢達もリアスを筆頭にペコリとお辞儀する。

 

そうして話がつくと、アザゼルはニタニタした顔でオーディンに近寄り

 

 

アザゼル「爺さん、どこか行きたいとこあるか?」

 

オーディン「おっぱいパブに行きたいのぉ!」

 

アザゼル「ハッハッ!さすが主神殿!見るところが違いますな!よっしゃ、この日の為に俺が厳選した超VIPな店に招待しちゃうぜ!」

 

オーディン「うほほほっ!超VIPとな!さっすが、アザゼル坊じゃ!楽しみじゃわい!」

 

アザゼル「ついてこい、クソジジイ!和の国日本でしか出来ねぇことをたっぷり教えてやるぜっ!」

 

オーディン「たまらんのー♪たまらんのー♪」

 

 

そうして上機嫌になった2人は仲良く肩を組むと、ランランと口ずさみながら軽やかな足取りでスキップしながら部屋を飛び出していった。

 

 

ロスヴァイセ「…だっ、駄目です!オーディン様!私もついていきますっ!」

 

 

ハッとなったロスヴァイセもその後を追う。

廊下から色々やりとりする声が聞こえるが、それも段々と遠ざかっていき、終いには聞こえなくなった。

 

 

『はぁ……』

 

 

部屋に取り残された我夢達とバラキエルはこの一連の出来事に深くため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラキエル「――朱乃、お前としっかり話し合いたいのだ」

 

我夢「?」

 

 

我夢は兵藤家の3階にある自分の部屋へ戻る途中、廊下の曲がり角からそんな声が聞こえ、足を止める。

気になった我夢はこっそりと隠れながら曲がり角を覗くと、険悪なムードを漂わせる朱乃とバラキエルが話し合っていた。

 

 

朱乃「気安く呼ばないで!」

 

 

そう突き放す朱乃の声は我夢が今まで聞いたないぐらい冷たいものだった。顔もニコニコしておらず、不快感を露にしていた。

 

 

バラキエル「彼とは……高山 我夢とは逢い引きの関係なのか?」

 

朱乃「っ!」

 

 

だが、バラキエルは朱乃の迫力に臆せず、静かに問いかける。それを聞いた朱乃は一瞬目を見開くが、すぐに半目で睨む。

 

 

朱乃「あなたには関係ないでしょう?どうしようと私の勝手じゃない!」

 

バラキエル「話は聞いている。3000万年前の超古代人の末裔で現代のウルトラマン。実力は申し分ないだけでなく、心穏やかで優しい男だと聞く。私も信頼している」

 

朱乃「それが何?問題ないじゃない…」

 

バラキエル「だからこそ、心配なのだよ。お前の身に何か起きるのではと…」

 

 

そう語るバラキエルは子を心配する親そのものだった。当然だろう。娘が自分がよく知らない男とデートをしていたのだから。

だが、

 

 

朱乃「彼はとても良い人よ。決して、そんなことしないわ。信頼するって言っておきながら、疑り深いのね。最低よ…。やっぱり、あなたを許すことなんて…」

 

バラキエル「私は父として――」

 

朱乃「父親面しないでよっ!!だったら、どうして()()()来てくれなかったの!?母さまを見殺しにしたのはあなたじゃないっ!!」

 

バラキエル「っ…!」

 

 

朱乃のその一言にバラキエルは黙り込んでしまう。

我夢も以前、アザゼルから昔、2人の間に壁が出来る悲惨な出来事があったのは知っていた。

 

 

我夢「(余程ひどいことがあったらしいな…)」

 

 

そんなことを思いながら我夢は神妙な顔を浮かべていると、ふいに物陰へ目をやった朱乃と目が合ってしまう。

 

 

朱乃「我夢君。聞いてたの?」

 

我夢「すみません…」

 

バラキエル「ぬ…っ!」

 

 

我夢は気まずそうに物陰から身を出す。偶然居合わせたとはいえ、こそこそ隠れて立ち聞きしてたのは事実だ。

我夢の姿を見たバラキエルは驚いた様に一瞬目を見開くと、すぐに眉間にしわを寄せ、詰め寄り始める。

 

 

バラキエル「破廉恥な…!男のくせに盗み聞きなどと!」

 

我夢「い、いえっ!僕は偶然通りかかったら、2人の声が聞こえて!それで…」

 

バラキエル「問答無用!噂だけなら問題ないと思ったが、親子の会話をこそこそと聞くようなこずるい奴に耳を貸すものかっ!!」

 

バチバチバチィィーーーー!!

 

 

誤解を解こうとする我夢の説得虚しく、完全に頭にきたバラキエルは手に廊下中を明るく照らす程の雷光を迸らせる。

 

 

我夢「くっ!」

 

 

説得は無駄と判断した我夢は冷や汗をかきながら身構える。変身していない悪魔の自分が1発でもくらえば、無事では済まさないだろう。変身しようにもエスプレンダーは自室に置いてきてある。

 

 

バラキエル「逢い引きは!認めんっ!」

 

 

そう言いながらバラキエルは雷光を纏った拳を我夢へ放とうとした時、さっと朱乃が我夢を庇う様に両者の間に割り込む。

 

 

朱乃「やめて!彼に何もしないでっ!あなたなんて、私の父親じゃない!どっかへ行ってよ!!」

 

バラキエル「っ!?」

 

 

朱乃の叫びにバラキエルはショックを受けた様に目を丸くすると、雷光を止め

 

 

バラキエル「……すまん」

 

 

一言そう告げると、悲しげにこの場を立ち去っていく。

―――私の父親じゃない!そう言われたのがショックなのか、大きく広い背中が我夢には小さく見えた。

 

 

我夢「朱乃さん…」

 

朱乃「お願い。何も言わないで…」

 

 

言いづらそうながらも我夢が話しかけようとするが、朱乃はそう言いつつ、我夢に抱きつく。

顔は俯いているのでその表情はわからないが、涙声で体を震わせていることから、泣いていることがわかる。

 

バラキエルを突き放している朱乃だが、こうして泣いているのは彼女自身も望んでいないことが我夢には理解できた。

 

 

朱乃「…もう少し、このままでいて。お願い、我夢…」

 

我夢「……はい」

 

 

その頼みに我夢は一言返すと、ギュッと朱乃を抱き締める。胸元に零れ落ちる涙の感触を感じつつ、我夢は朱乃が泣き止むまでしばらく抱き合った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーディン「―――と、いう訳でわしら北欧神話も協力させていただくぞい」

 

石室「はい、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

そう言葉を交わしたオーディンと石室は熱く握手を交わす。

あれから数日後の夜。現在、エリアルベースのコマンドルームではオーディンによるXIGの加入表明が行われていたところだ。

今後の課題や現状把握等の報告を挟みつつ話し合いは順調に進み、今、終わった訳だ。

 

オーディンの付き添いのロスヴァイセとバラキエルは当然のこと、護衛を任された我夢達もこの場にいたのだが…

 

 

『ほっ…』

 

 

話し合いが終わった瞬間、我夢達とバラキエル、ロスヴァイセはくたびれた様子で肩を撫で下ろす。

ここ数日間、オーディンはキャバクラや寿司屋等、日本の都内各地を好き勝手に遊び回っていた。

護衛である我夢達は必然的に連れ回され、一同は疲弊していた。

小猫やギャスパー、アーシアに至っては眠たそうにこっくりこっくりしていた。

 

 

オーディン「ほっほっ……ん?お主ら、どうした?」

 

一誠「(このジジイ~~…)」

 

 

訝しげに首をひねるオーディンに我夢達は怒りを覚えていた。誰のせいだよ!と…。

一誠に関しては今にも殴りかかりそうな剣幕で歯をギリギリと噛み締めていた。

 

皆が怒りを募らせる中、我夢はチラッと横目で朱乃を見る。

 

 

朱乃「…」

 

 

朱乃は1人、今心あらずといった様子でポカンとしていた。廊下での出来事以来、朱乃はずっとこの調子で、話しかけても「ええ」や「はい」と言った短い返事しかせず、我夢が話しかけても同じだ。

それ以上話そうとしても、彼女からは話しかけないでと言わんばかりの雰囲気を漂わせているので、話しかけにくい。

 

 

我夢「(朱乃さん…)」

 

 

そんな彼女を我夢は心配そうに見つめる。

そうしていると、帰り支度を整えたオーディンは

 

 

オーディン「じゃ、これで失礼するぞ」

 

石室「ええ、お気をつけて」

 

 

軽く会釈する石室と別れ際の挨拶を交わす。

我夢達は「これからが大変だな」と心で思いつつ、オーディンと共に立ち去ろうとした時、オペレーターに1通の通信が入る。

 

 

「コマンダー!G.U.A.R.D.ヨーロッパのダニエル氏から緊急連絡!」

 

アザゼル「突然なんだ?」

 

石室「出してくれ」

 

 

足を止め、首を傾げる一同をよそに石室がそう指示すると、オペレーターは中央のモニターに表示する様に手元のコンソールを操作する。

すると、モニターには焦った様子のダニエルが映し出された。余程緊急事態なのか、後ろからは研究員の慌ただしい声が聞こえてくる。

 

 

《ダニエル「コマンダー!()()()()()()()()()()()()()!」》

 

コマンダー「…どういうことだ?」

 

 

開口一番、ダニエルから発する言葉に石室を始め、我夢達は疑問を抱く。

ダニエルは続けて

 

 

《ダニエル「クリシスから放たれたプログラムが……G.U.A.R.D.ヨーロッパのメインコンピューターに侵入したのですっ!」》

 

アザゼル「クリシスは完全に凍結したんじゃなかったのか!?」

 

 

驚くアザゼルに皆は頷く。アザゼルの言う通り、根源的破滅招来体に操られていると判明したクリシスは文字通り凍結され、2度と機能しなくなった筈だ。

これにダニエルは

 

 

《ダニエル「システムダウンの直前、クリシスが最後に放った命令が独立したプログラムとしてネットワーク上に生き残っていたんです!まるで亡霊の様に……」》

 

石室「亡霊?……クリシスゴーストか……」

 

 

クリシスゴースト―――残されていた驚異に石室はそう名付ける。

これで一件落着と安心していたが、まさかまだクリシスの驚異が残っていたと知った一同は緊張が走る。

 

 

《ダニエル「G.U.A.R.D.ヨーロッパは全システムの停止に追い込まれました。恐らく―――ザ――ザザ――」》

 

ピチュン!

 

「外部との通信回線が切断されましたっ!」

 

 

ダニエルが何か伝えようとする矢先、音声がノイズが走るや否や、映像が途切れてしまう。

何だと皆が思った瞬間、独りでに動いた窓際のシャッターが一斉に下り、アラーム音がエリアルベース内に響き渡る。

 

 

プー!プー!

 

「自己防衛システムが作動しました!」

 

リアス「え!?」

 

 

自己防衛システム――それが作動することが指すことは、このエリアルベースにかなり深刻な事態が起きていることだ。

更に別のオペレーターが目を丸くすると、皆に振り向き

 

 

「コンピューターに侵入者!」

 

『!?』

 

アザゼル「クリシスゴーストか…!」

 

 

その報告を聞いて察したアザゼルは苦々しく呟く。

上空に浮かぶこのエリアルベースにこんなにも早くやって来るとは予想だにもしなかった。

 

オペレーターがエリアルベースのメインシステムの内部状況をモニターに表示する。

すると、クリシスゴーストはもう既にシステムを侵食し始めていた。

 

 

アザゼル「サブに切り替えろ!」

 

「はい!」

 

 

アザゼルの指示通りにオペレーターは稼働しているメインシステムの機能を停止して、サブシステムに素早く切り替える。だが、

 

 

「駄目です!こちらも汚染されています!」

 

我夢「っ!?サブシステムは完全に遮断されていた筈だっ!」

 

 

それを聞いた我夢は目を見開き、オペレーター達に駆け寄る。

こちらの動きを読んでいたのか、クリシスゴーストは完全遮断されている筈のサブシステムにも侵食して始めていたのだ。

 

 

「A2、A6のブロックがゴーストの侵入を受けてます!ワクチンプログラムが迎撃中!」

 

 

オペレーター達はワクチンプログラムを用いて必死に駆除を試みるが、ウイルスはワクチンの効力を受け付けない程強力で、その驚異の速度で次々に感染域を広げていく。

 

 

我夢「ワクチンを自己進化させるしかない…!コマンドをそっちへ送りますから!」

 

ロスヴァイセ「私もお手伝いします!」

 

 

オペレーターにそう告げた我夢は助太刀を申し出たロスヴァイセと共に中央のテーブルにあるコンピューターに駆け寄り、すぐに取り掛かる。

すると、 

 

 

バチッ!!

 

バラキエル「くっ!?」

 

 

バラキエルが近くにいた壁の精密機器がショートを起こし、火花が散る。

更に

 

 

ガクンッ!

 

『きゃっ!?』

 

『うわっ!?』

 

 

突然の揺れに皆は体勢を崩れる。

何とか立て直した一同が見たのはモニターに映るサブシステムの大半がウイルスに侵食されている光景だった。

 

 

石室「我夢。もし、全てのシステムが奪われたら……どうなる?」

 

 

そんな中、神妙な顔を浮かべる石室が問いかける。

すると、我夢は一旦作業を止め、深刻な面持ちで

 

 

我夢「リパルサーリフトが停止し………この船は落ちます…!」

 

『!?』

 

 

そうはっきりと告げられた一同は目を見開く。

XIGの前線基地であるこのエリアルベースには最先端の戦闘機が多く搭載されている。

もし落ちれば、破滅招来体への対抗力は間違いなくガタ落ちする。

 

 

我夢「敵のスピードが速すぎるんです!このデバイスでは入力が…!」

 

 

今でも我夢とロスヴァイセが頑張ってキーボードによる操作で駆除しようとしているが、ウイルスは2人のタイピングスピードを大きく上回る速度で感染していき、手に負えない状況だった。

更に

 

 

ドォンッ!

 

『!?』

 

 

またもや衝撃音が響き、エリアルベースは揺れる。

皆はコマンドルームの壁や柱に掴まり、堪える。

しかし、先程とは違うのはエリアルベース自体が揺れたというより、揺らされたという感覚だった。

すると、オペレーターは

 

 

「コマンダー!外部から攻撃を受けています!」

 

アザゼル「何だと!?」

 

 

それを聞いた皆は苦い顔を浮かべる。

こんな大変な時に敵襲とは…。

 

 

石室「ファイターとイーグルは出撃できるか?」

 

「駄目です!ウイルスの影響で発進ゲートが遮断されています!」

 

アザゼル「敵はわかるか?」

 

「レーダーとの通信が遮断されて、確認できません…!」

 

リアス「敵の全貌がわからない訳ね…。困ったわ……」

 

 

前線基地のほぼ全ての機能を奪われ、襲ってきた敵の全貌はわからない。敵がわからないとなると、戦略が立てられない。

苦しい状況下だが、ここで参る訳にはいかない。

 

 

石室「バラキエルはオーディン様をお連れして地上へ脱出!通信機器に詳しい者以外は外部の敵の対処へ移れ!」

 

『了解!』

 

 

冷静な石室の指示を受けたXIGメンバーは敬礼すると、早速行動に移る。

クリシスゴーストの対処は我夢、小猫、ギャスパー、ロスヴァイセ。その他のメンバーはアザゼルと共に外部の敵の迎撃へ当たった。

 

 

バラキエル「オーディン様。こちらへ」

 

オーディン「すまんのう」

 

 

バラキエルはオーディンを連れると、足下に魔法陣を展開すると、溢れる光と共に転移した。

 

 

我夢「みんな!何とかゴーストの侵攻を食い止めるんだ!」

 

『はい!』

 

 

我夢の号令のもと、小猫達はクリシスゴーストの対処を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、転移魔法陣で外へ出たリアス達はエリアルベースを襲った犯人と対峙していた。

その視線の先は黒いローブを纏った鋭い目付きの男性が上空へ佇んでいた。

 

皆が臨戦態勢をとっている中、男はバッとマントを広げると、高らかに語りだす。

 

 

ロキ「シッ、グ~~~の諸君っ!!我こそは北欧の悪神!ロキ!」

 

『っ!』

 

一誠「?」

 

 

皆が知っている様子で目元を引きつらせる中、ただ1人一誠は誰だ?と首をひねる。

それを見かねたリアスは神妙な顔を浮かべながら

 

 

リアス「…ロキ。北欧の神の1人よ」

 

一誠「えっ!?じゃあ、アイツもオーディンの爺さんと同じ神なんすかっ!?」

 

 

その言葉に驚く一誠。見た目が若く、オーディンとは大分年が離れているだろう目の前の男がまさか彼と同じ神とは信じられないだろう。

 

しかし、同じ神話の神が来たというのにこの不穏な空気

…。一誠にはただよらぬ予感がするのを感じられずにいられない。

 

 

アザゼル「おい、ロキ。この船には主神オーディン殿が乗っているのを承知の上の行動か?」

 

 

そんな中、アザゼルが慎重に問いかけると、ロキは腕を組みながら

 

 

ロキ「うむ、勿論承知の上だ。我らが主神殿が他の神話体系に触れていくのが耐え難くてね……。我慢できず、うっかり攻撃してしまった訳だ」

 

アザゼル「言ってくれるじゃねぇか…!」

 

 

悪気もなく、あっさりと白状するロキにアザゼルは激しい剣幕で睨み付ける。

そんな彼を見たロキは可笑しそうにふっと笑みを浮かべる。

 

 

ロキ「これはこれは堕天使の総督殿。随分と変わられましたなぁ…。やはり、貴殿もかなり老いたと思われる。本来、会いたくはなかったのだが、致し方あるまい。オーディン共々、我が粛正を受けるが良い」

 

アザゼル「悪いがこっちも手詰まりなんでな……出来ればこっちも手一杯なんでな、お前の相手をしたくねぇんだけどな。というか、お前が他の神話に接触するのはいいってのかよ?矛盾してるな」

 

ロキ「他の神話体系と和平を結ぶのを防げればそれで良いのだよ」

 

 

自己中心的な物言いをするロキに皆は更に戦う意思を強める。だが、ロキはオーディンが地上へ避難していることには気付いていないようだ。

アザゼルもそれを承知で上手いこと、エリアルベース内にオーディンがいると思い込ませている。

 

 

アザゼル「ロキ、1つ訊きたい。禍の団(カオス・ブリゲード)と繋がっているのか?」

 

 

アザゼルの質問にロキは先程の余裕がある顔から一変、不機嫌な顔に変わると

 

 

ロキ「愚者たるテロリストと我が願いを一緒にされるのは不快極まりない。己の意志でここに参上しているまでだ」

 

 

その返答に皆はほんの少しだけ安堵する。もし、『禍の団(カオス・ブリゲード)』と神が繋がっているとなれば、他の神話体系の神々をも疑わなければならないからだ。

 

 

アザゼル「…そうか。とはいってもこのまま見過ごす訳にはいかねぇなっ!」

 

 

アザゼルはそう言い放つと、右手に光の槍を作り出すと先陣きって飛び出す。

 

猛スピードで接近したアザゼルは光の槍を振り下ろすが、ロキの人差し指と中指の間で切っ先を止められる。

 

 

ロキ「どうした?こんな攻撃、簡単に止められるぞ?」

 

アザゼル「けっ!そう簡単にいかねぇか」

 

ドォンッ!

 

 

挑発の笑みを浮かべるロキにアザゼルは毒づくと、光の槍を離し、魔力弾をロキの顔面に浴びせ、後退する。

ロキの顔面からは爆煙が立ち込めており、あの至近距離からの一撃ではただじゃすまないだろう。

 

 

ロキ「やはりこの程度か…」

 

 

爆煙が晴れたロキは余裕の表情でピンピンしており、顔には傷どころか埃1つすら付いていない。

これが神の実力だということを証明している。

 

 

ゼノヴィア「はぁぁぁーーーーーー!!」

 

イリナ「やっ!」

 

朱乃「雷よ!」

 

 

ゼノヴィアのデュランダルの斬撃とイリナの手から放たれた光輪、だめ押しとばかりに朱乃の雷がロキに襲いかかる。だが、

 

 

ロキ「ふん!」

 

 

ロキが両手を前へ突きだして気合いを込めると、発生した衝撃波で3人の攻撃はあっという間に解き消される。

それを見た3人は呆気にとられる。

 

 

イリナ「嘘!?」

 

ゼノヴィア「やはり、北欧の神相手には効かないか…」

 

ロキ「ふははは!中々いい攻撃だったが、神を相手するにはまだまだだな!そよ風に等しい!」

 

一誠「おらっ!」

 

 

ロキが高らかに笑っている隙に背後へ回り込んだ一誠が左回し蹴りを首もとに叩き込むと、すぐに後退する。

しかし、その一撃もロキには全く通用しておらず、まるで羽虫が肌についた感覚で首を擦っているだけだ。

 

ロキはゆっくり振り向くと、次の瞬間。一瞬で一誠の懐へ潜り込む。

 

 

一誠「っ!?」

 

ロキ「無駄だ」

 

 

そう呟いたロキから放たれた拳をくらい、一誠は驚く間もなく、大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

 

一誠「ぐあぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

リアス「イッセー!」

 

木場「イッセー君!」

 

アーシア「イッセーさん!」

 

 

血反吐を吐き、苦悶の叫びをあげる一誠にアーシアは回復のオーラを飛ばす。

体勢を立て直した一誠が緑色のオーラを浴びて回復している中、ロキはリアスへ視線を向ける。

 

 

ロキ「紅い髪。グレモリー家……だったか?先程吹き飛ばしたこの男はウルトラマンの片割れという訳か。現魔王の血筋に堕天使幹部、天使にウルトラマンか……面白い」

 

 

そう呟き、ニタッと口角をあげたロキは両手を高らかに広げ

 

 

ロキ「来いっ!我が愛しき息子よっ!!」

 

『?』

 

 

その掛け声に皆は首を傾げる。すると、その声に呼応したかの様にロキの近くの空間が歪むと、1匹の大型の灰色の狼が姿を現した。10メートルもある巨体に鋭い牙と爪が月夜に照らされて光っている。

 

 

ゾクッ…!

 

『!?』

 

 

ふとその狼の目がリアスへ向いた瞬間、リアス達は身を引きつかせる。その巨大な体に恐怖したというより、その狼の存在そのものに恐怖したのだ。

その狼を見たアザゼルは鬼気迫った顔で皆に振り向き

 

 

アザゼル「お前ら、気を付けろ!こいつは神喰狼(フェンリル)だ!神を確実に殺せる牙を持っている!!」

 

『っ!?』

 

 

それを聞いたリアス達は驚愕する。神を確実に殺せる?

皆が戦慄する中、ロキは不敵な笑みを浮かべ

 

 

ロキ「そうそう、気をつけたまえ。こいつの牙は神を殺せる代物……悪魔、天使の諸君らはかするだけでも致命傷になるだろう。さあ、フェンリルよ。その牙で奴らを引き裂き、その血を啜るがよい」

 

フェンリル「オォォォォーーーーーォォンッ!」

 

 

ロキの命令にフェンリルは答える様に遠吠えをして身構えると、ひゅっと一迅の風を残して姿を消す。

皆がどこだと見回そうとした瞬間、フェンリルはリアスの眼前に迫っていた。

 

 

リアス「っ!?」

 

フェンリル「グルルァァァァァーーーーーー!!」

 

 

目の前に現れたフェンリルに動揺して身動きが出来ないリアス。無慈悲にもフェンリルは前足に生えている鋭い爪を振り下ろす。だが、

 

 

一誠「やらせるかよぉぉーーー!!」

 

フェンリル「キャウン!?」

 

 

間一髪、猛スピードで駆けつけた一誠がフェンリルの横腹目掛けて頭突きをくらわせる。フェンリルも予想外の攻撃だったのか、驚きの悲鳴をもらしながら、大きく怯む。

 

 

一誠「部長!大丈夫ですか?」

 

リアス「え、ええ…大丈夫よ」

 

一誠「良かった~~」

 

 

彼女が安全だと知って安堵する一誠を見てらリアスは目を丸くする。直前に気付いたとはいえ、誰1人対応出来なかったフェンリルのスピードに対応ができ、しかも、一誠はダイナに変身してすらもない。

――――これもウルトラマンの力の恩恵、それともイッセー自身のポテンシャル…?リアスがそんなことを考えていると、すっかり体勢を立て直したフェンリルは牙を剥きながら、今度は一誠のもとへ飛びかかる。

 

 

フェンリル「ガルッ!」

 

 

フェンリルは飛び込みながら、口を大きく開きその鋭い牙で噛み殺そうする。

 

 

一誠「おわっと!?」

 

 

一誠はそのスピードに翻弄されつつも、紙一重のところで横へかわす。

だが、それに合わせてフェンリルも横へステップすると、たて続けに両前足の爪で引き裂こうとする。

 

 

ガシッ!ガシッ!

 

 

一誠はフェンリルの手首を両腕で掴んで防ぐ。

しかし、フェンリルは意地でも一誠を殺したいのか、その手を緩めず、ギギギ…と力を込める。

一誠も負けじと冷や汗をかきながら、歯を食いしばって両腕に力を込める。

 

 

一誠「んぎぎぎ……!!」

 

フェンリル「ガルルル…!!」

 

一誠「このっ、わんころがっ!」

 

ガァン!

 

フェンリル「~~~~~~~~!!?」

 

 

一誠は後方へ頭を引き、その勢いのままフェンリルの鼻っ面へ思いっきり頭突きを食らわせる。

余程痛かったのか、フェンリルは声にならない悲鳴をあげると、大きく後ずさる。

 

その隙に一誠は懐からリーフラッシャーを取り出し

 

 

一誠「調子に乗るなよ!本当の戦いはここからだぜ!」

 

 

そう言い放ちながら、リーフラッシャーを斜め上へ掲げると、白い光に包まれ、等身大のウルトラマンダイナへ変身した。

 

 

ロキ「ほぉう…」

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"~~~…!デェアッ!」

 

 

ロキが興味深そうに唸らせる中、ダイナは胸の前で両腕をクロスする。すると、額のダイナクリスタルが青色に輝くと、ダイナの姿が変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エリアルベースのコマンドルームでクリシスゴーストの駆除している我夢達は悪戦苦闘していた。

何とか力を合わせてワクチンを自己進化させようとするが、クリシスゴーストの感染速度は時間が経つにつれ強力になっていき、まともに対応しきれなかった。

メインシステム及びサブシステムの大半はウイルスに感染した影響で艦内の酸素濃度が低下し、空気は重苦しくなっていく。

 

 

我夢「(僕の力がっ!何の役にも立たないなんてっ!)」

 

 

我夢は自分の無力さに苛立ち、デスクに拳を叩きつける。

アグルの力を得て、パワーアップしたのにも関わらずにだ…。目の前の敵を倒せない自分を我夢は悔しく思っていると

 

 

小猫「…我夢先輩。諦めるのは早いです」

 

我夢「小猫……」

 

 

そう声をかけられ、我夢は振り向くと、彼女の手におもちゃの戦闘機の操縦桿の様なものを持っているのに気付いた。

 

 

我夢「それは?」

 

小猫「遊びで作ったジョイスティックデバイスです。前に先輩に教えてもらった技術で作ったんです」

 

 

小猫の言葉を聞き、我夢は確かに自宅でそんなことを教えていたのを思い出す。

 

 

小猫「ギャー君」

 

ギャスパー「うっ、うん!」

 

 

小猫に呼ばれたギャスパーはジョイスティックデバイスを受け取ると、コンソールをデスクにあるパソコンに繋げると、さっそくゴーストの駆除を開始した。

 

すると、どうだろうか?ギャスパーは精密かつ物凄い速度で次々とウイルスを撃退していく。ギャスパーはグレモリー眷属の中でも一番ゲームの腕前は高く、ハネジロー以外に負けたことは一度たって見たことない。

 

 

我夢「…さ、さすがプロゲーマー」

 

石室「…」

 

 

この光景に我夢とロスヴァイセのみならず、普段表情を変えることが少ない石室も唖然としている。

 

 

ギャスパー「……これで最後」

 

 

そして、3分も経たないうちに最後のブロックまでウイルスを撃退すると、メインシステムとサブシステムは復旧した。

 

 

我夢「やった!よくやったよ、ギャスパー!!」

 

ギャスパー「えへへ…」

 

 

はしゃぎ喜ぶ我夢に頭をなだられ、ギャスパーは心地良さそうに頬を緩ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、エリアルベース付近上空。

フェンリルと対峙したダイナは銀色のボディーに走る青いラインにスマートな体型。ウルトラマンダイナはフェンリルの超スピードに対抗する為、ミラクルタイプに姿を変えた。

 

 

フェンリル「グルルォォォーーーー!!」

 

 

またもや飛びかかってくるフェンリルは鋭い爪で引き裂こうとするが、

 

 

スカッ!

 

フェンリル「!?」

 

 

ダイナは体を発光させると、姿を消し、フェンリルの前足は空を切る。

フェンリルがどこだと辺りの気配を探ろうとした時

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

フェンリル「ギッ!?」

 

 

テレポーテーションで背後に回り込んでいたダイナの延髄蹴りを思いっきりくらう。

振り返ったフェンリルはスピードを生かした引っ掻き攻撃で攻め立てるが、ミラクルタイプとなったダイナを捉えることが出来ず、次々とかわされていく。

 

 

ダイナ「グアァッ!」

 

フェンリル「グルアッ!?」

 

 

その間、隙を見つけたダイナはフェンリルの腹部を蹴り、そのまま上空へ蹴飛ばす。

平衡感覚を狂わされ、ジタバタともがきながら飛んで行くフェンリルへダイナは人差し指と中指を突き立て

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

ボウッ!

 

フェンリル「ギャウゥン~~~!?」

 

 

念力を込めると、フェンリルの体は突如発火した。

これこそ、ミラクルタイプが有する超能力の1つ――自然発火現象『ダイナファイヤー』だ。

身体中から燃え盛る炎の苦痛にフェンリルは苦悶の悲鳴をあげる。

 

 

木場「燃え盛る火事は…!」

 

リアス「鎮火しないとねっ!」

 

ドウンッ!!

 

 

その隙に木場の水の聖魔剣とリアスの放った滅びの魔力が襲いかかる。ダイナの超能力で気をとられていたフェンリルは避けられず直撃、爆発が起きる。

 

そして、爆煙が晴れるとフェンリルは銀色の毛並みが黒焦げになりながらも五体満足の状態で宙に佇んでいた。

 

 

フェンリル「グ、グルルルル…!」

 

 

牙を剥きながらダイナ達を威嚇するフェンリルだが、先程とは違って明らかに動揺を隠す為の威嚇だった。

 

 

ロキ「お、おのれ…!」

 

 

ロキは悔しげに歯を噛み締める。自分の中でも最高傑作のフェンリルがまさかここまで追い込まれるとは思わなかったからだ。

すると、そこへアザゼルのXIGナビに通信が入る。

 

 

《我夢「先生。エリアルベースのコンピューターに侵食していたウイルス全て、駆除しました」》

 

アザゼル「おおっ、そうか」

 

 

その報せを聞いたリアス達は顔を明るくする。

心の中でガッツポーズをとったダイナはロキを見据え

 

 

ダイナ「まだやるか?」

 

 

挑発を織り混ぜた問いかけにロキは込み上げる怒りを抑えながら、不敵な笑みを浮かべ

 

 

ロキ「無論、そのつもりだ。フェンリルでは相手が悪かったらしい。今度はこちらの手番だ」

 

『っ』

 

ロキ「行くぞ…」

 

 

そう答え、莫大な魔力を滾らせ、こちらへ向かってこうようとするロキに皆が身構えていると、

 

 

ドンッ!

 

ロキ「っ?」

 

『!?』

 

 

突如、上空から降りてきたバスケットボールサイズの魔力弾がロキに襲いかかった。ロキは咄嗟に片腕で防ぐ。

誰の仕業だ?皆が疑問に思いながら飛んできた方角を見上げると、

 

 

ヴァーリ「初めまして、悪の神ロキ殿。俺は白龍皇ヴァーリ。貴殿を屠りにきた」

 

 

龍を模した白銀の装甲を纏ったヴァーリがこちらを見下ろしていた。その後ろにはアーサー、黒歌、美猴といった強力な面々が控えている。

彼らを見て、ロキはよりいっそう口角をあげ

 

 

ロキ「ふっ、どうやらここまでのようだ。今日は一旦引き下がろう!だが、この国の神々との会談の日。再び相まみえようぞ!」

 

 

そう言い残しロキは指をパチンと鳴らすと、フェンリルと共に姿を消した。

それを見届けたヴァーリは禁手化(バランス・ブレイク)を解除すると、リアス達へ近寄る。

 

 

ヴァーリ「オーディンの会談を成功させるにはロキを撃退しなければならない」

 

 

突然今回の件について話し出すヴァーリに変身を解除した一誠が

 

 

一誠「んなこたぁわかってるって。今の戦い、見てただろ?ロキでも余裕だって」

 

美猴「馬~鹿。手下がフェンリル1体だけだと思うかぃ?それにロキの実力を全部見てない癖に大口叩くなよ。脳筋ゴリラ」

 

一誠「はぁ!?誰が脳筋ゴリラだっ!お前だって人のこと言えねぇじゃねぇか!この、人成り立てチンパンジー!!」

 

美猴「何ぃ!?やんのかっ!!」

 

一誠「やんのか、こらっ!!」

 

 

ギャーギャー言い争う2人をよそにアザゼルはヴァーリを見据え

 

 

アザゼル「ヴァーリ。何が言いたいんだ?」

 

 

そう問いかけると、ヴァーリは予想だにもしない言葉が返ってくる。

 

 

ヴァーリ「今回の一戦、俺達が協力してやってもいい」

 

『っ!?』

 

 

その発言にアザゼルやリアス達はおろか、言い争っていた一誠も大きく目を見開く。

敵であるヴァーリとその仲間――――思いもよらぬ共闘の申し出にリアス達はしばらく固まるのだった。

 

 

 

 

 




次回予告

ロキを倒すべく、ヴァーリチームと手を組むことにしたXIG。
語られる悲しき朱乃の過去…!それを知って我夢はどうするのか?

次回、「ハイスクールG×A」
「共闘作戦第一号」
迫られる選択に我夢は…!







よろしければ感想&コメントよろしくお願いします。


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第43話「共闘作戦第一号」

悪神 ロキ 
神殺獣 フェンリル 登場!


ロキの襲撃から翌日。兵藤家の地下1階にある大広間には我夢達オカルト研究部の面々にバラキエル、シトリー眷属、そしてヴァーリチームといった中々の異色の面々がロキ打倒作戦の為、集まっていた。

当初はエリアルベースに開こうとしたが、またクリシスゴーストに乗っ取られる心配があるので、兵藤家で行うことになった。

 

ちなみにオーディンとロスヴァイセは別室で本国と連絡を取っているのでこの場にいない。ロキが日本に現れたことは北欧でも大騒ぎになっているそうだ。

テロリストと協力―――そのことに納得がいかない面々がいる中、アザゼルは話す。

 

 

アザゼル「今回の作戦は俺達だけで行う。()()()()()()()()()()()()らしいからな……加勢は期待できない」

 

リアス「っ、何かあったの?」

 

 

その言葉にピクンと反応したリアスは問いかけると、アザゼルは頷き

 

 

アザゼル「ああ。昨日連絡が着てな。俺達がクリシスゴーストとロキの襲撃を受けている間、実はグリゴリ本拠地が()()()によってシステムが乗っ取られたそうだ」

 

『!?』

 

 

それを聞いた皆は目を見開く。自分達が対処に追われてる間に他所で敵襲があるとは…。

 

 

一誠「ちょっ!?そんな悠長にして大丈夫なんすかっ!?」

 

アザゼル「まあ、落ち着け。幸いシステムもすぐに復旧したし、怪我人もいねぇ。施設も損傷はしてない。ただ……」

 

我夢「ただ?」

 

 

我夢が首を傾げながら復唱すると、アザゼルは

 

 

アザゼル「研究用に保管していた金属生命体アルギュロスの破片サンプルだけが盗まれたそうだ」

 

リアス「何ですって!?」

 

小猫「アルギュロス…!」

 

ゼノヴィア「私達が遭遇したあの金属生命体かっ…!」

 

 

それを聞いたグレモリー眷属の面々は一斉に驚く。

金属生命体アルギュロス―――破滅招来体から地球へ送り込まれた生命体で、アグルの聖地『プロノーン・カラモス』を狙い、ウルトラマンアグルと死闘を繰り広げた強敵だ。

アルギュロスはアグルによって倒されたが、まさかその破片を堕天使側が回収してたとは初耳だ。

 

 

アザゼル「犯人は……まあ、クリシスゴーストだな。エリアルベースを襲ったのはその囮の為だろう」

 

我夢「どうして、アルギュロスの破片なんかを?」

 

アザゼル「いんや、そこんとこはわかんねぇ。まさか冥界にまで手を伸ばせるのは予想外だった。とにかく、今後もクリシスゴーストが他勢力の施設を乗っ取るリスクがある。だから、その警戒を緩める訳にはいかねぇから、ロキは俺達で何とかするしかねぇ」

 

 

アザゼルの話を聞き、ヴァーリチーム以外の面々は頷く。冥界や天界のことは気になるが、とにかく目の前の問題であるロキの解決が今優先すべきことは皆にはわかった。

皆が納得したのを確認したアザゼルはヴァーリへ顔を向ける。

 

 

アザゼル「…んで、ヴァーリ。お前が俺達に協力する訳は?」

 

 

アザゼルの質問にヴァーリはふっと不敵に笑うと

 

 

ヴァーリ「ロキとフェンリルと戦ってみたいだけだ。悪神とそれを越えるかもしれない力を持つ獣と戦う機会なんて早々ない。仲間達からも許可を得ている。不服か?」

 

 

そう迷いもせずハッキリと答える。相変わらず戦闘狂だな…と我夢達が思う中、アザゼルは怪訝そうに眉間にしわをよせ

 

 

アザゼル「まあ、不服と言われれば不服だな。だが、今は1人でも戦力が欲しいところだ。テロリストと組んでいるっていうのが少し問題だが、旧魔王の血筋であるお前の頼みを無下に出来ないとサーゼクスから言われてるからな。お前をこのまま野放しにするよりかはマシだ」

 

ヴァーリ「わかってくれて助かる」

 

『…』

 

 

承諾と受け止め、そう答えて不敵な笑みを浮かべるヴァーリをリアスやソーナ達は不満そうに見つめる。

下手に動かれるよりかは監視下に置く方が対処しやすいだろうが、テロリストと手を組むとはやはり不安でしかない。特にリアスはアザゼルやサーゼクスの懸命な頼みを聞くまで最後まで反対していた。

 

そう言ったアザゼルはヴァーリの瞳をじっと捉え

 

 

アザゼル「何を企んでいるんだ?」

 

ヴァーリ「さあね?」

 

アザゼル「怪しい動きをしてみろ?この場にいる誰もがお前の敵だからな。いくらお前でも、容赦なく引っ捕らえることを覚えておけ」

 

ヴァーリ「そんなことをするつもりは毛頭ないさ。だが、かかってくるならば、遠慮なく迎え撃つ」

 

 

アザゼルに釘を刺されたヴァーリは余裕ある態度を崩さず、逆に挑発的な言葉を返すと、途端に不穏な空気が漂う。

今にも戦いそうな雰囲気―――まさに一触即発の状態だ。

 

だが、アザゼルはヴァーリから顔を反らして気持ちを切り替えると、同時に話を変える。

 

 

アザゼル「…まあ、ヴァーリのことは一旦置いておく。さて、俺はロキとフェンリルの対策を聞きにいく予定だ」

 

一誠「誰に?」

 

アザゼル「五大龍王の1匹、『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)ミドガルズオルムだ。本来は北欧の深海で寝てるんだが、タンニーンとヴリドラの力を使って意識だけを呼び寄せるつもりだ」

 

匙「えっ!?俺も…?」

 

 

一誠への返答を聞いた匙は少々嫌そうな顔を呟く。

得体の知れないものに会うのは少々苦手なのかも知れない。その証拠にウルフガスにビビっていたことを我夢は思い出す。

アザゼルはバラキエルをチラリと見ると、我夢達を見渡し

 

 

アザゼル「まあ、とりあえず大方のことは俺達に任せろ。匙、タンニーンと連絡が付くまで待っていてくれ。俺は冥界に戻ってシェムハザに対策についてを話してくる。お前らはそれまで待機、絶対暴れるなよ?バラキエル、付いてきてくれ」

 

バラキエル「了解した」

 

 

そう言うと、バラキエルと共に大広間から去っていった。

 

 

『………』

 

 

広々とした大広間に残されたグレモリー眷属、シトリー眷属、それにヴァーリチーム間からは何とも言えない静寂が流れる。

お互いに何をすればいいのかわからない状況だ。

その静寂を最初に破る様に挙手したのは美猴だ。

 

 

美猴「なあ、ダイナ」

 

一誠「?」

 

美猴「この下にある屋内プールに入っていいかい?」

 

一誠「は?」

 

 

ニカッと笑う美猴の口から出た予想外の言葉に一誠はポカーンと口を半開きにする。

かたち的に協力関係ではあるが、敵である彼からそんな友達みたいな質問が来るとは思わなかったからだ。

 

一誠が返す言葉が思い付かず渋っていると、それを聞いたリアスがずんっと前へ出ると、美猴へ指差す。

 

 

リアス「ちょっと。ここは私とイッセーの家よ。勝手なマネは許さないわ」

 

美猴「まーまー、いいじゃねぇか!いくら敵同士でも今は味方。そんなんでいちいちピリピリしてるんじゃ、この先やってけねぇぜぃ?」

 

リアス「うるさいわねっ!余計なお世話よ!!私の生き方にどうこう言われる筋合いはないわ!!このバカ猿っ!!」

 

美猴「何だと!?やるか、紅ショウガ!!」

 

一誠「お、おい…。やめとけよ…」

 

 

ギャーギャーと言い争う2人を一誠はタジタジになりながらも両者をなだめようとする。

だが、美猴は不機嫌そうに一誠へ顔を向けると

 

 

美猴「うるせぃ!これはコイツと俺の問題なんでぃ!()()()は引っ込んでろやいっ!」

 

ピクッ…

 

一誠「単細胞……?」

 

 

単細胞―――その禁句を耳にした一誠はピタリと止まると、次の瞬間、一誠は怒りを爆発させた。

 

 

一誠「誰が単細胞だぁぁーーー!!大人しくしてたらいい気になりやがって!!」

 

美猴「へっ!売り言葉に買い言葉か!情けないぜぃ、すぐ単細胞って言われてキレるなんてよ!!5歳児以下だぜ!」

 

一誠「言わせておけば~~~~っ!!部長!コイツに俺達の怖さを思い知らせてやるましょう!!」

 

リアス「ええ!盛大に血祭りにあげてあげましょうっ!」

 

アーシア「あ、あの~…」

 

 

絶対に暴れるなと言うアザゼルの言葉を早速忘れた一誠とリアス。怒りのオーラを滾らせており、対する美猴はケラケラと笑っている。アーシアは止めようとしているが、この空気に圧巻され、困った様におろおろしている。

“怖さを思い知らせてやる”とか“血祭り”とか、とても防衛組織の人が言う言葉じゃないのだが……。

 

 

イリナ「へ~、これが失われた最後のエクスカリバーなんですね!すごい!」

 

アーサー「ええ、ヴァーリが発見した独自の情報と我が家に伝わる伝承を照らし合わせて見つけたのですよ。あ、ちなみに場所は秘密ですよ」

 

 

そのよそではすっかり意気投合したイリナとアーサーがエクスカリバーについて話している。

イリナは誰とでも気軽に明るく接するので、学園でも転校して間もないのにすっかり馴染んでいる。

気難しい藤宮が心を許したのもこういったところからだろう。

 

そんな2人の会話を木場とゼノヴィアは警戒しながら聞いている。敵であるアーサーに隙を見せる訳にもいかないが、剣を扱う者同士、伝説の聖剣が気になっている仕方がない様子だ。

 

 

ヴァーリ「(果たして上手くいくか……)」

 

 

椅子に座っているヴァーリはどこからか持ってきた少し厚めの本を眺めつつ、自分の計画について考えていた。

相手は悪神ロキ。恐らく今の自分の実力では勝てないだろう…。しかし、ウルトラマンがついているXIGに協力すれば、()()()()()…上手くいけばロキを倒せるかもしれない。

そんなことを考えていると

 

 

ゾクッ…!

 

ヴァーリ「っ!?」

 

 

突然悪寒が走り、ヴァーリは読んでいた本を床に落とす。背すじに氷を入れられ、全身の毛穴という毛穴から冷や汗が溢れ出る……そんな感覚が実感できた。

ヴァーリは目を見開いて振り向くと、ラムネを片手に飲んでいる四之宮がこちらに背を向けて椅子によっかかっていった。

 

 

ヴァーリ「(…い、いつの間に!?)」

 

 

ヴァーリは生まれて初めて戦慄した。昔から心身共に鍛えた影響で気配を即座に感知でき、背後を取られたことは1回もない。

だが、この男が後ろにいるのには悪寒が感じるまで気付かなかった。しかも強くも弱くも無さそうな中途半端な男にだ。

ヴァーリが驚愕で言葉を失っていると、ラムネを飲み干した四之宮はプハーと息を吐くと、ヴァーリへ振り向き

 

 

四之宮「よう。悪いな、お取り込み中の様だから話しかけなかったんだ。どうだ?もう1本あるから飲まねぇか?」

 

ヴァーリ「い、いや…大丈夫だ」

 

 

四之宮にポケットから取り出した新しいラムネを飲むように勧められるが、ヴァーリは苦笑いを浮かべながら断る。

正直、先程の悪寒のせいで喉はすっかりカラカラとなっていたが、とても飲む気にはなれない。

 

それを聞いた四之宮は残念そうな顔を浮かべると、ラムネをポケットへしまう。そのままヴァーリの前へ出ると、床へ落とした本を拾い上げ、それをヴァーリへ差し出す。

 

 

四之宮「ほれよ。落としもんだ」

 

ヴァーリ「悪いな」

 

 

ヴァーリは軽く心を落ち着けると、四之宮に軽く会釈して手渡された本を受けとる。

 

 

四之宮「ところで何の本なんだ、これ?この辺りじゃ中々見ないが」

 

ヴァーリ「『コズモクロニクル』っていう30年も前に大ヒットしたSF小説で、かつては世界中で100万部以上発刊されたロングセラー作品さ。今は第3部まであって続編も書かれる予定だったらしいが、作者が突如失踪してしまってね……それから人気も衰退し、今じゃ絶版品で、中々表では出回っていない。いわば、化石作品さ」

 

四之宮「なるほどな~」

 

 

ヴァーリの説明を聞き、四之宮は興味深そうに頷く。

コズモクロニクル―――四之宮、否、ジャグラーは以前に旧友から聞いたことがあるような気がしたが、特に思い出す必要もないので、考えるのをやめる。

 

 

四之宮「邪魔して悪かったな」

 

ヴァーリ「いや、平気さ。ロキとの戦いが控えている以上、俺も出来るだけコンタクトを取りたかったからな」

 

四之宮「そうだな~。じゃ、俺はこれで失礼するぜ」

 

 

そう言った四之宮は回れ右して立ち去ろうとするが、「おっと言い忘れたことがあった」と何か思い出したのか相槌を打つと、怪しげな笑みを浮かべてヴァーリの肩に顎を乗せると、そっと呟く。

 

 

四之宮「()()()()、うまくいくといいな…」

 

ヴァーリ「っ!?」

 

 

その言葉を聞いたヴァーリは目を丸くして、ゾッと背すじを凍らせる。

―――その計画、うまくいくといいな…。その声音からまるで最初から自分の心を見透かされていた様な感覚を味わった。

ヴァーリは気のせいかも知れないが、自分の肩に顔を乗せる四之宮の瞳が黒から禍々しい緑色に見えた気がした。

 

ヴァーリが言葉を失っている中、顔を上げた四之宮はヴァーリの肩をポンポンと軽く叩くと、ソーナのもとへ歩いていった。

彼が離れた瞬間、ヴァーリは肩から重りがなくなったかの様に肩を撫で下ろした。

 

 

ヴァーリ「(何者なんだ……アイツは……)」

 

 

遠くで呆れた様子のソーナと楽しく会話する四之宮を見て、ヴァーリは四之宮に警戒しながらも疑問を募らせるばかりだった。

 

 

黒歌「やっほー♪」

 

小猫「……」

 

 

一方、そこから少し離れたところには黒歌と小猫が向かい合っていた。

妖艶な笑みを浮かべる黒歌に対し、小猫は警戒しながら睨み付けている。やはり、姉に対して壁がある様子だ。

 

 

ギャスパー「…こ、小猫ちゃんのお姉さん。美人ですけど怖いですぅ…」

 

 

小猫の後ろにはギャスパーがぶるぶると怯えながら隠れている。どうやら、ギャスパーも黒歌に対しては恐怖しかなさそうである。

 

その不穏な空気を感じた我夢は両者の間にさっと割り込むと、小猫を自身の後ろへ隠す。

 

 

我夢「黒歌。まだ小猫を連れていくつもりなのか?」

 

 

我夢は真っ直ぐ黒歌を見据えて訊ねる。小猫は黒歌への怖さを押し殺そうとしているのか、我夢の右腕にぎゅっと掴みながら黒歌を見つめる。

黒歌はきょとんと目を丸くしていたが、何かを察したのかすぐに小悪魔な笑みを浮かべると、我夢の顔をまじまじと眺める。

 

 

黒歌「う~~ん。最初に会った時よりも凛々しくなっているにゃ。やっぱりアグルの力を得た影響かにゃ?それとも、女の味を知ったからにゃ?」

 

我夢「…?何が言いたいんだ?」

 

 

黒歌の発言の意図がわからない我夢は怪訝そうに訊ねると、次の瞬間、黒歌の口から爆弾発言が飛び出す。

 

 

黒歌「簡単なこと。私と()()()()()()()()?」

 

我夢「……え?」

 

 

その提案に我夢は思わず固まってしまう。

子供を作る…?困惑する我夢に黒歌は続け

 

 

黒歌「私ね、強い子供が欲しいの。うんと強い子供が。最初はドラゴンの遺伝子が欲しかったけど、ヴァーリには断られちゃって。だったら、ウルトラマンのあんたなら良いって思って。貴重な超古代人の遺伝子を持つし?」

 

我夢「待て。だったら、何で僕なんだ?他にイッセーがいるだろ」

 

黒歌「う~~ん。どっちにしようか迷ったけど、生まれてくる子供がお馬鹿さんじゃ嫌だし、やっぱり頭がキレる方がいいって思ったからにゃ」

 

我夢「お馬鹿さんって…」

 

 

黒歌の理由を聞いた我夢は苦笑する。前にも悪魔へ転生したばかりのゼノヴィアが子作りしようと持ちかけ、一誠を同じ様に酷評してたことを思い出す。

一誠は抜けてるところは多々あるが決して馬鹿ではないが、この様に過小評価され過ぎな気がする。

 

 

黒歌「妊娠するまでの関係いいからどうにゃ?」

 

 

 

妖艶な笑みを浮かべながら訊ねる黒歌。

しかし、我夢はそれで納得して首を縦に振る訳にはいかなかった。

彼女の発言からわかるが、その目的は我夢ではなく、我夢に流れる()()()()()()()()そのものだからだ。

 

猫又は数が少なく、女性の比率が多い種族なので基本的に他種族の男性と交配することは我夢も小猫から聞いたことがあるので、確かに元気な子供を作るには超古代人の遺伝子は欠かせないかもしれない。

 

だが、黒歌は勘違いをしている。ウルトラマンはドラゴンをも遥かに越える力を持っているが、絶対的な安全さと強さを持っている訳ではない。

一歩間違えたら他者のみならず、自身までを傷つける諸刃の剣になるやもしれない恐ろしい代物でもある。現に自分が怒りに囚われたせいで自分や藤宮のみならず、冥界に危機を呼び寄せてしまったことがある我夢には痛いほどわかっているし、生まれてくる子供も不憫だ。

 

我夢はきっぱり断ろうと口を開きかけた瞬間、小猫が我夢を庇う様に前へ出た。

 

 

小猫「…だ、駄目っ!姉様に先輩の………は渡しませんっ!」

 

 

小猫は焦った顔を浮かべながら黒歌へ制止を促す。途中で言葉を濁らせて聞き取れなかったが、つまりそういうことだ。

その反応を見た黒歌は面白そうに笑みを浮かべ

 

 

黒歌「へ~…白音、やけにあんたがその子にベタベタしているのは付き合ってるからなのね~」

 

小猫「ちっ、違いますっ!私と先輩は…!その…」

 

黒歌「違うの?……あっ、お姉ちゃんわかった!()()()()()()って訳ね」

 

小猫「……し、してませんっ!姉様のスケベな考えを私と一緒にしないで下さいっ!」

 

黒歌「んにゃ?私はまだ()()()()()()って、はっきり言ってないにゃ。にゃはは♪エッチなことを思い浮かぶ白音も人のこと言えないにゃ♪」

 

小猫「~~~!!」

 

 

黒歌にからかわれた小猫は顔を真っ赤にして恥ずかしげな声で唸る。先程のシリアスな空気から一変し、賑やかな空気になり、我夢は困惑した顔を浮かべていると、

 

 

梶尾「おい、俺の後輩をいじめるなよ」

 

黒歌「?」

 

我夢「っ、梶尾さん」

 

 

この騒ぎが気になったのか、横から梶尾が現れる。

黒歌が誰?と思ってる中、梶尾は彼女を睨み付け

 

 

梶尾「今はロキ打倒の為に仕方なく組んでるが、これが終われば次は自分達の番と思え…。俺の目が黒いうちはここでの好き勝手は許さん」

 

 

低い声音でそう忠告する。梶尾もリアスほど不満を露にしてなかったが、やはりヴァーリ達と組むことには反対の様だ。

その忠告に黒歌はきょとんとするが、すぐにいたずら気な笑みを浮かべると、

 

 

ペロッ…

 

梶尾「っ!?」

 

 

と軽く味見をする様に頬を舐めた。突然のことに梶尾は目を丸くして後ずさる。

頬を舐めた黒歌は舌を口内へ収めると、口を少しだけ動かしながら「う~ん」と声を唸ると、梶尾をニヤリと見つめ

 

 

黒歌「この味は子供の味かにゃ?経験ありそうと思ったけど、まだまだお子様なのね」

 

梶尾「うるさいっ!悪かったな、子供でっ!」

 

 

そう挑発すると梶尾は顔を真っ赤にして声を荒げる。

冷静沈着な梶尾がこんなちょっとした言葉で動揺する姿を初めて見た我夢達が内心驚いていると、ペースに乗ったのか黒歌は

 

 

黒歌「んー?見た感じ、あんた女慣れしてないにゃ。折角だから、私が教えてあげようかにゃ?ほら」

 

梶尾「だぁぁーー!!だっ、だ、だ、だ、誰がお前と何かとするかっ!!ちゃんと服を着ろっ!はしたない!」

 

黒歌「にゃはは♪尚更見せたくなるにゃ♪ほれほれ」

 

梶尾「なっ!?や、やめろぉぉ!!」

 

 

挑発する様に胸元を見せびらかす黒歌を梶尾は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、着物を整えようとするが、黒歌は手を止めず、胸元を完全に露出させようと挑発する。

いつもと違う梶尾のやり取りをはたから見た我夢達はポカーンとしていると、

 

 

梶尾「くっそぉぉぉーーーー!!敵前逃亡など、一生の不覚だっ!!」

 

 

梶尾はついに堪えきれなくなったのか、負け惜しみの叫びをあげながら猛ダッシュで大広間から逃走した。

 

 

黒歌「にゃはは~♪」

 

 

小悪魔な笑みを浮かべながら黒歌もその後を追っていった。取り残された我夢達はしばらく呆気にとられていた。しばらくすると、我夢が口を開き

 

 

我夢「な、何だったんだ…?」

 

ギャスパー「さ、さあ…?」

 

 

そう呟くと、小猫の後ろから身を出したギャスパーも目を丸くしながら答える。

その後、1時間後もしないうちに対策を整えたアザゼルが戻ってきた。

ちなみにリアスと一誠、美猴はアザゼルが宥めるまで口喧嘩を続けていたのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリゴリへ足を運ぶ途中、アザゼルは1人考えていた。

 

 

アザゼル「(ロキの襲来と同時にクリシスゴーストが襲撃。何か匂うな…)」

 

 

アザゼルは違和感を感じていた。クリシスゴーストのウイルスでエリアルベースが混乱している時に畳み掛ける様にロキが現れた。そして、その間にグリゴリからアルギュロスの破片サンプルが盗まれた。

ロキとクリシスゴーストの襲撃。この2つの襲撃によって防衛は人間界へと集中した。これらを整理したアザゼルは思ったのだ。

 

――――まるで意図的に組んでいたと。

 

最初こそは単なる偶然かと思ったが、グリゴリからの報告を聞いてから、それは確信に変わりつつあった。

 

 

アザゼル「(…とは言っても、まずは目の前のことを片付けるか…)」

 

 

 

そう思い直したアザゼルはバラキエルと共にグリゴリの施設へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日の朝。我夢と一誠はアザゼルに呼ばれ、兵藤家にある地下1階にある小部屋に集まっていた。何でもロキ討伐の必殺アイテムが届いたので、早速見てもらいたいとのことだ。

今日は平日で学校もあるが、グレモリー眷属及びシトリー眷属の面々はロキ討伐優先の為、代わりに彼らの姿を模した使い魔に行ってもらっている。

 

ちなみにシトリー眷属代表として同席する筈の梶尾は黒歌に追い回されている為、ここにはいない。

とても気の毒だが、黒歌を止められる人は思い当たりないので、彼には頑張ってもらうしかないと我夢は思った。

 

 

ロスヴァイセ「これがオーディン様からの贈り物のミョルニルのレプリカです。どうぞ」

 

 

同席していたロスヴァイセから一誠はミョルニルのレプリカを受け取る。それをまじまじと見る一誠の顔は次第に訝しげなものへと変わっていく。

 

 

一誠「…先生。これが本当にロキをぶっ倒す必殺アイテムですか?どう見てもホームセンターとかで見る普通のトンカチにしか見えないんですが…」

 

 

一誠は怪訝そうにアザゼルに訊ねる。

確かに彼の言う通り、豪華な紋様や装飾こそ施されているが、それを除けば市販のトンカチだ。

ロキを倒せる程の殺傷力も無さそうに見える。

それにアザゼルは

 

 

アザゼル「軽く力を込めてみな」

 

一誠「え?こ、こうっ…?おわっ!?」

 

ドォォォォンッ!!

 

 

促されるまま一誠は力一杯魔力を込めた次の瞬間、ミョルニルのレプリカはあっという間に一誠の身の丈を越える巨大なハンマーになった。

あまりもの重さに一誠は床に落とすと、ズシンッとこの建物が揺れる程の衝撃が走り、ミョルニルのレプリカは床へ埋まってしまった。

 

 

一誠「ふっ、ふんぬぅぅぅ~~~~!!」

 

 

一誠は急いでミョルニルのレプリカを床から持ち上げようと腕一杯に力を込めるが、ピクリとも動かない。

 

 

アザゼル「おいおいおい。魔力を込めすぎだ。もっと抑えろ、抑えろ」

 

一誠「えっ、おおっ…」

 

 

それを見かねたアザゼルのアドバイスを聞いた一誠は魔力を抑えると、ミョルニルのレプリカは次第に縮小し、両手で扱えるサイズにまで収まった。重たいことには変わりはないが。

 

 

アザゼル「まあ、とりあえずそのサイズをキープしろ。レプリカとはいえど、力は本物と変わらない。いくらロキの野郎でも一撃でも当たりさえでもすれば、ただじゃすまない。無闇に扱い方を間違えるなよ?この一帯ごと俺達が後片もなく消え去るからな」

 

我夢「え!?」

 

一誠「マジっすか!?」

 

 

それを聞いて青ざめた一誠はすぐさまミョルニルのレプリカを手渡されたサイズに戻す。

アザゼルは顔を後ろの壁へよっかかっているヴァーリへ変える。

 

 

アザゼル「ヴァーリ。お前もオーディンの爺さんにねだってみたらどうだ?今なら特別に何かくれるかもしれねぇぞ?」

 

一誠「先生!?」

 

 

その薦めに我夢達が不安そうな顔を浮かべるが、ヴァーリはフッと鼻で笑い

 

 

ヴァーリ「よしてくれ。俺にはこの天龍の力がある。ある彫刻家が言った。『現行のものに余計なものを付け足すとその美しさがなくなり、堕落していく』…と。それに俺が欲しいものは()()()()んでね」

 

『…』

 

 

――別にある。その意味深な言葉に我夢達は怪しむが、今はロキ対策が優先なので、アザゼルはフェンリル対策についてに話を変える。

 

 

アザゼル「んで、フェンリルについてはグレイプニルっ、つう魔法の鎖で捕縛する。鎖の製作はダークエルフの長老に任せている。完成次第、ヴァーリチームとグレモリー眷属に託す予定だ」

 

我夢「はい!」

 

ヴァーリ「了解した」

 

 

アザゼルの頼みに両陣営の代表は承諾する。

それを聞いたアザゼルはくたびれた様にソファーの背もたれにどっかりよりかかり

 

 

アザゼル「じゃ、これで話は終わりだ。作戦は後日伝える。それまで各自、戦いに備えて準備しておけ。あー疲れた。やっぱりこういう堅苦しいの役職は向いてねぇー。引退考えよっかなー…」

 

『…』

 

 

アザゼルの後半のぼやきに我夢達は苦笑する。アザゼルはほぼ毎日仕事に追われており、こうやって我夢達と触れあう時間帯もバラバラだ。更にロキのせいでその仕事の量も倍になったとか…。

 

そんなアザゼルを気の毒に思いながら、我夢達は来るべき戦いに備えるべく、部屋から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「アザゼル先生」

 

アザゼル「どうした?」

 

 

皆が退出し、アザゼルと2人っきりになった我夢は出ようとするアザゼルを呼び止める。

首をひねるアザゼルが問うと、我夢は口を訊ねる。

 

 

我夢「朱乃さんについて聞きたいんです。どうして、お父さんとあんなに険悪なんだって」

 

アザゼル「っ!」

 

 

その質問にアザゼルは目の色を変える。

前々から予想していたが、その表情の変わり様を見て、我夢はやはり朱乃さんの過去を知っているなと確信した。

 

 

我夢「前に先生が言ってたじゃないですか?昔にあった出来事で朱乃さんが自分に流れる堕天使の血を嫌いになったって。知っているなら教えて下さい!僕は朱乃さんの助けになりたいんです!」

 

アザゼル「…っ、わかった。話はちょっと長くなる。ソファーに座りな」

 

 

我夢の真っ直ぐな熱意に負けたのか、アザゼルは我夢へソファーへ座る様に勧めると、2人は向かい合わせでソファーへ座り直す。

 

 

アザゼル「これから話すことはできるだけ他言無用で頼む。朱乃にとっちゃあ、聞くだけで悲しませるだけだからな」

 

我夢「はい…」

 

 

神妙なアザゼルの頼みに我夢は固唾を飲んで頷く。

それを確認したアザゼルは語りだした。

 

――日本。とある有名な神社の宗家の1人娘がいた。

その娘の名は『姫島 朱璃(しゅり)』と言い、とても美しい女性であり、一族が経営する寺の巫女として働いていた。

 

ある日、朱璃がいつもの様に寺を掃除していると、深い傷を負った1人の男性を見つけた。

それこそが朱乃の父である堕天使幹部のバラキエルだった。バラキエルは敵対組織の襲撃を受け、死の淵をさ迷っていたのだ。

 

本来なら人間に仇なし、それどころか人間ではない彼を助ける義理はない。しかし、それを見かねた朱璃は考える前にバラキエルを救おうと行動し、境内で手厚く看病した。

 

ナイチンゲール症候群であろうか。バラキエルと朱璃は次第に親しくなり、やがて惹かれあった。

そして、2人の間に1つの小さな命が宿った。

 

 

我夢「それが…朱乃さん」

 

アザゼル「…」

 

 

我夢の呟きにアザゼルは頷く。

まさかそんなドラマみたいな経緯だったとは予想もしなかった。

アザゼルは話を続ける。

 

朱乃は無事生まれた。しかし、そこで1つの問題が発生してしまう。堕天使と人間のハーフが誕生した事実が。しかも、朱璃の実家である姫島は血統に厳しく、普通の人間どころか堕天使と結ばれたとなれば命を狙われるのは明白だ。

 

その危機を察したバラキエルと朱璃は生まれたばかりの朱乃を連れ、隠れ家へと移り、バラキエルはできるだけ2人から離れない様にしつつ、堕天使幹部として働くことにした。

 

3人は慎ましい生活ながらも充実な生活を送っていた。

だが――その幸せは長くは続かなかった。

 

 

アザゼル「姫島家の人間は“堕天使の幹部に大事な娘が洗脳され、手篭めにされた”と勘違いし、高名な術者をけしかけた…。まあ、その時はバラキエルが何とか退けたが、術者の中には恨みを持つ者がいた」

 

我夢「…」

 

 

話を進めると共に顔を曇らせていくアザゼルを見て、我夢は不安を募らせていく中、アザゼルの口から出た言葉に不安が見事に的中する。

 

 

アザゼル「奴らは堕天使と敵対している組織へ、バラキエルの隠れ家を教えやがった」

 

我夢「…っ!」

 

 

それを聞いた我夢はやはりと悲しげな目を浮かべる。

アザゼルはこれ以上話したくなさそうに唇を噛み締めていた。しかし、我夢の熱意に応えるべく、堪える様に膝の上に乗せている手に力を込めて雑念を振り払うと、アザゼルは話を続けた。

 

その情報を聞いた敵対組織はバラキエルが留守の時を見計らい、隠れ家を襲撃した。

情もない攻撃に朱璃は朱乃を庇いつつ、応戦した。

 

 

アザゼル「バラキエルは危機を察知し、急いで戻った。家の周りにいた敵対組織の連中を蹴散らし、2人の安否を確認をしにいった。朱乃は母親が命懸けで守っていたから助かったが、母親の方は――」

 

我夢「死んだ…」

 

 

アザゼルに続けて呟くと、アザゼルは悲しげな表情を浮かべながら頷く。我夢は以前朱乃の家に招かれた時に仏壇を見かけたが、あの仏壇にお供えされている人物こそが母親の朱璃だったと知った。

 

 

アザゼル「その時、朱乃は思ったんだろうな。どうして父が駆け付けてくれなかったのか……多くの敵がいる堕天使がいなければ…ってな。そのせいで母を失う残酷な現実を突きつけられたアイツは堕天使を快く思わなくなり、バラキエルに心を閉ざしたんだ…」

 

我夢「…」

 

 

朱乃の壮絶な過去を聞き、我夢は出る言葉がなかった。

バラキエルを――堕天使を心から嫌う訳を知り、我夢は悲しさのあまり胸が締め付けられる。

 

その後、住む家を追われ、天涯孤独となった朱乃は安住の地を求め各地を放浪した。数年後、リアスと出会い、自身に流れる堕天使の血を否定する為、彼女の眷属となったのだ。

 

 

アザゼル「俺が全て悪いのさ……。あの日、バラキエルを呼び出したのは俺さ。そのせいで、バラキエルと朱乃は……。俺はダチの大切な妻と母を奪ったんだ」

 

 

アザゼルは顔を俯かせながら語る。

後悔の念に駆られる彼はいつもの飄々としたチョイ悪親父の姿には見えなかった。

 

 

我夢「…先生。だから、朱乃さんのことをあんなに気にかけてたんですか?」

 

アザゼル「…」

 

 

我夢がふいに問いかけるが、アザゼルは何も答えない。

だが、その様子から肯定であることが我夢には伝わった。

 

お互い、しばらく沈黙していると、アザゼルは我夢へ頭を下げる。

 

 

我夢「…っ!何を?」

 

アザゼル「我夢。重ね重ねすまないが、朱乃の助けになってくれ!」

 

我夢「僕が…」

 

アザゼル「こんなこと俺が頼む筋合いはない!だが、このままだとアイツはこの先、ずっと孤独だ!お前にしか出来ないんだ!頼む、この通りだ!」

 

 

深く頭を下げるアザゼルに我夢は困惑する。

我夢は以前、夏の合宿でアザゼルに似た様に頼まれたことがある。その時は朱乃の過去をあまり知らずOKしたが、今、真実を語った上で改めて頼んでいるのだろう。

 

落ち着かせた頭でこの状況を整理した我夢は微笑みながらアザゼルへ顔をあげる様に言うと

 

 

我夢「わかりました。任せて下さい」

 

アザゼル「…っ!?本当かっ」

 

我夢「はい。できるだけのことはやってみるつもりです。先生もそんな暗い顔しないで下さいよ。いつもみたいに笑って下さい」

 

 

それを聞いたアザゼルは嬉しそうに「そうだな…」と返すと、いつものチョイ悪な笑みを浮かべる。

 

 

アザゼル「すまない。頼むぞ」

 

我夢「はい!」

 

 

両肩に手を置きながら頼むアザゼルに我夢は元気よく承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「そうなのね…」

 

 

その後、リアスの自室へ向かった我夢は事務作業を終えた彼女に作戦のこと、アザゼルから朱乃の過去について聞いたことを話した。

朱乃の主であるリアスは当然、朱乃の過去は知っている。

 

デスクの上にある書類を軽く片付けたリアスは

 

 

リアス「私の眷属となって、悪魔として第2の人生を歩き出した朱乃は以前に比べてだいぶ明るくなったわ。何よりも我夢、あなたが私の眷属になってから、朱乃はより一層楽しそうにしてたわ。まるであなたと会うのが生き甲斐の様に」

 

我夢「僕が生き甲斐?」

 

リアス「ええ、教室ではいつもあなたの話ばかりしてたわ」

 

 

そう話すと、我夢は驚いていた。まさか自分が彼女の原動力になっていたのだと。

我夢はどうして朱乃が自分にここまで心を開いてくれるのか未だわからなかった。無自覚ながら自分に何か共通するもの、共感できるものがあったのだろう。

そう考えていると、リアスは我夢を真っ直ぐ見つめ

 

 

リアス「我夢。私からも頼むわ。バラキエルを憎んでもお母様が亡くなったことはどうしようもないってのは朱乃自身わかってるのよ。けれど、それを素直に受け入れられる程、朱乃は強くないのよ。誰かに支えてもらわないと、きっと壊れてしまう。だから、お願い。助けてあげて…」

  

 

我夢はリアスの瞳を見て気付いた。リアスは主としてでなく、同年代の友人を心配する1人の少女として頼んでいると。

それに気付いていてもいなくても、どっちみち我夢は首を横に振るつもりはなかった。

 

 

我夢「わかりました」

 

 

それを聞き受けた我夢は頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからすっかり夜になり、我夢は兵藤家の3階にある自室へと戻っていた。

広々としたベッドに仰向けになり、我夢は今日起きた出来事や今後のことについて色々考えていたが

 

 

我夢「やっぱり、そろそろマンションを引き払おうかな~?」

 

 

自分が前から住んでいるマンションの一室からこちらへ移そうかと悩んでいた。最近、破滅招来体や『禍の団(カオス・ブリゲード)』の動きが活発になってきた影響で自宅に帰れる機会がメッキリ減っている。

こちらへこのまま住む方が非常事態にすぐさま対応できるし、グレモリー家が生活費を6割負担しているので、家賃を払う必要もない。それに一誠の母親からも移住の許可を得ている。

 

 

我夢「その方がいいだろうな…」

 

ガチャ…

 

我夢「?」

 

 

我夢がそう呟きながら決心を固めていると、部屋のドアから開閉音が聞こえた。

何だろうと我夢は上体を起こしてそちらへ顔を向けると、長い髪を下ろした白装束姿の朱乃が部屋に入っていた。

 

 

我夢「朱乃さん…?」

 

朱乃「……」

 

 

訝しげな顔を浮かべながら我夢が声をかけるが、朱乃は何も答えず、顔を俯かせていた。

そのまま後ろ手でドアを閉めると、カチッとカギを閉めた朱乃は我夢の前までへ歩み寄る。

 

 

朱乃「……我夢君」

 

我夢「はい?」

 

 

声をかけられた我夢は不思議そうに答える。

我夢には心なしか朱乃の表情には艶があり、声は低い様な気がした。

そんなことを思っていた瞬間

 

 

シュル…シュル……パサッ

 

我夢「!?」

 

 

朱乃は腰の帯を解くと、白装束を床へ脱ぎ捨て、白い裸体を我夢の眼前で露にした。

 

 

我夢「な…!?」

 

 

突然、目の前に現れた一糸纏わぬ朱乃の裸体に我夢は目を見開きながら顔を真っ赤にし、口をポカーンと開けたまま固まってしまう。

服の上からだと煩悩が沸き起こったりするが、今はそれすら起きなかった。

白く透き通る様な肌に出てるところは出て、締まるところは締まっている朱乃の美体を前に気絶しそうになっていた。

 

我夢がパニック状態に陥っている中、朱乃は彼に抱き付くと、そのままゆっくりベッドへ押し倒す。

胸元から伝わる朱乃の豊満な胸の感触に我夢は口をパクパクさせていると、朱乃は耳元で

 

 

朱乃「抱いて」

 

我夢「~~~~~~~!!?」

 

 

そうそっと囁くと、我夢は顔から蒸気が出るのではないかと思うぐらい真っ赤にする。

抱いて…抱いて…抱いて…抱いて…抱いて…抱いて…

頭の中で何度も再生させ、我夢はその言葉の意味にますます混乱する。

あまりこういうのには慣れてない我夢には刺激が強く、意識をギリギリ保つのがやっとだ。

 

そんな中、朱乃は我夢の頬に両手をそっと添え

 

 

朱乃「キス…するね…?」

 

我夢「え、え、え、え、え!?ままままっ!?」

 

 

そう告げると、頬を赤くした朱乃は瞼を閉じ、我夢へ顔を近づける。

あたふたする我夢だが、その間にも朱乃の顔は近付き、鼻先が触れあう距離まで来た。

 

 

我夢「………っ!」

 

 

堪忍して目を瞑ろうとする我夢だが、ふいに朱乃の手に触れた瞬間、何か異変に気付いた。

彼女の手がカタカタと震えていることに。

そう気付いた否や我夢はあたふたするのを止め、キリッとした顔つきになると、朱乃の両肩を掴んで上体を起こさせる。

 

 

朱乃「どうして?私の体、魅力ない…?」

 

 

朱乃は不安そうに震えた声で訊ねる。確かに我夢は先程まではパニックになっており、そのままでも良いかもと思ったが、彼女が震えているのを知って、このまま流されてはいけないと判断したのだ。

我夢は出来るだけ朱乃の顎から下は見ない様にしながら彼女を見つめ

 

 

我夢「いえ。朱乃さんは十分魅力あります。僕はこのままでもいいやっと思いました……正直、気絶しそうでしたし…」

 

朱乃「なら、どうして…?好きに使っていいのよ?あなたに全て委ねて、全て消し去りたいの……。なのに、どうしてなの…?」

 

我夢「じゃあ、どうしてそんな悲しそうな顔をするんです!体も震えてるじゃないですかっ!」

 

朱乃「…っ」

 

 

我夢に指摘された朱乃はハッとなり、体の震えを抑えようと身を強張らせる。

我夢は続けて

 

 

我夢「いつもならからかう様に、楽しむ様にこんなことをしてくる…。でも、今のあなたからはそれが感じられない。悲しいこと、辛いことを忘れようと自暴自棄になっている」

 

朱乃「そうよ…って言ったらどうする?あなたに抱かれることで全てを忘れ、決戦に臨む。それでいいじゃない…?」

 

我夢「そんなの間違っている!例え、それで安心したとしても一時的なもの!何の解決にもならないっ!」

 

朱乃「じゃあ…っ!じゃあっ、どうすればいいのっ!?」

 

 

そうぶつける様に叫ぶと、朱乃は肩を震わせ、泣き出してしまう。

我夢は優しい顔になると、一旦朱乃を自分の上からそっと下ろすと、床に落ちている白装束を彼女の肩にかけ、彼女が泣き止むのをじっと待った。

 

 

我夢「落ち着きました?」

 

朱乃「……ぐすっ……ええっ…」

 

 

しばらく経って、朱乃は泣き止んだ。瞳は涙で濡れており、嗚咽もあり、まだ体の震えも完全には止まってないが、もう十分話を聞ける状態と判断した我夢は朱乃の両肩に手を当て、静かに話し始める。

 

 

我夢「…朱乃さん。実は僕、アザゼル先生からあなたの過去に何があったのか聞きました。色々、悲惨なことがあったって…」

 

朱乃「…」

 

我夢「確かに世界は否定するかもしれない……。けど、世界が否定しても、ここにいる誰もが朱乃さんを否定しない。僕だってそうです。だから、もっと自分を大切にしてください……。そうじゃないと、僕は黙って受け入れることは出来ません………」

 

 

我夢がそう言うと、朱乃は納得したのかシュンと肩を下ろす。

我夢はそんな朱乃を見て思い出したのだ。経緯や生まれが違えど他者を憎み、自分を省みず何処かへ消えていった藤宮()のことを…。

 

しかし、納得しても朱乃は不安そうな顔を浮かべたままだった。ならどうすればと。

そんな彼女に我夢は優しく微笑みかけ

 

 

我夢「朱乃さん。こういう時は甘えていいんですよ。僕で出来ることなら何でもしますから。でも、さっきみたいに刺激が強いのはお断りですよ?」

 

朱乃「……」

 

 

そう言葉をかけると、朱乃は少し考えると、我夢を見つめ

 

 

朱乃「…じゃあ、一晩中抱き締めて。私の不安がなくなるまで…」

 

我夢「…はい」

 

 

そう頼むと、聞き受けた我夢は朱乃と共に布団で横になり、掛け布団をかけ、お互い抱き締める。

ちなみにこの時の我夢は「僕ってなんて大胆なことを…?」とまたもや脳内パニック状態に陥りかけていたとか。

 

 

我夢「寒くないですか?」

 

朱乃「…はい」

 

 

我夢にそう返す朱乃。朱乃は裸ではあるが、低い自身の体温と我夢の体温により、すっかり温かくなっていた。

しばらく我夢は起きていたが、1時間経つ頃には瞼を閉じて寝息を立てていた。

 

 

我夢「くかーー…くかーー…」

 

朱乃「…」

 

 

朱乃はそんな彼の寝顔をじっと見ていた。

入部してきた頃は頭がいい男の子ぐらいしか思っていなかった。だが、一緒に行動する中で誰とでも分け隔てなく接する優しさ、彼の熱い正義感に触れ、彼の対しての興味が湧いてきた。

 

――不思議な少年。ウルトラマンの力関係なしに彼の魅力に次第に惹かれていった。

そして、今こうして自分を助けようとしている。おかげで今は体の震えもすっかり収まっていたり

太陽の様な彼の傍にずっといたい……朱乃はそう思ったのだ。

 

 

朱乃「ありがとう…」

 

 

朱乃は身を乗り出すと、眠っている我夢の額に口づけする。

すぐに引き下がり、恥ずかしげに頬を赤くするが、心は喜びに満ちていた。

 

やがて朱乃も寝静まり、2人は朝まで抱き合って寝るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことがありながらも、数日後の夜。

深夜に差し掛かろうとする時間帯の高級ホテルの屋上にはグレモリー眷属、シトリー眷属、ヴァーリチームが集まっていた。

 

本日は日本の神々とオーディンが会談する日であり、ロキが再び襲来する日でもあった。

会談はこの屋上で行われ、我夢達はロキの迎撃準備をしており、上空には助っ人のタンニーンが待機していた。

 

作戦は

 

①ロキが襲来した瞬間、シトリー眷属の力で他のメンバーごとロキを採掘場跡地へ転移。

②ロキはガイア、ダイナ、ヴァーリ、フェンリルはグレイプニルで捕縛し、撃破。

③ロキへ総攻撃。怯んだ隙にミョルニルを叩き込んで撃破。

 

という流れだ。

今回、エリアルベースが再びクリシスゴーストの被害を受ける可能性がある為、ファイターは出せない。

ソーナ達は作戦上ではロキとは戦わないが、緊急時の際は加勢に入る流れとなっており、その際の会談場の警備は石室やハーキュリーズがやる手筈である。

 

 

リアス「時間ね」

 

バチッ!バチッ!

 

 

リアスが手首のXIGナビを見て呟いた瞬間、ホテル上空の空間が稲光りと共に歪み出した。

 

 

一誠「出やがったなぁ~!」

 

ヴァーリ「小細工なしか。恐れ入る」

 

 

歪んだ空間から大きな穴が開くと、そこからフェンリルを連れたロキが降臨した。

 

 

バラキエル「作戦開始」

 

 

バラキエルが耳にはめてあるインカムでそう伝えると、ホテル周辺から花火の様な光が上っていくと、上空で弾ける。

すると、ホテル一帯をオレンジ色の光のシャワーが包み込み始める。この転移装置こそ、改良したメタフィールドである。

 

 

ロキ「ふむ…」

 

 

ロキは特に抵抗することなく、余裕の笑みを浮かべたまま我夢達と共に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が晴れ、我夢達が目にしたのは岩肌ばかりがある大きく開けた採掘場跡地だった。

全員転送された様であり、グレモリー眷属やイリナ、ヴァーリチーム、ロスヴァイセ、バラキエル、タンニーンもいた。

 

そして上空には腕を組んでいるロキが高みの見物と言わんばかりこちらを見下ろしていた。

 

 

リアス「逃げないのね」

 

ロキ「逃げる?その必要はない。ここでお前達を始末してホテルに向かえばいい話だ。会談が成立しようがいまいが、オーディンには退場していただく」

 

バラキエル「貴殿は危険な考えにとらわれているな」

 

 

バラキエルがそう言うと、ロキは先程の余裕の笑みを消し、ジッと睨み付け

 

 

ロキ「危険な考え方を持ったのはそちらが先だ。各神話の協力だなと……くだらん。元はといえば、聖書に記されている三大勢力の和平から歪み始めたのだ」

 

一誠「お前、自分のことを棚に上げるつもりかよ!」

 

ロキ「黙れ!貴様には分かるまい!他神話の神に侵食される神の苦悩が…!私は何であろうと神話体系の調和の為、ここでオーディンを葬りされなければならんっ!」

 

バラキエル「話し合いは不毛か…」

 

 

バラキエルがそう呟き、皆が戦闘体勢に入った瞬間

 

 

ピピッ!

 

『?』

 

 

リアスのXIGナビから通知音が鳴り響き、ロキも含め、皆は体勢を直す。

リアスがXIGナビを開くと、ジオベースの樋口からだった。

 

 

《樋口「こちらジオベース!緊急事態発生!」》

 

リアス「どうしたの!」

 

《樋口「コンピューターウイルスの侵入を受け、施設の全機能が奪われました」》

 

『!?』

 

 

その報せに我夢達は驚く。

天界や冥界を狙っていたとばかり思っていたクリシスゴーストがまさか人間界に来るとは。しかもこんな肝心な時に。

 

 

我夢「ジオベースにはG.U.A.R.D.戦闘機の自動操縦システムをコントロールする施設があります。もし、ここまま野ざらしにすると…」

 

リアス「オーディン様達に……いえ、この町全体に被害が及ぶ…」

 

 

青ざめた我夢に続けてリアスが呟くと、皆は固唾を飲む。今すぐにでも戦闘機を止める為、ジオベースのウイルスを壊滅させたいが、人数を割くとロキ討伐はほぼ遠いものとなるだろう。

逆のロキを優先すれば、ジオベースから発進した戦闘機が町中を火の海に変えてしまうだろう。

 

 

ロキ「はっはっはっ!どうする?中々状況が厳しいらしいな」

 

リアス「っ」

 

 

高笑いを浮かべるロキにリアスは苛立ちを感じつつも冷静に考え、指示を出す。

 

 

リアス「我夢。ギャスパーと一緒にジオベースに向かってちょうだい!ロキの相手は私達に任せて!」

 

我夢「了解!行くよ、ギャスパー!」

 

ギャスパー「は、はいっ!」

 

 

リアスの指示を受けた我夢はファイターEXを出すと、ギャスパーを後部座席に座らせ、ジオベース向けて発進しようとする。

 

 

ロキ「ふんっ!逃がすわけなかろう」

 

 

ロキは宙に浮かぶファイターEXを撃ち落とそうと左手から魔力弾を放つが

 

 

バラキエル「させんっ!」

 

ロキ「っ!」

 

 

バラキエルが振りかぶって放った雷光に弾き飛ばされ、魔力弾は遠くの地面で爆発を起こす。

 

 

我夢「EX、発進!」

 

 

その隙に我夢はバラキエルに内心感謝しつつ、操縦桿を引き、ジオベース向けて飛んでいった。

ロキは少し残念そうな顔を浮かべるがすぐに元の余裕ある顔に戻ると、全身に力を漲らせ

 

 

ロキ「…さて、始めようか!」

 

 

そう言って、地上へ飛び込むロキに一誠達は迎え撃つのだった。

 

 

 

 




次回予告

戦場で繋がる親子の絆!
迫りくるガイアの力を得たロキ!
それは我夢達にとって、新たな戦いの始まりでもあった!

次回、「ハイスクールG×A」!
「新たなる戦い」!
ヴァージョンアップ・ファイッッ!!!!!


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第44話「新たなる戦い ~ヴァージョンアップ・ファイト!~」

―お知らせ―
今回、ガイアがスプリームヴァージョンに変身した瞬間~止めを刺すまで、『ガイアノチカラ』という処刑曲を流すことをお勧めいたします。




悪神 ロキ
神殺獣 フェンリル
終末の大龍(スリーピング・ドラゴン) ミドガルズオルム・クローン
金属生命体 ミーモス
金属生命体 アパテー
金属生命体 アルギュロス 登場!


一誠達がロキと戦い始めた頃。

我夢はファイターEXを使って、クリシスゴーストに侵食されたジオベースに向かって飛行していた。

 

 

《PAL『ガム 500メートルゼンポウニ 4キノセントウキ セッキンチュウ』》

 

我夢「来たか…」

 

 

モニターに映るファイターEXをデフォルメした様なAI、PALのアナウンスを聞き、我夢が目を凝らすと編隊を組んだG.U.A.R.D.の戦闘機がこちらへ向かってきていた。

操縦席には誰もおらず自動的に飛行している……所謂、無人戦闘機だ。

 

クリシスゴーストによって操られており、この先にある都市部は人口を壊滅させるつもりなのだろう。

ジオベースに向かうのが優先だが、だからといって素通りする訳にもいかず、相手もこちらを易々と通してはくれないだろう。

我夢は固唾を飲むと、後部座席に座るギャスパーに声をかける。

 

 

我夢「ギャスパー」

 

ギャスパー「は、はい?」

 

我夢「少し荒っぽくなるけど、しっかり捕まってて!」

 

ギャスパー「えっ、きゃっ!?」

 

 

ギャスパーがどういうことだと疑問に思った矢先、我夢は操縦桿を目一歩に前へ倒して機体を加速させ、無人戦闘機部隊に突っ込んでいく。

ギャスパーは上下左右に揺らされて驚愕する中、

 

 

ドォンッ!ドォンッ!

 

ガガガガガガッ!

 

 

その接近を察知した無人戦闘機達はミサイルやマシンガンを使って一斉砲火してくる。

我夢は操縦桿を駆使して機体を動かして攻撃を避け、何とかその間を潜り抜ける。

だが、

 

 

《PAL『ガム コウホウカラ オッテキテルヨ』》

 

我夢「逃がさないつもりかっ!」

 

 

無人戦闘機達はEXの後を諦めずついてきており、何とか撃ち落とそうと攻撃を続ける。

我夢はPALのナビゲートで攻撃を避けつつ、上昇して雲に隠れたり、急旋回したりとトリッキングな飛行で撒こうとするがそれでもしつこく追ってくる。

 

 

我夢「ギャスパー!君の神器(セイクリッド・ギア)で止められないか!?」

 

ギャスパー「む、無理です!無機物には効果が効きませんっ!」

 

我夢「っ、そうだった…」

 

 

ギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)の特性を思い出した我夢は苦虫を噛み潰した様な顔を浮かべる。

ギャスパーは視界に映ったものを停止させることが出来るが、それはあくまで有機物に対してであり、無機物には効果がないのだ。

 

 

我夢「何か…何かいい策がっ!」

 

 

それを知っていたのに頼んだ自分に焦りを感じているのかと思いつつも、我夢は必死に打開策を考案する中、PALが

 

 

《PAL『ガム ユウドウミサイルヲ ツカッテ ワクチンヲ ウチコメバ』》

 

我夢「そ、そうかっ!その手があった!」

 

ギャスパー「?」

 

 

アドバイスを聞いて何か閃いた様子の我夢にギャスパーは首を傾げていると、気付いた我夢は

 

 

我夢「怪獣用の誘導ミサイルにワクチンプログラムを搭載して、無人戦闘機に巣くうゴーストを撃滅させるってことさ」

 

ギャスパー「なるほど…」

 

我夢「そうと決まれば……PAL!僕達が市街地から離れた場所へ誘導する間、急いで誘導ミサイルにワクチンを搭載してくれ!」

 

《PAL『ガッテンダ!』》

 

 

PALは敬礼すると、早速準備に取りかかったのかモニターから消える。

その間、我夢はEXの操縦桿をあっちこっちへ忙しく動かして攻撃を避けつつ、市街地から離れた場所へ誘導する。

しかし、

 

 

ギャスパー「…えっ!?」

 

我夢「嘘だろ…」

 

 

順調だと思っていた矢先、最悪なことに遠くから数機の無人戦闘機が加勢するのが見えた。最初の数だけでも厄介なのに更に数が増えるとなると、これ以上、かわし続けるのは至難の道だ。

 

 

我夢「PAL!できたか!?」

 

《PAL『イマデキマシタ バッチリノデキダ』》

 

我夢「よし!」

 

 

その報告を聞いて頬を緩めた我夢は機体を旋回させ、正面を無人戦闘機に向ける様に方向変換する。

無人戦闘機編隊を組みながら近付き、それにギャスパーが怯えている中、我夢は冷や汗をかきながら操縦桿を握り

 

 

我夢「一か八かだ…!ワクチンミサイル、発射っ!!」

 

 

そう掛け声を発して操縦桿のスイッチを押すと、EXから淡い光を纏ったミサイルが放たれる。

真っ直ぐ放たれたミサイルは無人戦闘機の前で小さな爆発を起こして辺りに粒子を撒き散らす。すると

 

 

バチ…バチチチ…!

 

 

それを浴びた無人戦闘機達は機体に稲妻が走った瞬間、動きを止め、糸が切れた人形の様に次々と地上へと墜落していく。

 

 

ドォォンッ!ドォンッ!

 

 

地上では爆発が起きるが、市街地から離れた山奥なので人々に危害が及ぶ心配がない。

ウイルスから解放された無人戦闘機はあっという間に1機足りとも逃さず、墜落していった。

 

 

我夢「ふぅ~~…」

 

ギャスパー「こ、怖かったですぅぅ~~!」

 

 

その光景に我夢とギャスパーは冷や汗をかきつつも安堵する。今回の策は一か八かの賭けであり、もしワクチンが効かなければあっという間にやられてただろう。

 

 

我夢「PAL。助かったよ…」

 

《PAL『ドウイタマシテ!』》

 

 

えっへんと胸を張るPALに我夢は苦笑すると、視線を前へ向け

 

 

我夢「さあ、急ごう!」

 

ギャスパー「はいぃ!」

 

 

そう言うと、我夢は操縦桿を前へ倒して加速させる。

2人を乗せたファイターEXは猛スピードでジオベースへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、一誠達はロキと戦いを繰り広げていた。

ロキは一誠とヴァーリ、残りのメンバーはフェンリルと対峙していた。

 

 

ヴァーリ「そらそらそらそらぁぁーーーーっ!!」

 

ロキ「ふんっ!はっ!」

 

 

既に禁手化(バランス・ブレイク)して白い装甲を纏ったヴァーリは拳のラッシュで攻め立てるが、ロキは涼しげな顔でいなしたり、腕や足を使って防いでいる。

 

遠くにいる一誠は懐から取り出したリーフラッシャーを取り出すと

 

 

一誠「ダイナァァァーーーーー!!

 

 

そう叫ぶと同時に斜め上へ掲げると、リーフラッシャーのクリスタル部分から発する白い光に包まれ、等身大のウルトラマンダイナへ変身した。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

変身完了して間もなく、ダイナは思いっきり跳躍すると、後退して間合いを取るヴァーリの横に並び立つ。

 

 

ダイナ「待たせたな」

 

ヴァーリ「いちいちそう叫ばないと変身できないのか?」

 

ダイナ「わかってねぇなぁ~~。ヒーローの登場ってのは格好よく決めなきゃ意味ないんだよ」

 

ヴァーリ「ふっ、御託はいいさ」

 

ロキ「フハハハッ!!」

 

「「ッ!」」

 

 

2人は短く会話をしていると、突如ロキは歓喜の笑いをあげる。

その笑い声を聞き、2人が身構えてると、ロキは

 

 

ロキ「これは素晴らしい!このロキを倒すべく、ウルトラマンと白龍皇が共闘するとは!こんなに胸が高鳴るのは久方ぶりだ!!」

 

ダイナ「じゃあ、嫌っていうほど楽しませてやるよっ!」

 

 

嬉しげな感想を漏らす彼にダイナは皮肉を織り混ぜて言い放つと、ヴァーリと共に駆け出す。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ヴァーリ「シャアッ!」

 

カァン!

 

 

その勢いのまま跳躍して宙で1回転すると、ダブルキックを放つが、ロキが発生させた防御式魔法陣に阻まれる。

弾かれた2人は素早く退く。

 

 

ロキ「こんな戦いができるのは我が初めてだろうっ!」

 

「「!」」

 

 

歓喜しつつロキは間髪入れず魔術で作り出した幾度の光線を放つ。2人は上空へ飛んで避けるが、

 

 

グィン!

 

ダイナ「ハッ!?」

 

 

光線は突如軌道を変えると、2人に向かってくる。

2人は左右に散って飛ぶが、それでも光線は枝分かれして追ってくる。

 

 

ロキ「フハハハッ!その光は捉えた相手をどこまでも追っていくぞ!」

 

ヴァーリ「なるほど…」

 

 

嬉々としたロキの言葉を聞いたヴァーリは短く呟くと、クルリと体を後ろへ入れ替える。

追ってくる光線にヴァーリは右手をかざすと

 

 

《Half Dimension!》

 

フッ…

 

 

そんな音声が翼から響くと、光線は跡形もなく消える。

 

 

ダイナ「フッ!」

 

ドドドドォォン!

 

 

ダイナは両手から長方形のバリヤーを展開させると、若干勢いで怯むが、光線を全て防いだ。

 

 

ロキ「ほう…」

 

ダイナ「デェアッ!…フッ?」

 

 

それらを見てロキが感心した声をもらす。

ダイナは素早く身構えるが、近くで膨大なエネルギーの高まりを感じて振り向くと、ヴァーリが見たとこがない膨大な魔法陣を作り出していた。

 

 

ヴァーリ「覚えたての北欧魔術だ」

 

ブォォォォォォンッ!

 

ダイナ「グッ!」

 

 

そう呟くと、ヴァーリは魔法陣から膨大なビームをロキへ放射する。

発生する大規模な爆発に巻き込まれると予想したダイナは急いで離れるが、ロキは離れる様子はなく、余裕な笑みを浮かべながら腕を組んでいた。

 

 

ドォォォォンッ!

 

 

膨大な魔力はロキがいる地面へ直撃し、大爆発が起きる。その威力は凄まじく、ロキどころかこの採掘場の3分の1ぐらいの地面をえぐりとる規模だ。

だが

 

 

ロキ「フハハハッ!」

 

ダイナ「ッ!?」

 

ヴァーリ「…」

 

 

爆煙が晴れると、ロキは高笑いをあげながら地に立っていた。服が埃や切り傷で多少汚れているが、体には傷1つない様子だった。

その様子にダイナは驚愕し、ヴァーリも声には出してないが同じ反応だった。

 

 

ダイナ「ンンンン~~~…ハッ!」

 

 

出し惜しみしてる場合ではないと考えたダイナは取り出したミョルニルのレプリカにエネルギーを込めて、スレッジハンマーのサイズにまで巨大化させる。

 

それを見たロキは目元をひくつかせ

 

 

ロキ「…ミョルニルか。レプリカの様だが、危険なものを与えたものだ。オーディンめ、それほどまでに会談を成功させたいか…!」

 

 

そう言ってオーディンに対しての苛立ちを募らせる。

 

 

ダイナ「ダァァァーーーーーッ!」

 

ロキ「…ちっ!」

 

 

その隙にダイナは急降下してミョルニルのレプリカを振り下ろすが、ロキにかわさ、金槌の先が地面を砕く。

ダイナは直ぐ様持ち替えてミョルニルを振るってロキを攻め立てる。

 

 

ダイナ「ハッ!ダッ!」

 

ロキ「くっ!」

 

 

ロキは必死な形相で体を反らしたり横転して避ける。

ミョルニルの恐ろしさはロキ自身がよく知っているからだ。

 

 

ロキ「はっ!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

ダイナが振りかぶった瞬間の隙を捉え、横腹へ魔力弾を当てて怯ませる。大きく体勢を崩したダイナは軽く吹き飛び、ミョルニルから手を離してしまう。

 

 

ロキ「くらえ」

 

 

ミョルニルがなくなり、一気に好機となったロキは倒れているダイナへ手刀を振り下ろそうとするが、

 

 

ヴァーリ「はぁぁぁーーーーーっっ!!」

 

ロキ「…っ!」

 

 

いつの間に接近したのか、右から蹴りを繰り出すヴァーリに気付き、右手から発生させた防御式魔法陣で防ぐ。

ロキはニヤリと口角をあげ

 

 

ロキ「惜しかったな…このロキには不意打ちなど通用せんっ!」

 

ヴァーリ「ぐあっ!?」

 

 

そう言うと、もう片方の手から発する衝撃波で吹き飛ばす。ヴァーリは血反吐を吐きながら、地面へ叩きつけられる。

 

しかし、ロキはこの一瞬だけ油断していた。ほんの少し目を離したこの瞬間を。

 

 

ダイナ「デュッ!」

 

ロキ「っ!?」

 

 

ダイナは仰向けの姿勢のままソルジェント光線を放つ。

不意を突かれたロキは紙一重で防御式魔法陣で防ぐが、光線の勢いにどんどん押されていき

 

 

ダイナ「ダァッ!!」

 

ロキ「ぐおっ!?」

 

 

ダイナが気合いを込めて光線の出力をあげると、防御力魔法陣は木っ端微塵に砕け散り、光線に直撃したロキは後方へ思いっきり吹き飛ぶ。

更に

 

 

ヴァーリ「はぁっ!!」

 

ロキ「がっ!」

 

 

横から急接近したヴァーリが掌に溜めた魔力弾を至近距離で放ち、ロキは横くの字の体勢で吹き飛び、地面を転がる。

体勢を立て直した立ち上がったロキは遠方へ目を向ける。

 

 

黒歌「にゃん♪」

 

フェンリル「グルァッ!」

 

 

そこでは黒歌がフェンリルの足元に展開した魔法陣から飛び出たグレイプニルでフェンリルを捕縛していた。

捕縛されたフェンリルに前方に並ぶダイナとヴァーリ、その圧倒的な不利な状況にロキは焦るどころか余裕の笑みを浮かべる。

 

 

ロキ「ふっ…実力を侮っていたようだ。ならば、こちらも出し惜しみをせず、全力で行こうぞ。スコル!ハティ!」

 

 

そう叫びながらロキは両手を広げると、形成された空間の歪みから2匹のフェンリルが現れた。

 

 

リアス「フェンリル!?1匹だけじゃなかったの!?」

 

ロキ「ヤルンヴィドの巨人族の女を狼に変えて、フェンリルを交わらせて作った子供だ。親よりも実力は劣るだろが、牙の殺傷力は変わらん。更に…」

 

 

そう言葉を続けると、ロキの足下の影が広がり、体が細長く、蛇のようなドラゴンが5匹現れる。

 

 

タンニーン「…ミドガルズオルムの量産型かっ!」

 

 

それを見た目を細める。ミドガルズオルムは五大龍王の1匹で、ロキが作り出した強大なドラゴンだ。

普段はその巨体と怠け癖で海底に眠っているのだが、ロキはサイズを小さくしたクローンを生み出していたのだ。

 

 

ロキ「さあ、いけっ!」

 

『ガァァァァッ!!』

 

 

ロキの号令と同時に2匹のフェンリルはリアス達へ、5匹のミドガルズオルム・クローンはダイナとヴァーリへ襲いかかる。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ミドガルズオルム・クローン「グギャン!」

 

ダイナ「ハッ!ダッ!」

 

 

ダイナは飛びかかるミドガルズオルム・クローンを背負い投げで投げ飛ばし、続いて襲いかかってきた2匹を回し蹴りで蹴飛ばす。

 

 

ヴァーリ「そらそらそらぁぁぁーーーーー!!」

 

ミドガルズオルム・クローン「グベャアァァァーーー!!?」

 

 

隣で戦うヴァーリは蹴りのラッシュで2匹纏めてタコ叩きにする。

一方、フェンリルを相手にするリアス達は…

 

 

タンニーン「駄犬がっ!」

 

ボォォォォォォーーーーーー!!

 

 

そう吐き捨てながらタンニーンは胸を膨らませる程息を吸い込むと、高濃度の火炎を吐く。

広範囲の火炎が2匹のフェンリルに襲いかかるが、

 

 

シュッ!

 

タンニーン「ぐおっ!?」

 

ダイナ「おっさんっ!」

 

 

2匹のフェンリルは目にも止まらぬ速さで避けると、あっという間に爪でタンニーンの身体中をズタズタに切り裂く。

身体中から血を噴き出しながら膝をつくタンニーンの姿に、弟子であるダイナは思わず叫ぶ。

 

そのまま2匹のフェンリルはタンニーンを横切ると、リアス達へ進撃するが

 

 

木場「させないっ!」

 

美猴「でぇいっ!」

 

「「グルァッ!」」

 

 

素早く前へ出た木場と美猴がそれぞれ聖魔剣と如意棒を手に飛びかかる。

2匹は足を止めず、牙で引き裂こうと噛みついてくるが、2人は武器で受け止める。

 

 

黒歌「そ~~れっ♪」

 

「「グァッ!?」」

 

 

後ろに控えている黒歌が指をくるくると回すと、2匹の足下の地面が沼の様にぬかるみ、足下がすくわれる。

 

 

小猫「やっ!!」

 

ゼノヴィア「うおおおおーーっ!!」

 

「「ギャウン!?」」

 

 

続けて、後ろから小猫とゼノヴィアが木場と美猴を飛び越えると、小猫の術を織りまぜた蹴り、ゼノヴィアのデュランダルの一撃が2匹を吹き飛ばす。

更に

 

 

リアス「朱乃!」

 

朱乃「はあっ!」

 

「「ゴギャ!」」

 

 

リアスの指示のもと、朱乃の雷が追い討ちをかける。

数々の攻撃を受け、フェンリルは血が溢れ、黒焦げになっていた。

だが、それでもフェンリルの致命傷にはならず、未だ倒れていなかった。

 

 

リアス「なら、これで――――!」

 

ザシュッ!

 

リアス「――!?」

 

 

リアスが両手に作り出した滅びの魔力を放とうとした瞬間、腹部に鋭い痛みが走る。

リアスが後ろを振り向くと、鎖で拘束していた筈の親のフェンリルが解放されており、前足に生えている鋭い爪には血が滴っていた。

 

 

リアス「か、はっ…!!」

 

 

何故、どうして?とリアスが血反吐を吐いて、地に倒れようとする中、親のフェンリルの後ろを見て理解した。

もう1体の子供のフェンリルが鎖を咥えていたからだ。

つまり、自分達に他の2匹を戦わせて注意を引いている間に隠れていたもう1匹が親を解放したのだ。

 

 

リアス「一杯…食わされたわ……」

 

『!?』

 

ダイナ「部長!?」

 

 

悔しげに呟きながら倒れるリアスを見て、振り向いた皆は驚く。

親のフェンリルはその大きな口でリアスを食い殺せそうとしていた。

 

 

イリナ「リアスさんっ!」

 

子フェンリル「グルァッ!」

 

 

比較的近くにいたイリナはフェニックスの涙で回復させようと駆け出すが、そうはさせまいと子のフェンリルが立ち塞がる。

 

 

ダイナ「ま、まずいっ!!」

 

ミドガルズオルム・クローン「グベャアァァァーーー!!」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

 

 

リアスのピンチに目の色を変えたダイナは駆けつけようとするが、襲いかかるミドガルズオルム・クローンを殴りつける。

彼らの妨害で中々助けに向かう隙がないのだ。

すると、隣で戦うヴァーリが話しかけてくる。

 

 

ヴァーリ「兵藤 一誠」

 

ダイナ「何だっ!」

 

ヴァーリ「あの親フェンリルは俺が確実に殺そう。この量産型の相手を頼んでもらえるか?」

 

ダイナ「!?」

 

ヴァーリ「俺のスピードならフェンリルに喰われる前に彼女を助けられる。どうだ?」

 

 

ヴァーリの思わぬ救出の提案にダイナは一瞬黙りこむ。

ヴァーリのことであろうから何か裏がある……そんな疑念があるが、今はそんなことを考えている暇はない。

 

 

ダイナ「わかった!こいつらの相手は任せろ!」

 

ヴァーリ「感謝する」

 

 

承諾したダイナに短く感謝の言葉を送ったヴァーリは白い翼を広げると、目にも止まらぬ速さで親フェンリルのもとへ飛んでいく。

 

 

イリナ「どきなさいって!」

 

子フェンリル「ガルル…」

 

 

そして、子フェンリルと対峙するイリナは光剣で応戦していた。

この子フェンリルの後ろには、重傷で倒れているリアスが親のフェンリルに今まさに喰われようとしていた。

早く助ければいけない―――その焦りがイリナの剣術を鈍らせ、ただでさえ厄介な子フェンリルとの戦いを苦しいものとしており、呼吸も乱れていた。

 

 

ヒュッ!

 

イリナ「しまっ――!?」

 

 

その隙を突かれ、子フェンリルは神速で素早くイリナの懐に潜り込む。イリナは素早くバックステップで離れつつ光剣を横へ振るうが、子フェンリルの前足で弾き飛ばされてしまう。

 

 

子フェンリル「ガルル…グルァッ!!」

 

イリナ「!?」

 

 

武器がなくなったイリナに子フェンリルは牙を剥き出しながら飛びかかる。

そのピンチに無駄ながらもイリナは咄嗟に身構えた瞬間

 

 

アーサー「失礼しますよ」

 

ザシュッ!!

 

イリナ「…!?」

 

 

その間に突如出来た空間の裂け目から颯爽と登場したアーサーが聖王剣で飛びかかる子フェンリルの左目を切り裂いた。

 

 

子フェンリル「グルァァァァーーーー!!?」

 

 

左目を潰された子フェンリルは目から血飛沫をあげながら、苦悶の叫びをあげる。

その間にアーサーを腰を抜かしているイリナに手を貸して立ち上がらせる。

 

 

イリナ「あ、ありがとうございます…」

 

アーサー「いえ、私の話に付き合って頂いたご恩です。さあ、フェニックスの涙を届けに」

 

イリナ「は、はい!」

 

 

イリナは元気よく返事しながらペコリと頭を下げると、リアスのもとへ走っていく。

アーサーは彼女の後ろ姿を見届けると、こちらを威嚇する子フェンリルへ視線を向ける。

 

 

子フェンリル「ガルル…」

 

アーサー「さて、どう致しましょうか…」

 

子フェンリル「グルァッ!!」

 

 

アーサーがそう呟く中、走り出した子フェンリルは飛びかかってくる。

だが、アーサーは冷静に聖王剣を振り下ろすと、子フェンリルの前足ごと全ての爪を空間ごと削り取る。

 

 

子フェンリル「グギャアアァァァーーーーー!!?」

 

アーサー「次は牙!耳!後足の爪!」

 

 

アーサーはそう言いながら聖王剣を振るい、休む間も与えず、次々とフェンリルの身体を削り取っていく。

収まらない苦痛に子フェンリルの断末魔が響き、次の瞬間には子フェンリルは虫の息となっていた。

 

 

子フェンリル「ガ……」

 

アーサー「とどめです」

 

グゴォンッ!!

 

 

動けなくなり、悲鳴もあげなくなるほど弱ったフェンリルにアーサーを聖王剣を振り下ろすと、空間に削り取られた子フェンリルは後片もなく消え去った。

 

 

 

 

 

その頃、親のフェンリルはリアスを食い殺そうとゆっくりと大きく開いた口を近付けていくが

 

 

ロスヴァイセ「させませんっ!」

 

ドォォォンッ!!

 

フェンリル「グルァッ!?」

 

 

いつの間にか近くにきていたロスヴァイセが展開した幾つもの魔法陣から放った魔力弾の雨にフェンリルは大きく怯む。

その攻撃を受けても致命傷に至らないフェンリルだが、少し痛かったのか、標的をリアスからロスヴァイセへ向けた瞬間

 

 

ヴァーリ「待て!お前の相手はこの俺だ!」

 

 

急いで駆けつけ、その間に割り込んだヴァーリが待ったをかける。その間にリアスのもとへ辿り着いたイリナがフェニックスの涙をかけて回復させる。

 

 

フェンリル「グルルル…!」

 

ヴァーリ「黒歌!俺とフェンリルを予定のポイントに転送しろっ!」

 

黒歌「りょーかいっ♪」

 

 

ヴァーリの指示を受けた黒歌はにんまり笑いながら承諾すると、手をヴァーリへ向けて宙で指を動かし始める。

すると、ヴァーリとフェンリル、地に捨てられていたグレイプニルの鎖が光輝き出すと、次の瞬間、この場から姿を消した。

 

 

木場「ヴァーリはどこへ…」

 

黒歌「ちょっと遠いところへ移動させただけにゃ。ここじゃ、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を発動させにくいからにゃ♪」

 

 

木場の疑問に笑顔でそう答える黒歌。

確かにヴァーリの『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は周りのものを半減させてしまうという強力な能力がついている。

強力な力だからこそ、リアス達を巻き込む訳にはいかないという判断なのだろう。

 

 

ダイナ「グアッ!」

 

 

バク転して攻撃をかわしたダイナはエネルギーを込めた右腕を振り払ってフラッシュバスターを放つ。

 

 

ミドガルズオルム・クローン「グベャアァァァァァァーーーーー!!!」

 

ドガガガァァァァンッ!!

 

 

一斉砲火を前にミドガルズオルム・クローンは5匹とも断末魔と共に爆発四散した。

そのままダイナは2匹の子フェンリルと対峙している木場達へ振り向き

 

 

ダイナ「木場っ!」

 

木場「…っ、わかったよ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

声をかけられた木場は考えを察すると、ダイナは子フェンリルと対峙している木場達ごと目掛けて、フラッシュサイクラーを放つ。

切れ味抜群の三日月型のカッターは真っ直ぐ進んでいくが、子フェンリルが余裕でかわせる程の距離だ。

 

当然、子フェンリル達は直前でジャンプしようと身構えるが

 

 

「「!?」」

 

ズババババッッ!!

 

 

その間に神速で割り込んだ木場がすれ違い様に持ち味のスピードを駆使した剣術でフラッシュサイクラーを粉々に砕く。

対象が1塊でなく、複数になった小さなカッターの吹雪が子フェンリルに襲いかかる。

 

 

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!

 

「「グギャンッ!!」」

 

 

当然、的が小さいので子フェンリルは避けきれず、身体中切り刻まれる。切られた箇所からは血が溢れ、苦痛の悲鳴をあげる。

体勢を崩す子フェンリル……この攻撃で出来た隙を彼らは見逃さない。

 

 

タンニーン「ガァァァァーーーーーー!!」

 

リアス「くらいなさいっ!!」

 

「「―――!?」」

 

 

アーシアによって回復したタンニーンが吐き出す火炎とリアスの膨大な滅びの魔力が炸裂し、2匹の子フェンリルは断末魔をあげる間もなく消滅した。

子フェンリルとミドガルズオルム・クローンを倒した一同はロキへ顔を向ける。

 

 

リアス「あとは…あなただけね。あれだけ従えていた手下も全滅。誰もあなたの味方はいないわよ」

 

 

リアスは低い声色で言い放つ。まだ残っている親のフェンリルはヴァーリと共に戦っているが、ヴァーリが勝つのは明白なのでそれも時間の問題だろう。

この絶対絶命の状況にロキは

 

 

ロキ「……ふっ!ククッ、クハハハハハッ!!」

 

『!?』

 

 

突如、気が狂ったかのように高笑いをし出した。その笑い声はこの採掘場に響く程だ。

予想外の反応に皆は唖然としていた。

 

 

バラキエル「何が可笑しい!気でも狂ったか!?」

 

 

そのあまりにも不気味さにしびれを切らしたバラキエルが訊ねると、ロキは笑いを堪えて息を整えると

 

 

ロキ「いや、失礼。“味方などいない”と可笑しな言われ様をしてね……つい、笑ってしまったよ」

 

ダイナ「は?どこが変なんだよ?部長の言う通り、もう誰もいねぇじゃねぇか」

 

ロキ「いいや、君達は勘違いをしている。可笑しいとは思わないか?何故、我の襲撃にタイミングよくXIGの基地がウイルスに襲われたか?何故、今戦っている時にジオベースがウイルスに襲われているのか?」

 

リアス「…っ!?まさかっ!」

 

『!?』

 

 

リアスを筆頭に皆は勘づくと、目を大きく見開く。

今までのクリシスゴーストの襲撃とロキの襲撃――――偶然かと思っていたが、もしそれが事実であれば…。

皆が息を呑むと、ロキは不敵な笑みを浮かべ、

 

 

ロキ「理解できた様だな…。このロキは最初から、根源的破滅招来体と徒党を組んでいたのだよ!

 

『!!?』

 

 

その衝撃発言に皆は絶句する。神と破滅招来体が手を組むということを。

可能性がありはしたが、無いとばかり決めつけていた。

しかし、こうして明かされた事実に皆は驚愕するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ジオベースに到着した我夢とギャスパーはワクチンプログラムによって、クリシスゴーストが放ったウイルスを全て撃退した。

 

 

樋口「高山さん!ギャスパーさん!申し訳ありません、我々の警備の甘さでご迷惑をっ!」

 

我夢「いえいえ」

 

ギャスパー「ははっ」

 

 

申し訳なさそうな顔でペコペコと頭を下げる樋口に我夢とギャスパーは少々困りながらも笑顔で応える。

ジオベース内のウイルスが消滅したことで施設のシステムは回復し、都市部へ向かっていた無人戦闘機は無事回収される運びになっていた。

 

 

「チーフ!大変ですっ!」

 

 

皆が安堵していると、1人の研究員が息をきらしながら駆け込んでくる。

彼の様子で穏やかな空気が一変して、不安なものへ変わった。

 

 

樋口「何だ?何か、問題があったのか!?」

 

 

樋口が近寄って訊ねると、研究員は顔をあげ

 

 

「F4ラボに保管していたアパテーの破片サンプル及びウルトラマンガイアのデータが盗まれました!!

 

樋口「何っ!?」

 

『!?』

 

 

その報告に我夢達は一斉に目を見開く。

クリシスゴーストは都市部を破壊する為にジオベースを乗っ取ったのではなく、施設に保管してあった金属生命体の破片とガイアのデータを奪取することだったのだ。

…だとしても疑問が残る。

 

 

樋口「しかし……何故、金属生命体の破片サンプルとガイアのデータを?」

 

 

わざわざ大がかりな行動で施設を乗っ取ってまで破片サンプルが欲しかったのか?

それが何かに必要だとしても用途は不明であり、そもそもそれが欲しいのであれば、無人戦闘機を操る必要はない。

皆が頭をひねっていると、我夢は口を開く。

 

 

我夢「…考えられる可能性はあります。まず、クリシスゴーストは活動する肉体が欲しかった……だから、金属生命体の破片サンプルを盗んだ。ここまで大がかりにしたのは僕達の気を引く為だったんです。無人戦闘機も僕達を釣る為のエサだったんでしょう」

 

樋口「では、ガイアのデータは?」

 

我夢「ガイアを多くの怪獣と戦っています。敵対するものに立ち向かう為の知識が――――んっ!?待てよ…」

 

 

そう説明していた我夢は途中、何かに気付く。

クリシスゴーストに敵対するものは間違いなく、自分達のことだろう。

しかし、わざわざガイアのデータを別に盗む必要はあったのか?ガイアのデータはアパテーの破片サンプルを詳しく調べれば取り込むことも出来たであろうに…。

 

我夢が考えこんでいると、ギャスパーは何か気付いたのか、目を丸くする。

 

 

ギャスパー「…が、我夢先輩。何かおかしくないですか…?」

 

我夢「おかしい…?」

 

ギャスパー「は、はい…。人間界ならネットワークが通ってるからわかりますけど、どうして人間界のネットワークが繋がらない冥界にウイルスが行けたんだって…」

 

我夢「……そうかっ!?僕はクリシスゴーストは単体で行動していると勘違いしていた!冥界にウイルスを送りこめたのは破滅招来体の力によるものだと勝手に決めつけていた!冥界のネットワークに送りこむなら、それを手引きする存在もいる筈だ!それなら、ほとんど全ての行動が証明できる!何でこんな簡単なこと気付かなかったんだろう…!」

 

 

ギャスパーの意見を訊いた我夢はやっと糸口が掴めた。

クリシスゴースト誰かと手を組み、その人物―――ロキと共に今まで暗躍していたことを。

 

 

我夢「そう考えると…………そうか!そういうことかっ!!」

 

 

そのことから、金属生命体とガイアのデータを盗んだ本当の目論見がわかった我夢は頭にあった疑問が取り除かれると同時に仲間の危機を察知する。

 

 

我夢「ギャスパー!早くみんなのもとへ戻ろうっ!」

 

ギャスパー「ど、どうしたんですぅ!?」

 

 

急に危機迫った顔を浮かべる我夢に動揺するギャスパーに我夢は

 

 

我夢「イッセーが危ないんだっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロスヴァイセ「ロキ様!それはどういうことです!?北欧の神が地球に仇なす破滅招来体に堕ちるなど!」

 

 

ロスヴァイセはロキの発言が信じられず、異を唱える。

しかし、ロキは眉間にしわをよせ

 

 

ロキ「一介のヴァルキリーごときにはわかるまい……このロキの苦悩が…!神話を越えて文化を交わす……確かに自らだけでなく、互いの文明の発達に繋がるだろう。しかし、それは同時に新たな争いの種を作ることにもなる!互いの主張、方針…少しでも違えば、争いが起こるという危険性が!なのに、オーディンの奴はどうだ!“互いを尊重し合えば争いは起きん”等という甘い思想に憑り依かれよって、誰も聞く耳ももたん!!」

 

リアス「それで破滅招来体に…!」

 

ロキ「そうだっ!彼らは我の苦悩を理解してくれた!そして、諭してくれた!自身の考えを認めぬ存在だけを滅ぼし、残された崇拝者を導くことが真の救済と!」

 

バラキエル「真の救済?ロキ、貴様は騙されているのだぞ!破滅招来体がそんな慈悲の心を持っている筈がなかろう!」

 

ロキ「黙れ!我にはもうこれしか残されてないのだ!」

 

 

ロキはそう長々と言い放つと、パチンと指を鳴らす。

すると、地中から現れたぐにゃぐにゃとした液体状の金属がロキの体を纏わり始める。

皆が身構える中、ロキは更に話し続け

 

 

ロキ「しかし、君達相手…特にウルトラマンにはさすがの我も勝てる見込みはなかった。だから、電子生命体――君達の言うクリシスゴーストが知恵を授けてくれた。“我がウルトラマンになればいい”とね」

 

木場「じゃあ、クリシスゴーストの狙いは…!」

 

ロキ「そうだ!我の救済の門出でする肉体のピースを集めていたのだ!」

 

 

そう言うと、ロキはにっと不敵な笑みを浮かべ

 

 

ロキ「見るがよいっ!神とウルトラマン、破滅を持たらすものと1つになった新生ロキの誕生をっ!!」

 

キィンッ!

 

『!?』

 

 

そう言い放ち完全に金属が体に纏った瞬間、赤い閃光がロキから放たれる。

その眩しさに皆が目を瞑る中、ロキごと覆った金属の塊はグニョグニョと形を変えて巨大化していく。

 

 

リアス「あ…ああ…」

 

朱乃「そんな…!?」

 

 

光を晴れ、見上げた皆は驚愕する。

銀色のボディーに赤いラインが走った巨人――ウルトラマンガイアが静かに佇んでいた。そう、ロキは金属生命体の肉体、クリシスゴーストの知恵を授かり、ウルトラマンガイアへと変身したのだ。

 

しかし、本物にある胸のガイアテクターの内側は黒ではなく、アグルの光を得る前の赤色だ。名付けるのなら、『ニセ・ウルトラマンガイア』だ。

 

 

ニセ・ガイア「デュアッ!」

 

リアス「来るわよっ!」

 

 

変身して早々、ニセ・ガイアは左手の先からニセガイアスラッシュを連射する。

呆気にとられていた皆だが、リアスの声もあってすぐ正気に戻り、何とか避ける。

 

 

ダイナ「ンンンン~~~…デェアッ!!」

 

 

ニセ・ガイアに対抗する為、ダイナは巨大化する。

そのままニセ・ガイア向けて走り出すが

 

 

ニセ・ガイア「お前にはこいつらの相手をしてもらおう」

 

ダイナ「フッ!?」

 

 

その接近を見逃さないニセ・ガイアは手をかざすと、ダイナの前方の地中から巨大な2塊の金属が現れる。

そして、金属の塊は変形すると、アパテー、アルギュロスに変形した。

 

 

木場「倒された金属生命体を復元できるのかっ!」

 

アパテー「パォォォォーーーーー!!」

 

アルギュロス「パォォォォーーーーー!!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

皆が呆気にとられる中、ニセ・ガイアの手によって復活したアパテーとアルギュロスはダイナの行く手を阻む。

その間にニセ・ガイアは地上にいるリアス達向けてニセガイアスラッシュを放ちながら、一歩ずつ詰め寄っていく。

 

 

タンニーン「うおぉぉぉぉーーーー!!」

 

ニセ・ガイア「?」

 

 

途中、そうはさせまいとタンニーンが拳を作って突貫を仕掛けるが、

 

 

ニセ・ガイア「ダッ!」

 

タンニーン「ぐおぉぉぉぉーーーっ!?」

 

ドォォォンッ!!

 

 

素早く腕をL字に組んだニセ・ガイアのニセクァンタムストリームをくらって大きく吹き飛び、後ろの岩肌に叩きつけられ、爆発する。

 

 

ダイナ「おっさん!?」

 

アルギュロス「パオッ!」

 

ダイナ「ッ!くそっ…!」

 

 

救援に向かおうとするダイナだが、立ち塞がるアパテーとアルギュロスのせいで向かおうにも向かえない状況だった。

 

 

リアス「怯んじゃ駄目よっ!攻めてっ!!」

 

ロスヴァイセ「フルバーストッ!!」

 

ゼノヴィア「はあっ!!!」

 

ドドドドドォォォォォォーーーーンッ!!

 

 

リアスの号令に合わせ、リアス達は一斉攻撃する。

彼らの猛攻はニセ・ガイアに直撃し、大爆発が起きるが

 

 

ニセ・ガイア「こんなものか…」

 

『!?』

 

ニセ・ガイア「なら、今度はこちらの手番だ」

 

 

爆煙が晴れたニセ・ガイアの体は無傷だった。

まるでそよ風が当たったの様にピンピンと佇んでいる。

皆が驚愕する中、ニセ・ガイアは両手を広げ、その手を頭に当てながら深く腰を下ろし始める……ガイアの十八番、フォトンエッジの体勢だ。

 

 

リアス「っ!?みんな、避けてっ!!」

 

ガイア「デュアァァァーーーーーーーー!!」

 

 

それを見たリアスは危険を察して叫ぶが、時既に遅く、ニセ・ガイアはニセフォトンエッジを放った。

 

 

ドォォォォンッッ!!

 

『きゃああーーーっ!!?』

 

『うわあっ!?』

 

 

放たれた赤色の光線は地面で大爆発を起こし、リアス達を大きく吹き飛ばした。

その威力はこの採掘場を震わせるぐらいだ。

皆がその力の前に戦慄する中、

 

 

朱乃「雷光よ!!」

 

ニセ・ガイア「ッ!」

 

バチバチバチィィィーーーー!!

 

 

ただ1人爆発から巻き込まれず済んだ朱乃が地上から膨大な雷光を放つが

 

 

ニセ・ガイア「デヤッ!」

 

フッ…

 

朱乃「…っ!?」

 

 

ニセ・ガイアが軽く腕を振るうと、雷光はあっという間に消え去った。朱乃はこの一撃に自信があったのか、簡単にあしらわれたことに戦慄する。

 

 

ニセ・ガイア「中々いい一撃だったが、神とウルトラマンが融合した我には届かん。死ね…」

 

 

ニセ・ガイアはそう告げると、朱乃に向けてニセクァンタムストリームを放つ。

 

 

リアス「朱乃!逃げてっ!」

 

小猫「朱乃さんっ!」

 

朱乃「…っ」

 

 

迫りくる光線にリアスや小猫が避ける様に叫ぶが、朱乃は動揺して動けなかった。

偽者とはいえ、ウルトラマンの圧倒的な力量差にすっかり恐怖し、カタカタと体を震わせるしかなかった。

 

そして、光線が朱乃の目前に迫った瞬間、彼女を庇う影が颯爽と前へ現れた。

 

 

バラキエル「ぬぉぉぉぉーーーー!!」

 

朱乃「…えっ!?」

 

 

それは彼女の父、バラキエルであった。

バラキエルは両手を左右に広げ、光線を背中へ受けて朱乃を庇った。

 

 

ニセ・ガイア「ほう…」

 

 

突然の行動にニセ・ガイアも少々驚くが、すぐに興味深そうに鼻を鳴らすと、光線を撃つ手を止める。

バラキエルはバタリとその場で倒れ伏せる。服が光線の熱で焼け、露となった背中は焼きただれ、そこから血がだくだくと噴き出していた。

 

 

朱乃「ど、どうして…っ?」

 

 

バラキエルの行動に朱乃は動揺を隠せないでいた。

その声を聞いたバラキエルは顔をあげ

 

 

バラキエル「…お前までを…なくす訳にはいかない……」

 

朱乃「どうして…!?私はあなたを一方的に遠ざけていたのに…っ!どうしてっ!」

 

 

朱乃はますます訳が分からず、狼狽える。

今まで自分がしてきた態度はどれもきついものであり、助ける気など起きる筈がないのだ。

そんな朱乃を落ち着かせる様にバラキエルは手を握ると、冷や汗をかきながら真っ直ぐ見つめ、

 

 

バラキエル「…朱乃、落ち着いて聞くのだ……。朱乃、この世界は希望が満ち溢れているのと同時に残酷なものばかり溢れているのが常だ…」

 

朱乃「…」

 

バラキエル「その残酷な現実をまだ幼いお前に味わせてしまった……すまない。私は父親として失格だ。だが、朱乃。お前は自分はいつも孤独だと思っているだろうがそれは違う……。本来、私にお前を諭す権利なぞ無いに等しいが、この場を借りて言わせてもらう…!」

 

 

バラキエルは長々と話すと、苦しげに一呼吸して、口を開き

 

 

バラキエル「この場にいる皆がお前を信じ、助ける“仲間”だということを忘れるな…!お前にはまだ希望が遺されているっ!1人なんかじゃない…っ!!」

 

朱乃「…っ!」

 

 

その振り絞った説教に朱乃は思わず涙を流した。

そのメッセージは誰にも愛されてないと固まった朱乃の凍りついた心を溶かすのには充分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《バラキエル「お前にはまだ希望が遺されているっ!1人なんかじゃない…っ!!」》

 

我夢「バラキエルさん…」

 

 

バラキエルの胸に響く言葉は無線を通じて、ファイターEXに乗る我夢にも伝わっていた。

藤宮が表舞台から姿を消し、託された力を駆使して今後どうやって戦うのか迷っていた我夢の迷いをも解き消したのだ。

 

我夢は懐から取り出したエスプレンダーに目をやる。

我夢を応援するかの様に液晶に赤と青の光が静かに光った。

 

 

我夢「わかったよ、藤宮。僕は…みんなは1人なんかじゃない…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラキエル「朱璃のことを……お前のことを……1日足りとも忘れたことなどないよ…」

 

朱乃「父様…」

 

 

朱乃はポロポロと涙を流しながら、弱り果てている父の手を握る。その手は弱っている影響で少し冷えているものの、久しぶりに父の手を握る朱乃には温かく感じた。

再び繋がった親子の絆……。その感動の場面を邪魔するものがいた。

 

 

ニセ・ガイア「親子の感動の仲直りか……ふん、下らない」

 

バラキエル「ぐっ!?」

 

朱乃「あっ!?」

 

 

そう吐き捨てたニセ・ガイアは倒れるバラキエルをひょいと拾い上げると、そのまま握り始めた。

 

 

グギギギギギ……!

 

バラキエル「ぐおぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 

朱乃「父様っ!!」

 

 

ニセ・ガイアの掌からはバキバキと不吉な音が鳴り響き、バラキエルは苦痛の叫びをあげる。

朱乃が悲鳴をあげると、ニセ・ガイアは口元をニヤリとつり上げて笑い

 

 

ニセ・ガイア「娘よ、よぉく見るがよい!お前の存在で死に行く父の無惨な死に様をっ!」

 

バラキエル「がぁぁぁぁーーーーーー!!!?」

 

朱乃「やめてぇぇーーー!!」

 

 

そう告げたニセ・ガイアは朱乃の悲鳴に耳を貸さず、バラキエルを握り締める力を更にあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ガイアァァーーーーーーーッッ!!!

 

 

そのピンチを聞いた我夢はEXの操縦をPALに任せ、エスプレンダーを前へ突き出す。エスプレンダーから溢れる赤と青の閃光に包まれると光を纏ったままEXから飛び出し、そのまま真っ直ぐ飛んで行った。

 

 

[推奨BGM:フォトンストリーム]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ドォォォォォォォンッッッ!!!

 

ニセ・ガイア「ッ!」

 

 

採掘場に辿り着いたガイアは光を晴らすと、土飛沫を巻き上げながら地上へ降り立つ。

本物のガイアの登場にニセ・ガイアは思わずバラキエルを締め上げる手を緩める。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ドォンッ!

 

ニセ・ガイア「ジュアッ!?」

 

 

すかさずガイアが放ったガイアスラッシュを受け、ニセ・ガイアは体から火花を散らしながら大きく怯むと、手に握っていたバラキエルを放してしまう。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

宙に放り出されたバラキエルをガイアは左の掌をかざし、光のオーラで包むと、そのままアーシアのもとへ下ろす。

 

 

朱乃「我夢君っ…!」

 

 

朱乃は治療を受けるバラキエルに寄り添いながら、嬉し涙を流す。

何よりも最愛の人が父親を助けてくれたことに喜ばずにはいられなかった。

 

 

アパテー「パオッ!?」

 

アルギュロス「ッ!?」

 

ダイナ「来てくれたかっ!デェアッ!」

 

 

ガイアの登場に気をとられる2体の隙を突き、ダイナは両腕のラリアットですっ転ばせる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ニセ・ガイア「デュアッ!」

 

 

2人のガイアはファイティングポーズを取ると、睨み合いながら間合いをはかる。

 

 

スッ…

 

ニセ・ガイア「ッ?」

 

 

その途中、ガイアは手を前へ突きだす姿勢へ変える。その足取り、姿勢は今は姿を消したアグルのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

その戦いを会談を終えたオーディンや日本の神々、アザゼルやサーゼクス、石室はホテル内のモニターで観戦していた。

 

 

「ガイアのデータを持つなら、両者は互角。しかも、相手は悪神ロキ…」

 

「本物は勝てるのか…」

 

 

日本の神々の中からそんな不安な声を漏らしていると、石室は彼らに

 

 

石室「命あるものは全て前へ進みます……。昨日までのデータなど…!」

 

「成長しているというのか…!?ウルトラマンガイアが…!」

 

 

そう告げると、日本の神々は不安を漏らすのを止めると、モニターでの戦いを見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニセ・ガイア「ッ、デヤァァァァーーーーー…!!」

 

ガイア「グアァァァァァーーーーーー…!!」

 

 

ある程度間合いをとったニセ・ガイアはフォトンエッジの体勢に入ると、ガイアも合わせて拳を作った左腕を腰に携え、右腕を真っ直ぐ垂直に伸ばす。

ニセ・ガイアが頭部に赤色の光刃が形成されていくのに対して、ガイアの頭部には青い光刃が形成されていく。

 

 

ゼノヴィア「あの技は…!?」

 

イリナ「藤宮君の…!」

 

 

ガイアの放とうとする必殺技に既視感を感じた2人は目を丸くする。そう、2人の思う様に構えこそ違うが、アグルの必殺技フォトンクラッシャーだ。

 

 

ニセ・ガイア「――ァァァァァ…!!デヤッ!!!」

 

ガイア「――デュアッ!!」

 

 

ひと足先にエネルギーを溜め終えたニセ・ガイアはフォトンエッジを放つと、ガイアも少し遅れながらもフォトンクラッシャーを放つ。

両者の放つ光線はバチバチとぶつかり合うが

 

 

ガイア「――デュアッ!」

 

ドォンッ!!

