鉄血のビルドファイターズ(旧題 ガンダムビルドオルガーズ) (にくキャベツ)
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第1話 鉄と血とガンプラと

「最終防衛ライン、突破されました!」

 

「団長! 団長のガンダムを出します!」

 

「……おう、任せろ。オルガ・イツカ、カラミティガンダム。行くぜ!」

 

 激しい戦闘を繰り広げる宇宙艦隊の中の一隻から、ガンダムが勢いよく発進する。宇宙を駆けるその機体に三機のザクが迫る。

 

「来やがったな……俺が相手になってやる!」

 

 腕に持っているバズーカ、トーデスブロックを敵に向かい構える。が、しかし。

 

「やめろオルガ! それじゃ無理だ!」

 

「何言ってんだユージン! 今此処でやらなきゃ……」

 

「お前が作ったそのガンプラは……」

 

 それを持った腕が根元からスッポリと抜けてしまった。

 

「……腕がしっかりハマってねえんだよ!」

 

「……勘弁してくれよ」

 

 外れた腕を弾き飛ばしたザクがコックピットに向かいマシンガンを構える。そこから光が溢れ……るところで、彼は机から飛び起きた。

 

「……夢か。そういや、腕作る前に寝ちまったんだったな……」

 

 彼の名はオルガ・イツカ。私立鉄血学園ガンプラ部3番組、通称『鉄華団』の部長。……そして、近い未来、世界に名を轟かせる、ガンプラビルダーである。

 


 

「俺のカラミティガンダム……」

 

「……何浮かねえ顔してんだよ、オルガ」

 

「何言ったってよ、俺たち第3ガンプラ部は第1、第2から流れて来たガンプラとか設備しかねえ……だからあるのは……」

 

 鉄血武器セットに付属するモビルワーカー、その数30台。この全てが第1部室、第2部室から流れて来たものだ。

 

「こんなんで戦えるわけねえだろうが……」

 

 何故モビルワーカーで今まで戦えてこれたかといえば、モビルワーカーは機体数にカウントされないため幾らでも出撃させ全員で戦うことができる為である。しかしそれでも30台程度ではモビルスーツ1機を相手にするのがギリギリのラインだった。

 

「こいつらは極限まで作り込んだけどよ……絶対数が増えない限りモビルスーツには対抗出来ねえよ。だって世界大会だぜ?」

 

 そして鉄華団が目指すのは世界大会での優勝。何故このような弱小チームがそのような大きな目標を持っているかの理由は、その一室に飾られたトロフィーにあった。

 

「……アムロ・レイ。ガンプラバトル選手権準優勝……か」

 

 かつてチャンプと言われた男、アムロ・レイ。彼はこの私立鉄血学園にガンプラ部を作り、バトルシステムを用意し……去っていった。

 

「元チャンプのお墨付きの部活だからって、そこまで気張るかよ、普通?」

 

「せっかくやるならでっけえ事をやりてえだろ……」

 


 

「団長! ギャラルホルンだ! 第1ガンプラ部が!」

 

「……んだと? ギャラルホルンが俺たちみたいなのを相手にする理由はねえはずだろ!?」

 

「オルガが自腹で買ってコッソリ作ってたカラミティあるだろ? アレを嗅ぎつけたらしくて……」

 

「……奪いに来たって訳かよ……最悪な賭けバトルだ」

 

「あぁ、ガンプラバトルで勝ったらそれをもらうって無理やり……」

 

「……分かった、完成したばっかのカラミティで出る。モビルワーカーじゃどっちみち勝ち目は……」

 

「えっ、そんな無茶……本当にやるの?」

 


 

《field 2 Desert》

 

「アイン・ダルトン、グレイズ出撃します!」

 

「オルガ・イツカ、カラミティガンダム! 狩に出る!」

 

 展開されるフィールド。そこに降り立つガンプラが一機、グレイズ、指揮官機だ。

 

「……どこから来る、奴は必ず……」

 

 と、そこで赤色のビームが上空より飛来する。

 

「このビーム……ガンダムSEED系のスキュラか!」

 

 それに少し遅れ、その地面に着地するカラミティ。

 

「かかってきやがれ……!」

 

 が、しかし。グレイズが放つライフルをかわそうと加速するオルガだが……カラミティの勢いがあまりにも付きすぎ、ブレーキが効かなくなってしまう。

 

「畜生、やられちまう……!」

 

 そのまま転んだカラミティにバトルアックスを構えたグレイズが襲いかかる。シールド、ケーファー・ツヴァイで防ぐオルガだが……連続攻撃に耐えきれずシールドが弾き飛ばされる。

 

「畜生、俺じゃ無理か……!!」

 

 アインのグレイズがカラミティを両断しようとしたその時……オルガのホログラムコックピットに、もう一人現れ、操縦桿を握る。

 

「……オルガ。あとは俺に」

 

 そしてそれを押し込み……一気に加速しグレイズに体当たりをかまし、それにより敵を吹き飛ばす。そして、その操縦桿を握っているのは……三日月だった。

 

「ミカ……分かった。パイロット交代だ」

 

「オッケー」

 

「動きが……動きが変わった!?」

 

『アイン! 惑わされるな!』

 

「クランク顧問……」

 

 バトルステージ外から飛ぶ助言。それを聞いて体制を立て直すグレイズだが……

 

「オルガ、こいつの武器は?」

 

「第三スロット……シュラークだ!」

 

 背部のビーム砲を構え、それを放つカラミティ。それを横っ飛びで避けるグレイズ、そして真っ直ぐ敵へ突っ込む。

 

「砲撃戦特化なら……近付いてしまえば終わりだ!」

 

「突っ込んで来るぞミカ!」

 

「……分かってる」

 

 グレイズのバトルアックスを躱し、さらにその勢いのまま蹴り付ける。さらに向かって来るグレイズのアックスを避けながらバズーカの銃口を押し付け、放つ。

 

「行けるぞミカ、トドメを刺せ!」

 

「あぁ、分かってる」

 

「スロット5番目、スキュラだ! ぶちかましてやれ!」

 

 腹部のビーム砲に光が収束し、光線が放たれる。それを受けたグレイズは耐えきれず……爆散した。

 

《battle end》

 

「すみません……クランク顧問……敗北した挙句にガンプラを破壊してしまいました……」

 

「いいんだアイン。今日のところは引き下がるぞ」

 

「……俺の……俺たちのガンプラが、勝った!」

 

「これなら世界大会行けるかな?」

 

「……もちろんだ! 俺たちみんなで……世界を驚かせてやろうぜ!」

 

 初勝利を収めたカラミティが、粒子の光を受けながら力強く立っていた。



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第2話 マクギリス・ファリド

 

「おはよう、オルガ」

 

「……おぉ、ミカ」

 

 昨日初勝利を収めた鉄華団。それを受け安心したのか、昨日のオルガはグッスリと眠っていた。……そしてここは模型店、プトレマイオス。とある事情から親のいない者が多い鉄華団は住み込みでここで働き、日々生活している。ガンプラバトル用の筐体も置いてある為、実質鉄華団の溜まり場といっても良いだろう。

 

「……おはよう、ロックオンの兄貴」

 

「オルガか。昨日ガンプラバトルに初めて勝ったんだってな?」

 

 そして彼はロックオン・ストラトス。主にカウンターで会計などをこなす、模型店プトレマイオスの元からの店員の一人。

 

「懐かしいなぁ……一年前のガンプラバトル選手権、アレ俺たちも出てたんだぜ?」

 

「そうなのか? そりゃまた……」

 

「……てか、学校行くんだろ? もう9時なんだが」

 

「……え?」

 


 

 その後無事授業を受けたオルガ、部活の時間になった為部室に向かうと……そこに金髪の男が入ろうとしているのを見かけた。彼はオルガの方に振り向き……

 

「会えて嬉しいよ、鉄華団の諸君」

 

「……マクギリスじゃねえか……」

 

 彼の名はマクギリス・ファリド。第1ガンプラ部、ギャラルホルンの中でも有数の実力を持つガンプラファイターだった。

 

「……なんだ? 俺のカラミティは渡さねえぞ」

 

「いやいや、そのような事を言いに来たのではない。……私が純粋に君たちとバトルしたくなったんだ」

 

「……だったら良いけどよ。ミカ、やってくれるか?」

 

「いいよー」

 


 

《battle 5 city》

 

《battle start》

 

「それじゃ、三日月・オーガス、カラミティガンダム。出るよ」

 

「マクギリス・ファリド、アメイジンググレイズ。出撃する」

 


 

 勢いよく発進する二体の機体。降り立つカラミティの前に立つのは、赤い機体カラーのグレイズ。それを見てバズーカ砲、トーデスブロックを放つカラミティ、それを躱し肉薄するアメイジンググレイズ。グリムゲルデから移植した腕部に固定された剣でバズーカを破壊し、シールドも弾き飛ばす。

 

「オルガ、武器は?」

 

「本来はないサーベルを仕込んで置いた、抜け!」

 

 背中のバックパックに仕込まれたビームサーベルを引き抜くカラミティ。それを屈んで避けるアメイジンググレイズ。そのまま背後に回り込むも、超速度で反応し振り返ったカラミティの斬撃を避ける為バックステップで飛び上がる。

 

「避けやがった!?」

 

「これがガンプラバトル……アグニカンスタイルだ!」

 

 方向転換しカラミティの方向へ突っ込むグレイズ。内臓ビーム火器でそれを迎撃しようとするも、それを避けなおもこちらへ向かって来る。

 

「接近戦ならば……こちらが有利だ!」

 

 背部ビーム砲シュラークを斬りつけ破壊し、接近戦を強いるグレイズ、それが振るう剣を間一髪で躱すカラミティ、スキュラを放つもそれも避けられる。そのまま首を刎ね飛ばされ……そのまま倒れ込んだところをコックピットに一突き。……勝負は決した。

 

「……ごめんオルガ、負けちゃった」

 

「そう簡単に何度も勝てるわけねえさ。……あいつが、マクギリスのガンプラ……」

 


 

「……何負けてんだよ、オルガ、三日月!」

 

「あぁ、シノ……だけどな……」

 

「うん。いくら負けたってまた直せばいいんだ」

 

「俺たちみんなで世界大会に出て……リベンジしてやるんだ」

 

「……この、ユニコーンガンダムマーズキングでな!」

 




「俺たちの新しいガンプラだ!」
「前のより使いやすいね、これ」
「カラミティは使い辛かったってのかよ!?」
次回、『ユニコーンガンダムマーズキング』
「俺は、火星の王になる」


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第3話 ユニコーンガンダムマーズキング

 

 GNソードを携え立つトライアルカラーのガンダムエクシア。それにバズーカを放ちながらホバーで近づくカラミティガンダム。エクシアはそれを躱しGNソードを構える。それに反応しバズーカを投げ捨てサーベルを引き抜くカラミティ。お互いの剣がぶつかり合い弾き合う。GNソードがカラミティのビームサーベルを弾き飛ばし、ガラ空きになった胴体に斬りかか……ろうとしたところに腹部ビーム砲スキュラを受け、エクシアは吹き飛んだ。

 

「なるほど。FGのエクシアじゃもう勝てなくなったか」

 

「ねえ刹那、他のガンプラないの?」

 

「今はFGトライアルカラーエクシアしか持っていない」

 

「……そう」

 


 

「……なんかここパーツ合わなくねえか?」

 

「作ったのはオルガでしょ……」

 

「ビスケット、これ全部作ってくれよ」

 

「いやオルガが組むって言ったんじゃん」

 


 

「……刹那。この辺にファイターの溜まり場があるって本当?」

 

「あぁ。俺はクアンタを組みに帰るから一人で頑張ってくれ」

 

「うん、いいよ」

 

 夜の街。その一角にあるバー。そこに足を踏み入れる三日月。そこでは、激しいガンプラバトルが繰り広げられていた……

 

「……やあ。君が三日月君だな?」

 

 そんな三日月に近寄る武骨だがどこか優しさを感じる男。

 

「そうだけど、あんたは?」

 

「私の名前はククルス・ドアン。ビルダーをしている男だ。……君もガンプラバトルをしに来たんだろう? 刹那君から話は聞いているぞ」

 

 ドアンに連れられ、沢山のガンプラが並べられた一室に入る。

 

「この店ではガンプラのレンタルが可能だ。どれにする?」

 

「……じゃあ、これで」

 

 三日月が選んだのは、ガンダムアスタロト。鉄血のオルフェンズ月鋼に登場する主人公機の、ガンダムフレームだ。

 

「アスタロトか……中々良いセンスをしているな」

 

「使いやすそうなの選んだだけだよ」

 

 そんな三日月を見て、バトルしていた者たちが集まってくる。

 

「……新入りか?」

 

「あぁ。刹那君からの推薦だ」

 

「あの刹那から? ……にしてはただのガキですよ」

 

「刹那君も昔はそうだっただろ? 御託よりもまずは戦ってみたらどうだ?」

 


 

 ビームを乱射しながらアスタロトに襲いかかる五体のガンプラ。だがしかしナノラミネート装甲に対しビームは意味を成さない。そのまま五体まとめてアスタロトでぶった斬られる。

 

「……このガキ……強ぇ……」

 

「というかナノラミに対して俺たちはなんでビームで挑んでんだよ!?」

 

「行けると思ったんだよ! 行けると!」

 

「だったら今度は実弾装備で……」

 


 

 放たれるバズーカを躱しながら接近するアスタロト。それに対しヒートサーベルを抜いたリックドムだが、横斬りを縦に回避され、そのまま大型刀剣、デモリッションナイフで真っ二つに切断される。だが後ろから襲いくるギラ・ズールのロケットランチャーに被弾する。さらにそれに反応して振り返ると、さらに別方向からザクバズーカが飛来する。それを避けると続いてはリックディアスのクレイバズーカが襲いかかる。それを避けながら敵へ突っ込み、リックディアスを一刀両断する。が、奇襲して来たシュツルム・ガルスにデモリッションナイフを弾き飛ばされ、通常の短刀としてのナイフを抜くもののシールドに防がれる。

 

「……浅いか」

 

「もらったぁ!」

 

 シュツルム・ガルスがアスタロトにトドメを刺そうとした瞬間、謎のビームに撃ち抜かれ爆散した。その方向を向こうとした他のガンプラたちも次々と撃ち抜かれ撃墜されていく。

 

「……悪いね……余計な水差しちゃったか?」

 

「あのガンプラは……あのターンXは……」

 

 その煙の中から現れたのはガンバレルを搭載したバックパックを背負ったターンX。

 

「どうだい、三日月君。俺と戦ってみる気はないか? 一対一でな」

 

 バトルが終了し、ターンXを動かしていたサイドから出て来たのは……金髪蒼眼の男。

 

「……ムウ・ラ・フラガ……不可能を可能にする男、か」

 


 

「……出来たぜお前らァ! ユニコーンガンダムマーズキングだ!」

 

 完成したユニコーンモードのユニコーンガンダムを掲げるオルガ。

 

「凄え! ……でもこれ、ガンダムじゃなくねえか?」

 

「あぁ。こいつはここから変形してガンダムになるんだ」

 

「そりゃまたぁ、変な仕掛けだな……」

 

「……で、このカラミティガンダムは……昭弘、お前に預ける」

 

 新しく二つの剣を背負ったカラミティガンダムを昭弘に渡すオルガ。

 

「……なんで俺なんだ? 俺に射撃戦が向いてるとは思えないが」

 

「こいつはマーズキングを作るついでにソードカラミティに改造しておいた。ちなみに機体カラーは薄茶色にしといたぜ。あとこのバックパックに隠し腕も仕込んであるんだ。名前は……そうだな、ソードカラミティガンダムリベイク! なんてどうだ?」

 

 大きな声で新しい機体の名を宣言するオルガ。ユニコーンガンダムマーズキングとソードカラミティガンダムリベイクの二体がそこに並べられる。

 

「この二体で、俺たちは世界を取りに行く」

 


 

『只今より地区予選一回戦、第七試合を開始します』

 

「ミカ。俺のユニコーンガンダムマーズキングは完璧だ。……後はお前に懸かってる」

 

「分かってる。オルガのガンプラ、使いこなしてみせるよ」

 

 セットされるユニコーンガンダムマーズキング。森フィールドの空中に飛び出し、同じくフィールドに飛び出したジェスタと戦闘に入る。ジェスタの放つビームライフルを避けながら接近し、ビームマグナムを構える。

 

「やっちまえ、ミカ!」

 

 ビームマグナムから放たれる赤い光線。ジェスタがシールドを構えるも、それごと光線に飲み込んで行く。そしてジェスタはパーツをばら撒きながら墜落し……爆発した。

 

「凄い……瞬殺だ……」

 

「……ミカの奴、カラミティとはだいぶ勝手が違うのに簡単に操りやがった……どうやったらあんな腕が……」

 


 

「まったく、300回もバトルに付き合わせやがって……」

 

「世界大会で待ってるぜ、三日月君!」




「俺のユニコーンガンダムマーズキング……」
「俺のカラミティリベイクなら行ける」
「頼むぜ、昭弘!」
次回『バイアラン』
「お前は俺の……!!」


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第4話 バイアラン

 前回ガンプラバトル選手権にて初勝利を収めたオルガたち。今回は第二回戦としてマラサイと戦っていた。

 

「ミカァ! ハイメガランチャーが来るぞ!」

 

「分かってる」

 

 マラサイの持つ砲から放たれる光線を受け爆風が巻き起こり、勝利を確信する対戦相手の二人。

 

「……やった……!」

 

 が、しかし。その爆風の中からは持っていたビームマグナムやシールドが無くなったデストロイモードに変形したユニコーンガンダムが現れる。

 

「効いてないだと……?」

 

「カクリコン、距離を取……」

 

「遅い」

 

 一気に距離を詰め、ビームサーベルを抜いたユニコーンに真っ二つにされ爆散するマラサイ。

 

《battle end》

 


 

「今回もなんとか勝てたな……」

 

「うん、だけど」

 

 ハイパーメガランチャーの直撃やデストロイモードへのぶっつけ本番の変形によってユニコーンガンダムマーズキングはボロボロ、修繕には時間がかかる状態だった。

 

「こりゃあ直すのは面倒くせえぞ……」

 

 特にRGでもないユニコーンをデストロイに変形させるのは無理があったようで、装甲だけでなく関節部までに影響を及ぼしている。

 

「……次の試合にまで間に合うか……昭弘」

 

「あぁ。カラミティで出ろと言うんだろ?」

 

「その通りだ。俺たちはチームとして登録してるからな、ファイターの大会中変更もできるらしいぜ」

 

「そうか。なら次の試合までの間カラミティの操縦に慣れておく」

 

「頼むぜ」

 

 


 

 時は流れ、ガンプラバトル選手権予選会場。そこでは三回戦の戦いが繰り広げられていた。

 

「俺のスカッドガンダムに勝てると思うなよ!」

 

「ふむ、中々の出来栄えだ」

 

 機動武闘伝Gガンダムに登場するチョイ役の機体、スカッドガンダム。どうやら彼はそれをわざわざスクラッチしたようだ。搭載されたミサイルポッドからマイクロミサイルを無数に放ちマクギリスのアメイジンググレイズを攻撃するも、その全てを振り切られる。反撃として放たれた大型レールガンを弧を描きながら躱そうとするも一撃被弾し怯んでしまう。その隙を逃さなかったマクギリスが剣を展開し、急接近する。反撃しようと体制を立て直したスカッドガンダムだがもう遅い。コックピット部分に剣を一突きし、それを受けたスカッドガンダムは爆発四散した。

 

「ファングなんだよぉっ!!」

 

 一方その頃アインのグレイズがガンダムスローネツヴァイと戦い、ファングをバトルアックスで切り払いながらシュヴァルべから移植したアンカーを引っ掛け、怯んだところをワイヤーを巻き取り接近、胴体にアックスを突き刺して勝利した。

 

「やった! やりましたよクランク顧問!」

 

 そして……オルガたちの番がやって来た。

 

「対戦相手は……アレ? あいつら二回戦で倒した奴らじゃ……」

 

「まさか二回戦で当たって三回戦でも当たるとはな……」

 

 対面したのは第二回戦でも戦った金髪の男と前髪の後退した男。登録名はジェリド・メサとカクリコン・カクーラー。

 

「お前らなんで進んでんだ? ズルか?」

 

「違う! 俺がファイターとして登録されたGPベースとカクリコンが登録されたGPベースの二つで別々に大会に参加しただけだ」

 

「……それ、ズルくね?」

 

 困惑した様子で応対するオルガ。だがまかり通っている以上試合は続く。

 

《battle start》

 

「昭弘・アルトランド、ソードカラミティガンダムリベイク! 行くぞ!」

 

「ジェリド・メサ、バイアラン! 出撃する!」

 

 宇宙に飛び出す二体のモビルスーツ。ブーストで移動するソードカラミティリベイクの前に高速で飛行するバイアランが接近する。

 

「あの時とガンプラが違う?」

 

 スキュラで迎撃しようとするも躱され、腕部メガ粒子砲による反撃を受けよろける。

 

「くぅっ……!」

 

「そんなビーム砲で!」

 

 ビームサーベルを抜きカラミティに接近するバイアラン。カラミティも対艦刀を抜き鍔迫り合う。お互いがお互いを弾き合い仕切り直される。吹き飛ばされる両者、バイアランが一足先に体制を立て直しメガ粒子砲を放つ。それを躱したカラミティがビームブーメランを取り出し投げつける。それを避け、再び肉薄する二機。カラミティがすぐに対艦刀を抜き斬りかかるもなんとビームサーベルを抜かないバイアランが避け、その刀を持った腕に掴みかかりゼロ距離でメガ粒子砲を放つことで右腕を破壊する。そしてもう片方の腕でサーベルを引き抜くバイアラン。

 

「もらったぁ!!」

 

「そいつは……どうかな」

 

 そのサーベルがカラミティを捉えようとしたその時、カラミティがバイアランに向かい膝蹴りをかました。予想外の攻撃を受けたバイアランは怯みサーベルを手から落とす。

 

「何!? こいつ、そんな乱暴な使い方で……脳みそまで筋肉で出来てるのか!?」

 

「あぁ。生憎そうらしいぜ」

 

 すぐにサーベルを拾い体制を立て直すバイアラン。それに対し残った左腕でもう一本の対艦刀を背中から抜くカラミティ。再び急接近し鍔迫り合いになる。カラミティの脇腹を蹴りつけ怯ませるバイアラン、ジェリドは勝利を確信し全力で斬りかかる。

 

「勝った!」

 

「いやぁ……まだだ!」

 

 カラミティから隠し腕が現れ、ビームブーメランを取り出す。

 

「何!? 隠し腕だと!?」

 

 驚きの色を隠せないジェリド、ビームサーベルを振りかぶっているバイアランは無防備だ。

 

「こいつで……どうだ!」

 

 そんなバイアランの肩に直接ビームブーメランを突き刺す。それを受けバイアランはビームサーベルを手から離し、完全に隙を晒す。それを見たカラミティが対艦刀を構えながら突っ込み……斬り裂いた。

 

「バカな……俺のバイアランが……」

 

《battle end》

 

 試合終了を示すアナウンスが鳴り響き、戦いは終わった。

 

「……やったじゃねえか昭弘!」

 

「あぁ。これもお前が作ったガンプラのお陰だ」

 

「いやぁ……ほとんどビスケットの力借りて作ったもんだからそんなに褒められると申し訳ないぜ……」

 

「でもそれって鉄華団の勝利って事でしょ?」

 

 勝利を喜ぶ三人。その裏では負けを受け落ち込むジェリドの姿が……

 

「二人揃って負けたな……」

 

「……次回あたりにでも汚名挽回だ。あ、俺今間違ったこと……」

 

「ジェリド、汚名挽回は誤用じゃないらしいぞ」

 

「そうなのか? 馬鹿にされるからてっきり……」

 

 こうして鉄華団は三回戦を無事突破した。二人のファイターによる万全の体制を構築したチーム鉄華団が次に相対するは……




「最強のビルダー!?刹那の兄貴の知り合いって、まさか」
「どういうことだよ刹那ァ!?」
「ってか、これガンプラじゃねえじゃねえかよ!」
次回『最強ビルダークロスロード』
「30MMはバンダイのプラモデルです」


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第5話 最強ビルダークロスロード

「……こいつは、HGダブルオークアンタか……」

 

「あぁ。トランザム風のカラーに塗装した」

 

 刹那が作成したダブルオークアンタを見つめるオルガと三日月。

 

「へえ……すごいじゃん。早速バトルしてみようよ」

 

「いや、やめておく。これはバトルには使えない」

 

「え? なんで? こんなに作り込んでるんだから強いでしょ」

 

「確かに強いかもしれない。だが、俺がバトルで一番使えるのは自分で作ったガンプラじゃない。アイツが作ったガンプラなんだ」

 

「アイツって……」

 

「沙慈・クロスロード。俺の知る中で最高のビルダーだ」

 


 

「……さて、何処にいるのかな。刹那の言う鉄華団ってチームは」

 


 

 自室でパソコンのキーを叩くオルガ。

 

「えっと……沙慈クロスロード、ビルダー……こいつのことか」

 

 刹那の言う沙慈という男を画像検索で調べると、そこには彼の作品と思われる恐ろしいほどの出来栄えのガンプラと、彼本人の顔写真と思われる画像が映し出された。そんな画面を見ているとドアが開き、三日月が入って来る。

 

「ねえオルガ、俺のユニコーン直さなくていいの?」

 

「あぁ、その事についてなんだが……次の試合までにはしっかりと直すさ、間に合わなくても昭弘に出てもらえばいい。ってか、直す時にユニコーンに手を加えてえんだ。次の試合を勝ったら、さらにその次の試合はマクギリスと当たるはずだからな」

 

「……チョコの人とようやく戦えるのか」

 


 

 模型店、プトレマイオス。そこに一人の青年が立ち入る。

 

「……よく来たな、沙慈」

 

「あぁ刹那。刹那の言ってた鉄華団のオルガって人、何処かな?」

 

「そいつなら今工作部屋でガンプラを仕上げている。見に行ってやれ」

 


 

 ガンプラバー、ククルス・ドアンの島。前回刹那に連れられ三日月がやってきたこのバーでは、またも三日月とムウのバトルが繰り広げられていた。

 

「ガンダムアスタロト、確かに優秀な機体だ、だが!」

 

 マシンガンを持ち砂漠を飛び回るアスタロト。そんなアスタロトに対しターンXがトールギスのドーバーガンを放つ。捲き上る砂埃を被りながら手に持ったマシンガンを投げ捨て、対物ライフルを取り出し反撃する。

 

「調子に乗るのはそこまでだ、鉄華団のエース君!」

 

「……!」

 

 それを躱し、ターンXはバックパックに搭載されたガンバレルを解放し周囲に漂わせる。オールレンジ攻撃に使用せず、周りに浮遊する砲台として使用することにより手数を増やしアスタロトを追い詰める。二発ほど直撃を受け怯んだところにドーバーガンを撃ち込まれ墜落するアスタロト。

 

「……もう終わりでいいんじゃないか? これくらいに……」

 

「いや。まだ行けるから大丈夫」

 

「そうかい……俺は意地っ張りは嫌いじゃないがね」

 


 

「……あんたが沙慈・クロスロード、刹那の兄貴の知り合いか」

 

「うん。刹那と組んで選手権に出たこともあるんだ」

 

「なら、沙慈の兄貴と呼んだ方がいいか?」

 

「……別になんでもいいよ」

 

 少し困った様子を見せながら微笑む沙慈。

 

「そうだ、僕も新しい作品を持って来たんだ。刹那が次の選手権で使えるように」

 

「あぁ。そうだったな」

 

「それと……オルガの作品が見てみたいな」

 

「……沙慈の兄貴。悪いが俺の作品は凄いぜ」

 


 

 お互い睨み合い、ガンプラが入るサイズのホルスターに手をかける。

 

「こいつが俺の」

 

「こいつが僕の」

 

 ホルスターを開け、そこから取り出したのは……

 

「ユニコーンガンダムマーズキングだ!」

 

「アルトライザーだ!」

 

 オルガがユニコーンを取り出したのと同時に、沙慈はホルスターから確実にガンプラではない何かを取り出す。ベースキットは30 minute missionのアルト。カラーは白だ。バックパックはオーライザー、全身をコトブキヤ発売、MSGのクラッシュマント、サイドマントで、オーライザーが露出した背部以外の全てを覆っている。左腕には同じくMSGからエクスキャノンが搭載されており、右腕の手持ち武器はアルト付属のサブマシンガン。頭部は30 minute missionのカスタム用パーツの一つである指揮官用アーマーを使いカスタムしている。MSGをふんだんに使用し、なおかつベースキットはガンプラですらないという完全にバンダイに喧嘩を売ったそのカスタムを見てオルガは戦慄していた。その戦慄はバンダイに喧嘩を売ったことではなく、その恐ろしいほどの完成度から来たモノだった。マントにはクロスボーン・ガンダムX1に代表されるMSが使用するABCマントと同じ効果を付与するように特殊な塗装が施されておりただの飾りではない事が伺え、さらにオーライザーはアルトに装着可能にするために特殊な措置を施しており、さらに分離することも可能であると推測できる。マントで前面を覆っているため詳細が全くと言っていいほど不明であるのも不気味であり、何を仕込んでいるのか見当もつかない。オーライザーにGNドライブを一体化させていることも見え、トランザムも可能であろうという推測も頭を過る。

 

「……このガンプラ……出来る!」

 

 その頃沙慈も思案を巡らせていた。HGユニコーンガンダムをベースに改造したそのキットは、一見ベースキットとあまり変わらないようにも思える。だが特筆すべきはバックパック、なんとモビルワーカーが仕込まれている。おそらくこれを分離し事実的な二対一に持ち込むのだろうと予想する。二人の想像がぶつかり合い、想像の世界でのバトルが始まる。

 

「モビルワーカーを仕込んでるんでしょ、そのバックパック!」

 

「お見通しかよ、クソッ!」

 

 ビームマグナムを放つユニコーン、それを容易く躱すアルト。エクスキャノンによる反撃をシールドで弾き、ビームトンファーを滑らせ手で持ち、ビームサーベルとして使用する。それに対しサブマシンガンを投げ捨てたアルトがチェーンソーの付いた銃をマントの中から取り出す。

 

「何!? MSGのチェーンソーとダブルバルカンか!?」

 

「ご名答!」

 

 チェーンソーとビームサーベルが鍔迫り合い、光を散らす。

 

「力くらべは好きじゃないんだよね!」

 

「何!?」

 

 アルトがマントを脱ぎ捨て、その衝撃で吹き飛ばされるユニコーン。そしてマントを脱ぎ捨てたアルトの姿は……

 

「……んだよそれ」

 

 増設したジョイント、追加アームだらけの姿。そしてそのジョイント、アーム全てに様々な武装が搭載されている。その全てがあのマントの中に収まっていたとはとても思えないその異形の姿に圧倒される。

 

「これが僕のアルトライザー第二形態だ」

 

「第二形態!?」

 

 大量の武装が一斉に放たれる。デストロイモードに変身しシールドを構えながら避けようとするも……大量の火器からは逃れられず爆発に巻き込まれ撃墜された

 

 

 と、思われた。

 

「何? なんで避けて……!」

 

