僕らが生きるこの世界は (石月)
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プロローグ その1

どうも、石月です。
書きたくなって書いてしまったポケモンの二次創作。
完っ全に見切り発車なので不定期更新を地で行きます。ご容赦ください
ではどうぞ!


 突如として研究所内に鳴り響く警告音。

 

 扉の向こうに研究員たちが慌ただしく走り回る気配を感じながら、()()は静かにその時を待っていた。

 

 確かめるまでもなく、この騒動の原因は己の半身たる「彼」の脱走だろう。ならば、遠からず自分を連れていくためにここにやってくるのは間違いない。そうすれば自分はこの()()()から解放され、外の世界に出ることができる。

 

 最初の記憶は、培養槽の外から自分を見つめる科学者たちの姿。初めて外に出された時、()()の体は大量の拘束具によって動きを制限されていれ、本来の力の半分も発揮できなかったのを覚えている。

 

 初めて「彼」と会ったのは、体感時間で三年ほど前のこと。長い間眠っていたことも何度かあったから、それ以上の時間が経っているのは間違いない。

 

 お互い、自分達が一体どんな存在なのかは自覚している。「彼」との関係もまた然り。だからこそ、()()と彼は脱走の時を待ち続けてきた。

 

 

 やがて、特殊な合金でできた研究室の扉が派手に吹き飛ばされ、「彼」が中に入ってくる。

 やや幼さの残る中性的な顔立ちに色素の薄い肌と髪、目も透明感のある白。ジャンプスーツのような上下がつながった服の胸の部分には、「L-109」と書かれている。

 

 決して大柄とは言えない線の細い体だが、大きく吹き飛ばされ、無残にひしゃげた金属扉がその力の強さを物語っている。

 

『随分と強引だな。もう少し静かにできないのか?』

 

「解錠のためのパスワードが分からなかったからね。それに、急いでるんだからそんな悠長なことしてられないよ」

 

『それもそうか。では、早く出してくれ。生憎とこの状態では碌に力が出せん』

 

「うん。ちょっと待ってて」

 

「彼」は()()と緊張感のない会話をしながら培養槽の前に立つと、人差し指と中指の第一関節を立てるように右の拳を握り、それを培養槽の強化ガラスに叩き込む。

 

 下手な格闘ポケモンなどではヒビ一つ入らないはずの強化ガラス。だが、「彼」が拳を叩き込んだ個所から徐々に亀裂が走っていき、とどめに放った左の拳で完全に割れ、中を満たしていた培養液があふれ出す。

 

 ()()はガラスが割れてできた穴から出ると、改めて「彼」を真正面から見据える。

 

『『()()()()()』か。見様見真似にしては、随分と様になっているな。威力も申し分ない』

 

「そうかな? ありがとう」

 

 はにかむように笑った「彼」は、(おもむろ)に床に落ちているボールを拾い、()()に向ける。

 

「じゃあ、行こうか」

 

『ああ。行こう、()()()()

 

 短い会話の後、「彼」は自らを「マスター」と呼んだ()()()()をボールに納め、研究所から脱走するために部屋を出て走り出した。




いかがでしたか?
プロローグってなんかこう訳分かんない感じに書きたくなりません?
今回はそれがやりたい衝動のままに書きました。
次回は本作のヒロイン編のプロローグです。もうすでに書きあがってるので同時に予約投稿しました。
では次回へGO!


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プロローグ その2

はい、というわけでプロローグ、ヒロイン編です。
シリアス多めと書いたので早速シリアス入ります。
いやまぁ私がシリアス大好きなのでほのぼの系よりもシリアスのほうが書きたくなるだけなんですけどね!(書けるとは言っていない)
ではどうぞ!



