古明地こいしとFクラス (こいし金二)
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第一章『最初の戦争!』
第一話「はじまり!」


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それでは、はじまりはじまり!


 

 

「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だとつい楽しい気分にならない?」

 

晴れわたる青空。

満開の桜並木。

そして気持ちいい風。

新学期をむかえるには絶好の天気だよね!

 

「なにが楽しい気分よ・・・。こいしから無意識のうちにテストが終わってたと聞かされて、気を病んでいるのが私だけっておかしいと思うわよ・・・。しかもお空はテストの日付を忘れて欠席するし・・・。」

 

「でもお姉ちゃんはテストはわりと出来たんでしょ?」

 

「・・・まあ、私はBクラスは行けると思うわよ。お燐も同じくらいって言ってたし。」

 

「だったらもっと明るい表情しないの?」

 

「こいし、あんたのせいでこうなってるのよ!あんたにもお空にも勉強教えたのに、完全に無駄になってるわけじゃない!バカ。」

 

お姉ちゃんがおこだ。

いつもみたいにやさしくしてくれない。

・・・あれ、おかしいな。

なんだか無意識のうちに目から塩水が出てきたよ・・・?

 

「・・・一緒のクラスになれれば嬉しかったのに。」

 

「お姉ちゃん、何か言った?」

 

「何も言ってないわよ。」

 

お姉ちゃんが冷たいよ。

ちなみに、お姉ちゃんの名前は古明地さとり。

そして、私は古明地こいし。

お姉ちゃんのことは大好きだから、普段優しいお姉ちゃんにこう冷たくされると悲しい。

そう思いながら歩いていると、いつのまにか校門まで来ていた。

 

「おはようございます、西村先生。」

 

校門に立っている先生にお姉ちゃんがあいさつをする。

その先生は西村先生、通称鉄人だったかな。

私もあいさつしないと!

 

「おはよう、鉄人!」

 

「教師にタメ口を使うな!それと西村先生と呼べ!」

 

・・・痛い。

無意識に言ってしまったせいで、げんこつを落とされた。

手加減はしてくれてるみたいだけど、それでも痛い。

 

「まあ、これはあんたが悪いわね。」

 

とどめにお姉ちゃんの言葉が突き刺さる。

 

「・・・まあいい。とりあえず、これを受けとれ。」

 

渡されたのは二つの封筒。

名前を確認し、自分のをとる。

この封筒の中に書かれたクラスが、この1年過ごすクラスとなる。

一番上はAクラス。

そして、最下位がFクラス。

上位になるほどいい設備があって、成績順に振り分けられるんだけど、私は無意識のうちにテスト終わってたから、結果はわかってるんだよね。

 

「お姉ちゃ~ん、どうだった?」

 

「私はBクラスよ。あんたも、結果がわかってるとはいっても見ておきなさいよ。」

 

言われて封筒を開く。

やはりFクラス。

 

「なんというか、お前は頭が悪い訳ではないのだが・・・。テスト中の休み時間にふらっと出ていったきり、戻ってこない生徒はお前がはじめてだ、まったく。まあ、今年は0点扱いの生徒が数人いるが・・・。姉のほうはよく頑張ったな。Bクラスでも2位だから、あともう少し取れていればAクラスに入れたのはおしかったな。」

 

「ありがとうございます。」

 

「だが、これで満足せずにこれからもしっかりと励むように。応援しているぞ。」

 

「はい。」

 

クラスのチェックも終わったから、教室に向かおうっと。

・・・でも、まだ時間あるしAクラス覗いていこうかな?

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・これはすごい。」

 

私が予想していたより、Aクラスはものすごかった。

教室もやたら広いし、高級そうな絨毯や絵画も見える。

それに、個人用にノートパソコン、エアコン、冷蔵庫といった設備もあるみたい。

椅子もリクライニングシートだし。

・・・ちょっと、いやかなりやりすぎじゃないかな?

 

「ついでに、お姉ちゃんの教室も見ていこうかな~?」

 

Aクラスの隣にBクラスがあるため、覗いていく。

こっちも広い。

Aクラスの半分程度だけど、Aクラスが異常に広いから、Bクラスも充分なんだよね。

Aクラスみたいにぶっとんでは無いものの、白を基調としたデザインが高級感をただよわせてる。

机や椅子も使いやすそうだし、お姉ちゃんがここに来れてよかったよ!

私も楽しい学園生活目指して頑張ろー!

 

 

 

 

 

「う、うっわぁ・・・。」

 

早速気持ちが折れかけたよ・・・。

窓ガラスは一部割れていて、畳や木も腐っているところがちらほら。

机はちゃぶ台で、椅子なんてない。

2ーFと書かれた看板は今にも壊れそうで・・・・・・あ、今割れた。

AやBクラス見た後だから余計辛いな・・・。

 

「・・・まあ、ここで立っててもしょうがないよね。よし、気を取り直して行こう!」

 

きっと、この教室とは違って明るく楽しい人達がいるはずだよ!

気を取り直して、笑顔でこの扉を開けよう!

 

ガラッ!

 

「早く座れ、このウジ虫野郎。」

 

・・・ぶわっ!

あまりの酷い言い草に涙が溢れたよ!

ひどい!

私の気持ちを返して!

 

「・・・っと、お前は古明地か。人違いだ、すまん。明久だと思ったんだ。」

 

あらためて見てみると、私をウジ虫呼ばわりしたのは、私の友達の坂本雄二だった。

180センチを超えてる巨体に赤髪。

悪い人ではないけど、私をウジ虫呼ばわりしたのはひどいよ。

 

「坂本君もこのクラスなの?」

 

「おう、他にもいるぞ。」

 

そう言いつつ、坂本君が振り返る。

 

「おっ、古明地じゃないか!私もこのクラスだぜ!」

 

「あっ、魔理沙!このクラスだったんだね~。」

 

私に手を振ってきたのは霧雨魔理沙。

悪い子じゃないんだけど、人をからかうのが好きなのと借りたものなかなか返さないんだよね・・・。

 

「あ、そういえばお姉ちゃんがいい加減貸した本を返してくれって言ってたよ?」

 

「おう、また今度返すってつたえといてくれ!」

 

このやりとり、もう十七回目なんだよね。

 

「こいしちゃん、はろはろ~!」

 

すると、また別の人が手を振ってくる。

彼女は島田美波だ。

ドイツからの帰国子女で、すらっとした体と明るい色のポニーテールが魅力的な女の子。

胸が小さいことを気にしてるけど、私だってあんまないんだし、気にしなくていいと思うんだけどね~。

 

「やっほ~美波ちゃん!やっぱり問題が読めなかったの?」

 

「う、うるさいわね、その通りよ!ウチは問題さえ読めればいい成績出せるんだから!」

 

実際、漢字をあまり使わない数学の成績はいいから、この言葉は間違ってないんだよね。

 

「すまぬ、そこを通してくれるかの?」

 

「あ、ごめんね秀吉君。確かにここじゃ邪魔だったね。」

 

彼じ・・・彼も、私の友達で、木下秀吉というんだけど、女子と見間違えるような綺麗な顔してるんだよね。

演劇が好きで、声を自在に変えられるのが羨ましいんだよね~。

 

「お空も一緒なのね~。あはよ~!」

 

「あっ、こいしちゃん!おはよ~!」

 

秀吉君の後ろから入ってきたのは、私の一番の親友の霊路地空。

あまり頭は良くないんだけど、優しい娘だし面白いから、一緒にいて楽しいんだよね!

お姉ちゃんも言ってた通り、テストの日程を忘れてたみたいで、Fクラスになっちゃったみたいだけど、同じクラスになれたから結果オーライだよね!

話していたらチャイムが鳴ったため、席に座ろうとしたところで気付く。

 

「ところで坂本君。私はどこに座ればいいの?」

 

「あー、この教室は座席とか特に決まってないみたいでな。適当にしてくれ。」

 

な、なんて適当なんだろ・・・。

まあ、お空と隣になれるからいっか!

私とお空が席に着いた時、再び扉が開く。

 

「すいません、ちょっと遅れました!」

 

「早く座れ、このウジ虫野郎。」

 

「ひどい!可愛い生徒に向かって第一声がそれなんて、教育者としてあんま・・・・・・・あれ、雄二じゃん。何してるの?」

 

「教師が来るまで何となくここにいただけだ。代表としてここを使うことになると思うしな。だが明久、お前は可愛い生徒の中に入らないと思うぞ。ブサイクだからな。」

 

「雄二には言われたくないやいっ!」

 

今入ってきて、坂本君と喧嘩しているのが吉井明久。

明るくて優しいし、料理もできるし、運動神経も悪くないし、顔もブサイクじゃないけど、バカなんだよね・・・。

 

「だいたい、いきなりウジ虫野郎呼ばわりする雄二の心の方がブサイクじゃないかっ!綺麗な心の僕とは五十歩百歩じゃないか!」

 

ね。

五十歩百歩はほとんど差がない時に使うものなんだけどな・・・。

 

「えーと、ちょっと通して貰えませんか?」

 

言い争ってる二人の後ろから、中年の男性がやってくる。

生徒には見えないし、多分担任だよね。

 

「・・・では、HRを始めます。皆さん、席に着いてください。」

 

その言葉で、坂本君と吉井君、その他話していた生徒が席に着く。

 

「えー、おはようございます、私は2年Fクラスの担任を担当する福原槙と申します。よろしくお願いします。」

 

・・・・・・えーと、今黒板の方を見て、こちらを向いたのは特に深い意味はないんだよね?

私には、黒板に名前を書こうとしてチョークがなくて止めたように見えるけど、深い意味はないんだよね?

 

「皆さん、全員にちゃぶ台とざぶとんは用意されていますか?設備に何か不備があれば申し出てください。」

 

一応改善はしてくれるのかな?

私のところには不備はないけど、みんなはどうなんだろう?

 

「先生、俺のざぶとんに綿がほとんど入っていないです。」

 

「我慢してください。」

 

「先生、すきま風が入り込んで寒いです。」

 

「我慢してください。」

 

「先生、ちゃぶ台の足が折れたんですけど。」

 

「我慢してください。」

 

「無理だっつーの!」

 

「はっはっは、冗談です。木工ボンドとビニールテープの申請をしておきましょう。」

 

えーと、ここは地獄か何かなのかな?

蜘蛛の糸のような救いの手すら見えないんだけど・・・。

 

「必要なものがあれば、極力自分で調達するようにしてください。・・・他に設備の不備はないようなので自己紹介を始めましょう。廊下側の人からお願いします。」

 

(((((いや、不備たくさんあるけどね・・・。)))))

 

言っても我慢してくださいと言われるとわかってるから黙ってるだけで・・・。

クラス全員の意見が一致したと思うよ・・・。

その時、前の扉が開かれた。




いかがでしたか?
原作と一部違うところはあります。
それと、ポケきらの方は投稿をしばらく中止します。
ちょっと展開がうまくいかないので…。


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第二話「Fクラス!」

 

 

「「遅れてすみません!」」

 

入ってきたのは二人の女子生徒だった。

 

「「「・・・・・・」」」

 

でも、なんでこの二人がいるの?

二人とも成績、やたらいいはずなのに・・・?

 

「あの、なんであなたたちがここにいるんですか?」

 

聞き方によっては不躾な質問。

だが、それは全員が感じてたことだと思う。

 

「私は試験中に熱を出してしまい、途中退出で0点扱いになってしまって・・・。」

 

「実は私も同じく途中退出してしまって・・・。」

 

その二人が答えてくれた。

最初に答えたのが姫路瑞希、後に答えたのが稗田阿求、どっちも私の友達だね。

二人とも、成績が恐ろしいくらいにいいから残念だったね。

 

「そりゃ災難だったな・・・。実は俺も熱・・・が出たせいで・・・。」

 

「化学だろ?あれは難しかったな。」

 

「弟が熱を出してテストどころじゃなくて・・・」

 

「黙れ一人っ子。」

 

「前の晩、彼女が寝かせてくれなくてな・・・」

 

「今年一番の大嘘をありがとう。」

 

「私はあえてサボっただけだ!だから他とは違うのさ!」

 

「おい正邪、それはむしろ他の人よりダメだぞ。」

 

・・・・・・もしかして、この教室バカばっかり?

まあ、無意識で消えちゃった私が言えることじゃないけど・・・。

 

「とりあえず姫路さんと稗田さん、席に着いてください。あと、みなさん静かに・・・」

 

先生がみんなを静かにさせようと教卓を叩く。

すると、ボロボロと崩れ落ちた。

 

「・・・えー、私は替えの教卓を取りに行くので自習していてください。私が戻ってきたら自己紹介を始めてもらいます。」

 

えー・・・・・・。

さすがに酷すぎない・・・?

先生は去っていったけど、こんなんで1年過ごすのね・・・。

 

 

 

 

 

 

5分後、先生が戻ってきて自己紹介が始まった。

えーっと、私の番は後のほうかな?

 

「・・・木下秀吉じゃ、演劇に所属している。宜しく頼む。あと、わしは女ではなく男じゃから、そこを間違えないでほしいのう。」

 

「「「嘘だッッ!」」」

 

クラスの全ての男子が叫んだけど、木下君ほんとに男なんだけどな・・・。

 

「・・・まあ、ともかくよろしくじゃ!」

 

木下君が無理矢理自己紹介を打ち切った。

残念そうにしてるクラスメイト達をよそに、自己紹介は次の人に進む。

 

「・・・・・・土屋康太。趣味は盗ちょ・・・特にない。特技は盗さ・・・特にない。」

 

なんか、今変な言葉が聞こえたような・・・?

まあ、きっと気のせいなんだよね!

ポケットにボイスレコーダーとカメラが見えるけど、気のせいだよね。

まあ、私は知っているんだけどね。

 

「島田美波です。ドイツで育ったので、日本語は苦手ですが、話すのは大丈夫です。趣味は、吉井明久を殴ることです☆」

 

やっぱりいい笑顔で言うんだ・・・。

 

「あぅ、し、島田さん。」

 

「吉井、今年もよろしく~!」

 

怯える吉井君に対して、美波ちゃんは何もなかったかのように明るくあいさつをしてる。

相変わらず、吉井君に対して、感情を伝えるのが下手だよね・・・。

 

「・・・っと、次は僕か。えーと、吉井明久ですね。気軽にダーリンって読んでくださいね♪」

 

『『『ダァーリィーン!!!』』』

 

野太い声(と一部女の子の声)が響く。

ノリがいいな・・・。

ちなみに、私もしっかり言ったよ。

せっかくだもんね。

 

「・・・失礼、忘れてください。ともかくよろしくお願いします。」

 

吐きそうな顔で吉井君が座る。

・・・だったら言わなきゃいいのに。

 

「霧雨魔理沙だぜ!読書とゲームが趣味なんだぜ。みんな、よろしくだぜ!」

 

「私は・・・多分霊路地空だよ!お空って呼んでね!みんな、よろしくね!」

 

「鬼人正邪だ。一応よろしくだな。」

 

「あの、姫路瑞希ですっ!これから一年間、よろしくお願いします!」

 

「私は稗田阿求です。みなさん、よろしくお願いしますね。」

 

その後は特におかしなところもなく進んでるけど、このクラス、なんというか濃いな~。

女子が自己紹介をするたび、歓声をあげてる人達がたくさんいるし・・・。

おっと、次は私だね。

 

「古明地こいしだよ。好きに呼んでね。」

 

「「「うおおーっ!こいしちゃーん!」」」

 

やっぱり元気なクラスだな・・・。

 

「皆さん、今は自己紹介中ですよ。静かにしてください。」

 

さすがに先生が教卓を叩いて注意する。

そして、また教卓が壊れた。

えぇ・・・・・・。

さっき変えたばかりなのにまた・・・?

でもちょっぴり慣れちゃった自分が怖いな。

 

「もう一度替えの教卓を取ってきます。自習していてください。」

 

また教卓を取りに行く先生。

なんというか、このFクラスでは常識にとらわれてはいけないんだなぁ・・・。

 

「・・・・・・じゃなんだから廊下で。」

 

「まあ、別に構わんが。」

 

そんなことを考えていると、吉井君と坂本君が廊下に出ていくけど、何処にいくのかな?

ちょっと気になるから行ってみよーっと!

 

 

 

 

 

 

 

「・・・雄二、試召戦争をやらないか。こんな設備じゃダメだと思うんだ。Aクラスの設備を見た?それに比べてFクラスはぼろっちいしすきま風も入ってくるから健康にも悪いわけだし、ここで一年なんて、ごめんだね。」

 

「・・・ははあ、なるほどな。明久がやりたい理由は大好きな姫・・・」

 

「わーっ、そんなこと言ってないってば!」

 

・・・なるほどね~。

 

「ねえねえ二人とも、その話私も『その話、詳しく聞かせてもらっていいか?』あら?」

 

私が口を挟もうとしたら、誰か他の人が二人に話しかけてた。

 

「・・・ん?お前は確か・・・」

 

「鬼人正邪だ。呼び方は適当で構わない。それより、試召戦争をやるってのは本当なのか?」

 

なんだ、正邪ちゃんか。

 

「まあ、冗談で言っていた訳ではないが・・・。」

 

「私は下位クラスでの試召戦争やるのが面白そうだとおもっていたのだ。それがまさか初日で叶うことになるなんて予想してなかったが、こんな楽しいことを見逃すなんてもったいないじゃないか。古明地もそうは思わないか?」

 

あら、私にふられた。

 

「まあ、私も楽しそうだとは思うけど、やるならお姉ちゃんがいるBクラス以外がいいかな。」

 

「「古明地(さん)!?いつからいた(の)!?」」

 

「吉井君が力説してたあたりだよ?」

 

「「まったく気づかなかった・・・。」」

 

実は、私は存在感消すことにはちょっとした自信があるんだよね。

こっそり行動するのは得意だよ、えへん。

 

「・・・まあ、俺も学力だけが全てではないと証明してみたかったからな。俺達が最終的に狙うのはAクラスだ。そして、勝算はある。」

 

坂本君はそう言ってるけど、どうやって勝つつもりなんだろう?

 

「・・・と、先生が戻ってきたみたいだな。続きはあとでだ。」

 

教室に戻って、残りの人の自己紹介を聞くことになる。

おっと、聞いてたらもう最後か。

 

「では坂本君、最後に代表としてお願いします。」

 

先生に呼ばれた坂本君が、教卓に向かって歩いていく。

代表だからかな?

 

「俺がFクラス代表の坂本雄二だ。代表でも坂本でも好きに呼んでもらって構わない。」

 

「じゃあ私はド○キーコングと呼ばせてもらうぜ!」

 

「・・・坂本か代表と呼ぶようにしてくれ。」

 

坂本君が額に青筋をたてて魔理沙をにらむ。

あ、結構おこだね。

 

「とにかく、俺はみんなに一つ問いたい。Aクラスは冷暖房完備でリクライニングシート、さらに個人用のパソコンや冷蔵庫もあるらしい。だが、俺達はこの始末だ。不満はないか?」

 

「「「おおありじゃあっ!」」」

 

クラスの皆の心がひとつになったね。

私も、不満があるかな~。

 

「だろう?この設備には、俺も代表として問題意識を抱いている。だから、代表としての提案だが・・・・・・、我々FクラスはAクラスに試召戦争を仕掛けようと思う!」

 




いかがでしたか?
原作の流れがあると書きやすいですよね。


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第三話「試召戦争!」

 

 

 

坂本君が試召戦争を仕掛ける意思を言葉にした瞬間、みんながざわざわしだす。

試召戦争というのは、この学園の学園長先生が科学とオカルトの力で作った「試験召喚システム」というので、テストの点数に応じた強さの召喚獣を呼び出して戦うクラス間の戦争のことなんだけど、この戦争で、クラスの設備が変わるんだよね。

上位クラスに下位クラスが負けた場合、クラスの設備が入れ換えられちゃうから、もし私達がAクラスに勝てたとしたら、Aクラスの人達がこのぼろっちい教室に、Fクラスがシステムデスクになるということだね。

まあ、下位クラスが負けた場合、設備が1クラス分ランクダウンし、その後3ヶ月はふたたび戦争を挑めなくなっちゃうんだけど。

 

「勝てっこない・・・、あいつらは伝説のAクラスなんだぞ・・・。」

 

「これ以上設備を下げられるなんて嫌だ。」

 

「姫路さんと稗田さんがいてくれたらなにもいらない。」

 

「こいしちゃんマジ天使!」

 

坂本君が放った言葉に、否定の言葉が飛び交う。

ドラゴンボールが好きな人がいるのかな?

私へのコメントはスルーでいいか。

 

「勝つプランはある。いや、絶対に勝たせてみせる。」

 

坂本君のそんな言葉。

それでも、懐疑的なコメントは消えない。

まあ、Fクラスは最下位クラスだし、そう言われても信じるのは厳しいよね。

 

「根拠ならあるさ。このクラスには勝つために必要な要素は充分すぎるほどにある。おい康太、畳に顔をつけて古明地のスカート覗いてないで早く前に来い。」

 

「・・・・・・!!(ブンブン)」

 

あ、ほんとだ。

 

「まずはこの土屋康太。こいつがあの有名なムッツリーニだ。」

 

「・・・・・・!!(ブンブン)」

 

ムッツリーニ君は、畳のあとがついた額を押さえながら否定のポーズをしてるけど、なかなかすごいよね。

ちなみに、ムッツリーニというのは、要はムッツリスケベのことなんだけどね。

いつものことといえばいつものことだし私は怒らないけど。

 

「姫路と稗田のことは言うまでもないだろう。姫路は学年トップクラスだし、稗田は途中退出してなかったら文句なしに首席だっただろうな。」

 

「えっ、わっ、私ですか!?えーと、が、頑張ります!」

 

「私も頑張りますね。」

 

坂本君に名指しされた二人がやる気をみせる。

二人がやっぱりキーパーソンだよね!

 

「それに、霧雨魔理沙、霊路地空、古明地こいしと、科目を絞ればAクラスと対等に戦える人材も3人いる。」

 

「うにゅ?私?」

 

「お?私を買ってくれるのか?」

 

「私も、期待されてるなら頑張らないとね~。」

 

ちなみに、私の得意科目の地学は平均300点位で、お空もだいたいそれくらいなんだよね。

坂本君があげた名前でみんなの士気が上がっていってるけど、それでもまだ直接のぶつかりあいは厳しいんじゃないかな?

 

「そして、吉井明久もいる。」

 

・・・・・・・・・うわぁ、一気に士気が落ちた。

 

「ちょっと雄二!なんでそこで僕の名前を呼ぶのさ!せっかく上がった士気が台無しじゃないか!」

 

「まあ落ち着け明久。知らない人もいるだろうから言うが、こいつは《観察処分者》だ。」

 

「あの、すみません・・・。観察処分者って何ですか?」

 

姫路さんは知らないみたいで、坂本君に尋ねている。

 

「僕みたいにちょっと人と違う凄い『バカの』才能を持ち・・・ってちょっと雄二!僕の説明に口を挟まないでよっ!」

 

「いや、事実じゃねえか。」

 

「なるほど、吉井君って凄いんですね!」

 

「ああっ!穴があったら入りたいっ!」

 

吉井君が悶えてる。

 

「ちなみに、観察処分者の召喚獣には、ものに触れられるのと、召喚獣の食らったダメージが本人にフィードバックするという特別な仕様があったりする。よく教師の雑用に駆り出されてたりするな。」

 

「でも、それならおいそれと召喚できない奴が一人いるってことじゃないのか?」

 

「まあそうだな。だが、いてもいなくても変わらないようなザコだから問題はない。」

 

「雄二、そこは普通僕をフォローする場面だよね?」

 

ただバカにしたかっただけみたいだね。

この二人を見てると、友達なのかと疑わしくなる場面が1日3回くらいあるんだよね・・・。

 

「なんにせよ、まずは力の証明としてDクラスを倒そうと思う。」

 

ん?

Dクラス?

まあ、坂本君には坂本君の考えがあるんだよね!

 

「境遇に不満があるだろ?ならば全員ペンを取れ!俺達は決してダメ人間のあつまりなんかじゃねえ!最低クラスの実力、見せつけてやろうじゃねえか!」

 

「「「おおーーーっ!!」」」

 

またまたみんなの気持ちがひとつになったね。

私も頑張ろ~っと。

 

「よしじゃあ明久。お前にはDクラスへ宣戦布告に行ってもらいたい。」

 

あ、坂本君が吉井君を陥れようとしてる。

下位クラスの使者って、大抵酷い目にあわされるからね。

 

「それって僕に死ねっていいたいの!?」

 

「大丈夫だ。やつらはお前に加えない。騙されたと思っていってこい。俺を誰だと思ってる。俺を信じろ。」

 

「雄二・・・。そこまで言うならわかったよ。行ってくるね。」

 

「ああ、頼んだぞ。」

 

やっぱり信じちゃうのね。

吉井君純粋だからしょうがないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「騙されたぁっ!」

 

やっぱり吉井君はボロボロになって帰ってきた。

 

「やっぱりな。」

 

「少しは悪びれろよっ!」

 

「これくらい予想できずに代表がつとまるか。」

 

ほんとに、坂本君と吉井君が友人か信じられなくなることは多いなあ。

 

「あの、吉井君、大丈夫ですか・・・?」

 

「あ、うん、大丈夫。ほとんど軽い傷だから。」

 

「吉井、ほんとに大丈夫?」

 

「平気だよ。心配してくれてありがとう。」

 

「よかった・・・。ウチが殴る余裕はまだあるのね・・・。」

 

「ああっ!もうダメ!死にそう!」

 

吉井君、美波ちゃんは冗談で言ってるんだから、そんなに体を押さえて転げ回らなくても・・・。

 

「明久の傷のことはどうでもいいから屋上へ行くぞ。」

 

「ほら吉井、行くわよ。さっきのは冗談だから、ほんとに殴ったりしないわよ。」

 

「ほぇ?そうなの?」

 

「・・・っとそうだ。おい正邪、話を聞きたいんだろ?よかったらついてくるか?あと稗田と姫路も来てくれないか?」

 

坂本君、覚えてたんだ。

その声に反応してこっちに歩いてくる正邪ちゃんと阿求ちゃん。

それで、みんなで屋上に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今からDクラス戦の会議をはじめる。明久、宣戦布告はしてきたんだよな?」

 

「うん。今日の午後から開戦だと伝えてきたよ。」

 

「ならお昼御飯食べない?私、おなかすいちゃった。」

 

「確かにもうそんな時間だな。よしこいし、弁当を貸してくれ。」

 

「嫌だよ魔理沙・・・。返さないよね絶対・・・。」

 

「失礼な、ちゃんと返すぜ。まあ、いつ帰すかが未定なだけなんだぜ。」

 

「それは借りるって言わないんだけどな・・・。」

 

「とりあえず明久、今日くらいはまともなものを食べとけよ。」

 

「そう言うならパンくらいおごってくれればいいのに。」

 

まあ、吉井君の主食はアレだからね・・・。

 

「ん?吉井は昼食食べない派なのか?」

 

「いや、一応食べてるよ。」

 

「いや、あれは食べてると言えるのか・・・?」

 

「ん?少量しか食べないのか?」

 

「いや、コイツは量とかじゃなくて・・・・・・」

 

「吉井君の主食は水と塩だもんね~。」

 

「・・・・・・は?」

 

「失礼な!ちゃんと砂糖もとってるさ!」

 

「・・・すまない、意味がわからんのだが。」

 

「私の記憶にもいままで主食が水、塩、砂糖だった人はいないですが・・・。私の知り合いで悟りを開こうと修行している聖さんも、それ以上のものを食べてるのに・・・。」

 

「あの、吉井君、砂糖や塩は食べるとは言わないと思いますが・・・。」

 

正邪ちゃんと姫路ちゃんと阿求ちゃんがものすごく困ってる。

私もはじめて見た時はものすごく驚いたんだよね・・・。

あ、ちなみに阿求ちゃんはいわゆる瞬間記憶能力ってやつを持ってるんだよね。

覚えたことを決して忘れないから、吉井君以外に塩を主食にしてる人間はいないってこと。

どんだけおかしいかわかるよね・・・。

 

「まあ、吉井は飯代まで仕送りに使うから同情の余地ないんだけどな。」

 

「あの、吉井君。それなら明日から私がお弁当を作ってきましょうか?」

 

「ゑ?」

 

姫路ちゃんなかなかやるね~!

 

「本当にいいの?僕、塩と砂糖以外のものを食べるのは久しぶりだよ!どんなものだってありがたいさ!」

 

「はい。明日のお昼で良ければ。」

 

「姫路さん、本当にありがとう!実は僕、はじめてあった時からあなたのこと好き・・・」

 

「おい明久、今振られると弁当の話はなくなるぞ。」

 

「好きにしたいと思ってました。」

 

・・・・・・うん、ドン引きするしかないかな。

吉井君がバカなの知ってるけど、軽く引いちゃうのはしょうがないよね。

 

「明久よ、それはただ欲望をカミングアウトした変態じゃぞ。」

 

「だって・・・お弁当が・・・!」

 

「さて、話がそれたが試召戦争に戻ろう。」

 

坂本君が話を戻す。

 

「ひとつ気になっておったのじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階をふむならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

 

「とりあえずEクラスを攻めない理由は簡単だ。攻めるまでもないないからな。お前のまわりの面子を見てみろ。」

 

「えーと、美少女7人とバカが2人とムッツリが1人いるね。」

 

「誰が美少女だと!?」

 

「・・・・・・(ポッ)」

 

「ええっ!?雄二とムッツリーニが美少女に反応するの!?」

 

「おいおい、おだてても何も出ないぜ吉井?」

 

「正しい反応だけどなんか納得できない!」

 

「私はどっちなのかな?」

 

「古明地さんは当然美少女に決まってるじゃないか!」

 

「まあ要するにだ。姫路や稗田に問題がない今、Eクラスには100%勝てるだろうな。」

 

「Dクラスだとダメなの?」

 

「まあ、まともに戦ったら負けかねないだろうな。それに、打倒Aクラスのプロセスに必要だからだ。」

 

「??どんな流れなの?」

 

「まあそれはDクラス戦後に話す。とりあえず、今から作戦を話すぞ。特に明久と霊路地、お前はしっかり覚えとけよ。」

 

「ええっ!?なんで僕と霊路地さんだけ!?」

 

「俺にわざわざ言わせる気か?」

 

「・・・ああ、なるほど!僕や霊路地さんが作戦の要で期待され『バカと鳥頭だからだ。』酷いよ雄二!」

 

「私は鳥頭じゃないよ?」

 

「とりあえず今から話すから黙って聞いとけ。でないとチョキでしばくぞ。」

 

そうして、みんなで坂本君の作戦を聞いた。

さあ、いよいよ午後から開戦だね!




いかがでしたか?
明久ってどうやって生きてるんでしょうね。


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第四話「Dクラス戦前半!」

今回から戦いが始まります。



 

 

「ここは私が引き受けるぜ!島田は木下の援護を頼む!サモン!」

 

「わかったわ!サモン!」

 

「Fクラスがなめるなよ!サモン!」

 

「補習室送りにしてやらあ!サモン!」

 

おー、やってるやってる。

私は中堅部隊の副隊長として、隊長の吉井君と後ろに待機してるから、戦闘にはまだ参加してないんだよね。

一応、魔理沙や正邪ちゃん、お空と同じくテストは受けたから点数はあるけど。

 

「なっ!?なんでお前らFクラスなのにそんな点数なんだよ!」

 

「私達だってやれば出来るってことだぜ!」

 

「その通りだ。さあ来い!補習の時間だ!」

 

「てっ、鉄人!?嫌だ、補習室は嫌なんだ!」

 

「黙れ!戦死者は全員、補習室で特別抗議だ!終戦まで何時間かかるかはわからんが、終わるまでたっぷりと指導してやろう!」

 

「た、頼む、見逃してくれ!あんな拷問、耐えきれる気がしないんだ!」

 

「拷問?そんなことはしない。これは立派な教育だ。終わる頃には、趣味は勉強、尊敬する人物は二宮金次郎といった理想的な生徒にしてやろう。」

 

「お、鬼だ!誰か、誰か助け・・・(バタン、ガチャッ)」

 

「よし、どんどん補習室送りにしてやるぜ!次に死にたいのはどいつだ?」

 

「霧雨、至急手を貸してほしいのじゃ!このままでは押し負ける!」

 

「よしお空、行ってくれ!」

 

「わかったよ、行ってくる!」

 

「・・・げっ!もう私も点数がヤバイ!誰か助けてくれ!」

 

「ウチの方もお空がいても厳しいわ!誰か、手の空いてる人は援護して!」

 

結構厳しい状況だね・・・。

 

「古明地さん、中堅部隊の全員に伝えてくれ。」

 

「お、行くの?頑張ろ~!」

 

「総員撤退だ!」

 

「えいっ!」

 

「ぎゃあああっ!目が、目がァ!」

 

とりあえず、坂本君と美波ちゃんに言われた通り、吉井君が敵前逃亡しようとしたから目をついたけど、大丈夫かな?

一応手加減はしたけど・・・。

 

「吉井君、私達の役割は木下君達前線部隊の援護でしょ?前線のみんなが補給試験を受けてるときに、私達が戦線を支えなきゃダメなんだから、逃げちゃダメだよ。」

 

「た、確かにその通りだね!激痛で目が開けられないけど目が覚めたよ!」

 

「それじゃあ中堅部隊のみんな、前線部隊のみんなを助けにいこー!」

 

「「「おおーーーっ!」」」

 

私を先頭に、やる気になってくれたみんなが続いてく。

前線部隊のみんなを助け、出来るなら戦線を押し上げていこ~っと!

 

「「「こいしちゃんを補習室送りにさせないよう、全力で守るぞ!!ここは俺らに任せてください!」」」

 

あれ?

なんかおかしくないかな?

まあでも、崩壊しかけてた前線部隊は立て直したし、少しづつ押してるからいいか!

 

「待て!この戦線、この我、物部布都が止めて見せる!太子様、お願いします!」

 

「はいはい、フィールドを展開しますよ。」

 

・・・いや、ちょっとマズイかな?

あれは日本史の先生の豊郷耳神子先生だから、新たに立会人を増やして勝負をつける気だね!

 

「物部の秘術と道教の力の融合、見るがよい!」

 

「ぐああああっ!ただ皿投げてるだけなのに威力がやたらたけえっ!」

 

「福村ッ!今助けうわあああっ!」

 

「戦死者は補習!」

 

「「や、やめてくれええーっ!」」

 

福村君と藤堂君が補習室に連れてかれちゃった。

えーっと、相手の点数は・・・?

 

『Dクラス 物部布都 日本史 370点』

 

・・・あ、これものすごくマズイやつだ。

しかも、皿投げが点数消費するタイプだったのか、400点超えなことをあらわす腕輪をしてる。

しかも、ここにいるメンバーは理科系科目が得意なメンバーばっかりだから、日本史高い人いないんだよね。

こっちだと阿求ちゃんがものすごく得意なんだけど、今補充試験やってるし・・・。

よし、私ができるだけ頑張ろう!

 

「えいっ、サモン!」

 

私の声で、私の召喚獣が出てきたね。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 187点』

 

でも、これで持ちこたえられるかな・・・?

 

「次の我の相手はおぬしか?」

 

「うん、頑張って戦うよ!」

 

「待って!僕も助太刀するよ!サモン!」

 

吉井君も来てくれて、2対1になった。

一応、吉井君の得意科目は日本史だし、いい戦いになるといいんだけど・・・?

 

『Fクラス 吉井明久 日本史 149点』

 

「ぎゃあああーっ!足の裏に鋭く尖った固いものが刺さった感触があああーっ!」

 

・・・あ。

吉井君がさっき福村君を葬った皿の破片を踏んで悶えてる。

 

「なんじゃ?おぬし、何故痛がっているのじゃ?」

 

「僕は観察処分者だから、痛みがフィールドバックするんだよ!」

 

「そうか・・・、まあそれなら、できるだけ痛みが少ないように葬ってやろう!我の優しさに感謝するがよい!」

 

物部さんが、私達に向かって皿を投げてきた。

私も吉井君も頑張って避けてるけど、結構厳しいな・・・。

 

「「「こいしちゃんを守れーっ!サモン!」」」

 

すると、Fクラス中堅部隊のみんなが助太刀に来てくれたよ!

 

「おぬしら・・・、うっとおしいから我がまとめて焼いてくれるわ!霊符『太乙真火』!」

 

物部さんのセリフとともに、腕輪が発光する。

・・・あれはものすごくマズイ気がする奴だ!

 

「「「ぎゃあああーっ!」」」

 

「「「ってそれ、味方にも当たってるじゃねーかー!」」」

 

物部さんが燃え盛る皿を地面にぶつけた瞬間、ものすごい勢いで火が燃え広がり、味方ともども召喚獣を焼いていっちゃったよ・・・。

救援に来てくれたみんな(とDクラスの一部)がやられちゃった。

 

「戦死者は補習ーッ!」

 

西村先生が運んでいったけど、なんで15人くらいまとめて運べるのかな?

 

「太子様、我の活躍、見てくれていましたか!?」

 

「・・・言いたいことやお説教は後にしてあげますから、今は戦いに集中したほうがいいですよ。」

 

「ええっ、なんでなんですか!?」

 

物部さんが驚いてるけど、味方ともども焼き払っちゃあねえ・・・。

クラスメイトに恨まれないか心配になっちゃうよ。

 

「残りは吉井君だけ?」

 

「ああ!僕はなんとか避けられたよ!」

 

でも、ちょっとかすったのかな?

点数が半分くらいになってる。

私はなんとか完全にかわせたけどね。

 

「よしじゃあ吉井君、行こうよ!」

 

「ああ!このコンビの実力、見せつけよう!」

 

さっきの火と皿で、物部さんの点数は200点くらいまで減ってる。

これなら行ける!

二人で攻めていく。

 

「・・・っと、しまった!」

 

吉井君がうまく攻撃をしかけ、皿で迎撃し損ねた物部さんがバランスを崩す。

よし、ここで私が攻撃をすれば、物部さんを退場させてここを突破できるね!

 

「・・・やらせはしませんよっ!」

 

「えっ?」

 

あっ、いきなりあらわれた乱入者に私の召喚獣が飛ばされちゃった!

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 120点』

 

それで点数も落ちちゃった・・・。

 

「この紅美鈴、ここを通させるわけにはいきませんよっ!」

 

「おお、助かったぞ!あのままでは我が地獄行きになるところだったからな!」

 

「点数は高くないですが、頑張ります!」

 

『Dクラス 紅美鈴 日本史 127点』

 

むむむ、これで2対2、しかも吉井君も私も消耗しちゃってるから厳しいな・・・。

 

「ここは私に任せろ!日本史の点数が少ない吉井は他にまわれ!サモン!」

 

「!ありがとう、正邪さん!」

 

「正邪ちゃん、日本史の点数はどれくらいなの?」

 

「それはだな・・・。」

 

『Fクラス 鬼人正邪 日本史 180点』

 

「まあ、こんなもんだ。」

 

「さっきから思ってましたが、あなた達本当にFクラスなんですか!?それにしては点数高くないです!?」

 

美鈴さんが驚いてるけど、一応私達は理由があってFクラスにいるからね。

吉井君は得意科目だったわけだし。

 

「よし行くぞ!Fクラスの下克上、見せてやる!」

 

「負けませんよっ!Dクラスの門番として、何人たりともここは通しません!」

 

美鈴さんがくりだしてくる正拳突きを私の武器で受け止める。

この尖った触手のようなもの、伸び縮みするし結構便利なんだよね~。

 

「そのまま抑えてろ古明地!私が引導を渡してやる!」

 

「我を忘れるでない!」

 

美鈴さんに正邪ちゃんが攻撃しようにするも、物部さんに防がれちゃう。

これは、1対1で倒すしかないみたいだね!

よし、頑張ろう!

 

「・・・そろそろですかね。」

 

「ああ、あっちで始まっとるはずじゃ。」

 

「「??」」

 

戦いの手はとめてないけど、美鈴さんと物部さんが話してる。

私も正邪ちゃんもわからないけど、なんだかヤバそうな気がする!

 

「ぎゃあああ!物部クラスがまだいるのかあああっ!」

 

「い、嫌だ!春なのに補習室送りは嫌だ!」

 

「生物でもそんな奴がいるなんて聞いてねえぞおおっ!」

 

「春ですが補習室行きの時間ですよ~。えいっ!」

 

「うわあああ!点数があああっ!」

 

「戦死者は補習ーッ!」

 

「「「ぎゃあああーっ!」」」

 

むこうから、そんな声が聞こえてきた。




いかがでしたか?
原作と比べ、明久の日本史の点数は最初から高いです。


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第五話「Dクラス戦後半!」

 

 

 

「どうじゃ?我の日本史と、あの娘の生物による、理系文系両方で攻める作戦は?」

 

「むむむ・・・、化学か物理ならお空がかえりうちにできたんだけどな・・・。」

 

「もちろん、こちらも負けるつもりはありませんから、ねっ!」

 

「わわっ!危ないっ!」

 

しかけられた足払いをジャンプして回避する。

 

「今じゃ!」

 

でも、空中で身動きがとれない私に対し、物部さんが皿を投げてくる。

 

「とりゃっ!」

 

「皿って我以外に投げ返せたのかああああーっ!」

 

でも、正邪ちゃんがキャッチして、物部さんに投げ返した。

今までの消耗とあわせて、点数が1ケタになったね。

 

「よし、これでとどめだっ!」

 

「我が破れるなんて、嘘じゃああああっ!」

 

点数が大きく減って動きが鈍った物部さんの召喚獣を、正邪ちゃんの刀がばっさりと切り裂く。

 

『Dクラス 物部布都 日本史 0点』

 

「戦死者は補習ゥ!」

 

「い、嫌じゃ!補習室なぞ行きとうない!」

 

「こらこら布都。負けたのだから素直に受け入れなさい。ついでに、しっかり教育してもらいなさい。」

 

「嫌じゃあああっ!太子様、助けてえええ!」

 

「助けませんよ。」

 

点数がなくなった物部さんが補習室につれていかれた。

よしっ!

 

「よし、これで2対1だな!」

 

「マズイですね!でも私は負けませ・・・あれ?」

 

「これはこんな使い方もできるんだよ~!」

 

私の召喚獣の触手が、サマーソルトキックをしてきた美鈴さんの足にからみつき、動きをうまく封じる。

 

「よし、これでとどめだ!」

 

「ぐぬぬ・・・!でも、私の負けですね、参りました。」

 

私の触手を切らないように、今度は突きでとどめをさす正邪ちゃん。

物部さんと違い、美鈴さんは潔く補習室に連れていかれた。

 

「さて、あっちはどうなってるのかな?」

 

『・・・ピンポンパンポーン。風見幽香先生、風見幽香先生、吉井君が体育館裏でお待ちです。』

 

あら?

この放送なんだろ?

幽香先生は今生物の立会人をやってる先生だね。

 

『なんでも、育てていた花を水をやりわすれてひとつのこらず枯らしてしまったため、僕にお仕置きがてら花を綺麗に咲かせるコツを教えてほしいとのことだそうです。』

 

・・・・・・。

吉井君、御愁傷様。

生物の風見幽香先生は、普段はニコニコとしてて優しい先生なんだけど、お花を傷つけた人に対しては鉄人が可愛く見えるほどの折檻をかますんだよ・・・。

それに、花の育て方のコツを聞くと、だいたい10時間コースでみっちりと教えてくれるから、畏怖と尊敬も込められて『四季のフラワーマスター』なんて言われてたりするんだよね。

 

「・・・あら。それはしっかりとO☆HA☆NA☆SHIする必要があるわね。水をやりわすれるなんて、花に対する接し方が間違っているから直させないといけないわ。傘取ってこないといけないわね。」

 

うわぁ・・・。

ここからでも、春なのにひんやりとした空気を感じるよ・・・。

 

「吉井、あんた男だよ・・・!クラスのために風見先生に喧嘩を売るなんて・・・!」

 

「身命を賭して活路を切り開いた吉井隊長に続けーっ!」

 

「アキ、大丈夫かしら・・・?」

 

「十中八九、2日くらいは寝込むじゃろうな。」

 

むこうからはそんな声が聞こえてくる。

 

「あ、あれ?私の召喚獣が消えちゃいましたよ・・・。」

 

「マズイ!リリー・ホワイトさんを守りながら撤退しろーっ!」

 

どうやら、その娘はリリー・ホワイトさんっていうみたいだね。

でも生物のフィールドを展開していた幽香先生がO☆HA☆NA☆SHIをするために消えちゃったから、召喚獣を展開できなくなっちゃったみたい。

吉井君の命が危険にさらされてる以外は問題がなくなったね。

どうやらリリーさんは生物以外はダメみたいだし。

 

「・・・もう姫路ちゃんの補充試験は終わったかな?今回阿求ちゃんは参加しないけど、作戦はもうすぐだよね。」

 

阿求ちゃんは体が弱くて一度にたくさんテストを受けられないけど、成績は学年トップだからね。

今回は補充試験に徹してもらうことにしたみたい。

さっきの物部さん達も、阿求ちゃんがいたら2秒でかたがついたと思うけど、阿求ちゃんがみんなの前に姿をあらわしてたら、今回の作戦が破綻してた可能性があるからね。

・・・と、準備ができたみたいだね。

それじゃあ、私もこっそり行きますか~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校中の生徒にまぎれてDクラスの代表に近づいていく。

まだこちらにも気づいてないみたいだし、吉井君もいる。

それに、立会人となる古文の先生も付近にいるからしかけられる!

みたところ、近衛部隊もほとんどいないみたいだし、チャンスだ!

 

「新井先生!Fクラス吉井明久、Dクラス代表に古典で・・・」

 

「Dクラス玉野、受けます!」

 

「なっ!?」

 

「Fクラス古明地こいし、Dクラス代表に・・・」

 

「Dクラス直木、受けます!」

 

「むむむ、やっぱりダメか・・・。」

 

「残念だったな。二人とも。さすがにFクラスの生徒が近づいたら近衛部隊は来るに決まってるじゃないか。」

 

『Dクラス 直木美紀 古典 107点 VS Fクラス 古明地こいし 古典 73点』

 

ちょっとこれは厳しいかな・・・。

 

「でも、やるしかないよね!あともう少しなんだし!」

 

「でも、その点数ならどちらにしても無理だっただろうな。」

 

『Dクラス 玉野美紀 古典 101点 VS Fクラス 吉井明久 古典 37点』

 

・・・うん、言い返せないね。

 

「だろうね。僕には無理だと思うよ。だから姫路さん、お願いね♪」

 

「「は?」」

 

まあ、普通わかんないよね。

 

「あ、あの、すみません・・・。」

 

「え、あ、姫路さん、どうしたの?Aクラスはここを通らないはずだけど・・・。」

 

「あの、違うんです、Fクラス姫路瑞希、Dクラスクラス代表平賀君に現国勝負を申し込みます。」

 

「はぁ、どうも、よろしくおねがいしま・・・あれ?」

 

「サ、サモンです。」

 

『Fクラス 姫路瑞希 現代国語 339点 VS Dクラス 平賀源二 現代国語 129点』

 

「あの、えっと、ごめんなさい!」

 

姫路ちゃんが平賀君の召喚獣を一太刀でまっぷたつにする。

これにて、Dクラス戦は決着をむかえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふぅ。まさか、姫路さんがFクラスにいるとは、予想すらしてなかったよ。完敗だ。」

 

斬られてから1分ほど平賀君は立ち尽くしていたが、我にかえってそんなことを言ってくる。

 

「実は、もっと凄い隠し玉もあったんだけどな。」

 

あ、坂本君だ。

阿求ちゃんのことだね。

今回のことで相手は他に強大なメンバーがいないか調べるだろうし、阿求ちゃんのことを隠す必要はないと思ったんだろうね。

 

「あ、その、さっきはすみませんでした・・・。」

 

「いや、あやまる必要はない。物部やリリーがいるし、そもそもFクラスはDクラスより点数低いからFクラスなんかに負けるはずはないとなめてたせいで、下調べをしてなかったのも悪いし、何よりこれは勝負だ。」

 

「とりあえず、やったね!」

 

せっかくだから坂本君と握手する。

 

「古明地、物部との日本史ではよくやってくれたな。お前がいたからこの勝利があったと言えるだろう。」

 

「坂本君も、いい作戦だったよ!元神童の力はだてじゃないね!」

 

「それも、お前らの力があってこそだからな。」

 

「坂本君が私達の力を信じてくれたからだよ。」

 

こういうの、いいよね~。

 

「雄二、僕とも勝利の握手しようよ!・・・あれ?なんで手首を押さえるのかな?」

 

「押さえるに・・・決まってるだろうが!」

 

「ぬぐぐ・・・!雄二、生物ではよくやってくれたな!お前がいたからこの犠牲があったと言えるんだぞ!」

 

「お前もいい働きをしてくれたじゃないか。観察処分者は伊達じゃないな。」

 

「その時だって、雄二の力があったからじゃないか!」

 

「教師達がお前のバカさを信じてたからだろうが!」

 

こういうの、醜いよね~。

そして、カランと音をたてて落ちる包丁。

 

「・・・ふぅ。みんなでなにかをやり遂げるって素晴らしいね。」

 

・・・吉井君、やっぱりバカだね。

この状況、逃れられないでしょ・・・。

 

「僕、仲間との達成感がこんなにいいものだなんて、今まで知らな関節が折れるように痛いいぃっ!」

 

「今、何をしようとした。」

 

「も、もちろん、喜びを分かち合うための握手を手首がもげるほどに痛いぃっ!」

 

「おーい、誰かペンチを持ってきてくれー。」

 

「わ、わかった!僕が悪かったから生爪を剥がそうとするのはやめてください!」

 

まあ、当然だよね。

いやまあ、吉井君の状況も同情に値するけど。

 

「とにかく、ルールにのっとって教室をあけわたそう。ただ今日は時間も遅いし明日でいいか?」

 

平賀君がどこか悲しげな雰囲気を出しながら言ってくる。

まあ、そうだよね。

勝って英雄扱いでもてはやされるのが代表なら、負けて戦犯として責められるのも代表。

負けちゃった平賀君は、この先辛いんだろうなあ・・・。

 

「いや、その必要はない。」

 

だけど、坂本君はそんなことを言った。




いかがでしたか?
原作どおりの展開。
まあこの戦力ならDクラスはね。


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第六話「煉獄!」

 

 

 

「坂本君?どうして設備をもらわないの?」

 

坂本君の発言に対して私が質問する。

この場のみんなが頭にクエスチョンを浮かべてたんじゃないかな?

 

「忘れたのか?Dクラスはあくまで中間点。目的はAクラスだろう?」

 

「でもそれなら、なんで直接Aクラスに戦いを挑まないのさ?」

 

「ちょっとは自分で考えろ。そんなんだから近所の小学生にバカなお兄ちゃんと呼ばれんだよ。」

 

「・・・・・・人違いです。」

 

「冗談のつもりだったんだが、お前・・・。」

 

えー。

なにしたのか、すごく気になるよ・・・。

 

「とにかく、条件次第では設備交換をやめてもいい。」

 

「条件?一応聞かせてくれ。」

 

「なに、簡単なものさ。俺が指示したらBクラスのところにある室外器を破壊してくれ。」

 

「・・・ほう?それだけなのか?」

 

「ああ。設備を壊すから教師に睨まれるだろうが、そう悪い取引じゃないだろう?」

 

なるほどね。

私にはよくわからないけど、これが大事なんだろうね。

 

「だが、何故そんなことを?」

 

「次のBクラス戦に必要なことだからな。」

 

坂本君がそんなことを・・・・・・ん?Bクラス?

お姉ちゃんがいるBクラス?

 

「ねえ坂本君。私、お姉ちゃんがいるBクラスにはやらないでって言ったよね?お姉ちゃんをあんな設備にさせるわけにはいかないんだけど、さっきのはどういうことなのかな?もしお姉ちゃんにあんな教室を押しつけようとするなら、さっきの吉井君みたいな方法使ってでも止めるよ?ねえ坂本君、そこのところ答えてよ?」

 

「ま、待て古明地!あとで詳しく話すからそんな詰め寄ってくるな!明久と違ってお前が本気で隠れると全然見つからないから怖いんだよ!」

 

坂本君がなんか言ってるけど、さっき吉井君が落とした包丁はどこに行ったのかな?

家庭科室かな?

 

「待て古明地!とりあえず落ち着け!」

 

「そうだよ古明地さん!クラスメイトを殺すなんてダメだ!」

 

左右から魔理沙と吉井君が抑えてくるせいで動けなくなっちゃった。

 

「とりあえず、後で納得できる説明をするから落ち着け!」

 

・・・はっ!?

あれ?私はなんで抑えられてるんだっけ?

 

「まあともかく、その取引、のませてもらう。お前らがAクラスに勝てることを祈ってるよ。」

 

「ははっ、無理するなよ。どうせ勝てないと思ってるだろ?」

 

「まあそうだが、100%負けるとは思ってないからな。10%くらいはあると思ってるよ。まあ頑張ってくれ。」

 

そう言いつつ平賀君は去っていく。

 

「・・・さて古明地、ちょっと来い。さっきのこと、納得いく説明をしてやる。」

 

「わかったけど、内容によっては《ピー》で《ズッキューン》で《ザッパーン》だよ?」

 

「怖いからやめてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

私達は補充試験を受けるため、学校に来てた。

ん?私と坂本君のあの後?

一応納得したからチクチクするのは勘弁してあげたよ。

 

「おっはよ~!・・・あれ?姫路ちゃんどうしたの?」

 

「おはようございます・・・。実は、いけないものを食べてしまって・・・ぐすん。」

 

泣くほど痛いのかな?

なんかものすごく心配だな。

 

「無理だけはするなよ?健康は大事にしろよ。」

 

「あ、ありがとうございます・・・。でも、私は大丈夫です、多分・・・。」

 

「おっはよ~!って姫路さん、大丈夫!?もしかしてブサイクな雄二に話しかけられたせいで気持ち悪くなったの!?」

 

「おいこら明久、お前には言われたくねえよ。」

 

あ、坂本君と吉井君だ。

 

「よう吉井!坂本と睨みあってどうしたんだ?」

 

魔理沙も来たね。

 

「聞いてよ霧雨さん!雄二が姫路さんをいじめてたんだよ!」

 

「嘘をつくんじゃねえ!」

 

「あ、魔理沙、姫路ちゃんが具合悪いのは変なもの食べたかららしいからね?」

 

「なるほどな。とりあえず吉井、私の呼び方は魔理沙でいいぜ。」

 

「ほぇ?そうなの?ごめんね雄二、あまりにブサイクだから勘違いしちゃった。」

 

「テメェ表出やがれっ!」

 

「それより、吉井はここにいていいのか?1限のテストは生ぶ・・・・・・」

 

バギャドガァッ!

突然の大きな音に魔理沙の言葉が遮られる。

音がした方を見ると、破壊されたドア。

そして、恐ろしいオーラを放つ四季のフラワーマスター。

 

「あなたが吉井君ね。私に花のことを聞いておいてすっぽかすとはいい度胸してるじゃない?」

 

ひいっ!?

怖い、怖いよ。

私に向けられてないのにものすごく怖いよ!

こんだけ怒りのオーラ出してるのに表情が笑顔なのがなおさら怖いよ!

 

「あ、あ、あ、あ、あのですね風見先生、あの放送は雄二がでっち上げで・・・」

 

「へえ、そうなの。ならば・・・その雄二君とやらもまとめて教育してあげようかしら。」

 

「「ひいいいいーーーっ!」」

 

「花を水やり忘れで枯らすなんて、一番私が怒るものよ?花だって生きているのに、責任をすっぽかして殺すなんて、人として最悪な行為。それを嘘とはいえ私に言った二人は許されないわ。どっちも三途の川を渡る覚悟しときなさい。とても綺麗な花を見せてあげるわよ。」

 

「「い、い、イヤアアアアーッ!!」」

 

すごい勢いで走ってく吉井君と坂本君。

そして、あくまで笑顔でそれを追う先生。

・・・えっと、テストはどうするのかな?

まあ、とりあえず二人が生き残れることを祈っておこう!

 

「・・・あれ?アキがいない。昨日助けてくれたお礼をしようとしたんだけど・・・。」

 

後から来た美波ちゃんが吉井君を探してるけど、しばらくは無理だと思うよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

 

「大丈夫?」

 

「「ああ、綺麗な花畑と川だなぁ・・・。あ、鎌を持った女の人が杓をもった幼女に叱られてる。」」

 

「ちょっと!?それ多分三途の川だよね!?起きて!!」

 

「「はっ!?」」

 

良かった、目覚めたみたいだね。

命をかけた鬼ごっこでは二人とも捕まっちゃったみたいだけど、生きて帰れて一安心だよ。

 

「二人とも、風見先生は許してくれたのかの?」

 

「うん。捕まって花についてひたすら語られた後、花を枯らした嘘をついた罰として文庫本1冊程度の反省文提出したらひたすら傘でボコられた後、ようやく許してくれたよ。多分。意識が朦朧としてたからはっきりとはわからないんだけどね。」

 

「あ、あはは・・・」

 

阿求ちゃんが苦笑いしてる・・・。

私も過剰じゃないかなと思うけど、今日一日じゃなかっただけよかったのかな?

 

「とりあえず、今は昼飯を食べに屋上へ行くぞ・・・。」

 

「坂本君、屋上じゃなくて保健室に行こうよ・・・。」

 

「いや、鬼ごっこの前のこいつとの決着をつけないといけねえからな・・・。か、覚悟しやがれ、明久・・・。」

 

「の、望むところだよ・・・!」

 

「あの、これ以上やったら本当に死にますよ・・・?」

 

さっきも三途の川っぽいの見てたのに・・・。

 

「そういえば、姫路が弁当作ってきてくれるんだったよな?」

 

魔理沙の言葉で思い出したけど、そういえばそうだったね!

姫路ちゃんがビクンと反応してるけど、どうしたのかな?

 

「あ、あのですね、実は、持ってくるのを忘れ『お、これだな!』ま、魔理沙ちゃん!?」

 

魔理沙、人の鞄を勝手にのぞくのはやめようよ・・・。

 

「みたところ、弁当みたいだな!これは楽しみだぜ!」

 

「あ、あの、待って『やったあ!姫路さん、ありがとう!』あぅ・・・。」

 

「これはなかなか旨そうだな・・・。」

 

「・・・・・・・きっと美味。」

 

楽しみだな~!

みんなで屋上へいく。

坂本君と美波ちゃんは飲み物を買うため、あとから来るみたいだけど、無くなっちゃわないか心配だな。

 

「よーし、開けるぜ!」

 

魔理沙が弁当のふたをとる。

すると、中から唐揚げ、卵焼き、ベーコン巻き、おにぎりなどがこんにちはする。

とっても美味しそうだし、味に期待するしかないよね!

 

「「「おおーっ!」」」

 

「あぅ・・・。皆さん、いったん待って・・・」

 

「よしじゃあさっそくいただくぜ!」

 

「・・・いただき。」

 

「あっ、ずるーい!」

 

いきなり魔理沙とムッツリーニ君が唐揚げを口に運ぶ。

二人が食べた瞬間、ガシャン、ガタガタガタガタと顔から倒れて痙攣しはじめた。

・・・・・・・えっ?

 

「ああ・・・、二人とも大丈夫ですか!?意識ありますか!?」

 

私達が何が起こったかわからない状況のなか、姫路ちゃんだけは半泣きで二人に声をかけてるね。

 

「・・・(ムクリ)」

 

「・・・ふっ。(ムクリ)」

 

あ、二人が起き上がった。

 

「・・・・・・(グッ)」

 

「我が人生に、一片の悔いなしだぜ・・・。(グッ)」

 

だけど、そんなことを言ってまた倒れちゃった。

もしかして、美味しすぎて倒れちゃったということかな?

でも顔が青白いのが・・・。

 

「な、なんというか、二人とも突然倒れたが、確かこの時期は貧血を起こしやすいと言う噂を聞いたことがあるぞ!」

 

正邪ちゃんが半泣き・・・というか今にも泣き出しそうな姫路ちゃんを見てられなかったのか必死で理由をでっちあげる。

 

「そ、そういえばわしも聞いたことがあるぞい!今くらいの時期、貧血は多いものじゃろうしな!」

 

「ま、まったくムッツリーニも魔理沙ももっと鍛えないといけないよね!」

 

「ま、まさか目の前でおこるなんて予想してなかったよね~。」

 

「そ、そうですね。私の記憶にもこういうことがあった気がします!」

 

「まったく、偶然って怖いよね!」

 

「「「アッハッハッハッハ!」」」

 

「・・・と、待たせたな!早速俺も食べさせてもらうとするか!」

 

「「「あ・・・・・・。」」」

 

全員で必死にごまかしていたら、坂本君が食べてしまう。

ガシャン、ガタガタガタガタと、ジュース缶をぶちまけて倒れる坂本君。

 

「あ、ああ・・・」

 

「ちょっと!?坂本、どうしたの!?」

 

後ろからは美波ちゃんの声。

並ぶ3人の死体(生きてるけど)。

・・・・・・うん、これは詰みだね。

 

「ごめんね姫路ちゃん、お話、聞かせてくれないかな?」

 

「うう・・・っ、ごめんなさい!」

 

とうとう泣き出しながら謝る姫路ちゃん。

心苦しいけど、ごめん!

 

「じ、実は私の弁当が原因なんです・・・。昨日、頑張って作ってみたんですが、試食してみたら気絶しちゃって・・・。でも、意地をはってしまって持ってきちゃったんです・・・。本当にごめんなさいっ!」

 

泣きながら謝る姫路ちゃん。

悪気がないのはわかってるし、反省してるわけだし、誰も責めたりはしないけどね。

 

「・・・・・・大丈夫だよ姫路さん。姫路さんが作ってくれたんだから、どんなものだって嬉しいよ。だからいただきますっ!」

 

えっ吉井君!?

一口食べたら人の意識を刈り取る弁当をかっこみ始めちゃったよ!

大丈夫なの!?

 

「・・・・・・(ゴクン)、ふう。姫路さん、美味しかったよ・・・・・・・(バタリ)」

 

「よ、吉井君・・・!死なないでくださいっ!」

 

た、食べきった・・・・・・!

すごいよ吉井君・・・!

今、最高に輝いてるよ!

まあ、その輝きが命の焔を燃やしつくしかけてるのが問題なんだけど・・・。

 

「よ、吉井・・・、お前すごい男だな・・・。」

 

「吉井君の勇姿は、私の頭にずっと記憶しておきますよ・・・。」

 

死屍累々の状況だけど、吉井君は最高に輝いてた。

 

 




いかがでしたか?
自分の料理の味をしらないのは不自然ですよね。
明久かっこいい。


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第七話「Bクラス戦前半!」

 

 

 

「み、皆さん、本当に大丈夫ですか・・・?」

 

あのあと、気絶した4人を教室に運び込んだら、なんとか目をさましてくれた。

吉井君と坂本君は本日2回目の三途の川を渡りかけたみたいだけど、さっき怒られてた鎌の女の人が寝てたから戻ってこれたみたい。

・・・・・・死神だよね、それ。

 

「ああ。心配するな。さっきの地獄と比べたら・・・(ガタガタブルブル)」

 

「雄二の言う通りだよ。風見先生が見せた地獄に比べたら、全部食べてもへっちゃらだよ(ガタガタガタガタ)」

 

「私も大丈夫だぜ・・・。」

 

「・・・問題なし。」

 

吉井君と坂本君、足が生まれたての小鹿みたいにふるえてるけど、幽香先生はものすごくトラウマになっちゃったみたいだね・・・。

 

「うむ、ところで坂本よ、何故Bクラスなのじゃ?」

 

「・・・ああ、そうだったな。正直に言おう。俺達Fクラスがまともにぶつかったら逆立ちしたってAクラスには勝てない。」

 

その言葉に、昨日聞いた私以外がきょとんとした表情をする。

 

「そうなると、ウチらの目標はBクラスに変更なの?」

 

「いや、Aクラスだ。・・・まあ聞け。あと古明地は鉛筆構えるな。」

 

ざわざわしだしたみんなを坂本君がおさえて説明をはじめる。

 

「俺達FクラスがAクラスに勝てない理由は平均点の違いだ。姫路、稗田は高いが他はアレだからな。個々が強いだけではあっさりと押し負けてしまう。だから、一騎討ちに持ち込むつもりだ。」

 

「・・・わかりました。つまり、要求をのまなければBクラスにAクラスを攻めさせ、消耗させた直後に攻めこむと脅すわけですね。Bクラスも、Fクラスと設備を交換するよりはAクラスに攻めこむ方が得ですからね。」

 

「なんで得なの?」

 

「おい明久、試召戦争で下位クラスが負けたらどうなるか知ってるか?」

 

「・・・・・・うん、知ってるよ。」

 

絶対知らないよね・・・。

 

「設備が1クラス分落とされるわけだ。この場合、BクラスはCクラス相当になるな。Fクラス相当になるより明らかにマシというわけになるな。」

 

わかってない様子の吉井君のために正邪ちゃんが補足説明する。

だから、もし勝ってもBクラスとの設備入れ換えはしないみたい。

なら、いいかな?

 

「だが坂本、一騎討ちで勝てるのか?多分稗田や姫路はなんらかの対策をされると思うぞ。」

 

姫路ちゃんはAクラス代表の霧島さんに総合点数で負けちゃうし、阿求ちゃんは英語が苦手だから、そこをつかれたら負けちゃうんじゃないかな。

 

「大丈夫だ。勝つための策はある。心配するな。ともかく、今はBクラスだ。」

 

「それもそうだな。確かにそこに勝たないとダメなんだぜ。」

 

「ほらお空、次も頑張ろ?」

 

「うん、私頑張るよ!」

 

お空はさっきの昼休み、いっしょにいなかったけど、今の話は聞いてたみたい。

鳥頭だからちょっと不安があるけど・・・。

 

「よしじゃあ明久、さっそくBクラスに宣戦布告してきてくれ。」

 

「断る!雄二が行けばいいじゃないか!僕は本日3回目の三途の川を見るなんてごめんだね!」

 

「大丈夫だ。大事な大使を傷つけるような奴がBクラスにいるわけがない。」

 

「Dクラスの時もそう言って騙したじゃないか!」

 

不毛だな・・・。

Bクラスにはお姉ちゃんがいるし、私が行ってこようかな?

 

「よしじゃあジャンケンで決めよう。心理戦ありで行こうじゃないか。」

 

「わかった。それなら僕は・・・」

 

「待って?私とお空が行ってきてもいい?」

 

「え、古明地さん?」

 

「大丈夫だよ。優しいお姉ちゃんがいるんだから!ほらお空、行こ!」

 

「うん!」

 

「・・・まあ、姉がいるというのならあまり酷い目には、あわな・・・・・・、いや、どうなんだろうか?」

 

「む?何故わしを見るのじゃ?」

 

なんか坂本君が言ってるけど、まあいっか!

行ってこよ~っと!

 

「じゃあ行ってくるね~!」

 

「あっ、ちょっと待て・・・」

 

お姉ちゃんに会える、お姉ちゃんに会える~!

学校で会うのはクラス分けの時以来だな~!

スキップ気味に廊下を移動し、Bクラスの扉を開ける。

 

「やっほー!お姉ちゃん、いる~?」

 

「・・・えっ、こいし?なんでここにいるの?」

 

「えへへ、お姉ちゃんだ~。」

 

「ひゃっ!?ちょっとこいし、急に抱きつくのはやめなさい!」

 

「お姉ちゃんすりすり~!」

 

「私もいるよ~!お燐もいる?」

 

「ああ、お空ね。お燐ならいるけど、まずはこいしを引き剥がしてくれないかしら・・・。」

 

「というかこいしちゃん、確か私達、用があって来たんだよね?」

 

・・・あっ、そうだった!

お姉ちゃんに会って忘れてた!

お空に言われて思い出したけど私達、宣戦布告に来たんだった!

 

「ん?お空にこいしちゃん、どうしてここにいるのかな?にゃはは。」

 

今こっちに来たのが火焔猫燐、通称お燐。

お姉ちゃんの一番の親友で、私やお空とも仲がいいんだよね~!

 

「やっほーお燐!実は、私達、伝えなきゃいけないことがあるの。代表さんはいる?」

 

「代表?一応そこにいるけど、なにか用なの?」

 

お姉ちゃんが指差した方向を見る。

すると、なんか男の子達がいっせいに目をそらしたけど、どうしたのかな?

 

「よし、じゃあ言うよ。しっかり聞いててね。2ーFの古明地こいしです。私達FクラスはBクラスに対し、明日の午後から試召戦争を申し込みます。」

 

「「「なにっ!?」」」

 

私が言った瞬間、空気が変わった。

ピリついた感じに。

吉井君がDクラスで言った時もそうだったのかな?

 

「生意気な!この身の程知らず達に教えてやれ!」

 

「「おうっ!」」

 

一部の人達が私達に殴りかかってきた!

衝撃にそなえ、目をつぶる。

でも、いつまでたっても衝撃が来ない。

 

「お待ちなさい。こいしは私の大事な妹です。手を出そうというのなら、私がトラウマを植えつけてあげますよ。」

 

「お姉ちゃん!」

 

「にゃは、もちろんあたいも黙ってないよ?」

 

「お燐!」

 

「さて、やるのですか?」

 

「ぐっ・・・!」

 

根元君とやらが悔しそうに歯噛みする。

 

「あ、こいし、根元じゃなくて根本ですよ。覚える価値があるかはともかくですが。」

 

「あっ、そうなの?」

 

お姉ちゃんは、他人の表情や声のトーンなどを読みとって、目の前の人が何を考えているかを知ることができる。

やっぱりお姉ちゃんはすごいんだよ!

 

「あと、こいしに一応言っておくけど、もし私と戦う時に手加減とか自害とかしたら、この学校にいる間は口をきかないことにするし、あんたの恥ずかしい秘密をいくつかばらすわよ。嫌なら全力でやりなさい。私もそっちの方が嬉しいわ。」

 

・・・見透かされてたみたい。

お姉ちゃんが補習室送りになるのは嫌だったし、もし補習室送りになったら私も行っていっしょにやろうとしてたのに。

大好きなお姉ちゃんに口をきいてもらえなくなるとか、1日で死んじゃうよ!

 

「お空・・・は大丈夫そうね。」

 

「にゃはは、敵を応援するってのもなんだか変だけど、頑張るんだよ!」

 

「うん!お姉ちゃんもお燐も頑張ってね!」

 

「私達、頑張るよ!」

 

宣戦布告もしたし、さっそく頑張らないとね!

よーし、やるぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで翌日午後。

全員、しっかりと補充試験を終え、準備はできたよ!

 

「さて、まずはテストご苦労様だった。午後からBクラスとの試召戦争だがやる気は充分か?」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない。だから、前線部隊は稗田に指揮をとってもらう。」

 

「は、はい、頑張ります!」

 

「「「うおおおおっ!」」」

 

「目指すはシステムデスクだ!行くぞ!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

坂本君の号令で、みんなのやる気が膨れ上がる。

ちなみに私は阿求ちゃんひきいる前線部隊だよ~!

 

「み、みなさん、待ってくださーい!」

 

「私も、もうちょっとゆっくりにしてくださらないと・・・」

 

でも、みんな姫路ちゃんと阿求ちゃん置いていっちゃダメだよ~!

今回の作戦は渡り廊下戦を勝つのが最大の目的らしいね。

阿求ちゃん以外は理系な人達が多いし、相手は文系が多いみたいだから、理系科目で一気に攻めこむんだって。

そのためにFクラス50人中40人をここに突っ込んでいるんだって聞いたよ。

姫路ちゃんや阿求ちゃん以外にも、私、お空、魔理沙と強い人いるから、絶対負けられないね!

 

「いたぞ!Bクラスだ!サーチアンド!」

 

「「「デス!!」」」

 

デス!じゃないでしょ・・・。

でも私も頑張るよ!

 

「Fクラス風情が勝負を挑んだこと、後悔させてやる!サモン!」

 

「私達だってできるんだぜ!サモン!」

 

『Bクラス 武藤修平 数学 164点 VS Fクラス 霧雨魔理沙 数学 374点』

 

「げえっ!?なんだその点数は!?」

 

「Fクラスなめないでほしいんだぜ!」

 

『Fクラス 鬼人正邪 数学 241点 VS Bクラス 新川恭一 数学 184点』

 

『Fクラス 島田美波 数学 216点 VS Bクラス 萩生響 数学 197点』

 

まわりにも点数が見えてきた。

みんな、いい感じみたいだね。

 

「よしっ、私もサモン!」

 

『Fクラス 古明地こいし 数学 163点 VS Bクラス 有田重信 169点』

 

私の相手はだいたい同じくらいみたいだね。

 

「くたばれっ!」

 

「・・・後ろだよ?」

 

「なっ!?」

 

突撃してきたBクラスの人のうしろにまわりこみ、私の武器をつきさす。

うん、簡単だね!

相手はまだ操作に慣れてないのか、あっさりと刺され沈んでいった。

 

『Fクラス 古明地こいし 数学 163点 VS Bクラス 有田重信 0点』

 

「戦士者は補習ーッ!」

 

魔理沙ちゃん正邪ちゃんが倒した3人がつれてかれた。

でも、Fクラスの人達も2人か。

 

「お、お待たせしました・・・サモン!」

 

「私も、なんとかたどり着きました・・・!サモン!」

 

お、阿求ちゃんと姫路ちゃんが来てくれたみたい!

二人ともぜえはあ言ってるけど、召喚獣が召喚される。

 

「来たぞ!姫路に稗田だ!」

 

『Fクラス 稗田阿求 数学 334点』

 

『Fクラス 姫路瑞希 数学 417点』

 

「マズいぞ!姫路の奴、腕輪持ちだ!」

 

「ごめんなさい!これも勝負ですからっ!」

 

「左に飛べーっ!」

 

姫路ちゃんの謝罪と同時に腕輪が光り、そこから熱線が放たれる。

それは、退治していた二人のうち、逃げ遅れた片方の召喚獣を丸焦げにした。

 

「ごめんなさいっ!」

 

残ったもう一人の召喚獣もその武器で切り裂き、一瞬で決着がつく。

 

「姫路に2人やられたぞ!」

 

「ならばここは私が引き受けます!サモン!」

 

「虎丸、姫路相手に一人で大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫ですよ!私も、数学は出来るんです。」

 

『Fクラス 姫路瑞希 数学 397点 VS Bクラス 虎丸星 数学 421点』

 

「「「なにっ!?」」」

 

まさかBクラスにもいたとはね・・・。

 

「毘沙門天の威光、その身に刻みなさい!」

 

「レーザー、ですか!?」

 

姫路ちゃんが言うように、虎丸さんの攻撃はレーザーだった。

姫路ちゃんの熱線に比べて太いね。

姫路ちゃんはなんとか回避したけど、その射線上にいた3人のFクラスの人達が一気に蒸発しちゃってる。

 

「くっ、これはきついですね・・・!でも、負けません!」

 

姫路ちゃんは放たれるレーザーを回避させながら、虎丸さんに近づいていく。

 

「残念ですが、そこは射線上です!」

 

「えっ?・・・きゃあっ!」

 

虎丸さんの持つものから放たれたレーザーはぐにゃりと曲がって、姫路ちゃんの召喚獣を直撃する。

 

「ここは私に任せろ!レーザーにはレーザーだぜ!」

 

「ま、魔理沙ちゃん!?」

 

「あなたもレーザーを?」

 

「ああ、見せてやるぜ!マスタースパーク!」

 

魔理沙の掛け声とともに、武器として持ってる箒からレーザーが放たれる。

二本のレーザーはぶつかりあい、ちょうど中間でせめぎあう。

 

「むむむ、なかなかやりますね・・・!ですが、私は負けませんよ!」

 

「それはこっちのセリフだぜ!」

 

『Bクラス 虎丸星 数学 348点 VS Fクラス 霧雨魔理沙 数学 352点』

 

互いに消耗したからか、かなりいい勝負になりそうだね。

負けないでよ、魔理沙?

 

「みなさん、私がしんがりをつとめるのでここは退いてください!」

 

Bクラスが引いていくね。

よし、これなら行ける!

 

「待て古明地。なんだか嫌な予感がする。教室に戻るぞ。Bクラス代表は根本恭二だから、なにか卑怯なことをやりそうな気がする。」

 

私も追撃しようとしたんだけど、なにか感じたのか、正邪ちゃんが言ってくる。

確かに、卑怯そうな男だったし、噂も聞くもんね。

 

「うーん、わかった、そうだね!」

 

正邪ちゃんはあまのじゃくなところもあるけど、こういう時、味方を不利にするような嘘はつかないからね!

確かに、私とお空をボコボコにしようとした根本君が何かやってくるのはありそうだし。

そのため、私達はこっそりと教室へ戻る。

すると、中からFクラスのものではない声が聞こえてきた。

 




いかがでしたか?
こいしちゃん達がいることで運命は変わります。


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第八話「卑怯はダメだよ!」

 

 

 

「誰か、いるな・・・。」

 

「ちょっと私が確認してくるね。」

 

正邪ちゃんにそう言って、中にこっそり入っていく。

 

「・・・よし、誰もいないな。お前達は文房具と座布団をやれ。俺はちゃぶ台をやる。」

 

・・・いけないことしてるね。

人の文房具やちゃぶ台に手を出そうとするなんて、制裁が必要かな?

 

「ねーねー、そこで何してるのかな?」

 

「「「うわっ!?」」」

 

私に気づいていなかったみたいで、振り返って驚くBクラスの3人。

 

「人の私物や設備に手を出すのはいけないんだよ?わかってる?何してたか言わないなら、このまま補習室行く?」

 

「ほ、補習室は嫌だっ!」

 

「残念だけど、逃がさないからな?」

 

逃げ出した一人を正邪ちゃんが投げる。

正邪ちゃん合気道とか得意だから、高校生男子くらいならあっさり投げられるんだよね。

 

「ぐわっ!」

 

「さて、このまま私と古明地に痛めつけられた後、先生呼んで補習室行きになるか、おとなしくたくらみを話すか選ぶんだな。」

 

「わ、わかった、話す!代表にFクラスの文房具やちゃぶ台壊して補充試験を妨害しろと言われたんだ!」

 

「・・・なるほどな。一応聞くが、お前らに罪の意識ってものはないのか?」

 

「お、俺達だってやりたくはなかったんだ!代表の根本に脅されただけなんだ!」

 

「ほんとは古明地さんに従いたかったんだ!」

 

お姉ちゃん?

とりあえず、根本君はねじ曲がった性格だとよくわかったよ。

注意しておかないといけないね。

 

「それで、脅されただけだから俺達は悪くない、とでも言いたいのか?」

 

「い、いや、そんなつもりは・・・。」

 

「古明地、どうする?」

 

「私?私としては、一人だけ逃がして、もう二度とこんなことしないようにと伝えさせるのがいいんじゃないかな?」

 

「お前・・・なかなかエグいことを考えるんだな・・・。」

 

あれ?

正邪ちゃんがひいてる。

私が言った通りにすると、地獄の補習を逃れるために多分醜い争いが始まるだろうから、エグいかもしれないけどね。

この3人が友人だった場合、その後の友情にヒビが入るかもしれないけど、そんなの私しーらないっと!

 

「・・・よし、じゃあそうするか。おいお前ら、一人だけ逃がしてやる。ちなみに、とっとと決めないと他のFクラスの人達も来るから強制的に全員補習室だぞ?」

 

正邪ちゃんも人のこと言えないんじゃないかな・・・?

今、ものすごいゲス顔してるし。

 

 

ちなみに、結局3人は争ったあげく、決まる前に坂本君達が帰ってきたから、全員補習室送りになったよ。

 

 

 

 

 

「ところで坂本君はどこ行ってたの?」

 

「ちょっと協定を結びに屋上にな。」

 

「協定?」

 

「どんな内容なんだ?」

 

「そんな面倒なことじゃない。4時までに決着がつかなかったら、戦況をそのままにして続きは明日午前9時に持ち込み。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する、だ。」

 

うーん・・・、なんで根本君はそんな協定を結んだんだろう・・・?

なんか、絶対裏があるはずなんだよね・・・。

 

「こちらとしても戦力の要である姫路と稗田にとって有利だからな。」

 

「でも、なんでそんな協定を結んだんだろう?」

 

「わからんが、俺達がいない間に補充試験を妨害するためだけじゃないのかもしれないな。」

 

協定について会話していると、Fクラスの伝令が教室に飛び込んでくる。

 

「大変だ!霧雨とBクラスの虎丸が相討ちになり、島田が人質にとられた!」

 

魔理沙、やられちゃったのか・・・。

しかも美波ちゃんが人質?

 

「霧雨、数学は400付近だったはずだぞ!その虎丸って何者なんだ?」

 

「もう補習室いきましたが、腕輪を持ってレーザー撃つ召喚獣です!」

 

「ぐっ・・・!大事な戦力のひとりが欠けちまったか・・・!しかもレーザーなんて規格外だろ・・・!」

 

「いやまあ、魔理沙もレーザー撃ってたけどね。」

 

「それより今は島田の救出だ。古明地、行くぞ!」

 

「うん、美波ちゃんを助けよう。」

 

人質って、またベタな卑怯だよね。

立ち上がろうとすると、ふたたび伝令。

 

「島田は救出したぞ!Bクラスも教室に押し込めている!」

 

・・・と、私達が行く必要もなかったね。

そのまま時計をみてみると現在3時45分。

もうすぐ協定の時間だね。

そのまま私達は教室にいて、4時になったあたりで吉井君達が戻ってくる。

 

「ただいま~!島田さんも『美波でしょ?アキ?』あ、そうだったね、美波も救出してきたし、Bクラスも教室に押し込んでるよ!」

 

「おう、ご苦労だった。とりあえず明久、現在の戦況と島田の呼び方が変わったいきさつについて詳しく報告してくれ。」

 

「前者はともかく後者は嫌だよっ!なんで雄二なんかに言わなくちゃなんないのさ!」

 

私も気になるけど、まあいっか。

本人達に無理に聞くのも悪いしね。

 

「冗談だ。普通に戦況だけを聞かせてくれ。」

 

「うん、了解。まずね・・・。」

 

吉井君の報告によると、魔理沙がやられ、美波ちゃんと姫路ちゃんがだいぶ数学の点数を消費したみたい。

阿求ちゃんはまだあるみたいだけど、明日以降、数学でやるのは厳しいかな・・・。

あと、お姉ちゃんとお燐がまだ出てきてないのが気になる。

お姉ちゃんの得意科目は現代文と生物、お燐の得意科目は生物だから、その先生達も注意しないといけないかな?

 

「・・・・・・(トントン)」

 

「お?どうした?ムッツリーニ?」

 

「・・・・・・Cクラスに戦争を始めようとする動きがある。」

 

「・・・チッ。あいつら、漁夫の利を狙いにきたか。・・・ならCクラスと協定を結ぶか。Dクラスあたりを攻めこませると脅せばやる気もなくなるだろ。」

 

坂本君らしいね。

でも、これってBクラスとのとりきめに反してないかな?

 

「・・・待ってください坂本君。」

 

「お?どうしたんだ?稗田?」

 

「恐らく、これはBクラスの罠でしょう。私の記憶では、根本君と、Cクラス代表の小山さんはつきあっていたはずです。」

 

「な!?それは本当か!?」

 

「あはは稗田さん、冗談がうまいね。あんなブサイクで卑怯で人間として最低な根本君なんかに、そんな美人な彼女ができるわけがないじゃないか。」

 

「あまり人のプライベートをばらすのは好きじゃないんですが、小山さんは『卑怯というのは勝つために手段をつくすということだから私はいいと思うわよ。』と以前言っていましたし、この話はまず間違いなく本当なんですよね・・・。」

 

「嘘だっ!そんなんで彼女ができるなら、僕にも今ごろ彼女の2人や3人くらいいてもおかしくないはずなんだっ!」

 

「いや、2人や3人はダメだろ。二股は人間として最悪だぞ。」

 

慟哭する吉井君に正邪ちゃんが突っ込む。

・・・・・・でも、姫路ちゃんと美波ちゃんがいるし、あながち間違ってないんだけどね。

 

「あ、そういやお前に好意を持ってる奴が俺の知り合いでいたな。確か、久保・・・」

 

「えっ?ほんと?」

 

吉井君が嬉しそうにしてる。

 

「・・・利光だったかな。」

 

「・・・・・・もう僕お婿にいけない。」

 

天国から地獄へという言葉がこれほど似合うのを私は見たことなかったな。

 

「安心しろ。半分冗談だ。」

 

「ちょっと!半分ってなにさ!」

 

「さて、Cクラスのが罠とわかった訳だが、どうしたものかな。」

 

「罠だとしても、このままだと多分ほんとに攻めてくるだろうしね~。」

 

「逆にあえて罠にひっかかって、私達を狩りにきた根本の奴を返り討ちにするというのはどうだ?」

 

「それはかなり厳しいだろうな。今日消耗させられた数学でやられれば勝ち目は薄い。稗田は確かに点数が残っているが、虎丸の時みたいに、稗田に対抗できる奴が残っていたとしたらほぼ詰みだ。」

 

「ちょっと雄二!それより残りの半分のことを説明してよ!」

 

「明久、今は大事な作戦考えてるんだから、邪魔すんな。」

 

「僕にとってはこっちの方が大事だよっ!」

 

「まあ、Cクラスの方はおもいついたんだがな。今日はもう遅いから明日実行する。あと古明地と霊路地は少し残ってくれ。」

 

うん?

なんだろう?

 

「うにゅ?いいけど、どーしたの?」

 

「私も構わないけど、なにか用なのかな?もしかして告白とかかな~?」

 

「古明地。冗談でもやめてくれ。まわりを見てみろ。」

 

えーと、カッターを持ったFクラス生徒17人、ちゃぶ台を持った生徒4人、スタンガン持った生徒2人、脱いだ靴下を持った生徒2人だね。

・・・・・・ごめん、ちょっとこのクラスが理解できないや。

 

「・・・ということだ。」

 

「うん、わからないけどわかったよ。」

 

私としてもからかった結果坂本君がかえらぬ人になるのは望んでないからね。

とりあえず、それで話を聞いたけど、確かにこれは聞けてよかったかな。

よーし、明日も頑張るぞー!




いかがでしたか?
正邪は合気道ができます。


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第⑨話「Bクラス戦後半!」

 

 

 

「では、昨日言っていた作戦を実行する。」

 

翌日。

戦争のために集まった私達に対し、坂本君が言った。

 

「うにゅ?Bクラス戦はまだだよね?」

 

「Bクラスにではなく、Cクラスにだ。とりあえず秀吉、前に出てきてくれ。」

 

「んむ?何じゃ?」

 

「とりあえず、これを来てくれ。」

 

そう言って坂本君が取り出したのは・・・・・・女子の制服?

坂本君がどうやって手に入れたのか気になるな~。

今度聞いてみて、お姉ちゃんの制服を《ドッパーン》して《ズッキューン》する方法の参考にしよっかな?

 

「・・・おい。それなんで男の木下に着せるんだ。」

 

「まあ、わしは構わんのじゃが、確かに理由が気になるの。」

 

「・・・いや、そこはかまえよ。お前男だろ。」

 

ちょっと変わってるはずの正邪ちゃんが、ここでは一般人に見える。

不思議だな~。

 

「まあ、木下君は演劇に命かけてるといっても過言じゃないくらいに真剣だからね~。」

 

「うむ。この程度、劇では着なれておるのじゃ。」

 

「とりあえず、これを着る理由は、CクラスにAクラスの木下優子として行き、挑発して敵意をAクラスに向けさせるためだ。」

 

「ちなみに、木下優子とはワシの姉上じゃ。」

 

確かに、二人はそっくり・・・なんだけど、木下君の方が女の子っぽいんだよね・・・。

凶暴性・・・怒りの沸点?は吉井君に対する美波ちゃんくらいだし。

まあ、Aクラスにいるだけあってすごいことは事実なんだけど。

 

「と、いうわけだ。さっそく用意を頼む。」

 

「うむ。了解なのじゃ。」

 

言いつつ、制服に手をかける。

ちょっと木下君!?

ここで着替えるの!?

 

「ちょっと木下君、こっちで着替えようね。」

 

「何故じゃ!?わしは男だというのに!?」

 

「男の子だったら、女の子の前で着替えるのはダメでしょ?」

 

「・・・確かに、それもそうじゃな。」

 

まあ、本当はムッツリーニ君がカメラ構えてるのと、吉井君達が秀吉君の全身に穴があきそうなくらいみつめてたからなんだけどね。

木下君見た目は女子だから美波ちゃんとかも気にしてないし。

みんなが残念そうな声をあげるけど気にしなくていいよね。

 

「もしかしてこれはこいしちゃんと秀吉のゆ・・・」

 

聞こえてきた言葉は聞かなかったことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

3分後。

秀吉君が戻ってきたけど・・・、もうこれ女子だよね。

知らずに見せられたら、多分見抜けないよ私。

 

「・・・これは、売れる・・・!(プシャアアァ)」

 

ムッツリーニ君も鼻血を出してるし。

 

「よしじゃあ行くぞ。」

 

「あ、私もいい?」

 

「まあ、構わないが。」

 

私も、面白そうだからついていくことにしたよ~!

不自然に思われないように距離をとってついてく。

そして、秀吉君がCクラスの扉を開けた!

 

「静かにしなさい、この薄汚い豚共!」

 

うわぁ・・・。

なんというか、エグいね。

多分Cクラスの人達固まってるよ。

 

「な、何よアンタいきなり!」

 

「話しかけないで!豚臭さがうつるわ!」

 

自分から入っていってこの言い草。

多分これ、精神が弱い人なら泣き出すよ?

 

「私はね、こんな豚臭くて醜い教室が同じ校舎にあるなんて我慢できないの!あなた達なんて豚小屋につながれてるくらいがちょうどいいのよ!」

 

「なっ!?言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?」

 

秀吉君もひどいこと言ってるけど、豚小屋=Fクラスの式が成り立ってるのはなんでなの!

 

「私の手が豚なんかで穢れてしまうのは本当は嫌だけど、今回は特別に私がふさわしい教室に送ってあげようと思うの。せいぜい豚らしくブヒブヒと感謝の意を示しなさい。」

 

もうね、なんというか、ひどいよね。

さっきからCクラスの声が聞こえてこないし、狙い通りに挑発できてるんだろうけど、なんだろうこの素直に喜べない気持ち。

 

「ちょうど試召戦争の準備もしているみたいだし、覚悟しておきなさい。近いうちに私たちが薄汚いあなた達を始末してあげるから!」

 

そして、秀吉君の声が途切れ、中から出てくる。

 

「・・・と、まあこんなもんじゃろうか。・・・む?古明地よ、どうしたのじゃ?」

 

「とりあえず、やりすぎだよ・・・。」

 

狙い通りに挑発出来たとはいえ、流石に・・・ね。

 

「Fクラスなんか構ってられないわ!とりあえず、あの女、許さないんだから!」

 

Cクラスから声が聞こえてくる。

あれが代表の小山さんかな?

 

「ところで秀吉君、一応聞くけど、もしこれが優子ちゃんにバレちゃったらどうするの?」

 

「・・・・・・(ダラダラダラダラ)」

 

秀吉君、真っ青になって冷や汗かいてる。

まあ、私が出来ることはなにもないし・・・ね。

 

 

 

 

 

 

 

そして、Bクラスとの戦争の開戦時刻になった。

昨日の時点で、私達FクラスはBクラスを教室に押し込んでるから、今日はそっから開戦だね。

私達の役割はBクラスを外に出さないよう閉じ込めることだよ!

まあ、私とお空は少し特別な役割があるんだけどね。

 

「くそっ、Fクラスのくせに!」

 

「私達だってやるときはやるからな!」

 

「そっちも抑えててよ!」

 

「任せとけ!」

 

「古明地さん、相手が予想以上に強いです!」

 

「一人で勝てそうにないなら二人一組であたってください!とにかく、この教室の出口を解放するのを優先に!」

 

「わかりました!」

 

戦況は今のところ五分五分。

でも・・・。

姫路ちゃんが、さっきからオロオロするばかりで仕事を果たせてないんだよね。

 

「姫路ちゃん、さっきからどうしたの?なにかあった?」

 

「あ、あの、その・・・。」

 

泣きそうな顔をしてる。

なにかあったはずなんだけど・・・。

 

「な、何でもないんです。」

 

このように、答えてくれないんだよね。

 

「おい、後ろの出入口の科目が英語に変えられたぞ!」

 

「阿求ちゃんは一旦引いて!」

 

「わ、わかりました!」

 

英語は阿求ちゃんの苦手分野。

だから、現状はかなりマズイ。

姫路ちゃんが大事なのに!

 

「なにもないわけないでしょ!そんな顔で!」

 

「ほ、本当に何でもないんです。」

 

「ちょっと厳しいかもしれないけど、姫路ちゃんはこの戦争、いや、このクラスにとって大事な人なんだよ。このままだと作戦にも影響しちゃって、姫路ちゃんは自分のせいで負けたと後悔し、自分を責め続けちゃうことになるよ。だから、ね、言お?」

 

「ほ、本当に何もないんです!」

 

私・・・いや、誰ににとってもバレバレな嘘をつきつづける姫路ちゃんに、嫌な予感が混ざる。

まさか・・・。

 

「姫路ちゃん。もしかして、脅されてたりする?」

 

「!・・・あ、う、あうあ・・・」

 

私の考えが確証に変わる。

 

「マズイ!前の入り口の科目が世界史に変えられた!」

 

「物理の先生はどうした!」

 

「Bクラスに拉致された模様!」

 

こちらの得意科目を封じ、相手の得意科目で勝負か・・・。

上手い指揮だね・・・。

 

「私が行きます!・・・・・・あっ。」

 

姫路ちゃんが救援に行こうとしたけど、ある一点を見た瞬間、うつむいて立ち止まってしまう。

その一点を見ると、ニヤニヤとこちらを見下ろす根本君の姿。

そして、その手には可愛らしい封筒。

ここからでも、姫路ちゃんが心をこめて書いたのがわかるような封筒。

本人に事情を聞かなくてもわかる、靴箱とか机の中に入っていそうな封筒。

・・・・・・・・・へえ、そんなことまでしちゃうんだ。

私の中で、なにかが切れた音がした。

 

「うん、姫路ちゃん。ちょっと体調悪そうだから、保健室なり教室なりで休むといいよ。まだ戦争は続くんだから、体調管理はしっかりしないとね。」

 

「・・・はい。」

 

「姫路ちゃん、そんな風にならなくても大丈夫だよ。私達がきっちりと勝って取り戻してくるからね。」

 

さて、私が許せる一線を越えてきた根本君には、どう償ってもらうかな。

 

「とりあえず、まずは突破しないとね。」

 

「化学の先生、連れてきたぞー!」

 

うん、私はこっちだね。

お空もいるし、絶対に突破するよ。

 

 

 

 

 

 

 

「マズイ、古明地妹に原田と杉崎がやられた!」

 

「今度は霊路地に平賀がやられた!」

 

「おいお前ら!しっかり守れ!」

 

「・・・根本、あなた、何したか言いなさい。」

 

「お、俺はなにもしてねえ!」

 

「んな訳がないでしょう。あの娘が私関連以外であれだけ怒りをみせるなんて、姉の私でもほとんどみたことがないですからね。心の眼がなくたってわかります。」

 

中から根本とお姉ちゃんの声が聞こえてくる。

私は今、怒ってるから強いよ?

もうすぐ突破できそうかな。

 

「扉、突破されます!」

 

Bクラスの人が報告すると同時に、私達Fクラスが教室になだれこむ。

 

「どうもー、2日ぶりのFクラス古明地こいしだよ!」

 

「同じくFクラスの・・・・・・えっと、霊路地お空だよ!」

 

「そして同じくFクラス稗田阿求です。」

 

「お、お前らいい加減にしろよな。昨日から扉に固まりやがって、暑苦しいことこのうえないっての。」

 

「ふーん、そ。それはどこかのBクラス代表が卑怯な無能だからでしょ?」

 

「それは、あなたの代表としての能力が劣っていたからでしょうね。例えば人望や思考力などといったものが。」

 

「つまり、Bクラスの代表は私達よりバカだったってことなのかな?」

 

「ぐっ・・・!貴様ら・・・!」

 

私達の挑発(1人は天然だが)に歯噛みし、こちらに歩きだそうとする根本。

 

「待ちなさい!」

 

だが、お姉ちゃんが引き留める。

 

「こんな明らかな挑発にのってはいけません。まだ戦況的にはこちらが有利です。一応代表なんですから、それくらいは冷静に判断しなさい。」

 

「・・・チッ!それくらいわかってらあ!」

 

お姉ちゃんにとめられた根本は足を止める。

さすがお姉ちゃんだね!

 

「なるほど。Bクラスの指揮がうまかったのはあなたが理由ですか。納得しましたよ。」

 

「ともかく、こいつらを補習室送りにしてやれ!古明地、火焔猫!他の奴等は稗田を圧殺しろ!」

 

「あなたに指示されるでもありません。サモン。」

 

「にゃはは、お空、行くよ、サモン!」

 

『Fクラス 古明地こいし 化学 241点 VS Bクラス 古明地さとり 化学 293点』

 

『Fクラス 霊路地空 化学 371点 VS Bクラス 火焔猫燐 化学 217点』

 

対戦カードが表示される。

でもこれは2対2だ。

 

「お姉ちゃん、言われた通り本気で行くよ!」

 

「ええ、かかってきなさい。」

 

点数的はこちらが有利。

そして、お空は遠距離タイプだ。

 

「えいっ!」

 

まずは小手調べに触手を使って攻撃する。

 

「遅い!」

 

だけど、お姉ちゃんはあっさりとかわし、こちらにハート型の弾を撃ってきた。

えっ、お姉ちゃんも遠距離攻撃あるの!?

 

「にゃはは、こっちも忘れないでね!」

 

なんとか回避したけど、お燐が猫車を持って殴りかかってくる。

 

「それは私のセリフだよ!」

 

でも、お空の召喚獣がビームを放ち、お燐の攻撃の軌道を変えさせる。

 

「そのままさとりちゃんに、どーん!」

 

「させませんよ!」

 

そのレーザーをそのままお姉ちゃんに照射するけど、飛び退いて回避するお姉ちゃん。

なら・・・!

 

「お空、援護して!」

 

「わかった!」

 

先にお姉ちゃんを倒す!

ハート型の弾を放ってくるお姉ちゃんの弾幕を潜り抜けつつ、お姉ちゃんに近づいていく。

どうしても回避不可能な弾は私の触手ではじくか、お空がビームで打ち消してくれる。

 

「・・・!お燐、お空を止めて!」

 

「了解!」

 

お燐は猫車をかまえてお空の方に行く。

ビームは速度が速いが、照射にわずかにためがあること、同時に1本しか放てない欠点がある。

 

「にゃはは、猫車にはこういう使い方もあるんだよ!」

 

「お燐!?」

 

でも、普通に近づいていたら追いつかれて焼かれると判断したのか、猫車を使うお燐。

なんと、猫車を勢いよく押し、セグウェイのように飛び乗って突撃していってる。

 

「こいし、よそ見してていいの?」

 

「もちろん、してないよ?」

 

お姉ちゃんまであと2メートルくらい!

お姉ちゃんは冷静に後退しながら弾幕を放ってるけど、私の方が速い!

 

「つかまえたっ!」

 

「なっ・・・!?」

 

お姉ちゃんの召喚獣を触手で捕らえる。

弾幕を放つ両手をこちらに向かないように拘束し、あとはとどめをさすだけなんだけど・・・。

お姉ちゃんの形をした、お姉ちゃんの分身にとどめをさそうとしても手がうまく動かない・・・。

 

「こいしちゃん、そのさとりちゃんを倒しても本人に痛みはないから倒しちゃってよ!」

 

「こいし!敵に情けをかけるのはやめなさい!それは精一杯戦った私にも失礼よ!」

 

「・・・わかった。ごめんね、お姉ちゃん!」

 

触手をお腹に突き刺す。

すると、お姉ちゃんの召喚獣は静かに消えていった。

 

「・・・ってお空!危ないよ!」

 

「もう避けられないよ!ごめんね、これも勝負だからね!」

 

お空が眼を離した隙に、お燐の召喚獣がお空のそれの目の前に来ていた。

私のせい・・・だよね。

 

「まだ手はあるんだよ。爆符『ギガフレア』!」

 

「にゃっ・・・!?」

 

お空が言葉を発するとともに、お空の召喚獣の回りに【caution!】と表示される。

お燐も異変に気づいたが、もう止められない。

 

「いっけえーっ!」

 

そして、お空の召喚獣が大爆発をおこす。

爆発がとまった時、お燐の召喚獣は黒焦げになって倒れていた。

 

「よし、今だよムッツリーニ君!」

 

「・・・・・・参上。Fクラス土屋康太、Bクラス代表根本恭二に保健体育勝負を申し込む。」

 

「なっ、そんなとこから・・・!」

 

私が言った瞬間、窓から突入してくるムッツリーニ君と保健体育の大島先生。

Dクラスに条件として室外器を破壊させていたのと、私達が教室前で戦っていたため、室温が上がったBクラスは、熱中症を避けるために窓を全開にしていた。

だが、そこから入ってくるなんて誰が予想できただろうか。

 

『Fクラス 土屋康太 保健体育 441点 VS Bクラス 根本恭二 保健体育 220点』

 

点数差は2倍以上。

そして、勝負は一瞬でついた。




いかがでしたか?
こいしちゃんぶち切れ。
次回、制裁。


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第十話「因果応報!」

 

 

 

「・・・なるほど。私達の完敗ですね。」

 

「にゃはは、あんな奥の手を隠し持ってたなんて知らなかったよ。」

 

「お姉ちゃん達もやっぱり強かったよ。もしお姉ちゃんとお燐の得意科目でやられてたら、一瞬でやられてたんじゃないかな?」

 

「お燐もあのシャーッてやる奴凄かったよね!私もやってみたい!」

 

「いや、召喚獣でやっても感覚は感じられないよ?」

 

「うちのクラスの観察処分者の吉井ならできるよ!」

 

「いや、お空が感じる訳じゃないでしょ・・・。」

 

「でもお姉ちゃん、心の眼を使ってなかったよね?」

 

「・・・まあ、これは私にしかできないからね。せっかくの戦いだから、正々堂々と戦いたかったのよ。」

 

「えへへ、お姉ちゃんだ~いすき!」

 

「ひゃっ!だから、いきなり抱きつくのはやめてっていつも・・・」

 

「だって、お姉ちゃんが大好きなんだもん。」

 

「と、とにかく、そういうことは人目があるところではやめなさい!」

 

「はーい・・・。」

 

しょぼーん・・・。

でも、確かに今はやらなきゃいけないことがあるよね。

 

「とにかく、戦後会談を始めるぞ。そっちの取り決め役は古明地姉か?」

 

「いえ、こっちが一応代表なのでそっちにさせます。ほら、とっとと起きなさい。」

 

「・・・わかったよ。」

 

お姉ちゃんが根本を起こす。

ムッツリーニ君に倒されてからずっと座り込んでたんだよね。

聞く体勢になったのを確認した坂本君が話し始める。

 

「さて、本来ならお前たちにちゃぶ台をプレゼントしてやるところだが、特別に免除してやらんこともない。」

 

うんうん。

ここで交換しようとしてたら、お姉ちゃんの椅子にすりすりした後坂本君に《ピー》しようとしてたからよかったよ。

 

「・・・条件はなんだ。」

 

「条件はお前だよ、Bクラス代表さん。」

 

「何・・・だと?」

 

「お前は色々なことをしてきたからな。ツケは払ってもらおう。条件はひと『ちょっと待って。』なんだ古明地?」

 

口を挟んだ私に反応してこちらを向いた坂本君に、私の案を耳打ちする。

 

「・・・なるほど、古明地もなかなかやるな。」

 

「坂本君にはかなわないよ。」

 

「さて、条件は二つだ。まずひとつめはAクラスに行って、試召戦争の準備ができていると伝えることだ。宣戦布告はせずに、あくまで戦争の意思と準備ができていると伝えるだけでな。」

 

「・・・それがひとつめか?」

 

まあ、これだけならさほど難しくないもんね。

でも、まだ続きがあるよ。

 

「・・・ただし、これを来てな。」

 

坂本君が取り出したのは女子の制服。

うん、ハードルがかなり上がるね!

 

「嫌だ、ふざけるな!俺がこんなの着るなんて嫌げふぅ!」

 

「黙らせました。」

 

「お、おう・・・。ありがとな・・・。」

 

騒ぎだした根本に対し、Bクラスの女子生徒が腹パンをかまして黙らせた。

坂本君もあまりの変わり身の早さにひいてる。

 

「任せて。Bクラス全員で責任をもってやらせるわ。」

 

「「「おう!」」」

 

これを見るだけで、彼がどれだけ人望がなかったかわかるよね。

試召戦争の時より団結してるんじゃないかな?

 

「そして、二つ目だが、お前には今からFクラスで異端審問会に出頭してもらう。」

 

「・・・は?」

 

「内容は行ってみてからのお楽しみだ。・・・ま、死ぬなよ。」

 

「ちょっ!?おい、坂本、待ってくげふぅ!」

 

「異端者を確保。直ちに審問会を開始するためにFクラスへ運べ。」

 

「「「はっ!」」」

 

会長の須川君が指示し、根本にふたたび腹パンした後、一糸乱れぬ動きで根本を運ぶ。

 

「とりあえずBクラスのみんなに行っておく。『~しばらくお待ちください~』だ。まあ、そんなに時間は取らせないから待っていてくれ。さてFクラスの奴は行くぞ。」

 

私も行こう~っと!

 

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

 

「さて、次は女装だな。」

 

「・・・気絶してますし、しょうがないので私が着せま『絶対にダメ!』・・・どうしましたか?」

 

お姉ちゃんがあんな汚いのにふれるなんてダメ!

 

「・・・なるほど。皆さん、私がこの男に触れてほしくはないということですか。」

 

「・・・私がやるからさとりちゃんは触らないでおいて。そんな可愛いのに、こんなんで穢れちゃったら勿体無いから!坂本君、制服をちょうだい。」

 

「あ・・・はい、どうも・・・。」

 

根本に知らない女子生徒が女子制服を着せていく。

 

「あ、そうそう、脱がせた男子用の制服は渡してくれ。逃げられないようにな。」

 

「わかったわ。はい。」

 

「とりあえず、せっかくだから可愛くしてあげてね。」

 

「無理ね。土台が腐っているから、いくら飾っても無駄よ。」

 

吉井君の言葉に辛辣な言葉が返されるけど、たしかにそうなりそうだよね。

あ、そうだ!

 

「とりあえず、私が根本君の制服は預かっておくよ。」

 

「「「こいしちゃんがそんなんに触れるなんてとんでもない!!!」」」

 

むー・・・。

みんなに反対されちゃったせいで渡してくれなかったけど、手紙はどうしようかな・・・?

まあ、こっそり行くかな。

みんなが根本君の方を見ている間に制服のポケットから取りだし、こっそりと抜け出して、姫路ちゃんのバッグに手紙を入れて戻る。

あれは、間違いなく吉井君へのラブレターだろうけど、成就するといいね!

私も応援してるよ!

 

「次はこのポーズをしろ。」

 

「はあ!?嫌だ、俺は絶対にしたくねえよ!」

 

「ならBクラスの多数決で決めよう。根本がこのポーズで写真をとられるのに賛成なひとー。ちなみにしなかったらちゃぶ台と座布団だぞー。」

 

「「「はーい。」」」

 

「ほら、お前以外全員賛成だ。やれ。」

 

わー、むごいなー。

まあ、とめないけどね。

 

 

 

 

ちなみに、この後写真撮影され、宣戦布告を女装で行った後、吉井君によって捨てられてた自分の制服を着て、軽く涙を流しながら帰ったみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラスとの戦いが終わった次の日に補充試験を終わらせ、さらに翌日、私達はついにAクラス戦の時間になっていた。

 

「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している。」

 

前に立って話をはじめる坂本君。

坂本君が感謝をあらわすなんて珍しいな~。

 

「雄二がそんなこと言うなんて珍しいね。らしくないよ?」

 

吉井君も感じたみたい。

 

「まあな。でも、これは俺の偽らざる気持ちだ。ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるんだ!」

 

「「「おーっ!」」」

 

「下克上、成し遂げようぜ!」

 

「皆ありがとう。そして、Aクラス戦だが、一騎討ちで勝負をつけようと思う。」

 

当然、ざわざわするみんな。

まあ、あの場にいなかったら初耳だもんね。

 

「今からきちんと説明する。やるのは当然、俺と翔子だ。」

 

翔子?

えーと、誰のことなのかな?

 

「古明地。翔子っていうのはAクラス代表の霧島のことだ。」

 

へ~、知らなかった。

正邪ちゃん、よく知ってたね。

でも坂本君、下の名前で呼ぶってことはもしかして特別な関係なのかな?

 

「なんで雄二なのさ?姫路さんや稗田さんならともかく、バカで不細工なゴリラな雄二が勝てるわけなああああっ!」

 

「次は耳だ。」

 

吉井君に対し、刃を出したカッターを躊躇なく投げつける坂本君。

ギリギリのところを通ったカッターは後ろの掲示板に突き刺さり、プルプルとふるえている。

吉井君もプルプルと震えている。

 

「まあ、明久の言う通り、まともにやったら勝ち目はないだろう。だが、それはBクラス戦もDクラス戦も同じだった。今回も同じだ。俺達はAクラスに勝ち、システムデスクは俺達のものになる。」

 

どうするつもりなのかな?

Aクラス代表ということは、(途中退席の阿求ちゃんを考えなければ)学年首席ということになるわけだからね。

 

「具体的な作戦としては、日本史で戦う。」

 

「ん?霧島さんって日本史苦手なの?」

 

私はそんな話を聞いたことはないけどな~。

 

「ただし、内容は限定する。レベルは小学生程度、方式は100点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負という感じだ。」

 

「えらくしぼるね?」

 

「それではどちらも満点で延長勝負になってしまうのではないですか?延長になればレベルも上がるでしょうし、厳しいのではないですょうか。」

 

「大丈夫だ。俺は、ある問題が出たらアイツは確実に間違えると知っている。」

 

「?その問題はなんなんだぜ?」

 

「大化の改新だ。」

 

大化の改新・・・ねえ。

それのなんなんだろう?

 

「大化の改新の年号を問う問題が出たら、俺達の勝ちだ。」

 

「でも、霧島さんがそんな簡単なのを間違えるのかな?」

 

私ももちろん覚えてるからね。

大化の改新は645年、簡単だね!

 

「まあな。こんな問題は霊路地や明久でも間違えないはずだ。」

 

「うん!645年だよね!」

 

「ああ。この通りだ。明久だってわかってるだろう。」

 

「お願い・・・・・・、僕を見ないで・・・・・・。」

 

えぇ・・・。

お空でもわかるのに、吉井君・・・。

・・・・・・・うん、聞かなかったことにしよう。

 

「だが、翔子は間違える。それで、俺達の勝ち。はれてこの教室からはおさらばって寸法だ。」

 

「あの、坂本君。その・・・霧島さんとは仲がいいんですか?」

 

「・・・まあ、翔子とは幼馴染みだ。」

 

なーんだ。

てっきりつきあってたりするのかなとか思っちゃったよ。

 

「総員、狙ええぇっ!」

 

すると突然、吉井君の号令で男子生徒全員が上履きを構える。

一昨日異端審問会というのは見たけど、やっぱりこのクラスはわかんないや。

 

「なっ!?なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」

 

「黙れ、男の敵!Aクラスの前にキサマを殺す!」

 

「俺が何をしたと!?」

 

「遺言はそれだけか?・・・待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むものだ。」

 

「了解です隊長。」

 

どうやら、美人の幼馴染みがいるという状況が羨ましかったのかな?

根本が粛清された理由もそんな感じだったし。

 

「あ、あの吉井君。吉井君は霧島さんみたいなタイプの女の子が好みなんですか?」

 

「へ?まあ、美人だし。」

 

「・・・・・・」

 

「待って姫路さん!姫路さんはどうして僕に対して上靴を構えているの!?それに美波、教卓は決して僕に投げ当てるものじゃないよ!」

 

まあ、それはなんというか・・・ね。

セリフの選択が間違ってるとしか言えないんじゃないかな。

 

「じ、じゃあアキはウチのこと、どう思ってるの?」

 

「ペッタンコ」

 

「アキのバカあああっ!」

 

「ぎゃあああああっ!」

 

吉井君は教卓の下敷きになっちゃった。

でも、まあ、今のは吉井君の発言が無神経過ぎるのが原因だもんね。

やり過ぎな気はするけど、あんま同情の余地はないかな。

 

「というかお前ら一旦落ち着くべきだぜ!話が進まない!」

 

あ、魔理沙がとめた。

 

「というか、相手はあの霧島翔子じゃぞ。男なんかに興味があるとは思えんじゃろ。」

 

「そういえば、一年生の時、誰が告白しても全員玉砕してたもんね。」

 

あら、吉井君ピンピンしてる。

でも、吉井君と木下君の発言で場は落ち着いたみたいだしよかった。

阿求ちゃんが一人だけ気まずそうな顔をしてるのが少し気になるけど、まあいいか。

 

「とにかく、俺と翔子は幼なじみで、小さなころに間違って嘘を教えていたんだ。そして、アイツは一度覚えたことは忘れない。だから稗田が途中退席をした今、学年トップの座にいる。」

 

なるほどね~。

阿求ちゃんと同じく瞬間記憶能力があるのかな?

点数は阿求ちゃんの方が高いんだけど、そのへんは家の差とかなんだろうね。

阿求ちゃんの日本史と古文はものすごいし。

 

「俺はそれを利用して勝つ。そしたら俺達の設備は・・・」

 

「「「システムデスクだ!」」」

 

クラス全員の声がそろう。

・・・でも、この作戦うまくいくのかな?

なんか、私はうまくいかないような気がするんだよね~。

 

「よしじゃあ明久、宣戦布告にGOだ。」

 

「嫌だよ!なんで僕にばっかりその役目を押しつけようとするのさ!」

 

「安心しろ、冗談だ。今回は交渉があるからな。俺が行く。古明地、正邪、稗田、霧雨、姫路、明久、秀吉、ムッツリーニはついてきてくれ。」

 

みんなでAクラスにGO!だね!




いかがでしたか?
あとがきに書くことがねえ…。


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第十一話「宣戦布告!」

 

 

 

みんなで宣戦布告行くことになったけど、そういえばAクラスに誰がいるか、私は知らないんだよね~。

 

「さて、ついたな。行くぞ。」

 

坂本君がAクラスの扉を開け放つ。

 

「・・・あら?阿求、どうしたの?それにいっしょにいる人達は?」

 

こちらを見て、質問してくる女子生徒。

阿求ちゃんの知り合いなのかな?

 

「あっ、小鈴じゃない!ひさしぶり!」

 

「ひさしぶり!体は大丈夫?」

 

「うん、今は大丈夫よ。小鈴の方はどうなの?」

 

「うーん、なんというかこのクラス、豪華すぎて落ち着かないんだよね・・・。私はほら、ほどほどに狭い場所でたくさんの本に囲まれてるのが好きだしね。」

 

「まあ、小鈴らしいよね。」

 

うん、仲がいいみたいだね。

二人とも笑顔で楽しそうだもん。

 

「・・・んー?なにこの騒がしいのは・・・ああ、魔理沙じゃない。何してんの?」

 

「よう霊夢!今日はちょっと用事があるんだぜ?」

 

「まあよくわかんないけど、とりあえず私は寝るわ・・・。おやすみ・・・。」

 

「いやいやお姉ちゃん、せっかく魔理沙さんが来てるんだから起きようよ?」

 

「ん・・・早苗、相手よろしく・・・。」

 

「まあまあ、霊夢は頑固だから、言っても多分無駄だぜ?」

 

「むー、でもー。」

 

「それはお前が一番見てきて知ってるだろ?」

 

「まあ、そうなんですけど・・・。」

 

「とりあえずあっちにこいしもいるぞ。」

 

「やっほー、早苗ちゃ~ん!」

 

「あ、こいしちゃんじゃん!ひさしぶりだねー!」

 

「・・・おいお前ら、話の邪魔をしてすまないが、とりあえずあとでにしてくれないか。」

 

その言葉で、私も阿求ちゃんも魔理沙も気づく。

確かに、ここには宣戦布告に来たんだよね。

それに、木下君・・・じゃなかった木下さんが用件を聞いてきたし。

 

「で、Fクラスがなんの用かしら?・・・ま、だいたいわかってるけどね。どうせ宣戦布告でしょ?」

 

「いや?今日は交渉をしに来た。」

 

「交渉?一応聞かせてもらおうじゃないの。」

 

木下さんと、早苗ちゃんに小鈴ちゃんが並ぶ。

霊夢さんは寝てた。

にへらっとした表情浮かべてるけど、なにか美味しいものでも食べた夢みてたのかな?

 

「こちらの望みは、試召戦争ではなく、一騎討ちで勝負をつけることだ。」

 

「・・・何が狙いなのかしら?」

 

「もちろん、Fクラスの勝利だ。」

 

「へえ、ずいぶん大きく出たものね。うちの代表一人なら勝てると言いたいわけ?」

 

「さあな。それはやってみてのお楽しみだ。」

 

「結果はわかってるでしょうけどね。当然、Aクラスの負けはないわ。」

 

「だったら受けてもいいんじゃないか?そうすれば面倒な試召戦争を楽にできるわけだ。」

 

「「・・・・・・」」

 

互いに一歩も引こうとしないね。

 

「でも、こちらがわざわざ提案に乗る理由は無いんじゃないですか?変に楽しようとして負けるより、多少手間でも確実に勝てるほうがいいと思いますよ?・・・お姉ちゃんなら逆のこと言いそうですけど。」

 

「・・・確かに早苗の言う通りね。残念だけど、その提案は断らせてもらうわ。」

 

「ま、賢明だな。」

 

でも、交渉はここからが本番なんだよね。

 

「ところで、Cクラスとの試召戦争はどうなったんだ?」

 

「あ、それは問題なく勝ちましたよ!」

 

「そうか。それは良かったな。で、そのあとにBクラスとやりあってみる気はないか?」

 

「・・・もしかして、Bクラスって、おととい来てたあの・・・。」

 

「そう、アレがひきいるクラスだ。」

 

「あはは、私はああいうクラスと戦争はしたくないですね・・・。」

 

早苗ちゃんが苦笑いする。

だよね・・・。

私だって嫌だもん。

お姉ちゃんとお燐があのくくりにされるのは嫌だけど。

 

「でも、BクラスとFクラスの戦争はFクラスの勝利で終わったから、3ヶ月は試召戦争が出来ないんじゃないですか?」

 

「小鈴、あの戦争は対外的には、『和平交渉にて終結』というかたちになってるわ。」

 

「稗田の言う通りだ。だから、ルール上は何も問題ないわけだ。そしてDクラスもな。」

 

なんというか、交渉に乗らなければBクラスとDクラスをけしかけると脅す坂本君って、悪役だよね・・・。

 

「・・・うまいですね。私達が乗らなければBクラスとDクラスをけしかける・・・と。」

 

「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ?これはただのお願いだぞ?」

 

「ふん、よく言うわよ・・・。」

 

「それなら・・・姫路さ・・・阿求・・・」

 

「2人以外・・・いや、魔理沙・・・」

 

木下さん、小鈴さん、早苗ちゃんの3人がひそひそと話し合ってる。

 

「決めたわ。こちらの条件をのむなら、その条件、のんでもいいわ。でも、のまないのなら決裂よ。」

 

「・・・聞かせてもらおうか。」

 

「一騎討ちのことだけど、代表とは別に、6回一騎討ちをしてもらうわ。そして、代表をいれた7回のうち、4回勝った方が勝者というものよ。」

 

うーん、これは別にこちらがそこまで不利な条件じゃないはずだし、私は受けるべきだと思うかな?

姫路ちゃんや阿求ちゃん以外にも、ムッツリーニ君の保健体育、お空の化学、魔理沙の数学と、科目を絞ればAクラスに対抗できる人達いるもんね。

 

「なるほどな。こっちから姫路や稗田が出ることを警戒してか。」

 

「まあね。特に稗田さんは本来なら学年首席だっただろうしね。」

 

「安心してくれ、こちらからは俺が出る。」

 

「たとえそれが真実だとしても、信じるのは難しいわね。」

 

まあそうだよね。

一応ほんとだけど。

 

「・・・わかった、その条件をのもう。ただし、勝負科目はこちらで決めさせてもらう。それくらいのハンデはあってもいいはずだ。」

 

坂本君はさらにもう一手。

日本史勝負もあるし、一科目特化の人達(特にムッツリーニ君とお空)は活躍できないもんね。

 

「んー、それはちょっと厳しいんじゃないですか?わざわざFクラスにハンデを与える理由はありませんよ?」

 

「・・・受けてもいい。」

 

「わわっ!」

 

吉井君、びっくりするからそんな声を急に出さないでほしいな。

今出てきたのは黒髪の美しい女性でAクラスの代表の霧島さんだね。

 

「・・・雄二の提案、受けてもいい。」

 

「いいんですか?こちらが受けるメリットは無いですよ?」

 

「・・・いい。そのかわり、条件がある。」

 

「ほう、条件とはなんだ?」

 

「・・・負けたほうが、なんでも言うことを聞く。」

 

 

ダバダバダバ(ムッツリーニ君と吉井君が鼻血を出す音)

 

ブスブスッ(美波ちゃんと魔理沙が目潰しした音)

 

ジタバタジタバタ(目潰しされた2人が悶える音)

 

 

「「目があっ、目があっ!!」」

 

「でも、あちらに科目選択権を与えるのはまずくないですか?こちらが不利になりますよ。」

 

「それなら4つだけ相手に決めさせてあげるのはどうかな?それならそこまで不利にはならないよ。」

 

「確かに、それはいいかもね。坂本代表、それでいいかしら?」

 

「・・・まあ、いいだろう。」

 

「これで交渉成立ですね。いつからやりますか?」

 

「十時からでいいか?」

 

「・・・構わない。でも雄二。」

 

「あ?なんだ?」

 

「・・・絶対、負けないから。」

 

霧島ちゃんが坂本君の目を見て言う。

おー、なんかいいね~。

 

「抜かせ。勝つのは俺達だ。」

 

幼馴染みだからある距離感っていいよね。

 

「よしじゃあお前ら、一旦教室に戻るぞ。」

 

「7人って、メンバーは誰にするんだ?」

 

「それは一応考えてはある。あとで発表するつもりだ。」

 

「ほう、そいつは気になるな。」

 

私も楽しみだよ~。

私はでるのかな?

一応、地学ならAクラスに対抗できなくはないかもしれないけどね。

綺麗な石ころ集めるのが好きだったから、自然と頭に入ってるんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして十時。

 

「では、両クラス、準備はいいですか?」

 

「ああ。」

 

「・・・問題ない。」

 

よーし、今から始まるよー!

 

「ではただいまより、Aクラス対Fクラスの勝負を開始します。早速ひとりめは出てください。」

 

「じゃ、みんな、行ってくるね~!」

 

「「「こいしちゃん!頑張ってー!」」」

 

トップバッターは私。

よーし、頑張ってくるよー!