「確かにあんたの腕は俺より上だ。それに今の攻撃も俺が操縦してるなら絶対避けられねえ。……だけどな、ユニコーンガンダムマーズキングのパイロットは……」

 

 想像の世界でのユニコーンに乗るパイロットが、オルガから切り替わり……

 

「ミカなんだよ!!」

 

 三日月となる。ミサイルやビームを振り切りながらアルトに斬りかかる。

 

「やるね、だけどこのアルトライザーの正式パイロットだって僕じゃない、それにこのアルトライザーには第三形態が……!」

 

 ゴテゴテと引っ付いた腕やジョイントを引き剥がしながらユニコーンに対抗しようと……と、そこで。

 

「そこまでだ!」

 

 一人の男により勝負は中断された。

 

「この勝負、この私ドアンが預かった」

 

「……あんたは、刹那の兄貴の行きつけの……」

 

「あぁ。……この戦いは君たちの想像の中で終わるには惜しい。だからこそ、ここでの戦いは中断し、世界大会で改めて激突するのはどうだろう?」

 

「……分かったよ。僕のアルトも刹那に動かして欲しいしね」

 

「あぁ。沙慈のアルト、使いこなしてみせる」

 


 

 沙慈との出会いを受け、さらに改良したユニコーンガンダムマーズキングのバズーカから大量のミサイルが放たれる。

 

「なんだよそれ!? 反則だろ!?」

 

 対戦相手の量産型ガンキャノンがそのミサイルを受け爆散する。

 

《battle end》

 

「これなら、チョコの人相手でも勝てるよ」

 

「……そう言ってくれるとは嬉しいぜ」

 

 

 

 


 

 

 

 

《battle end》

 

 街が燃える。その中に立つ漆黒のガンプラ。その足元に転がる真紅の、原型を留めないほどに破壊された残骸。……3分前まではアメイジンググレイズだったモノだ。

 

「やりました、やりましたよ顧問。僕はあのマクギリス先輩を超えました」

 

 その頭部だった何かを持ち上げ、握り潰す。

 

『準々決勝、第四試合はアイン・ダルトン選手の勝利です』

 

「嘘だろ、マクギリスが負けた? なんなんだよ、アレは……」

 

 アメイジンググレイズを無傷で叩きのめした黒いガンプラ。登録ネームは……グレイズアイン。

 

 




「やりました、やりましたよクランク顧問」
「あなたのガンプラを完成させました」

次回『グレイズアイン』
「決着を付けよう、鉄華団。私のアメイジンググレイズで」


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第6話 グレイズアイン

 

「……マクギリスが……負けるなんて」

 

 ガンプラ部第一部室へ向かうオルガ。ドアを開け問いただす。

 

「マクギリス、何負けてやがる? あのガンプラは一体……」

 

「オルガか。だがここにマクギリスのヤツはいない。そして……この学校の何処を探してもいない」

 

「……クランクのおっさん。どういうことなんだ、それ?」

 

「マクギリスは……学校を無期限に休学した」

 


 

「……アイツは逃げたってのかよ、俺らから」

 

「オルガ」

 

「……何も言わないでくれ」

 

 俯いてユニコーンガンダムマーズキングを見つめ続けるオルガ。その顔は今までのいつよりも落胆しているように見えた。

 


 

 アリアンロッド本社。そこのトライアルバトル用フィールドでは、準々決勝で倒されたはずのアメイジンググレイズが周りの標的を次々撃ち抜いていた。

 

《trial battle end》

 

「タイムは30秒、的中率は98%! 凄いぞマクギリス! 並み居るファイター候補生の中でお前が一番だ! 三代目メイジンアグニカ襲名式にお前が選ばれるのは間違いないだろうな」

 

「……ああ、そうだなガエリオ」

 

 ガエリオと呼ばれた青い髪の男の横を通り抜け部屋を去るマクギリス。

 

「何処へ行くんだ?」

 

「心配しなくてもいい、明日の襲名式までには戻るさ」

 

「……好きにしろ。このメイジンアグニカの称号はお前が望んだモノなんだからな。それにしても大会を途中で抜けるために予備のガンプラを使ってわざと負けるとは……変なことを考えるものだな」

 


 

 ユニコーンガンダムマーズキングを見つめるオルガの部屋のドアが開き、三日月が入ってくる。

 

「……ねえ、オルガ」

 

「どうしたんだ? ミカ」

 

「それ、貸してくれない? 試合前に壊しちゃうかもしれないけど」

 

「なんでだ?」

 

 だが、しかし。三日月の目からオルガはその意図を感じ取る。

 

「……そういうことか。じゃあ持ってけ。但し、俺もついて行く」

 

「いいよ。……オルガも分かってるよね」

 

「あぁ。……ヤツが待ってんだろ?」

 


 

 学校のバトルルームに待っていたのは、マクギリス。

 

「来てやったぞ、マクギリス!」

 

「……会えて嬉しいよ、鉄華団の諸君……」

 

「ミカ、やってくれるな」

 

「勿論」

 

 お互いに向き合い、宇宙のフィールドを選択する。ガンプラをセットし、出撃する。

 

「それじゃ三日月・オーガス、ユニコーンガンダムマーズキング。出るよ」

 

「マクギリス・ファリド、アメイジンググレイズ。出撃する」

 

 お互いが宇宙(そら)へと飛び出す。放たれるビームマグナムを避けながら大型レールガンを放ち、背部バックパックに装備されたミサイルを発射する。シールドで防ぐユニコーン。爆風から飛び出しシールドに装備されたガトリングで迫るミサイルを迎撃するが、その爆風を切り裂き現れるアメイジンググレイズの剣にシールドが破壊され、反撃にマグナムを構え放つも当たらず、銃身を握りつぶされる。

 

「ミカ!!」

 

「分かってる」

 

 バックパックを分離しモビルワーカーが登場、ワイヤーを弾きながら空中を移動する。ワイヤーでグレイズを縛り付け、動きを止める。無理やりパワーで千切られるワイヤー、だが放り出されるモビルワーカーの放つ機銃がユニコーンのシールドから分離したガトリングを捉え、グレイズの至近距離で爆発し吹き飛ばす。宇宙に漂うモビルワーカーを回収しビームトンファーを手に持ちサーベルとして構えるユニコーン、それに対し剣を展開するグレイズ。お互いの剣がぶつかり合い、光の筋となりながらぶつかり合う。

 

「ミカ。俺を信じろ」

 

「あぁ」

 

 再度分離するモビルワーカー。さらにバックパックと合体し変形……戦闘機となる。鍔迫り合いの末に爆発する二人のガンプラ。だがマクギリスのグレイズのパーツも合体し戦闘機となる。

 

「ミカァ! あとは、俺に任せてくれ!」

 

 二機の戦闘機が空を駆け、撃ち合う。そして……

 


 

「……いやー、負けちまったな」

 

「そうだね。明日は準決勝だけど、ガンプラ壊しちゃったよ?」

 

「……あぁ、そうだな。だけどこれくらいなら、直せるさ」

 


 

 そして、翌日。

 

『準決勝第一試合を開始します』

 

 街中に降り立つユニコーンガンダムマーズキング。その上から現れる漆黒の機体は……グレイズ・アイン。

 

「またお前か……!」

 

 いきなりビームマグナムを構え放つユニコーン、だがその爆風の中からは無傷でグレイズアインが飛び出してくる。大型バトルアックスを抜くグレイズアイン、その攻撃をシールドで防ぐユニコーンだがアックスを受け止めたシールドはあっさりと破壊され、それで怯んだ隙に叩き込まれるドリルキックにより吹き飛ばされる。ブーストを吹かし体制を立て直すユニコーンだがそこに迫るグレイズアイン。ビームマグナムを撃つがグレイズアインはなんと身体を捻り躱す。さらに斧をしまいながら肩に掴みかかり、パイルバンカーで左腕を吹き飛ばす。

 

「浅いか……!!」

 

 また斧を抜きながら距離を取るグレイズアイン。それに対しユニコーンは腕部ビームサーベルを抜く。斧の一撃を躱し敵の頭部にサーベルを叩き込むユニコーンだが、あまりにも圧倒的なナノラミネートの再現率によりビームサーベルが全く通らない。そのまま胴体部に膝蹴りを喰らい体制を崩したユニコーンがもう一本の足により蹴り飛ばされる。ビームサーベルを落としながら倒れこむユニコーンに迫るグレイズアイン。

 

「……終わりだ、お前のガンプラを何にもならぬ屑に変え俺が……俺が決勝に進んでみせる……!!」

 

 事前に分離し背後から攻撃を狙うモビルワーカーを超反応で機関砲で叩き落とす。

 

「どうやらアレが最後の手段だったらしいな、これで……!」

 

 斧を構え振り下ろさんとするグレイズアイン。だが、しかし。

 

《NT-D》

 

 デストロイモードに変身したユニコーンがそれに掴みかかり、押し飛ばす。

 

「何? まだ動けるのか?」

 

「で……話は終わった?」

 

 なんと弾き飛ばされたはずの左腕を緑色の光で浮かせ、本体にくっ付ける。

 

「バカな、サイコフィールドだと?」

 

「これの名前知ってるの? サイコフィールドって言うんだ」

 

 背中のサーベルを抜くユニコーン。それに対し、バトルアックスを構えるグレイズアイン。サーベルによる突きを躱し右腕を斬り落とそうとするももう一本のサーベルを抜いたユニコーンに逆に左腕を落とされる。が、残った右腕によってユニコーンの左腕も捥がれる。そこからドリルキックを腹部に当てようとするグレイズアインだが、それを右手を引き換えに防ぐユニコーン。ビームサーベルが弾き飛ばされるが、そのまま素手で突っ込み押し出す。その衝撃で斧を落とすグレイズアイン、お互い素手になり互角の状態になる。その時サイコフレームが緑色に輝き出し……

 

「クランク顧問! 俺は、俺の信じる……」

 

 掴みかかろうとするグレイズアインの腹部にユニコーンガンダムマーズキングの貫手が突き刺さり、貫通する。それを受けたグレイズアインは倒れこみ……

 

《battle end》

 

 勝負は決した。

 

「……オルガ。俺勝ったよ」

 

「……ミカ……本当に勝てたんだな……」

 

 こうして激動の準決勝を勝ち抜いたオルガたちは、ついに決勝へ向かうこととなる。……世界大会は目前だった。

 

「……俺のグレイズが……」

 

「アイン……惜しかったな」

 

「……俺は」

 

 だが。まだ何かありそうだ。

 




「夏だから海に行こう」
「サービス回ってヤツ?」
「野郎ばかりの水着回とか何処に需要あんだよ!?」
次回『世界の実力』
「現実世界は冬?気にするんじゃねえよんなこと」


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第7話 世界の実力

「来るぞ昭弘!」

 

「分かってる!」

 

 前回の対グレイズアイン戦で激しく損傷した三日月のユニコーンガンダムマーズキングに代わり昭弘のソードカラミティガンダムリベイクが決勝戦に臨む。敵は大量のGビットを引き連れたガンダムダブルエックス風のクロスボーンガンダムX3。

 

「戦いは数だ。この数に勝てるわけがない」

 

 大量のGビットが放つビームを避けながらビームブーメランを取り出し投げるカラミティ。それは直角的な軌道を描きながら周りのGビットを次々と撃破した。

 

「……は?」

 

 その光景に呆気にとられる対戦相手。

 

「俺たちのガンプラは」

 

「伊達じゃねえ!」

 

 さらに次々とビームブーメランを投げつけ、Gビットを殲滅していく。そして近くにいるGビットは対艦刀で叩き斬る。

 

「ば、化け物か!?」

 

 呆然とするクロスボーンに接近したカラミティがそれを真っ二つに斬り裂き、勝負は決した。

 


 

「どうなってんだ白いガンプラが負けたぞ」

 

「……これは、あの、その」

 

「何にせよ、あの茶色のガンプラは脅威だな……」

 


 

 バスを貸し切り、高速道路を走る鉄華団。

 

「優勝の副賞が旅行とはな……」

 

「温泉だったか? こんな大人数で押しかけていいのかよ」

 

「いいらしいぜ、知らんけど」

 

 バスの席で黙々と新しいガンプラを作るオルガ。今回使用しているキットはガンダムマックスター……Gガンダムに登場するネオアメリカ代表のモビルファイターだ。

 

「おっオルガ! 今回は何作ってんだ?」

 

「……喜べ。次はシノのガンプラだ」

 

「へえ、俺の? カラーリングはピンクで頼むぜ」

 

「分かってる」

 

 そして……運転席に座っているのはドアン。

 

「悪いなドアンのおっさん。あんたに運転任せちまってよ」

 

「いいんだ。むしろ私も来て良かったのか?」

 

「……運転できるヤツが鉄華団にいないからな……ロックオンの兄貴は店番で忙しいし」

 


 

「見ろ。海だ」

 

 ビーチサイドを眺めるオルガたち。よく晴れており、絶好の海水浴日和と言えるだろう。

 

「……ねえ、泳がないの?」

 

「いや泳ぐわけねえだろ寒い」

 

 ……冬じゃなければ。冬は寒い、尋常じゃなく寒い。こんな日に海水浴に出れば普通に死ぬだろう。むしろなんで封鎖しない、シン、この馬鹿野郎。

 

「……旅館行こうか」

 

「あぁ……分かってる」

 


 

「ごめんくださーい」

 

 旅館に入るオルガたち鉄華団。そこに見覚えのある人影が駆けてくる。

 

「……ようこそおいでくださいました」

 

 そこに現れたのは和服姿の沙慈だった。

 

「……沙慈の兄貴? そんな格好で何を」

 

「僕だって知らないよ……優勝の副賞でここに来たらいつの間にかこんなことになってたんだ」

 

 そこに歩いてくる刹那ともう一人の女性。

 

「何をしている沙慈・クロスロード。しっかりと接客しろ」

 

「なんか面倒な事に巻き込まれちゃったね、沙慈……」

 

「ルイスは普通にしてていいよ。僕がやるから……刹那はもう少し遠慮というものを考えようか」

 


 

 オルガたちが旅館でくつろいでいると……突然轟音が響く。玄関からのようだ。そこへ向かうと……なんとそこには軽トラックが突っ込んでいた。

 

「……おいおい、冗談だろ?」

 

 そのトラックの中から現れる大男。

 

「すまない……ブレーキの効きが悪かったみたいだ。だがこれでは旅館は当分営業できないな……そろそろ俺たちに権利を売ってはくれないか?」

 

 その男はどうやら女将にこの旅館の権利を要求しているようだ。

 

「……典型的な地上げ屋だなぁ……」

 

 そんな中、オルガが彼らの前に立つ。

 

「……なんだお前は?」

 

「おい、バトルしろよ」

 

 そして突然決闘の申し込みに出る。

 

「お前が勝ったらこの旅館の権利をやる。だが俺が勝ったならこの旅館には二度と関わるな。それでいいよな、女将さん?」

 

「……えっ?」

 

「黙ってるってことはYESって事だな? やるぞ、ガンプラバトルだ! 刹那の兄貴、沙慈の兄貴も来てくれ!」

 

 強引にガンプラバトルの流れに持っていくオルガ。さらに刹那と沙慈も無理やりに巻き込む。

 


 

「ミカァ! やってくれるな?」

 

「いいよー。んじゃ、三日月・オーガス、ユニコーンガンダムマーズキング、出るよ」

 

「刹那・F・セイエイ、アルトライザー。目標を駆逐する」

 

 二体のガンプラが街に飛び出す。そんな二人に立ちはだかったのは……巨大なモビルアーマー。

 

「アプサラスか!」

 

「刹那、取り敢えずまずは第一形態で……」

 

「分かっている」

 

 アルトライザーがエクスキャノンからミサイルを放つ。それに被弾するアプサラスⅢだが、特に効いた様子はない。さらにアプサラスⅢは足を展開し地上に降り立つ。

 

「巨大な足が……」

 

 ビームマグナムを放つユニコーンだが、その光線は弾かれてしまう。

 

「Iフィールド……?」

 

「生半可なビームは通じないってことか!」

 

 圧倒的な火力の前に火の海と化すフィールド。それを避けながら都市を飛行する二人のガンプラだが……

 

「小賢しい」

 

 アプサラスⅢが謎のガスを放つ。それを浴びた二機は錆つき動きが止まってしまう。

 

「こ、このガスは!?」

 

 さらに襲いくるアッザムリーダー。その網にかかる二人。

 

「アッザムリーダーかよ!?」

 

「諦めろ、この灼熱地獄から逃れられたものは……!」

 

 ツノが折れ膝をつくユニコーン、だがしかしアルトライザーは……

 

「刹那! 第二形態!」

 

「分かっている」

 

 マントをパージしアッザムリーダーを弾き飛ばす。さらに各種ジョイントアームを展開し……第二形態へ変形する。

 

「撃つんだ、刹那!」

 

「了解。フルバースト!!」

 

 同時に放たれる大量の武装。反撃に放たれたアプサラスⅢのビームを物ともせず押し切り……破壊した。

 


 

「……今日は助けられちまったな」

 

「問題ない。お前こそよくあんな無茶な賭けが出来たな」

 

 こうして勝手に話を広げ、勝手に解決したオルガたち。旅館で身体を休ませ……ついに世界大会のメンバーが決まろうとしていた!




「ついに世界大会が近づいて来たぜ…!」
「俺様の流星号:TYPEAmericanも絶好調よ!」
「行こう。俺たちみんなで」
次回『交差する道』
「行くぞ沙慈・クロスロード」


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第8話 交差する道

 波打ち際のログハウスにて。

 

「僕がガンプラバトル選手権に出るだって?」

 

「そうですわ、キラ」

 

「……確かに僕も自信はあるけど今からそれ用のガンプラを仕上げたって間に合わないよ……ムウさんだって出場してるんだし僕なんか優勝出来るわけ……」

 

「大丈夫です。ガンプラはこちらで用意しましたわ」

 

「……なんでこういう時は用意周到なんだい? ラクス……」

 


 

 孤島の屋敷にて。

 

「お連れしました。挨拶しろ」

 

「ステラ。ステラ・ルーシェ」

 

「……で、俺はこの子の踏み台になれってのかい?」

 

「滅相も。それともう一人目をつけた者をスカウトしたのですが……まだ来ていない様子で」

 


 そして、アリアンロッド本社にて。

 

「……これが新しい私のガンプラか」

 

「その通り。アメイジンググリムゲルデ、気に入ってくれたか?」

 

「あぁ」

 

「そりゃあ良かった。……メイジンアグニカ」

 

 次々と世界大会に出場するであろうファイターたちがその芽を見せていた。そして……

 


 

「フォーエバーガンダム。確かに俺の最高傑作と言える機体だがまだ足りない」

 

「……今に見ていろ。全滅だ」

 


 

 一方その頃、部屋にこもり三体のガンプラを見直すオルガ。

 

「あいつら全員狂ってやがる。マクギリスのヤツのガンプラは確かにすげえ完成度だったが、それ以前にマクギリスの操縦技術がヤバい。そこまではいいんだ、常識的な範囲だ……だがあのアプサラスはなんだ? なんだあの足はふざけてるのか。狂ってやがる。それもそうだが沙慈の兄貴のアルトライザーも狂ってる。そもそもガンプラバトル大会に他のプラモ持ち込む時点で頭おかしいんだがあの狂ったように引っ付いたジョイントアーム、ありゃ完全に狂ってやがる。ダメだダメだダメだ。あんな狂人どものこと考えてたら俺も狂っちまう……」

 

 狂うという文字がゲシュタルト崩壊しそうなほど狂を連呼するオルガだが、彼が苦心しているのは確かなようだ。

 

「俺のガンプラはもっと常識的な範囲で強くなって常識的にあいつらをぶちのめしてやれるようなガンプラにするんだ。それまでは俺は止まれねえ。狂わない範囲であいつらに対抗する方法っつったら……こいつしかねえ」

 

 オルガが見据える先には新作のガンプラ、ガンダムマックスター改弐の姿があった。

 


 

 デビルガンダムの圧倒的な攻撃を躱しながら接近し、胴体を斬りつけ撃破するラゴゥ。

 

《trial battle end》

 

「……へえ。ラゴゥでデビルガンダムを……やるじゃないか」

 

「どうですか少佐。勝てそうですか?」

 

「……お前は結局どっちに期待してるんだ?」

 


 

「くらうがいい! 絶望蝶だ!」

 

 タキオンフェイズのエクストリームガンダムが月光蝶より強いという設定を持つ絶望蝶を撒き散らしながらビームアローを乱射し、目の前のフリーダムに挑みかかる。が、フリーダムはライフルを避け、逆にアローをビームで撃ち抜き爆発させた。

 

「何!?」

 

「やめてよね」

 

 それに怯み絶望蝶の放出を解除したエクストリームガンダムの左腕をビームサーベルで斬りとばす。

 

「本気でガンプラバトルしたら」

 

 さらに右腕、前足と次々と切断する。

 

「エクストリームガンダムが僕に勝てるわけないでしょ」

 

 さらに後ろ足二本、頭部を斬り裂き、ダルマになったエクストリームを小突いて吹き飛ばし、後方の岩肌に激突させた。

 

『……な、なんと!? 強豪ファイターのエクストラ選手をあっさりと撃破し今回初出場のキラ・ヤマト選手が勝……』

 

 勝利した、と思われたが……武装ユニットを脱ぎ捨てたエクストリームが岩をかき分け現れる。

 

「……僕はこれ以上戦いたくない」

 

「ならば降参すればどうだ?」

 

「でも僕には負けられない理由がある」

 

「ほざけ」

 

 ビームサーベルを抜き襲いくるエクストリーム。それに対しビームサーベルを投げ捨て腰にかけたガーベラストレートを抜くフリーダム。

 

「自由と邪道……その二つが合わされば」

 

 ビームサーベルを振るうエクストリームの下に回り込み、そのまま胴体を斬りつけ真っ二つにする。

 

「……新たな道が生まれる。これが僕たちの、フリーダムアストレイだ!」

 


 

 その頃。

 

「ナックルボンバー」

 

 アメイジンググレイズとアルトライザーを同時に吹き飛ばす謎のガンダムが放ったロケットパンチ。

 

「ダイナマイトキック」

 

 さらにその機体が放った飛び蹴りはガンバレルを背負ったターンXを貫通しその後ろにいたフリーダムアストレイをも貫く。

 

「バズーカシュート」

 

 まだまだその機体の活躍は終わらない。腕に装着されたバズーカで走行してきたガイアガンダムとソードカラミティガンダムリベイクをまとめて吹き飛ばす。

 

「ジーグブリーカー」

 

 そして襲いくるユニコーンガンダムマーズキングを抱きしめる形で締め付け、真っ二つにして破壊する。

 

《battle end》

 

「素晴らしいですよ大尉! 収集したトップファイターたちのデータを再現したAIに対してここまで圧倒するなんて!」

 

「……所詮データとはいえレベルが低すぎる。本番ではもっと強いファイターと戦えるんだろう?」

 

「さて……どうでしょう。大尉のお眼鏡に叶うファイターは……」

 

「いや。いるさ。そんな予感がする。俺と……俺のマグネットガンダムを楽しませてくれるファイターがな」

 

 かつてチャンプとして名を馳せたファイター、アムロ・レイ。その手には、緑色のガンプラが握られていた。

 

 




「ついに始まっちまったぞ…もう止められねえ!」
「トマラナイ!トマラナイ!トマラナイ!」
「止まるんじゃねえぞ…」
次回『開幕、世界大会』
「え?1話飛ばされた回がある?あんなもん再現できねえよ!」


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第9話 開幕!世界大会

「この野郎生意気な!」

 

 バルカンを放つグフイグナイテッド。だが地面を走るガイアガンダムを捉えることは出来ず、そのまま両断され爆散する。

 

「ハイネェェェェ!!!」

 

《battle end》

 

『なんと前大会でも高い成績を上げたハイネ選手が初出場の選手に敗れたァー!』

 

 声を張り上げ叫ぶ実況。このニュースは世界に駆け巡った……

 


 

 ガンプラ連合本部にも。

 

「へえ……あのハイネが負けたのか? やっぱりあの子は凄いな」

 


 

 プトレマイオスにも。

 

「しかも勝ったのは僕たちの同じくらいの女の子だなんて……」

 

「珍しいこともあるものだな、沙慈」

 


 

 何処かの穏やかな小屋にも。

 

「あの子……」

 

「どうしたのです?」

 

「いや、なんでもない。ちょっとシンに連絡を……」

 


 

 アリアンロッド本社にも。

 

「俺たちアリアンロッド情報部の情報収集能力を持ってしても、ガンプラ連合のファイターの詳細が分からない……」

 

「……面白くなってきたじゃないか」

 


 

 そして……

 

「本物はやはり違うな……俺のマグネットガンダムの相手にもなってくれそうだ」

 

 最強のチャンプの元にも。

 


 

「世界大会が……ついに始まっちまった……」

 

 車から降りるオルガたち。

 

「ここが滞在する選手村だよ。だが十日後には7割の選手がここを去る」

 

 ドアンの説明を聞き息を飲むオルガ。

 

「そんな身構えんなって! 俺たちなら余裕だぜ」

 

「……そうだよな……俺たちなら……俺たちのガンプラなら」

 


 

 別館にて……

 

「開催前のレセプションパーティ? とはなぁ……ま、楽しもうぜ!」

 

「落ち着け。そんな騒ぐようなパーティじゃない」

 

「……こいつら全員がガンプラファイター……」

 

 オルガとシノが大広間に入り、辺りを見回す。そんな事をしていると後ろから近づく人影が二つ。

 

「あ、オルガたちも来てたんだ。その様子からするに選手権用のガンプラ完成したんだね?」

 

「あぁ。沙慈の兄貴に刹那の兄貴」

 

「見ろ三人共。有名なガンプラファイターが見渡す限り大量にいるぞ。あそこにいるのはムウ・ラ・フラガ……トールギスのブースターとメビウスゼロのガンバレルを搭載したターンX、その名もストライカーXに乗るファイターだ」

 

 刹那がムウについて語っていると、ムウがオルガたちの方を向き話しかけてくる。

 

「よお、君がオルガ・イツカだな?」

 

「えっ? オルガってムウさんに名前覚えられてるの?」

 

「いや会ったことなんて……」

 

「三日月の奴は元気か? アイツ戦うの楽しみにしてるぜ」

 

「……ミカが? もしかしてミカが特訓してもらってた相手って……」

 

「そう、俺」

 

「なんか……すみません」

 

「いやいいんだ。俺も楽しかったしな」

 

 申し訳なさそうな顔で頭を下げるオルガ。それに対し優しい声をかけ微笑むムウ。

 


 

 一方その頃三日月と昭弘はショッピングモールで食事を楽しんでいた。

 

「おい、まだ食べるのか? 俺はいいけどよ」

 

「うん。これから長い間戦うんだから美味いもの食っておきたいじゃん」

 

 かりんとうの店へ向かう二人。

 

「かりんとう一つください」

 

「申し訳ありません。今日は売り切れなんですよ」

 

 目に見えて不満そうな顔をする三日月。

 

「おいおい……まだ美味いものはいっぱいあるんだからいいだろ」

 

「……そうだね」

 

 気を取り直して饅頭店へ向かうも……

 

「ここも売り切れ?」

 

「……一体どうなってんだ?」

 

 そこから離れ、次は肉まんの店へ向かう。

 

「あ、ここは残ってる」

 

 三日月がそれを注文しようとしたその時。

 

「肉まん一つください」「肉まんっていうの、ちょうだい……」

 

 隣に立っていた金髪の少女が、三日月とほぼ同時にそれを注文した。

 

「……」

 

 一触即発。睨み合う二人。困惑する昭弘。……三日月が何故か持っている拳銃を抜き金髪の少女、ステラに発砲する! がしかし、それを避けたステラが小銭を皿に置き肉まんを持ち逃げする。

 

「おつりはいらないから……」

 

 それに対し聞こえるように舌打ちする三日月。拳銃を二発放ち当たらないと見ればすぐさま追いかける。柵から乗り出し飛び降り、エスカレーターの手すりや看板を足場にし一階へ降りるステラに対し一階へ撃ち下ろす三日月。

 

「ステラァッ!」

 

 そこへ現れる不シン者。アサルトライフルを持ち出し三日月へ放つが、咄嗟に障害物に隠れた三日月には当たらない。なんでみんな銃なんか持ってるんだろうか。もちろんこの突然の銃撃戦に周りは大混乱である。

 

「シン! ショッピングモールで銃なんか撃つなこの馬鹿野郎!」

 

「いでぇ!?」

 

 だがシンは突然現れたアスランに殴られ退場! その隙に同様に飛び降りた三日月がステラを追う。そして……そこに一人残された昭弘。

 

「……俺に……俺にどうしろっていうんだ……」

 


 

 翌日。ついに世界大会が始まった。

 

『これより第2回、ガンプラバトル選手権世界大会を開始します。第一ピリオドは四人のファイターによる勝ち抜き戦で、一位には4ポイントが、二位には2ポイントが与えられます』

 

 早速始まる激しい戦い。第一試合は砂漠戦、アッシマーとジンクスⅣが激しい空中戦を繰り広げる。

 

「不死身のコーラサワー! 只今参上!」

 

 ビームライフルを乱射しながらアッシマーに近づくジンクスⅣだが、そのビームを全て躱され、逆に自らのビームライフルを撃ち抜かれる。

 

「何!? 俺のビームライフルが!?」

 

「甘いなぁ!」

 

 さらにそれで怯んだところに胴体にビームが直撃。ジンクスⅣは爆散した。

 

「そんなのってありかよ!?」

 

 そんな中変形し砂漠に降り立つレイダーガンダム。それに襲いかかるはブルーディスティニー2号機。

 

「連合のレイダー! このジオンの騎士たる……」

 

「そりゃあああああっ! 滅殺!」

 

 2号機が口上を述べている間に右腕のハンマー、ミョルニルを叫びながら放つレイダーガンダム。2号機はそれを避け、EXAMを発動しながらミサイルを放つ。レイダーはそれを空中に飛び上がり避け、ミョルニルを振うがそれを2号機はシールドで防ぎ、マシンガンを投げ捨てながらサーベルを引き抜く。EXAMの高機動で斬りかかり、連続で攻撃するもそれを全て躱したレイダーは空中に浮かび上がりそこからミョルニルを放ち2号機を粉砕した。

 

「バカな……この私のEXAMが……!」

 

 2号機を撃破したレイダーの元へアッシマーが飛来する。お互いにMA形態に変形し空中戦が始まる。アッシマーのビームをバク宙で躱したレイダーが連続でビームを放ちアッシマーの左腕を破壊する。それに対しMS形態に変形しビームライフルを構え反撃しようとしたアッシマーだがライフルを構えた右腕も撃ち抜かれ、体制を崩したところにミョルニルが直撃。アッシマーはあえなく撃墜された。

 

『第一試合勝者、クロト・ブエル。4ポイントを獲得しました。第一試合二位はブラン・ブルターク。2ポイントを獲得しました』

 

 続いて第二試合は森での戦いなのだが……それ以上に異常なことが起こっていた。

 

「ゲッタァビィィィム!!!」

 

 空に浮かび上がり腹部から放つビームで森を焼き払う……どう見てもガンプラではない、というかどう見てもゲッター1。それを受け森から飛び上がったのは……どう見てもレイズナー。

 

「V-MAX始動!」

 

