オリ主がヒロインに川に蹴り落とされるようなラブコメ (ルシエド)
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子供の頃、約束をした。「みっきーは俺が守るなー」 少年は覚えていた。少女は忘れた

 幼馴染の一つの会話
 ルールは一つ
 ルールの上では、気楽に本音を話せる気がする
 そんな気がする


「あ、いたいた。おーい、ちょっとそこのバカー」

 

「いやいやバカっていうほど悪い頭じゃ……って桐絵! お前この野郎! 出会い頭に!」

 

「うん、まあ、バカって言うほど悪くないわね」

 

「ええ……超速攻で前言を撤回するなよ……」

 

「幼馴染のよしみよ。許して」

 

「かなりイラっとしたけど桐絵の顔見たらなんか萎えた」

 

「気の許せる幼馴染特権ってことね。で、ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「苦労しないやつなら」

 

「結構苦労するわ」

 

「今後の桐絵さんの益々のご活躍をお祈り申し上げます」

 

「早速お祈りのお断りしてんじゃないわよ……いやほら、B級に最近新人来たでしょ」

 

「知ってる知ってる。三雲修くんね」

 

「凄く弱いでしょ」

 

「説明不要なくらいどストレートな罵倒来たな……」

 

「そんなことないわよ。事実よ事実。まあその……なんかいじめられてない?」

 

「多分そういうのは無いな。注目はされてるけど俺が見る限り皆遠巻きに見てる感じ」

 

「ちょっとでもない? 嘘ついてたら承知しないわよ?」

 

「つーか心配性のオカンかお前は。……ああ、そうか、同じ玉狛か」

 

「手空きならたまに話してやってくれない? 私あんま見ててあげられないし」

 

「とんだ姉気取りだな……後輩の心配する前に動物プリントパンツな自分の心配をしろ」

 

「な、な、何言って……んなもんもうはいてないわよ!」

 

「にゃんにゃんとかプリントされた女として終わってるお子様パンツ卒業したのか?」

 

「ぬぁにこんなとこでそんなこと言ってんのよ! このこの!」

 

「念の為確認しておかないと事実と異なる事実を拡散するかもしれないし……」

 

「脳味噌にトリオンでも詰まってるの? とにかくお願いね、うちの子達のこと」

 

「はいはい。まあできることは多くないけど、やっとくよ」

 

「引っかかる言い草だけど、ありがと。何かしてほしいことある?」

 

「普段桐絵が作ってるカレーとか持ってきてくれりゃいいよ」

 

「へ? そんなんでいいの?」

 

「ほっほっほ、安上がりじゃろ」

 

「まあ、あんたがそれでいいならいいけど……あんた本当に無欲よね」

 

「みっきーは本当に分かってねえ女だな」

 

「昔のあだ名で呼ぶな!」

 

「めっちゃ大きい声出すじゃん……デフォ設定の音量が最大で耳を壊しに来る動画サイトか?」

 

「もう聞き慣れたはずの幼馴染の声にそんな感想つける男いる?」

 

「やだよ、お前にはもっとこう……優しい声で大事にするように囁いて欲しい」

 

「遊戯王カードで小学生のあたしをボコった時と同じこと言ってる……」

 

「余の記憶には勝った方が一つだけ命令できるって約束しかないな」

 

「楽勝だと思ったのよ! あたしのブルーアイズは最強って信じてたし!」

 

「理解が甘い単細胞に遊戯王の勝利の女神は微笑みませーん」

 

「ルールは分かってたわよ! あんたがロックとかなんかアレ……あんた性格悪いわ!」

 

「レダメ脳死で出して来やがってからに。学校の勉強それでちゃんとついていけてんのか?」

 

「ロクに勉強してなかったあんたよりはマシにやってるわよ」

 

「わかんないとことか躓いてないか? かーっ、桐絵が置いていかれてないか……」

 

「ありがと」

 

「いやなんでそこで感謝?」

 

「うんまあ、心配されてることくらいは分かるし?」

 

