戦姫絶唱シンフォギア フロウレスエナジー (魚介(改))
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第1話 転生

シンフォギアって描くの難しいらしいですので
挑戦するスタイル!

多分超絶不定期更新になるので、あんまり期待せずにお待ちください


「ええっと…ここはどこでしょう?」

 

とりあえず、といった様子で辺りを見回す少年、

 

「…どこを見ても真っ白、

こんな空間は知らない、俺の居たはずの家ではない…ということは…」

 

少年は一人で呟くと

ゆっくりと息を吸い、

 

「寝るっ!」

 

まさかの爆睡に入った

ほとんど倒れるように寝転がり

真っ白な床?に伏せて

そのまま目を閉じ、寝息を上げ始める

 

「ちょっと!寝ないでください!」

空間から突然出現した白い服の謎の女性は、やや慌てた様子で伏せている少年を揺すり始めた

 

「貴方にはちょっとどころじゃなく

面倒な説明と事案があるんです!

起きてくださいお願いします何でもしますからあっ!」

「ん?今何でもするって」

「言いました!言ってますから早く起きてください!」

 

必死な様相で翠色の髪の女性が呼びかけると、伏せていた青年はむくりと上体を起こし

 

「じゃあ放置して、おやすみ」

「だめですぅ!」

 

すぐにパタリと伏せ直して寝始めてしまった

 

「こらあっ!寝ないでください!」

「寝かせておいてくれよ」

「ダメって言ってるじゃないですか!

とにかく説明しますよ!」

 

そう言い放った女性は

青年を揺するのをやめて今度は口を動かし始める

 

(話が長い…よくわからない…説明するなら専門用語のようなものは出来るだけ排除すべきだと何故わからないのか…)

 

概要すると女性は自らを神、又はそう呼ばれる存在と近しいものと名乗り、

事故的に全く別の世界に介入してしまった存在(ノイズ)炭素転換()されてしまった青年を自分の管理している世界に転生させるというものだが

 

女性の説明には

『ギア』『聖遺物』『フォニックゲイン』など様々な、部外者である青年にはよくわからない用語が混ざり、結果として説明そのものをもボカしてしまっていた

 

故に青年は半ばから聴講を放棄して

眠っていたのだが…

「説明も済ませましたし!転生しますね?

シチュエーションを選んでください!」

 

「……シチュエーション?」

 

(ヤッベェ説明全然聞いてない…)

「とりあえず太古か、現代か、未来かで選んでください」

「現代一択」

 

青年は慎重だった

太古では生活レベルが違いすぎて危険であり、未来では逆に相互理解に手間取る上、常識知らず扱いや、下手をすれば警察、又は類似する機関のご厄介である事を瞬く間に考察し、現代を選択したのである

 

「了解しました!…とりあえず

人間では脆いので〜どうしましょうか

 

そうです!完全聖遺物を器にしちゃえばいいんですね♪それじゃアレを使って…ちょっと弄ればそれで良しっと!

それじゃあ転生します、GOッ!」

 

軽く女性が手を振ると同時に

真っ白だった空間に色が付き

 

青年の下の床が突然消え

 

「のぁぁぁああわぁぁぁぁっ!」

 

青年を落下させた

 

「…行ってらっしゃい

…ごめんなさい、私に出来るのはここまでです、管理外の世界にノイズの位相干渉を招いてしまった責任は、私がとります……

願わくば、あのストーカーの目を覚ましてあげてくれるといいのですけど」

 

女性は笑顔のままで目を閉じて、その身を何もない白い空間へと溶かして行った

 

「貴方の次の人生に、幸多からんことを」

 

 

 

一方、落下中の青年はというと

 

「…………」

 

落下時間が長すぎて半分気絶状態にあった

 

 

「………………」

 

そして、ついにその時が訪れた

 

「……ふぎゅっ!」

 

延々と落下してきた青年は

ついに地面に叩きつけられたのだった

「ぬっがぁぁぁっ!頭ぁぁっ!」

 

空気抵抗と重力加速度が等しくなるより遥かに高い高度から思いっきり全身を叩きつけられ

そこらを転がり回る程度で収まっているのは大分おかしいが、まぁその辺は最初の保護的なもの、と納得して

 

痛みを堪える青年

 

「………ぬぅ…」

(まだジンジンと痛むが、転生お約束の保護機能が中途半端だったのか…)

 

なんとか立ち上がる青年

 

彼自身に知る由もないが、そこは

某県の山のなかであり、

 

大声を出そうが転がり回ろうが

各国の情報衛星にだって注目されはしないので、情報秘匿的観点(ある意味)では安全を保障されている場所である…

 

どうも落下転生お約束の機能はそこに集約されてしまっているようだ

 

「…ぐふっ、、ふぅ…仮にここが元いた世界の現代に近い環境、世代だというのなら…どこかに交番…いや

無戸籍は危険すぎる…

 

ネットカフェか?…財布財布…」

 

ポケットの中を漁り、

二桁程の札がある事を確認して

どう遣り繰りするかを考える青年

 

(身分のない俺は現代では安全を保障されていない、交番でも無戸籍とバレれば対応は一気に落ちる、そもそも無戸籍の人間は()()()()()()()()()()んだ

一旦どこかの紛争地域か未開発の土地に密航して、国籍を取得(ねつぞう)してから日本に帰化という形にするか?)

 

そこまで考えてから、

即座に思考を捨てる青年

 

(ダメだ、密航するには捕まるリスクが高すぎる、海外便は場所によるが警備が厳しい、船便で移動=長期的に潜伏

なんてするのは以ての外、泳ぐのは無理

まず地形や潮流を把握して良いタイミングを待った上で体力と運任せになる上に

向かった先で人に見つかりゃオジャンだ

対馬から日本海縦断でも遠すぎる)

 

そもそも仮面のバイク乗りとかスーパーなレンジャーでもなければトライアスロン選手でもない青年にそんなことができる体力があるはずがない…

 

(手段は二つ、徹底隠蔽でホテル暮らしか放浪生活(移動型ホームレス)だ……どこかで

秘密結社とかに属して

戸籍を捏造してもらうってセンもあるっちゃあるが、そりゃ無理筋だ)

 

青年はさっさと行動方針を決定した

「とりあえず人に会う、話はそこからだ」

 

この世界の勝手ってもの

をまず知らなくちゃならない

 

「………遠い…」

 

どうも彼が人と遭遇するのは

しばらく後になりそうだった



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第2話 鳴かず飛ばず

潜伏、事情説明回です…内容がないよぅ…早く原作に介入したいよぉ


「…結局はネットカフェ泊まりか…」

 

流石に厚顔にも泊めてくれ、なんて言い出せるような人物はいなかったようだが

 

確認できた点はいくつかある

 

まずなこの世界、そこそこ平和であり

転生先としては悪くなかった

ということ

 

(前提としてまず、『緋弾のアリア』や『ブラックブレット』もっと古いのだと『妖界ナビ・ルナ』や『結界師』のような殺伐系世界線ではまず生存できない自信がある、その点ことこの世界は

いわゆる一般人が一般人としてちゃんと生存している分、分相応に生きるのなら問題はない

 

就職が絶望的である事を除けば)

 

究極的に言えば『職業』は全て自称であるため、プロデューサーだろうが提督だろうがゴッドイーターだろうがサラリーマンであろうが

そう名乗ることはできる…実態が伴うかは別として

 

FXで株やったり、

田舎で個人営業所でも開いていれば

なんとか誤魔化せそうではあるが

 

「…せっかく街中まできて田舎へ

ってのは無理があるよな…まずは」

 

コンビニに入って、電話帳をパラ見し

求人誌を買って…無料なのだが

それだけ済ませて、店を出ると

 

雑踏を通り抜け、人の流れを頼りにショッピングモールに寄った青年は、フリースペースで手元の資料を読み漁り、一応の周辺地名を把握した

 

地名や近くの駅を把握するのに便利だ、電話帳や求人誌というものは

 

「一応だが、その辺を考えて…

といったところか」

 

適度に人口密集地域に住んだ方がいいかもしれない

 

(それに聖遺物がどうの、なんて

道行く人に訪ねられるような内容とは思えない

 

何かしらの形で世界の裏側に干渉しているのだろうそれに関する情報を如何に集めるか…)

 

どうしようもない事を悩みながら

青年は電話帳で書いてあった住所の記憶通りに24時間営業のネットカフェへたどり着き

 

「いらっしゃいませ!何時間分のご利用ですか?」

 

「六時間だ」

まずは夜を明かすことを優先した

 

時刻は既に午後11時、6時間と聞いた店員はすぐに夜明かしだと察したらしく

毛布を青年に渡した

 

「実にありがたい話だ…」

 

今後も継続的に使いたくなるくらいに

ありがたいと思っている

 

ネットカフェでも変わらずに情報収集に励む青年

いや、インターネットを使える分として

むしろ勢いは増している

 

ネットで地図検索を繰り返し、

周辺の地形、地名を記憶と照合したり

 

スレ民の話を観察したり

人気アニメの流動などのサブカル周辺を確認したり、世界的な常識の変化を探した

 

「ツヴァイ…ウィング…」

 

(今人気なユニットらしいが

………もしかしたら、違うかもしれない、あの世界じゃなく、別の可能性世界線であってくれ…!)

 

そう、この二人、

天羽奏と風鳴翼の二人のユニット

ツヴァイウィングとは

青年の記憶の中でも特にアレな世界線のうちの一つに引っかかってくる名前だった

 

「シンフォギア世界とか…

ふざけんじゃねぇ…」

 

青年はこの世界のことを、ほんのさわりくらいしか知らない、具体的には

第1〜第2期くらいまでしか知らない

その後の展開は把握できていない

 

どころかその知識すらも朧げである

 

「クソッ!アドバンテージが薄い!」

 

そう、現状1モブである以上、このモブ厳世界では青年には生存力が足りない

 

幸いにして、まだ奏は死んでいない

ライブ(死亡)まで、まだ猶予はある

 

この世界でハッピーエンドを目指すなら

死んでも構わないキャラクター…いや、本来死ななくてはならないキャラクターだが

 

青年は、平和だった()()の記憶通りに、お人好しとして行動を決意した

 

一番最初の原因、『フィーネ』が目論む『ネフシュタンの鎧の起動』を止める事を

 

「いける…かどうかわからんが

一応、聖遺物がどうの、というのはわかった…フォニックゲイン…だったか?

 

アレはたしか………ええっと…

アレだ!歌のエネルギー的なアレ!」

 

小声で叫びながら

俺は情報を整理し直す

 

まず、敵であるノイズについて

思い出す限りの情報を羅列する

 

(まず、殺傷圏内に入った人間を炭素転換して自壊する存在である、なんか普通の物理攻撃が効かない

倒すにはシンフォギアか同様の現象を起こせる聖遺物を使うか、少なくとも街一つ並みの被害を前提とした飽和攻撃で圧殺する、

でもそもそも普通のノイズはそこまでする価値がない

炭素転換は自壊を代償にする

つまり、ノイズの出現数≧被害者数が基本原則である

シンフォギアなら普通に触れるし炭素転換されない

 

以上の論からするに

最善策は速やかに周囲の人間を避難させて

自壊を待つかシンフォギアで撃破する事

 

だけど逃すにも問題がある

原作で主人公がイジメにあったのはそれが理由だった

 

「避難者同士で押し合い、殺しあう…それが問題か…」

 

ここがシンフォギア世界とするなら

原作にはできるだけ干渉せずに穏やかに過ごすか、それとも原作に介入しまくって死亡予定枠キャラを助けておくことで

原作難易度を下げる事だ

 

「前者の利点は『運が良ければ一度も危険に遭わない事』欠点は『運が悪ければ死ぬ』上に『どこかで原作乖離が起きたら詰む』

 

後者の利点は『本来死亡するキャラが生きていてくれる』そこから連鎖的に『装者が増える=本来出るはずだった被害が減る』『俺以外が起こす原作乖離にリアルタイムで対応できる』

 

欠点は『ある程度以上の原作乖離が起きると未来がわからなくなる』事と『キャラ減らしに更なる拍車がかかる可能性がある』事」

 

個人の安全性としては

二課に接触する分、OTONAに守ってもらえる可能性が生まれる+装者の防衛対象に入る+フィーネ(敵ボス)に接触できるという辺りから

後者がオススメだ

 

 

(というかこれ後者一択だろ)

 

問題点としてはフィーネ+クリスに消される可能性大という辺りがあるが、青年は気づいていない

 

(よし!原作介入しながら

できるだけ穏便に行こう)

 

とりあえず掲示板巡りでツヴァイウィングのファン歴が長い方々に取り入ることから始めた青年であった



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第3話 根本の失敗

「…3・5・1か」

 

 

あれから一週間程経ったのだが

 

今、青年は……競馬場に来ていた

 

もちろん賭博カスではなく

生活(ネカフェ)費を稼ぐ為である

 

「こんなことして金稼ぎとはねぇ」

真っ当に就職できない以上

こういった方法は金策の一つではある

 

運転免許も持っていない…前世と姿が違うから持っていても意味がない青年は

手っ取り早く金を得る方法として

競馬を選んだのだった

 

「…これは有難いんだが…転生特典…なのかねぇ」

 

実を言うと、青年は来るたびにある程度の金額を稼いでいたのだが

どうも正確に当たるのだ

 

この体は結構高性能であるようで

予知じみた運と少なくともオヤジ狩り集団五人くらいなら叩き返せるスペックを有していた

 

「兄ちゃん毎回稼いでんなぁ

その運、俺にも分けてくれよ」

「爺さん、運じゃなくて実力だよ

そもそも爺さんは大穴狙いすぎなんだ」

 

話しかけて来たのは、

来るたびに居るお爺さん

 

歳が幾つなのかもわからない程に歳をとっているように見える

「ワシはまだまだ現役じゃあ!男なら大穴狙わんかい!」「それで儲けを出そうとするのは間違いだよ爺さん」

 

確率が低いから倍率が出るのに

毎回かけてたら大損である

 

青年はなんとなくわかる

と言って、これには賭けないほうがいい、こっちに賭けてみよう、なんて気分で当てるのだが

爺さんは全くの楽しみ優先な賭け方をしている

 

当たる気がしない…それでもチラホラ当たるあたり、勝負師としての運は出てるようだ

 

「じゃあそろそろ、俺は帰るよ」

 

青年は換金を済ませてさっさと

移動して、ネカフェへと戻る

 

3日で別の場所に乗り換え、さらに別のネカフェに泊まるを繰り返して移動して

稼いだ金でバッグとスーツケースを購入

コインランドリーと銭湯で身綺麗を保つ

という収入以外は完全にホームレスな生活を続けている青年は、徐々に生活圏を移動しながら

ツヴァイウィングのライブを待っていた

 

のだが、この日は少し

様子が違った

 

「ノイズだぁぁっ!」

 

絶叫と同時に、黒い炭が舞った

 

様々な形、様々な性能を持つノイズ達が天空や地上より出現した

 

「ぅぉぁああっ!」「たすけてぇぇ!」

 

悲鳴とともに、さっきまで命だったものが辺り一面に転がる

 

逃げ惑う人々の流れと同時に

それを押し込むように人を圧するノイズ達

 

「マズイなぁ」

運が悪かったが故の死の危険を味わいながら、青年は離脱ビル上に籠る事を選択

遮二無二路上を抜けようとする人間の流れから自然に出て、手頃なビルに入り

 

階段ダッシュする

 

「ここで死んでたまるかっての!

まだライブいけてねぇんだぞぉっ!」

 

全力ダッシュで階段を駆け抜けて

5階、即ち屋上へと抜ける、

 

そこに

 

飛行型(フラスト)ノイズが襲来する

 

「禿げガァっ!死に晒せっ!」

 

突進してくるフラストノイズを辛くも避ける

 

しかし、ノイズはまだまだ多い

 

「俺単独で狙うなんてひどくありませんか?おかしいと思いませんか、あなた」

 

必死で回避し、

時には実体化した瞬間のノイズに

全力投擲の石をぶつけて動きを止め

なんとか切り抜けて

 

しかし、そこまでだった

 

屋上のドアが開く…そこにいたのは

人型ノイズ

 

「なにいっ!」

 

そして、驚愕の一瞬を突かれ

フラストノイズの突撃を食らう

 

「ぬがぁっ!」

 

突撃の威力を存分に受けて

()()()()()()()

 

「は?」

 

(どうなってやがる!人間が炭素転換されるのは確かに見た!その理に従うなら俺も転換されてるはず!

なのに俺はなぜ死んでいない?!)

一瞬で目まぐるしく思考を巡らせる青年

 

「だが、生きてる!」

俺は再び突進してくるフラストノイズを

コンクリ壁のすぐ前に陣取って迎え撃ち

 

ギリギリで回避する事で

相手が存在比率を変える前にコンクリ壁に激突させて動きを止め、更に実験を行う

 

「せえらっ!」

思いきりぶん殴ったのだ

 

果たせるかな…ノイズに触れた俺の右手は

炭素転換される事なく、

ノイズは炭となって消えた

 

(俺がカウンターすれば…攻撃できるのか?)

 

一度の実験で効果証明には早いと考えた青年は更に実験を繰り返そうとして

 

「危ないぞ!離れろっ!」

強烈な声に、咄嗟に下がる

 

直後に、大槍がコンクリ床に突き刺さる

 

当然の如くノイズを貫いて

 

「まぁったく…そこの人?無理せずに隠れておきな」

「…わかったよ」

 

現れたのは天羽奏、勝利の撃槍(ガングニール)の…現状唯一の適合者

 

「君は…いや、なんでもない!頑張ってくれ!」

「はいよっ…じゃあ頑張りますかぁ」

 

憎悪に塗れた槍は、

再開されたその歌声に応えて

唸りを上げた

 

戦闘BGM:

 

【STARDUST∞FOTON】

 

歌いながら槍を大きく引き絞り

投擲する

 

投げられた槍は大量に増殖し

多数のノイズを消し炭に変えていく

 

「うぉ…大迫力…」

 

青年が冗談めかして笑った瞬間、

謎の鈍痛が右腕に走る

 

「ぐぅっ…ぬぁ…いってぇぇ」

 

思わず声を上げた青年に、残存していたノイズが集り…

「隠れとけって言ったろ」

 

ガングニールに貫かれた

 

「ノイズ反応消失、戦闘終了です」

 

高性能イヤーが、インカム音声をキャッチし

それを理解したと同時に

 

(モブ厳世界で…生き残った…)

貴重な生存者枠に入った、という実感が湧く

そして

 

ご存知黒服さん達の御来訪である

「お手数ですが、ご同行願います」

「…アッハイ…」

 

すごくゴツい手錠的なもの?を付けられた青年はそのまま車で輸送され…

(リディアンの地下ですね分かります…

特定災害対策二課…でよかったかな?まぁ詳しくはどうでもいいけど)

 

無言のまま謎のエレベーター(カ・ディンギル)に詰め込まれて超速降下を体験して

「………ぬぁぁーーーっ!」

 

慣れた様子の職員の間で一人みっともなく叫ぶ

 

その後生気のない表情で話しと

誓約書の説明を聞き、

とりあえず同意して……

 

(この時間軸ってことは、まずセレナ死亡確認だよな…ついでに響、未来の存在確認、これ重要

あとほかの転生者がいないか)

 

考え込みながら歩いていると

 

「きゃっ!」

「おわっ」

 

人にぶつかってしまったようだ

「すいません、大丈夫ですか?」

体勢を崩して尻餅をついている女性…

 

『櫻井了子』と書かれたネームカードを首から提げた女性に、反射的に右手を差し出し

 

(どう見てもフィーネですねわかります

…ヤッベェ死ぬ!俺死んだ!)

