いろいろ書いてみる (アリファ)
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未来の至高の御方との遭遇

OVERLOADの作品たちに触発されてやりました。

4話まで書いありますわよ。


異形限定のギルド、アインズ・ウール・ゴウンは本来ならば41人の異形種によって運営されている。しかし、どういう訳か現在のAOGには42人目のメンバーがいる。

 

42人目の異形種の正体は……

 

クレマンティーヌが好きになった2000年代初期を生きていた厨ニ病が抜けきれていない青年である。

 

小説『OVERLOAD』を読んでクレマンティーヌのクレマンをティヌティヌしたい。あとついでにNPC達と触れ合いたい。

というクズみたいな願望が叶いかけているのか、OVERLOADの舞台年代で無い頭脳を振り絞り、上流階級の上の方にまで達していた。

 

ユグドラシルが出てからは課金に課金をかさね、運営の課金額ランキングで2位との差が文字通り桁違いになるまでつぎ込んだ。

運営のスポンサーにもなったが、課金は新しいのが来る度アイテムコンプするまで入れた。

 

この男、クズゆえに金にものを言わせた無理難題を運営にふっかけた。が、積まれた金だけで3回くらい人生謳歌できるレベルのえぐい金額になっているため、運営はゲームバランスをこわさない、やり過ぎないことを条件にクズ男の要望を通した。

 

結果、男のゲームデータはワールドエネミー?ワールドアイテム?何それ美味しいの?状態になっている。

 

 

プレイヤーネーム:グリンガム

種族:UNKNOWN(不明)

属性:中立 カルマ値:0

種族レベル:UNKNOWN Lv.15 不明 Lv.15 ワールド Lv.15

職業レベル:全知全能(ジ・オールマイティ) Lv.15 鍛冶の神 (ヘファイストス)Lv.15 クラフトワーク Lv.15

その他 Lv.10

永続アイテム:ワールドイズマイン(ワールドアイテム)

 

とんだぶっこわれである。

ただ、これを実装するにあたってのストーリーによりユグドラシル内ではやべーやつとして広く知られている。

 

大まかなストーリーはこうだ。

 

1.特殊条件下でのイベントがソロの状態でスタート。

2.条件、初期装備モーションサポートなし状態。内容はワールドエネミーの撃退。これを何日もかけてクリア。(実際に倒した。運営から人間じゃないと言われた)

3.達成報酬としてワールドアイテム:UNKNOWNとワールドイズマインを入手。

アイテム効果により元のアバターが消滅。今のアバターに至る。

 

この時のクエスト動画は公式でも流され、ワールドチャンピオンとどっちが強いのかなどと論争が起きた。

 

UNKNOWNは普通なら課金アイテムが必要なキャラクタークリエイトをいつどこでも好きなようにできるという夢の種族だ。

異形ではあるものの、ステータス:人化 と違い種族さえも好きに変えられるので特定の種族だからと言って襲われることを防げる。

変化したあとはその種族スキルを一通り使えるようになるのだ。

ついでに言うと、全知全能(ジ・オールマイティ)は装備した武器に合わせて対応スキルLv.10以上を得られる。

武器に依存するスキルなので武器のランクが低いとスキルレベルも低くなってしまう。

 

全知全能(ジ・オールマイティ)はそれだけでなく、最も使える能力がある。それが、アイテム制作時の必要素材減少+激運。

鍛冶の神(ヘファイストス)と合わせると歩く宝物庫(いちいち手作り)というとんでもない状態になる。

1回、世界最古の王の真似をして遊んだが勝手に片付いてくれないので1人寂しく深く突き刺さった剣を引っこ抜く作業が続いた。

 

今回は移動を楽にするために有翼種に変身して鉱石を狩に来たのだが…。

 

「………」

「………」

 

「「…………」」

 

目の前に聖騎士と骸骨とでかいサムライと蟹がいる。

しかも聖騎士は剣を抜いたまま。

とりあえず、攻撃を受けないように間合いの外に出る。

視線は聖騎士に向けたまま、後ろにいる骸骨達が仕掛けてきても対応できるようにスキルに意識を向けておく。

 

「………」

「「「………」」」

 

こちらが距離を取ったことで向こうも動き始めた。

というか、騎士はそのままに骸骨とサムライと蟹が後ろでヒソヒソと話し始めた。

 

「異形種…ですよね?」

「そうですね、今は戦闘装備になってますけど…有翼種…サキュバスでしょうか?」

「鉱石掘りかな?」

 

「この鉱山はソロだとマゾゲーだと思うんですけど…」

「かなり警戒してますね」

「たっちさんが剣抜いてるからですよ!」

「マジックキャスターかな?」

「動画で見た猫に似てる」

「ちょっ、何言ってるんですか」

 

「ソロプレイでもここに来る人いませんよ…たぶん、あの様子からすると普段からソロっぽいですね…」

「たっちさん声掛けてみてよ」

 

「なんて声かければいいんですか!あっちは戦闘態勢ですよ。 意外と油断出来なさそうなんでモモンガさん声掛けて!」

 

────────────

 

「はぁ…あー…こちらには戦闘の意思はない。だから安心して欲しい。」

「私たちはナインズ・オウン・ゴールっていうクランをやってるんだけど…」

「社会人の異形種達が集まって活動してる」

「1人でこのダンジョンに行くのはとても大変だと思う。だから、パーティーを…くまないか?」

 

「一応戦闘力見て誘うか決めましょう。ソロで来てるので強いとは思いますが…」

「見た感じ上位勢だと思うけどなぁ」

 

なんか小声で話してるけど聞こえそうで聞こえない。

ちぇっ、ワーウルフにでもなれば良かった。

まぁ、人数が増えるのは正直助かる。

 

「分かりました。ただし、人数的に裏切られないとも限りません。そこまで信用してませんし。なので1番後ろを歩かせてもらいます。」

 

「そうですね、初対面で人数差がありますから…分かりました。」

 

では行きましょう。と言いながらパーティー招待を飛ばしてくる骸骨。

 

モモンガのパーティーに参加しますか?

→YES / NO

 

…………こマ?

あっ、この骸骨モモンガさんだったんか!?

じゃあ聖騎士はたっちみーさんで蟹はあまのまさんか!?

侍は建御雷さん!?

やべぇ、本物じゃんか……。

似た装備の人達かと思ってた。

 

「そういえば自己紹介がまだでした。

私はモモンガと言います、マジックキャスターです」

 

「私の名はたっち・みー!前衛は任せてもらおう」

 

「武人建御雷。DPS役だ。よろしく頼む。」

 

「あまのまひとつ です。本業は鍛冶師です。」

 

 

「あぁ、えっと…、グリンガムです。」

 

「「「「………」」」」

 

「たぶん、いま思い浮かべてるグリンガムが私ですね」

 

「それ…本当ですか?」

 

「ミンナニハナイショダヨ☆」

 

「グリンガムさんってこんな見た目してたんですね…声も女性っぽいですし…」

 

「是非とも1回戦ってもらいたいが……」

 

「残念ですが私も本業は生産職なので戦いは苦手なんですよね」

 

「職業とかどうなってるんですか、あのクエストの時はバトル系統でしたよね?」

 

「あ〜…話せば長くなるので機会があればで、それよりも鉱石掘りに行きましょう。前衛たっちさん、建御雷さん、中衛モモンガさんとあまのまさんで。」

 

「ワールドエネミー単騎撃退できる人が後衛って…」

 

──────────────

 

 

「グリンガムさーん、採取の方はどうですか?」

 

モモンガさん達が戻ってくる。

こちらも大量に精霊銀鉱石を採取している。

 

「大量ですよ、これなら頑張ればレジェンド級の物が作れそうです、副産物で少しですがサファイアも取れました。」

「ほぉー…あの、グリンガムさん。」

「なんでしょうか?」

「私たちのクランに入りませんか?」



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ワールドアイテムとNPC

「モモンガさん!モモンガさん!!」

 

モモンガさんが居るであろうナザリックの玉座に飛び込む。

突然のことにモモンガさんがこちらを向いた。

 

「どうしたんですか、グリンガムさん」

「どうしたもこうしたもないです!

ついに完成しましたよ!」

 

「完成って…まさかワールドアイテム制作できたんですか!?」

 

ワールドアイテムは強力な効果を持つアイテムだ。

1個しかないものが多く、入手するにはかなり高い運と実力が必要になる。アインズ・ウール・ゴウンにも11個と、ユグドラシル内最多のワールドアイテムを持っている。

 

鉱山で出会ったあと、クランからギルドになった[アインズ・ウール・ゴウン]に加入した俺は、主に装備アイテムをメインで作り、高ランクアイテム制作実験として消費アイテムなどに手を出している。

 

「そのまさかだ!」

 

最近おれがやっていたのはワールドアイテムの制作。

タブラさんが作ったワールドアイテム、熱素石(カロリックストーン)のように、入手が難しいアイテムを大量に使えば出来るのでは、と考え、AOGメンバーにも協力してもらいながらアイテムの錬成・昇華を繰り返していたところ、8個目のアイテム実験が成功してワールドアイテムとなったのだ。

 

「いいですか!このワールドアイテム[深華武闘]は、持ち手の職業に合わせた高性能ゴッズ武器に変形します!さらに!!

 

確率で防御、回避無視の確殺攻撃が入る。

しかもめっちゃ綺麗なエフェクト付き!」

 

装備して見せると、篭手は瞬く間にどす黒くなり、紅く脈動するひび割れが現れた。

 

なににも変身していない状態の俺が褐色で、紅く明暗を繰り返すひび割れが体のあちこちにあるのでそれに合う模様になったのだ。

もう少し俺の外見を言うと、額には縦にした眼が着いているが、今は閉じている。もちろん、性別は男だ。

 

所有者のデザインに合わせた篭手は様々な武器に形を変えてみせ、モモンガさんの視線を釘漬けにしていた。

 

「いや〜、ゴッズ武器をぶち込んだかいがあった…17個くらいだったかな?おかげでアイテムボックスが広くなりましたよ…」

 

「17個も!?よく使おうと思いましたね…」

「いや、まだあの楽器に比べたら全然マシです。ゴッズ武器作るの大変だったけど…。

色合いと装備傾向から見た目を変えてるからどんなデザインになるかわからないから面白いんですよねぇ。」

 

「あぁ、『祝福のスーザフォン』…でしたっけ。あれは残念でしたというしか…そ、それよりも今度の討滅戦で使ってみましょうよ!」

 

『祝福のスーザフォン』というのは、でかい!音が大きい!音が低い!という楽器だ。

 

一応は音色による回復アイテムなのだが、音系のレジェンドアイテムを詰め込んだせいか、出る音が衝撃波になってしまい音の射線上にいると回復力より威力の高い波のせいで回復してからダメージを受けるという残念性能になってしまった。

 

「えぇ!それで…あのですね、アイテム効果的に私が持っていてもよろしいでしょーか?」

 

ワールドアイテムはその強さ故にプレイヤー間での取り合いが常に起こる。

使えばトンデモ威力を発揮するが、使わずに取られでもしたらそれが相手に使われてしまう。

このワールドアイテムは俺が作ったし、AOGメンバーしか知らないものなので優先的に狙われるとかは無いはずだ。

 