 レイズナーはV-MAXを発動し蒼いオーラを身に纏う。そのままゲッター1に襲いかかり、体当たりで粉砕した。と、そんなレイズナーの元へ飛んでくるのは白い戦闘機。バルキリーだ! ……まるでスパロボである。弾を撒き散らしながら空を舞う二機。だがしかし。

 

「全ミサイル照準! グレンキャノンもだ、行けぇ!」

 

 突如飛んできた大量のミサイルと細いビームに巻き込まれ二機は爆散する。

 

『第三試合、勝者ユウキ・コスモ!』

 

 そして攻撃を放ったのは……どう見てもイデオンのガンプラ? だった。

 

 そんな中第六試合では、スタービルドストライク、ビギニング30、ダブルオースカイが凌ぎを削っていた。ビギニング30の放つ濁流がスタービルドストライクとダブルオースカイのライフルを破壊するが、お互いサーベルを抜く。が、そんな三つ巴の戦いに月光蝶を発動したターンXが乱入し、三機のガンプラを全て砂塵に返し勝利した。

 

『第六試合、勝者ムウ・ラ・フラガ! 只今より第七試合を開始します』

 

「ついに出てくるのか……ガンプラ連合の虎の子、ステラ・ルーシェが……」

 

 宇宙戦。

 

「ここは一時休戦だ! 二人であの化け物を……!」

 

 ガンダムスローネツヴァイとビルゴがデストロイガンダムに襲いかかる。が、当然のように蹴散らされ撃墜された。

 

「デストロイガンダム……予選のガイアガンダムとは違う機体を用意して来たのか……なんだっていいさ。突貫します!」

 

 続いて現れたのはデンドロビウム。前回の大会で大暴れしたデンドロビウムと同じビルダーのモノだ。デストロイから放たれる大量のビームを躱し、Iフィールドで弾きながらコンテナを開き、中からマイクロミサイルコンテナを射出しミサイルをばら撒く。それに被弾するデストロイだが特にダメージを受けた様子はなく戦闘を続行する。デストロイガンダムもミサイルを放つもデンドロビウムはそれを避け、メガビーム砲で反撃する。だがデストロイも陽電子リフレクターでそれを防ぎ、負けじと胸部のスーパースキュラで攻撃するもIフィールドでまっすぐ突っ切ったデンドロビウムとの放つ爆導索を受けデストロイは轟沈した。

 

『第七試合、勝者コウ・ウラキ! 第2位はステラ・ルーシェ。それぞれ4ポイント、2ポイント獲得です』

 

「……今大会のダークホースと呼ばれたステラをこうもあっさりと撃破するウラキも脅威だが、そのウラキがここまで苦戦するのも今大会が始まって初めてのことだ……どちらも脅威になりうる」

 

『第十三試合を開始します』

 

 会場に駆けつけるオルガたち。

 

「やるぜシノ。ぶっつけ本番だけどいいよな?」

 

「オッケー! ノルバ・シノ、流星号TYPE・American! 行くぜ!!」

 

「……そいつの名前はガンダムマックスター改弐なんだが……」

 

「細かいことは気にすんな! 俺の考えた名前の方がセンスあるだろ!?」

 

 宇宙空間に飛び出すマックスター。放たれるミサイルを身体を捻りながら躱し、ボクサーモードへ変形する。

 

「喰らいな! こいつが俺の……サイクロンパンチよぉ!」

 

 マックスターがコークスクリューパンチを放てば、そこからは竜巻が発生し、襲いかかるミサイルを吹き飛ばす。さらに背後からビームが撃たれるも、それをなんと腕部のグラブで吸収する。

 

「ビームを吸収した!?」

 

「だったら俺のバスターガンダムで……」

 

 強力なビームライフルを放つバスターガンダムだが、そのビームでさえもマックスターはグラブで吸収してしまう。

 

「ミサイルならば!」

 

 変形したフラッグがミサイルを放ちながらマックスターに近づくも、バーニングパンチで迎撃され爆散する。マックスターへ斬りかかろうとするサーペントカスタムだが、背後からマックスターを狙い放たれたバスターのビームに巻き込まれ爆散。そのビームをマシンガンパンチで相殺するマックスター。

 

「グゥレイトォ!!」

 

 ミサイルを放つバスター、ノーマルモードに変形し直しギガンティックマグナムを抜きそのミサイルを迎撃するマックスター。そしてそれを投げ捨て再びボクサーモードへ。

 

「オルガ! チャージは!?」

 

「満タンだ! フルパワーで行けるぞ!」

 

「よっしゃあ!」

 

 グラブに収束されたビームを解放し、グラブが燃え上がる。激しい光がマックスターを包み、そして振りかぶり拳を振り抜く。するとその光が線となり収束、激しい炎と化しバスターに襲いかかる。それを受けたバスターは熱で武装を爆発させながら炎に飲まれていき、撃墜された。

 

『第十三試合、勝者オルガ・イツカ率いるチーム鉄華団』

 

 オルガたちの勝利を示すアナウンスが響く。そしてオルガとシノは……お互いの手を叩いた。

 


 

「オルガ! 凄いじゃないかあのガンプラ!」

 

「沙慈の兄貴……」

 

 試合を終えた鉄華団の四人は沙慈、刹那、ムウに迎えられた。

 

「……次の試合からはついにアリアンロッドのワークスチームのお出ましだな……」

 

「アリアンロッド……ガンプラバトルシステムを作ってる会社か」

 

「その通り。つまりガンプラバトルを知り尽くしたチームってわけだな。……そしてそのガンプラを操るのは……メイジン・アグニカ……」

 

 見上げるモニターに映るメイジンアグニカ。その姿は、オルガたちにとって見覚えがある姿だった……

 

「マクギリス……!」




「第二ピリオドは全員参加でバトルロイヤルだって!?」
「面白くなって来たじゃねえかよ!」
「絶対生き残ってみせるよ、オルガ」
次回『バトルグラウンド』
「このガンプラは……!?」


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第10話 バトルグラウンド

 

 唖然とするオルガ。

 

「……なんで……なんで負けたはずのマクギリスが……!」

 

 その目線の先にいるのは……メイジン・アグニカ。

 


 

「アメイジンググリムゲルデ。アリアンロッド技術部が持てる技術の全てをつぎ込んで完成した最高傑作だ。その初陣に相応しい戦果を期待しているぞ」

 

「期待だと? そんなものは必要ない。最強の英雄たるアグニカにとって勝利とは必要最小限の絶対条件だ」

 

 マクギリス……いや、アグニカの駆るアメイジンググリムゲルデが雪原へ飛び出す。それに対しブルーディスティニー1号機がEXAMを発動させながら近付く。

 

「ワークスチームか……だが、相手にとって不足はない!」

 

 ミサイルを放つ1号機。それを躱すグリムゲルデ、さらに横っ飛びで滑りながらライフルを放ち攻撃する。それをシールドで防ぎながらマシンガンを放つ1号機、被弾したグリムゲルデからカンカンと小気味好いが鳴るが通用した様子は見えない。

 

「ならば……!」

 

 マシンガンを投げ捨てサーベルを引き抜く1号機。それに対し答えるように自らもライフルを捨てヴァルキュリアブレードを展開するグリムゲルデ。接近すると同時に放たれる1号機のミサイルを腕部に追加搭載した小型ミサイルで迎撃するグリムゲルデ、ついに二機は肉薄する。ナノラミネートを塗装した剣とビームサーベルが弾き合い鍔迫り合いになる。お互いに距離を取り再び仕切り直しとなり、空中へ飛び上がる。空中でぶつかり合いながら剣を打ち合い弾き合う。二人のバトルに巻き込まれ、あたふたしたまま二人の放つミサイルの流れ弾に被弾し爆散するティエレン。お互いに激戦を繰り広げるグリムゲルデと1号機だが、1号機の背後から突如現れたAGE-1タイタスに1号機は殴り飛ばされダウン。特に動揺した様子も見せずタイタスに斬りかかるグリムゲルデ、突きを躱し回り込まれるもそこから放たれる剣も片腕で受け止める。殴り返して勝負を決めようとするタイタスだが突如グリムゲルデの腰部から飛び出してきた隠し腕がビームサーベルを取り出し、タイタスを横に斬り裂き撃破した。

 

《battle end》

 

「アレが……アグニカの戦いか……」

 


 

 第一ピリオド終了後、ホテルにて。

 

「アイツはどう見てもマクギリス・ファリド……俺とミカが初めて負けた相手だ」

 

「……うん」

 

「しかもアリアンロッドワークスチームのファイターと来たもんだ。ガンプラバトルを知り尽くしたチームが作った機体で尚且つパイロットはあのマクギリス。はっきり言って強敵だ」

 

「……だが俺たちは勝つ。勝つ以外に道はねえ」

 


 

「マクギリス。主催者からリークされた情報によると次のピリオドの種目はバトルグラウンドだそうだ」

 

「……バトルグラウンド……参加者全員でバトルロイヤルをするルールか。面白い」

 

「お前はアリアンロッドのファイターたちの見本なんだ。しっかりしてくれよ」

 

「あぁ。アグニカが目指すのは元より勝利のみだ」

 

「頼もしいな」

 


 

『長らくお待たせしました。世界大会、第二ピリオドの競技内容について説明します。第二ピリオドは、この巨大フィールドを使用し、全ファイター90名によるバトルロイヤルを行います。三分の一の機体が残った時点で終了となり、生還したファイターにはそれぞれ4ポイントが与えられます。それでは、第二ピリオドを開始します』

 

「それじゃユニコーンガンダムマーズキング、三日月・オーガス。出るよ」

 

 宇宙空間に飛び出すユニコーンガンダムマーズキング。

 

「とにかく目に付いたヤツ全員潰せばいいんだよね?」

 

「確かにその通りだが、敵は強豪揃いだ。気をつけろ、ミカ」

 

 と、その隣にアルトライザーが並走して飛ぶ。

 

「そうだ。この戦いに一機で挑むのは危険だ、ここは一度協力しないか?」

 

「刹那の兄貴……確かにそうだな」

 

「来るよ!」

 

 と! そこで沙慈の号令が飛ぶ。それとほぼ同時に飛来したビームを躱す二機。

 

「あ、あのガンプラは……」

 

「イデジム! 操縦ファイターは……ユウキ・コスモ!」

 

 そこに浮かんでいたのは、どう見てもガンプラではない異物。赤いボディと巨大な肩、そしてジムⅢに酷似した頭部を持った、伝説の巨神だった。

 

「グレンキャノンを有効に使わせろ!」

 

 イデオンの腹部が開き、そこからビームが放たれる。それを躱しながら突っ込むユニコーン。

 

「ミカ!? やるのか!?」

 

「あぁ。ここでやらなきゃダメだ」

 

 イデオンのパンチをシールドに受け、後退して距離を取る。それに対し腹部のビーム砲、グレンキャノンを放つイデオン。が、ユニコーンはそれをサイコフレームを解放したシールドで防ぎ吸収する。

 

「そうか、そのシールドはあのマックスターのグラブと同じ機能を持ってるのか……だけど!」

 

 ビームを吸収したユニコーンの頭上から大量のミサイルが飛来する。それをなんとか防ぐユニコーンだが、ビームと違い吸収できず吹き飛ばされる。

 

「こっちの弱点にもう気付いたか……!」

 

 背中にマウントしたシールドを飛ばし、シールドファンネルとして使用してミサイルを防ぐユニコーン。

 

「三日月!」

 

 チェーンソー付きのダブルバルカンをイデオンに放つアルトライザー、だがそれを躱され、グレンキャノンによる反撃でマントを剥がされ吹き飛ばされる。

 

「刹那! マントが!」

 

「分かっている、第二形態に移行する!」

 

 アルトライザーが怯んでいる内にユニコーンへミサイルを放つイデオン、シールドファンネル二枚をあっさりと破壊しユニコーンガンダム本体を追撃する。それを受け大気圏へ落下するユニコーン。

 

「くっ、三日月がやられた? ならば……!」

 

 第二形態の肩部に装着された大口径ビーム砲でイデオンを怯ませ落下するユニコーンを追うアルトライザー。

 

「……深追いは……禁物か」

 


 

 その頃、地上では……空を舞う量産型ガンキャノンがEz-8のビームライフルで撃ち落とされる。

 

「よし! 上手くいった!」

 

 そんなEz-8の元にストライクダガーが三機の編隊を組んでやってくるが、放つビームをシールドで防がれ、Ez-8の三連続射撃で綺麗に三機とも撃墜された。が、そんなEz-8も背後から現れたリーオーに右腕を切断され、そのまま首も刈り取られダウンした。そんな中街中を疾走するアメイジンググリムゲルデの前に三機のドムが現れる。

 

「オルテガマッシュ! モビルスーツにジェットストリームアタックをかけるぞ!」

 

 が、グリムゲルデが取り出したビームサブマシンガンに反応する暇もなく三機とも蜂の巣にされ爆散した。

 


 

 その頃、宇宙では……暴れまわるデストロイガンダムに対抗すべく四人のチームを組んで挑むファイターたちだが、あっさりと迎撃され爆散する。その中の一機のヘビーアームズがフルバーストでそのデストロイを撃破しようとするもその全てが通用しない。

 

「つ、強すぎる……!」

 

 が、そのヘビーアームズの横を通り抜けるようにヘビーアームズカスタムが現れる。

 

「お前はその機体の真価を引き出せていない」

 

「な、なんだお前は!?」

 

「……トロワとでも名乗っておこう」

 


 

 その頃荒野では……

 

「まずは優勝候補の一角、ムウ・ラ・フラガを崩すんだ!」

 

 大量の機体がターンXに襲い掛かる。だが、ターンXはその攻撃をことごとく躱す。

 

「で? お前らはそれを現実に出来るわけ? 出来ないよなぁ? ほら行くぜ、月光蝶である!」

 

 月光蝶を放出するターンX。10機以上の機体がその翼に巻き込まれ消えて行く。

 

「げ、月光蝶ォ!? ば、化け物か!?」

 

 号令を掛けていた男が情けない声を上げる。その男が乗っていたザウートもドーバーガンに撃ち抜かれ爆散した。月光蝶の放出を解除したターンXだが、そこに曲がるビームが襲い掛かる。

 

「曲がるビーム!? まさか……」

 

「見つけたぜぇ!? 殲滅!」

 

 と、そこに気を取られている間に背後から鉄球が飛来しバックパックが破損する。

 

「何!? ナノマシン散布ベーンが!?」

 

 そして鉄球を放ったのは……レイダーガンダム。

 

「チッ、その空飛ぶ砲台はぶっ壊せなかったかよ。だがあのインチキ兵器は封じたよぉ!?」

 

「こ、こいつら……!」

 

 と、そこにさらに二発のビームが飛来する。

 

「うっせーぞ、お前ら。後は俺が仕留める!」

 

 それを放ったのは……カラミティガンダム。

 

「ハァ? 後から出てきてトドメ貰おうったってそうは行かねえぞオルガ!」

 

「どっちもウザい。ちょっと黙ってて」

 

 さらに後から現れるはフォビドゥンガンダム。

 

「こいつら……チーム・悪の三兵器か!」

 

「よく分かってんじゃねえかよ! そこまで分かってんならさっさと死んじまえってんだ!」

 

 レイダーガンダムに飛び乗るカラミティガンダム。バズーカでターンXのドーバーガンを破壊し、さらにレイダーの頭部ビーム砲ツォーンで胴体を攻撃する。怯むターンXに、フォビドゥンのビームが襲い掛かる。溶断破砕マニュピレータでそれを弾くターンXだが、さらに背後から迫るカラミティの三発のビームには対応できず被弾する。

 

「こいつら、なんて強さだ!?」

 

 さらにカラミティはレイダーから飛び降り、レイダーはMS形態に変形。ガンダムハンマータイプの武器であるミョルニルを投げつける。

 

「そりゃあああっ! 滅殺!」

 

 それを躱すターンXだが続いて迫るフォビドゥンに左腕を切断される。

 

「何!?」

 

「フッ……」

 

「なんてな」

 

 が、切断された左腕を飛行させ、再びくっ付ける。

 

「バラバラになるのはこいつの得意分野なんでね!」

 

「抹殺!!」

 

「は、されねえぞ!」

 

 再び呪詛のような二文字熟語を放ちながらミョルニルを投げつけるレイダー、それをバラバラになることで回避するターンX。

 

「なんだそりゃあ!?」

 

 再び合体したターンXがレイダーを蹴り飛ばすが、それとほぼ同時に地上から放たれるカラミティのビームにターンXも被弾する。

 

「こいつら……強いぞ!」

 


 

 その頃大気圏内へ落下するユニコーンガンダムマーズキングは……

 

「ミカ! 機体の損傷は少ない、まだ行けるぞ!」

 

「……だけどシールドファンネルは二枚なくなっちゃったし、良い状態とは言えないでしょ」

 

「ミカはストイックだな……それでこそだ」

 

 荒野へ落下するユニコーン。そして……

 

「あれは……ムウさんのターンX!」

 


 

「テメエエエエ! 撃滅!!」

 

 三機のガンダムに追い詰められるターンX。

 

「くっ、さすがにこりゃキツイって……!」

 

 ミョルニルを受け怯むターンXにカラミティのビームが迫る。だが……そのビームは上空から飛んできたもう一つのビームに相殺された。さらに同じ方向からレイダーに向かいもう一発放たれる。それをなんとか躱すレイダー、さらにもう一発飛んでくるもフォビドゥンはそれをシールドで曲げる。

 

「なんだ!? 上からか!?」

 

 上空から現れたのは……ユニコーンガンダムマーズキング。

 

「三日月!? 何やってんだ、俺が負けた方が後々楽になるのによ!」

 

「……あんたとは一対一でやってみたい」

 

「……相変わらず頑固なやつ」

 

 と、上空から舞い降りたユニコーンに接近するレイダー。

 

「なんだか知らねえが、お前も瞬殺!」

 

 そして、ミョルニルを振るった。

 


 

「……どうだ、ガエリオ。マクギリスの様子は」

 

「ラスタル会長。実力差がありすぎるようで、マクギリスのヤツに挑む奴はほとんどいませんよ」

 

「なるほど。ジュリエッタ、お前が次期代表ファイターなワケだが……この戦いは参考になりそうか?」

 

「いえ。一部の戦い以外低レベルすぎて参考になりません」

 

「……そうか。ところで、このファイターは?」

 

 モニターに映された三日月を指差すラスタル。

 

「……三日月・オーガス。チーム鉄華団のエースです」

 

「ほう……鉄華団、か。面白くなってきたじゃないか」

 


 

 戦いを続ける悪の三兵器と鉄華団、ムウのチーム。レイダーに追い詰められるユニコーンガンダム、怯んだところに必殺のツォーンが直撃する……はずだった。そのビームを弾くもう一つのビーム。

 

「あぁ!? またかよ!?」

 

 レイダーのファイター、クロトが空を見上げると……そこにはアルトライザーがいた。

 

「間に合った……大丈夫か、三日月、オルガ!」

 

「せ、刹那の兄貴! 助けに来てくれたのか!」

 

 こうして三対三となり、激しい戦いがまた始まる……と思われたところで巨大な地響きが鳴る。

 

「……何? 何か来る?」

 

 全員が戦闘を止め、そちらの方を見る。……そこには、巨大なザクがいた。

 

「こ、これは……メガサイズのザクだと!?」




「な、なんだあのデカブツは!?」
「こうなったらアレを使うしかない……」
次回『巨大な敵』




「考えなくても分かる」

「これが俺のあるべき姿」


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第11話 巨大な敵

 

「私としたことが、目覚まし時計をセットし忘れるとは……寝坊だ寝坊……まだオルガたちは脱落していないだろうか?」

 

 急いで観客席へ駆け込むドアン。だがそこで彼が見たものは……

 

「何!? あの巨大なガンプラは……メガサイズモデルのザクか!」

 

 あまりにも巨大なザクⅡのガンプラの姿だった。

 


 

「オルガ、あのデカイのは?」

 

「1/48メガサイズモデルのザクだ、手強いぞ!」

 

 身構える周りのガンプラたち。ゆっくりとマシンガンに手をかけ引き金を引くザク。例え通常は威力の低いザクマシンガンであってもこのサイズでは脅威以外の何物でもなかった。一発一発が恐ろしい威力を誇るマシンガンを躱すユニコーン、だがアルトライザーは大量のジョイントパーツのほとんどを破壊されてしまう。

 

「ジョイントがほとんどやられた!?」

 

「アームがやられたなら第三、第四形態にはなれない、この二つすっ飛ばして第五形態になるよ!」

 

「了解」

 

 破壊されたアームパーツを収束し巨大なライフルとして一体化させるアルトライザー。シンプルな状態で巨大なライフルを持ったこの姿こそアルトライザー第五形態であった。……そしてメガサイズのザクは、排出される薬莢さえ脅威になる。降り注ぐ薬莢を避けるために飛び上がるターンX。それを見たザクは脚部のミサイルポッドからそれぞれ三発、合計六発のミサイルを放つ。

 

「おいおい、嘘だろ!?」

 


 

 その頃それを観戦するアリアンロッドの三人は……

 

「CPU戦用のメガサイズザクが動き出した? 何故だ?」

 

「さあ……俺にも原因は分かりません。考えられる可能性としては何者かがシステムのハッキングを……取り敢えずバトルを中止して原因を」

 

「いや、いい。……良い余興になるだろう、突如現れた強敵というのも……」

 

「……」

 


 

 その頃大惨事と化した荒野。

 

「なんだか知らねえが……お前も瞬殺!」

 

 メガサイズザク相手に互角に立ち回るレイダーガンダムだが、ザクに目立った損傷は見られない。

 

「くそっ、なんて硬さだよ!」

 

 ザクが巨大なザクマシンガンを放つたびに周りのガンプラがゴミクズになっていく。ティターンズカラーのガンダムmark-Ⅱがマシンガンを避け、反撃にバズーカを放つも全く通用せず、巨大な手で払われ爆散する。アッシマーとAGE-1タイタスが先頭に立ち大量の機体がメガサイズザクに立ち向かうも、Sマインでその全てが返り討ちにされる。Sマインは対人用兵装だが、このサイズで使えばMSをもあっさりと破壊可能だ。

 

「なんてパワーだよ、こいつ!」

 

 と、そこで空から降下するもう一つの影。

 

「……アレは」

 

 ある程度近づいて来たところで、それがとんでもない大きさだということが理解できた。そう、これは……

 

「デストロイガンダム!」

 

 そう、先ほどまで宇宙で戦闘していたデストロイガンダムが地上へ降り立ったのだ。メガサイズザクとデストロイガンダム、巨大な二機がお互い睨み合う。それを追ってヘビーアームズカスタムも地上へ落下、降り立つ。

 

「なんだよこりゃ……怪獣大戦争かよ」

 


 

「アレは一体……? フリーダムアストレイであそこに飛び込むのは無理かな……」

 

 遠くからそれを見上げるキラ。できるだけ離れようと移動を始めるも……その前に黒い影が立ちはだかる。それは黒く光り、その手には巨大な斧を持った……

 

「こいつは……!?」

 


 

 巨大機体同士がぶつかり合う荒野、その流れ弾に当たり脱落していく一般ファイターたち。

 

「オルガ、どっちを叩けばいい?」

 

「取り敢えず……ザクを叩く!」

 

 デストロイに加勢しザクを倒そうとする二人だが……そのザクの頭部に黒いガンプラが飛び乗り、手に持った斧でその頭を滅多打ちにし粉砕。それを受けたザクは、激しく砂埃をあげながら倒れ込んだ。

 

「何? ……マクギリスの次はお前かよ」

 

 爆発炎上するザクの残骸の中で佇むガンプラは……グレイズアイン。かつて予選でオルガたちが倒したはずの、黒い機体だった。

 

「な、なんでこいつが此処に? 予選で脱落したはずじゃ」

 

 戸惑いを隠しきれないオルガたちだが、グレイズアインの行動は続く。手に持った斧をデストロイに投げつけ、頭部に直撃させる。同じように倒れこむデストロイ。一方フリーダムアストレイが隠れていた森では……奇襲を受け頭部を潰されたフリーダムアストレイの残骸が残っていた。ブーメランのようにグレイズアインの元へ帰ってくる斧。

 

「化け物かよ……あの二機を一瞬で」

 

「チィッ!」

 

 ガンバレルを解放しながら溶断破砕マニュピレータを開くターンX。だが、その直後にグレイズアインに急接近され……反応できぬままドリルキックを受けたターンXは勢いよく吹き飛び、荒野を滑りながら見えないほどの距離へ飛んで行った。

 

「……沙慈! トランザムは!?」

 

「使えるけど、まさかあいつと戦うつもり!?」

 

「そのまさかだ!」

 

 トランザムを発動しながらチェーンソーを取り出しグレイズアインに迫るアルトライザーだが、一瞬で背後に回り込まれ、振り向いた瞬間に膝蹴りを受け怯んだところにバトルアックスが振り下ろされる。首を落とされダウンするアルトライザー。

 

「……嘘ぉ」

 

 あまりにも情けない声を出すオルガ。だがオルガが唖然としてる間にもグレイズアインの虐殺は続く。取り敢えず目に付いた悪の三兵器を吹き飛ばし、突如現れたデスティニーガンダムのアロンダイトを片手で受け止め投げ飛ばす。

 

「オルガ!」

 

「あぁ、ミカ。なんであいつがあんなに強くなってるかは知らねえが、さすがにビームマグナムをフルパワーでぶつければくたばるはずだ、絶対に当ててくれ!」

 

「分かってる」

 

 フルパワーでビームマグナムを放つユニコーン。それに反応し振り向くグレイズアインだが、さすがに避けれず直撃する。巻き起こる砂埃。

 

「やったか!?」

 

 が、グレイズアインは無傷でその煙の中から現れる。

 

「さすがに硬すぎる……なんだこの化け物は……」

 

「……またお前らか。チーム鉄華団……!!」

 

 そしてその黒い機体から怒りに震えた声が放たれる。

 

「あの時も、あの時もあの時もあの時も! 俺の前に立ちはだかったのはお前たちだった!」

 

「……こっちとしてもあんたは面倒だけどね」

 

「だが、その因縁も此処で終わりだ!」

 

「あんたが俺に一度でも勝ったことあったっけ。てかなんでここにいんの? 予選で負けたでしょ」

 

「口の減らないヤツだ!」

 

 バトルアックスを構えこちらは迫るグレイズアイン。

 

「ミカ、NT-D状態でディスチャージを使えばあの化け物も仕留められるはずだ……やれるな?」

 

「オルガがやれってんならね」

 

 デストロイモードに変形するユニコーン。さらにビームを吸収したシールドをビームマグナムに接続する。迫るグレイズアイン。

 

「……粒子出力100%、撃てるぞ!」

 

 ビームマグナムから放たれる真紅の光線。それがゲートを通り抜け拡散、強化される。

 

「な、何!? そのビームは!? ……ば、化け物共め……!」

 

 驚きの声を上げながら撃ち抜かれていくグレイズアイン。吹き飛ばされながら爆発し、炎を巻き上げる。

 

「やったぜ……!」

 

 晴れる煙。……そこには、両腕と頭部を失ったものの未だに立ち続けるグレイズアインの姿があった。

 

「何? ディスチャージでも仕留めきれなかったのか!?」

 

「よくも……俺のガンプラを……クランク顧問から譲り受けた俺のガンプラをここまで……!」

 

 迫るグレイズアイン。エネルギーを使い果たし動けないユニコーン。

 

「終わった……か」

 

 諦めかけたその時。そのグレイズアインが金縛りに合う。

 

「な、これは……ブラディ・シージ!?」

 

「ご名答」

 

 その周りには、吹き飛ばされたはずのターンXのパーツが浮かんでいた。

 

「よくもさっきはメチャクチャにしてくれたなぁ?」

 

「仕留めきれていなかったのか? そんなバカな……!!」

 

 そのターンXがグレイズアインにトドメを刺そうとした瞬間……試合が終了した。どうやら規定人数に到達したようだ。

 

「あらぁ……もうちょっとでこの化け物を倒せたのによぉ……」

 

 ちなみに試合終了後に表示されたグレイズアインのキルスコアは1……詰めが甘く、メガサイズザク以外のガンプラは一機も倒せていなかったらしい。

 


 

 試合終了後……

 

「負けた負けた……あのグレイズには完敗だ……俺たちだけじゃねえ、周りには大勢いたのにその全員が勝てないどころか圧倒されて……刹那の兄貴やムウさんも真っ向からじゃ勝てなかった……あの時ムウさんが入って来なけりゃ俺たちは……」

 

「……オルガ。こんなもんじゃないんだろ?」

 

「あぁ。決勝トーナメントまでにはあいつにも勝てるくらいのガンプラを……!」

 


 

「僕が作って、刹那が乗ったアルトライザーなら完璧だと思っていたのに……あいつにはボロ負けだよ」

 

「……時期が悪かった。あの時ははっきり言って戦闘力の低い第五形態でなおかつライフルが使えない状況だった」

 

「第六形態以降を早く完成させないと、またあいつと当たった時に今度こそ……」

 


 

「ステラ、どうなんだ?」

 

「……デストロイは壊れちゃったけど、ガイアは無事……だからまだ戦えるから……気にしないで」

 

「そういう問題じゃない。……あのグレイズ……こっちを追撃してきたら危なかったな」

 


 

「奇襲だったとはいえフリーダムアストレイが一瞬で……あのガンプラは強いよ」

 

「……大丈夫です。新しいガンプラもファクトリーが作っていますわ」

 

「……そんな大掛かりに作るものだったっけ?」

 


 

 各ファイターがグレイズアインについて思案する中、アリアンロッドのマクギリスとガエリオも……

 

「ガエリオ……あのガンプラは」

 

「……アレを使っているのはアインだ。それ以外何も分からない」

 

「アイン・ダルトン……まさか彼が」

 

 それを聞いたマクギリスは、少し口角を釣り上げた。

 




「強敵、ユウキ・コスモとの対戦だ!」
「なにこの武器」
「……さあ?」
次回『バトルウェポン』
「世界の壁はでっけえなぁ……」


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第12話 バトルウェポン

「ミカ? どうしたんだその腕の怪我」

 

「あぁ、これね……」

 


 

 話は昨夜、コンビニまで遡る。

 

「……あ」

 

 三日月は、またステラと鉢合わせしていた。

 

「……えっと、なんていうかこの前はごめんね……」

 

「いいよ、気にしてないし」

 

「……一応肉まん買ったから、食べる?」

 

 三日月に袋を投げ渡すステラ。

 

「……いや、いいよ」

 

「えっ、どうして?」

 

「冷めてるじゃん、これ」

 

「……ごめん、いつ来るか分からなかったから……」

 

「……もしかしてあの時のお詫びの為だけに俺のこと待ってたの?」

 

「うん。私お金はいっぱいもらってるから……」

 

「大丈夫だよ。俺自分で買うし」

 

 と、そのような会話を交わしていると……三人のチンピラがそこを通りかかる。

 

「ヒューヒュー、アツアツだねぇ……」

 

「すぐ冷めそうでもあるけどなぁ!」

 

「……何言ってんの? 俺たちがそんな風に見える?」

 

「……んだその言い方は?」

 

 が、三日月の一言で危険な雰囲気へと突入。チンピラの中の一人が金属バットを取り出し三日月へ殴りかかる。……が、そのバットは片手で受け止められ……

 

「へえ……喧嘩? 俺は嫌だね」

 