 

内心絶望的な表情だが、ちゃんと心配げな顔を維持している辺り

なかなかメンタル強めである

 

「…ありがとう、ちょっと上の空だったわ」

「ここ多分地下ですよね?」

「あっ、上手い」

 

散らばってしまった書類を集めて渡し

「はい、どうぞ…これで全部かな?」

「ちょっと多すぎてわかんないけど、まぁ後で見直せばわかるわ、せっかくだし一緒に来る?」

 

この時、フィーネには本当に他意はなく

純粋な行動だったのだが、青年には地獄に引きずり込もうとするかのような巨大な腕が幻視された

 

「コーヒーくらいなら淹れるわよ?」

「ぜひに」

 

青年はここしばらく飲めていない

ブラックコーヒーを求めて

櫻井女史の研究室にお邪魔することにした

 



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第4話 二課に来ないか?

ぁぁぁ!戦闘が描きたいいぃ!


「貴方はここについてどのくらい知ってる?」

この一言から、話は急激に発展した

 

二課からノイズについて、ノイズからシンフォギア について、シンフォギアから聖遺物について、聖遺物から月の呪詛について

 

一部聞いちゃいけない話しもあった気がするが、まぁ聞いてないことにしよう

 

「でね、北欧神話系とかの聖遺物は

名前の確認からすでに難しいんだけど、ガングニールは奏ちゃんに適合したからすぐにわかったの」

 

「なるほど、適合者の歌から逆算することが可能なんですね」

「そう言う事よ!」

左手のコーヒーカップを揺らしながら

人指し指を青年に向ける了子

 

「随分な聞き上手なのね、もうこんな時間だわ…そうだ♪」

コーヒーカップを置いた了子は

俺に向けて微笑みながら問う

 

「ねえ、貴方今何歳?貴方さえ良ければだけど、研究部門でココに来ない?貴方となら良い物が作れそうな気がするの!」

「俺と、ですか?」

 

聞き返されて、コクンと頷く了子

「…俺は…」

 

今何歳か、なんて把握していない

前世の年齢と違ってこの体は若い…

前世も19だったけど

 

「……あーっと、西暦で20〇〇生まれだから…」

「今15歳ね?となると少し先の話になっちゃうけど、貴方なら大歓迎よ!」

了子は最後に握手を求め、応じた青年が右手を差し出す

 

「じゃあ未来の同僚としてよろしく!」

「よろしくお願いします、聖遺物研究の第一人者さん」

 

笑顔で握手を交わした二人は

そのまま別れて

 

「で、民間人なのにほっつき歩きすぎですよ」

 

壁の陰から出現したOGAWAに注意された

「あはは…すいません、櫻井さんにぶつかっちゃって、そのままつい話し込んじゃって…」

「全く、機密事項の説明と確認だって手間なんですよ?送迎の車だって必要ですし」

「え?それいります?だってここ

リディアン音楽院の地下ですよね?」

 

「!!?」

感情を揺るがせるものの、

一瞬で動揺を隠したOGAWA

 

(あ…ヤベ、やっちまった

ついハイになって言っちまった…)

 

本来なら、青年はまだここがリディアンの地下であることは知らないはずなのだ

 

「どう考えたらそうなるんです?」

「え?だって…人間コンパスの技能持ちなので、曲がった回数と移動距離を覚えていただけです

 

それに地下なのは採光窓も換気窓も無い時点ですぐ分かりますし」

 

今考えた理由を説明して、緒川さんを見ると

やはり驚愕の表情になっていた

 

「凄まじい技能…惜しい…」

 

なにか小声で言っているが

なにを言っているのかは…聞こえている

 

「いえ、そこまで知られてしまった以上は、通常の措置で解放というわけにも行かなくなりましたし、」

OGAWAが悩み始めた直後

 

「どうしたこんな所で」

 

それは訪れた

 

「君は?」

青年を視線を合わせる大男.そう

OTONAの異名を取る元祖SAKIMORI

シンフォギア世界最強の男

風鳴弦十郎そのひとである

 

「…えっと、」

「現地で保護された民間人…な筈なんですけど…」

OGAWAが言葉を濁す

それを不審と取った弦十郎は

「どういうことだ?」

緒川に問いを続ける

 

「と、とりあえず…」

チラッと青年を一瞥する緒川、その僅かな所作で察したか、弦十郎は青年を別室に移動させて

緒川と会議室?らしき部屋に入る

 

(多分場所が割れたとか身元不明とかって話だろうな…あぁ、暇だ…)

しばらく面倒ごとが確定している青年は

諦めた顔で椅子の背に身を預けて…

 

「imyuteus ameno-ha bakiri tron」(イミュテェウス アメノーハ バキリトロォン)

だったわなぁ、と笑いながら

出来るだけ高めな声で翼の天羽々斬の聖詠を真似てみる

 

………当然何が起こるわけでもない

 

「croitzal ronzell (クロイツァー ロンゼェル) gungnir zizzl」 (ガン グニールズィール)

 

今度はガングニール奏version

もちろん、何も起こらない

 

そもそも、聖詠はギアを起動するための詠唱であり、ギアのペンダントが無ければ意味がない

 

俺の背後にペンダントが分解するイメージが浮かぶこともなく、もちろん謎空間も出ない

 

「………はぁ、まぁ期待はしないが

そもそも、あの格好はちょっと無いし」

 

考えるにギアは露出的観点から女性向けであり、男性の装着を想定していない…

 

「ガングニール(マリアversion)ならまだしもアガートラムとか装着する男がいてたまるか」

 

超小声で呟きながらぼーっとしていると

その部屋に入ってきたのは、

先程別れたはずの櫻井女史

 

「あら?貴方だったの、話題の人物は」

「話題?ですか?」

 

青年が怪訝な表情を浮かべて、

いかにもそれらしく偽装した声音で問う

 

「話題よ、今緒川くんと風鳴司令が保安部と会議中の」

「……おう…」

 

「男の子でしょ?変な声出さないの…さて、今は暇だし…どうしようかしら?」

「……」

 

青年は記憶持ちであるが故に

コイツがフィーネであることを知っている、だが、ここで口に出せば

OTONAが介入する前に殺さ(やら)れる

思わせぶりな口調の了子に

どう答えるべきかを考え…

 

「そうね、反応良かったから

聖遺物について話そうかしら?」

「ぜひよろしくお願いします」

 

了子(フィーネ)はペラペラと聖遺物について、それを改造して作ったFG式回天特機装束(シンフォギア )について

その起動に必要な聖詠について

事細かく、詳細に説明してくれた

 

「つまるところ、シンフォギア起動に必要なのはある程度以上の適合率と精神性なのよ、前者が足りなければギアが応えない、後者が足りなければ装者たり得ない

 

お分かりいただけた?」

「ええ、男性が使えない=ビジュアルが偏るってのは織り込み済みだったんですね」

 

実はフィーネ、この時点で

イチイバル、天羽々斬、ガングニールの

シンフォギアのイラストを青年に見せているので、不自然な指摘では無い

 

「え?…あぁ、男の子だもんね

つい視線が寄るのかしら?」

「…いえ、なんでも」

ニヤニヤしている了子(フィーネ)…性格の悪さが滲んでいるが、

 

机に半身を乗り出して顔を近づけ

圧力をかけながら言う

「実を言うと、男の子でもノイズと戦う方法がないわけじゃ無いのよ?

レゾナンス(ResoNance)式回天特機装束…まぁ構想だけの未完成品だけどね」

 

「…?男でも使えるんですか?」

「理論上ね、でも精神力を消耗しすぎて倒れるだけよ」

 

笑いながら軽く手を振る了子

 

そこへ

 

「失礼するぞ」

OTONAのご入室である

 

「君、ここが何処にあるか当てたらしいな」

「え?リディアンじゃ無かったんですか?」

「いや、その通りだ…まぁ残念ながら、そのおかげで君は特級の機密に触れてしまった事になる

通常の措置で解放とは行かなくなってしまった

 

と言うことでだ…君、二課に来ないか?」

 

「ここに、ですか?」

「そうなる、まだ子供だと言うのに、一生檻の中、というのは流石に忍びない

 

ついでに…君の周辺について調べさせてもらったのだが…まるでわからない

挙句痕跡すらないんだ」

 

真剣な表情でこちらに視線を送ってくる弦十郎

 

「君の名前、住所、家族構成と言った基本データから、医療の観点からの情報も、住基ネットも、プリペイドカードなどの購入履歴、クレジットカード作成履歴、銀行口座まで一切のデータがない

 

これは本来言えないが、駅の券売機のカメラなどにも過去一月以上一切写っていない

君に関しての情報が、まるで抜け落ちたように存在しないんだ」

 

 

「君は一体、何者なんだ?」

「…僕は………何者なんでしょうね

 

ただ一つ言えることは…無戸籍の人間は、政府にとっていない事になっている」

 

無表情のまま、淡々と答える

 

「それだけですよ」

 

青年の姿は、まるで亡霊であるかのように茫洋として、目を離せば消えてしまいそうなほどに儚げだった




次回!返答は…
デュエルスタンバイ!


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第5話 答えは……

「身分の一切を証明できないこの身でも、受け入れるというのなら、その時は」

 

青年はふわっとした笑顔を浮かべると

「よろしくお願いします」

 

そう、言い切った

「そうか!受けてくれるか!

よし!………とはいえ、まずは対外的に君の身分を用意しなければならないな」

 

OTONAは流石の反応で思考を再開し

身分の作成を提案してきた

 

「無戸籍はいろいろ面倒ですからね」

笑いながら応じる青年

 

「無戸籍だったの?!」

「はい、出生届が出されてないので」

 

この世界では提出されていないため

たしかに無戸籍ではある

 

嘘ではない…ただし100パーセント

真実でもない

 

「うむ…特異災害対策機動部二課

司令官として受け入れる、これは保安、人事、営業、機動部、司令、研究室の四部門二室の総意として決議済みだ

 

…ところで君、名前はなんというんだ?」

「………僕は…」

 

 

前世の名前を安直には使えない…

確か、この世界は名前に音楽関係が入ってると死なないんだったよな?

 

奏は例外

 

拍木統慈(カシワギ トウジ)、歳は15です」

 

名前は前世の名前の読みを流用した当て字であるが、苗字は拍子木から取ったものだ

 

(これで生き残る!)

名前から既に死にそうなのだが

モブ感を漂わせる名前を出して生存を誓う青年=統慈

 

「そうか、もし名もないと言われたら、俺の養子ということにでもして置こうかと思っていたが、良かった」

 

流石にKAZANARI姓は勘弁である

 

統慈如きがSAKIMORIになどなれるはずがない

「…僕としてはそちらの方が良かったかもと思いますがね?…まぁどちらでも変わりはしませんが」

 

「む、まぁ、君が変わることはないだろうな、まぁ、話はそれだけだ

正式に身分を用意してからニ課に所属してもらう事になるから

今後しばらくは出られんが、それも戸籍と身分を用意する までの間だ、辛抱してくれ」

 

「えぇ、構いませんよそのくらい

もともと無戸籍の非合法民(モグラ)でしたし、地下は慣れています、それにここは、面白い話が聞けそうです」

 

統慈が笑う、それは先ほどのボヤけた笑顔とは違う、明るく、優しい微笑みだった

 

「ねぇ、さっきから私が空気なんだけど?その辺りに配慮は必要よね?」

 

隣から伸びてきた腕が統慈の首を捉えて、抱き寄せる

「ほぉら、私がメインヒロインですよ〜?」

「ンなわけあるか!」

 

どっちかというとラスボスである

統慈の頭を撫でながら刷り込みのようにメインヒロインは私〜と囁く了子

流石に嫌になって藻掻く統慈

 

「なんだかなぁ…」

呆れたような目でそれを見ている弦十郎

…ちょっと不憫である

 

「研究室側としては引き取りに同意していたけど、この子の立場はどうなるのかしら?私の預りでも良いのよ?」

 

「いや、特別所属という形になるな

彼自身、身体能力には光るものがある、鍛え上げればそこそこ以上になるだろう

 

強襲なんてやらせる事は無いと思うが営業以外の3部門と司令、研究の二室の五種類の業務はどれも人手が足りんと訴えるし

しばらくはどこに適性があるかを見極めるために全部を回ってもらう事になるだろう」

 

「わかったわ、研究室側として

彼は欲しかったけど…一番適性があるところに居た方がいいわよね」

 

大人として物分かり(ひきぎわ)良は(見極め)を見せる了子は

統慈を離して、

 

「そういえば、部屋の割り当てとかはどうするの?地下施設だし、そんなに空いてないわよね?」

「そこは一応用意してあるぞ、

拍木君、付いてきてくれ」

 

そのあと、普通に部屋に案内された後

OTONAは

 

「殺風景だが、最低限の生活用品は置いてある

…元々は仮眠室のような使い方をされていた部屋だから少し狭いが、許してくれ」

「いえいえ、寝られれば十分ですよ」

 

「そうか、明日あたりに君の職場、生活についての説明を行うから、今日はゆっくりとしていなさい

 

予定はあるかな?」

「いえ、今日は日雇いバイトは入れていないので、大丈夫ですよ」「うむ、ではまた明日だ」

 

OTONAは爽やかに去っていった

 

…どうあがいても暑苦しいが

 

その後、なぜか再び来た了子に押されて

部屋で聖遺物の話になった…

 

(話しすぎだろ…)

「ブリーンシンガメンは北欧のフレイアの首飾りとされているのだけど、この形[炎の黄金珠]または[燃え盛る玉の首飾り]はブリーンシンガメン自体が燃えているのではなく、その形状を示すのだとすれば

輝夜姫が求めたとされる[龍の首の珠]と一致するのよ、炎の穂先の形をした珠と表現するか、水滴型と表現するかで洋の東西で別れるのが興味深いけど

 

[黄金の勾玉]型であるとすれば

どちらも同じ形になるわ、美を与える物であり、首飾りであり、絶世の美女が求めたとされる点も一致する

 

[龍の首]が何を示すかは…おそらく異国人でしょうね、つまり[聖遺物・ブリーンシンガメン]を[五宝・龍の首の珠]とすれば、ほかの五宝も自然と読めてくるわ」

 

その後、据え置きの時計で11時になるまで話は続いて居た…

 

何なのこの人…

 

「久し振りにここまで語れたわ♪」

テンションを上げたフィーネ嬢は一部異端技術(ブラックアート)までバラしている事に気付いていなかった

 

(一杯のコーヒーとは釣り合わなかった…まぁ異端技術のことも聞けたし、linkerの材料と調合法まで聞けたから良しとしよう)

正確には『LiNKER』であるが、統慈は普通に間違えている

 

「完全聖遺物の話とシンフォギアの話とlinkerと…まぁいろいろありがとうございました」

「いいえ、こっちこそ

楽しく話せたわ ありがとう」

 

去っていく了子を見送りながら

ベッドに倒れこむように寝る

 

「っばぁぁー、疲れる!」

完全に素が出ている統慈は笑いながら背を立て直し、『やっと原作に一枚噛めた』という小さな達成感とともに右手を握る

 

そこに…OTONA襲来

「そういえば、明日検査等も行うつもりだ、レントゲン撮影や採血等も行うからな

もし何か異常があったら知らせる、場合によっては相応の措置をとるから、了承を取る必要があってな」

「わかりました、よろしくお願いします」

 

一瞬にして表情を殺した統慈の声は

全くもって平然としており

統慈は自身のハイスペックなボディに感謝する事になった




次回、精密検査
ライディングデュエルアクセラレーション!


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第6話 精密検査

翌朝になり、6:30

 

統慈は職員がセットしていたらしい目覚まし時計に起こされた

 

「…クソ…最悪な目覚めだ…」

騒がしいアラームにガンガンとノックされる頭蓋は鈍痛を発し、尚更に動きを鈍らせる

 

「仕方ない…起きる」

 

無理矢理に体を起こして

伸ばした腕で目覚まし時計を止める

 

普通にボタンノックで止まってくれるタイプだった

 

「ごぁぁあ…はぁ」

 

統慈は部屋を出て、ゆっくり歩き

すれ違う人に挨拶しながら

司令室を目指す

 

「失礼します」

「…おう!来たか!」

「はい」

 

 

司令室に入ると、そこにはOTONAと

了子、緒川、さらにSAKIMORI(予定)

ノイズ絶対殺すウーマンという

初期メインキャラ勢揃い、

 

そして、一番驚くべきは

 

「なんで5部門の部長級が揃ってらっしゃるんですかね…」

 

そう、人手が足りないという全部門、全ての部長級が揃っているるのだった

 

「お忙しいことで、全く」

 

小声で呟く統慈

 

「いやいや、全くもって忙しいですよ」

背後からの声、それは緒川の声だった

 

「フロント側兼任のオペレーターですからね、ツヴァイウィングのマネージャー業も忙しいですし、仕事量も比例して増えるってものですよ」

 

「お疲れ様です」

 

背後から歩いて来た緒川の語り

その表情は完璧に平常だが、やはり本人的には疲れているのだろう

 

「さて、今日は各部門への挨拶とある程度の機械操作の説明…と行きたかったところですが

検査や就業時間等の説明が先に入ります」

 

自分が先導しますので、と歩き始めた緒川に統慈は慌てて追従する

 

営業以外の5部門への挨拶に1時間以上かかるとは思わなかった

 

「…以上で終わり、にはなりませんよ?

