東方隠猫録 (賢さ45)
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1話 猫

俺はどうやら転生したらしい。

 

と言っても記憶とかは全然なく、ただ前世の知識があるだけで自分がどんな人間だったか、見た目はどうだったかなどは覚えていない。覚えているのは男だったことぐらいか。

そんな俺だが、猫になっていた。にゃんにゃん。どこかの森のなかで気がついたら親に首をくわえられていた。ちなみに兄弟は5匹いた。兄貴2匹に姉2匹、妹1匹だ。俺は三男。言葉はにゃーにゃーとしか言えなかったのに親に意思を伝えられる。不思議!

餌は親が持ってきたものを食べている。ネズミとか虫とかで最初は嫌々食べていたが食べるものが他になく、なおかつ猫に成ったせいか忌避感も感じなくなってきた。

最近、親が俺達に餌の捕り方を教えてきた。そろそろ独り立ちかな?いやまだ早いか。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

生まれてから多分4ヶ月くらい。親が俺達に威嚇をしてきた。これははよ自立しろやの合図だ。猫の自立早すぎじゃね!?まあ一通り生きていく術は学んだし、頑張って生活するか。家族と別れて俺は独り暮らしを始めた。

そういえばこの森、化け物が出るんだぜ。大きな蜘蛛とか人の形をした何かとか。本当にここどこ!?俺が知ってる日本にはこんな化け物だらけのとこないよ!?いや、もしかしたらただ単に見つけられていなかっただけなのかもしれない。空の星もキレイだし空気も美味しい。実は北海道辺りにあったりして。そもそも日本かどうか自体分からないけど。

 

そんなことを考えながら移動していると茂みがガサガサと音を立てた。ヤバい!!俺は警戒しながら後ろに下がる。するとそこから大きな熊が現れた。俺が知識にある日本の熊のサイズとは偉い違いだ。大人二人が肩車しているようなサイズで、よく人の形をした何かと闘っているのを見かける。チャームポイントはその戦いで怪我した片目♪その熊が俺を見たとたん獲物を見つけたように飛びかかってきた!

 

ヤバいヤバいヤバい!!あいつ片手で木を破壊するんだぜ!しかも飛んでる虫を避けるように軽く手を振るだけで!!食らったら一発で御陀仏だぞ!!只の猫の耐久力舐めんな!!

 

熊は今も後ろから迫ってきている。たまに追い付かれそうになり、振り下ろされる腕が俺を吹き飛ばすような風を発生させ、それで加速しなんとか逃げている。それでも体力にはいずれ限界が来る。早く安全な場所に隠れなければ!!

走っていると小さな洞穴があり、急いで中に駆け込んだ。息を整え後ろを見ると熊が入り口でうろうろしている。熊の大きさではここに入れないようだ。俺は安心して周囲を見渡し、絶望した。

 

ここ・・・出口一つやん。

 

たった一つの出口は熊が塞いでいる。つまり、熊をどうにかしないと俺はここから出れない。出たら最後だ。

どうするか悩んだが熊をどうにかする手段が思い浮かばず、結局ここで一晩過ごすことにした。

 

 

 

 

 

 

 



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2話 食料

目が覚めると朝になっていた。

洞穴の出口から朝日が入ってきている。俺は恐る恐る出口に近づいた。顔を出して辺りを見渡すと、近くで熊がいびきをかいていた。

しめた!逃げるチャンスだ!!

俺は洞穴から出て音をたてないように走り出した。しばらく走って後ろを振り返っても熊は追いかけてこなかった。はあ。良かった。死ぬかと思った。

ぐうー

安心すると腹が鳴った。そういえば昨日からなにも食べていなかったな。俺は辺りを見渡した。しかしそんな簡単になにか食べ物があるわけではなく、探し歩くはめに成った。取り敢えず水飲もう。そう思い、川を目指した。

 

 

─────────────────────────

 

 

 

川につくと鹿が水を飲んでいた。俺も飲もうと思い川に近づくと鹿がいる方向に何かが飛んでいった。俺は驚き急いでそちらを振り向くと、鹿がライオンみたいな大きな獣に首元を噛み付かれていた。獣は鹿を噛んだまま首を左右に振っていた。何て言うんだっけあれ。たしか獲物の肉を柔らかくするためにするやつ。

 

鹿に夢中で獣は俺には気付いていないようだし隠れとこう。しかし腹減ったなー。何か食べるものないかなー?ふと顔をあげると目の前の大きな木に赤い実がたくさんなっていた。お、あれリンゴじゃない!?俺は獣に気付かれないように近くの木に登った。近くで見てみてみるとやはりリンゴであることが分かった。

ラッキー!これで腹を満たせる!まず一つ採ってみる。甘い!うまい!いやー、ここに来るのは初めてだったけど当たりだったなー。

俺は一つ目を完食し、二つ目を食べる。食べている間、下を見ると獣が所々食べ残した鹿肉を放置して何処かへ去っていった。周囲を見渡したが誰も来る気配はない。俺は急いで下に降りて鹿肉を食べる。やっぱ肉だねー。タンパク質も必要だし、鹿肉余ってて助かったよー。あのライオンみたいな獣に感謝しよう。

食べ終わると俺は再び木の上に戻り、食べかけのリンゴを食べた。え?食い過ぎだろだって?いや食べれるときに食べとかないと次はいつ食べれるか分からないんだよ?食い溜めしないと。

俺はリンゴを食べ終え、木を降りた。よし、取り敢えず家に帰ろう。家と言っても縄張りにしているだけの只の洞窟だ。出入口は今日入った小さな洞穴より少し大きいが、草に覆われておりぱっと見何処にあるか分からなくなっている。また出入口は複数あり、今日みたいな詰みにはならない場所だ。あ、そうだ。俺はリンゴの種を口に含み家に持ち帰り、家の近くに植えた。これが育ったらすぐリンゴを食べれる。そしたら食料に困りにくくなるだろう。目印として石で囲んだ。楽しみだなー。

・・・そういえば今頃だけど猫ってリンゴokだっけ?

 

 

 

 

 



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3話 能力

朝になり意識が覚醒した。

それと同時に俺の頭のなかに文字が浮かび上がってきた。

『隠す程度の能力』

隠すって何を隠すんだ?しかも程度とはなんぞや?そもそも何故いきなり浮かび上がってきたんだ?てか、どうやって使うんだ?疑問はつきないが、取り敢えず試してみることにする。

まずは俺の姿、隠れろー!!

・・・別に姿に変化はない。いつも通り自分の体は見える。変わった部分と言えば少し疲れたことくらいかな?もしかしたらやり方が違うのかもしれない。まあ能力については後にして朝飯を取りに行くか。そう思い俺は家を出た。

 

 

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獲物は相変わらず見つからず、今日もリンゴを取りに行く。川へ向かっている最中、前の茂みから音がした。

やべえ!また熊か!?ライオンか!?そんなことより逃げなきゃ!!

俺は急いで進行方向を変えて逃げる。後ろをチラリと見ると昨日襲ってきた片目の熊がいた。熊はこちらを見たが、鼻をひくひくさせるだけで追ってこなかった。

あれ?昨日はあんなにしつこかったのに何故?

俺は足を止めて熊の異常をもっと観察しようと近づいた。熊は俺が近づいているのにまるで見えてないように鼻をひくひくさせている。そして辺りを見渡し、なにかを探している。混乱しているようだ。

なんだこいつ?ついにその残った片目も見えなくなったか?

熊は俺を襲ってこないので横を素通りし、川の方向へ走った。

 

 

─────────────────────────

 

 

 

川に着いたがやはり熊は追ってこなかった。

結局何だったんだあいつ?あの執念はどこ行ったんだ?

まあいい。あの熊のことはほっといて、水とリンゴだ。俺は川に近づき、水を飲もうとした。が、何かがおかしい。ここに来たのも昨日今日だし気のせいだと思ったが、やはり変だ。水の味?昨日と同じだ。俺の体?この数ヵ月見続けた毛に覆われた体だ。俺の顔?見えない。

・・・ん?顔が見えない?あれ?

俺は水面に写っているはずの俺の顔を探す。やはりない。そう、水面に写ってない。顔どころか体全体が写ってない。

あれー!?なんで!?俺いつの間に吸血鬼になったんだ!?てか、猫の吸血鬼ってなに!?