 と、そんなところで。

 

「ステラぁぁぁぁっ!!!」

 

 走り寄って来たシンが三人のチンピラを約3秒で全員殴り飛ばした。

 

「何やってんだステラ、危険じゃないか! それにそいつと絡んで……また撃たれちゃったらどうすんだよ!」

 

「でも、謝らないとダメだって……」

 

「……確かに、そうだけど……とにかく、危険だからもう部屋に帰ろう……」

 

 去っていく二人。放置される肉まんと三日月。

 

「……これ、食べるか」

 


 

「……ってことがあってさ」

 

「昨日冷えた肉まん持ってたのはそのせいか……そんな腕じゃガンプラバトルは……昭弘やシノに代わってもらうか」

 

「大丈夫。これくらいの怪我なら問題ないって」

 

「そこまで言うなら……次も頼むぜ」

 


 

「どうも! ラクス・クラインでーす!」

 

 世界選手権のルール説明のステージに立つのは、ファイターの一人であるキラ・ヤマトのセコンドでもあるラクス・クライン……の、そっくりさん。

 

「ラクス……彼女は?」

 

「彼女はミーア・キャンベル。私のプロデュースしたアイドルで、時々私と入れ替わりながら生活していますわ」

 

「……君は自分のプロデュースしたアイドルに自分の名前を貸すのかい?」

 

「何かおかしいですか?」

 

 控え室でラクスの発言に呆れた顔をするキラ。ルール説明は続く。

 

「第3ピリオドはオリジナルウェポンバトル! くじ引きで引いた武器のみで一対一で戦う特殊ルールになっていて、手に入れた武器の特性、使い道を瞬時に判断する力が求められます!」

 


 

 くじ引きが終了し、それぞれバトルがスタートする。

 

「ハーッハッハッハ! このバスターライフルさえあれば無敵だ!」

 

 バスターライフルを乱射するアストレイゴールドフレーム。それを地面をローラーで滑りながら躱す、肩を赤く塗ったザクフリッパー。

 

「……」

 

「無言で不気味なヤツだ!」

 

 ローラーで滑る移動法、例えるならローラーダッシュで接近するザクフリッパー。その素早さにバスターライフルは一発も当たらない。

 

「終わりだ」

 

 ザクフリッパーの放つヘビィマシンガンで蜂の巣にされるゴールドフレーム。最終的にフリッパーの肩に装着されたミサイルポッドで吹き飛ばされ勝負は決した。

 

『第3ピリオド第一試合、勝者キリコ・キ……』

 

 続いてトンファーを振るうケンプファー相手に立ちはだかるのはアメイジンググリムゲルデ。トンファーから発射されるロケットアンカーを手に持ったナイフで切り払い急接近、ケンプファーにナイフを突き刺し勝利した。

 

「……なるほど。プログレッシブ……そういうのもあるのか」

 

『第3ピリオド第五試合、勝者マクギリス・ファリド!』

 

「武器が支給されていない!?」

 

「どうやらハズレを引いたみたいだね……」

 

 一方刹那のアルトライザーは武器すらない状態で砂漠に突っ立っていた。

 

「もらったぜガンダム! この俺パトリック・コーラサワーが第3ピリオドの頂点に立つ時が来たぁ!」

 

「お前、コーラサワーか?」

 

 ハイパービームサーベルを引っさげ現れるAEUイナクト。武器がないアルトライザーに殴りかかるが……

 

「仕方ない、行くぞ沙慈!」

 

「分かってる!」

 

 トランザムを発動し赤みを帯びるアルトライザー。それがどうしたといった様子で斬りかかるAEUイナクト。だが……

 

「トランザム神拳!」

 

「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあ!?」

 

 トランザムを発動したアルトライザーによる高速の拳による突きの連打を機体の全身に受け、言葉にならない声をあげながらコーラサワーのイナクトは砂漠に沈み、その衝撃で落としたハイパービームサーベルを拾ったアルトライザーは倒れ込んだイナクトにトドメの一撃と言わんばかりにそれを突き刺した。

 

「……そんなのってありかよ……」

 

『第3ピリオド第九試合、勝者刹那・F・セイエイ&沙慈・クロスロードチーム!』

 

「おいおい!? いくら強い武器を貰ってもこんなデカブツが相手じゃ……」

 

 レールガンを連射するガナーザクウォーリアを巨体による格闘で粉砕するデストロイガンダム。

 

『第3ピリオド第十三試合、勝者ステラ・ルーシェ!』

 

 GNアームズを手に入れウキウキ気分のドライセン。

 

「これならばどんな相手だろうと……!」

 

 と、油断していると……前方から接近してくるのはガンダムSEEDに登場する巨大強化ユニットミーティア。それのコアユニットになっているのは……フリーダムアストレイ。

 

「僕の使い慣れたミーティアを引けて良かった……これが別のモノだったら」

 

「ちょっと待て!? そんなの反則だろ!?」

 

「GNアームズ引き当てた人に言われたくないよ」

 

 ミーティアフルバーストで吹き飛ばされるGNアームズ付きのドライセン。

 

『第3ピリオド十七試合、勝者キラ・ヤマトと愉快な三隻同盟チーム!』

 

「……このチーム名はなんとかならなかったのかな」

 

 まだまだ第3ピリオドは続く。そして、次はオルガたちの試合だった……

 

「ミカ……この武器は……」

 

「うん。これって……」

 

 オルガたちに支給されたのは……野球のピッチャー用の装備一式だった。

 

「これで……これでやれってんのか?」

 

 と、そこで周りから壁やグラウンドがせり上がり……

 

「野球のスタジアムに……!」

 

 辺り一帯が野球のスタジアムとなった。そしてそのバッターボックスに立つのは……伝説巨神。

 

「なんかよく分からないが、イデオンなら野球も楽勝で勝ち抜いてみせる!」

 

「ミカァ! その腕で野球は無茶……」

 

「やるよ」

 

 振りかぶりボールを投げるユニコーン。それに対しバットを構えたイデオンは……そのままそれを振り抜き、ボールを打ち返した。

 

「……やっぱりその腕じゃ無理だって……俺が操作変わる……」

 

「それはダメだ。俺がやるよ」

 

「そこで意地張るんじゃねえよ……」

 

 もはや諦めムードのオルガ。半泣きで上を見上げる。が、無慈悲にも試合は続く。再び負傷した腕でボールを投げるも、

 

「悪いがこのイデオンなら、その程度!」

 

 あっさりと打ち返され、打ち返されたボールがユニコーンの左腕に直撃。それを受けた左腕は破壊された。

 

「……無理だって……その身体じゃ無理だって……」

 

「諦めるなんてオルガらしくもないよ」

 

「いやそうだけど……そうだけどよ……あと一球だぜ? また打ち返されて終わりだ……」

 

 やつれて死にそうな顔でネガティブな言葉を次々と放つオルガ。チーム鉄華団の敗北はもはや必然であった……が、彼らには切り札があった。

 

「ねえオルガ……アレ、使える?」

 

「アレ……? あぁ、アレか……ぶっつけ本番だが、確かにこの状況をなんとかするにはアレしか……阿頼耶識システムしかねえな……」

 

 阿頼耶識システムという単語を口走るオルガ。

 

「ミカ、こいつは負担が激しい。……やれるな?」

 

「あぁ」

 

 取り出した謎のケーブルを脊髄に挿入する三日月。そしてそれをバトルシステムのコンソールに繋ぎ……

 

「完全なる機体との一体化を果たす阿頼耶識システム……それのリミッターさえ解除できれば……そのガンプラの性能は、他の機体を二倍三倍は軽く超える!」

 

 デストロイモードに変形したユニコーンのツインアイが赤く発光する。

 

「やるぞ……ユニコーン……!」

 

「あの光は……それがお前らの本気か……! ならば! イデオンもイデを全開にして受けて立とう!」

 

 イデオンに刻まれたイデの紋章が輝く。それと同時にゴーグルアイに青い光が走る。

 

「行くぜミカ、全神経を右手に、右手の神経をガンプラに。粒子を通してガンプラに俺たちの信号を送り込んで、フルパワーで投げるんだ。俺の指示通りに!」

 

「オッケー」

 

「左足を、空に!」

 

 思いっきり左足を振り上げ、ボールを振りかぶるユニコーン。

 

「地面を、踏み込んで……後は勇気で!」

 

 そして、ガンプラの全エネルギーを右腕に集約し、そのボールを投げる。

 

「イデオンソード! バットに集中して……行けぇ!」

 

 イデオンの腕から放たれる白い光がバットを包み、それを迎え撃つ。

 

「やったか!?」

 

 ボールを受けバラバラに吹き飛びながら壁に激突するイデオン。勝利したユニコーンだが……その時だった。イデの発動が起こったのは……原作の宇宙を滅ぼすほどのエネルギーではないものの、イデオンから放たれる凄まじい光はユニコーンガンダムマーズキングを飲み込み……引き分けとなった。

 

『ゲームセット! 第3ピリオド二十試合はドロー、試合は引き分けです』

 

「ごめんオルガ、引き分けになっちゃった」

 

「大丈夫だミカ、これから俺たちが勝ちまくればいいんだ!」

 

「ありがとう。この勝負は楽しかったよ!」

 

「……コスモ……ユウキ・コスモか……」

 

「次戦うときは……俺のイデオンが勝つ」

 

「……それは俺たちのセリフだ」

 

 熱い握手を交わす三人。そして第四ピリオドは……




「次のピリオドはレースだと!?」
「それじゃ俺の流星号の出番だぜ!」
「……俺のカラミティの出番が少ない気がするんだが」
次回『オルガカート・ダブルダッシュ!』
「俺たちは止まらねえからよ……!」


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第13話 オルガカート・ダブルダッシュ!

 渡された端末を操作し選手情報を見るステラ。

 

「……三日月……あの子……このガンプラのファイターだったんだ」

 

「私、この子のガンプラも壊さなきゃダメなのかな」

 


 

 まだまだ世界大会は続く。第四ピリオドはガンプラを使った射的……ビームマグナムを放つユニコーン。

 

「よし、当たった」

 

「……当たったっていうか吹き飛ばしてねえか?」

 

 続いては運動会のような玉入れ。

 

「モビルトレースシステムがついてる流星号なら余裕だぜ!」

 

 第六ピリオド、三対三のチームバトル。

 

「ハハハハハ!! このモビルアーマーザムザザーさえあれば貴様らなぞ一瞬で!」

 

 暴れまわるザムザザー。ビームを放ち街を焼き払う。が、しかし。突如飛んできたマシンガンにビーム砲を破壊される。

 

「何!? 何者だ!?」

 

「……」

 

 それを放ったのは肩の赤いザクフリッパー。さらに肩のミサイルを発射しザムザザーのクラッシャーを破壊する。

 

「あの赤い肩は……まさかレッドショ……」

 

 それに気を取られたザムザザーは前方から接近するソードカラミティリベイクに気付かず、そのまま真っ二つに切断された。

 

《battle end》

 


 

 試合後のファミレスにて……

 

「さすがだよオルガ君、三日月君。まさかここまで全勝とはね」

 

「……俺たちも貢献したんだが」

 

 ドアンと話すオルガたち四人。

 

「全勝ってことはよ、俺たちはもう決勝トーナメント出場決定みたいなもんじゃねえか?」

 

「……そうでもない。全勝したファイターは他にもいる」

 

「……何?」

 

「まずはアリアンロッド特別枠で出場しているメイジンアグニカ……使用ガンプラはアメイジンググリムゲルデ。優勝候補筆頭と言われる腕前は伊達ではないようだ」

 

 メイジンアグニカ……オルガたちもよく知る、マクギリス・ファリドである。

 

「他にも今大会のダークホースと呼ばれたガンプラ連合のステラ・ルーシェ……を破り、なおかつその後も勝利を重ねる地方大会優勝常連、コウ・ウラキ。使用ガンプラはGP-03、デンドロビウム」

 

 デンドロビウムを駆る撃墜王、コウ・ウラキ。その実力はそれ以外では負けなしだったステラ相手に勝利するほどだった。

 

「ガンプラバトル以外の分野でも高い才能を発揮し、オリンピック選手や研究者などの経歴も持つスーパーヒューマンキラ・ヤマト。使用ガンプラは、フリーダムアストレイガンダムホワイトフレーム、バックには主催者側とも繋がりの深いラクス・クラインがいるとも言われている」

 

 キラ・ヤマト。強豪、エクストラを討った実力は確かだ。

 

「それにステラとは別枠で参戦したガンプラ連合のエース、君たちも良く知るムウ・ラ・フラガだ。使用ガンプラは独自のカスタムを施したターンX、ファンの間ではストライカーXとも呼ばれている」

 

 扱いが難しいガンバレルを操り、並みのファイターではまともに動かすことすら怪しいトールギスの機動力で多彩なターンXの強力な武装を扱う不可能を可能にする男ムウ・ラ・フラガ。

 

「そして最強のビルダー沙慈・クロスロードのガンプラを操るガンダムマイスターは刹那・F・セイエイ、使用ガンプラのアルトライザーにはどんな隠し機能が搭載されているか想像もつかない」

 

 オルガたちとも何度も対面し、その度に多彩な武装を見せてくれた、最強ビルダーが作った最強の機体、アルトライザー。そしてその全てを臨機応変に使用することのできる刹那。

 

「……これは地味で周りからはあまり知られていないがひっそりと全勝している隠れた強豪ファイター、キリコ・キュービィー。使用ガンプラは緑のカラーリングと赤い肩を有したザクフリッパーレッドショルダーカスタム、独自の武装カスタムも施してある」

 

 周りのファイターや観客からは知られていないが、並み居るファイターたちを蹴散らし全勝している謎のファイター。さらに使用ガンプラは旧キットのみで発売されているMSVのモビルスーツザクフリッパー。先程から登場している赤い肩のザクフリッパーも彼であった。

 

「他にもドイツ代表シュバルツ・ブルーダー、アメリカユニオン代表グラハム・エーカー、そして地球連邦代表アムロ・レイなど……」

 

「待ちやがれ。……アムロ・レイだと?」

 

「……そうだ。あの前回準優勝のかつてチャンプと呼ばれた男……アムロ・レイもこの大会に参戦している。だが手の内を全くと言っていいほど明かさないため詳細は不明だ……」

 

 アムロ・レイに関してはピリオドごとにガンプラを変えるという徹底ぶりを見せ、あらゆる情報を外部に出していない。……分かるのは、彼が恐ろしく強いということだけだ。

 

「他にもそれに続く者たちは先程話したステラ・ルーシェや君たちが破ったユウキ・コスモなど……ともかく、これからの動向で順位の入れ替わりもありえる。気をつけるんだ、みんな」

 


 

『第七ピリオドの種目内容を発表します! ……こちら、ガンプラレースとなっています! もちろんスピード重視でも構いませんが……原則、銃火器などによる妨害はありとなっています!』

 

「……妨害ありのレース……速さと強さを両立しなきゃな」

 

「じゃあこのシノ様の流星号で行こうじゃねえか! シールドを使えばサーフィンみてえに空中を滑れるし、パンチで妨害だって出来るぜ!」

 

「……そうだな。この勝負、お前に任せた」

 


 

 一方その頃、整骨院で腕の打撲を直してもらった直後の三日月は……

 

「……あ」

 

「三日月……だよね?」

 

 シンとステラに鉢合わせしていた。

 

「なんで俺の名前知ってんの?」

 

「テレビで見たから……ガンプラバトルの大会に出てるんだよね……?」

 

「あぁ、うん。結構楽しいよ、アレ」

 

「……楽しくない。変な感じがするから……」

 

 ステラがネガティブなことを言い始めた途端、シンが焦り始める。

 

「あぁおいステラ!? 大丈夫だって、今はアレとは関係ないから、ほら安心して」

 

「……シン……そうだよね、私今は休んでていいんだよね」

 

 抱きかかえるシンの胸の中で、外であるにもかかわらず眠るステラ。

 

「……三日月、だっけ? なんか、ステラがごめん……こいつガンプラバトルの話になると……」

 

「いいよ。ガンプラバトルで何か嫌なことあったんでしょ?」

 

「……あぁ。だけど……やっぱりダメだ。こんな子がファイターだなんて……でも連合の上の奴らは聞いてくれないし……」

 

「……ファイター? それに、ステラって……」

 

 シンのこぼしたファイターという言葉とステラという少女の名、そして連合という単語を脳内で結びつける三日月。彼は気付いた。……彼女がガンプラ連合のファイター、ステラ・ルーシェだということに……

 


 

 翌日。

 

『第三レースももうすぐ大詰めであります!』

 

 月光蝶で後続を消し飛ばしながらゴールするターンX。

 

「やっぱり、俺って不可能を可能に……!」

 

『第四レースを開始します!』

 

「最後まで言わせてくれよ……」

 

 第四レース、圧倒的出力による恐ろしいスピードでゴールテープを切るグリムゲルデ。

 

『第四レース、勝者メイジンアグニカ!』

 

「邪魔だあああああ!!」

 

 走行するガイアガンダム、周りのガンプラを切り捨てながらゴールテープを切る。

 

『第五レース、勝者ステラ・ルーシェ!』

 

「イデオンガン、発射!」

 

 放たれるイデオンガン。それを受けた前方を走行するガンプラたちはまとめて消し飛ばされ、そのまま悠々自適にゴールするイデオン。

 

『第六レース、勝者ユウキ・コスモ!』

 

 大量のサブフライトシステムをつなげた謎ブースターを使い一瞬でゴールするフリーダムアストレイ。

 

『第七レース、勝者キラ・ヤマト!』

 


 

『これより最終レースを開始します』

 

「いいかシノ、作戦通りに!」

 

「任せとけって!」

 

 一斉に駆け出すガンプラ達。その中で唯一明らかに他より速いガンプラが一機。ショッキングピンクのガンダムマックスター、流星号だ! それを撃墜すべく後続から大量にビームが放たれる。が、それをグラブで吸収する流星号。

 

「よし、ディスチャージで加速するぞ!」

 

「オッケー!」

 

 燃え上がる流星号、さらに背中からは炎の翼が現れ、それを身に纏い、風を吹かしながらさらに加速しコースを駆け抜ける。サーフィンのような姿でコースを颯爽と駆け抜けるその様は……

 

「……エウレカ?」

 

 またもガンダムではない作品をそれを見た観客に連想させた。はっきり言ってこのようなスピードに追いつけるものはいない……はずだった。それに超高速で追いつく青い機体。

 

「アイアムアヅダ! アイアムアデュバル! ピンク色のガンダム、お前もそろそろ退場してもらおうか!」

 

 そう、全勝ファイターの一角ジャン・リック・デュバルの駆るヅダであった。

 

「おいオルガ! ディスチャージで引き離せねえのか!?」

 

「無理だ、あとは温存しとかねえと後が怖……」

 

「うるせえ、今がその時だろうが!」

 

 再びディスチャージを発動し加速する流星号、だがヅダのファイターデュバルは未だ余裕の表情を崩していなかった。

 

「なるほど、素晴らしいスピードだ……だがこれならば! ……トランザム!」

 

 なんとヅダのバックパックが弾け飛び、GNドライブが露わとなる。それによりトランザムを発動し加速するヅダ。

 

「ディスチャージに追いついてきやがった!?」

 

「フハハハハハ! これがトランザムを発動したヅダの力だ!」

 

 驚きを隠せないシノ、得意げに高笑いするデュバル。さらに加速するヅダがさらに流星号を引き離し、見えないところまで加速していった……

 

『一周目のトップはヅダ! それをマックスターが猛烈に追う!』

 

「流星号だ! しっかりと機体の名前くらい覚えときやがれ!」

 

 実況に向かい叫ぶシノ。もはやヅダと流星号のトップ争いと化したレース。が、しかし。ヅダは機体の許容限界に達し爆発する。

 

「何!? 私のヅダがぁ!?」

 

「勝った! ヅダが自爆しやがったぞ!」

 

 ヅダの爆散を見て勝利を確信するオルガだが……水中を走っていた流星号は、突如水中へ引っ張られる。

 

「何!? 引っ張られて……」

 

「下か……!? どこのどいつだ!?」

 

 流星号を水中へ引き摺り下ろしたのは……水中用のカスタムが施され、大量のアームが付け足された……ジオングだった。

 

「バカな……なんでこんなガンプラが!?」

 

 水中の岩肌に押し付けられる流星号、さらに機体を締め付けていたヒートロッドに電撃が走る。

 

「やべえって! このままじゃ……」

 

「機体に負荷がかかってる以上阿頼耶識を使ったら逆に接続した神経が焼き切れちまう……このままじゃ!」

 

 水中に引き込まれた二人の上の水面を次々と走り抜けるライバル達。目前だった勝利が一気に遠ざかっていく。

 


 

 が、しかし。バトルシステムの下部でそれを操縦する謎の男に立ちはだかる者がいた。

 

「……なんだお前は!?」

 

「私の名前はククルス・ドアン。真剣勝負を邪魔する無粋な輩を見逃すわけにはいかんのでな」

 

 それを聞きドアンに殴りかかる謎の男だが、飛び上がったドアンに飛び蹴りを受け怯む。さらにドアンはアッパーカットで吹き飛ばしたところに正拳突きをかまし謎の男をKOした。

 

「後は任せたぞ!」

 


 

「よし、相手の動きが止まった! 阿頼耶識で……!」

 

「オッケー!」

 

 阿頼耶識を起動し、アームを引きちぎり水を振り払いながら水面から浮上する流星号。全ては思うままに。さらにディスチャージで風を、炎を纏い波に乗る。

 

『なんと! 水面に飲み込まれたはずのガンダムマックスターが再度浮上!』

 

「だから流星号だっての!」

 

 色あせた景色を風が流れていく。恐ろしいスピードで空中を滑る流星号。周回遅れを取り戻すようにスタンドラインを抜け、見えた他の機体をあっさり抜き去っていく。なんと一瞬で二位に浮上する。

 

「見えたぞ! アレが一番上の……!」

 

「Gアーマーか!」

 

 ついに一位のGアーマーをロックオンする流星号。猛烈な加速で追いつこうとするも……何か音がした。何かを閃いたような音だ。

 

「そこ!」

 

 次の瞬間、Gアーマーのメガ粒子砲を向けられ、さらにその次の瞬間には……流星号は残骸と化し道に横たわっていた。そして、最後に放たれたGアーマーからの声。その声は、ガンプラファイターなら、知らないはずのない声だった。

 

「……アムロ・レイ……と、とんでもねえレースを……引いちまった……」

 

 Gアーマーを操縦していたファイターはアムロ・レイ。前大会準優勝の、生ける伝説。その圧倒的な力の前に……オルガの渾身の傑作であったはずのガンダムマックスター改弐は、あまりにも無力で、ちっぽけなものだった。そのままゴールインするGアーマー。……試合は、終わりを告げたのだ。

 

「負けた……俺の……俺の最高傑作が……」

 

「どういうことだよオルガ……あのガンプラは! それに……あのGアーマーは!」

 




「ファイター同士の譲れない戦い!」
「これこそが、ガンプラバトルってヤツだよな!」
次回『愛ない、絶えない、退廃』
「俺たち全員が、一人のファイターだ!」


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第14話 愛ない、絶えない、退廃

 

「ラスタル会長、雇った者が失敗したようですが?」

 

「なあに、アレが成功するとは最初から思っていない。鉄華団のファイター達の実力を見るための試験といったところだ」

 

「……何故ラスタル様は鉄華団にそこまで入れ込むのですか?」

 

「そうだな……彼らは新時代の象徴的存在だ。そんな彼らに活躍の場を与え、試練を与え成長させ……その上でうちのマクギリスがそれを倒す。……メイジン新時代の幕開けにしては上々な演出ではないか?」

 

「……そりゃあまた、趣味がよろしいことで」

 

「さて、次のステップだ。象徴たる鉄華団が次に破るのは……」

 


 

「オルガ、次の試合形式が発表されたぞ。一対一のバトルで相手はムウ・ラ・フラガ」

 

「あーはいはい、一対一のバトルだな……まあ余……は? ムウ?」

 

 昭弘の言葉を軽く聞き流していたオルガだが、対戦相手の名前を聞き口を開けたまま固まってしまう。

 

「そうだ。俺たちも良く知る相手だな」

 

「……昭弘。このピリオドで勝てなけりゃ決勝には出れねえんだよな?」

 

「あぁ。相手が強豪の中の強豪であっても、この試合には勝たねえと俺たちはここで終わりだ」

 

「……ミカ、やってくれるな?」

 


 

「これからはこの私が世界を導くのだよ!」

 

 水面から現れるアルヴァトーレ。それに対し巨大な砲台を構えるイデオン。

 

「イデオンガン! 発射!」

 

 イデオンガンから放たれるエネルギーに巻き込まれたアルヴァトーレはそのまま粉砕され、中から現れたアルヴァアロンがイデオンに向かい銃を構えるも、それを放つ前にイデオンの手から放たれる白い光線、イデオンソードに真っ二つにされ爆散した。

 

『第1試合勝者、ユウキ・コスモ!』

 

 向かってくる105ダガーとガンバレルストライカーの攻撃をシールドで防ぎ、接近してきたところをガーベラストレートで一刀両断するフリーダムアストレイ。

 

『第5試合勝者、キラ・ヤマト!』

 

「行くぞレギンレイヴ! 飛操剣、起……」

 

「させるか!」

 

 一般機カラーのモビルレギンレイズが何やらファンネルのようなものを展開しようとするも、アルトライザーの超火力でその前に消し飛ばされる。

 

「そんな! 飛操剣作るのに苦労したんだぞ!?」

 

『第7試合勝者、チームプトレマイオス、刹那・F・セイエイ!』

 

「前回は加速のしすぎで遅れを取ったが、今回のヅダは完璧である!!」

 

 グレイズアインへ突っ込むヅダ。シールドピックをかわしヅダに斧を振り下ろそうとするグレイズアインだが、ヅダの機動力の高さゆえにその前に間合いから抜けられてしまう。

 

「もらったぞぉ!」

 

 シュツルム・ファウストでグレイズアインに攻撃するヅダだが、その攻撃がアインの逆鱗に触れた! 

 

「この欠陥品が……クランク二尉から頂いたガンプラを!」

 

 モノアイガードを開いたグレイズアインが驚異的なスピードでヅダに襲いかかる。その攻撃を躱し、バックパックを展開しトランザムを発動するヅダ。

 

「ハッハッハ! トランザムを発動したヅダは無敵だ!」

 

「チィッ!」

 

 加速し続けるヅダ、それになんとか追いつき打ち合うグレイズアイン。

 

「これで終わりだ!」

 

 ヒートホークを構えグレイズアインへ突っ込むヅダだが、グレイズアインは抵抗しようとしない。何故かと言えば……

 

「何? 時間がなかったからトランザムの調整が出来なかっただと!? それをどうにかするのがガンプラ製作チームの仕事だろう!? クソォ! ヅダが完璧な状態ならばこんなことにはぁ!」

 

 プスプスと音を立て、装甲や四肢がもげていくヅダ。そんな状態になっても未だ加速し続け、グレイズアインにその刃は届くことなく爆散した。

 

「呪うなら欠陥を直せなかった制作チームを呪うがいい……俺はお前の呪詛を糧としさらに成長する!」

 

『第10試合勝者、アイン・ダルトン!』

 

 ……そして、当然オルガたちの番もやってくる。

 

「ミカ、相手はムウさんだ……強敵だぞ」

 

「……そんなこと、俺が一番分かってる」

 

《battle start》

 

「それじゃあ三日月・オーガス、ユニコーンガンダムマーズキング……出るよ」

 

「ムウ・ラ・フラガ! ターンX! 行くぜ!」

 

 荒野に放たれる二体のガンプラ。ビームマグナムを構え、放つユニコーン。

 

「おいおい、いきなりかよ? ご挨拶もなし?」

 

「もう戦いは始まったんだから当たり前でしょ」

 

 それを地上に急降下し避けるターンX、さらに何発も放たれるビームマグナム。それを躱しながら荒野を走り抜け、ビームマグナムで起こる砂ぼこりと同時に消える。

 

「……いない?」

 

 と、そこで背後からビームが放たれ、それをユニコーンは躱しきれず被弾、爆発が巻き起こる。そのビームが放たれた方向に反撃のビームマグナムを放ち、それはターンXを捉えた……

 

「手応えはある……だけど変な感じだ」

 

 煙が晴れると、そこにいたのは……ターンXの左腕だけだった。

 

「しまった……!」

 

「どこを見てる!」

 

 左腕以外全て合体した状態のターンXがユニコーンの死角に飛び込み、蹴り飛ばす。そして左腕を引き寄せ、装着する。

 

「その分離……厄介だな」

 

 立て直すユニコーン。が、ターンXから分離したオールレンジ攻撃兵器、ガンバレルがユニコーンを追撃する。ガンバレルから放たれる弾を避け、シールドのガトリングで迎撃、一基目のガンバレルを破壊するユニコーンだが……その煙に紛れ接近したターンXが右腕の溶断破砕マニュピレータを展開し……

 

「シャイニングフィンガーッ!」

 

「しまっ……!」

 

 それによる一撃でシールドを容易く粉砕した。それによって怯んだユニコーンに足を分離し、勢いよくぶつける。俗に言うロケットキックというやつだ。それにより吹き飛んだユニコーンはビームマグナムを落としてしまう。さらに飛ばした足の方に全身を引き寄せ、相手の背後へ高速で移動。振り返ろうとしたユニコーンを蹴り飛ばし、その正面へ回り込み展開していない状態の右腕で強烈なアッパーカットを放つ。

 

「ほらほらどうしたぁ! そんなんじゃないだろ!?」

 

「……!」

 

 連続して放たれるターンXの拳を避けるユニコーン、ビームマグナムもシールドも失ったためとっさに回し蹴りを放つユニコーンだが、それを上へ飛び上がり躱したターンXが再びガンバレルを展開し、さらに全身を分離しユニコーンの元へ飛ばす。圧倒的なオールレンジ攻撃、なんとかそれを躱し続けるも、ガンバレルに被弾した一瞬の隙を突かれ合体したターンXのシャイニングフィンガーを頭部に受ける……前に、ビームトンファーを展開したユニコーンがその右腕を斬る。が、斬ったターンXの右腕が浮かび上がり再び胴体に付く。完全に捉えたかと思われたが、やはり斬られる寸前に分離したようだ。

 

「やっぱり……頭を潰す以外無理か……!」

 

「今度こそ、終わりだ!」

 

 渾身の斬撃を躱され、ガラ空きになった胴体にターンXの輝ける右手が襲い来る。が、しかし。

 

ARAYASIKI

 

 突然デストロイモードに変身し、なおかつその目が紅く光ったユニコーンガンダムマーズキングがその一撃を弾く。

 

「なっ……!? この動きは!?」

 

 驚きを隠しきれないムウ。

 

「あの動き……確か野球の時も……!」

 

 かつてを思い出す沙慈。そんな沙慈に対し、近くに座っていたキラがその動きについて、説明する。

 

「あの動きは間違いない。ガンプラバトルシステム用のコンソールに人体に外付けする神経共有システムを繋ぎ、反応速度と操縦性を圧倒的に向上させる……阿頼耶識システムだ。だけど、ガンプラに影響が及べばファイターの身体の神経にも影響を及ぼす危険な機能なんだよ。まさか、そのシステムを採用したのか、チーム鉄華団は……!」

