彼の対に。 (コメット/セラム)
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第1話 二年の間

どうも、コメット/セラム・・・長ったらしいのでコメットで構いませんね。初めまして。
一年近くランキング見たりお気に入りの小説見てるだけでしたが、友人が小説書いてるのと、久しぶりにイナズマイレブン見てたらこれまた久しぶりに書きたくなりました。

女オリ主、いいですよね。それではどうぞ・・・。


 

『下がれ!来るぞ!』

 

 

ボールを取られ攻めが逆転された瞬間、相手のキャプテンは自身のチームに指示を飛ばした。

キャプテンの言うことに従い、自陣に下がってディフェンスラインを構築していく。

毎日練習したのだろう。隙はほとんど見つからない。

だが・・・、

 

 

それでは、私と彼を止めることはできない。

 

 

「よっ!」

 

相手の股を抜いてボールをキープして、横にいる彼にボールを渡す。

それは一瞬で、すぐにボールは私の足元に。

ワンツーというやつだ。

 

「させるかよ!」

 

他よりも大柄な選手が、私の前に出てきた。

それと同じくして、後ろで彼が飛翔する。

ニヤリ、と笑みを浮かべて私は上空へ向けてボールを蹴り上げた。

 

「修也くん!」

 

上を見上げれば、そこに、炎を纏って回転する・・・豪炎寺修也がいた。

 

 

『ファイア・・・トルネード!!』

 

 

 

********************

 

 

そのシュートがゴールに入ったのと同時に、私・・・高良優梨はスマホの画面を消し、机に突っ伏した。

 

「もう、あれから二年か・・・」

 

現在、私は雷門中という学校の二年生だ。

今見ていた動画は、小学校の頃にあったクラブ全国大会の決勝戦。

不意に見たくなってスマホを開いたのだが・・・ホント、あの頃が懐かしい。

あれほど綺麗に決まった連携は、今のところ二年前のみ。

チラッと、私は教室の隅で黙々と弁当を食べる男子に目を向ける。

逆立った白い髪に、スポーツをやる過程でできた日焼け。切れ長だが、優しさもにじみ出ている眼。

二年という時間は、彼・・・豪炎寺修也とサッカーをしなくなった時間の事もさす。

直々話したりはしているが、サッカーの話題が出ることはない。

今年になって木戸川から転入してきて、非常に喜んだものだ。

しかし、それ以降彼がサッカーをする姿を見ることはなかった。

 

『悪い、優梨・・・。俺は、もうサッカーをやらないと誓ったんだ。本当に、すまない・・・!』

『・・・っ』

 

病院の前で、彼は深々と頭を下げて私に謝った。

なぜかお互いに泣いていたのを、覚えている。

 

・・・と、そういえば今日は昼で学校は終わりであった。

私は広げていた弁当をカバンの中にしまい、教室を出て屋外の女子トイレへ。

周りに誰もいないのを確認し、髪を束ね、帽子を被る。学校指定の女子制服も脱いでジャージに着替え、これまた誰もいないのを確認して外に出る。

 

「よし。本日も高良悠太、始動しマース」

 

小声でそう口にし、私は雷門サッカー部の部室へ向かった。

 

 

 

********************

 

 

 

部室のドアを開けると、中には誰もいない。代わりに、片付いていない散らかった惨状が私を迎えた。

まぁ、いつものことか。

机の中に備えてあるゴミ袋を取り出し、片っ端から入れていく。

 

「えーっと?これは菓子カス、これは菓子袋・・・ガムも捨て捨て。ーーー誰だろ、エロ本持ち込んだの」

 

最後のには触れないでおこう。うん。

丁寧に袋の中に入れ、掃き掃除で出たゴミも入れてから口を結ぶ。

使ったままであろうユニフォームは全部一つにまとめ、外に備えてある洗濯機に放り込む。

 

「こんなものかな」

 

整理を終えたら、部室からサッカーボールを一つ取り出し、外に出てリフティングを開始した。

テンポ良く、足のサイドや腿も駆使してボールを扱う。

 

「なんかしずっかで、まっちにはだっれも、いーなーいーし、そっんなのべっつに、どーでーもいー」

「相変わらず変なの歌ってるな」

 

声をかけてきたのは・・・、

 

「お、円堂くん」

「よう!今日はビッグニュースがあるんだぜ?」

 

円堂守くん・・・この雷門サッカー部の部長であり、ゴールを守るGKだ。

熱いハートを持っており、サッカーの好きさは誰にも負けない。

 

「どんな?」

「へへっ、なんとな・・・」

 

 

「帝国学園から練習試合を申し込まれたんだ!!」

 

 

ーーーはい?

 

 

 

********************

 

 

 

「いや、無理でしょ」

「あ、やっぱり?」

 

試合前日、親に帝国との試合の件について母親に話すと、即答で返事が返ってきた。

 

「仮にも全国大会を40連覇してる学校でしょ?大体、人数は?」

「あー、その点は大丈夫っぽい。キャプテンがどうにかするって」

 

試合が決まったその日から、円堂くんは怒涛の勢いで部員勧誘を始めた。

もう殆どの生徒がそれぞれの部活に所属しており、しかも無名の部活だ。誰も入らないと思っていたのだが・・・奇跡って起こるものだねぇ。

 

「でもお母さんの言う通り、人数が増えてもっていう話なんだよ」

 

ほぼ初心者の寄せ集め状態の我がサッカー部。

経験者は数人で、しかもここ最近は練習もしていないときた。

円堂くんの気合で数日は皆団結して修練に励むことはできたが・・・付け焼き刃で勝てるほど、帝国学園は甘くない。

恐らくだが、15点以上の大差をつけられて負けると思う。

 

「実力の話もだけど、貴女が女子って試合中にバレちゃった場合のことも考えておきなさいよ?ホント、なんで男に変装してまで・・・」

「ゔっ・・・仕方ないでしょ。女だったら真面目に相手してくれないだろうし」

「でも、あの子ならそんなこと気にせずに一緒にプレイしてくれたじゃない」

「あの子?」

「修也くん」

 

ズキンッ

 

「・・・おやすみなさい」

「ーーー?もう寝るの?」

「うん。明日に備えなくちゃいけないし」

 

バタリッとドアを優梨が閉めた直後、母親は時計を確認する。

時刻は19時。いくらなんでも早すぎる。

 

「まったく・・・何かあったのなら言いなさいよね」

 

 

 

********************

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」

 

大きなため息を吐きながら、私は明日の試合に向けての荷物を準備する。

スパイク、プロテクター、タオルをエナメルバッグに入れ、部屋の電気を消して横になった。

 

(明日の朝にスポドリ準備して・・・余裕持って6時半には出とこ・・・)

 

スマホの目覚ましをセットしながら、ふと、帝国学園の試合動画を検索。

上から順に見ていき、30分経ったところで再びため息を吐いた。

 

「レベルがちがーう・・・」

 

うちの部と比べて、動きの無駄が少ない。

おまけに、必殺技も多種多様だ。

私?私も一応、あるっちゃある。ふふん(ドヤァ)。

しかし、必殺技ね・・・。

頭の中を、炎の螺旋を描いたシュートが過ぎる。

そして、直ぐに頭をブンブン振って目を瞑る。

 

豪炎寺修也が試合に出ることなど、あるはずないのだから。

 

 

 

********************

 

 

 

試合当日、6時40分。

今日は変装を家から施し、自転車を漕いで学校を目指す。

服装は一般の学校ジャージじゃないのを着ております。中にユニフォームね。

 

「じょーきーげんー、そりゃそうでーす、みーんなーがたーすかーる、あーいつーもがんばってーる、わーたしーもがーんばーる」

 

自作の歌を歌いながら、昨日の動画を振り返る。

 

(あのチームは、ゴーグルの・・・鬼道くんだっけか。その人を軸にして試合を展開していくんだよね。フォーメーションはF-デスゾーン。5-3-2の攻撃型で防御面に若干の隙あり・・・でも、普通にポテンシャル高いからその点もぬかりないんだろうな)

 

舐めプしてくれたらそこをつける。

戦力差は歴然なので、頼むよ鬼道くぅん。

ーーーあとは、気合の入りようか。

 

「まぁ、そういうのは円堂くんが適任だよね」

 

ペダルを漕ぐスピードを上げ、私は正門を通過した。

 

 

 

********************

 

 

 

フィールドの周りは、野次馬の生徒が1、2・・・は?100人?多ッ。

我が学校サッカー部の初試合を見たいのか、帝国学園を見にきたのか、単に私らが負けるのを期待してのことか。

ーーー理由なんてどうでもいいか。

生徒たちに囲まれながら、雷門サッカー部はアップを始める。

各々がストレッチをしたり、ドリブル練をしたり、シュート練をしたり。

 

「高良くん、はいこれ」

「ん?・・・あぁ、ありがとう。木野さん」

 

マネージャーの木野さんに手渡されたのは、こちらのフォーメーションとメンバー表。

 

 

フォーメーション F-ベーシック

 

FW:染岡、目金

 

MF:宍戸、半田、松野(マックス)、少林

 

DF:風丸、壁山、高良、影野

 

GK:円堂

 

ベンチ:栗松

 

 

「・・・目金くんと栗松くんを心の底から変えたい・・・」

「こ、心の声が出ちゃってるよ!」

 

いや、ホントに目金くん。君はいらない。

本来ならば私がFW上がってDFに栗松くんを置きたいのに・・・!

 

「・・・12人揃ったんだから、目金くんの入部って必要あった?」

「・・・」

 

目をそらす木野さん。

小声で、『実は私もそう思う・・・』って聞こえてきた。

・・・はぁ。しょうがない。

目金は多分、全然動けない。

帝国相手に点入れて人気者になりたいという腹だろうが、そんな願望が通じるほどサッカーは簡単じゃない。

 

「指示は出来るだけわた・・・僕が出すから、マネージャーとしてのサポートよろしく」

「・・・うん。わかった」

 

そんなやりとりをしていると、

 

「来たぞ、帝国学園だ!」

 

お出ましです。

 

 

 

********************

 

 

 

帝国学園のアップの仕方がなんかすごい。

今目の前で行われているのは、本当にサッカーのアップなのだろうか?

絶対にサッカーとサーカス間違えてるよコレ。

 

「アップは終わった。さぁ、試合を始めよう」

 

ゴーグルと赤いマントを羽織った帝国学園のキャプテン・・・鬼道有人は笑みを浮かべてこちらを見据える。

 

「俄然燃えて来たぜ・・・なぁ、みんな!」

『おう!!』

 

おぉ、気合は十分のようだ。

よかった。試合前から戦意喪失してたらどうしようかと。

 

全員がポジションに付き、ボールが中央に置かれる。

初手はこちらの攻めだ。

 

『さぁ、雷門中対帝国学園の一戦が、いよいよ始まろうとしています!実況は私、角間圭太がお送りします!!』

 

なんか実況テーブル持って出て来たのは、将棋部の角間くん。

部活はどうした。部活は。

 

『本日、部活は休みであります!』

「心を読まれた!?」

 

彼はこれからも、実況を続けていきそうだ。部長に怒られても知らんぞ。

 

『みんな!しまっていこうぜ!』

 

円堂くんの檄が飛び、全員も雄叫びでそれに答える。

審判が笛に手を取り・・・、

 

 

今、試合が始まった。

 

 

 




女オリ主、いいですよね(二回目)
こんな感じの一人称視点で、今後ともやっていきたいと思います。
どこが悪い、とかご指摘があれば遠慮なく教えてください。
アンケートの取り方も教えてください。(切実)


因みに、オルフェンズキメてます。


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第2話 バックトルネード

2話目です。
UA見て、『あ、見てくれる人いるんだ』と感動しました。
今後も書いていくので、よろしくお願いします。


 

 

キックオフで、染岡くんは後ろにいる半田くんにパスする。

うん。目金は放っておく感じで行こう。

 

「マックス!」

「ほいっと!」

 

少々ぎこちないが、トラップに成功したマックスくんはドリブルを始める。

そして、右から攻め上がっていた少林くんにパス。

相手は・・・かんっぜんに舐めていますね、はい。

だって、全然動いてない。ただただこちらが攻めてるのを見てるだけ。

そうこうしているうちに、再びボールを得たマックスくんが走り込んでいた半田くんにゴール目前でパス・・・いや、これは、スルーパスした!

上手い!

スルーの先は、やはり染岡くん。

空中でのボレーシュートを相手ゴールキーパーは・・・、

 

すんなりと飛び込みキャッチ。

 

「ふぅ・・・こんなものか」

 

・・・まぁ、こんなものだよ。

流石は全国の選手。対応が速いのなんの。

相手のパスで、ボールを得たのはキャプテン、鬼道くん。

 

「ーーー」

 

無言でこちらのゴールにいる・・・円堂くんを見つめる。

ニヤリと笑みを漏らし、

 

 

半分は離れている地点からロングシュートを放った。

 

 

 

********************

 

 

 

この程度か。

相手のプレーを見て、鬼道は先ずそう思った。

ため息を吐き出すのを我慢するのに苦労したものだ。

ほら見ろ、今打ったシュートがゴールに・・・。

 

「ーーーっと!」

 

横から飛ぶ影があった。

他の相手選手は反応できていなかはずなのに・・・1人だけ、自分のシュートに反応し、対応したものがいた。

そいつはGKの前に立ち、腹で受けた。

 

「・・・いった!シャレにならないくらい痛い!」

 

痛みで涙を浮かべ、腹を抑える帽子の少年は・・・シュートを受け止めることに成功していた。

ーーーほう。

 

「多少は、動ける奴がいるじゃないか」

 

 

 

********************

 

 

 

あーいてー、真面目に痛い。

どんなシュート力してんの、あのゴーグル。

MFでしょアンタ。ウチのFWの何倍ですか。

 

「だ、大丈夫か!?高良!」

「なんっとか!痛いけど!」

 

さて、ボールはこちらに渡った。

 

「風丸くん!ちょっとお願い!」

「・・・あれだな!わかった!」

 

私の指示に頷く彼は、相手陣地へ向けて走り出した。何をするのか悟られない程度に。

 

「少林!」

「はい!」

 

パスを受け取り、攻め上がる少林くん。

小柄だが、スピードのある選手だ。

手を抜かれている感は否めないが、それでもスイスイと相手を抜いていく。

 

「染岡さん!」

 

少林くんから受けたパスを、染岡くんは・・・、

 

「風丸!」

 

右サイドから急激な加速を施してきた風丸の手に渡る。

手に渡るという表現はちょっとあれか。・・・うん。足に渡った。

 

「ナイスパス!」

 

そのままボレーシュート。

が、難なく相手にキャッチされてしまう。

 

「くそっ!」

 

悔しがっている風丸だったが、出し抜いたという手応えはあったようである。

現に、帝国陣は目を見開いて驚いているものばかりだ。

今の手はもう通用しないが・・・流れの主導権は6:4くらいかな。

 

「もう少し、あいつらを驚かしてやろう」

 

帝国学園のゴールを見ながら、私はひっそり呟いた。

 

 

 

********************

 

 

 

あいつらを驚かせてやろう、そう思っていた時期もありました。

今は前半終盤。点は0-2で負けている。

皆の状態はというと・・・、

 

 

私と円堂くん、目金くん以外・・・全員ボロボロで倒れています。

 

 

あのプレイ以降、帝国はラフプレーに切り替えて来て、腹にボールぶつけるだのタックルで突き飛ばすだの散々だ。

ギャラリーからも、哀れみの視線が向けられてくる。

それでも、試合が続いているのは・・・。

 

「ーーーふっ!」

 

私が、相手の攻撃を防いでいるからだ。

ドリブルで駆け上がってくる相手のボールに全神経を集中させ、次の瞬間一気に近づいてバク転しながらボールを奪う。

 

「クソッ!またかよ!」

 

はい。これが私の必殺技の《ラウンドターン》です。

取った相手からの追撃は空中にいるので気にしなくて問題なし。使いやすいよ。

ーーーなんか、弱いという声が聞こえたのは気のせいだ。そうだ、気のせいだ。クイックドロウのパクリとも聞こえたけど絶対気のせいだとも。

 

「さて、どうしよっか・・・」

 

目金くんは使えない。自分の体力も半分切ってる。対して相手はまだまだピンピンの元気はつらつオロナミンC。

 

「よくもまぁ、こんな惨状を目の当たりにして戦えるな」

 

相手キャプテン、鬼道くんに話しかけられる。

 

「試合、まだ終わってないから」

「それでも、勝負はついている。諦めたらどうなんだ?」

 

確かに。彼の言っていることは正しい。

この状況から逆転など、不可能に近い。

しかし、

 

 

一回だけ。

 

 

一回だけ、攻め上がる。それで、一矢報いれれば上々。

 

 

フィールド外の、木の影に隠れている人物を目線で追う。

オレンジ色のフードを被った・・・間違いない、修也くんだ。

彼が見ている。

ならば、完成したあの技を披露しないわけにはいくまい。

 

「鬼道くん、私ねーーー」

 

(ん?わたし・・・?)

 

 

「本職、FWなんだ。だからーーー1点、決めるよ」

 

 

 

********************

 

 

 

言った瞬間、鬼道くんを抜き去る。

完全に不意をついた状態だったのか、元から抜かせるつもりだったのかわからないが、まぁ突破には成功できた。

 

「鬼道さんが!?」

「させねぇよ!」

 

目の前に相手選手が立ちはだかる。

が、これを股抜きでかわす。

 

「なっ!?」

(えーっと、左からと正面からか)

 

フィールド中盤、二人掛かりで止めに入られる。

それを・・・、

 

「ふっ!」

 

急加速。

 

「はぁ!?」

 

まるで所々に瞬間移動しているようにも見えるだろう。ジグザグに躱し、相手が気づく頃には、私はボールを持って突破している。

 

「《スプリントワープ》」

 

そろそろ、息が辛い。

当たり前だ。ほぼゴール前から走り出したし、必殺技も使って、スタミナも切れる寸前だ。

でも、一点だけ。一点だけでいいからっ!

DFがボールを取りにかかる。

フェイント、急な加速を駆使してーーーゴール前に躍り出た。

 

「ーーー行くよ」

 

想像するのは炎の蹴り。

行うのはその反転。

 

「ふっ・・・!」

 

相棒だった、憧れの彼を思いながら飛ぶ。

回転は彼のシュートとは逆。

纏う炎も赤ではなく、青。

ボールに触れる部分も、足の甲ではなく踵。

 

ファイアトルネードの、対となるシュート。

 

 

『バック・・・トルネード!!』

 

 

青い螺旋はゴールネットにーーー突き刺さった。

 

 

 




《オリジナル必殺技》
ラウンドターン (ブロック) 真系

威力:ワンダートラップと同程度

相手がドリブルしてきたのと合わせて急接近、利き足でボールを蹴り上げてそのままバク転し、空中に逃げて後退するブロック技。
中学に上がって体の作りが丈夫になり、優梨がようやく習得したブロック技です。


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第3話 帰還

今日はこれで最後にします。




 

『私も修也くんみたいな必殺シュート欲しいな・・・』

 

『俺くらいのを覚えるとなると、相当な練習量が必要だぞ?』

 

『うん。だから、やる。習得する。修也くんみたいなシュート!』

 

『ーーーあぁ。楽しみにしてる』

 

『だからね・・・約束!』

 

『約束?』

 

『私が、この必殺シュートを完成させたら・・・』

 

 

 

『・・・そ、その時は、合体技を一緒にやろう!なんて・・・』

 

 

 

********************

 

 

 

「ーーー優梨」

 

フードを取り、今しがたシュートを放ちゴールを決めたプレイヤーに目を向ける。

 

「完成・・・していたんだな」

 

ふと、頰を何かが伝うのを感じて手で拭き取る。

涙。

 

「ーーーすまない」

 

彼の口からは自然と、

 

「すまない・・・!優梨・・・!」

 

彼女への謝罪の言葉が、漏れ出ていた。

 

 

 

********************

 

 

 

『ゴオオオオオォォォォォォルッッッッッッッ!!!!雷門中の高良!遂に!遂に帝国学園から!1点をもぎとりましたああああああ!!!』

 

角間くんの実況の声が響き渡り、彼の興奮がギャラリーに伝わり、やがて大きな歓声となった。

うるさい・・・でも、嫌いじゃないな。

あの日以来か。こんな大歓声をもらったのは。

 

「高良ああああああああ!!!」

「ん?のわっ!?」

「すっげえ!今の!必殺シュートか!?まさか隠してたなんて思わなかったぜ!」

 

鼻息を荒くした円堂くんが、ガクガクと両肩を揺らす。

酔う酔う。

 

「う、うん。たくさん練習して、つい最近できたんだ」

「くうううううっっ!いいなぁ!俺も必殺技欲しい!」

 

昔の私を見ているようで、なんだか懐かしいな。

と、ここでホイッスルが鳴る。

前半終了ーーーやっとですか。

 

「ほ、ほら。ベンチに一旦戻ろ?」

「ああ!」

 

1点は返せた。

シュートも見せれた。

あとは・・・無様に負けるのみだ。

 

 

 

********************

 

 

 

後半になって数分で、相手は私を複数で痛めつけてきた。

怖いわ!なにが好きでいじめまがいのものを受けなくちゃならんのだ!

 

「ジャッジスルー!」

「がふっ!?」

 

また、腹にボールをのせた蹴りが炸裂。

ジャッジスルーって、審判がそのままプレーを流すっていう意味だけど、見え見えだよ?

しんぱーん!仕事してー!

・・・いや、帝国から来た審判だから、それは無理な話か。

でもまぁ、被害が私だけにいってるのは不幸中の幸いかな。もうチームメイトが傷つくのは見たくないし。

ーーーこりゃ、今後は体力アップを主軸とした練習が必要かなぁ。

と、現実逃避をしながら私は吹っ飛ばされ続けた。

 

「勝敗は喫した。前半のお前のプレーには驚いたが、未来は変わらん」

 

膝をつき、ボロボロの私の前で鬼道が言う。

 

「も、もう嫌だああああ!!こんなの、もうごめんだああああ!!!」

 

コート隅で、目金くんがユニフォームを脱ぎ捨ててピッチを去っていく。

あんた、何もしてなかったでしょうが。

 

「愚かだな。何故そうまでして争う?」

「ーーーーーー約束が、あるからだよ」

 

足は行使のし過ぎで感覚がなく、スタミナもスカスカだ。

だが、私は立ち上がって、彼と向き合う。

 

「二年前にした、大切な約束が!」

「ーーー」

「へっ!何が約束だ・・・よっ!!」

 

鬼道くんの横にいた選手。寺門くんだったっけ?が、ボールを私の頭に直撃させる。

一瞬頭の中がチカチカして・・・衝撃で、帽子が取れた。

束ね、隠していた肩にかけて伸びる長い髪が、露わになる。

 

「・・・!おま、え・・・」

「・・・」

 

鬼道くんが目を見開き、呆気にとられて私を見る。

その視線に耐え切れず、顔を伏せる。

 

「高良、おまえ・・・」

 

円堂くんも、他のチームメイトも、鬼道と同様の表情だ。

あぁ、バレちゃったか・・・。

 

「女が、この試合に紛れ込んでたとはな」

「ーーーそれだと、さっきは女1人に掻き回されたってことになるね」

「こいつっ!」

 

ジャッジスルーが再び、私の腹を捉える。

元いたところから2メートル離れた場所まで転げまわり・・・ゴールを守る円堂くん、木陰にいる修也くんの、2人と目があった。

 

「たは、はは・・・ごめんね、円堂くん。騙してて・・・女だってわかったら、みんな真面目に構ってくれないと、思って・・・」

「そ、そんなこと絶対にしない!サッカーする中で、性別なんて関係ない!!」

 

・・・すごい人だ。

そういうのを、平然と言えるのは。

 

「あとは、俺に任せろ。ここからは一点も入れさせやしない!試合は・・・まだまだ終わってねーんだ!!」

 

バンッとキーパーグローブで自身の頬を叩いた円堂は、帝国学園と真正面から向き合う。

 

「なら、その宣言・・・すぐに覆してやるよ!」

「がっ!」

 

帝国選手から放たれたシュートが、円堂くんの顔面に直撃。

だが、ネット内に入れさせまいと、なんとか枠外に軌道を反らせて見せた。

 

「来い!俺が・・・全部止めてやる!!」

 

彼が、円堂くんがそう言った瞬間だった。

 

 

「選手交代だ」

 

 

フィールドの誰のものでもない声が、確かに聞こえた。

ある者は目を見開き、ある者は予定通りだと言うように笑みを浮かべ・・・ある者は、嬉しさのあまり、涙を流していた。

 

背中に携えるのはエースの10番。

 

逆立つ髪は焔のように。

 

 

 

炎のエースストライカー、豪炎寺修也は・・・サッカーに帰ってきた。

 

 

 

********************

 

 

 

フィールドにいる私を支え、立ち上げてくれる彼。

 

「優梨、大丈夫か?」

「・・・大丈夫じゃ、ないよ」

 

嗚咽を混じらせ、滲んだ目で彼を・・・豪炎寺修也を見る。

 

「おそ、いんだよ・・・くるの」

「ーーーああ。すまない」

 

静かに、彼は謝った。

 

『こ、この男は・・・去年のフットボールフロンティア全国大会において、驚異的なシュートで名を馳せた少年・・・炎のエースストライカー!豪炎寺修也だああああああ!!!』

 

角間くんの実況に、会場が湧くに湧く。修也くんは審判に向けて言葉を紡ぐ。

 

「審判、選手交代だ。目金に変わって、俺が入る」

「ま、待ちたまえ!君は正式な部員では・・・!」

 

ギャラリーから割って出てきたのは、雷門サッカー部顧問の冬海先生。

焦った声で反論するが・・・、

 

「構いませんよ。続けよう」

 

鬼道くんがそれを制止させ、試合続行を投げかけた。

 

「ご、豪炎寺・・・」

 

ゴールから、円堂くんが来た。

動揺したように、修也くんを見ている。

 

「い、いいのか?」

「今回だけ・・・・・・いや、今日からよろしく頼む」

 

少しの間を開けて、確かに、修也くんは入部を宣言した。

 

「っっっっっ!!ああ!」

 

感無量、と顔に書いてある。

ホント、わかりやすくて、良いキャプテンだ。

 

「優梨。まだ、行けるか?」

「うん。やれる。やれるよ、修也くん!」

 

それを聞いて、彼は少しだが・・・確かに微笑んだ。

 

 

 

********************

 

 

 

帝国学園からのコーナーキックで試合は再開した。

雷門中の面々はなんとか立ち上がり、抵抗を見せるが・・・ボールは取れない。

 

「お前たち!デスゾーン開始だ!」

『おう!!』

 

天才ゲームメーカーの指示のもと、帝国選手3人が動く。

空中で息の合った回転を見せ・・・、中央のボールを一斉に蹴り込んだ。

 

『デス・・・ゾーンッッッ!!』

 

禍々しいオーラを纏い、強力なシュートが円堂に迫る。

それを見て、私と修也くんは・・・、

 

 

振り返らずに、敵陣地へ走り出した。

 

 

((絶対に、円堂(くん)なら・・・!))

 

その思いが通じたのか、はたまた円堂守が奇跡的に力を発したのかわからない。

が・・・、

 

 

そこに、黄金に光る巨大な手が君臨していた。

 

 

『ゴッドハンド!!!』

 

片手から繰り出される必殺のキーパー技は・・・見事に、相手シュートの進撃を止めて見せた。

 

「頼むぞ!!2人ともおおおおおおおお!!」

 

オーバースローで投げられたボールを、修也くんがトラップで受ける。

彼はしばらくサッカーと離れていたはずだが、ブランクを感じさせないほどに、動きが洗練されていた。

 

「行かせるか!!」

 

敵選手が立ち上がる。

だが、その時にはすでにボールは彼の足元には存在していない。

私がキープしている。

すごく自然に、後ろへパスされたのを受け取ったのだ。

相手を躱し、残すはボールを相手ゴールに入れるのみ。

 

「修也くん!」

 

オフサイド直前になる手前で私からボールを受け、彼は跳躍した。

 

 

 

********************

 

 

 

今、自分が行うのは炎の蹴り。

幾度となく打ってきた、己の必殺。

 

「おおっ・・・!」

 

相棒だった、いつでもそばで支えてくれていた、彼女を思いながら飛ぶ。

回転は彼女のシュートとは逆。

纏う炎も青ではなく、赤。

ボールに触れる部分も、踵ではなく足の甲。

 

バックトルネードの対となり、その元となったシュート。

 

 

『ファイア・・・トルネード!!』

 

 

 

********************

 

 

 

ーーーあぁ・・・やっぱりだ。

炎を帯びたシュートが炸裂し、相手ゴールを目指して突き進んでいく。

あれを止めるなんて、とても想像がつかない。

思えば、凄く傲慢な考えだ。

だって、相手は全国でもトップクラスのキーパーであろう帝国学園の選手。

対してこちらは、サッカーをやらないと誓っていた元エースストライカー。

ボールを触る時間を、彼は入れていなかったはずだ。

そういう、大事なことに関しては決して曲げたりしないのを、知っているから。

ーーーだけど、それでも、

 

「君が負けるところなんて・・・想像つかないんだよ」

 

 

期待通り、炎の螺旋はゴールを決めて見せた。

 

 

 

********************

 

 

 

「夕香、優梨がきてくれたぞ」

 

稲妻総合病院にて、私は修也くんの妹である夕香ちゃんの見舞いに来ていた。

 

「久しぶり。夕香ちゃん」

 

言いながら花瓶に持参した花を入れる。

果物とかも持ってきた方がいいのではと思ったが、修也くんが『今日目覚めることは、まずないよ』と言ってきたのでやめた。その表情は、悲しみが滲み出ていたが。

 

「ーーーそういえば、俺が転入してきた以来か」

「・・・うん。あの時、嬉しかったよ。修也くんが雷門に来てくれて、本当に・・・嬉しかった」

「そうか」

 

ーーー会話が続かない。

もっと、気の利いた言葉があるでしょ、自分!

 

「え、えーっと・・・そう!昨日の試合!勝ててよかったね!」

「・・・結果的に、だ。ちゃんと勝ったわけじゃない」

 

昨日の試合、修也くんがシュートを決めて2-2となった後、帝国学園は試合放棄を申し出た。

理由はわからない。

だが、試合を放棄したという事実から、勝利は雷門中のものとなった。

 

「フットボールフロンティアに出場すれば、いやでも当たる相手だ」

「え?なに?やる気満々だね」

「・・・言うな」

 

私が茶化すと、彼は照れたようにそっぽを向いた。

 

「ーーーお前が、点を入れた時に思ったんだ」

「ん?」

「今一番、誰が、俺のサッカーを望んでいるのか。・・・それで頭に浮かんだのが・・・夕香と、優梨だった」

 

修也くんは改めて私と向き合い、宣言した。

 

「俺は、お前と・・・お前たちと、サッカーを続ける。だから・・・」

 

 

「あの日約束した合体必殺技、絶対に完成させるぞ」

 

 

ーーーあ。

子供の頃の、約束をした日を思い出す。

その時の私の心中が唐突に頭によぎり、冷や汗が大量に出る。

 

「う、うん!そうだね!」

「ああ!」

 

言えない。絶対に言えない。

 

 

 

(告白しようと思って出た言葉があれだなんて・・・絶対に言えない・・・っ!)

 

 

 

 




2-2。

・・・。
・・・。
まぁ、主人公頑張ったし、いっすよね。

次回更新は・・・ボチボチってことで!


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第4話 会長におねだり

筆が進んだ。やったぜ。
今回は少し、優梨の過去を一つと部活動について踏み込んだ話です。
前半シリアスすぎたかな・・・。


 

 

『女子が男子に混ざんなよ』

 

うるさい。

 

『お、女子いるから今日は楽できるな』

 

偏見で決めんな。

 

『フィジカルよっわ』

 

ボール奪うついでに言うな。

 

『下手クソ』

 

・・・君より練習はしてるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

してるんだよ。

 

 

 

******************

 

 

 

〜3年前〜

 

 

「優梨、もう帰るよー」

 

遠くで、お母さんが私を呼んでいる。

 

「まだやってくから、先帰ってて!」

 

「そー?気をつけて帰ってきなさいよ!」

 

「はーい!」

 

でも、まだ帰らない。帰ってはいかない。

今日も試合で負けた。

嘘。チームは勝って、私一人が打ちのめされた。

最近ずっとそうだ。5年生になってから、どんどん男子が大きくなっていく。力も強くなって、私のマークはすぐに外されてしまう。

だからその分、技術を磨かなくちゃいけない。

 

「また失敗!もう一回!」

 

壁に向かって強く打ち、跳ね返ってきたボールを足のサイドを使ってトラップ。これだけではダメだ。

走りながら足の甲で、踵で、胸で。

壁に打つときにも、ちゃんと狙ったコースを打てるように。

何千、何万と繰り返してきた。

 

「それでも、勝てないんだよなぁ・・・」

 

自分が練習しているように、相手も練習している。

しかも、練習と実戦は違う。トラップを阻む相手がいるし、シュートを阻む相手もいる。

それを全て、フィジカルで完膚なきまでに叩きのめされる。

私の身長は140cm。同じ小学校の女子達よりも頭半個分小柄で、クラブでは最低身長。

 

「ぎゃふっ」

 

ボールの着地点を見間違え、顔面にぶつかった衝撃で地面に倒れる。

痛い。

でも、痛いのは顔よりも、心が。

 

「楽しい試合、やりたいな」

 

ポツリと、そんな言葉が漏れた。

 

 

 

 

 

「あんた、今日試合出てた木戸川クラブのFW?」

 

小学生にしては低い声が、私一人しかいないグランドに響く。

誰だと声のあった方へ向いてみれば、そこにいたのは私と同年代くらいの男子。

 

「そう、だけど」

 

「俺、明日からクラブに入るんだけど」

 

「うん」

 

「・・・なんで泣いてんだよ」

 

「え?」

 

頰に触れてみると、確かに、自分の目から流れた生温い涙が指を湿らせた。

 

「それだけキツイなら、女子だけのとこに行けばいい。試合見てたけど、あんたなら良い線行くぞ?」

 

「・・・」

 

「でもまぁ「それじゃ意味ない」・・・は?」

 

「女子となんてつまんない。男子とやって、勝つのが・・・私のポリシー」

 

ビッと、親指で自分を指差す私を見て、彼は・・・、

 

「ふっ」

 

盛大に吹いた。

 

「な、なにさ!」

 

「いや、はは!そうかそうか!女子が男子にねえ!」

 

「無理じゃないし!絶対に・・・!」

 

「誰も無理とは言ってねえよ」

 

周囲の温度が、一気に下がった気がした。

本当に、目の前にいる少年は先程と同じ人なのか?そう思えるくらい、雰囲気が一変している。

 

「今日のあんたのプレー見てて思った。タッチは綺麗だし、ドリブルにもパスにもキレがある。シュートも、ブロックきつくなかったら多分入ってた」

 

「・・・っ」

 

「けど、個人技で勝てるほどサッカーは甘くない。チームプレイが基本なんだから、もっと周りに頼ってもいいんだ」

 

「・・・でも、そんな頼れる人なんて」

 

「俺がなってやる」

 

「・・・え?」

 

「俺が、あんたを上に連れていってやる。一緒にやるんだ。散々言ってきた奴らに、舐めてかかってくる奴らに、これからは二人で戦う」

 

改めて、彼を見た。

逆立った髪は、燃え上がる焔の如く。

まだ自分と同い年でありながら、必ず実行するというオーラが、にじみ出ている。

そして、彼の切れ長な眼は真っ直ぐに、私を捉えていた。

 

「・・・小学生が、何格好つけてんの」

 

「あんたも小学生だろ」

 

「その『あんた』っていうのやめて。ーーー私、高良 優梨。君は?」

 

「修也。豪炎寺 修也」

 

 

 

*****************

 

 

 

「起きなさい」

 

ベシッ

 

「ふがっ?」

 

昔の思い出に入り浸っていたのに、だれだい邪魔するのは。

あ、お母さんだった。

 

「大丈夫だよ・・・一人で帰れるから」

 

「何の話よ。そして、何時だと思ってんの」

 

「ふぇ?」

 

傍に置いてある時計を見ると、指している時刻は7時30分。

ギリギリ遅刻するかしないかの時間帯だ。

 

「な、なんで起こしてくれなかったの!?」

 

「だぁって、寝てる間ずーっと『修也くん修也くん』言ってたから邪魔しちゃいけないなーと思って」

 

「尚更起こしてくれよ!私に生き恥を晒さないでくれよ!」

 

秒でパジャマを脱いで制服を着込み、学生鞄とエナメルバッグを担ぐ。

 

「朝ごはんは?」

 

「ごめん無理!」

 

「と、言うと思って玄関に菓子パン置いてあります」

 

「流石お母様愛してる!」

 

「あ、変装セットはいいのー?」

 

「うん!もう必要なくなったー!」

 

外に出ると、それはもう爽快な青空だった。

 

 

 

******************

 

 

 

「部費の申請?」

 

朝のHRが終わってからの10分休憩の時、円堂くんが私と修也くんにその提案を告げた。

 

「ああ。帝国戦限りっていうやつらがこれからもやってくれるってさ!だから人数も揃ったし、練習道具も色々買いたいなと思って」

 

「ドリンクの素とか、包帯、テーピング・・・消耗品なんかも、これから練習量も増えるなら買っておかないとな」

 

「良い案だと思うよ。思うんだけど、さ・・・」

 

「ん?」

 

「あの生徒会長、どう説得するの?」

 

雷門中学に君臨する女王とも呼ばれている、理事長の娘『雷門 夏未』。

2年生ながら生徒会長を担当しているだけでなく、なんと理事長がいない間の代理も務めているという、まさに女王と称するに相応しい存在だ。

実際、一回話したことあるけどすごくお嬢様然としていたよ。

 

「そんなにすごいのか、生徒会長」

 

「修也くんは知らないんだっけ。思えば、帝国学園に勝たなきゃ廃部を提示したのもあの人でね・・・」

 

無理だ、勝てるわけがない!と心の中にいる王子も言っていた。実際、舐めプと修也くんいなかったら負けてただろうし。

 

「帝国には勝った!なら、少しのわがままくらい聞いてくれるんじゃないか?」

 

「あれは相手が棄権したからでしょうに・・・」

 

「まぁ、やるだけやってみよう。得点した俺と優梨が行けば、可能性も上がるだろうしな」

 

「そうそう!当たって砕けろだ!」

 

「「砕けちゃだめだろうに」」

 

 

 

******************

 

 

 

「ダメです」

 

昼休みになって即生徒会長室に突貫した私たち三人は、円堂くんが頭を下げて頼み込んで早々撃ち落とされた。

 

「ダメですし、秒ですか」

 

「ダメですし、秒です。今まで何の活動も起こしてこなかったサッカー部に、部費を提供なんてできると思って?」

 

まったくのド正論に言葉が見つかりません。

 

「け、けど、前の試合には勝ったんだからさぁ」

 

「貴方、あれを勝ったと捉えるつもり?」

 

「・・・嘘です、すみません」

 

「え、円堂が言いくるめられた!?」

 

毎度毎度押し押しの勧誘を受けていた修也くんは、消沈する円堂くんを見て驚きを隠せないでいる。

 

「あれはどう見ても貴方達の負けです。その気になれば、高良さんを痛めつけるのを置いといて二桁点取ることなんて、帝国なら可能だったでしょう」

 

う、思い出しただけでも傷が痛い・・・。結構トラウマモノだからね、あれ。

 

「なので、サッカー部に部費は提供致しません」

 

「・・・?だが、廃部とは言わないんだな」

 

「ええ。近いうちにある練習試合でもし、万が一、億の一つに勝てたのであれば・・・考えてあげてもいいわ」

 

練習試合、夏未さんは今、そう言ったのだろうか。

 

「試合!?できるのか!?」

 

「ええ。一週間後、尾刈斗中学との試合を、本学園で行います。勿論、負ければ廃部。勝てれば・・・そうね。部費のみならず、今年のフットボールフロンティア出場を認めてあげます」

 

「尾刈斗、か。FFの常連だ」

 

「結構攻撃層厚いところだね」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。勝てば、出れるのか?俺たちが、フットボールフロンティアに?」

 

動揺と混乱で呆気にとられている円堂くんに、夏未さんは綺麗な笑みを浮かべて、言った。

 

「ええ。約束するわ」

 

その時の笑みを見て、私は正直身震いした。

 

 

 

******************

 

 

 

「なんとしてでも勝ぁつ!」

 

会長室を出た廊下にて、堂々と言う円堂くん。

反面、私と修也くんの内心は暗かった。

 

「今のままじゃ、多分負けるよね」

 

「ああ。帝国ほどではないにしろ、向こうも強豪だ。地区予選の決勝までいった事例もあると聞く」

 

こちらの戦力は、最近必殺技を覚えた主将GKに付け焼き刃の練習しかしていない初心者多数、一応私は地元のトレーニングセンター行ったりして体動かしたりはしてるけど、修也くんはエース張れるとはいえブランク大きいだろうし・・・。

 

「どうしよっか」

 

「なにしょげてるんだ二人共!夢にまで見た舞台に、俺たち行けるんだぜ?なら勝つしかないだろ!今のままじゃダメなら強くなれば良い!練習、練習、練習だッ!!」

 

ホント、彼はサッカー選手になるより政治家にでもなった方がいいのでは?