俺が自問自答を繰り返していると一つのことを思い出した。そうだ。能力使ったんだった。なるほど。だから熊は俺を探していたのか。俺は『姿を隠す』と言ったから臭いだけが残ってそれを探していたのか。なら臭いも隠せるのか?野生の動物に見つからないようにするには姿と臭いと・・・、あと何だ。うーん、これだけで大丈夫かな?あ、気配は?取り敢えず全部隠してみよう。

 

 

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あのあと実験してみたが、結局姿、臭い、気配以外に、音も隠すことになった。これで堂々とこの森の中を移動できる!逃げる必要も無くなったし、死ぬ可能性も下がった!

だが、能力を使う度に何かを消費しているようで使いすぎてぶっ倒れた。襲われるかもとひやひやしたが、目が覚めた後も効果は続いていたようで、死なずにすんだ。どうやら俺が能力を解除するまで続くらしい。これは嬉しい。

目が覚めると昼前だったのが、夕方になっていた。今日はこれくらいにして帰るか。そう思ったが、

ぐうー

お腹がなり、一日中何も食べていないことに気づいた。

・・・リンゴ食べてから帰るか。

俺は川へ向かって走り出した。

 

 

 



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4話 人間

今日も食料を探して、見つからなかったらリンゴを食べよう。

そんな計画をたてながら森の中を散策していると、森の外れに大きな建物を見つけた。人が居るかもと思い近づいてみると、建物を壁が囲んでいた。つまり都市だ!

こんなところあったんだー。へー。凄いなー。

壁を真下から見てみると圧巻的で、軽く30メートルはいくのではないかと思うくらい高い。門らしき場所には二人のガチムチな男が立っており、警備をしていた。

・・・あんまり近づきたくないな。だってあんなガチムチマッチョだよ!?しかも上半身裸だよ!?実際会ってみなよ!マジで引くよ!?

という訳で俺は森に帰った。人に会いたいとは思ったけど、あんなマッチョに会いたいとは言ってない。

よし、全部忘れよう。マジで夢に出るくらいのマッチョだったよ。

 

 

─────────────────────────

 

 

 

しばらく餌を探しているとドクターマリオの赤青のカプセルが二つ逆に積み重ねられたような服を着た女性を見つけた。

おお!!猫になって初めて人間見た!!え?マッチョに会っただろ?なんのことかなー?(すっとぼけ)

今まで森のなかで見てきたのは人ではなく人の形をした何かで、本物は見ていなかった。確かにこの森異常だし、人入ってくるわけないけど。でも今会えた!よし、コミュニケーションとってみよう。能力解除して。

にゃーん

一鳴きして女性に話しかけてみる。女性は驚いたようで矢をこちらに向けてきた。危なっ!?女性は俺の姿を見て安心したようだ。そして俺に近づき膝にのせ、頭と顎を撫でてきた。思わずゴロゴロ喉をならしてしまった。暫く撫でられ続けて、女性が思い出したかのように花を取り出し俺に見せてきた。

 

「ねえ、猫ちゃん。この花何処にあるか知らない?」

 

お、この花俺の家近くにあるぞ。よし、案内してあげよう。俺は膝から飛び降り、女性を見ながら尻尾で手招きをする。女性は俺の後をついてきた。良かった。ついてきてくれている。これで俺の考えがわからないならどうすればいいかと思ったよ。よし、ついでに化け物達に襲われないように能力を発動しといてあげよう。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

道中何もなく、無事に俺の家に着いた。女性が見せてきた花は大量に咲いており、俺も邪魔だと思っていた。

だから好きなだけとってもいいよ!べ、別にあんたの為なんかじゃないんだからね!

女性は花を採取し始めた。俺は近くでくつろいでおこう。

暫くすると取り終わったようなので、ついでに帰りも案内してあげよう。俺は再び鳴き、尻尾で手招きをする。そして女性を朝見た都市まで送っておく。案内が終わったので帰ろうとすると女性に呼び止められた。

 

「ありがとう」

 

そう言われ、何だか恥ずかしくなったので逃げるように帰った。あ、もちろん都市着いたときには女性に能力解除しているよ。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

私の名前は八意××。みんなから永琳と呼ばれている。

都市では中々高い位におり、都市の中心と言っても過言ではない。今日も私は薬を作るための材料を集めるために森のなかに入った。材料となる花をいつもの場所に取りに行ったが、花は必要な量がなく、このままでは薬が出来ない。また、この森のは妖怪が多く、長く居るのは危険だ。先程も妖怪一匹が襲いかかってきて殺したぐらいだ。どうしよう、このまま帰るか?いや、しかし・・・。

悩んでいると後ろから音が聞こえた。

にゃーん

私は驚き、音がした方向へ矢を向けた。そこには真っ白な猫がいた。

はあ。警戒して損したわ。

私は矢を下ろした。白猫は尻尾を振りながらこちらを見ている。

・・・この白猫、かわいいわね。

私は白猫を抱いて近くの倒れている木に座り、白猫を膝の上にのせた。そして頭と顎を撫でまくった。

かわいい。この白猫、人懐っこいわね。

白猫は喉をゴロゴロと鳴らしている。私はもっと撫でたかったが、ここにいる目的と長く居座ることの危険性を思い出した。

花も見つからないし、帰るべきだろうか。

そうだ。この白猫に聞いてみましょう。言葉が通じるわけないけどどのみち帰るんだし試してみるだけ試してみましょう。私はそう思い、白猫に花を見せて聞いてみた。

 

「ねえ、猫ちゃん。この花何処にあるか知らない?」

 

白猫はきょとんとした顔でこちらを見ている。はあ、やっぱり通じるわけないわよね。さあ、もう一撫でしたら帰りましょうか。

するといきなり白猫が私の膝の上から飛び降りた。そして振り返りながら私を手招きするように尻尾を振っている。

もしかして、言葉が通じている?

私は疑問に思い、取り敢えず後をついていくことにする。白猫は私がついてきているのを確認し、時々止まりながら進んでいく。そして暫く歩くと、私が探していた花が大量に咲いている場所に着いた。白猫はつくとすぐ近くの石の上にのり、丸くなった。

この白猫、やはり言葉が通じているのか?

私は考えていたが、まずはこの花を採取する方を先にしよう。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

ある程度採り帰ろうと思ったが、帰り道が分からない。そもそもここまでこれたのはこの白猫のお陰だし、道は覚えていない。

帰る手段を考えていると、白猫が石の上から降りてきて、再び尻尾を振りながら私に振り返ってきた。

これは帰り道も案内してくれているのだろうか?ならありがたい。

私は白猫に再びついていくことにした。

 

この白猫はなんなんだろう。まるで私の言葉がわかるように行動する。妖怪かと思えば、感じるのは霊力だけ。こんな猫は初めてだ。そういえば、この森は妖怪がよく出るはずだったのに、この白猫に会ってから一度も遭遇していない。ますます分からない。

考えているうちに都市の前に着いたようだ。

本当に着いた。やはり言葉が通じているのか?

私は再び白猫を見ようとするが、横にいたはずなのに、いつの間にか居なくなっていた。振り返ると森に帰ろうとしていた。

 

「待って!」

 

私は白猫に呼び掛ける。白猫は驚いたようにこちらを見た。私は白猫に、

 

「ありがとう」

 

一言礼を言った。白猫はそれを聞くとすぐに逃げていった。

また、会えたらいいわね。

私の姿を発見した門番達が急いで近づいてくる中、私はそう思っていた。

 

 



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5話 妖怪

森のなかで女性に会ってから数十年経った。

え?いくらなんでも跳びすぎだろう?

てかなんで生きてんだよ?

前者は仕方がない。あまり特徴的なことがなかったんだから。

後者は・・・、俺、何と妖怪になりました!!どんどんパフパフ!え?古い?そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。

・・・とにかく、俺は妖怪になった。猫又とかいうやつ。朝起きると俺の尻尾が二つに別れていた。確か俺が知ってる伝承では100年生きた猫がなるはずだったんだけど・・・、俺は多分60年位でなっている。

どうしてこうなった?