 

ニセ・ガイア「ドアァァァーーーーー!?」

 

 

ガイアが光線の出力を上げると、あっという間に押し返し、ニセ・ガイアに直撃する。

ニセ・ガイアは火花を散らしながら、大きく後方へ吹き飛び、うつ伏せの姿勢で地面へ叩きつけられる。

 

 

[BGM終了]

 

グニャア……

 

ニセ・ガイア「パアァァーーー!!グアァァァーーー!!」

 

 

その衝撃を受け、もがき苦しんでいるニセ・ガイアの皮膚は次第に本来の金属質の肌が露になっていき、声もガイアのものではない、本来の金属生命体の鳴き声が出ていた。

 

 

朱乃「正体を現しなさいっ!」

 

 

その隙に雷光を放つ朱乃を筆頭にロスヴァイセ、イリナ、ゼノヴィア、リアスが攻撃を加えていく。

 

 

ニセ・ガイア「ドアァァァーーー!?」

 

 

立ち上がろうとするニセ・ガイアだが、矢継ぎ早に放たれる攻撃の嵐に身動きが取れず、次々と化けの皮が剥がされ、本来のボディーが露になっていく。

そして、一旦攻撃の手を止め、爆煙が晴れると、その全貌を現した。

 

 

ミーモス「ミィィィィ~~~~~…!!」

 

 

金属質な体にあちこち生えている穴が空いている金属片、生物らしさが感じられない黄色の瞳……。

これこそ、クリシスゴーストの知能に悪神の素質、金属生命体の破片、ウルトラマンガイアのデータが合わさることで生まれた金属生命体No.3『ミーモス』の正体だ。

 

 

ガイア「デュッ!グアッ!」

 

ミーモス「ミィィィィ~~~!!」

 

 

駆け出したガイアは振り下ろすミーモスの拳を弾くと、腹部へ拳を打ち込む。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ミーモス「ミィィィィ~~~~…!」

 

 

怯んだ隙にガイアは勢いよく回し蹴りを放つが、ミーモスの前転でその足をくぐって後ろへ回り込む。

そのまま後ろから蹴りを食らわそうとするが、ガイアの蹴りで防がれる。

 

矢継ぎ早に拳を繰り出すが、ガイアの腕に阻まれ

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ミーモス「ッ!?」

 

 

反撃の拳を腹部へ食らい、怯んだ隙に流れる様に後ろへ

投げ飛ばされる。

 

 

ミーモス「ミィィィィ~~~!!」

 

 

それでもミーモスは負けじと立ち上がり、回し蹴りとかかと回し蹴りを合わせた連続攻撃で攻めるが、ガイアはバク転で次々と回避して距離を取ると

 

 

ガイア「トアッ!」

 

ミーモス「!?」

 

 

そのまま助走をつけたドロップキックを放ち、ミーモスは後ろへ吹き飛ぶ。

続けて体重を乗せた倒れ込みのかかと落としを食らわせようとするが、横へ転がりながら立ち上がったミーモスに避けられる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ミーモス「ミィィィィ~~~!!」

 

 

体勢を整え、駆け出したガイアとミーモスは中央で取っ組み合いになる。

両者の力比べは完全にガイアの方に分があり、そのままミーモスを押していくが、

 

 

ガイア「ッ!?」

 

 

その勢いを利用したミーモスは徐々に体勢を低くして倒れると、巴投げでガイアを投げ飛ばす。

立ち上がったミーモスは詰め寄ろうとするが、

 

 

ガイア「デヤッ!グァァァァ…!」

 

 

素早く立ち上がったガイアは右腕を上、左腕を下に垂直へ伸ばすと、胸の前へ青い光球を作り出す。これもアグルの必殺技であるリキデイターだ。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ドォンッ!

 

ミーモス「パアァァ~~~~!?」

 

 

ガイアの放ったリキデイターをくらったミーモスは体から火花を散らし、大きく怯む。

 

 

シャキィンッ!

 

ガイア「デュッ!?」

 

 

ミーモスは負けじと体勢を整えると、右肩に生えていた金属片をクルクルとブーメランの様に飛ばす。

予想もつかない飛び道具にガイアは驚きながらも体を反らして回避する。

 

 

シャキィンッ!

 

シャキィンッ!

 

ミーモス「ミィィィィ~~!!」

 

 

ミーモスは右肩の金属片を新たに生やすと、右腕を天高くあげ、両肩、両太もも、計4つの金属片を頭上に滞空させる。

そして、そのまま振り下ろすと、4つの金属片はブーメランの様に縦回転の軌道を描きながらガイアに襲いかかる。

 

 

ガイア「グアッ!?ジュワッ!?ドアァァァーーーッ!?」

 

 

ガイアは最初こそ避けていたが、次々くるブーメランの連続攻撃に対応できず、火花を散らしていた。

 

 

シャキィンッ!ヒュンッ!

 

 

怯んでいる隙にミーモスは腕からさすまた状に変形させた金属片を飛ばす。

 

 

ガイア「ドアァァァーーーッ!!」

 

 

真っ直ぐ放たれたさすまた状の金属片はガイアの首もとを捉え、そのまま地面へ突き刺さる。

 

 

ミーモス「ミィィィィ~~~~~!!」

 

 

ミーモスは宙を飛んでいた金属片に命令を出す様に腕を動かすと、金属片はさすまた状に変形し、ガイアの両手、両足を拘束する。

 

 

ガイア「グッ…!グアァァァ…!」

 

ミーモス「ミィィィィ~~~~~…!!」

 

 

ガイアは何とか抜け出そうともがくが、拘束している金属片が深く地面に突き刺さっているので中々抜け出せない。

その間にミーモスは高笑いをする様に胸を張ると、身動きがとれないガイアへゆっくり近付いていく。

 

 

リアス「みんな!我夢に続くわよ!!」

 

『了解!』

 

ドォンッ!ガァンッ!

 

ミーモス「パアァァ~~~~…!!」

 

 

リアスの指示すると、皆は飛び道具でミーモスへ一斉攻撃する。ミーモスは攻撃があまり効いてはおらず、怯むだけであったが、ガイアが脱出する時間には充分な一瞬だった。

 

 

ガイア「グアァァ~~~~……デヤッ!!」

 

 

ガイアは力を込めて全身を赤く発光させると、地面に固定されていたさすまた状の金属片を引っこ抜き、完全に自由の身になった。

 

 

ミーモス「パアァァ~~~!!」

 

ガイア「デュアッ!グァァァァ………!!!」

 

 

ミーモスが仲間に気をとられる中、跳ね起きたガイアは両拳を腰に携えた後、両腕を頭上高く掲げ、胸の前で瞬時に合掌して一旦左右に広げて目映い赤色の光に包まれると、両腕を内側に180度回転させ始める。

 

 

小猫「…ガイアが変わるっ!!」

 

ガイア「デヤッ!グアッ!」

 

 

小猫がそんな驚きの声を漏らす中、ガイアは交差させた両拳を胸から下に降ろし、赤色の光を晴らし、最強最高のスプリームヴァージョンにヴァージョンアップした。

ガイアは深く腰を下ろすと、平手にして曲げた右腕を上、拳を作った左腕を下にする力強いファイティングポーズを取ると、地面を蹴って駆け出す。

 

それこそ、ミーモス――――否、ロキ終了のお知らせだった。

 

 

ミーモス「ミィィィィ~~~~!!」

 

ガイア「ダァァァーーーーッ!!」

 

ドォンッ!

 

 

駆け出したガイアは合わせて向かってくるミーモスを掴み上げると、勢いよく地面へ叩きつける。

 

 

ミーモス「パアァァ~~~!」

 

ガイア「ダッ!デヤァァァァーーーーーーッ!!」

 

ダンッ!

 

 

ガイアは苦痛の叫びをあげるミーモスを掴み上げて無理やり起こすと、休む間も与えず、背負い投げの要領で反対の地面へ叩きつける。

 

 

ガイア「…ダッ!」

 

ドォンッ!

 

ミーモス「パアァァ~~~ッ!!パアァァ~~ッ!!」

 

 

ガイアはフラフラと立ち上がるミーモスに駆け寄ると、両脇に手を通し、またもや反対の地面へ叩きつける。

 

 

ガイア「グァァァァ………!デュッ!!」

 

ダァンッ!

 

 

更に駄目押しとばかりとガイアはまだ立ち上がれずにいるミーモスを掴むと、ブレーンバスターの様に逆さまにしながら高く上げると、振り向き様に地面へ投げつける。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「ンン~~~…デェアッ!」

 

アパテー「パォォォーーー!!」

 

ダイナ「ダァァァーーーーーッ!!」

 

 

自分も負けてられないとダイナはストロングタイプへタイプチェンジすると、アパテーの懐に忍び込み、力強いアッパーを放つ。

アパテーは手足をジタバタしながら上空へ吹っ飛んでいく。

 

 

リアス「イッセー!これをっ!!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

その間に駆け寄ったリアスは巨大な滅びの魔力の塊をダイナへ与える。

リアスの意図がわかったダイナは両掌を前へ突きだして、滅びの魔力の塊を掴む。

 

 

ギュオォォォォン…!!

 

ダイナ「ハァァァ……!!シュワッ!」

 

 

その魔力の力にダイナは吹き飛ばされそうになるが、何とか自身のエネルギーで抑え込むと、赤褐色に輝く光球を作り出す。

作り出したエネルギーを片手に持ちかえたダイナは落ちてくるアパテーを見上げ、

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"~~~…ダァァァーーーーーーッ!!!」

 

 

深く腰を引くと、片手に携えていたエネルギー球を上空にいるアパテー目掛けて投げ飛ばした。

 

 

アパテー「パォォッ―――!」

 

ドガガガガガァァァァンッ!!

 

 

リアスとダイナの合体技を受けたアパテーは断末魔をあげる間もなく爆発四散した。

その威力は肉片すら残さない程だ。

 

そして、朱乃とバラキエルはアルギュロスと対峙していた。朱乃は堕天使の翼を広げると、上空に何枚もの漆黒の翼を広げるバラキエルの傍にそっと並ぶ。

 

 

朱乃「……私と一緒に戦って下さい!」

 

バラキエル「…勿論だ!」

 

 

朱乃の頼みにバラキエルは微笑み返すと、バラキエルは雷光を放ちながら左腕、朱乃も雷光を放ちながら右腕を重ねる。

そして、合わせたままゆっくりと下から上へ回すと、素早く顔の横へ腕を引き、腰に携えていたお互いの反対の拳に集約した2人分の雷光を溜め

 

 

「「はぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」」

 

ビガガガガガガァァァーーーーーーーン!!

 

 

そのままその拳をお互い突き出し、雷光を放つ。

絆が蘇った親子の一撃は激しい稲光りを起こしながらアルギュロスを捉える。

 

 

アルギュロス「パォォォーーー…!!」

 

ドガガガガガガガガガァァァァンッ!!

 

 

直撃したアルギュロスは破片すらも残さずらたちまち爆発四散した。

バラキエルは隣にいる朱乃へ目をやると、

 

 

バラキエル「やったな、朱乃…」

 

朱乃「……!はいっ!」

 

 

そう優しい顔で褒められた朱乃は少し気まずそうながらも元気よく返事した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファイティングポーズを取ったガイアは力強く猛進すると、ミーモスの上体を抱えあげ

 

 

ガイア「デュアァァァーーーーーッッ!!」

 

ドォォンッ!!

 

 

振り向き様に地面へ叩きつける。

ガイアはファイティングポーズを素早く取って、身構える。

 

土煙が巻き上げる中、ミーモスは痛みを堪えながら立ち上がってガイアへ飛び蹴りを放つが、ガイアは横から後ろへ回り込んで避ける。

 

 

ミーモス「ミィィィィ~~!!」

 

ガイア「ダッ!!」

 

 

それに合わせてミーモスも素早く方向転換して飛び蹴りを放つが、ガイアはその足を掴みかかると、そのまま前方向へぶん投げ、体勢を崩したミーモスを再び地面へ叩きつける。

 

 

ミーモス「パアァァ~~ッ!!」

 

 

 

ミーモスはふらつきながらもやかばやけくそ気味に飛びかかるが、腰元に飛び込んだガイアに易々と止められる。

そのまま上体を起こしたガイアに肩で抱えあげられると、手を離され、支えを失ったミーモスは背中から後ろの地面へ叩きつけられる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

その間にガイアは1回転しながら体勢を入れ替えて空高く跳躍すると、ミーモスの足下へ着地する。

 

 

ミーモス「パアァァ~~ッ!!パアァァ~~ッッ!!」

 

ガシッ!ガシッ!

 

ガイア「ダァァァーーーーーーッッ!!」

 

 

地面でもがき苦しむミーモスの左足首を掴むと、ガイアはそのまま持ち上げると、反対方向の地面へ力強く投げつける。

 

 

ガイア「ダァァァ~~……!」

 

ミーモス「パアァァ~~…ッ!!」

 

ガイア「デュアッ!!」

 

 

間髪入れず、ガイアはジタバタともがくミーモスを背中から重量上げの様に高く持ち上げると、力強く横へ投げ飛ばす。

宙で綺麗な放物線を描きながらミーモスは飛んでゆく。

 

 

ミーモス「…パアァァ~~~~~ッ!!」

 

 

地面へ叩きつけられたミーモスは苦しげにもがく。痛覚がない筈の金属生命体のボディーを貫通して、中にいるロキの肉体にダメージが当たっているのだ。

それでも諦めず立ち上がるが、体はふらついており、早く殺してと言わんばかりの様子だった。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァアァァァァ………ッ!!デュアッ!!!」

 

 

その隙にガイアは平手にした右腕を垂直、平手にして平行にした左腕を胸に当ててからクロールの様に大きく体を反らしながら円を描くと、胸の前で合掌する。

そのまま右手を下にずらすと、最強光線フォトンストリームを放つ。

 

 

ミーモス「ッ!?パアァァ~~~~~ッ!!」

 

 

その強大な光線を受けたミーモスはロキごと頭から足の先まで塵1つ残さず消滅した。

 

ミーモスを倒したガイアはこちらを見上げる朱乃を見下ろす。朱乃の顔は以前あった曇りがとれた元気なものだった。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

朱乃「…っ、ふふっ!」

 

 

そんな彼女を見て安心したガイアはサムズアップを送ると、朱乃も一瞬ポカンとするがすぐに意図を読むと、笑顔でサムズアップを返す。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

ダイナ「シュワッ!!」

 

 

そして、ガイアとダイナは正面を向くと、両腕を高く上げて飛翔し、どこか遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その勝利の一部始終はモニターで観戦していたサーゼクス達にも伝わっており、この場にいる全員はよろこび合っていた。

 

 

オーディン「…まさか、ロキごと消滅するなんてのぅ……何て力じゃ……。初めからミョルニルのレプリカなんて、いらなかったのかもしれんのぉ…」

 

アザゼル「落ち込むなよ、爺さんっ!会談は無事成功したんだしよぉ~!よっしゃ、祝いに俺の超ウルトラレベルの店で盛大にパァ~ッてしようぜ!」

 

オーディン「なぬ!?超ウルトラレベルとな!?よっしゃ、よっしゃ!すぐに向かうぞいっ!!」

 

 

いやらしい顔をしながら馬鹿騒ぎするアザゼルとオーディンを尻目にサーゼクスと石室はモニターに映る採掘場を眺め

 

 

サーゼクス「これでクリシスに宿っていた破滅招来体は完全に消滅したな」

 

石室「ああ。しかし、また……“新たな戦い”が始まる」

 

サーゼクス「はは…負けるつもりはないさ、我々は!ハハハハハハ…!」

 

石室「はいっ!ハハハハハハッ!」

 

 

改めて戦いへの意識を固めた石室とサーゼクスは笑い合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日後。我夢達は地下1階の大広間で各々でくつろいでいた。

会談が成功したオーディンは良い収穫を得たのか、ニヤニヤと怪しげな笑みを浮かべながら本国へ帰っていった。その際、ミョルニルのレプリカもきちんと返却している。

 

ちなみにヴァーリチーム全員は気付いた時には既にいなかった。我夢達が戦いに夢中になっている間にこっそりと姿を眩ました様だ。

どうやら、初めからフェンリルを捕まえるのが目的だったらしく、その為に我夢達を利用したのがわかった。

当然、上手く使われていたことに皆(特にリアス)は憤りを感じていたのは分かるだろう。

 

しかし、何やかんやありながらもこうして一段落ついた訳である。

皆には安らぎの時間が訪れたのだが…

 

 

ロスヴァイセ「もう終わりだわ!」

 

 

ただ1人、ソファーで嘆いていた。その人物はオーディンの付き人である銀髪のヴァルキリー、ロスヴァイセだ。

 

 

ロスヴァイセ「酷い!オーディン様ったら、酷い!私、あんなに頑張ったのに置いてかれるなんて!!うぅぅぅっっ…!」

 

我夢「……」

 

 

この世の終わりかの様な顔を浮かべながら号泣しているロスヴァイセを我夢は何とも言えない面持ちを浮かべていた。

彼女の言う通りオーディンに忘れられてしまい、そのまま置いていかれたそうだ。それを裏付けるかの様に今日まで迎えどころか連絡すら来ていない。

 

泣きわめくロスヴァイセにリアスはそっと近寄ると、肩に手を乗せ

 

 

リアス「もう、泣かないでロスヴァイセ。私達が通っている学園の教諭として働けるようにしておいたから」

 

ロスヴァイセ「……本当ですか?」

 

リアス「ええ。でも、女性教諭ってことでいいのよね?女子生徒じゃなくて?」

 

ロスヴァイセ「…はい。私、これでも飛び級で祖国の学舎を卒業しています。教員として充分教えられます」

 

『……』

 

 

ロスヴァイセの口から出た経歴に皆、目を丸くする。

年齢は我夢達とさほど変わらず、今まで見せた情けない姿とは売って変わって秀才とは思わなかったからだ。

我夢も以前、エリアルベース内のクリシスゴースト撃退を手伝ってもらったことがあるが、そのタイピングスピードは我夢を上回っており、その天才の片鱗を垣間見ている。

 

 

ロスヴァイセ「…けど、私、この国でやってけるのかしら?かといって国に戻っても、先輩方に会わせる顔もないし……」

 

リアス「うふふ、そこでこのプラン」

 

 

不安がるロスヴァイセにリアスは待ってましたとばかりにいつの間にか手に持っていた書類を見せる。

それは悪魔に転生した際の待遇について書き記された書類だった。

 

 

リアス「今、悪魔に転生すると、こんな特典やあんな特典が付くわよ?」

 

ロスヴァイセ「す、すごいっ!保険金、処遇、基本賃金が好条件すぎるわっ!」

 

リアス「更に私の眷属になれば、グレモリー家の数えきれない程の好待遇もついてくるわ。どう?」

 

 

最後の1つの駒『戦車(ルーク)』を手に持ってちらつかせながら買収にかかるリアス。

その好条件すぎる誘惑にロスヴァイセは

 

 

ロスヴァイセ「お願いします!!」

 

 

迷いもせずあっさりと引き受ける。

こうして、グレモリー眷属最後の1人としてロスヴァイセが加わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。まだ日が昇っていない頃、バラキエルはアザゼルに会いに兵藤家に来ており、2人は玄関先で話していた。

バラキエルは今回のロキ襲撃についての一部始終を組織に報告する為、冥界に戻ることになり、アザゼルに別れる前の挨拶をしていたのだ。

 

そして、話が終わりかけの時

 

 

アザゼル「…それで、朱乃には何も言わねぇのか?」

 

バラキエル「ああ。わだかまりが解けたとはいえ、どう接するか複雑でな……。娘も同じようだよ」

 

 

アザゼルの問い掛けにバラキエルは神妙な面持ちで答える。彼の言う通り、和解したはしたが、それまでにかかった時間もあって、お互い複雑な心境であるのだ。

そんな彼にアザゼルもどう言葉を送ればいいか困っていると、

 

 

我夢「あ、いたいた」

 

アザゼル「我夢!?それに…」

 

バラキエル「朱乃…」

 

朱乃「…」

 

 

そんな声が聞こえ、2人は振り向くと、我夢が朱乃が後ろから近付いてきていた。

人が寝静まる時間帯に2人きりと確信していたアザゼルとバラキエルはまさかの第3者の登場に驚いていたら、

 

 

アザゼル「お前、どうして起きてるんだ!?それにバラキエルがここにくるって教えてない筈だぞ?」

 

我夢「先生、僕を甘く見ちゃ駄目ですよ?いくら隠しても、僕の手にかかればすぐ分かりますよ」

 

アザゼル「ちっ!抜け目のねぇ奴…」

 

 

我夢にアザゼルは悪態をつきながらもニヤリと笑みを浮かべる。

そう会話した我夢は朱乃へ顔を向け

 

 

我夢「朱乃さん、ほら…」

 

朱乃「…」

 

 

促された朱乃は気まずそうな顔でバラキエルに弁当が入った巾着袋を手渡す。

その間に意図を察したアザゼルは席を外すかの様に離れていった。

 

 

バラキエル「これは…」

 

朱乃「……弁当。作ったから、食べてみて……」

 

バラキエル「あ、ああ…」

 

 

戸惑うバラキエルだが、朱乃に薦められると、恐る恐る包みを開き、弁当箱の蓋を開ける。

そこには色彩豊かな和食がズラリと詰められていた。

 

 

我夢「どうぞ」

 

バラキエル「ありがとう…。頂きます」

 

 

バラキエルは我夢から受け取った箸を手に肉じゃがを摘まみ、口の中へ運ぶと、瞳から一筋の涙がこぼれる。

 

 

バラキエル「朱璃の味だ…」

 

 

そう呟いたバラキエルは夢中でがっつくと、10分も経たないうちに完食した。

心幸せな気分に浸っているバラキエルに朱乃は重たい口を開き

 

 

朱乃「私は…母が死んだのは全てあなたのせいだと押し付けていた……。あなたを責めても何も解決しないってわかっているのにも関わらず……」

 

バラキエル「朱乃…」

 

朱乃「許してくれなくても言い…。でも、もし、許してくれるのなら…」

 

 

そう言うと、朱乃はバラキエルの瞳を見つめると、続けて

 

 

朱乃「もう1度……あなたを…“父”と呼んでもいいですか?」

 

バラキエル「…っ!」

 

 

目尻に涙を浮かべながら問うと、涙が止まったばかりにも関わらず、バラキエルもつられて涙を流し始め

 

 

バラキエル「ああ…っ!」

 

 

嗚咽をもらしながらうんうんと頷く。

幸せのあまりに出た涙だ。

しばらく、2人は泣きあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、1時間後。ひとしきり泣いたバラキエルは身支度を整えて、出発の準備が出来ていた。

バラキエルは朱乃へ顔を向け

 

 

バラキエル「しばらくはこちらへ帰れないが、時間ができ次第、顔を見せるつもりだ」

 

朱乃「お気をつけて」

 

バラキエル「ああ、お前もな」

 

 

バラキエルは朱乃へ笑顔を送ると、今度は我夢へ顔を向け

 

 

バラキエル「我夢君。娘のこと、君に任せたぞ」

 

我夢「はい!勿論ですっ!」

 

 

そう答える我夢にバラキエルは安堵する。最初こそは不安で仕方なかったが、彼の考え、行動力、優しさを直接見て、娘の見る目に間違いないと思った。

ちなみに我夢は恋愛的な意味が込められているのは知らない。

バラキエルは踵を返すと、玄関の戸を開け

 

 

バラキエル「では、失礼する」

 

 

そう告げると、外へ出ていった。

見送った後、我夢は申し訳なさそうな顔で朱乃を見つめ

 

 

我夢「すみません、朱乃さん。無理言って会わせて…」

 

朱乃「うん…。でも、我夢君が言ってくれなきゃ、私、きっと後悔するだけだったわ………。けど、昔みたいに父様と接せれるかしら……?」

 

 

不安そうに呟く朱乃に我夢は微笑みかけ

 

 

我夢「安心して…少しずつでいいんですよ。焦らず、ゆっくりでも……。本当に仲良くなきゃ、こんなに悩み、苦しんだりしませんよ」

 

朱乃「っ!」

 

 

そう元気付ける彼に朱乃は思わずときめく。

―――どうしてこの人はこんなにも優しいだろう…。 頬が赤くなり、心臓の鼓動が高鳴るのを朱乃は実感した。

 

 

朱乃「我夢君…」

 

我夢「?……っ!?」

 

 

朱乃に呼ばれ、振り向いた瞬間、我夢の頬に柔らかい感触が伝わる。それは朱乃の唇によるものだった。

我夢が顔を赤くして動揺する中、朱乃は照れくさそうに笑い

 

 

朱乃「うふふ…♪」

 

我夢「は、はは……」

 

 

そんな彼女に我夢はまともに返せ、照れながら笑い返すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベキッ…!

 

 

小猫「……ムカッ」

 

 

丁度同じ頃、起きたばかりの小猫が苛立ちながら鉛筆をへし折っていたことは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

うだるような暑さ…。
油田山の山肌に現れた奇怪な文字の正体は!?
その時、ジャグラーがガイアに挑む!

次回、「ハイスクールG×A」!
「激ファイト!ガイア VS(ブイエス) ジャグラー!」
手に汗握る戦いを見逃すな!




今回のバラキエルと朱乃さんのコンビネーション攻撃はコスモスとジャスティスの合体技『クロスパーフェクション』を意識して書いてみました。

さて、次回は皆さん大好きなジャグラーさんが大暴れします。
今後、ご期待下さい!

よろしければ、感想&コメントよろしくお願いします。


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第45話「激ファイト!ガイア VS(ブイエス) ジャグラー!」

自然コントロールマシーン エンザン
合体魔王獣 ゼッパンドン      登場!


油田山(あぶらださん)。我夢の故郷、吉岡街の近くにそびえ立つ標高2460mもの山。

今はもうないが、昔は油が盛んに取れ、当時、村だった吉岡街を大きく発展させたという記録も残されている。

その影響で昔の人々は『山の神の恵み』だと信じて山を崇め、油が沢山取れたことから『油田山』と名付けた。

 

 

ゴゴゴゴゴ…!!

 

ボゴォッ!

 

 

そして、この日の深夜。油田山の岩肌が突如、地響きを立てながら崩れ落ちた。土埃が舞い、ガラガラと岩が崩れ落ちていくと、山の中からは奇妙な文字が現れた。

本来、自然で出来た山の中にある筈のない人工で作られた文字だ。

 

 

キラッ…

 

 

奇妙な文字は赤く輝く。まるで瞼を開けたかの如く、不気味に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから夜が明け、吉岡街。油田山の奇妙な文字が現れたと共に、吉岡街は異常な猛暑に見舞われていた。

少し肌寒い季節である秋なのにも関わらずだ。

あまりの暑さ故、街中の住民はほぼ、家の中へ引きこもっていた。

 

 

唯一「はぁっ、はぁっ…暑いってもんじゃねぇなこりゃ」

 

 

そんな猛暑に照らされながら山道を登る眼鏡をかけた1人の中年男性がいた。

彼の名は高山 唯一。市役所でケースワーカーという身に問題がある人向けの支援を積極的に行う仕事をやっている。名字からわかると思うが、我夢の父親でもある。

 

唯一はだくだくと流れる汗をタオルで拭い、その都度水筒で水分補給しながら山道を登っていく。

しばらく登ると、拓けた土地にある瓦屋根の平屋に着いた。

防犯を気にすることもなく戸や窓を開けた自由な空間、気ままな田舎の雰囲気を醸し出している。

 

 

唯一「徳造さ~ん」

 

徳造「おう!」

 

唯一「役場の高山です~…」

 

 

唯一が縁側から開いた居間へ声をかけると、うちわを扇ぎながらニコニコと笑顔を浮かべる初老の老人――徳造が居間から現れる。

その言い方と麦茶を淹れた氷入りのグラス2つを乗せたばかりのお盆が縁側に置いていることから、唯一が来ることは前もって分かっていた様だ。

 

 

徳造「ははっ!上がってくれ」

 

唯一「は~い!」

 

 

軽く会釈した唯一は徳造に勧められるまま縁側に座ると、出された麦茶をゴクッと1口飲む。

氷でキンキンに冷えた麦茶は暑さで熱く渇いた唯一の口内を一瞬で冷やし、疲弊で落ち込んだ心も癒した。

 

 

唯一「へぇあぁっ、暑いね~……蒸し風呂みたいだよ!」

 

徳造「いんや!“心頭滅却すれば火もまた涼し”だ!はは!」

 

唯一「はははっ、何言ってんの」

 

 

徳造と談笑しつつ、唯一はカバンの中から1通の封筒を彼に手渡す。

それは老人ホームへの案内が書かれたものだった。

 

 

唯一「山の中で1人暮らしは不便だろ?そろそろ老人ホームに――」

 

徳造「んにゃ~!これ以上、役場の世話になる訳にはいかん!へへっ、ごくろうさん!」

 

唯一「そんなこと言わないでさぁ……っ!」

 

 

やんわりと断りながら封筒を手に居間へ戻る徳造に唯一はそう言っていると、ふいに居間の隅にある仏壇に目が止まった。

仏壇の中央には、迷彩服を着た1人の青年が笑顔でガッツポーズを取っている写真が飾っていた。

写真に映る青年は唯一も知っていた。

彼は徳造のたった1人の息子で、若き自衛隊のパイロットだった。

 

唯一は写真に目をやりながら、麦茶を手に居間へと上がる。

 

 

唯一「そういや、息子さんが亡くなってからもう半年だね…」

 

徳造「ははっ、バカ息子が…。親より先に逝っちまって…」

 

 

悪態をつく徳造だが、その顔は悲しげなものだった。

徳造の息子は自衛隊のパイロットとして大活躍していたが、駒王町のコッヴ襲来時に殉職したという。

 

もう残された人生が半分も過ぎた自分よりまだ未来がある息子に先立たれるのはどれほど辛いものだろう…。

1人の子を持つ唯一にはその悲しみがひしひしと伝わった。

 

 

徳造「そういえば、あんたんとこも1人息子がいたっけか?学生だったっけか?」

 

唯一「はい…。駒王町にある学園に通っててね」

 

徳造「駒王町……あそこ、この日本での怪獣被害が多いそうじゃねぇか。心配だろう…」

 

唯一「ええ……本人は問題ないって言ってるけど、正直なところ、心配です…。1度戻ってこい言いましたけど、()()()()()()()()()使()()()()()って断られましてね……」

 

徳造「へぇ、そりゃあなんだ?」

 

 

唯一の言葉に徳造は首をひねりながら訊ねると、唯一は麦茶を1口飲むと、うっすら微笑みながらこう言う。

 

 

唯一「“地球の為に”、ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四之宮「ふぅ…」

 

 

場面が変わり、駒王学園の生徒会室隣の男子トイレからは大量の脂汗をかいた四之宮がスッキリとした顔で廊下へと出ていた。

 

 

四之宮「……あぁー、死ぬかと思った。あの女、一体どんな調理であんな不味く出来るんだ?逆に教えて欲しいぜ…」

 

 

腹をさすりながら四之宮は悪態を吐く。実は10分前程、四之宮は皆に勧められるまま、ソーナの手料理を食べたのだが、この様子からお分かりの通り、あまりにも不味すぎて腹を壊したのだ。

見た目はとても出来が良くて美味しそうではあるが、味が不味い……所謂、外見が良くて中身が駄目というやつだ。

しかも、最悪なことに腕前はソーナ自身気付いていない。

 

ソーナが時たまに眷属達に振る舞うのだが、正直に言えばソーナがショックを受け、姉であるセラフォルーが黙っておらず、眷属全員は渋々従うしかない。

だが、(元々の)四之宮とは味覚が合うのか特に不満を言わず、むしろ美味しいと評価しているので、皆は押し付けているのだ。

それ故、その時の四之宮は普段とうって変わって“救世主”と称えられている。

 

 

四之宮「やけに作り笑いしてた理由が分かったぜ。……ったく、生活といい、味覚といい、コイツマジで人間かよ……」

 

匙「四之宮さーん」

 

 

四之宮がそんなことをぼやいていると、廊下の向こうから匙が近寄ってきた。

四之宮は四之宮本人としての振る舞い方へ切り替える。

 

 

四之宮「おお、匙か。どうした?」

 

匙「いえ、珍しく顔色を悪くしてトイレへ駆け込んでいったんで心配だったんスよ。いつもなら何ともないのに」

 

四之宮「ははっ、心配すんな!ちょっと催しただけだ」

 

匙「そうですか!なら、良かったです!いつもありがとうございます!」

 

四之宮「はは!良いってことだ!(コイツらも大変だな…)」

 

 

匙と談笑しながら、四之宮は内心同情する。

上の者へは逆らえない……下っぱの辛いところである。

ちなみに四之宮の記憶からソーナの手料理が不味いというのが読み取れなかったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()からである。

 

 

匙「あ、四之宮さん。知ってますか?日本のある地域だけで異常な猛暑が発生しているって」

 

四之宮「ん?いや、初耳だな」

 

匙「ちょっと待って下さいね……」

 

 

談笑していると、匙が思い出したかの様に話題を振る。

四之宮は首を傾げながら答えると、匙はズボンのポケットからスマホを取り出すと、何回か指で操作の後、スマホに映る記事を四之宮へ見せる。

 

その記事を見た四之宮は目を丸くする。

 

 

四之宮「『T県 吉岡街が35度の猛暑に見舞われてる』?夏並の温度じゃないか!」

 

匙「はい、熱波は付近の油田山を中心に広がっているそうで……何でも、山の地下から熱を発するものが原因らしいっすよ」

 

四之宮「火山じゃないのか?」

 

匙「そう思うでしょ?ところが、辺りには火山帯がないんですよ。目的は分からないけど、みんな言ってるんですよ。これも破滅招来体の仕業って」

 

四之宮「…」

 

 

匙の話を聞き、四之宮は顎に手を当てて考える。

――どうして熱を発する必要がある?文明の破壊?温暖化促進?

色々考えるが一向に思い付かないので保留にすると、再び匙の顔を見て

 

 

四之宮「調査には誰が行ってる?」

 

匙「それなら、ジオベースの樋口さんと高山が。何でも、吉岡街は高山の故郷らしくて、いの一番に名乗り出たらしいですよ」

 

四之宮「ふぅん……成る程」

 

 

それを聞いた四之宮は悪巧みを思い付いた様に口角を上げると、踵を返し

 

 

四之宮「んじゃあ、俺も行ってくるわ」

 

匙「…へ?」

 

 

そう言って立ち去ろうと歩き出す。

呆気にとられる匙だが、すぐハッとなると、四之宮を引き留める。

 

 

匙「ちょ、ちょっと待って下さいよ!?この後の生徒会の仕事、どうするんですか!?」

 

四之宮「ん?ああ、悪ィけどまたやってくんね?ラーメン奢るからよ」

 

匙「もうこれで30回目スよ!俺もそう簡単には首を振る訳には―――」

 

四之宮「そんじゃな~」

 

匙「ああっ!?まだ引き受けた訳じゃ…!」

 

 

ぶつぶつ文句を言う匙を無視して、四之宮はそそくさと去っていった。

 

 

匙「………はぁ…」

 

 

廊下に1人残された匙はため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エリアルベースのコマンドルームでも石室とオペレーター達が血眼で熱波の原因を捜していた。

 

 

「コマンダー!油田山の山肌に奇妙なものが!」

 

石室「よし、メインモニターに切り替えてくれ」

 

 

何かを見つけたオペレーターは指示通りにメインモニターへ表示する。

映し出された衛星からの日本地形図を次々拡大していき、油田山の山肌を映す。

そこには奇妙な文字が露出していた。

 

 

石室「っ、これは…」

 

 

それを見て、皆が息を呑んだ瞬間だった。

山肌が崩れ落ち、文字の全貌が露になる。

それは何やら篆書体が刻まれた謎の機械だった。

 

 

石室「炎山(エンザン)…」

 

『!?』

 

 

疑問に包まれる中、石室の呟きに皆は目を丸くして注目する。

石室は続けて

 

 

石室「炎、そして山と書かれている」

 

「炎の山……」

 

 

そう言うと、皆は再び山肌に現れた『炎山』と描かれた機械に目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「樋口さん!」

 

樋口「?」

 

 

同時刻。油田山付近を調査していた我夢は同行している樋口を呼び掛ける。我夢もその機械の出現を掴んだのだ。

 

樋口は我夢の手に持っている映像デバイスを見て、目を丸くする。

 

 

樋口「っ、これは……まさか…!」

 

我夢「ええ……。以前出現したテンカイに似ていますね…」

 

樋口「…とすると、何者かが作り出した自然をコントロールするマシン……」

 

我夢「ええ。恐らく表面をレーダーを感知できない絶縁素材でコーティングしてるんでしょう」

 

 

我夢は自然コントロールマシーンのその目的の恐ろしさを知っている。以前現れたテンカイも一見ほったらしても害はないと思うが、最終的には生物を死滅させるものだった。

今回現れたのも同類と考えるのなら、危険であることには間違いだろう。

 

 

樋口「とにかく、住人を避難させましょう」

 

我夢「はい!」

 

 

一足先に車に乗り込む樋口を見ながら、我夢は考え込む。

 

 

我夢「…テンカイには大気を浄化させる目的があった。コイツには一体何が……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、吉岡街の山道を何故か朱乃は歩いていた。

実は調査とは無縁の用事でここへ足を運んでいるのだ。

ちなみに今回は私服である。

 

朱乃は額から溢れる汗をタオルで拭く。吉岡街中は猛暑で見舞われており、とても散歩日和のものじゃない。

しかし、朱乃の顔は疲労の色が見えず、それどころかニコニコしている。

 

 

朱乃「うふふ…ご両親への挨拶、頑張りませんとね♪」

 

 

そう、朱乃は我夢の両親に挨拶する為、彼の実家に向かっていたのだ。

早い時点で良い女性だとアピールすれば、信頼を得られ、交際に反対する確率は低い。

更にライバルを牽制できるので、一石二鳥だ。

 

 

朱乃「あっ!?」

 

 

朱乃はルンルンと軽やかな足取りで歩いていると、暑さでやられたのか道端で倒れている男性を見つけた。

朱乃は急いで男性の元へ駆け寄る。

 

 

朱乃「大丈夫ですか?」

 

唯一「…あ……う…」

 

 

偶然か奇跡なのかその男性は我夢の父、唯一だった。

意識は朦朧としており、顔色も悪い。

 

とにかく、朱乃は応急処置をする為、唯一を運ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重美「ご迷惑おかけしました」

 

朱乃「いえ、大丈夫ですわ♪」

 

 

それから数分後。朱乃は途中で少し意識を取り戻した唯一の案内で彼の自宅へと運んだ。

唯一は今は寝室で休んでおり、居間では朱乃と我夢の母、重美が対話していた。

ちなみに朱乃はここが我夢の実家であることにはまだ気付いていない。

 

朱乃は出された麦茶を1口飲むと、重美へ問いかける。

 

 

朱乃「…本当に病院へ行かなくて大丈夫ですか?」

 

重美「暑いのに表を走り回って倒れただけですから、あの、意識もハッキリしてますし。本人が大丈夫と言ってますので……」

 

朱乃「そうですか…」

 

 

不安が残りつつあるが、重美にそう言われたのでそれ以上の追及を止めると、話題を変える。

 

 

朱乃「…でも、大変ですわね。役所のケースワーカーだなんて」

 

重美「ええ」

 

朱乃「あの、ご無礼を承知なのですが、この街の規模ならそう何人もいないのではないのですか?」

 

 

吉岡街は都会から離れていることもあり、自然豊かな街並みが特徴だ。しかし、逆を言えば人も少ない。

そんな規模なのに過労するほど働く必要はない筈だ。

その問いに重美は頷き

 

 

重美「うちの主人だけです。もう、昔から日曜も祭日も関係なく駆け回っているんです」

 

朱乃「そうですか…。では、失礼致しますわ」

 

重美「ありがとうございます…」

 

朱乃「いえ………?」

 

 

朱乃は立ち去ろうと席を立った瞬間、テレビの横にあるタンスの上に飾られている写真立てに目が入る。

入学時に撮ったものだろうか。その写真立てに写るのは駒王学園の制服を着た我夢が爽やかな笑顔でピースサインしていた。

 

 

朱乃「この写真の男の子って……高山 我夢君?」

 

重美「?ええ、そうですけど……あっ、もしかして我夢のお知り合い?」

 

朱乃「ええ、同じ学校に通ってますもの。それに部活も同じですし」

 

重美「あら~そうだったの!ごめんなさいね、大人びてるから学生さんって気付かなかったわ!」

 

朱乃「いえいえ♪」

 

 

朱乃は謙虚にしつつも目的地である我夢の実家であることに内心喜ぶ。偶然通りすがった男性を連れてきて、その先が我夢の実家だったとは予想だにもしなかっただろう。

喜びのあまり、はしゃぎたい気持ちを抑えていると、重美はニヤニヤとした顔を浮かべ

 

 

重美「ところで…我夢とはどういう関係?失礼だけど、お付き合いしてるとか?」

 

 

興味深々に訊ねる。以前訪れた小猫にも同じ質問をしたこともあり、息子の恋愛事情には興味がある様だ。

その問いに朱乃はニッコリと笑い

 

 

朱乃「…お付き合い、とまではいきませんが()()()()()()()()です。彼にはいつもお世話になっていますわ♪」

 

 

意味深な言葉を含めながらペコリと頭を下げる。

 

 

重美「あら、やだ!こちらこそいつも息子のお世話になっております!今後とも我夢と仲良くして下さいね!」

 

朱乃「はい♪」

 

重美「小猫さんといい、この娘といい、こんな可愛い女の子に囲まれるなんて!我夢も隅には置けないわ~~♪」

 

 

重美が我が事の様に照れる中、朱乃は内心ガッツポーズを取る。この短い会話の中で彼女の自分への評価は確実に高くなっており、上々と言ったところだろう。

 

2人がそんな気分に浸っていると

 

 

カタカタ……

 

ゴゴゴゴゴ……

 

『!?』

 

 

突然家が揺れ始めた。というよりも地面そのものが揺れ始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボゴォンッッ!!

 

 

山肌から噴き出す様に岩が崩れ落ち、その中にいた自然コントロールマシーンがせりだす様に現れる。

その姿は先端に2本の角が付いた石板の様になっており、中央には『炎山』と描かれた篆書体が縦向きに刻まれている。

 

遂に山中にいた自然コントロールマシーンが動き出したのだ。

 

 

我夢「あんな巨大なものがずっとあの山に眠っていたのか…!」

 

 

その出現を港で目撃した我夢は驚いた様に見上げる。

何の目的かはわからないが、大昔に作られ、そのまま数百年もの日本の山中へ眠っていたとは信じられないのだ。

 

真っ赤な熱で覆われたエンザンはバチバチと放電しながら、放出する熱を上昇させていく。

 

 

我夢「なんて暑さだ…」

 

樋口「気温がグングン上昇しています…」

 

 

我夢が上がっていく暑さに辟易していると、駆け寄ってきた樋口が手に持っている赤外線温度計で測った数値を見せる。

彼の言う通り、ただでさえ暑いのにも関わらず、気温は信じられない速度で上昇していく。

 

我夢はエンザンを見上げつつ、対策を報告する為、XIGナビで石室へ連絡をする。

 

 

《石室「…我夢、対策は?」》

 

我夢「奴の内部構造が分からないので、無闇に火器による攻撃は避けて下さい」

 

樋口「液体窒素によって、冷却というのは?」

 

我夢「有効かも知れませんが、逆に奴の持つ熱源を刺激して、より強力な熱を放射するかも知れません…」

 

 

アドバイスを授ける樋口にそう返すと、我夢は再びXIGナビを見つめ

 

 

我夢「とにかく、現時点では住民の避難を優先させて下さい」

 

《石室「わかった」》

 

樋口「避難はジオベースの職員に任せて下さい」

 

 

通信を終えた一同は各々動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後。

G.U.A.R.D.の迅速な避難誘導を行ったおかげで、住民の避難はあっという間に完了した。

 

人気がなくなった港に車を止め、我夢と樋口が降りると、1人のG.U.A.R.D.隊員が駆け寄って敬礼をする。

 

 

「避難はほぼ終了しました!」

 

樋口「ごくろうさん」

 

「はっ!」

 

 

労いの言葉を受けた隊員はペコリと軽く頭を下げると、他の隊員の集まっているところへ走り去っていく。

これで人々への危害はなくなったと安心した2人は笑顔で見合せると、我夢は数歩前へ歩き、カモメが鳴く港へ目をやる。

 

 

樋口「…っ」

 

 

そうしていると、何か思い付いた樋口は我夢の傍へ寄ると、仮説を語り始める。

 

 

樋口「以前出現したテンカイは大気を浄化させる目的別で作られた………ひょっとして、エンザンは地球の気温低下を防ぐ為に作られたものではないでしょうか?」

 

我夢「っ、氷河期を避ける為ですか?」

 

樋口「ええ…何者かが太古の昔に……」

 

重美「我夢っ!」

 

「「…?」」

 

 

樋口の仮説に我夢は納得していると、突然遠くの後ろから声が聞こえ、2人は振り向く。

その声の持ち主は我夢の母、重美だった。

 

 

我夢「母さんっ!」

 

 

我夢は顔を明るくして返事すると、重美へ駆け寄る。

すると、重美はジロジロと我夢の姿を見て訝しげな顔を浮かべる。

 

 

重美「我夢?その格好は…」

 

我夢「ああっ!?いや、これは……!」

 

 

彼女の反応に我夢は気付き、あたふたする。

現在、我夢はXIGの隊員服を着ているのだが、自分がXIGの隊員であるのは色々と不味いので普段、外での任務は顔が別人に見える様に誤認識させるヘルメットを着用している。

だが、暑さのあまり、うっかりXIGメットを着用するのを忘れていたのだ。

 

どう説明しようかと四苦八苦する我夢を見た重美は「それについては後で訊くわ」と言って我夢を一旦落ち着かせると、深刻な顔を浮かべ

 

 

重美「お父さんが!山の近くに住んでいる足が不自由な老人のところへたった1人で助けに…!」

 

我夢「!?」

 

 

その危険な報せを聞いた我夢は目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、徳造を助けに山を駆け上がった唯一は徳造の家へと辿り着いた。

 

 

唯一「っ!?徳造さんっ!!」

 

 

唯一は居間で意識を失って倒れている徳造を見て目の色を変えると、靴を脱ぐのも忘れ、急いで居間へ駆け上がる。

倒れている徳造の傍に寄り、首元に手を当てて脈を測る。

 

 

唯一「…っ、生きている!」

 

 

脈があるとわかった唯一は僅かに頬を緩ませる。

しかし、脈はあれど、このままここにいては危険なのは変わらない。唯一は彼の息子の写真を手に徳造の肩を担ぐと、急いで避難し始める。

 

 

唯一「うぅ…ぐぅぅ…!」

 

 

だが、気を失った男1人を担いで下山するというのには無理がある。人間は意識があるのとないのでは重さが全く違う。それをたった1人で行うのは無謀だ。

 

 

朱乃「手伝いますわ!」

 

唯一「君は……!っ、すまない!」

 

 

そこへ駆け付けた朱乃が徳造の肩を担ぐのを手伝い、唯一は申し訳なさそうに感謝しつつ、2人は下山していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四之宮「ふぅ~…暑いな……」

 

 

そして、丁度その時。四之宮は熱を放ち続けるエンザンと上空で監視するチームトルネイドの面々を山の頂上から見物していた。

サングラスをかけ、右手に日傘、左手に冷えたジュースを持っており、防暑対策もバッチリ取ってある。

 

四之宮はジュースをグイッと1口飲むと、エンザンの背部に備わっているエネルギーゲージへ目をやる。

体温計の様な構造をしているゲージは未だ最大まで溜まっておらず、丁度真ん中までしか溜まってなかった。

 

 

四之宮「はぁ…」

 

 

それを見た四之宮は退屈そうに嘆息をつくと、ズボンのポケットから1枚のメダルを取り出す。

そのメダルには結晶体の様な岩石から赤い触手が飛び出している怪獣が描かれていた。

 

 

四之宮「セレブロ。お前のメダル、有り難く使わせてもらうぜ♪」

 

ヒュンッ!

 

 

メダルに向かって不敵に告げた四之宮はメダルをエンザンに向けて投げ飛ばす。メダルは綺麗な放物線を描きながらエンザンのエネルギーゲージへ吸い込まれる様に入っていった。

すると、

 

 

グゥゥゥン…ッッ!

 

バチバチバチッッ!!

 

 

メダルの影響でエネルギーゲージが最大に達したエンザンは全身に赤い稲妻が走ったかと思うと、グニャリと変形し始める。

 

 

エンザン「ピィィ~~~!!」

 

 

変形を終えると、そこには胸元に『炎山』と描かれ、クワガタムシを彷彿させるシルエットの二足ロボットが立っていた。

これこそ、自然コントロールマシーン『エンザン』の真の姿だ。

 

 

椿姫「怪獣に変形した!?」

 

エンザン「ピィィ~~~!!」

 

 

驚いている椿姫達が乗るXIGイーグルに向かって、エンザンは角からの電撃と胸元から高熱の火炎弾を放つ。

 

 

『っ!』

 

 

椿姫達は驚きを隠せないままではあるが、すぐに気持ちを切り替え、攻撃を回避する。

 

 

《石室「チームトルネイド。攻撃をエンザンの足下に集中……動きを封じろ」》

 

『了解!』

 

 

その指示を受けた椿姫達は街への進行を食い止める為、エンザンの足下への一斉攻撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、徳造を連れて山を下りていた朱乃と唯一は道中で足を止めた。いや、止まるしかなかったと言うのが正しいだろう。

エンザンが暴れた影響で木が倒れ、道を塞いでいたからだ。

 

呆気にとられる中、朱乃は隣にいる唯一に訊ねる。

 

 

朱乃「他に道は?」

 

唯一「ここしかないんだ…っ」

 

 

それを聞いた朱乃は近くの木に徳造を寄りかからせて寝せると、すぐさま倒木の撤去に取りかかる。

これぐらいの倒木なら魔力であっという間に消せるが、人間である唯一の前で使うと怪しまれるので、手を使って執り行う。

 

これでも悪魔なので、人以上は力がある。それならば、1人でも出来る。そう思って始めたのだが、唯一はその横で手伝い始めた。

 

 

朱乃「お義父様。ここは私1人に任せて下さい!こう見えて、力はある方ですわ!」

 

唯一「いいや、女の子1人に任せる訳にもいかんっ」

 

朱乃「病み上がりなのに無茶はいけませんわ!その体で道を空けるのは無理ですわ!さあ、休んで…」

 

 

作業をしながら朱乃は休むよう促すが、唯一は首を横に振り

 

 

唯一「諦めちゃいけない!どんな時でもっ!例えそれが無理、不可能だとしても、少しでも差す光があればこじ開けて進むんだっ!」

 

(我夢「何もかも終わった訳ではないですし、諦めるのはまだ早いですよ」)

 

朱乃「…」

 

 

唯一の言葉を聞き、朱乃は以前、我夢にも同じ様なことを言われたのを思い出すと同時に思った。

――やはり、この人は我夢の父親なんだと。彼の持つ正義や思いやる心はこの人から受け継がれているのだと。

そう思った朱乃は微笑み

 

 

朱乃「似てますね、息子さんと」

 

唯一「え?」

 

朱乃「私、今はそうではないのですが、父と険悪だったんです。仲良くしたいって思っても素直になりきれなくて……でも、我夢君に励まされて父と和解できたんです。その時の彼の言葉や顔があなたに似てて、やはり親子なんだって…」

 

 

朱乃は自分とバラキエルの仲を取り持ったくれた日のことを思い出す。あの日、彼が行動してなければ、一生うやむやだっただろう。

朱乃はそう言いながら唯一へ顔を向け

 

 

朱乃「感謝していますわ。彼とそれを産んで下さったあなた達に…」

 

唯一「……ふふっ」

 

 

感謝の言葉を聞いた唯一は誇らしげに笑みをこぼした。

息子の我夢がこんなにも人の為に頑張れていることを…。

 

そうこうやり取りしているうちに倒れた木は人が乗り越えられるぐらいの高さにまで撤去していた。

 

 

朱乃「この程度の高さなら…」

 

唯一「君は先に!徳造さんは私が!」

 

朱乃「はい!」

 

 

唯一に促された朱乃は一足先に倒木の上に乗ると、唯一から肩を貸している徳造を抱き抱えると、そのままゆっくりと下へ下りながら地面へ下ろす。

 

 

バタリ…

 

朱乃「お義父様?」

 

 

その瞬間、唯一がいる反対側で何かが倒れる音が聞こえた。

嫌な予感がした朱乃は倒木を乗り越え、下を見ると、唯一が倒れていた。

仕事による疲労とエンザンによって上昇した気温が当たって、遂に限界が来てしまったのだ。

 

 

朱乃「お義父様!?しっかりして下さい!お義父様!」

 

唯一「あ…うぅ…っ」

 

 

その光景に目の色を変えた朱乃は肩を揺すって呼び掛ける。

唯一は息はあるが顔は青ざめ、荒い呼吸をしており、いかにも危険な状態であることを知らしている。

 

 

朱乃「お義父様っ!しっかりして下さい!」

 

我夢「朱乃さん?」

 

 

そして、その時。唯一を助けに来ていた我夢が朱乃の声を聞いて走り出す。

キョロキョロと辺りを見渡すと、山道の斜面に2人を目撃した。

 

 

我夢「父さんっ!?」

 

エンザン「ピィィ~~!!」

 

我夢「っ!」

 

 

駆け寄ろうとする我夢だが、近くにいるエンザンの鳴き声を聞いて踏み止まる。

 

 

バリバリーーー!!

 

エンザン「ピシュュュ~~~~!!」

 

 

エンザンは角から放つ電撃で地を走らせると、地面のみならず、近くにある徳造の家を燃やした。

 

 

エンザン「ピィィ~~!!!」

 

グシャンッッ!!

 

エンザン「ピシュュュ~~!!」

 

 

燃え盛る家をエンザンは助走をつけて踏み潰すと、そのまま朱乃と唯一達を踏み潰そうと近寄ってくる。

 

 

キィンッ!

 

 

我夢はすかさずエスプレンダーを上へ突き出すと、赤と青の閃光に包まれ、ウルトラマンガイアへ変身した。

 

 

ガイア「ダッ!トォアッ!」

 

エンザン「~~~!!?」

 

 

変身したや否や、ガイアは地を蹴って軽く跳躍すると、右足のジャンプキックでエンザンを蹴り飛ばす。

 

 

朱乃「ウルトラマン!」

 

ガイア「………グアッ!」

 

エンザン「ピィィ~~~~!!」

 

 

ガイアは安堵した様に呟く朱乃を見てコクリと頷くと、ファイティングポーズを取り、角を突き立てて突進してくるエンザンのもとへ駆け出す。

 

ガイアは走って勢い良く跳躍してグルリと1回転して飛び越える。

 

 

ガイア「ダッ!デヤッ!デュアッ!」

 

エンザン「ピシュュュ~~!!」

 

 

ガイアは振り向いたエンザンの角や頭を蹴り上げて大きく怯ませると、間髪入れず、回し蹴りとかかと回し蹴りのコンボで激しく攻める。

 

 

エンザン「ピィィ~~~!!」

 

ガシッ!

 

ガイア「…デュアァァァーーー!!」

 

ドォンッ!

 

 

ガイアは飛びかかってエンザンに組みかかると、後退しながら背負い投げの要領で地面へ叩きつける。

 

追い討ちをかけようとガイアは近寄ろうとするが、

 

 

エンザン「ピィィ~~~!!」

 

ジャキッ!

 

ガイア「デュアッ!?」

 

 

エンザンは負けじとクワガタの様な2本の角でガイアの首を挟みつける。

首の圧迫に一瞬驚くガイアだが、すぐに冷静を取り戻すと、エンザンの頭を両手でガシッと掴むと、

 

 

ガイア「ダッ!デヤァァァァーーーー!!」

 

ガァンッ!

 

エンザン「ピィィ~~~!?」

 

 

エンザンを逆さまの状態のまま力強く持ち上げ、ジャーマンスープレックスの様に後ろの地面へ投げ付ける。

その衝撃にエンザンは機械の筈なのにまるで痛そうに手足をジタバタさせる。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァァ……ッ!」

 

ダァンッ!

 

 

休む間も与えず、ガイアはエンザンを持ち上げて横へ投げ付ける。

 

 

ガイア「デュッ!」

 

ダァンッ!

 

 

そして、倒れるエンザンを無理矢理起き上がらせると、またもや後方へ思いっきり投げ付ける。

勢いに乗ったガイアは倒れるエンザンへ駆け寄るが

 

 

ジャキッ!

 

ガイア「デュッ!?グァァァァッ!!」

 

エンザン「ピシュュュ~~!!」

 

 

エンザンの2本の角に両膝を挟まれ、動きを封じられた。

両膝を固定したままエンザンは起き上がると、ガイアは宙で1回転して地面へ叩きつけられる。

 

 

エンザン「ピシュュュ~~~~!!」

 

バリバリーーー!!

 

ボォォォォッッ!!

 

ガイア「ドアァァァァーーーーーッ!!」

 

 

痛みを堪えて立ち上がるガイアにすかさず、エンザンは2本の角から放つ電撃と胸からの火炎弾の2重攻撃で攻める。

電撃で体が痺れ、火炎弾で身体中が一瞬だが燃え上がったガイアは片膝をつく。

 

 

バリバリーーーーー!!

 

 

これは好機と見たエンザンは再び電撃を放つ。相手に通用した攻撃を続けるのは得策だが、天才児のガイア―――我夢には同じ手は通用しない。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ピュイーーーン!ピュイピュイピュイ…!

 

 

ガイアは右腕を上に左腕を下に垂直に構え、プリズム状の光を発生させると、そのまま両腕を左右に開いて作り出す円形状の光の障壁―――ウルトラバリヤーを発動した。

ガイアのバリヤーは次々と放たれる電撃を容易く防いだ。

 

 

エンザン「ピィィ~~~~!!」

 

ボォォォォッッ!!

 

 

エンザンはバリヤーを突破しようと電撃に加え火炎弾も放つが、バリヤーには傷1つ付かない。

その隙にガイアは立ち上がって体制を整えると、

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

ドガァンッッ!

 

 

全身に力を込め、バリヤーでエンザンの放つ攻撃ごと押し戻して、ぶつけさせる。

直撃したエンザンの胸元から火花が激しく飛び散る。

 

 

エンザン「ピシュュュ~~!?」

 

ガイア「デュアッ!グァァァァァァァァ………デヤッ!!」

 

 

エンザンが混乱している間、ガイアは両腕を広げて頭部にエネルギーを溜めると、フォトンエッジを放った。

 

 

ドガガガガァァァァァァンッッ!!

 

 

真っ直ぐ放たれた赤い光刃はエンザンの身体中を切り刻むと、そのまま木っ端微塵に大爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エンザンに勝利したガイアを四之宮は遠くから面白そうに眺めていた。

猛暑の原因であるエンザンが倒された為、必要のない日傘を畳み、サングラスを取り外す。

 

 

四之宮「ふっ、やるねぇ…!メダルの力で多少なりともパワーアップしてる怪獣を1人で……」

 

 

四之宮はそう褒め称えながら懐から何かを取り出す。

それはメダルの装填口がついたブレードにトリガーがついた赤と黒を基調とする奇妙な道具だった。

 

 

四之宮「…久しぶりに血が騒ぐぜ!」

 

 

不敵に呟きながらその道具を突き出してトリガーを押すと、展開したゲートを潜った。

 

 

 

 

 

 

ゲート内の紫色の空間に入ると、四之宮が着ていた服はいつの間にか全身黒タイツになった。

 

手前に現れたカードの右上に摘み取ると、左手に持つ道具の真ん中にあるスロットに差し込む。

 

 

《Shinomiya. Access Granted.》

 

チャリンッ…

 

 

道具から認証音声が聴こえる中、四之宮は右手を開くと、怪獣が描かれた3枚のメダルを出現させる。

 

 

四之宮「…」

 

 

前髪を上げる様に頭を上げると、前の方を見下ろしながら目を見開く。

瞳が緑色に発光した瞬間、空間が歪むと、顔の左半分がトゲトゲとした魔人の顔が一瞬だけ浮かび上がった。

 

 

四之宮「ゼットンさん…」

 

チャリッ…

 

四之宮「パンドンさん…」

 

チャリッ…

 

四之宮「マガオロチ…」

 

チャリッ…

 

四之宮はねっとりとした口調でメダルに宿す怪獣の名前を呼びながらブレード部分の装填口に1枚ずつ装填する。

 

 

《Zetton.》

 

《Pandon.》

 

《Maga-Orochi.》

 

 

ブレードを展開して、メダルを読み込むと、四之宮は道具を顔の横に構え

 

 

「お待たせしました……。闇の力、お借りします!

 

《Zeppandon.》

 

《♪♪~~~》

 

 

そう叫んで真上へ掲げると、道具から発する怪しい光に包まれ、ロックな音をバックに四之宮―――ジャグラーは怪獣に変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「デュアッ――」

 

ドォォォォンッッ!!

 

ガイア「!?」

 

 

エンザンを倒し、ガイアが空へ帰ろうとした瞬間、突如、彼の後ろから地響きが聞こえた。

ガイアは驚きながら振り向くと、土飛沫が巻き上がった先には1匹の怪獣が立っていた。

 

サメの様な顔に側頭部には嘴と穴が空いた突起物が着いており、赤い体表に覆われている胴体は黒い身体に胸部のオレンジ色の発光体、両腕と両脚部は白い蛇腹状になっている。

両肩からは赤く長い突起があり、先端が鋭く長い尻尾が生えている。

 

ゼットン、パンドン、マガオロチ……かつて別世界の光の戦士を追い詰めた怪獣の力を結集させた合体怪獣―――その名は『ゼッパンドン』!

 

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……ガァガァッ!」

 

ガイア「ッ!」

 

 

ゼッパンドンの出現に驚くガイアだが、ゼッパンドンが口から放った火球で攻撃してきたことに気付き、側転して避ける。

 

 

ガイア「デュアッ!ダァァァァァーーー!!」

 

 

ファイティングポーズを取ったガイアは助走をつけた飛び蹴りを放つが

 

 

フッ…

 

ガイア「ッ!?」

 

 

ゼッパンドンの姿は突如消え、対象がなくなった蹴りは宙をきる。

ガイアは動揺しながらもどこだと辺りを捜そうとした時

 

 

ゼッパンドン「ガァガァッ!ゼットォーーーン……!」

 

ドォンッ!

 

ガイア「グアァァッ!?」

 

 

ゼッパンドンの顔の両脇の嘴から放つ紫色の光線を背後に受け、ガイアは大きく前へ怯む。

 

 

ガイア「ダッダッダッ…!!」

 

 

ガイアは反撃の拳による連打を繰り出すが、ゼッパンドンの強硬な皮膚の前では全く効かず、ビクともしない。

 

 

ゼッパンドン「ガァガァッ!!」

 

ガイア「グアッ!?」

 

ブンッ!!

 

ガイア「ドアァァァァーーーーッ!!」

 

ドォォォォンッ!

 

 

ゼッパンドンは右、左の張り手でガイアを大きく怯ませると、尻尾の凪ぎ払いで近くの山に叩き飛ばした。

 

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……ガァガァッ!」

 

ガイア「……グアッ!グァァァァ……デュアッ!」

 

 

瓦礫が崩れ落ちる中、ガイアは痛みを堪えて立ち上がると、かかってこいと手招きして挑発するゼッパンドンに向けてリキデイターを放つ。

だが、

 

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……」

 

シュュュン……

 

 

ゼッパンドンは体で受け止めると、光球をあっという間に吸収してしまった。

 

 

ゼッパンドン「ゼットォォーーーーン……!」

 

ガイア「ッ!デヤッ!!」

 

ドドォォォォォンッッ!!

 

 

反撃にゼッパンドンが吐いた3連発の火球に対し、ガイアは連射のアグルスラッシュで応戦する。

2つの攻撃は相殺し、宙で爆発が起きる。

 

 

ガイア「ダァァァァァ……デュアッ!!」

 

 

爆風に紛れてエネルギーを溜めたガイアはフォトンクラッシャーを放つ。

この光線は先程放ったリキデイターよりも強力で、吸収出来るヤワな威力ではない。

しかし、ガイアの考えは甘かった。

 

 

ポワワワワワポワワワワワ…

 

ガイア「!?」

 

 

ゼッパンドンは顔の横にある穴が空いた突起から飛び出した緑色の六角形のバリア『ゼッパンドンシールド』を前面に展開すると、ガイアの放った光線を容易く防いだ。

その光景を前にガイアは驚きを隠せずに入られなかった。

 

 

ゼッパンドン「ガァガァッ!ゼットォォーーーン…!」

 

 

その隙にバリアを収納したゼッパンドンは両腕を広げ、全身のエネルギーを胸の前へ集中させて形成した特大の火球をガイアへ放った。

 

 

ドォォォォンッ!!

 

ガイア「ドアァァァァーーーーッ!!」

 

 

まともに食らったガイアは火花を散らしながら大きく後方へ吹き飛び、背中から地面へ叩きつけられる。

 

 

ガイア「グアッ…アァ…!」

 

[ピコン]

 

 

苦しみながらも何とか起き上がろうとするガイアだが、あまりものダメージで中々起き上がれない。

ライフゲージも危険を報せる赤に点滅し初めている。

 

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……ゼットォォーーーン…!」

 

 

ゼッパンドンは倒れているガイアのもとへゆっくりとした足取りで近付いていくが

 

 

ドガガガガガ!!

 

ゼッパンドン「?」

 

 

その道中、背中から攻撃を受け、火花が散る。

ゼッパンドンは何だろうと怪訝に思いながら振り向くと、チームトルネイドの面々がこちらに向かって攻撃していた。

更に

 

 

朱乃「雷光よ!」

 

ビカカカァァァァァァンッッ!!

 

 

横から地上にいる朱乃が雷光を放つ。徳造や唯一がいないことから、安全な場所へ送り届けれたのだろう。

 

 

ゼッパンドン「ガァガァッ!」

 

ポワワワワワポワワワワワ…

 

 

朱乃の方を向いたゼッパンドンは前面にゼッパンドンシールドを展開して防ぐ。朱乃の強力な雷光でもゼッパンドンのバリアは突破は出来ないのだ。

けれども、チームトルネイドと朱乃はガイアを援護する為、攻撃を続けた。

 

 

朱乃「これ以上、我夢君を傷つけさせない!」

 

ガイア「みんな……止め――!?」

 

 

無謀な攻撃を続ける皆をガイアは止めようとするが、とあることに気付いた。

ゼッパンドンのバリアの弱点に。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァァ……デヤァァァーーーー!!」

 

 

逆転の策を思い付いたガイアは跳ね起きると、クァンタムストリームを放つ。

 

 

ポワワワワワポワワワワワ…

 

 

当然、ゼッパンドンはゼッパンドンシールドを展開して防ぐ。しかし、ガイアはそれでも光線を打つ手を止めず、そのまま走り出した。

 

端から見れば謎行動だろうが、天才児の彼の頭脳を甘く見てはいけない。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

ゼッパンドン「?」

 

ガイア「トォアッ!」

 

 

光線を撃ち続け、ある程度近付いたガイアは光線を打つ手を止めて高く跳躍してバリアを飛び越えると、飛び蹴りを放つ。

ガイアはゼッパンドンシールドは真上には張れないことに気付いたのだ。

 

 

キィンッ!

 

ゼッパンドン「ガァガァッ!!」

 

 

真っ直ぐ捉えたガイアの蹴りはゼッパンドンの顔面に直撃し、大きく怯ませた。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ゼッパンドン「!」

 

ガイア「グアッ!」

 

 

その隙にスプリームヴァージョンへヴァージョンアップしたガイアはゼッパンドンに掴みかかると、振り向き様に投げ飛ばす。

ガイアに豪快に投げ飛ばされたゼッパンドンは地を滑っていく。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……!」

 

ガシッ!ガシッ!

 

ガイア「グァァァァ……!」

 

 

ガイアは高く飛び上がり、宙で1回転して回り込むとゼッパンドンの両肩の突起物を両手で掴み、逆さまに持ち上げる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ドォォンッッ!!

 

 

高く持ち上げた状態で捻りを加えて投げ飛ばし、地面へ叩きつける。

 

 

ガシッ!

 

ガイア「グァァァァァァァァ……!」

 

ブォンッ!ブォンッ!

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

ガイアは間髪入れず、ゼッパンドンの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。

ゼッパンドンは地に何度もバウンドしながら転がっていく。

 

 

ガイア「グァァァァ……!」

 

ゼッパンドン「ゼットォォーーン…!」

 

ブンブンブンブン…!

 

 

それでも手を止めず疾走したガイアはゼッパンドンを右腕で高々に持ち上げると、一旦回って回転をつけると、右手を駆使してゼッパンドンを独楽の様に回し始める。

ゼッパンドンは三半規管が狂い、今にも気を失いそうだ。

 

 

ガイア「……デュアッ!」

 

ダァンッ!

 

ゼッパンドン「ピポポポポ……!ガァガァッ!」

 

 

目に捉えきれない程の回転速度となったゼッパンドンをガイアは前方へ投げ飛ばす。

ゼッパンドンはまたもや地面にぶつけながら転がっていく。

 

 

ガイア「デヤッッ!グァァァァァァアァァァァ……!デュアッ!!!」

 

ゼッパンドン「!」

 

ドガガガガガァァァァァァーーーーーーー!!!

 

 

ガイアは止めのフォトンストリームを放った。

膨大な光線は起き上がったゼッパンドンに直撃し、大爆発した。

 

 

[ピコン]

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

苦戦しながらもゼッパンドンを倒したガイアは両腕を真上へ広げ、今度こそ遠い空へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「よかった、大したことなくて…」

 

 

エンザン、乱入したゼッパンドンを倒した我夢は唯一が運ばれた吉岡街近くの病院へ足を運んだ。

唯一と徳造は命に別状はなく、早いうちに退院できるそうだ。

 

 

我夢「張りきり過ぎるんだよな、いつも」

 

重美「でも、そこがお父さんの良いところなんだしね」

 

 

重美の言葉に我夢は微笑む。ちなみに我夢はXIGの隊員でなく、あくまでG.U.A.R.D.の協力者ということにしている。

ウルトラマンとはいえ、学生が重火器を扱うXIGの隊員と広まれば色々厄介だからだ。

 

我夢は病室のベッドで眠る唯一の顔を見て、昔の出来事を思い出す。

 

 

我夢「そういえば昔、海で溺れそうになった時、父さんに助けてもらったよね…」

 

重美「ああ~…そんなこともあったわねぇ…」

 

我夢「恩返し……出来たかな?」

 

徳造「けほっ!ごほっ、ごほっ!」

 

「「?」」

 

 

一緒に暮らしていた頃の思い出に浸っていると、隣のベッドで寝ていた徳造が大きく咳き込むと、目を覚まして起き上がる。

 

徳造はキョロキョロと辺りを見渡すと、残念そうな顔をし

 

 

徳造「死に損なったか…」

 

重美「そんなこと言うもんじゃありませんよ!」

 

徳造「…?」

 

 

そう呟くと、聞いた重美が歩み寄ってキツイ顔で諌める。

徳造がポカンとする中、重美は棚に置いてある徳造の息子の写真を手に取ると、

 

 

重美「はい」

 

 

微笑みながら徳造に手渡す。写真に写る息子は元気な顔で笑っており、死んだ人間とは思えない程だ。

そんな息子の顔を見た徳造は微笑み

 

 

徳造「…そうだなぁ~~。死んだ、バカ息子の分まで長生きしてやらんとな」

 

重美「そうですよ~!」

 

 

生きる希望を見出だした徳造に重美は笑顔で頷く。

それが残された者の成すべきことだ。

 

笑い合う2人だが、徳造はふと唯一のベッドの傍に立っている我夢に目が合った。

その視線に気付いた我夢は近寄ると、重美は照れ臭そうに笑い

 

 

重美「息子の我夢です」

 

我夢「こんにちは!」

 

徳造「ああ…」

 

 

紹介を受けた我夢は笑顔で挨拶をすると、徳造も自然に笑顔で応える。彼が唯一の息子だということは一目でわかり、その優しげな瞳から唯一と同じ心強さがひしひしと徳造に伝わった。

 

我夢は重美へ顔を向け

 

 

我夢「悪いけど、そろそろ行かなくちゃ…」

 

重美「仕事?」

 

我夢「うん。この後も調査しなければいけないことがいっぱいあるから……それじゃ」

 

重美「じゃ」

 

 

別れを交わして、我夢はそのまま部屋を出ていこうとするが

 

 

徳造「ああぁ~…あんた!」

 

我夢「……え?」

 

 

ドアノブに手をかけた瞬間、徳造に止められ、足を止める。我夢が振り向くと徳造は

 

 

徳造「どんな仕事をしてるか知らんが、親より先に死ぬんじゃないぞ…」

 

我夢「…」

 

唯一「…」

 

 

息子を失い、悲しみにくれた徳造からのメッセージ。

我夢は真剣な顔を聞き届ける中、唯一は目を覚まし、我夢へ顔を向ける。

 

 

徳造「いいな…?」

 

我夢「はい!」

 

唯一「…」

 

 

徳造の問い掛けに我夢はハッキリと答えると、唯一は安堵の顔を浮かべながら、再び眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ゼッパンドンが倒された爆心地では、全身黒焦げの四之宮が寝転がっていた。

 

 

四之宮「あぁ~…あちこち痛ェ~~…!少しは手加減しろよ…」

 

 

四之宮は全身からズキズキと来る痛みに顔を歪ませながらぼやく。

長年戦い続けたベテランの彼もスプリームヴァージョンの鬼投げは相当くるらしい。

 

 

四之宮「ハッハッハッハッハッハッ……!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ…!!アッハッハッハッハッハッ……!!」

 

 

しかし、四之宮は突然吹き出すと楽しげに笑い出した。

面白可笑しく…かつ不気味に…。

四之宮はピタリと笑いを止めると、青空を見上げ

 

 

四之宮「あぁ~…面白ェ…」

 

 

そう満足げに言うと、こちらを振り向き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四之宮「…そう思うだろ?画面越しに見るお前達……?」

 

 

 




次回予告

『ウクバール永田』―――人は彼をそう呼ぶ。
彼は25年間ずっと帰り道を探していた。


吉田「宇宙人と?」


次回、「ハイスクールG×A」
「遠い町・ウクバール」


「駄目だよ、ウクバールなんて夢見てるだけじゃ!」





今回、ジャグラーがエンザンへ投入したメダルに描かれた怪獣わかるでしょうか?ヒントはガイアの怪獣です。
分かる方がいれば、コメントよろしくお願いします!


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第八章 悲鳴あげる大地
第46話「遠い町・ウクバール」


――――これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間の中に入って行くのです……

       『ウルトラQ』ナレーションより







守護獣 ルクー 登場!


駒王町から遠い位置に存在する町。

水が溜まった大きな囲い中心に噴水がある公園では、今日も通り行く者や楽しげに遊ぶ親子と子供達で賑わっていた。

 

そして、そんな公園の端にあるベンチで鳩の群れにエサをやる男性もいた。

彼の名は永田。この町にある宅配会社『らくだ便』で長年配送人の仕事をやっているごく普通の中年男性だ。

今日も休日の日課である公園に集まる鳩にエサを与えていた。

 

 

永田「…?」

 

「パパパパパ…」

 

 

エサに食い付く鳩を見てにこやかに微笑んでいた永田はふと空を見上げると、エサをやる手を止めた。

透明ではあるが、とんがった頭部に目の部分には風車の様に回転している赤い部位、尻尾が生えている奇妙な怪獣が空から静かに佇んでいたからだ。

怪獣は永田にしか見えておらず、その証拠に周りの人々は驚く様子もなく過ごしている。

 

普通、畏怖の存在である怪獣を見たら騒ぎ立てるであろう。

しかし、永田は逆に微笑んだ。その顔は家中を掃除していたら思い出の品が見つかった時の様に懐かしんでいるものだ。

 

惹き付けられる様に永田は自然と立ち上がり、一歩前へ出る。鳩が驚いて飛び立っていく中、永田は

 

 

永田「ルクー……」

 

ルクー「パパパパパ……」

 

 

怪獣の名を懐かしげに呟く。その怪獣、『ルクー』は何も答えず、目の部分をクルクルと回すだけだ。

 

懐かしさで明るい顔を浮かべていた永田だが、次第に曇らせていく。

 

 

永田「俺、帰り道がわからなくなってしまったんだ…」

 

スゥゥゥ…

 

 

永田の悲しげな声に応える様にルクーはうっすらと消えると、代わりに雲の塊が現れる。

 

 

ポォォォォ……

 

 

そして、雲が左右に別れると宙に佇む空中都市が顔を見せた。

お椀型の海に浮かぶ円形の孤島…。

カラカラと音をたてながら回る宙に浮かぶ風車…。

建ち並ぶ塔には階段がなく、梯子がかけられており、山の頂点にはルクーが静かに佇んでいる…。

 

 

永田「ウクバール…!」

 

 

永田はその幻想的な都市の名を嬉しげに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後――――。日本のとある地方にある廃屋に我夢とチームハーキュリーズの吉田はいた。

調査……というよりも純粋な疑問で来ており、2人とも疑問に満ちた顔を浮かべていた。

 

我夢が外に停めてある車の傍で待っている中、吉田は蜘蛛の巣だらけで腐敗した木片やら古びた家具が散乱しており、如何にも廃墟だ。

 

3日前の奇妙な体験をした上、ここに訪れた吉田は、後にこう語ったという…。

 

 

―――あの永田という名の男は、この世に生まれてから、ずっと……長い長い夢を見ていたのだろうか…?

 

―――それとも、永田の言っていたことは全て本当のことだったのだろうか……?

 

 

そして、時は3日前に遡る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――3日前。夜に包まれた町を吉田と幼馴染みの男、庄司(しょうじ)は千鳥足で歩いていた。吉田はさほど酔ってはないが庄司の方は酷く酔っ払っており、顔が真っ赤で補助がなければまともに歩けないぐらいだ。

 

 

庄司「大体ねぇ~、よっちゃんは滅多に遊んでくれねぇから…!ひっく!真っ赤な顔しやがってぇ…」

 

吉田「ポストだよ、ポスト」

 

庄司「わかってんだよぉ~……。お!お嬢さんね。俺の幼馴染みのよっちゃんはね、チームハーキュリーズのリーダーなんだよぉ~!」

 

吉田「はいはい、酔っ払ってるもんすからね!すみませんね!」

 

庄司「せんしゃ転がすんだよ!せんしゃ!」

 

 

戸惑う通行人に吉田は謝罪しつつ、未だ話しかけようとする庄司の脇を抱えてそそくさと退散する。

 

そして、数分後。庄司が落ち着いたのを見計らった吉田は都内のおでん屋台に足を運んだ。

 

 

「はいよ」

 

吉田「どうも。へへっ!」

 

 

注文した煮卵としらたき、大根を受け取った吉田は美味しそうに頬を緩ませる。少し肌寒くなったこの季節に食べるおでんは格別だ。

 

吉田はおでんを頬張りながら隣でチビチビとグラスに入った水を飲む庄司にニヤリと笑いながら目をやる。

 

 

吉田「おい。お前、またオーディションに落っこちたろ?それであれだろ?落ち込んでんだろ?」

 

庄司「ちっ!ああ…俺はもう役者の卵なんだよ?そんぐらいでへこむかよ、バカヤロー……」

 

吉田「でもよぉ。何かあったんだろ?」

 

 

吉田が訊ねると、庄司はグイッとグラス内の水を喉へ注ぎ込むと、グラスをテーブルへ置き

 

 

庄司「……あぁ、あった」

 

 

ハッキリと告げる。しかし、もったいぶっているのか、中々本題を話そうとはしない。

 

普段なら言いたがらないのは余程ひどいことがあったのかと察して追及しないだろうが、吉田は酒が回っている影響なのか気になり、しつこく問い詰めることにした。

 

 

吉田「言え。言えよ、正直に言っちまいなよ」

 

庄司「…分かったよ……言うよぉ…」

 

 

吉田のしつこさに負けた庄司は口を開き直すと、話し始めた。

 

 

庄司「実はよぉ……俺、1日トラックに乗ってたんだよ。宇宙人と」

 

吉田「………っ?宇宙人と?」

 

 

飛び出た予想外の単語に吉田は口へ運ぶ箸の手を止め、訝しげな顔を浮かべると、庄司は

 

 

庄司「今日、俺ぇ、宅配便のバイトを始めたんだけどさぁ……」

 

 

そう言って、今日1日の出来事を思い出していく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝10時。庄司は通りすがる宅配業者の人達に軽く挨拶をしながら事務所へと駆け込むと、ピシリと姿勢を正し

 

 

庄司「あ、おはようございます!今日から働くことになりました!あの、庄司ですけど!」

 

 

元気よく大声で挨拶すると、その声に気付いた担当者らしき眼鏡をかけたにこやかな中年男性がオフィスの奥から歩いてくる。

 

 

「おお、新人か!元気いいなぁ~」

 

庄司「あざっす!」

 

 

誉められた庄司は素直にペコペコと頭を下げると、担当者と一緒に近くの机に広げた書類に目を通す。

 

 

「ええっとねぇ……」

 

庄司「はい!」

 

「それじゃあ、あんた。永田と一緒に回ってもらおうか。永田は“配送一筋25年”のベテランだからね。心配ないよ!」

 

庄司「はぁ…」

 

「日笠さん。ユニフォーム」

 

「はい」

 

 

庄司が頷くのを確認した担当者はデスクワークをする女性の事務員に声をかける。

事務員からユニフォーム一色を受け取った担当者は満面の笑みで庄司に手渡す。

 

 

「じゃあ、これに着替えてな」

 

庄司「はい」

 

 

受け取った庄司は笑顔で頷く。

今日から始める宅配便のバイトに胸を踊らせていると、

 

 

日笠「私、知りませんから…」

 

「っ」

 

庄司「?」

 

 

女性の事務員の意味深な呟きに笑みを止め、首を傾げる。

よほど社内では悪い話なのか、担当者は余計なことは言うなと諌める様に視線を注いでいる。

 

 

庄司「あ、あの、永田さんですよね?」

 

「…っ、うん!大丈夫だから!」

 

 

困惑する庄司の問い掛けに担当者はぎこちない笑顔で答える。

 

――――大丈夫、大丈夫というが仕事についてだろうか?それとも永田の性格?

庄司は疑問に思いながら、ユニフォームを手に更衣室へ着替えにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替えた庄司は外に出ると、さっそく永田がいる配達区域に着き、会話している2人組の男を見つけた。

その片方、スラッとして肉付きのよい永田らしき人物だろうと判断した庄司は帽子を外して挨拶をする。

 

 

庄司「おはようございます!あの、今日から入りました庄司です!よろしくお願いします!」

 

 

2人はうんうんと頷いて答えると、庄司はさっそく永田であろう男に本人確認する。

 

 

庄司「あの、永田さんですか?」

 

「いや。俺、清水」

 

庄司「へ?」

 

「いや。俺、梶」

 

 

隣にいる男にも違うと言われ、庄司は困惑する。

確かにここにいると聞いた筈なのだが…。

 

 

庄司「あの~…永田さんは?」

 

清水「永田……居たっけ?そんな奴」

 

梶「永田ねぇ……」

 

 

顔を見合わせる2人だが、わからないと首をひねる。

 

 

庄司「あの……配達25年のベテラン……」

 

梶「あっ、ウクバールだ!ウクバール!」

 

清水「あっ、ウクバールか。『ウクバール永田』!あぁ~…」

 

 

戸惑う庄司の呟きに思い出した梶は声をあげると、清水も思い出し、続けて声をあげる。

 

 

庄司「『ウクバール永田』。外国の人ですか?」

 

 

庄司がそう訊くと清水は「甘いな~」とニヤリと笑みを浮かべると、ペンで指差し

 

 

清水「外国なんてもんじゃない。宇宙。宇宙の人…!」

 

庄司「は、はぁ…」

 

梶「ほら、あそこにいるよぉ~」

 

 

顔を近付けて言われ、苦笑する庄司に梶は悪戯げな笑みで指差す。

庄司はその指先の方へ顔を向けると、そこには段ボールの山に囲まれ、背もたれのないパイプ椅子に座る中年男性――永田がほやほやとした顔で空を眺めながら水筒のお茶を飲んで休憩していた。

 

永田を見る庄司に清水と梶は呆れた顔を浮かべ

 

 

清水「あいつな、自分は宇宙のどこかにある『ウクバール』って町から来たと思い込んでんだよ」

 

梶「馬鹿馬鹿しいよな~」

 

庄司「ははは…」

 

 

その話を聞いた庄司は苦笑しつつ、どうして事務員の女性が言っていた意味を理解した。つまり、永田は頭お花畑な人らしい。

 

 

永田「…っ」

 

 

と、そんなことを考えていると、庄司の視線に気付いた永田は笑顔でペコリと軽くお辞儀する。

 

 

庄司「ははっ…」

 

 

庄司もぎこちない笑顔でお辞儀を返すと、清水はポンと庄司の肩に手を置き

 

 

清水「…まあ、覚悟するんだな。お前も今日1日聞かされるぜ、ウクバールの話」

 

 

そんな哀れみの言葉をかけられながら、庄司の初バイトは始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不安を残しつつも、庄司は永田が運転するトラックに乗り、仕事を開始した。

永田は流石ベテランとあり、特に問題もなく順調に進んでいったが…

 

 

永田「ウクバールという町ではね、いつも風が吹いているんだよ。空には大きな塔や小さな塔がいくつも浮かんでる。そして、その塔のてっぺんにはな、黄色い風車がカラカラ音を立てて回っているんだよ」

 

庄司「はは…」

 

 

トラックでの移動中…。

 

 

永田「ウクバールの町にはね、階段というものはないんだよ」

 

庄司「いいっすね!そりゃあ~!」

 

永田「でも、ほら。沢山の塔が空に浮かんでいるだろう?だから、塔のてっぺんに登るにはね、長い梯子をかけなきゃならないんだ」

 

 

マンションの配達中…と、仕事の合間合間に庄司は延々と永田の話を聞かされていた。

庄司は先輩である永田に無礼なマネをする訳にもいかず、愛想よく受け答えするが、道中の人々に変な視線を感じられずにはいられなかった。

 

そして、ひと通り作業を終えた2人は河川敷で休憩した。

配達ですっかりくたびれた庄司は缶コーヒーをグイッと飲んで一息つき、

 

 

庄司「あぁ~…!いやぁ~~よく続くよね、おっちゃんも!俺なんかさぁ、足とか腰とかバキバキでボキボキで痛くてしょうがねぇよ」

 

永田「ははははっ」

 

庄司「おっちゃんキツくない?」

 

 

庄司はニコニコと笑う永田にそう問いかけると、永田は1拍あけ

 

 

永田「ああ……。でもなぁ、田舎からのりんごやみかんを届けてやると、みんなが喜んでくれるじゃないか。やりがいのある仕事だと思うよ」

 

庄司「へぇ~…」

 

 

その言葉に庄司はうんうんと頷きつつ、彼のことを考え直した。変わり者だろうが、仕事に誇りを持っている真面目な人なんだと…。

 

 

永田「それになぁ!俺が気に入っている理由がもう1つあるんだ!」

 

庄司「えっ!何よ、何?」

 

 

永田の仕事熱心さに感動した庄司は胸を踊らせながら尋ねるが、すぐに消え去ることとなる。

 

 

永田「こうやって車で色んな町を回っているとさ、いつかウクバールに帰る道が見つかるかもしれないじゃないか」

 

庄司「ああ…」

 

永田「だって、そうだろう?俺がこうして地球にいるってことはさ、ウクバールとこの世界がどっかで繋がっているってことだろ?」

 

 

それを聞いた庄司は笑みが消える。先程まで彼へ対する認識を撤廃し、やっぱり変わり者なんだとガックリする。

 

 

永田「さあ、行こうか」

 

庄司「…」

 

 

そう言って荷物を片付け、トラックに乗る永田を庄司は呆れた顔で眺めるのだった。

再開した作業でも…

 

 

永田「ウクバールの町にはね、いつも風が吹いているんだよ」

 

庄司「はいはい…」

 

永田「ウクバールの町はね、時たま大きな雲の中に入ってしまう時があるんだよ」

 

庄司「…」

 

永田「その上、ウクバールの町にはね、楽団もあるんだよ。あのね、太鼓やね、笛がね―――」

 

庄司「……」

 

永田「そして、ウクバールの町にはね、西風が吹くとね、サーカスがやってくるんだよ。このサーカスがまた凄くてね~…」

 

庄司「………」

 

永田「でね、ウクバールの町にはね―――」

 

 

相変わらず仕事の合間合間に楽しそうに話しかけてくる。そんな調子で話しかけてくるので、さすがに庄司もうんざりとしており、最初こそは適当に返していたが、終いには返事すらしなくなっていた。

 

そんなこんなで時間はあっという間に過ぎ、夕方に差し掛かっていた。

 

 

庄司「ええ!?もう5時!?」

 

 

永田が運転するトラックに揺られる中、庄司は手元の時計を見て目を丸くする。永田の空想話を延々と聞かされながらコツコツと作業をしていたので、もっと若い時間かと思っていたからだ。

 

それに対し、永田はニコニコしながら口を開き

 

 

永田「ウクバールには時計というもんがないんだ。だから夕方なるとね、大きなサイレンが鳴るんだよ。するとね、大人は仕事を止めて、子供は遊ぶのを止めて、みんな家に帰るんだよ」

 

庄司「はぁ…」

 

 

またもや語るウクバールの話に庄司はため息をつく。

口を開けばウクバール、ウクバールと話をするものだから庄司は心身共に疲れ果て、もう何とも言えなかった。

永田は続けて

 

 

永田「ウクバールはどっかにあるんだ……。だって、俺の故郷なんだから…」

 

 

目を爛々と光らせながら語る。

現実のしがらみで上手くいかない自分と相反して幻想に囚われている永田に庄司はくたびれた顔でぼそっと呟く。

 

 

庄司「あるある……ウクバールはあるよ……。おっちゃんの()()()にな…」

 

永田「……え?」

 

 

その心無い呟きに永田は振り向く。

先程まであった笑顔が一瞬で消え去り、目を見開いた。

本当にあると信じる永田には充分ショックであり、固まってしまった。

 

しかし、最低だが言うタイミングを間違えただろう。

彼らが乗るトラックのハンドルを握っているのは永田であり、ショックで固まったまま運転している……よそ見運転という危ない状態だ。

 

 

庄司「…ん?あっ!?おっちゃん!」

 

 

当然、よそ見したせいでトラックは意図しない場所へ突っ込む。立ち入り禁止のコーンを吹っ飛ばし、地蔵へ突っ込もうとしていた。

 

 

庄司「わあぁぁぁーーっ!!」

 

永田「!?」

 

キキキィィィ~~~!!

 

 

庄司の悲鳴で気を取り戻した永田はブレーキを踏み、間一髪のところでトラックは停まり、大事故には至らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。屋台から離れ、近くのフェンスに吉田は夜空を眺めつつ、顔を俯かせ芝生に座る庄司の話を聞いていた。

 

 

庄司「俺ェ、馬鹿なこと言っちゃったかなぁ……」

 

 

全てを話した庄司はそう呟き、ふぅ…と嘆息する。

いくら変人とはいえど、自分と同じ人間。好きなものを馬鹿にされたら傷付くのは庄司にもわかっていた筈なのに…。

 

すると、夜空を見上げた庄司はフェンスに乗り、

 

 

庄司「おっちゃーーんっ!!駄目だよ、ウクバールなんて夢見てるだけじゃ!人間っていうのはね!“現実”と向き合って生きなきゃ!!“現実”だぜ、大事なのはーーっ…!!!

 

 

大声で夜空に向かって虚しく叫んだ。永田に聞こえていようがあるまいが、吐き出さられずにはいられなかった。

役者になるという夢が叶えられず辛い日々を送る庄司には、さめない夢を見続けている永田が哀れであり、同時に羨ましくもあったのだ。

 

その声に反応した周りの人の視線も気にも止めず叫び終えると、庄司はフェンスから離れ、くたびれた様子でどっかりと座った。腹の底から思いっきり叫んだせいで息を荒くする。

 

 

庄司「はぁ…はぁ…」

 

吉田「大丈夫か?」

 

 

心配そうに声をかける吉田に心配ないと頷くと、庄司は閃いた様に口を開けると

 

 

庄司「あ、そうだ…。よっちゃん、XIGだろ?」

 

吉田「ああ」

 

庄司「証明してやってくれよ、おっちゃんにさぁ……」

 

吉田「証明って何を…?」

 

庄司「…だから、おっちゃんが“地球人”だってことだよ」

 

吉田「えぇ?」

 

 

唐突の依頼に吉田は苦笑する。変わり者の人間にそこまで大層なことをする必要があるのか吉田にはわからなかった。

困惑する吉田に庄司は

 

 

庄司「…だって、自分が地球人だってことがわかればさ……あぁ、そうだよ、うん……おっちゃんもウクバールのことなんて忘れて、現実と向き合って……現実なんだよぉ…大事なのは……

 

吉田「おい」

 

 

そう語るが、次第に声が小さくなっていき、最終的にはその場で眠ってしまった。

吉田が声をかけながら肩を軽く叩いても全く起きる気配がない。

 

こんな場所でよく眠れるなと吉田は呆れつつ、夜空を眺める。暗闇のヴェールに包まれた空には数多の星々が煌めいている。

 

 

吉田「ウクバールねぇ…」

 

 

吉田は空に浮かぶという都市の名を不思議そうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アパートに戻った永田は居間で腕を組み、黙々と考え込んでいた。

 

 

(庄司「ウクバールはあるよ……。おっちゃんの()()()にな…」)

 

永田「…」

 

 

永田は庄司に言われたことを思い出す。言われた時は信じられず思わず固まってしまったが、よくよく考えてみれば、何故自分しかウクバールが見えず、誰も知らないのかと疑問に思うと、1つの結論に至る。

 

 

永田「ひょっとして……ウクバールはどこにも無いんじゃないのか…?」

 

 

永田は今までの人生を振り返りつつ思う。

――25年近く探しても…………探しても…………。ウクバールの町が見つからないのは、あの町が自分の頭の中にしかないからじゃないかと……。

 

 

ジリリリリ…!

 

永田「…っ!」

 

 

そう思った矢先、突然黒電話が鳴り響く。時刻はもう11時に迫っており、電話をかけるにしては充分遅い時間帯だ。

夜分遅いのに誰だろう?と怪訝に思いつつ、永田は受話器を取る。

 

 

永田「はい、もしもし?」

 

 

永田が応答した瞬間、受話器から返ってきたのは声でなく環境音だった。

ヒュウウゥゥーーと心地よい風を受け、カラカラと音を立てて回る風車の音………。

その音を耳にした瞬間、永田は自然と笑顔になった。

 

 

永田「ウクバールだ…!ウクバールの風の音だ…!」

 

 

空想と思っていた故郷の音…。故郷に想いを馳せる永田は受話器から音が途切れるまで聞き続けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして3日後。チームハーキュリーズ、我夢、一誠らは汗だくでエリアルベースのトレーニングルームにある筋トレ器具でトレーニングに励んでいた。

ここ最近の2人はパワーアップの基礎中の基礎である体を鍛える為、ハーキュリーズのトレーニングにご一緒させてもらってるのだ。

 

吉田の話にチェストプレスで鍛えていた我夢と一誠は手を止める。

 

 

我夢「地球人の…証明ですか?」

 

一誠「…?地球人ってことは…」

 

志摩「そこ2人、さりげなくサボるな…」

 

「「ははっ!」」

 

 

考え込む2人だが、ぜぇぜぇと息をつく志摩に魂胆がバレ、筋トレを再開する。

 

 

桑原「物事の基本は…!体力~~っ!!」

 

 

そんな2人を尻目に桑原は力を込めてバーベルを思いっきり持ち上げていると、向こうでトレーニングしていた吉田がタオルで溢れ出る汗を拭いながら近寄る。

 

 

吉田「どうだ、桑原?知恵はないか?」

 

桑原「俺っすか?いやぁ~~俺ぁ、物心ついた時から何となく地球人だったし…」

 

吉田「おい、お前は?」

 

志摩「おお、俺も誰かから“地球人だーー!”って、教わったこともないし……。いや、たまにね……人間離れしてるって言われることは…あるんですけど……」

 

一誠「そりゃ、堕天使だから、当たり前でしょ…!」

 

志摩「へへっ、そうだな…!」

 

 

志摩のさりげないボケに一誠はツッコむ。

 

 

吉田「他ならぬ、幼馴染みの頼みだからな。何とか力になりたいんだが~…!!」

 

 

吉田はチェストプレスで鍛えながら、どうにかせんと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志摩「天使サイドの調査でも、ウクバールなんて都市なかったらしいし、そもそも聞いたこともないって言うし…」

 

吉田「うぅむ…」

 

 

筋トレを終えたシャワーを浴びた一同は火照った体を更衣室で冷ましていた。

一誠は濡れた髪をタオルで拭いていると、我夢が電子辞書の様な小型デバイスで何かを調べているのに気付いた。

 

 

一誠「何やってんだ?」

 

我夢「その、永田さんって人の生まれた家を見つけているんだよ。生まれ育った家を思い出せば、永田さんも地球人だって納得してくれるかもしれないから…」

 

「「「「あぁ~~なるほど~~…」」」」

 

 

我夢の説明を聞き、一誠とハーキュリーズの3人は口を揃えて納得する。

納得するかはともかく、証拠ないのとあるのでは全く信憑性が違うものだ。

 

 

我夢「あっ!あった!」

 

 

そうしていると、数十秒も経たないうちに永田の家を発見した。

吉田は画面を覗きこみ、住所を読む上げる。

 

 

吉田「T都M市…?」

 

我夢「あっ!この家、空き家になったまま、今も残ってますよ」

 

桑原「本当だ…」

 

 

永田が地球人という証拠を見つけた吉田はさっそくT都M市にある永田が生まれ育った家へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。出勤した庄司はいつもの様に事務所へ足を運ぶが…

 

 

庄司「え?永田さん休み?」

 

「そうなんだよぉ~」

 

 

担当者によると、永田は無断欠勤しており、連絡すらもつかないそうだ。永田は25年間休んだことがないので今回の様なケースは初めてだと驚いたという。

 

それを聞いた庄司は胸騒ぎがした。

自分が言ったことで深く心を痛め、自殺に至ったのではと…。

 

 

庄司「すみません!俺、様子見てきます!」

 

「あ!?おいっ!」

 

 

青ざめた庄司は居ても立ってもいられず、事務所を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、吉田は我夢が探し出した住所を元に永田の生家へ訪れていた。

 

 

キィッ…

 

吉田「…」

 

 

車を停め、吉田は外に出ると、前方に建つ永田の生家を眺める。

何年も放置されていたのか家は既に朽ち果てて、廃墟となっていた。

 

吉田は廃屋に入り、調査を開始した。

外観だけでなく中も荒れ果てており、クモの巣や埃やこけ、木材の腐敗があちこち発生しており、辛うじて家の原型を留めているのががやっとといえる状態だった。

 

 

吉田「?」

 

 

その最中、廊下を歩いていた吉田は柱に何かが刻まれているのを見つけた。

それは子供の頃の永田の7歳~12歳までの身長を刻んだものだった。

 

その上を吉田は擦り

 

 

吉田「やっぱり地球人だよなぁ…」

 

 

と呟く。ここで少なくとも幼い時に過ごした痕跡が残っているのだから、永田が地球人であるのは間違いないだろう。

 

 

ピピッ…!

 

 

そんなことを考えていると、XIGナビから通知音が鳴る。

 

 

吉田「はい、こちら吉田」

 

我夢「吉田さん。ポイント2-2-6のN1付近の磁場に微かに歪みが生じています」

 

吉田「どうした?」

 

我夢「偶然だと思うんですが、ポイントの中心に現在、永田さんが住んでいるアパートがあるんです」

 

 

幻想に囚われている永田が住んでいる場所に磁場…。

もしかしたら、これは偶然ではないのかもしれない。

 

 

吉田「わかった!すぐ現場に向かう!」

 

 

吉田はそう言って通信を切ると、すぐさま車で永田のアパートへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、同じ永田のもとへ向かおうとしている庄司と偶然出会い、2人は彼の住むアパートに到着した。

車を停め、吉田と庄司は外に出ると、アパートの階段を上っていく。

 

 

吉田「お前、来ないでいいから!」

 

庄司「そうはいくかよ!」

 

 

一歩も引く気がない庄司に吉田は嘆息しながら進んでいくと、永田の住む2階の部屋の前に着いた。

 

 

コンコン…

 

吉田「永田さん?永田さんっ!」

 

 

ドアをノックして呼び掛けるが一向に返事が返ってこない。

怪訝に思った吉田はドアノブを引っ張ると

 

 

吉田「開いてる…!」

 

庄司「…っ!」

 

 

ドアは施錠されておらず、何の抵抗もなく開かれた。

吉田と庄司は顔を見合わせると、永田の部屋へ駆け込む。

 

玄関からそのまま居間へ進むと、永田が大の字で倒れていた。

 

 

吉田「永田さんっ!?」

 

庄司「おっちゃん!おっちゃん!目ェ開けろよ、おっちゃんっ!!おっちゃんっ!!」

 

 

その光景に一瞬で青ざめた庄司は声をかけながら肩を揺さぶる。だが、永田は一向に起きる気配がしない。

まさか死んだのでは…?最悪なケースが脳裏に浮かんでいると

 

 

吉田「おいっ」

 

庄司「ん?」

 

 

そう言った吉田に腕でグイッと後方へ引き離される。

吉田は永田の胸元に耳を当てて心臓の鼓動音を確認すると、心臓はドクンドクンと健康なリズムを刻んでいた。

 

 

吉田「大丈夫だ。眠ってるよ」

 

庄司「眠ってる…?」

 

吉田「ああ、庄司。あの毛布取ってくれ」

 

庄司「わかった」

 

 

吉田のひと声に落ち着いた庄司は襖から毛布を取り、吉田へ手渡した瞬間、

 

 

永田「……う~ん」

 

「「!」」

 

 

永田はパチリと瞼を開け、目を覚ました。

彼の目覚めに2人は安堵していると、永田は寝そべったまま2人を見上げ

 

 

永田「……夢を見た……ルクーが迎えに来てくれんだよ…」

 

吉田「ルクー?」

 

庄司「?」

 

 

楽しげにそう言うと、吉田と庄司は何だそれ?と顔を見合わせる。

ルクーが何者だとしても、まだ夢と現実の区別が出来ないのは寝ぼけているからだろうか?

 

 

永田「俺、ウクバールに帰るんだ」

 

庄司「おっちゃん、しっかりしろよ…。それ、夢なんだよ……」

 

永田「あるんだよ、あの町は。ほら!ウクバールの風の音が聞こえる」

 

 

呆れる庄司にそう言いつつ、永田は吉田に黒電話の受話器を手渡す。

 

庄司はチラリと床を見ると、黒電話から伸びる電話線は切れていた。

嘆息をついた庄司は「何でわかんねぇんだよ…」と苛立ちながら、永田の肩を掴みかかり

 

 

庄司「いいか、おっちゃんっ!ルクーなんていないし、ウクバールなんて町はっ…!そんな町は、どこにもねぇんだよっ!!」

 

 

肩を揺らして哀れみを込めて叫ぶが、永田は相変わらずニコニコしており、庄司の叫びが耳に入っていない。

 

 

吉田「…っ、庄司!」

 

庄司「…え?」

 

 

すると、隣で受話器を耳に当てていた吉田に呼び掛けられる。吉田は何があったのか大きく目を見開いていた。

庄司は吉田から差し出される受話器に耳を近付けた。

すると、

 

 

ヒュウウゥゥゥゥーーーー…

 

 

と風の音と風に揺られてカラカラと音を鳴らす風車の音が聞こえてきた。

目を見開いた庄司はもう1度電話線を見るが、電話線は相変わらず切れたままだ。

 

 

庄司「嘘だろ…!?」

 

 

庄司は言葉を失う。電話線は確かに切れていた。

しかし、現に音が聞こえている。受話器や黒電話自体に細工をした形跡もない。

 

――ウクバールは実在するのか!?と2人が呆気にとられていると、

 

 

カァン!

 

「「?」」

 

 

突然窓に何かが当たる音が聞こえ、2人は振り向く。

窓には突如吹いてきた強風によって吹き飛ばされた桶がへばりついており、窓もカタカタ揺れている。

遠くから響く風鳴りは受話器から聞こえる環境音すらも解き消す程ますます大きくなっていく。

 

 

カラカラカラカラ…!

 

「「…!?」」

 

 

しかも窓が開いていないのにも関わらず、室内の風車は激しく回り始める。吉田と庄司が怪訝に思う中、満面の笑みを浮かべる永田は窓に向かって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永田「ルクーーーー!!」

 

パリィィィィンッッ!!

 

 

そう叫んだ瞬間、現実と夢の狭間を壊す様に窓は突風で粉々に吹き飛ぶ。

飛んで来るガラスの破片に吉田達は身を屈める。

破片の雨が静まり、吉田と庄司は割れた窓から恐る恐る町を見ると

 

 

ルクー「パパパパパ……」

 

「「!?」」

 

永田「ルクー!」

 

 

ルクーが目の部分にある風車の様な赤い部位を回転させながら静かに町へ佇んでいた。

吉田と庄司が驚く中、永田は嬉しそうに頬を緩める。

 

 

吉田「こちら吉田!ポイント2-2-6 N1に怪獣が出現!」

 

庄司「おっちゃん!?」

 

 

吉田はXIGナビで連絡を取っていると、目を爛々と輝かせた永田が家から駆け出していた。

庄司は急いでその後を追う。

 

 

『わぁぁぁーーーーー!!』

 

永田「ルクー!」

 

庄司「おっちゃん!」

 

 

逃げ惑う人々の間を駆け抜け、永田は親へ駆け寄る幼子の様にルクーの元へ走っていく。

庄司は必死に追うが、避難でこちらへ向かってくる人々のせいで中々前へ進めず、距離の差が埋まるどころかどんどん離れていく。

 

 

ルクー「パパパパパ……」

 

シャンッ…シャンッ…

 

 

ルクーは永田の声が届いたのか方向を変えると、永田のいる方へシンバルの様な足音を立てながらゆっくり歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、吉田も町中走り回って、行方が掴めなくなった永田を探していた。

 

 

吉田「(あの怪獣は本当にウクバールから来たのか?永田という男は一体…)」

 

 

吉田は疑問に思っていた。永田は地球人であり、空にあるというウクバールなんていうのも存在せず、全て彼の空想の産物である。

しかし、電話線が繋がっていない黒電話からウクバールの音が聞こえ、今まさに現実に怪獣ルクーは現れた。

本当に彼の空想なのかと…。

 

 

庄司「おっちゃぁぁーーーーーんっ!!」

 

 

庄司も別の場所で走り回って探すが、永田は一向に見つからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクー「パパパパパ…」

 

シャンッ…シャンッ…

 

 

その間にもルクーはゆっくりゆっくりと町中を歩いていく。周りの空気は幻想の様にぼやけており、ルクーが実像かはたまた幻かと惑わせる様に漂っている…。

 

 

キィンッ!

 

ポワンッ!

 

 

そこへ我夢が変身したガイアと一誠が変身したダイナが光と共に颯爽と現れる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

素早く身構えるガイアとダイナ。

しかし、

 

 

ルクー「パパパパパ…」

 

シャンッ…シャンッ…

 

「「?」」

 

 

ルクーは2人が眼中にない…それどころか視界にすら映っていないのか、ペースを変えずゆっくりと歩き続ける。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

首を傾げる2人だが、気を引き締めると、ルクーの目前へ出て、止めにかかるが

 

 

ガイア「デュ!?グアァァッ…!」

 

ダイナ「グァァ…ッ!?」

 

 

ルクーは全く微動だにもせず、抑えるどころか逆に押されてしまう。足に力を入れて踏ん張るが、ズザザザザ…と地面の擦れる音が鳴るだけで押されるばかりだ。

 

 

ルクー「パパパパパ…」

 

シャンッ…シャンッ…

 

 

2人の妨害を受けてもルクーは気にも止めず突き進む。

シンバルの様な足音を響かせ、永田の元へと…。

 

 

永田「ルクー!ルクー!」

 

 

同じ頃、永田もルクーに会うため、展望台の階段を急いで駆け上がる。

待ちわびた様にはしゃぐ永田は迎えにきたルクーの名を呼びながら。

 

 

ルクー「パパパパパ…」

 

ブンッッ!!

 

ガイア「デュアッッ!?」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

自分を呼ぶ声が届いたのか、ルクーは両腕を振り払ってガイアとダイナを吹っ飛ばす。

振り払われた2人は宙で1回転しながら背中から地面に叩きつけられる。

 

 

ルクー「パパパパパ…」

 

シャンッ…シャンッ…

 

 

邪魔者がいなくなったルクーは永田の元へ行こうと、ゆっくりゆっくり歩き続ける。

 

 

ガイア「グアァァァァァ……!」

 

ダイナ「ハァァァーーー……!」

 

 

立ち上がったガイアとダイナはそれぞれ、クァンタムストリーム、フラッシュサイクラーの体勢に入る。

 

 

永田「ルクゥーーーー!!ルクゥゥーーーーーー!!

 

ルクー「パパパパパ…?」

 

シャンッ………

 

 

と、丁度その時、展望台の頂上に上がった永田の呼び掛ける声がルクーの耳に入った。

ルクーが足を止め、永田の方へ振り向いたその時だった。

 

 

ウウゥゥゥゥゥ~~~~~~~…!!

 

永田「!」

 

吉田「!?」

 

庄司「?」

 

ガイア「…?」

 

ダイナ「フッ…?」

 

 

どこからともなくサイレンの音が鳴り響いた。町中から流れているのでなく、空から鳴っている。

その奇怪な音に吉田と庄司は足を止め、ガイアとダイナは攻撃の手を止めた。

 

 

(永田「ウクバールでは夕方になると、大きなサイレンが鳴るんだ。そしたら、みんな家に帰るんだ」)

 

吉田「まさか…」

 

 

吉田は以前、庄司から聞いた永田のウクバールについての話を思い出す。

夕方にサイレン……。今鳴っているこのサイレンがそれではないのかと察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永田は空を見上げると、雲の間から宙に浮かぶ空中都市が姿を現した。

 

 

永田「ウクバール…!」

 

 

宙に浮かぶ大小の塔、ヒュウウゥゥと常に吹く風にカラカラ音を立てて回る風車―――――。

そう、それは間違いなく永田の故郷ウクバールだ。

ウクバールは彼を迎えに来たのだ。

 

 

永田「ウクバール…!!」

 

 

永田は25年さ迷い続け、ようやく見つけた故郷に思わず笑顔がこぼれる。

しかし、ウクバールを待つのは彼だけでない。

 

 

ルクー「…」

 

スゥゥゥ……

 

ダイナ「!?」

 

ガイア「…!」

 

 

サイレンの音を聞いたルクーは足から静かに消滅し始め、5秒もしないうちに消えた。

それと同時に鳴り響いていたサイレンの音も止んだ。

あの巨体が蹂躙したのにも関わらず、町には損傷1つもなかった。

まるで初めから何も無かったかの様に…。

 

 

「「……?」」

 

 

ガイアとダイナは何だったんだ?と困惑しながら顔を見合わせると、夕陽に照らされる町を呆然と立ち尽くすのだった。

 

 

庄司「おっちゃーん……どこ行っちまったんだよぉ…」

 

 

そして、あの日以来……。永田は忽然と姿を消してしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在。吉田は我夢と共に廃墟となった永田の生家へ訪れていた。

呆然と立ち尽くす吉田の耳には、壁につけてある古びた風車がカラカラ音を立てて回るばかりだ。

 

 

我夢「吉田さーん」

 

 

すると、外にいる我夢に呼び掛けられる。空は暗くなり始め、もうすぐ夜になるから帰ろうということだろう。

吉田が我夢の声につられるまま、帰ろうとした時だった。

 

 

吉田「…?」

 

 

ふいに吉田は部屋の壁側にある物に目が止まる。

クモの巣や古びた襖の奥に隠れてよくわからないが、絵画が描かれたカレンダーの様に見えた。

 

気になった吉田は部屋に入ると、クモの巣を取り除き、襖をどける。

すると、吉田は露となったカレンダーを見て、息を飲む。

 

1966年と随分昔だが、それは関係ない。

問題なのは、そこに描かれている絵画だ。

 

宙に浮かぶ風車がついた大小の塔に浮かぶ都市の真ん中で佇むルクー……。そう、永田が言っていたウクバールそのものだった。

 

その後、吉田は皆にこう言ったのだという。

 

 

―――永田は幼い頃に見たカレンダーの中の町を自分の故郷だと思い込んでいた……ただの風変わりな男だったかもしれない。

でも、もしかしたら……ウクバールは本当にどこかにあって、永田はようやくそこに戻ったのかもしれない……と。

 

 

廃屋から出てきた吉田はぼそっと呟く。

 

 

吉田「あの男にはウクバールが必要だったのかなぁ?」

 

我夢「え?ウクバール?」

 

吉田「遠い町さ…」

 

 

訊き返す我夢にそう返すと、吉田は車に戻っていった……。

 

 

 

 

 




次回予告

またまたあいつがやって来る…。
人の心を蝕む死神のようなあいつが…!


リアス「邪魔しないでよ」


リアスに何が…?

次回、「ハイスクールG×A」
「迷宮のリアス」


「一人ぼっちなの?あたしと遊ぼう」




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第47話「迷宮のリアス」

超空間波動怪獣 サイコメザードII(ツー) 登場!


その夜。駒王町の上空から黄色の粒子が地上へ降り注いでいた。

この奇妙な現象に人々は疑念を感じていたが、キラキラと輝かせながら雪の様に降り注ぐ美しい光景に目を奪われ、その疑念もすっかり忘れていった……。

 

その粒子の雨は寝静まる兵藤家の上にも降り注いでいた…。

 

 

 

 

―――も~うい~いか~~い……?

 

―――ま~~だだよ~~~……

 

「?」

 

 

遠くから聞こえる子供達の声にしゃがんでいた長い紅髪の少女は顔に当てていた手をどけ、パチリと目を開ける。

背も顔も体格も小さく、年は4~5歳くらいだろう。

 

紅髪の少女は体を上げて辺りを見渡すと、メルヘンチックな建造物に観覧車やジェットコースター等、様々なアトラクションが建っていることから遊園地であることがわかる。

しかし、

 

 

―――ま~~だだよ~~~……ま~~だだよ~~~……

 

「みんなどこなの?どこにいるの?」

 

 

お友達の声のする方へ走るが一向に姿が見えない。

お友達どころか遊園地には人っ子1人おらず、少女1人のみだ。

 

 

「…みんなどこ?わたしを1人にしないでよっ……ぐすっ、ぐすっ……」

 

 

――孤独。それを感じた紅髪の少女は遂に泣き出してしまう。

――やっと、やっとあそべたとおもったのに……。心にポッカリとできた悲しみが広がり、涙が止まらない。

 

 

『あなた、1人ぼっちなの?』

 

「…?」

 

 

すると、後ろから少女が呼びかける声が聞こえ、ピタリと泣き止む。

紅髪の少女は涙溢れる目尻を手で拭い、治まらないえづきを堪えて振り向くと、稼働しているメリーゴーランドから照らされる金色の光を背に受けている1人の少女が立っていた。

 

長い茶髪を縦ロールに編み、頭頂部には黒いリボン、貴族のお嬢様が着るような黒とエメラルドグリーンで彩られた可愛らしいドレスを着ている。

9~10歳に見える少女の顔はまるで西洋人形の様に整っており、唇に塗っている口紅の赤がより一層白い肌を引き立てる。

 

 

「だぁれ?」

 

 

その可愛らしさに目を奪われつつも紅髪の少女は首を傾げて訊ねると、彼女はニッコリと笑みを浮かべ

 

 

『あたしと遊ぼう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「………んんぅ…」

 

《♪♪~~》

 

 

机に伏せていたリアスはパチリと目が覚める。

目を擦りながら顔を上げて周囲を見渡すと、自分の部屋であり、僅かな灯りとメリーゴーランドを模した小さなオルゴールが静かな音を奏でている。

机に目をやると、書きかけの悪魔契約関連の報告書が置いてあることから、どうやらいつの間にか寝てしまった様だ。

 

 

 

リアス「(あの時のことを思い出すなんて…)」

 

 

リアスは先程自分が見た夢を思い返す。皆様にはお分かりだろうが、あの夢に出てきた紅髪の少女はリアスであり、あれは幼い頃のリアスが体験したことである。

 

遊園地でかくれんぼをしている時、1人ぼっちになって寂しくなり、泣いてしまった。

しかし、そんな時に現れた少女こそリリアだった。

彼女は自分よりも幾らか年上であるはずなのに、ワガママを真摯に受け止め、一緒に遊んでくれた。

幼い頃のリアスにとってはソーナと並ぶ友人の1人だ。

 

それ以降もリリアは遊んでくれたが、リアスが10歳を越えようとした時、忽然と姿を消してしまった。

何度も探したが手がかりが見つからず、音信不通である。

 

 

リアス「リリア…元気かな」

 

カサッ…

 

リアス「?」

 

 

追憶に浸りながら足を動かした時、床にある紙を踏む。

床に落としてしまった書類かと思ったリアスは座ったまま椅子を引いて書類を取るが、

 

 

リアス「何…これ……?」

 

 

僅かにある灯りで照らされた瞬間、怪訝な顔を浮かべる。

その書類には

 

 

LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia LiLia

 

 

と用紙一面を塗り潰すかの様にリリアの名を書きなぐっている痕跡があった。

汚いながらもこの筆跡からリアスは自分が書いたのだと理解した。

 

 

リアス「これ、私が…?」

 

 

しかし、当の本人には書いた記憶が全く無かった。というよりもいつ、どこで、何の為に書いたのすら憶えていなかった。

けれど、この書類の文字から自分が書いたのは明白だ。

 

リアスは困惑していると、机に飾ってある写真立てに目をやる。

そこにはソファーに座った自分とリリアのツーショット写真が入っていた。

 

 

リアス「リリア…」

 

 

それを見たリアスはぼんやりとした顔で呟く。頭にあった懸念は写真に吸い寄せられる様に全て消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィィィシャォォォォ~~~…」

 

 

その時、上空から現れたワームホールから顔を出した怪獣は下界を見下ろしていた。

まるで嘲笑うかの如く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時が過ぎ、駒王学園。夕方となり、すっかり放課後の時間帯になっていた。

我夢達はいつもの様に旧校舎の部室へ足を運び、ティータイムを交えながら他愛のない話をしていた。

ちなみにアザゼルは現状の活動や情勢を報告し合う冥界の逐一会議に参加しているのでここにはいない。

 

 

我夢「そういえば、もうすぐ修学旅行だよね」

 

一誠「おっ、もうそんな時期か」

 

 

膝に小猫を乗せながらクッキーを頬張る我夢の言葉に一誠は反応する。

我夢達2年生は体育祭が終わった今、学校行事の1つである修学旅行が近付いていた。そんな大イベントをまだかまだかとワクワクするのが普通なのだが、ロキや破滅招来体の戦いがあって一誠も我夢もつい最近になるまで完全に頭から離れていた。

 

 

一誠「確か京都だっけ?行くの」

 

我夢「そうそう。3泊4日で最低8人のグループを作って回るらしいよ。観光場所は時間にもよるけど、基本は自由だって」

 

一誠「へ~~そうなのか。んじゃあ、グループはどうすっかな…」

 

イリナ「あっ!なら私達のグループと組まない?」

 

「「?」」

 

 

一誠がそう呟いた瞬間、話を聞いていたイリナが笑顔で話に入ってくる。

 

 

イリナ「私、ゼノヴィア、アーシアさん、桐生さんの4人で班を作ってるんだけど、丁度残りの人を探してて。それにどうせ組むなら気軽に接せれる人がいいしね!」

 

ゼノヴィア「うん、私も賛成だ。桐生には後から話をつけておく」

 

アーシア「イッセーさん、我夢さん。ご一緒してくれますか?」

 

 

アーシアは笑顔で2人に訊ねる。

高校生活の行事の中でもある程度自由がきく修学旅行。イリナの言う通り、そこまで接点がない人と組むよりも接点がある人と組む方が数倍楽しいだろう。

断る理由はない。

 

 

我夢「もちろんさ」

 

一誠「おう、全然OKだぜ!アーシアと俺はいつも一緒、だろ?」

 

アーシア「はい!ずっと一緒です!」

 

 

2人の承諾に加え、一誠の口から出た言葉にアーシアは満開の笑顔を咲かせると、嬉しさのあまりに彼に抱き着いた。

 

 

ゼノヴィア「ふふっ、いいものだな。愛し合うというのは…」

 

イリナ「みんながいる場所で抱き着くなんて……。大胆……」

 

我夢「まあまあ、幸せそうだし」

 

 

この光景にゼノヴィアと我夢は微笑み、イリナは恥ずかしそうに頬を赤く染める。

体育祭の告白で晴れて恋人同士となった一誠とアーシアは今まで堪えていたものが吹っ切れたのか、こんな風に四六時中イチャイチャしている。

こんなにベタベタしていたら普通は変な目で見られるのだが、一誠の相手がアーシアとあってか、大半は暖かい目で見ており、不満の声も少ない。

 

ひとしきり抱き合っていた一誠だが、何か気付いた顔を浮かべると、アーシアを離し、我夢に訊く。

 

 

一誠「思ったんだけど、俺達とここにいない桐生を含めても6人しかいない。最低8人だとしたら後2人足りないぞ?どうする?」

 

我夢「ああ、それなら松田と元浜がいいんじゃないかな?ほら、最近構ってあげられないし…」

 

一誠「ん、ああ…」

 

 

我夢の提案に一誠は納得する。確かにここ最近、自分達が多忙のせいで松田と元浜の2人と接する機会がメッキリ減っている。

変態で女子生徒の大半から軽蔑されている2人だが、根は良い人間だ。特に一誠は中学時代、過去のトラウマで悩まされていた自分を救ってくれた恩人でもある。

 

 

一誠「わかった。イリナ、アイツらも入れてあげてくれるか?」

 

イリナ「わかったわ!よーし、決まりね!」

 

ゼノヴィア「ふふっ、待っていろ京の都!そして金閣寺、銀閣寺!」

 

朱乃「あらあら、楽しそうですわね♪」

 

 

修学旅行の班が決まって盛り上がっているところへ新しい紅茶を淹れてきた朱乃がニコニコ笑顔で話に参加してくる。

我夢は軽く会釈してティーカップに紅茶を注いでもらうと、ふぅふぅと慎重に息を吹きかけてから1口飲むと、朱乃へ顔を向け

 

 

我夢「朱乃さんと部長は去年、どこへ行ったんです?」

 

朱乃「私達も京都でしたわよ。部長と一緒に京都中の名所を回ったものですわ。京都は楽しい名所ばかりですが、移動時間を視野に入れておかなければいけませんわ。あれやこれやと次々行こうとすると見学時間内に間に合わず、痛い目にあいますわ」

 

 

その助言に我夢達はうんうんと頷くと、朱乃は

 

 

朱乃「さもないと、あちこち行ったせいで二条城に行けず、駅のホームで地団駄を踏んだ部長と同じ思いを味わいますわよ♪」

 

 

と去年のことを思い出しクスクスと笑う。

リアスが日本好きなのは知っていたが、まさか年頃の高校生らしくエンジョイしていたとは我夢達は思わなかった。普段、大人の余裕を見せるリアスを知っているから尚更だ。

 

 

一誠「へぇ~部長って結構お茶目なところあるんすね!ねぇ?部長………部長?」

 

リアス「…」

 

 

それを聞いた一誠はいたずら気な笑みを浮かべて訊ねるが、リアスは心ここにあらずといった様子でポカーンとしている。

 

 

一誠「部長!」

 

リアス「…え!?ああ、ごめんなさい。ボウッとしてたわ……」

 

一誠「大丈夫すか?何か嫌なことでも…」

 

リアス「何でもないわ。大丈夫、平気よ」

 

『……』

 

 

そう言いつつ気丈に振る舞うリアスだが、いつもと違う様子に皆は訝しさは拭えなかった。

実は今日1日中リアスはずっとこの調子であり、どこか変なのだ。

 

 

我夢「朱乃さん」

 

朱乃「?」

 

 

我夢は近寄る様に声をかけて手招きすると、部屋の隅に連れると、

 

 

我夢「部長がおかしいのって、また婚約絡みですか?

 

 

リアス本人に聞こえない様にコソコソ声で訊ねる。

そう。依然、リアスはフェニックス家三男のライザーとの婚約に悩まされてた時期があり、その時も今回の様にどこかおかしい点が多々見られた。

ライザーとの婚約がされたとはいえ、他の上級悪魔との婚約の可能性は充分に有り得る。

 

だが、朱乃は首を縦に振り

 

 

朱乃「いいえ、今の時点では聞いていませんわ。それにイッセー君とライザーの戦いを見た他の上級悪魔も下手に手を出せないと諦めているようですし…

 

我夢「そうですか…

 

 

それを聞いた我夢はほんの少し安堵する。悩みの原因を掴めた訳ではないが、また婚約絡みではなかったのは幸いである。

もし、仮にまた来てもイッセーが必ず迎え撃つのは容易に想像できる。

 

しかし、これでまた振り出しに戻った訳である。

ポカンとしている原因は結局掴めていない。

同年代であり、リアスの“懐刀”と呼ばれる朱乃ですらわからないのだからかなり難しい。

 

 

一誠「(部長、どうしたんだよ……)」

 

 

不安に駆られた一誠がそう思った瞬間、

 

 

《ファーーーン……ファーーーン……》

 

『!?』

 

 

部屋中にアラーム音が鳴り響く。これは部室に置いてある怪獣探知機によるものだが、怪獣出現時とは違う音だ。

 

この音が何の意味を持っているか知っている全員は真剣な顔に切り替える。

リアスはまぶたを重たそうにしながらも目一杯見開き、低い声で

 

 

リアス「行きましょう…」

 

 

と言うと皆は頷く。

いつもならハッキリとした口調で言うが、今回はとろんとした口調で弱々しい。

同じセリフだが頼もしさがなく、それどころか皆には不安が募るばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕陽が沈み、暗闇になった町。そこにある廃工場にリアス率いるグレモリー眷属と助っ人のイリナはいた。

暗闇に包まれ、月の光が差し込む工場内には黒コートを纏った20~30人程の人、その後ろには10匹の異形の怪物が控えていた。

 

 

両陣営が相対する中、リアスは一歩前へ出る。

道中で不安になっていた我夢達だが、突然いつもの調子に戻ったのだ。

リアスは彼らを見据えると、口を開き

 

 

リアス「『禍の団(カオス・ブリゲード)』――英雄派ね?ごきげんよう、私はリアス・グレモリー……この町の領主を任されている上級悪魔よ」

 

「存じ上げますとも、魔王の妹君。我々の目的は貴様達を屠り、町を浄化することだけだからな」

 

 

軽く挨拶すると、集団の先頭に立つ黒コートの男はニヤリと口角を上げながら言葉を返す。

そう、彼らはテロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』の新勢力・英雄派の構成員だ。

ここ最近、各勢力の重要拠点を小規模ながらも頻繁に攻めてきている。三大勢力が集まりやすいこの駒王町も例外でなく、その度に領主であるリアス率いるグレモリー眷属が相手をしている訳だ。

 

怪獣だけでなく、こういったテロリスト集団の相手をしなければならないので我夢達にとっては、ありがた迷惑といったところだ。

 

男の返答から大人しく降参する意思はないと判断したリアスは嘆息すると、真っ直ぐ見据え

 

 

リアス「そう、仕方ないわね。けど、私達もタダでやられる訳にはいかないわ。少し手荒になるけど、大人しくさせてもらうわ」

 

 

そう言い放つと、我夢達は一斉に身構える。

我夢はジェクターガン、一誠はアザゼルがそれを改造したシグブラスターを構える。

朱乃、リアス、ロスヴァイセは魔力を滾らせ、小猫は猫又モードになり、ゼノヴィアと木場とイリナは互いの得物を構えており、ギャスパーは相手をいつでも時間停止できる様に目を見開いている。

 

それを見た英雄派の構成員の男は右腕を胸の前へ掲げると、藤色をした巻き貝の様な『神器(セイクリッド・ギア)』を発現させる。

 

 

スゥゥーー…!

 

『!?』

 

 

そして、男は巻き貝の様な『神器(セイクリッド・ギア)』を地面に向けると、煙を噴出させ、工場内を包みこもうとしていた。

嫌な予感がした我夢達は煙に呑まれない様にすぐに外へ出た。

 

振り返った時には工場内は煙に包まれており、内部からの様子は伺えなくなっていた。とはいえ、あのまま突っ立っていたら何があったかわからなかったのでひと安心だ。

 

 

一誠「逃げるつもりですかね?」

 

リアス「いえ、それはあり得ないわ。これまでのパターンから考えるに意地でも戦うつもりよ」

 

一誠「意地…ね…」

 

 

リアスの言葉に一誠は呆れた様に呟く。

今まで現れた英雄派の構成員は撤退することさえあれど、必ず戦ってから行っている。戦闘を行わず逃げるとは考えにくい。

 

そんな話をしていると、手元のデバイスで煙の成分を解析していた我夢がリアスに進言する。

 

 

我夢「あの煙からは有毒性は検知されません。視界を遮る為だけのものの様なので、XIGナビでの誘導が必要になります。しかし、可燃性である可能性があるので、できるだけ魔力や火器での攻撃は避けた方がいいかもしれません」

 

リアス「わかったわ。なら、私はXIGナビの位置情報を頼りに指示を出すわ。我夢は私のサポートをお願い」

 

我夢「はい!」

 

リアス「イッセー、祐斗、ゼノヴィアを先頭にイリナさん、ギャスパー、小猫は工場内に突入。朱乃とロスヴァイセは工場の左右に挟んで待機してちょうだい。煙を出したリーダーらしき男を生け捕りにしたらすぐに工場の外へ撤退。朱乃とロスヴァイセは皆が外へ出たのを確認したら工場へ一斉攻撃しなさい」

 

『了解!』

 

 

リアスは早速立てた作戦を伝えると、皆は承諾すると作戦に取りかかる。

ちなみに口では言ってないが、回復役のアーシアはリアスと共に待機だ。

 

 

木場「行くよ、イッセー君」

 

一誠「おう!久しぶりに生身で暴れるぜ!」

 

小猫「……お調子に乗って、ケガしないでくださいね」

 

一誠「わーてるって!心配すんな!」

 

ゼノヴィア「イリナ。君も張り切りすぎてヘマをするなよ?」

 

イリナ「そういうゼノヴィアもね!」

 

ギャスパー「よし…!頑張るぞぉ…!」

 

 

突入組の6人は他愛ない会話を交わすと、工場内へ突入していった。

 

突入したタイミングを見計らった我夢は手元のデバイスを自身のノートパソコンに繋げると、ノートパソコンの画面に工場内のマップが表示される。

工場内には6つの黄色の丸が一定のリズムで動いており、その上にはローマ字で記されている6人の名前が表示されていた。

 

リアスはそれを見ながらインカムを耳に取り付けると、指示を出す。

 

 

《リアス「祐斗。リーダーは恐らく階段を上がった先にいるわ。焦らず慎重に突き進んで」》

 

木場「了解!みんな、リーダーは2階にいる!」

 

一誠「わかった!俺がいく!」

 

 

戦いの最中、木場がそう叫ぶと、一誠が返事する。

煙で周囲がよく見えないが、うっすらとだが階段の近くにいることはわかる。

一誠は相対していた敵を蹴飛ばすと、階段の手すりに手をかけて上り始める。

 

 

「させるかっ!」

 

一誠「っ!」

 

 

道中、多数の構成員がそうはさせまいと襲いかかるが

 

 

小猫「イリナ先輩!ゼノヴィア先輩!斜め10時の方向!」

 

イリナ「こっちね!」

 

ゼノヴィア「はあっ!!」

 

『グギャ!?』

 

 

仙術で気を探知した小猫のナビゲートを受けたイリナが投げた光の槍とゼノヴィアが放つデュランダルの斬擊による援護攻撃が直撃。

襲いかかろうとした構成員は1人残さず大きく吹き飛ばされる。

 

 

一誠「サンキュー!」

 

 

一誠は姿は見えないながらも彼女らに感謝すると、階段をかけ上がっていく。

道中で阻む敵を援護攻撃や時折自分で退けながらかけ上がっていく。

 

 

一誠「やっと会えたぜ!」

 

「っ!」

 

 

一誠は2階にたどり着くと、リーダーの男を見つけた。2階は煙の発生源であるリーダーがいるからか煙が薄く、1階に比べて周りの景色か見やすい。

しかし、余程自分に自信あるのか、周りに護衛がいない。

リーダーの男は一瞬驚いた顔を浮かべるが、すぐに澄ました顔に変わると煙を出す手を止め、一誠を見据える。

 

 

「これはこれはウルトラマン殿。よくぞここがいるのがわかりましたな。変身しなくてよろしいなのかね?」

 

一誠「へっ!お前なんか変身するまでもねぇよ!」

 

「甘くみられたものだ…」

 

 

お互い軽口で煽ると、両者は身構える。視線を反らさず真っ直ぐ見つめ、ジリジリと足音を立てながら間合いを計る。

一歩も隙を見せられない緊張が走る中、足をピタッと止めた瞬間

 

 

一誠「おらっ!」

 

 

一誠とリーダーの男は一斉に駆け出す。

一誠は走った勢いをつけた蹴りを繰り出すが、リーダーの男は横へステップして避ける。

 

 

「ふっ!」

 

一誠「っ!」

 

 

リーダーの男が左の拳で反撃するが一誠は腕で払う。怯むリーダーの男だが、頭を狙った回し蹴りの応酬で攻め立てるが、一誠はバク転で回避する。

 

 

一誠「おらっ!」

 

「ぐおっ!?」

 

 

隙を見た一誠は体勢を整えると、助走をつけたドロップキックで蹴飛ばす。

一誠は床に倒れるリーダーの男に追い討ちをかけようと駆け寄るが

 

 

ガッ!

 

一誠「うおっ!?」

 

 

リーダーの男に足を払われ、前のめりに転倒する。

その間に立ち上がったリーダーの男はうつ伏せに倒れた一誠の両足をガッシリ掴むとジャイアントスイングの要領で回し始める。

 

 

ブンブンブンブン……ッ!

 

一誠「うぉぉぉぉぉーーー!?」

 

 

回す速度が増す度、激しい風切り男が鳴り、一誠が悲鳴を響く。

 

 

「はあっ!!」

 

 

ある程度回したリーダーの男は一誠を思いっきり壁に向けて投げ飛ばす。このままだと一誠は頭から壁に激突する。

だが

 

 

タンッ!

 

「!?」

 

一誠「おらっ!!」

 

 

一誠は宙で1回転して壁側に足を向ける体勢に入れ替えると、壁を蹴って跳躍。

壁面を利用したジャンプキックをリーダーの男の胸元に浴びせる。

 

 

「ぐっ!?」

 

一誠「まだまだいくぜっ!」

 

 

予想外の反撃にリーダーの男は大きく怯む。

着地した一誠はすぐさま追い討ちをかけるべく走り出す。

 

 

「ちっ!」

 

一誠「昇格(プロモーション)!『騎士(ナイト)』!」

 

 

リーダーの男はそうはさせまいと拳を繰り出すが、騎士(ナイト)に昇格した一誠は素早いスピードで後ろに回り込むと、ガシッと腰元に飛び付くと、男を持ち上げ

 

 

一誠「うぉぉぉぉぉーーーりゃっ!!」

 

ドォンッ!