「えー……自意識過剰。思い上がりMAX。なんだ桐絵お前調子乗ってない?」

 

「おんやぁー、なんか声に余裕がなくなってきたんじゃない?」

 

「癇に障るその笑いをやめろ桐絵。俺はお前の恥を言って回ることだってできるんだぞ!」

 

「機会があってもあんたにゃ無理よ」

 

「くそっ! 余裕ぶりやがって! 見てろよその可愛いツラを歪ませてやる!」

 

「……け、軽々にそういうこと言って後で後悔するのがあんたなんだから自覚しなさいよ」

 

「……こ、こんなノリで可愛いとか言われるだけで照れてるとかメンタルザコか?」

 

「流石にザコって言われるとイラッとするわね」

 

「しゃーない、切り替えていけ」

 

「好きな人ができた時苦労するわよあんた。そんなんじゃ嫌われるわ絶対」

 

「世界で一人だけ俺のことを好きで居てくれる奴が居ればいい。だからどうでもいいんだ」

 

「そんなかっこつけたこと言って。その一人に嫌われたらどうすんのよ」

 

「確かに。まあでも大丈夫だろ」

 

「超根拠のない自信ね……」

 

「強い自信には強い理由があるんだ! 桐絵だけは気付かないだろうがなァー!!」

 

「適当に予想したら当たんないかな……無理か……無理そう……」

 

「というかお前がその鈍感癖直さないと絶対に俺が大丈夫って言ってる理由は分からん」

 

「何が鈍感だってのよ。言っとくけどね、私は立派に玉狛で気遣いの先輩やってて……」

 

「人気ヒロインにはなれそうだけど人気の先輩になれんのお前? なれなくね?」

 

「ぬぁんですってぇ! 何よその偏見!」

 

「ネイバーとかの強い新入りが後輩になったらまあ上手く回るかもしれんけど」

 

「……の、脳内を読んだの? あたしの……」

 

「はーん、マジでそうか。後輩に感謝しろよ。多分結構気遣ってくれる後輩だ」

 

「ひょろっちい三人だったけど……うん、まあ、ガッツはあるわ。三人とも」

 

「普通に人格面を褒めろ。俺が褒めてるだろ? 素直になれないツンデレか?」

 

「変にあんたが意識させるからでしょ! そりゃまあ、入隊認めなかったりしたけど……」

 

「本当にお前の周りには寛容で優しい奴が集まるよなあ。理由は分かんなくもないけど」

 

「マジで!? 何々、教えて!」

 

「皆優しい奴の周りは居心地がいいってこと。優しくない奴にだけはなるなよ、桐絵」

 

「む。戒めとくわ。というかそんな言うほどあたし優しい?」

 

「メモしておけ、桐絵。ゴリラは優しい」

 

「……もっと何か他に言い方なかったの? 怒るわよ、あんなことやこんなことするわよ」

 

「やべえ、お怒りだ。どうすれば許してくれる?」

 

「許さないわ。でもあんたは分かってるはずよ。ごで始まっていで終わる言葉を言えばいいの」

 

「よかった、それでいいのか。ゴリラは優しい」

 

「っらぁ!! ごめんなさい! でしょうがぁ!」

 

「理性なき強要には屈しないぞ」

 

「類語探しの鬼みたいな語彙力してるわよね本当に……ああ言えばこう言う」

 

「レスバ最強の名をボーダーでほしいままにしてるからな、俺」

 

「論争であんたに勝てる人は居ないでしょうよ、そりゃ」

 

「悪口俺に言ってきたやつが最終的に泣いて帰ってたぞ」

 

「あまりにも口達者……あんたの親、真面目に心配してたわよそういうとこ」

 

「家に寄ってきたのか。どうだった?」

 

「憂いてるわよあんたのこと。そりゃまあ、当然なんだけど」

 

「えええー、俺家出少年だし合わせる顔ないし、家に帰りたくないですぅ~」

 

「親に心配させないために電話くらいかけたら?」

 

「かけたくない。桐絵、フォロー頼んだわ!」

 

