蒼の大狼(改訂版 (綾式)
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プロローグ〜開戦〜

お久しぶりです。前作のプロローグを大きく改訂してあります。感想等大歓迎です。


征歴1930年2月に帝国皇太子暗殺事件をきっかけに突如開かれた東ヨーロッパ帝国連合。通称『帝国』と大西洋連邦機構。通称『連邦』の開戦の報はヨーロッパ各国の緊張を急激に強めていった。開戦してからは、帝国、連邦共にそれぞれ周辺国に侵攻を開始し、次々と国土を広げて行きながらも、両国の国境地帯では、一進一退の激戦を行なっていた。

 征歴1932年4月。帝国が、産業革命以降重要な資源となっているラグナイト鉱石と、帝国領土拡大を求めてラグナイト資源産出国であるガリア公国に対し宣戦布告を行い、侵攻した第一次大戦の戦線の一つガリア戦線。小国のガリアに対し帝国は、精鋭部隊である重戦車を主体とする戦車機甲師団を6個師団投入。総兵力約7万2千の大軍であり、万全の構えでガリアに侵攻する事を計画した。帝国は、ガリア側は戦車を所持してはいるが、対歩兵戦を想定し、大規模戦車戦を想定していない軽戦車を主体とする戦車部隊が大半で、中戦車も生産は行われてはいるが、数が少ないため、脅威にはならないものであり、真正面から戦車戦を行えば、ガリアの敗戦は明らかなものであると、帝国は想定していた。

 

 

 そんななか、ガリア公国首都ランドグリーズにあるガリア軍部中央本部ラングレーでは、軍部将官会議が行われていた。

 

<ガリア軍部>

「中将、連邦と帝国の動きは今どうなっている」

その言葉を軍令部の上座に葉巻を手に持ちながら机に肘をつき、足を組みながら座る男が長机の横に座る男に話した。

「はい、大将閣下。情報部からの報告だと、現在両国は互いに一進一退の状態のようです。ですが、両国共に国土拡大を行なっているようで、つい先月、 帝国は南に接していたオストリアを、連邦は北に接していたスヴァニアをそれぞれ落としたようです。また、最新の情報で帝国がフィラルドも落としそうだ。と報告が入っております」

「落としそうだ?そんな曖昧な内容はいらん。正確な事実のみを話したまえ。良いな?中将」

「は、申し訳ございません。閣下」

ふん‼︎そう言うと、閣下と呼ばれた男は葉巻に火をつけた。

この男が、現在のガリア公国軍軍部の中部ガリア正規軍の司令官にして、ガリア正規軍全軍の最高司令官のゲオルグ・ダモン大将である。ダモンは、身体を揺らし左胸についてある勲章をキラキラ光らせながら、近衛軍、首都防衛軍、南部正規軍の現在の状況を、自分の指揮下である中央正規軍の状況を副官に報告させた後、北部正規軍の男の名前を呼んだ。

「では次だ。ベルゲン中将、ギルランダイオ要塞の守備状況、 および、北部軍の状況はどうなっているのかね?」

そう言って、ベルゲンと呼ばれた男はダモンに話した。

「はい、大将閣下。現在ギルランダイオ要塞は要塞守備隊3個大隊及び、国境警備隊三個中隊が守りについております。戦車の方も、最新式の軽戦車を20台要塞に配備しており易々とは抜けませんし、抜かせません。また、ファウゼンに新たに戦車工房を建築し、最新型軽戦車の生産準備に入っております。また、ディゼールとヤングールの両市近郊にも、部隊を駐屯させております。」

そうベルゲンがダモンに報告すると、ダモンはふん!と言い席に深く座り直すと、葉巻の煙を吐いた。ベルゲンが話した最新式軽戦車とは、打たれ弱い軽戦車を強化するために、前面装甲を既存の軽戦車につけれるように作り直し、側面のキャタピラを保護するために側面装甲を追加。さらに、火力不足を補うために、搭載機関銃の増やし、砲塔自体も一回り大きくしたものを採用。速力は落ちたが、継戦能力の向上を図ったものである。その後国内の補給基地の設置状況などを聞き、会議の終了を宣言しようとした時、一人の士官が会議室に飛び込んできた。