 

「がっ!?」

 

 

思いっきりジャーマンスープレックスを食らわせる。

脳天を床に叩きつけられた男は目を白黒させると、そのまま気を失った。

その証拠に工場内を覆っていた煙が消え始めている。

 

 

一誠「しぁゃっ!見たか、俺の超ファインプレー!」

 

 

気絶した男から離れると、一誠はガッツポーズを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィィィシャォォォォ~~~…」

 

 

その時、上空に浮かぶワームホールからはまたあの怪獣が見下ろす様に顔を覗かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《一誠「部長!大将っぽい男を捕まえました!」》

 

リアス「よくやったわ。なら、他の皆に伝えて撤退を―――うぅっ!?」

 

 

指示する最中、リアスは頭痛に襲われる。

キィィーーンと耳鳴りがし、脳内がかき乱されそうな激痛に思わず目を瞑り、苦痛の声をもらす。

 

 

《一誠「…部長?」》

 

リアス「平気。ちょっと目眩がしただけよ」

 

《一誠「……そうですか?わかりました。すぐ下がります!」》

 

リアス「ええ、頼むわ」

 

 

苦笑するリアスに一誠は怪訝に思いつつもそう答えて通信を切る。

不審に思った我夢は

 

 

我夢「部長。この後のナビゲートは全て僕に――」

 

リアス「いえ、大丈夫よ。あなただけに任せっきりにはいかないわ。たまには私に無茶をさせて?」

 

我夢「…」

 

 

元気よさそうに振る舞うリアス。しかし、我夢には不安が拭えきれなかった。

しかし、戦闘中の状況でこれ以上しつこく言うのは得策ではない。

 

 

我夢「わかりました。引き続きサポートをしますが、駄目だと思ったら無理せず言ってください」

 

リアス「ええ、ありがとう。あなたはイッセー達をお願い。私は朱乃とロスヴァイセの方を見るわ。アーシア、万が一の為にいつでも回復できる様にしておいて?」

 

アーシア「…は、はいっ!」

 

 

そう指示されたアーシアはポカンとしていたのかハッとなると、神器(セイクリッド・ギア)を発動する。

我夢と同じく、アーシアもやはり不安を覚えているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《リアス「朱乃、ロスヴァイセ。準備はいいかしら?」》

 

《朱乃「ええ、万全ですわ♪」》

 

ロスヴァイセ「私もいつでもいけます」

 

 

工場外の左右を挟み込む様に待機する2人はOKサインを出す。

一誠達が撤退した後、彼女らは一斉攻撃を仕掛け、敵を一網打尽にする手筈である。廃工場とはいってもわりと広く、悪魔の足でも1分ぐらいかかる程だ。

 

 

ロスヴァイセ「(私もグレモリー眷属としてお役に立てないと…!)」

 

 

身構えるロスヴァイセは内心思った。グレモリー眷属になってからは生活は前より安定したが、心なしか戦闘面ではあまり目立った活躍をしてないと。

とどめの攻撃役という重大なポジションを任された以上、期待に応えなければと…。

 

 

ロスヴァイセ「?」

 

 

ロスヴァイセがそう意気込んでいる中、目の前に黄色の粒子が降ってくる。1つだけじゃなく、2つ3つと次々と降ってくる。

何だろうと見上げたロスヴァイセは目を丸くする。

 

 

ロスヴァイセ「…何、これ…?」

 

 

空からは大量の黄色の粒子が雪の様に降り注ぎ始めていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、工場の外にいる我夢達は攻撃の合図を下ろす時まで静かに待機していた。

突然の粒子の雪に不思議に思いつつもモニターで状況を伺っていた我夢はリアスへ顔を向け

 

 

我夢「部長。約30秒後に全員脱出します」

 

リアス「ええ……朱乃、ロスヴァイセ……さん…じゅ……」

 

 

それを聞いたリアスは朱乃とロスヴァイセに指示を出そうとするが、突然眠気が強くなり、とろんとした口調になっていく。

 

 

―――ま~~だだよ~~~……

 

リリア『あたしと遊ぼう?』

 

 

リアスの脳内ではかくれんぼ中の友達の声。そして、メリーゴーランドからの黄金の照明に照らされたリリアの姿が思い浮かんでいく。

周りの景色が幻想かの如くぼやけ、リアスは夢の世界に入った感覚に支配された。

 

 

リアス「まぁ~~だだよ~~~……まぁ~~だだよ~~~……」

 

《朱乃「リアス?どうしましたの?」》

 

アーシア「リアス姉様?」

 

 

そして、瞼を重そうにしながらリアスは突然呟き始める。まるでかくれんぼをする子供の様に。

インカムからの朱乃や近くにいるアーシアの声すら耳に届いていない。

 

 

我夢「あと13秒だ…」

 

 

工場から一誠達が脱出するまで時間をモニターで見ていた我夢が呟いた瞬間

 

 

――も~~~うい~~~よ~~……

 

 

そんな声がリアスの脳内に響く。

――もういいよ。突然聞こえた声に怪しむだろうが、何故かリアスには逆らう意思すら起きなかった。

 

 

リアス「うってもいいよ……」

 

《ロスヴァイセ「っ、はい!」》

 

《朱乃「了解」》

 

「「っ!?」」

 

 

脳内に響いた声に従ったリアスは攻撃のGOサインを出すと、ロスヴァイセと朱乃は溜めていた魔力を解き放とうとする。

まだ一誠達の脱出が完了していないのにも関わらずだ。

その判断に我夢とアーシアは目を見開く。

 

 

アーシア「リアスお姉様!まだイッセーさん達が!」

 

リアス「…」

 

 

アーシアは止める様に進言するが、リアスの耳には全く届いておらず、ただボーっと前へ見つめるだけだ。

 

 

我夢「朱乃さん!ロスヴァイセさん!攻撃を待って下さい!!まだ退避が――」

 

ザ――ザザ――――…

 

我夢「くそっ!通信が使えない!」

 

 

我夢も朱乃とロスヴァイセを止める様にインカムで呼び掛けるが、突然の電波障害でノイズが走るだけだ。

「何で肝心な時に!」と我夢が疑問と焦りを感じる中、2人の攻撃は今まさに放たれようとしていた。

 

 

我夢「っ!」

 

 

――考えている時間はない!そう決心した我夢はエスプレンダーを前へ突き出すと、赤と青の閃光に包まれると、目映い光の球体となり、目にも止まらぬスピードで工場内へ入っていく。

 

 

ドォォォォンッ!!

 

『ギィアァァァァーーーーーー!!』

 

『!?』

 

 

その頃、工場内にいる一誠達は撤退する中、近くから破壊音と断末魔が聞こえ、思わずそちらへ目を向ける。

右から朱乃の膨大な雷光と左からロスヴァイセが放った魔力のフルバーストが構成員らをあっという間に呑み込む光景が目に飛び込んだ。

作戦よりも早すぎる攻撃に驚き、思わず足を止めてしまった一同に容赦なく左右から強力な攻撃が襲いかかるが

 

 

ガイア「デヤッ!!」

 

 

間一髪、攻撃が届く前に等身大のガイアが彼らのもとへ駆け付ける。

 

 

『!?』

 

ガイア「グアッ!」

 

 

突然の登場に驚く一同だが、ガイアは有無を言わさずガイアテレポーテーションを発動させると、一誠らと共に工場の外へと瞬間移動した。

 

 

ドォガガガガァァァァァーーーーーー!!

 

 

ガイア達が外へ避難した瞬間、2つの強力な攻撃が衝突し、廃工場は大爆発を起こした。

 

 

イリナ「わ……」

 

木場「我夢君がもし来てくれなかったら…」

 

 

木っ端微塵になり燃え盛る廃工場に木場達は戦慄する。

朱乃とロスヴァイセ……グレモリー眷属の中でもリアスに匹敵、それ以上の魔力を持つ2人の攻撃だ。

ガイアが後一歩遅ければ、全員タダじゃすまなかっただろう。

 

 

一誠「何が何だかわかんねぇが、とにかくありがとうな」

 

ギャスパー「た、助かりましたぁぁーーっ!!」

 

我夢「うん」

 

 

とはいえ、無事なのは何よりだ。

安堵した我夢な変身を解き、ほっとしていると

 

 

リアス「…っ!?私、一体…」

 

アーシア「リアス姉様!」

 

 

リアスがハッと正気に戻る。先程の爆発音で気を取り戻した様だ。

それを見た我夢は朱乃とロスヴァイセが集合するのを確認すると、彼女に問いかける。

 

 

我夢「部長。イッセー達がまだいるのに攻撃を?」

 

「「!?」」

 

 

その問いかけに事情を知らないロスヴァイセと朱乃は目を見開く。てっきり一誠達がいない上で下した命令だからだと思っていたからだ。

 

 

朱乃「リアス。本当なの?」

 

リアス「…っ」

 

 

朱乃はリアスの両肩に手を置いて訊ねる。その顔はいつもの様なニコニコ笑顔ではなく真剣そのものであり、声音も僅かに怒りが籠っている。

その迫力に加え、周りから向けられる怪訝な視線に言葉を詰まらせるリアスだが

 

 

リアス「……ごめんなさい。私のミスよ」

 

 

我夢達に向かって謝罪の言葉をかけつつ、頭を下げる。

確かに調子が悪いのは皆にはわかってはいたが、仲間の身の危険をさらす程と知り、責めるよりも不安する気持ちが強まった。

 

それを受けた朱乃はふぅと息を吐き

 

 

朱乃「リアス……調子が悪い貴方に指揮を任せていた私達にも負がありますわ。でも、これ以上は前線に立つのは危険ですわ。今回は我夢君が機転をきかせてくれたおかげで何事もありませんでしたけど、次も上手くいくとは限りませんわ。調子が良くなるまで、しばらく休んだ方がいいわ」

 

一誠「そうそう!後のことは俺達に任せてゆ~~っくり休んでくださいよ!羽を伸ばせる機会だと思って!」

 

 

朱乃に続き、一誠ははにかみ笑いをしながら休むように促す。一誠のおかげで重くなりかけていたこの場の空気が僅かに和らぐと、話しやすくなったリアスは頷き

 

 

リアス「ええ、そうするわ…。今日は本当にごめんなさい」

 

 

そう返すと、戦いの後始末は冥界の役人に任せ、この場は解散となった。

 

ちなみに捕らえたリーダー格の男は冥界に転送させたが、次に目覚めた時には英雄派に関する全ての記憶を失っていた。これは一度や二度でなく、今まで捕らえた他の構成員も同様で、負けた時に英雄派に関する情報が消える様にされているらしいが、どういう仕組みなのかは今のところは判明していない。

 

とはいえ一件落着……なのだが。

この時、我夢達は知らなかった。

 

異変はリアスだけでなく、この町に住む住民にも及んでいることを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。リアスがいない駒王学園は午前の授業が終わり、昼休みが訪れていた。

教師や生徒は立場関係なく訪れるこの憩いの時間に我夢、一誠、松田、元浜のいつもの4人に加え、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、愛華がこぞって昼食を取っていた。

 

元浜は弁当の唐揚げをつまみながら話を切り出す。

 

 

元浜「知ってるか?」

 

愛華「ん?アンタが一向にモテないってことかしら?」

 

元浜「違うわっ!昨日起きた大規模な多発事故のことだよっ!」

 

一誠「多発事故…?」

 

 

小馬鹿にする愛華へ顔を真っ赤にして吠える元浜の話題に一誠はピクリと耳を止める。

その反応に気付いた元浜は「知らないみたいだな」と得意げな顔で言いながら眼鏡の鼻を上げると、一誠を見て

 

 

元浜「実は昨日、飛行機の墜落事故が多く発生したんだ」

 

一誠「え!?マジで?」

 

元浜「ああ、本当さ。でも、妙に変な事故でな。こう連続して事故が起きるだけでも変だけど、墜落した飛行機はこの駒王町上空が空路に入ってたらしくて、しかも墜落の原因は全部、パイロットの人為的なミスらしい」

 

松田「噂じゃあ、一昨日降った粒子の雪が関係してるって話らしいけどなー」

 

 

元浜と松田の補足を聞いた一誠、アーシア、イリナ、ゼノヴィアは驚く。

人為的なミス……昨日のリアスも同じ様にイッセー達を危うく殺すところだった。丁度あの夜、突然粒子の雪が降ってきた。これは単なる偶然ではないのだろう。

 

 

《ピピッ…!》

 

我夢「!」

 

 

一誠達4人がそんなことを考えていると、我夢が左手首に着けているXIGナビから通知音が鳴る。

それが何を意味するかわかっている我夢は取り出したスマホを短い操作をすると、席を立ち、一誠達を見て

 

 

我夢「イリナ、ゼノヴィア、アーシア、一誠。話したいことがあるから、ちょっと体育館裏までついてきてくれないか?」

 

「「「「?」」」」

 

 

ついてこいと誘う。

何のことかわからないが、我夢が突然言い出したのだからには絶対意味があると信頼している4人はとりあえずついていくことにし、同じく席を立った。

 

 

松田「どこに行くんだよ?」

 

我夢「部活についての話さ。すぐ終わるよ」

 

 

首を傾げる松田にそう返すと、我夢は4人を連れて体育館裏へ向かって歩き出す。

 

 

イリナ「我夢君。一体何を話すの?」

 

我夢「昨日降ったあの粒子のことさ。詳しいことは着いてから教えるよ」

 

 

道中でのイリナの疑問に我夢はそう返しつつも、一行はスルスルと校内を進み、体育館裏へ到着した。

 

目的地に着いた一誠、イリナ、ゼノヴィア、アーシアは意外そうに目を丸くする。

体育館裏には木場、朱乃、小猫、ギャスパー、ロスヴァイセ―――我夢達を含めれば休んでいるリアスを除く、オカルト研究部のメンバーが集結していた。

 

 

一誠「木場」

 

木場「やあ、イッセー君達。僕達も我夢君に呼ばれたんだよ」

 

 

木場の話を聞き、一誠らは全員を集める程重要な話なのかと思っていると、我夢は一通り顔を見てリアス以外がいることを確認すると、早速本題を話し始める。

 

 

我夢「昼休み中、すみません。みんなを呼んだのは部長の様子がおかしかった原因が判明したからかもしれないからです」

 

朱乃「…っ、リアスの?」

 

我夢「はい。これを見てください」

 

 

訊き返す朱乃にそう言った我夢はいつの間にか取り出した小型のデバイスを操作すると、立体映像を投影する。

 

 

ロスヴァイセ「これって…」

 

我夢「はい。連日降り注いだ粒子のモデルです。近隣の家宅に付着していたものを分析した結果、意外な特性があるということが判明したんです」

 

アーシア「電子機器が使えなくなる他にもあったんですか?」

 

我夢「ああ。大気中の電磁波と反応し、極めて嗜好性が高い電気エネルギーを放射するんだ」

 

ゼノヴィア「電気エネルギー?それが何を引き起こすんだ?」

 

 

疑問に駆られる一誠達を代表してゼノヴィアが訊ねると我夢は

 

 

我夢「人間の脳細胞……特に記憶を司るシナプス神経回路を刺激し、ある種の幻覚作用を誘発する……」

 

一誠「っ!?じゃあ、部長がおかしかったのも墜落事故も全部その粒子のせいってことか!」

 

 

ハッと目を大きくした一誠がそう訊き返すと、我夢は頷いた。

しかし、これで納得した。リアスの異変が起き始めたのも粒子が降り始めた一昨日からだ。そして、昨日の戦いで大失態を犯した時も粒子が降っていた。飛行機の墜落事故もパイロットが幻覚を見せられていたせいだろう。

これで全て合点がいく。

 

それと同時にリアスには誰にも話せない悩みがある訳ではないということが判明し、皆は内心安堵する。

 

 

ハネジロー「パムパムー」

 

一誠「お?ハネジロー!」

 

 

リアスの異変の原因がわかり、各々神妙な顔を浮かべていると、突然空からハネジローが一誠のもとへ飛んできた。

可愛らしい一誠の使い魔の登場に我夢達は思わず頬を緩ます。

 

一誠は自分の肩に乗ったハネジローの頭を撫でていると、手に紙くずか何かを持っていることに気付いた。

 

 

一誠「ハネジロー?これ何?」

 

ハネジロー「ッ!パムッ」

 

 

一誠の質問にハネジローは目的を思い出したのかハッと口を開けると、一誠に差し出す。

 

 

一誠「これを俺に?」

 

ハネジロー「パムー」

 

 

その問いにハネジローが頷くと、一誠は疑問に思いながら紙くずを広げていく。

他の皆も興味深そうに一誠を囲って見守る中、紙を真っ直ぐに広げた瞬間、皆は絶句する。

 

 

一誠「何だよ……これ……」

 

 

広げた紙には拙いながらも『LiLia』という名前が紙面を埋めつくさんばかりに書かれている不気味なものだった。

それだけでも不気味ではあるが、この筆跡から書いたのはリアス本人ということが直ぐ様わかり、我夢達は冷や汗をかく。

 

 

我夢「リリアって?」

 

木場「さあ…?」

 

朱乃「私もわかりませんわ」

 

 

我夢は紙面に書かれている名前を木場に聞くが、首を傾げ、逆に教えてほしいという顔を浮かべており、近くで聞いていた朱乃もわからない様だ。

 

“リアスの懐刀”と言われる朱乃さえわからないのであると、彼女により近い存在でなければわからないことかもしれない…。

我夢は粒子の分析結果とハネジローが持ってきた手がかりをもとに今やるべき作戦を皆に立案する。

 

 

我夢「今は部長の身の安全を確保する必要があります。朱乃さん達は今すぐ部長の安否を確認して下さい。木場君はソーナさんから何か有益な情報がないか聞き出してくれ。僕は敵の潜伏位置を特定するから」

 

木場「わかったよ」

 

我夢「それとイッセー。君にも頼みたいことがあるんだ」

 

一誠「?俺も木場みたいに誰かに聞けばいいのか?」

 

 

一誠がそう訊ねると、我夢は頷き、こう言った。

 

 

我夢「部長のお母さんにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、学校を休んで兵藤家にいるリアスは自室のベッドで横になっていた。

 

 

リアス「…」

 

 

リアスは仰向けになるように寝返ると、ぼうっとした目で天井を眺める。眺めながら思い浮かべるのは昨日の出来事だ。

何故、あの時、ああ言ってしまったのか―――?リアスの脳内はその後悔の荒波で満たされており、落ち込んでしまっていた。

 

物心ついた時から、リアスは魔王の妹という立場に立たされ、自由がなくなっているのを感じていた。

他の子がちょっとしたミスだとしても自分の場合はその倍以上の責任を持て―――昔からそう教えられ、厳しいマナーを学ばされた。

 

周りから持て囃され、周りの子も遠慮気味であまり寄り付かない。

孤独―――幼いリアスが初めて自覚した感情がそれだった。

 

 

リリア『1人ぼっちなの?あたしと遊ぼう?』

 

 

そんな時、ふと夢で聞いたリリアの言葉を思い出す。

孤独の幼少期でいつも悲しく過ごしていた自分にとっては彼女は救いの存在であった。

落ち込んでいる今の自分の心境でも同じだ。

 

 

リアス「行かなきゃ…」

 

 

会いたい―――そう思うや否や、リアスはベッドから立ち上がり、私服に着替え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、一誠はリリアのことを聞く為、冥界にあるグレモリー邸に訪れていた。

 

 

「どうぞ」

 

一誠「は、はい」

 

 

客間に案内された一誠はメイドに一礼し、室内へ入る。

下座のソファーにはリアスの母・ヴェネラテが優雅な佇まいで座っていた。

 

 

ヴェネラテ「どうぞ。お座りになられて?」

 

一誠「はい。失礼します」

 

 

ヴェネラテから座る許可を得た一誠はまた一礼すると、上座のソファーへ座る。

以前の彼ならまず知らなかったマナーだが、夏休みの時にヴェネラテから叩き込まれた勉強の成果であろう。

 

室内は外に待機しているメイドを除けば、一誠とヴェネラテの2人きりである。

これは一誠がそう頼んだからだ。

今回の件は恐らくプライベートのことである為、従者といえど、滅多やたらに聞かれるのは彼女にとって悪いと思ったからである。

 

メイドが扉を閉め、完全に2人きりになったタイミングで一誠は頭を下げる。

 

 

一誠「す、すいません。いきなり押しかけてきて…」

 

ヴェネラテ「ふふっ、それはいいのですよ。娘の将来の婿殿の頼みとあっては変に断る訳にはいきませんから……それで、何の用でしょうか?」

 

 

2子を持つ母とは思えないヴェネラテの美しさを前に緊張する一誠だが顔を上げ、上ずろうとする口を堪えつつ、その問いに答える。

 

 

一誠「いきなりなんですけど……リリアってご存知ですか?」

 

ヴェネラテ「…?」

 

 

その質問にヴェネラテはキョトンとする。

驚愕……というよりも何故その質問をするのかわからないといった様子だ。

予想外の反応に一誠は首を傾げる。

 

 

一誠「…あの?どうしたんです?聞いちゃ駄目でしたか?」

 

ヴェネラテ「…いえ、すみません。どうして()()()()()()をするのかなと思いまして…」

 

一誠「?」

 

 

ヴェネラテから返ってきた言葉に一誠は疑問を感じる。

リリア―――恐らく悪魔であり、精神が不安定である今のリアスが紙面一面に書き殴るほど重要な人物であろう。

それを何故、何気ない思い出の1つの様に言うのか?

どういうことだと一誠が考えていると

 

 

ヴェネラテ「リアス、見た目によらず臆病なんです」

 

一誠「え?」

 

 

突然の発言に目を点にする一誠を見据え、ヴェネラテはリアスの幼少期について語り出した。

 

 

ヴェネラテ「昔は病弱でよく体調を崩して。名家グレモリー家の娘に加え、魔王の妹……その高すぎる立場から周りにはソーナさんやサイオラーグ以外に親しい友人と呼べる存在があまりいなかったんです。魔王の職務に追われるサーゼクスは勿論のこと、当時の私や夫も中々構ってあげられなくて……。『私はいつも1人ぼっちだ』って、よく泣いていました…」

 

 

その話を聞き、一誠は内心驚いた。今の話と現在のリアスを見比べても想像つかないからだ。

それにサーゼクスがあんなにもシスコン染みた愛情を注いでいるのかもわかった気がした。

 

この話を聞き、一誠は勘づいた。

 

 

一誠「っ、そんな時に出会ったのがリリアですか?」

 

ヴェネラテ「ええ。あの子の悲しさを少しでも緩和させようと……何故、昔のことを知りたいのです?」

 

一誠「…っ」

 

 

ヴェネラテの問いに一誠はたじろぐ。

ここにくる前、一誠はヴェネラテに不安を与えない為にリアスの現状は明かさないと決めていた。

しかし、真実を問う彼女の眼差しの前には言い訳も出来なかった。

根負けした一誠は正直に全てを話した。

 

――人間界に突如降り注いだ粒子によって幻覚を見せられていること。

 

――それが原因で大きなミスをしてしまったこと。

 

――皆が調査を行っていること。

 

――そして、彼女が呪いの様に書き殴った“リリア”とは何者なのか知る為に情報集めしにきたことを話した。

 

 

ヴェネラテ「…そうだったのですね」

 

 

全てを聞いたヴェネラテは不安そうに眉をひそめる。

夏休みに冥界へ来た時はリアスに手厳しいところが多々あったが、娘の現状を知って心配するのを見るにやはり1人の母親だ。

気まずくなりながらも一誠は話を続ける。

 

 

一誠「部ちょ――いや、リアス様かなり弱ってて……。もしかしたら、そのリリアって人に会いに行きたいのかもしれません」

 

ヴェネラテ「リリアに?それはありえないわ」

 

一誠「ありえない…?」

 

《ピピッ…!》

 

 

どういう意味だと聞こうとした時、一誠の左手首に着けてあるXIGナビから通知音が鳴る。

一誠はヴェネラテの許可をもらい、XIGナビを開くと、焦った顔を浮かべるアーシアが写っていた。

 

 

一誠「どうした?」

 

 

その様子に一誠は訝しげな顔で訊ねると、アーシアの口からとんでもない言葉が飛び出した。

 

 

《アーシア「大変です!!リアス姉様がいなくなりました!!」》

 

一誠「何っ!?」

 

ヴェネラテ「!?」

 

 

リアスの失踪……。最悪の事態に一誠とヴェネラテは驚愕する。

 

 

一誠「XIGナビ、携帯電話には?!」

 

《アーシア「それが全く出なくて…!位置情報も電波が撹乱しているせいでわかりません!ただ、『リリアに会いにいく』という伝言だけが…」》

 

一誠「リリアに…?わかった!こっちはこっちで冥界を捜してみる!」

 

《アーシア「わかりました!お気をつけて!」》

 

 

通信を終えた一誠はヴェネラテに一礼し、そのまま捜索に向かおうとするが、

 

 

ヴェネラテ「私も同行させて下さい」

 

一誠「?」

 

 

そう待ったをかけられ、一誠は思わず足を止め、振り向く。

 

 

ヴェネラテ「『リリアに会いにいく』……あの子はそう言ったのですね?心当たりがあります」

 

一誠「っ、本当ですか!?」

 

ヴェネラテ「ええ」

 

 

一誠の問いにヴェネラテは頷く。

長年暮らしてきた母であるヴェネラテが言うことだ。

この状況においてリアスのことがよくわかるのは彼女しかいないだろう。

断る理由がない。

 

 

一誠「わかりました!案内お願いします!」

 

 

一誠は承諾すると、ヴェネラテを連れて捜索に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、どこかの遊園地。

周りはすっかり日が落ち、暗闇に包まれており、園内のあちこちにある街灯であちこち照らしていた。

 

休園日である今日。人が誰もいないここのメリーゴーランドの前でリアスは立っていた。

虚ろな視線の先にはエメラルドグリーンのドレスを着た少女――リリアがこちらを見ており、稼働しているメリーゴーランドから溢れる金色の照明を背に受けていた。

 

 

リリア『リアス、また1人ぼっちになったのね?』

 

リアス「…うん。リリア…」

 

 

リアスはゆっくり頷くと、リリアのもとへ歩み寄っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「遊園地に?」

 

ヴェネラテ「ええ。リアスにとっては消えない思い出ですから」

 

 

一誠はヴェネラテとグリフォンに乗って冥界上空を飛んでいた。

ちなみに一誠がグリフォンに乗るのは2度目だったりする。

 

 

ヴェネラテ「…でも、やはりありえません」

 

一誠「…ですよね」

 

 

ヴェネラテがもらす言葉に一誠は頷く。

道中で一誠は彼女からリアスの過去を全て聞いていたのだ。

それを聞いた一誠は納得……ではなく、胃液が込み上がる様な得体の知れない感覚を味わったことを鮮明に覚えている。

 

 

《ピピッ…!》

 

 

そんな時、XIGナビの通知音が鳴る。

通信に出ると、我夢からだった。

 

 

一誠「我夢」

 

《我夢「イッセー。おおよそ敵の潜伏位置がわかった。マップを送信するよ」》

 

一誠「ああ……って。最悪だな、こりゃ…」

 

 

我夢から送られてきた敵の潜伏位置のマップを見て、一誠は毒づく。

 

その潜伏位置は、今まさに向かおうとしている遊園地だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリア『あたしにはリアスの寂しさがわかる……。あたしだけがリアスの本当のお友達なんだもん……』

 

リアス「リリアだけが……ほんとうのおともだち……」

 

リリア『そうよ!だからリアスのことをいじめるやつは許せない…!絶対に許せない…!』

 

リアス「そうよね……。みんな、許せないよね……」

 

 

メリーゴーランドに揺られながら、リアスはぼうっとした顔でリリアの言葉に耳を傾ける。

その顔はいつもの冷静で大人らしいいつもの彼女ではなく、幼い子供の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その時、遊園地に到着した一誠とヴェネラテは別にやって来たソーナと彼女の眷属、我夢以外のグレモリー眷属と合流していた。

梶尾、四之宮、匙はいないが、恐らく我夢と行動しているのだろう。

 

 

ソーナ「木場 祐斗君から話は聞いています。私にも手伝わせて下さい」

 

一誠「え、いいんすか?」

 

ソーナ「ええ、リアスの親友ですから」

 

一誠「助かります!」

 

 

一誠は嬉々とした顔で頭を下げる。

これだけ人手がいればすぐに見つかるだろう。

 

 

うふふふふふ…

 

『!?』

 

 

一致団結したその時、どこかから笑い声が聞こえてくる。

 

 

朱乃「今のは…!」

 

ソーナ「リアスの声…!」

 

小猫「こっちからです」

 

 

一誠達は声のした方へ足を運ぶ。

そこには黄色の照明で照らされるメリーゴーランド。

そして…

 

 

リアス「うふふふふ…」

 

 

フェンスに乗り、()()()()()()のにも関わらず、楽しそうに笑いかけるリアスの姿がそこにあった。

 

 

一誠「部長…」

 

 

病にも思える光景に皆は痛いげな顔を各々浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地上空では我夢と梶尾達チームライトニングが各ファイターに搭乗して待機していた。

粒子は特定の領域のみ電波信号を発しているのがわかったので、遊園地付近の電波を一斉に遮断して、敵の正確な位置が炙り出るのを待っていた。

 

 

我夢「さあ、姿を現せ…」

 

 

我夢は絞り出されていくマップをジッと見る。

幻覚粒子をばら蒔き、リアスを含め、多くの人々を惑わせた卑怯な敵に内心憤っているのだ。

マップは瞬く間に選出され、敵がいるポイントを絞り出すと、少し離れた上空にうっすらと歪んだ空間が現れた。

 

 

我夢「梶尾さん!ターゲット捕捉!」

 

梶尾「各機、アクションに移れ!」

 

「「了解!」」

 

 

我夢のGOサインに合わせ、3機のファイターは背部のブースターを噴かせて動き始める。

 

 

梶尾「ターゲット確認!発射っ!」

 

 

梶尾が下ろした号令と共に3機のファイターは魔力弾で攻撃する。

ファイターの猛攻の前に空間の歪みからはクラゲに似た巨大生命体・プライマルメザードが姿を現わすと、魔力弾の火力で燃え上がり、地上へ墜落した。

 

 

グニョオォ…

 

 

地上に墜ちたプライマルメザードは炎に包まれながらスライムの様に溶け、変形し始める。

我夢達が警戒を強める中、炎が消え、その全貌が明らかになる。

 

 

我夢「…っ!」

 

匙「出たな…!」

 

サイコメザードII「キィィィシャォォォォ~~~…!パァウゥゥ~…!」

 

 

正体を現した怪獣は産声の様な声をあげる。

その怪獣は以前、我夢の故郷を襲ったサイコメザードと同種の怪獣――『サイコメザード(ツー)』だ。

しかし、前の個体と違う点は腹におぞましい形相の人面がついているところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナ「リアス。そこで何をしているのです?」

 

 

一誠達と一緒に地上にいるソーナはリアスに問いかける。すると、笑うのを止め、無表情になったリアスはまばたきもせずゆっくりとソーナを見据え

 

 

リアス「…わたし、リリアとあそんでいるの」

 

一誠「部長!目を覚まして下さい!そんなものいないんですっ!」

 

 

そう答えるリアスを見ておれず、一誠は彼女へ近付こうと駆け出すが

 

 

バリバリバリッ!

 

一誠「ぐあぁっ!?」

 

アーシア「イッセーさんっ!」

 

 

電流が流れる不可視の壁に阻まれ、跳ね返される。

身体中に流れる激痛に体制を崩す一誠に皆は心配そうに駆け寄る。

 

 

リアス「邪魔しないでよ」

 

 

リアスは不機嫌そうな顔で言い放つ。

その見つめる目はまるで住宅を蔓延る害虫を見る様な冷たいものだ。

 

 

ヴェネラテ「やめなさい、リアス!」

 

 

アーシアと木場が一誠を介抱する中、今度はヴェネラテが前へ出て呼び掛ける。

一瞬きょとんとするリアスだが、すぐににんまりとした笑みを浮かべる。

 

 

リアス「わたしね……これからリリアのおうちへあそびにいくの」

 

ヴェネラテ「リリアなんていないわ!」

 

ソーナ「貴方は幻を魅せられているだけなのですよ!」

 

 

ヴェネラテとソーナは必死に訴えかける。

だが、リアスは首を傾げるとフェンスから降り、

 

 

リアス「なにいってるの?リリアならここにいるじゃない…」

 

『!?』

 

 

そう言って大きく手を広げると、体から黄色の光が解き放たかと思うと、全長10メートル程のリリアがメリーゴーランドの真上に現れた。

怨霊の様にただらなぬオーラを纏うリリア―――幻かと疑う光景に一誠達は目を見開く。

 

リリアを出現させたリアスは手を下ろすと、回れ右をし、ゆっくりと足取りでリリアのもとへ歩き出す。

 

 

ソーナ「リアス!!ぐぅ…っ!!」

 

 

このままだとどこか遠くへ行ってしまう彼女の手をいの一番に取ったのはソーナだ。身体中に流れる電流の激痛で顔を歪めるが、その手を離さない。

 

 

リアス「はなしてっ!」

 

 

リアスは振りほどこうとするが、ソーナはその掴んだ手を緩めない。

ソーナが止める中、ヴェネラテは再度彼女に訴えかける。

 

 

ヴェネラテ「リアス。貴方は子供の頃、この遊園地に来なかったのですよ!」

 

リアス「うそ!わたしはここへきた!ともだちとかくれんぼをしたわ!」

 

ヴェネラテ「それは幻想――体を崩してここへ来れなかったその悔しさが貴方にそう思い込ませただけなのよ!」

 

リアス「そんなのうそ!うそよぉぉーーー!!」

 

 

ヴェネラテから語られる事実にリアスは駄々をこねる幼子の様に叫ぶ。

 

 

サイコメザードII「キィィィシャォォォォ~~~…!!」

 

バリバリバリ~~~ッ!!

 

 

近くではサイコメザードⅡにチームライトニング、我夢の乗るファイターEXが応戦していた。

サイコメザードⅡが放つ電撃を掻い潜りながら攻撃しているが、苦しい状況であり、足止めするのが精一杯だ。

 

もう時間がない―――!それを横目に見ていた一誠達は何とかリアスを連れ戻そうと拍車をかける。

 

 

リアス「リリアだけがわたしのことをりかいしてくれるわ」

 

アーシア「それは違います!リアス姉様は辛い現実を生きてきた私達に新しい生き方を教えてくれたじゃないですか!」

 

ソーナ「…ぐっ!どちらが先に夢を叶えるか……そう約束したじゃないですか!?そうでしょう!?」

 

リアス「…っ!」

 

 

アーシアとソーナは悲痛な声で訴えかけると、リアスは心に響いたのか、それとも幻覚が覚め始めたのか、顔をほんの少し強張らせる。

正気に戻す糸口が見えたヴェネラテは彼女達に続く。

 

 

ヴェネラテ「貴方が寂しかったのはわかる!でも、過去の記憶に逃げないで!リリアは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、貴方が失くしてしまった人形の名前なのですよ!?」

 

リアス「!!?」

 

 

その言葉にリアスを大きく目を見開く。

脳裏には子供の頃にリリアとのツーショット写真がよぎるが、リリアは人でなく、エメラルドグリーンのドレスを着た西洋人形であることを思い出すと、過去の思い出が次々と鮮明に蘇る。

 

孤独に苛まされていた自分を励まそうと父親が買ってきたこと。

体調を崩したせいで家族と一緒に遊園地へ行けなかった時、一緒に寝たこと。

 

そして、ある日突然に無くしてしまったこと…。

 

 

リアス『リリア、リリア。私とお話しよう…?あっ…!』

 

 

脳内で幼い姿のリアスはうっかり手を滑らせ、リリアを湖に落としてしまう。

湖に落ちたリリアは地に落ちたガラスの様に霧散すると、サイコメザードⅡの腹部にある人面に変わる。

 

 

 

 

イッショニアソボウ?

 

 

 

リアス「きゃあぁぁぁぁーーーーっ!!!」

 

 

幻が解け、現実に戻されたリアスは混乱し、悲鳴をあげる。

それと同じくして、メリーゴーランドの真上に佇んでいたリリアの幻影は苦しそうに胸を押さえると、覆っていた光と共に消え去った。

 

 

…バタリッ!

 

『部長!/リアス!』

 

 

サイコメザードⅡの呪縛が解き放たれたリアスは気を失い、糸の切れた人形の様にその場で倒れる。

一誠達は血色を変え、急いで駆け寄る。

 

 

朱乃「気を失ったみたいですわ。命に別状はありませんわ」

 

 

朱乃の安否確認に一同はとりあえずひと安心する。

 

 

サイコメザードⅡ「パァウゥゥァァ~~~!?」

 

 

リアスを取り込むのに失敗したサイコメザードⅡは腹の人面を抑え、苦しそうにもがく。

 

 

一誠「よくも部長をっ!ダイナァァァーーーーッ!!

 

 

辛い過去を利用して、リアスをここまで苦しませたサイコメザードⅡに怒りを爆発させた一誠は掛け声と共にリーフラッシャーを空へ掲げる。

展開したクリスタル部分からは闇夜を照らす程の明るさを発する光が溢れ、その光に包まれた一誠はウルトラマンダイナに変身した。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ファイティングポーズを取ったダイナは地を蹴って勢い良く駆け出す。

 

 

サイコメザードⅡ「パァウゥゥァァ~~!!」

 

バリバリバリ~~~ッ!

 

ダイナ「グッ!」

 

 

サイコメザードⅡは近寄らせまいと両手から電撃を放つ。地に電撃が走ると、ドォンと爆音と共に爆発が起き、ダイナが見えなくなる程の爆煙が舞い上がる。

 

 

キィピィンッ!

 

 

そんな爆煙の中で一瞬青い輝きが見えたかと思うと、ミラクルタイプへ姿を変えたダイナが爆煙をきって走っていた。

 

 

[推奨挿入歌:ミラクルの風になれ]

 

 

サイコメザードⅡ「キィィィシャォォォーーー!!」

 

ダイナ「フッ!」

 

 

サイコメザードⅡは駆け寄るダイナ目掛けて体当たりをしかけるが、受け流す様に横へ前転して避けられる。

 

 

ダイナ「ハッ!デェアッ!」

 

サイコメザード「キィィィシャォォォーー!!」

 

 

後ろへ回り込んだダイナは体勢を整えると、サイコメザードⅡの腹部の人面目掛けて飛び膝蹴りを炸裂させる。

あまりもの激痛にサイコメザードⅡは大きく後退する。

 

 

ダイナ「ハッ!ハッ!」

 

 

間髪入れず、ダイナはサイコメザードⅡの両肩へモンゴリアンチョップを連発する。

 

 

サイコメザードⅡ「キィィィシャォォォーー!!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

サイコメザードⅡも負けじと身体中に電撃を纏わせながらタックルを食らわせ、ダイナを怯ませる。

 

続け様に両手で首を掴もうとするが、

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

サイコメザードⅡ「パァウゥゥァァ~~!!」

 

 

ダイナがしゃがんだことによって避けられ、その体勢のまま足下を蹴られ、バランスを崩したサイコメザードⅡは前へ転倒する。

ダイナは寸前のところで横へかわし、サイコメザードⅡは地面へ激突する。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

 

立ち上がったダイナはサイコメザードⅡの背中目掛けてエルボードロップを放つと、すぐにバク転して距離を取る。

 

その間にサイコメザードⅡはふらつきながら立ち上がる。パワーの低いミラクルタイプとはいえ、それを補うスピード殺法を前にかなり応えている様だ。

 

 

サイコメザードⅡ「キィィィシャォォォーーー!!」

 

ダイナ「デュ!ハァァァ~~~~……デェアッ!」

 

ドォォン!

 

 

サイコメザードⅡは力を振り絞って電撃を放つ。ダイナは円形状のウルトラバリヤーを展開して防ぐと、そのまま電撃を押し返す。

押し返された電撃はサイコメザードⅡの体に直撃し、火花が散る。

 

 

サイコメザードⅡ「パァウゥゥァァ~~!?」

 

ダイナ「ハッ!!ハァァァァァァァ……!」

 

 

サイコメザードⅡが怯む間、ダイナは右手に超衝撃波を作り始める。

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

 

瞬く間に超衝撃波を完成させたダイナは右手を突きだし、必殺のレボリウムウェーブを放った。

 

 

サイコメザードⅡ「――!?」

 

 

超衝撃波で押し出されたサイコメザードⅡは悲鳴をあげる間もなく背面に突如現れた人工のブラックホールに吸い込まれていった。

 

 

[挿入歌終了]

 

 

ダイナ「シュワッ!」

 

 

ダイナは両手を広げて飛び立つと、どこか遠い空へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアスさん、おはようございます!」

 

「リアス様、おはようございます!」

 

リアス「ええ、おはよう」

 

 

翌朝、リアスはいつもの様に学園に通っていた。

周りにも様子がおかしいと気にかけている人がいたらしく、3年生の教室には彼女のファンで溢れ返っていた。

 

その様子を一誠と我夢は廊下から眺めていた。

 

 

一誠「これにて一件落着…!ってとこだな」

 

我夢「ああ、部長もあの後何も異常が見られなかったし、良かったよ」

 

 

元気なリアスを見て、2人は安堵する。

あの後、一誠達は目覚めたリアスに謝罪された。

とはいっても相手は破滅招来体。どうしようもなかったので仕方がないとタジタジになりもしたが、ヴェネラテが「人は誰でも弱いところがある。恥ずべきことじゃないですわ」と良い言葉で締めたことでお開きになった。

 

しかし、同時に破滅招来体への脅威が更に強まった。

人の弱い心を漬け込むとは恐ろしいものだ。

 

 

四之宮「よお」

 

我夢「っ、四之宮さん」

 

 

そんなことを考えていると、後ろから四之宮が話しかけてくる。

何だろうと疑問に思っていると

 

 

四之宮「お前ら、まだここにいていいのか?1限体育に変更なったろ?」

 

「「あっ!やっべ!」」

 

 

その言葉で思い出した2人は口を揃えて声をもらす。

いつもなら普通通り座学だが、今日は教師の都合で体育に変更になっているのだ。

 

そのことをすっかり忘れていた我夢と一誠は急いで教室へ走っていくのだった…。

 

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

人々を狂気に陥らせる花粉!
その事件の黒幕は北川町に潜んでいた!
混乱する世を見て、メトロン星人は何を語るか…?

次回、「ハイスクールG×A」
「狙われない星」
お楽しみに!


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第48話「狙われない星」

幻覚宇宙人 メトロン星人 登場!


北川町。近代化が進み、高台な建物が建ち並ぶ中、昭和の雰囲気を残す数少ない町だ。

その影響もあって過疎化が進んでおり、住民の大半は高齢者が占めている。

 

これはこの町にあるアパートの一室のプランターにひっそりと植えられた1輪の花から始まるお話なのです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある都内の大通り。その日の昼はいつも以上に不穏で慌ただしかった…。

 

 

ダァンッ!ダァンッ!

 

「うぉわぁぁあぁぁぁーーーーーー!?来るなっ!来るなぁぁぁぁぁっ!!」

 

『きゃあぁぁーーーっ!!』

 

『わぁぁぁーーー!?』

 

 

工場の作業服を着た男が錯乱し、ライフルを手に近寄らせまいと威嚇射撃しており、大通りは悲鳴が飛び交っていた。

路上には近くにいた、または止めようとした4~5人の男女が倒れており、ぐったりとした体からは血が溢れている。

 

 

「ママ、怖いよ~~!」

 

「何あれ?薬中?」

 

「すっげ!マジやべぇ!」

 

 

ある人は怯え、ある人は興味本位で見物し、ある人はこれは面白いと言わんとばかりにカメラやビデオに収めてSNSを投稿する―――多種多様な目的を持った人だかりが男を囲んでいた。

 

その時、騒ぎを聞き付けた数台のパトカーと1台の装甲車が野次馬の間を潜り抜けて現れる。

装甲車から武装警官が颯爽と降りて、人々に被害が及ばない様に横1列の隊列を組む。

 

 

「う"ぁ"あ"ぁ"ぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

ダァンッ!ダァンッ!

 

『わぁぁぁーーーーー!!?』

 

 

警官隊の登場で更に混乱した男はライフルを四方八方に乱射する。

放たれた銃撃音と悲鳴が町中に響く。

 

 

カチッ…!カチッ…!

 

「っ?!」

 

 

だが、弾は有限ではない。むやみやたらと発砲した為、弾切れを起こしてしまった。男は焦って何度も引き金を引いても何も出ない。

 

 

「かかれっ!」

 

 

弾切れがわかると否や、警官隊は手に持つライオットシールドを前に突撃すると、男を中心に輪を作って取り囲むと、男が抵抗する間も与えず取り押さえた。

 

 

「離せ!離せぇぇーーーっ!!――っ!」

 

 

確保されても尚ジタバタと抵抗していた男だが、次の瞬間、目を見開くと、糸が切れた人形のように気を失った。

 

この騒ぎは鎮圧したが、瞬く間にSNSやメディアによって拡散され、多くの人が怒りと不安を感じた。

 

しかし、出来事というのはすぐに忘れ去られるものだ。

しばらく立てばその話題を話す人は少数となり、次第に頭から消え去り、そのことすら話すものはいなくなる。

そんなものだという者がほとんどであろう。

 

だが、人々は思わなかったことだろう。

この騒ぎが混乱の始まりだということを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――3日後。エリアルベース コマンドルーム

 

 

我夢「また錯乱事件ですか?」

 

石室「ああ。また昼頃、熊本県の市街地にある花屋の店主が突然錯乱し、暴れ出したそうだ」

 

 

目を丸くして訊き返す我夢に司令官・石室は静かに言葉を返す。

――また。そう、この様な暴動事件は3日前の事件を皮切りに全国各地、昼頃に頻繁に起きているのだ。

 

 

アザゼル「これで44件目だぞ。冥界、天界、他の神話勢力含めりゃ、100件以上……」

 

 

コマンドルームの中央のデスクにグタ~と顎を乗せて座るアザゼルはくたびれた顔でぼやく。

アザゼルの言うように暴動事件は人間界のみならず、悪魔や天使達にも影響を及ぼしている。

その対処に各勢力の首脳も追われていた。

もちろん堕天使の総督であるアザゼルも参加せざるを得ず、そのせいでろくに眠れない状況が続いて、心身共に疲れて果てているのだ。

 

そんなアザゼルに我夢は苦笑しつつも、訊いておきたいことを訊ねる。

 

 

我夢「それで錯乱した人は?」

 

アザゼル「…ん?ああ、案の定『わからない』の一点張りだよ。暴れた動機や暴れた時の記憶がサッ~パリないんだってよ」

 

石室「警察側も同じ答えだそうだ」

 

我夢「そうですか…」

 

 

気だるそうなアザゼルと石室の補足を聞き、我夢は顎に手を当てて考え込む。

この関連性に当然他の人達も『何か共通する原因があるのでは?』と頭に浮かんだが、どこを何を探しても一向に手がかりが掴めない。

我夢も電磁波の影響か何かと思って調べたが、それらしい反応が観測されなかった。

 

じゃあ一体何なんだ?そんなことを考えていると、石室は話を切り出す。

 

 

石室「これを受けて日本内閣は明日の深夜0時に『緊急事態宣言』を発令するそうだ。原因が掴めるまでは必要最低限の外出は控え、出来るだけ在宅するようにとのことだ」

 

 

その話にこの場にいる皆は静かに頷く。

今日の正午。錯乱の原因は外にあると考えた内閣は経済・ライフラインに必要不可欠な施設・機関を除き、全ての店や催し等を禁止することに決定した。

出来るだけ遠出や長い時間の外出を控え、社会人や学生は遠隔で業務・学習を行う決まりとなっている。

もちろん、我夢が通っている駒王学園も例外なく行うことが決まっている。

 

 

石室「アザゼル。堕天使側の見解は?」

 

アザゼル「ああ。俺んとこもそうするつもりだ。ま、他んとこの勢力もやるだろうさ。まあ、忙しいことにゃあ変わんねぇがな」

 

 

そうぼやきながらアザゼルは背伸びしてふぅ~っと軽く息を吐く。

規制させても法を破る輩はいるのが常だ。そういった連中を取り締まる為、常に目を光らせなければいけないので石室達は休めない。

 

更に後から聞いたことだが、魔王サーゼクスは『人間の真似事をしろというのか!』と四の五の文句を言う派閥を説得するのにかなり苦労をしたそうである。

 

石室は軽い笑みを浮かべ、我夢へ顔を向ける。

 

 

石室「我夢。進境があるまでしばらく待機だ。リアス達にもそう言っておいてくれ」

 

我夢「は、はい!では、失礼します」

 

アザゼル「おお。待たな~…」

 

 

一礼して自動扉から出ていく我夢をアザゼルは机にとつ伏せながらバイバイと手を振って見送る。

自動扉が閉まり遠ざかる足音が聴こえなくなると、アザゼルは「はぁ~…」と嘆息しながら体を起こす。

 

 

アザゼル「……大丈夫かね~。この規制で更に事態が悪化する気がするが……」

 

石室「出来る限りのことはやったんだ。その時はその時だ…」

 

 

アザゼルの懸念に石室は苦い声で同調しつつ、窓から見える遠い空の景色を見据えた。

その見据える瞳は不安の影がこもっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌朝。日本国が緊急事態宣言を発令し、学校や飲食店等は全て休みとなり、いつもなら聞こえてくる生活の音はほぼなく、すっかり静まりかえっていた。

 

そんな静かな朝。兵藤家ではいつもの様に一誠達がリビングに集まり、各々朝食を摂っていた。

とはいってもリビングも改築されたことによって、大食卓といった方が適切だろう。

 

 

リアス「気分が悪いわね…」

 

 

朝食中、険しい顔を浮かべたリアスは読んでいた朝刊新聞を机へ放り投げる。パサッと乾いた音が鳴ると共にリアスが見ていた記事が露になる。

『○○○国 日本大使館襲撃!』と銘打たれた見出しの記事には、海外にある日本大使館が民衆のデモによって襲われ、職員・無関係の者含め多くの負傷者が出たと書かれている。

その大元の理由は日本で起こっている件の錯乱事件で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という何とも自分勝手なものだ。

 

 

ロスヴァイセ「他国でも日本人の入国や移住した人を追い出そうとしているみたいですよ」

 

木場「それに錯乱した人の家族の家に石を投げたり、ネット上に誹謗中傷を書き込んだり、犯罪まがいなトラブルも多発………こんなことを平気でやれる神経が知れないね」

 

ゼノヴィア「馬鹿が…!」

 

イリナ「そんなことしたって何の解決もならないのに…」

 

 

朝刊の内容に加え、ロスヴァイセと木場の話にゼノヴィアは怒りの声をもらし、イリナは悲しそうな顔を浮かべる。

――――いくら不安だとはいえ、何の関係もない人々を巻き込むのは間違っている。

その気持ちはこの場にいる皆も同じで、一部の身勝手な人間に対し、怒りを覚えていた。

 

そんな暗い空気に包まれる中、

 

 

パンッ!

 

『っ?!』

 

 

と大きな音がリビングに響き、皆はハッとなって顔を向ける。音の発生源は既に朝食を食べ終わった一誠のごちそうさまの合掌からだった。

 

 

一誠「ふぃ~~!ごっそさん!………って、あれ?みんな、どした?」

 

『……ぷふっ!』

 

 

陽気な一誠だったが向けられる視線が気になり、きょとんとした顔を浮かべ、皆の顔をキョロキョロ見る。

重たい空気とミスマッチしたその表情―――妙にツボにはまった皆は堪えきれず、一斉に吹き出す。

 

 

一誠「な、何だよ…。いきなり笑いだして…」

 

我夢「…ははっ!いや、イッセーってどうしているだけでも面白いんだって」

 

一誠「はぁ?おいおい、それって褒めてるのかよ?」

 

 

笑いを堪えて話す我夢に一誠は釣られ笑いながらツッコむ。この何気ないやり取りだけですっかり暖かい空気に包まれた。

 

 

リアス「ふふっ。いい意味で捉えていいじゃないのかしら」

 

一誠「部長が言うんなら、そうしますっかね!んじゃ!俺、買い出しに行ってきま――」

 

《ピンポーン!》

 

 

一誠がにこやかな笑顔で席を立った矢先、玄関先からインターホンの音が鳴り響いた。

 

 

リアス「郵便?」

 

一誠「あ、俺取ってきますよ」

 

 

訝しげな顔を浮かべる面々にそう言うと、近くの戸棚から印鑑を取り、玄関へ赴く。

 

一誠はドアスコープから覗くと、そこには黒いハットを被り、黒いスーツを着た人物が何かが入っている段ボールを両手に抱えて立っていた。

ハットを深く被っているせいで目元はよくわからないが、体格や口元でしわが深い高齢の男ということがわかった。

 

 

「おはようございます。アーシア・アルジェント様のお宅はこちらでお間違いないでしょうか?」

 

一誠「はい、そうすけど……どちら様です?」

 

「ああ、すみません。私、悪魔郵便のものでして……。只今、転送魔法陣に手違いが発生して送れなくなり、直接お届けに参りました」

 

一誠「ああ~」

 

 

配達屋の男の言葉で一誠は納得する。

基本魔法陣で転送する悪魔郵便もたまに直接届けにくることを前に聞いたことがある。それにアーシアが前に花か何かを頼んでいたのを思い出した。

 

疑う必要がなくなった一誠は扉を開けると、商品を受け取り、差し出された書類に印鑑を押す。

 

 

一誠「わざわざすみません!忙しいのに疑って…」

 

「いえ。大変な時期、ですからね。それでは失礼します」

 

一誠「はい」

 

 

男はハットのつばを下げて軽くお辞儀をすると、踵を返して歩き出す。

一誠も受け取った荷物を両手に抱え、家の中へ入る。自動的に扉がゆっくりと閉まっていく中

 

 

「では、()()()()()()()()…」

 

一誠「?」

 

 

男がぼそっと漏らした意味深な呟きが耳に入り、一誠は振り向くが、気付いた時には既に扉が閉まっていた。

 

何だったんだ?と一誠はあの言葉の意味に首を傾げるが、別に意味がないとすぐに頭から消し去ると、皆が待つリビングへ戻った。

 

 

リアス「イッセー、郵便?」

 

一誠「はい、そうでしたよ。ほれ、アーシア。前に頼んでた花だぞ」

 

アーシア「すみません、ありがとうございます!」

 

 

アーシアは爽やかな顔で荷物を受け取る。気になった皆が見守る中、段ボール箱の包装を丁寧に丁寧に開封していく。

最後の包みを開け、中から現れたのは暗い黄色と明るい赤色の花弁が特徴な植物の煙草に似た花だった。

 

 

朱乃「あらあら、綺麗な花ですわね」

 

我夢「これも冥界の植物なのかな?」

 

木場「う~ん。見たことないけど、もしかしたら新しい品種なのかもね」

 

 

その植物の美しさに皆が各々感想を漏らす。一誠はそんなに興味がないのか「ふ~ん、そうなのか」と言うだけだ。

 

 

アーシア「いい匂い――――」

 

 

アーシアが顔を近付け、花の香りを嗅いだその時だった。

周りには見えないが真っ赤な光が照らされると、その天使の様な顔は目付きの悪い悪魔の様な形相に変わった。

アーシアは鋭い目付きで近くにいる朱乃へゆっくりと顔を向けると、食事に使ったフォークを片手に持つ。

 

 

アーシア「う"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!」

 

『!!?』

 

 

そして、次の瞬間。アーシアは獣の様な叫びをあげると、フォークを手に朱乃へ襲いかかった。

間一髪気付いた皆はすぐさま避けると、ゼノヴィアとイリナがアーシアを取り抑える。

 

 

イリナ「アーシアさん!一体全体どうしちゃったの?!」

 

アーシア「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!」

 

 

イリナは取り抑えながら語りかけるが、正気を失っているアーシアの耳には入っておらず、激しく抵抗するだけだ。

 

 

ゼノヴィア「アーシア。すまん!」

 

アーシア「―――っ!」

 

 

ゼノヴィアは首筋に手刀を叩き込むと、その衝撃でアーシアは気を失った。

静まり返ったリビング。しばらく誰も一言も話さないのは突然のアーシアの豹変ぶりに声を失ったからだった。

 

 

我夢「な、何だったんだ?一体…」

 

ゼノヴィア「とりあえず、アーシアを休ませなくては…」

 

イリナ「私も手伝うわ!」

 

 

気絶したアーシアを抱えるゼノヴィアにイリナが付き添う。

2人が部屋を出ると、皆は困惑した顔を浮かべながら話し出す。

 

 

リアス「アーシア……何があったのかしら?」

 

ロスヴァイセ「まるでニュースの事件の様に錯乱してましたね…」

 

我夢「もしかして、この花のせいじゃないでしょうか?」

 

 

ああだこうだと意見が交わされる中、我夢は先程配達された花を指差す。確かにアーシアはこの荷物が届いてから奇行に走った。関係あるのかもしれない。

それを聞いた木場は包装に使われていた段ボールの表に付いている郵便票を見て得心する。

 

 

木場「我夢君。これを届けた配達会社は偽物だよ」

 

我夢「え?」

 

木場「ほら、この会社のロゴ。雨水に晒されても消えない様に防水の魔法を込めたインクを使っているはずなのに滲んでるじゃないか」

 

我夢「本当だ…」

 

 

木場の言う通り、指差している配達会社のロゴは雨水が当たったかの様に滲んでいた。本物の悪魔郵便であれば、絶対にあり得ないはずだ。

偽装配達……錯乱花……謎の配達員……。これらからリアスは仮説を立てる。

 

 

リアス「…この花を嗅いでアーシアはおかしくなった。偽の配達員はそれを持ってきた……。その男はこの花で錯乱させて、私達を仲間割れさせようとしたのかもしれないわ」

 

我夢「それって…」

 

リアス「ええ。もしかしたら、一連の錯乱事件の黒幕かもしれないわ。XIGの一員である私達を潰す為に……」

 

 

リアスの話を聞き、皆は圧巻する。

今は休止しているが、錯乱事件の調査や対応はXIGも参加している。特に武装が強いXIGを潰すのは妥当だ。

 

その話を聞き、一誠は悔しげに拳を握りしめる。

 

 

一誠「くそ…!そうだとわかってたら、アーシアをあんな目に…!」

 

リアス「イッセー、悔しいのはわかるわ。でも、まずは犯人のことを調べる必要があるわ。我夢。あなたにこの花の分析を任せるわ」

 

我夢「はい!結果が出しだい、すぐに連絡します!」

 

リアス「ええ、頼むわ」

 

 

リアスの頼みに我夢は自信満々な声で応えると、錯乱花から花粉が舞わない様に袋で覆うと、すぐさま部屋を出た。

 

 

リアス「男の素性はとりあえずチームリザードに任せるわ。イッセー。隣町の警察署に聴き込みに行くわよ」

 

一誠「…聴き込み?錯乱事件の人にですか?」

 

リアス「そうよ。もしかしたら何か重要なことを思い出しているかもしれないわ。朱乃。留守の間、頼むわね」

 

朱乃「はい。お気をつけて」

 

 

朱乃にそう言い残すと、リアスは一誠を引き連れて警察署へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣町の警察署。この警察署では3日前に起きた錯乱暴動事件の犯人が収監されている。

今思えば、現在続いている錯乱事件の発端ともいえるだろう。

 

警察官の付き添いの元、案内されたリアスと一誠は取り調べ室の前に着いた。

勿論怪しまれない様にXIGの隊員服を着ている。

 

 

コンコン…

 

リアス「失礼します」

 

 

リアスはノックしてドアを開けると、2人は室内へ入る。

室内には机にあるライトスタンド以外明かりがなく、窓も閉められており、壊されない様に格子で厳重に取り付けられる。

ドラマでよくある取り調べ室の風景だ。

 

その薄暗い室内には錯乱を起こした加害者と取り調べを行う灰色のスーツを着込んだ中年の刑事が机を挟んで座っており、見張りの警察官2人が壁際に立っていた。

 

リアスと一誠が後ろの壁際につくと、刑事は話し始める。

 

 

「…いつも通り、あの時の記憶が無くなる前のことを話してもらおうか」

 

「…!」

 

 

中年の刑事の問いに俯いていた男はビクッと肩を震わせて顔を上げると、覚えている限りのことを話し始めた。

 

 

「…はい。えぇと……いつも通りの昼休みでした。コンビニで買った弁当を近くの公園で食べてたんです。それでその日は時間がまだあったんで、公園から1キロ先にある古い銃砲店に立ち寄ってて……」

 

「そこで記憶がなくなって、次に目覚めた時には署に連行されてたと…」

 

 

刑事が続けて言うと、男は頷く。

刑事はまた手がかりなしと落胆しそうになるが、男は口を開く。

 

 

「ただ…」

 

「ただ…?」

 

「今日うっすらと思い出したんですけど、記憶が無くなる直前に()()()()を嗅いだ様な…」

 

「「!?」」

 

「花?」

 

 

男の証言に刑事が首を傾げる中、リアスと一誠を目を見開く。アーシアが錯乱した原因も“花”を嗅いだからだったからだ。

もしかしたらと思うや否や一誠は身を乗り出して訊ねる。

 

 

一誠「そ、それで!!どんな花だったんですかっ!?」

 

 

あまりもの迫力に男はビクッと一瞬怯むが、頭に手を当てて記憶を絞り出すと

 

 

「……えっ、と。暗い黄色と明るい赤色の花でしたよ。煙草の花に似たやつ」

 

「「!!」」

 

 

花の特徴を聞いてリアスと一誠は確信する。アーシアの件とこの一連の錯乱事件は同一犯によるものだと。

 

 

瀬沼「失礼します。リザードの瀬沼です」

 

 

そんな中、チームリザードのリーダー瀬沼が入室する。

その登場に刑事達が驚く中、瀬沼はリアスと一誠がいることを確認すると、口を開ける。

 

 

瀬沼「お二方。花の分析結果、及び黒服の男の身元についての報告に参りました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察署を後にした瀬沼、リアス、一誠は瀬沼が運転する車に乗り込み、どこかへと走っていた。

瀬沼は運転席にあるスイッチを押すと、後部座席に座る2人の眼前にモニターが出現すると、我夢の姿が映される。

 

 

リアス「我夢。分析結果が出たのね?」

 

我夢「はい。アーシアの脳波を計測したところ、脳内のセロトニンが著しく減少していました」

 

一誠「セロトニン?」

 

 

何のこっちゃと頭をひねる一誠を見かねた我夢は

 

 

我夢「ストレスを抑える脳内物質さ。それが少ないと、イライラしたり不安になりやすくなるんだ」

 

一誠「なるほど~…」

 

 

我夢の補足に一誠は感嘆しながら相槌を打っていると、我夢は本題に戻る。

 

 

我夢「そこも問題なのですが、一番の問題は幻覚作用があることなんです」

 

リアス「幻覚作用?」

 

我夢「ええ。あの花の花粉には麻薬の様に感覚、精神共に支障をきたし、強い幻覚をもたらす効力があるんです。嗅いだ人は周りが敵に見える幻覚が」

 

 

我夢の話を聞いてリアスと一誠は嗅いだ人が突然暴れ出すメカニズムがわかった。

脳内のセロトニンで減らして精神を不安定にさせた上で、周りが敵に見える幻覚が働くことで、安心を得る為に目の前の敵を排除しようという生存本能を強く刺激させることだと…。

 

これで黒服の男が花粉をばらまき、人々を錯乱させているのはわかった。しかし、一誠には気がかりな点があった。

 

 

一誠「でもよ、花粉って風とかに乗って広がってくんだろ?それだと花の近くにいた俺達や一部の奴以外が錯乱してないのは何でだ?」

 

リアス「確かにそうね」

 

 

一誠の疑問にリアスは同意する。

スギやヒノキ等の花粉は風に乗って飛んでいき、多くの花粉症持ちの人々に多大な影響をもたらす。

3日前の錯乱事件だって暴れた男以外にも周りに嗅いだ人がいる筈だ。ピンポイントに暴れさせるのには無理がある。

その疑問に我夢は頷き

 

 

我夢「うん。でも、この花粉は光に当たって10秒もしないうちに死滅する特殊な特性があることがわかったんだ。僕達が錯乱しなかったのもリビングの光に照らされていたからだよ」

 

リアス「…っ!なら、今まで原因を掴めなかったのは()()()()()()()()()()()()()だったなのね!」

 

一誠「だから錯乱事件が起こるのは晴れた日の昼ばかりだったのか…」

 

 

その特性を聞き、リアスと一誠は合点がいった。

道理で一向にそれらしい原因が見つからず、昼ばかりに事件が起こるのかを。

我夢が話し終えると、瀬沼が話を引き継ぐ。

 

 

瀬沼「私からの調査報告ですが、兵藤 一誠さんが目撃した男はいずれも犯行現場にいることが判明しました。身元を洗いざらい探しましたがどこにも見当たらず、地球外から来た存在が濃厚と」

 

リアス「地球外から来た存在……さしずめ宇宙人ってことかしら」

 

 

そう呟きながらリアスは眉をしかめる。

それもそうだ。この地球を荒らすだけでなく、妹同然のアーシアをも手にかけたのだから。

 

 

リアス「瀬沼。それでその男の居場所は?」

 

 

リアスは運転席にいる瀬沼に問いかけると、瀬沼はハンドルをきりながら真剣な面持ちでこう答えた。

 

 

瀬沼「ここから北西30km……北川町に」

 

 

そう告げると瀬沼は車を北川町の方角へ走らせた。

車に揺られながらリアスと一誠は遠い先へ見据えた。

この先に待ち受ける元凶へと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車を走らせること1時間。瀬沼は駒王町から遠く離れた北川町にある古くさいアパートの前に車を止めた。

アパートの壁はあちこちボロボロになっており、改装した跡がなく建っているのが不思議と思うくらいだ。

エンジンを止めた瀬沼はアパートの2階の一室に指差す。

 

 

瀬沼「あれが敵の潜伏場所と思われるところです」

 

一誠「よし!さっそく殴り込みに――」

 

リアス「待ちなさい。イッセー」

 

 

瀬沼の話を聞き、意気込んだ一誠は車を降りようとするがリアスに右腕を掴まれる。

 

 

一誠「何するんです?!」

 

リアス「相手を許せない気持ちは私も同じよ。けど、ここで下手に動いたらせっかくのチャンスが無駄になるわ」

 

瀬沼「リアスお嬢様の言う通りですよ。例の男はパターン通りであれば、後30分でここを通りかかります。今は待ちましょう……」

 

一誠「…っ、はい……」

 

 

2人の説得を受け、一誠は思い止まる。

悔しい気持ちはリアスだって同じなのは一誠にはわかっていた筈だ。

――皆がくれたバトンをここで落とす訳にはいかない。一誠はスゥ…と深呼吸して心を落ち着かせると、ジッと待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「……変じゃない?」

 

一誠「…変?」

 

 

それから28分後。すっかり空は夕陽に包まれ、カラスの鳴き声が聞こえるだけの沈黙の中、リアスが唐突にそんなことを言い出す。

首をひねる一誠が訊き返すとリアスは頷き

 

 

リアス「どうしてわざわざ花を私達に届けに来たんだって。直前にすり替えるか何かすればいいのに直接よ?これじゃ、自分が犯人だって教えている様なものだわ」

 

一誠「ああ~…」

 

 

リアスの疑問に一誠はなるほどなるほどと頷く。

リアスの言う通り、花を送る為にわざわざ赴く必要がなく、むしろリスクを大きくさせている。とても隠密行動する者のやることじゃない。

 

 

瀬沼「誰か来ましたよ」

 

 

―――それは自信ありの挑戦か、はたまた罠か。

黒幕の矛盾した行動に一誠とリアスは考えていると、瀬沼の声が聞こえ、2人は息を潜め、瀬沼が見つめる方へ目をやる。

そこには一誠が今朝あったあの黒服の男が両手両足を激しく振って軽やかにアパート目掛けて走る姿があった。

 

一誠の目撃情報通りの風貌に如何にも怪しい足取り……3人はこいつが犯人で間違いないと確信していると、黒服の男はアパートの中へ入っていった。

 

 

リアス「瀬沼。ここで待っていてちょうだい」

 

瀬沼「大丈夫ですか?」

 

リアス「平気よ。何かあれば連絡するわ。行くわよ、イッセー」

 

一誠「はい!」

 

 

黒服の男がアパート内へ入るのを見計らったリアスは瀬沼にそう告げると、一誠と共に車を降りると、男の跡を追ってアパートの中へ突入した。

 

気を引き締める2人は夕陽の光が僅かに差し込む薄暗い空間の中、階段1つ1つをゆっくり慎重に上がる。

まるで魔境の様に先へ進むにつれ暗くなっていく狭い通路を進んでいく。

横切る部屋はどれも空きっぱなしで内部は朽ち果てており、通路は空き缶やガラス片といったゴミが散乱して踏む度にジャリジャリと音が鳴る。

天井や壁は蜘蛛の巣だらけで、長年誰も住んでいないのかが伺える。

 

荒れ果てたアパート内を眺めつつ探索する2人。

いつどこからか来てもいいよう警戒しながら進み、通路の突き当たりに迫った時だった。

 

 

バンッ!

 

一誠「うおっ!?」

 

リアス「きゃっ!?」

 

 

突然近くの扉が勢いよく開いた。2人が怯んでいると、中から出てきた何者かに腕を掴まれ、部屋へと連れ込まれた。

2人が部屋に入るのと同時に扉はひとりでに閉まった。

 

体勢が崩れた2人は互いの安否を確認する。

 

 

リアス「平気?」

 

一誠「はい。何とも…」

 

「無理やり連れ込んで悪いね」

 

一誠「…あっ!てめぇはっ!」

 

 

ふいに声をかけられ、2人は見上げると息をのむ。

眼前にはあの黒服の男が口角をあげてこちらを見下ろしていたからだ。

黒服の男は被っていた黒いハットを取ると、その顔は露になる。

温厚な顔ながらも気品漂うその姿勢や口調は紳士の佇まいを感じさせる。

そんなことを2人が思っていると、黒服の男はハットを胸に当てて、一礼する。

 

 

「ようこそ、リアス・グレモリーに兵藤 一誠………いや、ウルトラマンダイナ。私は君達が来るのを待っていたのだ」

 

一誠「…っ!?どうして俺のことを!」

 

「ハッハッ!そんな細かい話は後でいいじゃないか。ささ、こちらへ座って話そうじゃないか?」

 

 

黒服の男の態度に調子が狂う2人だが、促されるまま奥の居間へ進むと、手前に2枚、奥に1枚敷かれた座布団の間にちゃぶ台が置かれた畳の部屋に案内された。

 

黒服の男は座布団の上へあぐらをかいて座る。

罠があるのかと警戒する2人だが、黒服の男に早く座れとアイコンタクトを送られると渋々従い、ちゃぶ台を挟んで座る。

 

敵である筈なのに客人として歓迎され戸惑う2人に黒服の男はどこかから取り出したジュース缶の様なもののプルタブをカシュ…と音を立てて開けると、1人ずつ眼前に差し出す。

差し出された缶を見て、一誠とリアスは怪訝な顔を浮かべる。

 

 

リアス「何よこれ?」

 

眼兎龍茶(めとろんちゃ)。私の母星の名物だ。毒なんか入っていないさ。安心して飲みたまえ」

 

一誠「…」

 

 

薦められても訝しげにする2人だが、黒服の男が眼兎龍茶を美味しそうに飲む顔に思わずゴクリと喉を鳴らすと、薦められたままグイッと飲むと、濃厚な味わいが口に広がり、喉を潤わせた。

後日、一誠が1年分の眼兎龍茶をプレゼントされるのは余談である。

 

何やかんやで飲み干したリアスは眼兎龍茶の空き缶をちゃぶ台に置くと、黒服の男を見据え

 

 

リアス「…歓迎してくれて感謝するわ。でも、私達の名前を知ってても私達はあなたの名前は知らないわ。お互いに名前を教えるのがマナーというものじゃないのかしら?」

 

 

不敵な笑みを浮かべ、挑発気味に投げ掛ける。

その言葉に黒服の男はハッとなると、「これはすまない」と言うと、飲んでいた眼兎龍茶をちゃぶ台に乗せる。

 

 

メトロン星人「私は地球より遠く離れたメトロン星からやってきたメトロン星人だ」

 

 

自己紹介し終えた瞬間、黒服の男は本来の姿へと変わる。

赤、青、黄の派手な体色。イカに似た頭部の側面は右左合わせて計8つの発光体があり、上から下へスムーズへ点滅を繰り返している。

 

睨みをきかせる2人をよそにメトロン星人はちゃぶ台をトントンと軽く叩くとどこかからか、部屋中にクラシック音楽が流れ始める。

2人は一瞬不思議そうにキョロキョロと辺りを見渡すがすぐに切り替えると、メトロン星人を問い詰める。

 

 

リアス「あなたの陰謀は全て明るみになったわ。大人しく降伏しなさい…!」

 

メトロン星人「ハッハッハッ!陰謀なんか考えてないさ。侵略する気もないよ」

 

一誠「なら、とっとと帰れ!」

 

メトロン星人「ハハッ、落ち着きたまえ。そうカッカッしなくとも迎えの宇宙船が来しだい立ち去るさ。私は暴力を好まないのでね。…その前に何故今回の計画を起こしたのかを話そう」

 

 

鋭い目付きで睨み付ける一誠の迫力に動じずなだめると、メトロン星人は計画の経緯を長々と語り出した。

 

 

メトロン星人「昔、母星から選ばれた私はこの地球に降り立ち、侵略の機会を伺っていた。同族から、『地球人は互いにルールを守り、信頼しあっている』という話を聞いた私はその信頼を崩せば自滅し、簡単に侵略できるのではと思い、錯乱効果がある花粉をばら蒔いた」

 

 

嬉々とした様子で語るメトロン星人だったが、途端に呆れた様子に変わる。

 

 

メトロン星人「だが、この地球は何だ?ちょっとしたミスや話し方で揉め、互いに手を取らず、陳腐なことをするだけ。君達も見ただろう?この星の有り様を。これを見て私は確信したよ、『侵略する価値なし』と」

 

 

そう言ってメトロン星人はちゃぶ台に置いていた眼兎龍茶の残りを飲み干すと、話を続ける。

 

 

メトロン星人「地球は環境豊かだ。空は染み渡り、海は青く、大地は命溢れている。おまけに資源も豊富ときたもんだ……。宇宙全体見てもこれ程魅力溢れる星はそうそうない。だが、その魅力があるあまり、私利私欲の為に環境を破壊し、土地を争い合う。放っておいても自滅するのがこの星の運命なのさ。私はその手助けをしただけまでさ」

 

「「…」」

 

 

その言葉に2人は言葉を詰まらせる。

メトロン星人の言う通り、世界中がパニックとなっているのにも関わらず、地球人は手を取らず、互いを信じず消し合う。自滅する運命なのかもしれない…。

そんな暗い考えを浮かべていると、メトロン星人は一誠へ顔を向けると、予想外の言葉をかける。

 

 

メトロン星人「ウルトラマンダイナ。どうだい?私と一緒にメトロン星へ来ないか?」

 

一誠「何っ!」

 

メトロン星人「地球に選ばれたからとはいえ、恩を仇で返す地球人を守る義務なんてないだろう?同じ宇宙から来た者同士、遠い宇宙へ旅立とうじゃないか。どうだ?」

 

 

メトロン星人からの思わぬ誘いに一誠は一瞬、動揺する。確かに力を望んだとはいえ、使命まで背負う必要はないかもしれない。

 

だが、一誠はその首を振った。縦ではなく横に。

 

 

メトロン星人「ほう?」

 

 

メトロン星人が意外そうな声をあげると、一誠は口を開き

 

 

一誠「…確かにこの地球は侵略する価値すらもない残念な星になったかもしれない。それが正しいといっても、お前がやってることは侵略に変わりないんだ!」

 

リアス「そうよ!イッセーの言う通りだわ!」

 

 

そう言い放つ一誠に合わせて、リアスも同じだと物言う。

すると、メトロン星人は「ハッハッハッ」とこれは愉快だと言わんばかりに笑う。それと合わせるかの様に室内に流れていたクラシック音楽もいつの間にか止まっていた。

ひとしきり笑うと、フジツボの様な目で2人で見据え

 

 

メトロン星人「ハッハッ…そう言うと思ったよ。断られては仕方あるまい。では、私はそろそろ失礼させてもううよ」

 

「「!?」」

 

ガシャアァァンッ!!

 

 

話し終えた瞬間、メトロン星人は天井を突き破って巨大化した。

巨大化したメトロン星人の重さに加え、元々痛んでいたアパートは倒壊し始める。

瓦礫が雪崩の如く落ちてき、床が崩れ始め、足場がなくなる中、一誠はリアスを抱き寄せるとリーフラッシャーを取り出し

 

 

一誠「デュワッ!」

 

 

といつもと違う力強い掛け声と共に眼前に掲げると、展開したクリスタル部分から溢れた白い光に包まれると、ウルトラマンダイナに変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕陽に包まれた北川町。昭和の名残がある建物と近代化した建物が混雑する町並みが広がっており、夕陽を受けて照らされている。

昔と今……双方に丁度挟む川の水面には町の情景を眺めるメトロン星人が映っていた。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

川の反対側にダイナが宙で1回転して登場する。

しかし、ウルトラマンの登場にもメトロン星人は気にも止めず、町を眺め続ける。

 

 

メトロン星人「しかし、この地球の夕焼けは綺麗だ。いくら町が国が変わろうとも、自然の美しさには変わらない。同士が気にいる理由がわかったよ」

 

ダイナ「うるせっ!さっさと帰れ!」

 

メトロン星人「そう言われなくとも、ほら」

 

 

カッカッするダイナにメトロン星人はある一方の空を指差す。指差す方角からは枝豆を真ん中で折った様な赤いフォルムの宇宙船がやって来た。

振り向いたメトロン星人はダイナへ手を振った。

 

 

ダイナ「…ッ!」

 

 

思わず手を振り返してしまった自分に驚くダイナだが、次に前へ意識を向けた時にはメトロン星人の姿はなく、既に宇宙船に乗り込んでいた。

 

 

ダイナ「…」

 

 

メトロン星へ帰る宇宙船をダイナは攻撃しようともせず見送った。

宇宙船が見えなくなってもダイナはしばらく夕焼けに包まれる空を見上げ、ポツンと佇んでいた。

その心情は何とも言えないものだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、メトロン星人は地球を去りました。

見切りをつけても尚、人々を錯乱させたのは一体何故なのでしょうか?

 

それはともかく、彼は帰還した母星で過ごしてるのでしょうか?

それとも新しい星を侵略しに行ったのでしょうか?

 

ですが、ご安心下さい。

私達が住んでいるこの地球には決して来ないでしょう。

 

え?何故ですって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――我々人類は今も昔も変わらず、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから……。

 

 

 




次回予告

藤宮が帰ってくる!
まだ人類を憎んでいるのか!?
またガイアと戦うつもりなのか!?

次回、「ハイスクールG×A」!
「再会の空」!


藤宮「再び、あの扉を開けるんだ!」




メトロン星人の言うように我々人類は自滅する運命なのでしょうか?
人類は永遠にわかりあえないのでしょうか?

あなたはどう思いますか?
感想欄にて是非意見を聞かせて下さい。

アンケートの結果、我夢の今後はハーレムにすることに決定しました。あまり恋愛描写は得意ではないのですが、精一杯頑張っていきたいと思います。


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第49話「再会の空」

宇宙忍獣 X(クロス)サバーガ 登場!


駒王町。住宅街から少し離れた位置にある墓地。

まだ日が完全に昇りきっていない早朝の時間帯。

『稲森 京子 ここに眠る』と書かれた墓前に花束を供える1人の少年がいた。

 

その少年の名は藤宮 博也。地球から授けれた光でウルトラマンアグルとして変身能力を得た彼は、考えの相違から同じウルトラマンである我夢とその仲間のリアス達と考え幾度も衝突した。

 

しかし、それも過去の話。自分の信念が全て破滅招来体に仕組まれたものと知り、戦意喪失。

アグルの光を我夢へ手放し、以降、消息不明となっていたのだが、こうして生きていたのである。

 

だが、何が起きたのか頬はやつれており、目の下には隈が出来ており、鋭い瞳の奥は明るさを失っている。

人類削除の為とはいえ、かつてウルトラマンとして戦ってきた男の物陰はほぼ無くなっている。

 

目を閉じ、深く深く……懺悔の念を込めて藤宮は合掌してお辞儀する。

全て藤宮のせいではないが、間接的に巻き込んで恩人である稲森を殺してしまった藤宮にとっては悔やんでも悔やみきれない気持ちで一杯である。

 

お辞儀をした藤宮は顔を上げ、目を開けると、心の中で眼前の墓へ語りかける。

 

 

藤宮「(稲森博士……俺を全てを失った。なのにまだ奴等は生き残っている。……アグルの力は戻ってはこない……もう、地球は……俺に語りかけてくれなかった…)」

 

 

悲しげな目を浮かべながら藤宮は再びプロノーン・カラモスに赴いたことを思い出す。

ゾーリムの件以降戦意を失いさ迷っていた藤宮だが、しばらく経って破滅招来体と再び戦おうする意思を取り戻し、アグルの光を再び手にしようとプロノーン・カラモスのプールへ飛び込んだが、何も応えてはくれなかった。

そのことを思い出し悲しくなる藤宮だが、気持ちを切り替え、

 

 

藤宮「(だが、人として俺にもやれることはある……そうだろう?)」

 

 

墓前を見据え、語りかける。

何かを決意したのか瞳の奥は明るさを取り戻していた。

その決意の表れは、かつて人類を滅ぼそうとしていた危ういものと同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。日本のとある地区に位置するG.U.A.R.D.の施設の廊下を藤宮はG.U.A.R.D.隊員に変装して歩いていた。

 

 

「何だお前?うぐっ…!?」

 

 

道中、偽物と見抜いた本物の隊員に出くわすが腹パンして大人しくさせると、壁の案内板に『対空間レーザーシステム』と案内された方角へ歩いていく。

 

セキュリティルームに難なく侵入した藤宮はデスクに置かれてあるメインコンピューターを操作すると、謎のコンピューターウイルスをアップロードする。

2秒もかからないうちに『FINISHED』とアップロードされたことを知らせる表示が画面に映ると、藤宮はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

《ウー…!ウー…!ウー…!》

 

藤宮「っ!」

 

 

だがその瞬間、施設中から侵入者を知らせる非常ベルが鳴り響き、室内のハザードランプが点灯する。

腐っても人間界屈指の防衛組織G.U.A.R.D.だ。どれだけ工作して侵入したとしてもすぐにバレる。

 

やるべきことを終えた藤宮はすぐさまセキュリティルーム内のコンピューターをシャットダウンさせると、隊員に捕まる前にそそくさと立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「いやぁ~~我夢!すまねぇ!せっかく作ってくれたのにっ!」

 

 

次の日、兵藤家にある我夢の部屋では眼前で合掌した一誠が申し訳なさそうに頭を下げていた。

頭を下げる先には机に座る我夢がおり、手元にはクリスタル部分がひび割れたリーフラッシャーがあった。

実は昨日、一誠がリーフラッシャーを床に落としてしまい、壊れてしまったのだ。落ちたといっても膝下数10センチ……皿が割れるか割れないぐらいの高さだ。

そのくらいの高さで割れてしまったので、一誠が悪いのではなく、むしろ老朽化が進んでいたリーフラッシャー自体に問題がある。

 

謝る一誠に我夢は爽やかな笑みを浮かべながら顔をあげさる様に言うと、手元のリーフラッシャーを見て

 

 

我夢「いや、謝ることないよ。大分ガタがきてたからね、そろそろメンテナンスしようかと思ってたところさ。丁度いい機会だよ」

 

一誠「わ、悪ィな…」

 

我夢「ははっ、気にしなくていい。ただ、高額なパーツを仕入れる必要があるから、修理が終わるのは明日になるけどいい?」

 

一誠「おう!全然、大丈夫だぜ!」

 

我夢「うん。じゃあこれ預かっておくね」

 

 

一誠に確認を得た我夢はリーフラッシャーをビニール袋に丁寧に入れると、引き出しの中へ収納した。

 

 

一誠「んじゃあ、修理お願いな!」

 

我夢「ああ、任せてくれ」

 

 

ニカッと笑う一誠に我夢は微笑み返す。

悪いことをすれば正直に謝り、良いことをすれば誉め合う……。幼馴染みというのもあるが、これが理想の信頼関係であり、我夢と一誠の仲が途切れない理由でもあったりする。

 

 

《ピピッ!》

 

 

そんなやり取りをしていると、我夢のXIGナビから通知音が鳴る。

意識をXIGナビへ移した我夢は通信に出ると、XIGの司令官・石室からだった。

――何の用事だろう?と怪訝に思っていると、石室は真剣な面持ちで我夢を見据えると

 

 

《石室「我夢。いきなりで悪いが俺の部屋に来てくれ。話したいことがある」》

 

 

と単刀直入に伝えた。

いつも用事がある場合はコマンドルームかXIGナビを通して伝えるのだが、私室に呼ばれるのは初めてだ。

――よっぽど聞かれたく内容なのか……。そんなことを思いつつ、我夢は返事する。

 

 

我夢「わかりました。すぐに行きます」

 

《石室「ああ。頼む」》

 

 

行く旨を伝えると、石室は短く返事し、通信を終了した。

XIGナビを閉じた我夢は自分と同じ様に訝しげな顔をしている一誠の方へ顔を向ける。

 

 

我夢「という訳で行ってくるよ」

 

一誠「おお、気をつけてな。てか、わざわざ部屋に呼ぶなんて、何の用事なんだ?」

 

我夢「さあ?行ってみなきゃわかんないさ」

 

 

う~んと首をひねる一誠に我夢はそう返すと、部屋を出て、エリアルベースへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリナ「あっ!我夢君」

 

我夢「ん?イリナか」

 

 

石室の部屋へ向かうべくエリアルベースの廊下を歩く途中、反対側から声をかけられ、我夢は振り向くと、イリナとバッタリ出会った。

 

 

イリナ「どこ行くの?」

 

我夢「ああ、コマンダーに部屋に来るよう言われてさ」

 

イリナ「あ!それなら私も呼ばれたよ!」

 

我夢「え、本当?」

 

イリナ「うん」

 

 

きょとんとする我夢にイリナは頷く。

―――自分だけでなくイリナまで呼ぶなんて何か共通するものでもあるのか?我夢は少し考えるが幼馴染みという以外、思い当たる伏がない。

 

 

イリナ「じゃあじゃあ一緒に行こ?行くところ同じだし」

 

我夢「そうだね」

 

 

元気な声で提案するイリナに我夢は特に断る理由はないので承諾する。

そうと決まった2人は雑談を交えながら歩いていくと、数10分も経たないうちにコマンドルームの近くにある石室の自室へ着いた。

 

我夢は扉をコンコン…と軽くノックする。

 

 

我夢「コマンダー、我夢です。イリナもいます」

 

石室『入れ』

 

 

扉越しに呼びかけると扉の奥から石室の承認する声が聞こえた。

入室許可を得た2人は声を揃えて「失礼します」とひと言言うと、室内へ入る。中はエリアルベースに設けられた我夢達専用部屋と同じ旅客機の様な内装で、戸棚には満開の笑顔の石室の妻と息子の家族写真が飾られてあった。

 

 

石室「よく来てくれた。座ってくれ」

 

 

手前の2つの椅子に座るように促された2人は頷くと、椅子に座る。

湯呑みにお茶を淹れて2人に差し出すと、石室は話を切り出す。

 

 

石室「…単刀直入だが、対空間レーザーシステムを知っているか?」

 

我夢「あ、はい。つい最近、導入されたばかりのG.U.A.R.D.の新兵器ですよね」

 

 

我夢の言葉に石室は「そうだ」と頷く。

対空間レーザーシステム―――――地球の大気圏外に打ち上げられた宇宙からの侵略者を打ち落とす防衛衛星である。

名前の通りレーザーを用いる兵器だが、そのレーザーの攻撃力は凄まじく、下手すればウルトラマンの光線に引けを取らないレベルだそうだ。これにより、G.U.A.R.D.の戦力が13%もアップしたと言われている。

 

そのことを知らなかったのかふんふんと相づちを打っていたイリナは石室に問いかける。

 

 

イリナ「でも、そのレーザーシステムがどうしたんですか?」

 

石室「ああ。実は先日、これを管理している施設に侵入し、データを書き換えようとしたやつがいた」

 

「「!?」」

 

 

その出来事に我夢とイリナは驚く。

それもそうだ。下手すればウルトラマンの光線技と匹敵する威力を持つ防衛衛星を管理する施設に入り込んだからだ。犯人は明らかに危ない思想を持つ人物なのは間違いない。

我夢は石室に訊ねる。

 

 

我夢「それで犯人は…?」

 

石室「すぐに逃げたそうだ。だが……」

 

イリナ「だが?」

 

 

言葉を濁らせ、続きを言わない石室にイリナは首を傾げる。

僅かにだが苦い顔を浮かべる石室からは口にしたくないというよりも言いにくいというのが2人にひしひしと感じられた。

 

3秒くらいの沈黙の後、石室は正直に伝えようと決心し、閉ざしていた口を開く。

 

 

石室「……警備員の証言によると、犯人は藤宮 博也にとても似ていたそうだ」

 

イリナ「――っ!?」

 

我夢「藤宮が!?」

 

 

石室から口から出た言葉に我夢とイリナは驚く。

イリナに至っては絶句しており、目は今にも眼球が飛び出しそうなぐらい大きく見開いていた。

信じられない様子の2人に石室は「間違いない」と返すと、話を続け

 

 

石室「コンピューター班がプログラム中に『SHADOW(シャドウ)』とコードネームが打たれたウイルスを発見した」

 

我夢「それじゃ藤宮は……」

 

石室「対空間レーザーシステムを奪おうとした可能性は高い……」

 

 

ひょっとしてと問いかけた我夢だが、石室から思っていた通りの返答に2人は固唾を飲む。

どういう形とはいえ生きていたのは内心嬉しい。

しかし、戦う意思を破滅招来体に利用され、戦意喪失した彼がG.U.A.R.D.の新兵器を奪ってまでやろうとしていることに我夢は嫌な予感がし、気が気でならなかった。

イリナも同じ様子で今すぐにでも探しに行きたい様子だ。

 

顔を曇らせる彼らに石室は話を切り替え

 

 

石室「今回、君達を呼んだのは藤宮の捜索だ。地上のチームリザードと合流し、藤宮を探し出してくれ」

 

 

今回の指示を2人に出す。

――不安ではあるが藤宮に会える可能性がある。2人の脳内は命令があってもなくても探すつもりではあったが。

そうと決まるや否や、我夢とイリナは席を立つ。

 

 

我夢「わかりました。すぐ向かいます」

 

 

我夢はそう言ってイリナと共に一礼すると、そそくさと部屋を後にした。

 

2人が走り去ってしばらくの後、廊下の角から人影がひょっこりと身を出す。

その正体は四之宮 龍――――否、ジャグラスジャグラーその人だった。

 

 

四之宮「なぁるほど…」

 

 

四之宮はニヤリと口角をあげながら呟く。

この様子から察せられると思うが、四之宮はその優れた聴覚で我夢達の会話の一部始終を聞いていたのだ。

 

 

四之宮「さて、俺も動くとするか」

 

 

四之宮は意味深なことを呟くと、薄気味悪い笑みを保ちながらどこかへ歩き去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室の自室から出た我夢はイリナと共にファイターEXに乗り込むと、そのままエリアルベースから発進した。

 

 

イリナ「…ねぇ、我夢君?」

 

我夢「ん?」

 

イリナ「捜索して、もし藤宮君を見つけたらどうするつもりなんだろう?……捕まえる気じゃないよね?」

 

 

進路をジオベースに合わせて上空を真っ直ぐ飛ぶ中、後部座席に座るイリナが心配そうに訊ねる。

イリナが誰よりも藤宮を心配していることは我夢にはわかっていた。その証拠に藤宮が重傷を負った時は悲しみのあまりしばらく部屋に籠りっきりになっていたのを思い出す。

 

 

我夢「……」

 

 

我夢は思わず口を閉ざす。

脳内ではハッキリとした答えがあるのだ。

 

――――捕まえる、と。

 

騙されたとはいえ、三大勢力と人間界を引っ掻き回した危険人物を逃すはずもない。血眼になって探すだろう。

捜索に特化したチームリザードに調査をさせてるのが何よりも証拠だ。

捕まえた後は厳しい処罰が下る……イリナはそんな不安が胸中にあった。

 

ただ、我夢はそれを口にして認めるのが嫌だった。

藤宮がやったことは許されることではないが、それは全て地球を護ろうとしてやったことだ。それが破滅をもたらす者に歪められたものだとしてもだ。

捕まえたとしても、厳しい処罰にするのは少し間違っている。

我夢はイリナの不安を解き消す様に微笑み

 

 

我夢「いや、まさか。今の藤宮が前みたいな思想を持っているとは限らないし、サーゼクス様も十分承知のはずだよ。まあ、話してみなきゃわからないさ」

 

イリナ「…うん、そうよね。大丈夫よね……」

 

 

そう穏やかに言うと、イリナは自分に言い聞かせる様に呟く。

顔は依然として曇ってはいるが、ホッとしたおかげでほんの少しだけ明るくなった。

 

見ずとも声色で安心したのがわかった我夢は微笑んだ後、神妙な顔へ変わる。

 

 

我夢「(藤宮……また僕達と……)」

 

 

我夢は内心呟く。

我夢も不安だったのだ。また自分達と戦うつもりなのかと……。

目的は不明なれど、G.U.A.R.D.の新兵器を奪おうとした事実はある。しかし、藤宮の内情を考えれば、それだけで以前の彼に戻ったとは我夢には断定できず、信じられなかった。

 

 

我夢「(藤宮……)」

 

 

ただただ、嫌な予感しかしない。その心中を胸に我夢はファイターEXを飛ばしていく。

 

 

 

 

 

真っ直ぐ空を駆けていくファイターEXが通った空の近くの雲の中から一機の白い飛行機が姿を現す。

隠れて様子を伺っていた飛行機はファイターEXを尾行し始める。

その飛行機を操縦する人物は我夢達が探している件の藤宮その人だった。

 

 

藤宮「待っていろ……我夢」

 

 

藤宮は気付かれない距離を保ちながら映画館のスクリーンの様に投影されるファイターEXを見据え、呟く。

藤宮も我夢同様会いたいという気持ちは同じだが、その声色はどこか狙っている様な怪しさを含んでいた。

 

 

《ピー!ピー!ピー!》

 

藤宮「…?!」

 

 

そう呟いた矢先、コクピット内に異常事態を知らせるアラーム音が3回鳴り響く。

訝しげに藤宮はモニターへ目をやると、先程のライブ映像から一変して真っ赤な画面になったモニターの中央に『INTRUDER(侵入者)』と警告が表示されていた。

 

―――どういうことだ?と藤宮が目を細めると、モニターはピチュンと音を立てて強制的に閉じると、代わりに白い光を纏った人のシルエットが足から投影されていく。

次々と形成されていくホログラムに警戒して睨みをつける藤宮だが、その全貌が露になった瞬間、その顔は驚愕のものとなる。

 

 

稲森『ふふっ、相変わらず地球に関する研究心は熱心ね』

 

藤宮「い、稲森博士……!?」

 

 

全貌を現したホログラムから声をかけられた藤宮は動揺する。

そう、藤宮の眼前に映るホログラムの姿は彼の恩師かつ育ての親である稲森 京子だった。

 

 

稲森『私のこと、覚えていてくれたのね』

 

藤宮「…忘れる訳がない………」

 

 

藤宮は悲しげに顔を俯かせる。

藤宮は一時足りとも彼女のことを忘れたことはなかった。

幼い頃両親を失った自分を育て、クリシスの研究に協力してもらい、プロノーン・カラモスで苦楽を共にしたことを。

そして、自分のやろうとしていたことに巻き込んで死なせてしまったことも……。

 

それらのことを思い出し、藤宮が感傷に浸っていると稲森はクスリと笑い

 

 

稲森『でも滑稽ね。大いなる力に今でも抗おうとするなんて…』

 

藤宮「っ!?どうしてそれをあなたがっ!?」

 

 

心を見透かされる様に言われた藤宮は目を大きく見開いて問いかける。

言われたことは図星ではあるが、何故()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が藤宮には理解できなかった。

動揺する藤宮を見て稲森は可笑しそうにフフッと笑うと、藤宮を見据え

 

 

稲森『私は大いなる力で蘇った。その偉大なる力を挑発する愚かな男……』

 

藤宮「…っ、あなたは…破滅招来体に……!博士!その力とは何なんです!?何故、地球が狙われる!?」

 

 

告げられた事実に動揺しつつも藤宮は矢継ぎ早に問いかける。

稲森はフゥと嘆息をつくと、横を見ながら不快な顔を浮かべ

 

 

稲森『…あなたは掃き溜めに蠢く害虫の存在意義を考えたことがある?……考える必要なんてない。そんなものいらないもの。だから地球もいらない。汚れた存在は誰だって嫌……』

 

 

そう話すと稲森は真っ直ぐ藤宮を見ると先程の不愉快を露にした顔から一変して穏やかな顔へ変わる。

 

 

稲森『でも私はあなたと一緒にその汚れを取り除く方法を知ったのよ』

 

藤宮「…っ!」

 

稲森『きっと、操られたクリシスの答えは嘘ではないわよ。私とあなたはその答えを信じる運命……』

 

 

そう言いながら動揺する藤宮へ歩み寄る稲森。

長年一緒に過ごしてきていた藤宮だが、声、姿、口調は全く同じで数少ない安らげる人物であるはずなのに、目の前の稲森が放つ雰囲気はおぞましく、稲森の皮を被った別人にも思えた。

そうこうして固まっていると、稲森は藤宮の眼前にまで近寄っていた。

稲森は聖母の様な笑みを浮かべ

 

 

稲森『会いたかったわ……。博也君………』

 

藤宮「……」

 

 

そう呟くと、藤宮の頬へ触れようとゆっくりと手を伸ばす。

藤宮も深く考えるのを止めたのか目を瞑る。ホログラムであろど、久しぶりに義母の暖かさに包まれたかった……。

 

そうして稲森の手が藤宮の肌に触れたその時だった!

 

 

バチバチィーーーッ!!

 

稲森『っ!?何…!?』

 

 

カチッとスイッチ音が聞こえたかと思うと、藤宮の近くにある機械を介して電流が走った。

あまりもの激痛に退いた稲森は手を見ると、雨に打たれた泥の様にドロドロになり、手から全身へと溶解し始めていた。

藤宮は手元のスイッチで稲森を攻撃したのだ。

動揺する稲森に藤宮は鋭い目付きで睨み付け

 

 

藤宮「このコンピューターには強力なウイルスプロテクターが仕掛けてある…!クリシスの時の様にはいかないっ!」

 

 

ハッキリとした口調で言い放つ。藤宮には話す内にわかったのだ。

―――この人は稲森 京子ではない。破滅招来体によって姿と記憶をコピーした傀儡にしか過ぎないと。

稲森が溶ける激痛に苦しむ中、藤宮は顔を俯かせる。

 

 

藤宮「だが、1つだけ感謝しています……。博士の崇拝する力は俺に大切なことを思い出させてくれた……」

 

 

そう言って顔を上げて傀儡の存在である稲森を真っ直ぐ見据えると、

 

 

藤宮「俺は……アグルである前に……!ただの人間だったんです……

 

 

藤宮は心境をぶつけた。目の前に死した人が蘇ることなど決して有り得ず、話し方や雰囲気で破滅招来体が生み出したものとわかっていた。

しかし、そうとわかっていても喜んでしまい、まんまと利用されようとしていた自分がいた…。

その証拠にその目は怒りと悲しみが混ざっていた。

 

藤宮に拒絶された傀儡の稲森は途端に今にも泣きそうな悲しげな顔を浮かべる。

 

 

稲森『博也君…?あなた、私を見捨てるの…?』

 

藤宮「今のあなたは……俺の知ってるあなたじゃない」

 

 

藤宮は込み上げる罪悪感をグッと堪えて、頑なに拒否する。

偽者とはいえ、もう1人の母親として、1人の研究者として尊敬していた人の苦しむ姿を見るのは何よりもの苦痛だろう。

傀儡の稲森は苦痛の声を漏らしながら、手を差し伸ばす。

 

 

稲森『苦しいわ……博也君!博也君、助けて!助けて…っ!』

 

藤宮「黙れ…」

 

稲森『助けて…!あぁ…っ』

 

藤宮「消えろォォォーーーーーーッ!!

 

稲森『あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーーーーッッ!!』

 

 

救いを求める声を解き消す様に叫んだ藤宮は自分の考えが変わる前にスイッチを叩き押すと、傀儡の稲森は断末魔と共に消滅した。

傀儡の存在が消え、自分1人となった藤宮は緊張が切れ、スイッチに手を置いたままガクッと顔を下ろす。

 

 

藤宮「…」

 

 

一言も喋らず顔を俯かせる藤宮の顔は悲しみに満ちたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ジオベースに着いた我夢とイリナはチームリザードの瀬沼と合流し、早速調査に乗り出した。

瀬沼は2人を車の後部座席に同乗させると、門をくぐって発進させる。

ハンドルを手に運転しながら瀬沼は我夢達に今回の情報を話し始める。

 

 

瀬沼「藤宮にはいくつかの潜伏場所が確認されてるんですが、その1つに情報が入りました」

 

イリナ「彼は今まで何を?」

 

瀬沼「藤宮は幾つもの工学特許を所有しています。その財力で世界各地を転々としていました」

 

 

瀬沼から返ってきた答えに我夢とイリナは納得する。

単にアグルの力で飛び回っていたのかと思っていたが、動向がバレず、かつ活動拠点を作れたのはその財力あってのことだろう。

 

 

我夢「目的は?」

 

瀬沼「わかりません…」

 

 

我夢の問いに珍しく瀬沼は首を横に振る。

今、こうして舞い戻ってきたのはきっと理由があるはずだ。

しかし、瀬沼の調査はあくまで調査。心を暴けることはできない。仮にできたとしても藤宮本人に強い不信感を与えてしまうことになるので、結局は本人に訊くしかない。

 

我夢とイリナは不安を胸に藤宮のもとへ赴くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢とイリナがこちらへ来ると知らず、藤宮は拠点へと戻っていた。

コンクリート作りの廃墟の薄暗い一室にカタカタとノートパソコンのキーボードを打つ無機質な音が響く。

藤宮は何かしらのデータを打ち込んでいた。

 

 

四之宮「よう!」

 

藤宮「…っ!?」

 

 

一通り作業を終えた時、ふと背後から見知らぬ声をかけられ、藤宮は咄嗟にウィンドウを閉じて振り向く。

藤宮のいる位置よりも暗い物陰から身を出したのは余裕そうな顔を浮かべる四之宮だった。

 

 

藤宮「誰だ?」

 

四之宮「俺は四之宮 龍。駒王学園の学生をやらせてもらってる。まあ、XIGのメンバーの1人って言えば簡単かな?」

 

藤宮「……」

 

 

陽気な口調で話す四之宮に藤宮は更に警戒を強める。

それはXIGの隊員というよりも、四之宮からジワジワと放たれる怪しげな雰囲気にだ。先程も声をかけられるまでは全く気配を感じられず、そもそもこの拠点は地図でピンポイントで見つけられる簡単な場所ではない。

 

怪訝な顔を浮かべる藤宮を見て、四之宮は「おいおい」とおどけた調子で言うと

 

 

四之宮「そう怪しむなよ。俺はお前を捕まえに来た訳じゃない。個人的な興味でお前に会いに来たんだ」

 

藤宮「…そうだろうな。なければ、とっくに奇襲をかけていたはずだからな」

 

 

と事情を晒す四之宮に藤宮はそっけなく返すと、警戒を僅かに緩める。

ほんの少しだが警戒心を解いてもらったことを確信した四之宮はふぅと軽く息を吐くと、本来の姿であるジャグラー魔人態に戻った。

それを見た藤宮は唖然とする。

 

 

藤宮「その姿は…!」

 

ジャグラー「驚くのも無理はないか……。俺の本当の名はジャグラス ジャグラー、怪しい通りすがりの風来坊さ♪四之宮 龍っていうのは借り物の名前だ」

 

藤宮「……借りた?そうか…」

 

 

困惑する藤宮だが、生まれながら持っている頭の回転の速さでジャグラーの言っている意味をすぐに理解した。

 

 

藤宮「お前のことはわかった。なら、何しにきたんだ?その様子だと俺がやろうとしていることも知っているそうだが…」

 

 

藤宮の問いかけにジャグラーは内心、「鋭いな」と思いつつも正直に答える。

 

 

ジャグラー「ああ、お前にちょっと忠告しに来たんだ」

 

藤宮「忠告だと?」

 

 

ジャグラーの言葉に耳を止めて訊き返す藤宮にジャグラーは頷くと、隠さずハッキリと告げる。

 

 

ジャグラー「はっきり言うぜ。今のお前じゃあ何も出来ねぇし、何も救えない。そんな()鹿()()()()()を持ったままじゃな…」

 

藤宮「っ!?」

 

 

ジャグラーの発言に藤宮は目を見開く。

ジャグラーにはわかっていたのだ。藤宮がやろうとしていることが如何に危険であることを、如何に悲しみを生むのかを。

そんな心中が当然、初対面である藤宮には自分の行動を否定されたことしかわからず立ち上がると、けたたましい剣幕でジャグラーの肩に掴みかかる。

 

 

藤宮「お前に何がわかるっ!!信じるもの、守るべきもの全てを失った俺の気持ちがッ!!」

 

ジャグラー「…わかる。俺も信じていた正義を無下にされた。良かれとやったことを誰もが認めず、否定された」

 

藤宮「俺のせいで多くの人々が死んだ!今の俺には償いをできる力がないッ!地球に拒絶された俺にはもうこれしか残されていないんだッ!!」

 

 

感情に駆られる藤宮の言葉をジャグラーは受け止める。

藤宮の苦しみ悔しさにはジャグラーも共感できることがあるからだ。

それはかつての自分が今の藤宮と重ねているからでもある。だからこそ止めなければいけない。自分の挫折を味わわせぬ様に。

 

受けの姿勢で聞いていたジャグラーだが、次に藤宮から出た言葉に強い反応を示した。

 

 

藤宮「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

ジャグラー「ッ!」

 

 

――――誰も悲しまない?――――もう何もない?

その言葉に苛立ったジャグラーは次の瞬間

 

 

ジャグラー「甘えるなッッ!!」

 

バシィッ!!

 

藤宮「!?」

 

 

と藤宮の頬を思いっきりビンタをした。

突然の攻撃に加え魔人態の強靭な肉体から放たれる一撃に藤宮は横へ吹っ飛び、壁面に叩きつけられる。

 

 

ガラガラ…

 

藤宮「ぐ…」

 

 

藤宮は床に倒れ伏せ、衝撃で崩れた壁の細かい瓦礫が背中に落ちる。

強烈な一撃で口元からは血が出ている。

そんな中、近寄ったジャグラーは屈むと、苦悶の表情を浮かべる藤宮の前髪を引っ張って無理矢理顔を上げさせる。

 

 

ジャグラー「力を失ったからだ?守るべきものが無くなったからだ?…ハッ!失ったものばかりチマチマ数えやがって。ウルトラの力を得た時もそんな甘えた考えで戦っていたのか…?違うだろ?大を生かす為に小を切り捨てる“覚悟”があったからじゃねぇのか?」

 

藤宮「………」

 

ジャグラー「目に映るものばかりじゃない。もっと大事なものの為に戦ってきたんだろ?答えてみろ…!」

 

 

ジャグラーは禍々しい緑色の双眼で睨んで問う。

藤宮にはまだ自分とは違う明確な点があることをジャグラーは理解していた。

だが、あえて助け舟を出さない。本人に自覚させることが何よりも深く心に刻まれるからだ。

 

 

藤宮「……」

 

 

だが、しばらく経っても藤宮は沈黙したまま、何も答えなかった。ジャグラーの叱咤を受けても尚、わかっていなかったのだ。

その様子から察したジャグラーは呆れてため息をつくと、藤宮の髪を放して姿勢を上げる。

解放され、手をついて四つん這いになって肩で息をする藤宮にジャグラーは見下ろし

 

 

ジャグラー「…かつて、周りを敵にしても怖じけず戦ってきたウルトラマン様もこんな甘ちゃんだったとはな。見損なったぜ……もっと芯がある奴だと思っていたがな……。まあ、赤の他人の俺が言うことじゃないが」

 

 

藤宮に対してそう吐き捨て、ジャグラーは四之宮の姿に戻ると、そのまま近くの出口へ歩いていく。

体勢を整えた藤宮は口元に流れた血を拭うとソファーへ向かっていく。

出口の角に差し掛かった時、四之宮はピタリと足を止めると振り向かない姿勢のまま口を開き

 

 

四之宮「……熱くなりすぎだ。もっと周りのものを見ろ」

 

 

藤宮に対してそう言い残すと、四之宮は歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、10分後。藤宮と四之宮の間にそんなやりとりがあったとは知らない我夢、イリナ、瀬沼の3人は藤宮の潜伏場所へ到着した。

車を降りた3人は前方に見える拠点を見据える。

 

 

イリナ「瀬沼さん。ここに藤宮君が?」

 

瀬沼「ええ。我々の情報に間違いはありません」

 

 

イリナの質問にハッキリと答える瀬沼。

チームリザードの捜査力は冥界……いや、この地球一かもしれないと言われるので確かである。

3人揃って拠点に向かおうとした時、我夢は瀬沼に

 

 

我夢「瀬沼さん。まずは僕とイリナが会ってきます」

 

瀬沼「高山さん…」

 

我夢「大丈夫です、少し話すだけですから。瀬沼さんはもしもの時に備えて外に待機していて下さい」

 

 

身を案じてくれる瀬沼に優しく促す我夢。

―――瀬沼さんは藤宮に何度もくわされている。個人的な恨みも少なからずあるはずだ。もし一緒に会おうとするならば、藤宮はまともに話を聞いてくれないだろう――そう考えた上での制止である。

 

 

我夢「イリナ。行こう」

 

イリナ「う、うん!」

 

 

我夢の誘いにイリナは頷くと、2人は藤宮が待つ廃墟の中へ入っていく。

早く会いたいという焦りを抑えながら2人は散乱している瓦礫や蜘蛛の巣が張り巡らされている建物内を道なりに歩いていくと、開けた部屋に出た。

 

 

我夢「…っ!?藤宮…!」

 

イリナ「藤宮君!?」

 

藤宮「我夢……イリナ……」

 

 

辿り着いた2人は視界に映った人物を見て息をのむ。

ここにいると知っていたとはいえ、正真正銘、本物の藤宮がいたからだ。

藤宮は2人が来ることを察していたのか、特に驚いた様子を見せず、顔を僅かに振り向かせたままだった。

 

行方不明となっていた藤宮の生存に2人は内心喜びつつも、我夢は話しかける。

 

 

我夢「無事だったんだね」

 

藤宮「ああ…」

 

我夢「だったらどうして、君は僕らの前に姿を現さないんだ?もう、僕らが協力できない理由は無いはずだ――」

 

藤宮「あるさ!

 

我夢「っ!」

 

 

そう言ってこちらへ歩み寄ろうとする我夢を藤宮はピシャリと言い放つ。

驚いた我夢が思わずピタッと足を足を止めていると、藤宮はイリナへ話しかける。

 

 

藤宮「元気そうだな」

 

イリナ「…うん。しばらく藤宮君の深刻ぶった顔を見てないから」

 

 

そう返すイリナは顔を曇らせる。

それは以前会った時と比べて明らかに衰弱している藤宮の姿を目の当たりにしたからだ。

短く話した藤宮は再び我夢へ話しかける。

 

 

藤宮「…我夢。俺のせいで沢山の人が傷ついた。この人間界だけでなく、冥界や天界の人にも深く傷跡をつけた。俺は心の中で自分の力に溺れていた……俺はその償いをしなければならない」

 

我夢「僕が君の立場だったら同じことをしたと思う…」

 

藤宮「違うんだよ……。思うのと実際にしてしまうことは……」

 

 

藤宮は悲痛の顔を浮かべ、我夢のフォローをはね除ける。藤宮の奥底から込み上げる罪悪感が良しとしないのだ。

そんな彼に今度はイリナがフォローに入る。

 

 

イリナ「そんなことで誰も責めたりしない。もしあっても、我夢君と私でみんなを説得するから…」

 

藤宮「例え君達が許しても……俺に構うなっ!」

 

 

藤宮は声を張り上げて頑なに拒む意思を見せる。

だが、それでもイリナは諦めず、心痛な顔を浮かべて話し続ける。

 

 

イリナ「確かに人を傷付けた苦しみはわからない。でも、藤宮君が悲しんでるのはわかる……それはほっとけないよ?だって藤宮君自身が変わらなきゃ、出会った意味なんて何もないもの……」

 

藤宮「…」

 

 

イリナの言葉が胸に響いた藤宮は口を閉ざして考える。

ジャグラーの叱咤……我夢とイリナの信頼……それはどれも同情などではなく、自分の心と正直に向き合えというものだった。

藤宮も薄々わかってきた。しかし、自分が犯した罪は償えない程に深く、とても許されるものではない。

 

 

瀬沼「藤宮 博也!G.U.A.R.D.及び三大勢力の権限により、君の身柄を保護させてもらう!」

 

 

どうすれば良いのかと藤宮が悩んだ矢先、我夢達の後ろからしびれをきらした瀬沼がジェクターガンを構えて現れる。

『保護』という名目の『逮捕』にだ。

 

 

「「「!?」」」

 

 

我夢とイリナは瀬沼を止めるか止めまいかのせめぎわに顔を曇らせる中、藤宮はクルリとその場で回れ右すると、着ていたジャケットの右側を広げると我夢達は驚愕する。

それは藤宮の右腰に爆弾が取り付けられていたからだ。

 

唖然とする我夢達に藤宮は右腕を前へ真っ直ぐ上げる。

ゆっくりと見せる様に開いた右手の人差し指と親指には銀色の端子が着けてあり、そこから伸びるコードは爆弾に接続されている。

 

 

藤宮「接触すれば爆発する………悪魔や天使であっても無事でいられない威力のな」

 

 

そう言いながら藤宮はゆっくりと人差し指と親指の先を近付ける。

 

 

我夢「藤宮っ!」

 

イリナ「やめてぇーー!」

 

 

藤宮の脅しに緊迫する一同。

廃墟中に驚く我夢の声と制止を促すイリナの悲痛な叫びが響く。

藤宮は親指と人差し指をくっつくスレスレの間隔で止めると、

 

 

藤宮「道を開けてもらおうか」

 

 

3人に向かって要求を出す。指はそのままの状態を維持したままに。

もし断れば藤宮が死ぬどころか、最悪こちらまで死んでしまう。

3人はこの要求を呑まざるを得ず、大人しく重い足取りで左右に散って道を開けた。

藤宮は腰元の爆弾を見せつけて牽制しながらその間をスタスタと通っていく。

 

 

藤宮「我夢。今度会った時は手加減をするな……でなければお前がケガをするぞ!」

 

我夢「…っ!?」

 

 

藤宮は我夢の横を通り過ぎた時、意味深な言葉を発する。

その意味にもしやと思った我夢は冷や汗を流すと、藤宮に問いかける。

 

 

我夢「本気なのか!?君は僕達とまだ戦うつもりなのか!?」

 

藤宮「……」

 

 

その問いかけに藤宮は何も答えずスタスタと立ち去っていった。

我夢が思う最悪な予感――それは藤宮が再び三大勢力に牙を剥くことだ。

もう互いに争う必要もなく、そもそも理由がない。

しかし、藤宮からは人類削除に躍起になっていた頃の冷たい覚悟が我夢には感じられたのだ。

 

一体、何を―――?藤宮から溢れる嫌な予感を感じながら、3人は遠くなる藤宮の後ろ姿を眺めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点から立ち去った藤宮は個人飛行機に乗り込み、真っ直ぐどこかへと向かっていた。

 

 

藤宮「いけ!『PHOENIX(フェニックス)』!」

 

 

そう言いながら藤宮は手元のコンピューターのスイッチを押し、『PHOENIX』という謎のプログラムを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室「………そうか。再び姿を消したか」

 

 

イリナと共にエリアルベースに戻った我夢はコマンドルームにて、石室に藤宮との一部始終を報告していた。

椅子に座り、困った様子で唸る石室に我夢は言う。

 

 

我夢「コマンダー。でも、僕はアイツを信じたい」

 

石室「…」

 

 

石室は顔を俯かせる。

石室とて我夢と同じくできれば藤宮を救ってあげたいのだ。

しかし、過去に起こした数々の出来事を憎く思う集団が邪魔している。手助けすれば反逆と見なされ、我夢達に危険が及ぶので、先陣きって手助けできないのだ。

 

 

《ウー…!ウー…!ウー…!》

 

『!?』

 

イリナ「ど、どどどうしたの!?」

 

 

どうしたものかと考えようとした矢先、エリアルベース中に警報音が鳴り響く。

あまりもの規模に自室から飛び出したイリナが慌てて入ってくる始末だ。

 

 

「ジオベースから緊急アクセス!」

 

石室「どうした?」

 

 

鬼気迫った顔を浮かべるオペレーターに石室は訊ねると、予想外の言葉が飛び出す。

 

 

「対空間レーザーシステムが何者かにジャックされました!」

 

『!?』

 

石室「何だと…っ!?」

 

 

一同は言葉を失う。

藤宮が仕込んだウイルスは全て撃退、その後は更にセキュリティとウイルスプロテクターを強化して誰にも侵入出来なくしたはずだ。

それが何故……?

 

 

イリナ「ウイルスは全部消えたはずじゃ…」

 

我夢「…っ!そうか!発見されたのはダミーで本命はもっと奥に仕掛けられていたのか!」

 

 

ハッと気付いた我夢は急いでコマンドルーム中央のデスクのコンピューターで解析し始める。

 

 

「監視衛星にアクセス……映像出ます」

 

 

オペレーターはモニターに監視衛星の映像を表示させる。

モニターには地球の大気圏外の様子が映されており、近くにある対空間レーザーシステムが搭載された衛星が宇宙にではなく地球へと照準を変えていた。

 

 

「攻撃プログラム、作動中!」

 

石室「照準はどこだっ!」

 

 

石室は解析する我夢へ訊ねると、最悪な状況に後押しする事実が我夢の口から発せられる。

 

 

我夢「北緯0度。照準はこの、エリアルベースです!」

 

『!?』

 

イリナ「……嘘っ?!」

 

 

発覚した事実に一同は唖然とする。イリナに至っては血の気が覚めていた。

藤宮の狙いは対空間レーザーシステムを利用したエリアルベースへの破壊工作だったのだ。

そうと知るな否や、石室はオペレーターにすぐさま指示を出す。

 

 

石室「推進システム出力全開!エリアルベースの座標を移動させる」

 

「システム作動まで65秒!」

 

「間に合いません!30秒後には直撃します!」

 

 

オペレーターから伝えられる現状に回避策はことごとく砕かれる。

藤宮はこのことも読んでいたのか、確実にエリアルベースを撃ち落とすつもりだ。

 

 

我夢「…っ」

 

イリナ「あ、我夢君っ!」

 

石室「…」

 

 

この絶望的な状況を前に我夢は1人コマンドルームを飛び出す。

怖じ気づいて逃げたのではなく、この状況を打破する為にだ。

石室が真剣な眼差しで見送ったのは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま廊下を出た我夢は懐からエスプレンダーを取り出し、曲がり角付近で止まる。

我夢には今は出来なくても、いつか藤宮が手を取り合う日が来ると思っていた。だが、現実は再び争うという残酷なものだった。

 

 

我夢「どうして……!どうしてなんだぁぁぁーーーーッッ!!

 

 

訳も分からず困惑する我夢はそう叫びながら、エスプレンダーを上へ掲げる。

エスプレンダーの青い液晶の奥から放たれる赤と青の閃光に包まれると、エリアルベースを飛び出し、宇宙空間へと飛び出していった。

 

地球の大気圏外に辿り着いた光は晴れると、我夢が変身したウルトラマンの姿が鮮明と現れる。

大地の赤い巨人、ウルトラマンガイアだ!

 

 

ピュイン…ピュイン…ピュイン…ゴォォォォォ……!!

 

 

 

対空間レーザーシステムを搭載した衛星は幾度かのチャージを終えると、地球に向かってレーザーを発射する。

地球防衛の為のレーザーが地球を護る前衛基地エリアルベースへと襲いかかろうとしていた。

 

 

ガイア「グアァァァァ…!デュアッ!」

 

 

その最中、ガイアは素早く頭部にエネルギーを溜めると、放たれたレーザー目掛けてフォトンクラッシャーを放った。

光線とレーザーはぶつかり合い、バチバチと閃光を散らす。

 

 

藤宮「…」

 

 

衛星とガイアが光線で押し合う様子を藤宮はコクピット内のモニターから眺めながら、あることを思い出していた。

それはかつてガイアとアグル―――自分達が冥界のレーティングゲームのゲームエリアで死闘を繰り広げた際に光線技をぶつけ合ったことを。

 

藤宮は緊迫した面持ちで横の壁に取り付けてある波形パネルに目をやる。

そこにはガイアとアグルの光線技をぶつけた際のエネルギー波形のサンプルと現在、対空間レーザーシステムとガイアの光線技を比較した波形が表示されていた。

まだ不一致な点が多いことに藤宮は苦い顔を浮かべ

 

 

藤宮「まだだ…!我夢!」

 

 

と呟くと、手元のコンピューターのつまみレバーを上げ、レーザーの出力を上げた。

威力を増したレーザーはガイアのフォトンクラッシャーを押し始める。

 

 

ガイア「グアァァァァ……!デヤッ!!」

 

 

手前まで押されたガイアは負けじと気合いを込め、上体を引いてから両腕を前へ突き出す。

太くなったガイアの光線は威力を増し、レーザーを押し返していく。

 

 

藤宮「再び、あの扉を開けるんだ!」

 

 

そう言いながら藤宮はレーザーの出力を最大にする。

ガイアとレーザーの出力はかつてゾーリムを呼び寄せた時と同じ波形に到達していた。

 

衛星が見えなくなるまで極太となったレーザーはガイアのフォトンクラッシャーを更に押し返していく。

 

 

ガイア「グアァァァァ……!デヤッ!!!」

 

 

ガイアは頭を思いっきり上げると、フォトンエッジ発射の体勢で光線の出力を上げて応戦する。

 

 

バチバチ!バチバチバチバチ…!

 

 

ぶつかり合い、拮抗した青と黄の光線のエネルギーは天へと昇っていく。

天へと昇っていたエネルギーによって空間に歪みが生じると、巨大なワームホールが出現した。

 

このことは衛星映像を通じて、エリアルベースにも伝わっていた。

 

 

「ワームホール出現!」

 

石室「まさか、またあの時の…」

 

 

石室はワームホールの規模を見て、苦々しく呟く。

以前にも似た条件で現れた怪獣ゾーリムのことを。

藤宮の狙いはガイアの光線を利用したワームホールを形成することだった。

 

 

イリナ「どうして…」

 

「正体不明の飛行機がワームホールに向かっています」

 

 

イリナが藤宮の行動する意図に困惑する中、オペレーターからの報告が耳に入る。

モニターに目をやると、藤宮の乗る白い飛行機がワームホールへ真っ直ぐ向かっていた。

石室はオペレーターに訊ねる。

 

 

石室「どこの所属だ?」

 

「無所属です。チームリザードの報告によると、藤宮 博也が保有する個人機と思われます」

 

「映像解析の結果、機内には大量の爆弾が搭載されています!」

 

石室「何っ!?なら、藤宮は捨て身で突っ込むつもりか!」

 

イリナ「…っ!?藤宮君…っ!!」

 

 

それを聞いたイリナは絶句し、開いた口を手で覆う。

目は見開き、瞳孔をわなわなと痙攣させる。

そう、藤宮の本当の狙いは罪を償う為、自ら開いたワームホールに自爆特攻を仕掛けることだった。

イリナはショックのあまり、その場で膝をついた。

 

藤宮の操縦する飛行機はグングン進み、遂にワームホール手前まで近付いた。

 

 

「さらばだ、我夢!イリナ!」

 

 

藤宮は愛する者達へ別れの言葉を呟くと、飛行機を更に推進させ、ワームホール内へ突入する。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

藤宮の狙いを察したガイアは止めるべく、全速力で飛行機の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤宮は安堵した。これでようやく破滅招来体に一矢報いることができると。

破滅招来体には効果がないかもしれないが、これで罪も償えるし、後に残された者への足掛かりになるかもしれない。

 

我夢やイリナのことが気がかりだが、彼らは自分よりも強いから心配ない、何とかなるだろう。

特にイリナだ。彼女が自分へ恋意を抱いているのは薄々気付いていた。

初めて同世代の女性に愛されるのは悪くはなかった。

だが、自分は罪人。まだ先がある彼女の未来を自分に関わったせいで奪う訳にはいかない。

彼女には彼女の人生がある。

自分がいない方がきっと幸せだ。

 

そんなことを脳裏に考えながら、藤宮はワームホールを突き進んでいく。

だが、

 

 

バチバチッ!

 

藤宮「!?」

 

 

飛行機は突然推進を止めた。ワームホールから発生する不可視の壁に阻まれ、先に進めなくなったのだ。

藤宮は何とか突破しようとコクピットの機械を調節しようとするが、全てショートしてしまっていた。

後一歩というところで藤宮は完全に破滅招来体への対抗策を失ってしまったのだ。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

藤宮「何っ!?」

 

 

身動きが取れない最悪な状況の中、ワームホールの奥から一匹の怪獣がこちらへ飛んでくる。

その怪獣こそ破滅招来体が送り込んだワームホールの番兵、『X(クロス)サバーガ』である。

人間の分際でワームホールに侵入しようとする不届き者を始末しに来たのだ。

 

 

藤宮「ここまでか…っ!」

 

 

藤宮は悔しさのあまり、歯を噛み締める。

破滅招来体へ一矢報いることが出来なかったことに。

 

だが、ここで終わらない。

怪獣もろとも心中してやると。

そう決意した藤宮の指は自然に自爆スイッチへ動いていた。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

 

追い付いたガイアは全身を白く発光させて高速移動能力を発動すると、藤宮の乗る飛行機へ突っ込む。

Xサバーガが巨大化した手に直撃する寸前、ガイアはそのまま地上へ退避した。

 

 

ドォォォォォン!!

 

 

Xサバーガの攻撃と自爆装置の影響で飛行機は地上でも見えるぐらいの爆発を起こした。

 

 

キィンッ!

 

 

それと同時にワームホールが消滅を始める中、一筋の光が姿を現す。

我らがヒーロー、ウルトラマンガイアだ。

その両手には光の球体が包んでおり、中には気を失って横たわる藤宮の姿があった。

 

 

石室「ふぅ…」

 

イリナ「良かったぁ~…」

 

 

それを見て安堵のため息をつく石室。イリナは目尻に涙を浮かべながらホッと肩をおろす。

 

地上の山岳地帯に降りたガイアは藤宮をそっと地上へ降ろす。

すると、気がついた藤宮は目を覚まし、ガイアを見上げる。

 

 

藤宮「我夢…」

 

ガイア「…」

 

 

ガイアは静かに頷く。それはもう大丈夫だと安心させる意味が込めてあった。

ガイアはその無表情なフェイスから感じられないが、藤宮に後遺症が残らず内心ホッとしているのだ。

 

 

ドォンッ!

 

ガイア「ッ!?」

 

 

安堵する中、ガイアの後ろから何かが降り立つ音が聞こえた。

振り向くと、ワームホールの番兵Xサバーガが降り立っていた。ワームホールへ近付いたガイアを抹殺する為に追ってきたのだ。

ガイアは素早く身構える。

 

だが、Xサバーガは先程の爆弾で負傷したのか、右手はドロドロに溶解していた。これでは戦力は半減するだろう。だが、

 

 

ギィニュュウゥ…!

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

 

そんな懸念も感じさせず、右手が粘土の様に変形して手の形どったかと思うと、Xサバーガの右手はあっという間に再生した。

驚異的な再生能力に内心驚くガイアだが、ここで倒さなければ何も解決しないので、その場から駆け出す。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

走った勢いを利用して空中でスケート選手の様に右回りで回転し、回し蹴りを放つ。

Xサバーガは後退りながらも右腕で防ぐ。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

 

ガイアは掴みかかるが、組み合った状態でクルリと反対方向に回った後、Xサバーガに腕ではね除けられる。

お返しとばかりに左手のドリルで突き刺そうとするが、ガイアは屈みながら反対方向へ移動し、バックステップで距離を取る。

 

 

Xサバーガ「クァァァ~~!」

 

 

尻尾でのなぎ払い攻撃を仕掛けるが、ガイアはしゃがんで難なく回避する。

だが、この立ち上がるまでの時間をXサバーガは計算していた。

 

ガイアが立った瞬間、Xサバーガは左手のドリルを回転させ、ガイアの胸元に突き立てた。

 

 

ガイア「ドアァァァ~~~~ッ!?」

 

 

回避不可能な攻撃にガイアは胸元から火花を散らして大きく後ろへ吹っ飛んだ。

ゴロゴロと転がるガイアだが、すぐに片膝がついた体勢に切り替える。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

そのままガイアは手裏剣を投げる様にガイアスラッシュを放つ。赤色のくさび形光弾がXサバーガ目掛けて飛んで行く。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

ドォンッ!

 

 

だが、Xサバーガは思いっきり地面を蹴って浮き上がった地面で盾――――所謂畳返しで防いだ。

ガイアスラッシュの威力で土畳はガラガラと土煙を舞わせながら砕け散る。

 

土煙が晴れた先にはXサバーガは―――いなかった。

物音立てずに消えたのである。

 

 

ガイア「…!?」

 

 

これには流石のガイアも驚き、その場で立ち上がる。

―――奴はどこだ?

そう警戒しながらあちこち見回していたその時だった。

 

 

ドォォォンッ!

 

ガイア「ドォアァァァァーーーー!?」

 

 

足下の地面が盛り上がったかと思うと、飛び出してくる何かにガイアは足をすくわれ、地面に背中を叩きつけられる。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

 

地中から飛び出してきた正体はXサバーガだった。

Xサバーガは左手のドリルで地中を削りながら掘り進み、身を隠して奇襲をかけたのだ。

 

 

ガイア「…ッ」

 

 

ガイアは痛む体を抑えて片膝をつきながら体を起こす。

どんな手強い相手でも負けないという強い闘志が後押ししたからである。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

ガイア「!?」

 

 

だが、次の瞬間。ガイアは目を疑う光景を目にする。

それはXサバーガが3体に分身して自分を囲っていたからだ。

 

どれが本物だ?ガイアは困惑しながらも周りを囲むXサバーガを見渡すが、これといって違う特徴がなく、見分けられない。

 

 

Xサバーガ「クァァァ~~!!」

 

 

そんな中、Xサバーガが右手を突き出して巨大化させると、掌の穴から生体兵器小Xサバーガを放った。

放たれた無数の小Xサバーガ達はガイアの顔、腕、肩、太ももにガッシリと纏わりつく。

そして、赤い電流が流れたかと思うと

 

 

ドォォォォンッ!!

 

ガイア「ドアァァァァァァーーー!!」

 

 

小Xサバーガはダイナマイトの様に一斉に爆発した。

強力な威力にガイアは苦悶の叫びをあげる。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

Xサバーガ「クァァァ~~!!」

 

ガイア「グアァァァァッ!?」

 

 

それを皮切りに他のXサバーガも右手を巨大化させて掌の穴から小Xサバーガを放つ。

何十体もの小サバーガがまたもやガイアの全身に纏わりつく。

 

 

ガイア「グアァァァァーーーーーーッ!!」

 

[ピコン]

 

 

小Xサバーガから流れる赤い電流にガイアは悲鳴をあげる。ライフゲージも青から危険を報せる赤に点滅を始めていた。

 

 

ドォォォォォォン!!

 

ガイア「ドォアァァァァーーーー!!」

 

 

ガイアのエネルギーを吸いとった小Xサバーガは自ら爆発!

激痛のあまり、ガイアはその場で膝をついた。

ガイア、ピンチ!

 

 

藤宮「…」

 

 

そのピンチに藤宮は右手に持つアグレイターに目をやる。

ウルトラマンの力をあれば助けられる。

だが、それでも地球はアグルの光を授けてくれない。

 

 

藤宮「…くそっ!」

 

 

ガイアのピンチを前に何も出来ない自分の無力さに苛立った藤宮は近くの湖に投げ付ける。

 

しかし、藤宮はすぐに冷静になる。

こんなことをしても何の解決にならないことは藤宮自身もわかっているのだ。

 

 

藤宮「…?」

 

 

ただ、この状況をただ黙って見るしかないのかと悔しく思った矢先、湖面を奇妙な点に気付いた。

湖面ではXサバーガとそれに追い詰められるガイアが映っているが何故か1体しか映っていなかった。

すぐさま顔を上げて地上を見ると、やはりXサバーガは3体いた。

 

湖面と現実を見比べて、Xサバーガは全部本物ではなくあくまで分身で、本物はガイアの右隣にいることを突き止めた。

 

 

藤宮「あいつが本物かっ!」

 

 

そうと分かると否や、藤宮は右腰に装着していた爆弾を外し、起爆スイッチを起動させる。

 

 

藤宮「わあぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

 

渾身の叫びをあげながら藤宮はXサバーガ目掛けて力強く投球する。

 

 

ドォォンッ!!

 

 

放り投げられた爆弾はXサバーガの背中に直撃すると、たちまち大爆発を起こした。

 

 

 

藤宮「っ!」

 

 

その爆風に巻き込まれた藤宮は大きく吹き飛ばされる。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!?」

 

ガイア「…?」

 

 

藤宮の渾身の一撃を食らったXサバーガは苦痛の叫びをあげる。よほど堪えたらしく、分身体は全て消滅していた。

突然の爆発に疑問に思ったガイアは爆弾が投げられた方へ目をやる。

 

 

ガイア「藤宮!?」

 

 

爆風で吹き飛ばされた藤宮は岩に体を打ったのか意識を失っていた。

それを見たガイアは藤宮を危険な目にあわせた自分の不甲斐なさ、藤宮を絶望させて殺そうとしたXサバーガへの怒りを爆発させる!

 

 

ガイア「僕は…っ!許"さ"ん"ッ!!」

 

 

怒りの叫びをあげたガイアは素早くヴァージョンアップポーズをとると、赤い輝きと共にスプリームヴァージョンへ姿を変えた。

 

 

ガイア「デヤッ!!グアッ!」

 

 

ガイアは力強いファイティングポーズを取ると、地面を蹴って駆け出すと、その勢いで跳躍し、倒れこみの右回し蹴りを顔面にくらわせる。

スッテンコロリと綺麗に倒れたXサバーガ。だが、ガイアの攻撃はここからが始まりだ。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

ガイア「ダッ!!」

 

ドォンッ!

 

 

ガイアはXサバーガの喉元を蹴り上げて起き上がらせると、両手で頭を強引に掴む。

そして、そのまま軽く走って勢いつけると、プロレスのフェイスクラッシャーの様な技を炸裂する。

 

ガイアは間髪入れず体勢を入れ替え、頭を掴んで無理矢理起こさせる。

未だ朦朧としているXサバーガに掴みかかり、グルグルと回りながら移動し

 

 

ガイア「ダァァァァァーーーーーー…!トアッ!!!」

 

ドォンッ!