 

「なるほどね。ここは私、比那名居天子が行かせてもらうわ。」

 

相手は青色の長めの髪が美しい人だね。

天子さんっていうのか~。

桃つきの帽子をかぶってるけど、好きなのかな?

でも、なんで室内で帽子?

 

「よかった、ウチ以外にもあれだけ平らな子がいたのね・・・。」

 

なんか後ろで美波ちゃんが安心したような声をもらしてる。

どうしたのかな?

 

「そこ!私のこと平らとかまな板とか洗濯板とか言うんじゃないわよ!」

 

「ではお二人とも。勝負科目を決めてください。」

 

「それなら地学で行くわ!」

 

「!」

 

やった!

私の一番の得意科目だ!

相手が選んでくれるなんてラッキーだな!

 

「やった~、私の一番得意な科目なんだ!今回は結構とれたんだよ!サモン!」

 

私の召喚獣が出てくる。

地学は今回いつもより取れたからよかったな~!

 

『Fクラス 古明地こいし 地学 411点』

 

「・・・へえ、なかなかやるじゃない。Fクラスなのに腕輪つきってすごいわね。サモン!でも・・・」

 

天子さんが召喚獣を呼び出す。

でも、今回はだいぶ取れたし対抗できるくらいには・・・

 

『Aクラス 比那名居天子 地学 615点』

 

「私に比べたらまだまだね。」

 

「「「なにいっ!?」」」

 

ならなかったかな・・・。

みんなも驚いてるけど、私も驚いてるよ。

でも、やれるだけ頑張る!

さいわい、腕輪もあるし!

相手の召喚獣は剣だね。

 

「点数は負けてるけど、負けないよ!」

 

こうなったら、私の腕輪の能力で決める!

私の腕輪は、点数消費は多いけど10秒ほど透明になれる効果があるから、それで攻撃を受ける前にたおしちゃう!

 

「「「なっ、消えた!?」」」

 

天子さんも見失ったみたいできょろきょろしてる。

もといた位置から適当に動き、攻撃軌道を読まれないようにしてから攻撃だ!

 

「くっ・・・!」

 

『Fクラス 古明地こいし 地学 259点 VS Aクラス 比那名居天子 地学 417点』

 

私の攻撃で、相手の召喚獣の点数がそこそこ減る。

急所を狙った攻撃だったけど、直前で感じたのか、剣でわずかに軌道をそらされちゃったけど、このままなら行けるかな!

 

「・・・残念ね。」

 

「?どうしたの?」

 

「あんたの召喚獣の能力はだいたい理解したわ。地震『先憂後楽の剣』!」

 

天子さんがその言葉とともに、剣を床に突き刺す。

実際に揺れたわけじゃないけど、剣が刺さった場所から地震のような衝撃派が広がっていった。

 

『Fクラス 古明地こいし 地学 0点 VS Aクラス 比那名居天子 地学 217点』

 

「・・・勝負あったわね。」

 

一瞬後、そこにはドヤ顔の天子さんと、姿をあらわして倒れてる私の召喚獣がいた。

・・・あら、負けちゃったか。

 

「では、まずはAクラスが一勝ですね。」

 

高橋先生が結果をうちこむ。

トップバッターとして勝ちたかったなあ。

 

「すごいね~、私の場所がわかったのか~。」

 

「いや、場所はわかってないわよ。私の召喚獣が最初に攻撃された時、私の剣がたまたまかすったのか点数がわずかに減ってたじゃない?だから、無敵ではないと判断して地震という周囲攻撃で撃退しただけ。ふふん、そんなとこを見抜くなんて、さすが私ね!」

 

ナルシストさんなのかな?

でも、確かにその観察眼は凄いよね。

 

「まあ、地震は発動時に1センチでもジャンプしてると当たらないんだけどね。攻撃タイミングを予想して、回避できないタイミングを推定して地震をかましてみたわ。それに・・・」

 

「天子さーん、とりあえずあとでにしてもらってもいいですかー?」

 

「わわっ、早苗!ちょっ、引っ張らないでよー!」

 

なおも話し続けようとする天子さんが早苗ちゃんにひっぱられてく。

 

「・・・みんな、ごめんね。いきなり負けちゃった。」

 

「気にしなくていいぜ。まだあるんだからな!」

 

「魔理沙の言う通りだよ!まだまだあるんだから、そんなに気にしないで!」

 

「・・・でも。」

 

「それに、地学であんな点数取れる奴なんてうちのクラスにはいないからな。古明地が負けたことを気にする必要はない。」

 

「そうだよこいしちゃん。私だったら多分3秒でやられてたよ?」

 

「選択権もつかってないしな。」

 

「・・・ただ、二連続で負けたらさすがに士気に支障が出るな。ここはムッツリーニを次に出すか。」

 

「・・・わかった。」

 

次はムッツリーニ君みたいだね。

私は負けちゃったけど、しっかり勝てるように応援してこう!

 

 




いかがでしたか?
東方キャラが基本一点特化なこともあり、インフレがすごいことに。


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第十二話「Aクラス戦前半!」

 

 

 

「さて、次の人達は前に出てきてください。」

 

高橋先生が言う。

 

「・・・(スック)」

 

予定通り、ムッツリーニ君が立ち上がる。

頑張ってね~。

 

「じゃあ、ボクが行くよ!」

 

そう言って出てきたのは緑の髪をした男の子・・・いや、女の子だね。

ボーイッシュな雰囲気で、一人称がボクだったから、一瞬勘違いしちゃったよ。

・・・でも、冷静に考えてみたら、女子の制服着てるから一発でわかるはずだったんだけどね。

木下君みたいな人もいるけど。

 

「ボクは工藤愛子だよ。一年の終わりに転入してきたんだ、よろしくね。」

 

「科目はなににしますか?」

 

「・・・保健体育で。」

 

「土屋君だっけ?ずいぶんと保健体育が得意なんだよね?でも、ボクだって得意なんだよ。キミと違って、実技でね。」

 

ブシャアアアッ!

工藤さんの言葉を聞いたムッツリーニ君の鼻から、紅い液体が大量に噴射する。

なんか、変なこと考えたのがまるわかりだな・・・。

 

「あー、なんかこの教室暑いなー。」

 

吉井君もだったみたいだね。

顔が赤くなってる。

 

「そこのキミは吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育で良ければボクが教えてあげよっか?もちろん、実技でね。」

 

ブシャアアアッ!

吉井君とあとムッツリーニ君からふたたび紅い液体が出てくる。

絨毯、ひどいことになってそうだな・・・。

 

「ア、アキにはまだそんな実技なんて早いわよ!」

 

「そ、そうですっ!吉井君には永久に必要ありませんっ!」

 

あの、美波ちゃん、姫路ちゃん、吉井君の方をちょっと見て?

彼、ものっすごい悲しそうな顔をしてるよ?

 

「おいムッツリーニ、大丈夫か?」

 

「・・・これしき、何も感じない。(ダバダバ)」

 

鼻血出しながら言っても、全く説得力ないよね・・・。

 

「・・・大丈夫だ。問題ない。」

 

「で、では二人とも、召喚獣を出してください。」

 

「よーし、サモン!」

 

「・・・サモン。」

 

二人の召喚獣が出てくる。

工藤さんの召喚獣は・・・また強そうだね。

すっごく大きな斧持ってる。

 

「じゃあ、早速決めさせてもらうよ!」

 

さらに、工藤さんの斧にバチバチと電気が流れ出しちゃった。

なんというか、あれくらったら即死だよね・・・。

 

「それじゃ、バイバイ!」

 

工藤さんが斧を構え、突進するあたりで、ようやく点数が表示された。

 

『Aクラス 工藤愛子 保健体育 482点 VS Fクラス 土屋康太 保健体育 574点』

 

「・・・加速。」

 

「えっ?」

 

工藤さんの斧がムッツリーニ君に吸い込まれるようにヒットする直前、ムッツリーニ君の召喚獣の姿が一瞬にして消える。

 

「・・・・・・加速、終了。」

 

次にムッツリーニ君の召喚獣を視認した時は、工藤さんの召喚獣のうしろにいた。

そして、前に倒れる工藤さんの召喚獣には攻撃のあと。

 

「そ、そんな・・・。このボクが負けるなんて・・・。」

 

「・・・あまり理論派をなめるな。」

 

な、なんかかっこいいかも。

 

「これで1対1ですね。次は誰がやりますか?」

 

「よしじゃあ稗田、頼む。」

 

「え、私ですか?構いませんけど。」

 

おっ、阿求ちゃんの出番みたいだね!

学年トップの成績だし、ここは勝てるよね!

 

「じゃあ、私が出ます。よろしくね。阿求。」

 

「小鈴、自信があるの?」

 

「もちろん、やるからには全力でやるよ。科目は古文でお願いします。」

 

「小鈴、あんた・・・!」

 

「もちろん、知ってるわよ。これが阿求の得意科目なこと。でも知ってるでしょ?私も、古文は得意なこと。頑張ったんだから。サモン!」

 

それで小鈴ちゃんの召喚獣が出てくる。

点数は・・・・・・えっ?

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 983点』

 

「「「き、きゅうひゃくはちじゅうさんてん!!?」」」

 

Fクラスだけじゃなく、Aクラスの人達も驚いてる。

そりゃ、これだけとれるなんて聞いたことないもん。

高得点の目安としての腕輪が400点だから、これが異常な点数なのはよくわかるよね。

先生でもそんなに取れないんじゃないかな?

 

「確かに、小鈴は頑張ったんだね。でもね、サモン。」

 

小鈴ちゃんの圧倒的な召喚獣に対しても一歩も怯まない阿求ちゃん。

阿求ちゃんとは仲がいいから怯まない理由は知ってるけど、みんなはざわざわしてる。

 

『Fクラス 稗田阿求 古文 

・・・・・・1147点』

 

「「「はああああっ!?四桁台だとおおぉっ!!?」」」

 

「ぐぬぬ、わかってたけどやっぱりきついな・・・。」

 

「でも、家にある古典読んで全部覚えてる私より、初見ですらすら読んでいける小鈴の方が、私は凄いと思うよ?」

 

「いや、今まで読んだ全ての文覚えてるあんたの方がすごいでしょ。」

 

(((どっちも化け物だよ・・・。)))

 

この場の人達の心の声が一致した瞬間だった。

阿求ちゃんの家は奈良時代からの歴史があって、学校で出てくるような古典は家に全部あるんだよね。

日本史も同じように、まるで見てきたように知ってるから同じくらい取れるから凄いよね。

 

「まあ、おしゃべりはこのくらいにしましょ。」

 

「確かにそうね。戦いましょ。」

 

二人の召喚獣がぶつかりあう。

二人とも恐ろしい点数だから、動きを目で追うのも大変だよ。

どうにか追っていると・・・ん?

 

「おい、私の見間違いじゃなければ、相手が増えてないか?」

 

「私も見えるよ魔理沙。なんか妖怪っぽい・・・・・・というか狸の尻尾が生えた小鈴さんの召喚君が3匹見えるね。」

 

「うーん、1対4の状況に強いのはどの武器かな・・・?」

 

「というか、あの4匹、全部あいつが操ってるのか?」

 

「さあ?でも、すごい動きだよね。」

 

阿求ちゃんが1体に攻撃をしようとすると残りの3体が攻撃をしかけ、1体に攻撃しようとする、防御しづらいタイミングで攻めるというような絶妙なコンビネーションを見せてる。

どの狸に銃を撃っても持ってる剣で銃弾をはじかれてしまってる。

だから、一見阿求ちゃんが不利。

 

「腕輪も使用できるから、ここは範囲攻撃・・・?でも範囲と威力が高かったのは・・・」

 

でも、点数で勝ってる阿求ちゃんはその攻撃をほとんどかわしてる。

狸1が頭に降り下ろした剣をバックステップでかわし、狸2が着地の瞬間を狙って放った足払いを蹴りで迎撃し、動きが止まった瞬間に狸3が投げつけてきた剣を首をずらして回避し、その剣をキャッチし、降り下ろした本体の攻撃を銃身で受け止め、狸2に当たるように反らさせる。

私だったら無理だな・・・。

 

「・・・うん、このタイミングでこれがいいね。チェンジ、霊路地空!」

 

阿求ちゃんがしばらく回避に徹したあと、突然お空の名前を言う。

すると、阿求ちゃんの召喚獣から両手銃が消滅し、かわりに右腕に、お空の召喚獣と同じような武器が装填される。

そして、caution!というメッセージ。

 

「マズイ、後退しないと!」

 

本体と尻尾つきを後ろに跳躍させ、距離をとろうとする小鈴さん。

直感で危険を悟ったみたいだ。

 

「残念、少し遅いよ!」

 

その瞬間、お空が腕輪を使ったときと同じように、阿求ちゃんの召喚獣が大爆発する。

お空のよりも大きく、速い爆風。

 

「・・・残っちゃったか。」

 

爆風がはれた時、そこには狸召喚獣が1匹、そして本体の本居さんの召喚獣がいた。

 

「なかなか痛い爆風だったわ・・・。2人犠牲にしなきゃ、4人ともやられてたわね・・・。」

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 311点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 477点』

 

点数が更新される。

いまので、どっちもだいぶ減ってるけどまだまだ高いね。

 

「チェンジ、虎丸星!」

 

「今度はレーザー!?」

 

距離を行かすためか、今度は虎丸さんの宝塔を手にし、軌道が読みづらいレーザーを連発して相手を近づけないようにする阿求ちゃん。

自由自在・・・とまではいかなくても、射線が読みづらいレーザーにはばまれ、本居さんは近づけない。

 

「くっ、しょうがない!だったら!」

 

でも、本居さんはかわしきれないレーザーは剣で斬りつつ、無理矢理近づいてきた。

 

「なら、これでとどめよ!」

 

「狸ちゃん、お願いっ!」

 

「えっ、自分の召喚獣を盾に!?」

 

阿求ちゃんが放った必殺のレーザーの一撃は、小鈴さんの狸にはばまれ、本人まで届かない。

狸が消滅した時、目の前には攻撃を放った本居さんの召喚獣。

 

「くっ、チェンジ、工藤愛子!」

 

でも、阿求ちゃんはさっきの工藤さんの武器に変えて、それをなんとか防いだ。

斧と剣によるつばぜり合い。

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 175点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 241点』

 

でも、阿求ちゃんの方がまだ点数が高いから、なんとか押し返せてる!

 

「ぐっ・・・きゃあっ!」

 

そのままなんとか押し返し、本居さんの剣を弾き返す阿求ちゃん。

でも、あまり崩れてないから、斧じゃ多分間に合わない!

 

「チェンジ、坂本雄二。」

 

でも、阿求ちゃんは坂本君のメリケンサックに切り替え、本居さんの召喚獣の胸にパンチする。

体勢をたてなおす前に決まった一撃。

その一撃で召喚獣が吹き飛び、床に叩きつけられる。

 

『Aクラス 本居小鈴 古文 0点 VS Fクラス 稗田阿求 古文 191点』

 

それで決着がついたみたいだね。

なんというか、ものすごいハイレベルな戦いだったな。

 

「これで1対2ですね。」

 

「あーあ、やっぱり負けちゃったか。頑張ったんだけどなー。」

 

「でも、点数差がなかったら、私が負けてたんじゃないかな。あの狸達、小鈴が全部操ってたの?」

 

「ううん、あの狸ちゃん達には簡単な指示しか出してないよ。あの武器コロコロ変えるのはやっぱ阿求の腕輪だよね?」

 

「うん、今まで見てきた召喚獣の武器と腕輪を使えるの。決して見たものを忘れない私にはピッタリだよね。」

 

「でも、使うの初めてだったんでしょ?」

 

「まあ、そうなんだけどね。それはお互い様、でしょ?」

 

「・・・まあね。でも楽しかったよ。」

 

握手をかわす2人。

いいね~。

 

「では、次の人達は前に出てきてください。」

 

さて、次は4戦目だね!

ここまでは2勝1敗、次でリーチかけられるといいな。

 

 

 




いかがでしたか?
あっきゅんと小鈴ちゃんのバトルはもはや異次元。
ちなみに明久のものとは違い、本当に簡単な指示しかできません。


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第十三話「Aクラス戦後半!」

 

 

「よし、じゃあ次は霧雨頼む。」

 

「おう!任せてほしいのだぜ!」

 

「・・・あー、じゃあAクラスからは私が出るわ。」

 

「おう霊夢!やっぱお前が出てきたか!先生、科目は数学で頼むぜ!」

 

「はい、了解しました。」

 

魔理沙の得意科目だか

らね。

次の相手は霊夢さんか~。

 

「頑張ってね、魔理沙~。」

 

「任せてほしいのだぜ!」

 

「あ、そうだ魔理沙、せっかくだからこの勝負で賭けをしない?」

 

「ん?賭け?」

 

「この勝負で私が勝ったら魔理沙は私に昼食2回おごり、私が負けたら私が魔理沙に昼食を1回おごられる、これでどうかしら?」

 

「ちょっと待て!それだと私が勝っても負けても奢ることになるじゃないか!私が勝った時のメリットが一切ないぜ!」

 

「あるじゃない。あんたが勝てば、おごりは1回で済むのよ?」

 

「奢ることを前提に話をしないでくれ霊夢!」

 

「やっぱり、お姉ちゃんは常識にとらわれてないなぁ・・・。」

 

早苗ちゃんが呟く。

私もそう思うよ・・・。

 

「まあ、冗談よ。普通に私が負けたら奢るわよ。そのかわり、私が勝ったら奢りなさい。」

 

「まあ、構わないが・・・、でもお前、金あるのか?」

 

「今月はあと40円ね。大丈夫、1日2円で過ごせば問題ないわ。」

 

「相変わらずだなお前!昭和か!」

 

霊夢さん、人間は1日2円で生活するのは現代では不可能なんだよ・・・。

まあ、霊夢さんカエルでも雑草でも食べるからね。

月末、この近くの海や山いくと、食べられるもの探してる霊夢さんの姿があるから・・・。

 

「でもどうせ私が勝つから問題ないわ。食べ物がかかってる時の私は本気だからね。最悪、早苗に押しつけるわ。」

 

「おいおいお前、姉としてそれはどうなんだよ・・・。」

 

「あの、博麗さん、霧雨さん、とりあえずはじめてもらってもいいですか?」

 

「おっと、そうだったな。サモンだぜ!」

 

「ひさしぶりのまともなごはんのために・・・サモン。」

 

高橋先生に言われ、会話を中断した魔理沙と霊夢さんが召喚獣を呼び出す。

えーと、どうかな?

 

『Fクラス 霧雨魔理沙 数学 433点 VS Aクラス 博麗霊夢 数学 449点』

 

うーん、霊夢さんの方が高いけど、これくらいならまあいけるかな?

というか、霊夢さんはやっぱり赤を基調とした巫女装束なんだね。

手の武器はお祓い棒だし。

まあ、早苗ちゃんもそうだけど神社の神主の家系みたいだし。

母親が違うから、早苗ちゃんと霊夢さんは名字が違うけど。

 

「それじゃあ霊夢、弾幕ごっこと行こうぜ!」

 

「いや、私の召喚獣は弾幕撃てるかわからないんだけど・・・。でも、負けないわよ。」

 

「どっちも腕輪を持ってるけど、この勝負、どうなるかな?」

 

「魔理沙の召喚獣はレーザータイプ、あいつの召喚獣は近接タイプに見えるから、一見魔理沙が有利に見えるんだが、なんか嫌な予感がするんだよな・・・。」

 

「・・・なるほどね。私の召喚獣の特徴、だいたいつかんだわ。」

 

「行くぜ霊夢!」

 

魔理沙が霊夢さんの召喚獣に対してレーザーを乱射する。

霊夢さんはそれをかわすのと、召喚獣の動きに慣れるためか、攻撃も接近もせずに、横に走って回避している。

でも、完全には回避しきれないのか、時々かすり、そのたびに点数をわずかに減らしている霊夢さんの召喚獣。

 

「どうした霊夢?逃げてばっかじゃ勝てないぜ?」

 

「・・・まあ、そうでしょうね。逃げてばっかじゃ勝てない、アンタの言う通りだわ。」

 

「なっ!?いきなりだと!?」

 

でも、霊夢さんはいきなり魔理沙の召喚獣の方に走り出す。

魔理沙もレーザーを放つが全く当たらない。

霊夢さん反射神経もいいからね。

 

「くっ、こうなったら、召喚獣はパワーだぜ!マスタースパーク!」

 

直線で細いレーザーだと放っても回避されるだけだと判断したのか、魔理沙は強力で太いレーザーを放つ。

魔理沙はあれにマスタースパークって名前をつけてるみたいだけど、腕輪の能力だし、特別感はあるよね。

ほぼゼロ距離で、光速で放たれる太いレーザー。

さすがの霊夢さんでも、これはかわしようがないかな・・・。

わかってはいても、動きのスピードの関係で、回避不能な一撃。

 

「・・・ま、予想通りね。二重大結界!」

 

「結界!?」

 

「・・・後ろよ。」

 

霊夢さんの言葉とともに、霊夢さんの召喚獣を結界が包む。

そして、魔理沙のマスタースパークが霊夢さんの目の前で消滅し、魔理沙の真後ろからあらわれる。

なすすべもなく貫かれる魔理沙の召喚獣。

自身が放った技で点数を失い、魔理沙の召喚獣は倒れた。

 

「なん・・・で・・・。」

 

『Fクラス 霧雨魔理沙 数学 0点 VS Aクラス 博麗霊夢 数学 197点』

 

「さて、2勝2敗ですね。」

 

冷静に結果を告げる高橋先生。

ここで勝てればリーチだったんだけど、仕方ないよね。

 

「これで奢り確定ね。ここの冷蔵庫の中のお菓子以外でまともなものを食べるのはひさしぶりだわ~♪」

 

「・・・まあ、私もいいと言ったし、約束は守るが・・・。でもさっきの結界はなんだったんだ?」

 

「ああ、あれ?教えないわよ。また魔理沙からおごってもらう時・・・もとい、再戦の時に不利になるじゃないの。」

 

「むー、ケチ臭いぜ。」

 

「夜も奢ってくれるなら教えてもいいわよ。」

 

「・・・いや、さすがにそれは嫌だぜ。」

 

霊夢さん、食べ物とお金のことになると目の色変えるからね。

タダ飯の機会は決して逃さないし・・・。

 

「あの、博麗さんと霧雨さん、次の試合があるので降りてもらってもいいですか?」

 

高橋先生の言葉で降りる二人。

 

「じゃあ、次は私だね!」

 

「うん、お空、頑張ってきてね。」

 

「私にまかしといてよ!」

 

「さて、お姉ちゃんも勝ったし、私も頑張らないと・・・!」

 

「あなたが私の相手?負けないぞー!」

 

「ええ、よろしくお願いしますね。」

 

「早苗、負けたら承知しないわよー!」

 

「大丈夫ですよ天子さん。しっかり勝ってきますから。お姉ちゃんも見ててね!」

 

「zzz・・・天丼雲丹丼カツ丼うな丼親子丼・・・魔理沙の奢り・・・にへへ~。」

 

「・・・・・・(´・ω・`)」

 

「・・・・・・早苗、ドンマイ、よ。私が見ててあげるから・・・。」

 

しょぼんとする早苗ちゃんが可哀想に思ったのか、慰める比名那居さん。

 

「・・・あの、科目はどうしますか?」

 

「うーん、じゃあ物理で!」

 

「わかりました。」

 

「じゃあ、いくよ!サモン!」

 

『Fクラス 霊路地空 物理 407点』

 

「なるほど、あなたもかなりの高得点なんですね。やっぱり物理、好きなんですか?」

 

「うん!大好きだよ!」

 

「物理、いいですよね。私も大好きなんですよ。サモン!」

 

『Aクラス 東風谷早苗 物理 486点』

 

うーん、ここでもAクラスの方が上か・・・。

 

「たしか、霊路地さんはレーザーを放っていましたよね。それなら私はこうします!準備『神風を呼ぶ星の儀式』!」

 

早苗ちゃんがなにかを唱えるようにすると、地面から緑色の魔法陣みたいなものが出てくる。

 

「わっ!なにっ?・・・あれ?」

 

それをお空が踏んじゃったけど・・・、特に何も変わりはない・・・かな?

 

「じゃあ、行きますよ!」

 

「わわっ、えいっ!」

 

早苗ちゃんの召喚獣がいきなり距離をつめ、肉弾戦を仕掛けてくる。

一応、お空の砲台もわりと強度があるから、剣かわりにも使えなくはないんだけど、相手は点数が高いからちょっと不利だね。

 

「むー、あなた、近接は苦手だと思ったんですが、なかなかやりますね・・・。」

 

「けっこう、ギリギリ、だよ!」

 

早苗ちゃんの武器はないけど、武器もなにもない素手で普通にやりあってる。

坂本君ののようにメリケンサックがあるわけじゃないのに。

リーチはお空のほうがあるけど、火力とスピードは早苗ちゃんのほうが高いね。

どちらも決定的な有効打を与えられず、さっきの魔法陣の上で格闘してる。

 

「よし、今です!これで終わらせますよ!『神の風』!」

 

でも、早苗ちゃんが唱えたことで、魔法陣から緑色の竜巻が発生し、お空の召喚獣が空にうちあげられる。

そして、下で待っているのは早苗ちゃんの召喚獣。

 

「これで、とどめです!八坂スマッシュ!」

 

お空はレーザーを放とうとするも、瞬間移動かと見間違えるような速度でジャンプした早苗ちゃんの召喚獣に隣接され、パンチされる。

そして、そのまま地面に叩きつけられたお空の召喚獣は戦闘不能となった。

 

『Fクラス 霊路地空 物理 0点 VS Aクラス 東風谷早苗 物理 323点』

 

「よし、勝ちました!天子さん、見てましたよね!?」

 

「え、ええ、見てたわよ。べ、別に格好いいなとかやっぱ早苗はやってくれて嬉しいなとか思ってみとれてたわけじゃないけどね。」

 

「天子さんの期待にこたえられてよかったです!」

 

「うにゅ・・・。負けちゃった・・・。」

 

「大丈夫だよお空。いきなり負けちゃった私がいうのもなんだけど、姫路ちゃんと坂本君が勝ってくれれば勝てるんだから!」

 

・・・まあ、私はあまり信用できてないんだけど・・・。

 

「ところで古明地、さっきから木下と正邪の姿が見当たらないんだが、何か知らないかなのぜ?」

 

・・・あ、ほんとだ。

言われてみれば2人の姿がないね。

・・・ま、いっか。

 

「これで3対2ですね。では、次の人達は前に出てきてください。」

 

「では、僕が行こう。」

 

「・・・ま、予想通り学年次席のおでましか。姫路、頼んだぞ。」

 

「はい、頑張ってきますっ!」

 

「あれ?秀吉のお姉さんは出ないんだね。というか姿が見えないや。」

 

「まあ、木下姉は学年で両の指に入るくらいの成績優秀者だがな。特化科目があるというよりはオールラウンダーな感じだから、特化科目型が多いFクラスに対しては、少し厳しいんだろう。確か木下姉は全科目300点程度で総合4000弱だからな。」

 

「へー、秀吉のお姉さんはやっぱり優秀なんだね~。僕がそれだけ取ろうと思ったら、どれだけ頑張ればいいんだろ?」

 

「ま、とりあえず転生してこい。10万年くらいかければ、もしかしたら行けるかもしれないな。」

 

「雄二に言われたくないよっ!だったら雄二は10万光年必要だよ!」

 

「・・・おい吉井、光年は距離の単位だぜ。」

 

「・・・10万年じゃ、足りないかもな。」

 

「・・・と、ともかく今は姫路さんの試合だよ!」

 

「ま、その通りだな。」

 

吉井君と坂本君はやっぱり面白いよね。

でも私も姫路ちゃんの勝負を見ないとね!

 

「科目はどうしますか?」

 

「では、総合科目で。」

 

相手のメガネの男子・・・久保君だったかな?がそう答える。

こっちは坂本君のぶんが必要だから問題ないね。

 

「「サモン!」」

 

二人が召喚獣を呼び出す。

一年の頃は確か久保君のほうが姫路ちゃんより成績良かったけど、どうなるだろう?

 

『Aクラス 久保利光 総合科目 4096点 VS Fクラス 姫路瑞希 総合科目 4417点』

 

「マジかっ!?」

 

「姫路の奴、霧島に匹敵してるだと?」

 

「・・・まさか、ここまで上がっていたとはね。どうして、こんなに上がったんだい?」

 

「・・・私、このクラスが好きなんです。みんなのために頑張る人達がたくさんいる、このFクラスが。」

 

姫路ちゃんらしい、少しずれた感想だけど、気持ちは伝わってくるね。

 

「阿求ちゃんに教えてもらったこともありますが、やっぱり大きな理由はそれです!ですので、この勝負、勝たせていただきます。」

 

姫路ちゃんの召喚獣の武器はやっぱすごいね。

自分の体より大きい大剣を軽々と操ってる。

久保君の召喚獣も、まるで死神が持つような巨大な鎌を持ってて強そう。

 

「・・・なるほどね。でも、こっちだって易々と負けるわけにはいかない!」

 

でも、二人ともまだ召喚獣の扱いに慣れてないのか、姫路ちゃんは普通に突っ込むだけだ。

まあ、得点高いから、普通に速いんだけどね。

久保君も普通に鎌で受けることしか出来なかったのか、力比べとなる。

そして、それは点数で勝っている姫路ちゃんのほうが有利だ。

そして、つばぜり合いの末、姫路ちゃんの召喚獣が押し勝ち、久保君の召喚獣を切り裂いた。

 

『Aクラス 久保利光 総合科目 0点 VS Fクラス 姫路瑞希 総合科目 4417点』

 

「これで、3対3ですね。では、最後の人達はどうぞ。」

 

泣いても笑ってもこれが最後の勝負。

しっかり勝ってきてよ、坂本君?

 

 

 




いかがでしたか?
ちなみに霊夢さんの腕輪は二重結界で、相手の遠距離攻撃を相手の背後に転送する効果を持ちます。
つまりレーザーの魔理沙とは相性最悪。
なお、素手の召喚獣は腕輪とは別に特殊な能力があります。


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第十四話「大化の改新!」

 

 

「さて、最後は俺だな。」

 

「・・・私。」

 

こちらもむこうも代表だね。

この勝負がすべてを決めるから、勝ってきてよ?

 

「科目はなににしますか?」

 

「日本史だ。ただし小学生レベルで100点満点の上限あり、そして召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負でたのむ。」

 

ざわ・・・・・・・ざわ・・・・・・とAクラスの人達がざわざわする。

まあ、そうだよね。

Aクラスの人達は誰だって100点取れるだろうし、坂本君の作戦を理解できるAクラスの人がいたなら、それは事前に知ってたとしか思えないくらいだし。

お姉ちゃんなら多分見透かしたと思うけどね。

 

「・・・わかりました。では、問題を用意するので、少々待機していてください。」

 

急な注文でもあっさり答えるなんてすごいな~。

 

「雄二、あとは任せたよ。」

 

「おう、任された。」

 

あつい握手をかわす吉井君と坂本君。

ここだけ見れば、普通の友達だよね。

 

「革命の成功は、坂本にかかってるんだからな。絶対、勝ってきてくれよ。」

 

「ああ、勝ってくる。」

 

「ここで負けたら全部パーになるんだから、勝たないと許さないんだぜ。」

 

「わかってる。任せとけ。」

 

「・・・(ビッ)」

 

「お前にはずいぶん助けられたな。感謝してる。」

 

「・・・(グッ)」

 

「頑張ってきてねー!」

 

「で、でも無理はしないでくださいね?」

 

「ああ、ありがとな。」

 

「坂本君、勝ってきてね?」

 

「おう、信じててくれ。」

 

吉井君につづき、Fクラスのみんなが坂本君に声をかけていく。

その言葉のひとつひとつに嬉しそうに返していく坂本君。

でも、どうなるんだろ?

なんか、嫌な予感がするんだよね。

というか正邪ちゃん、いつのまにか戻ってたんだ。

木下君はまだいないみたいだけど。

 

「では、準備が出来ましたので、二人は視聴覚室に移動してください。」

 

戻ってきた高橋先生がふたりに誘導をかける。

あとは、坂本君の勝ちを祈るだけだね!

 

「こいしちゃーん、テストが終わるまでちょっとお話ししませんかー?」

 

と、待とうとしてたら、早苗ちゃんに声をかけられたね。

 

「私は構わないよ~。」

 

「どうせなら私の席に座ってくださいね。お菓子でも食べながらお話しましょう。」

 

「え?いいの?」

 

「ええ、構いませんよ。この椅子でまったりしてみてくださいね。」

 

「じゃ、遠慮なく~!ありがとね~!」

 

勧められたから座ってみる。

はふぅ・・・・・・。

なんだか、座り心地がものすごく良くて、下手をしたら二度と立ち上がれなくなっちゃいそうだよぉ・・・。

まったり~。

 

「そういえば、どうしてFクラスはあんな限定的なテストにしたんですか?」

 

「ああ、あれ?あれはねー、大化の改新の年号を問う問題が出ると、霧島さんが間違えるから、Fクラスが勝てるってことらしいよー。」

 

いま言っても対策は不可能だし、本人達もいないから言ってもいいよね。

 

「・・・へえ、あんた達、なかなか面白い作戦をたてるじゃないの。」

 

あ、霊夢さんだ。

さっき寝てたけど、いつ起きたのかな?

 

「あ、お姉ちゃん!寝てたんじゃないの?」

 

「夢のなかで出てきたもの全部食べ尽くしたから起きたわ。」

 

「あはは、そうなんだ・・・・・・どうせだったら私の活躍、見てほしかったな。」

 

「あー、見てたわよ見てたわよ。確かあんたの召喚獣、巨大化して相手の召喚獣踏み潰してたわね。」

 

「夢の中の話じゃない!私の召喚獣、巨大化なんてしてないよ!」

 

「・・・・・・ま、それはそれとして、Fクラスがたてた作戦、それほんとに上手くいくの?」

 

「・・・まあ、私もうまくいくとはあんまり思ってないけどね。」

 

「まず、その作戦、あんた達の代表が満点取るのが条件だけど、あのゴリラみたいな見た目したのが取れんの?」

 

ゴ、ゴリラ・・・。

まあ、気持ちがわかるからなんともいいがたいな・・・。

 

「お姉ちゃん、そんなこと言ったら失礼だよ。」

 

「あんたも思ったでしょ?」

 

「・・・・・・お、思ってないよ・・・。」

 

早苗ちゃん、それは苦しいんじゃないかな・・・。

ほら、霊夢さんがニヤニヤしてるよ。

 

「で、こいしはどう思うの?」

 

「・・・・・・正直、厳しいんじゃないかなって思ってるよ。」

 

坂本君、小学生の時は神童とか言われてたみたいだけど、中学の時は悪鬼羅刹だったみたいだし、いまも成績もそんな良くないからね・・・。

昨日復習してたならいいんだけど・・・。

 

「・・・あ、こいしちゃん、問題出ましたよ!」

 

早苗ちゃんの指差す方には、確かに問題が出てるね。

せっかくだから、私も解いてみようかな。

 

(  )年 十七条憲法制定

 

(  )年 壇ノ浦の戦い

 

(  )年 遣唐使廃止

 

えーと、上から確か604年、1185年、894年だったよね。

 

「そういえばお姉ちゃん、今は鎌倉幕府設立が1192年という説以外にもあるの、知ってる?」

 

「もちろん知ってるわよ。1180、1183、1184、1185とか色々な説があったわよね。」

 

「うん、お姉ちゃんさすがだね!」

 

「んで、こいし。大化の改新はあったの?」

 

えーと・・・

 

(  )年 大化の改新

 

「うん、あったよ。」

 

「・・・ま、これで代表の満点はなくなったわけね。向こうでFクラスの人達が歓喜の声あげてるのもそれが原因よね。」

 

「うん、多分そうだと思うよ。」

 

「・・・・・・うっとうしいから黙らせてきていいかしら。(スッ)」

 

「ちょっと、お姉ちゃん、ストップストップ!」

 

どっかから木の棒を取り出してFクラスの人達のほうに向かおうとする霊夢さんを必死に早苗ちゃんがとめる。

霊夢さん、うるさいの嫌いだしね~。

 

「よう霊夢、早苗!さっきぶりだな!何やってんだ?こいし、あの問題はしっかり出てたぜ!」

 

あ、そんなことしてたら魔理沙が来た。

 

「魔理沙さん、お姉ちゃんを押さえるのを手伝ってください!放置してたら、お姉ちゃんFクラスの人達みんな気絶させようとしちゃいます!」

 

「おいおい霊夢・・・。何してんだよ・・・。」

 

「あんた達がうるさいから、叩きのめすだけよ・・・。」

 

怖いなー。

さすがに幽香先生には負けるけど、すごいオーラ放ってる。

 

「まあ落ち着けって。FクラスがAクラスに勝つんだから、それくらいいいじゃないか。とりあえず、霊夢と早苗は御愁傷様だな。」

 

「普段ならあんたをボコるところだけど、今ボコったら食事がなくなるからあとでボコるわ。」

 

そうこうしてる間に、テストと採点が終わったみたい。

えーと、結果は・・・・・・・

 

「あ、あの、魔理沙さん・・・。」

 

うん、早苗ちゃんの言いたいことは私にもわかるよ・・・。

私も見たもん・・・。

 

「ん?どうしたんだぜ?」

 

「後ろの画面、見てください・・・。」

 

「ああ、私達が勝ったことを示すスクリーンか?どれどれ・・・」

 

《日本史 限定テスト 100点満点》

 

《Aクラス 霧島翔子 97点》

 

「ほらな?霧島が97点で、坂本がひゃ・・・」

 

《Fクラス 坂本雄二 53点》

 

「100点取れよおおおぉぉーッ!!!」

 

「「「何じゃこりゃあああっ!?」」」

 

「雄二ィィィィーッ!!?」

 

・・・なんというか、これはひどいよね。

今までのことが全部パーだよ。

 

「4対3でAクラスの勝利です。」

 

そして、とどめをさすかのような高橋先生の言葉。

・・・うん、わかってるよ。

坂本君、最後の最後で致命的なミスやらかしたものだよね・・・。

あはは、笑えない。

 

「魔理沙。御愁傷様。」

 

「いい笑顔で言ってくるんじゃねえっ!今はとにかく坂本だッ!」

 

「私も、ちょっとこれは言いたいことがあるからね・・・。」

 

Fクラスみんなで視聴覚室になだれこむ。

中には・・・膝をつく坂本君と、歩み寄る霧島さんがいるね。

 

「・・・私の勝ち。」

 

「・・・殺せ。」

 

「いい度胸だ!殺してやるッ!歯を食い縛れ!」

 

「これはちょっと私も納得いかないぜ!」

 

「最後の最後で台無しにするなんて、なにやってるんだよ!」

 

「アキ、魔理沙、正邪!ちょっとは落ち着きなさい!」

 

「ちょっと正邪ちゃん!?その手にある鉛筆はさすがにストップだよ!」

 

「ま、魔理沙ちゃん、ストップです!とりあえず落ち着いてください!」

 

気持ちはわかるけどね?

でもこのまま放置しとくとほんとに坂本君の命がなくなりそうだから、自業自得なとこもあるけど今回はとめないとまずいかなってね。

 

「雄二!53点ってなんだよ!0点とかなら名前の書き忘れの線もありえるのに、この点数ってことは・・・」

 

「いかにも俺の全力だ。」

 

「「「この阿呆がーっ!!」」」

 

「落ち着きなさいアキ!あんたなら30点も取れないでしょうが!」

 

「それについては否定しない!でもコイツには喉笛を引き裂くっていう体罰が必要なんだ!」

 

「吉井君、それは体罰じゃなくて処刑です!」

 

「魔理沙、乱暴はダメだよ!」

 

「正邪、ストップだってば!」

 

「魔理沙さん、ダメですよ!落ち着いてください!」

 

「「「放せええぇーっ!」」」

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

「・・・なんとか落ち着いたぜ。」

 

「もう大丈夫だ。だが、これでも坂本のこと信じてたんだけどな。」

 

「坂本って、バカだったの?」

 

「・・・でも、危なかった。雄二が所詮小学生レベルだと油断してなかったら負けてた。」

 

「この最後の最後での失敗、私の頭のなかに残り続けるでしょうね。」

 

「・・・マジすんませんでした。」

 

坂本君、土下座でもしかねない勢いだ。

まあ、正邪ちゃんと阿求ちゃんの目がかなり冷たいし、お空の無邪気な一言はグサリと来るからね。

 

「・・・それで雄二、約束。」

 

「・・・・・・!(カチャカチャ)」

 

ムッツリーニ君、何をうつそうとしてるのかな?

 

「ムッツリーニ、なにか僕に手伝えることはある!?」

 

「・・・そこのケーブルをコンセントに繋げ。」

 

「了解!」

 

吉井君ものらないの。

でも、もし私達女子がそういう目にあう可能性があるとしたら、坂本君受けてもいいと言ったかな?

 

「・・・わかってる。なんでも言え。」

 

代表としてのせめてもの意地なのか、潔く返事した坂本君。

 

「・・・それじゃあ、雄二。私とつきあって。」

 

・・・え?

これって告白?

 

「・・・やっぱりか。まだ諦めてなかったんだな。」

 

「・・・私は諦めない。ずっとずっと、雄二のことが好き。」

 

「その話は何度も断っただろ?他の男と付き合う気はないのか?」

 

「・・・私の中には雄二しかいない。他の男なんて、興味ない。」

 

わぁ・・・!

なんというか、聞いてるこっちがドキドキしてくるよ・・・!

 

「拒否権は?」

 

「・・・ない。だから、今からデートに行く。」

 

「ぐあっ!放せ!やっぱりこの約束はなかったことに・・・」

 

ぐいっ、つかつかつか・・・

 

霧島さんが坂本君の首もとをつかんでひっぱっていった。

霧島さん意外と力あるね・・・じゃなかった、うまくいくといいねー!

私は霧島さんを応援するよ~!

 

「・・・さて、我がFクラスの生徒達よ、お遊びは終わりだ。」

 

みんなが無言になってるなか、やってきた鉄人先生がそんなことを・・・ん?我が?

 

「おめでとう。お前達は戦争に負けたおかげで担任が福原先生から俺に変わることになった。これから一年、死に物狂いで勉強できるぞ。よかったな。」

 

「「「ウソオォォ!?」」」

 

「いいか、確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまで来るとは正直思わなかった。でもな、いくら『学力が全てではない』と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。全てではないからといって、ないがしろにしていいものではない。」

 

あ、教育者っぽい言葉だ。

生活指導と補習室担当の姿しか普段見ないから若干新鮮だね。

 

「とりあえず、お前らのその好ましくない言動と態度、それと成績をこの一年かけて俺がみっちりと直してやろう。特に吉井と坂本だな。なんせ、お前らは開校以来初の《観察処分者》と《A級戦犯》だからな。」

 

「て、鉄人先生!?そういうのは雄二だけにしてください!僕はこれほど真面目で優秀なのに、どうしてそんなことを言うんですか!」

 

「どの口がそんな虚言を言ってるんだ。あと西村先生と呼べ。」

 

「そ、それは今どうでもいいんです!」

 

いや、それ吉井君が言うことじゃないけどね。

 

「とにかく先生!例えどんなに監視されても、僕は何とか監視の目をかいくぐって、今まで通りの楽しい学園生活を過ごしてみせます!」

 

「吉井、どうしてお前にはそこで反省するという選択肢が出てこないんだ・・・。」

 

鉄人が呆れてるけど、ほんとうにそうだよね。

別に吉井君そんなにものわかり悪いわけじゃないのに。

反抗期って奴かな?

 

「とりあえず、明日から補習の時間を2時間増やしてやろう。」

 

うげ。

それは私も嫌だな・・・。

お姉ちゃんといられる時間が減っちゃうなんてやだ!

 

「んじゃ、アキ。補習は明日からみたいだし今日はどっか遊びにいこ?」

 

「へ?今から?」

 

おー、デートのお誘いとはやるね~!

ひゅーひゅー!

 

「今からよ。ほら、アキ。どうせ暇でしょ?時間がもったいないし、はやく行くわよ!」

 

「えっ、僕にだってやることがあるし、お金だってほとんどないし・・・」

 

「ダメです!吉井君は私と映画を観に行くんです!」

 

「ええっ!?姫路さんまで!?しかもそんな話初耳だよ!?・・・先生、補習は明日からといわず今日からやりましょう!思い立ったら仏滅です!」

 

「『吉日』だ、バカ。まあ、うーん、お前がやる気になったのはいいが・・・ま、無理をすることはない。今日だけは存分に遊ぶといい。」

 

「お、おのれ鉄人!僕が苦境にいると知った上での狼藉だな!こうなったら卒業式には伝説の木の下で釘バットを持って貴様を待つ!」

 

「斬新な告白だな、オイ。」

 

間違いなくふられるんじゃないかな・・・。

第一、伝説の樹ってうちにはないような・・・。

てか、吉井君じゃ鉄人先生には勝てないと思う。

パーフェクト負けして倒れた吉井君を見下ろす鉄人先生が容易に想像できるな。

 

「ほら、早く行くわよアキ!」

 

「行きましょう、吉井君!」

 

「い、嫌あああっ!僕の食費が!僕の栄養があああっ!」

 

吉井君、二人にひっぱられていったけど、楽しんできてね~!

 

「さて、それじゃ私達も帰るとするぜ。じゃあこいし、一緒にかえ『昼飯奢りの約束、破るの?』ろうと思った私が悪かったからとりあえずその棒をおいてくれ!」

 

「じゃ、行くわよ~!魔理沙のおごり、魔理沙のおっごり~♪」

 

あら、霊夢さんに魔理沙連れていかれちゃった。

 

「お姉ちゃん、ほどほどにね?」

 

「わかってるわよ。天丼カツ丼うな丼いくら丼親子丼大盛り3つづつくらいしか頼まないつもりよ。」

 

「あの、お姉ちゃん?普通はその中のどれかひとつだからね?」

 

ほんと、霊夢さんは常識にとらわれてないよね。

冬眠前の熊みたいに、霊夢さんは食べられるときにたくさん食べて蓄えるから・・・。

太らないのかと言われそうだけど、普段の主食は雑草や公園の水だから、平均摂取カロリーは一般人以下だからね。

 

「それならこいし、私とお空と帰らないか?」

 

「うん、いいよ、正邪ちゃん、お空!」

 

「いっしょに帰ろ~!」

 

結局、私は正邪ちゃんとお空と帰った。

 

 

 

 

 

「そういえば木下君知らない?さっきから全然見かけなくて。」

 

「うにゅ?知らないよ?」

 

「木下か・・・・・・あいつはいい奴だったよ。」

 

「正邪ちゃん知ってるの?」

 

「直接見た訳じゃないんだが、トイレの帰りに返り血がついたAクラスの木下姉に出会ってな、何してたか聞いてみたら『秀吉は急用ができたから先に帰ったわよ』って笑顔で言われたんだよな・・・。」

 

「「・・・・・・。」」

 




いかがでしたか?
霊夢さんはものすごい食べます。
そして第一部終了です。


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幕間『ラブレター騒動!』
第十五話「ラブレター!」


幕間。
ラブレター騒動やります。


 

 

 

「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だとつい楽しい気分にならない?」

 

今日もいい天気だね~!

晴れ渡る空、温かい日差し、そして散り始めた桜。

こういう日は、テンションが上がるよ!

 

「あんた、机がみかん箱になったのに随分元気ね・・・。」

 

「だって今はお姉ちゃんと一緒だもん。」

 

先日の試召戦争で、最後に坂本君がやらかしてくれたおかげで、私達Fクラスの設備はさらにランクダウンし、みかん箱とござになっちゃった。

でも、今はお姉ちゃんがいるからそんな憂鬱な気分なんて吹っ飛ぶよ!

 

「・・・と、私は先に行くわね。ちょっと部活で用事が出来ちゃったから。」

 

・・・えっ?

イマナンテイッタノ?

 

「こ、こいし・・・。そんな捨てられた子犬のような目をしなくても・・・。」

 

「お姉ちゃん、私も行く!」

 

「・・・まあいいけど、校門までよ?」

 

えー。

まあ、しょうがないか。

お姉ちゃんの邪魔はしたくないもんね。

ちなみに、お姉ちゃんは美術部だよ。

 

 

 

 

 

 

 

校門までお姉ちゃんと走る。

校門には鉄人・・・じゃなかった西村先生が立ってるね。

 

「おはようございます、西村先生。」

 

「おはよーございます、先生!」

 

「おう、おはよう!部活の朝練か?関心だ・・・」

 

あれ?

鉄人がこっちふりむいて固まっちゃった。

 

「先生?どうしました?」

 

「・・・すまない、少し間違えた。」

 

「何を間違えたの?」

 

「古明地姉は部活、感心だな。妹の方は何故早く来たんだ?吉井と何か企んでたのか?」

 

「間違えたって接する態度?」

 

ひどくない?

でもなんで吉井君の名前が出てきたんだろう?

 

「こいし、どうやら彼は少し前に来たみたいよ。」

 

「古明地姉の言う通りだ。吉井には今サッカーゴールを撤去させてるところだから、何か企んでたなら残念だったな。」

 

なるほど、少し前に来てたのね。

サッカーゴールなんて重いもの運ばせるなんて、何も知らなきゃ教育委員会に訴えられるような虐待レベルだよね。

私達が使う召喚獣は、人間の数倍のパワーを出せるんだけど、ものに触れることはできない。

でも、《監察処分者》である吉井君の召喚獣は特別仕様で、ものにさわることができるんだよね。

これだけ聞くとものすごく良さそうだけど、実際は教師の立ち会いがないと召喚できないし、召喚獣の感覚の何割かが吉井君本人にフィードバックするから、あまりいいことじゃないんだよね。

サッカーゴールみたいな重いもの運べば吉井君も疲れる。

多分、普通に10キロのもの持ってる位には疲れるんじゃないかな?

ちなみに、先生の召喚獣もものに触れるみたい。

もちろん、フィードバックは無いよ。

 

「私はお姉ちゃんと一緒に来たかっただけですよ?お姉ちゃんだーいすき!」

 

「・・・と、私はもう行かなきゃ行けないわね。」

 

「おう、部活頑張りなさい。」

 

私の言葉無視された・・・ぐすん。

お姉ちゃんも走ってく。

はあ・・・、私も行こうかな・・・。

 

「古明地、一応言っておくが、美術部の使用している教室を窓やドアから覗かないようにな。」

 

「・・・・・・・・・」

 

「返事をしなさい。」

 

「いいノー。」

 

「いいえとノーを混ぜるな!返事ははいだ!」

 

・・・痛い。

また鉄拳落とされた。

しょうがない、諦めて行こう・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・ん?これはなんだろう?」

 

教室に行くため、昇降口で上履きに履き替えようとしてたら、なんか便箋が落ちてるの見つけた。

・・・とりあえず、見てみようかな。

 

《吉井明久様へ》

 

・・・・・・おー!

ラブレターだったとは、吉井君もやるね~!

とりあえず、床に落ちてるのもアレだし、ぽいっと!

吉井君の下駄箱にこの手紙を入れてっと!

でも、どっかで見たような気がするんだよね・・・?

まあいっか!

さて、せっかく早く来たんだし、アレやっておこうかな?

 

 

 

 

 

 

Fクラスではないどこかの空き教室。

そこで、私は一人の男と、人目を忍んで会っていた。

 

「・・・用件は?」

 

「私の撮影と、お姉ちゃんの写真!」

 

「・・・毎度。」

 

それはムッツリーニ君だよ。

ムッツリーニ君は、撮った写真を売る、いわゆるムッツリ商会というのをやってるんだよね。

いい写真が多いから、かなりお世話になってる人多いんじゃないかな?

・・・盗撮だけど。

 

「・・・とりあえず、そこに立ってくれ。」

 

でも、私は盗撮されるの嫌だから、ムッツリーニ君の指示通りのポーズの写真とかを提供する代わりに、盗撮はしないのと、お姉ちゃんの写真を報酬に貰うように契約してるんだよね。

お姉ちゃんの写真、男の子に買われるなんて嫌だから、私が出来るだけ買い占めるようにしてるんだけど。

ムッツリーニ君もそんな過激なポーズ要求するわけじゃないしね。

そんなこんなで撮影を済まし、教室向かった頃にはもうSHRのはじまりが近くなってるね。

 

「おはようだな、古明地。」

 

「おはよう、正邪ちゃん!」

 

「おはよう、こいしちゃん!」

 

「おはよう!お空!」

 

挨拶をかわし、私も席につく。

そういえば吉井君はあのラブレター見たのかな?

・・・ちょっと聞いてみよっと!

 

「お前ら、SHRの時間だ。全員、席につくように。」

 

・・・と思ったら先生が来ちゃった。

しょうがない、あとでにしようっと。

出欠確認、返事したらさっき買ったお姉ちゃんの写真見よう!

 

「鬼人。」

 

「いいえ。」

 

「いいえってことは欠席だな。木下。」

 

「はい。」

 

「霧雨。」

 

「ういっす!」

 

「返事ははいだ。」

 

「はいだぜ。」

 

「ちょっと待ってくれ先生、はい!」

 

「最初からはいと返事しろ、鬼人。」

 

正邪ちゃん、時々あまのじゃくだからね・・・。

出欠は進んでいく。

 

「古明地。」

 

「はーい!」

 

「斎藤。」

 

「はい。」

 

よし、呼ばれたし、お姉ちゃん観賞タイムに・・・

 

「坂本。」

 

「・・・・・・明久がラブレターを貰ったようだ。」

 

「「「「「殺せええええっ!」」」」」

 

わっ、なに!?

普通だった教室がいきなりおかしくなったよ!?

 

「ゆ、雄二!いったいなんてこと言い出すんだ!」

 

「吉井が貰ってるなら、俺達にだってあってもおかしくないはずだ!自分の席の周辺を探してみろ!」

 

「ダメだ!腐りかけのパンと食べかけのパンしか出てこねえっ!」

 

「もっとよく探してみろ!」

 

「・・・・・・出てきたっ!未開封のパンだ!」

 

「お前は一体なにを探してるんだ!?」

 

みんながざわざわしてる。

とりあえず、なんで食べかけのパン放置してたのか気になるな。

 

「お前らっ!静かにしろ!」

 

でも、先生の一喝でしずまりかえった。

すごいな~。

まあ、このままだと暴動がおきてもおかしくなかったもんね。

とりあえず安心かな?

 

「出欠を続けるぞ。沢田。」

 

「吉井コロス。」

 

「島田。」

 

「アキのバカ。」

 

「白石。」

 

「吉井コロス。」

 

「進藤。」

 

「吉井コロス。」

 

・・・全然安心じゃなかったよ。

 

「みんな落ち着くんだ!ほとんどの返事が『吉井コロス。』に変わってるよ!」

 

「吉井、静かにしろ!」

 

え、そっち?

 

「僕じゃなくて他のみんなを注意してください!このままではみんな僕に殴る蹴るの暴行をくわえてしまいます!」

 

「原田。」

 

「吉井マジコロス。」

 

「稗田。」

 

「はい。」

 

「姫路。」

 

「は、はい。」

 

「福田。」

 

「吉井ブチコロス。」

 

さ、殺意が・・・・・・。

それに動じず出席続ける西村先生もどうかと思うけど・・・。

 

「・・・よし、遅刻欠席はないようだな。今日も一日勉学に励むように。」

 

「待って先生!可愛い生徒を見捨てないで!」

 

普通に去ろうとした西村先生に対して吉井君がすがりつく。

実際、間違いなく吉井君は酷い目にあうだろうしね。

 

「吉井、間違えるな。」

 

ん?

間違いってなんなんだろ?

先生は扉に手をかけたままだけど、吉井君を助けるのかな?

 

「お前はブサイクだ。」

 

「ブサイクとまで言われるとは思ってなかったよバカ!」

 

ブサイクって・・・。

私もそれは予想してなかったな。

そのまま扉を閉めて行っちゃう先生。

これは間違いなくひと波乱おきるね。

私としては、静かにお姉ちゃんの写真を観賞してたいんだけど、ラブレターも少し気になるんだよね。

 

「アーキー?ウチに教えてくれるかしらー?その手紙は誰から貰ったの?」

 

と、早速美波ちゃんが行った。

チンピラがガンを飛ばすように、吉井君に顔を近づけて聞き出そうとしてる。

 

「ちょっ、美波さん、顔が近い近い!」

 

「い、いいのよ今は!で、誰からのラブレターなのかしらー?男子?それとも女子?」

 

「男子という選択肢を入れないで!あってほしくないから!」

 

「じゃあやっぱり女の子からなのね・・・!アキのバカァーッ!」

 

「ぐはっ!そっいわれてっもね、僕にもっなにがなんだっか!?」

 

「ちょっ、美波ちゃん!吉井君が苦しんでる苦しんでる!」

 

どんどんと吉井君の胸を叩く美波ちゃん。

でも、吉井君叩かれるたびに息つまってるからもうちょっと優しくしてあげて!

 

「なあ吉井、それ私にも見せてほしいんだぜ?」

 

「私にも見せてくれよ?」

 

「魔理沙に正邪!?でも、僕、まだ読んでなくて・・・。」

 

「そうなのか?だったらこけで声に出して読み上げるんだぜ!」

 

「君は鬼かい!?やらないよ!」

 

「冗談だって。とりあえず、見せてくれないか?」

 

魔理沙と正邪ちゃんは手紙を平和的に見たいみたいだね。

だったら私も見たい!

 

「ねーねー吉井君、私にも見せて~?」

 

「私もみたいな~?」

 

「古明地さんと霊路地さんまで!?でも、人のラブレターを勝手に見せるのは・・・」

 

「あ、あの、吉井君。できれば、ですけど・・・、私にも手紙を見せて欲しいです・・・。」

 

「姫路さんも!?・・・みんな、ごめん。これは見せられない。」

 

「そうか、残念だな・・・。でも・・・」

 

「それは是非とも見てみたくなったな。だが・・・」

 

「そうですか・・・。でも・・・」

 

「「「私は吉井(君)に酷いことしたくないんだぜ?(ないんだけどな?)(ないんです!)」」」

 

三人の声を揃えての脅迫はやめてあげて!

 

「ちょっと待って三人とも!なんで僕に危害をくわえるのが前提なの!?」

 

「吉井が見せないからだぜ?」

 

「理由になってないよっ!」

 

「あの、みなさん、ちょっと落ち着いて吉井君の話聞いてあげてください!」

 

混沌と呼べるこの状況のなか、阿求ちゃんが仲裁に入る。

 

「確かに稗田の言う通りだ。お前ら、いったん落ち着け。」

 

坂本君がみんなを落ち着かせた。

なんだかんだで、友人のピンチには助けてあげようとし・・・あれ?

でも、この騒動って坂本君がラブレターのことカミングアウトしたのがきっかけだったような気がするんだよね・・・?

やりすぎたと思ったのかな?

でも、坂本君だし・・・。

 

「今大事なことは、明久の手紙を見ることじゃない。」

 

「ありがとうございます坂本君。まずはみんな吉井君の話を聞いてから・・・」

 

「問題は、明久をどうグロテスクに殺すかだ。」

 

「違いますよ!?」

 

これは酷い。

 

「前提条件が間違ってるんだよチクショウ!」

 

「逃がすな!追撃隊を組織しろ!」

 

「サーチアンドデス!」

 

「そこはせめてデストロイで!」

 

「みなさん、いったん待って・・・」

 

荷物をひっつかんで逃走する吉井君と、それを追うみんな。

阿求ちゃんの言葉は届かなかったみたいだ。

教室に残ってるのは美波ちゃん、木下君、阿求ちゃん、お空、あと私しかいない。

全員女子・・・じゃなかったね。木下君男だ。

・・・・・・・でも、なんというか、アレだよね。

落ちてた奴とはいえ、ラブレターを吉井君のところに入れたのは私でもあるわけだし、収集つけないといけないかもだよね。

 

「じゃあ、ちょっと収集つけてくるね。」

 

「あ、こいしちゃん、私もいっていい?」

 

どうやら、お空も来たいみたいだね。

かまわないけど、大丈夫かな?

 

 




いかがでしたか?
この世界の美波ちゃんは少し優しいです。


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第十六話「収拾!」

 

 

 

みんなを止めようと、教室を出たはいいんだけど、どうやったらいいのかな?

いい方法が浮かばないや。

 

「ねえお空、なにかいいアイデアない?」

 

「んー、ゴリラ先生に頼むのは?」

 

ゴリラ先生・・・西村先生のことなのかな?

 

「悪くはないかもしれないけど、下手したら私達が捕まっちゃうんじゃないかな?」

 

目的がどうであれ、授業中に外出ているというのは変わらないしね。

それに、さっき吉井君見捨てたし・・・。

 

「とりあえず、吉井君捜してみようかな?」

 

先生に一応注意しながら吉井君を探す。

 

「あれ?なんか焦げ臭くないかな?」

 

「うん、私も感じるよ。」

 

とある空き教室通った時、なんか焦げ臭い匂いがしてきたんだよね。

覗いてみよ~っと。

 

「・・・・・・えー。」

 

そこにあったのは、濡れたサッカーゴールのネットとスタンガン。

あと5人の男子生徒の死体だね。

死んでないけど。

 

「これ、間違いなく吉井君の迎撃だと思うけど、やりすぎじゃないかな・・・?」

 

「とりあえず、助けてあげた方がいいんじゃないかな?」

 

「うん、そうだね。」

 

私達じゃ保健室に運ぶことは出来ないけど、せめてスタンガンを止めておかないとね。

 

「えーと、スイッチはこれで・・・ネットを取って・・・きゃっ!」

 

ネットかなり熱かったよ!

バチってきた!

 

「・・・しょうがないから放置していこっと。行こ、お空。」

 

「うん、行こう!」

 

とりあえず、私が持っているメモにこのことを書いて教室前に貼って・・・と。

西村先生あたりが見つけたら保健室に連れていってくれるよねきっと!

・・・行くのは補習室かもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

「・・・吉井君、なかなか凄いね。」

 

あの後も、本棚の下敷きになっているクラスメイト、縄でまとめて縛られてるクラスメイト、空き教室に閉じ込められていたクラスメイト、出血多量で倒れてたムッツリーニ君とかいたしね。

これだけのことを全部吉井君がやったと考えると、凄いよね。

 

「でも、吉井君、どこに行ったんだろ?」

 

「あ、あれじゃない?」

 

お空が指差した先には・・・正邪ちゃんと一緒にいる吉井君だね。

でも、正邪ちゃんさっき吉井君脅迫してなかったかな?

・・・ま、いっか!

 

「やっほー、吉井君!」

 

「・・・こ、古明地さんと霊路地さん!?まさか、君達も僕の手紙を?」

 

「見せてくれるなら嬉しいけど、手荒な真似はしないつもりだよ。」

 

私達の目的は事態の収集だもんね。

 

「吉井、屋上で読むんじゃないのか?」

 

「・・・っと、そうだったね。」

 

「ねーねー、私達も行ってもいい?」

 

「え・・・?」

 

「ついていっちゃダメなら、この場で手紙を奪っちゃうよ?」

 

嘘だけどね。

ただついていきたいだけだよ。

・・・まあ、見たいのは事実だし、チャンスがあれば見るけどね。

 

「・・・わかったよ。でも、まずは手紙は一人で読ませてね。」

 

「私も覗き見なんてするつもりないからな。」

 

「私もお空も、そんなことしないよ?」

 

やった、交渉成立だね!

4人で屋上に向かう。

 

「・・・明久、やはりここまで来たか。」

 

「吉井君、言うことを聞いてください。」

 

「・・・!雄二、それに姫路さん・・・。」

 

でも、そこには坂本君と姫路ちゃん。

なんか、ラスボスみたいなポジションだよね。

まずは話し合いでどうにかしようとする吉井君。

 

「雄二、こんなことをして、雄二に何の得があるのさ!」

 

「得?そんなもの決まっている。明久が不幸になるのを見るのが、俺にとって最大の得さ。」

 

「あんたは最低の友達だ!」

 

・・・・・・吉井君、それ、世間一般では友達と呼ばないんじゃないかな・・・。

相変わらず、2人が友達か疑わしくなるよね。

 

「さあ明久、言葉はいらねえ。かかってこい。姫路、上着を頼む。」

 

「は、はい。」

 

上着を脱いで姫路ちゃんに預ける坂本君。

殺る気だね。

私達にはどうしようもないし、見てようかな。

 

「しょうがない、ラブレターをくれた女の子のためにも、ここで負けるわけにはいかない!正邪、上着をお願い!」

 

「よし、受け取った。」

 

上着を受けとる正邪ちゃん。

・・・あっ。

 

「さあ雄二、尋常に勝負だ!」

 

「・・・お前、バカだろう。」

 

「え?」

 

呆れたような表情をして正邪ちゃんの方を見る坂本君。

それで吉井君が正邪ちゃんの方を振り向く。

そこには手紙を持つ正邪ちゃんの姿。

・・・いや、吉井君。

入れた場所くらい覚えておこうよ。

 

「せ、正邪!?見ないって言ったじゃないか!」

 

「ああ、言ったな。『覗き見』はしないとな。」

 

「ひどいよっ!」

 

うわー、ゲス顔だー。

 

「正邪、ここは俺が抑えておく!俺のことは気にせず、手紙をやってくれ!」

 

「くっ、離せ雄二ィ!」

 

坂本君に羽交い締めされて暴れる吉井君。

こうなったら、私がやることはひとつだよね!

 

「正邪ちゃん、私にも見せて?」

 

「私も私も!」

 

「構わないぞ。ほい。」

 

もちろん、手紙を読むことだよ!

お空と一緒に読む。

ふむふむ、へえ~!

なるほどね~!

 

「あ、あのこいしちゃん、ちょっとその手紙、見せてくれませんか?」

 

「いいよ~、はい!」

 

姫路ちゃんに手紙を渡す。

でも、どうしたのかな?

姫路ちゃん、手紙の中身知ってるはずなのに。

 

「やっぱり・・・・・・。しょうがないですっ、えいっ!(びりびり)」

 

「ああーっ!記念すべき僕の大事な初ラブレターが小さな紙切れにいーッ!」

 

絶叫する吉井君。

 

「・・・すまん、明久。俺もこうなるとまでは思ってなかったんだ。」

 

坂本君が拘束を解除して、珍しく神妙に謝る。

確かに、普段の彼女からは、ここまですると思わないよね。

 

「まあ、友人としてのせめてもの情けだ。」

 

「雄二、まさか、手紙を復元するのを手伝ってくれるの?」

 

「未練を絶ってやる。」

 

シュボッ、メラメラメラ・・・

坂本君が取り出したライターから出る火が、手紙だったものを包んでいく。

 

「どうだい、明るくなっただろう?」

 

「ちょっと、何完全に消滅をはかろうとしてるんだよ!?誰か、誰か水を持ってきて!」

 

吉井君の叫びもむなしく、完全に燃え尽き、灰になっちゃった。

吉井君本人も、燃え尽きたようになってる。

 

「み、みなさん、このことはどうか内密でお願いします・・・。」

 

「うん、わかったよ!」

 

「ああ、秘密にしておこう。」

 

まあ、そうじゃなかったら、わざわざ手紙破ったりしないよね。

 

「ああ・・・、僕の手紙、僕の手紙・・・。」

 

ああいう感じで悲しみにくれている吉井君見ると言いたくなっちゃうけど。

ここは心を鬼にしないと!

 

「貴様ら・・・!やっと見つけたぞ・・・!」

 

・・・本物の鬼?

いや、西村先生だった。

・・・すごくおこだけど。

 

「授業をサボってこんなところにいるとはいい度胸だな・・・!貴様らにはたっぷりと教育をしてやろう。」

 

「ち、違うんです西村先生!僕は雄二に巻き込まれただけで・・・」

 

「おい明久、これの原因はお前にあるだろうが、だからここは明久を・・・」

 

「わ、私はみんなを止めようとしただけだから悪くないんだ!だから私以外を・・・」

 

「問答無用!」

 

「「「イヤアアアァア!」」」

 

三人の言い訳もむなしく、私やお空も含めた全員ひっぱられていった。

 

 

・・・このあと、滅茶苦茶怒られた。

一応私達は抑えようとしてたのにな。




いかがでしたか?
次は明久視点。


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第十七話「収拾!SideA」

今回明久視点。


 

 

現在、僕は悪魔に追われています。

 

「いたぞ!吉井だ!引っ捕らえて処刑しろ!」

 

「B隊は回り込み、C隊はこのまま追いかけて挟み撃ちにするんだぜ!」

 

「「「了解っ!」」」

 

「サーチアンド・・・」

 

「「「デス!」」」

 

後ろから聞こえてくる、全てを奪おうとする悪魔達の声。

悪魔理沙が部隊を編成して、僕を追い詰めようとしている。

まったく、僕がイケメンでラブレターをもらったからといって、そんなに嫉妬しないで欲しいよね。

これから貰えるかわからないんだから、一人でゆっくり読ませて欲しいものだよ。

・・・やだな、泣いてなんかいないよ?

 

「・・・吉井、見つけたぞ。」

 

「うわっ、正邪!?」

 

目から出た塩水を拭いながら走っていたら、目の前に正邪が出てきた。

いきなりだから結構びっくりしたよ。

 

「まあ落ち着け。私はお前に協力しようと思ってな。」

 

「・・・協力?」

 

さっき、僕のこと脅迫していたような気がするんだけどな・・・。

 

「少し考え直してな。お前もこのまま全員に捕まって手紙を取られるのは嫌だろ?」

 

確かにそうだね。

理由はわからないけど、味方がいた方が安心だ。

 

「うん、わかったよ。ありがとね。」

 

「気にすんな。・・・これも、手紙を平和的に見るためだからな。」

 

「ん?正邪、なんか言った?」

 

「いや、何も言ってないぞ?それより、逃げなくていいのか?」

 

正邪の言葉で振り返ると、確かに悪魔達が迫っていた。

 

「いたぞ!吉井だ!正邪も一緒にいるぞ!」

 

「・・・げっ。行こう、正邪!」

 

「おう、そうだな!」

 

僕と正邪は走り出す。

悪魔達から逃げ切り、幸せをつかむために。

 

「・・・その言い方だと、私とお前がそういう感じだと聞こえるからやめてくれ。」

 

「あ、ごめん。」

 

「吉井!観念して手紙を出しやがれ!」

 

「げ、前からも来た。」

 

このままだとはさまれちゃうから、やむなく近くの空き教室に逃げ込む。

なにか、なにかこの状況を打開できるものは・・・あった!

 

「正邪!これを入り口の上にひっかけるんだ!」

 

「おう、任せとけ。」

 

あとはタイミングを待つだけ・・・

 

「観念しやが『今だ、正邪!引っ張って!』うおっ!?」

 

全員が入った瞬間、僕と正邪で、さっきかけたゴールネットをひっぱる。

狙い通り、ネットにつつまれる五人。

 

「端の奴から出て吉井を引っ捕らえろ!」

 

「ああ、だがこのネット、濡れているから体に張り付いて・・・。」

 

それでもすぐに脱出しようとする悪魔達。

でも、僕がこれだけで終わるなんて思わないでほしいね!

 

「正邪は離れて!」

 

「おう!」

 

正邪が離れたことを確認し、僕は秘密兵器を取り出す。

 

「お、お前まさか!やめろ!」

 

「さらばだ!来世では悔い改めるんだよ!」

 

僕が取り出したのは、ムッツリーニから借りていたスタンガン。

これを、濡れたネットにつつまれたクラスメイトに、スイッチをONにして投げつける!

 

「「「ぎゃあああああっ!」」」

 

バチバチバチッ!と激しい音に焦げ臭い臭い。

そして、気絶するクラスメイト達。

よし、まずは5人だ!

 

「うわぁ、お前、容赦ないな。」

 

正邪がちょっとひいてるけど、こうでもしないとこの悪魔達は抑えられないしね。

 

「よし、今のうちに行こう!」

 

僕達はこのまま出る。

絶対に、この聖書を悪魔に奪わせはしないよ!

 

 

 

 

 

 

 

「やあお前ら、調子はどうだ?」

 

「!?・・・ああ、正邪か。吉井を殺る気は充分だ。吉井を見なかったか?」

 

「ああ、見たぞ。場所を教えてやろうか?」

 

「頼む。」

 

「・・・お前らの、後ろだ。」

 

「だらっしゃあああぁっ!」

 

「「「うわああああっ!」」」

 

正邪がクラスメイトの注意をひきつけている間に、僕は本棚を倒す。

ずしいいいんと大きな音をたてて倒れる本棚と、その下敷きになるクラスメイト達。

よし、これでまた無力化できたね!

 

「人の恋路を邪魔するからそうなるんだよ!さらばだ!」

 

「おのれ吉井!裏切り者め!」

 

「絶対に許早苗!」

 

「正邪さん、もっとやってください!」

 

「覚えていろ!お前の幸せは絶対にぶち壊す!」

 

「・・・本当に、歪んだクラスメイト達だなあ・・・。」

 

なんかMな人いたし。

 

「吉井、そこのモップで出入り口封鎖した方がいいぞ。」

 

「確かにそうだね。ありがと、正邪。助かるよおおおーっ!?」

 

危なっ!

いきなり飛んできた文房具。

なんとか回避したけど、あともう少し遅かったらと思うとぞっとする。

壁に刺さってるし。

 

「・・・動かなければ、楽にしてやれたのに。」

 

「さらっと何言ってるんだよムッツリーニ!」

 

「おいおい、私まで巻き込むとはどういうつもりだ?」

 

「・・・必要な、犠牲だ。」

 

僕にカッターを投げてきたのはやっぱり、元友人で、現在は敵のムッツリーニだった。

しょうがない、ラブレターのためにも眠ってもらうよ!

 

「とりあえず覚悟、ムッツリー『・・・次はカッター』やっぱり話し合おう。」

 

やっぱり友達に暴力なんてダメだよね。

 

「ムッツリーニ、そっちの欲求は?」

 

「やはり、吉井の手紙を奪うことなのか?」

 

「・・・そんなんじゃない。こちらの要求は・・・。」

 

あれ?

手紙を奪う気ないのかな?もしかしてムッツリーニも『・・・グロテスク。』悪魔だったよ畜生!

僕はこれほどどうにもならない交渉をしたことがない。

でもなんとかし『・・・交渉決裂。』ようとする前にダメじゃん!

しょうがない、殺るしかない!

 

「・・・動くな。」

 

「イヤだよ!」

 

飛んでくる文房具を必死に回避する。

 

「うわ、しまった!」

 

だけど、正邪が回避の際にバランスを崩してこけてしまう。

 

「・・・・・・青!(ブシャアアア)」

 

「おい、見るんじゃない!」

 

正邪がこけた時、パンツが見えたのか、鼻血を盛大に吹いて倒れるムッツリーニ。

倒れてもなお、僕を殺ろうとしたのかピクピク動いていたけど、やがて動かなくなった。

・・・勝った、第三部完。

 

「と、とにかく行こう!」

 

「私にとっては不本意だがな・・・。」

 

血まみれのムッツリーニを背に、僕と正邪はむかう。

 

「ところで、吉井はどこで手紙を見るつもりなんだ?」

 

「んー、特に決めてないかな。」

 

「屋上とかどうだ?」

 

「いいねそれ!」

 

確かに屋上なら良さそうだ!

いいアイデアだよ正邪!

早速、屋上へ行こう!

・・・と、その前にムッツリーニの死体から武器をとっておこうっと!

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、ここを通りたいなら手紙を置いていくんだぜ。」

 

「魔理沙、そこをどいてくれない?」

 

屋上へ向かう道の途中。

僕の前に立ち塞がったのは魔理沙だった。

 

「それは無理な相談なんだぜ。通りたいなら力づくでどかすんだな。」

 

「でも、2対1で、魔理沙が勝てると思うの?」

 

「いいや、2対2だぜ。サモン、須川!」

 

「いや、俺は召喚獣じゃないんだけどな。」

 

魔理沙の声であらわれたのは異端審問会会長の須川君だった。

手には木刀を持っている。

 

「吉井、俺はお前の幸せを許さない。この木刀は剣道部から借りてきた。さあ、覚悟しろ。」

 

「くっ・・・!卑怯な・・・!」

 

「いや吉井、お前死体から武器を取ってなかったか?」

 

・・・あ、そうだった!

 

「なら正邪は魔理沙をお願い!僕は須川君を殺る!さあ、この武器の山葵にしてあげるよ!」

 

そういいつつ、僕はムッツリーニから取った武器を取り出す。

どうだ須川君!僕だって爪切り装備しているから丸腰じゃないよ!

・・・ん?

 

「「「吉井・・・・・・。」」」

 

みんなのバカを見るような目が物凄く辛いです。

 

「くっ、いいさ!これでやってやる!覚悟!」

 

「いや爪切り使わない方が強いだろ!」

 

「吉井、お前こそ覚悟しろ!」

 

それぞれの考えを持つ四人が、今ぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まさか、本当に爪切りで勝てるとはね・・・。」

 

勝てちゃった。

深爪になって地面に倒れ伏す須川君。

その横に転がっている木刀。

 

「く、くそ・・・!吉井、お前の幸せだけは許さねえ・・・!」

 

「こっちも魔理沙は終わったぞ。」

 

「正邪!無事だったんだね!」

 

「まあな。」

 

よし、これで邪魔する人達もいなくなったはずだし、屋上に向かおう!

 

 

 

 

 

「正邪、あとは頼むぞ・・・。吉井の手紙を見届け、私に教えてくれ・・・ガクッ。」




いかがでしたか?
正邪と魔理沙は策士であった。
次からは文化祭編です。


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第二章『文化祭!』
第十八話「学園祭準備!」


 

 

 

「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だと、つい外で遊びたくならない?」

 

今日もいい天気だね~!

雲ひとつなく晴れ渡る空、温かい日差し、葉っぱだけになった桜。

こういう日は、テンションが上がるよ!

・・・普段ならね。

 

「こいし、今は外の天気を気にするんじゃなくて仕事をしなさい。」

 

私やお姉ちゃん、その他は文月学園の文化祭実行委員だ。

・・・正直、自分でひきうけたとはいえめんどくさいな。

お姉ちゃんがいたからやってるけど、お姉ちゃんと話したり抱きついたりするチャンスあんまりないし。

 

「・・・ここじゃなくても、学校で抱きつくのはダメよ。」

 

「・・・・・・( ;∀;)」

 

あれ、おかしいな?

無意識のうちに塩水が目から流れてるよ?

 

「泣いてないで仕事をしっかりこなしなさい。」

 

むー、お姉ちゃんが鬼だ。

 

「・・・まあ、もし、あんたが仕事を真剣にやったらだけど、私と召喚大会にで『やる!』・・・じゃ、頑張りなさい。」

 

召喚大会。

その名の通り、召喚獣を使ったトーナメント制のバトルで、優勝すると賞品として商品券とかが貰えるんだよね。

それに、クラスが違うから普段はお姉ちゃんと肩を並べて戦うことができないけど、この大会ならできるからね!

 

「お姉ちゃんと一緒に戦える~♪楽しみだな~♪・・・あ、お姉ちゃん、仕事終わったよ!」

 

「・・・相変わらず、やる気だした時のあんたは凄いわね。」

 

そんな嬉しいことが待ってるんなら、仕事もはかどっちゃうよ!

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?みんながいない。どこ行ったのかな?」

 

十分後、私は仕事を終えてクラスに戻ったんだけど、なんかクラスの人数が少ないな・・・?

姫路ちゃん、美波ちゃん、阿求ちゃん、木下君、お空しかいない。

男子全員と二人の女子がいな『わしは男じゃ!』木下君、こう言うときに勘が鋭いのは一般的に女性の特徴だよ?

 

「・・・あー、外、外見ればわかるわよ。」

 

美波ちゃんが、なんか言いづらそうにいう。

なにかあったのかな?

言われて外を見てみる。

 

「よっしゃ吉井!次は撃ってやるぜ!」

 

「もちろん撃たせるつもりはないよ!僕の魔球で三振になるがいい!」

 

「私も早く撃ちたいから正邪は早くヒットを撃つんだぜ。」

 

「・・・野球?」

 

野球・・・だよね。

何故か、Fクラスのほとんどの人達が野球やってる。

・・・楽しそう!

 

「楽しそうだから、私も行ってくる!」

 

きびすをかえし、外に出ようとする私。

でも、何故か、木下君に手を押さえられた。

 

「悪いことは言わないからやめておくのじゃ。もう一度外を見てみるべきなのじゃ。」

 

「・・・・・・あ。ありがとね、木下君。」

 

言われて外を見てみる。

そこでは野球ではなく鬼ごっこが行われているね。

・・・鬼が鉄人だけど。

楽しい遊戯というより、もはやデスゲームだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・さて、これから文化祭の出し物について話し合う。まずは議事録進行ならびに実行委員を一人任命する。そいつに全権を委任するから、あとは任せた。」

 

頭にたんこぶがある坂本君が言う。

やる気ないね~。

 

「で、その実行委員だが、古明地は頼めるか?」

 

「私?私は忙しいから無理かな。」

 

実行委員と召喚大会があるからね。

それに、お姉ちゃんと文化祭まわる時間も確保しないといけないからね~。

 

「そうか、じゃあ島田はどうだ?」

 

「ウチ?ウチもちょっと、召喚大会で忙しいから無理ね・・・。魔理沙はどう?」

 

「私はやる気がないんだぜ。それに、なんとなく忙しくなりそうな気がするんだぜ。」

 

「忙しくなりそうな気がするってまた斬新な断り文句だな・・・。なら・・・、正邪しかいないのか・・・。」

 

なんかすごく嫌そう。

正邪ちゃんはまれに天邪鬼だから、こういうの向かなさそうだもんね。

親友に言う言葉としてはアレだけど、お空は鳥頭だから、多分自分でだした指示や出された意見を忘れちゃいそうだし。

 

「雄二、姫路さんや稗田さんはどう?」

 

「その二人には無理だな。多分全員の意見を真摯に聞いているうちにタイムアップになる。」

 

「あ、あの、それに私も美波ちゃんと召喚大会に出るので・・・。」

 

「私も、小鈴と出ることが決定しているので、少し厳しいですね・・・。推薦してくださることはありがたいことですが・・・。」

 

「あ、そうなの?それならごめんね。」

 

結構出る人が多いな~。

私とお姉ちゃんのペアだけじゃなくて、阿求ちゃんと本居さんのペア、美波ちゃんと姫路ちゃんのペアと、3人いるみたいだしね。

さっきの魔理沙のアレは多分、霊夢さんに強制的にとかなのかな?

 

「私は一応やるからには真面目にやるつもりだぞ?」

 

「・・・なら、正邪頼む。」

 

「よし、任せてくれ。だが、黒板に書く役を一人決めたい。」

 

正邪ちゃんは、黒板に書かせる人が欲しいみたい。

 

「なら、とりあえず、誰にやらせたいか、適当に3人程書いてくれ。俺は寝る・・・・・・zzz。」

 

坂本君寝ちゃった。

 

「そうか。それなら・・・」

 

①吉井

②明久

③アキ

 

「この中から決めてくれ。全員バカだけどな。」

 

「ちょっと、それ全部僕じゃないか!それに、さらっとバカ呼ばわりするなんて君はバカだ!」

 

正邪ちゃんは吉井君にやらせたいみたいだ。

多分、面白がってるよあれ。

 

「じゃあ投票を取るぞー。・・・・・・・・・えーと、①が41票、②が7票、③が1票だな。よし、吉井に決まったから頼むぞ。」

 

ちなみに、私は②に投票をしたよ!

寝てる坂本君以外は全員投票をしたみたいだね。

不平を言っても無駄だと悟ったのか、上がっていく吉井君。

 

「とりあえず、意見がある人は手をあげてくれ。」

 

そう言われて、何人かが手をあげる。

よかった、やる気がある人はいるみたいだね。

 

「じゃあ、ムッツリーニ。」

 

「(スック)・・・写真館。」

 

・・・ムッツリーニ君が言う写真館って、なんか嫌な予感がするのは私だけかな?

 

「よし、じゃあ吉井、書いてくれ。」

 

「わかったよ。」

 

【① 写真館『秘密の覗き部屋』】

 

・・・・・・待って、その名前は危ない匂いしかしないよ吉井君。

 

「じゃあ、次進藤。」

 

いや、正邪ちゃんも突っ込もうよ。

 

「メイド喫茶・・・はありふれているだろうし、ウェディング喫茶を提案したいかな。」

 

「ウェディング喫茶?それはどういうものなんだ?」

 

「やることは普通の喫茶店と変わらないけど、店員がウェディングドレスを着ているというものだよ。」

 

「ほー、なかなか面白そうだな。」

 

ウェディングドレスね・・・。

私が着るのもいいけど、お姉ちゃんが着ているのも見たいな。

まあ、もし、お姉ちゃんが誰か男とつきあうなら、そいつを抹殺したうえで、どんな男かを確かめないといけないけどね。

 

「じゃ、吉井、書いてくれ。」

 

「へいへい。」

 

【② ウェディング喫茶『人生の墓場』】

 

・・・・・・待って、吉井君結婚をそう考えているの?

美波ちゃんと姫路ちゃんが不満そうな目で見てるよ?

 

「・・・・・・じゃ、次は魔理沙。」

 

正邪ちゃん突っ込むの諦めたね。

 

「それならカジノとかはどうなんだぜ?生きるか死ぬか、とまでは言わないが、そこそこの賭けを他人がやってるのを見るのは楽しいんだぜ。」

 

「じゃ、吉井、しっかり書いてくれ。」

 

「ほいほい。」

 

【③ カジノ『Dead oa Araive』】

 

・・・待って、名前が物騒とかいう以前にスペルがおかしい。

それを言うなら『Dead or Alive』だよね。

 

「・・・・・・もういいや。次、斎藤。」

 

「俺はお化け屋敷をやりたい。怖さがありつつも客を楽しませ、まるで夢を見ているような奇妙な体験をさせられるのが理想だ。」

 

「・・・吉井、お化け屋敷だ。真面目に書け。」

 

「な、なんだか怖いな。」

 

【④ お化け屋敷『夢○国、ディ○・・・』】

 

「「「アウトーッ!」」」

 

さすがにこれは突っ込むよ!

 

「吉井、それ以上書くな。絶対に書くな。」

 

「で、でも正邪が書けって『いいから書くな!』・・・はい。」

 

よかった、どうにかなったよ。

使者がやってきたら洒落にならない。

 

「・・・じゃあ、最後に須川。」

 

「俺は中華喫茶を提案する。」

 

「中華喫茶?店員がチャイナドレスを着るのか?それとも中華料理を出すのか?」

 

「いや、あくまで喫茶店だから、ウーロン茶とか簡単な飲茶を出すだけになるよ。それに、チャイナドレスで客を釣りたい訳じゃない。最近じゃあヨーロピアン文化が中華料理の淘汰が見られるから、その流れを変えようと一石投じてみたいからな。焼け石に水かもしれないが、水滴が石を穿つとも言う。中華料理は古来からあって、料理文化の中心とも言われていて・・・」

 

この後3分ほど語り続ける須川君。

すごい熱だね。

 

「オーケーオーケー、わかったわかった。吉井、いい加減に真面目に書け。」

 

「せ、正邪、なんか怖いよ・・・?」

 

【⑤ 中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

・・・・・・もう、何も言わないよ。

吉井君が書いた時、がらがらと扉を開ける音とともに鉄人先生が入ってくる。

 

「どうだ、清涼祭の出し物は決まったか?・・・これが候補だな。」

 

【① 写真館『秘密の覗き部屋』】

【② ウェディング喫茶『人生の墓場』】

【③ カジノ『Dead oa Araive』】

【④ お化け屋敷『夢○国、ディ○』】

【⑤ 中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

「・・・補習の時間を倍にしたほうがいいかもしれんな。」

 

「先生!それを書いたのは吉井で、俺達は関係ありません!」

 

「ただ吉井がバカなだけで、俺達に補習は必要ありません!」

 

「全部吉井が悪いんです!」

 

「馬鹿者!みっともない言い訳をするな!」

 

「「「!!!」」」

 

教師として、一人の生徒を生け贄に、自分だけ助かろうとする行為は許せなかったみたい。

一喝に、みんなの背筋が思わず伸びる。

 

「先生は、バカな吉井を選んだ行為がバカだと言っているんだ!」

 

・・・確かにそうだけど、それなの?

いいのかなそれで。

 

「まったくお前らは・・・。少しは真面目にやったらどうだ。稼ぎを出して設備を良くしようという気持ちすらないのか。」

 

「「「!!!」」」

 

その言葉で、さっきみたいにみんながはっとする。

みんなやる気を出したのか、ざわざわし始めるクラス。

なかなかおさまらないから、正邪ちゃんが強引に多数決をとる。

それで・・・多いのは中華喫茶だね。

よ~し、がんばろ~っと!

 




いかがでしたか?
こいしちゃんってチャイナドレス似合いそうですよね。


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第十九話「転校!?」

 

 

「さて、中華喫茶に決まったわけだが、料理がうまい奴はいるか?」

 

「俺は飲茶や胡麻団子はできるから引き受けるよ。」

 

言い出しっぺなだけあり、須川君には自信があるみたいだね。

 

「・・・・・・(スック)」

 

あれ、ムッツリーニ君も?

なんか、意外だね。

 

「あれ、ムッツリーニ、料理なんて出来るの?」

 

「・・・・・・紳士のたしなみ。」

 

紳士のたしなみ?

中華料理が紳士のたしなみというのは聞いたことがないけどね。

もしかして、チャイナドレス目的に中華料理店通っていたら、見よう見まねで出来るようになったのかな?

 

「なるほどな。なら、厨房は須川と土屋を中心にしよう。次は、厨房で料理を担当する厨房班と、客の注文を取るホール班を決めるぞ。厨房班を希望するなら須川の方へ、ホール班を希望するなら私の方に来てくれ。」

 

んー、私はどうしようかなー?

一応、料理はそこそこ出来るんだけど、お姉ちゃんのごはんが美味しくて、あまり作らないからね。

・・・よーし、ホールにしよーっと!

 

「お空はどうするの?私はホール班だよ。」

 

「んー、私もホールにする!」

 

お空もホールにするみたい。

でも、注文を忘れちゃったりしないか不安だな。

・・・ま、いっか!

 

「うぅ・・・、厨房かホールか悩める皆さんが羨ましいですぅ・・・。」

 

横では姫路ちゃんがしょぼくれてた。

・・・確かに、料理が料理だもんね。

姫路ちゃんには悪いけど、殺人料理出したら客いなくなっちゃうし・・・。

 

「大丈夫だよ姫路さん!姫路さんはホールに向いているし、見た目もいいから華がでるよ!」

 

そんな姫路ちゃんに吉井君がフォローする。

お、男らしいね~!

姫路ちゃんも嬉しそうにしてる。

 

「アキ?なら、ウチはどうすればいいと思うかしら?」

 

「美波の料理の腕がわからないからなんとも言えないけど、やりたい方をやればいいんじゃないかな?そっちの方が楽しいからね。」

 

「そういうこと聞いてるんじゃないのに・・・。」

 

吉井君、そこはホール班だよと答えるべきところだよ。

美波ちゃんは結局ホールにしたみたい。

 

「私は厨房班にしましょう。」

 

「お?阿求、料理が出来たのか?」

 

「まあ、それなりに・・・というか、本で過去に読んだ知識とレシピをたよりに作るくらいですが・・・。」

 

「なら、ホールをやった方がいいと思うんだぜ。可愛いんだからな。」

 

「可愛いなんて、ありがとうございます。では、ホールにしましょうかね。」

 

阿求ちゃんと魔理沙が後ろで話してる。

ふたりともホールにするみたいだし、Fクラス女子は全員ホールみたい。

 

「・・・こいしちゃん、この後、時間ある?」

 

「あるけど、どうしたの?」

 

「・・・ちょっとした相談があるのよ。」

 

「うん、わかったよ。」

 

そんなことを考えてたら、美波ちゃんが相談があるみたい。

でも、美波ちゃんの相談ってなにかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?古明地さんも呼ばれたの?」

 

「吉井君もなんだ。うん、私もだよ。」

 

言われた場所には吉井君や木下君もいたけど、どうしたのかな?

 

「・・・アキもこいしちゃんも、ありがとね。実は、相談は学祭のことで、多分アキが一番適任なんだけど、坂本を学祭に引っ張りだせないかな?」

 

「うーん、雄二は興味ないものにはとことん興味がないし、厳しいんじゃないかな?」

 

だよね。

今日の態度から、坂本君は学祭に興味がないのはわかるし。

 

「でも・・・アキと坂本って、仲がいいでしょ?それも・・・ちょっと愛が芽生えるくらいに・・・。」

 

「もう僕お婿に行けないっ!」

 

冗談・・・だよね。

うん、さすがに美波ちゃんも思ってないよね。

 

「でも、仲がいいのは事実よね?」

 

「誰があんな赤ゴリラと!それなら、断然秀吉がいいよ!」

 

「あ、明久よ、すまぬがおぬしの気持ちには答えられそうにないぞい。ほら、歳の差とかもあるからのう。」

 

違うよね。

歳の差問題じゃないよね・・・。

 

「そっか・・・。じゃあ、こいしちゃんや木下はどう?」

 

「んー、吉井君が無理なら私も厳しいと思うよ。」

 

「ワシも厳しいと思うぞい。」

 

愛はともかく、一番仲がいいのは吉井君だもんね。

友達か疑わしくなる時も多いけど。

 

「そっか・・・。これ、本人には言わないで欲しいと言われているけど、事情が事情だから話すわ。言いふらしちゃダメよ。」

 

「う、うん。わかったよ。」

 

美波ちゃんが真面目な調子だけど、それだけ大変なことってことだよね。

 

「実は、瑞希のことなんだけど・・・、あの娘、転校しちゃうかもしれないの。」

 

「・・・え?」

 

転校?

確かに、これは衝撃的なことだね・・・。

 

「ええ、それが・・・ってアキ?」

 

「む、いかん。明久が処理落ちしかけとるぞい。」

 

「アキ!不測の事態に弱すぎるのよ!起きなさい!」

 

固まってふらふらしてる吉井君を揺らす美波ちゃん。

よっぽど衝撃的だったんだね・・・。

 

「秀吉・・・、僕がグラ○ドラインに行っても、好きでいてくれるかい・・・?」

 

どうしてこうなったんだろう。

たまに、吉井君の思考回路がわからないや。

ワ○ピースと姫路ちゃんの転校ってつながらないよね・・・。

 

「起きなさいっ!(ボコッ)」

 

「・・・はっ!?姫路さんが転校って、いったいどういうことなのさ!」

 

よしいくんは しょうきに もどった!

でも、それは私も聞きたいからね。

 

「このままじゃ、瑞希は転校しちゃうかもしれないのよ。」

 

「このまま?なら、確定じゃないの?」

 

「じゃが島田。その姫路の転校の話と、さっきの雄二の件が全くつながっておらんぞ。」

 

だよね。

どういうことなんだろ?

 

「それがそうでもないのよ。だって、瑞希の転校の理由が『Fクラスの環境』なんだから。」

 

あー、なるほどね・・・。

姫路ちゃんは本来Aクラスにいるはずなのに、体調不良による途中退出のせいでここにいるわけだもんね。

劣悪な設備、ライバル心など発生しえないレベルのクラスメイト、すきま風など酷い教室。

クラスメイトには阿求ちゃんいるけど、彼女も本来はAクラスだったもんね。

学年首席だったし。

 

「だから、学園祭を成功させて設備をどうにかしたいのじゃな。」

 

「そういうことよ。それに、瑞希って体が弱いでしょ?」

 

「そういうことなら任せて!きっちり雄二をたきつけてやるよ!」

 

さっきと違ってやる気充分だね。

そのまま電話をかける吉井君。

 

「あ、もしもし雄二?ちょっと話が・・・・・・え?雄二今何してるの?ゆ、雄二!?もしもし!?もしもーし!・・・・・・切れちゃった。」

 

「・・・何があったの?」

 

「よくわからないけど、『見つかっちまった』とか、『鞄を頼む』とか言ってたよ。」

 

・・・指名手配犯かなにかなのかな?

 

「大方、霧島翔子から逃げ回っているのじゃろう。アレはああ見えて異性には滅法弱いからの。」

 

「そうなると、坂本と連絡をとるのは難しいわね・・・。」

 

逃げ回っているなら携帯で連絡しようとしても出ないもんね。

そうなると、校内を探すしかないのかな?

 

「いや、これは考えようによってはチャンスだ。」

 

チャンス?

 

「アキ、どういうこと?」

 

「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況なんだよ、うん。ちょっと3人とも協力してくれるかな?」

 

「うん、私は構わないよ!」

 

「それはいいけど・・・、坂本の居場所は分かっているの?」

 

「大丈夫。相手の考えが読めるのは、何も雄二だけじゃない。」

 

「何か考えがあるようじゃな。」

 

「うん。とりあえず、古明地さんは僕についてきてほしい。で、秀吉と美波は・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、坂本君はここにいるって言いたいの?」

 

私と吉井君は、吉井君が予想した場所に来たけど・・・。

そこには『女子更衣室』って書かれてる。

うん、明らかに男子がいる場所じゃないよね。

 

「うん。きっとここに雄二がいるよ。」

 

・・・わけがわからないよ。

 

「とりあえず、一応説明してね。」

 

「うん。今、雄二は霧島さんから逃げ回るために隠れているでしょ?なら、霧島さんにみつからない場所に隠れなければいけないわけだよ。」

 

・・・わけがわからないよ。(二回目)

 

「だったら、男子更衣室とか、女子がいないところじゃないと思うんだけどな。」

 

「いや、雄二はきっとその逆をとるはずなんだ。」

 

「・・・ま、いっか!でもね吉井君。」

 

「な、何?」

 

「もし、お姉ちゃんがこの中で着替えていたとして、もしそれを吉井君が見た場合、一生を暗闇の中で過ごす覚悟はある?」

 

「・・・い、いやだなあ古明地さん、冗談にしても怖いなー。」

 

冗談じゃないけどね。

 

「でも、きっとここに雄二はいるよ。じゃ、入ろうか。」

 

吉井君が女子更衣室の扉を開ける。

いつでもできるように、私もついていこーっと。

 

「やあ雄二、奇遇だね。」

 

「・・・どういう奇遇があれば、女子更衣室で鉢合わせをするか教えてくれ。」

 

うわー、本当にいたよ。

私が女子更衣室に入ったときに見たのは、その大きな体を小さくして、ロッカーの隅に隠れてる坂本君の姿だった。

 

「坂本君、自分がやってることは、一応わかってはいるんだよね?」

 

今は誰もいないから、先生につきだす気はないけどね。

友達が性犯罪者として捕まるのは気分良くないもん。

 

「まあまあ古明地さん、雄二がバカなのはいつものことだから大目にみてやってよ。」

 

「このうえなく屈辱的だが、今だけは否定できねえ・・・。」

 

まあ、わかっているならよかった。

 

「でも二人とも、誰も来ないうちに出たほうがい『ガチャッ』あっ、お姉ちゃんだ!わーい!」

 

「こいし、離れなさ・・・こいし、ここは女子更衣室よね?」

 

「うん、女子更衣室だよ。」

 

「・・・なんか、私には、この場にふさわしくないものが見えるのだけど、どういうこと?私、幻覚が見えてるの?」

 

「ううん、お姉ちゃんはなんもおかしくないよ。」

 

入ってきたのはお姉ちゃんだね。

おかしいのはお姉ちゃんじゃなくて前の二人だから大丈夫だよ!

 

「ふむ・・・。・・・はあ。霧島翔子から逃げるためだからといって、女子更衣室に入っていいわけがないでしょう・・・。」

 

「ぼ、僕は雄二を連れていこうとしただけで、やましい気持ちはないんだ!」

 

「・・・嘘ではないようですが、理由があっても男子が女子更衣室に入るのはダメということ、わかっていますか?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「・・・まあ、私も被害自体は無いですし、見なかったことにしてあげるのでとっとと去りなさい。」

 

「「ありがとうございます!」」

 

お姉ちゃん優しい!

さすがお姉ちゃんだよ!

ここをダッシュで出ていく2人。

 

「・・・で、こいし。いい加減に離れなさい。」

 

「やーだー!今誰もいないしこのままでもいいじゃーん!」

 

「・・・はあ。誰か来るかもしれないのに。」

 

そう言いつつも、無理に引き剥がそうとしないお姉ちゃん。

やっぱり大好き!

 

「ところでこいし、Fクラスは何をやることに決まったの?」

 

「中華喫茶だよ!お姉ちゃんにも来てほしいな。」

 

「・・・まあ、時間があれば行くわよ。」

 

「やったー!楽しみにしてるね!お姉ちゃん達Bクラスは何をやるの?」

 

「私達は焼きそばの出店よ。」

 

おー、焼きそばかー!

お姉ちゃんの料理はどれも美味しいからワクワクだよ!

 

「・・・で、こいしは戻らなくていいの?ここに来たのも、クラスのことだったんでしょ?私も着替えなくちゃいけないし・・・。」

 

「あ、そうだね。じゃあまたね、お姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、坂本君と吉井君は戻ってないの?」

 

教室にいたのは・・・木下君と美波ちゃんだけだね。

どこいったんだろ?

 

「ああ、あいつらなら一回戻ってきとったが、今は学長室に行ってるぞい。」

 

ふーん、そうだったん・・・ん?

学長室って何したの二人とも・・・あ、覗き容疑かな。

 

「もしかして、覗き容疑で捕まったの?」

 

「覗き?何のことじゃ?あの二人はFクラスの教室の改善を要求しに行っているぞい。」

 

「アキ、覗きをするなんて、これは制裁が必要そうね・・・。」

 

・・・あっ。

・・・吉井君に罪がない・・・訳じゃないけど、美波ちゃんが考えてるのとはちょっと違うし、止められないかな?

 

「ただいまー!ババァと話をつけ肘の関節があらぬ方向に曲がってて折れそうに痛いいいぃ!!」

 

・・・あっ。

なんて最悪なタイミング・・・。

 

「アーキー?覗きなんてするこの悪い目はこれかしらー?」

 

「ちょっ!?美波、平然とチョキをかまそうとするなんて危ないじゃないか!」

 

「美波ちゃんストップ、一回落ち着いてー!」

 

 

~少女説明中~

 

 

「理解はしたけど、坂本は何やってんのよ・・・。」

 

「まあまあ、雄二がバカなのはいつものことだから、大目にみてやってよ。」

 

「当たってたとはいえ、アキのその思考もおかしいでしょ!」

 

だよね。

たまに吉井君、実は天才なんじゃないかと錯覚しちゃうようなことはあるけど。

 

「ところで、坂本君はどうしたの?」

 

「雄二?雄二ならほら、そこに・・・。」

 

そこ?

・・・あっ。

 

「ぐわっ、翔子!まだ追ってきてたのか!」

 

「・・・浮気は許さない。お仕置きが必要。」

 

「待て、浮気なんてしてなぎゃあああああっ!(バチッ、ズルズルズル)」

 

「「「・・・・・・。」」」

 

そこには、霧島さんにスタンガンで気絶させられて首根っこ掴まれて引きずられる坂本君の姿があった。

 

「・・・これは、今日は無理そうじゃな。」

 

「・・・うん、そうだね。」

 

結局、その日は話を聞けなかったよ。

でもまあ、坂本君も学祭に協力してくれるみたいだし、まあいいか!




いかがでしたか?
さとり様はすごい。


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第二十話「一回戦!」

こいしちゃんとさとり様が組めるのはうれしい。
はやくも文化祭開始です!


 

 

 

 

学園祭当日。

あのあと、坂本君が協力してくれたおかげで、無事に準備は進んだよ。

・・・中華喫茶なのに、名前はヨーロビアンだけど。

 

「そういや坂本君、この布はどうやって用意したの?」

 

テーブルとして、Fクラスの汚いみかん箱を使うわけにもいかないから、綺麗な布で隠してテーブルとして使ってるんだけど、これはどうやったのかな?

 

「ん?ああ、これは稗田が持ってきてくれた奴だぞ。」

 

阿求ちゃんか。

それなら納得だね!

 

「そういえば、厨房の方はどうなってるのかな?」

 

店の外観を取り繕っても、出すものが美味しくないとダメだもんね。

ムッツリーニ君担当だけど、どうしたのかな?

 

「・・・・・・心配無用。」

 

「お、ムッツリーニ君。問題はないの?」

 

「・・・・・・(コクリ)上出来。食べてみろ。」

 

ムッツリーニ君は、お盆に載った胡麻団子を差し出してくる。

食べていいんだよね?

 

「お、私も貰っていいか?」

 

「私もいいですか?」

 

「・・・(コクコク)」

 

「「「じゃあ、いっただきまーす!(いただきます。)」」」

 

3人で団子を食べる。

ほわぁ、これは確かに美味しい・・・!

表面はカリカリで、中はモチモチだし、甘すぎないのもいいね!

幸せだな~!

 

「・・・おっ、団子の試食やってるの?なら僕も『残念だな、これは三人用なんだぜ(パクッ)』ちょっと魔理沙!2つ食べるなんて酷いよ!」

 

吉井君、ドンマイだね。

4つの胡麻団子は魔理沙がふたつ食べちゃったし。

 

「僕も食べたかったなぁ・・・(´・ω・`)。」

 

吉井君が悲しみにくれている。

 

「あ、まだ有りましたよ。」

 

「姫路さん、ありがとう!」

 

すると、姫路ちゃんが4つの胡麻団子が載った皿を持ってきてくれたね。

よかったね、吉井君。

 

「!!?ちょっと待て、それは食べちゃダメだ!」

 

あれ、魔理沙がなんかものすごく慌てた感じで吉井君を止めてる。

どうしたのかな?

 

「魔理沙はさっき食べたんだから、僕がこれ食べたっていいじゃないか!いただっきまーす!」

 

「待て、本当にストッ・・・」

 

「ふむふむ、表面はゴリゴリ、中はベタベタ、甘すぎず、酸っぱすぎる味わいがとっても・・・んゴパッ(バタン)」

 

え?

ありえない声をだして、吉井君が倒れた。

 

「「「・・・・・・。」」」

 

場を沈黙がつつむ。

えーっと・・・。

 

「だからダメだと言ったんだぜ・・・。あれは、私が作った失敗作だったのに・・・。」

 

ゑ?

このクラス、殺人料理人が二人もいたの・・・?

 

「というか、あの皿には食べないようにと注意書を書いた紙を貼っておいたはずなんだか・・・。」

 

「え?私が見た時にはその紙、ありませんでしたよ?」

 

「・・・あれ、これじゃない?」

 

それっぽい紙が床に落ちてた。

 

「・・・でも、何で置いておいたの?」

 

「タイミングを見て廃棄しようとしたんだけどな・・・。」

 

「とりあえず、これは廃棄し『おっ、旨そうじゃないか。どれどれ(パクッ)』・・・あっ。」

 

横から来た坂本君が流れるような動作で団子を口に運び、流れるようななめらかな動作でダウンする。

・・・南無三。

 

「ところで、材料は何を使ったの?」

 

「・・・ええと、まずはそこに生えてた赤と黄色のマーブル模様のキノコと」

 

「・・・これはいますぐ廃棄しましょう。」

 

「「「異義なし。」」」

 

阿求ちゃんの提案に、みんな賛成する。

二人とも、大丈夫かな・・・?

 

「「またまた死神が怒られてる・・・はっ!?」」

 

あ、目覚めた。

 

「吉井君、坂本君、大丈夫?あれは魔理沙が作った失敗作だったみたいだけど・・・。」

 

「「まあ、風見先生のアレよりは、全然マシだったからね。(からな)」」

 

本当にトラウマだったんだね・・・。

と、もう召喚大会の時間だね。

行かなくちゃ。

 

「じゃあ、私は召喚大会に行ってくるね~!」

 

「あ、いってらっしゃい。頑張ってくださいね。」

 

「おう、行ってこい。」

 

「頑張ってね!」

 

みんなの声を聞きながら、お姉ちゃんとともに、召喚大会に向かうよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、召喚大会の一回戦を始めます。出場者は前に出てきてください。」

 

「お姉ちゃん、頑張ろうね!」

 

「ええ、頑張りましょ。」

 

今の私はやる気充分だよ!

一回戦は数学みたい。

 

「・・・あら、さとりさんでしたか。私も負けませんよ!」

 

「星、空回りしないでよ。」

 

「大丈夫です!数学は得意科目なので、この毘沙門天の威光のもと、ひれふさせてみせます!」

 

「・・・不安だなあ。」

 

相手は・・・以前魔理沙とひきわけた虎丸さんと、知らない人だね。

でも、親しいのはわかるよ。

 

「こいし、早速行くわよ。」

 

「うん!」

 

「「サモン!」」

 

「こちらだって負けませんよ!」

 

「「サモン!」」

 

みんなが召喚獣を呼び出す。

えーと、みんなの点数は・・・

 

『Bクラス 古明地さとり 数学 211点 & Fクラス 古明地こいし 数学 178点』

 

VS

 

『Bクラス 虎丸星 数学 419点 & Cクラス ナズーリン・ペンド 数学 135点』

 

結構差があるね・・・。

私とお姉ちゃんの点数を足しても、虎丸さんに及ばないし・・・。

ナズーリンさんの武器は・・・なんだろ?

なんか曲がった棒みたいなのを持っているけど、あれが武器なのかな?

 

「こいし、星さんは私が引き受けるから、こいしはナズーリンさんを倒してちょうだい。」

 

「わかったよ~!」

 

ナズーリンさんなら、私の点数でも上回ってるし、なんとかなるかな?

まあ、虎丸さんの流れレーザーは怖いんだけどね。

 

「では、早速決めさせてもらいますよ!商品券のためです!」

 

虎丸さんはレーザーを放つ。

やっぱり、軌道が読みにくいね・・・。

でも、お姉ちゃんはその全てを回避し、時々ハート型の弾を撃って削っていってる。

さすがお姉ちゃん!

 

「こいし、早く加勢しなさい!こう見えて、結構ギリギリなのよ。」

 

「あ、ごめん!」

 

ナズーリンさんを倒さないとね。

触手のようなものと曲がった棒が、互いを倒そうと動く。

点数の差があるおかげで、私が今は押してるよ!

 

「くっ、厳しいね・・・。」

 

「そっちも操作、うまいね。」

 

「・・・まあ、Aクラスの時に少し慣れたからね。」

 

「ナズ、大丈夫ですか!?」

 

「・・・こっちの心配もいいけど、しっかり当ててよね。」

 

「こっちはしっかりやってますよ!相手が凄いんです!」

 

「そうだよ、お姉ちゃんがすごいんだよ!」

 

「こいし、恥ずかしいから向こうの会話に割り込むのはやめなさい・・・。」

 

だってお姉ちゃんはすごいんだもん。

それに、口を挟みながらもしっかり召喚獣も動かしてるからね。

 

「これで・・・っと!」

 

「・・・なっ!?」

 

私の触手を受け止めたナズーリンさんの召喚獣に、足払いをかけてバランスを崩させる。

うん、チャンス!

武器をナズーリンさんに突き刺し、点数を削り取る。

 

「ぐっ・・・!あとは任せたよ、星!」

 

「ナ、ナズーリンー!!」

 

『Fクラス 古明地こいし 数学 141点 & Cクラス ナズーリン・ペンド 数学 0点』

 

ちょっと削れたけど、なんとか倒せたね!

お姉ちゃんは・・・

 

『Bクラス 古明地さとり 数学 173点 & Bクラス 虎丸星 数学 244点』

 

すごい、だいぶ点数差が縮まってるよ!

私も加勢に・・・

 

「・・・こいし!右に飛びなさい!」

 

「・・・えっ?えいっ!」

 

お姉ちゃんが突然、右に飛べと言ってくる。

よくわかんないけど、お姉ちゃんだし、理由はあるはず!

すぐに飛ぶ。

すると、一瞬前まで私がいたところに、太いレーザーが突き抜けてった。

 

「二人とも外しましたか・・・。」

 

「おしいですね。ですが、かなりいい手だったと思いますよ。私の接近の瞬間、こいしが射線上に入るようにレーザーを放つのは。」

 

言葉とともに、お姉ちゃんが至近距離でハートの弾幕を放つ。

避けられるはずもなく、被弾する虎丸さん。

これで勝ちだね!

 

『Bクラス 古明地さとり 数学 117点 & Bクラス 虎丸星 数学 0点』

 

「ああ、商品券がぁ・・・。」

 

「まあ、しょうがないよ。星にしては頑張ったよ。」

 

「ちょっと!星にしてはってどういうことですか!」

 

ずーんとへこむ虎丸さんと、それを慰める(?)ナズーリンさん。

 

「勝者は古明地姉妹ペアですね。4人とも、お疲れさまでした。」

 

先生が、私達の勝利を告げてくれる。

 

「やったね、お姉ちゃん!」

 

「ちょっと、だから抱きつくのはやめてって・・・」

 

嬉しくて、ついお姉ちゃんに抱きついちゃったけど、しょうがないよね!

これで、1回戦突破だよ!

 




いかがでしたか?
魔理沙の団子は姫路ちゃんの料理に比べて致死量は低いですがものすごい危険なのは変わらす。
それと、しばらく明久視点と交互になります。


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第二十一話「一回戦!sideA」

 

 

 

 

「さて、古明地さんや稗田さんは大会に行ったし、僕たちもそろそろ行こうよ。」

 

「ああ、そうだな。」

 

あのババァのせいで、なんかなし崩し的に出場することになったから、古明地さんや稗田さんみたいに自分で希望したわけじゃないけど、それとこれとは話が別。

設備を良くして、姫路さんの転校を阻止するために優勝目指して頑張ろう!

それに、優勝商品には商品券があるみたいだから、塩と水だけの生活を一時的でも脱却できるしね。

やる気を胸に、大会の会場まで移動する。

 

「やっと来たね、吉井君。坂本君。相手はもう待機してるからはやくステージにあがってよね。」

 

「あ、ごめんなさい、河城先生。」

 

「うっす、すぐいきます。」

 

そんな僕達に声をかけてきたのは河城にとり先生。

数学の先生なんだけど、機械いじりと発明が好きで、時々不思議なものを持って来てる。

噂によると、ババァ長に協力してこの試召システムを開発したなんて言われてたりするけど、どうなんだろ。

別の噂では、自身の発明がいくつか特許とってるとか、以前は世界的に有名な会社の技術部にいたとか、発明中は水だけで1ヶ月部屋にこもってたことがあるとか、謎が多い先生なんだよね。

まあ、それはともかく今はステージに登る。

えーと、僕達の対戦相手は・・・と。

 

「おぬし・・・確か皿の破片踏んで痛がってた奴じゃったな。名前は確か・・・吉井アホ久じゃったか?」

 

「違うよ!なんだよアホ久って!人の名前をアホ呼ばわりするなんて酷いじゃないか!」

 

僕をいきなりアホ呼ばわりしてきたのは、確かDクラス戦で戦った物部さんだったかな。

まったく、失礼なもんだよ。罵倒するならそこの赤ゴリラにしてほしいものだね。

 

「おい布都、人の名前をアホ呼ばわりするのは失礼すぎるし、アホはお前だ。」

 

「なんじゃと!!おぬしだって今は我のことをアホと行ったじゃろう!アホって言う方がアホなんじゃ、このアホめが!」

 

「吉井君、こいつがすまなかったな。こいつは見ての通りアホだから、気にしないでやってほしい。」

 

「大丈夫だ、こいつはアホと呼ばれて喜ぶようなマゾだからな。」

 

「・・・うわ、そうだったのか。」

 

「ちょっと雄二、なに事実無根なことを言ってるのさ!僕はいたってノーマルだよ!だからそんな引いた目で見ないで!」

 

「おい、我を無視するでない!」

 

「あの、君達?そろそろ召喚してもらっていいかな?」

 

「「「「あ、はい、ごめんなさい。」」」」

 

カオスになりかけていたこの場をとめたのは河城先生だった。

額に怒りマークがうっすら見える。

正直、地味に怖い。

全員で謝っちゃった。

 

「雄二、あとで白黒つけてやる、サモン!」

 

「上等だ、返り討ちにしてやらあ、サモン!」

 

「む、我がアホの子でないことを証明してやるわ、サモン!」

 

「空回りする未来しか見えないな・・・、サモン!」

 

四人が召喚獣を召喚する。

僕の召喚獣は相変わらずの改造制服に木刀。

物部さんのも前回と同じ皿スタイルだ。

雄二の武装は・・・?

 

「あれ、雄二?武器はどこやったの?」

 

雄二の召喚獣はなにも持ってなかった。

白い改造制服着ているだけのように見える。

もしかしたら、東風谷さんの召喚獣みたいに、素手でも必殺技みたいなのがあったり、なんか弾幕を撃てたりするのかな?

 

「明久、よく見ろ・・・。手元にメリケンサックをつけているだろう?」

 

「うわっ、雑魚だ!雑魚がいる!」

 

「クラス代表がメリケンサックってどうなんだよ・・・。というか、このコンビ、まるでチンピラだな。」

 

「これはもう、我らが勝ちをもらったようなものじゃな!」

 

物部さんと隣の女子生徒が呆れたりおごったりしてる。

ちなみに、その女子生徒の召喚獣は・・・幽霊のような下半身と、緑の服だね。

武器はなんかギザギザした刀みたい。

しかし、点数がバカみたいに高いならともかく、雄二の点数ごときじゃなあ・・・。

ちなみに、点数はどうなんだろ?

表示されている点数を見る。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 63点 VS Dクラス 物部布都 数学 57点』

 

『Fクラス 坂本雄二 数学 159点 VS Cクラス 蘇我屠自子 数学 132点』

 

「ち、ちょっと雄二!なんでそんなに点数が高いんだよ!?Bクラス並みの点数じゃないか!」

 

「ああ、前回の試召戦争以来、本気で勉強しているからな・・・。」

 

「へー、それはまた珍しいね。どうして勉強を?」

 

コイツはそんな風に勉強するタイプじゃないとおもってたから意外だ。

 

「・・・・・・前に、翔子に聞かれてな。」

 

「何を?」

 

「・・・式は、和風と洋風、どちらがいいか、と。」

 

「・・・霧島さんは一途だね~。」

 

「しかも『・・・私は洋風がいい』と聞いてもないのに言い出して、本居小鈴の図書館で式場やドレスを調べた上で、東風谷早苗にドレスの製作を依頼しやがった・・・。しかもあいつも承諾して、どんどん既成事実が出来上がっていきやがる・・・!」

 

「ごめん雄二、東風谷さんがドレス作れるということが一番驚きだったよ。」

 

東風谷さんってすごいね。

古明地さんや魔理沙から聞いた話で、家事全般得意ってことは知ってたけど、ドレスまで作れるなんて。

霧島さんも、友人が作ってくれるのは嬉しいだろうし、素晴らしい計画だね。

雄二にとっては嫌みたいだけど。

 

「俺はもう負けられない!でないと、俺の人生は、俺の人生は・・・!」

 

「落ち着いて雄二!きっといい結婚生活が待ってるから!」

 

壊れた雄二が暴れださないようにはがいじめにする。

それにしても、霧島さんみたいな美少女にそこまで思われているなら、普通は喜ぶものなのに、雄二は贅沢ものだなあ。

 

「・・・あの二人、もしかして布都と同じくらい変人なんじゃないか?」

 

「おい、だから我を変人扱いするでない!」

 

向こうで蘇我さんが失礼なことを言ってる。

まったく、雄二と一緒にしないで欲しいな。

というか、そろそろ雄二を正気に戻した方が良さそうだ。

河城先生が怖い。

 

「ほら、雄二起きて。(ボコッ)」

 

「婿入りは嫌だ・・・!霧島雄二なんて死んでもごぼぁあ!はっ!?」

 

よし、雄二が正気に戻った。

古来から伝わる、壊れた機械の直しかたは雄二にも通じるんだね。

 

「じゃあ始めるよ。二組とも頑張ってね。」

 

河城先生が開始の合図をする。

なんだかんだあったけど、戦いのはじまりだ。

 

「よし屠自子よ!我は左に行くから、おぬしは右から攻めるのじゃ!」

 

「まあいいが、失敗するなよ?」

 

相手の二人が左右に散開して攻めてくる。

さて、もう勝負は始まっているし、ここは挑発でもして揺さぶろうかな。

 

「ふっ、物部さん。前回負けたのに、今回もまた負けにくるとはね。」

 

「いや、おぬしは途中で交代したじゃろ。」

 

「前回は物部さんの方が点数高かったのに負けたのを忘れたのかな?今回は、点数でも僕が勝ってるのにね。」

 

「だからおぬしは途中で交代したではないか。それに、今回はあの女子二人がいないうえにこやつがいるから、我が有利であろう?」

 

む、正邪と古明地さんは評価されているけど、僕や雄二は低く見られてるな?

 

「やれやれ、俺達も舐められたものだな、明久。」

 

「まったくだよ雄二。どうやらあの二人には、僕達の完璧なコンビネーションによる強さがわかっていないようだね。」

 

「なに!?おぬしら、まさか実は強いのか!?」

 

「布都、油断するなよ。」

 

どうやら蘇我さんには僕達の強さがわかったみたいだね。

その強さ、物部さんにも見せてあげるよ!

 

「さて、明久!」

 

「おう、雄二!」

 

僕達の間に言葉は不要。

軽く視線をかわしただけで、互いの意思を読み取ることができる。

もはや一心同体といえるこのコンビの実力、今見せてあげよう!

 

「「後は任せた!」」

 

僕と雄二は同時に左右に飛ぶ。

・・・ん?同時?

 

「ちょっと雄二!雄二が任せちゃダメじゃないか!雄二は点数は高いんだからここは雄二が行くべきでしょ!」

 

「てめえこそ働きやがれ明久!俺は試召戦争での召喚経験がねえだろうが!少しは役にたて!」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すよバカ雄二!」

 

「野郎、表に出やがれ!」

 

「上等だ!」

 

互いの胸ぐらをつかみあう僕と雄二。

まずはこいつを葬るのが先だ!

 

「・・・・・・あやつらは、何をしておるのじゃ。」

 

「・・・見るな布都。チンピラがうつる。」

 

・・・おっと、しまった!アホ見るような目で見られてしまってる!

 

「あー・・・コホン。どうだい、僕らの凄さ、つたわったかな?」

 

咳払いをして、二人に告げる。

 

「・・・アホじゃな。」

 

「・・・アホだな。」

 

残念、二人にはこの凄さがわからなかったみたいだ。

 

「じゃあ仕方ない!実力行使だ!さあ雄二、作戦を見せてくれ!」

 

「そこは自分で考えろよ!・・・まあいい、作戦ならある。最も楽に勝てる方法がな。」

 

「お、なになに?」

 

まさかこの短時間でそんな作戦を考えるなんてね。

さすがは元神童といわれるだけはある。

 

「まず明久が物部をひきつけて・・・」

 

「ふむふむ。」

 

「・・・その間に明久が蘇我を倒すんだ。」

 

「それってただ僕が二人と戦うってだけじゃないか!」

 

楽に勝てるって、雄二が楽に勝てるって意味だったのかよ!

 

「さあ行くぞ明久!一人一殺だ!」

 

「結局作戦なんてないんじゃないか!まあいいや、行こう!」

 

僕の召喚獣を物部さんの召喚獣のほうへ向かわせる。

さあ、今回は勝つよ!