それぐらい人を動かすのに特化している。

まったく、これでは暗くなっていた私が恥ずかしいではないか。

 

「そうだね。一週間後、まともな試合ができるように仕上げて、そして勝とう!」

 

「ああ。俺も、本調子を取り戻せるように努める」

 

「よし!それじゃあ放課後、早速練習だ!!」

 

『おー!!』

 

遂に、始まるのだ。私たちの、全国への挑戦が。

 

 

 

 




円「早速練習するぞー!」

ラグビー部「ダメです」



お気に入りが付いててヤッター!
お一人は名前非公開なのでわかりませんが、どうもありがとうございます。
もう一人のメンマ46号さん、ありが・・・・・・え、メンマ46号さん?どっかで聞いた覚えが・・・。


-なんか色々混ざった伝説-の作者さんじゃねーか!?
え、あ、ちょ、え、あ、あの・・・ありがとうございます。
いつも楽しみにしております。復帰を心待ちにしております。


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第5話 始動!

iPhoneのアプデで少し仕様が変わってしまって打ちづらい・・・。
昨日、日本代表勝ちましたね。格下のモンゴル相手とはいえ6点も!次の試合も期待です。

円『みんな、サッカー見たよなっ!なぁ!?」

豪『並行してバレーも見てたとは・・・』

優『口が裂けても言えない・・・』


「えっと、改めまして。二年の高良 優梨です。ポジションはGK以外なら一応どこでも入れるのは・・みんな知ってるか。女です。よろしくお願いします」

 

「二年の豪炎寺 修也、FW。これからよろしく頼む」

 

本校舎を中央に見て左に行くと、すぐ右手にある物置。

ところどころが錆れ、見た目は薄暗い。

しかし、何を隠そうここが雷門中サッカー部の部室である。

で、修也くんは兎も角、なんで私まで挨拶してるのかっていうと、ご存知の通り私は男子としてこの部に在籍していたのです。なので、私が女子っていうのに驚いてる人もいるから、改めての自己紹介。

 

「別に隠さなくても、気軽に接してたのにな」

 

「そうでヤンス!俺たちにとって、高良さんは頼れる先輩でヤンスよ!」

 

おぉ、ありがとうみんな。私、嬉しくて涙出そうだよ。

 

「でも、練習はちゃんとしようね!」

 

『さーせんっしたああああ!!!』

 

謝ってから、マズイと思ったのか部室を掃除し始める皆。

うむうむ、苦しゅうない。あ、そういえばあのエロ本、誰のだったんだろ。

 

「はいはい、おまえら一旦手を止めろ!今日から、豪炎寺を迎えた新体制でスタートだ。一週間後の尾刈斗戦に備えて、練習していくぞ!」

 

「基本的には体力づくりと基礎練。あと、ちょこちょこ戦術の確認もしていくつもりです」

 

気の利いた木野さんが、事前に練習メニューの書かれたホワイトボードを運んできてくれた。

流石我が部のマネージャー、絶対将来良いお嫁さんになる。絶対だ、うん。

 

《尾刈斗戦に向けて!》

・体力無さ過ぎ体弱過ぎ!体力身体能力強化!

・基礎がなってない!基礎練基礎練!

・バラバラに動き過ぎ!このチームの戦術を頭に入れる!

・飲め、食え。

 

「最後、何か捻れよ」

 

「たはは。生憎と語彙のストックが尽きた」

 

私作、雷門に足りないのはこれだ。

帝国戦、GKの円堂くんと私以外、全員前半でバテてしまった。ラフプレーも原因の一つだけど、やはり練習不足が祟った。

 

「通常のランニングの時、私が笛を吹きます。次に笛を吹くまで全力走して、大体グランド5周の内に10回行います」

 

「キッツ」

 

「大丈夫、言い出しっぺの私もやるから」

 

「サッカーは様々な場所で加速を強いられるスポーツだ。相手やボールを追いかける時は勿論、味方のフォローにいち早く駆けつけるのも必須になってくる」

 

修也くん、丁寧な説明ありがとう。

 

「で、身体能力の向上についてだけど・・・半田くん、おいで」

 

「な、なんだよ」

 

「大丈夫、ちょっとしか痛くしないから」

 

「どちらにせよ痛くするんじゃないか・・・」

 

落ち込みながらも、素直に前に出て来る彼は良いモノ持ってる。

本当にそう思う。

 

「じゃあ今から私に、全力タックルをお願いします」

 

「・・・マジで言ってんの?」

 

仮にも女子の私に対してタックルするのを、半田くんは躊躇した。

だが、ここで引いてもらっては困る。

 

「本気と書いてのマジさ。・・・もしかして、怖い?」

 

少し挑発成分混ぜて言ってみた。

 

「ーーーわかったよ。じゃあいくぜ!」

 

乗っかってくれた。ナイスです半田くん。

狭い部屋の中で十分に助走を取り、私の右肩めがけて自身の左肩をぶつけてきた。

 

「ふんっ」

 

「おごふっ!?」

 

『え“っ』

 

だがしかし、吹っ飛んだのは受けた私ではなく半田くん。あまりの出来事に皆ポカーンと口を開けており、本人に至っては何が起こったかわからないご様子。

 

「女子の私でこれぐらいなんだから、きっとみんなはもっと体幹つくと思うよ」

 

「すっげえ、高良先輩・・・」

 

「いや、でもあれは単純に・・・」

 

「・・・半田が弱い」

 

怒涛のコメントに半田くんが泣き出した。

やめたげてよぉ。

 

「気にすんな半田!絶対に強くなれるって!」

 

「え、円堂ぉ・・・」

 

「半田は円堂に任せて、説明だ」

 

「はいはーい」

 

キャプテン、後処理は頼んだよ。

 

「えっと、瞬発力落ちない程度に筋肉つけるのと、柔軟、体幹トレーニングね。これは家でもできるから、風呂前か上がった後にやって欲しいです」

 

因みに私は小1から続けているので両手がべったり地面に着きます。

 

「次に、技術!」

 

「俺、必殺技覚えたいっス!」

 

「先輩、教えてください!」

 

「その基礎がなってないの。いい?サッカーに関しての技術が無いのに必殺技使えたら、もうそれ神だよ、仏だよ」

 

なぜか一瞬、ゴーグル付けたナイスガイがビーチでサーフィンしてる図が頭をよぎったけど、気にしない。

 

「具体的には、パス、トラップ、ボールのキープ、ドリブル、ブロック、フェイント、キックかな。一週間じゃ一部しか覚えられないだろうから、ポジションによって強化項目を絞ります」

 

尾刈斗戦で勝てばの話だけど、その後は総合的に技術を磨いていけばいい。

しかも、こちらには全国エースという大のお手本がいるのだ。利用しない手はない。

 

「個人個人に合ったプレイスタイルがあるだろうから、あくまでも口だけだ。だが、厳しくいくぞ」

 

「円堂くんは、FW陣からのシュートを兎に角止めてもらうことになるよ。ロングパスは帝国の時綺麗なのできてたから問題ないだろうし」

 

「ああ。任せとけ!」

 

ゴッドハンドを安定させて、且つ端のコースのシュートに飛びついていけるかも重要になってくる。皆も練習するとはいえ、GKに対する負担は通常よりも大きくなる。

彼には、本当の守護神になってもらわねば。

 

「次は戦術だね。戦術と言っても難しいことじゃないの。単純にラインを揃えて、バラバラにならなきゃいいって話。勿論、危なくなった時には飛び出しても構わないし」

 

「うぅ・・・難しいっス」

 

「意思疎通が大事になってくるね、それだと。入って直ぐの僕らだけど、まぁなんとかしてみるよ」

 

壁山くんの弱気な発言を跳ね除けて、マックスくんが前向きなことを言ってくれた。この変ニット帽、やりおる。

 

「ラインを重視すれば、それだけで相手が攻めにくくなったり、自分が担当する選手のマークにつきやすくなるよ」

 

「最後の飲め、食えってのは・・・」

 

「飲め、食え。以上」

 

「やっぱそのまんまかよ」

 

「私たち、まだまだ成長期!それと、栄養は力に変わるから!最低でもご飯は2杯食べること。その分練習で消化できるしっ」

 

いつも5杯食べてるっスと言った壁山くんには、それを維持してねと頼んだ。なんでそんな食えるんですか。

 

「こんなものかな」

 

「なんだか、高良先輩見てたらいける気がしてきた!」

 

「・・・俺、やるよ」

 

「ここで廃部になんて、したくないもんね」

 

皆のやる気が満ちていくのを感じる。

つい最近まで人数も揃わない弱小サッカー部だったのに、えらい成長したものだ。

 

「よし、みんな!気ぃ引き締めていくぞ!!」

 

『おー!!』

 

「そのためにも!」

 

『ん?』

 

「グランド交渉行ってくる!」

 

『練習する大前提じゃねえかあああ!!??』

 

結局、円堂くんはグランドの使用権を勝ち取ることができなかった。

 

 

 

******************

 

 

 

「ちぇー!なんだよラグビー部の奴ら!少しぐらい俺達が使う時間があってもいいじゃないか!」

 

雷門サッカー部の切り替えは早かった。

練習場所をグランドから河川敷にし、現在そこへ走り込みをかねて向かっている。

因みに、木野さんは私の自転車でついてくる形だ。

 

「まぁしょうがないよ!むしろ、学校から河川敷まではランニングに丁度いい距離だし」

 

「笛全力走がなければなあああ!!!」

 

先頭を主将の円堂くんが担当し、後ろについているのは私、修也くん、風丸くん、少し遅れて染岡くん、マックスくん、少林くん。

後は半田くんを筆頭に後ろです。メガネくんはほぼ木野さんと並走してますね、はい。

 

「中々に厳しいな、これ」

 

元陸上部の風丸くんでも、結構効くらしい。

 

「横暴だぁ!経験者という肩書きの乱用だぁ!」

 

「はい、そこ!文句言わない!こっちだって、笛吹くの、疲れるんだから!」

 

「それでも2番手っておまえ化け物か!?そして円堂はなんでそんなに体力ある!?」

 

「GKでも、体力づくりは必須要目だ!だから毎日走ってる!ざっとこれの倍は!」

 

「もっと化け物がいたよ・・・!」

 

「あ、笛鳴らそっかなぁ・・・鳴らしちゃえ!ピッ!」

 

「畜生覚えとけよおおお!!!」

 

半田くんの断末魔をバックに、元々運動神経の高い人たちは先へ進んでいく。

 

「ピッ!・・・キッツい」

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・あいつらが遠ざかった途端だなおい」

 

「しょう、じき、初っ端これは、みんなにとって、キツすぎたと、反省、して、る!」

 

トレセンのドSコーチにいつもやらされてることなのだけれど、距離と回数も伸びてるため難易度が鬼畜化してた。

 

「もうすぐ着くぞー!高良、最後に笛、鳴らしてくれ!競争だあああ!!」

 

「りょうかああピーーーーーーーッ!!!」

 

おらあああやら、だりゃあああやら、うおおおおやら、ピイイイイィィィィィやら、男達の汗と涙が河川敷に響く。

見えてきたのは、地面が土のサッカーグランド。

そこに一番で辿り着いたのは・・・、

 

「や、やった!俺が1位だあああああ!!」

 

デッドヒートを制した、染岡くんだった。

次に円堂くん、風丸くん、修也くん、私と、続々グランドに到着。

 

「だあああ疲れたああああ!!!」

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「ピヒュゥ・・・ピヒュゥ・・・」

 

「おい・・・笛を、口から外せ・・・今笑ったら・・・死ぬ」

 

「ピ?ーーーあ、そうか・・・通りで、息苦しいと・・・」

 

「みんな、ドリンク持ってきてるから飲んでね!少しだけよ!」

 

皆、女神のような振る舞いの木野さんにスポドリ求めて群がっていく。さながらバイオハザードだ。

 

「飲んだらすぐにパス練からするぞー!」

 

((((おまえのどこにそんな体力あるんだよ・・・))))

 

部員のほとんどがそう思っていた。

一人を除いて。

 

(負けねぇ・・・豪炎寺にだけは、絶対に)

 

ふつふつと闘志を燃やし、彼は目前の炎を睨みつける。

 

 

 




はっきり言って超次元じゃなかったら死にそうなトレーニング内容だなぁ。
そして、半田は犠牲になったのでした。負けるな半田!君なら全田よりも目立てるはずだ!


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第6話 苦悩

日本勝ちましたね!(バレー)
フルセットでヒヤヒヤしましたけど、実際手震えてたし。


 

 

尾刈斗中との練習試合まで、あと3日!

 

に、迫ったある日のこと。昼休みになり、食堂で昼食を済ましている時のことだった。

 

「相席、よろしいかしら」

 

ふと、上品でお嬢様気質な声が私にかかったのである。

誰なのかと箸を止めて顔を上げると、なんと、いたのはあの雷門 夏未さんだった。

 

「どうぞ」

 

「ええ、ありがとう」

 

動揺を隠しながら、私は思考を張り巡らせる。

普段は上の会長室で食べてるこの人がなんで、とか、サッカー部の廃部を前倒しにしてきたのか、とか、相席するくせして弁当も何も持ってきてないじゃないか、とか。色々。

因みに我が学校は別棟に食堂、本棟に購買部が設置されており、食堂に来て食券を買い食す者、購買でパンだのおにぎりだのおでんなどを買う者、はたまた家で作った弁当を持ってくる者と様々だ。

私は普段は教室で弁当を食べるんだけど、どうやら玄関に忘れてきたようで小遣いを食券に当てた。

唐揚げ定食、美味し美味し。

 

「・・・よくそれだけ入るのね」

 

「いやぁ、連日の練習がキツいので。それに、食べた分はエネルギーになるし、体力も尽きます」

 

現在ご飯3杯目。食堂のおばちゃんに白い目で見られた。そして半田くんにも白い目で見られた。

 

「まぁ、貴女の胃袋事情の話をしにきたのではないの。最近、サッカー部はどうなのかしら?」

 

どうやらこの人、近況報告を聞きたいらしい。

 

「順調ですよ。みんな素質あるみたいで、予定よりも早く様になってきました」

 

最初の走り込みにもついていけてるし。

 

「そう」

 

「風丸くんなんて、もう必殺技を習得したらしくって。円堂くんのゴッドハンドも安定してだせるようになってきて、修也くんと私の必殺シュートにも磨きがかかってます」

 

「・・・へぇ」

 

「ただ、染岡くんがちょっと・・・?なんですか?」

 

「貴女、他の人は名字で呼ぶのに、豪炎寺くんだけ名前呼びなのね」

 

・・・え。

 

「そ、そりゃ幼馴染みですから!向こうも名前で呼んでくれますし!」

 

「でも、帝国の時といいその名前呼びといい・・・何かあると思うのが普通よね?」

 

「うぅ・・・」

 

実際、私は修也くんのことが好きだ。愛してると言ってもいいね!いや、ふざけてるんじゃなくてね。

三年前のあの日、打ちひしがれていた私を彼が助けてくれたから。

最初は憧れだったけど、段々とその感情が好意なのだと気づいたのは親の仕事の転勤で引っ越す前日。

で、私は言ってやったのさ。

 

『私が、この必殺シュートを完成させたら・・・そ、その時は、合体技を一緒にやろう!なんて・・・』

 

「馬鹿野郎私馬鹿野郎!!」

 

「ひっ!?」

 

なんだよ、何なんだよその告白声明は!?聞いたことないよ!小学校の頃の私はアホか?アホなのか?黒歴史確定だよ。もし仮に付き合えたとしても、一生いじられるやつだよ!

 

「な、なんで急に馬鹿?」

 

「あ、す、すみません!気にしないでください!病気みたいなものなので・・・」

 

「・・・恋の?」

 

「違います」

 

「ふふっ、そう?」

 

この人には、一生敵う気がしない・・・。

 

「で、高良さんの恋愛話はさておき」

 

「ち、違いますからねっ!別にそういうことじゃ、ないんですからねっ!」

 

「染岡くんが、どうしたの?」

 

「あ、そっちですか」

 

なんだよぉ、これじゃあテンパってた私が馬鹿みたいじゃないかよぉ・・・。

 

「最近、修也くんを目の敵にしてることが多くって。向上心がある、と言えばそうなんですけども」

 

「彼、元々FWだったじゃない?それで少し焦ってるのよ。ファイアトルネードを使える豪炎寺くんがいて、バックトルネードを使える高良さんがいて。置いていかれた感が否めないのよ、きっと」

 

普段から真面目に練習しておけば、そうなることもなかったでしょうに、と小声で言ってから夏未さんは席を立った。

 

「ありがとう、とても有意義な時間だったわ」

 

「いえ、こちらこそ」

 

「ではこれにて。二つの意味で、頑張ってね」

 

「二つ、とは?」

 

「部活と、青春よ」

 

本当、この人に勝てる気がしない。

 

 

 

******************

 

 

 

「今日からマネージャーとして入部させて頂きます!音無春奈です!」

 

男子だらけのサッカー部に、花が増えた。これで、私を含めて3つだね。うん。ーーーそこ、誰が彼岸花だ。

 

「新聞部と兼部で、ですけど!私、帝国の試合見てて皆さんのプレーに感動しちゃって・・・相手の情報とか、弱点とか、仕入れるのは私に任せてください!」

 

勿論、マネージャーとしての仕事にも励みますよと力瘤を作る彼女を見て、

 

「名字とのギャップが・・・」

 

「音無て」

 

「元気があるのはいいことだ!俺としては、尚更歓迎したいぜ!」

 

キャプテン、あんたは絶対に大物になるね。総理とか。

 

「練習を始める前に、音無が仕入れた尾刈斗中の情報を見たいと思う。有り難く拝見するように!」

 

『へーい』

 

机の上にある、音無さんが持ち込んだパソコンを起動。ファイルを開き、一本の動画が流れ始めた。

 

「これ、尾刈斗と他校の練習試合?」

 

「はい。対戦した学校に知り合いがいて、譲ってもらったんです」

 

コミュニティ広いんだ。

 

「尾刈斗は、攻撃陣が優秀なチームです。基本は前線にボールを回して、中盤は省略。三人ほどで攻める型ですね。守備面もマークはしっかりしてるらしくて」

 

「伊達に強豪じゃないな」

 

「でも、戦ってる学校はちゃんと対応できてるみたいだね、ほら」

 

中盤を省略しているのは、他チームよりそこだけ層が薄いという意味を持つ。

ボールを奪ってしまえば、中盤でボールをキープしつつ、堅実に攻めていけばいい。

 

「あ、1点決まった」

 

「尾刈斗中、そこまで大したことないんでヤンスかね」

 

「いえ・・・問題なのは試合終了間際でして」

 

問題のシーンまで早送り。すると、どうにも奇妙な光景が広がっていた。

相手選手が、硬直したかにようにその場から動かないでいるのだ。

 

「なんで、動かないんだ?」

 

「動けないんです。相手のキャプテンに話を聞いて見たんですけど、『体がいうことを効かなくなった』と」

 

「んだよソレ」

 

「『呪い』、とか」

 

音無さんが出した単語に、皆が嫌な顔をする。

私と修也くん、染岡くんはそこまで。だって、信じられないし。

 

「ネタ動画とかじゃなくて?」

 

「最初は私もそう思ったんですけど・・・」

 

まぁ、他校を交えてこんな規模のは撮れないよね。

 

「呪いなんて、どう戦えばいいんスか?」

 

「タネが分からないんじゃ、対策のしようが・・・」

 

「みんな、なに弱気になってるんだ!こっちだって頑張って練習して、強くなってる。力が通じないわけがない!相手が呪いなら、俺たちは気合で勝負すればいい!」

 

「だね。見たところ、ウチと向こうの相性はいいと思うよ。パスを繋げて、中盤大事にするのが私たちのサッカーな訳だし」

 

「必ず決めてみせる」

 

今更怖がってなどいられない。

呪いを恐れて無様を晒すより、最後まで足掻いた方が良いに決まってる。

 

「よし、河川敷に行って、パスやドリブルを重点的にやるぞ!」

 

『おー!!』

 

 

 

******************

 

 

 

それは、練習を終えてすぐのこと。

 

「染岡くん」

 

「あ?・・・んだよ、高良か」

 

ハードな特訓が終わり、円堂くんを初めもう皆ヘロヘロ。彼を筆頭に揃って帰ったにも関わらず、染岡くんだけ一人で練習していた。

無人のゴール目掛けて、ひたすらに、納得のいくまでシュートを打ち続けていた。

 

「あんまり無理すると、足に障るよ」

 

「・・・いや、今まで何もしてこなかったんだ。これぐらいの無理が丁度いい」

 

言って、ボールを蹴った。

ど真ん中を狙ったのかと思ったが、途中でコースが変化。ゴールの隅に見事突き刺さる。

 

「すっご・・・」

 

フリーキックなら、相手届かないんじゃないか?

 

「止まってるボールを蹴っただけだ。・・・悪いな」

 

「え、何が?」

 

「俺、最近ずっとみんなの足引っ張ってる。ミニゲームの時、いつもプレイが荒っぽくなって、突き飛ばして・・・」

 

修也くんが入部して、焦ったのだろう。

自分の立ち位置が奪われるーーーいや、違う。自分も、彼のようにならなければと。

 

「帝国戦の時、あいつの・・・豪炎寺のシュートを見て、多分嫉妬してるんだと思う。羨ましいんだ」

 

皆に頼られ、期待に応え、絶対の存在になりたい。

ポツポツと本心を呟く染岡くんを見て、私は胸が熱くなった。

 

「あいつみたいになれたら、俺もファイアトルネードを打てたなら。あそこにいるのが、あいつじゃなくて俺だったらって」

 

「別に、修也くんになる必要なんて無いよ。私は、染岡くんらしいプレイが見たいな」

 

豪快で荒々しい、敵を無理矢理の突破で抜き去り、砲丸のようなシュートを打つ、そんな彼を見てみたい。

 

「第一、プレイスタイルが合ってないしね」

 

「・・・そうだな」

 

苦笑いを浮かべる染岡くんの顔は、先ほどよりもまっすぐに、なにかを見据えていた。

 

「俺、実はもう少しで完成しそうな技があるんだ。ーーー俺だけの、必殺技」

 

「なら、試合までには必ず完成させなくちゃね」

 

「ああ」

 

「あれ?二人ともまだ残ってたのか?」

 

後方から声がして、振り向くとそこには円堂くんが。

手に片っぽだけのグローブを持っているあたり、忘れて取りに来たのだろう。

 

「おう。どうだ円堂、俺のシュート、受けてくれねーか?」

 

「おお!望むところだぜ!高良も来いよ!」

 

「うん!」

 

さっきはあれだけ草臥れてたのに、どこから湧いてくるんだその元気は。

口では言わない。心だけに留めておく。だって、今は三人でサッカー、したいから。

 

 

 




サクサクラさん、緋炉さん、クロスaroさん、細野空さん、グロウさん、お気に入り登録ありがとうございます。豆化天然水さんも、ありが・・・ちょっと待って。
〜頂点を目指して〜の方でしたか・・・。ありがとうございます。

それでは、台風に御注意を・・・。間違っても外でHOT LIMITやらないでね!


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第7話 弄らないで!(羞恥)

ラグビー日本代表、決勝トーナメント進出おめでとう!!
男子バレーも5連勝おめでとう!!
いやー白熱でしたね。あ、皆さん台風大丈夫でしたか?自分は今静岡にいるので直撃コースでしたが、どうにか無事でいます。冠水もしなかったしね!
今回、前半部分にオリジナル展開を入れています。先に言っておくと、ごめんね。だが私は謝らない!(矛盾)


 

「で、最近豪炎寺とはどんな感じですか?」

 

「ぶふぉっ!?」

 

尾刈斗戦前日の夕方。

今日は明日が試合ということもあり早めに部活を終えた私は、やはりまだ消化不良。なので、電車でとある中学へ遊びに来ていた。

その学校というのは、かつて修也くんが在籍していた木戸川清修中学校。

全国大会の常連校で、帝国と毎回覇権を争う文字通りの強豪だ。

 

「もういくとこまでいったんじゃね?みたいな」

 

「クラブでも二人、めっちゃ仲良かったし」

 

「い、いやいやいやいや!べべべ別にそういう関係には至ってないよ!」

 

そこで私は、小学校時代クラブの同期だった3兄弟から質問責めを喰らっていた。

巷で有名な、武方三兄弟。勝くん、友くん、努くんだ。

 

「動揺しすぎですし」

 

「あれだ。俺の推測からするに、告白はできたもののそれが捉え方によっては違う意味に聞こえてしまう代物で、というかそういう捉え方しかできない告白声明だった」

 

「「ふむふむ。クソ雑魚な語彙力で放った精いっぱいの『何か』だったと」」

 

「で、結局訂正もやり直しをすることも出来ずに一日一日を過ごし、限界を悟った高良さんは俺たちを訪ねに来た、みたいな?」

 

「なるほど」

 

「そういうことか」

 

「勝手に納得しないで!く、くそぉ・・・!最後以外合ってるのが腹立つんだよなぁ・・・」

 

クラブ時代は可愛い奴らだったのに、何を間違ってこんな捻くれ者集団になってしまったのだろうか。

 

「まぁまぁ、意地を張らずに」

 

「私たちに相談してみてください」

 

「みたいな?」

 

「無駄に高度なコンビネーション使いやがってぇ・・・。そもそも、今は明日ある練習試合に向けてそれどころじゃないの。本気を出す時じゃないの!」

 

「ビビリだ。みたいな?」

 

「ビビリですね。間違いなく」

 

「尻込みしてちゃ何も変わらないって」

 

ガリッ、ガリッと私のライフポイントを確実に削っていく三人。やめて!優梨のライフはもうゼロよ!

 

「というか、そろそろ君たちも彼女を作ったらいいじゃん。もう良い年した中学二年生でしょ?」

 

「あ、話変えたこの人」

 

「俺たちはいいんだよ。なんたって」

 

「高良さんと豪炎寺の仲を見守る会ですから」

 

「誰の許可でそんな会が発足してるのさ!?」

 

ほんと、いい迷惑だよ!

 

「去年、豪炎寺が決勝に来なくて。あいつがいれば俺たちは勝てた、そうやってずっと責任を押し付けてた」

 

「そんな私たちに、彼が来れなかった理由を伝えてくれたのは貴女じゃないですか」

 

「それでいろいろなことに気づかされた。今まであの人に頼りきりだったことも、自分たちができるのは何なのかを」

 

「だから、俺たちを変えてくれた二人には幸せになってもらいたいんだよ。みたいな?」

 

「いや最後、話跳躍しすぎっ!?ーーーわかった!もう帰る!家帰る!」

 

そう言って、私は借りていたゼッケンを投げ捨て・・・はせずにキチンと畳んでから立ち上がった。

 

「あ、腰抜けが逃げるぞー。みたいな?」

 

「そんなんだから婚期を逃す女性が増えるんですよー」

 

「結婚式、俺たち呼んでねー」

 

後ろからの罵詈雑言を完全にシャットアウト。

私はプンスカしながら木戸川を後にした。

 

 

 

******************

 

 

 

試合当日。

 

午前と午後は普通に授業があり、試合は放課後になってからです。

 

「あー早く試合してー」

 

昼休み、教室で私、円堂くん、修也くんで机を付けながら弁当を食べている。美味し。

 

「朝からそれしか言ってないね」

 

「だってさぁ、これまでの練習の成果を発揮したいじゃないか」

 

「そういえば、染岡も張り切っていたな」

 

モグモグと卵焼きを咀嚼しながら、修也くんは言う。

どうやら染岡くん、例の必殺技が遂に完成したようで、今日わざわざ報告しに来てくれた。あの時の彼の笑顔といったらもう、心底報われて良かったと思いました。

 

「今の俺たちが、どこまで通じるのか。すっごく気になるだろ!?」

 

「まぁ、確実に帝国戦の時よりは強くなってるね。流石にまだその帝国と・・・木戸川には勝てないだろうけど」

 

「昨日、練習に参加させてもらったんだってな。勝から聞いたよ」

 

「うん。高いレベルに仕上がってたよ」

 

武方三兄弟が中心の木戸川清州は、攻撃面、防御面共に安定した精度を誇っている。攻めは三兄弟が、守りは、青バンダナの西垣くんだったかな?その人が中心で、隙のない構成のようだ。

 

「勝てる勝てないかは、やってみなくちゃ分からない!・・・とは言ってみるものの、現実主義二人の意見を聞くとなぁ」

 

「おまえはいつも通りドッシリ構えてればいいんだ。そして熱い檄を飛ばしてくれ」

 

「そうそう。あれの有る無しじゃ、ウチはだいぶ変わってくるからね」

 

影響力の強さから、私は密かに『円堂教』と呼んでいる。宗教じみてるからね。そんな私たちは、既に入信させられているのだ・・・恐ろしや。

 

「あぁ、そういえば優梨。合体必殺技の件、明日からでいいか?」

 

「え?あぁ、うん。ベツニイイケド」

 

マズイ、片言になってしまった。

・・・いや、他意はない。そう、あの時の私は別に他意などなかったのだ。そういうことにしておこう。うん。

 

「合体技!?そんなこと考えてたのかよ!」

 

「ファイアトルネードとバックトルネードの融合。足したらどんな技になるか、気になるだろう?」

 

「すっげえ!でも、なんで高良はそんなに影を背負ったような顔してるんだ?」

 

え、顔に出てた?うっそ、マジで?

 

「嫌なのか?」

 

「そ、そういうことじゃなくて・・・」

 

首を傾げる修也くん。あれ、これ下手したら私が好意持ってることバレるんじゃないか?

さっきから顎に手を当てて『んー?』とか言ってるし。

 

『優梨おまえ、もしかして小学校の時のアレが告白だとかいうんじゃないだろな?』

 

『高良もウブだったんだな!』

 

それは困る!というかウザいな円堂くん!?

 

「ふ、二人技だけじゃなくて、三人技も面白いかなって!ほら、帝国もデスゾーンって技使ってたじゃない?だからより強力な技を皆で考えて、且つ習得すればチームにとって大きな力になるし、何より確実に点を決める技があればそれだけで相手にとって脅威になるから、覚えといて損はないと思うんだっ!さっきの話と外れてるって?咄嗟の思いつきに頭を回してたから生返事になっちゃっただけだよ!ごめんね?それで約束の件だけど、他意はないから!本当だよ?嘘じゃないよ?私が嘘ついたことなんて一度も」

 

チラッと前を見てみると、

 

そこには誰もおらず、

 

5時限目を告げるチャイムが鳴り響き、

 

そういえば次は体育だということに絶望した私であった。

 

 

 

******************

 

 

 

ついに、放課後になった。

皆、緊張の面持ちだ。

それはそうか。負けたら廃部なのだし。

私?私はあの後授業に遅れて来たせいで先生に怒られて気持ちがナイーブです。

 

「おいおい、また試合するらしいぜ?」

 

「帝国にあそこまでやられてるのに、まだ続けるんだ」

 

「引き分けでも、実力の差は見て取れたからな」

 

「でも、河川敷で結構練習してたらしいぞ?」

 

「無理無理。たかが一週間で変わるわけねえ」

 

ちょーっと殴りに行ってきていいかな?(切実)

 

「イッテクル」

「やめとけやめとけ。俺たちのプレーで見返してやれば良い」

 

先日の焦りとは打って変わって、落ち着いている染岡くん。

必殺技を完成させて余裕ができたのだろう。

ちなみに、今日のフォーメーションはこちら。

 

フォーメーション F-ベーシック

 

FW:染岡、豪炎寺

 

MF:半田、高良、松野(マックス)、少林

 

DF:風丸、壁山、栗松、影野

 

GK:円堂

 

ベンチ:宍戸、目金

 

 

以前とは違い、ツートップに修也くんと染岡くん。

宍戸くんの代わりに私が入って、前の私のポジションに栗松くんが入る。

後半から宍戸くんを半田くんと入れ替える予定です。

というか、マックスくんは筋が良い。数ヶ月後には、チームには欠かせない中核になっていそうだ。

あぁ、目金くんは安定のベンチです。はい。

 

「来たな」

 

修也くんの声に皆が反応。校門を見れば、そこには無気味な格好が特徴の尾刈斗中学サッカー部がいた。

まるで、突然現れたかのように。

 

「無気味だ・・・」

 

「おまいう」

 

「両チームとも、整列!」

 

影野くんと半田くんのコントはさておき、審判の人から招集がかかり、お互いが向かい合うように整列。

一番前列では、監督同士の挨拶が行われた。

ウチは冬海先生、向こうは地木流灰人っていう監督さん。

で、何を思ったのか地木流さん、私と修也くんに近づいて来た。

 

「君が豪炎寺修也くん、そして君が・・・高良優梨さん、ですね?」

 

「ーーーどうも」

 

「はい」

 

「帝国戦でゴールを挙げたというその活躍、我々の耳にも届いております。今日は、お手柔らかに」

 

なんだろう。すごく礼儀正しい人なのに、言葉の一つ一つがネバネバしてて・・・気持ち悪い。

 

「そいつら以外の奴も忘れてもらっちゃ困るぜ。先取点は頂かせてもらう」

 

染岡くんは地木流さんのセリフがシャクに触ったのか、忠告を兼ねて煽っている。

 

「ほぉ?これは滑稽ですね。我々は次回のFFに向けてお二人の研究をするために、練習試合を挑んだのですよ?精々、お二人の足を引っ張らないことですね」

 

「そう言ってられるのも今のうちだぜ」

 

聞く耳持たず。だが、彼から吐かれた煽りに染岡くんは反応せず、逆に冷静に言葉を返した。

 

「大丈夫だよ、染岡くん。これまでの特訓、無駄なことなんて無いんだから」

 

「高良・・・ああ!絶対決めてやる、俺の必殺技を!」

 

「いいか、みんな。俺たちは俺たちのサッカーをする。呪いがなんだ、そんなの、こっちの気合いで跳ね除けてやろうぜ!」

『おう!!』

 

やっぱり、円堂くんはキャプテンの才能があるんだろうな・・・。

私じゃあんな風に檄を入れることなんてできない。

 

「両者、ポジションについてください!」

 

と、時間のようだ。

さて、みんなで勝利と行きますかね。

 

 

 

 




優「なに良い奴ムーブかましてんのさ」

三兄弟「二次創作だから」

豪「おまえこそ三人技のフラグ立ててたじゃないか」

優「それはそれですー」

タケノコブルーさん、Hiro1224さん、アナザーZEROさん、暁 蒼空さん、お気に入り登録ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします・・・。


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第8話 炎の螺旋、竜の一撃&アクシデント

バレー惜しかったですね・・・。
今日の最終戦、皆さんも応援しましょう!