 

Xサバーガ「クァァァ~~!?」

 

 

巴投げの要領で反対の地面へ投げ付ける。

背中から地面に叩きつけられた衝撃にXサバーガは苦痛の叫びをあげる。

 

Xサバーガは反撃にとふらふらしながら左手のドリルで突き刺そうとするが、ガイアにガシッと掴まれて止められる。

 

 

ガイア「デヤッ!」

 

ドォンッ!

 

 

ガイアはそのまま足を引っかけて、倒れる勢いを利用して反対の地面へ思いっきり投げ付ける。

それでもなお、Xサバーガは諦めずに立ち上がるが

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

Xサバーガ「クァァァ~~…!」

 

 

ガイアの強烈な右ラリアットをくらい、またもやスッ転ばされる。

その隙にガイアは両手でしっかりと尻尾を掴むと、腕を駆使してXサバーガを回し始めた。

 

 

ブォンブォンブォンブォンブォン…!

 

ガイア「グアァァァァァァァァァ………!」

 

Xサバーガ「クァァァ~~~……」

 

 

ガイアは一切容赦せず、力強く回し続ける。

その慈悲の欠片もない攻撃にXサバーガは平衡感覚を失い、声も弱々しくなっていた。

 

 

ガイア「グアッ!!」

 

ドォンッ!

 

 

ひととおりぶん回したガイアはXサバーガを投げ飛ばす。

勢いよく飛んでいったXサバーガは地面を何度もバウンドしながら転がっていく。

 

 

Xサバーガ「ピシュッ!」

 

 

それでも立ち上がったXサバーガは翼を広げると、ガイアへ突進攻撃を仕掛ける。

これ程痛め付けられてもなお戦おうとするとは流石ワームホールの番兵である。

しかし、そんな攻撃はガイアには通用しない。

 

 

ガイア「ダァァァァァーーー!!」

 

Xサバーガ「クァァァ~~!?」

 

 

向かってくるXサバーガの顔面にガイアはカウンターでエネルギーによって真っ赤に染まった右拳を突き刺し、大きく後方へ吹っ飛ばす。

Xサバーガはまたもや地面とキスするはめになった。

拳の威力と突進の勢いもあってXサバーガの顔面は押し潰したペットボトルの様にぐにゃぐにゃに潰れていた。

 

 

ガイア「デュアッ!デヤァァァァーーーッ!!!!!」

 

 

その隙にガイアは天高く跳躍すると、右足を突き出したキックポーズを取った。

足先がエネルギーによって赤く染まり、急降下を利用したガイアの必殺技『スプリームキック』を放った!

 

 

ドガガガガァァァァァァァァァンッッッ!!!

 

 

スプリームキックが炸裂したXサバーガは断末魔をあげる間もなく爆発四散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ふぅ…」

 

 

戦いを終えたガイアは光になると、我夢の姿へ戻る。

しかし、今回の敵は相当堪えた為、我夢はくたびれた様に息を吐く。

 

 

藤宮「我夢…」

 

我夢「藤宮」

 

 

すると、湖の反対側から藤宮の声が聞こえ、我夢はそちらへ顔を向ける。

体をあちこちぶつけて苦しそうにする藤宮だが、命には別状なさそうである。

藤宮は息を荒げながら話す。

 

 

藤宮「はぁ、はぁっ!エネルギー分析では完璧に再現できたはずだった…!」

 

我夢「それでわざと…」

 

藤宮「どうしてェ!俺を助けたりした!」

 

 

藤宮は声を荒げて問いかける。

あのまま見捨てていても状況は変わらないはずなのにどうして助けたのか、自分を傷つけた相手を助けたりするのが藤宮には理解できなかった。

――どうせならそのまま死ねれば良かったのに…。そんなことを考えていると、我夢は眉間にしわを寄せて言い返す。

 

 

我夢「甘ったれるな藤宮!そんな償い方だなんて、誰も求めていない!君を心配してくれる人はちゃんといるのに……どうしてそれをわかってやれないんだ?」

 

藤宮「…」

 

 

心配する人―――。それを聞いて藤宮の脳裏に1番思い浮かんだのはイリナだった。

出会いこそ最悪だったが自分を理解してくれ、誰よりも傍にいようとした彼女のことを…。

 

 

藤宮「っ」

 

 

しかし、藤宮は振り払うと、おぼつかない足取りで立ち去っていく。

我夢は去り行く藤宮の後ろ姿を心痛な面持ちで見つめ、こう呟いた。

 

 

我夢「もう、僕らには戦う理由なんて何もないんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四之宮「よう」

 

藤宮「…っ」

 

 

我夢と別れた藤宮は苦痛で顔を歪ませながらふらふらと歩いていると、道中でニタニタと笑う四之宮に出会った。

ピタリと一瞬止まった藤宮だが、すぐに目線をそらすと四之宮を無視して歩み続ける。

 

 

四之宮「随分無茶なことをするんだな。あんな巨大な敵を相手に」

 

 

四之宮の横を通り過ぎた時、四之宮が呆けた口調で話しかける。

確かに四之宮の言ってることは間違いない。ウルトラマンの力を失った今の藤宮では太刀打ちできる程、破滅招来体は甘くない。

だが、藤宮はジロリと四之宮を睨み

 

 

藤宮「……俺の体だ。どうしようか勝手だ……。俺に構うなっ!」

 

 

そう言い放つと、藤宮は歩くペースをあげて反対方向へ歩き去っていく。

藤宮は自分の償うのを諦めろと四之宮から言われた気がしてならなかったからだ。

 

四之宮はクルリと振り向き様にジャグラー魔人態に姿を変えると、藤宮を見据え

 

 

ジャグラー「ンッフッフッ……素直に聞いとけばいいものを。困った小憎だよ、全く」

 

 

そう悪態をつくと、ジャグラーは闇を纏って何処かへ消えていった。

 

 

 

 




次回予告

怪獣によって大勢の部下を失った男。
今地底に眠る一匹の怪獣に先制攻撃が…!

次回、「ハイスクールG×A」
「大地裂く牙」
ガイアよ。今、君にできる事は何なんだ?





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第50話「大地裂く牙」

地殻怪地底獣 ティグリス 登場


ある休日の昼。

いつもの様に兵藤家に訪れた我夢は解析に使う機器や生活用品等を自室に配置していた。その隣では朱乃が手伝いに来ていた。

 

 

我夢「ふぅ……これで終わりだな」

 

 

そう呟いてひと息ついた我夢は近くで運び終えたソファーに座る朱乃へ顔を向ける。

 

 

我夢「すみません、僕の分まで手伝ってもらって…」

 

朱乃「あらあら、いいですのよ♪一緒に住まわせて頂いたことですし、お引っ越しを手伝うのは当然のことですわ♪」

 

 

礼を告げる我夢に朱乃はいつものニコニコ笑顔で返す。

そう、彼女の言う通り、我夢は今まで住んでいたマンションからこの兵藤家に引っ越すことにしたのだ。

これに思いきった経緯は、非常事態の際にわざわざ兵藤家へ赴くのは少々面倒だからと前々から思っていたからである。

それに以前から一誠の母に「いっそここで住めばいいのに」と誘われたこともあって、今回引っ越すことにしたのだ。

 

ちなみに軽い荷物以外は魔法陣で転送してもらったので引っ越し業者入らずだ。現在、冥界に呼ばれている小猫の荷物も彼女の部屋へしっかり運んでいる。

 

我夢は「う~ん」と唸って気持ちよく背を伸ばすと、ある提案を出す。

 

 

我夢「朱乃さん。せっかく手伝ってくれたことですし、何かお礼をしたいです」

 

朱乃「お礼?」

 

我夢「ええ、何でもいいですよ。僕に出来る限りなら…」

 

朱乃「お礼ねー……あっ」

 

我夢「っ!」

 

 

そう言われて朱乃は頬に手を当ててしばらく考えると、ポンと名案が思い付いた。

その時の朱乃は頬を赤らめ、どこか妖艶さがあった。

朱乃から漂う色気に我夢は生唾を飲むと、朱乃は口開く。

 

 

朱乃「じゃあ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから5分後。冥界から帰ってきた小猫は兵藤家の廊下を歩いていた。

今回冥界に呼ばれたのは悪魔稼業の勤労勲章を授与された為である。

冥界では悪魔稼業での売上が基準よりも大幅に成績が良かった悪魔に対して勤労勲章を授けるシステムになっている。小猫も最近の稼ぎが良かった為、その対象に選ばれたのである。

 

 

小猫「(……我夢先輩と朱乃さんにお礼を言わなくちゃ)」

 

 

小猫は自分の荷物を運んでくれた我夢と朱乃がいるであろう部屋へ向かっていた。

仕方がなかったとはいえ、自分の荷物を快くやってくれた彼らにキチンとお礼を言うのが筋であろう。

そう思いながら我夢の部屋の近くを通った時である。

 

 

『んんあ…ッ!』

 

小猫「…っ!?」

 

 

艶めかしい女性の声が聞こえ、小猫は目を見開く。

声のする方を探ると、発生源は我夢の部屋からだった。

小猫はもしや…と頬を赤らめ、何故かドキドキする胸を抑えながら恐る恐るドアに耳を当てる。

 

 

朱乃『我夢君…!じょ、上手ですわっ!ンんんッ!?』

 

我夢『朱乃さん!もっと声を、声を抑えて…!』

 

朱乃『んんッ!だって、気持ちがいいですもの…ッ!はあンッ!そこ、そこいい…っ!もっと!もっとォ…!』

 

小猫「~~~~!!」

 

 

小猫は羞恥で顔を真っ赤に染めて悶える。

部屋には声や気で我夢と朱乃がいるというのがわかる。

だが、ドア越しから聞こえる少々焦っている我夢と喘ぐ朱乃───この2人の会話で“淫らなこと”を繰り広げていると嫌でも妄想してしまう。

女性陣の中でも特にそういった方面に不慣れな小猫にとっては我がことのように恥ずかしい…。

 

 

我夢『朱乃さん、喉渇きませんか?』

 

朱乃『んんっ、そうですわね…。確か、アーシアちゃんが買ってきたジュースが下に』

 

我夢『ええ。僕が取ってきますよ』

 

朱乃『お願いしますわ』

 

小猫「っ!?(…まずい!)」

 

 

恥ずかしさのあまり悶々としていると、ドア越しからそんな声が聞こえ、小猫はハッとなる。

急いで離れようとするが、あまりもの恥ずかしさのせいで腰が抜けてしまって動けない。

どうしようどうしようと焦る中、我夢の足音が近付いてくる。

立てなくとも、ほふく出来るぐらいの距離にある柱の陰に隠れられるが、それを考える冷静さは今の小猫にはなかった。

 

 

ガチャ…

 

 

遂にドアが開けられ、小猫は中から出てきた我夢と目が合う。

 

 

我夢「あれ?小猫、帰ってきてたんだ。どうしたんだ?そんなところでへたりこんで」

 

小猫「…あっ…ああ…」

 

 

我夢が訊ねるが、パニック状態の小猫の耳には届かず口をパクパクさせるだけだ。

先程まで部屋の中であんなことをやっていたにも関わらず、平然といられる我夢に小猫は更に顔を赤くする。

 

 

我夢「どうした?顔が赤いぞ。熱でもあるのかな」

 

小猫「…っ!」

 

我夢「う~ん。熱は無さそうだけど…」

 

 

小猫の様子が流石に変と思った我夢はその場でしゃがむと右手を小猫の額に当てて熱を測る。

小猫は昔、リアスにもしてもらったことがあるが、今回は異性────しかも相手は自分の想い人(我夢)だ。

恥ずかしさのボルテージが限界を超え、堪えきれなくなった小猫はガバッと立ち上がると、頭を下げ

 

 

小猫「…す、すみませんっ!私、何も聞かなかったですから!荷物を運んでくださってありがとうございます!!失礼しました!」

 

我夢「あっ!ちょっ…!」

 

 

逃げる様にそう言い残すと、意味を問おうとする我夢を残して脱兎の如く廊下の奥へ走り去る。

遠くなる小猫の姿を見ながら我夢は首を傾げていると、外の様子が気になったのか部屋から朱乃が出てくる。

 

 

朱乃「我夢君。どうしましたの?」

 

我夢「あ、いや、小猫がいたんですけど様子が変でして……顔が真っ赤でしたし。病気じゃなさそうでしたけど、気になることを言ってて」

 

朱乃「気になること?」

 

我夢「ええ、『何も聞かなかった』とか何とか…」

 

 

それを聞いた朱乃は察してクスリと笑う。

我夢は未だわかっておらず、首を傾げているばかりだ。

我夢は訝しげにボソリと呟く。

 

 

我夢「ただマッサージしてただけなのにな~……うるさかったのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、エリアルベースに1人の男がやってきた。

白いG.U.A.R.D.の士官服に身を包み、サングラスをかけた身長185センチもあろう大男は2人の部下を引き連れ、コマンドルームに足を運ぶ。

大男はピシリと姿勢を正し、部下と共に室内の石室、アザゼルに敬礼をする。

 

 

柊「G.U.A.R.D.環太平洋部隊の(ひいらぎ)です」

 

石室「XIGコマンダー石室です」

 

 

石室も合わせて敬礼する。

互いに堅苦しい挨拶を交わすと、両者はフッと頬を緩める。

 

 

石室「久しぶりだな、柊君……おっと失礼。今は柊准将殿か。あまりでしゃばれないな」

 

柊「よして下さいよ、石室隊長。今も昔も隊長の部下には変わりませんから」

 

 

そう言って笑い合う2人。

柊は石室がまだG.U.A.R.D.陸上防衛隊長として部隊を率いていた頃の部下である。

立場が大きく変わった今でも2人の関係は変わらないのである。

 

 

柊「噂には聞いていましたが、素晴らしい基地です。ここが空の上だとはまだ信じられません」

 

 

サングラスを外した柊は周りを軽く見回して感嘆の声をもらす。

それもそうだろう。人間界に加え、冥界や天界の最先端の技術が用いられているのだから。

 

 

石室「さっそくだが、用件を聞こうか」

 

 

仕事モードに切り替えた石室はそう訊ねると真剣な顔に切り替えた柊は部下に耳打ちすると、モニターに1つの湖の解析地図を表示させる。

それを見たアザゼルは問う。

 

 

アザゼル「これは?」

 

柊「『津村湖』近辺の地層を調査した地図です。以前から、この湖の地下1500メートルの地点に怪獣が眠っていることが判明しています。コードネームは『ティグリス』」

 

石室「ティグリス…」

 

柊「そうです。我々は明後日、ティグリスに対し、『地底貫通弾』による攻撃を実施します」

 

 

それを聞いた石室は不快そうに眉をピクリと動かし、アザゼルも不快そうに口を締める。

アザゼルも石室も地底貫通弾の恐ろしさを知っているからだ。

 

 

アザゼル「おいおい。地底貫通弾はかつて国際条約やらで戦争での使用を禁止されている大量破壊兵器だぞ?例え、怪獣相手に使うとしても、無神経にそれを使うのは違うんじゃねぇのか?」

 

 

アザゼルが異議を申し立てる。言葉こそ発さずも石室も同じ意見だ。

怪獣とはいえ、そこにいるだけなのに先制攻撃を仕掛けるのはナンセンスだ。

それに対して柊は口を開き

 

 

柊「アザゼル技術顧問。怪獣はいつ目覚めるかわかりません。地底貫通弾は地下にいる怪獣に致命傷を与える唯一の兵器です」

 

アザゼル「しかし、環境汚染や地殻破壊等もあると聞いている……」

 

柊「環境が護られても、そこに住む人間が“安全”でなくては……意味がない!」

 

 

柊は頑なに意思を変えず、アザゼルを鋭く見据える。

お互い一歩譲らない姿勢だ。

柊は石室へ視線を変えると

 

 

柊「これは決定事項です。XIGには万が一のことを備えて、バックアップをお願いしたい…!」

 

『…』

 

 

真っ直ぐと言い放つ柊。

与えられた指示にこの場にいる皆は納得できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

柊がコマンドルームを立ち去った後、石室とアザゼルは彼について話をしていた。

石室は内心ショックを受けていた。昔の彼は先程の様な冷酷な男ではなく、優しい人間だったからだ。

心境が変わったというのもあるが、その激変ぶりに昔から知っている石室にとっては辛いものだった。

 

石室は辛さを内心に秘めつつ、アザゼルに問いかける。

 

 

石室「アザゼル……(あいつ)のことをどう思う?」

 

アザゼル「意思の強い男、だな。ありゃあ、テコでも動かねぇぞ」

 

 

アザゼルからの印象を聞いた石室は頷くと、それを皮切りにあることを話し始める。

 

 

石室「アリゾナのスコッツデールで怪獣と戦ったG.U.A.R.D.アメリカの地上部隊が全滅したのを覚えているか?」

 

アザゼル「ああ。確かアグルが世界各地の怪獣を目覚めさせた時のか…」

 

 

アザゼルは思い出す。

9月の上旬頃、宇宙からゾーリムがやってくる前に人類を滅ぼそうと決断したアグル───藤宮が怪獣を目覚めさたことを。

それが原因が人間界中は大パニックとなり、多くの人々の心に深い傷痕を残したことを今でも鮮明に覚えている。

アザゼルが出来事を思い出していると、神妙な顔を浮かべる石室から出た言葉に驚く。

 

 

石室「彼はその部隊の指揮をとっていた…」

 

アザゼル「…っ!?本当か!」

 

石室「ああ」

 

 

訊ねるアザゼルに石室は頷く。

それを聞いたアザゼルは何故、そうしてまで怪獣を殲滅させようとした経緯がわかった。

アザゼルは顔を曇らせると、何もない虚空を遠い目で見据える。

 

 

アザゼル「自分の部下を失った辛さはわかるが…」

 

石室「…」

 

 

そう呟くアザゼルに石室は複雑な面持ちで返す。

アザゼルもかつての大戦で多くの部下を失い、怒り、憎しみ、悲しみを味わっている。その経験もあって今は戦争は馬鹿馬鹿しいと思い、今日に至っている。

しかし、だからといって怪獣と理由だけで攻撃するのは────。

 

 

 

 

 

その頃、柊は近くに部下を待機させ、窓から空の絶景を見下ろしていた。

外はすっかり夕焼けに包まれ、オレンジ色に包まれた空の美しい情景が広がっている。

 

 

柊「美しい景色だ。こんなところにいるから、地上の人間の痛みがわからなくなる」

 

 

柊は空の絶景に感銘しつつも不満の声をもらす。

地上で自分や人々が受けた苦しみ、痛み、悲しみ……その他諸々の辛さはXIGの面々には決してわからないだろう───そんな冷ややかな心情で沈み行く大陽を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、テレビ局『KCB』のアナウンサーはニュースで以下の内容を報じた。

 

 

『G.U.A.R.D.は津村湖の地下に潜む怪獣に対し、地底貫通弾による攻撃を決定しました。ミサイルは明日の午後、発射される予定です』

 

 

そう、G.U.A.R.D.が地底貫通弾を用いて先制攻撃を仕掛けることをだ。

これには『怪獣に怯えなくて済む』『暴走する怪獣への抑止力に使える』という賛成意見や『いくら何でもやり過ぎ』『怪獣も生き物なのに…』といった反対意見がSNS上のネット掲示板等へ多数投稿されていった。

 

 

リアス「爆弾を怪獣にね…」

 

一誠「おいおい、マジかよ…」

 

 

そのニュースは勿論、リアス達の耳にも届いていた。

まだ何もしていない怪獣に対して攻撃を仕掛けるのはリアス達も納得がいかない様子だった。

 

 

我夢「…」

 

 

一同が騒然とする中、我夢は深く考えて込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

そして、同時刻。街角で見ていた彼も何かを考えると、足早にどこかへ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な思いが交差しながらも夜が明け、翌日。

XIGの隊員服に身を包んだ我夢は、小猫と共に津村湖に訪れていた。

我夢は津村湖の近くにそびえ立つ地底貫通弾の管制施設を見据える。

 

 

我夢「何をした訳でもない……地底に眠っている怪獣にミサイルを撃ち込む。そんなことが───」

 

「許されるはずがない」

 

「「!」」

 

 

我夢の呟きに背後から続けて答えてきた声に2人は振り向く。

 

 

我夢「藤宮…!」

 

小猫「…!」

 

 

話しかけてきた人物こそ、元・ウルトラマンアグルである藤宮 博也だった。

我夢は以前会ったことがあるが、その顔は前よりも衰弱しきっており、目の隈はより黒く、頬も痩せこけ、ストレスからか髪の毛にも白髪が2~3本チラチラと覗かせている。 

歩み寄ってくる彼に僅かながらも警戒を抱く小猫を我夢は肩をポンと軽く叩いて緩めさせるのをよそに、藤宮は話し続ける。

 

 

藤宮「地底に眠っていた怪獣を呼び起こし、結果的に地底貫通弾を使わせたのは俺だ」

 

我夢「しかし、それは…!」

 

藤宮「そうしていなければ、沢山の人間が死んでいた!……俺は救われたと思っていた。だが、今は違う!地球に向けた刃は、いつか必ず人間自信に跳ね返る…!」

 

我夢「そうかもしれない…」

 

 

そう言いながら我夢は顔を曇らせる。

───騙されていたとはいえ、破滅招来体から地球を護る為にやったことだ。罪意識があるのは彼が善人である証拠だが、あまりにも自分を責めすぎている……。

我夢がそんなことを思っていると、藤宮は地底貫通弾の管制施設へ視線を向ける。

 

 

藤宮「俺は腕ずくでも地底貫通弾の発射を止める」

 

我夢「藤宮…」

 

藤宮「俺は俺のやり方でやる……。お前達は自分で出来ることを考えろ」

 

 

そう言い残すと、藤宮は管制施設の方へ走り去っていった。

 

 

「「……」」

 

 

───自分達で出来ること……。取り残された我夢と小猫はその言葉の意味を深く噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石室「柊准将。地底貫通弾の使用を思い留まってくれませんか…?」

 

 

一方、エリアルベースでは石室が柊に地底貫通弾での攻撃を止める様に進言していた。

その態度はかつての部下に接する上司ではなく、1人の軍人に対して接する極めて真剣なものだ。

石室は続け

 

 

石室「部下を失った辛さは自分でもわかるつもりです…」

 

 

そう言いつつ、僅かに顔を曇らせる。

石室も軍人である以上、戦場で多くの部下を無くしている。苦楽を共にした元・部下である柊の気持ちも尚更、わかる。

しかし、相手が怪獣というだけという理由で攻撃する───それだけで恨みをぶつけるのは間違っている。

終わらない憎しみの連鎖を断ち切る……そういった石室の思いがあった上での制止だが、

 

 

柊「失ったのは、私の部下だけではないんです…」

 

 

柊は石室の瞳を捉え、言い放つ。その眼には生半可ではない、依然として変えない姿勢を貫く覚悟があった。

 

 

石室「…」

 

 

それを察した石室は物悲しそうに目を伏せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、我夢は地底貫通弾の発射を阻止するべく、リアス達に協力を仰ごうとXIGナビを通して呼び掛けていたのだが…

 

 

《リアス「駄目ね…。地底貫通弾を止めるのは許されないわ」》

 

我夢「…どうしてです?」

 

 

結果はノーであった。あまりにも意外すぎる返答に我夢が問いかけると、リアスは神妙な顔を浮かべ

 

 

《リアス「人間界の方針を必要以上に干渉するのは私達、異種族の間では禁止されているの。悪魔稼業とかの国単位に影響を及ぼさないレベルなら大丈夫だけど、人間が取り決めた政権には流石に踏み込めないわ」》

 

我夢「そんな…」

 

《リアス「我夢。残念だけど今の私達には静観しか出来ないわ」》

 

 

顔を曇らせる我夢につられてリアスも曇らせる。

この様子から、本当はリアスもこの作戦を止めたいのが我夢には痛い程わかる。力があるのに静観するしかないという選択しかない現実が歯痒くて仕方がない。

 

我夢はXIGナビを閉じると、津村湖へ目をやる。

青い湖は大陽の日に照らされ、テラテラと明るく光っている。

この美しい自然がもうじき地底貫通弾によって憎しみと怒りが籠った血生臭い地になる…。そう思った我夢は怒りとも悲しみともとれない顔を浮かべ、自然と拳を握り締める。

 

 

小猫「…先輩」

 

 

そんな我夢の様子を小猫は心配そうに見つめるのだった。

 

その時、時刻はもうすぐ正午に差し掛かろうとしていた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻が正午に差し掛かろうとする中、G.U.A.R.D.のマークが記された1台の車が地底貫通弾の管制施設に到着した。

 

 

柊「…」

 

 

車を運転していた人物───柊は2人の部下を連れて降りると、管制施設を見据える。

サングラスの奥にあるその目は待ちに待っていたと言わんばかりの強い念が籠っていた。

 

柊は部下を引き連れて、管制施設へ入っていく。

 

 

藤宮「…」

 

 

その様子を木陰から身を隠していた藤宮は見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、津村湖付近に位置する津村町には最悪の事態を懸念した石室の伝達により、町全域に避難勧告が伝達されていた。

突然の避難勧告にパニックになる町の人々をG.U.A.R.D.の隊員は冷静に避難誘導していく。

 

 

石室「チームライトニング出動!津村町上空を警戒せよ!」

 

 

石室の指令が下った梶尾、四之宮、匙の3人は各自、3機のXIGファイターに乗り込む。

 

 

梶尾「オールチェックグリーン!ファイター1(ワン)、スタンディングバイ!」

 

四之宮「ファイター2(ツー)、スタンディングバイ!」

 

匙「ファイター3(スリー)、スタンディングバイ!」

 

梶尾「チームライトニング、シュート!

 

 

梶尾の号令と共に3人はコンテナ状態のファイターを発進させ、エリアルベースの出撃ゲートから飛び出すと、フライトモードに変形した3機のファイターは空を架けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、湖畔にいる我夢は猫又モードになった小猫の気の探知能力頼りに怪獣を探していた。

───地底貫通弾の発射を阻止出来ないのなら、その前に怪獣を救えばいい。小猫に同行を頼んだのも彼女が仙術が使えるからである。

 

しかし、懸命に探索しているが怪獣はよほど深い位置に眠っているのか中々すぐには見つからない。かれこれ5分経つが、尻尾も掴めない状況だった。

 

 

我夢「小猫。以前、ミズノエノリュウが現れたことを覚えているか?」

 

小猫「…はい」

 

 

探索中、ふと問いかけられた小猫はピクリと猫耳を動かすと、地に手をついた姿勢のまま頷く。

忘れるはずもない。ミズノエノリュウは今の駒王町が出来る前からその大地を護っていた守護神である。

駒王町の都市開発の為に龍脈を断ち切ったことに怒り、地上を取り戻す為に暴れ回るが、朱乃の説得を受けて地上へ戻っていった…。

自然の恐ろしさを体現した怪獣のことを小猫は思い出していると、我夢はそれを皮切りに話し続ける。

 

 

我夢「ミズノエノリュウは人が作った町を見ていた……朱乃さんの仮説だけど、やり直すチャンスを与えてくれたんだ。人間さえ、その気になれば………」

 

 

我夢は「けど」と続けると、湖畔を遠い目で眺め

 

 

我夢「今、人間は自らそのチャンスを───」

 

小猫「……投げ出そうとしている?」

 

 

続けて小猫が呟くと、我夢は頷く。

やり直す機会を与えても尚、過ちを犯す人類に2人は何ともいえない気持ちを抱きながら、湖畔の向こう岸にある地底貫通弾の管制施設を見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「予定通り、5分後に地底貫通弾を発射する。総員、配置につけ」

 

 

正午まで後5分まで迫った頃。管制室に入った柊はマイクを通して職員達に命じていた。

スイッチ一本押せば、地底貫通弾はすぐにでも発射できる……そんな状態だった。

 

管制室に繋がる通路を藤宮は単身乗り込んできていた。

 

 

「誰だ?ここは関係者以外立ち──ぐあぁぁぁーー!?」

 

「ぐぅあぁぁっ!?」

 

 

管制室前に見張りとして立っていた柊直属の部下2人を懐に忍び込ませていたスタンガンを用いて気絶させると、藤宮は管制室へ入っていく。

 

藤宮は管制室に入ると、そこには今まさに発射スイッチに指をかけている柊の姿があった。

背後から藤宮が侵入していると気付いた柊は隙を見せぬ様、ピタリと動きを止めていると、藤宮は口を開き

 

 

藤宮「あなたがこの作戦の責任者か?」

 

 

そう訊ねると、柊はゆっくりとした足取りで振り向く。

見覚えのある顔を見て、柊は威圧しながら訊ねる。

 

 

柊「……柊だ。君は確か……」

 

藤宮「藤宮 博也」

 

 

藤宮は柊が言う前に名乗ると、柊はサングラスを外し、鋭い眼光を向けた。

それもそうだろう。自分の部下を失った原因は間接的にとはいえ、アグルと何かしらの関係があるこの男なのだから。

睨みを効かせる柊に藤宮は警告を促す。

 

 

藤宮「これ以上、地球に傷を負わすな……。こんなことを繰り返しているうちに世界は滅ぶ…!」

 

柊「…テロリストに指図される覚えはない……」

 

 

柊は聞く耳を持たない姿勢で通すと、藤宮へ背を向け、発射スイッチがある装置へ体を向ける。

それでも藤宮は折れず、警告し続ける。

 

 

藤宮「自分達“だけ”が生き残る為に他のものを滅ぼすことは、人間のおごりだ!」

 

柊「…私は沢山の人達が怪獣の犠牲になって、虚しく死んでいくのを見てきた……。怪獣は滅ぼさなければならない…!」

 

 

悲しみに満ちた声でそう言った柊は発射スイッチに指を伸ばす。

 

 

藤宮「その装置から手を離せっ!」

 

 

そうはさせまいと藤宮は肩に手を置くが、柊が振り向き様に放った腹パンをくらった。

 

 

藤宮「ぐぅっ…!」

 

 

藤宮は苦痛に顔を歪ませると、その場で膝をつき、そのまま倒れこむ。

そんな藤宮を柊は冷ややかな眼差しで見下ろす。

 

 

柊「すでに沢山の人達が怪獣によって命を失っているんだ……。その人達に対して、お前はどう責任を取る!!」

 

 

そう吐き捨てると柊は今度こそ発射スイッチに指を伸ばす。

 

 

柊「私は……これ以上、犠牲を出させない…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小猫「我夢先輩!怪獣の潜伏場所が!」

 

我夢「わかった!」

 

 

小猫の報告を受けた我夢はエスプレンダーを手に走り出す。

我夢は間に合えと心に願いながら足を動かす。

 

 

我夢「与えられたチャンスを、逃してはいけない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「人類の為に…!」

 

藤宮「…!」

 

 

我夢と小猫の奮闘虚しく、柊は遂に地底貫通弾の発射スイッチを押した。

ゴゴゴゴ…と駆動音が辺り一面に響き渡る。

 

 

我夢「そんな…!……人も怪獣も地球で生まれたのに…」

 

 

それを遠くから聞いた我夢は落胆する。

人類は与えられたチャンスを理解せず、再び過ちを犯してしまったのだ。

 

放たれた地底貫通弾は地中に眠るティグリスに向かって突き進んでいく。

そして…

 

 

ドォォォォォォンッ!!

 

 

ティグリスに炸裂し、けたたましい爆発音と激しい揺れが地上に響き渡る。

 

 

小猫「…」

 

 

地響きが収まり、静かになった地面を小猫は悲しげに見下ろす。

罪のない怪獣に人間は一方的に牙を剥き、殺したのだ…。

落胆する小猫だが、何かを察知し、目を見開く。

 

 

小猫「何かが…来る!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地底より急上昇してくる物体があります」

 

石室「何っ!?」

 

 

オペレーターの報告に石室は動揺する。

地底貫通弾で発射して間もなく地底から迫ってくる存在───それは…。と考えていた矢先、

 

 

ドォォォォンッ!!

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーー!!」

 

 

管制施設の近くの地表から血反吐を吐きながら雄叫びをあげる1匹の怪獣が土煙を立てながら現れた。

白虎に似た立派な角と鋭利な牙を生やした四足歩行の怪獣『ティグリス』だ。

しかし、右角は焼き焦げ、右目は潰されており、地底貫通弾に含まれている有害物質の影響で変色した黄色の血を口から垂れ流している、見てられない程の痛々しい姿だ。

 

それでも生きていた怪獣は怒り狂って現れたのだ。

自分を攻撃した存在に。

 

 

柊「馬鹿な……!?地底貫通弾が効かないなんて……」

 

 

柊は唖然としていた。人類最大の兵器が、怪獣を殺せると思っていた兵器を持ってしても倒せなかったのだから。

 

 

柊「総員。シェルターに待避」

 

 

動揺を隠しきれずも柊はマイクで職員全てに待避命令を出した。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーー!!」

 

ドガァァンッ!

 

 

そんな中、管制施設の方角へ向かっていくティグリスは変色した血反吐を吐きながら、頭部の2本角を駆使して隣接する施設を破壊していく。

 

 

柊「くそぉ…!」

 

 

怪獣に蹂躙される光景に柊は悔しげに歯を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「どうして……こうなってしまったんだ?」

 

 

怒り狂ったティグリスに破壊されていく施設の光景に我夢は悩み、眉間をしわをよせて呟く。

同じ地球に住む者なのに。ただ姿・形が違うだけなのに……。

そう悩みながら我夢はエスプレンダーに目をやると、液晶の奥から赤と青の光が答える様に仄かに輝く。まるで動けと言うように。

 

 

我夢「それでも僕に…出来ることがあるというのか……?ガイアァァァァーーーーーーーッッ!!

 

 

我夢は左肩に一旦当ててから掛け声と共にエスプレンダーを真上へ掲げる。

液晶から溢れる赤と青の閃光に包まれ、我夢は大地の巨人────ウルトラマンガイアに変身した。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

 

ガイアはファイティングポーズを取ると、火の海となった施設を蹂躙するティグリスに飛びかかる。

だが、

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーー!!」

 

ガイア「デュアァァッ!?」

 

 

抵抗した際にブンブンと振り回した尻尾が顔面に直撃し、はね飛ばされる。

ガイアはそのまま大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

ガイアを敵と見なしたティグリスは方向転換すると、ガイアを見据える。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーー!」

 

ガイア「…ッ」

 

 

ティグリスは口から血反吐を吐きながらも睨み付ける。

いつもだったら勇敢にかかっていくガイアもその痛々しい姿にどうすればいいかわからず、固まってしまう。

 

そんな中、チームライトニングが乗った3機のファイターチームが遅れて到着する。

 

 

匙「あの怪獣…」

 

梶尾「何て姿だ…」

 

四之宮「…」

 

 

手負いのティグリスを目の当たりにした匙と梶尾は悲痛な顔を浮かべながら呟く中、ただ1人、四之宮は冷ややかな眼差しを管制施設の方へ向けていた。

───これが人間のエゴか。と言わんばかりの軽蔑するような眼差しだった。

 

 

《石室「…怪獣を町に向かわせるな。まだ避難が終わっていない…!」》

 

梶尾「…っ!」

 

 

石室の指示を受けた梶尾達は断腸の思いで攻撃を始める。

ファイターから放たれた銃弾はティグリスの皮膚を削っていく。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーー--!!」

 

ガイア「グアッ…!?」

 

 

体から火花が散り、ティグリスの悲鳴にガイアは立ちすくむ。

ファイターがすぐに旋回して次の攻撃を伺う中、ティグリスは傷付いた体を押して再び管制施設の方へ向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「小猫ちゃーーーん!」

 

小猫「……っ、イッセー先輩…。それにみなさんも」

 

 

痛々しい光景を小猫は見守る中、遠くから一誠達が駆け寄ってくる。

 

 

リアス「心配になって見に来たのよ……っ、これは!?」

 

イリナ「ひどい…!」

 

木場「こんな姿に…!」

 

 

ティグリスを目の当たりにした一同は絶句する。

変色した血反吐を吐き、片目が潰れ、皮膚が焼けただれたその姿を目にすれば当然のことだろう。

 

 

アーシア「私!あの怪獣さんを治してきます!」

 

 

見ておれずにいたアーシアはそう言って駆け出そうとするが、その手を小猫が止める。

 

 

アーシア「小猫ちゃん?」

 

 

止められたアーシアは首を傾げて声をかけると、小猫は今にも泣きだしそうな顔を浮かべていた。

その様子にアーシアが言葉を失う中、

 

 

小猫「もう、あの怪獣は……」

 

 

小猫は涙声で呟く。生物の気が探知できる小猫にはわかるのだ。1つの生命の灯火が消えそうなことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪獣が地底貫通弾の管制室に向かいます」

 

石室「奴は知っているのか!自分の敵を…!」

 

 

オペレーターの報告に石室は驚く。

ティグリスは暴れる意思を持っておらず、ただ自分を攻撃した敵だけを排除しようとしていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティグリスが迫る中、管制室にいる柊は鋭い目付きで睨み返す。

 

 

柊「人間はただお前達に怯えるだけではない…!」

 

 

柊は横のパネルのスイッチを押す。すると、管制室付近の砲台が稼働し、ティグリスへ狙いをつけると、ミサイルで攻撃し始めた。

 

 

ドガガガガッ!

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーー!!!」

 

 

ミサイルが命中し、ティグリスは悲鳴をあげながらも足を止めず、突き進んで行くと、砲台を踏み潰した。

 

 

柊「維持防衛システム、作動」

 

 

今度は横の砲台が稼働し、ティグリスへ狙いをつけると、そのままミサイルで攻撃する。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーーー!!!!ガァオォォォォォーーーーー!!!!」

 

 

無慈悲なミサイルの嵐にティグリスの体からは火花が散り、耳をも伏せたく様な苦痛の悲鳴をあげる。

 

 

ギャスパー「もう見てられませんっ!!」

 

 

目の前で繰り広げられている悲惨さにギャスパーとアーシアは目を瞑り、手で顔を抑える。

リアス、一誠、朱乃、ロスヴァイセは絶句し、木場、ゼノヴィア、イリナは目を背けている。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーーー!!!」

 

 

攻撃を浴びながらもティグリスは管制室の目前に迫っていく。

そんな中、脂汗を流しながらも立ち上がれる程度に回復した藤宮は叫ぶ。

 

 

藤宮「お前には、聞こえないのか…!あの、大地の叫びが!!!

 

 

その言葉に一瞬だけ目を伏せる柊。

だが、再び目を上げると

 

 

柊「奴は……怪獣だ!」

 

 

自分に言い聞かせる様に言い放つと、柊は更に砲台の火力を上げる。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーーーーーー!!!」

 

 

ティグリスは悲鳴をあげながら、身体中から血を噴き出しながらも前進していく。

体もフラフラしており、かなりの出血から最早助かる見込みはなくとも足を止めない。

管制室にいる柊を真っ直ぐ睨み付けながら…。

 

 

ティグリス「ガァオォォォォォーーーーー!!!」

 

柊「…」

 

ティグリス「ガァオォォォォォーー………」

 

 

そして、ようやく辿り着いたティグリス。

だが、次の瞬間。体が右へ反れ、地面に倒れ込んだ。

地底貫通弾で受けたダメージに加え、数々のミサイルや重火器での攻撃を立て続けにくらったことが致命傷となったのだ。

 

 

ティグリス「ガァオォォ………」

 

 

弱々しい声をあげながらティグリスは涙を流し、ゆっくりとその瞼を閉じた。

その涙の意味は後一歩で柊を殺せなかった悔しさからくる怒りなのか?

それとも同じ地球に住む同士なのに殺し合うのか理解できない悲しみなのか?

その意味は今となってはもう聞けない……。

 

 

梶尾「任務終了。帰投する」

 

 

梶尾は淡々と告げると、エリアルベースへ帰還していく。

その顔は何処か複雑なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

大地に住む仲間ティグリス、永眠─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「…」

 

 

ガイアはやりきれない気持ちで力尽きたティグリスにそっと近寄る。

その死に顔は先程と怒り狂っていたものではなく、安らかな顔だった。

何も出来なかった自分にガイアは複雑な心境で佇んでいると、管制室を出た藤宮が寄ってくる。

 

 

藤宮「ガイア…!怪獣を地底に戻してやれ」

 

ガイア「…ッ」

 

 

そう懇願する藤宮の顔を見て、ガイアは絶句する。

藤宮の顔は今まで見たことがないぐらい悲しみに満ち溢れていたからだ。

 

 

ガイア「…デュアッ!」

 

 

藤宮の頼みを聞いたガイアはティグリスを両手で抱え上げると、元いた地中へ埋葬しに行った。

 

その光景を眺めつつ、柊は拳を握り締める。

 

 

柊「怪獣は滅ぼさなくてはならない……。人類の為に……」

 

 

そう自分に言い聞かせる柊。キッパリと言いきっているのにも関わらず、その顔は何処か浮かないものだった。

 

この悲劇は目撃した多くの人々に残るものとなった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャンスを蹴ってしまった人類。もう、人類にはそのチャンスが巡ってくることはないのでしょうか?

 

いえ、きっとあるはずです。

 

大地に住む仲間達と共に生きる方法が必ずあると信じる限り……。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

迫る修学旅行。
レーティングゲームの次なる対戦相手はリアスの従兄弟、サイラオーグ・バアルだった。
若手最強と称される男の実力とは?

次回、「ハイスクールG×A」
「最強の男」


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第九章 修学旅行はパンデモニウム
第51話「最強の男」


ある晩、青年は夢を見た。

混沌から生まれし闇は自ら生み出した怪獣を送り出し、地上を、空を、海を支配せんとしていた地球の記憶を…。

 

怪獣達が建物や人を無慈悲に踏み歩き、破壊していく。

恐怖に染まった人々の悲鳴を音楽に怪獣は愉快に壊し尽くす。

炎に包まれ、破壊尽くされようとする文明。人々が嘆き悲しむ…。目を背けたくなる様な地獄絵図になる中、突如、光が降臨した。

 

光の巨人―――ウルトラマンだ。

その登場に人々は一斉に歓喜に包まれた。

 

 

『ハッ!』

 

 

巨人達は力を合わせ怪獣を蹴散らすと、その背後に潜む闇をも照らした。

地球は救われたのだ…。

 

その光景を青年が呆気にとられながら眺めていると、古風のロ-ブを身に纏った銀髪の女性───ユザレが現れた。 

 

―――君は?

 

 

ユザレ「私は地球星警備団団長ユザレ。遥か3000万年前の地球に存在していた超古代人の1人です。――――、あなたは超古代の光を受け継ぐ我が末裔なのです」

 

 

―――僕が…?

 

 

ユザレ「…そうです。あなたは光の巨人―――ウルトラマンとなる資格があるのです」

 

 

―――嘘だろ?僕が、ウルトラマン…?

 

 

ユザレ「これは真実です。――――よ、ウルトラマンとなり、闇を照らすのです」

 

 

―――違う!僕はそんなんじゃない――!!

 

 

ユザレ「しかし、貴方は光を継ぐもの。それに変わりはありません」

 

 

―――僕は、僕は―――――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行が間近になった頃、我夢達オカルト研究部の面々はグレモリー家に呼ばれ、リアスの両親が催したお茶会に参加していた。

というのもリアスの眷属が全て揃ったので、近況報告を兼ねて改めて紹介することになったからである。

 

 

ロスヴァイセ「将来的にはグレモリー領に北欧魔術の学舎を設立したり、悪魔の女性からヴァルキリーを輩出したりと新しい事業に挑戦してみたいと思っております」

 

ジオティクス「ハハハ、ロスヴァイセさんは良い夢をお持ちだ。グレモリー家の当主としては期待が膨らむばかりだ」

 

 

ロスヴァイセが語る未来像を聞いたリアスの父・ジオティクスは朗らかに笑う。

娘の眷属が揃っただけでなく、各自それぞれに理想があることに大満足の様子だ。

 

すると、紅茶を口にしていたヴェネラテはカップを置くのを皮切りに新しい話題を振る。

 

 

ヴェネラテ「そういえば、一誠さん達2年生の皆さんは修学旅行間近でしたわね。日本の京都だったかしら?」

 

一誠「は、はい。もうすぐ行く予定です」

 

 

ヴェネラテの疑問に一誠は畏まった口調で答える。

一誠は夏休みの間、ヴェネラテにマナーや社交ダンスのスパルタ教育を嫌という程されている。

少しでも粗相があれば厳しく指導される恐ろしさは身に染みているので、気を緩められない。

 

 

ヴェネラテ「去年、リアスがお土産が買ってきてくれた京野菜のお漬け物……とても美味しかったわね」

 

一誠「俺……いや、よろしければ私が購入してきますよ?」

 

 

ヴェネラテがぼそりと漏らしたその言葉に一誠は気をきかせて提案する。

すると、ヴェネラテは恥ずかしそうに頬を赤らめ、口元を手で隠し

 

 

ヴェネラテ「あら、そういうつもりで言ったのではないのだけど……。気を遣わせてごめんなさいね」

 

一誠「…っ、い、いえ!?別に大丈夫です!はい!」

 

 

と謝罪する彼女の反応に思わず少し可愛いと思ってしまった一誠は照れ笑いをする。

 

 

リアス「…」

 

 

そんな一誠の様子を横に座るリアスがジト目で見ていたのは余談である。

 

その後も他愛のない会話を交え、優雅なお茶会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイラオーグ「おお。お邪魔しているぞ、リアス」

 

リアス「あら?サイラオーグじゃない」

 

 

お茶会を終えた我夢達は帰り用の転移魔法陣がある部屋までの通路を歩いている道中、サイラオーグに鉢合わせる。

鍛えぬかれた肉体からは闘気が溢れ、力強い紫色の双眸は自信に満ち溢れている。

 

 

リアス「元気そうね。今日、ここに来たのは……」

 

サイラオーグ「ああ。バアル領で取れた果物のお裾分けにな」

 

リアス「あら、別に気を遣わなくてもいいのに。従兄弟なのだから、気軽に言ってくれれば私が行くのに」

 

 

リアスとサイラオーグは穏やかな空気で他愛のない会話をしていると、サイラオーグは真剣な顔に切り替わる。

 

 

サイラオーグ「今度のレーティングゲームのこと、聞いたな?」

 

リアス「ええ。あなたと当たるのでしょう?まさか、従兄弟と戦う日がくるとは思いもしなかったわ」

 

 

そう、つい最近決まったことなのだが、リアス率いるグレモリー眷属の次なる対戦カードは目の前にいるサイラオーグが率いるバアル眷属なのだ。

若手悪魔のレーティングゲームではぶっちぎり1位のスコアであり、特に苦戦したこともないので、悪魔界隈からは『若手最強』と謳われている。

そんな男が相手なのだ。

 

リアスは厳しい目付きでサイラオーグを見据えると、ある話題を問う。

 

 

リアス「先日、送られてきたゲームのルール変更についての志願書を見たわ。あれは何?『フィールドのルールを用いたルールを除き、バトルに関する複雑なルールを全て除外して欲しい』と……。サイラオーグ、それはつまり、こちらの不確定要素も全て受けていれると受け取っていいのかしら?」

 

 

リアスの真剣な問いにサイラオーグはフッと不敵な笑みを浮かべ

 

 

サイラオーグ「ああ、その通りだ。ルールに縛られて全力を出しきれない相手を倒しても意味はない。全てを受け入れた上で全力で迎え撃つ……そうでなければ、大王家の次期当主を名乗れるはずがないからな」

 

『っ!』

 

 

サイラオーグの堂々とした宣言に皆は息を呑む。

バトルに関する全ての制約を取っ払う───つまり、サイラオーグ側も有利になる反面、不利になるということだ。

明白なデメリットがあるにも関わらず全てを受け入れるこの自信───並ならぬ実力と自信を備えていることだ。

 

皆が唖然とする中、サイラオーグは我夢と一誠をチラリと見てからリアスへ視線を戻すと、ある提案をする。

 

 

サイラオーグ「リアス。従兄弟のよしみで提案がある。ガイアとダイナ……双方どちらかと拳を交えたいのだが」

 

『!?』

 

 

唐突の腕試しに一同は驚く。特に我夢と一誠は何で自分達なんだと訳がわからない顔を浮かべている。

リアスが怪訝そうな目を送っていると、サイラオーグは

 

 

サイラオーグ「何。ほんの興味本意だ。以前よりも随分と腕が上がっている様だからな…。軽い腕試しと思えばいい。どうだ?」

 

 

と簡潔に説明する。

実際に戦って、攻撃パターンや癖を読まれ、対策を組まれるデメリットがあるのは相手にとっても同じだ。

むしろ互いの実力を知るメリットの方が大きい。

それに卑怯なことを企むような男でないのは付き合いが長いリアスには充分知っている。

 

少し考えたリアスは最適な答えを導き出すと

 

 

リアス「わかったわ。断る理由がないものね。2人共、どっちが来てもやれるわね?」

 

「「はい!」」

 

 

そう訊くリアスに我夢と一誠は元気よく答える。

そうと決まった一同はグレモリー城の地下にあるトレーニングルームへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下のトレーニングルームに着いた一同は中央のリングに一誠とサイラオーグを残し、端の方へ待機していた。

どちらが戦うのかという話になった際、一誠は自ら志願した。

というのも、1人の戦士としてサイラオーグと真っ向と戦ってみたいと思ったからである。

 

 

一誠「それじゃ、行きますよ!」

 

サイラオーグ「ああ、遠慮せずこい!」

 

 

戦う確認を取った一誠はリーフラッシャーを斜め上に掲げる。展開したクリスタル部分から溢れ出す光に包まれ、一誠は等身大のウルトラマンダイナに変身した。

 

 

ダイナ「グアッ!」

 

 

身構えたダイナはその場から駆け出す。それに合わせてサイラオーグは上着を脱いでグレーのアンダーウェア姿になると、その場から駆け出す。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

サイラオーグ「タアッ!!」

 

 

助走をつけた両者の拳がぶつかり合い、ガァンと鈍い衝突音が辺りに鳴り響く。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

サイラオーグ「フンッ!」

 

 

ダイナはすぐさま反対の拳を繰り出すが、サイラオーグは体を反らして避けつつ、右足の膝蹴りをくらわせる。

 

 

ダイナ「グアッ!?」

 

サイラオーグ「フンッ!」

 

ダイナ「ッ!」

 

 

苦悶の声を漏らして体制を崩したダイナ。

サイラオーグは追い討ちに頭上に上げた両拳を勢いよく振り下ろすが、危険を察知したダイナは横転して回避する。

行方のなくなったサイラオーグの拳はそのままリングの床を叩き割る。

 

 

ダイナ「デュッ!」

 

ガァンッ!

 

サイラオーグ「ぐっ!?」

 

 

体制を立て直したダイナはウサギの様に前方へ跳躍すると、頭突きを炸裂させる。もろに顎にくらったサイラオーグは怯むが

 

 

サイラオーグ「お返しだっ!!」

 

ガァンッ!

 

ダイナ「グワァァ!!」

 

 

後ずさる足を踏みしめると、ダイナの顔面へ頭突きをくらわせる。

 

怯むダイナだがすぐに立て直し、サイラオーグと一歩も退かない攻防を繰り広げる。

 

 

我夢「す、すごい…!全くの互角だ!」

 

 

その戦いの様子を端から観戦していた我夢は驚きの声を漏らしていた。他の皆も同じ反応を見せていた。

 

普通、ウルトラマンはドラゴンを越える素養を秘めており、一部の悪魔を除けば渡り合う実力者は数える程しかいない。

だが、ダイナと互角───しかも最も得意とする格闘戦で渡り合うサイラオーグも並ならぬ実力者だと感嘆していた。

流石、若手悪魔最強というべきか。

 

そうこうしているうちに長く激しい応酬を繰り広げた両者は後退ると、助走をつけ、相手の胸部に拳を打ち込んだ。

 

 

ダイナ「グアッ!!」

 

サイラーグ「ぐほっ!?」

 

 

胸元に伝わる衝撃に苦悶の声をあげながら大きく後ろへ後退る。

両者共に体勢を僅かに崩し、肩で軽く息をする中、ダイナは自然と声が出る。

 

 

ダイナ「あんた、やるな…!純粋に鍛えた賜物って訳か!」

 

サイラオーグ「うむ。ただ、己の身体1つを信じてきただけだ…」

 

 

思わずタメ口で話す一誠を咎めず、サイラオーグは不敵な笑みを浮かべながら答える。

サイラオーグは名門バアル家譲りの滅びの魔力を持って生まれておらず、それが原因で悲惨な過去を歩んできた。

残された肉体を鍛えに鍛え、逆境を乗り越えた男の実力は生半可なものではない……ダイナはそう実感した。

 

しかし、相手が手強い程勝ちたいものだ。軽い腕試しであるにしてもだ。

だが、サイラオーグとダイナの肉弾戦においての実力は互角である。このまま戦っても勝負が拮抗し、ジリ貧だ。

けれど、ダイナはぶつかり合う中、この状況を打破するきっかけを掴んでいた。

 

 

ダイナ「ハァァァ~~~…!グアッ!!」

 

 

ダイナは両腕を胸の前でクロスさせると、額のダイナクリスタルが青く輝くと、ミラクルタイプにタイプチェンジする。

 

 

サイラオーグ「ほう…」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

タイプチェンジを直に見たサイラオーグは感嘆の声を漏らす中、ダイナは残像が出来る程のスピードで走り出すと、円を作って取り囲む。

ダイナはフラッシュタイプの比ではスピードには流石のサイラオーグも対応できないであろうと踏んだのだ。

 

 

ダイナ「ダァァァーーーーーッ!!」

 

 

好機と見たダイナは飛び出すと、サイラオーグの背中目掛けて右足のジャンプキックを放つ。

だが、

 

 

ダイナ「!?」

 

サイラオーグ「イヤアァァッ!!」

 

 

軽く体を横へ反らしたサイラオーグに避けられる。

まるで初めから来るタイミングがわかってたかの様に軽くだ。

ダイナは驚きの声を漏らしそうにサイラオーグはその場で横回転で軽く跳躍すると、回転をつけた回し蹴りを左肩へ炸裂させる。

 

 

ダイナ「グワァァーーーーーーーッ!!」

 

ドォォォォンッ!!

 

 

まともにくらったダイナは衝撃を殺しきれず、壁へ激突する。

ガラガラと崩壊音を立てながら体に落ちる瓦礫を振り払いながらダイナは立ち上がるが、「何故、攻撃するタイミングがわかったのか?」と困惑していた。

それを見かねたサイラオーグは

 

 

 

サイラオーグ「目には見えぬ真実を見極める心の目───心眼を使ったのだ。心を無にし、気配を探れば、目に追えぬスピードで撹乱しようとも相手の動きは読める…」

 

 

それを聞いたダイナは「マジかよ…」と内心ぼやく。

ミラクルタイプのスピードはガイア、アグルを上回っていることは自負している。速すぎて相手が対処できず、今までまともに攻撃をくらったことはなかった。

しかし、サイラオーグは今まで戦った相手とは違った。

一撃とはいえ、こうも簡単に攻略する彼の底知れない自信と実力を前に、ダイナは尊敬と恐ろしさを味わった。

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~……!ハッ!!」

 

 

実力を過信していた自分への反省を胸にダイナは再び胸元の前で両腕をクロスさせると、額のダイナクリスタルが白く輝き、フラッシュタイプへ戻る。

 

 

サイラオーグ「ここまでにしようか」

 

ダイナ「?」

 

 

さあ、第2ラウンド開始だと意気込んでいる矢先、サイラオーグは手を前に出して待ったをかける。

これからが勝負となりそうな時に切り上げる彼の提案に当然、ダイナは納得できず、首を傾げる。

 

 

ダイナ「まだ、ここからが本当の戦いなのに…」

 

サイラオーグ「いい意気込みだ。だが、これ以上はお互いにとってベストではない。歯止めが効かなくなり、本戦を前に響く可能性がある。そうだろう?」

 

ダイナ「…」

 

 

説得力がある言葉にダイナは納得すると、変身解除した。

サイラオーグは床に落とした上着を羽織ると、リングの端にいるリアス達と一誠を交互に見て

 

 

サイラオーグ「この続きは本戦にとっておこう。待つのもまた娯楽というものだ。…また会おう、グレモリー眷属。そして、ウルトラマンダイナ……いや、兵藤 一誠」

 

 

そう言い残すと、サイラオーグは去っていった。

しばらく呆然としていた一誠は

 

 

一誠「こりゃあ、手強いぜ…」

 

 

と冷や汗をかきながら呟く。

これまで幾多もの相手と戦ってきたが、サイラオーグは一筋縄ではいかない強敵と認識した一誠はプレッシャーを感じつつも、密かに闘志を燃えすのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、人間界のモンゴル平原では大異変が起きていた。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

突如、けたたましい音と共に地響きが発生した。

時間と共に強くなった揺れは地を裂くと、深い地中から目覚めた怪獣が現れた。

 

 

「ゴォガゴォガ!」

 

 

堅牢な鎧を纏った様な外皮を持つ怪獣は産声かの如く雄叫びをあげる。

更に

 

 

「ピィィィーーーーーッ!!」

 

 

同時刻、イースター島でも地中から怪獣が目覚めた。

鳥の様な怪獣は翼を広げ、甲高い声を島内に鳴り響かせる。

 

2体の怪獣の復活。

この大異変の兆しは着実に始まろうとしていた……。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

大悟「久しぶり!」


修学旅行で京都に訪れた我夢達。幼馴染み、大悟との再会に喜ぶが…


九重「かかるのじゃ!」


そこで出会った妖狐の少女、九重は母の救出を願う!

次回、「ハイスクールG×A」
「いざ京都!」
お楽しみに!








京都の和の雰囲気とティガのBGMって合うよね~


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第52話「いざ!京都」

一誠がサイラオーグとの模擬戦を終えて、数日後。

我夢、一誠、アーシア、木場、ゼノヴィア、イリナ達2年生は待ちに待った修学旅行当日を迎えた。

前日までに準備した荷物を止まらない好奇心と共にリュックサックに詰め、都市部の駅から京都行きの新幹線に乗り込んでいた。

 

 

松田「俺、実は新幹線乗るの初めてなんだよなー」

 

 

駅から出発して20分くらい経った頃、松田がウキウキしながら隣の元浜に話しかけていた。

車両の一番後ろの座席に座る我夢の隣には車窓に頭をよっからせて眠る一誠、その前の座席には松田と元浜が座っている。

通路を挟んだ向こう側の座席にはゼノヴィアとイリナ、その前には愛華とアーシアが座っており、楽しそうにおしゃべりしていた。

 

最初こそは彼女らの様に談笑していたが、我夢がつい先程行ってきたトイレから戻ってきた際には一誠は眠っていた。

話す中で眠たそうにしていたのが多々見受けられたが、昨日、楽しみのあまりよく寝られなかったというのが原因であろう。小学生の時の遠足でも、同じ理由で寝不足だったのは今でも覚えている。

生きていく中で幼馴染みが成長した面も垣間見えるが、変わってない部分があるのは安心したりするものである。

 

 

「ねぇ知ってる?外国に怪獣が出たって話!」

 

「知ってる、知ってる!モンゴル平原とイースター島に出たって話ー!」

 

「怖いね~…でも、流石に京都まで来ないよね…」

 

「とか言ったら来るかもよ?」

 

「そんなこと言わないでよぉ~!もぉ~」

 

我夢「(怪獣、か…)」

 

 

ふと耳を傾けた女子の会話を聞いて、我夢は今朝報じられたニュースを思い出す。

モンゴル平原とイースター島……日本時刻22時頃にそれぞれ怪獣が同時に地中から出現したと言うのだ。

目覚めた怪獣は直後に発生した霧に包まれ、忽然と姿を消したという。

数少ない目撃者によると、近くにいた怪しげな集団が絡んでいるとされているが、依然不明である………

 

というのが、人間界側の見解であるが、我夢には大体の検討はついていた。

 

 

我夢「(英雄派の仕業か…)」

 

 

そう。最近、頭角を現してきたテロリスト組織『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一派、『英雄派』の仕業ではないのかと我夢は睨んでいた。

各勢力に幾度も攻撃を仕掛けてくる彼らだが、その侵攻の際、霧と共に姿を現し、撤退には霧と共に姿を消している。

この能力と類似する『神器(セイクリッド・ギア)』が存在しているのはアザゼルから聞いているので、英雄派にいるのは間違いないと皆は踏んでいる。

 

 

我夢「(しかし、怪獣を連れて何をする気なんだ?また僕達に差し向けるのか…?それとも別に……)」

 

 

けれど、わざわざ目覚めた怪獣を何に使う目的はわからない。

各神話勢力に攻撃を仕掛けるとは思うが、何処か引っ掛かる気味悪さに疑問が絶えず、今回向かう京都でも人波乱あるのではと警戒している。

 

 

木場「今、いいかな?」

 

我夢「…ん?木場君」

 

 

顔を俯かせて深く考え込んでいる中、声をかけられた我夢は顔を上げると、いつもの様に爽やかな顔を送る木場がいた。

我夢達とは別クラスの木場がここにいるということは前方の車両から来たらしいが、我夢は考えるあまり声をかけられるまで気付かなかった。

 

 

我夢「どうしたんだ?」

 

木場「もう一度向こうに着いた時の予定を聞きたくてね。万が一の時を想定してさ」

 

 

万が一の時────それは敵の襲撃があることを意味しており、我夢同様、木場も警戒している様だ。

予め我夢達の班と木場の班の予定情報はアクシデントの際に合流する為、取り合っている。細かい部分の再確認ということだろう。

 

 

我夢「わかった。ただ、ここじゃイッセーが起きるから、前の車両で話さないか?」

 

木場「わかったよ」

 

 

そう提案した我夢は席を立つと、木場と一緒に前の車両へ移動し始める。

 

 

「え…?高山君と木場きゅんが!」

 

「きゃーーーーっ!!まだお昼前なのに!」

 

「王道の兵藤×木場きゅんもいいけど、高山君×木場きゅんも良いわね~~~!!薄い本キタコレェェーーー!!」

 

我夢「……」

 

 

道中、危ない展開を妄想する女子の歓喜する声が聞こえてきたが、我夢は頭の中で考えず、木場と一緒にそそくさと前の車両へ移動した。

 

10分程、木場の座席の隣に座りながら予定確認と非常事態についての話を再確認すると、我夢は元の車両へ戻った。

ちなみに我夢はついでに先程の女子の反応についてどう思うかを話したが、満更でもない反応を見せたので鳥肌が立ったのは余談である。

 

 

『御利用ありがとうございます。間もなく京都に到着致します』

 

 

そうこうしている内に新幹線はあっという間に京都駅に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都に着いた駒王学園2年生一行は駅から数分歩いたところにある高級ホテルのロビーから抜けた先にある広いホールに集まっていた。

その名も『Misery Abate hoTel(苦痛を和らげるホテル)』───通称『MAT』。ここは京都中にある観光ホテルの中でも最高級に位置するホテルの1つである。

料理やルームサービス、施設等が充実しており、京都駅に近いことから、観光客がこぞって宿泊する大人気ホテルである。

 

こんな高級ホテルに団体の高校生が宿泊できるのが甚だ疑問ではあるが、このホテルのオーナーがサーゼクスとの繋がりがある為、格安で全員分の部屋を用意できたのだ。

また、このホテルの食事に出されるおはぎは絶品とのこと。何でもオーナーが大のおはぎ好きだからである。

 

脱線したが、本題に戻そう。

広いホールの床に集まって座る生徒達に教師陣が交代交代で注意事項諸々を説明していくと、ロスヴァイセの番が回ってきた。

皆が何を話すんだろうと思う中、ロスヴァイセは生徒達の前に出て、ハッキリとした口調で言う。

 

 

ロスヴァイセ「100円均一ショップは京都駅の地下ショッピングセンターにあります。何か足りないものがあれば、そこで済ませるように。お小遣いは計画的に使わないと後々損することになります。お金は天下の回りもの……あれやこれやと使えばすぐに無くなります。だからこそ、100円で済ませなければならないのです。100円均一こそ日本の宝なのです!」

 

『……』

 

 

長々と熱く語るロスヴァイセに生徒のみならず、教師陣も唖然としていた。流石にいつもふざけた調子のアザゼルも額に手を当てて、「駄目だこりゃ」と参っている様子だった。

ロスヴァイセが日本に来てからというものの、100円均一ショップへ毎日の様に足を運ぶ姿を我夢達は目撃しているが、まさかここまで病みつきになっているとは思いもよらなかった。

 

 

「ロ、ロスヴァイセ先生。ありがとうございました…」

 

 

話し終えた頃、次の先生が苦笑いしながらバトンを受け継ぐと、最終確認を始める。

 

余談だが、ロスヴァイセは教師に就任してからも男女問わず、すぐに生徒達からの人気を得た。美人で真面目なのにどこか抜けているところが接し安く、「ロスヴァイセちゃん」の愛称で呼ばれていたりする。

本人は先生と呼んでと言っているのだが、その性格からマトモに受ける生徒はいない。

 

 

「───以上の点に気をつけて下さい。それでは各自、部屋に荷物を置いたらさっそく自由行動していいです。京都駅周辺なら各班好きな場所へ行っていいですが、遠出は避け、午後5時半には部屋に戻るようにして下さい」

 

『はーい』

 

 

教師からの説明に生徒達は返事すると、教師陣は各班に宿泊する部屋のルームキーを手渡し、解散した生徒達は荷物を持って各部屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「おおーっ!見ろ!アーシア、イリナ!珍しいものが沢山並んでいるぞ!」

 

アーシア「わ~、可愛い狐さんばかりですね!」

 

イリナ「ここでお土産買ってもお小遣い足りるかしら?」

 

 

解散してから数十分後。ゼノヴィア、アーシア、イリナは伏見稲荷大社の参道に立ち並ぶお土産屋を見ながら和気あいあいと歩いていた。

 

 

一誠「ははっ!楽しそうだなー、あいつらー」

 

我夢「そうだね。行く予定はなかったけど、満足してくれて良かったよ」

 

 

その光景を微笑ましく一歩離れた場所で微笑ましく眺めながら会話する一誠と我夢。

我夢の言う通り、本来行く予定ではなかった。

だが、せっかくの自由行動なので無駄にはしたくなく、京都駅から比較的近いこの伏見稲荷大社へ足を運ぶことを我夢は皆に提案したのだ。

突然の予定変更に不満を持たれるかと思ったが、そんなことはなく、むしろ楽しんでいるので結果オーライだ。

 

 

松田「京都を満喫する美少女トリオ。まずは1枚目!」

 

 

満喫するアーシア達を隣で松田が高そうなデジカメでパシャリと撮影する。

それを見た愛華は半目で物申す。

 

 

愛華「ちょっと、私は撮らないの?」

 

松田「被写体としてはちょっとなー…」

 

元浜「そうそう。微妙というか、インパクトに欠けるというか…」

 

愛華「あんた達ねー…」

 

我夢「お、落ち着いて…」

 

一誠「まあまあ」

 

 

松田と元浜に好き放題言われ、口元をひくつかせる愛華を我夢と一誠は必死に宥める。

愛華の為に言うが、彼女は決して不細工ではなく、むしろ可愛らしい顔をしている。ただ、アーシア達のレベルが高いせいでそう見えるだけだ。

 

 

「……ん?」

 

 

その近くを通りかかった青年は我夢達の騒ぎを耳にすると、ピタリと足を止める。

180センチもある長身に紺色のジャケットに白のTシャツ、ズボンは黒のチノパンで艶なしのレザーシューズを履いている……所謂キレイめと呼ばれるファッションで、背中にはリュックサックを背負っていた。

青年はそのまま我夢達の方へ顔を向けると、ジーと目を凝らす。

 

 

「もしかして……」

 

 

呟く青年の視線の先にあるのは、苦笑しながら愛華を宥めようとしている我夢と一誠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから我夢達は一番鳥井を通り抜け、両脇の狐の像に挟まれた門を潜り、本殿を抜けた先にある稲荷山へ続く階段を登っていた。

 

 

元浜「……ぜぇ、はー……ま、待ってくれ……。ど、どうしてお前達はそんなに動けるんだ……?」

 

 

歩き始めて数十分。汗だくだくの元浜は息を切らしながらよろよろと階段を上がっていた。

運動神経がない元浜にとっては地獄そのものだ。

 

 

松田「おいおい、元浜。情けないぞ。アーシアちゃん達だってまだ元気だってのに」

 

 

そんな元浜を上の段にいる松田は嘆息しながら言う。

松田は元々運動神経が良く、愛華も常人ぐらいの体力はある。人間より身体能力が優れてる悪魔、天使である我夢達はこれ程じゃどうってことはなく、息も乱れない。

 

 

我夢「…」

 

 

疲れ果てている元浜を松田より下の段にいる我夢は不安そうに見下ろす。ついさっき手を貸そうとしたが、意地でもあるのか、「これぐらい平気」と元浜にやんわりと断られた。

と言われても、当の本人はよろよろしているので、いつ階段を滑らせるか不安である。

 

そんな不安を我夢が胸中に秘める中、元浜が次の段へ足を下ろした瞬間

 

 

ズルッ!

 

元浜「っ!?」

 

 

足を踏み外した元浜はバランスを崩した。

前のめりに倒れた際の顔面の着地点は階段の角……このままだと最悪、鼻や歯が折れてしまう。

 

 

我夢「元浜っ!」

 

一誠「くそっ!」

 

 

気付いた我夢と一誠は脇目も降らず急いでかけ下りる。

だが、反応がコンマ1秒遅かったので、悪魔の走力を持ったとしても間に合わない。間に合っても顔面がぶつかるのは避けられない。

すっ転ぶ元浜の顔面が階段とぶつかろうとするその時だった。

 

 

「おっと!」

 

『!?』

 

 

ピンチを察したのか青年が下から勢いよく元浜の元へかけ上がってくると、元浜の腰に腕を回し、衝突を防いだ。

後一歩遅ければ大怪我するところだった……青年はふぅと安堵のため息をつくと、元浜の腰から腕を離して両足を地につけさせると、元浜へ向き直る。

 

 

元浜「あ…」

 

 

青年の顔を見た元浜は言葉を失った。

元浜へ顔を向ける青年は朝焼けの様に明るい茶髪、汚れのない水晶の様な純粋な瞳を持ち、目鼻口が整った顔を持っており、服装は大人びており、身長は180センチの長身を持ち、全体的に爽やかを感じさせるイケメン───我夢と一誠を目撃したあの青年だった。

 

 

「君、大丈夫?ケガはないか?」

 

元浜「……あ、はい。す、すみません……」

 

 

元浜があまりもの格好よさに見惚れ、青年からの問いに曖昧な受け答えをしていると、上からかけ下りてきた我夢と一誠。遅れて愛華、アーシア、ゼノヴィア、イリナがやってくる。

 

 

我夢「すみません。ありがとうございます」

 

「はは、いいよ。でも、そんなに他人行儀されるのは違和感があるな~」

 

一誠「え?」

 

「ほら、この顔に見覚えない?我夢、イッセー」

 

 

何で自分達の名前を?と我夢と一誠は訝しげに思いながら青年の顔をまじまじと見ると、あっと声をあげる。

 

 

「「大悟!?」」

 

大悟「久しぶり!」

 

 

すっとんきょうな声をあげる我夢と一誠に青年は爽やかな笑顔で返す。

そう、この青年こそが我夢、一誠、イリナの幼馴染みである『長野(ながの) 大悟(だいご)』だ。

 

 

一誠「おおー…昔と比べて大人びてたから全然気付かなかったぜ」

 

大悟「まあ、小学校以来会ってなかったからね。無理もないさ」

 

我夢「元気そうだね。また会えて嬉しいよ!」

 

大悟「僕もさ、我夢。格好よくなったね。まあ、イッセーはそこまで変わんないね」

 

一誠「おいおい、それどういう意味だよ~~~!」

 

我夢「ははは!」

 

 

数年振りの再会を喜び、じゃれ会う我夢、一誠、大悟。

一誠に軽くヘッドロッグ決められながらもニコニコと笑う大悟を見て、イリナは呆然と呟く。

 

 

イリナ「あの人、大悟君だったのねー。会わないうちに随分かっこよくなっちゃって」

 

松田「すげ~イケメンだ…」

 

愛華「イリナさんの知り合い?」

 

イリナ「うん。ええとね…」

 

 

愛華に訊ねられたイリナは彼女と松田を加えて大悟が何者かを教える。

緊迫した空気から一変して訪れた和やかな空気にアーシアはつられて微笑んでいると、隣のゼノヴィアが訝しげに大悟を見つめているのに気がついた。

 

 

アーシア「どうしたのですか?」

 

ゼノヴィア「い、いや……。何でもない……」

 

アーシア「?」

 

 

そう言いつつも表情は依然として明るいものとはいえないゼノヴィアにアーシアは首を傾げる。

 

ゼノヴィアは不可解に思っていた。

それは元浜を助けた際の大悟の異常なまでの速さである。

あの状況は人間より身体能力が上である悪魔をもってしても確実に間に合わなかった。しかし、普通の人間であるはずの大悟があっさりと救いだした。距離的に元浜から大分離れていたはずなのにだ。

この違和感がゼノヴィアの脳裏から離れなかった。

 

 

ゼノヴィア「(大悟……君は何者なんだ?)」

 

 

ゼノヴィアは1人。我夢、一誠と笑い会う大悟を訝しげな目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟を加えた一同はしばらく階段を上がり続けると、途中に設けられた休憩所のお店でひと休みすることにした。

 

 

元浜「ふへぇあぁぁ~~~…」

 

我夢「お疲れ様。ごめん、無理をさせて」

 

 

休憩所の奥にある長椅子に座るのは完全にバテて、だらしない声で項垂れる元浜だ。その傍には我夢がついており、労いの言葉をかけながら、休憩所で買った冷えた水を渡している。

外では一誠と松田と愛華が山の絶景を眺めたり、写真に納めている。途中、一誠と松田が過敏に反応しているが、恐らく愛華にからかわれているのだろう。

 

その光景を尻目に大悟、イリナ、ゼノヴィア、アーシアは休憩所の外にある長椅子に座ってくつろいでいた。

 

 

イリナ「ねえ、大悟君。私のことは覚えているよね?」

 

 

イリナは単刀直入に大悟へ質問する。大悟が我夢と一誠に対しては昔のように接していたが、イリナには全く懐かしむ反応を見せてくれなかったからだ。

う~んと唸らせる大悟だが、首を傾げるばかりだ。

 

 

イリナ「紫藤 イリナ。ほら、昔、一緒に遊んだ幼馴染みの……」

 

大悟「ああー、イリナね。イリナ………え!?」

 

 

イリナのひと声で思い出した大悟はうんうんと頷くが、すぐに目を丸くして驚きの声を漏らすと、

 

 

大悟「君、女の子だったの!?」

 

イリナ「デジャヴーーー!」

 

 

大悟にそう言われ、ショックを受けたイリナは叫ぶ。

我夢と一誠とは違う反応を見せてくれると期待していたが、そんな期待もすぐに消し飛んだ。

 

 

イリナ「もう!大悟君もひどいわ!我夢君とイッセー君だけじゃなくて、私を男の子と思ってたなんて!」

 

大悟「はは、ごめん。あんなにやんちゃだったから…」

 

 

ぷりぷり怒るイリナを大悟は苦笑しながら謝る。

大悟に宥められ、不満が収まったイリナはずっと気になっていたことを訊ねる。

 

 

イリナ「あ。そういえば、大悟君って他県に引っ越してから何してたの?我夢君達とも音信不通だったみたいだけど」

 

大悟「うん。さっき我夢達にも話してたけど、僕は親の転勤で他県に引っ越したんだ。そして、そこの中学を卒業した後、より幅広く学ぶ為に海外の高校へ留学することにしたんだ」

 

 

大悟はそれから京都に来るまでの経緯を語る。

海外へ留学することに決めた大悟は両親と相談した後、共に移り住むことになった。その時に住所が変わったことや携帯を買い換えたことで連絡先がわからなくなってしまったそうだ。

 

高校へ留学・卒業後は考古学の分野に特化した短期大学へ進学した。考古学を専攻したのも、世界の謎を探求して冒険してみたかったからと幼い頃からの夢があったからだ。

短期大学卒業後は両親から離れ、しばらく世界各地を旅していたのだが、ふと日本の京都に行ってみようと思って帰国したところ、我夢達との再会に至ったのだ。

 

 

イリナ「へえ~そうだったんだ」

 

 

大悟の語った話にイリナは感嘆する。

イリナは小学校に上がってから間もなく海外へ移り住んでしまい、大悟とはしばらく会ってなかったが、再会するまでにここまで濃い経験を積んでいるとは予想出来なかった。

しかも、そんな彼と修学旅行先で再会するとは思いもよらなかっただろう。

 

 

アーシア「世界各地を冒険したって、一体どこを冒険したんです?」

 

大悟「地球の最北端から最南端まで色んなところを冒険したよ。アマゾンの密林の奥地やエジプトの砂漠、エベレストの頂上やら何まで……数え切れないぐらいさ」

 

アーシア「すごいですね~!私、世界のことをよく知らないので気になります!」

 

 

大悟が数々体験した冒険に興味津々なアーシア。

それもそうだろう。教会時代は聖女と崇められながらも軟禁させ、外界からの情報をシャットダウンされていたアーシアにとっては世界を旅した大悟は憧れの存在であろう。

 

乱入する形で我夢達と行動を共にすることにした大悟だが、初対面のアーシアだけでなく、ゼノヴィア、愛華、イケメン嫌いの松田、元浜すらともすっかり仲良くなり、意気投合していた。これも世界を渡り歩いたコミュニケーション力によるものだろう。

 

 

ゼノヴィア「…」

 

 

しかし、ゼノヴィアは仲良くしつつも、ただ1人懐疑的な考えを持っていた。

大悟は悪い人間ではなく、むしろ好青年で良い人間でどこも疑う必要はない。だが、先程、元浜を助けた際のあの常人離れのスピードが疑問を浮かばせている。

 

階段を上る時に聞いたのだが、本人曰く「冒険で鍛えられたから」らしいが、とてもそう簡単に説明できるものではないことは、長年戦場を潜り抜けてきたゼノヴィアにはわかる。

 

 

大悟「あ、もうこんな時間だ」

 

 

ゼノヴィアが訝しげに思う中、腕時計を見た大悟はそんなことを呟くと、長椅子から立ち上がり、リュックサックを背負って何処かへ向かう準備を始める。

 

 

イリナ「どこへ行くの?」

 

大悟「現地の知り合いのところへさ。この後、会うことになってるんだ。すまないけど、君達とは別れるよ」

 

イリナ「そっか、気をつけてね」

 

大悟「まあ、僕は京都にはしばらく滞在する予定だし、明日には出会えるよ。連絡先も交換したしね。じゃあ!」

 

 

そう言って席を外した大悟は我夢達のところへ向かい、別れる旨を伝えると、大悟は登ってきた坂を下りていった。

 

 

イリナ「大悟君。相変わらず爽やかなのは変わらないわね~」

 

アーシア「私、またお会いしたいです!」

 

 

大悟が去った後、イリナとアーシアは嬉しげな声色で呟いていると、ゼノヴィアはイリナの肩をちょんちょんと指で叩くと耳を貸すようにジェスチャーを送る。

耳元でゼノヴィアは

 

 

ゼノヴィア「イリナ。あの大悟という男……本当に普通の人間なのか?」

 

イリナ「っ!?それって───」

 

 

思わず大声を出しそうになるイリナをゼノヴィアはしっ!と静かにするように口の前を人差し指で立てる。

出そうとなる大声を何とか堪えたイリナは一拍置くと、声を抑えて訊き返す。

 

 

イリナ「ちょっと、ゼノヴィア。それって、大悟君が人間じゃないっていうの?

 

ゼノヴィア「お前も見ただろう?あの常人離れのスピードを。あれはそんやそこらの人間の鍛練でなせる技じゃない。私達の世界を知る人間でも出来ない速度だ

 

イリナ「うん。でも…

 

 

ゼノヴィアの疑念にイリナは共感しつつも、どこか違う気がして納得しきれてない状態だった。

大悟からは悪魔や天使の気配は感じず、正真正銘の人間である。エクソシストか何かかと思うが、身のこなし方や雰囲気からはとてもだが、戦い慣れしているものじゃない。

それにあの純粋かつ温厚な性格の大悟がそんな人を騙すような姑息な人間とはイリナには思えなかった。

 

 

愛華「イリナさん、ゼノヴィアっち。そろそろ行くわよー!」

 

 

頭をひねってそんなことを考えていると、外にいる愛華から集合の声をかけられ、思考を現実に戻される。

バテていた元浜がすっかり復活したことに合わせて、山登りを再会することにしたのだろう。

皆が集まり、愛華が人数確認するが

 

 

愛華「あれ?誰かいないわね…?」

 

 

何故か人数が合わない。

班とは無縁の大悟を除き、我夢、松田、元浜、イリナ、ゼノヴィア、アーシア、そして愛華本人。

全員揃っているはずなのだが、誰かを忘れているような気がしてならない。

皆が誰だろうと思う中、我夢はアッとすっとんきょうな声をあげると、足りない人物の名前を口にする。

 

 

我夢「イッセーがいない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、皆から離れた一誠はひと足速く頂上目指してかけ上がっていた。

高い場所へ早く登りたいという子供心が一誠を駆り立てたからだ。

独断行動している一誠であるが、考え無しにしている訳ではない。最初から頂上を目指しているので、我夢達も後から追い付いてくることもキチンと念頭に置いた上でキチンと行動している。

 

他の観光客の邪魔にならない様に階段をかけ上がっていくと、一誠は頂上らしき拓けた場所に到着した。

 

 

一誠「ふぅ……あら?ここが頂上?」

 

 

不思議に思う一誠の視線の先は随分と古ぼけたお社だけがポツンと建っていた。頂上なら荘厳なお社があって、観光客で賑わっていると思っていたが、人っ子一人いない。周りには人の気配がなく、風でざわめく木々の音しか聞こえない。

おかしいなと怪訝に思いつつ、お社を背に向けた時だった。

 

 

「…京の者ではないな?」

 

一誠「っ!?」

 

 

突然謎の声が後ろから聞こえ、ハッとなった一誠は振り返る。

振り返った先には、山伏の格好をしたカラスや神主衣装に身を包んだ狐仮面の集団がいつの間にか一誠を取り囲んでいた。

 

集団から漂う空気から明らかに歓迎ムードでないことを察した一誠は身構えていると、集団の中から巫女装束を着た小学校低学年くらいの女の子が現れた。

大陽の日差しの様にキラキラと輝く金髪に金色の双眸。

しかも、頭部から生えている狐の耳、尾てい骨に当たる部分からはもふもふしてて柔らかそうな金色の尻尾が生えている。

 

起きているこの状況を一誠が把握できていないでいると、狐耳の少女は一誠を睨み付け、吐き捨てるように叫ぶ。

 

 

「よそ者め!許さぬ……許さぬぞッ!」

 

一誠「…は?何言ってんだよ?」

 

ゼノヴィア「おーい!イッセー!」

 

イリナ「イッセーくーーん!」

 

 

狐耳の少女に恨まれる意味が分からず、一誠が疑問の顔を浮かべていると、後ろからゼノヴィア、イリナ、我夢、アーシアが駆け付ける。

だが、このただならぬ状況に4人は動揺の色を見せる。

 

 

ゼノヴィア「何だこの状況は?」

 

イリナ「え、何々?妖怪さん?」

 

アーシア「あわわわ…」

 

我夢「イッセー。何が起きたんだ?」

 

一誠「わかんねぇ……。ただ、よそ者は許させねぇって…」

 

我夢「?」

 

 

一誠の話を聞いても敵意を向ける理由がわからず首を傾げる我夢だが、とにかく話そうと一歩前へ出ると、集団のボスと判断した狐耳の少女に話しかける。

 

 

我夢「君達はこの地の妖怪か?気に触るけど、僕達が何か悪いことをしたのか?詳しく教えてくれないか?」

 

 

それを聞いた狐耳の少女は歯を噛みしめ、わなわなと肩を震わせると、怒りをぶつける。

 

 

「しらばっくれるなッ!お前達が神聖なるこの地を荒らすだけでなく、母上を拐ったではないか!」

 

我夢「母上…?一体、何のことだ?僕達は君のお母さんを拐ってないぞ」

 

「そのような筈ない!私の目は誤魔化せんぞ!」

 

 

そう言って狐耳の少女は眼光を鋭くするが、我夢だけでなく、話を聞いていた一誠達も全く身に見覚えがない。

母親を拐った集団はわからないが、とにかくその集団と自分達を勘違いしているのはわかった。

 

 

我夢「待ってくれ。これは誤解だ!話を聞いてくれ!」

 

「ええい、これでもシラをきるかッ!者共、かかるのじゃ!」

 

 

我夢の制止虚しく、狐耳の少女が号令をかけると、控えていた妖怪達が一斉に襲いかかる。

仕方がないと思いつつ、我夢達は臨戦態勢に入る。

 

 

我夢「みんな!麻酔弾で対応するんだ!」

 

 

我夢の指示の意味を汲み取った一同はカートリッジを麻酔弾に変えたジェクターガンで応戦する。

我夢達は妖怪達の攻撃をかわしつつ、銃口から放たれる黄色の麻酔弾で次々と眠らせていく。

 

 

「おのれ…!珍妙な武器を使いよって!」

 

 

次々と仲間が眠らされていく光景に堪えきれなくなった狐耳の少女は自ら前線に出ると、我夢に向かって小さな火の玉を6連射する。

 

 

我夢「昇格(プロモーション)!『騎士(ナイト)』!」

 

 

我夢は直ぐ様、『騎士(ナイト)』に昇格すると、強化されたスピードを駆使した連続バク転で襲いかかる火球群を避ける。

 

 

一誠「くらえっ!」

 

「そうはさせんっ!ぐぅっ!?」

 

「っ!?」

 

 

一誠が入れ替わる様に前へ出ると、狐耳の少女目掛けて麻酔弾を放つが、少女に当たる直前に烏天狗が割り込んで身を呈して庇った。

狐耳の少女が動揺する中、身代わりになった烏天狗はバタリと倒れるとその場で眠りについた。

 

 

ゼノヴィア「そこだ!」

 

イリナ「はっ!よっと!」

 

アーシア「妖怪さん達、ごめんなさい!」

 

 

ゼノヴィア、イリナも最低限の動きでかわしながら麻酔弾を放ち、アーシアは相手に謝りながらも麻酔弾で眠らせていく。麻酔弾なので相手が傷付くことはないが、それでも罪悪感を感じるのはアーシアの優しさ故だろう。

 

我夢達が出来るだけ傷付けず麻酔弾で応戦してから3分後。

次々と眠らせ、30人ぐらいいた妖怪達も起きているのは狐耳の少女含めて6人までとなった。

狐耳の少女が憎しげに睨み付ける中、我夢はジェクターガンを下ろして再度呼び掛ける。

 

 

我夢「彼等は生きている……麻酔で眠らせているだけだ!僕達には争う理由がない!お願いだから話を聞いてくれ!」

 

「敵意がないフリをして油断させるつもりじゃな!騙されぬぞ!」

 

『…っ』

 

 

我夢の説得に全く聞く耳を持たない狐耳の少女と妖怪集団。断固として戦う意思を見せている。

我夢達は苦い顔を浮かべながら、力ずくで止めるしかないと半ば諦めかけていると

 

 

大悟「ちょっと待った!」

 

『…え!?』

 

 

と、待ったをかける声が聞こえたかと思うと、木々の間を駆け抜けてきた人影が颯爽と飛び出し、妖怪達と我夢達の間に割り込む。

その人物を見た我夢達は思わず驚きの声を漏らす。

そう、その人物こそが先程別れたばかりの青年──長野 大悟その人だったからだ。

 

 

我夢「大悟!?」

 

一誠「一体どういうことなんだよ!?」

 

大悟「さっきぶり……かな?詳しいことは後で説明するよ」

 

 

予想外の登場に動揺し、問いかける一誠にそう言って下がらせると、大悟は狐耳の少女へ顔を向ける。

 

 

「大悟!これはどういう訳じゃ!何故、そやつらを庇うッ!」

 

大悟「九重(くのう)!君は誤解している!彼等は君のお母さんを拉致するような悪い人じゃない!」

 

 

大悟は狐耳の少女───九重に説得を試みる。

お互いに名前を知っていることから、大悟とは以前から知り合いだったことが我夢達にはわかった。

それでも引き下がらない姿勢を見せる九重は問いを投げ掛ける。

 

 

九重「何故そう言い切れる!?」

 

大悟「友達なんだ!僕が保証する!お願いだから、今は手を退いてくれ……」

 

九重「っ……」

 

 

懇願する大悟は頭を深く下げる。

その行動に九重は一瞬驚く素振りを見せ、しばらく口を閉ざして考えると、

 

 

九重「……わかった。大悟がそこまで言うのなら、今は撤退しよう」

 

 

大悟の誠意に折れた九重は隣にいた烏天狗にアイコンタクトを送ると、烏天狗を筆頭に妖怪達は眠らされている仲間を回収し始める。

取り敢えず戦う必要がなくなり、ホッとする我夢達に九重は鋭い目付きで睨み付け

 

 

九重「…じゃが、お前達の疑いが晴れた訳ではない。必ず母上を返してもらうぞ!」

 

 

そう言い残すと、突如吹いた一迅の風と共に九重と妖怪達は消えていった。

あれだけの激闘があったにも関わらず、何事もなかった様に静かとなった山中に残された我夢達と大悟。

ひと息ついたところで振り向いた大悟は我夢達に謝る。

 

 

大悟「ごめん、みんな!普段はあんな険悪じゃない……本当は良い人達なんだ!」

 

一誠「いや、そりゃあいいけどよ…」

 

我夢「大悟。彼等とはどういう関係なんだ?それに、何故僕達が疑われているんだ?」

 

 

根は持っていないが、真面目に謝られた一同がじたじになる中、我夢は質問を投げ掛ける。

すると、大悟は神妙な顔を浮かべ

 

 

大悟「さっき九重が言っていたけど、九重のお母さんは拐われたんだ。ここ最近、現れた怪しげな集団に。事件現場に偶然居合わせた僕は傷付いた従者を手当てする為に隠れ里に運んだんだ。九重はその時に知り合った友達だよ」

 

 

そう説明すると、我夢達は納得する。

怪しげな集団──思い浮かぶのはやはり、『禍の団(カオス・ブリゲード)』だ。

得体の知れない集団に母親を拐われたのだから、今日やって来た悪魔と天使である我夢達を仲間と疑うのは当然警戒するだろう。

大悟と九重達、妖怪の関係を把握していると、大悟はリュックサックを背負い直し

 

 

大悟「九重のことは任せてよ。君達が悪い人じゃないって説得してみせるから」

 

 

そう言って爽やかな笑顔で返すと、大悟は木々の奥へ立ち去っていった。

 

大悟が立ち去った後、我夢達は直ぐ様XIGナビでアザゼルに何があったかを報告すると、愛華達と合流して一通り観光すると、ホテルへと帰った。

 

我夢は予感していた人波乱が今、起きようとしているのを実感していた──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。京都市内のビルの屋上から1人の男が町の夜景を見下ろしていた。

その男は四之宮だった。3年生である彼は京都にいないはずだが、何故かこの京都に姿を現していた。

四之宮はニヤリと怪しげな笑みを浮かべる。

 

 

四之宮「さぁて、楽しそうなことが始まりそうだな……。おっと、いけねェ……この顔のままじゃマズイな」

 

 

一応、3年生である四之宮がここにいることがバレれば後々面倒なことになる。

大事なことを思い出した四之宮は顔に掌を当てて、3秒して離すと、別の人間の顔に変わっていた。

 

 

ヘビクラ「ンッフッフッ……完璧♪」

 

 

四之宮───ジャグラーは取り出した手鏡を見て自分の顔が完璧に変わっていることを確認すると、気味の悪い鼻笑いをする。

その姿はかつて地球防衛組織の隊長として活躍していたヘビクラ・ショウタ───ジャグラーの本当の姿だった。

 

顔だけでなく、背丈だけでなく服装も駒王学園の制服から黒の紳士服に変わっている。

これ程見た目は大きく変わっているが、四之宮の体には憑依したままだ。

憑依していないと、体の本来の持ち主である四之宮が死んでしまうからである。

 

ヘビクラは手鏡を胸元の内ポケットにしまうと、上着の

ポケットから何かを取り出すと、クククと鼻で笑い

 

 

ヘビクラ「…京都を巻き込んだこの祭り。さぁて、俺はセレブロが遺した玩具で参加するとするか…」

 

 

意味深な言葉を呟く。

怪しげな笑みを浮かべるヘビクラの手には、新しい5枚の怪獣メダルが握られていた。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

裏京都に伝わる勇者の伝説。
それは何をもたらすか?
九重のガイドで京を満喫する一行に霧が……。


次回、「ハイスクールG×A」
「霧より出でし英雄」
お楽しみに!


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第53話「霧より出でし英雄」

英雄派首領 曹操
肉食地底怪獣 ダイゲルン 登場!


我夢「デヤァァァーーーーッ!!」

 

 

まだ日が昇りきってない早朝。人気がないホテルの屋上にカァンと木刀同士がぶつかり合う渇いた音が響き渡る。

九重ら京都妖怪の襲撃があって、翌日となったこの日。

我夢は木場のレクチャーのもと、剣術のトレーニングに励んでいた。

 

ここ最近、我夢は以前から行っている日課の基礎トレーニングに加え、木場とワンツーワンの剣術を学んでいる。

このトレーニングは我夢自ら頼み込んだものであり、何でも「自分の力に慣れたい」という向上心があってのことだ。

 

 

我夢「はあっ!」

 

木場「っ!」

 

 

激しい打ち合いの中、我夢は木刀を下から振り上げ、木場の木刀を弾く。

 

 

我夢「もらった!」

 

 

出来た隙を狙って我夢は勢い良く踏み込むと、木刀を振り下ろす。

 

 

スカッ!

 

我夢「!?」

 

 

だが、当たる瞬間、木場は突如姿を消した。

的が無くなった木刀が虚空を切る。

驚いた我夢がどこだどこだと辺りを見渡そうとした瞬間

 

 

木場「ここだよ」

 

我夢「…わっ!?」

 

 

いつの間にか後ろにいた木場に声をかけられ、我夢はビクッと肩をすくませる。

木場は攻撃が当たる瞬間、十八番の神速で避けつつ、我夢の背後へ回り込んだのだ。

 

背後をとられた我夢は動揺しながらも体勢を立て直そうとするが既に遅く、首もとに切っ先を向けられる。

 

 

木場「一本……かな?」

 

我夢「ま、参りました…」

 

木場「ふふっ。じゃあ、今日はここまでにしようか」

 

 

手を万歳して降参を示す我夢に木場は爽やかな笑みでそう言うと、我夢は木刀をそこら辺に置き、息を切らしながら大の字で寝転ぶ。

疲弊し、汗だくとなっている我夢に対して、相手をしていた木場は疲弊した様子がなく、むしろ涼しい顔をしている。

 

木場は爽やかな顔を浮かべながら少し離れたベンチに置いてあるペットボトルの飲料水とタオルを取ると、そのまま我夢差し出す。

 

 

木場「これ使ってよ」

 

我夢「サ、サンキュー…」

 

 

きつそうな顔で我夢は木場から手渡されたタオルと飲料水を受け取ると、上体を起こし、飲料水を口へ流し込む。

ゴクゴク…と喉を鳴らして豪快に飲み、渇いた口内を潤す。

 

ぷはーと息を吐いてペットボトルの口から離すと、中の飲料水は半分ぐらいまで減っていた。

ウルトラマンといえど、木場との剣術のトレーニングは難しいのだろう。ちなみに我夢は武道の経験は一切無いので余計過酷だ。

 

タオルで汗を拭いてクールダウンしたところで、木場は爽やかな顔で話しかける。

 

 

木場「我夢君。前よりも全体的に上達したよ」

 

我夢「そ、そうか…?」

 

木場「うん。僕の動きについてこれるぐらいにはね。当てることすら出来なかった頃に比べたら段違いだよ」

 

我夢「は、はは…」

 

 

そう言われて苦笑する我夢。

初日は木場の剣速に翻弄され、一太刀も浴びせることが出来なかった。

しかし、我夢はまだ未熟な点がありつつも太刀筋がわかる様になり、素早い木場の動きにもついてこれる様になった。

その時と比べれば段違いの成長といえよう。

 

 

木場「基礎的な動きは身についてきているし、この調子でいけば短期間で並大抵の剣士には負けないぐらいにはなりそうだよ。ただ、相手の気配を注意深く探ることが今後の課題だね」

 

我夢「そ、そうか…。ははっ」

 

 

爽やかな顔を浮かべる木場の言葉に我夢は期待を膨らませ、うっすらと笑う。

とはいっても木場には到底剣術で勝てるビジョンが浮かばないが…。

 

そんな会話をしていると、木場は昨日の出来事について触れる。

 

 

木場「そういえば昨日、京都妖怪の襲撃にあったそうだね。確か九尾の女の子のお母さんを拐った集団と勘違いしたって」

 

 

訊ねる木場に我夢は頷く。

襲撃があった後、我夢達はロスヴァイセとアザゼルにその旨を伝えた。他勢力の種族が京都に訪問することは事前に報告されたのにも関わらずにだ。

当然、思い当たる伏がない2人は困惑の色を見せるも、とりあえず悪魔側、妖怪側双方に確認を取るとだけ言い、答えが出るまで待つことになった。

 

 

我夢「あの場に大悟がいなければどうなっていたか…」

 

木場「大悟さんは僕達の世界を知っているみたいだね」

 

我夢「ああ、世界を旅するうちに知ったんだろうね。どこまで知っているかはわかんないけど」

 

 

我夢は昨日の大悟の様子について振り返る。

我夢達が襲撃を受けた林はやや斜めに傾いた地形で見晴らしが良く、林に入れば遠くからでも戦いの様子を見ることが出来る。

一般人であれば、異形が戦っている非現実な光景に驚くだろう。

 

しかし、大悟は大して驚いた様子を見せなかった。

人間離れした動きをする我夢達を見てもだ。

恐らくだが、京都妖怪だけでなく、他の異種族にも出会っているからだ。我夢達が人間ではないことも何となく察したのだろう。

 

 

木場「大悟さんからは連絡は?」

 

我夢「ああ。何とか話し合いに応じてもらって、今日の正午に金閣寺で会う約束になってる。木場君も出来れば参加してほしい」

 

木場「うん、わかった。班の人達に何とか言って落ち合うよ」

 

 

我夢の頼みに応じる木場。

大悟からのメールが来たのはついさっきばかりで、その理由は九重の説得にかなり時間がかかったとのこと。

その連絡は九重の遣い伝てにアザゼルやロスヴァイセにも知らされている。

 

 

我夢「おっと、もうこんな時間だ」

 

 

そう話しつつ我夢はポケットから取り出したXIGナビで時間を見ると、もうすぐ朝の点呼が始まる時間帯に入ろうとしていた。

我夢はよっこらせと立ち上がる。

 

 

我夢「悪いね、特訓に付き合ってもらって」

 

木場「別に大丈夫さ。朝の運動は心地いいしさ。それに教える方が逆に身に付くっていうしね」

 

我夢「はは、そうか。じゃ、行こう」

 

 

笑いあった我夢と木場は先生達に見つからないよう、そそくさと屋上から各々の部屋へと戻っていった。

 

大陽が地平線から昇り、京都中を照らす。

波乱を含んだ修学旅行2日目が今、始まろうとしていた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「銀じゃない!?」

 

 

観光巡りをする中、訪れた銀閣寺を見たゼノヴィアは愕然としていた。

それもその筈。ゼノヴィアは『銀閣寺と金閣寺はその名の通り、建物は全て銀色と金色に輝いている』と信じていたからだ。

あまりにも理想とかけ離れてたのがショックだったのか、口をあんぐり開けて、放心状態になっていた。

 

銀閣寺が銀色じゃないのはほぼ常識なようなものであるが、ゼノヴィアは日本文化にほとんど馴染みがなかったせいである。

銀閣寺の前に訪れた清水寺でも三年坂を上る際に『転ぶと三年以内に死ぬ』という言い伝えを真に受けて、『日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな』と戦慄していた。

アーシアも本気で怖がって一誠にしがみついていたのだが、そこが彼女らのチャームポイントと言えるだろう。

 

 

愛華「建設に携わった足利 義尚(よしひさ)が亡くなったから銀箔貼るのを止めたとか、幕府の財政権で中止にしたとか、色々諸説があるけど、銀箔じゃないわね」

 

我夢「へえ~」

 

一誠「そうだったのかー」

 

 

愛華の説明に我夢と一誠は興味深く頷く。

ここまで各名所について詳しく知っているのは事前に調べてきたからだろうか。

 

ひと通り見回った後、我夢達はお土産を買って次の観光名所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア「おおっ!金だっ!今度こそ金だぞ!」

 

アーシア「綺麗ですね~!」

 

 

次の観光名所、金閣寺に着いた途端、ゼノヴィアは隣にいるアーシアに話しかけながら、嬉しそうにピョンピョン跳び跳ねていた。

先程の銀閣寺の時とはうってかわったリアクションなのは、金閣寺がイメージ通りだったのが余程嬉しかったからだろう。

 

 

一誠「あいつら嬉しそうだな~」

 

我夢「うん。実際に見るのは僕も初めてだけど、これははしゃぎたくもなるさ」

 

 

嬉しそうな彼女らを少し離れたところから見ながら呟く一誠に我夢はそう返す。

テレビや教科書等の媒体で見たことはあるが、実際に見る金閣寺の美しさは段違いで、目を見張るものがある。

我夢もいつものように冷静を装ってはいるが、実は内心はしゃぎたい気分である。

 

彼らの隣で眺めるイリナも金閣寺の美しさに目を奪われ、お祈りするように胸の前で手を組んでいた。

 

 

イリナ「わあ~~輝きに満ちていて綺麗ね!まるで私の心のようだわ!」

 

我夢「それはないかな」

 

イリナ「……」

 

 

そのイリナの呟きに我夢はさらっと毒がこもった言葉で返す。しかも即答で。

そんな我夢をイリナはジト目で見つめる。

 

我夢本人は自覚していないが、実は意外と毒舌な面があり、そのせいで毎回小猫の鉄拳制裁を食らうハメになっている。

恋愛に疎いのもこういった側面がある影響なのかもしれない。

 

 

木場「やあ、みんな」

 

一誠「っ、木場」

 

 

そんなやりとりしていると、観光客の人混みから木場がやってきた。

1人でいることから、班の人に上手いことを言って抜け出してきたようである。

 

 

我夢「随分早いね。予定まで後30分もあるのに…」

 

 

木場の予定外の登場に少し驚く我夢。

予定では正午になる10分前に境内にある休憩所で落ち合うことになっていた。

その言葉に木場は

 

 

木場「こういう観光スポットは人だかりが多い……早いことに越したことはないさ。それに我夢君やイッセー君に会うのが待ち遠しかったというのあるしね♪」

 

我夢「そ、そうなのか…?」

 

一誠「お、おう…」

 

 

ニコッと笑って返す木場に我夢と一誠はゾワッと背筋が立つ。

木場の最後の一言がどう聞いても()()()()()のものしか聞こえなかったからだ。

本人には全く自覚がなさそうなのが余計気味悪さを感じさせる。

 

木場が1人でいることに疑問を持つ愛華、松田、元浜の3人に迷子になった設定で説明し、大悟と会う正午近くになるまで観光した後、一行は境内の休憩所に足を運んだ。

 

 

ヘビクラ「いたいた…」

 

 

しかし、一行は気付かなかった。

不敵な笑みを浮かべたヘビクラが人混みを掻き分けながらその後を追っていることに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩所に辿り着いた一行は長椅子に腰をかけて休みながら、注文した抹茶と和菓子を堪能していた。

京都名物の1つである抹茶というだけあってすごく苦いのかと一同は思っていたが、意外と苦みがなく、飲みやすい風味で、一緒に出された和菓子との相性が抜群だ。

 

 

アーシア「うぅ、少し苦いです…」

 

 

だが、アーシアだけはこの味が苦手らしく、困ったように眉を下げている。

しかし、抹茶自体は嫌いではなく、チビチビと少量ながらも口に含んでいる。

 

 

ゼノヴィア「金だった……」

 

 

ゼノヴィアは目をキラキラと輝かせながら未だ感激に浸っている。抹茶を飲んだ筈だが、その苦味にも反応を示さないくらいにだ。

余程、彼女にとって金閣寺の衝撃は大きかったことを物語っている。

 

その光景を眺めつつ、一誠は休憩所の時計へ目をやる。

時間はとうに正午を過ぎ、長針が5に差し掛かろうとしていた。

 

 

一誠「大悟のやつ、どうしたんだ?」

 

我夢「いや、来るはずだと思うんだけど…」

 

 

未だ姿を見せない大悟に不審に思う2人。

電話どころか遅れるというメッセージすら来ていない。

どうしたんだろうと首を傾げていると、

 

 

『キャーーーー!!』

 

 

と、悲鳴にも近い女性達の黄色い声が聞こえてきた。

何だろう?と思った一同は外に出ると、ある一ヶ所に女性の人だかりが出来ていた。

興奮する女性達の手にはカメラやスマホ、あるいはサイン色紙を手にしており、まるで芸能人がやってきたかのようだ。

よく見ると、同じく駒王学園の女子生徒の姿もあった。

 

 

我夢「ちょっと聞いていい?」

 

「あ、高山君」

 

我夢「この人だかりは一体?」

 

 

気になる一同を代表して我夢が近くに集まる女子生徒3人に問いかける。

すると、その3人は顔を見合わせて嬉しそうにニヤニヤすると、興奮気味に話す。

 

 

「うん!私達もさっき来たばかりだけど、アイドル級のイケメンが来てるらしいの!」

 

我夢「アイドル級のイケメン?」

 

「そうそう!温厚そうだけど、どこか知性溢れる……大人っぽい爽やか系男子って感じ?」

 

一誠「爽やか系男子?」

 

「それに、茶髪で高身長らしいの!」

 

イリナ「茶髪で高身長?」

 

「誰かを待っているらしいけど、彼女さんかなー?ああ~…私もあの人みたいな格好いいイケメン彼氏が欲しいなぁ~~…」

 

 

女子生徒から聞いた情報に我夢、一誠、イリナは聞き覚えがある単語に耳を止める。

茶髪で高身長でアイドル級のイケメン…そして誰かを待っている…。

その情報からもしや…と思った矢先、人だかりから出てきた人物を見て、的中する。

 

茶髪で高身長でアイドル級のイケメン───それこそ、我夢達が到着を待っていた長野 大悟その人だった。

 

 

「すみませーん!写真お願いします!」

 

大悟「ごめんね。先、急いでいるからまた今度ね」

 

「連絡先交換しよー!」

 

「彼女はいるのー?」

 

大悟「わっ、待って」

 

 

やんわりと断って何とか抜け出そうとする大悟だが、餌に群がる鯉のように次々と押し寄せてくる女性達に阻まれ、先に進めない。

相手が別に悪意を持っている訳でないので、大悟は強く言えず、苦笑いを浮かべている。

この光景に苦笑する我夢、イリナ、一誠を除いた唖然とするその他の面々。

 

 

イリナ「大悟君って昔からモテてたよねー」

 

我夢「ああ。アイドル事務所に何度もスカウトをかけられたこともあったらしいし」

 

 

イリナの呟きに相槌をうつ我夢。

彼らの言う通り、この状況になるのは今回に限った話でなく、過去にも似たケースが日常茶飯事で起きていた。

本人には気の毒だが、久しぶりに見た光景に我夢、一誠、イリナは懐かしさを感じる。

 

 

一誠「しゃあねぇな。俺達で助けてやるか」

 

ゼノヴィア「そうだな」

 

 

見かねた一同が一誠を筆頭に助け舟を出そうとした時だった。

大悟を取り囲んでいた女性達が突然、糸が切れた人形のように一斉に倒れた。

それを発端に周囲の観光客、休憩所にいた松田、元浜、愛華も意識を手放していた。

 

 

一誠「え?」

 

我夢「何が…?」

 

イリナ「大丈夫。眠ってるだけみたい」

 

 

動揺する我夢達だったが、近くで倒れていた観光客の容態を見ていたイリナが言う。

イリナの言う通り、観光客はスースーと規則正しい寝息を立てていた。

命に別状がないと我夢達はひと安心しかけるが、

 

 

木場「…どうやら、落ち着く暇は与えないらしいね」

 

『…っ』

 

 

木場の一言に周囲からする気配を察知し、一斉に身構える。

周囲の物陰から音を立てながら出てくる影に警戒する我夢達だったが、現れたのは今回の件に大きく絡む妖怪達だった。

その数は20~30と出迎えるにしてはかなり大人数だ。

あまりもの大人数に不審に思う我夢達だったが、彼らから昨日のような敵意が感じられず、それを裏付けするように武装をしている者が見当たらない。

 

警戒を解いた我夢達は今度こそとひと安心していると、妖怪達が一礼し、その中から着物を着た従者らしき妖狐の女性が大悟のもとへ歩み寄る。

 

 

「大悟様、ご友人様。勝手ながら、我々家臣がお迎えに上がりました」

 

大悟「あ、ありがとう。助かったよ。でも、よくここが分かったね。みんなと合流する場所までは教えてなかった筈なんだけど……」

 

ロスヴァイセ「私が伝えたのです」

 

大悟「…っ!?」

 

 

大悟の疑問に答える声が1つ。皆がそちらへ視線を向けると、物陰からロスヴァイセが現れた。

彼女の登場に大悟は何故かあり得ないぐらい目を見開いていたのは誰も気付いていなかった。

 

我夢はロスヴァイセに問う。

 

 

我夢「ロスヴァイセ先生、どうしてここに?」

 

ロスヴァイセ「先に京の妖怪が住む都にいたのですが、予定時刻より遅れているのを心配したアザゼル先生から迎えに行くように頼まれたのです。まさか、迎えに行く本人が原因を作ってるとは思いませんでしたが…」

 

大悟「は、はは…」

 

 

そう言いながらロスヴァイセにチラッと横目で見られた大悟は、申し訳なさそうにポリポリ髪をかきながら苦笑する。

我夢達もつられて苦笑いする中、今度は木場が問いかける。

 

 

木場「ロスヴァイセ先生。話し合いをするということは誤解が解けたということですか?」

 

ロスヴァイセ「ええ、九尾のご息女が先日の件についての謝罪。そして、この京都で何が起きているのかをお話ししたいのだそうです」

 

 

ロスヴァイセが目的について語ると、妖怪達は頭を下げる。

わざわざ迎えに行くために大勢で出迎えるのはそういった反省の意味も込められているのだろう。

それに謝罪するだけでなく、部外者である自分達に京都の現状まで話すとは余程重大なことだと我夢達は察した。

 

 

「我らの住む裏の都に皆様をご案内致します。ついて来てくださいませ」

 

 

着物を着た狐耳の女性の引率のもと、我夢達はひとまず妖怪達の住む裏京都へ赴くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重「先日は申し訳なかった!お主達を一方的に敵と決めつけ襲ってしまった!どうか許してほしい!」

 

 

我夢達が来て早々、深々と頭を下げる九重。

裏京都に招かれ、九重が待つ屋敷の大広間に案内されたのだが、まさかいきなり謝罪されるとは思わなかったので我夢達は少し困った。

ちなみに九重は正装なのか、戦国時代のお姫様が着るような着物を着ている。

 

 

アザゼル「…という訳だ。俺達も協力して、丸く収めておいたぜ」

 

セラフォルー「うんうん!平和が一番だものね☆」

 

 

困惑している我夢達に話しかける男女────アザゼルと着物を着たセラフォルーだ。

この口調から、彼等も今回の誤解を解決するのを根回ししてくれていたようだ。

 

困った顔をする一同だが、未だに頭を上げない九重に我夢は歩み寄り、話しかける。

 

 

我夢「九重、顔を上げてくれ。誰も君を恨んじゃいない」

 

九重「し、しかし…」

 

大悟「ほら、我夢も言ってることだし。ね?」

 

九重「う、うむ…」

 

 

頭を上げるのを渋る九重だが、付け加えるように大悟が言うと、流石に九重は折れたのか顔を上げる。

微笑ましい光景に良かった良かったと皆が頷いていると、九重は悲痛な顔で叫ぶ。

 

 

九重「………身の程をわきまえぬかと思うが……どうか、どうか!母上を助けてほしい!」

 

 

それは種族関係なく、親を想う1人の少女の叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

九重は母の護衛をしていた従者から聞いたことを語る。

 

この京都を収める妖怪の総大将、八坂。

九重の母である彼女は他地域に遣わされた使者と会談する為、数日前にこの屋敷を後にしたという。

 

ところがその道中、謎の霧と共に現れた集団に襲われ、八坂は拐われたのだ。

八坂が拉致された後、残された護衛達は口封じと称して、その集団の子分の怪物に次々と殺されていった。

 

 

九重「その生き残った従者も殺されそうになったのじゃが、颯爽と駆けつけた大悟があっという間にその怪物を倒したのじゃ」

 

大悟「いや、僕は手当てしただけなんだけど……」

 

九重「謙遜せんでも良い」

 

大悟「い、いや……謙遜じゃないんだって…」

 

『?』

 

 

九重と大悟のやりとりに首を傾げる一同。

というのも、否定する大悟の顔は本気であり、冗談を言っているように見えないからだ。

九重は「それはさておき…」と呟くと、話を続ける。

 

助けられた従者は命の恩人である大悟を客として裏京都に招くと同時に、八坂が拐われたことを告げた。

そして、怪しげな集団を徹底的に捜していたところ、人間ではない我夢達を怪しいと思って襲撃。

撤退後は大悟に説得され、アザゼルやセラフォルーの話に応じ、八坂を拉致したのが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の可能性があると情報提供し、今に至るという訳だ。

 

 

ゼノヴィア「…私が心躍らせている中、そんなことがあったのか……」

 

 

話を聞き終わった開口一番、ゼノヴィアは申し訳なさそうに呟く。

知らなかったとはいえ、妖怪達が辛い想いをしている中、あんなにはしゃいでいた自分に恥じているようだ。

 

 

イリナ「でもでも、どうして拉致したかったのかしら?」

 

一誠「大方、各勢力を手を結ぶのを邪魔したかったんじゃないのか?ロキみたいによ」

 

我夢「いや、それだったらその場で始末しようとするはず……わざわざ拐う必要はない。聞くところ、何の要求も出してきてもない」

 

 

一誠の意見を呈する我夢。

以前戦ったロキも他の神話と連合を組むのを邪魔する為、オーディンを始末しようとしていた。

しかし、今回は始末では拉致。しかも人質に使った要求すらも出してない。

我夢の意見にアザゼルは「その通りだ」と肯定すると

 

 

アザゼル「我夢の言う通り、連中は()()()()()()に拐ったのが濃厚だ。それに今のところ、奴らはここを離れる気はないらしいからな」

 

一誠「どうしてわかるんですか?」

 

 

確信持って話すアザゼルに一誠は問いかけると、アザゼルは

 

 

アザゼル「八坂──九尾の狐は特殊でな、住まう地に流れる様々な気や何やらをまとめ、バランスを保つ存在なんだ。殺されたり、管理地を離れたりすると、その地のバランスを保てなくなり、異変が起きる。だが、京都全域の異変は今のところ起きちゃいない。だから、ここにいる可能性は高いんだ」

 

一誠「なるほど…」

 

 

説明すると、一誠を始めとした我夢達一同は納得する。

アザゼルの話通りであれば、八坂の命はとりあえず無事である。

 

 

ロスヴァイセ「…ですが、何の目的に?」

 

一誠「あっ、確かに」

 

 

八坂の現状について話し合っている中、先程から沈黙していたロスヴァイセが疑問を口にする。

人質目的でないとすると、アザゼルが口にした別の目的とは何なのか?

良からぬことには変わりないではあるが。

 

 

九重「それは今から説明致す。(じい)

 

「ははっ」

 

 

その目的に心当たりがあるのか、九重は近くにいた天狗に命じる。

九重に爺と呼ばれた天狗の老人は返事をして立ち上がると、2人の従者を引き連れて隣の襖へ入っていく。

 

我夢達は何だろう?と思いながらしばらく待っていると、3人が金属で出来た三角錐のカプセルを重そうに抱えて帰ってきた。

従者らが大広間の中央にセッティングする中、アザゼルが九重に問いかける。

 

 

アザゼル「これは?」

 

九重「およそ半年前……コッヴと呼ばれる怪獣が現れた同日、この裏京都に空から落ちてきた隕石の中から発見された“たいむかぷせる”?という代物じゃ」

 

我夢「コッヴと同じ日に?」

 

九重「うむ。正確にはコッヴが現れる3時間前ぐらいじゃがの。母上を拐った連中が狙っているものがここに記されているものじゃろう…」

 

 

ひと通り説明した九重は老人の天狗にアイコンタクトを送る。

指示を受けた老人の天狗はタイムカプセルの底付近の再生スイッチを押すと、タイムカプセルが青白く仄かに光る。

頂点付近の小窓が開き、中にあるポインターから投影された人型の立体映像を見て、我夢達は驚く。

 

 

ユザレ『…』

 

『!?』

 

 

そう、投影された立体映像は3000万年前の超古代人ユザレだった。

前々から存在を知っている我夢と一誠は「何でユザレが?」といった風に驚いているが、その他の妖怪達を除く面々は話だけは聞いていたが、ここまでロスヴァイセに似ているとは思わず、目を真ん丸にしている。

 

 

ロスヴァイセ「わ、私!?」

 

 

特に姿が瓜二つのロスヴァイセの驚き振りは凄く、まるで自分のドッペルゲンガーを見ている感覚を味わっていた。

皆が驚愕に包まれるのをよそに、立体映像のユザレは語り始める。

 

 

ユザレ『私は地球星警備団団長ユザレ。このタイムカプセルが地球に到着したということは、地球に大異変が相次いで起きます。その兆しとして、根源的破滅の刺客が魔王の若き妹君が納める領地へ降り立ちます』

 

木場「コッヴのことか…!」

 

 

ユザレの言う根源的破滅の刺客がコッヴを指していることに気付いた木場は呟く。

地球に降り立つというだけでなく、魔王の若き妹君──リアスが収める領地である駒王町に来ることまでピンポイントに言い当てている。

本当にタイムカプセルなのか?と疑うレベルだ。

 

 

ユザレ『そして…遥か遠い宇宙のみならず、忘れ去られた古代の闇が現れるでしょう。その先兵として、大地を揺るがす怪獣『ゴルザ』と空を切り裂く怪獣『メルバ』が復活します』

 

我夢「ゴルザとメルバだ!ほら、イースター島とモンゴル平原で目撃されたあの怪獣のことだよ!」

 

 

我夢は皆にニュースで報じられた2体の怪獣こそがゴルザとメルバのことであることをやや食い気味に話す。

忘れ去られた古代の闇───即ち、ゴルザとメルバが3000万年前の怪獣であることを意味していた。

 

 

ユザレ『大異変から地球を守れるのは地球より生まれし光の巨人……そして、『ティガの巨人』だけです』

 

イリナ「ティガの巨人?」

 

ユザレ『かつて、地球上の守り神だった巨人は戦いの為に用いた体を妖怪達が住まう地に眠るティガのピラミッドに隠すと、本来の姿である光となりて、星雲へと帰っていきました』

 

『!?』

 

 

ユザレの発言に驚く我夢達。

ティガの巨人───3000万年前に存在していた超古代のウルトラマンが人間界の何処かにサーゼクスが語っていたので我夢達は知っていたが、まさかこの京都に隠されているのは思いもよらなかった。

 

ユザレは一拍開けると、話し続ける。

 

 

ユザレ『我が末裔達よ……巨人を甦らせ、ゴルザとメルバを倒すのです』

 

九重「?」

 

大悟「…」

 

 

皆がユザレの話に注目する中、九重はふと視線を外すと、大悟が口を引き縛り、神妙な面持ちを浮かべているのに気付いた。

会ってそんなに日が経っていないが、いつも明るい笑顔を振り撒く彼が今まで見せたことがない曇った顔を浮かべている。

思い返して見れば、タイムカプセルを再生させた時から顔を曇らせていた気がする。

 

 

九重「(…大悟?)」

 

 

九重はそんな彼の身を案じ、不安を覚える。

母親を拐われ、悲しみに暮れる自分を励ましてくれた大悟に九重は部下を救ってくれた恩人以上の感情があった。そうとなれば、気にしまうのが当然だ。

 

そんな不安をよそにユザレは

 

 

ユザレ『巨人を甦らせる方法はただひとつ……ザ──ザザ─────!』

 

『っ!』

 

 

肝心な箇所を話す途中、ノイズが走ると、映像が途切れてしまった。

 

 

一誠「あれ?この続きは?」

 

九重「残念じゃが、映像はここまでじゃ。何度再生してもいつもここで途切れてしまう」

 

一誠「んじゃあ、叩いてみるか」

 

ゼノヴィア「そうだな」

 

我夢「2人共!?ストップ!ストップ!もし壊れたりでもしたらどうするんだ!」

 

 

裾を捲ってタイムカプセルを直そうとする一誠とゼノヴィアを我夢は慌てて制止すると、2人はあっさり納得し、大人しく座る。

そんな光景を尻目に顎に手を当てて考えていたアザゼルは口を開く。

 

 

アザゼル「…とりあえず、こういうことだろう?超古代の怪獣ゴルザとメルバが甦った。それに対抗する為のウルトラマンの肉体があるティガのピラミッドは京都の何処かへある。その場所を知るのは……」

 

我夢「八坂さん…?」

 

 

アザゼルに続けて我夢が呟くと、九重は頷く。

 

 

九重「この京都には大昔、クラヤミノオロチという人々に災いをもたらした悪しき邪龍を光の勇者が倒したという伝承が残されておる。当時の京の妖怪は感謝の意を込めて勇者の墓を作ったとされているが、それがティガのピラミッドじゃろう…」

 

大悟「そうなのか…」

 

 

九重の話に初耳の反応を示す大悟。

世界中を旅した経験から歴史は誰よりも得意な大悟でも流石に京都にウルトラマンの墓があるとは知るよしもなかっただろう。

 

 

ロスヴァイセ「ティガのピラミッドは何処に?」

 

九重「九尾の一族は代々、その墓の守人を任されておるが、当代の守人───つまり、私の母上しか居場所を知らぬ。お役に立てず、申し訳ない……」

 

ロスヴァイセ「ああっ、気を落とさないで下さい。仕方ありませんよ。知らないものは知らないのですから」

 

 

顔を曇らせる九重を何とか宥めるロスヴァイセ。

こうして見ると、教師らしい一面は一応はあるようだ。

アザゼルは現状得た情報から整理し始める。

 

 

アザゼル「ひとまず、確定じゃねぇが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の狙いはそのティガの巨人ってことだ。奴らは八坂にピラミッドの居場所を吐かせ、ゴルザとメルバを利用して何かを企んでいる、と。まあ、未だ大きな動きがないのは、ピラミッドが見つかっていないってことだな。…何としても阻止しねぇとな」

 

セラフォルー「そうね。せっかくの修学旅行を台無しにさせたくないしね」

 

アザゼル「おう」

 

 

セラフォルーの真剣な言葉にアザゼルは頷くと、我夢達を見渡すように視線を向ける。

 

 

アザゼル「お前達にも動いてもらうことになるかもしれんがとりあえず、調査は引き続き俺達の方でやっておく。シトリー眷属には俺から伝えておく。調査に進捗があるまで、下手に動かず、観光を続けてくれ。頼むぞ」

 

『はい!』

 

 

アザゼルの指示に応じる我夢達。

正直なところ、旅行どころでなく、今すぐにでも八坂の救出とティガのピラミッドを探し出したい。

しかし、八坂を人質に捕られている以上、下手に動くことは得策ではない。待つのが今出来る最低限のことだ。

 

 

九重「……どうかお願いじゃ。母上を……この京都を助けてくれ……。いや、助けて下さい。お願いします」

 

 

そう懇願すると、九重が床に手をつき、深く頭を下げる。周りにいる従者も続けて同じ動きをする。

涙声で震わせる小さな娘の頼みに胸を打たれた我夢達は誓った。

───必ず助け出す、と。

 

 

大悟「ティガ……」

 

 

大悟は何かが引っ掛かる様子でタイムカプセルを見据え、呟く。

時間を越えた超古代人からのメッセージを受けた大悟の心情は誰にも読み取れない。

 

そして、大広間の隣で盗み聞きする者が1人。

ジャグラスジャグラーこと、ヘビクラが襖に耳を当て、話の一部始終を聞いていたのだ。

 

 

ヘビクラ「なるほどぉ…」

 

 

何か思い付いたのか。ヘビクラはニヤリと怪しげな笑みを浮かべると、闇のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さで何処かへ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。我夢達は昨日と同じように京都観光を行っていた。

今日は嵐山方面を観光する予定で、まずは京都駅発の電車から比較的近い天龍寺に向かっていた。

 

 

我夢「(結局、あのタイムカプセルからは何の情報も出なかった…)」

 

 

最寄り駅に着くまでの間、我夢は電車に揺られながら昨日のタイムカプセルについて考えていた。

あの後、我夢はアザゼルに頼まれて、深夜近くになるまで映像が途切れていた箇所の修復に取りかかっていたが、あの手この手を使っても解析出来なかった。

わかったことはタイムカプセルが3000万年前に作られたことと、宇宙から落ちてきたことだけだった。

 

 

我夢「(巨人を甦らせる方法はただひとつ……か)」

 

 

自分のような超古代人の遺伝子を持つ者が復活させる鍵なのは明らかであるが、肝心の蘇らせる方法がわからず、そもそも巨人が眠るピラミッドの場所がわからない。

──どうすればいいのか…?と顔を俯かせて深く考え込んでいると

 

 

松田「おい、我夢。何、難しい顔してんだ?」

 

我夢「…っ」

 

 

我夢の視界に訝しげな様子で覗き込む松田の顔が映った。ハッとなった我夢は顔を上げると、松田の隣にいる元浜も同じ顔をしている。

どうやら、沈黙し続ける態度に不安を与えてしまったようだ。我夢はニコッと作り笑いを浮かべる。

 

 

我夢「いや、ちょっとした考え事さ。大したことじゃない………って、何度も言うけど、凄い顔になってるな~」

 

松田「まあな~」

 

元浜「名誉の負傷だ」

 

 

我夢の言うように松田と元浜の顔は普通では有り得ないぐらいパンパンに腫れ上がっており、絆創膏やガーゼが顔のあちこちに貼られている。

松田と元浜は昨晩、女湯が覗ける秘密のスポットへ行ったのだが、案の定上手くいく筈もなく、生徒会に取り押さえられた。

それでも強行突破して女湯に入ろうとしたが、2人が来ていると情報が伝わっていた女子達に袋叩きにされ、現在に至るという。

 

 

我夢「君達、懲りないね。もう止めといたらいいんじゃない?」

 

松田「いいや、俺達は決して諦めない!女子の裸体をこの双眸に収めるまでは!」

 

元浜「そうとも!今度こそ上手くいくプランを立てるまでだ!」

 

 

そう言ってガッチリと肩を組む松田と元浜。

ここまで痛い目にあって尚、めげない姿勢に呆れを通り越して逆に尊敬してしまうなと我夢は苦笑しつつ思った。

 

そんな他愛のない会話をしていると、向かい側の席に座っていた愛華が荷物を手にスタスタと歩いてくる。

 

 

愛華「あんた達、もう着くわよ」

 

「「「はーい」」」

 

 

少し間延びした返事をする3人。愛華だけでなく一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナも席を立ってすぐに下車できる準備が出来ていた。

 

そんなやりとりをして1分もしないうちに目的の駅に到着。改札を出た後は案内看板とマップをもとに徒歩で数分、巨大な門を構える天龍寺に着いた。

 

門を潜り、境内を進んだ先にある受付で我夢達が観光料金を支払い終えた時だった。

 

 

九重「おおっ、お主達。来たようじゃな」

 

大悟「みんな、こんにちは」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえ、皆は振り向く。

そこには狐の耳と尻尾を引っ込めた状態の九重と何故かベースボールキャップとマスクを着けた大悟がいた。

 

 

我夢「九重?それに大悟も。どうしてここに?」

 

大悟「ああ、九重がどうしてもみんなの観光案内したいってね」

 

 

そう言われて我夢達は九重が帰り際にそんなことを言っていたのを思い出す。

この間の件のお詫びのつもりで、大悟はその付き添いなのだろうと察した。

 

 

一誠「てか、何でそんな怪しい格好してんだよ?不審者っぽいぞ」

 

 

一誠はさっそく大悟の格好にツッコむ。

今の大悟は目元深くキャップを被り、マスクをしているせいで顔がよく見えなくなっている。端から見たら幼女を連れる不審者だ。

それに対し大悟は

 

 

大悟「ああ、これ?ほら、昨日女の子に囲まれて…」

 

一誠「ああ~」

 

 

大悟の話から一誠は彼が女の子に囲まれていたことを思い出す。

大悟は一誠も認めているがアイドル級のイケメンであり、それ故、昨日は予定通りに上手くことが運ばなかった。

そういった経験もあって顔を隠しているのだろう。

 

 

愛華「やーん!可愛い!」

 

九重「やーめーーー!離すのじゃ!馴れ馴れしいぞ!」

 

愛華「お姫様口調で嫌がるなんて、最っ高だわ!キャラも完璧じゃない!」

 

 

そんな会話をしている横では目をキラキラと輝かせている愛華が九重にじゃれついていた。

対する九重は嫌がり、身を捩って離れようとするが、愛華はガッチリ抱き締め、猫のように頬擦りしていた。

可愛い小さな娘には目がないのだろう。

 

愛華の好みが垣間見えたことに意外に思う我夢と一誠だが、流石にこのままでは可哀想なので、愛華を九重から引き離してあげた。

 

解放された九重は脱兎の如く走ると、大悟の後ろに隠れ、ひょこりと顔を出し、ジト目で愛華を警戒する。

大悟にくっつく九重を見て、愛華は訊ねる。

 

 

愛華「その子、やけに大悟さんに懐いてるわね……もしかして、娘さんですか?」

 

大悟「ん?…いや、違うよ。この子は九重、僕の知り合いの子供さ」

 

九重「コホン……九重じゃ。よろしく頼むぞ」

 

 

紹介された九重は咳払いして平静を保つと、若干ふてぶてしい態度で自己紹介する。

なんやかんやありながらも、九重の案内付きの観光が始まった。

 

ちなみに元浜が終始、九重に興奮気味だったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で九重の案内のもと、天龍寺を巡る。

誰かに教えられた知識をもとに一生懸命案内する姿は健気で微笑ましいものだ。

 

九重は天龍寺以外にも二尊院、竹林の道、常寂光寺…その他諸々観光名所を案内した。

見た目通りの可愛らしい仕草1つ1つに癒されながら、京都観光を楽しんだ。

 

そして、ひと通り観光した一行は九重お気に入りの湯豆腐屋で昼食を取っていた。

九重が率先して器に掬ってくれた湯豆腐を我夢達は頂く。

 

 

一誠「ん~~、めぇぇーーーっ!」

 

ゼノヴィア「和の味がする。悪くない」

 

アーシア「はい、いつも食べているお豆腐とは違って新鮮で美味しいです」

 

イリナ「味わいが深いわぁ~…」

 

九重「そうじゃろう!ここの湯豆腐は絶品じゃ!」

 

 

湯豆腐に舌を唸らせる一同を見て、九重は満開の笑みを浮かべる。どうやら、口に合ってよかった安心しているようだ。

我夢は九重に感謝を告げる。

 

 

我夢「九重の案内助かったよ。観光名所で知れないことも知れたし、美味しい湯豆腐も食べられたし」

 

九重「うむ、そうじゃろう。ここの湯豆腐は特に皆に食べてもらいたかったからのぅ」

 

大悟「まあ、単純に食べに行きたかったというのもあるけどね~」

 

九重「こ、これ!余計なことを言うでない!」

 

 

恥ずかしそうに小突く九重に大悟は「ごめん、ごめん」と笑って返す。

九重の反応から半分は本当なのだろうが、皆に食べに行きたい気持ちは嘘ではないのがわかる。

母親がいない寂しさを紛らせたい気持ちも少なからずあるだろうが、妖怪の総大将の娘とはいえ、皆と遊びたいという見た目の年相応の気持ちが強いのだろう。

 

 

我夢「(それにしても、親子に見えるな~…)」

 

 

そんなことを思いつつも我夢は楽しげに会話をする大悟と九重に微笑む。

大悟に余程懐いてるのか、案内中も大悟の傍を離れなかった。

対する大悟も嫌そうな感じはしておらず、手を繋いで歩いていた。その光景は親子か、年の離れた兄妹といっても誰もが納得するものだった。

 

 

木場「あ、我夢君」

 

我夢「木場君か」

 

 

我夢も湯豆腐の美味しさに舌鼓を打っている中、話しかける声に振り向くと、木場がいた。

近くに木場と同じ班の人が昼食を取っているのを見て、彼の班も嵐山方面へ行く予定なのを思い出した。

 

 

木場「天龍寺にはもう行ったのかい?」

 

我夢「ああ、実物の雲龍図は迫力が違ったよ」

 

木場「僕達の班もこの先の渡月橋を見てから、午後は天龍寺に行く予定なんだ。話を聞いてますます楽しみになってきたよ」

 

我夢「渡月橋か……僕達もこれを食べ終わったら行くつもりだよ」

 

 

そんな話をして、お互いにこれから訪れる観光名所に胸を膨らませていると、

 

 

アザゼル「よお、お前ら~。楽しんでるか?」

 

 

上機嫌な調子で話しかける声が聞こえ、そちらへ顔を向けると、白昼堂々酒を飲んでいるアザゼルの姿があった。

勤務中にも関わらず飲酒するアザゼルに我夢はすかさずツッコむ。

 

 

我夢「アザゼル先生!勤務中に酒を飲んでいいんですか!?まずいですよ!」

 

アザゼル「あぁん?俺は特例なんだよ、特例──」

 

ロスヴァイセ「何が特例ですかっ!職務怠慢してるだけじゃないですか!」

 

 

ほろ酔いのアザゼルにダァン!とテーブルを叩き、抗議する声が1つ。ロスヴァイセだった。

青筋立てて怒るロスヴァイセは我夢達へ視線を向けると、アザゼルに指指し、非難の声をあげる。

 

 

ロスヴァイセ「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです!生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三注意してるのですが……」

 

 

ロスヴァイセは声を張り上げていたが、困り果てた顔を浮かべると次第に沈んでいく。

アザゼルの対応に四苦八苦しているようだ。

 

すると、アザゼルはグビッと杯の中の酒を飲み干すと、ロスヴァイセに

 

 

アザゼル「まあ、そう言うなよ。ちったぁ、リラックスしろよ。いちいち堅苦しくするから、男の1人や2人も出来ないんだぜ?」

 

ロスヴァイセ「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないで下さい!」

 

 

そう言われたロスヴァイセは顔を真っ赤にして声を張り上げる。オーディンの付き人をしていた時もそうだが、毎回この手の話題を振られると、狼狽えてしまう。

────これじゃ転生する前と変わんないんじゃ、と見守る我夢達が気の毒に思っていると、ロスヴァイセは驚きの行動に出た。

 

 

ロスヴァイセ「もういいです!これ以上あなたに飲ませるくらいなら私がっ!」

 

『あ!』

 

 

やけくそになったロスヴァイセはアザゼルから酒瓶を取り上げると、それを一気に口に流し込む。

流石にこの行動に我夢達だけでなくアザゼルも驚き、目を丸くする。

グビッ…グビッ…グビッ…と喉を鳴らして豪快に飲むと、酒瓶をダァン!とテーブルに叩きつけるように置く。

 

 

ロスヴァイセ「……ぷはー。だいたいれすね!あなたはふだんからたいどがダメなんれすよぉ…!」

 

アザゼル「お、おい!?一杯で酔っぱらったのかよ?」

 

 

たった一杯であっさり酔っぱらったロスヴァイセに驚くアザゼル。

目が座り、呂律も回っておらず、明らかに悪酔いしている。あまりもの早さに驚愕する一同を差し置いて、ロスヴァイセはもう一杯、今度は盃に注いで飲み干す。

 

 

ロスヴァイセ「わらしはよっぱらってないれすよ!おさけのおつきあいはむかしからしていれ……あーもう、おーでぃんのクソジジイのことをおもいらしてきた!あんなもうろくジジイのあいてばかりしてるせいれ、ろくなせいかつはれきないし!かれしはれきないし!うあぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 

アザゼルに絡んできたロスヴァイセは酔いからきた本音を吐き出したかと思うと、遂にテーブルに突っ伏して泣き出してしまう。

あまりもの悲惨さに我夢達はおろか、アザゼルもどう対応すればいいか困惑していた。

 

しばらくして、観念したように嘆息したアザゼルは席を立ち、我夢達に言う。

 

 

アザゼル「お前ら、ここは俺に任せて、早く他のとこへ観光へ行け」

 

一誠「先生は大丈夫なんですか?」

 

アザゼル「仕方ねぇ、これも大人の付き合いってやつだ」

 

 

心配する一誠をそう返すと、アザゼルは再び席に着く。

皆は顔を見合せて頷くと、そそくさと立ち去ろうとしていた時、突如席を立ったロスヴァイセが千鳥足で歩くと、立ち去ろとする大悟の腕を掴んだ。

 

 

ロスヴァイセ「ろこにいくのれすか?あなたもつきあってもらいますよぉ」

 

大悟「え、ええ!?」

 

ロスヴァイセ「『ええ!?』じゃないれすよ。しってますよ、きのうわらしをチロチロみていらことを。ろうせ、あなたもこんなわらしを『さちがうすいおんな』だなんてあざわらってらんれしょ?」

 

大悟「い、いや……そんなことは…」

 

ロスヴァイセ「いいわけむよう!わらしのくろうをきけば、そんなかんがえまちがっれるってきっとわかりますから!さぁ、いきますよ!」

 

 

必死な弁明も虚しく、大悟はロスヴァイセに連行されていく。

大悟に御愁傷様と思いつつも、一同は湯豆腐屋を後にした。

 

ロスヴァイセに連行された大悟はアザゼルの隣の席に座らされる。

最早逃げることは出来ないと観念した大悟にアザゼルは申し訳なさそうに耳打ちする。

 

 

アザゼル「悪いな。連れの暴走に巻き込んじまって」

 

大悟「いえ、これも大人の付き合いですから」

 

 

これから始まる終着点不明の地獄の時間に2人は笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

店を抜け出た我夢達は渡月橋を渡っていた。

木場は途中、班の予定通り天龍寺へ行く為に別れた。

 

 

九重「大悟、大丈夫かの…」

 

 

そう呟きながら、九重は遠くの湯豆腐屋の方へ心配そうな視線を送る。

連行された大悟が不安なようだ。

寂しそうにする九重に一誠は声をかける。

 

 

一誠「ま、大悟なら大丈夫だろ。あいつ、接客とるの上手いから」

 

九重「うむ……。しかし、お主らの仲間は大変なやつが多そうじゃな」

 

我夢「ま、まあね。はは…」

 

 

そう言われた我夢は苦笑する。

確かにグレモリー眷属はアットホームな感じで良い人ばかりではある反面、癖が強いのが多い。

かくいう我夢もあまりそう見えないが、やはりというべきか、癖が強い。

まともなのはアーシアぐらいだろうか。

 

それはさておき、我夢は渡月橋から景色を見渡す。

端にある陸地は美しい町並みが並び、標高高い山々は悠然と佇み、橋の下を流れる川は大陽に照らされ、キラキラと輝いている。

この美しい情景の裏で陰謀が渦巻いているとは思えないくらいだ。

 

 

我夢「(このまま何も起きなきゃいいけど…)」

 

 

我夢がそう願いながら橋の真ん中に差し掛かった時だった。

突然、ヌルリと生暖かい感触が我夢達を包みこんでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「な、何だ!?」

 

 

突然周りの空気が変わったことに驚く我夢は辺りを見渡す。

周囲には共に行動していた一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、九重に加え、橋の遠くからは別れたばかりの木場がこちらへ駆け寄る姿が見える。

だが、それ以外の面々はおらず、松田、元浜、愛華はおろか、周りにいた観光客も忽然と姿を消していた。

 

この奇妙な現象に集まった警戒していると、一誠は周囲の足下に霧が立ち込めていることに気付いた。

この霧を目にした一誠は既視感を感じる。

 

 

一誠「この霧……」

 

木場「うん、間違いない。『禍の団(カオス・ブリゲード)』の所有する『神滅具(ロンギヌス)』の1つ、『絶霧(ディメンション・ロスト)』だ。この一辺の空気の感じから、僕達は渡月橋周辺の疑似空間に移動させられたみたいだね…」

 

 

一誠の呟きに答えるように木場が話す。

絶霧(ディメンション・ロスト)』───霧で包んだものを有機物・無機物問わず転移させる能力がある。

この能力を使えば、地球の反対側だろうが、作り出した疑似空間だろうが、何処へでも移動させることは容易だ。

 

木場の解説を聞き、『禍の団(カオス・ブリゲード)』によるものと把握した皆はよりいっそう警戒を強める。

いつどこから攻撃がきてもいいように身構えていると、遠くから飛んでくる影が1つ。

堕天使の黒翼を羽ばたかせているアザゼルだった。

 

 

アザゼル「お前ら、無事か?」

 

我夢「はい。今のところは何とも」

 

アザゼル「そうか。他に誰かいねぇか見てきたが、俺達以外、さっぱり消えちまっている。まるでゴーストタウンみたいにな」

 

 

アザゼルの報告に皆はやはりと思った。

自分達だけを転移させる……つまり、敵が直接始末しに来たことを告げている。

 

 

「はじめまして、アザゼル総督。それにXIGの方々」

 

『!?』

 

 

敵の奇襲に身構えていると、橋の反対側から我夢達を呼ぶ声が聞こえた。

我夢達は声のする方へ振り向くと、霧の中から集団を引き連れた学ランを着た黒髪の青年が現れた。

青年の手には身の丈程の槍らしき得物を持ち、トントンと肩を軽く叩いている。

 

我夢達がその槍から放つ得体の知れない気味悪さに生唾を飲んでいると、近くに降り立ち翼をしまったアザゼルが訊ねる。

 

 

アザゼル「お前か。英雄派を仕切ってる男ってのは」

 

曹操「曹操と名乗っている。三国志の武将、曹操の末裔だ」

 

我夢「何だって!?」

 

 

曹操と名乗る青年の口から出た言葉に衝撃を受ける我夢。

あの三国志で有名な曹操の子孫であることにも驚くが、何よりもテロリストの派閥のリーダーとして立ちはだかるとは予想もしなかった。

我夢以外の面々も同じ反応を出している中、アザゼルは視線を曹操へ向けたまま、皆に声をかける。

 

 

アザゼル「お前ら、あの男の持つ槍には要注意しろ。あれこそが『神滅具(ロンギヌス)』最強と謳われる『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』だ。神だろうが魔王だろうが、貫いたものを確実に抹殺できる代物だ」

 

『───ッ!?』

 

 

アザゼルの言葉に驚きの色を見せる我夢達。

聞いたことはあるが、まさかテロリストの手に渡っているとは……。

そんな中、九重が怒りでわなわなと肩を震わせながら曹操に叫ぶ。

 

 

九重「貴様かっ!貴様が母上を拐ったのは!」

 

曹操「おお、よくお分かりなられましたな。そう、あなたのお母上を拐ったのは俺達さ」

 

 

激しい剣幕を立てる九重と相反して飄々とした態度であっさり認める曹操。

まるで何か悪いことでもしたのか?と言わんばかりの態度だ。

それにより、更に怒りがヒートアップした九重は曹操に叫ぶ声のボリュームが上がる。

 

 

九重「母上をどうするつもりじゃ!早う、返せ!」

 

曹操「残念ながらそうはいきませんよ。お母上には()()()()()にお付き合いしていただく予約がされているのでね」

 

九重「実験?何だ、それは!」

 

 

実験という単語が頭に引っ掛かった九重は曹操に問い詰める。

曹操は平然とした態度で答える。

 

 

曹操「ここで今話してもいいのですが、まだ劇は始まったばかり……先に大筋を知っても面白くないだろう?映画館に観に行ったら、近くの客に映画のネタバラシされるのと同じくらいさ」

 

九重「くっ…!」

 

 

それを聞いた九重は歯を噛み締め、今にも飛びかかりそうな鋭い目にはうっすらと涙を溜めている。

実験と称したふざけたことの為に、母親を拐うだけでなく、この京都を好き勝手に蹂躙されるのが悔しくて堪らないのだ。

 

 

曹操「…後、スポンサーの要望を叶える為、かな?」

 

アザゼル「スポンサー?オーフィスのことか?それとも別の勢力か?」

 

 

曹操がポロッと溢した言葉を聞き逃さなかったアザゼルは睨みを効かせながら問い詰めるが、曹操は「本題には関係ありませんよ」とバッサリ斬ってかわすと、別の話に切り替える。

 

 

曹操「さて、皆様は『どうして表舞台に顔を見せたのか?』とお思いと思われます。その理由は単純。コソコソ隠れる必要がなくなったので、挨拶ついでにお手合わせ願いたかったのですよ……。光の巨人は特にね」

 

 

曹操はそう告げると、不敵な笑みを我夢と一誠へ向ける。

曹操の動機を聞いて、ますます怒りを募らせる我夢達は各々の武器を構える。

 

 

一誠「へっ、そうか。勉強が苦手な俺にもわかりやすい理由だ。八坂さんを取り戻すには、お前らをぶちのめすしかねぇようだな!」

 

 

一誠はそう言い放つと、ジェクターガンの改良銃──シグブラスターの銃口を曹操の眉間に向けて放つ。

曹操は首を捻って軽々と避けると、斜め後ろにいる少年に話しかける。

 

 

曹操「レオナルド、アンチモンスターを頼む」

 

 

曹操に頼まれた少年───レオナルドは無表情ながらもコクリと頷くと、足下に不気味な影が現れ、広がっていく。

すると、地面に広がった影から背筋が凍る程、禍々しい異形が形成されていった。その数は一体だけでなく、十……百は軽く超えている。

 

 

アザゼル「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』か!」

 

我夢「アザゼル先生。知っているんですか?」

 

アザゼル「ああ。あれも『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』と同じ『神滅具(ロンギヌス)』だ。名前の通り、自分が思い描くモンスターをデメリットなしでいくらでも創り出せるんだ」

 

我夢「そんな…」

 

 

苦々しい顔を浮かべるアザゼルの説明を聞き、我夢は絶句する。

異形の怪物を無制限で何体でも創り出せるとしたら、ある意味、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』より厄介だ。

その会話に乗っかった曹操は補足するように話す。

 

 

曹操「まあ、とはいうものの、レオナルドはまだ無制限に創り出せる程の力はない。ただ、相手の弱点を正確につくアンチモンスターを生み出す力には特化していてね、このアンチモンスターは今まであなた方と戦わせてきた神器(セイクリッド・ギア)所有者と黒い怪物から収集したデータを基に創ったものなのですよ。今回は()()()にカスタマイズしてもらいましたが…」

 

アザゼル「そうか、各陣営にちょっかいをかけてきたのはその為か!」

 

 

アザゼルの問いに曹操は「ご名答」と呑気な口調で返す。

これまでの襲撃は全てたった1つの目的───確実に我夢達専用のアンチモンスターを創り出す為、用意周到に練られた作戦だったのだ。

アザゼルが鋭く睨み付ける中、曹操は自嘲気味に笑うと

 

 

曹操「…けれど、肝心なウルトラマンのデータは収集しきれていない。三大勢力らを相手するには一番の壁である存在がね。中々、変身して戦ってくれないので───」

 

アザゼル「手合わせと称してデータ収集にきたって訳か」

 

 

続けてアザゼルが話すと、曹操はコクリと頷く。

曹操の態度から興味本意で戦いたいというのも少なからずあるだろうが、データ収集が目的と知れば尚更、我夢と一誠の警戒は強まる。

 

ひと通り話し終えた曹操はふっと不敵に笑うと、聖槍の切っ先を我夢達へ向け

 

 

曹操「さあ、はじめようか」

 

 

その一言が合図となり、戦いの火蓋が切られた。

始まると否や、アザゼルは翼を広げて曹操の元へ突っ込んでいく。

 

 

一誠「先生!」

 

我夢「イッセー。曹操はアザゼル先生に任せよう。今は僕達に出来ることをやろう」

 

 

驚く一誠に我夢は諭すと、他の面々に指示を出す。

緊急時の戦闘の指揮は我夢がするようにとリアスに託されたからである。

 

 

我夢「木場君、ゼノヴィア、イリナは前線に出てくれ!木場君とゼノヴィアは地上、イリナは空中から攻撃を!」

 

木場「わかったよ!」

 

ゼノヴィア「了解だ」

 

イリナ「オッケー!」

 

我夢「アーシアは後方から回復支援、イッセーはアーシアに近付く敵を倒してくれ!」

 

アーシア「はい!」

 

一誠「ラジャー!」

 

 

我夢からの指示を受けた一同はそれぞれの持ち場に向かっていく。

残された我夢は近くにいる九重に

 

 

我夢「九重は僕の傍を離れないでくれ」

 

九重「…う、うむ。わかった」

 

 

そう言うと、九重は少し顔を曇らせながらも返事をする。

本当は母親を拐った張本人が目の前にして戦いたいのだろうが、八坂がいない現状で京都妖怪を仕切っている彼女に万が一のことがあれば、大混乱を引き起こしてしまうのは明白。

ここは待機させるのが賢明だ。

 

 

イリナ「はあーーーっ!!」

 

『ゴギャアァァ!』

 

 

イリナは空中を飛び回りながら、光の矢でアンチモンスターを攻撃していく。

悪魔用アンチモンスターとだけあって、天使の光にはめっぽう弱く、イリナの攻撃を前に次々と倒されていく。

 

 

ゼノヴィア「」

 

木場「」

 

『ゴアァァァァーーーーッ!』

 

 

ゼノヴィアと木場も『騎士(ナイト)』のスピードで前進してくるアンチモンスターをデュランダルと聖魔剣のコンビで切り裂いていく。

 

 

一誠「おらおらっ!」

 

『ゴギャアァァ!』

 

 

木場達が倒し損ねたアンチモンスターは一誠が徒手空拳とシグブラスターを使い合わせて倒していく。

我夢もただジッとしているだけでなく、九重を守りつつ、ジェクターガンで後方支援する。

 

 

アザゼル「曹操!お前は俺がやらせてもらう!」

 

 

曹操のもとへ辿り着いたアザゼルは地上に降下しながら人工神器(セイクリッド・ギア)からなる黄金の鎧を纏う。

右手に作り出した光の槍の切っ先を下に向け、落下の勢いを利用した急降下攻撃を仕掛ける。

 

 

曹操「面白い!かの有名な堕天使の総督が俺と戦ってくれるとは!」

 

 

曹操は不敵な笑みを浮かべて歓喜の声をあげると、聖槍の刀身で光の槍を受け止める。

そのまま両者は攻防を繰り広げながら、戦いの場所を橋の下に流れる川の岸へ変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異空間でのアンチモンスターの大群と我夢達の合戦。

その戦いを遠くから高みの見物をする者───ヘビクラがいた。

ヘビクラの正体がジャグラーであることは敵味方どちらも知らず、その証拠に『絶霧(ディメンション・ロスト)』に巻き込まれていなかった。

入ろうとしても、『絶霧(ディメンション・ロスト)』による結界で腕が立つ術者でも侵入は困難である。

 

しかし、どういう訳か現にヘビクラはここにいる。

まるで入れて当然と言わんばかりに涼しい顔をしていた。

ヘビクラは広げたレジャーシートに座り、お土産屋で買ったクッキーを熱いお茶と一緒に食べていた。

 

 

ヘビクラ「ふっ…俺抜きにしては、中々面白いことになってるな。流石にコイツを使わなければここには入れなかったが…」

 

 

そう言いながらヘビクラは摘まんだ1枚の怪獣メダルに目をやる。

怪獣メダルにはこの世の産物と思えないくらい悪質な赤い悪魔が描かれていた。

ヘビクラは目を細めて、呟く。

 

 

ヘビクラ「『巨大ヤプール』───どこで素材を入手したかわかんねぇが、セレブロの奴、とんでもねぇのを作ってたんだな」

 

 

巨大ヤプール───こことは別宇宙のウルトラマンを苦しめた異次元の侵略者が合体した姿だ。

ヤプールは本来異次元人なので、そう易々とサンプルを回収できないが、ヘビクラの言うセレブロは特殊なルートで手に入れたようだ。

 

セレブロの底知れぬ情報網にヘビクラは半ば驚きつつも、再び戦場へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「おらッ!」

 

『ゴギャアァァッ!!』

 

 

アーシアの近くで戦う一誠はシグブラスターでの銃撃を浴びせると、アンチモンスターは断末魔をあげ、霧散していく。

 

 

アーシア「イッセーさん!」

 

 

回復のオーラを受けた一誠は心地よく癒されると、一瞬で受けた傷が跡形もなく塞がった。

 

 

一誠「アーシア、サンキューな!」

 

アーシア「えへへ…」

 

 

一誠にサムズアップで感謝されたアーシアはここが戦場だということも忘れて、嬉しさのあまり頬を緩めて照れる。

好きな人に誉められるのは普通の人に言われるよりも気持ちがいいのは当然のことだ。

 

2人は何となくいい雰囲気に包まれていると、木場が構成員を斬り捨てながらやってくる。

 

 

木場「イッセー君。そっちはどうだい?」

 

一誠「ああ、こっちは今のとこ順調だ。お前らは?」

 

木場「うん。こっちも同じさ」

 

一誠「おっ、そうか。……しっかし、ラチがあかねぇよな~~……」

 

木場「そうだね~」

 

 

一誠は近寄ってくる構成員を蹴散らしながらぼやくと、木場は苦笑する。

一誠達は構成員とアンチモンスターを苦戦せず殲滅してはいた。

 

しかし、問題はアンチモンスターだ。

倒しても倒しても次々と現れるので手を焼いている状態だった。

 

 

ドォォォォンッ!!