 

「む、やはりおぬしが相手か。向こうは頼んだぞ、屠自子よ!」

 

「やってやんよ!」

 

物部さんは皿を投げて攻撃してきたはずだから、距離をあけると不利なはず。

なら、いっきに近づく!

 

「そりゃっ!」

 

そのまま木刀を物部さんの召喚獣めがけて降り下ろす。

 

「そんなもの、当たらぬわ!」

 

それを横にずれて難なく回避する物部さんの召喚獣。

そのまま、お返しとばかりに手に持った皿を降り下ろしてくる。

でも、点数は僕の方が上だし、回避はできる!

 

「隙ありイィィィーッ!」

 

そして、かわされて若干体勢を崩した召喚獣の背中に、木刀による一撃を叩き込む。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 63点 VS Dクラス 物部布都 数学 31点』

 

よし、点数を減らせた!

 

「なかなかやるではないか!前回は少し手加減したが、今回は手加減せぬぞ!痛いのを覚悟しておけ!」

 

そう言いつつ、物部さんはふたたび攻撃してくる。

でも、さっきと同じように回避して、攻撃を、撃つ!

 

「むっ・・・!」

 

だが、前回とは違い、物部さんは皿で木刀をガードしていた。

でも、あくまでそれは皿。

木刀の一撃を防ぎきれはせず、粉々に砕け散る。

割れた瞬間、後ろにバランスを崩したように動く物部さんの召喚獣。

よし、これでとどめ・・・ッ!

ぎゃあ!足の裏に陶器の欠片が大量にささったような痛みが!

その痛みで、攻撃を外してしまう。

 

「かかったな!今度はこっちの番じゃ!」

 

必殺の一撃を外したことによる大きな隙。

そこをつかれ、吹き飛ぶ僕の召喚獣。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 14点 VS Dクラス 物部布都 数学 31点』

 

攻撃を受ける瞬間、とっさに両腕をクロスさせて勢いを殺したけど、だいぶ持ってかれてしまった。

点数も逆転されて、かなり厳しい状況。

そして、物部さんが追撃で投げてきた皿がすぐ近くまで迫ってきていて、回避ももう無理。

点数的にも、これを受けたら間違いなく僕の召喚獣は戦闘不能になる。

でも、僕は負けるわけにはいかないんだ!

 

「やられるかあああーっ!」

 

とっさの判断で、木刀を手放し、真剣白羽取りの要領で迫ってきた皿をキャッチする。

そのまま、物部さんめがけて皿をおもいっきり投げつける。

 

「二回も同じようにやられはしないわ!」

 

それを回避する物部さん。

 

「って屠自子、危ない!」

 

僕が投げ、物部さんが避けたた皿がたまたま蘇我さんの方に飛んでいく。

そっちには、拳で剣と互角にわたりあってるおかしな召喚獣がいた。

見たところ、雄二が優勢だ。

 

「え?・・・うわっ!」

 

飛来する皿に当たって体勢を崩した蘇我さんの召喚獣。

その隙を逃さず、雄二の召喚獣が拳を叩き込む。

 

『Fクラス 吉井明久 数学 132点 VS Cクラス 蘇我屠自子 数学 0点』

 

そのまま蘇我さんの召喚獣は戦闘不能に。

これで2対1。

 

「くっ、これは厳しいの・・・!」

 

雄二による拳の嵐と、僕の木刀が物部さんを襲う。

数でも点数でも劣る物部さんは防戦一方だ。

 

「・・・・・・第三者の観点からすると、吉井君、坂本君ペアは早急に負けて欲しいものだね。」

 

河城先生が呟く。

だよね。

一人の女の子を武装チンピラコンビがリンチしてるようにしか見えないもの。

当事者じゃなかったら、僕だってそう思うよ。

 

「これで・・・終いだっ!」

 

ダメージ覚悟で、僕が物部さんのガードを破り、雄二が拳をみぞおちに叩き込む。

100点を超える点数の一撃を耐えられるわけがなく、物部さんの召喚獣は戦闘不能になる。

よし、これで一回戦突破だ!

 

『Fクラス 吉井明久 数学 7点 and Fクラス 坂本雄二 数学 107点 VS Dクラス 物部布都 数学 0点 and Cクラス蘇我屠自子 数学 0点』

 

「そこまで。勝者は吉井君、坂本君ペアだね。4人とも、お疲れさま!」

 

河城先生によって勝利の軍配があげられる。

 

「まずは一勝だな。」

 

「うん、まずは一勝だね。」

 

おっと、そういえばやらなきゃいけないことがあったんだったね。

そして、僕と雄二は向き合う。

 

「それじゃ、改めて・・・」

 

「うん。」

 

二人の意見が一致したのが、言葉を交わさなくてもわかる。

友情を確かめるため、互いに手を出す。

 

「さっきの決着をつけるぞクソ野郎!」

 

「それはこっちのセリフだよバカ野郎!」

 

勝利の余韻のなか、僕らは互いに友情を確かめあった。




いかがでしたか?
アホ久は我ながら語感がよくて好き。


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第二十二話「罪と罰!」

今回は大会ではないです。
常夏コンビ初登場。


 

 

 

「じゃあこいし、またあとでね。クラスのほうも頑張りなさいよ。」

 

「うん、頑張ってくるよ!お姉ちゃんも、来てくれるならサービスしちゃうよ!」

 

お姉ちゃんとわかれて、クラスに戻る。

クラスのほうも頑張らないとね!

 

「あ、こいしちゃん!Aクラス戦以来ですね!」

 

「あ、早苗ちゃん!ひさしぶり~!」

 

「あんはは・・・たひかこへいひよね?」

 

その途中、たまたま早苗ちゃんと出会う。

隣にいるのは確か天子さんだっけ?

色々な食べ物持って、今も食べてるみたい。

 

「こいしちゃんはどうしたんですか?」

 

「ん、私?私は召喚大会の帰りだよ!」

 

「あ、私もですよ!そのついでに、天子さんと出店を回っているんですが・・・、天子さん、さっきからずっとはしゃいでまして・・・。」

 

「あによ、あはひはへふにははいへはいわよ。」

 

天子さん、もの食べながらしゃべってるから、何言ってるか全然わかんないや。

 

「天子さん、ものを食べながらしゃべるのは、行儀が悪いですよ。」

 

「・・・(ゴクン)そういやFクラスは確か中華喫茶だったわよね?」

 

「うん、そうだよ!早苗ちゃんも、比那名居さんも、よかったら来てね!」

 

「私は天子でいいわよ。それで、Fクラスはどこ?」

 

「あ、私が案内するよ!あと、私もこいしでいいよ!」

 

「それはありがとね。ほら早苗、次はFクラスに行くわよ!」

 

「はいはい、天子さんやっぱりはしゃいでますよね。」

 

早苗ちゃんと天子さんを連れて、私はFクラスに戻る。

 

「ちなみに、どんな感じなの?」

 

「えーとね、店名は『ヨーロビアン』で、主に胡麻団子と飲茶を売りにしてるよ。」

 

「「中華喫茶なのに、ヨーロビアン・・・?」」

 

うん、普通おかしいと思うよね。

私もそう思うよ。

でも、魔理沙のアレ以外のは美味しいし、気に入ってくれるといいな。

歩いてると、Fクラスがちかづいてくる。

 

「おいおい何だよこのきったねえ机はよ!」

 

・・・ん?

今のはFクラスからだよね?

 

「こんなきったねえ箱使って食品扱うなんて、衛生管理がなってねえだろ!」

 

また別の声が聞こえてくる。

Fクラスに普通の机なんてないから、みかん箱にテーブルクロスをかけて机にしていたけど、その下を見た客が騒ぎ立ててるというところだよね多分。

一応、みかん箱もテーブルクロスも、アルコール消毒で殺菌してるし、クラスもしっかり清掃はしたから、衛生面の問題はないんだけどね。

ちょっと、様子を見てこようかな。

 

「ちょっと待っててくれる?私は中の様子見てくるから。」

 

二人に声をかけて、一度厨房に行ってから、私はクラスの中に入る。

中ではやっぱり、文月学園の制服を着た、二人の男がテーブルクロスをひっぱがして騒いでた。

一人はモヒカン、もう一人は坊主だけど、見たことないから3年の人かな。

 

「とっとと責任者を出せ!」

 

うーん、今坂本君召喚大会の真っ最中なはずだから、来ることが出来ないんだよね・・・。

一応、私も代表補佐的な立場だし、ここは私が対応しようかな。

とりあえず、はじめは礼儀正しく、何が不満なのかを聞かないとね。

 

「お待たせしました。私が代表補佐の古明地と申します。何かご不満がおありでしょうか?」

 

「おう、このきったねえ箱だよ不満は!なんなんだよこれは!」

 

「そうだそうだ!こんなんで体を壊したらどう責任とりやがる!」

 

なんというか、声を荒らげて因縁をつけてくるこの二人、チンピラみたいだよね。

もちろん態度には出さないけど。

 

「その件についてはご安心ください。テーブルも、テーブルクロスも、アルコール消毒をきちんとしております。ですので、お客様の健康に害を与えることはありません。」

 

「そういうことじゃねえんだよ問題は!」

 

でも、これで納得してくれないみたい。

 

「では、どういうことなのでしょうか。」

 

あくまでも丁寧に聞く。

でもやっぱ、こういう態度は慣れないな。

自分で言ってて違和感感じるもん。

 

「見た目が汚ねえんだよ!こんな場所で食わされるこっちの身にもなりやがれ!」

 

「こんなところで喫茶店やるなんて、客の気分を害するだろうが!」

 

「教室はきちんと清掃し、見た目も綺麗にしております。それに、そのテーブルもテーブルクロスで、お客様が不快な思いをされないためにつけております。」

 

「ぐっ・・・!と、とにかくFクラスのような汚い教室で喫茶店をやるなんて気分が悪くなるだろうが!」

 

そんな坊主頭の主張。

・・・うん、さっきから気づいていたけど、この2人は敵だね。

だったら、こっちもそのつもりで対処しないと。

丁寧語は崩さないようにはするけどね。

 

「お客様はFクラスは汚いから嫌だと言われましたが、それなら何故、Fクラスに来られたのでしょうか?先程の発言から、お客様はFクラスが汚いところだと思っているみたいですが、それならわざわざここに来たのか不思議だと思われませんか?」

 

「ぐっ・・・!そ、それは・・・!」

 

そこまで考えてなかったのか、言葉につまった様子をみせる二人。

 

「ともかく、他のお客様のご迷惑になりますので、店内ではお静かに願います。」

 

「んなっ!?もとはといえばお前らが原因だろうが!責任をなすりつけてんじゃねえっ!」

 

モヒカンと坊主がさわぎたてるけど、まわりの人達は私達じゃなくてその二人の方に不快感をしめしてくれてる。

もし、私が当事者じゃなかったとしても、あれは言い過ぎと感じるもんね。

それと、モヒカンが常村、坊主が夏川っていうみたい。

 

「・・・チッ!もういい!行くぞ夏川!」

 

クレーマー二人は退散していく。

・・・というストーリーでもよかったかもしれないけどね。

クラスのためにも、私は鬼になるよ。

 

「お待ちください。では、お詫の品を渡したいと思います。」

 

「おっ?やっと自分達の非を認めやがったか!」

 

「で、何をくれるってんだ?」

 

うわー、この二人、なんかすごく嬉しそうにしてるよ。

何想像したんだろう。

 

「こちらの特製胡麻団子でございます。味は保証しますよ。本来はかなり高いものですが、お詫びの品なので、お代は結構です。」

 

「ほうほう、じゃあいただくとするか。」

 

二人がそれを口に運ぶ。

 

「「ふむふむ、表面はゴリゴリ、中はベタベタ、甘すぎず、酸っぱすぎる味わいがとっても・・・んゴパッ(バタン)」」

 

うん、計画通り。

さっきの魔理沙が作った胡麻団子、このクレーマー達と話す前にふたつだけ回収しといたんだよね。

殺傷能力は充分にあるから、これでこの二人も改心してくれればいいんだけど・・・。

 

 

 

 

 

 

教室に死体を放置しとくわけにもいかないから、ずるずるとひきずって移動させる。

でもこの死体、どうしようかな?

かなり重いし、近場の人目のつかない場所に捨てておければいいんだけど・・・。

 

「早苗ちゃん、天子さん、待たせてごめんね?もう大丈夫だよ!」

 

とりあえず、待たせてた二人に声をかけることにする。

 

「ん?こいし、その二人がクレーマー?」

 

「うん、そうだよ。」

 

「あはは・・・また派手にやりましたね・・・。」

 

「そう?私だったらこんなもので済ますつもりはないし、こいしは優しいと思うわよ。」

 

天子さん、恐ろしいよ。

 

「まあそれはいいとして、案内してくれない?あと、そのクズ共はそっから投げ捨てとけばいいんじゃない?」

 

「天子さん、それはダメですって!死んじゃいますから!」

 

窓をあけて捨てようとした天子さんを早苗ちゃんが慌ててとめる。

・・・ちなみに、ここ2階だよ。

 

「(ガラッ)古明地、そいつらの処理は私がやっとくから、その二人を案内してやってくれ。」

 

処理について考えていると、出てきた正邪ちゃんがかわりに処理してくれるって言ってくれた。

 

「ありがとね!正邪ちゃん!」

 

「・・・ま、まあ私には多分そのクレーマーの対処をうまく出来なかったと思うしな。だから気にしないでくれ。」

 

正邪ちゃんが引きずっていく。

私は首根っこつかんでたけど、正邪ちゃんはわざわざうつぶせにしてから足をひっぱってるから、顔が地面にゴリゴリあたってる。

痛そー。

 

「じゃあ、二名様、ご案内~!」

 

正邪ちゃんに任せ、私は案内する。

早苗ちゃんも天子さんも、胡麻団子と飲茶に大満足してくれたみたいだし、よかったよ!

そして、接客したり、さっきのことを坂本君に話したりしてたら、いつのまにか第二回戦の時間だね。

よーし、次も勝つよ~!

 




いかがでしたか?
こいしちゃんと天子さんが友人になりました。


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第二十三話「想起『テリブルスーヴニール』!」

今回は2回戦。


 

 

「・・・こいし、遅いわよ。」

 

「ごめんねお姉ちゃん、クラスでちょっと問題あって遅くなっちゃった。」

 

お姉ちゃんと合流する。

次に余裕ができた時、お姉ちゃんのBクラスにも行きたいな。

焼きそば楽しみだな~!

 

「・・・まったく、焼きそば食べたいなら、わざわざ来なくても私が作ってあげるのに。」

 

・・・・・・!!?

 

「お姉ちゃん大好き!!」

 

「ひゃっ!?だ、だからだきつかないでって言ってるでしょ!」

 

引き剥がされちゃった。

残念。

でもまあ、今は大会に集中しないと!

 

 

 

 

 

 

「・・・げっ、お前らかよ!」

 

二回戦の対戦相手は、えーと・・・誰だっけ?

・・・あ、そうだ!藤○君だ!

 

「・・・こいし、彼は根本よ。」

 

あれ、そうだっけ?

姫路ちゃんからラブレター奪ったクズで女装趣味ということしか覚えてないや!

覚える価値ないし!

 

「ところで、隣の人は誰?」

 

「えーと・・・、確か小山さんだったわね。Cクラスの代表で、根本の彼女だったはずだわ。」

 

へー、あの人が小山さんなんだ。

・・・男を見る目がないみたいだね。

 

「・・・男を見る目が無いって可哀想だよね。」

 

「ちょっと失礼ね!」

 

あ、声に出ちゃったみたい。

 

「と、とりあえずとっとと勝負を始め『待ちなさい。』・・・なんだよ。」

 

話が良くない方向に進んでいきそうなことを察したのか、根本がとっとと勝負を開始しようとしたが、お姉ちゃんはそれを止める。

 

「さて根本、この際だから改めて言わせてもらいますが、あなたのふるまいはクラス代表として、あまりにもふさわしくないものです。あの戦いの時もそうです。あの日のあと、何故あそこまで怒っていたかこいしから聞きました。」

 

「・・・そ、それが何だと言うんだよ。」

 

「・・・反省はしないのですね。それなら、私はBクラスの一員としてではなく、古明地こいしの姉としてあなたに怒りをぶつけます。ああいう手口は、私が最も嫌うものです。・・・小山さん。」

 

「・・・なに?」

 

「実は私、このようなものをたまたま持っていまして。そこにいる根本の晴れ姿が映っていますよ。」

 

お姉ちゃんは懐から本を取り出す。

・・・ってあれ、もしかして。

 

「!!?待て古明地!止めろ!反省するから!」

 

お姉ちゃんが取り出したのは、『生まれ変わった私を見て!』というタイトルの写真集。

中には、根本の女装写真がたくさん。

若干禍々しいオーラを感じるそれを、どうするのかな?

 

「・・・今更遅いですよ。さあ、ここからが本番です。トラウマを呼び起こす恐怖の記憶で眠りなさい。・・・小山さん。これを見たいのなら、負けを宣誓してもらえませんか?」

 

「古明地ッ!お前は鬼か!?」

 

うわー、相当エグいね、これ。

このままだと、根本には黒歴史を彼女に見られて試合にも負けるっていう最悪の展開が待ち受けることになる。

 

「・・・わかったわ。私達の負けよ。」

 

「話がわかりますね。ではこちらを。」

 

小山さんが受諾し、お姉ちゃんが写真集を渡す。

お姉ちゃんを無理矢理に止めようとした根本を、美波ちゃんに教わった関節技で制裁しつつ、小山さんが写真集を眺めるのを確認する。

根本の叫びと、小山さんが写真集をぱらぱらとめくる音だけが聞こえる。

 

「ということで、私達の勝利でいいよね?」

 

「・・・あ、はい!勝者は古明地姉妹ペアです!」

 

その写真集がどんなものか気になるのか、小山さんの手元をじっと見つめてた先生に声をかけると、我にかえった様子の先生が勝利を宣言してくれた。

うん、これで2回戦突破だね。

根本を放して、私とお姉ちゃんはこの場を去る。

 

「・・・別れましょう。」

 

「ま、待ってくれ優香!これには事情があったんだ!」

 

・・・後ろから聞こえてきた声はしーらないっと!

 

 

 

 

 

 

 

「・・・さて、戦いがすぐに終わったから、少し時間が余ったわけだけど、Fクラスに行ってみてもいい?」

 

「もちろんだよ!たくさんサービスするね!」

 

お姉ちゃんが来てくれるなら、最高のおもてなしをしないと!

お姉ちゃんを連れて、Fクラスに戻る。

 

「・・・もしかして、あまり繁盛してないの?」

 

「いや、さっきまでは人がもっといたと思うんだけど・・・。」

 

さっき大会にいた時より、明らかにお客さんの姿が減ってる。

何かあったのかな?

 

「いらっしゃいませ!・・・あっ、こいしちゃんとさとりちゃん!試合は勝てたの?」

 

ドアを開けて入ると、お空が私達に寄ってきた。

 

「うん、勝てたよ!・・・ところで、いつからこんなに人すくなくなったかわかる?」

 

「んー、こいしちゃんが出てすぐ、いきなりお客さんが少なくなったんだよねー。徐々にじゃなくて、ほんとに突然減った感じだよ。」

 

お空によると、なんの前触れもなく減ったみたい。

どういうことなんだろ?

 

「そういえば、さとりちゃんは注文、どうするの?」

 

「では私は、飲茶と胡麻団子でお願いします。」

 

「わかった!伝えてくるね!」

 

お空が元気に厨房に向かっていく。

間違えないといいな。

 

「・・・あっ!ピンクの優しいお姉さんです!」

 

「きゃっ!・・・ああ、葉月ちゃんですか。」

 

お空を見ていたら、いきなり小学生くらいの女の子がお姉ちゃんにかけよってきて抱きついた。

お姉ちゃんもびっくりしてたけど、知ってる娘だったみたい。

 

「ピンクの優しいお姉さん、ひさしぶりですっ!ここには何しにきたですか?」

 

「私ですか?私は普通に食べに来ただけですよ。妹のこいしのクラスなので。」

 

「ピンクの優しいお姉さん、妹がいたですか?」

 

「ええ。隣にいますよ。」

 

「緑のお姉さん、ピンクの優しいお姉さんの妹だったですか?葉月は島田葉月、小学5年生ですっ!」

 

「私は古明地こいしだよ。よろしくね~。」

 

元気のいい自己紹介されたから、私も挨拶を返さないとね。

 

「緑のお姉さん、ピンクの優しいお姉さん、バカななお兄ちゃんを見てないですか?葉月、バカなお兄ちゃんを探しているです。」

 

バカなお兄ちゃん、ね・・・。

うーん、絞れないような気がするな・・・。

 

「名前はわからないの?」

 

「あうぅ・・・、それがわからないのです・・・。」

 

名前がわからないということは、実の兄じゃないのかな?

 

「うーん・・・、他になんか特徴はない?」

 

「えーっと・・・、すっごくバカなお兄ちゃんだったです!」

 

・・・うん、多分わかっちゃったよ。

ごめんね吉井君。

 

「んー、今は大会に行ってるから、多分もうすぐ戻ってくるんじゃないかな・・・?」

 

「じゃあここで待つです!緑のお姉さん、ピンクの優しいお姉さん、ありがとうございました!」

 

お礼を言って、葉月ちゃんは座ってた席に戻ってく。

入れ替わりのように、お空が胡麻団子と飲茶を持ってくる。

 

「おまたせ!胡麻団子と飲茶だよ!」

 

「ありがとう、ではいただくわね。・・・あら、美味しいじゃない。」

 

やった!

お姉ちゃんが認めてくれた!

 

「でも、なおさら客がいない謎が深まるわね・・・。こいし、なにか心当たりはないの?」

 

「えーっと、2回戦の前に営業妨害目的のクレーマーが来たのはあったけど、制裁はしたからもうやってないと思うんだけどね・・・。」

 

「制裁?何を・・・いや、やっぱり言わなくていいわ。」

 

心を読んだのかな?

でも、あれだけやられてまだ妨害続けるかな・・・?

考えてると、魔理沙が戻ってきて、客の少なさに驚いていたから、軽く説明しておく。

すると、魔理沙がとある案を出してくれた。

 

「それなら、いい案があるぜ!チャイナドレスを着て客寄せをすれば、千客万来間違いなしなんだぜ!」

 

「チャイナドレス?そんなもの、ないんじ『・・・ここに。』ムッツリーニ君、私達が着ているの、見たかったの?」

 

「・・・違う、宣伝のためだ。」

 

チャイナドレスという単語に反応したのか、ムッツリーニ君がチャイナドレスを持ってやってきた。

相変わらずだけど、こういうことになるとムッツリーニ君はものすごくハイスペックになるよね~。

 

「じゃあ、早速着てみるね!」

 

いいだしっぺの魔理沙と、ついでに今いるお空と阿求ちゃん、あと私は奥で着替えてくる。

戻ってきてみんなの前に立ったら、ムッツリーニ君が「・・・感無量」とか言って鼻血を出して倒れたり、美波ちゃんに胸元見られながらものすごい悔しそうにされたりと色んな反応があったけど、少なくとも似合わない訳じゃないみたい。

よかった。

 

「じゃあ、早速宣伝してくるよ!お姉ちゃん、好きなだけゆっくりしていってね!」

 

「あ、私も行くよ!」

 

早速宣伝に行くと、戻ってきた時にはお客さんがたくさん来ていたよ!

よかった、効果はあったみたい!

このあとも頑張らないとね!




いかがでしたか?
根本振られたザマア。
さて明久サイドはどう出るのか。


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第二十四話「想起『テリブルスーヴニール』sideA!」

 

 

 

「雄二、二回戦の科目って知ってる?」

 

「ああ知ってるぞ。・・・まあ、口で言うより見た方が速いだろ。」

 

「あれ?雄二、足が震えてるけどどうしたの?」

 

なんか、雄二の足が生まれたての小鹿のように震えてる。

まったく、そうなるなんて恐がりなんだなあ。

平気なところ見せて、雄二のことを笑ってやろ・・・・・・

 

「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」

 

雄二が震えてた理由がようやくわかった。

そこに立っていたのは、ブルーベリー・・・じゃなくて、生物の先生である風見幽香先生。

しかも、笑みを浮かべている。

あれは、間違いなく怒っている時の表情だ。

今は立会人としてだけど、もはや僕の頭には鉄人と比較にならないくらいのトラウマが刻み込まれてる。

 

「吉井君、坂本君、遅れているというのに、どうしてそんなにゆっくりだったのかしら?」

 

「「ご、ご、ご、ごめんなさい!!」」

 

今の僕らはまるで蛇に睨まれた蛙。

風見先生に言われ、全速力でかけ上がる。

 

「よう!奇遇だぜ!」

 

「金金金金金・・・・・・」

 

そこにいたのは、魔理沙と・・・あれは博麗さんでいいのかな?

なんか禍々しすぎるオーラが彼女を覆ってるように見えるね。

 

「まったく、霊夢は食糧とお金のことになると、ものすごく目の色変えるから、少しは落ち着いて欲しいものだぜ。」

 

「だって5000円よ?それだけあったら最長2ヶ月はまかなえるのよ?」

 

「お前、1日100円弱で暮らしていけるのか・・・?」

 

「まあこれは、美味しいものを食べるのにパーッと使う予定だけどね。」

 

「じゃあ暮らせないじゃないか!それに私だって協力してるんだから報酬はしはらわれるべきだぜ!」

 

「報・・・酬・・・?」

 

「そんな心底不思議そうな顔をされても困るぜ!」

 

「まあ冗談よ。1%あげるわ。」

 

「これだけやらされて50円って、さすがに理不尽すぎる!」

 

なんか二人で漫才みたいな会話を繰り広げてる。

でも多分、博麗さんは全部本心で言ってる気がする。

それに、僕の今日の朝ごはんは、市販のカップラーメンを6回半分にした1/68カップラーメンだったし、別におかしくはないと思うけどなあ。

 

「なあ博麗、お前が出場した目的はなんなんだ?」

 

「・・・なによいきなり。そんなもの決まってるじゃない。商品券よ。早苗が既にペア組んでいたから、そこの魔理沙を引っ張って参加してきたのよ。だから、あんたらには悪いけど、負けてもらうわ・・・。」

 

凄まじい殺気を放つ博麗さん。

これ、僕生きて帰れるかな・・・?

生物の点数はおせじにも高くないし、博麗さんの殺意がこもった本気の一撃をかまされたら、フィードバックで昇天しかねない気がする。

 

「ねえ雄二、今の博麗さんの一撃をくらったら、フィードバックで昇天しかねない気がするんだけど。」

 

「まあ案ずるな。俺に任せろ。おい博麗。お前は商品券を何がなんでも手に入れたいという訳か。」

 

「当たり前じゃない!チケットは換金するし、腕輪も売っ払うわ!」

 

「だが、俺達も勝たなければいけない理由がある。・・・そこで博麗、俺からひとつ提案だ。」

 

おお雄二!

言葉で戦闘を回避しようなんて、今は君が神に見えるよ!

 

「・・・何よ?」

 

「もし、ここで負けてくれたら、商品券分の5000円を渡す。腕輪もチケットも興味ないんだろう。そっちは労せず確実に5000円得られる、こっちは勝てると、両方に得があるだろう?」

 

「・・・まあ、確かに得あるわね。でも、それだとチケットと腕輪の分損するじゃない。」

 

「なるほどな。ならば、もうちょい多めに渡そう。8000でどうだ?」

 

「・・・支払いは、いつ?」

 

「この大会が終了したら、きっちりと責任を持って払おう。・・・・・・明久が。」

 

・・・雄二。

・・・今は、君が大悪魔に見える。

 

「ちょっと雄二!君は僕を殺す気なのかい!?」

 

8000円の出費なんて、一体何日公園の水と砂糖塩だけで生きていかないといけなくなるか、想像がつかないよ!

 

「安心しろ。この大会に勝てば、商品券は手に入る。だから明久、お前は3000円払うだけでいい。」

 

「だとしても大金だよっ!」

 

「明久も文句ないみたいだな。じゃあ博麗、それでいいか?」

 

「いいわよ。じゃあ先生、私達の負けで。」

 

「ちょっと雄二、博麗さん、まだ僕払うなんて一言も『あ゛?』・・・払わせていただきます。」

 

博麗さんからとてつもない圧と殺気を感じたため、折れるしかない。

だって、このなかで払わないなんて言い出したら命だって失いそうなんだもん。

 

「あら、結局戦いはなしで終わりなの。まあいいわ。吉井君と坂本君のペアの勝利ね。」

 

風見先生が僕達の勝利を告げる。

勝ったのはいいけど、今度は生命の危機だよコンチクショウ!

これは、死んでも優勝しないと!

でないと、死ぬ未来しか見えない。

・・・あれ?もしかして、僕の未来、どうあがいてもデッドエンド?

 

「さて魔理沙、これで8000円入るのは確定したし、今度の日曜にでも、どこかに食べに行きましょ。」

 

「えっ、私もいいのか?」

 

「そりゃまあ、無理矢理誘った訳だしね。さっきはああ言ったけど、さすがに感謝の気持ちはあるわよ。」

 

「霊夢・・・!・・・もしかして、明日の天気は晴れときどきぶたか?」

 

「失礼ね!んなこと言ってるなら誘わないわよ!」

 

後ろから聞こえてくる会話からも、博麗さんが楽しみにしてることがわかる。

すっぽかしたら修羅を見ることになるよなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと雄二!なに勝手に人生賭けてくれちゃってんのさ!僕がお金に困ってるのは知ってるはずなんだから、雄二が払えばいいじゃないか!」

 

「お前が金に困ってるのは自業自得だろう。それに・・・、俺達、ダチだよな?」

 

「友人を売るような奴なんかとダチになった覚えはない!これでもくらえっ!(ブォンッ!)」

 

「っと、あぶねえな!この野郎!」

 

雄二と殴りあいの喧嘩をしていると、雄二と僕の携帯が同時に鳴る。

やむなく喧嘩を中止して、確認する僕ら。

メールは正邪からで、喫茶店の客足がいきなり大幅に減少したことが書いてあった。

・・・どういうことなんだろう?

 

「・・・あ、確かあなた達は観察処分者の人と翔子ちゃんの婿の53点の代表でしたよね?ちょうどいいところに!」

 

「待て、俺は翔子の婿になんてなってねえ!」

 

僕達がメールのことを考えていると、声をかけてきた人がいた。

えーっと、確か彼女は本居さんだったっけ?

でも、何の用なんだろう?

 

「とりあえず、ちょっとAクラスまで来てくれませんか?」

 

「?どうしてAクラスに?」

 

「・・・まあ、行けばわかります。」

 

本居さんに連れられて、Aクラスに向かうことになる。

Aクラスに近づくと、中から声が聞こえてきた。

 

「しっかし、ここの机は綺麗だよなー!」

 

「ほんと、2ーFとは比べ物にならない位だよなあ!」

 

「2ーFは店も汚かったし、サービスも味も最悪だったもんなー!」

 

「まったく、あの汚さでよく喫茶店やろうと思ったよな!」

 

「ほんとだよ!あんなところで食べたら食中毒が発生してもおかしくなさそうだよな!」

 

「2ーFには気をつけろということだな!」

 

2人の男によって、中から聞こえてくるFクラスの悪口。

・・・クソッ!あんなことされたら、Fクラスに悪い評判が流れて、お客さんが来なくなるじゃないか!

 

「・・・こういうことなんです。比那名居さんか博麗さんを探していたんですが、Fクラスの2人をたまたまみかけたので。さっきから出たり入ったりして繰り返していますし、あれだけ言われてるということは、なにかあったのかなと気になりまして・・・。」

 

「・・・常夏コンビ、古明地に制裁されたはずなのに、まだこりてねえのか。」

 

そう言う雄二だけど、どこか想定内というような表情をしている。

しかし常夏コンビとはうまい。

座布団・・・は今Fクラスにないからござ1枚。

そんなことを僕が考えている間に、雄二が本居さんに事情を軽く説明してた。

そのままAクラスの中に入る。

『ご主人様とお呼び!』というメイド喫茶らしいし、常夏コンビだけじゃなくて、メイド服姿の女子もたっぷりと確認しないと!

 

「・・・おかえりなさいませ。」

 

そんな僕らを出迎えてくれたのは、学年首席で、雄二のことが好きな霧島さん。

こんな似合ってる姿を見ると、ほんと雄二にはふさわしくないと思うよ。

 

「・・・おかえりなさいませ。今夜は返しません、ダーリン。」

 

・・・ほんと、まったくもって不公平だ。

 

「おい翔子。突然だが、予備のメイド服はないか?1着貸して欲しい。」

 

「・・・わかった。」

 

雄二の急な頼みにも、顔色ひとつ変えずに了承する霧島さん。

そのまま自分が着ているメイド服に手をかけて・・・

 

「待て待て待て!何故お前は普通に脱ごうとする!」

 

「・・・だって、雄二はメイド服が欲しいって言った。」

 

「俺は、よ・び・のメイド服を貸して欲しいって言ったんだ!お前が着ているメイド服が欲しいなんて言った覚えはねえ!」

 

「・・・そう。今、持ってくる。」

 

ちょっと残念そうにし、奥に消えていく霧島さん。

雄二に言われたからといって、躊躇いなく脱ごうとするなんて、底知れない人だ。

 

「・・・おまたせ。これでいい?」

 

間もなく戻ってきた霧島さんの手には、霧島さんが着ているそれと同じものがあった。

でも、雄二はそんなものをどうするつもりなんだろう。

 

「でも雄二、そんなものどうするの?」

 

「服というのは、当然着るためのものだろう。着るんだよ。・・・明久が。」

 

へー、まあそうだよね。

メイド服は着るものだよね・・・ってちょっと待て!

 

「ちょっと待って!なんで僕がメイド服を着させられるのさ!」

 

「よく考えろ。お前も俺もFクラスだ。もし、そのままあいつらをボコしたとすると、今度は『Fクラスはチンピラの集まりだ』というような噂が流れかねない。まだ顔は割れてないかもしれないが、お前はバカで有名だからな。」

 

「なんだと!?雄二にはバカって言われたくはないやい!」

 

「話は最後まで聞け。だから、メイド服を着て変装し、常夏コンビを仕留めるといったところだ。」

 

「だったら雄二が着ればいいじゃないか!僕は着ないよ!」

 

「やれやれ・・・。それなら仕方ない、公平にあっちむいてホイで決めようじゃないか。それで負けた方が行く、これでどうだ。」

 

「わかった。あとで後悔しないことだね!」

 

これで勝って、女装は回避してやる!

 

「「ジャーン、ケーン、ポン!」」

 

雄二はグー、僕はチョキ。

くっ、最初は負けたか。

でも、雄二が指差した方向と違う向きをむけばいい!

 

「あっちむいて・・・」

 

雄二の指が、僕の目に迫ってくる。

これはあれだな?

指をかわすために顔をそらしたら、そっちを指差す作戦だな?

その手にのってたまるか!

僕は顔をそらさず、きっと睨み付ける。

 

「・・・あ、あっちにチャイナドレスを着た古明地と姫路がいるぞ。」

 

「えっ!?どこどこ!?」

 

雄二が指差す方向を見る。

どこにいるんだ!?

 

「ホイ。お前、本当にアホだな。」

 

・・・・・・あっ。

しまったああぁぁっ!

 

「第一、接客は制服でなんだから、チャイナドレスを着ているわけないだろ。とりあえず、着替えてこい。」

 

「嫌だッ!こんなの、不正じゃないかッ!」

 

「男らしくないぞ明久。覚悟を決めろ。」

 

「うぅ・・・」

 

仕方がないので着替えてくる。

ううっ、絶対雄二に復讐してやる・・・。

 

「・・・ほう、案外似合うじゃないか、明久。」

 

「・・・確かに可愛いけど、きっと雄二だったらもっと似合ってた。」

 

そんな二人の感想。

嬉しくないよっ!

・・・はあ、しょうがないし、行ってくるか。

 

「・・・失礼いたします。」

 

「ここと違って、Fクラスはほんと・・・ん?お前、なかなか可愛いな。」

 

掃除をするフリをして近くに寄る。

一撃でしとめる!

 

「それでは、失礼して・・・」

 

「お?なんで俺の腰に手を・・・まさか、俺に惚れて」

 

「死にさらせええぇーーえッ!」

 

「ごふあっ!?」

 

よし、決まった!

僕のバックドロップがうまく決まり、頭を床にうちつける坊主先輩。

 

「なっ、夏川っ!?ってお前、Fクラスの吉井明久じゃないか!」

 

くっ、バレたか!

ならばこのまま畳み掛けるっ!

 

「ぐっ、ここは逃走だ!夏川、起きろっ!とっとと逃げ・・・!」

 

走り出したモヒカン先輩。

でも、それはすぐに何かによって止まる。

そこには・・・

 

「あんたらの営業妨害のせいで、収益が減ったら私の旨味も減るじゃない・・・!責任、取ってもらおうかしら・・・?・・・それに、魔理沙の邪魔にもなるじゃない・・・。(ボソッ)」

 

「うちのクラスにまで来て、他クラスの営業妨害になることを叫び散らすなんて、あんたらはクズで邪魔な存在ね。こいしと違って、私は甘くないわよ・・・!」

 

そこには、赤鬼と青鬼がいた。

・・・間違えた。怒りのオーラを全身から放つ博麗さんと比那名居さんがいた。

 

「お、お姉ちゃん、天子さん、やりすぎないようにして・・・」

 

「「大丈夫よ、命は取らないから。直前で済ますわよ。」」

 

「半殺しはやりすぎですよ!」

 

東風谷さんが二人を抑えようとしてるけど、とまる様子はなさそう。

 

「ではお客様、メイド2人による特別な接待をお楽しみくださいね?」

 

「「ひっ・・・!た、助け・・・」」

 

「「問答無用!」」

 

「「ぎゃあああああああっ!!」」

 

常夏コンビの二人に、二人の修羅が襲いかかる。

・・・というかもしかして、お金を払わなかった場合、僕もこうなる?

ちなみに、常夏コンビは意識を失った後、さらにボコボコにされようとしていたのを東風谷さんが止めた。

 

 

 

 

 

 

「なんだかんだで、悪評のもとは解決したと思うけどさ、これ、僕が女装する必要ってあったのかな?」

 

「いや、ねえぞ。放置していても、あの二人が片付けてただろうな。」

 

「くたばれええーーっ!(ブゥン!)」

 

僕の渾身の飛び蹴りはかわされてしまう。

そのまま、喧嘩をしていると、後ろから知ってる声が聞こえてくる。

 

「・・・あれ?坂本君と吉井君?なにやってるの~?」

 

「ああ古明地さん、僕は今雄二に、男のプライドと正義をかけた鉄拳を・・・・・・ッ!!?」

 

僕は、雄二が全て悪いということを伝えようと振り返るが、その瞬間、声が出なくなる。

だ・・・だって、古明地さんがチャイナドレスを着てたんだよ!?

古明地さんみたいな美少女がチャイナドレスなんてものを着たら、もうそれは似合うなんてものじゃない!

もはや芸術だよ!

ムッツリーニ!君の写真にとても期待しているよ!

 

「どう?似合ってる?」

 

「似合ってるなんてものじゃないよ!こんなに素晴らしいもの、僕は見たことない!ビバ、チャイナドレス!」

 

「明久、お前チャイナドレスが好きなんだな。」

 

「大好・・・愛してる。」

 

雄二のいきなりな質問に、ついうっかり大好きと口走りそうになったから、慌てて訂正する。

ふっ、これが僕のとっさの判断力さ。

 

「言い直した意味がまるでないな。」

 

だ、だって本当なんだから仕方がないじゃないか!

 

「今私は宣伝担当してるから、また後でね~!あ、あと他のみんなもチャイナドレス着てるよ!美波ちゃんとか姫路ちゃんとか、すごく似合っていたから誉めてあげてね~!」

 

そう言いつつこいしちゃんがどっか行っちゃう。

ああ、もっと見ていたかったのに!

まあ、しょうがないから戻ろうかな。




いかがでしたか?
買収して勝ちました。
ですがこれは悪魔の誘い。
払えなかったら東京湾に沈むことに。


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第二十五話「三回戦!」

 

 

 

「こいし、もうそろそろ大会の時間じゃないのぜ?」

 

客が戻ってから、ずっとチャイナドレスで接客してたから、時間がわかってなかったけど、いつの間にか時間になってるね。

魔理沙に言われなかったら気づかなかったかも。

 

「あ、魔理沙、ありがと~!じゃあ、行ってくるね~!」

 

じゃあ、行ってこよっと!

さっき、お姉ちゃんと待ち合わせるのは大会の会場って決めてるから、まっすぐ会場に向かう。

すでに待ってたお姉ちゃんに声をかけて、早速あがるよ!

対戦相手は誰なのかな?

 

「・・・あ、こいしちゃんとさとりさんじゃないですか!」

 

「ああ、こいし、さっきぶりね。」

 

そこで待っていたのは、早苗ちゃんと天子さんだったね。

 

「早苗さん、ひさしぶりですね。」

 

「さっきぶり!天子さん、今度こそ負けないよ~!」

 

前回の戦争では負けちゃったけど、二回も負けたくないもんね!

 

「・・・ところでお姉ちゃん、科目はなに?」

 

「・・・それくらいは調べておきなさいよ。現代文よ。」

 

・・・え、現代文?

 

「それでは、お互い召喚獣を出してください。」

 

「「サモン!」」

 

早苗ちゃんと天子さんが、召喚獣を呼び出す。

点数は・・・

 

『Aクラス 東風谷早苗 現代文 181点 and Aクラス 比名那居天子 現代文 322点』

 

「天子さん、今回のテストはいつもより取れたんですよ!」

 

「それでもBクラスの平均程度でしょ・・・。早苗は現代文だけ点数良くないわよね・・・。」

 

「うう・・・、採点する先生は常識に囚われすぎなんですよ!」

 

召喚獣、出したくないな・・・。

 

「こいし、あなたの現代文の点数が低いのは知ってるわよ。でも、私がフォローするから大丈夫よ。」

 

お姉ちゃん・・・!

 

「わかった、じゃあ出すよ!」

 

「「サモン!」」

 

お姉ちゃんと同時に、召喚獣を呼び出す。

 

『Fクラス 古明地こいし 現代文 37点 and Bクラス 古明地さとり 現代文 499点』

 

「・・・こいし、さすがにもっと取りなさい。」

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん・・・。」

 

お姉ちゃんとの点数差は、約13.4倍。

現代文は苦手だけど、前回のはさらに取れなかったんだよね・・・。

 

「そういえば、こいしちゃんも現代文苦手でしたね。」

 

「でも早苗、姉の方は腕輪持ちだから注意しておいた方がいいわよ。」

 

「はい!私はこいしちゃんを先に倒すので、天子さんはさとりさんの足止めをお願いしますね!」

 

「まあいいけど、早く倒してよ?」

 

どうやら、私の相手は早苗ちゃんみたい。

点数比4.8倍、吉井君の気持ちがわかる気がするな・・・。

 

「こいし、勝とうと思わなくてもいいから、やられないでね。」

 

「わかった!」

 

観察処分者の吉井君ほどじゃないけど、私もある程度は操作できるからね!

それに、早苗ちゃんの召喚獣は基本的に素手だから、リーチはこっちが有利だし!

 

「では、行きますよ!」

 

早苗ちゃんがこっちに早速拳を叩きこもうとしてくる。

 

「おっとっと・・・、これはまともに受けちゃダメみたい・・・。」

 

それに対し、私は武器である触手のようなもので受けようとするけど、点数が低い私の召喚獣はいつもより打たれ弱くて、あっさりと押しきられちゃう。

受けた瞬間に気づいたから、後ろに飛んで勢いを軽減してどうにかなったけど、これは判断をミスすると簡単にやられちゃうなあ・・・。

 

「まだまだ行きますよ!」

 

そんな私の思いなんてお構いなしに早苗ちゃんがどんどん攻めてくる。

素手の召喚獣は、相手の武器を防ぐ方法がものすごいシビアだし、攻撃も武器を持つ召喚獣より威力は低いけど、身軽な分スピードと手数に優れてるから、受けられない今の状況だとやりづらかったねやっぱ。

早苗ちゃんの拳を頑張って回避しながら、ちらりとお姉ちゃん達の方を見てみる。

 

「あんたはそんなもんなの?これなら点数が同じだったら私の圧勝よね!」

 

「・・・言ってなさい。ですが、奢りは身を滅ぼすことになりますよ?」

 

どうやら、お姉ちゃんと天子さんはいまのところ互角に戦っているみたい。

・・・互角?

 

「よそ見とは余裕ですね!」

 

「・・・!しまっ・・・!」

 

見た時間はだいたい1秒くらい。

でも、早苗ちゃんはその隙を逃さずに、左手の拳を叩きこんでくる。

慌てて回避したけど、それはフェイクだったみたいで、右の拳が私に向かってきた!

回避する余裕がなかったから、触手のようなものを束ねて両端を持って受けるけど、勢いを殺しきれず、ダメージをくらっちゃう。

 

『Aクラス 東風谷早苗 現代文 177点 VS Fクラス 古明地こいし 現代文 11点』

 

即死は免れたけど、だいぶ点数を持ってかれちゃった。

この点数だと、下手したらかすっただけでも倒されかねないかも・・・。

 

(どうしよう・・・。このまま早苗ちゃんが倒されちゃうと、2対1になっちゃう・・・。でも、私の点数じゃ早苗ちゃんを長くは足止めできないし・・・。)

 

「・・・こいし。落ち着きなさい。」

 

テンパっちゃってた私に、お姉ちゃんが落ち着くようにと声をかけてくれる。

それで落ち着いた私は、お姉ちゃんが天子さんと早苗ちゃんに見えないように動かした指の動きが目に入る。

・・・ああ、なるほどね。

わかったよお姉ちゃん。

お姉ちゃんを信じて、お姉ちゃんの方に少しづつ移動しながら回避を繰り返す。

そして、少しの時間がたつ。

 

「・・・わっ、きゃっ!」

 

何度目かの攻防で、お姉ちゃんが体勢を崩す。

 

「隙を見せたわね!」

 

その隙を見逃す天子さんではないようで、刀でお姉ちゃんの召喚獣に斬りかかる。

 

「・・・こいし!今よ!」

 

「なっ!?」

 

お姉ちゃんの言葉を聞き、私の方を向く天子さん。

でも、私の狙いは天子さんじゃない。

私の仕事は・・・

 

「むっ、触手による拘束ですか!ですがこいしちゃんからの攻撃手段はないはずです!」

 

早苗ちゃんの動きを封じることだよ!

点数に大きな差がある現状、拘束も長くはもたない。

でも、少しの間、拘束するだけでいい!

 

「心花『カメラシャイローズ』。」

 

天子さんがお姉ちゃんからわずかに意識をそらし、早苗ちゃんの動きが止められた瞬間、お姉ちゃんが腕輪の力を解き放つ。

四方八方に撒き散らされたハートの一撃の威力は低いけど、たくさん当たればそれだけ火力は出る。

そして、天子さんはかなりお姉ちゃんに近い。

とっさに刀で防ぐ天子さんだけど、量が多すぎて当たってしまう。

一度当たると次々と当たっていく。

そして、私が動きを封じていた早苗ちゃんと、ついでに私にもたくさんのハートがヒットしてく。

ハートの射出が終わった時、そこに立っていたのはお姉ちゃんだけで、三体の召喚獣が倒れていた。

 

『Aクラス 東風谷早苗 現代文 0点 and Aクラス 比名那居天子 現代文 0点』

 

『Bクラス 古明地さとり 現代文 377点 and Fクラス 古明地こいし 現代文 0点』

 

「古明地姉妹ペアの勝利ですね。どちらもお疲れ様でした。」

 

先生によって、私達の勝利が告げられる。

なんとかなったね。

 

「ごめんねこいし、あなたまで倒すことになってしまって。」

 

「ううん、大丈夫だよお姉ちゃん。」

 

私が倒れても、お姉ちゃんが残ってるおかげで私達の勝ちだし、召喚獣が倒されても痛みはないからね。

それに、私がもっと点数をとれていればよかったわけだしね。

 

「ごめんなさい、天子さん・・・。私がもっと点数をとれていたなら・・・。」

 

「早苗が悪いんじゃないわ・・・。」

 

対照的に、凹んでいる天子さんと早苗ちゃん。

正直、早苗ちゃんがもっと点数高かったらダメだったかもしれなかったよ。

 

「四回戦もここに集合でいい?」

 

「うん、大丈夫だよ!」

 

お姉ちゃんと待ち合わせ場所を決めて、解散する。

四回戦のあとは、準決勝、決勝となって優勝だから、いまでちょうど半分なはずだね。

よーし、喫茶店のほうもがんばっていこうっと!

 

 




いかがでしたか?
早天コンビはふし幻で好きになりました。


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第二十六話「犯行!」

 

 

 

 

「ねえ古明地さん、飲茶の材料が足りなくなったから、取りに行くの手伝ってくれないかな?」

 

喫茶店の仕事をしていると、吉井君に、飲茶の材料を取ってくるのを手伝って欲しいってたのまれた。

 

「うん、いいよ~。」

 

断る理由もないし、協力はするよ~。

でも、なんで私なのかな?

 

「ありがとう。ちょっと一人では多かったからね・・・。」

 

・・・まあいっか!

吉井君と二人で、材料を置いてある空き教室に向かう。

えーと、確か4袋だよね。

 

「じゃあ古明地さん、僕は3つ持つから、古明地さんは1つ『おい、お前ら。』・・・ん?」

 

3つの袋を担ぎ上げようとする吉井君だったけど、知らない声が後ろから聞こえてきたため、吉井君と私は振り返る。

そこにいたのは、知らない男子3人だけど・・・なんだか嫌な感じがするな。

 

「お前らが・・・吉井明久と古明地こいしか?」

 

「うん、まあそうだけど・・・、申し訳ないけどここは部外者立ち入り禁止なんだよね。悪いんだけど、出てもらっていいかな?」

 

吉井君が、立ち入り禁止なことを伝える。

 

「んなことは今重要じゃねーんだよ。あんたらにお願いがあってな。」

 

「・・・お願い?」

 

でも、その3人は従う気はまったくないみたい。

 

「ああ、お前ら二人とも召喚獣大会勝ち進んでるみたいだが、負けてくんねえかな。」

 

「「・・・は?」」

 

吉井君も私も、わけのわからない要求に声が漏れる。

制服も違うから他高の生徒なのは確定的だし、なんでなんだろう?

外部の人達には、大会の結果なんて関係がないはずなんだけど・・・。

 

「・・・なんで?」

 

「んなもん教える義理はねえよ。お前らはただ、黙って負けらぁいいんだよ。」

 

吉井君が一応理由を尋ねたけど、男達は答える様子を見せない。

ずいぶんと、勝手な話だね。

 

「私達が断ればどうするつもりなのかな?」

 

「ちょっと辛い目にあってもらうだけだぜ?まあ、俺らとしては、それもありだけどな!」

 

「「ギャハハハハ!!」」

 

・・・うっわあ。

この人達、あれだなあ。

 

「・・・古明地さん、下がってて。」

 

吉井君が前に出る。

男らしいけど・・・、3対1じゃ大丈夫かな?

 

「あ?テメエ、痛い目見たいのか?」

 

吉井君の動きを見て、殺気だつ3人。

・・・うん、吉井君一人に任せるんじゃなくて、私もやらないとね。

殴りあいとかみたいな喧嘩は苦手だけど、一応護身用アイテムみたいなものはあるし。

それにお姉ちゃんに害を及ぼそうとする男をアレするためのものとかのもあるしね。

 

「おいお前ら、行くぎゃあ!(バチッ!)」

 

「おい大和、どうしうぎゃああ!(バチィッ!)」

 

とりあえず、吉井君に気をとられている相手のうちの二人を小型スタンガンで気絶させる。

もう一人も気絶させようと思ったけど、吉井君が取り押さえてたからやめておかないとね。

聞きたいこともあるし。

 

「・・・で、誰の差し金なのかな?」

 

「ひっ!?し、しらねえよ!」

 

他校の生徒にとっては、誰が優勝しようが関係ないはずだからね。

誰かに指示されたんだとは思うんだけど・・・、素直に教えてくれないみたい。

 

「シラをきっても、いいことないよ?」

 

「ほ、本当に知らないんだ!匿名でメールが来たから、誰の計画かはわからないんだ!」

 

なおも尋ねてみるけど、どうやらほんとに知らないみたい。

でも、誰なんだろ?

個人的には、わざわざ営業妨害してきた常夏コンビの二人が怪しいと思うんだけどね。

 

「古明地さん、この人達どうする?」

 

「ほんとに知らないみたいだし、放してあげていいんじゃないかな。・・・まあ、お姉ちゃんを狙っていたら、骨二、三十本折ってたとこだけど。(ボソッ)」

 

「?古明地さん、どうしたの?」

 

「別に何でもないよ~。」

 

吉井君が退く。

取り押さえられてた男は、気絶していた二人を起こし、逃げていった。

 

「ありがとね、吉井君。」

 

「い、いやこっちこそありがとう!」

 

実際、吉井君がいなかったら、スタンガン当てられなかったと思うしね。

そんな話をしつつ、吉井君と教室に戻る。

・・・そういえば、次の科目と対戦相手は誰なのかな?

三回戦では、確認してないところにいきなり現代文だったせいで、焦っちゃったし。

わかっているのといないのでは心のあり方が変わってくるもんね。

えーっと、次は古文で、相手は・・・。

 

(・・・なるほどね。)

 

トーナメント表に書かれていた名前は、微妙に見覚えがある人達。

やっぱり、さっきの人達はそういうことなのかな。

まあ、とりあえず今は喫茶店の仕事だね!

古文なら、阿求ちゃんに教えてもらったおかげでだいぶ取れたし。

 

 

 

 

 

 

「げえっ!?お前らかよっ!?」

 

1時間後。

私とお姉ちゃんは、四回戦の相手である・・・えーっと、名前なんだっけ、とにかく坊主とモヒカンと対峙していた。

・・・あ、そうだ!確か夏川と常村だね!

・・・どっちがどっちか忘れちゃったけど。

 

「おっと、ここでやって来ました古明地姉妹コンビ!姉妹だけあって抜群のチームワークをみせつけ、ここまで進んできました!彼女達ははたして三年生コンビに勝てるのでしょうか!?」

 

・・・あ、そっか。

そういえば四回戦からは公開試合なんだったね。

 

「・・・こいし、この二人が、営業妨害してきたって人?」

 

「うん、そうだよ~。」

 

「・・・なるほどね。確かに、この二人は心が腐っているわね。ゾンビという方が正しいかもしれないわ。」

 

「おいお前ら!さっきから丸聞こえなんだよ!」

 

お姉ちゃんと話していると、坊主の方が口を挟んでくる。

 

「・・・なんですか?ゾンビの分際で話しかけないで貰えませんか?というか今すぐ心だけでなく体まで腐り落ちてこの場から消えてくださるとありがたいのですが。・・・あ、臭うので寄らないでいただけます?体に毒です。」

 

「「て、てめえっ!何言いやがるっ!?てか臭くねえよっ!!」」

 

普段のお姉ちゃんらしくない強烈な罵倒に激昂する二人。

相手の考えていることを読み取れるお姉ちゃん、相手が言われたくないことをピンポイントで突けるから、本気を出すと口喧嘩はものすごく強いんだよね。

でも、直接的な恨みはないはずなのに、なんでこんなに言葉の刃が鋭かったんだろ?

 

「・・・口論はその辺にしておけ。始めるぞ。準備はできているのか?」

 

激化していく言い争いを止めたのは、立会人である易者先生の声だった。

易者先生もまた、謎が多い先生なんだよね~。

本名知らないし。

 

「おう。」

 

「できてるよ~。」

 

易者先生に返事を返すモヒカンと私。

 

「お?お前ら、やけに自信があるじゃねえか。」

 

「へっ、どうせ二年、しかも片方Fクラスだから大したことねえだろうけどな!」

 

むー、ちょっとカチンときたよ。

 

「・・・こいし、絶対に勝ちましょう。」

 

「うん、そうだね。」

 

こんな二人には負けたくないよね。

 

「では、召喚獣を出すんだ。」

 

「「おう!サモン!」」

 

常夏コンビが召喚獣を呼び出す。

点数は・・・っと。

 

『Aクラス 夏川俊平 古文 227点 and Aクラス 常村勇作 古文 234点』

 

なるほど、言うだけはあるみたい。

装備も一般的な盾と剣だし。

 

「どうした?ビビっちまったのか?」

 

「まあFクラスの奴にとってはなかなか見られない点数だろうしな!」

 

得意気に挑発してくる常夏コンビ。

自信満々だね。

 

「お姉ちゃん、どうやら私達、ずいぶん弱いと思われてるみたいだね。」

 

「・・・ええ、そうね。心から楽勝だと考えているみたい。」

 

「あ?俺達がお前らみたいなFクラスに負ける訳がねえよ!」

 

「隣の奴は知らねえが、Fクラスの妹はどうせ点数大したことねえだろうしな!」

 

ぎゃはははと下品に笑う常夏コンビ。

なんというか、小物感満載だよね・・・。

まあ、さっきからカチンときてるし、ここらで反撃しようかな。

阿求ちゃんに教えて貰ったから、古文はわりと取れたんだよね。

 

「ねえねえ、じゃあ、そんなバカな私達に負ける二人は何になるの~?」

 

「「は?」」

 

「「サモン!」」

 

お姉ちゃんと召喚獣を呼び出す。

 

『Bクラス 古明地さとり 古文 340点 and Fクラス 古明地こいし 古文 411点』

 

「「なあっ!?」」

 

お姉ちゃんは、生物や現代文程じゃないけど古文は得意だし、私は阿求ちゃんにとことん教わったしね。

あまり2年をなめない方がいいよ?

これでも阿求ちゃんの足元に及ばないわけだし、多分常夏コンビがあと10ペア分いても多分阿求ちゃん勝つよ?

 

「こいしはモヒカンをお願い。私は坊主を殺るから。」

 

「うん、わかった!」

 

「ぐっ・・・!」

 

召喚獣をモヒカンの方に走らせる。

そのまま、私の武器である触手のようなものでアタックするが、剣で防がれる。

3年なだけあって、操作には慣れているみたい。

お返しとばかりに腰めがけて放たれた剣での攻撃を回避し、触手のようなものによる突きを放つ。

それもかわされるけど、これは伸び縮みするし固さも変えられるからね。

ムチのようにして側面から攻撃して突き刺す。

先制攻撃は貰ったよ!

 

「ぐっ!?テメエッ!」

 

その攻撃に、一瞬虚をつかれたような表情をしたけど、すぐに私めがけて剣を突きだしてくる。

攻撃をしていたせいで回避が間に合わず、ちょっとかすっちゃったけど、そこまでのダメージにならなくてよかったよ。

その前に点数を削れてたしね。

 

『Aクラス 常村勇作 古文 168点 VS Fクラス 古明地こいし 古文 397点』

 

「・・・ところで、なんで執拗に営業妨害したの?」

 

召喚獣を戦わせながら、私は気になっていたことを聞いてみる。

 

「・・・特に理由なんてねえよ、お前らFクラスが気に入らなかっただけだ。」

 

「・・・ふーん。気に入らない、ね。」

 

嘘だね。

明らかにわかるよ。

・・・まあ、いいけどね。

どっちにしても、その理由は私の怒りとやる気ゲージをチャージするもんだったし。

 

「・・・じゃあ、そろそろ死んでね。」

 

「・・・なっ!?テメエ、何しやがったんだ!?」

 

腕輪の力を発動させて、私の召喚獣の姿を消す。

相手は腕輪を持っていないし、問題ないね。

やみくもに剣を振り回すけど、もちろん私には当たらない。

方向を変えて読まれないようにしつつ、相手の召喚獣を刺していく。

全身をめった刺しにされた召喚獣は、点数を全て失い、どうと倒れ伏した。

 

「お、おい常村!何やってんだ!」

 

「・・・余所見とは、また余裕なものですね。」

 

相方の敗北に気をとられ、隙が生まれた坊主。

その隙を逃すことなく背中に弾を撃ち込み、お姉ちゃんが倒す。

 

「お~っと、ここで勝負が決まりました!なんと、経験という壁を打ち破り、古明地姉妹コンビが勝利をおさめました~!」

 

実況の声とともに、観客の歓声が聞こえてくる。

やったね!

 

「こいし、やったわね。これで準決勝出場よ。」

 

「うん、お姉ちゃん!いえ~い!(パァン!)」

 

お姉ちゃんと、よろこびのハイタッチをして、退場していく。

ちなみに裏に退場していく時も、私達への歓声は続いてたよ。




いかがでしたか?
常夏コンビはここで退場。


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第二十七話「犯行!sideA」

 

 

 

 

「さて明久、そろそろ行くぞ。」

 

古明地さんと材料取りに行ってから働いていると、いつのまにか大会の時間が迫ってたみたいだ。

 

「そういや雄二、次の作戦はなにか考えてるの?」

 

「まあな。トーナメント表見りゃ、誰と戦うことになりそうか大体予想つく。」

 

「ちなみに、その雄二の予想では次の対戦相手は誰なのさ?」

 

「まあ、それに関しては直接見たほうが速えだろうな。」

 

確かに、今雄二に聞かなくても、戦いはもうすぐ開始だ。

会場行ってから見ればいいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あら、今回の相手はアキと坂本なのね。」

 

「吉井君と坂本君が相手なんですね。ですが手加減はしません!」

 

そこにいたのは、姫路さんと美波のペアだった。

それと観客達もいる。

そういえば、二人も召喚大会、出てたんだっけ。

でもね姫路さん、僕の召喚獣はフィードバックがあるから、科目によっては本気で行かれると死にかねないんだ。

 

「姫路さん、出来ればお手柔らかにしてくれるとありがたいな~なんて・・・」

 

「ところで姫路、島田。お前達は明久が誰とペアチケットで幸せになりに行くか知っているか?」

 

「「えっ!?誰(なんですか)!?まさか坂本(君)!?」」

 

雄二の言葉に同時に反応する二人。

僕としては、何故そこで雄二の名前が出てくるか、小一時間ほど問いつめたいところだ。

 

「いや、島田・・・」

 

「えっ、アキ、まさかウチと・・・!」

 

「の妹だ。」

 

「殺すわ。」

 

まずい、雄二の事実無根の発言のせいで美波が殺気だってる。

 

「吉井君、小学生に手を出すのは犯罪なんですよ?」

 

「ちょっと雄二!何しちゃってくれてるのさ!美波なんか今すぐにでもこっちに来て僕に拳を叩き込もうとしてるじゃないか!」

 

「美波ちゃん、落ち着いて下さい。」

 

どうやって惨劇を回避しようかと考えていると、姫路さんが美波を止めてくれる。

ああ姫路さん!

僕は君の優しさを信じていたよ!

 

「召喚獣でお仕置きすればいいんですよ。そうすれば私もいっしょにやれますから!」

 

かと思ったら笑顔で死刑宣告。

最近姫路さんの考えが読めない。

 

「そうね。瑞希の言う通りだわ。アキ、覚悟しなさい!サモン!」

 

「吉井君、おしおきですっ!サモン!」

 

二人が召喚獣を呼び出す。

 

『Fクラス 姫路瑞季 古文 399点 and Fクラス 島田美波 古文 6点』

 

「っ!?古文!?数学のはずじゃ・・・!」

 

「残念だが、お前らに渡した科目表は偽物だ。島田が古文が大の苦手なのは知っているからな。」

 

「くっ・・・!卑怯ねアンタ・・・。」

 

美波が悔しそうにしているが、6点の召喚獣なんて、はっきり言っていないも同然だよ!

 

「「サモン!」」

 

僕らも召喚獣を呼び出す。

さあ、行くよ!

 

『Fクラス 坂本雄二 古文 211点 and Fクラス 吉井明久 古文 9点』

 

「・・・・・・・・・明久。」

 

「・・・・・・正直、すまなかったと思ってる。」

 

すごくいたたまれない雰囲気だ。

さっきまで召喚獣の登場で盛り上がっていた会場もシーンとしてるし。

 

「アキ!おしおきよ!」

 

そんでもって二人とも僕の方へ向かってくるの!?

9点の召喚獣に対して、6点の召喚獣と399点の召喚獣が襲いかかる。

ねえこれいじめだよね!?

雄二も見てないで助けてよっ!

というか雄二の方が点数高いんだから雄二が姫路さんと戦ってよっ!

 

「・・・明久、キツいだろうがそのまま武器を抑え込め。俺が奇襲をかける。」

 

助けを求めると、そんな返事が小声で返ってくる。

・・・そういうことね。

なら、一瞬の痛みを我慢して押さえ込む!

姫路さんの召喚獣が剣を引き戻そうとするタイミングで召喚獣を飛びつかせる。

ぐうっ!引き戻す動作でも攻撃力が高いっ!

 

「雄二ッ!」

 

でもこの一瞬の痛みを耐えきれば、雄二が倒してくれる!

さあ、あとは僕を巻き込まないようにして・・・

 

「アホか、そんなこと考慮したら威力が落ちるだろうが。」

 

ドンッ!

雄二の言葉とともに、姫路さんの召喚獣と僕のに叩き込まれる拳。

ぐほっ・・・。

し、死ぬほど痛い・・・。

 

「瑞季っ!」

 

「余所見とは余裕だな。」

 

姫路さんの召喚獣に気をとられていた美波に、雄二の攻撃が叩き込まれる。

姫路さんですら耐えられなかった一撃だ。

結果は見なくてもわかる。

というか、痛みで意識が飛びそうなため見えなくなってきた。

 

「え・・・っと・・・。姦計をめぐらせ、味方ごと敵を倒した坂本君の勝利です!」

 

先生の戸惑ったような声を最後に、僕は痛みで気を失った。

 

 

 

 

 

しばらくして僕が目覚めたあとは、秀吉、ムッツリーニ、僕の3人で食事をとるため学祭を回っていた。

胡麻団子は美味しいけどお腹はあまり膨れないし。

 

「む?あれはBクラスのようじゃな。」

 

秀吉が指差した方には行列がある。

焼きそばの美味しそうなにおいがこっちに来てて食欲が増す。

 

「並ばない?」

 

「・・・・・・賛成。」

 

「そうじゃの。」

 

他の二人からも賛成を得られたため、並ぶ。

数分待つと、僕らの順番が回ってきた。

 

「注文はどうしますか?」

 

「じゃあ焼きそば3つで。」

 

店員に注文をして、待つ。

すると、焼きそばを作りながら、彼女は話しかけてきた。

 

「・・・妹は、クラスでうまくやれていますか?」

 

・・・妹?

誰のことなんだろう?

 

「妹とは、誰のことなのじゃ?」

 

秀吉も疑問に思ったようで、彼女に質問する。

 

「失礼、そちらの二人とは初対面でしたね。私は古明地さとり、こいしの姉です。」

 

古明地さんのお姉さんだったのか。

 

「というか、そこの吉井明久とは会っているのですが、忘れていたのですね。」

 

言われて思い出した。

雄二を探すために女子更衣室に行った時に会ったんだった・・・。

その節は助かりました。

まあそれはともかく、古明地さんのお姉さんに、思った通りに答える。

 

「・・・そうですか。いい友達を持ったのですね。焼きそば、できましたよ。」

 

それで伝わったのか、彼女は安心したような笑みを浮かべ、焼きそばを渡してくれる。

焼きそばは期待通り美味しかった。

 




いかがでしたか?
さとり様は結構妹思いです。


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第二十八話「準決勝!」

 

 

 

 

「・・・さて、これから準決勝な訳だけど・・・なんでその格好なの?」

 

四回戦が終わって1時間後、準決勝の時間が来たからやってきたけど、お姉ちゃんは困惑と呆れが1:4くらいの割合な表情をしてる。

喫茶店から直接来ただけなんだけどな。

 

「・・・いや、私が言いたいのはなんで制服に着替えずにチャイナドレスで来たのかってことよ?」

 

「えー、でも可愛いでしょ?」

 

「・・・こいしに一般常識を求めた私がバカだったみたいね。」

 

チャイナドレス、可愛いと思うんだけどな~。

 

「まあいいから会場向かうわよ。」

 

「はーい。」

 

お姉ちゃんと一緒に会場に入る。

四回戦と同じ・・・いや、それ以上に観客がいるね。

対戦相手も今から入場するところだけど、対戦表見てるから相手誰だかはもう知ってるよ。

 

「こいし、点数はどれくらい?」

 

「んー、確か220点くらいだったかな・・・?」

 

保健体育は別に得意でも苦手でもないんだよね。

お姉ちゃんが私の点数を確認している間に、対戦相手の二人が入場してくる。

出てきたのは阿求ちゃんと本居さん。

なんというか、四回戦で当たらなくてよかったよ。

 

「あら、次はこいしさんでしたか。お手柔らかにお願いします。」

 

「よろしくね!あと古文の時は助かったよ~!」

 

阿求ちゃんに教えてもらったおかげで古文の点数とれたからね。

 

「じゃあ、始めよ!」

 

「「「サモン!!」」」

 

四人が召喚獣を呼び出す。

えっと、みんなの点数はどれくらいかな・・・?

 

『Aクラス 本居小鈴 保健体育 278点 and Fクラス 稗田阿求 保健体育 364点』

 

『Bクラス 古明地さとり 保健体育 447点 and Fクラス 古明地こいし 保健体育 223点』

 

んー、どうだろこれ?

点数では勝ってるけど、そこまでの差じゃないし・・・。

銃での遠距離攻撃は辛いから、距離をつめようかな。

 

「お姉ちゃん!援護お願い!」

 

「わかったわ。」

 

恐らく阿求ちゃんの弾は威力は低いけど高速連射できるんだと思う。

放置していると危険そうだから、先に倒したいよね。

400点を超えてないから多分武器も変わらないし。

 

「ですが、させませんよ!小鈴!」

 

「わかってる!」

 

でも、そううまくはいかず、間に割り込んできた本居さんと戦うことになる。

お姉ちゃんの援護も、阿求ちゃんの攻撃のせいで無くなっちゃう。

私と本居さん、お姉ちゃんと阿求ちゃんと、1対1のかたちがふたつになる。

でも、本居さんの武器は普通の剣だから読みやすいは読みやすいけどね。

降り下ろされた刀を横から弾いて軌道を反らす。

そのまま踏みつけて武器を動かせないように封じ、こちらの攻撃を打ち込む。

本居さんは武器を諦めて後ろに飛んで回避したけど、武器をどうにかすることはできた。

でも、このあたりの判断のはやさはさすがAクラスだね。

 

「マズイな・・・。」

 

武器を失ったことによる、本居さんの焦りの呟きが聞こえてくる。

私の武器は直接くっついてるから同じことがおこる心配はないけど、気持ちはわかる。

まあ、だからといって手加減とかはしないけどね。

攻める。

 

「・・・ここね。」

 

えっ?

その言葉を疑問に思う間もなく、私の召喚獣が大きく体勢を崩す。

何が起きたのかわからなかったから注意して見てみると、どうやら本居さんの回し蹴りが私の召喚獣の足をとらえたみたい。

体勢を立て直す間に本居さんは剣を再度拾い上げ、横凪ぎに打ち込んでくる。

マズイ!

とっさにガードはしたけど、不充分だったために吹き飛ぶ私の召喚獣。

 

「チャンスよ阿求!」

 

「任せて小鈴!」

 

「・・・ッ!こいし!頭を守って!」

 

吹き飛ぶ私の召喚獣に、阿求ちゃんが銃を撃つ。

お姉ちゃんの直前の警告で、頭だけは守れたけど、弾が私に当たる。

 

『Aクラス 本居小鈴 保健体育 186点 VS Fクラス 古明地こいし 保健体育 65点』

 

「・・・仕方無いです、心花『カメラシャイローズ』。」

 

お姉ちゃんが、私に対するさらなる追撃を防ぐために、腕輪の力を使う。

本居さんは残念ながら射程圏外だけど、阿求ちゃんにたくさんのハートの弾が襲う。

本居さんが私のところに来るまでには、私は体勢を立て直せる。

これで阿求ちゃんを倒せれば、1対2のかたちを作れる・・・

 

「と思っているかもしれませんが、そううまくはいきませんよ。」

 

えっ?

何を言って・・・

 

「「無傷・・・!?」」

 

お姉ちゃんの攻撃が終わった後、そこには傷一つない阿求ちゃんがいた。

でも、放たれた時に動かなかったから、回避したわけではないはず・・・。

もしかして・・・

 

「全弾撃ち落としたの・・・?」

 

「いいえ、自分に当たる弾だけです。」

 

平然と言う阿求ちゃんに、お姉ちゃんも私も驚く。

いくら拡散するといっても、まさか完全に防げるとはね・・・。

でも、おかげで体勢を立て直すのは間に合った。

さっきは武器を封じた油断からやられちゃったけど、次は油断しないよ。

同じような足払いも警戒しつつ、ギリギリのところで回避し、わずかずつ、しかし確実にダメージを蓄積させてく。

一撃当たったら多分やられちゃうし、かなり厳しいね。

 

「小鈴、攻撃が必要以上に大振りになってるわよ。落ち着いて。」

 

「ああ・・・ごめん。ありがと。」

 

点差が縮まったことによる焦りが生まれていたのか、攻撃の隙が大きくなっていたけど、阿求ちゃんが落ち着かせてもとに戻る。

私的には大振りな方が攻撃しやすかったからよかったんだけどね。

阿求ちゃんとお姉ちゃんの方も互角みたい。

驚きながらも回避はしていたから、点差もほとんどないしね。

・・・いや、互角じゃなさそう。

だんだんお姉ちゃんが優勢になってきている。

 

「その銃、連射性能等は高いみたいですが、重さもかなりのものみたいですね。点数が下がり、動きにくくなってきたはずです。」

 

「見抜かれていましたか・・・。」

 

自分の武器を扱えなくなることはないけど、武器の性能は召喚獣の点数に比例するかのように変わる。

お姉ちゃんは武器がないけど、阿求ちゃんは両手銃というだけあって、質量も大きいんだよね。

しかも今回は400点に達してないから、武器を変えることも出来ないし。

 

「では終わらせましょう・・・。心花『カメラシャイローズ』。」

 

お姉ちゃんの弾を阿求ちゃんが撃ち落としたタイミングで、お姉ちゃんが再び腕輪の力を使う。

 

「もう1回やっても同じことで(カチカチッ)・・・・・・嘘、弾切れ!?」

 

さっきと同じように撃ち落とそうとした阿求ちゃんだけど、どうやら弾切れが起こったみたいで、驚きの表情を浮かべている。

あの様子から考えるに、そもそも弾切れがあるのを知らなかったということだよね。

 

「・・・!ごめん小鈴、あとはお願い・・・。」

 

銃を構えていた体勢からの回避は間に合わず、弾幕が阿求ちゃんに多数hitする。

さすがに耐えきることはできずに、阿求ちゃんは倒れる。

 

『Fクラス 稗田阿求 保健体育 0点 VS Bクラス 古明地さとり 保健体育 112点』

 

「阿求!私がやるしか・・・。」

 

これで2対1。

点差もちまちま攻撃していたおかげで、だいぶ縮まってるし、油断しなければ行ける!

お姉ちゃんと目線を交わし、作戦を伝える。

そして、あえて体勢を崩し、隙を生み出す。

もし私を攻撃しようとすると、お姉ちゃんの弾が直撃するような位置に行くように。

弾は私の武器と私の召喚獣の体で隠れるような軌道になってる。

 

「くっ、しまっ・・・!」

 

本居さんも気づいたようだけど、それはひっかかった後。

私が攻撃されると同時に、お姉ちゃんの弾が本居さんの召喚獣の頭に当たる。

倒れたのは同時。

・・・ほんとは紙一重でかわすようにしたんだけど、失敗しちゃった。

まあ、お姉ちゃんがいるから勝ちだしいっか!

 

『Aクラス 本居小鈴 保健体育 0点 VS Fクラス 古明地こいし 保健体育 0点』

 

「そこまで!優勝最有力候補であった稗田・本居ペアを破り、決勝への切符を手にしたのは、古明地姉妹ペアだぁ~!」

 

実況の人・・・かはわからないけど、その人が私とお姉ちゃんの勝利を告げてくれる。

危なかったけど、なんとかなってよかったよ!

 

「・・・お疲れ、こいし。」

 

「うん、お疲れさま、お姉ちゃん!」

 

お姉ちゃんと言葉を交わす。

決勝戦は明日だし、今日はこれで終わりだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・じゃあこいし、喫茶店頑張りなさいよ。」

 

「うん、お姉ちゃんも頑張ってね!」

 

お姉ちゃんと別れて私のクラスに向かう。

・・・でもせっかくだし、おやつ食べてから行こうっと!

進路をちょっと変えて、Fクラスの教室じゃなくて控室的な場所に向かう。

そういえばさっき、ここで絡まれたんだっけ。

まあ、2回も同じことはおこらな『おい、お前Fクラスの女か?』フラグって怖い。

 

「ん?そうだけど、どうしたの?」

 

「おいお前ら、連れてくぞ。」

 

えっ?

何が起こってるかわからないうちに腕をつかまれ、つれていかれる。

・・・三人の男達に私一人でも勝てないし、しょうがないから抵抗しない。

腕をつかまれてるのは不快だけどね・・・。

 




いかがでしたか?
このコンビと当たったのが4回戦だったら2秒でやられてたでしょうね。


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第二十九話「準決勝!sideA」

 

 

 

「ねえ雄二、次はどんな卑怯な手を使って勝つつもりなの?」

 

「準決勝の相手は翔子と木下姉だ。だから秀吉を使う。」

 

秀吉を?

どういうことなの?

 

「はあ・・・。秀吉を木下姉に変装させ、降伏を宣言させるってことだ。そんくらい、言われなくてもわかれ。」

 

僕が雄二の言ったことを考えていると、呆れたような感じで雄二が補足する。

まったく、僕は雄二のような卑怯な男じゃないんだしわかるわけがないじゃないか。

 

「とにかく、翔子にペアチケットを渡すわけにはいかねえ・・・。企業の力で無理矢理婿入り・・・、霧島雄二なんて呼ばれるのはごめんだ・・・!勝たないと、俺の人生は、俺の人生は・・・!」

 

最近、雄二の壊れかたがワンパターンな気がする。

まったく、霧島さんのような美人なら、僕なら大歓迎なのにな。

開始の時間も近いので、古来から伝わる壊れた電化製品を直す方法を雄二にやって起こし、会場に向かう。

雄二が言っていた通り、出てきたのは霧島さんと木下さん・・・いや、秀吉なんだっけ。

 

「・・・雄二。私は雄二と幸せになりに行きたいだけ。そんなに嫌?」

 

いきなり霧島さんが上目使いで、雄二に質問する。

うっ、これは僕なら嫌とは言えない。

というか、それでお願いをされて断れる人は人の心を持ってないと言えるだろうね。

 

「ああ、嫌だ。」

 

雄二は人の心を持ってなかった。

 

「・・・そう。なら、頑張る。」

 

でも、霧島さんも特に気にした様子はみられない。

案外、この2人はお似合いなのかもしれない。

 

「さて、それじゃ秀吉!やってくれ!」

 

雄二が叫ぶ。

これで、木下さんのフリをした秀吉が、敗けを宣言し、僕らは決勝戦に進める。

はずなんだけど、秀吉は黙ったまま宣言しようとはしない。

 

「秀吉、何をやってるんだ?うちあわせ通りに頼むぞ。」

 

「秀吉?もしかしてあのアホのことかしら?」

 

霧島さんの隣に立っている秀吉?がそんなことを言い出す。

指差した方向を見ると、チャイナドレスを着た秀吉?が縛られ、転がされていた。

・・・・・・ごくり。

・・・じゃなくて、誰があんなことを!

 

「・・・雄二の考えることはわかる。」

 

くっ、霧島さんと雄二が幼馴染みなのは、試召戦争では有利に働いたけど、今は仇となったのか!

 

「くっ、翔子・・・」

 

ともかく、ムッツリーニが写真を撮りながら縄をほどきに向かったけど、雄二の作戦は失敗してしまった。

もちろん、学年主席の霧島さんと学年でも指折りの成績優秀者である木下さんとまともに戦ったら、僕達には万にひとつも勝ち目はない。

どうにか勝てる方法は・・・そうだ!

 

「ねえ雄二、勝てる作戦を思いついた。僕を信じて、今から僕が言う言葉を言ってね。棒読みじゃダメだよ。」

 

「・・・わかった。俺の作戦は失敗しちまったし、お前を信じようじゃねえか。」

 

よし、雄二の協力もとりつけられた!

この作戦には、雄二が必要だからね。

 

「じゃあ行くよ。『翔子、俺の話を聞いてくれ。』」

 

「翔子、俺の話を聞いてくれ。」

 

「・・・なに?」

 

うん、無事に霧島さんの気をむけられている。

ここまでは計画通り。

 

「『お前がそう思ってくれているのは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ。』」

 

「お前がそう思ってくれているのは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ。」

 

「・・・考え?」

 

「『俺はお前に勝って、俺の意思で、胸を張って幸せになりたいんだ。』」

 

「俺はお前に勝って、俺の意思で、胸を張って幸せに・・・ってちょっと待て!」

 

こちらを向いて抵抗してくる雄二。

でも、それくらいはお見通しさ!

 

「『だからここは俺に勝たせてくれ。そして優勝したら結婚しよう。』」

 

「だ、誰がそんなこと言うかボケ!」

 

雄二が激しく抵抗する。

 

「くたばれ!」

 

「くぺっ!?」

 

だから僕は雄二の頸動脈を押さえ、意識を刈り取る。

意識を失った雄二の体を支えて・・・と。

 

(秀吉、お願い。)

 

(うむ、任せるのじゃ。)

 

近くに呼んだ秀吉を雄二の後ろに隠すようにして配置する。

 

「だからここは俺に勝たせてくれ。そして優勝したら結婚しよう。愛してる、翔子!(秀吉の声真似)」

 

秀吉が雄二の声で、霧島さんに愛の告白をするのにあわせて、僕が後ろから口や手を動かし、本当に雄二が言っているように演出する。

・・・ところで、僕が指示してないものまで入ってたんだけど、実は秀吉もこういうの好きなのかな?

ともかく、これで霧島さんは封じた。

こっちも雄二を落としたけど、雄二と霧島さんの交換なら余裕でお釣りがくる。

名付けて『なりすまし作戦』、成功だ!

そして、ここからが僕の秘策第二段!

 

「さあ木下さん、残りは君だけだ!」

 

雄二と霧島さんの対話の間に召喚獣を出していた木下さんに言う。

 

「いくよ!サーモン!」

 

「・・・・・・サモン(ボソッ)」

 

『Aクラス 木下優子 保健体育 234点 VS Fクラス 土屋康太 保健体育 691点』

 

これぞ第二の秘策、『なりかわり作戦』!

保健体育だけはべらぼうに高いムッツリーニによる代理召喚で決める!

 

「・・・加速。」

 

「ちょ、本当に卑怯・・・きゃあっ!」

 

出現と同時に腕輪の力を使い、一太刀で木下さんの召喚獣を切り裂くムッツリーニ。

 

「・・・えー、ただいまの勝負ですが・・・。」

 

む。でも、物言いがつきそうだ。

 

「秀吉、お願い。」

 

「うむ。愛してる、翔子!(雄二の声真似)」

 

「・・・私達の負けでいい。」

 

「・・・わかりました。吉井、坂本ペアの勝ちです!」

 

ふう、危なかった。

雄二の作戦が失敗したときはどうなるかと思ったけど、僕の天才的な頭脳のおかげで、雄二の人生という、僕には全く損害がないものだけで勝つことが出来た。

優勝できなかった場合、僕の人生は博麗さんに終わらせられるか、水道水と塩だけしか食べられなくなってのたれ死ぬとこだったし、安いものだよね雄二の人生くらい。

 

 

 

 

 

 

「テメェ明久!なに俺の人生を売ってやがるんだ!」

 

「もとはといえば雄二の作戦が失敗したから悪いんじゃないか!むしろ僕のおかげで勝てたことに感謝して欲しいんだよ!」

 

「だからといってこれじゃ本末転倒なんだよボケ!あれか?2回戦の時の仕返しのつもりかこの野郎!」

 

「ああ、その通りだよ!計8000円という大金を支払わなくちゃいけなくなった僕の苦しみを、雄二も味わえばいいんだ!」

 

「8000円と俺の人生って、割にあわなさすぎるだろうが!」

 

雄二と口論しながら、Fクラスに戻るために歩く。

・・・ん?なんだかFクラスの様子がおかしいような・・・?

 

「・・・大変なことになった。」

 

僕らの姿が見えたのか、先に戻っていたムッツリーニが慌てた様子で教室から出てくる。

 

「どうした、なにかあったのか。」

 

「・・・女子達が連れ去られた。」

 

へ?

連れ去られた?

 

「・・・連れ去られたのは正邪以外の全員。正邪だけは連れ去ろうとした奴を撃退したそうだ。」

 

正邪以外の全員・・・というと大変じゃないか!

今すぐ助けにいかないと!

 

「落ち着け。まずはどこに連れていかれたか確認だ。」

 

「・・・もう調べた。これを。」

 

ムッツリーニがなにかを見せてくる。

これは・・・発信器?

・・・うん、今だけは見なかったことにしよう。

友人から逮捕者が出るなんて事態、僕も嫌だしね。

 

「・・・学校の近くのカラオケを差している。」

 

「そこに、姫路さん達がいるの?」

 

「そうだな。助けに行くか。」

 

「うん。」

 

誘拐なんてする犯人達を、僕は許せない。

待っててねみんな!今助けに行くから!

・・・でも、なんでこんなに事件が起こるんだろう。

正邪がやってくれているから店から店員がいなくなる事態にはならなかったけど、誘拐なんて普通に犯罪じゃないか!

 

 

 

 

 

 

「ここか・・・。」

 

5分後。

ムッツリーニの発信器がさしていたカラオケに到着していた。

店員に、中に連れがいると言って入る。

ムッツリーニは既に店員として潜入してる。

中から聞こえる声を聞くために、ムッツリーニから借りた盗聴器を耳にあてる。

すると、聞こえてくる声。

 

「ちょっと、いい加減にしなさいよ!何が目的でこんなことをするのよ!」

 

これは・・・美波の声?

 

「そんなの言うわけないだろ。お前達はここで大人しくしてれゃいいんだよ。」

 

「よくわからないけど、これ美味しそうだから頼んでいい?」

 

「なあお空、こっちも美味しそうだぜ!」

 

「あ、これ、前に私がお姉ちゃんと食べて美味しかったやつだ!瑞季ちゃんも阿求ちゃんもどう?」

 

「い、いえ・・・。私はいいです・・・。」

 

「あ、あの・・・、そこの3人、呑気過ぎませんか・・・?」

 

「というか、よく食べられるのう・・・。」

 

「だって、この人達、どうせ出してくれないと思うもん。だったら、食べられるものを食べた方がいいかなって。」

 

「その通りだぜ!・・・それに、今私達金持ってないし、こいつら持ちに出来そうだしな。(ボソッ)」

 

美波とは対照的に、危険を感じていない様子の魔理沙と古明地さんと霊路地さんの声。

というか魔理沙、誘拐犯に持たせようとするなんて凄いね・・・。

今すぐ行かなくても良さそう。

隙をうかがって・・・

 

「この・・・!お前、いい加減にしやがれ!」

 

ドンッ、ガシャーンと、なにかを突き飛ばしたような音と、テーブルか何かに当たったような音。

そして、魔理沙のうめき声が聞こえてくる。

うん、前言撤回。

 

「お、おい明久、落ち着・・・」

 

雄二の声を無視して中に入る。

中には、聞こえてきた音と同じような光景があった。

数は・・・6か。

 

「あ?なんだ、テメェ?」

 

そのうちの1人が、こっちにガンつけながら近づいてくる。

それじゃ、失礼して・・・

 

「死にさらせエェェーッ!」

 

「ごふぉっ!?」

 

股間を思いっきり蹴りあげる。

そいつは股間をおさえて沈んでいった。

 

「テメェ!リュウキに何しやがる!」

 

僕の腹にパンチを叩き込む誘拐犯の一人に、カウンターの顔面パンチを叩き込む。

魔理沙を突き飛ばしたのはどいつだ?

誰でもいい、全員ぶちのめす!

 

「やれやれ・・・全く、突っ走りやがって・・・っと!」

 

でも、多勢に無勢。

不利になってきていたけど、雄二も加勢してくれる。

店員に扮したムッツリーニが最後の一人の頭を灰皿でぶん殴り、制圧は完了した。

 

「大丈夫、みんな?」

 

なにかトラウマになるようなことがなかったか、突き飛ばされた様子の魔理沙に怪我がないかと聞いてみたが、問題はないようだ。

そのため、みんなでFクラスに戻る。

 

「や・・・やっと帰ってきたか・・・。あとは・・・頼む・・・ぞ・・・(バタン)。」

 

「ちょっ、正邪!?」

 

中には、1人チャイナドレスで奮闘し、げっそりとしたような正邪の姿があった。

こっちを見て、糸が切れたように倒れる彼女。

お疲れさま。

そして、ありがとう。

 

 

 

ちなみに、彼女は控え室でゆっくりと寝かせておいた。




いかがでしたか?
こいしちゃんサイドに比べて明久サイドは卑怯。


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第三十話「白金の腕輪!」

 

 

 

連れ去られた私達を吉井君達が助けてくれてからしばらく後。

学園祭1日目も終わって、他の生徒はもう帰ったんだけど、何故か私はひきとめられたんだよね。

今教室にいるのは私と吉井君と坂本君の3人。

あのあとお姉ちゃんと話したけど、まだ話したいのにな。

 

「ところで、用件ってなんだっけ?私、はやくお姉ちゃんと会いたいんだけどなー?」

 

「まあ待て。もうそろそろ来るはずだ。」

 

「ん?誰か来るの?」

 

そう言ったのは吉井君。

あれ、吉井君も知らないのかな?

 

「ババァだ。」

 

・・・・・・いや、誰?

ババァって言われてもなあ・・・。

 

「え?学園長がここに来るの?」

 

「えっ?ババァって学園長のことだったの!?」

 

学園で一番偉い人なのにババアって・・・。

二人らしいといえば二人らしいけど。

 

「でも、どうして学園長がここに来るの?」

 

「俺が呼んでおいた。さっき廊下で会ったときにな。」

 

「ダメだよ雄二。性悪ババァとはいえ一応目上の人なんだから、用があるならこっちから行かないと。」

 

吉井君・・・。

ババァとか言っていなければ、とてもいいことを言っていたのに・・・。

 

「用もなにも・・・、今日起きたFクラスへの妨害の原因は、あのババァなはずだからな。事情を聞かせてもらわないと気がすまん。」

 

「もうちょっとふさわしい呼び方をした方が・・・・・・ん?なんて?」

 

なんだか今、妨害の原因が学園長にあるって聞こえたんだけど・・・。

 

「だから、あのババァが今日のトラブルの原因だ。」

 

「えええっ!?あのババァ、なにか企んでいたのかっ!?」

 

もしそうだったら・・・残念だな。

その時、ガラガラと扉が開けて、長い白髪の女性が入ってくる。

 

「やれやれ、わざわざ来てやったのにずいぶんな挨拶だね、ガキ共。」

 

「出たな!諸悪の根源め!」

 

その容貌に、教育者としては乱暴なしゃべり方、あと吉井君の台詞から考えるに、今入ってきた人が学園長である、藤堂カヲルさんで間違いないはず。

 

「おやおや、アタシが黒幕扱いかい?」

 

「そうでないにしろ、俺たちに隠していることがあるのは間違いないはずだ。でないとたかが学園祭の出し物で、執拗な営業妨害や誘拐が発生するなんて、どう考えてもおかしい。話を聞かせてくれるんだよな?」

 

「・・・まさか奴らがそこまでするとは、このアタシも思わなかったのさ。本当にすまなかったね。」

 

そう言いつつ学園長が頭を下げて謝罪を・・・え?

 

「そこのジャリ共も、誘拐犯から生徒達を助け出してくれたこと、感謝してるよ。」

 

学園長は頭を下げたまま吉井君達にお礼を言い、頭を上げる。

 

「・・・さて、謝罪も終わったことだし話すとしようかい。身内の恥をさらすような真似になるから、あまり話したくはないんだけどねえ。」

 

そう言って、学園長は話し始めた。

 

「アタシの目的は、如月ハイランドのペアチケットじゃないのさ。」

 

・・・ん?

まって、いきなり話がわからないんだけど・・・。

ペアチケットっていうと大会の優勝商品だよね。

お姉ちゃんと行くつもりだったけど、なにかあったのかな?

 

「ベアチケットじゃない!?どういうことですか!?」

 

「アタシにとっちゃあ企業の企みなんかどうでもいいんだよ。アタシの目的は、別の優勝賞品の方さ。」

 

「別のって言うと・・・商品券と、『白金の腕輪』とやらか。」

 

「ああ。あの特殊能力がつくとかなんとかってやつ?」

 

そういえばそんなものもあったっけ。

確か、片方が点数を半分にわけて2体同時に出せるのと、教師がいなくてもフィールドを展開できるんだったかな?

 

「その白金の腕輪をあんたらに勝ちとって欲しかったのさ。」

 

「ああ。それと引き換えに教室の補修を許すってな。ま、俺達が聞いてたのはチケットの方だった訳だが。」

 

へー、そんなことがあったんだ。

確かにFクラスはすき間風とか酷いもんね。

 

「でも、なんで吉井君達に手に入れて欲しかったの?」

 

「・・・・・・欠陥があったのさ。恥ずかしい話だが、点数が一定以上だと暴走してしまうんだよ。」

 

「一定以上?」

 

「そうさ。片方はそこまで水準は低くはないが、もう一方は平均点程度でも暴走してしまうようでね。だから、あんたらのような、優勝の可能性がある低点数者がいいってわけさ。」

 

な、なるほどね・・・。

確かに坂本君は作戦でD、Bクラスに勝ち、Aクラスにもあと一歩のとこまで行った(それを台無しにしたのも坂本君だが)し、吉井君は監察処分者だから召喚獣の扱いが上手いものね。

 

「雄二、僕たちは褒められてるってことでいいのかな?」

 

「いや、お前らはバカだって言われてるんだ。」

 

「なんだとババァ!」

 

「それぐらい自分で気づけっ!」

 

暴れだしかけた吉井君をおさえて学園長の話を聞き続ける。

あれ、そうなると負けたほうがいいのかな・・・?

私達以外で勝ち上がったのは吉井君達みたいだしね。

 

「ところで、明日の試合は私とお姉ちゃんが負けたほうがいいの?」

 

あまりやりたくはないけど、そういう事情があるならしょうがないかな。

 

「いや、そんなことはするんじゃないよ。決勝はいろんな人が見てるんだ。そんなことをしちまったら八百長試合で思い切り叩かれちまうさね。もしもあんた達が勝ったら、『白金の腕輪』だけ、そこのバカガキどもに譲ってやってくれるかい?」

 

「うん、わかったよ。」

 

腕輪とかちょっと面白そうだけど、不具合あるならしょうがないよね。

うん、それなら二人と普通に戦えるよね。

 

「ええええ!?バ、ババア!そこは古明地さんに負けろって僕は言ってほしかったよ!?」

 

でも突然吉井君が慌てだす。

なんか事情があったのかな?

 

「あん?別にアタシとしちゃあ、『白金の腕輪』が戻ってくるんならどちらでもいいさね。むしろ、礼儀知らずのあんたらには負けてもらって、この娘に勝ってほしいぐらいだよ。」

 

「そんな!?ババァ、僕達を見捨てないで!可愛い生徒じゃないですか!」

 

「バカ言うんじゃないよ。あんた達よりもこの子の方がよっぽどかわいい生徒だ。万が一にも八百長を仕掛けるとしてもこの子を勝たせるさね。」

 

「そ、そんな殺生なっ!?」

 

よくわからないけど・・・吉井君は八百長してでも勝ちたい理由があるのかな?

でも、さっきの吉井君、まるで命がかかってるかのような必死な感じがしたけど・・・。

 

「まあそういうわけで、明日は頼んだよガキ共。」

 

「ああっ!待って、ババァ長!」

 

吉井君が呼び止めるのを無視して、スタコラと歩いていく学園長。

吉井君の態度も態度だけど、無情だよね。

 

「雄二!今日は徹夜で勉強するよ!」

 

「とはいってもなあ・・・。古明地らが勝てば、翔子にペアチケットが渡る心配はないだろうしな。だろ、古明地?」

 

「うん、私はお姉ちゃんと行くつもりだったよ~!」

 

「ん?だったとはどういうことなんだ?」

 

お姉ちゃんと一緒に行きたかったんだけど・・・。

 

「お姉ちゃん私と遊園地行くの恥ずかしいみたいで、いいって言ってくれなかったんだよね・・・。」

 

「そうなると、どうするつもりなんだ?」

 

「んーっとね、お姉ちゃんは今一番欲しがっている人に売るって。」

 

「欲しがっている人・・・?」

 

「えーと、Aクラスで学年主席の、一途な女の子って言ってたよ。」

 

「・・・Can you say that again?(もう一度言って貰えますか?)」

 

何故英語?

私もさっきまで知らなかったんだけど、お姉ちゃんと霧島さんは知り合いだったらしいんだよね。

 

「Aクラスで学年主席の、一途な女の子って言ってたよ。」

 

とりあえず言われた通りにもう一度言ってあげる。

 

「じゃ、私はもう行くね~!」

 

お姉ちゃんがいる場所に私も向かうため、坂本君と吉井君に別れの挨拶をして去る。

 

「ちくしょおおぉおっ!明久ァ!今から死ぬ気で勉強するぞおおぉおっ!!」

 

後ろから、そんな坂本君の魂の叫びが聞こえてきた。

 

 

 




いかがでしたか?
霧島さんとさとり様は友人です。


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第三十一話「決勝戦開始!」

 

 

 

翌日。

 

「おっはよ~!」

 

「おう、古明地か。おはようだな。調子はどうだ?」

 

教室に入って、挨拶すると、正邪ちゃんが調子を聞いてくる。

 

「うん、しっかり寝たし大丈夫だよ!そういや坂本君は?」

 

普段、こういう時にははやく来ているのに、姿が見えないから気になったんだよね。

なにかあったのかな?

 

「坂本と吉井なら、徹夜で勉強してたから、少し眠らせて欲しいらしくてな。今は屋上で寝てる。」

 

「ほ、ほんとに徹夜したんだ・・・。」

 

私、昨日も普段通りに11時に寝たんだけど・・・。

まあお姉ちゃんも健康は大事って言ってたし、間違ってはいないはずだよ!

 

「そういうこいしはどうなんだぜ?」

 

話していたら、横から魔理沙が聞いてきた。

 

「ま・・・まあ、それなりに勉強したよ!」

 

ほんとは1時間くらいしかやってないんだけど、そのまま言うのは恥ずかしいし、ごまかそっと。

 

「それなり、ねえ・・・。」

 

あ、正邪ちゃん信じてない。

ものすごく疑わしげな視線を感じるよ。

 

「こいしがこう言う時って、大抵ウソなんだぜ。」

 

魔理沙にもバレてる。

まあ魔理沙とはそこそこ長い付き合いだしね・・・。

 

「と、ところで、喫茶店の準備はどうなってるの?」

 

このまま話を続けたくなかったので、ちょっと強引にでも話を変える。

喫茶店がどうなったか知りたいのは本当の気持ちだもんね。

 

「特に問題なく進んでるぜ。このまま行けば、開店時刻までには準備は終わるはずなんだぜ。」

 

お、それは安心だね。

とはいっても、私だけサボっているのは嫌だから、そのまま手伝う。

そして、開店、接客、料理運びなどをこなしているうちに、あっという間にその時刻は近づいてたよ。

 

「じゃあ私、そろそろ行ってくるね!」

 

「頑張ってね、こいしちゃん!応援してるよ!」

 

「精一杯頑張ってきなさい!・・・まあ、アキにも同じことをいうつもりなんだけどね。」

 

「あはは、まあそうだよね!」

 

私の声に、お空と美波ちゃんがそう言ってくれる。

同じクラスの人同士が戦うんだもんね。

そりゃ片方だけ応援なんてできないよね。

 

「・・・いいシャッターチャンスをた『お姉ちゃん撮ったらカメラ壊すよ?』無情すぎる・・・!」

 

当たり前だよね?

お姉ちゃんを盗撮するなんて、許せないもん。

 

「こいし、出来れば接戦で頼むんだぜ!」

 

「古明地、いい試合を見せてくれ!」

 

「善処する!」

 

魔理沙と正邪ちゃんのそんな言葉。

うーん、接戦ね・・・。

それで負けちゃったら元も子もないし、気にしない方がいいかな?

 

「頑張ってきてくださいね。私が教えたこと、生かしてくださいね。」

 

「わっ、私も応援してます!吉井君達もですけど・・・。」

 

「うん、頑張ってくるよ!」

 

阿求ちゃんと姫路ちゃんの応援も、ありがたいよ。

阿求ちゃんには、昨日少し日本史教えてもらったし。

みんなの応援をうけとめ、教室を出る。

お姉ちゃんは、すでに待っていた。

 

「こいし、調子は問題ない?」

 

「うん、元気だよ!勝とうね、お姉ちゃん!」

 

「ええ、そうね。決勝はたくさんの人が来ると思うけど、怯んじゃダメよ。」

 

確かに、決勝はたくさん人がいそうだよね・・・。

外部の人も召喚獣システムがどのようなものかを確かめるため、見に来てるって学園長も言ってたはずだし。

よーし、頑張るよ!

改めて意気込みつつ、会場前まで歩く。

 

「2人とも、来たね。会場から、入場の掛け声が聞こえてきたら入場だから、それまでここで待機しててよ。」

 

着いたら、河城先生が手招きしてた。

なるほど、ここで待ってればいいんだね!

 

「しかし2人とも凄いよね~。四回戦では三年生コンビを打ち破るし、準決勝や三回戦も、学年トップクラスの相手に勝ってるわけだし。」

 

「ありがとうございます。入場の掛け声が来るのはどの程度後でしょうか?」

 

「んーと、大体十分といったとこかな。」

 

そんな風に、河城先生も交えた3人で話しながら待つ。

そして。

 

『さてさてご来場の皆さん!長らくお待たせいたしました!これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行いまーーすっ!実況は私、保坂実里が担当いたします!最初の登場となるのは、2ーB所属、古明地さとりさんと、2ーF所属、古明地こいしさんです!皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい!』

 

「ほら、出番だよ。頑張っておいで。」

 

『うおーーーーっ!』

 

私達が入場すると、たくさんの拍手と声援が迎えてくれる。

んー、やっぱりちょっと緊張するな。

 

『さて、このペアですが、名前からわかる通り、姉妹です!FクラスとBクラスと、クラスこそ違いますが、姉妹の絆は随一!完璧なコンビネーションを見せつけ、四回戦で三年生コンビにすら白星をおさめています!しかもどちらも可愛い!才色兼備とは、まさにこのことではないでしょうか!』

 

才色兼備なんて・・・、保坂さん、お姉ちゃんにいいこと言うね!

私の自慢のお姉ちゃんなんだから!

 

『そんな彼女達の相手となるのは、2ーF所属、坂本雄二さんと、同じく2ーF所属、吉井明久さんです!皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい!』

 

入ってくる2人に対し、同じように、歓声と拍手が響く。

私達の時より、ちょっと少ない・・・かな?

 

『さて、このペア、なんとどちらも学年最下位クラスであるFクラス所属でありながら、ここまで進んできました!先程の古明地こいしさんと合わせ、4人中3人がFクラス所属となります!いやー、これはFクラスの認識を改めないといけないかもしれませんねー!』

 

嬉しいこと言ってくれるね。

姫路ちゃんのお父さんが聞いていたら、Fクラスのイメージアップに繋がると思うし。

 

『さて、ルールについてですが・・・』

 

保坂さんが観客に対してルールの説明をしてる間に、言葉を交わす。

 

「驚きました。まさか翔子さんを破って、あなた達が決勝に残るとは思いませんでしたから。・・・ですが、二人ともやけに血走った目をしてますね。どうしたのですか?」

 

「自分の胸に手を当てて考えてくれ!誰のせいだと思ってやがる!」

 

「ふむ、しかし霧島雄二さん、翔子さんと行くのの何が悪いのでしょうか?」

 

「悪いし俺は坂本雄二だ!婿入りさせんじゃねえ!」

 

「坂本君はわかるけど、吉井君はどういう理由なの?」

 

「だって、優勝出来なければ、僕は博麗さんの手によって殺されるからね!」

 

「・・・??」

 

よくわからないや。

なんで霊夢さん?

 

「というわけで、俺達は死んでも勝たなけりゃいけねえ!そんくらいの意気込みでいかねえと、勝てそうにねえからな!」

 

「いい心掛けですね。こいし、油断してはダメよ。」

 

「うん。吉井君も、普段の成績は悪いけど、本気だした時は凄いと思うし。」

 

よく、運動バカとか野球バカとか言われるけど、それは誉め言葉だしね。

吉井君も、そういう一面を持ってると思う。

 

「それに、坂本君の策も恐ろしいもんね。味方だと頼もしいけど、敵に回すとかなり怖いものだよ。」

 

「本当です。私達Bクラスに勝ったのも、彼の作戦があったからでしょうしね。ですが、今回はどんな作戦を見せてくれるのか、楽しみでもあります。」

 

「策?そんなもんはねえ。俺達は今回は正々堂々と戦う。」

 

「その割には自信満々ですね。徹夜でもされたのでしょうか。」

 

「「ああ!死んでも勝つ覚悟だからな!!」」

 

気迫を感じるよ。

絶対に勝つというか、DEAD or ALIVEというか・・・。

まあ、でも負ける気はないんだけどね。

 

『さあ!それでは説明も終わりましたことですし、始めるとしましょうか!』

 

と、話している間に保坂さんが、観客に対しての説明が終わったみたい。

 

「さて、4人とも。科目は日本史なので、私が立会人をつとめます。後悔がないよう、全力で頑張ってくださいね。では、召喚を行って下さい。」

 

神子先生が召喚の合図を出す。

さて、召喚しないとね!

 

「「「サモン!」」」

 

四人が同時に召喚する。

それで出てくる召喚獣は、やっぱり外部の人には珍しいみたいで、歓声があがる。

・・・さて、Dクラス戦の時は140点くらいだった吉井君だけど、どこまで上がってるのかな?

それぞれの召喚獣の点数が出てくる。

 

『Bクラス 古明地さとり 日本史 324点 and Fクラス 古明地こいし 日本史 287点』

 

VS

 

『Fクラス 坂本雄二 日本史 288点 and Fクラス 吉井明久 日本史 276点』

 

えっ?

吉井君が予想以上に凄い・・・。

バカだバカだと言われてたけど、本気になればやるね・・・。

普段からこれだけやれてれば、吉井君をバカだと言う人もいなくなると思うんだけどな。

 

「さて、両者出揃いました!それでは、文月学園召喚大会決勝戦、スタートでっす!!」

 

そして、保坂さんによって決勝戦の火蓋が切って落とされる。

さあ吉井君坂本君、勝つのは私達だよ!

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
決勝戦がついに開始。
どっちが勝つかはわかりません。


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第三十二話「決勝戦!」

 

 

 

「行くよ~!」

 

保坂さんの開戦の合図と同時に、私は召喚獣を走らせる。

狙いは・・・

 

「・・・俺が狙いかっ!」

 

「そうだよ坂本君!覚悟してね!」

 

坂本君の方が点数は高いけど、私の考えだと、強敵なのは坂本君より吉井君。

お姉ちゃんの方が点数高いし強い。

だから、私は坂本君を倒すよ!

まずは、近づきざまに左ストレート。

 

「そう簡単にくらうかっ!」

 

でも、それは坂本君が右に移動し、あっさり回避される。

お返しとばかりに、メリケンサックつきの拳がとんでくる。

狙いは・・・顔だね!

 

「それはこっちもだよ~!」

 

でも、私もそう簡単には当たらないよ!

あいていた右手で彼の拳を横から払いのける。

それと同時に、私の武器である、触手のようなものを展開し、攻撃をしかける。

 

「それは読める!」

 

でも、坂本君は読んでいたのか、拳で横からなぐりつける。

なぐりつけられたことで、私の攻撃は坂本君の召喚獣を反れていく。

同時に、もう片方の拳を私の鳩尾に叩き込もうとする坂本君。

・・・ま、そこまでは想定内なんだけどね。

 

「だったらこうだね・・・っと!」

 

坂本君の拳をはじくんじゃなくて、片手で横から腕をつかみ、ひっぱる。

 

「・・・ぐっ!?」

 

つかまれていない方の手もさっきの防御に使ってた坂本君は、予想通りひっぱられてバランスを崩す。

よし、まずは一発!

さっき弾かれた触手のようなものを手に持ち、坂本君の召喚獣の能天めがけて突きを放つ。

 

「・・・させるかあっ!」

 

「・・・むっ。」

 

これで決まっていれば勝ててたと思うけど、残念ながら、それは直前で止められてしまう。

私の先端の部分にメリケンサックを合わせてるから、多分向こうにはダメージないはず。

点数も坂本君の方が高いとはいっても、差はほとんどないから、力勝負では互角。

ん~、どうしようかな。

 

「・・・うん、じゃあこうしようかな。」

 

少し考えた後、私は触手のようなものを最大まで固くして、手を離す。

これは私の召喚獣の体と直接繋がってるから、少しだけなら弾かれない。

 

「えいっ!」

 

「なっ!?・・・ぐふっ!」

 

そして、武器を離したことで自由になった右手で、坂本君の召喚獣の腹をなぐりつける。

両手がふさがっている坂本君に防ぐ術はなく、私の拳は直撃する。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 287点 VS Fクラス 坂本雄二 日本史 251点』

 

でも私の召喚獣は拳タイプじゃないし、あまり削れなかったな。

でも一撃は一撃。

点数は削れたし、次同じような場面があっても力押しで勝てるよね。

 

「くっ、やってくれるな。Dクラスの時は140点程だったし、妹だけなら俺でもなんとかなると思っていたんだがな。」

 

「お姉ちゃんは私の自慢のお姉ちゃんだからね!それに阿求ちゃんに教えてもらったし!」

 

「稗田か。確かにあいつは日本史の点数もべらぼうに高かったな。まったく、試召戦争では助かったが、今は恨み言のひとつもこぼしたくなるぜ。」

 

「そう言う坂本君も、Aクラス戦で小学生レベルので53点だったのに高くなったよね~。」

 

互いに距離をとって軽口をかわす。

もし、あのときにこれくらいの実力があれば、今ごろ私達はAクラスだったのかなとか思ったけどしょうがないよね。

 

「まあなんだっていいさ。ともかく俺と古明地が敵なのは変わりない。俺は操作技術等で劣るだろうが、それでもただで負けるつもりはねえ。最大限削ってやるぜ。」

 

「ん?吉井君がお姉ちゃんに勝つって思ってるの?」

 

確かに吉井君の方が強敵だとは思うし、吉井君がすごいのは否定しないよ。

でも、相手はあのお姉ちゃんだよ?

 

「ああ。俺はそう信じてる。」

 

そういう坂本君には、疑っている様子などひとつもない・・・というか、もはや決定事項であるかのように話してる。

もちろん、ちらりと横を見ても本当にお姉ちゃんが負けてるわけじゃない。

 

「へ~、なんだかんだ言って、坂本君って吉井君のこと好きだよね~。そういう噂がたつのも納得できるかな?」

 

「ばっ、古明地!冗談でもそんなこと言うんじゃねえ気色わりぃ!」

 

私の冗談(6割程本気だけど)に対して心を乱す坂本君。

普通にセコイけど、スキが出来たかな。

 

「よし、チャンス!」

 

「なっ、汚ねえっ!」

 

スキだらけになっていた坂本君の召喚獣に対して武器をつきだす。

まあ、かわされちゃったんだけどね。

 

「古明地!俺の幸せな未来のためにおとなしく負けてくれっ!」

 

「坂本君こそ、私達の商品券のために潔く婿入りしてくれないかな?」

 

「バカ言うんじゃねえバカ野郎!!」

 

本当に婿入りが嫌なようで、振り払うかのように拳を叩きつけてくる。

でも、そんな興奮してたらスキだらけだよ?

 

「ていっ!」

 

「ぐはっ!」

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 287点 VS Fクラス 坂本雄二 日本史 176点』

 

隙を見せた坂本君の召喚獣に、私の武器で攻撃する。

一発くらってのけぞる坂本君の召喚獣。

よし、チャンス!

 

「とおっ、やあっ!」

 

反撃される隙を見せないように注意しつつ、連続で攻撃していく。

よし、いい一撃が入った!

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 287点 VS Fクラス 坂本雄二 日本史 98点』

 

「ぐぬっ・・・。だが、何度も同じ流れになってたまるかあっ!」

 

そう言うと、攻撃に転じる坂本君。

結構ラッシュの勢いが強い。

 

「オラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

「・・・きゃっ、痛っ!」

 

額に一撃入り、吉井君の召喚獣のようにフィードバックがあるわけでもないけど、つい声が出ちゃう。

 

「やってくれたね坂本君。最後のあがきって奴?」

 

「いや、違うな。火事場のクソ力ってやつだな!」

 

わっ、確かにそうかも。

この点数になってからすごくなった気がする。

本当にシステム的にそんなものがあるとは思わないけどね。

 

「・・・でも、私は返り討ちにするだけだよ!」

 

「上等だ!勝って婿入り回避してやらあ!」

 

互いの勝ちたいという気持ちがこもった2匹の召喚獣が、拳と触手のようなものをかわす。

真剣勝負に、観客の歓声も大きくなってるね。

なら見ててね!

私が勝利をおさめるところ!

私の武器を坂本君の召喚獣の腹に突きさ・・・

 

「でえいっ!(バシッ)」

 

すことははじかれてできず、逆に私のもとに左の拳が・・・まずい!

 

「くっ!」

 

なんとか防げ・・・

 

「オラッ!(ゴチン)」

 

「きゃっ!」

 

てない!

手は防いだけど、頭突きが顔に・・・。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 171点 VS Fクラス 坂本雄二 日本史 96点』

 

・・・まずいね、今の頭突きでだいぶ減っちゃった。

 

「よし、もう一発だ!」

 

だめ押しとばかりに拳による攻撃をしかける坂本君。

これ以上攻撃をくらうと流石に倒れちゃいそうだし、ここらで決めないと!

 

「うん、捕まえたよ、坂本君!」

 

「なにっ!?畜生、離せっ!」

 

坂本君の左腕を左手でつかみ、右の手を触手のようなもので押さえつける。

私は右手がフリーなのに対し、坂本君は両腕を使えない状態。

私の召喚獣は拳タイプじゃないからダメージは少ないけど、そのまま殴り続ければ点数は減らせるもんね。

 

「よし、これでとどめだよ!」

 

「くそぉっ、せめて最後に少しでも減らしてやらあ!」

 

私が拳を頭に降り下ろし、最後の点数を減らそうとすると、そこに坂本君が頭突きをしてくる。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 108点 VS Fクラス 坂本雄二 日本史 0点』

 

思ってた通りに点数はなくせたけど、坂本君の最後の狙い通り、私の点数も減らされちゃった。

 

「おーっと、今片方で決着がつきました!勝利したのは古明地姉妹の妹、古明地こいしさんですっ!ですが・・・」

 

「ちっくしょおおぉぉおっ!!俺の未来が・・・っ!待ち受ける地獄を受け入れるしかねぇんだぁ・・・!」

 

慟哭する坂本君。

なんというか、彼のまわりだけ空気が重いというか・・・。

 

「・・・坂本さんはどうしてあそこまで落ち込まれているのでしょうか・・・?まるで、今後の人生を賭けたギャンブルに敗北し、地下送りが決定したかのようですが・・・。」

 

保坂さんが当たらずとも遠からずなことを言ってる。

そのせいで、なんかすごい罪悪感がね・・・。

素直に勝ちを喜べないな・・・。

 

「・・・ま、まあ坂本君、坂本君ならきっと幸せな家庭を築けるよ!だからほら、元気出して!」

 

「鎖と首輪は嫌だ・・・!でももう受け入れるしかないのかぁ・・・!」

 

・・・・・・あれ、聞き間違いかな?

今婚約者というよりペット的な扱いな感じに聞こえたんだけど・・・?

その坂本君のセリフから、幸せな家庭を築ける方法が全く浮かばないから罪悪感がさらに3割増しだよ。

 

「・・・はっ!そうだ!まだ明久が!」

 

そういえばそうだった。

2対2だから、自分が負けても片方が勝てば優勝できるんだよね。

 

「・・・っと、ここでもう一方も勝負がついたようです!結果はどうなったのでしょうか!?」

 

そんな保坂さんの実況を聞いて、私達はお姉ちゃんと吉井君のほうを見る。

さて、どうなったのかな?

まあ、お姉ちゃんが勝ってると思うけどね!




いかがでしたか?
雄二VSこいしちゃんはこいしちゃんが勝ちました。
明久VSさとり様はどっちが勝ったのか。
次回、明久視点です。


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第三十三話「決勝戦!sideA」

明久サイドですが、ちょっと時間が戻ります。
2日目開始時点からです。


 

 

学園祭の2日目。

召喚大会の決勝戦のため、僕と雄二は会場に向かっていた。

結局、昨日は徹夜したけど、みんなの厚意で寝かせてもらえたのは助かった。

眠いまま勝負したら負けそうだもんね。

相手は古明地さんとそのお姉さんだし。

 

「来たか。会場から入場の掛け声が来たら入場だ。それまで待機していろ。」

 

会場に着いた僕達を待っていたのは易者先生だ。

本名はババァですら知らないらしいから、みんな易者先生って呼んでいる謎の多い先生である。

 

「しかし、まさかお前達が決勝戦に上がるとはな。正々堂々ではないとはいえ、驚いたぞ。教師の立場上、どちらかに肩入れすることは出来ないが、期待はしている。だがテーブルの件はあとで説教だ。」

 

と、先生がそんなことを言ってくる。

説教のほうはなしにしてくれたらなあ・・・。

常夏コンビの一件の後、僕と雄二と魔理沙で応接間とかからテーブルを(無断で)借りて使ってたんだよね。

そのまま会話していると、入場の掛け声が聞こえてくる。

易者先生によると、最初は古明地さん達みたいだから、僕達は2番目みたいだね。

 

『さてさてご来場の皆さん!長らくお待たせいたしました!これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行いまーーすっ!実況は私、保坂実里が担当いたします!最初の登場となるのは、2ーB所属、古明地さとりさんと、2ーF所属、古明地こいしさんです!皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい!』

 

聞こえてくる大きな歓声。

さすがは古明地さん達だ。

 

『さて、このペアですが、名前からわかる通り、姉妹です!FクラスとBクラスと、クラスこそ違いますが、姉妹の絆は随一!完璧なコンビネーションを見せつけ、四回戦で三年生コンビにすら白星をおさめています!しかもどちらも可愛い!才色兼備とは、まさにこのことではないでしょうか!』

 

保坂さんによる解説を聞きながら、僕達の入場の番を待つ。

 

『そんな彼女達の相手となるのは、2ーF所属、坂本雄二さんと、同じく2ーF所属、吉井明久さんです!皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい!』

 

・・・と、今だね。

名前を呼ばれたため、入場する。

古明地さん達程ではないけど、かなりの歓声が僕達にも浴びせられる。

・・・あ、美波や姫路さんをはじめとしたFクラスメンバーがいる。

見に来てくれたようだ。

 

『さて、このペア、なんとどちらも学年最下位クラスであるFクラス所属でありながら、ここまで進んできました!先程の古明地こいしさんと合わせ、4人中3人がFクラス所属となります!いやー、これはFクラスの認識を改めないといけないかもしれませんねー!』

 

そんな保坂さんによる言葉。

嬉しいことを言ってくれるね。

教室改修でないもうひとつの目的として、姫路さんのお父さんに、Fクラスにも召喚大会で優勝出来るほどの生徒がいるのを示すというのがある。

姫路さんいわく、決勝戦には見に来るらしいからね。

今の発言は、いい印象を与えたはずだ。

 

『さて、ルールについてですが・・・』

 

保坂さんが観客に対してルールの説明をしてる間に、言葉を交わす。

僕達はいまさら聞く必要なんてないからね。

 

「驚きました。まさか翔子さんを破って、あなた達が決勝に残るとは思いませんでしたから。・・・ですが、二人ともやけに血走った目をしてますね。どうしたのですか?」

 

そんな古明地さんのお姉さんの言葉。

だって、僕達は死んでも勝たないといけないからね!

 

「自分の胸に手を当てて考えてくれ!誰のせいだと思ってやがる!」

 

「ふむ、しかし霧島雄二さん、翔子さんと行くのの何が悪いのでしょうか?」

 

「悪いし俺は坂本雄二だ!婿入りさせんじゃねえ!」

 

まったく、雄二もそろそろ観念すればいいのに。

僕からすれば、代わってほしいくらいだ。

 

「坂本君はわかるけど、吉井君はどういう理由なの?」

 

「だって、優勝出来なければ、僕は博麗さんの手によって殺されるからね!」

 

Aクラスで常夏コンビを制裁した時の彼女の姿、2回戦での殺気を考えるに、払わなかったら間違いなく僕は無事では済まない。

だから、勝たないといけないのさ!

 

「・・・??」

 

古明地さんが不思議そうな表情をしている。

 

「というわけで、俺達は死んでも勝たなけりゃいけねえ!そんくらいの意気込みでいかねえと、勝てそうにねえからな!」

 

「いい心掛けですね。こいし、油断してはダメよ。」

 

「うん。吉井君も、普段の成績は悪いけど、本気だした時は凄いと思うし。それに、坂本君の策も恐ろしいもんね。味方だと頼もしいけど、敵に回すとかなり怖いものだよ。」

 

「本当です。私達Bクラスに勝ったのも、彼の作戦があったからでしょうしね。ですが、今回はどんな作戦を見せてくれるのか、楽しみでもあります。」

 

そんなことを言う古明地さんのお姉さん。

でも、残念ながら?今回は策はなにもない。

 

「策?そんなもんはねえ。俺達は今回は正々堂々と戦う。」

 

「その割には自信満々ですね。徹夜でもされたのでしょうか。」

 

「「ああ!死んでも勝つ覚悟だからな!!」」

 

決勝戦の科目は、僕がほとんど唯一得意な日本史。

つまり、僕が唯一、古明地さん達のような成績優秀者に太刀打ちできるもの。

 

『さあ!それでは説明も終わりましたことですし、始めるとしましょうか!』

 

と、話している間に保坂さんによる、観客に対しての説明が終わったみたいだ。

 

「さて、4人とも。科目は日本史なので、私が立会人をつとめます。後悔がないよう、全力で頑張ってくださいね。では、召喚を行って下さい。」

 

豊郷耳先生が、召喚の合図をする。

いよいよだね。

 

「「「サモン!」」」

 

4人が同時に召喚獣を呼び出す。

沸き上がる歓声。

そして、点数が表示される。

 

『Bクラス 古明地さとり 日本史 324点 and Fクラス 古明地こいし 日本史 287点』

 

VS

 

『Fクラス 坂本雄二 日本史 288点 and Fクラス 吉井明久 日本史 276点』

 

よしっ!