優「サッカーもあるよ。W杯予選」

豪 「また交互に見るんじゃないだろうな」

見ます(決定事項)



 

『さぁまもなく、雷門中VS尾刈斗中の一戦が始まろうとしています!』

 

帝国学園での試合から引き続き、角間くんが実況をしている。

良い声してるね、お腹に響くよ。

 

『尾刈斗中は攻撃陣が目立った成績を残しているチーム、対して雷門中は、あの帝国学園に2つの必殺技で得点しています。これは燃える試合になりそうです!』

 

キックオフは相手から。

先ずはボールを奪って、流れを作っていこう。

 

『ピィーーーーーッ!』

 

審判の笛が甲高く鳴り、試合が始まった。

幽谷から月村へボールが渡され、単身でこちらの陣内に切り込んでくる。

修也くんと染岡くんは月村の動きを見ながら前線へ。

 

「へっ、炎のストライカーの実力を肌で感じたかったけど、逃げられたんじゃ仕方ない!」

 

違うんだよなぁ・・・。二人から私への要求なんだよなぁ・・・。

 

(始まってすぐに)

 

(流れを作れ)

 

御丁寧に命令形ですよ。

生憎と、試合初っ端からとばすのは私の性に合わない。

ここはわざとそれっぽく抜かして、DFが機能してるか確認しておこう。

ドリブルで攻め込んでくる月村を通し、あっという間にペナルティエリア一個手前だ。

 

「ここは絶対に・・・」

 

「通さないでヤンス!」

 

ここで影野くんと栗松くんが同時にボールを奪いにかかった。

しかし、少し力み過ぎたのかスッとかわされてしまう。

 

「この程度かよ!」

 

うん。

 

「練習の成果、出てるじゃん」

 

瞬間、私は月村からスライディングでボールを奪った。

 

「なに!?」

 

『おっと、先ほど抜かれたと思われた高良が!鮮やかなスライディングで月村からボールを奪いました!』

 

「いいぞ高良!」

 

実は抜かれてからも後ろでずっとピッタリくっついてました。で、二人が抑えている隙に月村の前に出て、突破した直後にボールを奪ったと。

 

「力を抜いて一旦落ち着こう!さっきみたいに二人でかかれば、いざ取れなかった時もMF組がカバーするから!」

 

『は、はい!!』

 

「動きはちゃんと出来てる。あとは、それが結果に結びつくかどうか・・・マックスくん!」

 

「オッケ!」

 

前へパス。受け取ったのは特徴的なニット帽を被るマックスくん。

太ももでトラップし、前線へゆっくり攻め上がる。

 

「少林!」

 

「はい!」

 

更に右を使う。

少林くんは素早さに定評がある選手で、小さい見た目に反して意外と打たれ強い。

なので、ボールキープ率が一年生の中では一番高い。

相手のDFを振り切り、センタリングを上げるところまできた。

当然と言うべきか、修也くんにはマークが二人も。

 

「い、一旦もどして・・・」

 

「少林寺!」

 

自陣へ戻そうとする少林くんに、修也くんが声を張り上げた。

 

「そのまま上に上げろ!必ず決める!」

 

「は、はい!豪炎寺さん!」

 

高めのセンタリング。

修也くんは上を見据え、相手DFを華麗なターンで回避、そして跳躍。

炎の螺旋が上空まで駆け上がっていき、少林くんの出したパスに追いつく。

 

「ファイア・・・トルネードッ!!」

 

技の名を謳い、轟音と共にシュートが炸裂。

空間を焼き焦がす程の威力を誇る彼の必殺技は、生きた猛獣の眼のように、尾刈斗ゴールを枠に捉えた。

 

「ぐ・・・うあああああ!!??」

 

それを真正面で迎え撃つGK鉈。が、必殺シュートに通常のガードが敵うはずもなく、炎の弾丸は鉈ごとゴールに突き刺さった。

 

『ゴオオオオオオルッッ!!前半開始早々、豪炎寺のファイアトルネード炸裂!尾刈斗DFのマークを物ともせず、先制点を叩き出したああああああああッッッ!!』

 

1-0

 

やった、先取点もらいィ!

ちょっと修也くんのスペックに頼ったところがあるけど、1点は1点なのだ!

 

「修也くんナイス!」

 

「ああ」

 

「よぉっし!ナイスだ豪炎寺!!」

 

最奥でゴールを守る円堂くんも、彼を労う。

 

「・・・あいつが、また」

 

「染岡」

 

『先に決められた』、そのことに悔しさを覚える染岡くんに、反対に『先に決めた』修也くんが声をかける。

 

「・・・んだよ」

 

「これで、おまえの左サイドが活きる」

 

「・・・!」

 

「決めてくれ」

 

それだけ言って、修也くんはポジション位置へ。

 

「・・・上等だ。決めてやろうじゃねえか」

 

怒りに燃える彼の顔は、獰猛に笑っていた。竜の狩りが、始まるーーー。

 

 

 

******************

 

 

 

前半は、先取点を挙げた雷門のペースで試合が展開された。

修也くんという全国エース級の存在がいることも大きいが、みんなの能力の向上も理由の一つだと思う。

実力差があるので、FWには決して一人では挑まず二人で。これで動きを大幅に制御できる。

 

「くらえ、ファントムシュート!」

 

仮に裏をかかれてパスを出され、シュートを打たれたとしても・・・、

 

「ゴッドハンドッ!!」

 

私たちには、円堂くんがついてる。

神の手はガッチリと紫のオーラを纏ったシュートをキャッチ。

帝国学園戦よりも粗が少ないあたり、練習の成果が出ているのだろう。

 

「モノにしたんだな、円堂!」

 

「まぁな!風丸、もう1点取るぞ!」

 

任せろ、彼の期待に応えるため、風丸くんは自身のスピードを生かして前線へ上がる。

え、さっきまでペナルティエリア近くだったのに、もうハーフライン過ぎてるんですけど。速すぎじゃなくて?

 

「半田!」

 

「よっと、少林!」

 

ダイレクトでのパス回し。本当に弱小なのかと疑うほどの高度なプレイに、尾刈斗の面々は翻弄されていく。

そして、ボールは先ほど1アシストを務めた少林くんに。

もう一度修也くんにパスが来ると、相手は信じて疑わない。

だが、こっちにはまだいるのさ。とっておきの真打が。諦めずに努力を重ねたストライカーが!

 

「お願いします!」

 

あきらかに、修也くん狙いではないパス。

裏をかき、左でフリーになっている・・・彼の元へ。

 

「ナイスパスだぜ」

 

見据えるは相手のゴール。

構えるは己の右足。

狙うは、正面。

 

「これが俺の、俺だけの必殺技」

 

彼のーーー染岡竜吾の中学時代初ゴールは、

 

「ドラゴンクラッシュだあああああ!!!」

 

会場の度肝を抜く、追加点として大成功を果たした。

 

 

 

******************

 

 

 

2-0

 

決めた。

染岡くんが、決めた。

ーーー入った!

 

「いよっしゃあああああ!!!」

 

歓喜の咆哮。力強く右手を上げてガッツポーズをし、観客の歓声に応える。

 

「やっば!2点目、取っちゃったぞ!?」

 

「なんかドラゴン見えなかった?超すごい!」

 

この1点で、すでにこちらを蔑む人たちはいなくなっていた。ただ純粋に、凄い、格好いいと、思っていることだろう。

 

「染岡くん!」

 

「高良!」

 

ハイタッチ。

私は彼を讃え、彼はそれに笑顔で応じる。

今にも感動で泣きそうだ、私。この一週間、ずっと苦悩と戦ってる染岡くんを見てきたから、その努力が報われて、本当に嬉しい。

 

「ナイスシュート」

 

修也くんも、柄になく嬉しいようで。

いつもはしない握手を、染岡くんに求めた。

 

「・・・決めたには決めたが、あれはおまえが作り出したチャンスだ」

 

「なんで急に意地張るの!最終的に決めたのは、染岡くんなんだからっ」

 

そう!結果だ、結果が大事なのだ!

この世には結果だけが・・・関係ないですね、すみません。

 

「良いシュートだった。ドラゴンクラッシュ、それがおまえの必殺技か」

 

「ーーーああ」

 

ぎこちなく、けれど確かに、二人は互いを認め、手を握り合った。

 

 

 

******************

 

 

 

最早、場の空気は雷門中に完全に掌握されたと言ってもいい。

 

「・・・まさか雷門にあれ程のストライカーがいるとは」

 

地木流灰人は、呆気にとられた様子だった。

豪炎寺による先取点はまだ許容範囲内、向こうが彼に頼りきりだと言っているようなものだったから。

しかし、流れはあちらに傾き、想定以上の実力を発揮され、豪炎寺ではなく無名のFWにゴールを奪われた・・・。

前半はまだ10分しか経っていない。

ーーーやむを得まい。

 

「ゴーストロックを使い、彼らを・・・あいつらを恐怖のどん底に叩き落としてやる」

 

性格、顔色が豹変。それは名前の通り、かの有名な『ジキル博士とハイド氏』の二重人格のように。

自分得意の催眠術で相手の動きを鈍くし、その間に点を入れる。

術中の間は何もすることはできない。

 

「さぁ、一転しての恐怖を味わうがいい・・・」

 

そう、ゴーストロックを発動しようとした瞬間だった。

 

『おおっと!高良のボレーシュートはゴールに嫌われポストに直撃!ボールの行方は・・・!』

 

「調子にのってるんじゃねえぞカスどもがけべぶっっ!!??」

 

突如、顎に強い衝撃が入りベンチと共に倒れる地木流。

なにがーーーと、ボールの飛んできた方を見ると、彼を案じた尾刈斗中の生徒たちが駆け寄ってくる。

その、向こうに・・・、

 

 

 

やっちまった、という顔をした女子選手・・・高良優梨が頭を抱えていた。

 

 

 

顎への強打は脳を激しく揺らし・・・やがて、彼は数時間の気絶に陥った。

 

 

 

********************

 

 

 

やばいやばいどうしよう。

いや、本当にどうしよう。

流れるように連携が決まるもので、つい張り切ってしまった。

いつも以上にシュートの力がブーストされ、枠内を逃してしまったのだ。

そこまではいい。問題はその後だ。

まさか跳ね返った先に相手監督がいるとは・・・。

だが、何故だろう・・・酷い話だが、なんとも言えない達成感があるのだ。

ホント、なんでだ。

 

「こ、これって廃部の言い訳に使われるんじゃないの?」

 

マックスくんの一言で、そんな達成感はすっ飛んで行きました。

 

「ど、どうしよう修也くん!?」

 

「こういうの、雷門夏未的にはどうなのだろうか・・・」

 

ふと、ギャラリーの中で混ざって観戦している夏未さんを見る。

視線に気づいたのか、顎に手を当て目を瞑り考え出し・・・数十秒後、◯サインが出た。

 

「お咎め無し・・・か?」

 

「いいや、あの顔を見ろ。『後で覚えておきなさい』ってオーラがビンビンに伝わってくるぜ・・・」

 

「こ、怖い・・・試合が終わったら、どんなことされるか・・・」

 

笑ってるのに、目は完全に『ヤ』の付く自由業を主とした人のそれだ。

 

「なんにせよ、罰を受けるのは張本人の高良だ。俺たちは逃げて、雷雷軒でやり過ごそうぜ?」

 

「は、半田くん。世の中には連帯責任という非常に便利な言葉があってだね・・・」

 

「お、俺らも道連れにする気か!?」

 

「フフフ・・・私だけが損する訳にはいかない・・・」

「汚ねぇ・・・!」

 

 

その後、試合後に待ち受けているであろう罰作業に内心ビクビクしながらも、新必殺技である『ドラゴントルネード』を修也くんと染岡くんの二人が完成させて、チームは5-0で快勝するのであった。

 

 

他の学校に、雷門が尾刈斗を破ったニュースと同時に・・・噂がどこかで歪曲され、私が『雷門の相手監督殺し』という二つ名を被るのを、当時はまだ知らない。

 

 

 




優「キング・クリムゾン!」

尾刈斗の皆さん「あんまりだあああああ!!」

優「時よ!再始動しろおおお!」

早めに和解してもらい、結果だけを残しました()
因みに、残りの3点は高良のバックトルネード1本、続けて豪炎寺と染岡によるドラゴントルネード2本です。

jackyさん、クレヤさん、taka114たかさん、鷹密さん、お気に入り登録ありがとうございます!

そして誰か、アンケートのやり方を教えてください・・・。


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第9話 忘れてはならない

今更ですけど、優梨ちゃんのプロフ載せときますね。

名前:高良 優梨 (タカラ ユウリ)

性別:♀

誕生日:8月25日 乙女座 (現時点で13歳)

身長:150cm

体重:39kg

髪:桃色のシュシュで長い髪の先端を束ねている。髪色は極限まで薄くした金髪。白金色?
シュシュは母親からのプレゼント。

目:空のように透き通った水色。二重。

属性:風

ポジション:攻撃的MF(GK以外ならどこでも)
「コンバートするにしてもGKはやめてね!」

必殺技:

・ラウンドターン (ブロック) 風 真系 オリ技
・スプリントワープ (ドリブル) 無 G系 GO技
・バックトルネード (シュート) 風 真系 無印技
・???(二人技)
「一体何トルネードなんだ・・・?」





 

 

フットボールフロンティア、雷門サッカー部出場決定!

 

という訳で勢いづいている我々ですが、本日の練習はお休みです。

というか、むこう一週間無いです。なぜならばそうーーー皆さん、お忘れでは無いでしょうか。

 

「中間テストです」

 

『げっ』

 

部室にて。

私の言葉に皆が苦い顔をする。

このまま予選までスムーズに行けると思ったかい?それは甘いね、パフェに餡子と蜂蜜をぶっかけるくらいにね!

 

「1学期前半はどうだったのか、自分の実力は如何程なのか。やることは試合とそう変わりありません」

 

「いや全然違うだろ。そもそもなぜに敬語?」

 

「半端くんは黙っていなさい」

 

「あぁ!?テメェ今半端って言ったかコラ!?もういっぺん言ってみやがれってんだゴラァ!」

 

「半田、どーどー」

 

半端、中の中、なんでもできるけどなんでもできない、これらは全て禁書目録に記された半田くんに対して言ってはいけないこと。つまり、『禁句』である。

 

「怒った半田くんは放っといて、説明を続けます。一年は知らないと思いますが、二年は赤点を取ると休日が補習になるのを知っていますね?」

 

「まあ」

 

「常識だよな」

 

「テストは来週の月曜、火曜にかけて行われます。で、今が火曜日。大体一週間しかありません」

 

その間に勉強して、なんとしてでも赤点を回避しなくてはならない。

 

「それぐらいあれば余裕だな!」

 

「このダボちんがああああ!!」

 

「けぱれ!?」

 

あっけらかんとアホなことを抜かした主将の頭に、ハリセンを一髪叩き込んでおいた。

 

「そんなこと言って、いっつも木野さんにノート見せてもらったり、それでもいっつも赤点取って、且ついっつも補習授業に参加してるでしょうが!」

 

ここ一応私立だよ?平均偏差値良い方だよ?

 

「二年生の成績って、高校入試で結構重要になってくるんだよ!?」

 

「す、スポーツ推薦で・・・」

 

「推薦できるか決めるために通知表見られるの!オール3の半田くんならまだしも、円堂くん3少しでほとんど2じゃん(1もある)!というか今の状況でそれ言うか!?弱小の今の分際でそれを言うかああああ!!!」

 

「た、高良さんが・・・」

 

「荒ぶってる・・・」

 

もうね、余裕がないの。

円堂くんの高校進学のこともだけど、目先のことに余裕がないの。

 

「優梨がいつにも増してこんななのには理由があるんだ。試験の週の休日、何があるか思い出してみろ」

 

修也くん、分かってくれるのは君だけだよぉ・・・。

木野さんも傍でうんうん頷いてるし、よかった。理解者がいた。

 

「ということは来週の・・・」

 

「休日・・・日曜・・・」

 

数秒の思考の末、部員達はとある結論に辿り着いた。

 

『FFの予選1回戦じゃねーか!?』

 

「それだよ!なんとしてでも赤点回避しなくちゃいけないんだよっ!」

 

「ちょっと待て、赤点取ったら」

 

「補習ってことは・・・」

 

皆が一斉に、円堂くんの方を見た。

 

『GK無しで1回戦挑むことに!?』

 

「おいゴラァ!なんで俺が最初から欠場決定なんだ!?」

 

そんなの、自分の成績に聞いてくれて!

 

 

 

******************

 

 

 

と、いう訳で。

 

「勉強会をします」

 

会場は円堂くんの家、参加者は、二年生組の中でも学力に関してはエキスパートの人に来てもらいました。

 

国語:高良 優梨

 

数学:豪炎寺 修也

 

理科:影野 仁

 

社会:木野 秋

 

英語兼総監修:目金 欠流

 

中間は5教科だけなのでこの布陣で行く。

 

「なんで僕も呼ばれてるんですか!?しかも総監修って・・・」

 

「一応全科目高得点マークしてるんだから、力になってくださいお願いします」

 

あ、一年生にはぶっつけで頑張ってもらうしかないので、意外に成績の良いらしい宍戸くんと、見た目通りの音無さんに全てを託した。

 

「影野くん、理科得意なんだ」

 

「・・・ああ。結構ね」

 

「修也くんはまぁ、そうだよなぁ」

 

「なんだ、わかりきったように」

 

だって、医者の息子だもの。

 

「さて円堂、先ずは一年最後の期末テストを見せてみろ」

 

「おう!」

 

修也くんに言われるがままに、円堂くんはそれはもうクシャクシャになった過去の答案用紙を出した。

見て、誰もが思ったことであろう。

 

『ぺけがいっぱい(語彙』

 

なんだこれ、なんなんだこれ。

用紙には、沢山の『ペケ』というステップ草原が生えていた。

あっははおもろ。

ーーーいや、笑えないよ。何が草生え散らかすだよ、上手いこと言ったつもりかよ。

 

「丸は添えるだけって感じだな・・・」

 

「オール赤って、本当にいるんだ」

 

「最早芸術ですね」

 

「「円堂くん・・・」」

 

「だああああ!!見せろって言われたから見せたのになんだ!?じゃあみんなの合計の平均教えろお!」

 

先ほどの順で。

 

「85」

 

「98(木戸川での成績)」

 

「86」

 

「91」

 

「93」

 

「もういいです・・・俺の負けです・・・」

 

「因みに円堂は?」

 

「26・・・」

 

「聞くまでもなかった」

 

本当に高成績の人が集まってるのだと改めて実感しました。

というか、これだとサッカーよりも他の才能あるんじゃないかと疑うレベルでみんな頭良いね。

因みに、修也くんは木戸川で学年首位だったそうです。ウチの首位?夏未さんに決まってるでしょうよ。

 

「赤点ボーダーは40点未満。最低でも4割取れているようにしないとね」

 

「マネージャーの言う通り、最低ラインでいい。40点取れていればこちらの勝ちなんだ」

 

「ですね。1教科1教科、集中的にやっていきましょう」

 

おお、今までで一番目金くんがイキイキしている。帝国戦で逃げ出した彼とは大違いだ!

こいつには、やると言ったらやる、凄みがあるッ!(ブチャラティ感)

 

「ついてこれるか、円堂」

 

「やってやる!みんながここまで協力してくれるんだ。絶対に赤点回避してやるぜ!」

 

こうして、私たちのサッカーとは別の戦いが始まったんだ。

朝、昼、夜。これ以上ないくらいに勉強漬けの日々。

私はテスト範囲の漢字、文章を読み解く問題について解説。

修也くんは連立方程式を分かりやすく説明。

影野くんは細胞の種類、呼吸から消化にかけての生物の体のシステムを教えた。

木野さんは南北朝時代についての(鎌倉時代もあったが捨てた)知識を授けた。

目金くんは現在進行形やらを教えていては拉致が開かないと、出そうな問題を丸暗記させた。

 

「俺たちもやるぜ!」

 

途中から染岡くん、風丸くん、半田くんも参戦。

彼らには総監修の目金くんが教え、時には逃げ出そうとした円堂くんを止める役割を担ってもらった。

かつてない一体感を作り上げ、嵐を乗り切る。

いつしか、雷門サッカー部のプレイスタイルは勉強をする私たちに反映されていた。

 

 

 

******************

 

 

 

そして、中間考査当日!

 

 

 

 

 

皆、頭を抱えていた。

 

「おいどうするんだ豪炎寺!円堂の奴、家でやった小テストじゃろくな点取ってなかったぞ!?」

 

染岡が焦る中、5教科のエキスパート達は誰も彼もが絶えず撃沈していた。

 

「まさか、あそこまで覚えが悪いとは思わなかった・・・」

 

目下にくっきりとできている隈。目頭を押さえながら、自分の不甲斐なさに悔しむ豪炎寺。

炎のエースストライカーを冠する彼ですら、この案件は荷が重すぎたようだ。

 

「寝てないんじゃないのか?昨日泊まり込みだったし・・・」

 

「俺はまだいい方だ」

 

チラッ

 

「あ、あれぇ・・・?国語って道徳だっけ・・・正解はないんだっけ・・・?」

 

「高良・・・」

 

木野にうちわを扇がれながら、机で目を回している高良。

同じく隈、整っている長髪が今日は所々にあほ毛が乱立状態。制服の首元の隙間からは湿布が貼られているのが見える。

 

「で、当の円堂はどうしたんだ?」

 

「円堂か?円堂なら・・・」

 

指差した先には、

 

「・・・机って木だな」

 

「え、円堂おおおおおおおッッ!!??」

 

教えている五人でさえアレなのだ。であれば、教えられている本人はそれ以上であろう。

例えるならそう、ホセに真っ白にされたジョーの如く。真顔で机と口付けをしているキャプテンがそこにいた。

 

「万事休す・・・か」

 

「結局、俺たちはGKを欠いて戦わなくちゃいけないのか・・・」

 

彼の声、檄、指示、セーブ力、ゴッドハンド。

どれもこれも雷門サッカー部を形作るのに必要なピースだ。

それが、次の試合では・・・。

 

「ーーーやむを得ない」

 

おもむろに、高良が立ち上がった。

 

「優梨?」

 

「おい、鉛筆なんて持って何を・・・」

 

「できれば、この手だけは使いたくなかった。・・・円堂くん」

 

ソッと、彼の机の上に鉛筆を置く。なんの変哲もない、ただの鉛筆を。

ーーーいや、少し違う。

削られていない方の先端に、何か・・・。

 

「記号でどうしてもわからなくなった時でいい」

 

数字や、カナ字が書かれている。

 

 

 

 

「回せ」

 

 

 

 

サイコロ鉛筆であった。

 

 

 

******************

 

 

 

「試験開始!」

 

紙を裏返す音が全四方から聞こえる。

1日目は国語、理科、英語

2日目は数学、社会。

昨日は円堂くんに鉛筆を渡した後、15分ほど仮眠を取った私はどうにか正気を取り戻すことができた。

テストも問題なく解くことができ、現在『社会』。

これが終われば、後は結果を待つのみ。待つのみ・・・。

 

 

(((((社会、南北朝5問しか出てねぇ(ない)!!)))))

 

 

山を張って赤点を回避する予定だった社会は、まさかの山はずれ。

五人は顔を見合わせ、目線は円堂へ。

 

「・・・も」

 

(ダメだ!真っ白のままだ!)

 

(なんか言ってるぞ)

 

(も?)

 

(『も』って何!?)

 

(口の動きだと・・・『もうダメだ、お終いだぁ』ですかね?)

 

いつから戦闘民族の王子になったんだ。

でも、本当にもうお終いだ。実は円堂くん、4教科は存外解けたと言っていたので、これは社会も楽勝だろうというありがちなフラグを立てていた。

 

(・・・あ!)

 

(円堂!)

 

(キャプテン・・・)

 

(あれは・・・!)

 

(昨日高良さんが渡した・・・!)

 

そう、サイコロ鉛筆である。

細長く、今の彼自身を象ったかのように弱々しい形をしたそれを、円堂くんはコロリと転がしては書き、また転がしては書きを繰り返していく。

 

(思考を捨てたんだね・・・)

 

(だが社会は記号が多い。カ行やサ行もそれっぽいのを選択して書けばどうにか・・・)

 

痛々しいほど健気に鉛筆をコロコロする円堂くんを尻目に、私たちは答案を埋めた。

 

 

 

******************

 

 

 

結論から言えば、赤点は無かった。

どれもギリギリの点数だったが、それでもボーダーは超えていたのである。

強いて言うなれば、

 

「本当ですって!カンニングだなんてするはずないじゃないですか!」

 

「しかし他のテストの結果を見るとな・・・」

 

「そんなぁー」

 

4教科が40〜50なのに対し、社会だけは96という破格の点数を叩き出したことだろうか。

当然、カンニングだと疑われた。

恐るべし、鉛筆。いや、この場合円堂くんの運、ラック値と言ったところか。

 

「何はともあれ、よかったよ」

 

「ああ。・・・だが」

 

私と修也くんは自身の肩を軽く回し、同時にため息を吐いて、言う。

 

「「今日は休みにしよう・・・」」

 

 

 

 




彼らの学校生活は、こんな感じがいいなぁというつもりで書きました。
因みに優梨は理科が苦手です。毎回それで点数を落としています。

とある世界のハンターさん、ガルドさん、わさび、さん、お気に入り登録ありがとうございます!わさび、さんは感想もありがとうございました!
そして、アンケートの取り方がわかりました・・・近いうちにやります!


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第10話 野生中対策

11月に試験があるので少し投稿間隔開空くかもしれません(書かないとは言っていない)
日本ラグビー、感動をありがとう!


フットボールフロンティア、予選一回戦まで残り3日となった。

 

「なんでテスト明けに試合があるんですかね・・・」

 

狙ってるとしか思えない。おかげでまだ肩こりがひどいし、目の隈がまだ残ってるし・・・。

進級した時に買い溜めたルーズリーフ、まさか全部使っちゃうとは思わなかったよ。

 

「優梨ー、そろそろ出たらー?」

 

「はーい!」

 

時刻は6時30分。今日は部室外でパス練をするらしいので、これぐらいには出ておかなければ。

制服着て、学生鞄とエナメル持って、忘れ物は・・・うん、ない!

 

「いってきます!」

 

「あ、ちょっと待って!これ食べながら行ったらー?」

 

何をー?と聞きながら玄関のドアを勢いよく開放。

 

「おはよう、優梨」

 

ばたむ。

私は勢いよく扉を閉めた。

 

「な、な、ななななな」

 

なんでいるんだよぉ・・・。

 

「修也くんとほら、りんご!剥いてあげたから一緒に食べて行きなさ・・・ん?」

 

玄関の前で頭を抱えてへたり込んでいる私を、お母さんは不思議そうに見つめていた。

いるなら言ってくれよお母さん・・・。

 

 

 

******************

 

 

 

今日は自転車じゃなくて、徒歩で通うことに決めました。

理由?そんなの分かり切ってるでしょ畜生。

 

「おばさんの切ってくれたりんご、美味いな」

 

修也くんが一緒に登校するからだよお。

なんで来たのさ、こっちにはその、心の準備というかさ?そういうのが必要な訳でいきなり来られるとこう・・・兎に角いきなりに弱いんだよ私は!

 

「優梨、りんご食べないのか?」

 

「え、ああうん。食べましゅ」

 

噛んだ。

恥ずかしい・・・穴があったら入りたい。

 

「もっ・・・美味しい」

 

「だな」

 

「・・・私が剥いたのも、今度」

 

「ん、なんだ?」

 

「なんでもない」

 

難聴系はどこぞの赤胴髪かワンサマーだけで十分だよ。

いや、でも今のは私の声が小さかったのが悪い。こういうのはちゃんと、はっきりと言わなくては。

 

「優梨」

 

「ひゃ、ひゃい?」

 

先を越されてしかも噛んだ。

 

「二人で打つ必殺技の件だが」

 

「あ、うん」

 

そうだった、そんな話もあったね。

 

「単純にファイアトルネードとバックトルネードを空中で合わせる、でいいんじゃないかな?元々はバックトルネードって、修也くんの技の派生みたいなものだから、技同士の相性はいいと思うんだ」

 

「問題はタイミングだな。全ての行程をほぼ同時・・・いや、全く同時に行わなければ、俺たちの合体必殺技は完成しない」

 

一瞬、『俺たちの』にときめいてしまった自分がいた。でも、そっか。二人の息を合わせるっていうのが重要なんだ。

時間はかかると思うけど、最低でも予選決勝までには完成させたいな。

 

「頑張ろ」

 

「ああ」

 

拳を、お互いの意思表示のように合わせた。

 

 

 

******************

 

 

 

部室へ着くと、すでに皆が集まっていた。

 

「お、来た来た!遅いぞ二人とも」

 

「みんなが早すぎるんだよ。まだ7時にもなってないし」

 

「全員集合か・・・周知したいことでもあるのか?」

 

「ああ。冬海先生が集めとけって」

 

あの部活に興味nothingな冬海先生が、顧問らしいことを?

一体何があるのやら。

そんなことを考えてると、後ろでドアが開いた。

 

「失礼しますよ。全員、集まっているようですね」

 

来た。噂をすればってやつだね。

 

「今日は二点ほど。先ず、一回戦の相手についてです」

 

あぁ、大会のことか。なんだ、ちゃんと仕事してるじゃん。

 

「一回戦の相手は、野生中です」

 

抽選会に行ってくれてたらしいんだけど、コミュ症の冬海先生にはキツかったんじゃないかな?だって各学校の監督たっくさんいるし。

って、野生中?・・・たしか去年、

 

「地区予選決勝で、帝国と戦ったところだな」

 

私が言うより先に、修也くんが言ってくれました。

結果は相当な得点差だったと思うけど、間違いなくの強豪だ。

 

「大量得点差で負けるのは勘弁ですよ。それと・・・」

 

新入部員です、の先生の言葉を遮って、一人のナイスガイが部室の扉から顔を出した。

 

「チワッス!俺、土門飛鳥。DF希望で、一応経験者だぜ」

 

顔黒いけど、あれ地肌じゃないだろうな。

多分、スポーツやってて馴染んじゃったやつ。つまり、結構できる人だ。

とか考えながらいると、冬海先生は『では、私はこれで』とそそくさと去っていった。

やっぱ最低限しか仕事しないんだなぁ。

 

「え、土門くん?」

 

木野さんが、心底驚いたように新入部員の彼を呼んだ。

 

「え、もしかして秋?うおっ、マジかよ!久しぶりだな!」

 

「知り合いなのか?」

 

「幼なじみなんだよ。なんだ、秋はこの学校のマネージャーだったのか」

 

腕を組んでそっかそっかと頷く土門くんは、単純に嬉しそうだ。

 

「土門!これからよろしくな!」

 

「おう、よろしくキャプテン!ーーーけど、次の相手は野生中か・・・ちょっとヤバイぜ?」

 

「え、なんで?」

 

「全体的な身体能力が高い。おまけにジャンプ力は帝国を抑えてトップ、高さ勝負じゃ負けなしの学校だよ」

 

うちの必殺技って、空中で打つ技が多いんだよね。現時点での最高火力を誇るドラゴントルネードも、上から抑えられちゃうかもだし。

 

「だったら、そのジャンプ力を上回る新必殺技を編み出そうぜ!」

 

「いや、円堂。残り3日だぞ?ここはどうマークを外してシュートを決めるかを考えた方が・・・」

 

「そうと決まれば、河川敷行こうぜ!」

 

「聞いてないし」

 

発想的には面白いんだよね。相手の高さを超える・・・自分たちの長所が上をいかれるって、どういう気分だろうか。

 

「じゃあ、修也くんの案と円堂くんの案、どっちも採用して練習しようよ。目指せ、オーバーキル的な?」

 

『発想がえげつねぇ・・・』

 

「よおし、やるぞー!」

 

 

 

******************

 

 

 

「だあああああ!!何も思いつかねえええ!」

 

まぁ、そうだよなあ。

現在、円堂くん、修也くん、私、風丸くんの四人で雷雷軒に来ている。

練習帰りは結構ここ寄るんだよね。

 

「マークをはずす練習は良い感じだったけどね」

 

「本物はもっとキツいと思うぜ?なにせ地区予選決勝まで行く奴らだからな」

 

「風丸のスピードも重要になってくる。おそらく、野生中の速度について行けるのはおまえぐらいだろうしな」

 

「か、買いかぶりすぎだ豪炎寺」

 

そんなことはないと思うけどなー。

風丸くん、単純に速いだけじゃなくてボール運びもしっかりしてるし、キープ力もチームの中じゃトップクラスだ。初めて数週間とは到底思えない。

 

「ラーメン3つに、チャーシュー麺大盛りおまち」

 

「はーい」

 

「高良、よく食えるよなその量・・・」

 

「優梨のそれは昔からだから気にするな。昔、男だけのクラブで合宿行った時も、1人だけお代わりしまくって浮いてたしな」

「なに?なんか言った?」

「イヤナニモ」

 

・・・まぁ、いいか。

ご飯食べられれば問題なし。

 

「そんなことより、どうすんのさ。必殺技が思いつかないんじゃ、オーバーキルできないよ」

 

「敢えてそれに拘るんだな」

 

それはもう、拘りまくりですよ。

 

「尾刈斗中のように思い通りにはいかないぞ?」

 

「百も承知だよ。でも、少しは大穴狙ってみたいじゃん。そこで勝って初めて、私たちの実力が本物って他の学校に分かってもらえるんじゃないの?」

 

帝国に勝った、というのも間違いではないが勝ちとは言えない。前に夏未さんが言っていた通り、完膚なきまでの敗北だ。

尾刈斗にも5-0で勝ちはしたが、まだまだ信じていない学校が多数だろう。

 

「ま、そうなんだけどさ」

 

「あーあ!何かないのかなー!」

 

「・・・イナズマイレブンの秘伝書がある」

 

「へー、秘伝書なんてあるんだ」

 

「聞いたことないな。優梨、ごまいるか?」

 

「ありがと」

 

・・・・・・。

 

『ええええええええ!!!???』

 

暫くの沈黙の後、全員が叫んだ。

誰だ言ったの、秘伝書って・・・あ、もしかして店主さん?

そしてイナズマイレブンとも言いました?あの40年前の、伝説の?

 

「あるの!?秘伝書!」

 

「・・・マジで?」

 

「デジマ?」

 

「デジマだ」

 

店主さん、意外とノリノリだった。

 

 

 

******************

 

 

 

秘伝書があるのはどこか?そう聞くと、教えてくれた。

 

「何のようかしら?」

 

理事長室、と。

もう夕方で職員室の明かりもついてないし、これは理事長もいないだろうと思って四人で忍び込んで部屋のある3階に来てはいいものの、夏未さんに見つかってしまった。

 

「なんでいるんだよ!?」

 

「質問に質問?理事長としての仕事が終わっていないからよ。忘れてた?これでも私、理事長代理なのよ?」

 

完全に失念していました。

 

(どうする?俺がゴッドハンドで・・・)

 

(一般でその技を使うな!ふざけろ!)

 

(もう素直に頼むしかないでしょ)

 

「生徒会長、忍び込んできた身分ではあるが頼みがある」

 

修也くんイッター!

 

「何かしら?」

 

「理事長室に保管されているという、秘伝書を譲ってくれないだろうか」

 

「いいわよ」

 

『即答!?』

 

「だって、明日渡そうと思っていたところだもの。はい」

 

なら明日まで待てばよかったんじゃん。

・・・というか、最初から夏未さんに頼めばよかったんじゃん。

手渡されたのは、一冊のボロボロなノート。

円堂くんがペラペラめくっていく。

 

「すげぇ!ゴッドハンドの極意とか書かれてあるぜ!?」

 

「へぇ、他には・・・」

 

「なにが・・・」

 

「書いて・・・」

 

私含めた三人が止まった。

なんだこれ。

アラビア語?いや、中国語?ロシア語?

 

「いや、ものすごく汚い字だ」

 

風丸くん、的確なツッコミありがとう。

 

「よくそれが読めたわね」

 

曰く、読めないから扱いに困っていたらしい。

まぁ、急にこんな汚い字で書かれたノート渡されてもね。

 

「これ、俺が持ってるじーちゃんの特訓ノートにそっくりなんだ!高さを追求した必殺技は・・・」

 

「はいはい、それは明日な。明日」

 

「おじゃましました・・・」

 

 

 

 

 

「待って?」

 

 

 

 

 

それは、帝国にいた鬼道くんなど及ぶべくもない、殺人的な圧だった。

 

「なに、さりげなく逃げようとしているのかしら?」

 

目が怖い。口元はニコーってしてるのに、目が笑ってない。あと怖い。

 

「本校の生徒とはいえ校舎への無断侵入、最低でも停部。最悪、サッカー部は廃部ね」

 

コツコツと、歩く音が廊下に反響する。

 

「豪炎寺くんともあろう人が、まさかこんなことに首を突っ込むだなんてね?」

 

「・・・馬鹿二人のせいだ」

 

「「風丸(くん)、言われてるぞ(よ)」

 

「どう考えても円堂と高良だろうが・・・」

 

「風丸くんも優等生かと思いきや、こんなことをするとはね」

 

なんかもう、獲物を追い詰めてる蛇とか狐にしか見えないです。

 

「黙秘権を・・・行使する」

 

いや、意味ないでしょ。

 

「高良さん?」

 

「ヒッ」

 

「貴女の秘密、そう、私と貴女だけが知ってる秘密よ。ーーー何を言いたいかわかるわね?」

 

 

 

『貴女、他の人は名字で呼ぶのに、豪炎寺くんだけ名前呼びなのね』

 

『二つの意味で、頑張ってね』

 

『部活と、青春よ』

 

 

 

「煮るなり焼くなり好きにしてください・・・」

 

「よろしい」

 

冷や汗が止まらない。

体感で体の温度が下がっていくのがわかる。まさか蛇に睨まれた蛙を実感することになるとは。

 

「さて、最後に残った円堂キャプテン?」

 

「は、はい」

 

「一つお願いがあります。断りは・・・しないですね?」

 

「は、はい」

 

は、はいしか言えてないよ円堂くん。

 

 

「私を、サッカー部のマネージャーとして入部させて」

 

 

・・・うぇ?

 

 

 

 

 

 




こんにゃくジローさん、お気に入り登録ありがとうございます。
わさび、さんは前回に引き続きコメントありがとうございます。

夏未さんを早めにマネージャーとして入部させました。・・・いいよね?


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第11話 誓い、噂、影

きりよくしたら短めになってしまいました。申し訳ない。

皆さん、アンケ投票ありがとうございます。集計はまだ先なのでドシドシ入れちゃってください。


 

試合前日。

今日は午前に最後の調整を行なって解散となった。

夏未さんからもらった秘伝書に記されていた技、その名も『イナズマ落とし』。この数日間で適役である修也くんと壁山くんが練習してたけど、完成には至っていない。

壁山くんの、高所恐怖症が発覚してしまったからだ。

なぜ今日になって言うのさ・・・。

こうなったら最悪、マーク外して決める戦法でどうにかしなくては。

 

午後は木戸川にお邪魔して練習に入れてもらった。

 

「へへっ、こっちだよ高良さん」

 

「待てコラァ!」

 

3兄弟に翻弄されっぱなしだった。クソォ・・・あいつらああ見えて実力は相当上なんだよなぁ・・・。

 

「と、そんなこんなで着いた」

 

その練習も終わり、帰るついでにやってきたのは雷門中学校近くにある病院。

夕香ちゃんが入院しているところだ。

正面玄関の自動ドアが開き、独特の匂いと雰囲気が私を迎えた。

 

「まず受付で・・・」

 

「高良くんか?」

 

名前を呼ばれた。

聞き覚えのある声だった。

 

「あ、おじさん。お久しぶりです」

 

「ああ。2年ぶりかな?」

 

修也くんの、お父さん。

この病院で働いてるんだ。仕事の転勤って、ここのことだったんだね。

 

「今日は夕香ちゃんのお見舞いに来ました」

 

「ありがとう。先ほど修也も来てね、おそらく部屋にいると思うよ。・・・大会があるらしいね」

 

「はい。二人で頑張ってきます」

 

そうか、とおじさんは短く返して行ってしまった。

ーーーあんなに冷たかったっけ?

