頭無惨による鬼殺隊解体RTA伝 (かいな)
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頭無惨による鬼殺隊解体RTA伝
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
耳鳴りがする。嫌な音だ。
ここは……。
「私は神だ」
疑問の解決よりも先に、目の前に居た老人の姿が目に映る。
「君は私の手違いで死んでしまった。お詫びとして好きな世界、時間、容姿、能力を持たせて転生させてあげよう」
なんとも淡々とした口調で、私の死が宣告された。
だがしかし。思い返してみれば……死んだ記憶はある。
ならば私は死んだのだろう。神の手違いとやらで。
しかし怒りはない。何故なら私は常に考えていたのだ。来世でのことを。やりたいことを。
私は口を開き、願いを言う。
「では鬼滅の刃という作品の、鬼舞辻無惨というキャラクターに転生させてください。時間は鬼舞辻無惨が鬼になる直前でお願いします」
「よかろう」
すると足元の感覚がスゥッーっと消えていき……気付けば、私の目の前には善良な医者が居た。
私がやりたい事。それは鬼舞辻無惨に転生して鬼殺隊解体RTAを行う事。
何故そんな願いか? 簡単だ。世界記録に挑戦したいからだ。
という訳で何度繰り返されたかわからないテンプレを超えて。
『頭無惨な走者による鬼殺隊解体RTA』
はーじまーるよー。
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……………………
…………
……
◇
はい。という事で鬼殺隊を解体していきたいと思います。
という訳で薬を調合して処方してくれた善良な医者を早速食べちゃいましょう。
原作では包丁か鉈みたいな刃物で殺してましたがそれだと一人分の栄養が得られなくなってしまいますので勿体無いです。
鬼となった今貴重な栄養です。
私は薬を処方された直後に体を捕食しやすい大きさまで変化させ、善良な医者を捕食した。
生まれてすぐに人を食らい栄養を摂取する鬼の鑑。鬼舞辻無惨です。
はい。善良な医者を食べたら活動できる夜になるまで待機です。
この間が一番暇なので鬼としての体の性能でも見ていきましょう。
まず先ほど善良な医者を食べた体の肥大化。これは身体能力が低い初期段階では非常に有用です。出すだけでみんなぎょっとして怯むのでその間に食べられますので出し得です。
次は血を茨のとげの様にして辺りを攻撃する黒血枳棘。これは掠るだけで相手を鬼化させて服従させられるのでこれもまた出し得です。ただ初期段階では速度が遅いためあくまで牽制用ですね。
なんて話しているうちに夜となりました。
行動を開始しましょう。そしてこれがこのRTA最大の見せ場となります。
まず自らの一族郎党を皆殺しにしましょう。この際、赤子だろうと遠い親戚だろうと見逃してはいけません。
鬼殺隊運営において非常に重要な役割を果たす産屋敷家は私こと鬼舞辻無惨の一族の者です。
彼ら産屋敷家の男子はみな何故か早死にします。彼らはその理由を身内から鬼が出ているという訳の分からない理由で納得します。そして鬼被害に遭った方々を結集し鬼殺隊という組織を設立していきます。
頭がおかしいんですかね。いやまぁ事実ではあるのですが、彼らはそんなおとぎ話のような話をマジに信じて鬼舞辻無惨に組織単位で何百年と粘着してきます。
なので反逆の芽は早いうちに摘み取っておきます。
一先ず家に居た者を一人だけ残してすべて食らい尽くします。
なんで一人だけ残したのか。
何故なら私は他の一族の者を知らないから。
彼に情報を貰ってさっさと産屋敷家を潰しに行きましょう。
◇
はい。たった今産屋敷家の人も全て食らいました。道案内してくれた人も食べちゃいましょう。
これで鬼殺隊の元はなくなったとみて間違いないでしょう。ここまで来たらこちらのもんです。もはやこのRTAは終了ですね。
後の余生はすることがないので、鬼を増やしつつ悠々自適に青い彼岸花を探しましょう。その間私はすることがないので日銭を稼いで慎ましく暮らします。
さて、短くなりましたが……。
これにて鬼殺隊解体RTA完結です!