 

『!?』

 

 

そんな会話をしていると、橋の上で激突音が鳴り響く。

一誠と木場はそちらへ目をやると、半壊した瓦礫の山から鎧を纏ったアザゼルが瓦礫をどかして立ち上がっている姿が見えた。

しかし、アザゼルの鎧は所々破損しており、背中から生やしている黒い翼も焼け焦げた箇所から血が痛々しく滲み出ていた。

 

それを追って曹操もスタッと軽い足取りで橋の上に着地する。

相変わらず余裕綽々な顔ではあるがアザゼル相手に無傷ということはなく、身体中は傷だらけで服装もボロボロになっていた。

特に左側頭部からは深い切り傷があり、真っ赤な血が頬を伝って流れていた。

 

いずれも重傷ではないが、普段戦わないことを抜きにしても充分強いアザゼルと互角で戦えている曹操の強さは中々のものだ。しかも曹操はまだ息を切らしてすらない。

曹操の計り知れない実力に一誠達が戦慄していると、視線に気付いたアザゼルが顔を向ける。

 

 

アザゼル「安心しろ、お前ら。お互い本気じゃない……まだ、ほんの小手調べくらいだ」

 

 

アザゼルは安心させるように話す。

仮面に覆われていて素顔が見えないが、アザゼルもまだ余裕な様子だ。

小手調べとはいっても先程2人が戦っていた川は激しさのあまり、大きく変形してはいるが…。

 

曹操は首をコキコキと鳴らし、ふぅと息を吐くと、口を開く。

 

 

曹操「いいチームだ。噂通り……いや、それ以上だ。俺自身、実力に自信あるが、意外とやってくれる。もう少し鍛え直す必要があるか」

 

一誠「お前、結局何がしたいんだよ?」

 

 

満足気に話す曹操に一誠は眉をしかめて問いかける。

曹操がティガの巨人を狙っている可能性はあるが、自身が傷付くにも関わらずわざわざ戦おうとする姿勢に疑問を抱いていた。

曹操は聖槍の柄を肩へ乗せると、一誠へ顔を向ける。

 

 

曹操「至ってシンプルだよ。『人間』としてどこまでやれるのか、という挑戦心だ。堕天使、悪魔、天使、その他諸々を倒す『英雄』はいつだって人間だった……いいや、人間でなければならない。超常の存在より下回る人間がどこまで強くなれるか………それをやってみたかっただけさ」

 

 

自身の夢を熱く語る曹操。

それが本当なのか甚だ怪しいが、曹操がやろうとする熱意が本気だということがヒシヒシと伝わる。

夢───一度は挫折してしまった一誠にとっては後ろめたい未練であり、それを豪語する曹操が羨ましいとさえ思ったりしたが、

 

 

一誠「くだんねぇな…」

 

 

心の底から放った言葉がそれだった。

聞こえるか聞こえないかくらいの声量で放ったが、曹操の耳には届いたらしく、ピクッと眉を動かすと、一誠を見据える。

 

 

曹操「今、何と言ったんだ?」

 

一誠「くだんねぇ、って言ったんだよ。何だよそれ?そんなことの為に九重の母ちゃんを拐って、コソコソ動き回って……そんなのでよく『英雄』って名乗れるよな」

 

曹操「ふっ、散々言うじゃないか。けれど、誰もが願う夢の形はそれぞれ。大きくても小さくてもいいじゃないか?俺は人間の限界に挑戦したい。それをくだらないなんて────」

 

一誠「お前の夢は否定しない。だけど、やり方が間違っている…!誰かを傷付けてまで叶える願いは夢じゃない、エゴだ!もし、それでも止めねぇんだったら……」

 

 

そう言いつつ一誠は一旦言葉を止めると、懐からリーフラッシャーを取り出し

 

 

一誠「俺が全力で倒す!」

 

 

力強い目で曹操を見据え、ビシッと言い放つ。

普段のアホっぷりから一変した一誠の姿にアザゼルは思った。「こいつは将来大物になる」と…。

 

呆気にとられる曹操だが、再び不敵な笑みを浮かべると、聖槍の切っ先を一誠へ向ける。

 

 

曹操「ふふふ……じゃあ止めてみせてみなよ」

 

 

そう言った曹操は深く腰を落として構えると同時に一誠もリーフラッシャーを構える。

睨み合いながら一誠がリーフラッシャーを斜め上に掲げようとしたその時だった。

見たことがない魔法陣が両者の間に現れた。

 

 

アザゼル「これは…」

 

 

アザゼルが知っているかのような口ぶりをしていたので、一誠が尋ねようとした矢先、魔法陣が光輝くと、中から魔法使いの格好をした小柄な少女が現れた。

 

一誠達が「誰だ?」と怪訝そうにしている中、魔法使いの少女は一誠達の方へ体を向けると、ペコリと頭を下げる。

 

 

ルフェイ「はじめまして。私、ヴァーリチームで活躍させて頂いています『ルフェイ・ペンドラゴン』です。同チームのアーサーは私の兄です」

 

一誠「なっ!?アーサーの妹だって!?」

 

 

ルフェイがアーサーの妹という事実に一誠は目を丸くする。

アザゼルも仮面で顔が見えないが一誠と同じ顔をしているだろう。

パッと見、妹と言われなければわからないが、よく見ればアーサーの面影がある。

 

本日一番の衝撃に一誠はポカンとしていると、ルフェイが小走りで近寄ってくる。

ルフェイが目をキラキラさせ、視線を送ってくるので、一誠が怪訝に思っていると、手を差し出してくる。

 

 

ルフェイ「…あ、あの!私、実は『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』のファンなのです!」

 

一誠「………へ?」

 

 

突然の告白にすっとんきょうな声をあげる一誠。

その衝撃は先程まであった緊迫した空気がぶっ飛んでいくくらいだ。

 

 

ルフェイ「差し支えがなければ、あ、握手をして下さい!よろしければこの色紙にサインを!」

 

 

興奮やまない様子でルフェイは帽子から取り出した色紙とペンのセットも一緒に差し出す。

あまりにも唐突すぎて脳の処理が追いつかず、困惑する一誠だがとりあえず「ありがとう」と一言して握手をしてから色紙に『ルフェイちゃんへ  兵藤 一誠 ウルトラマンダイナ』と書いてあげた。

 

 

ルフェイ「ありがとうございます!……あっ!よく見れば向こうにも高山 我夢さんがいるじゃないですかっ!すみません!すぐ戻りますから!」

 

 

そう言うと、ルフェイは尋常じゃないスピードで駆け抜けると、向こうにいる我夢にも同じ様に握手とサインを求める。

一誠同様、我夢も困惑していたが、握手とサインを書いてあげると、ルフェイはピョンピョン跳び跳ねて喜ぶ姿が見えた。

 

ルフェイは一言お礼を言った後、再び猛スピードで走って一誠達のもとへ帰ってきた。

帰ってきたルフェイは満足げな笑みを浮かべ、2人分のサインが入った色紙を大事そうに抱えている。

 

 

ルフェイ「今、戻りました!いやはや、握手だけじゃなくて2人分のサインを貰えるなんて……!」

 

曹操「……そ、そうか。それで、ここに来た理由は?」

 

 

呆気にとられて話を切り出しにくくそうにしていた曹操だが、困惑しつつもルフェイに尋ねる。

その問いにルフェイは屈託のない笑顔を返す。

 

 

ルフェイ「はい!ヴァーリ様からの伝言をお伝えに参りました!」

 

曹操「伝言?」

 

ルフェイ「そうです!『邪魔だけはするなと言ったはずだ』───だそうです♪私達のチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

ルフェイが可愛らしい口調で伝えると、大地が震わせる程の地響きが襲う。

立っていられない強い揺れに、敵味方関係なく足場をすくわれる。

 

ルフェイ以外の面々が怪訝に思う中、地面が盛り上がったかと思うと、ドゴォンと固い地表を突き破り、土砂を巻き上げながら、姿を現したのは……

 

 

「バァァァァァ~~~!!」

 

一誠「か、怪獣!?」

 

 

獰猛な目付きをした二足歩行の怪獣だった。シュモクザメのような頭部に真っ赤な目。横長の口には鋭い歯が並んでいる如何にも狂暴そうなフォルムの怪獣だった。

驚く一誠にルフェイはニコッと笑みを浮かべながら話す。

 

 

ルフェイ「私達が最近捕まえた肉食怪獣のダイゲルンです♪腕っぷしが良さそうなので捕まえたのですが、とても獰猛でうちのリーダーも手が焼く暴れん坊さんです♪」

 

一誠「な、何でそんなもんを差し向けんだよ!」

 

ルフェイ「すみません、ヴァーリ様の意向ですから……あ、そうそう。3日ぐらいエサを与えていないので、いつもより狂暴ですよ~」

 

 

ルフェイの説明を聞き、一誠はダイゲルンを見上げる。

こちらを見下ろすダイゲルンの口元からはよだれが滝のように流れていた。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

 

その直後、ダイゲルンは雄叫びをあげる。

3日ぶり、しかも沢山いるエサにありつける喜びからくるものであった。

 

 

ルフェイ「それでは頑張ってくださいね~」

 

一誠「あっ、おい!」

 

 

一誠は帰ろうとするルフェイを呼び止めようとするが、ルフェイは足下に魔法陣を出現させ、そそくさと立ち去っていった。

 

 

一誠「持ってきたもんはちゃんと自分で持ち帰れよーー!」

 

アザゼル「イッセー、気を引き締めろ!くるぞ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~ッ!」

 

 

ルフェイに向かって叫ぶ一誠にアザゼルは呼び掛ける。

皆は身構えていると、ダイゲルンはその場からジャンプ、けたたましい音を立てながら一誠達とは反対側の橋の近くに降り立つ。

 

ダイゲルンは腕を高らかにあげると、そのまま橋へ振り下ろす。

その巨体から繰り出される強力な一撃に渡月橋はあっという間に半壊した。

そこにいた英雄派の構成員とアンチモンスターは崩壊に巻き込まれ、次々と川の底へ落ちていく。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

『ギィヤァァァァーーーー!!』

 

 

ダイゲルンは落ちる構成員やアンチモンスターを手でキャッチすると、次々と口を中へ放り込んでいく。

恐怖して立ち竦む、逃げ出そうとする、勇敢に立ち向かう英雄派の構成員をも手で捕らえ、口の中へ放り込み、ボリボリ音を立てて食べていく。

数分しないうちに100人以上であろう反対側にいた英雄派の構成員はあっという間に30人にも満たないくらいまで減っていた。

 

怒涛の勢いで大勢の人を食べたダイゲルンはペッと何かを地面へ吐き出す。

一誠達は地面に目をやると、吐き出されたのは消滅しかかっているアンチモンスターの亡骸だった。

どうやらダイゲルンの口には合わなかったようだ。

 

 

曹操「ヴァーリ、かなり頭にきていたようだな。ハハッ!……だが、これ以上仲間を減らされてはこちらが困る」

 

 

軽い笑みを浮かべていた曹操だが、すぐに真剣な顔に切り替わると、聖槍の切っ先を未だ構成員を食い尽くすことに勤しむダイゲルンに向ける。

 

 

曹操「伸びろッ!」

 

 

曹操がそう叫んだ瞬間、聖槍の切っ先がギュウゥゥゥンと勢いよく伸び、そのままダイゲルンの首もとに突き刺さる。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~!?」

 

ドォォォォンッ!

 

 

突然の攻撃にダイゲルンは苦悶とも困惑とも取れる悲鳴をあげると、横へ体勢を崩し、大きな衝撃音を立てて倒れた。

 

 

一誠「あの槍、一撃であんなデカイ怪獣をぶっ飛ばしたのかよ!?」

 

木場「これが最強の『神滅具(ロンギヌス)』の力か……」

 

 

襲いくる揺れに堪えながら、目の前で起きた出来事に驚愕する一誠達。

曹操の倍以上の規模を持つダイゲルンをたった一発でスッ転ばせる聖槍の底知れぬ強さに嫌でも圧巻された。

 

曹操が元の長さに戻した聖槍に一同が目を奪われていると、ダイゲルンはすぐさま立ち上がった。

刺された首もとからは赤黒い血がダラリと流れている。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

立ち上がったダイゲルンは曹操と一誠を視界に捉えると、怒りの雄叫びをあげる。

それは刺されたことよりも、食事の邪魔をされたことに関しての怒りだった。

怒り狂ったダイゲルンはその場で地団駄を踏むと、次の標的に定めた一誠達に向かって突進してくる。

 

 

一誠「…やべっ!ダイナァァァーーーーーーーッッ!!

 

 

曹操がいる手前、あまり披露したくはないがこの際仕方ない。

腹をくくった一誠は掛け声と共にリーフラッシャーを斜め上に掲げる。

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーーーーッッ!!

 

 

少し遅れながら、我夢も掛け声と共にエスプレンダーを前へ突き出す。

 

互いの変身アイテムから発する光に包まれ、2人は光の巨人────ウルトラマンへと変身した。

 

 

ダイナ「ダァァァァーーーーッッ!!」

 

ガイア「デヤァァァァーーーーーーッ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~~!!」

 

 

変身直後、ダイナとガイアは空中で一回転してジャンプキックを放つ。

2人の巨人によるダブルキックを受けたダイゲルンは後方へぶっ倒れる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~!!バァァァァァ~~!!」

 

 

2人が着地してすぐ身構えると、ダイゲルンはすぐさま立ち上がる。

食事を邪魔した相手を食べようもしたのを妨害され、またもや転倒されたことに怒り心頭の様子だ。

 

雄叫びをあげ、威嚇するダイゲルンにダイナとガイアはファイティングポーズを取って、出所を探る。

ダイゲルンは自分の力に自信があるヴァーリがわざわざ捕まえてきた怪獣だ。

そこに深い意味はないのかもしれないが、ヴァーリがとる行動には裏がある───それを知っているダイナ、ガイアだからこそ警戒するのだ。

 

 

バチバチッ!

 

『?』

 

 

互いに睨み合い、間合いを計っていると、両者が挟む空間に稲光りが走る。

この現象にこの場にいる全員が不思議に思った矢先、

 

 

バリィィィンッ!!

 

『!?』

 

 

空がガラスのように割れ、破片が飛び散る。

この平穏ではない現象にガイア、ダイナ、アザゼル達はおろか、曹操までもが警戒していると、割れた空から赤い空間が広がっており、そこから巨大な影が覗いているのに気付いた。

 

 

「……」

 

 

赤い空間から覗く影。それは牛のような顔に刺々しい針状の腕に右手にはフック状の手の形をしていた異形の怪獣が静かにこの状況を伺っていた……。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

怪獣を超える脅威──『超獣』との戦いは熾烈を極める!
試練を乗り越えた先、曹操の拠点を発見した我夢達は二条城を目指す!

次回、「ハイスクールG×A」!
「行け!英雄討伐隊」
お楽しみに!




・京都名物No-1「完全(いふ)湯豆腐」
  九重が我夢に案内してくれた湯豆腐屋の人気イチオシのメニュー。お値段2005円(税込)。
普通の豆腐と違って形はマシュマロのようだが、食感や強度は普通の豆腐と同じ。
その味は完全の名の通り絶品で、わざわざこれを食べに来る客も多い。
ただ、杜撰な食べ方をすると、豆腐に含まれている熱湯が飛んできて火傷する恐れがあるので充分注意せし。

・京都名物No-2「レンボラークッキー」
  ヘビクラこと、ジャグラーが渡月橋の戦いを観戦した際に食べていたクッキー。お値段40枚入りで1974円(税込)。
虹を模した虹のクッキーで、七色に彩られた部分はそれぞれ別の味がする。
ボクサーの間ではこれをお土産に買うと、必ず次の試合には勝つという噂があり、縁起が良いとされている。



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第54話「行け!英雄討伐隊」

英雄派首領 曹操
肉食地底怪獣 ダイゲルン
大超獣 ジャンボデューク
最強超獣 ジャンボキング 登場!


時は少し遡り、英雄派と一誠達が戦いを繰り広げている最中、ルフェイが現れた時だった。

遠くの高台で観戦していたヘビクラはルフェイが我夢と一誠に握手とサインを求める熱狂ぶりに舌を巻いていた。

 

 

ヘビクラ「あの娘、戦場なのにあの場違いのテンション……。全く、興味があるもんの前には我を失うのは、()()()()()を思い出すぜ……」

 

 

ヘビクラは1人興奮するルフェイに、かつて一緒に戦った女性の姿を重ねる。

ジャンルが違えど、彼女も興味があるものを目にするの、ルフェイのように途端にはしゃいでいた。

 

「あいつ、元気かな~」なんて思っていると、突如地響きと共に地中からダイゲルンが現れた。

ヘビクラは発生する揺れにも動じず、クイッとお茶を飲み干すと、ダイゲルンへ目を向ける。

 

 

ヘビクラ「あの怪獣、あの娘が呼び出したのか。ハッ、戦いにとんだ火付け役を投下したもんだ」

 

 

ヘビクラは客観的に呟きながら不敵な笑みを浮かべる。

何千、何百との歴戦の修羅場を潜り抜けてきたヘビクラには、ダイゲルンがルフェイに連れてこられたのが一目でわかった。

 

橋を破壊し、暴れまわるダイゲルンを視界に収めつつ、ヘビクラは懐から赤と黒を貴重とし、メダルの装填口がついたブレードにトリガーがついたアイテム───ダークゼットライザーを取り出す。

 

 

ヘビクラ「────じゃあ、食後の運動といくか」

 

 

ヘビクラはそう呟いてダークゼットライザーのトリガーを押し、出現させた光のゲートを潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回同様、ゲート内の紫色の怪しげな空間に入ったヘビクラの服は黒のスーツ姿から全身黒タイツになっていた。

まるで彼の旧友を彷彿とさせる格好だ。

 

そうすると、手前に四之宮の姿が描かれたアクセスカードが出現する。

ヘビクラがアクセスカードの右端を摘まむと、カードのデザインが四之宮からヘビクラのものへと変化した。

 

変化するのがわかっていたのか、ヘビクラは特に反応せず、アクセスカードをライザーのカード装填口に装填する。

 

 

《Hebikura.Access Granted.》

 

 

ライザーから認証音声が聴こえる中、四之宮は右手を開くと、チャリッと音を立てて怪獣が描かれた2枚のメダルを出現させる。

 

ヘビクラは髪を振り上げるように顔を上げ、正面を睨み付ける。

瞳が緑色に発光した瞬間、顔の左半分に不気味な魔人の顔が一瞬だけ浮かび上がった。

ヘビクラは出現させた2枚の怪獣メダルをライザーに装填していく。

 

 

ヘビクラ「カウラさん…」

 

チャリッ…

 

ヘビクラ「巨大ヤプールさん…」

 

チャリッ…

 

 

ヘビクラはねっとりとした口調でメダルに宿す怪獣の名前を呼びながらブレード部分の装填口に1枚ずつ装填すると、ブレードを動かす。

 

 

《Cowra.》

 

《Giant Yapool.》

 

 

ライザーにメダルを読み込ませたヘビクラはライザーを顔の横に構え

 

 

ヘビクラ「お待たせしました。闇の力、お借りします!

 

《Jumbo duke.》

 

 

その掛け声と共に真上に掲げて共にトリガーを引くと、ライザーから発する光に包まれ、ヘビクラは合体怪獣──否、合体超獣に変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリィィィンッ!

 

『!?』

 

 

ヘビクラが変身した合体超獣はさっそく空を割って、ガイア達の前に降り立つ。

割れた空は逆再生のビデオのようにすぐに破片がくっついて何事もなかったかのように戻っている。

 

腕部と背中は巨大ヤプール。それ以外は牛神超獣 カウラ。

2体の超獣の力が合体した大超獣『ジャンボデューク』の登場である。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

イリナ「何なのー!?あの怪獣!」

 

アザゼル「曹操、まさかお前か?」

 

曹操「いいや、俺が呼んだものではない」

 

 

一同がジャンボデュークの登場に驚く中、アザゼルの問いに曹操は首を横に振る。

曹操も逆に誰が差し向けたのか知りたいぐらいだった。

それもそうだろう。誰が差し向けたものでもなく、ヘビクラ───ジャグラーが変身した姿なのだから。

 

 

アーシア「あの怪獣さん、何か怖いです……」

 

 

アーシアはジャンボデュークを見て、僅かに身震いする。

今まで出会ってきた怪獣は種族が違えど人と同様、喜怒哀楽の感情が感じられた。

 

しかし、ジャンボデュークには全くそれが感じられない。

ヘビクラが変身したものとはいえ、生物兵器としての側面が強い超獣には感情そのものは全くないからだ。

それによって痛みや恐怖を感じず、その肉体が滅びるまで暴れ続ける。

誰よりも優しく、感受性豊かなアーシアには超獣が感情を持たないことがヒシヒシと伝わっていた。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

一同が固まっている中、乱入からの乱入に遂に我慢の限界を迎えたダイゲルンは怒りの雄叫びをあげる。

───この苛立ちが止まるならこの際、何でもいい!

そう思ったダイゲルンは大地を踏み荒らして、ジャンボデュークに突貫を仕掛ける。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

 

接近を許さないジャンボデュークは鎌状の右手から白色のレーザーを連射する。

放たれた無数のレーザーは突貫を仕掛けるダイゲルンの身体を易々と貫き、全身の傷口から火花と血が飛び散る。

 

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ~~ッ!!」

 

ジャンボデューク「ピィ~ギャアワァァッ!!」

 

 

身体全身を貫く苦痛にすくみ、苦悶の叫びをあげるダイゲルン。

その隙に接近したジャンボデュークは鎌状の右手で上下左右に振って3回斬り付けると、巨木のような牛の足から繰り出すヤクザキックで蹴り飛ばす。

後ろへ吹っ飛んだダイゲルンは背中から地面に体を打った。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

攻撃が通らず、更に苛立ちを募らせたダイゲルンは癇癪を起こす子供のように地面を叩き、立ち上がり様に尻尾で凪ぎ払う。

勢いがついた長く太い尾が襲いくるが、ジャンボデュークは左手で軽々と掴むと

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ジャキィンッ!

 

 

反対の鎌状の右手を振り下ろし、小気味の良い音を立て、尻尾を斬り落とした。

当然、体のバランスを保つ尻尾を失ったダイゲルンは大きく前のめりに倒れる。

 

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ"~~~~~~~ッッ!!」

 

 

尻尾を斬られ、狂い悶えるダイゲルンをジャンボデュークは見下ろしつつ、左手に持っていた尻尾の切れ端を地へ落とす。

両者の足下に流れる川は尻尾の切れ端とダイゲルンの尻尾の切り口から溢れる血によって真っ赤に染まっていく…。

 

 

ガイア「…ッ」

 

ダイナ「何て奴だ…」

 

 

怪獣と超獣のかけ離れた実力に圧倒され、思わず釘付けになるガイアとダイナ。

2人共、今まで怪獣を何体とも戦ってきたが、ここまで一方的にやられる姿を見るのは初めてである。

 

ジャンボデュークの恐ろしいまでの実力に戦慄していると、ダイゲルンは満身創痍ながらも立ち上がった。

受けたダメージは肉体的にも酷いが、それよりも精神的なのが強いだろう。

ここまで一方的にやられる経験はダイゲルンにとっては今までなかったのだから。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

これだけの実力差を見せつけられて尚も、ダイゲルンは奥の手でいわんばかりに口から火炎を吐く。

辺りを照らすばかりの高熱を持った火炎が向かってくるのに合わせ、ジャンボデュークも息を軽く吸って火炎を吐いた。

 

 

ボォォォンッ!!

 

アーシア「きゃっ!?」

 

ゼノヴィア「くっ!」

 

 

両者の火炎がぶつかり、暗かった景色全体を一瞬で照らす程の大爆発が起こる。

衝突時に起きた眩しさと熱風で目を伏せて身を固める一同。

 

しばらくして爆発が収まり、一同は目を開ける。

──勝ったのはどっちだ?

皆がそう思う中、立ち込める爆煙が晴れた先にいた勝者は───

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ…ッ!」

 

 

大超獣ジャンボデュークだった。

傷1つなく依然として佇むジャンボデュークの視線の先には全身火だるまとなり、弱々しい悲鳴をあげるダイゲルンの姿があった。

どうあがいても勝てないと悟ったのか、先程までの威勢は消え去り、抵抗する意思も最早無かった。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~~!ギャアワァァッッ!!」

 

ダイゲルン「バァ"ァ"ァ"ァ"ァ"~~~~ッッ!!」

 

ドガガガガガァァァァァンッッ!!

 

 

せめて止めは刺してあげようとジャンボデュークは口から無数のミサイルを放つ。

容赦の無いミサイルの雨にダイゲルンは断末魔をあげながら爆発四散した。

 

 

『……』

 

 

怪獣をあっという間に倒したジャンボデュークを前に、ガイア達は絶句する。

怪獣を超える存在───超獣の強さの片鱗を目の当たりにしてしまえば、こうなるのも無理はない。

超獣の強さに衝撃を受ける中、振り向いたジャンボデュークはガイアとダイナを視線に捉える。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

『…!』

 

 

直後、ジャンボデュークは雄叫びをあげる。

それを耳にし、我に戻ったガイア達は次は自分達に向かってくると察して身構えると、ジャンボデュークはその場から駆け出す。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

それに合わせてガイアは先陣をきって駆け出す。

接近し、振り上げようとしていた鎌状の手があるジャンボデュークの右腕を両手で抑えつつ、タックルをくらわせる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!」

 

ダイナ「ハッ!ダァァァァーーーッ!!」

 

 

ジャンボデュークが怯んだところをガイアを飛び越え、空中一回転して威力をつけたダイナの飛び蹴りが炸裂する。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

 

その衝撃にジャンボデュークは後退りながらも口から無数ものミサイルを放つ。

ミサイルは縦横無尽の軌道を描きながら迫りくるが、

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ピュイーーーン!ピュイピュイピュイ…!!

 

 

ガイアは冷静に右腕を上に左腕を下に垂直に構え、プリズム状の光を発生させると、そのまま両腕を左右に開いてウルトラバリヤーを発動した。

全てのミサイルは展開した円形状の光の障壁によって防がれる。

 

 

ダイナ「ハッ!デェアッ!!」

 

ジャンボデューク「パパパパ…ッ!」

 

 

バリアで防いだガイアは横へ移動して後ろにいたダイナに道を開けると、すかさずダイナはフラッシュ光弾を放つ。

放たれた虹色の光球にジャンボデュークは僅かに体勢を崩す。

 

 

アザゼル「お前ら!一斉攻撃だっ!」

 

『はいっ!』

 

 

アザゼルは出来た一瞬の隙を逃さず、木場達に指示を出すと、ジャンボデュークめがけて一斉攻撃をする。

飛ぶ斬擊、無数もの光輪、投擲される光の槍……様々な攻撃が入り交じった攻撃の嵐がジャンボデュークに襲いかかる。

 

 

ジャンボデューク「パパパパ…ッ!」

 

ガイア「グアッ!グアァァァァ………デヤッッ!!」

 

ダイナ「ハァァァァ……シュワッ!」

 

 

あまりダメージを受けている様子ではないが、攻撃そのものは通っており、怯むジャンボデューク。

一斉攻撃に合わせ、ガイアはクァンタムストリーム、ダイナは胸のダイナテクターに蓄えたエネルギーから形成した光弾───『スパイラルバースト』を放った。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ドォォォォォッ!!

 

 

グレモリー眷属十八番のごり押し戦法にジャンボデュークは大爆発を起こし、身体中から火花を散らした。

 

巻き上がる大爆発の中、ジャンボデュークの体内のインナースペースにいるヘビクラはすかさずダークゼットライザーに3枚の怪獣メダルを追加装填する。

 

 

ヘビクラ「ユニタングさん!マザロン人さん!マザリュースさん!」

 

《Unitang.》

 

《Mazaronian.》

 

《Mazarews.》

 

 

ブレードを動かし、怪獣メダルを読み込ませると、顔の横に構え

 

 

ヘビクラ「闇の力……もうちょっとお借りするぜぇぇっ!!

 

《Jumbo king.》

 

 

その掛け声と共に再び真上に掲げてトリガーを引くと、ライザーから強い光が発する。

それと同時にジャンボデュークの身体に異変が起きていた。

 

全身が怪しい光で輝いたかと思うと、ジャンボデュークの腰から新しい胴体と足に加え、ラクダのコブのような形状をした突起が生え、両腕は二又状のハサミを持ったものに生え変わった。

 

前半身は牛神超獣 カウラ。

後半身と両腕はくの一超獣 ユニタング。

後半身の両脇に着いている背部パーツは異次元人 マザロン人。

前半身と後半身を繋ぐ胴体は地獄超獣 マザリュース。

そして、この4体の超獣を繋げる強大な力を持つ巨大ヤプール。

 

ケンタウロスのようなフォルムを持ったこの合体超獣こそ、最強超獣『ジャンボキング』だ。

 

 

ダイナ「違う怪獣と合体しちゃたのかよ…」

 

ジャンボキング「ピィ~~!ギャアワァァッ!!」

 

 

複数の超獣の力が合体したものと知ったことと、姿が変わったことに驚く一同をよそにジャンボキングは4本の足で大地を踏みしめて前進する。

 

 

ダイナ「ダッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

 

ダイナは飛び上がってチョップを仕掛けるが、ジャンボキングの角から放つ紫色の光線で撃ち落とされる。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ダイナ「ダッ!」

 

 

続けて接近したガイアとすぐさま立ち上がったダイナは

拳と蹴りの応酬で攻め立てる。

しかし、僅かに微動だにするだけでジャンボキングには大して効いていない様子だ。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッ!!」

 

ドガガガガガッッ!!

 

ガイア「ドアァァァァッッ!?」

 

ダイナ「グワァァァーーッ!?」

 

 

ジャンボキングの口から放たれたミサイル群を至近距離から受け、ガイアとダイナを大きく吹き飛ばされる。

ジャンボキングは更に追い討ちにとばかり、両腕のハサミからクモの糸を放ち、立ち上がろうとする2人に絡みつかせ、膝を着かせる。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「デュッ!」

 

 

何とか振りほどこうともがくガイアとダイナだが、粘着性を持った糸から抜け出すのは至難の技で、もがけばもがく程、糸の拘束力は強まっていく。

 

 

ジャンボキング「ピィ~ギャアワァァッッ!!」

 

 

ジャンボキングは鼻から白色のガスを浴びせつつ、口から火炎を吐く。

その瞬間

 

 

ボォォォンッ!!

 

ガイア「ドアァァァァーーーーッ!!!」

 

ダイナ「グワァァァーーーーッ!!!」

 

 

火炎がガスに引火し、大爆発が起きた。

爆発をもろに受けたガイアとダイナは全身から火花を散らし、そのまま地面に叩きつけられる。

 

その破壊力は凄まじく、爆発から発生した爆風だけで渡月橋の3分の1以上は吹き飛ばされた。

アザゼル達は何とか空中に避難し、九重とアーシアはいつの間にか陸地に避難していたので大事には至らなかったが。

 

 

アザゼル「イッセー達を援護するぞ!」

 

『了解!』

 

 

木場達はアザゼルの号令のもと、ジャンボキングへ一斉攻撃を仕掛ける。

 

 

バリィィンッ!

 

アザゼル「何っ!?」

 

 

だが、ジャンボキングは空を叩き割ると、赤い空間が広がる異次元へ逃げ込んだ。

割れた空は元に戻り、アザゼル達の仕掛けた攻撃は虚空を切り、近くの建物に当たった。

 

どこだどこだと皆は辺りを見回して警戒する中、後ろから巨大な影が顔を覗かせる。

驚くアザゼル達が振り向いた先は、予想通りジャンボキングだった。

ジャンボキングは今まさに角からの紫色の光線に加え、口から火花を放とうとしていた。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

アザゼル「ちィ!───ぐわぁぁっ!!」

 

イリナ「きゃあっ!!」

 

ゼノヴィア「かはっ!」

 

木場「ぐあっ!」

 

 

アザゼルは咄嗟に木場達を覆う程の防御魔法陣を展開するが、即席だったこともあって魔法陣は呆気なく粉微塵となった。

火炎の光線の二重攻撃を受けたアザゼル達は橋の麓の陸地に叩きつけられた。

 

 

ガイア「っ、みんな!よくも……!」

 

ダイナ「許さんっ!!」

 

 

仲間達が傷つけられるのを目の当たりにしたガイアとダイナは怒りに奮えて立ち上がると、ジャンボキングに向かっていき、殴りかかろうとするが

 

 

バリィィンッ!!

 

「「ッ!」」

 

 

またもや空を割ったジャンボキングに異次元へ逃げられ、2人の拳は虚空をきる。

完全に現実空間から気配が消え、ガイアとダイナはどこだと辺りを見渡していると、2人の真上の空間から姿を現したジャンボキングの角から放つ紫色の光線をくらう。

 

 

ガイア「ドアッ!?」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイナはやけくそとばかりに丸ノコ状の光輪ダイナスラッシュを放つが、またもやジャンボキングに異次元へ逃げられる。

 

その後も何とか攻撃を当てようとするガイアとダイナだが、異次元を駆使したジャンボキングのトリッキーな攻撃を前にたじろぐしかなかった。

 

 

ダイナ「くそっ、このままじゃジリ貧だぜ」

 

ガイア「……」

 

 

ジャンボキングに撹乱され、窮地に追いやられるガイアとダイナ。

気配が完全に消える相手を前にどうすれば?と苦悩するガイアだったが、今朝の木場とのトレーニングのことを思い出す。

 

相手の気配を注意深く探ること────それがもしかしたら今回の相手に通用するかもしれない。

思い立ったガイアは一歩前へ出て、右腕を振り下ろし、青い光剣アグルブレードを形成する。

これもアグルから受け継いだ技なのだが、アグルと違い、ブレードの根本は赤く輝いている。

 

 

ダイナ「ッ!」

 

 

ガイアの無意味とも取れる行動に驚くダイナだったが、彼のことだからきっと意味があるのだろうと察すると、静かに様子を見守る。

 

 

ガイア「……」

 

 

腰を深く落としてアグルブレードを構え、ガイアは静かに周りの気配に耳を澄ませる。

川の流れる音……崩れる瓦礫の音……そして、仲間達の気配……。

木場に言われたことを思いだしつつ、注意深く気配を探ると、自分の背後の空間が僅かに乱れのを察知した。

 

 

ガイア「───デュアッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!?パパパパッ!」

 

 

──そこだ!ガイアは背後の虚空に向かってアグルブレードを突き刺すと、異次元から現れたジャンボキングに命中する。

胸元に命中し、怯んだジャンボキングは異次元から放り出される。

 

 

ガイア「ダッ!ダッ!デヤッ!!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

 

アグルブレードをしまったガイアはすかさず右、左と拳をジャンボキングの顔面に打ち込むと、その場で回しかかと蹴りをくらわせる。

 

 

ダイナ「シュワッ!!」

 

ザ────────!!

 

 

ガイアが怯ませたところへダイナは両腕を十字に組んで、追い討ちの『スペシウム光線』を放つ。

青白い点線の光線が真っ直ぐジャンボキングの胸元を捉える。

 

 

ドガガァァァァァンッ!!

 

ジャンボキング「パパパパ…!」

 

 

命中し、爆発したジャンボキングは大きく後退する。

流石に威力の高い光線では効くのか、当たった箇所は黒焦げている。

 

 

アザゼル「何とか突破口が見えたようだな」

 

ダイナ「先生!それにみんなも!」

 

 

初ダメージで2人が士気をあげていると、アーシアの治療によって回復したアザゼル達が戦場へ復帰する。

 

 

ガイア『みんな、あの怪獣はこっちの空間に現れる瞬間、僅かに空気にブレが発生する。そこを狙うんだ』

 

ゼノヴィア「なるほど」

 

木場「我夢君、流石だね…」

 

 

ガイアのテレパシーからジャンボキングの弱点を聞き、皆は頷く。

特訓に付き合った木場は特に嬉しそうに頬を緩める。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!!」

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

雄叫びをあげるジャンボキングに身構える一同。

僅かであるが、弱点がわかったことで暗闇から差す光のように希望が見出だせた。

 

このままいけるかと思った矢先、この場にいる全員はあること……否、ある人物もこの空間に巻き込まれているのを忘れていた。

そう、忘れてはいけない当然の人物を。

 

 

ロスヴァイセ「……うい~。ひとがきぶんよくねていうところぉにドッカン!バッタン!あばれてぇ……うるさいンれすよォ!」

 

 

フラフラと千鳥足で崩壊した橋を歩く人物──酔い覚めぬ様子のロスヴァイセの登場だ。

こちらへ転移された後、しばらく酔いつぶれていたようだが、どうやら戦闘音で起こされてご立腹だ。

 

 

ガイア「ロスヴァイセさん!?」

 

アザゼル「起こさねぇように防音の結界を張ってたんだがな……」

 

 

アザゼルの言うようにロスヴァイセが寝ている間に結界を張っていたのだが、それすらも貫通するくらい戦闘が激しかったのだ。

彼女の登場に安心よりも何故か嫌な予感がした一同は冷や汗をかいていると、ロスヴァイセはジャンボキングに気が付いた。

 

 

ロスヴァイセ「…んあ?なんれすか、このにんきのなさそうなでかぶつは?……はっ、いいれすよ。やってやろうじゃないれすか!」

 

 

ジャンボキングを敵と認識したロスヴァイセはそう言い放つと、自身の周囲に無数もの魔法陣を一気に展開させる。

それを見て、これから起こることを察したアザゼルは他の仲間に叫ぶ。

 

 

アザゼル「お前ら離れろっ!!」

 

『ッ!』

 

 

アザゼルの言葉にハッと我に戻った一同は渡月橋から一斉に離れる。

ガイアとダイナも身の危険を察し、空へ避難した。

 

 

ロスヴァイセ「ヴァルキリーじらいにきずきあげた、ほくおうしきフルバーストまほうをくらえぇぇぇぇッ!!!」

 

ズドドドドドドォォォォォッ!!!

 

 

一同が避難した瞬間、ロスヴァイセは無数もの魔法陣から大量の魔法攻撃を放った。

火、水、光、雷、ありとあらゆる属性を持った魔法攻撃は縦横無尽に軌道を描きながら、ゲリラ豪雨の如く、ジャンボキングに降り注ぐ。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッ!!!」

 

ドォォォォォンッ!!

 

 

無数の魔法攻撃を前にジャンボキングはなすすべなく、魔法攻撃をたて続けにくらい、身体の全貌が見えないくらいの大爆発を起こした。

 

しばらくして、ロスヴァイセは気が晴れたのか攻撃の手を止める。

爆風が晴れると容赦のない連続攻撃には敵わなかったのか、ジャンボキングの姿はどこにもなかった。

流石、元オーディンのお付きと言いたいところだが…

 

 

ガイア「こ、これは……」

 

 

一同は周囲の景色に唖然とする。

周囲の被害をお構い無しに攻撃したせいで、家屋や店や道路も跡形もなく消し飛び、辺りからプスプスと爆煙と焼け焦げた匂いが立ち込めていた。

どこぞの防衛チームの人が見れば、きっと「バカヤロー!」と激怒すること間違いなしだろう。

 

 

ロスヴァイセ「うぇへへ……どうらってんだ!」

 

 

擬似空間とはいえ、これだけの被害を出した当のロスヴァイセは満足したようでその場で大の字に寝っ転がる。

木場とアーシアは苦笑しつつ介抱しに向かった。

 

何とも言えない空気が流れる中、辺りを見渡していたイリナはいつの間にか曹操と英雄派の構成員がいないことに気付いた。

 

 

イリナ「ねぇ、アザゼル先生。曹操は…?」

 

アザゼル「俺達がさっきの怪獣と戦っている間に逃げ出したらしいな。ご丁寧に俺達をこの空間に置き去りしてな」

 

 

イリナにアザゼルは曹操への皮肉を込めて話す。

───敵対しているとはいえ、自分達だけスタコラサッサと逃げ出すのは『英雄』が取るべき行動ではないだろう…。

そんなことをアザゼルは思っていると、足下に漂っていた霧が濃くなり、一同の全身を覆っていく。

 

 

アザゼル「お前ら、空間が元に戻るぞ!武装を解除しておけ!」

 

 

視界が霧に覆われ、周りが見えない中、アザゼルの声が一同に響き渡る。

それを聞いたガイアとダイナは変身解除し、木場達も手に持っていた武器を閉まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧が晴れ、次に目を開けると、我夢達は観光客で溢れ返る渡月橋の真ん中で突っ立っていた。

橋や家屋も壊れておらず、近くには愛華、松田、元浜がいることから現実の空間に戻れたことを察した。

木場とロスヴァイセの姿が見えないが、恐らく転移される前の場所に戻っているのだろう。

 

我夢は先程の戦闘に加え、曹操の行動理念に憤っていると、松田が顔を覗かせているのに気付いた。

 

 

松田「…どうした、我夢?険しい顔して」

 

我夢「……っ、ははっ!いや、何でもないさ!少し考え事をしただけ」

 

松田「?」

 

 

我夢は苦笑して誤魔化すと、松田は首を傾げつつも少し納得した様子を見せる。

言えるはずがない。関係のない人に話す訳には。

例え、それが友達である松田や元浜にあってもだ。

 

 

アザゼル「実験だと…ッ?ふざけやがって…!!」

 

 

憤るアザゼルは電柱を横殴りする。

その表情は今まで見たことがないくらい怒りに駆られた険しいものだった。

 

 

九重「……母上。母上は何もしてないのに……どうして…っ」

 

 

泣きそうな顔を浮かべる九重。

自分達は何もしてないのに、訳もわからない連中に勝手に弄ばれる。

悔しさと悲しさに体を震わせる彼女を我夢達は悲痛な面持ちで見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、渡月橋から離れた山中では上着をはだけさせているヘビクラの姿があった。

ヘビクラはあの爆発から無事脱出出来ていたのだ。

救急キットで少し焦げている胸元を治療し、包帯で巻いていた。

 

 

ヘビクラ「……悪いな。この体、傷付けてしまって」

 

 

ヘビクラは処置を終えた自身の胸元に手を当てると、いつになく真剣な顔で語りかける。

それは独り言というよりも、憑依している体の持ち主である四之宮に対してである。

ヘビクラ────ジャグラーが受けたダメージは彼ではなく、憑依している四之宮に全て通る。

了承は得たとはいえ、乗り移った体で無茶苦茶な行動ばかりしてきた罪悪感があるのだろう。

 

ヘビクラは元の調子に戻ると、地面に置いていたダークゼットライザーを掲げて見上げる。

 

 

ヘビクラ「……あの女、中々ぶっ飛んでやがる。巨大ヤプールのメダルを持ってなきゃ今頃どうなってたか……」

 

 

ヘビクラは先程、ロスヴァイセがフルバーストを放った一部始終を思い出す。

ヘビクラ──ジャンボキングは出来るだけ至近距離で口から無数ものミサイルを発射し、フルバーストを相殺させて爆発を起こさせて自分の姿が爆煙で見えなくさせると、空を割って異次元へ避難したのだ。

そうして、あたかも倒されたように見せかけつつ異次元を通って現実の空間に戻ってきたという訳だ。

 

 

ヘビクラ「…まあ、現状を把握出来ただけでも良しとするか」

 

 

そう呟いたヘビクラは上着を着て、ダークゼットライザーを懐へしまうと、どこかへ歩き去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄派とジャンボキングの襲撃があった後、当初の予定通りの観光を行った我夢達はホテルに戻ってきた。

 

夕食と入浴を終えた後、就寝時間が間近に迫ろうという時刻、我夢達はあるホテルのある和室に足を運んだ。

アザゼルはもちろんのこと、匙を始めとしたシトリー眷属2年生メンバー、セラフォルーもこの一室に集まっていた。

 

アザゼルは辺りを見渡して全員がいるのを確認すると、口を開く。

 

 

アザゼル「先程、曹操宛からこんなものを矢文で送ってきやがった」

 

 

アザゼルは手に取った矢文を皆に見せるようにテーブルの上に置く。

皆がそれに顔を覗かせると、矢文にはこう書いてあった。

『今宵、二条城にて九尾の御大将を用いた実験を執り行う。此を止めたくば、是非とも参加せし』──と。

 

 

一誠「あの野郎…!」

 

 

見れば見るほどふざけた文面に一誠は拳を握りしめる。

一誠だけでなく、この場にいる全員が曹操への憤りを感じていた。

 

 

アザゼル「…奴等はこの状況を楽しんでいるのか、潜伏場所をあっさりと白状しやがった。正直のところ、俺も腹立たしい……。現在、悪魔、堕天使、それに協力してくれる京都妖怪の関係者を総動員して、二条城と京都駅周辺に非常警戒態勢を敷いた。今のところは怪しい動きは見せていない……そこでだ。せっかくの旅行を台無しにして悪いが、お前達にもこの作戦に協力してもらいたい」

 

 

そう言ったアザゼルは先程の矢文をどけると、テーブルの上に地図を広げる。地図には京都全域を記されており、アザゼルが書いたのか今回の作戦で重要と思われる箇所を蛍光ペンでマークしている。

アザゼルは一拍空けると、作戦を告げる。

 

 

アザゼル「作戦を伝えるぞ。まずはシトリー眷属。お前達は京都駅周辺で待機だ。このホテルを守るのもお前達の仕事だ。一応、ホテルには強固な結界を張っているが、万が一の場合はそれに当たってくれ」

 

『了解!』

 

 

アザゼルの指示にシトリー眷属の全員は返事をする。

頷いたアザゼルは我夢達へ指示を出す。

 

 

アザゼル「次にグレモリー眷属。悪いが、今回も前衛に当たってくれ。作戦は単純、二条城へ向かって八坂の姫を救い出すことだ。それが出来たらソッコーに逃げてもいい」

 

一誠「ちょっ!?逃げてもいいって、曹操を野放しにするんすか!?」

 

アザゼル「今回の作戦のメインは八坂の姫の救出だ。お前達なら大丈夫とは思うが、敵の力は未知数。迂闊に踏み込めば痛い目に合うぞ」

 

一誠「…っ」

 

 

待ったをかけた一誠だが、アザゼルの説明を聞いて押し黙る。

曹操達を倒すのもいいが、八坂の救出が最優先であることを思い出したからだ。

いつになく慎重なアザゼルに緊迫感が漂う中、「あっ」と声をあげた我夢はアザゼルに訊ねる。

 

 

我夢「そういえば、部長達やXIGの支援は?」

 

イリナ「あっ、確かに!」

 

 

それを聞いてイリナも気付く。

いつもなら、エリアルベースに集まって石室の指示を受けるのだが、現在に至るまでそういった連絡すら着てない。

それについて、アザゼルは口を開き

 

 

アザゼル「実は伝えようとはしたんだが、現在、グレモリー領のとある都市部で旧魔王派の残党が暴動事件を起こしてな……それの対応に出ているようだ。XIGもその対策に追われている」

 

我夢「それって、大丈夫なんです!?」

 

アザゼル「まあまあ、安心しろ。報告によると、リアスのお母様とグレイフィアが出陣したそうだ。この作戦が終わる頃には鎮圧してるだろうさ」

 

 

心配する我夢を宥めたアザゼルはそう言いつつも苦笑する。

リアス、カテレア、グレイフィア……グレモリー家の女性陣の揃い踏みは味方であれば頼もしいが、相手にとっては地獄だろう。

特に一誠は夏休みにカテレアの恐ろしさの片鱗を味わっているので、身震いをしていた。

 

アザゼルはコホンと咳払いをして脱線した話を戻す。

 

 

アザゼル「とりあえず、外部からの支援は受けらねぇから俺達でやるしかねぇ。シトリー眷属は駅で待機、グレモリー眷属は八坂の救出。作戦は以上だ。京都は俺達が死守するんだ」

 

『了解!』

 

 

アザゼルの言葉に賛同し、全員は一斉に返事をする。

作戦会議を終えた一同は身支度をする為、一旦解散すると、それぞれの持ち場へと向かっていった。

 

────京都を救う。ただそれだけを胸に抱いて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスに乗り、京都駅のバス停に着いた一同。

流石に夜中に学生服で出歩く訳にはいかないので、全員XIGの隊員服を着ている。

皆、いつでも戦える気迫を出しており、準備は万端…

 

 

ロスヴァイセ「うっぷ……」

 

 

ただ一人を除いてだが。

ロスヴァイセは口元を手で抑えて、込み上げてくる吐き気と戦っていた。

一体どれくらいの酒を飲んだのか、未だ体調は優れなく、顔は真っ青になっていた。

皆、以前からロスヴァイセは残念美人だとは薄々思ってはいたが、ここまで酷いとは思いもしなかった。

 

 

匙「俺もいるぞっ!」

 

 

ロスヴァイセさんにお酒を与えるのはよそう──と皆が思う中、向こう側から匙がこちらへ駆け寄ってきた。

シトリー眷属である匙が何故、ここにいるのかに疑問を抱くと、我夢は匙に問いかける。

 

 

我夢「匙、どうしてここに?他の眷属と一緒じゃなかったのか?」

 

匙「…ん?ああ、アザゼルに言ってこっちに行かせてもらうように頼んだんだよ。俺のヴリドラの力はサポート向きだからな」

 

 

そう言ってニコッと不敵な笑みを浮かべる匙。

匙の持つ『神器(セイクリッド・ギア)』は相手の動きを止めるだけでなく、力を奪い取ることが出来る。

確かにデバフがいないグレモリー眷属にとっては重要な戦力である。

 

 

匙「……それに────」

 

我夢「っ!」

 

 

皆がこの同行に半ば納得していると、匙は神妙な顔でボソッと呟く。

その呟きをしっかりと耳にした我夢は目を丸くする。

 

 

我夢「何て言ったんだ?」

 

匙「い、いや!何でもねぇよ!ただの独り言だ」

 

 

血の色を変えた我夢はすかさず聞き返すが、匙はやや焦りながら誤魔化すが、我夢にはそれが嘘だとわかった。

聞き間違いでなければ、匙はこう言ったのだ。

 

────ここが俺の終着点かもな、と。

 

夏休みのレーティングゲームもそうだが、最近の匙はやたら危険なことばかりをやっているのを我夢は思い出す。

そのことは他のシトリー眷属の面々からも聞いており、まるで死に場所を探しているように見える。

 

 

九重「お主達!私も行くぞ!」

 

 

我夢が不安に思っていると、幼い女の子の声が耳に入る。

思考を一旦止めた我夢は声がした方へ体を向けると、裏京都へ待機しているはずの九重がいた。

 

 

一誠「九重!?」

 

九重「私も母上を救う!連れて行ってくれ!」

 

 

そう頼み込む九重。

とはいえ、ここから向かう先は敵地。何が起こるかわからない危険な場所だ。

 

しかし、九重は頑なに着いていこうとする意思を見せる。

どう断ればいいのか……皆が困惑していると、その後ろから大悟が遅れて駆け寄ってくる。

 

 

大悟「九重、ここにいたのか。みんな、ごめん。勝手に抜け出して……。さあ、帰ろう」

 

九重「嫌じゃ、嫌じゃ!私も母上を救いたいっ!」

 

 

そう言って大悟は連れて帰ろうとするが、九重は駄々をこねて頑なにこの場を離れようとしない。

そんな九重に大悟は両肩に手を置き、片膝をついて目線を合わせると、穏やかな口調で語りかける。

 

 

大悟「九重。助けに行きたい気持ちはわかる。でも、ここはみんなに任せよう」

 

九重「大悟。じゃが……」

 

大悟「大丈夫、この人達は強い。だって僕と君の友達じゃないか?きっとお母さんは帰ってくる………信じて待つのも立派な仕事だよ?」

 

九重「…」

 

 

大悟に諭された九重は顔を俯け、しばらく口を閉ざした後、コクンと頷く。

それは九重は自ら助けに行きたい気持ちを堪え、我夢達を信じることを表していた。

大悟はニコッと笑うと立ち上がり、九重の手を取ると、我夢へ顔を向ける。

 

 

大悟「我夢、それにみんなも頑張って。僕達は裏京都で待ってるよ」

 

我夢「ああ、任せて。けど、最後に1つだけ聞いていいかい?」

 

大悟「何?」

 

我夢「どうして僕やイッセーが悪魔だって知っても、昔と変わらず接してくれたんだ?」

 

 

我夢の問いに大悟は一瞬すっとんきょうな顔を浮かべ、う~んと声を唸らせると、答えが出たのか穏やかな顔に変わると、口を開く。

 

 

大悟「そりゃあ、最初は驚いたけど我夢は我夢、イッセーはイッセー、イリナはイリナ。そして、僕はそんな君達の幼馴染み。どんなに姿形が変わっても、それは変わんないからだよ」

 

我夢「大悟…」

 

 

大悟の言葉にジーンと胸を打たれる我夢。

種族が変わっても友達として信じ続ける大悟の器の大きさに我夢や一誠、イリナだけでなく、他の面々も同じ反応を見せていた。

 

一誠は左手首のXIGナビを開くと、時計は作戦開始時刻に差し迫っていた。

 

 

一誠「んじゃあ、そろそろ行くか。九重。お前の母ちゃんは俺達がきっと取り戻してみせるからな!」

 

九重「うむ、頼んだぞ!」

 

 

そう言って一誠が九重と約束の握手を交わそうとした瞬間だった。

体験した覚えのある生ぬるい感触を持った霧が全員の体を包み込んでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「……ん?ここは?」

 

 

霧が晴れ、次に我夢の視界に映ったのは地下鉄のホームだった。

近くを見渡すと、駅名プレートには『京都』と書かれていることから、ここが京都駅の地下ホームということがわかった。

 

ホームは人気がなく静まり返っているが、誰か自分以外に飛ばされた仲間がいないかと一歩前へ踏み出した時、少し離れたところから騒がしい声が聞こえてきた。

 

 

イリナ「どういうことなの!?京都駅にいたと思ったら地下鉄にいるわ!またいきなり転移させられたのかしらっ!……あっ、我夢君!いたのねっ!」

 

 

我夢を視界に捉えたイリナはドタドタと足音を立てながら猛スピードで接近してくる。

 

 

我夢「や、やあ、イリナ。ところで他のみんなは見なかった?」

 

イリナ「あなた以外は見かけなかったわ。きっと他のみんなは別の場所にいるんでしょうね。でも、我夢君がいて安心したわ!1人だと心細かったんだもん」

 

我夢「とてもそうには見えないけど……」

 

 

異変が起きても変わらないイリナのハイテンションぶりに苦笑いを浮かべる我夢。

といってもこれがイリナのアイデンティティーであり、長所なので逆に安心したりする。

 

 

《ピピッ》

 

 

イリナと合流して間もなく、我夢のXIGナビから通知音が鳴る。

我夢はXIGナビを開くと、通信は木場からのものだった。

 

 

我夢「こちら、我夢。木場君、無事か?」

 

《木場「こちら、木場。大丈夫、問題ないよ。こちらは『京都御所』にいる。匙君とロスヴァイセさんも一緒だ。そちらは?」》

 

我夢「こっちはイリナと一緒にいる。見たところ、京都駅の地下ホームに飛ばされたみたいだ。他のみんなの現在位置は?」

 

《木場「うん。我夢君にかける前に確認したけど、イッセー君とアーシアさんは『京都国際漫画ミュージアム』、ゼノヴィアは大悟さんと九重姫と一緒に『京都市歴史資料館』にいるようだよ」》

 

我夢「っ!?大悟と九重が…!?」

 

 

九重と大悟がこの異空間にいると知り、目を見開く我夢。

飛ばされた時、近くにいたことからもしやと思ってはいたがその不安が的中するとは…。

ゼノヴィアが着いているとはいえ、まだ幼い九尾の九重に一般人の大悟にとっては危険で、命を落とすかもしれない場所には変わらない。

 

 

我夢「……そうか。みんな別々の場所に飛ばされたのか……早く合流しなきゃ────ん?いや、もしかしてっ!」

 

《木場「どうしたんだい?」》

 

我夢「ちょっと確認したいことがあるんだ」

 

 

何かに気付いた我夢はリアスから借りた高性能通信デバイスW.I.T.を取り出すと、モニターに京都駅から二条城周辺の地図を表示させる。

地図上で皆が飛ばされた場所を目で追っていくと、意外な点が判明する。

 

 

我夢「木場君、わかったよ。みんな飛ばされた場所は二条城を中心とするエリア内に入っている…!」

 

《木場「…っ、そうなのかい?」》

 

我夢「ああ。恐らく、敵はレーティングゲームのゲームエリアと似た技術で作り出した疑似空間に迷い込ませたんだ。この空間は町丸ごと再現されている……もしかしたら、町並みも現実のものと大差ないと思う」

 

 

推測通り、我夢達が現在いる空間は英雄派がレーティングゲームのゲームエリアの技術を用いて作り出された空間だった。

どこからその技術が漏れたかはわからないが、今いる空間が現実のものをコピーしたものであれば、早いうちに再会できると我夢は踏んだのである。

 

 

《木場「うん、わかったよ。じゃあ、二条城に集合しよう。イッセー君達には僕が伝えとくよ」》

 

我夢「了解。じゃあ、ゼノヴィア達には僕が。念の為、アザゼル先生にも連絡をしてみる。繋がったら追って連絡するよ」

 

《木場「わかった。気を付けてね」》

 

我夢「ああ」

 

 

短く返事して木場との通信を終えた我夢はゼノヴィア達に安否を確認すると、二条城へ向かうように伝えた。

その後、外にいるアザゼルにも連絡を試みるが、この空間に流れる特殊な力に解き消されるのか全く繋がらなかった。

 

ひとまず、我夢は連絡で得たひと通りの流れをイリナに説明していると、

 

 

「ごきげんよう!」

 

「「っ!」」

 

 

と、奥のホームから声が聞こえ、我夢とイリナは振り向くと、黒い軍服のようなものに身を包んだ男を先頭に、後ろに似た服装をした男女数人と気味の悪い異形の怪物数匹がこちらへ向かってきていた。───英雄派である。

我夢達が身構える中、集団は目と鼻の距離で足を止めた。

 

 

我夢「英雄派か……。それに、お前は前に取り逃がしたやつか」

 

「ははっ!かの伝説を継ぐウルトラマン殿に覚えてもらえて光栄ですな!」

 

 

そう返事して不敵な笑みを浮かべる男に我夢は目を鋭くさせる。

我夢は覚えていた。この男が数日前に冥界であった英雄派の襲撃の指揮を取っていた人物ということを。

 

 

我夢「(何だ?この異様なまでの自信は?)」

 

 

我夢は男から感じられる気迫や自信に怪訝に思っていた。

以前にあった時はそこまで強く感じず、前に対峙した際は一目散に逃げ出していた。

 

しかし、今は以前の姿が嘘のように思えるくらい成長しているとひしひしと伝わっていた。

警戒した我夢はイリナにも「油断するな」と耳打ちして警戒心を強めさせていると、男は不敵な笑みを浮かべたまま話しかける。

 

 

「ここから先は行かせない。我々全員と遊んでもらうまではね」

 

イリナ「何よそれー。勝手に巻き込んどいて自分勝手じゃない。痛い目に合いたくなかったら通しなさい」

 

「残念だが、そいつは無理な話だ。我々のリーダーのご命令でね…。それに()()()と一緒にしたらそちらが痛い目に合いますぞ」

 

 

男の言葉にイリナが首を傾げていると、男の周りに影が集まってくる。

男から放たれる重圧に我夢達が更に警戒を強める中、男は低い声音で一言発する。

 

 

「……禁手化(バランス・ブレイク)

 

 

その一言をキーに男のもとに集まっていた影が全身を包み込む。

全身を包みこんだ影は徐々に形を変えていき、全身を纏う鎧へと変化した。

 

 

「これが俺が得た新しい力だ」

 

 

男は仮面の下でほくそ笑む。

我夢はアンチモンスターだけでなく、何故何度も構成員を襲撃させたかが何となく理解した。

 

 

イリナ「結局、強行突破するしかないって訳ね」

 

我夢「やるしかないのか…」

 

 

イリナと我夢が面倒そうに呟きながら、お互い武器を構える。イリナは光の剣、我夢はジェクターガンだ。

 

 

我夢「いくぞ!」

 

イリナ「うんっ!」

 

 

その言葉が開戦の合図となり、両陣営は戦いを始めた。

 

同じ頃、我夢とイリナだけでなく、各地にいる一誠達も一斉に戦いを始めた。

二条城でみんなと再会する為に───それを胸に秘めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、京都市歴史資料館に大悟、九重と一緒に飛ばされたゼノヴィアは道路に出て、英雄派の構成員とアンチモンスターの集団と戦いを繰り広げていた。

 

 

ゼノヴィア「はあぁぁぁーーーっ!!」

 

ドォォォンッ!!

 

『ぐあっ!』

 

『グギィアァァッ!!』

 

 

飛び上がったゼノヴィアは真上からデュランダルを横へなぎ払い、斬撃を飛ばして構成員とアンチモンスターを一掃すると、片膝をついて着地する。

 

 

ボォッ!

 

ゼノヴィア「っ!」

 

 

着地した瞬間、10個もの火の玉が飛んでくるが、ゼノヴィアはデュランダルの刀身で難なく防ぐと、駆け出して一気に接近し、構成員を斬り捨てた。

 

 

ザッザッザッ…

 

ゼノヴィア「ふぅ…」

 

 

倒したところを補充するように増援される敵の集団に息を吐くゼノヴィア。

ここまで苦戦せず、構成員やアンチモンスターを楽々と倒しているゼノヴィアだが、動き辛い戦いを強いられていた。

その理由は自分の後ろにある家屋に隠れさせている大悟と九重を敵の攻撃から守っていたからだ。

 

狭い資料館から外へ出たはいいものの、戦えない大悟と九重を庇いつつ、大量の集団と戦う……。

更にデュランダルの性質上、下手な使い方をすれば大悟達を攻撃に巻き込んでしまう恐れがあるので、力をセーブしないといけないので非常に厳しい状況である。

 

 

「グギィアァァッ!」

 

ゼノヴィア「はっ!」

 

ザシュッ!

 

 

どうすればいいものかと考える暇もなく飛びかかってきたアンチモンスターを斬り伏せるゼノヴィア。

───とりあえず片付けるしかない。そう決めたゼノヴィアは上空から雨のように撃ってくる構成員の魔力弾をかわしながら目前の電柱に向かって飛びかかり、壁蹴りの要領で勢いよく飛び上がると、上空に佇んでいた構成員の群れを斬り落としていく。

 

 

『ギャアァァーーー!!』

 

ゼノヴィア「くらえっ!」

 

 

断末魔をあげ、地へと墜ちていく構成員。

家屋の屋根へ降りたゼノヴィアは地上に向かってデュランダルを軽く左右に振るい、光の斬撃を飛ばす。

 

 

ドォォォーーーーーーン!!

 

『グギィアァァッ!!』

 

『うわあぁぁぁーーーーっ!!』

 

 

力をセーブしているとはいえ、伝説の聖剣から放たれる斬撃に地上にいた構成員とアンチモンスターは吹き飛ばされていく。

これで60人ほどいた敵も20人ぐらいまで減り、敵の士気もゼノヴィアの猛攻を前に怯んでいた。

このまま片が付くと思った矢先、

 

 

「動くなっ!」

 

ゼノヴィア「…っ!」

 

 

地上の道路から女の声が聞こえ、ゼノヴィアは視線を下ろす。

そこには隠れていたはずの九重が構成員の女に胴に回した腕で抱えられ、首もとを短剣で突き付けられている光景があった。

ゼノヴィアは内心「しまった」と歯を噛み締めていると、女は九重を人質に要求を出す。

 

 

「今すぐ武器を捨てろ。無駄な抵抗をするな。さもなくば、狐の姫君の命はないぞ!」

 

九重「す、すまぬ……捕まってしまった」

 

ゼノヴィア「……くっ!」

 

 

面目なさそうな顔でゼノヴィアに謝る九重。

敵の卑怯な手に憤慨するゼノヴィアだが、このままだと九重の命はない。

デュランダルを投げ捨てると、ズシンと物音を立てて道路にめり込む。

それを見て静かにほくそ笑んだ女は近くの構成員2人にアイコンタクトを送ると、魔法で作り出した縄でゼノヴィアの両手首を拘束すると、無理矢理地上へ引きずり落とす。

 

 

ゼノヴィア「ぐっ!?」

 

 

勢いよく地上へ叩きつけられた痛みに顔を歪ませるゼノヴィア。

その間にダメ押しとばかりに閉じた両足も縛られ、ますます身動きが取れなくなった。

 

 

「ふふっ、お似合いじゃないか」

 

ゼノヴィア「くう…っ!」

 

 

手足を封じられた様子を嘲笑う女をゼノヴィアは睨め付ける。

今すぐにでも飛びかかってやりたいが、魔法で出来た縄は想像以上に固く、抜け出すのは至難の技だ。仮にもし、出来たとしても九重が殺されるデメリットの方が大きい。

何も出来ない悔しさに唇を噛み締めるゼノヴィアだが、目を配らせても大悟の姿がどこにもないことに気付いた。

 

 

ゼノヴィア「貴様っ!大悟をどうした!」

 

「大悟…?ああ!あの男なら邪魔するものだから痛めつけてやった。イケメンだから見逃してあげようとも思ったのが、あまりにもしつこいのでな……今頃のたれ死んでるかもな」

 

ゼノヴィア「貴様ァ──!ぐあぁぁぁぁーーーーーっ!!?」

 

 

嘲笑う女に頭にきて声を張り上げるゼノヴィアだったが、突然体に走る激痛に襲われ、悲鳴をあげる。

全身が内側から焼き焦げるかのような激痛にゼノヴィアは困惑していると、ケラケラと笑う女が説明する。

 

 

「口には気を付けた方がいい。さっき、お前を拘束している縄に微量ながらアンチモンスターの光を流した。光が弱点の悪魔にとっては雀の涙でも痛いらしいからな」

 

ゼノヴィア「はぁー…!はぁー…!」

 

 

大きく息を切らすゼノヴィア。激痛のあまり、大粒の汗をかき、涙が滲んでいた。

その様子をニタニタして見物していた女は

 

 

「さて、このか弱き姫君を始末してしまいましょう」

 

ゼノヴィア「なっ!?その子は関係ない!すぐに放すんだっ!」

 

「…うん?抵抗するなとは言ったが、()()()()()()とは言ってない」

 

ゼノヴィア「この外ど────があぁぁぁぁーーーーーーーっ!!?」

 

九重「ゼノヴィアッ!おのれ!放せっ!」

 

 

ゼノヴィアは抗議の声をあげようとするが、拘束されている縄から光が流れ込み、言葉を遮られる。

全身の走る激痛に苦悶の叫びをあげる中、女はジタバタと腕の中でもがく九重の小さな抵抗を鼻で笑うと、首もとに向けていた短剣を天高く振り上げる。

 

 

「見届けよ。何も出来ず幼き命が死ぬ様をね」

 

ゼノヴィア「や、やめろォォーーーーッ!!」

 

 

制止するゼノヴィアを無視して女は短剣を振り下ろす。

短剣は九重の胸元目掛けて急降下していく。

ゼノヴィアは抜け出そうともがくが、どうやってもほどけず、間に合わない。

まさにピンチ。そんな時

 

 

ピュッ!

 

「痛っ!?」

 

九重「っ!」

 

 

どこからか飛んできた1本の短剣が女の手に掠る。

女は突然の攻撃に狼狽えていると、拘束が緩んだ隙に九重は脱出し、ゼノヴィアのもとへ駆け寄る。

 

 

「誰だっ!」

 

 

女は手の甲から溢れる血を抑えながら奇襲をかけた方向へ叫ぶ。

飛んできた短剣は英雄派の構成員が基本武器として配給されているものだ。

裏切り者かと女が思っていたが、路地の闇から現れた人物を見て驚愕する。

 

 

「っ、お前は…!」

 

大悟「……」

 

 

朝焼けの様に明るい茶髪、180センチの長身を持った男───大悟だった。

女が驚くのも無理はない。マトモに立てない程に痛め付け、その体は傷だらけの筈だったからだ。

しかし、目の前にいる大悟は服装こそ汚れや傷痕が目立つが、体には()1()()()()()()

 

更に額には光輝く()()()()()が浮かび上がっており、雰囲気も異様に感じる程、変化していた。

無言の大悟から発する気迫を前に構成員達はたじろぎ始める。

 

 

『ゴギャアァァァッ!!』

 

 

大悟の気迫に押されていると、アンチモンスターの集団が背後から襲いかかろうと駆けてきていた。

 

 

九重「っ、大悟っ!」

 

大悟「……」

 

ゼノヴィア「…後ろだっ!避けろ!」

 

 

九重が悲鳴に似た叫びをあげるが、大悟は微動だにしない。

ゼノヴィアも声をかけるが、それでも大悟は静かに佇むだけだった。

 

 

『グギィアァァッ!!』

 

 

避けようともしない大悟にゼノヴィアと九重が緊迫する中、一斉に飛びかかったアンチモンスターの凶刃が降り注ごうとした瞬間

 

 

大悟「──ハッ!!」

 

『ゴギャアァァァッ!?』

 

『!?』

 

 

大悟の振り返り様に放った回し蹴りを受け、壁に叩きつけられたアンチモンスター達は消滅した。

しかも、()()()()()でだ。

戦闘経験がないただの一般人がアンチモンスターを軽々と倒した光景に敵味方問わず目を丸くする。

 

 

「…ひ、怯むなっ!かかれ!」

 

 

動揺する構成員達だったが、先程の女の指示を受けて気持ちを切り換えると、魔力弾と光の矢を放つ。

数多の飛び道具が飛び交う中を大悟は常人を超えたスピードで駆け抜けると、構成員達を拳や蹴りで地に沈めさせていく。

 

 

『がっ!?』

 

『ぐあっ!?』

 

 

構成員達も何とか当てようと攻撃するが、神速となった大悟を捉えることは出来ず、1人…1人…また1人と倒されていく。

目の前で繰り広げられる光景にゼノヴィアと九重は圧巻され、言葉が出なかった。

 

 

九重「(常人を超えた力、額に光る紋章………。やはり、あの話は嘘ではなかった!)」

 

 

まるで別人のようになった大悟を見て、九重は従者の話は嘘ではないと確信する。

謙遜か本当に忘れていたかの真偽は不明だが、従者を助けたのは大悟で間違いないことはハッキリとわかった。

 

そうこうして戦いを見守っていると、19人ぐらいいた構成員とアンチモンスターの軍勢は1分も経たないうちに大悟によって全滅された。

術者が倒されたことで、ゼノヴィアを拘束していた縄もいつの間にか消滅していた。

 

 

「アワワ…」

 

 

この光景を前にたった1人残された女は口をあんぐりと開き、恐怖と驚きのあまり、腰を抜かしていた。

大悟は女を視線に捉えると、ゆっくりと歩を進め、女の目前に立つ。

 

 

「いっ、命だけは───」

 

トンッ

 

 

大悟は女が命乞いをする間も与えず、首筋に手刀を打ち込んで気絶させた。

倒れ込む女を支え、地面に優しく寝かした大悟は今度は驚き止まぬゼノヴィアのもとへ近寄ると、倒れている彼女の背中に触れる。

 

 

ゼノヴィア「な、何を…?」

 

大悟「……」

 

 

突然の行動に怪訝になるゼノヴィアを尻目に大悟は背中に当てる手の力をグッと強める。

すると、穏やかな光が手からゼノヴィアの全身に伝わると、身体中の痛みが和らいでいく……。

大悟が手を離したタイミングでゼノヴィアは起き上がってひと通り体を見ると、受けた傷は全て何事もないように塞がっていた。

 

 

ゼノヴィア「…傷がない。大悟、君はどこでこの技術を───」

 

大悟「──ん?え、ええ!?何なんだよ、これ!?」

 

 

ゼノヴィアはアーシアに負けず劣らずの回復能力をどこで手に入れたのか訊ねようとしたが、ハッと意識が戻った大悟は周囲を見て愕然とした。

まるで何があったかわからないといった反応だ。

 

 

大悟「何これ!?もしかして、君達が…?」

 

九重「いいや。こやつらは全て、大悟が倒したのじゃ」

 

大悟「僕が…?いやいやいや、あり得ないよ!喧嘩だって出来ないくらい弱いから!」

 

ゼノヴィア「…覚えていないのか?」

 

大悟「ああ、全然。……ただ、ぼんやりとしていてことしか……」

 

 

先程までの自分の行動を全く覚えていない大悟にますます謎が深まるゼノヴィアと九重。

よく見れば、額に浮かんでいた菱形の紋章は消えていた。

 

九重はそれなりに腕が立つ人、ゼノヴィアはこちら側の世界を知る一般人くらいしか認識していなかったが、先程の一部始終でそれが覆った。

思えば、初めて会った時から普通ではないと睨んでいたが、それがますます深まっていくのをゼノヴィアは実感した。

 

ますます謎が深まる大悟だが、考えるのを後回しにしたゼノヴィアは行動を促す。

 

 

ゼノヴィア「…と、とりあえず先を急ごう。ここでジッとしてても仕方がない」

 

大悟「そうだね。ごめん、僕が非力なせいで君に負担を…」

 

ゼノヴィア「あ、ああ……」

 

 

申し訳なさそうにする大悟に苦笑いで返すゼノヴィア。

─────本当に何も覚えていないのか。

戦闘時と今の大悟の雰囲気の違いように戸惑うゼノヴィアだったが、ひとまず、先へ進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、ゼノヴィア達が移動し始める姿を近くの物陰から怪しげな眼差しで眺める怪人───ジャグラスジャグラーの姿があった。

ジャグラーは品定めするように大悟を見つめると、一言呟く。

 

 

ジャグラー「ふぅん……なるほど。そういうことか……」

 

 

大悟から得た情報で何かを確信したジャグラー。

その声音は純粋な興味、もしくは何かの企みを思いついたとも取れるものだった。

 

 

ジャグラー「……俺も本格的に動くとするか」

 

 

ジャグラーは続けて呟くと、闇のオーラを纏い、目にも止まらぬ速さで何処かへ立ち去っていった……。

 

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

遂に二条城に辿り着いた我夢達!
待ち構える曹操は八坂の力を悪用しようとしていた!
深夜の二条城を舞台に曹操一味との激しい死闘が展開する!

次回、「ハイスクールG×A」!
「月下の死闘」!
お楽しみに!



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第55話「月下の死闘」

英雄派首領 曹操
英雄派 ゲオルク
英雄派 ジークフリート
英雄派 ジャンヌ
英雄派 ヘラクレス   登場!


地下鉄のホームに襲いかかってきた集団を蹴散らした我夢とイリナはその後も向かってくる敵を退け、何とか二条城に辿りついた。

 

 

フッ…

 

「「あれ?」」

 

 

その瞬間、周りに立ち込めた霧がなくなったのを感じた。不思議に思った2人は振り向くと、霧はバリケードのように漂っており、それ以上我夢達がいる地点へ迫ってくる気配はなかった。

 

 

イリナ「霧があそこにあるってことは……ここって現実ってことかしら?」

 

我夢「ああ。多分、台風の目のようにこの二条城だけは霧を張ってなかったんだろう。わざわざここが現実空間である必要はわからないけど……。さあ、急ごう」

 

イリナ「うん!」

 

 

イリナは頷くと、2人は再び走り始め、二条城の東大手門に向かった。

そこにはすでに散り散りになっていた他の面々が集まっていた。

 

 

一誠「…おっ!我夢にイリナ!無事だったか?」

 

イリナ「ええ、何とかなったわ~」

 

我夢「君達も無事で良かったよ。大悟、九重も大丈夫そうだね」

 

大悟「うん。ゼノヴィアさんが僕達を守ってくれたから」

 

イリナ「さっすがゼノヴィア!やるじゃない!」

 

ゼノヴィア「…あ、ああ……」

 

 

イリナをはじめ、皆によくやったと賞賛されるゼノヴィアは固い表情で返す。

ゼノヴィアは先程見た大悟の常人を越える力に頭から離れなかった。

以前からおかしいとは思ってはいたが、彼が普通の人間ではないのは疑惑からほぼ確信へと変わっていた。

 

 

我夢「そういや、ロスヴァイセさんと匙は?」

 

 

ゼノヴィアがそんなことを考えていると、我夢はロスヴァイセの姿が見えないことに気付く。

木場と一緒にいる筈だけど……。我夢が怪訝に思っていると、木場がチョンチョンと肩を叩く。

 

 

木場「我夢君。あそこ」

 

我夢「ん?……あ」

 

 

木場が指差す方───そこには電柱の陰で嘔吐するロスヴァイセと心配そうに背中を擦る匙の姿があった。

我夢がポカーンと眺めている中、木場は苦笑しつつ補足を入れる。

 

 

木場「僕達も敵と戦闘したんだけど、激しく動き回ったせいで……」

 

我夢「ああ~」

 

 

それを聞いて、みなまで言わなくともどうなったか我夢はわかった。

京都についてから目立つロスヴァイセの奇行の数々に我夢は何とも言えなかった。

 

何とも言えない空気が漂う中、我夢はアッと思い出したのような声をあげる。

 

 

我夢「そういえば、ここに来る道中の敵、少なくなかった?」

 

木場「あ、言われてみればそうだね」

 

 

我夢の率直な疑問に木場も同意見だと頷く。

ここまで楽々進めたのも、道中で襲いかかってきた敵が少なかったからである。

意図的に少なくしたのか、それとも何者かの仕業か……次々と疑問が浮かぶが、とにかく誰1人抜けず無事だったのは幸いである。

 

 

ゴゴゴゴゴ…

 

 

皆、ひとまずの安否を喜びあっていると、巨大な門が鈍い音を立てながら開いた。

開かれた門から見える城内は薄暗く、中の様子はよくわからない。まるで、獲物を飲み込まんとする怪物の大口のようだ。

 

 

木場「あちらも手厚く歓迎してくれてるみたいだね」

 

一誠「全くだ」

 

 

木場の皮肉に一誠は呆れた顔で返す。

 

その後、一同は罠が仕掛けられてる可能性に警戒しつつ、二条城の敷地へ入っていく。

そんな中、立ち止まった我夢は後ろで見送る大悟へ振り向く。

 

 

我夢「大悟。君は九重と一緒にここで待っていてくれ。ここから先は危険だ……」

 

 

我夢は真剣な顔で大悟に頼みを入れる。

ここから先は戦場──何が起こるかわからない。

ここが危険な場所には変わりないが、敷地内に同行させるよりも城の外で待機させておくのが比較的安全だと踏んだからだ。

 

我夢の思いをすぐに察した大悟は頷く。

 

 

大悟「わかった。この近くの安全な場所に隠れているよ」

 

九重「我夢。母上を頼むぞ」

 

我夢「任せてくれ」

 

 

九重にそう言われた我夢は九重と約束の握手を交わす。

───絶対に助ける。誓った決意を改めて胸に刻み、我夢は他の皆と共に敷地内へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敷地内へ入った我夢達は闇夜で薄暗い道を進んでいくと、古い日本家屋が建ち並び、美しく整備された庭園へ出た。

設置されたライトに照らされて幻想的な情景が広がっている。

 

 

曹操「待っていたよ」

 

『っ!』

 

 

警戒しながら歩を進めていると、上から呼びかける声が聞こえる。

我夢達は見上げると、前方の建物の屋根に件の首謀者───曹操が見下ろしていた。

その周りの建物の陰から構成員らしき人影も見えた。

 

曹操は聖槍の柄でトントンと首を軽く叩くと、話し始める。

 

 

曹操「よくあれだけの軍勢を切り抜けてきたね。あの中には禁手(バランス・ブレイカー)使いが何人かいた筈だが、それを難なく突破する君達はまさに驚異的だ」

 

一誠「はっ、全然大したことなかったぜ!あんなんで時間を稼ごうたって、俺達には無駄だっ!」

 

 

ビシッと指差しながら言い放つ一誠。

確かに中には厄介な相手もいたが、どれも我夢達を止められるレベルではなく、しかも人数も少なかった。

 

曹操は軽く息を吐くと、首もとに乗せていた聖槍の石突きを足下の屋根に置き

 

 

曹操「まあ、あれぐらい楽に倒せなきゃ俺達の相手は務まらないからな。さて、今宵の宴の準備を始めるか…」

 

 

そう言って曹操は聖槍の石突きをトンと屋根に叩くと、曹操の傍の足下から魔法陣が現れる。

我夢達が警戒する中、魔法陣から姿を現したのは、狐耳と九つもの尻尾を持った着物の女性だった。

だが、曹操達に何かしらの催眠をかけられたのか、瞳は虚ろで顔も無表情だ。

それを見てこの人物が誰かを察した一同を代表するかのように我夢は叫ぶ。

 

 

我夢「曹操!もしかして、その人は八坂さんか!?」

 

曹操「その通り。我々の実験には九尾の御大将の力が必要不可欠なんでね」

 

一誠「何が実験だ!!ふざけんなっ!!さっさと返しやがれっ!!」

 

曹操「まあまあ、落ち着け。これから行う実験についてわかりやすく説明してやるから聞いてくれ」

 

 

怒りを露にする一誠に曹操は不敵な笑みを浮かべながら言い宥めると、今回の事件を起こした目的について話し始めた。

 

 

曹操「京都には様々な気脈が流れる都市ということは君達も知っているだろう?この京都自体がパワースポットであり、普通ならあり得ない現象さえも起こすことが出来る。都市の力とそれを管理する九尾の狐を使えば、こことは()()()()()()()()()()()()だって呼び寄せることさえもね……」

 

我夢「異なる空間に……?それは誰なんだ?」

 

 

我夢が問いかけると、曹操はその存在の名を告げる。

 

 

曹操「グレートレッド………。名前ぐらいは聞いたことあるだろう?次元の狭間を飛び回る巨大なドラゴンさ。奴ほどの存在は現実空間でなければ、呼び寄せるのは難しい」

 

 

グレートレッドについては我夢達は以前、アザゼルから聞いている。

その実力はオーフィスに勝るとも劣らないとされている強力なドラゴンだが、普段は棲み家である次元の狭間を飛び回るのが好きなだけで何もしなければ無害な存在だ。

 

 

我夢「グレートレッドを呼び寄せてどうするつもりなんだ?」

 

曹操「とりあえずは捕獲するつもりさ。うちのボス───オーフィスにとっては邪魔なんでね」

 

 

オーフィスの目的は故郷である次元の狭間に帰ること。

ただそれだけだ。

その願いを成就させようとするのはわかったが、グレートレッドを呼び出すだけでなく、捕獲するのはどうにも怪しい。

 

 

我夢「お前の目的はわかった。だが、そんなことをすれば、ここに住む人や世界中の人達が大変なことになるかもしれないんだぞ?」

 

曹操「人生はギャンブルってよく言うだろう?運が良いときもあれば、悪いときもある。もし、最悪な場合が世界に起きても、運が悪いって割りきればいいさ」

 

我夢「っ!」

 

 

曹操の言葉に我夢はわかった。

根本的に考えや認識が違う、と。

平和的観点や思想、全て何もかもがわかりあえないのだ。

これだけ周りを傷つけて尚、更に傷口を深くさせようとする考えに我夢は憤りを感じていると、曹操は聖槍の石突きで再び屋根をトンッと叩く。

すると、

 

 

八坂「…っ!?う……うぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッッ!!!」

 

 

突如苦しみだした八坂が悲鳴をあげると、体が姿を変えながら巨大化していく。

 

 

曹操「おっと」

 

 

巨大化する八坂の重みによって崩落していく建物から曹操は巻き込まれまいと地上へ降り立つ。

崩落した建物を押し潰し、八坂は九つの尾を持つ巨大な金色の狐に変貌した。

 

 

「────オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

八坂は正気がないのか、夜空に向かって遠吠えをあげる。

伝説の妖怪───九尾の狐の迫力に我夢達は圧巻され、開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重「母上!?母上じゃ!」

 

大悟「何だって!?」

 

 

その頃、城の外で待機していた九重と大悟も変貌した八坂の本来の姿を目の当たりにしていた。

驚く九重からもらした事実に大悟は目を丸くする。

 

 

九重「間違いない、あの妖怪は母上じゃ!」

 

大悟「あれが伝説の妖怪……九尾の狐………」

 

 

大悟は今、視界に映る八坂の姿に圧巻される。

それもその筈。歴史が好きな大悟は勿論、日本の妖怪についても学んでいたが、まさか伝説上の妖怪といわれる九尾の狐を目の当たりする日がくるとは思いもよらなかっただろう。

 

 

九重「じゃが、母上があの姿になるということは余程身に危険が迫っているということじゃ。それにとても苦しそうじゃ……」

 

 

月夜に吠える八坂を見て心配そうに呟く九重。

大悟には八坂が全く苦しんでいる様子が伺えないが、気を探知できる九重──それに親子にしかわからないところがあるのだろう。

 

顔を曇らせる九重を見かねた大悟は安心させる為にそっと手を握る。

握り返してくる震える小さな手を包み、大悟は再び城の方を見上げる。

 

 

大悟「(我夢……イッセー……イリナ……)」

 

 

大悟は不安に押されつつも、彼らの勝利を信じて祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、二条城敷地内。突如、変身した八坂に圧巻される我夢だが、すぐに気を取り戻して叫ぶ。

 

 

我夢「曹操!八坂さんに何をしたッ!」

 

曹操「計画がスムーズにいくようにちょっとした催眠をかけたのさ。我々の手中に収めるのは手こずったが、今やリードに繋がれた犬同然さ」

 

我夢「何てことを…!」

 

曹操「とりあえず実験を始めよう。ゲオルク!」

 

 

憤る我夢達をよそに曹操は後ろにいた魔法使いのローブを纏った眼鏡の男───ゲオルクが頷くと、隣に出る。

 

 

曹操「九尾の狐に京都中のパワースポットの力を注ぎ、グレートレッドを呼び出す準備をしてくれ」

 

ゲオルク「わかった、すぐにとりかかろう。ただ、その間、制御に集中する必要があるので、自分は無防備になってしまうが……」

 

曹操「構わんさ。俺達が護れば問題ない。お前は気にせずやってくれ」

 

ゲオルク「了解」

 

 

曹操の了承を得たゲオルクは八坂に向けて手を突き出す。

すると、八坂の足下に巨大な魔法陣が現れると、発した光が八坂を包みこむ。

その瞬間──

 

 

「オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

八坂が苦悶の叫びをあげる。

目を大きく見開き、全身の毛が逆立って如何にも危険で苦しそうなことがわかる。

八坂の異変に緊張が走る中、我夢達の前へ出た匙は振り向き、口を開く。

 

 

匙「高山。あの九尾の御大将は俺に任せてくれ。無傷で済ませるなら、俺のヴリドラがうってつけだ」

 

我夢「匙、無茶はするなよ?まずいと思ったら、一旦引いてくれ」

 

匙「ハハッ、お前こそヴリドラの力を舐めるなよ?あれから更に修行を重ねて、新しい力を身につけたんだ。そう簡単にはやられねぇよ。それに戦闘ってのはいつも死と隣り合わせ………覚悟くらい出来てるよ」

 

 

心配する我夢にそう言った匙は八坂のもとへ走り出す。

走る最中、匙の体は黒い炎に包まれ、次第に大きく燃え上がっていく。

 

 

匙「龍王変化(ヴリドラ・プロモーション)』ッッ!!

 

 

匙がそう叫ぶと、体を包んだ黒い炎は大きくなりながら形をなしていき、細長い黒い東洋の龍へと変身した。

黒龍へと変身した匙は体から発した炎で八坂の周囲を囲むと、真正面から対峙する。

 

 

「ジャァァアアアアッ!!」

 

「オォォォォォォォォンッッ!!」

 

 

互いに標的を捉えた匙と八坂は雄叫びをあげる。

九尾の狐と黒龍───巨大生物同士の大決戦を始めた。

 

大地を揺らす程の激戦を横に曹操は我夢達を品定めするように見ると、不敵な笑みを浮かべながら話しかける。

 

 

曹操「さてさて、隣が盛り上がっているところだ。俺達もそろそろ始めようじゃないか?ジャンヌ、ヘラクレス」

 

ジャンヌ「はいはーい」

 

ヘラクレス「おぉう!」

 

 

曹操の呼び声に応じた男女が前に出る。

レイピアを持った金髪の西洋人らしき女性がジャンヌ、2mを超える体躯を持つ巨体の男がヘラクレスだ。

 

 

曹操「名前からわかるが、彼らも英雄の意思を継ぐものだ。お前達、どれとやる?」

 

 

曹操に訊ねられた2人は沈黙し、すぐに決まると口角をあげる。

 

 

ジャンヌ「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。可愛い顔してるし」

 

ヘラクレス「俺はそっちの銀髪の姉ちゃんだな」

 

 

ジャンヌはイリナ、ヘラクレスはロスヴァイセを指名する。

戦う相手に視線を送った両者は戦う場所を変えるべく、二条城内の各所に散る。

 

 

曹操「ジークフリート、お前はどうする────って訊くまでもないか……」

 

 

次に曹操は後ろに控えていた男──ジークフリートに訊ねようとしたが、ジークフリートは既に抜き取った剣の切っ先を指名相手に向けていた。

切っ先の指す方角には木場とゼノヴィア……彼らを対戦相手に決めたようだ。

相手を見定めた3人はそのまま自分達が戦う場所へと散った。

 

 

曹操「さて、残ったのは俺と君達か。ウルトラマンガイアにウルトラマンダイナ……今夜のメインディッシュとも言ってもいいな」

 

我夢「イッセー、行くぞ!」

 

一誠「おう!」

 

 

我夢の呼び掛けに応じた一誠はリーフラッシャーを取り出し、我夢もエスプレンダーを取り出す。

2人は各々の変身アイテムを前へ突き出すと、等身大のウルトラマンへと変身した。

それを見た曹操は不敵に笑うと、聖槍を構え

 

 

曹操「ふっ、全力で戦うその姿を待ちわびていたよ!さあ、始めようか!」

 

 

そう言うと、地面を蹴り、ダイナ、ガイア向かって走り出した。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

それに合わせてダイナ、ガイアもファイティングポーズを取ると、勢いよく駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリナ「光よ!はっ!!」

 

 

純白の翼を広げたイリナは上空から幾多もの光の槍を地上のジャンヌ目掛けて投げつける。

襲いかかる光の槍をジャンヌは走りながら軽々と避け、ときにレイピアで弾いていく。

 

 

ジャンヌ「いいね~!やるじゃない!お姉さん感激っ!」

 

イリナ「じゃあ、これなら!」

 

 

余裕の笑みを見せるジャンヌにイリナは4つの光輪を放つと同時に急降下し、手に形成した光剣で斬りかかる。

イリナを避ければ、光輪が…。逆に光輪を避ければ、イリナに斬られる。隙のない同時攻撃だ。

普通なら何とかしようと動きを見せるが…

 

 

イリナ「?」

 

 

ジャンヌは全く動じず余裕の笑みを見せたまま佇んでいた。まるで動く必要がないと言わんばかりに。

あまりもの余裕さに違和感を覚えたイリナが降りる速度を落とした瞬間だった。

 

 

ジャンヌ「───聖剣よ!」

 

ジャキィィンッ!!

 

イリナ「っ!?」

 

 

ジャンヌが叫ぶのを合図に足下から数多もの聖剣がジャンヌを取り囲むように生えてくると、迫っていた光輪は全て粉々に砕け散った。

驚くイリナだったが、右太ももに掠りながらも間一髪、翼を羽ばたかせて上空へ回避する。

 

 

イリナ「…っ!危なかった…!もしスピードを落としてなきゃ……」

 

 

イリナは右太ももの切り傷の痛みに僅かに顔を歪ませながら、聖剣の剣山を見下ろす。

もし違和感に気付かず突っ込んでいたら──。それを想像してゾッと背筋を凍らせる中、ジャンヌは感心そうに笑った。

 

 

ジャンヌ「ふふっ、やるやる!私の予想以上じゃない!」

 

イリナ「こ、これでも天使長ミカエル様のA(エース)なんだから!舐めないで!」

 

ジャンヌ「そっかー…ミカエルさんのね。うん、わかった。お姉さんも本気で応えなきゃね」

 

 

ジャンヌは自分に言い聞かせるように言うと、イリナを視線に捉えたまま話し始める。

 

 

ジャンヌ「『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』────それが私の能力の名前。色んな属性を持った聖剣を創れるわ。そっちの聖魔剣を使う人の聖剣バージョンって言った方がわかるかしら?…けど、色々創れるっても、本場の聖剣には敵わないわ。能力で創った即席物と丹精込めてものとじゃどうしても差が出来ちゃうわ。それを越えるには禁手(バランス・ブレイカー)……ううん、よりもっと上の力じゃないとね~~」

 

イリナ「何が言いたいの…?」

 

 

意図の見えない話に訳がわからないイリナは眉をしかめて訊ねると、ジャンヌはクスリと笑う。

 

 

ジャンヌ「ふふっ……より強くなるには、普通に決められた強化じゃつまんないってことよ。誰もが予想だにしない方が面白いと思わない?」

 

イリナ「…?」

 

ジャンヌ「それをお姉さんが教えてあ・げ・る♪」

 

 

ますます意味がわからず首を傾げるイリナをよそにジャンヌは小悪魔な笑みを浮かべると、腰元から1枚のメダルを取り出す。

縁が黒と白で彩られたカジノコインのように見えるが、内側には2本角を持つ獰猛そうな首長の怪獣が描かれている。

ジャンヌが手にしているメダル────それはジャグラーも持っている怪獣メダルだった。

 

 

イリナ「(何、あれ?)」

 

 

当然、見たことも聞いたこともないイリナは訝しげな顔を浮かべる。

その間にもジャンヌは怪獣メダルをレイピアのアームガードに装填する。

 

 

《Kingsaurs III》

 

 

機械的な音声が鳴ると、ジャンヌはレイピアを真上へ掲げ

 

 

ジャンヌ「───怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)♪」

 

 

猫被った声でそう言うと、周囲を囲んでいた聖剣の山が一斉に背後に移動し始める。

速い勢いで重なった数多の聖剣は形を変えていくと、聖剣で出来た2本角の四足歩行怪獣へとなった。

だが、あくまで姿形を模したのか、全長は10メートル程で標準の怪獣より高くはない。

 

 

イリナ「嘘っ!?怪獣!?」

 

「──ピィィイッッ!!ピィィイッッ!!」

 

 

事の一部始終に驚くイリナに向かって雄叫びをあげる聖剣怪獣。

長い首をくねくねともたげながら動かす様はまるで本物の怪獣のようである。

 

 

ジャンヌ「この子は確か、『キングザウルス三世』……だったかしらね。その怪獣の力を宿したメダルと私の『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』と掛け合わせた全く新しい禁手(バランス・ブレイカー)────『断罪の聖王獣(ステイク・ビクティム・モンス)』よ」

 

イリナ「っ!」

 

 

怪獣の力と『神器(セイクリッド・ギア)』を合わせた全く新しい力──怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)

想像もしたことない組み合わせに衝撃を受けるイリナだったが、すぐに気合いを入れ直して光剣を構え直す。

 

 

イリナ「そんなこけおどしで参る訳にはいかないわっ!みんなの為に負けられないんだもん!」

 

ジャンヌ「あら?だったらかかってきたら?お姉さん見とくから」

 

イリナ「っ、馬鹿にしないでっ!」

 

 

ジャンヌの挑発に乗る形でイリナは左手を天高く掲げて巨大な光の槍を創り出すと、聖剣怪獣に向かって力強く投げつける。

巨大な光の槍は聖剣怪獣を捉え、このまま一直線に貫通する筈だが

 

 

カキィンッ!

 

イリナ「っ!?」

 

 

光の槍は目と鼻の先のところで弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。

目を丸くしたイリナは聖剣怪獣の方へ目を凝らすと、周囲には不可視の壁が張られていた。

光の槍はそれで弾かれたのだ。

ジャンヌはあっと声をもらすと、不敵な笑みをイリナへ向ける。

 

 

ジャンヌ「ごめんなさいね、先に言っておくべきだったかな?この子には何でも弾く強力なバリアーを張る能力があるのよ。このバリアーはウルトラマンの光線でさえ破壊できないわ」

 

イリナ「っ、だったら!」

 

 

ジャンヌの話にイリナは負けまいと気を引き締めると、今度は数多の光輪や光の矢を放つ。質より量で叩く作戦だ。

しかし、どれもバリアーを突破出来ず、次々と弾き飛ばされるばかりだった。

 

 

イリナ「はあっ!!」

 

 

ならばと直接攻撃に切り換えたイリナは長く伸ばした光剣で斬りかかる。

勢いよく横へ振られた剣は聖剣怪獣の首を捉えるが

 

 

パキィンッ!

 

イリナ「っ!?」

 

 

バリアーの強固さを前に光剣は耐えきれず、儚い音を立てながら折れてしまった。

これでも突破出来ないことに軽くショックを受けるイリナだったが、他からすれば隙だらけの状態である。

 

 

「ピィィイッ!!」

 

イリナ「きゃあっ!!」

 

ドォォンッ!

 

 

聖剣怪獣の口から放つ熱線に気付かず、もろに受けてしまい、地面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、木々に囲まれたエリアで戦うロスヴァイセも苦戦を強いられていた。

 

 

ロスヴァイセ「くっ!これだけ受けてもモノともしないなんて…!」

 

ヘラクレス「ハッハッハーッ!いいね、いいねっ!その調子だぜ、姉ちゃん!!」

 

 

ロスヴァイセは距離を取りながら魔法の嵐をぶつけているが、まともに受けても尚、ヘラクレスは余裕の笑みを見せながら突っ込んでいた。

 

 

ヘラクレス「オオラッ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

接近したヘラクレスは拳を繰り出すが、ロスヴァイセはヘラクレスの頭上を飛び越えて軽やかにかわす。

空振りした拳はロスヴァイセの背後にあった樹木に炸裂……その瞬間

 

 

ドォォンッ!!

 

 

爆弾が起爆したかのように激しい爆発音と共に樹木は木っ端微塵に吹っ飛んだ。

降り立ったロスヴァイセは冷や汗をかきながら軽く息をきらす中、ヘラクレスはゆっくりと振り向く。

 

 

ヘラクレス「へへっ!中々いい動きだな!攻撃と同時に爆発させる俺の『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』にしっかり警戒してるなぁ!よっしゃ、コイツでペースアップだッ!!」

 

《Antlar》

 

 

そう言ったヘラクレスは懐から取り出した怪獣メダルを右腰のホルスターに装填すると、機械的な音声が鳴り響く。

ヘラクレスは腰を深く落として身構えると、口角をあげて掛け声を発する。

 

 

ヘラクレス「怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)ッッ!!」

 

 

その瞬間、ヘラクレスが一瞬だけ光輝くと、頭部にはクワガタの大顎のような角、全身がカブトムシの固い外皮に包まれていた。

 

 

ロスヴァイセ「姿が変わった!?」

 

ヘラクレス「力の基となった怪獣は『アントラー』ッ!!そして、コイツが俺の怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)────『怪獣による悪魔の虹(デトネイション・レインボラ・モンス)』だァァッ!!」

 

 

叫んだヘラクレスは頭部の大顎で地面を掘ると、地中へ姿を消した。

ロスヴァイセは周囲を見渡して気配を探る。

いつ、どこに来るのか。用意周到に見渡していると

 

 

ドゴォォンッ!

 

ヘラクレス「こっちだぜ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

後ろから土砂が巻き上がる音と共に声が聞こえたロスヴァイセは振り返ると、ヘラクレスが地中から現れた。

ヘラクレスの大顎に捕らわれそうになるが、ロスヴァイセは間一髪悪魔の翼を広げて上空へ回避する。

 

 

ロスヴァイセ「くらいなさい!」

 

ドドドドドド…ッ!!

 

 

ロスヴァイセは炎、氷、雷……三属性の魔力弾を地上のヘラクレス目掛けて放つ。

ゲリラ豪雨のような激しい攻撃がヘラクレスに襲い、大量の粉塵が巻き上がるが…

 

 

ヘラクレス「──ハッハッ!愉快な攻撃だ!マッサージには丁度いいくらいだな!」

 

ロスヴァイセ「なっ!?」

 

 

全くの無傷で余裕の笑みを浮かべているヘラクレスの姿があった。

ヘラクレスを纏うアントラーの外皮は、あの初代ウルトラマンのスぺシウム光線すら通さない強固なものだ。

流石にこれだけの光線を受けても平然とする姿にロスヴァイセは絶句する。

 

 

ヘラクレス「さぁて、今度はこっちの番だなッ!そりゃッ!!」

 

ロスヴァイセ「っ!?か、体がっ!勝手に…!!」

 

 

ヘラクレスは頭部の大顎の間から虹色の磁力光線を放つと、ロスヴァイセは磁石に反応する金属のように体が徐々に吸い寄せられていく。

何とか踏ん張ろうとするが磁力光線の吸引力には敵わず、背中を向けた姿勢でヘラクレスの方へ引っ張られる。

 

 

ガシッ!

 

ヘラクレス「オリャアァァァーーーーッ!!アントラー・スープレックスッッ!!」

 

ドォォォォンッ!!

 

 

吸い寄せたロスヴァイセの腰を頭部の大顎でロックしたヘラクレスは後方に反り返りながら地面に叩きつけると、大爆発が起こる。

 

巻き上がる爆煙の中、ヘラクレスは腰のロックを外し、地面でうずくまるロスヴァイセを見下ろす。

ロスヴァイセは爆発をもろに受けたせいで体のあちこちが火傷しており、XIGの隊員服もボロボロだ。

 

 

ロスヴァイセ「…か…はっ…!」

 

ヘラクレス「おいおい、大丈夫か?まだまだこれからだぜぇ?もっと頑張れよ」

 

ロスヴァイセ「…余計な…お世話です!」

 

 

煽るヘラクレスにロスヴァイセは痛む体を鞭打って立ち上がる。

とはいえ、体はボロボロで出血もひどく、パワーアップしたヘラクレスの相手をするにはかなりきつい。

 

 

アーシア「ロスヴァイセさんっ!」

 

ロスヴァイセ「っ!」

 

 

危機を知ったアーシアは回復のオーラをロスヴァイセに飛ばす。

送られた淡い緑色の光で回復したロスヴァイセはアーシアにサムズアップを送る。

 

 

ヘラクレス「はっ!回復ねぇ!まあ、それぐらいハンデがねぇと楽しめねぇからなぁ!」

 

ロスヴァイセ「まだ勝ったと決めつけるのは早いですよ!」

 

 

ロスヴァイセは楽しげな笑みを浮かべるヘラクレスにそう言い返すと、再びヘラクレスへ向かって魔法攻撃を仕掛けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークフリートと戦う木場とゼノヴィアは西門付近で剣術戦を繰り広げていた。

2対1と数的には不利な筈だが、ジークフリートは両手に持つ剣で軽々と2人の攻撃を捌いている。

 

 

ギギギ…!

 

ゼノヴィア「悪魔祓い最高の戦士ジークフリートと戦う日が来るとはっ!」

 

ジークフリート「こっちも教会を去った君とこういう形で剣を交えるとは思わなかったよ」

 

 

ゼノヴィアと鍔迫り合いしながら、ジークフリートは軽やかな口調で答える。

元々、彼はゼノヴィアやイリナと同じ教会の戦士で、トップクラスの実力者だった。

だが、現在は曹操の誘いに乗って裏切り、英雄派に身を置いているのだ。

 

 

木場「はっ!」

 

ジークフリート「おっと」

 

 

木場が隙を逃さず、神速で斬りかかるが、ジークフリートは鍔迫り合いを外すと素早くバックステップで下がった。

木場とゼノヴィアが構え直す中、ジークフリートは横目で遠くで戦う仲間の様子を伺うと、顔を正面へ向き直す。

 

 

ジークフリート「ジャンヌ達も盛り上がっているみたいだね。よし、こちらも大サービスをしよう」

 

 

そう言ったジークフリートは両手に持つ剣を地面へ突き刺す。

武器を手放すという不可解な行動に木場とゼノヴィアが訝しげな顔を浮かべていると、両手に龍の意匠がある籠手を出現させる。

 

 

ジークフリート「これが僕の神器(セイクリッド・ギア)───『龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)』。何の変哲もないありふれたものさ。けど、このメダルの力を使えば……」

 

 

ジークフリートはスボンの両ポケットから取り出した2枚の怪獣メダルを左右の籠手のクリスタル部分に装填する。

 

 

《Powerd-Abolas》

 

《Powerd-Banira》

 

 

機械的な音声が鳴ると、ジークフリートは不敵な笑みを浮かべながら右側に差した剣を左手、左側に差した剣を右手で握って叫ぶ。

 

 

ジークフリート「怪獣禁手化(モンストラ・ブレイク)!!!」

 

カッ!

 

 

剣を地面から引き抜いてX字に斬り上げると、両腕が目映い光に包まれる。

あまりもの眩しさに木場とゼノヴィアは目を瞑る。

 

 

「「……っ!!?」」

 

 

やがて光が晴れ、2人は恐る恐る目を開くと、ジークフリートの変化に目を丸くする。

右腕はワニのような固い群青色の皮膚に変化しており、右肩には恐竜に似た獰猛な怪獣の顔が突き出ている。

反対の左腕は骨が浮き出たような赤色の皮膚になっており、こちらも左肩には細長い頭をした凶悪そうな怪獣の顔が突き出ていた。

 

 

ジークフリート「右腕に宿る怪獣の力は“青い悪魔”と恐れられた『パワードアボラス』。左腕に宿るのは“赤い悪魔”の『パワードバニラ』。これが僕の怪獣禁手(モンストラ・ブレイカー)───『青と赤の狂騒宴(アボラス・バニラ・エヴィッジ)』。さて、君達はどこまで戦えるかな?」

 

木場「…っ、くるっ!」

 

 

そう言うとジークフリートは双剣を構えて駆け出すと、右の剣を振り下ろす。

気を引き締めた木場は聖魔剣で防ぐが

 

 

シュ~~~……

 

木場「何っ!?」

 

 

聖魔剣が剣が当たった箇所から煙を立てて溶け始めた。経験したことがない光景に驚く木場だが、このままだと刀身ごと斬られることを危惧して素早く後ろへ下がる。

木場は溶けた刀身が溶けた聖魔剣を見て、驚きの声をもらす。

 

 

木場「聖魔剣が…!」

 

ジークフリート「パワードアボラスの溶解液は何でも溶かす。聖と魔を宿す聖魔剣でさえも簡単にね」

 

ゼノヴィア「なら、私がっ!」

 

 

木場に変わってゼノヴィアが飛び出す。

ジークフリートは右手の剣を振るって溶解液を込めた斬撃を飛ばすが、ゼノヴィアはデュランダルを盾にしながは接近していく。

刀身から放つ聖なる光は溶解液を蒸発させていく。

 

 

ジークフリート「やるね。なら、こっちはどうかな?」

 

 

斬撃の手を止めたジークフリートはもう片方の剣を持つ左手に力を込めると、刀身に炎を纏わせて身構える。

 

 

ゼノヴィア「はあぁぁぁーーーーーっ!!」

 

キィィンッ!!

 

 

近付いたゼノヴィアは大地を蹴って飛び上がると、デュランダルを豪快に振り下ろす。

ジークフリートは炎を纏った左の剣で軽々と防ぐ。

炎と光───輝きを放つ2つの属性は暗闇を照らす程にぶつかり合う。

ゼノヴィアは持ち前のパワーで押し込んでいくが

 

 

ジュウゥゥ~~~!!

 

ゼノヴィア「熱っ!?」

 

 

突如、グリップ部分が尋常ではないくらい熱くなり、思わず後方へ投げ飛ばしながら飛び退く。

地面に降り立ったゼノヴィアは両手に目をやると、掌は火傷で赤くなっていた。

その様子に不敵に笑うジークフリートは赤い左腕を見ながら話す。

 

 

ジークフリート「この左腕の力……パワードバニラの炎はあらゆるものを熱し、焼き付くす。君の持つデュランダルも伝説の聖剣といえど金属………さっきグリップ部分が急に熱くなったのは熱伝導したせいさ」

 

ゼノヴィア「何だと…!」

 

 

ジークフリートの説明にゼノヴィアは戦慄する。

剣を溶かし、熱伝導させる……剣士にとってはどれも厄介な能力だ。

ゼノヴィアは冷や汗をかきながらも熱がすっかり冷めたデュランダルを引き抜くと同時に新しく創った木場が駆け寄る。

 

 

木場「これは厄介だね…」

 

ゼノヴィア「ああ。しかし、ここで退く訳にはいかない……」

 

 

生唾を呑みながら剣を構える2人。

ジークフリートは能力も厄介ではあるが、剣の実力も高い。

2人はこちらへ歩いてくるジークフリートに戦慄しつつも、気を引き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、崩壊した本丸御殿近くではガイア、ダイナのタッグと曹操による激しい攻防が繰り広げられていた。

 

 

ダイナ「ハッ!!」

 

曹操「ふっ!」

 

 

走り出した曹操はダイナの連射したビームスライサーを聖槍を回して弾くと跳躍し、聖槍を下へ向け、切っ先を伸ばす。

標的を捉えた切っ先はダイナに向かって飛んでいくが

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

フィンッ!

 

 

軌道に割り込んだガイアがアグルブレードを斜め上へ振るって弾く。

曹操は軌道が逸れた聖槍を元の長さに戻して、スタッと着地する。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

フィンッ!

 

 

ガイアはすかさず頭上で構え直したアグルブレードを振り下ろし、青い光の斬撃を飛ばす。

鋭い速度で迫る三日月型の光のカッターに、曹操は聖槍を力強く振って、刃部分で真正面から受け止める。

 

 

曹操「ぐぅぅぅ……っ!!」

 

 

斬撃を受け止めながら曹操は歯を噛み締める。

アグルブレードから放たれた斬撃は彼の予想以上に重く、刃の部分からは火花が飛び散り、踏ん張っている足も後ろの地面を抉る程だ。

 

 

ダイナ「デェアッ!」

 

キィィィ─────ンッッ!!

 

曹操「ぐあっ!」

 

 

ダイナはだめ押しにとダイナスラッシュを放つ。

青い斬撃に丸のこ状の回転カッターが加わったことで受け止める刃は激しい火花を散らすと、曹操ごと後ろへ押し返す。

 

 

ガイア「ダッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

その隙にアグルブレードを収納したガイアとダイナは大地を蹴って真っ直ぐ低空飛行。

接近する最中、2人は足を相手に向けてキックの体勢に入れ換える。

 

 

「「デヤァァァーーーッ!!/ダァァァァーーーーーッ!!」」

 

曹操「ぬうっ…!ぐぅあっっ!!」

 

 

ガイア、ダイナ───両者の息のあったダブルキックが放たれる。

曹操はすんでのところで聖槍を盾にして防ぐが、威力は殺しきれず、大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

 

フィンッ!

 

 

着地したガイアは再度アグルブレードを展開すると、ダイナよりひと足先に駆け出す。

 

 

ガイア「グァッ!ダッ!」

 

曹操「ふっ!はっ!」

 

 

ガイアはアグルブレードから繰り出す素早い剣術で攻め立てる。

曹操も聖槍での槍術で対抗し、火花が散る程の激しい接戦を繰り広げる。

武器を使った戦いに慣れてなかったガイアがこうやって互角に戦えるのは木場との特訓の賜物である。

 

 

キィンッ!!

 

 

得物をぶつけ合い、短い(しのぎ)合いの後、両者共に後ろへ下がると、ガイアと入れ替わるようにダイナが前へ飛び出す。

 

 

ダイナ「フッ!ハッ!」

 

曹操「…チィッ!」

 

 

勢い良く接近したダイナは名前の由来に違わないダイナミックな格闘戦で攻める。

最初こそ曹操は聖槍を巧みに使って防いだり、反撃していたが、ダイナのダイナマイトの如き勢いに次第に押され始めていき、拮抗していた形成はすぐに傾くことになった。

 

 

ダイナ「ダッ!」

 

曹操「くはっ!?」

 

ダイナ「デェアッ!ハァァァァーーーーー………!」

 

 

攻防の僅かな隙を見逃さないダイナのストレートキックが曹操の腹部に炸裂する。

その一撃に曹操は苦悶の表情を浮かべながら吐血し、前のめりに体勢が崩れる。

怯んだところをすかさずダイナは曹操の頭を脇に挟んでロックして水平に持ち上げると、ハンマー投げのように回し始める。

 

 

ダイナ「────ァァァァーーーーーー……!デェアッ!!」

 

 

ある程度勢いがついたダイナは曹操を思いっきり遠くへ投げ飛ばす。

 

 

曹操「──ぐはっ!?」

 

 

勢いよく地面に叩きつけられた曹操は身体中に突き刺さる痛みと苦痛のあまり血反吐を吐いた。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァ……!!」

 

ダイナ「ハァァァァ……!!」

 

「「デュアッ!!!/デェアッ!!!」」

 

 

その間に必殺エネルギーを溜めたガイアとダイナはそれぞれ追い討ちのリキデイターとスパイラルバーストを放った。

 

 

曹操「────っ!」

 

ドォォォォォーーーーーンッ!!

 

 

真っ直ぐ飛んで行く青色と青白い光球は曹操が驚きの声をあげる間もなく着弾し、大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ドォォォォォーーーーーンッ!!