前もトゲがある感じだったけど、あそこまでは・・・。

と、今はお見舞いお見舞い。

 

「失礼します」

 

豪炎寺 夕香。

名札が貼られている病室を開けると、穏やかな表情で眠っている夕香ちゃんと、彼女の頭を優しく撫でている修也くんがいた。

 

「ん」

 

「さっきぶりだな。ーーー今、誓いを立てていた」

 

「どんな?」

 

「夕香が目覚めるまで、絶対に負けないっていう誓いさ」

 

格好いいことを。

 

「なに小学生の頃みたいなことしてんの」

 

「こうやって自分に言い聞かせておかないと、どこかで躓いてしまいそうでな」

 

復帰後初の公式戦。尾刈斗との練習試合でブランクは払拭できたけど、周りからかかるプレッシャーとかもあるんだろうな。

おまけにイナズマ落としも完成していない。不安になるのは当然だ。

 

「・・・今日、父さんに言われたんだ。『まだそんな球遊びをやっているのか』ってね」

 

「・・・っ!」

 

「言われて当然だ。夕香をこんな目に合わせたのは、俺のせいなんだからな。・・・だが、やめるつもりは毛頭ない」

 

決意に、彼の目は燃えていた。

戻ってきたのだ。今の彼は、正真正銘、あの頃の豪炎寺修也なのだ。

 

「ーーー君は負けないよ」

 

「え?」

 

「私がいるから」

 

静かに、ただその言葉を、事実を告げる。

昔からそうだっただろう?二人で挑めば敵なしだった。

それに、今は円堂くん達チームメイトもいる。

 

「明日、絶対勝とっ」

 

「・・・ああ!」

 

 

 

******************

 

 

 

『さぁ!フットボールフロンティア予選一回戦、雷門中対野生中の試合が、今始まろうとしています!実況はお馴染み、角間圭太がお送りします!』

 

まぁた来てるし。

 

「部活はー?」

 

『将棋部は日曜休みであります!』

 

私の質問に、元気よく答えてくれた。

大丈夫か将棋部、ウチでも毎日やってるぞ。

 

「しっかし、観客多いね」

 

「全員野生中の生徒さんだろうな」

 

フィールドの周りは、すでに我らがサッカー部の勇姿を見届けようと多くの相手サポーターが声援を上げている。

 

「こっちにもいるぜ?ほれ」

 

『にいちゃん頑張れー!』

 

「あぁ、壁山くんの」

 

弟らしい。どことなく似てるね。

・・・あれ?向こうの席に座ってるのって・・・。

 

『豪炎寺ー、高良さーん!頑張れ〜!』

 

『みたいなー!』

 

なんでいるのあんたら三兄弟!?

 

『おい、あれ木戸川の武方三兄弟だよな?』

 

『なんでいるんだ?偵察か?』

 

やっぱ有名人だね。ってそうじゃない!

 

「どうしているのさ!?」

 

「ウチの一回戦、二日後だから余裕あるんですよ」

 

「だから雷門がどんなチームになったか気になって」

 

「観にきた、みたいな?」

 

別に来なくていいのに・・・。

 

「有難いと思っておこう。正直、嬉しいだろ優梨」

 

「・・・まぁね」

 

『照れてるー?』

 

「照れてなああああいッッッ!!」

 

試合終わったら絶対しめてやる・・・!

 

『おい、あの叫んでる女子選手』

 

『ああ。尾刈斗の監督、殺してるらしいな』

 

待て。最後の。

どう言う意味だ。

たしかに尾刈斗の監督にボールぶち当てたけれども。

そしてさっきからボケとツッコミが怒涛過ぎる。

 

「噂が独り歩きしたんだな」

 

「そういう次元超えてるよ?イジメだよねアレ」

 

修也くんの能天気な一言にツッコミを入れる。

あれは誰がどこから見ても不慮の事故だ、そうだ。

 

「高良先輩・・・」

 

「マジかよ、あの後死んだんだあの人」

 

おい後輩ども、少しは先輩に気を使うってことを覚えた方がいいんじゃないの。

 

「・・・むすー」

 

「拗ねんなって高良!ーーー気を取り直して、みんな、いよいよ予選だ。気を引き締めていこうぜ!!」

 

円堂くんの飛ばした檄に、皆は力強く雄叫びをあげた。

 

 

フォーメーション F-デスゾーン

 

FW:高良、豪炎寺

 

MF:壁山、染岡、松野(マックス)

 

DF:風丸、土門、栗松、宍戸、影野

 

GK:円堂

 

ベンチ:半田、少林、目金、

 

 

今回、作戦の都合上帝国学園のフォーメーションを参考にしてみた。

壁山くんはイナズマ落とし要員としてMFへ。染岡くんをMFに下げたのにはちょっとした理由がある。

あと、体力が上がってると言っても全員がフルで戦えるようになったわけではない。なので、控えの三人にも出番があります。

気を抜かずに挑むとしよう。

 

 

 

********************

 

 

 

「間に合ったあ!」

 

野生中学校校門前。そこに、雷門の制服を着た三つの影があった。

 

「試合始まる寸前みたいだな。まったく、誰かさんが電車を乗り間違えなきゃ、余裕持ってこれたんだが」

 

「あ、あれは二人が起こしてくれないからでしょ?」

 

一人は特徴的な天然パーマで、元気溌剌な口調の少年。

もう片方の少年は、紺に近い黒髪を逆立てた、制服に改造を施しているいかにもヤンキーといった風貌。

そして、最後の少女はボリューミーな茶髪。前髪は切りそろえられており・・・、

 

「昨日夜更かししたからだろ」

 

「見たいテレビがあったやんね〜」

 

語尾には中々珍しい方言を使っている。

 

「うわ〜!豪炎寺さんがいるよ!円堂さんも、高良さんも!」

 

「俺たちがあの人たちの隣に立てる日が来るといいんだが。・・・入部届、三人一緒に出すとか言っといて忘れたのはどこのどいつだ」

 

「「申し訳ない」」

 

少々憤る彼に、二人は息を揃えて謝った。

それに対して少年はため息で話を切り上げ、フィールドを見た。

いつもとは違う選手達の配置。高さに秀でている野生中に対策を施してきたのだろうか。

 

「お手並み拝見といこうか。先輩方」

 

「ねぇ出たよ。いつもの」

 

「ああやって言っとけば格好いいと思ってるやんね」

 

「おまえら一度そこに直れェ!」

 

観客席の片隅で、ゲンコツの音ととある少年の説教が響いた。

 

 

 

 




チョココロネ「真」

ブラコン「打」

おもち「登場やんね!」

優(あそこの席、元気良いなー)

起爆剤セット完了。
少しだけ()超次元要素追加してみたかった。
なんで彼らがいるかというと・・・『この世界線での時空最強イレブンはザ・ラグーンに負けている』とだけ。あぁ、あと記憶は無いです。

diarさん、ayataneさん、お気に入り登録ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします・・・。

追加:クレヤさん、誤字報告ありがとうございます。優香→夕香に直しました。


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第12話 自分なりに

フロンターレvsコンサドーレ見ました!?
サーガブレイヴ2話見ました!?
FGO見ました!?

謎のヒロインX・・・なんで今くるんだよ畜生。でも、自分はバビロニア後半かセイバーウォーズ2ピックアップでエレシュキガルが来るのを信じて待つつもりです。来て!

前話の最後にも書きましたが、クレアさん、11話の誤字報告ありがとうございました!


 

試合開始。

久しぶりに修也くんと2トップ組めてちょっとテンション上げ上げな私です。

キックオフはこちらから。

ボールを染岡くん、風丸くんと繋いで自陣に回す。

少しずつ修也くんと一緒に上がりながら、前を見据えた。

 

「聞くのと実物は、やっぱ違うね」

 

中学生にしては体がゴツい人が殆どだ。これで身体能力もウチ以上なのだから笑えない。

試合開始前、私は皆に戦う、デュエルしようとはせずに細かくパスを回すように指示を出した。

ちゃんと実行できてるようで、ハーフライン右の野生中よりにつけていたマックスくんにボールが渡る。

 

「早っ!?」

 

だが、そこは強豪校。一瞬で二人のチェックがついた。

堪らず中央の染岡くんにパス、そこから私にループで相手一人を跨いで・・・、

 

「ふっ!」

 

「なに!?」

 

結構な高さのはずだったが、相手MFの・・・大鷲がジャンプでカットした。

なるほど、これが例のジャンプ力か。

 

「すまん!」

 

「オッケ、なるべく下で繋ごう」

 

対策とか色々立ててたつもりだけど、心のどこかで慢心してたのかも。

 

「でも、一回DFがどんなのか確かめたいから、次上げて欲しい」

 

「わかった!」

 

気持ち切り替えなきゃ。

 

『ボールを奪った大鷲、前線へ駆け上がる!』

 

「チーター!」

 

「させない!」

 

既に上がっていたチーターへのパスを、風丸くんが奪い・・・、

 

「疾風ダッシュ!」

 

そのまま必殺技でチーターと大鷲を出し抜いた。

自分のスピードを生かした、いい必殺技だね。

あと、チーターって呼ばれてた人を速さで抜くっていう皮肉、最高。

 

「染岡!」

 

「おう!いけ、高良!」

 

ドリブルは最低限にし、パスでボール運びを心がける。

なるべくダイレクトを心がけて、敵をかわす。

ーーーよし。先ずはお手並み拝見。

 

「よっ!」

 

蒼炎と共に回転しながら上空へ。高く上がったボールに向かって螺旋を描いて上昇。

 

「バックトルネー・・・!」

 

「コケエエッ!!」

 

踵でボールを蹴り下そうとした瞬間、私よりも後にジャンプしたであろう相手キャプテン、鶏井が今まさに蹴ろうとしていたボールをカット。

 

『高良のバックトルネードは不発に終わりました!なんというジャンプ力だ野生中鶏井!』

 

着地し、互いの目が合った。

 

「空中は俺たちのものコケッ」

 

「なるほどね」

 

トラップ能力も高い。あれだけ上から着地したのにボールの乱れがなかった。

こりゃ苦戦しそうだ。

 

 

 

******************

 

 

 

戦況は8:2で野生中のペース。

私がバックトルネードを打ち損じて以降、押される立場になってしまった。

やはり、身体能力の差が大きい。

時間が経過してからは、動きを読まれてパスをカットされる回数が増えてきている。

 

「クソッ、またかよ!」

 

中々攻め上がることができず、苛立ってのミスも目立つ。

仮にカウンターを仕掛けたとしても・・・、

 

「壁山!」

 

「ひぃっ!無理っスうう!」

 

普通の空中戦で勝てない今、頼みはイナズマ落とし。

それも、高所恐怖症を克服できていない壁山くんでは発射台の役割を果たすことができずに失敗が続く。

そのミスが命取りになり、野生中は怒涛の攻撃を何度も仕掛けてきた。

だが、未だに試合は0-0。理由は二つ。

一つ目は先日加入した土門くんのディフェンス。

余程の強豪校にいたのか、ブロックといいチェックといい、敵を好勝手にさせていない。二つ目は勿論、

 

「スネークショット!」

 

「熱血パンチッ!」

 

我らがキャプテンがゴールを死守しているからだ。

もう何度目になるだろう。迫りくるシュートも嵐を、円堂くんは物ともせず弾いていく。

 

「高良、もう一度だ!」

 

「うん、壁山くん!」

 

「・・・やっぱり、俺には無理っス!DFに下げて欲しいっス!」

 

「野生中の高さを突破するには君の力が必要なんだよ!?」

 

「そんな大役、俺に務まるはずないっス!」

 

ぬぬぬ、この根性無しめぇ・・・!

でも、そうなるのも仕方ないと思うよ!一年生で、且つDFなのに点を取る役割に抜擢されているんだから。

おまけに弟くんが応援に来ているとなれば、相当なプレッシャーだろう。

少し、彼の中に余裕を持たせてあげなくちゃいけない。

 

(でもどうやって?下手な励ましは毒だし・・・)

 

「壁山!」

 

私が悩んでいる中、修也くんが声を張り上げた。

 

「いいか壁山、プレッシャーは誰しも感じることだ!俺だって、優梨だって、ゴールを守っていつも皆を支えている円堂だってそうだ!」

 

「豪炎寺さん・・・」

 

「課題は一つ、その壁をどう越えるか、どう壊すかだ!今日の試合は、おまえにとっての分岐点となる。それを良い方向に向けるかはおまえ次第だ!」

 

「俺、次第・・・」

 

「何度でもやるぞ。失敗しても、後ろにいる仲間が繋いでくれる。信じろ、チームを!おまえ自身を!」

 

ーーーよし!

 

「壁山くん、私がチャンス作るから!一緒に、みんなで成功させようよ。イナズマ落とし!」

 

「豪炎寺さん・・・高良さん・・・」

 

言うなり、私は駆け出した。

 

「円堂くん、パスパース!」

 

「行くぞおおおおッッ!!」

 

ゴールからのロングパス、それは足元に収まった。やっぱ精度良いね。

私は左サイドに寄って相手陣内にドリブルで切り込んでいく。

近くにいる野生中選手は四人ほど。どうにか彼らを私のいる場所におびき寄せなければ。

中央からは、修也くんと壁山くんが上がってきている。

 

「通さねぇ!」

 

「押し通る、絶対に!」

 

先ず一人、ターンを使って回避。

 

「なに!?」

 

「俺が止める!」

 

「バックトルネー・・・」

 

「なっ、マジかよ!」

 

いきなり私が必殺技の態勢に入ったのに体が反応したのか、反射的にジャンプで上を取った。

バックトルネードは空中で打つ技だからね。即座に対応したのは流石としか言いようがない。

・・・まぁ、

 

「飛ばないけどね」

 

序盤に一度見せてたのも効いてたのかもしれないね。

地面から足が離れていれば、飛ぶのをやめてドリブルを再開した私を止めることはできない。

隙を見逃さず、二人目を抜いた。

これに焦りを覚えたのか、ゴール前にいる鶏井を含めた二人が押さえにかかる。

狙い通りだ。

いくら強豪とはいえ、所詮は中学生。こういう急なことには焦るだろうと思った。

で、私に相手は集中していて、中央は?

 

「修也くん、壁山くん!」

 

「ああ!いくぞ、壁山!」

 

「はいっス!」

 

フリーになっているのだ!

これで、壁山くんへのプレッシャーを減らすことができた。

空へ向けて大きくセンタリング。ペナルティエリア前で、二人は飛ぶ。

 

「やらせないコケェッ!!」

 

「えっ!?」

 

想定外のことが起きた。

鶏井が、必殺技の態勢を取った二人に追いついている。

向こうの底力も中々のものだ。

 

「壁山くん!」

 

「大丈夫・・・大丈夫・・・俺は、やるっス!」

 

自分にそう言い聞かせ、彼は大きくお腹を張った。

今まで、発射台の足場は肩に乗って行おうとしていた。それでは下を気にしてしまって連携をとることができない。

でも、上を向いて足場を変えれば。

 

「下なんて気にする必要ないんだ」

 

成長した。

今まさに、彼は自分を変えて見せた。

ブロックに入った鶏井は一段目のジャンプには届いたものの、

 

「ふっ!」

 

「コケ!?」

 

壁山くんのお腹を使って二段ジャンプをした修也くんには、もう届かない。

 

「これが俺の!」

 

彼だからこそできる、必殺技。

 

「イナズマ落としいいいいッッ!!」

 

そのシュートは、天から落とされた雷のように思えた。

 

 

 

******************

 

 

 

「ドラゴン・・・クラッシュ!!」

 

「ぐあああああッッ!!??」

 

蒼龍がGKを吹き飛ばし、ゴールへ。

 

『決まったああああ!!試合終了間際、染岡のシュート炸裂!3-0、雷門の追加点だああ!!』

 

この試合を通して、わかったことがある。

野生中は、フェイントに弱い。

思考が単調、と言えばいいだろうか。こっちへ避けるぞという誘いをかければ、面白いように誘導されている。

それを応用し、修也くんとドラゴントルネードを打つと見せかけて直接ゴールに叩き込んだ。

あ、因みに2点目は後半から影野くんと交代で入った半田くんが相手を撹乱してからの私のバックトルネードだよ。

半田くんもやるようになったねぇ。関心関心。

 

『そしてここで試合終了!勝ったのは、雷門中だああああッッ!!』

 

「よおおおしッ!!やったぞみんな!」

 

皆、円堂くんに駆け寄っていく。壁山くんなんて泣いてるし。

私?私もそうしたいけど、今回お礼を言う相手が一応いますからね。一応。

 

「ありがとね、応援来てくれて」

 

「おうよ!結構サマになってるじゃんか、高良さんと豪炎寺のチーム、みたいな?」

 

「これは、木戸川も負けていられないですね」

 

「このまま二人の関係も良い感じになったらいいのにな!」

 

「努くん?ちょおっと黙ろうか?」

 

暇さえあれば軽口叩くんだから。もう。

とはいえ、応援も力になっただろうし、少しは感謝してやろうじゃないか。

 

「んじゃ、俺らは行くよ。豪炎寺によろしく伝えておいてくれ。みたいな」

 

「りょーかい。今日はありがと」

 

観客席から三兄弟は立ち上がると、落ち込みムードな野生中サポーターに混じり、去っていった。

 

さて、と。ーーー大金星だよ!

強豪相手に、3点!

いやぁ、後半は皆良い動きができてたね。円堂くんにかかってた負担も徐々に少なくなってたし。

これはもう、帝国に勝て・・・ないね、うん。まだまだ敵わないと思う。

けど、近いうち絶対に、彼らに勝てるような実力をこのチームは身につける、そんな気がした。

 

「これで、他に新入部員が入ってくれたらまた面白いんだろうなぁ」

 

この時期にそんなこと起こらないか。土門くんは特殊だったしね。

でも、もし本当に入ってくれたら・・・、

 

 

それは、雷門中サッカー部に新しい風を送り込んでくれるはずだ。

 

 

 

******************

 

 

 

次の日。

 

「1年、松風 天馬。MF志望です!よろしくお願いします!」

 

「同じく1年、剣城 京介です。ポジションはFW・・・その、よろしくお願いします」

 

「チーッス!ウチ、菜花 黄名子です!GK以外なら、どこでもOKやんね。よろしくお願いしまーす!」

 

三人、良い感じの1年生が入った。

 

 

 

 




御影専農「は?誰こいつら」

引きこもりたい…!!さん、かぁびぃさん、お気に入り登録ありがとうございます!
引きこもりたい…!!さんは感想もありがとうございます。あと一人の非ログインの方も、ありがとうございます。
お礼言ってばっかだな・・・。今後とも、よろしくお願いします!


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第13話 796286

書き終わって思った。どうしてこうなった。
けど、後悔はしていない。だって、面白いからね!

kuroponさん、前回の誤字報告ありがとうございました。


朝、部室で冬海先生に彼らを紹介された。

新しく入る一年生だと。まさか本当に新入部員が来るとは。

しかも三人。

 

「では、後はよろしくお願いしますね」

 

いつもはシャクに触る冬海先生の喋り方も、嬉しさがまさって今はどうでもいい。

 

「ポジション志望するってことは、もしかして三人とも経験者?」

 

「はい。俺たち幼馴染みで、小さい頃からクラブに所属してたんです」

 

「剣城は帝国学園からスカウトがきたこともあるんですよ!」

 

「て、帝国から!?なんで行かなかったんだよ勿体無い!」

 

「・・・なんとなく、向こうのサッカーは性に合わないと感じました。実際、先輩方の試合見ててそう思いましたし・・・それに、こいつらとサッカーするの、好きなんで」

 

一見ヤンキーに見えて、意外にも純情な心の持ち主だった。

サッカー、本心から好きなんだろうなぁ。

 

「いくら帝国から良い目で見られてても、レギュラーの座はそう簡単に渡さないぜ?」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

染岡くんからのからかい混じりの忠告に、剣城くんは臆せずはっきりと返事をした。

何度も言うが、ここにきての新入部員は非常に有難い。

野生中に快勝した私たちは他校からマークされるだろうし、三人の存在は素直に心強い。

他にも、一年生だから元々いる後輩たちにも良い刺激になるんじゃないかな?

 

「あれ?でもなんで入学してからすぐに入部しなかったんだ?」

 

至極当然な、しかしそういえば忘れていた疑問を風丸くんが口にした。

 

「天馬と黄名・・・菜花が、入部届を無くしてたんです」

 

「机の中に眠っていました・・・クシャクシャで」

 

「置き勉はするものじゃないやんねー」

 

再発行とかして貰えばよかったのに。そこまで頭が回らなかったのかもしれない。それに、再発行頼んでもウチの顧問あの人だからなぁ。

きっと面倒臭さがって対応してくれないでしょ。

 

「兎も角、新しい仲間が増えた!次の準々決勝も、勢いを保って挑んで行こうぜ!」

 

「準々決勝って言っても、二回戦だけどな」

 

「この言い方のほうが燃えるだろ?勝とうぜ、次の試合も!」

 

『おー!!』

 

円堂くんの声に、皆が続く。

まったくウチのサッカー部の団結力は凄まじい以外の言葉が思いつかないね。

 

「ちょっと待った!」

 

しかしここで、私は皆に待ったをかけた。

 

「どうしたんでヤンスか?」

 

「んだよ、折角盛り上がってるのに」

 

「あの、非常に申し上げにくいんだけどね?」

 

『・・・』

 

「女子用の部室、倉庫でいいから欲しいなって」

 

『あー』

 

私の提案に、部員たちは納得のいった顔をしていた。

 

 

 

******************

 

 

 

さて、みんなに質問だ。

私は練習の始まる前、どこで着替えをしていると思う?

答えは簡単、部室近くの女子トイレだ。

私は部室でいいって言ったんだけど、修也くんやマネージャーの二人がダメだと言って聞いてくれなかった。

嫌なんだよなぁ、外トイレ。

臭いがアレだし、薄暗いし狭いし、酷評のオンパレード。

自分の物を置くロッカーも無い。

折角同じ女子の黄名子ちゃんが入部してくれたのだから、これを機に女子部室を設置してもらおう!

 

と、言うわけで夏未さんに直談判に来ました。

 

「不許可です」

 

・・・あれ?デジャビュ?

 

「不許可ですし、秒ですか」

 

「不許可ですし、秒です。・・・前にもこんなやり取りをした記憶があるのだけれど」

 

奇遇ですね、私もですよ。

 

「ん・・・だけど、私もサッカー部の一員ですし。時々使うことになるかもしれないわね。いいわ。先ほどの臭い暗い狭い以外の理由があれば、考えてあげる」

 

「えっと、スポドリとかおにぎりとか、今あの部室で木野さんと音無さんが作ってくれてるんです。でもあそこ、衛生的に・・・」

 

「・・・そうね」

 

汗水流した男子たちが出入りするものだから、控えめに言うと少々独特な臭いがする。

・・・もうはっきり言うね。

汚いの!

女子としての意見だけど、あれはないと思うんだ本当に!

剣道部の籠手の臭いを何倍にも薄めた感じの!

慣れてしまった自分が怖いよ!

 

「年頃の男子が出入りしているものね」

 

「はい・・・。あと、マネージャーの二人も結構汗かくんですよね。それで、今は夏未さん含めて五人になりましたから、着替える場所とかロッカーも欲しいな、なんて」

 

「ちゃっかり備品を要求してくるところ、抜かりないわね。ーーーいいわ。検討してあげる」

 

「ありがとうございます!」

 

「他に何か要望があれば聞いておくけど」

 

「あ、じゃあ新しいドリンクボトルに、お米炊く用の炊飯器。水道も外か中のどちらでもいいから設置して欲しいです。洗濯機も新型に変えてもらえれば。前に野球部のが古いのと交換してましたよね。新品のボールも何個か、大小のコーンもできれば、ドリブル練習で使いたいし。あ、言うの忘れてましたけどロッカーは鏡付きのにしてください。ーーー以上です!」

 

「要求の量が異常なのだけれど」

 

まぁいいわ、と苦笑いをしながら、夏未さんは提出書類に判子を押した。

え、いいの?ダメ元で色々言ってみたけど、やってみるもんだね。

 

「流石に高良さんの言ったままだと予算外になるので、コーンとかは陸上部から余っているのを取り寄せるようにします。洗濯機も、形式が新しい中古で構いませんね?」

 

「はい。いやぁまさか本当に受け入れてくれるとは思ってなかったので、ちょっと驚いてます」

 

「ふふ。私がここまでやったのだもの。次の試合も、楽しみにしているわ」

 

訳:負けたらただじゃおかないわよ。

 

目が笑ってない。

で、でも勝てばいいんだし!二回戦で負けなければいいんだし!

 

「あ、そういえば次の対戦相手のこと、高良さんは知っていて?」

 

「え?い、一応は・・・シード校だったので、名前だけは知ってます。御影専農でしたっけ?」

 

あまり聞いたことのない学校なんだよなぁ。

正式名、御影専修農業高校附属中学校。農業の学校なんだね。

抽選でラッキー引き当てた運の良い中学校、っていうイメージ。

 

「音無さんに調べてもらうといいわ。彼女のことだから、もう手をつけてると思うけれど」

 

「私から聞いてみますよ。夏未さん、今日部活来ます?」

 

「ええ。どうかしたの?」

 

「いえ、練習にあまり顔出せてないから、今日はどうなのかなぁと思って。きっと、みんな嬉しがりますよ」

 

「・・・貴女の裏表のないとこ、私好きよ」

 

夏未さんはそう言って笑う。

そこからはただ、資料に押す判子の音だけ鳴り続けた。

 

 

 

******************

 

 

 

後日設置されたピカピカの女子部員用倉庫を見て、男子たちからブーイングが飛んだ。

 

『女子だけずるいぞ!』

 

「じゃあおにぎり抜き」

 

『すいやせんでした!!』

 

まさに鶴の一声。やるな木野さん。

 

人数が増えた訳なので、赤白に分かれてやるミニゲームがすごく楽しくなった。

 

「天馬くん、いくよー!」

 

「はい!」

 

因みに、チーム分けはこんな感じ。

 

赤: 円堂、高良、染岡、宍戸、松風、壁山、影野

 

白:豪炎寺、剣城、半田、風丸、土門、栗松、少林、菜花、目金

 

修也くんのチームにはGKがいないので、多めの9人にしてるよ。

 

「よっと!」

 

私からのパスを受け取り、ぐんぐん攻め上がる天馬くん。

栗松くんと風丸くんのブロックが入るけど、軽やかなドリブルで躱していく。まるで、ステップでも踏んでいるかのように。

 

「やるな、あいつ」

 

「だね」

 

修也くんの評価に、私は頷いた。

伊達に経験者やってないね。無駄な動きとか少ないし、こりゃ他の一年生焦るぞー。

 

「キラースライドッ!」

 

「うわぁ!?」

 

なんて話してたら、先輩げもなく土門くんがボールを奪った。

 

「うぅ、土門先輩・・・」

 

「へっへーん、後輩にこれ以上好き勝手やらせねーぞー?」

 

「土門くん大人げなーい」

 

「先輩の威厳ってやつだよ!ーーーで、さぁ」

 

「ん?」

 

「あれ、どうにかならねぇ?」

 

土門くんの指差す方向、河川敷のグランドを一望できる橋の上。

そこには、私達の練習を見るためにギャラリーが集まっていた。

確かに、やりにくよね。

 

「俺たちも、応援されるぐらい有名になれたんスね・・・」

 

「まぁ、強豪に3点差つけて勝てば嫌でも注目するだろうぜ」

 

その前の帝国戦、尾刈斗戦のこともあるだろうけどね。アレは練習試合だったから、ガセって思う人が多かったんだろうけど、野生は公式試合だったからこれだけの観客が来るのはうなずける。

いや、観客じゃないか。

 

「違う中学の制服が、いくつもいくつも」

 

「他校にもファンがいるのか」

 

「違う。どれも強豪の制服だ。奴ら、俺たちの偵察に来ている」

 

『えええええぇぇえええ!!??』

 

良くも悪くも、今大会のダークホースとして我ら雷門中は他校からの注目の的、という訳だ。

おぉ、よく見たら帝国のジャージもいる。

 

「お、なんか来たぞ」

 

堤防を沿ってやってきたのは、大型トラック二台。

それらは止まると、何やら荷台のカーゴを開いてパラボラアンテナを展開。

アレ、必要?

そしてなんか二人ぐらい変な人出てきたんだけど。

 

「トゲトゲやんねー」

 

「身長でかいな、あのトゲトゲ」

 

「あの人達、次の対戦相手の御影専農ですよ!偵察に来たんでしょうか・・・?」

 

あんな大層なモノ用意してくるくらいだから、そりゃそうだろうねぇ。

 

「必殺技の特訓、無理そうだね」

 

「下手に使ってパターンを読まれるのも避けたいしな」

 

「よし、じゃあシュート練でもしようぜ!DFのみんなも、たまには打ちたいだろうしさ!」

 

「シュート打ちたいでヤンス!」

 

「ウチもウチも!」

 

DFからすごい支持だな。いつも守り、ご苦労様です。

黄名子ちゃんはこれから頑張ってね。期待してるよ。

 

 

 

******************

 

 

 

で、何人かでローテーションしてシュートを打っていました。

なんで過去形かというと、御影の人たちがグランドに入ってきて練習が中断になったから。

 

「他校の練習に割って入るなんて非常識だぞ!」

 

ん?私に言ってる?いや、ちゃんと木戸川には二階堂監督に許可もらってるし。

それよりも煽り散らかす三兄弟が非常識だと思います!

 

「なぜ、必殺技の特訓をしない?」

 

口を開いたのは、トゲトゲ頭の・・・音無さん曰く、GKで御影キャプテンの杉森さん。

 

「どうせ隠しても無駄だ。君たちのデータは全て調べ上げている」

 

傍にいるのは、エースストライカーの下鶴くん。

 

「次の試合、君たちの勝つ確率は1%にも満たな・・・そこの3人、初めて見る顔だ」

 

杉森さんは最近入部した一年3人に興味津々のようだ。

 

「そんなことはどうだっていい。勝つ確率が1%?勝負はやってみなくちゃわからないだろ!」

 

「勝負?はっ、何を言い出すかと思えば。これは単なる害虫駆除作業に過ぎない」

 

プチッ

 

「害虫!?」

 

「き、聞き捨てならねぇ!俺が追い出して」

 

 

 

「ねぇ」

 

 

 

シン、と周囲が静まり返り、皆が私を見た。

今、彼は何と言った?

がいちゅう、ガイチュウ・・・害虫、そう仰ったか。

 

「た、高良先輩」

 

「優梨ちゃん・・・」

 

いきなり出てきてこちらの悪口と来ましたか。

そうですか。わざわざ貶しにきたんですか。

私は自分よりも数cmは背が高いであろう下鶴くんの前に立った。

 

「取り消して、今すぐ。そうすれば今の君の失言、忘れてあげる」

 

「事実を言ったまでだ」

 

「・・・むぅ」

 

「やめろ優梨」ペシッ

 

「あうっ」

 

後ろから修也くんに頭叩かれた。痛い・・・。

 

「な、なにすんのさ」

 

「試合前に問題起こそうとしてどうする。こういうのは、放っておけばいいんだ。さっきの借りは試合で返せばいい。みんなもそれでいいだろう?」

 

修也くんの冷静な判断、これには雷門イレブンの面々も同意。円堂くんなんかはプルプルして怒りを堪えてるけど。

 

「ということで、だ。お引き取り願おう」

 

「ーーーふむ、そちらの三人のデータを取りたかったが、今日は引き上げるとしよう。いくぞ、改」

 

「はい」

 

残念といった感情も見せず、こちらに背を向けて去っていく二人。

だが、私の心はまだ煮え滾ったまま。言われっぱなしで終われるか!

 

「そんなにデータデータって拘るんなら、私のスリーサイズくらい言ってみやがれええええええええ!!!」

 

「・・・!?おい、優梨!」

 

修也くんの制止の言葉など届かない。言ってやったぞ!私は言ったぞ!

すると、二人は一度立ち止まって顔を見合わせた後、杉森さんが頷いた。何か、下鶴くんにOKを出すかのように。

彼はスッと息を吸いこむと、それこそ橋の上で偵察している人達にまで聞こえる大声で、とんでもないことを言ってみせた。

 

「ななじゅうきゅうろくじゅうにはちじゅうろくううううううう!!!!」

 

「ぴやあああああああっっっ!!!???」

 

い、いいいい言いおった!マジで言いおったあの赤髪!

 

「ひゃくごじゅう、さんじゅうきゅううううううううううっっ!!!」

 

「いやああああああ!!!体重はいやあああああ!!」

 

「見事に返り討ちにあってんじゃねえか!?」

 

前哨戦は、私一人の完敗で終わった。

 

 

 

******************

 

 

 

「う、うぅ・・・うぇぇ・・・」

 

「優梨ちゃん、お水飲む?」

 

「飲むぅ・・・」

 

彼らが去った後、私は大泣き。精神的にとんでもない傷痕をつけていきやがった畜生。

お、お母さんにも知られたことないのにぃ・・・。(知られてます)

一番悲しいのは、修也くんに聞かれたことだよぉ。

 

「あ、あの高良さんが・・・」

 

「撃沈・・・」

 

「79・・・はぁ。ウチは・・・」

 

「おまえもそこそこダメージ負ってんなオイ」

 

上ジャージを頭に被されて木野さんの膝を枕にしてもらってます。至福のひととき。

 

「しかし、まさかそこまで詳しく分析されていたとはな・・・」

 

「俺たちの必殺技も、研究されてるって考えた方がいいな」

 

私の教訓を生かして、皆が今後に関して思考を張り巡らせている。私の犠牲は無駄じゃなかったんだね!

 

「じゃあ、新必殺技だ!前のイナズマ落としみたいに、また秘伝書を頼りに・・・」

 

「ここで練習してたら、普通にバレちまうぞ。どこか人気のない場所じゃないと・・・」

 

「そんな都合の良い場所あるわけ」

 

 

 

「あるわ」

 

 

 

『・・・!?』

 

堤防の上でサッカー部を見下ろす、一つの影。

喋り方といい綺麗な長い髪といい、言わずもがな、夏未さんだ。

 

「場所は学校の地下。かつて伝説に名を馳せた、貴方達の目指すイナズマイレブンの使っていた修練場・・・」

 

その名も、

 

「イナビカリ修練場よ!」

 

 

 




優「私はシリアスに負けて、ギャグでも負けたんですよ」

豪「災難だったな」

優「で、でも今は80くらいあるし!」

下鶴「ふむ、データ更新」

優「いやあああ墓穴掘ったああああっっ!!」

優梨は二度死ぬ。

暁の教徒さん、RipoDさん、黒鉄さん、お気に入り登録ありがとうございます!

次の投稿は11月になってからとなります。


追加: 志ノ乃さん、誤字報告ありがとうございます。
追加2: みなてぃーさん、誤字報告ありがとうございます。


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第14話 開花

バーに色がつきました。
評価してくれた方々、ありがとうございます。

優「・・・納得いかない」

豪「どうしてだ?めでたいことじゃないか」

円「もっと素直に喜べって!」

優「・・・だって」

豪、円「?」

優「私のスリーサイズで赤色もランキングもとったようなものじゃんうわあああああん!!!」

下鶴「結局、皆『えちち』というやつが好きなんだな」



 

あれからどれくらいの時間が経っただろうか。

 

「・・・っ、・・・ッ!」

 

声にならない悲鳴、嗚咽が私の口から溢れる。

体の感覚はとうに薄れ、目も霞んできた。

ただただ辛い。痛みは、そこまでしない。

ひたすらに追ってくる『何か』から、進む先で待ち受ける障害を乗り越えながら逃げ続ける。

後ろから迫る驚異に怯え、何度も心が折れそうになっても足を止めることだけは絶対にしなかった。

ーーーそして、

 

『ビィーーーーーーーッ』

 

終わりを告げるブザーが鳴り響き、

 

「お、終わった・・・」

 

私は、その場に倒れ伏した。

 

 

 

******************

 

 

 

バシャッ

 

「うあっぷ」

 

いきなり頭から水をぶっかけられた。

鼻に入って痛い・・・夏のプールを思い出す。

 

「起きたか」

 

犯人は修也くん。手にはバケツが握られている。

周囲を見渡すと、ほとんどの部員が私と同じ状態だった。

 

「どのぐらい、寝てた?」

 

「ほんの数分だ。寝てた、というより気を失ってたの方が正しい」

 

夏未さんに紹介された、かつてイナズマイレブンが使っていたとされる練習場所。

通称、『イナビカリ修練場』。

御影専農との一件からすぐに案内され、入ってみれば・・・例えるなら、地獄かな。

 

「持久力無限のロボットに追い回されるって、私の人生3つ目のトラウマだよ・・・」

 

「前の2つは?」

 

「帝国にボコボコにやられたのとスリーサイズばらされた件」

 

「結構最近だな」

 

2つ目に関してはついこの間だしね。ホント下鶴くん許すまじ。

 

「明日はいよいよ試合だ。ここでの練習の成果を存分に出せるよう、頑張らないとな」

 

「うん。・・・ちょっと、起こして」

 

ヤバイ。足に力が入らない。

精々両手をバンザイするので精一杯だ。

仕方ない、と修也くんは私の両手を掴んで・・・いや、え、ちょっ、

 

「ひゃっ」

 

「軽いな」

 

勢いよく引っ張り上げられ、彼の懐に収まった。

 

「ちゃんと食べてるか?・・・このまえ、奴らが言ってた体重じゃ確か」

 

「皆まで言わないで・・・!しょ、しょうがないでしょ?太りにくいんだから」

 

「全国の女子が聞いたら嫉妬しそうな発言だな。ーーー優梨にとっては違うけど」

 

大丈夫、わかってると修也くんは頭を撫でてきた。

・・・こういうところで、夕香ちゃん想いが出てるんだよね。え、ということは私、仲の良い兄妹としか思われてない?

 

「校内に練習場があって助かったな。他にあったら流石に途中で力尽きる。・・・さっきからぶつぶつ何言ってるんだ?」

 

「い、いや、ちょっとこれからの算段というかなんというか」

 

「予選のことか?真面目だな、やっぱり。ーーーよっ」

 

「え、え?」

 

おんぶされた。

大事なことなのでもう一度言う。

修也くんに、おんぶされたっ!!