頑張ったかいもあって、点数差はそこまでない!

これなら、たとえ木刀でも真っ正面から戦えるはず!

それに、雄二もかなりの点数を持っている。

Aクラス戦で53点を叩き出した彼とはまるで別人のようだ。

 

「さて、両者出揃いました!それでは、文月学園召喚大会決勝戦、スタートでっす!!」

 

そして、保坂さんによって決勝戦の火蓋が切って落とされる。

開幕と同時に、古明地さんの召喚獣は、雄二の方へ向かっていく。

なら、そちらは雄二に任せ、僕はお姉さんの方を狙う!

 

「・・・私が狙いなのですね。」

 

お姉さんの召喚獣は何も持ってないように見える。

雄二のようなメリケンサックなのか、東風谷さんのようなタイプなのかはわからない。

でも、木刀でも持っている僕の方が、リーチ的には有利なはずだ!

 

「・・・とでも考えているのでしょうか。浅はかですね。」

 

・・・・・・ッ!

お姉さんのその言葉が聞こえて来た瞬間、嫌な予感に襲われ、全力で右に飛ぶ。

すると、僕の召喚獣のすぐ左をハート型の弾幕が掠めていった。

・・・危なかった。

僕の点数がいつものレベルだったら直撃していたかもしれない。

 

「かわしますか。なかなかやりますね。」

 

「まさか、遠距離攻撃を持ってるなんてね・・・。」

 

予想してなかった。

 

「だったら、距離をつめる!」

 

お姉さんの召喚獣が遠距離攻撃主体なら、近接タイプは距離をつめるのが最適解だ。

普段やってる格闘ゲームとかでもそうしてるしね。

木刀を構え、ふたたび突っ込ませる。

弾幕も、来るとわかっていれば防御できる!

 

「やはり、そう来ますか。」

 

でも、それはお姉さんも読めていたようで、弾幕を放ちつつ後ろに下がられ、距離をなかなかつめることが出来ない。

だったら、多少無理矢理にでも距離をつめに行く!

弾幕をはじくのでなく、勢いを殺さずにかわす方法に切り替える。

精密な召喚獣の操作技術が必要だし、タイミングもシビアだけど、観察処分者として召喚獣の操作に慣れている僕なら行ける!

 

「・・・驚きました。失礼ながら、ここまでやれるとは思っていませんでしたから。」

 

全ての弾をかわし、お姉さんに接近戦を仕掛けることができる。

そしてそのまま一発を叩き込み、点数を減らす。

 

『Bクラス 古明地さとり 日本史 261点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 276点』

 

よし、逆転した!

お姉さんは驚いた様子を見せたけど、簡単なことさ!

 

「・・・前に、友達が言ってたんだ。」

 

「・・・・・・?」

 

「好きな人のためなら頑張れるってね。」

 

「・・・・・なるほど。誰とは聞きませんが、普段からそれだけ頑張れば、バカと言われることもないでしょうに。」

 

それはちょっと無理かな・・・。

今回は姫路さんのためというのと、自身の命のためという理由があったからね。

 

「とはいえ、私も負ける気はありませんよ。」

 

その言葉と同時に、僕が降り下ろした木刀を回避し、足で踏みつけてくる。

さっきの一撃で点数では勝っているけど、お姉さんの召喚獣の質量があるせいで、武器を動かすことが出来ない。

そのままゼロ距離で放たれた弾幕。

やむなく木刀を手放し、後ろに飛び退いて回避するが、木刀を奪われてしまった。

しまった!

 

「これで、武器は失いましたね。私は剣に慣れていませんし、こうしておきましょう。」

 

そう言うとお姉さんは僕の木刀を蹴り飛ばし、雄二と古明地さんが戦っている方向とは逆側の遠くに飛ばしてしまう。

取りに行けないことはないかもしれない位置だが、弾幕がかなり危険だ。

でも、木刀が無いとキツいのも確かなんだよね。

 

「くっ・・・。どうする・・・。」

 

「迷っている暇はありませんよ。」

 

どちらにしても、あまり時間をかけられない。

チラリと横目で向こうの戦いの様子を確認したところ、雄二が劣勢だ。

逆転する可能性はあるが、このまま雄二が負ければ武器を失った状態での2対1になってしまう。

そうなれば、負けは確実だ。

 

「・・・仕方ない!」

 

だったら木刀を取りに行く!

召喚獣を蹴られた木刀の方へ走らせる。

 

「やはりですか。」

 

予想していたのか、走る僕の召喚獣目がけて弾幕を放つお姉さん。

軌道を変えつつ弾幕を避けて走らせるが、もう少しのところで弾幕が左肩にヒットしてしまう。

 

「ぐぅっ!!」

 

フィードバックで、僕自身にもダメージが入る。

まるで、肩に熱された金属が当てられたかのようだ。

 

『Bクラス 古明地さとり 日本史 261点 and Fクラス 吉井明久 日本史 128点』

 

一発当たっただけなのにこの点数の減り。

動きを止めたら蜂の巣にされるため、フィードバックを根性で我慢し、回避を続け、木刀をつかむ。

そのまま勢いを殺さず走り抜けて、弾幕を回避する。

もし、勢いを僅かでも落としていたら、弾幕が直撃していたかもしれない。

 

「・・・取り返されましたか。失敗ですね。」

 

「そう簡単に負けてたまるか!」

 

とはいっても、遠距離で不利なのは変わらない。

それに、さっき当たったせいで、肩に火傷のような痛みが残っている。

その痛みを無理矢理意識の外に追い出し、僕はふたたび接近戦を仕掛けにいく。

弾幕を撃ちつつ距離をとろうとしても先程のようになると判断したのか、お姉さんは弾幕を撃つだけで動かない。

先程のように攻撃するとまた木刀を奪われかねないため、突きと横凪ぎを中心に攻撃していく。

 

「・・・多少のダメージは覚悟しましょうか。」

 

でも、僕が放った攻撃をお姉さんは素手で受け止め、刀身を両手でつかむ。

木刀では斬れないし刀身をつかんでもダメージを受けることはない。

点数で勝るから、武器を奪おうとしたのだろう。

でも、2回も同じ手は食らわない!

 

「だらっしゃああああぁっ!」

 

だから、僕はあえて手を放し、無防備となっていたお姉さんの顔に、渾身の右ストレートをかます。

 

「きゃっ!」

 

フィードバックがあるのは僕だけだけど、反射的に声が出たのだろう。

衝撃で手を放し、後ろにのけぞるお姉さんの召喚獣。

チャンスだ!

僕はふたたび木刀を握り、急所である首めがけて突きだす。

 

「・・・くっ!危ないところでした・・・!」

 

でも、その一撃は本当にギリギリのところで止められる。

とはいえ、お姉さんは片手、しかも不安定な体勢。

それに対し、僕は両手かつ安定した体勢。

点数は低いけど、このまま押すっ!

 

「いっけええええぇぇっ!」

 

「くっ、ダメでしたか・・・!」

 

その結果、僕の木刀は、お姉さんの喉元を貫いた。

よっしゃあ!

 

『Bクラス 古明地さとり 日本史 0点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 128点』

 

「・・・っと、ここでもう一方も勝負がついたようです!結果はどうなったのでしょうか!?」

 

実況の保坂さんの声が聞こえる。

ついさっき、雄二が負けたというのが聞こえて来たから、これで1対1になるね。

 

「・・・なんと、古明地姉妹の姉、古明地さとりさんを破り、立っていたのは吉井明久さんですっ!これで両チームともに1人!点数は同じくらいですが、はたしてどちらが勝つのでしょうか!?」

 

雄二はしっかりと点数を削っておいてくれたみたいだ。

この勝負、絶対に勝つ!

そして、生き残るんだ!




いかがでしたか?
大穴、明久が勝利しました。
次回、ついに決着!
こいしちゃんVS明久!


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第三十四話「決着!」

 

 

 

「・・・なんと、古明地姉妹の姉、古明地さとりさんを破り、立っていたのは吉井明久さんですっ!これで両チームともに1人!点数は同じくらいですが、はたしてどちらが勝つのでしょうか!?」

 

え?

うそ、お姉ちゃんが負けたの!?

信じられなくて、実際にこの目で確かめてみても、吉井君の召喚獣が立っていて、お姉ちゃんの召喚獣が倒れてる。

点数を見ても、お姉ちゃんの召喚獣が0点で、吉井君の召喚獣が120点ほどだ。

確かに、吉井君は油断できないとは言ったけど、それでもお姉ちゃんは負けるはずがないって思ってたからね。

 

「さあ古明地さん、あとは君を倒して、僕は生き残って見せる!」

 

そんな吉井君の一言。

 

「私も負けないよ!お姉ちゃんのかたき!」

 

私が勝てば、お姉ちゃんも優勝できる。

なら、頑張るよ!

早速吉井君が木刀で殴りかかってくる。

吉井君の方が点数は高いから、木刀といえどもやっぱり真っ正面からの力押しは良くないよね。

横凪ぎにくり出された木刀での一撃をバックステップで回避し、私の武器を槍のように突きだす。

2本とも木刀ではじかれ、引き戻す間に、吉井君が斬りかかってくる。

今度は突きだったから、右腕で横からガードし、そのまま力を込めて吉井君の召喚獣の腕を折ることを狙っていく。

まあ、少しやって無理そうだと判断したから諦め、いったんバックステップで距離をとったんだけどね。

召喚獣同士の戦いに沸き立つ観客達。

 

「やっぱり、吉井君は強いね。」

 

「まあ、僕は監察処分者として、長い間召喚獣を動かしてきたからね!」

 

「だとしても、私も負けるつもりはないから!」

 

私だって、理由があって召喚獣の扱いには慣れている。

吉井君程じゃないけどね。

 

「なら・・・僕は実力で勝利を勝ち取ってみせる!」

 

私と吉井君の召喚獣が、ほぼ同時に踏み出す。

その勢いのまま互いの得物がぶつかり合い、つばぜり合いとなる。

押しきられる前に私が引き、吉井君の召喚獣の足を狙って、ムチのように足払いをしかける。

それを小ジャンプでかわし、その隙を狙って木刀を降り下ろす吉井君。

横にかわしたあと、ふみつけて武器を封じようと思ったんだけど、それよりはやく剣を引き戻されたからそれは無理だったよ。

むしろ逆に、空ぶった足を木刀に狙われて・・・しまった!

認識は出来たけど回避は間に合わず、足を木刀で叩かれてしまう。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 88点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 128点』

 

吉井君ののように私自身に痛みがくるわけではないし、そこまで点数が減った訳ではないけど、点数差は開いちゃった。

 

「やってくれるね吉井君・・・。」

 

焦りを感じた後、やっぱり攻めに行くことにする。

それでも、全てかわされた末、もう一撃もらってしまう。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 56点 and Fクラス 吉井明久 日本史 128点』

 

さらに点数差が開いていく。

・・・・・・まずい。

・・・このままでは、私はパーフェクトで負ける。

しかも、こんなに大勢の前で。

さらに、これは決勝戦だ。

観客の期待とかも大きい。

その前に坂本君を倒しているけど、吉井君だってその前にお姉ちゃんを倒してる。

それに、天子さんの時にあったような点数差もほとんどない。

・・・・・・あのときと同じだ。

頭の中で、忘れていた・・・いや、忘れようとして記憶から締め出していたあの出来事が思い返されてしまう。

あのときの記憶が私を縛りつけてくる。

まるで、足下が突如底無し沼になり、沈んでいくような感覚。

凍りついたように身体や頭が動かない。

そのまま薄れていく意識。

・・・やっぱり私、あのときから変わってなかったのかな。

 

「こいし!そんなことないから落ち着きなさい!変わってないわけがないでしょう!」

 

私が意識を失う直前、お姉ちゃんの声が聞こえ、同時に私の手がお姉ちゃんに握られる。

その温もりが私の手からつたわり、私の氷を溶かしていく。

 

「こいし、ここにはあのときのような人間はいないわ。それに、まだ逆転の可能性は充分にある。私がついてる。心を強くもちなさい。私はこいしを信じているわ。」

 

お姉ちゃんの言葉で、私の心は動き出す。

・・・そうだね。

ここで意識を失ってしまったら、棄権で敗北になってしまう。

それに、まだお姉ちゃんは私を信じてくれている。

なら、まだ頑張れる!

私はあのときとは違う!

 

「古明地さん、大丈夫?さっき明らかに様子がおかしかったけど・・・。まだ戦えそう?」

 

どうやら、吉井君は私の様子に気づいて、攻撃を止めてくれていたみたい。

私が動けていない時に止めをさしていれば、確実に楽に優勝できたのに、バカだよね。

さっき言っていたのが本当なら、優勝しないと自分の命が危ういかもしれないのに。

でも、そういうところは吉井君のいいところだと思う。

そういうところは私も好きだし。

 

「うん、ありがと。私はもう、大丈夫だよ。」

 

だから、私も答えられる。

あの出来事の記憶を奥に押し込めて。

 

「じゃあ・・・改めて、決着をつけよう!」

 

吉井君がふたたび木刀をかまえ、攻めにくる。

点数差はだいぶ大きいし、吉井君の方が技術が高い。

私も普通に攻めたら、今度こそ点数を全部持っていかれちゃうと思う。

だから、今は攻撃を考えない。

防御も、点数差で押しきられる気がする。

だから、防御も考えない。

私は何も考えず、ただ反射と無意識での回避に徹する。

 

「よし、ここ!」

 

そして、チャンスが来たところで武器を突き出す。

 

「うぐっ!」

 

それで吉井君の脇腹にヒットしたみたい!

腹を貫いたわけじゃないから致命傷にはならなかったけど、点数は大きく削れる。

それと吉井君の体力も。

吉井君、フィードバックあるからね。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 56点 and Fクラス 吉井明久 日本史 63点』

 

点数も、だいぶ近くなった。

腹を押さえて苦しむ吉井君は可哀想だけどね。

 

「うぐぐ・・・やってくれたね・・・!」

 

「まだ行くよ!」

 

吉井君が怯んだ隙に武器を突き出し、点数を全てなくすために攻撃をする。

 

「やられて・・・たまるか!」

 

でも、木刀でギリギリ防がれる。

残念。

そのまま、つばぜりあいになる。

 

「僕は、絶対に負けられないんだあああああぁっ!」

 

でも、吉井君の思いがこもったパワーなのか、点数では同じくらいなはずなのに、私の武器が易々と弾かれ、そのまま私に攻撃が刺さる。

 

『Fクラス 古明地こいし 日本史 0点 and Fクラス 吉井明久 日本史 63点』

 

そして、決着がついた。

・・・結局負けちゃったか。

でも、さっきのようにあの出来事が思い出されることはなかった。

 

「おーっと、ついに決着がつきました!勝ったのは吉井、坂本ペアです!皆様、彼らに盛大な拍手を!」

 

保坂さんによる、勝負の結果を告げる声。

残念だけど、しょうがないよね。

 

「お姉ちゃん、ごめん・・・。」

 

「いいのよ。私も負けた訳だし、こいしだけのせいでは決してないわ。」

 

最初はお姉ちゃんと一緒に大会に出ることが目的だったんだけど、せっかくなら優勝したかったな。

召喚大会はこんな感じで終了したわけだし、このあとは喫茶店頑張らないとね。




いかがでしたか?
結果的には明久が勝ちました。
これで明久は明日の日の出を拝むことができます。


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三十五話「学園祭の後!」

 

 

 

召喚大会が終わったあとの喫茶店は大忙しだったよ。

ひたすら注文とって、飲茶と胡麻団子を運んで、勘定やテーブル拭きをして。

私だけじゃなくて、全員が一生懸命働いた。

そして、文化祭終了の放送が流れてくる。

 

「文化祭も、まだ片付けあるけど、とりあえずはこれで終わりなのか・・・。」

 

召喚大会では負けちゃったけど、楽しかったもんね。

せっかくだし、もう少しチャイナドレスは着たままでいようかな。

あと、準優勝でも貰えるものがあったみたいで、私とお姉ちゃんは3000円分の図書カードと、黒い腕輪を貰った。

黒い腕輪は、学園長先生によると、新しい武器みたい。

これをつけて召喚すると、あらかじめ設定した武器を持って召喚出来るんだって。

一度決めたら変えられないみたいだから、阿求ちゃんの腕輪みたいにコロコロ変えるのは不可能だけど、戦略の幅は広がるよね。

私は遠距離に対処出来るように弓を、お姉ちゃんは近接戦をしやすくするために2本のナイフを選んだよ。

ちなみに、私もお姉ちゃんも、武器にハートがある。

だってハート可愛いんだもん。

 

「ところでこいし、あいつらはどうしたんだぜ?」

 

黒い腕輪のことを考えながら片付けしてたら、魔理沙が私に質問してくる。

あいつら?

 

「あいつらって?」

 

「吉井と坂本だぜ。特に吉井だな。」

 

あー、あの2人ね。

確か・・・。

 

「あの2人なら、学園長室行ったはずだよ?」

 

勝利の報告と、改修の交渉のためにね。

私も誘われたけど、片付けの方をしたかったから断ったんだよね。

 

「霊夢が心配だな・・・。吉井のことだし何か問題犯して追われそうだ。霊夢に金渡せなければ、明日の霊夢は修羅になりかねないぜ・・・。」

 

「ずっと気になっていたんだけど、吉井君と霊夢さんの間になにがあったの?」

 

吉井君も、「博麗さんに殺されないために」とか言ってたし、気になっていたんだよね。

 

「ん?ああ、あの2人は霊夢を買収して2回戦に勝利したんだぜ。」

 

察したよ。

霊夢さん、お金のことになると両津○吉以上の執着を見せるからね。

払うと言ったものを払わなかった場合、そんじょそこらのヤミ金が天使に見えるレベルで恐ろしいし。

そんなことを話しながら片付けをしてると、火薬が爆発する音、それと壁かなにかが崩壊するような音が本校舎の方から聞こえてきた。

よくわからないけど、何故か吉井君と坂本君が原因だと確信できちゃったよ。

鉄人先生の声も聞こえてきたし。

見てみると、校舎の一部が崩落し、そこと屋上から煙があがっていた。

確か、あのへんって教頭の部屋だよね。

昨日のこと考えると同情はしないけど・・・・・・。

 

「・・・ま、まあいいや。ところで魔理沙、このテーブルってどこから持ってきたか知ってる?」

 

爆発に関しては見なかったことにし、このテーブルに話をシフトさせる。

3回戦行ったあと返ってきたら、いつのまにかテーブルがきれいになってたんだよね。

ミカン箱だったのが、ごく普通のテーブルに。

木下君の演劇部にはテーブル2つくらいしかないみたいなのに。

 

「ん?ああ、それは吉井と坂本と私が色々な場所から調達してきたんだぜ。」

 

・・・色々な場所?

 

「えっと魔理沙、色々な場所って『霧雨、説教の時間だ・・・!』ん?」

 

私が聞こうとしたところ、怒った様子の易者先生が、Fクラスに入ってくる。

慌てる魔理沙。

 

「げっ・・・!」

 

「俺は殴ったりはせん。だが、テーブルを盗んだ件はきっちりと説教させてもらおう!あの二人もだが、まずは霧雨、お前からだ!」

 

「に、逃げるんだぜっ!」

 

「待てっ!」

 

逃げる魔理沙と、追いかける易者先生。

・・・えっと、大体わかっちゃったな。

どっから持ってきたかわからないから、テーブルは外に出しておくだけにしとく。

ほんとは返したいんだけどね。

そのままみんなで片付けをして、喫茶店は完全に片付いた。

このあと、公園で打ち上げをやるみたい。

お姉ちゃんも帰りが遅いらしいから、私も行くつもりだよ。

・・・・・・あ、チャイナは着替えたからね?

着替えようとしたらムッツリーニ君が必死にひきとめてきたけど、さすがにこれ着て外を歩くのは恥ずかしいかな。

 

 

 

 

と、行こうとしたことで、大事なことを思い出した。

そういえば、お姉ちゃんの絵をまだ見てない!

美術部でもあるお姉ちゃんは、清涼祭で、絵を展示してるんだよね。

今から美術部に行けばまだなんとか見られたりしないかな?

淡い期待を持ちつつ、美術部へダッシュで向かう。

扉からこっそり中の様子を覗いてみると、女子生徒一人だけみたい。

横顔しか見えないけど、お姉ちゃんより薄いピンクの髪の毛で綺麗な人だ。

文化祭の装飾もなくなり、普段の様子を取り戻した美術部の部室で、一人真剣に集中した状態で絵を描いているその人は、なんというかとても絵になっている。

何を描いているのかはここからじゃ見えないけど、中に入るのは止めておこうかな。

邪魔しちゃ悪いもんね。

 

「・・・・・・誰?」

 

そう思っていたら、私の気配に気づいたのか、その女性は振り返り、聞いてくる。

その顔に表情はないけど、やっぱりきれいな人だね。

う~ん、同学年で見たことはないけど、先輩なのかな?

 

「私は古明地こいし、古明地さとりの妹です。」

 

先輩だったら失礼だし、丁寧に答えておこうかな。

 

「・・・へえ。あの子が言っていた子なの。」

 

同じ美術部というだけあって、お姉ちゃんのことは知ってるみたい。

でもお姉ちゃん、私のことを話してたのかな?

だったらなんか嬉しいな。

 

「・・・少し、時間はある?」

 

「ええと、まああるかな?」

 

「・・・なら、良かったら私の絵、見てくれない?」

 

そう言うと、その人は今書いていた絵ではなく、恐らくは学祭で展示してあった作品だと思う作品の山から、1枚の絵を取り出す。

えっと、どれどれ・・・

 

「わぁ・・・。」

 

思わずそんな言葉が出てくるくらいには、凄い絵だったよ!

草原に咲くたんぽぽの絵だけど、まるで花の香りやそよ風が伝わってきそうだもん!

 

「・・・風景画は、得意なの。でも。」

 

そう言って、彼女は今書いている絵を私に見せる。

やっぱり、この絵も・・・

 

「・・・ん?」

 

あれ、予想と違う。

学祭の絵なんだけど、確かに背景はものすごく綺麗。

でも、そこに書いてある人達の表情が・・・・・・ものすごく無表情なんだよね。

楽しい学祭の雰囲気みたいなのが全く伝わってこないというか・・・。

 

「・・・私には表情が書けないの。私自身、感情がわからないから。」

 

私の微妙な表情を悟ったのか、彼女が言う。

確かに彼女、最初からほとんど表情変えてないもんね。

 

「・・・あの子から、あなたは感情が豊かな子って聞いている。少し、あなたを描かせてもらってもいい?」

 

「あ、うん、全然いいよ。」

 

「・・・ありがとう。なら、そこに座って普通にしてて。」

 

言われた通りに、私は座ってじっとしてる。

20分くらいそのままだったかな?

 

「・・・できた。けどやっぱり、うまくいかない。」

 

彼女がそう言ったから、絵を見せてもらう。

確かにさっきのみたいだけど・・・少し違うかな?

わずかだけど、表情があるというか・・・。

 

「でも、さっきのより表情があるように見えるかな?」

 

「そう?」

 

「うん。」

 

とはいっても、ほんとに少しだから、さっきのを見てない場合はわかんないと思うけどね。

 

「・・・そう。・・・あなたを書いている時、わずかだけど不思議な感じがした。・・・よかったら、また描かせて貰っても、いい?」

 

「うん、私はいいよ。」

 

別に不都合なこともないしね。

 

「・・・ありがとう。あなたを描いていれば、私はなにか掴めそうな気がする。・・・私は秦こころ。これからよろしく。」

 

「うん!」

 

こころさんっていうんだね。

そんなことがあって、私は時々モデルをすることになったよ。

まあ、今は打ち上げ会場の公園に行かないと!

 

 

 

 

 

「へー、吉井君達の方ではそんなことがあったんだ~。」

 

「うむ。あやつらが盗聴器を仕掛けておっての。その内容を屋上の放送機器で流そうとしたようなのじゃ。」

 

「それで花火を爆弾として投擲したんだな・・・。」

 

打ち上げ会場の公園で、私は正邪ちゃんと、木下君に学園長室であったことを聞いていた。

確かに、自身の失態を隠すために学園長先生と大会出場者が密約をしていたなんて、公にされたら姫路ちゃんの転校どころかこの学校が潰れかねないよね。

でも、そんなことをして常夏コンビに得になるのかな?

 

「やっぱりあの爆発、吉井君達だったんだね・・・。2人はまだ学校?」

 

「・・・まあ、校舎の破壊をしたわけだし、良くて厳重注意、悪ければ停学や退学もあり得るだろうがな。」

 

そんな話をしていると、当の2人と魔理沙がやってくる。

・・・2人は顔が腫れ上がってるね。

鉄人先生に殴られたのかな?

魔理沙の方は易者先生にこってり説教さるたのか、ものすごく疲弊した顔してる。

 

「いやー、ひどい目にあったよ。」

 

「まあ厳重注意で済んでよかったと言えるがな。明久が壊しちまった場所には花もなかったし。」

 

「それもこれも、学園長先生が手を回してくれたからなんだろうね。」

 

確かに、修理の名目で部屋をガサ入れして証拠をつかむことが出来るもんね。

 

「ところで、収益はどれくらいなの?」

 

私は気になってたことを坂本君に尋ねる。

施設がどれだけ良くなるか気になってたんだよね!

 

「どれどれ・・・。えーと、これだとちゃぶ台と座布団が限界だな・・・。」

 

「まあ、戻ったと思えばいいんじゃないのぜ?」

 

やっぱり最初の妨害が効いたんだろうね。

思い出したら腹がたってきたよ。

 

「まあでも、姫路ちゃんの転校は阻止できたみたいだし、いっか!」

 

「姫路さんの転校、阻止できたの?」

 

「うん、本人がさっき言ってたよ!」

 

よかったよね。

 

「あ、坂本もアキも来てたのね。はい、ジュースとお菓子。」

 

「吉井君!転校しなくていいとお父さんも言ってくれました!」

 

美波ちゃんと姫路ちゃんが、こっちに来てジュースとお菓子を渡してくれる。

オレンジジュースみたいだね。

喉乾いていたからありがたく一気に飲む。

・・・・・・ん?なんだかオレンジジュースにしてはちょっと苦いような・・・?

それに、なんだかからだとあたまがぽかぽかする・・・。

 

「・・・あれ?古明地さん、顔赤いけどどうしたの?」

 

「ん~?どうもしてらいよ~?」

 

よしいくんがおかしいな~、いっぱいいるよ~?

わらし、どうもしてらいのに~?

 

「いや、明らかにおかしいぜ。まさか・・・・・・やっぱり、これお酒なのぜ!」

 

まりしゃがなんかいってりゅけど、どおしたんだろ?

おしゃけ?

 

「あははははは~、そんなわけないれしょ~。わらしはよってにゃいし~!」

 

「そうれすよね~、おかしなことないれすよね~!」

 

「「ね~!」」

 

ひめじひゃんのゆうとおりよ~!

 

「いや、二人ともどう考えても酔ってるよね!?」

 

「そうですよね、吉井さん。2人ともあきらかにおかしいではありませんか。私のように、落ち着いた行動を心がけるべきですよ。さあ、自然の声に耳を傾けましょう。」

 

「そういう正邪もキャラが全然違うじゃないか!絶対君も酔ってるよねえ!?」

 

「あははははは、よしいくんおもしろ~い!」

 

「この状況、僕だけじゃ突っ込みきれない!」

 

よしいくんもたのしそう~。

 

「あきひさくん、わたしはおこってるんれすよ?」

 

わー、ひめじひゃんがよしいくんにつめよってる~!

 

「それよりまりしゃ、おもしろいいっぱつげーみせて~!」

 

「うわこっちに来た!いきなり無茶ぶりすぎるぜ!」

 

「やらにゃいの?なりゃ・・・こうしちゃう!」

 

「いひゃいいひゃい、ほっへた引っ張るのはやめてふへなんはへ!」

 

まりしゃのほっぺたやわらかーい!

・・・あれ、なんかねむくなってきた・・・。

 

「じゃあ、おやふみ・・・。zzz・・・。」

 

「暴れた末にやっと寝て大人しくなってくれたのぜ・・・。姫路とこいしには酒を絶対飲ませてはいけないな・・・。」

 

まりしゃのこえをさいごに、わひゃしのいひきはうすれて・・・。

 

 

 

 

 

 

次に私が目覚めた時、私は自宅の布団で寝てた。

記憶は残ってたから、恥ずかしいな・・・。

あと、その日から姫路ちゃんの吉井君に対する呼び方が明久君になってた。

私が魔理沙に絡んでた時になにかあったのかな?

ま、いっか!




いかがでしたか?
こいしちゃんは美術部に寄り、こころと知り合いました。
酔っ払ったこいしちゃんはもはや別人格です。


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第三章『強化合宿!』
第三十六話「脅迫状!」


今回から強化合宿です。



 

 

 

「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だと、なにかいいことが起こりそうじゃない?」

 

今日もいい天気だね~!

青く晴れ渡る空、ちょうどいい日差し、葉が青々としげる桜。

こういう日は、なにかいいことありそう!

 

「いつにも増してテンション高いわねこいし・・・。今日は強化合宿前日だし、あまりはしゃぎすぎるとバテるわよ・・・。」

 

そう!

お姉ちゃんの言う通り、明日は強化合宿!

勉強浸けの生活だけど、みんなとお泊まりというのはワクワクするよね!

そんな話をしながら歩いていたら学校に着いたから、お姉ちゃんと別れて自分の教室に向かう。

お姉ちゃんは新校舎、私は旧校舎だから、場所が違うんだよね。

 

「・・・ん?なんだろこれ?」

 

教室に行こうと下駄箱から上履きを取り出そうとすると、中になにか入ってる。

取り出してみると、白くて四角い手紙が出てきた。

『古明地こいし様へ』って書かれてるし、私宛なのは間違いなさそう。

・・・あ、もしかしてラブレターかな?

他人に見られるのも良くないし、お断りを前提にトイレでこっそり見てみる。

今はお姉ちゃんがいるからね。

 

『あなたの姉の秘密を握っています。公開されたくなければ、胸の小さい同性にこれ以上近づかないように。』

 

「・・・・・・脅迫状?」

 

それは予想してなかったな。

しかも、脅迫材料が、私のことじゃなくてお姉ちゃんのことだ。

私が嫌なことを的確についてる。

むー。

 

「というより、胸の小さい同性って誰のことなんだろ?」

 

うちのクラスだと、正邪ちゃんに美波ちゃん、あと魔理沙位かな?

阿求ちゃんはこの前の喫茶店で見たけど、平均的な大きさだったし、お空と姫路ちゃんは平均以上だしね。

木下君は胸小さいけど男の子だし。

あと私が関わりがある中で条件に合うのは天子さん位かな?

霊夢さんや早苗ちゃん、あとお燐はわりとあるし。

お姉ちゃんも胸小さいけど、多分違うと思う。

 

「・・・とりあえず、ムッツリーニ君にでも協力を頼んでみようかな?」

 

お姉ちゃんの秘密を握っているなんて許せないもんね。

みつけたら《ズゴゴゴゴ》して《ガラガラガラ》して《ピッチューン》しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に行き、さっそくムッツリーニ君に協力を頼もうとしたら、そこには吉井君、坂本君、あと魔理沙がいた。

3人とも相談しようとしてるみたい。

 

「実は、僕のメイド服パンチラ写真が、全世界にweb配信されそうなんだ。」

 

「・・・何があった?」

 

吉井君、何があったんだろう?

さすがに色々飛ばしすぎたと思ったようで、説明する吉井君。

どうやら、吉井君と魔理沙も私と同じように脅迫状が来てたみたい。

それで、無視した場合、同封されていた吉井君のメイド服写真をばらまくってことらしい。

でも吉井君、なんでメイド服着てるの?

ちなみに、坂本君は婚姻の証拠としてプロポーズ音声を親に聞かせようとしてる霧島さんに、その音声ファイルが渡らないようにしたいらしい。

もう坂本君、結婚しちゃえばいいのに。

 

「・・・恐らく、4人のそれは全て同一人物。」

 

ムッツリーニ君がそう予想する。

坂本君以外の3人の脅迫状は似ているしね。

筆跡に関しては、どれもデジタルで打ち込まれたものだからわかんないけど。

 

「遅くなってすまないな。HRを始めるから席についてくれ。」

 

4人で脅迫状について話していると、鉄人先生が入ってきた。

手に大きな箱を抱えてる。

 

「・・・とにかく、調べておく。」

 

ムッツリーニ君がそう言ってくる。

私達は鉄人先生にどやされないうちに席に戻っていく。

特に吉井君と坂本君は目をつけられてるからね。

 

「さて、明日からの強化合宿だが、だいたいはしおりに書いてある通りだ。まあ、勉強合宿だから着替えと勉強道具さえあれば特に問題はないはずだが。携帯ゲーム機等は没収するから持ってこないように。」

 

前から渡されたしおりを1冊とって後ろに回す。

 

「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないようにな。特に他のクラスの場所と間違えるなよ。クラスごとでそれぞれ違うからな。」

 

パラパラとめくって集合場所を探す。

今回行くのは、電車やバスで行くとだいたい5時間くらいかかる場所だね。

Aクラスはやっぱり豪華なリムジンバスなのかな?

そうなると、Fクラスはどうなるのかな?

やっぱり補助席とかつり革とか・・・?

いや、もしかしたら引率だけな可能性も・・・。

 

「いいか、Fクラスは他のクラスと違って・・・現地集合だからな。」

 

「「「案内すらないのかよっ!!」」」

 

扱い・・・。

あまりの扱いに、全員が涙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

集合場所の関係で私はFクラスのみんなとともに電車に乗っていた。

電車で1時間くらい乗ってるだけでも景色はだいぶ違ってくる。

窓の外には緑が豊かな光景が見えるしね。

 

「あと2時間はこのままですね。」

 

姫路ちゃんが操作していた携帯をしまう。

多分乗り換えを見てたのんだと思うよ。

でも、意外にやることないよね。

 

「ねえ雄二、なにか面白いもんない?」

 

吉井君もやっぱりヒマみたいで、坂本君に尋ねてる。

 

「鏡がトイレにあったぞ。存分に見てくるといい。」

 

「それは僕の顔が面白いって言いたいのかな?」

 

「いや、お前の顔は・・・・・・笑えない。」

 

「笑えないほど何!?そんな酷いの!?」

 

「面白いと言ったのはお前の守護霊だ。血みどろで黒髪を振り乱してる珍しい守護霊がな。」

 

「そいつはどう考えても僕を守ってないよね。」

 

「安心しろ。半分冗談だ。」

 

「あ、なんだ。びっくりした。」

 

「本当は茶髪だ。」

 

「そこは一番どうでもいいよね!?」

 

二人は楽しそうに話してる。

まあ吉井君をからかってる坂本君が、だけど。

 

「そういえば美波ちゃんは何読んでるの?」

 

ふと横を見たら、美波ちゃんがなんかの本を読んでいた。

珍しいな。

 

「ん、これ?これは心理テストよ。意外と面白いの。」

 

「へえ~、面白そうだね。ねえ美波、よかったら僕にもなんか問題出してよ。」

 

吉井君も興味を示したみたい。

 

「じゃあ私も、それやってみたいな。」

 

「いいわよ。じゃあ・・・『次の色でイメージする異性をあげてください。①緑 ②オレンジ ③青』似合うと思う人の名前をあげてね。」

 

ぱらぱらとページをめくった美波ちゃんが問題を出す。

えーっと・・・。

 

「えーっと、私は①木下君②坂本君③吉井君かな?」

 

「僕は・・・①古明地さん②秀吉③姫路さんかな?」

 

ビリィッ!!

美波ちゃんの手元からすごい音がした。

 

「「あ、あの美波さん?何故本を引き裂いているのですか・・・?」」

 

私と吉井君はついつい敬語になっちゃう。

 

「こいしちゃんはどうして青がアキなのか、アキはウチが入ってなくて瑞季が青なのか、説明してくれる?」

 

「「ど、どうしてと言われましても・・・。」」

 

私はなんとなくなんだけどな・・・。

 

「なんとなくなんだけど・・・。」

 

吉井君もそうみたい。

でも、どうして美波ちゃんは本を裂いたんだろう。

気になったから、本を見てみる。

・・・あー、そういうことねー。

緑は友達、オレンジは元気の源、青は・・・

 

「ちょっ、返しなさいよ!」

 

「ごめんごめん、ちょっと気になっちゃってね。」

 

これは吉井君には言わないでおこうかな。

 

「お?なかなか面白そうなことやってるな、私も参加していいんだぜ?」

 

「別にいいわよ。」

 

そうこうしていると、あっちで話してた魔理沙達も興味を示したようで、やってくる。

 

「じゃあ・・・『1から10の数字で、今あなたが思い浮かべた数字を順番に2つあげてください。』だって。どう?」

 

「私は5、8だぜ。」

 

「俺は5、6だな。」

 

「ワシは2、7じゃな。」

 

「私は8、10かな?」

 

「私は10、6だ。」

 

「僕は1、4かな。」

 

「私は3、8です。」

 

ちなみに、順番に魔理沙、坂本君、木下君、私、正邪ちゃん、吉井君、姫路ちゃんだよ。

 

「『最初の数字は、普段あなたが見せている顔です。』魔理沙と坂本が・・・『クールでシニカル』、木下は『落ち着いた常識人』、こいしちゃんは『素直で思いやりがある人』、正邪は『冷静で思慮深い』、アキは・・・死になさい、瑞季は『温厚で慎重』ね。」

 

「私と坂本はクールでシニカルなんだな。」

 

「常識人とは嬉しいのう。」

 

「素直で思いやりがあるのね~。」

 

「冷静で思慮深いはわかるな。」

 

「ねえ、僕だけ罵倒されてなかった?」

 

「温厚で慎重ですか~。」

 

口々に感想を述べている私達。

 

「それで『次に思い浮かべた数字はあなたがあまり見せない本当の顔』だって。魔理沙と瑞季が『意志の強い人』、坂本と正邪が『公平で優しい人』、木下は『色香の強い人』、アキは・・・むごたらしく死になさい、こいしちゃんは『冷静で思慮深い人』ね。」

 

「坂本や正邪は公平で優しいんだな。」

 

「秀吉は色気があるのか。」

 

「霧雨と姫路は意志が強いようじゃの。」

 

「古明地は冷静みたいだな。」

 

「ねえ、僕の罵倒エスカレートしてなかった?」

 

感想を口々に言い合う私達。

こういうのも、旅の醍醐味だよね。

そんな話をしながら昼ごはんを食べたりみんなで遊んだりしたら、いつのまにか時間も経って、強化合宿の場所に到着したよ。

個人的には、阿求ちゃんが教えてくれた人狼ってゲームが面白かったな。

強化合宿の会場は、潰れた旅館を文月学園が買取り、合宿専用の施設に改修させたんだって。

召喚獣も教師の立ち会いのもとなら出せるようになってるみたいだけど、お金あるよね~。

 

 

 




いかがでしたか?
脅迫された人が多いです。
明久は死ななかった。


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第三十七話「一日目!」

 

 

 

合宿場所に着いたあと、私と魔理沙は吉井君達の部屋に来ていた。

もちろん、脅迫状の犯人のことを聞くためだよ。

 

「・・・昨日、犯人が使ったと思われる道具の痕跡を発見した。」

 

昨日の今日だから、そこまで期待してたわけではないけど、ムッツリーニ君は情報をつかんでいたみたいだね。

 

「・・・手口や使用機器から、4人の犯行は全て同一人物だと断定できる。」

 

まあ、普通そう何人もいないよね。

そもそも、犯人とムッツリーニ君2人がそういうことやってるのもおかしいと思うし。

 

「それで、犯人は?」

 

「・・・(フルフル)」

 

さすがに、まだわからなかったみたい。

 

「・・・犯人は女子生徒でお尻に火傷の痕があるということしかわからなかった。」

 

「「「キミはいったいなにを調べたんだ(の)(のぜ)。」」」

 

私と魔理沙と吉井君が突っ込む。

普通、お尻の火傷の痕なんて知らないよね。

どう調査したかが気になるし、もしお姉ちゃんにそういうことをしていたならしかるべき処置をしないといけないからね。

 

「・・・校内に盗聴器を仕掛けた。これを。」

 

ムッツリーニ君にどう処置をするか考えてたら、盗聴器っぽいものを取り出し、ピッと再生ボタンを押す。

 

『ーらっしゃい。』

 

音質が悪いから特定は出来ないけど、かろうじて女子だというのはわかる。

取引相手と思われる人は・・・坂本君のプロポーズ音声を注文してるし霧島さんだよね。

 

『・・・雄二のプロポーズを、もうひとつお願い。』

 

『毎度。2回目だから、安くしとくよ。』

 

『・・・値段はどうでもいいから、出来るだけ早く。』

 

『さすがお嬢様、太っ腹だね。じゃ、明日の朝・・・と言いたいところだけど、明日からは強化合宿があるし、月曜の朝でいい?』

 

『・・・わかった。我慢する。』

 

「あっぶねえ!強化合宿に救われたぜ!」

 

坂本君が心底嬉しそうに言う。

相変わらず素直じゃないよね。

とはいっても、学校が休みな土日はほとんど動けないから、実質的なタイムリミットはこの合宿の間だけだけど。

 

「・・・それで、こっちが証拠の音声。」

 

ムッツリーニ君がまた違うファイルを再生する。

今度の取引相手はまた別の人みたい。

 

『しかし、相変わらずすごい写真ですね。こんなのバレたら大変じゃないですか?』

 

『ここだけの話、実は1回母親にバレてね。文字通りお灸をすえられたよ。まったく、いつの時代の罰なんだか。』

 

『それはまた・・・。』

 

『おかげで未だに火傷の痕が残ってるよ。乙女に対して酷いと思わないかい?』

 

それ以降は、他愛もない商談がいくつか続いた。

 

「なるほど、そういうことだったのね。」

 

よかった、友人を手にかけなければいけない事態にならなくて。

 

「犯人を特定できる有力な情報だけど、お尻の火傷か・・・。スカートをめくりまくっても、わかるとは限らないし・・・。」

 

その前に吉井君、それは普通にアウトだよ?

 

「赤外線カメラでもわからないだろうしな・・・。」

 

坂本君も悩んでる。

 

「なら、私と魔理沙でお風呂の時にFクラスの人の分だけでも見てこようか?」

 

私達は同性だから問題ないもんね。

クラスごとで、Fクラスは最後だから、Fクラスの人達と、出るのが遅れたEクラスの人くらいしか見られないけど。

・・・まあ、クラスメイトのなかに私達にこんな脅迫状を出す人がいるとは思いたくないけどね。

 

「じゃあそれで頼む。風呂の予定は・・・。」

 

坂本君がしおりを広げ、風呂の予定を探しているから覗きこむ。

・・・・・・ん?

 

「ねえ木下君、なんで個別風呂なの?」

 

「本当に何故ワシだけ個室風呂なのじゃ!?」

 

クラスごとに男子女子で別れているなか、木下君だけ個人名がのせられて個室風呂になってた。

まあ、木下君が男子トイレや男子風呂に入るのは絵的にダメな気がするけど・・・。

 

「しかし、Fクラス以外をどう確認したものか・・・。」

 

そうやってみんなで悩んでいると、突然ドアが勢いよく開けられ、大勢の女子生徒が突入してくる。

え?なになに!?

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」

 

「木下、こいしちゃん、魔理沙はこっちへ!そこのバカ3人は抵抗を止めなさい!」

 

とっさに窓から脱出しようとした3人を美波ちゃんが制する。

なんでとっさの判断で窓に向かえるかという私の疑問はこの際置いておこっと。

 

「仰々しく大勢でぞろぞろとやって来て、なんの真似だ?」

 

「よくもまあ、そんなシラを切れるものね。あなた達が犯人だということくらい、すぐにわかるのに。」

 

「・・・なんのことだ?」

 

「女子の脱衣場にあったこれのことよ。」

 

前に出てきて、なにかを見せたのは、Cクラス代表の小山さん。

あれは・・・?

 

「・・・小型集音マイクとCCDカメラ。」

 

こういうのに圧倒的に詳しいムッツリーニ君が答える。

・・・・・・えっ?

 

「ええっ!それって盗撮じゃないか!」

 

「とぼけないで。あなた達以外に誰がこんなことをするっていうの?」

 

どうやら、小山さんをはじめとした女子達は吉井君達を犯人と確信しているみたい。

でも、いくらムッツリーニ君や吉井君でも、そんな完全にアウトラインなことはしないと思うんだけどなあ。

 

「違う!ワシらはそんなことしておらん!覗きや盗撮なんてそんな真似は・・・・・・そんな真似は・・・・・・否定・・・できん・・・っ!」

 

「ええっ!?信頼度低くない!?」

 

友達の無実を証明しようと声を荒らげる木下君だけど、途中で尻すぼみになる。

でも、このままでは決まった訳ではないのに本当に吉井君達が犯人扱いされ、折檻されかねない。

 

「まさか明久君たちがこんなことしてたなんて・・・。」

 

「待ってくれ姫路さん!本当に覚えがないんだ!」

 

「アキ・・・。信じてたのに、どうして・・・。」

 

「美波。信じてたなら、拷問道具は持ってこないよね?」

 

美波ちゃんが持ってるのは、膝の上に乗せるタイプの石。

明らかに乗せる気マンマンだよね・・・。

 

「みんな、ちょっと待って。」

 

だから、いったん私が制止する。

犯人と決めつけられてる3人の話は聞いて貰えなさそうだしね。

 

「どうしたのよ、こいしちゃん。」

 

「その機材が、本当に吉井君達のだという証拠はあるの?冤罪かもしれないのに、折檻するのは可哀想だよ?」

 

「でも他に誰がいるってのよ!」

 

「だとしても、同じもの持ってるみたいな確固たる証拠がないのに犯人と決めつけて折檻するのは良くないんじゃないかな?」

 

「こいしの言う通りだぜ。それに、美波も瑞季もこいつらがそんな完全な犯罪行為をするような奴らだと思ってるのか?」

 

「「うっ・・・。」」

 

魔理沙の言葉に2人がたじろぐ。

ムッツリーニ君も本当にヤバイ写真は取ってないもんね。

 

「だから、誰がやったかわかるまで、折檻は止めよ?」

 

「う・・・。そうね・・・。」

 

小山さんが引き下がってくれる。

後ろで「見るもん見たなら金は払ってもらうわよ」とか言ってる霊夢さんは、魔理沙がなだめてくれた。

 

「俺達は決して盗撮はやっていない。だから翔子、『・・・浮気はダメ』と言いながら手をかまえて俺の顔にロックオンするのはやめてくれ。」

 

「・・・わかった。信じる。」

 

うん、この場は収まりそうだね。

安心したよ。

あとでお姉ちゃんに見抜いてもらおうかな。

そう思っていると、ムッツリーニ君が立ち上がった時に、ゴトリと音をたてて小型集音マイクが落ちる。

それはさっき見たものと全く同じで・・・・・・・・・時間が、止まった。

 

「・・・・・・落とし物。」

 

ムッツリーニ君が何事もなかったように拾い、懐にしまう。

・・・・・・うん。

 

「「GO(だぜ)。」」

 

魔理沙と声がそろう。

もう私も魔理沙も止めないよ。

むしろ私もやっちゃおっと。

 

「・・・浮気はダメ。」

 

「明久君、覗きは犯罪なんですよ?」

 

「アキ、おしおきよ。」

 

「ムッツリーニ君、ちょっとおりおりするけど我慢してね?」

 

「「「ぎゃああああああっ!」」」

 

坂本君には霧島さんが、吉井君には美波ちゃんと姫路ちゃんが、ムッツリーニ君には私が中心になっておしおきする。

まあ、私が被害を受けた訳でもないから、おしおきだけしたらもう何も言うつもりもないけどね。

お姉ちゃんや友達が被害にあったなら私ももっと怒るけど。

それにデータが入ってたと思われるマイクやカメラは回収されたしね。

そんなことを考えながら、私はムッツリーニ君をおりおりしてた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・酷い目にあったよ。お金もとられたし・・・。」

 

「・・・見つかるようなヘマはしないのに。」

 

おしおきされた場所をさすりながらぼやく吉井君とムッツリーニ君。

私と魔理沙は脅迫状のことがあるし、あの後も残ってた。

ムッツリーニ君は反省全くしてないのかな?

 

「・・・上等じゃねえか。」

 

ぼやく吉井君達とは対照的に、怒りの炎を目に宿しながらつぶやく坂本君。

 

「ゆ、雄二?どうしたの?」

 

「あっちがそう来るなら、本当に覗いてやろうじゃねえか!」

 

よりによって彼はなんてことを言い出すんだろ。

頭霧島さんにアイアンクローされておかしくなっちゃったのかな?

 

「どうせもう仕置きは受けたんだ、覗きなんて真似はやりすぎだと自重していたが、あっちがそう来るなら本当にやってやろうじゃねえか!」

 

「ねえ坂本君、お仕置きした後で聞くのもなんだけど、本当に覗きはしてないの?」

 

「ああ、神に誓ってしてねえ。」

 

「お姉ちゃんに心を見透かされたとしても同じこと言える?」

 

「ああ。」

 

「嘘だったら霧島さんと即結婚誓える?」

 

「大丈夫だ、俺達はまだやってない。」

 

ふーん。

坂本君の返事には、全く嘘は込められてないように感じるね。

 

「魔理沙はどう思う?」

 

「うーん、確かに嘘ついてるようには見えないが・・・乙女として覗き宣言を見過ごすのはなぁ・・・。こいしはそこのとこどうなんだ?」

 

「んー、そこまで良くはないけど、止めても聞かなさそうだしね。それに覗きをされるなら、吉井君達と行動していれば見られる心配はないし。お姉ちゃんや友達のは絶対に見てほしくないけど、それ以外ならまあいいかなって。」

 

同行なりしていれば、もし覗きが成功しても、私はその時服を着てることになるしね。

それに、もしお姉ちゃんの裸なりを見られそうになったら目潰し出来るし。

 

「お・・・おう、そうだな・・・。」

 

あれ?

魔理沙がひいてる。

私、そんなおかしいこと言ったかな?

 

「・・・まあ、確かに脅迫犯を見つけたいしな。しょうがないから協力するぜ。」

 

「そうと決まれば早速行くぞ。ムッツリーニ、女子風呂の場所はわかるか?」

 

「・・・真っ先に確認済みだ。」

 

「よし、ならば全速前進だ!」

 

吉井君達は部屋を出て、女子風呂めがけて走る。

4人の男子と、私含めた2人の女子。

対するは・・・

 

「止まりなさい!カメラがあったと報告を受けたので念のため張ってましたが、まさか本当にくるとは思いませんでしたよ!」

 

女子風呂に続く廊下に立ち、私達を止めようとするのは、化学の布施先生。

 

「構わん!ぶちのめせ!」

 

「そこは構いなさい吉井君!」

 

「くたばれえええぇっ!」

 

「ひいいいいっ!サ、サモン!」

 

先生を殴り倒そうとした吉井君の拳は、出現した召喚獣によって阻まれる。

そういえば、先生の召喚獣も物理干渉出来るんだったね。

 

「危ないところでした・・・。」

 

「くっ、自分で作ったテストを解けばそりゃ点数が高いのは当然じゃないか!卑怯な!」

 

「いや、これはそもそも正式な勝負ではないので卑怯もなにもないですし、それ以前に一方的に殴ろうとしたことを棚にあげてませんか・・・?」

 

だよね。

私も、先生の方が正しいと思う。

 

「サモン!ここはワシに任せて先に行くのじゃ!」

 

召喚獣には召喚獣。

木下君が召喚すると、坂本君と魔理沙も召喚する。

さすがに先生も3体の召喚獣を相手にしつつ私達3人を止めることは不可能なようで、ありがたく先に進ませてもらう。

 

「そこで止まれ。」

 

次に立ち塞がるのは保健の大島先生。

ムッツリーニ君にとっては師匠みたいな先生なのか、苦い顔をしてる。

でも、ムッツリーニ君は保健体育は教師に劣らないくらいに取れるはず。

だから、いい勝負になってくれるはず・・・。

 

「・・・・・・大島先生。これは覗きじゃない。」

 

「じゃあなんだと言うんだ?」

 

意外なことに、説得でどうにかしようとするムッツリーニ君。

先生は聞く態度を見せる。

 

「・・・これは、保健体育の実習。」

 

「サモンだ。」

 

説得は失敗。

・・・当たり前だけど。

 

「ムッツリーニ、ここは任せた!」

 

ムッツリーニ君ならいい勝負するだろうし、ムッツリーニ君ですらいい勝負にならないなら私達が加勢しても意味無さそうだしね。

私と吉井君は大島先生の横をすりぬけ、そのまま向かう。

 

「来たか、吉井と・・・古明地もか。」

 

「出たな鉄人!」

 

「西村先生と呼べ!」

 

女子風呂の扉の前で背を向けて仁王立ちしていたのは鉄人先生。

 

「ここは通らせてもらいますよ!サモン!」

 

吉井君が召喚獣を召喚する。

それに対して、鉄人先生は何故か拳を構える。

・・・ん?

 

「・・・あれ、先生?もしかして、僕の召喚獣が特別製だということ、忘れてます?」

 

「阿呆か。学園で一番の問題児のお前のことなど忘れるわけがあるか。それに、担任変更などのゴタゴタで試験を受けそびれてな。」

 

「つまり、召喚獣出せないの?」

 

「まあ要約すると古明地の言う通りだ。」

 

そういうことみたい。

なら私は召喚獣を出す意味は全くないし、静観していようかな。

 

「そういうことなら・・・日頃の恨みもこめて、くたばれ鉄人!」

 

吉井君が召喚獣を動かし、フェイントをまじえて木刀を先生に叩きつけようとする。

 

「ふんぬっ!」

 

「・・・・・・は?」

 

でも、先生が放った拳で木刀が弾かれ、カランカランと音をたてて転がる。

・・・私の記憶では、召喚獣は人間の数倍のパワーがあったはずなんだけどな・・・?

 

「吉井、何故お前の召喚許可を取り消さないかわかるか?」

 

さっきのは何かの間違いだと言わんばかりに突進する吉井君の召喚獣に対し、小さな蹴りを放つ鉄人先生。

たったそれだけなのに、吉井君の召喚獣は完全に空中に浮いていた。

 

「召喚獣なら殴っても体罰にはならんからな!歯ァ食いしばれェッ!」

 

「ごふうっ!」

 

抵抗できない状態になった吉井君の召喚獣に対し、目にもとまらぬ速さで5回拳が叩き込まれる。

フィードバックする仕様のせいで苦しそうに腹をおさえる吉井君。

 

「さて、古明地、お前はどうする気だ?召喚獣出しても生身で来ても、俺には勝てんぞ。」

 

「ん~、これは無理だね、降参しよっと。」

 

「賢い選択だ。男らしく正面から来た気概とその返事に免じ、停学は勘弁してやろう。優しい西村先生が相手でよかったな。まあ、俺も鬼ではない。指導を終えたら解放してやろう。そっちの4人もな。」

 

「え?」

 

後ろを向くと、捕縛された坂本君、木下君、魔理沙、ムッツリーニ君の姿があった。

あらら、勝てなかったのか。

 

「さて、まずは英語で反省文を書いて貰おうか。文法、単語等間違えていたら何度でもやり直しだ!終わった人からシャワーを浴びて寝ても良し!」

 

こうして、私達は廊下で正座させられながら反省文を書かされることになった。

大変だったよ・・・。




いかがでしたか?
こいしちゃんや魔理沙は女子ですが罰則を受けたのは、覗きに加担したからです。
2人はともかく明久達が成功したらそれはダメですからね。


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第三十八話「二日目!」

覗き合宿2日目。


 

 

翌日。

今日の予定は、Aクラスとの合同学習となっていた。

質問あれば教師や周囲に聞いてもOK。

まあ、自習みたいなものだよね。

お空と早苗ちゃん、阿求ちゃんと本居さん、魔理沙と霊夢さんみたいな、普段学校行事で一緒に勉強する機会があまりないグループが出来てる。

お空と早苗ちゃんはAクラス戦のあとに仲良くなったみたい。

天子さんが一人で勉強しながら、早苗ちゃんの方を10秒に1回くらいのペースで寂しそうに見てるけど、早苗ちゃんは気づいてないのがなんか見てて面白い。

 

「・・・雄二。一緒に勉強できて嬉しい。」

 

「待て翔子。当然のように俺の膝の上に座ろうとするな。クラスの連中が靴を脱いで俺を狙ってる。」

 

膝に乗ろうとする霧島さんとそれを阻止しようとする坂本君の攻防も、見てて面白い。

まあ、あんまやってると注意されそうだけどね。

 

「でもなんでこんなところまで来て自習なんだろ。勿体なくないかな?授業やらないの?」

 

そうつぶやく吉井君。

でも、Aクラス向けの授業受けても理解できるとは限らないし、AクラスにとってはFクラスの授業は多分簡単すぎて身にならない。

それに、多分目的は意識の変革だしね。

坂本君も、それはわかっていたようで吉井君に説明する。

吉井君もそれで納得したようだ。

 

「あ、代表ここにいたんだ。それならボクもここにしようかな?」

 

すると、聞きなれない声。

彼女は確か、Aクラス戦でムッツリーニ君と戦った工藤さんだっけ。

 

「えっと、工藤さん、だっけ?」

 

「そうだよ。キミは吉井君だったよね?ひさしぶり。」

 

吉井君の質問に答えて、にっと笑う彼女。

ボーイッシュな雰囲気とあいまって、とても爽やかだね。

 

「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうね。Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞、スリーサイズは上から78・56・79、特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ。」

 

・・・んっ?

なんか途中不思議なものなかった?

 

「吉井君もしかして疑ってる?なんならここで披露してみせよっか?」

 

吉井君も疑問そうな顔をしてたからか、そんなことを言い出す彼女。

・・・・・・あっちで目をおさえてのたうち回ってる坂本君と、「・・・浮気はダメ。」と呟いて、手をチョキにしてる霧島さんは関係ないよねそうに違いない。

 

「あれ?ムッツリーニ、随分と冷静だね。僕ですらこんなにドキドキしてるんだから、鼻血の海に沈んでいると思ったのに。」

 

「・・・騙されるな。奴はスパッツを履いている。」

 

「あはは、ばれちゃった?」

 

そういえばムッツリーニ君なんか静かだったけどそういうことだったんだね。

普段のムッツリーニ君ならこのセリフ聞いただけで鼻血の噴水を産み出すはずなのに。

「俺は目を突かれ損じゃないか・・・。」と呟いてる坂本君は視界から外しとこっと。

 

「まあ特技ではないけど、最近はまってるのはコレかな?」

 

そう言って、工藤さんは小型な機械を取り出す。

よくわからないけど、あれは録音機かな?

そのままカチカチと弄る工藤さん。

 

ピッ《工藤さん》《僕》《こんなにドキドキしてるんだ》《やらない》《?》

 

「わああああっ!僕こんなこと言ってないよ!?変なものを再生しないでよ!!」

 

「ね?面白いでしょ?」

 

工藤さんの声は、吉井君ではなく、その後ろに向いている。

そっちには・・・

 

「・・・ええ。最っっ高に面白いわ。」

 

「・・・本当に、面白いセリフですね。」

 

氷の笑みをたたえた美波ちゃんと姫路ちゃん。

当事者ではないけど怖い。

 

「瑞季。ちょっとアレを取りに行くのを手伝ってもらえる?」

 

「わかりました。アレですね?喜んでお手伝いします。」

 

机に勉強道具を置いてなにかを取りに向かう2人。

笑みが怖い。

 

「あれ、秀吉、首をかしげてどうしたの?」

 

「明久、何かあったのじゃ?今姫路と島田に石畳を運ぶのを頼まれたんじゃが・・・。」

 

吉井君の全身から冷や汗が吹き出してる。

私にも使用用途が100%わかるから怖いよ。

 

「工藤、今のは録音した会話を合成したのか?」

 

「うん、そうだよ。」

 

それを聞いた坂本君と吉井君がヒソヒソと話してる。

多分脅迫状の犯人か話してるんじゃないかな。

 

「ねえ工藤さん。キミが・・・」

 

「ん?なに、吉井君?」

 

「あ~、えーっと、キミが・・・」

 

「ボクが?」

 

「キミが・・・僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!」

 

・・・・・・。

お尻に火傷の跡があるか確かめるためなんだろうけど、セクハラ発言だよ。

工藤さんは笑って流してくれたみたいだけど・・・。

 

「違うんだ工藤さん!別に僕はお尻が好きな訳ではなくて・・・」

 

「さすがだな明久。まさか録音機を目の前にそこまで言うとは。」

 

「へっ?」

 

そう。

録音機があるんだよね。

 

ピッ《僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!》

 

「ひあぁぁっ!これは合成すらしてない分ダメージが大きいよ!お願い工藤さん!今のは消してください!」

 

「吉井君ってからかいがいがあって面白いなあ。ついついいじめたくなっちゃうよ。」

 

ピッ《お願い工藤さん!》《僕にお尻を見せて》

 

「今の、何かしらね、瑞季?」

 

「なんでしょうね?美波ちゃん。」

 

表情を変えず、吉井君の後ろに石畳を設置していく2人。

気のせいか、2人の後ろにブリザードが見えるよ。

 

「ただでさえ目をつけられているFクラスで、さらに問題発言をしたバカがいるのかしらね。」

 

「そうですね、そんな人には、きつ~いお仕置きが必要ですね。」

 

「2人とも、これ合成だからね?」

 

最近、姫路ちゃんがFクラスの悪影響を受けてる気がする。

私の言葉も届いたか怪しいよ。

 

「二人とも誤解なんだ!僕は問題を起こす気はなくて、ただ《お尻が好き》ってだけで・・・って今のも音を重ねられたんだ!お願いだから手を後ろに縛らないで!あとそっちも見てないで助けてよ!特に雄二!」

 

「・・・工藤愛子。おふざけが過ぎる。」

 

そんな友のピンチに立ち上がったのはムッツリーニ君。

やっぱり、友達を陥れるような真似は許せなかったみたい。

吉井君が弁解を始める。

 

「2人ともよく聞いて。さっきのは誤解なんだ。僕はただ、《お尻が好き》って言いたかったんだ。《特に雄二》《の》《が好き》ってムッツリーニィィーッ!後半は貴様の仕業だな!」

 

「・・・吉井、雄二は渡さない。」

 

「いらないよ!」

 

「アキ・・・。そんなに坂本のお尻がいいの・・・?ウチじゃダメなの・・・?」

 

「前からわかっていたことですけど、ハッキリ言われるとショックです・・・。」

 

美波ちゃんと姫路ちゃんのお仕置きがとまったのはいいけど、吉井君には悲しいレッテルが。

というかムッツリーニ君、遊んだだけだったね・・・。

 

「だからどうして僕を同性愛者扱いするの!?僕にはそんな趣味は『同性愛をバカにしないでくださいっ!』ないよ!」

 

スパァンと音をたててドアを開け、外からドリルのツインテールの女の子が入ってくる。

誰?

さっきのセリフを考えるに、彼女は同性愛者なのかな?

ちなみに、私は同性愛を否定する気はまったくないよ。

私もお姉ちゃんがとっても大好きだし!

 

「み、美晴!?どうしてここに!?」

 

「お姉様に会うため、美晴はDクラスを抜け出しちゃいました!」

 

ミハルと言うその娘の恋愛対象は美波ちゃんみたいで、彼女の姿を見るなりとびつく。

 

「す、須川バリアーっ!」

 

「穢らわしいですっ!腐った豚にも劣る抱きごこちですっ!」

 

酷い・・・。

勝手に盾にされて罵倒された須川君、涙をこらえるかのように上を向いてるよ?

 

「ひどいですお姉様っ、美晴はこんなにもお姉様を愛してるというのにっ!」

 

「バカ、何言ってるのよ!アキに勘違いされちゃうでしょ!」

 

勘違いされるのは吉井君にだけじゃないと思うけどね。

まあ、美波ちゃんは吉井君が好きなのは見てればすぐわかるし、片想いというか一方通行気味みたい。

 

「君達、少し静かにしてくれないかい?」

 

新たな人も加わって騒いでいたら、さすがにうるさいと思われたらしく、メガネの男子が注意してくる。

彼はえーっと・・・あ、思い出した、Aクラス次席の久保君だ!

 

「あ、ごめん久保君。」

 

「吉井君か。気をつけてくれ。まったく、姫路さんといい島田さんといい、Fクラスには危険人物が多くて困る。」

 

謝った吉井君に対して言う久保君。

でも意外だな、坂本君とかより先に2人の名前があがるなんて。

 

「それと、同性愛者をバカにするような発言はどうかと思う。彼らは異常者でも精神障害者でもなく、個人的嗜好が世間一般とちょっと違っているだけの普通の人なのだから。」

 

同性愛者に対する言動をたしなめる久保君。

でもなんだろ、言葉にやけに重みがあるような・・・?

もしかして久保君もそうなのかな?

で、その対象が吉井君だから、彼のことが好きな2人を危険人物として挙げたとかだったりして!

ま、さすがにないよね!

 

「とにかく美晴、自分の教室に戻りなさい。」

 

「嫌ですっ!美晴はお姉様を愛してるんですっ!性別なんて関係ありませんっ!」

 

「はいはい、ウチにその趣味はないからね。」

 

美波ちゃんがミハルと呼ばれた女子生徒を教室の外に出し、扉を閉める。

やっと静かになったかな?

 

「性別なんて関係ない、か・・・。」

 

そう呟きながら吉井君をじっと見つめる久保君。

なんだろう、さっきあり得ないと捨てたはずの考えがバックステップで帰ってきた。

 

「性別なんて関係ない、ですか・・・。」

 

「なんで姫路さんはそこで僕と雄二を交互に見るの!?僕は知っての通り《秀吉》《が好き》ってちょっと!?」

 

またまた録音機による捏造が入る。

 

「もう、こうなったら《久保君》《雄二》《と》《交互に》《お尻を見せて》って違う!なんでこの場面で2人のお尻を見る必要があるのさ!とにかくそのボイスレコーダーを使うのはやめて!」

 

吉井君に交互にお尻を見せる坂本君と久保君・・・。

あ、想像したらツボに入ったかも。

やばい、笑いがとまらないや。

 

「吉井君、そういうのは困る。物事には順序というものがある。」

 

「わかってる!順序以前に人として間違ってることも!というかなんで僕をそっちの人にしようとするの!?とにかく、僕の話を聞いてくれぇっ!」

 

結局、この騒ぎと私の笑いの発作は鉄人先生がどなりこんでくるまで続いた。

笑いすぎてお腹痛いや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで勉強時間や晩ごはんの時間も終わって、入浴時間の30分くらい前。

私達は吉井君達の部屋に来ていた。

 

「んで雄二、今回はどうするの?」

 

「昨日は待ち伏せしていた教師達に勝てるような戦力がなかった。だから、今回は頭数を増やす。廊下は一直線だから、正面突破以外ないからな。」

 

坂本君はそう言うけど、どうやって増やすんだろう。

もしかして、Fクラス男子全員で攻める、とかかな?

と思ってたらその通りだったようで、Fクラスの男子がぞろぞろとやってくる。

目的は聞かされてないらしくざわざわしてる。

坂本君はそれがおさまるのを待ち、声を出した。

 

「みんな、女子風呂の覗きに興味はないか?」

 

「「「詳しく聞かせろ。」」」

 

わー、全員食いついた~。

 

「俺達は昨日、理想郷を目指し6人で突撃したのだが、そこで卑劣にも待ち伏せしていた教師の罠にかかり、目的を達成できなかった。」

 

「「「ほほう、それで?」」」

 

坂本君の言葉に対して誰も突っ込みしてないことに対して、私は突っ込みたいな。

 

「そこで、お前達には教師という障害の排除を頼みたい。報酬はその後の理想郷の光景だ。」

 

「「「乗った!」」」

 

全員が躊躇いもなく賛同したよ。

いいのかなこれで。

でも、これだけは言っておかないとね。

 

「でも、お姉ちゃんの裸とかをみるのは絶対にダメだよ?見たら暗闇の刑だからね。」

 

「「「こいしちゃん!?」」」

 

まあ、男子だけの覗きと思っていたら女子がいたわけだし驚くよねそりゃ。

 

「大丈夫だ、古明地と霧雨は、とある事情からこちら側だ。さてそれより、これから隊を4つに別ける。A隊は俺、B隊は明久、C隊はムッツリーニ、D隊は秀吉に続け!二○一○、出陣するぞ!」

 

「「「おうっ!!」」」

 

わー、一糸乱れぬ返事だ~。

こういう団結力は凄いんだよね。

変態達によって組まれた編隊が部屋を飛び出し、女子風呂めがけて突撃してく。

廊下には、昨日と同じように布施先生が立ってる。

 

「昨日でこりるかと思ってましたが、まさか数をふやしてやって来るとは!全員止まりなさい!」

 

「D隊、足止めを頼む!」

 

「「「おうっ!」」」

 

立ち塞がろうとする先生に対し、D隊みんなが召喚獣を出す。

ひとりひとりは弱いけど、先生の召喚獣をぐるりと取り囲むだけの数がいるからね。

本人は横を抜けていく私達を捕まえようと追いすがってきたけど、ある程度のところで悔しそうに止まった。

 

「あれ?諦めたのかな?」

 

「恐らく干渉を嫌ったんだろうな。」

 

干渉?

よくわからないけど、とにかくこれで第一関門は突破かな?

 

「そこまでです、薄汚い豚共!この先は男子禁制の場所!大人しく引き返しなさい!」

 

そう思っていたら、目の前には予想外の光景が。

さっき見たミハルさんを先頭に、女子達がずらりと立ち塞がってる。

戦力的には・・・だいたいDEFの3クラス分+αってとこかな?

まあ、私の感覚が少しズレてるだけで、普通は覗きという行為自体が許せないものだもんね。

横では美波ちゃんのことペッタンコペッタンコ言ってた吉井君が間接技決められてるけど、それはまあいっか。

 

「やっほー、吉井君。何を見に来たのかな?ボクを覗きに来てくれたのなら嬉しいんだけど♪」

 

「工藤さん!?そんな、どうしてここに!?」

 

吉井君に工藤さんが手を振っている。

もし工藤さんが脅迫犯なら、ここにいられると火傷の確認が出来ないから嬉しくないな。

 

「・・・古明地?何故そっち側にいるんだ?まさか、姉を覗きに来たのか?」

 

あ、正邪ちゃんにバレた。

正邪ちゃんなら信頼できるし脅迫犯のこと、言ってもいいかもしれないけど・・・。

でも、今ここで言うのは論外なんだよね。

 

「うん、まあちょっとした事情があるんだよ。」

 

「・・・まあいいけどな。」

 

正邪ちゃんは追求を止めてくれる。

なにか事情があるんだと思ってくれたのかな。

 

「でも、この布陣、どう突破するつもりなのですか?あまりこういうことは言いたくないのですが、私には勝てないと思いますよ。」

 

「我もおるぞ!太子様、我らに任せてくだされ!」

 

「布都、腕輪で味方を攻撃するのは注意しなければなりませんよ。まあ、そこまで言うのなら任せましょうか。一応私も召喚獣だけは出しておきましょう。」

 

前に出てきてそう言うのは阿求ちゃん。

あと物部さん。

昨日とは布陣を変えたようで、豊郷耳先生がいる。

うーん、阿求ちゃんの日本史は4ケタだし、物部さんも腕輪持ちだから厳しすぎるよね。

先生の点数はわからないけど、かなり高いだろうし・・・。

 

「落ち着け!豊郷耳先生以外の召喚獣は物に触れない!召喚獣は出さないか豊郷耳先生の足止めのみにして、脇を駆け抜けろっ!」

 

須川君が、そう指示を飛ばす。

教師の召喚獣以外は物に触れない。

だからその判断は一見正しいように見えるけど・・・。

 

「教育的指導ッ!」

 

「ぐふぉっ!」

 

まあ、こうなるよね。

最終関門として、鉄人先生が立ち塞がってるわけだし。

 

「鉄人を生身で突破しないといけないのか!?」

 

「勝てっこない・・・!あいつは伝説の鉄人だ・・・!」

 

「勝てるわけがないッ!」

 

絶望のざわめきが広がってる。

まあ、Fクラスは特に恐ろしさを知ってるもんね。

 

「さて、吉井、昨日のでは指導が足りなかったようだな・・・ 。今日もまた、指導してやろう・・・。」

 

ものすごい絶望的な状況だね。

前からは鉄人先生が迫ってきていて、生身ではどうやっても勝てない。

後ろも女子達が壁を作ってるから通れそうにないしね。

かといって召喚獣出しても、阿求ちゃんに瞬殺される未来しか見えないもん。

これは・・・全滅ルートだよね。

 

「吉井っ!諦めるな!悔しくてもこの場は退いて力を蓄えろ!今日はダメでも明日にはチャンスがあるはずだ!」

 

「す、須川君!?」

 

でも、打ち倒された須川君が鉄人先生の足にしがみついて行く手を阻んでいた。

 

「吉井、鉄人を倒すことが出来るのは、《観察処分者》であるお前の召喚獣だけなんだから・・・。だから頼む!この場は逃げて生き延びてくれ!」

 

「須川君っ!無理だよ!みんなを置いて自分だけ逃げるなんて!」

 

須川君が最後の力を振り絞って吉井君に訴えかける。

鉄人先生の拳が叩きこまれても、意地でも離さない。

 

「こ、この手は離さねえ・・・!吉井は俺達の希望なんだ・・・!皆、吉井の撤退を援護するんだ・・・!」

 

『『『おうっ!』』』

 

「す、須川君・・・!それに、皆も・・・。」

 

「吉井!お前は召喚獣で女子を押し退けて走れ!召喚獣は俺達が意地でも抑える!」

 

「この場の全員で血路を開く!お前は振り向かずに駆け抜けろ!」

 

「ここが男の見せ所ってやつだな!」

 

みんなが次々と死地におもむいていく。

漢の生きざまみたいな感じでかっこいいね。

 

「私も援護するぜ!点数低いがやってやる!ファイナルマスタースパーク!」

 

魔理沙も、まるで自身の召喚獣の命を削るようなレーザーを放ち、後方の召喚獣を消し飛ばす。

召喚獣システムにはオカルトの要素があるからか、みんなの召喚獣が点数以上の力を出してるみたい。

こんなの見せられちゃ私も、ね?

 

「易々と逃がしはしないのじゃ!」

 

「逃がしません!」

 

「吉井を守れっ!」

 

点数4ケタと400台の召喚獣から放たれた遠距離攻撃が吉井君に襲いかかろうとする。

でも、遠距離攻撃が吉井君に当たらないように、自身の召喚獣の身を呈して庇うFクラスの2人。

 

「・・・チェンジ『本居小鈴』。遠距離はダメなようですね。」

 

Fクラスの人達が肉盾となって防がれると判断したか、即座に武器を切り替え、分身して攻めにかかる阿求ちゃん。

 

「・・・って、これ、バラバラすぎて操作が効かないです・・・!」

 

でもまだうまく操作が出来ないようで、うまく動けてない。

 

「ごめんね、私も吉井君を倒されたく無いんだ。少し相手してね?」

 

「・・・何故、そちら側に・・・?」

 

「ちょっと事情があってね。」

 

そうした私達の援護のおかげで、吉井君は後ろを振り向かずに逃げていく。

 

「皆・・・ごめん。必ず僕は生き延びて、いつか理想郷に辿り着くことを誓うから・・・。」

 

吉井君の、心底悔しそうな声がかすかに聞こえてくる。

自分の無力さへの怒りと悔しさ、そして強さへの欲望が感じられる声。

私の召喚獣も阿求ちゃんに倒され、打つ手はなくなっちゃった。

まわりの男子達も、恐らく布施先生に当たったD隊も既に壊滅し、拘束される。

私達はここで終わるけど、吉井君だけは生き延びることを祈る。

どうか、吉井君は・・・。

 

《放送連絡です。Fクラス吉井明久。至急臨時指導室に来るように。》

 

ま、そうなるよね。

顔バレてるし。

わかってたけど。

 

 

 

 

 

こうして2日目も、完全敗北で補修で終わったよ。




いかがでしたか?
ファイナルマスタースパークはオカルト。


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第三十九話「交渉!」

評価がほしい。
求:感想か評価
出:ヘビボ勇敢最遅ダンゴロ@ポイントマックス
···嘘です。
出せますけど嘘ですただポケモン交換風にしただけです。



 

 

「そういえば、昨日工藤さんに『脱衣所にまだ見つかってないカメラがある』って言われたんだよね。」

 

強化合宿も3日目。

クラスごとでまとめられ、朝食を食べていると、吉井君がそんなことを言い出した。

見つかってないカメラ?

 

「怪しいよね。それを知ってるってことは、やっぱり犯人じゃないかな?」

 

「いや、それならわざわざ怪しまれるようなことを言うとは思えないのじゃ。」

 

吉井君の言葉に反論する木下君。

でも逆に、犯人候補から外れるためにあえて自身に不利になるようなことを言うという方法もあるからね。

まあ今回に関しては、残っているカメラなんて知りようがないことだし・・・いや、魔理沙ならわかるかも。

隠してあるもの探すの上手いからね。

 

「・・・やっぱり、覗くしかないかぁ。」

 

「・・・いや、あれから少し考えたんだがAクラスに関してはどうにかできるかもしれないのぜ。」

 

吉井君の呟きに魔理沙が反応する。

どういうこ・・・あ、わかったかも。

 

「・・・ほう?その方法とは?」

 

「霊夢に協力を頼むんだぜ。あいつのことだ、報酬をキッチリ出せばやってくれるはずなんだぜ。」

 

確かに霊夢さんなら、報酬を出せばさほど事情を話さなくてもやってくれそうだね。

工藤さんと同じAクラスである霊夢さんなら、何もおかしなところなく火傷確認出来そうだし。

Bクラスもお姉ちゃんに相談すれば確認してくれるかもしれないけど、お姉ちゃんには脅迫のことを知られたくないもん。

だから私に禁断症状出ちゃってるけど、解決するまでお姉ちゃんと会わないようにしてる。

 

「そういうことなら頼む。工藤が犯人か否かわかるだけでも重要だからな。だが、報酬はどうするんだ?明久が出せばいいのか?」

 

「また僕に出させようっていうの!?嫌だよ!学園祭の時、もっのすごく怖かったんだから!」

 

「心配はいらないのぜ。私が持ってるこの焼肉食べ放題引換券を使うつもりなんだぜ。」

 

確かに、それなら霊夢さんも引き受けてくれそう。

霊夢さんは冬眠前の熊みたいに、一度に栄養をたくさん取るために、自分が金を出さない場合、だいたい15~20人分くらい食べるから食べ放題とはもっとも相性がいいし。

霊夢さんの場合、肉が焼けるの待てなくてまれに生で食べ出すけど・・・。

 

「・・・そうなると、Aクラスは解決だな。」

 

「うん。あとは覗きを成功させるだけだね。雄二、作戦はあるの?」

 

「ああ。昨日の敗因は戦力差だ。だから今回はさらに戦力を増やすため、他クラスの協力を仰ごうと思う。」

 

そう作戦を説明する坂本君。

でも、普段のやり方とは違うような・・・?

普段の坂本君はカルタゴのハンニバルのような、相手の予想を超える奇抜な作戦で勝つのに。

吉井君も疑問を感じたみたいで、坂本君にその旨を言ってる。

 

「もちろん理由はある。女である古明地と霧雨はともかく、覗きは立派な犯罪だ。今はまだ未遂で終わってるからいいが、成功すれば真犯人が見つからない限りなんらかの処罰はあるだろう。」

 

まあ、そうだよね。

警察沙汰になっても不思議じゃないもん。

 

「それを避けるためのメンバー増員だ。人が増えれば、覗きに参加したメンバーの記憶も難しくなる。」

 

「でも、阿求ちゃんは瞬間記憶能力持ってるし、私達Fクラスの顔はバレてるよ?」

 

それで吉井君に呼び出しがかかった訳だし。

 

「大丈夫だ。召喚システムで世界的に有名な進学校である文月学園でこんな不祥事が起きた場合、学園側はキッチリ全員処分するか、ひた隠しにするしか選べない。現在顔が割れているFクラスのみを罰した場合、ただでさえ批判を受けてるクラス間の格差について、さらに強めることになりかねんしな。それに、稗田だって一人だ。戦場の全てを確認出来る訳がない。」

 

なるほど、そういうことね。

坂本君、こういうこと考えさせるとすごい。

 

「さっすが雄二、ずる賢いね。で、どのクラスから協力を頼むの?」

 

吉井君が質問する。

相手はDEFクラスにくわえ、Aクラスの一部やAクラス以上の力を持つ阿求ちゃんに先生がいるからね。

万全を期すならA~Cクラスくらいは仲間にしたいかな。

 

「知略に富んでいると言え。もちろんAクラスからだ。」

 

今後というか今日の方針が決まったところで、私達は朝食を食べるのを再開した。

朝ごはん食べないと調子出ないもん。

 

 

 

 

 

「Aクラスなら久保を説得するのが妥当だろうな。ということで頼むぞ明久。」

 

その後の自習時間。

昨日と同じようにAクラスと合同だよ。

 

「・・・(コクン)」

 

「適任じゃな。」

 

「別に構わないけど、どうして僕なの?」

 

久保君への説得役が一瞬で吉井君に決定した。

吉井君の質問に対し、昨日の考えが確信に変わっていた私は苦笑いしながら目をそらすことしかできないな・・・。

 

「・・・ま、まあお前がこの中で久保に一番好かれているからな・・・。」

 

「あ、なんだ。そういうことね。」

 

「ただし、いざとなったらこれを使え。」

 

珍しく歯切れが悪い坂本君が吉井君に渡したのは、スタンガン(20万ボルト)。

『どうして同じ学校の生徒にお願いをしに行くだけなのにスタンガンを持たされるのか、僕にはさっぱりわからない。』と思っていそうな表情をしている吉井君は、是非そのままでいてほしいな。

 

「そ、それじゃ行ってくるね。」

 

釈然としない様子ながら、頼みに行く吉井君。

3分ほどした後、戻ってきた。

 

「ごめん。ダメだったよ。」

 

「そうか。まあ無事で何よりだ。」

 

事情が事情だからか、坂本君がきれいな坂本君になってる。

映画版なのかな?

 

「しかし、そうなると他のクラスとの交渉を迅速に進めないといけないな。」

 

「それはそうだけど、今は授業中だよ?」

 

「それはわかっている。だが、全クラスに交渉をするなら休み時間だけでは全然足りないからな。なんとかして抜け出そうと思う。」

 

どうやら坂本君は抜け出したいみたい。

でも、自習時間とはいっても鉄人先生が監視してるから並大抵のことじゃないと思うんだけどね。

今だって勉強してるふりしておかないと、注意されてるはずだよ。

 

「ところで、霧雨と古明地はどうする?」

 

「私はやめておくのぜ。霊夢と早いこと交渉しておきたいし、私が行っても邪魔になりそうだからな。」

 

「私はついていってもいいかな?」

 

正直、いなくなったのを気づかれた時に誤魔化しきれない気がするもん。

それに、吉井君達についていった方が楽しそうだし!

鉄人先生のスキを見計らうため、こっそりて様子をうかがう。

 

「こーら、また悪巧みしてるでしょ?」

 

そうしてたら、美波ちゃんが怪しく思ったようで、私達に声をかけてくる。

その悪巧みというワードに、ピクリと反応する鉄人先生。

 

「もう今更問題を起こすなとは言わないけど、覗かれる方の気持ちにもなってみなさいよ。風呂場ではまわりと比べられるし、寄せて上げることも出来ないし・・・。Fクラスで同じくらいなのって、魔理沙と正邪くらいしかいないじゃない・・・。」

 

「あの美波、それって特定の部位を見られるのを嫌がってるだけに聞こえるんだけど・・・。」

 

「そこで私の名前を出さないで欲しいのぜ!美波よりはある!」

 

美波ちゃんの気持ちはわかるけどね。

私は平均くらいだけど、お空や姫路ちゃんには圧倒されちゃうし。

ちなみに、魔理沙も正邪ちゃんも、美波ちゃんよりはあるよ。

そんなことを思ってると、坂本君が吉井君に美波ちゃんを遠ざけるように指示を出してる。

 

「そういえば美波、さっき須川が話があるって言ってたよ。」

 

「須川がウチに?まあ、休み時間にでも聞いてみるわ。」

 

「え~・・・っと、それじゃ困るというか・・・。」

 

「なんでよ?」

 

「彼はすっごく真剣な顔をしてたから、よっぽど大事な話なんだよきっと。」

 

「ええっ!?それってまさか・・・!」

 

顔を赤くする美波ちゃん。

旅先でそういうのは多いみたいだし、そう思ってもおかしくないよね。

 

「今すぐ伝えたいって言ってたから、すぐにでも行かないと可哀想だよ。」

 

さらに押す吉井君。

多分吉井君は美波ちゃんの顔が赤くなった理由を全く理解してないんじゃないかな。

 

「アキは・・・それでいいの・・・?」

 

ほら、美波ちゃんも責めるような、どこか寂しそうな目で見てる。

 

「え?それで良いもなにも『だからっ!アンタは、ウチがその、須川とゴニョゴニョ・・・』ごめん、よく聞こえないんだけど・・・。」

 

「ああもうっ!要するに、ウチが誰かに告白されたらどう思うかって聞いてるのよ!」

 

「悪戯だと思う。」

 

「はぁ・・・。シャツについた返り血って、落とすの大変なのよね・・・。」

 

「いきなり返り血の心配!?僕の出血は決定事項なの!?」

 

ここでそう言っちゃうあたり、ほんと鈍感だよね吉井君は。

美波ちゃんがそう思うのもおかしくないよ。

美波ちゃんスタイルいいし美人だし、告白されても全然おかしくないと思うけどね。

私は素直に祝福できると思うよ。

 

「まあまあ美波ちゃん、吉井君はきっとどこかに行くはずがないって油断してるんだよ。ここらでひとつ、焦らせてみるのも手じゃない?」

 

とりあえずこのままだと美波ちゃんを遠ざけられなさそうだし吉井君が血の海に沈みそうだから、そう言っておく。

実際、吉井君は美波ちゃんを恋愛対象というよりは、気のおけない友達みたいに見てるところあるしね。

 

「そうね。見てなさいアキっ!ウチだって、結構モテるんだから!」

 

捨てセリフのように言って、須川君の方に向かってく美波ちゃん。

 

「島田。そんなに血相を変えてどうした。」

 

「西村先生、ウチは須川に用事があるんです。すぐに終わりますから。」

 

「そうか。だがその剣幕だと、お前が須川を血の海に沈めないか心配なんだが。」

 

あ、途中で鉄人先生に捕まってる。

とにかくいまのうちだね。

鉄人先生の注意がそれているうちに、そ~っと、音をたてないよう慎重に扉を開けて脱出する。

扉を閉める直前に、美波ちゃんの怒りの声が聞こえてきたけど、それは吉井君にむけてのものだし、まあいっか!

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり監視の先生はいるな。」

 

見つからないように慎重に歩くこと数分。

DクラスとEクラスの合同自習会場の部屋の前に辿り着いた私達は、扉をわずかに開けて中の様子をうかがっていた。

残念なことに、ここの監視を担当してる豊郷耳先生は出入り口の前にいるから、こっそり侵入するのは厳しいな。

 

「して、どうするのじゃ?このままでは交渉を進められんが。」

 

「簡単だ。一人が囮となって、教師を引き付ければいい。(チラッ)」

 

「断る。」

 

囮といいながら吉井君をチラ見した坂本君に対し、言われる前に先手を打って断る吉井君。

まあ、Dクラスへの宣戦布告の時みたいに、大抵は吉井君がやることになるもんね。

 

「やれやれ。それじゃ、ゲームで決めないか?」

 

「ゲームって何?」

 

「古今東西ゲームだ。」

 

「・・・わかったよ。」

 

古今東西ゲームか~。

私は隠れることなら出来るけど走るのはあまり得意じゃないし、選ばれたくはないかな。

誰かが追われてるところで注意をひきつけて隠れるとかならいいんだけどね。

 

「坂本雄二から始まる、古今東西ゲーム!!」

 

「「「イェーイ!」」」

 

「【A】から始まる英単語っ!」

 

「へっ?」

 

パンパン!

 

「【Apple】(坂本君)」

 

パンパン!

 

「【Angel】(私)」

 

パンパン!

 

「僕のっ・・・負けだッ・・・!(吉井君)」

 

えー、ひとつもないの・・・?

 

「で、でもムッツリーニも出来ないよね!?」

 

ムッツリーニ君も囮役に引き込まんとする吉井君。

 

「・・・そんなことはない。」

 

でも、それに対するムッツリーニ君のセリフは意外なものだね。

まあ、それが普通なんだけど。

 

「じゃあ、行くぞ。古今東西ゲーム!!【A】から始まる英単語!」

 

パンパン!

 

「【April】(坂本君)」

 

パンパン!

 

「・・・【AV】(ムッツリーニ君)」

 

「はいちょっと待って。」

 

吉井君によるストップが入る。

まあAVは英単語ではないもんね。

AudioやAdultならともかく。

 

「なんだ?ちゃんとAから始まっていただろう。」

 

「それはそうだけど・・・。」

 

「だろ?続けるぞ。」

 

吉井君の物言いは却下された。

 

パンパン!

 

「【Action】(坂本君)」

 

パンパン!

 

「・・・【Akihisa】(ムッツリーニ君)」

 

「はいストップ。今僕の名前を言ったよね。いつの間に僕の名前は英単語になったのかな?」

 

「《名詞》バカの意。またはそれに値する人物の総称。~fulで形容詞。」

 

「何!?そうやって本当に載ってるかのような説明はやめてよ!?」

 

「《例文》He is so akihisaful.(彼はこのうえなく愚かな人物だ。)」

 

坂本君、それっぽいね。

本当にありそう。

 

「とにかく、固有名詞や略語は禁止だからね!」

 

「わかったわかった。次行くぞ。」

 

吉井君の物言いは再び却下され、続行される。

 

パンパン!

 

「【Arrive】(坂本君)」

 

パンパン!

 

「・・・【Amen】・・・ボ(ムッツリーニ君)」

 

「今小さい声でボって言ったよね!?今のは明らかにアメンボだよね!?」

 

パンパン!

 

「【Agent】(坂本君)」

 

パンパン!

 

「・・・【Aー●△●◇※★⁉】(ムッツリーニ君)」

 

「今思いつかなかったから早口で言ってそれっぽく誤魔化したよね!?ねえ!?」

 

吉井君の抗議はガン無視されてる。

 

「ふう。勝負がつかないな。これくらいでいいだろう。」

 

「・・・(コクリ)」

 

「納得いかない!どうしてムッツリーニへの判定はそんなに甘いのさ!」

 

あ、ちょっと吉井君!

そんなに大声出したら!

 

「(ガラッ)誰ですか!自習時間に出歩いているのは!」

 

ほら、豊郷耳先生にバレちゃった。

 

「あ、やば。雄二・・・っていない!くっそぉ、やっぱり僕がこの役目になるのかぁ!」

 

私達は即座に隠れたから、出遅れた吉井君だけが豊郷耳先生のターゲットになる。

猛ダッシュして逃走する吉井君と、それを追う先生。

とりあえずこれで監視の先生の目はなくなった訳だけど・・・交渉の場に女子である私がいてもね。

 

「じゃ、私は吉井君の手助けをしてくるから、あとは任せるね~。」

 

隠れるのには自信があるから、吉井君を追う先生からある程度離れた場所で注意をひきつけて、吉井君が撒きやすくするつもりだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・はぁ・・・大変だった・・・!途中から大島先生も出てきて・・・。」

 

あのあと、私の協力もあって吉井君は先生を振り切れたよ。

その間に無事にD、Eクラスとの交渉は終わったみたい。

で、私達はB、Cクラスのところまで来てた。

 

「おお明久、お陰で交渉は成功したぞ。もう1回、よろしくな。」

 

「今度は勝って回避してやる!ここまでに考えてきたんだからな!」

 

お、吉井君が自信満々だ。

 

「ほう?見せてもらおうか。古今東西ゲーム!【O】から始まる英単語!」

 

パンパン!

 

「【オーガスト(August)】!(吉井君)」

 

「吉井!何故授業中に出歩いているのだ!」

 

「すいません!色々事情があるんです!」

 

易者先生は意外に足が速いってことがわかったよ。

吉井君、私も手伝うから頑張ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そこでは振り切ったけど、結局Fクラスの会場に戻った際、鉄人先生に捕まってみんなそろってお説教と課題、あとげんこつを貰ったんだけどね。




いかがでしたか?
相変わらず明久は貧乏くじ。


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第四十話「三日目!」

他のでもそうなんですが、うちは展開が速めだなぁ。


 

 

その日の夜、EクラスとDクラスの協力を得られることになった私達は、吉井君達の部屋で待機してた。

結局CとBクラスには協力を得られなかったみたいなんだよね。

Cクラスは小山さんがリーダーだからか尻込みしてる感じらしいし、Bクラスも同様に今のクラスの中心は根本じゃなくてお姉ちゃんな関係で尻込みしてたみたい。

まあ、根本は今立場無いだろうからね~。

 

「まあ、得られなかった戦力のことを嘆いても仕方がない。DとEには既に集合場所と時間は知らせてある。とにかく時間まで待機だ。」

 

それもそうだね。

坂本君の言う通りだ。

 

「そういえば魔理沙、霊夢さんは引き受けてくれたの?」

 

「ああ、バッチリだぜ!最初は渋ってたけど、食べ放題のチケットを見せたら0.1秒で承認してくれたんだぜ。」

 

あはは、霊夢さんらしい。

まああの身体にどうやって入るのかなっていうくらい食べるもんね。

 

「やられたっ!女子が食堂で待ち伏せしてやがった!」

 

それを聞きながら待機していたところ、須川君が駆け込んできて報告する。

・・・えっ?

 

「なんだと!?・・・クソッ!翔子か!」

 

坂本君が驚いた後、悔しそうにする。

そっか、幼馴染みだから考えてることが読めたんだね。

試召戦争では有利にはたらいたけど、今はつらいね。

とにかく食堂に向かうと、そこでは戦争がはじまっていた。

まだ入浴時間になってないためか、女子は全クラス見受けられる。

D、E、Fの下3クラスなこちらは圧倒的に不利だ。

・・・どうするの?

 

「生き残った奴は陣形を立て直し、俺に続け!どうにか持ちこたえるんだ!」

 

坂本君の指示が飛ぶ。

どうにかFクラスのみんなと合流はできたけど、このあとどうするの?

そう思っていたら、坂本君は迷いなく進み始める。

向かってるのは・・・敵が多い方?

 

「坂本君、なんでわざわざ多いほう行くの?」

 

「敵が少ない方は罠の可能性が高い。だからあえて多い方に行った方がいいという考えだ。」

 

なるほどね。

でもなんだろう、なんか不自然な気が・・・。

多数の女子達と接敵してるけど、むこうが召喚獣を出さないどころか、なんか道をあけてる気がするし・・・。

 

「・・・やっぱり、雄二ならそうすると思った。」

 

「翔子!?クッ!」

 

私の予感は間違ってなかったようで、目の前には霧島さんや姫路ちゃんをはじめとしたメンバーが勢揃いしてた。

しかも、さっき私達を避けた女子達が通せんぼするかのように後ろを塞いでる。

坂本君の気持ちはわかるよ。

とっさの判断でとった行動が完全に相手の思い通りだった訳だもんね。

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

坂本君の行動パターンを予測して待ち伏せるなんて、霧島さんはよっぽど坂本君の覗きが許せないみたい。

 

「落ち着け!女子の召喚獣は触れない!間を無理矢理にでも抜けるんだ!」

 

須川君による指示。

昨日みたいに鉄人先生はいない(鉄人先生は最後の砦として女子風呂の前に陣取ってるからね)から大丈夫かと思ったのかもしれないけど・・・。

 

「まったく、あなた達には社会のルールについてたっぷりと指導する必要がありそうですね。」

 

注意がいるのは鉄人先生だけじゃない。

教師全員だからね。

しかも、よりによって学年主任の高橋先生がいる。

普通に考えれば、今合宿所にいる先生のなかでもトップだよね。

 

「くっ!こうなったらとことんまでやってやる!サモン!」

 

吉井君が召喚獣を呼び出し、単身相対する。

 

「先生!アキの召喚獣は見た目よりずっと強いですから気を付けてください!」

 

「大丈夫です。心配には及びません。吉井君。あなたには失望しました。少しは見所のある子だと思っていたのですが。」

 

美波ちゃんの言葉に返事を返し、武器であるムチを構えさせる高橋先生の召喚獣。

対する吉井君も木刀を上段にかまえさせ、間合いを計るかのようにして備えている。

さて、高橋先生はきっとものすごく強いけど吉井君も召喚獣の扱いは多分誰よりも上手い。

どうなるかな?

・・・と、少し期待しながら見ていたんだけどね。

吉井君の召喚獣がいきなり倒れる。

そして一瞬後に本人も痛みで倒れ、のたうち回ってる。

はっきりと見えたわけじゃないけど、まるで剣術の居合のように素早くムチをふるい吉井君を倒したあと、もとに戻してた。

あれ多分、ムッツリーニ君が腕輪を使った時よりも速いんじゃないかな?

落ちた小銭や食べられる獲物を発見する能力に長けているため反射神経がものすごい高い霊夢さんならともかく、常人ならたとえ点数が5ケタとかあっても回避出来ないと思うよ。

・・・改めて思うけど、霊夢さんの人外っぷりが凄い。

 

『学年主任 高橋洋子 総合科目 7791点 VS Fクラス 吉井明久 総合科目 0点』

 

点数も恐ろしいよね。

瞬間記憶能力持っていて、日本史と古典が4ケタな阿求ちゃんですら5000点ちょいなのに、なにしたらあれだけいくのかな・・・?

 

「仕方ない!ここからは各自の判断で行動しろ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

坂本君による、事実上の撤退宣言が出される。

ここまでに召喚獣を出してない私は罠だとわかった瞬間、そっと女子達の間にまぎれて共犯認識されないようにしたけど、みんなはどうするのかな?

 

「「・・・・・・(土下座)」」

 

全員土下座か。

・・・ムリじゃないかな?

 

「・・・ほう?あなた達は土下座をしないのですね。指揮官としてのプライドですか?」

 

ほとんどが土下座をするなか、吉井君と坂本君だけが微動だにせず立っているのを見て、高橋先生が感心したかのように目を細めてる。

でも私は2人と長くいるからわかるよ。

多分あれは・・・

 

「いいや、違うな。アンタはなにもわかっちゃいない。」

 

「まさか、援軍が来るとでも?」

 

「助け?俺達が言っているのはそういうことじゃない。」

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

「坂本君、明久君。覗きは立派な犯罪なんですよ?」

 

「そういえばアキには昼間のこともお礼しなきゃね?」

 

・・・あれは、「土下座をしても許してもらえそうにないからだ」と思ってるよねきっと。

まあ実際土下座組も全員許されなかったわけだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、なんでわざわざここに呼び出したのよ。」

 

「私とコイツら以外にはこのことを聞かれたくなかったからなんだぜ。」

 

「・・・ふぅん。まあ、いいけどね。」

 

吉井君達へのお仕置きと私達女子のお風呂が終わった後。

私達だけでなく、霊夢さんも吉井君達の部屋に来ていた。

魔理沙がここに来るよう言ってあったみたい。

 

「で、どうだったんだ?」

 

「言われた通り、尻に火傷の跡がある生徒がいないか見てきたわよ。結果から言うと、Aクラスにはいなかったわね。」

 

霊夢さんが言う。

Aクラスにいないってことは・・・

 

「工藤は風呂にいたか?」

 

「なに、アンタ愛子に気があんの?代表いんのに浮気?」

 

「ちっがう!」

 

坂本君の質問に対して勘違いした様子の霊夢さん。

まあ、そう思ってもおかしくはないかな?

 

「まあいいわ。とにかく愛子もいたわよ。」

 

そうなると、工藤さんは犯人ではないみたいだね。

 

「で、焼肉食べ放題のチケットは渡すんでしょうね?『いつ渡すか指定してないから、その気になれば10年、20年先にすることも可能だ』みたいなこと言ったら鉄骨で殴ってビルから叩き落とすわよ。」

 

「んなことは言わないぜ。ほれ。」

 

魔理沙が約束の品を渡す。

まあ、霊夢さんなら本当にやりかねないからね。

鉄骨渡りとかも即答でやって成功しそうだし。

 

「確かに受け取ったわ~♪夢が膨らむわね~!」

 

「ちなみにそれ、有効期限があるから注意するんだぜ。1月くらい先だけどな。」

 

「問題ないわ。合宿終わったらすぐ行く予定だったから。」

 

「それと、せっかく2枚あるんだから、早苗の奴を連れていってやったらどうだ?絶対に喜ぶと思うんだぜ。たまには姉として、な。」

 

「・・・まあ、考えておくわ。」

 

確かに、早苗ちゃんは霊夢さんのこと大好きだもんね。

早苗ちゃんが特別お肉が好きっていうわけじゃないけど、多分霊夢さんが誘えば喜んで行くんじゃないかな。

 

「・・・あ、そうそう。この部屋の前で西村先生が見張ってるから、吉井、坂本、木下、えーとあとカメラは外に出ない方がいいわよ。んじゃね。」

 

出ていこうとした霊夢さんが振り返ってそんなことを言う。

カメラって。

ムッツリーニ君だけ名前覚えられてないみたいだね・・・。

 

「・・・俺の名前は土屋康太。カメラじゃない。」

 

「まあまあムッツリーニ君、そう気を落とさないの。吉井君と坂本君は召喚大会で戦ってるし、木下君は同じクラスにお姉さんがいるから覚えてただけだと思うよ。」

 

でも監視されてたのか~。

私はうまくまぎれられたおかげで罰を受けないで済んだし、魔理沙は今日参加してないから罰を受ける理由がないし、監視がつく前に部屋に入ってたから知らなかったや。

 

「まあ、霊夢はあまり積極的に人の名前を覚えようとしないからな。気にすんなって。それで、Fクラスのは私が見てきたぜ。こっちも火傷の痕はなし、だ。」

 

魔理沙が報告する。

まあ、同じFクラスにこんなことをする人がいるとは思ってなかったけどね。

 

「ふむ。まあそうだろうな。」

 

「・・・同じクラスでやっていたのなら、5秒で察知していた。」

 

「そうなると、やはり覗くしかないみたいだぜ。坂本、作戦はあるのぜ?」

 

「正面突破だ。」

 

えー。

 

「そんな絶望的な顔をしないで話を聞け。相手はあれ以上戦力は増やせない。今日は負けたが、相手の戦力を知ることができた。これは大きいぞ。」

 

「・・・他のクラスの情報も把握済み。」

 

多分D、Eクラスだね。

 

「向こうの布陣は教師を中心とした防衛布陣だが、色々と弱点がある。明久、わかるか?」

 

「微塵もわからないね。」

 

「チョキの正しい使い方を教えてやる。」

 

「ふぎゃあっ!目がっ!目があぁっ!」

 

吉井君の眼に坂本君のチョキが刺さったよ。

痛そ~。

 

「それは干渉だ。向こうにとって、一番避けなければいけないのは召喚獣を出せなくなることだからな。」

 

確かに、召喚獣の力なしで男子高校生の群れを止めるのは難しいもんね。

鉄人先生ならともかく。

 

「それと、やはり最大の関門は鉄人だ。覗きを成功させるには、ある奴を無傷で送り届けなければならない。」

 

「ある奴って?」

 

「お前だよ明久。鉄人と張り合えるのは、監察処分者であるお前の召喚獣だけだ。」

 

確かにそうだよね。

人間が熊などの獣に勝つには武器が必要だし。

 

「それで、今日の目撃情報から敵戦力を推察すると、こうなる。というか、俺ならこうする。」

 

話しつつ、この会場の地図に予想布陣を書き込む坂本君。

 

「なるほどね。絶対に通らなければいけない場所には、最強の先生である高橋先生を置いてくると。」

 

「まあな。だから、さっき言ったことを実現させるには、高橋先生のエリアを明久が無傷で突破する必要がある。とはいっても、現状の戦力では突破どころかたどり着くことすら厳しいだろうな。」

 

実際、AやBクラスの人もチラホラいたもんね。

 

「だからやはり、A、B、Cクラスの協力が必要ってことだ。」

 

「なるほどね。でも、どうやって?」

 

「これを使う。」

 

そう言って取り出したのは、部屋に備え付けられている浴衣。

一応使っちゃいけないことになってるけどまあ、坂本君だもんね。

 

「これを着せた写真を撮って劣情を煽るつもりだ。うまくやればA、B、Cクラスの協力もとりつけられるだろう。」

 

「またワシが着るんかの・・・。」

 

木下君がしょんぼりしてる。

まあ、こういうのをやるの、木下君が多いもんね。

 

「いや、今回は秀吉だけではない。古明地と霧雨、あと島田と姫路にも協力を頼む。」

 

あ、私も?

・・・って考えてみたらそりゃそうか。

 

「ぜぜ!?私!?」

 

対照的に、魔理沙は驚いてる。

結局はなんかしらの交渉をした末に了承してたけど、何を話してたかは聞こえなかったな。

ちなみに、私はOKしたよ。

 

「ということで、明久は島田と姫路に連絡をとってくれ。古明地と霧雨、あと秀吉は準備を頼む。」

 

「「「はーい。」」」

 

返事をして、見えない位置に移動する。

着替えている途中、吉井君の変な声と何かが倒れるような音が聞こえてきたし、着替え終わって戻ったら、なんか元携帯っぽい電子パーツが複数とお茶漬けの携帯、あと坂本君の死体があったんだけど・・・。

いや、何かがあったの?

部屋はなんかひどいことになってるし・・・。

ある程度の耐水機能がある携帯なら電源を切ってパーツごとに分解して数日放置すれば大抵は生き返るけど、あれは大丈夫なのかな・・・?

 

「あ、古明地さんと魔理沙!悪いんだけど携帯を少し貸してほしいんだ!美波にメールを送らなければいけなくて!」

 

「うーん、私は携帯部屋にあるんだよね・・・。」

 

「私は持って・・・そういえばパチュリーの図書館に本を借りに行って逃げ帰った時に落としたからもってないなぜ、すまん。」

 

「・・・ねえ魔理沙、確かそこ出禁喰らってなかった?あと本といえばいい加減お姉ちゃんに返してほしいんだけど・・・。」

 

「今は合宿で無理だしそのうちな。」

 

パチュリーさんは、魔理沙の家の近くにある私立図書館の館長なんだけど、魔理沙は借りた本返さないから出禁喰らってるんだよね。

魔梨沙という偽名と赤いウィッグで変装したりこっそり忍び込んだりで本を借りてるけど、いつか窃盗罪で法的手段に訴えられないか心配だよ。

それに、『送信先を間違えて美波ちゃんに告白ともとれるメールを送ってしまい、訂正メールを送ろうとしたところ坂本君に携帯を壊されてどうしようもなくなり、報復に同じことをやってやった』みたいな顔してる吉井君もね。

そんなことをやっていたら時間が過ぎ、コンコンと控えめなノックの音が聞こえてくる。

 

「失礼します・・・。」

 

この声は姫路ちゃんかな?

吉井君がドアを開けると、やっぱり姫路ちゃんが立ってた。

 

「よく来たね。鉄人に絡まれなかった?」

 

「あ、はい。お菓子をあげたら通してくれました。みなさんもどうぞ。」

 

そう言って、市販品と思わしきお菓子を出す姫路ちゃん。

まあ、姫路ちゃんは成績優秀で(基本)品行方正な生徒だし、大丈夫って判断されたんだと思う。

 

「よく来たな姫路。早速だがプレゼントだ。」

 

「浴衣・・・ですか?」

 

「そうだ。それを着た写真を撮らせてほしい・・・と、明久が言っている。もちろんタダとは言わない。・・・ゴニョゴニョ・・・。」

 

坂本君が姫路ちゃんに小声で交渉してる。

ほとんど聞こえなかったけど、寝顔写真って単語が聞こえたな。

 

「わかりました!少しくらいなら浴衣のすそをはだけさせても大丈夫ですっ!」

 

すごいやる気だね。

だいたい何を提示されたかわかっちゃったよ。

私だってお姉ちゃんの寝顔は何時間見てても飽きないもん!

 

「あ、そうそう。撮った写真を他の人に見せても構わないかな?」

 

吉井君が許可をとる。

まあ、さすがに無断で見せるのは友達としてどうかなと思うもんね。

 

「他の人、ですか・・・。少し恥ずかしいですけど・・・頑張ります。」

 

姫路ちゃんのなかで天秤にかけた結果、寝顔写真に傾いたみたい。

 

「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ姫路さん。僕と秀吉、それに古明地さんと魔理沙も映るからさ。」

 

「・・・そうですか。」

 

ちょっと不満そうな姫路ちゃん。

やっぱり吉井君とのツーショットが良かったのかな?

まあ、結局撮影は5人でやったけどね。

多分ムッツリーニ君の腕なら、絶妙に吉井君だけをフレームアウトさせつつ、良いアングルで取ってくれてると思うよ。

せっかくだし、可愛く写ってると嬉しいな~。

・・・あ、そうだ。

 

「・・・あのさムッツリーニ君。」

 

「・・・どうした?」

 

「こっそり、姫路ちゃんと吉井君の2人の写真を撮って、姫路ちゃんに渡してあげてよ。吉井君には秘密でね。」

 

私のお節介かもしれないけど、多分姫路ちゃんにはいい思い出になるはずだからね。

 

「・・・いいだろう。」

 

ちなみに、吉井君も姫路ちゃんとのツーショット写真をお願いしていたみたいだけど、これを知ったのは相当後なんだよね。

 

 




いかがでしたか?
金で雇った霊夢のおかげで愛子が犯人ではないと判明しました。
霊夢さんなら本当にブレイブメン・ロードを渡りきり、風圧も根性で耐えそうです。


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第四十一話「四日目!」

 

 

強化合宿も4日目。

明日は帰るだけだから、今日が実質的な最終日だね。

朝食の時間だけど、吉井君と坂本君はものすごく眠そうに目をこすりつつぼやいている。

昨日私と魔理沙、あと姫路ちゃんが帰ったあとに何かやらかして夜通し指導を受けたのかな?

 

「気合いさえ入れば目が覚めると思うんだが、全然気合いが入らな・・・ふおおおおっ!」

 

なになに!?

坂本君がいきなり叫んで覚醒したんだけど!?

よく見たら坂本君はなにか持ってる。

あれは・・・写真?

 

「ムッツリーニ、今お主が見せたのは何なのじゃ?えらく興奮しているように見えたが・・・。」

 

「・・・魔法の写真。」

 

魔法の写真?

なんだろ、私も見たい!

 

「あはは、雄二も単純だなあ。そんな写真一枚で気合いが入るなんてこと、あるはずなふおおおおっ!!」

 

入ってるじゃん。

吉井君の後ろから覗き見させてもらうと、どうやら昨日撮った写真を現像したものみたい。

浴衣姿の私に魔理沙、木下君に姫路ちゃんが、すごい色っぽく写ってる。

自分で言うのもどうかとは思うけど、私もすごく可愛いな。

ムッツリーニ君、凄いよ!

 

「・・・それと、綺麗に撮れたので印刷してみた。」

 

「放して秀吉!このバカの頭をカチ割ってやるんだ!」

 

「落ち着くのじゃ明久!よく撮れておるではないか!」

 

ムッツリーニ君が取り出したもう1枚の写真には、セーラー服を着た吉井君の姿。

それを見て、ムッツリーニ君の頭をカチ割ろうとする吉井君を木下君が羽交い締めにしてる。

どこから入手したんだろうとか、いつ着たんだろうとか、本人に気づかれずにどこから撮影したんだろうとか突っ込みたいことがたくさんあるけど、なんか突っ込んだら負けな気がするんだよね。

 

「驚いたぞムッツリーニ。まさかここまですごい写真を撮るとは。」

 

目に光を取り戻した坂本君が、ムッツリーニ君に労いの言葉をかける。

普段あんまり女の子に興味を示さない坂本君でさえこんな反応だし、かなり期待出来そうだよね。

 

「よし、これを全男子に回せ。」

 

坂本君が写真の裏にパクるのを禁止するよう字を書き、近くにいた須川君に渡す。

須川君は疑問符を浮かべながら写真を受け取って、

 

「ふおおおおっ!」

 

覚醒したね。

でも、こんな風に全員が覚醒してたら、怪しまれないかな?

まあいっか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから私達は、最後の決戦に向けて補充テストを受けたり、作戦を考えたりと、頑張ってた。

もちろん私もね。

そしてついに、運命の時間がやってくる。

 

「いよいよ、この時が来たな。」

 

坂本君がしゃべり始める。

もう、この時間には監視の先生もおらず布陣についてるから、いるのは協力者だけだ。

 

「もはや言葉はいらねえ!理想郷を目指し、進むぞ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

最後の戦いが、幕を開けた。

さて、私も頑張らないとね。

私と魔理沙は、吉井君と行動するように言われてる。

鉄人先生への唯一の切り札である吉井君を、無事に送り届けるためだよ。

 

 

 

 

 

 

 

「うむむ、我に集団で来るでない!鬱陶しいわ!」

 

「落ち着け布都!防衛陣を敷いているこの状況での太乙真火は味方の被害が大きい!」

 

「行け!物部と蘇我を圧殺しろ!」

 

まず最初に戦場となっているはずの2階広間。

Cクラスが協力してくれていれば、ここで戦いが行われるはずだけど、無事にやってるね。

見たところ、攻撃側が優勢みたい。

 

「Cクラスのみんな!協力してくれたんだね!」

 

「ったりめぇだ!あんなモン見せられて、男がおめおめと帰れるかってんだ!」

 

「ここは俺達に任せやがれや!てめぇらこそしくじんじゃねぇぞ!」

 

すごい、口調が少しおかしいけどノリがいいね。

 

「通す訳にはいかないんです!」

 

「いいや、あいつらは通させてもらう!」

 

おかげでこの戦場はスルーすることができた。

後ろは振り返らず、前だけを見て走る。

先の試召戦争では敵だった相手が、今は味方になってるのは、なんか嬉しいね。

階段を降り、次は大食堂。

ここでも勝負が繰り広げられてたなら、賭けには勝てるはず!

 

「・・・メだ、かなわ・・・」

 

「・・・護をた・・・」

 

「やった!戦いが行われてるみたいだ!」

 

「待て!様子がおかしいぞ!」

 

安堵する吉井君を坂本君が諌める。

 

「・・・ここは通さない。」

 

「ええ。ここは私達が守りますよ。」

 

扉を開けて、中に入るとそこでは戦いが行われてた。

さっきとは違って、防衛側が圧倒的に優勢。

見たところ・・・Aクラスの姿はない。

Bクラス男子は首席の霧島さんと、実質首席の阿求ちゃんに蹂躙されちゃってる様子だ。

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

「くっ、根本バリアー!」

 

「さ、坂本!?せっかくの協力者に、それはあんまりじゃないか!?」

 

坂本君が盾にした、Bクラス代表である根本の召喚獣すら一撃で斬り伏せられる。

うーん、根本が倒されたのはどうでもいいけど、この戦況はまずいね。

 

「明久よ。どうしてお主はここまで覗きに拘るのじゃ?失礼かもしれんが、これを達成しても、お主のレッテルは大して変わらんと思うぞい。それに、お主はやられれば痛く苦しいはずじゃ。何故、そこまで諦めないのじゃ?」

 

この戦況をどうするか考えてたところ、横から木下君の質問が聞こえてくる。

確かに、苦労に対して、リターンは少ないと思うよね。

 

「確かに、最初は僕の名誉の為だったよ。でもね秀吉、それに向かって努力したり、仲間が増えて、その仲間を失いながら前に進んだりしているうちに、僕は本当の気持ちに気づいたんだ。世間がどう思うかなんて関係ない!僕は自分の気持ちに正直でありたいんだ!純粋に、心から己の欲望のために女湯を覗きたいんだ!」

 

「お主は何を言ってるのじゃ!?」

 

どう答えるかと思ったら、ね。

でも、なんかかっこよく聞こえなくもない・・・かな?

 

「・・・よく、わかりました。吉井君、覚悟をしてく『君の想い、確かに聞きとった!』誰ですか!?」

 

呆れと怒りがこもった阿求ちゃんの言葉を遮り、何者かが声をあげる。

声がした方を見ると・・・

 

「吉井君!君の想いは確かにこの僕が聞きとったよ!すまない、準備はしていたが、踏ん切りがつかなくてね。だが、君の言葉を聞いて、気持ちが固まったよ。ただ今からAクラス男子総勢22名、吉井明久の覗きに力を貸そう!」

 

「お主ら自分が何を言ってるのか、わかってるのかの!?」

 

久保君を先頭に、Aクラスの男子っぽい人達がずらりと並んでる。

そして、久保君の合図とともに、一斉に召喚を行い、戦いを始める。

一人一人がさっきの根本より点数が高いため、戦況は一気に逆転・・・とはいかなかったけど、五分五分くらいにはなった。

 

「ありがとう久保君!」

 

「なに、気にすることはないよ。僕も、君の言葉の通り、気持ちに正直でいようと思っただけだからね。」

 

まあ、その気持ちが吉井君にとっては問題なんだけどね。

私には腐った趣味はないし。

とにかく、私達は戦場を駆け抜ける。

 

「やはり、来ましたか。あなた達にはもう一度、社会のルールを説く必要がありそうですね。」

 

次は高橋先生率いる部隊。

昨日見てわかったけど、高橋先生の召喚獣はものすごく強い。

多分この中で一番扱いに慣れている吉井君ですら瞬殺したもんね。

見えないレベルの攻撃速度だったし、多分吉井君が阿求ちゃんくらいの点数を持ってても厳しいんじゃないかな。

 

「アウェイクン!」

 

だから、私達は戦わない方法を選ぶ。

坂本君が召喚大会で得た腕輪には、教師の立ち合いなしにフィールドを生成できる効果がある。

点数は消費するし科目はランダムだけど・・・。

 

「干渉、ですか。やってくれましたね・・・。」

 

召喚フィールドがぶつかってしまうと、互いが互いのフィールドを消してしまう。

フィールドがなくなれば召喚獣は実体化出来ないから、この場の全員の召喚獣が消滅したね。

この隙に、脇を駆け抜ける。

召喚獣さえいなければ、高橋先生はただの女性だもん。

 

「くっ、4人通してしまいましたが、これ以上はさせません!」

 

でも、先生がフィールドを消去したことで、坂本君のフィールドのみが残り、召喚獣は再び実体化する。

さすが高橋先生、判断が早いね。

点数を消費する関係上、坂本君のはそう簡単にオンオフができない。

だから、実質的に、ここから先は私、吉井君、ムッツリーニ君、魔理沙の4人で戦うしかなくなったね。

高橋先生はそう簡単に倒せないと思うし。

 

「止まれ。」

 

「ボクも女の子だからね。ここを通す訳にはいかないんだ。」

 

廊下で待っていたのは大島先生と工藤さん。

1日目に先生の点数を見てるし、工藤さんもムッツリーニ君ほどじゃないけど、点数が高い。

大丈夫かな?

 

「・・・ここは俺が引き受ける。行け。」

 

「でも、ムッツリーニ君一人でこの2人って・・・。」

 

「・・・いいから行け。俺のことは心配ない。」

 

そこまで言うなら、この場はムッツリーニ君に任せようかな。

 

「わかった!任せるよムッツリーニ!理想郷でまた会おう!」

 

ムッツリーニ君以外の3人でダッシュする。

・・・でも気のせいかな、初日よりかなり前にいたような・・・?

少し、嫌な予感する。

 

「あんた達、止まりなさい。」

 

「ここは通す訳にはいきませんよ!」

 

「・・・こいし、あとで事情をみっちり聞かせてもらいますよ。」

 

そう思ったのは間違いじゃなかったみたいで、目の前には霊夢さんと早苗ちゃん、そしてお姉ちゃんが立ってる。

・・・どうしよ。

でも、とりあえずお姉ちゃんに私の目的を悟られるわけにはいかないな。

 

「・・・しょうがない。吉井!お前だけでも抜けるんだ!」

 

「・・・わかった!僕は鉄人を倒す!」

 

「あ、こら、待ちなさい!」

 

「「サモン!」」

 

吉井君を止めようとする霊夢さんの気を引くために、私と魔理沙で召喚獣を出す。

フィールドは・・・数学だね。

・・・数学?

私達の学年の数学教師は河城先生だけど、昨日というか今朝も居なかったような・・・?

あと、フィールドだけで先生がいないのも気になるな。

まあでも、そのへんを考えててもしょうがないよね。

 

「・・・わかったわ。あんた達の挑戦、受けてやるわよ。あんた達が勝ったら、私は手を引くわ。」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

早苗ちゃんが驚いてる。

 

「魔理沙は理由もなくこんなことに加担するような人間じゃないし、それはこいしも同じよ。早苗もそれは知ってるでしょ。それにさとりも姉なんだからわかるはずよ。」

 

「まあ、そうですが・・・。」

 

「これは勘だけど、あんた達・・・少なくとも私が部屋にいった時にいたメンバーは覗きに目的があるんでしょ。例えば・・・お尻に火傷の痕がある、初日の盗撮の真犯人を見つけるとか、ね。」

 

すごい、大体合ってる。

 

「・・・さすがお姉ちゃんだけど、でも何でこいしちゃんや魔理沙さんが?」

 

「そこまでは知らないわよ。その真犯人になんか脅迫でもされてるんじゃないの。」

 

適当な感じで言う霊夢さんだけど、それも正解だよ。

やっぱりすごいね霊夢さん。

 

「・・・まあ、今はいいでしょう。こいしの考えも読みとることが出来ませんし。」

 

お姉ちゃんが呟く。

なんで読みとることが出来ないのかはわかんないけど、良かったかな。

とにかく、今は3人を倒さなければならないね。

 

『Aクラス 博麗霊夢 数学 421点 and Aクラス 東風谷早苗 数学 375点 and Bクラス 古明地さとり 数学 361点』

 

VS

 

『Fクラス 古明地こいし 数学 271点 VS Fクラス 霧雨魔理沙 数学 408点』

 

うーん、霊夢さんと魔理沙が腕輪持ちみたいだけど・・・。

でも霊夢さんと魔理沙の戦いは、Aクラス戦の時に負けてるんだよね・・・。

 

「大丈夫だぜ、こいし。あの時は使えなかったが、霊夢を倒せる策はあるんだぜ。」

 

小声で魔理沙が言ってくる。

 

「霊夢!私の技を受けてみるんだぜ!恋符『マスタースパーク』!」

 

「・・・あんたそれ、前回やられたじゃないの。二重け『チャリチャリーン』お金の音!(シュババッ!)」

 

「ちょっとお姉ちゃん!?」

 

魔理沙が、前回も使ったマスタースパーク?を放つと同時にポケットから500円玉を2枚取り出し、霊夢さんの方へ1枚、その場に1枚落とす。

前回もやった反射行動を取ろうとした霊夢さんの意識は完全にそっちへ向き、結果的に魔理沙のレーザーは霊夢さんの召戦争を貫いた。

えー・・・・・・。

 

『Aクラス 博麗霊夢 数学 0点』

 

それで霊夢さんの召戦争は戦闘不能。

でも・・・

 

「「「・・・・・・」」」

 

味方であるはずの私も含め、全員が魔理沙をジト目で見てる。

 

「・・・すまないな霊夢。例え卑怯だ根本だと言われようが、私は勝たなければいけなかったんだぜ。」

 

「・・・・・・まあいいわ。1000円は私のものになったし、そこまで怒らないわよ。」

 

「さ、さすがは霊夢だな!人間が出来てるぜ!」

 

「魔理沙、合宿が終わったら、5000であんたの悪いものを祓ってあげるわ。来なかったら・・・わかるわよね?」

 

「・・・・・・ハイ。」

 

霊夢さん、やっぱり怒ってた。

まあでも、霊夢さんの巫女業は真面目にやってるから詐欺でもないんだけどね。

 

「しょうがないから、早苗とさとりに後は任せたわよ。」

 

「わかったよお姉ちゃん!」

 

「いいのでしょうかこれで・・・。」

 

燃える早苗ちゃんと、困惑気味のお姉ちゃん。

 

「・・・とりあえず今はこの場の戦いだ!行くぜ!」

 

魔理沙が箒を構えて召喚獣を走らせる。

狙いはお姉ちゃんみたい。

 

「ふむ、そう来ますか。私の召喚獣はハートの弾幕で武器はない、だからあえて近接戦を仕掛ける。狙いは悪くないと思います。」

 

・・・・・・そういうことか!