「会議中失礼します!」

飛び込んできた士官に対しダモンが怒鳴りつけようとしたが、その後の報告で絶句した。

 「ガリア政府より通達です。帝国が、我が国に対し宣戦布告を行いました。ガリア政府は国内に対し、非常事態宣言を発令。並びに、軍部に対し、総力を持ってこれに対応せよ

「ギルランダイオ要塞司令部より緊急入電!帝国軍がギルランダイオ要塞に襲来!敵軍は大規模戦車部隊の模様。至急、救援を送られたし‼︎」

 

のちにガリア戦役と呼ばれる戦いの始まりである

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第1話 イムカ

ガリアと帝国。両国の接する国境線は、東部の国境線に存在する市であるブルールと、北東部に存在するギルランダイオ要塞の、2つの場所を通るように作られた街道が主な主要路である。そのうちの1つであるギルランダイオ要塞は、帝国とガリアを分断するように存在する、山脈の途切れた部分に建築された中世の砦を、近代的に改修を続けたものである。この要塞は、帝国と連邦の開戦までは出入国管理所として機能しており、駐屯軍も国境警備隊しかおらず、約100名ほどしか居なかった。だが、両国開戦の影響を受けてからは、新たに要塞守備隊が駐屯し、国境警備隊の増員や要塞砲の設置や、塹壕やトーチカといった野外陣地の構築が、行われていった。

 

要塞にほど近い森の中、木々が生い茂る場所にポツンと小さな広場のように開けた場所があり、そこで、1人の人物が木に背中を預け、根に腰掛けて座っていた。その人物の姿は、夜闇に紛れており、所々月明かりに当たることで、シルエットでしかわからないが、誰かいることはわかる。辺りは既に日が落ちており、森の中にいる虫たちの鳴き声や、木々に止まる鳥たちの鳴き声が、静かに響いていた。夜風に揺られる木々の葉の隙間からは、夜空に輝く月の光が森の中に入ってきており、その光景は一つの絵になっていた。そこへ、新たに1人の人物が、木々に覆われた夜の闇の中から現れた。その人物は、ガリアの兵士に一般的に支給されている兵士服に、上からジャケットを着ている姿である。ジャケットには、その人物の兵科である偵察兵の証である双眼鏡をイメージできるような刺繍が入っており、肩の部分にギルランダイオ要塞所属であるという証の刺繍と、警備隊の人間であるという証の刺繍が縫われている。その人物は、木に持たれて座っている人物に近づくと、声をかけた。

「イムカ、やはりここに居たか。おまえはここが好きだな。」

そう声をかけられたイムカと呼ばれた人物は、声をかけた人物に顔を向けず、森の方をみながら黙ったままだった。いつも通りの対応なのか、声をかけた人物は気にした様子をせずに、イムカと呼ばれた人物の座る木に立ったまま背をもたれ、話を続けた。

「もう夜も遅い、偵察任務を含めた野外訓練もとっくの前に終わっているぞ。イムカ、帰るぞ」

そう言いながら、腰掛けて座っている方に目を向けながら話していると、イムカと呼ばれた人物は腰掛けていた根から立ち上がり、一言「問題ない」とだけ呟くと、あとから来た人物が持たれている側とは反対側に立て掛けて置いてあった身の丈程の巨大な鋼鉄の塊を肩に担ぐように持ち、そのまま要塞方向に歩きだした。それをみながら、その場に残された人物は「やれやれ…」と呟くと、先に歩いて行った人物を追った。

「イムカ。一応俺はお前が所属している小隊の隊長なんだがな、迎えに来た奴を無言で置いていくのは、どうかと思うぞ」

先に歩いて行った人物に追いついた人物は、横に並びながら言った。すると、先に行ったイムカと呼ばれた人物は、立ち止まることなく隣に並んだ隊長と名乗った人物に向けて、

「問題ない。そっちが勝手に来ただけ」

とだけ返すと、また歩き始める。返された人物は肩を竦めため息を吐くと、またイムカの横に並び、歩き始めた。

 

しばらく歩くと、森を抜けて、野外陣地が設営されている場所に出てきた。森の夜闇から出て、陣地を照らす光を浴びることにより、イムカと呼ばれた人物の全体がよく見えるようになる。