「たしか、職業に合わせて…でしたか。……私もグリンガムさんが持つのがいいと思います…でもワールドアイテムですからね…

みんなに話してみて、いつもの多数決で決めましょう」

 

 

結果を言うと、俺の作ったワールドアイテム…ワールドウェポン?は俺が装備することになった。

ウルベルトさんが欲しがったが、代わりに黒いカッコイイゴッズ武器作ると言ったらしぶしぶOKしてくれた。

 

今の俺の装備は深華武闘だけ。

腰にボロボロの体とおなじ模様の入ったスカートと、深華武闘の本体である篭手。他にもアクセサリーはつけているが、色合いが合わないので非表示にしている。

 

 

 

多数決の後、モモンガさんや二式炎雷さん、ペロロンチーノさんの少人数で討滅戦マラソンした時に深華武闘を使ったが、数回目の攻撃で刀身に焔が走り、切り終わりと同時に切ったところから紅い水晶がボスを包み込み爆散した。

 

その光景にモモンガさん、ペロロンチーノさんが使ってみたいと言い出し、交代で装備して戦う事になった。モモンガさんは敵の頭上にいくつもの魔法陣が同心円状に展開され、ボスが光に包まれて消滅し、ペロロンチーノさんが使った時は矢が放たれた瞬間、暴風が吹き荒れボスに大穴が空いていた。

二式炎雷さんも使ったのだが、隠密からの弱点特攻するため確率ゲーに負け、ただの奇襲になっていた。

 

その日の収穫は今までにない程高く、しばらく金策しなくとも拠点が維持出来るくらいの金額とレアドロップが手に入った。

 

──────────────

 

「グリンガムさん、NPCどうします?」

 

「NPCって?」

 

「あれです、ナザリックに置くNPCで防衛時の重要ポジションになる…、それとは別にメイド1人は作ってもらいますけど。」

 

あぁ〜、階層守護者とか領域守護者とかか。

 

「グリンガムさんはレベル200分でお願いします。

メイドは50で」

 

多くない?レベル100を2人って俺でいいのかい?

他の人は大丈夫なのだろうか…。これでNPCが変わっちゃったりとかしたら少しやばいな…。

 

「レベル多くないですか?」

 

「いえ、グリンガムさんのアイテムのおかげで多くのPKギルドを潰せたのでまだまだありますよ。

 

階層守護者を作る人は、この前グリンガムさんが来られなかった時の多数決で決まりました。なのでグリンガムさんには全体を見回りするNPCをおまかせしようかと。」

 

良かった…これでNPC達は問題なさそうだわ…。

でもなぁ、向こうでクレマンティーヌを近くに置ければそれでいいしな…キャラクリは好きだけど設定とか苦手なんだよなぁ…

もういっその事他の人に丸投げしよ。

 

「キャラクリは他の人にお願いしてもらってもいいですか?」

 

「いいんですか?」

 

「見た目は可愛いorカッコイイよくて。腹黒くなければ変態設定でもなんでもいいですからね」

 

「それ、タブラさんやペロロンチーノさんが聞いたらヤバいですよ」

 

今話している場所は9層にある俺の自室だ。

タブラさんもペロロンさんも自分のNPC作りをしている最中だろうし、問題はな

 

「任せろ!」「話は聞かせて持った!」

 

嘘だろモモン太郎…。

扉の向こうからバカ2人が揃って入ってきた。

 

「いやぁ〜、グリ厶ンがどんなNPC作るのか聞きに来たら変態でもいいとは!ぜひ運営に挑戦しましょう!」

「任せてください。グリ厶さんが好きと言っていたヤンデレにしておきますから!」

 

「タブラさん、性別どうしましょうか」

「グリムさんは男アバターにも女アバターにもなりますからね…両刀女性にしておきましょう、ギルメンの男×男は破壊力がきついですから…」

「種族は?」

「グリムさんの種族が特殊ですからねぇ」

「あ、行動派のヤンデレにしましょう。表の顔と裏の顔凄いやつに」

「初心設定が栄えますね。ヤンデレ初心両刀女性。」

「そういえば、レベル100を2人作るんでした。姉妹設定で、ある程度共通要素持せたらあとは自由に作りませんか?」

 

そうだ、グリムさーん!だいたいの感じをまとめてくるので確認お願いしまーす!!」

 

ノリノリで扉から歩いていった2人。

聞こえた範囲でも結構やばい気がするゾ…。

まぁいいけど。

 

「モモンガさん、あの2人に…」

 

モモンガさんに声をかける。

 

「職業は召喚士兼ヒーラーとエンハンサー兼アサシンにして、と伝えてください」

 

「」

 

まさかの言葉だったのか、モモンガさんは口が大きく空いて片手が空中にあった。

 

「いや、あの…いいんですか、自分で作らなくて。」

 

「好きな見た目なら自分で成れますからね。

それに、自分の姿を変えた時の装備とかまだ整ってないのでそっち優先です。」

 

「あんたまだやるのか!」

 

「良いでしょう!?体にワールドアイテム2つあって、1つ装備していたって不安なものは不安なんですよ!」

 

「さすがに過剰すぎですよ!大規模ギルドでも潰しに行くんですか!?」

「備えあれば嬉しいなってどこかの国王陛下も言ってるんですよ!?いいじゃないですか!!」

 

「それ間違ってませんか!?……はぁ、アイテム量産もいいですが宝物庫の容量も考えてくださいよ?」

 

「りょうかーい!」

 

絶対考えてない。と呟き、メイドはちゃんと自分で作れ。と言ってモモンガさんは部屋から出ていった。

 

メイドかぁ、レベル50をどう振り分けようかな…。

異形種…変身させればいいから見た目2つ考えなきゃか…。

 

昔、ネットゲームで作ったアバターにしよ。

名前は…『ヤラ』でいいか…。

種族は龍人で、種族スキルはLv15、職業は召使いLv15…商人Lv15…あと5レベルは盗賊でいいか。



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サービス終了。メイン開始

ナザリック地下大墳墓にギミックやNPCが配置されて、内装も完成してからしばらく。

 

ナザリックとプレイヤー1500人による戦いで、八階層まで侵攻されたり、ナザリック侵攻に関わったギルドを壊滅させたりと楽しいことがあったが、今ではやることが無くなってしまい、リアルの都合から引退する人が続々と出てしまった。

 

今、アインズ・ウール・ゴウンに残っているのは、ヘロヘロさん、ペロロン、ペロロンの姉のぶくぶく茶釜さん、モモンガさんそして俺だけだ。

 

随分と広くなってしまったナザリックを維持するため、俺とモモンガさんで日々金策をしている。

ぶっちゃけ俺1人で十分稼げるのだが、モモンガさんが さすがに… ということで2人で実入りのいいボス戦をマラソンするのが日課になった。

 

─────────

 

「今日でサービス終了ですか……」

 

円卓に座っている、モモンガさんと紫の粘液体であるヘロヘロさん。

 

「いやぁ、まさか最終日までナザリックが残っていたとは…」

 

ヘロヘロさんはブラック企業も真っ青な会社に務めているらしく、サービス終了を聞いてなんとかインしたそうだ。

そのせいで明日は会社から帰れそうにないらしい。

 

「すいません、さすがに疲れがやばいので落ちますね。」

 

「ほんとうにブラックなんだねぇ…。死なない程度に頑張ってください」

 

「本当にお疲れ様です、ヘロヘロさん。」

 

「ありがとうございます、死なないように頑張ります…

では、他のゲームであったらまたよろしくですー。」

 

ピコンと言ってヘロヘロさんが落ちた。

モモンガさんが震えていたけど、俺がいるからかなんとか抑えているようだ。

 

「残り10分もないか…」

 

そう言って立ち上がる。

モモンガさんがこちらをじっと見るが、心配しなくても落ちることはしない。

 

「最後だから私たちの最高傑作のギルド武器を持って玉座に行きませんか? めっちゃくちゃ美人に変身して並んであげますよ」

 

「……そう…ですね、最後ですしそうしましょうか」

 

モモンガさんがギルド武器を持つと2人で移動を始める。

円卓の部屋からでて、プレアデス達を追従させて玉座へ。

 

アルベドの設定を見たモモンガさんは、ちゃっかり自分を愛していると書き込んでいた。

 

「いや、最後ですし、別にタイプだからとかじゃないですからね?!本当ですよ!?」

 

「いや、アルベドのコンセプトってモモンガさんの理想女性ですからね。タブラさんお得意の膨大な設定の中にモモンガさんへの思いも書いてあったはずです。なんら問題ないですよ?」

 

モモンガさんがまた唖然としている。

 

 

気を取り直したモモンガさんが玉座へと座る。

アルベドと、変身して真っ白な髪に紅のヒビ模様のある黒いドレスを纏った俺(♀)がそれを挟むように立つ。

 

残り30秒…。

 

向こうに行けたらクレマンティーヌをどうにか手元に置いて、ナザリックが人類敵にならないようにしよう…あとモモンガさんがこじらせないようにしてあげよう……。

さすがにユグドラシルで迷惑かけすぎた…。

 

残り3秒。

 

 

 

2……。

 

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……目を開ければ広々とした空間。

全体は暗く、冷たい印象を覚える。足元からはフカフカな感触。

モモンガさんを見てみれば、また顎がガックリと開いている。

 

「なっ……」

 

「モモンガさん、時間は過ぎましたよね?」

 

あぁ、声が見た目とおかしくないように男の声から変わっている。

ちゃんと女の声だ。

 

「…! グリンガムさん!そ、そうですねとっくに時間は過ぎているのでこの場にいるはずが…ユグドラシルの続編でも始まってるんですかね?」

 

顎に手を置いて考え込む骸骨。

ふとアルベドを見てみると、そわそわとモモンガさんの様子を伺っている。

 

プレアデス達も露骨ではないが、こちらの様子を見ているようだ。

 

 

「グリンガムさん!GMコールもログアウトも使えません!メニューすら表示されてない!」

 

色々試したのだろう、モモンガさんが現状を教えてくれる。

俺の方は見た情報をモモンガさんに伝えよう。

 

「モモンガさん、NPC達が自我を持ってるっぽいです。」

 

そう言ってアルベドに目を向けるとモモンガさんもアルベドを見た。

 

また顎がガックリと開いている。いつか外れそうだ。

というか、いつかカートゥーンみたいに地面まで顎が落ちそうだ。

 

注目されたアルベドは話すタイミングを探していたのか、視線を受けて口を開いた。

 

「なにやら問題があるようですが、モモンガ様、グリンガム様がなにを仰っているのか存じ上げない私はお力になれそうにありません。この失態を払拭できるなら如何様にもご命令を。全身全霊を持ってこなしてご覧にいれます。」

 

モモンガさんはアルベドの言葉を聞いてNPCが()()()()()ことにパニックになっているようだ。

俺は元々知っていたし、パニックになってる人が近くにいると自分は冷静になれるのでまったく動じてない。

 

「あ、あぁ、いや、……そうだな。アルベド、近くに寄れ。」

 

支配者っぽい口調と声色になったモモンガさんは、たぶん、運営のハラスメントコードの確認をするためにあれをするんだろう。

 

モモンガを愛しているアルベドは必要以上にモモンガさんに近寄った。というか、もう少し顔近づけたらキスする距離だ。

ガチ恋距離だ、ガチ恋距離。

 

もう既に惚れてるand理想女性が目の前のどーてー。

 

もうゴールでいいんじゃないかな。

 

アルベドとのガチ恋距離のせいか、周りが見えてないらしくアルベドに断りを入れてからモモンガさんは骨の手でアルベドの胸を……揉んだァァァァァァァア!