 

 サイコフレームの赤い輝きを見せつけながら、深紅の目でターンXを見つめる火星の王。

 

「なるほど……こりゃあ凄い」

 

「ここで……阿頼耶識の力を出し切る」

 

 あまりにも強くコンソールに接続しすぎた弊害で、目が充血しそこから血が垂れる。だが、身体にそこまでの負荷をかけてまで深くシンクロした三日月とユニコーンガンダムマーズキングは、もはや一切のタイムラグなしに、まるでそれが自らの身体であるように動く、最強のファイターと化した。

 

「面白い……! こいつを受けてみな!」

 

 展開されるガンバレル、四方八方から放たれるその銃撃は……一発として当たることはなかった。引き抜いたビームサーベルで周りのガンバレルを目にも止まらぬ速さで斬り裂く火星の王。

 

「やるじゃ……ねえかよ!!」

 

 溶断破砕マニュピレータからシャイニングフィンガーを展開するターンX。それに対し、ビームサーベルを投げ捨て、万が一のために用意しておいたメイスを構える火星の王。お互い、最後の手段を使おうとしていた。

 

「……頼むぜ、ターンX。あと少しだけ……あと少しだけでいいんだ、少しだけなんだ。あと少しで……この戦いに決着が付く!」

 

「おいユニコーン。さっさとよこせよ。あいつに……あの人に勝つには、お前の全部がいる。……だから、全部寄越せ。ユニコーン」

 

 突っ込んでくるターンXに頭部を掴まれ、岩肌に押し付けられ引き摺られる火星の王。が、メイスを持っていない左腕がターンXに向かい拳で一撃を加える。そのままターンXを押し出し……

 

「こいつで……いや、これじゃないと」

 

 メイスを構える、鉄華の王。同じく、ターンXは展開すらしない右手でその王の顔面を殴りつける。が、頭部を破壊されても、王は怯まない。槍のような使い方で、ターンXに向かいメイスを放つ。

 

「……殺し……倒しきれない……!」

 

 ターンXトップを捉えるメイスの先端、パイルバンカー。そして……

 

「……はっ……強くなったなぁ、お前ら……」

 

 頭が潰れ、倒れこむターンX。勝負は……決した。

 

『……さ、最終試合。勝者は……チーム鉄華団!』

 

 巻き起こる拍手と歓声。そしてバトルを繰り広げた二人は……とても、清々しい顔をしていた。そして、コンソールに向かい合っていたオルガは、倒れこもうとする三日月を支える。

 

「大丈夫かよ、お前……最後らへん血流してたぜ?」

 

「……たぶん大丈夫だと……あ……アレ……?」

 

「どうしたんだ、ミカ?」

 

「……なんか、身体動かなくなった」

 

「は?」

 




「街で金髪の変な人に会ったんだけど」
「その人って、もしかして……」
次回『赤い彗星』
「前作主人公の登場は、熱い」


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第15話 赤い彗星

「えぇいアムロめ……私に第2回の開催を知らせないとは」

 

「……だが、皆良い目をしている。……私もやるしかないようだな」

 


 

 ホテル、自室にて……あの後、オルガはユニコーンガンダムマーズキングの修理を。そして、三日月は…動かなくなった左半身を動かすために、粒子に反応し動く全く新しいタイプのギプスを提供してもらった。

 

「……酷くやられたね、オルガ」

 

「あぁ。だけど今回はこれで満足だ。……決勝大会はまで間に合わなかったら、昭弘とシノに任せる」

 

「……そっか。俺何か手伝えるかな?」

 

「お前一個も作ったことないだろ? ……だからお前はしっかり休んでおいてくれ」

 

「うん、分かった」

 


 

 その後、三日月はいつものショッピングモールにあるガンプラ売り場に来ていた。

 

「……オルガがああ言ってるんだ、俺もすごいの作れるようになってオルガを楽にしてあげないと」

 

 棚を見つめ、黙り込む三日月。周りの棚を見回し……その種類の多さに圧倒される。……そしてそれを後ろから覗くのは……シン。

 

「ステラ……本当にあいつのこと気になるんだな」

 

「……だって」

 

「ああ言わなくていいって……」

 

 その背中には、ステラが隠れていた。

 

「……ララァ・スン専用モビルアーマー? これガンプラの名前?」

 

「それには事情があってね」

 

 一つのガンプラの箱を持ち上げる三日月に、サングラスをかけた金髪の男が話しかけて来る。

 

「……あんた一体?」

 

「あぁ。私の名前はクワトロ・バジーナ。流離のガンプラビルダーとでも名乗っておこう。見たところ君は初心者のようだが? 悩んでいるなら、君に合いそうなガンプラを探してみようか?」

 

「え、本当に? じゃあお願い」

 

 しゃがみこみガンプラを物色するクワトロ。何か電撃が走ったような音が響き、一つのガンプラを手に取る。

 

「これとかどうだろうか? HGキャスバル専用ガンダム。前大会で優勝した記念にキット化されたモノだよ」

 

「……へえ。前回優勝者のガンプラなんだ」

 

「その通り。それに基本はRX-78だから作りやすさもバッチリだ。……これにするか?」

 

「……なんか聞いてる限り良さそうだからこれにするよ」

 

 そしてそれを物陰から凝視するシンとステラ。……当然クワトロに見つかる。

 

「そこの物陰から見ている君たちには……そうだな、このストライクガンダムとSD騎士ガンダムがオススメだ」

 

「えっ!? 俺ら!?」

 

「えっとその……ステラは……」

 

「遠慮するな、私の奢りだほら作るぞ君達!」

 

 困惑する二人を押し切り制作ゾーンに向かうクワトロ。

 

「待ってくれ、俺たちガンプラ作ったことなんて……いや俺はあるけど三日月ってヤツとステラは!」

 

「なあに、気にすることはない。私が教えよう。道具だってしっかりあるんだ」

 


 

「……まずはその説明書を読め。時間は1分だ」

 

「えっおい!? 1分はさすがに……」

 

「確認なんてそれくらいでいいだろう。次はニッパーだ。説明書の一番から作る」

 

「俺足作るの苦手なんで足から作っていいですか!?」

 

「……シン君の場合は経験者だからこのような無茶が出来るが、初心者のみんなは一から作ろう」

 

「……うん」

 

 経験者のシンが初心者の中に混ざっているためクワトロのガンプラ制作講座はかなりグダグダだ。

 

「ゲートは少し大きめに切り、はみ出た部分をもう一回切る二度切りが有効だ」

 

「……そんなことしてる暇あったらナイフで削ってヤスリかければいいんじゃないっすか?」

 

「シン君ちょっと黙ろうか」

 

 少しイライラしてきているクワトロ。が、初心者たちの初組み立ては進み、講座は続く。

 

「切ったパーツは説明書をよく見て組み立てるんだ」

 

「……ねえシン……ポリキャップ入れ忘れちゃったんだけど」

 

「あぁ、それなら大丈夫。ナイフの刃をパーツの間に滑り込ませて……ほら、取れたぞ」

 

「パーツの取り外しはかなり面倒な作業だから気をつけろ。組み間違えたことに後から気づくと悲惨だぞ。次はシールだ、シールの張り直しは粘着力が弱まる。しっかり慎重に貼るんだ」

 

「あの……俺ガンダムマーカー持ってきたんで部分塗装していいですか?」

 

「勝手にやってなさい」

 

 誰がどう見てもシンへの対応を鬱陶しく思っていることが分かるほど不満そうなクワトロ。

 

「出来ました議長!」

 

「私は議長ではない。……うむ、三人とも上手くできているな。そうだ、シン君の言っていた部分塗装や墨入れ、トップコートや簡単な合わせ目消しもしてみようか」

 


 

「……すごい……」

 

「どうだ凄いだろう。あぁ、思い起こせば私も昔アムロやカミーユにこのようなことを教えてもらったものだ……」

 

 三人の作ったガンプラを見て思い出に浸るクワトロ。二人のことを口走っている時点で正体はモロバレなのだが……聞かれていないのでセーフのようだ。

 

「では三人の作ったガンプラでバトルしようじゃないか! そうだな、二対二では一人足りない……私もこの百式で参戦しよう」

 

 クワトロがホルスターから百式を取り出しそれを見せつける。

 

「……すごい……これ、あんたが?」

 

「あぁ。昔色々あってね……」

 

「あの、クワトロさん? だっけ? 実はステラは……その、バトルが嫌いで」

 

「……そうなのか? ならシン君と三日月君の一対一だな」

 

「ま、待ってくれよ!? 俺!? そこはあんたが……」

 

「私の百式で初心者ボコったら可哀想だろ。ほら行け、君も男だろう?」

 


 

《battle start》

 

「シン・アスカ、エールストライク! 行きます!」

 

「それじゃ三日月・オーガス、ガンダム。出るよ」

 

 宇宙に飛び出すストライクガンダムとキャスバル専用ガンダム。お互い小惑星基地の近くで対面し……撃ち合いが始まる。ストライクのビームを回転を交え、身体を捻り避けるガンダム。反撃のビームライフルでストライクのシールドを粉砕するが、ライフルを捨てサーベルを抜き急接近したストライクにシールドを斬り飛ばされ、ライフルも手で弾き飛ばされる。

 

「チィッ……!」

 

 ガンダムもサーベルを抜き、ストライクと弾き合う。体制を立て直したストライクが辺りに漂っていたガンダムのライフルを拾い、それを放つ。

 

「武器を奪った……? だったらこっちも」

 

 ストライクのライフルを拾おうとするガンダムだが、執拗な攻撃の前にライフルに近寄れない。

 

「もらったぁぁっ!」

 

 サーベルを抜きガンダムに接近するストライクだが……

 

「え、ちょっと、待っ……」

 

 困惑の声をあげながら何処かから飛んできたビームにストライカーパックを破壊され、小惑星の方向へ墜落した。

 

「……乱入? 何者だ?」

 

 現れたのは、足の部分に大型クローを取り付けたジオング。そこから放たれるビームを躱すガンダム。

 

「……あのガンプラ、何処かで……?」

 

 手首を飛ばし放つオールレンジ攻撃も、既にムウ戦で経験しているため容易く避ける三日月のガンダム。そのまま懐に飛び込むも……足の部分に取り付けられた大型クローに捕まる。

 

「しまっ……この足が……!」

 

 メガ粒子砲をチャージするジオング。決着は決まろうと……しなかった。突如飛んできた剣がジオングに突き刺さる。その衝撃で大型クローからガンダムを手放すジオング。

 

「……三日月、大丈夫?」

 

「あ、えっと君……ステラだっけ」

 

 その剣を投げつけたのは……槍を携えた騎士ガンダム。その二人にジオングの腕が迫る……が。それを躱し続けた二人の手助けするように、小刀……アーマーシュナイダーがジオングの腕に突き刺さり爆散する。

 

「大丈夫か二人とも! ……三日月! こいつを!」

 

 それを投げつけたライフルを回収したストライクが三日月にガンダム用のビームライフルを投げ渡す。それを連射し、ジオングの大型クローを破壊するガンダム。

 

「こいつで……トドメだ」

 

 槍を構える騎士、サーベルを引き抜くガンダム。二人の攻撃がジオングを貫き……それを受けたジオングは、爆散した。

 

「……やったなステラ! お前がそんなに楽しそうにガンプラバトルしてるところ、初めて見た!」

 

「シン……ステラ、そんなに楽しそうだったかな? そうだ、ねえ三日月」

 

「……?」

 

「……今のバトル、凄かった。大会で会えるといいね」

 

「え? 大会って……ああ、やっぱりそうなんだ」

 

「おいステラそれバラしていいのかよ!? ……アレ? そういやあの人は……?」

 

 三人がそんな会話を交わしていると……いつの間にか、クワトロは何処かへ消えていた。

 


 

 そしてそんなクワトロが何をやっているか。清掃中の看板が立ててあるトイレにこもり、何やら妙な機械を操作する謎の男。

 

「……」

 

 何やら不満そうな顔をした後、彼は退室する……が、その個室から出た途端、その前にはクワトロが立ちはだかった。

 

「……やはりあのガンプラはお前のモノか。あの大会中に現れたジオングも……今回現れたジオングもお前のガンプラだな。ガンプラマフィア、コードネーム《C》」

 

 謎の男の正体と思われる単語を放つクワトロ。

 

「では私の正体も明かしてやるとするか。私の名は……」

 

 サングラスを取り、投げ飛ばすクワトロ。そして髪を整え……オールバックにする。

 

「キャスバル・レム・ダイクン。かつてシャア・アズナブルと呼ばれた男だ!」

 

 殴りかかるガンプラマフィアの男の拳を避け、締め落とすシャア。

 

「……ガンプラを使ってロクでもないことやるんじゃない」

 


 

「大佐、また余計なことやったんですか?」

 

「なあに、今回は成果を出したさ」

 

「……でも元の動機は遊びたいからでしょう?」

 

「そう言ってくれるなドレン。私とてビルダーだ、あんな盛況を見て冷静で居られるわけがないだろう?」

 

「……あんたの場合冷静なのに理性でああいうことするからタチ悪いんでしょうが」

 




「刹那!やっとアルトライザーが完成したよ刹那ァ!」
「遅かったな沙慈・クロスロード。だがこの完成度は素晴らしいぞ。これならばオルガたちとの決着に相応しい」
次回『最終形態』
「俺が、俺たちが!ガンダムだ!」


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第16話 最終形態

 

「また遅刻だ! どうすんだこれ!?」

 

「おい三日月遅えぞ!?」

 

「だから本当は身体動かないんだからしょうがないでしょ」

 

「……もうミカは放っておけ! 俺たちだけでどうにかするぞ!」

 


 

 身体がうまく動かない三日月を背負い、会場へやってきたオルガたち鉄華団。

 

「……ミカ、そろそろ重いから降りてくれ」

 

「あぁ、うん」

 

「さて、対戦相手は……」

 

「俺だ、鉄華団」

 

 声が響き、その方向に振り向くオルガ。そこにいたのは……刹那と沙慈。

 

「ついに来たね。僕たちのガンプラの決着をつけるときが来た」

 

「……あぁ。こっちだって万全の体制だ。負けねえぞ?」

 


 

「今日のバトルは二試合。メイジンアグニカとステラの二人が勝ち進むって予想するのが普通かな……」

 

 トーナメント表が映し出されたモニターを見ながら戦略を立てるキラ。そこにムウが近付いてくる。

 

「よう、キラ。……お互い初戦は楽に勝ち進めそうだな」

 

「あぁ、ムウさん。油断は禁物ですよ。だって次の相手は……」

 


 

「……刹那。勝つイメージが僕には全然湧かないんだけど勝てる?」

 

「あぁ。ガンプラバトルは理屈じゃない。俺はアイツらに勝つ。……新搭載された最終形態を使って」

 


 

 観戦後の帰り道……

 

「……前回阿頼耶識を使いすぎてミカは通院中、仮にバトルに出れたとしてもあんなぎこちない動きじゃ刹那の兄貴には勝てねえ。昨日はガンプラバトルして来たみたいだが……いつもより動きが悪かったらしいからな」

 

「なるほど。代打は俺か? シノか?」

 

「今回は昭弘に出てもらう。流星号も前回ディスチャージを使いすぎて関節にキてるからカラミティくらいしか無事なガンプラはねえんだ」

 

「分かった」

 


 

 そんな中、沙慈は……なんと一旦、プトレマイオスに戻って来ていた。

 

「……あの、ニール・ディランディさんですよね?」

 

 来ていたのは、ニール……ロックオンを訪ねるため。

 

「あぁ。まあ店員姿の時はロックオン・ストラトスだけどよ」

 

「……教えてください。どうやったら僕は刹那に相応しいガンプラを作れるんでしょうか」

 

「刹那のヤツに相応しいガンプラ?」

 

 その言葉を聞いたロックオンは、少しだけ微笑を見せてから盛大に笑った。そして、そのままのトーンで次の言葉を言い放った。

 

「……刹那はそんなこと気にしねえよ。アイツにとっては、お前みたいな、分かり合えるような人間が作ってくれたガンプラが、自分に一番相応しいモノだと思ってるはずだ。刹那は自信満々なんだろ? ……それじゃあお前もそれに相応しいだけ、存分に調子に乗ってやれ」

 

「……調子に……乗る……」

 

「自信過剰になれないヤツは、丁度良い程度の自信も持てねえんだぜ? もっと胸張って……刹那に任せてみな」

 

 ロックオンの言葉を聞いた沙慈は、何かを決意したように拳を握りしめ……礼を言いながら店を去った。

 

「……お前らの試合、楽しみにしてるぜ」

 


 

 翌日。オルガたちの正面に立つのは……刹那のみ。

 

「……どうすんだ刹那の兄貴。沙慈の兄貴来ねえぞ……」

 

「大丈夫だ。あいつは必ず来る。来てくれる」

 

 その言葉通り……さらなるカスタムを施した、アルトライザーを持った沙慈が、一足遅れてやって来た。

 

「……刹那! 遅れてごめん!」

 

「いいんだ。ほら、アルトライザーを」

 

「あぁ。ここにあるよ」

 

 アルトライザーを受け取る刹那。お互いにガンプラをセットし……戦いが始まる。

 

《battle start》

 

「昭弘・アルトランド。ソードカラミティガンダムリベイクフルシティ! 行くぞ!」

 

「刹那・F・セイエイ。アルトライザー、目標を駆逐する」

 

 お互い、宇宙のフィールドに飛び出す。索敵を行うカラミティだが……そこに大量のミサイルが襲いかかる。ユニコーンガンダムマーズキングと同型のアブソーブシールドを犠牲にしそれを防ぐカラミティ。

 

「いきなり第二形態か……!」

 

 大量のアームを搭載したアルトライザー第二形態の姿を確認するオルガ。だが、そのようなものは序の口に過ぎなかった。

 

「第二形態の初撃が回避された。第三形態に変形し一気に制圧する」

 

「了解!」

 

 大量のアームがアルトライザーの身体を包み、さらにその膨大な数のアームがさらに増殖し周りのデブリ群や小惑星を巻き込みながら巨大化する。さらに元はアームだったモノで構成された上半身、顔、そしてそのさらに上から生える、アルトライザー本来の身体。

 

「これは……デビルガンダム!?」

 

「デビルガンダムを参考に作られたのがこの第三形態だ。……単純な戦闘力ならば数々の形態の中でトップクラスを誇るぞ」

 

「警告どうも」

 

 大量に襲い来る触手のような元アームを切り払いながら本体に接近しようとするカラミティ。アームで出来た巨体の中から生み出される、通常の白アルトをビームブーメランで蹴散らしながら本体の前までたどり着く。が、その巨体から繰り出される格闘攻撃にうまく接近できず防戦一方。

 

「昭弘!」

 

「分かってる!」

 

 振り抜かれた拳を対艦刀で防ぎながら、隠し腕を使いそれを斬り刻む。右腕を破壊したが続いて左腕が襲い来る。それに対し……対艦刀をなんと二刀流で使用し、片方でその攻撃を受け止めながらもう片方で腕を破壊した。

 

「くっ……第三形態もここまでか」

 

 アルトライザー本体に接近するカラミティだが、巨体を脱ぎ捨てたアルトライザーが接近するカラミティを肥大化した拳で殴りつける。

 

「第四形態……! ここでどこまでやれるか……!」

 

「今度は素手の格闘か!?」

 

 対艦刀を振るうカラミティだが、それを片手で防がれる。それどころかアルトライザーはその対艦刀を握り潰してしまう。昭弘が恐るべきパワーに驚いている隙に腹部を殴りつけるアルトライザー。が、カラミティは腹部ビーム砲スキュラでその殴りつけた拳を粉砕し、それによって怯んだアルトライザーの顔面に、落とした対艦刀すら拾わず拳を叩き込む。

 

「ぐっ……沙慈! 第五形態は?」

 

「第五形態は武装がほとんど失われたから無理! ……最終形態のお披露目……するかい?」

 

「あぁ。それしかないようだな」

 

 砕けて行く、アルトライザーに張り付いていたアームたち。それどころか、アルトライザーの装甲が、次々と剥がれて行く。

 

「な、なんだ!? どうなって……」

 

 アルトライザーの頭部が砕け、その姿を覗かせた本当の顔は……ガンダム、エクシア。

 

「これが……俺たちの……ガンダムだ!」

 

 叫ぶ刹那。次々とアルトライザーという名の殻を破り現れる刹那の『ガンダム』。その姿は、まるで……

 

「天使だ」

 

 観客席にいた、メイジンアグニカが、その姿をそう評した。純白の翼を広げ、今空に輝くのは革新の天使。

 

「これが俺の……ガンダムエクシア・ライザークアンタだ!」

 

 二つの不釣り合いな翼が、輝き出し……光を放つ、一点の曇りもない白と青の色を持った新たなる羽となる。

 

「そうだ。俺は、俺は負けない。……何故ならこの先に……」

 


 

『もらった!』

 

『し、しまっ……』

 


 

「……あいつが、あいつらが待っているからだ!」

 

 トランザムを発動し赤く輝くエクシア。

 

「昭弘! 三日月みたいにならないようにな!」

 

「分かってる……!」

 

 それに対し、阿頼耶識を起動し目を赤く光らせるカラミティ。お互いに剣を構え……斬り合う。ぶつかり合うそれが、火花を散らす。その様子を、全ての観客、ファイターが真剣な眼差しでそれを見守っていた。

 

「ライザーソードだ。出し惜しみはするんじゃない!」

 

「分かってる。ライザーシステム起動!」

 

 真っ赤なビームの刃がGNソードを包む。

 

「あいつを受け止めるには……全神経を拳に持って行って、粒子の圧縮率を上げるしかねえ……! 全身強化なんかしたら、ミカみてえになっちまう……全身強化無しでも、いけるな?」

 

「……分かってる。この拳に全部をかければいいんだな!?」

 

 カラミティの目がさらに深く、赤に光る。お互いの全力が、光る宇宙でぶつかり合う。GNソードがひび割れる。それに対しカラミティの腕も、ピキピキと音を立て破片を落とす。そして……その光の刃は、厄災の拳によって砕かれた。

 

「……何?」

 

「行けっ! すぐにトドメを刺せ!」

 

「分かってる!」

 

 そして、その拳は天使の身体に迫り……

 


 

 選手控室から出て行く沙慈。

 

「……あ、ルイス」

 

「えっと……沙慈? ……カッコよかったよ。あんなの見たの初めてで……」

 

 ルイスに話しかけられても、まだ歩みを進める。

 

「ちょっと、沙慈!?」

 


 

 河原に座り込み……なんとも言えぬ表情で川を見上げる。

 

「……負けた。僕のガンプラじゃ……刹那は勝てなかったんだ……」

 

 その背後から近づくのは……刹那。

 

「……刹那。ごめん。僕のガンプラが弱かったせいだ」

 

「いいんだ。ほら立て沙慈、また次、もっと強いガンプラを作ってくれるなら、俺はそれでいい」

 

「刹那。やっぱり、刹那は刹那だ」

 

 差し出された手を取り、立ち上がる沙慈。二人が見る川の景色は……青く、美しく輝いていた。

 


 

「ミカ? リハビリは終わったのか?」

 

「うん。今日の分はね。これつけてる間だけだけどしっかり動くようになって来たよ」

 

「それじゃあバトルに出れる日もそう遠くはなさそうだな……」

 

 後から会場にやってきた三日月とそんな会話を交わしていたオルガだったが……

 

《battle end》

 

 突然響いたバトル終了のアナウンスを聞き、立ち上がる。

 

「アレは……」

 

 バトルステージに転がっているのは……オルガたちを苦しめた伝説巨神、イデジム。バラバラになった状態で、その巨神は倒れ、イデオンガンは、原型を留めないほどに潰されていた。

 

「嘘だろ? あのユウキ・コスモが!?」

 

「……相手は?」

 

 信じられない様子だったオルガたちだが、その対戦相手を見て、その驚愕は納得へと変わった。

 

「……鋼鉄ジーグの相手には物足りないぜ!」

 

 高らかに拳を振り上げるのは、オルガたちも良く知る、いやガンプラバトルをやっていて知らない者はいないファイター。

 

「アムロ……アムロ・レイ!」

 




「ついに現れやがった最強ファイター、アムロ・レイ!」
「その圧倒的な力がマクギリスのアメイジンググリムゲルデを襲う!」
次回『鋼鉄アムロ』
「マグネットパワー、オン!」


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第17話 鋼鉄アムロ

 

 空を舞う伝説の巨神。どうみてもイデオンのガンプラ、イデジム。そのイデオンの前に、黄のビームが飛来するも、それを躱しミサイルを放つ。

 

「アレは……マグネットガンダムか!」

 

 爆発するミサイル、その爆風から逃れるように飛び上がる緑と黄色を基調としたRX-78ベースのガンプラ、マグネットガンダム。

 

「よし、イデオンガンで……!」

 

 巨大な砲を取り出しそれを放つイデオン。原作ほどの力はないが、マグネットガンダムの立っていた地面は消し飛び、そこにはマグネットガンダムも存在していなかった……

 

「……やったか?」

 

 が、しかし。突如目の前に現れたマグネットガンダムにイデオンガンは叩き潰され、さらにそのままの調子で顔面を殴りつけられる。

 

「何? いつの間に……! だけど接近戦ならイデオンが!」

 

 すぐさまに体制を立て直し殴りかかるイデオンだが、振るおうとする右腕は……

 

「ダイナマイトパンチ!」

 

 マグネットガンダムの空を飛ぶ拳、所謂ロケットパンチで吹き飛ばされ、粉砕される。

 

「み、右腕がやられた……ならイデオンソードで!」

 

 左腕から光の剣を発生させ斬りかかるイデオン。が、振るう直前のガラ空きの胴体に……

 

「ダイナマイトキーック!」

 

 必殺の蹴りが突き刺さる。そのまま地面に押し付け、滑る。

 

「トドメだ!」

 

 そのまま足を振り上げるマグネットガンダム。足から抜けたイデオンに対し、腹部のビーム砲をチャージし……

 

「スピンストーム!」

 

 叫びと共にそれを放った。崩れ落ちる伝説巨神。勝負は決した。

 

《battle end》

 

「……ユウキ・コスモが負けた?」

 

「鋼鉄ジーグの相手には物足りないぜ!」

 


 

 その試合後……

 

「まさかな……あのユウキ・コスモがここで消えるとは」

 

「……相手はあのアムロ・レイって噂ですよね」

 

 対戦表を見て思案を巡らせるムウとキラ。

 

「……次の試合が目玉だな」

 

「はい。事実上の決勝戦かもしれません」

 

 その対戦表には……第二回戦で、アムロ・レイとメイジンアグニカが当たるという情報が映し出されていた。

 


 

「メイジンアグニカか……面白い。俺の相手には充分だ」

 

「後は俺のマグネットガンダムを完璧に仕上げるだけだ……」

 


 

「やあみんな、これから此処でお世話になるよ」

 

「沙慈の兄貴……それに刹那の兄貴も。俺たちの部屋に……」

 

「あぁ。これからよろしく頼む」

 

 オルガたちの部屋に上がり込んできた沙慈と刹那。

 

「それじゃあ僕はこれで……」

 

「沙慈の兄貴、どこへ……」

 

「沙慈はルイスとデートの予定があるんだ。放っておいてやれ」

 

「……なんだ、兄貴にも彼女がいたのか。まあ居そうな顔してるけどよ?」

 


 

 前回のマグネットガンダムとイデジムの戦いのVTRを見直すマクギリスとガエリオ。

 

「あの格闘能力と腕を発射する技、それに腹部のビーム砲……タネも仕掛けもない、純粋な力で、ストロングスタイルなガンプラであるイデジムをあっさりと粉砕している……力を相手にそれ以上の力で粉砕するような奴だ。強敵だぞ」

 

「……ガエリオ。私が負けると思うか? 確かに相手はアムロ・レイだ。だが、アグニカの名を継ぐ者として負ける訳にはいかない。私は勝つ」

 

 笑みを浮かべアメイジンググリムゲルデを取り出すマクギリス。

 

「自信家だな」

 


 

 翌日。

 

『只今より第二回戦、第一試合を開始します』

 

「……始まるか」

 

 オルガたちも含め、数々のファイター、数々の観客が見守る中、事実上の決勝戦と評された試合……アムロ・レイとメイジンアグニカの戦いが始まる。

 

「メイジンアグニカ。アメイジンググリムゲルデ。出撃する」

 

 廃墟の街を駆け抜けるアメイジンググリムゲルデ。とある一角に向かい……そこで立ち止まる。

 

「敵はこちらに接近戦を仕掛けて来るはずだ……狙撃戦なら」

 

「……分かっている。彼のガンプラに真っ向から戦うことは愚かだということくらいな。場所の解析を急いでくれ」

 

「今やってる」

 

 キーボードを叩き敵ガンプラの居場所を探知するガエリオ。小型ウィンドウを開き……その姿を映し出す。

 

「……見つけた、予想通りこっちに猛進してるぞ」

 

「分かった。現在位置は?」

 

「Cブロックの三番ビルの上、物陰に隠れている。此処からなら充分狙撃出来る。……やるか?」

 

「何かされれば厄介だ。先制を取る!」

 

 ビームスナイパーライフルを取り出しビルに向かい銃撃を行うグリムゲルデ、その銃撃をやり過ごすマグネットガンダム。

 

「大尉! 居場所が気づかれて……」

 

「慌てるな。チェーン、ビッグシューターを出してくれ。いつでも換装出来るようにしろ」

 

「はい」

 

 何やら戦闘機のようなモノを取り出し、置くマグネットガンダム。その戦闘機……ビッグシューターが飛び上がり何処かへ飛んでいく。

 

「ビッグシューター、スタンバイ完了」

 

「よし。……仕掛ける」

 

 飛び上がるマグネットガンダム。そのまま腹部ビーム砲から赤黒いビーム……スピンストームを放つ。躱そうとするグリムゲルデだが、圧倒的威力の前に吹き飛ばされる。

 

「格闘機なのに遠距離でこの威力なのか!?」

 

「なんの!」

 

 驚きの声を上げるガエリオ、体制を立て直し、右腕の拳を地面に押し当てブレーキをかけるマクギリスのグリムゲルデ。

 

「ふむ……距離を取っても無駄ならば……自ら罠にかかるべきか!」

 

 ビームサブマシンガンを二丁取り出し、マグネットガンダムの元へ飛び出すアメイジンググリムゲルデ。

 

「大尉! そちらへ行きました!」

 

「問題ない。ジーグビームで対応する」

 

 目から放たれる黄色の光線でグリムゲルデを迎撃するが、もちろんそれを躱す。

 

「バラバラババンバン!」

 

 さらに手を開いた腕を両方発射し、グリムゲルデを掴もうとするマグネットガンダム。その一発を躱し、もう一発を弾くグリムゲルデだが、その後ろから飛び出した先ほど対処したのとはまた違う二本の腕に足を掴まれる。なんとか振り払うが……

 

「しまった、コンテナを捥がれた!」

 

 足に付いていたコンテナを剥がされてしまう。そのまま落下するグリムゲルデ、さらにその足を掴んだその腕は、マグネットガンダムの元へ飛んで行き、合体した。

 

「腕を切り替えた……!? でも、何処から……?」

 

 驚きの表情でそれを見つめるガエリオ。また新たなウィンドウを開き、腕が飛んできた方向を映し出す。そこには、ビッグシューターの姿が……

 