確かに60年は猫の寿命を遥かに越えている。だが40年どこ行った?あれ、もしかして早くなりすぎたから俺弱いんじゃない?どうしよう。いや、もしかしたら100年は俺の記憶違いだったのかもしれない。そうに違いない。

 

俺は妖怪に成ったからか自分の中にエネルギー(俺は妖力と呼んでいる。)があることに気が付いた。どうやら熊とか人の形をした何かとかも持っているらしく、遠くからも感じ取ることができた。さっき弱いんじゃないかと思ったが、妖力的に言ったらあいつらとどっこいどっこいなんだよなー。まあ、妖力が高い=強いとは限らないけど。取り敢えず妖力も隠して森を歩くようにしている。能力は妖力を使うことで発動できるらしい。だから能力を使うと少し疲れていたのか。あと妖怪に成ったせいか、俺は喋れるようになった。ようやくにゃーにゃーから脱却出来るよ。

あ、あの女性とはあれ以来よく会っているよ。八意永琳っていう名前なんだって。俺は永琳と呼んでいる。森に薬の材料を採りに来るついでに俺に会っているらしい。

毎回お土産として永琳が俺にキャットフードを持ってきてくれている。何だか餌付けされている気分だ。

そういえば、俺が妖怪に成った辺りから目を光らせて実験台がどうたらとか言っていたが、どういうことなんだろうか?

あと持ってきてくれたキャットフードを食べると体が痺れたり、だるくなったりするのは何故だろう。喋れるようになったから、キャットフードの味の感想とか体に異常はないかとか聞かれて、それを永琳が何かの紙に書き込んでいる。

本当に何してるんだろう?新しいキャットフードでも作っているんだろうか?

ちなみに最近永琳と会っていない。もう来ないのだろうかと寂しく思っていたが、今日久しぶりに会えた。いつも通りぶらぶら森の中を歩いていると、森でも目立つ赤青の服が見えた。俺は能力を解除して永琳に駆け寄った。

 

「久しぶり、永琳。もう来ないのかと思ったよ。」

 

俺が挨拶をすると、気付いた永琳も笑顔で返してくれた。

 

「久しぶり、白。ごめんなさいね。研究が忙しくて抜け出す暇がなかったのよ。」

 

“白”とは何を隠そう、永琳が俺に名付けてくれた名前だ。俺は猫になってから名前がなかった。だから呼びづらいということで永琳が名付けてくれたのだ。安直だったけど嬉しかったよ。

しかし、今日の永琳は元気がないように見える。どうしたのだろうか?

 

「永琳、元気ないように見えるけどどうしたんだ?体調でも悪いのか?」

 

もしかしたら研究のし過ぎで疲れていたのかもしれない。俺はそう思い、永琳に問いかけた。永琳はしばらく悩む素振りを見せると、ようやく話す気になったようで俺に向き合った。

 

「・・・、白。あのね、この世界には穢れがあることは前に話したでしょ?人は今までそれを避けていたんだけど、最近穢れが増えてきて・・・、月に逃れることになったの。今まで来れなかったのは、ロケットを作っていたからなのよ。」

 

月?

 

「何で月なんだ?」

 

「月には穢れがないようだし、それに最近妖怪が増えてきたからね。だから月に行くのよ。・・・本当は妖怪の貴方を連れていっちゃ駄目だけど、私の権力を使えば━━━。」

 

「大丈夫だ、永琳。」

 

「え?」

 

「俺はここに残る。」

 

「ッ!?・・・そう。・・・いつかまた会いに行くからね。」

 

「ああ、待ってる。ちなみにいつ出発するんだ?」

 

「一週間後よ。月が満月になる日。」

 

「そうか。・・・見送り位はするよ。」

 

「そう。ありがとう。」

 

それから俺達はいつも通り世間話をした。・・・あと一週間か。

 

 

 

 



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6話 月へ

遂に永琳が月へ行く日になった。

俺は永琳を見送るために都市へ向かった。しかし道中、俺は違和感を感じた。不思議に思い、一つ一つ確認していると違和感の正体が分かった。

森中至るところで感じれるはずの妖力が一つの場所に集まって移動しているのだ。しかも向かっている先は俺と同じ方向。つまり都市へ向かっているのだ。

永琳が危ない!

俺は全速力で都市へ走った。都市ではすでにロケットが飛びかけているのが見えた。

 

 

─────────────────────────

 

 

「八意様、第一ロケットの発射が成功しました。」

 

今日、私達は地上を捨てて月に移住する。今、そのロケットの打ち上げをしている。私達研究者は最後の第五ロケットに乗る予定だ。白とはこれでお別れになってしまう。・・・白は来てくれるだろうか?いや、来ても都市には入れないし会うことはないか。

私が物思いにふけっていると、突然研究室の扉が乱暴に開かれた。

 

「八意様!!大変です!!妖怪達が大軍を作り、都市に進行しています!!」

 

「ッ!?」

 

研究員の一人が息を切らしながら報告をしに来た。私は焦った。妖怪が攻めてくることは予想できていたが、大軍を作ったことは予想外だった。

何故妖怪が!?今まで妖怪は徒党を組むことなどなかった。妖怪は自由奔放で縄張り意識が強く、顔を会わせるとすぐに殺し合いになっており、指導者すら現れなかった。なのに何故!?いや、考えている暇なんかない!

 

「都市の防衛システムで時間を稼いでいる間にロケット全機発射するわよ!急いで準備をして!」

 

「は、はい!!」

 

他の研究員達に指示をして私も発射の準備に取りかかる。

妖怪達がここに辿り着くのとロケットが全て発射されるの、どちらが早いのかしらね。

 

 

 

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俺はなんとか妖怪達より早く都市に着いた。早速中に入ろうとしたが、都市の門の前にいたロボット達が邪魔をして来た。ロボット達は俺が妖怪だとすぐに見抜き、ガトリングガンを持ち出してきやがった。

危なっ!?死ぬかと思ったぞ!?いや、妖怪を侵入させないためだし当たり前か。

俺は能力を発動した。ロボット相手にどこまで隠せばいいかわからなかったので、取り敢えず俺の存在自体を隠してみた。姿を隠しても赤外線とかでバレるかもしれないし、生命反応を確認できるかもしれない。特にこの都市のレベルからしてそれぐらいできる可能性がある。だから存在を隠したが、バレなかったようだ。ロボット達はガトリングガンを下ろした。ふう。

え?何でいつもそれをしないんだ?これ結構妖力使うんだぜ。存在自体を隠すとこの世界のありとあらゆるものから認識されなくなるんだけど、世界に影響するからか消費量がえぐい。全体の半分くらいかな。俺の妖力、そこまで少なくないんだけどなー。てか、俺永琳がどこにいるかわからないなー。どうしよう。

俺はそんなことを考えながら都市に入っていくと、白衣を着たおっさんが慌てながら建物の中に入っていくところが見えた。よし、ついていこう。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

おっさんについていったが、着いた先はたくさんの資料が置かれている部屋だった。永琳はいなかった。

あーあ、また探し直しか。妖怪達が来る前にいそがなきゃな。

俺はこの部屋を出ようとして━━━いきなり視界が白色に覆われた。

うわ!?何事!?

俺は顔に手をやると、紙が張り付いていた。

なーんだ。只の紙か。

その紙を捨てようとした時、俺の視界に物騒な単語が入った。

核爆弾!?

見ればその紙は、月に移住する計画の計画書だった。計画書にはロケットが全機発射したら、技術の漏洩を防ぐため都市に核爆弾を投下すると書いていた。

やべえ!!ここにいたら死ぬ!!急いで永琳に会ってから逃げなきゃ!!

そう考えたものの、永琳がどこにいるか俺は知らない。悩んでいると、おっさんじゃない白衣を着た青年が部屋に入ってきた。青年は部屋の資料を数枚掴み、出ていった。よし、次はあの青年にしよう。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「八意様!第四ロケットの打ち上げが終了しました!後は我々だけです!」

 

「八意様!資料の回収完了しました!これで準備は終わりました!いつでも出発できます!」

 

「八意様!妖怪達が門を破りそうです!急いで我々もロケットに乗り込みましょう!」

 

研究員がロケットの打ち上げ成功と準備の完了、そして妖怪達の現状を伝えてきた。私も遂に月に行く時となった。最低限の荷物を持ち、部屋を見渡す。必要なものは全て持った。これで私も出発の準備ができた。私がロケットに向かおうとすると、後ろから音が聞こえた。

にゃーん

私は驚き音がした方向に振り向いた。まさか、まさか!そこには━━━白がいた。

 

「永琳、行ってらっしゃい。」

 

白は微笑みながら私に言った。私もそれに微笑みながら返す。

 

「ええ。・・・行ってきます。」

 

そう言ったとたん、大きな破壊音が聞こえた。門からだ!どうやら妖怪達が門を破ったようだ。時間がない。白の方を見るともう居なくなっていた。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!妖怪が入ってきた!しかもかなりのスピードで!このままだと永琳が行く前にロケットに妖怪が辿り着いてしまう!!何としてでも防がなきゃ!!でもどうする?俺に勝てるのか?時間稼ぎできるのか?