 

みんな見てるよー、セバスもプレアデスも俺もみてるよー!

 

セバスは空気読んで気配消してるし、プレアデス達も気配を薄めてる。羨望の眼差しが向いてるけど。

 

「んん”!ハラスメントコードもダメらしいですね…。あんなに規制凄かったのに…」

 

俺の声にビクッと反応する2人。

1人は俺がいたことを思い出して。

もう1人は頬を赤く染めていやらしい感じになっている。

 

「アルベド、ここで致すのもいいけど、ムードのある所の方がより燃えるよ?今我慢すればもっと楽しめると思うけどなぁ…。」

 

アルベドはハッとした後、すぐさまそばに控えた。

頬はまだ紅潮して、これからを考えたのだろう、笑みを浮かべていた。

 

「ま…まず情報を集める。でいいですか?グリンガムさん。」

 

「………はい。情報がないと何も対策できませんからね」

 

モモンガさんは気配を戻したセバスに外の様子を見てくるよう命令すると、プレアデス達に通常業務に戻るよう指示した。

 

「アルベドは各階層守護者と見廻りに六階層、アンフィテアトルムに集合するように伝え…ろ。時間は1時間後だ。

アウラとマーレには私自ら伝える。」

 

全員が返事を返すと、玉座の間には俺とモモンガさんだけになった。

 

「…とりあえず、私の部屋行きますか。」

 

「そうですね…」

 

 

玉座から俺の部屋に移動する。

 

俺は女の姿から男の姿に戻る。

体そのものがグ二グ二と動いて形を変える形式らしい。

これは確かに異形種だわ…。

 

モモンガさんと男に戻った俺は色々確認していく。

 

「魔法は使えますかね?」

 

「試しにメッセージ使ってみますか

 

『メッセージ/伝言』」

 

『グリンガムさん聞こえますか?』

 

こいつ!直接脳内に……!

 

『ファミチキください』

 

『ファミ…?なんですかそれ』

 

『なんでもないです』

 

「…魔法は使えるっぽいですね。」

 

「モモンガさんが魔法使えなかったらただの豪華なスケルトンですからね」

 

「高位の魔法は使えるんですかね?」

 

「闘技場を集合場所にしたのって魔法とかの確認のためじゃないんです?」

 

「いや、もしNPC達が攻撃してきてもすぐ逃げれるようにです…」

 

おぉう…。

まぁ、確実か。

 

「それと…NPCたちの前では支配者ロールをしようかと。」

 

やっぱりかぁ……。

どうすっかなぁ…。体に意識が引っ張られるんだっけな…。

人化の腕輪渡して人間の姿でも過ごしてもらうか…?

 

「まぁ、仕方無いですか…。

俺はいつも通りで行きますので」

 

「ずるいですよ!グリンガムさんもロールしてくださいよ!」

 

「いーやーだーねー!モモンガさんは42人を纏めてたリーダーなんだから仕方ないじゃん!」

 

「ちくしょぉ!」

 

「はぁ、息抜き用に人化の腕輪あげますから頑張ってくださいよ。」

 

アイテムボックスの空間へと手を突っ込み、腕輪を取り出す。

 

「なんで持ってるんですか」

 

「課金額ランキングチャンピオンに抜かりはなかった。

冗談です、対モモン…アンデッド用にバッドステータス効果つけるために素材としてキープしといたんですよ。」

 

「今、対モモンガって言いませんでした?

言いましたよね?」

 

「言ってないです。アルベドに寄られてどーてームーブ噛ましてる人の名前なんて言ってないです。 」

 

「グリンガムさんだって自分の姿変えて楽しんでたじゃないですか!」

 

「当たり前でしょう!自分の体が理想ボディとか見たり触れたりするでしょーが!

 

スケルトンは大変ですねぇー!!食べ物も食べれなくて!睡眠も取れなくて!!挙句には今まで連れ添ってきた愛棒も無くなって!女性を前に永遠のお預けですかぁ?」

 

「……『オーバーグラビティ/超重力』!!」

 

「うごはぁ!!」

 

「まったく…、食事や睡眠のための人化ですか…。

最初からそういえばいいんですよ。ありがたく頂いておきます。」

 

地面に押し付けられてる俺から腕輪を拾う童貞骸骨。

イタタタタタタタタ。めりこむ、めり込んじゃうからァ!!

 

「フレンドリィファイアしてるぞこの骨ェ!!」

 

「あ、確かにそうですね。すいません。」

 

フッと体を押し付けられている感覚が無くなる。

立ち上がり、ホコリを払う。

 

「今度から魔法には気をつけないとですね。」

 

「ゲームと少し違うみたいだしな…、1度確認しないと。

ということで、集合時間まで残り40分ですしアンフィテアトルムに行って実験しましょうか、すこしばかり手が滑るかもしれないですけどねぇ?」

 

「グリンガムさんの攻撃力、洒落にならないので遠慮しておきます。

アウラとマーレにも話をしなければですし行きましょうか」

 

モモンガさんと俺は、装備しているリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで六階層、闘技場〈アンフィテアトルム〉に転移した。



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モモンガさん(人間)

一気に更新だっシャオラァ!


六階層、次の階層へと続く転移門がある闘技場〈アンフィテアトル厶〉に転移したモモンガさんと俺はショタ(♀)とロリ(♂)に歓迎されている。

 

ショタ(♀)の名前はアウラ、茶釜さんが作った男装女の子だ。

ビーストテイマーで、集団戦No.1。

 

ロリ(♂)の名前はマーレ。同じく茶釜さんが作った女装男の子…。

さすがペロロンの姉だな…。

しかし、侮るなかれ、マーレの広範囲殲滅力はナザリック1である。

 

ついでに言うと、マーレは戦士系であるアルベドより力が強い。

 

ギャップ萌えも入れてるのか茶釜さん……。

 

「アインズ様とグリンガム様はなぜ六層においでに?」

 

元気に質問してくるアウラ、何故かその頭と腰に犬耳としっぽが見える。

半歩後ろでマーレが「お姉ちゃん御二方に対して失礼だよ…」なんて言っている。守護者の中で1番まともかもしれないからこのままでいて欲しい。

 

「あと30分くらいでここに各階層守護者達が集まる。

それと、少し試したいことがあってな。

 

アウラ、的を用意してくれるか?」

 

モモンガさんがそう言うとアウラはこれまた元気よく返事をして準備に取り掛かった。

モモンガさんもアウラについて行った。

 

残された俺とマーレ、ただ待つのも暇なのでテーブルとイスを取り出し、紅茶2カップと大皿のクッキーを置く。

 

また玉座の時と同じ白い髪、黒いドレスの姿に変身してマーレを膝に座らせた。マーレは突然のことに身を固くしているが、ユグドラシル時代からNPC達にアクションを取っていたこともあり、すぐさまリラックスしてくれた。

 

まぁ、スキルでリラックスフレグランスも使ったからなんだけど。

 

「マーレ、好きに食べていいわよ」

 

「えぇ!?いいんですか!?」

 

驚くマーレだが、目はチラチラとクッキーと紅茶の方に向いている。

食べても大丈夫と伝えれば、杖を抱いたままクッキーへと手を伸ばし口に運びだした。

 

「美味しいです!グリンガム様ぁ!」

 

……本当に玉ついてるのだろうか?

 

クッキー食べるマーレの頭を撫でながら、魔法実験をしているモモンガさん達を確認する。

 

モモンガさんが何か呟くと藁人形の上半分がちぎれ飛んだ。

 

えぐい魔法使うなぁ…。人間なら即死だよ、上半身と下半身がサヨナラバイバイだね。

 

アウラの下僕であるドラゴンキン─ドラゴンの近親者─に藁がぶつかっている。

モモンガさんが変に上機嫌だが、部屋で俺に使った魔法の方が高威力だと思うんだけど……。

 

そう思いつつ紅茶を啜っていると、モモンガさんとアウラがなにやら話をして、距離をとった。

 

モモンガさんが我らがギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを地面に向けると、炎の巨人が現れた。

 

こちらにも熱風が向かってきているが、邪魔でしかないので障壁で打ち消す。

 

『高位結界・断空』

 

テーブルと俺たちを包むように円形に透明な壁が現れる。

この結界は第十位階魔法の直撃でなければ破られることは無い。

 

アウラがアレに挑むようだ。

 

マーレのサポート無しで大丈夫だろうか…。

まぁ、マーレが何も言わずにお茶飲んでるし大丈夫だろう。

 

「マーレ、お茶は美味しい?」

 

「はい!と、とっても美味しいです!」

 

「口にあって良かったわ、お代わりはどうかしら?」

 

「あ、ありがとうございます!いただきます!!」

 

可愛いなぁ…。

あぁ。私は断じてショタコンではないです。

甥っ子です、可愛い甥っ子。

 

マーレは甥っ子と言うよりも姪っ子っぽいけど。

 

お茶を自分の分とマーレの分を注いでいると、もう少し戦い終わったのかモモンガさんとアウラがこちらに向かってきていた。

 

アウラは若干怒っているようだ。

モモンガさんは驚いている。若干口空いてるし。

 

「マーレ!あんたなにグリンガム様の上に座ってるのよ!」

 

やっぱりね、思ってた通りのお怒りだったか。

でも、座らせたのは俺だからさすがに可哀想だ。

 

「私が膝に座らせたのよ。」

 

「え?」

 

驚きながら、ユグドラシルでの俺の行動を思い出しているのか表情がコロコロ変わっているアウラ。

 

マーレを降ろしてアウラを手招く。

近づいてきたアウラを抱っこし、膝の上に座らせる。

 

「あっ…」

 

「アウラ、クッキーと紅茶はどう?」

 

新しくアイテムボックスからアウラとモモンガさんの分のカップを出して、ティーポットから紅茶を注ぐ。

 

「モモンガさんも人化の腕輪をして飲みましょう。美味しいですよ。」

 

そう言うと、モモンガさんはまだ人化するのに抵抗があるようだ。

 

「人化の腕輪をしてもステータス低下しかつかないので万が一はありませんよ、ちゃんとお守りしますから。」

 

ちゃんとフォローをすると伝えると、腕輪を着けて人間の姿になった。

 

装備アイテムはそのままサイズに合うように縮んだ、どこかの大魔術師かなんかに見える。

見た目は優しげな日本人だった。

 

アウラとマーレはモモンガさんの人間化に驚いているようだった。

 

「少しステータスは下がりましたが問題はないですね。

グリンガムさん、ありがとうございます。」

 

声はそのままなのに、柔らかく、優しい感じがする。

 

椅子を2つテーブルに並べて、モモンガさんとマーレを座らせる。アウラは膝の上のままだ。当然でしょう?