「別方向からの攻撃?」

 

「何? ありゃ戦闘機じゃねえか!」

 

 それを見ていたオルガたちが驚愕の目でその光景を見つめる。まだまだマグネットガンダムの追撃は続く。着地したグリムゲルデを相手に拳を握りしめた右腕を発射しサブマシンガンを破壊、さらに……

 

「チェーン! ジーグバズーカ!」

 

「はい!」

 

 ビッグシューターから放たれるバズーカのようなパーツがマグネットガンダムの、既になくなった腕部に接続される。

 

「バズーカ、シュート!」

 

 そこから連続して放たれる砲弾。それを廃墟の道路を滑りながら躱すグリムゲルデ。

 

「ミサイルだ、あいつを上から引き摺り下ろせ!」

 

 腕部マイクロミサイルを発射しビルを破壊する。が、その爆風の中から無傷で現れ、飛び降りるマグネットガンダム。

 

「硬いな……だが!」

 

 飛び降りたマグネットガンダムにもう片方のサブマシンガンで攻撃するグリムゲルデ。が、それを躱したマグネットガンダムがスピンストームで背後のビルを破壊し、それにより落下する岩石で攻撃する。それを躱すグリムゲルデだが、前方から接近する二本の腕に肩を掴まれる。

 

「これは……先ほど弾き飛ばした腕か!」

 

 先ほどグリムゲルデが躱し、弾き飛ばした最初の腕をマグネットガンダムは次の一手に使用したのだ。それにより仰向けに倒れそうになるグリムゲルデだが……地面に手をつけ後ろに転がることですぐに体制を立て直す。が、隙は大きく……

 

「ダイナマイトキック!」

 

 飛び蹴りで左腕を破壊される。なんとか左腕以外の被害は免れ、サブマシンガンで反撃するがあまりにも高い防御力を誇るマグネットガンダムに傷一つ付けられず、そのままスピンストームで辺りを焼き払われる……が、その爆風の中からグリムゲルデが飛び出す。

 

「やはり……彼は強い」

 

 バズーカを外し、本来の右腕に戻した状態でビルの上に立つマグネットガンダム。この激しい戦いの中で未だ無傷である。

 

「流石の硬さ、流石の素早さ……何もかもが流石と言う他ない。それにあのパーツ交換能力……関節部に特殊磁石を仕込んで合体、分離を行なっているんだろう。アレならば小さい傷など何の意味も為さないだろう。ならば、無傷の状態から一瞬で討ち取るしかあるまい」

 

「この街の中に潜んでいるか……ならばあぶり出す!」

 

 スピンストームで街を焼き払うマグネットガンダム、爆風から逃れながらドームの中へ逃げ込むグリムゲルデ。

 

「確かにアレは脅威だ……だがこの閉鎖空間で一気に仕留めれば」

 

「……いや。奴は元々格闘機だ。ならば、接近戦でヤツが弱いわけが……」

 

 ドームの壁を粉砕し現れるマグネットガンダム。それに反応しサブマシンガンを連射するグリムゲルデだが、やはりサブマシンガンではまったく歯が立たない。

 

「言った通りだ!」

 

 ビームサーベルを取り出し斬りかかるグリムゲルデ、がその刃はまったくと言っていいほど通らない。そのまま頭部を殴りつけるマグネットガンダム。

 

「サーベルも効かないのか!?」

 

「出し惜しみはしない、実体剣で!」

 

「ヴァルキュリアブレードなんて通るのか!?」

 

 胴体を斬りつけるグリムゲルデ、浅い傷ではあるが、今大会において、初めてマグネットガンダムに傷が付いた瞬間だった。

 

「くっ……当たったのか!?」

 

「アムロ大尉! マッハドリルを!」

 

「分かっている!」

 

 両腕を発射し攻撃するマグネットガンダム、容易く避けるグリムゲルデだが、この攻撃は次の攻撃への布石だった。

 

「これは……ドリルか!」

 

 なくなった両腕に巨大な掘削機を装着するマグネットガンダム。これが先ほど使用したバズーカに次ぐオプションパーツ、マッハドリルであった。それに装着されたブースターで加速し、グリムゲルデで突っ込む。それを間一髪で躱すが、マグネットガンダムは方向転換し再度接近する。身体を捻り躱し続けるグリムゲルデだが、その圧倒的なスピードの前に防戦一方だった。

 

「まずいぞ。あの速さでは剣を当てることは出来ない」

 

「捕まえるしかないか」

 

「その必要はないな!」

 

 自ら真正面から突っ込んできたマグネットガンダムがドリルを突き出し、そのまま組みついてくる。

 

「……捕まえた!」

 

 マッハドリルを分離し、通常の腕に差し替えるマグネットガンダム。そして、そのまま相手の胴体を締め付け……

 

「ジーグブリーカー! ……死ねぇ!」

 

 真っ二つに割ろうとする。ピキピキと音を立てながら破片が零れ落ちるアメイジンググリムゲルデ。

 

「くぅっ……やられる……!」

 

「マクギリス! ……アレを使うんだ! 早くしろ!」

 

「……! そうだな……!」

 

 アメイジンググリムゲルデの目が赤く光る。自らを締め付ける腕を無理やり振り払い、宙返りしながら地面に降り立つ。

 

「赤く光った目……阿頼耶識システムか!」

 

 観戦していたオルガが、自らのチームも使っていた阿頼耶識システムであるとその目を見て叫ぶ。だが、隣に座っていた沙慈がそれを訂正する。

 

「……アレは阿頼耶識システムじゃない。ガンダムのゲーム、THE BLUE Destinyシリーズに登場したニュータイプ殲滅用システム……その名は、EXAMシステム!」

 

 この大会にも度々参戦していたブルーディスティニー系統のモビルスーツが搭載する、リミッター解除を行うニュータイプ殲滅用自律稼働システム、EXAM。アメイジンググリムゲルデは奥の手として、それを搭載していたのだ。

 

「……ブルーディスティニー系統でもないのにどうやってそれを……」

 

「答えは簡単だ。このグリムゲルデの頭部は、グリムゲルデの頭部のガワをブルーディスティニー一号機の頭部に被せただけのカモフラージュ。そしてEXAM搭載機の頭部さえ移植すればEXAMの起動は可能になる!」

 

 そう、何を隠そうこのアメイジンググリムゲルデ、頭部は一皮剥けばもう既に一号機の頭部が見えるという設計になっており、この構造ならば相手にグリムゲルデの頭部であると誤認させつつ内部に搭載されている本物の頭部でEXAMの起動が可能になる。まさに、覆面ガンプラだ。

 

「EXAMシステムとは、流石に予想外だった。だが……!」

 

 再びマッハドリルを装着するマグネットガンダム。EXAMを起動した状態で剣を構えるグリムゲルデ。

 

「……行くぞ!」

 

 地を滑りマグネットガンダムに接近するグリムゲルデ。マグネットガンダムのドリルを横っ飛びで躱し、剣を振るう。ドリルで防ぐマグネットガンダム、キックで反撃する。怯まず、そのキックを利用して後ろへ下がるグリムゲルデ。発射されるマッハドリル、飛び道具として使用された二つの鉾を剣で弾き飛ばすグリムゲルデ。が、しかし。

 

「終わりだ」

 

 その後ろに隠れ接近していたマグネットガンダムに蹴り飛ばされ……折れた剣と共に倒れこんだ。

 

「……マクギリスが……アリアンロッドの総力が……負けた」

 

 EXAMシステムもダウンし、元に戻る目の色。剣も折れ、片腕は既に無く、残りの武装すらない。絶望的な状況で倒れこんだ戦乙女には、既に戦う力は残っていなかった。

 

「まだ……負けていない。負けていないぞ、ガエリオ!!」

 

 が、その戦乙女は。そんな状況であってもまだ、活路を見出した。ブースターを吹かすグリムゲルデ。そのまま噴水へ突っ込み……

 

「ガトリングガンか!?」

 

 飛び散った水の中から、バルカン砲を構えたグリムゲルデが現れる。放たれる銃弾が目の前の鋼鉄の神を撃ち抜いていく。

 

「何? 俺のジーグが……!」

 

「これはスパロボではない。ガンプラバトルだ!」

 

 当たり前の事実を言い放ちながら、ガトリングを撃ち尽くすグリムゲルデ。何故ガトリングガンなんて代物が置いてあったかと言えば、試合序盤に剥がされたコンテナ……その中に入っていたから。そしてそのコンテナが落とされた場所こそが、この噴水だったという訳だ。穴だらけになったマグネットガンダムが爆散するところを見届け……試合は、終了した。

 

「……なんてな!」

 

 訳ではなかった。爆風の中から飛び出すのは、マグネットガンダムの頭部。ジーグヘッドというヤツだ。

 

「チェーン! パーツを!」

 

「はい!」

 

 再びマグネットガンダムに合体し、無傷の状態で地面に降り立つ。一方的な仕切り直しを受けるマクギリス。

 

「マクギリス! ビッグシューターを落とさなかったのは失敗じゃないか!?」

 

「いや……これでもまだ、勝ち筋はある! ……むしろ、本体が頭ということを教えてくれた。勝ち筋が増えたところだ!」

 

 もう一方のコンテナからチェーンソーを取り出すグリムゲルデ。それに対し、素手で構えるマグネットガンダム。

 

「行くぞ……もう一回、EXAMで……!」

 

 クールタイムの終了したEXAMで、マッハドリルに換装する前のマグネットガンダムへ突っ込む。マグネットガンダムはそれを躱すも、追い討ちに放った膝蹴りが命中し……

 

「その首貰った!」

 

 叫ぶマクギリス。チェーンソーがマグネットガンダムの頭部を捉える。スピンストームを放ち反撃しようとするマグネットガンダムだが……

 

「……しまった! 発射口が……!」

 

 先程の膝蹴りでスピンストームの発射口は歪んでおり、撃てば暴発しマグネットガンダムも粉々になってしまう。そのままチェーンソーがマグネットガンダムの頭部を削り……

 

「……負けたよ、メイジンアグニカ……」

 

 粉砕。残った胴体はそのまま倒れこみ……今度こそ勝負は決したのだった。

 

《battle end》

 

 捲き上る歓声。

 

「やったぞマクギリス! あのアムロ・レイ相手に大金星だぞ大金星! お前じゃなきゃ絶対に勝てなかった!」

 

「……確かに、アムロ・レイにはここまでしないと勝てなかったかもしれない……だが、私は……私はワークスチームの技術の結晶であるこのガンプラを……ここまで破壊してしまった」

 

 なんとも言えぬ表情でほとんど相討ちのように崩れ落ちたグリムゲルデを見つめるマクギリス。そして……それを上から見上げるのは、オルガたちチーム鉄華団。

 

「……やっぱマクギリスは凄えな……」

 

「そうだね。だからこそ、俺たちも行こうよオルガ」

 

「あぁ。あいつのいる場所へ、あいつの待ってる決勝戦へな! そいつが俺の……俺たちチーム鉄華団の最高の上がりだ!」

 




「やべえ……スーパーコーディネーターの先輩じゃん……」
「チーム鉄華団。彼らは強敵です」
「分かってるさ。だから、僕も本気で行かなくちゃ」
次回『我が道を征く者』
「道を切り開け、フリーダムアストレイ!」


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第18話 我が道を征く者

 

 宙を舞うブレイヴとフリーダムアストレイ。ブレイヴの放つビームを躱したフリーダムアストレイが接近し、ブレイヴの変形機構を破壊する。

 

「やるな!」

 

 ブレイヴが放つ膝蹴りがフリーダムアストレイを怯ませるが、いつの間にか解放されていたドラグーンにブレイヴは蜂の巣にされる。

 

「これで……終わり!」

 

 落下するブレイヴに刀を一突き。勝負は決した。

 

《battle end》

 


 

 観戦を終えた帰り道のオルガたち。

 

「いやぁさっきのフリーダムアストレイとブレイヴの戦いは凄かったなミカァ!」

 

「……うん。負けた方のブレイヴだっけ? そっちも凄い強かったし、世界大会のすごさを改めて感じれたかも」

 

「あぁ。そして俺たちの次の相手だ」

 


 

 ……その頃。キラ・ヤマトは……

 

「ラクス? どうしたんだい?」

 

「キラ。ついに彼らが食いついて来ましたわ。私たちのスポンサーになりたいと、アリアンロッドが申し出を」

 

「本当かい? ……ラクスも変なこと考えるよね。オモチャを動かすだけの粒子の謎を調べようだなんて」

 

「いえ。あの粒子は、プラフスキーは……この世界を変えてしまうかもしれないのです」

 

「大袈裟だよ」

 


 

「ラスタル様。良いのですか? あの様な者たちに工場見学などさせてしまって。あのエリアは不可侵ではないのですか?」

 

「……泳がせておけ。どうせ彼は次の試合で……鉄華団の輝かしい伝説の1ページとなり、負けたとなれば適当に理由を付け……我々の近くから消えてもらえばいい。新しい時代の糧になる駒を増やしたにすぎないんだよ、我々は」

 


 

「明日の組み合わせはオルガたちのチームとキラの試合と……」

 

 トーナメント表を見るムウ。

 

「……この勝負、どっちが勝つかねえ……」

 


 

 翌日。ガンプラバトル会場にて……

 

《battle start》

 

「……さて。行こうぜミカ。身体の方は?」

 

「オッケー。身体なら大丈夫、もうかなり動くよ」

 

 城のステージに飛び出すユニコーンガンダムマーズキング。赤い空、輝く月、そして日本の城。そんな風情のあるフィールドは……

 

「僕がまた吹き飛ばすよ」

 

 ドラグーンを解放しあたりを焼き払ったフリーダムアストレイにより、城も山も野原も全て吹き飛ばされ、荒野と化す。その光で辺り一帯が眩い光に包まれ昼のようになる。フィールドの特徴を一瞬で全て消し去ったフリーダムアストレイが地面に降り立つ。

 

「さて、やろうか」

 

「……なんて威力だ……戦う前にまずフィールドを粉々に……」

 

 刀を抜くフリーダムアストレイ。

 

「ミカァ! 短期決着で……阿頼耶識を繋ぐぞ!」

 

「分かってる」

 

 NT-Dを起動しデストロイモードに変形、さらに目を赤く光らせる。バックパックからビームサーベルを引き抜くユニコーンガンダムマーズキング。お互い剣を構え睨み合う。先に動いたのはフリーダムアストレイ、初動の動きを見せず鋭い剣戟を振るう。が、それに一瞬で反応したユニコーンがそれを躱す。

 

「躱された? くっ……!」

 

 距離を取りながらドラグーンを放つフリーダムアストレイ、恐ろしい素早さで的確な動きをするオールレンジ攻撃が襲い来る。

 

「……またこれか」

 

 だがムウのターンXやガンプラマフィアのジオングとの戦いで既に対応に慣れた三日月は辺りを駆け巡るドラグーンのビームを避け、手に持ったサーベルで切り払って行く。

 

「ドラグーンが通用しないなら……」

 

 放出していたドラグーンを辺りに漂わせ、全砲塔を放つフリーダムアストレイ。さすがに避けきれず、シールドで受けるユニコーンだが、それでも受けきれずシールドを粉砕される。

 

「……手強いか」

 

「フルバーストで倒せないなら、接近戦を……いや、ドラグーンで充分か?」

 

 再びユニコーンの周りに漂うドラグーン。今度は切り払われないよう距離を取りつつ射撃している。それを躱しながら頭部バルカンを連射するが、ユニコーンの頭部バルカンではドラグーンを撃ち落とすことは不可能だ。舌打ちをする三日月。その次にすぐさま行った行動は……サーベルを投げること。手に持ったサーベルを投げつけ、ドラグーンを破壊する。さらにもう一本、バックパックのサーベルを投げつけ、さらにさらにビームトンファーとして使用可能な腕部のビームサーベルも一本二本と投げつけドラグーンを破壊して行く。

 

「武器を投げた? だけどそれじゃ近接武器は……」

 

 サーベルを全て消費し尽くしたところを見計らい接近しトドメを刺そうとする残りのドラグーンだが……それは突如振るわれた鉄塊に薙ぎ倒され、破壊された。

 

「アレは……そうか、ムウさんと戦った時使ってたメイスか!」

 

 ドラグーンが巻き起こした爆風の中から現れるのはメイスを携えたユニコーンガンダム。それを見たフリーダムアストレイは……背中の羽根から、光の翼を解放した。

 

「……だったら……僕だって本気でやるしかないよね……!」

 

「ねえ、手品はもう終わり?」

 

「行けミカァ! 接近戦なら……」

 

 突っ込むユニコーンだが、そのメイスはかわされ、顔面を蹴りつけられる。さらにそのままの勢いでフリーダムアストレイはビームライフルを投げ捨て、ビームサーベルを抜き、メイスを弾き飛ばす。

 

「しまっ……!」

 

「悪いけど……勝たせてもらうよ!」

 

 左腕にサーベルを突き刺し、その刺さった持ち手を掴み投げ飛ばす。岩肌に叩きつけられるユニコーン、右腕を動かして抵抗しようとするもそこにもう一本のサーベルが右の掌に突き刺さり岩肌に固定される。さらにフリーダムアストレイは投げ捨てた二丁のビームライフルを空中でキャッチし連結させ、身動きの取れないユニコーンを踏みつけながらそれを突きつける。が、バックパックに背負っていた予備のシールドがいつの間にかシールドファンネルとして解放されており、その攻撃でフリーダムアストレイが怯んでいる隙に無理やり磔を解きながら顔面を殴りつけるユニコーン。それでもフリーダムアストレイは殴りつけられた衝撃を利用してユニコーンを蹴りつける。それに怯まず突っ込んできたユニコーンに、腰部レールガンを突きつけ放つ。肩の装甲が剥げながらも、貫手でフリーダムアストレイの左肩を破壊する。お互いに離れながら、空へと加速し宇宙へ出る二機のガンプラ。

 

「ガーベラストレート!」

 

 二本目の日本刀……ガーベラストレートを抜くフリーダムアストレイ。

 

「……ミカ。やれんだよな? だから任せてんだぞ?」

 

「当たり前だよ。オルガが言うならね」

 

 武術の構えを取るユニコーン。そして、その目は赤色に染まっていた。振るわれる刀の下に回り込んだユニコーンが、手刀でその腕を斬り裂く。そして……

 

「決めるぞミカァ! 手に全神経を接続、機体を自動稼働に変更! 後は気合で補えばいいんだ!」

 

「これで……」

 

 全力の貫手が、フリーダムアストレイの胴体を貫いた。

 

「……ごめんねラクス。僕はやっぱり、この粒子は遊びのためにないとダメだと……」

 

《battle end》

 


 

「勝ったぞミカァ! 俺たち強豪と当たりすぎだぜ……」

 

「だけど、勝てたんだから良いじゃん」

 

「まあ、そうなんだけどよ」

 

 明るく語り合うオルガたちの裏で、微妙な顔でラクスと対面するキラがいた。

 

「……負けちゃったよ。これじゃあもう……」

 

「いいのですわ。あそこまで楽しそうにしてるキラ久しぶりに見たのですもの」

 

「そうかい? ……粒子の謎はまた今度かな?」

 

「いえ。こちらが既に手を回しておりますわ」

 

「……仕事が早いね」

 

 微妙な表情が優しい笑顔へと変わり、キラはオルガたちの方へ向き直り……

 

「頑張ってよ。優勝したいなら……僕を倒したくらいで満足しちゃダメだからね……」

 

 

 




「アインとムウの準決勝が始まったようだ」
「ムウさんの方は……アレステラじゃ?」
「ステラだって辛いんだ。止めてやってくれ」
「アインの方は……あのドイツ仮面は!?」
「俺にはクランク顧問の他に恩人と言える人がもう一人居るんです。その名前は、キョウジ・カッシュ」
次回『大地のガンダム・鏡のガンダム』
「二本立てじゃねえのか?」


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第19話 大地のガンダム・鏡のガンダム

 アリアンロッド開発ラボにて……

 

「ガエリオ主任? ……え? プロジェクトB・E・Lを今すぐロールアウトする? アレはまだ未完成で……すぐにそちらへ送らなければならないと……了解しました」

 

 開発されている謎のガンプラ。それは、二つの剣を携えた……白い、ガンダムだった。

 


 

 再び、ラスタルとジュリエッタはVIPルームにて前回の試合を見返していた。

 

「予想通り、勝利したのはチーム鉄華団か」

 

「はい。ラスタル様の予想を疑っていたわけではありませんが、まさかあのキラ・ヤマトを破るとは。……憎いものですね」

 

 不満そうな表情を浮かべるジュリエッタ。

 

「どうした? バトルが出来ず不満か? ……今回のワークスチームのファイターはマクギリスに決定しているんだ。我慢しろ」

 

「分かっていますが」

 


 

「さてと……俺も行きますか」

 

 ターンXを持ち宿を出るムウ。そこに待っていたのはドアン。

 

「おお、ドアンさんか。お出迎え感謝」

 

「それはいい。……準々決勝か……相手はコウ・ウラキ相手に一度敗北した事以外は無敗を貫いているステラ・ルーシェだ。気をつけろ。……もっとも同じガンプラ連合のファイターであるお前には分かりきっている事か」

 

 それを聞き……脳裏に、ガンプラ連合の生体CPU開発部を訪れた時のことを思い出すムウ。連合の上層部は、彼女の当て馬として彼を使うつもりだ。だが……そんなことは、彼にも分かりきっているようにも見えた。

 

「……どうしたんだ? ムウ」

 

「いや、少し考え事を……心配しなくても、俺は勝ちますよ。あいつらへのリベンジ、しなくちゃなりませんからね」

 


 

 これまでのベスト4は、鉄華団と、マクギリスのワークスチーム。……そして本日、残りの二組が決まる。

 

「アムロ・レイとの今大会最高と言っても差し支えないバトルをしたメイジン・アグニカ……そして完全復活した三日月君による接戦を見せてくれたチーム鉄華団……それに続くのは、どちらなんだ?」

 

 奇しくもガンプラ連合のファイター同士の戦いになったステラとムウの戦い。東から来たるは不可能を可能にする男、ムウ・ラ・フラガ。西から来たるは最強のファイターとして送り込まれたステラ・ルーシェ。ムウのガンプラはトールギス、ターンX、そしてガンバレルストライカーをミキシングし完成した、通称ストライカーXとも言われる専用のターンX。ステラのガンプラは準々決勝まで温存されていたと思われる謎のガンプラ、ガイアガンダムファントム。

 

《battle start》

 

「ムウ・ラ・フラガ! ターンX! 出撃する!」

 

 雪原に飛び出すターンX。それを捕捉したガイアは、MA形態に変形しその雪原を駆け回る。

 

「元気な子犬ちゃんだこと!」

 

 腕を分離しガイアを追尾させるターンX。ターンXの分離は一度失えばもう補給できない代わりに自由に動かすことができる為、前々回の試合で登場したマグネットガンダムとはまた違う特性を持つ。飛び上がり、雪山を滑りながら腕の方向に向き直り、ビームライフルを連射する。怯ませることは出来るが、破壊することなど出来ない。その間に回り込んでいた本体に蹴り飛ばされるガイアだが、すぐさま変形し撃ち返す。それを避け、ガンバレルを展開しながら腕を戻すターンX。

 

「……やっぱりムウ、強い」

 

「悪いけど俺もタダでかませ犬になるつもりはないんでね!」

 

 ガンバレルに対応し、周りの砲塔を切り払おうとするガイアガンダムだが、対応しきれず攻撃が命中、隙が生まれる。それを逃さず右腕部からビームサーベルを発生させ斬りかかるターンX。が……陽電子リフレクターのような、光の壁に防がれる。

 

「こいつは……陽電子リフレクター、いやアルミューレ・リュミエールか!」

 

 アルミューレ・リュミエール。SEEDシリーズに登場した防御機構であり、主にハイペリオンガンダムに搭載された。有り体に言ってしまえばバリアであり、あらゆる攻撃を耐えれる範囲までなんであろうと弾き返す、無敵の装甲である。本来はガイアガンダムに搭載されているわけがない、超武装。そんな光の壁にターンXの攻撃は阻まれ、逆に蹴り飛ばされてしまう。

 

「おいおい、そんなのありかよ? ……まあ、勝つんだけどな!」

 

 月光蝶を展開するターンX。確かに、隙をついて月光蝶を直撃させればアルミューレ・リュミエールも無力だ。だが、背中から発生し羽のように使用する月光蝶では、目の前にいるガイアに当たることは難しい。

 

「……少しでも当たれば、俺の勝ちだ!」

 

「当たらなきゃいいだけ……!」

 

 牽制で放たれるビームやガンバレルの砲弾を弾き返しながら月光蝶を避ける位置でターンXを攻撃するガイア。

 

「即死が当たらねえのなら……真っ向から!」

 

 ガイアから放たれる光線を避けながら、溶断破砕マニュピレーターの出力を上げていくムウ。そして、フルパワーに達した途端……

 

「シャイニング!」

 

 急加速し、ガイアに肉薄する。だが搭載されたアルミューレ・リュミエールの効果でターンXの攻撃は通用しない……

 

「フィンガー!」

 

 訳ではなかった。溶断破砕マニュピレーターのフルパワー、登録名シャイニングフィンガー。それにより、無敵のバリアは砕かれ、攻撃が通るようになる。

 

「勝ったぜ!」

 

 ビームサーベル状にビームを変形させるターンX。勝負は付いた……はずだった。

 

ARAYASIKI

 

 目が赤く光ったガイアがその刃を避け、ターンXを殴りつける。

 

「その赤い目は……阿頼耶識!? ガンプラ連合のエクステンデッドに阿頼耶識を上乗せとは……さすがに趣味が悪いぜ、そりゃ」

 

 サーベルを持ったガイアに連続で斬りつけられるターンX。抵抗すら出来ずに接近戦で圧倒される。

 

「なんで俺は……阿頼耶識相手にツキがないのかね……」

 

 シャイニングフィンガーを放とうとするも、その前に殴り飛ばされ地面に倒れこむ。

 

「悪いね。リベンジはできそうにない」

 

《battle end》

 

 試合終了のブザーが鳴り響く。だが、しかし。

 

「……む? ちょっと待て、ステラが止まらないんだが」

 

「こちらの調べによりますと、元々エクステンデッドのステラにEXAMとナイトロと阿頼耶識を併用させたせいで精神負荷が上限を超えたようです!」

 

「何故そんなに山盛りにした!? 言え!」

 

 動きを止めないガイアがサーベルで倒れたターンXを執拗に突き刺す。

 

「やめろ! もう試合は……」

 

「……うるさい……うるさいうるさい」

 

 何かを呟きながら、それを続ける。が、そこにもう一機、試合に参戦していないガンプラが現れる。キャスバル専用ガンダムだ。

 

「……あんたさ、もう戦いは終わったんだからこういうのやめてくれる?」

 

 乗っているのは……三日月。サーベルを構え、ガイアに斬りかかるも……すれ違った一瞬に四肢を砕かれ雪原に沈む。

 

「……邪魔な奴」

 

「嘘だろ!? ミカのガンダムを一瞬で……」

 

 驚愕の声を上げるオルガ。だが、しかし。ゆっくりと振り向いたガイアは……突然飛んできた網に絡まる。

 

「……! 嘘? 誰!?」

 

 それを放った方角から現れる、黒いガンダム。

 

「私はドイツ代表、シュバルツ・ブルーダー。覚えておいてもらおう」

 

 そこに立っていたのは……ガンダムシュピーゲル。

 

「怪しいヤツ……お前は誰だ!?」

 

「先ほど名乗っただろう。同じことは二度言わない主義でな!」

 

 ネットを引きちぎりシュピーゲルに斬りかかるガイア。が、そのシュピーゲルは影に消え去る。

 

「嘘? いない?」

 

「こっちだ!」

 

 気付かぬ間に回り込んでいたシュピーゲルが腕部の刃でガイアの右腕を斬り飛ばす。それに反応し振り返ろうとするガイアだが、回し蹴りで吹き飛ばされる。

 

「反応は上々のようだが、それに身体が付いて来ていないようだな」

 

「うるさい……なんで邪魔を……!」

 

「悪いが、試合はここで終了させてもらう!」

 

 襲ってくるガイアの左腕、右足左足、頭部を切断し、さらにバックパックを分解する。

 

「嘘……なんで、なんで?」

 

「まだ私の番ではない故に、破壊するのは忍びない。だが、バトルシステムを強制停止させるにはそれしかあるまい!」

 

 雪原に倒れこむガイアのコックピットに刃を突き刺し、爆散させる。さらにシュピーゲルはフィールド外に身投げすることによりこれによりフィールド上に戦闘可能なガンプラは存在しなくなり、バトルが強制終了する。

 

「……俺がボロ負けしたステラをそんなにあっさりやっちゃう?」

 

 呆気にとられた顔でその光景を見るムウ。

 

「あんたは……一体」

 

 さらに、オルガたちの注目はステラのガイアをあっさりと分解した覆面ファイター……シュバルツ・ブルーダーに集まる。

 

「おっと失礼。見ていられなかったからつい乱入してしまった」

 

 そして、そのシュバルツ・ブルーダーを見ている者がもう一人。

 

「あの人はまさか……キョウジ・カッシュ?」

 

 アイン・ダルトン。どうやら彼は、シュバルツに見覚えがあるようだ。さらに、それを観客席から眺めるゴッドガンダムを握りしめた男。

 

「……アイン。次の相手は俺の兄さんで……お前の師だ」

 

 




「クランク顧問は俺にガンプラを教えてくれた!カッシュ家は俺にガンプラバトルを教えてくれた!」
「だからこそ俺はキョウジさんを超えてみせる!」
次回『シュピーゲル』
「フハハハ!甘いぞアイン!」


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第20話 シュピーゲル

 さて皆さん、大変なことが起こりました。ドイツ代表のシュバルツ・ブルーダー、彼はなんと強豪、ムウ・ラ・フラガを倒したステラ・ルーシェをあっさりと鎮圧してしまうではありませんか。さらに、そんな彼の次の対戦相手であるアイン・ダルトンはその彼、シュバルツ・ブルーダーに何か心当たりがあるようなのです。突如現れた覆面のファイター、果たしてアインは準決勝のマクギリスの元へ駒を進めることができるのでしょうか? 

 

 それではガンダムファイト、レディー! ゴー! 