俺が悩んでいると、ある考えが浮かんできた。

そうだ、能力を使おう。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

私は白と会った後、研究員に急かされてロケットへ走った。

 

「もう来てます!もう来ちゃってます八意様!!妖怪達が来ちゃってます!!」

 

研究員が言う通り、妖怪達は私達のロケットの目と鼻の先まで来ている。

もう駄目か。

私が諦めかけたとき、

 

「信じられない!妖怪達が足を止めた!?何が目的なんだ!?」

 

研究員がそう叫んだ。私も外を見てみると、妖怪達は周囲を不思議そうに見渡している。何が起こったのだろうか?だがこの状況は好都合だ!

 

「急いで発射して!早く!」

 

「は、はい!!」

 

ロケットは無事に発射された。しかし妖怪達に何が起きたのだろうか?まるでロケットが見えていないようだった。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「・・・グッドラック。」

 

俺は飛んでいくロケットに向かって、そう呟いた。何故妖怪達は足を止めたのか?それは俺が能力で、ロケットの存在自体を隠したからだ。妖怪達にとっては目の前で消えたようなものだっただろう。あんな巨大な塊が目の前で消えたら、そりゃあ驚いて探すだろう。これで時間は稼げた。後は俺が逃げるだけだ。都市には後少しで核爆弾が落ちる。その前に逃げなければ。てか、存在隠したせいで妖力やべえ。永琳に会うまでに少し回復していたが、せいぜい雀の涙程度。気を抜いたら倒れてしまうだろう。

俺は建物を出た。ロケット発射台付近では、妖怪達が騒いでいる。俺は素通りして去ろうとした。その時、妖怪達が暴れだした。ある妖怪は隣にいる妖怪と殴り合い、ある妖怪は近くにいる妖怪に食らい付いていた。俺は巻き込まれない内にここから去ろうと思ったが、突然黒い何かが絡み付いてきた。そして、

 

「ひゃっはー!!おいおい猫ちゃんよー!!そんなに急いでどこに行くんだい!?」

 

痩せた男のような形をした何かが話しかけてきた。俺は拘束を外そうと体を捻るが、

 

「無駄無駄無駄無駄ァッ!そいつは俺の能力、『影を操る程度の能力』で操っている影さ!!君みたいな猫ちゃんの力でちぎれるわけないだろぅ!?まあ、これちぎれるやつはいないんだけどねぇ。」

 

何かは楽しそうに話している。

 

「本当はさぁ、月に逃げる人間を殺そうと思って大軍連れてきたわけよぉ。だけど逃げられたんだしー、もうこんな大軍必要ないわけじゃーん。でさぁ、目的が同じだったから協力してたわけでぇ・・・、元々皆自分以外全員殺したいのさぁ!!人間を殺せなかった不満が爆発して・・・、もう誰にも止められない。たった一人だけが生き残る、殺し合いの始まりだぁぁぁぁぁ!!・・・で、君も楽しもうよ?」

 

どうやらこいつが大軍を率いてたようだ。しかし、狂っているな。いや、こいつに構っている暇はない。爆弾が落ちる前に逃げなければ!

俺は必死にもがく。

 

「猫ちゃんよー。そんなに死にたいなら早くいってくれれば良かったのにー♪俺は苦しまずに君を逝かせてあげれるよ?・・・ん?猫ちゃん君ぃ・・・、妖怪だったんだね!!妖力少な過ぎてわかんなかったよぉ?やっぱり君は殺すんじゃなく・・・、俺が食べてア・ゲ・ル♪俺がさらに強くなるために食べてあげよう!」

 

力が入らなくなってきた。もう俺は駄目なのかもしれない。何かが影で俺を包んできた。体が包まれ、首まで影は上がってきた。

 

「ほらほらぁ!もっと絶望してくれよ!?絶望した肉が一番うまいんだよ!さぁもっと、もっともっともっとも━━ん?なんだぁ、あれぇ?」

 

空から何かが降ってきたのが見えた。・・・ヤバイ!核爆弾だ!俺は逃げようとしたが、影で徐々に包まれていき、遂にはなにも見えなくなった。

 

「遠くてよくみえないなぁ。人間が落としたのかなぁ?君はどうおも━━━━━

 

核爆弾が地面に当たり、衝撃が俺を襲った。俺の意識は直ぐに落ちた。

 

 

 




人物紹介

名前)なし
特徴)大軍を率いていた妖怪。モブであるが、森のなかでは上位に位置する。喋り方はふざけているようで、狂っている。血を見るのがだぁい好き。この小説にはもう二度と出ない。
能力)『影を操る程度の能力』。


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7話 影

とある森のとある場所に、全長1mにも満たない黒い物体がある。森に住んでいる生物は誰も近づかないが、ある時、熊が好奇心で触った。物体は硬いとも柔らかいとも言えず、また、熊の爪では傷付けることができなかった。物体は長い年月を経ても形は変わらずそのままだった。しかし、今突然、物体の黒い部分が徐々に失われ始めた。そして完全に黒色が無くなった後に見えるのは、白色の物体。白色の物体は僅かに動き出し、起き上がった。白色の物体の正体は、一匹の白猫であった。白猫は周囲を見渡して、暫くするとどこかに去って行った。黒い物体があった場所には何も残っていなかった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

目が覚めた。俺は何時から寝ていたのだろうか?気付けば視界が真っ黒で何も見えない。ここはどこなんだ?俺は記憶を手繰った。

えーと、永琳見送って・・・、あ!妖怪に襲われたんだ!で、影に捕まって逃げ遅れて・・・、爆弾の衝撃で気絶したのか。あれ、じゃあこれ影?まだ包まれているの?

俺は何とか影の中から出ようともがこうとしたが、体がピクリとも動かせない。

どうすれば出れるのだろうか。もしかして一生このまま!?それだけは避けたい!

俺は暫く必死に動こうとしたが、やはりピクリとも動かない。俺は疲れてもがくのを止めた。

あーあ、影が自動で霧散していかないかなー?

半ば諦めながらそんなことを考えていると、急に眩しくなった。俺は思わず目をつぶる。

今度はなんだ!?

恐る恐る目を開けてみると、そこは森の中だった。

は?何で見えるの?影は?

首を動かし下を見ると、俺を覆っていたはずの影は徐々に下に下がっていき、最終的に地面にある俺の影に集まっていった。

何故?でもこれはチャンス!

周りを見渡したが、あの妖怪は見えない。俺から目を一時的に離しているのか、もう俺のことを忘れて放置しているのか。わからないがとにかく俺は必死に逃げ出した。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

あの場所から逃げて、森の中を走り続けた。相変わらずあの妖怪は現れない。俺はふと疑問に思った。。

あの妖怪はどうやって核爆弾から逃れたのだろうか?

俺は影に包まれていたからか助かった。自分の影で自分を包んだのだろうか?しかし、俺を包んだときの影のスピードは余り早くはなかった。あれが最高速度と決まった訳じゃ無いが、瞬時に動かせれるほどの時間はなかった。そもそも俺はあれからどれくらい経ったのかはわからないが、影が俺をさっきまで包んでいたことからあの妖怪が生きていると考えていた。だが、どう考えてもあの妖怪が生き残れたとは思えない。もしかしたら、この能力は発動者が死んでも残るタイプなのかもしれない。なら何故さっき能力が解けた?

俺は悩んでいたが、一つのことを思い出した。偶然かもしれないが、俺が影が無くなればいいのにと考えた後に影が動き出した。まさか・・・。

俺は手の形をイメージする。すると、俺の影から一本の腕が延びてきた。グー、チョキ、パーの順にイメージする。影の手はその通りに動く。次に近くにある木を殴るイメージをする。するとその手は木を殴り付けた。木は殴られた部分の少し下が折れ、飛んでいった。

・・・やっぱりだ。

どうやら俺は能力が増えたらしい。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

『影を操る程度の能力』。

都市から逃げようとした俺を捕まえた妖怪の持っていた能力だ。操る影の強度はかなり高く、ついさっきまで俺が拘束から抜け出せずにいたくらいだ。しかし何故俺が使えるようになったんだ?