 

「モモンガさんの人間化は驚いた?」

 

アウラの頭を手ぐしで整えながらそう2人に聞くと、

 

「とても驚きました!アンデッドのモモンガ様も威厳があってかっこいいですけど、人間になったモモンガ様の方が優しそうでかっこいいと思います!」

 

「ぼ、僕も人間になったモモンガ様の方がいいです、アンデッドのモモンガ様よりその…、優しそうなので…。」

 

なかなか好感触の2人、モモンガさんを見てみると照れているのか少し気まずそうに紅茶のカップで口元を隠している。

 

「良かったですね、モモンガさん。」

 

「本当に、良かったですよ。

でも、私だけ人間化は浮いている感じがするのでグリンガムさんもなってくださいよ。」

 

仕方ないなぁ、

 

「守護者が来るまでですよ」

 

アウラを座っていた椅子に座らせて、変身する。

種族変更から人間になれば人化の腕輪は必要ない。

 

適当にリアルでのラフな格好になってモモンガさん達と対面する。

 

「グリンガムさん、イケメンだったんですね。」

 

「モモンガさんも優しい顔したイケメンですよ」

 

モモンガさんからは安堵。

アウラと、マーレは…。

 

「とてもかっこいいです!モモンガ様は優しいお父さんって感じですけど、グリンガム様はかっこいいお兄さんって感じです!」

 

「お姉ちゃんそれさすがに失礼だよ、でも、お二人共かっこいいと思います!」

 

モモンガさんがアウラのお父さん発言にダメージを受けているのに笑った。

 

テーブルに椅子を増やし、4人でお茶会を続ける。

モモンガさんはクッキーと紅茶を気に入ったのか、ひょいひょいと食べ進めている。

 

「こんな美味しいクッキーとお茶は初めてですよ。」

 

まぁ、あのリアルとは比べ物にならないよなぁ…。

 

「えぇ!?そうなんですか!?」

 

予想以上に驚いたのはアウラだ。

至高の御方がろくなもの食べてないことに驚いたのだろう。

 

『モモンガさん、ここでアウラとマーレにリアルについて少し話そうと思うのですが、』

 

『本当に美味しいですね、このクッキーとお茶。』

 

『モモンガさんモモンガさん、この飲み物は紅茶と言うんですよ。』

 

『そうなんですか!あ、リアルの話でしたね、よろしくお願いします。』

 

「アウラ、マーレ。よく聞いてね、俺たち42人はアウラたちのいる世界と別の世界にいたんだよ。

その世界はとても過酷でね。非力な人間にしかなれないんだ。

生きるためにみんな必死で働いて……。それでも何人かは命を落とした。

食べるものなんか美味しさなんて感じられない、酷いものしかないんだ。だから、モモンガさんも俺もこっちでは質素な料理や景色でも、今までないくらいの美味しさだったり、美しさだったりするんだよ。

ごめんね、君たちの創造主達はそんな生き物なんだ。幻滅したかい?」

 

『ちょっと、大丈夫なんですかそんなこと言って!』

 

『大丈夫ですって、たぶん。』

 

モモンガさんが頭の中で騒いでいるが、無視する。

アウラとマーレを見ると2人は涙を浮かべているようだった。

 

「アウラ?マーレ?」

 

「幻滅なんてしません!至高の御方々がそんな環境にいたのに私たちは…なにも…」

 

ちょっと雲行き怪しいな?

 

『モモンガさん、どうしようか。この子達の忠誠心限界突破してるっぽいわ。』

 

『えぇ!?ここでそんなこというんですか!?』

 

『やべぇ、どうフォローしようか…、モモンガさんよろしくお願いします!』

 

『えぇ!』

 

「あー、うん。そうだな、アウラ、マーレ。

確かに向こうは酷いところだ、私とグリンガムさんが残れたのは奇跡かもしれない。

しかしもう終わったことだ。この世界と私たちがいた世界とは分断されて行き来することが出来なくなっているからな。

 

気に病むことは無い。」

 

 

あー、うん。これはパッパだわ。

 

『さすがモモンガパッパ。お父さんだわ。』

 

『やめてください、結婚もしてないんですから。』

 

『そういえば、AOGでの独身同盟なんで除け者にしたんすか!』

 

『グリンガムさん未婚者だったんですか!?』

 

『童貞ではないけどね!!』

 

『ギルティだおらぁ!!』

 

「まぁ、気にするな。いつも通りでいいんだ。」

 

頭の中でモモンガさんと騒ぎながら、リラックスフレグランスを強める。

残念だな、これはデバフじゃないから防御貫通するんだ。

 

人間になったモモンガさんが1番効果出てるせいで優しさ4割増になっちゃってるわ。

 

2人は落ち着いて、お茶を飲み進めている。

少しばかり元気が減っているが……。

 

「2人とも、そんな顔だと美味しさが減るよ。もっと元気に!ほら!」

 

 

 

 

 

 

早く守護者達来ないかなぁ……。



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魔法科高校の劣等生
さすおにと兄弟になりまして


魔法科高校の劣等生にオリ主ぶっこみたかったんや。

アニメとwikiでやっていきます。

キャラはブレブレかもしれませぬ。


目を開ければ目の前は海。

夜だからか、昼見えるであろう綺麗な淡いグリーンではなく、どす黒い、闇のような色をしている。

背後からの赤い光でより黒色が濃くなってしまっていた。

振り向けば南国の木々の向こうでごうごうと火が燃えている。

 

「…うん。なんでこうなったんだっけな…」

 

 

思い返してみる。

 

たしか、魔法科高校の劣等生のアニメ見てて…、2次小説読んで…こんな力を持ったキャラでさすおにを近くで見てみたいな…と思ったところまでは覚えている。

 

というか、そう思って瞬きしたら砂浜に立っていたんだけど…。

 

考え事をしていると、遠くから爆発するような音が聞こえてきた。

なんの音だろうか、音のした方を見てみると丸い何かが大量に飛んできている。

 

………。

 

ドォォォォオオン

 

飛んできた弾は後ろの建物に当たり、炎を広げた。

 

「夢じゃ…ない……」

 

砲撃にも、飛んでくる弾にも驚いたが、それだけだ。

不思議と恐れはない。

 

次々と弾が飛んできている。特化型CADを抜き、()()()()を自分の前面に展開して被害を無くす。弾の通り道を演算して部分的に強めることで風圧以外を遮断する。

 

魔法を使うのは初めてだが、迷うことなく発動できた。

元々知識があったかのように今ではどんな魔法が使えて、何が使えないのかがわかる。

 

砲撃をものともせずに軍艦を眺めていると、右の方から覚えのあるサイオンを感じた。

 

「あぁ、達也のアレか…。」

 

………なぜ()は達也だと分かった。

確かに魔法科高校のあらすじのようなものは知っているから、この後 達也が戦略級魔法:マテリアル・バーストを使うのはわかる。

 

でもどのタイミングで打つのかは知らない。

それに、感じたのは達也が魔法を使う時の想子だ。

達也のところまである程度の距離がある。常人なら感知できたとしても個人を特定するまでは出来ないはずだ。

 

また達也の想子が放出されているのが分かる。

海の方を見ると、遠くの方で軍艦が光に呑まれたのが見えた。

 

二次災害を阻止するべく、達也が魔法を打ち込んだ座標に

()()()()()()()()()()()()()を発生させ、マテリアル・バーストによって起こった大波をそれに吸引させる。

 

ある程度落ち着いたところで吸引をやめる。

 

ふと視線を感じた方を向くと、達也と目が合った。

 

なんだ、驚いた顔もできるじゃないか。

 

 

しばらく目線を合わせていたが、それ以上は何も無いので喉を潤しに比較的被害が少ない方へ向かう。

五歩くらい歩いたところで視線は無くなった。

 

喉潤したら色々と確認しないとな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきは突然の砲撃になにも確認していなかったが、落ち着いてみると、ブラックホールを使った時は黒い髪だったのが今は卯の花色になっている。

髪型も腰まで届く長髪を後ろで一つに束ねていた。

顔は確認できないが、触ったところ整っていたと思う。

 

身元を確認出来るものが無いかとポケットを確認した所、財布があった。

中には3000円と小銭、学生証が入っていた。

 

学生証を見てみると、やっぱりイケメンの写真だった、証明写真を撮った時からロングヘアだったらしい。

 

名前………いや…うん。

さすおにを近くで見たいとは思ったよ。

 

何故、達也の想子を判別できたのかも分かった。

達也が驚いた理由も多分だが予想が着く。

 

僕の名前は『司波 虎白(こはく)』。

 

誕生日は2079年4月24日…。

達也と同じ日だ。

 

そうか……あぁ、わかった。

まだ全部じゃないけど、この体の記憶が教えてくれていんだ。

 

だけど今は知らないことばかりだ。

少しばかりこの世界とこの体に馴染まないとな…。



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しかし! まわり こまれて しまった ! ▼

ガバガバ魔法理論だぜ☆


自動販売機でコーヒーを買い喉を潤していると、後ろから達也がCADを突き付けてきた。

 

「いきなりだね、達也。()に向かってそれは酷いんじゃないか?」

 

否、雲散霧消を使ってきた。

肉体じゃなくて持っている缶に、だけど。

 

「お前はなんだ。魔法は発動した、なぜ分解されない」

 

肉親なのにあたりが強いなぁ…。

この缶コーヒーまだ一口しか飲んでないんだから消させてたまるか。

 

「大変だったんだよ、達也のソレを攻略するの。」

 

たった1つの魔法を 達也が霧散霧消を発動させるのと同時に、収束、発散、吸収、放出の加減を全て逆で発動させた

 

達也の魔法を僕の魔法で相殺させただけ。

 

「それで、何しに来たんだい」

 

振り向くと達也が距離をとった。

CADは向けられたままだけど。

 

「お前は魂が抜けたような人形だった。感情も、喋ることもなかった。もう一度聞く、お前はなんだ。」

 

前の僕はそんなだったのかい…。

あぁ、思い出した。

 

「僕は司波 虎白だよ。君の兄で、深雪の兄でもある。

そうだね…7年前、達也は精神をいじられて今は兄妹愛…まぁ、深雪への愛情か、それしか残ってないだろう?その代わりに魔法演算領域を手に入れた。」

 

「それがなんだ」

 

「僕は今まで自分の魔法で人格を消していたんだよ。

産まれてすぐ、持っていた想子量と演算領域のせいで人格が崩壊しかけてね、そこから人格ができあがるまでずっと。」

 

「………」

 

CADは向けたまま、達也はポケットから端末を取り出した。

 

「とのことですが、どうされますか」

 

『そうなの…とりあえず2人とも戻ってきなさい。』

 

あぁ、聞いたことある声だ。

母上殿(深夜)か…。

 

達也がこちらを見る。

返事をしろってか…、

 

「わかりました。」

 

「すぐにもどります。」

 

通信は切られ、達也がやっとCADを片付けた。

 

「道すがら色々聞きたいことがある、こっちだ、兄さん」

 

!?

 

これは嬉しい。

僕の方にも少しばかり兄弟愛があるようだ。

いつまでもお前呼ばわりは兄弟としてあんまりね……。

しかも僕の方が兄だから余計にね?