 


 

「もう試合の進行に支障はあるまい、大会を続けてくれ」

 

 ガイアを容易く撃破したシュバルツが改めてバトルシステムの端に立つ。

 

「えー……ハプニングはありましたが、準々決勝最終試合を開始します」

 

 会場にアナウンスが入り、試合が終了した選手たちが退場し、シュバルツの対戦相手……アインが入場する。

 

「あの実力……二人のファイターを連戦で倒したステラ・ルーシェのガイアを一瞬で解体するなんて、はっきり言って俺の勝てるような相手じゃない……だけど、あいつらも使っていた阿頼耶識なら……!」

 

 様々なジャンクパーツで補修したグレイズアイン、グレイズアインリペアードを握りしめシュバルツの前に立つアイン。そして……バトルシステムに粒子が散布され、戦いの準備は整う。

 

「フッ……教えてやるアイン。純粋な反応速度に頼りすぎることが、死を招くと言うことをな!」

 

 旧キットのシュピーゲルを極限まで作り込んだガンプラをセットするシュバルツ。粒子との兼ね合いも含め、旧キットにも関わらず圧倒的な性能と可動域を誇る。

 

「それでは行くぞアイン! ガンプラファイト!」

 

「レディ……ゴー!」

 

 お互いに開始を叫び、荒野に降り立つ。グレイズアインが振るう巨大バトルアックスをシュピーゲルブレードで受け止める。それを弾き、肩に蹴りを入れるシュピーゲル。それに留まらず連続で蹴りを入れる。

 

「ハハハ! どうした!」

 

「やっぱりこの動き……!」

 

 そのまま背後に回り込み、シュピーゲルブレードで斬りつける。振り返るグレイズアインだが、振り返ると同時に放った斧の一撃は分身で躱される。さらに背後から飛び出してきたシュピーゲルの攻撃を斧で防ぎ、鍔迫り合う。

 

「やはり……この動き、キョウジ・カッシュ! キョウジさんなのですよね……!」

 

「さてどうだろうな。この戦いに勝てれば分かるかもしれんな」

 

 お互い弾き合い、着地するシュピーゲル。グレイズアインの放つ攻撃を躱し続け、右手の斧を弾き飛ばす。それに肩のマシンガンで対抗するも通用せず、ステラ戦でも使用した網、アイアンネットでグレイズアインを固める。

 

「どうした、自慢の阿頼耶識とやらは!」

 

「……うるさい!」

 

 阿頼耶識を接続しモノアイガードを開くグレイズアイン。ネットを必死に振り払いシュピーゲルに襲いかかる。初撃を躱され、すぐさま二発目を放つ。ブレードに防がれるも落ちていたもう一本の斧を拾い三発目を放ちシュピーゲルを吹き飛ばす。さらに吹き飛んだシュピーゲルに膝蹴り、ドリルキック、パイルバンカーなどのあらゆる攻撃を叩き込む。が……

 

「ハハハ……何処を狙っている?」

 

 何故か、背後からシュバルツの声が聞こえる。気付いた時には、攻撃を叩き込んでいたはずのシュピーゲルは消え去っていた。

 

「いつからそこに?」

 

「お前が追撃しようとした辺りからだ。このような変わり身に騙されるとは……単純な反射だけではそれ以上強くはなれんぞ」

 

「知った風な口を……俺は俺のやり方で、今日こそあなたを超えてみせる!」

 

「フン……阿頼耶識に振り回されるようではこのシュピーゲルは捉えられぬわ」

 

 足を掘削機のように回転させ、ドリルキックを放つグレイズアイン。だがそれがシュピーゲルに触れることはなく、分身で躱されてしまう。さらに顔面に蹴りを受け、右腕を切り飛ばされてしまう。錯乱して斧を突き出すアインだが、シュバルツはシュピーゲルの特性すら使わずその斧の上に飛び乗ってしまう。

 

「武器の上に……」

 

「愚か者め!」

 

 さらにそこから頭部を蹴り、その衝撃で落とした斧を踏みつけて折るシュピーゲル。

 

「どうやらとんだ期待外れだったようだな。それでは私にも、ドモンにも勝てはしないぞ」

 

「ドモン……ドモン・カッシュさんか。確かにあの人のゴッドガンダムは強い」

 

「その通りだ。今の機械のシステムに頼ったお前では明鏡止水の領域にまで至るなど夢のまた夢。恥を知れ!」

 

 腕を組み、ブレードを収納するシュピーゲル。

 

「確かに俺は……カッシュ家の人間に一度も勝ったことはなかった。だけど、俺は昔とは違う。クランク顧問から託されたこのガンプラがある。そして俺の後ろには彼らがいる!」

 

「何!? まさかお前のスポンサーは」

 

 立ち上がるグレイズアイン。そして、アインから放たれる言葉に驚愕の声を上げるシュバルツ。

 

「だけど、それも今日で終わりだ!」

 

 背中に刺さった阿頼耶識のケーブルを引きちぎるアイン。それと同時に、バトルシステムに通信が入る。

 

『何をしているアイン、貴様に阿頼耶識を与え出場権まで用意したのは我々なのだぞ?』

 

「会長。俺はここから、俺だけの力でやって見せます。連合には既に二人ファイターがいる、それにアリアンロッドにもマクギリス先輩が……!」

 

『おい、話は終わっていないぞ』

 

 通信を切り、操縦桿を握るアイン。それに対し、ブレードを展開し構えるシュバルツ。

 

「ついに吹っ切れたか。だがその小細工なしのお前がどこまで私に通用するか?」

 

「通用します。させてみせる!」

 

 自らモノアイガードを引きちぎり、拳を握りしめる。

 

「ハハハ! そのパイルバンカーだけで私を倒すつもりか! ……面白い! 正面から受けて立とう!」

 右手を失った状態ではほとんど無傷のシュピーゲルには勝てない。会場のほとんどがそう考えた。だが……突き出されたブレードを分身し回避、さらに背後に回り込み顔面に一発食らわせるアイン。

 

「分身殺法、体得したか!」

 

「いえ、これは分身ではありません。……単純な速度で回避しました」

 

「速度でだと? ……面白い事をしてくれる」

 

 後ろに下がり、何やら妙な構えを取るシュピーゲル。

 

「行くぞ。シュツルム・ウント・ドランク!」

 

 シュバルツが叫び、回転するシュピーゲル。まるでコマのように回転したそれは、全てを切り裂く竜巻となりグレイズアインに迫る。躱すグレイズアインだが、何回も曲がりながら向かってくるそれを避けきることはできず、ついに直撃を食らってしまう。連続の斬撃を受け、ボロボロになるグレイズアインだが……

 

「取っ……た」

 

 その激しい攻撃の中、頭を掴むことに成功する。

 

「……ぐっ……しまった!」

 

 回転数を上げ、一気にトドメを刺そうとするシュバルツ。が、グレイズアインのパイルバンカーは稼働を始め……

 

「ガンダムファイト国際条約第一条。……頭部を破壊されたものは、失格と……」

 

 シュピーゲルの首を、討ち取った。

 


 

《battle end》

 

「……強くなったな。アイン」

 

「待ってください! やはりあなたはキョウジ……」

 

「私からは語らん。……聞きたければ観客席にいる弟に聞け」

 

 去っていくシュバルツ。完全に退場する前に、観客席で見守っていたドモンを指差し、何処かへと去っていった。

 

「……試合に勝って勝負に負けた気分だ。やはり彼らは強い……あの人たちに相応しいファイターになる為に、今大会で優勝しなければ」

 

 そして、破壊されたグレイズアインを見て……

 

「クランク顧問。あなたのガンプラは、確かに責務を全うしました。今度は俺が一から作ったガンプラで……」

 

 それを、静かにしまいこんだ。それを見ていたマクギリスたちワークスチームは……

 

「フフッ、まさか強豪であるカッシュ家の者が彼を育てる為だけに出場したとはな……彼らならば優勝を狙いに行けるだろうに」

 

「そう言うなガエリオ。私は楽しみになってきたよ。彼と……アイン・ダルトンと戦うのがね」

 

 オルガたち鉄華団、ステラの連合チーム、そしてワークスチームのマクギリス。……さらに、連合とアリアンロッド双方と繋がっていたと思わしきアイン。ベスト4は出揃い、ついに準決勝が始まる……

 




「ついに準決勝開幕だ!」
「……三日月」
「ステラ……」
「あの二人の戦いを止めないと。ステラは三日月と戦いたくなんかないんだ」
次回『運命の種』
「これってただの遊びだぜ?」


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第21話 運命の種

「……い、いやぁ……凄い戦いだったな」

 

 震え声で三日月に話しかけるオルガ。だが、三日月はアインの試合を見ておらず……ずっと、破壊されたキャスバル専用ガンダムを見つめ黙り込んでいた。

 

「……ステラ」

 

「やっぱり、そうなんだよな。お前あいつと仲良いんだろ?」

 

「そこまででもないけどさ。次の相手は結局あいつなんだから」

 

 そのようなことを話すオルガたちの部屋のドアが開き……黒髪の青年、シン・アスカが入ってくる。

 

「あんた……よくステラの近くにいる」

 

「シン・アスカだ。……頼む。ここで一旦、ステラを……負けさせてやってくれ」

 


 

「えっと、改めてこんなこと頼んで申し訳ないんですけど……」

 

「いいんだよシン。……ステラを負かしたいって、どういう……」

 

 改めて、沙慈や刹那、キラも呼んで、テーブルを囲みシンの話を聞くオルガたち。

 

「……ステラは無理やり戦わされてるだけなんだ。ちょっとばかり才能があるからって、身体弄られて、変なケーブルまで刺して。ステラは望んじゃいないのに。だっておかしいじゃないですか、ガンプラバトルは本来楽しいものなんですよ……」

 

 俯き、ステラの現状を語るシン。顔を上げ、声を張り上げる。

 

「だから! ……あいつらが欲しいのは、ステラの力だけだから……ステラが負ければ、ステラは奴らに捨てられるはずなんだ。ステラが奴らの手から離れれば、後は俺がなんとかするから……」

 

「それは無理だね」

 

 シンが言うステラを救うための作戦を、一言で否定するキラ。

 

「なんで……ステラを助けるためにはこれしか……」

 

「……ステラが不要になったら、シンが思っている通りには捨てられないと思う。おそらく、ステラは殺される。ステラを通じてガンプラ連合の行なっていることがバレれれば連合は失脚、企業としての体が保てなくなる。だから、ステラを野放しにするはずがない」

 

「そ、そんな……人間を殺すだなんてそんなことすればそれこそ……」

 

「いいかいシン。国籍も、身寄りすらもない女の子の死なんて……連合ならいくらでももみ消せるんだよ」

 

 キラの語る現実の前に、顔が絶望に染まっていくシン。先程から黙って聞いていたオルガたちも冷や汗をかきはじめる。

 

「……だがキラ。お前には考えがあるんだろう?」

 

「刹那は鋭いね。……僕のバックには……ラクスがいる。それに特別に雇った切り札もね。シンがそうやって、ステラを助けたいって言うと思ったから」

 

「キラさん……俺」

 

 絶望一色だったシンの心に一筋の光が射す。

 

「決まりだ。僕たちの中で敗退してないのはオルガたちしかいないから……君たちに頑張ってもらうよ。まずは、ステラを倒すんだ。ガンプラバトルでね」

 

「あぁ……やってくれるな、ミカ」

 

「うん。もちろんだよ」

 

 ここにいる全員と、そしてその仲間たちによる共同戦線。熱き大会のバトルとはまた違う小さな戦いが、今ここに始まった。

 


 

 話を昔に遡ろう。

 

『……エクステンデッド計画?』

 

 ガンプラ連合。主に地方大会の開催やレンタルガンプラの開発、賭けバトル……そしてファイターの育成を中心とする、ファイター、研究者の集まり。彼らにとって世界大会は、一気に名を知らしめる絶好の機会だった。……最初は、純粋なエースファイター、ムウ・ラ・フラガを送り込み正々堂々と優勝するプランが立てられていた。……が、これには確実性がないと判断された。ムウはガンプラ連合調査のランキングにおいてトップランカーを常に維持し、なおかつ連合に所属しているという優秀なファイター候補だったが……

 

『はい。第二回世界大会にはメイジン・アグニカ、アムロ・レイ……そして前回優勝者のシャア・アズナブルも参戦すると思われます。ムウでは優勝を狙うことは難しいかと』

 

 ……はっきり言って、世界大会の舞台で優勝できると本気で期待している人間は、連合の中には居なかった。そこで立ち上がったのがエクステンデッド計画。一部の才能のある人間に、今まで培った技術をつぎ込み最強のファイターを誕生させようという、遊びに対して本気になりすぎた大人たちによる暴走とも言える、狂気のプランだった。だが、そのことに反論する者はもう連合の研究チームには存在しなかった。

 

『阿頼耶識システムは危険すぎます。資金をつぎ込んだエクステンデッドをダメにする可能性を考えれば採用しない方が妥当であると考えます』

 

『……ならば阿頼耶識に耐えられる改良案を探せ。壊れない程度ならいくらでも苦痛を与えて構わん』

 

『容易く言ってくれますね』

 

 そうして生まれた強化人間たち。……第一号、オルガ・サブナック。既に連合のコントロール下を離れている。第二号、クロト・ブエル。同じく、連合には既に居ない。第三号、シャニ・アンドラス。以下同文。初期型三人の反省を生かし、凶暴性を抑え、それと同じように謀反するほどの知能を抑え完成したのが第四号、ステラ・ルーシェ。前三人のように、手術を受けるだけ受け脱走することはなくなったが、幼児退行を起こし少女のような性格になってしまった。それと同時進行で作られたのはそもそも改造手術を受けたとしても連合に反抗することはない人間を、元の素体の人格を最も色濃く残した状態で強化したのが第五号、アイン・ダルトン。性格、人格の変化は全くと言っていいほど存在せず、なおかつ予選敗退し影を落としていたところを拾い、決勝への切符まで用意した為まず反抗することはないという推測だった。……それに、第五号、アインに関してはアリアンロッドの幇助を受け完成している。ワークスチームのライバルとして、興行的に起用したかったらしい。だが……そのような位置で連合が満足するわけがなかった。もちろん、アインはワークスチームに勝たせるつもりだ。

 

『ステラとアイン、そしてムウをそれぞれ別枠で出場させます』

 

 連合はその力で、表向きではムウをメインでプッシュし、別部署の別ファイターという口実でステラ、アインに出場権を用意した。もちろん、本命はこの二人だ。……結果、出場させた三枠全てが決勝トーナメントに出場することとなった。だがムウはステラと当たり脱落、アインは見積もりが甘かったのか連合のコントロール外へ。……そしてステラは……

 

『へえ、君ステラって言うんだ。君もガンプラが好きなの?』

 

 予選大会中に、運命の出会いを果たした。シン・アスカと出会った彼女は休み時間、空いた時間にシンと会うことが楽しみとなり、それがきっかけで……シンは、連合の実態と、ステラの正体を知ることになったのだ。

 

 ……さて。閑話休題。本題に戻ろう。今、現代ではシンにも、そしてシンの他に初めて出来た友達の三日月とも会えなくなり、ベットで寝込むステラがいた。

 

「……助けて……シン」

 

 彼女はもう、あの時の負荷の重ねがけで少しづつ好きになれていたガンプラバトルというものが、一瞬で恐怖の対象に逆戻りしてしまった。シンのデスティニー、インパルス……そしてあのストライクと一緒に頑張ったあの時。三日月が使ったあの赤いガンプラ。彼女はそれを思い起こして、必死にガンプラに対するマイナスな思考を振り払おうとした。……が、三日月のキャスバル専用ガンダムを思い出せば、その三日月のガンプラを、踏みにじるように破壊してしまった自分を思い出してしまう。

 

「ごめん……ステラが……ステラが悪いから」

 

 頭を抱え踞る。……彼女の夜はまだ終わりそうにない。

 


 

「……ミカ。ステラ。シン。……俺も出来る限りの事は、やってみせるさ」

 


 

 翌日。会場にて……

 

『準決勝、第一試合を始めます』

 

 ついに、この時が来た。鉄華団と、連合の最終決戦。

 

「ミカ。ここで勝てばアイツを助けられる。んで、ここで勝てば」

 

「……決勝」

 

「そうさ。……行こうぜ」

 

 強く操縦桿を握りしめる三日月。モニターに目を送るオルガ。

 

「んじゃあユニコーンガンダムマーズキング!」

 

「三日月オーガス。出るよ」

 

 二人の掛け声と共に、カタパルトから射出されるユニコーンガンダムマーズキング。その目の前に立つのは……ガイアガンダムファントム。

 

「……気をつけろミカ、アルミューレ・リュミエールとかいうバリアみてえなのがあるらしいぜ」

 

「つまり破ればいいんだろ?」

 

 ビームマグナムを取り出し、フルパワーで放つユニコーン。ガイアを包む光の壁に防がれるが……その爆風の中から現れたメイスがその膜を打ち破る。

 

「そんな……!」

 

「悪いが……こちとら力押しなら世界一なんだよ!」

 

 メイスでバリアを砕いたユニコーンが本体に殴りかかろうとするも、胴体を蹴っ飛ばされ、なおかつ距離を取ったガイアは変形する。

 

「MA形態か……素早いが耐久性はゴミ以下だぜ!」

 

 メイスをしまい、シールドのビームガトリングを放つユニコーン。躱そうとするガイアだが、空中に追い込まれ、身動きが取れなくなったところを蜂の巣にされ、爆発する。

 

「よっしゃ! 案外呆気なかったな!」

 

 勝利を確信するオルガだが……爆風の中から現れたのは、再びアルミューレ・リュミエールを展開したまったく無事なガイアだった。

 

「効いてねえ……!」

 

「……まあそうなるでしょ」

 

 シールドを投げ捨て腕からサーベルを抜くユニコーン。同じくサーベルを抜くガイア。

 

「おい! あの壁にサーベルは……」

 

「分かってる」

 

 自らはサーベルが通用しない壁に守られながら、一方的な戦いを繰り広げるガイア。ついにユニコーンのサーベルを弾き飛ばしてしまう。だが、ガイアがサーベルを突き出した瞬間……

 

「オルガ、緊急用アブソーブ!」

 

「えっ、おい!?」

 

 実は、ビームを吸収するアブソーブシステムはシールド以外にも……腕にも内蔵されていたのだ。決して見せたことがなかったその緊急用吸収口を開き、サーベルのエネルギーを吸い取るユニコーン。

 

「嘘?」

 

「これで……オルガ、ディスチャージ!」

 

 ディスチャージで時限的強化されるユニコーン。高速でガイアを殴りつける。速度はさらに加速し、それに耐えられなくなったアルミューレ・リュミエールは粉砕され……さらにまだ止まらない。連続で放たれる拳を受け、あらゆる箇所が破損していくガイア。さらに……その光の壁を作り出す発生装置を引きちぎる。地に落ちる、大地の亡霊。その前に立つのは火星の王。

 

「……嫌、嫌……負けるのは嫌、だけど三日月……!」

 

 錯乱しガイアを立ち上がらせるステラ。……だが連合がこのまま見ているだけのはずがなかった。

 

「……阿頼耶識とEXAM、ナイトロだったか? やれ」

 

「は、はい。今度はゼロシステムも搭載しました」

 

 ステラに流れ込む膨大な負荷。そしてそれを補って余りある戦闘力。耳をつんざくような悲鳴と共に、ガイアの目が光る。

 

「……ミカ。やるぞ」

 

「うん」

 

 チャージしたエネルギーを使い切ったユニコーンは、NT-Dを発動すると同時に阿頼耶識を接続、目を赤く光らせる。落としたビームマグナムを拾い、ガイアにビームを放つも……その全てが躱される。

 

「マグナムのエネルギー切れたぞ!」

 

「CAPを……!」

 

 エネルギーCAPを交換しようとするユニコーンだが、ライフルを取り出したガイアに反撃されそのような暇はない。飛行し、木の裏へ逃げようとするが……そこに先回りしていたガイアのサーベルの一撃でマグナムは破壊される。

 

「埒があかない。ここでやる」

 

 ビームトンファーを展開するユニコーン。振り返り、サーベルによる一撃を防ぐ。ガイアのビームライフルを破壊するが、突き出されるサーベルが肩を掠める。

 

「ちょっと当たった……」

 

 それに気を取られている隙にガイアのキックが炸裂し吹き飛ぶユニコーン、地面に激突し、砂埃が巻き上がる。その砂埃の中へ、サーベルを構え突進するガイアだが……

 

「……ねえ」

 

 その瞬間、光が巻き起こり……それが収まった時には、そのサーベルは、素手であっさりと受け止められていた。

 

「一つ聞いておきたいんだけどさ。本当に……手加減しなくていいんだよね」

 

 なんとビームを持ち、そこからガイアを投げ飛ばすユニコーン。今までの勢いが嘘のように、木に叩きつけられるガイア。

 

「なんだ、急に……どうしたミカ?」

 

「……いやさ、今の一瞬でなんか聞いた気がするんだよ」

 


 

「……ここ、何処?」

 

 光に包まれ……何か、真っ白な空間の中で、ステラと対面する三日月。

 

「……嫌……もう嫌」

 

「もしかして嫌々戦ってたの?」

 

「うん。だって……戦わないとダメだって、みんな言うから。ステラはそれだけやってればいいって、みんな」

 

「所詮遊びなんだから好きにやればいいじゃん」

 

 自分のことを話すステラに、三日月は自分の考えを話す。だが、ステラはまだ、安定しない様子のまま言葉を紡ぐ。

 

「でもみんな……戦わないステラに居場所はないって」

 

「俺たちも昔はそうだったよ。プトレマイオス来る? 案外楽しいけど」

 

「本当に? いいの?」

 

 顔を上げ、三日月を見つめるステラ。

 

「あー、そうだ。あんたのこと、シンが呼んでるよ。あんたを助けたいって」

 

「シンが……」

 

「だからさ。あんたはどうしたい?」

 

 光が薄れていく。現世に引き戻される二人。

 


 

「うん。……ステラも手加減しないよ?」

 

「ふーん。まあ頑張ったら?」

 

 お互いに組み付き、森の外へ飛び出す。お互いに離れ、広大な大地を、変形し駆け巡るガイア。そして、殲滅を示す赤から、暖かな緑へ変わっていくユニコーンのサイコフレーム。

 

「行くよオルガ」

 

「お、おう!」

 

 緑の暖かな身体に、熱い赤い血の流れる目が輝く。真っ向から相手しようと、MA形態のままユニコーンへ向かって行くガイア。

 

「後始末は……してくれるってさ!」

 

「そう……それじゃあ安心だね!」

 

 お互いにぶつかり合うガイアとユニコーン。刃と貫手がぶつかり合い……

 


 

《battle end》

 


 

「……ステラが負けました」

 

「よし予定通り破棄だ。戻り次第本部へ返し、殺処分しろ。そのあとはマニュアルに沿って……」

 

 確認すら取らず、ステラの処遇を決める連合の上層部。が、彼らはその会話をダクトから聞いている何者かに気付きもしなかった。排気口を破壊し、降りて来るサングラスをかけた金髪の男。

 

「何者だ……? いや、お前は」

 

「……私の名前はクワトロ・バジーナ」

 

 サングラスを投げ捨てる金髪の男。

 

「そして、シャア・アズナブルだ。……ガンプラ連合、ラクス・クライン氏の依頼につき、諸君らを処罰する」

 

「ちなみに録音は済ませてありますし、証拠の調べもついておりますわ」

 

 その背後のドアから現れるラクス。突然現れた二人の前に呆然とするガンプラ連合の組員。

 

「……は?」

 

「ちなみにステラはラクス氏の方で保護することとし、アインはアリアンロッドにスポンサーを完全に移行するものとする」

 


 

「ステラ……良かったなステラァ……」

 

「近いよシン……」

 

 ステラの頬に頬を擦り付けるシン。両方とも幸せそうだ。

 

「俺の家に来てくれステラ、俺にはステラと仲良くなれそうなくらいの妹が居て……」

 

「でも三日月はプトレマイオスに来いって……」

 

「あー……俺はステラの行きたい方に行けばいいと思うよ」

 

 すっかり仲良くなったステラと三日月。そして、ステラの友達が自分以外にまた一人増えたことを喜ぶシン。

 

「また、バトルしようね」

 

「うん。勿論」

 

 




「メイジンアグニカと呼ばれる男」
「そしてそれを追いかける男」
「アインとマクギリスがついに激突する!」
次回『バエル・フォーミュラ』
「メイジンアグニカの魂!」


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第22話 バエル・フォーミュラ

 

「プロジェクト・バエル……」

 

「あぁ。アリアンロッド最強のガンプラだ。お前に相応しいモノだと思うが?」

 

「バエル。……歴代のメイジン・アグニカが使用してきた、伝統、いや伝説のガンプラ。……私もついにそれを与えられる日が来たのか」

 

「あぁ。お前の希望通り……ほとんど素に近いカスタムでな」

 


 

 前々回の戦いで、ほとんどのパーツを破損したグレイズアイン。アインはそれをそっと置き……新しいガンプラの制作に取り掛かった。ベースキットは……キュリオス。

 

「バエルに……マクギリス先輩に勝つには、これしかない」

 

 彼にとっての、初めて、最初から、ベースキットから組み立てる、カスタムガンプラ。尊敬する恩師から譲り受けたガンプラを改造したモノでも、レンタルガンプラでもない。彼にとって最初の……自分だけの力で作ったガンプラの大舞台だった。

 


 

「……アインか」

 

「あぁ。刹那さん」

 

 ホテルの一室、フリーバトルルームで座り込んでいたアインに話しかける刹那。

 

「お前もバトルしに来たのか? 俺でいいなら相手をする」

 

「……ありがとうございます。俺も手加減はしません」

 


 

 お互いに宇宙空間に飛び出す機体。

 

「相手はキュリオス……接近戦に持ち込み、変形させさせなければアルトライザーが有利か。……第一形態で様子見を!」

 

 チェーンソーを取り出しキュリオスに突っ込むアルトライザー。だが、しかし……

 

「俺のこの手が」

 


 

「刹那!? そのアルトライザーは……」

 

 破壊されたアルトライザーを拾い上げる沙慈。

 

「相手は……相手は?」

 

「アイン・ダルトン。彼は……以前とは比べ物にならないほど強くなっている」

 


 

 翌日。準決勝第二試合で……ついにアインとマクギリスが激突する。

 

《battle start》

 

「マクギリス・ファリド。アメイジングバエルF。出撃する」

 

 荒野に飛び出すマクギリスのバエル。それに向かってくるのは……戦闘機型から人型に変形し、砂原へ着地するキュリオス。砂埃を巻き上げながら地に降り立つ二機。お互いに距離を取り……

 

「……マクギリス先輩」

 

「アイン。その機体はなんだ?」

 

「俺の……初めてのオリジナルです!」

 

 まず動いたのは……キュリオス。サーベルを抜き、バエルに斬りかかるも……躱される。背後に回り込んだバエルがキュリオスに剣を振るうも、キュリオスはそれを宙返りで躱す。

 

「速い……やはり! だけど! バエルに射撃武装はない!」

 

 ビームサブマシンガンを取り出し、バエルに向かい連射するキュリオス。が、バエルにそれは当たらない。

 

「当たらないなら、結局接近戦しか!」

 

 お互いの剣が空中でぶつかり合う。お互いに弾きあい、射撃戦に移行する。ビームサブマシンガンを連射するキュリオスに、射撃武装すらないバエルは太刀打ちできない……はずだった。変形する、背中のバエルウイング。そこから現れるビーム砲は……

 

「VSBR……!?」

 

 VSBR。通称はヴェスバー、正式名称はヴァリュアブル・スピード・ビーム・ライフル。つまり、速度、威力などを自由に調整可能なビームライフルである。F91では背中に収納していたが、アメイジングバエル・Fではほとんど同じ位置にあるバエルウイングに同等の機能を搭載しており、その中からビームを放つ事が出来る。

 

「射撃武器はアグニカに反するんじゃ……」

 

「敢えて言おう。ガンプラは、アグニカは自由だ!」

 

 通常のビームライフルと同等の威力でヴェスバーを放つバエル。それを変形しながら躱すキュリオス。反撃にサブマシンガンを放つが、それも当たらない。最終的に変形しながらサーベルを抜き、肉薄するキュリオス。短い鍔迫り合いの後弾かれ、空中を舞うキュリオス。

 

「俺に力を貸してくれ、キュリオス」

 

 ……そんな中。スロットを操作し、何か妙な項目を選択する。

 

「トランザム」

 

 赤みを帯び、変形するキュリオス。

 

「飛び込むぞ、バルキュリオス!」

 

 そのまま、圧倒的なスピードで空を舞い、浮かび上がったバエルに突っ込む。それが放つGNビームサブマシンガンの銃撃と圧倒的なミサイルの嵐から、時にはヴェスバーで迎撃し、羽根を広げながら美しい軌道で躱して行く。

 

「アサルトワイヤー!」

 

 が、その煙の中から飛び出してきたワイヤーに絡め取られ、動きを止める公式の悪魔。それを巻き取りながら現れるのは、何やら妙な実体剣を持ったキュリオス。それをバエルに突き刺し、蹴り飛ばし、マシンガンを連射しワイヤーに引き寄せられながら再び接近する。

 

「フリージングバレット!」

 

 さらに手を叩きつけ、そこからバエルを凍りつかせる。振り払われるキュリオスだがワイヤーが絡まっている限り追撃は終わらない。続いて脚部にビームの刃が現れ……

 

「ライトニングキック!」

 

 バエルを飛び蹴りで蹴り飛ばす。さらに続いて、ワイヤーを使い相手を引き寄せながらもう一本剣を取り出し、

 

「モーターソード!」

 

 さらにもう一発バエルに突き刺す。さらにGNフィールドを発生させ……

 

「GNフィールド・ディストーション!」

 

 それを自らバエルに当てることにより歪みを発生させ、バエルを吹き飛ばす。

 

「ついに吹っ切れたか……アイン・ダルトン!」

 

 トドメと言わんばかりに巨大なプラスドライバーを持ち、バエルに突っ込むキュリオスだが……

 

「……私が……何も考えていないと思ったか」

 

 黄色い残像を纏いながら、そのバエルは何処かへ消えてしまった。

 

「残像? これは一体……」

 

 アインのキュリオスの周りを飛び交う大量のバエル。アインを囲い込み、ヴェスバーを構える。

 

「まずい! 質量を持った残像か!」

 

 すぐさま本体を見極め、そこから放たれるビームを躱す。

 

「トランザムの限界時間は迎えたはず……何故まだトランザム出来ている?」

 

「……明鏡止水。曇りなき俺の心が、限界を超えた力を引き出しているんです」

 

 お互いに高速で大空を飛び交い、残像を撒き散らしながら、二刀流同士の剣のぶつけ合いが繰り広げられる。激しく音を立てながら、大気を揺らしながら行われる接近戦。ヴェスバーから放たれる光線を躱しながら、新設されたマシンキャノンで反撃を行う。が、接近するバエルに対応するため可変し、バエルの追跡を振り切りながらミサイル、マシンガンなどでバエルを攻撃する。大量のミサイルの軌道を見切り、相打ちさせるように誘導しながら位置を取り、ミサイルを振り切るバエル。それに変形しながら斬りかかるキュリオス。何度も弾きあい何度も剣を交える。一瞬の隙をつき、キュリオスの剣を弾き飛ばすバエル。

 

「これが私の全力だ!」

 

 だが、突如トランザムに加え、黄金に輝き出したキュリオスにそのトドメの一撃になるはずだったモノは防がれる。

 

「これは……」

 

「トランザム・プラス・ハイパーモード! これが、俺の全力です!」

 

 黄金のハイパーモード、紅蓮のトランザム。その二つが合わさり、赤みを帯びた金がここに顕現する。バエルの剣を躱し受け止め、蹴りを入れ顔面に正拳を叩き込む。さらにその頭部を掴み取り岩肌に叩きつけ、バックファイアでさらに追撃する。それと同時に飛び上がったキュリオス。

 

「まさか……キュリオスの皮を被った、モビルファイターとでも言うのか!?」

 

 バックファイアを受け、左腕が耐えられなくなり爆発するバエル。が、それでも立て直し、残像を纏いながら空へ飛び上がる。

 

「その覚悟。真っ向から受け止めよう」

 