んー、わからん。まあ、考えても仕方がない。使えるようになったんだし、何ができるか試してみるか。

さっき出した腕は破壊力は凄いが、スピードはそこまでだった。拘束とかも相手が避ける可能性がある。必ず当たるようにするにはどうすればいいか。・・・あ!隠せばいいのか!元の能力のことを忘れていたよ。俺は影の腕を再び出して、姿と妖力を隠した。操った影には少し妖力があるらしく、強い妖怪なら感じることが出来るだろう。だから隠してみた。

早速試してみようと辺りを見渡していると、丁度兎が通りかかった。よし、殺ってみよう。

俺は影の腕を出し、兎に向けて伸ばす。兎は気づかない。兎の首に手をかける。兎は気づかない。手は最後まで気づかれずに兎の首を握りつぶした。

やべえ。威力高すぎじゃない!?暗殺とか簡単に出来るだろこれ!!

しかし見えない手か・・・、よし、これを『見えざる手』と名付けよう!

攻撃手段も得た訳だし、他にも技を作っておくか。自衛手段はあった方がいいよね!

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

あれから色々試した結果、俺の妖力が増えていることに気付いたり、『見えざる手』の本数が増えたり、相手の影を操り拘束する技とか作ったりした。

本当に強い能力だなー。もしかしてあの妖怪上位の妖怪だったりしてー。まあ、今となってはわからないけど。取り敢えず能力のコントロールはできるようになった。さて、これからどうしよう。うーん、森から出てみるか?森の外に何があるか気になるしな。うん、旅に出よう!

目的地は無いけど歩いていたらどこかに着くでしょ。そう思い、俺は旅に出た。



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8話 諏訪の国

旅に出てぶらぶら歩いていると、森を抜けたて平原に出た。

やっと出れたよ。出るまでにどれだけかかったか忘れたけど、緑以外の景色を見たのは前世以来だ。しばらく景色を楽しんでいると、少し遠くに大きな茶色い物体が見える。物体の前には人らしき二人組がいた。

ん?あれは・・・門か?ここからじゃよく見えないな。もっと近づいてみるか。

俺は茶色い物体の方へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

近くまで来て、茶色い物体が木製の門で二人組が門番だとわかった。しかも門は結構広範囲に広がっており、中はかなり広いことが窺える。

へえ。こんなところに街?があったんだ。それにしても何でわざわざ木製にしているんだ?コンクリートとかで作った方が頑丈なのに。

疑問に思ったが、世界にはまだ原始的な暮らしをしている部族もいる訳だしおかしくはないか。

取り敢えず中に入ってみるか。俺は自分の姿と気配を隠して門を飛び越えた。

着地して周囲を見てみると、中も原始的だった。時代的に言うと弥生時代だ。うーん、今までスルーしてきたが、やはりおかしい。都市もこの街?もどちらも俺が知っている現代の状況とは違いすぎる。都市は技術が進み過ぎていたし、この街?は技術が進んでなさ過ぎる。この街?は都市からそこまで遠くはない。だが、技術に差がある。つまり都市が技術を伝える気がなかったのか、この街?が都市が滅びた後にできたかだ。そういえば今の状況、オカルトマニアとかが言ってる超古代文明に似ているなー。昔、超古代文明があったが滅びて今の文明ができたってやつ。・・・まさかな。もし本当なら、俺は過去に来たっていうことになる。何とも非科学的な話だ。現代で話したら大笑いされるか頭の正常さを疑われるだろう。でも俺、今妖怪なんだよなー。正に非科学的の塊だ。そう考えたらあり得るように思えてきた。

なら神とかいるのかな?超古代文明と妖怪がありなら神とかもいるはず。昔話とか神もて余すほどいるからね。なんだよ、米一粒に七人の神がいるって。だったらご飯一杯に何万人もいることになるじゃねえか!

そんなことを考えながら歩いていると、鳥居が見えた。神社かー。よし、折角だし神が本当にいるか確かめに行こう。

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

鳥居をくぐると一気に空気が変化した。なんと言うか、神聖さを感じるというか。しかし、立派な神社だなー。現代の神社はだいたいが色が掠れていたり、ひどい所は壊れている部分があったりした。だが、この神社はいつ作られたか知らないが、まるで新品そのものだった。

神はいるのかな?よく聞く話では神社の奥にいるとか。行ってみるか。俺は中に入ろうとした。すると、

 

「止まれ。」

 

奥から威圧的な声が聞こえた。

まじかよ!?言葉だけなのに、押さえ付けられているみたいに体が重く感じる!!誰だ!?しかも俺は今能力発動してんだぞ!?何故分かる!?

俺は声がした方向に顔を向けた。

そこには、大量の白蛇と━━━目玉の着いた帽子をかぶった、金髪のロリがいた。

 

「なんか今、失礼なことを考えていなかったか?」

 

「い、いえ。気のせいだと思います。」

 

ロrゲフン、少女が射殺すような目でこちらを見てきたので、慌ててごまかした。少女はしばらく疑っていたが、納得してくれたようだ。

 

「まあいい。私の名前は洩矢諏訪子。この諏訪を納める神だ。・・・お前妖怪だろう?隠しているようだがお前から僅かだが禍々しさを感じるからな。なんの目的で我が国にやって来た?まさか大和の回し者か?答えろ。」

 

大和?諏訪?大和は大和国で諏訪は諏訪国のことか?

・・・やっぱり今が昔なのは正しいのかもしれない。

 

「俺は大和の者ではありません。ただの旅の妖怪で、この国を見かけたので来てみました。何か危害を加える気など毛頭ありません。」

 

「・・・ふむ。嘘はついてないようだな。

・・・なーんだ、心配して損したよー。ミシャグジ様、帰っていいよ。」

 

え?

洩矢が指示を出すと大量にいた白蛇が一瞬で消えた。いや、驚いたのはそこではない。洩矢が急に軽々しくなった。あれ?さっきまでの威圧感は?

 

「あ、そういえば猫ちゃん名前は?」

 

「し、白だ。」

 

「よし、白ー、おいでー。」

 

洩矢は手招きしている。俺は呆けながら近づく。すると洩矢に抱き上げられた。

 

「よーしよしよし。あー、やっぱりふわふわだー。私の目に狂いは無かった!」

 

あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

「神を名乗る少女にモフられている。」

 

な・・・何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった・・・。

頭がどうにかなりそうだった。

催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・。

 

俺は遠い目をしながら、洩矢にモフられ続けた。

 

 



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9話 洩矢諏訪子

あの後、辺りが暗くなるまでモフられ続けました。

いやー、驚いたよ。モフられて暇になったから軽く寝てたら夜になってたからね。あー、お腹すいたなー。取り敢えずまだモフっている諏訪子の腕から脱出した。

 

「あー!!私のモフモフがー!!」

 

「誰が私のだ。・・・あーあ、泊まるとこ探さなきゃ。」

 

「ならここに泊まっていけばいいじゃん。」

 

「え?いいのか?」

 

「うん。どうせ私以外いないし。」

 

ラッキー!最悪野宿でいいと思ってたけど家(神社)に泊まれるなんて!

 

「ありがとう。なら代わりに夕飯ぐらい作ってやるよ。」

 

「え?白、ご飯作れるの?猫なのに?」

 

「簡単なものくらいなら出来るぞ。」

 

俺は前世の記憶がある。で、前世の俺は一人暮らししてたらしく、料理の記憶がある。だから難しい料理以外ならだいたい作れる。うーん、何を作ろうか。

 

「えーっと・・・洩y「諏訪子って呼んでね?」・・・諏訪子、今この神社にどんな食材がある?」

 

諏訪子が目が笑っていない笑顔で言ってきたので、諏訪子と呼ぶことにしよう。

 

「確か・・・魚と米と味噌と野菜くらい?」

 

「そうか。」

 

よし、作るものが決まったな。早速作るか。

 

「ねえ、猫の手で料理出来るの?」

 

「え?出来ないぞ。」

 

なに言ってんだこいつ?

 

「え!?じゃあどうやって作るの?」

 

影で手を作りそれで作るのもいいが、今回はあっちの方がいいな。旅の途中で何となくやってみたらできたやつだ。

 

「えいっ!」

 

ボフン!