 

「それで?聞きたいことってなんだい」

 

足元に魔法を展開して加速しながら話す。

達也も同じ魔法で併走している。

 

「艦隊を壊滅させた後に使った魔法。あれはブラックホールであっているかな」

 

「あってるよ。まぁ、厳密にはブラックホールもどきだけどね

 

あれは……収束と発散と…吸収と放出と加重の複合魔法でブラックホールを再現したものだから。達也の分解と似たようなものさ」

 

「そうか…それって範囲とか広げられるのか?」

 

「当たり前。まぁ、危ないから使わないけど。」

 

「そうか……今日から兄さんも戦略級魔法師だ」

 

「面倒くさそうだね、お断りさせてもらってもいいかな?

だいたい、理論はとっくに出てると思うんだけど?」

 

「使えるのと使えないのでは天と地だからな、断る権利はないぞ。」

 

うへぇ…あの軍人さんとも話さないといけないのか…。

なんだっけ……か…か……風祭警部?

あぁ、風間大尉?風間少佐?どっちでもいいか。

 

それにしても母上殿と面談か…。

まぁ、今まで人格がなかったんだし責められることは無いだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私には2人の兄様がいます。

兄様達は双子ですが、二卵性双生児なので初めて会った時は双子とは思いませんでした。

 

そんな兄様達の感情がわかりません。

 

上の兄は虎白兄様といって、高い身長に非常に整った顔立ちなのですが、常に無表情です。それに私は虎白兄様の声を聞いたことがありません。

ですが、お兄様は近くにいる時に色々と相手になってくれました。言葉が帰ってくることはありませんが私のお話に頷きで返してくれたりもします。

 

少し前に屋敷の廊下を歩いていた際に聞こえてきた話から虎白兄様の身体について知りました。

異常な想子量、四葉の精神干渉系魔法術者数人でも把握出来ない演算領域、誰も知らない魔法で守られた人格。

 

お兄様が無表情で人形のようですが、それが自己防衛のためと知ってから私はお兄様と接する時間が長くなりました。

 

何回か一緒の布団で寝たのですが、1度だけ、頭を撫でてくれたことがありました!

それがあまりにも気持ちよくてすぐに寝てしまったのですが、意識が落ちる直前に虎白兄様が笑みを浮かべていたように見えたのです。

 

起きたらお兄様はおらず、いつも通り縁側に座っていました。

顔はこれまでと同じ無表情のまま…。

 

沖縄に行った時、気がついたら虎白兄様がいなくなっていました。

その後、沖縄海戦があり、もう1人のお兄様にしていた誤解が解けたのですが、なんと虎白兄様の人格が戻ったと達也兄様から聞かされました。

 

今は叔母様と母様とでこれからについてお話しているようです。

 

 

もう1人の兄である達也兄様は四葉の特殊な魔法によって魔法領域を与えられ、精神を縛るべく私と虎白兄様への兄妹愛しか残っていません。

 

今まで話すこともなかったのでどうなるか心配でしたが、虎白兄様の話で意外と盛り上がりました。

 

虎白兄様は私がいない間に達也兄様と遊んでいたそうです。

その間もいつもと同じ無表情だったらしいのですが…ずるいです!

私だってお話するか膝枕してもらうかしかしていません!

お兄様達だけで遊んでいたなんて!

 

これから虎白兄様にはいっぱい付き合ってもらわなきゃいけませんね!

 

もちろん、達也兄様にもです!




一緒に寝た→布団に潜り込んだ。

オリ主(人形時)は一般的な生活サイクルと微かな反応をしますが、自分の意思が出ることはありません。
その場で反射的に動いてます。

達也とのお遊び→四葉流お遊び(戦闘)


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四葉面談

キャラ崩壊と繋がってない文章。

次回からすっ飛ばして高校入学編になります。



耐えろ!耐えるんだ!!

地獄の始まりだぜ!
↓↓↓


あぁ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙

 

もうダメだ、何この圧迫面接。

 

四葉のトップが出てくると思ってなかったわけじゃないけど急に声掛けてくるのやめて貰えませんか。

 

部屋に入って母上殿に座るよう言われたから対面に座ったらアンタッチャブル中のアンタッチャブルなご本人登場ですよ。

 

後ろから声かけられた時は冷や汗と鳥肌がやばかったね。

 

しかも母上殿の隣に座るのかと思ったら僕の隣って……。

叔母上殿……、甥に色仕掛けですか、僕も普通だったら思春期真っ只中ですよ?

 

しかも扇情的すぎるドレスのせいであなたの方向いたら色々とやばいから向けないんですよ。

 

「そう…、虎白さんの処遇の話だったわね

でも…その前に今までのことを話してもらえるかしら?

四葉でもある程度は把握してるわ、それの確認も込めてね」

 

「はい、叔母様。

 

僕は産まれてすぐ、持っていた想子量と演算領域のせいで体も精神もボロボロでした。体の方は治癒力とキャパオーバーのダメージが同等だったので一応は大丈夫だったのですが、精神の方は耐えられなかったので、精神が成熟するまで解けない封印を施し精神に夢を見せていました。その間の体は叔母様や母様が知っての通りです。」

 

体の人外スペックぱなぃ……。

産まれてすぐ魔法使うとかやべぇやつやん…。

 

「そう…四葉のデータとも同じね…。

わかったわ、おかえりなさい、虎白さん。」

 

イマイチこの人が魔王って呼ばれるの違う気がするんだよなぁ…

 

「え?あ、ただいまもどりました…?」

 

「ふふっ…。そうだわ、もうひとつ聞きたいことがあるの。

 

達也さんのこと、深雪さんのこと。どこまで知っているのかしら?」

 

今までと違う。

張り詰めた一触即発の空気。

ここでミスったらミーティアされるな……。

 

「達也と深雪に関しては…そうですね……。

強い力は抑制しなければ危ないですから僕からは特に何も。

そのせいで兄妹仲が壊れるなんてことにしたくありませんし。封印時のぼんやりした記憶でも何となく分かりますから。」

 

「そう、分かったわ。

ごめんなさいね、もうひとつって言ったけどまた一つだけ」

 

 

周りが夜に包まれた。

 

なんで四葉の人はすぐに魔法使ってくるかなぁ!?

 

叔母様の流星群(ミーティア・ライン)は光の通り道の作る魔法。

防御魔法は効かない。対処出来るのは達也の分解くらいだけど…。

光がこちらに向かって動き始める。

 

僕も一番使いやすい魔法を発動させる。

そう、ブラックホールだ。

光すらも入ってしまったら出てこれない。引力は空間すらもねじ曲げて呑み込む。

叔母様の流星群はブラックホールに呑み込まれ消滅した。

 

僕はBS魔法が使える。能力は『空間支配』だ。

演算領域を少し持ってかれているが、異常な領域の広さのおかげでBS魔法師にならずに済んでいる。

空間支配は空間に存在する力や物体を好きに操作できるのだ。

やろうと思えば相手の魔法をねじ曲げて返すことや、場所を認識出来ればワープみたいなことも可能だろう。

 

「……決めたわ深夜。虎白さんを私の息子にします。」

 

「何を考えてるの真夜」

 

「虎白さんは達也さんの扱いを分かっている。それに四葉に嫌悪感もない。

達也さんへの制圧力は必要よ?戦略級魔法も扱えるし。

私の流星群を受けても生きている…。

でも、四葉の次期当主候補にするかはまだ決めていません。

いない時間が長すぎたからその分ね。

 

それと、虎白さんに拒否権はありませんよ。」

 

………は?

現状維持がいいですって言ったら何がどうなって当主の息子の話になった?

 

……あ、もしかして都合のいい手足ってことっすね。

了解了解、達也が裏切らないように監視ね、ハイハイ。

 

「叔母様…叔母様の息子が僕というのは対外的に危ういと思うのですが…。ほら、僕は今まで人形だったでしょう?誰も知らないやつがいきなり現当主の息子というのは……。」

 

「拒否権はありませんよ?

それに、虎白さんのことは既に四葉分家にも伝わっています。」

 

「拒否権がないのは分かりましたが発表とかどうするつもりですか、達也達に知られたら余計警戒されますよ」

 

「高校卒業と同時に発表するから大丈夫よ。

それまでよろしくね。虎白さん?

ついでで悪いのだけど、達也さんと深雪さんのストッパーもお願いね。」

 

「はぁ。高校卒業までは司波兄妹として、普通に過ごさせていただきます。報告は月終わりか行動があった時でよろしいですか、叔母「義母様」……「義母様」」

 

本物の母様はいいのか……あ、だめだ。諦めてる顔だあれ。

 

「わかりました…。義母様。

では失礼します。」

 

僕自身も観察対象なんだよなぁ…きっと。

自室に戻ったらふて寝しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虎白をなぜ息子に?

そこまで大事かしら?」

 

もう…わかってないわね…。

虎白さんの魔法師としての力は既に並の十師族を超えているわ。

『分解』以上のものが使えるのは明白。達也さんと同じで危険すぎる。

でも、達也さんと違うのは、自分で精神を大人の状態まで成熟させたこと。

子供っぽいところもあるけど、加減は分かっている。それに、現状維持なんて弟が縛りを課せられているのに感情的にならない所がよく出来てるわ。

達也さんより厄介なら手元で管理した方が万が一の時に対処できる。

 

それに、何者にも染まっていないからいいのよ。

 

 

「息子と母の関係である意識が大事なのよ。

あの子は優しいもの、縛るのにはこれが一番いいの。」

 

少し距離を取っているのが気になるけど…。

人格が戻ったばかりだからかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉真夜の息子にさせられた僕は記憶を頼りに自室に戻って寝ていたんだけど…。

 

起きたら深雪さんが布団の中にいた。

しかもパジャマで。

寝る気満々だな?

自分の部屋で寝なさい…。

 

「深雪?」

 

「なんですか?虎白兄様。」

 

ニコーって笑う顔は僕じゃなかったら確実に落とされていたね…。

じゃなくて。

 

「ここは僕の布団なんだけど……」

 

離れる気がないのか背中を僕のお腹にくっつけて僕の腕を枕に寝る準備を整えられた。

思い返してみると、人形の時に何回も布団に侵入していたなぁ…。

 

「虎白兄様の人格が戻って良かったです…、達也兄様にしていた誤解も解けました。

 

これからもっと仲良くしていきたいと思います」

 

うん…意気込みは良いけどさ、淑女教育されてなかった?

男の布団に潜り込むとか完全に淑女がやることじゃないよ。

 

「…そして、お兄様が今まで無反応だった分、私には甘える権利があります!」

 

そうですか…。

なんかいつも深雪さんと一緒にいた気がするのですが?

 

むふー、と意気込む深雪さん…。

頭を撫でてやればすぐさま夢の中へ落ちていったようだ。

 

「達也」

 

「バレていたのか。」

 

達也が扉から入ってきた。

 

「深雪の警護お疲れ様。悪いけ「深雪は兄さんと寝たいそうだ。」……それは深雪さんからお願いされたのかな?」

 

「そうだ。深雪から『虎白兄様と一緒に寝られるように手伝ってください』と、頼まれてな。可愛い妹のためだ、諦めてくれ。」

 

その妹が男の布団でねるんだが?