◇
お久しぶりです皆さん。
あれから大体七百年ほど経ちました。
室町幕府の威信は地に落ち、天下統一をかけ各地の大名が台頭する時代。
世はまさに戦国時代! な時代となっています。
平安時代から一転、乱れた時代になりました。ですが世が変わろうと世代が変わろうと青い彼岸花は見つからず、しかも私の生活は戦国時代故に悠々自適とはいかなくなってきました今日この頃です。
さて、七百年ほど前に鬼殺隊の大本を潰してRTAを終了させたのですが……何故か。
なーぜーか! 鬼殺隊的な組織が私を追い詰めてきているんですよねぇ。
おかしいなぁ。日銭を稼いでつつましやかに人を食らっているだけなのですが。
しかも何故か私の名前を知っているんですね彼ら。おかしいな名乗った筈などないんですが。
と、思っていたんですが今殺した鬼殺隊的組織の人間の言い分を聞くに、青い彼岸花を探すために放っていた鬼が吹聴したようです。
は?
そう言えば、たまに鬼の反応が消えることが有りました。馬鹿な奴が日の光を浴びたのかなぁ? とか思っていたんですが……殺されていたようですね。しかも私の名前を告げながら。
「鬼舞辻無惨! 私は決してお前を許さない! 絶対に!」
今私の目の前には、鬼殺隊ならぬ『鬼滅隊』と名乗った前髪で目を隠している女の隊士が居ます。
なるほどなぁ。こうやって原作鬼舞辻無惨は呪いをかけていったわけなんですねぇ……。
「……ふ」
「……何がおかしい!」
「ふふふ……全く人をイラつかせるのがうまい奴らめ……」
あまりの怒りに私は手に持っていた鍬を握力のみでへし折った。
「絶対に許さんぞ虫けらどもめェェェ!!」
そして空いている片手を宙に向け、今存在している全ての鬼の頭を捻りつぶした。
女隊士は私のいきなりの豹変にドン引きしている。
しかししょうがないだろう。折角世界記録を取ったと思ったのに……全てが台無しにされた上個人情報が流出していたのだから。
八つ当たりでもする様に女隊士の方を向く。
「……貴様……貴様からは色々と聞かなければならないな……」
「っ黙れ! 私が貴様に情報を与えるなど!」
「私の新記録を邪魔するなど……万死に値する。誰も彼も役には立たなかった。鬼滅隊……何かわからんが貴様たちは今日私が潰す」
瞬間、筋力をフル活用して跳躍し、女隊士の顔面を貫く。
「──ッがっ、あ……え?」
「何故頭を貫かれても死なぬか……不思議か? 良い事を教えてやる。人を鬼とするには私の血を摂取させるだけで良い。普通であればお前はもう死んでいるが……貴様にも今、許容できるギリギリの量を与えている。つまりお前は鬼となる」
「──!?」
声にならない悲鳴を上げつつ……しかしたまげた精神力で顔面を貫かれた状態から抜け出そうとする。
だが意味がない。既にこの女の体の主導権は私にある。
「お前に名を付けてやろう。貴様の人生で最も栄誉な事だ。そうだな、さっきから小うるさくきゃんきゃんと鳴くので……貴様は鳴女だ」
とっさに出てきた名前が原作既出キャラと被ってしまった。
まぁいいか。こいつの血気術が駄目だったら潰そう。
厳選作業という奴ですねぇ。
そして鬼とした女隊士。またの名を鳴女から情報を引き出すと……どうやら鬼滅隊というのは神から鬼を滅せよ、という指令を受けた神職の家の者が作り出した組織だそうです。
そして各地に潜む鬼を狩り……とうとう私の居場所を突き止め総攻撃を仕掛けに来たそうです。
正直ドン引きした。神のお告げって……いや私は面会したことあるんで信じますけど……普通会った事も見た事もない奴の指示に人生をささげるか……?