お姉ちゃんの狙いはわかった。

 

「ですが、私も黙ってやられはしませんよ。」

 

「ナ、ナイフだと!?」

 

魔理沙が振りかぶった箒は、お姉ちゃんが手に持つ2本のナイフで止められる。

よく見たら、お姉ちゃんはあの黒い腕輪をしてる。

さっきマスタースパーク?で点数を消費してるし、魔理沙の箒は木。

それに箒は近接用の武器じゃないもんね。

 

「では、今度はこちらから行かせて貰いましょう。」

 

「うぉっ!とっとっ、と・・・!」

 

お姉ちゃんが2本のナイフを使いこなし、魔理沙に攻撃を加えていく。

魔理沙も箒で防ごうと奮闘するけど、手数が多いせいで防ぎきれてない。

・・・と、魔理沙の方を気にしてる場合じゃないね。

私も早苗ちゃんをなんとかしないと。

早苗ちゃんの拳をかわしたり私の武器で防いだりして攻撃の機会を待つ。

前回戦った時は現代文だったから点数差が酷かったけど、今回はまだマシだしね。

でも、どうしようかな。

こっちから攻められそうなチャンスはないし、魔理沙の方も放置してたら多分負けちゃう。

 

「・・・こちらは終わった。そっちはどうなった。」

 

打開策を考えながら戦ってたら、ムッツリーニ君がやってくる。

どうやら、先生と工藤さんに勝ったみたいだね。

 

「吉井君は鉄人先生と戦ってるはずだけど、今私達はお姉ちゃんと早苗ちゃんに止められてるって状況だよ。」

 

戦いの手は止めず、ムッツリーニ君に状況を説明する。

 

「・・・わかった、加勢する。サモン。」

 

ムッツリーニ君が召喚獣を出す。

これで数的優位にたてたし、行けるかな・・・

 

『Fクラス 土屋康太 数学 27点』

 

・・・って思ったけど、これじゃほぼ変わらないような気がするな。

 

「今です!八坂スマッシュ!」

 

「!!」

 

私がムッツリーニ君の点数を見て落胆したところで生まれた一瞬の隙をつき、早苗ちゃんが八坂スマッシュを放つ。

一撃目が私に入り、高く打ち上げられる。

確か・・・次はジャンプからの地面に叩きつけだったよね。

 

「じゃあ、こうするよ!」

 

Aクラス戦の時、お空が受けてた時を思い出し、場所を推測して攻撃を放つ。

合っていたみたいで、早苗ちゃんの拳と私の武器がぶつかり、音をたてる。

とはいっても、不安定な場所から放った攻撃だし、早苗ちゃんの攻撃に重力も乗ってるから、私の召喚獣は高速で地面に落下していくんだよね。

多分、防衛行動をとっても私の死は免れない。

だったらせめて、一矢報いるよ!

ポケットに入れていた黒い腕輪を素早く腕に装着する。

私の武器である、触手のようなものが細かな粒子となって消え去り、かわりに私の手に弓が生成される。

召喚獣を既に出してる時でも、つけてない時からつけた時に限るけど武器をチェンジ出来るって学園長先生から聞いてたからね。

 

「早苗ちゃん、覚悟だよ!」

 

「弓っ・・・!?」

 

早苗ちゃんの召喚獣だって、あの攻撃を放った後は落ちるしかない。

素早く弓をひいて、上にいる早苗ちゃんの召喚獣めがけて放つ。

さっきの一撃は防いだから、まだ私の召喚獣の点数は200点くらいある。

それだけの一撃が入れば、早苗ちゃんの召喚獣もただではすまない。

まあ、防御行動とってない私の召喚獣も倒されちゃうんだけどね。

あとは魔理沙とムッツリーニ君に任せようかな。

 

『Fクラス 古明地こいし 数学 142点 VS Aクラス 東風谷早苗 数学 0点』

 

・・・って、あれ?

私の召喚獣が死んでない。

 

「・・・間に合った。」

 

ムッツリーニ君が呟く。

私が自身の召喚獣の方を見ると、私の召喚獣をお姫様だっこで支えるムッツリーニ君の召喚獣が。

・・・ってなってればかっこよかったんだけど、実際はムッツリーニ君の召喚獣が私の召喚獣の下に入り、クッションになってた。

そのおかげで落下の衝撃がだいぶ緩和されて、生き残ったみたい。

とにかくムッツリーニ君のおかげで私は生き残ってる。

ムッツリーニ君は犠牲になっちゃったけどね。

ありがとね、ムッツリーニ君。

 

「えいっ!」

 

とにかく、私は召喚獣に弓をつがえさせ、狙いを絞る。

もちろん、狙いは魔理沙を攻めてるお姉ちゃん。

ほんとはお姉ちゃんに攻撃したくはないけど仕方ないよね。

 

「・・・!」

 

放たれた矢はお姉ちゃんめがけて飛んでいくけど、ギリギリのところで当たらない。

うーん、やっぱり真上に射つだけならともかく、狙いを定めるのは難しいな。

 

「・・・今のはこいしね。わざと外したのかしら?」

 

お姉ちゃんがこっちを見て確認するかのように呟く。

お姉ちゃんはそう疑ってるけど、純粋に外しただけなんだけどね。

 

「・・・まあいいわ。魔理沙さん、覚悟です。・・・あと、いい加減本も返して下さい。」

 

「やられるつもりはないぜ!あと、本はまたそのうち、な。」

 

お姉ちゃんが魔理沙を攻め続ける。

でも位置関係がよくないな。

お姉ちゃんと私の直線上に魔理沙がいるような位置をとられてる。

でも弓には銃にも弾幕にもレーザー(星さんのは別だけど)にもない利点があるからね。

今の私が出来るかはわかんないけど、矢を上向きに放つ。

上向きに放たれた矢は重力に引かれ、そのままお姉ちゃんの召喚獣の肩あたりにヒットする。

・・・うん、うまくいったみたい!

軌道が直線とは限らないから、味方の頭上を越えて攻撃出来るっていうのが選んだ理由のひとつなんだよね。

 

「・・・くっ。」

 

「隙ありだぜ!マスタースパーク!」

 

私の矢で点数を減らし、動きが鈍ったお姉ちゃんの召喚獣に対し、至近距離で必殺技を放つ魔理沙。

回避は敵わずレーザーは直撃した。

 

『Bクラス 古明地さとり 数学 0点 VS Fクラス 霧雨魔理沙 数学 108点』

 

「よし!勝ちだぜ!」

 

「・・・負けましたか。ナイフの扱いももう少し慣れなければなりませんね。」

 

「私も、八坂スマッシュ決まった後も油断はしないようにしないとですね・・・。」

 

「約束通り、通っていいわよ。」

 

霊夢さんの言葉に甘え、悔しそうなお姉ちゃんと早苗ちゃんを横目に通る。

女湯の前には満身創痍ながらも勝利をもぎ取った様子の吉井君と気絶してる鉄人先生、あとは・・・誰だっけ?

ドリルのツインテールに見覚えはあるんだけど・・・。

 

「・・・あ、古明地さんと魔理沙!どうやら、彼女が脅迫犯みたいだよ。」

 

え、そうだったんだ。

ちょっと失礼して、お尻の火傷の痕の有無を確認させてもらうと、確かにあるね。

・・・うん。

 

「爪に針・・・、歯茎をペンチ・・・。姫路ちゃんの料理強制・・・。」

 

「「古明地さん(こいし)、真顔で何怖いこと言ってるの(のぜ)!?」」

 

おっと、いけないいけない。

お姉ちゃんの秘密を握って脅迫したんだからこれくらい当然だけど、心の声が漏れちゃった。

 

「それより吉井君、よく鉄人先生に勝ったよね!おめでと!」

 

「あ、うん、ありがとう。2体の召喚獣を使ってやっとの勝利だったよ。」

 

「「「いざ、理想郷へ!」」」

 

吉井君と話してたら、むこうで戦っていた男子達がやってくる。

どうやら、勝ったみたい。

これでもう、阻む壁はないってことだよね。

でもなんだろ、なんか良くない予感がするな。

坂本君がみんなの前で感謝の意とかを述べてる時に、こっそりと風呂場の中を覗きこむ。

・・・・・・あっ。

 

「では理想郷へ『みんな、ちょっと待って。』どうした古明地。」

 

「みんな、ここで覗きをしないで引き返した方がいいよ?」

 

「「「今更帰れるか!」」」

 

「ここで実行すれば、絶対に良くないことになっちゃうよ。今ならまだ間に合うよ?ね、だから引き返そ?」

 

「「「断る!」」」

 

私の説得も空しく、進行してくみんな。

あーあ、私は確かに止めたよ?

みんなのために言ったんだけど、受け入れられないならしょうがないか。

せめて、これから起こる惨劇を見ないよう、彼らに背を向けて出てく。

 

「「「割に合わねええぇぇーっ!!!」」」

 

だから言ったのにな。

学園長先生の艶姿なんて、吉井君達男子高校生が見たら良くないって。

まあ、私にとっては吉井君達男子に友達やお姉ちゃんの裸を見られなくて済んだし、脅迫犯も見つけられたし、なんだかんだで楽しかったしハッピーエンドだね!

こうして、強化合宿は幕を閉じたよ。

・・・というか、あの時あっさり通過許可を出してた霊夢さんはこうなるって知ってたみたい。

強化合宿の様子を見るため、河城先生と来てた学園長先生がお風呂に入るのを見てたらしいよ。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに翌日、男子生徒全員1週間の停学になったけど、私と魔理沙は女子だからお咎めナシ。

阿求ちゃんとかの視線がちょっと痛かったけど、キチンと説明したらわかってくれたよ。

吉井君達には悪い気がするけど、しょうがないよね!




いかがでしたか?
これが魔理沙の霊夢対策。
ちなみに八坂スマッシュを武器で防いでから地面に落下するまでは2秒くらいです。
こいしちゃんの反射神経すげえ。


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第四章『合宿後の騒動!』
第四十二話「急展開!」


強化合宿終わって一波乱。


 

 

 

 

「お姉ちゃん、本当にいい天気だね~!こんな天気だと、なにかいいことが起こりそうじゃない?」

 

今日もいい天気だね~!

青い空と白い雲、明るい太陽、見える黒い制服。

こういう日は、なにかいいことありそう!

 

「そういえば今日が男子の停学明けだったわね。」

 

強化合宿が終わって1週間後。

Fクラス男子達の停学が明けるのが今日だよ。

 

「確か、Fクラスはクラスの80%以上が男子よね。」

 

「うん、そうだよ。」

 

だからすごく広く感じたよ。

まあ、それも昨日までなんだけどね。

今日からは吉井君達が来るから、いつも通りに戻ると思う。

 

「じゃあこいし、またね。私は根本に少しばかりお灸をすえないとならないので。」

 

「うん、わかった!じゃーねー。」

 

今は根本よりお姉ちゃんの方が実質的な立場は上だからね。

お姉ちゃんと別れ、私達Fクラスの校舎に向かう。

 

「・・・!!」

 

そこで、私は驚きの光景を目にしたよ。

なんと、美波ちゃんが吉井君とキスしてる!

吉井君の方は何がなんだかわかってない様子だけど、もしかして美波ちゃん、合宿中に告白を決意するような何かがあったのかな?

改めて考えてみると、吉井君達の停学期間中、少し悩んでるような素振りが多かったかもしれないな。

 

「じ、冗談じゃないから・・・!」

 

それだけ言い、美波ちゃんは走り去る。

やるね!

これで吉井君も美波ちゃんの想いに・・・・・・気づいたら苦労してないか。

今も吉井君、何がなんだかわからないような感じで呆然として・・・あ、吉井君の顔に須川君が全力で拳叩き込んだ。

黒いローブを羽織り、悪魔降臨の儀式を行うような服装の、Fクラスの異端審問会の人達が吉井君を気絶させ、Fクラスに運び込んでる。

なんというか、いままでと比べて本気の殺意を感じるな。

 

「・・・なあ古明地。これ一体どういう状況だ?」

 

「あ、正邪ちゃん!うーん、私もよくわからないけど美波ちゃんが吉井君にキスしてたよ。」

 

「だからあいつらはあれだけ殺気だち、坂本も殺ろうとしてるのか。」

 

あ、本当だ。

あそこにいる霧島さんと、かれらのレーダーにひっかかるようなことしたのかな?

 

「まあ、とりあえず教室に行けばわかるかもしれない。」

 

正邪ちゃんといっしょに教室へ向かう。

異端審問会のみんなもFクラスに行ったしね。

扉を開くと・・・なんていえばいいのかな、生け贄の儀みたいな感じになってる。

中央に縛られた2人を取り巻くよう並ぶ会員達。

どうやら、審問会みたいだけどね。

 

「これより異端審問会を始める。では、始めに判決を言い渡す。判決、死刑!」

 

・・・ん?

もしかして2人の死刑は決定事項なの?

 

「ストップ!せめて吉井君と坂本君の言い分を聞こ?」

 

「安心しろ、今からするところだ。吉井と坂本の猿轡を外してやれ。」

 

「「「はっ!」」」

 

一応聞く気ではいたみたいで、会長である須川君の命によって数人のメンバーが外す。

それでも2人とも、みのむし状態で、動けそうにはないかな。

 

「では、まずは罪状の確認を行う。横溝。」

 

「はっ。本日午前八時頃、吉井明久が人目のある場所であるにも関わらず、島田美波に対して強制猥褻行為を働きました。これは学園上の風紀を乱すものとして我々は事実と余罪について追求を『長い。簡潔に述べよ。』キスしてたから羨ましいであります!」

 

わー、簡潔だー。

 

「うむ、簡潔でよろしい。吉井明久よ。罪を認めるか?」

 

「・・・ちなみに、認めたらどうなるの?」

 

「そうだな、ライターと灯油を使った刑を『濡れ衣です!僕はやってない!』そうか、それなら自白を強要するまでだ!」

 

「そうだ!自白を強要させろ!」

 

「議事録を改竄しろ!」

 

んん?

審問会でやっちゃいけないことが聞こえるよ?

まあ、もうこれは審問会って呼んじゃダメなもんになってると思うけどね。

 

「ええい、灯油とライターの用意はまだか!」

 

「拷問用もそれなの!?なら同じじゃん!」

 

「違うぞ吉井。罪を認めない場合は拷問用と処刑用の2回だから罪を認めた方が1回お得なんだ。」

 

「そんな風に言われても、僕は騙されないぞ!」

 

「というか灯油とライターはダメ!校舎が燃えちゃうよ!」

 

これで火事になったら大変だもん。

こんなぼろっちい校舎、すぐ燃えちゃいそうだし・・・。

卓袱台も畳も燃えやすいしね。

 

「・・・よかろう、古明地こいしに免じて『特別バンジージャンプ』に刑を変えてやろう。あまり恐怖を与える訳にもいかないからヒントくらいしか言えないが・・・『パラシュートのないスカイダイビング』といったところか。」

 

死刑だよね?

120%死刑だよね?

 

「それもう答え言ってるじゃん!死刑だよね!?僕と雄二をここから突き落とすつもりなの!?」

 

「テメェ・・・!やるならコイツだけをやれ!」

 

「雄二、ありが・・・違う!それだと被害を受けるのは僕だけじゃないか!あまりにもかっこよく言うから一瞬勘違いしちゃったよチクショウ!」

 

「よかろう、男らしいお前のセリフに免じ、刑は吉井だけにしてやる。」

 

「須川君も気づいて!コイツはただ友達を売って自分だけ助かろうとしてるだけなんだ!やるなら雄二を!」

 

「まあ安心しろ、明久。こんなこともあろうかと、持っていたものがある。」

 

そう言って、坂本君が取り出したのは・・・・・・切れた輪ゴム。

さては坂本君、遊んでるね?

 

「HRを始めるぞ、お前ら席に・・・・・・お前らは停学明け早々、何をやっているんだ。」

 

そんな風にドタバタしてると、いつのまにかHRの時間になっていたようで、鉄人先生が入ってくる。

 

「先生!助けてください!校内暴力です!虐められてるんです!」

 

「違います!これは学園の風紀を守るための戦いなんです!吉井は不純異性交遊の現行犯なんです!」

 

「・・・まあ、何をやってたのかはどうでもいいが、それより補充テストは受けんでいいのか?ここにいる大半は点数がゼロなはずだぞ。」

 

確かに、私達女子はテストを受けたけど、停学中だった男子みんなは受けられてないもんね。

最終的に、特定の教科で点数がなくなったら他のフィールドに行って召喚し戦うといった、全教科入り乱れての戦いとなっていたようだし。

もし今戦争を仕掛けられたら、7人しか戦えないよ。

 

「でもこんなFクラスに戦争仕掛けてくるところなんてないと思いますよ?稗田さんと姫路さんもいますし。」

 

「「「それより今は吉井のことだ!」」」

 

「・・・まあ、お前らの自由だ、好きにすればいい。それとその稗田についてだが、体調を崩したため3日程学校を休むそうだ。」

 

あらら、阿求ちゃん大丈夫かな?

昨日は普通に元気そうだったから深刻な病気じゃないはずだけどね。

阿求ちゃんは身体が弱いから、まれに今みたいに休むことがあるんだよ。

 

「最後に、試召システムのメンテナンスが遅れている。教師総動員で当たっているが、今日中に終わらないだろう。そのため、試召戦争が出来るのは明日以降になる。では、HRを終わる。あまりこんなことばかりしてないで、勉学に励むように。」

 

そう告げて先生は教室を出ていく。

・・・大丈夫かな?

というか、そろそろほんとに吉井君助けないと殺されそう。

 

「まあ落ち着けお前ら。羨ましいという気持ちはわかるが、処刑したからといって島田の気持ちがお前らに向く訳ではないんだぞ?」

 

あら、珍しく正邪ちゃんが制止した。

しかも普通に真面目なこと言ってる。

 

「「「だとしても、俺達は吉井が殺したいほど憎いんだ!!」」」

 

それに対しての反応がコレ。

酷いというか歪んだクラスだよね。

 

「・・・はぁ。とにかくキスごときでクラスメイトを殺そうとすんなって。」

 

「だとしても、吉井と島田の接吻は異端審問会として許されるものでなく・・・」

 

須川君の言葉の途中で、ガラッと扉が開けられ、当人である美波ちゃんが入ってくる。

その顔は耳まで真っ赤になってて、普段とは違う空気に誰も言葉を発せない。

授業に来た先生も、その様子に驚いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ねえ、アキ。ウチの卓袱台、損傷しちゃったから、一緒に使わせて欲しいんだけど・・・いい?」

 

「あ、うん・・・。いいけど・・・。」

 

一時間目の授業が終わり、美波ちゃんが吉井君に言う。

普段とは明らかに違うのがわかるくらいぎこちないよね。

まあ、今までの友達という関係からカップルという関係になるなら、はじめてのことばっかりだと思うししょうがないよね。

 

「「「・・・・・・!!」」」

 

その様子を見てるクラスメイト達から怒りと嫉妬のオーラが立ち上ってる。

頭の上に、何故かぱるぱるという文字が見えたよ。

 

「お姉様!その豚野郎から離れてください!」

 

さらに乱入してきたのはDクラスの清水美春ちゃん。

先の強化合宿での覗きの真犯人かつ脅迫犯で、美波ちゃんが好きな女の子だよ。

まあ、脅迫についてのお仕置きは、男子の停学期間中にやったんだけどね。

爪に針とかだと目立っちゃうから、せっかくだから火傷の痕があった場所にお灸をすえてみたよ。

・・・まあ、今も事情を知って乱入してきたし、多分改心はしてないけど・・・。

でもお姉ちゃんの写真を撮らないよう釘をさしたし、お仕置きは済ませたしまあいっかなって思ってるけどね。

 

「み、美春!?ウチの邪魔をしにきたの!?」

 

「当然ですっ!そこの豚野郎とそんなに密着してるのを見逃す訳にはいきませんっ!」

 

豚野郎って、相変わらず毒舌だよね・・・。

 

「し、しょうがないじゃない!卓袱台は狭いから密着しなきゃならないでしょ!ウチのは壊れてるんだし!」

 

「だったら他の女子の所へ行けばいいじゃないですかっ!魔理沙さんとか正邪さんとか古明地さんとかっ!」

 

まあ、理にはかなってるよね。

でも、友人の恋は応援したいと思っているはずの魔理沙と正邪ちゃんと私は素早く目線を交わす。

 

「先に言っておくが、私はお断りだぜ。美波には悪いが、私は卓袱台を広く使いたいのぜ。」

 

「私も魔理沙と同じだ。古明地のとこはどうだ?」

 

「ごめんね、私も無理かな。」

 

もちろん、こういう事情がなかったら全然構わないんだけどね。

美波ちゃんは友達だし。

 

「そういう訳みたいよ。」

 

「だ、だったら稗田さんとか姫路さんとか霊路地さんとかいるじゃないですかっ!」

 

「阿求は今日休みだから勝手に使ったら悪いし、瑞希は勉強の邪魔になっちゃうし、お空は寝てるから頼めないし・・・。」

 

「あ、あの美波ちゃん、私なら大丈夫ですから・・・。色々話したいこともありますし・・・。」

 

おずおずと言う姫路ちゃん。

まあ、姫路ちゃんも吉井君のことが好きな訳だもんね。

 

「でも、そうは言っても遠慮しちゃうし・・・。」

 

「私は本当に構いませんから・・・。」

 

「そうですお姉様!席は移動して美春とお弁当を食べましょうっ!朝早起きしてお手製のタレで作った唐揚げとかっ、産地に気を遣って選んだポテトサラダとか、奮発した挽き肉を使ったハート型のハンバーグとか、デザートとしてつけたウサギリンゴとか、考えただけで美春は、美春は・・・!」

 

「待ちなさい!なんでアンタがそんなに知ってるのよ!?」

 

まあ、気持ちはわかるけどね。

私もお姉ちゃんの料理は大好きだし。

でも、美波ちゃんのその料理の想いは吉井君に向けてだけどね。

 

「あのね美春。いままでは我慢してたけど、もうこういうことは止めてほしいの。だって、ウチとアキは、つき合ってるんだから。」

 

「畳返しっ!」

 

シュカカカカッ!

美波ちゃんの言葉とともに、吉井君にカッターが飛ぶ。

咄嗟に盾にした畳に刺さってるカッターの本数は・・・・・・優に50を超えてる。

おかしいな、この教室、50人しかいないよね?

というか、この教室がフローリングやござだったら、吉井君死んでたよね・・・。

 

「そ・・・そんな・・・。嘘・・・ですよね・・・。」

 

「ウソじゃないわ。」

 

「・・・・・・だったら男を全て殲滅します!男なんかがいるから、お姉様はたぶらかされてるんです!男がいなくなれば、お姉様は目を覚ましてくれますっ!」

 

落ち込んだかと思ったら、吉井君の命を奪おうと襲いかかる美春ちゃん。

まあ、お姉ちゃんに手を出す男は《ピチューン》してから人柄を確かめるし、気持ちはわかるけどね。

その動きはかなり速くて、吉井君が捕まりそう。

 

「助けてムッツリーニ!」

 

「・・・今、消しカスで練り消しを作るのに忙しい。」

 

《練り消し作り》>《吉井君の命》

友人をあっさり見捨てつつも、視線は美春ちゃんのスカートから外さないムッツリーニ君。

 

「そろそろストップしとけ。これ以上続けると良くないことになるぞ。」

 

そんなムッツリーニ君の代わりに美春ちゃんを止めたのは正邪ちゃん。

 

「邪魔しないでくださいっ!美春はお姉様のために男を殲滅するという行為をやりとげなければならないのですっ!」

 

「・・・まあいいか。私は忠告したぞ?」

 

あれ、やけにあっさり引き下がった。

どうしたのかな?

 

「5秒あげるので、神への祈りを済ませてください。」

 

「ちょっと正邪!そこまでやってくれたなら、僕を助けてよ!」

 

追い詰められた吉井君に迫る美春ちゃん。

私が止めに入ろうかな。

 

「おいお前ら、授業を始めるぞ、席に・・・やれやれ、また清水か。授業が始まるから自分の教室に戻るように。」

 

そう思ってたら、扉が開き、鉄人先生が入ってくる。

もしかして、正邪ちゃんはこうなるとわかってたのかな?

確かに、時計を見ると休み時間がもう終わろうとしてるし、あり得る話だよね。

 

「見逃してくださいっ!特に重要な要件なんですっ!」

 

「なんだ?まさかまた、『邪魔者のいない教室でお姉様と授業を受けたい』と言い出すつもりではないだろうな?」

 

あー、あったねそういえば。

その時は問答無用でつまみ出されてたけど。

 

「いえ、今回はこのクラスの男子を殲滅するという『今後このクラスへの立ち入りを禁止する。』ああっ、お姉様!」

 

鉄人先生の手でつまみ出される美春ちゃん。

扉をドンドンと叩いて主張するも、鉄人先生の生活指導の脅しによって、それは静かになる。

まあ、しょっちゅう受けてるFクラスのみんなでも恐怖の対象だもんね。

 

「お姉様・・・!卓袱台だから豚野郎にくっつくというのなら、美春にも考えがありますからね・・・!」

 

不穏当な言葉を残し、それ以上は何もせずに去っていく美春ちゃん。

その後は鉄人先生によって、何事もなかったかのように、授業は始まったよ。

・・・まあ、美波ちゃんと吉井君はいつも通りじゃなかったけどね。

何が原因かは見てなかったからわからなかったけど、美波ちゃんの髪に吉井君がさわって、両方赤面してるし。

でも、その度に周囲で増幅してく殺意の波動はどうにかならないのかな・・・?

 

「「「もう我慢ならねえーっ!!!」」」

 

あ、爆発した。

みんながカッターを構えて立ち上がり、吉井君の方を憎しみと怒りが込められた顔で睨んでる。

悪政に耐えかねた市民が革命起こしたみたいになってるね。

 

「もう殺す、絶対殺す、苦しめて殺す。」

 

「徹底的に、魂まで殺す。」

 

「お姉様の髪を豚野郎が触るなんて、万死に値します・・・!」

 

あ、あれ?

いつのまにか美春ちゃんがいる。

 

「全員、畳返し対策として、カッターを投げつけた後、間髪入れずに卓袱台を叩きつけるのです!あの豚野郎に正義の鉄槌を下します!」

 

「「「おうっ!」」」 

 

カッターだと畳返しで防がれるから、カッターで動きを止めるために使い、卓袱台の質量で止めをさすというつもりみたい。

・・・こういうことしてるから、卓袱台が壊れるんじゃないかな。

 

「お前ら!今は授業中だぞ!」

 

吉井君を殺害するために暴れだそうとしたみんなを、鉄人先生の一喝が止める。

並の先生なら止まらなさそうだし、凄いよね。

 

「お前ら、そういうことは休み時間にやれ。それと清水、もう一度言うがこのクラスへの立ち入りを禁ずる。わかったな?」

 

「・・・わかりました。」

 

不承不承って様子だけど、撤退してく美春ちゃん。

去り際に吉井君を一睨みしたけど、それだけ。

とりあえず、この場は鉄人先生のおかげで事なきを得た・・・・・・かな?

 

 




いかがでしたか?
美波ちゃん勇気を出しました。


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第四十三話「八つ当たり!」

 

 

休み時間。

嫉妬に狂ったクラスメイトが投げるカッターとか卓袱台とかが飛び交うなか、坂本君やムッツリーニ君が固まって何かを話してる。

どうしたんだろ?

 

「ねえねえ、深刻そうな顔してどうしたの?」

 

「・・・ああ、古明地か。明久のせいで、少々マズイ事態になっていてな。」

 

「?吉井君がどうかしたの?」

 

「・・・Dクラスに試召戦争をしようという動きがある。」

 

Dクラスっていうと・・・ああ、美春ちゃんかな?

さっき、「卓袱台だから・・・」って言ってたのは、試召戦争で設備を落とすってことかな?

確かに、みかん箱なら二人はくっつけないし、ござなら畳返し出来ないもんね。

私達は負けてるから宣戦布告は出来ないけど、挑まれたら受けざるを得ないし。

 

「わかったようだな。そう、Dクラス・・・というか清水の狙いはFクラスだ。」

 

「でも、美春ちゃんの個人的な怨みだけで戦争は出来ないんじゃないかな?」

 

「そこで今の状況が問題になる。俺達は覗きの主犯だ。Dクラス代表の平賀も協力してる。だから発言権は皆無だ。覗き犯に制裁しようと怒りに燃える女子達を抑えられるとは思えん。」

 

なるほどね。

自らの手で罰を与えたいとDクラスの女子達が考えてるなら、美春ちゃんを中心に戦争をしようという流れになってもおかしくないかも。

 

「それで、勝てそうなの?」

 

「・・・厳しいな。うちのクラスは今朝からのことで補充出来てないし、向こうには20人以上の女子生徒がいる。特定科目に絞った場合なら島田と正邪はBクラス、他はAクラス並の点数を持ってるが、Dクラスの主力の物部とリリーは日本史と生物で、対抗出来ないからな。稗田が来ていればどうにかなったんだが・・・。」

 

確かに、阿求ちゃんがいれば行けたかもしれないよね。

阿求ちゃん日本史と古文4ケタだし。

 

「てな訳で、今回の戦争は回避するのが賢明な訳だ。Dクラス程度の設備では旨みが薄いし、せっかく貸しがあるクラスをわざわざ敵に回すことはない。」

 

だよね。

Dクラスはごく普通の高校の設備って感じだし。

Cクラスは大学の講堂みたいな感じでちょっと豪華だし、交換するならCかAって感じかな。

もちろんBはお姉ちゃんの教室だから交換はあり得ないよ?

 

「・・・あれ、雄二達どうしたの?なんか深刻そうな顔してるけど・・・。」

 

あ、吉井君が来た。

坂本君がいきさつをざっと説明する。

 

「で、だ。この戦争を回避出来るかはお前と島田にかかっている。明久、島田を見なかったか?」

 

「えーっと・・・。確か休み時間が始まってすぐ、姫路さんとなにやら真剣な顔して出ていったけど・・・。」

 

真剣な顔して出ていったって、やっぱり今朝のことだよね。

吉井君に好意を寄せてるのは姫路ちゃんも同じだもん。

 

「・・・その前に、ひとつ確認しておきたいことがある。お前と島田は、つき合ってるのか?」

 

「えっと・・・、僕の記憶だと・・・つき合ってないと・・・おもう。」

 

んん?

吉井君の方ではつき合ってないっていう認識なの?

美波ちゃんの態度は明らかにつき合ってるものなんだけどな・・・?

 

「じゃが、島田のそれは、明らかにつき合っているものじゃぞ?」

 

木下君からみても、やっぱりそうだよね。

さっきは美波ちゃんのキスは告白だと考えてたんだけど、あの態度になるまでに吉井君が返事のようなものをした様子は全くなかったし、あのキスは告白の返事ととらえるというのが自然だと思ったんだけどな。

 

「・・・うん、それは強化合宿中のメールが原因で・・・。」

 

そう言って、吉井君は強化合宿中の悲しい事故について話す。

・・・美波ちゃんの気持ちを知る私としては呆れるしかないかな。

 

「・・・そうか、俺は素晴らしいタイミングでやらかしたんだな。すまん、明久。」

 

でも漫画みたいな出来事だよね。

というか、あの時事情を説明してくれてたら、部屋まで携帯取りに行ってたのに。

 

「・・・でも、そもそもの原因は明久の確認不足。」

 

「うっ、確かに。」

 

「全く、吉井と坂本は腹を切って詫びるべきだぜ。坂本は吉井に、吉井は美波にな。」

 

あ、魔理沙がいつのまにか近くに来てる。

 

「あれ、魔理沙、いつ来たの?」

 

「今なんだぜ。告白が間違いって聞こえたから気になってな。」

 

「・・・まあ、間違いってなら話は早い。」

 

「え?何が?」

 

「Dクラスとの戦争の話だ。島田の誤解を解いて、お前らがいつもの姿に戻れば清水の怒りも収まるだろう。そうすれば中心となる人物が居なくなるから、この話は流れる。」

 

なるほど、確かにね。

美波ちゃんには酷なことしてると思うけど、このまま騙し続けるのはもっと酷だもん。

後から来た魔理沙にDクラスの戦争の準備の動きについて話していると、扉が音を立てて開けられ、姫路ちゃんが駆け込んでくる。

 

「明久君!美波ちゃんに告白したというのは本当なんですかっ!?」

 

普段の雰囲気とは違って、かなり真剣だね。

珍しいな。

 

「それについてだが、話すのは島田も一緒な方がいいだろう。島田の場所はわかるか?」

 

「えっと・・・美波ちゃんはさっきまで一緒に屋上にいましたけど・・・。」

 

「だったら屋上に行くか。姫路には引き返す形になって申し訳ないがな。」

 

「あ、いえ、大丈夫です・・・。」

 

みんなで屋上に向かう。

屋上の扉を開けると、確かにそこに美波ちゃんはいた。

 

「瑞希・・・とアンタ達も?みんな揃ってどうしたのよ?」

 

「あの、さ・・・。実は話しておかなければいけないことがあるんだ・・・。・・・神よ、ご加護を・・・。」

 

吉井君の言葉次第では、彼が半殺しにされる可能性もあるからね。

吉井君が十字を切ったのもわからなくはないかな。

 

「いきなり十字を切ったりして、どうしたのよ。それで、話したいことって何?」

 

「あのさ、強化合宿の時に送ったメールのことなんだけど・・・。」

 

「め、メールって、あのメールのこと?」

 

美波ちゃんが顔を赤くしてる。

 

「うん。実は、あのメールなんだけど・・・間違いなんだ。」

 

「・・・・・・え?」

 

赤い顔のまま固まる美波ちゃん。

まあ、いきなりそんなこと言われたら固まるのもおかしくないと思う。

 

「いや、誤解っていうか、送り先を間違えたっていった方が正しいかな。」

 

・・・それだけ聞くと、かなり最低なことをしてるよね。

 

「えっと・・・誰に送るつもりだったの・・・?」

 

「須川君・・・かな。」

 

「「「えええええっ!?」」」

 

美波ちゃんだけではなく、姫路ちゃん、魔理沙、あと私も驚いてるよ。

告白ととれるようなメールを送ろうとした須川君とは何があったんだろう?

 

「じ、じゃあアキは須川に告白したつもりだったの・・・・・・?」

 

「明久君はなんだかんだ言って女の子が好きだと思っていましたが、やっぱり男の子が好きだったんですね・・・。しかも坂本君でも木下君でも久保君でもなくて須川君とは・・・。」

 

姫路ちゃんの悩みはわからなくはないけど、そうだったら女子風呂を己の欲望のために覗きたいとかは言わないと思うけどね。

 

「いや、そうじゃなくてね。『お前は何故そんなに女子風呂の覗きに拘るのか?坂本や木下が好きなんじゃないのか?』みたいなメールが来たから、それの返事を送ったつもりが、間違えて美波に・・・ってことなんだ。」

 

「え、でも告白にしか・・・でも、改めて見ると少し文章がおかしいような・・・。」

 

「私にも見せて貰っていい?」

 

「あ、うん、いいわよ。はい。」

 

美波ちゃんの携帯を見せてもらう。

えーと、なになに・・・?

 

『もちろん好きだからに決まってるじゃないか!雄二なんかよりずっと!』

 

・・・・・・。

確かに帰国子女の美波ちゃんが、違和感に気づかず告白と勘違いしてもおかしくはないような文章かも。

でも、私だったらなんで坂本君が比較対象なの?って思うかな。

あ、よく見たら鍵マークついてる。

 

「明久よ、なんて送ったか覚えているかの?」

 

「うーん、あんまり覚えてないかな・・・。」

 

「アキからのメールには『もちろん好きだからに決まってるじゃないか!雄二なんかよりずっと!』って書いてあるわ。」

 

「ふむ、おかしいとは思わなかったのかの?」

 

「その時は別に・・・。アキは坂本のことが好きなんだって思ってたし・・・。」

 

「あの、美波?僕は女の子が好きなんだからね?」

 

「いいなぁ美波ちゃん・・・。私も坂本君より好きだなんて言われてみたいです・・・。」

 

「姫路さんもおかしいからね!それだと僕が雄二が好きなのが確定みたいじないか!」

 

「あ、明久・・・。俺はどんな返事をしたらいいんだ・・・?」

 

「普通に嫌がれ!」

 

吉井君の突っ込みにガハハと笑って答える坂本君。

坂本君に関しては100%遊んでるのがわかるね。

 

「・・・まあ、そういうわけで間違いだったんだよ。」

 

「そっか。誤解だったのね。ウチもちょっとおかしいなと思ってたけど、やっと納得がいったわ。」

 

「もう、美波はそそっかしいな。」

 

「あら、宛先を間違えるアキには言われたくないわね。」

 

二人はあっはっはと笑いあってる。

まあ、それで済むわけないけどね。

 

「どうしてくれるのよーっ!ウチのファーストキス!!」

 

「ごっ、ごごごごめんなさい!」

 

吉井君に詰め寄る美波ちゃん。

まあ、好きな人とはいっても勘違いでっていうのは悲しいよね。

美波ちゃんが怒るのも当然だと思う。

 

「ごめんで済む問題じゃないでしょ!」

 

「そ、その、美波。えっと・・・僕も初めてだったから、おあいこってことじゃ、ダメかな・・・?」

 

「「「ダメに決まってんだろ(だぜ、でしょ)。」」」

 

私達の総ツッコミ。

多分言った本人もそう思ってると思うけどね。

 

「え・・・?そ、そうなんだ・・・?それは、その・・・ご・・・ご馳走さま?」

 

「ぅおぃっ!いいのか島田!?」

 

・・・通った。

まあ美波ちゃんにとっては好きな人のファーストキスを貰ったわけだし、いいの・・・かな?

 

「あのさ美波。怒らないで答えて欲しいんだけど・・・。僕と美波がつき合ってるって話なんだけど、あれってもしかして、美波が僕のことを・・・その、す、好き、とか・・・?」

 

おっ?

あの鈍感すぎる吉井君が気づいた?

 

「あ・・・!そ、それは・・・っ!」

 

慌てたように手をバタバタ振る美波ちゃん。

まあ図星だもん、動揺するよね。

 

「あ、あれはね、ほらっ。美春があまりにもしつこいから、彼氏でもいたら諦めてくれるかと思って、それでちょうどアキが告白してきたもんだから・・・!」

 

せわしなく手や目を動かしながら言う美波ちゃん。

苦しいと思うな。

 

「ああ、なるほど。そういうことね。」

 

・・・でもそれで納得しちゃう鈍感野郎が吉井君だったの、私は忘れてた。

吉井君以外の全員にバレバレなのに、吉井君だけ気づいてないし。

 

「・・・美波、素直になった方がいいと思うぜ。」

 

「・・・うるさいわね。ウチがこんなバカのこと、好きになるわけがないじゃない。」

 

「・・・まあいいけどな。私も人のこと言えないかもしれないしな。」

 

魔理沙の言葉にも意地を張る美波ちゃん。

告白が間違いだったって言われて言いづらいのはわかるけど、今は気持ちを伝えるチャンスだと思うんだけどな。

言わなきゃ多分吉井君一生気づかないよ?

 

「しかし、それならそうと先に言ってよ。美波が僕のことを好きだって勘違いしちゃったじゃないか。」

 

「あ、う・・・うん。」

 

「美波が僕のことを好きになるわけがないし、それにこんなに美波がしおらしい訳がないものね。」

 

「・・・そうね。ウチがしおらしいわけ、ないものね・・・!」

 

「ちょっ、美波痛い痛い!骨が折れるっ!」

 

むー、なんか見てたら腹がたってきたよ。

えいえい。

 

「ちょっ、なんで古明地さんまで僕のすねを蹴ってくるの!?」

 

「別にー?特に理由はないよー?」

 

「ふっ、二人ともやめて!折れるっ!折れちゃうっ!ギブッ!ギブッ!」

 

吉井君が苦しそうだし、このへんにしとこっかな。

まあ、ダメージの大半は美波ちゃんの間接技だけどね。

とにかく、あとはこれを美春ちゃんに伝えればDクラスとの戦争の問題は解決かな。

吉井君だと美春ちゃんは襲いかかりそうだし、美波ちゃんが伝えるのがいいと思う。

それで吉井君と美波ちゃんの態度がいつも通りに戻れば異端審問会のみんなも矛を収め・・・るかはわかんないけど、一件落着って言っていいかも。

 

 

 

 

 

 

 

・・・そう思ってたんだけどね。

昼休み、私はお姉ちゃんに呼び出された。

普段こんなことないのに、どうしたんだろ?

 

「・・・来たわね。ごめんねこいし、いきなり呼び出して。」

 

「ううん、お姉ちゃんからの呼び出しなら大歓迎だよ!でもどうしたの?」

 

「いくつか聞きたいことがあるのよ。まず、Fクラスの今の点数はどうなってるか、わかる?あと、稗田さんがやすみというのは本当?」

 

「うん、男子はほとんど全員ゼロだよ!阿求ちゃんが休みなのも本当!」

 

朝からあんな騒ぎがあったしね。

補充テストはいきなりやりますと言って、はいそうですかと始められるもんじゃないし、事前の申請が必要なんだよ。

 

「・・・そう。そんなことがあったのね。どちらにしても、それだとかなり良くないことになるわ。」

 

「良くないこと?」

 

点数がないと良くないことになるって、戦争くらいだけど・・・。

でもDクラスの誤解は解消したし・・・。

 

「私はBクラスの生徒としてではなく、あなたの姉としてこのことを伝えるわ。Bクラスは今、Fクラスに戦争を仕掛けようとしてるわよ。」

 

えっ?

BクラスがFクラスに?

まあ確かに勝てる試合だとは思うけど、メリットがほとんどないような・・・。

 

「・・・まあ、そう思うわよね。根本の狙いは、復讐と明確な外敵の提示よ。」

 

復讐・・・。

まあ、確かに根本には女装写真撮らせて写真集にしたり、異端審問会に行かせたり、女装写真集を彼女の手に渡らせて破局させた(これは実際にやったのはお姉ちゃんだけど)りと、色々あったもんね。

当然の報いだけど、逆恨みされててもおかしくないと思う。

でも、明確な外敵の提示って?

 

「こいしは為政者が大衆の不満の声を抑えるのに効果的な方法って何だと思う?」

 

「うーん、不満の声が出せなくなるまで徹底的に痛めつけて抑圧する?」

 

「・・・それもなくはないけど、よっぽどの権力がないと難しいわ。正解は、共通の外敵を作る、よ。アドルフ・ヒトラーはわかるでしょ?彼も、ユダヤ人というドイツ人にとって共通の外敵を示すことで国をまとめてるわ。」

 

なるほど、今回はその相手がFクラスってことなのね。

 

「根本は元々の人望の無さにくわえて、覗きに協力したせいで、今彼の発言力はほとんどないのよ。それ以前に、卑怯な手を使いつつもFクラスに敗北してるのもあるわ。少し失礼な言い方になるけど、覗き犯の中心かつ今戦えばまず勝てる弱い相手であるFクラスは、支持回復には適切ということね。」

 

「それはわかったけど、どうして私にそれを教えてくれたの?」

 

「私はこの戦争に反対しているから、よ。」

 

確かに、こういうのはお姉ちゃん好きじゃないもんね。

覗き犯への制裁なりなんなりと理由をつけたとしても結局、根本がやってることは己の益のためだし。

それに、今のFクラスは相当弱ってる。

Fクラスの私が言うのもなんだけど、弱いものいじめだもんね。

 

「現在、Bクラスは着々と補充試験を進めてるわ。それで、根本はFクラスがBクラスの動向に気づいた様子を見せる、または全ての補充試験が完了した時に、Fクラスに宣戦布告をしようと画策してるの。」

 

「つまり、こちらは下手に動かない方がいいってこと?」

 

「まあ、そうなるわね。とはいっても、稗田さんがいれば状況は変わってくるわ。根本も稗田さんが明日来る可能性がある以上、よほど露骨な動きをしなければ様子を見てくるはずよ。」

 

確かに、阿求ちゃんの点数はほぼ誰にも止められないもんね。

 

「でもそれなら今日仕掛けてきてもおかしくないんじゃないの?」

 

「今日はメンテナンスのせいで、戦争は出来ないのよ。」

 

そういえば、鉄人先生がそんなこと言ってたかも。

 

「Bクラスの非開戦派は私を含めても7人しかいないけど、開戦派だってこの戦いで得られるものはひとつもないわ。それに、以前負けたトラウマだってある。もしFクラスが万全な状態ならば、根本も宣戦布告を行わないはずよ。」

 

まあ、2回も同じような奇襲は通用しないとは思うけどね。

多分次奇襲するなら教室の壁を破壊するくらいやらないとダメだと思うな。

・・・やったら多分停学になるけど。

 

「戦争が始まれば、Bクラスが卓袱台になるか、Fクラスがみかん箱になるかしかないわ。厳しいとは思うけど、どうにか戦争を回避する手段を考えなさい。・・・まあ、あの代表ならばこちらの動向くらいは察知していると思うけど。」

 

確かに、ムッツリーニ君は盗聴器を学校に仕掛けてるもんね。

 

「うん、ありがとうお姉ちゃん!」

 

「いいのよ。ただ、私はもうそろそろ戻らないといけないわ。健闘を祈るわよ。」

 

お姉ちゃんが去ってく。

ありがとう、お姉ちゃん。

さて、私もお姉ちゃんの親切を無駄にしないように教室に戻って考えないとね。

 

 




いかがでしたか?
こいしちゃんに忠告するさとり様マジ天使。
現在Bクラス代表は実質さとり様みたいなものなのですが、女子は開戦派ですからね。
男子?発言権ありませんが?


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四十四話「演技!」

 

 

 

お姉ちゃんと別れた後、私は坂本君を探す。

えーっと・・・あ、いた。

ムッツリーニ君といる。

 

「ねえねえ坂本君。」

 

「うぉっ!?古明地か、いきなりだったから驚いちまった。ちょうどいい。実は今、今朝よりもさらに良くない状況になっている。」

 

「もしかして、Bクラスに宣戦布告をされそうなの?」

 

「・・・そうだが、何故知ってるんだ?」

 

「お姉ちゃんに聞いたんだよ。」

 

私はさっきお姉ちゃんが教えてくれた情報を伝える。

お姉ちゃんが非開戦派なこともきちんとね。

じゃないと情報の信憑性なくなっちゃうし。

 

「・・・なるほど、そういうことだったか。お前の姉が言う通り、戦ったら100%負ける。だから戦いは回避しなければいけないんだが・・・そのためにDクラスを使おうと思う。」

 

「Dクラス?なんらかの方法でDクラスがBクラスに宣戦布告をするようしむけて時間を稼ぐの?」

 

「いや、違う。試召戦争は1対1しか認められてない、つまりDクラスとの戦争中はBクラスは宣戦布告が出来ない。そして、終戦後には補充試験の時間が与えられる。こうしないとどんなクラスでもすぐ負けるからな。」

 

なるほどね。

確かに、Dクラスと戦う方がBクラスと戦うよりいいかも。

勝っても負けても私にとってマイナスだし・・・。

・・・ん?

 

「坂本君、その案なんだけど、Eクラスじゃダメなの?」

 

「まあもちろんそれができるならそっちの方がいいが、Eクラスには戦争の中心となる人物は今はいない。Dクラスの方が圧倒的に簡単だ。なにせ明久と島田の件があるからな。」

 

「でもそれ誤解だってさっき吉井君言ってたよね?」

 

「この際事実関係はどうでもいい。とにかく明久と島田に、清水がキレるくらいにベタベタさせ、宣戦布告をするよう仕向けるのが俺達が生き残る道だ。」

 

「・・・実はさっき、明久に頼まれて屋上の盗聴器は接触不良を装い、一時的に機能しないようにしていた。」

 

なるほど、それならまだ伝わってないってことなのね。

 

「まあ、Dクラスと戦うにしても勝算はない。ただ負けない勝負が出来るというだけだ。強いて言うなら、負けない勝負を続けて稗田が登校出来るようになるまで戦いを引き伸ばすのが勝ち筋といったところだな。」

 

それは確かにめんどくさいよね。

こういう体調を崩した時、阿求ちゃんが登校出来るまでには平均で3日くらいかかるから、明日始めるとだいたい2日間ずっと戦争になるし。

 

「さて、まずは恐らく水飲み場で昼食をとっているだろう明久に事情を説明する。その後は島田と姫路がここに戻って来次第作戦を始めるぞ。姫路や島田が戻って来た時のために俺は教室に残りつつDクラス戦の準備を行う。ムッツリーニは情報操作を、古明地には明久への説明を頼む。」

 

「うん、わかったよ~。」

 

「・・・了解。あと、説明の簡略化にこれを持っていけ。二番目のデータに今の会話の録音がある。」

 

そう言いつつムッツリーニ君が渡してきたのは小型録音機だね。

それに今の会話のデータがあるみたいだから、それを聞かせればいいってことかな?

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん?古明地さん、僕に何か用なの?」

 

「まあ、今大変なことが起こってるから、ちょっと吉井君の力が必要なんだよね。とりあえず、これを聞けばわかると思うよ。」

 

不思議そうにする吉井君の前で、小型録音機を取り出して、再生する。

 

『・・・土屋君、明久君のセーラー服写真を売っているって本当ですか?』

 

『・・・1枚100円。二次配布は禁止。』

 

『二次配布は禁止ですか・・・。でも、私個人で楽しむだけでも充分に』

 

「(ブツッ)あ、ごめん、ファイルこれじゃないみたい。」

 

「ちょっと待って古明地さん!僕の女装写真をムッツリーニは売ってるの!?そっちの方がよっぽど僕にとって大変なことなんだけど!?」

 

そういえば二番目のファイルだった。

というか、音質が悪くて声からはわかんないけど、これ姫路ちゃんだよね・・・。

 

「まあそれはあとでムッツリーニ君に聞いてね。それで、今度こそ正しいよ。」

 

もう間違えないでファイルを再生する。

Bクラスが戦争の準備をしていること、それを凌ぐために美波ちゃんと吉井君がつきあってるふりをしてもらうこと、お姉ちゃんが非開戦派なことを伝えたら、吉井君も困った様子だけど、一応はやってくれるみたいだね。

吉井君を連れて教室に戻る。

美波ちゃんと姫路ちゃんはもう帰ってきてたみたいで、坂本君が早速要件を伝えてるね。

 

「それで、ウチにどうしろって?」

 

「明久と付き合ってる演技を頼みたい。それもベタベタで、見ている者が怒りで血管が切れそうになるくらいのな。」

 

「絶対イヤ。ウチがそこのバカと付き合ってるフリなんて。」

 

まあ、当然断るよね。

今朝あんなことがあったのに付き合ってるフリをしろなんて、人によっては坂本君を殴ってもおかしくないんじゃないかな。

 

「そこをなんとか頼みたいのじゃ。島田だけでなく姫路も。」

 

「え、私もですか?」

 

「うむ、明久と島田だけでは現実味に欠けるからの、おぬしには2人の仲を妬む役をやってもらいたい。」

 

あれ、木下君いつの間に?

さっきはいなかったけど、既に話してあったのかな?

 

「どう言われようともイヤよ。」

 

「島田よ、よく考えるのじゃ。確かに色々思うところはあるとは思うが、これはおぬしにしかできん役割じゃ。静観し、良くない結果になった時、おぬしは自分を責めずにいられるかの?例えば・・・姫路の転校とかの。」

 

「うっ・・・。」

 

そういえば、学祭の時に転校は免れたから忘れてたけど、設備が悪くなれば姫路ちゃんの転校の可能性もあるんだった。

ならなおさら守らないとね。

 

「あのさ、だったら彼氏役が僕じゃなかったらいいんじゃないかな?ほら、例えば雄二とかさ。」

 

「ほほう、お前は俺に死ねと言うのか。」

 

代案を提示する吉井君だけど、坂本君がもしやったら、多分「・・・浮気はダメ。」って言われてスタンガンとアイアンクローで制裁を受けるんじゃないかな・・・。

作戦立てる人いなくなっちゃったら、Dクラスを挑発出来ても、結局負けちゃうよ。

 

「でも吉井君、今朝あんなことがあったのに、他の人と付き合ってるなんて無理があるよ?」

 

「そっか、確かに・・・。」

 

少なくとも私なら嘘って思うよ。

キス、しかも唇と唇なんて好きな人にしかしないと思うし。

 

「あのっ、やっぱり私転校なんてしたくないですっ!すごく個人的な理由ですけど、お願いしますっ!」

 

「う・・・。わ、わかったわよ!とりあえず形だけでもやればいいんでしょ!でも演技の内容次第じゃ、どうするか知らないからね!」

 

美波ちゃんが結局折れたように見えるね。

役得かもしれないけど・・・。

 

「うむ、そうと決まれば早速開始じゃな。三人とも、この台本を受けとるのじゃ。」

 

「お前らはそいつを持って屋上で演技開始だ。ムッツリーニ、清水の盗聴器はどうなってる?」

 

「・・・さっき明久に頼まれた時は接触不良を装っただけだから、今はまた動くようにしてある。」

 

「そうか。だとしたら演技以外の会話は一切しないようにするんだ。演技がバレたら元も子もないからな。」

 

「・・・カメラには死角がある。台本を読みながらの演技でいい。」

 

確かに、演技だってバレたら意味ないもんね。

でも、木下君はどんなことを台本に書いたんだろ?

気になるけど、まあ実際に3人がやるのを見ればわかるよね。

ちなみに、キスシーンみたいなのは入ってみないみたい。

盗聴対策にみんな無言で屋上へと続く廊下を歩く。

たてつけが悪いドアを開き、屋上に出る。

どうやら誰もいないようだね。

カメラの死角に移動して台本を開く2人。

 

「「・・・・・・」」

 

あれ、なんか固まってる。

なにが書いてあるのかわかんないけど、なんか大変なことが書いてあったのかな。

まあ、余計な言葉が入らないよう、私達はFクラスに戻る。

ムッツリーニ君が持ってる受信機で音声はその場にいなくても聞けるからね。

 

「・・・ねぇ、アキ。」

 

あ、始まった。

 

「ん?なに、美波?」

 

「今さらなんだけど・・・あ、アキにきちんとウチの気持ちを伝えておこうと思うの。」

 

ちょっと詰まりながらだけど、美波ちゃんはセリフを続ける。

抵抗はあるみたいだけど、このくらいなら問題は多分ないと思う。

・・・ないよね?

 

「え?そんなの、今更言われなくても・・・。」

 

「それでも聞いて欲しいの。・・・・・・こういうことは、ハッキリさせておきたいから。」

 

あれ、少し不自然な間がある気がする。

 

「う、うん。わかった。それなら聞かせてほしい。美波の、本当の気持ち。」

 

お、多分ここから告白始まるかな。

 

「わ、わざわざ・・・・・・わざわざこんなところに呼び出してごめんね、アキ・・・。あのね、ウチは、アキのことが・・・・・・。」

 

しおらしく言葉を紡ぐ美波ちゃん。

一瞬言葉を区切り、その後のセリフを告げるために大きく息を吸う。

さて、どんな風に告白を・・・

 

「・・・アキのことが、嫌いなのっ!!」

 

んん?

何を言ってるのかな、美波ちゃんは。

 

「み、美波・・・?」

 

「始めて会った時から、ずっとアキのことが嫌い!あれから友達として側にいるのがずっと辛かった!本当は友達でいるなんて、我慢できなかったのに!」 

 

これは酷い。

わざわざ屋上まで呼び出して嫌いって言われるなんて。

こんなの漫画や小説とかでも見たことないよ?

 

「美波・・・。」

 

「アキ・・・。」

 

美波ちゃんと吉井君が見つめあってるような気配がする。

さっきのセリフを受けて、吉井君はどうフォローするのかな?

 

「・・・僕も、ずっと、同じ気持ちだった。」

 

・・・多分吉井君、台本のセリフをそのまま言ってると思う。

見てないから断定は出来ないけどね。

・・・あ、美波ちゃんが吉井君を殴った音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくお主らは、なんという失態を・・・。」

 

「美波ちゃんはセリフをちゃんと言わないと。吉井君は考えよ?」

 

「だ、だって仕方ないじゃない!あんな台詞言えるわけないもの!しかも録音されてるかもしれないのよ!?」

 

「そうだよ!美波があんな可愛い台詞言えるわけがあれ?右手の感覚がなくなってきたような?」

 

「美波ちゃんストップストップ!吉井君の手酷いことになってる!」

 

まあ、美波ちゃんの気持ちはわからなくはないけどね。

でもあれはね・・・。

あと、吉井君はいい加減学習した方がいいと思うな。

 

「それなら、木下君かこいしちゃんがお手本を見せるのはどうですか?」

 

「うーん、私でもいいけど、こういうのはやっぱ演劇が上手な木下君がいいと思うな。」

 

木下君は演劇に関しては校内でも多分トップクラスだと思うしね。

 

「んむ?別に構わぬが。」

 

そう言うと木下君は吉井君の手を取る。

さて、どんな感じになるのかな?

 

「わざわざわざわざこんなところに呼び出してごめんね、アキ・・・。あのね、ウチは・・・、アキのことが好きなのっ!始めて会った時から、ずっとアキのことが好き!あれから友達として側にいるのがずっと辛かった!本当は友達でいるなんて、我慢できなかったのに!アキ・・・。あんなことしちゃった後で今更だけど、改めて・・・貴方のことが好きです。ウチと、付き合ってください。」

 

わぁ・・・!

私に言われたわけじゃないのに、なんだかドキドキする・・・!

 

「・・・とまあ、こんな具合じゃ。」

 

スッと手を離す木下君。

吉井君が幸せな夢が覚めた時のような表情してるけどしょうがないよね。

・・・あ、キラキラ光るものが目に。

 

「ともかく、このままでは清水が嫉妬するどころか全く逆の結果になりかねん。次は姫路も参加してもらうが、しっかり頼むぞい。」

 

「はい、頑張ります!」

 

「それはいいけど、もう次の授業が始まっちゃうんじゃないの?」

 

「その点は大丈夫じゃ。今は補充試験なりメンテナンスなりで教員の手が足りんため、今の時間は自習になっとるからの。」

 

あ、ほんとだ。

時計を見たら、もう授業が始まってる時間だ。

 

「次の設定は、授業を抜け出し逢い引きをしておる2人を姫路が注意するというものじゃ。まずは島田と明久は腕を組むのじゃ。」

 

「「・・・・・・」」

 

顔を見合わせる2人。

ハードル高いなって思ったのかな?

 

「あ、あのっ、木下君。腕まで組む必要はないのでは・・・。」

 

まあ確かに、演技とはいっても好きな人が別の子と腕組みなんて、あまりいい気分にはならないよね。

 

「お主の気持ちもわからなくはないが、視覚的な影響は大きいからの。たまたま見かけただけの人がそれを見て、2人が付き合っていると認識すれば、それが清水に伝わるかもしれん。」

 

「わ、わかったわよ。でもアキは変なところ触ったらコロスからね・・・!」

 

「う、うん・・・。」

 

結局2人は折れて、若干ギスギスした感じになりながらも腕を組む。

普段ならこんな姿を見たらちゃぶ台やカッターが飛び交うこの教室も、坂本君があらかじめ事情を説明してたから静かなまま。

まあ確かにリアリティは出たかもしれないけど、作戦がめちゃくちゃになりそうだったもん。

 

「もう、そんなに腕をぎゅっとしてたら歩きにくいじゃないか。」

 

「あはは、いいでしょアキ。ウチらはつきあってるんだから。」

 

気恥ずかしさとか色々あるとは思うけど、二人とも顔に笑みを貼り付けて演技を続けてる。

・・・美波ちゃんの力が少し強すぎるせいで、ギシギシと音が聞こえてきたのは気のせいだよね!

ちなみに、私はさりげなく後をつけて、カメラの死角から指示を出すよう言われてるよ。

 

「でも美波、そのせいでさっきから肘に当たってるんだけど。」

 

「え!?こ、この、スケベっ!」

 

「アバラ骨が。」

 

「うふふふ。アキってば、冗談が好きなんだから。本当に可愛いわね。」

 

「まったく、美波は甘えん坊だなぁ。」

 

2人とも演技を続けてる。

でも多分、美波ちゃん間接技仕掛けてるよね・・・。

 

「ねぇ美波。美波は僕のどこが好きかな?」

 

「そんなの、決まってるじゃない。頭の天辺から眉毛まで、全部好き!」

 

おでこだけ?

そこは爪先だよね?

ちなみに、私はお姉ちゃんのどこが好きかっていうと、お姉ちゃんが存在している宇宙から、お姉ちゃんが誕生する遠いきっかけのビックバンまで、全部好き!

 

「そういうアキはどうなの?」

 

「そりゃあ、もちろん美波と一緒だよ。」

 

「もうっ。アキったら。ホントに可愛いんだから・・・っ!」

 

多分今また間接技かけたよね美波ちゃん。

それでも屋上に行くまで技を決められたまま表情を笑顔のままにしてる吉井君は凄いと思うな。

 

「さあ、屋上に着いたしあっちに行こうか。」

 

「ううん。向こうにしましょ?」

 

「いやいや、あっちの方が日当たりが良くて良さそうだよ?」

 

「日差しを浴びすぎるとお肌に良くないのよ。あっちの日陰にしましょ?」

 

場所を言い合う2人。

吉井君が指してるのはカメラの死角だから、腕組みを続行したい美波ちゃんと腕を解放してほしい吉井君の戦いって言っていいかも。

まあ結局、美波ちゃんの日陰になったけどね。

二人が座ったところで、木下君が合図を送る。

 

「ふっ、2人とも!こんなところで何をやってるんですかっ!今は授業中ですよっ!」

 

ここで姫路ちゃんの乱入。

実際に恋心を抱いてるからか、リアル感あるなぁ。

 

「しかも、そんなに近いなんて!まるで付き合っているみたいじゃないですかっ!」

 

「・・・ええ。ウチとアキはつきあってるわ。ごめんね瑞季。今までこの気持ちを黙ってて。」

 

「そんな、やっぱり美波ちゃんは、明久君のことを・・・。」

 

多分これ、演技じゃないと思うよ。

吉井君は二人の様子に言葉が続かない様子だったけど、なんか言わなきゃと思ったのか、大きく息を吸い込んで言葉を発する。

 

「やめて2人とも!僕のために争わないで!」

 

・・・そのチョイスはどうかと思うよ。

美波ちゃんも吉井君を一瞥もしないで間接外して、何事もなかっように続けてるし。

 

「・・・やっぱりそうでしたか。美波ちゃんも、明久君のことが・・・。」

 

「謝って済むことだとは思わないけど・・・、ごめんなさい。ウチのこと、許せないでしょうね・・・。」

 

「え?許してくれるの、瑞季?」

 

「許すとか許さないとかじゃなくて・・・。その、人を好きになるのは自由だと思いますから。美波ちゃんのことを責めるなんて、私には出来ません。でも、今朝のキスは反則ですっ!あれは許しませんっ!」

 

「あ、あれはあんなメールとか色々あったから、つい!」

 

「つい、じゃないですっ!あんなズルは、神様が許しても私が」

 

ドンッ!

話が脱線してたから、坂本君か誰かが壁を叩いたみたい。

私も話戻してサインは出してたけど、見てなかったみたいだし、正しい判断だったかな。

・・・それはそうと、吉井君が自分の右腕を見ながら、ものすごい焦りと恐怖の表情を浮かべてるのがものすごく気になる。

○ギーでも寄生してるのかな?

 

「あ・・・。と、とにかく美波ちゃんのバカァっ!」

 

そう言って走り去る姫路ちゃん。

今までが素だったし、ここだけ演技っぽく聞こえるけど、しょうがないと思う。

 

「ちょ、ちょっとアキ!?何瑞季の後を追おうとしてるのよ!?」

 

・・・ん?

ちょっ、吉井君、ストップストップ!

美波ちゃんの手を振りほどき、切羽詰まった状況で走りだそうとしてるけど、そんなことしたら台無しだよ!

 

「ま、まさかアキは本当にこういう場面になったらウチじゃなくて瑞季を選ぶって言うの・・・?ね、ねえアキ・・・ウチと一緒にいてくれないの・・・?ウチはアキのことが・・・す、好き、なのに・・・。」

 

「ごめん美波!行かなくちゃいけないところがあるんだ!」

 

あちゃー、吉井君は手を振りほどいちゃった。

そのまま真剣な表情で姫路ちゃんの後を追うように走ってく。

吉井君は美波ちゃんじゃなくて、姫路ちゃんを選ぶつもりな・・・・・・ん?

私の横を通っていった吉井君の右腕、なんか直視できないような色してたような気がするんだけど、見間違いかな?

ちょうど美波ちゃんがつかんでたあたりだけど・・・。

 

「・・・そう、そうなのね。アキは瑞季を選ぶのね。・・・もう演技なんてどうでもいいわ。アキは瑞季みたいな女の子が好きなんでしょ。」

 

美波ちゃんがそう呟いたけど、吉井君には聞こえてなさそう。

木下君が美波ちゃんに迂闊なセリフを言わないよう言ってるけど、効果はナシ。

美波ちゃんの方も気になるけど、正直今は吉井君が気になる。

でも、Fクラスに戻ったけどいないね。

 

「・・・古明地。俺のデジタルカメラがひとつ見当たらないのだが、見なかったか?」

 

吉井君を待っていると、ムッツリーニ君が私に聞いてくる。

 

「デジタルカメラ?見てないよ?」

 

「・・・ならいい。見たら教えて欲しい。」

 

「うん、わかったよ。」

 

ムッツリーニ君はカメラがひとつ、見当たらないらしいけど・・・。

まあ見たらでいいよね。

とりあえず吉井君が帰ってくるのを待つかな。

ところで、さっきから魔理沙を見かけないような気がするんだけど、気のせいかな?




いかがでしたか?
明久の腕はヤバイことになってます。
色はまるでベトベターです。


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四十五話「摩擦!」

 

 

「雄二、演技はどうなったの?」

 

「大失敗もいいところだバカ野郎。」

 

姫路ちゃんと一緒に帰ってきた吉井君が坂本君に聞くけど・・・、当然大失敗。

あれを見て、美波ちゃんと吉井君が恋人だと思う人はいないんじゃないかな。

私だったら、美波ちゃんは吉井君に好意があるけど、吉井君は姫路ちゃんに好意を持っているっていう三角関係だと思う。

 

「このバカが最後に逃げ出してくれたおかげで、今までやってきたこと全てが台無しだ。唯一の救いは島田が明久に好意があると示したことだが、それだけでは開戦には踏み切らないだろう。」

 

「うむ。しかももう一度やろうにも、明久は姫路と一緒に帰ってくるし、島田があの調子じゃからの。」

 

吉井君と姫路ちゃんが戻ってくる前に美波ちゃんが戻ってきたけど、自分の席に着くなり、窓の方を向き、完全に怒ってる態勢になってる。

今もちらりとこっちを見たけど、すぐにそっぽ向いたし。

 

「とりあえず、明久は島田に詫びの一つでも入れた方がいいな。」

 

「うん、そうするよ。」

 

吉井君が美波ちゃんの卓袱台の方に向かう。

でも美波ちゃんは一瞬見たけど、顔を合わせようとしない。

 

「・・・あのさ美波。」

 

「もうアンタなんか知らない。瑞季とよろしくやってればいいじゃない。」 

 

「い、いや、姫路さんとはたまたま会っただけで・・・『言い訳なんか聞きたくない。』あぅ・・・。」

 

取りつく島もない美波ちゃん。

 

「で、でもこのままだと姫路さんが・・・。」

 

「アンタはいつも瑞季ばっかりお姫様扱いして!魔理沙にも正邪にもお空にも阿求にもこいしちゃんにも普通に優しい態度とってるくせに、ウチは何なの!?男とでも思ってるの!?どうしていつもウチにはそんな態度なのよ!?」

 

「い、いや、そんなつもりは・・・。」

 

「瑞季が転校させられそうになったら、ウチが直接家に行って直談判するわ!だからもう話しかけて来ないで。アンタの顔なんて見たくもない。」

 

姫路ちゃんの転校を引き合いに出したのが逆鱗に触れたのか、今までにない剣幕でまくしたてるように感情を叩きつける美波ちゃん。

言い捨ててそっぽを向いた美波ちゃんは多分、今はもうどんなに話しかけても吉井君の方を向かないよね。

でも吉井君、やっちゃったね・・・。

 

「完全に怒らせちゃったよ・・・。」

 

「そのようじゃな。」

 

木下君にも会話は聞こえてたみたい。

まあ、かなり大声だったし、教室中に聞こえてたもんね・・・。

 

「やれやれ・・・。明久、ほとぼりが冷めたら、後できっちりフォローしておけよ?」

 

「うん、そうするよ。」

 

「それならその話は置いといて、だ。まずはDクラスに作戦を仕掛ける前に時間を稼ぐ必要があるな。ムッツリーニ、悪いが須川達と協力してBクラスに偽情報を流してくれ。」

 

「・・・内容は?」

 

「Dクラスが戦争の準備をしているというもので頼む。その相手はBクラスだともな。」

 

「・・・了解。」

 

なるほど、確かにそれなら、私達に宣戦布告したらBクラスは確実に連戦になっちゃうもんね。

少しは躊躇うかも。

 

「それと秀吉。秀吉にはDクラスの清水を交渉のテーブルに引っ張り出して欲しいんだが、頼めるか?」

 

「うむ。じゃが・・・交渉といっても、どうするつもりじゃ?」

 

「決まってる。清水を挑発して敵意を煽るだけだ。その際、島田も同席しているのが理想だが・・・そっちの交渉は俺に任せろ。」

 

確かに、今の吉井君や姫路ちゃんが近づいたら機嫌は悪くなる一方だよね。

さっき私の名前もあがってたから、私だってあまり向いてないし。

 

「古明地は・・・とりあえず、霧雨の捜索を頼む。霧雨に清涼祭の時の胡麻団子(毒)のようなゼリーを作って欲しいからな。」

 

「うん、わかったよ。」

 

でも毒って・・・。

 

「明久はとりあえず俺と一緒に来い。Bクラスへのアピールをするからな。」

 

「アピール?」

 

「新校舎の3階を、いかにも暇そうにうろつくんだ。うまくいけばBクラスには気づいてないと思わせ、Dクラスには開戦に踏み切らせることができるかもしれない。」

 

「わ、わかったよ。」

 

「なら私も、魔理沙を探すのは何気なくした方がいいの?」

 

「出来ればそうしてくれ。呑気に散歩しているように見せられればなお良い。」

 

「うん、じゃあ行ってくるね~。」

 

呑気に散歩か~。

・・・あれ?

教室出るときにちらりと美波ちゃんの方を見てみたけど、いなくなってる。

どこいったのかな?

まあでも、まずは魔理沙を探すことにして、言われた通りぶらぶらと散歩してると・・・あ、魔理沙の声がした気がする。

この教室かな?

何してるかわからないから、そっと扉を開けてみよう。

 

「・・・から、いい加減にしろって言ってるんだぜ!」

 

・・・あれ、なんか良くない雰囲気・・・・・・。

普段声を荒らげることが少ない魔理沙が珍しいな。

 

「何よ!アイツがウチの扱いだけああなのが悪いんじゃない!」

 

「吉井にいつも間接技仕掛けてるのは誰なんだ!?でも吉井はいくら間接技極められても、いつもお前に普通に接してたんだぜ!」

 

「ウチが間接技かけるのは、アキがペッタンコとか言うのが悪いのよ!」

 

どうやら、魔理沙が言い争ってる相手は美波ちゃんみたい。

止めた方がいいかもだけど、どう止めたらいいかわからないな。

 

「だとしても、お前は吉井がこんなになってるのを見て何も思わないのか!?見ろ、お前の間接技が原因で、吉井の右手が死にかけたんだぞ!」

 

「・・・っ!」

 

「そんなことをされても吉井はお前に何か怒るようなことを言ったのか?言ってないだろ?多分だがむしろお前に謝ったんじゃないのか?」

 

「それは・・・謝られたわよ。でもアキは演技でも恋人だったウチじゃなくて瑞季の方に行って、一緒に帰ってきたのよ!ウチもアキに(演技としてだけど)好きって言ったのに!」

 

・・・・・・どうしよう。

今更だけど、私が聞いててもいいのかな。

美波ちゃんが吉井君のこと好きなのは今更って感じするけど、喧嘩を見られてるって知ったら気まずくなりそう・・・。

 

「吉井に女の子扱いされたいって言うなら、自分の行動を見直すべきだ!あんなことしておいて、それが出来ないなら、吉井と恋人どころか、友人である資格もないぜ!」

 

「うるさいうるさいうるさいっ!ウチとアキの関係に、魔理沙が口出しする権利なんてないのに!」

 

わっ、怒鳴り散らすように美波ちゃんが言葉を発して、教室を出てく。

慌てて隠れたけど、美波ちゃんはこっちを見てなかったから多分バレてない。

・・・バレてないよね?

 

「・・・ふぅ。私らしくなかったぜ。悪いのは美波とはいえ、私も言葉がキツかったな。・・・で、いるんだろこいし?覗き見は良くないぜ。」

 

魔理沙にはバレてたみたいだけどね・・・。

気配は殺してたんだけどな。

 

「ごめんね、魔理沙に用があったんだけど割り込めなくてね。いつから気づいてたの?」

 

「美波が出ていった時にチラッと見えたんだぜ。恥ずかしいとこ見られちまったな。んで、何の用なんだぜ?」

 

「えーっとねー・・・。」

 

坂本君に言われたことを魔理沙に話す。

自分の料理()が暗殺の道具にされるのは複雑だと思うけど、魔理沙は了承してくれた。

 

「ところで、なんで魔理沙はさっき喧嘩してたの?」

 

「美波のせいで右腕が動かなくなりそうだった吉井を見たら、友人としてちょっと我慢の限界だっただけだぜ。こんな色になっててな。」

 

そう言いつつ、魔理沙はデジタルカメラをポケットから取りだし、写真を見せる。

確かに酷い感じになってるけど・・・。

 

「その前に、魔理沙デジカメなんて持ってたの?」

 

「ちょいと土屋に借りただけだ。使い終わったし、返しておいてくれるとありがたいんだぜ。」

 

「まあいいけど・・・ムッツリーニ君そのカメラ探してたよ?」

 

もしかして、勝手に持ってきちゃったのかな?

 

「・・・(ダラダラダラ)」

 

冷や汗かいてる・・・。

 

「ま、まああとで詫びはするつもりだぜ。一応借りたことを書いた紙は入れといたんだがな・・・。それより、暗殺ゼリーは出来たら坂本に渡すのか?」

 

「うん。これが調理室の鍵だって。・・・それと一応言っておくけど、清涼祭の時みたいに、誤って食べる人が出ないようにしてよ?」

 

容器はごく普通のスポーツゼリーの形だから、何らかの理由で紛れこんじゃったら誤飲の可能性あるし・・・。

特に事情をあまり知らないお空が普通に飲んじゃいそうで怖いんだよね・・・。

 

「さすがにもうあんなことはないと思うんだぜ。じゃあ、私は作ってくるからよろしくだぜ。」

 

「うん、またね~。」

 

魔理沙に別れを告げて、私は教室に戻ろっと。

ここからなら、Bクラスの前を通るのが一番近いかな。

 

「なら、英単語クイズでもやるか。英単語を言うから、その意味を答えるんだ。5問のうち、1問でも答えられなかったら負けというルールでどうだ?」

 

「オッケー、どんと来い!」

 

あ、坂本君と吉井君だ。

そういえば、この辺をフラフラしてるんだっけ。

報告しておこうかな。

 

「ねえ坂本君、魔理沙には頼んだよ~。」

 

「うぉっ、古明地か。霧雨は引き受けてくれたんだな。」

 

「うん、出来たら卓袱台に置いといてくれるって。それより今何してたの?」

 

「暇潰しに英単語クイズをな。古明地もやるか?」

 

「うん、じゃあそうしようかな?」

 

折角だしね。

あと、なんか面白いこと起こりそうな予感がするからね。

 

「よし、それじゃ罰ゲームは『敗者は勝者の言うことを聞く』だ。じゃあ行くぞ。」

 

「えっ、ちょっ・・・!」

 

「『astronaut』」

 

いきなり追加された罰ゲームに慌てる吉井君だけど、問答無用で問題を出す坂本君。

えーと、アストロノートは確か宇宙飛行士だったよね。

 

「どうした?わからないのか?」

 

「私はわかってるけど、吉井君に先を譲るよ。答えられないかもだけどね。」

 

「ふふん、僕をいつまでもバカだと思ってもらったら困るよ。道路に使われているアレだよね?」

 

「俺の勝ちだな。」

 

・・・・・・???

吉井君の考えていることが、私にはさっぱりわからない。

道路に宇宙飛行士が使われていたら、それはもう事件だよ。

 

「ちょっと!どうして答えを言い切ってないのに間違いと決めつけるのさ!」

 

「じゃあ古明地の答えを聞こう。」

 

「宇宙飛行士、でしょ?」

 

「正解だ。で、明久は宇宙飛行士を道路のどこに使うつもりなんだ?」

 

「・・・・・・ケアレスミス、か・・・。」

 

「待って吉井君。どこに注意を損なう要素があった?」

 

私にはさっぱりわからない。(2回目)

 

「まあ、しょうがない。負けを認めるよ。」

 

「今ので認めなかったら、人としてどうかと思うが・・・。」

 

かすってすらいないと思うけどね・・・。

 

「さて、次は霧島さんの番だね。」

 

・・・いつのまに。

いつからかはわからないけど、私と坂本君の横にいた霧島さん。

もしかして、言うことを聞くと聞こえたから来たのかな?

 

「・・・頑張る。」

 

コクリと小さく頷き、手をグッと握る霧島さん。

なんというか、絵になってるよね。

 

「し、翔子!?何時の間にいた!?」

 

「・・・雄二が『何でも言うことを聞く』って言ったのが聞こえたから、来た。」

 

まさかほんとにそうだとは。

耳いいんだね・・・。

 

「それじゃ、出題者が霧島さんで、回答者が雄二ね。それでいい?」

 

「うん、私はいいよ~。」

 

「・・・わかった。」 

 

「待て!翔子が参加するなんて聞いてないぞ!」

 

「あれ?雄二、もしかして逃げるの?男のくせに?」

 

「ぐっ・・・!いいだろう、やってやらぁ!」

 

こういう時の坂本君って単純なところあるよね。

 

「では霧島さん、一問目をどうぞ!」

 

「・・・わかった。えっと・・・『betrothed』。」

 

ダッ(坂本君が身を翻して逃げる音)

 

ガガッ(私と吉井君が坂本君の肩を掴む音)

 

「雄二、どこに行くのかな?」

 

「坂本君、どこへ行こうと言うのかね?」

 

「明久、古明地、テメェら・・・!」

 

問題を聞いた瞬間、わからないと踏んで逃走しようとした坂本君だけど、面白そうだし逃がさないよ。

ム○カ大佐じゃないけど、ちょっとあのセリフ言ってみたかったのもあるし。

 

「まあ霧島さん、一問目からトドメじゃ可哀想だし、問題を変えてあげてよ。見てる方も面白くないしね。」

 

「・・・わかった。なら・・・『prize』。」

 

「えっと・・・賞品か?」

 

今度は正解した坂本君。

 

「・・・『as』。」

 

「~として。」

 

「・・・『engage ring』。」

 

「婚約指輪。」

 

「・・・『get』。」

 

「手に入れる。」

 

「・・・『betrothed』。」

 

ダッ(坂本君が身を翻して逃げる音)

 

ガガッ(私と吉井君が坂本君の肩を掴む音)

 

「だから雄二、どこに行こうとしてるのかな?」

 

「頼む!お願いだから見逃してくれ!今のを聞いたら、俺の恐怖がわかるだろ!」

 

えーと、『賞品』『として』『婚約指輪』を『手に入れる』ってことかな?

霧島さんらしいかな。

 

「あはは、霧島さんの冗談に決まってるじゃないか。僕らはまだ学生だよ?婚約指輪なんて買えるわけが」

 

「・・・あっ。」

 

吉井君のセリフの途中、霧島さんが取り落としたのは、宝石店の案内。

 

「・・・冗談。」

 

そう呟いて、霧島さんは恥ずかしそうにしまう。

うん、冗談冗談。

冗談ってことにしておくよ。

 

「・・・・・・。」

 

「あはは。雄二ってば。そんな僕にしか聞こえないような小さな声で『ヤバい。マジヤバい。』なんて連呼されても困っちゃうよ。」

 

私にはその声は聞こえないけど、目が虚ろなのが印象的かな。

 

「さあ雄二、回答をどうぞっ。」

 

「えーと・・・『betray』が裏切るだから・・・謀反とかか?」

 

確かにありそうかも。

ちなみに私もわからないよ。

 

「・・・雄二のこと。」

 

「死刑囚か!」

 

「・・・婚約者。」

 

へー、知らなかったよ。

私には使う機会ない単語だしね。

 

「さて、答えられなかった雄二の負けだよね。約束通り、霧島さんの言うことを何でも聞いてあげて。」

 

坂本君の顔がどんどん曇ってく。

それを見て満足そうにしてる吉井君が対照的だ。

 

「翔子、さっき冗談って言ったよな?」

 

「・・・うん。婚約指輪は冗談。」

 

「じゃあ、本気の方はなんだ?」

 

「・・・それは・・・人前じゃ、恥ずかしくて言えない・・・。」

 

「なんだ!?俺は何をさせられるんだ!?」

 

人前だと恥ずかしくて言えないことって何かな?

私や吉井君が邪魔なら、どいた方がいいよね。

 

「・・・こんなところで言わせるなんて、雄二はいやらしい。」

 

「死ね雄二ぃぃーっ!」

 

霧島さんの言葉を聞いてから、吉井君が飛び蹴りを坂本君に放つまで、約1秒。

攻撃に入るまでが短すぎないかな?

 

「なぜ俺が狙われるんだ!?俺は何も言ってないだろ!?」

 

「黙れ!今朝聞いた『寝ている霧島さんに無理矢理キスをした』って話を含めて、納得の行く説明をしてもらおう!」

 

吉井君、本当は逆だって。

・・・聞く耳持ってなさそうだけど。

 

「待て!話の内容が変わっているぞ!本当は『・・・キスだけじゃ終わらなかった。』」

 

なんだろ、今の言葉で、吉井君の内部でなにかが解除された音が聞こえたような・・・?

 

「嫉妬と怒りが可能にした、殺戮行為の極致を思い知れっ・・・!」

 

「うぉっ、明久の動きがマジで見えねえ!」

 

坂本君の言葉は誇張でもなんでもなく、吉井君の動きがムッツリーニ君を上回る程、ものすごい速くなってる。

 

「・・・キスの後、一緒に寝た。」

 

また、吉井君のなにかが解除されたと思う。

 

「ごふっ!?明久に力で負けるとは・・・!」

 

その証拠にパワーが膨れ上がってる。

坂本君にパワーで上回るなんて今までみたこと無いもん。

 

「・・・とても気持ちよかった。」

 

「さらに分身・・・いや、残像か!?お前もう人間じゃないだろ!」

 

凄い。

『超人「吉井明久」』なんて言えそうな感じになってる。

でもこんな残像が見えるくらいの動き、魔理沙とやった格闘ゲーム位でしか見たことないんだけど、吉井君はどんな能力してるの?

 

「殺したいほど憎たらしいという気持ちは、不可能を可能にする・・・!」

 

「上等だ!こっちも本気で相手してやらあ!」

 

そんな動きをしてる吉井君に対し、逃げずに立ち向かう坂本君も凄いと思うけどね。

でもそんな騒がしくしてると、鉄人先生とかが来そうだし、私は先に教室戻ってよっと!

靴底が摩擦で焦げてるのか、嫌な匂いもするもんね。

ちなみに、私の読みは当たっていたみたいで、2人は鉄人先生に追いかけられたみたいだよ。

 




いかがでしたか?
魔理沙と美波が喧嘩。
珍しいですね。


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四十六話「挑発!」

 

 

 

 

教室で待機してると、坂本君と吉井君、それとムッツリーニ君と魔理沙が戻ってくる。

魔理沙は毒ゼリーが入った容器を3つ持ってるね。

 

「ところで坂本、頼まれてたものは作ったが、誰を暗殺するつもりなんだぜ?やっぱ根本か?」

 

「いや、そうじゃない。古明地姉が非開戦派だから根本を殺れば止まる可能性は少しはあるかもしれないが、それでは多分止まらないだろう。狙うのはBクラスの使者だ。」

 

「Bクラスの使者?」

 

「ああ、DクラスがBクラスに敵意があると聞けば、真偽を確かめたうえで同盟なり不可侵条約なりを結びに来る。その使者がやられれば、Bクラスは間違いなくDクラスに敵意を感じるだろう。そうなれば同盟は成立しないし、奴等の疑念は深まるはずだ。」

 

うわー、なんかすっごい嫌だな。

影から干渉して戦わせ、利益を得るみたいな感じで。

 

「でも、スタンガンとかでもいいんじゃないの?わざわざ魔理沙の料理を使わなくても・・・。」

 

「スタンガンだと悲鳴をあげられるからな。誰にも気づかれるわけにはいかん。」

 

「なら、口を塞げば・・・。」

 

「アホか。そんなことしたら、自分も感電するだろうが。それに、霧雨の料理を使ったのは俺の趣味だ。」

 

「お?坂本、毒とわかってて私の料理を食べたいのぜ?予備はあるから、遠慮しないでグイっと行ってもいいぜ!」

 

墓穴掘ったね坂本君。

 

「い、いや・・・。俺は遠慮しておく・・・。それよりそろそろBクラスの使者が発つ頃だろう。行くぞ。」

 

坂本君に連れられて、私達はまた新校舎へ向かう。

ムッツリーニ君のお手並み拝見だね。

 

「やはり、出てき・・・なっ!?2人だと!?」

 

私達が着いて少ししたら、使者が出てくる。

その数は2人。

でも坂本君は1人と予想していたらしく、驚いてる。

 

「補充試験で人手は足りないし、立場がない男子生徒1人で来ると予想してたんだが奴等め、2人で来やがったか・・・!古明地、ムッツリーニと同時にもう1人を殺ってくれ!」

 

あらら、いきなり私も暗殺することになっちゃった。

まあ、私も気配を殺して動くのが得意だし、お姉ちゃんに近づく不届きな男に対して暗殺的な行為をした経験は何度もあるし、多分行けるよ。

坂本君から予備のゼリーが入った容器を受け取り、ムッツリーニ君が仕掛けるタイミングを待つ。

確実に忍び寄るため、ムッツリーニ君は注意をひきつけるようななにかをしてくるはずだし。

でも、使者とDクラスの距離があと3メートル、2メートルと詰められていってもムッツリーニ君は動かない。

そして、あと1メートルとなった時。

私達の目の前を何かが横切り、それはカッという音をたてて壁に刺さる。

刺さったのはカッターナイフで、そこに写真が刺してある、ちょっと変わった矢文みたいなもんだね。

廊下にいる人は全員、写真を見ようとしてる。

さて、今だね。

呑気に最後尾で背伸びして写真を見ようとしてる使者の2人に近づき、ムッツリーニ君と私でそれぞれの口を塞ぎ、動きを封じる。

 

「「・・・・・・!」」

 

2人は驚いてるけど、私達は容赦はしないよ。

さっきのパックの先を指の隙間から押し込み、中身を押し込む。

相手も防ごうと・・・あれ、あんましてこない。

思ったよりすんなりとパックの中身を使者の喉に押し込むことが出来た。

 

「あり・・・が・・・とう・・・ござ・・・か・・・は・・・っ。」

 

「・・・・・・(ググッ)。」

 

何故かお礼を言われたけど気にせず、残りのチューブの中身を全て押し込む。

それで相手はビクンと痙攣したあと、動かなくなった。

ムッツリーニ君の方も上手く終えたみたい。

この暗殺に気づいた人はゼロ。

 

「・・・さすがだな、ムッツリーニ、古明地。惚れ惚れするような手際だった。」

 

「・・・この程度、自慢にもならない。」

 

「ムッツリーニ君が注意をひきつける手を打ってくれたからね~。」

 

そんなに難しくない任務だったし。

ムッツリーニ君も坂本君の賛辞に対して眉一つ動かしてない。

とにかくこの後は、今の2つの死体をBクラスからは見えてDクラスからは見えない位置に押し込むだけ。

そうすれば、最初に発見するのはBクラスになるはずだからね。

この仕事は3人がやってくれた。

私は力あんまりないもん。

さて、あとは様子を見るだけだね。

 

 

 

 

 

 

教室に戻って、6時間目。

やっぱり自習だからBクラスの様子を教室で見ていると、坂本君の狙い通り疑心暗鬼になってるみたい。

とはいっても、使者も明日には目覚めてバレちゃうし、そうなったらBクラスも何があったかDクラスに聞きに行くだと思う。

今度は暗殺が通じないように大人数でね。

まあ、お姉ちゃんがいたら暗殺は出来ないんだけど。

 

「ところで、放課後の会談はどうなったの?」

 

「うむ、清水を引っ張り出すことには成功したぞい。放課後旧校舎2階の空き教室で会う手筈じゃ。」

 

木下君の方も、無事に交渉に成功したみたい。

 

「でも雄二、そううまく怒らせるような策があるの?」

 

「ああ。とびっきりの奴がな。」

 

さすがは坂本君。

何をするかは聞いてないけど、この状況で怒らす策があるとは。

 

「ただ、明久は余計な口を挟むなよ。島田と明久がいなければ挑発にならないから一応連れてくが、下手なことを言うと作戦がおじゃんになるからな。」

 

「うん、その辺は雄二に任せるよ。」

 

実際、ここで失敗したらチャンスはないよね。

 

「・・・一つ、気になることがある。根本がAクラスに何かの情報を流していた。」

 

・・・Aクラス?

今、用があるとは思えないんだけど、どういうことなのかな?

 

「・・・妙だな。Dクラスが気になっているはずのこの状況で、さらにAクラスを巻き込んでどうしようってんだ?巻き込むクラスを増やしても膠着状態になるだけでBクラスに得は・・・」

 

その情報に眉をひそめる坂本君。

すると、バンッ!と大きな音をたてて、扉が開け放たれる。

・・・ん?

 

「・・・雄二・・・っ!」

 

入ってきたのは霧島さん。

普段はクールだけど・・・今日はなんだか慌ててる様子だね。

 

「翔子?そんなに慌ててどうした?」

 

「・・・どうした、じゃない・・・!お義母さんが倒れたというのに、どうして様子を見に行かないの・・・!」

 

「は?あのお袋がか?風邪もひかない健康体だぞ?」

 

「・・・いいから、早く・・・!」

 

坂本君のお母さん、倒れちゃったの?

・・・いや、でも坂本君は知らなかったみたい。

知ってたらさすがに様子を見に行ったはずだし・・・。

 

「待て、俺は今から大事な作戦が・・・」

 

「そんなこと言ってる場合じゃない!」

 

わっ、普段の様子からは考えられない大声にびっくりしちゃった。

それだけ坂本君のお母さんのことが心配なのか、グイグイと手を引っ張って連れていこうとする霧島さん。

 

「だから待て翔子!何かがおかしい!どうして俺よりお前が『いいからっ!』だから落ち着・・・」

 

ガチャッ、バタン。

抵抗空しく、興奮した様子の霧島さんに連れていかれる坂本君。

・・・でも、やっぱりおかしいよね。

普通、こういうのは血が繋がってる坂本君に来るのが自然だし、なんで・・・まさか!

 

「まさか、さっきのAクラスへの情報はこれだったの?」

 

「・・・その可能性が高い。」

 

「なんじゃと!?」

 

ムッツリーニ君も同じことに気づいたみたい。

・・・やってくれたね根本。

恐らく、本人はDクラスの動向を探るまでの時間稼ぎのつもりで打った何気ない手だと思うけど、今の私達にとってはそれが相当痛い。

作戦の要というか知ってる人物は坂本君だし、もともとこの状況で怒らせるのは難しい訳だしね。

 

「・・・誰か、雄二から作戦は聞いてる?」

 

「・・・いや、俺は聞いてない。」

 

「恐らく盗聴防止の為、雄二は誰にも話していないじゃろうな。」

 

「私もそう思って聞かなかったんだよね・・・。」

 

こうなるなら、聞いておけばよかったかも。

 

「明久、古明地、雄二に携帯電話で連絡を取れぬか?」

 

「無理だと思う。僕のもそうだけど、雄二のも修理中なんだ。」

 

「私の携帯電話には坂本君の番号はあるけど・・・。坂本君の携帯が壊れてるならどうしようもないね・・・。」

 

試しに電話をかけてみても、電波の届かないところにいるか・・・というメッセージが聞こえるだけ。

・・・どうしよ。

 

「・・・そろそろ時間。」

 

考えてもなにも浮かばないまま時間だけが過ぎ、気がつけば会談の時間はもうすぐそこまで迫ってた。

 

「とりあえず、参加メンバーは僕ら4人と美波くらいかな。」

 

「いや、ムッツリーニは待機しておいた方がいいかもしれん。『先日の覗きについて謝罪をしたい』と言っておるから、むこうは恐らくDクラス代表の平賀と清水じゃろう。なら、こちらも人数を絞るべきじゃ。」

 

確かにそうかも。

それで、謝罪をそっちのけで挑発するのが目的なんだけど・・・出来るのかな?

でもやらなきゃいけない。

こうして私達は、クラスの命運を左右する戦いに坂本君抜きで挑むことになった。

・・・不安しか残らないや。

 

 

 

 

「待たせたね。」

 

会談の場所の空き教室に入ると、既にDクラスの2人は待機してた。

若干遅刻したのもあって、吉井君が口先だけの謝罪を述べる。

 

「お姉様!お会いしたかったですっ!」

 

「きゃっ!ちょっと、くっつかないでよっ!」

 

・・・でも、ガン無視。

というか美波ちゃん以外、眼中にない感じがする。

 

「お姉様・・・邪魔物のいない空き教室で2人きりなんて、やっぱり美春のことが・・・!美春はお姉様を心よりお慕いしております・・・。」

 

「や、やめてよっ!ウチにはそっちの趣味はないんだからっ!それよりアンタ、まわりの連中が見えないの!?とにかく離れなさい!」

 

美波ちゃんが力づくでひっぺがす。

いきなりペースを持ってかれたような気がするね。

 

「清水よ、そこまでにしておくのじゃな。島田は明久の恋人じゃ。むやみやたらと手を出すでない。」

 

木下君が切り込む。

こちらの目的は謝罪じゃないし、そっちの方に話を持っていくのは自然だよね。

 

「何バカなことを言っているのです?お姉様とそこの豚野郎に何の関係もないことくらい、お姉様の顔を見れば一目瞭然です。」

 

いかにも全部知ってますって感じの態度。

まあ実際、盗聴や盗撮で情報は得てるとは思うけど。

 

「そもそも、そこの豚野郎が、お姉様にふさわしいとは思いません。」

 

「そりゃ、僕は勉強も出来ないし部活もやってないけど、でも」

 

「勉強?部活?違いますね、それ以前の問題です。」

 

吉井君の口上を遮り、見下すような目をしながら言う美春ちゃん。

それ以前の問題っていうと・・・やっぱ接する態度かな?

 

「前々から見ていましたが、そこの豚野郎の態度は最低です。同じクラスの姫路さん・・・いえ、お姉様以外の異性に接する態度とお姉様への態度は、あまりに違いすぎます。」

 

その考えは間違っていなかったみたい。

美春ちゃんが言った瞬間、美波ちゃんがビクンと反応してる。

 

「他の異性には優しく気を遣い、まるでお姫様を相手にする、そこまではいかなくとも普通に親切な態度。それに対してお姉様への態度はどうです?全く気遣いが見られないどころか、異性に対する最低限の優しさすら見られないじゃないですか。」

 

あのー、美春ちゃん?

言いたい気持ちはわかるけど、美波ちゃんの表情見よ?

吉井君を糾弾してるその言葉、美波ちゃんにも同じくらい刺さってるからね?

 

「はっきり言えば、そこの豚野郎はお姉様の魅力に気づいていないどころか、異性への最低限の気遣いすらせず、男友達のような態度で接している大馬鹿野郎です。容姿や学力以前に、そんなのがお姉様とつりあう訳がありません。それに・・・」

 

トドメとばかりに言葉を紡ぐ美春ちゃん。

 

「それに、演技とはいえ好きとまで言ってくれたお姉様を無視して、姫路さんのところに行くなんて、普通では考えられません。もしかして、お姉様のことを男とでも思っているんじゃないですか?」

 

「・・・っ!」

 

その言葉が放たれた瞬間、耐えかねたような感じで教室を出て走ってく美波ちゃん。

その軌道にはキラキラ光るものが見えて・・・これ、私どうするのがいいんだろう。

 

「美波!?」

 

「追ってどうするのですか?また男友達に接するような乱暴な言葉をかけるのですか?そうやってまたお姉様を傷つけるのですか?」

 

反射的に追おうとした吉井君だけど、美春ちゃんの言葉で足が止まる。

・・・そうは言うけど、直接の原因は美春ちゃんだって気づいてる?

 

「ここはワシが追おう。今お主が行っても逆効果じゃし、古明地よりはワシがいいはずじゃ。」

 

そう言って、木下君が追いかける。

確かにそれは正しい判断かも。

 

「・・・よくわからないけど、もう俺は行ってもいいよな?こんなんじゃ、謝罪どころじゃなさそうだしな・・・。」

 

続いて、Dクラス代表の平賀君が席を立つ。

多分、この気まずい空気が耐えられなかったんだと思う。

 

「・・・この話し合いに何の意味があったのかは知りませんが、もう美春は貴方を恋敵として認めることはありません。お姉様を男として扱う豚野郎に嫉妬するのは、時間の無駄ですから。・・・お姉様の魅力がわかるのは、美春だけです。」

 

美春ちゃんが席を立つ。

この話し合いは失敗。

DクラスはFクラスに宣戦布告してくることは多分ない。

私はどうしようかな。

 

「・・・ちょっと待って、清水さん。」

 

「・・・なんです?美春に何か言いたいことがあるんです?」

 

「うん。一つだけ。その前に、悪いんだけど古明地さんは席を外してもらってもいいかな?」

 

「ま、まあいいけど・・・。」

 

吉井君が真剣な表情をしてたから、私は席を外しす。

・・・私、これからどうしようかな。




いかがでしたか?
この作品、モブにちょくちょくドMが出てきてますね。
あ、作者はSでもMでもないですよ?


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四十七話「意外!」

 

 

 

 

吉井君に外に出てほしいと頼まれ、外に出たけど・・・どうしよ。

そう考えてたら、私の携帯が鳴る。

ん、誰だろ?って思って携帯を開くと、メールが届いてた。

差出人は・・・『秦こころさん』ってなってるね。

秦こころさんって確か・・・清涼祭の日に会った美術部の先輩だったよね。

メールを開くと、『時間が空いてたらモデルになってほしい。今日はあの子もいなくて私1人だから、気兼ねする必要はないし、お茶とお菓子も用意しておく。』って感じの内容がかかれてる。

うーん、今のクラスの現状を考えたら断った方がいいのかもしれないけど、正直今私がやれることは何もないんだよね。

少しばかり迷った後、OKの返事を出して美術部に向かう。

メールにはこころさん一人って書いてあったけど、やっぱりお姉ちゃんは色々忙しいのかな?

 

「・・・いらっしゃい。」

 

美術部の扉を開くと、メールで言ってた通りこころさんが1人で座ってた。

というかメールの通りに紅茶とクッキーが用意されてたけど、このお茶はどこから出したのか気になるな。

放○後ティータイムみたいに部に持ってきたティーセットを常備してる・・・わけないか。

 

「・・・じゃあ、早速お願いしてもいい?」

 

「うん、いいよ!」

 

「・・・ありがとう。ところで、あの子が今日来ない理由、何か知ってる?」

 

「まあ、一応?」

 

「・・・良かったら、教えて欲しい。」

 

隠すようなことでもないから、今日のいきさつを大体話す。

 

「・・・そう。そういう事情があったのね。少し、元気がないように見えたのも、わかったわ。」

 

まあ、今日は色々あったから、少し疲れた気がするしね。

置かれてた椅子に座って20分程待つ。

今回はクッキーとお茶をいただきつつだけどね。

 

「・・・できた。どう?」

 

こころさんが完成させた絵を見る。

うーん、僅かだけど、絵の中の私から、美味しいっていう感情が伝わってきてるかな?

実際、紅茶もクッキーも美味しかったしね。

 

「・・・そうだ。もし良かったらだけど、あの子の絵、見てみる?」

 

「うん、見たい見たい!」

 

お姉ちゃんの絵、普段はあまり見れないからね!

 

「・・・これが、あの子がこの前書いたもの。」

 

こころさんが持ってる絵を覗きこむ。

うわぁ、綺麗なお屋敷だ!

特に中央の上部のステンドグラスと、床の夕日を反射して優しい光出してるガラスがいい雰囲気!

所々に見えるネコとかカラスとかハシビゴロウとかの動物もいいね。

もしかして、将来はお姉ちゃんこんな屋敷に住みたいのかな?

 

「・・・私も、あの子の絵は好き。」

 

「私も!やっぱりお姉ちゃんはすごいな!」

 

その後もお姉ちゃんの絵とかの話題で30分くらい話してたけど・・・さすがにそろそろ帰らないといけないかも。

 

「・・・そろそろ、部活の終了時間になる。」

 

どのタイミングで切り出すか迷ってたけど、ちょうどこころさんがそう言う。

お姉ちゃんはともかく私は部活に入ってないから知らなかったけど、そうなんだ~。

 

「・・・今日はありがとう。・・・それと、良かったらまた今度、さっきの話の結末、聞かせて欲しい。」

 

さっきの話っていうのは、今B、D、Fクラスの間で起きてる戦争のことだと思う。

興味を持ったみたい。

 

「うん、またね~!紅茶とクッキー、美味しかったよ~!」

 

こころさんが部室の鍵を閉めるのに合わせて、私も出る。

最後に手を振って別れたよ。

・・・ところで、吉井君は何を話したんだろ?

あの時点で交渉は失敗してたし、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけどね。

あーあ、明後日からござになっちゃうのかな・・・。

病気が治って登校してきた阿求ちゃんや、身体が弱い姫路ちゃんが体調を崩さないといいんだけど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも翌日。

 

「我々Dクラスは、Fクラスに対して宣戦布告を行う!」

 

朝一番に、何故かDクラスの男子が教室に来て、そのまま宣戦布告。

・・・あれ?

 

「?なんじゃと?」

 

「どういうことだ?昨日聞いた話と違うが・・・。」

 

昨日のいきさつを知ってる木下君と、それを木下君から聞いていたみたいな坂本君は怪訝な顔してる。

そういう私にも全くわからないけどね。

 

「ムッツリーニ、原因はわかるか?」

 

「・・・わからない。ただ、今朝は清水がやけに興奮していた。」

 

「今朝興奮していたなら、挑発は成功してたということか?」

 

「いや、昨日の挑発は、明らかに失敗じゃったはずじゃ・・・。明久と古明地よ、ワシが島田を追った後に何か話していたのかの?」

 

「ううん、私は吉井君に美春ちゃんと話すことがあるって言われて出て『い、いや何もなかったよ。それより今は戦争の準備をしないと!』・・・ま、いっか!」

 

私の言葉を遮るようにして話を反らす吉井君。

昨日は興味なかったけど、こうなると気になるかも。

でも確かに今は戦争が重要だよね。

 

「確かに明久の言うことは正しいな。ここで戦争に負けたら元も子もない。よし、まずは戦力確認と行くか。全員聞け!聞こえていた通り、FクラスはDクラスとの戦争に突入する!まずは戦力確認のために持ち点を紙に書いて俺のところに持ってきてくれ!」

 

坂本君がクラス全員に聞こえるような声で点数を持ってくるよう言う。

さて、私も書かないとね。

続々と集まってくる点数を、坂本君はノートに書いて整理してく。

フルに戦える人は少ないけど、男子も全員が戦死した訳じゃないからね。

戦力になるかは置いとかなきゃいけないけど、1点でも残ってたら召喚獣は出せるし。

まずは戦死して0点になってる人から補充だよね。

 

「全員よく聞け!まずは下位10位の人から補充試験を行ってもらう!その際、数学が7名、古典と日本史と保健体育を1名づつとする!各自の配置場所は、点数確認が終わり次第発表とさせてもらう!」

 

坂本君が前で呼び掛け、卓袱台に戻って人員配置を考え始める。

Eクラス以外は新校舎だから、やっぱり新校舎と旧校舎をつなぐ渡り廊下と、旧校舎側の階段が防衛ポイントになるはず。

 

「ねえ雄二、どうしてあんなに補充を細かく分けるの?僕らは点数がないんだから、まずは数学に統一して少しでも蓄えを増やすべきじゃないの?」

 

「今回の目的は時間稼ぎだ。だから心理戦による騙しあいが必要になる。そんな中で、採点が速い数学の先生だけ呼び込んだら、蓄えがありませんよと言ってるようなもんだからな。」

 

卓袱台に近づいて質問した吉井君に対して、そう答える坂本君。

確かにそうかも。

数学の河城先生は採点が厳しめだけど速いのに対して、日本史の豊郷耳先生は採点が甘いかわりにゆっくりなのは有名な話だもんね。

ところで、私はどこになるのかな~?

ちょっと覗いてみよっと!

吉井君と覗きこむ。

 

「・・・あれ?僕は補充じゃないの?」

 

「ほんとだ、吉井君が日本史かなって思ってたけど違うんだね。」

 

「明久はまだ点数が残っていたからな。それに、お前は特別な存在だ。今回の作戦でも、重要な役割を担当してもらうことになる。キツいだろうが、頑張ってくれ。」

 

「了解、そこまで言われたら頑張るしかないね。」

 

坂本君がそう言う。

信頼してるって感じがするね。

監察処分者ならではの役割があったりするのかな?

 

「それで、私はどこの防衛になる感じ?」

 

「いや、お前と姫路、あと霧雨は教室にいてもらう。正邪には渡り廊下、霊路地と島田には階段付近の防衛をさせるつもりだがな。・・・よし、こんなもんだな。」

 

えっ?

私と魔理沙、あと姫路ちゃんは教室待機なの?

・・・あ、そっか、坂本君の親衛隊か。

もし前線が崩壊して、坂本君がいるFクラスに敵が来ちゃった時、点数がある女子生徒がいないと困っちゃうもんね。

でも、阿求ちゃんがいない今、最大戦力である姫路ちゃんはなんでなんだろ?

自分で言うのもなんだけど、私も美波ちゃんやお空より総合科目とか高いよ?

 

「いいか、よく聞け!前回勝ったとはいえ、相手は2つも上のクラスだ!下手に突撃すると一瞬で蹴散らされるぞ!どんなに有利な状況でも決して深追いはせず、決められた場所の防衛に徹しろ!」

 

確かに、さっきの点数調査では、Fクラス全男子の合計は1万点にすら満たなかったからね。

今いない阿求ちゃんを除いた私達女子の点数を足してもだいたい2万ちょいだし。

Dクラス女子平均が1500点って仮定すると、これだけで4万点くらいになるし、さらに男子がいるから戦力差は歴然としてる。

 

「向こうは圧倒的に有利な女子の総合科目、それと腕輪持ちがいる日本史と生物をメインに攻めてくる!霊路地と正邪、それと島田と秀吉を主軸にうまく立ち回れ!限界まで粘ったら状況によっては教室まで退いてもいい!以上だ!健闘を祈る!」

 

「「「ぃよっしゃぁああーっ!」」」

 

坂本君の説明が終わるとともに時計の長針がカチッと音をたてて動き、9時ちょうどを示す。

開戦と同時に、まずは先見隊が教室を出て、ダッシュで渡り廊下を目指す。

やる気はみんな充分みたい。

・・・まあ、まだ怒ってる感じの美波ちゃんに対して吉井君が話しかけて無視されるなんてことはあったけどね。

 

「・・・で、そろそろ何故私とこいしと瑞希を教室に置いたか説明が欲しいんだぜ。」

 

防衛部隊と補充組が教室を出て、教室にいる人は少なくなる。

間違いなく作戦はあると思うけど、それを知りたいんだよね。

 

「なら説明するか。俺達Fクラスは渡り廊下に大多数の戦力を投入した。そうなれば、相手は必然的にこう考える。『Fクラスは渡り廊下を制圧したいはずなのに何故姫路や古明地、霧雨を出さないんだ?何か別なことを企んでいるのか?』とな。」

 

「あ、つまり姿の見えない私達を警戒して、戦力を小出しにさせるということですね!」

 

「そういうことだ。特に前回の戦いで、平賀は姫路に不意打ちされて負けてるからな。きっと面白いように引っ掛かってくれるはずさ。」

 

ほえ~。

そういう考えがあったのね・・・。

さすが坂本君。

 

「だが、それだけじゃ不充分だ。だから、ムッツリーニに情報操作をさせてある。『FクラスがDクラスとの開戦を望んでいた』とな。」

 

なるほど、昨日の目的不明の交渉とか、Dクラスあたりを吉井君と坂本君がふらついてたアレとかを始め、思い当たるような節がいくつかあるから、確かに簡単に信じちゃいそう。

実際事実だしね。

 

「それで、Dクラスはありもしない企みを警戒するあまり、動けなくなるということか。こういうのを見ると、坂本はやっぱり敵に回したくないって感じるぜ。」

 

「向こうは今ごろ開戦を後悔している頃だろうな。なにせ、勝っても得られるものはないうえに、負けたら最低ランクの設備に。しかもFクラスには勝利の秘策があるのではないかと疑ってる。ハイリスクローリターンな戦いなわけだ。何かきっかけがあればすぐにでも休戦交渉に応じるだろ。」

 

「そうなると、平賀君と交渉でもするの?」

 

「平賀は無理だ。こちらを警戒してるから、間違いなく前に出てくることはない。だが、今回に限ってはDクラスの頭は1人じゃない。」

 

「あ、美春ちゃんを引っ張り出すの?」

 

「ご名答。清水を封じれば、この戦争は終わらせることが出来るだろう。そのために使う奴が・・・お、ちょうど戻って来たな。」

 

坂本君が扉の方へ視線を向けたから、私達もつられて見ると、そこにいたのは吉井君。

 

「指示通りにしてきたけど・・・あれに何の意味があったの?」

 

「ん?吉井君はどんな指示を受けてたの?」

 

「えっとね、最前線に顔を出して、余裕があることをアピールしてから教室に戻ってこいって言われたんだけど・・・敵がやけに少なかったことも含め、説明をしてよ雄二。」

 

「もう1回説明をするのはめんどくさいから、姫路に聞いてくれ。」

 

坂本君に丸投げされた姫路ちゃんが、吉井君に説明をする。

 

 

~少女説明中~

 

 

「・・・ということみたいです。それで、清水さんを出すために明久君を使うというのはどういうことなのですか?」

 

「明久と清水に一騎討ちをさせるということだ。明久、例えばここに須川がいたとしたら、お前がDクラスの立場ならどう思う?」

 

坂本君が指差したのは、Fクラスの隣の空き教室。

階段から向かったらFクラスに向かう際に前を通るけど、当然戦略的には関係ない場所。

しかも須川君は首を獲る必要はないからね。

私だったらスルーだね。

 

「え?どう思うもなにも・・・意味ないものにしか見えないけど。」

 

「まあ、そうだろうな。それなら、更に条件を付け加えよう。そのタイミングで、お前と須川が姫路を巡って争ってたとしよう。そしたらどうなる?」

 

確かに、その条件なら、召喚獣バトルで白黒はっきりつけようとしてるように見えるかも。

 

「それなら、須川君が僕を待ってるように見えるかな。その話に決着をつけるために。」

 

「その通りだ。」

 

よくできましたという感じで頷く坂本君。

 

「つまり、だ。他の連中には首を獲る必要もない明久が意味もなく空き教室にいるようにしか見えないが、清水にとってはそうじゃない。明久が決着をつけるために清水を待ってるように見えるってことだ。その為に明久の存在をアピールさせたんだからな。」

 

「もしかして、さっきの教室前まで退いてもいいというのはそういうことですか?」

 

「ああ。そうしないと明久に気づいて貰えないからな。休戦交渉に足るだけの点数補充を終えたら、廊下か階段を開放して空き教室の様子を教えてやる必要がある。もっとも、こちらが劣勢と思われるわけにもいかないから、さじ加減が難しいんだがな。」

 

「そんなにうまく行くのかな・・・?」

 

疑問そうに呟く吉井君。

でも、私はうまくいくんじゃないかなって思ってるよ。

Aクラス戦の大化の改新の時みたいな大きな穴は見当たらないしね。

一騎討ちに吉井君が勝てばDクラスの女子達も大人しくなりそうだし、負けても誘き出せたならそのまま交渉に入ることはできそう。

 

「まあ、結果は見てのお楽しみだ。いつ戦線が後退するかはわからんから、明久は今から空き教室に向かってくれ。」

 

「うん、わかった。今すぐ行くよ。」

 

「ああ、頼むぞ。」

 

教室のドアを開けて出ていく吉井君を私達は見送る。

 

「・・・さて、補充組が終わるまではまだ時間があるな。明久と清水が交戦を始めたら交渉のために向かうが、それまでは教室から出ずに適当に待機しててくれ。」

 

「あ、はい、わかりました。」

 

「うん、わかったよ~。」

 

「了解だぜ。」

 

さて、坂本君の作戦はどうなるのかな?

・・・あ、ちなみに、前回私達を苦しめた物部さんとリリーさん、あと紅さんは代表の護衛に回ってるみたいだよ。




いかがでしたか?
こころさんのところは完全オリジナル。


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第四十八話「決闘!」

 

 

 

 

「・・・・・・暇だぜ。」

 

作戦が説明されてから3分くらい後。

卓袱台の上に寝転がるような体勢をしながら、魔理沙がそう呟く。

・・・暇なのはわかるけど、その格好はどうなの?

 

「でも、確かに暇だよね・・・。魔理沙は暇潰しの道具は持ってないの?」

 

「えーと、一応トランプならあるぜ。」

 

そう言って立ち上がった魔理沙がバッグからトランプを取り出す。

 

「もしかして、いつも持ち歩いてるの?」

 

「いや、今日はたまたまなんだぜ。なにかやるのぜ?」

 

「でも、2人じゃババ抜きとか大富豪とかダウトとかやってもね・・・。」

 

私が持ってないカードが魔理沙の手札みたいなもんだから、わかっちゃうしね。

戦略もなにもないし。

 

「・・・あ、そうだ。私の携帯、暇潰しのためにマインスイーパーを入れてたんだぜ。」

 

「ん?なにそのマリンスローパーって?」

 

「マインスイーパーな。地雷が埋まってるマスを推測して避けながら、掘り進んでいくゲームなんだぜ。・・・そうだ、こいしがやってみるのぜ?」

 

えーと、私マインスイーパーってやったことないんだけどな・・・。

でも、せっかくだし、やってみようかな。

魔理沙から携帯を受け取る。

 

「・・・最初はどうすればいいの?」

 

「まずは適当に1マス叩く必要があるぜ。手がかりもなにもないからな。」

 

言われた通りに、マスを1つ叩いてみる。

こうすると、どうなるのかな・・・ってなんか丸いのが出てきたね。

 

「・・・・・・初手地雷って、運がないな。気を取り直してやり直しだぜ。」

 

あ、これが地雷なの?

ほんとだ、なんか爆発してる。

・・・なるほど、地雷マスを叩いちゃうとゲームオーバーなのね。

 

「さっきのマスにもう1回仕掛けられる確率は低いよね、もう1回ここっ!」

 

さっきのマスを叩く。

さすがに2回連続地雷はなかったみたいで、いくつかのマスが一気に剥がれる。

 

「この数字って何?」

 

「これは周囲のマスに、いくつ地雷があるかを示しているんだぜ。」

 

なるほど、この4っていうのは、まわりに4つ地雷があるのね。

この数字のまわりで、見えてないマスもちょうど4つだから、このマスは全部地雷ってことかな。

 

「地雷の場所がわかったら、旗を立てて目印にするんだ。全部の地雷に旗を立てたらクリアだぜ。」

 

旗ってこれかな?

よーし、これをさっきわかった4つのマスにたててっと。

 

「今旗を立てた地雷の位置がわかったから、これでまた地雷がないマス、地雷があるマスが新たにわかる。それの繰り返しなんだぜ。」

 

「確かにこれ、楽しいかも!」

 

ひとつの場所を解くとまた新たなところがわかるというのがいいね!

えーと、ここに地雷があるから、1のまわりにはもう地雷はないから掘っても大丈夫で、それで出てきたのは2だから、まだまわりには1つ地雷があって・・・。

 

 

~少女撤去中~

 

 

「地雷はあと3つみたいだぜ。にしても、はじめてでこれとは凄いな。」

 

「実際には2回目だけどね。」

 

「・・・あれはノーカンでいいと思うぜ。」

 

20分くらい続けてたら、まだあと旗を立ててない地雷は3つになったみたい。

まあ、確かに最初のはノーカンでいいかも。

 

「あ、そこ地雷がある場所だと思うぜ。」

 

「あ、ここ?じゃあ、旗を立てないとね。」

 

「おい、それ旗じゃなくて・・・!」

 

え?

魔理沙が慌てて制止したけど、もう遅かった。

操作ミスで、旗じゃなくてスコップを持ってたのに私も遅れて気づいたけど、地雷を踏んだ後。

・・・やっちゃった。

 

「・・・ま、まあドンマイなんだぜ。こういうのは私にもあるぜ。」

 

「むー・・・。もう少しだったのに・・・。」

 

残念。

まあ、楽しめたからいっか!

 

「そういえば、そろそろ補充試験も終わった頃じゃない?」

 

「お、確かにそんな時間みたいだな。坂本のところに行ってみようぜ。」

 

坂本君のところに向かう。

とはいっても、同じ教室内だから大して移動してないけど。

坂本君はちょうど補充組のみんなに何かの作戦を伝え終わったところみたい。

多分交渉のために吉井君と美春ちゃんの一騎討ちの場所に向かうってことだと思うけど。

 

「霧雨、今の外のフィールドは数学だ。腕輪の力で一気に突破する。」

 

「了解だぜ。」

 

魔理沙は腕輪の400点を越えてたみたい。

魔理沙の腕輪の力は太いレーザーだから、突破力に優れるからね。

 

「行くぜ!恋符『マスタースパーク』!」

 

教室を出て、魔理沙が腕輪の力を放つ。

放たれたレーザーは3人の召喚獣を貫いて補習室送りにし、4人の召喚獣を回避に専念させて攻撃出来ない状況を作り出す。

よし、今だね。

向こうの攻撃が止んだ隙に空き教室に入る。

中には予想通り吉井君と美春ちゃんが一騎討ちやってるね。

 

「「「サモン!」」」

 

って、えっ?

私と魔理沙以外の全員が召喚獣を出して、攻撃体勢をとってる。

一騎討ちとして単身で来た美春ちゃんをリンチなんて、根本と同レベルの卑怯だよね。

 

「ち、ちょっと雄二!それはあまりにも卑怯だよ!」

 

「悪いな、これは勝負ではなく戦争なんだ。そして俺にはクラスを勝利に導く義務がある。やれ。」

 

「さすがにこれはダメだ!サモン!恋符『マスター・・・』ダメだ、レーザーが出せない!」

 

魔理沙が急いで再召喚し、腕輪の力でその攻撃を防ごうとするけど、今ここは化学のフィールドみたい。

様々な武器が投てきされ、全てが突き刺さる。

・・・吉井君の召喚獣に。

・・・・・・・・・あれ?

 

「「・・・え?」」

 

吉井君と魔理沙がほぼ同時に、状況が理解出来てないような感じの声を出す。

そして、一瞬遅れて痛みが襲いかかってきたような吉井君が悶え苦しむ。

 

「うぎゃぁあああっ!頭から爪先までくまなく今まで味わったことがない位の痛みがぁっ!しかも誰か剣や槍に混じって棍棒とか投げたね!鈍い痛みと鋭い痛みのコラボレーションが、新境地を切り開きそうだよ!?」

 

「清水、この通り元凶は成敗した。これで水に流しては貰えないだろうか。」

 

「そうですね・・・。美春の怒りはまだまだおさまりませんが・・・。」

 

話しながら、既に動ける状態にない吉井君の召喚獣のもとに召喚獣を向かわせ、持ってる剣でザクリザクリと刺す。

 

「いだだだだっ!!もう勝負はついてるのに、ふくらはぎから頭へと刃物で切り裂かれる感覚が!」

 

「美春の気が済むまでこの豚野郎を成敗した後、放課後まで軟禁するというならいいでしょう。」

 

「ああ、それで構わない。約束しよう。このまま引き上げ、あとは放課後までそれぞれの教室で補充試験でもやって過ごせばいい。その間明久はずっと鉄人の餌食だ。」

 

ひどい。

というか、今思えば最初から坂本君は吉井君を売るつもりだったのかも。

・・・ん?

今、横からなんか怒りのオーラみたいなのを感じたような・・・?

 

「なにを恨めしそうな顔をしているのです。もとはといえば、貴方がお姉様をたぶらかしたのがいけないのです。少しは反省してくるといいです。」

 

「ははは反省してますっ!いだだだだっ!!」

 

ザクザクザクと、吉井君の召喚獣にくまなく剣を突き刺してく美春ちゃん。

あれだけ刺されたら、痛みに耐性がない人ならショック死しかねないような・・・。

・・・あ、まただ。

 

「まあ、あの言葉が嘘なら、この程度では許しませんでしたが、今回は、これくらいで、ゆるして、あげましょう・・・!」

 

今度は斬った場所をゲシゲシと蹴りだす。

ただでさえ痛そうなのに・・・。

でもそれより、美春ちゃんが蹴るたびに横の魔理沙の怒りのオーラみたいなのが強くなってるのが気になる。

 

「・・・・・・めるんだぜ。」

 

「?何か言いましたか?」

 

「止めるんだぜって言ったんだぜ!さすがにやり過ぎだ!」

 

あ、爆発した。

耐えかねたような魔理沙が前に出てきて、制止する。

 

「この豚野郎にはこれくらい当然です。お姉様を傷つけた報いなのですから。」

 

「・・・どうやら、言っても止める気はないみたいだな。だったら、Fクラス霧雨魔理沙、Dクラス清水美春に召喚獣勝負を申し込むぜ!」

 

ちょっ、魔理沙?