 

「兄さんは妹に手を出す変態では無いだろう?」

 

「当たり前だよ」

「なら問題ないだろう。」

 

それでいいのか弟よ…。




いろいろすいませんでした。
orz。


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入学編 Ⅰ

あれれ〜、おかしいぞぉ〜?

話が進まない…………。

あとオリ主がなんでもありになってしまった……。(今更感)


あ、

!⚠️注意⚠️!

深雪さんのキャラ崩壊が酷いです!!

深雪→♡→オリ主

になっています。

達也は他の誰かとくっついてもらう予定です!

ご注意ください。


日増しに暖かな陽気になり、過ごしやすい季節となりました。

今年度、国立魔法大学付属第一高等学校に入学する皆様におかれましては、新しいことへの挑戦を前にして胸が一杯のことと存じ上げます。

 

僕もまた、その1人なのですが、僕は今、深雪さんに正座をさせられています。

 

第一高校の入学式の答辞を深雪がすることになっているので早めに学校に来たのだが…。

 

僕が答辞を辞退したのが深雪さんにバレてました。

 

学校についてから深雪達と別れて散策に行こうとした時に2人に肩と腕を抑えられてから尋問が始まりましたよ。

 

「虎白兄様?なぜ正座させられているのかお分かりですね?」

 

嗚呼、済まなかった、だからその笑顔はやめてくれ。

僕に効く。やめてくれ。

 

「なんで入試の席次を知っているんだい、まさか達也…」

 

「違う、俺も深雪になんで二科生なのかと絞られたあとだ。」

 

あぁ、それは…ドンマイ☆

 

「入試の情報なんてどうでもいいことです!

…虎白兄様、なぜ辞退なされたのですか!

納得いくように説明してください!」

 

たぶん、このまま答辞するのがめんどくさかったからです。

なんて言ったら帰って何されるか……。

それとなく訳を…

「兄さんは答辞がめんどくさかったと言っていたぞ。」

 

達也ぁ!なに言ってくれてるのさ!

読心術か?お前、精神構造理解がついに心の声まで聞こえるようになったのか!?

 

「学校からの電話の後にそう言っていた。」

 

聞いていたのか……。

……扉閉まってたよな?

 

「達也…もしかして僕の部屋に盗聴器とか仕掛けてる?」

 

「いや、たまたま忘れていた機器に録音されていた」

 

「あ〜あ、今度から気をつけなくちゃねぇ…。」

 

「お兄様?」

 

深雪から冷気が広まる。

僕の足元まで地面が氷に覆われた。

 

「だめだよ、深雪。落ち着かないと。」

 

振動系魔法で地面を覆った氷を溶かす。

 

「お兄様のせいです!」

 

「深雪、そろそろ時間じゃないか?」

 

ナイス達也!

 

「深雪の答辞を楽しみにしてるよ。」

 

おっけー、おっけー。

このまま流してしまえばモーマンタイ!

 

「そうですね。虎白兄様とは帰ってからじっくりとお話をしましょう」

 

ニッコリと笑顔を見せた深雪はそのまま体育館へ向かって行った……。

 

やっぱりダメだったよ。

 

 

 

 

「……達也、今日は僕どこかのホテルに泊まっていいかな」

 

「何言ってるんだ兄さん、自業自得だろう。

それよりも、どこか座らないか?」

 

「あぁ」

 

でもなぁ、帰ったら説教コースですよ。

魔法の実験で大怪我した時は休憩挟んで3時間だったからなぁ…。

今回は2時間…で済めばいいな…。

 

僕と達也は人通りの少ないベンチに腰をかけて、それぞれ端末をいじり始めた。

 

「達也、どうにか深雪の説教を回避する方法はないかな?

 

あとこれ、新しいCADの設計図なんだけど。この前できるようになった錬金術を使って作った幻想金属を使おうと思ってる。

どうだろう?」

 

「さぁ、深雪は甘えん坊だからな。それこそ言うことを1つ聞くって言えば大丈夫なんじゃないか?

 

CADは問題なく作れる、けど世に出せるものじゃないな。」

 

「自分用だからね。CADへの挑戦さ。可能なら今日帰ったら作ってみる。魔法式は頼むよ。

 

言うこと聞く、なんて言ったらどんなこと言われるか…。

今でも布団に潜り込んでくるんだから……。

そろそろ心を鬼にして離れるように言わないとかな……。」

「深雪には俺から言っておく。頼むから兄さんは今のままでいてくれ。深雪のためにも、俺のためにも。」

 

「え…あ、ああ。」

 

甘やかしのままで大丈夫なのだろうか……。

四葉の次期当主候補としてそれでいいのかな…。

 

「深雪にとって兄さんはいつも一緒にいる存在なんだ。

前に魔法の実験をして1週間意識が戻らなかったことがあっただろう。あの時の深雪の慌てようは落ち着かせるのに叔母上の手も借りることになったくらいだぞ。」

 

「あれか…目が覚めてからしばらく右腕にくっつかれて大変だったよ…。

 

でも、このままだと僕の貞操が危うい。」

 

「…?」

 

「ここ最近になって体を押し付けてくるんだよ…

それに寝てる時も上に乗っかってきたり…

僕も寝起きの生理現象だけはどうにもならないからね…

1番危なかったのはお風呂に突撃しかけてきたことかな。

水に関する魔法の実験もしていたから鍵を閉めていて大丈夫だったけどね…」

 

あれはびっくりを通り越して怖かったなぁ……。

すりガラスの向こうに多分バスタオルだけの状態で立っていたんだもん。

 

反射的に扉を凍らせたのは間違っていないと思ってる。

義母様に相談したら高校卒業まで頑張って耐えなさいって言われたし…。

 

いや、義母様…兄妹ですからね?!

 

 

「なにをしているんだ深雪は……。

すまない、兄さん。俺からも注意しておくよ。」

 

「ありがとう。さすがに妹に魔法を使うのは嫌だからね…。」

 

「だが、深雪からの説教はどうしようも無いな。」

 

「好きな料理作るって言ったら許してくれるかな……」

 

「無理だな、逆に食べてくださいって言われると思う。」

 

そうなんだよなぁ……。

休みの日に適当にパスタ作って食べてたら深雪に料理は私がします宣言されたんだよな…。あれ以来包丁もフライパンも触ってないよ…。

 

「なんでかなぁ……。」

 

「(深雪に胃袋を掴んだらいいんじゃないかって教えたことは黙っておこう…)」




深雪さんは、ある程度オリ主と離れたままになると…病みます。

達也は深雪からオリ主攻略について都度都度相談をされています。

真夜も深雪の息がかかってるため、四葉によるオリ主×深雪包囲網が形成されているので、もう助からないゾ。

達也にCADに入れる魔法の魔法式を実際に実行して見せているので兄弟仲はめちゃくちゃいいです。

インデックス?しらんな()



あれ?恋愛初心者小悪魔会ちょ…(ここから先は赤く染まり、穴が空いているため読み取れない。)


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入学編 Ⅱ

気がついたらほのかがヒロイン枠に入っていた!?


名前が出てこないけど、
魔法科で有名な人が出てくるから探してみてね!


達也と2人で話をしていると、体育館の方から黒髪の女子生徒が歩いて来ていた。

 

()()()()()、七草真由美。

『万能』の魔法家の生まれで、相当上位の魔法師。

たしか”G〇ogle map”みたいに遠くを視認できる魔法も使えるんだっけ?

 

四葉と同じ十師族の1つ、”七”の一族。

 

”七”の一族とか忍ばない忍び作品ぽくていいね。

四葉も”四”の一族とか呼ばれないかな?

今はアンタッチャブルとか言われてるけど。

こっちの方がかっこいいと思うんだけどなぁ……。

 

まぁいいや、達也には悪いけど逃げさせてもらおう。

 

 

「達也、時間も迫っているし、僕は少し玄関の方を見てから行くよ。それじゃ…」

 

「もうそんな時間か。わかった、俺はこのまま体育館に行くよ」

 

 

すまない…本当にすまない……。

生け贄になってくれ。

受けになると急にポンコツになる(※個人の感想です)あの生徒会長を相手にするとろくな事がない。

 

ベンチから立ち、七草真由美がこれ以上近づく前にここから離れる。

幸い、ベンチの真横の方から来ているので真っ直ぐ歩けば簡単に離脱できる。

達也はまだ端末をいじっているが、僕は何事も無かったかのように正面玄関の方へ向かった。

 

七草真由美の前を通った時に視線を感じたが、疑うような感じではなかったので大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

玄関の前には多くの学生がいる。

新しい制服を着た生徒達が玄関横の『第一高校 入学式』と書かれた看板で写真を撮っていたり、案内板を指さして確認していたりと、実に初々しい反応をしていた。

 

何故か悪寒を感じたのだが……。

気の所為だろう。

あの会長を見てしまったからだろうか、だいたいあの人のせい…とか考えてしまっている。

 

正面玄関から校舎に入り、人の流れに沿って体育館まで向かう。

途中、女子生徒達に遠巻きに見られていたが近くにいた男子生徒が自分のことと勘違いしたのか、胸を張ってズンズン歩いていった。

 

あの男子生徒……知っているような…知らないような…………?

 

あんまり重要ではないことだと思うけど、思い出せないモヤモヤ感を感じつつ体育館に入る。

 

会場は既に生徒でいっぱいで、席があまり空いていない。

よく見ると、前が一科生、後ろが二科生と綺麗に別れていた。

僕は一科生なので、変に目立たないように前の方へ向かう。

 

階段を降っていく途中も視線を集めてしまっていたがなんとか端っこの空いている椅子まで来れた。

隣に座っている女子生徒に声をかけて確認をする。

 

「あの…この椅子、座っても大丈夫かな?」

 

「へ?あ……はい!大丈夫ですよ!」

 

顔を見られてから少し間が空いたが…。

誰も座ってない椅子らしいので、座ることにする。

座れなかったら恥ずかしい思いしてたなぁ…。

 

「あの!私、光井ほのかっていいます!」

 

隣の子が急に自己紹介をしてきた。

やだ…コミュ力高すぎ…?