その人物は紺色の長髪を持ち、それを後ろで結んでいる女性である。顔はまだ、子供の時の童顔を持ちながらも、綺麗に整っており将来が楽しみな顔をしている。

身体は、全身をバトルドレスで包んでおり、無駄な肉の無い引き締まった身体をしている。また、両腕両足の関節部分に、動きが阻害されないように作られた装甲を身につけ、胸部を守るように厚めの同じく装甲を身につけている。腰部分には、軍用ナイフと拳銃を装着できるように作られたベルトに、各種グレネードや応急処置用ラグナエイド等を入れることができるように厚めのポーチがある。

だが、それらの印象がまるで無くなるものがあり、右手に持ち肩で担ぐようにして、そこにあるだけで畏怖を与えれるような巨大な獲物があった。それは、先端に銃身、その下部分に砲身を持ち、胴体部分にはブレードがあり、側面部分には装甲が施されている。握り手部分には、握りやすいようにグリップが施され、さらに、銃身を使うためのトリガーが備えられており、見た目だけでもかなりの重量級だが、それを軽々と片手で扱っている彼女の実力がかなりのものであるということがわかる。やがて、陣地入口から陣地内に入ると、中にいた隊員から声をかけられた。

「隊長、おかえりなさい。イムカを見つけれましたか」

「おう、今戻った。俺の居ない間に何かあったか?」

「いえ、何も。こちらはいつも通りでした。イムカはやはり?」

「あぁ、いつもの場所にいた」

そう、隊長と呼ばれイムカと共に陣地に戻ってきた男と、陣地内にいた隊員との話を横目に、イムカは、陣地内の自分のテントに向かおうと身体をその方向に向けたが、すぐに後ろから隊長と呼ばれた男から呼び止められたが、その場で立ち止まると、顔を動かして耳だけを男に向けた。

「イムカ、そろそろ要塞内部に撤収するぞ。準備しておけ」

そう告げられると、イムカは「ん」とだけ呟きながら首を頷け、再びテントに歩き出した。

ギルランダイオ要塞国境警備隊第2中隊第4小隊所属。それが、イムカの所属している部隊である。

 

 

 




9/11 読みにくかった場所の修正と足りない部分の修正


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日常①

前作とは、ガラリと変えた日常フェイズをお届け


 自分のテントに戻ってきたイムカは、テントの中には入らず、その外で地面に腰を下ろし肩に担いでいた武器を地面に下ろした。

銃身を上に向けるように柄の部分を肩にもたれさせ、同じ隊の設営班がテントを片付けているのを眺めていた。しばらくすると、隊長の男が出発の号令をあげると、腰を上げて、隊員たちが集合していた場所に向かった。イムカが集合したのを確認した隊長は、イムカに近寄ると話しかけた。

「イムカ、準備は出来たか?」

それに対しイムカは無言で頷くと、隊長は隊全体に対し

「ギルランダイオに帰るそ!」

と隊全体号令を発すると、彼らの部隊の戦車がラジエーターを動かしはじめた。戦車の砲身部分上部ハッチから、隊長の男が戦車の中に入ると、戦車は前に進み出した。隊長の男が上半身を出しているハッチの後ろに、城塞を背景にしてⅣの文字が書かれた部隊旗が夜風と振動ではためいていた。

 

 

ギルランダイオ要塞。この要塞は中世の頃に街道沿いにつくられた砦を、近代化していく時代に従って改修が続けられるに連れて、巨体なものになっていった。今現在は、街道とその周囲の地形全体を塞ぐように存在しており、征歴1930年の開戦の年までは、ガリアと帝国の国境線上で、入出国管理所としての役割を果たしていたが、帝国と連邦の開戦に合わせて、要塞設備と、配備人数が急激に強化されていった。

 

「夜間までの国境線警備、並びに帝国領強行偵察任務ご苦労だった。大尉」

隊を率いてギルランダイオ要塞まで戻ってきた大尉と呼ばれた隊長は、帰還して直ぐに要塞司令部にまで来るようにという命令を受け、要塞司令部で、要塞司令である中将に報告を行っていた。