これから公的身分の説明と就業時間、環境の説明、書類の作成と検査…まぁいろいろありますから」

 

笑顔で言い切る緒川に、はやくも帰りたくなる拍木

 

「書類までは……終わった…」

結局5時を超えてしまった

「………仕方ないか…」

 

緒川の移動が早すぎて常に駆け足で追いかけるような状態だったが、

まぁそれも終わりだ

 

「最後に、検査ですよ

身体検査と内科検診、最後に採血、こちらもだいたい1時間で終わりますよ」

 

緒川が忍者じゃなくて悪魔に見えて来た

 

「それじゃあ検診始めるわね」

「よろしくお願いします」

 

検診を受けに医務室に移動した統慈を待っていたのは、原作に登場しない…と言っても描かれていないが存在は示唆されている役職だった

医務官の女性、名前を悌 明美(オモカゲ アケミ)

 

その姿は、黒髪ストレートロングのほっそりとした、165くらいの身長

その容姿は、前世の統慈の母親とまったく同じだった

 

(表情を取り繕う技術は上がってるよなぁ)

 

驚愕を取り繕いながら

検診を受ける、まずは問診から始まり

脈拍、血圧測定、寄生虫検査

そして採血へと進む

 

「じゃあちょっと痛いですけど

我慢してくださいね」

無言で頷いて、左腕を出す

 

「はい、おしまいです…あとはこっちで機械検査するからね、帰って大丈夫よ」

「わかりました」

 

席を立って、袖を戻し

部屋に…いや、司令室に向かう

 

「もう夜ですよ、18時ですよ…」

採血で血液量が減ったからか、書類がどうこうに気をすり減らしたか

ぼーっとする頭を抱えて入室

 

その瞬間

「それでは!新たな仲間!拍木統慈君の歓迎会を始めるぞ!」

「…………は?」

 

フリーズした

「さぁ、今日の主賓、席にどうぞ」

「…はい」

 

とりあえず誘導に従って席に座り

クラッカーの炸裂音に軽くビクつく

 

「そういえば…」

(宴会好きだったなこの人、今思い出したよ)

 

この人は格闘どころではないバトルスタイルの印象が強すぎて前線に出ないのに前線指揮官として認識していたからである

 

「せーの!」

《就任&誕生日おめでとう!》

 

(…………は?誕生日?たしかに覚えていないとは言ったがそれはこの体の話であって……ダメじゃん)

 

自分で混乱して自分で納得するという器用な行動をとりつつ、表情は平常に保ち

「みなさん、ありがとうございます」

とりあえず一つ、コメントを送る

 

「主賓入場のサプライズも終わった事だし、サッサと食おうか!」

二課も忙しいと言いつつわざわざ司令室の大改装までしておきながら食事とは、全く恐れ入るが

それ自体は嫌いじゃない

「とりあえず…乾杯の音頭を風鳴司令にお願いします」

「おいおい、俺が取っていいのか?…まぁいいか!統慈の就任を祝って、乾杯!」

《かんぱーい!》

 

みんながみんなテンション高い訳ではないようで、流石に冷静に、もう飽きた、という目をしているものも居る

逆に毎回楽しんでいるような奴もいる

 

(個性的な職場だなぁ…まぁ戦闘中に歌うくらいだし、それもそうか)

 

統慈は手元のシャンメリーで乾杯に応じる

……流石に未成年に酒を飲ませるような公的組織はないようだ

 

「まぁ、いいか」

 

………結局パーティは22時くらいに自然と解散になり、弦十郎率いる有志が二次会に繰り出していった

 

一方統慈は部屋に戻り、未だ殺風景な部屋をどう綺麗に保つかを考えていたりする

統慈、実は片付けられていない部屋や秩序立てられていない数式などが大っ嫌いであり

即刻正そうとするタイプなのだが

 

収納に対して物数が多いと

どうも部屋内装側に露出してしまうものもある訳で…そういったものを避けられないホコリなどからどう保護するかと悩んでもいる

 

「ようやく一日終わった…この調子でやってはいられないぞ、疲れ果てる…」

 

そう言い残して、統慈の意識は闇に沈んでいった



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第七話 偶然

統慈は翌朝に

とりあえず司令室に向かう

 

「この世界は不用意に歌えないからちょっと辛いよなぁ…おはようございます」

 

「あぁ、おはようございます」

今日は生活用品の買い出しと、事務の予定だ

(ゲッター+SEED+マジンガーの大人勢に四六時中監視されてんのは生きた心地がしないよなぁ)

 

ただでさえニンジャだったり超人だったりするオペレーターや武器開発に携わるラスボスがいる二課だ

 

安全ではあるかもしれないが

そんな所にいては人間性が死ぬ

 

「んじゃあー買い出しの方に行ってきます」

「おう、緒川が付いてるから何かあったら遠慮なく言ってくれ」

「はい」

 

結局OGAWAは外せなかったようだが

諦めることにした統慈は

エレベーター(カ・ディンギル)に乗り込み

超高速昇降するエレベーターに重力加速度の勉強をさせられた

 

「ぬぉぉぉつ!わすれてたぁぉっ!」

最後のぉっ!は突然停止したエレベーターの中で若干浮いたから出た謎の声である

 

「はぁ、はぁ、よし、大丈夫」

統慈はゆっくりと息を整えて、

シンフォギア世界の厳しさを実感しながら

学院の外に出る

 

呼吸すらも満足にできないとは流石モブ厳である

 

「生きてれば勝ちだ、

さぁて、まずは衣類と家具系を買うから…ニ○リかコスト○か、ヨーカ○ーとアリかもしれないな」

 

軽く頭の中で計算しながら

道を想起し、なかなか遠いので

統慈はまずレンタルバイクを借りることにした

 

効率を考えたら車がいいのだが

コストが高いため金銭の浪費につながるし、そもそも免許がこの世界で適用できるか分からないからである

 

「さて、チャリレンタル…は」

約1.5キロほど離れているが、まあまあ歩く程度で収まる距離である

 

「よし、行こうか」

……………三時間後

 

「帰りましょう、早く、疲れた」

統慈はチャリを返却し、

重い荷物を持って移動していた

 

「あの、大丈夫ですか?重そうですけど」

「…僕なら大丈夫ですよ、

このくらい 平気、へっちゃらです」

 

無理に笑顔を作りながら声の主人へと振り返り…立花響(主人公)と目があった

 

「お父さんとおなじ……」

「んじゃあ僕はこれで」

 

コイツに関わるとロクなことが無い、と考えてさっさと立ち去る統慈

 

紛うことなきクズの所業である

 

「あ…名前、聞き忘れちゃった」

 

呟く響を置いてさっさと立ち去る

「…………立花響(主人公)…」

 

(危なかった…あのままいたら

確実に絡まれていた)

心の中で派手に深呼吸しながら

さっさと離れる

 

 

(ネフィリムをネフィ/リムにしたりするお仕事がのこってるんだからな、原作開始前から無闇矢鱈に介入すると針穴通し並みの精度で精密に生き残ってる響が死ぬ可能性大だし)

 

大きく言えば、

原作開始前に響が死ぬルートは

ノイズの襲撃、交通事故の二つなのだが

これは原作開始まで響を放置していれば

確定回避される現象である

 

ライブでガングニールの破片が刺さるまでは絶対に無事なのである

 

「一応、まぁ、用は終えたし」

さっさと急いで帰る

多少荷物の重量が統慈の腕に堪えるが、その程度はこの場を素早く離れることに対して何の優先度もないのだから

 

「…よし、帰り着いた」

 

(またカ・ディンギルか…)

これで何度も何度も往復するのは

精神的によろしく無いと思う統慈だが

それを愚痴ったところで

どうにかなるようなものではないため

黙して乗り込む

 

「せめて最小限の使用で済ませたい…」

 

必死で落下に耐えて、下に降りる

「ようやくだ…」

 

湧き上がる吐き気を抑えながら

荷物を抱えなおして部屋へ戻る

 

「お疲れ様でした」

部屋に入ってから、自分と

緒川さんに礼を言う

 

「こちらこそ」

 

藤尭さんと友里さんにも

帰った旨を伝えないといけないため

荷物を置いて司令室へ向かう

 

「お二方、お疲れ様です

ただいま帰りました」

 

「あぁ、おかえりなさい」

「おかえり、統慈君」

もっとも、軽く挨拶を取るだけで済ませたが

 

その後はすぐに事務の方に行き

書類の処理を教えてもらった

…教わっただけで17:30を過ぎて

終業時間を超えてしまった

 

「…今日はもう遅いから部屋に帰りなさい」

「はぁい、わかりました」

 

書類処理で半日終わったなんて

不甲斐ないことだ…

 

(すまない、本当にすまない)

統慈は帰れと言われてしまった手前

無理に残業をするわけにも行かず

そのまま部屋に帰った

 

翌朝

 

「とりあえずリディアンまで繋がる徒歩用階段を発見する事を目的としよう」

 

…統慈は絶望的な表情で高速エレベーターを味わって死んだ目になっていた

 

それも一往復分である

やったことそのものは了子(フィーネ)のおつかいでコーヒーを買いに行っただけであるが

 

司令に少しは外に出ろと言われた際

蒼白な顔になったのは誤魔化せなかったようだ

 

「だからって外に放り出すのは…ダメだろ…」

 

統慈は路上を散策しながら呟く

…そして、その奇妙な音を聞いた

 

それは雑音

 

それは警告

 

そしてそれは、絶望の音

 

「ノイズ!」

周囲に突然出現するノイズ達

 

統慈は拳を固めて…

「すぐに離れてください!ノイズです!」

全力で叫んだ

 

一拍遅れて、悲鳴が響きわたる

一斉に道路を抜けようとする人達

 

ノイズから離れるために他の人を見殺しにして、自分は生き延びようとしている

………

 

(生物として強靭な個体が生存するのは当然な事だ…それを咎めることはない…筈だ)

統慈は無意識のうちに一歩ずつ

前へと踏み出し始める

 

ノイズが獲物を見つけて、一斉に殺到する

 

「来い…俺の元へ……来い!」

 

統慈自身はなぜか炭化しないことは

先日の戦闘で確認されている

……なぜかは不明だが、現状一番被害を少なく抑えるのはそれを利用することで

被害を統慈だけに一極集中する事だ

 

「はぁっ!」

押し殺した声とともに

ノイズに拳を叩きつける

 

腹を撃ち抜かれた人型(アイロン)ノイズは炭へと成り果てて消えた

 

「…ふっ!せぇっ!」

実体化の瞬間、確実に、一撃

全力を叩き込む

 

そこまでしてようやく撃破できる

尋常ならざる集中と認識力を要求されるその繊細極まる作業を続け

ある程度ノイズを消して

 

避難が大方終わったところで

「imyuteus ameno habakiri tron」

 

翼の聖詠が歌われる

統慈ノイズの群れの中から急いで離脱し

翼の視線から隠れる

 

一方的な蹂躙が、幕を開けた瞬間だった



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第8話、原作の足音

一瞬にして、カタがついた

ただ一人で全てを薙ぎ払って行くその姿はまさに剣…なのだが、

まだ彼女は相方を失っていない

つまりはコレが彼女の素という事なのだが

 

………それにしても強くないだろうか

「ドラクエの適正レベル倍オーバーみたいな蹂躙だった…」

 

統慈が引き合いに出したのは、1ターンキル連続で作業になるアレである

 

「お疲れ様、翼さん(ズバババン)

 

「あ、貴方は…?」

「最近二課に配属された…拍木統慈だよ

字が分かりづらいけど、

拍子木(ひょうしぎ)って書けばいいよ」

 

笑顔で歩み寄り、翼の手を取った

 

「お疲れ様、守ってくれて、ありがとう」

 

避難は済んでいるため

目撃者はいなかったが、

いかに年下に見える少年が相手であろうと

これはコレで悪質なメディアの手に掛かれば、もしや恋人!?とばかりにセンセーショナルなスキャンダルになりかねないネタであるので

 

翼はさっさと手を離す

 

「…うん、お疲れ様

遅れてごめんなさい」

「いいや、最速で駆けつけてくれたんだろ?なら遅いと責めるのは筋違いだよ」

 

統慈は軽く翼を励まし

被害者(すみのかたまり)の身元確認を図る

 

せめて最後に、

遺品だけでも届ける為である

ノイズに襲われた人は顔や体型で特定できるような状態の死に方をしないため

身元確認は難しいが

財布や免許証などから少しずつ身元を破り出そうとしていると、

 

「あとは我々が引き継ぎます」

「お疲れ様でした」

 

黒服の方々…

一課所属の現場検証班である

実働の方の担当である一課、情報担当兼、表に出やすい一課では扱い辛い兵器…シンフォギア運用によるノイズ駆除を行う二課

 

と分担している以上

やはりぶつかるところはあるようで

一課と二課の所属員がバッティングすると、まれに管轄外に口を出すなと諍いになるのだが

 

現場検証班や捜索員さんに限っては

シンフォギア装者など、

二課人員に接する機会が多い為

むしろ仲は良い方だ

 

「お疲れ様です…翼さんも」

「はい、お疲れ様でした…拍木さん」

「了解、お送りします

 

といっても、車使えないんで

緒川さん呼ぶんですけどね」

 

体を張ったジョークでおどけてみせる統慈だが、残念ながらタイミングも場所も良くない

翼の側もあまり笑える気分ではないようで、緒川さんが来るのを二人して待つ…必要はなかった

 

「もう着いてますよ、車回しましたから、最低限のガードは宜しくお願いします」

「了解」

 

統慈の声は明るいが、実際の表情は暗い

「最低限のガードって言われちゃいましたし、とりあえずは僕がお付きをやるんですかね…緒川さんと違って俺はニンジャじゃ無いんだけどなぁ」

 

「仕方ありませんよ、

あの人は次元が違いますから」

 

「あはは、っと、もう来ましたよ」

「はい、もう来てますよ」

 

背後の陰から出現する緒川さん

流石エリートマネージャーだ

 

「じゃあ後は僕がお送りします…何してるんです?統慈くんも来てください」

 

「えっ」

「何がえっですか、車使えるならまだしも、15歳の少年を放り出してなんかいられませんよ」

「…拍木さん、早く来てください」

 

翼さんからも言われてしまった

「じゃあ、すいません、お世話になります」

 

そのあと、流れで助手席側に乗って

一緒にリディアンの地下まで送ってもらった

 

「ぇぅぅ…まいかい…これだよ…」

「慣れないとキツいですよね、お疲れ様です」

 

(防人語じゃない翼さん…)

統慈にとっての翼さんは大体防人語の謎の語彙を振り回す人なのだが

現時点ではまだ防人に目覚めていないため、普通に女の子らしい口調をしている

 

いくつかの運命分岐を乗り越えれば

そのままの口調でXVまでたどり着くことも可能であるが、最寄りの分岐点は現状において

奏生存or死亡ルートの分岐であり

まだ当分先である

 

「死ねる…まぁ、頑張るんですけどね」

 

姿勢を直して深呼吸して

 

「あっ、コーヒー…買ってきたのに…」

 

ノイズによる突然のサプライズで無くしてしまった…こういう時は災害保険降りるんだろうか

 

(まぁ、仕方ない

正直に言おう…あと、まずは

司令にノイズの出現と現場に居合わせた人間からの報告があるからそれをやってかないと)

 

統慈は気を取り直して

司令室に向かった

 

 

 

翌日

 

「コーヒー買い直しかよ…当然だけど」

 

インスタントもついに切れたため

ショッピングセンターに再度購入に来ていた

 

「ついでにちょっと服も揃えないとなぁ」

 

この体は別段貧相と言うわけではないが、筋骨隆々というわけでもないので、普通にフリーサイズでいいと思うのだが

 

どうも了子さん曰く

自分の体に合った服を着ているほうが良いらしい

 

(うるせえよ裸族…なんて思っちゃいないがな)

1期にサービスシーン…という名の拷問を叩き込んだあのフィーネの助言なんて聞きたくはないようだ

 

「えっと、インスタントの奴とコーヒー豆の奴、両方指定されてるんだよなぁ」

 

どうもコーヒーにこだわりがあるようだ

 

目的のブツを買い終えて引き上げようとするその時、少女の泣き声がショッピングモールに響く

 

「……チッ!…」

 

統慈は軽く舌打ちしながら

騒がしく泣く少女に歩み寄る

「…おい」

「うぇぇぁぇぁ!」

 

「おい」

「ぴぃいぇぇぇん!」

 

「おい!」

「うぇぇぇぇええええん!」

「もう泣くなバカ!」

 

泣き叫ぶ甲高い声を止めるために少女の頭を押さえる

「何があったか、話せるか?」

 

統慈がいくら声をかけても

ますます泣き叫ぶばかりの子供に

人は遠のいていく

 

そこへ

「あの、大丈夫ですか?」

 

立花響(主人公)…参戦!

 

「うん、この子が泣いちゃっててさ

話を聞こうにも答えてくれないんだ」

 

向いてないのかなぁ…などと呟きながら後を任せようとしてそっと離れる統慈

 

その瞬間

 

「ん!」

突如泣き止んだ少女が統慈の服(青チェックの白いカッターシャツ)の裾を掴む

 

どうも離すつもりは無いようだ

「…仕方ないか…」

統慈は暗い表情で呟いて

無表情を作り直す

 

その間に響は少女の前に屈みこんで視線を合わせ

 

「えっと、お名前は?」

「…みらい」

 

少女から情報を得ていた

鳥居大路未来(とりいおおじ みらい)ちゃんね、うんオッケー」

 

なかなかぶっ飛んだ名前だった

 

「じゃあみらいちゃん、お姉さんとお兄ちゃんが一緒にお父さん探してあげるね」

「うん!」

 

その流れはあまりにも自然で

巻き込まれていることに気づかない程だった

 

「っておい!僕はどうして巻き込まれているんだ!?」

「一緒に探してくれないの?…」

 

目に涙を浮かべながらこちらを見つめる少女の声に屈した瞬間だった



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第9話 響と

響といっしょに

子供を連れて歩くこと数分…

 

 

「パパ!ママ!」

子供というのは現金なので

両親を見つけた途端に繋いでいた手を離して走り出し、親の元へと飛び込んで行く

 

「………」

「よかった…見つかったんですね」

「…よかったな」

 

一瞬言葉を詰まらせて

沈黙していたなんて言えなかったようだ

 

娘を抱きしめる両親を見ながら笑う響

「あのね、あのお姉ちゃんとお兄ちゃんが一緒に探してくれたの!」

 

子供が何事か言っているうちにさっさと退散させてもらおうとして振り向く統慈に後ろから声がかかる

 

「このお礼は必ず!」

「……っ?!いえ、結構です」

 

父親の方が統慈に詰め寄り、

手を取って握り、意地でも離さん

とばかりに力を込めてくる

 

「そう仰らずに!ねっ!」

「………はぁ」

 

チラリと隣を見れば響も似たような事になっていた

 

「………結局、万札押し付けられてしまった…」

「ええっと…」

 

家族が去った後、使い道に困る金を抱えて困惑する統慈と響だったが

「なぁ、アンタ」

「ふぇ?私ですか?」

 

「あぁ、そうだよ…ちょっとそこのファミレスでも寄らない?」

 

大胆にも主人公を誘う統慈

 

ちなみに、この時の統慈の頭の中はすでにストレスで焼き切れているため、自分が何をしているかほぼわかっていない

 

「…アッハイ」

そろそろ昼頃であり、響個人としてはふらわーで食べるつもりだったが食欲に負けたようだ

 

フラフラと知らない男について言ってしまうあたり、防犯的意識に欠如を感じる

 

「さて、ついて来てくれたな

万札出すから、そこそこの量なら食えるだろうし、遠慮しないでね」

 

テーブル席の対面で笑いながら

響にお品書きを渡す統慈

 

ちなみに、軽く話しながら聞き出した情報によると、響は休日に服を買いに来ていたらしい…それで雑貨コーナーあたりまで来ているのは謎だが

大型のショッピングモールだし

色々回りたくもなるのだろう

 

(運命の修正…とか言わないよね?)

「そっか…じゃあ災難だったかな?