とか思ってたら、もう1人の女子が光井さんの向こうから自己紹介に混じってきた。

 

「私は北山 雫、よろしくね。」

 

 

2人とも何となく知っているような気がしている。

 

最近になって”魔法科高校の劣等生”の記憶が薄れてきたと感じる。

印象の強い事はまだ覚えているのだが…細かい所などはどうしても思い出せなくなってしまった。

 

女子生徒2人からの視線で顔に穴があきそうなので自己紹介をする。

 

「僕は司波 虎白。兄妹が2人いるから虎白って呼んでね」

 

僕の名前を聞いて、2人が驚いていた。

光井さんは「えっ…なんでここに…?」と、一人呟いている。

北山さんの方は僕に質問を飛ばしてきた。

 

「なんで入試首席がここにいるの?」

 

「やっぱりそうだよね!?」

 

光井さんも同じ疑問を持っていたらしく、激しく同調していた。

長年一緒にいる親友のような関係性を感じられた。

 

「光井さんも北山さんも落ち着いて。

入試2位の子の方が男子生徒も嬉しいだろうし、答辞なんて大変だからね。辞退したんだ」

 

「いいんですかそれ…。」

 

腑に落ちていないようだが、なんとなく分かってくれたようだ。

 

「私のことは雫でいい。」「私のこともほのかでお願いします!」

 

「…入試2位って司波深雪さんだよね、もしかして双子?」

 

……どこから入試成績の情報が漏れているのだろうか…。

生徒会と風紀委員仕事しろ。

 

「僕は双子だけど、深雪は別。

僕達は2079年の4月生まれで、深雪は2080年3月生まれだよ。

ついでに言うと僕が長男で、次男、長女、だね。」

 

「もう1人って?」

 

「司波 達也。頭はとんでもなく良いけど、魔法力が低くてね…。

二科生にいるよ。」

 

「1人だけ二科生って…問題なかったの?」

 

「一科生とか二科生とか気にするやつじゃないから大丈夫」

 

そろそろ始まるのか、照明が暗くなってきた。

 

「2人ともそろそろ始まるよ!」

 

ほのかに言われて僕と雫はステージに顔を向ける。

睡眠時間の始まりだ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ほら、入学式終わったよ。」

 

雫の声で意識が戻ってくる。

体の情報が流れ込み、固くなっている部位を解す。

 

「起こしてくれてありがとう、雫」

 

「大した事じゃない。ほのかが少し離れてるから戻ってくるまでここで待って。」

 

あぁ、トイレか…。

時間を確認すると結構経っていた。

会場にはまだ少し生徒は残っているが、大体は教室や校内を見て回っているだろう。

 

体がバキバキな訳だ…。

 

「途中、妹さんや生徒会長がこっちを見てニッコリ笑ってたけど…」

 

あ、終わった……。

 

「雫、僕…冷凍保存されるかもしれない……」

 

最悪だ、深雪ならなんとなく見つけるだろうことはわかっていた。しかし、会長に目をつけられたってことはろくな事がない前兆…。明日から少し不登校にでもなろうか…?

 

「寝てたのが悪いと思う」

 

「こういうのって眠くならないかな?」

 

「魔法科高校に入れたんだし、ならないよ」

 

中学の卒業式は行かずにCAD弄ってたからなぁ……。

話長いとすぐ寝ちゃう…。

 

「ごめん、お待たせしましたー!」

 

ほのかが上の方から階段を駆け下りてきている。

 

「きゃっ!」

 

それは神のいたずらか、ほのかのドジか。

足を踏み外したほのかは前倒れになって落ちてきた。

 

僕は怪我をしないように近づいて抱き止める。

 

「大丈夫?怪我は?」

 

一瞬のことにほうけていたほのかは次第にどんな状況にあるのか理解したらしく、耳まで真っ赤になっていた。

 

緊急時だったから気が付かなかったが、ほのかの豊満な胸は僕とほのか自身に挟まれて形を変えていた。

落下を受け止めたことで、体全体を僕に預けている。

 

僕も気がついたのでほのかをしっかり立たせ、少し離れる。

 

 

「ほのかは急ぎすぎ。昔だって走っていて転んだんだから」

 

「ちょっと、雫!あ、あ…ありがとうございました!!」

 

雫の言葉で戻ってきたのか、頭を上下に振っている。

 

「怪我がなくてよかった…。」

 

「虎白さん、さっきの移動はなに?」

 

「体術だよ、体の力を流すように使うんだ。

これからどうしようか」

 

「そう…。次はIDカード受け取りに行く」

 

こっち、と言って歩き始める雫を未だ顔を赤くして自分の世界へ入ってるほのかの手を引いて追いかける。

 

 

 

「へ…!?あああの!手が!」




「お兄様、帰ったら説教です!」

「司波さんと達也くんから聞いたけど…お姉さんの挨拶を寝て過ごすなんていい度胸だわ。」



おかしい、進みが遅すぎる!?
いつになったら せやかて副会長がでてくるのか……。
モブ崎くんはいつ噛ませになるのか!?


12/3 :誤字報告ありがとうございます!
修正しました!


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入学編 Ⅲ

万能魔法として使っていくぜ!!




IDカードを発行してもらい、またほのかと雫の所へ。

 

「私はA組でした!2人は?」

 

「私もA」

 

2人ともA組か、僕もIDカードを確認する。

個人の名前、生年月日、学籍番号などが書いてある。

所属クラスは……A組だ。

 

「僕もA組だ、改めてよろしくね」

 

「みんな一緒でよかったぁ〜」

 

「私たちは教室見に行くけど…」

 

「僕は少し校内を見ていくよ、それじゃまた明日」

 

2人に手を振り、感じられる深雪のサイオンとはやっぱり別の方向に向かう。

 

気の向くままに少し歩き、案内板を見てみる。

 

この先は……図書館か…。

少し、調べに行きますかね。

 

「逃がすと思うか?」

 

「達也…」

 

「本当に逃げようとしているとはな、探しに来て正解だった」

 

「達也のサイオンが感じられないと思ったら……

図書館を見てみようとしただけじゃないか…」

 

あの生臭坊主から学んだ気配を消す方法を使ってまで僕を捕まえるとはね、シスコン極まれりだね。

 

「深雪が待ってる。施設探索は明日にしてくれ。」

 

「深雪は誰かと一緒にいるみたいだけど?

邪魔しちゃいけないよ。」

 

深雪はいま、グラウンドに面する廊下、窓寄りにいる。

ベンチならまだしも廊下にそのまま立って待つことなんて無いだろう。

もう友達ができたのか…。

いや、あの美貌だし…近づいてくるのは多いか…。

 

「今日知り合った人達と話している。

兄さんを連れてくるまで付き合ってもらっているんだ」

 

「はぁ…。ブラコンがここまで進行しているとはね…

四六時中一緒は無理なんだから少しは厳しくしなさい。

それに、僕の自由時間は?」

 

「気持ちはわからないでもないが今日は入学初日だ。

我慢してくれ」

 

僕は渋々達也に見張られながら深雪の元へ。

位置はわかっているので最短ルートで進む。

 

「お兄様方!」

 

窓際で赤毛の女子生徒と黒髪眼鏡女子と話していた深雪は華やかな笑顔を浮かべこちらに向かってくる。

 

他人から見たら絶世の美少女によるハート確殺笑顔だが、僕からしたら別の意味でハート確殺笑顔だ。

 

深雪と話していた2人の女子生徒もそれに続いてくる。

 

「初めましてー、私は千葉エリカ。エリカでいいわ、えっと…深雪のお兄さん?」

 

「初めまして、柴田美月といいます。私も、美月とお呼びください」

 

赤毛の活発系がエリカ、黒髪巨乳の文系が美月…と。

 

「紹介するわ、私のもう1人のお兄様、虎白兄様よ」

 

自分で自己紹介する前に深雪がしてしまった…。

 

「司波虎白。よろしくね、お二人共。」

 

「ねぇ、達也くん。司波家ってモデルかなにかが家業なの?」

「御三方とも美形ですね…」

 

「違う、普通の魔法家だ。」

 

普通では無いけどね。

 

「別のオーラ………?」

 

「美月は霊子放射光過敏症なんだ」

 

そうか…

でも、僕を視るなんて無茶はしないように注意しておこう。

 

「僕は異常だから、あんまり視ない方がいいよ。

僕自身も気をつけるけど。」

 

「はい…すみません、まだ扱いきれていなくて…。」

 

「ねぇ!虎白さんってなにか武術やってる?

達也くんもそうだけど、動きに無駄がないというか…

警戒されないように態と隙作ってるでしょ?」

 

いや、確かに色んな戦術は試したことあるけど…

 

「確かに兄さんは色んなことしてたな…」

 

「しっかりとやっていた訳じゃないからそんな事ないよ」

 

「そう、じゃ、そういうことにしておいてあげる!」

 

………?

 

「そろそろ帰らないか?」

達也の言葉に窓の外を見ると、太陽は木々の中に沈んでいっている。

 

「そうねー、それじゃまたね!」

 

「それでは、失礼します」

 

「ああ、また明日」

 

「また明日、2人とも気をつけてね」

 

「お疲れ様、またね」

 

エリカと美月と別れて、校舎から出て歩いていると、

深雪から冷気がまとわりついて来た。

 

「そういえば…虎白兄様、私が答辞をしている時寝ていましたよね。」

 

やばい、出来ることなら忘れていて欲しかった。

 

「答辞を辞退しただけでなく、私の答辞も寝ていて見ていないなんて……許せません!」

 

達也ヘルプミー!!

 

まとわりついていた冷気が一気に体を冷やす。

急激な体温低下により、筋肉は硬直。

呼吸も鼓動も止まり、意識は闇へと落ちていく。

 

 

 

 

─系統外魔法・精霊憑依術式展開─

 

憑依精霊:EFREET(イフリート)

 

 

 

 

下がっていた体温は平熱よりも熱くなり、髪の色も真紅に変わる。

額に3つ目の縦目が開いたところですぐさま解除した。

 

「深雪、いくら兄さんが妹の晴れ姿よりも睡眠をとったからと言ってこういう所ではダメだ。」

 

「申し訳ありません、感情が抑えきれなくなってしまいました。」

 

達也の言葉でまた冷気がまとわりつく。

 

「達也…そう思うなら余計なこと言わないでくれるかな…。」

 

「深雪に答辞を言わせておきながら寝ているような兄さんは少し痛い目を見た方がいい」

 

「済まなかったって…。」

 

いつまた冷気が襲ってきてもいいように待機させているため、グラデーションかかっている髪を手に流しつつ家へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也と僕がリビングで端末をいじっていると、深雪が不穏なオーラを出しながら入ってきた。

僕へのおしおきかと思ったが、別なようだ。

 

「先程…あの人達から連絡がありました。

入学祝いだそうです…。お兄様方には……」

 

「いつも通りだよ」

 

「やはり…!」

 

深雪の感情によって深雪の近くにあった物は凍りついた。

どんどんと氷が侵食しているが僕達にまで被害が及ぶと気がついた深雪はなんとか気を取り直して冷気を収めた。

 

「僕はなんとも思わないかなぁ…ずっと人形だったせいで記憶もなんもないし。」

 

「俺もだ、会社に入ることを断って入学したからな。

それよりも兄さんが作り出したさっきの魔法が気になっている。」

 

「あー、深雪、僕と達也の分のコーヒーを頼むよ。」

 

「わかりました…、いつも通りでよろしいですね」

 

「うん、よろしく。

それで達也、さっきの魔法だけど、あれは…憑依魔法とでも言おうか。」

 

「精霊魔法ではないと…?」

 

「僕の固有魔法は『空間支配』だよ?