 

「「っ!」」

 

 

2人のウルトラマンが引き起こした爆発は城の外で待つ大悟と九重の目にも届いていた。

次々と起こる大爆発と無数に飛び交う光や魔力弾の数々……それを見て、大悟と九重は予断も許さない大激闘が繰り広げていると安易に想像できた。

 

 

───大悟………大悟………

 

大悟「……?」

 

 

外から戦いの様子を見守る中、大悟の脳裏に自分を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。

不思議に思った大悟は辺りをキョロキョロ見渡すが、当然、九重以外誰も見当たらなかった。

 

大悟の様子が気になった九重は訝しげに問いかける。

 

 

九重「大悟?どうかしたのか?」

 

大悟「いや、誰かが僕を呼んで……九重も聞こえただろ?」

 

九重「……?私には全く聞こえぬぞ?」

 

大悟「え」

 

 

大悟はそう説明するが、九重には全く聞こえておらず、きょとんとしていた。

この声は自分にしか聞こえていないのか──大悟は幻聴かと思い過ごしていると

 

 

───大悟………大悟………大悟………

 

 

またもや自分を呼ぶ声が脳裏に響いてきた。

大悟はふと見上げると、数十メートル離れた先に黄金に輝く光のピラミッドが蜃気楼のように現れた。

 

 

大悟「…っ」

 

 

荘厳な雰囲気で佇むピラミッドに大悟は何か突き動かされたのか、声に導かれるようにピラミッドのもとへ歩き始めた。

 

 

九重「大悟、どこにいくのじゃ?大悟!大悟!」

 

大悟「……」

 

 

怪訝に思った九重が呼びかけるが、大悟は心ここにあらずといった様子で返事すらせず、スタスタと歩いていく。

またも様子がおかしくなった大悟に困惑する九重だが、大悟が向かう方角にピラミッドがあることに気付いた。

 

 

九重「っ!あれはもしや………っ、そんな場合じゃない!大悟、私を置いていくなっ!」

 

 

九重はピラミッドの正体に勘づいたが、とりあえず思考を現実に戻すと、急いで大悟の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ…

 

曹操「ふぅ…」

 

ダイナ「デュッ!」

 

ガイア「グァッ!」

 

 

爆煙が立ち込め、岩の瓦礫を下から退かして、身構えるガイアとダイナの前に現れるのは曹操だ。

あちこち傷だらけで服装もボロボロであるが、まだ戦える余力はあり、息を吐くくらい余裕である。

 

曹操は服についている埃を軽くはたくと、ガイアとダイナ、交互に見ると愉快そうな顔で口を開く。

 

 

曹操「いやぁ~~流石は地球が産んだウルトラマンだ。それに幼馴染み同士だけあって、連携も完璧だ!相手として文句はない!」

 

 

2人の戦いぶりを称賛する曹操。

曹操の見せる余裕に加え、その言動に益々気味が悪くなるガイアとダイナは警戒を強めていると

 

 

ジャンヌ「あら?こっちはやってるんだ?」

 

アーシア「イリナさんっ!」

 

 

とぼけた口調のジャンヌと悲鳴混じりの声で叫ぶアーシアの声が聞こえる。

ガイアとダイナはジャンヌの方へ顔を向けると、血塗れでぐったりしているイリナを肩に抱えていた。

 

 

ガイア「イリナッ!」

 

ジャンヌ「けっこー頑張ったんだけどね、バリアを突破しようと必死になったせいで体力を消耗しすぎてやられちゃったって訳」

 

ダイナ「クッソォォ~~~……!」

 

ジークフリート「やっぱり最初からその2人と戦えば良かったんだよ」

 

ヘラクレス「全くだぜ!」

 

「「ッ!」」

 

 

ダイナが怒りで拳を震わせていると、ジークフリートとヘラクレスの声が聞こえる。

もしや───と不安に思いつつガイアとダイナは顔を向けると、不安は的中する。

ジークフリートの両腕には血塗れの木場とゼノヴィア、ヘラクレスの肩には同じく血塗れのロスヴァイセ────仲間がやられた姿があった。

 

 

ダイナ「木場!ゼノヴィア!」

 

ガイア「ロスヴァイセさん!そんな……」

 

ジークフリート「大丈夫、彼らは生きているよ。ここで殺しちゃ今後の成長を楽しめないからね。そうだろう?ヘラクレス」

 

ヘラクレス「おうよ!コイツらは頑張った方だぜ!まあ、ちぃっとばかし期待外れだったがな!」

 

 

そう言うと、ヘラクレス、ジークフリート、ジャンヌは気絶している木場達をガイアとダイナの眼前に放り投げる。

仲間達が倒され、ショックを受ける3人に更なる追い討ちがかかる。

 

 

「グォォォォーーーーー!!」

 

「「「!?」」」

 

 

龍の咆哮が聞こえ、3人は顔を向けると、黒龍姿の匙が九尾の狐の九つの尾に縛られ、苦痛の叫びをあげている姿があった。

匙までやられ、気分が沈む3人に曹操は口元の血を拭って話す。

 

 

曹操「楽しかったよ、ガイア、ダイナ。残念だが、俺が遊ぶのはここまでだ。やるべきことがあるんでね。さて、ここで少し休憩することにするよ……。そこの君、早く仲間の傷を回復させるのをオススメするよ」

 

アーシア「…っ!皆さんっ!」

 

 

曹操に指摘されて我に戻ったアーシアは倒れる木場達のもとへ駆け寄ると、治療を開始する。

 

治療される最中、ガイアとダイナは未だ仲間が簡単にやられたことに信じられなかった。

まだまだ未熟と言われるが、グレモリー眷属の面々は実力が高く、そう簡単にやられる程鍛えている訳ない。

 

ガイアとダイナには悪いが、彼らがやられるのも無理はないだろう。

何せ、ジャンヌ達3人の力の基である怪獣はどれも歴代のウルトラ戦士を苦戦させてきた強豪ばかりで、しかもそのうち1体はウルトラマンを敗退させている。

初見で勝てと言うのは至難の技であるだろう。

 

 

ゲオルク「曹操。召喚の儀式は後少しだが、()()()()は完了したそうだ」

 

曹操「そうか……準備が出来たか」

 

 

ゲオルクの報告に口端を上げる曹操。

───例の準備?ガイアとダイナが怪訝に思っていると、見かねた曹操が説明する。

 

 

曹操「ああ~言い忘れたが、俺達はグレートレッドを呼び出す以外にも目的があるのさ。こっちのが本命かもしれないけどね」

 

ダイナ「何なんだよ、それ?」

 

 

ダイナの問いかけに曹操は不敵な笑みを浮かべながら、ハッキリ告げた。

 

 

 

曹操「────ティガの巨人像の破壊。俺達の()()()()()の要望の為にね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ピラミッドに向かう大悟とそれに着いていく九重はピラミッドの麓へ辿り着いた。

道中、大悟はあっちこっち曲がったり通ったり滅茶苦茶なコースを通っていたが、不思議と周囲の建物がまるで道を譲るように避けていく感覚を九重は実感した。

 

 

大悟「……」

 

 

大悟はピラミッドをひとしきり見上げてから、そっと手で壁面に触れる。

すると、壁面はそこに何もないかのようにすり抜けた矢先、壁面が光り輝くと、大悟はピラミッド内へ入り込んだ。

 

 

九重「っ!」

 

 

この光景にはっと息をのんだ九重は居ても立ってもいられず、大悟に続いて壁面に触れると、光が身体中を包みこんでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

九重「……?ここはピラミッドの中か……?」

 

 

眩しさがなくなり、恐る恐る目を開けた九重はキョロキョロと辺りを見渡す。

周囲は薄い光に包まれている以外何もない不思議な空間で、何故か心が和やかになるのを感じた。

 

 

九重「っ、大悟!」

 

 

すぐ近くには何かを見上げる大悟の後ろ姿があった。

九重は急いで大悟のもとへ駆け寄るが、依然として大悟は口を僅かに開けたまま、何かを見上げていた。

 

 

九重「……大悟?どうしたのじゃ?」

 

大悟「あれを……」

 

九重「……?あれはっ!?」

 

 

はっきりとしない口調で答える大悟が指差す方へ九重は顔を向けると、途端に目を丸くする。

 

大悟が指差す先────そこには全長50メートル程の3体の巨人像が静かに佇んでいた。

それを見て九重は確信した。

 

 

九重「やはり、ここが……母上が護ってきた勇者の墓…!ティガのピラミッド!」

 

 

九重の一族────正確に言えば九尾の一族が墓守の役割を務めてきた光の巨人が眠る墓。

話だけは母親から聞いてはいたが、まさかこんな形で来ることになるとは思いもよらなかっただろう。

 

九重が呆気にとられる中、大悟は巨人の足元にある階段をかけ上がると、3体のうち、1体の巨人像に近付く。

 

 

大悟「…っ」

 

 

大悟は巨人像から伝わる迫力に圧巻されながらもその巨人像に触れ、見上げる。

その巨人像は額にひし形のディテールが施されているのが特徴で、神仏のような神々しさを放ちつつも、どこか優しく微笑んでいる暖かさがあった。

 

大悟と九重は憑り依かれたかのようにしばし、巨人像を眺めるのだった……。

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])

3000万年の時を超えて、究極の勇者が蘇った!
洗練された技!鮮やかなタイプチェンジ!
英雄派から京都を救え!

次回、「ハイスクールG×A」!
「光を継ぐもの」!
お楽しみに!


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第56話「光を継ぐもの」

超古代怪獣 ゴルザ
超古代竜 メルバ  登場!


ガイア「やはり、巨人像も……!」

 

 

曹操が明かした巨人像の破壊───。それを知ったガイアは鋭く見据えながら呟く。

拐われた八坂がティガのピラミッドの場所を知っている情報を得た時から巨人像も狙いではないかと睨んでいたが、案の定その通りであった。

 

曹操はクルリと聖槍を回して首に乗せると、言葉を返す。

 

 

曹操「ああ。グレートレッドを召喚させるついでにスポンサーから、『古の巨人の復活を阻止しろ』っていうご命令が下されたんだよ。ジーク達をパワーアップさせる『怪獣メダル』の前報酬付きでね」

 

 

怪獣メダル────それが如何なるものかはわからないが、それが木場達を圧倒した理由であることがガイアとダイナにはわかった。

曹操は「そこで…」と付け加えると話を続ける。

 

 

曹操「拐った九尾の御大将に催眠術をかけて持ちうる情報を吐かせたんだ。だが、暗示をかけているのか肝心なピラミッドの在処は中々吐かなかった。そこでその手の専門家に頼んだところ、この()()()()()()()()()()ことがわかった」

 

「「…ッ!?」」

 

 

曹操の口から放たれた事実にガイアとダイナは衝撃が走る。

野望を阻止する為に戦っているこの二条城に隠されていることは思いもよらなかった。

 

しかし、これでわかったことがある。

二条城をわざわざ擬似空間ではなく、現実の空間にしたのはそのピラミッドを探し当てる為だと……。

曹操は肩に乗せた聖槍の石突きを地に着けると、更に話し続ける。

 

 

曹操「在処は絞り出せたものの、ピラミッドの詳しい場所まではわからない。俺達は3000万年前の人間じゃないんでね。そこで()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「?」」

 

 

意味深な言葉に疑問を浮かべる2人をよそに曹操は石突きでトンッと地面を叩く。

その瞬間、少し離れたところに巨大な魔法陣が現れ、中から現れたのは───

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

堅牢な鎧を纏ったような怪獣と鳥とも竜にも似た翼を持つ怪獣だった。姿が違えど、2匹とも体表は岩石状となっている。

これこそ、ユザレの預言していた大地を揺るがす怪獣『ゴルザ』と空を切り裂く怪獣『メルバ』である。

 

 

ガイア「あの怪獣は…!」

 

曹操「ゴルザとメルバ……闇の尖兵の生き残りである超古代怪獣さ。元々は地中で眠ってたんだが、スポンサーが目覚めさせたのを、俺達の言うことが聞くように洗脳したんだ。まあ、時間は大分かかったが」

 

ダイナ「そいつらを使ってどうするつもりなんだよ?」

 

曹操「ティガのピラミッドを探し当ててもらう。彼らは古の巨人の気配を本能的に覚えている。自分達の同族を倒したから尚更そうさ」

 

 

そう答えた曹操は顎をクイッと動かし、2人に見るように促す。

2人は振り向くと、キョロキョロと辺りを見渡しながら二条城を探索していたゴルザとメルバはある地点を見据えると、ピタリと足を止めた。

 

 

ゴルザ「ゴォ…!」

 

ビィィィィ──────!!

 

 

ゴルザは身体中のエネルギーを額に集めると、虚空に向かって頭部から紫色の光線を放つ。

すると、何もなかった場所に光輝く黄金のピラミッドが現れた。

 

 

ガイア「あれが…!」

 

ダイナ「ティガのピラミッド!」

 

 

ピラミッドが現れた光景にガイアとダイナは驚きの声をもらす。

何処にあるのかもわからず、遠くにあるものと思っていたものがすぐ近くにあったのだから。

 

 

ビィィィィ──────!!

 

 

ゴルザはピラミッドの外壁に光線を放ち続ける。

光線の威力を前に役目を果たせぬまま、外壁は徐々に粒子となって飛んでいき、中に眠る巨人像が露になっていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「!?」

 

九重「な、何事じゃ!?」

 

 

同時刻、ピラミッド内にいた九重と大悟もピラミッドに異変が起きていることを感じていた。

大悟はふと見上げると、天井が消え去っており、夜空が見え、ピラミッド自体が溶けるように無くなろうとしているのに気付いた。

 

 

大悟「九重!ここにいたら危険だ!さあ!」

 

九重「う、うむ…!」

 

 

せっかく見つけた巨人像に名残惜しそうにする九重だが、命には変えられないので差し出す大悟の手を取ると、2人は外を目指して走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それから少し経つと、美しくそびえていたティガのピラミッドは跡形もなく消え去った。

ピラミッドのあった場所には露になった3体の巨人像が静かに佇んでいた。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

巨人像を目にしたゴルザとメルバは歓喜に満ちた雄叫びをあげる。

洗脳されていながらも本能的に自分達を苦しめた光の巨人に言葉では表しきれない恨みがあるのだろう。

その光景に曹操は口角をあげながら呟く。

 

 

曹操「確実に探し出すとはいえ、因縁のある相手にさせるとはスポンサー様も随分意地が悪いな…」

 

ダイナ「スポンサー、スポンサーって……さっきからお前の言うスポンサーって誰だよ?」

 

曹操「君も知っている筈だよ。もう大体、察しがついているんじゃないのかな?」

 

 

問いかけるダイナに「もうわかるだろう?」と言わんばかりの顔で返答する曹操。

曹操の反応にダイナ、ガイアも頭に浮かんでいた解答候補が濃くなるのを実感すると、代表してガイアは静かにその名を告げる。

 

 

ガイア「……『根源的破滅招来体』」

 

曹操「その通り!大正解だよ!」

 

 

ガイアの解答に曹操はにんまりと笑みを浮かべ、パチパチを送る。

禍の団(カオス・ブリゲード)』と『根源的破滅招来体』──────いつかは手を組むだろうという可能性はあったが、まさか現実になるとは…。

予想した答えだが、実際に言われるとまた違う衝撃がある。

 

 

ダイナ「はっ…!ぶっ飛ばす奴らが1つになってごちゃごちゃしなくて済むぜ。そうとなりゃ、尚更邪魔しねぇとな!」

 

ガイア「ああ!巨人像は破壊させない!」

 

 

そう言い放ったダイナとガイアは、巨人像に歩み寄るゴルザとメルバに向かって走り出すが…

 

 

ヘラクレス「おおっと!」

 

ガイア「グァッ!?」

 

ダイナ「グワッ!?」

 

 

ヘラクレスが放った虹色の磁力光線に捕まってしまう。

足に力を込めて踏ん張るガイアとダイナだが、磁力の吸引力には敵わず、元いた場所に戻される。

 

 

ヘラクレス「おいおい、俺達と遊ばずにどこに行こってんだァ?」

 

ジャンヌ「もし、この先へ行きたいのなら♪」

 

ジークフリート「僕達を倒してみるんだね」

 

 

ヘラクレス、ジャンヌ、ジークフリートは交代交代に話すと、2人の前に立ちはだかる。

 

 

ガイア「…デュアッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

どうやっても戦いを避けられない悟った2人は臨戦態勢を取ると、ジャンヌ達へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア達がジャンヌ達に行く手を阻まれる中、ゴルザとメルバは今まさに巨人像の破壊に取りかかろうとしていた。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

ガァンッ!

 

 

ゴルザは力強く巨人像の胸元をひっぱたき、その場でクルリと回って尻尾で脚部を攻撃。

勢いついた尻尾の威力に脚部は呆気なく砕け、姿勢を保てなくなった巨人像はそのまま地面に崩れ落ち、半壊する。

 

 

ガァンッ!

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

メルバも後頭部から嘴で突き刺して頭を吹っ飛ばすと、翼を広げて上昇すると、前へ飛びながら足で巨人像を蹴り倒す。

 

 

ゴルザ「ゴォガ!ゴォガ!」

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

ゴガァンッ!ガァンッ!

 

 

ゴルザと地上へ降り立ったメルバは念入り半壊した巨人像へ追い討ちをかける。

ゴルザは足で踏みつけ、メルバは嘴で突き刺す。

情け容赦ない破壊攻撃に2体の巨人像はあっという間に粉微塵になった。

 

ゴルザは残った1体の巨人像の肩をガシッと掴んで揺さぶり、地面へ叩きつける。

九尾の一族が長年護り続けた巨人像のうち、最後の1体をゴルザとメルバは破壊しようとしていた。

 

 

九重「母上だけでなく、巨人像も……!許さぬっ!」

 

 

自分の母親が護り続けた巨人像を破壊される光景を前に九重は怒りを堪えきれず、ゴルザとメルバのもとへ駆け出す。

 

 

大悟「っ!?九重、無理だ!よせっ!」

 

 

あまりもの無謀な行動に大悟は慌てて引き返すよう呼び止めるが、九重は足を止めない。

近付いた九重はゴルザ、メルバをキッと睨み付けると両手を前へ突き出す。

 

 

九重「くらえっ!」

 

ボォッ!

 

 

そう叫んだ九重は掌から無数もの小さな火球を放った。

無数もの小さな火球はゴルザ、メルバに直撃し、破壊活動の手を止めさせたが…

 

 

ゴルザ「……」

 

メルバ「……」

 

 

やはり無謀であろうか。

幼い九尾の狐火程度ではゴルザ、メルバには全く通用せず、破壊活動を邪魔した九重を視界に捉える。

 

 

九重「あ……」

 

 

ゴルザとメルバの冷たく獰猛な目に威圧された九重は顔を真っ青にして腰を抜かした。

───自分なら何とかなる。

しかし、現実は残酷。どうにもならない。

絶望のあまり、肩をカタカタと震わせ、涙すら込み上げそうになった。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

恐怖ですくみ、動けなくなった九重に向けて、メルバは目から破壊光線を放とうとしていた。

 

 

ガイア「九重!?」

 

ダイナ「おいっ!逃げろっ!」

 

 

ガイアとダイナは外にいた筈の九重がここにいることに疑問を抱くが、メルバが攻撃しようと察し、逃げるように促す。

だが、九重はそれすらも耳に入れる余裕がなく、腰を抜かしたままだった。

 

 

ジークフリート「余所見は禁物だよ」

 

ガイア「ッ、グァッ!」

 

 

助けに行こうとするガイアだが、邪魔せんと振り下ろしたジークフリートの剣をバックステップで避ける。

本当なら今すぐにでも助けに入りたいが、今戦っているジャンヌ達に妨害されてしまう。

ダイナも同じ理由だ。

しかも、彼らは怪獣メダルの力で強化されており、一瞬の油断すらも許されない。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

九重「っ!」

 

 

そうこうしている間にもメルバは目からオレンジ色の破壊光線を放つ。

九重は直気を取り戻すがもう遅く、光線は目前に迫っていた。

万事休すかと思われたその時、

 

 

大悟「危ないっ!」

 

九重「わっ!」

 

 

駆けつけた大悟が九重を押し飛ばす。

勢いよく横へ吹っ飛んだ九重は地面に体を打ち付けるも、光線の軌道から外れた。

 

 

ドォォォーーーーーンッッ!!

 

 

だが、その代わりに大悟が光線の着弾地点に入ってしまった。

当然、避けられる筈もなく、大悟は大爆発に巻き込まれた。

 

 

九重「大悟!?大悟ぉぉーーーーーッ!!」

 

ガイア「グァッ!?」

 

ダイナ「フッ!?」

 

アーシア「!?」

 

 

目の前で起きたショッキングな光景に九重は叫ぶ。

その悲鳴にも似た叫びを耳にしたガイア、ダイナ、アーシアはそちらへ顔を向け、唖然とする。

 

 

九重「大悟…!私のせいじゃ…!私のせいで…!」

 

「「「……」」」

 

 

膝をついた九重は土を握り締め、涙声で自身を責める。

土を握り締める拳には流れ落ちた涙がポタポタと積もる。

嘆き悲しむ九重の姿にガイア、ダイナ、アーシアは悼まれない気持ちに包まれる。

 

だが、この時誰も知らなかった。

大悟が爆発したところから飛び出した1つの光が倒された巨人像へ溶け込むように一体化したことを。

巨人像の額にある菱形の器官は人知れず淡い白い光で輝いている。

 

 

ゴルザ「ゴォ…」

 

 

邪魔者が消えたことを確認したゴルザは唸り声をあげながら最後の1体に近付くと、大きく足を上げる。

巨人像の頭部を簡単に覆う厚さを持った足で踏み潰そうとするが

 

 

ガッ…!

 

ゴルザ「?」

 

 

その寸前、何かにぶつかって足が阻まれる。

疑問に思ったゴルザは首を傾げてチラッと足下を見ると、巨人像がひとりでに両腕でクロスさせて足を防いでいた。

どういうことだと思った矢先、

 

 

チャァッ!!

 

ゴルザ「ゴォガァァ!?」

 

 

巨人像に生気が宿ったかの如く鮮やかな色が入ったかと思うと、立ち上がり様に腕を振り上げて立ち上がる。

足をはね除けられたゴルザは驚愕の声をもらしながらスッテンコロリと倒れた。

 

右腕を天高く、曲げた左腕を顔の横へ上げた巨人は平手にした右手を前、握り拳にした左手を胸元近くに構えたファイティングポーズを取る。

 

 

『!?』

 

九重「あれは…!?」

 

曹操「巨人だとっ!?」

 

 

石像から突如として生物として蘇った巨人の姿に思わず目を奪われる一同。

曹操もこの予期せぬ事態に先程の余裕から一変して、口をあんぐりと開ける。

 

赤、青紫、白の体色。

胸元には翼のような意匠のプロテクター。

闇夜の中で光る乳白色の瞳と胸部で青く輝く『カラータイマー』。

そして、その顔立ちは神仏の如く神秘さと菩薩のような優しさを持っていた。

 

 

木場「…くっ」

 

イリナ「……う、うぅん…」

 

アーシア「っ、皆さん!」

 

 

皆が巨人の復活に気をとられていると、気絶していた木場、イリナ、ゼノヴィア、ロスヴァイセが目覚め始める。

アーシアがほっと安堵の笑みを浮かべる中、木場達は安定しない頭を抑えていると、見慣れない巨人が2体の怪獣と相対している光景に目をとられた。

 

 

ロスヴァイセ「これは一体……」

 

アーシア「巨人ですっ!巨人が甦りましたっ!」

 

ゼノヴィア「だが、どうやって?」

 

 

口をポカーンと開けるロスヴァイセに現状を伝えるアーシア。

しかし、一同はゼノヴィアの呟きを筆頭にどうして巨人が蘇ったのかわからない様子だ。

 

爆発に巻き込まれる危機一髪の瞬間、大悟は光となって巨人の体内に溢れた。

大悟の生命を得ることで、巨人は永き眠りから目覚めたのである…!

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

 

古の巨人を睨み付けながら威嚇するゴルザとメルバ。

最初はゴルザが相手をするのか先陣をきって前へ出ると、メルバは走って離れる。

 

 

古の巨人「……」

 

 

対する古の巨人は乳白色の瞳で静かに見据え、状況を見極めると、ゴルザに向かって駆け出す。

近付いた巨人は前へ軽く跳躍すると、助走を加えたジャンプチョップをゴルザの脳天に炸裂させる。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!?」

 

 

怯むゴルザに休む間も与えず、古の巨人は流れるような動きで胸元へチョップを叩き込む。

そして、そのまま頭を掴んで引き寄せると、膝蹴りを2発食らわせ、首に腕を回してロックする。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

古の巨人「ッ!」

 

メルバ「ピィピィ~~~!?」

 

 

ゴルザのピンチにメルバは加勢しようと駆けつけるが、古の巨人に蹴っ飛ばされ、呆気なく地面へ倒される。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

ジジジジ……!

 

 

その隙に脱出したゴルザはピラミッドの外壁を破壊したのと同じ紫色の破壊光線を額から放とうとしていた。

 

 

古の巨人「ッ!」

 

 

それを許さない古の巨人はゴルザの口元と額をガシッと掴んで中断させる。

ゴルザも負けじと頭を掴む古の巨人の手を振りほどいて両手首を掴んで、力比べを始める。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

その間に翼を広げたメルバは飛び立って降下すると、ゴルザに気をとられる古の巨人の背中へ体当たりを食らわせる。

 

 

古の巨人「グアァァッ!?」

 

 

背中からきた衝撃に体制を崩した古の巨人は驚愕の声をあげながら、前方へ吹っ飛ばされる。

受け身を取って最小限にしても伝わるダメージに頭を振って堪えると、直ぐ様身構える。

 

 

ビィィィィ──────!!

 

 

ゴルザは追い討ちに先程中断された額の紫色の光線を発射する。

古の巨人は立ち上がると、次々放たれる光線を側転で回避する。

光線が当たった地面からは次々と爆発が巻き起こり、闇夜を照らす。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

古の巨人「ッ!」

 

 

メルバは古の巨人が側転を終えたところを狙って接近し、両腕の鎌・カッターハンドを振り下ろす。

カッターハンドが危険と察した古の巨人は両腕で食い止めるが、メルバに誘導されるように体勢を入れ替えられ、ゴルザに背中を向ける形に変わる。

 

 

ゴルザ「ゴォガァァ!」

 

 

無防備となった古の巨人の背中にゴルザの額から放つ紫色の破壊光線が直撃する。

 

 

古の巨人「グアァァッ!!」

 

 

光線を背中に受けた古の巨人は苦しげな声をあげて膝をつく。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

古の巨人「グッ…!」

 

 

怯んだところでメルバの右フックが炸裂し、古の巨人は土埃を巻き上げながら地面に叩きつけられる。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

古の巨人「…ッ」

 

 

体勢を立て直す古の巨人のもとへジリジリと歩み寄るメルバとゴルザ。

最初こそは善戦していたが、1対2とあって古の巨人は劣勢になりつつあった。

 

 

ピキィンッ!

 

 

追い込まれる最悪の状況の中、古の巨人の額にある菱形のクリスタルが赤く輝いた。

 

 

古の巨人「フ"ゥ"ン"ン"ン"~~~……!ハァッ!!」

 

 

古の巨人は額の前で握り拳を作った両腕を交差させて振り下ろす。

その瞬間、古の巨人の体は首から全身へと赤く染め上がった。

 

 

ゼノヴィア「色が変わった!?」

 

ダイナ「アイツも俺みたいに出来んのか!?」

 

 

古の巨人のタイプチェンジに驚く一同。

真っ赤に染め上がった古の巨人は色だけでなく、筋骨粒々の逞しい体躯へ変化していた。

これこそ、ダイナのストロングタイプに相当する怪力形態───『パワータイプ』だ。

 

両手を力強く握り締めたファイティングポーズを取った古の巨人は大地を蹴って走り出す。

 

 

ゴルザ「ゴォガァァ!」

 

 

そうはさせまいとゴルザは額から紫色の破壊光線を放つが、古の巨人は右手をかざし、オレンジ色に輝く半球型の光の障壁───ウルトラシールドで受け止める。

 

 

メルバ「ピィィッ!!」

 

古の巨人「………ハァッ!」

 

 

メルバも目からオレンジ色の破壊光線で加勢に入るが、古の巨人は左腕を右腕に交差させて光の障壁の強度を上げて防ぎきり、両腕を振り払って霧散させる。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!」

 

 

それならばと自慢のパワーで突貫を仕掛けるゴルザ。

それに合わせて巨人も助走をつけて前へ飛び上がると、フライングタックルを食らわせる。

 

 

ゴルザ「ゴォガ!」

 

 

パワー負けしたゴルザが怯んだ隙に懐に飛び込んだ古の巨人は素早く背中へ両腕を回すと、手前へ手繰り寄せるように締め上げる。

 

 

ガギボギボギ……!

 

ゴルザ「ゴォガァァ!?」

 

 

パワータイプの怪力で締めつけられ、背中から骨が折れたような不吉な音が響く。

背中の骨という骨がへし折られる感触にゴルザは口を大きく開けて苦悶の叫びをあげる。

 

フラフラとしながら悶えるゴルザから離れた古の巨人はゴルザの首をガシッと掴みつつ、背を向けた体勢で肩へ喉元を乗せると

 

 

古の巨人「ヂャァッ!!」

 

ドォォォォンッッ!!

 

 

背負い投げの要領で勢いよく投げ飛ばす。

怪力で体が浮かび上がったゴルザは綺麗な放物線を描きながら、勢いよく地面へ叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「すっげぇぇプレースタイルだ!」

 

ガイア「僕らも続くぞ!」

 

ダイナ「おうっ!」

 

 

古の巨人の戦いぶりに士気が上がったダイナとガイアは

それぞれタイプチェンジとヴァージョンアップに入る。

 

 

ダイナ「ン"ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~……!グアァッ!!!」

 

ガイア「デュアッ!グァァァァ………デヤッ!!!」

 

 

両腕を交差させたダイナは額のダイナクリスタルを赤く輝かせ、ガイアは両腕を天高くあげて両手の間に現れた赤と青に輝く光を身に纏って赤い輝きに包まれる。

腕を振り払うと、ダイナはストロングタイプ、ガイアはスプリームヴァージョンへ変身した。

 

 

ジャンヌ「あら。ずいぶん逞しくなったじゃない」

 

ジークフリート「さっきよりと比べようがない迫力だ」

 

ヘラクレス「ハッハァッ!本気を出しに来たかッ!いいね、いいねェ!」

 

 

ガイアとダイナが全力で戦うことを察したジャンヌ達は嬉々に満ちた表情を浮かべる。

自分達が勝てるかもわからない形態になったにも関わらず嬉しそうなのは、同じ組織に属するヴァーリ同様、戦闘狂であることを物語っている。

 

 

ジャグラー「俺も混ぜてくれよ」

 

『?』

 

 

両陣営が意気込む最中、そんな声が何処からか聞こえたかと思うと、ガイアとダイナの前に降り立つ異形の影が1つ。

刺々しい体表の胸元には三日月型の古傷が真っ赤に輝き、左手に携えるのは日本刀に似た愛刀『蛇心剣』。

魔人の如き姿をした異形────ジャグラスジャグラーだった。

 

 

ガイア「ジャグラー!」

 

ダイナ「お前、何しに来たんだよ!」

 

ジャグラー「そう邪険にするなよ。俺もお前らと同じで奴等を倒したい……利害の一致ってやつだ。どうだ?ここは一時休戦して、手を組まねぇか?」

 

「「ッ!?」」

 

ジャグラー「相手は3人……俺を加えればこっちも3人。頭数的には問題無いぜ?」

 

 

唐突にジャグラーの口から出た共闘の申し出にガイアとダイナは驚く。

確かにジャグラー程の手練れが共闘してくれるのは有難い。

 

だが、相手はあのジャグラーである。

敵か味方かわからない立ち位置にいる存在だ。裏があることは明白である。

特に半殺しされた経験のあるダイナは信用ならない様子だ。

求められる決断にガイアは

 

 

ガイア「わかった。ここは協力してくれないか?」

 

ダイナ「な!?」

 

 

あっさりとジャグラーの共闘にOKサインを出した。

てっきり断るだろうと思っていたダイナは拍子抜けた声を出す。

 

 

ジャグラー「ンッフッフッ……話がわかって助かるぜ」

 

ダイナ「我夢!お前、正気かよ!?こいつは信用出来ねぇ奴だぞ!」

 

 

その判断に納得出来ないダイナはガイアに問い詰める。

その疑念に対しガイアは落ち着いた口調で答える。

 

 

ガイア「君の言い分はわかる。でも、相手は一筋縄ではいかない……1人でも心強い味方が欲しいところさ。状況が状況。ここはジャグラーの言う通り、一時休戦するべきだよ」

 

ダイナ「……わかったよ。そこまで言うんなら、仕方ないな」

 

 

ガイアの言い分に折れたダイナは観念したように呟く。

話がまとまったことを把握したジャグラーは左手に携える鞘から蛇心剣を抜刀すると、淡々と2人に指示を出す。

 

 

ジャグラー「よし。俺はあの姉ちゃんの相手をやるから、ガイアはあの剣士、単細胞はあのデカブツとやれ」

 

ダイナ「た、単細胞っ!?ていうか、勝手に仕切───」

 

ジャグラー「行くぞ」

 

ダイナ「あっ!?お、おい!」

 

 

抗議の声をあげようとするダイナをスルーして、そう言ったジャグラーはジャンヌ目掛けて走り出すと、ガイアも続いてジークフリートに向かって走り出す。

 

 

ダイナ「あーーー!もう知らねぇぞっ!」

 

 

置いてきぼりをくらったダイナは地団駄を踏んでやけくそ気味に叫ぶと、2人の後に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンヌ「さあ、やっちゃって!サンちゃん!」

 

「ピィィイッッ!!ピィィイッッ!!」

 

 

ジャンヌの指示を受けたサンちゃん、もとい聖剣怪獣は口から放つ火球と全身から射出する聖剣の雨でジャグラーを攻撃する。

 

 

ジャグラー「シャアッ!!」

 

カキィンッ!

 

 

ジャグラーは次々と向かってくる攻撃を蛇心剣で弾き、時に避けながら蛇心剣から斬撃を飛ばして反撃するが、聖剣怪獣の展開するバリアーによって届かない。

その状況にジャンヌはケラケラと嘲笑する。

 

 

ジャンヌ「無理無理!どんな技を使っても、この子のバリアーは突破出来ないわよ。さっき戦った天使ちゃんも傷1つ付けることが出来なかったわ!」

 

ジャグラー「バリアー?その姿に能力、キングザウルス三世の力を使ったか?」

 

ジャンヌ「大正解♪ていうか、よく知ってるね。()()()()()()()()()()()()なのに」

 

ジャグラー「まあ、昔ちょっと世話になったからな。ここより遠い遠い場所でな」

 

 

首を傾げるジャンヌにそう言葉を返すジャグラー。

ジャグラーは思い出していた。人間でいえば遥か遠い昔、『光ノ魔王獣』と呼ばれる怪獣の復活に利用したことを……。

そんなことがあったなと懐かしむジャグラーだったが、すぐに思考を切り替えるとジャンヌに訊ねる。

 

 

ジャグラー「ところで教えてくんねぇか?そのメダルをどこの誰から手に入れたか……」

 

 

ジャグラーがここに現れた理由。それは本来、この世界に存在しない怪獣メダルの出処を探る為であった。

ジャグラーが持つメダルはここより前にいた宇宙にて対峙した小悪党から押収したものだが、自分がばら蒔いた訳でも無いのに最近、何故か『禍の団(カオス・ブリゲード)』が怪獣メダルを取り扱っている情報をキャッチしたのだ。

 

 

ジャンヌ「フフッ…結構面白い人だから教えてあげたいところだけど、それは無理。ポロリと口にでもすれば、殺されちゃうもの」

 

ジャグラー「そうか」

 

 

当然ながら自分達に不利益な情報を与えないジャンヌ。

ジャグラーも初めからわかっており、短く返事をする。

 

ジャグラーに興味を持ったジャンヌは今度は自分から問いかける。

 

 

ジャンヌ「ねぇ、個人的に思うんだけど、渡したのが誰なのか大体検討ついているんじゃない?()()()()()()()()って感じ?」

 

ジャグラー「……さぁな?」

 

 

探りを入れるジャンヌの問いにジャグラーはとぼけた口調で返す。

とぼける彼だが、ジャンヌの考える通り、ジャグラーには怪獣メダルを渡したのは誰かが検討ついていた。

 

後は決定的な証拠を掴むだけだが、これ以上聞いても無駄だと判断したジャグラーは蛇心剣をしまうと、ダークゼットライザーと3枚の怪獣メダルを取り出す。

怪獣メダルを目にしたジャンヌは目の色を変える。

 

 

ジャンヌ「っ!あなたも怪獣メダルを…!」

 

ジャグラー「ああ。お前達とは違うルートで手にいれたもんだがな。さぁて、そろそろ終わりにするか」

 

 

そう答えたジャグラーは3枚の怪獣メダルをダークゼットライザーに装填すると、ブレード部分をゆっくりと展開する。

 

 

《Alien Baltan.》

 

《Unitang..》

 

《X-Savarga.》

 

 

初代バルタン星人、ユニタング、X(クロス)サバーガ───星人、超獣、怪獣……種族の異なる3体の名がダークゼットライザーから鳴り響くと、ジャグラーは忍者が手裏剣を構えるようなポーズを取って呟く。

 

 

ジャグラー「貫影(かんえい)壊縛陣(かいばくじん)……!」

 

 

そのままトリガーを引くと、奇怪な現象が起こった。

ジャグラーの体から青白い無数の人影が飛び出したかと思うと、一瞬にして分身したジャグラーが聖剣怪獣を囲んだのだ。

 

 

『ハッ!』

 

 

ジャンヌが驚く間も与えず、大群のジャグラーはダークゼットライザーを前へ突き出すと先端から赤い閃光と共に糸が射出され、ジャンヌと聖剣怪獣を拘束した。

 

 

「ピィィイッッ!!ピィィイッッ!!」

 

ジャンヌ「……!?」

 

 

何とか糸を振りほどこうとする聖剣怪獣とジャンヌだが、何故か体が硬直してしまい、身動きがとれない。

ジャンヌに至っては声すらもあげることが出来ない状況だった。

ジャグラーの使ったメダルの1つ、初代バルタン星人にはありとあらゆる生物を硬直させる赤色凍結光線がある。

それによってジャンヌは声すらもあげられず、聖剣怪獣はバリアーで防ぐことが出来なかったのだ。

 

 

ジャグラー「シャアッ!!」

 

 

その隙に分身を戻したジャグラーは大地を蹴って空高く跳躍。

聖剣怪獣の真上に到達したジャグラーは逆さまになり、ダークゼットライザーを突き出して高速回転し始めると、闇のエネルギーで形成された1本のドリルとなって急降下する。

 

高速回転するドリルは聖剣怪獣の硬い胴体を簡単に突き破った。

 

 

「ピィピ₷₳ィ₵₭₧₧ッッ₰¢₳₲!!」

 

 

突き破られた衝撃でおかしくなったのか、聖剣怪獣はバグった機械のような判別不可能な声をひたすらあげていた。

スタッと降り立ったジャグラーは未だ身動きがとれないジャンヌとバグった聖剣怪獣に背を向けた姿勢で歩き始め

 

 

ジャグラー「あばよ」

 

ドォォォォォンッ!!

 

 

振り向かず、道中でそう言った瞬間、大爆発がジャンヌと聖剣怪獣を襲う。

身動きがとれない1人と1匹は何も出来ず、あっという間に倒された。

 

 

パシッ!

 

 

大爆発の中、飛んできた怪獣メダルをジャグラーは掴み取る。

開いた掌にあるキングザウルス三世のメダルは未だ力があることを証明するかのように怪しいオーラを放っていた。

 

 

ジャグラー「有り難く貰ってくぜ」

 

 

後ろで気絶しているジャンヌにそう言ったジャグラーは他の2人の戦いを見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークフリート「はっ!そらっ!」

 

 

スプリームヴァージョンとなったガイアはジークフリートと戦いを繰り広げていた。

接近戦に持ち込まれるのは危険と感じたジークフリートはひたすら距離を取って飛ぶ斬撃で攻撃していた。

 

 

ガイア「グァァァァ……!デュアァァァーーーーーッ!!」

 

ドォォンッ!!

 

ジークフリート「ぐっ、ぐあぁっ!腕が…!」

 

 

飛んでくる溶解液と火炎の斬撃を飛び込んで前転したガイアは立ち上がり様にフォトンエッジを放つ。

ガイアの頭部から放たれる赤色の光刃はジークフリートの右肩に命中し、吹き飛ばした。

ジークフリートも流石に苦悶の顔を浮かべた…

 

 

ジークフリート「──なぁんてね」

 

ガイア「ッ!」

 

 

のは演技でケロッと余裕のある顔に変わると、直ぐ様腕を再生させた。

何ともないように腕を動かす光景にガイアが驚いていると、ジークフリートは不敵な笑みを返す。

 

 

ジークフリート「ただ火炎と溶解液を出すだけが取り柄じゃないんだよ。何度傷つけられようが吹き飛ばされようが無限に再生できる」

 

ガイア「ッ!グァ…ッ!」

 

 

それならばとガイアは左腕を高々と上げ、両足を軸に錐揉み回転をし始める。

ブォンブォン…と激しい風切り音と共に突風が吹き荒れ、土煙が舞い上がる。

 

 

ジークフリート「何をする気かわからないが、邪魔させてもらうよ!」

 

 

嫌な予感がしたジークフリートは阻止するべく、双剣を持つ両腕に溶解液と火炎のエネルギーを込めようとした瞬間

 

 

ボンッ!!

 

ジークフリート「ぐあぁっ!?」

 

 

パワードアボラスとパワードバニラの顔を模した両肩の肩当てが針が刺された風船のように破裂した。

激痛に顔を歪めるジークフリートは先程のように再生を試みるが、何度力を込めても両肩は再生しなかった。

 

 

ジークフリート「何故だ!どうして…!?」

 

 

ジークフリートが動揺の色を見せていると、回転をやめたガイアが答えを提示する。

 

 

ガイア「簡単なことさ。回転することで周りの空間に歪みを与えて、体内の再生器官を破壊したんだ」

 

ジークフリート「あり得ない…!そんなことが……」

 

ガイア「これが地球の力なんだ!」

 

 

今起きた現象に信じられない様子のジークフリートにガイアは堂々と言い放つ。

理論や仕組みやら不可解な点が多すぎるが、回ればなんとかなるので気にしてはいけない。

 

 

ジークフリート「訳がわからないけど、勢いで押される訳にはいかないねっ!」

 

 

ジークフリートは双剣を振り下ろし、溶解液と火炎を纏った無数もの斬撃を飛ばす。

 

 

ガイア「デュアッ!!」

 

 

ガイアは全身を発光させて目にも止まらぬ速さで走りながら掻い潜ると、あっという間にジークフリートの目前に近付いた。

 

 

ジークフリート「っ!」

 

ガシッ!

 

ガイア「ダァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

 

斬りかかろうとするジークフリートだが、ガイアに両手首を掴まれると、横へ投げ飛ばされる。

 

 

ドォォンッ!

 

ジークフリート「かはっ!」

 

 

地面に叩きつけられた衝撃でジークフリートは苦悶の顔を浮かべる。

口から肺に溜めていた空気が一気に抜けていく感覚を味わい、あまりもの激痛に両手に持っていた剣を離してしまう。

 

 

ガイア「デヤッッ!!」

 

ドォォンッ!!

 

ジークフリート「があっ!?」

 

 

間髪入れずガイアは倒れているジークフリートの足を片手で掴んで高々と持ち上げると、反対側の地面へ叩きつける。

またもや襲ってくる激痛にジークフリートは顔を歪める。

 

 

ジークフリート「くっ…!」

 

 

このままやられる訳にはいかないと奮起したジークフリートは立ち上がり様に両手をかざし、溶解液と火炎を放つ。

 

 

ガイア「ッ!グァッ!トォアッ!!」

 

ジークフリート「どぐっ!!」

 

 

紙一重のところで3連続バク転で回避したガイアは距離を取って助走をつけたドロップキックを浴びせ、ジークフリートを蹴り倒す。

接近したガイアはジークフリートの両脇から手を通して持ち上げ

 

 

ガイア「ダァァァァァーーーーッッ!!!」

 

ドォォンッ!!

 

ジークフリート「ぐはっ!?」

 

 

反り返りながら勢いよく地面へ叩きつける。

背中から叩きつけられたジークフリートは口から血を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘラクレス「オラオラァァ~~~」

 

ダイナ「グワッ!」

 

 

突貫を仕掛けようとするダイナだが、ヘラクレスの磁力光線によって動きを封じられる。

ダイナは抵抗しようとするが、体がヘラクレスの方へ引き寄せられていく。

 

ヘラクレスは頭部に生えているアントラーの大顎をカカカカカ…と小気味悪い音を立てながら広げ、待ち構える。

引き寄せられながら、ダイナは自然にヘラクレスへ背を向ける体勢となる。

 

 

ガシッ!

 

ヘラクレス「アントラー・スープレックスッッ!!」

 

 

頭部の大顎で捕らえたヘラクレスは勢いよく反り返る。

このまま後方の地面へ叩きつけようとするが

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

ガシッ!

 

ヘラクレス「ヌオッ!?」

 

 

素早く脇から肩甲骨付近に両足を通したダイナによって阻止される。

ヘラクレスは足を離させようと腰を締め付ける大顎の力を強めるが、ダイナは大顎を掴むとギリギリと腕に力を込め

 

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

バキィィッ!!

 

ヘラクレス「グォォッ!?」

 

 

豪快に大顎をへし折った。

掴むものが無くなりヘラクレスが動揺する最中、ダイナは大顎を投げ捨てると、前転して離れる。

 

 

ダイナ「デュッ!!」

 

ドォンッ!

 

ヘラクレス「グブッ!!」

 

 

再度ヘラクレスに近付いたダイナは顔面に拳を打ち込む。

まともに受けたヘラクレスの顔面からは火花が飛び散り、地面へスッテンコロリと倒れる。

ダイナはすかさず倒れたヘラクレスにボディープレスをくらわせる。

 

 

ヘラクレス「ごふっ!」

 

ダイナ「ハッ!ハァァァァ………!」

 

 

腹部の衝撃に苦悶の顔を浮かべるヘラクレスは口から血を吐き出す。

起き上がったダイナはヘラクレスの両足を掴むと、ハンマー投げのようにブンブンと豪快に回し始める。

 

 

ガイア「グァァァァ……!!」

 

 

それと同時にガイアもうつ伏せのジークフリートの脇に首を差し込み、両肩で抱え上げる体勢でクルクルと回る。

強烈なスイングにヘラクレス、ジークフリート共に三半規管を狂わされる。

 

 

ガイア「デヤッ!!」

 

ダイナ「ダァァァァァーーーーッ!!」

 

 

回転によって勢いをつけたガイアとダイナは2人を投げ飛ばす。

 

 

ドォォォォォンッ!!

 

ジークフリート「かっ!?」

 

ヘラクレス「ぐほぉっ!?」

 

 

宙を飛び、ジークフリートとヘラクレスは土埃を立てながら地面に叩きつけられる。

全身という全身の内臓や骨が悲鳴を上げる感覚に2人は苦悶する。

 

 

ダイナ「決めるぜ!」

 

ガイア「ああ!」

 

 

頷きあったダイナとガイアは空高く跳躍した。

同じ高度に飛び上がった2人は片足を突き出したポーズを構える。

 

 

ダイナ「ダァァァァァーーーーーーーーーーーッッ!!!」

 

ガイア「デュアァァァァァーーーーーーーーーーッッ!!!」

 

 

ガイアとダイナは落下の勢いとエネルギーを込めたダブルキックを放った。

 

 

ジークフリート「うぉあっ!?」

 

ヘラクレス「グォォッ!?」

 

ドォォォォォーーーーーンッッ!!

 

 

2人のウルトラマンの放った連携キックはジークフリートとヘラクレスの胸元に炸裂。

大きく後方へ吹き飛ばされた2人は苦痛の叫びをあげると、大爆発を起こした。

爆音が鳴り響く大爆発の中から3枚のメダルが飛び出す。

 

 

ジャグラー「よっと」

 

 

それを見逃さないジャグラーはどさくさに紛れて飛び出たメダルを手に取って回収する。

掌を開くと、回収されたメダルは3枚とも未だ力が宿っていた。

 

 

ジャグラー「上出来♪」

 

 

それを見たジャグラーは満足そうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古の巨人「……」

 

 

ゴルザを地面に叩きつけた古の巨人は追い討ちをかけようとすると歩み寄る。

 

 

メルバ「ピィィーーーピィィッ!!」

 

古の巨人「ッ!」

 

 

そうはさせんとメルバは突撃を仕掛ける。

古の巨人は咄嗟に回し蹴りを放つが、鈍重な動きのあまり、翼を広げて飛翔したメルバに軽々と避けられる。

メルバは空高々と飛翔していく。

 

 

ザッザッ…!

 

古の巨人「ッ!」

 

 

メルバに気をとられていると、近くで地面を掘り返す音が古の巨人の耳に届く。

その方角を振り向くとゴルザが地面を掘り返していた。

古の巨人に敵わないと判断し、逃げ出そうとしているのだ。

 

当然見逃さない古の巨人はゴルザに駆け寄ろうとするが

 

 

ビィィッ!

 

古の巨人「グァァッ!?」

 

 

背中から光線を受けて妨害される。

ゴルザの逃亡を手助けしようとメルバが空を舞いながら攻撃したのだ。

 

 

古の巨人「…ッ」

 

 

地上にはゴルザ。空にはメルバ。

どちらを優先するか一瞬悩む古の巨人だが、目の前で尻尾以外地中へ潜り込んでいるゴルザを優先すると、尻尾を掴もうと駆け出す。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!!」

 

 

またも妨害せんとメルバは目からオレンジ色の破壊光線を放とうとするが

 

 

ロスヴァイセ「させませんっ!」

 

ドォォンッ!!

 

メルバ「パァァーーーーーッ!?」

 

 

その矢先、地上からロスヴァイセとイリナが魔力弾と光の矢で牽制する。

攻撃を受けたメルバは怯み、体から火花を散らす。

 

突然の支援に古の巨人は驚いたようにロスヴァイセ達を見下ろすと、ロスヴァイセは古の巨人を見上げて話しかける。

 

 

ロスヴァイセ「ここは私達が!あなたはゴルザをお願いします!」

 

古の巨人「…ッ!」

 

 

自分が敵か味方かもわからないの関わらず援護を買って出るロスヴァイセ。

彼女だけでなく、その他3人からも同じ眼差しと全幅の信頼に古の巨人は頷くと、改めてゴルザに向かって駆け出す。

掘り進んでいるゴルザの尻尾は既に4分の1が地中へ入っていた。

 

 

古の巨人「チャッ!」

 

ゴルザ「ゴォガ…!?」

 

 

完全に逃げ切る寸前、古の巨人はヘッドスライディングで地面を滑ると両手で尻尾を掴んだ。

掴んだまま立ち上がった古の巨人は尻尾を引っ張り、ゴルザを地中から引っ張り出す。

 

 

古の巨人「チャアァァァーーーッ!!」

 

 

地中から引っ張り出した古の巨人は尻尾を掴んだ腕を振り上げ、一本背負いの要領でゴルザを地面に叩きつけた。

 

 

ゴルザ「ゴォガゴォガ!?」

 

古の巨人「ハッ!ハァァァァァァァ……!!」

 

キュポンッ!

 

 

ゴルザが悶える中、距離を取った古の巨人は斜め下に広げた両手を回して上へあげ、胸の前にかざした両手の間に灼熱の如く赤い光球を形成する。

 

 

古の巨人「ハァッ!!!」

 

 

光球を右手に持ちかえた古の巨人は力強く真っ直ぐ右腕を伸ばして放つパワータイプの必殺技、『デラシウム光流』を放った。

 

 

ゴルザ「ゴォガァァ…!」

 

ドガガガガガガァァァァァンッッ!!

 

 

赤色のエネルギーの波はヨロヨロと立ち上がるゴルザに直撃し、たちまち爆発四散した。

 

 

木場「やった!」

 

ゼノヴィア「後はメルバだけだ!」

 

 

ゴルザを倒した一部始終を見た木場は微笑む。

ゼノヴィアの言う通り、残すはメルバだ。

 

 

メルバ「パァァーーーーーッ!」

 

イリナ「あっ!」

 

 

戦えるのが自分だけ……形勢不利と判断したメルバは対峙していたロスヴァイセ達への攻撃をやめ、更に高い上空へ逃げようとする。

 

 

ピキィンッ!

 

古の巨人「ン"ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~……チュッ!」

 

 

空を飛ぶメルバが遠くなっていくのを目にした古の巨人は額のクリスタルを今度は青く輝かせると、額の前で両腕を交差させて振り下ろすと、今度は全身が青紫色に変化した。

 

 

ロスヴァイセ「また色が変わった!?」

 

 

古の巨人の2回目の変化にロスヴァイセを筆頭に驚く一同。色だけでなく、体格はパワータイプと対照的にスマートなものへ変化していた。

これこそ、ダイナのミラクルタイプに相当する俊敏形態───『スカイタイプ』だ。

 

 

古の巨人「チュッ!!」

 

メルバ「ピィィーーーーーッ!?」

 

ドォォンッ!

 

 

平手を作った両手で構えた古の巨人は大地を蹴って紫色の残像を残すほどのスピードで飛び上がると、上空を飛んでいるメルバを蹴り落とした。

 

 

古の巨人「…」

 

メルバ「カァァァ…!」

 

 

華麗な1回転で地上に降り立った古の巨人は素早く振り返って再度ファイティングポーズを構える。

フラフラと立ち上がるメルバは聞いたことがない苦悶の鳴き声を出していた。

 

好機と見た古の巨人は両腕を胸の前で交差させ、瞬時に左右に伸ばしてから上にあげてエネルギーを集約させると、両手を左腰に携える。

 

 

古の巨人「チャッ!!!」

 

 

素早く手裏剣を投げるように右手から光弾を投げつけた。

スカイタイプの必殺技、『ランバルト光弾』だ。

 

 

メルバ「ピィィーーーーーッ!!」

 

ドガガガガガガァァァァァンッッ!!

 

 

光弾を胸元に受けたメルバはのけ反ると、断末魔と共に爆発四散した。

 

 

曹操「このままじゃ儀式もろくに出来ないな。ゲオルク、撤退だ」

 

ゲオルク「わかった」

 

 

曹操に命じられたゲオルクは撤退の準備に取りかかる。

自分達の仲間だけでなく、甦った古の巨人によってゴルザとメルバも倒されたことで自分達が圧倒的に不利と判断したのだ。

 

 

曹操「宴はここまでだ。また会おう、XIGの諸君。それに伝説の勇者よ」

 

ガイア「待てっ!」

 

 

そう言い残して撤退しようとする曹操をガイアは止めようとするが遅く、曹操達と気絶したジャンヌ達を包み込んだ霧と共に消え去った。

 

 

「ォォオオオオーーーーッ!?」

 

ドォォォンッ!

 

 

それと同時に縛り付ける者がいなくなった八坂こと九尾の狐はけたたましい雄叫びをあげると、その場で眠るように倒れた。

八坂と対峙していた匙はその様子を見届けると、元の姿へ戻る。

 

 

匙「お、終わった……のか?」

 

 

突然のことに肩で息をする匙は首を傾げながら、寝息すら立てない八坂の顔を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄派が撤退した後、我夢達は境内の中心に集まっており、休む間もなく戦い続けた匙はアーシアの治療を受けていた。

ちなみにジャグラーは目的を果たしたのかいつの間にかどこかへ消えていた。

 

戦いで崩壊した建物や荒れた地面は悲惨なものだが、アザゼル達が何とか修繕してくれるので安心だろう。

しかし…

 

 

九重「母上!起きてくだされ!母上!」

 

『……』

 

 

九重が何度呼び掛けても八坂は一向に目を覚ます気配がなかった。

曹操達の洗脳が余程強力だったのか、ピクリとも動かなかった。

 

それに加えて大悟までも失ってしまった。

幼馴染みである我夢やイッセーは勿論、心を通わせた九重にとっても辛いことだ。

 

 

九重「もうわがままは言いません。好き嫌いもしません。夜中に外へ抜け出すこともしません……。どうか、どうか、いつもの母上に戻ってくだされ……」

 

『………』

 

 

泣きじゃくりながら懺悔する九重を我夢達は悼まれない気持ちで見るしか出来なかった。

 

 

古の巨人「……」

 

九重「……?」

 

 

そんな中、後ろで伺っていた古の巨人が歩み寄る。

九重が不思議そうに見上げると、古の巨人は頷いた。

まるで任せろと言わんばかりに。

 

 

ピキィンッ!

 

古の巨人「フ"ゥ"ゥ"ン"ン"ン"ン"ンンン~~~~!!ハッ!!」

 

 

額のクリスタルが白く輝き、額の前で両腕を交差させた古の巨人は腕を振り下ろすと、赤と青紫の形態───『マルチタイプ』に戻った。

 

古の巨人両腕を広げて両手に淡い黄色の光を纏わせると、両手を重ね、八坂に向けて放射した。

すると、奇跡が起こった。

 

 

『!?』

 

 

淡い黄色の光に包まれた八坂は巨大な狐から徐々に人の形へと戻っていく。

そして、光が晴れた先には人の姿へと戻った八坂だった。

 

 

古の巨人「……ッ、グァァッ!」

 

[ピコン]

 

 

放射を終えた古の巨人は片膝をつき、胸元のカラータイマーは青から赤に点滅していた。

セルチェンジビーム』は巨人のエネルギーを極限まで消耗させるのだ。

 

 

八坂「……ここは?」

 

 

しばらくしない内に意識を戻した八坂は重く閉じていた瞼を開ける。

まだ体が万全ではないが、命に別状はなく、ただ周りの風景を不思議そうに見渡していた。

 

 

九重「母上っ!母上ぇぇぇっ!!」

 

 

八坂が意識が戻ると否や、九重は泣き叫びながらいの一番に八坂に駆け寄り、その胸に飛び込む。

八坂は少々困惑しながらも九重を抱き、頭を撫でながら優しく語りかける。

 

 

八坂「どうしたのじゃ、九重。いつまで経っても泣き虫は治らんの」

 

九重「母上……うわぁぁぁん!」

 

 

久しぶりに聞いた母の顔、声、匂い……。

それを実感した九重は堪えていたものが一気に壊れ、ワンワンと泣きじゃくる。

 

 

アーシア「うぅ……九重ちゃん、良かった」

 

イリナ「うん、うん…」

 

 

その感動の再会にアーシアは滝のように涙を流す。イリナも貰い泣きし、同じ様に大粒の涙を流していた。

他の面々は涙こそ流してないが、心中は感動の渦に包まれていた。

 

 

八坂「……おや?あれはもしや……」

 

キィィンッ!

 

 

九重を宥める中、八坂は古の巨人がいることに気付く。

八坂はそのことに言及しようとした瞬間、古の巨人は目映い光に包まれ、段々と小さくなっていくと、大悟の姿へ戻った。

 

 

『大悟!?/大悟さん!?』

 

 

それを見た瞬間、八坂以外の一同全員は2重の意味で驚愕する。

1つは死んだかと思われた大悟が生きていたことと、2つは大悟があの巨人の正体であったことである。

 

 

八坂「そうか……。お主が『光を継ぐもの』であったか」

 

大悟「僕が……?」

 

 

八坂の言葉に信じられない様子の大悟。

古の巨人に変身したことが夢と思っていたが、すぐに懐に違和感があるのに気付くと、それを取り出す。

 

 

大悟「……嘘だろ?」

 

 

それを見た大悟は目を丸くする。

取り出したそれは音叉の形状をしており、古の巨人の胸元のプロテクターを模したパーツが先端にある神秘的なアイテムだった。

当然、入れた覚えのない大悟は今あったことが全て夢ではないことがわかった。

 

困惑する大悟に八坂はそのアイテムについて説明する。

 

 

八坂「それは『スパークレンス』。光の巨人に選ばれし者に力を授ける神秘の器具じゃ」

 

大悟「スパークレンス……」

 

八坂「お主が私や九重達を助けてくれたのだろう?感謝致します」

 

大悟「え、あぁ…」

 

 

そう言って頭を下げる八坂に大悟はどういった反応をすればいいかわからず戸惑う。

頭を上げた八坂は全員の顔を見渡す。

 

 

八坂「……ここにいる皆に知っておいて欲しい。何故、我ら一族があの墓を守り続けたのか。何故、大悟が巨人に変身できたのかを」

 

 

そう言うと、八坂は長々と語り始める。

 

 

八坂「昔、この地を荒らしていた邪悪を3人の光の巨人が葬った。我らはそれに感謝を込め、彼らを勇者と崇めた……。そして、ある日。3人のうち1人な勇者はこう我らに伝えたのじゃ。『遠い未来、私の光を受け継ぐものが現れる。その時までこの体を護ってくれ』と……」

 

我夢「それであのピラミッドを……」

 

八坂「作用。光が遠い星雲へ帰った後、残された肉体を墓に納め、その時が来るまで代々護り続けてきた。その後、九尾の一族は3人の勇者の中でも熱心に我らの救いの手を差し伸べてくれた勇者の名を忘れぬよう、後世に語り継いでいった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない裏京都の御殿。暗闇の中、倉庫にしまわれていたタイムカプセルが独りでに起動すると、ユザレの姿が投影される。

 

 

ユザレ『巨人を甦らせる方法はただひとつ……()()()()()()()()()です。その巨人の名は───』

 

八坂「その勇者の名は───」

 

 

2人は同時に、1分1秒ずれずに全く同じタイミングでその名を告げる。

 

 

 

 

『「ウルトラマンティガ」』

 

 

 

 

大悟「ウルトラマンティガ……」

 

 

自身が変身した古の巨人───ウルトラマンティガ。

その名を聞いた大悟は呟きながらスパークレンスを眺める。

 

スパークレンスを眺める大悟の顔は困惑したものだった……。

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM[初期])


大悟「僕はウルトラマンティガじゃないっ!!」


与えられた光に戸惑う大悟。
その時、現世に蘇ったガンQと鬼神が更なる怨みを込めて京都を襲う!

次回、「ハイスクールG×A」
「呪いの鬼眼」
お楽しみに!






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第57話「呪いの鬼眼」

奇獣 ガンQ
二面鬼 宿那鬼(すくなおに) 
再生怪獣 ダイゲルン 登場!


深夜。

我夢達が曹操率いる英雄派と二条城にて死闘を繰り広げている頃、人里から遠く離れた場所に位置する『宿那山』に登山服を着た2人の男が懐中電灯を歩いていた。

 

やぶや木々をはね除けながら、刈り上げの男は前方を歩く眼鏡の男に話しかける。

 

 

「おい、本当にこっちで合ってるんだろうな?」

 

「知らないよ。初めて来るし……」

 

「はあ!?だから言ったじゃねぇか!こんな舗装もしてない山を歩くのはよそうって……!」

 

 

眼鏡の男の言い分に悪態をつく刈り上げの男。

どうやら登山に来たはいいものの、帰り道がわからず迷ってしまったようだ。

 

 

「わからんわからんであっちこっち行って無駄歩きして、気付けば夜になってる!おまけに電波も届かないときた!お前を信じた俺が馬鹿だったよ!」

 

「はいはい!悪ぅございやしたね!」

 

 

反省の色を見せない態度に頭にきた刈り上げの男は前へ出ると、眼鏡の男に肩に掴みかかる。

 

 

「はぁ!?てめぇ、いい加減にしろよ!誰のせいだと思ってるんだ!」

 

「ホイホイ簡単に着いてくる方も悪いんだ!俺だけの責任じゃない!」

 

「ふざけんなっ!こんまま山に埋めるぞっ!」

 

「やってみろぉ!!」

 

 

顔を真っ赤にして吠え合う2人は互いの胸ぐらを掴んで取っ組み合いになる。

このまま殴り合いの喧嘩が始まろうとした矢先だった。

 

 

───鵜留徒羅万鶏芽ー目茶繰茶御喪視呂異……

 

「っ!?」

 

 

眼鏡の男の脳裏に呪詛のような念仏を唱える数人の男女の声が聞こえる。

目を丸くした眼鏡の男は胸ぐらを掴む手を離して周りを見渡すが、近くには誰もいない。

 

 

「……おい。どうしたんだよ?」

 

「何か聞こえないか?ほら、念仏みたいな声が……」

 

「はあ?気味悪いこと言うなよ。俺の耳にはなーんも聞こえないし、こんな山に人なんかいるわけねぇだろ」

 

 

不可解な顔を浮かべる刈り上げの男を見て、眼鏡の男は察する。

この声は自分しか聞こえないと。

ブツブツと低い声音で呟く不思議な声は今なお眼鏡の男の耳に響いている。

 

 

───佐火模外冠斗九間持干社……

 

「……」

 

 

突如、何を思ったのか眼鏡の男は何処かへ導かれるように歩き出した。

手に持っていた懐中電灯を落とし、暗闇に包まれた山道をスタスタと歩いていく。

 

 

「あっ、おい!?どこ行くんだよ!!」

 

 

突然の行動に刈り上げの男は落とした懐中電灯を拾い上げ、急いで後を追う。

 

植物が生い茂げ、最早人が通らないであろう山道を眼鏡の男は平然と歩いていくと、拓けた場所に着いた。

草木はこの場所を避けるように生えておらず、中心には錆び付いた鎖で厳重に扉を閉ざした古びた御堂がポツンと佇んでいた。

 

 

「……祠?何でここに……」

 

ガチャ…ガチャ…

 

「あっ!おい、大丈夫かよ?」

 

 

疑問を口にする刈り上げの男をよそに祠に近付いた眼鏡の男は扉の施錠を強引に外しにかかる。

祠から漂う得体の知れない不気味さに刈り上げの男は心配そうに声をかけるが、眼鏡の男は無視して黙々と作業を続けて施錠を外すと、扉を開く。

 

 

キィィィ……

 

 

扉は木材が軋む音を立てながらゆっくりと開くと、埃やクモの巣だらけの暗闇の空間が広がっていた。

 

 

「な、なあ…」

 

 

青ざめた刈り上げの男は中へ入ろうとする眼鏡の男を止めようとする。

理由は簡単で、御堂の壁には魔除けの札と思われるものがあちこち貼られていたからだ。

眼鏡の男は怯える刈り上げの男へ振り向く。

 

 

「……平気。ちょっと見るだけだから」

 

「……お、おう。早くしろよ」

 

 

そう言った眼鏡の男は祠の中へ入っていく。

その声に刈り上げの男はどこか生気が無いように違和感を感じていたが、御堂には入りたくないので待つことにした。

 

御堂に入った眼鏡の男は暗闇に目を凝らす。

正面に設置されている祭壇には40センチ程の武神像が奉られていた。

気になる眼鏡の男はつまずかないように慎重な足取りで武神像のもとへ近寄る。

 

 

「?」

 

 

その道中、武神像が奉られている段の下に何か細長いものが置かれているのに気付いた。

気になる眼鏡の男はポケットからスマホを取り出し、ライト機能でそれを照らした。

 

 

「刀?」

 

 

その細長い物体は鞘に納められた日本刀だった。

眼鏡の男には刀に関する知識は無いのだが、大切そうに台座へ飾られていることから、余程の大業物であることが伺えた。

 

 

───とれ……とれ……

 

 

刀を眺めていると、眼鏡の男の脳裏に先程の不気味な声が聞こえる。

囁くように話すその声は先程と違って明確に刀を取れと指示を出していた。

 

声の指示に従った眼鏡の男は両手で刀を手にした。

 

 

「うッ!?」

 

 

刀はずっしりと男の両手にのしかかった。

大量の広辞苑を持つくらい重く、下手すれば手だけでなく、腰や肩もただじゃ済まないかもしれない程だ。

 

それでも男は歯を食いしばって耐えながら、しっかり柄を握り、上へ引っ張る。

すると刀は難なく鞘から抜け、刀身が露となる。

 

 

「おお……」

 

 

その刀は美しかった…。

何十年、何百年と前のものであるにも関わらず錆一つ無く、鏡のように男の顔を映しており、扉から僅かに差す月の光によって照らされた刀身は美しい光を放っている。

眼鏡の男は刀には詳しくなく、興味すら無いが、この刀はそんな彼でも一目惚れする程あまりにも美しかったのだ。

 

眼鏡の男が刀に見惚れていると、外にいる刈り上げは声を震わせながら声をかける。

 

 

「お、おい…!もう終わったんなら帰ろうぜ!気味悪いよ、ここ!」

 

「ん?ああ……」

 

 

立ち去るのを催促する刈り上げの男に眼鏡の男は気のない返事を返す。

鞘を近くの草むらに捨てた男は刀を手に御堂を出ると、再び扉を閉めた。

 

程なくした頃だった。静寂に包まれた暗闇の中で男の断末魔が鳴り響いたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です!京都駅付近にもののけの類が!!」

 

アザゼル「何だと!?」

 

 

深夜2時。京都妖怪からの報せにより皆に緊張が走った。

曹操との戦いが終わり、八坂の計らいで裏京都でくつろいでいた我夢達にとってはせっかくのゆとりの時間も費えてしまった。

 

 

八坂「弱々しいが、確かに邪な気を感じるの……」

 

 

火急の報告に京都の御大将────八坂は不快そうな面持ちを浮かべながら呟く。

京都中の気を総括する八坂が言うのだから、間違いないだろう。

 

 

アザゼル「我夢!京都駅付近の監視映像を出せるか?」

 

我夢「はい!映像、出ます!」

 

 

アザゼルが指示を出すまでもなく準備していた我夢は素早く手元のノートパソコンを操作する。

キーボードを打ち込むと、ノートパソコンのカメラから監視カメラの映像が映画のスクリーンのように投影された。

 

 

『!?』

 

木場「あれはッ!?」

 

 

映像に注目した次の瞬間、我夢達はそこに映る存在に絶句した。

暗闇に包まれた街中を逃げ惑う人々の反対側にそびえるのは────

 

 

我夢「ガンQ!?」

 

 

そう、かつて我夢────ウルトラマンガイアが以前戦った強敵・ガンQだった。

駒王町付近の石油コンビナートで戦い、精神的に苦しめながらも何とか倒した筈だが、今、目の前でこうして蘇っている。

 

だが、以前倒された影響なのか特徴的な大きな目玉は潰れており、そこから青黒い血液がただれ落ちている不気味な姿に成り果てていた。

全体的に腐ったトマトを彷彿させる姿はまさにゾンビというのが正しい。

 

 

イリナ「うぇ…気持ち悪い……」

 

アーシア「前よりもおぞましいです……」

 

 

その変わり果てた風貌にイリナとアーシアは顔を引きつらせる。イリナに至ってはわずかに吐き気が催し、口元を手で押さえている。

 

 

一誠「アイツは我夢が倒したのに…!」

 

我夢「奴は生物が生きる上で必要な条件を満たさない……科学的に解明できない『不条理の塊』だ。生き返ってもおかしくないのかもしれない」

 

 

疑問を浮かべる一誠に我夢はそう仮説立てて説明する。

不条理の塊であるガンQに対して何でいるのかとか、何で蘇ったのかといちいち気にしたところではっきりとした結論には結びつかないのでここでバッサリと断ち切るのが適切だろう。

 

 

『わあぁぁぁーーーーーー!!』

 

ガンQ「グォォォ………」

 

 

一同がガンQの出現に気を取られる中、ガンQは逃げ惑う人々に向かって目から紫色の光線を放つ。

光線を受けた人々は糸が切れた人形のように次から次へと倒れていく。

 

その奇怪な光景に察した木場は僅かに顔を強張らながら、呟く。

 

 

木場「今度のガンQは、人の魂を吸収するみたいだね……」

 

一誠「マジかよ…」

 

木場「多分だけど、今のガンQは以前ほどの力はない……。生者の魂を取り入れることで身体を構成させようとしているんだと思う」

 

 

ポカンと口を開ける一誠に木場は仮説立てて説明する。

他の皆も同じ意見で、厄介な能力……我夢やアーシアにとっては以前の方がまだ可愛いレベルである。

 

 

ゼノヴィア「だとしたら、これ以上野放しにするのは危険だ!」

 

イリナ「うんっ!私達で止めに行かないと!」

 

アザゼル「その必要はないみたいだぞ」

 

 

そう言ったゼノヴィア筆頭にガンQのもとへ急行しようとする一行をアザゼルは冷静な一言で制止する。

どうしたと疑問の顔を浮かべる一行にアザゼルがじっと見ているモニターへ目をやると、突如、ガンQは蜃気楼のように消えた。

 

 

我夢「消えた……?」

 

 

我夢は思わず言葉を漏らす。

目的を達成したのか?それとも自分達が動き出そうとしていたのかわかって退散したのか?

しかも存在理由そのものが不明なガンQの行動なので気味悪いものである。

 

登場して間もなく消えたガンQの不可解さに皆は茫然とする中、我夢達に顔を向けたアザゼルは口を開く。

 

 

アザゼル「……とりあえず、消えたガンQの行方は俺達に任せろ。情報だけでも掴めるかもしれねぇからな。お前達今夜はホテルでしっかり休んで、体力を万全にしておけ」

 

『はい!』

 

 

アザゼルの指示に我夢達は返事をする。曹操との戦いで我夢達は体力を消耗しており、相手の手の内がわからない以上、捜査に参加するのは得策ではないだろう。

 

 

我夢「大悟?大丈夫か?」

 

 

ひとまず一誠達とホテルへ戻ろうとする中、部屋の端で黙りこくっている大悟へ話しかける。

御殿に戻ってきてから先程まで、大悟はずっと沈黙しており、話しかけても空返事ばかりだった。

 

流石に心配させすぎだと考えたのか、大悟は爽やかな笑顔を浮かべる。

しかし、その双眸は迷いの色が見えていた。

 

 

大悟「……ははっ!何でもないよ。僕も眠いかもな~。もう遅いから、寝るよ。また明日ね」

 

我夢「あ…」

 

 

大悟は矢継ぎ早に話すと、我夢が話す間もなくそそくさと御殿の奥へ歩き去っていく。

平常と思えない行動に心配そうな顔を浮かべる我夢の周りに一部始終を見ていた一誠達も集まる。

 

 

アーシア「大悟さん。どうしたんでしょうか?」

 

一誠「気持ちの整理が出来てないんだろうな……」

 

アーシア「気持ちの整理、ですか?」

 

 

訊き返すアーシアに我夢は一誠に変わって我夢が説明する。

 

 

我夢「僕やイッセー、そして藤宮は自らの意思で光を手にした。でも、大悟はそうじゃない。()()()()()()()()()()んだ。今まで普通の人間として生きてきたのに、いざウルトラマンとして戦う力を手にしてしまったことでどうすればいいのかわからないんだよ」

 

アーシア「力を手にして……」

 

 

現在の大悟の心情を聞いたアーシアは共感出来た。

彼女も唐突に神器(セイクリッド・ギア)が発現したせいで生活が一変し、散々な目に遭っている

アーシアの場合は元来持つ優しさで能力の意義を保っているが、大悟の場合はまた違うのだ。

 

 

我夢「でも、僕は信じている。彼が一緒に戦ってくれることを……」

 

 

それでも我夢は大悟を信じていた。きっと隣で戦ってくれることを。

信頼を見出す言葉に一誠もうんうんと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢達と別れた大悟は御殿内に広がる廊下を歩いていた。

出来るだけ誰かと会うのは避け、複雑な気持ちを胸に急ぎ足で角という角を曲がっていき、客人用として使わせてもらっている寝室に駆け込むように戻った。

 

広さはおおよそ四畳半の和室の人一人が寝泊りするくらいだ。

しかも、従者が気をきかせてくれたのか灯りと布団が引かれてあった。

 

 

襖を閉めた大悟は「ふぅ」と息を吐いて気持ちを落ち着かせると、どっかりと腰を下ろした。

大悟はくたびれたのだ。

戦いに巻き込まれたというのもあるが、それを上回る事実が疲弊の大半の原因だった。

 

 

大悟「(あの夢で……。ユザレが告げていたことは本当だったのか……?)」

 

 

京都に訪れる前、大悟は夢を見た。

3000万年前の地球でのウルトラマンと闇との争い。闇を消し去ったウルトラマンに感謝する超古代人。

そして、夢の中でユザレに告げられたのだ────。大悟がウルトラマンであると。

最初は嘘だと思っていた。3000万年前の人間が現れるのだから、それこそ信憑性が薄いただの夢だと。

 

しかし、実際どうだろうか。京都に訪れてから、夢で出会ったユザレがタイムカプセルの映像という形ではあるが再会。

果てには『ウルトラマンティガ』にも変身した。

大悟は頭を抱える。

 

 

大悟「どうして、僕に力を……」

 

 

大悟は迷っていた。今まで普通だと、ただの人間だと思っていた自分が超古代人の末裔────ウルトラマンの資格があることに。

ウルトラマンの話は旅の中で耳にしているがなりたいと思ってはおらず、ヒーローになるつもりもない。

しかも、戦うことが嫌いであるのに戦う力を授けられたのだ。望んで手に入れた訳ではない大悟にとっては、複雑な心情を生むことは容易いことだった。

 

 

ユザレ「大悟……またの名をウルトラマンティガ」

 

大悟「ッ!?」

 

 

黙々と悩んでいる最中、ふいに声をかけられた大悟は飛びのくように立ち上がる。

自分しかいない筈の部屋から声をかけられた方へ顔をやると、フォログラムで投影されているユザレの姿があった。

しかし、記録されている映像の筈なのにフォログラムのユザレは意思があるように見え、投影媒体であるタイムカプセルがどこにも見当たらない。

 

 

大悟「君はフォログラムじゃないのか?」

 

ユザレ「これはフォログラム……。でも、末裔だけに聞こえるプログラムを施した人工知能が組み込まれてある」

 

 

大悟の疑問に淡々と口調で答えるユザレ。

とても3000万年前とは思えない卓越した技術力に驚く大悟だが、何故現れたのかを問いかける。

 

 

大悟「どうして僕に……」

 

ユザレ「あなたがウルトラマンティガだから──」

 

大悟「違うっ!僕はウルトラマンティガじゃないっ!!長野 大悟だっ!!」

 

 

淡々と答えるユザレの声を遮るように大悟は大声で否定する。

大悟は認めたくなかったのだ。自分がウルトラマンであることに。

しかし、大悟に怒鳴られてなお、ユザレは全くペースを崩す気配を見せず、淡々と話し続ける。

 

 

ユザレ「大悟のDNAには我夢と一誠と同じ、古代の英雄戦士の情報がプログラミングされている……」

 

大悟「何……?」

 

ユザレ「危機的状況に追い込まれたとき、額に輝く紋章────『ティグの紋章』が何よりもの証拠。超古代の戦士達は危機的状況に陥ると、ウルトラマンに変身せずともその光を発揮できる能力を持っている。これは()()()()()()()()()()()大悟にしか無い能力。あなたも薄々気付いている筈……」

 

 

ユザレの言葉に大悟は息を呑む。

一瞬記憶を失う程の力が何となく自分にあるのではということは周りの話や体のだるさから薄々勘付いていた。

しかし、認めたくない気持ちがある強い分、認めざるを得ない気持ちが同じくらいあったのだ。

 

 

ユザレ「そして、大悟が持つスパークレンスこそが、大悟がウルトラマンティガたる英雄の証……」

 

 

続け様にユザレに言われた大悟は懐からスパークレンスを取り出す。

ティガの胸元のプロテクターを模した飾りはクリスタルのように透き通っており、部屋の灯りを受けて美しく輝いていた。

 

 

大悟「こんなもんっ!!」

 

 

苛立った大悟はスパークレンスを床に叩きつける。

叩きつけられたスパークレンスは軽い音を立てて畳の床を転がっていく。

肩で息を震わせた大悟は鋭い目でユザレを見つめる。

 

 

大悟「大体君達は、あんなに高度な文明に築き上げながらどこへ行ったんだ?!」

 

ユザレ「……ある者は滅び、ある者は他の土地へ向かった」

 

大悟「あんなに沢山の巨人がいたのに君達を護ることが出来なかったのか?!」

 

 

大悟は疑問を投げかける。夢の中で出てきたウルトラマンは沢山おり、少なくとも100人以上はいた。

それなのにどうして忽然と姿を消し、文明は滅んでいった。

この不可解な点にユザレは

 

 

ユザレ「ウルトラマンは人類の選択までには干渉しない……何故なら、彼らは“光”だから……。でも、大悟は別。あなたは“光”であり、“人”である。それは我夢も一誠も同じこと……」

 

 

しっかりと眼を見つめ、答えた。────“光”であり、“人”である。

大悟はしばらく考えた後、投げられた言葉の意味を問いただそうとするが、ユザレの姿は何処にもなかった。

 

 

九重「大悟……」

 

 

茫然と立ち尽くす大悟を襖から覗いていた九重は困惑した顔を浮かべる。

いつも笑顔で明るい大悟が悲しそうな顔をしているのを見て、九重も心配だったのである。

 

複雑な気持ちを胸に抱いたまま、各々、朝に備えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝。我夢、一誠、イリナの3人は捜査の為、宿那山の山中を歩いていた。

一夜かけて得たアザゼルの情報と八坂の話を基にガンQの行方の手がかりとなる、祠へと向かっていた。

ちなみに他の面々は街中で調査している。

 

 

一誠「しっかしよ~。ガンQの正体があるなんて、思いもしなかったよな~」

 

我夢「僕もだよ。科学的には証明できないものには変わりないけどね」

 

 

道中、頭の後ろで手を組みながら隣を歩く一誠に頷く我夢。

想像すら出来なかったガンQの正体。その目的。

我夢は朝早くから招集された裏京都での会話を思い出す……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(我夢「魔頭鬼十朗(まとうきじゅうろう)?」)

 

 

疑問が混じった我夢の声にアザゼルは頷く。

八坂の御殿に一同(勿論、匙達もいる)は集まり、調査の報告を受けていた。

ちなみに大悟はこの場にはいなかった。

ウルトラマンの光を得た彼だが、まだ協力してもらうとは本人から口にしていないので、無理に参加させるのは酷だと判断した為だ。

 

 

(アザゼル「約500年前、戦国時代の呪術師だ。これはこの御殿の倉庫から見つかった魔頭本人が描き残した古文書だ」)

 

 

そう言うと、アザゼルは手に持っている巻物の封を解くと、床に広げる。

古ぼけた用紙に様々な墨絵がところ狭しに描かれていた。

皆が食い入るように寄って見る中、アザゼルに変わって八坂が説明する。

 

 

(八坂「私の遠い先代が残したこの古文書によると、何百年も前にコッヴの襲来を預言している。それも何年、何日、場所に至るまで正確にじゃ」)

 

 

古文書にはコッヴが地球に襲来した際に入っていた黒曜石状の隕石やゾーリム、根源的破滅招来体の名も描かれていた。

 

 

(八坂「魔頭は呪術の力で並みいる戦国武将を暗殺し、着実に地位を手に入れていった……。じゃが、それだけに飽きたらず、宿那鬼(すくなおに)と共に我々、日本妖怪を支配下に置こうとしていたのじゃ」)

 

(我夢「宿那鬼?」)

 

(八坂「魔頭と同時期に日本各地を暴れ回った残虐非道、山ほどの巨体を持つ鬼神じゃ。市街地にある宿那山はその鬼神の名から取られておるのじゃ」)

 

 

八坂の話を聞き、我夢は旅行前、ネットで調べた京都の地図にそんな名前の山があるのを思い出した。

 

 

(八坂「魔頭と宿那鬼は恐怖に満ちた自分だけの楽園を築こうとした。じゃが、剣豪・『錦田小十郎景竜(にしきだこじゅうろうかげたつ)』の手によって、宿那鬼は退治され、追い詰められた魔頭は自害した」)

 

(木場「師匠から聞いたことがある……。日本各地を周り、悪業を働く妖怪達を退治していって剣豪がいたって」)

 

 

八坂の話から出た錦田小十郎景竜という名前にピンと思い出した木場は自然と口に出していた。

アザゼルもほんの昔───人間とっては大昔に耳にしたことはある名前だと思い出していた。

 

 

(八坂「退治された宿那鬼は景竜によってバラバラに切り裂き、宿那山のあちこちに身体を埋め、山の中腹部に御堂を建て、景竜の刀と共に封印された」)

 

(アザゼル「しかし、魔頭の方は自害をする寸前、最後の呪術を施した。破滅招来体の力をも利用して復活し、世界を乗っ取ろうと……」)

 

(我夢「ッ!?これは……」)

 

 

八坂、アザゼルがたて続けに説明する中、古文書を見ていた我夢はそこに記されている絵に目を丸くする。

釣られた一誠達も我夢の視線の先を見て、同じ反応をする。

 

驚く我夢達にアザゼルはこう返す。

 

 

(アザゼル「それが、魔頭だ」)

 

 

目を真ん丸にする我夢の視線の先。

そこに描かれているものは青い瞳を持つ目玉の化け物───ガンQだった。

 

 

(我夢「ガンQ……」)

 

 

ガンQの正体に驚きの声を漏らす我夢。

呪いの産物であるなら、初めから科学的に証明すること自体、不可能だったのである。

 

 

(アザゼル「御堂を調べたところ、刀は持ち去られていた。詳しいことはわからんが、奴の目的は人々の魂を使い、自身と宿那鬼を完全復活させることだろう。刀は魔頭が持っている可能性がある。お前達には早速、魔頭の行方を追ってくれ」)

 

『了解!』

 

 

アザゼルの指示を受けた一同は一斉に返事を返すと、詳しい指示を訊き、各々の持ち場へ解散した。

 

 

 

 

 

 

イリナ「あっ!あれが御堂かな?」

 

 

そんなことを思い出しつつ、しばらく3人は歩きながら会話していると、イリナは斜め前を指差す。

指差す方角に進路を変え、下り坂を慎重に降りて歩いていくと、古ぼけた御堂が見えた。

 

3人は祠に近付く。

イリナが扉の取っ手を引っ張ると、扉はギィ…と木が擦れる音を立てながら開いた。

一誠は「よし」と手を叩くと、

 

 

一誠「じゃあ、何か手がかりになりそうなもんを探すか!俺はこの中探すから、お前らはその周辺を探してくれ」

 

イリナ「うん!」

 

我夢「わかったよ」

 

 

一誠の指示に返事した2人は御堂周辺を探し始める。

草むらをかき分けながら地面を歩く蟻が見える程目を凝らして探していく。

 

 

イリナ「?」

 

 

捜索を続けていると、イリナは草むらの中から金具が付いた細長い物体を見つけた。

拾い上げると、その物体は日本刀を収める鞘だった。

そう、眼鏡の男が捨てた景竜の刀の鞘である。

 

 

イリナ「ねえ、これっ───ッ!?」

 

 

我夢と一誠に声をかけようとするイリナだったが、突然声をかけるのを止めた。いや、出来なかったのだ。

体が金縛りにあったように硬直し、口を動かすだけでなく、声をあげることすら出来なかったのだ。

 

イリナは他の2人に何とか助けてもらおうと体を必死に動かすが、ピクリともしない。

この異常事態に四苦八苦する中、ふとイリナの脳裏に男の声が聞こえてくる…。

 

──────そち、聞こえるか?

 

イリナ「(だ、誰!?)」

 

───拙者は錦田小十郎景竜。この日本を放浪し、悪事を働く物の怪を退治していた者だ

 

イリナ「(景竜って、あの……!)」

 

 

それを訊き、イリナは自分に語りかけてくる男の声の正体が景竜の幽霊であることを理解した。

 

 

───亡者となった今では身動きがとれん。失礼だがその身体、借りるぞ

 

イリナ「(え?ちょっ、やっ!んん…ッ!)」

 

 

イリナの返事を待たず、景竜はイリナに憑り依き始める。

侵入を拒もうと抗うイリナだったが、金縛りにあっている彼女には勝ち目はなく、あっという間に憑依された。

 

その頃。一誠と我夢は一旦調査を切り上げ、中間報告をしていた。

 

 

一誠「我夢。あったか?」

 

我夢「いいや。それらしいのは見当たらないよ。そっちは?」

 

一誠「全然。あるのはクモの巣と御札だけ。現場に跡は残るってアザゼル先生が言ってたけどなぁ……」

 

 

はぁと息を吐く2人。くまなく探していた2人だったが、行方の手がかりらしいものは一向に見つからないでいた。

朝早くということもあり、正直のところ、今すぐにでも寝たい状況であった。

 

 

一誠「あ。イリナ」

 

 

そんな話をしていると、一誠が鞘を肩によっからせたイリナがこちらへやってくる姿を目にする。

しかし、いつもと違ってどこか歩き方が男っぽかった。雰囲気もまるで別人のように感じた。

違和感を感じる我夢と一誠だったが、手に持っている鞘が気になり、イリナに駆け寄る。

 

 

我夢「イリナ。その鞘は一体───!?」

 

 

我夢が話しかけながら近付こうとした瞬間、イリナは勢いよく鞘を振り下ろした。

驚きつつも我夢は間一髪のところでバックステップでかわした。

 

 

我夢「あ、危ないじゃないか!」

 

一誠「イリナ!どうしたんだよ?!冗談やってる場合じゃ──」

 

 

突然襲いかかってきたイリナに我夢と一誠は抗議しようとするが、次の瞬間、言葉を失う。

目の前にいた筈のイリナが何故かちょんまげを携え、侍の格好をした50歳くらいの男性の姿になっていたからだ。

幻覚かと疑った2人は目を擦ったが、目の前の状態は一切変わりがない。

 

唖然とする2人に侍───景竜は警戒心を抱きながら話しかける。

 

 

景竜「……お主ら、人では無いな?物の怪……?しかし、邪な気が感じられん。御無礼。平にお許しを」

 

 

敵ではないと判断した景竜は鞘を腰元に収めると、ペコリと頭を下げる。

すると、再びイリナの姿に戻った。

何が何だかわからない我夢と一誠だったが、とりあえず目の前にいるイリナに憑依した景竜に訊いてみることにしてみた。

 

 

我夢「あの……どちら様で?」

 

イリナ(景竜)「この娘はお主らの友の様だな。拙者は錦田小十郎景竜。既に肉体が無いので借りておるだけだ。しかし、ちと肩が凝るのが難点だが仕方あるまい」

 

一誠「錦田小十郎景竜?……本当にィ?」

 

 

半目で問いかける一誠に「本当だ」と返すイリナ(景竜)。

にわかに信じられないことだが、今まで自分達が体験したことを思えば起きないということは無いので景竜の霊がイリナに憑依したことはわかった。

 

2人が状況を整理して落ち着かせていると、イリナ(景竜)は語り出す。

 

 

イリナ(景竜)「拙者は生来、物の怪を見極める力を持っておってな……。その為、一生、物の怪退治に明け暮れた。宿那の鬼も魔頭もそうじゃ」

 

我夢「魔頭も、物の怪ですか?」

 

イリナ(景竜)「如何にも。物の怪は必ずしも異形の姿をしている訳ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()。奴はまことなき人の姿をした物の怪じゃ」

 

 

イリナ(景竜)の語る話にうんうんと頷く我夢と一誠。

特に“人も心の闇に蝕まれば闇となる”───この言葉はやけに2人の胸に響いた。

 

 

景竜「何を呆けておる?置いていくぞ」

 

「「あ」」

 

 

2人がひっかかるその言葉の意味を考えてようとしていると、いつの間にかイリナ(景竜)はまた景竜の姿になり、下山しようと声をかける。

それに気付いた我夢と一誠は意識を現実に戻すと、スタスタと歩いていく景竜の後をついていく。

景竜は歩きながら話の続きをしていく。

 

 

景竜「宿那の鬼を討伐した拙者は四肢と首を切り落とし、それぞれを分散して埋めた。そして、心の臓がある胴体を埋めた地に祠を設けた。今は無いが、心の臓を妨げる刀を置いてな」

 

我夢「……つまり、その刀を魔頭が持ち出したが為に封印が解かれようとしていると?」

 

景竜「如何にも。だが、奴は知っていたのか人を操り、刀だけを盗ませた。幸いにも鞘が残ったので拙者はこの鞘を通して娘の体を借りさせている。心の臓が蘇る前に奴から刀を取り返し、元の位置に戻さねば…!」

 

 

景竜の言う通りなら、魔頭が盗んだ刀を取り返さなければ宿那鬼が蘇ってしまう。

こうしている間にも魔頭は人々を襲っているであろうが、我夢は少し疑問に思ったことを口にする。

 

 

我夢「でも、どうやって捜すんです?人々の魂を奪う一部始終を見ないとわからないですよ」

 

景竜「案ずるな。先ほど申したであろう?拙者が生来、物の怪を見極める力を持っておると。それで奴が潜伏している場所を見つけ、刀を取り返す……。それに、奴の企みは生者から抜き取った魂を使い、自身と宿那の鬼の肉体を繋ぎ合わせ、蘇らせようとしているのだろう。生前、奴は死者を現世に蘇らせる術について探求していたと聞く。刀を取っただけでは鬼が復活しようとも四肢は離れたままだからな」

 

 

景竜は生前の知識を元に魔頭の目論見を推理する。

つまり、人々の魂はバラバラになった宿那鬼の体を繋ぎ合わせる為と魔頭が肉体を取り戻す為に必要な訳であったのだ。

 

景竜に対して色々不安なところがあったが、こうして目的を推理し、未だ行方知らずの魔頭の居場所がわかるのはとても心強いものだ。

 

 

一誠「ん?そういや、何でトドメを刺さなかったんですか?」

 

景竜「めんど……いや。何度斬ってもしぶといものだから、封印するのが精一杯だった。いやぁ、面目ない」

 

「「……」」

 

 

謝る景竜だが、そのにこやかな顔から全く反省の色が見られない。それに面倒くさいと聞こえたような…。

彼のいい加減な一面に半目で見る2人だったが、我夢は肝心なことを思い出し、またイリナの姿になった景竜に問う。

 

 

我夢「あ!ちゃんと、イリナの体は返してくれるんですよね?」

 

イリナ(景竜)「………安心せい!事が終わり次第、この娘にちゃんとお返し致す」

 

一誠「何でちょっと間が空いた?」

 

 

絶妙な間を開けて返答するイリナ(景竜)にツッコむ一誠。

その反応に2人は期待が高まるどころか、胡散臭く感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。京都市街の裏路地を1人の男が顔を俯かせながら歩いていた。

ボサボサ髪に眼鏡をかけた青年───深夜、宿那山で迷子になっていたあの青年だった。

だが、どこかその顔は生気がなく、虚ろげな雰囲気を醸し出していた。

 

 

ドンッ

 

「…っ、いって!おい!」

 

 

顔を俯かせて歩くものだから道中、すれ違った3人組の不良グループの先頭にいた銀髪の男に肩をぶつけてしまう。

頭にきた銀髪の男はそのまま通り過ぎようとする眼鏡の男の肩を強引に掴んでひき止め、振り向かせる。

 

銀髪の男、太った青髪の男、ひょろひょろとした体格をした金髪の男。

彼らは以前、イリナに絡み、藤宮にリンチをしたあの不良3人組である。

 

 

「おっさん!どこに目ェ付けてあるいとんだぁ、ごらぁ!このジャケット、1万円もすんだぞ?!どうするんだ、こらぁ!」

 

「こりゃあ、弁償代じゃ済まねぇよな?」

 

「ごめんなさいね♪運が悪かったってことでね☆」

 

 

青筋を立ててキレる銀髪の男、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる青髪の男と金髪の男はそう言いながら取り囲み、退路を塞ぐ。

3人は指を鳴らしながら眼鏡の男に殴りかかろうとした瞬間だった。

 

 

ザシュッ!

 

「「!?」」

 

 

肉が斬り裂かれたような鈍い音が聞こえたかと思うと、突然、銀髪の男は呻き声すらあげず倒れた。

眼鏡の男な何も無い空間から取り出した刀で銀髪の男を右肩から斬ったのだ。

 

予想だにしなかった出来事に他の2人は一瞬で青ざめ、パニック状態に陥る。

唖然とした顔を浮かべ、腰を抜かしてしまう。

 

 

「あ、あわわ……!」

 

「お、お、俺たちが悪かった!!だから許して!命、命だけは────」

 

 

太った青髪の男は命乞いするがそれも虚しく、眼鏡の男に2人まとめて斬られた。

すると、不良3人の体から青白い火の玉──魂が浮き上がると、眼鏡の男に吸収されるように飛び込んだ。

眼鏡の男は3人から魂を抜き取ったのだ。

 

 

「まだだ……まだ足りぬ……」

 

 

だが、眼鏡の男は目的を遂行したのにも関わらず不服そうに呟く。

眼鏡の男はこれまで、同じ様に通りすがりの人々の魂を抜き取ってきたが、それだけでは本当の意味での目的達成にまでにいってないのである。

 

 

ヘビクラ「よぉ。ボチボチやってるようだな」

 

「ッ!」

 

 

どうしようかと悩んでいた矢先、声をかけられる。

声のする方を振り向くと、黒いスーツに身を包んだ青年───ヘビクラが怪しげな笑みを浮かべながら歩み寄ってきていた。

 

見られたからにはこいつの魂を……。

そう考えた眼鏡の男は近付こうとするヘビクラに向かって刀を振り下ろすが、ヘビクラは咄嗟にジャグラー魔人態の姿に変わると、蛇心剣で受け止めた。

 

 

「!?」

 

ジャグラー「おいおい。随分と手荒な挨拶だな。安心しろ、()()()()()()()だ。復活に手間取っているようだから、手助けしてやろうと現れただけだ」

 

 

魔人態の姿に目を丸くする眼鏡の男だが、軽口を叩くジャグラーの言い分が気になり、刀を下ろす。

それと同時にジャグラーもヘビクラの姿に戻ると、自己紹介を交えて語り出す。

 

 

ヘビクラ「俺はジャグラー。通りすがりの風来坊さ。あんたが考えていることはわかる。この世に肉体を手に入れて復活したい……けど、生きている奴らの魂だけじゃ足りない。もっと強い魂が欲しい。そうだろう、魔頭鬼十朗幻州(げんしゅう)さん?」

 

 

ヘビクラが魔頭の名を出すと、一瞬のうちに眼鏡の男の姿が変わった。

白髪の頭に隈取りを縁取った目、ポルトガルの渡来人のような格好をした齢50代くらいの男の姿がそこにあった。

そう、この男こそ魔頭鬼十朗幻州である。

眼鏡の男に景竜の刀を盗ませるように唆したのも彼の仕業で、眼鏡の男の体に憑依して周りに溶け込みつつ、生者の魂を集めていたのである。

 

 

魔頭「ほう。私の正体だけでなく考えていることまで見抜くとは……」

 

ヘビクラ「なぁに、簡単さ。あんたと俺はある意味同門だからな」

 

魔頭「ふむ。確かに私に流れる呪力とお前の持つ闇は通ずるところがある。信頼してもいいだろう」

 

 

魔頭は呪術でヘビクラに流れる闇の力が自分と似ていると見抜いた。

ヘビクラの言うことが嘘ではないとわかった魔頭は本題を訊くことにした。

 

 

魔頭「して……手助けをするとは言ったが、どんなものだ?」

 

ヘビクラ「あぁ。それはな……」

 

 

ヘビクラは魔頭の耳越しで作戦を伝える。

それを聞いた魔頭はニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

魔頭「……その手があるか」

 

ヘビクラ「そうだ。言う通りに動いてくれば、あんたは文字通り完全復活できる。邪魔する奴のことは俺に任せろ」

 

魔頭「うむ。その策、あえて乗らせて頂こう」

 

 

意見が合致したヘビクラと魔頭は怪しげな笑みを交わす。

結託した至上厄介なコンビは動き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九重「大悟!菓子を買ってきたぞ!」

 

大悟「うん。ありがとう」

 

 

その頃、九重と大悟は伏見稲荷の山頂付近の古びた社でくつろいでいた。以前、九重が我夢達を敵と勘違いして襲いかかってきた場所である。

ここに来た理由は暗い顔ばかり浮かべる大悟をみかねた九重が元気になってもらおうと考えたからである。

 

晴れ渡る空の下で広がる自然溢れる景色を目にしながらお茶と共に菓子をつまんだ大悟は九重に微笑みかける。

 

 

大悟「ありがとう……気遣ってくれたんだろ?わざわざ誘ってくれて」

 

九重「いや、気にするでない。私も色々あって気分転換したかったからの。2人っきりになれる機会に……

 

大悟「?」

 

 

九重が頬を赤らめてボソボソ話した内容を聞き取れなかった大悟は疑問の眼差しを向けるが、九重は慌てて「何でもない」と話を逸らすと、ティガの話題に変えた。

 

 

九重「しかし、驚いたの。大悟がティガだったとは……」

 

大悟「ああ、自分でも驚いたよ。ウルトラマンは遠い存在だと思ってたけど、まさかそのものになるなんて。……でも、僕は戦いたくないんだ。勇者とか英雄とか言われても、そういうのになるつもりは全く無い。このまま、意味もなく戦っても自分を見失う気がして怖いんだ……」

 

九重「……」

 

 

そう語りながら渋い顔で俯かせる大悟に九重は昨晩のことを思い返す。

昨晩の大悟は珍しく荒れており、とても苦しそうにしていたことを。

──自分が何者かがわからない。それが与えられた力で大悟が苦しむ大元の原因だった訳である。

 

だが、このまま見ておるだけにはいかない。

幼いながらも決心した九重の口は自然と動いた。

 

 

九重「……よくはわからぬが、大悟は変わらないと思うのじゃ」

 

大悟「え?」

 

 

思いがけない言葉をかけられた大悟は顔をあげる。

呆然とした顔を向ける中、九重は話し続ける。

 

 

九重「大悟は心優しくて、かっこよくて、穏やかで……何より、母を拐われた私の心を癒してくれたではないか。大悟がいなかったら今、私は生きていなかった……。人間であっても、光の巨人であっても、大悟は大悟のままじゃ!」

 

 

九重の精一杯の励ましに大悟は目を見開く。

自分は自分のまま───当たり前に聞こえる言葉だが、迷いに迷っていた大悟の胸には十分に響いた。

簡単なことなのにこんな幼い子供に心配までさせて……大悟はそんな情けない自分を自嘲するように笑う。

 

 

大悟「ははは…っ!」

 

九重「何がおかしい!人が一生懸命絞り出して考えたのに…!」

 

大悟「ははっ…ごめん、ごめん。別に君を馬鹿にしてる訳じゃない。ここまで気にかけてくれるなんて嬉しいよ。ははっ、ありがとう」

 

 

頬を膨らませる九重を大悟は笑いながらも感謝を込めて頭を撫でる。

心を許した相手に撫でられるのは気を害するものでなく、先程まで不機嫌そうにしていた九重も心地良さそうに顔を緩ませ、尻尾を嬉しそうに振っている。

九重の言葉で、大悟の重くのし掛かった肩の荷が心が降りた。

 

 

一誠「よお、大悟!ここにいたんだな」

 

 

そうしてくつろいでいると、一誠、我夢、イリナ(景竜)がやってくる。

大悟は顔を見合わせると、一誠に訊ねる。

 

 

大悟「3人共、どうしてここに?」

 

一誠「敵の捜索をして、もしかしたらここに───」

 

イリナ(景竜)「……ふむ、九尾の子か。それに、この青年もお主らと同じ気を持つだな」

 

大悟「?」

 

我夢「あ~…実は……」

 

 

変な口調で話すイリナに違和感を感じる大悟に我夢はこれまでの経緯を全て話した。

 

 

大悟「……錦田小十郎景竜が?信じられないけど、本当っぽいな」

 

 

大悟はまじまじとイリナ(景竜)を見ながら呟く。

信じるのも当たり前だろう。大悟には目の前にいるイリナが景竜の姿に見えていたからだ。

それは九重にも同様で、目をパチクリさせていた。

 

大体の事情がわかった大悟は気持ちを切り替え、景竜に問いかける。

 

 

大悟「君達が魔頭の気を探知して追っているのはわかった。それで今はどこに──?」

 

景竜「もう来ておる」

 

大悟「え?」

 

 

景竜の返答に耳を疑う大悟だったが、景竜が指差す方へ顔を向ける。

木陰から眼鏡をかけた男が現れたかと思うと、男の体はゆらぎ、次の瞬間には魔頭の姿へと変わっていた。

 

 

『ッ!』

 

 

目の前にいる人物こそが魔頭と確信した我夢達は一斉に身構える。

魔頭は虚空から刀を取り出すと、ゆっくりと歩み寄り、景竜へ話しかける。

 

 

魔頭「久しぶりだな、景竜。刀を奪い取った時に魂も消え去ったかと思ったが、よもや生きておるとは。驚いたぞ」

 

景竜「お前が捨てた鞘を通して一時的に現世に蘇っただけだ」

 

 

そう言う景竜を魔頭はおかしそうに鼻で笑う。

 

 

魔頭「そんな小娘の体を借りてまで蘇るとは、しぶとい奴だ」

 

イリナ(景竜)「それはお主も同じことだろう。罪もない者の体を奪い、その手で罪もない人々の魂を次々と奪いよって……。我らは死者だ。この現世にとどまるべき存在ではない。今一度、成敗してくれる!」

 

魔頭「ええぃ!あの世に返るのはお前だ!私の邪魔を出来ぬよう、ここで始末してくれようっ!」

 

 

鋭い剣幕で吠えた魔頭はパンッと両手を合わせる。

すると、周囲の地面が盛り上がると、中からボロボロの甲冑を纏った武士や足軽の格好をした死人達が現れた。

取り囲まれた我夢達は各々の武器を取り出し、背中を合わせる。

 

 

ア″ァ″ァ″ァ″~~!!

 

一誠「くそっ、目玉お化けの次はゾンビかよ!30くらいいるぞ!」

 

景竜「戦国の世に散った屍を呪術で傀儡にしておるのか。相変わらず趣味が悪い……」

 

我夢「みんなっ、来るぞ!」

 

 

我夢が叫ぶと同時に魑魅魍魎の死人達は一斉に襲いかかってきた。

我夢はジェクタ-ガン、一誠はシグブラスター、景竜は素手で立ち向かっていく。

その間、戦いの邪魔にならないよう、九重を引き連れた大悟は御堂の近くで身を潜めた。

 

景竜は1人、死人の群れが特に多く発生している場所へ前進していく。狙いはその奥にいる魔頭だ。

我夢と一誠はそれをフォローする形になっていた。

 

 

景竜「ぬぅぅッ!!」

 

ア″ァ″ッ!!

 

 

景竜は向かってくる死人を背負い投げで地面に叩きつける。

次々と向かってくる新手の死人達を洗練された武術で攻撃しながら突き進んでいく。

 

その様子を近くで戦っていた一誠と我夢は感嘆の声をもらす。

 

 

一誠「スゲェな、あのおっさん。剣豪なのに剣なしでどう戦えるだって心配したけどよ」

 

我夢「剣豪だからって格闘を怠けてる訳じゃないようだ。僕達も」

 

一誠「おう!」

 

 

景竜の活躍に鼓舞した我夢と一誠は援護射撃していく。

撃たれた死人は水をかけた砂のようにドロドロと溶けて消滅していく。

 

2人の活躍で通り道が拓けた景竜は魔頭の目前にまでたどり着いた。

景竜は地面を踏みしめて勢いよく飛び出す。

 

 

景竜「魔頭!覚悟ッ!」

 

魔頭「ッ!」

 

 

予想以上のスピードで接近された魔頭は目を丸くしながらも刀を振り下ろす。

この目と鼻の距離では避けられないだろう。

 

しかし、相手は剣豪。

素人の腕から繰り出す剣撃では捉えることは出来ず、軽々と避けられ、体当たりをまともに受けた。

 

 

魔頭「ぐっ!?」

 

景竜「とぉりゃ!!」

 

 

怯んで後ずさる魔頭に景竜は追い討ちの正拳突きを腹部へ打ち込む。

魔頭は肺の中にある空気が1ccも残らず全て吐き出される感覚に襲われると同時にその場に跪いた。

 

景竜は落とした刀を拾いあげると、魔頭の首筋に刃先を向ける。

 

 

景竜「終いじゃ、魔頭」

 

 

低い声音で威圧する景竜。

もうどうあがいても魔頭に勝ち目がなく、魔頭もそれがわかっているのか、死人達も忽然と姿を消していた。

 

─────これでようやく終わった。皆がそう確信し、我夢と一誠がほっと安堵した時だった。

 

 

大悟「九重ッ!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

大悟の悲鳴に似た叫びが聞こえ、3人は振り返ると目を見開いた。

空中には意識を失っている九重が宙を佇んでおり、その隣には()()1()()()()()が宙に浮かんでいたのだ。

頭上から見下ろす魔頭は我夢達を嘲笑う。

 

 

魔頭「フフフ……」

 

 

────今まで戦っていた魔頭は一体!?

焦燥感に駆られた3人は改めて地上にいる魔頭へ顔を向けると、魔頭だった人物はいつの間にか黒い紳士服に紫色のワイシャツを着こんだ男性───ヘビクラへと変わっていた。

 

どういうことか理解できない我夢達にヘビクラは首筋に向けられていた刃先をどかして立ち上がると、怪しげな笑みを浮かべながら話し出す。

 

 

ヘビクラ「簡単に言うとな、あっちが本物の魔頭でこっちは偽者……俺が魔頭に化けてたんだよ。要するに囮って訳だ」

 

イリナ(景竜)「何……?お主からは魔頭と同じ気を感じられたぞ?」

 

ヘビクラ「フフッ。コイツが使えば簡単なんだよ」

 

 

眉をひそめるイリナ(景竜)にヘビクラはズボンのポケットから取り出した縁が黒、白、灰色三色で彩られたメダルを見せる。

見覚えのあるメダルに我夢と一誠は驚嘆する。

 

 

我夢「怪獣メダル…!まさか、それで……」

 

ヘビクラ「その通り!この暗黒星人 ババルウ星人のメダルで変身してたんだ。コイツは姿、声だけじゃなく、そいつの持つ気なんかもコピー出来るんだぜ?」

 

 

我夢の浮かんだ推測にヘビクラは大正解と言わんばかりに指差す。

メダルの力となっているババルウ星人の変身能力の精度は本物であり、昔、とある滅ぼされた星の巨人に化け、他の惑星の巨人達だけでなく、その巨人唯一の肉親である兄でも見抜けない程だ。

状況を撹乱し、挙げ句の果てには地球が滅ぶ寸前にまで追いやった恐るべき星人なのである。

 

唖然とする一同にジャグラーは「更に」と付け加える一声を発すると、禍々しいオーラを纏わせ、ジャグラー魔人態へと変身した。

 

その正体にあっと驚く我夢達だが、すぐに怒りが湧いた一誠は眉間にしわをよせ、鋭い眼差しを向ける。

 

 

一誠「ジャグラー!!てめぇ……!」

 

ジャグラー「悪いな。これでも、俺にとっては重要な仕事なんでね。さあ、魔頭さんよ!早く目的を果たせ」

 

 

ジャグラーに促されるまでもなく、魔頭はボソボソと低い声で呪詛を唱えた。

すると、霧状になった魔頭が九重の体に入り込むように憑依すると、形を変えて巨大化し始めた。

 

魔頭の巨大化に呼応するかのように暗雲が押し寄せ、晴天の空を覆い隠した。

一瞬にして夜のとばりが下りたかのように京都中が暗闇に包まれる中、景竜は魔頭の狙いが何なのかを確信した。

 

 

景竜「……ッ、真の狙いは九尾の姫を器にすることだったか!」

 

魔頭「ハハハッ!流石に理解できたようだが、もう遅い!お前達がまんまと私達の策にはまったお陰で、こんな強力な気を持つ肉体を手中に出来たのだからな!感謝するぞ!!」

 

景竜「魔頭…!」

 

魔頭「見るがいい!破滅をもたらす者の力を得て、肉体を取り戻した私の姿を!!」

 

 

悔しげに歯を噛み締める景竜に高々と宣言した魔頭は両掌に青い瞳を持つ手を天に掲げる。

すると、宙に無数の青白い人魂───今まで奪ってきた生者の魂を出現したかと思うと、それを体内に取り込み、暗い紫色の光に包まれる。

光が晴れた次の瞬間、魔頭はガンQの姿に変身していた。

 

しかし、昨夜のような腐ったトマトのようなグロテスクな姿ではなく、所々血管が浮き出ているものの、以前のコードNo.01に似た姿になっていた。

ガンQ[コードNo.02]』の誕生の瞬間である。

 

 

ガンQ「ヴハ″ッハ″ッハ″ッ…!!」

 

 

完全復活したガンQは歓喜のあまり、低くおぞましい笑い声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわぁぁぁーーーーーッ!!?』

 

『怪獣だぁぁーーーーッ!!』

 

 

ガンQを目にした人々は恐怖に駆られ、一斉に逃げ出す。

突然のことに警察の避難誘導も手一杯であり、あちこちで交通事故が発生していた。

 

 

アーシア「ガンQ!」

 

ゼノヴィア「間に合わなかったか……!」

 

 

ガンQの復活は町で捜査していたアーシア、ゼノヴィア、木場、ロスヴァイセの目に届いていた。

ゼノヴィアは悔しげに歯を噛み締める。

 

 

木場「完全復活……いや、前とは比べようにない力を持っているね」

 

 

今のガンQの雰囲気から以前よりも強くなっていることを感じ取った木場は苦い顔を浮かべる。

膨大な気を持つ九尾の肉体を得たガンQは強力無比そのものであり、その迫力はひしひしと伝わっていた。

 

 

ロスヴァイセ「ひとまず、あの山に向かいましょう」

 

 

ロスヴァイセの提案に頷いた一同はガンQが出現した伏見稲荷に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンQは我夢達を尻目にズシンズシンと大地を震わせて歩き出す。

向かう先にあるのは鬼神が封じ込められている山───宿那山だ。

 

 

ガンQ「グォォォォ…!」

 

 

宿那山に近付いたガンQは瞳から紫色の光線を山の中腹辺りに放った。

すると───

 

 

ゴゴゴゴ……!

 

 

地響きと共に山から両腕、両足が人体の構造から考えてあらぬ方角から突き出る。

間もなく突き出ていた両腕、両足が山の中へ引っ込むと、割れた山の地表から1匹の鬼神が現れる。

 

2本角に単眼、鋭い牙を生やしているおぞましい顔に長い白髪を生やした赤鬼───『宿那鬼』が永き封印から目覚めたのである。

 

 

宿那鬼「……ガァァァァーーーーッ!!」

 

 

自身の体を見て、バラバラに引き裂かれていた自身の肉体が完全に繋がっているのを確認した宿那鬼を雄叫びをあげる。

500年以上も封印された鬱憤を晴らせる時がやってきたので、その喜びは常人では計り知れない。

 

歓喜にうち震える宿那鬼だったが、自身の近くにガンQ───魔頭がいるのに気付くと、喜びからくる興奮を抑え、話しかける。

 

 

宿那鬼「……魔頭か。再びこの地に踏めることに感謝するぞ。……景竜め、このまま生かしてはおかぬ」

 

ガンQ「宿那鬼よ。怨み、憎しみによって力を蓄えた我らにとっては景竜など敵ではない。それより、力で破壊、制圧し尽くすことにより、我らの国を今一度造ろうではないか!」

 

宿那鬼「ふむ。ならば、麓にいる人間共を焼き尽くすとするか」

 

 

意見が合致したガンQと宿那鬼は近くの町に向かおうと歩き始める。

町は未だ人民の避難は完了しておらず、このままだと甚大な被害が起きてしまう。

 

刀を鞘に納めた景竜は周囲を見渡す。我夢、一誠は冷や汗をかいており、少し離れた場所にいる大悟は緊迫した顔をしていた。

ジャグラーはいつの間にか消えていた。どうやら、どさくさに紛れて逃げたようだ。

景竜はふぅと心を落ち着かせると口を開く。

 

 

景竜「奴等は完全に蘇った。以前よりも遥かに凶暴になってな……。最早、拙者の手では負えぬ」

 

一誠「何、落ち着いちゃってんだ……」

 

 

この最悪の状況を前に開き直ったかのような態度を取る景竜に一誠はさりげなくツッコむ。

さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら……。そんなことを我夢、一誠、大悟は思っていると、景竜は3人の顔を見合せ──

 

 

景竜「拙者は宿那の山にこの刀を持っていく。奴等の相手は任したぞ。お主、ついてこい」

 

大悟「え!?ちょっと!」

 

一誠「あ」

 

 

手短かにそう告げると、3人の返事を待たないまま大悟を連れて走り去っていった。

突然のことに2人は呆然と佇む。

 

 

一誠「行っちゃったよ……。いい加減なところがあるよな、あのおっさん」

 

我夢「仕方ない。とにかく、魔頭を止めよう!」

 

一誠「だな!」

 

 

景竜のことが気になるが、近くで暴れるガンQと宿那鬼を止めるのが先決だ。

我夢の意見に同意した一誠は頷き返すと、2人は懐から変身アイテムを取り出す。

 

我夢は右手に嵌めたエスプレンダーを左肩に当て、一誠は右手に持ったリーフラッシャーを左腰へ一旦回し──

 

 

我夢「ガイアァァァーーーーーーーッッ!!

 

一誠「ダイナァァァーーーーーッッ!!

 

 

その掛け声と共に我夢はエスプレンダーを正面に突き出し、一誠は右斜め上に掲げる。

変身アイテムから発する目映い光に包まれ、2人はウルトラマンへと変身した。

 

我夢と一誠───ガイアとダイナは変身して間もなく、高速移動で地上を駆け、蹂躙する2匹の悪しき獣へ接近する。

後ろから近付く気配にガンQと宿那鬼は振り返る。

 

 

「「デヤッ!/ハッ!」」

 

ガンQ「グゥゥゥ~~~!?」

 

「「グアッ!/デェアッ!」」

 

宿那鬼「ガァルルッ!?」

 

 

ガイアはガンQ、ダイナは宿那鬼に息のあったコンビネーションで左右交互に回し蹴りを打ち込む。

怯む2匹に休む間も与えず、ガイアとダイナは拳にエネルギーを込めると、ガイアはガンQ、ダイナは宿那鬼に拳を真っ直ぐ突き出す。

 

 

「デュアッ!!/デュッ!!」

 

ガンQ「グォォォォオォオオォォ~~~ッ!!」

 

宿那鬼「ガァォォアァァーーーッ!!」

 

 

ガイアの赤熱化した拳とダイナの白熱化した拳は2匹の胸元に炸裂し、苦悶の叫びをあげながら吹っ飛んでいく。

そのまま吹っ飛んでいった先にある地上の建物を瓦解しながら不時着した。

 

 

「見ろっ!ダイナだ!」

 

「ガイアもいるぞ!」

 

「頑張れーーー!!そんな奴等、やっつけてくれーーッ!!」

 

 

ガイアとダイナの登場に希望が湧いた人々は一斉に落ち着きを取り戻し、2人に声援をかけた。

 

 

ガイア「…ッ」

 

ダイナ「フッ…!」

 

 

聞こえてくる人々の声援にガイアとダイナはそちらの方へ振り向く。

先程まで混乱していた1人1人が目を輝かせ、応援してくれている。その光景に自分達が希望を与えているのだと自覚した。

 

 

ガンQ「グォォォ……!」

 

「「ッ!」」

 

 

ガイアとダイナが人々の声援に気を取られている中、物音を立てぬようゆっくりと起き上がったガンQは瞳から紫色の光弾を発射する。

不意打ちに気付いたガイアとダイナは咄嗟に両手を広げて、ウルトラバリヤーで防ぐ。

 

 

宿那鬼「ガァァァーーーッ!!」

 

 

ガンQに続いて宿那鬼は口を大きく開き、灼熱のごとき熱線を放つ。

熱線が当たる寸前、ガイアとダイナは目映く発光すると、忽然と姿を消した。

空撃ちした熱線は先にある住宅街の一角を破壊した。

 

ガンQと宿那鬼はどこにいったのかと思考を張り巡らせていた矢先──

 

 

「「ッ!?」」

 

ガイア「デヤァァァーーーーーッッ!!」

 

ダイナ「ダァァァーーーーーッッ!!」

 

 

上空から急降下キックを繰り出すガイアとダイナが見えたが、もう遅い。

能天に直撃したガンQと宿那鬼は苦悶の声をあげながら、後方へ倒れた。

 

地上へ降り立った2人は間髪入れず、2匹の獣に駆け寄る。

ガイアはガンQ、ダイナは宿那鬼の両足を両脇に抱えて体を持ち上げる。

 

 

ガイア「デュアァァーーーーッ!!」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ガァンッ!

 

「「ッ!?」」

 

 

そして、両者は抱えたまま後ろからクルリと回って遠心力をつけると、ガンQと宿那鬼の頭を激突させた。

2匹の獣の頭が重なった箇所から鈍い音が鳴り響く。

倒れたガンQと宿那鬼は苦痛のあまり身悶える。

 

 

ガイア「デュアッ!グァァァ…!!」

 

ダイナ「ハァァァァーーー……!!」

 

 

その隙にバック転で距離を取ったガイアとダイナはクァンタムストリーム、フラッシュ光弾の構えに入る。

だが───

 

 

ガンQ「ブォッブォッブォッ……!」

 

「「!!」」

 

 

放とうとした瞬間、起き上がったガンQが嘲笑うと、2人は攻撃の手を止めた。

否、止めるしかなかった。ガンQはその巨大な眼に九重の姿をホログラムのように投影したのだ。

 

そう、実体化したガンQの肉体は元々九重のもの。

つまり、ガンQを倒すとなると、彼女を殺してしまうのも同じことである。

九重を人質にした卑怯なやり方に2人は憤りを感じながらも、エネルギーを溜める手を下ろした。

 

 

宿那鬼「ガァァァーー!!」

 

ダイナ「グアッ!?」

 

ガイア「ドォアッ!?」

 

 

下手に動けなくなった2人に宿那鬼が吐いた熱線が炸裂する。

胸元から火花を散らし、体が反り返った2人は地面に叩きつけられる。

 

 

ガンQ「ブォッブォッブォッ…!」

 

 

ガンQは不気味な笑い声をあげながら、軽く力を込める。

すると、足にビッシリ付いていた3つの目玉が蠢くや否や目玉がついた円盤状となって体を飛び出した。

 

 

ガンQ「ハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッ……」

 

 

ガンQはその3つの目玉を遠隔操作し、ガイアとダイナの上を取り囲むように配置させると、紫色の光線を発射させた。

 

 

ガイア「グァァァッ!?ドォアァァァァーーーーッ!!」

 

ダイナ「グッ!?グワァァァーーーーーーッ!!」

 

 

ガイアとダイナは襲いかかる激痛に頭を抱え、身悶える。

目玉が放つ紫色の光線は精神に多大な悪影響を与える物質が含まれており、2人は麻酔無しで工具用ドリルで頭中を貫かれるような刺激を脳内の神経に送られているのだ。

 

 

ピコン

 

ティヨン

 

 

あまりもの苦痛にガイアとダイナの胸元に輝く命の象徴───ライフゲージが青から赤へ点滅し始めた。

赤色の点滅は命の危機を知らせる危険信号であり、もし、その輝きが消えた時、ウルトラマンは二度と立ち上がれないだろう。

 

 

ガイア「グアッ、アァァァ……!!」

 

ダイナ「グワァァァアァァァーーーッ!!」

 

 

宿那鬼は2人のウルトラマンがもがき苦しむ様を見ながら付近の山に手を突っ込む。

山に埋まってある何かを掴んだまま勢いよく引き抜くと、白い輝きを放つ太刀が露になった。

 

 

宿那鬼「ガァァァ……!」

 

 

太刀をブンブンとデモンストレーションのように振り回した宿那鬼は構えると、2人のもとへゆっくりと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中、車を拾って宿那山に辿り着いた大悟は車を降り、景竜と共に御堂がある山の中腹部へ向かって歩いていた。

 

 

景竜「お主。何故(なにゆえ)、拙者が連れ出したかわかるか?」

 

大悟「…え?」

 

 

途中、先頭を歩く景竜が立ち止まり、真剣な面持ちで尋ねる。

当然、唐突に訊かれた大悟は気の抜けた声をあげるが、質問する意味がわからないながらも答える。

 

 

大悟「そりゃあ、この山に行く車を運転してもらう為じゃ……」

 

景竜「無論、それもある。だが、拙者がお主をここまてで連れてきたのは、お主に力を持つ意味を説く為じゃ。お主は光の者、強大な力を秘めておる。だが、それを持ったが為に()()()()()()()()()()()()。そうだろう?」

 

大悟「…ッ!」

 

 

景竜に見抜かれた大悟は目を丸くする。

まだ会って間もないのにも関わらず自分の悩みをスラスラと言い当てる様は流石、伝説の剣豪と言われるだけあると大悟は理解した。

景竜は空を仰いで昔のことを振り返ると、再度大悟を見据える。

 

 

景竜「拙者は生来、物の怪を見抜く力を持って旅をし、人々を蹂躙する悪しき物の怪どもをこの刀で退治してきた。伝説の剣豪やら妖怪滅者などと持て囃されてきたが、拙者はそれを望んじゃ生を全うした訳ではない。己が為すべきこと……()()()()()()()()()()()()だ」

 

大悟「……真に、為すべきこと?」

 

景竜「うむ。お主もとうにわかってる筈だ。今はとにかく友を救いたいという思いがな。答えを探す前に心に従うべきではないのか?」

 

大悟「……」

 

 

景竜に説かれた言葉に大悟の脳に溜まっていた迷いが吹き飛んだ。答えを拘るばかりに自分が本当にしたいことを知らず知らずのうちに抑え殺していた。

 

九重に言われた自分は自分のまま───。

 

景竜に言われた自分の心に従う────。

 

その言葉に大悟の悩みはあっという間に吹き飛んだ。

 

 

大悟「今、はっきりとわかった……!答えがわからなくてもいいじゃないか!僕は……僕だッ!」

 

景竜「行ってこい!友を救いに……護るたい者の為に!」

 

 

激励する景竜に大悟は頷くと、大悟は山の向こう側へ倒れているダイナとガイアへ振り向く。

ガンQの攻撃でもがき苦しむダイナとガイアを斬ろうと歩み寄る宿那鬼。まさに大ピンチだ。

 

九重を、我夢を、一誠を救いたい!その願いを叶える力の象徴───スパークレンスを胸元から取り出す。

昨晩まで嫌悪していたが、今は違う。むしろ自分の体の一部のように無くてはならないものだ。

スパークレンスは大悟の誰かを救いたい気持ちに呼応するかのように淡く輝いた。

 

 

大悟「………僕に戦える力を与えるなら!みんなを、僕が護るッ!!

 

 

堂々とした口調でそう言うと、大悟はスパークレンスを前へ突き出す。

 

 

キュピィンッ!

 

ガッ!スゥゥゥ……!

 

 

そして、その腕を引っ込めると同時に平行にしたもう片方の腕と交差させる。

そのまま大きく回して

 

 

大悟「ティガァァァーーーーーーーーッッ!!!!!

 

キュピィーーーーーンッ!!

 

 

とその掛け声と共に天高く掲げると、スパークレンス先端にあるウィングパーツが展開し、露になったレンズから溢れる白い光に包まれ、大悟はウルトラマンティガに変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイア「ドォアァォァァーーーーーッ!!」

 

ピコン

 

ダイナ「グワァァァーーーッ!!」

 

ティヨン

 

ガンQ「ハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッハ″ッ…」

 

 

悲鳴をあげるガイアとダイナの苦しむ様をガンQは低い不気味な声音で嘲笑う。

人質という絶対的な武器を持っている以上、手出しが出来ない。

この状況における圧倒的優位にガンQは喜びに浸っている。

 

 

宿那鬼「ガァァァ……!」

 

ガイア「グアッ!」

 

ダイナ「グワァッ、アァァァ…!!」

 

 

ガイアとダイナに近寄った宿那鬼は刀をしっかりと両手で握り、振り上げる。狙いは勿論、2人の首だ。

その危機に2人は悲鳴をあげながらも何とか避けようとは思うものの、脳内を蝕む激痛で体が思うように動かない。

 

宿那鬼はニヤリと気味の悪い笑みを浮かべると、勢いよく刀を振り下ろした。

2人の首が吹っ飛ぶ絶対絶命の危機。刀が首に触れるその瞬間だった。

 

 

ピキィン!

 

宿那鬼「!?」

 

ガンQ「グォッ…!?」

 

「!!」

 

 

ピキィンと目映い光の柱がガイアとダイナの前に立ち塞がるように出現すると、取り囲んでいた目玉を消し飛ばし、宿那鬼を大きく後方へ吹き飛ばした。

予想外の事態にガイア、ダイナはおろか、ガンQも笑みを止める。

そして、目映い白色の光が収まっていき、姿を現したのは───

 

 

「「大悟!」」

 

 

青紫と赤、銀色の体色を持った伝説の戦士───ウルトラマンティガだった。

大悟が変身した正真正銘の光の巨人である。

その登場にガイアとダイナは口揃えて彼の真の名を叫ぶ。

 

 

木場「あれは……」

 

ゼノヴィア「ウルトラマンティガ!」

 

アーシア「大悟さんが変身した!」

 

ロスヴァイセ「光の巨人……!」

 

 

近くに駆け付けた木場、ゼノヴィア、アーシア、ロスヴァイセは安堵した表情で口々に声をもらす。

2人の首が吹っ飛ぶ光景を見ずに済んで内心ほっとしている。

この時、ロスヴァイセがティガに見惚れていたことは誰も知らない。

他の巨人より頭1つ抜けてる美しさを前に釘付けになったのである。

 

ティガは振り向くと、ダイナとガイア両者に手を差し伸べると謝罪の言葉を口にする。

 

 

ティガ「遅くなってごめん」

 

ダイナ「全くだ!おかげで死にかけたぜ?」

 

ガイア「けど、来てくれると信じていた!」

 

 

ダイナは冗談っぽい口調、ガイアは喜びに溢れた口調で言うと、差し伸べられた手を取り、立ち上がる。

3人は前方に存在する敵を睨みながら構えると、ガンQ───魔頭は余裕に満ちた声で話す。

 

 

ガンQ「フッ……いくら数が増えようとも九尾の娘の肉体がある限り、我らには傷1つつけられんわ!」

 

ティガ「ッ!」

 

 

ガンQの言葉にティガは息を呑む。

確かに今のガンQは九重の肉体と生者の魂で構成されている。

万が一ガンQを倒したりしたら、九重はおろか、奪われている生者の魂が元の肉体へ戻る確証はない。

ティガ、ダイナ、ガイアの3人にどう行くまいかと考えてようとした矢先──

 

 

八坂「そこまでじゃ、魔頭!」

 

 

高貴そうな女性の声が聞こえ、両陣営は声のする方へ顔を向けると、一本木の上に立つ八坂と付き人の従者数人の姿があった。

きょとんとしていたガンQだったが、八坂だと知った途端に余裕に満ちた様子に戻り、嘲笑う。

 

 

ガンQ「フッ……誰かと思えば、今代の九尾の御大将か……。私の呪術より劣る貴様が出たところで何の解決にも至らん!」

 

八坂「よう言うてくれるの。お前に散々苦しめられてきた我ら妖怪が何の対策もせずに来ると思うか?」

 

ガンQ「何…?グォォォォ……!!?」

 

 

八坂の自信ある様子に疑問が浮かんだ瞬間、ガンQの足下に緑色に光る結界が現れた。

結界から放たれる光に打たれたガンQは急な脱力感に襲われ、苦しみ始める。

 

 

ガンQ「…ち、力が!抜けていく……!何をしたッ!?」

 

八坂「これは解呪結界じゃ!お前が復活すると知った先祖達が長年の月日をかけて編み出した特殊な技法……呪術を操る者を衰弱させるものじゃ。習得には時間がかかったが、瀬戸際のところで間に合った。さあ、今まで奪い取った魂、娘を返してもらうぞ!」

 

ガンQ「グォォォォーーー!!」

 

 

八坂が言い放つと同時に結界の光は強まり、ガンQは悲鳴をあげる。

すると、ガンQの体から数多の魂が解き放たれ、元の持ち主の元へ飛んでいき、最終的には眼球から九重が飛び出す。

 

 

ティガ「ッ!」

 

 

宙に放り出された九重をティガは地面に落ちる前に滑り込むようにキャッチすると、木の上にいる八坂へ差し渡す。

 

 

八坂「九重!九重!九重!」

 

 

九重を抱き抱えた八坂は呼び掛けながら体を軽く揺する。

その呼び掛けあってか間もなく九重はおぼろげな表情ながらもパチリと目を開いた。

 

 

九重「母上……」

 

八坂「九重!」

 

 

娘の無事に八坂は嬉しさのあまり九重を抱き締める。

この光景に皆が安堵する中、力を失ったガンQは怒りに震える。

 

 

 

ガンQ「おのれェ!おのれおのれおのれおのれェ!!よくもこんな目にィィ!!」

 

 

喚き散らすガンQの体は先程までの完全な状態ではなく、醜悪に満ちた不完全なものへと戻っていた。

先程までの力はもう無く、あるのは醜い魂だけの存在であった。

 

 

ティガ「……フッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ティガはバック転で下がってダイナ達の元へ戻ると、平手にした右手を前、左拳を胸元近くに構えたファイティングポーズをとる。

それに合わせてダイナとガイアも身構える。

 

起き上がった宿那鬼も刀を構え、ガンQの隣に並び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両陣営が睨み合う中、それを遠くの木陰から眺めていたヘビクラはフッと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

ヘビクラ「ヒーローにしては、3対2ってのは卑怯じゃねぇか?」

 

 

そう言いながらヘビクラは蛇心剣を振るって虚空を斬り、闇に包まれた穴を作り出すと、中から傷だらけの怪獣の死骸が飛び出す。

それは以前、ヘビクラが変身したジャンボデュークが倒した怪獣ダイゲルンであった。

バラバラとなった部位を針金のようなもので繋ぎ合わせており、フランケンシュタインの人造人間みたいである。

しかし、尻尾だけは斬られたままである。

 

 

ヘビクラ「こういう時の為に回収しておいて良かったぜ。尻尾は木っ端微塵にしちまったから仕方ないか……。さ、早速働いてもらおうか」

 

 

白目を剥くダイゲルンの死骸にそう言うと、胸ポケットから1枚の怪獣メダルを取り出す。

それは宇宙寄生獣の異名を持つ怪獣──『サイクロメトラ』のメダルであった。

 

ヘビクラはそれをダイゲルンの死骸に投げ入れると、メダルは体内に吸い込まれる。

すると、ビクンビクンと痙攣した後、ダイゲルンはムクリと起き上がった。

 

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

生前と違わぬ気迫で雄叫びをあげるダイゲルン──正確には寄生しているサイクロメトラのメダルは本能から遠くにいる3人のウルトラマンを敵と認識すると、大地を踏み荒らして走り出す。

 

 

ガイア「ッ!デュアッ!」

 

ダイナ「デェアッ!」

 

ティガ「ヂャッ!」

 

 

ダイゲルンの接近に気付いた3人は自然と対戦相手の前に立ち、身構える。

ガイアはガンQ。ダイナはダイゲルン。ティガは宿那鬼に決めた。

高まる緊張感。そして、双方とも合図もなく、その場から駆け出した。

 

 

ガンQ「グォォォォ……!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

駆け寄ったガイアはガンQの触手のような腕から放つ横払いを屈んで避けると、懐に飛び込んでガッシリと捉える。

そのまま抱え上げてクルリと一回転して遠心力をつけ──

 

 

ガイア「デュアァァァァーーーーッ!!」

 

ガンQ「グォォォォオォォォォ…!!」

 

 

豪快に投げ飛ばす。

ガンQはジタバタと手足を動かしながら飛んでいくと、仰向きで地面に叩きつけられる。

 

 

ダイナ「ハッ!」

 

 

ダイゲルンと戦うダイナは地面を蹴って跳躍し、宙で一回転すると、ストロングタイプにタイプチェンジする。

落下の勢いに合わせて両足を突き出したキックポーズをとる。

 

 

ダイナ「ダァァァァーーーーッ!!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

そのまま急降下キックはダイゲルンの脳天に炸裂し、火花を散らした。

ダイナのダブルキックは急降下の勢いもあって強烈な破壊力を生み、ダイゲルンの脳天を陥没させた。

 

 

ダイゲルン「バァァァ~~ッ!バァァァ~~ッ!」

 

ダイナ「…ッ!」

 

 

ダイゲルンは反撃にと尻尾を駆使した凪ぎ払い攻撃を繰り出そうと体勢を低くして、背面をダイナへ向ける。

ダイナも攻撃に警戒して身を固めるが───

 

 

ダイゲルン「?」

 

ダイナ「……?」

 

 

一向に攻撃は来ず、ダイゲルンとダイナは首を傾げる。

それもそのはず。ダイゲルンの尻尾は切断されたままなのだからである。

尻尾が無いことにダイゲルンが困惑していると、好機と見たダイナは胴体に掴みかかる。

 

 

ダイナ「ハァァァ……!デェアッ!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

 

そのままダイナはダイゲルンを力任せに投げ飛ばす。

ダイゲルンは地面に何度も叩きつけられながら遠くへ転がっていく。

 

宿那鬼と対峙するティガは振り払う刀を避けながらカウンター攻撃を与えていく。

 

 

宿那鬼「ガァァ……!」

 

ティガ「チャッ!」

 

 

ティガは横一直線の剣撃を前回りに跳躍して回避する。背後にあった木々は寸分の狂いなく斬れ、地に落ちる。

背後に回ったティガは脳天目掛けて手刀を叩き込もうと駆け出すが──

 

 

宿那鬼「ガァァ!!」

 

ティガ「ッ!?」

 

 

宿那鬼の後頭部を覆う白色の長い髪がめくれ、もう1つの顔が露になる。

驚きのあまり立ち竦んだティガに口から吐く突風を浴びせる。

 

 

ティガ「ヂョアァァッ!?」

 

宿那鬼「ガァァァァ…!」

 

 

突風でバランスを崩したティガはスッ転ぶ。

その隙に宿那鬼は刀を振り下ろすが、ティガは前転して回避する。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

ドォンッ!