で、でもこれは恥ずかしい。中学生にもなっておんぶはちょっと・・・。

 

「どうせ動けないだろ。女子部室まで運んでやる」

 

「い、いいよ!修也くんだって疲れてるんだし」

 

「問題ない。羽みたいだ」

 

・・・っ!

こ、この人はまったく・・・!

 

「おまえのおかげなんだ。小学校の頃、俺が優梨を上に連れていくなんて事言ったけど、一度は辞めた身だ。そんな俺を、あの技が・・・優梨のバックトルネードが思い出させてくれたんだ。あの日の努力を、情熱を」

 

「修也くん・・・」

 

「改めて、ありがとう優梨。感謝しても仕切れない。俺は人生で、最高の相棒をもったよ」

 

「・・・」

 

「優梨?」

 

ーーーや、やややややヤバイ!心臓がさっきからバックバクなんだけども!?体の感覚なかったのにもう色々と熱い!

 

「あわわわわわわわ」

 

「ん?なんか鼓動早くないか?熱でも・・・」

 

「な、なんでもない!ほら、前見て歩く!レッツゴー!」

 

「・・・?ああ」

 

それから私は、自分の動揺が悟られないよう心がけた。

 

 

 

******************

 

 

 

「自転車が重いぃ・・・」

 

現状、ペダルを漕ぐより押す方が楽だと気づいた私は、疲れ切った体に鞭打って家への帰路についていた。

なんでこんなに遠いんだよぉ。

坂くんなー。

 

「お腹空いたぁ」

 

いつもなら帰りに雷雷軒によって軽く一杯(ラーメン)やっていくんだけど、今日は商店街まで行く気力も沸かない。

キツい。ただひたすらにキツい。

足に重りがついてるのかってくらい前に進まない。足取りがほぼゾンビ状態だ。

 

「早く家帰って昨日録画したレアルを・・・ん?」

 

坂を登り切って直ぐの電柱に、誰かが腕を組んで背を預けていた。

身長は私より10cmはあるかな。赤いジャケットに、上でまとめられたドレッドヘア。一番目立つのは・・・青い、ゴーグル。

 

「お久しぶりだね、鬼道くん」

 

帝国学園キャプテン、鬼道有人。

なんで彼がここにいるのだろうか。

 

「家、こっちなの?」

 

「いいや、単純に雷門の偵察に来ただけだ」

 

うおぅ、真正面から言ったよ。

でも、主将自らとは驚いた。

 

「最近河川敷でお前達を見ないからな。サボっているかと思えば・・・その様子じゃ、練習は怠っていないようだな」

 

「ボロボロだけどね」

 

ロボットに追い回されたり、ボールが四方八方から飛んできたり、本当にサッカーの練習をしてるのかって思うくらいデタラメな内容。思えば、ちゃんと必殺技を打ったのは何日前だっただろうか。

 

「明日は試合だろう。オーバーワークが過ぎるんじゃないか?」

 

「これくらいしないと、40連覇の帝国学園には1点も入れられないですよーだ」

 

「フッ、そうか」

 

あ、鼻で笑ったぞこの人。

 

「ま、まぁ?まだ余裕あるっていうか?別にこのくらい疲れてもいないし!」

 

「・・・ほう」

 

ちょっとムカついたから見栄貼っちゃった。

本当は今直ぐにでも帰ってシャワー浴びてからソファでぐでりたい。

 

「であれば、おまえがどれ程腕を上げたのか確かめたい。ーーーまだ時間はあるな?」

 

「ある、けど・・・」

 

「ちょっと待っていろ」

 

言ってから鬼道くんは、誰かに電話をし始めた。

最初は後輩か誰かに『今日の報告はしなくていい。明日に備えておけ』と。

次に『袴田、車を用意してくれ。リムジンではなく、後ろにママチャリが積めるやつだ』と。

・・・ん?車?リムジン?

 

数分で、鬼道くんが呼んだ車が来た。

その間の沈黙が相当気不味かったよ。だって何考えてるかわからないから話題の出しようがないんだもん。

 

「お積みします」

 

「あ、はいどうも・・・」

 

袴田さんという執事の人に自転車を積んでもらい、私は鬼道くんと共に後ろの席に乗る。

 

「ど、どこに行くの?」

 

「実力を見たいと言っただろう。まぁ着けばわかる」

 

不安な私を置いてけぼりにしながら、車は発進した。

 

 

 

******************

 

 

 

で、着いたのが。

 

「・・・えぇー」

 

ゲームのラスボスがいそうな城的な外観、黒を基調として所々にある赤色が建物を這えさせている。

足元に敷かれた、レッドカーペット。

 

「どうした、降りろ」

 

「い、いやでもここって・・・」

 

「・・・?俺の学校だが」

 

俺の学校って・・・、

 

(帝国学園じゃんかッ!!!)

 

なんで、どうしてそうなった!?もっと場所はあったでしょうに!

というか私は馬鹿か?なんで自分の手の内曝け出すために敵陣乗り込んでんだよ。折角イナビカリ修練場で隠れて練習したのに。

 

「自転車はその辺に置いておけ。盗難に関しては安心しろ、監視カメラもある」

 

なんで一般校が監視カメラ配備してるの。そもそもその予算はどこから来てるの。

 

「ついてこい」

 

「・・・はーい」

 

道中、十字橋の下にサッカーグランドがあったり生徒さんに会う度に敬礼された。

帝国学園って優秀な成績を収めたエリートしか入れない、なんて話だけど本当そうだ。

 

「いいなぁ、芝生」

 

「俺はおまえ達の使っている土のグランドが恋しいがな。・・・ここだ」

 

メタリックな自動ドアが開かれ、目の前に広がったのは橋の上から見た芝生のグランド。

そこでは前に雷門に来たレギュラーメンバー達が練習に励んでいる。

 

「すごい。練習量も、わかってたけどレベルも数段上だ・・・」

 

「雷門も野生中の試合では良い動きだったぞ。まさか、高さには高さをぶつけるとは思わなかったが」

 

「円堂くん理論」

 

「・・・なるほど。やはり『バカ』、というやつか。ーーー集合!!」

 

ククッ、と笑ってから鬼道くんは普段の見た目とは想像がつかない大声を張り上げた。

皆、ピタリと練習をやめて主将の元へ集まってくる。

 

「お疲れ様です、鬼道さん。・・・?そちらは、雷門の?」

 

敬語で鬼道くんに対応するのは、MFの辺見くん、だったかな。

 

「ああ。小一時間ほど、こいつを加えて練習する。俺も入るぞ」

 

『はい!!』

 

まぢですか。(ぢはわざと)

よく帝国の人たちもOK出したな。

 

「あの、その・・・よろしくお願いします」

 

『・・・』

 

うぇ・・・めっちゃ睨んでくるよぉ。

さっきした返事の元気はどこいったんだよぉ!

 

「なんで敵を招いたんだ?これじゃあ帝国の情報を提供するようなものだ」

 

「なにか考えがあるんだろう。鬼道さんのことだ、きっと俺たちには想像もつかないことを企んでるんだ」

 

絶対違う。

さ、さては私の見栄に気付いているなあのゴーグルめ・・・。

 

「ルールは簡単、俺とこいつの二人で、ハーフラインからスタートして10人を相手する。ボールを奪えばおまえ達の勝ち、シュートを決めれば俺とこいつの勝ちだ」

 

「2対10って、無理でしょ」

 

FWツートップのみで全員が戻り切ってる相手陣内に攻め込むようなものだ。

 

「問題ない」

 

聞いちゃいない。

 

「・・・じゃあ、着替えてくる」

 

「ああ」

 

 

 

 

******************

 

 

 

「気持ち悪い・・・背中ペトペトする」

 

汗かいたユニフォームにまた袖を通すことになるなんて。

来るのに通った廊下を歩きながら、私は悪態をついた。

早く脱ぎたい。

 

「それにしても、更衣室まであれだけの設備が整ってるんだなぁ」

 

新しく夏未さんが設置してくれた女子部室よりすごい。細部までお金かけてる感がした。

やっぱりサッカーで名を馳せてる学校は関連設備にも気を使ってるんだろうね。

 

「なぁ、あんた」

 

「む?」

 

不意に、声をかけられた。

大人の声ではなく、少年の声。

誰かと思い声の主の方を向くと、そこには結構インパクト強めな人が。

 

「そのユニ、もしかして雷門?鬼道クンが連れてきた女子生徒ってあんたのこと?」

 

「そう、だけど」

 

「へぇ。最近強いって聞くぜ?なんでも、地区決勝常連の野生中を3-0で敗る快挙を為し得たとか」

 

キリッとした三白眼、着崩した帝国学園の制服に、黒髪に入った白いメッシュ。そして、

 

(バナナだ)

 

「俺も1ヶ月前の練習試合に行く予定だったけど、調整が間に合わなくてな」

 

この人もサッカー部なのか。

なんか、特徴的な人が多いな帝国。

 

「決勝で待ってるぜ?ま、その前に目先の二回戦で負けないよう努めろよ」

 

「ご忠告どうもー」

 

軽く流し、私は彼の横を通り過ぎた。

 

 

 

 

 

 

「あれが、高良優梨か」

 

一人残された少年は、少女の名を口にしていた。

 

「オフェンス、ディフェンス、トラップ、パス。どれをとっても人並み以上に熟す。特にオフェンス、豪炎寺修也との連携を主軸にした攻撃が主・・・チッ、気にいらねぇ」

 

舌打ちをする少年の表情は、

 

「テメェのサッカーはどこにあんだよ」

 

酷く、怒りに満ちていた。

 

 

 

******************

 

 

 

「では、始める」

 

赤マントの帝国ユニフォームに着替えた鬼道くんと並ぶ、雷門ユニフォームの私。

彼からのパスでゲームは始まった。

 

「仕事ならほぼ残業だよこれ・・・」

 

「ぐだぐだ言うな。いいか、ウチのDFは全国でもトップクラスと言っていい。それを突破するにはまずゴリ押しではダメだ」

 

「はいはい、パスを回せでしょ?」

 

「そういうことだ」

 

ーーーよし、いいこと思いついた。

普通はとれないキラーパスだしてやろう。そうしよう。

 

「よっ!」

 

「ナイスパス」

 

・・・普通にとられたし。涼しい顔で。ムカつく!

 

「相手が鬼道さんでも、容赦しないですよ!」

 

素早いチェック、迫る帝国の面々を鬼道くんは軽々と躱していく。

ターン、また抜き、ループフェイント、それらを確実に、鮮やかに決め、相手のブロックを無力化。

 

「ワンツーだ!」

 

「・・・っ!」

 

なんとか反応。さっき私が出したパスの数倍は速いボールだった。

修練場での練習で疲れてるってのもあるけど、連携に合わせるのに精一杯だ。

 

「合図をしたら走れ!・・・そこだ、サイドチェンジ!」

 

「ええっ!?」

 

二人しかいないのにサイドチェンジ!?無茶苦茶だよ、届くわけないじゃん!

 

「・・・ああもう!」

 

「そこだ!」

 

突然の右サイドから左サイドへの切り替えにより、相手は呆気に取られるばかり。

でも、出されたボールに追いつけなきゃ意味は・・・。

 

「あれ?」

 

足に、すでに収まっている。

こんなに、私速かったっけ?

 

「そのままドリブルしろ!」

 

「う、うん!」

 

右に選手が集中していたから、左は層が薄くなっている。これなら私一人でも突破可能・・・できないよ!?

何言ってんの!?パスを細かくしろ、って言ったのは君じゃない!

 

「アースクエイクッ!」

 

「・・・ッ!」

 

必殺技だ。地面に全体重を打ち付けて放つ衝撃波。

それを・・・私は・・・、

 

「スプリントワープ」

 

瞬間的な加速で、衝撃波が出される前にDFを突破していた。

 

「なに!?」

 

「え、え、え?」

 

何が起こっている?技のキレが以前と別格だ。

 

「そのまま打て!必殺技を!」

 

鬼道くんからの指示。

私はそれに応えるように空中へ飛んだ。

蒼い炎、修也くんの技とは逆の回転による螺旋。

ゴールを見ると、GKの源田くんが私を見据えて必殺技の体制に入っていた。

同時に、私は思った。

 

(ジャストミート(あ、これ入る))

 

「バック・・・トルネードッ!」

 

技の銘と共に打ち出された己の必殺。

未だかつてない速さと威力を誇るそのシュートは・・・、

 

「・・・な」

 

相手が体を動かすよりも先に、ゴールネットを揺らした。

 

「あ、あれが・・・先月見た、奴の同じ必殺技だと?」

 

ゴールラインを割ったボールを、信じられないという表情で見つめる源田くん。

ーーーいや、自分で自分が、なんであんなプレイを出来たのかがわからない。

 

「源田から・・・」

 

「あんなに、あっさりと・・・」

 

帝国イレブンも、同じ感情を持っているらしい。

ただ一人を除いて。

 

「高良」

 

鬼道くんが、唖然としている私に近づいてくる。

今までおまえやこいつとしか言っていなかったのに、なぜか名前で私を呼んでいた。

そして、次に彼の口から出た言葉に、私は一層呆気にとられることになった。

 

 

 

「おまえ、帝国に来るつもりはないか?」

 

 

 




氷花(旧:峰風)さん、yukkuriseiさん、reisumwさん、kaede0110さん、そこら辺のAC乗りさん、wanwantaroさん、ryuchiさん、Arthurさん uytrewqさん、七夜遠野さん、フリュード、那桜姫さん、枕魔神さん、ポテト野郎さん、モサリッシュな人生さん、チャンバランさん、ネオグラ@ステラ姉ぇ大好き!さん、あたかなさはやまにさあたやはさたさん、秋刀魚ブレードさん、藤恭さん、ぷう助さん、bot Aさん、カオマッカォさん、Rayetさん、狐狗狸堂さん、yypkmnさん、ライダー厨さん、さん、お気に入り登録ありがとうございます!

志ノ乃さん、みなてぃーさんは誤字報告、有り難いです!

いやぁ・・・まさか40人近く増えるとは思ってもみませんでした。
これからも、本小説をよろしくお願いします。
あ、孤高の反逆児くんはアレス仕様のマイルドさになっております。

次回更新は、11/9を予定しています。


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第15話 忠告

予告通り投稿!
国家試験無事終わりました〜。これで心おきなく書けます!


14話NGシーン

優「・・・ちょっと、起こして」

豪「おう」両足掴んでズザーッ

優「あばばばば!!??」

豪「疲れてるだろ?部室まで運んでやるよ」

優「地獄!?」




待ちに待った試合当日。

雷門イレブンは、対戦校の御影専修農業高校附属中学校に来ていた。

 

「・・・本当に農業の学校かよ」

 

「俺、トイレ行ってくるっス!」

 

「こんなところで試合できるなんて、俺楽しみです!」

 

大型のアンテナがいたるところに設置されており、グランドの整備具合も野生中とは大違い。

その光景を見て驚きを隠せない者、恐怖でトイレをせがむ者、経験したことないフィールドに心躍らせる者と様々だ。

 

「みんな、着替えてすぐアップにかかるぞ!」

 

「あれ?キャプテン、高良先輩は?」

 

「高良なら・・・ん?あいつ今どこいるんだ?」

 

「優梨なら、少し遅れるらしい。なんでも知り合いが来ているとか言ってたな」

 

「知り合いって、前来てた三兄弟か?」

 

「いや、あいつらも今日試合だ。違う奴だと思うが・・・」

 

 

優梨に、サッカー関係以外の友人がいただろうか。

 

 

別に貶しているとか、そういうことではない。

だが小学校の頃も、今いる中学校でも、彼女がサッカー部以外の生徒と話をしているところを、豪炎寺は見た試しがなかった。

遠方からの知人なら納得いくが。

 

「試合には間に合うだろ。高良はそういうやつだ」

 

「だな」

 

 

 

******************

 

 

 

「本当に、俺の提案を飲まないのか?」

 

御影専農校門前、私は鬼道くんと対面している。

昨日の練習で彼に出された案を、私は即行で却下した。

なぜか?確かに設備整ってるしレベルも高いし、より上を狙うなら帝国に行ったほうがいいだろう。

 

「うん。私、雷門のサッカーが好きだからさ。今はこのチームで優勝を狙いたいんだ」

 

「優勝とは、大きく出たな」

 

けど、雷門には帝国にはないポテンシャルを秘めている。先ほど言った、優勝を狙えるぐらいにすごい可能性を。

 

「おまえが入れば我が校の勝利は確実になる。そう断言できる実力を高良、おまえは持っているんだぞ?」

 

「あはは、そんな褒めても何も出ないよ。昨日はただ調子が良かっただけだろうし、君が望むような技術や力なんてわたしにはないよ」

 

それじゃあ試合あるから、と彼の横を通り過ぎようとして、

 

「技術目的というのは、建前だ」

 

私は足を止めた。

 

「・・・どういうこと?」

 

「雷門は円堂を起点とした全員で繋ぐチームサッカーだ。これまでの試合を見るに、実力不足を信頼関係で補っている。だが高良、おまえは違う。チームのために追力しているのは分かるが、それは試合に勝つためか?そのための努力か?」

 

「そ、そりゃそうでしょ」

 

「いいやそうじゃない」

 

彼は私の首肯を否定し、目前まで迫る。

 

「勝つ、負けるはおまえの中では二の次だ。第一に考えてるのは『役に立つこと』。皆のためでも自分のためでもない。考えてはいるだろうがそれさえも二の次、たった一人に自分という役割を注いでいる」

 

「・・・?」

 

どういうこと?私、結構自分勝手なところあるけど。

 

「言われた今でもまだ自覚はないだろう。だから、ここが分岐点だ。自身が気づいて破綻する前に、帝国に来い。雷門に原因があるならば、そこから遠ざけさえすれば自然にその考えも薄れる」

 

「い、いきなりそんなこと言われても困るよ。私は雷門が好きだし、離れたくない」

 

本心からの言葉を告げた。

今更何を言わせるつもりだ。私は、このチームで優勝したいんだ。

 

「・・・そうか。だが、今は成り立っているがこの先、何かがキッカケでどこかで躓き、浅くない傷を必ず作るぞ。ーーーもしかしたら」

 

今日の試合かもな。

 

そう言い残し、彼は観客席のある場所へ去っていった。

取り残された私は、

 

「私は、雷門が好き」

 

自分に、

 

「雷門のみんなが好き」

 

そう、

 

「ーーー修也くんが、好き」

 

言い聞かせ、グランドに向かう。

 

最後の囁きが、鬼道くんの言った破綻のピースだと知らずに。

 

 

 

******************

 

 

 

なぜ、ここまで彼女に固執するのだろうか。

会って間もない、他校の生徒に。

 

「で?どこからどこまでが建前なんだよ、鬼道クン」

 

鬼道を待っていたかのように、不動は壁に寄りかかりポケットに手を突っ込んでいた。

 

「聞いていたのか」

 

「そりゃもうバッチリと」

 

「・・・さぁな。思えば、途中からムキになっていた」

 

「アレ、捉え方によっては告白みたいだな!」

 

ケラケラと茶化す不動に、鬼道は何も言い返さない。

 

「・・・え、マジ?」

 

「そんなわけないだろう」

 

「いやでも、返答遅れてたし」

 

「考え事だ。なぜ俺はあそこまで執拗に忠告していたのか、とな」

 

帝国の仲間ならいざ知らず、敵になぜあのような事を言ったのだろうか。

 

「存外、惚れていたりするのか?俺は」

 

「聞いてる時点で無いと思う。ま、そんなことは置いといて、偵察いこうぜ〜」

 

話題をふったのは不動であろうに、彼は話を切り上げてゆっくりと観客席に向かう。追いながら、鬼道の頭にはとある光景が浮かんでいた。

高良優梨と、正面から話した時のこと。

雷門との練習試合、初めて言葉を交わした時。

 

『1点、決めるよ』

 

真っすぐに放った宣言と、蒼炎を纏って空を制する彼女の姿。

あの時は、体が動かなかった。

目に映る光景に、心を奪われた。

違う。光景ではない。高良優梨に、一瞬ではあるが感覚を支配されていた。

 

「もしかしたら俺は、あの芸術とも言える少女が壊れるのを、見たくないのかもしれないな」

 

「なぁんか言った〜?」

 

「いいや」

 

誰かが言った。芸術は爆発だと。

高良優梨を待ち受けているのは、華々しい栄光かバッドエンドか。

彼女の未来が絶望で染まらぬ事を、鬼道は純粋に願う。

 

試合が、始まるーーー。

 

 

 

******************

 

 

 

 

『間もなく、フットボールフロンティア二回戦、雷門中vs御影専農の試合が始まろうとしています!実況はお馴染み、角間圭太がお送りします!』

 

フォーメーション F-スリートップ

 

FW:高良、染岡、豪炎寺

 

MF:松風、半田、松野(マックス)

 

DF:風丸、栗松、壁山、土門

 

GK:円堂

 

ベンチ:宍戸、影野、少林、目金、菜花、剣城

 

こうして見るとウチも部員が増えたねぇ。

今までのフォーメーションはF-ベーシック、F-デスゾーン。どちらもツートップの陣形だ。

御影は私たちのこれまでの動きを全て掌握した上でこの試合臨んでくる。

なので、フォーメーションに多少ではあるが工夫を加えてみた。

4-4-2から4-3-3へ。

で、メインは勿論・・・、

 

「お、俺がスタメンですか!?」

 

御影にデータが無い、天馬くんをMFに起用することだ。

サイドバックの風丸くんが突破をはかるのが今まで。今日の試合はそれが読まれていた場合の戦法を考えておいた。

突破力、キープ力に優れた天馬くんを左サイドに配置すれば、データの無い選手ということもあって相手の戸惑いも増すはずだ。

 

「君のいる左サイドが攻略の鍵だね」

 

「俺にできるかな・・・」

 

「上手くしようとするなよ。楽しんでいけ」

 

「は、はい!」

 

うむうむ、元気があってよろしい。

勝負が劣勢になったらこれまたデータのない剣城くんと黄名子ちゃんを後半に投入すればいい。

 

「そういえば、向こうはどんなサッカーをするんだろうな」

 

「音無さん、データある?」

 

「シード校なので特には・・・。でも、三年の杉森威はGKになってから1点もゴールを決められたことがないらしいです」

 

「それならこっちにも、2試合連続無失点の男がいるだろうが」

 

染岡くんが円堂くんの背中を叩く。

チームの士気力向上を図ったんだね。

 

「ゴールは任せとけ!みんなは点、入れてくれよ?」

 

『おう!』

 

んじゃ、勝つとしますかね!

 

 

 

******************

 

 

 

「・・・」

 

「ぬぬぬ・・・」

 

私のポジションはFWだ。

始める前に敵と向かい合うのが一番近い場所にいる。

それすなわち、

 

「スキャンの結果が出た。おまえたちの勝つ確率が30%に上昇・・・エラーか?」

 

御影のエース、下鶴くんが目の前にいるということだよ!

 

「一応聞いとくけど、河川敷で会った時は?」

 

「0.796286%だ」

 

「喧嘩売ってるでしょキミッ!?」

 

「冗談だ」

 

この人冗談言えたんだ・・・。

 

「ついでに言うと、おまえの体重も5g程増加しているな」

 

「いらぬお節介だよ!?というか、一瞬で計測できるとかその機械なんなのさ!?」

 

「我ら御影の科学技術の結晶だ」

 

「答えになってなぁい・・・」

 

そもそも、試合で装着していいのかソレ。私が審判だったら全選手に警告だしてるぞ。

 

「・・・絶対負けない」

 

乙女のプライベートデータを公然で曝け出すセクハラ野郎に、天誅くれてやるっ。

え、誰が乙女だって?いるじゃんここにぃ!

 

 

 

******************

 

 

 

『ピィーーーーーーッ!!』

 

審判の笛で、雷門からキックオフ。

染岡くんが足でタッチし、修也くんが後ろにいる半田くんへボールを回した。

最初は中央を存分に使って攻めて・・・あれ?

 

「こ、こいつら動かないぞ!?」

 

驚きの声を上げる半田くん。

試合が始まったというのに、下鶴くんを含めた御影イレブンはその場から一歩も動こうとしない。

舐められてる?

 

「半田、動いてこないなら好都合だ!そのまま上がれェ!」

 

「お、おう!」

 

円堂くんの檄が飛び、応じて半田くんはドリブルを開始。

不気味なほど微動だにしない御影の選手の間をすり抜け、あっという間に相手陣地の半分を過ぎる。

 

『ディフェンスフォーメーション・γ3』

 

「ディフェンスフォーメーション・γ3、発動!」

 

「豪炎寺!」

 

やっと杉森さんがなんらかの指示を出した。

なんかの合言葉かな?

半田くんのパスを修也くんはトラップ。

そのまま前を向いて前進を試みるが・・・、

 

「なに!?」

 

すでに3人もの選手にマークされていた。

速っ!

 

「豪炎寺、中央だ!」

 

そちらの対応も早いけど、ウチの連携も甘く見てもらっては困る。

染岡くんがパスを要求し、危なげなく受け取った。

そしてシュート体制へ。

 

「ドラゴン・・・」

 

足を振り上げた直後、修也くんについていたマークが一斉にシュートコースへ殺到。

 

「クラッシュ!!」

 

蒼い光弾となって射出された竜の必殺技がゴールを襲う。

しかし、コースに入っている4人がシュートのサイドに攻撃を加えていく。

結果、通り抜けることはできたが威力は完全に削がれており、難なく杉森さんの腕の中にボールは収まった。

 

「なっ!?」

 

「君たちの行動パターンは、すでに予測済みだ。ーーーはッ!」

 

ゴールから前線へのロングパス。

受け取ったのはMFの山郷。

ディフェンスに栗松くんがついた。

 

「いかせないでヤンス!」

 

「邪魔だ」

 

「ぐあっ!?」

 

そんなのはお構いなしと言うように、栗松くんをタックルで躱す。

 

「栗松!・・・壁山、チェックだ!」

 

「はいっス!」

 

突き飛ばされた栗松くんに一瞬気を取られるが、状況が悪い。切り替えてすぐ、円堂くんは壁山くんに指示を飛ばした。

その壁山くんは山郷がパスを出すことで回避。

出した先には・・・、

 

「決める」

 

下鶴くんがいた。

ボールを真上へ上げ、飛翔。

 

「必殺技!?・・・え?」

 

何度も、幾度となくこの目で見てきた飛び方だった。

飛ぶタイミングも、回転の仕方も、・・・螺旋の炎も。

 

「ファイアトルネード!!」

 

「はっ!?」

 

打ち出されたシュート。

円堂くんが驚くのも無理はない。なぜなら、あれはウチのエースが、修也くんが最も得意とする必殺技なのだから。

 

「くっ・・・熱血パンチ!!」

 

ゴッドハンドは間に合わない。

ならば、自分の中で最速の技をぶつけた。

炎を纏った球と、熱を帯びた拳が激突。

 

(無駄だ。シュミレーションの結果、熱血パンチでファイアトルネードは止められな・・・)

 

「でりゃああああ!!」

 

バチィッ!!と快音が響き、円堂くんはゴールをセーブした。

 

「よっしゃあああああ!!!」

 

「・・・ッ、なんだと!?」

 

円堂くん咆哮。

流石の下鶴くんも、これには驚きを隠せない。

弾いたボールは土門くんへ。

 

「マックス!」

 

「ああ、半田!」

 

「よし・・・天馬!」

 

「はい!」

 

流れるようなダイレクトパス。お待ちかね、本日の目玉の天馬くんにボールが渡った。

御影は先程のシュートが止められて呆気にとられているのか、動きが鈍くなっている。

 

「いっくぞおおおお!!」

 

軽やかに、鮮やかに、向かってくる御影の選手を抜いていく。

 

『すごいすごい!松風、御影の選手を次々に躱す!とても一年生とは思えないプレイだ!』

 

「速い・・・ッ、データにない動きだ!」

 

「行かせるか!」

 

MF寺川が抜かれたところで、DFの花岡が止めに入る。

が、それも織り込み済みだったようで。

 

「そよかぜステップ!」

 

一迅の風が吹く。

風を纏い、名前の通りそよかぜのようなターンで天馬くんは相手を抜き去った。

 

「できた!」

 

「いけ、天馬!」

 

「持ち込むやんねー!」

 

ベンチにいる剣城くん、黄名子ちゃんからも声援が飛ぶ。

勢いづいたのか、走りにもキレが増した。

 

「高良先輩!」

 

「うん!」

 

私にパスが出された。

ここまで彼が運んでくれたボールを、無駄にはできない。

ペナルティエリア前、杉森さんと残った守備選手が構える。

 

「・・・」チラッ

 

視界の端にいる人物二人に目配せ。

すると、即行でOKが出た。

勿論、前線にいるのはあの彼らだ。

 

「染岡くん!」

 

「よし!」

 

ゴール真正面、絶好の位置にいる染岡くんへパスが通る。

 

『ドラゴンクラッシュの確率は・・・28.35%!』

 

「では、奴の狙いは・・・」

 

「豪炎寺いくぞッ!」

 

染岡くんの背後から、修也くんが躍り出た。

 

『ドラゴントルネードの確率、99.95%!』

 

「ドラゴン・・・!」

 

再び、蒼い竜が彼の足より放たれた。

ゴールへ向けてではなく・・・遥か上空へ。

同時に、修也くんが紅い炎と共に宙を舞う。

 

(豪炎寺と染岡の合体技か。ドラゴントルネードならば、シュートポケットで対応できる!)

 

杉森さんは多分、止められると思ってるんだろうな。ウチを研究してるのなら、ドラゴントルネードも読まれていることだろう。

ーーーでも、

 

「誰がいつ、修也くんが蹴ると言った?」

 

空振り。

あの豪炎寺修也が、ボールを空振った。

観客、御影イレブンに戦慄が走る。

 

 

 

なぜなら、私がバックトルネードの体制で飛翔しているのだから。

 

 

 

「・・・ッ!?」

 

こちとら少しイライラしてんの。

そちらに害虫呼ばわりされた挙句スリーサイズばらされたり、鬼道くんに意味わかんないこと言われたり、そちらに技を、あろうことか修也くんのファイアトルネードをパクられたりでもうプンプンなんだよ!

 

「トルネードッ!!」

 

「シュートポケッ・・・」

 

青い炎を帯び、更に濃い蒼へと変貌した竜が、ゴールを襲う。

対して杉森さんは必殺技を発動。自分を中心にエネルギーのシールドを張り、受け止めようとする。

私が狙ったのはゴール隅。しかも、私が担当するドラゴントルネードは威力より速さが増す。

 

「ト・・・!」

 

シールドを張り終える頃には、ボールはゴールラインを割っている。

 

1-0

 

「作戦」

 

「成功」

 

「だね」

 

シュートが決まったのを確認し、私たちFW陣はお互いを称え合うようにハイタッチをした。

 




優「え、何あの会話。私死ぬの?」

鬼「それらしい会話になってしまったな」

《技解説》

ドラゴントルネードb (シュート) 真系

威力:ドラゴントルネードの0.9倍

威力はオリジナルに及ばないものの、速度はこちらの方が上。
bは単純にブルーのbから。
誰もが予想していたであろう組み合わせ。そして書く前からやろうと思ってた合体技。

杏寿さん、ココアの魂さん、こんころ狐さん、ヨウヨウさん、壬生谷さん、ミウさん、こうにぃさん、wayさん、ダスクさん、お気に入り登録ありがとうございます!

アンケート、今日で集計終了とさせて頂きます。
ご協力ありがとうございました!


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第16話 情熱

今回で、御影戦は終了でございます。
そして長いです。8000を超えましたぜィ。

狩る雄さん、ミナトーンさん、誤字報告ありがとうございます。
bot Aさんも指摘、感謝します。「・・・」から「…」にの件も、実は他の作者さんが書く小説を見ていて思うところが自分にもありました。
しかし、今更変えるのも、というのがありますので、以降も「・・・」でいきたいと思います。


『ゴオオオォォォルッ!!なんと、豪炎寺は囮!決めたのは同じくFWの高良だああぁぁッ!!』

 

誰もが忌み嫌い、恐れるもの、初見殺し。

御影には特に効く、そう思っていたよ。ふふん!

 

「良い感じに決まったな」

 

「だが油断はできねぇ。ファイアトルネードがコピーされてたんだ。他にどんな隠し玉が用意されてるか」

 

・・・あの、私だけ喜んでて馬鹿みたいじゃないですか。修也くんは兎も角、染岡くんまで冷静だと恥ずかしいんですけど。

天馬くーん、一緒に喜びを分かち合おー?

 

「よくやったぞ天馬!」

 

「あんなドリブル技を持ってたのかよ!」

 

「うわ、先輩方!?落ち着いてくださいって!ははは!」

 

天馬くん、他の二年生に取られた。

な、なんだよぉ。1点取ったの私だぞ?そりゃ功績は天馬くんが8で私が2ぐらいだろうけど、もっと褒めてくれたっていいじゃない!

 

「うわああん、夏未さあああん!」

 

「はいはい。よくできました」

 

しょうがないので、ベンチにいる夏未さんに泣きついた。

 

「手玉に取ってますね」ナデナデ

 

「二人、結構仲いいから」ナデナデ

 

音無さんと木野さんも頭を撫でてくれる。三人を見てか、ベンチメンバー六人も参加してきた。

嬉しい。

 

「ありがとみんな、いってくる!」

 

9ナデナデされた私にもう敵はいない。

さっさと片付けてくるよ!

 

「立ち直りが早いというか」

 

「単純というか」

 

「・・・バカ?」

 

なんか後ろから聞こえてきたけど気にしなーい!

 

「ナイスシュート、高良!」

 

フィールドに戻ると、味方ゴールから円堂くんが褒めてくれた。やっぱキャプテンだね。

 

「円堂くんありがふお!?」

 

「なにやってるんだ、ポジションに戻るぞ」

 

お礼を言おうとしたんだけど、いつのまにかいた修也くんに後ろ襟掴まれてズルズル運ばれていく。扱いがひどい。

 

「一応陣地にプレイヤーが揃ってる。ボールが中央に置かれて審判が笛を吹けば試合は再開されるんだぞ」

 

「うぅ・・・ご、ごめん」

 

「ーーーよくやった。ナイスシュート」

 

「わっ」

 

ポンと背中を押された私は振り返る。

そこには、心の底から1点を決めた私を祝福している・・・微笑みを浮かべた修也くんが。

 

「この調子で、次も決めるぞ」

 

「う、うん!」

 

そうだ、まだ試合は終わってない。

ペースを崩さず、追加点を狙っていこう。

ポジションにつくと直ぐ、試合再開の笛が鳴った。

 

 

 

******************

 

 

 

前半20分を経過。

得点は未だに1-0のままだ。

 

「ラウンドターン!」

 

「うおっ!?」

 

相手に急接近し、バク転しながらボールを刈り取る必殺技で進行を止め、攻めに入る。

 

「天馬くん!」

 

「はい!って、うわぁ!」

 

開始早々のドリブルが脅威と見たのか、御影のDF陣は天馬くんを執拗にマークしている。

ボールを持たないままでは、得意のステップを踏むことはできない。

 

「くっ・・・すみません!」

 

「大丈夫!」

 

彼から奪ったボールは、前線にいる下鶴くんに渡ってしまった。

 

「くらえ、パトリオットシュートッ!!」

 

天に向けて上げられたボール。

それがミサイルのように勢い良く白煙を出しながらゴールへと突撃していく。

 

「なんの・・・ゴッドハンドッ!!」

 

対する円堂くん、自身の中で最もセーブ力のあるゴッドハンドで迎え撃つ。

一瞬の拮抗、徐々にボールの威力は弱まっていき、最後には完璧に止めた。

 

「我々の必殺技が、通じない?」

 

「(体が軽い。前なら多分、間に合わなかった)攻めろ、土門!」

 

「おうよ!」

 

投げられた先にいたのは、土門くん。

ボールを奪おうと迫る御影選手を、天馬くん程ではないが確実に抜いていく。

 

「(へへっ、これでも帝国サッカー部出身だぜ?俺)豪炎寺!」

 

前線へのロングパス。走り込んでいた修也くんの元にボールが飛んでいく。

 

「甘い」

 

だが、すんでのところでDF稲田がカット。

あれを取っておけばシュートチャンスだったんだけどなぁ。

稲田は中央の藤丸へパス。

 

「いかせない!」

 

ここで抜かれたらまた向こうにチャンスを与えてしまう。

私が、止める!

 

「ラウンドターン!」

 

いつも通り、ボールを奪った。

ーーー奪ったんだけど、

 

「そこだ」

 

「うわぁっ!?」

 

バク転して後退するのをわかっていたようで、怯まずに突進を仕掛けてきた。

空中でもろに受けてしまったため、そのまま吹っ飛ばされてしまう。

 

「高良、無事か!?」

 

「なんとか。・・・研究されてるよねそりゃ」

 

一度目は確認のために受けたのかな、イテテ。

 

「下鶴」

 

「はっ!」

 

藤丸からのパスを、ダイレクトでゴールへ蹴る下鶴くん。

枠の左を捉えたと予想し、円堂くんは左へ迷いなく飛んだ。

 

「なに!?」

 

だが、急に球は右に逸れていく。

シュートではなく、パス。

向こうの左サイドFW、山岸がフリーになっていた。

 

「ふっ!」

 

「(熱血パンチで弾くか?いや、溢れたら押し込まれる!)だあああああッッ!!」

 

気合一喝、左足で踏ん張りを効かせて今度は右へ飛んだ。

どうにか、両手でボールを挟み込むことに成功。懐に収め、体を回転させてショックを和らげた。

と、同時に前半終了の笛が鳴る。

 

『円堂止めたああああ!!怒涛の御影の攻めに、我らがキャプテンは見事に対応しております!そしてここで前半終了!スコアは1-0、白熱した試合展開となっております!』

 

「す、すごい円堂くん・・・」

 

「あの連続攻撃を止めるとはな」

 

まさかイナビカリ修練場での特訓の成果?