しかもそんなあやふやなもので人の生活に土足で踏み入るなどと。
「……気味が悪い……」
誰にともなく呟く。しかし休んでいる暇は無い。鳴女の言う通り、確かに人の気配が集結しつつある。
情報を全て吐き終え、ぐったりとしている鳴女を放置し、私は人の気配へと奇襲を仕掛けた。
◇
「私は今非常に機嫌が悪い。貴様たちのせいで折角の記録がパァだ」
誰に言うでもなくそんなことを呟きながら、鋭利な刃物へと変化させた腕を縦横無尽にしならせる。
それだけで肉片が飛ぶ。それだけで人が命を落としていく。
あまりにも無情な現実である。
そう……無情な現実。
鬼殺隊を解体したつもりが全く解体できてなかった。
世界最速を狙ったはずが全く関係ない所から奇襲を受けるとは思っていなかった。
いやまぁぶっちゃけ、産屋敷家壊滅させただけだと鬼殺隊解体RTAか? って気もしていたんですけどね。
だってそれって、見ようによっては産屋敷家解体のRTAであって、鬼殺隊解体のRTAじゃないですからね。正直レギュレーション違反な気もしていました。
そう考えると、私は本当の意味で鬼殺隊解体RTAを完了していなかったのかもしれません。
ともすれば今の状況は第二のチャンスかも。
今襲い掛かって来るのは鬼殺隊ではないけど……謎の組織鬼滅隊もやっていることはほとんど鬼殺隊と同じっぽいですからね。
という訳で大きくガバをしましたが、もう一度、今度は鬼滅隊を解体して鬼殺隊解体RTAを完遂しましょう!
◇
「……」
鬼舞辻無惨。鬼を作ることのできる唯一の鬼。そして最強の鬼。
その、彼が。
「……な、何故……」
腰を抜かして尻餅をついていた。
目の前にいるのは……鬼滅隊最強の侍。継国縁壱。
「お前は逃がさない。何処へ逃げようと絶対に。必ずその首に刃を振るう」
「お前……そうか……お前も居るのか……」
「……」
鬼舞辻無惨はそのまま反転し、一目散に駆け出す。
しかし縁壱からは逃げられない。
すぐに追いつかれて首を斬られてしまった。
「がっ……」
鬼舞辻無惨は首を落とされると、苦悶の表情を一瞬だけ浮かべるが、首だけの状態で即座に縁壱に話しかけた。
「きさっ……貴様……貴様のような奴が……何故鬼殺……いや、鬼滅隊に……?」
「鬼が居た。そして私には鬼を狩るだけの力があった。それだけだ」
「……そうか」
どこか諦めたような声色でそう呟く鬼舞辻無惨。
──しかし。
「やはりお前の親は殺しておくべきだった」
首を斬られ。圧倒的に不利な状況に追い込まれたと言うのに。
鬼舞辻無惨は気味の悪い笑顔を浮かべながらそんな事を宣った。
「そうすればお前は生まれてこない……私の記録は……更新される……」
「貴様は勘違いをしている」
「……?」
「私など大した男ではない。私が死んだとしても……必ず後に続くものが現れ、お前の首を斬る」
「……」
「それが分からぬ貴様では──」
「いや……
──それは、鬼舞辻無惨を知る者であれば、あり得ぬと太鼓判を押すであろう一言であった。
生憎その異常事態に気付くものは居ないが……しかし、縁壱も謎の気味の悪さは感じ取れた。
ただの生首。例えこの状態から何が有ったとしても、縁壱であれば対応できる。
なのに……鬼舞辻無惨の底知れぬ気味の悪さは拭えることは無かった。
「次はもう少し工夫する」
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……………………
…………
……
◇
皆さん。お久しぶりです。鬼舞辻無惨です。
あれから……百年ほど経ちました……。
鬼滅隊……解体できませんでした。
私は完全に、継国縁壱の事を失念していました。
途中まではイケイケだったんですけど……急に現れた彼に殺されかけました。
おかしいなこのRTAで命の危機なんて太陽くらいしかないんですけど。
というかもう開始から八百五十年たっています。でも終わりません。RTAとしては駄目駄目ですね。
しかし! 私もRTA走者の一人。当初の記録よりは遅いですが……最速記録を狙える以上、最後まで走り切ります!
そして! 継国縁壱は今日! 死にました! また後の上弦の壱となる黒死牟をゲットできました!
継国縁壱が生きている間に下手に動いてしまいますとなんならゲームオーバーになってしまいますからねぇ。
今日を境に鬼滅隊解体に本腰を入れていきましょう!
今後は鬼作りにも力を入れていきます。十二鬼月というやつですね。
古い方の鬼はもう駄目です。そもそも名前吹聴するとか万死に値しますからね。今後は血に呪いとかつけちゃいます。
え? そうまでして鬼を増やす意味は有るのか?