引き止めちゃって」

「いえ!また会えたので、

むしろお話できて嬉しいですよ」

 

(笑顔の響…あぁメンタルが…)

 

浄化されている統慈は置いて

真面目に話を続けると、

今日は小日向未来…393は家族と一緒にお出かけだそうだ

 

まだライブ事件前であるのに

一緒にいない理由はわかった

 

「俺もなんか頼むか…」

さっさとメニューを見て、即決し、

響に確認をとってボタンを押す

 

「パルマ産生ハムピザひとつ、

ミラノ風ドリアとガーリックポテトをひとつずつ

ドランクバーを2つ、デザートに

コーヒーゼリーを一つ」

 

2500円程度に抑えるようだ

 

響はドリンクバーをセット注文された事で更に上乗せを考えて…流石に悪いかと思い直したようだ

 

「ええっと、まずは…」

 

色々と注文しつつも、

ちゃんと予算内に収めているあたり

頭の回りも遠慮もある

 

本当に遠慮なく注文するなら

焼肉屋のような形態でなくファミレスでは店を変えて梯子する所までセットとなる

 

「以上でよろしいですね?」

「「はい」」

少々顔を引きつらせながらも

注文を確認して引っ込んで行くバイト青年を見送り、ちょっと憐れむ

 

あれはまず注文内容の再確認を要求されてしまうだろうからなぁ

 

「さて、まぁ注文は済ませたが

君の方の話が続きだったね」

 

ライブ前ということは、

13歳程度なのだが、なぜかすでに15歳前後と言われてもおかしくは思わない身長を持っている響に、軽く話を促す

 

「ええっと、どこまで話したっけ?」

「ツヴァイウィングがどうこうまでだよ」

 

この時期ということは、

そろそろライブがあるころ…というかライブまでに残る時間は既に三週間であるが、

統慈は全くもって知らない

 

「私じゃなくて、未来が誘って来たんだけど、ライブがあるんだって」

「…ほう」

 

「チケット余っちゃったって言われてね、一緒に来る?って」「なるほど」

 

(まさか…まさか…ね)

()()である可能性を考えて統慈が冷や汗を流していると、先ほどのバイト青年が料理を運んで来た

 

「失礼します、こちら…」

 

大量すぎて5、6往復することになった青年は、最後の方はもはや辛そうだった

「…料理きたぜ、食べようか」

「はい!」

 

「「いただきます」」

 

二人して手を合わせて、それだけ言い切った後はもう目の前の料理に集中する響

 

………

1時間後

 

「「ごちそうさまでした」」

 

7:3くらいで響が食べていたが

ちゃんと予算内に収まっている

やっぱり良い子だ

 

「…ふぅ……ってもう結構経っちゃってる!」

「…あ、そういえば1時間くらい過ぎてるな、どうする?直帰するかい?」

「はい!、あ、その前に」

 

統慈に向けて携帯を出してくる響

「連絡先!交換しましょ!」

「…良いけど」

 

支給品の青い無地デザインのガラケーにはセンスの欠片もないため、あまり見せびらかすようなものではないのだが

 

「はい、これで良いかな?」

「はい!」

 

ピロリン!という音とともに

空メールが届く、

それを電話番号に登録して

 

「よし、オーケーだ、掛けるよ?」

「はい!」

 

確認のために一回電話をかけ

響と繋がることを確認して

 

「ありがとうございました!」

「…またね」

 

支払いを済ませて店から出る

もう2度と来るなと言わんばかりの目でこちらを見るレジ店員をよく見ると

先ほどのバイト青年だった

 

「ご利用ありがとうございました」

 

事務的な挨拶も声が乾いている

 

「じゃあ響ちゃん、お別れだよ

俺も帰るから

……知らない男に声かけられても付いて行っちゃダメだよ?」

「行きませんよ、失礼です」

 

「…俺にホイホイ乗せられてたのに」

「それは…!

だって知らない人じゃないですし」

 

むっとした表情になる響

「…名前素性も知らない奴は知らない人で良いんだよ、んじゃな」

 

「…はい、さようなら」

 

統慈は今度こそコーヒーを持って

響と別れ、リディアン地下のニ課本部に帰った

 

「………!!?!」

統慈は今更ながらに『僕何やってるの!?』と混乱しているようで、

翼と奏の二人(ツヴァイウィング)がせっかくいるのにライブの事を確認し損ねていた



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第10話 ついに始まる原作時間

なんか皆さん、絶唱させたいみたいですね…

わかりました、

次のアンケートでルート分岐です!


その後、廊下を歩いていた翼さんに確認すると、三週間後にライブがある事を聞き出せた

 

「ネフシュタン…そろそろか」

 

奏から関係者枠用の特別席…なんてチケットを渡されてしまったのは誤算だった様だが

 

「良いって良いって、どうせ他に渡す相手なんていないんだから、遠慮なく受け取っときなよ」

「…なら、お言葉に甘えて」

 

という一幕で押し切られてしまったのだ

 

まぁ、これは奏の説得力が高いからであり

別段コミュ力に問題があるからではない

 

「…そういえば、1話でクリスを確保できる可能性もあったんだよなぁ…すまない…」

 

ブツブツと呟きながら移動して

部屋に着く

 

「さて、そういえば軽く用意してた食品もあったよなぁ……えっと…奏さんにお返しでも差し入れとこう」

 

軽く用意…という名の冷蔵庫詰め込みである

 

家庭用サイズのものだが、

その中には色々と食品が詰まっていた

 

「ええっと、まずは

ジューサーで粉砕したリンゴ500グラムとトマト250グラムに、こちらは荒く賽の目切りにしたゴーヤを投入、これを濾過機に静かに注いで…」

 

『ルル・アメルでもお家で出来る!カストディアン流栄養ドリンクの作り方』

 

というキチ手引き(魔道書)に従い

手を進めて行く統慈

 

「蒸留済みの純水一リットルの煮立った湯に泥を落とした高麗人参を沈めて火を止め、適温になるまで待ったあと、湯の中で玉ねぎを出来るだけ細かく薄切りにする…時間かかるなぁ」

 

コンロの火を止めたあと、手引書のページをめくる統慈は、一瞬にして白目を剥いた

 

「これ平行作業あるんかい」

 

とりあえず生卵をボウルに割り入れ、当日の朝日を浴びたカミツレの花から直接触れずに採集した花冠を浮かべて

そうこうしているうちに

湯の温度が下がってきたため、手順A側に戻る

 

「………ふっ、終わった…」

 

出来るだけ薄くいちょう切りした玉ねぎを引き揚げて、その湯の中に塩を5グラム入れて…

 

湯が水になった頃に

Bに浮かべたままのカミツレの花を引き揚げて、これに刻んだ生姜の汁を加えてかき混ぜつつ、低温で保持し

………

 

 

もしこの状況をサンジェルマンが見たら、懐かしい…とばかりに感想を零すだろう

 

それくらい昔の錬金術じみた手順の複雑な加工を施した結果、統慈の目の前には小麦色に輝くペットボル一本分くらいの液体が精製されていた

 

「苦労に対して生成量少な過ぎない?

これ本当にカストディアン流なの?」

 

了子から借りた本だから、レシピに間違いはないと思うが、こんな事をいちいちやるのはかなりの苦労になる

 

まぁ、写真?通りの色、量の液体が生成されたのだから、成功と見て間違い無いだろう

 

これをあらかじめ買っておいた水筒に入れて…

 

「よし!栄養ドリンク完成、奏さんに渡そう」

 

ちなみに、味の方はそこそこ良好で

エール(イギリスの方で生産量の多いいわゆる黒ビール)に蜂蜜と僅かな渋みを足したような味

 

「といっても僕はエール(黒ビール)飲んだ事ないけど…まぁ、良いか」

 

十分に差し入れに持っていける味である事を確認したあとは

奏さんを探す旅である…

 

「奏さん、どちらでしょうか」

「ん?奏か?奏なら」

 

司令室にいた風鳴司令に聞けば一発だった

 

「訓練室にいる筈だ、もうじきライブだからな、LiNKERを断っているから、訓練も短時間にしているだろうし」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

(まずいぞ…linker無しの戦闘は負荷が激しい…それをずっと続けているともなれば)

 

まぁリンカーを使ったら使ったで毒の蓄積が起こるのだが、それを差し引いても体を壊すリスクが高いので

 

戦闘可能時間が短くなる→奏死亡までのタイムが縮む→ライブでの死者が増える

という悪夢の連鎖を少しでも削りたい統慈からすれば決して歓迎できる行動ではない

 

そもそも栄養ドリンクの差し入れだって

体調を整えておいてくれれば

気休め程度でも体を保たせることが出来るかもしれない、という打算である

 

「こうなったら…」

 

まぁ、統慈に出来ることは、訓練を減らす事を進言する程度である

「奏さん、いらっしゃいますか?」

 

訓練室に到着して、扉をノックする

 

(防音だろうから無駄かもしれないけど)

とりあえず、マナー的にノックはしておく

 

案の定無視されているようなので

サッと扉をあけて中に入り

 

「失礼します」

 

「ん?どうした?」

運良くツヴァイウィングの二人が一緒に出てくるところだったようだ

 

 

「はい、奏さんにチケットのお返しでも、と思いまして、栄養ドリンクの差し入れです、了子さんにレシピを貰ったやつなので、効果は保証できます」

 

水筒を差し出して、にっこりと笑顔を作る

 

奏は翼にニヤつかれながらも水筒を受け取って

 

「ん、ありがと、貰っとくよ」

 

「あぁ、ついでにそれ、鮮度が命らしいので早めにどうぞ…水筒の方は後でまた受け取りますので」

 

サッと出て行く統慈を見送った

 

「…で?どうするの?」

「決まってるじゃん、貰うよ」

 

パキュツという音を立てて

水筒の蓋を開けた奏は

 

そのまま中身のドリンクを一気飲み

「…んっ、結構おいしいじゃん」

 

渋みと甘みと…と味ごとにまぁ複雑な表情をしながら飲みきった後、一言コメントとともに、統慈に水筒を返すために外へ出ていった

 

「……もう、ファンからもらったチョコとか全部食べる性格は変わってないなぁ…」

 

翼も微笑を浮かべながら

奏を追って訓練室を出た

 

 

そんな事を三週間毎日続けて

ついにライブ当日の朝になった

 

ライブ会場のゲート列前で響を出待ちする不審者が一人

通報されそうになりながら

頑張って待機を続けているのだった



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第11話 ライブ開始

生死比率、15:1で奏生存ルートに突入です



「未来どこ?私もう会場だよ?」

 

電話で遥か彼方の友人に質問している響の声、間違いない、これは響の最初期ボイスだ

 

ごめん、行けなくなっちゃった

とでも言われているのだろう

 

響の通話が終わるまで、少しだけ待ち

響が電話を切ったタイミングで話しかける

 

「ん、立花じゃん、どうしたの?

なんか困りごと?」

「?…!統慈さん!なんでここに?」

 

「あれ?言ってなかった?チケットもらったから俺もライブ観客って」

 

「言われてません!」

 

響は叫んだ直後に、

周りの視線に気づいて黙り込む

 

「一緒に行こうか?席はどうなってる?」

「席はE-35です」

 

「うわ結構遠い…まぁ仕方ないか」

「統慈さんは何処なんですか?」

「僕?僕は向こうの…おっと、列動くぞ」

結構早く列が流れ出したため、

響の手を引いて歩く

 

「んじゃ、僕は向こうだから」

 

物販コーナーでサイリウムだけ購入して

手を振りながら爽やかに分かれる

 

もうじきあれが始まる

…その前に、俺はネフシュタンを保管している部屋に行き、強奪を止めるか

上にとどまって出来る限り被害を減らすか

それを決めなくてはならない

 

選択の時だ

 

(僕は…)

 

A【ネフシュタンの保管室へ向かう】

B【上に、留まる】

 

(上に、留まる)

ネフシュタン起動強奪ルートはつまり

原作通りルートでもある

序盤どころか時系列的過去で乖離を大きくすれば二年後には大問題になる可能性もあり得る

 

前提ルートを変化させないで

出来るだけ人を助けたほうが良いだろう

 

「幸い、死者の人数を減らす為に

奏さんのlinkerは持ってきてる

………最悪でも、絶唱までの時間を伸ばすくらいにはなる!」

 

統慈は階段を上りながら、

鞄の中を確認する

 

その中には

保冷剤とともにLiNKERが入っている

「よし」

 

俺はボックス席に座って、その瞬間まで

二人の姿を見届けることにした

 

そして、ついに

「始まったか…!」

流れるイントロは逆光のフリューゲル、そして、歌声と共にカウントダウンが始まる

 

観客の光らせるサイリウムとの真ん中に、ピンクと青の両翼が、ツヴァイウィングが降りて来る

 

歌う二人を見つめながら

同時に観客の持つ空気と、とある席を注視する

 

奏の声が、元気よく

まだまだ行くぞー!と宣言した直後

 

「今っ!」

会場が突如爆発する

 

そして、次々と現れてくるノイズの群れは

観客たちに襲いかかる

 

その時点で判断の早いやつらは走り出したが、やはり、逃げようとする連中は次々にノイズに炭にされて行く

 

統慈の元にも、ノイズは押し寄せるが

「…っ!」

最小限の動きでカウンターを叩き込み、サイリウムを短剣のように操ってノイズを殴り倒す

 

「…やはり、来る!」

 

Croitzal ronzell (クロォイツァ ロンゼェル)gungnir zizzl(ガングニール ヅィール)

Imyuteus ameno (イミュテーウス アメノ)habakiri tron( ハバキリ トロン)

 

翼と奏はそれぞれの歌を歌いながら

互いのポジションを把握し合い

それぞれ別の場所で戦う

 

統慈も必死で避難誘導を行い

なんとか道を整える

 

何体かのノイズをサイリウムで殴り飛ばしてしまったのは気のせいとしてもらうしかないが

 

STARDUST∞FOTONや

LAST∞METEORでノイズを消し飛ばして行く奏

 

そして、それを崩れかけて人気の消えた観客席から、呆然と見つめている響

 

「やばいっ!」

統慈はノイズをサイリウムで殴りながら

全力で走り出した

 

観客席の上、関係者用のボックスシートに残された鞄、その中のLiNKERを取る為に

 

群れをなすノイズを躱し

時に殴り崩して進む

 

「ようやく、届いた!」

ついに鞄を掴んだその瞬間、

足元が崩れ落ちた

 

「ぬぉぉあああっ!」

 

ずがらがらがらっ!と轟音とともに

観客席の崩落に巻き込まれる統慈

 

そして、地面に叩きつけられると

同時に意識を失いかける

 

「ぐぎゅつ!」

 

体を叩きつけられて、衝撃で痺れている

しかも最悪なことに、叩きつけられた衝撃でアンプルが割れて、LiNKERを失った

 

「駆け出せっ!」

 

奏の声が遠い…

 

そして、遥か彼方では

奏が限界時間を超えて尚、槍を振るって響を助けようとしている

 

ガングニールの鋭い風切り音

そう、これは終わりの合図

 

「…っ、…!」

 

ガラリ、と瓦礫が崩れる

鋭いもの重いもの、そして軽く崩れるもの

 

種々様々なものが背を打ち、

統慈を押しつぶそうとする

 

しかし

「!っ!」

 

無理矢理に体を起こし、

統慈は足を動かす

 

その瞬間、ガングニールが砕ける

「うぁあぁあああっ!」

 

奏の声と共に、砕けた破片が飛散し

響に、地面に、背後の壁に突き刺さる

 

「おい!死ぬな!」

倒れた響に駆け寄る奏、

 

「目を開けてくれ!」

 

響に呼びかける声

「生きるのを諦めるな!」

 

それに気づいたか、響はゆっくりと目を開き

 

それに安堵した奏は、最後の歌を決意する

 

「いつか、心と体を全部空っぽにして…」

 

槍を携え、響の前に立つ奏

 

「思いっきり、歌いたかったんだよな…」

 

ノイズの群れは、

大型小型入り混じる、比類なきものであり

もはやLiNKERの一本や二本で変えることはできない状況、故に、一人でも多くを活かすために

 

赤き天の鳥は

自らの死を歌うと決めたのだ

 

「今日は、こんなにたくさんの連中が聞いてくれるんだ…だからあたしも、出し惜しみ無しでいく」

 

必勝を謳う大槍を、高く天に掲げ

崩れゆくその槍の陰で

零す涙は、誰の目にも映らない

 

「とっておきのをくれてやる…【絶唱】」

 

それは、彼女の絶唱

過去に囚われた緋色の鳥が最後に歌う

高く奏でる明日の調べ

 

「Gatrandis babel ziggurat edenel」

 

シンフォギアの機能を最大限に発揮する代わりに、装者自身も危険にさらすその歌を、奏は高らかに歌い上げる

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

(ダメだ!歌っては!)

「いけない奏!歌ってはダメェッ!」

 

覚悟の撃槍は天高くを指し示し

相方の声にも、全く揺らぐことはない

届かない声にも、揺るがない

 

「Gatrandis babel ziggurat edenel」

 

最後の一節を目前に、響がつぶやく

「歌が…聞こえる…」

 

莫大なフォニックゲインが

崩れかけたアームドギアを介して、半ば無理矢理に増幅され、循環し

奏自身を傷つけながら膨れ上がっていく

 

その悲しき歌が、響へと届いたのだ

(そうさ…命を燃やす、最後の歌)

 

「Emustolronzen」

 

その瞬間に、

統慈の目の前が真っ暗に染まる

 

(何がリンカー持ってきただ…

何が避難誘導だ…結局、何も変えられてない!ただ安穏と流されてただけじゃないか!)

 

(ならば、何を求める?)

(護れる力だ!絶望の中でも、大切なものを護れる力だ!)

 

(ならば、何処に求める?)

(何処でもない!()()()に!)