「は。此度の偵察任務も、いつも通り何もなく平和なものでありました」

そう報告をすると、夕食である机の上にあるステーキを食べながら中将は話した。

「あぁ、わかった。ところで大尉、君のとこにいるダルクス人はまだ隊から離れないのかね?我が誇りあるギルランダイオ要塞にダルクス人など、必要ないのだが…。ダモン将軍の派閥の中にいる貴族の御曹司殿も君の隊にはいることだし、どうかね?帝国から迫害を受けて私の要塞に流れてきたそうだが…果たして本当なのかね?私には間諜にしかみえないのだが。中佐、君はどう思うかね?」

そう中将が話すと、中将の後ろに立っていた中佐と呼ばれた男はじろりと大尉をみながら

「はい、閣下。私にも、あのダルクス人には信用することが出来かねます。我が歴史あるガリア正規軍にも、この要塞にも、あれはいらないものではないかと考えます」

その答えを聞いた中将は首を縦に頷けながら「やはりそうであろう」とニヤけるように話すと、大尉に対し

「どうかね?大尉。あのダルクス人をこの要塞から追い出して帝国側に追い返すというのは、帝国側はさぞ喜んでくれるだろう」

そう言いながら、フッフッフと腹の中年太りをした贅肉を揺らしながら笑い。

「あぁ、大尉。報告ご苦労だった。下がってよい」

と告げた。それに対し隊長は、敬礼をしたあとに司令室を退室すると、要塞中枢塔からそのまま隊舎に歩いて行った。しばらく歩くと、隊長の率いている部隊と同じ部隊章を腕に描かれた隊服を着こなしているように見える金髪の男が壁にもたれて待っていた。

「やぁ、隊長。御立腹のようだね」

そう声をかけた男に対し隊長は、「アルフォンスか」とだけ声をかけ、ついてくるように手でジェスチャーをした。それを見たアルフォンスと呼ばれた男は、隊長に並んで同じ方向に歩き出した。

「今日もイムカのことで何か?」

アルフォンスが歩きながら声をかけると、隊長はイラついている感じの早口で返した。

「あぁ、今日もいつものようにイムカはまだ隊にいるのか?イムカが間諜ではないのか?追い出さないのか?帝国側に追いやらないのか?ときたもんだ。」

その返しにやれやれとアルフォンスは呟きながら、

「イムカが間諜なわけがないだろう。間諜だったのなら、2ヶ月前の大規模遭遇戦で戦車4両に敵陣地単独制圧。あれだけの戦果は出さずにこちらが敗北していただろう。それに」

そう言い、歩きながら腕を組み、

「イムカの活躍のおかげで、俺たちの部隊は、あの戦場でけが人は出たが、全員生還。死人は出てないんだ。仮にあいつが間諜だったというなら、俺たちの部隊はバタバタ死人が出てるだろうさ…」

と、アルフォンスが話していると、2人の部隊であるⅣの字が書かれた隊舎に到着し、中に入っていった。

 

 

「おぉ、隊長。おかえり。今夕飯作ってるから待っててくれ」

そう言いながら隊舎エントランスから食堂に繋がる開け放たれたままの扉から、コンロの前に立つコックの衣装風に作られた軍服を着た男が、エントランスに顔を出した。2人を迎えたコックの男は顔を食堂に引っこめると、それに続いた2人の目の前で、鼻歌を歌いながら鍋を火にかけゆっくりと混ぜていた。隊長の男が

「あぁ、わかった。他の皆は?」

そう隊長が話すと、コックの男は、部屋の中にある隣の両開き扉を指でさしながら、

「1名除いて全員隣の部屋で飯が出来るのを待ってるよ。んでもってイムカが」

そう言いながら上に指をさして「自分の部屋で武器の手入れしとるよ。直ぐに終わるって言ってたからそろそろ降りて来るんじゃないか?」

そう言ってると、上に繋がる階段から、最後にみた両四肢に着けていた装甲を外し、バトルドレスから、動きやすい見た目に変わっているイムカが降りてきた。

「お、イムカ。ヴァールの手入れは終わったのか?」そうコックの男がイムカに話すと、イムカは頷き、

「今日は撃たなかったから、簡単な手入れで済んだ。今日は楽」

と返した。その様子を見ながらコックの男は「うんうん」と頷きながら話すと、

「そろそろ完成だ。3人とも、隣の部屋で席に座って待っていてくれ」

その言葉に3人が了承の声をかけると、食堂の両開き扉を開けて中に、入っていった。

 

 




9/11日。改訂

さて、隊長の名前どうするか


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