私が帝国に行った時に良いプレイができたのも、もしかすると・・・。

 

「押されてるけど、なんとか耐えてるな」

 

「こっちが点取ったのに、流れが来ないでヤンス」

 

前半で雷門がシュートできた回数は、4本。

決まったのは2本目のドラゴントルネードbだけで、あとは杉森さんに止められてしまっている。

奇襲によるイナズマ落としも、あと少しのところで防がれた。

1点取れたのが奇跡だね。

 

「後半、キツいかも」

 

「今の状態が続くと、流石に円堂も持たない」

 

「なら、出し惜しみしている暇はないのではなくて?」

 

凛とした声が、雷門サイドのベンチで鳴った。

言わずもがな、夏未さんである。彼女の後ろには、適度に汗をかいた剣城くんと黄名子ちゃんがいる。

 

「後半から使ってください。アップは済んでます」

 

「ウチも準備OKです!」

 

確かに、新戦力の二人が入ればリズムも変わって戦いやすくなると思う。実際、練習では流石の動きで私を含めたメンバーを翻弄している。

ーーーけどなぁ、

 

「勿体なくない?」

 

「そうだな。できれば決勝で当たるはずの帝国戦に備えて、二人は温存でいきたい」

 

修也くんも同じ意見のようだ。

 

「でも、このままではジリ貧よ?他に何か対応策はあるのかしら」

 

「むむ・・・そう言われると無いんですよね」

 

「・・・フォーメーションを、戻してみてはどうですか?」

 

発言したのは、剣城くん。

 

「どういうこと?」

 

「いつもの4-4-2に戻して、選手のポジションを変えるんです。御影がいくら雷門のデータを解析していても、右サイドにいた選手が左サイドにいれば、若干タイミングを取りづらいと思います」

 

鏡みたいに反対にするってことか。

 

「じゃあ、こんな感じかな」

 

 

フォーメーション F-ベーシック

 

FW:豪炎寺、染岡

 

MF:高良、宍戸、松野(マックス)、半田

 

DF:土門、影野、壁山、風丸

 

GK:円堂

 

ベンチ:松風、栗松、少林、目金、菜花、剣城

 

 

「天馬くんと栗松くんは交代。後半からは宍戸くん、影野くんが入るよ」

 

「栗松はディフェンス、松風は初試合ながらよく頑張った。あとは応援を頼む」

 

「「はい!」」

 

「試合出たかったやんね・・・」

 

落ち込む黄名子ちゃん。申し訳ないことしちゃったなぁ・・・。

私だって張り切って準備したのに出させてもらえなかったら元気なくなるよ。

 

「ごめんね、黄名子ちゃん。絶対に勝って、次に出番があるようにするから」

 

「先輩・・・、了解やんね。信じて待ちます!」

 

パーッと背後から効果音が出そうな笑顔。

可愛い。

 

「よしみんな、後半も頑張ろうぜ!」

 

『おう!』

 

 

 

******************

 

 

 

『これは試合ではなく、ただの害虫駆除作業。私はそう言ったね?富山君』

 

御影ベンチにて。

御影専農監督、富山信一郎は現在、精神的な崖っ淵に追い込まれていた。

 

「そ、総帥!前半の1点はなにかの手違いです。後半は必ずや、憎き雷門を地のどん底に叩きのめして見せましょう!」

 

『私は言い訳が嫌いでね。ーーーどんなことをしてでも、勝利を勝ち取りたまえ。もし、万が一でも君たちが負けた場合は・・・』

 

 

わかっているだろう。

 

 

冷徹で、且つ恐怖の象徴のような囁きを最後に、連絡先との通信は切れた。

 

「マズイ、マズイぞ・・・総帥に見捨てられてしまう・・・!」

 

何か手はないのか。どんな手を使ってでも勝てと言われても、その案が思いつかなければどうしようもない。

 

『監督、後半が始まります』

 

キャプテンの杉森からの通信が入る。が、今構っている暇はない。

 

「煩い、黙っていろ!なにか・・・なにかないか・・・?ーーーラフプレーで相手を戦闘不能に・・・!」

 

『お言葉ですが監督、我々のプログラムにラフプレーはインプットされていません。そもそも、相手に危害を加えることは、サッカーではない』

 

「ええい人形風情がッ、私に知ったような口を聞くな!おまえ達はただ指示に従っていれば良い!それ以外するな!」

 

『ですが・・・』

 

口ごたえしようとする杉森からの通信を、富山は切断した。

なぜ思い通りにいかない?どうしてこんなことになった?

延々と、彼は悩みの怨嗟を繰り返す。

 

 

 

******************

 

 

 

「この勝負、雷門が勝つな」

 

「だな」

 

観客席、御影のサポーターが消沈している中、帝国学園の鬼道、不動はそう決定付けた。

 

「野生中とやった時も驚いたが、ここまで実力のあるチームだったか?前に来てた高良優梨は兎も角として、他の奴らも相当だぜ?特にGKの円堂だ」

 

「拙かった技術が、この数日で格段にサマになっている。源田に勝るとも劣らないキーパーになったな、円堂」

 

あの日、帝国と雷門の練習試合で見せた意地と気合、根性・・・そして、ゴッドハンド。

初めて円堂の技を目にした時、言葉にできない確信を、鬼道は得た。

敢えて言うなれば、あいつは必ず上に来る者だ、という感じであろうか。

 

「こりゃ、決勝も雷門で決まりだな」

 

「そうとは限らない・・・と、一応言っておく」

 

サッカーは何が起こるかわからない。

だが、雷門が帝国と戦う前に敗れるなど、想像もつかないのは確かだ。

 

「決勝が楽しみだ」

 

「なんだ?やっぱ鬼道クンもそう思ってんじゃん」

 

柄にもなく、天才ゲームメーカーは笑みを深めた。

 

 

 

******************

 

 

 

「ドラゴン・・・クラッシュ!!」

 

「シュートポケットォ!!」

 

剣城くんの案は、見事に的中した。

最初は真逆のポジションということもありミスが目立ったんだけど、それを修正しようと努めていたら、自動的に御影にないデータの動きをするようになる。

よって、シュートチャンスも増える。

 

「ぐっ・・・やはりデータを遥かに上回っている威力だ・・・はぁッ!」

 

シールドが貫通するも、自身の腕で弾くことでゴールを免れた。

けど、まだまだ私たちのターンは終わらない。

こぼれ球は再び、染岡くんへ。

 

「豪炎寺、高良!」

 

「「了解!」」

 

マークについていたDFを躱し、二人同時に空中へ。

一方は赤い炎を、もう一方は青い炎を纏わせ天高く昇っていく。

 

「ドラゴントルネードか!?」

 

先ほどは私が打った。

次はどっちで来ると思う?しめしめ。

 

「ドラゴン・・・!」

 

「どちらのシュートが来ようとも、今度はロケット拳で・・・」

 

 

 

 

「クラッシュッ!!」

 

 

 

 

「なに!?」

 

残念、裏の裏の、そのまた裏なのさ。

完全に上からシュートを打たれると思っていた杉森さんに、このフェイントは効くだろう。

何せ、二回連続の染岡くんのシュートだ。円堂くんでも願い下げだろうね。

 

「シュートポケットッ!!・・・がぁ!?」

 

反応が遅れるも、なんとか一部分だけシールド展開に成功。真正面からシュートと相対し・・・結果、頭上のバーに当てることによって阻止。

ーーーだけどね、杉森さん。

 

「ウチのエースは、オーバーヘッドも辛口だよ」

 

バーに弾かれたボールは、修也くんへ。

 

「ふっ!!」

 

イナズマ落としの要領で振り下ろされた左足はボールの中央をしっかり捉え、目にも止まらぬ速さでゴールネットに突き刺さった。

 

2-0

 

『ご、ゴオオオオォォォルッ!!雷門怒涛の連続攻撃にGK杉森は大健闘!しかし豪炎寺がその上をいったああああああ!!2-0で雷門、追加点です!』

 

「やったぁ!」

 

「おう」

 

「けっ、かっさらわれたぜ」

 

少し不服そうだが、染岡くんも修也くんのゴールを讃えるためにハイタッチ。

これだよ!プレイでもコミニケーションでも、こういうのを望んでたんだよ私は!

 

「我々が、二度目の失点だと・・・?」

 

ラインを割ったボールを見て、信じられないという表情の杉森さん。

他の御影イレブンも、同じ顔を浮かべている。

 

「データにはない。こんな状況を覆す方法は、データにはない・・・」

 

「杉森さん・・・」

 

見ていて少し、可哀想になった。

彼らが本当の楽しいサッカーをやったのは、一体いつになるのだろうか。そう考えると、無性に心が締め付けられる。

 

「データデータって、それに頼るのがおまえ達のサッカーなのかあああッッ!?」

 

「うおおおお!?」

 

突如、真反対の自陣ゴールから鬼の形相の円堂くんが叫びながら走ってきた。

ビックリして変な声出しちゃったよもう。

 

「我々の、サッカー?」

 

「そうだ、きっと杉森たちにもあるはずだ!やってて楽しくて、辛かった時が!その辛かった時期が長かったから、データに頼ったんだろ?負けたくなかったから、大好きなサッカーで勝ちたかったからだろ!?」

 

「・・・ッ!」

 

「その情熱が残ってるなら、まだ間に合うさ!今変わればいい、やろうぜ?本当のサッカーを!」

 

円堂くんの熱い言葉に、杉森さん心の中変化をきたしたのだろうか。

 

「皆、装置を外せ!」

 

チームにそんな指示を出し、頭のコードを抜き捨てた。

 

「キャプテン!?」

 

「法則や命令に妨げられない、我々の・・・いや、俺たちのサッカーを!」

 

彼の言葉も、人を変えていく。言われるがままに、装置を外す彼らの目は、試合前とは打って変わって色づいている。

 

「敵さん本気なっちまったぞ。余計なことしやがって・・・」

 

「そんなこと言って、結構嬉しそうじゃん染岡くん」

 

「うっせ」

 

「あう」

 

デコピンされた。ツンデレを指摘しただけなのに、解せぬ。

 

「貴様らァ!私の命令に従わないつもりか!?」

 

監督ベンチから、荒い息づかいの・・・えっと、御影の監督さんかな?がヒステリックに叫んだ。

 

「命令など、もうどうだっていい!俺たちは貴方のやり方には乗らない!」

 

「馬鹿なことを言うな!私がなんのために・・・・・・え、そう・・・すい?そ、総帥いいいっっ!!??」

 

発狂。

鼻元まで覆い隠していた機械を投げ捨て、狂ったような顔で会場を後にする相手監督。

なんか、怖い。

 

「杉森・・・」

 

「大丈夫だ。円堂、そして雷門イレブン。ここからが本当の勝負だ」

 

「・・・ッ!ああ!臨むところだ!」

 

 

 

******************

 

 

 

試合は、どちらも一歩も譲らない、見ている者の胸も熱くする展開となった。

片方が攻めれば、片方が守り、片方が止めれば、もう片方も止める。

まさに一進一退。

 

「豪炎寺!」

 

「そこだッ!」

 

マックスくんからのパス、それをなんと、下鶴くんがカット。

カウンターだ。

 

「ま、マズイ!?」

 

「みんな戻れええええ!!」

 

全速力で自陣へ急ぐ。

だけど、距離がここまで離れていては・・・!

 

「優梨、スプリントワープの加速だ!」

 

「え?」

 

「いいから早く!」

 

「う、うん!」

 

並走する修也くんに言われるがままに、私は普段使うスプリントワープの急加速を使って下鶴くんを追走。

 

「なっ!?」

 

「間に合った!」

 

なんと、ペナルティエリアに入る数メートル前で、追いついた。

消耗度外視じゃないと、この手使えないね。

向かい合う私と下鶴くん。

 

「いくぞ!」

 

「勝負!」

 

お互いに、FWとしての意地のぶつかり合い。

右に躱そうとするのを右足でコースを塞ぎ、揺さぶりには横ステップで対応。

 

「おおッ!」

 

「そこっ!」

 

競り勝ったのは私だった。

一瞬の隙を突いてボールを股に潜らせるよう、後方にクリアしたのだ。

しかも、結構強めに蹴ったから後ろの方に飛ぶはず。

 

「改ああああああ!!」

 

「キャプテン!」

 

でも、思惑は潰される。

中盤まで上がってきていた杉森さんが、蹴り返したのだ。

 

「抜かせてもらう!」

 

「あっ!」

 

今度は私が隙を突かれてマークから逃れられた。そして、杉森さんからのロングパスをトラップされてしまう。

 

「絶対に決める!パトリオット・・・」

 

「来い!」

 

「シュートッ!!」

 

再三の対決。ミサイルのようなシュートがゴールを襲う。

 

「今だ、豪炎寺!」

 

「円堂!?なにをするつもりだ!」

 

ゴッドハンドで迎え撃つのかと思いきや、ペナルティエリアにまで私と戻ってきていた修也くんに、彼は合図を出した。

 

「俺を・・・信じろ!」

 

二人の間に丁度迫っていく、下鶴くんの必殺技。

 

「いくぜ!」

 

「おう!」

 

それを、お互いの位置が入れ替わるようにターン、且つ、全く同じタイミングで蹴りを叩き込んだ。

ゴール前からの、シュートブロック兼超絶ロングシュートだ。

電撃を帯電させたかのようなオーラを纏ったボールは、地面を抉り取るのではないかと思われる威力込められている。

 

「し、しまった!キャプテン!」

 

「任せろ!ーーー止める・・・このシュートは、絶対に止めてみせる!」

 

中盤からゴール前へ戻った杉森さん。

シュートポケットとは違う、右腕を構えるモーションをとった。

 

「ロケットこぶしッッ!!」

 

円堂くんのゴッドハンドに似た、拳を握った金色の腕が出現。

狙いを見据え、文字通りの必殺の拳をシュート目掛けて放つ。

 

「おおおおおおッッ!!!」

 

激突、轟音。

ぶつかった瞬間から、どんどんロケットこぶしは押し込まれていく。

だけど、その状況を前にしても杉森さんは諦めない。拳に力を込めるのを、やめることは決してしない。

バンッと嫌な音が響く。ロケットこぶしが、破られたのだ。

 

「まだだああああッ!!」

 

必殺技が破られたのなら、最後の砦は自分自身。両手で、雷撃のシュートを受け止める。

威力は削ったはずなのに、未だに衰えることを知らない二人のシュートを見て、私は身震いした。

同時にこうも思う。止められるわけがない、と。

それは、フィールドに立つ者のほとんどが思うことだった。

今なおシュートに争う、杉森さんを除いて。

 

「ぐぅ・・・!」

 

ジリジリと、踏ん張りを効かせる足もろともゴールへ押されていく。

だが、ようやくではあるが遂にボールの回転が収まってきた。

勝負はまだ、わからない。

 

「オオオオオオオォォォッッ!!」

 

咆哮がグランドに鳴り響く。それが合図だったのだろうか、ボールは、勢いをなくして杉森さんの両腕の前に静止している。

 

「キャプテンが、止めた?」

 

「・・・いいや」

 

確かに、シュートは止めた。

しかし、ボールは・・・杉森さんを含めて、ゴールラインを割っていた。

勝負は、

 

「よっしゃあああああ!!!」

 

二人の、雷門の勝利だ。

 

『決まったああああッッ!!!円堂と豪炎寺によるツインシュート炸裂!3点目、3点目です!』

 

 

 

その後、ホイッスルが鳴って試合終了。

3-0で、雷門の快勝だ。

でも、最初からあのテンションで攻められたら、どうなっていたかはわからない。

 

「すまなかった」

 

試合後、私達は杉森さんと下鶴くんに頭を下げられていた。

 

「心にもないことを言った。取り消してくれとは言わない。ただ、許して欲しい・・・」

 

「気にするなよ!もう怒ってないしさ!」

 

「・・・そうか、ありがとう」

 

「えっと、じゃあ私のスリーサイズの件も忘れるということで・・・」

 

「ん?それはできない相談だ」

 

「なんでさ下鶴くん!?」

 

「また、俺たちと試合をしてくれないだろうか」

 

「勿論、受けて立つぜ!」

 

「ねえちょっと!いい感じで話を終わらせないでよもおおお!!」

 

最後は両キャプテンの硬い握手で、試合は幕を閉じたのであった。

私の叫びは、虚しくも下鶴くんに届くことはなかったけどね!ちくしょう。

 

 

 




優「怪我しなかったね。よかった」

豪「これで、秋葉名戸戦に万全の状態で出れるな」

秋葉名戸の皆様『や め て』

じょうじょうじさん、ユキさんとユリカさんさん、青葉まーくさん、蒼音さん、狩る雄さん、柊 纏さん、ナケダマさん、氷結傀儡さん、スキヤキさん、藍色19011さん、鈴羽さん、増川さん、傘座さん、黒姫凛さん、othelloさん、如月 ルナさん、ゆんしーさん、水虎さん、太郎丸☆さん、あんやさん、甘酢さん、うたよみさん、通りすがりの暇人さん、全自動人形さん、お気に入り登録ありがとうございます!

豪炎寺、怪我はしませんでした。どちらかというと下鶴くんは優梨ちゃんの方が因縁強かったので(スリーサイズの件も含めて)
そして原作よりも高成績。3試合連続無失点ですね、円堂くん!
次回は、待ちに待ったデート回ですヤッター!お楽しみに・・・。


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第17話 買い出し1

遅れました・・・。一言で言うと、剣盾が悪い()
あんな見事なゲームを作ったゲーフリと任天堂が悪い()
殿堂入りしたので、また同じペースで書けるようにしますね!

今回、短いです。すみませぬ。
誤字報告してくださった方々、ありがとうございました!


 

 

お風呂の効果音って、なんだろう。

ドラマやマンガ、アニメの風呂シーンでは『ちゃぷ』やら『かぽーん』などといった気の抜けた音が鳴るのをご存知かな?

恋愛モノだったり、スポーツモノだったり、バトルモノだったり、お風呂に入る時の大半は先に挙げた効果音が鳴る。

 

「「・・・」」

 

一体何の音なのか、そうマンガを見てる時に毎回思う。

『ちゃぷ』は分かる。すげーよく分かる。(ギアッチョ感)浴槽に張ったお湯が、入浴した際に立てる音だ。少なくとも私はそう感じている。

 

「「・・・」」

 

だが、『かぽーん』ってどういうことだぁ!?(ギアッチョ感2)

水音でそんな音が鳴るのかちくしょー!

 

「「・・・」」

 

桶かな?桶がタイルに落ちる音なのかな?

むむむ・・・私にとっての一生の謎だよ。

 

「・・・優梨」

 

「・・・なんでしょう」

 

「・・・いや、やっぱりなんでもない」

 

「・・・そっか」

 

今までのは現実逃避。

なぜそんなことをしていたのかは、次にいう一言で納得がいくと思う。

 

 

 

修也くんと、お、おおおお風呂入ってるんだよ!

 

 

 

水着で、なんだけどね。

異性且つ好きな人が同じ浴槽の中で一緒にいるんだよ?逃避ぐらいさせておくれよぉ。

さっきから緊張のせいか触覚の機能がおかしくなってきてるの。

 

「「・・・」」

 

なぜ、私のようなクソ雑魚告白女が修也くんとお風呂をご一緒しているのか。

それには、至るまでの説明が必要だ。

 

 

 

******************

 

 

 

練習が終わってすぐの、女子部室にて。

 

「で、進展したの?貴女。豪炎寺くんと」

 

「ひょえ!?」

 

いつものようにユニから制服へ着替えている最中、他の三人がいる中で夏未さんが倒置法でネタをぶっ込んできた。

 

「尾刈斗戦以来、この話しなかったんだもの。気になるわ」

 

「な、ななななんてことを!夏未さんあなたなんてことを!」

 

突然のことに声が上擦ってしまった!

なんで今言うの!?事情を知らない木野さん達がいるのに・・・!

 

「あ、私も聞きたい!前々から気になってたの」

 

え。

 

「いつもそれらしい視線を豪炎寺さんに送っていたのでもしかしたらと思っていましたが・・・」

 

うぇ。

 

「学校の中といい、練習中の時といい、試合中の時といい、話しかけられるたびに赤くなってますよ!」

 

・・・えぇ?

 

「「「ま、事前に夏未さん(先輩)から聞いてるんですけど」」」

 

「うわあああああ!!」

 

「ふふふ」

 

ポカポカと夏未さんを叩くも、不敵な笑みを浮かべるだけで意に返さず。

ち、ちくしょぉ・・・先手を打たれていたのかぁ・・・。

 

「わかりやすいもの。そりゃ気付くよ」

 

「そ、そんなに?」

 

「男子もあらかた気付いてるんじゃないかしら」

 

「まさか修也くんにも!?」

 

「いや、本人はそんな風に見えないですけど」

 

よかった。心底よかったと安堵したよ。

というかそっか、結構な人にバレてるんだなぁ・・・。

 

「どうなの?最近」

 

「い、いやぁ一緒にいる時間は長いけど、そういうアプローチは取れてないですね」

 

「貴女がヘタレなだけではなくて?」

 

「うぐっ!?」

 

「仮にも幼馴染だったのでしょう?距離を近づける時間は、生活していく中であったと思うけど」

 

そんなこと言われても。

一緒に登校したのは先日きりだし、学校ではいつも円堂くんを含めた三人行動、練習中は皆がいるし、下校も同じく。

 

「私知ってます。幼馴染って、恋愛漫画でいう負けポジションなんですよ」

 

ゔぇ!?突然何を言い出すの音無さん!?

 

「豪炎寺先輩、校内でも特に人気ですもんね。ファンクラブもできてるってウチも聞きました」

 

「そのクラブの人に、このままじゃ取られるかもしれないわよ?」

 

「で、でも・・・」

 

「ヘタレね」

 

「「「ヘタレー」」」

 

「夏未さんは兎も角、今日は三人の当たりも強いなぁ!」

 

さっきからガリガリHPが削られていくのだけれども。辛い。

 

「まったく、何か良い策はないものかしら」

 

「い、今はフットボールフロンティアで忙しいですし、正直今そういう関係になっても維持できる気が・・・」

 

「あら、告白したら付き合えると思ってるの?そもそも、貴女告白できるの?その度胸はあるの?」

 

「・・・ないです」

 

「そこは嘘でも『ある』って言おうよ優梨ちゃん」

 

うるさぁい。

ないものはないんだよ。だって、思いを伝える代わりに出た言葉が合体必殺技作ろう、だよ?

ーーー思い返してみると、本当に私ヘタレじゃん。

 

「そうだ!高良さんは部活の無い日曜日、何をしてますか?」

 

「えっと、ジムに行って体を解したりとか、親と出かけたりとか、かな。けど今度の日曜はジムは機械の調整で開いてないし、親も出張行ってるから特に予定はないよ」

 

「ならその日、豪炎寺さんと一緒に買い出しに行ってきてください!」

 

ちょっと何言ってるのかわからない。

 

「あ、それいいかも。ちょうど消耗品が切れそうだったの。お願いしてもいい?」

 

なんでそんなおつかい感覚で頼んでるのさ。

いや、買い出しに行くのは別にいいんだけども。

修也くんの都合というのもあるし、こちらが独断で決めていいことでは・・・。

 

「命令です。今度の休日、豪炎寺くんと買い出しもとい、デートに行ってきなさい。これは理事長の言葉と思ってもらって結構です」

 

とんでもなくしょうもないことで理事長権限使うなぁ。勝手に決められたし。

・・・でも、デート。デートかぁ。

あの修也くんと、お出かけできるんだ。そう思うと、恥ずかしさよりも期待感が上回ってくる。

 

「・・・わかりました。やってみます」

 

「よろしい。豪炎寺くんには私自ら言っておきます。それとも、貴女から誘う?」

 

「い、いえ!そちらでよろしくお願いします!ホントに、お願いします!」

 

「そういうところがヘタレなんですよ」

 

というわけで、デートすることになった。

 

 

 

******************

 

 

 

当日、午前11時。

 

「貴女、おバカ?」

 

修也くんと私の集合場所となっている、商店街入り口にて。

私は同輩二人と後輩二人にお叱りをくらっていた。

 

「どうしてジャージなの?」

 

そう、今私が着用しているのは、六年生の頃から愛用しているスポーツ用ジャージだ。

紺色を基調としており、ラインはピンク色と女子受けの良いデザインである。最近では着る機会はランニングとジムに行く時くらいで、しかも少しキツくなってきたけど、まだ着れる。

 

「都会に繰り出すならまだしも、近所ですよ?商店街で、しかも部活の買い出しですよ?」

 

「だとしても、他にもっとあったでしょうに・・・先行きが思いやられるわ」

 

仮にもデートよ、そう言う夏未さんは、心底呆れているようだった。

 

「あ、夏未さん!来ましたよ!」

 

「まだ言い足りないのだけれど。なにその髪型、いつもと同じじゃない。普通は髪留めで前にアレンジを加えたりするの。他にも」

 

「夏未さーん、一先ず退散するやんねー」

 

文句が続く彼女を、黄名子ちゃんが物陰まで引っ張っていく。後ろに木野さん、音無さんと続く。

四人が隠れ切ったところで、

 

「おはよう」

 

来たようだ。

 

「うん、おはよう」

 

修也くんのご到着です。

彼の服装は、黒基調のライン赤な、私と同じくオーソドックスなジャージ。

ほら、ジャージじゃないか。

下手に私だけ本気でオシャレしてたら、危うくどちらも恥をかくところだったよ。

 

「そのジャージ、まだ着てたのか」

 

「気に入ってるからね。最近ちょっとキツくなってきたけど。修也くんのも小学生から着てるやつじゃん」

 

クラブの練習とかで、よくこのジャージ着てたよなぁ。

 

「で、買い出しと聞いてるんだが何を買うんだ?」

 

「消耗品各種。スポドリの粉末と、テーピング、絆創膏かな」

 

「わかった。いこう」

 

「うんっ」

 

 

 

******************

 

 

 

「なんで向こうもジャージ!?どうして!?女子が男子と二人っきりで出かけるって言ったら、デートとしか考えないでしょ!?もっと服装を考えてくるでしょう!?」

 

二人が歩いていく中、物陰で見守る四人のうち、このデートを企画した夏未は憤慨していた。

 

「お、落ち着いてください夏未さん!少女漫画の読みすぎですよ、現実じゃそう上手くいきませんって」

 

「夏未先輩、メルヘンやんね〜」

 

「うんとオシャレしておくようにって、言っとけばよかったかな」

 

しかし流石はサッカー少年及び少女。サッカー以外のところではこんな穴があったとは。

今回、その穴が見事に重なって最悪な事態は免れたが。

 

「でもこのままだと、進展も何もなく買って即終了しちゃいそうですね」

 

「それは阻止するわ。絶対に阻止するわ」

 

「燃えてるやんね・・・」

 

「具体的には、最低でも手を繋げるぐらいの仲にしないと。さもないと高良さん、高校になってもあの一方通行の片思いのままよ」

 

「流石にそれは・・・あるかも」

 

自分で行動を起こそうにも、恐らく高良優梨という少女は『うーん、これでいいか』とどこかで妥協してしまうだろう。

実際、ジャージの件でその説は深まっていた。

 

「でも、豪炎寺さんもジャージですよ?」

 

「彼のは違った意味よ。・・・彼女、多分親友として見られているわ」

 

「そもそも、異性として見られてるんですか?」

 

本人のいないところで、散々言われている。

最後は前提条件にすら疑いを向けられていた。

 

「サポートは出来る限りするつもりだけれど、それを今後に繋げるのは高良さんしかできないわ。頑張ってもらわないと」

 

「恋ごともストライカーの時ぐらいガツガツしてればいいんですけどね」

 

優梨は気づかない。

自分のいないところで散々酷評されていることに。

 

「へっくち!・・・ん?」

 

「風邪か」

 

「いや、違うと思う。・・・んー?」

 

しかし、何かしら感じ取ってはいた。

 




優「え、なんでお風呂?こんなラノベ的な展開あっていいの?イナズマイレブンだよ?超次元サッカーだよ?」

豪「一応これ、恋愛主体にしたいところがあるから仕方ないだろ」

円「二人とも、後書きでは色々激しいな・・・」

下「これも『えちち』か」

豪、円「どっからわいた」

優「断じて違う」

おおいたさん、イミメツさん、蒼色のシキさん、茉宵 悠瑠璃さん、315さん、禁じられたテテフさん、vividだねぇさん、お気に入り登録ありがとうございます!

本来なら8000文字ぐらいで書く予定だったんですけど、想像異常にポケモンが面白くて・・・。
ヒバニー、ニンフィア、ギャラドス、ネギガナイト、シャンデラの5体でクリアしましたとさ、まる。


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第18話 買い出し2

遅くなりました。すみませぬ。
スマブラspゲッコウガVIP入り、ポケモン剣ヒトカゲ厳選に全神経を注いでおりましたので・・・(並行して鬼滅の刃見てたなんて言えない)

そして報告があります。
今まで自分はお気に入りをしてくれた方々の名前を後書きに載せていましたが、収集つかなくなったので終了とします()誠に申し訳ない。


あ、それと試験受かりましたヤッター!


 

「これ、どうかな」

 

「それよりこっちは」

 

あらかたの買い物を終えた二人。

最悪の事態である、即帰宅になってしまうかに思われた。

が、優梨の方が何やら勇気を出して豪炎寺をショッピングに誘ったのである。

夏未、木野、音無、黄名子は『おおっ!?』と声を出すくらいに驚き、また歓喜した。あのヘタレで通っている優梨が、自分から誘ったのだから。

側から見れば、(ジャージという点を除き)カップルが服を選んでいるようにしか見えない。

 

「やっぱりピンクかなー」

 

「優梨はオレンジもいいと思うけどな」

 

良い感じだった。

微笑み、ハンガーへ手を伸ばした際にお互いの指が触れ合う、なんてお決まりも起こったほどだ。

全てが順調であり、本人たちも幸せなのだろう。

 

 

 

「選んでるのがジャージでなければね」

 

 

 

店外、スポーツ用品店の窓の外に、四人は張り付いていた。

 

「着てくるのもジャージ、買おうとしてるのもジャージときたら、怒るのを通り越して呆れてくるわ」

 

「で、でも進展してるじゃない。褒めるべきところよ!」

 

ため息をつく夏未とは別に、木野は苦笑しながら二人をフォローする。苦し紛れではあるが。

 

「最近キツくなってきたし、この際だから新調しちゃおっか」

 

「俺も買うよ。会計二人分出せばいいな?」

 

「そ、そんな悪いよ!」

 

「一応それなりに持ってきてるんだ。奢らせてくれ」

 

その会話はもっと別の時にやってくれ。

四人の心は一致した。

 

「じゃあ・・・お願いしちゃおっかな」

 

「ああ」

 

籠の中に入れられたのは、黒基調のラインがオレンジ色、青色のジャージ二つ。

 

「未だかつてないペアルックですね」

 

果たしてあれをペアルックと呼んでいいのだろうか。もし呼べるとすれば、試合中のユニフォームまでもがペアルックになってしまいそうで恐ろしい。

 

「他に何か見たいものはあるか?」

 

「んー、特にないけど、一応回ってみよう」

 

「わかった」

 

買うジャージを決め、二人は道具や季節品を販売している二階へ。もちろん、夏未以下四人も追跡。

先ず向かったのはボール売り場。

 

「・・・新品」

 

「高いぞ」

 

「わかってる。でも、惹かれるよね」

 

「まあな。蹴った時、良い音が鳴りそうだ」

 

それぞれ手元にサッカーボールを扱いながら、自分の蹴った姿を想像しているのか、どこか嬉しげである。

 

「デザインは・・・やっぱり、南アフリカのやつが好きかな」

 

「俺は日韓のやつが個人的にいいと思うが、試合がな」

 

「あー、まあね」

 

「(わかるわかる)」

 

「(木野さん?)」

 

「(共感できるところがあるんですよ。私もですけど)」

 

「(ウチもです)」

 

サッカーに関して多少疎い夏未は兎も角、情報収集担当の音無を含め、経験者達は皆同じような顔を浮かべた。

※詳しくは、『2002年W杯』で調べよう。

 

「次、どこ見る?」

 

「スパイクが見たいな。確か向こうだった気がする・・・優梨」

 

「へ?」

 

何か気づいたのか、豪炎寺が隠れて尾行している夏未達に近い方向を指差した。

 

「(バレた!?)」

 

「(いえ、そういう訳では・・・あ)」

 

彼が指したのは、目的のスパイクが置かれているスペース。

そこには意外な人物が靴を手に持ち、どうするべきかと眺めている。

 

「剣城くん」

 

「・・・?高良さん、豪炎寺さん」

 

最近入部した一年、剣城京介。

彼は二人の存在を知るや、ペコリと軽く会釈をした。

 

「あれ?天馬くんは一緒じゃないんだ」

 

「はい。あいつは今日、午前は寝るって」

 

「買い物か?」

 

「いえ、少し下見を」

 

「なんの?ーーーって、ほほう?」

 

「な、なんですか」

 

「それ、レディースだけど?」

 

なぜか自分以外の恋ごとに敏感だった優梨。

 

「誰にあげるの?」

 

「・・・来月、菜花の誕生日なので。いつも世話になってるからスパイクぐらい新調してやろうと」

 

「「「(えっ)」」」

 

「(・・・)」

 

マネージャー三人が一斉に黄名子を見る。

まさかそういう関係?という期待は、

 

「(い、いややんね三人とも!別にそういうあれじゃないですよ!)」

 

良い意味で裏切らなかった。

頰は桃色に染められ、見るからに慌てている。

付き合っては、いないらしい。ただ単にお互いがお互いを気になっているとか。

 

「(両想いじゃない!?)」

 

「(だからそんなんじゃ・・・あぅぅ)」

 

「(告白しようよ黄名子ちゃん!きっとOK出るよ!)」

 

「(でも・・・)」

 

「(貴女それでよく高良さんにヘタレなんて言えたわね)」

 

いつも天馬、剣城、黄名子で行動しているのでそれらしき気色は全くなかったのだが、まさかまさかのである。

 

「ユニフォームにも合う色がいいよね。雷門は青と黄だから・・・」

 

「これなんかどうだ?」

 

「あ、いいね!どう、剣城くん」

 

「ーーーいいですね。候補に入れときます」

 

裏であれこれしているうちに、表の三人はお目色にかなった品が見つかったようだ。

 

「ありがとうございました。買い出し、お疲れ様です」

 

「うん。じゃあねー」

 

「またな」

 

「(動きますよ)」

 

「(菜花さんの尋問は後にしましょう)」

 

「(じ、尋問!?ウチ、何されるやんね!?)」

 

 

 

******************

 

 

 

「あ、これ・・・」

 

私の目に映った物、それは・・・。

 

「どうした」

 

「ん」

 

「・・・?あぁ、水着か?」

 

既に6月。夏が近い、というかもう夏なだけあって、こういうスポーツ専門の店でも売り出してるんだなぁ。

 

「スク水以外にもあるね」

 

「割と品揃え豊富だなこの店。まぁ今年は着る機会、なさそうだが」

 

修也くんの言う通り。

雷門が順調に勝ち進み、予選を突破すればプールやら海やらの騒ぎではなくなる。

練習に次ぐ練習、毎日がその繰り返しになるね。

 

「FFが終わった後、夏季合宿でもできたらいいんだけど」

 

「絶対遊ぶことしかしないだろうな、優梨含めて」

 

「ちょっと?」

 

「悪い。しかし、夏季合宿ってことはFFで全国優勝する気満々だろ。負けたら廃部のこと、忘れてないか?」

 

「あーそういうえばそうだったね。危うく忘れるところだった」

 

夏未さんも忘れてるのではなかろうか。この部、負けたら即刻廃部なんだよね。忘れてたけど。

案外あの人のことだから、万が一負けてもお咎めなしになったりは・・・しないか。うん。やることはやる人だからね。

 

「少し見てくか?」

 

「そだね」

 

各々、メンズとレディースで別れ、探索開始。

水着と言っても、色々と種類がある。

肌の露出が多いビキニだったり、それにタンクトップを組み合わせたタンキニ(タンクトップ+ビキニ)、フリル重視のワンピースタイプだったりと、豊富だ。

私は生まれてこの方、スク水以外の水着を着たことがない。なので、これだけ様々な種類を見るのは壮観だったりする。

 

「なーにがあるかなー」

 

あまり派手なのは好きじゃないから、できれば単色がいいな・・・お、これいいかも。

 

「修也くん、これどお?」

 

「ん?白のビキニ?」

 

「うん。フリルついてるし、可愛いかなって」

 

「可愛いという概念を、優梨が知ってるとはな」

 

「おーい?」

 

「はは、冗談だ。いいんじゃないか?こういうのあまり着たことないんだろうし」

 

因みに俺はこれだな、と修也くんは太ももが隠れるくらい長い裾の海パンを出した。

 

「選んじゃったけど、どうする?買うなら私がお金出すよ」

 

「・・・そうなると、ジャージと値段もそこまで変わらないな」

 

「やっぱり自分の分は、自分で買おっか」

 

「ああ」

 

レジまで行き、会計。

いいのが買えたぞ。どうだ夏未さん、水着を異性と買って見せたぞ。

 

「用済んじゃったけど、これからどうしよっか」

 

「特にないな・・・思えば、これといった趣味がサッカー以外にない」

 

「私も」

 

そこまで言ったところでお互いの目が合い、吹き出した。

 

「ふふ、じゃあ・・・あそこ行こ」

 

「だな」

 

 

 

******************

 

 

 

「結局、サッカーなのね」

 

日ごろ部活で使用している、河川敷。

そのグランドで真剣にボールを追いかけている二人を、四人は遠目で見つめていた。

 

「らしいといえば、らしいけど」

 

「好きなことが共通してるって、なんか憧れますね!」

 

多少、少年めいてはいるが。主に優梨。

 

「よっ、ほっ」

 

「やるな」

 

高度なボールの奪い合い。伊達に雷門のストライカーをやっていない。

片方が右に行こうとすれば、片方はそれを読んでいたかのようにそこに存在しており、ボールを奪取。

攻めと守りが逆転すれば、また繰り返される。

 

「お互いに、どう動くのかが分かってるみたい」

 

「きっと体が覚えてるのよ。何回も何回も、数え切れないくらい二人でああやってサッカーして・・・癖とか、呼吸とか、次に動くタイミングとか、全部わかっちゃってるのよ」

 

「でも付き合えないんですね」

 

「ヘタレだから・・・。もう帰りましょうか」

 

「え?」

 

「デートとしては赤点ですけれど、なんやかんやでいい雰囲気じゃなくて?」

 

進展という進展は見られない。が、確実に仲はいままで以上に深まったはずだ。

 

「そうね。このまま影から見てるのも、ちょっと罪悪感あったからこれぐらいにしておこ?」

 

「「ですね」」

 

木野も、後輩二人も賛成のようで。

 

「では、帰りにどこかカフェに寄りましょう。菜花さんの尋問の件もありますし」

 

「うへぇ・・・覚えてたやんね」

 

そうして、四人は河川敷を後にした。

 

 

 

******************

 

 

 

練習を始めてどれくらいだっただろうか。

夢中で取り組んでたせいか、あたりは既にオレンジ色、夕方になっている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「・・・上手く、いかないね」

 

1vs1もそこそこにし、私と修也くんは以前より予定していた合体技の特訓をすることに。

でも、これがどうも上手くいかない。

彼の必殺技、ファイアトルネード。私の必殺技、バックトルネード。この二つを同時にボールへぶつければいい話だろう、と皆は言うと思う。

 

「威力がな・・・こう、俺と優梨が衝突しない距離を保ち、ジャンプして、最後にボールと足を激突させる」

 

「タイミングは合ってるのに。100%、確実に合ってる。だけど、成功しない・・・」

 

何がいけないんだろう。

打つ瞬間、威力がブーストされる感覚は伝わってきている。攻撃力を削いでいるのは他が要因だ。

 

「技の威力の違い?」

 

「いや、俺のファイアトルネードの威力、優梨のバックトルネードの速さ、この二つの長所が組み合わさるのがこの技だ。短所は長所で補える。他には?」

 

「回転の数」

 

「足りないとは思わない。これ以上増やせば、タイミングに支障が・・・」

 

残ったのは・・・、

 

「「・・・距離?」」

 

声が重なった。

 

「でも、空中でぶつかっちゃうし・・・」

 

「ーーーいや優梨、自分を歯車と思って飛んで見てくれ」

 

「歯車?」

 

「ああ。二つの歯車が、ぶつかるギリギリで回転を行い、頂点に達したところでボールを蹴り込む。どうだ?」

 

「おっけ」

 

即了解だよ。確かにそれなら、ダイレクトに力をボールに伝え易くなるかも。

やってみる価値はある。

 

「いくぞ!」

 

「うん!」

 

 

 

******************

 

 

 

「で、夢中になって練習してたら夕立が降ってきたと」

 

「「はい・・・」」

 

「そしてずぶ濡れになり、家まで走って帰ってきたと」

 

「「はい・・・」」

 

「お馬鹿」

 

水浸しになった私たちを迎えたのは、お母さん。手にはバスタオルが二枚。わかってらっしゃる。

 

「兎に角拭いて、お風呂入ってきなさい」

 

「はぁい・・・」

 

「すみません、おばさん」

 

「いいのよ」

 

着替えある?と聞く私のお母さんに、修也くんは新しく買ったジャージのことを伝える。

 

「へー、買い物かー。・・・お?」

 

ビニール袋に入ったものをガサガサ探すお母さん。

ーーーそして、見つけた。

 

「水着?」

 

「うん。修也くんと一緒に選んだ」

 

「ならちょうどいい!二人とも、お風呂は入ってきなさい」

 

「「え!?」」

 

何を言い出しやがったこの人は!?