でも、勝負を申し込んじゃった時点で、もう止められない。

どっちの召喚獣も既に場に出てるから、そのまま戦いに入る。

点数は・・・魔理沙の方がちょっと高いかな?

吉井君の召喚獣の死体蹴りしてた美春ちゃんの召喚獣に箒で殴りかかって距離をとらせ、それを守るように立っている。

 

「この、邪魔です!」

 

「これくらい防げるぜ!・・・今だ!吉井、すまん!」

 

剣を箒で防ぎ、美春ちゃんが距離をとった瞬間、魔理沙の召喚獣は吉井君の召喚獣をつかんで思いっきり投げ飛ばす。

召喚フィールドから出ると召喚獣は消滅するから、これ以上の被害を受けないようにしたんだと思う。

フィードバックの痛みは召喚獣が消えたからってすぐに消えるわけじゃないけど、追加で痛めつけられる心配はなくなったね。

 

「これで吉井はいなくなったな。さて、タイマン勝負と行こうぜ。」

 

「よくも豚野郎への仕置きを邪魔してくれましたね・・・。」

 

さっき吉井君を投げた時の反動で点数が減少し、点差は逆転してるけど、今度は魔理沙が攻めに行く。

でも、召喚獣の扱いにそこまで慣れていないのか、美春ちゃんはそれをうまく防げない。

 

「ぐっ・・・。」

 

「これで、終わりだぜ!」

 

手持ちの剣を上に弾かれ、無防備となった身体をさらしたところで、魔理沙が箒からのレーザーで貫く。

大体心臓のあたりを通り抜けたそのレーザーは致命傷になったみたいで、美春ちゃんの召喚獣はその場にどうと倒れる。

 

「勝負ありだな。私が言うのはお門違いだとは思うが、少しは自分の態度も省みるんだな。」

 

「ぐぐぐ・・・!ですが、どんな責め苦を受けても、美春がお姉様を慕う気持ちは衰えません!」

 

最後にそう言い残し、美春ちゃんとさっき戦死した吉井君は、鉄人先生に連れてかれる。

それと、召喚獣勝負が終わったのを見届けた先生もね。

交渉は成立しとたのに、魔理沙はこのあとはどうするんだろ。

 

「・・・まあ、清水を落とせばDクラスの女子も勢いを失うのは変わらんが、交渉は済んでいたはずだったんだがな。」

 

「・・・すまんだぜ。つい、カッとなっちまった。」

 

申し訳なさそうに謝る魔理沙。

でも実際、魔理沙らしくはないような気がするね。

 

「・・・清水さーん、帰りが遅いので来ましたが、一騎討ちは終わったんで・・・・・・えっと、もしかして私はヤバイ状況に入ってしまいましたかね?」

 

そんな中、美春ちゃんを迎えに来た様子のDクラスの女子が1人でこの教室に入ってくる。

入ってくるなり固まったけど、そりゃあFクラスの生徒が10人以上いるなかに入ってきたら、ね。

というか前に戦ったことはあるんだけど・・・名前はなんだっけ・・・?

 

「お、美鈴じゃないか。清水なら吉井を倒した後、私と一騎討ちして補習室にいるぜ。ちなみに、私との一騎討ちの前に休戦協定を結んだから、代表にでも伝えてやってくれ。」

 

「休戦協定、ですか?伝えるのは構わないんですが・・・それが嘘じゃない証拠とかはあるんですか?」

 

「まあな。これを聞けばわかる。」

 

魔理沙がそう言って取り出したのは、小型の録音機。

スイッチを押すと、休戦協定を結んだ時の会話が流れ出す。

・・・でも、なんで小型の録音機持ってたのかな?

 

「ねえ魔理沙、普段はそんなの持たないのにどうしたの?」

 

「・・・今日の星座占い、最下位だったからな。霊夢に占って貰ってラッキーアイテム聞いたんだぜ。」

 

納得。

魔理沙って意外と乙女なとこあって、星座占い気にするんだよね。

それで最下位だと、霊夢さんに占って貰ってラッキーアイテムを聞くんだよ。

霊夢さん、占うの結構好きだからね。

ちなみに的中率は7割くらいで、結構高いよ。

 

「なるほど、魔理沙さんの言うことも嘘ではないんですね~。なら、伝えておきますよ。清水さんの戦死も伝えなければなりませんし。私一人で代表を討ち取れるとも思わないので・・・。」

 

「ああ、任せたぜ!」

 

美鈴さん?が教室を出てく。

多分、これで講和は成功だと思うよ。

 

「・・・まあ、これで勝負は終わりそうだな。だが、攻めてこられても防衛できる人数は残しておくか。それじゃお前ら、教室に戻るぞ~。」

 

「「「おお~っ!」」」

 

私達も教室に戻る。

結局あれからDクラスは攻めてくることはなく、放課後までの休戦と講和に同意することを伝えに来た使者が来ただけ。

補充試験を行いつつ戦争は終了したよ。

それで、こちらの戦力が平常時に戻ったことと、お姉ちゃんの主張もあって、Bクラスも戦争の準備を中止したみたい。

設備がダウンすることもなかったし、めでたしめでたしでいいのかな?




いかがでしたか?
戦争中携帯禁止ですがそんなことは知らない。
ちなみに魔理沙は男子の停学中に携帯を新調しました。


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第四十九話「真相!」

 

 

 

 

放課後。

正式に双方の和解という形で戦争も終了したんだけど、私と魔理沙は教室に残ってた。

坂本君とムッツリーニ君、あと木下君もいるけど、なんでもムッツリーニ君が昨日の交渉の音声を残してたらしく、吉井君が美春ちゃんに何を言ったのか聞けるみたい。

確かにそれは興味あるよね。

特に魔理沙は食いついてたもん。

準備が出来たら再生するみたいだし、それまでとある準備をしながら待ってるよ。

 

「はぁ、酷い目にあった・・・あれ、雄二達は何してるの?」

 

そうしてたら、吉井君が帰ってきた。

ムッツリーニ君の準備も終わりそうだし、あらかじめ作成してたメールを送信して・・・と。

これで良しだね。

 

「おお、明久か。今からムッツリーニが面白いものを聞かせてくれるらしいからな。明久もどうだ?」

 

「・・・面白さは保証する。」

 

坂本君とムッツリーニ君が誘う。

私達全員、楽しそうだからね。

 

「そうなの?そんな面白いなら、僕も聞いてみようかな。」

 

私達の笑顔の真意に気づかず、聞く体制をとる吉井君。

流れ始める。

 

『・・・なんですか?美春になんか言いたいことでもあるんですか?』

 

『うん、一つだけ。清水さんの誤解を解いておきたいんだ。』

 

『誤解?お姉様と付き合っているのが演技というのなら既に知っていますけど?』

 

「ちょちょちょっと!なんて物を再生してくれてるのさ!?冗談じゃない!早く止め」

 

「秀吉。」

 

「了解じゃ。」

 

木下君が動いて、吉井君を羽交い締めにする。

 

『いや、そうじゃなくて・・・。その・・・美波の魅力を知っているのはキミだけじゃないってこと。』

 

「くっ!は、放してよ秀吉!これだけは本当にダメなんだ!」

 

「ふっふっふ。そうはいかんのじゃ。」

 

『何を言ってるんですかっ!いつもお姉様に悪口ばっかり言って、女の子として大切に扱おうともしないで!』

 

『うん、清水さんの言う通り、確かにお姫様みたいに扱ってるわけじゃない。男友達に接するみたいに雑な態度になってるかもしれない。けどね・・・。』

 

「わーっ!わーっ!聞くなーっ!流すなーっ!」

 

「五月蝿いな、少し黙ってろ。」

 

「むぐっ!?んむーっ!!」

 

声をあげてかき消そうとした吉井君の口を坂本君が手でふさぐ。

 

『けど、なんですか?』

 

『・・・けど、僕にとって美波は、ありのままの自分で話ができて、一緒に遊んでいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い、とても魅力的な・・・女の子だよ。』

 

・・・・・・・・・思ってたのよりすごく直球だ・・・!

私に言われたわけでもないのに、なんかちょっとドキドキしてくるかも・・・!

他の4人も驚いたような表情してる。

恥ずか死しそうな吉井君だけど、かっこよかったと思うよ!

これならきっと・・・。

 

「・・・っ!(ダッ)」

 

その時、急にムッツリーニ君が険しい顔をして廊下に出ていく。

 

「なんだ!?どうしたムッツリーニ?」

 

「・・・油断した。」

 

戻ってきたムッツリーニ君が苦々しい顔してそう呟く。

 

「んむ?まさか廊下に誰かおったのかの?」

 

「・・・今のを立ち聞きされたかもしれない。」

 

「あら、それはまた・・・。(棒)」

 

「ムッツリーニ!あいては誰!?」

 

「・・・多分、張本人。」

 

「そうか、聞かれちまったか。すまん明久、まさかこれほどのものだとは思わなかった。」

 

「すまぬ明久。」

 

「・・・すまなかった。」

 

「悪かったのぜ。」

 

「ごめんね吉井君。(棒)」

 

頭を下げる私達だけど、私の持ってる携帯の画面には送信完了の画面が表示されてる。

宛先は美波ちゃんで、送信時間はついさっき。

件名は『今すぐ教室に来て。そして廊下で中の会話をこっそり聞いててね』、本文はなし。

吉井君には悪いけど、見てられなかったから・・・ね。

今度さりげなくなにかおごってあげようかな?

 

「まあ、聞かれてしまったものはしょうがないけど・・・。悪いと思ってるなら美波との仲直りの手伝いをしてよ。あれ以来ずっと険悪なままなんだから。」

 

「大丈夫だよ!その必要はないはずだから!」

 

「・・・・・・?」

 

吉井君が不思議そうな顔してるけど、私はしっかりやったし、安心していいよ!

とにかく、これで一件落着だね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私は阿求ちゃんの家にいかないとね。」

 

ほんとなら昨日行きたかったんだけど、昨日の時点ではまだ騒動の真っ最中だったし、阿求ちゃんに責任や心配を感じてほしくなかったからね。

ちなみに魔理沙は、美波ちゃんと話をしに行ってる。

今回がはじめてじゃないし、一回家に行って適当に果物を持って行く。

使いの人に名前と阿求ちゃんのお見舞いにきたことを伝えると、案内してくれる。

・・・でもやっぱり、何回見ても慣れないな・・・。

稗田家は奈良時代からの由緒正しい家柄なだけあって、純和風のお屋敷もものすごく大きくて広いんだよね。

阿求ちゃんはそんな家筋の一人娘ってだけあってかなり家も厳しいし。

考えながら連れられ5分ほど歩くと、ようやく阿求ちゃんの部屋まで到着。

 

「失礼します。次期当主様、お見舞いにきたという友人様を連れて参りました。」

 

「ありがとう、下がっていいわ。」

 

「わかりました次期当主様。」

 

下がる使いの人。

思ってたより阿求ちゃんは元気そうに見える。

 

「いつもお見舞いに来てくれてありがとうございます。」

 

「やっぱり相変わらず凄い家だよね・・・。」

 

「まあ、知っての通り、稗田家は歴史が長い家ですから・・・。それで、私が休んでいる間なにかありましたか?」

 

「うん、結構大変なことがあってね・・・。」

 

私は昨日の朝の美波ちゃんと吉井君のキスから始まった一件について、ざっと話してく。

阿求ちゃんは興味深そうに話を聞いてくれたけど・・・時おり悲しそうな表情を見せるのが気になる。

 

「・・・どうしたの阿求ちゃん?なんか悲しそうだけど・・・。」

 

「いえ、組分け試験もですが、そういう大事な時に限って体調を崩してしまう自分が嫌になりまして・・・。」

 

「あー・・・。でも、身体が弱いのはうまれつきなんでしょ?」

 

以前阿求ちゃん本人から聞いた話だけど、稗田家は代々、瞬間記憶能力を持つ代わりに病弱で、寿命も短いらしいんだよね。

いつもは特になにもない日だったから、あんまり気にしたことはなかったけど・・・。

 

「・・・だとしても、です。大事な時に体調を崩して、迷惑をかけてしまう。そういうことがあるたび、自分が嫌でたまらなくなるんです。今回だってそうですし・・・。」

 

「・・・それは違うと思うよ。」

 

「・・・え?」

 

「今回阿求ちゃんが休んだことを責めた人なんていないはずだし、迷惑かけられただなんて思ってないよ。Fクラスの人達はバカでもそこまで人間的に腐った人はいないしね。」

 

もちろん、私だってそんなこと微塵も思ってない。

 

「そもそも、今日の戦争に負けてたとして、阿求ちゃんは肝心な日に休んだ戦犯じゃなくて、自分の力が及ばないところで設備が格下げされた人なんだから。それに、普段から頑張ってるじゃん。」

 

「そういうもの、なんでしょうか・・・?」

 

「そういうものだよ。というか迷惑かけてもいいんだよ。異端審問会なんてもんがあるくらいだしね・・・。」

 

「確かに、あれはおかしいですものね・・・。」

 

クラスメイトが一丸となること自体は悪いことじゃないけど、その内容が、ね・・・。

世界中どこを探してもあんなクラスはないと思うよ・・・。

 

「・・・でも、少し元気が出ました。ありがとうございます。」

 

「それならよかったよ!」

 

阿求ちゃんも元気そうだし、あんま遅くなるわけにもいかないから、その後30分くらい話して帰ることに。

昨日は38度5分まで熱上がったけど、今日の昼くらいに平熱まで下がったみたいだし、明日には登校できるみたい。

帰る前に、阿求ちゃんが読むことが許されてないけど隠れて読んでる、こっそり持ってきたまん○タイムきららを渡して、私は帰る。

帰りも使いの人に連れられて歩く。

阿求ちゃん、明日来られるといいな。




いかがでしたか?
こいしちゃんの策略で美波は聞いてしまいました。
ちなみにこいしちゃんがお見舞いに行っている間に美波と魔理沙は仲直りしたそうです。


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第五章『期末テスト!』
第五十話「異変!」


ついに50話突破!
でも5巻書きにくい。


 

 

 

 

「そういえばお姉ちゃん、もうすぐ期末テストだけど調子はどうなの?」

 

夏に近づき、期末テストももうすぐな日の朝。

私はいつも通りお姉ちゃんと登校しているよ。

 

「私は問題なさそうよ。恐らく根本よりは取れるわ。」

 

根本はBクラスの代表。

お姉ちゃんは組分け試験ではBクラスで2番目だったけど、本来はお姉ちゃんの方が成績がいいんだよね。

本当ならAクラスにいるべきなんだけど、私、お燐、お空に勉強を教えてくれたこともあってカバーしきれなかったみたいなの。

だから、極力お姉ちゃんの邪魔にならないようにしてるよ。

 

「それよりこいしはどうなの?最近私に勉強教わりに来ないけど・・・。」

 

「わ、私も大丈夫だよ!お姉ちゃん程じゃないけど取れるから!」

 

私の学力は、本来はBクラスとCクラスの間くらいなんだよね。

 

「・・・ところでこいし、アレは何なのかしら。見たところ、Fクラス代表のように見えるのだけど・・・。」

 

ん?

お姉ちゃんの指差した方を見てみると・・・あれはダッシュしてる坂本君のように見える。

でも、なんで裸Yシャツ(+トランクス)・・・?

正直朝から見たいものじゃないよ・・・。

 

「・・・いや、あれは知らない人じゃないかな?」

 

うん、私は何もミテナイ。

でもお姉ちゃんにあんな姿を見せた坂本君にはちょっとした制裁しないと。

・・・坂本君に意味深なメールを送ってみようかな?

 

「・・・それはやめなさい、こいし。今の状況だと下手したら彼は全てを失いかねないわよ。」

 

早速やろうとしたけど、確かにそれは困るかも。肌色一色の坂本君とか見たくないし・・・。

そんなものをお姉ちゃんが見たりなんかしたら、私は坂本君を最大限の苦痛とともに消さなきゃいけないもん。

 

「・・・まあ、さっき見たものは忘れるとして、勉強でわからないところや詰まったところがあったら、遠慮せずに言いなさい。こいしの点数が伸びるのは、姉として嬉しいことなのだから。」

 

やっぱり、私の考えてることはお姉ちゃんにはお見通しみたいだけどね。

お姉ちゃんはやっぱり優しい!

そのあとはとりとめもない話をしながら歩き、校舎が見えてくる。

 

「じゃあ、頑張りなさい。」

 

「うん、またね~!」

 

校門で、お姉ちゃんと別れて教室に向かう。

とりあえず、さっき走っていった坂本君に事情を聞きたいかな。

もう教室にはいると思うけど、まさかまだあんな姿じゃないよね・・・?

ちょっとドキドキしながら教室の扉を開ける。

 

「雄二の家に泊めてくれないかな。今夜はちょっと・・・帰りたくないんだ!」

 

・・・・・・・・・。

扉を開けるなり聞こえてきた吉井君のセリフがちょっと理解出来なくて、思考がちょっと停止したよ。

こういう時、私はどうすればいいのかな・・・?

 

「・・・ウチにはアキの気持ちがわからないっ!」

 

あ、いつの間にか後ろにいたみたいな美波ちゃんが鞄を投げすて、走り去ってった。

 

「え!?何!?なんで美波は登場と同時に退場したの!?それに古明地さんはなんで硬直してるの!?」

 

・・・いや、なんでって言われても、友人がいきなりそんな関係になってたら誰でもこういう反応になると思うけどね。

しかも、坂本君があんな格好してるのを見た後だし・・・。

 

「あ、明久君!そういうのはまだ早いですっ!もっと大人になってからにしてくださいっ!」

 

姫路ちゃんも顔を赤くして注意してる。

好きな人が同性にそんなメール送ってたことを知った姫路ちゃんの気持ちはある程度ならわかるかな。

 

「・・・?明久は走っていくし、島田も教室から走り出しておったし、今朝はえらく慌ただしいのう。何かあったのかの?」

 

そんな中、教室に入ってきた木下君が不思議そうにしてる。

 

「いや、特に何もないけど。」

 

「なんじゃ、先程のことといい、ワシに隠し事かの?ちと寂しいのじゃが・・・。」

 

吉井君にそう言う木下君は、なんか罪悪感抱きそうになる顔してる。

木下君ってときおり女の子より女の子してるよね。

女学院に紛れ込んでも多分バレないような気が。

 

「聞いてくれ秀吉。明久が朝から公序良俗に反することを言っててな。」

 

「ち、違うよ!ムッツリーニじゃあるまいし、そんな真似はしないよ!」

 

「・・・・・・失礼な。」

 

当のムッツリーニ君がいつの間にか来てた。

さっきまでは気づいてなかったけど、いつの間に?

というか・・・。

 

「あれ、ムッツリーニ君、なんか荷物多くない?」

 

普段使ってる鞄だけじゃなくて、両手でなんか大きな包み抱えてる。

 

「・・・ただの枕カバー。」

 

「ん?ムッツリーニ、その割には包みが大きすぎない?」

 

「・・・そんなことはない。」

 

ブンブンと首を振って否定するムッツリーニ君。

こういう時はなにかを隠してることが多いよね。

 

「ごめんムッツリーニ、ちょっと中身を見せてね。」

 

「・・・・・・あ。」

 

ムッツリーニ君が持ってる包みを吉井君がひとつ奪い取り、中身を見る。

私も少し気になるかな。

 

「さて。何が入っているのか・・・な・・・・・・ムッツリーニ、何、コレ・・・?」

 

中身を見た吉井君がすっごく複雑な表情しながらムッツリーニ君に聞いてる。

中身を横から覗かせてもらうと・・・中に入ってたのは等身大の吉井君がプリントされた白い布(セーラー服ver)。

 

「・・・ただの抱き枕カバー。」

 

「ただの、じゃないっ!枕カバーと抱き枕カバーには大きな隔たりがあることを覚えておくんだ!というか何で僕の写真なのさ!」

 

「・・・世の中には、マニアというものがいる。」

 

ほほう、さては姫路ちゃんや美波ちゃんだね?

 

「何を言ってるのさ!僕の抱き枕カバーを欲しがる人なんてどこにも・・・。」

 

コンコン。

吉井君が話してる途中で扉がノックとともに開けられる。

 

「失礼。土屋君はいるかい?前に頼んだ枕カバーを・・・」

 

「あれ?久保君、珍しいね。ムッツリーニに何か用なの?」

 

「・・・何でもない。用事を思い出したのでこれで失礼するよ。」

 

多分その枕カバーを受け取りに来たんだと思うけど、さすがに本人の前では受け取れないようでUターンしてった。

・・・というか、久保君はムッツリーニ君と取引してたんだね。

 

「とにかく、これは没収するからね・・・。僕の抱き枕カバーは全部回収して、写真を全部秀吉にして持ってきてよ・・・。」

 

「明久よ、どさくさに紛れてワシの抱き枕を作ろうとするでない。」

 

「ダメですよ明久君。人のものを勝手に取って改造するなんて、いけないことなんですよ?・・・それに1枚は私の分ですし・・・。」

 

やっぱり、そうだったみたい。

でも、さっき見た時、抱き枕は5つくらいあったように見えたんだけど、美波ちゃん、姫路ちゃん、久保君以外にあと2人くらい欲しがってる人がいるのかな?

 

「ところで、先程のお主らの話はなんだったかの?」

 

「ああ、俺が明久にトランクス姿での登校を強要されたという話だ。」

 

ふーん、そうだったんだね。

それなら・・・。

 

「雄二っ!わざと誤解を招くような言い方をしないように!というか古明地さんはどこに電話しようとしてるのっ!?」

 

「ん?警察だよ?」

 

「誤解だから!誤解だから通報しようとしないで!」

 

個人の範疇で楽しむのはいいけど、お姉ちゃんに迷惑をかけるのはダメだし、通報しようかなって思ったけど、誤解なの?

 

「まあそれは冗談だが・・・、要するに、明久が送ってきたメールのせいで翔子が勘ぐって、それで俺が酷い目に会わされたってことだ。」

 

「メール?それは今朝の明久の様子がおかしいのと関係があるのかの?」

 

木下君が何となく呟いたような言葉を聞いて見てみると、確かに吉井君の様子がちょっと違うかも。

寝癖がないし、顔色がいいし、制服も糊まで利いてパリッとしてる。

みんなもおかしいって思ったみたいで、それぞれが意見を述べてる。

 

「た、たまにはそういう気分になっただけだよ!それよりそろそろチャイムが鳴るよ!それじゃ!」

 

強引な話の反らしかたをしたあとで、逃げるように吉井君が自分の席に向かってく。

 

「「「・・・・・・怪しい。」」」

 

私以外もみんなそう思ったみたいで、全員が呟く。

まあ、吉井君は嘘つくのが苦手だからね。

それが彼のいいとこだとも思うけど。

とにかく、この場ではそれ以上追求は出来なさそうだし、またあとで話してみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして昼休み。

午前中、私はとっても珍しいものを見たよ。

なんと、吉井君が真面目に授業を受けてたのだ!

これには先生達も異常だと認識したみたいで、保健室に行くよう言う先生が多数・・・というか今日の授業をした先生全員。

やっぱり、今日の吉井君はなんか変だ。

 

「やっぱり、今日のアキはなんか変よ。熱でもあるんじゃないの?」

 

美波ちゃんもやっぱそう思ったみたいで、吉井君の額に手を当てて熱をはかろうとする。

 

「って、これはダメだっ!」

 

「きゃっ!」

 

なんでかはわからないけど、美波ちゃんが伸ばした手を避けるように距離をとる吉井君。

いきなりだったからか、美波ちゃんが小さく悲鳴をあげる。

 

「こらっ!せっかく人が心配してるのに、何よその態度!」

 

「ご、ごめん!でもこれには事情があるんだ!」

 

「事情?何よそれ?」

 

「え、えーっと、それは・・・。そ、それよりお昼にしようよ!あまり話していると、昼休みが終わっちゃうよ!」

 

事情とやらを聞かれたくないのか、強引に話を反らして弁当を取りだす・・・・・・取りだす?

 

「え、アキ!?お弁当を持っているなんて、一体どうしたの!?」

 

「普段吉井君水と塩なのに珍しいよね?」

 

美波ちゃんもおかしいと思ったみたいで、驚いてる。

 

「・・・あら?吉井君は今日は弁当、しかも手作りなんですね。始めて見たような気がします・・・。これは驚きですね。」

 

たまたま近くを通った阿求ちゃんがそう言うってことは、すくなくとも2年になってからは初ってことだよね。

 

「いや、みんな、そこまで驚かなくても・・・。僕だって人間なんだから、たまには栄養をとらないと死んじゃうし・・・。」

 

いや、普通の人間は毎日栄養をとらないとダメなんだよ?

 

「・・・まさか、誰かにつくってもらったとか?」

 

美波ちゃんの目が、スッと細められる。

まあまあ、落ち着いてよ美波ちゃん。

 

「一応、自分で作ったんだけど。」

 

「嘘ね。」

 

「あの、吉井君は確か料理出来ましたよ・・・?」

 

即座に否定する美波ちゃんに阿求ちゃんが言う。

私の記憶でも、吉井君は料理は出来たはずだけどね。

 

「でも、随分と上手な弁当ですよね。栄養バランスも良さそうですし。」

 

「これほどの弁当を作れる人というと、坂本か土屋のどっちかね。」

 

「美波ちゃん、認めないのね・・・。」

 

先入観って怖いなぁ。

確かに初見じゃ信じられないとは思うけどね。

 

「・・・やれやれ、想像にお任せするよ。」

 

「アキ・・・。そんなに汚れちゃってたのね・・・。」

 

「何!?何を美波は想像したの!?」

 

んー、いきなり吉井君が手作り弁当作ったのはどうしてなんだろ?

もしかして、一人暮らしでキチンと出来てるか監査が入ったとかかな?

彼女・・・はちょっと考えづらいと思う。

 

「・・・やっぱり、雄二の浮気相手は吉井だった。」

 

わっ、気づかなかった。

いきなり来てそんなパワーワードを言ったのは霧島さん。

 

「あら、翔子さん。何か用があったのですか?」

 

「・・・(コクリ)雄二にズボンを返すつもりだった。」

 

今朝の坂本君の超クールビズ登校は霧島さんのせいだったのね。

・・・ん?だった?

 

「ああ、翔子か。そうかそうか、やっと制服を返す気になったんだな。」

 

「・・・浮気には、お仕置きが必要。」

 

霧島さんが放つ殺気に気づかず、少し離れたところから呑気に近づいてくる坂本君。

逃げて。

 

「やれやれ、これでやっとマトモな服装に・・・ん?なんでズボンを離さないんだ?」

 

「・・・雄二。私は、雄二に酷いことをしたくない。」

 

「酷いことをしたくない?よくわからんが、いい心がけだな。」

 

「・・・だから、先に警告する。・・・おとなしく、私にトランクスを頂戴。」

 

ダッ(坂本君、猛ダッシュ)

 

「あはは、雄二はバカだなぁ。」

 

「私としてはトランクスは取られないで欲しいかな・・・。」

 

坂本君の坂本君は見たくないもん。

 

「まあ、坂本のことは置いておくとして、アキはその弁当、食べるの?」

 

「え?まあ、そりゃあね。」

 

「ふーん・・・。坂本の愛妻弁当をね・・・。詳しい事情を聞かせてほしいわね。」

 

「・・・確かに私も非常に気になりますね。それなら、こういうのはどうでしょう?そこにいる風見先生に協力していた」

 

ダッ(吉井君、猛ダッシュ)

 

「待ちなさいアキ!殴らないから事情を教えなさいっ!」

 

あら、吉井君と、彼を追う美波ちゃんが走っていっちゃった。

廊下に出て様子を見に行ってみると、いつの間にか合流した坂本君と吉井君が全力で逃げてた。

・・・大丈夫かな?

とりあえず、やっぱり気になるし、私もあとで改めて聞いてみよっかな。




いかがでしたか?
ちなみに風見先生は基本的には優しく生徒からの悩み相談も受けますし、姫路さんは別に悪意はないのですよね。


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第五十一話「お姉さん!」

 

 

 

その日の放課後。

 

「ねえ雄二、今日は泊めてよ。期末テストにむけて、勉強を教えてほしいんだ。」

 

ざわ・・・ざわ・・・。

普段はテスト勉強なんてしない吉井君が発したその言葉に、教室中がざわめく。

 

「マジかよ・・・!今の聞いたか・・・?」

 

「ああ・・・。まさかあの吉井と坂本が・・・。」

 

「「期末テストの存在を知っていたなんて・・・!」」

 

あ、そっち?

坂本君は元神童って呼ばれてたみたいだし、さすがにテストの存在は知ってたでしょ。

 

「吉井、今回はやけにやる気じゃないか?何か理由があるのぜ?」

 

「え、えっと・・・。実は今回の試験では、召喚獣のデータがリセットされるみたいなんだ!だったら頑張らなきゃ『嘘だな。』いけ・・・って嘘じゃないって!」

 

「嘘じゃないにしろ、すくなくとも何か別の事情があるんじゃないか?吉井がそれだけでそこまでやる気になるとは思えないんだが・・・。」

 

今の会話が聞こえてたみたいな正邪ちゃんが言う。

実際、なんからの事情は絶対あると思うんだけど・・・。

 

「でもそれより、召喚獣のデータリセットってどういうことなの?」

 

正直、私はそっちの方が気になる。

 

「えっとね、普段は組分け試験でしか召喚獣の設備は変わらないでしょ?でもババァが特別に、今回の試験でも装備を変えるみたいなんだ。木刀だと、武器を交わすたびにすり減ってそうで嫌なんだよね・・・。」

 

へ~。

装備が変わるってことは、今の武器じゃなくなる可能性があるのかな?

私やお姉ちゃんの黒の腕輪のはどうなるんだろ。

 

「・・・まあ、俺としてもお前の点数が伸びるのは悪いことではないし構わないが、勉強会はお前の家でだ。」

 

「え、えっと・・・。今日は改装工事の業者が来る予定になっていて・・・。」

 

「嘘つけ。本当なら今日はお前の家でボクシングゲームをすることになっていただろ。」

 

「・・・じゃなくて、家が火事になって・・・。」

 

「火事になったのに顔洗って弁当作って制服糊付けして登校してきたのか?どんだけ大物なんだよ。」

 

「・・・じゃなくて、えっと、えっと・・・。」

 

「いい加減にしろ明久。お前の嘘は底が浅いんだよ。」

 

「それなら、私も行くぜ。興味が湧いたしな。」

 

「・・・俺も行く。」

 

「ウチも興味あるわね。」

 

「テスト前じゃから部活もないしの。」

 

「私も興味があるのですが、今日は小鈴と約束しているんですよね・・・。」

 

吉井君の家に坂本君が行くことが決まった後、行くという意思表示が次々されてく。

もちろん、私もね。

阿求ちゃんは不参加みたいだけど、彼女以外は行くみたい。

 

「ちょ、ちょっと、部屋が散らかってるし、そんな大人数は・・・。」

 

「なら、私も部屋の片付けを手伝いますっ。お部屋が汚いとお勉強に集中出来ませんし・・・。」

 

「私も手伝うよ~。」

 

私自身、掃除はよくやるからね。

お姉ちゃんには綺麗な家で生活してほしいし。

そうして、みんなで吉井君の部屋に押しかけることになったよ。

あ、そうそう、私からお空を誘ってみたら行きたいって言われたからお空も一緒にね。

最近あまり一緒にいられてなかったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、何があるんだろうな。ムッツリーニと違って、明久は滅多に隠し事しないし。」

 

「・・・(ブンブン)。」

 

「今朝からのおかしい点っていうと、お弁当を作ってきたり、身だしなみを整えて来たり、勉強をやろうとしたりというところだね。」

 

「ふむ、女でも出来たのかの。」

 

「「「・・・!」」」

 

木下君の言葉に、私とお空以外のみんなが大きく目を見開く。

 

「あ、アキっ!どういうこと!?説明しなさい!」

 

「うーん、吉井に私達にも秘密な彼女、か・・・。友人としては祝うべきなのはわかってるんだが、釈然としないというかもやもやするぜ・・・。」

 

「・・・裏切り者。」

 

「僕、何も言ってないんだけど・・・。」

 

みんな、想像力豊かだね。

 

「大丈夫ですよ。明久君が私達に隠れてお付き合いなんて、そんなことをするはずがありません。ね、明久君?そんな人がいたりなんて、シマセンヨネ・・・?」

 

姫路ちゃんの笑顔が怖いよ。

最近、姫路ちゃんはFクラスの悪い影響を受けすぎてると思う。

そんなこんなで、吉井君が住んでるマンションに到着っと。

私はいままで3回来たことあるけど、最近は来てなかったかな。

 

「さて、着いたな。明久、鍵を出せ。」

 

「ヤだね。」

 

「明久、裸Yシャツの苦しみ、味わってみるか・・・?」

 

「え、待って!?会話のステップがたくさん飛んでない!?」

 

せめてもの抵抗とばかりに拒否する吉井君に対してつきつけられたのはそんな脅迫。

 

「・・・涙目で上目遣いだと好ましい。」

 

「売る気!?もしかして抱き枕に使う気!?リバーシブルで、裏は秀吉!?」

 

「明久よ。何故そこでワシを巻き込むのじゃ。」

 

「あの・・・。上2つのボタンは開けておいていただけると・・・。」

 

「姫路さんも最近おかしいからね!?わかったよ!開ければいいんでしょ!」

 

「・・・ボタンを?」

 

「鍵を!」

 

さすがに屈したか、鍵を開ける吉井君。

 

「まあ、上がってよ。」

 

腹を括ったのか、私達をリビングに上げる吉井君。

扉が開けられ、まず見えたのは・・・・・・干されてるブラジャー(けっこう大きい)。

 

「いきなりフォロー出来ない証拠がぁーっ!?」

 

慌てて駆け込んで別室に放り込む吉井君だけど、もう私達は全員見ちゃったよね。

 

「・・・もう、これ以上ないくらいの物的証拠ね・・・。」

 

「・・・そうじゃな。」

 

「まさか本当にいたとはな・・・。」

 

「・・・殺したいほど、妬ましい・・・!」

 

それぞれがそれぞれの反応を見せる。

 

「・・・ダメじゃないですか明久君。あのブラ、サイズが合っていませんよ?」

 

「「「コイツ認めない気だ!」」」

 

そのなかで唯一、現実から目を反らす姫路ちゃん。

あのブラは吉井君がつけてるということにしたみたい。

 

「あら、これは・・・。」

 

次に姫路ちゃんが見たものは、化粧用のコットンパブ。

私達くらいの歳なら、下手に化粧するより素肌で勝負するのがいいみたいだから、化粧は使わないけど判別くらいは出来るよ。

これも証拠だね。

 

「ハンペンですね。」

 

「「「ハンペェン!?」」」

 

・・・4月の殺人料理事件を考えると、今回は本気な可能性があって怖い。

あれ以来、料理について学んでるみたいだけどね。

 

「・・・しくしく、もう否定出来ません・・・。」

 

「なんで女性用下着も化粧用品もセーフなのに、女性用弁当はアウトなの!?姫路さんのなかで、女性用下着や化粧用品はどういう認識なの!?」

 

しくしく泣き出した姫路ちゃんが見たものは、どうやら女性用のヘルシー弁当みたい。

基準はどうなってるの?

 

「・・・はぁ、もうこうなったら正直に言うよ。実は今、姉さんが来てるんだよ・・・。」

 

お姉さん?

それなら吉井君の部屋にこういうのがあるのは自然なことかも。

同棲してる彼女よりは明らかに説得力あるしね。

 

「な、なんだ、アキに彼女が出来るわけないものね!」

 

「・・・納得。」

 

「・・・あれ、でもそれだけならなんであんなに隠そうとしたの?」

 

私の言葉に、余計なことをというような表情をする吉井君。

でも、自慢のお姉ちゃんを持つ私からすると、わからないんだよね。

 

「まだ何か隠してるんだろ?もう全部ゲロって楽になれよ、な?」

 

坂本君が肩を叩く。

まあ、もう隠しとおせる状況でもないしね。

 

「わかったよ・・・。実は、姉さんは・・・僕から見てもかなり変というか・・・常識がないというか・・・。だから、一緒にいると大変で、色々減点とかされるし、帰りたくなくて・・・。はぁ、お姉さんが常識人な古明地さんが羨ましくなるよ・・・。」

 

「まあ、お姉ちゃんは自慢のお姉ちゃんだしね!でも、吉井君が非常識って言うなんて、どれだけ・・・?」

 

「確かに興味が出てきたぜ。」

 

「そこまで言われる人物とは会ってみたいな。」

 

みんな、当然のように興味を示す。

もちろん、私もね。

 

「あー、お前ら、そういう下世話な興味は良くないと思うぞ。誰にでも隠したい姉とか母親とかあるだろ。」

 

それを諫めたのは、とても意外なことに坂本君。

坂本君が吉井君に助け船を出すなんて珍しいよね。

 

「ゆ、雄二・・・。ありがと」

 

ガチャ

 

「あら?アキくん、姉さんが買い物に行っている間に帰ってきていたのですね。」

 

・・・あ、ちょうどお姉さんが帰ってきたみたい。

すごいタイミングだね。

吉井君が隠れるよう言うけど、私も含めて会う気満々だから効果はナシ。

一瞬の後、リビングが開かれた。

 

「あら、お客様ですか。ようこそいらっしゃいました。狭い家ですが、ゆっくりしていってくださいね。」

 

「「「お、お邪魔してます・・・。」」」

 

普通じゃん。

ごく普通の服装をしてるし、対応もおかしなところはないよね。

ちょっと拍子抜けしちゃった。

 

「失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私は吉井玲と言います。みなさん、こんな出来の悪い弟と仲良くしてくれて、どうもありがとうございます。」

 

「ああ、どうも。俺は坂本雄二。明久のクラスメイトです。」

 

「・・・土屋康太、です。」

 

「はじめまして。雄二くんに康太くん。」

 

坂本君とムッツリーニ君の自己紹介に対しても笑顔で挨拶する玲さん。

・・・いままでにおかしなところ、全くないよね?

 

「ワシは木下秀吉じゃ。よしなに。初対面の者にはよく間違われるのじゃが、ワシは女ではなく・・・」

 

「ええ、男の子ですよね?秀吉くん、ようこそいらっしゃいました。」

 

「・・・・・・っ!!わ、ワシを一目で男だとわかってくれたのは、主様だけじゃ・・・!」

 

木下君が感動してる。

まあ、普段から間違えられてるもんね。

女の子より女の子っぽいことも多々あるし。

 

「勿論わかりますよ。だって、うちのバカでブサイクで甲斐性なしの弟に、女の子の友達なんて出来るわけがありませんから。」

 

酷い確信の仕方だけど、今の3人以外女の子だよ?

 

「ですから、残りの皆さんも男の子なのですよね?」

 

「なんてことを言うのさ!雄二とムッツリーニ・・・じゃなかった、康太以外は全員ちゃんと女の子だよ!」

 

「明久よ、ワシは男で合ってるぞい!?」

 

いきなりでびっくりしちゃった。

今まで男の子に間違えられたことはなかったし・・・。

 

「・・・女の子、ですか・・・?まさかアキくんは、家にこんなにたくさんの女の子を呼ぶようになっていたのですか?」

 

玲さんが吉井君の方を向きながら言う。

 

「あ、あの、これには深い事情があって・・・。」

 

「・・・そうですか、女の子でしたか。皆さん、変なことを言って失礼しました。」

 

何か言うのかなって思ったけど、特に何も言わないで私達に謝る。

吉井君は慌てて事情を説明しようとしてたけど、どうしたんだろ?

 

「あれ?姉さん、怒らないの?」

 

「何を怒る必要があるのです?友達を連れてきただけで。それよりアキくん。」

 

「何?」

 

「今日はお客様が大勢いらっしゃるようですし、アキくんが楽しみにしていたお医者さんごっこは明日でいいですよね?」

 

・・・・・・お医者さんごっこ?

 

「ね、姉さん何言ってんの!?まるで僕が日常的にお医者さんごっこを嗜んでるかのような物言いはやめてよ!僕は姉さんとそんなことをする気はサラサラないからね!?」

 

「アキ・・・。血の繋がった、実のお姉さんが相手って、法律違反なのよ・・・?」

 

美波ちゃんがひいたような感じで言う。

まあ、私は別に構わないけどね。

私だってお姉ちゃん大好きだし。

 

「姉さん!お説教はあとでいくらでも受けるから、さっきのセリフを訂正してよ!」

 

「何を慌てているのですかアキくんは。それより、昨日姉さんが洗濯していたナース服を知りませんか?」

 

「このタイミングでそんなことを聞くなぁーっ!!」

 

吉井君が叫ぶ。

・・・なんというか、苦労しているみたい。

 

「それと、不純異性交遊の現行犯として減点を200ほど追加します。」

 

「200!?多すぎるよ!まだ何もしていないのに!」

 

「・・・・・・『まだ』?・・・250に変更します。」

 

「ふぎゃぁああっ!姉さんのバカあぁぁっ!」

 

減点?

よくわからないけど、大変そう。

でも確かに吉井君が隠したがるワケ、わかったかも。

 

「・・・失礼しました、話が反れましたね。貴女方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい。私は姫路瑞希と言います。明久君とはクラスメイトです。」

 

「ウチは島田美波です。アキとは・・・・・・友達です。」

 

「・・・鬼人正邪です。」

 

「私は霧雨魔理沙、吉井とは友達です。」

 

「私は古明地こいし、友人です。」

 

「私は霊路地空!」

 

私も含めてお空以外、みんな普段と違う口調だ。

自分でも違和感あるけどね。

 

「美波さんに瑞希さん、魔理沙さんにこいしさん、正邪さんに空さんですね。はじめまして。」

 

さっきのが嘘だったかのように普通な態度で接する玲さん。

 

「ところで、姉さんは何しに出ていたの?」

 

「夕食の買い物に行っていました。」

 

吉井君の質問に答える玲さんだけど、なんかやけに量が多いような。

 

「でも分量多くない?」

 

「いえ、この量で合っています。」

 

吉井君も思ったようで、そう尋ねるけどちょっと不機嫌そうな顔で玲さんは否定する。

 

「せっかくですし、皆さんも夕食を食べて行かれませんか?たいしたおもてなしはできませんが。」

 

確かにパッと見で10人前くらいの材料があるように見えるね。

なら、ありがたくいただこうかな。

みんなもいただくことにしたみたい。

でも、何の材料を買ってきたんだろ?

 

「ではアキくん、お願いしますね。」

 

「うん、わかったよ。」

 

あれ、吉井君が作るの?

確かに吉井君は料理出来るけど、玲さんが作るのかなって思ってたから意外だ。

 

「え!?アキが作るの!?」

 

「明久君、料理出来たんですね・・・。」

 

「そう不自然なことでもないだろ。俺やムッツリーニだって作るしな。」

 

「・・・紳士の嗜み。」

 

「ワ、ワシはあまり得意では・・・。」

 

改めて考えてみると、ここの男子達の料理出来る割合凄いよね。

ちなみに私はあまり得意じゃないよ。

 

「ムッツリーニはともかく、雄二はやっぱり作って覚えたタイプでしょ?」

 

「そうだが、何故やっぱりなんだ?」

 

「だって、雄二って家の中で一番立場低そうじゃん。」

 

???

いきなりよくわからないこと言い出した吉井君だけど、どういうことなんだろ?

 

「は?何故立場の話になるんだ?」

 

「だって、食事って家の中で一番立場が低い人が作るんでしょ?」

 

「「「・・・・・・。」」」

 

かわいそう。

吉井君、家の中で一番立場低いんだね・・・。

 

「母の方針で、我が家ではそういうことになっています。」

 

「普通、出来る人が作るもんなんだがな・・・。」

 

「今まで何の疑問も持たなかったのぜ・・・?」

 

「アキのお母さんって、案外パワフルな人なのね・・・。」

 

「え!?普通の家では違うの!?おのれ母さん!いままでずっと僕を騙し続けてくれたな!」

 

憤慨する吉井君だけど、いままで不思議に思わなかったの?

 

「んじゃ、ちょっと早いが先に夕飯の支度から始めるか。明久、手伝うぞ。」

 

「・・・協力する。」

 

「あ、ありがと2人とも。じゃ、僕達で作ってくるから、女子達は座っててよ。」

 

「楽しみにしてるぜ!サンキューな!」

 

「頑張ってね~!」

 

男子達がキッチンに消えてく。

さて、何が出来るのかな?




いかがでしたか?
こいしちゃんが主人公なので5巻はやっぱ書きにくい。


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第五十二話「勉強会!」

 

 

 

 

 

「良ければアルバムでも見ますか?アキくんの小さな頃の写真が入ってますよ。」

 

吉井君達が料理を作りに行ってからしばらく後、玲さんがそんなことを言う。

吉井君の小さな頃の写真か・・・。

私も興味あるかも。

 

「え?いいんですか?」

 

「面白そうだぜ。」

 

「では、持ってきますね。少し待っていてください。」

 

玲さんが出ていき、少ししてアルバムを手に戻ってくる。

 

「こちらが、アキくんが2歳の頃のお風呂の写真です。」

 

「わー、可愛いです!」

 

「愛くるしい顔をしておるな。」

 

「そしてこちらがアキくんが4歳の頃のお風呂の写真ですね。」

 

「風呂の中で寝てるんだな。」

 

「あどけない寝顔だね~。」

 

「吉井君、お風呂が気持ちよかったのかな?」

 

「さらにこちらがアキくんが7歳の頃のお風呂の写真で、」

 

「アキも少しがっしりしてきてるわね。」

 

「成長が見てとれるぜ。」

 

「こちらがアキくんが10歳の頃のお風呂の写真です。」

 

「待った姉さん!なんでさっきからお風呂の写真ばっかなの!?そのアルバムは中身どうなってるの!?」

 

お風呂の写真を次々出す玲さんに耐えかねたのか、台所から吉井君の声が聞こえてくる。

そりゃあ恥ずかしいよね・・・。

料理中じゃなければ止めにきてたと思うよ。

 

「そして、これが昨夜のアキくんのお風呂の写真です。」

 

「「・・・・・・(ゴクリ)」」

 

・・・・・・昨夜?

 

「放して雄二!もう料理なんてどうでもいい!このフライパンであのバカ姉の頭をカチ割ってやるんだ!」

 

さすがに吉井君も我慢の限界だったようで、台所から叫び声とバタバタと音が聞こえてくる。

坂本君が抑えてるみたいだけど。

・・・でも、今の吉井君のお風呂姿、ちょっと興味あるような、見ない方がいいような・・・。

ちなみに、結局、美波ちゃんと姫路ちゃん、あと魔理沙は見てたよ。

美波ちゃんと姫路ちゃんはともかく、魔理沙はちょっと意外かも。

怖いもの見たさみたいな感じなのかな?

見なかった私、正邪ちゃん、お空、あと木下君は普通の写真を見せてもらってたよ。

 

 

 

 

 

「おい皆。夕飯が出来たぞ。」

 

そんなこんなで時間が経ち、夕食が完成したみたい。

えーと、確かこれはパエリアだったかな?

 

「ほえ~、美味しそうだね~!」

 

「うん、早く食べたくなるよ!」

 

「そ、そうね・・・(ポッ)」

 

「お、美味しそうです・・・(ポッ)」

 

「食欲をそそられるぜ・・・(ポッ)」

 

「ねえ、なんで美波、姫路さん、魔理沙は僕を見て顔を赤くしてるのかな?」

 

「まあまあ吉井、私や古明地は見てないから落ち着けって。」

 

うんうん。

まあでも、他の写真は見たけどね。

 

「まったく、アキくんの声がこちらまで聞こえていましたよ。もっと落ち着きを持つべきですね。」

 

「それは姉さんが原因だからね!?」

 

「どうやらカルシウムが足りていないようですね。皆さん、ムール貝の殻はこちらにお入れ下さい。」

 

「殻だけ!?僕の夕食、殻だけなの!?これって苛めだよね!?」

 

吉井君のパエリアの皿をのけて空の皿を置き、貝の殻をここに入れるようにと言う玲さん。

・・・流石に可哀想になってきたかも。

 

「姉さん・・・。もしかして、僕のこと、嫌いなの・・・?」

 

吉井君がちょっぴり涙目で玲さんに尋ねる。

 

「心外です。私がアキくんのことを嫌う訳がないじゃないですか。むしろその逆です。」

 

「・・・逆?逆ってことは・・・。」

 

「はい、私はアキくんを愛しています。」

 

おお~、堂々と愛してると言えるくらいなんだね!

 

「一人の異性として。」

 

「最後の一言は冗談だよね!?それならむしろ嫌いでいてくれた方が嬉しいんだけど!?」

 

さすがに冗談だとは思うけどね。

まあ・・・私もお姉ちゃんのこととっても大好きだから、あまり言えないけど。

 

「日本の諺に、こういうのがありますよね。バカな子程可愛いと。」

 

「明久、諦めろ。世界でこの人ほどお前を愛している人はいないぞ。」

 

「それって僕が世界一バカだって思われてるってこと言いたいの!?」

 

「う、ウチだってアキのことを世界一バカだって思ってるんだから!」

 

「わ、私だってそうです!」

 

「やめてあげて!吉井君のライフはもう0だから!」

 

言葉による袋叩きにあってる吉井君はかなり可哀想なことになってる。

今の状況、バー○ーカーソウルみたい。

 

「とにかく、覚めないうちに頂きましょう。」

 

「「「頂きまーす!!」」」

 

玲さんの言葉で、みんなでいただきますをする。

なんというか普段塩と水が主食な吉井君とは思えないくらいに上手で美味しい!

みんなも美味しいって好評みたいだね。

美波ちゃんは料理の腕のプライドが打ち砕かれたかのような表情してるけど。

姫路ちゃんも複雑そうな表情してる。

 

「上手に出来ていますね。アキくんが知っているものと違う材料を用意したのにいつも通りなのは残念ですが。」

 

「偉そうに言うなぁ。姉さんは料理からっきしなくせに。」

 

さっき吉井君に材料渡したあたりでわかってたけど、玲さんは料理はダメらしい。

どれくらいなのかはわかんないけどね。

ちなみに、私は目玉焼きまでなら作れるレベルだよ。

 

「そう見くびってもらっては困ります。姉さんだって、海外で成長していたのですから。」

 

「おっ?どう変わったの?」

 

「胸がEカップになりました。」

 

「アンタに恥じらいの概念はないのか!?料理関係ないし!」

 

突っ込む吉井君。

ものすっごい羨ましそうな目してる美波ちゃんと鼻を押さえてるムッツリーニ君が印象的だね。

 

「勿論料理だって勉強しましたよ。ついに、海栗とタワシの区別がつくようになりました。」

 

「僕としては、いままで区別出来なかったことが驚きだよ・・・。」

 

・・・料理以前の問題?

お米をとぐ時、砥石や洗剤使おうとする鉄板ボケみたいなことをやっちゃいそうな予感がするな・・・。

何故か坂本君が「羨ましい・・・。」って呟いてたのが気になったけどね。

 

「ところで皆さん。うちの愚弟の学校生活はどんな感じでしょうか?例えば、成績や異性関係など。」

 

後半が強調されてたけど、そこを聞きたいのかな?

でも、吉井君に無断で不利益になるようなことはしゃべらない方がいいよね。

さっき減点とかされてたし・・・。

美波ちゃんとキスしたことを言ったら、吉井君下手すると死の危険がありそうなんだよね。

 

「んー、吉井君最近成績も少し伸びてきたと思いますよ。」

 

「え、ええ。ウチもそう思うわ。」

 

「今日も(は)授業中頑張っていたと思うぜ。」

 

「そうですか。それで、異性関係の方は?」

 

「私はよくわからないかな。」

 

「私もだぜ。」

 

「私もわからないです・・・異性関係は。」

 

「ウチも・・・異性関係は。」

 

異性関係はと強調する美波ちゃんと姫路ちゃん。

でもまあ、久保君のことを言うわけにもいかないもんね・・・。

あなたの弟さん、学年次席の男の子に恋愛的な意味で好意を持たれて、抱き枕カバーの柄にされてますよなんて、言われたらちょっと引くよね。

 

「そうですか・・・。では、秀吉くんは何かご存知でしょうか?」

 

「そうじゃな・・・。何か、となると『秀吉、あーん。』んむ?あーん、じゃ。」

 

何か言われる前に木下君にフォークを差し出してセリフを中断させる吉井君。

玲さんは食べ物が口に入ってる間にしゃべるのを良しとしないみたいで、木下君が飲み込んでからもう1回尋ねた。

 

「それで秀吉くん、さっきの話を」

 

「秀吉、あーん。」

 

「あーん、じゃ。」

 

もぎゅもぎゅ。

 

「秀吉くん、お話を」

 

「秀吉、あーん。」

 

「あーん、じゃ。」

 

もぎゅもぎゅ。

 

「秀吉く」

 

「秀吉、あーん。」

 

「あーん、じゃ。」

 

ごきゅぼきゅ。

・・・あれ?

 

「ふぬあぁぁあっ!肘の間接が!逆方向向いて次世代型の人間になってるよ!」

 

玲さん、躊躇いなく吉井君の肘間接を逆方向に曲げたよ・・・。

 

「それで、秀吉くんはなにか知っていますか?」

 

しかものたうつ吉井君を完全無視。

美波ちゃんより怖いよ。

 

「そうじゃな・・・。本人が何も言わぬなら、ワシが言うわけにもいかぬじゃろ。」

 

「わかりました。あとでアキくんからぼっきり聞き出すことにします。」

 

「それがいいじゃろ。」

 

「待った姉さん!ぼっきりって何!?普通そこはじっくりとかゆっくりだよね!?」

 

ぼっきりだと、吉井君骨持ってかれそう。

木下君、具体的なことは言わなかったけど何かあったのが明白な言い方だったしね。

「明日の夕食は魚にしようかな・・・。」って呟いてるけど、骨折対策のつもりなのかな?

 

「そういえばアキくん、姉さんは明日からしばらく帰りが遅くなるので、夕飯は用意しなくても大丈夫ですよ。」

 

吉井君が嬉しそうにしてる。

「これでしばらくは姉さんの圧力から解放される・・・!」って顔してる。

 

「アキくん、嬉しそうですね?」

 

「うぇ!?そ、そんなことないよ!せっかく帰ってきた姉さんの帰りが遅いなんて淋しいナー。」

 

「英語で言ってみて下さい。」

 

「Happy!」

 

「・・・・・・(パァン)」

 

「あ、痛っ!姉さっ・・・食事中にビンタはっ・・・。」

 

吉井君、そこはHappyはダメでしょ・・・。

食事中にビンタはどうかとは思うけど、玲さんが怒るのも当然だよ?

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろお勉強を始めましょうか?」

 

「そうだね。いつものように勉強を始めようか!」

 

(主に吉井君の身体に)一波乱あった夕食のあと、私達は目的であった勉強会をはじめようとしてた。

ていうか吉井君、今回がはじめてだよね?

玲さんがいるからだとは思うけど。

 

「皆さんでお勉強ですか。それなら昨日、部屋を掃除していたらいいものを見つけました。今持ってきますね。」

 

玲さんがリビングを出て、すぐに戻ってくる。

手に持っているのは、本かな?

タイトルは・・・。

 

『女子大生 魅惑の大胆写真集』

 

「アキくんの部屋で見つけました。」

 

「僕のトップシークレットがぁーっ!!」

 

・・・こういう時、どう反応したらいいんだろ。

異性の友人のそういう本を、お姉さんが持ってくるなんて経験、当然はじめてだもん。

 

「というか姉さん、あれだけ部屋に入るなって言ったのに僕の部屋に入ったね!」

 

「昨日、アキくんが入ってほしいって言ったではないですか。」

 

「あのときの着替えはこれが目的か!」

 

何があったんだろ、すごく気になる。

 

「良ければ保体の教科書にどうぞ。」

 

「じ、じゃあ、使わせて貰おうかな・・・。」

 

「わ、私も・・・。」

 

「姫路さんも美波も見ようとしないで!お願いだから!」

 

私はそういう本持ってないからわかんないけど、異性にそういう本見られるのはそりゃあ嫌だよね・・・。

 

「アキくんのベットの下にあった他の参考書も確認しましたが、どうやらアキくんは胸が大きくポニーテールの女の子を重点的に学習しているようですね。」

 

「やめて姉さん!言い方を変えても僕の嗜好をばらしてるのは変わりないから!」

 

胸が大きくて、ポニーテール・・・。

姫路ちゃんと美波ちゃんの特徴が万々って感じなのかな。

 

「そうですか・・・。んしょ・・・っと。」

 

姫路ちゃんがわかりやすすぎるね。

絶対あれポニーテールにするつもりだよ・・・。

 

「みっ、瑞希っ!どうして急に髪をまとめ始めるのよっ!?」

 

「べ、別に深い意味はありませんよ?ただ、お勉強の邪魔になるかと思って。」

 

「それならウチがやってあげるわっ!お団子でいいわよねっ!」

 

「美波ちゃん、意地悪です・・・。」

 

姫路ちゃんと違って、求められてる部分がどうしようもない美波ちゃんが、姫路ちゃんの背後にまわってお団子に髪をまとめてる。

お団子姫路ちゃん、なかなか新鮮かも。

 

「お勉強なら、宜しければ私が見て差し上げましょうか?」

 

「え?お姉さんが、ですか?」

 

玲さんの提案に姫路ちゃんが目を丸くしてる。

私も、さっきまでの行動を見てるから同じ思いだよ。

 

「はい。日本ではなくアメリカのボストンにある学校ではありますが、大学の教育課程を昨年修了しました。多少はお力になれるかと。」

 

ボストンの大学・・・?

そこってもしかして、あの世界的に有名な・・・!

 

「ぼ、ボストンの大学だと・・・!?それってまさか、世界に名高いハーバード・・・」

 

「よくご存知ですね。その通りです。」

 

「「「えぇぇっ!?」」」

 

驚き・・・。

玲さん、頭すごくいいんだね・・・。

天才ってどこか変わった人間が多いって言うけど、玲さんも多分その類なのかな。

というかお姉さんがそんなに勉強出来るのに・・・吉井君ドンマイ。

 

「なるほど、出がらしか・・・。」

 

「雄二、その言葉の真意を聞かせてくれないかな?」

 

坂本君も似たこと思ったみたい。

失礼かもだけど、2人合わせたら平均的になりそう。

 

「そういうことならお願いしたいぜ。私達ではどうにもできない本場の英語とか教えて貰えそうだからな。」

 

「・・・心強い。」

 

「わかりました。では、まずは英語からですね。」

 

結局、この日は10時くらいまで玲さんの講義を聞いてから解散になったよ。

帰りが遅くなっちゃったけど、お姉ちゃんには夕食待ってる時に連絡してたから問題はナシ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後。

 

「さあ、今日も成績を上げるために楽しく勉強会をしよう!」

 

昨日事情を知ったから理由はわかるけど、それでも違和感があるなぁ・・・。

 

「お前、キャラ崩壊してないか?」

 

「なんとでもいってよ、今の僕にはそんな余裕がないんだから。」

 

その様子だと、また減点食らったのかな?

 

「今、減点はどれくらいなんだ?」

 

「確か、合計で340点。もうかなり厳しいんだよね。」

 

えーと、確か普段の吉井君というか、強化合宿の時に見た吉井君の総合科目は800点くらいだったから、1150点くらいになるのね。

この点数は、確かEクラス中堅位だから、吉井君が必死になるのもわかるよ。

 

「まあ、その程度ならなんとかなるだろ。お前の場合、伸びしろがあり暗記系科目である世界史が狙い目だな。日本史もお前の得意科目だから行けるだろうしな。」

 

「世界史か・・・。」

 

「それに、今回のテスト作成は世界史が田中、日本史が豊郷耳だ。今のお前にはちょうどいいだろ。」

 

確かに、2人とも問題がやさしめだもんね。

田中先生は問題が全体的に解きやすいし、豊郷耳先生はやさしめな問題の中にちょくちょく難しい問題を混ぜるタイプだから400点とかは取りにくいけど、それなりの点数は取りやすいんだよね。

まあ、一問目から愚直に考えていくと壊滅するんだけど・・・。

 

「今日も吉井君の家で勉強会をするのですか?今日、私は予定無いので、良ければ一緒によろしいですか?」

 

「それは構わないけど、僕の家?うーん・・・。今日は姉さんがいないからそれでもいいんだけど、今日は雄二の家でやろうよ。」

 

「あら、吉井君にお姉さんがいたんですね。」

 

「そっか、稗田さんは昨日いなかったから知らないか。」

 

吉井君が阿求ちゃんに説明する。

まあ、ここで隠しても私が教えるつもりだったしね。

 

「それで、雄二の家でいいよね?」

 

「・・・まあ、昨日無理矢理押し掛けたようなもんだしな。幸いお袋も温泉旅行でいないし、いいだろう。」

 

今のセリフ、ちょっと気になるかも。

昨日、玲さんの存在を隠そうとした吉井君と重なるんだよね。

 

「それじゃ、僕はいつものメンバーを誘ってくるよ。」

 

吉井君が私達を誘いに来る。

もちろん、私は参加するよ!

結局、今日はお燐と勉強するらしいお空、図書館から勉強に必要な本を借りにいく魔理沙以外全員参加することになったみたい。

てか魔理沙、またパチュリーさんの私立紅魔大図書館から無断で借りるつもりだよね?

程々にしないと、いつか警察沙汰になりそうで心配だよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、着いたぞ。」

 

学校から15分くらい歩いた後。

私達は坂本君の家である集合住宅の一室に立ってた。

ここが坂本君の家なのか~。

 

「でも今更だけど、こんな大勢で押しかけちゃってよかったの?」

 

「ああ。親父は仕事だし、お袋は温泉旅行に行っていて留守だからな。」

 

あれ、坂本君が少し晴れやかな感じする。

そのまま、坂本君が鍵を開けてドアを開き、私達を招き入れる。

 

「・・・・・・・・・!(ぷちぷちぷちぷち)」

 

・・・んん?

なんか、居間にひたすら無言で一心不乱に、包装とかに使われるあのぷちぷちを潰してる人がいるんだけど・・・。

しかも潰し終わったものと思われる量が、10分や20分のものじゃない。

 

「・・・(バタン)」

 

無言で扉を閉める坂本君。

・・・もしかしなくても、あれって坂本君のお母さん?

 

「ゆ、雄二・・・?今の、山ほどあるプチプチを潰してた人って・・・。」

 

「・・・赤の他人だ。」

 

「多分、あれって坂本の母親だよな・・・。どれだけ長い時間、潰していたんだ・・・?」

 

「そういう仕事なのかしら・・・。」

 

みんながそれぞれの反応。

ぷちぷちを潰すのは確かに楽しいけど、あれだけの量潰すのは私には無理かな。

 

「あー、あれは恐らく、脳に疾患がある精神異常者がなんらかの方法でこの家に入りこんだんだろ。なにせ、俺のお袋は温泉旅行に行っているはずだからな。」

 

坂本君、苦しいよ~。

普段とは違って、嘘がバレバレ。

珍しいよね。

 

「・・・あら、もうこんな時間。雄二を送り出したばかりだと思っていたのに。」

 

・・・どうやら8時間くらいやってたみたい。

 

「続きはお昼を食べてからにしましょう。」

 

しかも、まだやるんだ。

 

「お袋っ!?何してんだっ!?」

 

さすがに耐えきれなくなった様子の坂本君が部屋に飛び込む。

やっぱり坂本君のお母さんだったみたいだね。

 

「あら雄二。おかえりなさい。」

 

「おかえりじゃねえっ!何でいるんだ!?今日は泊まりの温泉旅行だったはずだろっ!?」

 

「それがねお母さん、日付を間違えちゃったのよ。7月と10月って、パッと見似てるから困るわよねっ。」

 

「どこがだっ!形どころか字数も合ってないだろっ!」

 

「もうっ、そうやってまたお母さんを天然ボケ女子大生扱いしてっ。」

 

「女子大生なんて図々しいわっ!アンタの黄金期は10年以上前に終わっただろっ!」

 

「あら、雄二のお友達?」

 

「人の話を聞けぇーっ!」

 

・・・なんだろ、怒濤の応酬が凄い。

なんていったらいいかわかんないけど、とにかく凄い。

 

「皆さんいらっしゃい。私は雄二の母親で、雪乃と言います。」

 

私達に挨拶をする雪乃さん。

というか若いね。

女子大生って言われても、ギリギリ信じられるかも・・・。

みんなもそう思ったみたいで、一様に驚きの表情を浮かべてる。

 

「とりあえず皆、お袋は置いといて俺の部屋に来てくれ・・・。」

 

坂本君が疲れたような顔で言いつつ、部屋に案内する。

・・・でも、9人が入るには明らかに狭くない・・・?

 

「あの、さすがにこの部屋に9人は無理があるのではないでしょうか・・・。」

 

阿求ちゃんもそう思ったみたいで、坂本君に言う。

 

「だが、居間だとあのお袋がいるからな・・・。」

 

「もう、ダメですよ坂本君。お母さんを邪魔物扱いなんてっ。」

 

「いや、そうは言うが一緒に暮らしていると、あのお袋にはツッコミ所が・・・。」

 

ピリリリリ!

 

坂本君の言葉の途中で、美波ちゃんの携帯が鳴る。

1分くらいの短い電話だったし、あまり聞こえなかったけど、Mumって単語が聞こえたしお母さんかな?

と思ってたらそうだったみたいで、どうやらお母さんが今日は家に帰れなくなったんだって。

だから今は美波ちゃんの妹の葉月ちゃん1人らしいから、美波ちゃんは帰るみたい。

 

「それなら島田、お前の家は構わないか?」

 

「ウチの家・・・?うん、まあ、いいけど・・・。」

 

坂本君の提案に、ちょっと困ったような顔しながらも了承する美波ちゃん。

なにか見られたくないものとか、あるのかな?

 

「じゃ、決まりだな。」

 

坂本君、嬉しそう。

みんな荷物をまとめて美波ちゃんの家に移動する準備する。

その間に、坂本君が移動することを坂本君のお母さんに伝えに行ってるのが聞こえてくるね。

 

「お袋、これから移動するからお茶の用意はいいぞ。・・・ところで、そのめんつゆのボトルは何に使うんだ?」

 

「めんつゆ?・・・あら、お母さんアイスコーヒーだと思ってたわ。」

 

「お袋・・・。色や匂いで気づけとは言わないから、せめてラベルで気づいてくれ・・・。」

 

なんだろう、坂本君は家にいる時の方が疲れてる気がするよ。

 




いかがでしたか?
さすがにストックもなくなってきました。


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第五十三話「テスト勉強!」

タイトルのネタがなくなってきた…。


 

 

 

「ただいまー。葉月、いる?」

 

そして場所は変わって美波ちゃんの家。

 

「わわっ、お姉ちゃんですかっ。お、おかえりなさいですっ。」

 

美波ちゃんが玄関のドアをあけて呼びかけると、葉月ちゃんがちょっと慌てたように出てくる。

葉月ちゃんと会うのは学園祭以来かな?

 

「あれ?葉月今、お姉ちゃんの部屋から出てこなかった?」

 

「あぅ・・・。葉月一人で寂しかったから、お姉ちゃんの部屋に行って・・・。」

 

「ぬいぐるみでも取ってこようと思ったの?それくらい、お姉ちゃん別に怒らないのに。」

 

「そ、そうですか?お姉ちゃん、ありがとですっ。」

 

微笑ましい姉妹のやりとり。

美波ちゃんって、葉月ちゃんの前では優しいお姉ちゃんって感じだよね~。

まあ、私のお姉ちゃんにはかなわないけど!

 

「葉月ちゃん、こんにちは。」

 

「あっ!バカなお兄ちゃんですっ!」

 

一段落したのを見計らって前に出て挨拶した吉井君が、葉月ちゃんにだきつかれてる。

吉井君のみぞおちあたりに葉月ちゃんの頭があるから、だきつかれた瞬間、腹パンされたような顔してたけどね。

その後私達にも気づいたみたいで、挨拶してくる葉月ちゃん。

 

「こーら葉月。そんなにアキにくっついてたら入れないでしょ?」

 

「じゃあ葉月が案内しますっ!こっちですっ!」

 

「まあまあ葉月ちゃん、そんなにひっぱらなくても・・・ん?」

 

吉井君の目線の先には、さっき葉月ちゃんがでてきた部屋の扉。

美波ちゃんの部屋らしいけど、吉井君は何が見えたのかな?

 

「ち、ちょっとアキ!何見てんのよっ!」

 

・・・どうやらよっぽど見られたくないみたいで、一瞬で吉井君の人体の急所に攻撃を叩き込み、両手の間接を外す美波ちゃん。

 

「いい!?この部屋はぜっっっったいに、入ったらダメだからね!」

 

両手でバタンと扉を閉め、修羅の形相でそう言う美波ちゃんに対してこくこくと頷く吉井君。

まあ、誰にでもひとつやふたつ見られたくないものはあるもんね。

興味あるけど・・・もしかして吉井君の写真でも飾ってあるのかな?

 

「とりあえずみんなは準備をしておいてちょうだい。ウチはテーブルを用意するから。」

 

そう言って、美波ちゃんがテーブルを用意しに別の部屋に。

 

「あれ?テーブルなんて出して、トランプでもするですか?」

 

それを見て、葉月ちゃんはトランプをするって思ったみたい。

まあ、私達の目的は勉強なんだけどね。

 

「ごめんね葉月ちゃん、私達はこれから勉強会をするんだよ。」

 

「あぅ・・・。なら葉月、お部屋で静かにしてます・・・。」

 

「待った葉月ちゃん。もしよかったら、僕達と一緒にお勉強やらない?学校の宿題とか、予習とかはある?」

 

私が説明したら部屋にいこうとした葉月ちゃんを、吉井君がひきとめる。

まあ、私達が来ただけで嬉しそうだったし、聞き分けが良すぎるのもどうかと思うもん。

私は吉井君に賛成かな。

 

「葉月も一緒にお勉強していいんですか?」

 

「うん、みんなもいいよね?」

 

「まあ、1人に教えるのも2人に教えるのも労力的には変わらないしな。」

 

「雄二、それは僕が小学五年生並みの知能だって言いたいのかな?」

 

「もちろん、私も構わないよ~。」

 

「私も成績いい訳じゃないが、小学生レベルなら教えられるぞ。」

 

「・・・保健体育なら教えられる。」

 

ムッツリーニ君、その発言はギリギリ(アウト)だよ。

とにかく、みんな賛成したから葉月ちゃんも一緒に勉強することに。

葉月ちゃんは勉強道具を取りに行くのか、部屋を出てく。

 

「お待たせ、テーブルを持ってきたわよ。」

 

入れ違いになるように入ってきた美波ちゃん。

両手でテーブルを持ってる。

 

「手伝わなくて良かったのか?まあ、部屋に飾ってある誰かの写真を見られたくなかったという理由ならいいが。」

 

「さっ、坂本!?まさかアンタ、部屋の中が見えてたの!?」

 

「いや、冗談のつもりだったんだが・・・。」

 

美波ちゃん、吉井君の写真(多分ムッツリーニ君から買ったんだと思う)を飾ってるのか~。

乙女なとこある~!

 

「ところで、夕飯はどうする?」

 

「・・・何か作る?」

 

「僕は別にそれでもいいけど。」

 

吉井君とムッツリーニ君がそう言う。

確かに今は5時くらいだし、いい時間だもんね。

美波ちゃんは私とかと違って料理出来るし、美波ちゃんが作るのかな?

 

「今日はピザでも取りましょ。作る時間が勿体ないし。」

 

「そうですね、特に明久君は頑張らなくちゃいけませんから、ご飯を作っていちゃダメですっ。」

 

美波ちゃんと姫路ちゃんの吉井君を気遣う発言。

でも意外かな、美波ちゃんが作るんじゃないかなって思ってたもん。

 

「なんじゃ、ワシはてっきり島田が手料理を振る舞うのかと思っておったのじゃが。」

 

「昨夜、プライドを打ち砕かれたからちょっと、ね・・・。」

 

「なるほどのぅ。」

 

美波ちゃんの言葉に私も納得する。

あー、確かに昨日のパエリアは美味しかったし、昨日の美波ちゃんは沈んだような顔してたしね・・・。

 

「おまたせしましたですっ、葉月も勉強道具を持ってきましたっ!」

 

勉強道具の準備をしてると、葉月ちゃんが帰ってくる。

事情を知らない美波ちゃんに、葉月ちゃんも一緒に勉強することを説明し、いざ勉強はじめと思ったんだけど・・・。

 

「えへへ、葉月はここですっ!」

 

葉月ちゃんが座ったのは吉井君の膝の上。

 

「こら葉月、そこにいたらアキの勉強の邪魔になっちゃうでしょ。」

 

当然注意する美波ちゃん。

 

「大丈夫だよ美波、これくらいなんでもないから。」

 

「それならいいけど・・・変な気はないでしょうね?葉月に手出したら、どうなるかわかってる?」

 

「イエス、マム。毛ほどもそんな気持ちはございません。」

 

まあ、吉井君がいいって言うならいいよね!

さすがに吉井君も葉月ちゃんに変なことはしないと思うし!

さて、私は阿求ちゃんに私が苦手な現代文について教えて貰おっかな!

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって特に何か起こるでもなく2時間ほど勉強してピザを食べ、さらに勉強して時間は進み・・・。

 

「ん?もうこんな時間か。そろそろ今日は終わりにするか。」

 

坂本君の声で時計を見ると、針は9時半を指していた。

 

「なんじゃ。あっという間じゃったな。」

 

「外もいつの間にか暗くなっているな。」

 

「・・・集中していた。」

 

坂本君の一言でみんな鉛筆を置く。

集中してたし、まだ8時くらいかなって思ってたよ。

 

「それなら、続きは明日するとして、そろそろお開きにするか。」

 

「そうですね。ありがとうございます、美波ちゃん。」

 

「こっちこそ助かったわ。ほら葉月、お礼を・・・葉月?」

 

「zzz・・・」

 

「あはは、どうやら寝ちゃったみたいだね。」

 

いつの間にか、葉月ちゃんは吉井君の膝の上で寝てたみたい。

やっぱり落ち着くのかな?

 

「こら葉月、起きなさい。アキが帰れないでしょ。」

 

「んぅ・・・。帰っちゃいやです・・・。」

 

美波ちゃんが起こそうとするけど、葉月ちゃんは離れようとしないね。

吉井君のシャツ握ってる。

 

「アキが困ってるでしょ、いい加減にしないとお姉ちゃん怒るからね?」

 

美波ちゃんがお姉ちゃんらしく注意する。

優しいだけじゃなくて、厳しくも出来るのか~。

 

「お姉ちゃんにはわからないです・・・。お姉ちゃんはいつも一緒にいられるからいいです・・・。でも、葉月はこういう時しか、バカなお兄ちゃんと一緒にいられないです・・・。」

 

半分寝てる様子の葉月ちゃんのその発言は、多分本音。

さっきの聞き分けの良さもあって、私達はつい顔を見合わせる。

 

「あのさ美波、よかったら僕はまだもうちょっとやっててもいいかな?」

 

それを聞いて、吉井君が提案する。

まあ、私もそれがいいと思うよ。

 

「だな。今のチビッ子の台詞を聞いたら、明久は残るべきだよな。」

 

「ああ、私もそれがいいと思う。」

 

「・・・人気者。」

 

みんなもそう思ってるみたいで、吉井君を口々にからかってる。

吉井君も、悪い気はしないみたいな表情してるしね。

 

「そ、それじゃあ、悪いけどもう少し葉月に付き合ってもらえる?」

 

「うん。」

 

「あ、あのっ、それなら私も・・・っ!」

 

残ることにした吉井君に、姫路ちゃんがそう言い出す。

あ、もしかして、吉井君と美波ちゃんの関係が進むのに危機感抱いてる?

それなら、あの吉井君と美波ちゃんだし心配はいらないと思うんだけどね。

 

「え?ダメだよ姫路さん。女の子があまり遅い時間に出歩いちゃ危ないからね。雄二あたりにでも送ってもらって帰らないと。」

 

姫路ちゃんを心配して言う吉井君だけど、心配してることは多分わかってないんだろな~。

 

「俺が姫路を送るのは構わないが、それだけだと足りないな。俺が姫路、正邪、稗田を送るから、ムッツリーニは古明地、秀吉を頼む。」

 

「・・・心得た。」

 

「ワシは釈然としないのじゃが・・・。」

 

・・・まあ、木下君だと女の子にしか見えないもんね。

そのあともなおも食い下がる姫路ちゃんだけど、こういう時の吉井君は考えを曲げないからね。

結局坂本君の説得もあって折れた姫路ちゃん。

私はムッツリーニ君に送られて帰ったからどうなったかは知らないけど、正邪ちゃんの話だと、姫路ちゃんがなにかと理由つけて戻ろうとしてたのもあって、結局吉井君が追いついたみたいだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫路さん、昨日は大丈夫だった?」

 

「それが・・・。凄く怒られてしまいました・・・。」

 

翌日の昼休み。

帰りが遅かったらしい姫路ちゃんに吉井君が聞いたところ、怒られちゃってたみたいだね。

まあ、2日連続で帰りが遅かったら、そりゃ心配するよね。

どうやら、両親からの電話も無視しちゃってたみたいだし・・・。

 

「おかげで、週末まで学校以外では外出禁止になってしまいました・・・。」

 

あらら、それはまた・・・。

私には両親いないし、お姉ちゃんにはきっちり連絡してたからそういうことにはならないけど、やっぱ心配するよね・・・。

でも、そこでしっかり反省出来てるあたり、姫路ちゃんは立派だと思うよ。

 

「ところで、雄二は大丈夫だったの?」

 

「あ?まあ俺のお袋は何も言わねえからな。」

 

確かに雪乃さん、そういうのあんま気にしなさそうだもんね。

おおらかというかなんというか・・・。

 

「いや、そうじゃなくて。」

 

でも吉井君は別のことが言いたいみたい。

どうしたのかな?

 

「2日連続で女の子と夜遅くまでいたし、昨日は途中からだけど夜道で女の子と2人きりになってたんでしょ?霧島さんは怒らないの?」

 

・・・・・・おお、坂本君の顔にマジックででかでかと『やってもうた』って書かれてる。

 

「まあでも翔子にバレなければ『・・・雄二。今の話、詳しく聞かせて。』まあ待て翔子、これはお前が思っているような・・・」

 

タイミング悪いのか、霧島さんがずっと聞いてたのかはわからないけど、ちょうど来た霧島さん。

坂本君、非常に心配だよ。

 

「・・・言い訳は向こうで聞かせて貰う。」

 

そのまま坂本君&霧島さん退場。

その直後、吉井君の携帯が、メールの着信を知らせる。

吉井君が開いたメールは坂本君からで、件名が『たすてけ』、本文はナシ。

きっと助けてって打ちたかったんだと思うと、涙が・・・。

 

「・・・あの、教えられる2人が来られなくなってしまったこの状況で言い出すのもなんですが、実は私も週末まで用事が入ってしまい、行けないんですよね・・・。ごめんなさい・・・。」

 

さらに阿求ちゃんも用事で来られないみたい。

 

「これは今日は厳しそうじゃな・・・。」

 

「・・・だな。坂本も阿求も瑞希もいないなら、教えてくれる人がいないぜ。」

 

木下君と魔理沙がそう言う。

坂本君は私達の心の中で生き続けてるけど、それじゃ勉強はどうしようもないもんね。

 

「そうなると勉強会は中止か・・・。困ったな・・・。」

 

「・・・吉井。」

 

「うわっ!?霧島さんか・・・。」

 

悩んでる様子の吉井君に、後ろから声をかける霧島さん。

どうしたんだろ?

・・・あ、あと霧島さんの服についてる赤いものはケチャップだよ多分。

 

「・・・勉強に困ってるなら、私も協力する。」

 

「え?協力って?」

 

「・・・よかったら、週末に、皆で私の家に泊まりに来るといい。」

 

「え?いいのっ?」

 

「・・・(コクリ)吉井には、いつかお礼をしたいと思ってた。」

 

霧島さんがそう提案する。

皆でってことは、私達もってことなのかな?

 

「皆でということは、ワシらもいいのかの?」

 

「・・・勿論。」

 

おー。

でもこの人数を泊められるってことは、霧島さんの家はかなりお金持ちなのかな?

なんにしても、お姉ちゃんと一晩離れることになる以外はいいことばっかだよね!

みんなも参加するみたいだよ。

 

「雄二は参加出来るのかな?」

 

「・・・大丈夫。その頃には退院してる。」

 

「なるほど、そっか。それなら安心だね。」

 

みんなでうんうんと頷きあう。

・・・・・・・・・ん、退院?

・・・坂本君、南無三。

 

 

 




いかがでしたか?
テスト勉強って他人とやったことほぼないのですよね。
教えてもらえるメリットはありますが、話しちゃってはかどらないのではないかと。
集中するなら一人が一番です。
…ぼっちじゃないやい!


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第五十四話「お泊り!」

乱入イベント発生中。



 

 

 

そんなこんなで週末。

私は魔理沙と共に霧島さんの家に向かってたんだけど・・・。

 

「ひさしぶりの翔子の夕飯、楽しみだわ~!」

 

「・・・こいしちゃん、魔理沙さん、知っての通りお姉ちゃんは言い出したら聞かないので・・・。私が止められればよかったんですが、ごめんなさい・・・。」

 

どこから聞いたかわかんないけど、霊夢さんと早苗ちゃんも参加するみたい。

まあ、私的には霊夢さんも早苗ちゃんも大歓迎なんだけどね。

 

「お姉ちゃん、この前みたいにカー○ィにならないでよ?」

 

「早苗、私だってそれくらいわかってるし、自重はするわよ。せいぜい10人前にするわ。」

 

「お姉ちゃん・・・。普通は1人分だからね・・・。」

 

霊夢さんは相変わらずでちょっと安心かも。

早苗ちゃんに話を聞いたところ、前回来た時は霊夢さんが22人前食べたみたい。

どうやら、行くことを知った2週間前から断食してたみたいなんだけど・・・霊夢さんらしいというか。

 

「まあまあ早苗、私もこいしも迷惑だなんて思わないし、お前のことだから了承は得てるんだろ?」

 

「まあ、連絡は勿論してますけど・・・。」

 

「だったら大丈夫だと思うぜ。」

 

「大丈夫、なのかな・・・?」

 

早苗ちゃんの心配もわからなくはないけど・・・霊夢さんって本当に幸せそうに食べるから、多分作ってる側も悪い気はしないんじゃないかなって。

それに、早苗ちゃんがそこまで心配する必要はないのに。

そんな話をしてたら私達は家に着く。

霊夢さんが呼び鈴を鳴らすと、中から出てくる霧島さん。

連れられて部屋に案内されると、既にほとんどが集まってるみたい。

・・・あれ、姫路ちゃんがいつもと違ってポニーテールだね。

 

「ところで、来る途中にあった、鉄格子がはまった部屋は何だったのぜ?」

 

「・・・雄二の部屋。」

 

魔理沙と霧島さんが話してたけど、魔理沙は聞くんじゃなかったみたいな表情してる。

 

「あと来てないのは・・・吉井君と坂本君かな?」

 

このなかには2人の姿だけが見えないからね。

霊夢さんや早苗ちゃんみたいに、私が知らなかった参加者がいるならともかく、あと2人なはず。

 

「・・・ちょっと待ってて。今連れてくる。」

 

ん?

連れてくるって誰を・・・。

 

ドサッ←ロープで縛られた坂本君が床に落ちた音

 

「・・・雄二を連れてきた。」

 

「・・・ん?古明地らか。どうしてお前達がここにいるんだ?」

 

「ああ、うん、霧島さんの好意だよ・・・。」

 

そっちこそ、なんでロープで縛られてるの?って聞きたいけど、聞いたらまずいかな・・・?

 

「・・・吉井も来たみたい。出迎えに行ってくる。」

 

木下君がロープをほどいていると、呼び鈴が鳴ったのが聞こえたね。

やっぱり吉井君かな?

 

「ところで雄二よ、お主は霧島から何も聞かされておらぬのか?」

 

「ああ。いつものようにクスリ嗅がされて気を失い、気がついたらここにいたって感じだ。」

 

・・・いつものように?

突っ込むのも今さらかもだけど・・・。

坂本君の日常について考えてると、霧島さんが吉井君連れて戻ってきた。

うん、これで全員だね!

 

「ところで、坂本君は連行されたわけだけど、勉強道具は大丈夫なの?」

 

「・・・大丈夫。準備は万全。」

 

手に持ってるのは・・・坂本君のものと見られる鞄。

本人が知らない場所で、よくそれだけの用意を・・・って思ったけど、そういえば坂本君、入院してたんだったね。

 

「全員揃ったみたいですし、早速始めませんか?」

 

阿求ちゃんが言う。

改めてみると、ものすごい大人数だよね。

Fクラスからは私、魔理沙、お空、正邪ちゃん、阿求ちゃん、美波ちゃん、姫路ちゃん、吉井君、坂本君、ムッツリーニ君、木下君が、Aクラスからは工藤さん、霊夢さん、早苗ちゃん、小鈴さんと、15人いるもん。

じゃあ、私はこの前と同じく阿求ちゃんに現代文かな?

私の現代文、ひどい時には吉井君や帰国子女の美波ちゃんに劣ることがあるし・・・。

召喚大会の3回戦ではそれでお姉ちゃんに迷惑かけちゃってるし、補強しないとね。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・と、つまりここがてがかりとなるんですよ。」

 

「私ならこの時、こうは思わないんだけどな・・・。」

 

「私もです・・・。」

 

「確かに、自分ならどう考えるかというのも、文章を読んでいくにあたって大事なことですが・・・、ある程度パターンはあるものなんですよ。」

 

私と早苗ちゃんは、今は阿求ちゃんに現代文を教わってるよ。

パターンってどういうことなんだろ?

 

「基本的に、現代文の問いは本文中に書かれていることのみで考えるんですよ。例えば、『太郎は顔を真っ赤にした。』という文章があったなら、太郎の感情はどうだと思いますか?」

 

「えーと、怒りかな?」

 

「私は屈辱だと思いますね。」

 

「そうです。表現によって、感情はある程度は絞れるのですよ。その文章の前後に大抵ヒントがあります。さっきの文章なら、直前に『花子にミスを指摘され』とかがついていれば、怒りより羞恥が適切となりますよね。」

 

「そうかもしれないけど・・・そういうのがなかったらどうするの?」

 

「そういう場合は、一度飛ばして先を読んでみるとあることがありますよ。それと、本文を読む前に一度設問に目を通した方がいいです。」

 

「設問?先に文章を読まないと解けないですよね?」

 

「設問で、何が聞かれているか。それを知ってから本文を読むことで、注意を向けやすくなるのですよ。例えば図書館等で本を探す際、本棚をひととおり見てからタイトル見て記憶を頼りに探すより、先にタイトル等を見て探す方が楽だと思います。本棚が文、タイトルが設問、本が答えといったところでしょうか。」

 

「なるほど・・・。」

 

確かにそう言われてみると、先に設問見た方がいい気がしてきたよ。

 

「慣れないうちは、登場人物の関係性や出来事などを、簡単に図にまとめながら読むと頭に入りやすいと思います。それだけの時間がないのなら、重要と感じた場所に目印をつけるだけでも変わってくると思いますよ。」

 

「でも、重要と言われてもそれがわかんない時はどうすれば・・・?」

 

「物語文ならば時間と場所に誰視点か、随筆文や論説文なら作者の思想と一般論の対比といったところでしょうか。どちらにしても、接続詞が手がかりになってきますよ。」

 

えーっと、論説と随筆が対比で、物語が視点で・・・。

頭がこんがらがりそう・・・。

 

「阿求ちゃんはそこにつけてるの?」

 

私がふと漏らした質問に対して、何故か阿求ちゃんは目をそらす。

どうしたんだろ?

 

「非常に言いづらいのですが・・・私は見たものを忘れないので、1回設問と文を読んだら印などをつけなくても記憶してるのですよ・・・。」

 

そういえば阿求ちゃんはそうだった。

でもその割には説得力あるし、実際にやったら成績上がりそうなんだよね。

すごいな阿求ちゃん。

そもそも現代文は暗記はあんま関係ない科目だし、努力してるのはわかるよね。

そのまま勉強会をしてると、時刻はいつのまにか6時になってた。

みんなも勉強がはかどったのか、やりきったみたいな顔してる。

苦手科目かつみっちり絞られてた美波ちゃんと木下君はのびてるけど・・・。

 

「・・・ご飯の準備が出来た。」

 

そう言われたから私達は移動したけど・・・なにこれ、すごい!

普通の家庭じゃあまり見かけないようなダイニングテーブルに、とっても美味しそうな料理がところ狭しと並べられてる!

とても遊びに来た友人に出すレベルじゃないから、私のテンションも上がっちゃう!

・・・ところで、1か所だけ異常にドカ盛りされてるのは霊夢さん用なのかな?

 

「アキがこんなの食べたら、慣れない味でお腹壊しちゃいそうね。」

 

「あははっ。本当だよ。」

 

美波ちゃんと吉井君の会話が聞こえてくる。

ここにはだいたい25人前(霊夢さんが10人分)くらいあるから、吉井君の食費1年分くらいはありそうだよね~。

 

「やっぱり翔子のところの料理は美味しそうだわ~!断食したかいがあるってもんよ!」

 

「お姉ちゃん、まずは取り分けられてるものからだからね?翔子ちゃんがお姉ちゃんの分だけ多めにしてくれてるんだから。」

 

「・・・毎回思うんだが、よく入るものだよな霊夢は。」

 

目をキラキラさせて涎を垂らしそうな霊夢さんは多分全部食べるんだけど、魔理沙の言う通り、どこに入ってるのかがものすごく気になるよね。

大食いとか出ればいいのにって思うよ。

 

「ところで、本来は家族で食事する場所なのじゃろ?こんな大勢で食事して、家族に迷惑ではないのかの?」

 

「・・・大丈夫。私だけだから。」

 

「翔子の家族はそれぞれが自由に暮らしてるからな。」

 

あ、それ私もちょっと思ってた。

いくらお金持ちでも普通、幼馴染みとはいえ婚約も正式にしてない彼氏の部屋(しかも鉄格子つき)なんて、家に作れないもんね。

実際、家が名家でお金持ちな阿求ちゃんは、家が厳しいもんね。

お見舞いの時にたまに行くけど、こことは違って日本家屋だし厳格な雰囲気を感じるもん。

 

「「「いっただきまーす!!」」」

 

まあでも今は食べないと!

こんな豪華なのに、冷めちゃったらもったいないもん!

 

「おいしい!」

 

「凄く美味しいんだが・・・食べ過ぎちゃいそうだな・・・。体重計に乗りたくないなこれは・・・。」

 

「ですね・・・。ううっ、食べ過ぎちゃいそうです・・・っ。」

 

「僕の大好物のカロリーがこんなにたくさん・・・っ!!」

 

「翔子。どうして俺に取り分けた料理だけ毒々しい紫色をしてるんだ。」

 

「・・・怪しい薬なんて入ってない。」

 

「・・・!(ガツガツムシャムシャモグモグ)」

 

「お姉ちゃん、もっとゆっくり食べよ・・・?」

 

「ははは、やっぱり霊夢は相変わらずなんだぜ。」

 

みんなでわいわいと食事する。

気を遣ってくれたのか、ここには私達以外の人はいないし、まるで高級レストランを貸し切りにしてるみたい。

こういうのって楽しいよね~!

 

「ほら吉井君、ボクが食べさせてあげる。はい、あ~ん。」

 

「ん?あ~ん。」

 

「こらアキっ、行儀悪いわよっ!」

 

「そうですよ明久君っ!お行儀が悪いですっ!」

 

「まあまあ、2人ともそう目くじらたてないであげよ?それよりこれ、すごく美味しいよ!」

 

「翔子。何故俺の飲み物だけ毒々しいピンク色をしてるんだ。」

 

「・・・怪しい薬なんて入ってない。」

 

「この小さな容器のものははじめて食べる味ですね・・・。美味しいです。小鈴、これ何かわかる?」

 

「これは多分・・・高級食材のひとつのツバメの巣だと思うけど・・・私もはじめて食べたから自信はないかな・・・。」

 

そんな風に、滅多に食べられないような豪華な料理に舌鼓をうちつつ勉強の疲れを癒し、あっという間にデザートの杏仁豆腐に。

これも甘くておいしい!

 

「・・・雄二。勉強の進み具合はどう?」

 

「まったくもって順調だ。心配はいらねぇ。」

 

「・・・本当に?」

 

「ああ。次のテストではお前に勝っちまうかもしれないぞ。そしたら俺は晴れて自由の身だな。」

 

楽しげに笑う坂本君を見て、霧島さんの目がスッと細くなった。

 

「・・・そこまで言うのなら、勝負、する?」

 

「勝負だと?」

 

「・・・うん。雄二がどの程度出来るようになったのか、見てあげる。」

 

「ほほぅ・・・。ずいぶんと上から目線で言ってくれるじゃねぇか。」

 

・・・あれ?

もしかしてだけど・・・坂本君、のせられてる?

 

「・・・実際に、私のほうが上だから。」

 

「くっ、上等だ!勝負でもなんでもしてやろうじゃねえか!本当の格の違いとやらを見せてやらぁ!」

 

やっぱりのせられてる。

幼馴染みってだけあって、坂本君の操り方が上手いな~。

 

「・・・なら、この後出題範囲の復習を兼ねて、模試で勝負。」

 

「おう、望むところだ!」

 

「・・・それで、私が勝ったら雄二は私と寝る。」

 

「・・・は?」

 

坂本君の目が点になる。

これ、普通の男子なら全力で負けに行くんじゃないかな?

まあ多分、そうなったら坂本君は、脱走防止のために両手両足に手錠つけられて、それでも逃げようと暴れるからスタンガンで強制的に眠ることになりそうだけど・・・。

 

「霧島さん、杏仁豆腐食べたいからナイフを持ってきてくれないかな?包丁や日本刀でもいいんだけど。」

 

殺害する気マンマンな吉井君。

素直に持ってこようとする霧島さんを坂本君が止める。

まあ、命に関わるもんね。

 

「かわりに、雄二が勝ったら吉井と寝るのを許してあげる。」

 

「驚くほど俺にメリットがねえぞ!?」

 

まあ、扱いを考えたら確かにそうかも。

 

「ねえ魔理沙、私達も勝負しましょ。勝った方が奢りね。」

 

「・・・お前、あれだけ食べておいてすぐ、よくその案出せるな・・・。」

 

「ダメです魔理沙さん!お姉ちゃんは私と勝負するんです!それで勝ったらお姉ちゃんは私と寝るんです!」

 

「イヤよ暑苦しい。」

 

あっちでも勝負の話がされてる。

早苗ちゃんが霊夢さんに勝負もちかけるも、あっさりとつっぱねる霊夢さん。

拒否られた早苗ちゃんがム○クの叫びみたいな顔してるのは突っ込まないよ。

 

「そういうの楽しそうだよね~、ボクもなにかやりたいな~。」

 

「・・・愛子も勝負する?」

 

「それもいいけど、せっかくならテストの点数で部屋割りを決めるのはどうかな?」

 

そう言いつつ、彼女は吉井君を見て片目をつぶる仕草をする。

どうやら、誘ってるみたいだね。

 

「だ、ダメですそんなことっ!明久君にそういうコトは、えっと、その、まだ早いと思いますっ。」

 

「でも保健体育のお勉強、ボクが吉井君に教えてあげたいな?」

 

「ダメったらダメですっ!工藤さんがそんなことをしようとするのなら・・・私が明久君と一緒に寝ますっ!」

 

「えぇぇえっ!?姫路さん何言ってるの!?」

 

おー、行ったね。

まあ吉井君なら特に何もなさそうだけど。

 

「み、瑞希っ!?何を言ってるの!?」

 

「でも、美波ちゃんだって明久君のHな本を見たならわかるはずですっ!明久君だって男の子、Hなことにも興味津々なはずなんですっ!」

 

「確かに、アキの4冊目にはショートカットの娘もいたけど・・・。」

 

吉井君のそういう秘密、どこまで知ってるのかちょっと気になるかも。

まあ私はお姉ちゃん以外なら別に、性的な目を向けられても気にしないけどね。

男の子ってそういうもんだと思うし。

 

「だから明久君を守るため、私が明久君と寝るんですっ!」

 

「そうね、アキを守るため、ウチがアキと一緒に寝ないとね!」

 

姫路ちゃんと美波ちゃんまで。

木下君や正邪ちゃんが提案に乗らなければいいって主張するも完全スルー。

 

「あの、もしかしてこれ、私達も参加せざるをえない流れなのでしょうか・・・。」

 

「まあでも阿求ちゃんは実質学年トップなわけだし、いいんじゃない?」

 

「私は普通に男女割が好ましいのですけどね・・・。」

 

私はどうせ、お姉ちゃんいないなら誰でもいいし。

ムッツリーニ君だと鼻血とか写真とかの問題はあるけど・・・。

 

「・・・じゃあ、まだ開けてない新品の模擬試験を持ってくる。」

 

「まて翔子!俺はまだ承諾してないぞ!」

 

「・・・決定事項。さっき雄二は勝負するって言った。反対意見は認めない。」

 

「ぐっ・・・!そ、それはそうだが・・・!」

 

さっきのせられた坂本君が、目を泳がせて何かを考えてる様子。

こういうとき、坂本君の頭の回転は早いから、何か策を思いついたのかもしれないけど、何をするつもりなのかな?

・・・と思ってたら、坂本君がジュース溢した。

 

「っと、すまん翔子!服にかからなかったか?」

 

「・・・大丈夫。」

 

「いや、大丈夫じゃない。お前からは見えづらいかもしれないけど、服の裾のそのへんにかかったみたいだ。」

 

坂本君が指差す場所に、ジュースがかかった様子はない。

だというのにそう言うってことは、服が目当て?

 

「・・・それは困る。」

 

「悪い、俺の不注意で・・・」

 

「・・・あの薬は、繊維を溶かすから。」

 

「待て。お前は俺の飲み物に何を入れたんだ。」

 

まあ、色がおかしかったしヤバイものが入ってるのはわかってたけど、ほんとにこぼれたジュースが絨毯と反応して煙あげてるよ。

 

「・・・とにかく、洗ってくる。」

 

「それなら、少し速いが風呂にしないか?食後の腹ごなしも兼ねてな。」

 

坂本君のそんな発言。

いまいち意図がわからないけど、なにか策があるのはわかるよ。

うーん・・・。

 

「・・・なるほど、そういうことですか。」

 

私が考えてる横で小さく呟く阿求ちゃん。

阿求ちゃんには意図がわかったのかな?

 

「ねえ阿求ちゃん、何がわかったの?」

 

「坂本君の狙いですよ。恐らく彼は私達がお風呂に入る間に問題を盗み出すつもりだと思います。まあ、私はそちらの方が好ましいので言いませんけどね。」

 

お互いにしか聞こえないくらいの小さな声で話す。

それなら私の荷物は鍵かけとこうかな?

 

「でも、それで吉井君達の誰かが阿求ちゃん選んだらどうするの?」

 

「まずないでしょうから大丈夫だと思いますよ。」

 

確かにそうかも。

じゃあ私も、言わないでおこうかな。

実際、お風呂に入りたいし!

そんなわけで、私達は着替えのために男女で部屋を別れたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧島さん、お風呂はどんな感じですか?」

 

「・・・大浴場と、露天風呂がある。」

 

「わぁ、楽しみ!」

 

「ボクも楽しみだよ。温泉も、姫ちゃんのコレを直に見るのも、ねっ。」

 

「きゃっ!ど、どこ触ってるんですかっ!」

 

姫路ちゃんの胸を後ろから触る工藤さん。

確かに姫路ちゃんおっきいもんね。

 

「それに、空ちゃんもおっきいから楽しみかな~。」

 

「うにゅ?別に羨ましいものでもないよ?」

 

私はあんま自分のの大きさを気にしないけど、気持ちはわかるよ。

 

「早苗ちゃんのも負けず劣らずおっきいけど、何が入ってるんだろ?」

 

「確かに不公平だよな。まあ私は霊夢の方が気になるけどな・・・。あんだけ食べるくせに、その体型なんて、不公平だぜ。」

 

「確かに、霊夢さんは不思議だよね・・・。」

 

さっきもあれだけ食べたのに、お腹も特にいつもと変わってないし。

 

「・・・羨ましい。」

 

「ちょっ、翔子も愛子もそんなとこ、触ろうとしないでってば!」

 

「私は瑞希の大きさが不公平だと思うけどね。・・・注射器で吸いとったりできないかしら・・・。」

 

「み、美波ちゃん・・・?目が本気で怖いんですけど・・・。」

 

・・・美波ちゃんなら、出来たらやりそうで怖い。

そんな話をしながら脱衣所につく。

というか、この感想は何回言ったかわかんないけど、広いな~。

ホテルのくらいあるから、私達が全員入っても狭さを感じないよ。

 

「・・・あ、ボク、下着を忘れてきちゃった。取りに戻るね。みんなは先入ってて。」

 

確かに、下着ないと困るもんね。

着替えを取りに戻る工藤さん。

霧島さんや美波ちゃん、姫路ちゃんも一緒に戻るみたい。

・・・さっきの阿求ちゃんの発言から、なんか惨劇が起こりそうな気がするし、私は先に風呂に入ろっと!




いかがでしたか?
現代文のとこはうちが教えられた方法です。
結構役立つんですよ。
しかしいい加減ポケきらも書かなければなぁ…。
コンテストバトルの描写が難しいのですよ。


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第五十五話「本番!」

5巻と6巻の境目は曖昧。


 

 

 

 

お風呂も入った後。

吉井君、坂本君、ムッツリーニ君が死地をさ迷いつつも、木下君が問題の奪取に成功したみたいでテストは中止に。

食事前と同じようにみんなで勉強をすること数時間。

日付が変わったあたりで、もうそろそろ寝ようってことになって、部屋に戻ってた。

ちなみに、部屋割りは私達女子部屋と男子部屋の2つだよ。

最初は木下君だけ別に個室になるはずだったけど、木下君本人の強い希望でその割り当てに。

強化合宿でも何も起きなかった事実も考慮されて成立したけど、美波ちゃんと霧島さんは彼に防犯ブザーを渡してた。

 

「・・・あれ?私の髪留め、どこにいったんでしょう?ここに置いておいたはずなのに。」

 

「もしかして無くしたのぜ?」

 

「・・・探すの、手伝う。」

 

「あ、いえ、大丈夫です。明日の朝、お布団を片付ける時にまた探してみますから。」

 

そういえば姫路ちゃんって、いつもあの髪留めをしてるような気がするね。

それだけ大事なのかな?

よし、ちょっと聞いてみよっと。

 

「そういえば姫路ちゃんはいつもあの髪留めつけてるけど、なにか深い思い入れがあるの?」

 

「んっふっふ~。ボクの予想だと、好きな人からの贈り物って感じなんだケド?」

 

「いえ。あれ自体は自分で買ってきた普通の髪留めです。」

 

「ありゃ、予想が外れちゃった。」

 

「確かに、思い入れはありますけどね。」

 

「それは面白そうだな。気になるんだぜ。」

 

「残念ながら、それはヒミツ、です。それより、私は工藤さんのお話が気になります。」

 

「え?ボク?」

 

「そうね、ウチも気になるわ。」

 

「あ、確かに私も気になる!」

 

「3人とも、そんなにボクのHな話が聞きたいのかな?」

 

「違うわ。土屋との関係の方よ。」

 

「ふえっ!?」

 

「・・・それは私も気になる。」

 

「な、何を言ってるのさ4人とも。ボクとムッツリーニ君がどうこうなんて、そんなことあるわけないじゃないか!」

 

ん~、これは黒かな。

普段私達が見てるのと明らかに態度が違うし、そうムキになって否定するところがますます・・・ね。

 

「・・・普段の愛子なら、笑って受け流す。」

 

「へぇ、愛子、アレが好きなんだ~。(ニヤニヤ)」

 

「まあ、私にもそんな風に見えていましたからね~。お似合いのカップルになると思いますよ?(ニヤニヤ)」

 

「霊夢と早ちゃんまで!ち、違うってば!ボクもムッツリーニ君もそんな気は全然ないよっ!」

 

「それはどうかしらね?意外と男子部屋でも、土屋が同じようなことを言ってるかもしれないわよ?」

 

「・・・お泊まり会の定番。」

 

「ほらほら、言っちゃえば楽になるよ~?」

 

「だ、だからあんな頭でっかち、ボクは全く興味ないんだってば!」

 

むー、これは言う気は無さそう。

まあ、態度で全員がわかったけどね。

その後はなんかみんなで好きな人を言ってく恋バナの流れになったけど、特に新しいことはわかんなかったな。

私はお姉ちゃんしかそういう意味では興味ないから、聞かれても問題なかったしね。

既に寝てた阿求ちゃんを除いて、誰もいないって答えたのは魔理沙、正邪ちゃん、小鈴さんだったけど、魔理沙はそう答えた時、少し違和感があったような・・・。

長いつきあいな私くらいしか気づかなかったみたいだし、気のせいなのかな?

そして他愛もない話をしながら、1人、また1人と寝てった。

私もいつのまにか寝てたみたい。

朝になって起きた後は、翔子ちゃんによる豪華な食事に舌鼓をうったり、昨日のように勉強を夕方くらいまでしたりして、みんな解散。

なんというか、かなり充実した2日間だったね。

・・・あ、そういえば、霧島さん、工藤さん、小鈴さんに言われて、これからは翔子ちゃん、愛子ちゃん、小鈴ちゃんって呼ぶことにしたよ。

 

 

 

 

 

 

そして時間は過ぎて、翌日の朝。

テスト当日だよ。

初日の最初の時間にいきなり私の最大の関門の現代文があるから、遅くまで勉強しててあんまり寝られてないし、おなかもすかなかったんだよね・・・。

一応パンは持ってきたけど、食べるかはわかんないな。

直前に見直すためにも、普段より速めに登校してるよ。

ちなみにお姉ちゃんは現代文はいつも勉強してないみたいだけど、英語と世界史の復習のため、いつも通り家でギリギリまで覚えてるみたい。

・・・って、あれ。

振り分け試験の時と同じくらいの時間に来たのに、先客がいる。

振り分け試験の時は一番乗りだったのに、意外。

しかもそれが吉井君だからさらにびっくり。

 

「おはよ~、吉井君。速いね~。」

 

「ああ、古明地さん、おはよう・・・。」

 

「フラフラしてるけど大丈夫・・・?まだ1日目なのに。もし徹夜で飲まず食わずでやってておなか空いてるなら、私のパンいる?」

 

「大丈夫、大丈夫・・・。パンも大丈夫・・・。ただ、気遣いはありがたいんだけど、あまり話しかけないでもらえるかな?昨晩必死で詰め込んだものが出ていっちゃうから・・・。」

 

「あ、そうなの?わかったよ。頑張ってね~。」

 

私が吉井君から離れ、自分の席でパン食べながら現代文の復習をしつつ、吉井君の方を振り返ってみると、まさに鬼気迫るというのが相応しい様子でひたすら詰め込んでる。

昨日のお泊まりから何があったのかはしらないけど、あれだけ頑張ってるんだから、いい結果になってほしいな。

他のクラスメイトもやってきて、朝のHRが始まっても、吉井君はひたすら詰め込んでる。

さて、私にとっての関門である現代文、頑張ろうかな。

 

 

 

 

 

(・・・うん、普段よりはいい点取れそう!)

 

今は現代文のテスト終了5分前。

阿求ちゃんに教えて貰った通りに印をつけながら読み、先に設問も読んでから文を読んだおかげで、うまく解けたよ。

今から新しい文章を読んで問題を解く時間はないから、今は見直し中。

 

(それに、今回の問題の文章のひとつのScarlet Ammo Online、たまたま最近読んでたのも大きかったかな。)

 

おかげで時間を節約出来たしね。

武偵と呼ばれる人達が、VRMMOに閉じ込められる話だけど、出たのはラッキーだったかな。

文章の流れがわかってたから、解きやすかったよ。

・・・あ、名前のところに最初の回答書いちゃってる。

幸い、7問目が飛ばした問題で、ズレはそこまでだから直すのは簡単だけど、気づいてよかったよ。

このままだったら私、エ組の羅生門になるとこだったからね。

修正修正っと。

 

(・・・でも、我ながら凄いミスだよね。)

 

多分こんなミスするの、私くらいだと思うな・・・。

もし気づかなかったら、すごい恥だったよ・・・。

他にも2つほど間違いを発見して直し、わからなかった記号問題を勘で埋めたら、テスト終了を告げる鐘がなる。

うーん、わかんないけど多分3桁行くか行かないかってところかな?

 

 

 

 

 

 

その後は特に何事もなく普通に進んでいき、3日間のテストも無事に終了。

いつも通り、地学は多分腕輪ライン行ったはずだし、全体的に点数も向上してる。

私の武器は特殊だからどう変わるかはわかんないけど、装備も期待出来るかな?

まあそもそも組分けは0点だったけどね。

・・・ちなみに吉井君は、基準点を満たせなかったみたい。

どうやら、テスト開始直後に忘れないように書いた年代と出来事が名前のとこにかかれてるのに終了後気づいたみたいで。

そのせいで彼は334クラスのアレキサンドロス大王になりました、と。

・・・私以外にも同じミスして、しかも気づかなかった人がいるとは思わなかったよ。

それでテストも終わり、テスト勉強からも解放された私達は・・・

 

「この問題は微分を使って解を出すことになる。sinθを微分すると、cosθになるため・・・」

 

・・・クラス全員、鉄人先生の補習を受けてた。

・・・まあ、戦争なり停学騒動(私関係ないけど)なりで授業時間が不足していたし、しょうがないっちゃしょうがないけど、すっごくあつい。

私達女子(と木下君)、特にそのなかでも身体が弱い阿求ちゃんと姫路ちゃんは比較的風通しがいい席を与えられてるけど、それでも溶けちゃいそうだよ・・・。

かき氷アイスプールエアコン扇風機・・・。

 

(・・・なあ、あいつら脱走を企んでるみたいだぜ。私達はどうする?)

 

マッチ売りの少女みたいに涼しいものを考えて気をまぎらわせてたら、そんな事を隣の魔理沙がほとんど唇を動かさず、前を向いたまま私だけに聞こえるくらいの声で話しかけてきた。

ちなみにこの技、鉄人先生に目をつけられてる、クラスの大半の人ができるよ。

そして私もね。

 

(・・・うーん、私はやめておこうかな。なんか嫌な予感するし・・・。)

 

(わかった。私はそれでも行くぜ。)

 

多分、発案者は坂本君なんじゃないかな。

そして恐らく彼らが仕掛けるタイミングは、次に鉄人先生が番書のために黒板に向かったタイミング。

 

「そしてここで今求めたx=cosθ+3sinθを与式に代入し・・・」

 

こちらを向いたまま説明するのも限界か、黒板に向かい、番書を始める。

そのタイミングで、皆が一斉に気配を極限まで殺し、扉へ向かうために立ち上がろうとする。

その瞬間。

 

「全員動くなァッ!」

 

鉄人先生がこちらを向くことなく言い、機先を制する。

どうやら、読んでたみたいだね。

 

「貴様ら、俺の授業から脱走を企むとはいい度胸だな・・・!」

 

鬼の形相でこちらを向く鉄人先生。

これは・・・鉄拳コースかな?

私はやってないから無罪だとは思うけど。

 

「そんなに俺の授業はつまらなかったか、これは俺の落ち度だな。すまなかったな。わびといってはなんだが面白い話をしてやろう。霧雨以外の女子と木下は耳を塞げ。」

 

と思ったら、そんなことを言い出した。

でも面白い話をすると言ってるのになんで私達女子は塞ぐように言われたのかな?

まあ、一応塞いどくけどね。

なんか嫌な予感するし。

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「「「・・・・・・・・・・!!!」」」

 

音声が聞こえないけど、鉄人先生が何か言った瞬間、何人かの男子が悲鳴をあげ、力尽きる。

・・・え、なにが起きてるの?

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・!・・・!」

 

「・・・・・・・・・!!」

 

その後も鉄人先生が何かを話すたび、クラスメイトの精神が崩壊していく阿鼻叫喚の地獄絵図が。

声は聞こえないけど、必死に助けを求めてるのが伝わってくる。

・・・とりあえず、これが罰だったってことはわかったかな。

ふと横を向くと、机に突っ伏したまま動かない魔理沙が視界に入った。

 

「・・・・・・・(バタリ)」

 

ちょっ、魔理沙!?

魔理沙がいつのまにか死んじゃってるよ!

手に持ってた赤ボールベンのインクで死に際に書いたのか、左指の先には『てつじ』って文字が。

助けてあげたいけど、今耳から手を離したら、ほぼ間違いなく私も殺られる。

だから今は、この地獄が終わるまでひたすら耳を塞いで待つしかないね。

脱走を企てたクラスメイト全員の精神が崩壊し、力尽きたあたりで鉄人先生が話を止め、耳を塞ぐのを止めていいとジェスチャーで伝えられる。

 

「10分休憩を取る。その間に、脱走を企てたことを反省するんだな。」

 

あ、休憩を取るのね。

一度脱走を企てた魔理沙達を警戒してるのか、休憩を取ると言っても教室からは出ず、扉の前に椅子を置き、そこに腰をおろす鉄人先生。

 

「・・・えっと魔理沙、生きてる?」

 

「・・・ああ、こいしか。死にかけたぜ・・・。」

 

よかった、魔理沙が生き返った。

 

「えっと、鉄人先生に何されたの?」

 

「・・・ブラジルでの鉄人のガチムチレスリングの話だぜ。」

 

うわぁ、それは確かにキツいね・・・。

ただでさえこの教室は暑いのに、さらにそんな暑苦しそうな話を聞かされたら、精神が崩壊してもおかしくない。

鉄人先生はトライアスロンやってるだけあって筋肉が凄いし、ブラジルってことは多分、身長も高くて筋肉が凄い黒人だと思うから、聞かなくてほんとよかった。

というか阿求ちゃんが聞いてたら、その瞬間記憶能力で脳内フォルダに永久保存されることと、持ち前の身体の弱さで命を落としてたか、酷い後遺症残ってたんじゃないかな・・・?

さいわい、しっかりと耳を塞いでたみたいだけどね。

 

「はぁ、ひどい目にあったぜホント・・・。こんなんなら脱走に参加しなければよかったぜ・・・。」

 

「私、あの時参加しなくてよかったな・・・。」

 

死屍累々の教室を見ながら水筒の中の飲み物を飲む。

水分補給は大事だからね。

普段はお茶なんだけど、今日はたくさん汗かきそうだったからスポーツドリンクにしてるよ。

 

「・・・そういえばこいし、テストが終わったということは召喚獣の装備も変わったってことだよな?確かめてみたくないか?」

 

「確かめるっていってもどうやって?」

 

「召喚許可を貰うか、坂本の腕輪を使えばいいぜ。休憩時間が終わる前に行こうぜ!」

 

そう言うと魔理沙は、さっきまでの死体状態が嘘のように、ドアの前にいる鉄人先生の方へ向かってく。

そこには吉井君達もいて、同じように召喚許可を求めてたね。

でも鉄人先生は普段の堂々とした態度じゃなくて、なんか歯切れの悪い感じで断ってる。

問題児認定されてる吉井君や坂本君じゃなくても、姫路ちゃんや美波ちゃんが言っても無視して、誤魔化すように授業を始めようとしてるね。

 

「ちょっと待った。こうなりゃ召喚許可をよこせとは言わねぇ。だが、何が起きたのかは説明はしてもらうぜ。アウェイクンっ!」

 

「それじゃ、早速。サモンっ!」

 

その腕を坂本君がつかみ、腕輪の力でフィールドを作成し、吉井君が召喚獣を呼び出す。

おなじみ幾何学模様から吉井君の召喚獣が出てきてるね。

特に変わりがなければ学ランに木刀だけど・・・。

 

「あれ?なんだか僕の召喚獣が・・・?」

 

「おいおい・・・。明久のクセになんだか妙に贅沢な装備になったな。これは甲冑か?」

 

「なかなかかっこいい感じだな。しかも剣も普通の大剣に見えるぜ。」

 

「というか、身長がやけに高いね。」

 

出てきたのは、西洋騎士って感じの甲冑と大剣を装備した吉井君。

しかも、いままでのデフォルメされた感じじゃなくて、身長も本人とあんま変わってない。

なんというか、吉井君がもう一人いるみたいな?

 

「顔も明久君そっくりですね。今までの可愛い感じと違って、今度のは凛々しいです。」

 

「え?そ、そう?」

 

吉井君が照れてる。

 

「姫路も酔狂なヤツだな。こんなブサイクのどこがいいんだか。」

 

「あ痛っ。」

 

パコン、と坂本君が吉井君の召喚獣の頭を小突く。

すると、その叩かれた頭は首から離れて、ゆっくりと重力に従い、畳の上に落下した。

・・・・・・え?

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

私達が絶句するなか、胴体から離れた生首はてんてんと転がりながら私達の目の前を静かに横切り、やがて卓袱台の足にぶつかって、こちらを見つめた状態で静止した。

・・・・・・待って、脳の処理が追いつかない。

 

「「きゃぁぁあああーっ!?」」

 

「えぇぇっ!?な、何コレ!?僕の召喚獣がいきなりお茶の間にはお見せできない姿になっているんだけど!?」

 

身体はさっきのように仁王立ちしたまま、頭だけが地面に落ちてる。

なんというか、デフォルメじゃない分余計にアレだよ・・・。

・・・あれ?

首なんて取れたら監察処分者である吉井君は想像を絶する痛みに襲われそうなものなのに、何ともないのかな?

 

「ん?ああ、すまん。そんなに強く叩いたつもりはないんだが、まさか外れちまうとはな・・・。待ってろ、今ホチキスを持ってくる。」

 

「何的はずれなことを言ってるのさ!?くっつけるなら接着剤でしょ!?ホチキスだと穴が開いて痛いんだから!」

 

「そういう問題ではないと思うんじゃが。」

 

「というか吉井君、首取れたのにフィードバックの痛みはないの?」

 

「あ、確かにそういう痛みはないかも・・・。どういうことなんだろう?」

 

『Fクラス 吉井明久 総合科目 1083点』

 

首が取れてても戦闘不能になったわけじゃなくて、きちんと点数もある。

というか吉井君、強化合宿の時と比べて点数高いね。

吉井君が試しに腕を動かす操作をすると、首なしのまま動いてる。

つまり、首が取れるのが仕様ってこと?

 

「2人とも、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。これは死体じゃないみたいだから。」

 

「はぅ、そうじゃなくても、やっぱり怖いです・・・。」

 

いまだ怖がって目を手で覆って見ないようにしてた姫路ちゃんと美波ちゃんに、吉井君がやさしく声をかける。

死体じゃなくても怖いとは思うけどね。

 

「何か知ってるんだろ、鉄人。」

 

坂本君がわざとらしく聞くと、鉄人先生は諦めたように答えてくれる。

 

「あー、学園長の話では、今呼び出される召喚獣は、化け物の類になっているらしい。」

 

化け物?

妖怪ってことかな?

だとしたら吉井君のは・・・デュラハンかな?

 

「なるほど、調整に失敗したんだな。」

 

「・・・身も蓋もない言い方をするな。」

 

「でも、なんで西洋の妖怪のデュラハンなんだろ?日本にも妖怪はいっぱいいるのに。」

 

確かに、ドイツからの帰国子女の美波ちゃんはともかく、私達は日本人だから関係ないよね。

 

「学園長の話を聞いた限りでは、本人の本質や特徴によって決められたらしい。」

 

となると・・・デュラハンの特徴は頭が取れることだから・・・あっ。

 

「特徴や本質ですか?そうなるとデュラハンが選ばれたっていうのは、僕の騎士道精神が召喚獣に影響を与えたからってことですね。」

 

「明久。現実から目を背けるな。」

 

「え?違うの?そうなると他に考えられるのは、甲冑の似合う男らしさとか、大剣を振る力強さとか『恐らく、頭がない=バカだからじゃな。』言ったぁー!僕が必死に目を逸らしていた事実を秀吉が包み隠さず言ったぁー!」

 

やっぱりそうだよね。

見た目は格好いいけどさ。

というか頭が取れるということは、戦闘時もどっちかの腕で抱えないとダメってことだよね。

坂本君もそれに思い当たったらしく、吉井君に言ってる。

甲冑と大剣で強くなったと思ってた吉井君は、やっぱりへこんでた。

 

「面白そうだから、私も召喚してみるぜ。何が出るんだろうな。サモン!」

 

すると、ここまで黙って見てた魔理沙が召喚する。

何が出るんだろ?

 

ポンッ←魔女登場

 

「お、私のは魔女みたいだぜ。なかなかいいじゃないか。」

 

魔理沙が出した召喚獣は、魔女だったよ。

これがどういう本質なのかはわかんないけどね。

 

「じゃあ、私も!サモン!」

 

面白そうだし、私も召喚獣を呼び出してみる。

私のは何が出るのかな・・・って思ってたら、前のとほとんど変わってないような気が。

強いて言うなら、私の召喚獣の胸の前に、青色の閉じた眼みたいなのがコードみたいなもので繋がれてるくらいかな?

・・・あ、試しに黒の腕輪を装着してみたら、装備が普段の弓じゃなくて固定電話の受話器とナイフになった。

でも、さっきの眼は残ってるね。

・・・あ、ムッツリーニ君が写真撮ってる。

せっかくだしポーズ取らせちゃお。

 

「古明地のは・・・なんだ?」

 

「私もわからないが・・・なんの妖怪なんだぜ?」

 

みんなもわかんないみたい。

・・・あ、そうだ!

 

「阿求ちゃんならわかるかも!ちょっと聞いてみるね~。」

 

阿求ちゃんは日本古来のこととかも詳しいからね。

この召喚獣のこともわかるかも!