確かに、結局頼れるのは自分だけなのですが……強い鬼であれば雑魚散らしや青い彼岸花捜索くらいには使えますので。
まぁ無いよりある方が良い程度なんですけど。
そうそう鬼といえば、鳴女が結構いい具合に成長しているんですね。
まさかの原作鳴女ちゃんと同じ血鬼術!
彼女は元鬼滅隊の一員ですので、よりがちがちに自意識を縛っておきました。移動系の道具的な感覚で使って行きましょう。
さて話がそれてしまいましたが……今度こそ鬼滅隊を解体しましょう。
今の鬼滅隊の現状ですが……何故か潰したはずの神主の一族の息子だか娘だかが台頭して組織を再生していっているんですねぇ。
彼らはゴキブリの繁殖速度並みの勢いで組織を拡大し、再生させていきました。
というか、鬼滅隊に入隊する人多くない? 命が惜しくないのか……?
正直ドン引き。どんだけ鬼滅したいんだ……。
まぁ、既に鳴女に鬼滅隊隊員の居場所の殆どを把握させているのですが。
罠を大量に仕掛けた無限城モドキも作ってあります。
まぁ罠といっても適当な所で鳴女殺して地中に埋めちゃうんですけど。
後は鬼滅隊隊員を全員呼び寄せてさっさと解体しちゃいましょう。
これにてRTA終了ですね!
◇
「鳴女」
「はっ」
「お前は私が思った以上に成長した。人を一切食らわずに、まさかここまで強くなるとは……。素晴らしい。この戦いが終われば、貴様を上弦の鬼に加えてやる」
「光栄でございます」
「では……開始せよ」
「はっ」
べんっという音が響く。
「……は?」
何故か、鬼舞辻無惨が地上に出ていた。
「……」
そして……その周囲を囲むように、鬼滅隊が殺意をたぎらせながら刀を構えている。
「……? 何だこれは……」
「お前は騙されたんだよ、鬼舞辻無惨。お前の配下にな」
「……?」
まだ年若い、子供のような鬼滅隊隊員。
しかし……その額には、まるで縁壱のような痣が浮かんでいた。
「まだ気づいていなかったのか? 鳴女さんは……彼女は、お前の呪いを外したんだよ」
「……」
そこまで言われて、鬼舞辻無惨は、ああ、と何か納得したような表情を浮かべた。
「なるほど、なるほど……」
そして次第に表情をゆがめていくと──。
「初めてだよ……ここまで私をコケにしたお馬鹿さん達は……」
「……」
何かが振り切れたように冷静になった。
「何故貴様らはいつもそう、私の邪魔をする? 本当に…………そうだ、私は知りたいんだ。何故貴様たちは鬼滅隊などという異常者共の集まりに参加したんだ?」
「……貴様がそれを言うのか?」
「それはそうだろう。私が何か悪い事でもしたか? 全く身に覚えがない」
「……」
瞬間、鬼舞辻無惨を囲う者どもの空気が変わった。
そして、こらえきれず、鬼舞辻に罵倒を投げかけてきた。
「っ、貴様がァァァァ!! 貴様がッ、俺の姉を食ったんだろうが!! 覚えてないのかァァ!!」
「いや……知らんが」
「……は?」
「名前ぐらい言ったらどうだ。じゃなきゃ分かる訳がない。常識のない奴め」
「……煉獄杏子」
鬼舞辻無惨は底冷えするほど淡々と会話をしていたが、しかし名前を聞いて初めてぴくりと反応して見せた。
「それがお前の姉か?」
そこまで話して、初めて鬼舞辻無惨はその隊員のほうを向いた。
それで、少し目を見開いたかと思うと。
「知らんな……人違いじゃないか?」
「……お前は何を言っているんだ?」
バッサリと切り捨てた。そして妙に親切に、その隊員に向かって説明を始めた。
「鬼など私以外にも居るだろうに。お前は私に姉を食われたというが……食ったという私はてんで覚えがない。人違いを疑った方が建設的だ」
「……ッ──」
姉を食われたという隊員は、鬼舞辻無惨のあまりの言い分に言葉を発そうとする。
しかし。
「しつこい」
鬼舞辻は何かを言いかける隊員に被せるように吐き捨てた。
「お前たち……まさかそんな事のために私の時間を割こうとしていたのか? 百年も……心底うんざりした。お前たちは生き残ったのだからそれで十分だろう」
「……」
「若い身空でくだらぬ復讐に人生を費やすなど……阿呆のする事だとは思わないか? 何故生き残れた事を喜び人生を謳歌しない」
「……」
「死んだ人間が生き返ることなど……神の奇跡無くしてあり得ない。下らぬことはもうやめにしよう。私も貴様ら異常者の相手は疲れた」