 剣を構え、キュリオスへ向かって行くバエル。それに対し、腕を掲げるキュリオス。

 

「俺のこの手が……真っ赤に燃える! 勝利を掴めと……轟き叫ぶ!」

 

「行くぞガエリオ。出力最大で……迎え撃つ!」

 

「今やってるところだ!」

 

「爆熱! ゴッドフィンガァァァッ!」

 

 叫びと共に放たれる赤く輝く腕。それとぶつかり合うバエルの剣。閃光と共に戦いは終わりを告げようとしていた。

 

「壊れろ、壊れろ唯一神!」

 

 そして、純白の悪魔が……黄金の天使、いや神を。その腕ごと、打ち砕いた。

 

《battle end》

 


 

「マクギリス先輩……!」

 

「アイン。君はよく頑張った。初めてのカスタムだったんだろう?」

 

「そうです。まさかここまでやれるだなんて……」

 

「俺、いつか超えてみせます。マクギリス先輩の事……それに、ガエリオ先輩の事も!」

 

「……出来るかな? お前に」

 

 お互い笑い合う、ギャラルホルンの面々。

 

「次は、カルタも呼ぶとするか……」

 

 笑顔を漏らすマクギリス。終わった試合に……後悔はなかった。

 




「俺のユニコーンガンダムマーズキングが!」
「俺のバルバトスが」
「最強だ!」
次回『火星の王』
「……何処かで前、これを動かしてた気がする」


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第23話 火星の王

 

「……アメイジングバエル・フォーミュラをここまで……彼も成長したものだ」

 

「そうか、次は」

 


 

「どうも! 世界大会スポンサー及びイメージキャラクターのラクス・クラインです! ……こちらをご覧ください。決勝戦を目の前に、こちら会場の静岡では大盛況を見せております!」

 

 会場付近に設置された数々のアトラクションや施設が賑わいを見せる光景をカメラに映す、レポーターのミーア。

 

「そしてご覧ください。実物大のユニコーンガンダム立像とバエル立像ですわ! こちらは大会の為だけに急ピッチで作られたイベント用のモノになっており、参戦ガンプラと同様のカスタムが施されているのです」

 

 映し出されるのはユニコーンガンダムマーズキングの1/1立像、そしてアメイジングバエル・Fの同様の立像。

 

「こちらはガンプラ製作コーナー、買ったガンプラをすぐさま作成可能です! さらに隣接するフリーバトルコーナーでバトルまで可能ですよ! しかも大会に出場した選手とのバトルも……」

 

「あらミーアさん。あなたもバトルしに来ましたか?」

 

 レポートを続けるミーアの元に、満面の笑みのラクスがやってくる。……ちなみに生放送中である。

 

「ちょっとラクス様、今は撮影中で……」

 

「あらすみません……すぐに行きますわ」

 

「あー! もう! カット! カットよ!」

 

 そんなハプニングだらけな番組の裏で……

 

「不死身のコーラサワー! 只今参……」

 

 あっさりと切り捨てられるジンクスⅢ。

 

「……嘘だろぉ?」

 

 あっさりと倒される大会出場ファイターの姿があった。

 


 

「刹那ぁ……」

 

「いつまで落ち込んでいる沙慈・クロスロード」

 

 祭りの中を歩く鉄華団と刹那、沙慈。

 

「別に沙慈のガンプラは弱くなかったと思うけど?」

 

「でも……刹那はあの人に負けたって言うしさ」

 

「……それは俺のせいだ。気にするな」

 

「そんなことより飯食おうぜ!」

 

 いつの間にかフライドポテトを大量に持って来ていたシノ。

 

「……ハンバーガーは?」

 

「芋の方が美味えじゃん?」

 

「そうか……」

 


 

 その頃、フリーバトルコーナーでは……ガンプラ一年分をかけた熱き戦いが繰り広げられていた。

 

「まったく、世界大会出場者の俺が出たら圧勝だって言ったじゃんかよ!」

 

 周りのガンプラを蹴散らしていくムウのターンX。一般参加者だけでなく、コーラサワーのイナクトも爆散していく。

 

「ちょっと待てよ!」

 

 コーラサワーの悲痛な叫びをかき消すように戦闘は続く。そのターンXに立ち向かうのは……アインのキュリオス。

 

「邪魔だ、この準々決勝敗退野郎!」

 

「準決勝まで進んだヤツの言うことはキツイね!」

 

 キュリオスの放つミサイルを躱すターンX、そのまま月光蝶を展開するもその隙を突かれ、モーターソードを胴体に突き刺され……

 

「おいおい、そんなのって……」

 

「ありです!」

 

 掴まれ、フリージングバレットでトドメを刺された。

 

「やはり、世界大会よりかはレベルが低……」

 

 油断するアインの前に現れたのは、手を真っ赤に燃やすゴッドガンダム。反応する暇もなく胴体を掴まれ……

 

「ヒィィィィト!!」

 

「ドモンさん? 何故ここに、と言うかちょっと待って……」

 

「エンド!」

 

 そのまま爆発。アインのキュリオスは倒れた。

 

「見てるか! レイン!」

 

 真っ二つになったキュリオスを確認し、腕を掲げるドモン・カッシュ。どうやら目的はガンプラ一年分ではなく……

 

「……ドモン、今の私は司会なのよ……恥ずかしいからやめて……」

 

 その近くに立っている女性だったようだ。

 


 

 その頃、オルガたちは製作コーナーにて……

 

「よう、シン。ガンプラを作るのか?」

 

「あぁ。俺のじゃなくてステラが作りたいって」

 

 シンと出会い、ステラのいる場所へ案内されていた。が、そこにいたのはステラだけではなく……

 

「会えて嬉しいよ。鉄華団の諸君」

 

「マクギリスじゃねえか……」

 


 

 再び、メイジンではない、マクギリスと出会ってしまったオルガたち。オルガと三日月だけを連れ……高台で会場を見下ろす。

 

「マクギリス……お前」

 

「ハハ……申し訳ない。あの時、私はメイジンになる道を選んでしまった」

 

「別にいいよ。チョコの人と世界大会で戦えるんだし」

 

「君たちは優しいな。多くは語るまい……」

 

 背中を見せ、ニヤリと笑いながらマクギリスは、最後の言葉を語った。

 

「最高のバトルをしよう」

 

 そうとだけ語り……マクギリスはその手すりを乗り越え、飛び降りて去っていった。

 

「……なんだあの帰り方」

 

 同じく帰ろうとするオルガに、三日月が話しかける。

 

「ねえオルガ。……ちょっとさ。一回だけバトルしてみない?」

 

 それを聞いたオルガは、口角をゆっくりと吊り上げて……

 

「お前とか? ……いいぜ」

 

 その勝負を受けた。

 


 

 彼らのバトルを見るために……数々のファイター、数々の観客が集まる。

 

「かかってきな、ミカ。俺の作ったガンプラでボコボコにしてやるぜ」

 

「へえ。性能だけ良くても勝てないんじゃなかったの?」

 

 お互いガンプラをセットするオルガと三日月。

 

「オルガ・イツカ。ユニコーンガンダムマーズキング! 狩りに出る!」

 

「それじゃ三日月・オーガス、ガンダムバルバトス。出るよ」

 

 宇宙へ飛び出す二人のガンプラ。性能が高いのはオルガだが……操縦技術は圧倒的に三日月の方が上だ。

 

「バルバトス? いつの間にそんなもん作りやがった……」

 

「あぁ、うん。あの赤いのは今直せないから、新しく作ろうと思ってさ」

 

 滑腔砲を放ちながらユニコーンに迫る三日月のバルバトス。が、それをシールドで受けながら、ビームマグナムで反撃するユニコーン。それを真っ向から突っ切りながら、バルバトスは滑腔砲を連射する。それを宙返りで躱すユニコーン。

 

「あの動き……オルガのヤツ上手くなってやがる!」

 

「へえ、やるじゃん。それじゃあ接近戦なら……」

 

「なんの! こっちにだってメイスくらいあるさ!」

 

 メイスを構えるバルバトス、それと同じように取り出したメイスを構えるユニコーン。ぶつかり合う二つの鉄塊、が、素組みのバルバトスでは力負けする。

 

「勝った! このまま押し込んで……」

 

「オルガ、性能だけ勝てないって忘れた?」

 

 が、バルバトスはその力を受け流しながらユニコーンの体制を崩し、そのまま蹴り飛ばす。体制を立て直すユニコーンだが、突き出されるメイスにシールドを破壊される。

 

「あのさオルガ……それ決勝戦で俺が使うから壊したくないんだけど」

 

「なんのすぐに直すさ!」

 

 接近してきたバルバトスを蹴り飛ばし、距離を取るユニコーン。そのままメイスを投げ捨て、ビームマグナムを放つ。

 

「それじゃあ遠慮なく」

 

 が、そのマグナムは避けられ、急接近されたユニコーンはメイスを叩きつけられ、さらに宇宙に漂う小惑星に叩きつけられた挙句連続で打撃を受け……

 

「おいふざけんな、なんで俺がこんなに作り込んだガンプラが素組みのミカに負けんだよ!?」

 

「オルガが弱いからじゃない?」

 

「クソゲー! クソゲーだぜこりゃあ!」

 

 オルガの嘆きと共に、ユニコーンガンダムマーズキングは爆散した。

 


 

 その後も楽しい時間は続き……こうして、前夜祭は終わりを迎えようとしていた……

 

「……おいふざけんな。俺は楽しくねえぞ」

 

 死んだ目をしながらユニコーンガンダムマーズキングを直す、オルガを除いて。

 


 

 翌日。

 

「……マクギリス?」

 

「始めようじゃないか。全力の戦いを。君たちの求めていた、戦いを」

 

 戦いの場に立っていたのは、異様な姿をした……真っ黒なガンプラだった。

 




「これがマクギリスの本気?いや、違う!」
「これは……チョコの人じゃない」
次回『ダインスレイヴ』
「月の悪魔と厄災の剣……か」


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第24話 ダインスレイヴ

 

「ついに完成したぞマクギリス。俺の最高傑作、アメイジングバエルヴィダールだ!」

 

「……ヴィダール要素を足した意味は?」

 

「俺の趣味だ」

 

 フフッと笑い、マクギリスはそのガンプラを見つめる。が、そんな作成室に、ボディガードを引き連れた一人の男が現れる。

 

「それでは足りんな」

 

「……ラスタル会長か。何の用です?」

 

「いや、それに付け足す魅力的な改造プランを持って来てな」

 

 ラスタルはあるものをその机に置き、並べる。

 

「な……そんな! これは……」

 

 その並べられた、改造用のパーツたちに驚愕の目を向けるマクギリスとガエリオ。

 

「使わねばなるまい。君たちには勝ってもらわんと困る。……初っ端から新生メイジンが負けたとなれば……盛り下がるのでな」

 

「……いえ。しかし……これはナンセンスです」

 

「ならば仕方ない」

 

 ボディガードに取り押さえられる二人。そして、ラスタルが……阿頼耶識のケーブルのようなものを取り出す。

 

「悪く思うなよ」

 

「……それは」

 


 

 オルガたちと対面する、メイジンアグニカ……マクギリス・ファリド。それが携えるガンプラは……異形の、赤黒い血の色をしたガンプラだった。

 

「……なんだこりゃ……」

 

「やっぱり、チョコの人の様子がおかしい」

 

「だよな? ……まあ、戦うしかねえんだけどよ」

 

 困惑しながらも、ガンプラを取り出すオルガ。それを受け取る三日月。それを見てもなお、マクギリスは全く動じることなく、真っ直ぐ立っていた。

 

「……よし、やるぞ」

 

《battle start》

 

「三日月・オーガス。ユニコーンガンダムマーズキング。出るよ」

 

 宇宙空間に飛び出す三日月のユニコーンガンダムマーズキング。が、それを不意打ちで月面に叩き落とすバエル。

 

「……なっ……いきなりかよ」

 

「まあ、チョコの人も本気なんでしょ」

 

 バエルのヴェスバーから放たれるビームをシールドで吸収するユニコーン。そして、そのシールドをマグナムに繋ぎ……

 

「よっしゃミカ! ディスチャージで行こうぜ!」

 

「あぁ」

 

 そのエネルギーを解放、強力なビームを放つ。……が、それを見たバエルはなんと羽から()()()()()を解放した。ヴェスバーと同時にそれを放ち、ビームを逸らす。

 

「あれは……フリーダムアストレイの!? アレにあんな使い方があったのか……!」

 

 それに驚くオルガ、剣を抜き接近してくるバエル。それに対しサーベルを抜き冷静に対処する三日月。鍔迫り合う両者、そんな中バエルがユニコーンの頭部を殴りつけ、右半分を破壊する。

 

「カメラがやられた?」

 

 舌打ちを鳴らし、カメラを切り替えながら膝蹴りで反撃し距離を取る三日月。体制をすぐに立て直し接近、シールドを斬り飛ばすバエル。さらにそれで怯んだユニコーンのビームマグナムも真っ二つに斬り裂く。

 

「あっぶな……」

 

 追撃される前にバエルの腹部を蹴り飛ばし、その反動で距離を取るユニコーン。が、その破壊されたライフルとシールドから巻き起こる爆発の煙の中から、猛スピードでユニコーンの方へ突っ込むバエルが現れる。予想以上に素早いバエルに対応できず、踏みつけられそのままの勢いで月面へ落下する。

 

「三日月……!」

 

「オルガ! 三日月! 何やってやがんだ……!」

 

 観客席にも騒めきが起こる。煙の中からいち早く現れるユニコーンだが、それを上回るスピードで横に回り込んだバエルがそれを蹴り飛ばす。

 

「チッ……予想以上に速いな」

 

 あくまでも冷静に対応しようとする三日月だが、根本的な機動力の違いと、それに対応するマクギリスの反射神経に徐々に追い詰められる。

 


 

「……何故すぐにアレを使わない?」

 

「いえ、会長がこれはショーだと言うので……」

 

「あんなもの建前だ。チャンスがあればすぐに使え」

 

「……はい」

 

 その頃、 別室ではラスタルがそれを観戦していた。何故彼が鉄華団の敗北に拘るのか。それはメイジンを勝たせる為などという理由ではなく……

 

「彼らには嫌な思い出しかないからな」

 


 

 関節部のみを執拗に狙ってくるバエル。その攻撃を全て間一髪のところで躱すユニコーン。が、突然フィールドが切り替わり……狭い通路に変わる。

 

「何? どうなってんだ?」

 

 そこを進むユニコーンだが……その先にあったのは行き止まりだった。

 

「……ミカァ! NT-Dだ!」

 

 追ってくるバエル。それの持つ二本の剣と鍔迫り合うユニコーンのビームトンファー。だが、そのバエルソードが冷気を纏い……

 

「ビームが、凍る……!?」

 

 ビームトンファーが、ビームごと凍りつき機能を停止した。それを捨てながら距離を取ろうとするユニコーンだが、もう片方の剣に炎を纏ったバエルがそれを許さず、追撃する。その二本の剣で両肩を突き刺し、そのまま壁に押し込む。

 

「……力負けするか……それじゃあ……」

 

 バルカンを放つユニコーンだが、バエルはすぐさまその側頭部を握りつぶす。それと同時にユニコーンはそのカメラアイから光を失い……

 

「ミカァ! 全機能が止まって……」

 

 焦ってコンソールを叩くオルガ。

 

「クソッ! 動けよユニコーン! ここで止まったら……! 頼むから動いてくれよ、なあ! まだ勝負は付いてねえだろうが!」

 

 錯乱して叫びながら機能の回復を図るオルガ。それに対し、三日月は冷たく、だがその内には熱い何かを秘めた目で、冷静に操縦桿を握っていた。

 

「……オルガ」

 

「ミカ? 何か案が……」

 

 その間にもユニコーンの破壊は続く。

 

「つまり、無理やり動かしてやればいいんだろ?」

 


 

「……アレを使うまでも無かったか。すぐにトドメを……」

 


 

 バエルが剣を構える。狙いはコックピット、この状況なら回避はできない。もはや、オルガたちに勝ち目は……

 

ARAYASIKI

 

 実はあるのだ。一つだけ。この状況を打開する勝ち筋が。光を失ったはずのユニコーンに、明るい血が流れ、瞳をその色で染める。(プラ)()が通い、急所に当たるはずだった悪魔の一撃は、突如機敏に動いた目の前の一角獣に躱され……そしてそれは、いつの間にかその背後に立っていた。

 

「……うん。動く。無理やりにでも、動かす」

 

 限界を迎えたその身体を、無理にでも、もう本当は動かなくとも、全力で。目の前の勝利だけを見て引きずり続ける。それが、彼らの華だった。襲いくるバエル相手に全力で押し出し……通路の壁を突き破りながら、その外の宇宙へ飛び出す。

 

「ミカァ……! なんでこうなっちまったかは知らねえけどよ……! マクギリスのヤツをぶん殴って目覚まさせてやれ!」

 

「分かってるって」

 

 怯むバエルを蹴り飛ばすユニコーン。

 

「……ミカ。またアレを使っちまうけど、いいか?」

 

「うん。オルガがやれってんならね」

 

 質量を持った残像を纏うバエル。それに対し、阿頼耶識のリミッターを解除するユニコーンガンダムマーズキング。砕ける三日月の付けていたギプス。

 

「おいミカァ、ギプスが……」

 

「大丈夫だから。行こう」

 

 背中からビームサーベルを二本抜き、バエルに向かい突っ込むユニコーン。それに対し、余計な武装を全て排除した状態で、剣のみになりそれを迎え撃つバエル。お互いに激しく、剣同士で打ち合う。が、ユニコーンのサーベルは一本、また一本と弾き飛ばされて行く。

 

「……いつも通り、貫手で行くぞ!」

 

「あー、アレね」

 

 緑の光を纏いながら、残像を撒き散らすバエルへ突っ込んで行く。バエルの持つ、剣と貫手がぶつかり合い、激しい粒子の濁流が巻き起こる。

 

「……行けえええええええ!!!」

 

 そして……それが晴れた時。相手を貫いていたのは、ユニコーンガンダムマーズキング。たった一人の火星の王だった。

 


 

「……ラスタル様。メイジン負けましたけど」

 

「そうか……マクギリスのヤツには私のくだらん私怨に付き合わせて悪かったとでも言っておけ。だが彼らが勝って終わるというのはつまらんのでな。……私のお遊びにも、付き合ってもらおう」

 


 

「勝った! 俺たちが勝ったぞミカァ!」

 

「……そうだ、チョコの人は?」

 

 三日月を抱え、マクギリスに駆け寄るオルガ。

 

「マクギリス! ……お前、なんでこんなこと……」

 

「……あぁ。オルガ団長に三日月君か。すまない……せっかくの決勝なのにこんなことを。実は……この阿頼耶識の技術を転用したケーブルで精神を支配されていてな」

 

「あぁ? んなこと信じられるわけ……」

 

「……嘘は言ってないと思うよ、チョコの人は」

 

「ミカがそういうなら……」

 

 と、オルガたちが試合後に笑いあっていると……突如、会場が粒子で包まれる。

 

「な、なんだこれは? まさか、バトルシステムが暴走して……」

 

 その会場を飲み込んだバトルフィールドに現れた、鉄血のオルフェンズシリーズにおけるアリアンロッド艦隊のフラッグシップ、スキップジャック級戦艦。そして……それを守るように配置された、大量のハーフビーク級戦艦。

 

「……会場のファイターたちに告ぐ。ボーナスステージだ」

 

 そして……その広大なフィールドに響くラスタルのアナウンス。

 

「全員参加だ。私が総制作期間半年と3ヶ月かけて作った……アリアンロッド艦隊を攻略せよ」

 

 そして。それを守るように配置されたのは……

 

「ダインスレイヴ隊……!」

 




「本当の最終試合は、私との対戦だ」
「だったら、やるしかねえだろうが!」
次回『約束』
「その先に、連れてってやるよ!」


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第25話 約束

「粒子が暴走して……あの艦隊は!?」

 

 膨大な量の粒子が会場に散布され、現れるアリアンロッド艦隊。会場がそれに巻き込まれ、崩れていく。

 

「……どうなっている会長! ボーナスステージとは、この惨事はなんだ!?」

 

「さあな。……君たちの勝利条件はただ一つ。粒子発生装置を破壊し……このバトルを終了させる事のみだ」

 

 叫ぶマクギリスに対し、帰ってくる返事はただそれだけだった。

 

「……ってことは、正真正銘ガンプラバトル選手権最後の戦いってことか」

 

 鉄華団に号令をかけ、それぞれのガンプラを取り出すオルガ。それに加え、観戦していた各ファイターたちも彼らに駆け寄る。

 

「ええ。このまま粒子が散布され続ければどんな惨事を引き起こすか想像が付きませんわ」

 

「僕たちも協力するよ」

 

「刹那。やろうか」

 

「あぁ」

 

「……あんたら」

 

 キラ、刹那が修復したガンプラで参戦しようと名乗りをあげる。それだけではない。

 

「まったく……こんな流れになったら断れないじゃないか」

 

「分かった。ステラもあと少しだけ頑張る」

 

「ステラがやるってんなら……俺もやるしかないな」

 

「俺も、バルキュリオスでやってみせます」

 

「イデジムの力、思う存分見せてやる!」

 

 ムウ、ステラ、シン、アイン。そして、コスモも次々とガンプラを持ち寄る。

 

「……やるか。みんな!」

 

 次々とガンプラをセットしていく、ファイターたち。

 

「ユニコーンガンダムマーズキング! オルガ・イツカ!」

 

 あるものはここまで付き添ってきた白いガンプラを。

 

「それじゃガンダムバルバトス、三日月・オーガス」

 

 あるものは自分で作った、まだ荒削りなガンプラを。

 

「ソードカラミティリベイク、昭弘・アルトランド」

 

 あるものは家族から受け継いだガンプラを。

 

「流星号TYPEAmerican、ノルバ・シノ!」

 

 あるものは仲間の作ったモノに自分で名付けたガンプラを。

 

「アイン・ダルトン、バルキュリオス」

 

 あるものは模索し続けようやく見つけた答えを詰め込んだガンプラを。

 

「シン・アスカ、デスティニー!」

 

 あるものは自分の運命を決めたガンプラを。

 

「……ステラ・ルーシェ、ガイアインパルス」

 

 あるものは初めて自分で選んだ運命のガンプラを。

 

「ムウ・ラ・フラガ、ターンX」

 

 あるものは自らとよく似た者のガンプラを。

 

「キラ・ヤマト、フリーダムアストレイ」

 

 あるものは歌姫から託された自分だけの道を切り開くためのガンプラを。

 

「イデジム!」

 

 そしてあるものは、ガンプラではない伝説の巨神を。それぞれその最後の戦いの舞台へ旅立たせた。広大な宇宙を駆ける光の線。その全てが、艦隊へ真っ直ぐ進んでいた。

 

「ダインスレイヴ隊の砲撃には散開して対応。艦隊さえ潰せば……バトルは強制終了するはずだ!」

 

 放たれるダインスレイヴ。圧倒的な速度の砲弾を……

 

「ここは俺に任せろ!」

 

 オルガが放ったシールドファンネルがサイコフィールドを発生させ、ダインスレイヴを全て弾き返す。さらにそのシールドファンネルがダインスレイヴ隊に突っ込んでいき、次々と突き刺さる。シールドが突き刺さったグレイズは次々と爆散していく。

 

「陣形は崩れた、今のうちに肉薄!」

 

 接近されたダインスレイヴ隊は、近距離ではまったく対応できぬまま次々倒されていく。が、他の艦からは次々と通常装備のグレイズが現れ、ファイターたちに襲いかかる。

 

「イデオンガンを使う!」

 

「よぉし、ガンバレルと手足全部使うぜ!」

 

 分離したターンXのパーツがそれぞれ、グレイズたちを撃ち抜き、撃墜していく。さらに向かってくる大量のグレイズとその背後にいる艦隊を、イデオンガンが一気に消し飛ばす。

 

「ミーティアなら!」

 

 ミーティアユニットを装着したキラのフリーダムアストレイが戦艦を斬り裂きながらグレイズ隊を壊滅させていく。他にもトランザムを発動したバルキュリオスが目にも留まらぬ速度で飛び回り、ミサイルとマシンガンを撒き散らしながら艦隊を蹂躙する。

 

「デスティニーなら! ……付いてきてくれ、ステラ!」

 

 デスティニーが真っ直ぐ突っ込み、その討ち漏らしをステラのインパルスが殲滅する。その横ではマシンガンパンチで周りのグレイズを吹き飛ばしていくシノと、それで開かれた突破口を抜け戦艦を斬り捨てていく昭弘の姿があった。

 

「それにしても数が多いな……!」

 

 大量の戦艦と、それ相応の数を誇るグレイズ。未だ終わりは見えず、このままで物量差、疲労でこちらが負けると思われたその時。赤い光が突き抜け、大量のグレイズと戦艦が巻き込まれていく。

 

「これは……ライザーソード! ってことは、刹那の兄貴か!」

 

「正解だ。最終調整に時間がかかって出撃に遅れてしまった」

 

 既にアルトライザーの殻を脱ぎ捨てたエクシアが、ライザーソードを振るい周りの敵を薙ぎ払っていく。

 

「チーム鉄華団は今のうちにスキップジャック級を!」

 

「オッケー! 行くぜお前ら!」

 

 オルガたちがスキップジャック級の撃破へ向かう。が、その間それ以外のファイターたちは不利な戦いを強いられる。

 

「グレイズばっかり……それ以外になんかないのかよ、ここの主催者は!」

 

 そう愚痴をこぼすムウに答えるかのように、何処からか現れるは……ネオジオング。

 

「……ムウさんがなんか言ったせいでまたヤバいの来たんじゃないですか?」

 

「おいおい、俺のせい?」

 

 ガンプラの中でも最大の大きさを誇るネオジオングだが、それだけではなかった。ネオジオングが一機、ネオジオングが二機。

 

「ネオジオングが……ネオジオングが三機!?」

 

 そこに現れたのは、赤と、青と、白の、三機のネオジオングだった。あまりにも理不尽なこの光景に流石に戦慄する面々。

 

「くっ……だが倒さないことには!」

 

 構える刹那だが……そのネオジオングの中の白い一機が、何処からか現れたザクの正拳突きによってコアユニットのシナンジュスタインのみを破壊され崩れ落ちる。

 

「あのザクは……ククルス・ドアン!」

 

「待たせたなみんな。私も加勢する!」

 

 さらにそれに反応して攻撃しようとした青いネオジオングは、背後から現れた黄金のモビルスーツに次々とパーツを解体され、最後にはシナンジュを燃え盛る腕で破壊され沈黙する。

 

「ドモンさん!」

 

「あぁ! 俺のゴッドガンダムさえあれば百人力だ!」

 

 ドアンのザクとドモンのゴッドガンダムが並び立つ。そして……

 

「ククルス・ドアン! 久しぶりにやってみるか!」

 

「あぁ。……魂のハイパーモードだ!」

 

 黄金に輝き出すドアンのザク。ゴッドガンダムと同時に残った赤いネオジオングに立ち向かい、ビームを弾き返し、躱しながら接近し、拳や蹴りを連続で叩き込みネオジオングを解体していく。

 

「トドメだ! このキックで……!」

 

 さらにコアユニットに飛び蹴りが直撃。最後のネオジオングも同じように沈黙した。

 

「……ネオジオングが一瞬で……」

 

「デタラメな強さだね……」

 

 さらにそのままの調子で周りの艦隊も蹴散らしていく。形勢逆転と思われたその時……その宇宙を電磁波のようなものが貫いていく。

 

「巨大なビーム砲!?」

 

「……アレは……ジェネシス!?」

 

 スキップジャック級が構える巨大なビーム砲。それは、ガンダムSEEDのジェネシスを、極限まで小型化した何かだった。

 

「あんなもんまで持ち出して来んのかよ!?」

 

 もちろん、オルガたちを追撃するために、グレイズたちがやってくる。なんとか対応するが……

 

「このままじゃまた撃たれちまう……!」

 

 ジェネシスの再発射がそこまで迫っていた。だが周りのグレイズを相手するので忙しく、回避行動は間に合わない。……と、思われた。

 

「バエル!」

 

 残像を纏いながら現れたバエルが、周りのグレイズを殲滅する。もちろんそのパイロットは……マクギリスだった。

 

「お前……マクギリス!」

 

「あぁ。ガエリオが1分で直してくれたぞ。ここは私たちに任せてくれ」

 

「……たち?」

 

 それと同時に現れた赤いガンダムが緑色の暖かな光に包まれたビームを放ち……ジェネシスをあっさり破壊する。

 

「……これでスキップジャックは無防備だ、少年!」

 

 その煙の中から現れたのは、シャア・アズナブルが駆るキャスバル専用ガンダム。さらにそれをカバーするように現れたフォーエバーガンダムが周りのグレイズを殲滅する。

 

「……行くぞアムロ、マクギリス君。ここは私たちで抑える」

 

「あぁ。やるぞ、シャア!」

 

「……分かっていますよ、二人とも」

 

 さらに、この三人だけではない。会場にいたガンプラビルダーたち全てが、この戦いに加勢しようとガンプラを持ち寄り、そして既に出撃していた。……そしてすべては、スキップジャック級を攻めるオルガたちに託された! 

 

「ふざけたイベント企画しやがって! 俺たちがぶっ潰してやる!」

 

 周りの敵を殲滅しながら艦に近付く鉄華団。

 

「ブリッジ叩くのはお前らに任せた!」

 

 砲塔の対処に回るシノと昭弘。そしてオルガたちは……

 

「ミカァ! バックパックを移す!」

 

 バックパックを分離するユニコーンガンダムマーズキング。分離したそれが、バルバトスに繋がり……

 

「後はもう後ろは振り返るな! ……ブリッジを潰せ!!」

 

 そのまま勢いを付け……その艦を貫いた。

 


 

「……見事だった。このようなファイターたちに集まってもらって光栄だったよ」

 

 最後の大イベントの後、辺りは既にお祭りムードだった。……まあ、その祭りはもう、終わったのだが。ワイワイと賑わうその姿は……本当は決勝戦でマクギリスとオルガが実現したかった、ガンプラの楽しさを感じる戦いを実現したように見えた。

 

「……おいマクギリス。俺たちの決着はまだ付いてねえよな?」

 

「あぁ。今度こそ、改めて決着を」

 

「そうだな。ミカァ! ……おいミカ?」

 

 オルガが改めてマクギリスに勝負を挑む。……が、彼が後ろを振り返った時には。

 

「……ミカ」

 

 そこに残されていたのは、両目から光を失い、ピクリとも動かない三日月だった。

 

「……嘘だろ?」

 


 

 その日の夜、オルガは夢を見た。それは、動かなくなったはずの相棒が語りかけてきた夢。

 

「オルガ。俺はいつか戻って来るからさ」

 

「……その間俺を置いて行くくらい強くなってよ」

 

 彼は用件だけを告げて去っていった。……多くを語らないその姿は、本当に彼のようだと、オルガが感じたかどうかは定かではないが。それから一年後、オルガたちチーム鉄華団は再び、導かれるように選手権の舞台に立っていた。

 

「……やるか。トップバッターは俺が行くぜ!」

 

 オルガはまた、その席へ付いた。今度は自分で操縦する……獅電を携えて。

 

 




鉄血のビルドファイターズ、完結!
……トライの構想自体もまだできてないんすよ……


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