 

宿那鬼「ガァッ!?ガァァァァ……!」

 

 

後ろに回ったティガは反撃に手から光弾───『ハンドスラッシュ』を放つ。

胸元に直撃した宿那鬼は火花を散らして一瞬怯むものの、刀を正面に構え、雄叫びをあげながら突撃を仕掛ける。

 

 

ティガ「ハッ!!」

 

宿那鬼「!?」

 

 

ティガはすかさず胸元のプロテクターに両腕を交差させてエネルギーを蓄えると、両腕を伸ばして光のカッター───『ティガスライサー』を発射した。

放たれた光のカッターは目前に迫る刀だけでなく、宿那鬼の首をも通過した。

 

 

パシィィィンッ!!

 

ティガ「……」

 

 

迫っていた宿那鬼は動きを止め、勢いが残る眼前の刀をティガは白刃取りで受け止める。

しばらく沈黙が続いた後、ティガはゆっくりと立ち上がると、切断された刀は真っ二つになって崩れ落ち、宿那鬼の頭は胴体から離れ落ちた。

ティガは未だ倒れない胴体に違和感を感じつつも背を向けて歩き出す。

誰もが勝負ありと思ったその瞬間だった。

 

 

ゼノヴィア「ティガ!後ろだッ!」

 

ティガ「ッ!」

 

 

ゼノヴィアの鬼気迫る声が聞こえ、ティガは振り向くと、頭を失った宿那鬼の胴体が斬れた刀を振り下ろそうとしていた。

ティガは紙一重のところで横へ回避すると手を蹴り上げて刀を弾き飛ばす。

 

 

ティガ「フッ!ヂャッ!」

 

 

尚も暴れる宿那鬼の胴体を重量上げのように持ち上げると、ガンQとダイゲルンが倒れる場所へ投げ飛ばす。

宿那鬼の胴体は地面を転がっていく。

 

すかさずティガは突き出した両腕を前方で交差させて大きく横へ広げる。

紫色にかがやく光のラインが描かれると共にエネルギーが集約されていく。

 

 

ガンQ「グォォォォ……!」

 

ダイゲルン「バァァァァァ~~ッ!!」

 

「「ハッ!/デュアッ!」」

 

 

ガンQとダイゲルンは悪あがきに目から光弾と口から火炎を吐くが、ダイナとガイアの展開したバリアーに防がれる。

その間にエネルギーを溜めたティガは腕をL字に構え──

 

 

ティガ「ヂャァッ!!!」

 

 

白色に輝く必殺光線───『ゼペリオン光線』を放った。

高火力の光線は3匹の怪獣に命中し、倒れると同時に爆発四散した。

 

 

ドガガガガァァァァンッ!!

 

 

大爆発が起き、真っ赤な光が暗闇を照らした。

ガンQ──魔頭が倒されたことによって暗雲が晴れ、太陽が天々と昇る青空が顔を覗かせた。

 

 

木場「やった!」

 

 

その光景に木場はいつものキャラを忘れ、ガッツポーズをとる。

他の面々も嬉しそうに顔を見合わせる。

 

 

ダイナ「大悟!やったな!」

 

ティガ「ああ。君達がいてくれたから僕は戦えた」

 

ガイア「何を言うんだ。君がいてくれたから僕達もまた戦えた、だろ?」

 

 

ダイナ、ティガ、ガイア───3人のウルトラマンもまた駆け寄り、喜びを分かち合う。

3人の幼馴染みはウルトラマンとなっても絆は変わらない。

 

 

宿那鬼「ガァァァ……ッ!!」

 

 

歓喜の最中、地面に倒れていた宿那鬼の頭がムクリと起き上がる。

頭だけとなっても執念から動こうとしているのだ。

不意を突いた頭は背後からティガの首もと目掛けて飛びかかる。

 

 

ガイア「ッ!後ろ!」

 

ティガ「フッ!?」

 

 

ガイアが気付き声をあげ、ティガは振り向くも宿那鬼の頭は目前と迫っていた。

首もとを捉えた宿那鬼の頭は牙を突き立て接近する。

 

どうしようとも間に合わない。その危機一髪の瞬間、一筋の輝きが宿那鬼の眉間に突き刺さった。

それは景竜の放った愛刀だった。

 

 

宿那鬼「ヴゥゥヴァァァ……!!」

 

 

宙でピタリと止まった宿那鬼は呻き声をあげると、刀から放たれる封印の力によって淡い光に包まれ、再び宿那山へと封印された。

 

皆がホッとひと息つく中、ティガ、ダイナ、ガイアの脳裏に景竜の声が響く。

 

 

──────間一髪、だな。頭1つなら拙者でも倒すことが出来る。さらばだ、光の人らよ

 

 

その言葉に3人は頷く。

何やかんやあれど、最後は景竜によって助けられたのは事実だ。

この言葉を最後に景竜の声は聞こえなくなった。

 

 

ティガ「ヂョアッ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ガイア「デヤッ!」

 

 

3人は両腕を空高く広げると共に大地を蹴ると、そのまま遠い空へと飛んでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、宿那山麓に集まった一同は途中で気を失っていたイリナと合流し、安否の確認と今回の出来事の情報交換、今後の対策を行っていた。

 

話し合った結果、刀を収めた景竜の御堂は未来永劫見つからないように強力な結界を月1のペースで張り直す方針にした。

人に見つかったのはその結界が弱まっていた為であり、今後はそのようなことが無いように厳重にするそうである。

 

 

九重「大悟!」

 

 

皆が談笑する中、大悟を見かけた九重はぴょんと彼の胸へ飛び込む。

大悟は九重が落ちぬように抱え上げる。

 

 

九重「魔頭の中から見ていたぞ。必死に私を助けようとしていたことを。ありがとう」

 

大悟「礼を言うのはこっちだよ。九重のおかげでケジメをつけれたし。本当にありがとう」

 

 

大悟は感謝の言葉を返す。

大悟が戦う決意のキッカケは景竜もあるが、何より九重のおかげである。彼女の言葉がなければ今頃迷っていたであろう。

 

そんなこんな会話をしていると、イリナが「あ!」と何かを思い出したように声をもらす。

皆が問いかける視線を送ると、イリナは皆の顔を見合わせて話す。

 

 

イリナ「景竜様が言ってたわ。『強者は常に孤独だ』って言ってたわ……」

 

大悟「常に……孤独?」

 

イリナ「うん。『強者は勝ち続けなければならない。その為に孤独になる』って。何のことかサッパリだけど」

 

 

そう言ったイリナは言葉の意味をわからず、首を傾げる。

──強者は常に孤独。いい加減なところもある景竜の残したこの言葉は深い意味は無いのかもしれないが、大悟、一誠、我夢──ウルトラマンである彼等の胸に強く響いた。

 

真剣なムードにアザゼルはコホンと咳払いをすると、話題を切り替え、大悟の問いかける。

 

 

アザゼル「それはそうと、お前さん。これからどうする?俺達に着いていくか?」

 

 

───俺達に着いていく。即ち、XIGの一員として戦いの中へ身を投じるということである。ここでYESと答えを出せば、抜け出したくとも抜け出せない辛い出来事にも直面するであろう。引き返すなら今である。

 

皆が息を呑んで大悟の答えが出てくるのを待ち望む中、大悟の導き出した答えは────

 

 

大悟「……戦います。みんなと一緒に。託された力の意味を探したいんだ」

 

 

YESだった。決してそれは流されるままでなく、ハッキリと自分の意思で決めたものだ。

その証拠に大悟の眼は揺らぎない意思を秘めており、これまで何億人もの人物と出会ってきたアザゼルにはヒシヒシと伝わった。

アザゼルはニッと口角をあげると、手を差し出す。

 

 

アザゼル「よし、わかった。これからよろしく頼むぜ?長野 大悟()()?」

 

大悟「ええ!」

 

 

冗談っぽく話すアザゼルに笑顔を向けた大悟は差し出された手を取って握手を交わす。

 

こうして、大悟はXIGの一員となった。

しかし、それは同時に戦いが激化することも意味していた……。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM)

戦う決意をし、XIGに加入した大悟。
新しい仲間への歓迎で盛り上がる一方、新たな陰謀が動きだそうとしていた……。

次回、「ハイスクールG×A」
「サ・ヨ・ナ・ラ京都」
お楽しみに!






アンケートの結果、サイラオーグさんにパワーアップアイテムを授けることになりました!
どのようなアイテムが授けられるか是非お楽しみに!


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第57.5話「Pull the Trigger ~next future~」

大悟「???」

 

 

大悟は脳の理解が追い付いていなかった。

戦いが終わり、つい先ほどまで大悟は八坂の御殿にある客室で寝ていた筈だった。

 

しかし、いざ目覚めてみればどこかもわからない赤茶けた砂漠の上に立っていた。

大悟は世界を旅してきたこともあって景色を見ればすぐに思い出せるのだが、今いる場所は何処の地域にも当てはまらない。

 

 

ゴゴゴゴ……!

 

大悟「…っ、地震か!?」

 

 

───これは幻覚か?そう思った矢先、地鳴りと共に大地が揺れ始める。

足下をすくわれないよう、大悟はその場でしがみつくように伏せていると

 

 

ドガガァァァァン!!

 

「ゴォガゴォガ!パァァァーーーーーッ!!」

 

大悟「!?」

 

 

突如、地中から岩石と砂煙を巻き上げながら怪獣が出現した。

砂煙が晴れ、怪獣の風貌が明らかになると、大悟は顔を上げ、目を丸くした。

 

何故ならその怪獣はゴルザとメルバ───ティガである自分が倒した2体の古代怪獣が合体したような姿だったからだ。

 

 

大悟「何だ、あの怪獣!ゴルザか?!いや、メルバなのか?」

 

 

何処かわからない土地に飛ばされ、更にゴルザとメルバの特徴を併せ持つ怪獣の登場に大悟はますます意味不明になる。

だが、このまま野放しにする訳にはいかない。ティガに変身しようと懐のスパークレンスを取り出した時だった。

 

 

Boot up!Lightning!

 

「伏せて下さい!」

 

大悟「ッ!?」

 

 

電子音と青年の声が後ろから聞こえてきた。

危機迫った声音に大悟はすぐさま指示通りに頭を伏せた。

すると、自分の真上を通って雷光が直線上に放たれ、怪獣の頭部に炸裂した。

 

 

「ゴォガゴォガ!パァァァーーッ!!」

 

「大丈夫ですか?!」

 

 

怪獣は頭部から走る電撃で身体中が痺れる。

怪獣が怯んでいる隙に青年は大悟を保護すると、そのまま近くの洞窟の陰に身を隠した。

 

身を隠す中、大悟は薄暗い洞窟に差す光で露になる青年の顔を見た。

 

背は180センチ。年齢は自分の2つ下くらいで、明るい茶髪にサファイアのような青い瞳をしたイケメンだった。

服装は自分に支給される予定のXIG隊員服に似ており、先ほどの電撃光線を放ったであろう白い銃を右手に持っていた。

大悟は青年の名を訊ねてみることにした。

 

 

大悟「助けてくれてありがとう。僕は長野 大悟。君は?」

 

大翼「あっ、はい。僕の名前は大翼(つばさ)です!大いなる翼って書いて大翼。まだ入りたてですが、『XIG-SELECT(セレクト)』の隊員です!」

 

大悟「XIG-SELECT?」

 

大翼「はい。地球を中心に太陽系の超常現象や怪事件の調査、侵略者からの防衛を目的とした組織です!……ご存知ないですか?」

 

 

首を傾げる大翼の問いに大悟は頷く。

XIGは自分が所属する予定の組織なのでわかるが、XIG-SELECTなんて組織は聞いていない。

別に組織があるのか?と大悟が思った矢先、先ほどまで痺れていた怪獣は活動を再開した。

 

 

ゴルバー「ゴォガゴォガ!パァァァーーッ!!」

 

大翼「ゴルバーの奴、もう回復したのか!」

 

大悟「ゴルバー?それがアイツの名前か!」

 

 

大翼の独り言から目の前の怪獣の名前がゴルバーであると察した大悟。

“ゴルバ”ではなく、“ゴルバー”なのは安直なネーミングと思われなくないだからだろうか。

 

 

ゴルバー「ゴォガゴォガ!」

 

 

それはさておき、自分を攻撃した大翼を見つけたゴルバーは額のメルバの眼からオレンジ色の破壊光線で襲いかかってきた。

 

 

大翼「うわっ!?」

 

ドォォンッ!

 

 

大悟と大翼はその場から疾走し、避難する。

先程まで身を隠していた洞窟は木っ端微塵に吹き飛んだ。

その後も次々と放たれる光線をかわしていく。

 

 

大悟「こうなったら…!」

 

 

ティガに変身するしかない!大悟はスパークレンスを前へ突き出してから引っ込めると同時に水平にした片方の腕と交差させる。

そのまま回転させようとした時、その腕を大翼に止められる。

 

 

大悟「?」

 

大翼「ここは僕に任せて下さい」

 

 

疑問の表情を浮かべる大悟に大翼は自信ありげにそう言うと、そのまま三歩前へ出る。

バックルの左側に差している紫色のUSBメモリに似たガジェット───『XIGハイパーキー』を取り出すと、上部のスイッチを押した。

 

 

Ultraman Trigger!Multi Type!

 

大悟「(ウルトラマン……トリガー?)」

 

 

シグハイパーキーから聞こえる知らないウルトラマンの名前に大悟は疑問符を浮かべる中、大翼はXIGハイパーキーを白い銃───『XIGスパークレンス』の持ち手の下部スロットに装填する。

 

 

Boot up! Zeperion!

 

 

装填認証音声が流れると、大翼はXIGスパークレンスの銃身を手動で開き、スパークレンスモードに変形させる。

左右に開いたウィングパーツから菱形のレンズが現れた。

 

 

大悟「(何か、似てる……)」

 

 

変形したXIGスパークレンスと自分が手に持っているスパークレンスと見比べて、大悟は似ているなと感じた。

 

 

大翼「未来を築く、希望の光!

 

 

そう言いながら、大翼はXIGスパークレンスを左斜め前へ突き出してからゆっくりと顔の真横へ持ってきて水平にした片方の腕と交差させると、戦士の名を叫ぶ。

 

 

大翼「ウルトラマン……トリガーーッッ!!!

 

Ultraman Trigger!Multi Type!

 

 

その掛け声と共に内側に一回転させたXIGスパークレンスを掲げ、トリガーを押す。

すると、次の瞬間。XIGスパークレンスのレンズ部分から放たれた目映い光が大翼を包み、戦士───ウルトラマントリガーへと変身させた。

 

 

大悟「……ッ!?ティガ!?」

 

 

大悟は目の前にいる大翼がウルトラマンに変身した状況に驚愕する。

小顔ながらもティガに似た容姿とボディーカラー。

手足と胸元に金色のプロテクターに額に輝く菱形のクリスタル。

そして、胸元の中心に青く輝く菱形のカラータイマー。

これこそウルトラマントリガーである。

 

 

トリガ-「エァッ!」

 

 

トリガ-は軽く開いた右手を前、左握り拳を後ろに引いた───何処かティガに似たファイティングポーズを取ると、ゴルバ-に立ち向かっていく。

 

 

ゴルバ-「ゴォガゴォガ!」

 

トリガ-「フッ!テヤッ!」

 

 

ゴルバ-は大木のような両腕を振り回して攻撃するが、トリガ-はその優れたフットワークを駆使してかわすと、横腹に回し蹴りを打ち込む。

その一撃にゴルバ-の体勢は崩れる。

 

 

トリガ-「タァッ!トゥアッ!!」

 

 

ゴルバ-に生じた僅かな隙にトリガ-は格闘戦で攻め立てる。

左右のパンチを胸元へ打ち込み、左のチョップを脳天に炸裂された後、右足のストレートキックで蹴り飛ばした。

 

 

ゴルバ-「パァァァァ--ッ!!」

 

ドォォォォォォンッ!!

 

 

吹っ飛ばされたゴルバ-は付近の岩山に叩きつけられる。

岩山はゴルバ-の重さに耐えきれず吹っ飛び、岩石が辺りに飛び散る。

 

 

トリガ-「テヤッ!」

 

 

順調な流れを掴んだトリガ-は追い討ちをかけるべく、ゴルバ-のもとへ駆け出す。

 

しかし、このままやられっぱなしでいるゴルバ-ではない。

ゴルバ-は岩山から崩れ落ちるいくつもの岩石を拾うと、それを一直線に向かってくるトリガ-に投げ付けた。

 

 

トリガ-「ゥウアッ!?」

 

ゴルバ-「ゴォガゴォガ!パァァァァ--ッ!!」

 

 

飛んでくるトリガ-が気をとられて怯む中、ゴルバ-は背中の翼を広げると空高く飛翔。

ある一定の高度に到達すると、そこから急降下して体当たりをくらわせる。

 

 

トリガ-「ゥウアッ!!」

 

 

もろに受けたトリガ-の胸元からは火花が飛び散る。

トリガ-は何とか捉えようとするがその隙もなく、Uタ-ン飛行するゴルバ-の体当たり攻撃をまた受けてしまい、仰向けに倒れてしまう。

 

 

トリガ-「フッ!」

 

Circle Arms. Multi Sword.

 

 

負けじとすぐさま立ち上がったトリガ-は虚空に手をかざすと、何処からともなく飛んできた武器を手にする。

丸い輪に紫色の刃が着いた剣────トリガ-専用武器であるサ-クルア-ムズである。

サ-クルア-ムズを手にしたトリガ-は大地を蹴って飛翔する。

 

 

ゴルバ-「パァァァァ--ッ!!」

 

トリガ-「ツアッ!タァッ!」

 

 

そうはさせまいとゴルバ-は額のメルバの眼からオレンジ色の光線で撃ち落とそうとするが、トリガ-はかわしながら、ときにサ-クルア-ムズの刀身で防ぎながら、上昇していき、ゴルバ-の背後に回り込んだ。

 

 

Maximum!Boot up!Multi!

 

トリガ-「ェアァァァァ----ッ!!」

 

ゴルバ-「ゴォガァァァ----ッ!?」

 

ドォォォォォォンッ!!

 

 

サ-クルア-ムズの刀身にエネルギーを込めたトリガ-は横一文字に振り払った。

飛んでいく紫色に輝く斬撃はゴルバ-の両翼を斬り落とし、飛行を支える部位が無くなったゴルバ-は地面へと落下していった。

 

 

ゴルバ-「ゴォガゴォガ!パァァァァ--ッ!!」

 

 

地面に土砂を巻き上げながらゴルバ-は立ち上がる。

翼を失っても尚、闘争心は消えておらず、翼を斬り落としたトリガ-への憎しみでヒ-トアップしていた。

 

 

トリガ-「ハァッ!」

 

 

地上へ降り立ったトリガ-はサ-クルア-ムズを地面へ突き刺すと、突き出した両腕を交差させ、真横へ広げる。

すると、横一直線に紫色の光のラインが描かれると共に体の手足や胸にある金のプロテクターが紫色に光輝き、エネルギーが溜められていく…。

 

 

トリガ-「トゥアッ!!!」

 

 

エネルギーを溜めたトリガ-はそのまま腕をL字に組み、白色に輝く破壊光線を放つ。

ティガと同じ必殺光線────ゼペリオン光線だ。

 

 

ゴルバ-「ゴォガゴォガ!!ピィィィ----ッ!!!」

 

ドガガガガガガァァァァァンッッ!!!

 

 

対象を捉えた白色光線はゴルバ-に命中し、瞬く間にゴルバ-は断末魔をあげながら爆発四散した。

 

 

大悟「……」

 

 

その光景を終始眺めていた大悟は開いた口が塞がらなかった。

───ゴルバとメルバの合成怪獣。

───聞いたことのない防衛組織。

───ティガに似たウルトラマン。

しかも、そのウルトラマンはティガと同じ光線技を使った。

困惑しない筈がないのだ。

 

 

大悟「…?」

 

 

そのせいなのか、急に眠気が大悟に襲いかかる。

まぶたが重く、足下がふらつく。

あまりもの睡魔に大悟は両ひざをついた。

 

 

大悟「……ウルトラマン……トリガ-……」

 

トリガ-「……」

 

 

薄れる意識の中、大悟は目の前に佇む巨人の名を呟く。

トリガ-がこちらをジッと見つめるのを最後に大悟は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「………はっ!?」

 

 

ガバッと身を起こした大悟は辺りを見渡す。

景色は先程までいた砂漠ではなく、裏京都の客人用の寝室で、敷き布団の上に座っていた。

 

 

大悟「あれは夢、なのか?」

 

 

この状況を見て、大悟は今の今まで体験していた出来事は全て夢であると納得した。

見知らぬ土地にXIG-SELECTにウルトラマントリガ-───夢にしてはやけに鮮明であったが、どれもあり得ないことばかりだった。

 

そう、きっと夢なのだろう。

戦闘での疲れが溜まった影響で見てしまった夢だ。

大悟は自らに言い聞かせて納得させ、再び布団に横になろうとした時だった。

 

 

大悟「ん?」

 

 

枕元に何かがあるのを目にした。

寝る前には明らかに無かったことはこの部屋を何日も使っている大悟にはすぐわかった。

大悟はそれを手に取ると、紫色のUSBメモリに似たガジェット────大翼が使っていたXIGハイパーキ-だった。

 

 

大悟「何でこれが?」

 

 

大悟は夢の産物であるものが現実にあることに不可解に思いながらXIGハイパーキ-に目を通す。

キ-の正面にはステンドグラス状の絵が描かれているが、手に持っているキ-に描かれているのはトリガ-ではなく、ゼペリオン光線のポーズを構えるティガだった。

 

大悟は不思議に思いながら、大翼が使っていたようにキ-の上部スイッチを押した。

 

 

 

Ultraman Tiga!Multi Type!

 

 

 

 

 




はい!ということで2ヶ月投稿しなかったお詫びとしてのサプライズ回でした。
現在(2021年)放送中の『ウルトラマントリガー』に便乗しまして、こういったコラボ回を書いてみました。

最後は意味深な終わりをしてますが、ストーリーには一切関係ありませんので、PVの気持ちで頂くと幸いです。


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第58話「サ・ヨ・ナ・ラ京都」

今回は短いけど許してね♪



京都最終日。遂に京都を発つ日がやってきた。

我夢達───グレモリー眷属の面々は購入したお土産を詰めた袋を手に持ち、京都駅の新幹線ホームにいた。

見送りには八坂と九重、何故かセラフォルーが来ていた。

セラフォルーは今回の騒動の中、陰で色々と支援しており、そのせいで京都を満喫出来なかったのでその分をこれからしてくるそうだ。

 

 

一誠「あー…もうこことはお別れか。なんか寂しいな……」

 

 

名残惜しそうに呟く一誠に皆はうんうんと頷く。

旅行先でも戦いに巻き込まれた訳だが決して辛かっただけでなく、楽しいこともあった。

色々あったが、思い返せば割といい思い出だったと皆は思った。

 

 

大悟「お世話になりました!」

 

八坂「こちらこそ。娘が世話になったのぅ」

 

 

大悟は笑顔で八坂に感謝を告げる。

京都を発つのはグレモリー眷属だけでない。XIGの一員として、ウルトラマンティガとして戦う決意をした大悟もこの京都を離れるのだ。

 

 

九重「もう行ってしまうのか」

 

 

八坂の手を繋ぐ九重は寂しそうに顔を俯かせる。

それも当然だ。出会いは突然であれど、ここ数日間は家族のように一緒にいたのだから。

 

しょんぼりとする九重に大悟はニコッと笑顔を浮かべると、膝をついて目線の高さを合わせ、ポンッと軽く頭に手を乗せると優しく語りかける。

 

 

大悟「心配するなって。ほんの少し会えなくなるだけだから。時間が出来たら、また遊びに来るよ」

 

九重「…ッ、本当か!?絶対、絶対にか!?」

 

大悟「ははっ、絶対に来る。その時はみんなと一緒に来るから、また京都中の案内を頼むよ」

 

九重「うむ!約束じゃぞ!」

 

 

大悟の言葉ですっかり元気になった九重は約束の握手を交わす。

その何とも微笑ましい光景に八坂は口元を手で覆いながらクスリと笑った。

 

 

ピピピピ……!

 

 

そして、談笑の終わりを告げるように新幹線の発射音がホームに鳴り響いた。

我夢達は荷物を持って新幹線に乗り込む。勿論アザゼルもだ。

全員が乗り込むのを確認した八坂はアザゼルに話す。

 

 

八坂「アザゼル殿、そして皆方。本当にすまなかった。礼を言うても尽くしきれない程感謝しておる。これからはあのような輩によってこの京都が恐怖に包まれぬよう、他神話と協力態勢を敷くつもりじゃ」

 

アザゼル「おう!歓迎するぜ!」

 

 

アザゼルは笑顔でそう返しながら八坂と固い握手を交わした。

八坂達、京都妖怪も昨夜、XIGへ正式加入した。

また仲間が増えたことで組織としての規模が大きくなるのは皆にとって嬉しい限りだ。

 

 

セラフォルー「うふふ♪みんな、帰り気を付けてね♪ちゃんとみんな分のお土産買って帰るから楽しみに待っててね☆」

 

 

いつもと変わらないニコニコスマイルでそう言いながらセラフォルーは手を振る。

京都を満喫するとは言っても、この後八坂と改めて詳しい取り決めを行う予定だ。

 

新幹線の扉が閉まろうとする時、九重は手をメガホンのように作って口元に当て、大きな声で叫ぶ。

 

 

九重「ありがとう!大悟!皆!また会おう!」

 

 

満開の笑顔で手を振る九重に我夢達も笑顔で手を振ると、新幹線の扉はプシューと音を立てて閉まった。

 

発射しても尚、我夢達は手を振り続ける九重の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「大悟。今、大丈夫?」

 

 

京都駅を発射して10分ぐらい経った頃。窓際の席から外の景色を眺めていた大悟に我夢はそう声をかける。

勿論、駒王町に着くまで特に何もすることがない大悟は大丈夫と返事すると、我夢はニコッと笑みを浮かべると隣の席に座った。

 

 

我夢「よかった。これは重要だから、どうしても伝えておきたくて」

 

大悟「…重要?一体、何を?」

 

我夢「ティガとしての戦い方さ」

 

 

大悟の疑問に我夢はそう答えつつ膝の上に出したノートパソコンを操作すると、画面に3タイプのティガを並べたデータを表示させた。

それを見せながら我夢は説明し始めた。

 

 

我夢「まず、ティガはガイアやダイナみたいな地球が産んだウルトラマンと違って、()3()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

大悟「どうして、そう言い切れる?」

 

我夢「胸のタイマーが点滅した際のエネルギー低下が激しかったからさ。地球の環境に適応しているガイアやダイナはともかく、ティガは宇宙から来た存在……。元々住んでいた環境と違う場所じゃ慣れないものだろ?」

 

 

我夢の説明に大悟は納得する。

カラータイマーが点滅してからやけに苦しかった気がするのは、巨人の体が環境に慣れてないからだと思えば納得出来る話だ。

 

我夢は続けて別のウィンドウを開くと、深夜に撮られたと思われる映像を流す。

それは大悟がティガとして初めて戦ったゴルザ、メルバ戦時のものである。

我夢は映像に合わせて再び説明し出す。

 

 

我夢「最初の体が赤と紫色の姿───仮に名付けるとしたらマルチタイプの状態だった。でも、体色が赤一色のパワータイプになることでマルチタイプよりも強力なパワーを発揮できる」

 

大悟「だったら、最初から赤で戦えばいいんじゃ…」

 

我夢「いや。それがそうでも無いんだ」

 

 

大悟の意見を否定した我夢は映像の再生速度を速めると、その証拠となる映像を見せる。

それはマルチタイプとパワータイプ、それぞれのティガがメルバと戦う映像を2分割にしたものだった。

 

 

我夢「パワータイプは確かに強い力を出せる。でも、その分、スピードが遅くなってしまうんだ」

 

 

映像の通り、マルチタイプのティガの蹴りはメルバに命中しているのに対し、パワータイプのティガの蹴りは掠りもせず、軽々とかわされている。

パワータイプ一強ではないとわかった大悟は喉を唸らせる。

 

次に我夢はスカイタイプのティガがメルバと戦う映像に切り替える。

映像に映るティガは空高く跳躍し、上空へ逃げようとするメルバを蹴り落とした。

 

 

我夢「反対に紫一色のスカイタイプになれば、動作は機敏になる。けど、パワーが落ちてしまうんだ」

 

 

そう言って映像をパワータイプとスカイタイプのものに2分割したものに切り替える。

大悟はパワータイプの攻撃では相手が大きく怯んでいるのに対し、スカイタイプはそれほど怯んでいないように見えた。

 

 

我夢「敵に与えるダメージが大きいのはパワータイプ。けど、スカイタイプでメルバを倒せたのは相手が身軽だったからだよ。後、マルチタイプは特出するスペックは無いけど、光線の威力は最も高いんだ」

 

大悟「なるほど……。使い分けて戦えばいいのか」

 

 

我夢の説明ではっきりとわかった大悟は納得した表情を浮かべる。

これまで2回戦ってきたが、どれも無我夢中で戦っており、自信の能力について理解出来ていなかった。

しかし、この説明を受けて今後の戦い方について深く理解出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王町に着いた一向は大悟をリアスや小猫といった1、3年生組に紹介する為、兵藤家の一室に集まっていた。

玄関で大悟と再会した一誠の母は大喜びしており、張り切って料理を作っている。

 

 

リアス「あなたが長野 大悟さんね?話は我夢とイッセーから聞いてるわ。これから“大悟”って呼ぶけどいいかしら?」

 

大悟「もちろん!皆さんのお役に立てるよう頑張ります!」

 

リアス「こちらこそ歓迎するわ」

 

 

笑顔を交わしながらリアスと大悟は握手する。

眷属ではないが、また新しい仲間が増えたことは喜ばしいものである。

軽く挨拶を交わすと、リアスは指をパチンと鳴らし、手元に現れた1枚の書類を見ながら訊ねる。

 

 

リアス「……それで、私達の学園で働きたいということだけど、丁度歴史の先生が抜けているから配属先はそこでいいかしら?」

 

大悟「はい。教員免許は取ってますし、何より歴史は得意分野なんで」

 

リアス「わかったわ。後はこちらで調整するから、決まったら教えるわ」

 

 

ひとしきり話し終えたリアスはさてと呟きながら別の方へ視線を向ける。

そこでは我夢達2年生組がバツの悪い顔を浮かべて正座していた。

今回起きた曹操の件、ガンQの件について報告してくれなかったからだ。

ちなみにロスヴァイセは旅行疲れで体調を崩し、自室で寝込んでいる。

 

リアスは半眼で問いかける。

 

 

リアス「何で教えてくれなかったの?ソーナは知っていたのよ?私達も大変だったけど、少しくらい相談して欲しかったわ」

 

『は、はい……』

 

 

リアスの言い分に我夢達6人はぐうの音も出なかった。

リアス達もグレモリー領で騒動があったので直接救援に向かうことは難しいが、話すことは出来たはずである。

少し眉間にしわを寄せる朱乃、小猫が続けて話す。

 

 

朱乃「そんな大変なことがあったなんて……。お仲間として頼って欲しかったですわ」

 

小猫「……水くさいです」

 

ギャスパー「ま、まあ、皆さん無事で帰って来れたのですから……」

 

 

ご立腹の2人を宥めるようにギャスパーは苦笑いで言う。

今回の件は反省すべき場面は多々あったが、こうして五体満足で帰って来れたのはそれはそれで良いものである。

そのことについてアザゼルはソファーで酒を嗜みながらフォローの言葉をかける。

 

 

アザゼル「京都妖怪の連中もXIGに加わったし、新しい仲間が加わったし、メシや観光も良かったしよ」

 

我夢「うんうん。それに九尾の女の子!可愛かったよね~。僕も妹がいれば、あんな子がいいなぁ~~」

 

アザゼル「お前がそんなこと言うなんて珍しいな。何だ?お前、もしかしてああいう幼女が好みなのか?」

 

 

ニヤニヤと冗談めいた口調で問いかけるアザゼルに我夢はハハッと笑いのけると、いやいやと手を横に振る。

 

 

我夢「よして下さいよ。僕は小さい女の子にそんな目を向けません。合意だとしても法律的にアウ───」

 

 

と笑いながら話していると、小猫の拳が腹部に炸裂する。

突然のことに皆はあっと息をのむ中、我夢は腹部の痛みに顔を歪めながら小猫に問いかける。

 

 

我夢「……ど、どうして……?何の恨みが……?」

 

小猫「……別に。何となくです」

 

 

そう短く答えると小猫はプイッとそっぽを向く。

小猫が怒っている理由は他の皆には大体わかるが、原因となった我夢には全く理解できなかった。

 

変な空気になる中、アザゼルはハハッと笑って切り替えると、リアスに──

 

 

アザゼル「まあ、悪いことばかりじゃねぇし今回は大目に見てやってくれ。大悟もいるしよ」

 

リアス「……そうね。今夜は大悟の歓迎でもあるし、今回の件についてはここでお終いにするわ」

 

 

アザゼルにそう呈されたリアスは頷く。

やや強引気味で話をまとめたが、とにかく今は新しい仲間が加わったことを喜ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王町から遠く離れた九州地方の熊本県。

夜空を包まれ、人里離れた山中にヴァーリとルフェイ、手懐けたフェンリルの姿があった。

 

 

ルフェイ「───以上、京都での活動報告でした」

 

ヴァーリ「ああ、ご苦労だった。わざわざここまで来てもらって悪いな」

 

ルフェイ「いえいえ~。大した距離ではありませんから」

 

 

ヴァーリの労いの言葉にルフェイは照れ臭そうに頬を緩める。

京都から熊本までかなり距離があるが、魔法使いである彼女なら一瞬のことだろう。

 

ルフェイは笑顔を保ちながら本題に切り込む。

 

 

ルフェイ「ところでヴァーリ様。見せたいものがあると仰ったですが……もしかして、()()()()が見つかったのですか?!」

 

ヴァーリ「ああ。他の皆にはもう見せたが、お前にも見せておこうと思っていてな。───フェンリル」

 

フェンリル「ガウッ!」

 

 

ヴァーリの呼び掛けに応じたフェンリルは短く吠えると、近くの洞窟の中へ入る。

ヴァーリとルフェイもその後に連れて洞窟へ入っていく。

 

ルフェイの魔法で灯りを灯しながら進んでいく中、ルフェイはヴァーリに問いかける。

 

 

ルフェイ「ヴァーリ様。例のものを探すのにどうして、フェンリルが必要だったのですか?」

 

ヴァーリ「それは簡単さ。フェンリルはあらゆる神仏を一瞬で嗅ぎ付ける特性がある。それが3000万年も前であっても正確にだ」

 

ルフェイ「へぇ~~そうだったんですね」

 

 

ヴァーリの説明にルフェイは相槌を打つ。

今までロキからフェンリルをどうしても手に入れたい理由がわからなかったが、フェンリルの嗅覚を知り、ハッキリとわかった。

 

 

フェンリル「ガウッ!」

 

ヴァーリ「着いたみたいだな」

 

 

そうこうしていると前方にいたフェンリルが2人に知らせるように吠える。前方には拓けた場所が見えていた。

目的のものへ辿り着いたと察したヴァーリはフェンリルにその場で待機するように指示すると、ルフェイを連れて拓けた場所へ出た。

 

その場所は広々とした空間が広がっており、その広さは向こう側の壁が見えないくらいだ。

ルフェイはキョロキョロと辺りを見渡しながら着いていくと、ヴァーリは立ち止まる。

ルフェイも合わせて立ち止まると、ヴァーリは前方の上へ指差す。

 

 

ヴァーリ「ルフェイ。これが例のものだ」

 

ルフェイ「……ッ!?」

 

 

ヴァーリが指差す方へ視線を向けたルフェイは例のものが目に入った瞬間、言葉を失う。

 

果たして、視線の先にあったものは──────。

 

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告BGM)

オカルト研究部に飛び込んできた依頼。
それはフェニックス家の三男、ライザーの再起だった。
猛特訓に明け暮れるライザーが目撃したのは侵略ロボットの建造現場だった。

次回、「ハイスクールG×A」
「蘇らない不死鳥」
お楽しみに!



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EX「ハロウィンの夜に」 ※ハロウィン特別回

異次元人 ギランボ 登場!


───10月31日 ハロウィンの夜。

 

夜空に浮かぶ満月のもと、人々がハロウィンで賑わう中、遥か上空──赤道上に位置する要塞エリアルベースでは我夢達は真剣な表情でモニターとにらめっこしていた。

 

エリアルベースでは地球の周りを飛ぶ衛星観察機で捉えたあらゆる気象現象、怪獣の出現などを瞬時に見ることが出来る。

三大勢力がこのシステムに関わっているので人間界だけでなく、天界や冥界なども見ることが可能だ。

 

逸れてしまったが、話を戻そう。

我夢達がこぞって集まっている理由は、モニターに表示されている冥界の上空には通常では考えられない磁場が発生しているからだ。

解析している我夢は不思議そうに声をもらす。

 

 

我夢「こんな強い磁場、初めてだ……」

 

石室「冥界とはいえ、ただの気象現象とは思えないな。怪獣の仕業と考えるべきか……」

 

 

椅子に座る石室はモニターを睨みながら呟く。

冥界にも気象はあるにはあるが、磁場が強まる現象は聞いたことがない。

行動に移すべきと判断した石室は席を立つと、我夢達は石室のもとへ集まる。

石室は皆の顔を見合わせると、指示を出す。

 

 

石室「冥界───アルイドで強力な磁場が発生した。様子を探ってきてくれ」

 

『了解!』

 

 

石室に敬礼した一同は一斉にコマンドルームを出た。

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって冥界。広々とした草原の中を一同は馬車で移動していたのだが───

 

 

一誠「んで?どうしてコスプレしてるんだ……?」

 

 

自身の衣装を見ながら一誠は疑問の声をもらす。

現在、何故か一誠は狼男の仮装をしていた。しかも一誠だけでなく、他の皆もそれぞれ仮装していた。

 

ちなみにリアスとアーシアは魔女。朱乃はミイラ。小猫は化け猫(仮装の意味あるかは不明)で、木場はフランケンシュタインの人造人間。

我夢はゾンビ、ゼノヴィアとイリナは吸血鬼。

ギャスパーは白い布に除き穴を開けたゴーストで、ロスヴァイセはゴーストを模したドレス。

そして、大悟はジャックオーランタンだ。

 

一誠の疑問に対して、リアスは宥めるように答える。

 

 

リアス「まあ、いいじゃない。これから行くところはハロウィンを毎年盛んに行う地域だし。いつもの隊員服で行って、『XIGだ!何事だ』って騒ぎ立てられるよりマシじゃない?」

 

朱乃「それに今夜はハロウィンですわ。楽しみにしている皆さんのお邪魔をする訳にはいきませんわ」

 

 

リアスに続けて朱乃がそう話すと、一誠はこの状況を受け入れる。

年に一度のイベント……それを邪魔されたら楽しみにしている人は嫌がるだろう。

 

しかし、朱乃の仮装は頭以外を包帯で巻いたものではあるが、胸元や太ももといった素肌が見えるとても際どいものであり、下手をすれば全裸になるかもしれないくらいだ。

更に朱乃自身のグラマーな体格を浮き出ているので、とても視線を向け辛い。

 

 

「お客さん。着きましたぜ」

 

 

そんなこんなで会話していると、馬車が止まると共に御者の声が聞こえてくる。

目的地に到着した一同は御者に料金を支払うと、ハロウィンが行われている町───アルイドに向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロウィンの町アルイド。都市部から遠く離れたこの町では毎年10月31日の夜にハロウィンを催している。

ハロウィンの発祥の地とされており、人間界でのハロウィンはこれを真似たのではないかという噂もある。

 

人工は100人と少ないものの、全体の6割が子供で占めている。少子化が進んでいる昨今では貴重な存在であり、子供を喜ばせる意味でもハロウィンは行われているのだ。

 

ハロウィン仕様の装飾がされている町内を仮装をした子供達は駆け回る。

家の玄関の前に着いた子供達は「いっせーのーせー」とタイミングを合わせて口を揃えて言う。

 

 

『Trick or Treat!』

 

 

────お菓子をくれなきゃいたずらするぞ。その意味を持った魔法の言葉を言うと、玄関の戸が開き、中からニコニコ笑顔の大人がお菓子の入ったバスケットを手に出てくる。

 

 

「あら~!可愛い子供達ね!はい、みんなで分けてね!」

 

『ありがとう!』

 

 

お菓子を受け取った子供達は感謝を述べると、大盛り上がりしながらまた別の家へ向かっていく。

冥界といえど、人間界のものと変わりない伝統の作法とも言えるものだ。

 

しかし、楽しい雰囲気に呑まれてはいけない。

我夢達がここに来たのはあくまで調査の為だ。仮装したのも周りに溶け込む為の変装だ。

仕事と私情を分けて行動すべき、なのだが───

 

 

大悟「わーー!」

 

『わーーー!!』

 

 

大悟は年甲斐もなくはしゃぎ、子供達に紛れて追いかけっこをしている。

一緒に行動していたロスヴァイセも最初は大目に見てたが、明らかに私情ばかりを挟んでいる素振りしか見せないので注意をかける。

 

 

ロスヴァイセ「大悟君!遊びに来てるんじゃないんですよ?本来の目的を忘れないで下さい!」

 

 

ロスヴァイセの抗議の声に大悟はカボチャの被り物を外して、ニコッと微笑み、言い分を聞かせる。

 

 

大悟「ははっ、勘違いしないでよ。子供と仲良くするのも捜査のうち………うわぁぁ~!美味しそうなロリポップ!何処で貰ったの?」

 

 

話す最中、通りかかった女の子達が持つロリポップが目に入った大悟は尋ねると、女の子達は指を指す。

 

 

大悟「よし!僕も貰ってこ~よう!」

 

ロスヴァイセ「あっ、待って下さい!……もう!」

 

 

制止も聞かずに大悟はカボチャの被り物を被ると、女の子達が指差した方角へ走っていく。

取り残されたロスヴァイセはぷんすかと頬を膨らませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟が向かった先ではとんがった鼻に皺が入ったおぞましい魔女のマスクにとんがり帽子と黒いローブを着こんだ大人がいた。

近くのオレンジ色の風船がくくりつけてある荷台には、かご一杯のロリポップがこれでもかと積めてあった。

 

魔女は見た目通りのしわがれた声で呼び掛ける。

 

 

「夢がある子は集まっといで!夢をい~~っぱい持っている子には褒美に美味しいキャンディーをあげよう」

 

 

その呼び掛けに食らいついた子供達は一斉に魔女のもとへ集まっていく。

 

 

「おばあちゃん!ぼくにちょうだい!」

 

「わたしにも!」

 

魔女「ヒッヒッヒッ……はいよ」

 

 

囃し立てる子供に魔女は不気味に笑うと、ロリポップを子供達1人1人に渡していく。

ロリポップを貰うべく、子供達の後ろに並んだ大悟は子供のフリをして魔女に話しかける。

 

 

大悟「1ぽん、お~くれ」

 

「子供にしかあげないよ」

 

大悟「あ~~……そうなの、も~~う!」

 

 

あっさりと見破られた大悟はしょげると、カボチャの被り物を外し、トボトボとした足取りで離れていく。

すると、丁度通りかかった我夢と小猫に鉢合わす。

 

 

我夢「あ、大悟。今、何してた?」

 

大悟「いや、あそこのおばあさんからロリポップを貰おうって思ったんだけど、『子供にしかあげない』って」

 

我夢「はははっ!祭りとかそういうのになると飛び付く癖は変わってないみたいだね」

 

 

落ち込む大悟を見て我夢は笑いながら肩をポンポンと叩く。

普段、大悟は大人しいが祭りや季節行事(特に花見)になると、嘘のようにはしゃぐ癖があった。今も昔も変わらないところがあるのは安心するものである。

 

大悟は「いじるなよ」と笑い返していると、魔女の視線に小猫が映った。

視線に捉えた魔女はねだる子供達にロリポップを渡しながら小猫に近寄る。

 

魔女が子供と言えない16歳の小猫に近寄るのには理由があった。

小猫の体格は小学生くらい小さい。そう、同年代の誰よりも。

つまり、魔女は小猫を子供と勘違いしているのだ。

 

 

「おや?お嬢ちゃん、まだキャンディーを貰ってないみたいだねェ…」

 

小猫「……いえ、私は──」

 

「遠慮することはないよ。さぁ、たんとお食べ」

 

 

子供と勘違いされているとわかった小猫は断ろうとするが、ロリポップを魔女に押し付けるように渡されたので、渋々受け取る。

魔女は「ヒッヒッヒッ……」と不気味に笑うと、また新たにやって来た子供達のもとへ戻っていく。

 

小猫は困ったように首を傾げていると、その一部始終を隣で見ていた我夢は噴き出す。

 

 

我夢「ぷぷっ…!()()()()()()()か、あはははっ!!」

 

小猫「……」

 

ゴスッ!

 

 

自身を馬鹿にして腹を抱えて笑う我夢に当然頭にきた小猫はムッと眉をしかめると、我夢の足を力強く踏みつけた。

 

 

我夢「ッ、~~~!」

 

大悟「だ、大丈夫なの!?」

 

小猫「……大丈夫。当然の報いです」

 

 

足を抑えて悶絶する我夢を見て心配する大悟に小猫はムスッとしながらそう言う。

───しかし、どう見ても平気ではないのだが。そう思いながら苦笑する大悟が魔女の近くに立ててある鏡のモニュメントを見た時だった。

 

 

大悟「ッ!?(鏡に魔女が映っていない!?)」

 

 

魔女は今も子供達にロリポップを渡しているのだが、モニュメントには魔女の姿が映っておらず、子供達しか映っていなかった。

これを目撃した大悟は一気に怪しくなった魔女へ疑いの目を向ける。

 

 

「──ッ!さあ、今日は店じまい!どいたどいた!」

 

大悟「あっ!」

 

 

大悟の視線から自分が疑われているのを察したのか、魔女は荷台を押しながらそそくさと立ち去る。

明らかに不審な動きに更に疑念が深まった大悟は魔女の後を追っていく。

 

小猫は声をかける間もなく走り去っていった大悟に首を傾げていると、ロスヴァイセが後ろからやってくる。

 

 

ロスヴァイセ「小猫さん。大悟君は?」

 

小猫「……さっきまでいましたけど、向こうへ走っていきました」

 

ロスヴァイセ「もう!またどこかに行って!」

 

 

大悟がまたも遊びに行ったと思ったロスヴァイセはぷんすかと腹を立てる。

予想外の行動に腹を立てるのは真面目な彼女らしい。

 

大悟を過大評価し過ぎたと胸中にロスヴァイセがため息をついていると、未だ足を抑えて悶絶する我夢の姿が視界に映る。

 

 

ロスヴァイセ「あと、我夢君は一体何が───」

 

小猫「……気にしないで下さい。柱に足をぶつけただけですから」

 

ロスヴァイセ「……はぁ」

 

 

───どう見てもそのレベルではない。またもや小猫をいじったのだと察したロスヴァイセは深いため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ!ハーハッハッハッ……!」

 

 

暗闇に包まれる道を高々と笑いながら走って荷台を押す魔女を大悟は追いかける。

老婆とも思えない足の速さに驚く大悟だったが、必死に足を動かし、追い続ける。

 

 

大悟「?」

 

 

町から外れた森の中まで追跡していた大悟だが、森を抜けた先にある丘へ辿り着いた途端、魔女を見失ってしまう。

丘には立ち入り禁止の看板が立ててある柵があり、その先は断崖絶壁……という訳ではないが、傾斜が緩やかな坂が続いていた。

 

坂には身を隠せるような障害物が一切なく、まっ平らな地面が広がっているので、ここを通っているのならすぐ見つかるだろうし、荷台を押して通ることは不可能だ。

荷台を捨てさえすれば逃げられるだろうが、その荷台は何処にも見当たらない。

 

 

大悟「……ッ!?」

 

 

大悟はキョロキョロと辺りを見渡していると、坂の平坦な場所に霧と共に突如として黒レンガの家が現れた。

北欧の地域にありそうな趣をしている家の窓からは光が漏れており、中に人がいることが伺える。

玄関の灯りはまるで大悟を誘うように揺らめいている。

 

 

大悟「行くしかないか」

 

 

意を決した大悟は懐から支給されたXIGハイパーガンを手に取ると、慎重な足取りで坂を下り、扉のドアノブに手をかける。

ドアノブを回しながら扉を押すと、扉はギィィ…と古めかしい音を立てながら開いていく。

大悟は周囲を警戒しながら家の中へ入っていく。

 

中は外観と違って埃まみれであり、辺り中クモの巣だらけで洋風な家具やつぼ、すぐ近くの階段の隣に設置されている甲冑にまで張り巡らされている。

 

 

───ヒッヒッヒッ……

 

大悟「ッ!」

 

 

階段から魔女の笑い声がこだまのように聞こえてきた大悟はXIGハイパーガンを構えて階段をかけ上がっていく。

 

階段をかけ上がった大悟は飛び出ると、左右に銃口を向けて構えるが、魔女の姿はなかった。

どこにいるんだと神経を研ぎ澄ましていると、奥の扉が風を受けたよえにギィィと物音を立てて開いた。

中からは魔女の笑い声が聞こえる。

 

 

───ハッハッハッ……!

 

大悟「そこかッ!」

 

 

駆け出した大悟はその扉の前で銃口を向ける。

だが、魔女の姿はなく、そこにあるのは目映い光に包まれた真っ白な空間だけだった。

家の一室にしては違和感しかない空間に不気味すら思えるが、大悟は勇気を振り絞って中へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「(どこだ…!ここは……)」

 

 

部屋に入った大悟は自分の目が信じられなかった。

家の一室に入ったつもりだが、いつの間にかどこかの公園に来ており、近くにはブランコやジャングルジムといった遊具が設置されている。

 

しかし、現実の公園でないことはわかる。

砂が敷き詰められている地面には玩具が辺り一面散乱しており、現実の公園だったらまずあり得ない光景である。

 

 

ギィィ…

 

大悟「ッ!」

 

 

大悟が周囲を見渡していると、入ってきた扉が閉まろうとしていた。

嫌な予感がして閉まる前に脱出しようとするも、扉は閉まり、スゥ…と蜃気楼のように消滅した。

 

 

───アハハ……アハハ……

 

 

この奇妙な空間に閉じ込められた大悟はどうしようかと考えようとした矢先、今度は子供の笑い声が聞こえてくる。

大悟は声のする方へ走ると、サーカスのピエロのような帽子を被った3人の子供が体操座りでうずくまっていた。

 

 

大悟「おーい。僕たち──ッ!?」

 

 

優しく声をかけた大悟だったが、反応して振り向いた子供達の顔を見て唖然とする。

子供達の顔は真っ白だった。まるでペンキで白塗りしたように生気が感じられない程に真っ白だったのだ。

大悟が固まっていると、子供達は何かから逃げるように走り去っていく。

 

 

大悟「おい、どうしたんだ……ッ!」

 

 

その行動を訝しげに思った大悟は問いかけようとするが、頭上を巨大な影が覆う。

振り返ると、そこには星空のようにキラキラと輝いた青い単眼を持ち、ハロウィンカラーの体色をした怪人が大悟を嘲笑っていた。

大悟は驚きつつもXIGハイパーガンで攻撃しようとするが──

 

 

「ハッハッハッ……!」

 

大悟「うわぁあぁぁぁーーーーッ!!」

 

 

その前に宇宙人の眼から紫色の光線が直撃する。

大悟は自身が苦痛の叫びをあげたことを最後に意識を失った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ここが磁場の中心源ですね」

 

 

一方、大悟が消えた丘ではリアス達と合流した我夢がXIGナビを通して石室と連絡していた。

 

 

《石室「何か変わったところはあるか?」》

 

我夢「いえ、地下をスキャンしても特に怪しいものは見つかりませんでした」

 

小猫「……気で探知しても異常はなかったです」

 

《石室「そうか。町の方は?」》

 

朱乃「何も。町人もみんな楽しそうにしてましたわ」

 

 

それらの報告に石室は頷く。

強力な磁場が発生しているので何者かが起こす前兆かと思っていたが、それも杞憂だったかもしれない。

そうとわかった石室は皆に指示を出す。

 

 

《石室「……わかった。念の為、町人が全員家に帰りつくまで警戒してくれ」》

 

『了解!』

 

 

皆は一斉に返事をした。

石室との通信が終了すると、リアスは立体地図を取り出すと指を指して細かな指示していく。

 

 

リアス「みんな、今から町に戻って警備するわよ。私とイッセー、アーシアはN地区を担当するから、イリナさんとゼノヴィア、ギャスパーはE地区、我夢と小猫、朱乃、裕斗はW地区。そして、S地区はロスヴァイセと大悟に任せるわ」

 

『了解!』

 

返事をした皆はさっそく持ち場に着こうとするが、リアスがキョロキョロと辺りを見渡しているのが引っ掛かり、足を止める。

ギャスパーは首を傾げながら尋ねる。

 

 

ギャスパー「ど、どうしたんですぅ?」

 

リアス「ええ。大悟が見当たらないって思って……」

 

ロスヴァイセ「さっきまで私といたんですが──ひゃっ!?」

 

大悟?「……」

 

 

皆がどこにいったのだろうと思う最中、ロスヴァイセの背後からカボチャの被り物をした大悟?がのそっと現れた。

流石に頭にきたロスヴァイセは大悟?に説教する。

 

 

ロスヴァイセ「こんなときに悪ふざけはよして下さい!勝手にいなくなったと思ったら勝手に出てきて……!」

 

リアス「まあまあ、ロスヴァイセ。無事だったなら良かったじゃない。さあ、いきましょう」

 

小猫「……待ってください」

 

 

リアスが丸く収めて持ち場に行こうとした時、小猫が待ったをかける。

皆が怪訝に思った矢先、小猫は大悟?の頭を殴り付けた。

 

 

『!?』

 

 

小猫の拳を受けた大悟?はカボチャの被り物が歪み、その場でスッテンコロリと倒れる。

突然の行動に皆は目を丸くして小猫を問い詰める。

 

 

我夢「何を!?」

 

小猫「……見てください」

 

『?……ッ!?』

 

 

答えはこれだと言わんばかりに小猫が指差す方へ皆は顔を向けると、目を見開く。

倒れていた筈の大悟の身体はなく、仮装だけが脱け殻のように転がっていた。

これが指し示す事実はただ1つ───衝撃が走った皆は一斉に身構える。

 

 

一誠「部長。これって、つまりこういうことっすよね?既に()()()()()()()()()()()って」

 

リアス「その通りよ」

 

 

一誠の考えにリアスは頷く。

大悟は敵にやられた。つまり、敵はすぐ近くにいるということは明白だった。

 

 

──ヒッヒッヒッ……!

 

 

緊張が走る中、木陰からしわがれた笑い声と共に魔女の影が飛び出す。

飛び出した影は素早い動きでグルグルと回り、我夢達を取り囲む。

 

リアスにアイコンタクトで指示を受けた木場は頷くと、感覚を研ぎ澄まして本体を見極めると、影に向かって聖魔剣を振り下ろした。

 

 

木場「はあッ!!」

 

「ぎゃんッ!?」

 

 

振り下ろされた斬撃は見事本体に命中。肩を斬られた魔女は悲鳴を上げながら転がっていく。

それと同時に我夢達を取り囲んでいた影も消滅した。

 

 

「ッ!」

 

木場「動かない方がいいよ」

 

 

起き上がった魔女は逃げようとするが、首もとに木場の聖魔剣を向けられ、牽制される。

その隙に歩み寄ったリアスは見下ろして話しかける。

 

 

リアス「ごきげんよう。あなたね?この町に強力な磁場を発生させた犯人は」

 

「……」

 

リアス「黙りこくってもいいわ。別に後でじっくりと聞かせてもらうから。自ら出てくるなんて油断大敵だったわね?さて、送られる前に何か言うことは?」

 

 

リアスが転送用の魔方陣を展開しながら尋ねる。

すると、魔女はヒッヒッヒッと不気味に笑うと、我夢達に向かってこう言った。

 

 

魔女「……油断大敵とは()()()()()()かね?」

 

『!!?』

 

 

その瞬間、我夢達の足下が沼のようにぬかるむと、沈み始めた。

皆は何とか逃れようともがくが、沈む勢いは増すばかりだ。

その隙に逃れた魔女は嘲笑いながら話す。

 

 

「ヒッヒッヒッ……!無駄無駄。その沼はもがけばもがく程沈んでいく底なし沼だよ」

 

我夢「くっ!」

 

一誠「このっ!」

 

 

我夢と一誠は互いの変身アイテムを取り出し、ウルトラマンに変身しようとする。だが──

 

 

「おっと!ズルはいけないねェ~」

 

我夢「ガ、ガム!?」

 

一誠「チョコになっちゃった」

 

 

魔女が指先から放った橙色の光線でエスプレンダーはガムに、リーフラッシャーは板チョコに変えられてしまった。

頼みの綱が消えてしまった我夢と一誠は落胆する。

 

 

「精々頑張りな!ハッハッハッーーー!!」

 

 

去り際に魔女はそう告げると、笑い声を響かせ闇夜に消えていった。

残された我夢達だが、すでに胸元まで地中に浸かっていた。

助けを呼ぼうにも人里から離れたこの丘には誰も通らないだろう。

 

 

「「昇格(プロモーション)!『戦車(ルーク)』!」」

 

ロスヴァイセ「きゃっ!」

 

小猫「……ッ!」

 

ギャスパー「ひぃやっ!?」

 

 

──それでも何とかしよう。一誠と我夢『戦車(ルーク)』に昇格すると、近くにいたロスヴァイセ、小猫とギャスパーを地上へ投げ飛ばす。

その反動によって2人は沈む勢いが増していく。

 

 

小猫「先輩!」

 

我夢「来るな!」

 

 

我夢は自身を助け出そうとする小猫を呼び止める。

小猫が立ち止まる中、我夢とリアスは3人に指示を出す。

 

 

我夢「僕達のことはいい。それよりも他のみんなにこのことを伝えるんだ」

 

リアス「3人共、助けを呼んで磐石な体制を整えてから魔女を探して!」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

既に顎近くまで浸かっているのにも関わらず全く取り乱さず指示を出す……。揺るがない彼らの姿勢に3人は頷くと、町の方へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「……?」

 

 

その頃、目を覚ました大悟は辺りを見渡した。

周りは遊園地のメリーゴーランドのように煌やかなイルミネーションが照らされた幻想的な部屋であり、どこからか『10人のインディアン』のオルゴールが流れている。

大悟は下着以外全て取られ、部屋の中心にあるカプセルの中に閉じ込められていた。

大悟は何とか脱出しようと叩いたり揺らしたりするが、カプセルはひび1つ入らずビクともしない。

 

 

「ランララランラン、ランランランラン……♪」

 

大悟「?」

 

 

奮闘する中、大悟の耳にオルゴールの音色に合わせて口ずさむ男の子の声が聞こえてくる。

そちらへ視線を向けると、口ずさみながらメリーゴーランドで乗る馬に跨がっている男の子と近くの大理石のテーブルにスパークレンスとXIGハイパーガンが置かれていた。

 

 

大悟「はぁ…」

 

 

大悟は頼みの綱が没収されているのを目にし、コツンとカプセルに額をぶつける。

落胆していると、入口らしき扉がギィィと開き、魔女が軽快なスキップをしながら入ってくる。

 

 

大悟「おい!お前は誰だ!ここはどこだ!おい!おいッ!」

 

 

問い詰める大悟を無視して子供に近寄ると、顎を掴んで自身に顔を向けさせる。

強引なやり方にも関わらず男の子は全く気にせず口ずさみ続けている。

すると、男の子の背後の壁に埋め込まれてある幾つものテレビが点き、お菓子や玩具などの映像が切り替わりながら映る。

 

 

大悟「やめろッ!子供に触るな!」

 

 

大悟の制止を無視して魔女は自ら着けている仮面を上へずらして口元を露にして、ストローで吸い込むように口をすぼめる。

 

すると、子供の耳から飛び出た虹色に輝く液体状の光をゴクゴクと喉を流しながら飲んでいく。

それと同時にテレビの映像が1つ1つノイズが走ったものになっていき、子供の顔も次第に生気を失っていき、声も小さくなっていく。

 

 

大悟「やめるんだ!その子から離れるんだッ!」

 

 

大悟の制止に耳もかさず液体を飲み終えた魔女は仮面を元の位置に戻す。

耳から液体が全て抜かれた子供はガクリと馬の上に項垂れ、テレビも全てノイズが走ったものになった。

 

魔女はワインを手に取り近くのグラスに注ぐと、またもや仮面をずらしてワインを飲む。

先程の一部始終を目の前で目撃した大悟は怒気を強めて問いかける。

 

 

大悟「何をした?子供に何をしたんだ!?」

 

「夢をぜ~~んぶ吸いとった」

 

大悟「馬鹿な!?夢を返せ!その子の夢は、全部その子のものなんだ!!おいッ!!」

 

 

飲み干した魔女はグラスをそこら辺に投げ飛ばすと男の子に歩み寄り、頭を掴んで顔をあげさせる。

男の子の顔は先程大悟が捕まる前に出会った子供のように真っ白になっていた。

魔女は鼻で笑う。

 

 

魔女「……子供に夢はいらないよ。どうせ大人になるまでに人形や玩具のように、夢を捨ててしまうのさ」

 

大悟「!?」

 

 

魔女が男の子の頭上を覆うように腕を振るうと、男の子は忽然と姿を消した。

この光景に大悟は眉間にしわを寄せ、怒鳴るように問う。

 

 

大悟「子供をどこにやったッ!!」

 

「夢の墓場に捨てたのさ。ヒッヒッヒッ……!」

 

大悟「夢の墓場?さっきの公園のことか!……ッ!」

 

 

ピンと来た大悟だが、足下から煙が籠っていく。

咳き込む大悟に魔女は入口に向かって歩きながら独り言のように話す。

 

 

「大人はいらない。大人の腐った欲望吸っても、腹を壊すだけさ。ハッハッハッ……!」

 

大悟「待て!おいっ!待てぇぇーーーッ!!ゴホッ、ゴホッ…!」

 

 

呼び止める大悟を無視して魔女は部屋から出ていった。

カプセルに充満されていく煙に息は苦しくなっていき、咳き込む頻度も増していく。

大悟は咳き込みながら外の大理石の机にあるスパークレンスを眺める。

 

 

大悟「……ッ」

 

 

───あれに届きさえすれば!脱出したい大悟の願いと相反して煙は大悟を覆い隠す程に放出されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───深夜0時。健全な子供なら寝静まるこの時間。

日も変わったこの時間。オルゴールの音色がアルイド中に鳴り響くと、子供達は一斉に眼を覚まし、ベッドを抜け出して裸足のまま夢遊病のように外へ歩き出した。

 

 

ニュウゥゥ……

 

 

丁度その時、丘の立ち入り禁止区域から巨大なジャックオーランタンが現れた。

子供達はそれに向かって歩いていく。

 

 

ギャスパー「あ、あれって!」

 

「「!?」」

 

 

町へ降りる道中、ギャスパー、小猫、ロスヴァイセは1列に並んだ子供達が丘に現れた巨大なジャックオーランタンに入っていく光景を目撃する。

その中には大悟にロリポップを貰った場所を教えた女の子2人もいた。そのことからロスヴァイセは合点がいった。

 

 

ロスヴァイセ「あの魔女、キャンディーを食べた子供達を操っているんだわ!」

 

小猫「……止めないと!」

 

 

3人は頷くと進路を町から森へ変えて走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丘に子供達が集まっていく中、ジャックオーランタンの頭上に魔女がオルゴールを手に現れると、子供達を誘導する。

 

 

「さぁ、みんな!パンプキンに乗って、夢の国へ行こう!ハッハッハッ……!!」

 

 

夢の国など当然なく、ただ魔女の食事になるだけ。

魔女の思惑も知らず、子供達は次々とジャックオーランタンの口の中へ入っていく。

その光景を魔女は躍り狂うように笑う。

 

その時、駆け付けたロスヴァイセと小猫は子供達に呼び掛ける。

 

 

ロスヴァイセ「目を覚まして!しっかりして下さい!」

 

小猫「……騙されないで!あれは罠」

 

「いーやー!」

 

「やめてよ!はなして!」

 

 

2人の必死の制止に反して子供達は嫌がり、尚もジャックオーランタンへ入ろうとする。

子供の悲鳴が上がる中、見下ろしている魔女は2人を指差して言い放つ。

 

 

「ほれ見ろ!大人は敵だ!大人はいつでも子供の邪魔をする!夢も自由もぜ~~~んぶ、大人が子供から奪っていく!」

 

ギャスパー「貰います!」

 

「…アッ!?やめろっ!」

 

ガッシャァーーーアンッ!!

 

 

魔女の隙をついてコウモリに変身していたギャスパーは変身を解除して魔女からオルゴールを奪い取ると、オルゴールを床へ叩き壊す。

オルゴールは音色を奏でることなくピタリと止んだ。

 

 

「ちっ!」

 

 

不味いと判断した魔女はマントを翻して姿を消した。

 

 

「いやだーー………あれ?」

 

「なにしてたんだろ?」

 

 

オルゴールが止まったことで正気に戻った子供達は一斉に首を傾げる。

3人がホッとひと安心する中、子供達が目にするのは目を怪しく光らせる巨大なジャックオーランタンだ。

ロスヴァイセは叫ぶ。

 

 

ロスヴァイセ「みんな逃げてッ!!」

 

『きゃーーーーーッ!!』

 

 

一拍空けて子供達は悲鳴をあげながら丘の上へ逃げていく。

走り慣れない子供は小猫やロスヴァイセが抱えて一緒に避難する。

 

 

 

 

 

 

大悟「……ゴホッ…ゴホッ…!」

 

 

その頃、オルゴールが壊れたことにより大悟が閉じ込められていたカプセルのロックが解除された。

大悟は咳き込み床に突っ伏しながらカプセルから抜け出す。

 

 

大悟「うぅっ……くぅぅ……」

 

 

痺れた体を押しながら大悟は机にあるスパークレンスへ手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロスヴァイセ「落ち着いて。1人1人対応しますから!」

 

小猫「大丈夫」

 

ギャスパー「こ、こっちですぅ!!」

 

 

何が起きてるかわからない恐怖と不安で子供達の悲鳴があげる中、ロスヴァイセと小猫は宥めると、ギャスパーが先頭する方へ避難させていく。

避難を続ける最中、巨大なジャックオーランタン型の魔女のアジトは地中に溶け込むように沈んでいく。

魔女の力によって空間を歪ませ、次元を移動しようとしているのだ。

 

 

「「……ッ」」

 

 

その光景にロスヴァイセと小猫は悔しげに歯を噛み締める。

逃亡を阻止する為にギャスパーが眼で停止させようと試みたが、次元を移動する能力には干渉出来ないのか全く効果がなかった。

 

その他には攻撃するしかない。

しかし、巨大な物体の動きを止める程の火力となるとかなりのものであり、中に捕らわれている子供達もただではすまないだろう。

目の前で逃亡する相手に手を出せない状況が悔しくて仕方がなかったのだ。

 

2人が無念に思う中、ジャックオーランタンはついに頭まで浸かった。

最早、これまで。誰もが思った矢先、ジャックオーランタンはピタリと制止した。この異変に皆は怪訝な顔を浮かべる。

刹那───

 

 

ティガ「チャッ!」

 

 

地中から大悟が変身した光の巨人───ウルトラマンティガがジャックオーランタンを頭上で抱え上げて浮上した。

ロスヴァイセはすがるように叫ぶ。

 

 

ロスヴァイセ「ウルトラマンティガ!みんなを助けてーーッ!!」

 

ティガ「……」

 

 

ロスヴァイセの願いを聞き届けたティガは静かに頷くと、ジャックオーランタンを地上に下ろす。

 

 

「ヒッヒッヒッ……!」

 

 

その時、ジャックオーランタンの口から箒に跨がった魔女が高笑いしながら飛び出す。

地上に降り立った魔女は振り向き様に箒を捨てると、ティガを見上げる。

 

 

「おのれェェェ~~~~~!!」

 

 

恨めしい声を出しながら魔女は鋭い目付きで睨みながら手を震わせる。

すると、魔女の体は変形していきながら巨大化していき、その正体を明かした。

 

光り輝く青い単眼に角のように尖った左手を持ち、ハロウィンを彷彿させるカラーリングの体色を持った魔女の本性。異次元人『ギランボ』だ。

 

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ……」

 

ティガ「チャッ!」

 

 

ギランボは電子音に似た独特の鳴き声をあげながら身構えると、ティガも合わせてファイティングポーズを構える。

人工の満月の下で照らされながら両者は出所を伺う。

少しの沈黙の後、一斉に駆け出す。

 

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ……」

 

ティガ「チャァッ!」

 

 

その勢いを活かしてギランボとティガは下向きのかかと回し蹴りをぶつけ合う。

すぐさまティガは水平チョップを繰り出すがギランボの腕に防がれ、払いのけられると、胸元に左右交互の連打を叩き込まれる。

ギランボは追い討ちに飛び上がってチョップしようとするが──

 

 

ティガ「チャッ!」

 

ギランボ「ッ!」

 

ティガ「チャァッ!」

 

 

ティガに腕で防がれ、生じた隙に放たれたキックを受けてバランスを崩し地面に倒れる。

負けじとギランボはすぐさま起き上がり、身構える。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

 

ティガは助走をつけて前進しながら蹴りを放つが、ギランボは足を開脚して横へ飛ぶといったややコミカルな動きで回避する。

 

 

ティガ「フッ!ハッ!」

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ……」

 

ティガ「ッ!チャッ!」

 

 

ティガはパンチを繰り出すが受け流したギランボに腕を腕を抑えつけられる。

すぐさまティガは蹴り上げて飛び退かせると、飛び込むかの如くに掴みかかる。

ハサミの持ち手のような頭の突起物を掴み──

 

 

ティガ「チャッ!!」

 

ドォンッ!

 

 

巴投げの要領で豪快に地面へ投げ飛ばす。

ティガは地面に叩きつけられた衝撃でジタバタと手足を動かしているギランボに追い討ちをかけるべく馬乗りになると、右の拳を2発打ち込んだ後、前転して離れる。

 

 

ティガ「ハッ!」

 

 

ティガは起き上がったギランボへかかと回し蹴りを放つ。

ギランボは背を腰の位置で垂直になるまで反らして回避すると、空振りで体勢を崩したティガの首もとに掴みかかる。

 

 

ティガ「…ッ」

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ……」

 

 

襲いくる首の圧迫感にティガは苦しみつつも腹部にエルボーを3発打ち込んで怯ませると首を絞めていた手を振り払って同時に掴む。

 

 

ティガ「チャーーーーッ!」

 

 

持てる限り力を込めて、思いっきり前方へ投げ飛ばした。

ギランボは宙で一回転して綺麗に着地すると、振り向き直す。

 

 

ティガ「フッ!チャッ!!」

 

フッ……

 

 

身構えたティガは助走をつけて前方に跳躍。その勢いのまま飛び蹴りを放った。

しかし、蹴りが直撃する寸前、ギランボの姿は一瞬のうちに消えた。

 

 

ドシャアァァン!

 

 

対象を失ったティガの蹴りは宙を切り、そのまま正面にある木々に突っ込んだ。

ティガの重い体重に耐えきれない木々は押し潰される。

 

 

ティガ「ッ!……?」

 

 

立ち上がったティガはすぐさま身構えるが、ギランボの姿がどこにも見当たらない。

ティガが辺りを見渡していると、ギランボは物音立てず背後に現れ、ティガに鋭利な左手を振り下ろす。

 

 

───ヒッヒッヒッ……!

 

ティガ「ヂャァッ!?」

 

 

気配に気付いたティガだがもう遅く、振り向き様に胸元に一撃をくらう。

思わず怯んだティガにギランボは同じ箇所に蹴り込む。

だが、ティガも負けじとその足を掴むと、思いっきり後方の地面へ投げ飛ばす。

 

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ……」

 

フッ……

 

 

ギランボが立ち上がった瞬間を狙い、ティガは蹴り込む。

しかし、またもや姿を消したギランボに避けられてしまう。

 

 

───ヒッヒッヒッ……!

 

 

魔女の不気味な笑い声が響く中、ティガは摺り足で歩きながら辺りを見渡して消えたギランボを探す。

ギランボはティガの背後に現れると忍び足で物音を立てないようにゆっくり近付く。

 

 

ティガ「……フッ!」

 

 

気配に気付いたティガは身構えながら振り向くが、ギランボは三度姿を消した。

 

 

───ハッハッハッ……!

 

ティガ「ッ!……!!?」

 

 

また隠れんぼをするのかと思った矢先、背後にギランボが現れた。ティガが身構えると、思わず肩を竦めた。

ギランボは1人、また1人と分身し、あっという間に6人のギランボが取り囲んだのだ。

どこからか『10人のインディアン』のオルゴールが脳裏に流れてくる。

 

ティガが動揺して固まっていると、6人のギランボは一気に攻め立てた。

 

 

ティガ「チャッ!?」

 

 

ティガも反撃しようとするも本体と分身体がコロコロと入れ替わるせいで対応しきれない。

次々と繰り出される攻撃の嵐にティガは何度も地面に倒れるのを繰り返す。

最後の一発とばかりに胸元へ力強く蹴り込まれたティガはその場に膝をついた。

 

 

ティガ「……ッ」

 

[ピコン]

 

 

肩で息をするティガと同様に胸元で青く輝くカラータイマーも苦しそうに赤く点滅し始めた。

 

 

────ハハハ……!ハッハッハッ……!!

 

 

ギランボはティガの苦しむ様を高笑いしながら、円陣を保ったままクルクルと回って更に追い込む。

ティガは目で追おうとするが、素早い速度なので翻弄される。

 

 

ティガ「……ハッ!」

 

 

──目で追うな、冷静になれ。内心自身に言い聞かせたティガは混乱する頭を振り払って立ち上がると、額のティガクリスタルの前で両腕を交差させる。

ティガクリスタルが黄色に輝かせ、ティガは交差させた両腕を突き出して振り下ろすと、胸元のカラータイマーが目映い光を発する。

 

 

────ハハハ……!ハッハッハッ………ハ?

 

 

すると、どうだろう。ティガの周りを取り囲んでいたギランボの分身体は次々と消滅していき、最後には戸惑う本体だけが残った。

 

 

ティガ「チャッ!チャッ!ヂャァッ!!」

 

 

ティガはすかさず本体に右、左、右と蹴りを打ち込むと、右足のストレートキックを胸元へ放つ。

反撃のラッシュにギランボは地面に倒れる。

 

 

ティガ「ッ、チャーーーーーッ!!」

 

ギランボ「ポォォワリポォォワリ…」

 

 

ギランボの両足を脇で挟んで抱えたティガはそのまま巴投げの要領で空高く投げ飛ばす。

ギランボはジタバタと手足を動かしながら夜空へ飛んでいく。

 

 

ティガ「ハッ!!」

 

 

間髪入れずティガは突き出した左の掌から黄色の光線───『ウルトラフィックス』を放つ。

背中に直撃したギランボは固まり、宙で停止する。

 

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

 

ティガは突き出した両腕を交差させて紫色の軌跡を描くと共にエネルギーを溜めると、両腕をL字に構えてゼペリオン光線を放った。

白色の光線はギランボに命中し、紫色のスパークが放出されると、粒子となって消滅した。

 

 

キラキラ……

 

 

ギランボが倒された場所で光が発するとオーロラが現れた。

オーロラから降り注ぐ光の粒子はギランボのアジトに捕らわれた子供達を解放し、蒼白だった顔も奪われた夢も戻ってきたことで健康のある顔色になった。

 

 

ロスヴァイセ「子供達が……!」

 

ギャスパー「よかったぁ~……」

 

 

子供達が無事戻ってきたことにロスヴァイセ、ギャスパー、小猫はほっとひと安心する。

 

何してたんだと子供達が辺りを見渡していると、近くで見下ろしているティガの姿を見つけた。

 

 

「あ!ウルトラマンティガだ!」

 

「ありがとう!ティガーーー!」

 

「ありがとー!」

 

ティガ「……ヂョアッ!」

 

 

手を振って笑顔で感謝する子供達にティガは静かに頷くと両腕を広げて大地を蹴り、遠い空へと飛んでいった。

ティガが飛んでいった方角からは悪夢の終わりを告げるように地平線から朝日が昇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「ふぅ……助かったわ」

 

 

ギランボが倒されたことで地中に埋められていたリアス達も地上へ解放された。

皆、土の味を味わったせいかもう地中に入るのは二度とごめんだとこりごりしていた。

 

 

我夢「今回、僕達全く活躍出来なかったな~」

 

大悟「まあまあ、この冥界の宝物が守れたんだし。“子供達の夢”っていう宝物が」

 

一誠「そうだなー。あー何かもう疲れたぜ。戻ったらたっぷり寝て、夢を見ようぜ」

 

 

一誠の意見に皆は口を揃えて『賛成』と言うと、帰路に着こうとした時、XIGナビから石室がこう言う。

 

 

《石室「それはいいが、お前達。今日は登校日じゃなかったのか?」》

 

『あ』

 

 

その一言ですっかり忘れていた我夢達はポカンと口を開ける。

日付が変わって11月1日になった今日は平日の月曜日。

夢から現実に戻された皆(特にイリナと一誠)は落胆する。

 

 

イリナ「えぇ~~!私達、夢も見られないの?」

 

朱乃「夢を実現するにはまず現実に向き合え、ということですわね。ふふっ♪」

 

一誠「えぇ~~!そんなぁぁ~~~!」

 

 

更に落胆する2人に皆は朝日を背に笑いあうのだった。

 

 

 




Happy Halloween!
皆さんも夢を奪われないように気をつけて下さいね♪


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第59話「蘇らない不死鳥」

知略宇宙人 ミジー星人
三面ロボ頭獣 ガラオン 
大超獣 ジャンボデューク 
最強超獣 ジャンボキング 登場!


我夢達が修学旅行から帰ってきて間もない頃。

オカルト研究部に珍しい客人が訪れていた。

 

 

リアス「ライザーについて?」

 

 

リアスの問いかけに対面で座るドレスを着こんだ少女は頷く。2つ編みにした髪の端を縦ロールにした金髪が特徴の少女。

 

皆、覚えているだろうか。

 

そう、彼女は悪魔貴族フェニックス家の三男──ライザー・フェニックスの妹のレイヴェル・フェニックスである。

 

レイヴェルは朱乃から出されたお茶を一口飲んで口内の渇きをリフレッシュさせると、神妙な面持ちで話す。

 

 

レイヴェル「……はい。兄があの一件……リアス様との婚約が破談された以来、ふさぎ込んでしまったのはお耳に届いているかと思いますが………」

 

 

一学期の頃、元々ライザーとリアスは親同士が取り決めた許嫁の関係であったが、それを望まないリアスを守る為に我夢達は戦った。

色々あったものの最終的にはウルトラマンダイナに覚醒した一誠の活躍によって婚約は破談。

それ以降のライザーは負けたことがトラウマとなり、酷く落ち込んだのだが、半年近く経ってもなお続いている模様だ。

 

2人の会話を他の皆は部屋の端で聞いていた。

その話題に我夢や一誠、朱乃、小猫、木場、アーシアといった当時を知るメンバーには懐かしさを覚えた。

その一方、ゼノヴィア、イリナなど面識がない者らには疑問符を浮かべていた。

 

 

ゼノヴィア「……ライザーか。話には聞いているが……」

 

イリナ「アーシアさん。どんな人なの?」

 

アーシア「はい。えーと、フェニックス家の三男で───」

 

 

尋ねるイリナに応じてアーシアは他の面識がないメンバーにライザーの人物像やリアスとの関係から事の顛末について全て話す。

 

 

ギャスパー「僕が閉じ籠っている間、そんな大変なことが起きてたなんて……」

 

ロスヴァイセ「悪魔社会は複雑ですね。でも、貴族社会は」

 

イリナ「でもでも、大切な人の為に変身するなんて憧れるわ~♪」

 

 

ギャスパーは複雑そうな顔を浮かべ、ロスヴァイセは冷静に分析しながら、何かの企むように思考を張り巡らせる。

イリナはロマンチックな展開にすっかり感激に浸っている。

 

 

小猫「……自らここに来るなんて……。本当に困っているのかも」

 

我夢「確かに……」

 

 

小猫の呟きに我夢は相槌を打つ。

相談なら別に遠隔で通話できる手段でも出来るし、わざわざここに来ることはない。

しかし、直接相談で来たということはそれほどライザーの状態は深刻なのだろう。それを証拠にレイヴェルはいつもの高飛車な態度はなりを潜めている。

 

神妙なレイヴェルにリアスは話しかけ辛そうにしながらも慎重な口振りで尋ねる。

 

 

リアス「ライザーは……あれから立ち直れてないのね」

 

レイヴェル「…はい。あの件以降、兄は立ち直るどころか更に悪化して部屋から一向に出なくなってしまったのです。やることといえば部屋の中で1日中レーティングゲームの妄想に浸っているか、チェスの強い領民を呼び寄せて一局打つ繰り返しばかり……。酷い“ウルトラマン恐怖症”ですわ……」

 

リアス「“ウルトラマン恐怖症”?」

 

レイヴェル「はい。お抱えの医師が診断した精神病で、イッセー様が変身なさるウルトラマンダイナに負けたことがキッカケなのだと。そのせいでウルトラマンの姿だけでなく、“ウルトラマン”の“ウ”の字を聞くだけでも震え上がってしまいますのよ……」

 

一誠「何か悪いことしたな……」

 

 

ライザーの現状に叩きのめした張本人である一誠は苦い顔を浮かべる。

勿論、婚約が破談したのは女癖が悪かったライザーの自業自得なのだが、心身共に酷いとなれば負い目すら感じる。

そんな一誠の言葉にレイヴェルは首を横に振る。

 

 

レイヴェル「いえ、イッセー様は悪くないですわ。むしろ、兄の方に問題がありますわ!大体ですね、情けないんですよ!一度くらい負けたくらいで半年もビクビク、ビクビクと怯えて……!あれからレーティングゲームにも参加してませんし、ゴシップ雑誌には『フェニックス家の面汚し』やら『メンタル軟弱悪魔』やらと書かれ放題!なのに何もしようともしないなんて……!本当に情けない!」

 

 

レイヴェルの口から矢継ぎ早に放たれた兄への不満に我夢達は呆気にとられる。それも次々と言うものだから、ライザーの現状がよほど酷いのが伺える。

 

誰もが口を開かず場が静まり返っていると、紅茶をクイッと飲んだレイヴェルは気持ちを落ち着かせ、再び神妙な面持ちで話す。

 

 

レイヴェル「そこでお願いなのですが、兄を立ち直させて欲しいのです。……本来、ここに来ること自体筋違いかもしれません。ですが、リアス様の眷族が持つ“根性”こそが今の兄に必要なのです」

 

リアス「ライザーが心配なのね……」

 

レイヴェル「……一応、私の兄なのですから」

 

 

リアスの相槌にそう答えたレイヴェルは俯く。

わざわざ出向いてまで頼みに来たのはライザーを何とかしてあげたいという家族心だろう。

藁をも掴む思いで来たであろうレイヴェルに皆は察していると、端で聞いていた一誠はレイヴェルのもとへ歩み寄ると、話しかける。

 

 

一誠「安心しろ、レイヴェル。お前の兄貴は俺が何とかしてやるよ」

 

レイヴェル「…ッ」

 

 

一誠のかけた言葉にレイヴェルは顔をあげる。

彼女だけでなく他の皆も一誠に注目する。

一誠は集まる視線に肩を竦めるもすぐに切り替えて話し続ける。

 

 

一誠「……状況ちゃあ状況とはいえ、お前の兄貴をそんな風にしてしまったのは俺の責任だからな。何とかやってみるよ」

 

 

その言葉にレイヴェルはパアッと顔を明るくさせる。

 

 

レイヴェル「ほ、本当ですか!?」

 

一誠「ああ!任せてくれ!根性をつけるんだろ?俺にいい考えがある」

 

 

ニッコリ笑顔でサムズアップする一誠。

その考えは如何に。皆は疑問を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数分後。我夢達はさっそくフェニックス家の屋敷に訪れていた。

屋敷といっても最早城であり、建物や敷地やら全て規格外で下手をすれば迷いそうなくらいである。

 

 

大悟「へぇ~~これが悪魔貴族の屋敷か!」

 

ロスヴァイセ「こら!みっともないマネはよして下さい」

 

 

特に冥界、上級悪魔の屋敷に訪れたことがない大悟は興味津々で目を爛々と輝かせて辺りを見渡している。

興味に惹かれてどこかに行こうとすることも多々会ったが、その度にロスヴァイセが止めに入っていた。

同じ職場で働く者同士ならではの光景であろう。

 

 

レイヴェル「ここですわ」

 

 

そんなことがありながらもしばらく進んでいくと、先導していたレイヴェルの指示で足を止める。

そこはフェニックスのレリーフが刻まれた巨大な扉だった。

 

レイヴェルはコンコンと扉をノックすると、中にいるであろうライザーに呼び掛ける。

 

 

レイヴェル「お兄様、お客様ですわよ」

 

 

だが、中からの返事はなかった。

寝ているのかと皆が思った矢先、室内からか細い声が帰ってきた。

 

 

ライザー『……レイヴェルか。悪いが今日は誰とも会いたくない。嫌な夢を見たんだ……。とてもそういう気分じゃない』

 

 

声の主はライザーであった。

しかし、以前の嫌みったらしい程の自信に満ち溢れた声音はどこにもなかった。

レイヴェルはため息をついて気を取り直すと、ハッキリとした声でライザーに告げる。

 

 

レイヴェル「リアス様がお見えになっておりますわよ」

 

ライザー『──ッ、何!?リアスだと!』

 

 

久しぶりに聞いた元許嫁の名前に過敏に反応を示すライザー。

かなり狼狽えており、ベッドから転げ落ちる音を始め、部屋の物を倒す音が聞こえる。

リアスは一拍空けて声をかける。

 

 

リアス「ライザー、私よ」

 

ライザー『ふんっ、振った男に今更何の用だ?笑いに来たのか?それとも兵藤 一誠との仲睦まじいエピソードを聞かせに来たのか?』

 

 

扉の奥にいるライザーはふて腐れた態度を取る。

ここまで文句を言うくらいなので一応生きる気力はあるのだろうが、このまま放置する訳にはいかない。

リアスはここで引き下がらず言葉を投げかける。

 

 

リアス「恨むのはわかるわ。でも、少しだけでいいからお話をしましょう?顔を見せてちょうだい」

 

 

そう言うと扉の奥からドタドタとこちらへ足音が近付くと扉が勢いよく開かれた。

中から現れたのは寝癖がぴょんぴょん跳ねまくっているボサボサの髪にパジャマをだらしなく着たライザーのあまりにも自堕落な姿だった。

 

ライザーは不機嫌そうな面持ちでリアスに問いかける。

 

 

ライザー「俺に一体、何を話すと───」

 

一誠「よ、よお。シュワッチ」

 

 

冗談っぽく一誠がソルジェント光線のポージングをつけながら挨拶する。

ライザーの視線が一誠を捉えてしばらくの間、固まると次の瞬間───

 

 

ライザー「ギィアァァァァァァーーーーッッ!!?」

 

 

ライザーは長い廊下の奥にまで響く勢いの絶叫をあげると、脱兎の如く部屋の中へ逃げ出すと一目散にベッドの飛び込み、布団にくるまってしまった。

 

 

ライザー「か、帰ってくれウルトラマンッ!!あの時のことを思い出すのは嫌だ!あんなみじめで無惨な思いはもうごめんだッ!!早く帰ってくれェェェーーーーッ!!!」

 

 

ガタガタと布団の中で怯えるライザーの様子に皆は勿論のこと、かつて彼と顔を合わせたことのある面々は唖然とする。

かつてあれほど一誠を高圧的に見下していた男が今やひと目見るだけで震え上がっている。

一誠は呆気にとられながらも隣にいる木場に尋ねる。

 

 

一誠「そ、そんなに俺が怖いの……?」

 

木場「うん。今までまともにダメージを受けたことがないにも関わらずあれだけ一方的にやられたらプライドもズタズタだろうさ」

 

一誠「なるほど……」

 

 

木場の説明に一誠は苦い顔をしながら頷く。

あの時は必死にリアスを助けよう感情的になっていたが、それが逆に相手に恐怖を与えてしまっていたと思い知った。

 

一誠が今度から慎重に力を使おうと考えていると、レイヴェルはライザーがくるまっている掛け布団を取り払おうと引っ張り始める。

 

 

レイヴェル「お兄様!リアス様達がせっかくいらっしゃったのですから───」

 

ライザー「嫌だ!お願いだ、帰ってくれェェェーーーーーッ!!」

 

 

実の妹の頼みにも応じずライザーは叫んで必死に抵抗する。

目の前の光景のあまりもの酷さに我夢は苦い顔をしながら一誠に訊く。

 

 

我夢「これいけるの?」

 

一誠「はは……。でも、やるしかねぇよ」

 

 

我夢の不安に一誠は苦笑いで答える。

その後、我夢達はライザーの眷属達と協力して何とか強引に城の庭まで連れ出すことに成功した。

その代わり、連れ出すのに約2時間半はかかってしまったが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザー「お、お、俺を外に連れ出してどうする気だァァーーー!?」

 

 

一誠、我夢、大悟が荷物を纏める中、ライザーは震えた声で訊ねる。

すっかりライザーは小動物のように庭の端の方で縮こまっている。

一誠はライザーに

 

 

一誠「安心しろよ。()()()()()()()()だ」

 

ライザー「ひぃぃいいいいぃぃぃーーーーーッ!!?」

 

 

そう言うと、ライザーは更に縮こまってしまう。

深い意味は無いのだが、きっと裏があるに違いないと深読みしてしまったのだ。

 

 

リアス「それで作戦はどうするつもり?3人共、登山しに行く格好をして……」

 

一誠「あ、もう来ますよ」

 

 

訊ねるリアスに一誠がそう答えながら上を指差すと、上空に大きな影が覆う。

 

 

ズシィィンッ!!

 

 

大きな地響きと共に巨大なドラゴンが豪快に庭に降り立つ。

一誠はそのドラゴンを見上げて感謝を告げる。

 

 

一誠「おっさん!来てくれてありがとな!」

 

タンニーン「うむ」

 

 

頷くドラゴンは元龍王───タンニーンであった。

夏休み、一誠を鍛え上げた師匠でもある。

更に──

 

 

吉田「よお!我夢!」

 

桑原「元気にしてたか?」

 

志摩「俺達のこと、忘れてないよな?」

 

我夢「忘れるはずないですよ!吉田さん、桑原さん、志摩さん!」

 

 

タンニーンの背中からチームハーキュリーズの3人がひょっこり顔を出して我夢に挨拶する。

彼等はアザゼルの所有する特殊部隊の1つであり、夏休み間、我夢をしごきまくった師匠達でもある。

彼等もまたタンニーン同様、一誠に呼ばれてやって来たのである。

 

 

ライザー「あばばばば………!!」

 

 

筋骨隆々の巨大なドラゴンに同じく筋骨隆々の屈強な堕天使3人組。

これから訪れることが悪い予感しかしないライザーはすっかり腰を抜かしていた。

 

タンニーンはジロリと横目でライザーを捉えると、その変貌振りに嘆息をつく。

 

 

タンニーン「ライザー・フェニックスか。レーティングゲームの活躍振りに将来有望な『(キング)』と期待していたのだが……。こんな有り様とはな」

 

志摩「んで、チューインガムのダチよ。この坊っちゃんのなよなよした精神を鍛え直して欲しいって訳だな?」

 

一誠「そうっすね。ただそれだけだと効果がないんで……我夢」

 

我夢「うん」

 

 

一誠の呼び掛けに応じた我夢はバックから白い機械を取り出す。それはゲームなどで使われているVRゴーグルだった。

我夢はそれを起動させると、ライザーに駆け寄り、彼の目元を覆い隠すように装着させた。

 

 

ライザー「おいッ!何だこれは!?は、外れない!?」

 

我夢「これは市販のVRゴーグルを仮想で戦闘訓練できるように改造したものです。ウルトラマンや怪獣等のありとあらゆるデータが内臓されています。更には……」

 

 

あたふたしているライザーをよそに皆にそう説明した我夢は手元のスイッチを押す。

すると──

 

 

ライザー「ギィアァァァァァァーーーッ!!く、来るな!!」

 

 

突然叫びだしたライザーは我夢達を化け物に遭遇したように怯えるとその場にうずくまった。

ガタガタと震えるライザーに皆が唖然とする中、我夢はスイッチを切って説明を続ける。

 

 

我夢「AR──つまり、現実の風景をそのままに仮想的な視覚情報を与える機能もついています。さっきのライザーからは僕達のことがウルトラマンに見えています」

 

吉田「なるほど……。それを使って俺達をウルトラマンに見せて、トラウマを克服させようって訳だな?」

 

 

吉田の問いかけに我夢が頷くと、一誠が説明を引き継ぐ。

 

 

一誠「いい特訓場所がないかってタンニーンのおっさんに相談したところ、おっさんの領地にある雪山にしようって訳になったんです」

 

タンニーン「うむ。雪山は根性をつけるにはうってつけだ。足場が不安定で足腰もよく鍛えられる」

 

 

一誠の提案にタンニーンもうんうんと頷きながら太鼓判を押す。

一誠はタンニーンとの特訓で死にかけたので酷だとは思うが荒療治でもしなければ治らないだろう。

 

 

ライザー「い、嫌だッ!そんなところへは行かんぞッ!!」

 

 

炎の翼を広げて逃げ出そうとするライザーだったが、タンニーンの巨大な手にあっさり捕まってしまう。

タンニーンは掴んだライザーを眼前に持ってくると、ギロリと鋭い目で睨み付ける。

 

 

タンニーン「逃げるな。男なら覚悟を決めろ」

 

ライザー「ひぃぃぃーーーーーッ!!」

 

 

その一言に顔が青ざめ、震え上がるライザー。

端から見れば人を食おうとしているドラゴンという光景にしか見えないのは気のせいではないだろう。

 

一誠、我夢、大悟はタンニーンの背に乗ると、手を振ってしばらくの別れを告げる。

 

 

一誠「んじゃ、部長。そういうことで行ってきます!」

 

リアス「3人共、気をつけるのよ。何かあったら必ず連絡して」

 

「「「はーい」」」

 

 

そう言うリアスに3人は仲良く返事する。

準備が整ったので、タンニーンは翼を羽ばたかせて上昇していく。

 

 

ライザー「おぉい、お前ら!今すぐ俺を助けろ!命令だぞッ!!」

 

 

未だに腹を決めてないライザーは尚も抵抗を見せ、地上にいる自分の眷属達に助けを求める。

だが───

 

 

『ライザー様、ファイトーー!!』

 

ライザー「薄情者ォォォーーーーーッ!!」

 

 

眷属達は助けるどころか逆に手を振って応援するだけだった。

あっさり裏切られ、ショックを受けたライザーの悲痛な叫びはタンニーンの姿が遠い空へ見えなくなるまで響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タンニーンの領地である渓谷の雪原地帯に降り立った我夢達はチームハーキュリーズとタンニーンによるライザーの特訓を見学し始めた。

 

 

「ほらほら、遅いですぞ」

 

ライザー「うわぁぁあッ!!こ、凍る!!俺の炎がァァッ!!」

 

 

改造VRゴーグルと登山装備をしたライザーはさっそく水色の龍──『氷雪龍(ブリザード・ドラゴン)』に追い回されていた。

氷雪龍(ブリザード・ドラゴン)の吐息によってライザーは尻に火がつくならぬ、尻に凍る状態で逃げ回っている。

 

氷雪龍(ブリザード・ドラゴン)の背には何故かレイヴェルが乗っていた。

ここにいる理由は、兄の一緒に立ち直らせたいという何とも健気な願いだからである。

レイヴェルは眼下で走り回るライザーに激を飛ばす。

 

 

レイヴェル「お兄様!これぐらいで音を上げてどうしますの!」

 

ライザー「ひいっ!ふうっ!そんなことを言わずに助けてくれェェェ~~!」

 

 

健気な妹に比べて兄・ライザーは応じるどころか助けを求めようとしていた。

本当に兄妹なのか怪しいくらいである。

 

ヘロヘロになっているライザーだが、まだこの走り込みは準備体操にしか過ぎない。

 

 

 

 

 

──次の日。今度は崖登りに挑戦させたが──

 

 

ライザー「はぁーーッ!はぁーーーッ!」

 

志摩「オラオラッ!!坊っちゃん!早く登りきらねぇと下敷きになるぞ!」

 

 

当然、普通の崖登りではない。

頂上にいる志摩は崖を登るライザー目掛けて岩を次々と落としていく。

勢いのついた岩を登りながら避けるなど当然不可能であり、ライザーは次々と当たっていく。

 

 

桑原「心を落ち着かせろ!身体の末端までの神経に意識を集中させるんだ!」

 

ライザー「そんなことが出来るかァァァーーーーッ!!」

 

 

桑原の助言にライザーは涙目で叫ぶ。

慣れていない崖登りで落石を前にしても冷静でいられる方がおかしい。

 

ライザーはこうなったら飛んでやると炎の翼を広げて飛び立とうとするが──

 

 

ドォォンッ!!

 

ライザー「ぐおっ!?」

 

 

地上から放たれた砲弾が背中に炸裂し、怯んだライザーは強制的にもとの位置へ戻された。

ライザーは地上を見下ろすと、XIGバズーカを構えた吉田の姿が見えた。

 

 

吉田「ズルは駄目だぜ、坊っちゃん!」

 

 

XIGバズーカを肩に担いだ吉田は暑苦しい笑顔を見せる。

ライザーが再生出来る体質であるのが幸いだが、普通なら悪魔といえどひとたまりもないだろう。

 

真面目に崖を登ろうとすれば岩を落とされ、飛ぼうとするならバズーカに撃ち落とされる。

どうあがいても地獄の特訓にライザーの恐怖心は強まり、涙すら流れた。

 

 

ライザー「ひぃぃぃぃ~~~!!」

 

 

ライザーは情けない声をあげながらも崖を登っていく……。

 

 

 

 

 

 

 

ライザー「ぎゃあぁぁぁーーーーッ!!!」

 

 

その次の日。またもライザーは雪原の上をブレスを吐くドラゴン達から逃げ回っていた。

それを遠くから見ながら我夢、一誠、大悟はレイヴェルが差し入れに持ってきたパンケーキをデザートにお茶を楽しんでいた。

 

焼きたてであろうパンケーキを口にいれた一誠は舌を唸らす。

 

 

一誠「うん!しっかし、このパンケーキ美味いなぁ~。レイヴェルが作ったのか?」

 

レイヴェル「え、ええ。材料などはここのドラゴンさん達から頂いたのですが、足りないものもあって満足の出来では……」

 

一誠「いや、美味いよ。本当に美味い!お世辞とかじゃなくてマジに!なあ?」

 

我夢「外はパリッと中はフワッとした食感に濃厚な味付け……。全然不味くなんかない」

 

大悟「うんうん。この味なら店出せるよ。調理師の資格を持っている僕が保証するよ」

 

 

一誠に続いて我夢、大悟も好意的な感想を出す。

特に調理師免許を持ち、グルメな大悟も太鼓判を押すので本当に美味しく出来上がっている。

 

彼等の感想を聞いたレイヴェルは一瞬頬を緩めるがすぐにハッと口元を抑えると、上から目線で自慢気な顔を浮かべる。

 

 

レイヴェル「当然ですわ!私のパンケーキを食べられるなんて光栄に思うべきですわ!感謝しながら味わってもらいたいですわね!」

 

「「「ズズズ……」」」

 

 

典型的なツンデレキャラクターの反応に我夢達は『わかりやすいなぁ~』と内心思いながら、紅茶をチビチビ飲む。

高飛車なところもあるが、それでも根は正直で気を配れる人物なのは確信できる。

 

 

我夢「あっ。そういえば、レイヴェルは……あーー人間界の学校でいえば何年生に当たるんだ?」

 

 

ひょんなことを思い出した我夢は遠回しに年齢を訊ねる。

これまでレイヴェルとは何度も会っているが本当の年齢までは知らない。

年は自分達とはさほど変わらないと思うが、念の為だ。

 

レイヴェルはコホンと軽く咳払いをすると、我夢を見据える。

 

 

レイヴェル「では、特別に教えて差し上げます。日本のハイスクールでいうところの1年生にあたりますわ」

 

我夢「え!?まさかの後輩?」

 

一誠「知らなかったぜ……」

 

大悟「じゃあ、16~15歳くらいか」

 

 

レイヴェルの年齢を聞いた我夢、一誠は驚き、大悟は冷静に相当する年齢を呟く。

オカルト研究部のメンバーで同じ学年にあたるのは小猫とギャスパーである。

 

ちなみに小猫と同年代とはいえ、()()()()は彼女を遥かに上回っているのは余談である。

 

もし入学してくれたら……と我夢達が想像していると、ふと何かを思い出したレイヴェルはそれを口にする。

 

 

レイヴェル「そういえば、今夜リアス様達がこの山に来るそうですわよ」

 

一誠「部長達が?何しに?」

 

レイヴェル「はい。何でもこの近くに美容にとても良い温泉があると───」

 

ライザー「があぁぁぁぁーーーーッ!!」

 

『!?』

 

 

温泉について話している彼等を遮るようにライザーの奇声が耳に飛び込んでくる。

我夢達は声のした方へ顔を向けると、苛立った様子のライザーが地団駄を踏んでいた。

元々嫌だった特訓の過酷さにビビることを通り越して逆ギレしたのだ。

ライザーは叫ぶ。

 

 

ライザー「生粋の上級悪魔である俺にこんな泥臭いことをさせて!!朝から晩まで撃たれ、凍らされ、落とされの連続!もう我慢できんッ!」

 

バキッ……!!

 

我夢「あ…」

 

ライザー「こんな特訓やめだ!!帰らせてもらうぞッ!!!」

 

 

怒りに任せ、改造VRゴーグルを強引に引きちぎって投げ捨てたライザーは炎の翼を羽ばたかせて遠くへ飛んでいく。

感情的になっている影響かスピードは早く、1秒もしないうちに小さくなる程離れていた。

 

 

我夢「……小猫でも外せなかったゴーグルのロックを壊すなんて!何て握力なんだ!」

 

一誠「何感心してんだよ!早く追うぞ!レイヴェルはここで待っていてくれ!」

 

レイヴェル「お気をつけて!」

 

 

呆気にとられるのを通り過ぎて感心する我夢に現実へ戻るように促した一誠はレイヴェルにそう告げると、悪魔の羽を広げて我夢と共にライザーの後を追っていく。

 

遠くへ飛んでいく2人を見送ったレイヴェルは視線を横に向けると、手を振って見送る大悟がいることに気付いた。

不思議に思ったレイヴェルは訊ねる。

 

 

レイヴェル「あら?大悟様は行かれないのですか?てっきり、一誠様達と行かれるものかと……」

 

大悟「………飛べないんだよ。人間だから」

 

レイヴェル「あっ……」

 

 

そう言って落ち込む大悟を見て、レイヴェルはやってしまったと口元を抑える。

忘れていたのだ……この場にいるほとんどが悪魔なのですっかり大悟が人間であることを。空を飛べないことを。

 

この時、レイヴェルは触れてはいけなかったと反省した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザーは吹雪く雪にも屈せず、自慢の炎で溶かしながら猛スピードで飛び抜ける。

最初は慣れない環境に辟易していたが、ここ3日間の特訓のおかげですっかり適応した。

 

 

ライザー「む?」

 

 

飛んでいる最中、眼下にそびえ立つ山の洞窟から光が漏れているのを目にする。

 

現在いるタンニーンの領地には多くのドラゴンが生息しており、氷を吐くドラゴンだけでなく、雷を吐くドラゴンも生息している。

そのドラゴンが雷を放ったのかと思ったが、雷にしては光の漏れかたが不自然だった。

 

どうしても気になるライザーは進路を変更して下降すると、その洞窟の中へ入っていく。

洞窟は上空から見たものと反して大きく、薄暗い空間が広がっていた。

 

 

ライザー「……?」

 

 

足を踏み入れたライザーは白い息を吐きながら洞窟を見渡しながら歩いていくと、洞窟にすっぽりと嵌まった建物を見つけた。

自然の産物でもある洞窟に似合わない人工的な鉄筋コンクリート製で辺りには段ボールの空箱が散乱している。

 

入口らしき扉を見ると、『ミジー製作所』と魔界文字で書かれていた。

製作所ならばここは工場ということである。

 

 

ライザー「こんなド田舎に工場なんてあったか……?」

 

 

しかし、ライザーは首を傾げる。

半年間引き込もっていたとはいえ、外界の情報は収集していたが、タンニーンの領地に工場があるのは全く聞き覚えがないのだ。

ましてやドラゴンだらけで天候も不安定なこの場所に悪魔が働く施設を建てるなど自殺行為に近い。

 

 

「さあ、急ぐぞ」

 

ライザー「ッ!」

 

 

ライザーが不思議に思っていると、中から従業員らしき男の声が聞こえる。

ライザーは咄嗟に段ボールの陰に隠れると、近くの窓から中を覗く。

 

中にはソフトモヒカンで髪の先端が赤色の小太りの中年、赤い作業服を着た紫色の髪をオールバックにした背が高い男、くねくねとオネエっぽい動きをする金髪の男──計3人の作業員がいた。

どうやら先程の声はリーダー格である小太りの男のものの様だ。

 

金髪の男はくねくねとした動きで手を頬に当てながらくたびれた声を出す。

 

 

「ねぇ、私達。最近働き過ぎじゃない?」

 

「何を言う。後もう少しで『ガラオン』が完成するじゃないか。それまでの辛抱だ」

 

ライザー「(ガラオン?)」

 

 

ライザーはソフトモヒカンの男の口から出た聞き覚えのない単語に眉をしかめる。

上級悪魔として数々の品々を見てきた彼だが、ガラオンなんてものは見たことも聞いたこともない。

庶民が使う玩具か何かとライザーは思っていると、金髪の男は痒いように鼻をモガモガと動かした瞬間──

 

 

「くしゅんっ!!」

 

ライザー「ッ!?」

 

 

くしゃみと共に金髪の男の顔が赤色に側面に幾つもの穴が空いた異形の姿に変わった。

目の前に起きた光景にライザーは目を丸くして声すらも出なかった。

 

 

「「∪⊃≮/£﹩+<₸₤₩₮₭₡₦!!」」

 

ポンッ!

 

「ふぅ~~危ない危ない……。ほんと、この星の気温には慣れないわね」

 

 

他の2人は焦ったように金髪の男に見えてる見えてると何かしらの言語を発する中、金髪の男は音を立てて合掌すると、元の人の顔に戻った。

金髪の男は戻ったことを確認して安堵の息を漏らす中、ソフトモヒカンの男はキョロキョロと辺りを警戒する。

 

 

「……大丈夫だ。おい、気をつけろ。どこで見られているのかわからんのだぞ。急げ」

 

「今日も残業か……」

 

 

ソフトモヒカンの男はそう注意を促して作業を催促させると、紫髪の男はそう言いながらため息を漏らす。

驚きが止まないライザーはしゃがんで今目撃した出来事を纏める。

 

 

ライザー「あれは、宇宙人なのか……!本当にいたのか……!」

 

 

人里から離れた場所に工場。そこには何かを作業する宇宙人。

今まで信じていなかった彼にとっては衝撃であろう。

驚きを隠せないライザーだったが、息を吸って落ち着かせると再び窓からそおっと覗き込む。

 

作業員3人が設計図らしき書類とにらめっこしている壁の奥には巨大な怪獣の顔が機械によって製造されていく光景が広がっていた。

 

 

ライザー「怪獣……」

 

 

呆気にとられるライザーだったが、すぐに正気に戻るとこれ以上はここにいると危険だと判断し、後ろ向きで抜き足差し足と入ってきた方へゆっくり歩いていく。

 

物音を出来るだけ立てずに歩いていき、洞窟の出口へ差し掛かった時だった。

ドンッと背中に何かがぶつかる。

 

 

ライザー「ッ!?……お前達か!」

 

 

驚いたライザーは宇宙人かと思って振り返ると、そこには我夢と一誠が立っていた。

彼等を見て安堵していると、素早くライザーの両隣に移動した2人は片方ずつ腕を絡ませて拘束する。

 

 

ライザー「へ?」

 

 

拘束されたライザーは気の抜けた声を出す。

ライザーは忘れていたのだ。自分が逃亡の身であると。

我夢と一誠は呆れた声音で話す。

 

 

我夢「やっと見つけた」

 

一誠「散々苦労かけさせやがって、全く……。さ、帰るぞ」

 

ライザー「ま、待った!話を聞けっ!」

 

一誠「この後に及んで何だよ?」

 

 

待ったをかけられ眉根を寄せる2人にライザーは先程目撃したことを全て話した。

 

 

一誠「───は?3人の宇宙人がこの洞窟の奥にある工場で怪獣を作ってるって?出任せ言ってんじゃねぇだろうな?」

 

ライザー「嘘じゃない!俺を信じろ!」

 

我夢「嘘かはともかく、一応確かめてみよう」

 

一誠「……そうだな。もし嘘だとわかったら、逃げた罰として特訓をもっと過激にしてもらうからな。いいな!」

 

ライザー「わ、わかった……」

 

 

我夢の意見に賛成した一誠はライザーにキツく釘を刺すと、3人は洞窟の奥に進み、工場の前に着いた。

 

 

我夢「本当に工場があったんだ……」

 

一誠「よし!突入するぞ」

 

我夢「うん」

 

 

頷いた我夢はジェクターガン、一誠はXIGブラスターを取り出すと、持ち場につく。

一誠は入口、我夢はその後ろをつける形で銃口を構える。

緊張が走る中、工場内から足音が近付き、扉が開いた瞬間──

 

 

「「動くなッ!!」」

 

 

2人は牽制に叫びながら出てきた人影に銃口を向ける。

だが──

 

 

「ッ!?な、何すか!?あんた達は!」

 

一誠「あ、いえ。大したことでは……」

 

 

出てきたのは仰天するソフトモヒカンの中年男だった。

どこからどう見てもごく普通の作業員にしか見えない2人は苦笑いで謝りながら銃をしまった。

 

申し訳なさそうにしながらも我夢はソフトモヒカンの男に事情を説明する。

 

 

我夢「すみません。この工場で怪獣を組み立てていると聞いたもので……」

 

「怪獣?ハッハッハッハッ……!!」

 

「「「?」」」

 

 

ソフトモヒカンの男は高笑いをあげる。

不思議に思う我夢達を置いてきぼりにひとしきり笑った後、ソフトモヒカンの男は言う。

 

 

「確かにいますよ」

 

「「「!?」」」

 

 

その言葉に緊張が走る。

我夢達は警戒を見せる中、ソフトモヒカンの男は作業服の上着のポケットから取り出したものは──

 

 

「ほらね」

 

一誠「え?」

 

我夢「人形?」

 

 

何の変哲もない怪獣のソフビ人形だった。

どこの玩具屋にでもある精巧に作られた怪獣ムルチの人形だ。

 

 

「私達が働いているのを見せましょう。どうぞ」

 

「「は、はぁ…」」

 

 

拍子抜けた我夢達にソフトモヒカンの男は工場内に招く。

工場内に入ると、作業員の紫髪の男と金髪の男が忙しそうに動き回りながらソフビ人形を作っていた。

ソフトモヒカンの男は屈託のない笑顔で言う。

 

 

「大量に注文が入りましてね、このところ残業続きで社員もブーブー言ってるんですよ。どうですか?どこか、怪しいところでも?」

 

一誠「いやぁ~全く無いですね。なあ、我夢」

 

ライザー「おかしい……確かにあったはずだ……」

 

 

ライザーは中を見て目を丸くする。

先程まで怪獣があった場所は最初から何も無かったようにまっ平らな壁があるだけだった。

作業員も動揺している素振りはない。

 

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

「あ…ッ!」

 

「あぁあッ!?」

 

 

ライザーが首を傾げていると、紫髪の男は痒そうに鼻をモガモガと動かし、くしゃみが出そうになる。

それを見たソフトモヒカンの男と金髪の男は声をあげ、狼狽えるが──

 

 

「ふぅぅ…」

 

 

紫髪の男はくしゃみを堪えるのを見て、ほっと安堵する。

 

 

我夢「大丈夫ですか?」

 

「あ、いいえ…」

 

 

心配そうに声をかける我夢に問題ないと首を横に振る。

一誠は近くの机からギエロン星獣のソフビ人形をひょいと手に取ると、それをライザーに見せながら詰め寄る。

 

 

一誠「ほら!ここは本物の怪獣じゃなくて、玩具の怪獣工場って訳なんだよ。勘違いしたんだな」

 

ライザー「勘違いじゃあない!本当に怪獣の頭があったんだ!あの壁の向こうに!」

 

「「「あっ……!」」」

 

 

そう言って壁に駆け寄ろうとするライザーに3人の作業員達は目を見開いて息を呑む。

 

 

我夢「…?」

 

 

その過剰な反応に我夢が違和感を感じていると、ライザーは壁に触れる寸前のところで一誠に羽交い締めにして捕らえる。

 

 

一誠「はいはい。ホラ話なら後で幾らでも聞いてやるから……これ以上迷惑かけるんじゃねぇよ」

 

ライザー「嘘じゃない、信じてくれッ!本当なんだッ!」

 

一誠「もし俺がお前の上司だったら、『一週間謹慎だ』って言ってやりたいね。ふんっ……」

 

 

なおもジタバタともがきながら主張を続けるライザーに一誠は呆れた顔で聞き流すと、ズルズルと後ろへ引っ張って元の位置に戻っていく。

ソフトモヒカンの男はニコニコと屈託のない笑顔を浮かべる

 

 

「いやぁ~~想像力があって素晴らしい!面白いな!」

 

一誠「すんません、うちのバカがとんだマネを」

 

「いいんですよ。記念にどうぞ」

 

 

そう言いながらソフトモヒカンの男は一誠達3人にソフト人形を1体ずつ渡す。

一誠はギエロン星獣、我夢はジャミラ、ライザーはムルチのソフビ人形を受け取った。

 

 

一誠「忙しいところすみません」

 

我夢「では、失礼します」

 

 

一誠と我夢は手を振るソフトモヒカンの男にそう告げると、入口の扉から外へ立ち去っていく。

 

 

「……」

 

 

見届け終えたソフトモヒカンの男は途端に作り笑顔を止めると、窓から冷酷な眼差しで彼等の後ろ姿をジッと見つめた。

 

ちなみに連れて帰られた後、ライザーは倍以上にしごかれ、この世のものとは思えない絶叫をあげていたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その夜。

我夢、一誠、大悟、ライザーは洞窟に寝袋を敷き、雑魚寝していたが───

 

 

大悟「大変だ!ライザーがいない!」

 

「「何だって!?」」

 

 

大悟の一声で今までうたた寝していた我夢、一誠は跳ね起きる。

2人はライザーの寝袋を見ると下手くそな顔が描かれた紙を貼り付けた囮人形にすり替わっていた。

むかっ腹が立った一誠は地団駄を踏む。

 

 

一誠「クソッ!アイツ、また逃げ出しやがったな!」

 

我夢「この吹雪だ。まだ遠くには行ってないだろう。僕と大悟はファイターEXで北の方を捜索するから、一誠は南の方を捜索してくれ」

 

一誠「わかった………って、乗せてくれないのか?」

 

 

一誠の問いに我夢は「2人乗りなんだ」と答え、呼び出したファイターEXに大悟と乗り込むと、北の空へと飛んでいった。

 

 

一誠「俺も専用機が欲しいな~」

 

 

それを見届けた一誠は羨ましく呟くと、悪魔の翼を広げて反対方向へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。

こっそり抜け出したライザーは再びあの工場がある洞窟へと足を運んでいた。

 

 

ライザー「(誰も信じないのなら、俺が暴いてやるッ!!)」

 

 

ライザーが抜け出した理由。それは特訓が過酷なので逃げたのではなく、あの工場で宇宙人が怪獣を作っている証拠を掴む為だった。

 

しかし、それは正義感ではない。

ライザーを突き動かすのは、あくまで()()()()()()()()()だ。

上級悪魔としてのプライドが“嘘つき”という汚名を付けられたことを許さなかったのだ。

 

先程の工場の入口についたライザーは窓から中の様子を伺う。

中は昼間と違って灯りは消えており、帰ったのか作業員の姿はどこにも見当たらなかった。

だが、肝心の怪獣を製造しているところはわからない。

 

 

ライザー「よし……」

 

 

絶好のチャンスを確信したライザーは軽く力を込めて入口の施錠を強引に外す。

扉を開け、中へ入ろうとしたその時だった。

 

 

一誠「……おい、何してんだよ?」

 

ライザー「……ッ!兵藤 一誠!」

 

 

後ろから声をかけられたライザーは振り返ると、不満げな顔を浮かべる一誠がいた。

一瞬驚くライザーだったが、証言になると思い付き、話しかける。

 

 

ライザー「丁度いいところに来たな!貴様にここが怪獣工場だってことを証明してやる」

 

一誠「は?まだそんなこと言ってんのか。いいか?ここは本物の怪獣を作るんじゃなくて、怪獣の玩具を作ると・こ・ろ!ホラ話もいい加減にしろ。ほら、帰るぞ」

 

 

呆れた一誠はそう言い放ち、連れ戻そうと手を伸ばすが──

 

 

ライザー「ビビっているのか?」

 

ピクッ!

 

 

ライザーの漏らした挑発に反応した一誠はピタリと手を止める。

ライザーは一誠が挑発に弱いことは以前会った時から知っている。

手応えがあったと確信してライザーはニヤリと小馬鹿にするような笑みを浮かべてもう一度言う。

 

 

ライザー「どうした、ビビっているのか?本当は怪獣が怖いのが認めなくて逃げようとしているのだろう?」

 

一誠「ビ、ビビってなんかないぜ!怪獣なんて……怖くねぇーぜッ!」

 

ライザー「なら、証明してみせろ」

 

一誠「わかった!やってやるよ」

 

 

易々とライザーの口車に乗せられた一誠はふんっと鼻を鳴らすと、工場の中へ入っていく。

ライザーもその後を着いていきながら、怪獣が作られていた場所があった壁へ案内する。

 

 

ライザー「ここだ。この場所だ」

 

一誠「ここか?よーし……」

 

 

一誠は右手に息を吹きかけて気合いを込めると、拳を構える。

 

 

一誠「いっせーのーせッ───うおっと!?」

 

ライザー「!?」

 

 

タイミング合わせて拳を繰り出した瞬間、眼前にあった壁は幻のように消え去り、バランスを崩した一誠は前のめりに倒れる。

カモフラージュの壁の奥にはライザーが昼間に目撃した怪獣を作っている3人の作業員の姿があった。

 

3人に赤色の銃を向けられて不意を突かれた一誠とライザーは降参を示すように両手を挙げた。

 

 

「おら、起きろ!」

 

一誠「………これは、どーいう……?」

 

 

一誠は紫髪の男からXIGブラスターを奪い取られ、無理矢理立たせるも突然のことで状況が読み込めず、ソフトモヒカンの男に訊ねる。

ソフトモヒカンの男はライザーを指差すと、答えを提示する。

 

 

「その男が言ったことが本当だってことさ」

 

一誠「……何だって!?」

 

 

ソフトモヒカンの言葉を受けて、一誠は裏返った声で驚く。

奥の方へ目をやると、製造中であろう巨大な怪獣の顔が佇んでいる。ライザーの言っていたことは本当だったのだと理解した。

 

 

ドルチェンコ「我々はミジー星からやってきた秘密工作員だ。かねてより資源のある星を我々の植民地にする計画を進めてきたが、この地球はまさにうってつけだ!」

 

 

ソフトモヒカンの男はライザーと一誠の間を縫うように通りながら話す。

そう、彼等は地球侵略を企む『ミジー星人』だったのだ。

ソフトモヒカンの男はリーダー格の『ミジー・ドルチェンコ』。紫髪の男は『ミジー・ウドチェンコ』で、金髪のオネエは『ミジー・カマチェンコ』だ。

 

 

ドルチェンコ「……我々はその為に周到な計画を進めてきた」

 

一誠「計画?」

 

 

一誠が計画という単語に眉をひそめていると、ドルチェンコはしかめっ面をしている怪獣───ガラオンに歩み寄ると振り返って声に出す。

 

 

ドルチェンコ「これは我がミジー星が誇る特殊戦闘用メカニックモンスター───ガラオンだ」

 

「「ッ!」」

 

ドルチェンコ「我々はこの星のレーダー網にかからないように部品を細分化し、防御シールドにくるんでここに持ち込み、組み立てていたのだ」

 

 

語り歩くドルチェンコの後を一誠とライザーはウドチェンコとカマチェンコに銃を背中に突き付けられながら歩かされる。

一誠はともかくライザーは撃たれようとも再生できる体質なので切り抜けられるが、唐突すぎてそれすら考えが浮かばなかった。

 

 

ドルチェンコ「今まで、この星には様々な侵略者が訪れたらしいが、全て失敗に終わっている。それは今1つ……計画性がなかったからだ。そこへ行くと、どうだ!我々の計画は完・璧すぎて恐れいっただろう、ヌハハハハーーーーッ!!」

 

一誠「威張るんじゃねぇ。こうしてライザーにバレてるじゃねぇか」

 

ドルチェンコ「ッ、確かに……」

 

 

一誠に痛いところを突かれたドルチェンコは高笑いを止め、瞼をピクピクさせる。

そこで折れずに立ち直ったドルチェンコは振り返ると一誠を指差し──

 

 

ドルチェンコ「しかし、君達はその男の言うことを信用しなかった!」

 

ライザー「……」

 

 

そう指摘されるのに加え、恨めしい目を向けるライザーに一誠はすまんすまんと軽いジェスチャーで謝る。

ドルチェンコは再び背を向けると、近くの机の戸棚に置いてあるライブキングのソフビ人形を手に取る。

 

 

ドルチェンコ「……だが、この際どうでもいい。既にガラオンは完成した。明日にはこの星は我々ものだ、アッハッハッ……!」

 

一誠「何て奴だ…!」

 

 

勝ち誇ったように笑うドルチェンコを見て、一誠は顔を強張らせて呟く。

既に侵略したのも同然と確信したドルチェンコは妄想を膨らませる。

 

 

ドルチェンコ「おお……!何と美しい光だ!」

 

カマチェンコ「何て綺麗なんでしょう……!」

 

ウドチェンコ「俺達は何としてでも……!」

 

「「「この星が欲しいッ!!!」」」

 

 

それに続いて一誠とライザーに銃を突き付けていたカマチェンコ、ウドチェンコも持ち場を離れ、一緒に妄想する。

 

一誠とライザーは3人のミジー星人が自分達をそっちのけで妄想に浸っているのを見て確信した。

───これ、今なら倒せるんじゃね?と

そう思うな否や、意見が初めてあった2人は顔を見合わせると、行動に移した。

 

 

ライザー「ふんッ!!」

 

ボォォッ!!

 

 

ライザーは両手に掌サイズの火球を作り出すと、それをミジー星人の足下へ投げ飛ばした。

高熱の火球はあっという間に床に火の海を作り出す。

 

 

「「「ぎゃぁーーーっ!?あちっ!あちちちちっ!!」」」

 

一誠「おらッ!!」

 

 

突然床が燃え出したのに仰天したミジー星人達は熱さのあまり、タップダンスを踊るように飛び跳ねる。

その隙に走って接近した一誠は3人にタックルをくらわせる。

 

 

カチャ…!

 

「「「₡₦£₩₤₭<+)#〡٤ⅸ!?」」」

 

 

倒れた拍子で床に落ちたXIGブラスターを取り返した一誠は素早く銃口を向けると、狼狽えるミジー星人達は動揺のあまりに母星の言葉を発しながら物陰へと逃げていく。

 

 

ピュン!ピュン!

 

 

両陣営共、物陰に隠れると激しい銃撃戦が始まる。

とは言ってもライザーは銃ではなく、魔力で作り出した火の弾なのだが。

 

 

ドガンッ!

 

ドルチェンコ「あ!?」

 

 

しばらく繰り広げられていると、ウドチェンコとカマチェンコの放った光線弾が壁に接続されてあるパネル型の装置に直撃する。

装置が火花をあげて壊れるさまを机から頭を出したドルチェンコは顔面蒼白に口をあんぐりと開ける。

 

その装置が破壊されたのと同時に山全体を覆っていた透明のドーム型の防御シールドが消え去り、隠されていた工場の全貌が露になる。

隠されていた鉄の六角錐形のドームは歪に山の中腹部から突き出ている。

 

 

ドルチェンコ「馬鹿!防御シールドを撃つやつがあるかッ!何やってんだよッ!」

 

ウドチェンコ「あわわわ……!」

 

カマチェンコ「壊しちゃったァ!」

 

ドルチェンコ「馬鹿者ッ!よぉし……。こうなったら、ガラオンで滅茶苦茶にしてやるッ!!」

 

 

誤射してしまって口をあんぐりと開けるウドチェンコとカマチェンコにドルチェンコは叱責すると、すぐに気を取り直してガラオンに乗り込もうとするが───

 

 

ガァンッ!!

 

ウドチェンコ「……ッ!」

 

 

丁度振り向いたカマチェンコの頭と衝突し、苦痛で顔を歪ませる。

それを見て痛そうに感じたウドチェンコは開いた口を抑える。

鳴きそうな声音で痛がるカマチェンコにドルチェンコは叫ぶ。

 

 

ドルチェンコ「馬鹿ァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「何だ?」

 

大悟「工場?」

 

 

一方、遠くで探索していた我夢と大悟も露になったミジー星人の工場を目撃していた。

それがある場所に思い当たりのある我夢は大悟に話す。

 

 

我夢「あそこって昼間、僕達が行った玩具工場があったところだ!」

 

大悟「よし、行ってみよう!」

 

 

我夢は頷くと、ファイターEXの進路を工場の方向へ変えて飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ミジー星人達は工場に隠していたガラオンのコックピットに乗り込んでいた。

 

コックピットは生物チックなガラオンの外見に反して、機械質なパイプや電子回路がチラチラ光る壁等、やけに機械的な作りとなっている。

ウドチェンコとカマチェンコは入ってすぐの左右の床から突き出ている電子パネル、ドルチェンコは奥にある幾つものレバーがついた操縦台に着いた。

 

 

ドルチェンコ「ハハハハハハ……!ガラオンは最強のメカニックモンスターだ。今、その力を見せつけてやる………行けぇ!!」

 

「「ラジャー!」」

 

 

ドルチェンコの号令にサムズアップしながら答えたウドチェンコとカマチェンコは電子パネルを操作して電源を起動させる。

ウィィン…とエンジン音が鳴ったのを合図にドルチェンコは操縦台の右のレバーを手前に引き、左のレバーを押して発進させた。

 

 

ゴゴゴゴゴ……!

 

 

その頃、一誠とライザーはガラオンが起動した影響の地響きからくる揺れる足下に気をつけながら外へ避難していた。

 

 

ドガァァンッ!!

 

「「!」」

 

 

すると、後ろの工場が山ごと爆発し、2人は振り向く。岩石と人工物の破片が合わさった瓦礫の雨が落ちてくる中、地面から生えるように阿修羅のように3つの面が貼り付いたガラオンの顔が露になった。

 

 

ヒュウゥゥ……

 

 

それと同時にガラオンを見て呆気にとられている一誠とライザーの近くに到着したファイターEXが降り立つ。

降りた我夢と大悟は駆け寄ると、一誠に問いかける。

 

 

我夢「イッセー!あれは一体……」

 

一誠「ロボットの怪獣だ。あの工場の奴ら、地球侵略を企む宇宙人だったんだよ」

 

我夢「何だって!?」

 

大悟「しかし、随分と不細工だな……」

 

 

一誠の語る真実に驚く我夢に対し、大悟はガラオンの顔の造形を見て呟く。

ガラオンは光る黄色の眼にしかめっ面、泣き顔、笑い顔の3つの面がついているといった恐ろしい要素があるが、たらこ唇で顔の面積がやけに広いのでどうしても恐ろしさに欠けてしまうのだ。

 

 

ライザー「あっ、おい。何処へ……」

 

我夢「いいから来て」

 

 

そんなやりとりの後、我夢は有無を言わさずライザーを連れるとファイターEXの操縦席に乗せる。

初めて座る戦闘機の感触にライザーがあちこち内部を見ている中、我夢は操縦席の前面にある液晶パネルに映るファイターEXをデフォルメしたような見た目のAI──〡PAL《パル》に話す。

 

 

我夢「PAL。ライザーを安全な場所まで連れて行ってくれ」

 

《PAL『ワカリマシタ ガム』》

 

ライザー「おい!?動いてるぞッ!」

 

 

PALは合点承知と指示を承ると、我夢が離れたのを合図に中にいるライザーごとファイターEX を上昇させる。

戸惑うライザーを話から置いていきながら、ファイターEXは我夢達から離れていく。

それを見届けた我夢はニコリと微笑む。

 

 

我夢「これでよし!」

 

大悟「彼を避難させたことだし……」

 

一誠「そろそろ行くかッ!」

 

 

そう言ってガラオンに振り向き直した我夢、大悟、一誠は懐から変身アイテムを取り出す。

大悟はスパークレンスを突き出してから引っ込めて両腕をクロスさせて大きく回し、一誠はリーフラッシャーを左胸に当て、我夢はエスプレンダーを左肩に当て───

 

 

大悟「ティガァァァァーーーーーーーッ!!!

 

一誠「ダイナァァァーーーーーーーーッ!!!

 

我夢「ガイアァァァーーーーーーーーッ!!!

 

 

叫ぶように掛け声を発しながら大悟は真上、一誠は斜め上に掲げ、我夢は前方に突き出す。

各々の変身アイテムから溢れ出した目映い光に包まれ、3人はウルトラマンに変身した。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

ダイナ「フッ!」

 

ガイア「グアッ!」

 

 

ティガ、ダイナ、ガイアは地面に乗っかっているガラオンへ身構える。

自分達の脅威の登場にミジー星人達は驚くものの、すぐに平静を取り戻す。

 

 

ドルチェンコ「出たな、ウルトラマン共め……。だがァ、完成したガラオンの敵ではない!見て驚けェェ!」

 

ゴゴゴゴゴ…!!

 

 

そう不敵に言うと、ドルチェンコは右手に持つ操縦レバーを手前に引っ張る。

すると、地鳴りと共に地表がひび割れると埋められていたガラオンの首から下が出てきた。

大きくなったガラオンはみるみると巨大な影を作り出し、その高さは3人のウルトラマンが小人に見えるくらいまでになった。

 

 

「「「ッ!?」」」

 

ドルチェンコ「ハハハッ!!どうだ!見て驚いたか!!このガラオンは身長400mも誇るビッグモンスターだ!たかだか50m程度のお前らなど目じゃない!アハハーーッ!!」

 

「「ハーハハハハーッ!!」」

 

 

唖然とする3人のウルトラマンを見て、優越感に浸るドルチェンコと他の2人は嘲笑った。

ただでさえ巨大なウルトラマンを見下ろせる景色は中々見られないだろう。

 

 

ドルチェンコ「いよ~~!」

 

ポンッ!

 

 

お手を拝借のリズムに合わせてミジー星人達は合掌すると、本来の姿に戻った。

3人共顔は同じだが、体型や服装はそのままなので誰が誰なのか一目でわかる。

すっかり上機嫌になったドルチェンコは───

 

 

ドルチェンコ「まずは手始めに踏み潰してやる!」

 

「「いぇ~~~いッ!」」

 

 

そう宣言すると、他の2人も賛成と言わんばかりにテンションを盛り上げる。

ニヤニヤしながらドルチェンコは足を操縦するレバーを引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドルチェンコ「……あれ?あれあれ?」

 

 

────だが、全くガラオンの足は動く気配がなかった。レバーを何度も何度も引いても微動だにしなかった。

動かないガラオンにドルチェンコは首を傾げていると、カマチェンコはあっと思い出したように声をあげる。

 

 

カマチェンコ「胴体に接続する部品を忘れてたわッ!」

 

ドルチェンコ「何ッ!?この馬鹿者ォォーーーーッ!!」

 

「「「チャッ!/ハッ!/トォアッ!」」」

 

ドガァァンッ!!

 

「「「₡₦₦₦”ⅸⅸ₩₰₪₩n!!」」」

 

 

製造ミスが発覚したミジー星人達が慌てふためている隙にティガ、ダイナ、ガイアの手先から放たれた牽制光弾がガラオンの頭部に炸裂する。

衝撃で胴体から吹っ飛んだガラオンは地上へ墜落する。

 

 

ドルチェンコ「~~ッ、ええい!こうなったら頭だけでもやってやる!」

 

 

床に頭をぶつけた痛みを堪えながら起き上がったミジー星人達は何とかガラオンを起きあがらせる。

すると、ガラオンの首から足、額からペンチのような手が生えた。

ガラオンの緊急戦闘時の形態だが、デカイ頭に小さい手足が生えただけなので不恰好すぎる。

 

 

ザッ…ザッ…ザッザッザッ……!

 

ガラオン「ガァガァガァ……!」

 

 

怒り顔のガラオンは闘牛のように足で地面を引っ掻けると、バタバタと忙しく足を動かして突進を仕掛ける。

 

雪を巻き上げ猛進するガラオンだが、3人のウルトラマンに横へ飛ばれて軽々と避けられる。

 

 

キィィ───!!

 

ガラオン「ガァガァガァ……!」

 

 

足で踏ん張ってブレーキをかけたガラオンは振り向き直すと再び突進を仕掛ける。

 

 

ティガ「ヂャッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

ガイア「グアッ!」

 

ガラオン「ガァッ、ガァッ、ガァカッ!?」

 

ドォォォンッ!