 

「fine-el」

 

(ならば目覚めよ、その力の名は

終末を封じし絶望の鍵匣(レーギャルン)

 

「zizzll…」

Laegyalun(レーギャルン)!」

 

奏が血を吐きながら笑うと同時に、

叫ぶ

 

自ら壊れようとしている槍を壊させないために、炎を封じる魔匣は目覚めた

 

贄は既に此処にある

〈捧ぐは不死鳥(ヴィヴゾニィル)、炎の尾羽は此処に在り〉

 

絶唱によって生まれたフォニックゲインを

全ての力を、反動を

全ての炎を飲み込んで

 

匣はその鎖を解く

 

「そんな…!」

奏の携えた勝利の撃槍(ガングニール)は今度こそ崩れ去り

同時に奏は気絶して倒れる

それを鍵としたように

 

匣の鍵穴の隙間から、僅かな光が溢れ出た

ただそれだけで

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

統慈の右腕に宿った完全聖遺物

終末を封じし絶望の鍵匣

レーギャルン、覚醒の瞬間であった



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第12話

その後、焼き払われたノイズ達が再出現することはなく、事態は速やかに収拾した

 

「…奏はLiNKER無しでの長時間戦闘の負荷と絶唱のバックファイアで意識不明、翼も左手に火傷、ネフシュタンの鎧は喪失、ライブ観客にも被害が出た…最悪に近い結果だ」

 

「…ライブに於いての被害は

死者.行方不明者3000人以上、もはやどうしようもないほどに大規模です」

「くっ…」

 

「…ネフシュタンの鎧を失ってしまったのは大きいわね…ノイズに対する新たな対抗策として有力視されていただけに、政府側も厳しい対応をしてくると思うわ」

 

「あぁ、それはわかっている…」

 

意気消沈する二課主要メンバー達

「………」

 

そこへ、

「司令」

 

翼さん登場である

「奏も、多数の死者も、ネフシュタンの鎧も全て、守りきれなかった私の責任です」

 

「翼っ!?」

 

いつに無くキリッとした表情の翼さんは

なんの逡巡も無くそう言い放つ

 

同時に

「ノイズの反応を検知!」

けたたましいサイレンが鳴り、藤尭が叫ぶ

「本部より距離1200!」

 

「近いな!」

「迎え撃つ!」

 

風鳴二人の、全く毛色の違う声と共に

二課は素早く警戒態勢に移行し、唯一現存する装者である翼が迎撃に向かった

 

 

「……僕、結局何も言われなかった」

 

(レーギャルンも奏さんの絶唱って形にされてたし、結局、奏さんは意識不明、

響も、多分欠片が刺さってる

 

でも、被害者の数は、多分大きく減った)

 

原作よりも奏さんが技連発する時間が長かった為、ノイズによる直接の被害者数はガタ落ちであり、かつ

さりげなく混ざっていた緒川さんや統慈達の連携した避難誘導で効率的に避難を進められた為

死者、行方不明者を含めた被害者数は原作の3割程度まで下がっていた

 

「まぁ、助けられた人も居るだけ、よしとしよう…きっと、誰もいなかったらもっと被害は大きかったと思うし」

 

非番なので、部屋で一人呟きながら

寝っ転がる

 

「ネフシュタンの在り処はわからないけど

雪音クリスの存在はわかる

 

二年後のお出ましを待ってるよ…」

 

 

翌朝

 

いつまでグダグダやってんだ早く切り替えろとばかりにノイズが発生し、素早く討伐され…さらに出現したノイズが討伐され…を繰り返して

 

いつのまにか二課は

いつもの空気を取り戻していた

「お疲れ様でした」

「お疲れ様です」

 

「さて、今日は研究室にいくの…

頑張ってね?」

「はい、ありがとうございます」

 

友里さんからの声に返事をしながら

司令室を出る

やることといえば単純だが…

内容はLiNKERの製造?である

 

「…どちらかといえばあれは調合だよなぁ…薬物だし、取扱資格取ってないんだけど…」

 

そんなことは了子にとっては

問題になり得ないようで、さっさと薬剤師と毒劇物取扱資格の認定証?を渡されてしまった

 

「…まぁ、仕方ないか…」

 

今日も今日とてlinker調合…

だけではすまなかった

 

「今日はシンフォギアのメンテナンスを実施するわ、貴方にも出来るようになってもらうからね」

「……ハイ……」

 

統慈はどこを目指しているのだろうか

それはもはや作者にすらわからない…

(メタ)

 

複雑すぎるシンフォギアのメンテナンスを聞きかじったあと、いつものようにノイズ警報を聞く

 

「またか…最近多すぎんよ〜」

「私に言われても…」

 

いくらできる女でも、元凶だから減らすわけには行かないので、それはさすがに仕方ないと言わざるを得ないようだ

 

「まぁ、色々できるようになれば

生存率も上がるわよ、若人(わこうど)なんだから頑張りなさい」

「はーい…」(お前が出してるクセに)

 

まぁモブは死んでも仕方ないし

実際有名な作品でもモブは次々に死んでいく、具体的にはクウガ

 

「…さて、あとはギアを起動状態から還元するだけよ、やってみて」

「…了解…えっと、sleepye-s (深く 眠れ )

ageyes gungner(ガングニールの鎧) zizzll(強制執行)

 

キュィィンという音とともに、光のリングに分解したガングニールギアがペンダントに戻る

 

ちなみに、正確には

基底状態返還 ギア:ガングニール 執行コードであるらしい、音声起動の理由は統慈は知らないが、聖詠と対を成す詠唱である

 

もちろんテンポなども各ギアの聖詠と同じ

 

「よしっ、良好ね…でも、これは使用者が意識不明状態だし、保管庫行きかしら」

「保管庫ですか、まぁ仕方ないですね」

 

「そうね〜」

 

二人してのんびり話しているうちに

天羽々斬のギアを使った翼が戦っているのだが、そんな事は今は関係のない事だ

 

「…さて、僕は上がりですかな?」

「ええ、今日はもうすることもないし

研究自体も大詰めだから、あとは私一人でなんとかするわ、上がっちゃって良いわよ」

 

「お疲れ様でした」

それだけ聞いて、

さっさと研究室を去る統慈

 

ちなみに、研究室には頻繁に行っており

正式な配属先はオペレーターにもかかわらず、研究室に出入りできるI.Dカードも持っている

 

「…まぁいっか」

 

そんなことは気にせずに、統慈は、もう慣れてしまったエレベーターで外に出て

その足でふらわーに向かった

 

「今日は響と予定があってな…

早く上がれてよかったよ」

 

しばらく時間を過ごした後

立花響を迎えて、夕食を取る

 

「で、その後どうだ?…ライブ以来だけど」

「うん、あのライブの後、すぐに学校でイジメが始まってね」

「…おう」

やはりイジメはあったようだ

 

「大丈夫ですよ、平気へっちゃらです」

「そうか、なら良いんだ」

 

(ホントは大丈夫じゃないんだろ?)

「まぁ、辛くなったら…いや、辛くなくても僕には現状報告くらいおくれよ、何せ同じ生還者同士、お互いに助け合おうじゃないか」

「…はい!」



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第13話

「生存者同士…とはいったものの

生存を掴み取ったものか、死に取り残されたものか、そして、他者から生存を奪いとったものか

この分類がわかれるからなぁ…」

 

そしてそのうち、責められるべきものは

いない

 

生存を奪い合うのは生物として当然なのだ

それは人間であろうと、動物であろうと

生きようとする者にはあって当然の戦いであり、より強かな方が生き残る

 

「それが自然の摂理だ…

それを責める権利は誰にもない」

 

統慈は二課の本部施設内の自室へと帰り

ゆっくりと呟く

 

「やはり、どうしようもない」

 

再び呟く、どうにかする方法が

どうしても出てこない

 

そもそもイジメを解決する事はできない

イジメとは表面上なくなったようでも、対象やアプローチを変えて続行されるゲームなのだから

 

イジメっ子達は自分が優位に立っている、いじめている内は呑気なものだ

自分たちが優位であり、自分たちが正義であり、そして自分たちが勝者なのだから

 

そもそも、イジメという形で認識しておらず、ただふざけていただけ、遊んで、楽しんでいただけ、ちょっと無茶振りしてからかっているだけ

 

そう考えているものだ

それがどれだけの負担を強いているか

どれだけ尊厳を傷つけているか

想いを踏み躙り、心を切り刻んでいるか

考えもせずに、残酷に、楽しげに

笑っているのだから

 

いじめられる側は悲惨だ

結局、イジメられているという事は変えられない、教科書は泥水に浸され、靴や制服は何処かへ捨てられ、悪戯電話は悪意を持って繰り返される

実話であるが、こういう時に於いて

女子の行動力というのは存外に高い

 

「…まぁ、せめて少しでも、他者に寄りかかるくらいは出来るようになってもらおうか」

 

(俺も介入が必要なら動くしかない…それに、聖遺物融合例?としては確か

ギアの核になっているガングニールの欠片が肥大化して体内から壊されるんだったか?

それも、シェンショウジン以外でどうにか出来る方法を探したいところだ)

 

もう夜も遅い…そろそろ眠らなくては

 

「…よし、寝よう」

対策を考え付かないからとりあえず睡眠に走るクズの鑑だった

 

「もう朝か…」

ちなみに俺の職業(偽装)は学生であり

その所属は私立リディアン音楽院

「…絶対に何か間違ってるんだよなぁ」

 

毎回女装してる訳ではない。そもそも

登校義務は免除されている

 

「なぜ制服なんて用意されてるんですかね…」

恐らくは緒川さんの差し金であろう

 

「学校なんて前世で通い飽きたっての」

笑いながら机の上に置かれた制服を眺める

 

「しかも女装じゃねえかよ…」

 

そう、その制服は

紛う事なき女子用制服

 

そもそもリディアンは女子校であるため

制服といえば全て女子用である

 

「僕に女装しろって?泣いていいよね?

それじゃあ泣くね」

 

半笑いを崩さずに

しばらく呼吸もなく言い切った後

やたら上手な嘘泣きを始める

 

「二年間もコレは厳しいぞ…」

 

誰にも笑顔の無い夜は過ぎていく

 

 

「おはようございます〜…はぁ…」

寝ぼけた声で挨拶しながら

リディアンの制服を纏った統慈はため息をついた

「案外可愛いじゃない」

「よしてくださいよ了子さん」

「なんでよ、可愛いものに可愛いと言って何が悪いの?」

「その可愛いものは可愛いと言われることに忌避感を覚えているのでこれ以上精神的な負荷をかけないでください」

 

統慈はなんとか了子から逃れるために身をよじるが、その動きにすらもぴったりと追随され、結果的には悪あがきに終わる

 

「ほらほら逃げない、いくら髪型はウィッグでごまかすと言っても、綺麗に結うには時間も手間もかかるのよ?」「僕は地味でいいんです!」

 

「可愛いものを飾らないのは罪よ!」

ゴリゴリに押されて最終的には

 

「…………」

「うふふふっ、これよ!

これがやりたかったのよ!」

 

完全にオモチャ扱いされていた

 

「もうやだ…なんで僕がこんな事を…」

「とは言っても、歳的には高校生だし

学歴中卒は厳しいわよ」

 

「だからなんでリディアンなんですか!わざわざリディアンじゃなくったって良いでしょうに…」

 

統慈は泣き言を言いながらも

大人しく髪を結ってもらい…

 

「始めまして、転校生の拍木旋音(かしわぎりんね)です…終わりで良いですか?」

 

統慈はもう諦めていた

しかし、環境はそれを許さない

 

「それで良いわけないでしょ!」

「まだまだ聞きたい!」

「お話ししよー!」

「スリーサイズは?」

 

「答えません!」

 

一部セクハラを除いて

質問に一つづつ答えさせられる事になってしまった統治の明日はどっちだ



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第14話 学園にて

「リディアン 一期生旋音(リンネ)…ねぇ、これが僕の名前ですか?」

 

「もちろん♪それ以外だれが名乗るのよ」「了子さん」

 

一瞬の躊躇も隙もなく即答する統慈は、冗談だ、と呟いて下を向く

 

「はぁ………」

 

間違っても『泣きそうになっている』とは言ってはならない表情をして

統慈は発声練習を開始する

 

「A……A〜」

「だーめ、低すぎるわよ、それじゃあ疑われるわ」

 

「A〜」

「今度は高くすることに集中しすぎ、音量が足りない」

「A〜っ!」

「声量が増えても旋律を乱してはいけないのよ、はい、もう一回」

 

なぜあーだけで4回もリテイクを食らうのかといえば、偏に『女性として違和感のない歌声』かつ、『普段の声に近い音』を維持しなくてはならない

音楽を重視する学校ゆえの問題があるからだ

 

「A〜…」

「うん、いい感じ、じゃあそれを維持できるようにもうちょっと長めに」

「A〜〜」

「最初に戻ってどうするの?また声が低くなってるわよ?」

 

その後しばらく練習を続けて、学校に違和感を悟られないレベルの声帯操作術を身につけ

ようやく編入の手続きに向かい

学期の途中から編入という、新規参入には些か目立ち過ぎる格好で

女生徒として通うことになってしまった統慈

 

「……はぁ…(美声)」

 

ため息すらまともにつけない、と嘆く統慈に、新たなクラスメイトに沸く

姦しい連中が集ってくる

 

「ねぇねぇ!旋音ちゃんの好きな歌手って誰?」「ズバリ!編入の理由は?」

「随分スタイル良いけど、本当に生おっぱい?盛ってない?」

 

実際は確かに盛っている

だが、少女Cが求めているような貧乳が盛った結果のサイズではなく

ゼロから作りあげたサイズである

嘘も突き通せば誠、了子さんの技術によって、その偽乳は徹底的に凝っているらしい

 

スリーサイズ(実測)は

上からB…よそう、悲しくなってくる

 

w57だけは自身のそのままの数値であるが、それもまた意味はない

 

身長156であるため

理想サイズに大体一致している

というわずかなポイントも

今の統慈には嘲笑っているようにしか聞こえないだろう

 

「一つ一つ答えますからね、皆さん、少し落ち着いてください」

「あぁごめんごめん」

「ちょっと熱くなってたね〜」

「めんごっ♪」

ABはまだ許す、だがC、お前はダメだ

とばかりのオーラを纏う統慈(リンネ)

 

「ええっと〜…」

その後、質問が連発され続けて話が進まないと判断されるのだった

 

 

 

翌朝、火曜なので

当然のごとく登校するのだが

その前に朝のひと時だ

 

「やはりコーヒーはブラックに限る…なんて言えれば良いんだけど…」

 

とはいえ流石に女子高生がブラックコーヒーを良い顔で飲んでる訳にもいかない

女子高生とはもっとこう、キャラメルマキアートとか、カフェモカとかそういった甘ったるいものばかりを飲んでいるものだ

 

「…いや、流石に偏見かな?」

高校時代には年中コーラ飲んで騒いでる不良女子だっていたし、そう言う奴に限って

体型はきっちり維持している

 

…成績は知ったことではないが

「さて…行くか」

 

一緒に帰ろー?といってくれた女子はいたが、統慈の帰る家などない

という事で、適当に駅あたりまで引っ張って、電車で帰る振りをして、二駅目で対向車に乗り換えてiターンで戻るのだ

 

適当に考えた割には効率的な手法であり、帰り道でばったり会ったりしなければ

なんの問題もないし、時間を結構ズラす事でニアミスを回避する事が出来る

 

「いつものエレベーターか…」

若干憂鬱になりながらも

学校内直通エレベーターで登校して

職員に紛れている(…というかほぼ全員)二課の人員に鍵を開けてもらい

 

さっさと教室へ向かう

 

「…よしっと(美声)」

風鳴翼の一年下、立花響の一年上

という微妙な年齢設定故に、クラスメイトに原作登場人物はいないと思われる

 

いたとしても、

もはや統慈は覚えていないので

一切全く関係はない

 

授業自体は恙無く終了したので

さっさと帰宅…とはいかないらしい

 

 

警報が鳴り響き…ノイズが出現した

「マズイなぁ…」

 

俺のleagyarnは使いこなせでいないし、そもそも単独で戦闘したことがない俺に、大したライフセービングは出来ない

 

「だが…死なせるわけには…!」

 

これ以上の犠牲を出すわけには行かないと、俺は集団で現れたノイズに向かって突進した

 



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第15話 聖詠

「燃えろ…俺のコスモっ!」

 

有名な漫画の代表的なセリフを叫びながら突進した統慈は

 

左手を握り、思いっきり叩きつける

 

無論、雑魚ノイズとて即死するわけではない、統慈はパンチ一発でコンクリートを粉砕するようなパワーをしているわけではないからだ

 

 

「死に晒せえっ!」

 

倒れるまで何発でも、

拳を、そして脚を撃ち込む

 

ノイズに触れられる俺ならば

シンフォギア無しでも生身で戦闘できるのは確かだが、それを他の存在に悟られるわけには行かない

 

映画で見た動きのような『魅せるアクション』は不要だ、只々コンパクトに、素早く、身に隠して、致命の一撃を放つ

 

動きの理想は仮面ライダーコーカサス

そのクロックアップ時の動きだ

 

仮面ライダーコーカサスは主人公ライダーのカブト同様、待ち受ける(カウンター)タイプのライダーだが、クロックアップ時は打って変わって、獰猛な格闘戦スタイルを取る二面性もある

 

その動きの真似…

じみたもので打ち掛かる

 

「フッ!セェヤッ!」

右ストレートからの膝蹴り、地面についた手で体を回して反転キック

 

一応、腕は折れないように気をつけているが、相手はノイズだ

体表はそれなり以上に固い

 

再び拳を撃つ、撃つ、撃つ

心拍でタイミングを取りながら

息が上がらないスピードで格闘を続け、ノイズ警報で人が去るのを待つ

 

一度、二度、三度、

ノイズを打つたびに、波紋が広がる

それは未だ形を持たない始まりの音

 

「ゼエエェェッ!」

 

最後の一撃とともに離れ、炭化するノイズを見届けることなく次へ向かうが

 

「多いな…」

路上という地形上、

一体一体相手をしていられないというのに、ノイズはかなりの数出て来ている

 

「っ!」

 

その時、捉えた、捉えてしまったのだ…路地に座り込んだ少女に襲いかかるノイズを

 

「ウォォォッ!」

道を塞ぐノイズを足蹴にして

飛び越えて、今まさに少女に触れる寸前のノイズへと到達した統慈は

 

「ゼエエェェッ!」

着地を考えず、左足による飛び回し蹴りを叩き込む

 

真横に弾かれたノイズは、すぐさまに炭化せずとも、少女を襲う事は叶わず

 

「生きてるか?」

統慈は少女へと手を差し伸べる

「……?」

 

炭にされることを覚悟して、目を瞑っていた少女は、そこに希望の光を見た

 

「生きてるならそれで結構、そんなお年で死になさんなよ…そこで待ってな

もうじき、正義のヒロインズが来てくれるからよ」

 

統慈は笑顔で少女の頭を撫でる

 

「僕はちょっとアレだけど、もっとちゃんとした組織の人たちが来るからさ

それまで生き延びなさい

最低限くらい私が庇ってあげよう」

 

そう言い切って、律儀に待っていたノイズを打ち飛ばし、壁へと叩きつける

 

「リズムは整った…」

 

波紋は満ち、決意は為された

音は生まれ、形は得た

旋律は歌となって鳴り響く

 

Sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

囁くように、詠う

 

その瞬間、腕から炎が湧き上がり

糸のように、鎖のように

俺へと巻きつき、同時に実体を得る

 

黒い鏈と弓道着に近い装甲

右足は黒い鎧状のアーマー

左足は鉄鎖が巻きついたような赤と銀

 

「うわっ、なんだこれ…いや、だいたいわかる…レーギャルンの装甲形態…だな」

 

「全然使い方とか分からないが…やるしかないっ!」

統慈は前方に跳躍すると、そのままノイズへと体当たりする

 

「よし!これでも倒せる!」

もともとノイズの外殻は武道家が数発殴るなりすれば砕ける程度の装甲しかない

攻撃が当たらないのが問題なのだ

 

確実に当てられる上に火力も出る今のレーギャルン=統慈には余裕の相手

 

「フッ!セイ!ハッハイイッ!ヤアッ!」

 

鎖製の装甲のお陰で拳と足を痛める心配も無いので、全力で打ち込む

周辺のノイズ全てを引き込むような勢いで

「権限起動:9/1定率 積層変成-物理力体」

 

装甲の表面が剥離して、炎へと還元される

鎧に纏っていた炎を拡散させ

それを烈火の弾丸として射出する

 