 

「い、異性と入るの!?何考えてんの!?」

 

「平気平気!折角水着があるんだし、早く入らないと風邪引くわよ?」

 

 

 

******************

 

 

 

で、その後お母さんの圧に押し切られ、冒頭に至る。

 

(ど、どどどどうすりゃあいいのこれ?振り返った直後であれだけど、なんで私修也くんと一緒に浴槽浸かってるの!?)

 

謎はそれに尽きない。

さっきから体勢を変えようとするたびに足と足が触れ合うんだけど。

私の家の風呂は、お世辞にも広いとは言えない。精々私の身長で足が伸ばせる程度だ。

 

「優梨、大丈夫か?顔赤いぞ」

 

「あ、暖かいからだよ。修也くんこそ上せた?」

 

「・・・かもな」

 

肌がちょんと触れると、自分の体温が上がるのが分かる。体感100度くらい、表面も心も熱い。

おかしくなりそうだ。

かれこれ30分、こうして時々話しては黙るという行程を続けている。

ーーーん?ちょっと待てよ。

 

(ここには私と修也くんしかいない)

 

買い出しもといデートをした訳だが、周りには人がいて、告白なんて到底できる状況ではなかった。

なら、この状況ではどうだ?

もう夏未さん達からヘタレなんて呼ばれるのはまっぴらごめんである。

 

「しゅ、修也くん!」

 

言うのだ。今。

 

「ん?」

 

勇気を出せ、高良優梨!

 

「私、ね。ずっと修也くんのことが・・・」

 

ポタッ

 

・・・ぬ?

何かが、お風呂の水面に落ちた。他ならない私から落ちた。雫ではない。

痛々しいくらい深紅に染まった赤い何かが、自分の・・・鼻から滴っている。

 

「あの、優梨」

 

「・・・」

 

「鼻血が」

 

「・・・きゅううう」

 

意識は、そこで途切れた。

 

 

 

******************

 

 

 

上せたらしい。

気付いた時にはベッドに寝かせられており、おでこに氷の入ったビニールを置かれた状態だった。

熱いと鼻血が出る、あれ本当なんだね。

修也くんは雨も病んだと言うことで帰ったらしい。お見送りとかしなくちゃいけなかったのに気を失っていたとは、自分が情けない。

 

「昨日はどうだったの?」

 

「お風呂一緒に入りました」

 

「「「「!?」」」」

 

学校で女子四人に聞かれ、間髪入れずにそう答えた。驚いた顔を見れて少し嬉しい。

 

「告白する寸前に鼻血出して倒れましたけど」

 

「やっぱヘタレじゃない」

 

うるさい。

・・・けど、本当に言う寸前にだったからなぁ。

修也くん察し良いし、もしかしたら気付いちゃってるかもしれない。

それだけが、私は気が気でなかった。

 

 

 

 




〜次回予告〜

「何を証拠にズンドコドーン!」

「戦術と戦略は違うんだよ」

「私か?通りすがりの監督殺害犯だ。覚えておけ」

「ボールは友達だああああ!!!」

「おまえのポジねえから!」

「勝てばいいのだよ、勝てば!」

「もう全ての条件はクリアされた」

「止まるんじゃねぇぞ・・・」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」

「洗濯バサミにも劣る自分の不甲斐なさを、嘆くがいい!」

「この距離なら、ゴールをずらせないな!」

「30分前行動」

「気付いたようだな。蹴っていいのは、蹴られる覚悟のあるやつだけだと」

「さぁ、おまえの罪を数えろ」

秋葉名戸編、開幕です。



優「なんだこれ」




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第19話 目には目を

鬼滅の刃、面白いですね。甘露寺と時透くんが個人的推しキャラです。
勢いで漫画全巻買ったから金欠なんですよね・・・しばらくは無駄遣いができない。
早く2月になれ。19巻早ぉ。


 

 

皆は、『オタク』という言葉をご存知であろうか。

 

個人差はあるだろうが、およそ小学5年生ほどから発症する、アレだ。

様々な種類があり、アニメ、ゲーム、アイドル、ボカロ、アーティスト、スポーツ、鉄道、etcetc・・・。

その中でもメジャーなのはやはり、アニメだろう。今や日本文化の象徴として愛されている『アニメ』は、そこからまた違う特徴を持つオタクに分岐していく。

DVD Blu-ray全巻揃える者、原作であるマンガを全巻揃える者、関連グッズを買い漁る者、同人作品を作る者、前者のように、あげてもあげてもキリがない。

尚、その派生において『中二病』という、温かく、甘酸っぱい青春の話については後々話すこととして。

 

ーーーさて、ここにも一人。

オタクの道に足を踏み出す、片鱗を見せ始めた人物が。

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

『これで世界は軍事力ではなく、話し合いという一つのテーブルにつくことができる。・・・明日を迎えることができる』

 

『・・・それが』

 

『ああ』

 

『『ゼロ・レクイエム』』

 

 

 

「ルルーシュウウウウウウッッ!!!」

 

叫んでも無駄なのはわかっていた。

自分の声が届かないことも、すでに決まっている運命、物語なのだと。

しかし、私は叫ばずにはいられなかった。

 

「そんな、そんなぁ・・・!」

 

涙を浮かべながらも、私こと高良優梨は彼に尊敬の念を込めた敬礼をする。正座しながら。

なぜかと問われれば、『それは彼が気高き皇であり、一人の兄だったからであり、敬意を表したからだ』と言わざるを得ない。(ジョジョ視聴済み)

画面には既にエンディングが流れており、このアニメに関わった全ての人、団体の名が記され、そして消えていく。

 

「う、うぅ・・・」

 

涙をハンカチで拭きながら、私は徐にスマホを手にとり、とある人物へ電話をかけた。

 

『もしもし』

 

「よがっだ」

 

『それはそれは』

 

開口一番その濁点付き4文字か、とツッコミを入れられるかもしれないが、許してほしい。所謂語彙力の低下というやつだ。

 

「このあとの続きとかは・・・」

 

『R2の前日譚なんかがありますよ。それを見た後には劇場版三部作を見て、その後完全新作の方を視聴していただければ』

 

「で、でも三部作はアニメの総集って前に」

 

『いくつか違う点が多いんです。なので、その三つを見た後に新作を見てください。因みに一番好きなキャラは・・・』

 

「ルルーシュかロロか我らがオレンジ」

 

『即答ですか。そして多いなぁ』

 

電話の向こうにいる相手、彼は他者を自分色に染めることに長けていた。

見せる順番といい、解説といい、王道パターンだ。

で、誰なのかというと、

 

「このアニメに出会えたことを誇りに思うよ目金くん・・・」

 

『いえいえ、同じ部活の仲間じゃないですか。見終わったら次のを貸しますので』

 

我らが雷門サッカー部ベンチウォーマー、目金欠流である。

なぜアニメを見る経緯に至ったかというと、私がいつもリフティングなどでよく口ずさむ例のアレに彼が反応したからだ。

 

『た、高良さんそれはまさか!まさか貴女があの詠唱を知っているとは!』

 

『え、えぇぇ?』

 

今までに見てきたアニメは飛び飛びで見るポケモンやら夕方5時放送とは到底思えないシナリオに心揺さぶられたオルフェンズぐらい。

まさか団長があれだけネタになっているとは思わなかった。

目金くんにアニメを提供してもらうこと数日、最初は比較的見やすいものを貸してもらった。

まぁオルフェンズ見れるんだから耐性ついてるんだろうけど、初心者ということを踏まえて目金くんは選んでくれたのである。優しい。

 

「でも、部活とは両立してねー?」

 

『ゔっ・・・肝に銘じておきます。明日は確か準決勝の相手が決まるのでしたっけ?』

 

「うん。尾刈斗か秋葉名斗のどっちかでね。結果は見えてるけど」

 

噂から推測するに、身体能力に関しては帝国戦前の私たちより弱い。

油断はできないけど。仮にもここまで勝ち上がってるんだから、何かあるに違いない。

 

『それでは、また明日』

 

「うん。じゃね」

 

通話を切る。

そしてベッドに仰向けで倒れ込み、神アニメが終わってしまったことにより襲来した賢者タイムと戦う。

あぁ、終わってしまった。見ている時はあんなに楽しかったのに。終わったあとの喪失感が半端ない。

 

「・・・」

 

なぜか、体が勝手に動いていた。

ゆらりと立ち上がり、まっすぐに直立。

右手で左目を隠すようにして、顎を引く。

 

「それとも気づいたか?撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだと」

 

精一杯出した低い声。

なりきれ。なりきるんだ。今の私は高良優梨ではない。

あの画面の中にいた、物語を駆け抜けた、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアになるんだ。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じるーーー」

 

 

 

「我に・・・いや、ボクに従え」

 

 

 

こうして、彼女は扉を開けてしまった。

 

 

 

******************

 

 

 

買い出しをした日から早一週間が過ぎようとしている。

変わったことはない。朝起きて、同じように授業を受け、部活の練習に励み、帰って寝る。

問題なのは、俺ーーー豪炎寺修也の心の内だ。

なぜか、あの日の買い出しを境に胸が熱くなる。主に優梨の顔を思い出すたびに、自身の眼で見かけるたびに、鼓動と体温が上昇するのを感じていた。

 

(なんなのだろうか、これは)

 

風邪でも引いたか?

しかし体調は問題無い。それどころか、すこぶる調子がいい。

優梨のことを思うだけでなんでもできてしまいそうな根も葉もない確固たる自分が形作られている。

 

(気にしても仕方がない、か)

 

明後日には予選準決勝が控えている。練習を厳かにするわけにはいかない。

教室で円堂か優梨に会ったら、檄でも入れてもらおう。

そう思いながら教室に到着。

今日は随分と早くきてしまったので中には誰もいない、そう思っていた。

 

「ご、豪炎寺!」

 

いつもと変化のない・・・ん?

扉をガラガラ開けると、中から円堂が俺に助けを求めるかのような声で名前を呼んできた。

 

「おはよう。どうした?」

 

「どうしたもこうしたも、高良が・・・」

 

「優梨がどうかしたのか?」

 

見て貰えばわかる、そう促されるがままに俺を優梨のもとへ誘導。

いた、優梨だ。

白金色とも呼べる長髪の先端を桃色のシュシュで束ね、黄昏ているのか、どこか憂いを含んだ表情で窓の外の校庭、いや雷門町を見つめている。

 

「おはよう、優梨」

 

「ん?ーーーああ、おはよう我が友」

 

・・・あれ?

柄にもなく素っ頓狂な声をあげそうになった。今彼女は、なんと言った?

いつもなら『あ、修也くん。おはよう!』と元気溌剌且つ気軽に挨拶してくれるはず。

だが優梨が放ったのは、幼馴染みの自分でも聞き覚えのない挨拶と、喋り方だ。

 

「どうしたんだ?優梨」

 

「どうしたって?・・・ふっ、そうだな。何がどうして、ボク(・・)があるのか。それは本人であるボクにもわからない。けど、すでにボクはここに存在している」

 

本当に何があったのだろうか。

改めて彼女を正面から見た。

口調以外に、ほかに違うところはないか。

すぐに見つかった。

眼帯だ。しかも治療後にするものではなく、一般的にアイパッチと呼ばれるものを左目に装着している。

制服のスカートなぜかいつもの2cm短く、両サイドの腰あたりにはシルバーチェーン、靴下は黒のニーハイ。

生徒の模範のような格好だった昨日までの優梨とは、大違いだ。

 

「いい朝だ。普段は裏で生きるボクでさえも、この朝日には心地よさを覚える。さぁ我が友、そしてキャプテン。明日のゲームに勝利するために、精進しようじゃないか」

 

活き活きとしていた。

今までにないくらい、優梨は活き活きとしていた。

 

「ほ、本当にどうしちまったんだ?」

 

「わからない・・・」

 

「ふっ、ボクはユーリ。ゲームを持ってゲームを制する、一人・・・いや、独りのプレイヤーだ」

 

さっき俺のことを我が友と言っていただろうに。

 

「あーまさか、高良さんがこの症状に至ってしまうとは」

 

想定外ですね、トレードマークであるメガネをクイっとする少年は、ご存知目金欠流。

彼の発言と、態度を見るや俺は反射的に突っ掛かった。

 

「おい!優梨になにが起きている!?答えろ目金!」

 

「ひょえ!?」

 

「落ち着けって豪炎寺!」

 

「これが落ち着いていられるか!もしも記憶障害が起こっているとしたら、取り返しのつかないことになるかもしれないんだぞ!?」

 

俺の今言ったことが本当なら、俺はまた一つ大切な人を失ってしまう。それだけはダメだ、もう夕香のように、痛ましくベッドで眠り続ける人を増やしたくない。

それが友達、しかも優梨ならなおさらだ。

 

「ひ、一先ず落ち着いてください!全部話しますから!」

 

「・・・すまん」

 

正直熱くなりすぎた。事情を知っているとはいえ、目金がわざと優梨をあの状態にしたとは思えない。

 

「高良さんは、とある病に苛まれています」

 

「病?」

 

「はい。これは少なからず、ちょうど我々の学年で発現するケースが多々あるんです」

 

「その病気の名前は、なんていうんだ?」

 

「名はーーー」

 

ゴクリ

 

 

 

「ーーー中二病です」

 

 

 

******************

 

 

 

「中二病ねぇ」

 

急遽、生徒会長室にて数人による緊急会議が開かれることとなった。

メンバーは円堂、豪炎寺、夏未、目金、優梨(捕縛済み)である。

 

「んむー!んむむー!」

 

『一体どういうことだぁ!事情を説明しろぉ!』とでも言っているのだろうか。腕と足を縛られ、口も封じて床に転がされた優梨を他の四人は何とも言えない視線を向ける。

理事長権限により五人は一時限目の授業を休んだ。優梨を元に戻す作戦を練るためである。理事長すごい。

 

「簡単に言えば、アニメの影響を受けすぎたのでしょう?」

 

「ええ。僕が貸したTVアニメ、『コードギアス〜反逆のルルーシュ〜』に心動かされたようです。昨日電話をした時には普通だったので、おそらくその後にこうなってしまったと推測できます」

 

誰もがやってみたくなるだろう、ギアス発動の動作。少女か少年かと聞かれればどちらかというと聞かれれば少年寄りの思想を持つ優梨が、あの社会現象を巻き起こしたアニメを見て影響を受けない訳がない。

そもそも、彼女は他からの影響を受けやすい性格だった。

 

「ボク、ボクかぁ」

 

「ボクっ娘というやつです。さて皆さん、これからの方針を固めていきましょう」

 

「なんで貴方が仕切ってるのよ」

 

「今回の件に関しては、目金の専売特許だ。任せよう」

 

サッカー部、校内においてこれほどまでにアニメ文化に精通しているのは目金を置いて他にいない。ここは彼に頼るしかないのだ。

 

「まず、高良さんを元に戻す方法ですが・・・我々の力では、恐らく不可能です」

 

「そんな・・・」

 

「本人に自力で目覚めてもらう他ありません。一般的な言葉は通じないことを、先ほどの会話で二人は学びましたね?」

 

目金の問いに、円堂と豪炎寺は頷く。

 

「であれば、高良さんが元に戻るように仕向けるのではなく、我々は戻った時のことを考えなくてはなりません」

 

「どうして?」

 

「今はあのように格好つけていられますが、悪く言えば痴態を晒しているようなものです。他者が見たとき、周囲の目はどう彼女を見るでしょう」

 

「それは・・・まぁ・・・」

 

イタイタしい。

 

「としか」

 

「はい。最悪いじめも起こりかねません。なので、極力部員以外に今の高良さんを目撃させてはいけません。今後の彼女の学校生活もかかってきます。僕が同じ状況に置かれていて、中二病が治ったと仮定して想像すれば、10回は死ねます。精神的に」

 

「なら、授業中はここに軟禁しておくわ。足りない授業は休みで補えばいいもの。監視として私が付く。いいかしら?」

 

「んむ!?」

 

「優梨のためだ。それも仕方がないか・・・」

 

「んむんむ!?」

 

「よし!そうと決まれば、俺たちは戻るか!」

 

「んむむー!!」

 

「待ってください」

 

猿轡越しに聞こえる断末魔を背にしながら部屋を去ろうとする円堂と豪炎寺。しかし目金は彼らに待ったをかけた。

 

「何かあるのか?」

 

「次は試合についてです。準決勝の相手は、秋葉名斗に決まりました」

 

「はぁ!?負けたのか尾刈斗中!・・・いや、そこまで驚くことでもないな」

 

5-0で勝ったし。

 

「その秋葉名斗の選手ですが、マネージャーからの情報によると試合前日にメイド喫茶へ入り浸っていたようで。これは何か秘密があるに違いありません。皆で調査に向かいましょう!」

 

「め、メイド喫茶にか!?」

 

「ええ!もちろん豪炎寺くんも行きますよね?」

 

「いや俺は・・・」

 

「秋葉名斗はほとんどが何かしらのオタクと聞きます。もしかすると、中二病を治す方法を教えてくれるかもしれませんよ?」

 

「・・・わかった」

 

「豪炎寺ェ・・・」

 

「腹をくくれ円堂。優梨のためと思って」

 

こうして、放課後彼らはメイド喫茶に乗り込むこととなった。

 

 

 

 




アフロさん「ヘブンズタイム!」

優「うわぁ!それギアスだよね!?ロロだよね!?ねぇねぇ!」

下「因みに、高良が目金に最初に見せられたアニメはAngel Beats!らしいぞ」



後悔はしていない()

優梨の声ですが、花澤香菜さんの声が最適かなと。イメージとしてはあんな感じです。


自分がアニメを本格的に見出したのは、中学2年の頃に職場見学の休憩時間中、友達にSAOの小説を見せられたことがきっかけです。
個人的にアニメを知らない人に見せるなら、PSYCHO-PASS、Fate、鋼の錬金術師、コードギアスですかね。もしかしたらオルフェンズも気に入ってもらえるかもしれない。
あ、一番好きなのは魔法少女まどか☆マギカです(畜生の目





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第20話 歯には歯を

すみません、遅れました!失踪はしません!

できてはいたのですけど、仕事上、自分は圏外にいることが多くなってしまうので投稿する時間がなかったのであります・・・。
よくて週一、悪くて週二のペースで今後とも上げていきたいと思っているので、これからもよろしくお願いします!


 

 

「んじゃ、行ってくる!」

 

「はいはい」

 

放課後になり、円堂を初めとした雷門イレブンは商店街にあるメイド喫茶へと向かった。

残されたのは夏未と優梨の二人のみ。同じ女性陣である木野と音無は家の用事があるので帰宅、黄名子は行くのを嫌がる剣城を強制連行してメイド喫茶へ。

 

『おい菜花!?離せ、俺はそんな得体の知れない場所に行くつもりはない!』

 

『先輩たちとの交流はもっと大事にするやんね〜』

 

彼女は彼女で先日の一件以来、積極的になったらしい。

 

「後輩に負けるわよ、貴女」

 

「むむ・・・」

 

生徒会長室で相変わらず縛られている高良を見下ろす夏未。

不適に笑みを浮かべる理事長代理、その口角が緩んでいるのには理由があった。

彼女には分かってしまったのだ。優梨が中二病になった訳を。

 

「まったく、不器用にも程があるわ」

 

「ぷはぁ!・・・な、なんのことだい?」

 

「私に対して慣れないタメ口をきかないで頂戴」

 

「は、はい!すみませんごめんなさい!」

 

口にあてがわれた布を外し、喋るのを許可。

夏未の問いに優梨はそっぽを向くが、次の鶴の一声で折れた。

キザっぽい口調はどこへやら、同じく拘束を解かれた腕でアイパッチを外す。

そこには、いつも通りの高良優梨がいた。

 

「大方の見当は付くけど、説明して」

 

「はい・・・」

 

彼女の圧に押され、気を落としながら優梨は訳を話し始める。

 

 

 

******************

 

 

 

「私なりに、焦ってたんだと思います」

 

買い出し、もといデートが終わってから、私は修也くんの反応、接し方がどう変化したか気になっていた。

告白できなかったとはいえ、一緒にお風呂にまで入ったのだ。進展の証拠が、結果が欲しかったのかもしれない。

だけど、一週間の時が経過したにも関わらず彼との関係が変わることはなかった。

 

「せっかく夏未さん達が作ってくれたチャンスが無駄に終わっちゃったと思うと、申し訳なくて。それに、ここまで何もないってことは私に女の子としての魅力なんて・・・」

 

「無い、そう思ったわけね?」

 

「はい・・・」

 

消沈した私は、目金くんの貸してくれたアニメの世界に逃げた。

そして、視聴しているうちにとある考えが頭に浮かぶ。

 

(私の性格とか口調がいきなり変われば修也くんは、気遣ってくれるかなぁ)

 

いっそ容姿も変えてしまえと、母に頼んでアイパッチをネットで買ってもらい、スカートの裾上げ、靴下の新調も行った。

 

「よかったじゃない。効果、あったわよ?」

 

「たはは、目金くんに掴みかかった時にはヒヤヒヤしましたけどね。でも、私のことをあんなに想ってくれてるって初めて知りました」

 

「彼、顔に出さないものね」

 

いつも表情は平静を保っていて、声も一定のトーンを超えることは少ない。

そんな中、時々表れる笑顔と、優しげな声には創造以上の破壊力が備わっている。

豪炎寺修也は、私にとって格好いいの象徴なのだ。

 

「貴女のために、慣れないでしょうメイド喫茶へ調査。愛されてるじゃない」

 

「そ、そんな。愛とかそう簡単に言わないでくださいよもう・・・」

 

縮こまる私を見て何を思ったのか、夏未さんはそっと近づき背中に手を回してくれた。所謂ハグだね。

・・・え、ハグ?

 

「な、夏未さん?」

 

「さっき言ったこと、取り消しなさい。自分には魅力がない、なんていう話。好きな人を想い続ける女の子のどこに、魅力がないですって?一途なところ、豪炎寺くんの前だと声が上ずるところ、図星を言い当てられて赤くなるところ、私たちの心を温めてくれるところ、全部貴女にしかない長所よ」

 

自信を持ちなさい、背中をポンポンと叩いてくれる夏未さんに、私は見惚れていた。

 

(あぁ、やっぱり敵わないなぁ)

 

恐らくこれからずっと、雷門夏未には頭が上がらないと思う。

一年経っても、十年、何十年、はたまた一生かかっても、勝てっこないだろう。

 

「すみません」

 

「謝罪より、感謝が欲しいわ」

 

「ありがとう、ございます」

 

「ええ。どういたしまして」

 

目が合って、お互いに笑う。

 

「さぁ、そろそろ河川敷に行ってみましょう。時間も経つし、調査も終わってる頃だと思うし」

 

「みんなに、迷惑かけちゃったなぁ・・・」

 

「謝れば大丈夫よ。そうね・・・『ドッキリだったけど言うタイミングを逃した』なんて言えば納得してくれるわ」

 

「ですね」

 

一応アイパッチを持ってと。折角お母さんに買ってもらったんだからね。放っといたら勿体無い。

 

 

 

******************

 

 

 

「そろそろ着きます」

 

「ええ」

 

河川敷まで送ってくれると言うことで、お言葉に甘えさせてもらった。

黒塗りのリムジンを運転するのは、夏未さんの執事さん。バトラー、なんていう呼ばれ方をしている。

平然と外の景色を楽しむ夏未さん、それとは反対に私はというと、

 

「うわぁ・・・うわぁ・・・」

 

学校で乗ってからというもの、高級車の凄さに圧倒されていた。

ソファはふかふか、足元は広いし、流石はお金持ちの乗る車といったところか。すごい(語彙力の無さ

 

「アホが出てるわよ」

 

「あぁはい!で、でも凄いんですもん。一般人はこんな車なんて滅多に乗る機会なんて無いですし」

 

「そんなものかしら」

 

そんなものですよ。

 

「近頃、もう一つ買おうか悩んでるのよね」

 

「これ一つで十分でしょうに」

 

お金持ちってすごいなぁ。

普通の買い物感覚でリムジン買えちゃうんだ。

因みに私の今まででいちばんの買い物は、期間限定で販売していたスパイク。比べるまでもないね、桁が違う。

 

「見えました。ーーーおや?」

 

「どうしたの?」

 

「何やら、練習に身が入ってないようです」

 

窓から河川敷を眺めると、本当だ。座り込むかダラダラ走ってるだけで真面に練習してない。

染岡くんと剣城くんが率先して一年に指示出してるけど効果はあまりないっぽいし、他の二年は・・・作戦会議中かな?

 

「ありがとうバトラー。高良さん、行きましょう」

 

「はい!」

 

車を降りて、真っ先に円になって話し合いをしている二年生組の元へ。

 

「ちょっと、これはどういうことなのかしら!?」

 

「・・・あ、会長。高良もいるじゃん」

 

気づいた半田くんから伝わるように、他の皆がこちらを向く。

 

「明日は準決勝よ?もっと真面目に練習なさい!」

 

「と、言われてもなぁ」

 

「相手が相手なんだよ」

 

話を聞くと、明日対戦する秋葉名斗学園はアニメやゲーム、その他諸々のオタク文化を集結させたような存在らしく、明らかに弱そうだから特訓しなくてもどうせ勝てるんじゃね?みたいな感覚でいたところに私たちがやってきたのだと。

 

「豪炎寺と染岡、高良のFW陣がいるし、中盤も天馬が入って一段と強くなっただろ?最弱なんて呼ばれる学校に負けるはずないって」

 

「うちも元々弱小校だったでしょうに。タカを括って負けたチームがいたのをお忘れではなくて?ーーーキャプテン、今こそ貴方の本領を発揮する場面よ」

 

「ん?そうだなぁ・・・慢心は敵、慢心は敵。相手が強くても弱くても関係ない!正々堂々、正面から本気でぶつかって行こうぜ!そのためにも、今日の練習を大切にしなくちゃな!」

 

やっぱ言うこと違うね。

 

「なら、対策もしなくてはな。出場校中最弱と呼ばれていても、準決勝まで勝ち上がっているんだ。向こうなりに秘策があるに違いない」

 

修也くんの言う通り、絶対に何かある。伊達に尾刈斗に勝ってないんだから。

 

「ーーーこの僕に、良い考えがあります」

 

キランと眼を光らせるのは、察しの通り目金くん。

・・・ん?なんか私の方見てるんだけど。

 

「古来より日本では、『目には目を、歯には歯を』と云います。そう!ここは中二病に陥っている高良さんをぶつければいいのではないでしょうか!」

 

は、はああああぁぁっ!!??

 

「なるほど。アニメの影響を強く受けてる高良を主軸に展開すれば、自ずと勝利が見えてくるってことだな?」

 

「ズバリその通り!」

 

「オタクには、オタク、か・・・」

 

「すっげー!面白そうだなソレ!」

 

なな、なんで本人の承認も無しにそんなこと決めちゃうわけ!?

というか私、ここに来て一言も喋ってないんだけど!

 

「できるか?優梨」

 

あぁ、やめて!心配そうな目で私を見ないで修也くん!

や、やるべきなのか?実際、今の私たちなら周りくどいことなんてせずに真っ向から試合すれば勝てると思うんだけど・・・。

でも、皆の期待・・・しゅ、修也くんの期待ぃ・・・!どっちを選べば良いの・・・!

 

「・・・」

 

これをやって、勝ちが確実になるのなら、

 

「優梨?」

 

修也くんが、喜んでくれるなら。

 

「な、なんだ?」

 

自然と、私はポケットを手探りしていた。触れた物を掴み、外気に当て・・・左目に、装着。

 

「フ、フフフ・・・」

 

「高良?どうしたんだ?」

 

「心配は無用だよ、キャプテン」

 

そこには、

 

 

 

「このボク(・・)に、ユーリに任せておきたまえ」

 

 

 

親が見たらきっと恥じるであろう口調と格好、ポージングをとった私という存在がいた。

 

「うおおお!やってくれるのか?!?」

 

「愚問だね。チームのため、何より我が友らの頼みとあっては、断る理由などない・・・」

 

お母さん、ごめんなさい。引き返せたらまた戻ってきます。本当にすみませぬ。

 

「よしみんな!景気付けに高良・・・いや、ユーリを胴上げしようぜ!」

 

『おー!!』

 

What!?

思わず英語が出てしまった。

なんで胴上げ!?やることが適当だし大雑把でって、うわぁなにこの浮遊感クセになりそう。

 

「あれ、キャプテン達なんだか面白いことしてますね!」

 

「ズルイっス!俺達も混ぜて欲しいっス!」

 

「おう混ざれ混ざれ!せーの、」

 

『わーっしょい、わーっしょい、わーっしょい!!』

 

あぁ、無情。

空中に何度も放り出される度に、思う。

 

「どうじてこうなっだあああああ!!!」

 

『わーっしょい、わーっしょい、わーっしょい!!』

 

泣きじゃくる私をお構い無しに、胴上げは続いていく。

理不尽に、まさか頼りにしてる中二病のメンタルはドボドボだとはいざ知らず。

 

「・・・まったく、やっぱりお馬鹿ね」

 

エンドレスに投げられる私を見て、夏未さんはソッと、諦めのため息を吐いた。

 

 

 

 




下「新しい黒歴史のページが刻まれたな」

優「言わないでください・・・」

下「次回はネタのオンパレードになる予定らしい。楽しみにしていてくれ」

円、豪(下鶴をここまで推すの、この小説以外ないだろ・・・)


仕事がキツい・・・。眠ることがどれだけ大事なのかがわかりますね(尚、投稿時間
次回をお楽しみに!


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第21話 速攻

「4G、圏外になったおまえを、俺はもう電波とは思わない(善逸感」

気を取り直して、

あけまして、おめでとうございます!!今年もよろしくお願いします・・・ッ!

いやぁ今年はアニメ映画が目白押しですね。Fateに始まりEVAに鬼滅の刃、現在公開中のヒロアカまで!
果たして仕事漬けになるか、アニメ漬けになるか、ゲーム漬けになるか・・・。まぁ兎に角、更新を怠る事なく、頑張りたいと思います。


優「ところで、私の背番号って何番だと思う?」

豪「21だ」

優「なんで答えちゃうかなぁ(テレテレ」

下「ここで彼対こそこそ噂話。21の理由は、本作の『対』から。対→つい→ツーいち→21。設定ではクラブで貰ったゼッケン番号がこれだったから、以降気に入って付けているのだと」


 

 

『フットボールフロンティア地区予選、準決勝!我らが雷門中学vs秋葉名斗学園との一戦がここ、秋葉名斗グランドで始まろうとしています!』

 

後に、実況はお馴染み角間圭太がお送りしますと続く。

現在私の周りでは、スイカをガツガツ食べてる相手監督に驚く者、相手チームが中々にクセのあるメンツばかりで戸惑う者、メイド服を着せられる者(主に夏未さん)と様々。

しかし、そんなことは知ったこっちゃない。

こちとら朝起きてから憂鬱でたまらないのだ。今も行儀が悪いと分かっていても貧乏ゆすりをやめられない。

 

(なんで眼帯付けて試合しなくちゃいけないのぉ・・・?邪魔じゃん。せめて鬼道くんみたいなゴーグルにしておくれよぉ・・・)

 

でもゴーグルを付けての試合もどうかと思い、やっぱ素でやりたいユーリ、違う、優梨なのでした。

スポーツ漫画などで格好付けのためにアイパッチを装着しているキャラはチラホラいるけど、よく考えてみればどうして視界の阻害にしかならない物をわざわざ付けているのだろうか。

怪我をしている訳でもなく。

 

(それに、今は仕込みで異様に痛い・・・)

 

本気で中二病を演じる上では欠かせない物。

仕方なく填めてるけど、尋常じゃない痛みが左目を支配している。

パフォーマンス下がるの必至だよこれ。

 

「そ、そこの君。いいカナ?」

 

「む?」

 

顔を上げると、そこにはカメラを持った秋葉名斗の選手が二人。

 

「その髪色、中々のセンスだ!一枚いいかい?」

 

「・・・フッ、勘違いしているようだが、この髪色はボクの母より授かったモノでね。不純な手は一切加えられていないんだ」

 

訳:地毛です。

 

「ふぉおッ、地毛!ボクっ娘!じゃあその眼帯は?」

 

「これかい?これも母から。彼女が電脳世界にアクセス、介入し、入手したモノさ。本来のボクの力を抑えるためにね」

 

訳:お母さんがネットショッピングで買ってくれたんだ。これ付けると邪魔でプレイがままならないんだよね。

 

「ふおおお!!なんてクオリティの御仁だ!」

 

「付けたい・・・、この子に、ネコ耳を付けたい・・・!」

 

「いいよ。こんなボクでよかったら、幾らでも撮ってくれ。ありのままのボク、猫のようなボク、どれも同じボクだ」

 

心中:嫌だ嫌だそんなネコ耳なんて恥ずかしすぎる!ただでさえこの姿修也くん含めてみんなに見られて死にそうなのに・・・っ!でも、キャラを定着させるには付けるしか・・・逃げ道はないっ。

 

「すごいっス、高良先輩」

 

「いつものアイツなら赤面物だね」

 

「・・・俺だったら死ねる」

 

よぉく分かってるじゃないか、そこの三人。

上から壁山くん、マックスくん、影野くん。覚えたかんなぁ・・・!

と、とりあえず、今日のスタメン紹介いってみよう!

 

フォーメーション F-デスゾーン

 

FW:染岡、豪炎寺

 

MF:半田、宍戸、松野(マックス)

 

DF:風丸、土門、高良、壁山、影野

 

GK:円堂

 

ベンチ:少林寺、目金、栗松、天馬、黄名子、剣城

 

相手の出方がよくわからないので前にやったフォーメーションを下地に、私は一つ後ろへ。宍戸くんにも経験を積ませたいしね。

 

と、いうのが表向きの理由。

 

現状!FW!務まらない!私!

こちとら目が痛すぎてプレイに支障が出まくるの確定ですよ!今の状態で前衛が務まる訳ないでしょ!?・・・え、なに?格好もイタい?うるさいうるさい。

 

『さぁ両チームがポジションについた!果たして勝つのは雷門か、秋葉名斗か!?』

 

「みんな、気を緩めずにいこうぜ!」

 

『おー』

 

明らかに緩んでるねぇ。キャプテンと前衛二人しか集中してないよ。

ここは、私が檄の一つでもガツンとかましておこうか!

 

「全員、負けたら全力走100本だ!」

 

『い、イエッサアアアアッッ!!』

 

うんうん、よろしい。

 

「えげつねぇ、俺らもやるのかよ」

 

「覚悟を決めておこう。負けるつもりはないがな」

 

「あ、あのおおお!!僕は!?この目金欠流はなぜいつも通り、実家のような安心感を醸し出しているベンチに居座っているのでしょうかあああ!?前の話的に、僕がスタメンなのはほぼ確定的でしょおおお!?」

 

む、君は今日もお休みだよ。

だって修也くんと染岡くんどっちか外せって言われても外したくないし。ならスリートップでいけって?今日はツートップの気分なのだ()

まぁ敢えて何か言って欲しいなら・・・、

 

「おまえのポジねえから!(蔑みの目」

 

「そんな目でウインナー!?」

 

決していい性格とは言えない(戒め)

むむ・・・けどもう少し気の利いた言葉があったんじゃないだろうか。ここは同じくベンチにいる黄名子ちゃんに頼んでみよう。

ほいっ、チラリと目配せ。

 

チラッチラッ

 

「(ピコーン!)目金さん目金さん!」

 

「え・・・?」

 

「(前髪をかき上げながら) 洗濯バサミにも劣る自分の不甲斐なさを、嘆くがいい!」

 

「たわばッ!?」

 

おいうち。

すごくキザッた感じのセリフ、いただきました。

可愛い。

代わりに目金くんのメンタルが死んだけども。

 

「目金氏が散々言われている・・・」

 

「陽キャって怖い」

 

アニメのセリフだけど、秋葉名斗の方々が震えてる。

 

「狼狽えることはない!我々の作戦が失敗しない限り、勝利は確実だ!」

 

『お、おぉ!』

 

相手キャプテンの掛け声が終わると同時に、審判の笛が鳴った。

 

 

 

******************

 

 

 

優梨はなぜ中二病に陥ったのか。

 

目金や昨日行ったメイド喫茶にいた人達に話を聞いたが、皆が皆アニメの影響を強く受け過ぎたせいだと言った。

ーーー本当にそうだろうか?