皆、黙り込んだ。
呆然と、あり得ぬものを見るかの様に鬼舞辻無惨を眺めている。
「では話は終わりだな? 失礼する」
「おい……待て……失礼するな」
呆然としている鬼滅隊の面々を一通り見たかと思うと、鬼舞辻無惨は退散しようとする。
しかし、それを縁壱の面影を残す少年に止められる。
鬼舞辻はまだ何かあるのか? とでも言いたげな表情で足を止めた。
「鬼舞辻無惨」
「なんだ」
「お前は……存在してはいけない生き物だ」
◇
鬼滅隊と鬼舞辻無惨の戦闘は苛烈を極めた。
しかし、無惨の呪いを解き、無惨を裏切った十二鬼月達の加勢も有り
戦闘は佳境を超え終盤に差し掛かっていた。
水の呼吸──
岩の呼吸──
雷の呼吸──
月の呼吸──
日の呼吸──
炎の呼吸──
風の呼吸──
ありとあらゆる技、妖術が無惨に襲い掛かる。
無惨はそれを紙一重で捌いていくが──。
「ガアアアアァァ──!!?」
避けた先。そこには朝日が伸びていた。
「ば、馬鹿なッ!? もう日の出だと!? まだ時間に余裕は──」
「鳴女さんが少しづつお前の位置を東にずらしてたんだよ! 気付かれないようになッ!」
「ッ! 鳴女ぇェェェ!!!」
鬼舞辻無惨が太陽にさらされ、燃え始めた。
◇
わお。
ヤバい。
これはひどいガバですよ……。
私は胸中穏やかでは無かった。
何せこのままだと千年近く浴びていなかった太陽光を浴びる事になってしまう。
不味い。どうしよう。リカバリーを。記録はどうなる?
ここから立て直しても結局良い記録は──。
「……」
と、そこまで考えて……ある事に思い至った。
「……意外と、諦めは良いんだな」
あの縁壱とかいう化物の面影を思わせる謎の子供が話しかけてきた。
「……後生だ。最後に……年号を……教えてくれ……」
「……」
「頼む……」
頼んでみると、意外な事に返事が返ってきた。
「承応二年だ」
承応二年……西暦に直すと1653年。
私が鬼になったのは、嘉祥元年の頃……なので西暦に直すと848年。
計算すると……805年の月日か……。
「……お前たちは……これからどうする……もう……解体されるのか……?」
「ああ。お前を殺す事。それだけが鬼滅隊の存在意義だ」
私はそれを聞いて──。
にんまりと笑顔が浮かんでしまった。
「……」
そうか。確かにそうだ。別に力づくでこいつらを解体させる必要は無かった。
鬼舞辻無惨がいなくなればこいつらも自動的にいなくなるんだから。
「ふ、ふふふふぅぅふふふ……」
「……おま──」
「新記録達成だ」
…………………………………………
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……………………
…………
……
◇
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
耳鳴りがする。嫌な音だ。
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
嫌なはずだ。これは鬼の体が燃える音。
いつまでも鳴り響く。いつまでも……いつまでも。
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
耳鳴りがする。嫌な音だ。
「私は神だ」
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
耳鳴りがする。嫌いな音だ。
「君は私の手違いで死んでしまった。お詫びとして好きな世界、時間、容姿、能力を持たせて転生させてあげよう」
ゴォォォォォォ────…………………………。
ゴォォォォ…………ンンンン…………。
耳鳴りは続く。延々と続く。
「では鬼滅の刃という作品の、鬼舞辻無惨というキャラクターに転生させてください。時間は鬼舞辻無惨が鬼になる直前でお願いします」
「よかろう」
そう答えると、スゥっと足元の感覚がなくなった。
◇
『頭無惨な走者による鬼殺隊解体RTA』
はーじまーるよー。
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