「使い方は分かる…何をすればいいのか、どれくらい残量があるのか…」

 

頭の奥の方に、炎の量を示すゲージのようなものがあり、それが教えてくれるのだ

あとどのくらいの時間、この炎を燃やせるのかを

 

「……世界 焼く 炎の刃 封ずる この鍵と を以 て」

 

湧き上がるのは殺意と敵意

絶望的な圧力を伴って、内側から溢れ出す力

 

外部からの干渉など、たった一度、起動の種火一つで充分

それは世界を焼き尽くす炎を

内に秘する匣なのだから

 

「はっ!」

大きく跳躍して、ビルの五階ほどに着壁

左手を突き出して

 

「権限起動9/1…解錠」

 

背後に九つの黒い勾玉が浮かび

右下の一つだけが赤く染まる

 

Shiny-leagjarn(シャイニー-レーギャルン)

 

赤く染まった勾玉が鍵となり、さらに召喚された匣の錠を開く

突き出された左手に沿って

その鍵穴から炎が放出された

 

《ズドォオォン!》

「……これで、終…」

 

足場としていた壁を抉りとりつつ

反動に耐えた統慈は、路上に戻り

 

着地した瞬間に、装甲が強制解除される

「ぐぅ……っ…」

 

ノイズは粗方一掃したが、

それでもまだ数十体は残っている

 

「なぜ、急に強制解除が…」

今さっきまでの暴力のツケとでも言うのか、急激に力が失われて行く

 

「クソッ!大技は軽率だったか!」

 

力を失った俺へ、ノイズが殺到し

imyuteus ameno habakiri tron(イミュテゥス アメノ ハバキリ トロン)

 

蒼ノ一閃が全てを断った

 

「そこの少女、立てるならば下がって」

 

スタイリッシュ防人登場である

見られていたかと一瞬心配もするが

 

「民を、国を守るは防人の務め!」

気づいている様子はない

 

「よかった…(認識能力)ガバガバだ

 

……ふぅ、はぁ…よし!」

 

深呼吸とともに、立ち上がる

さっきの強制解除は息切れ的なものだったのかもしれない

 

「…sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

火種を投じ、再び装甲を展開しようとするが…

「応えない…?」

 

火種となる歌にも反応はない

 

「…考えてる暇はない!」

ノイズは生身でも殴れるのだから

近づいてきたノイズは皆殴る

 

流石に素手で殴るのは走者の前では危険なので、文房具のハサミを包帯でカバーしてナックルガードがわりに仕立て、それで左腕をガードして殴る

 

「…他の人もこのくらい出来るっ!」

 

鉄扉重ねて殴る人とかも居た!と心の中で叫びつつ、ノイズをバカスカ殴り倒す統慈

 

「…ハァッ!」

 

理論としてはシンフォギアの周囲にいるノイズは皆、強制的に実空間に引きずり出されるので、位相差障壁は無効化される

そうなれば通常兵器とて火力になる

 

繰り返すが通常兵器がノイズに対する上での欠陥とは

『攻撃が効かない』のではなく

『攻撃が当たらない』が故に火力足り得ない事である

 

当たらなければどうという事はない

つまりは当たりさえすれば致命傷なのだ

 

「ギガノイズ…!」

 

小型や人型のノイズを壊し切ったあたりで、唐突に出現したのは

大型ノイズ

 

「ふっ!」

 

それに慌てることもなく遥か高みへと跳躍した翼は…

「天ノ逆鱗」

 

巨大な刃を召喚し、それを蹴りつけて

ギガノイズを頭上から串刺しにした

 

「スゲェ……」

圧倒的な戦闘経験値を見せつけられる形となったが、それもまた勉強としたようだ

 

「ふぅ……」

SAKIMORIがゆっくり呼吸しているうちに、俺は現場を離れて

後ろの少女の方へ向かう

 

「…怪我はないか?」

「うん、大丈夫だよ、()()()()()

 

「……お姉ちゃん?」

統慈は身を見回して…

「あ………」

 

自分が下校中に事態に巻き込まれたことを思い出した、そう、未だ統慈は

女装とメイクを解いておらず

外見的にはかなりの美少女のままなのである

 

「ありがとう、お姉ちゃん」

「………はぁ…」

 

統慈は素早く頭の中で声質を調整して

 

「あなたが無事でよかった、あなたは生き延びてくれた、それだけよ、

…それじゃあ、さようなら」

 

さっと身を翻して

ビルの中に隠れ、ウィッグを外して髪留めのゴムを取り、髪型を戻す

 

「服は…ええっと、仕方ないか」

 

臨時徴用ということで、ビルにあったアパレルショップ(無論無人、炭入り)のシンプルなシャツ、ジャケットとジーンズを購入

足回りはローファーでごまかす

 

決して軍資金がギリギリという訳ではない

 

「これでも5000円はしちゃうんだよね…はぁ…」

 

値段を見てパッと計算した額をレジに置いて…非常に問題ではあるが

ICチップのついたタグはハサミで切って外す

 

「商品だけどごめんね…」

 

正規の購入処理ではないというと盗難品そのものであり、したがって現在の立場的に統慈は窃盗犯なのだが、これはあくまで災害であるノイズ関連のモノから離れるための緊急的な処置であるからして

緊急避難の原則が適用できるものと判断したらしい

 

「とりあえず格好は繕った、制服の方は…どうしようかな」

適当に隠してしまうのも問題だと思うし、かといって女子用の制服を持って現役学生の前をうろちょろすれば、なぜその制服を?と呼び止められてしまう可能性大だ

そのカバンを調べられれば

教科書や弁当以外の(バレたらヤバい)代物が隠し通せるとは思えない

 

「はぁ………」

 

(よし、あとは二課スタッフとして素知らぬ顔で黒服側に参加すれば良い)

 

なかなか無理のあるヴィジョンだが

それ以外に大きな策が無い事ので

結局はそういうことになる訳だ

 

「あとは、技術力」

 

結局、誤魔化し勝負となり、二課のI.D.カードでゴリ押したところ、なんの問題もなく

ノイズ警報を聞いて現場判断のもと被害を減らすべく急行した避難誘導員

 

程度の扱いで終わってくれた

全方位に顔を広げていた上に、全部門に顔を出していたお陰かもしれない

 

「お疲れ様でした」

「あとは我々、作業員が引き継ぎますので、初期対応、ありがとうございました」

 

「こちらこそ、無用な混乱を招いてしまって申し訳もありません、ありがとうございました」

 

深々と頭を下げてから、すぐに歩き出す…風鳴翼に引っかけられない限り

問題はないはずだ

 

「よし、これで突破だ」

 

 

翼さんの隣を通り抜けて

俺は二課へと戻った




ちなみに、主人公の聖詠の読みは
シルダーレイガァールン ネシェルトロン

前半イチイバル、後半イガリマのテンポで歌っております


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第16話 軋む心

「……はぁ、よし」

 

自室に帰ってから、統慈は頭の中に残っている状況をリプレイする

 

「俺の聖詠…俺の力か…あれが」

 

戦力としてあまりにも貧弱な炎

しかもまるで使いこなせていない

 

挙げ句の果てには大技を空撃ちして強制解除?なんて事だ

 

これじゃあ戦力としてカウントできない、むしろお荷物だろう

 

「鍛えないと…もっと、強く」

 

最終目標はクリスのイチイバル

『MEGA DETH QURTET』より広範囲、高火力での焼灼攻撃

火力砲台型であるイチイバルの大技を超えるレベルの火力を使用できれば

一発限りとはいえそれなりの鍵にはできる

 

「まずはそこまでたどり着く…!」

 

まずは、この力の解析から始めるべき、と定めた統慈は立ち上がり…

しかし、どこへ行くでもなく立ち尽くす

 

「忌々しいが…」

そう、異端技術に関しては、現状において頼れる人物はいないので、

最悪の選択肢、フィーネを頼る

を取るほかにない

 

とはいえそっくりそのまま話しても意味はない、どこらか利点はない

 

リスクならいくらでも上がるが、利点はまるでない…なので上手い事

誤魔化しながら

アウフヴァッヘン波形やらなにやらの隠蔽を行う必要があるのだ

 

「やることは山積みか…」

 

ため息を一度付き、重苦しい気分を払おうとして、結局ななもできなかった統慈は

まずは一度寝ることにした、

 

翌朝になり

「司令」

 

まずは、風鳴弦十郎司令の元へ向かった統慈は、今まさに司令と向かい合っていた

 

「いきなり言うのも失礼と思いますが、お願いがあります…強くなる方法、教えてください」

 

「うむ…突然だな、どうかしたのか…いや、先日のノイズ発生の現場、あそこに君もいたんだったな…避難誘導しか出来ない自分に打ちひしがれ、力を求めた、と言ったところか」

 

「その通りです、シンフォギア装者でもない自分にはノイズを倒すことはできない

でも、少なくとも避難民の安全確保の為に、出来ることはある

しかしそれも、体力が無ければ叶わない…僕はあの事件に居合わせて

自分の体力の無さに気付かされました

ですから、自分の知る限り最も『強い』大人である司令を頼って来ています」

 

「なぜそこで体力の話から強さの話にすり替わったのか分からないが…まぁ、そこは君の中の解釈なのだろうな…」

 

「筋力があれば避難中に転んだ人を抱えて走れますし、持久力と筋力の総合的な表現はやはり『強さ』だと思うので」

 

持論を展開しながら司令の方を見遣る統慈、しかし、司令の表情は暗い

 

「結論から言うと

俺は君を鍛えることはできない」

「何故ですか?」

 

「時間が足りないのだ、現状、シンフォギア装者は翼一人、その翼もメンタルバランスが取れていない、それだけでなく

新たに適合する可能性のある人物の捜索、秘密の情報組織としての体面付け

各方面への対応や勢力争いの回避

最高責任者である俺でなければ対処できない問題も多い、それらに圧殺されている中で君の稽古を満足に見られるとは思えない」

 

すまない、の一言と共に

頭を下げられてしまった

 

「いえ、無理な頼みであることは百も承知ですから、お構いなく…あ、司令」

「なんだね?」

 

席を立った統慈は、クルリと首だけで反転して、司令の方に視線を向ける

 

「司令の特訓の方法だけでも教えてください、鍛え方の参考になると思うので」

「…参考になるとは思えんのだが…まぁいい、俺の鍛え方はな…

飯食って映画見て寝るッ!男の鍛錬なんざ、それだけで十分!」

 

「全く参考になりませんでしたありがとうございました」

 

首をくるっ、と戻した統慈は

そのまま司令室を出て、研究室へ向かった

 

「例のカストディアン流栄養ドリンクも作ってきたし、とりあえずは一杯呷るか」

 

ポキュ、という音と共に、わりかし安い給料で買った水筒を開ける

 

「うん、まぁまぁな味」

 

一気飲みを終えた後、研究室に入る

ちゃんとIDは研究室に入れるものだ…というか統慈はどのセクションでも入れるカードキーだ

 

「…失礼します」

「ん?統慈君?どうしたの」

「どうもこうもありませんよ、ノイズ被害に遭ったんです、そりゃ凹むよ」

 

めっちゃ凹んでるアピールをしておく

 

「はぁ…まぁ、そんな境遇なら仕方ない…かしら?…私自身は直接襲われた事はないけど、ノイズについては嫌という程調べたし

見識なら貸せるわよ?」

 

こっちに顔を向けないままにぬけぬけと言い放つ櫻井女史(フィーネ)

 

「ノイズを殺せる方法が欲しいです」

「無理ね、あぁ、でも」

 

「でも?」

「シンフォギア装者のノイズを実空間に引きずり出す能力の影響下なら

ノイズを通常火力で撃破することもできるわ、それでなくても

ノイズだって、向こうから一方的に接触する事はできないんだから

接触する瞬間にはこっちからも物理攻撃が有効よ、その一瞬を狙えれば、だけど」

 

つまり、論外と言っているわけだが

それは統慈も知っている

 

「あとは…ノイズの自壊制限時間まで逃げ延びることかしらね?こっちなら実現できるんじゃないかしら」

 

「意味ないですね…あ、そうだ」

「なに?」

 

統慈のフリに、向き直る了子さん

 

「アウフヴァッヘン波形の記録装置って、最近どうなってますか?なんか司令が

新規適合者を探す〜って言ってたので、あれ使えないかな?と」

「ターナウトリコーダー?あれはちょっと使い方が違うのだけど…ん?でも

ちょっとまってね」

 

頭の中で何かを考えているらしい時が過ぎて行き、了子さんはパッと目を開く

 

「できるわ!感知する波長をガングニールに合わせれば『ガングニールの波長』に共振する、つまりガングニールの適合者になりうる人物を発見できる!すごいじゃない!」

 

バッと手を取られて振られた

「私にすら無かった発想!これで適合者を探し出せる確率が上がる!お手柄よ!」

 

「は…はぁ…」

 

惚けた声を出す統慈

 

「早速計画書に纏めなきゃ!ごめんねちょっとまって…ターナウトリコーダーの調整手伝ってくれる?」

「はい!」

 

上手いことリコーダーのデータを見る機会が得られた統慈は、パッと

最近のデータに目を通して…

 

「新規10件、全てがアメノハバキリ?どういうことだ?」

 

そこに、レーギャルンや

アンノウンと書かれた項は無かった

 

「観測されてない…のか?」

「どうしたの?早くこっちこっち!」

 

「あっはい!」

 

思考を進める間も無くパシられて走ることになる統慈、しかし、その頭の中には

レーギャルンは観測されていない、という事実がしっかりと残っていた

 


 

「よし!」

「終わった…」

 

日が暮れようという頃になって

ようやく調整を終えた統慈と了子は、未だ研究室にいた

 

「ちょっと人使い荒いですよ…」

「頑張れ男の子!」

 

「女装して女学院に通ってるんですがねぇ…誰のせいだと」

「もちろん自分でしょ?」

 

取りつく島もなかった

 

「はぁ……」

 

ため息をつきながら、研究室を辞して

掏り取ったファイルを自室に持ち込む

 

「ええっと?これは…」

フィーネとしての研究資料らしいファイルは、さまざまな情報に溢れているが

いくつかの欠落も伴っている

 

「…これだと、シンフォギアの制限の数が三億もある理由がまるでわからん…

しかもそんな高性能にするから負けるんだよ…」

 

しかし、幾らかのシンフォギアの設定、性能の評価などが書かれた辺りや、ノイズの情報が書かれた辺りは有効に活用できるだろう

 

「ん?これは…」

 

統慈が見ているのは

聖遺物の共鳴についての情報が書かれた項

 

「…えっと…?」

 

完全聖遺物は人間の音を必要としない…辺りは読み飛ばされ、聖遺物のかけらの力を増幅するために、特定波長(聖遺物の波長)と共振する…というあたりを読み込んで

 

「とりあえず、写本にするか」

 

必要な情報をノートの裏側に書き込み始める統慈だった

 

 

翌朝

 

「だぁるい…こんな時のために

カストディアン流栄養ドリンク」

 

やっぱり謎のドリンクをゴクゴクと飲んで体力を水増しして、写本を見直す

 

「シンフォギア が女性じゃないと使えない理由、固定化されたエネルギーで装甲を作る関係上、それだけのエネルギーに耐えられる肉体が必要で、それが実現できるのは女性だけ

 

って事で良いのかな?」

 

頭の中で理論を分解し観察し、再構成して、それでやっと理解する

 

細かい事は置いておいて、

大枠はそれで良いのだろう

 

「よし!学校行かなきゃ…はぁ」

 

もう女装に慣れてしまったことを自覚しつつ、それでも嘆く統慈であった

 

「おはようございます…」

 

そうして退屈な日中は過ぎ

5時ごろにようやく学校を出て…

「夕食はお好み焼きにしよう」

 

前に響に勧められた、ふらわーに行く

 

「さて!…ん?あれは」

 

統慈が見かけたのは、

ふらふらと歩いている響

 

「響?」

 

「………」

「響!」

「………」

 

「響っ!」

 

「っ!?あ…」

「どうしたんだ?そんなぼうっとして」

 

「…っ!」

突然、響きが泣き出した

 

「どうしたんだ本当に!?突然泣き出すほど悲しい事があったのか?」

「…みくが…みくがてんこうしちゃって…ぐすっ…私…一人になっちゃった…」

 

恥も外聞もなく泣く少女と

その隣の男。

 

どう見ても泣かせたのは俺である

 

「響っ!?」

 

「ふぇぇん!」

「あぁもう!ガキみたいに泣くなよ」

 

とりあえず響を衆目から隠すために

路地へと向かった

 

「響、落ち着いたかい?

…涙を止めるには、一度眠るのも手だが、思いっきり泣いて、枯らしてしまうのも手だと言う

俺でよければ受け止めよう」

 

格好をつける統慈だったが、あまり格好良くはない…ここが顔面偏差値の差である

 

 

それはそれ、

響には格好良く見えていたのだろう

 

「じゃあ、一緒にいて」

「あぁ、良いよ、俺でよければ」

 

その後しばらく話を聞き、響を家に送った

 

「…そろそろマズイか…?」

 

響がいじめられている頃、なのはわかるが、これはそろそろ父親が失踪する時間だと思う

 

やはり失踪後の足取りは把握していた方がいいかもしれない

 

「響、今後も定期的にメンタルケアと面談を実施しないと危険か…」

 

ゆっくりと『統慈』という存在を

意識に組み込んでおかないと、環境ストレスからの圧力で折れてしまいそうだ

 

「…スケジュールの調整はしておく」

 

頭の中で、予定を調整しながら

統慈は部屋へと戻るのだった



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第17話

「そうか、親友が、何も言わずに転校…ね」

 

あれから何日か経ったのだが、統慈は響と定期的…というより毎日会っており、その話を聞きながら状態を確認、メンタルケアを行っていた

 

「…はい…」

「響、大丈夫だ、僕がついてる

君は一人じゃない、手を離されはしない、それに君の親友とやらも

君が信じた友人が、そんな非道を望んでするわけがない、なんらかの事情があるか

そもそも、正規の手段が阻害されている可能性もある

 

とにかく僕が確認してみるよ」

 

また発作を起こしかけた響に声をかけて、落ち着かせてから、ゆっくりと身を離す

 

「…転校先、転出先は確認できるかもしれないが、公権を乱用するわけにはいかないからな、いちいち考えなきゃいけないのも考えものだ」

 

そっと頭から背中に手を回して

ゆっくりと撫でる

 

あくまで優しくだ、性的な意味はない

それに可哀想なのは…統慈の性癖ではない

 

「大丈夫、君は一人じゃないよ」

徹底的に甘い言葉をかけて蕩かそうとしているわけじゃありません

 

「頼っても、いいんですか?」

「もちろん」

 

「負担になるかも」「君からだったら大歓迎だよ」

 

「迷惑に」「なる訳ないだろ?」

 

なんども逃げ道を潰して、

周到な蜘蛛のように巣を張って

蝶を優しく捕まえる

 

「落ち着いたね…それじゃあ僕は戻るからまた今度、さよならっ」

 

とりあえず響と別れた統慈は

すぐさまに司令に

『ライブ事件が禍根を残している』事をしっかりと伝えたところ

 

なんと司令は突然の事ながらにやってくれた…やらかしたのだ

 

ツヴァイウィングライブ事件被害者の会を立ち上げ、その再就職支援組織と同時に、ポストとなる会社まで立ち上げたのである

 

当初から不動産業から財務コンサルタントまでの多角的な業務をやっているが

やがては機械生産まで手を出すそうだ

 

「さっすがぁ…」

お偉い方もこれには驚いたのか

急遽招集がかかったが、これにも堂々と対応していたらしい

 

さすがOTONAと言うべきだろう

 

「…大人は強い、これ常識な?」

 

笑いながら統慈も登校準備(女装)を進めるのだった

 

「最近一人で女装できるようになったからなぁ…」

 

数週間も経つと、自分の格好を作るのも必要になってくるので、統慈は早めにメイクやウィッグの整え方などを習っていたのだ

 

「…よし、オーケーですガングニール!」

 

それは空耳であるとは誰も指摘してくれなかった、そもそも誰も知らないのだから当然だが

 

「…拍木旋音、出撃します」

 

統慈は今日もリディアンに向かうのだった

 

 

余談になるが、統慈は体育の授業全てを欠席することになっている…見学もするが

とにかく体そのものだけは誤魔化せないため、体操着や水着は流石に諦める他ないのだ

 

「体育全部欠席は流石に怪しいよ…

自分でもそれくらいわかるって」

 

自覚はしているようだが、これも必要な事、頑張ってほしい

 

「……はぁ」

 

今日もミステリアスな雰囲気が出ている、完璧な美少女である

 

「……なんで音楽が5単位もあるのかなぁ」

 

「週5音楽って、他の学校じゃあり得ないよね?」

「そりゃまぁ、リディアンは音楽院ですし?学院ってことはミッションスクールですから、特殊な授業があってもおかしくないと思いますよ?」

 

女子A.Bが話しかけてくる

ちなみに、全員旋音の友達を自称しているが、正体は知らない…知っていたらまずい

 

「そうですよね、えぇ」

 

「学費安いから来たのに、こんなに毎日毎日歌わされてたら喉壊れちゃうよ…」

 

1年は早くもヘタりがちだが

2年以上はもう慣れたもの、と行った表情である、むしろ他の学校よりも授業の進みが早いので、そっちに苦労しているレベルで

 

「あ、今日学食行かない?