 

 

だが、その攻撃はまたも掠りもせず、ガラオンの頭上を飛び越えた3人に避けられる。

対象を見失ったガラオンはおっとっとっ…とバランスを崩し、思いっきり転んだ。

 

 

「「「……?」」」

 

 

スッ転んだガラオンを見て首を傾げる3人のウルトラマンはこう思い始める。

───こいつらアホなのか?と。

そう疑問に思っていると、起き上がったガラオンは今度は泣き顔に切り替えた。

 

 

ガラオン「ファァ~~~!」

 

 

ガラオンは何処か悲しさが入った鳴き声をあげながら三度突進する。

3人のウルトラマンはカウンターを食らわせてやろうと拳を振り上げて待ち構えるが───

 

 

ガラオン「ハーーハハッ!!」

 

「「「ッ!」」」

 

 

ガラオンは目前のところで笑い顔に切り替わると、口から黄色のガスを噴射した。

 

 

「「ッ!」」

 

ダイナ「グワァァァーーーーッ!?」

 

 

嫌な予感がしたティガとガイアは素早くガラオンの両脇から前転して避けるが、一歩反応が遅れたダイナはもろにガスを受けて後ろへ転んでしまう。

ティガとガイアは振り向くと───

 

 

ダイナ「ハッハッハッハッハッハッ……!」

 

「「………???」」

 

 

何がおかしいのか途端にダイナは腹を抱えて笑っていた。込み上げる笑いを堪えきれないあまりに地面をバンバンと叩く始末だ。

ガラオンの吐いたガスの正体は笑気ガスであり、触れてしまったダイナは笑わされているのだ。

ウルトラマンが抱腹絶倒する光景にティガとガイアは唖然とする。

 

 

ピィロン♪

 

ティガ「ヂョアァッ!?」

 

ガイア「グアッ!?」

 

 

ティガとガイアは気をとられている隙にガラオンの怒り顔と泣き顔の眼から放たれる赤色と青色の光線を受け、胸元から火花を散らしながら倒れる。

 

 

ガラオン「ガァガァガァ…!」

 

 

怒り顔に切り替わったガラオンは手足を引っ込めると、浮遊装置を作動させ、3人のウルトラマンを見下ろせる高さまで上昇する。

 

 

ブンブンブン…ッ!

 

ガラオン「ガァガァガァ…!ファァ~~!ハーハハッ!」

 

 

そして、その場でグルグルと高速回転するのと同時に赤、青、黄色の光線を次々発射した。

 

 

 

ドォォォンッ!

 

ガイア「ドォアァァーーーッ!?」

 

ダイナ「グワァァァーーーッ!?」

 

ティガ「グァァァッ!?」

 

 

落雷の如く降り注ぐ光線の嵐にガイア、ダイナ、ティガは避けきれずもろに受けてしまい、周囲が明るくなる程の爆発が舞う。

 

 

ドルチェンコ「₦₩₪₸₮₰≮₤↓⊃)♪」

 

「「₮₰₰≮∪₪↓~〇♪」」

 

 

3人のウルトラマンが一方的にやられる様を見て、ガッツポーズをするドルチェンコを筆頭にウドチェンコ、カマチェンコも嬉しそうに跳び跳ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

火花と煙、吹雪が舞う中で繰り広げられる両者の戦いを1人の男が双眼鏡を使って見物していた。

 

その男は四之宮 龍。リアスの親友であるソーナ・シトリーの眷属の1人ではあるが、時に彼等の敵、時に味方として暗躍する魔人───ジャグラスジャグラーの顔も併せ持っている。

 

四之宮は双眼鏡を下ろすと、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

四之宮「ほぅ…?中々、賑やかになっているな。どれだけ成長しているか、試させてもらうぜ♪」

 

 

そう言いながら四之宮は懐から取り出したダークゼットライザーのトリガーを引き、出現した光のゲートに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイナ「……フッ!シュワッ!!」

 

ガイア「グアッ!!」

 

 

ミジー星人達が狂喜乱舞している中、やっと笑いが収まったダイナとガイアは跳び跳ねて立ち上がると、すぐさまスペシウム光線とクァンタムストリームを放つ。

だが、素早く上昇したガラオンにひらりとかわされる。

 

 

ドルチェンコ「おっと、危ない。ハッハッ……。敵を目前に油断する我々では────」

 

ティガ「ヂャァッ!」

 

ドォォンッ!!

 

ドルチェンコ「₪≮₰∪⊃⊃₩!?」

 

 

嘲笑うミジー星人達だったが、両腕を十字に組んだティガが放つ断続的な青白い光線──『マルチ・スペシウム光線』がガラオンに炸裂する。

ガラオンの体からあちこち火花が飛び散り、回路がショートしたコックピット内は大慌てになる。

ガラオンからは煙が立ち上がり、火気類も使えない。

勝てないと判断したドルチェンコは部下に撤退を命じる。

 

 

ドルチェンコ「逃げろォ、逃げろォ!!おのれェ……覚えていろッ!ウルトラマ───」

 

《Jumbo duke.》

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

「「「どわぁぁぁーーーーーー!??」」」

 

 

ドルチェンコが捨て台詞を最後まで話す間もなく、背後の空間からガラスを割るように出てきたジャンボデュークに殴られる。

ガラオンは搭乗している3人のミジー星人の悲鳴と共にギャグ漫画の如く遠い空へ吹っ飛んでいった。

夜空に星を描いて。

 

 

ジャンボデューク「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

「「「……ッ!」」」

 

 

呆気にとられていた3人のウルトラマンだったが、ジャンボデュークの鳴き声にハッと我に戻ると、牽制光弾───ハンドスラッシュ、ビームスライサー、ガイアスラッシュを放つ。

 

 

パキィンッ!

 

 

ジャンボデュークは空を叩き割ると、赤い空間が広がる異次元へ逃げ込んだ。

割れた空は閉じ、3人の放った光弾は宙を切って遠い空へ飛んでいく。

忽然と姿を消えたのを見て、3人は自然と背中合わせで円陣を組む。

 

 

ティガ「消えた……。あの怪獣は逃げたのか?」

 

ダイナ「いや、異次元に逃げ込んだだけだ。今もどこかで奇襲を狙ってる」

 

ガイア「気を付けろ。前にも戦ったけど、手強かった……」

 

 

上、下、右、左───あらゆる角度に視線を張り巡しながら注意喚起を促す。

特にダイナとガイアは以前、京都で戦ったことがあるのでジャンボデュークの強さは身に染みている。

 

 

パリィンッ!

 

「「「───ッ!」」」

 

《Jumbo king.》

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

 

緊張が走る中、ティガの正面の空間が割れると、機械音声と共にジャンボデュークからジャンボキングへと進化した合体超獣が姿を現す。

鋭い歯が並ぶ口を大きく開くと、暗闇を照らす程の火炎を放射する。

 

 

ガイア「デュアッ!」

 

ピュインピュインピュインピュイン……!

 

 

ガイアは素早く2人の前へ出ると、ウルトラバリヤーを展開する。

両腕から発生した高速回転の光の障壁は燃え滾る炎の進行を防ぐ。

 

 

ティガ「ン″ン″ン″ン″ン″~~~~ハッ!」

 

ダイナ「フ″ゥ″ン″ン″ン″~~~~グァッ!」

 

 

その隙にティガはスカイタイプ、ダイナはミラクルタイプにタイプチェンジすると、大地を蹴って上空を飛び立つ。

空気抵抗の少ないスマートな体格を得た両者はあっという間にジャンボキングが小さく見える程の高度に到達する。

 

 

ティガ「ヂャッ!」

 

ダイナ「ハッ!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

 

ティガとダイナは空を縦横無尽に飛び回りながら手先から放つ光弾で攻撃し始める。

ジャンボキングも負けじと鼻からミサイルを発射して応戦する。

空中で大爆発が起きるも、ティガとダイナは紫と青の残像を残してひらりひらりとかわしながら攻撃していく。

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

 

両者に気をとられている間に接近したガイアはタックルを仕掛ける。

ジャンボキングは僅かに怯む程度で効いていないが、ガイアは果敢に格闘戦で攻めていく。

 

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

ガイア「トォアッ!」

 

 

流石に鬱陶しいジャンボキングは顔の側面に生えているカウラの角から光線を放つ。

ガイアは跳躍してかわすと、ラクダのように凹凸がある背中へ跨がる。

振り落とそうと揺らされながらもしがみついて粘るガイアはチョップや拳の応酬でジャンボキングの死角から攻め立てる。

 

 

ピーーーー!

 

ガイア「グアァァァッ!!」

 

 

攻め続けるガイアだったが、後半身のコブから生えているギロン人の肩パーツから放たれる粒子状の光線を背後から撃たれ、怯んだ隙に振り落とされる。

 

地面へ落とされてしまったガイアだが、時間は充分稼いだ。

そう、ジャンボキングが戦うのは彼だけではないのだ。

 

 

ダイナ「フ″ゥ″ゥ″ゥ″ゥ″~~~~……!」

 

 

額の前で両腕を交差させたダイナは体全体を粒子状に変換させると、ティガの体に飛び込む。

ダイナの光を纏い、光輝くティガは両腕を胸の前で交差させた後、素早く左右に伸ばして上にあげて青色に煌めくエネルギーを両手に集約させる。

 

 

ティガ「ヂャァッ!!!」

 

 

両腕を左腰に携えたティガは忍者が手裏剣を投げるかの如く素早く青色の光弾を投げ飛ばす。

スカイタイプの必殺技───ランバルト光弾だ。

しかし、ただのランバルト光弾ではない。ダイナが放たれた青色の光弾と一体化し、体を実体化させながろ飛び出しているのだ。

言うなればウルトラマン版の人間砲弾だ。

 

 

パリィンッ!

 

 

当然、そんな攻撃を易々と受けるは毛頭ないジャンボキングは空間を割り、赤い空間が広がる異次元へ踏み込むが───

 

 

ガイア「グアッ!」

 

ジャンボキング「ピィ~!ギャアワァァッッ!」

 

ガイア「グアァァァ……ッ!」

 

 

飛び付いたガイアに止められる。

両腕を首に回したガイアは渾身の力を込めてジャンボキングを異次元の穴から引っ張り出すと、外へ放り出す。

放り出したその位置は丁度青色の光弾と一体化したダイナの標準だった。

 

完全に実体化したダイナは拳を突きだし、真っ直ぐ突撃する。

 

 

ダイナ「デェアッ!!!」

 

ドォォォォォンッ!!

 

ジャンボキング「ピィ~!?ギャアワァァッッ!」

 

 

ランバルト光弾と一体化したダイナの体当たりはジャンボキングに炸裂し、大木のような巨躯を貫いた。

その衝撃でジャンボキングは驚いたように叫ぶ。

 

だが、体を貫かれてもなお、体はピンピンしていた。

とある宇宙で光線技の名手と謳われる英雄も光線技を持ってしてもジャンボキングを倒せず、首をはねてやっと活動を停止させたぐらい渋いのだ。

 

地上に降り立ったダイナはガイアに駆け寄る。

遅れてティガも彼等のもとに降り立つ。

未だ闘志は消えない眼前の敵にティガはやや嫌そうに声をもらす。

 

 

ティガ「タフな奴だ……」

 

ダイナ「けど、ゲームセットも間近だ!決めるぜ~!俺達のウイニングショット!!」

 

ガイア「ああ、行くぞっ!!」

 

 

ガイアの呼び掛けに応じたティガとダイナは頷くと、額のクリスタルを輝かせて各々の基本形態に戻る。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァ……ッ!!」

 

 

ガイアは両拳を腰に携えた後、両腕を頭上高く掲げ、胸の前で瞬時に合掌して一旦左右に広げて目映い赤色の光に包まれると、両腕を内側に180度回転させる。

そして、交差させた両拳を胸から下に降ろして赤色の光を晴らすと、スプリームヴァージョンにヴァージョンアップした。

 

 

ガイア「デュアッ!グアァァァアァァァァ……!!」

 

 

ガイアは平手にした右腕を垂直、平手にして平行にした左腕を胸に当ててからクロールの様に大きく体を反らしながら円を描き始める。

 

同時にティガも突き出した両腕を交差させた後大きく開いて紫色のラインを描き、ダイナも斜め上にした右腕と斜め下にした左腕をライフゲージの前で沿わせ、大きく斜めへ開いて放射状の光を集約させる。

 

 

ガイア「デュアァァァァァーーーーーーーーーッ!!!」

 

ダイナ「シュワッ!!!」

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

 

一連の動作を終えたガイアは右手を下にずらし、ダイナは両腕を交差させ、ティガはL字に構えて光線を発射する。

 

───フォトンストリーム

───強化ソルジェント光線

───ゼペリオン光線

 

3人は互いの最強光線を結集させた一大必殺技──────『TDGスペシャル』を放った!

 

 

ジャンボキング「ピィ~!?ギャアワァァッッ!」

 

ドォォォォォォォンッ!!!

 

 

タフなのが売りのジャンボキングもこの一大必殺技の前には耐えきれず、直撃した瞬間に大爆発を起こした。

変身解除された四之宮は爆風に吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。

変身に使っていた怪獣メダルはバラバラに飛んでいった。

 

 

四之宮「ちっとは手加減しろっての……!」

 

 

3人のウルトラマンを見上げながら四之宮は悪態をつく。

体を貫かれたにも関わらずそんな台詞を吐けるのは合体怪獣…否、合体超獣の姿と力を借りたからであろう。

 

 

ティガ「ヂャッ!」

 

ダイナ「シュワッ!」

 

ガイア「デュアッ!」

 

 

ジャンボキングが四之宮が変身していたことも露知らず、3人のウルトラマンは両手を天高く広げて大地を蹴ると、遠い空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人のウルトラマンが立ち去った後、四之宮以外にも戦いを眺めていた黒い人影が1つ。

その人影は雪に足跡を残しながら歩いていた。

 

 

「……」

 

 

地面に何かを見つけた人影はピタリと足を止める。

そこに落ちてあったのは四之宮が変身解除の際に落としたカウラ、ユニタング、マザリュース、マザロン人、そして巨大ヤプールの計5枚のメダルだった。

 

 

チャリッ…

 

 

人影はその細い指で巨大ヤプールのメダルを手に取ると、雪を払って懐にしまう。

他の4枚も同様に回収していった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わった3人はファイターEXで避難させていたライザーを拾い、寝床にしていた洞窟へ戻っている筈……だったが───

 

 

一誠「待てーー!」

 

 

何故か一誠を先頭にライザーを追いかけていた。

空を飛べない大悟は我夢がおぶる形で飛んでいる。

先程、3人は寝床にしていた洞窟に行ったのだが、洞窟の中はおろか、ファイターEXの操縦席ももぬけの殻だった。

 

何故、ライザーが抜け出したのか。

それは彼の口からわかるだろう。

 

 

ライザー「ええい、待たんッ!俺は覗く!何としてでもリアスの乳をこの目に収めるまではなーーッ!!」

 

 

そう、ライザーは近くの山にある露天風呂を覗きにいこうとしていた。

今夜はリアス達オカルト研究部の女性メンバーが入浴している。昼間にその話は我夢達は聞いているが、ライザーは特訓に明け暮れながらもしっかりと盗み聞きしていたのだ。

 

女湯を覗く……至ってシンプルなスケベ心に拍子抜けた一誠は呆れた声をあげる。

 

 

一誠「はあ!?たったそれだけの為にかよ!?宇宙人から助けた恩を忘れたのかよ!」

 

ライザー「ああ、お前達には感謝している。……だがな、それとこれは別だッ!!いいか!温泉に女が入ると決まれば覗くのは当然のことだ!お前達の仲間は美女揃いだが、特にリアス!あの乳を拝めるだぞ!元フィアンセである俺が見て何が悪い?!」

 

一誠「ふざけんなッ!大有りだ!俺達の部長の裸をお前なんぞに見せてたまるかッ!!」

 

 

ライザーの無茶苦茶な言い分に頭にきた一誠は速度を上げて急接近して殴りかかる。

一誠の拳はライザーに軽々と避けられ、空を切る。

空中戦では長い間飛び続けてきたライザーに分があった。

振り向いたライザーは宙で停止すると一誠に指を指す。

 

 

ライザー「貴様にはわかるまい!あのデカイ乳を毎日拝めると思った矢先に絶望を叩き落とされた俺の気持ちが!あれを見ないまま一生終えるなんて、諦められるかッ!!」

 

 

昼間のヘタレさは何処か消えたのか、決心という炎を瞳に秘めたライザーは熱烈に語る。

自分の眷属が全て女性であるにも関わらずにだ。

 

一誠達はライザーには根性がないと思っていたと勘違いしていた。

 

あったのだ。誰にも負けないスケベ根性が。

 

 

ライザー「それに雷の巫女のも見たいしな!リアスよりデカそうな乳をしているだろ!」

 

我夢「何っ!?絶対にさせない!!イッセー!早くアイツを叩きのめすんだッ!」

 

一誠「オーケー……」

 

 

雷の巫女───朱乃の裸を覗くと知った我夢は珍しく感情的になると、一誠をけしかける。

承諾した一誠は指をポキポキと鳴らしながらゆっくりとライザーに近付き始める。

 

ライザーもそれに合わせて身構える。

静寂の闇夜に降り注ぐ吹雪の音がやけに大きく聞こえるくらい緊張が走る。

一誠はライザーの後ろを指差す。

 

 

一誠「ライザー。あれ何だ?」

 

ライザー「ん?」

 

 

一誠が後ろに何かをあるように言うものだからライザーは思わず振り向く。

しかし、後ろには山と吹雪が飛び交う雪原が広がる代わり映えのない景色だった。

 

 

一誠「隙ありーーーーッ!!」

 

ライザー「のあァァァーーーーーーッ!!?」

 

 

一誠の策にまんまと引っ掛かり隙を見せたライザーは一誠の延髄斬りをくらい、地上へと吹っ飛んでいく。

 

 

一誠「よしッ!」

 

 

フェイクが上手くいった一誠は嬉しさのあまりガッツポーズを取る。

ライザーの覗きを阻止できたことに喜ぶ一同だったが、我夢はライザーの落ちていく方角を見て焦燥の色を見せる。

 

 

我夢「不味いぞ!ライザーが飛んでいった方角には温泉がある!」

 

一誠「何ィ!?」

 

大悟「早く行かないと!」

 

 

焦った3人はライザーが飛んでいった方角に向けて急降下する。

 

温泉に降り立った3人は辺りを見渡す。

足下は温かい湯が流れており、周りは全貌が見えない程の湯気が立ち込め、あちこちに石が敷き詰められている天然の露天風呂と言える光景が広がっていた。

 

 

ライザー「……」

 

 

温泉から少し離れた床にはライザーが○神家の如く逆さまの状態で埋まっていた。

大悟がライザーの足をちょんちょんと触っても反応しない。

完全に気を失っているようだ。

 

 

大悟「とりあえず、早くここを立ち去ろう」

 

一誠「そだな」

 

我夢「ライザーを引っ張っていこう」

 

 

今は誰もいないが、一刻も早く立ち去らねば自分達が覗き魔扱いされてしまう。

大悟の提案に乗った一誠と我夢はライザーを床から引っ張り出そうとした矢先──

 

 

リアス「……凄い音がしたから誰かと思えば、イッセーじゃないの?それに、大悟と我夢も」

 

「「「……?」」」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえてきた3人は声のする方へ視線を送る。

すると、そこには生まれたままの姿のリアスが立っていた。

この状況に3人は狼狽えていると、湯気の中から次々と見覚えのある人物が現れる。

 

 

朱乃「あらあら?随分と野性的ですわね♪」

 

アーシア「ひゃあぁぁっ!?み、皆さん、いらっしゃったのですか!?」

 

ゼノヴィア「私達を覗きに来たか!流石だ!」

 

 

朱乃、アーシア、ゼノヴィアが現れる。

勿論、生まれたままの姿だ。

恥ずかしがって腕で大切な箇所を守るアーシアはともかく、裸なのにいつものように振る舞う朱乃とゼノヴィアの豪胆さはどこから来ているのだろう。

 

 

イリナ「ちょっと!?早く出てってよ!」

 

小猫「……覗き、最低です」

 

ロスヴァイセ「もうお嫁にいけないわっ!!うわぁぁぁぁん!!」

 

 

彼女の後ろでは顔を真っ赤にしたイリナ、小猫、ロスヴァイセが岩陰から顔を出している。

裸を見られたのがよっぽど応えたのか、ロスヴァイセは嘆き悲しんでいる。

 

 

レイヴェル「……イッセー様?お兄様?」

 

 

どうしようかと3人が狼狽える最中、レイヴェルが湯気の中から現れる。

レイヴェルは戸惑う3人を視界に捉えて一拍空けると、次の瞬間、顔を真っ赤にして───

 

 

レイヴェル「きゃあぁぁぁーーーー!!?エッチィィィィーーーーーッ!!!!」

 

「「「すみませんでしたァァァーーーーーッ!!」」」

 

 

悲鳴をあげるレイヴェルが放つ火炎を受けて、我夢、一誠、大悟。そして気絶しているライザーは爆発の衝撃で吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ライザーは持ち前のスケベ根性でウルトラマン恐怖症を克服した。

もう部屋に閉じ籠ることもなくなり、今は半年間のブランクを埋めるためのトレーニングに励んでいる。

 

そして、ミジー星人のアジトで共闘したのが縁か、一誠とライザーは連絡を取り合う程の仲になったとか。

 

 

ちゃんちゃん♪

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM)

突如、熊本の地に姿を現した地中鮫ゲオザーク!
怪しげな策略を企むヴァーリは、大悟のスパークレンスを狙う…!

次回、「ハイスクールG×A」!
「地の鮫」!
お楽しみに!


大悟「待て……ッ!」




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第十章 学園祭のライオンハート
第60話「地の鮫」


地中鮫 ゲオザーク 登場!


ガイア「行くぞ、みんなっ!」

 

ダイナ「おう!」

 

ティガ「ああ!」

 

 

ステージ上の等身大のガイア、ダイナ、ティガの3人は同じく等身大のガンQ、ダイゲルン、ゴルザに向かっていく。

 

今日、我夢達は冥界の旧首都ルシファードにある大型コンサート会場にて『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』のヒーローショーに参加していた。

 

通常はアトラクション担当のスーツアクターが演じているのだが、今回は我夢、一誠、大悟は各々が変身するウルトラマンのスーツを着て演技している。勿論、怪獣達も着ぐるみだ。

我夢達も学園祭間近ということもあって断ろうとしたが、懇願するサーゼクスに負け、こうして出演することになったのだ。

 

 

「さあ、みんな!3人を応援して!せーのっ!」

 

『頑張れーー!!』

 

 

司会のお姉さんの声に合わせて客席の子供達は声援を送る。

子供達の声援を受け取ったティガ達は怪獣達を蹴り飛ばすと、バック転で距離を取る。

 

 

ティガ「チャッ!!」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ガイア「デヤッ!!」

 

ドォォォォォンッ!

 

 

3人のウルトラマンの光線ポーズ(ゼペリオン光線、ソルジェント光線、フォトンエッジ)に合わせて背後のスクリーンから光線エフェクトが放たれる。

怪獣達は苦しむ演技をしながらステージ下のパイプから噴き出す煙に紛れて舞台裏にはけていった。

 

 

木場「おのれ……。覚えていろッ!」

 

 

木場扮する黒衣の剣士───ダークネスナイト・ファングは捨て台詞を吐くと、漆黒のマントを翻してステージの段差にある舞台裏に通じる抜け穴へ飛び込んで退場する。

 

こうして、老若男女見守る熱いヒーローショーは大盛況のもと幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ふぅ~」」」

 

 

ひと通りの出番が終わってくたびれた我夢、一誠、大悟は舞台裏の楽屋で一息ついていた。

というのも我夢達3人の出番はヒーローショーだけでなく、終わった後にあるサイン会と撮影会もあり、本来なら30分の予定だったが、予想以上にファンが多かったので1時半もかかってしまったのだ。それも1人1人丁寧に。

なのでこうしてくたびれている訳で、スタッフが用意してくれていたタオルと飲料水は有難いものだ。

まさに砂漠をさ迷った先に見つけたオアシスだ。

 

体の火照りが静まり出したところで、我夢が菓子をつまみながら言う。

 

 

我夢「握手会なんだけどさ。女の人、だいぶ大悟の方に流れてなかった?」

 

一誠「あ~確かに……」

 

 

我夢の一言に一誠は合いの手をつく。

大悟が変身するティガは男の子のファンもいるが、お母さん含めた女性ファンが特に多く、ティガが初参戦した回の視聴率は現時点で最高記録を叩き出したという。

変身前も後もイケメンである大悟の魅力のおかげだろう。

 

 

大悟「そうかな?多いとは思ったけど、2人にも沢山女性ファンが───」

 

我夢「ははっ、謙遜するなよ!性別問わず支持してくれるファンがいるのはいいことじゃないか!」

 

一誠「俺達にも分けて欲しいくらいだぜ。よっ、人気者!イケメン総大将!」

 

 

そこまで誉め殺しされて流石に恥ずかしくなった大悟は「いじるなよ」と一誠を小突く。

だが、人気があるのは嬉しい限りで表情筋が緩むのを抑えきれなかった。誉められて嬉しいことは誰もが持つ人の本能だろう。

 

 

一誠「ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

我夢「行ってらっしゃい」

 

 

そうこう談笑していると、一誠はそう言って立ち上がる。ガブガブと水分補給したものだから尿意を催すのは当然と言えば当然だろう。

我夢はごく自然に返すが───

 

 

大悟「ファンが欲しいからって、女子トイレに入るなよー。迷走期みたいにーー……」

 

 

大悟はニヤニヤと冗談を吐く。

大悟は我夢から一誠の迷走期(変態時代)のことは聞いている。先程のいじりを絡めたお返しのようだ。

 

 

一誠「入るか!馬鹿ッ!!」

 

 

痛い黒歴史を突かれた一誠は顔を真っ赤にしてツッコむと、足早に楽屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁだぁぁぁーーーーーッ!!!」

 

一誠「ん?」

 

 

用を足してスッキリした気分で廊下を歩いていると、近くから子供の喚く声が聞こえてきた。

気になった一誠は裏口の扉の陰からこっそり覗くと、駄々をこねる男の子とその母親らしき女性が困った様子でスタッフと話していた。

 

 

「何とかなりませんか……?」

 

「すみません、本日の整理券配布は終了しまして……」

 

「そうなんですか……。ほら、もう終わりだって」

 

「やだやだッ!!ダイナにあいたいよーーーッ!!」

 

 

母親から諦めの言葉を告げられた男の子はよりいっそう泣きじゃくる。

意地でもここを離れたくない様子で、母親とスタッフも困り果てていた。

こういったイベントではよくあることで今回が初めてではない。一誠達も整理券無しでのサインや握手は固く注意されており、特別に許してしまうとそれに便乗してよってたかり、不平等が生じるからだ。

 

 

一誠「……」

 

 

最初こそ立ち去ろうとした一誠だったが、すぐに思い留まった。

男の子の泣き叫ぶ自身(ダイナ)の名前──そして、男の子が大事そうに持つダイナのソフビ人形。汚れや塗装剥げはあるものの愛着を持ってくれているのはひと目でわかった。

それを見て胸の底から込み上げるものを感じた一誠は自然とリーフラッシャーをかざし、等身大のダイナへ変身した。

 

 

ダイナ「どうしたんすか?」

 

 

裏口から身を出したダイナは声をかけると、スタッフと親子は振り返る。

すると──

 

 

「あ!ウルトラマンダイナだ!」

 

 

一転して泣き止んだ男の子はぱあっと満開の笑顔を咲かせると、ダイナに駆け寄る。

ダイナはよしよしと男の子の頭を撫でていると、スタッフは困り顔で説明する。

 

 

「実はこちらの方達がサイン会に間に合わなかったようでして……」

 

ダイナ「なるほど……。あ、サインペンなんかあります?」

 

「あ、はい。ありますよ」

 

 

事情を呑み込んだダイナはスタッフからサインペンを受け取ると、男の子を一旦自分から離し、片膝をついて目線を男の子に合わせる。

汚れない純粋な眼差しを見つめ返しながら問いかける。

 

 

ダイナ「君、お名前は?」

 

リレンクス「リレンクス!」

 

ダイナ「リレンクス……よ~し、リレンクス。俺に会いに来てくれてありがとう!ところで、君はどうして俺が好きなんだ?」

 

リレンクス「うーんとね……ティガもすきだけど、ダイナはおとこっぽくてかっこいいから!あかいのがすき!」

 

ダイナ「そうか、そうか。こんな熱心なファンに出会えて嬉しいぜ。記念といっちゃあだけど、この帽子にサインしてもいいかな?」

 

 

憧れの存在のお願いにリレンクスは断る選択肢はなく、うんうんと頷いた。

ダイナはリレンクスから預かったダイナを模した帽子にダイナのウルトラサインを書くと、それをリレンクスの頭に被せた。

リレンクスは目をキラキラと輝かせると、帽子を取って母親に自慢するように見せた。

 

 

「おかーさん、みてみてー!本物のダイナのサインだよー!」

 

「よかったわね~……。本当にありがとうございます!」

 

 

母親は男の子の頭を撫でると、ダイナに感謝の言葉を告げる。

ダイナは照れくさそうにいやいやと手を振ると、再びリレンクスに視線を向ける。

 

 

ダイナ「いいか、リレンクス。すぐ泣いちゃ駄目だ。ウルトラマンは呼べばいつでも来てくれる訳じゃない。助けられない時だってある。だからこそ精一杯頑張って、身近にいるお母さんやお父さん、お友達を守れるように強くなるんだ。約束できるな?」

 

リレンクス「うん!」

 

 

ダイナからの約束にリレンクスは元気一杯に誓うと、両腕のクロスタッチを交わした。

 

その後、母親に連れられて帰るリレンクスにダイナとスタッフは手を振って見送った。

親子の姿が見えなくなるのを合図に変身解除した一誠は背伸びをしていると、スタッフは困惑した顔で苦言を口にする。

 

 

「兵藤さん。これからこういうのは控えてください。全ての人に対応するのは無理ですから……」

 

一誠「すいません……」

 

 

スタッフの言い分に一誠はわかってたはいたものの素直に謝る。

しかし、一誠にはルールを破ってでも、あの小さなファンを見捨てることは出来なかった。

子供の悲しむ姿は見たくなかったのだ。

 

スタッフも気持ちを汲んだのかふぅと軽く息を吐くと、それ以上何も言わず持ち場へ戻っていった。

事が済んだ一誠も舞台裏に戻ろうと振り返ると、裏口の扉にリアスが寄っ掛かっていた。

 

 

一誠「あ、部長」

 

リアス「最後まで見させて貰ったわよ。あれは少し軽率すぎたわね」

 

 

そう咎められ落ち込む一誠だったが、リアスは「でも」と付け加えると一誠に歩み寄り──

 

 

リアス「少なくともあの子の夢は守ったわ。あなたは立派なヒーローよ」

 

一誠「部長……」

 

 

にっこりと微笑むリアスの賛辞に一誠はたちまち笑顔になる。

心の底から確信した。───ああ、この人は俺をわかってくれてると。

 

 

リアス「さ、そろそろ帰るから支度しなさい。遅れてもしらないわよ?」

 

一誠「うっす!」

 

 

小悪魔な笑みを浮かべるリアスに一誠は運動部の部員のように気持ちのよい返事をすると、リアスと一緒に舞台裏へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。大悟は借りているアパートの自室で山のように積もったファンレターに目を通していた。

ちなみにこのアパートの部屋は前に我夢が借りていた部屋である。

 

1枚1枚読み、必要とあらばお返しのレターを書く。

逐一読む必要はないのだが、書かれている内容はどれも似通ったものだが、その1枚1枚に書かれている応援のメッセージは大きな支えになるのだ。

 

 

大悟「ふぅ~ぅうん……!終わったーー!」

 

 

それから時計の長針が2時を指す頃。大悟は大きく唸りながら背伸びをすると、ソファーの背もたれに体重を乗せる。

かれこれ4時間以上513枚のファンレター全てに返事を書いたのだからくたびれるのも無理はないだろう。

 

 

大悟「……?」

 

 

達成感に満たされた大悟は紙コップに淹れてあるコーヒーを飲んでいると、コート掛けにかかっている自分の上着のポケットに白い紙が挟まっているのに気付いた。

気になった大悟はコーヒーをテーブルに置いて上着のポケットからそれを抜いた。

その白い紙は丁寧に封がされた手紙だった。どこを見ても宛名や差出人の名前はなく、無地の真っ白な手紙だった。

 

 

大悟「……あれ?こんな手紙貰ったかな?うおっ!?」

 

 

見覚えない手紙に大悟は首を傾げていたその瞬間、手紙の封が勝手に開き、中から目映い光が漏れる。

驚きのあまり思わず手紙を落としてしまった大悟は唖然としていると、光の中から人の形をしたホログラムが現れた。

それと同時に光は収まり、ホログラムの人物の全貌が露になった。銀髪に鋭い眼をした長身の少年だった。

思い当たりがない大悟がますます困惑する中、その少年のホログラムはペコリとお辞儀をして挨拶する。

 

 

ヴァーリ『ごきげんよう。はじめまして、長野 大悟。俺は禍の団(カオス・ブリゲード)の一員、ヴァーリ・ルシファー』

 

大悟「……ヴァーリ?ッ!そうか、お前が……」

 

 

見覚えがない人物だったが、その名前を聞いてピンときた大悟はアザゼルに聞かされた情報を思い出す。

───ヴァーリ・ルシファー。初代魔王・ルシファーの直属の血筋であり、恐るべき相手の力を半減させる白龍の力を持つ存在。

そして、テロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員である。つまりは自分達の敵である。

 

敵の出現に警戒心を強める大悟だが、ヴァーリはその心中を見透かしているのか高らかに笑った。

 

 

ヴァーリ『ハッハッハッ……!警戒しないで頂きたい。これはただのホログラム。君に害を与える細工は一切していない。……しかし、君だったんだね。超古代の光を受け継いだのは……』

 

大悟「何が望みだ!?言えッ!」

 

ヴァーリ『望み?まあ、俺は強いて言うなら……君のファン。そして、()()()()()()を持っている。気になるんだよ。君が()()()()()()()()()()()()を』

 

大悟「何?」

 

 

問いかけに対する返答とは全く違う意味深な返答に大悟は眉をしかめる。

──君と同じもの?どうやって光になれるのか?

大悟は眉間にしわを寄せて考えていると、ヴァーリは手をかざし、何かの地図を見せる。

 

 

大悟「これは……!」

 

 

それを見た大悟はすぐに思い出した。その遊園地は昔、家族で行ったことがある遊園地の地図だった。

思い当たる反応を見せたのを見計らったヴァーリは指示を出す。

 

 

ヴァーリ『知っているとは思うが、これは九州の熊本にある遊園地『ドンシャインランド』だ。明日の午後15時丁度、ランド内の中央広場に来い。わかっているとは思うが、誰にも話さずたった1人で来るんだ』

 

大悟「もし、来なかったら……?」

 

ヴァーリ『それは君の判断に任せる。ただ、明日は平日とはいえ設立55周年のイベントが開催される。いつもよりも幼い子供もわんさかといるだろう……』

 

大悟「まさかッ!」

 

ヴァーリ『さぁね?ご想像にお任せするよ』

 

 

ヴァーリのとぼけた反応から察した大悟は睨み付ける。

つまり、こう言いたいのだ。──こちらは()()()()()()()()を人質にとっていると。

もし、妙な動きを見せればランド内の人々の命は無い…。大悟は込み上げる怒りで歯を噛み締める中、ヴァーリは不敵な笑みで淡々と話し続け──

 

 

ヴァーリ『詳しい指示は当日、同封しているインカムで伝える。忘れずに着けてくるんだ。それでは、また明日会おう』

 

大悟「待てッ!」

 

 

大悟を制止しようと手を伸ばすが、すんでのところでホログラムは消えた。

やりきれない怒りを堪えながら大悟は残された手紙を拾い上げて中を確認すると指示通り、丁寧にビニールで包装されたインカムが入っていた。

大悟はそれを取り出すと、ぷるぷると手を震わせながら手紙を握り締めた。

自分達と全く無関係な人々を人質にとる卑劣なやり方に怒りを抑えきれずにいるのだ。

 

激しい怒りと同時に大悟は冷静にヴァーリの企んでいることを考える。

この脅迫は明らかに罠で、何が待ち受けているかわからない。しかし、逆らおうともランド内の人々が人質にとられている。

ヴァーリは戦闘狂で、戦わせる為なら非常な手段をも取る男なのは知っている。

 

だが、反対に言えば脅迫をしてまで自分を呼び寄せたいということだ。

敵にバレるリスクを負ってまでやり遂げたいその行動理念が大悟にはわからなかった。

 

 

大悟「(奴は何が狙いなんだ……?)」

 

 

──戦いたいのか。それとは別か。ヴァーリの企みについて色々と考えるが、無情にも時間が過ぎていくだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明け翌日。我夢達はいつも通り駒王学園に登校し、朝のHRに入っていたのだが───

 

 

「えー皆さん。1時限目の歴史の授業ですが、長野先生が体調不良でお休みとのことなので自習となります」

 

『えーー!!?』

 

 

担任の教師から出た言葉にクラス中は湧き立つ。

普通なら授業が無くなって喜ぶのだが、この歴史学だけは別だった。

教え方がわかりやすいのはさながら、大悟のかっこよさもあって生徒から大人気なのだ。

それが無くなったとなれば落ち込むのも無理ないだろう。

 

 

「えー!私、長野先生にお弁当食べてもらおうと思ってたのにー」

 

「あたしもー」

 

 

特にイケメンに目がない一部の女子生徒達にはショックなようで、口々に残念がる。

教師になってから大悟は休み時間に押しかけてきた女子生徒達からプレゼントやら手料理を渡されている。大悟は柔らかく断っているのだが、収まるどこか更にプレゼントがグレードアップしている模様だ。

 

 

一誠「風邪か?知ってたか、我夢」

 

我夢「さあ?初耳だよ。昨日まで元気だったのに……」

 

 

大悟が学校を休むことに大きく反応した我夢達もだった。話どころか、誰1人携帯やXIGナビにも連絡が来ていなかったのだ。

どうしたんだろうと一誠と我夢は首を傾げていると、何かを察したイリナはハッと声をあげる。

 

 

イリナ「きっと、まともに連絡出来ないくらい酷いのよ!ああ…!今でも苦しんでるんだわ!」

 

アーシア「はわっ!?そうなのですね!大悟さん、大丈夫でしょうか……?」

 

ゼノヴィア「よし!学校が終わったら真っ先にお見舞いに行こう!教会時代の看病を振るうぞー!」

 

 

一致団結したイリナ、アーシア、ゼノヴィアはおー!と掛け声をあげる。

変に盛り上がる3人を横目に我夢は「まともに連絡出来ないなら学校に連絡がきてないだろ」と心中でツッコむと、大悟のことを考える。

単なる風邪だとは思うが、体調を崩したと聞けば親友として不安なるのは本当だ。

 

 

我夢「(帰りにお見舞いにでも行くか……)」

 

 

そんなことを考えながら、我夢は窓から差し込む暖かい光を眺めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時刻が進み午後15時近く。ここ、熊本県のとある地域には『爆裂戦記ドンシャイン』という特撮ヒーローを取り扱った遊園地───『ドンシャインランド』がある。

設立55周年キャンペーンとあって平日にも関わらず、多くの人々で賑わっていた。

 

 

大悟「……」

 

 

人が溢れ変える遊園地の中央広場に長野 大悟の姿はあった。指示通り、インカムを耳に装着し、誰にも告げずたった1人でやって来た。

「これからどうなるのだろう」と不安な気持ちを抱きつつ、神妙な面持ちで一定間隔で刻まれる腕時計の針を眺め、次の指示が出されるのを待っていた。

 

そして、時計の針が丁度15時きっかりに差し掛かった時、中央広場に建てられている時計からポーンと午後15時を報せる音が鳴った。

「いよいよか」と呟きながら大悟は気を引き締めて待ち構えた。

周囲の人混みの1人1人に目をやって、迎えに来るであろう人物を探す。

 

 

大悟「?」

 

 

しかし、どうしたことか。いくら待っても迎えに来る人物は来なかった。

腕時計ではとうに午後15時は過ぎており、今は15時10分だ。中央の時計を見ても同じ時間なので自分の時計がずれている訳ではないのがわかる。

どうしたのかと思った矢先、悲鳴と共に人々が逃げ出し始めた。

 

 

大悟「何だッ!?」

 

 

明らかに不審な行動に大悟は驚きながらも向かってくる人々とは反対の方向へ走り出す。

スタッフの避難誘導と悲鳴を耳にしながら人混みをかき分けながら進むと、パニックの正体が視界に映った。

 

それは地中からそびえ立つ大きな鮫のヒレだった。

比喩とかではなく、まごうなき生き物のそれで、巨大な影をつくる程の規模を誇っていた。

巨大なヒレはまるで水中の泳ぐ鮫のように地中を掘り進めながら、真っ直ぐこちらへ向かってきていた。

大悟はタイミング悪く出現した怪獣に眉をしかめていると、インカムからヴァーリの声が聞こえてくる。

 

 

《ヴァーリ「やあ、長野 大悟。遅れてしまって申し訳ない」》

 

大悟「ヴァーリ!どこにいる?!姿を見せろッ!」

 

《ヴァーリ「それは言えない。俺の計画が台無しなるからね。……それよりも俺の作ったゲオザークに驚いてくれて嬉しいよ」》

 

大悟「…ゲオザーク?あの怪獣はロボットなのか!?」

 

《ヴァーリ「その通り。フェンリルの遺伝子情報を基に作った地中襲撃兼偵察ロボットさ」》

 

 

ヴァーリは軽い口調で話す。

地中鮫───ゲオザークはヴァーリが作り出した怪獣。

目的はわからないが自分とは関係ない人々を巻き込んでいる事態に大悟は激しい怒りを抑えながら訊ねる。

 

 

大悟「何が狙いだ…!」

 

《ヴァーリ「そんな話をしてる暇があるかな?後ろを見てみろ」》

 

 

ヴァーリに言われるがまま大悟は後ろを振り向くと、その視線の先には2人の男女スタッフが切羽詰まった状態で話していた。

大きく話すものなので、会話が自然と耳に流れてくる。

 

 

「避難状況はどうなってる?!」

 

「場内は大丈夫です。けと、まだ観覧車に人が!」

 

大悟「!?」

 

 

その情報を聞いた大悟は目を丸くすると、観覧車を見上げる。

目を凝らすと、ゆっくりと回り続ける観覧車のゴンドラの中には確かに取り残された人々がいた。

迫りくるゲオザークに人々は恐怖し、ある者は騒ぎ、ある者は体を寄せあって震えていた。

しかも最悪なことに観覧車はゲオザークの進路に入っていた。このままではゲオザークと衝突してしまう。

 

 

《ヴァーリ「どうした?変身しないのか?このままだとあそこにいる全員がゲオザークの餌食になってしまうぞ?」》

 

 

インカムからは変身するようにヴァーリが煽る。

これを聞いた大悟は察した。そう、ゲオザークと戦わせるのがヴァーリの狙いだったのだと。

ウルトラマンにならざる得ないこの状況を作るのが目的だったのだ。

 

このまま変身して戦えば観覧車にいる人々は救える。

しかし、それは同時にヴァーリの罠に入るのも同然である。目的はわからないが、嫌な予感がするのは確かだ。

姑息なやり方に大悟は歯を噛み締める。

 

 

大悟「…ッ」

 

 

だが、迷って暇はない。罠だとはわかっているが、目の前で消えそうな命を見捨てる訳にはいかない。

意を決した大悟は近くのトイレの物陰に隠れると、懐からスパークレンスを取り出す。

いつも両腕は交差させているがそうはせず、両腕を大きく回転させて斜め上に掲げる。

スパークレンスのウィングパーツが展開し、露になったレンズから溢れる光に包まれ、ウルトラマンティガに変身した。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

 

地上に降り立ったティガはファイティングポーズを取ると、土煙を巻き上げながら向かってくるゲオザークのヒレを真っ正直から受け止める。

後ろ足に力を込めて何とか押し返そうとするが──

 

 

ティガ「ジョワァッ!?」

 

 

推進するゲオザークは効果がなく、力負けしたティガははね飛ばされてしまう。

障害がなくなったゲオザークは遊園地の方へ進んでいく。

 

 

ティガ「──ハッ!フッ!」

 

 

ならば、ティガは両腕を額の前で交差させてティガクリスタルを赤く輝かせ、そのまま両腕を振り下ろすと、全身真っ赤のパワータイプにタイプチェンジした。

筋骨粒々の逞しい姿になったティガは後ろからゲオザークのヒレに掴みかかり、行かせまいと後ろへ引っ張っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦いの様子はニュース番組の緊急生中継にて報道されていた。

 

 

我夢「ティガ!?どうして熊本に……」

 

 

当然、この緊急生中継は昼休みに入った我夢達にも届いていた。

オカルト研究部の部室にて一誠のスマホを取り囲む一同は驚いていた。休んでいるはずのティガ───大悟が何故か遠く離れた熊本で突然現れた怪獣と戦っているのだから。

大悟の欠勤と同じ日に起きたこの戦い───皆、偶然とは思えなかったのだ。

 

 

朱乃「部長。ただ事ではありませんわね」

 

リアス「ええ、何者かによる陰謀が絡んでるのは間違いないわね。私達も行きましょう、熊本に」

 

 

朱乃の意見に頷いたリアスはそう言うと、全員、部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲオザークのヒレを掴みながら正面に移動したティガは引っ張り上げようと両腕に力を込める。

 

 

ティガ「ヂャアッ!」

 

 

思いっきり力を込めて上へ引っ張ると、地中に埋まっていたゲオザークの後半身が露になる。

ティガは後ろに回り込むと同じように上へ引っ張り、ゲオザークを引っ張り上げた。

完全に露になったゲオザークは青い瞳を持ち、鼻先がドリルに似た形状となっている巨大な鮫に似た姿をしていた。

 

 

ティガ「ヂャッ!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

ティガはゲオザークを重量上げのように高々と持ち上げると、地面へ放り投げる。

地面に叩きつけられたゲオザークは痛がる様子も見せず、すぐさま起き上がる。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「フッ!」

 

 

身構えるゲオザークに合わせてティガはファイティングポーズを構える。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

間合いを計って両者は睨み合う中、ゲオザークは胸鰭と尻尾を叩きつけた反動で飛び上がると、体当たりを仕掛ける。

 

 

ドンッ!

 

ティガ「ヂャアァァッ!?」

 

 

胸元に直撃したティガは火花を散らすと、仰向けに倒れる。

背中を地面にぶつけたティガが苦しむ中、ゲオザークは再び飛び上がって体当たりを仕掛ける。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

ドォォンッ!

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

 

そうはさせないとティガは右手の手先からくさび型の光弾──ハンドスラッシュを放つ。

直撃したゲオザークは体勢を崩すと、そのままジェットコースターのレーンを崩しながら倒れる。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「ッ!」

 

 

すぐさま起き上がったゲオザークはジェットコースターの残骸を踏み潰しながら地面を這ってティガの前に出る。すると、ゲオザークは胸鰭で地面を叩いて飛び出ると、鋭い歯で噛みつきにかかった。

ティガは前転してゲオザークの後ろに回り込むと、右手でヒレを掴みながら上に乗っかった。

 

 

ティガ「チャッ!ハッ!」

 

 

真上に乗っかったティガは拳と蹴りの応酬で攻め立てる。パワータイプの怪力を前にゲオザークは抵抗出来ず、胸鰭と尻尾をジタバタさせることしか出来なかった。

そして、額の皮膚に掴みかかると、ギシギシと音を立てながら力を込め───

 

 

ティガ「ヂャアッ!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

思いっきり剥ぎ取った。火花を散らして皮膚が剥ぎ取れた箇所は内臓の代わりに本来の金属質な皮膚が覗かせている。

そのままティガはゲオザークの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領でその場で回し始める。

 

 

ティガ「───チャアァァァァーーーーッ!!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

3回回して勢いがついたティガはゲオザークを力一杯投げ飛ばす。

投げ飛ばされたゲオザークは土埃を巻き上げながら地面に叩きつけられる。

 

 

ティガ「ハッ!ハァァァァーーー……!!」

 

 

その隙にティガはとどめを刺そうと両腕を広げ、灼熱のエネルギーを溜めていく。デラシウム光流の体勢だ。

そして、球状の赤色エネルギーを胸の前に構え、発射の体勢に入ろうとした時───

 

 

《ヴァーリ「大悟」》

 

ティガ「フッ!?」

 

 

突然ヴァーリの声が脳内に聞こえ、思わず手を止める。

声の発信主は目の前にいるゲオザークだ。とはいってもゲオザーク自身が話しているのではなく、青い瞳にはうっすらと浮かぶヴァーリがゲオザークを通して話しかけているのだ。

その声は周りには聞こえておらず、ティガにしか聞こえないテレパシーのようなもので話しかけている。

固まるティガにヴァーリは問いかける。

 

 

《ヴァーリ「人よりも遥かに進化した力を手に入れたというのに、何でつまらないことばかりしているのかな?」》

 

ティガ「…ッ」

 

 

その問いかけに息を詰まらせたティガは溜めていたエネルギーを手放してしまう。

その問いかけにティガ───大悟は何故かはわからないが急所を貫かれたように胸に刺さったのだ。

ヴァーリは不敵な笑みで話し続ける。

 

 

《ヴァーリ「選ばれたにも関わらず平和の為だとか、愛の為だとか……そんな窮屈な理由で戦ってもいいのかな?俺だったら違う。俺は俺自身を遥かな高みへ昇る為に使うね。アザゼルが掲げる平和は所詮、自己を押さえ付ける縛りにしかならない」》

 

ティガ「……」

 

《ヴァーリ「君は選ばれたから戦っていると思っているのだろう?違うんだよ。君はたまたまティガのピラミッドを見つけただけ。俺は自分の力で超古代の遺跡を見つけたんだ。あらゆる手を使ってね」》

 

 

そう話し終えると、ゲオザークは尖っている鼻先から光線を放った。

 

 

ドォォンッ!

 

ティガ「グゥアッ!?」

 

[ピコン]

 

 

直撃したティガは胸元から火花を散らし、くの字で吹っ飛ぶ。

地面に叩きつけられて悶えるティガの胸元のカラータイマーは青から赤へと点滅していた。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「ヂャアッ!?」

 

 

痛みを堪えて起き上がろうとするティガだが、ゲオザークのアンキロサウルスのような尻尾が直撃。宙を舞って地面へと叩きつけられる。

間髪入れずゲオザークは鋭い歯を立てて胸鰭を駆使して飛び出ると、膝をついて立ち上がろうとするティガの左肩に噛みついた。

 

 

ティガ「グゥアァァァァーーーーッ!!!」

 

[ピコン]

 

 

左肩に襲いかかる鋭い痛みにティガは悲鳴に似た叫びをあげる。体験したことがない苦痛にティガは身動きが取れず、カラータイマーの点滅も速くなっていく。

 

 

ティガ「フッ!ンンンンン~~~…ッ、ヂャアッ!!!」

 

 

ティガは内側の肉と肉が裂けていくような激痛を堪えながら、ゲオザークの頭を持つと、精一杯の力で突き飛ばすように無理やり引き離した。

 

 

ティガ「グゥアァァッ…!」

 

 

激痛から解放されたティガは肩を抑えながら息を切らす。噛みつかれた肩からは光の液体が血のように溢れていた。

 

 

ティガ「ハッ!ハァァァァーー……!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

ティガは痛みを堪えて立ち上がると、再びデラシウム光流の体勢に入る。

球状の赤色エネルギーを胸の前に形成すると、そうはさせまいとゲオザークは大きく口を開いて飛びかかる。

 

 

ティガ「ハッ!!!」

 

 

ゲオザークが辿り着く前にエネルギーを溜め終えたティガは右手を突き出してデラシウム光流を放った。

放たれた光流はゲオザークの口に侵入。そして──

 

 

ドガガガァァァァァンッ!!!

 

 

内部のあらゆる回路を破壊し、宙で爆発四散した。

破片を跡形も残さないほど木っ端微塵にだ。

 

 

ティガ「フッ!?グゥアッ!!」

 

[ピコン]

 

 

ひと安心したからか堪えていた痛みや疲れが一気に襲いかかる。ティガは思わず膝をつきそうになるが何とか立て直すと、空を見上げ──

 

 

ティガ「ジョアッ!!」

 

 

両手を広げて大地を蹴ると、遠い空へと飛んでいった。

戦いが終えた頃には上空にあった太陽も西の空へと沈み始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり陽が落ち、辺りは夜に包まれていた。

遊園地のあちこちからイルミネーションが点灯し、闇夜を美しく照らしている。

本来ならこの時間にも来場客がいるものだが、ゲオザークの騒ぎもあって閉園となっており、人っこ1人もいない。

だが、たった1人。遊園地の床で仰向けに倒れている青年がいた。

 

 

大悟「う……」

 

 

アスファルトの硬い感触を肌に受け、青年───大悟は重たい瞼を開ける。意識がまだはっきりとしないながらも上体を起こして辺りを見渡すと、夜の遊園地にいることを把握した。どうやら、空を飛ぶ最中に気を失ってしまったらしい。

 

 

ヴァーリ「お疲れ様」

 

大悟「ッ!」

 

 

状況整理をしている大悟の耳に1つの声が聞こえてくる。

その声にハッとなった大悟は声のした方へ顔を向けると、メリーゴーランドの馬車に揺られるヴァーリの姿があった。それを皮切りに物陰から次々と人影が現れる。

アーサー、美猴、黒歌、ルフェイ、フェンリル───ヴァーリチームの登場だ。

 

疲労感と身体中の痛みに顔を歪めながらも大悟は立ち上がる。幸い噛まれた左肩からはウルトラマンの硬い皮膚のおかげで軽傷で済んでいるものの痛みは続いており、右手で抑えながら堪えている。

大悟が警戒する中、メリーゴーランドから降りたヴァーリは健闘を祝うように拍手を送りながら歩み寄り始める。

 

 

ヴァーリ「お見事、お見事。素晴らしい。俺も苦戦したゲオザークを倒すなんてね。流石、ウルトラマンに選ばれし者といったところか」

 

大悟「…ッ」

 

 

不敵な笑みを浮かべるヴァーリに大悟は口元を締める。関係ない人々に恐怖を与えたにも関わらず、平然としていられるのだから。

ヴァーリは拍手を止めると、疑問に思うように顎に手を当てる。

 

 

ヴァーリ「……だが、ウルトラマンになっても君の体は酷使されているね。そんなにまでなって、君は何の為にティガになるのかな?」

 

大悟「ッ、それは……」

 

ヴァーリ「君の自己満足の為だよ。地球を救うという美しい言葉に酔っているだけさ。ティガの光が無かったら君に何が出来る?教えてくれよ」

 

 

問いかけると同時にヴァーリの拳が顔面目掛けて放たれる。大悟は額にティグの紋章を輝かせると、拳を掌で受け止める。もう片方の拳で腹部に打ち込んでヴァーリを怯ませると、背負い投げの要領で投げ飛ばした。

投げ飛ばされたヴァーリは宙で一回転して着地する。腹部の一撃が強烈なあまり、口元からは一筋の血が流れていた。

 

 

美猴「ヴァーリ!」

 

ヴァーリ「手を出すな。こいつは俺1人でやる」

 

 

援護に入ろうとする美猴をヴァーリは冷静な声音で制する。ヴァーリもまだまだ本気ではないのだ。

口元の血を手の甲で拭ったヴァーリは駆け出すと、素早い足技で攻め立てる。先程の拳とは比にもならない速さで。

 

その素早い攻撃に最初は対処出来ていた大悟も段々と追い付かなくなり、ブロックしていた両腕を蹴り上げられる。

 

 

ヴァーリ「シャアッ!」

 

大悟「ぐぅッ!?」

 

 

がら空きになった大悟のみぞおちにヴァーリのストレートキックが炸裂。大悟は肺の空気が全て口から吐き出すような感覚と共に後ろへ吹っ飛び、床に体を打ち付けながら転がっていく。

 

 

大悟「う……ぐ…ッ!」

 

 

仰向けに倒れた大悟は何とか起き上がろうとするが、先程の一撃で体が痺れて中々出来ない。額に輝いていたティグの紋章も消え去っていた。

ヴァーリはパンパンと服の埃をはたくと、再び不敵な笑みを浮かべながら歩み寄る。

 

 

ヴァーリ「俺は生まれつきどんな悪魔よりも強い力を備わっている。白龍皇の力も手にしている。『歴代最強の白龍皇』なんて呼ばれるがそれに慢心せず、常に鍛えてきたんだ。強靭な力をより高める為にね。……だけど、君はどうだ?何の努力もしていない君にウルトラマンの光を使う資格があると思うのか?」

 

 

ヴァーリはそう言葉を投げ掛けながら苦悶している大悟の上着の裏に手を突っ込むと、スパークレンスを奪い取る。

イルミネーションの光を受けて輝くクリスタルで出来たウィングパーツに魅了されたヴァーリは満足気に微笑む。そのまま立ち去ろうとするヴァーリの足を大悟はしがみつく。

 

 

大悟「止めろ……ッ!」

 

ヴァーリ「綺麗だな……。これだけが俺に足りなかった、俺の体を光に変えてくれるシステム……」

 

 

そう言ってヴァーリは足を振るって大悟をはね飛ばすと、仲間達のもとへ向かう。ヴァーリチームの面々もスパークレンスの美しさに目を奪われている様子だ。

 

 

アーサー「目的は済みましたね。さあ、行きましょう」

 

ヴァーリ「ああ。頼む」

 

 

アーサーは手に構える剣──コールブランドで宙を三回斬ると、空間に裂目を作り出す。

一同が次々と乗り込む中、ヴァーリは別れ際に振り向いて告げる。

 

 

ヴァーリ「この力、有り難く頂戴する」

 

大悟「待て……ッ!」

 

 

大悟は痛みに顔を歪ませながらも止めようと手を伸ばすが、裂けていた空間は中にいたヴァーリチームごと閉じ、跡形もなく消えていった。

 

まんまと辛酸を舐めさせられた大悟は項垂れる。

それは悔しさや怒りなどではなく、自分への不甲斐なさであった。迷ってもいい、答えはじっくりと探す───ティガとして戦う決意としてきたのだが──

 

 

(ヴァーリ「君は何の為にティガになるのかな?」)

 

 

ヴァーリの問いかけが頭を過る。あの時、大悟は答えられなかった。躊躇してしまったのだ。

何の為に戦う。そして、“ティガ”ではない自分は何が出来るのか。

その言葉は迷ってもいいと思っていた大悟の決意を揺らがせるのには充分だった。

 

 

ゼノヴィア「大悟ーーー!」

 

木場「大悟さーーーん!」

 

イリナ「返事してーー!」

 

大悟「……ッ!?」

 

 

そんな中、近くから仲間達の探す声が聞こえてきた。

どうしてここにいるのかはわからないが、自分を探しに来たことは明白だ。

 

しかし、助けに来たにも関わらず大悟はこっそり身を隠しながら仲間から離れていった。

よくはわからないが、とても皆の前に顔を見せる気分ではなかったのだ。

 

 

我夢「大悟ーーー!イッセー。そっちは?」

 

一誠「いや、全然だ。小猫ちゃんの方は?」

 

小猫「……いえ、私の方も。……気が弱っているのか探知も出来ません」

 

 

一誠の問いかけに小猫は首を横に振る。

手分けして探しているのだが、一向に見つからない。頼みの綱である小猫の気の探知も全く見つからないのだ。

 

 

ビュオォォォーーーーッ!

 

一誠「うおっ!?」

 

我夢「ッ!?」

 

小猫「きゃっ!?」

 

 

捜索に難航している3人に一陣の風が吹く。

2人は突然の突風に身を固め、小猫は自然と捲られそうになるスカートを抑える。その突風はまるで巨大な手で触られるような奇妙な風だった。

数秒もしないうちにすっかり収まると、3人は風が通り過ぎていった方角を不思議そうに眺める。

 

 

一誠「何だったんだ?あの風……」

 

我夢「さあ?とにかく大悟を探そう」

 

 

我夢の言葉に頷いた一誠と小猫は大悟の捜索に戻った。

 

しかし、この時我夢と一誠は気付かなかった。

一陣の風に紛れて黒い人影が通ったことを。

 

その後。何度も呼びかけるが、大悟からの返事が帰ってこなかった。

大悟はその夜から姿を消した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王町。すっかり夜になり、街灯がつく路地を四之宮はくたびれた様子で歩いていた。

基本すぐに帰宅する彼が夜遅くに帰宅しているのには理由があり、京都に行く為に無断欠席をしまくったせいで補修を受けるハメになったのだ。とはいっても元々の四之宮も常習犯だったようなので、教師間では日常茶飯事のことらしいではあるが。

 

 

四之宮「流石にこれからは長期間離れるのは控えるか。めんどくさかったしな。あ″ぁ″~~!晩飯どうすっ──」

 

 

と背伸びしながらぶつぶつ呟く矢先、背後から気配を感じ、素早く跳躍して電柱に上に乗る。電柱から下を見下ろすと、先程まで四之宮がいた地面は無数のカラスのような真っ黒な羽が突き刺さっていた。

四之宮は隣の電柱の影に顔を向けると、挑発するように話しかける。

 

 

四之宮「随分手荒な挨拶だな?出てこいよ。とっくにわかってる」

 

 

四之宮が言葉を投げ掛けると、電柱の影から1つの人影が現れる。その人物は黒いコートを身に纏い、フードを目元まで深く被った女性だった。

この人物は以前、コカビエルにアパテーやスフィアを与えたあの黒フードの女である。

黒フードの女は凍りつくような低い声音で四之宮に話しかける。

 

 

「四之宮 龍……いや、ジャグラスジャグラー。私と共についてきてもらうぞ」

 

四之宮「ほぉう?俺の正体を知っているのか。なら、お前は()()に近いってことだな?」

 

「答える必要はない」

 

 

四之宮の問いに対してそう言い捨てた黒フードの女は鋭い爪を生やした手で襲いかかる。

四之宮は手に持っていた学生鞄を投げつけるが、黒フードの女は難なく切り裂いて突き進む。だが、四之宮の姿はない。

 

 

 

四之宮「こっちだ!」

 

「!」

 

 

声の通りに見上げると、四之宮は上空にいた。

四之宮は神器・『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』を発動させて路地中のゴミを集めて巨大な拳を創ると、黒フードの女に振り下ろす。

黒フードの女は背中からカラスのような真っ黒な翼を生やして素早く後ろへ回避すると、翼を羽ばたかせて無数の羽を手裏剣のように飛ばす。

 

 

四之宮「ふんッ!」

 

 

四之宮はすぐさまゴミの山を拳の形から円形状の盾に変形させて、豪雨のように襲い来る羽手裏剣を防ぐ。

羽手裏剣は次々と盾に刺さっていくが、四之宮のもとにまで届かない。盾に隠れながら四之宮は蛇心剣を取り出すと、紫色に輝く三日月状の斬擊を飛ばす。

斬擊は盾ごと切り裂きながら黒フードの女に向かっていく。

 

 

「ッ!」

 

 

迫る斬擊に黒フードの女は羽を飛ばすのを止めると、翼を羽ばたかせて猛スピードで回避する。

対象を見失った斬擊は勢い無くすことなく飛んでいき、遠くにあるビルに三日月状の傷を残した。

 

 

四之宮「あいつら……」

 

 

四之宮は脳内に一誠と我夢を思い浮かべながら毒づく。先程の攻撃を黒フードが避ける際に見えたのだ。女の懐にリーフラッシャーとエスプレンダーがあることに。

そう、一誠と我夢は知らぬ間に変身アイテムを盗られてしまっていたのだ。

「あいつら何やってんだ」と呆れていると──

 

 

ドムッ!!

 

四之宮「が……ッ!?」

 

 

鋭い痛みが四之宮の腹部に突き刺さる。四之宮が気を取られている隙に接近していた黒フードの女の拳が打ち込まれたのだ。

この一撃に流石の四之宮も敵わず、ガクリと項垂れた。

地上へ落ちようとする四之宮を女は担ぐと、冷たい視線で顔を覗く。

 

 

「無駄な足掻き……」

 

 

意識を失った四之宮に冷たく吐き捨てると、黒フードの女は四之宮と共に闇夜に消えた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。すっかり夜が明け、空に昇った朝日が大地を照らす頃。人里離れた自然溢れる山中の芝生で大悟は寝転んでいた。

雲が点々と昇る空を見上げながら大悟は内心呟く。

 

 

大悟「(僕はただの人間だ……。スパークレンスが無ければ何も出来ない、無力な小さな人間……)」

 

 

ヴァーリとの出来事で自分の無力さを痛感した大悟は身も心もすっかり傷付いてしまった。

大悟は光に選ばれたから戦っていた。ティガのピラミッドも自分が呼ばれたから見つけた。だからこそ皆の為に戦う決意をした。

 

──でも、それは本当にそうなのか。

 

ヴァーリの言うように自分はたまたま見つけただけだとしたら。今までやってきたことが全て自分の思い上がりだとしたら。ただ単に自分はウルトラマンの力を借りるしか能がない人間なのか。

現に生身でヴァーリに負けた。魔王の直系とはいえ、生身の悪魔にすらも負けたのだ。誰よりも強く、誰よりも力を欲するヴァーリと力を借りているだけの自分ではこんなにも差があると思い知らされた。

このことが重なり、大悟はすっかり意気消沈していた。

 

 

「くぅ~~ん……」

 

大悟「?」

 

 

やはり、自分にはティガである資格はないのか───と悩んでいたとき、野原から一匹の子犬が飛び出す。

子犬は大悟を見かけるなり駆け寄ると、尻尾を嬉しそうに振りながら大悟の顔をペロペロと舐め始める。

最初は構う気分ではないので無視を決め込もうとしたが、あまりものこそばゆさに思わず頬が緩む。

 

 

大悟「よせよ~。遊びたい気分じゃないんだよ……」

 

 

そう文句は言いながらも大悟の表情は依然曇りは残ってはいるが、明るくなっていた。動物と触れあうのは別に嫌いではないし、こうして慰めてくれるのは癒されるものだ。

しばらくじゃれていると、何かを感じ取った子犬は大悟から離れ、何処かへ走り出す。

 

 

「ワンッ!」

 

大悟「どこ行くんだ?」

 

 

まるでついてこいと言わんばかりに吠える子犬に大悟は首を傾げながらその後を追いかける。

 

子犬は人が通らない山の奥深くまで進んでいくと、岩肌に出来た洞窟に辿り着く。洞窟はそれほど古くなく、まだ新しい形跡が残っている。

その中へ入っていく子犬の後を大悟は着いていく。

 

そして、奥深くまで進んでいくと、洞窟の最深部に辿り着いた。しかし、行き止まりであり、案内をしていた子犬の姿も何処にも見当たらなかった。

 

 

大悟「どこ行っちゃったんだ……ッ!?」

 

 

と呟いた矢先、行き止まりの壁から光が溢れたかと思うと、壁が消え、隠し通路が姿を現した。

大悟は警戒しながらも奥へ奥へと進んでいき、遂に最深部に到達した。

行方知らずだった子犬もそこにいた。大悟は安堵する最中、子犬が視線が気になって見上げると、言葉を失った。

 

 

大悟「!?」

 

 

大悟が見上げる視線の先。

そこには1匹の怪獣の石像。

そして──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ティガのピラミッドにしかないと思われていた、ウルトラマンの像が佇んでいた。

 

 

大悟「巨人が、他にもいた……!」

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM)

地下洞窟で巨人像を発見し、邪悪な心を持ったままウルトラマンに変身したヴァーリ!
傷ついた大悟は、渾身の力を籠めてイーヴィルティガに立ち向かう!

次回、「ハイスクールG×A」!
「影を継ぐもの」!
お楽しみに!


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第61話「影を継ぐもの」

イーヴィルティガ
超古代狛犬怪獣 ガーディー 登場!


熊本に現れた地底鮫ゲオザークはティガを疲弊させる為に作られたロボットだった。

大悟はヴァーリにスパークレンスを奪われ、四之宮は謎の女に連れ去られてしまった。

 

一体、何が起きようとしているのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「巨人が、他にもいた……!」

 

 

唖然とする大悟の見上げる先。天井から地上の光が僅かに差す広々とした地下遺跡には怪獣の石像、そしてウルトラマンの像が佇んでいた。

ティガのピラミッドにしかないと思われていたものがあることすら驚きなのだが、胸のプロテクターの形状や顔つきが違うものの、その巨人像はティガそっくりだったのだ。

 

大悟が言葉を失っている中、案内してくれた子犬は巨人像に向かって歩き出す。好奇心が体を突き動かしたのだろう。そのまま巨人像の足下へ近寄ろうとしたその瞬間──

 

 

バリバリィッ!

 

子犬「キャウゥゥン!?」

 

大悟「ッ!?」

 

 

突然電撃が走り、子犬は苦痛の叫びをあげながら弾き飛ばされた。目を丸くした大悟は駆け寄り、子犬の体に手を当てて安否を確認する。幸い命は別状はないようだ。

 

ひと安心した大悟は子犬が弾き飛ばされた場所を目を凝らして見る。そこには電撃を帯びた不可視の壁が巨人像を護るように張り巡らされていた。

 

 

ヴァーリ「おや?ここまで来れたんだな」

 

 

──誰の仕業だ、と思った矢先、とぼけた口調で話しかける銀髪の男と複数の男女が物陰から姿を現す。大悟からスパークレンスを奪った男、ヴァーリとその仲間達である。大悟が警戒する中、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべながら話す。

 

 

ヴァーリ「俺は君と同じ……言っただろう?君は選ばれし特別な存在じゃない。思い上がってるだけだってね……」

 

大悟「そうだ……僕は特別な人間なんかじゃない……。けど、与えられた力があるなら全力で守りたい。この星に住むみんなと一緒に──」

 

ヴァーリ「みんな?フフッ……やはり思い上がっている。せっかく神をも越える力を手にしたというのに……。良いのかい、そんな()()()()()()で」

 

大悟「情けないだって?」

 

 

真剣で答えた戦う理由を鼻で笑い飛ばされた大悟は眉をひそめて声音を僅かに荒らげる。

その言葉にヴァーリは「そうさ」と答えると、大悟を指差しながら話し続ける。

 

 

ヴァーリ「君は光の力を頼っているだけだ。何の理想も持たず、ただ戦うだけ……。人智を越えた力で他者を制し、この世に知らしめる……。それが光に選ばれた者の使命と思わないか?」

 

大悟「違う!暴力による支配なんて、間違っている!」

 

 

巨人像を指差しながらそう言うヴァーリに大悟は抗議する。暴力による支配は余計に反発を生むだけ、血で血で争う負の連鎖を繋げることになる。

その抗議にヴァーリは「いいや、違わない」と一蹴すると、話し続ける。

 

 

ヴァーリ「ウルトラマンとはそういう存在なのさ。…物心ついた頃から俺は高みを目指して戦いに明け暮れていた……それが白龍皇である自分の使命なのだとね。数多の強者を打ち破った俺だが、ウルトラマンには勝てなかった。理解に苦しんだよ…どうして俺が負けるのか、ってね。そんなある時、ガイアとアグル──2人のウルトラマンの戦いを見て確信したよ……いくら努力したって越えられない壁があるってね」

 

大悟「……」

 

ヴァーリ「ショックだったよ。どこまでも強くなれると信じていた俺に“限界”があるなんてね……。アルビオンを信頼していない訳じゃないが、正直このまま鍛えても絶対に越えられないと悟ったよ」

 

 

ヴァーリの長々とした話を大悟は視線に捉えたまま沈黙していた。自身のことを語るヴァーリはただ乾いた笑みを浮かべていた。戦闘狂なのは同感できないが、悔しいという気持ちだけは大悟にも理解できた。

 

曇った顔をしていたヴァーリだったが、気持ちを切り替えて再び不敵な笑みを浮かべると、人差し指をピンと天高く上げた。

 

 

ヴァーリ「そこで思い付いたんだ。ウルトラマンを越えられないなら、俺がウルトラマン()()()()になればいいってね。……フェンリルの嗅覚を頼りに巨人像を見つけたが、肝心な変身するシステムはわからなかった………。そんな悩んでいた矢先、君に白羽の矢が立ったという訳さ!」

 

大悟「何……?」

 

 

どういう意味だと眉間にしわを寄せていると、ヴァーリは後ろで控えていた黒歌にアイコンタクトを送る。

ニッコリと妖しく微笑んだ黒歌は指で何もない虚空に向かって魔方陣を描いていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある薄暗い地下洞窟。地上の光が一筋とも差さないこの空間に、コンクリート材質の壁や床にパイプが張り巡らされていた。何かの工場か研究所のようである。

ここでは、テロリスト組織・『禍の団(カオス・ブリゲード)』の構成員達がところ狭しと動き回っていた。

 

如何にも秘密基地の内装に包まれた空間には構成員だけではなかった。黒いフードを口元が見えるか見ないかぐらい深く被り、真っ黒なコートを纏った女がいた。

格好からして不気味な雰囲気を漂わせる彼女のその肩には、気絶した四之宮が項垂れていた。

 

 

「連れてきたぞ……」

 

 

冷たい声音でそう言った黒フードの女は、肩に背負っていた四之宮を雑に投げ渡す。あまりもの雑さに構成員達は驚くも咄嗟に受け止めた。

 

 

「お、おい!もう少し丁寧に扱え!目が覚めたらどうする!」

 

 

構成員達がせっせと四之宮を奥の装置がついた椅子に運び込む中、彼女の乱雑な態度に抗議の声が1つ。その声を発した人物は黒いハットに黒い紳士服を身に纏い、ペンキで白塗りしたくらい真っ白な顔をしたふくよかな男だった。さながら、太ったチャップリンを彷彿とさせる。

少し焦りの色を見せる太った紳士に黒フードの女は視線を向けず、閉ざしていた口を再び開く。

 

 

「……私は任務を全うした。この男を丁寧に扱えなどという指示は一切受けていない」

 

「し、しかしだな……。こいつは一癖も二癖もある奴だ。あらゆる()()を転々と回り、長年築き上げてきた商売先もこの男のせいでほとんどがパアになった……」

 

「それは貴様の問題だろう。貴様が怪獣メダルの製造方法を知らないせいで手間がかかったのではないか?」

 

「ぐっ…!し、仕方ないだろう!私が渡したあの4枚のメダルはセレブ……いや、顧客から物々交換したものだ!製造方法までは知らん!」

 

 

淡々と話す黒フードの女の言葉に太った紳士は痛いところを突かれながらも反論する。焦りのあまりか思わず、彼の職業でご法度である顧客の名前を出しそうになってしまったが、すんでのところで誤魔化した。

 

ジャンヌやヘラクレス達が持っていた怪獣メダル。それらは全てこの紳士服の男から渡されたものである。ジャグラー同様、この男もまた別の宇宙からの来訪者だったのだ。

 

ふんふんと鼻息を荒くする男を見て、言い争うのは無意味と考えた黒フードの女は話を切り替えようと四之宮の方へ顔を向ける。視線の先にいる四之宮は額に電極をつけて椅子に縛り付けられていた。

黒フードの女は太った紳士に訊ねる。

 

 

「……そこでジャグラスジャグラーの記憶を機械で読み取り、怪獣メダルの製造方法を手にいれる訳だな。本当に知っているのか?」

 

「情報が確かなら、怪獣メダルの製造方法を記したメモを奴は目にしているそうだ」

 

「……」

 

 

男の情報に黒フードの女は信憑性があるのかと疑うが、数多の次元を渡り歩いてきたこの男なら本当なのだろう。

 

 

「準備が完了しました!いつでも動かせます!」

 

 

そんなやりとりをしていると、構成員の1人が2人に報せにやってくる。装置の起動準備が完了したようだ。

 

 

「始めろ……」

 

「了解!記憶収集装置、起動!」

 

 

黒フードの女の了承を得た構成員達は椅子付近に設置されているパネルのスイッチを押して起動させる。

四之宮の額につけられている電極が仄かに光ると、電極のコードから繋がっているパソコンを経由して、宙にあるモニターに記憶情報が次々と投影されていく。

 

 

「おおっ!素晴らしい、素晴らしいぞ!メダルだけでなく、私の知り得ない怪獣のことまでしっかりと映っているぞ!ハハハッ!」

 

 

四之宮───ジャグラーの記憶に胸踊らせる太った男は興奮気味に笑う。未知の怪獣を知ったとなれば彼の職業柄、喜ぶ意外何もない。

 

太った紳士の男の愉快な声が響く中、四之宮の記憶は次々と構成員達に記録されていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「これは…!」

 

 

大悟は黒歌が形成した魔方陣から投影される映像を見て目を丸くする。宙で浮かぶ映像。そこに映っているのは、京都の二条城で初めて大悟がティガとなる瞬間を捉えた映像だった。記憶に新しい出来事、当事者である大悟は勿論憶えていた。

しかし、何故この映像を見せるのかと疑問の色を見せている中、ヴァーリは話す。

 

 

ヴァーリ「そう、ルフェイに撮ってきてもらった映像アーカイブだ。この時、君は光になった。そして、巨人像に転移し、巨人を甦らせた……。これは君自身を光の粒子に変移させるシステムなんだ」

 

 

そう言いながらヴァーリは懐から大悟のスパークレンスを取り出す。スパークレンスは天井から差す地上の光で美しく輝いている。

ヴァーリの計画についてわからなかった大悟だったが、ここまでの話を聞いて思い浮かんだ。

 

 

大悟「お前が何をしようとしているかわかったぞ……。お前がどんなに強くて、頭が良くても……お前はウルトラマンティガにはなれない!」

 

 

大悟はハッキリと言い放つ。例え、巨人の力を解明したとしても超古代人の遺伝子を受け継いでいなければ変身は出来ないのだ。そのことを大悟は充分理解している。

だが──

 

 

ヴァーリ「ハハハハハハーーッ!!」

 

大悟「!」

 

 

ヴァーリはまるでその事実がさも可笑しいようにゲラゲラと笑い出した。その笑い声は静寂に包まれている洞窟内に響き渡る。

大悟が何が可笑しいのかと眉をひそめていると、ヴァーリは笑いを抑え──

 

 

ヴァーリ「やはり君は自分を特別な人間だと思っている!見ろ……」

 

 

そう言ってヴァーリは宙のスクリーンに向かって手をかざして画面を切り替える。大悟はつられてスクリーンを見ると、切り替わったスクリーンには2つの遺伝子図を比較したものが投影されていた。

 

 

ヴァーリ「これは君と俺の遺伝子情報を分析し、図形化したものだ。この結果から、君と俺は同じ遺伝子ルーツを持っているんだよ」

 

大悟「何…!?」

 

ヴァーリ「俺が悪魔の父と人間の母のハーフというのは聞いている筈だ。俺の母は超古代人の光を受け継ぐ者、つまり、その子供である俺も超古代人の末裔なんだよ。君達だけじゃなかったんだよ、光を受け継ぐ資格を持つ者は……!」

 

大悟「…ッ!」

 

 

ヴァーリから突きつけられた事実に大悟は言葉を失う。彼もまた『光を継ぐもの』───いわば兄弟のようなものだったと。

身近の人が光を受け継いでいるのなら他にもいるのかもしれない考えたことはあったが、まさかそれがヴァーリとは予想だにもしなかったであろう。

 

大悟が衝撃を受けている中、ヴァーリは地面の魔方陣からピラミッド型の機械を出現させた。

スイッチを点けていって機械を起動させたヴァーリは不敵な笑みを浮かべながらスパークレンスを眺める。

 

 

ヴァーリ「ウルトラマンになろうとしても、スパークレンス(これ)だけでは変身出来ない。そこで、俺は強制的に自ら光へと変換させ、巨人像と一体化させるこの『光遺伝子コンバーター』を開発した。こう見えて、科学者としての顔も少し持っているんでね」

 

 

淡々としていながらもどこか自慢げに話すヴァーリ。

科学の知識があるのもアザゼルのもとで育てられた影響なのだろう。大悟がそんなことを考えていると、ヴァーリはスパークレンスを光遺伝子コンバーターの頂点にある固定具にセットしていた。

 

 

大悟「やめるんだッ!間違った心で光になったら──!」

 

ヴァーリ「フッ…。間違いかどうか、これでわかるさ……」

 

 

引き止めようとする大悟の叫びをヴァーリは嘲笑うと、

光遺伝子コンバーターに掌をかざして起動させる。すると、光遺伝子コンバーターからプラズマが走り、ヴァーリの掌から全身へと流れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、熊本の市街地から少し離れた広野には武装した多くの悪魔、堕天使、天使が集まっていた。その中には各勢力のトップであるサーゼクス、アザゼル、ミカエルの顔もあった。

彼らはヴァーリからの連絡でここにくるように呼び集められたのである。当然、招待相手がテロリストなので、周囲への警戒を強めていた。

 

 

リアス「お兄さ──魔王様!」

 

ソーナ「遅れて申し訳ございません」

 

サーゼクス「おお、君達か…!」

 

 

緊迫した空気が漂う中、サーゼクスのもとにリアスとソーナ、彼女らが率いる眷属が到着する。しかし、全員揃っている訳ではなく、グレモリー眷属からは我夢、小猫、ゼノヴィア。シトリー眷属からは椿姫、匙、四之宮の姿がなかった。

サーゼクスは跪こうとする彼らを制すると、リアスに訊ねる。

 

 

サーゼクス「リアス。大悟君の行方は?」

 

リアス「はい。現在、私達の眷属に捜索させていますが……」

 

サーゼクス「そうか……。四之宮君に加えて大悟君もいなくなるとは……」

 

 

段々と落ちていくリアスの声のトーンから察したサーゼクスは曇った顔で呟く。

ヴァーリが不審な動きを見せると同時に行方知らずとなった四之宮と大悟。自身が所有する魔王専用捜索チーム・リザードにも捜索させているが、一向に手がかりが掴めていなかった。

 

その近くで建てられている仮設テントでは、アザゼルがXIGナビを通して石室と通信していた。

 

 

《石室「──わかった。だが、念の為、そちらの方にも何機か待機させておこう」》

 

アザゼル「頼むぜ」

 

 

石室とのやりとりを終えたアザゼルはXIGナビを閉じると、そこへミカエルがテントに入ってくる。

 

 

ミカエル「何の話を?」

 

アザゼル「ああ。石室に冥界と天界の警備を強化するように頼んだ。俺達がいない間に攻める……何てこともあり得るからな。まあ、こっちの方にも戦闘機を手配してくれるそうだけどな」

 

 

訊ねるミカエルにアザゼルはうっすらと笑みを浮かべながら答える。ここまでするのは、三大勢力のトップが出払っているうちに領地へ何かしらを仕掛けるかもしれないと踏んだからだ。

相手はヴァーリ。何を考えているかわからないこそ危険なのだ。

 

 

ミカエル「ヴァーリ。彼は何を始める気なんでしょうか?」

 

アザゼル「さぁな。ろくでもねぇことが起きるってことは確かだな」

 

 

ミカエルの問いにアザゼルは真剣な表情で答える。

普段のだらしのない態度とは一変しているのは、目的は不明だが、不穏なことが起きようとしていると感じ取っているからだ。

 

アザゼルとミカエルは空を見上げた。先程まで晴れていた空は太陽が雲に隠れた影響で暗転に包まれていた。それは、まるで両者の心情を表していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地下遺跡ではヴァーリがウルトラマンへ変身しようという計画の最終段階へと移行していた。

稼働している光遺伝子コンバーターはヴァーリを光へ変換させる準備が着々と進んでいた。

 

 

ヴァーリ「神を超えた存在へと俺は進化するのだ!ハハハーーーッ!!」

 

 

完全に有頂天となっているヴァーリは最早説得も応じない。もう誰にも止められない。

テンションが最高潮に高まっているヴァーリは両手を広げて──

 

 

ヴァーリ「古代の力よ!俺を光に変えたまえーーーッ!!」

 

 

と叫んだ瞬間、光遺伝子コンバーターにセットされていたスパークレンスが煌めく。それと同時に光遺伝子がヴァーリに流しているプラズマが強まっていく。

 

 

ヴァーリ「う″ぉ″あ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーー……!!!」

 

大悟「やめろーーッ!」

 

バリバリッ!

 

大悟「ぐあっ!」

 

 

制止させる為、駆け寄ろうとした大悟だったが、電流が流れる不可視の壁に弾かれる。

地べたに倒れ伏す大悟をルフェイは合掌して軽く謝る。

 

 

ルフェイ「ごめんなさーい。それは北欧の術式で創った丈夫な結界なんです」

 

大悟「今すぐ解くんだ!大変なことになるかもしれないんだぞ!」

 

美猴「うるせぇな。見物なら黙って見てろやい。もうすぐ神を超える存在が誕生するんだからよぉ」

 

 

大悟の必死の訴えに美猴は耳を痛そうに話す。

まともに聞こうとしない美猴の態度に大悟は眉間にしわを寄せる。

 

 

大悟「何を言っているんだ!?巨人の力は僕も完全にはわかっていない!そんな危険なマネを、君達は止めようと思わないのか!?」

 

美猴「思わねぇよ。ヴァーリならお前よりも扱いきれるってぇ確信はあるぜぃ」

 

アーサー「ええ、私も同感です。旧ルシファーの血統に白龍皇の力……。これだけ強い要素があれば巨人の力を使いこなせるかと」

 

黒歌「ヴァーリが強くなればどうでもいいにゃん」

 

 

大悟が訴えかけるも美猴、アーサー、黒歌も全く耳を貸さない。黒歌はどうでもよさそうにしているが、止める気は全く無い様子だ。

そうこうしているうちにヴァーリの体は光輝き、粒子状へと変換していく。

 

 

ヴァーリ「ひ″~~~か″~~~り″~~~よ″ォ″ォ″~~……!!」

 

大悟「駄目だ……!」

 

 

大悟の願い虚しく、光となったヴァーリは巨人像のカラータイマーから全身へ伝っていく。

そして、淡い光を放つ巨人像の額のクリスタルが煌めくと、ヴァーリは淡い光を纏った巨人へと変身した。

 

 

大悟「そんな馬鹿なこと……!」

 

 

大悟は口をあんぐりと開ける。目の前でヴァーリが文字通り変身したのだ。ウルトラマンへと。失敗するかと思っていたから尚更だ。

動揺を隠しきれない大悟に反して、ヴァーリチームの面々は嬉しそうに微笑む。

 

 

もう1人の巨人「……シ″ャ″ァッ!」

 

 

巨人は手を握って開いたりして満足に動けることを確認すると、両腕を天高く上げて地上へと飛び立っていく。

それに連れてヴァーリチームもルフェイとフェンリルを残して魔方陣で転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ゼノヴィア。そっちはどうだい?」

 

《ゼノヴィア「いいや。全く掴めていない……」》

 

 

その頃、近くでは我夢達が大悟の捜索に当たっていた。我夢は小猫を後ろに乗せてファイターEXで上空から、残りのゼノヴィア、椿姫、匙は地上で捜索していた。

四之宮の方はチームリザードに任せているが、未だどちらとも見つかっていない。

 

 

我夢「(大悟。君は何処に……)」

 

 

我夢は不安を募らせる。先日から今日にかけて不幸続きだった。

まず始めに大悟が失踪。次には四之宮。更にはエスプレンダーと一誠のリーフラッシャーも消えてしまった。

落としたのだろうと思って思い当たる場所を探し回ったが、何処にも見当たらなかった。

 

変身アイテムは我夢が開発したものではないスパークレンス以外、盗難した時を想定してGPSを搭載しているが、位置情報が掴めない場所なのか全く反応しなかった。親友と仲間の失踪に変身アイテムの盗難が加わって、気分は最悪だった。

 

 

PAL『ガム 12ジのホウガクカラ カイセキフメイノヒコウブッタイ セッキンチュウ

 

我夢「ん?」

 

 

不安が募る中、EXに備え付けてある人工知能PAL(パル)の呼び掛けが耳に入った我夢は前方を見据える。前方からは遠くから光を放つ謎の物体がこちらへ近付いてきていた。

警戒していつでも迎撃出来るように操縦桿の引き金に手をかけていた我夢だが、光の正体がはっきりと見える距離に近付いた瞬間、その手を緩めた。

 

 

我夢「ティガ!」

 

 

そう、光る物体はティガにそっくりだったのだ。探していた大悟が変身するティガと瓜二つなのだ。

大悟が見つかったと我夢は安堵するが、小猫は訝しげに呟く。

 

 

小猫「……待ってください。何か様子がおかしいです」

 

我夢「え?」

 

 

その声で疑問を感じた我夢は前方に佇むティガ?を再度見据える。最初こそ発する光が眩しいせいで大まかなシルエットしかわからなかったものの、段々と目が慣れてき、細かいシルエットが判明していった。

その姿は全体像がティガに似通っているものの、全くの別人だった。

 

 

我夢「ティガじゃない!うおっ!?」

 

 

目の前にいるのがティガではないとわかった瞬間、ティガ──否、ヴァーリが変身した光の巨人は握り拳を突き出し、紫色の光弾で攻撃してくる。

我夢は咄嗟に操縦桿を手前に引いて急上昇し、紙一重のところで避けた。

 

 

もう1人の巨人「……シ″ャ″ァッ!」

 

 

進路を阻む者がいなくなった巨人は何処かへ向かって飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

バリバリッ!

 

大悟「うぅ、ぐぅぅ……!」

 

 

残された大悟はもう1人の巨人を追うべく、スパークレンスがセットされている光遺伝子コンバーターに駆け寄る。

電流が流れる不可視の壁に阻まれるものの、大悟は奥歯を噛み締めて痛みを堪え、強引に通ろうとするが──

 

 

バリバリッ!

 

大悟「……ぐあぁぁッ!!」

 

 

やはり、魔法で作り出した結界を普通の人間が突破できるはずもなく弾き飛ばされる。

痛みに顔を歪めながら地べたに這いつくばる大悟にルフェイは嘆息をつく。

 

 

ルフェイ「これで10回目。無駄ですよー。この結界は私だけじゃなく、ヴァーリ様の北欧魔法も入ってますから絶対に破れません」

 

 

ルフェイの忠告に大悟は悔しげに拳を握り締める。

ティガであれば簡単に突破出来るであろうが、それがないと何も出来ない自分の不甲斐なさが悔しかったのだ。

 

そんな大悟の視線に倒れている小さな影が映る。

先程、結界に張られた電流で吹き飛ばされた子犬だ。

幸い、まだ生きているものの命の保証があるとは断定出来ない状態だ。

大悟は地べたを這って、子犬に手を伸ばす。柔らかい毛並みが手から伝わってくるが、体温は徐々に冷めていく。

 

 

大悟「僕は、何でもない……無力な存在だったのか……?」

 

 

消え入りそうな声音で大悟は弱音を吐く。

自分はティガじゃないと何も出来ない。こうして、目の前で傷付き消えようとする小さな命さえも救えない。大悟の心はますます曇っていく……。

 

しかし、この時大悟は気付かなかった。子犬の体が仄かに光輝き出し始めたことに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「な、何なの……?あの光り輝くティガは……」

 

 

大悟が悪戦苦闘している頃、リアス達は目の前の状況にざわめいていた。彼らが見上げる先、そこにはヴァーリチームの面々と淡い光を纏うティガが佇んでいた。

味方であるティガが何故敵対勢力と…?現状が把握出来ず戸惑っていると、アザゼルのXIGナビに通信が入る。

相手は我夢からだった。

 

 

《我夢「先生!その巨人はティガじゃありません」》

 

アザゼル「何!?じゃあ、あの巨人は俺達の敵ってことか!」

 

 

我夢からの通信を受けたアザゼルは驚きながらも再度巨人を見上げる。確かにシルエットは似ているものの、よく見ればティガとは顔つきが違う別人だ。

別人とわかると否や、全員は臨戦態勢に入る。テロリストと一緒にいる以上、敵と判断するのは容易だった。

緊張が走る中、ティガに酷似したウルトラマン──もう1人の巨人は地上にいるアザゼルに話しかける。

 

 

もう1人の巨人「久しぶりだな、アザゼル」

 

アザゼル「その声!?お前、ヴァーリかッ!」

 

 

巨人が発する聞き覚えのある声に動揺するアザゼル。

忘れるはずがない。敵側に寝返ったとはいえ、幼少期から長年育ててきていたヴァーリの声なのだから。

動揺の色を見せるアザゼルにもう1人の巨人は満足げに鼻を鳴らすと、自らを誇示するかの如く高らかに声をあげる。

 

 

もう1人の巨人「……俺は、神をも超える新しい存在へと進化したのだ。見よ、この肉体!白龍皇と旧ルシファーの血を持つ俺は最早、誰にも越えられない!その絶対的な力を手にしたのだ……!」

 

アザゼル「何てこった……」

 

 

ヴァーリがウルトラマンに変身した。つまり、ただでさえ強大な力を持つヴァーリもまた、我夢達と同じ光を継ぐ存在だったということなのだ。

その事実にアザゼルは冷や汗をかく。

 

 

サーゼクス「これを我々に見せる為に呼び寄せたのか」

 

ミカエル「ヴァーリの周到な計画、という訳ですね」

 

 

反対にサーゼクスとミカエルは冷静に今回の出来事について分析していた。彼らの言う通り、ヴァーリはウルトラマンとなった自分の力をアピールする為に三大勢力のトップをここへ呼び寄せたのだ。

 

 

もう1人の巨人「ッ、ゥウ″ウ″ゥゥゥ…!グゥゥ……ッ!!」

 

朱乃「様子がおかしいですわ……」

 

 

巨人の変化に朱乃は呟く。しばらく誇示していたもう1人だったが、急に苦しそうに震え始めたのだ。

 

苦しそうにもがいていた巨人だったが、1分もしないうちにピタリと収まる。それと同時に光が晴れ、見え辛かった体色や体の造形が明らかとなった。

銀を貴重としたボディーに黒のラインが走り、手首足首には朱色のプロテクター。そして、鋭く尖った目は青く輝いている。

 

 

もう1人の巨人「……」

 

 

もう1人の巨人は周囲をキョロキョロと見渡した。周囲の地形、点々とした雲が浮かぶ青空、地上にいるリアス達。

品定めをするように見渡す中、不安に思った美猴は筋斗雲で近寄る。

 

 

美猴「おい、ヴァーリ?大丈夫かぃ──」

 

もう1人の巨人「フ″ン″ッ″!」

 

美猴「ッ!?」

 

 

と、声をかける美猴目掛けて、もう1人の巨人は握り拳を突き出して紫色の光弾を放った。

美猴は思わぬ攻撃に驚きながらも咄嗟に横へかわした。光弾は遠くの地面に着弾。爆発を起こす。

 

 

美猴「な、何をするんでぃ!悪ふざけは止めろぃ!」

 

アーサー「ヴァーリ。ふざけてる場合では──」

 

もう1人の巨人「シ″ャ″ァ″ッ″!」

 

 

美猴とアーサーは抗議するも、もう1人の巨人は耳を貸さず、2人目掛けて左右の拳から紫色の光弾を放つ。2人は避けるものの、これを機にもう1人の巨人は積極的にヴァーリチームへ攻撃を仕掛ける。

 

 

ロスヴァイセ「仲間割れ?」

 

 

目の前で繰り広げられる光景にロスヴァイセは理解出来ないでいた。

ウルトラマンとなったヴァーリが現れたかと思えば、急に仲間を攻撃し始めた。それは皆も同じであった。

仲間割れを始める巨人の姿を見て、サーゼクスはあることに感づいた。

 

 

サーゼクス「まさか、暴走しているのか…!」

 

リアス「え?」

 

 

聞き返すリアスを筆頭に皆が振り向くと、サーゼクスは神妙な面持ちで話す。

 

 

サーゼクス「人には誰しも光のように明るい善の心、それとは対極に影のように潜む悪の心がある。光は正しき心しか扱えない。だが、彼は光とは真逆の邪悪な心で変身……その結果、闇の巨人へとなってしまったんだ」

 

リアス「そんなことが……」

 

 

その言葉に皆は唖然とする。それもそうだろう。

まさか、光であるウルトラマンが闇に堕ちてしまうとは思いもしなかったからだ。

 

サーゼクスの読み通り、ヴァーリが変身したもう1人の巨人。

彼は光から闇へと堕ちた巨人──『イーヴィルティガ』へとなってしまったのだ。

 

 

黒歌「出し惜しみ無しで行くにゃ!」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!」

 

 

黒歌は仙術を纏った手で地面を叩く。すると、大地から巨大な蔦が生え、イーヴィルティガを縛りつける。

 

 

アーサー「はぁぁぁーーーーッ!!」

 

美猴「デカくなれ、如意棒!」

 

 

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』を手にしたアーサーと巨大化させた如意棒を手にした美猴は、身動きが取れないイーヴィルティガに向かって振り下ろす。

聖のオーラが纏った斬撃と高層ビルのように巨大な如意棒が襲いかかる。だが──

 

 

ブチブチィッ!!

 

アーサー「何ッ!?」

 

美猴「うおっ!?」

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ァ″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガは強引に蔦を引きちぎって拘束から脱出。右手でアーサーの放った斬撃を叩き落とすと、もう片方の手で如意棒を受け止めた。

そして、そのまま左手に軽く力を込めると、如意棒は音も無くへし折れた。

 

 

美猴「お、俺の如意棒が……」

 

 

元のサイズに戻り、真っ二つに折れた如意棒を見て青ざめる美猴。

だが、落ち込んでいる時間を与えてくれる程、暴走する巨人は優しくはない。

 

 

イーヴィルティガ「ハ″ァ″ッ″!!」

 

ドォォンッ!

 

アーサー「ぐあっ!」

 

美猴「ぬあっ!?」

 

 

イーヴィルティガは折れた如意棒を雑に投げ捨てると、両腕を胸の位置に上げて闇のエネルギーを溜め、両拳から放つ紫色光弾──イーヴィルビームを放つ。

見事に着弾したアーサーと美猴は爆発と同時に地上へ叩きつけられる。

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』はアーサーの手を離れ、遠くへ吹き飛んでいく。

 

 

ドドドド…ッ!!

 

イーヴィル「ッ!」

 

 

黒歌はパンッと音を立てて合掌し、地面を叩く。すると、土砂が火山の噴火の如く舞い上がり、イーヴィルティガに降り注ぐ。

イーヴィルティガは土砂の山に埋もれていく。

 

 

黒歌「くらえッ!」

 

ドォォォォォンッ!

 

 

土砂の山に向かって黒歌は口から直径50m程の火球を吐き出す。1発だけでなく、40発もだ。

休みなく次々と放たれる火球群を受けて土砂の山は大爆発を起こす。──中にいるイーヴィルティガもただではすまないだろう。そう思った黒歌はほんの少しだけ余裕が生まれ、攻撃の手を止める。

だが──

 

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

黒歌「ッ!」

 

 

イーヴィルティガには全く通用していなかった。体には傷1つなく、それどころか今までの攻撃を苦ともせず、不気味に笑いながら首をゴキゴキと鳴らしていた。

変身者であるヴァーリがこの程度でやられるとは思ってはなかったが、掠り傷1つもつけられないとは……。

人とウルトラマンとの力量差を黒歌は痛感した。

 

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

 

そんな黒歌を次の標的を定めたイーヴィルティガは不気味に笑いながら振り上げた右拳に紫色のエネルギーを込める。暴走したイーヴィルティガ────ヴァーリはかつて同じ道を歩んできた仲間でさえも躊躇する気はないのだ。

 

思わず立ち竦む黒歌。ウルトラマンとは以前戦ったが、その時には感じなかった明確な殺意を前に黒歌は蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなかった。

そんな心情も意に返さないイーヴィルティガは紫色の光弾を放とうするが──

 

 

ドォォンッ!

 

イーヴィルティガ「ッ?」

 

黒歌「!?」

 

 

上空からイーヴィルティガの背中に数発の光弾が直撃、爆発で前のめりに怯む。

驚いた黒歌は光弾を放った方角を見ると、ジェクターガンを構えている梶尾に加えてシトリー眷属とグレモリー眷属の姿があった。

先頭にいる梶尾は叫ぶ。

 

 

梶尾「馬鹿!何固まっている!」

 

黒歌「ッ!」

 

 

梶尾の必死な声に気を取り戻した黒歌はその場から走り出して離れる。

その間にも梶尾達は各々の飛び道具で攻撃していく。標的を梶尾達へ切り替えたイーヴィルティガは光弾を受けても苦ともせず前進していく。

 

 

サーゼクス「総員、攻撃開始!」

 

 

奮闘する梶尾達に続いてサーゼクスの号令がかかると、同時に三大勢力の戦士達も攻撃を仕掛けていく。

数多の魔力弾が次々とイーヴィルティガの身体に直撃していく。

だが、火花が散り、僅かに怯むはするもののイーヴィルティガには全く通用していない。それでも、三大勢力はめげずに攻めていく。

 

 

イーヴィルティガ「ゥ″ウ″ウ″ゥ″ゥ″ゥ″~~~!ハ″ァ″ッ″!!」

 

ドォォンッ!

 

『うあぁぁーーーーッ!!』

 

 

次々と放たれる魔力弾をイーヴィルティガは両腕を上下に広げ、紫色に輝く円形状のバリアで防ぐ。そして、上下を反転させてバリアを回し、魔力弾を弾き飛ばした。

弾かれた魔力弾は近くにいた戦士達を吹き飛ばす。

 

 

イーヴィルティガ「ウ″ア″ァ″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!!」

 

アザゼル「神をも超える新しい存在か……。皮肉だな、ヴァーリ……」

 

 

粉塵舞い上がる戦場で暴れ回るかつての養子の姿にアザゼルは複雑な表情で吐き捨てる。ヴァーリが幼い時から育て、力の在り方を説いた筈だが、テロリストへ離反。

そこまでしてヴァーリが追い求めた力の先が、彼が目標とするものとは真逆の存在になってしまった。

その光景にアザゼルは呆れや怒り……そして、彼の心に潜む影に気付かなかったことに対して悲しみが湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしよし!いいものを見させてもらった!ふふっ、新しい商売先も見つかりそうだ……」

 

 

その頃、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の秘密基地では、構成員達の手によって四之宮の記憶データは全て録り終えていた。

太った紳士は無事に録り終えたことに加え、まだ見ぬ怪獣を知れたこともあり、でっぷりと出た腹をたぷたぷと揺らして飛び跳ねていた。

喜びに満ち溢れている太った紳士に黒フードの女は場を読まず、冷たい声音で話しかける。

 

 

「……おい。()から頼まれたものを持ってきた。奴はどこだ?」

 

「ああ、それなら……」

 

 

訊ねる黒フードの女の手には一誠と我夢から奪ったリーフラッシャーとエスプレンダー。太った紳士は()がいつも何処にいて、何をしようとしているのかハッキリとわかっている。

彼の居場所を伝えようとしたその時──

 

 

ドォォォォンッ!!

 

『うぁあぁぁぁーーーッ!?』

 

「「!?」」

 

 

突如、構成員の悲鳴と共に爆発が起きた。目を離した隙に四之宮がいた場所が爆発したのだ。

2人が何事かと思った矢先、爆炎から縦状に伸びた三日月の斬擊が黒フードの女を襲う。

 

 

「ッ!」

 

 

黒フードの女は素早く太った紳士を突き飛ばして横へかわすが、流石に油断していたのか、思わずリーフラッシャーとエスプレンダーを床へ落としてしまう。

 

 

「おわわ…」

 

 

尻餅をついた太った紳士は突然のことに驚きながらも床を這い、リーフラッシャーとエスプレンダーを回収しようとする。

 

だが、あと一歩で手が届きそうなところで進行を止めた。いや、止めざるを得なかった。太った紳士の首筋に「これ以上進めば斬る」と言わんばかり、日本刀の刃が突き立てられていたからだ。

太った紳士は「まさか…」と思いながら顔を動かさず目だけを動かして見上げる。視線の先にいるのは、魔人態となったジャグラーだった。

 

 

ジャグラー「久しぶりだな」

 

「ひっ!?」

 

 

ジャグラーの何気ない挨拶に軽い悲鳴をあげる太った紳士。──先ほどまで意識がなかった筈なのにどうして?

そんな疑問をテレパシーを使ったかのように読み取ったのか、ジャグラーは緑色の眼で見下ろしながら答える。

 

 

ジャグラー「何で意識があるんだって顔をしてるが、教えてやるよ。そっちの姉ちゃんと戦った時、わざと捕まったのさ。出来るだけ意識を保つように急所を外して、お前らの秘密基地を確認する為にな……。まあ、思ったより回復が遅かったのは想定外だったがな」

 

 

そう言うとジャグラーは足下に落ちているリーフラッシャーとエスプレンダーを拾い上げる。

そして、黒フードの女がこちらに迫ってきてることを視認すると、蛇心剣を鞘に収めて鼻で笑う。

 

 

ジャグラー「フンッ…どうやら遊んでる場合じゃないらしいな。お前はいずれ引っ捕らえてやる、覚えとけ」

 

 

威圧が籠った声音で言い残すと、ジャグラーは混乱に乗じて逃げ出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフェイ「そ、そんな!?ヴァーリ様ッ!」

 

 

地下遺跡にいるルフェイは人としての理性を失って暴れ回るイーヴィルティガの姿をスクリーンで見て唖然としていた。

白龍皇で旧ルシファーの血を引く男がウルトラマンの力に呆気なく呑まれ、暴走する光景が信じられないのだ。

 

ルフェイがスクリーンに釘付けになっているのを尻目に、粒子状の光となった子犬は怪獣の石像の胸元にあるカラータイマーに吸い込まれるように一体化した。

そして、一際眩しく輝くと、生物感に満ちた体表へ変化した。

胸元にはカラータイマー───ガーディータイマーが青く輝く狛犬に似た怪獣───『ガーディー』が蘇った。

 

 

大悟「君は……あの巨人の、友達だったんだ。……頼む。アイツを、止めてくれ……」

 

ガーディー「ガァゥゥ…」

 

 

息絶え絶えの大悟の頼みに応えるかのようにガーディーは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、すっかり戦場へと変わり果てた広野ではイーヴィルティガと三大勢力による熾烈な激戦が続いていた。

 

 

美猴「そんな……。嘘だろ、ヴァーリ。冗談だよなぁ……お前は巨人の力を誰よりも扱える歴代最強の白龍皇なんだ……」

 

 

そんな中、現状を受け入れられない美猴はすっかり戦意喪失してしまっていた。ウルトラマンの強さもそうだが、誰よりも優れた才能を持つと信じていたヴァーリが暴走してしまう事実が信じられなかったのだ。黒歌やアーサーも同様に意気消沈してしまっていた。

そんな美猴の弱音を近くで耳にした梶尾は鋭い剣幕で美猴の胸ぐらを掴む。

 

 

梶尾「まだそんなことを言っているのか!見てみろ!あの巨人を!何が歴代最強の白龍皇だッ!!自分の心が巨人の力に負けてしまってるじゃないかッ!!」

 

 

梶尾が指差す先にいる巨人。そこには、抑えきれない力で無茶苦茶に暴れる獣以下に過ぎない存在。そこに歴代最強と謳われるヴァーリ・ルシファーの姿はなかった。

光を継ぐものに血統や才能は関係ないのだ。

梶尾は胸ぐらを掴む手を離すと、続けて叫ぶ。

 

 

梶尾「今、ここでやることは奴を止めることだ!得体の知れないものに手を出す程、奴は弱いのか?そうじゃないと信じてるんだろう!?お前が奴を想い、尊敬しているなら、尚更止めなきゃいけないだろうが!」

 

美猴「く、くぅぅ……」

 

 

梶尾の説教を受け、泣き崩れる美猴。誤った道をしたリーダーの現状を受け入れ、止めようとする姿勢──そのことは他の2人にも充分伝わった。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!」

 

 

そんな最中、イーヴィルティガは三大勢力の攻撃を振り払うと、両腕を天高く上げ、何処かへ飛んでいく。

突然の逃亡とも取れる行動に一同が疑問に思う中、アザゼルはイーヴィルティガの向かった方角を見て焦りの色を見せる。

 

 

アザゼル「不味いぞ……あっちには街がある。しかも都市部だ」

 

一誠「え!?」

 

リアス「早く追わないと!」

 

 

それを聞いて青ざめた一同は急いでイーヴィルティガの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢、小猫、ゼノヴィア、匙、椿姫の5人はガーディーが飛び出てきた方から大悟がいるのではと検討をつけ、地下遺跡へ繋がる洞窟の中を進んでいた。

 

 

我夢「大悟!」

 

ルフェイ「ッ!?」

 

 

地下遺跡へと到着すると、我夢が地べたで倒れる大悟の姿を発見すると、一行は駆け寄る。

その声でハッと意識を現実に戻したルフェイはビクッと肩を震わす。

ルフェイの存在に気付いたゼノヴィアと匙が身構える中、我夢は大悟の上体を起こし、容態を確認する。

 

 

大悟「我、夢……」

 

我夢「ああ、僕だよ!もう大丈夫だ。小猫、手当てを」

 

小猫「……はい」

 

 

我夢の指示を受けた小猫は猫又の姿になると、仙術で治療を始める。掌から伝わる暖かい感覚に大悟は痛みが柔らいでいく気がした。

 

 

ゼノヴィア「貴様か!大悟をこんな目に合わせたのは!」

 

ルフェイ「あ、い、いや……私は……」

 

 

問い詰めるゼノヴィアの剣幕に圧されるルフェイはヴァーリの現状もあって、しどろもどろにしか話せなかった。

緊迫した空気に包まれていると、椿姫のXIGナビに通信が入る。XIGナビを開くと、それは主であるソーナからだった。

 

 

《ソーナ「椿姫。新たな怪獣が熊本市街に現れました」》

 

『ッ!』

 

 

この報告に一同は驚く。

怪獣の正体はこの地下遺跡から出てきたものだということは皆は察した。しかし、場所が悪い。

ただでさえ、同じ場所にいるイーヴィルティガの鎮圧に苦戦しているのにも関わらず、もう1体相手をしなければならないのは非常に苦しい。

 

皆が焦燥感に駆られていると、小猫の治療を受けている大悟は呟く。

 

 

大悟「あいつは……間違った心を持ってしまった主人を……取り返しに行ったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、熊本市街では大暴れするイーヴィルティガによって戦火に包まれようとしていた。平穏な日常から一変して戦いに巻き込まれた人々はパニック状態になり、XIGやG.U.A.R.D.の避難誘導も手一杯だった。

 

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!シ″ャ″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガはそんなこともお構い無しに本能の赴くまま破壊活動を続けていた。道路を踏み歩き、建物を叩き壊し、光弾で大地を焦がす……。追い付いたリアス達三大勢力に石室が出撃させたXIGの戦闘機も応戦するが、活動を停止させる程の有効打は与えられずにいられなかった。

 

 

イーヴィルティガ「?」

 

ガーディー「ガゥゥ…」

 

 

渦中に包まれる中、イーヴィルティガの前に超古代狛犬怪獣ガーディーが地中より現れた。ガーディーの出現にXIGの面々はおろか、イーヴィルティガも予想外だった様子で、破壊活動の手を緩めた。

 

 

梶尾「こいつは俺が攻撃する」

 

《リアス「待って!あの怪獣、偽のティガに向かっていくわ」》

 

梶尾「何?」

 

 

XIGファイターSSに搭乗する梶尾がガーディーに攻撃しようとした矢先、リアスが待ったをかける。

梶尾はリアスに言われるまま視線を向けると、ガーディーがイーヴィルティガに立ち向かっていく姿があった。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!」

 

ガーディー「ウォォン!」

 

 

イーヴィルティガは向かってくるガーディーの肩目掛けてかかと落としで蹴りつける。体勢は崩れるもののガーディーは抑えこもうと立ち向かっていく。

イーヴィルティガはそれを払いのけ、蹴りや拳の応酬で徹底的に痛め付ける。

 

 

ガーディー「ウォォン…」

 

 

それでもめげずにガーディーは立ち向かっていく。イーヴィルティガに何度も何度も痛め付けられ、倒れても出来るだけ暴力はせず、必死に押さえ込もうと食らいついていく。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!イ″ィ″ア″ッ!!」

 

 

最初は軽くあしらっていたイーヴィルティガも流石にしつこいと感じ、みぞおちを蹴り込んで怯ませると、頭部の角を両手で掴んで思いっきり後方へ投げ飛ばした。

市街地を転がるガーディーはすぐに立ち上がると、右掌を前に突き出して吠える。

 

 

ガーディー「ウォォン!ウォォンッ!」

 

ロスヴァイセ「何か訴えかけている……?」

 

 

ガーディーの行動に意思を感じたロスヴァイセは首を傾げて呟く。何かを訴えかけるように吠えるガーディー──その仕草も相まって、まるで「止めてくれ」と言っているように見えた。

 

子犬の命を得たガーディーは大好きな主人を止める為に蘇ったのである。

 

 

イーヴィルティガ「ウ″ゥ″ゥ″……ア″ァ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!!」

 

 

しかし、イーヴィルティガはその制止にも耳を貸さずに一際大きく唸ると、大地を蹴って飛び上がり、その勢いのままガーディーを蹴り上げた。

 

 

ガーディー「ガゥゥ…ウォォン……」

 

イーヴィルティガ「ハ″ッ″!グゥ″ア″ッ″!」

 

ガーディー「ガゥゥゥ……」

 

 

痛む体に鞭打って立ち上がり、制止するように訴えかけるガーディーにイーヴィルティガは容赦なく握り拳を交互に突き出して、紫色の光弾を2連発浴びせる。

まともに受けたガーディーは胸元から火花を散らすと、ズシンと大地を震わせ、仰向きに倒れた。

 

 

イーヴィルティガ「ゥ″ゥ″ウ″ゥ″ゥ″……!ダァ″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!ウ″ゥ″ゥ″オ″ア″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!」

 

 

ガーディーを痛め付けても尚イーヴィルティガの暴走は収まる気配を見せず、癇癪を起こした子供のように道路を踏み荒らし、近くの建物を叩き壊していく。

 

 

ガーディー「ウォォン!ウォォン!」

 

[ビコン]

 

 

ガーディーのエネルギー残量を現す胸元のガーディータイマーが青から赤へと点滅し初めていた。

 

 

ガブッ!

 

イーヴィルティガ「ッ!」

 

 

エネルギーも残り僅かとなり、フラフラになっても立ち上がったガーディーは破壊を続けるイーヴィルティガの左腕に噛み付いた。

イーヴィルティガは力ずくで離そうともがくが、ガーディーは意地でも離れなかった。

 

 

ガーディー「クゥゥン……」

 

 

噛み付きながらガーディーは悲しげに鳴く。

───止めてくれ。君はこんな悪いことをする奴じゃないだろう?

聞こえない悲痛な訴えは一筋の涙となってこぼれ落ちる。

 

 

ロスヴァイセ「泣いている……」

 

 

怪獣ガーディーの涙にロスヴァイセを筆頭にその悲痛な気持ちが伝わってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「さあ、バリアを解いてくれ」

 

 

小猫の治療を受けた大悟はルフェイに頼み込む。

イーヴィルティガが暴走した以上、ヴァーリ側にも良くない状況だ。早くしなければ、スクリーンの向こう側で奮闘しているガーディーが殺されるかもしれない。

焦りという感情が大悟の額に細かな汗を浮かばせていく中、ルフェイは首を横に振る。

 

 

ルフェイ「それは出来ません……。この結界はヴァーリ様が創られたものなんです。術者だったら解けるのですが、ヴァーリ様がああなってしまった以上は……」

 

 

そう話したルフェイは顔を曇らせる。

北欧の術式はそっとやちょっとで解除出来る代物ではない。出来たとしても、その時は熊本市街は壊滅するだろう。

 

皆がどうしようと考える中、大悟は思った。

───自分がやるしかないと。

意を決した大悟は我夢達の方を振り向く。

 

 

大悟「みんなは先に行っててくれ。必ず、帰るから……。お願いします」

 

 

皆にそう頼む大悟。ピッチリと引き締めた口に、何かを決意した眼差し──そこから一同は大悟の真意を汲み取った。

椿姫は皆に指示を出す。

 

 

椿姫「……わかりました。行きますよ」

 

我夢「絶対帰って来るんだぞ」

 

 

去り際に我夢が放った激励に大悟は力強く頷く。それは現状、変身出来ない我夢が大悟に全てを託したということと同じだ。

 

我夢達が地下遺跡から去っていった後、大悟は結界内の光遺伝子コンバーターに供えてあるスパークレンスを見上げる。

 

 

大悟「僕に出来ること……人として出来ることを!」

 

 

自分に言い聞かせるように言うと、大悟は決意を固めると結界へ飛び込んでいく。

 

 

バリバリィッ!

 

大悟「うぅああーーーッ!!?ぐぅあぁぁぁーーーーッ!!!」

 

 

しかし、そう簡単にはいく程甘くはない。結界中を走る電流が大悟に襲いかかる。身体中につんざくような痛みが走り、思わず悲鳴に似た叫びをあげる。

激痛のあまりうつ伏せに倒れる大悟だが、激痛を歯で噛み締めて堪えると、這って先へ進んでいく。

 

 

大悟「う″ぅ″う″ぁ″ぁ″ぁ″……あ″ぁ″ぁ″ぁ″ッ!!」

 

 

倒れるのは簡単だ。このまま吹き飛べば身体中に流れる痛みが収まって楽になる。

だが、大悟は引き下がらなかった。ウルトラマンでなくとも、人である自分自身で出来ること───その熱い決意が大悟の体を押し上げていた。

 

 

ルフェイ「(どうして……無理だとわかってるのに……)」

 

 

ルフェイにはわからなかった。不可能だとわかっていても立ち向かっていくのかを。

高い壁にぶつかれば高い梯子を用意すればいい。わざわざよじ登るより、よっぽど簡単でリスクも少ない。

 

しかし、大悟(この男)はその壁をよじ登ろうとしているのだ。傷付き、倒れるのを承知でだ。

どうして、そこまで意地を張るのか。この時の彼女にはまだ理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!」

 

ガーディー「ガゥゥゥ…」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガは左腕に噛み付くガーディーを3発蹴りつけて引き離すと、その場で一回転し、回し蹴りで蹴り倒す。

すかさず、倒れたガーディーの上に股がると、顔目掛け、拳で滅多打ちにかかる。

 

 

ガーディー「ウォォン…」

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ーーーッ″!ハ″ァ″ーーーッ″!!シ″ャ″ーーハ″ハ″ハ″ハ″ッ″……!」

 

 

既に抵抗出来ない程に満身創痍のガーディーを一発、一発、また一発と殴り付けることに快感を感じるイーヴィルティガは不気味に笑い出す。

 

 

イリナ「やめてーーーッ!」

 

梶尾「この偽者めッ!!」

 

ドォォンッ!!

 

イーヴィルティガ「グゥ″オ″ッ″!?」

 

 

目の前で繰り広げられる悲惨な光景に我慢出来ない…。

地上にいるイリナ達の飛び道具、梶尾のファイターSSのミサイル攻撃がイーヴィルティガの胸部に命中。

火花を散らし、怯んだイーヴィルティガは攻撃の手を一旦止めると、地上にいるリアス達を見据え───

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!」

 

ドガァァァーーーンッ!!

 

『きゃあぁぁぁーーーーーッ!!』

 

 

拳を突き出して光弾を放つ。着弾点からは大爆発が起き、巻き込まれたリアス達は悲鳴をあげながら吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「はぁ……はぁ……」

 

 

その頃、地下遺跡で奮闘していた大悟は遂に結界を突破した。ようやく辿り着いた安堵からか、大悟は思わず地に手をついてきらした息を整えていた。

 

 

ルフェイ「嘘……」

 

 

ルフェイは自分の目を疑った。

あれ程強固な護りで固められていた筈の結界が力ずくで突破したことに。しかも、何の能力を持たないただの人間にだ。

───どうして、何故、と色々疑問が浮かぶが、検討がつかない。

 

 

大悟「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

ある程度息が整ってきた大悟は痛む身体に鞭打って立ち上がると、フラフラとした足取りで光遺伝子コンバーターに供えられているスパークレンスを手に取る。

スパークレンスは光遺伝子コンバーターから放つ照明を受けて美しく輝いている。

 

 

大悟「…!」

 

 

───僕が止めてみせる。新たな決意を固めた大悟はスパークレンスを天高く掲げる。

そうすると、スパークレンスのウイングパーツが開き、中にあるレンズから目映い光が放たれ、大悟を包む……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア「皆さん!」

 

 

アーシアは急いで傷付き倒れる仲間達に回復のオーラを飛ばして回復させる。淡い緑色の光の回復力は致命傷レベルの傷もたちまち癒した。

続々と戦線復帰するが、状況は以前として変わらない。

 

 

リアス「流石にきついわね……」

 

ソーナ「ええ。正直、持ちこたえられるかも怪しいですね……」

 

 

思わず吐いたリアスの弱音にソーナは同意する。

アーシアの回復能力があるとはいえ、気力と体力はじわじわとすり減っている。既に死傷者も続々と出ており、自分達もいつ倒れるかわからない。

長引けば長引く程、不安は募り、状況は悪化していくばかりだ。

 

絶対絶命のその時、空を滑空する巨大な物体が飛んできた。

 

 

梶尾「来てくれたぜ、本物が……!」

 

 

その飛行物体を目にした梶尾は頬を緩める。その正体は待ちに待った勇者────ウルトラマンティガである。

 

 

ティガ「チャーーーッ!!」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

地上に降下するに合わせて一回転したティガは蹴りを放つ。直撃したイーヴィルティガは火花を散らして怯むも、側転して素早く身構える。

着陸したティガもそれに合わせて平手にした右手を前、握り拳にした左手を胸元近くに構える。

 

 

ガーディー「クゥゥ……」

 

 

ティガの登場に気付いたガーディーは満身創痍ながらも重たい瞼を開け、フラフラと立ち上がろうとする。

その瞬間──

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!」

 

ドォォンッ!!

 

ティガ「ッ!?」

 

 

イーヴィルティガの拳から放った光弾が胸元に命中し、ガーディーはバタリと倒れてしまう。

もうマトモに動けないのにも関わらず、容赦なく攻撃する姿に思わずティガは固まる。

 

 

[ビコン ]

 

 

致命傷を受けたガーディーは悲しみの涙で濡らした目元をゆっくりと閉じた。それと同時に息絶えたことを知らせるように、胸元で点滅を繰り返していたガーディータイマーの輝きも消えた……。

 

 

ティガ「…フッ!」

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

ティガ「フゥ~~~……!フゥ~~~………!!」

 

 

ティガは込み上がる怒りで拳震わせた。

人々を傷付け、街を破壊し、ガーディーを殺して嘲笑うイーヴィルティガの悪質さに。

───こいつは絶対に許さない!燃え上がる怒りを力に変えて、改めてイーヴィルティガへ立ち向かう決意を固めた。

 

 

イーヴィルティガ「ォ″オ″オ″オ″……!ェ″ア″ッ″!!」

 

ティガ「チャッ!!」

 

 

身構えた両者は同時に駆け出し、蹴りを入れながら背後に回る。

ティガは交互に拳を繰り出すが、イーヴィルティガは拳を捌くと、素早く背後に回り、ティガの背中を蹴る。

よろめいた隙にイーヴィルティガは蹴り込もうとするが──

 

 

ティガ「チャッ!」

 

イーヴィルティガ「フ″ッ″!?」

 

 

ティガは素早く体勢を切り替えて背後に回ると、逆にイーヴィルティガの背中を蹴りつける。

 

怯んだイーヴィルティガはすぐに体勢を整えると、上下段の蹴りを繰り出す。ティガも合わせて上下段の蹴りを放つ。全くタイミングのあった2人の足がぶつかり合う。

そして、立ち位置を切り替えるた両者は互いの胸に張り手を繰り出し、後退る。

 

───実力は互角。流れを変えようとイーヴィルティガは拳を握った両腕を広げて現れた黒色の軌跡を手前でクロスさせてエネルギーを集約させ、対するティガも平手にした両腕をクロスさせてから白色の軌跡を描いてエネルギーを集約させる。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!!」

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

 

エネルギーを溜めた両者は鏡合わせのように両腕をL字に構え、イーヴィルティガはイーヴィルショットを、ティガはゼペリオン光線を放った!

闇と光の巨人による光線の押し合い合戦が始まる。黒と白の光線のぶつかり合いは凄まじく、周りの影が見えなくなる程の閃光がバチバチと迸る。

 

 

ドォォーーーンッ!!

 

ティガ「チャアッ!?」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

しばらく打ち合っていたが、光線のぶつかり合う箇所から小規模の爆発が起き、両者は大きく後方へ吹っ飛ぶ。

光線では決着がつかなかった2人だが、すぐに立ち上がると、再び格闘戦を繰り広げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカエル「超人同士の戦いですか……」

 

アザゼル「いや、人の心が引き起こした戦いだ」

 

 

ミカエルの呟きにアザゼルは否と言い換える。

端から見えば超常的な力を持つ者同士の戦いと捉えられる。しかし、結局のところはヴァーリという男の邪な心が発端となった戦いなのだ。

 

 

アザゼル「ティガ、必ず勝ってくれ……」

 

 

アザゼルはティガに自身の願いを込めて呟く。

それはイーヴィルティガを倒してくれという堕天使総督の思いもあるが、何より間違った道を歩んでしまったヴァーリを止めてくれという彼自身の親心からでもあった。

勝手だと思いつつも、アザゼルは静かにティガの勝利を信じて見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手刀を互いに交わしたままゆっくりとした足取りで動くと、互いに蹴りを交わした後、拳をぶつけ合う。

ティガは間合いを取って蹴り込もうとするが、隙を見つけたイーヴィルティガに腹を蹴りつけられる。

 

 

ティガ「…ッ!」

 

イーヴィルティガ「イ″ェ″ア″ッ″!」

 

ティガ「チ″ャァッ!?」

 

 

怯んだ隙にイーヴィルティガはティガの首を軽く掴むと、力任せにティガを投げ飛ばした。

クルリと一回転して倒れたティガにイーヴィルティガは情け容赦なくかかとで蹴りつける。

 

 

イーヴィルティガ「ハ″ハ″ハ″ーーーーッ″!!」

 

 

そして、起き上がろうとするティガの首を掴んで無理やり立ち上がらせると、左肩にチョップを2発打ち込み、首を絞める。

ギチギチと鈍い音が苦悶するティガの耳に流れる。このままだと失神してしまう。

 

 

ティガ「ハッ!」

 

イーヴィルティガ「…ッ″!」

 

 

ティガは意識が遠のきそうなのを堪え、両手の手刀をイーヴィルティガの首に叩き込む。

この一撃で首を絞める手が緩んだチャンスをティガは逃さず、イーヴィルティガの首後ろに手を回して後方に下がり──

 

 

ティガ「チャッ!!」

 

ドォォンッ!

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

背負い投げの要領で勢い後方の地面に投げつけた。

地面に叩きつけたイーヴィルティガは苦痛の叫びをあげ、土埃を舞わせる。

 

ティガは素早く身構えると同時に起き上がったイーヴィルティガも身構える。両者共傷付いてきているが、まだまだ戦う気力は充分だ。そう思われていたが──

 

 

[ビコン]

 

イーヴィルティガ「…ッ″!」

 

[ピコン]

 

ティガ「…ッ!」

 

 

両者の胸元に光るカラータイマーが青から赤へ点滅し始めた。カラータイマーが示すのは活動限界時間だ。

残された時間がないことを把握した両者は一気に決着をつけようとその場から飛び上がり──

 

 

イーヴィルティガ「シ″ィ″ヤ″ァ″ッ″!!」

 

ティガ「チャーーーーッ!!」

 

 

イーヴィルティガの蹴りとティガのフライングチョップがすれ違い様に炸裂する。

土埃を僅かに舞わせて両者は着地する。そのまま膠着状態が続き、カラータイマーの音だけが聞こえる静寂の時が流れる。

先に倒れるのは───

 

 

ティガ「……チャアッ!?」

 

イーヴィルティガ「ハッハッハッハッ……」

 

 

ティガだった。強烈な痛みがある胸部を抑えながら片膝をつく。

──勝った!そう確信したイーヴィルティガは振り向き様に高々と笑う。だが──

 

 

イーヴィルティガ「ハッハッハッ……グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

笑っていたイーヴィルティガも苦しそうな声をもらすと、その場でドサリと倒れた。しかも、ダメージが深かったのは彼の方であり、立ち上がろうにも思うようにいかない。

その間にティガは立ち上がった。

 

 

ティガ「フッ!」

 

イーヴィルティガ「ア″、ア″ァ″……ア″ァ″…ッ″!」

 

 

既に決着がついたにも関わらず、諦めの悪いイーヴィルティガは片膝をついたままイーヴィルショットの体勢に入る。

だが、ティガから受けたダメージが深く、エネルギーが溜められない。

 

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

イーヴィルティガ「ア″ァ″ァ″ッ″!?」

 

 

その隙にエネルギーを溜め終えたティガは両腕を一瞬胸に添えてからL字に組んで、生物を元あるべき姿に戻す還元光線──セルチェンジビームを織り混ぜたゼペリオン光線を放った!

直撃したイーヴィルティガは一瞬苦しそうな声を出した後、粒子状の光となって消滅した。

 

イーヴィルティガを倒したティガは傷付いた体を押しながら、ガーディーの亡骸に寄り添うと、ギュッと抱き締める。

それはティガが出来る助けられなかったことに対しての悲しみがこもった謝罪であった。

 

 

ティガ「ヂョアッ!」

 

 

ティガはガーディーの亡骸を両腕で抱えあげると、宇宙に向かって空高く飛んでいった。せめてガーディーが死後、安からに眠れるように信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、リアス達は合流した我夢達も加わって、撤収作業と出来るだけの復旧作業に勤しんでいた。

 

 

《石室「皆、よく頑張ってくれた。かけがえのない存在を失った者もいるが、君達のおかげで被害が拡がらずに済んだ。ありがとう」》

 

サーゼクス「私からも礼を言う。本当にありがとう」

 

 

スクリーン越しの石室、サーゼクスは労いの言葉をかける。今回の戦いは決して良く出来たとは思えないぎ、ティガが駆けつけるまで持ちこたえたのは上出来であろう。

 

 

ヴァーリ「ぅう、う″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーー!!」

 

 

我夢達が頷いていると、後ろから苦しそうに叫ぶ声が聞こえてくる。皆は振り向くと、その声の発信源は全身を拘束具で拘束されて担架で運ばれているヴァーリだった。

ちなみに黒歌達の姿が見えないのは逃げ出したそうだからだ。

 

 

ヴァーリ「う″あ″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーーッ!!う″ぅ″あ″ぁ″ぁ″ぁ″……ッ!!」

 

 

苦しげにもがいているヴァーリは顔中脂汗まみれで安静にしようとも出来ない状況だった。

ゼペリオン光線に織り混ぜたセルチェンジビームを受け、巨人の肉体とヴァーリは無事引き離すことが出来た。

だが、強引に光になったことでその反動が返り、彼を苦しめているのだ。

 

搬送車の中へ運ばれていくヴァーリを皆が見守る中、サーゼクスはアザゼルが今まで見たことがないぐらい悲しげな表情を浮かべているのに気が付いた。

 

 

サーゼクス「アザゼル……」

 

アザゼル「ああ、わかってる……」

 

 

サーゼクスの呼びかけにアザゼルは細々と返す。

ヴァーリは恐らく、医療施設へ治療された後、監禁されるだろう。今回の件に加え、今までのテロ行為もあって重い刑罰は避けられないだろう。

 

しかし、庇っては駄目だと頭ではわかっているが、どうしても“庇う”という選択肢がもやの様に絡まって離れないのだ。

アザゼルの複雑な心情をサーゼクスは察し、これ以上触れることはなかった。

 

 

一誠「そういや、大悟の奴どこ行った?」

 

 

ふいに出た一誠の声に皆はあっとなる。ガーディーを宇宙に帰した後、大悟は一向に現れる気配がなかった。

先に帰ったのだろうか?皆がそう思った矢先───

 

 

大悟「おーーーいッ!」

 

 

と遠くから呼びかける声が聞こえ、皆は振り向く。

その視線の先には爽やかな笑顔を浮かべる大悟が手を振りながらこちらへ向かって駆けてくる姿があった。

 

 

一誠「あ!あいつ、心配かけさせやがって!」

 

ギャスパー「だ、大丈夫そうですね!」

 

我夢「大悟ーー!」

 

 

安堵した一同は一斉に大悟に駆け寄り、周りを囲む。

一誠はこのやろと満面の笑みで大悟の首に腕を回し、頭をやや乱暴にくしゃくしゃと撫で回す。

 

 

ソーナ「……」

 

 

その様子を遠くからソーナ率いる生徒会メンバーは微笑ましく見守る。

うっすら笑みを浮かべるソーナだが、四之宮がどうなったのか気がかかり、ぎこちないものとなっている。

四之宮の安否が気になっていたその時───

 

 

四之宮「かーいちょう♪」

 

ソーナ「……ッ!?」

 

 

と、後ろから左肩に硬いものが触れ、耳元で聞き慣れた囁き声がした。ぎょっと驚いたソーナは飛び退くと、そこにいたのは気味が悪い笑みを浮かべた四之宮の姿だった。

 

 

ソーナ「四之宮!?」

 

四之宮「よっ!皆さん元気そうで……」

 

匙「元気そうって……心配してたんすよ!」

 

梶尾「そうだ!連絡1つも寄越さないで!」

 

 

いつもの調子で話す四之宮に生徒会メンバーはぷんすかと問い詰める。しかし、皆、内心では無事で安心しているのだ。

詰め寄られる四之宮はへらへらと笑みを浮かべる。

 

 

四之宮「お前ら、酷いな~。ほら、せっかく探し出したのにな」

 

一誠「あ!それ、俺達の!」

 

 

そうぶつくさ言いながら四之宮が取り出したのは紛失したリーフラッシャーとエスプレンダーだった。

それを見た一誠と我夢は血相を変えて、どかどかと四之宮に駆け寄る。

我夢は興奮気味に訊く。

 

 

我夢「見付けてくれててたんですか!」

 

四之宮「ああ、結構苦労したぜ~~……。ま、すぐに返してやりたいところだが、こんな大切なものをホイホイ無くすお前らの管理能力は甘いよな?よって、これから3日間、生徒会の俺の分の仕事を命じる」

 

「「えぇ~~~……!」」

 

 

突然の罰則を課せられた一誠と我夢の感情は、先程から込みあがっていたプラスが一気にマイナスへと叩きこまれた。

2人が嫌がるのも、生徒会の仕事はきついとあまり良い評判しか聞かないからである。

 

これを口実に仕事をサボれると四之宮がほくそ笑んでいると、ソーナはちょんちょんと指で肩を叩く。

 

 

ソーナ「四之宮。何、呑気そうにしているのですか。貴方には無断で行動したことに関する始末書が山ほどありますからね?」

 

四之宮「え、あ……」

 

 

それを聞いた四之宮は思わず固まった。忘れていたのだ。自分が無断で失踪していたことになっていることを。

一変してぎこちない表情になった四之宮はしばらく考え込むと、回れ右をして猛ダッシュで逃亡し始めた。

 

 

四之宮「ま、また今度ーー!!」

 

ソーナ「あ!今日は逃がしませんよ!」

 

 

面倒ごとを放り投げる四之宮の後をソーナは追いかけ回す。何気ない微笑ましい光景に皆は自然と笑いが込み上げてきた。

 

身分、種族、分け隔てなく愉快に笑い、温かい空気に包まれる。

そんな彼らの後ろを一匹の子犬が元気そうに走り回っていた……。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告
(※イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告)

一誠「俺は、このまま戦ってもいいのだろうか……」

サイラオーグの過去を知り、きたるレーティングゲームへの姿勢に迷う一誠。
その時、帰国した球友が一誠に告げる言葉とは?

次回、「ハイスクールG×A」
「青春の陰り」
お楽しみに!






作者の一言
『イーヴィルティガは止まらない』



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