事情を説明して連れてくる。

 

「・・・ふむ、なるほど。これは恐らくさとり妖怪でしょうか。胸の第三の眼で人の心を読み取り、考えていることを言い当てるという妖怪です。ですが眼が閉じてるのはわかないですね・・・。それと、手に持っている受話器は、メリーさんでしょうか。」

 

阿求ちゃんのおかげで正体はわかったけど、なんで目を閉じてるのかはわかんないな。

というか受話器はメリーさんなんだ。

メリーさんっていうと、電話をかけて、『今、あなたの後ろにいるよ』って言うやつだよね。

せっかくだから、吉井君のデュラハンの後ろに移動して、メリーさんぽくやってみる。

 

「さっきから面白そうなことやってるみたいだな。」

 

「なんか本質がどうたらとか言ってたな。」

 

「だから吉井のには頭がなくて、魔理沙ちゃんとこいしちゃんは可愛いのか。」

 

そうやって騒いでると、悪夢から目覚めたクラスメイトがやってきた。

吉井君が『この連中だけには言われたくない。』みたいな顔してる。

 

「そこまで言うなら、君達も召喚してみなよ。きっと酷いのが出てくるからさ。」

 

吉井君がそう言うと、3人とも口の端を歪めて、嫌な笑みを顔に浮かべ、召喚する。

 

・・・ズズズズズ←ゾンビ登場

・・・ズズズズズ←ゾンビ登場

・・・ズズズズズ←ゾンビ登場

 

あぁ、根性が腐ってるのね・・・。

 

「こ、怖いです明久君・・・っ!」

 

「あ、アンタたち!その汚いものを早くしまいなさいよっ!」

 

自分の本質を美波ちゃんに汚いって言われた3人は、お互いの肩を抱き合って泣いてたよ。

その後もみんなで召喚獣を出していって、吉井君の本体も召喚獣のように首が取れかけたり、吉井君の身体に美波ちゃんが拳を叩き込んだり、吉井君の頭がサッカーボールとしてゴミ箱にシュートされたりと色々ありながらも、みんなが召喚してく。

木下君が猫又、姫路ちゃんがサキュバス、美波ちゃんがぬり壁(可哀想)、ムッツリーニ君がバンパイア、坂本君が狼男みたい。

途中でやってきた正邪ちゃんは天邪鬼、お空はやたがらすだったよ。

正邪ちゃんは時にあまのじゃくなところあるからわかるけど、お空のやたがらすはなんだろ?

阿求ちゃんいわく、やたがらすは太陽の力を持つ三本足の鴉みたい。

 

「さて、最後は私ですね。サモン。」

 

阿求ちゃんが召喚獣を呼び出す。

はたして何が出るのかな?

 

ポンッ←百鬼夜行絵巻登場

 

・・・・・・ん?

絵巻?

 

「・・・・・・これ、私どう戦えばいいのでしょうか・・・?」

 

阿求ちゃんが困ったように呟く。

なんせ、阿求ちゃんの召喚獣は、絵巻物に手と足が生えたような見た目してるからね。

武器もナシ。

坂本君の狼男も素手だったけど、あっちはがっしりした肉体があったし・・・。

 

「ちょっと試してみましょうか。えいっ。」

 

阿求ちゃんが念じると、百鬼夜行絵巻が展開され、中から徳利とか茶碗に手足が生えたようなものが弾丸みたいに高速で出てくる。

これなら私知ってるよ、付憑神ってやつだよね。

 

「・・・これはまた、面白い攻撃ですね。」

 

「それはそうと、この召喚獣はきちんと次の召喚戦争には直るのか?こんなんで勝負やったら妖怪大戦争になっちまうだろ。」

 

阿求ちゃんが試してたら、坂本君が鉄人先生に言う。

確かに、私の召喚獣はいいけど姫路ちゃんは恥ずかしいもんね。

 

「召喚システムの調整については俺もよくわからん。学園長なら何か知っているかもしれんがな。」

 

鉄人先生が眉根を寄せる。

これは教師サイドにも好ましい事態じゃないみたい。

 

「確かにその辺は鉄人よりもババァに聞いた方が良さそうだな。なんたって召喚システムの開発者様だからな。」

 

「そうだね。学園長に聞いてみよっか。」

 

「うんうん、それがいいよ。」

 

学園長先生なら何か知っているかもしれないしね。

これは確認しないと。

 

「キサマらっ!ドサクサに紛れて脱走か!」

 

あ、気づかれた。

 

「しまった雄二!気づかれたよ!」

 

「走れ明久、古明地!ババァの部屋に逃げ込めばこっちのもんだ!」

 

「うん、わかったよ!」

 

さっきは参加しなかったけど、私だって出来るなら脱走したかったからね。

学園長室に入れれば行けるけど、まあ私の場合は適当なタイミングで2人とわかれて逃げれば、多分鉄人先生は2人を優先するから逃げられそうだけど、ついていくよ




いかがでしたか?
やっと肝試しに入って、妖怪の召喚獣だせて満足。
腕輪も変化しており、神秘録の怪ラストワードが近くなりました。


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第六章『肝試し!』
第五十六話「妖怪!」


本質より元ネタが優先。


 

 

 

 

 

「んで、どうなんだ、学え・・・ババァ。」

 

「教えて下さい、学え・・・ババァ。」

 

「私も気になります、学園長先生。」

 

「どうしてそっちのクソジャリ共は素直に学園長と呼べないのかねぇ・・・・・・。」

 

化け物と化した召喚獣のことについて話を聞くため、私達は学園長室に来てた。

2人が問い詰めると、学園長先生は呆れたようにため息をつく。

まあ、そりゃそうだよね。

 

「すいません。学園長。」

 

「はンッ。今更言い直しても教えてやるもんかい。このクソガキどもが。」

 

「そんな!?酷いですよババァ長!」

 

「その呼び方は今までで一番酷いさね!?」

 

「おい明久。巷で若いと評判の学園長(笑)にあまり失礼な発言をするな。」

 

「アンタも充分失礼だよこのクソジャリ。」

 

2人の言葉で、学園長先生の機嫌はどんどん悪くなっていく。

・・・どうするのこれ?

 

「で、実際どうなんだ。きちんと復旧するのか?」

 

「はぁ?復旧?何を言ってるんだいボウズども。それだとまるで召喚システムに欠陥があるみたいじゃないか。」

 

バカを見るような目で2人を見てる学園長先生。

 

「だって、見るからに調整に失敗してるじゃないですか。」

 

「いいや、違うね。あれはちょっとした遊び心さ。今は夏休み。肝試しにはもってこいの時期だろう?」

 

そんな学園長先生の言葉。

というと・・・。

 

「つまり、調整に失敗したんじゃなくて、夏仕様にカスタマイズしたってこと?」

 

「そうさ。夏休みにも頑張る生徒達への、アタシからのささやかなプレゼントという奴さね。」

 

ごまかしにしか聞こえないのは私だけかな?

それに、美波ちゃんや姫路ちゃんのことを考えると、ありがた迷惑って感じなような・・・。

 

「まあ、学園長がそう言うなら、そういうことにしておくか。それなら、学園長の好意に甘えさせてもらおうぜ。」

 

「あれ?本当のことを聞かないの?」

 

「別に言わせて得があるわけではないからな。学園長だって肝試しを考えたうえでのプレゼントなんだろう?俺達生徒に異変が伝わった以上、世間体を考えると、何もしないわけにはいかないからな。」

 

「本当にアンタは、こういうことになると頭が回るねぇ・・・。」

 

つまり、坂本君はこのことを利用して、補習期間を潰そうと企んでるみたい。

私は怖いものは別に平気だし、それなら私もいいかな。

姫路ちゃんあたりは意見が違いそうだけどね。

そのまま坂本君と学園長先生が協議して、ルールとかを決めてく。

どうも、ただの見た目だけでの肝試しじゃ許可してくれないみたいだから、点数を使ったものも入れる必要があるみたいだけど、そこは坂本君なら大丈夫なハズ。

私は一足先においとまさせてもらおっと。

学園長室から出て、何しよっかな?って少し考えて、美術部に行ってみようかなって思い立つ。

おとといに、こころさんから『・・・暇な時でいいから、よかったら美術部に来てほしい。』ってメール来てたしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

美術部の扉をノックすると、中からこころさんが出てくる。

 

「・・・いらっしゃい。上がって。」

 

「あれ?こころさんは1人?」

 

「・・・今は補習なり夏休みなりで、私だけ。」

 

どうやら今は補習か夏期講習の時期だし、部員はこころさんだけしかいなかったみたい。

あれ?こころさんは講習ないのかな?

 

「・・・私は美大志望だから、絵の練習。」

 

と思ったら、ちょうど私の心を読んだかのようなタイミングで、こころさんが言う。

なら、私も練習手伝いたいな。

 

「・・・ところで、よかったら、食べる?」

 

そう言ってこころさんが出してきたのはいつもの紅茶とクッキーじゃなくて、キンキンに冷えてる麦茶と棒アイス。

ほわぁ、今欲しいものだよ!

 

「うん、ありがと!」

 

さっきまで暑い教室にいたから、アイスが天国みたい。

冷たくて美味しい!

 

「・・・あ、そうだ!こころさん、テストの後に召喚獣出してみた?」

 

「・・・まだだけど、なにかあるの?」

 

「いつものデフォルメされたやつじゃなくて、今は等身大の妖怪になってるんだよ。」

 

「・・・妖怪?」

 

「なんでも、召喚者の本質や特徴で種類が決まるんだって。私は眼を閉じてるさとり妖怪だったんだけど、こころさんならどうなるのかな?」

 

「・・・それなら多分だけど、私は面霊気になると思う。」

 

「めんれいき?」

 

私の知らない名前だね。

どういうのなのかな?

 

「・・・付憑神の一種で、感情を表すお面を司る妖怪。感情を知るため、舞踊で他人の感情を奪う特徴もある。」

 

へぇ~、そんな妖怪がいるんだ~。

確かに感情を求めるって意味ではあってるかも。

 

「・・・でも、なんで妖怪に?」

 

まあ、そう思うのは普通だよね。

私だって最初見た時思ったし。

 

「なんか学園長先生によると、夏休みにも学校に来てる生徒達に、肝試し出来るようささやかなプレゼントなんだって。」

 

「・・・調整ミスの言い訳?」

 

あ、やっぱりそう思うよね。

 

「まあ私もそう思ったけど、それで2年生は夏期講習や補習の最後の2日間、肝だめしすることになったよ。」

 

「・・・へぇ。それは確かに面白そうな気がする。・・・よかったら、また今度その時の話を聞かせて。」

 

「うん、わかったよ!」

 

「・・・それなら、この前の戦争のこと、教えて欲しい。私は、その間に描くから。」

 

そういえばここに来るのはその時以来だったね。

言われた通り、吉井君が交渉の時に言ってたこととか、魔理沙が和平交渉が済んでいた美晴ちゃんに勝負しかけて補習室に送ったことや、先の期末試験で吉井君が名前の記入ミスで334クラスのアレキサンドロス大王になったこととかを話す。

そのたびにこころさんは興味深そうな表情を浮かべながら私の話を聞いてる。

最近の話のネタになることはあらかた話し終えたあたりでこころさんは絵を完成させたみたい。

その絵は前回よりやっぱり、さらにうまくなってる。

そのあとはこころさんの話を聞いたりお姉ちゃんの絵を見せてもらったりしながら30分くらい過ごして、私は部室を後にしたよ。

 

 

 

 

 

翌日。

 

「おーい、ここを誰か押さえてくれ!」

 

「ベニヤ板が足りないぞ!誰か持ってきてくれ!」

 

「ここの装飾、涸れ井戸だけでいいのー?」

 

私達2年のクラスは、肝だめしのための改修作業で盛り上がっていた。

しかも・・・。

 

「それにしても、まさかAクラスまで協力してくれるとは思わなかったよ。」

 

吉井君が言った通り、A~Eクラスも参加してるし、使う教室も広いA~Dクラスのものとなってる。

 

「まあ、Aクラスといえどもワシらと同じ高校生じゃからな。勉強ばかりでは息も詰まるじゃろうて。」

 

「そりゃそっか。遊びより勉強が好きな高校生はそうそういないよね。」

 

「わ、私はお勉強のほうが・・・。」

 

お化けとか苦手みたいな姫路ちゃんはそう言うけど、まあ普通はそうだよね。

ちなみに私は普通くらいだし、多分楽しめると思うよ。

 

「だ、大丈夫よ瑞季。どうせ周りは全て作り物なんだし、お化けは召喚獣なんだから、怖いことはひとつもないわ。」

 

美波ちゃんがそう言うけど、なんというかむしろ、自分に言い聞かせてるみたい。

吉井君が苦手なのか聞いたけど、美波ちゃんは動揺しつつ強がって認めないね。

普段の様子とは違って動揺してる美波ちゃんの姿が面白いと思ったのか、からかう吉井君だけど、怖がってだきついた美波ちゃんによって頸椎にダメージが入ってる。

しかもそれで、物陰から見ていた美晴ちゃんが怨みの言葉を呟いてるからちょっと怖い。

ただでさえ薄暗い教室だし。

 

「・・・明久。」

 

「きゃああぁぁぁあっ!」

 

暗がりから突然ムッツリーニ君が声をかけたせいで、さらに怖がる美波ちゃんによって吉井君の腰からコキュッという音がする。

腰から鳴っちゃいけないタイプな音だけど、大丈夫かな・・・?

ムッツリーニ君の要件は監察処分者の吉井君にロッカーの移動を頼みたいとのことらしく、了承した吉井君は召喚獣を呼び出す。

Aクラスのロッカーは鍵とか収納スペースとか、Fクラスのとは比べ物にならないくらい立派だから、人(鉄人先生を除く)の力じゃ動かせないよね。

 

「このロッカーをどけたらいいんだね?」

 

「・・・(コクリ)」

 

吉井君が召喚獣に指示をだし、ロッカーに手をかけた時、その衝撃でコロリと頭が落ちちゃう。

 

「「・・・・・・っ!?」」

 

美波ちゃんと姫路ちゃんが息を飲む様子が見て取れる。

まあ、今のは私もちょっとビクッってしちゃった。

 

「頭が外れちゃうのは不便だなぁ・・・。」

 

「・・・ガムテープで固定するとか?」

 

「う~ん・・・。一旦消すとまた貼りなおさないといけないなんて面倒だし、せっかくの肝だめしだから首が外れないと意味がないし・・・このままでいいや。じゃあ動かすよ。・・・よいしょっと。」

 

そう言って、頭は床に転がしたまま両手でがっしりとロッカーをつかませる吉井君。

頭転がしっぱなしなんて、危ないと思うんだよね。

誰かが間違って踏んだり蹴ったりしないように、こういう雑用の間は吉井君本人が頭を抱えておけばいいのに。

・・・まあ、絵面がSch○○l Daysの最後みたいになりそうだけど。

 

「ぐあっ!!頭に突然激痛がっ!」

 

やっぱり誰かが踏んじゃったみたいと思ったけど、美晴ちゃんが怨みの念を込めて踏んでた。

本人は召喚獣の操作で動けないし、召喚獣もロッカー持ってるから動けない。

 

「清水!吉井の頭をこっちに渡すんだ!」

 

このまま足蹴にされるのも可哀想だし、私が取り返そうかなって思ってたら、そこにFクラスのクラスメイトが美晴ちゃんに言う。

 

「邪魔をしないでくださいっ!この豚野郎にはお仕置きが必要なんですっ!」

 

「いいからさっさと吉井の頭を渡せ!」

 

「お前にはそれを任しちゃおけねえ!」

 

「「「俺達が本物の処刑を見せてやる!」」」

 

・・・んん?

 

「わかりました。そういうことなら渡しましょう。」

 

「感謝するぞ清水。女子に抱きつかれた裏切り者の血の制裁だ!サモン!」

 

「「「サモン!」」」

 

召喚フィールドにゾンビが溢れる。

 

「おらっ、行くぞっ!パース!」

 

「うぐっ!」

 

「よーし、こっちもパース!」

 

「ぐあっ!」

 

「ナイスパース。おらっ、シュートだ!」

 

「ぐえっ!」

 

デュラハンの頭でゾンビがサッカー。

・・・え、なにこの地獄絵図。

というか助けてあげたいけど、うまくドリブルで吉井君の頭をかすめとれる自信がないし、まっこうから行こうにも、さすがに多勢に無勢すぎるんだよね・・・。

 

「待つんだ。これ以上吉井君を苛めるとなれば、僕が相手になろう。」

 

するとそこに、Aクラス次席で、吉井君に友情より強い好意を持ってる久保君が助けに入る。

 

「ありがとう久保君!助かるよ!」

 

「気にしないでいいよ吉井君。君のことは僕が守るよ・・・・・・いつまでも。」

 

なかなか男らしいプロポーズみたいな久保君の台詞。

吉井君が男の子なことを除けば、いい場面かな。

 

「Aクラスの久保・・・でしたか?豚野郎のお仕置きを邪魔しないでくれませんか?」

 

「それは出来ない相談だよ清水さん。僕にも守りたい・・・いや、守らなければいけないものがあるからね。」

 

「わかりました、ならそこの豚野郎と一緒に始末してあげます!サモン!」

 

「僕が勉強を頑張っていたのは、今ここで吉井君を守るためだったみたいだね・・・。サモン!」

 

2人が召喚獣を呼び出す。

気になる種類はえーと・・・多分迷ひ神かな?

道に迷って力尽きた人間が、道連れを求め放浪してるものだったはず。

同性愛を否定する気はないけど、確かに2人は人の道を踏み外してると言えなくないかな。

・・・お姉ちゃんがものすごい好きな私が言えるかは疑問だけどね。

そのままゾンビと迷ひ神VS迷ひ神の戦いがスタート。

生首を抱えているゾンビの群れに迷ひ神が襲いかかり、向こうも対抗して腐った身体で引っ掻きや噛みつきを繰り出してくる。

飛び散る腐肉、宙を舞う生首、弾け飛ぶ四肢。

 

「「「きゃああぁぁぁあーっ!」」」

 

あまりに凄惨な光景に、美波ちゃんや姫路ちゃんだけじゃなくて、私も含めたクラスにいた全員が悲鳴をあげる。

等身大だから余計に酷い・・・。

私もここまでのは無理・・・。

その光景に恐怖し召喚獣を出す者、彼女を守ろうと召喚獣を出す者、それを殺さんと襲う者と、あっという間に召喚フィールドは阿鼻叫喚の妖怪大戦争が発生する。

私もゾンビのちぎれた足がこっちに飛んできたからつい召喚しちゃった。

あまりの騒がしさに、先生がフィールドを消すんじゃないかって思ったその時。

 

「「「お前らうるせぇんだよ!!」」」

 

普段あんま見ない顔の人達が怒鳴りこんできた。




いかがでしたか?
関係ないのですが、伝ポケの鳴き声で一番好きなのってパルキアなんですよね。
ひさしぶりにディアルガvsパルキアvsダークライ見てそう感じました。


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第五十七話「乱入!」

少しだけネタバレ。
肝試し中に新しい3年生の東方キャラが登場します。
ヒント:姉妹


 

 

 

「騒がしいと思ったらまたお前か、吉井!」

 

「つくづく目障りな奴だな・・・!」

 

先頭の2人が吉井君を見て、嫌そうに顔をしかめる。

 

「変た・・・変態先輩でしたっけ?」

 

「おい!言い直そうとして俺達の顔を見て言い直すのをやめなかったか!?」

 

「お前俺達を心の底から変態だと思ってるだろ!常村と夏川だ!いい加減覚えろ!」

 

名前を覚えてなかった吉井君に常夏コンビが主張する。

まあ吉井君は変態だって思ってるみたいだけど、私は真性のクズって思ってるし、名前を覚える価値ってないと思うな。

 

「テメェらうるせえんだよ!騒ぎが上まで響いて受験勉強に集中出来ねぇだろうが!」

 

先頭の常夏の片割れが怒鳴ると、後ろの人達もそうだそうだとがなりたてる。

でも、防音はしっかりしてるはずのこの校舎で下の音がそんなに聞こえるのかな?

 

「すいません。上の階まで響いているとは・・・」

 

「おいおい、そいつは言いがかりじゃねえか?」

 

吉井君が謝ろうとした時に坂本君がやってくる。

あ、やっぱ坂本君もそう思う?

 

「えっ?それはどういうこと?」

 

「口実を設けて難癖をつけることだ。いちゃもんとも言う。」

 

「言葉の意味は聞いてないよ!さてはキサマ僕のことを真性のバカと思ってるな!」

 

「・・・え・・・・・・?」

 

「なんだその『何を今さら』って顔は!そう思ってるのは雄二だけで、他の人は・・・って待った!どうしてみんな気まずそうに目をそらすの!?僕の目を見てよ!」

 

私も目をそらさざるをえないな・・・。

坂本君が子供をあやすかのような言い方で、あとで話そうと言って、その話は一度流れたけど。

 

「まあ要するにだ、通常の学校でも下の音はほとんど聞こえてこないのに、試召戦争という騒ぎを前提としているために防音がしっかりしているはずの新校舎で、ドアを閉めた教室に音が聞こえるわけがないだろ?そもそも俺達が騒がしいのは認めるが、これだってれっきとした召喚獣を使った一種の勉強だ。おおかた、勉強に飽きてフラフラしているところに俺達がなにか楽しそうなことをしてるのをみつけて、八つ当たりしに来たと言ったとこだろ。」

 

坂本君の言葉が図星だったのか、バツが悪そうに目をそらす3年生。

情けないというか、なんというか・・・。

 

「それじゃ言わせて貰うがよ!お前らは迷惑なんだよ!学年全体の覗き騒ぎに、あげくの果てに男子全員停学だぞ!俺達3年までバカと思われたら内申に響くじゃねえか!」

 

「「「う・・・。」」」

 

今度は2年男子達が目をそらす。

そこは確かに否定出来ないかも・・・。

私は言われてないけど参加してるし・・・。

きっかけ美春ちゃんだけど。

 

「だいたいお前ら2年はそこのクズコンビをはじめ、出来の悪い連中やクズが多すぎるんだよ。バカの代名詞と言われる監察処分者も2年にしかいないしな。」

 

言い返せない男子達を見て、片割れが得意気に鼻を鳴らして言葉を続ける。

でも、残念ながらその言葉は的外れだよ。

 

「でもそれ、私とお姉ちゃんにボロ負けした人が言うの?」

 

「「なっ!?うるせえっ!!」」

 

「第一、3年のクズコンビが他人のことクズって言える立場なの?自分のこと省みてからものを言ったら?」

 

「なっ、テメェ・・・!お前らのことは前々から気に入らなかったんだ!」

 

「おい常村、教師もいるんだ。暴力はやめておけ。」

 

「わかってらぁ・・・!こうすりゃいいだろ、サモン!」

 

それとともに召喚された召喚獣は・・・地獄の門番の牛頭かな?

 

「さて吉井よぉ。お仕置きの時間だぜ。」

 

「く・・・っ!やっぱり僕の召喚獣狙いか!でもこんだけいるなかで、どれが僕の召喚獣かなんて・・・」

 

「こいつだろ。」

 

「あがぁっ!」

 

牛頭が迷わずデュラハンに向かって攻撃をしかける。

・・・まあ、頭がないなんて召喚獣、吉井君のだけだから異彩を放ってるし・・・。

 

「ぐぅっ、僕の召喚獣を一瞬で見抜くなんて、さすがの洞察力だと誉めて」

 

「いや、頭がないなんてバカな召喚獣、明らかにお前しかいな」

 

「鋭い洞察力だと誉めておこう!」

 

あ、今吉井君聞こえないふりした。

 

「加勢しよう吉井君。理不尽な先輩の裁きに従う必要なんてない。」

 

そこに、いつのまにか頭を取り返した様子の久保君が加勢を申し出る。

それを見て、常夏コンビの片割れもまた呼び出す。

 

『Aクラス 常村勇作 世界史 174点 and Aクラス 夏川俊平 世界史 163点』

 

先に表示される2人の点数。

私とお姉ちゃんが前に戦った時の点数もこれくらいだったから、これが平均って感じかな。

そのまま吉井君達の点数を待ってると・・・。

 

「ぐぅっ・・・!」

 

「痛てえか?そいつは何よりだ・・・なっ!」

 

意識が逸れた隙に、吉井君の召喚獣が牛頭に体当たりされる。

体勢を崩したところに追撃とばかりに振りかざされる斧。

 

「吉井君っ!」

 

そこに久保君の召喚獣が割り込むように体当たりして牛頭をふっとばし、その後ろの馬頭もまとめて吹き飛ばす。

 

「なっ・・・!コイツ、結構やるぞ・・・!」

 

「吉井もだ。さっきの体当たりがほとんど効いてないってどういうことだ・・・?」

 

「あまり甘く見ないでくださいね変態先輩。いつまでもバカのままじゃないんですから。」

 

驚く2人に対し、ニヤリと笑いながら自信満々に言う吉井君。

その態度に触発され、私を含むみんなが点数に注目した。

 

『Aクラス 久保俊光 世界史 374点 and 334クラス アレキサンドロス大王 世界史 161点』

 

「「「・・・・・・。」」」

 

「さあ勝負はここからだ!この僕の本当の実力を見せて・・・」

 

「・・・おうコラちょっと待てそこのバカ。」

 

「・・・何か不都合な点でも?」

 

「不都合な点しか見当たらねぇよ・・・。」

 

モヒカンの方が頭に手をあてあきれている。

まあ、そりゃそうなるよね・・・。

 

「誰だよアレキサンドロス大王って!それに334クラスって学校拡張しすぎだろ!明らかにこれはお前の点数じゃねえだろうが!」

 

吉井君が説明しようとする前に、坊主の方が怒りを露に叫ぶ。

 

「ち、違いますよ!少しミスしちゃいましたけどこれは僕の点数です!名前の間違いなんて、誰もがすることじゃないですか!」

 

「無記名ならともかく、何をやらかしたら名前がアレキサンドロス大王になるんだ!?」

 

こればっかりはもっともだと思うかな。

忘れないためにメモ書きとして書いたのが名前のとこだったみたいだけど・・・。

吉井君も説明に困ってる。

 

「おい夏川。最近召喚システムの調子が悪いらしいからな、名前のはその不具合かもしれんぞ。」

 

「ん?ああ、そうだな。不具合でもなければこんなことはありねえか。」

 

「・・・・・・。」

 

そう勘違いされて、本当のことが言いづらそうな吉井君。

 

「まあ、名前の部分は不具合だとしてもだ。お前らがこの学校の汚点であることに・・・。」

 

「不具合とは聞き捨てならないねぇ。」

 

さらに言い募る坊主の言葉を遮るように、学園長先生が話に入ってくる。

 

「まったく・・・。吉井のバカまでシステムのせいにされちゃたまったもんじゃないさね。それは正真正銘このジャリのミスさ。けど、こっちのミスと思われるのも癪だしね。その名前の部分くらいはあとで直してやろうかね。」

 

まあ、さすがにこのままって訳にもいかないもんね・・・。

事情を知らない人にとっては敵か味方かわからなくなっちゃうし、さっきみたいに不正を疑われかねないもん。

 

「それで、こんなとこまで来てどうしたんですか学園長?なにか用でも?」

 

珍しい、吉井君が学園長先生をババァとか呼ばないなんて!

どうやら坂本君というか2年生に、肝試しを学園側が援助するかわりに、盆休みに一般公開するため作ったものをそのままにするよう伝えにきたみたい。

まあ、私達にしてみれば、願ってもない提案だよね。

 

「それと・・・折角だからね。3年も肝試しに参加したらどうだい?こんなところで小競り合いをしているよりはその方が有意義さね。」

 

「冗談じゃねぇ。こんなクズどもと仲良く肩を並べて肝試しなんかやってられるか。」

 

「だよな、胸糞悪ぃ。」

 

学園長先生の提案に、鼻を鳴らして答える常夏コンビ。

後ろの3年生も同様の意思を態度で示してる。

 

「そういう態度をとられると、是が非でも参加させたくなるねぇ・・・。よし、決めたよ。夏期講習と補習最終日は全員参加の肝試しにするよ。これはあくまでも講習や補習の閉めだからね、各講座の参加者は全員余すことなく参加すること。いいね。」

 

「「なっ・・・!?」」

 

うわっ、性格悪っ。

その提案に目を白黒させてる常夏コンビを放置し、満足したように出ていく学園長先生。

でもまた、予想外の展開だよね・・・。

 

「そういうわけだセンパイ方。仲良くやろうぜ。」

 

「うるせぇ!俺はお前らがなんざと仲良くなるつもりはねぇ!」

 

「だろうな。俺もアンタらは気に食わねぇ。ってことで、こういうのはどうだ?」

 

「あぁ?」

 

「驚かす側と驚かされる側に分かれて勝負する。適当な罰ゲームでもつけて、な。」

 

あ、確かにそれなら悪くないかも!

仲良くやる必要もないもんね。

 

「悪かねぇな。当然俺達3年が驚かす側だよな?俺達はお前らにお灸をすえてやる必要があるんだからな。」

 

これは驚く私達を見て笑おうっていう魂胆かな?

坂本君も似たような魂胆持ってるから、言い争いに・・・

 

「ああ、それで構わない。」

 

あれ?

・・・・・・あ、そっか。

驚かす側だと準備の手間あるもんね。

 

「決まりだな。ルールと負けた方の罰は?」

 

「コイツが最初予定していたルールだ。文句があれば一応聞くが。」

 

そう言いつつ坂本君が取り出したのはA4サイズのプリント。

私も1枚もらって見てみる。

 

①2人一組での行動が必須。1人のみのチェックポイント通過は認めない。(1人になっても失格ではない)

②2人のうち1人でも悲鳴をあげてしまった場合両者ともに失格とする。

③チェックポイントはB、C、Dクラスにひとつ、Aクラスにふたつの5ヶ所とする。

④チェックポイントでは各ポイントを守る代表者2名と召喚獣勝負を行う。撃破で通過扱いとなる。

⑤1組でもチェックポイントをすべて通過出来れば驚かされる側、通過者がいなければ驚かす側の勝利とする。

⑥驚かす側の一般生徒は召喚獣でのバトルは認めない。あくまでも驚かすだけとする。

⑦召喚時に必要な教師は各クラスに1人配置する。

⑧通過の確認用として、驚かされる側はカメラを携帯する。

 

わっ、けっこう作り込まれてる。

でも悲鳴だけじゃ定義があいまいだよね。

 

「あとはこれに設備への手出しを禁止するってのを追加する予定だ。学園長がうるさそうだからな。」

 

「坂本、悲鳴の定義はどうなっている?」

 

「ん?ああ、そうだな・・・。そこは声の大きさで判断するか。カメラを携帯させるわけだし、音声が一定値を越えたら失格とかにするか。」

 

「そんなことが出来んのか?」

 

「・・・問題ない。」

 

さすがはムッツリーニ君。

そういう技術力は凄いね。

それで結局、罰は体育祭の片付けをやることに。

明日、バトルになるみたいだけど・・・、どうなるのかな?




いかがでしたか?
しかし今回のアニポケ、1話見ましたがすごくいいですよね。
全地方出るならヒカリが出て欲しいです。


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第五十八話「肝試し!」

今回短め。


 

 

 

「うわぁ・・・。なんか凄いことになってるね・・・。」

 

「そうね・・・。これはそういうのが苦手な人にとっては鬼ね・・・。」

 

翌日。

お姉ちゃんと私はお化け屋敷となった新校舎3階を覗いてみたんだけど・・・陰鬱な雰囲気凄いな・・・。

 

「お姉ちゃんってこういうのは大丈夫だったよね?」

 

「まあ、それなりには・・・ね。こいしこそ大丈夫?」

 

「うん、私は平気!だからお姉ちゃん、ペア組もうよ!」

 

「まあ、いいけど・・・。暗闇だからってわざと私に抱きついたり変なとこ触るのはナシよ。」

 

「・・・・・・」

 

「返事しなさいこいし。」

 

やった!

せっかく肝試しをするならお姉ちゃんと一緒がいいもんね!

決まったことだし、私達の集合場所の旧校舎に向かう。

今回この肝試しに参加するのは補習や講習を受けてた人達だから、だいたい学年の半分くらい。

そのなかから2人1組のペアを作って順番に入ってくことに。

ムッツリーニ君によるとカメラは計5台あるらしいから一度に5組入れるってことだって。

 

「ところで雄二、ペアはどうするの?」

 

「そうだな、せっかくだから極力男女ペアになるようにするか。」

 

えっ?

吉井君と坂本君がそんなこと言ってるけど、私やだよ?

お姉ちゃんと組むんだから・・・!

 

「でもなんで男女ペアなの?」

 

「確かお主ら、常夏コンビと個人的な勝負の約束をしとらんかったかの?」

 

「んなもんあいつらに面倒な準備を押しつけるための方便だ。こうしてそれに成功した以上、受ける必要なんざないからな。体育祭の片付けだってサボれるんならサボりたいが、そんくらいならな。無理に勝ちに拘る必要もない。」

 

「へ~、なるほどね~。」

 

納得したように頷く吉井君。

 

「で、本音は?」

 

「翔子にペア組むよう脅された腹いせに全員を巻き込んでやろうと思った。」

 

「なるほど、シンプルな理由だね。」

 

なんでもいいけど私やだよ?

 

「男女ペアとは坂本もなかなか粋なはからいしてるぜ。吉井は誰と組むつもりなんだぜ?」

 

「えっと、じゃあ・・・魔理沙、よかったら一緒に組まない?」

 

「え、私か?ま、まあ私は構わないんだ『ねえ魔理沙、私と先約があったわよね?』・・・え?霊夢?」

 

魔理沙の返事を遮るように、いきなり出てきた霊夢さんが言葉を挟む。

あれ、でも魔理沙困惑してない?

 

「え、霊夢?何を言って『あ・っ・た・わ・よ・ね?』あ、そ、そうだな。そういえばしてたな。と、というわけで吉井すまんな。」

 

「え、うんまあいいけど・・・。」

 

脅迫・・・・・・?

 

「どういうつもりだ霊夢?」

 

「悪いわね、こういう肝試しはどうしても早苗と組みたくないのよ・・・。」

 

「・・・?」

 

「昔、いろいろあってね・・・。」

 

「まあ、詳しく話したくないのなら聞かないが・・・。」

 

2人が話しているのが聞こえてくる。

霊夢さんなにがあったんだろ?

まあいっか!

それで、吉井君は誰を選ぶのかな?

 

「あのさムッツリーニ、肝試しだけど一緒に行かない?」

 

「・・・・・・っ!?(ブンブンブン)」

 

!?

候補のなかでムッツリーニ君に話ふるの!?

木下君ならともかくムッツリーニ君!?

 

「あ、アキっ!アンタついに土屋にまで興味を持ったの!?」

 

「え?だって魔理沙は博麗さんと行くみたいだし、雄二を誘ったら悪い霧島さんに悪いじゃないか。」

 

「この面子でお前の選択肢は俺とムッツリーニの2択しかないのか!?」

 

「・・・気持ちだけでも迷惑・・・。」

 

「・・・私に来られてもお姉ちゃんと行くから困ってたけど、美波ちゃんや姫路ちゃんじゃなくてムッツリーニ君に行くんだ・・・。」

 

吉井君って、考えてること読めないよねほんと・・・。

もし超能力者でも無理そうな気が・・・。

 

「お姉様、美春とペアを組みましょう!」

 

さっきから物陰にいるのは気づいてたけど、吉井君がムッツリーニ君を誘ったのを見届けたからか、飛び出してくる。

 

「ちょっ、美春!?坂本が言ってたじゃない、男女でペアを組むって!」

 

「大丈夫ですお姉様!お姉様のなだらかで水平線のごとき胸があれば問題ないですし、そこに女の子同士のペアもいるのですから!」

 

何気に失礼な美春ちゃんのセリフ。

もしこれ吉井君が言ってたなら、肋骨数本くらい持ってかれてたんじゃない?

 

「も、もう離れなさい美春!ウチはアンタと組む気なんてなくて『お願いだムッツリーニ!僕とペアをくぺっ!?』、アキとペアを組むをしてたのよ。だから、またの機会にしてくれる?」

 

危険を察知し逃れようとした吉井君を抱き寄せる・・・いや、吉井君の頸動脈を押さえる美波ちゃん。

吉井君の命運やいかに。

 

「離れてくださいお姉様っ!そんな豚野郎、お姉様にふさわしくはありませんっ!」

 

「美春、ウチが約束を破ることが嫌いなの、知ってるわよね?」

 

「わかりました・・・。ですが万一、そこの豚野郎が参加出来なくなったら、美春とペアを・・・」

 

「ごめんね美春、その時はお腹が痛くなってる予定なの。」

 

「お姉様は薄情ですーっ!」

 

お腹が痛くなってる予定。

斬新な断り文句だけど、変に希望を持たせるような断り方してたら吉井君が亡き者にされてた可能性あるし、正解っちゃ正解なのかな?

ということで吉井君のペアは美波ちゃんに決まったんだけど・・・・・・。

 

「お姉様とペアなんて万死に値します・・・!殺します殺しますころしますコロしますコロシマコろシコロこロコロ・・・!」

 

さっきまでいたポジションに戻った美春ちゃんが凄い怨念送ってる。

なんというか、驚かす側で登場したら悲鳴の10や20、すぐなんじゃないかなってくらいだよ。

・・・ところで、そんな美春ちゃんに接触して、なにかもちかけてる様子の久保君は何をしてるの・・・?

 

「まあ、今はだいたいで、細かい部分はあとででいいだろ。まずは他の参加者たちを楽しませてやらんとな。」

 

「あれ?雄二らしくないね。」

 

「まあ、俺達は主催者だからな。まずは他の参加者を楽しませるってのが筋ってもんだろ。」

 

「本音は?」

 

「翔子とペアを組むことが決まった以上、他の連中がクリアして参加しないようにしたい。」

 

単純な理由だ・・・。

その後坂本君の宣言通りに基本男女ペアで組まれて、坂本君や吉井君は最後の方に順番が決定する。

私とお姉ちゃんもわりと後の方だけど、相手も多分本気だし、私達まで回ってくるよね。

でも、今回は講習と補習の参加者だから、こころさんがいないのは残念かな・・・。




いかがでしたか?
この作品書きながら弱保ヨノワール考えてるのですが、どうやってもミミッキュがつらい。
ドラパルトならHB腕白で火力上昇持ち物なしならダイマックスなしでゴーストダイブもとのダイホロウ耐えられるので殴りと影撃ちで、火力アップアイテムならダイマックスすれば勝てます。
判断は夢のおみとおしで。


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第五十九話「突入開始!」

久しぶりにポケきらの方書き始めました。
コンテスト難しい。


 

「ね、ねえ・・・。あの角、怪しくない・・・?」

 

「そ、そうだな・・・。何か出てきそうだよな・・・。」

 

ムッツリーニ君が設置したモニターから、最初に突入したBクラスらしい男女ペアのカメラからの音声や映像が流れてくる。

まずはBクラスのチェックポイントを目指すんだけど、夜の江戸時代の街並みのような作りになってる。

演出のために光が抑えられてるそこは、こういうの苦手でもない私でもスリルあるかな。

 

「そ、それじゃ俺が先に行くから。」

 

「う、うん・・・。」

 

カメラが見るからに怪しい曲がり角を中心に映す。

緊張しながらも歩みを進めていく2人。

こっちも何が来るか緊張しながら見ていると、カメラはその先の道を映し出しただけだった。

私達が安心した時。

 

「「ぎゃぁあああーっ!!」」

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

カメラの向こうから悲鳴が響き、それを聞いた美波ちゃんと姫路ちゃん、あと小鈴ちゃんと早苗ちゃんが悲鳴をあげてた。

 

「・・・失格。」

 

ムッツリーニ君が言う通り、モニターのメーターは失格ラインをはるかに越えたラインを示してる。

というか・・・。

 

「小鈴ちゃんと早苗ちゃん、お化け苦手だったの?」

 

「ええ、文献見るのとかは大丈夫なんですけど、驚かされる感じなのは苦手で・・・。」

 

「私もです・・・。妖怪はいいんですけど、こういうのに弱くて・・・。」

 

「安心しなさい早苗、私が守るわよ。」

 

「天子さん・・・!」

 

「天子さんってそういうの大丈夫な人なんだ~。」

 

「ももももちろんよ!ここここんな子供だましのものに私が怖がる道理なんてにゃいわ!」

 

そういう天子さんの手は震えてるけど・・・・・・そこは言わないでおいてあげるのが優しさだよね。

でも、さっきは何がいたのかな?

カメラの死角から来たせいで悲鳴しか聞こえなかったのもあって、正体がわかんない。

これじゃ恐怖が助長されるだけだよね・・・。

次のペアも、向こうが驚かすタイミングをずらしてきたことであっさり失格に。

まあでも、呟きから口裂け女や化け提灯が来ることはわかったけどね。

 

「最初の角で2組失格だと、こちらの士気に関わってくるな・・・。勝敗はどうでもいいとはいえ、やられっぱなしは気に食わねぇ。よし、順番を変更しFクラスペアを2組投入する!」

 

坂本君がここで恐怖とは無縁そうなFクラス男子のペアを投入することに。

確かに悲鳴はあげなさそうだし、進んでいけばどんな仕掛けがあるかわかるようになるから進みやすくなるもんね。

まず突入したのは須川君と朝倉君のペア。

さっきまでのペア達と違って、曲がり角もずんずんと進んでく。

まあ、そっちの方がおどかすタイミングもつかみづらいし見てる方も怖くないけどね。

そして、曲がり角を曲がったところでカメラが壁の様子を映す!

そこには血まみれの生首が!

 

「「「きゃぁあああーっ!!」」」

 

そしてそのまま後ろを振り返ると、そこには耳まで口が裂けた女性が!

 

「「「きゃぁあああーっ!!きゃぁあああーっ!!」」」

 

画面を見てる美波ちゃん達が、どっから声出してるのかなって思うような音量で悲鳴をあげる。

だけど・・・。

 

「おっ、こっちの口裂け女、ちょっと口が大きいけど美人じゃないか?」

 

「いやいや、こっちの方が血を洗い流せば美人なはずだ。首から下がないから、スタイルはわかんねえけどな。」

 

当の2人は冷静・・・というかどっちか美人かで討論する余裕まである。

まあ・・・・・・あれくらいの光景はよく見るし、美波ちゃんも四十四話で吉井君の腕をあれより酷いグロ画像にしてるのに・・・って四十四話ってなんだろ?

続いて出てきたのは化け提灯。

いきなりセットのなかに紛れ込ませてた召喚獣が姿を表すとはいい演出だね。

 

「おっ、これはさわれねぇな。」

 

「召喚獣なら触れるんじゃねえか?サモンっと。」

 

こちらも平然とした様子の2人。

ゾンビにつかまれてバタバタしてる化け提灯がちょっとシュールだ。

 

「そういえばお主、肝試しは極力男女ペアだと言っておらんかったかの?」

 

「だいたいそうなるようにはしたんだがな・・・。俺達Fクラスは男の割合が多いうえ、女子同士で組む奴らも多かったからな。」

 

そんな坂本君の言葉。

まあお姉ちゃんが男に誘われて肝試しなんて、相手の男は冥界送りしないといけないし当然だよね!

 

「あー、畜生。なんで俺が須川なんかと・・・!」

 

「お前がモテないから悪いんだろ。」

 

こっちの会話を知ってか知らずか、ペアをぼやいてる2人。

まあ、せっかくこういうイベントがあったのに、相方が男なら不満抱いて当然だよね。

 

「何だと須川・・・?お前だって朝から20人くらいに声かけて全滅していただろうが!」

 

「ち、違う!あれは別に断られたわけじゃない!向こうの事情があっただけなんだ!モテないわけじゃない!」

 

「俺だってそうだ!向こうに事情があっただけなんだ!モテないわけじゃない!」

 

・・・・・・ん?

今の言い争いでメーターが失格ラインを越えたような・・・。

 

「・・・失格。」

 

「あいつらは何をやってるんだ・・・。」

 

「・・・まあ、ここまで進めたのはいいのではないでしょうか。」

 

仕掛けで悲鳴はあげなかったものの、言い争いで失格になるFクラス2人。

まあでも、仕事は不充分ながらもしてくれてるよね。

そうしてもう1組のFクラスペアがその先に進み、仕掛けの全貌を明らかに。

何が来るとわかってても悲鳴をあげちゃった人達もいるけど、点数の高い人達も進めてる。

そして、Fクラスペアの2人がチェックポイントに到達。

そこで待っていたのは化学の布施先生と3年生。

ここでは純粋な点数勝負になるからね。

相手の点数は300点ちょい。

操作技術に1年の差があり、点数も5倍くらいの召喚獣に2秒でやられるFクラスの2人。

こればっかりは仕方ないかな。

 

「だが、これでチェックポイントまでの道のりはわかった。皆、ここは一気に勝負を決めるぞ!今の連中に対抗出来そうな点数のペアは突入してくれ!」

 

坂本君が待機してるみんなに声をかける。

 

「「「俺達に任せとけっ!」」」

 

「お前らは戦える点数じゃないだろ!?」

 

何故か一番最初に自信満々に立ち上がったのはFクラスのみんな。

自分の点数理解してないの?

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ!Bクラス制覇!」

 

「やったね真一君!」

 

Fクラスの2人が秒殺されてから7組が突入し、そのうち5組がギリギリな悲鳴をあげつつもチェックポイントにたどりつくことに成功。

今回のルールだとチェックポイントの人は入れ替わることもないし、補充試験もナシ。

だから、こうやって点数を徐々に削っていけば勝てるって感じだね。

 

「はぁ・・・。良かったです・・・。これでBクラスには行かなくていいんですよね・・・?」

 

心底安心した様子の姫路ちゃん。

姫路ちゃんが言う通り、一度クリアしたクラスは次からは飛ばしてもいいことになってるから、次はDクラスに行くことになるんだよね。

ちなみに姫路ちゃんは一縷の望みをかけて順番を最後の方に設定してる。

当然順番になる前にクリアされたら終わるから、参加しなくて済むからね。

 

「それじゃあ、引き続き俺達はDクラスに向かうぞ。」

 

「頑張ろうね、真一君。」

 

「怖くなったらいつでも言えよ真美。俺が守ってやるからな。」

 

「うん、ありがとう。頼りにしてるからね真一君。」

 

「「「チ・・・ッ!」」」

 

モニターから聞こえてきた会話を聞き、教室の各地から舌打ちが聞こえてくる。

BとかCクラスによるものかな?

えっ?Fクラスじゃないのって?

 

「坂本、次は俺に行かせろ。奴等に本当の敵はF2年にいることを教えてやる。」

 

「まあ待て近藤。ここは『安心確実仲間殺し』の異名を持つ俺、武藤啓太の出番だろ?」

 

「いやいや。『逆恨み凄惨します』がキャッチコピーのこの俺、原田信孝に任せとくべきだ。」

 

Fクラスは舌打ちだけじゃなくて行動しようとするからね・・・。

 

「おいおいお前ら・・・。とにかく落ち着けよ。」

 

さすがに見かねたようで、坂本君がみんなを諌める。

 

「そういうのはクラス全員でやるべきだ。」

 

知ってた。

まあ、今はダメだけどね。

ところで、Dクラスはどんな仕掛けがあるんだろ?

大きさはBクラスの3分の1くらいしかないから、あんま大がかりなものは無理だと思うけど・・・。

 

「きゃぁあああっ!!」

 

「え!?どうした真美!?なにかあったのか!?」

 

「な、なにかヌメっとしたものが首筋に・・・!」

 

そう思ってた矢先、いきなり女の子の方が悲鳴をあげる。

え、なにごと?

 

「何が起きたの・・・?」

 

カメラにはなにも映ってなかった。

だから何が起きたのかもわかんなかったけど・・・。

 

「恐らくですが、直接接触でしょうね。」

 

「だと思います。召喚獣は陽動で、本命はコンニャクかなにかによる触覚での驚かしでしょうか。」

 

お姉ちゃんと阿求ちゃんによる分析で理解する。

あー、確かにいきなりそれは辛そう・・・。

 

「くそっ、向こうもバカじゃないな。驚かす方法を視角から触覚に変えて、ついていきづらくさせてやがる。」

 

「しかも見えないから、カメラで予習するのも難しいですからね。新校舎の教室の中では狭いDクラスをうまく使っていますね。」

 

「それならこっちだって手を打ってやろうじゃねぇか。Fクラス部隊第二陣、出撃準備だ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

気合いの入った返事が、4組8名のFクラスメンバーから返ってくる。

・・・この時の8人がまさかあんなことになるなんて、私達は思ってもなかったけどね。

 

「・・・こいし、不吉なナレーションはやめなさい。」

 

「大丈夫、冗談だから。」

 

お姉ちゃんに心の中読まれたのか突っ込まれる。

まあ、お化け屋敷でそう恐ろしいことはないとは思うけどね。




いかがでしたか?
フラグって怖いですよね。
ポケきらの投稿はまだ先になりそうです。


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第六十話「惨劇!」

坊主先輩はよくこの役割をひきうけたものですよね。
生物兵器となるなんて。


 

 

「おい、坂本や戻ってきた奴の話によると、ここでは何だかよくわからん物を当ててくるらしいぞ。」

 

「そうなのか。それだとさっきのBクラスよりはやりづらいな。」

 

第二陣として入っていったうちの一組が警戒しつつ会話をしてる。

流血沙汰に慣れてるFクラスでも、やっぱちょっとやりにくいみたい。

まあ、他よりは大丈夫そうではあるんだけど。

 

「そこで、俺はちょっとした対策を考えてきたんだ。」

 

「対策?なにかいい方法があるのか?」

 

「ああ。悲鳴をあげるのは、それがなんだかわからないものだからだ。だから、その物を『俺のことが好きで手を繋ぎたいけど、恥ずかしいからそこらのものを使ってしまう美少女』に脳内変換してやればいい。そうすればむしろ嬉しい接触に早変わりだ。」

 

「な、なんだと・・・!?それはあまりに妙案過ぎる・・・!武藤、俺はお前の頭脳が恐ろしいぜ・・・!」

 

・・・・・・。

これ、会話もモニターに流れてるんだけど・・・。

2人は理解してるのかな?

とにかくそうして進むこと数分。

たまたま方向転換したカメラになにかが横切る。

あれは・・・コンニャク?

ピタッと音をたて、2人に接触するそのなにか。

 

「「ふおぉぉおーっ!!たまんねぇーっ!!」」

 

2人は脳内で変換してトリップしてた。

・・・・・・アホなの?

 

「・・・・・・明久。後であの2人を始末しておいてくれ。」

 

「了解。」

 

・・・まあ、止めなくていっか。

あの2人は置いといて、残りの3ペアは順調に進んでる。

突然の接触に小さな声を出すくらいで、失格にはならないような大きさだし。

でもまあ、こっちが順調ならなんかしらの手を打ってくるよね。

 

「さて、そろそろ向こうも何かをしてくる頃合いだとは思いますが・・・。」

 

お姉ちゃんもそう思ってたようで、モニターを注視してる。

私も見てると・・・・・・あれ、なんか広いところに出た?

 

「なんか不気味だな。」

 

「ああ。よくわからねえがなんかヤバそうな雰囲気を感じるな。」

 

モニターの向こうでも、2人が固唾を呑む様子が伝わってくる。

ここはきっと、勝負の行く末を左右する場面のひとつになるはず・・・!

全員がモニターに注視し、なにが起きるか見守ってる。

画面には暗闇の空間の中央に誰かが佇む感じが見てとれる。

でもその人影は実は囮で、背後からの奇襲も充分に考えられそう・・・。

 

「突っ立ってても仕方ねえ。先に進むぞ。」

 

「わかった。」

 

2人が歩みを進め、カメラも移動していく。

そして、2人が中央に近づいたところで、バンと照明が点灯。

暗闇から一転して光が溢れだした舞台には、常夏コンビの片割れである坊主が佇んでいた。

・・・・・・全身フリルだらけの、ゴスロリ姿で。

 

「「「ぎゃぁあああーっ!!」」」

 

とんでもないグロ画像を前に、画面の内外関係なくそこらじゅうで悲鳴があがる。

こ、これはものすごく辛い・・・!

SAN値が・・・!

 

「坊主野郎めっ!やってくれやがったな!」

 

「汚いっ!手段も汚ければ絵面も汚いよっ!」

 

「これは最悪です・・・!」

 

「気持ち悪い・・・。」

 

「あれはワシも耐えられん・・・!」

 

「お姉ちゃんにあんなもの見せるなんて、ころす・・・。」

 

翔子ちゃんみたいにお化けに耐性があっても悲鳴は避けられない。

 

「なんだ?今、こっちの方から何か聞こえなかったか?」

 

「ああ、間違いない。そこで悲鳴が・・・ぎゃぁあああーっ!!」

 

まずい、悲鳴が呼び水になって二次被害が!

 

「雄二!早く手を打たないと全滅だよ!」

 

「く・・・っ!だが、既に突入した奴等は助けようがない・・・っ!」

 

「そんなっ!彼らを見捨てるしかないっていうの!?」

 

吉井君の言葉に唇を噛み、悔しそうに黙ってうつむく坂本君。

そんな・・・。

 

「ぎゃぁあああーっ!!誰か、誰か助け」

 

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!頼むからここから出してくれ!」

 

「助けてくれ!それが出来ないならせめて殺してくれ!」

 

「       」

 

「突入部隊・・・全滅・・・ッ!」

 

「くそぉっ!皆ぁっ!」

 

注ぎ込んだ戦力は全滅。

モニターで見てた私達ですらこのダメージ。

これは直接見てしまった彼らは、もう・・・。

 

「坂本!仇を・・・!あいつらの仇を討ってくれ!」

 

「このまま負けたら、散っていったあいつらに申し訳がたたねぇよ・・・!」

 

涙ながらに訴えるクラスのみんな。

私も同じ気持ちだよ。

いくらなんでもあんな惨い死に様は酷すぎるよ・・・!

酷いよ、こんなのあんまりだよ・・・!

 

「わかっている!向こうがそう来るのならこっちだって全力だ!突入準備をしている連中を全員下げろ!ムッツリーニ・工藤愛子ペア、そして博麗・霧雨ペアを投入するぞ!」

 

「「「おおーーっ!!」」」

 

その名前を聞き、教室から雄叫びが響きわたった。

きっとやってくれるはず!

教室中から、彼女達の名前のコール。

 

「はぁ、仕方ないわね・・・。まあ、私もあんなもん見せられた怒りがあるし、やってくるとするわ。」

 

「だな。散っていったあいつらの敵討ちをしてくるぜ。」

 

「だってさ。よろしくねムッツリーニ君。」

 

「・・・(コクリ)」

 

あれを見せられても、緊張した様子がない4人は凄い。

 

「・・・あ、霊夢さん、施設への手出しはルール違反になるからね?」

 

「わかってるわよ。さとり、ちょっと聞きたいことがあるのだけど、来てもらっていいかしら?」

 

「ええ、構いませんけど・・・。」

 

注意した私に答えた霊夢さんは、何故かお姉ちゃんになにかを聞いてる。

何を聞いてるのかな?

お姉ちゃんに聞いても教えてくれなかったけど、まあわかるよね。

そしてカメラを構えつつ進んでいく4人。

魔理沙と愛子ちゃんがカメラを持って、ムッツリーニ君は何か大きなものを持って進んでる。

 

「皆!もうすぐあの衝撃映像が来るよ!女子は全員目を閉じるんだ!」

 

吉井君がみんなに呼びかける。

でも私も、霊夢さん達が仇を討つのを見届ける!

さっきの場所はふたたび照明が消されており、真っ暗になってる。

暗闇からいきなり出てくるほうがインパクトも大きいし、予想通りではあるけど・・・。

来る・・・!

 

バンッ!(照明がつく音)

 

ドンッ!(ムッツリーニ君が大きな鏡を置く音)

 

ケポケポケポッ(坊主が嘔吐する音)

 

「て、てめぇっ!なんてもの見せやがるっ!思わず吐いてしまったじゃねえかっ!」

 

「・・・吐いたのは人として当然のこと。恥じることはない。」

 

「くそう、想像以上の気持ち悪さに自分で引いたぜ・・・!どうりで着付けをやった連中が頑なに鏡を見せてくれねぇ訳だ・・・!」

 

「・・・しかし改めて見ると本当に気持ち悪いな。こんなに気持ち悪い姿でよく生きてこられたなと感心しそうになるぜ。(ボソッ)」

 

「そうね、自尊心とかないのかしら。(ボソッ)」

 

「ちょっと待てお前ら!聞こえないよう言ったつもりかもしれねえが、はっきり聞こえてんぞ!」

 

「ムッツリーニ君、この先輩面白いね。来世でなら知り合いになってあげてもいいかも。」

 

「お前はお前で俺の現世全否定してないか!?しかも生まれ変わっても知り合い止まりかよ!」

 

「あ、ごめんなさい。悪気はなかったんですゲロ野郎。」

 

「純粋な悪意しか見られねぇよ!」

 

「愛子、それは失礼よ。3年なんだから先輩つけて、ゲロオカマ先輩とでも呼んであげる方がいいわ。」

 

「それ罵倒がランクアップしてるだけだからな!先輩つければいいってもんじゃねえ!って残りの2人は何カメラ向けてやがるんだ!」

 

「・・・海外のホンモノサイトにアップする。」

 

「こんな気持ち悪いものはそうそう見られないからな、Twit○erにでもあげようと思っただけだぜ。」

 

「じょ、冗談じゃねえっ!覚えてろぉおっ!」

 

涙目になってダッシュで逃げていくゴスロリ坊主。

4人のおかげで最大の危機は去ったね。

でも、さっきの感じ、霊夢さんや魔理沙らしくないキツい感じだったような・・・。

 

「もしかしてお姉ちゃん、さっき霊夢さんに口撃のやり方聞かれた?」

 

「その通りよこいし。」

 

やっぱりね。

清涼祭でも言ったと思うけど、お姉ちゃんは口喧嘩がとても強いし、相手の心にトラウマを植えつけるのが上手いんだよね。

まあお姉ちゃん優しいから普段はそんなことしないんだけど。

ちなみに愛子ちゃんの罵倒は美春ちゃん由来だって。

 

「・・・と、やはりチェックポイントはすぐそこだったみたいだな。」

 

坂本君が言う通り、さっきの照明がスペースをとりすぎていたせいか、すぐにチェックポイントが見えてくる。

保健体育ということで、先に着いていた霊夢さん達はあえて入らず、先にムッツリーニ君と愛子ちゃんが行くことに。

 

「あら?ここのチェックポイントは先程の気持ち悪い坊主ではないのですね。」

 

「まあ、そんなルールはつけてないからな。AかCにでもいるんだろ。」

 

「そうですね、あなた達は個人勝負の約束をしたようですし、出てこないことはないのでしょう。」

 

お姉ちゃんと坂本君が会話をしてる。

確かにお姉ちゃんの言う通り、どこかにはいるとは思うけどどうなんだろ?

 

「「「サモン!」」」

 

そうこうしてる間に、4人が召喚獣を呼び出す。

ムッツリーニ君は前見た通り吸血鬼で、愛子ちゃんはのっぺらぼう。

3年の2人はミイラ男とフランケンシュタイン。

でも、本当の顔がないのっぺらぼうが愛子ちゃんの本質ってことは、今私達に見せてる、明るいセクハラ発言愛子ちゃんは本当の素顔を隠すものってことなのかな?

過去、もしくは現在進行形で何か辛いことが・・・。

吉井君も同じようなことに思い当たったみたいで、考えてる表情してる。

 

「そういえば、ワシが前に演劇の候補として怪談話を探しておったのじゃが、その中にのっぺらぼうの尻目というものがあっての。そののっぺらぼうはなんでも、人に出会うと全裸になったそうじゃ。」

 

((僕(私)の心配を返してほしい。))

 

吉井君と心の声が一致した気がした瞬間だった。

そんなことを思ってる間に、相手の点数が表示される。

その点数はどちらも300点超え。

 

「ムッツリーニ君。先輩達の召喚獣、なんだか強そうだね。召喚獣の操作もボク達より1年長いし、結構危ないかな?」

 

「・・・確かに強い。」

 

『Aクラス 工藤愛子 保健体育 479点 and Fクラス 土屋康太 保健体育 557点』

 

「・・・が、俺と工藤の敵じゃない。」

 

「確かに、ね。」

 

瞬きすら許されない刹那の後、相手の召喚獣は攻撃どころか反応すら出来ず地に倒れ伏す。

あまりに圧倒的な戦力差。

・・・というか、何があったか見えなかったんだけど私・・・。

 

「ねえ雄二、今何があったか見えた?」

 

「ああ、はっきりと見えたわけじゃないが・・・。吸血鬼の方は一瞬で無数の蝙蝠になってフランケンを切り裂いて、また人型に戻っていた。」

 

恐ろしい攻撃速度だね・・・。

凄い・・・。

 

「それで、のっぺらぼうの方は?」

 

「ああ、はっきりと見えたわけじゃないが・・・。一瞬で全裸になってミイラ男をボコボコにして、また服を着ていた。」

 

なんで全裸に・・・?

わかんない・・・。

 

「あと、ムッツリーニはその一瞬で出血・止血・輸血を終わらせてた。」

 

さすがムッツリーニ君・・・。

 

「・・・雄二。浮気の現行犯。」

 

「待て!工藤のは見ようとした訳じゃないから不可抗ぎゃぁあああっ!!」

 

翔子ちゃんによって行われるリアル肝試し。

こんな光景美波ちゃんや姫路ちゃん見慣れてるだろうし、自分でも作り出すのになんでここまで怖がるのかな?

というか翔子ちゃんって、例えば坂本君の前に痴女がいて、見せつけてきたとしても坂本君にアイアンクローや間接技かましそうだよね。

その横では記録用ハードディスクを姫路ちゃんに抜き取られ懇願してる吉井君の姿。

まあそれはとにかく、次はCクラスだよ!




いかがでしたか?
フーパの映画を見てて思ったんですが、多分ラティ兄妹は水の都のやつなのでしょう。
だがあのレックウザは何者なのだろう。
烈空の訪問者は通常色ですけど気になる。


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第六十一話「対策!」

新作のカセキメラを見ていると、ミュウツーを思い出します。
誰が産んでくれと願った。


 

 

 

 

「あれ?この口がふたつある女の人ってなんのお化けだっけ?」

 

「・・・ふたくち女。」

 

「じゃあ、あっちの身体が伸びてる女の人は?」

 

「・・・高女。」

 

「そっちの毛深い男の人は?」

 

「・・・どうでもいい。」

 

あっちでは平然と進んでいくムッツリーニ君と愛子ちゃん。

 

「うーらーめーしーやー!」

 

「あっそ。」

 

「いやちょっとは反応してやれよ霊夢。この唐笠お化け涙目になってるぞ。」

 

「涙目?どうでもいいわ、とにかく行くわよ。」

 

「確かにいちいち構ってられないのはそうかもしれないぜ。」

 

こっちではやっぱり平然と進んでいく霊夢さんと魔理沙。

・・・というか今カメラに出てきてたオッドアイの人、しゃべってたけどもしかして生身?

 

「順調だね、このままクリアしちゃうんじゃない?」

 

「いや、それはないだろうな。向こうもさっきのでムッツリーニの正体に気づいたはずだ。保健体育が異様に得意でスケベな2年生がいるってことくらいは把握してるだろうからな。」

 

「だからといって、悲鳴あげさせられるのかな?」

 

「大きな音を出す手段はそれだけじゃない。例えば、鼻血の噴出音とか・・・な。」

 

3年がそんなことまでするなんてありえない・・・とは言い切れないかも。

さっきのゲロ坊主の一件があるからね・・・。

 

「・・・・・・ッ!(くわっ)」

 

「どうしたのムッツリーニ君?・・・ってああ、なるほどね・・・。」

 

ムッツリーニ君の視線の先にいるのは、髪を結い上げた切れ長の目の綺麗な美人で、色っぽく着物を着崩した女の人。

 

「「「眼福じゃぁーっ!!」」」

 

教室の中からあがる歓喜の声。

確かにムッツリーニ君が反応するのも納得できるかな。

女の私でも目を奪われそうになるその人を前にして、ムッツリーニ君も必死に鼻血をこらえてる。

 

「ようこそいらっしゃいましたお二人方。私、三年A組所属の小暮葵と申します。」

 

「小暮先輩ですか、こんにちは。ボクは2ーAの工藤愛子です。その着物、似合ってますね。」

 

「ありがとうございます。こう見えてもわたくし、茶道部に所属しておりますので。」

 

「あ、そっか。その服装はユニフォームみたいなものですものね。ちょっと着方はエッチですけど。」

 

「はい、ユニフォームを着ているのです。」

 

「そうですか。それではボク達先を急ぐので。」

 

「そしてわたくし、実は・・・」

 

「なんですか?まだなにかあるのですか?」

 

「新体操部にも所属しておりますの。」

 

その言葉とともに着物は脱ぎ捨てられ、下に着ていたレオタードがあらわになる。

・・・これは無理だね。

音声ラインと画面が赤く染まり、2人は失格に。

そして着物に小銭を入れていたのか、硬貨が落下して、チャリーンと音をたてる。

 

「・・・お金っ!」

 

その音を聞きつけたのか、叫んでダッシュする霊夢さん。

その叫びと移動による音で、こっちもラインが基準を越えてしまう。

霊夢さん・・・・・・。

 

「チクショウ、やり方が汚ねぇっ!着物だけでもギリギリだってのにさらにレオタードなんぞ耐えられる訳がねえだろうがっ!」

 

「そうだよ!とりあえず雄二は作戦を練って!僕は姫路さんに土下座してさっきのハードディスクを設置しなおして貰うから!」

 

「ああわかった!抜かるなよ明久!」

 

さっきの小暮先輩のレオタード姿を記録に残そうとする2人だけど・・・美波ちゃんが吉井君に、翔子ちゃんが坂本君に華麗に目潰しして失敗に終わる。

 

「大変だ!土屋が危険だ!助けに行ってくる!」

 

「一人じゃ危険だ!俺も行く!」

 

「待て!俺だって土屋が心配だ!」

 

「俺も行くぜ!仲間を見捨てる訳にはいかないからな!」

 

司令塔である坂本君が機能してない間にFクラスのみんなは独断専行をはじめてた。

私達は止めようとしたけど間に合わない。

そんな状態で行ったら・・・!

 

「「「うぉおおおぉぉっ!新体操ーっっ!!」」」

 

・・・突入と同時に全員失格。

バカだよね。

興味示すのはいいんだけど、おたけびあげながら突入して失格になったら見られないのに。

次々と戦力が減ってく。

 

「う・・・うぅ・・・。ま、マズイな・・・。このまま放っておいたら男子は久保以外全滅しちまう・・・。」

 

翔子ちゃんに突かれた目を押さえながら坂本君が言う。

まあ、久保君のそういう対象は、ね・・・。

吉井君が立候補するも美波ちゃんと姫路ちゃんに圧力かけられて取り消してる。

 

「私が行こうか?」

 

私とお姉ちゃんなら色香に惑わされる心配もないからね。

 

「・・・こいし、あなた現代文苦手でしょ?」

 

「・・・あ、そうだったね。」

 

阿求ちゃんに教わったおかげで点数は確かに上がったけど、それでも2桁止まりだからね私の現代文・・・。

Aクラスであろうチェックポイントの相手と戦うのは分が悪そうだもん。

 

「ならやはり、ここは木下姉妹で行くぞ!」

 

確かに、それが一番良さそうだよね。

早苗ちゃんやお空は現代文私とどっこいどっこいだし・・・。

姉の木下優子さんはあまりよく知らないけど、翔子ちゃんや愛子ちゃん、霊夢さんに天子さんみたいな一部問題がある人達と違って、完璧に近い優等生って感じだし、成績もほぼ全教科で上から数えて両の指に入るくらいにはいいから期待出来そう!

突入してく2人。

・・・というか、ほんとにそっくりだね。

木下君が女子の制服着てたらすぐには見分けられないかも。

 

「困ったわね・・・。アタシ、こういうのあまり得意じゃないのよね・・・。」

 

「姉上、踏んどる。セットを踏んどるぞい。」

 

「あ、ごめんなさい。壊れてないわよね?」

 

苦手とか言ってる割には平気そうだよね。

特に悲鳴をあげる要素もなくさっきの小暮先輩のとこにたどり着く2人。

 

「あら?あなた方は・・・そうですか。女の子同士の組み合わせで来ましたか。それでしたら、私にできることはありませんね、どうぞお通りください。」

 

「だって、秀吉。お言葉に甘えて行きましょ。」

 

「むぅ・・・。すんなりと通れたのにこのわだかまりは何なのじゃ・・・。」

 

言葉通り、小暮先輩は何の抵抗もなくあっさりと横に移動して道をあけてくれる。

でも、ちょっと無抵抗過ぎない?

 

「来たか、木下。待っていたぞ。」

 

と思ったら、モヒカンが立ってる。

もしかして、木下君対策かな?

だとしたら、さっきあんなにもあっさり通してくれたことに対して説明もつくけど・・・。

 

「なんじゃ?ワシを待っていた?」

 

「よくわからないけど、早く済ませてもらいなさい秀吉。アタシらは先に進まないと。」

 

「ああ、大丈夫だ。時間は取らせねぇ。・・・いいか、木下秀吉。」

 

「なんじゃ。」

 

画面の中、モヒカンが真剣な顔で木下君に一歩近づく。

そして、はっきりと、聞き間違いのない口調で木下君に告げた。

 

「俺は・・・お前のことが好きなんだ。」

 

私は、はじめて木下君の本気の悲鳴を耳にした。

まあ・・・同性、しかもアレに本気の告白なんかされれば悲鳴の2つ3つあげてめおかしくはないけど。

・・・でもその作戦、お姉ちゃんにしなくてよかったね、やってたら今頃現世から旅立ってたよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すまぬ・・・。まさかワシがあんなみっともない悲鳴をあげてしまうとは・・・。」

 

「気にするな秀吉。あんなムサい奴に告白されればしょうがない。」

 

「そうだよ。それに『アタシを差し置いてなんでアンタが・・・!』とか言いながら間接技かけられてたし、悲鳴で済ませただけ凄いと思うよ。」

 

「そうそう。木下君は何も悪くないというか人として当然の反応だし、元気出して。」

 

「姉上の間接技も痛かったのじゃが、ワシを思って書いた詩を朗読されたのが一番キツかったのじゃ・・・。」

 

確かにあれはキツかったね。

お前は俺を照らす太陽だとかいいフレーズが聞こえてきた瞬間、ついモニター叩き割ろうとしちゃったもん。

直接聞かされてた木下君のダメージは計り知れない。

 

「できれば姉上の力でせめて消耗させておきたかったのじゃが・・・。」

 

「それは心配するな秀吉。こっちにも秘密兵器がいるからな。アイツらなら色香に惑わされることもないだろうし、チェックポイントもクリア出来るだろ。」

 

「え、誰?阿求ちゃんと小鈴ちゃん?」

 

「いや、そうじゃない。アイツらは2つあるAクラスのチェックポイントのひとつに当てたいからな。まあ常夏コンビはもう出てこないだろ。というわけで行ってこい明久、島田。」

 

え?

なんで2人・・・ああ、なるほどね。

魔物を召喚するための手順ってことか。

吉井君はわかんないみたいで、坂本君に無茶だと言ってる。

美波ちゃんも怖がってるけど・・・坂本君によっていい理由付けされたことで行くことに。

まあ怖いとは言っても、合法的に吉井君に抱きつけるしね。

美波ちゃんも難儀な性格だよね。

さて、吉井君と美波ちゃんの2人・・・をおっかけて突入するであろう久保君と美春ちゃんに期待かな。




いかがでしたか?
レイマリはあっさり退場してしまいました。
秀吉には同情しかない。


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第六十二話「強敵!」

今回、ついに彼女達が登場。
なお、これはこいしちゃん主人公の物語なので明久の中のは全カット。


 

 

 

 

 

「よくやった明久。作戦は大成功だ。」

 

「え?僕はただ行って戻ってきただけだし、美波は気絶しちゃったけどなんで?」

 

「お前はそれでいいんだ。モニターにお前の結果がでてるぞ。」

 

突入して途中で戻ってきた吉井君に、坂本君がねぎらいの言葉をかける。

現在モニターには吉井君と美波ちゃんが突入してすぐに、追いかけるため突入した久保君と美春ちゃんだったモノがチェックポイントに映ってる。

 

「ヒぃー・・・フぅー・・・!オネェサマ・・・。オネェサマ ヲ イケニエ ニ ササゲナサイ・・・!」

 

「ね、ねぇ・・・。これ、あなたの召喚獣・・・?」

 

「いえ、一応これでも人間なのですが。」

 

チェックポイントの先輩が言う通り、美波ちゃんを追ううちに美春ちゃんははダークサイドに堕ちてしまい、視認できそうなくらいどす黒いオーラをまとってる。

もはや悪魔と呼ぶにふさわしい存在だし、小さな子なら夏休みいっぱい悪夢でうなされてもおかしくはないレベルだよ。

 

「それにしても意外ね、葵のところを男子が突破できるなんて。」

 

「確かにそうね。葵の魅力にほだされないなんてあなた、ブス専?」

 

「いえ、あの先輩が魅力的な人だというのはわかりますよ。前に好きになった人は女性でしたから。」

 

現在は・・・ね。

吉井君はわかってないけど。

 

「コロ・・・す・・・ウバ・・・う・・・オネェサ・・・マ・・・。」

 

「それでは先輩方。これ以上彼女が人の言葉を失う前に始めましょうか。」

 

「もうその子、人として大切なものをいくつも失っているように見えるけどね・・・。」

 

だよね、今の美春ちゃん、いつ魔女化してもおかしくないような見た目してるもん。

グリー○シード探さなきゃ。

 

「「「サモン。」」」

 

4人が召喚獣を呼び出す。

相手は雪女とハーピーで、点数は2人とも300点弱。

対するこっちは二人とも迷ひ神で、久保君が400点弱、美春ちゃんだったモノが140点ほど。

合計点数では負けてるんだけど・・・。

 

「アナタがそっちの娘をやりなさいよ!」

 

「イヤよ!アナタの方が点数低いんだから、アナタがそっちの娘で私が男の子をやるべきでしょ!」

 

「私だってイヤよ!だってあの娘、目がイッちゃってるもの!」

 

なんとか勝てそうではあるよね。

相手は完全に美春ちゃんだったモノの邪悪な気に怯えてるし。

というか久保君が、3匹の悪霊を操る死霊使いにしか見えない・・・。

 

「オネェサマ・・・オネェサマ・・・ ミハル ハ オネェサマ ヲ コンナニモ Iシテル ノニ ドウシテ オネェサマ ハ コタエテ クレナイノ・・・?」

 

・・・てかあれ戻るのかな?

戻ったとしても、あんな姿を見たクラスメイト達がどう接するのか気になるけど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美春ちゃんだったモノが放つオーラに怯えてる先輩達を僅差で撃破した2人(人?)はそのままAクラスに突入していく。

AクラスはDクラスの6倍程もあるためか、広さを生かした迷路で召喚獣が突然出てくるだけのシンプルな仕掛けになってる。

とはいっても、随時迷路の道を作り替えているようで、今までみたいにカメラで予習・・・というのが通用しない。

そのせいで、久保君と美春ちゃんだったモノが突入した後に入った人達はどんどん失格になってる。

作り替えられてるからルートを覚えることも出来ないからね。

 

「ぅおわっ!」

 

「きゃあぁぁあっ!」

 

暗がりの通路の中、いきなり出てきたお化けに驚いて悲鳴をあげる。

それは一般的なお化け屋敷の楽しみかたで、さっきまでの仕掛けで怯えてた人達も気を取り直して楽しんでいた。

 

「くっ、いないな・・・!こうしている間にも2人が親交を深めてるかもしれないというのに・・・!」

 

「ドコ・・・? オネェサマ ドコ・・・?」

 

曲がり角に着くたび焦ったように左右を見回し、また走る2人。

 

「やれやれ、清水はともかく久保まで正常な判断ができなくなってるとはな。チェックポイントを通過したんだから、前に誰もいないと気づいてもいいだろうに。」

 

「・・・恋は盲目。」

 

「よほど姿を見失ったことに焦ってるのじゃな。」

 

「まあ、今気づいたところで・・・って感じではあるよね。」

 

当の吉井君は理解してないみたいだけどね。

 

「くっ、どこだ・・・?あれ、明かり・・・?」

 

「オネェサマ ドコ・・・?」

 

そんな話を私達がしてるうちに、チェックポイントにたどり着いた2人。

坂本君が煽ったからか、そこには常夏コンビの2人がいる。

 

「よぅ、待ちくたびれたぜ。」

 

「散々待たせてくれたんだ、ちっとは楽しませてくれんだよなぁ?」

 

「失礼。先輩方。ここに吉井君と島田さんは来ませんでしたか?」

 

「アぁ?ここに来たのはお前らが最初だぜ。」

 

「え?そんなはずは・・・。彼らは僕達より先に行っていたはずでは・・・。」

 

「吉井たちなら確か、途中で引き返していくのが映ってた気がするな。」

 

「そんな・・・。じゃあ僕達は無駄な時間を・・・。」

 

「よくわかんねぇが、会いたいならさっさと俺達に負けて教室に戻るんだな。サモン。」

 

「そういうことだ。さっさと始めようぜ。サモン。」

 

「そうですか・・・。サモン・・・。」

 

「・・・サモン・・・。」

 

やる気を失った様子の2人と、常夏コンビが召喚をする。

科目は物理みたい。

ここともうひとつ、場所がわかってないチェックポイントをクリアすれば私達2年生の勝ちだね。

 

「久保君たちは勝てるかな?」

 

「どうだろうな。久保も清水も、確かガチガチの文系だったはずだ。正直分が悪いだろうな。」

 

戦争の時に優位にたつためか調べていた坂本君がそんなことを言う。

3年生はセンターや二次試験で使う科目を選択してやるから、多分常夏コンビは物理が得意なはずだよね。

表示された点数によると、久保君が200点くらい、かつて美春ちゃんだったモノが70点くらい。

これで300点とか取られてたら厳しいとこだけど、常夏コンビだし・・・

 

『Aクラス 常村勇作 物理 412点 and Aクラス 夏川俊平 物理 408点』

 

「「「なにぃっ!?」」」

 

思わずハモっちゃうくらいに驚いた。

ええっ、常夏コンビって腕輪レベルだったんだ・・・・・・。

 

「んじゃ、せいぜい頑張ってみせろよ後輩ども。」

 

「散々待たされたんだ。ちょっとは粘ってくれよ。」

 

ニヤニヤと笑いながら言う常夏コンビ。

さっきの会話で心ここにあらずな状態だった2人は一撃で敗北。

でもまあ物理なら一応お空や早苗ちゃんが同じくらい点数あったはずだし、さいわいこの2人はまだ失格になってない・・・というか突入してない。

腕輪2人VS腕輪1人だからさすがに1回では勝てないと思うけど、大きく削ってくれるはずだよね。

 

「やはりここはお燐とお空が一番でしょうね。」

 

「ああ、そういえば霊路地の得意科目は物理だったな。ならその2人に行って貰うか。」

 

お姉ちゃんもすぐそれに思い至ったみたいで、坂本君に進言する。

お空もお燐もあんまり怖がるタイプじゃないし、多分たどり着けるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、お空とお燐が突入してから5分くらい経った後。

お燐がちょっと驚いた声を出したくらいで、失格ラインにひっかかることもなく、前方にチェックポイントらしき光が見えてくる。

 

「チェックポイントに着いたみたいだねお空。行こっか。」

 

「チェックポイントの人を削ってくればいいんだっけ?」

 

2人が光のもとに進んでいく。

常夏コンビともいい勝負を・・・

 

「Ravi de vous rencontrer,une connasse.私、月乃瀬夢月と申しますわ。」

 

いい勝負を・・・

 

「Ravi de vous rencontrer,une connasse.私は月乃瀬幻月よ。」

 

・・・どうやら、2人は別のチェックポイントにたどり着いてしまったみたい。

待っていたのは、金髪のそっくりな2人。

はじめて見るはずなんだけど・・・なんか嫌な感じがするような・・・?

というか最初、なんて言ったんだろ?

 

「え、えっとはじめまして、私は火焔猫燐です・・・。」

 

「私、霊路地空!」

 

「って私達の行く場所はここじゃないよお空!戻るよ!」

 

「そんなこと、させると思いますか?」

 

「・・・浅はかね。」

 

お燐とお空が戻ろうとするも、入ってきた入り口が閉まり、迷路に戻れなく。

これは・・・やるしかないのかな。

 

「仕方ない、やるしかないみたい・・・。サモン!」

 

「サモン!」

 

「行きましょう、お姉様。サモン。」

 

「すぐ倒してあげるわ、サモン。」

 

ここの先生は地学だから、科目は地学。

先にお燐とお空の召喚獣が出てくる。

 

『Bクラス 火焔猫燐 地学 176点 and Fクラス 霊路地空 地学 86点』

 

お燐の召喚獣は木下君のと同じで、尻尾が2つに割れた猫又。

お空は・・・3本足のカラス?

どっちの点数もそこまで高くないし、相手はチェックポイントにいるくらいだし300はあると思うし、多分勝てないとは思うけど・・・。

3年の2人は悪魔かな?

それで、点数は・・・

 

『Aクラス 月乃瀬夢月 地学 613点 and Aクラス 月乃瀬幻月 地学 428点』

 

「「「こっちも腕輪レベルだと!?」」」

 

しかも600点って!

というかこれ、すっごくまずくない・・・?

当然のように一撃で決着がついちゃう。

 

「雄二、勝てそう?」

 

「良くて3:7くらいだな。」

 

五分五分ですらのね・・・。

 

「翔子はともかく、俺の点数はせいぜい150点くらいだな。うまく常夏コンビに勝てたとしてももう一方は俺じゃ無理だ。」

 

「じゃ、じゃあそれまでに点数を削って貰えば・・・!」

 

「・・・それは厳しい。残りは突入済のを含めても6組12名しかいない。」

 

え、そんなしかいなかったの?

坂本君と翔子ちゃん、私とお姉ちゃん、早苗ちゃんと天子さん、阿求ちゃんと小鈴ちゃん、あと今中にいる名前を知らない男女ペアとあと誰だろ?

 

「・・・ちなみに、その中の1組は明久達。」

 

「え?僕?あ、そっか。でも美波はあんな状態だし、僕らはもう戦力にはならないよ。」

 

「・・・(フルフル)」

 

「吉井君、彼が言っているのは姫路さんのことですよ。」

 

あ、そっか。

怖がってるから忘れてたけど、姫路ちゃんもまだ突入してないんだったね。

姫路ちゃん自身も怖がりながらも参加を表明する。

まあ、美波ちゃんが気絶する直前に告白の未遂してたし、ここで行かなきゃ勝敗はもはや決定したようなものだから・・・ね。

物理が得意な早苗ちゃんと地学が得意な天子さんのペアなら、どっちに入っても仕事出来るから、まず最初に2人が突入。

そのあと私達、吉井君ペア、坂本君ペアと行き、今中にいる誰かが失格になったら阿求ちゃんペアが突入するという流れに。

よーし、やっとお姉ちゃんとやれるから頑張るよ!




いかがでしたか?
ここで夢幻姉妹が登場。
ちなみにRavi de vous rencontrerはフランス語で「はじめまして」という意味です。
その後の言葉の意味はあえて載せないので、知りたいなら調べてみてください。


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第六十三話「覚醒!」

ついにこいしちゃんが突入。
果たして2年は勝てるのか。(ちなみにAクラスのチェックポイントは勝たないと出られません)


 

 

 

「こいし、そこ足元気をつけなさい。」

 

「あ、ありがとお姉ちゃん!」

 

Aクラスの中。

私達はチェックポイントを目指して進んでいた。

お姉ちゃんと一緒だから、こんな薄暗い場所でも楽しいよ!

 

「でも、さっきからお化け全く出てこないけどどうしたんだろね?」

 

「・・・そうね。確かに見ないけど・・・出てきたからといって驚いたフリして抱きつくのは禁止よ。」

 

むー。

せっかくの肝試しなのにー。

 

「そういえばお姉ちゃんって地学の点数どれくらいだったの?」

 

「だいたい200点くらいね。さすがに真っ正面からやりあうのは難しいわ。」

 

「まあ私に任せて!」

 

「とはいってもあなたも400点くらいよね。」

 

「でも、削るくらいなら出来るよ!」

 

そんな会話をしながら、進んでいく。

ちなみに、カメラを持ってるのは私だよ。

 

「天子さんは今回どのくらい地学取れたんですか?」

 

「ま、まあざっと600点くらいかしら。」

 

「やっぱり天子さんは凄いですよね~。私の地学、190点くらいですよ~。」

 

「さ、早苗だって物理は凄いじゃないのよ。そ、それよりさっきまで怖がってたわりに全然平気そうだけど大丈夫なの・・・?」

 

「ん~、なんというか慣れちゃいました♪それに、天子さんと一緒ですからねっ!」

 

「・・・///」

 

近くから早苗ちゃんと天子さんと思われし2人のペアが会話をしてるのが聞こえてくる。

2人も楽しんでるみたいで何よりだよね。

そんなことを思いながら進んでいると、いきなり電気が消えて真っ暗闇に。

 

「こいし、ストップよ!」

 

お姉ちゃんと今は手を繋いでなかったから、お姉ちゃんの声だけが感じられる。

でも暗闇のなか動くと危険だから、目が暗闇に慣れるまで待たないと・・・。

何故か、なにかを動かすような音が聞こえてくる。

もしかしたら、明かりがついた瞬間、まわりを召喚獣に囲まれてるのかも。

 

「・・・あれ、壁?」

 

ようやく目に慣れてきたところでお姉ちゃんの方に行こうとするも、私の目の前にはさっきまでなかった壁が。

・・・まさか、迷路を作り替えられて、お姉ちゃんと分断された!?

 

「だったら早く合流しないと!」

 

1人になっても失格じゃないけど、2人じゃないとチェックポイント行けないし、お姉ちゃんとはぐれてるなんてヤダ!

1メートル先すら見えないような暗闇を手探りで進んでいくと、しばらく行ったところで人の気配。

もうはぐれないよう、近づいて手を握る。

 

「お姉ちゃん、やっと合流」

 

パッ(照明点灯)

 

「・・・違ったみたい。」

 

そこにいたのは天子さんだった。

手の感じが違ったから触った瞬間に気づいたけど、お姉ちゃんじゃなかった・・・。

 

「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」

 

「・・・天子さん?」

 

「・・・こいし、一緒にいてくれないかしら・・・?1人だと怖くて・・・。」

 

「え、うん、まあいいけど・・・。」

 

お姉ちゃんを探しに行きたかったけど、さすがにこんなにふるえてる天子さん放置は・・・ね。

 

「や、やっぱりこういうの苦手だったの?」

 

「や、やっぱりってにゃによ、そんにゃわけありゅわけにゃいれしょ!(涙目)」

 

「・・・説得力ないよ天子さん。」

 

噛みまくってるし涙目だし・・・。

普段の自信満々な感じとは程遠い姿だよね。

お姉ちゃん探しに行こうとしてたんだけど・・・こんな状態の天子さん放置して行くのはちょっと気が引けるな・・・。

 

「えっと、よかったら一緒に行く?」

 

「・・・お願いするわ。」

 

やっぱ怖かったのか、素直に答える天子さん。

さいわい向こうはカメラは早苗ちゃんが持ってたし、私がカメラ持ってるから、教室に取りに行く必要はないね。

 

「でも、なんでペアを入れ換えさせるような真似したのかな・・・?」

 

「・・・多分だけど、地学が得意な私とこいしをペアにして、まとめて失格にさせようと考えたんじゃないかしら。」

 

「なるほどね・・・。確かに私とお姉ちゃんのコンビじゃビビらないもんね。」

 

落ち着いた天子さんが考えを述べる。

地学腕輪レベルの私と天子さんをまとめて失格にすることが出来れば、3年の勝利確率はぐっと上がるもんね。

 

「・・・あれ?そうなるともうお姉ちゃんとは合流出来なさそうな感じ?」

 

「・・・多分だけどそうなるわ。」

 

そんな・・・!

お姉ちゃんと合流はほぼ不可能なんて・・・!

 

「・・・悔しいけど、ひっかかってしまった以上諦めるしかなさそうね。私としたことがとんだ失態だわ。」

 

心底悔しそうな天子さん。

うーん、ハメられた悔しさが2割、早苗ちゃんと離れさせられた悲しみが8割って感じかな?

 

「あれ、でもそれだけ考えてたなら対策のうちようとかあったんじゃないの?」

 

「・・・こいしと会ってから思い当たったのよ。」

 

そっか、それならしょうがないのかな。

天子さんと会話しながらチェックポイント目指してしばらく歩く。

 

「私の計算だとチェックポイントはもうそろそろなはずなのだけど・・・。」

 

5分くらい歩いたところで天子さんが呟く。

ちなみに平気そうにしてるけど、途中私が元気づけたり怖がって抱きついてきたりしてたんだ『し、してないわよ!証拠はあるの!?』心の声にまで否定してるけど、カメラあるよ?

 

「もしかしたらあっちの道じゃないかな?」

 

「見えにくいけど確かにあるわね。行ってみましょ。」

 

天子さんの言ってることが正しいなら、方角的にあっちに地学のチェックポイントがあるんだよね。

心なしかお空やお燐がチェックポイントについた時の装飾に近い感じがするし・・・あれ?

 

「急に道がなくなった?」

 

「これは・・・恐らく私達がチェックポイントに到達しそうになって慌てて壁を動かしたんじゃないかしら。ほら、隙間が見えるわ。」

 

ほんとだ、近づいてみてわかったけど、そこから光が漏れだしている。

 

「どちらにしても、すぐに入るわけにはいかなかったけどね。ここが私達が目指しているチェックポイントであるかを確認する必要があるわ。」

 

あ、確かにそうだよね。

Aクラスの上位な天子さんならともかく、私の物理の成績は坂本君よりも低いからね。

間違って常夏コンビの方に行っちゃったら二重で悲しい。

 

「・・・たいですね。さと・・・」

 

「・・・すね。早苗さんには申し・・・数があまりな・・・」

 

あれ、この声はお姉ちゃんと早苗ちゃんだよね?

 

「お姉ち・・・むぐっ。」

 

「バカ、そんな音量で呼んだら失格になるわよ!」

 

「そ、そうだったね・・・。ごめんね天子さん。」

 

ついお姉ちゃんによびかけようとしちゃったけど、天子さんに口をおさえられて事なきをえる私。

危ない危ない。

 

「古明地さとりと東風谷早苗、ですか。どうやら成功したみたいですねお姉様。」

 

「ふふっ、そうみたいね。これで面白くなりそう。」

 

「その前に、この2人を片付けないといけませんわ。」

 

壁の向こうから声が聞こえてくる。

ということはやっぱりここがチェックポイントってことだよね。

 

「・・・・・・そういう考えでしたか。」

 

「とにかく私達に出来るのはちょっとでも削ることですよね!」

 

「ええ、そうですね。」

 

お姉ちゃんと早苗ちゃんの声も聞こえてくる。

お姉ちゃんだから心配はしてなかったけど、無事に着けててよかった!

 

「正直めんどくさいわね。」

 

「まあ、Fクラスのクズ2人を相手するよりは楽しめるでしょう。」

 

その言い草に、私はちょっとカチンとくる。

間違いなく吉井君と坂本君の2人を指してるだろうけど、あの2人にだっていいとこはたくさんあるんだから。

 

「しかしあなた達も可哀想ですね。」

 

「・・・何がです?」

 

「ろくでもない姉妹がいること、ですよ。」

 

「博麗霊夢という金のことしか考えずまわりに迷惑をかけるクズ姉がいるから、東風谷早苗は迷惑をこうむる。」

 

「古明地こいしという試験途中で抜け出し、女子でありながら強化合宿で覗きの共犯となるゴミ妹がいるから、古明地さとりは迷惑をこうむる。」

 

けっこうな言われようだけど・・・霊夢さんはともかく私のことは正しいからね・・・。

記憶がないんだけど、途中で退出してお姉ちゃんの教えてくれたのを全部無駄にしちゃったし、お姉ちゃんの脅迫犯捕まえるためにとはいえ、覗きサイドに味方してるからね・・・。

 

「身内に恥じるべき存在がいるなんて、本当に可哀想。」

 

「こいしは恥じるような存在じゃないです。」

 

「・・・身内の贔屓目という奴でしょうか。そんなことも理解出来ないとは。」

 

「それとも、古明地さとりも古明地こいしと同じく、ゴミだからゴミ同士、一緒にいるのかしら?」

 

・・・お姉ちゃんまでバカにするなんて許さない。

頭が沸騰しそうなくらい熱くなる。

ここが大きな音を出してはいけないお化け屋敷なことも、壁を破壊してはいけないというルールも全て頭から吹き飛び、あの2人を黙らせようとした時。

 

「なんでそんな酷いことを言うんですかっ!」

 

ここまではっきりと聞こえてくるくらいの大声が聞こえてくる。

それは早苗ちゃんのもので、それで私の足は止まる。

 

「お姉ちゃんだってさとりさんだってこいしちゃんだって、いいところはたくさんあるんですからっ!確かに悪いところもありますけど、表面的なところばかり見て決めつけないでください!」

 

「・・・ふふっ、本当に愚か。」

 

早苗ちゃんの叫びに対し、向こうは嘲笑うような口調で呟く。

 

「挑発されてルールを忘れ、感情に任せて大声を出して失格になるとは本当に愚か。」

 

「こうも思い通りに動いてくれると笑いすら出てきますね。」

 

「「なっ・・・!」」

 

そして、返ってきたのはそんな言葉。

先程の言葉は全て、ただお姉ちゃんや早苗ちゃんを失格にさせるために言っただけだとでも言うのか。

それはれっきとした作戦で、咎められる筋合いはないのかもしれない。

でも、越えてはいけないラインというものはあるよね。

・・・正直、勝敗はどっちでもよかったし、お姉ちゃんと肝試しを楽しむのが目的だった。

天子さんも同じだったと思う。

・・・・・・でも。

 

「「ここからは本気で勝ちに行くよ(わよ)。」」

 




いかがでしたか?
ペアが変わり、こいしちゃんと天子さんのペアになって本気になりました。
でもこれはむこうの計画通りなのですがね。
うちの夢幻姉妹は基本クラムベリー的な感じです。


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第六十四話「夢幻姉妹!」

夢幻姉妹の二次創作もっと増えないかな?



 

 

 

「お姉様、古明地こいしと比那名居天子が来たようです。」

 

「ええ、見えてるわよ。」

 

早苗ちゃんとお姉ちゃんが失格になったすぐ後。

私達はチェックポイントに到達していた。

 

「しかし塞いだ通路の壁を退かして入ってくるなんてね。」

 

「ルールでは施設への手出しを禁止しているけど、私は壁を動かしただけで、傷は一切つけてないわ。ギリギリルール違反にはならないわよ。」

 

「ギリギリのラインだけど、まあいいわ別に。」

 

天子さんの言う通り、これはかなりギリギリのライン。

だけど、さっきまでの発言を考える限りこの2人は私達との戦いを望んでいるように感じる。

だから多分通ると予想したけど、その通りになったね。

 

「さて、勝負の前に改めて名乗っておくわ。私は月乃瀬幻月。」

 

「そして私は月乃瀬夢月。」

 

「「以後、お見知りおきを。」」

 

何故かこのタイミングで再び名乗る2人。

 

「・・・何故わざわざ名乗ったのかしら?」

 

「それは私達が古明地こいしと比那名居天子を評価しているから、よ。」

 

「特に古明地こいしを、ですね。」

 

・・・・・・私?

なんかよくわからないけど、私目をつけられてる?

 

「・・・あんたらさっきこいしを酷評してたわよね。」

 

「あんなものは古明地さとりと東風谷早苗を失格にさせるためのでまかせに過ぎないわ。」

 

「学期が始まってすぐのBクラス戦、召喚大会4回戦、強化合宿4日目、2年男子の停学明けの日。古明地こいしを私達が気に入る要素はいくつもありましたからね。」

 

「夢月の言う通り、私達は古明地こいしに興味がある。だからこそ知りたいのよ。」

 

ゾクッと背中に悪寒が走り抜ける。

なんだろう、氷を背中に突っ込まれたみたい。

 

「「そんな花を手折った時、どんな感情を抱くか、ね。」」

 

「「・・・・・・!!」」

 

ニタリと笑みを浮かべる2人。

・・・狂ってる。

 

「そういう訳で始めましょ。サモン。」

 

「はい、お姉様。サモン。」

 

「こいし、絶対に負けるんじゃないわよ!サモン!」

 

「そ、そうだね。サモン。」

 

ちょっと気圧されちゃってたけど、全員が召喚獣を出す。

 

『Aクラス 月乃瀬夢月 地学 611点 VS Aクラス 比那名居天子 地学 589点』

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 428点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 433点』

 

相手の2人はやっぱり悪魔の姿で、私は瞳を閉じたさとり妖怪。

それで天子さんは・・・あれ、大きさ以外はいつもと同じように見えるけど・・・。

 

「私は天人よ。」

 

そう考えてたら、天子さんが心を読んだみたいなタイミングでそう言う。

天人って妖怪とは違うような・・・。

 

「さて、本気で行かせて貰うわ。」

 

そう言うと共に召喚獣を動かし、私の方に突っ込ませてくる。

私はそれを武器で受ける。

点数が同じくらいだからガードがそのまま破られることにはならず、力は拮抗する。

 

「見た目にはあまり関係なく、力は同じくらいなのね。」

 

「そう簡単に、負ける気はないよ!」

 

相手が3年で召喚獣の扱いに慣れていても、私だってそこそこは出来るんだから!

それに、もう1人は天子さんが相手をしてくれてる。

 

「なら、次はこんなのはどうかしら。」

 

そう言うと相手はいったん距離をとらせ、高速で突っ込ませてくる。

一撃攻撃を入れたらそのまま再び距離をとる一撃離脱型だね。

召喚獣の点数の関係でかなり動きは速いけど・・・私なら見切れる!

攻撃を防いだ直後に返す刀で攻撃を入れ、相手の点数がわずかに減少する。

やった!

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 403点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 433点』

 

「これも対応出来るのね。なら、少し本気を出そうかしら。」

 

そう言うと共に、ナイフをどこかから取り出して投げてくる。

でも、軌道は直線だしかわすのは問題ない。

相手が飛び道具で来るなら近づいて・・・えっ?

 

「ダメじゃない。腕輪持ちを相手にするなら、常に警戒していないと。」

 

その言葉とともに、いつのまにか私の背後にいた相手の召喚獣に私の召喚獣が拳を叩き込まれる。

音を立てて吹っ飛ぶ私の召喚獣。

・・・いつの間に後ろに?

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 384点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 319点』

 

点数が逆転したけど、相手の腕輪の能力がわからない・・・。

ナイフを投げられ、回避して近づこうとした瞬間、いつのまにか背後にいた相手に殴られた。

 

「・・・ムッツリーニ君と同じ加速?それとも瞬間移動?」

 

「その謎を解かなければ、勝ち目はないわよ?」

 

そう言いつつ、再びナイフを2本投げてくる。

さっきはナイフを回避した後近づこうとしたら背後から殴られたから、今度は回避した後動かず、移動したところにカウンターを・・・!

 

「悪くない判断だけど、あえて言わせて貰うわ。愚策とね。」

 

「・・・!」

 

左右を掠めていった2つのナイフをかわし、移動して来たところにカウンターしようとしたところまではよかった。

でも、私の攻撃が当たる前に再び瞬間移動し、また背後から攻撃される。

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 347点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 202点』

 

さらに開く点差。

相手は腕輪の能力の反動か、点数は減ってきてるけど、それ以上に攻撃されてる私の減りが大きい。

・・・でも、今のでわかった気がする。

 

「・・・その顔は能力を見抜いたって顔ね。」

 

「多分だけどね。投げたナイフの場所にテレポート・・・といったとこかな?」

 

「正解。でも、わかったところで対処出来なければ意味がないわよ。」

 

そう言いつつ、5本のナイフを様々な方向に投擲する。

・・・でも、相手だって点数を消費するからそう何回もワープは出来ないはず。

だから、召喚大会決勝でやったみたいに攻撃も防御も何も考えないで、ただ無意識と反射で攻撃を回避することにする。

焦らずに、ひたすら攻撃を回避してチャンスを待つけど・・・決定的なチャンスが来ない。

相手の攻撃も焦れて大振りになることもなく、確実なチャンスも巡ってこない。

そもそも攻撃をしようとしても、ワープで逃げられちゃったら避けられちゃうしね。

・・・と、少しでも考えちゃったのがいけなかったかもしれない。

 

「・・・あっ!」

 

その時は突然やってきた。

相手のフェイントにひっかかり、私の召喚獣はバランスを崩してしまう。

そして、その先には誘い込まれたかのようにナイフが落ちている。

当然、ワープして攻撃をしてくる。

なんとか防御はしたけど、さらに点差は広がってしまう。

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 284点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』

 

「マズイね・・・。」

 

点数はもはやダブルスコア以上。

このままじゃ負けちゃうのは確定的。

流れを変えないといけない。

でも、今私の腕輪は点数の関係で使えないか、使っても点数がほとんど残らないから、失敗したら待つのは死のみ。

それなら・・・!

 

「なるほど、武器を変えることで流れを絶ちきろうとした訳ね。」

 

私には黒の腕輪がある!

使い慣れた触手のようなものの方がいいと思ったから使わなかったけど、これを使えばもしかしたら・・・。

 

「・・・・・・ッ!」

 

一瞬で私の手に黒電話の受話器とナイフが装備される。

それを見た相手は何かを感じ取ったのか、今までの余裕な、どこか見下すような、遊びの表情をはじめて崩した。

その真意はわからないけど、実はここに突入する前、坂本君の召喚フィールドで受話器の性能を試してある。

それに、この腕輪をつけた瞬間、頭の中に腕輪のイメージも湧いてきたんだよね。

 

「くっ・・・!」

 

焦ったように投擲してきたナイフを受話器を鳴らし、音波で弾く。

そしてその後も何回か鳴らして相手を牽制してると・・・あれ、鳴らすたびに効果範囲増えてない?

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 284点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』

 

それでいて、点数も別に減ってない。

範囲が広がっていけば当然相手に攻撃も入るわけで、相手が腕輪を使いだしてから始めて攻撃が入る。

ダメージはごくわずかだけどね。

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 264点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 139点』

 

「やってくれるわね。でも、威力は弱いなら強引に行けばいいだけ。」

 

そう言いつつ、いままで距離をとっていたのが一転、一気に距離をつめてくる。

こっちの受話器の音波も強引に拳で打ち消し、突っ込んでくる。

点数は依然ダブルスコアだし、攻撃を受けたらほとんど持っていかれちゃう。

だから、ふたたび神経を集中して無意識の反射で攻撃を回避するしかない。

だから、それにいち早く気づいたのかもしれない。

相手の死角から、天子さんのと思われる大きな剣が飛んできているのに。

 

「・・・!?夢月は!?」

 

相手はギリギリでかわしたけど、かわし方が無理な姿勢だったせいで体勢が大きく崩れる。

これはチャンス!

 

「こいし、今よ!」

 

「うん、行くよ!」

 

このチャンスを作ってくれた天子さんの言葉に応え、腕輪の力を発動する。

受話器から放たれた攻撃が相手に当たり動きを止める。

これ自体にはほとんど威力はないけど、動きを止めたらあとはナイフで急所を貫く!

抵抗出来ずに急所を刺された相手の召喚獣は倒れ、やがて薄れて消えていった。

 

『Aクラス 月乃瀬幻月 地学 0点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 8点』

 

「えーん、強すぎるわー。」

 

「まぁまぁお姉様、落ち着いてくださいな。」

 

さっきの腕輪の反動か、私の点数ももうほとんどないけど、私達の勝ちだよ!

 

「・・・こほん、見苦しいところを見せたわね。とにかくあなた達の勝ちよ。常夏コンビの方も決着がついたから、この勝負は2年生の勝ちね。」

 

そう言われてモニターを見てみると、確かに吉井君の召喚獣が常夏コンビを撃ち破っていた。

 

「吉井君達もやってくれたんだね!」

 

「ええ、そうみたいね。」

 

これで全チェックポイントがクリアされたから2年の勝ち!

・・・あれ?

 

「でも最後、なんで相手はワープしなかったんだろ?」

 

「それは私がそうさせないように投げたからよ。」

 

私のふと思った疑問に天子さんが答えた。

 

「あれ、でも天子さんなんでワープのこと知ってるの?」

 

「そりゃ隣で話してれば聞こえるでしょ。」

 

「でも、バトルしてたんじゃ?」

 

「まあね。でも、私ならそれくらい出来るわ!そして、ワープしたら剣が刺さるように位置を合わせて投げたのよ。ふふん、さすが私ね!」

 

ほへ~・・・。

 

「・・・なるほどね。正直、比那名居天子にも興味がわいたわ。またどこかで戦いたいものね。」

 

「ですねお姉様。私は古明地こいしと戦ってみたいものですわ。」

 

話してたら聞いていたみたいで、そんなことを言って去っていく先輩達。

・・・正直危険な気がするから、できればあまり関わりたくはないけど、なんというか結構関わることになりそうな予感がするんだよね。




いかがでしたか?
夢幻姉妹は底知れないですが、天子さんもかなりすごいですよね。
夢月と戦いながら幻月の腕輪のロジックを見破り、夢月を撃破して正確に投剣でサポートなんて、普通じゃできない。
夢月も弱くないのに。
天子さんはナルシストなだけの力があります。


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第七章『野球大会!』
第六十五話「没収品!」


今回から野球編です。
野球って片手で数えるほどしかやったことないのですよね。


 

 

 

私達の目の前で腕を組み、静かに私達Fクラス生徒一同を見ている鉄人先生。

対するは私達Fクラスの生徒達。

その代表の坂本君が、諭すようにゆっくりと語りかけた。

 

「西村先生。知的好奇心を育むには、具体的な目的が必要だと思わないだろうか。」

 

相手の目をまっすぐに見つめ、心にまで届くよう語りかける坂本君。

鉄人先生はそれに対し何も言わず、ただ続きを語り出すのを待っていた。

 

「古今東西、科学技術の発展の裏側には、必ず戦争の影が存在した。鉄が生産されたのも工業ではなく剣や鎧を作るためであり、馬が飼育されたのは農業の為でなく騎兵の生産の為だ。近代で上げるとしたら、核技術開発の発端だって戦争だと言えるだろう。」

 

その後も坂本君は技術発展と戦争のことに対し、語り続ける。

・・・長いからカットしたけど。

 

「・・・それは『知的好奇心は具体的な目的を持つことで、より良い結果へと繋がりやすい』という事実だ。・・・ここまで言えば、あとは先生にはわかって貰えるはずだが。」

 

そう坂本君が締め括ると、鉄人先生はここではじめて反応を見せた。

 

「坂本、お前の言わんとしてることは伝わってきた。確かにお前が言う通り、知的好奇心は目的の有無でそのあり方が変わってくる。それはその通りだ。だが・・・。」

 

鉄人先生が腕組みを解き、私達全員にはっきりと告げる。

 

「だが、没収したエロ本その他の返却は認めん。」

 

「「「ちくしょぉおおーっ!!」」」

 

私達Fクラスはあまりにも無慈悲な宣告に涙を流して絶叫した。

新学期早々、まだ戻りきらない生活リズムのせいで眠い目をこすって登校してきた私達を迎えたのは、非情な持ち物検査。

抵抗すら出来ずに取り押さえられた私達は、せめてもの抵抗として没収品返還を求める演説を行ってた。

 

「どうしてですか西村先生!さっきの雄二の演説を聞いたでしょう!僕達が保健体育という科目の知的好奇心を高めるためには、エロ本の理解という具体的な目的に則したものが必要なんです!」

 

「学習しなければ理解出来ないようなものを読むな。お前は何歳だ。」

 

「そんな!知的好奇心を持つことには年齢なんて関係ないはずです!」

 

「よく見ろ。思いっきり成人指定と書かれているだろうが。」

 

吉井君の言葉もバッサリ切っていく鉄人先生。

 

「でも私の写真はお姉ちゃんという具体的な目標のためのものだから!」

 

「だったら水着写真である必要はないだろう。それに俺はお前の姉から妹が私の水着写真等を持っていたら没収するよう頼まれている。」

 

そんな・・・!

私の浴衣写真と引き換えにムッツリーニ君からレンタルしたカメラで撮影した、お姉ちゃんの水着写真を返してもらえないなんて・・・!

ちなみに、夏休み中に私とお姉ちゃん、お燐お空と行ったんだけど、その話はまた別の機会に、ね。

その日は吉井君達も1泊2日で海に行ったみたいで、私も誘われたんだけど・・・かぶってたから断ったんだよね。

楽しそうではあったけど、先約だったし・・・。

 

「お願いします、西村先生!僕らにその本を返してください!」

 

「僕には・・・僕らには、その本がどうしても必要なんです!」

 

「お願いです!僕達に、保健体育の勉強をさせてください!」

 

「西村先生、お願いします!」

 

「「「お願いします!!」」」

 

「黙れ。一瞬スポ根ドラマと見紛うほど爽やかにエロ本の返却を懇願するな。」

 

私が思い出してる間に、クラス全員が声を揃えてお願いしたけど、効果はナシ。

 

「それなら先生。こう考えては貰えませんか。」

 

「だから何だ吉井。これ以上無駄な演説に割く時間はないぞ。」

 

「あれはエロ本ではなく、保健体育の不足している知識を補うための資料だと」

 

「朝のHRを終わる。全員授業の準備をして席に戻るように。」

 

バッサリ。

 

「こうなったら仕方ない!実力行使だ!僕らの大事なお宝のため、命をかけて戦うんだ!」

 

「「「おぉーっ!!」」」

 

いくら鉄人先生だって、40人以上の男子高校生(+私)を一度に相手するのは難しいはず!

 

「ほぅ・・・。貴様ら、いい度胸だな。」

 

そんな危機的状況でも、眉ひとつ動かさない鉄人先生。

 

「かかれぇぇえーっ!」

 

「「「うおおぉぉーっ!」」」

 

大切なものを取り返すため、私達は拳を固めて飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

「あの野郎、絶対人間じゃねぇ・・・。」

 

一本背負いでうちつけられてた腰をさすりながら、坂本君がぼやく。

結果は惨敗。

一斉に襲いかかったにも関わらず、全員返り討ちに。

吉井君は召喚獣出す隙すら与えられず肩固めで悶絶させられてたし、ムッツリーニ君や私は死角からスタンガンで特攻して、武器を奪われ返り討ちに。

しかも私達Fクラスの生徒は返り討ちにされながらも深刻な怪我を負ってる人はおらず、鉄人先生は加減して戦ってたみたいだし・・・。

もはや人間技じゃないよね。

 

「アンタ達ってこういう時、ものすごい結束力を見せるわよね・・・。」

 

死屍累々の私達を呆れたような目で見ながらそんなことを言うのは美波ちゃん。

 

「ものすごい結束力って、そんな統制取れてたかな?」

 

「統制っていうか・・・その、なんで男子が一人残らずその・・・ああいう本を持ってきてるのよ・・・。こいしちゃんも・・・。」

 

「あの、美波ちゃん?私が持ってきてたのは写真だからね?」

 

酷い勘違いだよ。

とはいっても男子達も、さすがに普段から毎日全員がエロ本持ってきてる訳じゃないから、なにか鑑賞会なり交換会なりいったイベントがあったんじゃないかな?

知らないけど。

 

「ところで美波ちゃんや姫路ちゃんは何か没収されたの?」

 

「まあ、ね・・・。DVDとか雑誌とか抱き枕カバーとか色々持っていかれたわよ・・・。」

 

「私も小説とかCDとかとか抱き枕カバーとかです・・・。」

 

間違いなく吉井君だね柄は・・・。

でも実際、久しく持ち物検査はなかったし完全に油断してたところもあるからね。

 

「なんだ、姫路や島田も没収されてたのか。んじゃ、秀吉もか?」

 

「うむ・・・。演劇用の小物の類なのじゃが、運悪くそれが携帯ゲーム機とかでの・・・。」

 

苦々しく呟く木下君。

前の衣装も返してもらえなかったらしいから、これは絶望的だね確かに・・・。

 

「学年全体で一斉持ち物検査だからな・・・。俺達がいない間に打ち合わせをしていたってことか。」

 

「・・・持ち物検査の警戒をすっかり忘れていた。」

 

悔しそうに呟くムッツリーニ君。

ムッツリーニ君が本気で警戒をしてたなら、持ち物検査の存在を事前に察知することぐらいわけないと思うし、本当に警戒してなかったんだろうね・・・。

 

「・・・データが入ったメモリーも没収されたから、再版も当分できない。」

 

「「「ええぇっ!?」」」

 

ムッツリーニ商会の利用者にとっては悪魔の宣告に等しいその言葉に、吉井君と美波ちゃんから驚愕の声があがる。

確かにムッツリーニ君が日々撮影する量は膨大だ。

私としてはお姉ちゃんの写真が出回る機会が減るしいいんだけどね。

 

「う、嘘よね土屋!?バックアップはあるわよね!?」

 

「そうだよムッツリーニ!家のパソコンにあるんだよね!?」

 

「・・・バックアップはある。でも、抽出に時間がかかる。」

 

「「「そ、そんな・・・!」」」

 

その言葉を聞いて、クラスのみんなに絶望が広がっていく。

そして、その波紋はやがてひとつの流れへと収束する。

 

「さて、雄二・・・。やる?」

 

「そうだな・・・。こんな横暴を許したら今後の学園生活に支障が出るな・・・。よし、やるぞ明久!教師ども・・・特に鉄人が出払った昼休みに職員室に忍び込み、俺達の夢と希望を取り戻すんだ!」

 

「おうっ!」

 

吉井君と坂本君が没収品の奪取のため、2人は再び立ち上がる。

 

「・・・雄二と明久だけを、戦わせはしない。」

 

それに呼応するように、目に強い光をたたえて立ち上がるムッツリーニ君。

そこには先程の沈んだ表情なんて欠片も見られない。

 

「待ちな、お前ら!」

 

「俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

「へへっ・・・。俺達、仲間だろ?」

 

「さっきは参加しなかったが、そういうことなら私と正邪も力を貸すぜ!」

 

「み、みんな・・・。」

 

気がつけば、さっき叩きのめされてダウンしていたFクラスの男子全員に加えて、魔理沙と正邪ちゃんまでもが立ち上がっていた。

もちろん、私だって協力するよ!

私達Fクラスはたとえ没収されても、ただでは諦めない!

1%でも可能性があるんなら、そこに賭けるよ!

 

「あ、あのっ!ちょっと待ってくださいっ!」

 

そんな今すぐにでも職員室に突撃しそうな私達を止めたのは姫路ちゃんだった。

 

「そういう、忍び込むなんて真似はよくないと思うんですっ。」

 

「でも、そうしないと持ち物は帰ってこないんだよ?」

 

吉井君が言うように、この学校の持ち物検査はかなり厳しい。

普通は時間が経てば返してくれるけど、この学校では没収されたらそれっきり。

二度と帰ってこないからね。

 

「で、でも先に学校のルールを破ったのは私達ですし・・・。」

 

「確かにそれで問題行為をするのはちょっと違う気がするわよね。」

 

「はい。それで忍び込むのはなんというか・・・狡い気がします。」

 

姫路ちゃんに続き、美波ちゃんも反対の意を述べる。

それで気まずくなったのか、吉井君達みんなも尻込み。

確かにそうかも・・・。

 

「なるほど、姫路達の言いたいことはわかった。つまり・・・忍び込んだりせずに、男らしく正々堂々鉄人を殺って奪い取れ、という訳だな。」

 

「全然違いますよ!?」

 

確かにそれならある意味狡くはないかもしれないけどね。

それでもやっぱり、没収されたものは取り返したい。

だから、私達は昼休みに職員室強襲を決行する運びとなった。

 




いかがでしたか?
持ち物検査で没収されたものを取り返そうと職員室強襲って、リアルでやったら停学ものですよね。
文月学園規格外。


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第六十六話「復讐!」

そろそろストックがなくなってきた。
本当に。



 

 

 

「だから、どうしてお前らはそこまで単純なんだ・・・・・・。」

 

そして、私達は補習室の床に正座させられ(椅子すら使わせてもらえなかった)、鉄人先生の監修のもと、ひたすら補習の問題集をやらされていた。

強襲に加わらなかった美波ちゃん、姫路ちゃん、木下君、お空はEクラスで授業を受けてるから、この場は私と魔理沙と正邪ちゃん以外全員男子(阿求ちゃんは法事で欠席だって)。

 

「くそっ、汚ぇ・・・。俺達のお宝をうばってボコったあげく、今度は職員室で召喚獣を用意して待ち伏せだなんて・・・。あんなの教師がやることじゃねえ・・・!」

 

「まったくだよ。正々堂々男らしく正面から襲撃に来た僕達を、卑劣にも待ち伏せて召喚獣だなんて、教師の風上にもおけないよね。」

 

「吉井、坂本。無駄口を叩く余裕があるお前らにプレゼントだ。」

 

「「げっ!」」

 

2人の前に、ドンと問題集が積まれる。

・・・2人とも終わるのかな?

 

「酷いっ!このチンパンジー、人間じゃないっ!」

 

「さてはこのチンパンジー、俺達を家に帰らせないつもりだな!?」

 

「そういえば、お前らは夏休みの課題もまだだったな。提出が遅れている分の利子だ。1週間遅れるごとに1冊追加してやる。」

 

「「うぎいぃぃーっ!!」」

 

そりゃあ、わざわざチンパンジーなんて言えば怒るよね・・・。

こういうのは黙ってればいいのに。

 

「まったく、吉井も坂本もバカだな。チンパンジーに逆らうなんて。」

 

「まったくだ。俺達みたいに黙ってチンパンジーの言うことに従っていればいいものを。」

 

「無駄な抵抗をするからチンパンジーに目をつけられるんだ。」

 

他の人達がそんなことを言うけど・・・。

 

「そういえばお前らも課題提出がまだだったな。安心しろ、全員平等に利子をくれてやる。」

 

「「「うぎいぃぃーっ!!」」」

 

「私何も言ってないのぜ!」

 

既に課題を提出してる私と正邪ちゃん以外の全員に更に1冊積まれる。

そりゃチンパンジーって言ってるからね・・・。

ちなみに、私と正邪ちゃんはお姉ちゃんや早苗ちゃんと一緒に夏休み前半に宿題会やって終わらせたよ。

あれもなかなか楽しかったなぁ。

 

「おのれ鉄人・・・!絶対に復讐しちゃる・・・!」

 

「あの野郎、今に見てやがれ・・・!」

 

「・・・この恨み、忘れない。」

 

「月のない夜道には気をつけろってもんだ・・・!」

 

「みてろ、そのうち靴に画鋲を仕込んでやる・・・!」

 

「それなら俺は、鉄人同性愛者説を学校中に流してやる・・・!」

 

「さらに1冊追加だ。」

 

「「「うぎいぃぃーっ!!」」」

 

そんなこと言えばそりゃそうなるよね。

何も言ってない私、正邪ちゃん、魔理沙とその他の問題集の数はもう倍くらい差があるよ。

 

「まったく、そんなに体力が有り余ってるならば運動で発散しろ。幸いにも近々体育祭があるからな。」

 

そういえば、2学期始まってすぐに体育祭があるんだったね。

 

「さて、俺はお前らが暴れた職員室の後始末をしてくる。脱走したら・・・地獄を見せてやる。」

 

不穏な一言を残し、鍵をかけて出ていく鉄人先生。

鍵をかけてる以上、脱出のしようがないよね。

 

「そうか、そういやもうすぐ体育祭だな。体育祭ってことは・・・アレがあるな。」

 

坂本君がニヤリと笑みを浮かべる。

 

「そうだね、アレがあるね。」

 

それに反応する吉井君も、同じような笑みを浮かべている。

 

「思えばこの5ヶ月・・・いや、1年5ヶ月。色々なことがあったな。男子全員が停学になったり、地獄の補習をさせられたり、酷い設備の教室に押し込められたり、ババァの裸を見せられたり、聖典を没収されたりな。だがこの体育祭、俺達は奴等に復讐出来る!」

 

改めて聞くとほんと酷いなこのクラス。

簡単に言うと、事故に見せかけたラフプレーで怪我をさせるってことだからね・・・。

しかも全部逆恨みだからタチが悪い。

まあお姉ちゃんの写真没収は私もおこだけど。

 

「いいかお前ら!こんなチャンスはまたとない!今までの学園生活で罵倒され、虐げられてきたこの鬱憤、この機に晴らさずしていつ晴らす!全員今は牙を研げ。地に臥し恥辱に耐え、チャンスの為に力を溜めろ。今この時は真に敵を討つ時期じゃない。鬼教師どもに復讐するべき時は体育祭。親睦競技という名の下に、接触事故を装って復讐を果たす。いいか、俺達の狙いは・・・」

 

「「「生徒・教師交流野球だ!」」」

 

男子全員の声がそろい、拳をかかげる。

・・・ほんと酷い。

 

「・・・ねえ正邪ちゃん、魔理沙。」

 

「なんだ?」

 

「どうしたんだぜ?」

 

「仲間って、なんだろうね・・・。」

 

「だな・・・。」

 

「・・・とっとと出たいな。」

 

「それなら、問題集を手分けしないか?3人で別の場所やって写せば、手間も減るだろ。・・・本当はここにいる全員でやろうと言うつもりだったんだけどな。」

 

「「賛成。」」

 

さっきのを見ると、ね・・・。

没収品は取り返したかったけど、復讐したいなんてのは欠片も思ってないもん。

結局私達は1時間くらいで終わらせ、最後の授業だけEクラスで参加することに。

Eクラスはじめて入ったけど、机と椅子での授業って、よく考えたらすごいひさしぶりかも。

ちなみに、男子達は下校時刻までかかったみたい。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「「ババァーーっ!!」」

 

私が登校し、教室のドアを開けたら、入れ違いになるように吉井君と坂本君が走っていった。

・・・?

 

「・・・あー、そういうことね。」

 

教室の掲示板に、『今年の親睦野球は召喚獣を用いるものとする。』と書かれた紙が貼られている。

昨日、あれだけ復讐復讐言ってたもんね。

 

「おはようございま・・・あら?今年の親睦野球は召喚獣でやるのですね。」

 

「あ、阿求ちゃんおはよ~!」

 

私が掲示板を見てると、後ろから阿求ちゃんの声。

 

「こいしさん、おはようございます。私、身体が弱いので体育祭は見学でしたけど、これなら参加出来そうですね。」

 

そう言いつつ嬉しそうに笑う阿求ちゃん。

あ、そっか。

召喚獣でやるってことは阿求ちゃんも出来るのか。

 

「でも阿求ちゃん、ルールは知ってるの?」

 

「えっと、実はあまり・・・。良ければ、教えてくれませんか?」

 

「うん、いいよ~。まずはね~・・・」

 

阿求ちゃんにだいたいのルールを教える。

私もそこまで知っているわけじゃないけど、ある程度はわかるからね。

阿求ちゃんは1回聞けば覚えられるし、点数も高いからかなり活躍できそうだもん。

さすがに2塁行くときに1塁経由しないでグラウンドを突っ切ったり、速すぎて前の走者を追い越したりなんていうアホなミスはしないと思うけど、ルールを知っておくのは大事だよね。

途中から正邪ちゃんと魔理沙が加わって、私も知らなかったルールを教えてもらったり、ボールの投げ方やバットの打ち方を実践してみてくれたり。

正邪ちゃんは昔、友達と野球やってたみたいだし。

召喚獣での野球って、どんな感じになるのかな?