私弁当持って来てないんだ」

「…別に良いですけど」

「私のものを分けてあげましょうか?」

 

Aに渋々ながら同意する統慈と

同調するB

 

結局、三人揃って学食に向かったのだが、カレーパンはすでに売り切れていた

 

「…はぁ」

「人気メニューですし、仕方ありません」

「人が多い時は、もう取られてると考えた方が良いよ…潔く諦めよう」

 

その日一日中、Aは授業に身が入らなかったという

 

「んで、登下校中にまでノイズか…」

 

すぐさま司令に連絡をかけて

避難誘導を行う旨を伝え…

 

「オラァッ!」

 

通信を着るや否や、ノイズに殴りかかる

 

sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

「ハァッ!…変わった!」

 

右腕から殴りつけて、左腕、足と乱撃を仕掛け、次々に装甲が装着する

 

「フッ!」

最後に頭突きでヘッドギアを装備して

全身の装備換装が完了する

 

「…今回は近接だけでっ!」

 

前回は大技を使ったが故に強制解除を起こしてしまった、なら使わないという条件下での自分の戦闘力を調べよう、ということだ

 

統慈にしては頭を使っているが

実戦縛りというかなりキツい縛りが付いているので、あまり変わっていない

 

精密な検証ができていない以上

体感どの程度

という差に過ぎないのだから

 

「………ふっ!」

戦闘しながら、時間を計る

自分の戦闘継続可能時間の限界を測定するつもりなのだろう

 

「…まだやれる…」

 

呟く声は、前回記録を超えた証

約3分を超えてなお、

そのギアは歌もなしに衰えを見せていなかった

 

「頑張れる…」

 

拳は振るわれ、鎧は解けて炎の剣を形成し

 

「…戦えるっ!」

 

振り下ろされた炎は、

全く抵抗を感じさせずにノイズを切り裂いていく

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

最後に炎を吹き上げて大きく跳躍

「権限起動:9/1定率 積層変成-物理固体」

 

炎が形象化して、

足に接続された大剣を形成

 

天の逆鱗と同じようにライダーキックのポーズをとり

 

「うぉらぁぁっ!」

 

爆発とともに、ノイズの山が消し飛んだ

…剣は炎に還元されて消滅し、統慈の装甲に戻ってきた

 

洋風な擬似:アメノハバキリ(P・A)戦法は一応の成功を見たようだが、まだ装甲は解除されていない

 

なので

 

「今度は…っ!」

遥か遠くから、歌声が聞こえた

それはつまり、()()()()()()

なので、統慈は諦めてさっさと装甲を解除し、レーギャルンを腕の中に戻し

今回はちゃんと入っていた

(以前の緊急装備以降、警戒してずっと入っている)私服に着替える

 

それとほぼ同時に

 

「…拍木!ノイズはどこだ?」

「もう殆ど炭です!近くにはいないようですが…」

 

「了解、こちらで探すからここに居てくれ」

「わかりました」

 

たしかにもう殆ど炭だ

なにせ統慈がやったのだから

 

翼さんにはもう仕事はないと言えるだろう

 

「…まぁ、終わりかな」

 

一日に数度もノイズ(災害)が現れるような事など、ないと言っていいだろうし

万一あっても、近くの正規職員に押し付ければいい話だ

 

彼らはノイズから逃れる訓練もしているし、十分に生き残れるだろうから

なんの心配もいらない

 

統慈は、のんびりと翼さんを待つことにした



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第18話

「で、どうでした?いましたか?」

 

「いや、周囲にノイズはいなかった…ところどころに残骸らしき炭の塊は残っていたが…それだけだ」

 

「そうですか…被害者の処置はもう、こっちの人員で対処済みです

お疲れ様でした」

 

しばらくしてから帰ってきた

翼さんにお辞儀をしてから、統慈はその場を離れ、徒歩でリディアンの裏側から入り直して、二課に戻った

 

「…はぁ……」

 

頭の中では考えごとを続けているが

外面的には、何度も何度もノイズに遭遇する己の身を嘆いているように見えるので、周りの大人たちから若干の心配のこもった目で見られている

 

もっとも、統慈はそれに気づいていない

 

(チェンソーみたいに刃をギザつかせた構造の剣を作って撫で斬りにすればより大きく傷をつけられるかもしれん…いや、そもそも人体を相手に攻撃するわけじゃないんだ、スペツナズナイフみたいに刃を射出して刺すのも良い…)

 

頭の中では次の実験に備えた

試験構想を練っていたようだ

 

 

「拍木はいるか?」

 

その声と共に部屋がノックされ

慌てて扉を開く統慈

「いますよ〜?どなたでしょう…司令」

 

「おう!」

 

ドアを開けたその裏にいたのは

我らがOTONA、

この二課の司令官、風鳴弦十郎だった

 

「最近、君が初動対応をやる事になったノイズ群は二回、ほぼ連続でだ…今後も、もしかすればあるかもしらん、それに両方ともシンフォギア装者()が到着する前にほぼ全滅しているからな…それなりの時間耐えて、避難誘導を続けていたんだろうし、精神的な負担もあると思ってな」

 

「それで直接顔を見にきたんですか?」

「あぁ、平たく言えばそうなんだが…それだけじゃないぞ」

 

その表情を見て、何事かと言えるようなことではないと察した統慈は

即座に弦十郎を部屋に入れる

 

「どうぞ、なにもない部屋ですが

それでも茶くらいは出せますよ」

 

「すまんな、気を遣わせて」

「いえ、気にしないでください」

 

統慈はさっと調理台の方に向かい

その裏の棚からガラスのコップを取り出す

 

「緑茶にしますか?紅茶にしますか?」

「緑茶で頼む」

「はい」

 

手早く湯を沸かして、パック品ではなく茶葉から緑茶を淹れる統慈、その手際は悪いとは言えない程度に滑らかで、慣れているように見える

 

「…」

「どうぞ、安物ですが」

「もらおう」

 

一人分というのもそれはそれで礼を失するという事で、ついでに統慈自身の分も淹れられた茶は、やはり強く湯気を立てており、熱湯で手早く煮出した手抜きである事を如実に伝えているのだが

 

それでもわざわざ茶を淹れるあたりを若人なりの気遣いと感じたのか、

感心したような表情になる弦十郎

 

「しかし、今話に来たのはそれではない、一応だが、この話をしておこうと思ってな…」

「何の話ですか?」

 

弦十郎の言葉に興味を示す統慈、そこへ切り出されたのは

 

「以前言われた、稽古の話だ

俺が多忙故に断らせてもらったが、あの話は今でも有効か?」

「はい、もちろんです」

 

「蒸し返すようだが…もし良ければ、引き受けさせてくれないか?」

「ありがとうございます」

 

深々と頭を下げる統慈に

逆に渋い顔になる弦十郎、

 

「最近ノイズの出現回数は目に見えて増えている、君がそれに遭遇した場合

まず逃げるのではなく

避難を誘導しようと動くこともおおよそわかった、であればやはり

君自身が言っていたように、鍛えておくことも重要だと思ってな…幸い

事業は増えたが、そこに優秀な人材が集まってくれてな?

 

仕事はきっちりこなした上で手が余っているからとこちらの仕事にも手を貸してくれている、お陰で俺も手が空いたという訳だ」

 

「なら!」「あぁ、俺で良ければ、な」

「こちらこそお願いします」

 

深く頭を下げる統慈、しかし

 

「少し調べて見たが、俺の鍛錬は…少々、世間一般で言う身体強化の訓練とは掛け離れているようだ、それでもいいのか?」

 

確認のような言葉が放たれる

 

「もちろんです!」

それに即答した統慈は

弦十郎司令の事をこう呼んだ

 

「よろしくお願いします、()()!」

 

それは奇しくも、シンフォギア本編において主人公、立花響が用いたものと同じ呼び方だった

 

「ふっ、師匠か…俺は厳しいぞ?」

「望むところですよ」

 

笑顔で握手する司令と統慈

…統慈の腕はメリメリと音を立てているが、やせ我慢で表情を守っている

 

「よし、そうと決まれば君用の特訓メニューを立てよう、俺と同じでは成り立たんだろうし、真っ当な身体強化の訓練を積まなくてはな

 

茶、うまかったよ、ではこれにて失礼する」

 

弦十郎司令はそのまま帰って行った

「………はぁ………」

 

一方残された統慈は悲鳴をあげる腕を押さえながら、最近新しくもらった冊子に書いてあったところの

『ルル・アメルでもお家でできる!カストディアン流鎮痛剤の作り方』に従って作っていた鎮痛剤を飲む

 

正確には痛みを和らげているのではなく、痛覚を伝達させないようにしているだけらしいが、それでも焼け石を冷やすことは出来る

 

「水でも大量に掛ければ焼け石を冷ます、塵も積もれば山…っても、栄養ドリンクと併用してしっかり治さないとなぁ…」

 

カストディアン流栄養ドリンクと、同じくカストディアン流の鎮痛剤、どちらも成分は薬草や野菜、生薬の類から抽出しているので、もちろんながらに合法

 

決して違法行為ではなく

単なる調理である、凄まじいほどの手間と負担はあるが、それだけである

 

「…今日は寝よう…」

 

起きたら明日の分の栄養ドリンクを作る事を心に決めながら統慈は眠りにつくのだった



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第19話

お待たせしました


「腕は…痛くないけど…」

 

翌朝目覚めた統慈の腕は腫れていたり、赤くなったりもしていない、まぁ加減されていたのもあって

痛い程度にすんでいたからの話だろう

 

「よし、学校だ」

 

痛みの引いた腕を存分に使って化粧と女装を施し、素早く仕事を終えて

声のチェックに入る統慈

 

もう慣れて来ている

 

Gatrandis babel(ガァランディスバァーベェル) ziggurat edenel(ジィグラッド.エェデナール)

Emustolronzen fine(エミュストォ ロンゼンフィーネ) el baral zizzl(エルバァラルツィール)

9Gatrandis babel(ガァランディスバァーベェル) ziggurat edenel(ジィグラッド エェデナァール)

Emustolronzen(エミュストォーロン ゼン) fine el zizzl(フィー ネル ツィーーール……)

 

「よし完璧だ」

 

統慈はこれを以て

声調整を完了して

 

髪を再確認してから学校へと向かった

髪型の乱れはウィッグバレにつながるからね、仕方ないね

 

「…行ってく…行ってきます」

 

部屋を出るときには既に口調すらも用意したものに切り替えて、統慈は『拍木旋音』を演じていた

 


 

「…で、帰ってきたら」

「帰り次第司令室に来てくれって伝言がきてるわ、()()()()()♪」

「やめてください了子さん」

 

すぐ脱ぐ巫女さんとお話しする間もなく、司令室に連れて行かれるのだった

 

「おう、来たか」

「ただいま戻りました、司令…この格好のままでよかったんでしょうか?」

 

「構わんよ、むしろそれが普段着なんだから、そのままで十分動けるようにならないとな!」

 

とてつもない脳筋理論で

女子制服のまま動けと言われた統慈

彼の明日はどっちだ

 

「それでは早速、これを見てくれ」

 

勘違いを招きそうなその言葉と共に提示されたのは時間割表

 

「すごく…偏ってますね」

 

映画鑑賞3時間(おそらく二時間半ぐらいのものを見るため)にその他基礎筋トレ1時間

どう見てもありえない

 

これでも原作的にはだいぶ譲歩した方である

 

「うむ、筋トレに偏りがあるが、これはまぁ、全身バランスよく鍛えるために、まずは『鍛えられる筋肉』を作るということで、背筋、腹筋、上腕筋、大胸筋、大腿筋を基礎レベルにまで到達させるためだ」

「以前の身体測定と同時に行っていた筋力テストでおおよその数値を出してるわ

週に一度はデータ測定して

トレーニング負荷と成長率の記録を作るから、しばらくはこれで頑張ってね」

 

フィーネもなぜかノリノリで協力しているようだが、本当に意味不明だ

 

なぜ映画鑑賞が入っているのかは統慈にはわからないだろう

 

「わかりました、ではこれで

今日からでいいんですよね?」

「あぁ、まずは映画鑑賞だ

これで筋力の使い方を学ぶといい」

 

「…了解しました」

 

此処から地獄の映画鑑賞が始まった

 


 

「よし!それじゃあ少し早いが

筋トレの方に移るぞ」

 

エンドロールまできっちり見た上で

かなり眠気が来ている統慈に

やる気に満ちた声がかけられる

 

「…了解しました」

「まずは100メートル流しで行くぞ、ウォームアップだ」

「了解です」

 

移動した先のフィールドで軽く走った後、腿上げや背筋、腹筋などを限界までやらされ

 

「…よし!大体のデータは揃ったな

高校生基準の新体力テストに照らし合わせると…投擲は5点、シャトルラン6点、それ以外は概ね7点、長座体前屈は10点だな」

 

出た数値は体育会系の学校の平均値ぐらいだった

 

「…はぁ……はぁ……」

 

全力は尽くしていても

やはり生来苦手な事はある、ソロモンの杖は393に任せておくべきだろう

 

「此処から最低オール10点を取れるように半年で鍛える!相当負荷が掛かるが、普段の体育を欠席しているツケだと思えばなんという事は無いだろう!」

 

「…大問題ですよそれ…」

 

統慈は聞こえないようにそっと呟くのだった

 


 

「旋音、最近なんかぼーっとしてること多いよね?」

「わたくしには分かりますわ…

普段生活面でも成績面でもきっちりしている彼女が隙を見せる…この流れ

 

男ですわ!」

 

「おー…とこ?………は?!

旋音に男!?どういう事だし!

旋音は同族(非モテ)じゃないの?」

「無論あの子だってそれは自覚してる筈、でもそれでも!やっぱり彼のことが気になって仕方がない!認めたくないのに…悔しい!でも想っちゃう!恋とはそんなものなのですわ!」

 

なお、統慈は高負荷筋トレのせいで疲労が激しく、鎮痛剤も栄養剤を併用してなお肉体の疲労が抜けないほど疲れているせいで脳が満足に働いていないだけである

 

ちなみに、生成には複雑な手順が要求されるので、フィーネ(了子)が作っている

 

流石に訓練後の時間で作れと言うには酷すぎる手順であるから残当でもあるが

 

「私は男なんて作ってないんだけど…大丈夫だよ、授業は受けてるし

体育は見学だけど…その分も動いてるから」

 

嘘は言っていない、『その分』が唐突かつ過剰すぎることを除けば、だが

 

「ならなんで急に?」

 

「そのジム通いがかなり響いてるだけです…ふぁっ」

 

唐突なあくびを抑えて、眠気を堪えつつ必死に授業に集中する旋音

 

「今の可愛い声何ぃ?」

「…これはバ○ブ仕込まれてますわ」

「どこの筋肉鍛えてんのよ…」

 

何やら邪推を呼んでいるようだが

断じてそんな事はない

この年頃の女子はそう言う妄想が激しいだけである

 

「…なんか違うことを考えられている気がします…」

 

旋音とてそれは察しているのだが

言えば言うほど騒がれることもまた知っているので、その辺りは自然と下火になることを願って無視することにした

 

そして、翌年の春になり

そんな噂は(本人の巧みな情報操作によって)消え果てていた




いや…とうとう原作開始まで間もない時間ですね…(適当感)


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第20話

順当に単位を落とした体育を除いて

すべての教科で80以上の点数を出して一応進級に成功した柏木旋音

 

だが、やはりというかなんというか

彼に現れた身体的な強化は

一般的な筋トレ程度のレベルに収まり、OTONAのレベルには至っていない

 

「まぁ仕方ない…かしら?」

 

この一年ですっかり板に付いている女装も、もう誰の手も煩わせずに

一人で、極めて短時間のうちにできるようになっていた

 

「さて、帰りましょっか」

「はいよ?…今日メック寄る?」

「寄りません、夜に用事があるから、その仕込みで早めに寝るのよ」

 

さっと誘いを遮って

不自然にならない程度に情報を隠したセリフを置いて、そのまま鞄を取る

 

その動作もなんとなく力任せだった昔とは違い、力の向きや勢いなどを制御して

女の子らしく、

上品な動きになっている

 

フィーネは何を努力しているのだろうか

 

「…それじゃあ、帰りますよ」

「はいはーい、で、詩歌達は誘うの?」

「詠奈だけよ、二人はたしか今日委員会の集会があったはずだから」

「そっか…んじゃっ!」

 

荷物を詰め込んだ鞄をガバッと持ち上げるのは、琴乃詠奈(17)

 

かつて友人A(仮称)とされていた

現友人である

美居歌葉(17)

成瀬詩雅(16=遅生まれ)

 

とともに四人でよく一緒にいる

というか、女子の連帯意識は基本的に強く、基本自由時間は一緒にいる

 

「みーちゃんもシガも忙しいんじゃ一緒になるのは二人だけか…寂しいねぇ」

「そうね…一人よりはマシだけど

やっぱりみんな揃ってこそよね」

 

「あーやめやめ!明日一緒に帰れば良いじゃん!辛気臭い空気は出荷よー」

 

「…クスッ…」

「あ!笑った!よし!