 

「うわっ!?」

 

俺が力を込めると白い煙が俺を包んだ。それを見た諏訪子が驚きの声を出した。

そして煙が晴れると━━━━そこには白髪の男がいた。

 

「よし、作るか。」

 

「待って待って!それ何!?何で人に為ってんの!?」

 

諏訪子が喚いている。なんだよいきなり。

 

「何ってそりゃあ、人化しただけだろ。」

 

「いやいやいや!人化ってある程度妖力無いと出来ないんだよ!?白、全然妖力ないじゃん!」

 

「あー、そういえばそうだったな。わかった。今解除する。」

 

「へ?」

 

俺は能力で隠していた妖力を解放する。

 

「うわあ!?何これ!?この量、大妖怪レベルだよ!?白、大妖怪だったの!?」

 

大妖怪レベル?

 

「え?そんなにある?」

 

「あるよ!そもそも私が見た時にはそんなに無かったよ!?なんで増えてるの!?」

 

なるほど。俺の能力で妖力も姿も隠していたのに、諏訪子に何故俺が妖怪だとばれたか、今ようやくわかった。

多分神の力的な何かで一部だけ感知するとこができたのだろう。しかし、それ以外は完全に隠れていてこれしか妖力がないと勘違いしたのだと思う。勿論推測でしかないが。

これを諏訪子に話したら納得したようだった。

 

「へぇー。すごいんだね、白って。ところでなんでいつも人の姿でいないの?」

 

「人の姿より猫の姿の方が面倒事が少ないだろ。猫なんて何処にでもいるんだし、わざわざ注目しないだろう?」

 

確かに元人間の俺的には人の姿の方がいい。だが、人の姿では面倒事が多かった。それに人の人生より猫の人生の方が長いからか、こちらの方に愛着が湧いている。

まあ、細かく話すつもりは無いんだけどな。

 

「取り敢えず料理作ってくる。台所は?」

 

「入り口から入って左の部屋だよ。」

 

「了解。」

 

俺は台所に向かった。

台所は釜戸でザ・昔の台所っという感じだった。まず米を炊き、その後に俺は七輪を用意し捌いて味噌を塗った魚をセットし弱火でじっくり、焦げ目がつくまで焼いた。綺麗な焦げ目が着いた頃には米も炊けており、俺は野菜と魚を盛り付けて米をよそい、諏訪子の元に持っていく。

 

「これぐらいしかできなかったがいいか?」

 

「全然大丈夫だよ!この魚凄いいい臭いだし、早く食べよう!」

 

諏訪子に急かされて俺はちゃぶ台の前に座った。

 

「「いただきます。」」

 

俺は早速魚の味噌焼きを一口食べる。うん、うまい。どうやら成功したようだ。

 

「うん、美味しいよ!ありがとう、作ってくれて!ところで、白ってこれからどうするの?この国見終わったらすぐ旅に出るの?」

 

「うーん、そうだな。・・・宛もないし、しばらくこの国に滞在してもいいか?」

 

「全然オッケーだよ!てゆうかここに住みなよ!」

 

「いいのか?」

 

「うん!そのかわりご飯は作ってもらうよ。」

 

「それぐらいならいいぞ。」

 

しばらくこの神社に住むことになった。

毎日野宿だった俺にはうれしいな。

 

「あ、また後でモフらせてね!」

 

「え。」

 

またモフられるのか・・・。はっきり言って勘弁して欲しいものだ。



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10話 八坂神奈子

諏訪に住んで、早くも一週間。最近諏訪子の様子がおかしい。なんか妙にそわそわしているというか。こうなり始めたのは一昨日、俺が散歩から帰って来た時からだ。

諏訪子は俺に驚き、背後になにかを隠した。俺が追及するとしどろもどろになり、最終的に部屋にこもってその日は出てこなかった。それ以降、話しかけても上の空だったり、ため息をついたりしている。本当に何があったのだろうか。

 

「なあ、諏訪子。最近どうしたんだ?何かあったなら相談しろよ。一人で抱え込んでても解決しないぞ?」

 

俺は諏訪子に聞く。だが、

 

「白・・・。いや、何でもないよ。何もない。ただ疲れているだけさ。」

 

はぐらかされた。しかし、何かを考えたように間を開けたし、やはり何かを隠しているようだ。

 

「諏訪子。お前が何を隠しているか俺には分からない。だが、俺はそんなに頼り無く見えるか?お前が抱えている問題に手も足もでないほど俺は無力に見えるか?お前は俺のことが信用できないか?」

 

俺は諏訪子の目を見て話す。諏訪子は躊躇っていたが、ようやく決心したように口を開いた。

 

「・・・白と初めて会った時に私が何と疑ったか覚えている?」

 

「確か・・・、『大和の回し者』だったはず。合ってるか?」

 

「うん、正解。あの時、私は白が大和から派遣された妖怪だと疑ったんだ。」

 

「で、それがどうしたんだ?」

 

「・・・大和はね、周囲の国に戦いを挑み勝利してどんどん支配圏を拡大させてるんだ。それが最近諏訪の近くの国まで進行してきて・・・、一昨日この神社に宣戦布告の手紙が来てね、『降伏して信仰と国の支配権を寄越せ。さもないと戦争だ。』だって。・・・神は信仰によって生まれ、信仰が多ければ強くなるが信仰がなくなると消滅する。だけどあげないと国民が大勢死ぬ。だから戦争は回避しなきゃいけないけど・・・私、まだ・・・死にたくないよ・・・。ねえ、白。私・・・どうすればいいと思う?」

 

そうか。神は信仰が無いと生きていけないのか。でも国民が死なないために信仰を渡さないといけない。それで悩んでいたのか。それにしても、大和の出す条件は明らかに傍若無人すぎる。どちらにせよ、降伏すると神は死ぬしかなくなり、それを回避するため戦うと人口と信仰が減る。どちらに転んでも神は無事ではない。

 

「大和か・・・。」

 

支配圏を広げていることだし、数では勝てないだろう。神の強さにしても大和の全国民が信仰していれば、絶対に勝てないだろう。しかしだからと言って、納得する俺ではない!

 

「なあ、諏訪子。大和ってどっちだ?」

 

「え?えーっと、確か南西だったはず。」

 

それを聞くと、俺は立ち上がり外に出ようとする。

 

「あれ?白どこに行くの?」

 

俺は振り返りながら諏訪子に言う。

 

「ちょっと大和まで。」

 

「え!?」

 

俺は影を操り大きな見えない手を作り、そこに乗って空を移動した。

 

「夕飯までには帰ってくるからー!」

 

「ちょっと待ってー!!」

 

よし、目指すは大和。方角は聞いたしさっさと行くか。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

手に乗りながら移動して三時間くらい。途中から遅すぎるので影で体を包んで防御しながら影の手でぶん投げて、着地する前に影の手を出してまたぶん投げるというバケツリレーみたいな方法をとっている。影は移動速度は遅いが力は強い。あのまま乗っていたら何十時間かかったことやら。しばらく投げ続けていると、大きな街が見えた。恐らくあれが大和だろう。・・・合っているよね?違ってたらまた投げられなきゃいけない。自分でやっといてなんなんだけど、あれ結構精神的にきついんだよ。衝撃は影が吸収してくれるけど、落ちてる感覚とかもろに味わうことになるからね。

まあ取り敢えず行ってみるか。俺は地面に降り、人化する。妖力は隠しておくか。バレたら面倒だし。俺は門に近づく。門の前には門番がいた。

 

「誰だ貴様!」

 

「すいません。諏訪の使いです。今回の戦争についての話をしに来ました。」

 

「おお!そうかそうか!よし、入れ!」

 

案外簡単に入らせてくれるんだな。念入りにチェックしないのは油断か、余裕か。

案内されて着いた場所には、背中に大きな・・・えーっと、たしか注連縄だっけ?それを着けている女性が座っていた。

 

「諏訪の使いか。よくぞ参ったな。私は八坂神奈子。この大和の神だ。さて、それでは結論を聞かせてもらおうか?」

 

へぇ。こいつがトップか。しかしこいつ偉そうに話すなぁ。なんだろう。すごく殴りたい。おっといかん。平常心平常心。俺は息を整え、八坂に宣言する。

 

「諏訪は大和と戦うことを決めました。」

 

「・・・ほぅ?本当に、それでいいのだな?我々と戦うということで。」

 

「ええ。ただし、条件があります。」

 

「条件?」

 

八坂は怪訝そうにこちらを見ている。俺はためを作り、その条件を話す。

 