確かに、小学校の頃は好きな選手のゴールパフォーマンスを真似したり、キックモーションを参考にしていたが、少なくともあそこまで濃いキャラを演じることはなかった。

原因は、アニメ以外にあるのではないか。

 

「おい、豪炎寺」

 

少なくとも俺はそう思った。

ではその正体はなんなのか。もしかすると他者のせいかもしれない。

対戦校側からの介入を受けた?考えにくい。

友人とのいざこざ?そんなことがあった場合、優梨は真っ先に相談に来る。

 

「キックオフだぞ、おい」

 

・・・俺は、相談するには頼りないのだろうか。

最近はよくマネージャー三人+菜花と話すことが増えたらしいので、女子仲でしか話せないことなのかもしれないが。

もっと、何かできないものか。

優梨に対して、俺ができるものはないのか。

 

「豪炎寺!」

 

「・・・ッ、・・・あぁすまん。ボールをくれ、染岡」

 

「くれっておまえ、大丈夫か?具合でも」

 

「考えごとだ。そして、今のおまえの声がきっかけになって、良い案が浮かんだ」

 

「・・・?そうか」

 

ほらよと、ボールが俺の足元に。

 

『試合開始!先ずは雷門攻撃、どう出るのでしょうか!?普段はFWにいる高良がDFにいるのも見どころでしょう!』

 

優梨が普段とは違う状態なのであれば、チーム全員でカバーしなくては。その中でも、俺は特に貢献せねばならない。

 

「スー・・・ッ」

 

浅く呼吸、神経を研ぎ澄ませる。

狙うは正面の彼方にある敵ゴール、そこへボールを放り込む。

 

「シッ!」

 

自身に喝を入れるかのような短く、妙に耳へ響く息遣い。

地面を蹴り、ボールと共に突き進み始めた。

 

「なぁッ!?」

 

普段の雷門は後ろへボールを回し、中盤を大事にして攻め上がるスタイルだ。

キックオフから仕掛けるなど、前例がない。

通常のチームで戸惑うことは必至、ましてやそれが今は身体能力の低い秋葉名斗が相手。

目視で反応できても、体がついてこないだろう。

 

「ご、豪炎寺!?」

 

味方陣地の最奥から、円堂の声が聞こえる。焦ったような、困惑した声。驚いた顔も目に浮かぶ。

すまない。だが俺は、優梨の分まで・・・!

 

「点を、決める!」

 

「いかせねぇ・・・三人でかかれ!」

 

既にペナルティエリア付近、距離の空いていたDF陣はなんとか俺を止めるために飛び出してきた。

だが、

 

「遅い・・・!」

 

避ける必要はない。加速を利用して真っ向から押し通る。

自身の心を中心に、体全体の熱が上昇していく。その熱はやがて、鎧のように周囲を覆う炎の壁となった。

 

「ヒート・・・タックル!!」

 

激突。

拮抗する間も無く、DF三人を炎の弾丸が貫いた。

 

「ひ、ヒィッ!?」

 

前を見据えると、GKがすぐそこまで来ている。いや、俺が強引に突破して近づき過ぎたか。

自分の速さを見誤った。しかし問題は無い。ちょうどよく足を開いてるじゃないか。

 

「・・・っと」

 

軽く右足でボールに力を加える。

するとどうだろう、秋葉名斗GKの股を綺麗に潜りーーーあっさりと、ネットを揺らした。

 

『・・・』

 

静まり返るグランド、唖然として俺を見る仲間たち。

それらを視界の隅におき、俺は自陣にいる彼女に、優梨に目線を向けた。

 

「どうだ、意外とやるものだろう」

 

 

 

******************

 

 

 

自信満々にそう言ってのけた修也くんに、私は誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。

 

「大人げねぇ・・・」

 

さぞ、私の顔は引きつっていたことであろう。

なぜかって?周りにいるチームメイト全員が、同じ反応をしていたからさ。

 

 

 

 

1-0

 

 

 




〜観客席〜

三兄弟「大人げねぇ・・・」

鬼&不「大人げねぇ・・・」

ドン引きでした。




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第22話 偽・中二病

決してカラドボルグではない()

もうすぐ給料日だヤッター!
風化雪月を買うべきか否か・・・あれ?そういえばイナイレのゲームってまだ出ないの?



〜質問!好きな武器は?〜

円堂「エネルギー系!」

豪炎寺「炎系の剣とか魔法とか」

半田「剣(全田感)」

優梨、目金、秋葉名斗の皆様「 ド リ ル 」





 

最近、娘の様子がおかしい。

一週間前、友人からアニメを借りてからというもの、部屋に篭ることが多くなった。

夕食後、いつもなら一時間程二人で駄弁るのだが、『んじゃ、上行きまーす』と食事を終えてすぐに自分の部屋へ戻ってしまうのだ。

この前なんて、なぜかアイパッチが欲しいとねだってきた。

サッカー以外にハマるものができたのであれば母親として喜ばしい事。が、家族の時間が減ってしまうのは個人的に悲しい思いがあった。

 

「ごちそうさまー」

 

「はい、お粗末様」

 

今日、なぜこもるようになってしまったのか、その謎を明かにしようと思う。

台所で二人分の皿を洗い終えた我が娘、優梨は

短く上に上がる趣旨を告げ、早々に二階へ。

上階で扉の閉まる音が聞こえてから暫くして、行動を起こすことにした。

作戦は単純。間食として娘が好んでいる茹で卵を持っていくのを名目に、部屋に入って何をしているかを確認する。

 

「と、思いながら卵の殻を剥く母なのでした」

 

中央だけを剥いてやると、上と下がすんなり外れます。そう説明してみる、これまた母なのでした。

二つ小皿に入れて、別の皿に塩を多めに振って完了。

 

「優梨〜、茹で卵よ〜」

 

部屋の前に来て呼びかけてみたものの、返事がない。

ドアに耳を当ててみると、微かにブツブツ呟いているのが聞こえてくる。何を言っているのかはわからないが。

 

「入るわよ」

 

ガチャリと取手に手をかけ、ゆっくり開放。

最初は隙間から覗くように、半分まで開けて部屋が電気も付けず真っ暗だったことに違和感を感じて全開。

 

「こう・・・こう!・・・違うなぁ、こう!んー?・・・こうか!」

 

視界に映ったのは、全身が映る鏡に向かい合い、ひたすらポージングを繰り返す我が娘がいた。

いつも試合や練習でつけるであろうユニフォーム、背部にはなぜか表地黒、裏地赤のマント、加えて左目を覆うのは以前買ってあげたアイパッチ。

 

(知らぬ間に、娘が中二病になってた件)

 

「むぅ・・・上手くいかない。まぁ最悪なんとかの呼吸、壱の型とか言っておけば誤魔化せるね、うん」

 

一体全体、どうして誤魔化せると思ったのだろうか。

そもそも、なぜこんなことをしているのだろうか。

思案に暮れようとして、ふと、考えるのをやめ、とある行動に移る。

何はともあれ、一人娘の成長の一端を垣間見ることができた。記録として残すのもありだろう。

そう思い、丁度ポケットに入っていたスマホのカメラモードを起動。

 

ピロンッ

 

「うぅ・・・やっぱ恥ずかしい。でも、修也くんやみんなのためにも、頑張らなくちゃ。次はこう!・・・で、こう!」

 

抵抗感を覚えながらも、なんとなく活き活きしているように見えるのは母の気のせいだろうか。

そして、存外録画の音に気づいていないらしい。

このまま撮っておこう。

 

「口調も固定しないと。ボク、ボク・・・うんOK。気取った感じを崩さないように・・・」

 

その後、腹筋が耐えられなくなって吹き出してしまいバレた。

こちらを向いた時の絶句した表情をナイスタイミングでカメラに収められたので、結果オーライ。

 

 

 

********************

 

 

 

(うわああああああ!!死にたい!忘れろ忘れろ忘れろおおおお!!!)

 

昨夜のことを思い出してしまい、羞恥心で頭をかち割りそうになった。できるならしたい。今すぐこの場から消え去りたい。

 

(へ、平常心・・・平常心だ私。こういう時はそう、素数を数えるんだ。2、3、5、7、11、13・・・)

 

「すごいブツブツ言ってるっス」

 

「あれ、どうにかした方がいいんじゃないの?」

 

「高良なら大丈夫だ!あいつがすごいことくらい、みんなもう知ってるだろ?」

 

プレッシャーを、プレッシャーを与えないでくれぃ。このままでは、見えない圧力の壁と恥ずかしさで押し潰されてしまう。

 

「にしても、前半は豪炎寺が点入れたくらいで何も無かったな」

 

「ずっと自陣でボール回ししやがって・・・ムカつくぜ」

 

前の方から半田くんと染岡くんの会話が聞こえてくる。

そうなんだよねー。

最初の速攻で驚いてたことはあったけど、なんとか冷静になってパスを出し合ってると思ったら、それだけで前半が終わっちゃうんだもん。

 

(ボールを奪ってシュートを打っても、なぜか決まらなかったし)

 

二、三度、こちらがブロックに成功してシュートを打ったんだけど、打つ前に目眩しの土煙を相手側が三人で巻き起こした。

お構いなしにど真ん中を打ち抜いたんだけど、これがなぜか入らず、ボールは後ろで転がっていたんだよ。

 

(あの土煙の中で、何かしらやってるのかな?)

 

『試合は1-0、雷門リードで試合が再開されようとしています!前半では豪炎寺の1点以外、目立ったプレイはありませんでした!しかしこのまま秋葉名斗がおわるとは思えません!何か策があると見ていいでしょう!』

 

「さぁ、来い!」

 

『ピィーーーーーッ!!』

 

中央でボールが置かれ、審判の笛、円堂くんの気合いの声と共に、後半がスタートした。

 

「よし、いくぞ!」

 

『おう!』

 

早々に、相手側が仕掛けてきた。

守り一辺倒だった秋葉名斗が、こちらの陣地へ攻め上がってきたのである。

 

「なっ!?」

 

意表を突かれた雷門イレブンは、しばらくその場から動くことができない。

その隙に、向こうはゴール目掛けて走ってくる。

 

「明井戸!」

 

「よし!」

 

「こちらの体力がないことは自覚している!フルで戦うには無謀だとも!」

 

「後半勝負!一気に畳み掛ける!」

 

一見、本当にサッカーをやったことがあるのかと疑う面々が揃ってるけど、意外や意外、普通にパスがつながっている。というか、普通にうまい。普通に!

 

「好武!」

 

「よっしゃあああ!」

 

明井戸の声に、芸夢が反応して加速。DF陣、私の裏でパスを貰おうとしていた。

 

「ま、マズイ!」

 

円堂くんの焦った顔が、後ろにいるにも関わらずなんとなく想像できてしまった。

・・・って、冷静に解説してるんじゃないよ私!

え、ちょ、これどうすればいい!?私今、止められる気しないんだけど!?左目超痛いし、丁度攻めてきてるのこっちから見て左サイドだから尚更死角なんだよね畜生!

 

(どうにかして止めないと!)

 

DF技のラウンドターンを使えば良い話だけど、左目がアレだから着地失敗しそうなので却下。

土門くん達DF陣も対応に遅れてるし・・・あぁもう考えろ私!

 

(慌てるな。常に冷静さをかかず、自身の周りを見ろ)

 

え、なんか聞き覚えのある福山潤さんボイスが頭に響いてきたんだけど(幻聴)

 

(ボールを奪うのは手段の一つでしかない。今一度考えろ。止める必要はあるのかと(・・・・・・・・・・・))

 

止めなきゃ点入れられちゃうのに、と思いながらも言われた通り、まずは周りを見てみる。

味方は焦ってるようだけど、体はどうにか動かせてるみたい。前までは無理だっただろうけど、修練場でパワーアップしたみんななら咄嗟の指示にも反応してくれるはず。

次に、秋葉名斗を見る。

左から攻めてくる彼らは、ボールと味方しか目で追っていない。

こちらが反応できていないから、気を割く必要がないと思ってるんだ。

 

(ここまでくれば、わかるだろう。ブロックする以外に止める術があると。今の状態でも、ボールを手元に置く方法が存在すると)

 

ーーーそっか!

取らなくてもいい、接触しなくていい、シュートもさせない戦術・・・いや、戦略がある!

 

(さぁ奴らに思い知らせてやれ。戦術と戦略は違うのだと)

 

了解!・・・いや、Yes,my load!

 

※全て、土壇場で頭に浮かんだ幻聴です。

 

「DF、ラインを上げるんだ!」

 

「は、はぁ!?・・・どうにもなれ!」

 

隣の土門くんをはじめとして、雷門の守備ラインを前に押し上げていく。

ゴール前が、ガラ空きになるほどに。

 

「何をしようと無駄なんだよ!漫画!」

 

「わかったよ!」

 

二人技なのか、芸夢に漫画が並走、モーションに移る。

そこで丁度、DFラインが重なり・・・、

 

「好武、決めろ!」

 

パスが出され、

 

「ド根性・・・バッドオオオオッッッ!!」

 

漫画をバッドの如く構えた芸夢が、顔面・・・芯でボールを捉えたが、

 

『ピィーーーーーッ!』

 

「へあ!?」

 

「ばはっ!?」

 

審判の突然の笛でフォームが乱れ、打ち出された球はあらぬ方向へ。

 

「な、なんだってんだよ!」

 

笛の鳴ったのは、サイドラインの外。

そこに立つ審判は、旗を掲げていた。それが意味するもの、お分かりだろう。

 

「お、オフサイド・・・?」

 

高く上げられた旗、いつの間にか自身より後ろに雷門のDF陣がいること、その二つが今し方起きた結果を証明していた。

明井戸がパスを出した時には、すでにゴールに一番近いのは円堂くんを除いて、芸夢と漫画だけになっていたのである。

 

「止める必要はないんだ。ただこうやって、相手が自滅するよう仕向ければいい」

 

単純、ありきたりな手ではある。

だけど、格好つけるために言っておこう。

必殺タクティクス、

 

「オフサイドトラップ」

 

必死に作った嘲笑を貼り付け、私は静かにそう呟いた。

 

 

 

******************

 

 

 

「すっげえ!高良、あんなことできたのかよ!」

 

「あうあううう、酔う酔う」

 

驚きと歓喜の混じった形相で、私の肩を掴みぐわんぐわんしてくる円堂くん。

なんかデジャブ。

 

「きょ、今日初めてやったことだから、付け焼き刃に過ぎないよ。秋葉名斗以外には、おそらく通じない」

 

「それでも十分すごいって!普通あんなこと考えないぞ!」

 

チームメイトとはいえ、すっごい褒めてくれる。素直に嬉しい。

 

「今のを防げたのはでかいな。あとは・・・」

 

「俺らで、ゴールを決めるだけだな」

 

既に1点リードしているとはいえ、まだまだFW二人はやる気に満ち溢れている。ご愁傷様、お相手さん。

 

「けど、シュートは全部外れちゃうぞ?あの土煙、どう攻略するんだよ」

 

「ふっ、どうやら忘れていなかったようだね半端くん」

 

「あぁ!?テメェおまえ貴様半端って言ったかオラァ!コラァ!」

 

「うあううあうごめんなさいごめんなさい!酔う!本当に酔うから!」

 

なに、流行ってるんですかそれ。おええ。

そして危ない。キャラが崩れるところだった。

 

「何か手があるのか?優梨」

 

「ふ、ふぅ・・・勿論だ我が友。だから、これから皆には私の指示通りに動いてもらう。いいね?」

 

「よーしっ、みんな!高良の言う通りに攻めて、守って、勝とうぜ!」

 

『おー!!』

 

 

 

******************

 

 

 

雷門ボールで試合再開。

流れを一度切ったのはいいけど、まだまだ油断してはいけない。後半は始まったばかりなのだから。

 

「高良!」

 

「ああ」

 

だいぶ痛みにも慣れてきた。

左目阻害という違和感は消えないけど、秋葉名斗の運動神経を考えれば対応は可能。

 

「それでは、ラインを上げよう」

 

ジェスチャーを送る。

一歩、また一歩、ついにDF陣はハーフライン手前にまで来ていた。

 

「カウンター怖え・・・」

 

「ボール取られたらおしまいだ」

 

「ゴールは俺が守る!だから伸び伸びやれよー!」

 

お望みのままに。

 

「何をしようと、正義の前に屈するのみ!ヒーローキーック!!」

 

「よっ、マックスくん」

 

安直なスライディングを避けて、

 

「了解!」

 

相手陣地中央、右サイドにいるマックスくんへパスが通る。

 

(えっと、相手のリアクションでペースを崩されるって高良が言ってたから・・・直ぐにパスを出す!)

 

「ウィーン、変形シークエンスに移行・・・」

 

「染岡!」

 

「おう!」

 

センタリング。呂薄のロボット地味た動きをなるべく視界に入れないようにし、ボールを打ち上げる。

多少雑になってしまったけど、そんなことは気にせず難なくトラップした染岡くんは流石としか言いようがないね。

 

「いくぜ!ドラゴン・・・」

 

「DF!五里霧中だ!」

 

前半同様、三人がペナルティエリア内で土煙を起こし始める。ものの数秒で、ゴールは覆い隠されてしまった。

 

「・・・半田!」

 

「よし!」

 

「なっ!?」

 

シュートモーションには入ったものの、蹴らずに半田くんへバックパス。

 

「豪炎寺!」

 

今度は修也くんの頭上目掛けてボールが飛んでいく。

普段の試合ならフェイントとか入れて飛ぶ彼だけど、今はマークが付いてないから見てから打つのは余裕。

足に力を込め、回転と共に起こる炎を引き連れて宙を舞った。

 

「ファイア・・・」

 

「あ、足を動かし続けろ!」

 

「宍戸!」

 

「またっ!?」

 

これまた打たない。

後ろにいた宍戸くんへオーバーヘッドによる緩めのパス。

 

「っとと・・・高良さん!」

 

お次は私。

真上に上がったボールを追いかけるように、修也くんとは逆の回転、蒼の炎と一緒に飛翔。

・・・やっぱ見えにくいね。

 

「バック・・・」

 

「こっちが本命か!?」

 

「風丸くん!」

 

「ど、どういうことだぁ!?」

 

再三。打たないよ。

それじゃ、同じこと繰り返していきましょうか。

 

 

 

〜10分後〜

 

 

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 

「よ、陽キャの発想えげつねぇ・・・」

 

元々スタミナの無い彼ら。

サッカーでいう10分は結構長い。常に動き続けるから体力の消費は自ずとかかる。10分にわたるプレッシャーのかけ続け、五里霧中による足の疲労。

この二つが積み重なり、秋葉名斗の面々はGKも含めて全員が疲労困憊の様子だった。

 

「いつくるか分からないシュート。恐ろしいな」

 

「まったく、ウチの指揮者はとんでもない案を考え出すなおい」

 

褒めてるのか褒めてないのかわからない。

 

「ーーーさて、もう全ての条件はクリアされた」

 

歩くだけの、周りへの警戒を一切しないドリブルにさえ、現在の秋葉名斗は対応できない。

あっという間に、ペナルティエリア内だ。

 

「最初のうちは簡単にできてたみたいだけど、もう隠せないね」

 

「ぐ、ぐぬぬ・・・」

 

「この距離なら、ゴールをずらしても意味がないよ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「・・・ッ!」

 

ゴール側面の地面の状態が酷い。幾度となく何かを動かした痕跡、左右に渡るソレから、こちらのシュートをゴールをずらすことで外しているのは白日の元となった。

 

「だからバレないように、土煙で誤魔化してたのか」

 

「は、反則じゃないか!」

 

「う、五月蝿い!勝てばいいのだよ、勝てば!」

 

「僕たちはなんとしてでも勝たないといけないんだ!」

 

何を言おうと、反則は反則だ。それは覆らない。

 

「ーーーほら、どうぞ」

 

だから、私は敢えて相手にボールを渡した。

コロコロと、ボールはキャプテンである野部流 の前で止まった。

 

「・・・え?」

 

「点が欲しいんだろう?だったら、目指すといい。我がキャプテンの守るゴールへ」

 

示し合わせていたかのように、野部流の進行方向に円堂くん以外の雷門イレブンは一人もいなかった。

 

「・・・くぅッ!」

 

ぎこちなく、ドリブルを開始。

後ろにいる私から逃げるように、突き進んでいく。

それを、ゆっくり追走。

ハーフラインを割った。誰もボールをとりに行こうとはしない。

自陣の中央に入った。誰もボールをとりに行こうとはしない。

ーーーペナルティエリアの、前まで来た。

 

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「ーーー」

 

キャプテン同士が向かい合っている。片方は息も絶え絶えに、片方は堂々と両手を構え、その姿は対照的だ。

 

(これだけ近いんだ。今の私のシュートでも入るはずだ・・・入る・・・はずなんだ)

 

右足を振り抜けば、それで同点だ。

だが、

 

(蹴ればいい、だけなのに・・・!)

 

「重い・・・!重すぎる・・・!」

 

「キャプテン・・・」

 

苦悩し、頭を抱えて膝をつく主将を、チームメイトは疲労しながらも見つめる。

そこで、ようやく私が到着した。

 

「どうした、打たないのかい?ゴールは目前だよ」

 

「・・・」

 

「それとも気づいたのかな、ーーー打っていいのは、打たれる覚悟のあるやつだけだと」

 

アイパッチを、外す。

 

「・・・な」

 

空のように透き通った水色の目、右目はいつも通りだ。

が、外したアイパッチの内側にあった左目は・・・、

 

 

 

煌々と、妖しく輝く紫色であった。

 

 

 

「ボールを、譲ってくれるかい?」

 

「・・・いいや」

 

首を振り、野部流は立ち上がる。

 

「我々の、負けだ」

 

どこか憑物の晴れたかのような、爽快な笑顔を・・・彼はしていた。

 

「君は、一体何なんだい?」

 

「ーーーボクかい?」

 

暫し考え込み、うんと頷いた後・・・こう言って述べた。

 

「通りすがりの・・・しがないサッカープレイヤーだよ。君と同じ、ね」

 

 

地区予選準決勝、秋葉名斗学園途中棄権のため、試合終了。

 

1-0

 

雷門中、地区予選決勝進出。

 

 

 

******************

 

 

 

「君達のおかげで気づかされたよ。これからは、真っ当なサッカーを我々はしていくことにするよ」

 

「ああ!またサッカーやろうぜ!」

 

試合終了後、お互いのチーム同士で握手と簡単な挨拶を行った。

なんでも、男子組はゲーム関連で聞きたいことが山ほどあるそうで、連絡先も交換していたよ。

 

「なんとか、無事に終われたようね」

 

「夏未さん。・・・はい、滅茶苦茶疲れましたけど」

 

ふぃーようやくカラコン外せるよ。

すっきりすっきり。

 

「貴女、そんなこと言って後半は結構楽しんでたでしょ。最後なんて、イタいを通り越して最早格好よかったもの」

 

「イワナイデクダサイオネガイシマス」

 

「ふふふ」

 

一生弄られるなこれ・・・。

 

「おーい高良ぁ!ちょっと来てくれー!」

 

「行ってきたら?」

 

「は、はい。今行くよキャプテン!」

 

そのキャラはいつ辞めるのかしら、という夏未さんの言葉を背に受けて、私は男子勢が集まる所へ急ぐ。

 

「どうしたんだい?」

 

「いや、秋葉名斗のキャプテンがさぁ」

 

「是非とも、是非とも先ほどのセリフをもう一度言って欲しいんだ!」

 

「我々も近くで見たい!神々しい君の姿を、この目に焼き付けておきたい!」

 

「できればフィルムにも焼き付けたい」

 

ーーーはえ?

 

「えっと、ね?実はこのキャラ」

 

「アンコール!」

 

「アンコール!」

 

『アンコール!アンコール!』

 

言わせてくれない。

そしてここまで期待されたら言い出せない。作ったキャラだなんて。理由なんてもってのほかだよ。

 

「・・・」

 

『アンコール!アンコール!アンコール!』

 

「・・・しょ、しょれとも気づいたのかな?打っていいのは、打たれる覚悟のあるやつだこふっ」

 

「た、高良!?」

 

もうダメ。

もうダメです円堂くん。

これ以上やってられません。心が死にます。精神が死にます。今後に影響が出ます。

・・・あ、今出たのは鼻血だけどね、はは。

あーなんか頭の中フワフワする不思議ー。

 

「わ、私はこれからもサッカー続けるからさ、みんな・・・」

 

『・・・』

 

「止まるんじゃねぇぞ・・・」

 

『だ、だんちょおおおおおお!!!』

 

地面でサタデーナイトフィーバーする私を見て、主に目金くんと秋葉名斗の方々が同時に叫んだ。

 

 

 

 




優「うわああああ!!死にたい死にたい死にたい死にたい!!」

目「え、僕の出番あれだけってマジですか?」

下「マジだぞ(無慈悲」

仕事キツい・・・でも皆さん頑張ってるし!自分も頑張らないと!(ライド感)

オフサイドトラップは、GOのタクティクスにあるんですよね。
自分はロマン砲が好きでずっとグランドラスターしか使っていないですが()


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第23話 いい加減

投稿が遅れてしまい、すみませんでした!
仕事が忙しく、終わったらベッドinが常だったので・・・。
ちょうど暇ができたので、投稿した次第です。
待っていた方々、ありがとうございました。
今後は不定期更新になりますが、書き上げる努力は怠らないので、よろしくお願いします!

優「あつ森やりたい・・・」

豪「皆が皆、そればかりだしな」

下「因みに作者は、前作で1億ベル、魚虫幸コンプ、金バラ青バラ、HHA最高評価までやっていたらしい」

優、豪「ガチ勢か」




 

 

中二病騒動でてんやわんやだった(誤解は解けた)秋葉名斗との一戦から一夜明け、帝国戦に向けての特訓が始まった。

河川敷、ではなく今日は学校のグランド。

たまたまラグビー部が休み&サッカー部の予選決勝間近ということもあって、使用許可を獲得できたのだ。

 

「バック・・・トルネードッ!!」

 

「ゴッドハンドォッ!!」

 

今はシュート練。ちょうど私のバックトルネードと円堂くんのゴッドハンドがぶつかり合ったところ。

 

「ぐぎぎ・・・!」

 

歯を食い縛り、多少押し込まれるも完璧に封殺させてみせた我らがキャプテン。脱帽だよ。

 

「あーもうっ!」

 

「へへっ、良いシュートだ!」

 

悔しい半分、嬉しさも半分。防がれたのは確かにもどかしいけど、こんなに力強いGKが自陣を守ってくれているのかと、改めて実感できた。

 

「次、染岡!豪炎寺!」

 

「「おう!!」」

 

気合の掛け声と共に、修也くんが炎を引き連れて飛翔。

相方の染岡くんは、地上でシュートモーションに入った。

 

「ドラゴン・・・!」

 

竜が出現、ボールは蒼い光弾となって高々と打ち上げられ、上空でゴールを見据える修也くんの元へ。

 

「トルネードッ!!」

 

蹴った瞬間、炎が竜を覆い赤く染め上げる。

赤竜が獰猛な牙を見せつけ、円堂くんの守るゴールを襲う。

 

「ゴッド、ハンドォ!!」

 

弱冠の溜め、そして黄金の巨手を顕現。

そういえば見たことなかった、現雷門No.2の威力を誇る技とゴッドハンドの対決。

竜が、食い破らんと猛威を振るう。

神の手が、押し返さんと前へ出る。

 

「おおおおおおぉぉぉぉッッ!!!」

 

短い、けれどとても長く感じる拮抗。

赤竜の勢いも徐々に落ちるが、同時に神の手の出力も下がっていく。

勝つのは・・・、

 

「ーーーよっしゃあああああ!!!」

 

天高く掲げられたボール。

満面の、憎めない笑みを貼り付けた・・・我らがキャプテンの、勝利宣言。

 

「マジかよ」

 

「決まったと思ったんだがな・・・」

 

「にししっ、どんなもんだい!次、剣城!高良は水分補給行ってくれ!」

 

「はい!」

 

「はーい!」

 

剣城くんと入れ替わる形で、私はベンチへ。

ふぇ〜、二時間くらいぶっ通しで走ったり蹴ったりイナビかったりしてたから喉カラカラだよもう。

 

「どうぞ」

 

「あ、どもです」

 

差し出されたスポーツドリンクの入ったボトル。

敬語でお礼を言ったので察しているだろうけど、くれたのは夏未さんだ。

ゴキュゴキュ(飲む音)

 

「ぷはぁ・・・美味し」

 

「すごい汗ね。貴女、髪長いんだから尚更ではなくて?」

 

「あはは、そうですね。でも切りたくないんです」

 

「どうして?」

 

どうして・・・って聞かれても。

急に言い淀み、モゴモゴし始めた私を見て、夏未さんは一瞬何か考えた後、答えに行き着いたのかニコリと微笑んだ。

 

「豪炎寺くん関係ね」

 

「ギクゥッ!?」

 

本当に、本当にちょっとしたことだったんだ。

小学6年生の頃、多分本人も何気なく言っただけなんだと思う。

けど、

 

『髪、綺麗だな』

 

それだけで私は、この長さを一生キープするって決めたんだよね。

 

「・・・普段は少年みたいなのに、そういうところはホント乙女よね、貴女」

 

「うぅ・・・」

 

練習してる時より体が熱くなっているのがわかる。どんだけ照れてるの私。

 

「汗、さっきよりもすごいわよ?」

 

「言わないでくださいよもう」

 

ふふふと笑う夏未さん。笑い方と言い微笑み顔と言い、絵になるね。さすがお嬢様。と、現実逃避をしてみるも、やっぱり恥ずかしさが勝ってしまう。

ち、ちくしょう・・・。

 

「あぁでも、そろそろ焦った方がいいと思うわ」

 

「・・・?どういうことですか?」

 

私が聞くと、『これ聞いたらどんな反応するのかしらこの子』的な表情を浮かべながら、

 

「豪炎寺くん、今日の朝1年生に告白されてたのよ」

 

とんでもないことを言ってきた。

 

「え、ちょ、え、ええええぇぇっっ!!??」

 

「そうよねぇ、そういう反応するわよねぇ。貴女の好きで好きでたまらない豪炎寺くんが、他の女子に取られそうになってるんだから」

 

好きで好きで、のところで2Hit。他の女子でクリティカルHitが入った。

こ、このぉ!私のヘタレ!バカぁ!ノロノロしてるから修也くんとられちゃんだぞ!?

・・・って、え?取られそうになってる?

 

「まだ、付き合ってる訳じゃないと?」

 

「豪炎寺くん、その子をフったのよ。大会の決勝が近いし、今はサッカーに集中していたいと」

 

「よ、よかったぁ・・・」

 

「なにもよくないっ」

 

「あうっ」

 

安心してその場にへたれこむ私を、デコピンする夏未さん。痛い。

なにがいけないんだよぉ。

 

「サッカーに集中してるなら、大丈夫じゃないですか。女子の情報網ってすごいし、告白しても意味ないことは公然の事実になってますよきっと」

 

「貴女も一応その『女子』の部類なのよ。普通だったら好きな人が告白されてたら知ってるものなのよ、じょ・し・な・ら!」

 

「おぐ、うぐ、あぐ、あう」

 

わかりました!わかりましたからほっぺを突っつくのをやめてください!あう!

仕方ないじゃないか。こちとらとんちを利かせて絶賛スライディング三昧の中学サッカー部員でっせ?そもそも女子の友達なんてマネ三人と黄名子ちゃんぐらいだし。

小学校でも修也くんとクラブ仲間(三兄弟)としか話さなかったし(圧倒的コミュニケーション不足

 

「女子なら知ってるはずよ。ーーー豪炎寺くんのファンクラブができてることは」

 

「・・・えぇ?」

 

・・・えぇ?

頭の中と声がシンクロニシティ。

ふざけてる場合じゃなかった。

はぁ!?なんのアイドルだよ!どんだけ人気なの修也くん!

そりゃ格好いいけども!けどそんな、ファンクラブができるほど人気って・・・。

 

「いつの時代の少女漫画ですか」

 

「知らないわよ。私漫画は読まないし。・・・話が逸れたわ。で、その人たちの誰かから、このままだといずれ豪炎寺くん取られちゃうわよ。それでいいの?」

 

「そりゃ・・・よくは、ないです、けど」

 

「だったら、何かしらの行動を起こしなさい。絶対に付き合うという姿勢を、態度を行動で示しなさい」

 

具体的になにをすればいいんだ。

 

「行動って・・・」

 

「貴女がシャイでヘタレなのはわかってるわ。重々承知よ。けど、言わせてもらうわ。いい?」

 

 

 

「帝国戦が終わったら、豪炎寺くんに好意を伝えなさい」

 

 

 

・・・はぇ?

 

「も、も、もももももう一度お願いします」

 

「わからなかったかしら?告白しなさいって言ったのよ」

 

一瞬、冗談を言っているようにしか思えなかった。

だけど、目が本気だよこの人。

 

「な、なななんで!?さっきサッカーに集中するから付き合わないって・・・」

 

本人が、そも夏未さんがさっき言っていたことじゃないか。

大慌てで理由を求める私に対して、不適な笑みを浮かべて夏未さんは言葉を紡ぐ。

 

「この前デート、したわよね?」

 

「え、まぁ・・・はい」

 

デートっていうより、買い出しなんだけども。

 

「内容はどうあれ、二人の距離感はだいぶ変わったと私は思うの。内容はどうあれ」

 

「二回言わないでください」

 

「貴女が豪炎寺くんを想っているように、向こうも何かしら、普通じゃない感情は持っているはず。そこに揺さぶりをかけるの」

 

・・・持ってるのかなぁ。

そうだったらすごく嬉しいけど、今までそんなそぶり見たことない。

いつものスンッてした表情で『すまない』とか言われそうで怖いよ。

 

「心配いらないわよ。前にも言ったけど、貴女は十分可愛くて、魅力のある女子よ。胸を張って、堂々と告白すればいいわ」

 

「夏未さん・・・」

 

確かに、ここを逃したら永遠にタイミングが訪れないかもしれない。

他の子に取られることもあり得る話だ。

 

「約束。試合が終わったら告白なさい。これは友人の言葉と思ってもらって結構です」

 

「・・・わかりました。私、頑張ります」

 

理事長の言葉、ではなく友人としての言葉に少しほっこりしながら、私は頷いた。

いい加減、覚悟を決めないと。

しっかり想いを伝えるんだ。

 

「その息よ。・・・あら?」

 

夏未さんは決意を固めた私を見て微笑み、ふと、グランドの方に目を向けた。

つられて振り替えると、練習から抜けて茂みの方へ足を運ぶ土門くんの姿が。

 

「ボールでも飛んで行きましたかね?」

 

「彼、さっきまで柔軟とストレッチしかやってなかったわよ」

 

むむ・・・少し怪しいね。

 

「こんな時こそ!」

 

「うおぅ?」

 

突如、隣で記録を録っていた音無さんが反応。

 

「新聞部兼サッカー部マネージャーの、私の出番ですね!」

 

「あ、じゃあお願いしていい?」

 

「はい!」

 

いつもポケットに入れているメモ帳とペン、額のメガネをかけ直し、音無さんは土門くんの消えた茂みへ突貫していった。

活き活きしてた。ジャーナリストの血が騒ぐ、的な?

 

「あの子、私と貴女との会話をずっとメモしてたわよ」

 

「うえぇ!?人の恋路を記事にするつもり!?」

 

「成功してもフラれても、面白い記事になりそうね」

 

そんな楽観的な・・・!

い、いや、音無さんはそんな悪魔みたいなことはしない。絶対にしない。だって可愛いし、こんな私を慕ってくれてるし、可愛いし。

・・・しないよね?

あぁもう!考えても仕方ない!

 

「練習、戻ります!」

 

「ええ。いってらっしゃい」

 

すごく良い笑顔で送り出された。

なんだろう、この敗北感。

 

「次私打つー!」

 

まだシュート練は続いているようで、初っ端決めてやろうとキャプテンに声をかけた。

 

「高良!ちょっと待ってくれ、次は半田が打つんだ!」

 

が、今は半田くんの番のようで。

ちょっとばかし我慢だね。

 

「ーーー遂に、この時が来たな」

 

何故か、妙に自信満々な半端野郎がそこにはいた。

足に右足乗っけて、腕まで組んでるよ。

 

「円堂!それから豪炎寺、染岡、剣城、おまけで高良!よぉく見ておけ!」

 

おまけってなんだよ。

 

「俺は日々の練習により、おまえたちのようにシュート技を会得することに成功したァ!」

 

『な、なんだってえええ!!??』

 

な、なんだってえええ!!??(心中)

またもやシンクロニシティしちゃったよ。

って、え、マジ?あの半田くんが?私に体幹で吹っ飛ばされてた半田くんが?

 

「半田くーん!」

 

「ぬ?」

 

「今日はエイプリルフールじゃないよぉ!」

 

「テメェ後で雷雷軒のマシマシチャーシュー麺奢らせるからな」

 

私の財布が死刑宣告されたのだけれど。

 

「先輩が必殺技って・・・」

 

「ないない」

 

「ないだろ」

 

「俺も奢ってもらいたいっス」

 

否定の嵐。ちょい最後、壁山くん。君に奢ったら借金まで作っちゃうよ。

 

「おまえら・・・そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ」

 

いつもなら汚い高音(善逸感)で『なんでだよぉ!なんでそんなこと言うんだよぉ!』と喚き散らす彼だが、今日は落ち着いた面持ち。

これは、あるのか?本当に必殺技を習得したのか?

 

「威力はFW陣の奴らには確かに劣る。だが、中盤からもゴールを狙える決定打を、雷門はゲットした。それを証明する!」

 

見据えるは円堂くんの待つゴール。

果たして、どんなシュートなのか。あれだけdisっといてなんだけど、結構気になってたりする。

 

「いくぞ!」

 

「来い!」

 

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」

 

普段の彼からは想像のつかない雄叫び。

出るのか?本当に、必殺技が!?

 

 

 

「ローリングキックッッ!!」

 

 

 

弱そう(前言撤回

 

 

 




もう返って強そう(逆転の発想

もうすぐ、もうすぐで帝国戦なので暫しのお待ちを・・・。

話は変わりますが、黒死牟強すぎじゃないですか?(唐突
19巻を買えたキッズ達は、アニメ勢の子達に月の呼吸でマウントとってそう(偏見

最後に、皆さん!コロナには気をつけましょうね!




優「エイプリルフールは明日だよぉ!」


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