今日のスマイルゲット!

…それじゃあ帰ろっか」

 

つい笑ってしまった旋音に指を突きつけてから自分も笑い出す詠奈

 

一仕切り笑い合ったあとに

一緒に教室を離れて

そして共に駅へと向かう

 

「それでね…」

 

詠奈の出す話題は尽きないが、

旋音とて女子向けの話題はちゃんとチェックしている、そんなところでボロを出すわけには行かないからであるが

実を言うと

半分以上、単純に友人達との話が楽しいからもっと話したいと考えているのが原因である

 

「それじゃあ、ここで」

「うん、じゃまぁ…また明…」

 

『また明日』なんの変哲もないその言葉、しかし今日に限ってその言葉は中断された

 

「ノイズ!」

 

詠奈を庇って押し倒し路上を転がって、すんでのところでその手から逃れる二人

 

「…来たか」

原作開始後一番わかりやすい目印である、ツヴァイウィングのライブ後

2年後の新年度のタイミング

 

ノイズ襲来が響の融合症例:ガングニール・ギアの覚醒を告げるその時が

ようやく来た

 

「でもそれより…まずは」

「…なにあれ…なんなの…」

「ノイズです、詠奈!逃げて!」

 

詠奈を強引に立たせて

同時にノイズの方を確認する

(よかった、まだ会話フェーズだ)

 

ノイズの行動として、よく空気を読む

ちゃんと会話中であることを察して待ってくれているのだろう

 

「…早く逃げなさい、詠奈!」

「だからなんなのよ…急に出てきて…なんでノイズ?なんで?」

 

完全に恐慌状態を起こしている詠奈は旋音の話を聞きはしない

 

「…仕方ない」

 

故に選択した、

戦うか逃げるかの二択を

 

「こっちに!」

 

強引に詠奈の手を引き

無理やり走り出す

 

追ってくるノイズを見させないように頻繁に声をかけながら、全力で走り

 

足が限界に来たらしい詠奈が座り込みかけたところで、鞄を放り捨てて詠奈を背負う

 

「んんっ!」「きゃっ!?」

 

「今は逃げることが先決!」

 

語尾や語調の修正はこんな時でも切らさないが、それでも焦りながら

OTONAレベルには至っていない程度の速度で走る

 

体力はあるが、さすがに高2女子一人をそのまま背負ってフルマラソンなんて出来るような自衛隊員レベルの体力ではなく

 

「く…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ついに肉体側が悲鳴を上げ始めた

「もうやめてよ…置いて行って

置いてけば一人で逃げられるでしょ!?なんでよ!」

「…はぁ…はぁ…置いてく?…はぁ…バカな…事を……」

 

既にノイズに囲まれている状態

変身していなくてもノイズに接触できる統慈=旋音が単独ならともかく、

詠奈が助かる道はない

 

「でも」

「『だっても』『でも』もない!友達だから!その一言で十分だよ!

 

友達を助けるのにそれ以上の理由はいらない!私が一人で逃げたところで!

 

それで私は助からない!友達を見捨てて逃げた卑怯者になって!それで私は!明日笑っていられないから!」

「旋音…」

 

そこでようやく、ノイズが動き出す

再びの二択、今度の選択は…

 

「クラスのみんなには、内緒だよ?

 

sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

右腕から湧き上がる炎が糸を紡ぎ

炎の織布を形成して全身を覆う

それと同時に知覚が拡張された

 

詠奈の方に炎を伸ばして炎の壁で周囲を囲い込み、ノイズが侵入しないように防御した

 

「…殲滅する

 

権限起動:1/9定率 積層変成物理力体」

 

早口と同時に装甲の炎を伸ばして

Rosso=fantasma(ロッソ=ファンタズマ)

 

炎の槍を形成、槍を鞭のように伸張して縦横無尽に撃ち放つ

 

「…ぅぉぉぉっ!」

 

声の偽装を敢えて解き

全力で大暴れする

 

ノイズは未だ数が減らないが

それでも統慈の炎は衰えない

自重しない統慈は自分がスカート姿であることすら忘れて、身長より長い大槍を振るう

 

「やれる…勝てるぞ…

Rosso=fantasma!」

 

再度炎を注ぎ込み、サイズを引き上げて、巨大な槍を斧槍(ハルバード)に変えて

大きく振り回し、さらに巨大化させて

 

「horizontal=wave」

 

視界のノイズを横薙ぎの一撃で完全に撃滅する

 

「…ふぅ…」

 

ノイズ被害と言い張るには明らかに派手すぎる破壊痕が残ってしまったが

友達を守るためなら誤差であろう

統慈は即座に装甲を解除して

炎の障壁を解く

 

即席だがこれの技名は

muro di fuoco(防火壁)…解除」

 

さすがにファイアウォールでは直接的すぎると思ったのか、イタリア語で誤魔化している

 

ほかはほとんど英語なのに

ロッソ=ファンタズマとモーロ ディ フォーコだけはイタリア語なのは

何故なのだろうか

 

「詠奈!」

そこにいた詠奈は…気絶しているのか、倒れていた

 

「っ!」

 

otona塾で習った救命技に則りすぐさま呼吸と心拍を確認して…異常がない事を知り

大きく息をついて落ち着く

 

そして統慈は…再び詠奈を背負って

駅を離れることにした

 

幸にして携帯はポケットに入っていたので、投げ捨てた鞄を探す必要もなく

先に救援を呼んでから…現場を離れる、詠奈の家は把握しているので、そこまで送ろうというつもりだ

 

「…はぁ…ついてない…」

 

結局、帰宅予定の時間に

大幅に遅れてしまった統慈は響の加入パーティーに顔を出すことすらできずに

意気消沈して寝入るのだった



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第21話

「…はぁ」

 

統慈、翌日学校に遅刻

 

昨夜に遅く帰ってきてはすぐに不貞寝した挙句に翌朝学校に遅刻とは

醜態ここに極まれりである

 

「…まぁ、仕方ないか」

 

ノイズだから仕方ない

これは意外と昔からある価値観なのだが、『ノイズ』という名前は意外と知られておらず『認定特異災害』として指定されている存在

という名目でのみ、高い知名度がある

 

ちなみに、天然のノイズはフィーネ曰く『10年一度の偶然』レベルで珍しいらしいが、フィーネは任意でノイズを呼び出す道具を(停止状態だが)所持しており

 

クリスを騙してそれをネフシュタンの鎧と共に起動させて使用する

 

10年一度という割に

フィーネがソロモンの杖で召喚した物以外にも各所に頻繁に現れているとは言ってはいけない

 

「よし」

 

もう慣れきった女装で登校しつつ

学校に電話を入れて…もう連絡されていたようで、あっさりと電話を切る統慈

 

「ノイズ被害の心労で…って、それむしろ休む言い訳だと思うんだけど…」

 

どうも緒川さんの心労とは

20分遅刻程度のものであるらしい

 

流石NINJYAなだけある

 

「まぁ良いや、いそご…」

 

otona塾で鍛えた脚で…上着の裾やスカートに気をつけつつ走る、無論

全力ストライドとはいかない

女子力のある走り方のために速度を犠牲にしているが、それてもある程度は早いといえる走りだった

 

「…到着!」

 

時刻は8:40

まだショートホームルーム前

少し遅刻程度の話に収まっているようだ、うまく交渉すれば遅刻判定すら出ない可能性もある

 

のだけれど

そんな皆勤賞狙いのようなことはしていないので、普通に職員室に寄る

 

「失礼しまーす」

「はいよ、話は聞かせてもらっているから、構わないよ…災難だったね」

 

「はい、ノイズが…目の前で…」

 

此処の学校の先生も、ほぼ全員が二課の息のかかった人物なので、この問答も正直に言えばほとんど茶番であるが、一応やっている

 

「…それじゃあ、私は教室に…」

「いってらっしゃい」

 

名前を覚えてもいない

英語の先生に送り出されて

教室へと向かう統慈=旋音

 

「失礼します…すいません、遅れました」「はいよ、話は聞いたから

気にしなくて良いよ」

 

軽いお小言だけを聞いて席につき、そこからは黙りこむ、心労が理由で遅れてきたやつが急に明るく振る舞い出しても心配を誘うだけだろうから

ある意味正解な行動ではある

 

「…大丈夫?」

「大丈夫ですよ…私は」

 

俯きながら、軽く頷く

(無論ほぼ演技)

 

「詠奈ちゃんも巻き込まれたって聞いたよ?」

「はい、一緒にいたので

詠奈と二人で逃げました」

 

普段ならそこらで、

愛の逃避行などと茶化されるのだが

命が掛かっている局面故にか、誰も騒ぐようなことはない

 

「…それで、詠奈は?」

「家に送りましたよ?…なんとか、と言った有様ですが逃げ延びましたから」

 

しっかりと答えておく

そこで回答を誤ると人殺し呼ばわりされるので、情報は秘匿したままのほうが

本来なら良いのだが

むしろ不自然に隠すのも危険であるので、敢えてしっかりと答える事にしたようだ

 

「…おつかれさま」

「はい…疲れました」

 

さっさと机に突っ伏してつかれているアピールをしておき、授業中もそれでやり過ごした

 

「帰ろう…」

 

結局、朝以外はなんの変化もなく

やや旋音のテンションが低い程度の話で処理されてしまったらしい

 

「…よし」

 

一人呟きながら頭の中で時系列や場所をピックアップし始める統慈

これからもやる事がある以上

先の事を考えておくに越した事はない

 

とはいえ、統慈の機記憶は不完全な穴だらけの代物、イベントなど

時間軸的に先のものに絞ると

ノイズが出現して響がガングニールを纏う、ガングニール=響とアメノハバキリ=翼が戦う→OTONA登場の三つと

 

ドスケベスーツのクリス登場→アーマーパージだ!(イチイバル装着)およびデュランダル輸送作戦の響暴走程度である

 

クリスのネフシュタンについては無力化する算段がつくものの、イチイバルにはそれは効かないし、どうせ原作通りのルートにならなければクリスは脱落してしまう、それはいくつかの状況で必要な彼女の火力が使えないということになり

 

最高のルートで進んでも三期GXの最終戦(VS覚醒キャロル)で詰んでしまうことを意味する、無論大概の場合ではそれ以前に一期の最終戦(VSネフシュタン=フィーネ)での月破壊が達成されてしまうだろうし、そこから連鎖的にシェム・ハ登場である

 

一期のギアでは出力が足りなすぎてシェム・ハに負けてしまうだろうし、そもそもシェム・ハは倒せてもそこらの人間を依代にして無限に復活するのだ

エクスドライブでもどうにもできない事はある

 

「よし」

 

二度目の呟きが上がると同時に

統慈=旋音は立ち上がり

 

いつのまにか終わっていた授業の内容をノートに残しながら、同時に

別のノートに作中の時間軸やフィーネの元から引っ張り出してきた聖遺物の研究についてのデータ、櫻井理論の論文から抜き出してきた文章やグラフデータの写真(無論紙にコピーしたもの)を書きつけたり貼ったり、見る間に余人が見れば黒歴史となるだろうノートを作り上げる

 

放課後になるころには

時間軸的にだけでなく、聖遺物の研究結果的にも、国家機密的にも、そして旋音の尊厳的にも誰にも見せられない黒歴史ノートが完成するのだった

 

そこに記されたのは

大雑把ながらに未来の記録となるフローチャート、おおむね原作通りだが

奏が生存しているという

明らかにズレたポイントがある

これが後にどう響くか、これが問題となるだろう

 

チャートはあまり先の未来まで伸びてはいないが、取り敢えず知っているイベント

予測できるイベント、および

フィーネの都合上どこかで起きるだろうイベントは確保している

 

…マリアの全裸生中継を録画するための努力の結晶であるだなんて統慈の口が裂けても言わないだろう、まぁどちらにせよ当分先の出来事だが

 

「アレは衝撃的すぎるイベントだからなぁ…」

一人仮想カラオケ中継中にギアボッシュートされて強制解除→服戻らずの流れをやらかしてしまうマリアの幸の無さやいかに

 

「帰りましょっか…」

 

今日ばかりはそっと二課に帰ると、その直後…

 

「サイレンっ!?」

ノイズ警報が響き渡った

 

「このタイミングで…アレか!」

 

部屋に帰って真っ先に飛び込んだベッドから飛び起きた統慈はそのまま部屋を出て

エレベーター(カ・ディンギル)で外へ向かう

そして、それと同時刻

 

響が決意も持たないまま(翼主観)

ガングニールを使って飛び出して行くのを見届けた緒川さんはため息をついて

 

「なんで装者同士、仲良くできないものなんですかね…」

 

などと呟いていた



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響の変化

「…っ!」

 

飛び出していった響と、それを追うと同時にノイズ殲滅のために駆ける翼

二人の動きは全くバラバラで共闘意識など微塵もない

 

そして、当然ながら

統慈のことなどまるで考えていない、どころか思考の片隅にすら存在していない

かたや力を振り回すだけに必死になり、かたやノイズを殺す(正確には破壊する)ことしか考えていない

 

それでは意識は隙だらけだ

当然、統慈が介入するのに邪魔などはいらない

 

sealder leagjarn nshel tron(絶望を封じる箱を開け)

 

起動させたレーギャルンを纏い

その場で待機する

 

無論、この後のイベントで発生するはずの余波をかわすための展開であり

戦闘目的でもなければ、テストでもないのだが、嫌な気配が滲み出ている空間で素面でいることもできずに着装しただけである

 

「…………………」

 

統慈の表情はやや怒り寄りの興味

と言ったところだが

その目で見ているのは年端もいかない…というほどでもない美少女達

お巡りさんこいつです

 

「…今だ!」

 

小さく呟く統慈、その視線の先には

ロクな狙いも付けずに天ノ逆鱗をブッパする翼の姿があった、そう

OTONAの介入待ちである

 

「……よし!」

 

OTONAが翼の繰り出す天ノ逆鱗を止める…言うは易し行うは難しの典型であろうが

本当に素手でシンフォギアの攻撃を止めたのである

 

当然ながら爆風が巻き起こるが

仮にもシンフォギアを装備しているだけあって、統慈にその影響はない

 

そしてそれをやり過ごしたと判断した瞬間に、統慈はレーギャルンを解除した

OTONAにバレるのを防ぐためである

 

OTONAは時に気配を察知してくる

OTONAは5期の翼がアマルガムを使わざるを得ないほどの攻撃力を持つ

OTONAは完全聖遺物装備のフィーネを撃退する継戦能力がある

OTONAは攻撃特化のギアでも軽くいなす技量がある(なおジジイ限定)

 

これだけスペック山盛りのOTONAが(たとえ一期序盤とはいえ)出てきているのだ

警戒に力を費やす事を惜しいとは考えないのが最善であろう

 

 

「帰るか」

 

ちゃんと原作通りにシーンが進展した事を見取った統慈は素早く帰還するのだった

 


 

「…ふぅ……」

 

ベッドに戻った統慈は

とりあえず今日のの鍛錬は中止になるかと考えて、自分の分+響の分の

カストディアン流(ry

を作成開始し、リンカーの調合法を確認したり、調整のシュミレーションをしたりと色々やっていた

 

のだが、結局帰ってきたOTONAは何事も無かったかのように普段通り鍛錬を宣言した為、疲弊した体で走り回ることになり映画鑑賞中に寝落ちしてしまうのだった

 


 

翌朝 ピピピピー!と煩く鳴る目覚まし時計の音で起きた統慈は、すぐさまに自分の状態を確認して、旋音のままである事を知り、それならそれで、とすぐに登校して行った

 

「のだけれど…」

 

特にすることもなく、原作開始後の貴重な時間を無駄に過ごしているという焦りだけが蓄積する

 

「とにかく、私が今するべきことは…眠」

 

統慈は眠ってしまった

 

のだが、さすがに起こされ

眠い目を擦りながら(メイクは崩さないように)授業を受けることになった

 

「旋音?大丈夫?」

「ん、大丈夫……」

 

「全然大丈夫じゃないじゃん…全く…いいよ、明日ノート見せてあげるから今日は寝てな」

「ふぁぁすぁぅ…」

 

もはや真っ当に返事すらせずに眠る旋音は、その二時間後の体育の授業になってようやく起こされるのだった

 

その後、帰宅した統慈はまず

カストディアン(ry

を飲んだ後、身体的な能力の向上のための訓練をこなし、映画を見て

宿題に追いかけ回された後に寝た

 

 

その後、本当にその後…

 

「また、フラワーにきているわけだ」

「はい!」

 

なぜか統慈は響と『ふらわー』に来ていた

 

しかも、お好み焼きを食べるという本来の目的から外れた、そう…いわば

談話目的での会合である

 

「で、急に呼び出されたんだが

何があったんだ?」

 

「実はですね…わたしは今、ちょっと悩んでることがあって」

「ふむ」

 

響は人に頼るのが苦手だ

分担的に任せることはあっても、行動自体を他者に頼ることは珍しい

 

のだが、やはり信頼の賜物か

悩み事や不安などを素直に言ってくれるようになっていた響は、なぜかふらわーでだが

相談という形でそれを打ち明けてくれた

 

のだが、はっきりと言わせてもらおう

原作改変のバタフライエフェクトである

 

「つば…えっと、最近出会った知り合いの人と、あんまり打ち解けられなくて

昨日、昨日いろいろと…その、怒られちゃって…」

「下を向くのは勝手だが

その前に情報をおくれ、まずは何があって怒られたか、どのように怒られたか、真意はその人にしかわからないが推測はできるからな」

 

適当な事を言ってより詳しい情報を書き出そうとしているが、統慈は既に知っているので、やっている事は答え合わせどころかカンニング済みのテストの採点に近い

 

「えっと…あの…」

 

隠し事の苦手な響は事情をうまく説明できずにいるが、そこを読み取っている振りをして

統慈は響の耳元に囁く

 

「二課だろ?」

 

それだけで、響は驚愕の表情をする

「大丈夫、俺も二課の所属だ」

 

遂に明かされた…というか、今まで知らせるタイミングに巡り会えなかった情報が

遂に響にわたり、そして

響も情報漏洩のリスクがなくなった事で、真っ当に話せるようになった

その結果…

 

「アームドギア…か」

「はい…」

 

響は、問題に直面していた

そう、シンフォギア最高のセリフと言う議論の時に、必ず上がってくるセリフ

『繋ぐこの手が、私のアームドギアだ!』これは三期GXでのセリフ

つまり、アームドギアが手である事を、統慈は知らないのである

 

「まぁ今は出なくても

それは強い意志が有れば出るんだろ?

なら、立花の心持ち次第だ

少なくとも古来『出したい』じゃあ出ないから、何かの一念を決める必要があるけど」

 

「じゃあ!」「気にする必要はない、それだけだよ」

 

統慈は『結局それらしい武器が出てくることがなかったからなくても十分だろう』

程度にしか考えていないが

実は的を得ているのだった



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