「両陣営の神同士の一騎討ちにして欲しいのです。」

 

「それに私達がそれに従わなければいけない理由がない。今すぐにでも攻め込んでも良いのだぞ?」

 

「いえ、理由ならあります。」

 

「なら言ってみろ。私が納得できるならその条件、呑んでやる。」

 

「はい。・・・簡単なことです。その方が民の犠牲がなくなります。そもそもあなた達が諏訪に攻め込むのは信仰を奪うためです。なのにあなた達はその信仰を減らすのですか?戦争をすれば両陣営共大勢が死にます。大勢が死ねば勝ったときに得られる信仰も減る。だからこの条件を呑むことはあなた達にも利点があるのです。」

 

「ふむ、確かに一理あるな。・・・良かろう。貴様らのその条件、呑んでやる。だが、私達からも条件がある。正々堂々、他の者の手出し無用で戦え。それが条件だ。」

 

「わかりました。では一騎討ちはいつどこで?」

 

「一週間後、私が指定した場所に来い。・・・安心しろ・・・安心しろよ・・・使者。罠は仕掛けない。後日場所についての手紙を送る。それまで待て。」

 

八坂がどこぞの吸血鬼みたいなことを言っている。敵なのに安心できるわけないだろう。何を言っているんだこいつ。・・・取り敢えず帰るか。

 

「では、失礼します。」

 

俺は部屋から出た。そして門を出ようとすると、いきなり男達に囲まれた。

 

「どこへ行くんだぁ?」

 

「敵対するとわかった相手を無事に返すわけ無いだろ!」

 

「その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。」

 

あー、めんどくせえ。俺は隠した影を操り男達を拘束する。

 

「な、なんだ!?か、体がうごかねぇ!?」

 

「大人しく殺されていれば痛い目に遭わずに済んだものを・・・。」

 

まじでなんなんだこいつ。一人変なのが混じっている。セリフはかっこいいのに今何も出来ないでいる。口だけなのか?まあいいや。帰ろう。

 

「おい!放置するな!」

 

「その程度のパワーでオレを倒せると思っていたのか?」

 

・・・うん。もう何も言わない。帰るか。俺は門を出て行った。

 

 

 

 



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11話 諏訪にて

大和を出た後、俺は諏訪に帰った。

え?『どうやって帰ったんだ?』だって?もちろん行きと同じさ。もう完全に酔ったよ。気持ち悪い。もうあの方法使わない。俺はそう決心しながら神社に降りた。

 

「ただいm「白ーー!!」グヘラッ!?」

 

部屋に入ろうとした瞬間、腹に衝撃が走った。見ると諏訪子の頭がめり込んでいた。

 

「心配してたんだよー!?一人で大和行っちゃうし、全然帰ってこないし!!もう戻ってこないかと思ったんだよ!?」

 

「・・・ごめん。」

 

まさか諏訪子がそんなに心配してくれていたとは。確かにあんな手紙を出した国に一人で行くのは危ないだろう。『断るなら戦争だ!』だからな。

 

「だが諏訪子。大和に行って八坂と交渉して、一騎討ちに持ち込めたぞ!これで国民は無事だ!」

 

「えーー!?い、一騎討ち!?わ、私そんなに強くないよ!?八坂神奈子って軍神って呼ばれてるんだよ!?勝てるわけがない!もうだめだぁ・・・おしまいだぁ。」

 

諏訪子は両膝と両手を地面につき、項垂れた。

こいつ!もう諦めてやがる!弱音ばっか吐きやがって!

俺は諏訪子の頭を掴んだ。

 

「何を寝言言ってる!ふてくされる暇があったら戦え!」

 

「でもどうすればいいのさっ!?私の強さじゃ戦いのプロに勝てるわけが無いじゃないか!そもそも私、一回も実戦したことないんだよ!?」

 

「・・・わかった。」

 

「はぁ、はぁ。・・・へ?」

 

諏訪子が息を切らしながら、驚いたようにこちらを見た。

 

「わかった。諏訪子。一騎討ちは今から一週間後。だから今日から一週間、修行するぞ。」

 

「えーーー!?」

 

「さあ、早速修行だ。俺も組み手の相手ぐらいなら出来るし手伝ってやる。まずは庭に出るぞ。」

 

俺はそう言って諏訪子の首根っこを掴んで引きずる。対する諏訪子は連れていかれまいと必死に抵抗する。

 

「ちょ、ちょっと待って!!さっきの話聞いてた!?たった一週間で強くなるわけ無いじゃん!!」

 

「誰も一週間で実力をあげろとは言ってないぞ。ただ実戦を積め。あとは自分ができることを確認しとけ。そしたら少しは強くなるだろう。」

 

「でもっ私は「諏訪子、そんなに死にたいのか?」えっ!?」

 

俺の変わり様に諏訪子は呆けている。いきなり死にたいかと聞かれたら、そりゃあそんな反応するよな。

 

「今回俺が一騎討ちを提示しに大和まで行ったのは、お前が生き残る可能性を僅かでも上げるためだぞ?数と質で負けてた。で、今は質だけ負けてる。数の差はどうしようもなかったが、質は上げられる。だからがんばれ。まだ死にたくないんだろう?」

 

「っ!?」

 

俺は諏訪子に問い掛ける。こっから先は諏訪子のやる気次第だ。勝ちたいと思うなら、わずかな時間でも強くなれる。だから俺は諏訪子に聞く。

 

「もう一度聞こう。諏訪子、お前は死にたいのか?」

 

「・・・・・・だ。」

 

「ん?」

 

「嫌だ!!まだ死にたくない!まだ消滅したくない!」

 

「なら修行しろ。」

 

「うん!」

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「ほらほらほらー!さっさとよけろー!」

 

「そんなこと言われてグヘォ!」

 

俺が諏訪子にした攻撃を避ける修行。諏訪子は必死に避けていたが、腹に当たり、吹っ飛んでいった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「そこだー!」

 

「甘い。」

 

「うわー!!」

 

諏訪子と組み手。俺は攻撃せず、避けるだけ。しかし今諏訪子が俺に避けられたせいで、勢いよく木に突っ込んでいった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「ミシャクジ様!」

 

「鉄の輪!」

 

「危なっ!?」

 

技の修行。『ミシャクジ様』は全部よけたが、『鉄の輪』は不意打ちで来たので僅かにかすってしまった。だが、

 

「・・・見えざる手(ボソッ)」

 

「え!?『鉄の輪』がいきなり壊れた!?」

 

ふっふっふっ。まだまだだな。え?大人げない?勝てばよかろうなのだァァァァッ!!

 

そして修行して一週間経った。

 



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12話 諏訪大戦

すいません。更新遅れました。それもこれも全てテストってやつのせいなんだ。


決戦当日。

遂にこの日がやって来た。

「むふー!白との修行の成果をみせてやる!絶対勝つからね!」

 

諏訪子は随分とやる気だ。この一週間、俺は諏訪子に対人戦の仕方を叩き込んだ。最初はぐだぐだすぎて、あまり戦いが得意ではない俺が余所見しながらでも勝てたが、最終的に肉弾戦では気を抜くとすぐに負けるくらい強くなった。具体的に言うと、体術と鉄の輪、ミシャクジ様の組み合わせがどこぞの凶悪コンボかっていうくらいえげつなくなった。俺はもう戦いたくない。

 

なんだよあれ!?あの毎回真正面から突っ込んできた馬鹿正直な諏訪子に一体何があったんだよ!?