いかがでしたか?
姫路ちゃんと違い、阿求ちゃんは少し練習してるため、打つのならできるようになりました。
阿求ちゃんが古文や日本史で投げたら多分迫撃砲くらいの威力になりそう…。


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第六十七話「Eクラス戦!」

67話というと、うちの書いていたScarlet Ammo Onlineで、GGO編が終わった話数なのですよね。
現在OS編は公開していないので、追いつきました。
なお、ストックが切れた模様。
つぎの投稿は少しあとになります。
今回字数多いので許して。


 

 

 

そして召喚野球大会当日。

あの後、吉井君から『野球大会で優勝すれば、没収品を返してもらえる』ということを聞かされ、私達のやる気は急上昇。

逆に言うと、これで負けたらもう帰ってこないってことだからね。

私達は退屈な開会式を終え、グラウンドの一部を仕切って作られたクラス席を離れ、野球大会の会場に向かっていた。

 

「そういえば、最初の対戦相手は誰なの?」

 

「最初は同学年の隣のクラスだから、Eクラスだな。」

 

Eクラスか・・・。

隣のクラスではあるけど、私達との接点はほぼないんだよね。

学園最初の戦争ラッシュでも、Eクラスだけ動きがなかったからね。

私もこの前授業をEクラスで受けたくらいだもん。

クラスとしては・・・野球のバットやバスケのユニフォーム、面や籠手みたいな運動部のものが多かったし、部活頑張ってるって感じなのかな?

 

「Eクラスって野球で勝負しても大丈夫?問題はない?」

 

「ん~・・・まあ、大丈夫だろ。さっきEクラスの代表と話した限りでは、対応も可愛いもんだったしな。」

 

「え?本当?どんな感じだったの?」

 

「えーとだな、『押忍!自分はEクラス代表の中林であります!本日は絶対に勝たせていただきます!』って感じだ。」

 

「全く可愛くないよね!?ソイツ絶対全身筋肉質だよね!?」

 

「冗談だ。本当は『今日はよろしくねっ。絶対に負けないんだからっ☆』みたいな感じの喋り方をしてた。」

 

「なんだ、冗談かぁ。よーし、負けないぞ!」

 

「ただしラグビー部所属。」

 

「やっぱり全身筋肉質だろソイツ!」

 

実は私もEクラス代表は知らないんだよね。

普通の授業1つの間に代表が前に立つなんてないし・・・。

というかうちにラグビー部ってあったっけ?

 

「なんてな。それも嘘だ。Eクラスの代表は女子テニス部のエースをやってる中林ってヤツだ。性格は島田に近い感じじゃないか?」

 

「外見は?」

 

「鉄人に近・・・冗談だ明久。ダッシュで逃げるな。」

 

「雄二の冗談は心臓に悪いんだよ!」

 

まあ、美波ちゃんは吉井君殴るけど、鉄人先生並のパワーだと勝ち目はないもんね。

 

「それで、Eクラスはどういった連中なのじゃ?」

 

「一言で言うと、『体育会系クラス』だな。部活を中心に学園生活を送ってるヤツがほとんどだ。成績は良くないが、その分体力や運動神経はかなりのもんだ。」

 

「なるほど、部活バカってわけだね。」

 

いや、バカって吉井君には言われたくないんじゃないかな・・・。

そう思ってると、ズンズンとこちらに近づいてくる人影。

 

「アンタにバカって言われたくないわよバカ!」

 

「えっと・・・。」

 

「私達がバカなら、その下のクラスのアンタ達は大バカじゃない!この大バカ!」

 

やっぱり怒るよね吉井君にバカって言われたら。

クエスチョンマークを浮かべてる吉井君に、坂本君がEクラスの代表と教える。

ヘアバンドが特徴的な女子だけど・・・記憶にないや。

 

「この人が例の全身筋肉質って話の・・・。」

 

「全身筋肉質!?私一体どういう紹介をされてたの!?」

 

中林さんが目を丸くしてる。

てか吉井君混ざってる混ざってる。

気を取り直したように改めて彼女を観察してる吉井君。

その視線をいやらしいものだととらえたのか、自分の身体を抱くようにして距離をとる中林さん。

 

「な、何よその視線は。これだからFクラスのバカは嫌なのよ。人の身体をジロジロ見て、嫌らしい。」

 

「違うよっ!僕はただ単に中林さんはラグビー部で鉄人に似てる人だと・・・」

 

「アンタ私に喧嘩売ってるんでしょ!?そうよね!そうに決まってるわよね!?」

 

そりゃ怒るよね・・・。

吉井君を見る目が更に険しくなってく。

 

「まあまあパツキン姉ちゃん。明久も悪気があって言った訳じゃない。」

 

そこに珍しく助け船を出す坂本君。

でも、パツキンってどういうことなんだろ?

 

「はぁ?パツキンって金髪のこと?どうしたらこれが金髪に見えるのよ?病院に行ってきたら?」

 

だよね。

彼女は茶髪で、間違っても金には見えないもん。

 

「違う違う。そっちの意味じゃない。漢字では『髪筋』って書く。文字通り、髪まで筋肉で出来てるんじゃねえかってことだ。」

 

「言ってくれるじゃないの・・・っ!」

 

「・・・と、明久が言っていた。」

 

「なんですってぇぇーっ!!」

 

「酷い誤解でげふぅっ!」

 

なんという擦り付け。

怒った中林さんに吉井君が殴られた。

 

「ところで中林。さっきは聞き忘れたが、先攻後攻はどうする?」

 

「知らないわよ!好きにしたらいいじゃない!」

 

「そうか。それならこちらは後攻にさせてもらう。」

 

「いいわよ。そんなことより覚えてなさい!絶対にアンタには負けないんだから!」

 

そう言い、Eクラスのベンチにズンズンと戻る中林さん。

多分、挑発だったんだろうけど・・・吉井君の印象が最悪レベルになったよね。

先攻後攻も決まったところで、いよいよ試合開始だ。

易者先生がいるってことは・・・古文だね。

早速阿求ちゃんが活躍・・・は敬遠されて出来ないような気はするけど、頑張らないと!

通常の野球だと9回まであるけど、今回は短縮されて5回で決着がつくし、1回ごとに科目も変更になってる。

 

「んじゃ、そろそろ打順と守備の配置を発表するか。」

 

坂本君によって組まれた打順発表を聞く。

それによると、キャッチャーは坂本君、ピッチャーは吉井君みたい。

 

「あれ?僕がピッチャーでいいの?点数が高い稗田さんがやるのがいいんじゃないの?」

 

それを聞いて不思議そうにする吉井君だけど・・・。

 

「出来るのならそうしたいがな。稗田が投げて、取れる人がいると思うか?」

 

無理。

阿求ちゃんの次に点数が高い姫路ちゃんでも400点前後だからね。

投げるたびに1人の召喚獣が跡形もなく吹き飛ぶ未来しか見えないよ。

 

「なるほど、納得したよ。」

 

「それなら、姫路が投げて稗田が捕るのではダメなんじゃろうか。」

 

木下君がそう言うけど、坂本君が答えるより先に姫路ちゃんと阿求ちゃんが答えた。

 

「あ、あの、私野球をしたことがなくて・・・。ルールも全然わからないですし・・・。」

 

「私もルールはわかりますが、実際にやったことはなく・・・。」

 

「だそうだ。姫路はルールの把握も兼ねてライトに配置している。状況によって変えるけどな。」

 

確かにライトなら、球はあまり飛んでこないよね。

慣れるにはもってこいかも。

 

「以上だ。他になにか質問は?」

 

坂本君が全員を見回す。

他には質問は出なかった。

そして流れで、男子達が円陣を組む。

 

「よし。それじゃ・・・いくぞテメェら、覚悟はいいか!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「Eクラスなんざ、俺達にとっちゃただの通過点だ!こっちの負けはありえねぇ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「目指すは決勝、仇敵教師チーム!ヤツらを蹴散らし、その首を散っていった戦友の墓前に捧げてやるのが目的だ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「やるぞテメェら!俺の・・・俺達のかけがえのない仲間の弔い合戦だ!」

 

「「「おっしゃぁーっ!!」」」

 

それを私達女子は冷めた目で見ていた。

・・・だって、私達はそういう本を没収された訳じゃないもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレイボール!」

 

主審をつとめる先生の声が響き渡り、ゲームが始まる。

ちなみに、私達は別にどこに立ってもいいんだけど、やりやすさを考えると必然的に召喚獣の後ろに立つことに。

気分はまるで本当に野球してるみたい。

 

「しゃーっす!サモン!」

 

Eクラスのトップバッターが挨拶し、打席に入る。

サインを見られないように、バッターはボックスの真後ろあたりに立たされる。

点数はたいして変わんないから、どうなるかな・・・?

 

キンッ

 

「ホームラーン!」

 

「ちゃんと投げろボケがぁーっ!」

 

「ちゃんと指示しろクズがぁーっ!」

 

甲高い音をたてて、ボールは青空に吸い込まれていった。

・・・そりゃ、いくら召喚獣慣れしてなくても、運動部相手にど真ん中スローボールはダメでしょ。

最初の投球でホームラン。

これで0対1。

 

「おねっしゃっす!サモン!」

 

ノーアウトランナーなしで2番バッターの登場。

今回は・・・

 

キンッ

 

「ホームラーン。」

 

「「バットをよこせぇーっ!」」

 

またしてもかっとんでくボール。

吉井君と坂本君が同時にベンチにバットを渡すよう言う。

どう考えても、互いを撲殺しようとしてるようにしか見えないよね。

その後、ピッチャーとキャッチャーが他のクラスメイトに変わり、さらにまた1点。

開幕で0対3になっちゃった。

 

「どうしよう、いきなり大ピンチだよ・・・。」

 

「というかもう点取られた後だけどな。」

 

こんだけ点数を取られていながらも、まだ相手はノーアウト。

さらに次は4番バッターだもん。

 

「とにかくピッチャーキャッチャーは俺と明久に戻して、こっからは真剣に行くぞ。」

 

「うん、わかったよ。」

 

配置について、バッターが構えるのを待つ吉井君。

 

「吉井明久・・・!さっきはよくも人を筋肉質呼ばわりしてくれたわね・・・!絶対に許さない・・・!」

 

やはりというか、相手は代表の中林さん。

吉井君への殺意で燃えてる。

さすがにここで手を抜くわけにはいかないと思ったようで、吉井君も真剣な表情で投げ・・・

 

ゴスッ

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「殴らせて!あの男を一度でいいから殴らせてよ!」

 

「落ち着け中林!せっかく勝ってるんだ!乱闘でノーゲームにするのは勿体ない!」

 

力が入りすぎてすっぽぬけたみたいで、ボールは中林さんの召喚獣にヒット。

そりゃ怒るよね。

クラスメイトに宥められ、一塁に歩く中林さんの召喚獣。

続く5番バッターは、前のバッターが軒並みホームランを撃った焦りとプレッシャーからか、撃ちにくい球に手を出してセカンドフライに。

そして慣れてきたのか、6番、7番と連続でアウトを奪う吉井君。

これで3アウトで攻守交代。

 

「よし、さっきはちょっとしたハプニングがあったが、だいたい計算通りだ!さっさと点数を取ってブッ倒すぞ!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

坂本君の言葉に全員で拳をかかげて応える。

そもそも、異端審問会なりで日常的に攻撃してるような感じだからね。

トップバッターは木下君。

 

「木下。まずはアンタを打ち取って波に乗らせてもらうわよ!」

 

マウンド上ではピッチャーの中林さんが闘志を燃やしている。

木下君がバッターボックスに入ったのを確認して、中林さんが投擲する。

木下君は球筋をじっくりと見極めて、黙ってボールを見送った。

 

「ボール。」

 

審判がボールを宣告する。

キャッチャーが球をピッチャーに返すと、第二球を投げてくる。

 

「ボール。」

 

二球目もストライクゾーンには入らない。

コースがうまく定まらないようで、ピッチャーの中林さんは悔しそうにしていた。

 

「ストライク!」

 

三球目はストライクゾーンに。

そのまま投球が続き、2ストライク・2ボールとなる。

さらにもう1球投げられたところで、はじめて木下君が動きを見せた。

 

「ファール。」

 

あまり飛ばす気のないようなスイング。

多分これはフォアボール狙いだね。

4回ボールでバッターは塁に出ることが出来る。

だからヒット狙いで3ストライクになるよりは確実なんだよね。

 

「ファール。」

 

その次のボールもカット。

ただでさえ慣れてない召喚獣での投球で、最初のバッターにやられると、やりづらいことこのうえないはず。

 

「ボール。」

 

さらにひとつボールのカウントが増える。

 

「ぐ・・・。嫌らしいやり方をしてくるじゃない・・・!」

 

別に反則ではないけど、中林さんはそれが許せないみたいで、歯噛みしてる。

 

「思いっきり振ってきなさいよ木下!勝負よ!」

 

「すまぬが、それはできん。5回までしかない以上、確実に点を返さねばならぬからの。」

 

「何よ!私が怖いの!?フォアボールなんかじゃなくて、ちゃんとヒットで塁に出なさいよ!」

 

「なんと言われようと無駄じゃ。ワシはワシの仕事をこなすだけじゃからの。」

 

「くっ・・・!とにかく勝負しなさいよ!男らしく!」

 

「・・・男らしく、じゃと?」

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

男らしくという言葉が琴線に触れたのか、最後のみ大振りになる木下君。

三振で1アウト。

次のバッターはムッツリーニ君。

ムッツリーニ君は運動神経も悪くないし、召喚獣の扱いだって慣れてるから、多分いい勝負をしてくれそう。

 

『Eクラス 中林弘美 古文 107点 VS Fクラス 土屋康太 古文 17点』

 

・・・前言撤回。

無理だねこれ。

下手したらバットに当てても押し戻される可能性あるかも・・・。

予想通り、ムッツリーニ君はサード前にゴロを転がしてアウト。

2アウトだから厳しいけど、次は吉井君。

点数はともかく、操作技術はダントツだし運動神経もいい方だから、多分やってくれると信じてるよ。

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「痛みがぁっ!顔面が陥没するような痛みがぁっ!」

 

初球から顔面デッドボール。

吉井君の召喚獣は痛みがフィードバックするから、実際に顔面に当てられたのとほぼ変わらない。

しかも相手は人間の数倍の力を持つ召喚獣だし、球も通常の野球ボールより格段に重い。

しかも吉井君に同情しかないよ。

点数も減ってるしね。

 

「この先、アンタの打席は全てデッドボールよ。」

 

そして、さっきまでフォアボール狙いがどうこう言ってた彼女とは思えないような発言。

吉井君はフィードバックの痛みをこらえながら一塁へ向かう。

 

「さて、ここで真打ち登場だな。」

 

そして4番バッターは坂本君。

 

『Eクラス 中林宏美 古文 107点 VS Fクラス 坂本雄二 古文 196点』

 

点数だって差があるし、操作技術や本人の運動神経も悪くない。

 

「うっ・・・。コイツも怖いけど、この次はあの稗田だし、ここは勝負で・・・!」

 

坂本君の後ろが大したことない人なら、多分彼女は敬遠を選んだと思う。

でも、その次は阿求ちゃん、さらにその次は姫路ちゃん。

点数が高いだけで実際にやったことはない姫路ちゃんはともかく、阿求ちゃんは勝負してきたら勝てるはず。

それに坂本君と阿求ちゃんを敬遠したなら、相手は満塁で姫路ちゃんと戦うことに。

だから相手は勝負を選ぶ。

そして投げられた一球目。

 

「あらよぉっと!」

 

カキンといい音をたてて、空に飛んでいくボール。

軌道を見るまでもなくホームラン。

吉井君と坂本君がホームベースに戻り、2点となる。

 

「くっ、次からは坂本にもぶつけるしかないっていうの・・・?」

 

「「「普通に敬遠しろ(しようよ)!」」」

 

つい突っ込んじゃった。

確かにデッドボールの方が点数減らせるという意味ではいいのかもしれないけど、あんまやってると危険球として反則取られるよ?

とにかく、次は5番バッターの阿求ちゃん。

ここと次は間違いなく敬遠だよね。

 

「本当はここでホームラン打って追いつければいいんだけどね。」

 

「満塁ならともかく、さすがにあの点数相手に勝負をしてくるほど甘くはないと思うぜ。」

 

「まあ、坂本もそれはわかってるだろうしな。」

 

ベンチで魔理沙と正邪ちゃんと会話する。

ちなみに、私は9番で、魔理沙は8番、正邪ちゃんはベンチとなってる。

ちなみに、もう1人のベンチは須川君。

お空はあんまり運動神経よくないからね。

私もいい方じゃないけど、点数はまあそこそこあるから・・・。

 

「ボール。フォアボール。一塁へ。」

 

話してるうちに阿求ちゃんが一塁に移動してる。

 

「さすがに敬遠してきますよね。デッドボール狙いなら多分打てたのですけど・・・。」

 

そんなことを呟きながら移動する阿求ちゃん。

続いて姫路ちゃんもフォアボール。

これで2アウト、ランナー一塁二塁。

次のバッターは・・・。

 

「うぅ、ウチの番ね・・・。」

 

随分と自信がない様子の美波ちゃん。

運動神経はいい感じなはずなんだけど・・・あ。

 

『Eクラス 中林宏美 古文 105点 VS Fクラス 島田美波 古文 6点』

 

「さあ守備だ!きっちり守るぞ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「ウチまだ打ってないんだけど!?」

 

そんな叫びも空しく、ピッチャー前にゴロを転がしてアウト。

まあ美波ちゃんは古文苦手だしね。

次頑張ろ!




いかがでしたか?
こいしちゃんをはじめとした東方キャラの出番はわりと少ないです。
Eクラスには東方キャラいないので。


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第六十八話「Eクラス戦後半!」

野球だとこいしちゃんが活躍できない。



 

 

 

 

「じゃこいし、守ろうぜ。」

 

「うん。」

 

2回表。

守備の位置につくため、私と魔理沙は向かおうとする。

それを坂本君が呼び止めた。

 

「待て、この回は霧雨、キャッチャーを頼む。」

 

「・・・あ、確かに数学だしな。わかったのぜ。」

 

魔理沙は数学は腕輪レベルだからね。

そしてピッチャーは美波ちゃん。

この回限定なら、Bクラスレベルのバッテリーだよね。

 

『Eクラス 大村新太郎 数学 65点 VS Fクラス 島田美波 数学 193点』

 

予想通りの得点差。

さっき7番バッターまで打ったから、次は8番からだし問題は多分ないはず。

1、2球目と心配なく見守る。

すると、3球目で魔理沙がボールを取り損ね、胸に当たった。

じっさいかなりの速さだもんね。

魔理沙の点数が10点ほど減ってる。

点数が2倍くらい差がある魔理沙でもこれなら、他の人ならかなりのダメージになってたはず。

その後も投球が続き、この回は問題なく凌ぎきる。

 

「お疲れ、美波。ナイピッチ。」

 

「ありがと、アキ。」

 

「凄い球だったね。さすがだよ。」

 

「ふふっ。さっき打つ方で活躍出来なかった分、せめて守備では活躍しないとね。」

 

片目をつぶってそう言う美波ちゃん。

かっこいい。

 

「お姉様!最高です!かっこよすぎです!そんなお姉様を見ているだけで、美波は、美波はもう・・・っ!」

 

・・・だから、女子にモテるんじゃないかな?

 

「さて、次は私からだな。・・・まあ、敬遠されそうだけどな。」

 

次のバッターの魔理沙の数学は腕輪レベル。

魔理沙が言った通り、敬遠で塁に。

さて、次は私だね。

 

『Eクラス 中林宏美 数学 108点 VS Fクラス 古明地こいし 数学 127点』

 

点数は同じくらいだし、ヒットを狙っていきたいな。

構えさせる。

そして、1球目が投げられる。

 

「ストライク!」

 

最初は空振り。

うーん、けっこう難しいね。

でも、今のでタイミングとかはわかったかも。

次で行くよ!

 

「アウト!」

 

・・・と思ったんだけど、レフトにフライを打ち上げてアウトに。

やっちゃった。

魔理沙はなんとか二塁にたどりついたものの、次の木下君とムッツリーニ君も凡退でチェンジ。

その後も3、4回と互いに無得点で終わる。

そして、最後の5回表。

こちらは依然1点差がついてるから、ここは取らせないようにしたいところ。

そこで科目は保健体育。

 

「じゃあムッツリーニ、ピッチャーは任せたよ。」

 

「・・・了解。」

 

いやいや、ムッツリーニ君が投げたらキャッチャー吹っ飛ぶよ?

坂本君もそう言って、ピッチャーは坂本君がやることに。

坂本君だって100後半くらいの点数あるし、結構な速さになる。

おかげで無事に点を取られず守りきることに成功。

途中、2回ほどボールを受け損なって身体に当たってたけど、さすが得意科目。

ほとんど点数を減らすことなく耐えていた。

 

「さあ、ここで逆転するぞ!次の打順は誰からだ!」

 

「ワシからじゃの。」

 

打順は2周して、次はトップバッターである木下君。

 

「秀吉、絶対に打ってね。」

 

「・・・期待している。」

 

「そうだ、頼むぞ木下!」

 

「頑張ってね木下君!」

 

「ファイトだぜ木下!」

 

口々に寄せられる期待と応援の声。

私は9番バッターだからもう絶対に回ってこない。

だから応援だけでもね。

 

「う、うむ。努力はするが・・・。」

 

「「「俺達の、エロ本の為に!」」」

 

うーん、そのエールは・・・。

 

「ストライク、バッターアウト!」

 

「どうしたの秀吉?スイングに力が入ってなかったけど。」

 

「あの激励で力が抜けてしまっての・・・。」

 

そりゃそうだよね。

疲れきった顔してる。

でもまあ、次はムッツリーニ君。

保健体育はムッツリーニ君の得意科目だし、期待してるよ。

 

「・・・まあ、間違いなく敬遠されるだろうがな。」

 

「だよね。」

 

点数が高すぎるとフォアボールで歩かされちゃうからね。

そして予想通り、ムッツリーニ君はフォアボール。

これじゃ点数にはならない。

だから次のバッターである吉井君次第。

 

「次は吉井君だけど、点数いくつくらいなの?」

 

「えーと・・・。確か30点くらいかな?」

 

「酷いもんじゃな。」

 

「だ、だって・・・。参考書を取られちゃったから・・・。」

 

「アンタは何使って勉強しようとしてんのよバカ。」

 

でもこれ大丈夫かな?

相手は100点ちょいくらいあるし、吉井君の撃った球によってはムッツリーニ君もアウトをとられてゲームセットの危険さえある。

 

「ま、気楽に行ってこい。なんとかなる。」

 

そんな状況にも関わらず、何故か坂本君はお気楽だった。

不思議そうにしてる吉井君だけど、審判の先生に注意を受け、小走りで向かってく。

・・・???

 

「で、坂本君。作戦があるの?」

 

「ない・・・が、今は5回裏の1点差、科目は保健体育。」

 

「そんなのはわかってるわよ。」

 

「それで、ランナーはあのムッツリーニだ。」

 

「盗塁だっ!」

 

坂本君が言った直後、グラウンドの方から声が聞こえてくる。

・・・そっか、そういうことね。

牽制球が来ないのを確認したムッツリーニ君は二塁に向かって走らせる。

それを見た吉井君はあえて大きく空振り。

あれはバットでキャッチャーの視界を遮り、盗塁の成功率を少しでも上げるためのもの。

キャッチャーがボールを受けて、二塁に送球しようとする。

このタイミングだと、アウトかセーフかギリギリ・・・ん?

ムッツリーニ君って700点くらいあるのに、100点くらいの相手にギリギリ?

そう思いながら見ていると、送球の瞬間、ムッツリーニ君の目がぎらりと光ったような気がした。

 

「・・・かかった。」

 

そう呟くと、召喚獣の動きが一気に速くなる。

やっぱり手を抜いてたのか!

 

「「「なっ!?」」」

 

ムッツリーニ君が通りすぎた後、ボールを受け取った二塁の守備は三塁に送球。

これもまたギリギリなタイミングだね。

 

「・・・加速。」

 

そこに、ムッツリーニ君が腕輪の力を発動させてさらに加速。

 

「「「んだとぉっ!?」」」

 

Eクラスから悲鳴のような声が聞こえてくる。

余裕で三塁を通過したムッツリーニ君の召喚獣は、ホームベースに走り出す。

 

「くそったれ!」

 

三塁の守備がホームベースに送球する。

でも、それより先にムッツリーニ君の召喚獣はホームベースを駆け抜けて生還していた。

 

「「「おっしゃあーっ!」」」

 

Fクラスから歓声が沸き上がる。

これで同点!

あと1点取れば、私達の勝ちだよ!

吉井君も投球に備え、召喚獣にバットを構えさせる。

相手ピッチャーも動揺してるはずだし、吉井君も行けるかも!

 

ゴスッ

 

「デッドボール。一塁へ。」

 

「だから・・・っ!なんで僕はデッドボールばっかり・・・っ!」

 

『Eクラス 古河あゆみ 保健体育 102点 VS Fクラス 吉井明久 保健体育 0点』

 

「吉井明久、戦死!」

 

・・・今のデッドボールで0点になったよ吉井君。

 

「ちょっと待って!まだ試合が残ってるのに0点になったんだけど!?」

 

「野球の方は代走で鬼人が入る。補充試験を受けてこい。なに、ここまでやったんだから勝っておくさ。」

 

「戦死者は補習!」

 

「あんまりだーッ!!」

 

戦死した吉井君を、鉄人先生が連れていく。

・・・体育祭の最中に補充テストなんて、ドンマイだね。

まあ、こうなったら勝って、勝利を戦死した吉井君に捧げないとね。

・・・私出来ることないけど。

 

「さて、次は俺だな。死んだ明久の為にも、撃ってくるとするか。」

 

吉井君は戦死したけど、デッドボールで塁には出てるから、現在は1アウト一塁。

相手は1点でも取られると敗けが確定するから、坂本君、阿求ちゃん、姫路ちゃんの誰かで勝負に出ないといけない。

さっきのムッツリーニ君の盗塁の印象が強かったのか、相手ピッチャーは牽制球を投げてからキャッチャーに投げてくる。

そして坂本君はフォアボール。

さっきホームラン打たれたからかな?

 

「次は私ですね。」

 

阿求ちゃんがバッターボックスに立つ。

阿求ちゃんは身体が弱いせいで、体育の授業は常に見学してる。

だから、多分ここで勝負に出ると思うな。

予想通り、迷いつつもストライクゾーンにボールを投げてくる相手ピッチャー。

 

「私も練習したんです、よっ!」

 

それに対し、カキンといい音をたててバットをボールに当てる阿求ちゃん。

ボールはぐんぐんと上昇し、ホームランに。

やった!

サヨナラ勝ちだよ!

 

「「「よっしゃぁーっ!!」」」

 

Fクラスから歓声が沸き上がる。

一時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった!

次は3ーEか3ーFかわかんないけど、勝つよ!




いかがでしたか?
あっきゅんによろサヨナラホームランで無事に勝利できました。
しかし中林さんのデッドボール宣言、実際なら危険球扱いで退場になりそうですよね。


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第六十九話「二人三脚!」

今回は野球ではなく体育祭競技です。
二人三脚ってやったことないなぁ。


 

 

 

「頼む・・・!なんとか最高のパートナーを・・・!」

 

「いいから早く引けよ。後がつかえてるんだから。」

 

「わかってるから急かすなよ!・・・よし、これだ・・・チクショォーッ!!」

 

「「「っしゃぁああーっ!ざまぁ見やがれぇーっ!!」」」

 

「・・・えっと、あれは何やってるのかな?」

 

補充試験を終えて中央グラウンドに戻ってきた吉井君が、あの騒ぎを見て坂本君に聞いてる。

 

「ん?あれか?あれはただのくじ引きだが。」

 

「いやそれはわかるよ。そうじゃなくて、なんであんな騒いでるのかってことだよ。」

 

「あれが二人三脚のくじだからな。」

 

ちなみに、男女混合だよ。

私は魔理沙と、正邪ちゃんはお空とペアになったけど、美波ちゃん、木下君、姫路ちゃんのペアはまだ未定。

だからこそ騒いでるんだけどね。

・・・ちなみに、Bクラスの方まで行って確かめてきたけど、お姉ちゃんは虎丸さんとペアになったらしい。

よかったよ、お姉ちゃんとペアが男だったら死人が出てたもん。

 

「なんじゃ明久。ずいぶんと落ち着いておるではないか。」

 

「うん、僕は別にペアが誰でもいいからね。どうせ男女別だろうし『今回は男女別だぞ。』全然問題ないサモン。」

 

モノにさわれる自身の召喚獣で皆殺しにしようとする吉井君だけど、召喚フィールドないよ?

 

「ちなみに私は魔理沙と、正邪ちゃんはお空とペアになったけど、美波ちゃん、姫路ちゃん、木下君はまだ決まってないよ。」

 

「あ、なんだ。それは良かった・・・。」

 

「まあ、私達にとってはこんな競技より野球が大事なんだけどね。」

 

「古明地の言う通りだな。」

 

「・・・同意。」

 

あっちはお姉ちゃんの写真という実利があるからね。

優勝という名誉より、お姉ちゃんの写真310枚という実利の方が何倍も重要だもん。

ちなみに、2回戦の相手は今延長戦中。

7回裏が終わって決着がつかなかったら引き分けに。

そう言うと聞こえはいいけど、実際は両者敗退と同じ。

そうなると私達は自動的に不戦勝だからありがたいんだけどね。

 

「とにかく、2回戦があると考え、作戦や打順をたてておくか。」

 

坂本君がプログラムを取り出して確認する。

次の科目はごく普通のもの。

現代文があるのが良くないけど、他は問題なさそう。

 

「・・・保健体育がない。」

 

悲しそうに呟くムッツリーニ君。

坂本君が持っているプログラムを覗きこむと、確かにこの先には保健体育がなかった。

ムッツリーニ君は保健体育がないなら吉井君とどっこいどっこいの点数だからね。

だから二回戦はムッツリーニ君はクラス競技に参加することに。

 

「打順と守備位置も弄る必要があるな。最初が数学だから島田を1番に置いて、霧雨を2番にするか。」

 

「僕はどうなるの?数学は苦手なんだけど。」

 

「数学も、だろ。どうせ物理の点数だって壊滅的なんだから、3番のままでバントさせた方が良さそうだな。」

 

「ん、了解。」

 

坂本君が打順と守備位置を次々に決めていく。

そう話してると姫路ちゃんと美波ちゃんがやってきて、吉井君に二人三脚のペアを聞きにくる。

それで思い出したように二人三脚くじを引きにいく吉井君。

ちなみに、美波ちゃんが6、姫路ちゃんが7だから、その2つが当たりだね。

神妙な面持ちの須川君に促され、くじを引く吉井君。

 

「あ、6ば」

 

「殺れ。」

 

「「「イエス、ハイエロファント。」」」

 

「バカな!?もう囲まれた!?」

 

うっかり番号を読み上げてしまったばっかりに、一瞬で覆面集団に囲まれ、腕間接を極められ、くじを奪われる吉井君。

 

「さて、この6番のくじだが、オークションを」

 

「わかりました、美春が言い値で買い取りましょう。」

 

「「「なんで清水がここにいるっ!?」」」

 

「残念だがこれはクラス内のもので・・・ん?これ・・・6じゃなくて9だな。9番の見間違いだ。」

 

あ、そうなの?

異端審問会メンバーが愚痴をこぼしながら三々五々に散らばっていく。

肘間接をさすりながら戻ってきた吉井君に美波ちゃんが駆け寄るけど、9番だと知って残念そうに去っていく。

私もくじを見せてもらったけど、確かに9の下にアンダーバーがひかれてた。

 

「そういえばだけど、坂本君達はまだ引いてないんじゃない?」

 

「ん?そういやまだだな。アイツらが落ち着くのを待っていたらすっかり忘れてた。」

 

「ワシもじゃ。」

 

「・・・行ってくる。」

 

くじびきに向かう3人。

引いてないのは3人だけだし、吉井君の9番はまだ出てない。

どうなるかな?

男子の誰もが固唾を呑んで見守るなか、最初に木下君が引く。

 

「む。9ば・・・」

 

「っしゃぁ全員かかってこいっ!僕は死んでもこのくじを守りきってみせる!」

 

「「「生きて帰れると思うなよボケがぁっ!!」」」

 

一瞬で膨れ上がる殺気に負けないように声を張り上げる吉井君。

競技開始まで逃げ切れれば勝ちだよ吉井君。

 

「・・・ではないの。6番じゃ。」

 

「「「・・・・・・」」」

 

空気の抜けた風船のように一瞬で萎む殺気。

となると、木下君は美波ちゃんとペアみたいだね。

となると、残りは吉井君か姫路ちゃん。

次にムッツリーニ君がくじを引く。

 

「・・・9ば」

 

「さらばだっ!」

 

「「「逃がすなっ!坂本を捕らえて血祭りにあげろっ!!」」」

 

この間、1秒未満。

ムッツリーニ君が吉井君とペアになるから、残った坂本君が姫路ちゃんとペアになると確定。

それを悟り即座に逃げに入る坂本君と、それを殺らんと追いかけるみんな。

体育祭という行事にふさわしい速度で走ってるけど・・・。

 

「・・・雄二。浮気は許さない。」

 

「ぐわぁぁああっ!翔子、お前どっからわいたんだ!?」

 

そうしてもラスボスからは逃げられない。

翔子ちゃんの指が坂本君の顔に食い込んでいく。

・・・うわぁ、あれは痛いよね。

 

「・・・ところで雄二。」

 

「おい待て。普通は話すなら指を緩めるだろ。」

 

「・・・お義母さんから、なにか預かってない?」

 

「ん?ああ、あれか?」

 

待てと言いつつ結局そのまま話し始める坂本君。

よくアイアンクローかけられながら会話出来るね。

 

「それならあの持ち物検査の日に、催眠術の本が入った袋に入れといたぞ。」

 

「・・・本当に?」

 

「ああ。」

 

「・・・なんてことを、してくれたの・・・!」

 

「ぎゃぁぁああっ!死ぬほど痛えぇぇっ!」

 

「・・・あの袋、中身ごと全部没収されたのに・・・!」

 

「ぐぎゃぁああ・・・ぁぁ・・・」

 

パキュッと乾いた音とともに、地面に倒れる坂本君。

 

「・・・雄二のバカっ・・・!」

 

そう言い捨てて去っていく翔子ちゃん。

 

「・・・大丈夫?何したの?」

 

さすがに放置は可哀想なので、吉井君と助け起こす。

すると坂本君は頭をふりつつ立ち上がったけど、あの攻撃受けてすぐ立ち上がるって丈夫だね。

 

「ああ・・・。俺のせいで、預けてたものを雑誌類と一緒に没収されたらしくてな・・・。」

 

あの様子だと、よっぽど大事なものだよね。

 

「お袋に預けた、となると・・・まさか、婚姻届の同意書かっ!」

 

ああ、確かにそうかも。

2人とも未成年だから、保護者の同意が必要だしね。

 

「危なかった、それならあの持ち物検査に感謝してもふぐぅっ!」

 

バチッという音とともに、ふたたび倒れる坂本君。

後ろには、異端審問会の人達が大勢立っていた。

 

「連れていけ。」

 

「「「ハッ!」」」

 

ぐったりとした坂本君がかつぎあげられ、そのまま校舎裏に運ばれてく。

間違いなくひどい目にあうと思うけど、さすがに私じゃどうしようもできないかな。

とりあえず、二人三脚の練習をした方がいいかも。

 

「おっすこいし!二人三脚の練習しようぜ!」

 

そう思ってたら、魔理沙の方からそんなことを。

私もそのつもりだったから了解して、少し練習をしてから本番に。

他の人は誰なのかな?

 

「・・・あら、こいしじゃない。」

 

「あ、お姉ちゃん!わーい!」

 

やった!

私の横にはお姉ちゃんと虎丸さんのペアがいたよ!

 

「ところで魔理沙さん、いい加減貸していた本を返してくれませんか?」

 

「まあ、また今度返すぜ。」

 

「さとりさん、本を貸してるんですか?」

 

「ええ。1年以上前に貸して、催促してるのにいまだに返ってきていませんが。」

 

「えぇ・・・。」

 

虎丸さんがドン引きしてる。

 

「じゃあ、こういうのはどうだ?この二人三脚で私達が勝ったら本の貸出期間は延長。逆にさとり達が勝ったら本は明日返すという感じで勝負しようぜ。」

 

「・・・本当ですね?」

 

「本当だぜ。」

 

「・・・わかりました、いいでしょう。」

 

魔理沙がそんな賭けを提案し、お姉ちゃんがそれを受け入れる。

こうなったら私のやることは1つだよね。

スタートの合図が出て、全員が出発する。

そして結局、お姉ちゃんと虎丸さんが1位に、私と魔理沙が2位に。

少し手を抜いて、お姉ちゃんが勝つようにしたからね。

とりあえず、これで本を返して貰えることになったけど・・・一応明日魔理沙の家に行こうかな?




いかがでしたか?
こいしちゃんがペアな時点で魔理沙に勝ち目はありませんでした。


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第七十話「3-A戦!」

ついにストック完全に切れました。
最近頑張ってポケきらも書いてるので次以降は投稿遅れそうです。



 

 

 

3ーEと3ーFの試合は延長戦でも勝負がつかず、私達の不戦勝が決定。

そして、いよいよ準決勝だね。

 

「確か、相手は3ーAだっけ?」

 

「ああ。あの常夏コンビがいるクラスだ。」

 

あと、あの夢幻姉妹もね。

肝試しで対決したばっかなのに。

 

「んむ?ということは、2ーAは負けたということじゃな?」

 

「そうなるな。」

 

「負けたって、霧島さんがいるのに?」

 

「霊夢もいるのにか?」

 

「まあ、そうなるな。」

 

霊夢さんとか早苗ちゃんとか天子さんがいるし、私も2ーAかなって思ってたんだけどね。

 

「ちなみに、2ーAが勝ち上がってきてたらどんな作戦を考えていたの?」

 

「久保と博麗を懐柔して11VS7で勝負するつもりだった。」

 

「え?確かにそれが出来たら楽だとは思うけど、博麗さんはともかく久保君はそんな汚いことに手を貸すかな?」

 

「・・・そうか。そう思っていられるのなら、そのままの方が幸せなんだろうな。」

 

どうか、吉井君にはそのままでいてほしいかな。

 

「それで坂本君、3ーA戦には作戦があるの?」

 

「ああ。とはいっても翔子や久保がいる2ーAが負けるとは思ってなかったからな。作戦なんてほとんどないんだが・・・」

 

そうはいっても坂本君のことだし、なにか考えてるよね。

 

「・・・奴等の召喚獣を殺そうと思う。」

 

「・・・酷い作戦だぜ。」

 

なるほどね。

実にわかりやすくシンプルな作戦だけど、ものすごいクズな作戦だね。

 

「わかった。乱闘に持ち込むんだね?」

 

「・・・誰を狙えばいい?」

 

「何故お主らは躊躇いもなく受け入れることが出来るのじゃ・・・。」

 

乗り気な2人を見て木下君が呆れてる。

 

「いや、別に乱闘じゃなくてもいい。直接攻撃以外にもダメージを与える方法はあるからな。」

 

「そっか。タックルしたり、デッドボールしたりでもいいものね。」

 

「・・・振りきったバットを投げつけてもいい。」

 

「ああ。理解が早くてなによりだ。」

 

「お主らは真性の外道じゃな!」

 

「目的の為なら手段を選ばないっていう気持ちはわかるんだけどね・・・。」

 

もともと坂本君達はスポーツマンシップという言葉とは最も縁遠いし。

 

「でも、そんな戦法とったら相手に卑怯だとか汚いとか言われそうだぜ。」

 

「チッチッチッ。わかってないなぁ。」

 

「ああ。どうやら霧雨には俺達のスポーツマンシップが伝わってないらしい。」

 

「・・・理解不足。」

 

「・・・何が言いたいんだぜ?」

 

魔理沙にそんなことを言う3人。

ちなみに私もわかってないよ。

 

「いいかい、魔理沙?」

 

「「「卑怯汚いは敗者の戯言!」」」

 

「「最低すぎるぜっ(でしょ)!」」

 

つい突っ込んじゃった。

 

「んむ?じゃが、戦闘不能にしたからといって、野球の点が入るわけではないのではないかの?」

 

そもそもワシらの点数ではたいした攻撃力にならぬのではないかの、と言葉を続ける木下君。

確かに言われてみればそうだよね。

点数を削ってピッチャーの球やバッターのバットの威力を減らし、点をとりやすくするというならわかるんだけど。

 

「確かに秀吉が言う通りだが、3年には持ち物検査はなかった。だからそのモチベーションの差を使う。まあ見てろ。」

 

・・・よくわかんないや。

まあ、いざ実行する時にわかるよね!

 

 

 

 

 

 

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

「ごめん坂本、あれは打てないわ・・・。」

 

「気にすんな。相手は3年のAクラスだからな。」

 

さすが相手は腐っても3ーAというだけあって、球速もコントロールもかなりレベル高いね。

この回の化学は美波ちゃんの得意科目でもないし、撃てないのはしょうがないかなって。

ちなみに、この試合はラフプレイ前提の打線。

トップバッターの美波ちゃんは普通に打ってもらってるけど、2番の須川君、3番の吉井君は可能ならラフプレイすることになってる。

 

「サモン。」

 

その須川君が召喚獣を呼び出す。

 

『Aクラス 夏川俊平 化学 244点 VS Fクラス 須川亮 化学 59点』

 

相手のバッテリーは常夏コンビ。

多分、吉井君達が相手ってことでわざわざ出てきたんだろうね。

 

「59点とはまた、ずいぶん貧相な点数だな。」

 

マウンド横に立つ坊主が須川君の点数を見て、馬鹿にしたように言う。

相変わらず、他人を馬鹿にした態度が好きだよね。

それに対し須川君は特に反応を見せることもなく、黙ってバットを構えさせる。

Fクラスなだけあって、バカにされることに耐性ついてる感じかな?

 

「けっ、言い返す勇気もねえのか。腰抜けめ。」

 

坊主がつまらなさそうに鼻をならし、ボールを投げる。

投げられたボールはストライクゾーンど真ん中を通り、モヒカンがキャッチ。

 

「ストライク!」

 

「どうした?ど真ん中だぜ?」

 

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる坊主だけど、須川君はなにも言わない。

反応しないのがつまらないようで、そのまま2球目を投げてくる。

 

「ストライク!」

 

さっきとほぼ同じ球。

須川君はバットを振らず、冷静にボールを見極めようとしてるね。

 

「これで三振は2人目だな。」

 

そんなことを言いつつ、3球目を投げてくる。

さっきまでとなんら変わらないモーションと軌道で、さっきまでより数段遅い球が投げられる。

タイミングをずらされたからか、バットを振れず棒立ち状態の須川君。

ボールはストライクゾーンど真ん中に入ってるし、これは三振だね・・・。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

これでランナーなしの2アウト。

よろしくないね。

 

「おいおい、せっかく緩い球を投げてやったんだ。ちゃんと打てよな?」

 

わざと挑発するように言う坊主だけど・・・この体育祭の準備を全部やらされたこと、根に持ってるのかな?

自分達から言い出したことなのにね。

 

「どうだった?」

 

ベンチに戻る須川君に、吉井君が小声で話しかける。

私も5番バッターだし、次の回あたりで当たりそうだし聞いとこっかな。

 

「ダメだ。全くみつからない。」

 

「そっか・・・。」

 

「どこを探しても、この前のエロい着物姿の先輩とチェックポイントの美人な先輩姉妹がみつからない。」

 

「それはそれでありがたい情報だよ。」

 

・・・・・・。

まあでも、いたら私多分狙われてたし、いい情報といえばいい情報なのかな?

吉井君が打席に立つ。

 

「吉井か。テメェを打ち取って3アウトにしてやる。」

 

「そう簡単には負けませんよ変川先輩。」

 

「待て。今俺の名前と変態という単語を混ぜて斬新な名字を作らなかったか。」

 

「あ、すいません変態先輩。」

 

「変態で統一しろって訳じゃねえっ!夏川で統一しろって言ってんだよ!」

 

「あ、すいません。どうにも紛らわしくて。」

 

「どこがだよ!夏川と変態って、共通点文字数くらいじゃねえか!」

 

「まあまあ落ち着いてくださいよ夏川変態。」

 

「響きが似てるからって今度は先輩と変態を間違えるんじゃねえーっ!!」

 

吉井君の挑発?で熱くなる坊主。

多分普通にしゃべってるだけなんだろうけどね。

 

「テメェ、吉井明久・・・!絶対に殺す・・・!」

 

殺意に満ちた坊主が振りかぶり、1球目を投げてくる。

さっきと同じようにど真ん中に叩き込まれるボール。

それを吉井君はじっと観察して見送る。

手も足も出ないように見える様子に満足したようにしてもう一球投げてくる坊主。

同じようにど真ん中を通り、ふたたびストライク。

 

「なんだ、ずいぶん静かじゃねえか。」

 

「次に討ち取るために観察してるんですよ。」

 

「けっ、本当のことを言えっての。どうせ手も足も出ねぇんだろ?」

 

その挑発には何も言わず、黙ってバットを構える吉井君。

 

「そんじゃあ、コイツで止めだ。」

 

坊主が第3球を振りかぶり、全力で投げてくる。

その動きに合わせてバットを振る吉井君。

空中を滑るように吉井君の頭をめがけて飛んでくるボールと、交差するようにピッチャーの顔面めがけて放たれる。

互いの全力を込めた一撃は、一瞬の時を経て吸い込まれるように目標に向かっていく。

 

「「って危ねぇーっ!!」」

 

坊主の投げたボールは吉井君のこめかみを、吉井君の投げたバットは坊主の鼻先を掠めて飛んでいく。

 

「「おのれ卑怯なっ!」」

 

「どっちもでしょうが。」

 

美波ちゃんの冷静な突っ込み。

その通りだよね。

 

「ストライク。バッターアウト。」

 

今の吉井君の投擲がスイングと判断されて三振に。

これで3アウト、チェンジだね。

 

「ごめん雄二。今ので警戒させちゃったかもしれない。」

 

「大丈夫だ。今のミスはピッチングで取り返せばいい。」

 

「・・・皆でフォローするから問題ない。」

 

この会話、事情を知らない人からしたら普通の会話だよね。

中身はアレだけど。

木下君や美波ちゃんも呆れてる。

姫路ちゃんはちょっとズレた反応をしてたけど。

警戒は野球用語じゃないよ?

とにかく、次は私達が守備。

私はサードの守備だよ。

 

「お前が吉井か・・・。3年に楯突いたことを後悔させてやる・・・!サモン!」

 

むこうのトップバッターが敵意たっぷりに召喚獣を出す。

こないだの肝試しと体育祭の準備のせいで、吉井君を快く思ってない人が増えてるみたい。

こっからじゃサインは見えないけど、多分坂本君はここは普通にやらせるはず。

ここを勝てたら、さらに点数が高い教師チームだし、どの程度なら勝負できるか確かめたいしね。

 

「ストライク!」

 

予想通り、吉井君は普通に投げる。

相手も初球はさすがに見守った様子。

キャッチャーの坂本君がボールをピッチャーに返し、2球目が投げられる。

 

「アウト!」

 

2球目は相手は当てたけど、当たりどころが悪くボールはあまり飛ばず。

送球が間に合い相手はアウト。

ふむふむ、やっぱり点数が高くても芯をとらえなければ飛ばないんだね。

でもEクラスの時みたいに、同じくらいの点数でも当たりどころによってはホームランも出る。

そこらへんは普通の野球となんら変わらないけど、点数が高い方がいいのも同じだよね。

そして2番バッターは・・・モヒカンみたい。

召喚獣を呼び出す。

 

『Aクラス 常村勇作 化学 223点 VS Fクラス 吉井明久 化学 57点』

 

「さてと。吉井に坂本・・・!溜まりに溜まった屈辱、しっかり利子をつけて返してやる・・・!」

 

怒りのこもった声が聞こえてくる。

でもその屈辱、全部3年のクズコンビの自業自得だよね。

そして吉井君が1球目を投げる。

モヒカンはその球に対して大袈裟なくらいバットを振ったから、まずは1ストライク・・・

 

「っと、手が滑った!」

 

と思ったら、バットの勢いを緩めずに、そのままキャッチャーである坂本君の召喚獣にぶち当てた。

・・・考えることは同じだったってことだね。

 

『Aクラス 常村勇作 化学 223点 VS Fクラス 坂本雄二 化学 109点』

 

相手が先にやってきたなら、わたしも躊躇う必要はないや。

黒の腕輪って使えるのかな?

 

「すまないな、坂本。まあでもスポーツに事故はつきものだよな?」

 

「・・・いや、気にすることはない。スポーツに事故はつきものだからな。」

 

故意であんなことしたと認識されたら退場になる。

それを嫌ってか心にもない謝辞を述べるモヒカンに対して、さして気にしてない様子で答える坂本君。

 

「そうか、さすが坂本は心が広いな。」

 

「いやいや、それほどでもないさ。」

 

そのまま、表面上は和やかに会話を続ける2人。

そして坂本君の召喚獣はさっきのバットでこぼしてしまったボールを拾い、ピッチャーに戻すために全力で投げつけた。

・・・間にモヒカンがいたにも関わらず。

 

『Fクラス 坂本雄二 化学 109点 VS Aクラス 常村勇作 化学 191点』

 

ボールがモヒカンの頭にぶつかり、転がる。

坂本君が100点ほど減ったのに対し、モヒカンはせいぜい30点くらい。

バットとボールの威力に差があったのと、その前に攻撃力が減らされたのが影響してるのかな。

 

「すまないな、センパイ。俺はどうにも召喚獣の扱いに慣れてなくてな。けどまぁ、仕方ないよな?スポーツに事故はつきものだもんな?」

 

「く・・・っ!そ、そうだな、これくらい笑って許してやるよ・・・。たいしたダメージでもないしな・・・。」

 

さっきの言葉を返され、こめかみに青筋をうかべるモヒカン。

つかみかかってやりたいけど、審判の前だから堪えてるって感じだね。

 

「君たち、小競り合いはやめなよ?これ以上するならふたりとも退場させるよ?」

 

審判の河城先生が注意し、2人はこれ以上何も言わずに自分達のポジションに戻る。

多分、このあたりで坂本君と吉井君は仕掛けてきそうだけど・・・。

 

「さあ来い、吉井。」

 

モヒカンが体をマウンドに向かって開いた状態で構えてる。

ピッチャーにもキャッチャーにも攻撃しやすい体勢だけど、多分狙いは坂本君。

そして、吉井君がモヒカンの頭めがけてボールを投げ、モヒカンはバットを坂本君めがけて振りきる。

2人の攻撃はそれぞれの目標に対して吸い込まれるように命中した。

 

「デッドボール。」

 

『Aクラス 常村勇作 化学 178点 VS Fクラス 坂本雄二 化学 7点』

 

「明久テメェっ!全然減らせてねえじゃねえか!」

 

「雄二キサマっ!ちゃんと防御しろ!」

 

坂本君が受けたダメージは100点程度なのに対し、モヒカンはせいぜい10点くらい。

これじゃ先にやられちゃうね。

 

「っていうかテメェら、今のはわざとだろ!先輩に向かって良い度胸じゃねぇか!」

 

「何を言ってやがる!そっちが先に仕掛けてきたんだろうが!肝試しに負けたのを根に持ちやがって!器が小せぇぞ先輩!」

 

「んだと!?上等だ!こうなりゃ野球なんて面倒なことやってねぇで、直接・・・!」

 

「望むところだ!元々3年は気に食わなかったんだ、ここらで一発・・・!」

 

ベンチや他の選手からそんな声があがる。

もともと互いにいい感情を抱いてないから、こういったことで火種が燃え上がるのは当然といえば当然だよね。

坂本君の作戦だと、ここで一気に乱闘になだれ込むことになってるから、私も準備。

黒の腕輪を使って、誰に攻撃するのがいいかな・・・?

 

「おやめバカどもっ!」

 

そんな中に、しわがれた声が割って入ってきた。




いかがでしたか?
学園長乱入。
審判は召喚大会で出て以降一切出番がなかったにとり先生にやってもらいました。
まあでも教師戦やれば風見先生も神子先生も出せるはず…。
ここまで来るともう新キャラ出す要素もほぼないので、既存キャラの出番をキープしたい。
Scarlet Ammo Onlineでも途中からかなめがほぼ空気だったので…。(1話で登場したかなめ以外の6人はメインの話あります)


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第七十一話「悪魔!」

ポケきら全然進まない。
どうしてもこっちに逃げてしまうのが…。


 

 

「やれやれ、つくづく救えないガキどもさね・・・。どうして召喚獣勝負にまでしてやったのに、おとなしくできないんだい。」

 

額を押さえながらそんなことを言っているのは学園長先生だった。

 

「なんだババァ。何しに来たんだ?」

 

舌打ちでもしそうな表情で坂本君が言う。

まあ坂本君にとっては狙いを邪魔されたわけだもんね。

 

「学園長と呼びなクソガキ。まったく、組み合わせを聞いて人がちょいと様子を見に来てみればこのザマかい。せっかく来賓の方も召喚獣野球を見て満足してくれたんだ、今さらアンタらがバカをして心証を悪くするんじゃないよ。」

 

どうやら、学園長先生は組み合わせを見て、問題が起きないか様子を見に来たみたい。

いい読みしてる。

 

「止めないでください学園長!2ーFのクズどもには先輩として礼儀を叩き込んでやる必要があるんです!」

 

「こっちこそもう我慢ならねえ!さんざんバカにしやがって!学園長!この先輩面したカスどもを殺らせてください!」

 

「だからお止めって言ってるんだよ、クソガキども!」

 

抗議するAクラスとFクラスを学園長先生が一喝する。

亀の甲より歳の甲というだけあって、その場の全員が黙りこむ。

 

「痛みが返ってこないから乱闘になだれ込むのかねぇ・・・。・・・よし決めたよ。この試合だけ召喚獣の仕様を変えてやろうじゃないか。」

 

「「「・・・は?」」」

 

召喚獣の設定を変える?

どういうこと?

 

「この試合に限り、全員の召喚獣が痛みがフィードバックするようにするということさね。そしたら乱闘なんかせずにまともに試合をするだろう?」

 

つまり、みんな吉井君のようになるってことかな?

 

「じゃ、そういうことだよ。全員真面目に野球をやんな。」

 

そう言い残し、去っていく学園長先生。

えーと・・・。

 

「審判、ちょっとタイムで。」

 

・・・と、ここで坂本君が正式にタイムを申し出る。

作戦も考え直さないといけないから妥当な判断だね。

マウンド付近に集まる。

 

「どうする雄二?乱闘のもくろみが崩されたよ?」

 

「問題ない。予定とは違うが、こうなったらこちらの秘密兵器を使うまでだ。」

 

「秘密兵器?」

 

「ああ。幸いにも次のバッターは坊主野郎だ。手加減する必要もない。」

 

そう言って、坂本君は主審の河城先生のもとに歩みより、ピッチャーの交代を宣言した。

 

「ピッチャー吉井に代わって、姫路。吉井はキャッチャーと交代、キャッチャーの俺はセカンドの島田と交代。」

 

秘密兵器って姫路ちゃんのことなのかな?

よくわかんないけど、私は変更はないみたい。

自分の持ち場に戻ろっと。

・・・その最中、坂本君と姫路ちゃんが何か話してたけど、聞こえなかったな。

そうして、全員がポジションに。

さっきデッドボールでモヒカンが塁に出てたから、ノーアウトランナー一塁で再開だね。

 

「へへっ、何の小細工を考えたか知らねぇが、俺には通用しねぇってことを教えてやる。サモン。」

 

向こうの3番の坊主がバッターボックスに。

そして姫路ちゃんも召喚。

 

『Aクラス 夏川俊平 化学 244点 VS Fクラス 姫路瑞希 化学 437点』

 

「げっ!そういや、あの女はかなり点数があったんだよな・・・!」

 

点数を見ておののく坊主。

まあAクラスでも、学園トップクラスの姫路ちゃんに勝つのは難しいもんね。

 

「くそ。高城抜きでやるのはキツいかもしれねぇな・・・。」

 

悔しそうな坊主の呟き。

高城・・・どっかで聞いたことがあるような・・・?

 

「じゃ、じゃあ、よろしくお願いしますっ!えっと、このプレートに足をかけさせて、こうして・・・・・・。」

 

「待って待って姫路さん!」

 

「?なんですか明久君?」

 

早速ボールを投げようとした姫路ちゃんを止める吉井君。

 

「ほら、一塁にランナーがいるでしょ?まずはその人に盗塁をされないよう、牽制球を投げてみようよ。」

 

遠くてはっきりとは見えないけど、一塁のランナーは別に離れてる訳でもない。

多分、肩慣らし的な感じかな?

 

「牽制球・・・あ、わかりました。ボールを一塁に投げたら良いんですね。」

 

「そうそう。一塁にいる福村君にボールを投げて貰える?」

 

「了解です。それじゃ・・・。」

 

姫路ちゃんの召喚獣が腕を振り上げ、投球の構えをとる。

 

「やぁーっ!」

 

・・・キュボッ

 

「・・・・・・えっ?」

 

『Aクラス 常村勇作 化学 0点 and Fクラス 福村幸平 化学 0点』

 

VS

 

『Fクラス 姫路瑞希 化学 437点』

 

ドサリ、と重いものが倒れる音。

一塁にたっていたランナーのモヒカンも守備の福村君も上半身が跡形もなく消し飛び、下半身のみになっていた。

 

「「ぎぃゃぁぁあああーっっ!!身体が!身体が痛ぇぇえええっ!!」」

 

遅れて上半身を消し飛ばされた2人が悲鳴をあげる。

召喚獣の設定は変更されてるようで、地面をのたうち回っていた。

 

「負傷退場者の交代要員を出して。」

 

河城先生が交代を促す。

苦しむ2人を運びだし、3年は男の先輩が、私達はベンチの魔理沙が入った。

 

「うぅ・・・。失敗しちゃいました・・・。」

 

2人を消し飛ばした姫路ちゃんが自責の念を見せる姫路ちゃん。

 

「気にするな姫路。お前はただ全力で投げればいい。」

 

「でも・・・。」

 

「いいんだ。ピッチャーはそれが仕事なんだからな。」

 

「でも、そんなことをしたら、今度は明久君が・・・。」

 

「おいおい、なんてことを言うんだ。お前は明久を信じられないのか?」

 

「あ・・・。い、いえっ!そんなことありませんっ!」

 

坂本君、さては吉井君を殺す気だね?

 

「行きます、明久君!え、えいーっ!」

 

「ん?は・・・なんでっ!?」

 

掛け声とともに投げられた豪速球は、ベンチで次打席の準備をしていた4番バッターに直撃した。

 

『Aクラス 金田一真之介 化学 0点 VS Fクラス 姫路瑞希 化学 437点』

 

もとの点数がわかんない4番バッターは足首以外吹き飛ばされて帰らぬ人となり、フィードバックで悶えてる。

犠牲者は3人。

・・・というか姫路ちゃんの投げたボール、空気との摩擦で火がついてたような気がするな・・・。

 

「し、審判!?あれは危険球だろ!?」

 

坊主が血相を変えて審判に反則を訴える。

すれと、審判がなにか言う前にセカンドを守ってる坂本君が口を挟んだ。

 

「おいおい、酷いこと言うなよ先輩。姫路のあの姿を見たらわざとじゃないことくらいわかるだろ?」

 

「ほ、本当にごめんなさいっ!私ピッチャーとか初めてで緊張しちゃって・・・。」

 

姫路ちゃんが3ーAのベンチに駆け寄り、ぺこぺこと頭を下げている。

その様子には一片の嘘もないもんね。

 

「ふ、ふざけんな坂本!故意じゃなくても許されないことがあるだろうが!」

 

「黙れクソ野郎。さあ先生、よく考えて見てください。苦手でもクラス行事に一生懸命参加する可憐な生徒と、神聖なスポーツに悪意を持ち込む不細工な先輩。あなたは聖職者としてどちらを応援しますか?」

 

「ん~・・・プレイ!」

 

「しんぱぁん!?」

 

河城先生による無慈悲な続行宣告。

まあさっきまで片割れがバットを降りきって坂本君に当ててたしね。

 

「うぅ、うまくいきません・・・。もっと力を込めればうまくいくんでしょうか・・・。」

 

姫路ちゃんのそんな言葉。

・・・あれでもフルパワーじゃないんだ。

コントロールを無視した学年トップクラスの全力投球。

ベンチ付近ですら安全でないし、もはやこれは狩りであり一方的な殺戮だよね・・・。

私はサードだから安全だけど。

 

「行きますっ!」

 

「「ひいぃぃいっ!!」」

 

姫路ちゃんが投げたと同時に、バットもミットも手放し全力で地面に這いつくばる吉井君と坊主。

姫路ちゃんが投げた球は2人のすぐ上をすごい勢いで通過してった。

 

「ボール。」

 

河城先生がボールを宣言。

・・・もはやそういう問題じゃないような気もするけどね。

 

「変えろぉっ!あのピッチャーを今すぐ変えろぉっ!!」

 

「何を言うんだ先輩。徐々に狙いがシャープになってきているというのに。」

 

「その狙いがキャッチャーミットだとは思えねぇんだよ!」

 

吉井君も同感って顔してる。

 

「うぅ、うまくいきません・・・。やっぱり私が吉井君のことを信じきれていないからでしょうか・・・。」

 

そして、姫路ちゃんは目を閉じて投げるという、さらにとんでもない暴挙に出る。

 

「おい!?あのピッチャー、目を閉じてないか!?」

 

「あれは信頼関係の表れだ。キャッチャーのリードを信じてるからこそ、目を閉じていても投げられるってことだ。」

 

「だから目を閉じていたらそのリードが見えないって言ってんだよ!」

 

「じゃああれだ、心の眼ってやつだ。達人は目を閉じていても気配でえも・・・相手の居場所を探り当てることができるってことだ。」

 

「居場所探り当ててどうすんだよ!てか今お前獲物って言いかけなかったか!?」

 

「言いがかりはよしてもらおうか獲物先輩。」

 

「言った!今獲物ってはっきり言いやがっただろ!?」

 

その獲物には吉井君も含まれてるのかな?

 

「くっ、仕方ない!こうなったら姫路さんが投げた直後に大きく横っ飛びをしよう・・・!運が良ければ助かるはずだ・・・!」

 

「なっ!?テメェ、自分だけ助かろうって魂胆か!」

 

「すいません!僕は自分の命が惜しいんです!」

 

坊主がそれができない理由に、バッターはバッターボックスから出てはダメというルールが。

だから坊主はあの狭いバッターボックスで回避しないといけないということに。

 

「行きます、明久君っ!」

 

「できれば目を開けて、姫路さん!」

 

吉井君の切実な叫びも姫路ちゃんには届かない。

ボールを全力で、大威力で、豪速球を。

・・・・・・坊主の召喚獣の頭に。

 

「・・・・・・・・・うわぁ・・・・・・。」

 

果物の中には初夏に花を咲かせるザクロというのがあるんだよね。

甘くてちょっと酸味のある、鮮やかな赤色の果実。

木になって熟したそれは、まれに収穫されることなく地面に落ちていることがあるんだよね。

真っ赤な果肉や果汁を辺り一面にべったりと飛び散らせて。

ぐちゅっという音とともに作られた打者の姿は、私にそんなことを思い出させた。

 

「ひでぇ・・・よ・・・。あの女、絶対、悪魔だ、よ・・・。」

 

R18Gがかかりそうな姿に変わり果てた召喚獣の隣で、痛みで気を失いかけた坊主が呟く。

・・・・・・これはいくら坊主でも、さすがに同情しちゃうかな・・・。

今が昼前じゃなかったら、何人か戻してたんじゃないかなと思えるその光景(実際口に手を当ててた人何人かいたし)が時間とともに薄れ消えていく。

瞬間記憶能力を持ってる阿求ちゃんが今回参加してなくてほんと良かったよ。

 

「あの、明久君。うまくいきましたか?」

 

「いや、まぁ・・・。僕らの目的を考えたら、すごくうまく行ってるんだけど・・・。」

 

手放しで喜べないよねこれじゃ・・・。

 

「バッター、ネクスト。」

 

河城先生が普通に指示を出す。

ベンチボックスを見ると、全員が審判と目を合わせないよううつむいていた。

 

「へいへい、バッタービビってる!」

 

どこかからそんなヤジが。

そりゃビビるよね。

 

「先生!こちらはもう交代要員がいません!」

 

ベンチからそんな声が。

そっか、交代要員は2人まで。

それで、登録メンバー以外の介入は認めないってルールがある。

だから坂本君はこういう作戦立てたのか。

私でもドン引きするくらい非道な作戦だけど・・・。

 

「うーん、そうだね。じゃあ一度その人の打順を飛ばし、その間に補充試験だね。」

 

さらっと酷なことを言う河城先生。

一見妥当な判断だけど、それって姫路ちゃんからの文字通りのデッドボール(フィードバックつき)を受けるために試験受けろってことだよね。

 

「じゃあ・・・5番バッターは前に、点数がなくなった人達は痛みはあると思うけど我慢して補充試験に」

 

「「「3ーA、ギブアップします!!!」」」

 

そりゃギブアップするよね。

補充試験だって大変なのに、それで得られるものが再びの補充試験と豪速球で身体を消し飛ばされる痛みだもん。

確かにデッドボールで塁に進めるけど、そこまでしても得られるものはナシだし。

これが逆ならエロ本のためにFクラス男子は耐えてた気がするけど・・・。

補充試験は1問正解して点数が1点でもあればデッドボール受けて塁に出られる(地獄のフィードバックあるけど)し。

そして、2名の打者に対してデッドボール2つ、犠牲者4名、傷害率200%を叩き出した姫路ちゃんは伝説になった。




いかがでしたか?
自覚がないのってやっぱり怖い。
関係ないですが、バカテストを作って今までの前書きに書いていこうかなって考えています。
ロストしたので改めて考え直す必要上、予定は未定ですが。
あげたらまた後書きか前書きで告知します。


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第七十二話「昼休み!」

アニポケ見てて思ったんですが、ヒカリのイノムー(マンムー)って、なんで言う事聞かなかったんですかね?



 

 

 

「雄二、よくあんな非道な作戦たてたよね・・・。」

 

「いや、フィードバックについては想定外だったからな・・・。さすがの俺もあれには同情するぞ・・・。」

 

昼休み。

強敵3ーAにも勝利して、楽しいお弁当タイム!

・・・なはずなんだけど、私達は一切爽快感を得られてなかった。

 

「そもそも俺は3年には持ち物検査がなかったから、補充試験を受けてまで試合を続けるモチベはないだろうと考えていただけだ。あのババァが余計な介入をしてこなければ、あんな惨劇は起こらなかったんだ。」

 

「流石にやりすぎたと感じたみたいで、学園長も戻すって言ってたぜ。」

 

「まあ、召喚獣は人間の数倍のパワーがあるし、普通の野球でデッドボール当たった箇所が消し飛ぶなんてことはないもんね・・・。」

 

次はついに決勝の教師チームだけど、威力は姫路ちゃんよりも高い人がゴロゴロいるからね・・・。

 

「あの、ところで皆さん・・・。私、お弁当を作ってきたんですけど・・・。」

 

ズザザザザッ(姫路ちゃん以外の全員が距離をとる音)

 

「そんな風に警戒しないでくださいっ!普通のおにぎりですから!」

 

いやまあ、4月の料理での事件は忘れられないからね・・・。

 

「ちゃんと味見もしたんですよ・・・?」

 

うーん・・・。

姫路ちゃんの言葉には嘘は感じないし・・・。

 

「じゃあ、いただこっかな?」

 

「はいどうぞ、いっぱい食べてくださいね。」

 

姫路ちゃんのおにぎりを1つとって、ほおばる。

味は・・・。

 

「うん、美味しい!」

 

具は入ってないけど、シンプルで美味しい!

 

「良かったです。練習してもなかなかうまくならないので、炊いたご飯にお塩をまぶして、俵型に握ってのりを巻いたただけですけど・・・。」

 

「確かにそれなら普通に美味しそうだな。俺も貰うとするか。」

 

「はい、みなさんも一杯食べてくださいね。本当はおかずも用意するつもりだったんですけど、そっちはうまくいかなくて・・・。食べられない程ではないんですけど、焦がしたり生焼けだったり苦かったりで・・・。」

 

「大丈夫だせ瑞希!食べて痙攣した4月の時よりは格段に成長してると思うし、このおにぎりも美味しいぜ!」

 

「そ、そうでしょうか・・・。ありがとうございます・・・。」

 

励ます魔理沙だけど・・・魔理沙も大概だよね。

 

「あ、あのね・・・。」

 

「ん?どうしたの美波?」

 

「瑞希はおかずに失敗しちゃったって言ってたわよね・・・。それっ、ちょっと作りすぎちゃったから・・・よかったらなんだけど・・・これ、みんなで食べない?」

 

そう言いつつ、鞄から弁当箱と思われしものを出して蓋をあける美波ちゃん。

中には色とりどりでとっても美味しそうなおかずが入ってた。

卵焼きにウィンナー、唐揚げにサンドイッチ、トマトやブロッコリーといったお弁当の定番なおかずが所せましと並んでる。

 

「へえ、作りすぎた・・・ね。」

 

「その割には随分と量が多いのではないかの?」

 

「まったく、美波ちゃんは素直じゃないなぁ。」

 

「ほ、本当に作りすぎちゃっただけよ!サンドイッチならその・・・余っても家で食べられるし。」

 

「そういう時は僕に言ってよ。いつでも協力するかルァーーっ!!?」

 

吉井君が言葉の途中で絶叫する。

吉井君の方を見ると、分度器が背中に刺さってた。

 

「お姉様の手料理をブタ野郎が食べるなんて罪、許せません・・・!美春の憎しみで人が殺せたらどんなにいいことでしょうか・・・!」

 

分度器が飛んできたであろう方角を見ると、物影から美春ちゃんが吉井君をにらみつけて、怨念を送ってた。

憎しみで殺せたらもなにも、直接攻撃してるよね・・・。

美波ちゃんも気配に気づき、美春ちゃんは隠れるのをやめて猛ダッシュして追いかけてくる。

全力で逃げる美波ちゃん。

 

「お姉様!お姉さま!おネェ・・・サ・・・マ・・・!」

 

「こ、来ないで!なんか最近のアンタは特に怖いのよ!」

 

「何を言うのですお姉様!美春はお姉様の為ならば畜生道に堕ちることすら厭わないというのに!」

 

「だからアンタのそういうとこが怖いって言ってるのよ!」

 

ダッシュで逃げる美波ちゃんとそれを追う美春ちゃん。

まあ、いつもの光景だよね。

 

「まあ、あれも一種のコミュニケーションではあるよな。」

 

「・・・仲睦まじい。」

 

「翔子と坂本みたいなもんだしな。」

 

「おい待て。当人達がどれだけ必死か知ってるのか。」

 

突っ込む坂本君だけど、もう素直になっちゃえばいいのにね。

 

「そういえば、飲み物を買ってこないといかんの。」

 

「「「・・・・・・(クルリ)」」」

 

吉井君達が私達に背を向けてジャンケンを始める。

あ、吉井君負けた。

飲み物の注文をする他の3人を見ると、買い出しジャンケンだったのかな?

 

「へいへい了解。他のみんなは?」

 

「え?何がですか?」

 

「飲み物だよ。」

 

「え、いや悪いですそんなの。」

 

「じゃあ私は緑茶がいいかな。お金は渡しとくね。」

 

「私はコーラで頼むぜ。」

 

「じゃあ私はアクエリだな。」

 

遠慮する姫路ちゃんを尻目に、私、魔理沙、正邪ちゃんは注文をする。

ちなみに阿求ちゃんは保健室で休養中、お空はお燐と食べてるよ。

 

「そんな遠慮することはないのに。紅茶でいいよね?」

 

「は、はい。」

 

「それじゃ、買ってくるね。」

 

自販機がある方に走っていく吉井君。

 

「そういえばなんだけど、次の教師戦の科目ってどうなってるの?」

 

「えーと・・・生物、日本史、地学、現代文、英語だな。」

 

やった!

地学がある!

現代文が良くないけど・・・。

 

「そうなると、私は活躍できそうにないな。残念だぜ。」

 

「日本史なら稗田は教師をも越えるからな、そこで点をしっかり稼ぎたいところだ。」

 

そんな感じでご飯を話しながら打順等を決めてく。

楽しいお弁当タイムって感じでいいよね。

 

「そうじゃな、ワシは今回は生物以外あまり取れ・・・んぐっ!?」

 

しゃべりながらおにぎりを頬張った木下君がいきなり咳き込む。

大丈夫?

 

「ど、どうした秀吉。」

 

「今食べた握りが塩味でなく砂糖味での。いきなりじゃったから驚いてしまったというわけなのじゃ・・・。」

 

「姫路ちゃん、もしかして砂糖と塩間違えて入れた?」

 

「ご、ごめんなさい実は・・・。失敗作として置いておいたはずなんですけど、間違えて混ぜてしまったようで・・・。」

 

あらら。

まあ、塩と砂糖間違えるくらいなら王道なミスだし、食べて気絶や痙攣するようなこともないし可愛いもんだよね。

 

「ちなみに、間違えちゃったのは何個くらいなの?」

 

「2つです・・・。」

 

となると、あと1つだね。

まあ、砂糖くらいなら命に関わるようなことはないし、気にしなくても大丈夫だよね。

木下君も何事もなかったかのように食べてるし。

その後も普通に楽しいお弁当タイム。

ちなみにもう1つの砂糖おにぎりは吉井君に当たったよ。

 

「あ、それとデザートも持ってきたんです。」

 

「デザート?」

 

「ちょっと珍しい果実を頂いたので持ってきちゃいましたっ。」

 

果物なら安心だね。

 

「そうなんだ。それは楽しみだねっ!」

 

「珍しい果実とは気になるな。」

 

「はい、えっと・・・」

 

姫路ちゃんが容器の蓋に手をかけ、中身を披露してくれる。

 

「ザクロを持ってきましたっ。」

 

その果実は、姫路ちゃんによって変わり果てた坊主の召喚獣の成れの果てによく似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、一年生各クラスによる応援合戦を行います。一年生の生徒は・・・」

 

お弁当タイムも終わり、グラウンドにアナウンスが流れる。

お昼休みが終わった後は応援合戦。

色とりどりの衣装に身を包み、音楽に合わせて演技を始める一年生達。

華やかでいいよね。

そんな一年生達を尻目に、私達も次だから準備をしてた。

私達女子はチアの衣装で、吉井君達男子は学ラン。

この学校の制服は学ランじゃないから、なかなか新鮮かも。

そんなことを思ってると、美波ちゃんがチアの衣装を持って真剣な目をしながらやって来る。

 

「ねえ木下。」

 

「嫌じゃ。」

 

「うぅ、まだ何も言ってないのに・・・。」

 

木下君にしては珍しいつっけんどんな返事。

手に持つチアの衣装から考えるに、木下君にもチアやらせようとしてるみたい。

まあ、Fクラスは女子7人(阿求ちゃんは参加しないから実質6人)だし、応援団の人数は余ってるもんね。

 

「そんなこと言わないで、ね、木下?チアの衣装はこんなにも可愛いのよ。」

 

「可愛いからイヤなのじゃ。」

 

なおも食い下がる美波ちゃんとつっぱねる木下君。

でも6人が7人になったからって正直そんなに変わらないのに、どうしてそんなに拘るのかな?

 

「あ、美波ちゃん!早く着替えないと時間がなくなっちゃいますよ!」

 

「こいしちゃんも!早く着替えなきゃだよ!」

 

2人のやりとりを見てると、既にチアの衣装に着替えて準備万端な様子の姫路ちゃんとお空がやってくる。

タッタッタッと跳ねるように走ってくるせいで、2人とも胸がすごい揺れてる。

吉井君とムッツリーニ君が鼻をおさえるのもわかる気がするかな。

というかもしかして美波ちゃん、あの2人の揺れる胸と比較されるから胸ない仲間を増やそうとしてるのかな?

姫路ちゃんとお空の胸見て血の涙を流しかねないような表情してるし。

そんな姫路ちゃんは吉井君と何故か坂本君にもチアの衣装を差し出してる。

 

「てか姫路ちゃん、身体は大丈夫なの?」

 

「はい。迷惑かけちゃうかもしれませんけど、私は私の出来ることを頑張りたいですから。」

 

私の質問にそう答える姫路ちゃん。

なんというか、姫路ちゃんも変わったよね。

昔の姫路ちゃんなら、出来ないことを気に病んで落ち込んでたと思うけど、今は自分の出来ることを頑張ろうと、なんというか前向きになった気がする。

Fクラスのメンバー・・・特に吉井君による影響があるのかな。

悪影響もあるけどいい影響もたくさん受けたんじゃないかな。

そんなことを考えてると、珍しく翔子ちゃんが坂本君の気配に気づかずに素通りしようとしてた。

なんか随分元気がなさそうだけど・・・。

 

「あ、おい翔子。どうしたんだ?」

 

「・・・あ、雄二・・・。」

 

坂本君が問いかけても、元気なく返事するだけ。

大丈夫かな?

 

「どうした?ずいぶんと元気がないようだが。」

 

「・・・野球、負けちゃった・・・。」

 

「ああ、そうらしいな。まぁ、代わりに俺達が勝ったから安心しろ。仇は討った。」

 

偉そうにしてるけど、微塵も考えてなかったよね多分。

 

「・・・でも、私の没収品、返して貰えない・・・。」

 

悲しそうに呟く翔子ちゃん。

没収品って、さっき坂本君が言ってた同意書かな?

 

「没収品って、お前な・・・。」

 

額を押さえ、呆れたように言う坂本君。

 

「・・・結婚式まで、大事に保管しておくつもりだったのに・・・。」

 

「バカ言うな。あんなもん、没収されてなかったとしても、見つけたら俺が代わりに捨ててやる。」

 

「・・・え・・・?」

 

悲しそうに呟く翔子ちゃんに、いつもの調子で答える坂本君。

その言葉を聞いて驚いたような態度を見せる翔子ちゃんだけど、坂本君はそれに気づかず言葉を続ける。

 

「いや、『・・・え・・・?』じゃないだろ。あんな物を没収された程度でそこまで落ち込むなって。」

 

「・・・あんな物、って・・・。」

 

「そもそもそんなつまらないものを没収された程度でへこむなら、常夏コンビごときに負けたことをだな・・・。」

 

「・・・・・・・ッ!」

 

いい気になって説教を垂れようとする坂本君。

そこに、パシンという乾いた音が響き渡った。

 

「・・・つまらないものじゃ、ない・・・!」

 

目に涙をため、そう言う翔子ちゃん。

・・・え、どういうこと?

 

「雄二にだけは、そんなこと言ってほしくなかった!」

 

翔子ちゃんらしからぬ大声を出し、向こうに走ってく翔子ちゃん。

えっと・・・・・・。

 

「わ、私、翔子ちゃんのところに行ってきます!」

 

「わ、私も!」

 

その場の全員が茫然とするなか、早く我にかえった姫路ちゃんとお空が翔子ちゃんを追って走ってく。

私も行くべきかもしれないけど・・・。

 

「翔子のヤツ・・・・・・!な・に・が『つまらないものなんかじゃない』だ!俺本人が同意してない婚姻届なんか、つまらないもの以外のなにものでもないだろうが!」

 

そして自分を取り戻し、怒りを顕に空に叫ぶ坂本君。

 

「俺にだけは言われたくないって、俺だから言うんじゃねぇか!こっちは何も承知してねぇんだぞ!悪く言うのは当然じゃねぇか!」

 

烈火のごとくという表現がふさわしいくらいに怒り狂う坂本君。

近くに机とかがあったらボコボコにしそうな勢いだよね。

 

「う~ん・・・。まぁ確かに霧島さんにとっては大事でも、同意した覚えのない婚姻届であんなに怒られても困るよね・・・。」

 

「まったくだ!つまらねぇという言い方が気に食わねぇなら、くだらねぇとでも言い換えてやろうか!あのバカがぁーっ!」

 

同調する吉井君と、怒りがおさまる様子のない坂本君。

まあ、傍観者の私にとっても、翔子ちゃんの言い分は少し理不尽に思えるからね・・・。

当事者の坂本君が怒り狂うのも、無理はないかも・・・。

 

「じゃあ、ウチが学ランを着るから、アンタがチアを着るのはどう?」

 

「それはワシにとって何の解決にもなっておらぬのじゃが!?」

 

向こうでは、こちらの様子に気づかず言い争ってる美波ちゃんと木下君。

坂本君も翔子ちゃんも、大丈夫かな・・・?

ちなみに、木下君は最終的にサラシに学ラン姿でボンボンを持って踊るっていう折衷案で妥協してたよ。




いかがでしたか?
悲しき事件。
姫路ちゃんは料理の味を自覚しているので、被害はせいぜい砂糖で済みました。
まあ砂糖つけすぎてもはや砂糖の味しかしていないのには気づいていません。
しっかしこの話が出る時にはシャイニー・シスターズが発売されてるのか。
楽しみ。


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第七十三話「教師戦1回!」

アニポケ5話見ててサトシとゴウがカビゴンをダイマックスと勘違いしたとこで思ったんですが、サトシさんあなたカビゴン手持ちにいましたよね。
てか自然発生した粒子纏ってキョダイマックスってガラル魔境すぎません?


 

 

 

体育祭のプログラムのひとつだけど、私達にとってはとても大事な召喚野球大会の決勝戦。

教師チームという強敵に打ち勝つため、私達は打順を決めていた。

ちなみに、私は9番。

地学だからね!

私の前には坂本君。

 

「雄二は8番でよかったの?」

 

「・・・・・・俺は日本史も地学も取れてるからな。」

 

吉井君の問いかけに対し、ムスッとした表情で不機嫌そうに答える坂本君。

 

「まったく・・・。雄二が怒るのも仕方ないとは思うけどさ、それとこれとは話が別なんだから。」

 

「坂本君の気持ちもわかるけどね、今は切り替えないとだよ?」

 

フォローの為に私と吉井君で坂本君をなだめる。

すると、姫路ちゃんが私と吉井君の裾をチョイチョイと引っ張る。

どうしたのかな?

 

「あの、2人とも。仕方ないって、2人は坂本君が怒られたのはおかしいと、そう思いますか?」

 

坂本君に聞こえないくらいの大きさで、そんな質問をしてくる姫路ちゃん。

 

「まぁ、話を聞く限りは雄二が怒るのも仕方ないような・・・。」

 

「うん、私も。」

 

普段は翔子ちゃんの味方だけどね。

 

「坂本君もああやっていきなり翔子ちゃんに言われて、売り言葉に買い言葉だったとは思います。だから、全部が全部坂本君が悪いとは言いませんけど・・・。でも、後で冷静になったら、きちんと翔子ちゃんに謝ってほしいです。そうでないと翔子ちゃんが可哀想ですから。」

 

どうやら、姫路ちゃんは翔子ちゃんの味方みたい。

うーん、私としては坂本君の気持ちもよくわかるんだけどね。

 

「これより生徒・教師交流野球決勝戦を始めます。皆さん、整列してください。」

 

そんな話をしてたら、審判の先生によるコールが。

出場する全員が並ぶ。

 

「プレイボール!」

 

「「「おねっしゃーっす!!」」」

 

一斉に頭を下げて、私達は守備位置に移動する。

私達は後攻だから、まずは守備から。

トップバッターは・・・風見先生だね。

 

「野球・・・ね。何年ぶりかしら。サモン。」

 

風見先生が召喚獣を出す。

 

『生物教師 風見幽香 生物 683点 VS Fクラス 吉井明久 生物 57点』

 

予想はしていたけど、やはり圧倒的な点数。

なんとなく風見先生の召喚獣ってパワーがありそうな気がするし、当たったら場外まで飛んでいきそうな気が・・・。

坂本君が指示を出し、吉井君が投げる。

風見先生もやはり野球は慣れていないみたいで、バットを振らずに様子見してきた。

 

「ストライク!」

 

ストライクゾーンに入ってたため、これで1ストライク。

続いて、ストライクゾーンから外れた球で様子を伺う吉井君。

風見先生はピクッと反応したけど、振らずに堪えてた。

 

「ボール!」

 

これで1ストライク、1ボール。

そろそろ振ってきそうだし、このへんが勝負どころだよね。

投げる吉井君。

 

「「「って、すっぽぬけてんじゃねえかーっ!!」」」

 

よりによってこのタイミングですっぽぬけるの!?

 

「・・・あら、撃ちやすい球を投げてくれるのね。」

 

その言葉とともに、全力でバットを振りかぶる風見先生。

バットが当たったそのボールは、さっきの全力の姫路ちゃんの3倍くらいの速度で、吉井君の召喚獣の頭のすぐ横を掠めて水平に飛んでいく。

ピッチャー返しのような感じで高さはなかったからホームランにはならなかったけど、今のが直撃してたら吉井君何十人分の威力があったのかな・・・?

ギリギリダメージは発生してなかったけど、吉井君も恐怖の表情浮かべてる。

 

「やっぱり難しいわね。わざとではないわよ。」

 

風見先生が一塁を通過し、二塁とのちょうどまん中に来たあたりで外野の守備が捕球する。

二塁は間に合わないと判断し、サードの私に送球してきたから受けとる。

ノーアウト二塁、あんまりよくない状況かな。

 

「次は僕ですか。サモン。」

 

次は若い男の声。

普段私達が教わってる先生とは別の現代文の寺井先生・・・だったはず!

曖昧だけど!

 

『現代文教師 寺井伸介 生物 209点 VS Fクラス 吉井明久 生物 57点』

 

文系の先生だからか、Aクラスの平均くらいの点数。

とにかく吉井君、もうすっぽぬけないよう注意してよ?

低めの速球を投げる吉井君。

 

「ほっ・・・と。」

 

カン、と鈍い音が響き、ボールは低い軌道でも勢い良く一塁、二塁間を抜けていく。

 

「ちゃんと捉えたと思ったんですけど、やっぱり生身でやるのとは違いますね。」

 

一塁ベースでそんなことをいいながら苦笑いを浮かべてる寺井先生。

なるほど、野球の経験者だったのね。

私の側の三塁では風見先生が共感するような表情をしてる。

これでノーアウト一塁三塁。

そして3番バッターは・・・。

 

「宜しくお願いします。」

 

学年主任の高橋先生。

普段のスーツ姿じゃないから、少し雰囲気が柔らかい気がする。

 

「お手柔らかに、吉井君。サモン。」

 

普段、私達Fクラスが高橋先生と話すような機会は皆無だし、確かにこういうイベントは交流を深めるのにはいいのか・・・えっ?

 

『学年主任 高橋洋子 生物 807点 VS Fクラス 吉井明久 生物 57点』

 

「「「ぶほぉっ!!」」」

 

守備陣が一斉に吹き出したのがわかる。

というか、なんで担当教師の風見先生よりも点数高いの・・・?

あんな点数で打たれたら、まず間違いなくホームランで3点入るよね。

だから1点取られるけど敬遠の判断を・・・ん?

なんか高橋先生の召喚獣に違和感があるような・・・?

 

「高橋先生。バットの持ち方が逆だな。それだと打ちにくいはずだ。」

 

ベンチの鉄人先生からの指摘で判明。

なるほどね。

姿勢は直ったけど、高橋先生は野球に慣れてないみたい。

なら、勝負に行った方がいいかもね。

坂本君もミットを構え直す。

そして、最初はラインを外して投げる吉井君。

 

「ええと、こうでしたか。」

 

高橋先生は吉井君が投球モーションに入ったのを確認してから、バント狙いのバットの持ち方を変える。

なるほどね、送りバント・・・というかスクイズ狙いか。

風見先生をホームに戻し、確実に1点を確保って感じかな?

 

「ストライク!」

 

バットを振ったためストライクを取られる高橋先生。

とにかく、スクイズか送りバント狙いなら、少し前に出てた方がいいかな?

どうせ次は4番だから敬遠すると思うし、やらせてアウトを増やした方がいいよね。

どっちにしても1点取られるし。

 

「・・・あれ?でもそんな甘い?」

 

そこまで考えて、気づく。

私でも気づいたようなことを教師が気づいてないのかな?

なら多分、相手の狙いは・・・!

 

「プッシュバントか!」

 

気づいても後の祭り。

気づいた時には既に高橋先生は打っていた。

スクイズと違って、プッシュバントはヒット狙いのバント。

転がすのを予想して前に出てた私と吉井君の間をボールは勢い良く抜けていく。

しまった・・・!

 

「任せろっ!」

 

と、ここで天は私達に味方したようで、転がっていったボールはショートの福村君の目の前に。

ミットを身体の前に構え、捕球の体勢をとる福村君。

さっきのでわかったけど風見先生は速度はあんまり速くないみたいで、まだ三塁寄りにいる。

ボールを受け止め、ホームに送球しようとしたところで、

 

「ごぶるぁっ!!」

 

「「「なんだとぉっ!?」」」

 

ボールと一緒に吹っ飛んだ福村君の召喚獣。

・・・えっ、なんでバントで召喚獣ぶっ飛ぶような威力が出てるの!?

 

「高橋先生!あれなら二塁まで行けます!」

 

教師チームの誰かが声をかける。

福村君が吹っ飛んだことで、ボールはセンターに転がってる。

これは行かれちゃう・・・!

 

「二塁ですか。わかりました。」

 

冷静に頷く高橋先生。

そしてその直後。

高橋先生は召喚獣を凄い勢いで走らせ、二塁に向かわせた。

一直線に。

マウンドの上を突っ切って。

 

「「「・・・・・・は?」」」

 

ランナーの風見先生や寺井先生も含めた全員の目が点になる。

 

「・・・・・・バッター、アウト。」

 

審判の先生がアウトを宣言する。

みんな知ってるとは思うけど、野球にはバッターは所定の位置以外を走ってはいけない、一塁を踏まずに二塁を踏んではいけないっていうルールがあるんだけど・・・高橋先生はそういうのを一切知らなかったみたい。

 

「高橋先生・・・。アウトなので、ベンチに戻ってください・・・。」

 

「何故ですか。」

 

「そういうものなんです・・・。」

 

眼鏡の奥の瞳を若干不満そうに歪め、ベンチに戻っていく高橋先生。

というか・・・知らなかったとしても風見先生が一塁を経由して二塁に出てたのは見てたと思うんだけどね・・・。

 

「えっと、はい、タッチアウトっす。坂本。」

 

「え?」

 

一塁と二塁の間で茫然と立ち尽くしていた寺井先生に、いつのまにかボールを拾ってたらしい須川君がアウトを取り、ホームに送球する。

それを見て、同じく三塁とホーム間で立ち尽くしていた風見先生が慌てたようにホームに走り出すけど、ボールがホームにつく方が速い。

須川君のファインプレーのおかげて3アウトでチェンジなんだけど・・・なんだろ、この盛り上がらない気持ち。

・・・ちなみに、吹っ飛んだ福村君の召喚獣は静かに天に召されてたよ。




いかがでしたか?
野球のルールを知らなかった高橋先生。
ちなみに風見先生の召喚獣は特別仕様です。
幽香さんはパワー系なイメージもあり、パワーが高めに設定されています。
ポケモンで言うとドサイドンとかナットレイ(鉢巻)、ヨクバリスなんかと近いかも。
おまけなんですが、風見先生の生物の点数683点のうち、670点程が植物、またはそれに関する動物についてです。


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第七十四話「教師戦2回!」

クリスマスですね。
一緒に過ごす人はいないので一人でゲームします。
これがあがる時には乙女シリーズどんくらい終わってるのかな?


 

 

 

高橋先生の奇行のおかげでなんとか点を取られずに攻撃が終わり、今度はこちらが攻撃する番。

 

「じゃ、行ってくるぜ!」

 

「頑張ってね、魔理沙!」

 

こちらのトップバッターは魔理沙。

相手はピッチャーが鉄人先生、キャッチャーが風見先生。

さっきの撃った球の威力からして、風見先生がピッチャーは出来なかったって感じかな?

ちなみに高橋先生も同様みたいで、レフトの守備についてる。

なんというか、こっちの姫路ちゃんと立ち位置が似てるね・・・。

 

「守備も固いけど、レフトに飛ばせたらまだ希望はありそうだよね。」

 

なんらかの反則するとか、投げたボールの威力が強すぎて他の守備がやられるとか。

 

「・・・そうだな。」

 

まだ坂本君不機嫌なの?

大丈夫かなこれ・・・。

『ストライク!』まあでも、『ストライク、ツー!』ちょっと聞いた『ストライク!バッターアウト!』作戦だと、最後『ストライク!』の方の攻撃に全てを『ストライク、ツー!』かけるって言ってたし、『ストライク!バッターアウト!』この辺は重要じゃないみたい。『ストライク!』まあでもやっぱり、頑張って『ストライク、ツー!』いるんだから応援はし『ストライク!バッターアウト』さて、守備頑張ろうっと!

魔理沙、正邪ちゃん(天に召された福村君と交代)、木下君の3人が一瞬で三振。

ボール球すらなしだったし、こっちの攻撃は一瞬だったなぁ・・・。

とにかく、2回は日本史。

阿求ちゃんが投げるわけにもいかないから、ピッチャーは引き続き吉井君。

とはいっても、吉井君も得意科目だからさっきよりはいい感じになりそう。

 

「さぁ来いっ!今度はさっきまでのようにはいかないぞ!」

 

吉井君も威勢がいい。

この回も、できれば抑えたいとこだよね。

 

「威勢がいいな吉井。」

 

相手の4番バッターはやっぱり鉄人先生。

まあでも、鉄人先生の怖いのは本人の身体能力だし、補習教師という立場上全教科に対応しなきゃいけないから点数はそこまで・・・。

 

『補習教師 西村宗一 日本史 712点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 200点』

 

そんなんチートやチーターや!(CV関○一)

これは敬遠しかないね・・・。

吉井君と坂本君も同じ結論に至ったようで、敬遠の体勢を・・・あれ?立ち上がらないの?

吉井君も疑問に思ったようだけど、そのまま投げる。

それを見た鉄人先生は眉をひそめながら一球目を見送った。

 

「ボール!」

 

審判がボール宣告。

 

「・・・これは、坂本の指示か?」

 

「そうだが、何か?」

 

鉄人先生の問いかけに対し、坂本君がそう答えると、「・・・そうか。」と不機嫌そうに答える。

どういうことかな?

 

「・・・お前らは勉強はダメでも、こういうことは理解してると思っていたんだがな。まだまだ指導が必要なようだ。」

 

「?フォアボール狙いなんて、勝負の基本だろう。敬遠を汚いとか言うつもりか?」

 

「そういうことを言ってるんじゃない。いいか、教師としてひとつ言っておく。」

 

何を言うのかな?

わかんないけど、吉井君がボールを投げる。

 

「何事も、やるなら徹底的にやれ!」

 

ガキンという音とともに、ミットに向かっていたボールがかき消える。

敬遠球を打たれたの・・・?

ボールの軌道なんて見るまでもない。

ホームランだね。

 

「・・・ふん。」

 

鉄人先生がひとまわりしてホームに帰還する。

・・・痛いけど、もし高橋先生が奇想天外なプレイをしてなかったら、今ごろノーアウトで4点取られてたんだよね。

正直、ぞっとするかな。

 

「・・・くっ!」

 

坂本君が悔しそうに唇を噛む。

やっぱり、いつもの坂本君らしくない。

普段なら鉄人先生が言うまでもなく、こういうのには手を抜かないのに。

そもそも高橋先生のプッシュバントのこととか、持ち手が逆なこととか気づいてたと思うし・・・。

 

「タイム!」

 

吉井君が咄嗟にタイムを申告。

坂本君の方に駆け寄り、二言三言言葉を交わして戻る。

坂本君も、自分が本調子じゃないことは自覚してるとは思うんだけど、さっきのこと忘れて試合に集中しろってのも酷な話ではあると思う。

このまま坂本君があの調子なら、この試合はダメかもしれないよね。

 

「プレイっ!」

 

試合が再開され、次は5番バッターから。

次は・・・保健体育の大島先生だね。

 

『保体教師 大島武 日本史 233点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 200点』

 

基本実技の先生で、保健体育くらいしか座学はないはずなのにこの点数。

点数自体は吉井君より少し高いくらいだけど、運動神経は言わずもがな。

勝負にはちょっと勇気がいるかも。

でも日本史教師の豊郷耳先生が後ろに控えてるから、ここで敬遠は辛いし勝負はするはず。

一球目を投げる吉井君。

 

「ファール!」

 

いきなり大島先生振ってくるとはまたやる気だね。

打たれたけど、ファールだから問題ナシ。

 

「なるほど、確かに自分でやるのとは違うようだ。」

 

教師チームは準決勝の時とメンバーが総とっかえされてる。

これが2回目だったら、私達に勝ち目はまずなかったんじゃないかな・・・。

そして吉井君が指示を見てから二球目を投擲・・・しようとしたところで指示が入ったのか、無理矢理速度を緩めようとする吉井君の召喚獣。

ストライクゾーンに行った球は打たれたものの、根元に当たったのか飛距離はあんまり伸びてない。

 

「これなら・・・っ!」

 

私は召喚獣を走らせて、なんとか補球に成功。

ボールが地面に落ちる前に補球出来たから、何もなかったらアウトになるんだけど・・・。

 

「・・・・・・」

 

審判はアウトの宣告をしない。

吉井君のさっきの投球は二段モーション気味だったから、ボークの反則を取るか判断に迷ってるのかな。

 

「今のはアウトで構わない。」

 

そんな審判に、大島先生がベンチに戻りながら言う。

初回だから見逃してくれたみたいだけど、今の私達には正直ありがたい。

これで1アウトノーランナー。

 

「野球・・・か。ルールは知っているが、やったことは全くないな。」

 

次のバッターは易者先生。

どうやら野球の経験はないみたいだけど、ルールは知ってるみたいだからさっきの高橋先生みたいなことはなさそうだよね。

 

『現代文教師 易者 日本史 470点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 200点』

 

うわっ、文系の先生なだけあって、かなり点数高い。

まあ、易者先生って何となくそういうのが得意そうなイメージあるからね。

というか、召喚獣の名前のところ易者って。

ほんと、謎が多いね・・・。

 

「ストライク!」

 

そんなことを考えてる間に吉井君は投げてた。

易者先生もバットを振ってたみたいで、ストライクに。

 

「・・・ふむ、なかなか難しいものだな。」

 

そう呟く易者先生。

まあ、経験がない野球をさらに召喚獣でやるわけだからね・・・。

いくら易者先生の点数が高くても、そう簡単にはいかないんじゃないかな。

そして二球目を投げる吉井君。

ボールはストライクゾーンに入ってたけど、タイミングが合わず易者先生は盛大に空振り。

 

「ストライク、ツー!」

 

あと1ストライクでアウト。

ここはどうにかストライクを取ってほしいところかな・・・。

三球目を投げる吉井君。

 

「確か、こんな感じだったな。」

 

・・・!

易者先生は三球目でいきなり持ち方を変え、高橋先生がやったようなバントの体勢に。

ゴン、と音を立てて転がるボール。

ここでプッシュバントは想定外だった!

低い軌道で転がってきたボールを補球して一塁に送球するも間に合わず、一塁に進まれる。

うーん・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も試合は不安定なまま進んでく。

8番バッターの布施先生はフライを打ち上げてアウトになったものの、7番バッターの豊郷耳先生は敬遠で(900点あったし・・・)、9番バッターの河城先生は普通にヒットを打たれ、現在2アウト満塁。

そして打順は一巡し、再び1番バッターの風見先生。

さっきの生物ほど点数はないはずだけど、パワーはありそうだから、下手したら満塁ホームランで一気に4点取られる可能性もある。

2回目だし相手も慣れたと思うし、かなりピンチ・・・。

吉井君の方を見守ってると、その奥のファーストの木下君が牽制球を投げるような指示。

ここから見る限り、河城先生は特にベースから離れてないし必要は無いけど・・・緊張をほぐすためかな?

指示の通り、投げる吉井君。

河城先生は当然アウトになるわけもなく、悠々と一塁上に立っていた。

 

「セーフ!」

 

まあ、吉井君だってこれでアウトを取れるなんて思ってないと思うけどね。

木下君はそれを吉井君に投げ返す・・・と思いきや、心配そうに顔を歪めてた。

 

「タイム!」

 

そしてそのままタイムを申告し、吉井君の方に歩いてくる。

そのまま二言三言話した後に戻り、再び試合は再開。

 

『生物教師 風見幽香 日本史 299点 VS Fクラス 吉井明久 日本史 200点』

 

試合の行方を左右するような回。

私もそっちに意識が向いてると・・・。

 

「タッチアウト、じゃ。」

 

「へっ?」

 

一塁側で、そんな声が。

そっちを見ると、ボールを持ったグローブを、一塁からリードを取った河城先生に当ててる木下君の姿。

これってもしかして・・・隠し球!?

 

「ランナーアウト、チェンジ!」

 

審判が宣告し、スリーアウト。

・・・え、嘘、このピンチを無得点で凌ぎきったの?

 

「これでワシも役に立てたようじゃの。」

 

「木下、ナイス!」

 

「さすがだぜ木下!」

 

「・・・グッジョブ。」

 

「すごいじゃん木下君!」

 

ベンチに向かいながら、木下君の活躍を褒め称える。

正直、絶対打たれるって思ってたし・・・。

 

「これで、気持ちよく秀吉とお風呂に入れるっ!」

 

「おぬしはいきなり何を言っておるのじゃ・・・?」

 

吉井君?

 

「あれ?だってさっき秀吉が僕のところに来た時、一緒にお風呂に入りたいって・・・。」

 

「何を言っておる。ワシはそのようなことは一言も・・・」

 

そこまで言ったところで思い直したかのように意見を翻す木下君。

 

「い、いやっ。そういえば言ったの!そうじゃな!風呂じゃ!明久よ、是非ワシと共に男湯へ・・・くふぅっ。」

 

「あらあら、ダメじゃない木下。お風呂は性別ごとに別れて入るものなのよ。」

 

「そうですよ木下君。お友達と一緒にというなら、あとで私達と一緒に入りましょうね?」

 

「し、島田に姫路!?落ち着くのじゃ!ついにワシと風呂に入るということすら違和感を覚えなくなっておるぞい!?」

 

「確かに木下君の見た目で男湯は問題だけど、木下君男だから女湯も問題だからね?」

 

一緒にお風呂入れるとしたら・・・アキちゃん位じゃないかな?

・・・あれ?なら吉井君と入ってもおかしくない?

アホなこと考えてたら頭がこんがらがってきたよ・・・。

 

「さあみんな!今度はこっちの攻撃だよ!頑張ろう!」

 

「「「おうっ!」」」

 

とにかく、やっと掴んだ攻撃チャンス。

最初は阿求ちゃんからだし、頑張って!




いかがでしたか?
易者先生対応力が高いですね。
打てないと判断して即座にバントに切り替えました。
しかしポケきら年内に書きあがってるのかな?
恐らくこれでこの作品は今年は終わりだとは思いますけどね。


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第七十五話「教師戦3回!」

今年中にこっちは投稿できました。
正真正銘これで最後です。
来年もどうぞよろしくお願いします。



 

 

 

 

 

「さて、私は敬遠されるとは思いますが・・・打てるなら打ちたいところですね。」

 

4番バッターの阿求ちゃんが打席に入る。

阿求ちゃんはFクラスどころか学年全体で唯一勝てるからね。

 

『Fクラス 稗田阿求 日本史 1027点 VS 日本史教師 豊郷耳神子 日本史 914点』

 

鉄人先生の点数も充分高いからか、今回のピッチャーは豊郷耳先生で、キャッチャーが鉄人先生。

改めて考えると、阿求ちゃんも豊郷耳先生もヤバすぎだよね。

 

『ボール。フォアボール。』

 

考えてたら、阿求ちゃんはやっぱり敬遠。

鉄人先生はさっき言った通り、ボールが絶対に届かないように立ち上がってる。

というか、球見えなかったんだけど・・・。

とにかく、これで阿求ちゃんは一塁に。

この試合ではじめて塁に出たね。

とはいっても、次のバッターである須川君、姫路ちゃん、吉井君は多分撃てないと思う。

姫路ちゃんは野球経験がアレだし(今までの試合は全部敬遠だったしね)、吉井君と須川君は野球経験はあるけど根本的に点数不足。

となると、やっぱり阿求ちゃんは盗塁するしかないと思うんだけど・・・。

 

「セーフ!」

 

やっぱり相手も警戒してるのか、牽制球を投げてきた。

阿求ちゃんは特にリードを取ってなかったからアウトにはならなかったけどね。

ボールは豊郷耳先生に戻され、今度こそキャッチャーに投げられる。

 

「盗塁だっ!」

 

その瞬間に二塁へと走り出す阿求ちゃんの召喚獣。

さすが4ケタなだけあって、豊郷耳先生が投げに入ってからボールを鉄人先生がキャッチするまでの約3秒の間に、7割ほどの距離を進んでる。

二塁へと送球する鉄人先生。

 

「チェンジ、土屋康太。」

 

その瞬間、阿求ちゃんの召喚獣はムッツリーニ君の腕輪を使い、さらに加速する。

もはや残像しか見えなくなった阿求ちゃんの召喚獣は土埃をあげつつ二塁に到達し、そのまま三塁へ向かう。

やっぱり7割程進んだところで、捕球するセカンドの風見先生。

確か点数は300点くらいだし、これなら間に合うはず・・・!

 

「「「・・・・・・えっ?」」」

 

しかし、風見先生が受けとり投げたボールはものすごい速さで飛んでいき、加速がついてる阿求ちゃんを追い抜く。

 

「・・・防御。」

 

そんな勢いで飛んでいったら、サードを守ってる易者先生の召喚獣なんて頭から割られるはずだけど、青色の光とともにボールを受け取った易者先生は無傷。

そして、足は三塁をしっかりと踏んでいる。

阿求ちゃんはまだ三塁に到達していない。

 

「アウト!」

 

「そんな・・・!」

 

阿求ちゃんでも間に合わないなんて・・・!

そしてそのまま三振×2でスリーアウト。

 

「さあ皆、今度はこっちの守備だよ、頑張ろう。」

 

「「「おー・・・。」」」

 

阿求ちゃんがいたから少しは戦えたけど、教師チームのと比べてとても攻撃が短い・・・。

次は地学だから私が活躍出来るはずなんだけど、さっきの阿求ちゃん見てると自信がなくなりそう・・・。

しかも、私キャッチャーで坂本君がピッチャーになったにも関わらず、1番の風見先生に普通にヒットを打たれ、2番の寺井先生にセーフティバントを決められてあっという間にノーアウト一塁二塁。

そして、この状況で迎えるのは高橋先生。

 

(坂本君、もちろん勝負だよね?)

 

(当たり前だ。)

 

アイコンタクトで坂本君と意思疏通。

確かに高橋先生の点数は怖いけど、高橋先生を敬遠したらノーアウト満塁で鉄人先生を迎えることに。

さすがにあの日本史は得意科目だったとは思うけど、鉄人先生の運動神経で腕輪レベルとかなら勝ち目はないもん。

普通ならキャッチャーがピッチャーにサインを出すけど、坂本君の方が詳しいし、私は投げられたボールを取るだけ。

高橋先生はスイングとバントの中間のような、完全に当てることに特化した構えをとってる。

そして、坂本君がボールを投げる。

アウトコース高めで、初心者には打ちにくい軌道。

 

「・・・まあ、予想通りですね。」

 

あっ!

さっきのミスの印象が強かったから忘れてたけど、この人頭の良さは随一なんだよね。

コースを読まれ、腕を伸ばしあっさり打たれる投球。

 

「い、嫌だぁっ!こっちに飛んでこなぶるわっ!」

 

打たれた球は再び福村君の召喚獣を吹っ飛ばし、センター前に転がる。

今度こそ確実に抜かれた・・・!

 

「高橋先生!今度はちゃんと一塁から順番に回ってください!」

 

教師チームから指示が飛ぶ。

 

「わかっています。同じミスは二度としません。」

 

それに対して冷静に答えた高橋先生は、召喚獣を走らせる。

さっきの阿求ちゃん(加速なし)に負けずとも劣らないスピードで一塁を踏み、二塁を踏み、三塁を踏む。

速い、速すぎる。

速すぎて・・・。

 

「高橋先生・・・。アウトです・・・。」

 

前の走者を追い抜かした。

えー・・・。

見てる全員が言葉を失う。

野球のルールに、前の走者を追い抜かしてはいけないというルールがあるんだよね。

まあさっきのに比べたらマイナーかもしれないけど・・・。

 

「なぜですか。」

 

「とにかく高橋先生。アウトなので戻って下さい・・・。」

 

「納得できません。」

 

「そういうものなので・・・。」

 

不満そうな目をしつつベンチに戻っていく高橋先生。

そして、またもや茫然とするランナーに対して三塁と二塁に送球し、アウトを取る。

これで、一応3アウト。

 

「・・・・・・3アウト、チェンジ。」

 

さっきの焼き直しのような光景に審判が力なく、呟くように宣言する。

・・・まあ、さっきのもそうだけどこんなトリプルプレイなんて見たことも聞いたこともないからね。

パワ○ロとかでもこんなことないし・・・。

 

「さっきのもだけど、高橋先生があんな行動を取るとは驚いたわ・・・。」

 

「僕、密かに高橋先生に憧れていたんですけどね・・・。」

 

風見先生と寺井先生がトボトボとベンチに戻っていく。

ま、まあこれでピンチは凌いだよね!

 

「と、とにかくこれでピンチは凌いだ!稗田さん以外にもそろそろ一本出そう!こっちの最初のバッターは」

 

「お主じゃな、明久。」

 

うん、吉井君だよ。

 

「・・・期待してるぞ、坂本、古明地さん。」

 

「坂本、こいしちゃん!2人だけが頼りだ!」

 

「頼む。ホームランをかっ飛ばしてくれ。」

 

「えっと、私と坂本君だけじゃなくて、吉井君にも期待してあげよ?」

 

吉井君悲しそうにしてるよ?

 

「「「あー・・・、まあ、そうだな・・・。一応吉井も・・・。」」」

 

「もういいよ!形だけの声援なんていらないよ!」

 

あまりの扱いにへこんだ顔する吉井君。

わ、私は吉井君応援してるよ?

 

「あの、明久君。頑張ってくださいね。」

 

「そうだぜ!私は期待してるぜ、吉井!」

 

「姫路さん、魔理沙・・・!ありがとう!頑張ってくる!」

 

「はい。応援してますっ。」

 

「おうっ!頑張ってくるんだぜ!」

 

「よしっ!この打席を、2人に捧げるよ!」

 

へこんだ吉井君に訪れる、天使と魔理沙の癒し。

応援で気合いが入った様子の吉井君が、意気揚々とバッターボックスに入り、バットを構える。

 

「デッドボール。」

 

「ぎにゃぁぁああっ!手が!左の手首から先の感覚がぁぁああっ!」

 

「ご、ごめんね吉井君・・・。力加減失敗しちゃって・・・。」

 

よりによってフィードバックがある吉井君の召喚獣に、河城先生の失投が当たる。

痛みでのたうち回ってる吉井君。

 

「うぅ・・・。活躍どころかカッコ悪い姿を見せちゃったよ・・・。」

 

起き上がり、一塁に。

とはいっても、一塁に進めたのは大きいよね。

 

「さて、俺の番だな。」

 

坂本君が進む。

今回地学の先生は立会人の1人しか空いてなかったみたいで、今のピッチャーは河城先生。

 

『数学教師 河城にとり 地学 275点 VS Fクラス 坂本雄二 地学 189点』

 

点数では負けてるけど、運動神経や反射神経を加味すると、わりといい勝負になるんじゃないかな?

河城先生がボールを投げる。

コースはど真ん中で、球速も普通。

さっき吉井君にデッドボール出しちゃったのが心理的なストッパーになってるみたい。

これはチャンス!

 

「・・・っ(ピクッ)」

 

その球を見て、ピクッと反応し、そのまま見送る坂本君。

結果、ストライクカウントが1つ増加。

今のを打たないのは、なにか考えがあったのかな?

考えてる間に、河城先生が2球目を投げる。

今回はアウトコース低め。

ギリギリストライクゾーンに入ってるけど・・・。

 

「こ・・・の・・・っ!」

 

さっきと同じように身体を震わせて、バットを動かした。

カッと半端な音をたて、ピッチャー前に転がるボール。

坂本君、判断に迷ってバットを振り切らなかったね!

 

「アウト!」

 

ピッチャーが拾ったボールを二塁に送球し、そのまま一塁に送球。

これで一気に2アウト。

チャンスは残念ながらものに出来なかったみたい。

 

「くそぉっ!」

 

ベンチに戻る途中、悔しそうに吠える坂本君。

やっぱり、さっきのをまだひきずってるのかな・・・。

っと、次は私だった。

 

『数学教師 河城にとり 地学 275点 VS Fクラス 古明地こいし 地学 461点』

 

この点数なら、きっと・・・!

バッターボックスに立ち、落ち着いてピッチャーを見据える。

そして、投げられる。

1球目はストライクゾーンに入ってなかったから見送り。

 

「ボール!」

 

とはいっても、キャッチャーの鉄人先生は立ってないし、別に敬遠ではないよね。

そして2球目を投げてくる。

球速は速いけど、コースはいい!

これなら!

 

「えいっ!」

 

カァンと音をたて、ボールは高く飛んでいく。

ホームランこそ出せなかったものの、一塁に出られた!

でも、そのあとの魔理沙が普通に三振でアウトになり、得点には繋がらず。

・・・残念。

そのままベンチに戻ると・・・。

 

「・・・・・・っ!」

 

今までにみたことがないくらい真剣な顔で、坂本君が考えていた。

 

「えっと、何があったの?」

 

「それが・・・。さっき雄二と霧島さんの件あるでしょ?その時の没収品って、婚姻届の同意書じゃなくて、如月ハイランドで貰ったヴェールだったみたいで・・・。」

 

吉井君の説明に、一瞬言葉を失う。

如月ハイランドで貰ったヴェールって、坂本君との結婚式体験のアレだよね・・・?

坂本君のお嫁さんになるっていう夢を大勢の目の前で笑われたあと、『俺はお前の夢を笑わない』と言われてプレゼントされたって翔子ちゃんがお泊まり会の時に話してたアレだよね・・・?

そうだったんだ・・・。

坂本君は知らなかったみたいだけど、確かにそれは翔子ちゃんに同情かな。

それで、そのヴェールを取り戻すために今、坂本君は全力で考えてるって訳なのね。

実際、次は4番の鉄人先生からだし、無策で挑んだらさっきの二の舞になること間違いナシだし。

 

「雄二、ピッチャーとキャッチャー交代。」

 

「「「は?」」」

 

そんな坂本君に、吉井君が声をかける。

えっと・・・?

 

「稗田さん、ピッチャーをお願い出来るかな?」

 

「え?は、はい、だいぶ慣れてきたので出来るとは思いますけど・・・。」

 

何を思ったか、阿求ちゃんにピッチャーを頼む吉井君。

でも、阿求ちゃんの点数は相当高いし、受けきれる人がいないんじゃ・・・?

 

「明久、確かに稗田なら行けるかもしれないが、キャッチャー出来る奴がいないだろ。俺の点数は250程度だし、稗田はいくつだ?」

 

「えっと・・・今回は500点くらいですね。」

 

「だそうだ。受け損なったら誰であろうと即死は免れないはずだぞ。」

 

「うん、そうだね。受け損なったら死ぬよ。だったら、受け損なわなければいい。僕が全部完璧に受けきってみせる!」

 

そう言い切る吉井君。

おおっ、かっこいい!

 

「・・・わかった。なら、失敗するなよ!」

 

言い切った吉井君に対して、信頼して任せる坂本君。

坂本君も復活したみたいだし、これなら行けるかも!




いかがでしたか?
雄二復活。
あ、ちなみに如月ハイランドのエピソードはこいしちゃん視点だとスッカスカにしかならないので原作読んでください。


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第七十六話「教師戦4回!」

新年あけましておめでとうございます。
時が経つのは早いものですね。
今年もあげていく予定ですが、現在Cクラス戦をどう展開させるか非常に悩んでいます。
それと、現在ポケきらの方を本腰入れて書いてるのでこの投稿遅れそうです。


 

 

 

『Fクラス 稗田阿求 現代文 498点 VS 補習教師 西村宗一 現代文 401点』

 

4回表。

吉井君が言った通り、ピッチャーは阿求ちゃんに交代。

ちなみに、吉井君の点数は83点。

受け損なったら死あるのみだけど、吉井君ならやってくれるはず!

そうして、1球目が投げられる。

 

「ストライク!」

 

ど真ん中ストレートを宣言通り受けきる吉井君。

姫路ちゃんと違って、コントロールには問題なしみたい。

鉄人先生は反応できずにいた。

まあ、いままで吉井君の球を散々見てきたところに阿求ちゃんの速度だもんね。

そして坂本君の入れ知恵で、ボールを受け取った後に、普通ならサインやりとりをする時間を省略してそのままストレートを投げる阿求ちゃん。

 

「ス、ストライク!」

 

さっきより強い球を受けて、完璧にキャッチャーミットで受けたにも関わらずわずかにダメージを負う吉井君の召喚獣。

阿求ちゃんも吉井君の宣言を信じ、全力で投げてるみたい。

 

「普通の野球は出来ませんけど、召喚野球なら私も活躍出来ますからね。1点たりとも取らせませんよ。」

 

その言葉とともに、最高速で放たれた豪速球。

さっきの姫路ちゃんのを超えるスピードでありながら、まっすぐ飛んできたそれをキャッチャーミットで受けきる吉井君。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

これで最大の脅威だった鉄人先生は凡退。

そのままストレートで大島先生、豊郷耳先生を討ち取る阿求ちゃんと吉井君。

これで、4回表の攻撃は凌ぎきった。

あとは、点数をとって逆転するだけ!

 

 

 

 

 

 

 

「福村、秀吉、稗田。作戦だ。恐らくフォアボールやヒットが出ても、点数には繋がらないだろう。稗田がうまいこと打てたとしてもな。だから、そのあとの作戦に全てを賭ける。だから時間稼ぎを頼む。」

 

「うむ。了解じゃ。」

 

「は、はい。わかりました。」

 

「了解。そのかわり、次はしくじんなよ。」

 

3人は快く了承。

確かに相手チームには寺井先生と易者先生と、現国教師が2人もいるから、阿求ちゃんでも多分ヒットが関の山。

なら、5回での作戦に賭けるみたい。

坂本君によると、仕込みは万全らしいし。

でも、その為には時間稼ぎが必要。

だから唯一打てそうな阿求ちゃんも時間稼ぎに徹する。

 

「プレイっ!」

 

反則にならない程度にバッターボックスに入るのを引き伸ばし、時間稼ぎを狙う福村君。

相手ピッチャーは易者先生ではなく、野球経験がある寺井先生。

時間稼ぎすらうまくいくかはわかんないけど・・・。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

福村君はカウントをフルに使い、ファールも2回出して時間を稼ぐもアウトに。

続く木下君も必死に豪速球に食らいつくもアウト。

残るバッターは阿求ちゃんだけになった。

時計は2時28分を指している。

秒針がないから、針が進むのがすごく長く感じる・・・!

早く・・・!

 

「ファール!」

 

必死にバットにボールを当て、ファールで時間を稼ぐ阿求ちゃん。

阿求ちゃんは確かに現国500点あるけど、寺井先生は600点以上。

現在のカウントは2ー1。

向こうにはボール球を投げる余裕すらあるのに対し、こっちはもう1回すらミスできない。

見てるだけしかできないのがすごく歯痒い・・・!

 

「ボール!」

 

混ぜられたボール球も、振りかけるもギリギリ見送る阿求ちゃん。

こう何度も投げられてると、阿求ちゃんの集中力もいつ切れてもおかしくない。

 

「ファール!」

 

何度目かのファール宣告。

福村君、木下君合わせて10回以上ファールを出しているのに、それはいまだに来ない。

もう少し、もう少しなはずなんだけど・・・!

 

「・・・来た・・・!」

 

ムッツリーニ君がピクッと反応し、呟く。

来たってことは・・・!

続いて、スピーカーから、ザザ、ザという音。

 

「これより、借り物競争を始めます。参加する選手の方は・・・」

 

「「「来たぁっ!!」」」

 

それは、私達の作戦の鍵となる福音。

その直後、ついに阿求ちゃんが打ったボールがキャッチされてアウトに。

でも間に合った!

 

「何故、彼らはアウトになったのにも関わらず、喜んでいるのでしょうかね?」

 

「さあ。あいつらのことですし、きっと何か企んでるのでしょう。」

 

教師サイドから聞こえる声。

確かに4回の攻撃は終わったね。

でも、これは全て最後のための伏線。

そこで絶対に勝つよ!

 

「吉井、坂本。何を喜んでいるかは知らんがさっさと準備をしろ。」

 

鉄人先生が来て、守備につくように言う。

 

「わかってます。でも、もう少し待ってください。」

 

「今に来ますから。」

 

「来る?一体何のことだ?」

 

訝しげな鉄人先生。

そして、向こうから走ってくるFクラスのみんな。

 

「遠藤先生!借り物競争です!すみませんが一緒に来てください!」

 

「え?でも私はこれから召喚野球の立ち会いを・・・。」

 

「なんと言われてもダメですよ!召喚野球大会より体育祭競技の方が優先されるのですから!」

 

「「「っ!?」」」

 

先生達が目を見張ったのがわかる。

クラスメイトの手によって、遠藤先生がひっぱられていく。

 

「なら仕方ない、ベンチの先生方に立会を頼んで」

 

「船越先生!お願いします!」

 

「胡桃沢先生!来てください!」

 

ベンチの2人も別のクラスメイトに連れていかれる。

勿論、これは作戦。

彼らの手の中の紙には、きっと全く違うのが書かれているはず。

 

「これで立会の先生はいなくなったな。」

 

「坂本、これは貴様の作戦だな。まあいい。さっきの回の立ち会いの先生に頼んで」

 

「おっと、そいつはルール違反だ。事前に決めただろう?同じ科目は使わないと。」

 

「ならばどうしろと言うんだ。こっちのチームに8人でやれとでも言う気か?」

 

鉄人先生が坂本君や吉井君を交互に鋭い目で見る。

もしかして、これを利用して無効試合にしようと考えてると思われてるのかな?

・・・勿論、私達はそんなことは1ミリも考えてない。

だって、無効試合にしてもお姉ちゃんの写真は帰ってこないもん。

 

「鉄じ・・・西村先生。まだ他にも勝負できる科目があるじゃないですか。」

 

「だから何を言ってるんだ吉井。立ち会いの教師はもういないと」

 

「違いますよ。立ち会いの教師がいなくても、野球の勝負が可能な科目が残ってると言ってるんです。5回の勝負は、体育の・・・実技といきましょう!」

 

これが、坂本君が最初にたてた作戦。

成績最低クラスだけど行動力だけはある、私達Fクラスが点数が高い教師チームに勝つための一手。

体育の実技だって、れっきとした科目だからね。

 

「さぁ全員、グローブをつけろ!5回の勝負はハードだぞ!」

 

坂本君が事前に野球部から借りて用意していたグローブを指差す。

こうして、最終回。

たった1回だけの、教師と生徒の交流野球大会が幕をあけた!




いかがでしたか?
体育実技のためあっきゅんは退場。
多分いままで言っていませんでしたが、あっきゅんは体育をはじめとした運動を厳しく禁止されています。
ちなみになんですが、苗字がない旧作の東方キャラはガヴリールドロップアウトのキャラから苗字をとっています。
出す予定はないですが、天真=サリエル=ホワイトとか似合いそう。
え?何故この話をしたかって?
それはまあ、ね。


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