「気持ちが乗らないんじゃしょうがないか。ま、いいわ。私がたまに見に行っとく」

 

「クズのフォローをさせてすまんな」

 

「経緯全部知ってるあたしはあんまほっとけないもの。親に顔見せたくないのも分かるわ」

 

「こいつ本当に可愛いし良い女だな」

 

「……!? さ、さっきの二番煎じね! 可愛い二回目、口八丁も随分鈍ったんじゃない!?」

 

「しょうもないとこでマウント取ってくんなこいつ。恋愛力コラッタか?」

 

「好きな人に告白もできないとか言われてる奴に言われたくないわよ!」

 

「―――。世間話か何かで噂でも聞いたのか?」

 

「そうそう。誰かは知らないけど、あんた好きな人が居るって聞いたのよ」

 

「他人の話を鵜呑みにするとかバカの典型だな。今日から小学生並み小並桐絵に改名しろ」

 

「中二病にちなんだ名前にあんたが改名したら考えてあげる。で、どうなの?」

 

「つまらん噂です、終わり」

 

「てことはデマ? うーん、今日はそれも問い詰めようと思って走ってきたのに」

 

「というかなんで桐絵がそんな気にするんだ、そんなこと」

 

「……? なんでだろ。あんたの方が分かってたりしない?」

 

「日本一お前のことを分かってるつもりだが分からん」

 

「抜け目なく見抜いてて黙ってることあるからあんたの言葉は判断に困るのよね……うむむ」

 

「念入りに探ってくるなこいつなんなの? こわい」

 

「能面見てる気分だわ。昔のあんたなら顔見てれば嘘か本当かくらいかは分かったのに」

 

「恥を隠すために……まずこの表情を捨てたのさ! お前が片っ端から見抜いて来るから!」

 

「表情が見えないと、やっぱり話してて寂しい時ってのは……なくなくなくなくなくないわ」

 

「ふっ、なんだその誤魔化しと照れが途中で入ったない連呼」

 

「……平気?」

 

「本気で心配するような声出すなよ。なーんで俺の嘘だけ信じないかな、このいい子は」

 

「……また嘘つくんじゃないかって、怖いからよ」

 

「妙なこと言うな。お前に嘘ついたのは一回だけだぞ、信じろ、トラストミー」

 

「昔からあんたは誠実だったわ。でも、あの時だけは、大嘘ついてあたしを騙した」

 

「面目ない。あれは謝るしかないことだ」

 

「もう駄目なあたしを助けるため嘘ついて……あんたはこうして話すブラックトリガーになった」

 

「や、それはどうかな。俺はボーダーの皆を思って変化したみたいなとこあるし」

 

「唯一あたしにだけ作用するんだって、あんたの傷治癒機能」

 

「余計な機能の発現で俺の内心バレバレじゃない? オラ思考盗聴やめろ!」

 

「来世に期待した方がいいんだってさ。あんたが、人間に戻れる可能性……」

 

「理屈っぽく考えるなよ。もっと笑って、もっと気楽に受け止めな。桐絵」

 

「類が無い未研究トリガーだから、似たトリガーを手に入れたら治せるかも、だから……」

 

「冷静になれ。俺は別にそういう危険犯してほしいわけじゃないんだ。やんなくていい」

 

「……ロクに自分の内心も話さないまま、そんななっちゃって、あんた何考えてんの!?」

 

 

 

「分からないなら何度でも言うさ。

 分かるまで何度でもお前に使われてやる。

 お前が笑ってられる今日が俺の誇りだ。

 お前の笑顔が好きだ。

 お前が生きてりゃいい。

 理由なんてこんなもんでいいんじゃないか? 知らねえけど。

 さ、もう行け。

 また会いに来てくれたら嬉しい。

 そんでもって、お前が俺の見てないところで笑っていてくれたら、もっと嬉しい」

 

 

 

「……んなかっこつけんな! また会いに来るわよ! 水に落としてやる!」

 

「あああああああっー!?」

 

 

 




 テーブルの上には一つのトリガー。喋るだけの黒いトリガーが置いてある


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