 

だが、ここまで強くなったんだ。いくら軍神でも少しは渡り合えるくらいにはなっているはずだ。勝率も幾らかは上がっているだろう。

 

「よし!行ってくるね!」

 

「おう、行ってらっしゃい!無理すんなよ!」

 

場所は昨日神社にぶっ刺さった矢についていた手紙に書いていた。組み手をしている最中にいきなり諏訪子が、「何か来る!」とか言い出して、その数秒後に神社の柱に矢がぶっ刺さった。すげえな諏訪子。来るってわかっていたとか。え?僅かな神力を感じた?へー。俺は妖力しか感じられないからなー。てか、神が使ったものにも神力って宿るんだな。え?あれ自体はただの矢で神力込めただけ?へー。神力ってこめられるんだー。あれか!覇気を纏った武器とかそう言うやつか!なるほどなるほど。

 

俺が勝手に納得していると、諏訪子遂に出発した。決戦場所には昨日俺が矢が来た後視察しに行った。罠は仕掛けられていなかったし、正々堂々という言葉に嘘はないだろう。よし。諏訪子も行ったし俺も行くか。え?何処にだって?決まっているだろう?俺は自分が出来ることをやるだけだ。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

さーて、やって来ましたは諏訪から少し離れた場所に位置する、大きな平原だ。では、あそこをご覧下さい!大和の大量の下級神共がトップがいない間に攻めてきています!なんということでしょう!トップが指示したのか、下級神共が独断行動を取っているのかは分かりませんが、神が約束を反故にしています!一応話くらいは聞いてみましょうか。

という訳でもろもろ隠し、神達の会話を聞いてみることにした。

 

「いやー、今回の諏訪は結構大きい国だし、これで大和がさらに強くなるな!」

 

「だが、神奈子様に内緒でこんなことしてよいのだろうか?」

 

カビのような形の緑色の髪をした神が心配しているが、太っている神は笑いながら痩せている神に言う。

 

「いいだろ。どーせ俺達の下になる国なんだ。適当に制圧しとけば後々楽だろ?あと・・・、お前も溜まってるんだろ?混乱の中でヤッとけばバレないだろうし、なんならシた後に殺せばいい。何より・・・、最近血を見てないしな!あー!早く血が見てー!」

 

そこに大剣を持った禿げた神がやって来た。目が逝ってる。禿げた神は狂ったような笑みを浮かべながら言う。

 

「俺は早く試し切りがしてぇ!最近新しい剣を作ったんだ!切れ味がどのくらいなのか試してやる!あー!何人くらい斬れるかなー!?」

 

他にも共犯者がいることに安心したのか、先程のカビのような形の緑色の髪をした神も自分の要望を楽しそうに言う。

 

「じゃあ!私は!人間共の絶望の表情が見たい!希望が尽きて・・・、命を終える瞬間の顔をっ!」

 

「ハハハハハハハ!お前もいい趣味してるじゃねぇか!楽しみだなぁ、楽しみだなぁ!!」

 

へえ。とんでもないクズだった。部下の暴走か・・・。八坂のやつ、ちゃんと手綱を握っておけよ。てかこいつら本当に神か?都市で俺を縛り付けていた妖怪と同じくらいのクズっぷりなんだが。

 

まあいい。殺すか。

 

俺は能力を解いて姿を表す。

 

「ん?なんだ?猫?なんでここぬぃぃぃぃ?」

 

俺を最初に発見した、カビのような形の緑色の髪をした神の首を『見えざる手』でねじきる。

 

「うわぁ!なんだいきならぁぁぁぁ?」

 

「え?どうなっグヘッ!」

 

俺は大量に『見えざる手』を出して、神を倒していく。罪悪感はない。だって、神は信仰があれば何度でも蘇るからだ。という訳で安心して死ね。

 

「どこから攻撃が『グチャッ』」

 

「おい!誰か対応しガハッ」

 

「取り敢えず撤退だ!撤退をゴフォッ!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!死にたくない!死にたくないよぉぉぉぉ!うわぁぁ『ゴシュッ』」

 

「何故だ?何故私のものにならぬ!?神よ、何が気に入らなかったのだ!?グフッ。」

 

『見えざる手』は神を蹂躙していく。まさに地獄絵図だ。大量の血を流しながら神が死んでいく。あんなクズでも血は赤いんだなー。汚物は消毒だ~!!

そう考えているうちに、最後の一人になった。いや、一座?一柱?まあいいや。それは頭を抱えて何かブツブツ言っている。俺はそれへ向けて『見えざる手』を飛ばす。

 

「あんなにいた俺の軍隊が・・・全滅。ゆ・・・夢だ・・・。これは夢だ。この俺が追い詰められてしまうなんて・・・きっとこれは夢なんだ。俺は今までうまくやって来た。俺より上の神を暗殺したり裏で手を回してこの地位までたどり着いた。そうだ。今まで何でもうまくいってきたんだ。だからこれは悪い夢に違いない。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ━━」

 

『グシャッ』

 

ふう、これで全滅か。よし、諏訪に帰るか。

神の死体は光の粒子となって消え始めており、少しつついただけで崩壊した。これで下手な妖怪が神の肉を食らうことなんてないだろう。神を食べたら妖怪はもっと強くなるみたいだし、それは防ぎたい。

 

・・・一応消えるまで隠しておくか。

 

俺は能力を発動する。これで安心だな。さて、今度こそ帰るか。

俺は諏訪に向かって歩き出した。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

神社に戻ってきた。諏訪子はまだ帰ってきていないらしい。ああ、暇だ。とても暇だ。暖かいしとても眠い。

・・・帰ってくるまでなら寝ていいよね?うんいいだろう。お休み・・・。

 

「白ーー!」

 

うおっ!?何事!?

いきなり俺の腹に衝撃が走った。うとうとしていたのに急に現実に戻され、死ぬほど驚いた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁん!!負けた!!負けたんだよー!!」

 

「なんだ、諏訪子か。で、負けたのか。」

 

「そうだよ!!うおーー!!もふもふー!!」

 

こいつ、やけになってやがる!

俺は諏訪子をなだめながら話を聞く。

 

「取り敢えず八坂はどこ行った?話をしたいんだが。」

 

「もふもふもふもふもふもふ━━へ?ああ、神奈子なら国の皆に新しく神になることを宣言しに行ったよ。

・・・はぁ、私ももう終わりか・・・。今までありがとうね。短い間だったけど楽しかったよ。」

 

「諏訪子・・・。」

 

神は信仰で生きている。それが無くなれば、消滅する。今回の一騎討ちで信仰をかけて戦い、諏訪子は負けた。だから仕方がないとは思うが・・・。

 

俺がどうにかして諏訪子を助けれないか考えていると、ボロボロになっている八坂がこちらに向かって走ってくるのが見えた。心なしか、怒っているように見える。

 

「おい、諏訪子!これは一体どういうことだい!?」

 

「へ?何が?」

 

神奈子が諏訪子に胸ぐらを掴み、揺さぶる。

さすがに見るに耐えなかったので、俺は八坂を止めた。

 

「一回落ち着け。何がどうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたもないよ!諏訪の国民はミシャクジ様の祟りが怖いから私を信仰することは出来ないって言うのさ!タダ働きなんて御免だよ!」

 

「・・・諏訪子。お前・・・。」

 

「・・・うん。わかっている。わかっているんだよ。」

 

諏訪子は目をそらしながら返事をする。見ると冷や汗を大量にかいている。俺はわざわざ人化してから諏訪子のほっぺたをつねる。

 

「いひゃいいひゃい!まっふぇ!わひゃひが悪ひゃっははらまっふぇ!」

 

「あんた、あのときの使者じゃないか。妖怪だったのかい。」

 

「ああ。そんなことよりほら、早く言え。何をしたんだ?」

 

「うへー。痛いー。あ、あのね、じ、実はね━━」

 

諏訪子が語ったのは、この国を恐怖で支配していたという事実だった。ミシャクジ様の力を見せつけ、ミシャグジ様は少しでも蔑にするとたちどころに神罰が下るという恐ろしい神様であり、これをコントロール出来るのは諏訪子だけであると広め、信仰を不動なものにしていたらしい。まったく、なにやってんだか。

 

「このままじゃ、私、信仰を受け取れないよ。どうするんだい、諏訪子?」

 

「うーん。白、何か思い付かない?」

 

「・・・そうだな。俺にいい考えがある。」

 

「え!?なになに!?」

 

俺はこうだ。名前だけの新しい神と諏訪子を融合させた神を信仰させることにし、裏では諏訪子がそのまま信仰され、神奈子を山の神とすることで両者とも信仰を得れる。

 

「いいじゃん!そうしよう!」

 

「ふむ、確かにいいね。よし、それでいくか。」

 

「そんなことより八坂。お前に話がある。」

 

「話?」

 

「なに、簡単なことさ。・・・部下の手綱ぐらいちゃんと握っておけよ。」

 

「?それはどういう意味だい?」

 

「国に帰れば分かるよ。」

 

「?ますます分からないよ。」

 

八坂が不思議そうな目でこちらを見ている。この様子だとやはり知らなかったようだな。八坂はあいつらをどうするのだろうか?まあ、後悔するぐらいの罰は与えて欲しいな。

 

 

 




カビのような形の緑色の髪をした神はCV宮内敦士です。


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