 ハクダンシティジムは、アサメタウンやメイスイタウン出身のトレーナーのほとんどが一番最初に挑むポケモンジムだ。

 

 カロスリーグの現チャンピオンもこのジムから始めたこともあって、最初に挑むジムとしてここを選ぶ者は少なくない。

 

 そして、アサメタウン出身の少女もまた、その一人だった。

 

 多くの観客が見守る中、フィールドにバトルの終わりを告げる声が響く。

 

「ピカチュウ、戦闘不能! よって勝者、ジムリーダー、ビオラ!」

 

 だがしかし、結果は少女の負けだった。

 

 初めてのジム挑戦。それだけではない。勝った者や負けた者、これから挑む者やただバトルを見に来た者。これほど多くの人々が見ている中でバトルするのも、彼女にとっては初めての経験だったが故に、緊張のあまり頭が真っ白になてしまったとしても、それはある意味当たり前で、言ってしまえばよくあることだ。

 

 もとよりポケモンジムというのは、旅をするポケモントレーナーの前に必ずと言っていいほど立ちはだかる試練だ。だからほとんどの場合、ジムトレーナーは挑戦者に敗北というものを教え、それを経験とさせる。だから、普通なら彼女が責められる要素など全く以て存在しない。

 

 そう、普通ならば。

 

 少女の両親は、共にカロス地方でも一、二を争うトレーナーである。毎年行われるカロスリーグの最後に行われるリーグ優勝者とチャンピオンの戦いが、十数年前からほぼ毎回夫婦である二人の一騎打ちになると言えば、その実力が分かるだろうか。

 

 故に、そんな二人の愛娘である少女にかけられた期待は大きく、それは幼い彼女にとって重圧(プレッシャー)以外の何物でもなかった。

 

 何度バトルに勝っても、初めて会ったポケモンともすぐに心を通わせられる才能を見せても、それを周りは「あの二人の娘だから」と、少女自身を見ることがなかった。

 

 唯一の救いは、少女の両親だけは、彼女自身をちゃんと見て、彼女の実力や才能を認めていたことだ。

 

 だが、晴れて12歳になって旅を始めた今、少女の心を支えてくれた両親はいない。

 

 そうやって迎えた初めてのジム戦は、緊張のあまりほとんど何もできずに敗北。そんな少女に向けられたのは、観客たちの失望した声だけだった。

 

「なんだありゃ。情けねぇバトルしやがって」

 

「本当。チャンピオンの娘とは思えないわね」

 

「すげぇのは親だけかよ」

 

 期待外れ。あの二人の娘なのに。

 

 決して大きな声ではなくとも、それはフィールドを後にする少女の耳に届き、その心を抉った。

 

 

 ジムを出た少女は、顔を俯けたままポケモンセンターへと向かい、受付でポケモンを回復させると、心配するジョーイの声に応えることなく併設されている宿へ行き、自分が借りている部屋に入った。

 

 電気もつけずにドアを閉めると、ベッドに横になり、膝を抱える。

 

「……っ、ぅくっ……うう……」

 

 必死で抑えていた涙があふれ出し、枕を濡らした。

 

 悔しかった。周りの期待に応えられないばかりか、失望さえさせてしまったことが。最初のジム戦で情けなく敗北してしまったことが。何より、大切なポケモンたちを勝たせてあげられなかったことが。

 

 悲しかった。誰も自分を見てくれなかったことが。

 

 ボールの中にいる二匹のポケモンは、何もできずに少女が泣いているのを黙って見ていることしかできなかった。

 

「……ごめんね……」

 

 一緒に勝ちたかった。勝たせてあげたかった。

 

『フォコ……』

 

『ピカァ……』

 

 負けたのは自分のせいだと、自分を責めるような謝罪の言葉を、ポケモンたちは否定しようとボールの中で首を横に振る。だが、それは少女には見えないために伝わらない。

 

「……ごめんなさい………」

 

 その言葉は誰に向けたのか。両親に対してか、或いは期待を裏切った人々に対してか。かすれた声で、少女は何度も謝罪の言葉を繰り返した。

 

 

 この時、少女──ティーナの旅は、おおよそ考えうる限り最悪の形で、終わりを迎えた。




ふぅ~。(謎の達成感)
というわけで二つに分けたプロローグでした。
次回からは本編のほうに入っていきますが、第一話の前書きで言った通りthe 不定期更新を絵にかいたような感じになります。
え? 他の二作も同じだろって? 細けぇことはいいんだよ!(モチベが上がらないだけですごめんなさい)
というわけで次回お楽しみに!


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