領域内を好きに改変するなんて端末を弄るようなもの。そうやって作り出したのが、あの魔法さ。

僕の体に憑依したのは『憑依精霊』。僕が『空間』で作った精霊だけど力量は充分。

達也の自己修復術式みたいにトリガーをセットしてるから条件さえ揃えば勝手に発動してくれる。」

 

「さすが『空間支配』。使い勝手がいいな」

 

「人相手には一切効果がないけどね」

 

「他にどんな精霊が?」

 

達也と僕の作った魔法について話していると、キッチンの方からコーヒーのいい香りがしてきた。

 

「お待たせいたしました、虎白兄様のカフェオレと、達也兄様のブラックです。」

 

「「ありがとう。」」

 

うん、ちょうどいい甘さだ。

 

「それで、僕の精霊だっけ?」

 

「虎白兄様の精霊…ですか?」

 

深雪も気になったようだ。

達也の隣に座って自分の分のコーヒーを飲んでいる。

 

「あぁ、条件も気になるしな」

 

「そうだね、今のところ3つかな。

イフリートとリヴァイアサンとガルーダ。

イフリートは急激な温度の変化、リヴァイアサンは水分量の変化、ガルーダは圧力の変化で発動するよ。」

 

「なるほど、だからさっきは発動したのか」

 

「あんまり長い時間は使ってられないけどね。」

 

「………もしかして、昔大怪我したのは…」

 

「そうだよ、この魔法に失敗したから。」

 

「そんな危険な魔法は封印するべきです!」

 

テーブルに前のめりになって言う深雪の目には涙が溜まっている。

 

「魔法はどれも危険なものだ、それに使えるようになったんだろう?」

 

「その通り、強くイメージを持つことで安定した。」

 

そう言ってよく読んでいた本のタイトルを見せると達也は納得したようだ。深雪ははてなマークが浮いている。

 

「なるほど…魔法師が自分に不信感を覚えると魔法が使えなくなるその逆を試したのか」

 

魔法師はなんらかのショックで魔法が使えなくなる。

自分の魔法が信じられなくて使えなくなるなら、使えると強く思い込めばいい。

 

思い込むことで魔法を経由し現実に反映される。

イメージを固めるのに80年前くらいに流行したファンタジー物を漁った甲斐が有るというものだ。

 

「そういうこと、それじゃ、僕は眠いから寝るよ。

おやすみ、2人とも」

 

ソファから立とうとしたとき、

 

「今日、お兄様は私に対して酷いことをしましたよね?」

 

あっ……。

 

「悪いと思うのなら…添い寝してもらいます!いいですね!」

 

達也たすけ…だめだ、完全に無視する体制だ。

 

 

 

その夜、深雪を警戒して布団に入るといつ間にか居た深雪にホールドされて一夜明かすこととなった。




ヒロインは深雪にすべきか……ほのかにすべきか…。
ハーレムルートにするべきか……。


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入学編 IV

性転換憑依変身が好きすぎてバカみたいだな?

しかたあるまいよ!
そう言う性へk(((((殴

うん、ごめんね、でも好きだから仕方ないんだ…。
そうじゃなかったら最初っから女オリ主総受けでレズレズさせてるから!

まぁ、性転換はそんなに頻度ないはずなんで大丈夫だと思いたい。


朝、深雪が離れていることを確認して起こさないように起きる。

 

達也達は今日の朝に九重寺に朝練をしに行くらしいので、僕は達也も知らない地下魔法試験場に向かい、昨日の憑依魔法の発展系を試す。

 

なんとか達也達が九重先生の所に向かうまでに把握しておきたい。

 

地下魔法試験場の入口は強力な精霊で隠している。達也であっても見つけることは難しいだろう。

内装は外のように輝く太陽の元、草原や海、砂丘などがある。

 

たまにここで過ごしていて達也に疑われたことがあるが、未だバレてはいない。

 

岩場にて憑依魔法を使い真紅を纏う。

 

下ろしていた髪は赤々と、額に縦目が開き頭にはねじれた角が左右に生えた。

服装は真っ赤なパーティースーツになった。

 

イフリートは火の精霊、試しに熱魔法を岩に放とうとするとノーチャージで岩が燃えだした。

 

他の岩に一条家の秘術、爆裂を実行すれば瞬時に爆散した。

自動防御があるのか、飛んできた欠片は燃え尽きて消えた。

 

どうやらイフリートは振動と放出に強いようだ。

 

憑依魔法なのだし、見た目も変えられないかとイメージする。

 

バレても固有魔法だと言えば問題は無いだろうが、最初から目をつけられないように別人を演じるつもりだ。

深雪さんの感情爆発で誘発されなければいいが……。

 

漁っていた資料からちょうどいい姿を思い出し、投影する。

 

真紅の髪はそのままに、黒のラインが入った真っ赤なスレンダーラインドレスにフレンチヒール。顔は深雪に似た赤目の美女で体はモデル体型だ。

 

「ほぉう…これは想像以上だ…」

 

発声してみれば艶のある綺麗な声が自分の口から出ている。

 

成功だ。

 

だが、如何せんサイオンの消費が激しい。

憑依魔法を使った状態で重ねがけしたからだろうか。

 

新しい憑依精霊を試したらすこし危ないかもしれない。

ほんの少しだけ憑依させてすぐキャンセルする。

 

ほんの少しだけだったが、とてつもない倦怠感を感じるので、誤魔化すようにシャワー等を済ませて少しでも回復しておく。

 

 

 

 

リビングで髪を乾かしながらカフェラテを飲んでいると達也が起きてきた。

服は既に動きやすいジャージを着ている。

 

「おはよう、達也。」

 

「おはよう、兄さん。深雪は?」

 

「そろそろ起きてくるんじゃないかな?」

 

「そうか、今日は兄さんも行くんだろ」

 

「弟がお世話になっているからね、菓子折りも作ったし」

 

深雪にバレないよう地下魔法試験場内の別荘で作った饅頭。

味見したけど九重先生に渡すの勿体ない気がしてきた。

 

達也がソファに座り、ニュースを見ていると深雪が制服姿でリビングに入ってきた。

 

僕も制服姿だ。着崩しているけどね。

 

「おはようございます」

 

「「おはよう」」

 

深雪の準備が出来次第、九重寺に向かうが僕は少しやることがあるので菓子折りを持って先に行ってもらう。

 

朝に忘れていた新しいCADの調整だ。

刻印型魔法が刻まれた首飾りで、サイオンの放出を抑える効果がある。

錬金術というなの『空間支配』で作り出したファンタジー鉱石によってその効果を実現した。

 

サイオンに反応するため、常にサイオンを消費する魔法にしか効果がない。

 

少し憑依魔法で試してみると、地下で使った時よりも全然楽だったので成功しているようだ。

 

 

達也たちの後を追って九重寺まで自己加速術式を使って走る。

 

 

 

九重寺の入口に立つと上の方では打撃音が響いている。

ドンパチやっているようだ。

 

僕は彼らを驚かすために、新しい憑依魔法を使う。

もちろん、バレないように最初から女性の姿でだ。

 

女体化願望?

可愛いこの子の方が見てて嬉しいでしょうが!

 

んん"!

新しい憑依精霊は灼熱のイフリートとは真逆。氷結、シヴァだ。

 

これは深雪のおかげですんなり作ることが出来た。

炎に弱くなってしまったが、全てを凍らせることが出来るのであまり問題は無い。

 

太陽サンサンの場所ではいつも以上に体力を失ったが…。

 

銀髪に氷モチーフの青系のコタルディ、冷徹な印象を与えるが綺麗な面持ちへ。

 

達也たちの元へ行くと、九重八雲先生が最初にこちらに気がついた。

一瞬警戒されたが、僕だとわかったのか、すぐにいつもの雰囲気に戻っていた。

 

達也達はまだ気づいておらず、八雲先生にしごかれたのだろう達也は地面に大の字になっていた。

 

せっかくなので、正門の方からゆっくりと、深雪と同じように触れている部分から凍らせて歩いていく。

 

九重先生の門下生から「氷の…女王…」なんて聞こえるが無視だ無視、深雪が達也を庇うように立ちはだかる。

 

達也はこの距離になって僕だと分かったのか、大きく息を吐いていた。

 

「そこで止まりなさい!なに者ですか!」

 

深雪がCADを向けて来るが、この体に氷結魔法は効果がない。

 

「止まりなさい!」

 

深雪の魔法によって氷漬けにされた。

しかし、干渉力でも氷の温度さえも僕の方が上位。

 

「─ダイヤモンドダスト─」

 

透き通った声で紡いだ能力は僕を固めていた氷を粉々に砕き、風に乗せて僕の周りを回らせる。

 

「そこまでだよ、虎白くん」

 

九重先生の一言で僕と深雪の魔法は止められた。

達也はやはり、と言う顔をしているが、深雪は本気で困惑しているようだ。

門下生からは絶句。

 

「気づくのはやすぎですよ、九重先生」

僕がドレス姿から一校の女子制服(魔法による自作)に変えると、にっこりと笑みを浮かべた生臭坊主。

美人ならなんでもいいのかこのハゲは……。

 

「貰ったお饅頭と同じ匂いが微かにしたからね。

遅れてくると聞いていたし、なんとかわかったよ」

 

「あの…本当に虎白兄様なのですか?」

 

「本物だ、深雪。間違いない」

 

「そう…ですか…お兄様がそうおっしゃるのなら……」

 

深雪も達也の精霊の眼を知っているので僕のことを納得したようだ。

「ところで虎白くん……それが精霊魔法の発展系かい?」

 

憑依魔法に使う精霊は九重先生にも協力してもらったのだ。

魔法や個人情報などには詳しいからな、このハゲ。

 

「そうです、その名も憑依魔法。精霊を自分の身に憑依させることで魔法傾向を特化させる魔法です。」

 

「たった一日で新しい精霊を出してくるとはな…」

 

「私も驚きました。…あ、そうでした!朝ごはんに致しませんか?お話も、すこし行儀が悪いかもしれませんが食べながらというのはどうでしょう……?」

 

深雪が手に持っていたバケットから大量のサンドイッチを見せる。

 

ハゲは女子高生の作ったサンドイッチと、盛り上がっている。

 

タツヤの カラテチョップ !

攻撃は 外れてしまった!

 

「それで、兄さんのその姿は?」

 

達也がたまごサンドを食べるようだ、僕はツナエッグ。

九重先生はハムサンド、深雪はお茶の準備をしている。

 

「ただ髪の色が変わるよりも面白いからよ」

 

「口調まで変えるとは気合いが入ってるね」

 

「この見た目で男口調で話そうか?」

 

「似合いませんのでおやめください!虎白姉様!」

 

…………ん?

まて、いつ僕は姉になった。

 

「深雪くんの適応力はすごいねー」

 

「深雪……。兄さん、学校はどうするんだ?」

 

「この姿は緊急時に使う予定、深雪に凍らされたり、なにかの魔法に巻き込まれたりしなければこういう姿になることはないわ。

 

司波虎白だってバレたとしてもBS魔法って言うつもりよ。

私の本当のBS魔法の隠れ蓑にもなるし、たしかあの人の血筋に古式魔法家も混じってたはずだから問題ないもの」

 

 

 

──────────

 

 

「そろそろ時間だ」

 

「そうね…。それじゃ、僕はこのまま学校に向かうよ」

 

「俺たちは一旦家に寄っていく。

では、師匠、今日はありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当のBS魔法ね……

ま、虎白くんには毎回おいしいもの貰ってるから聞かなかったことにしておこうか。

僕も、彼は相手に回したくないからね…。

 

それにしても……彼がいいのか…彼女がいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凍らせればお兄様がお姉様に……。」




イフリートの憑依衣装を上裸 腰マントにするか悪魔っぽいスーツにするか迷った。

半裸でも良かったかもしれないけど、たしか魔法科の時代は厳しかったような……。
ブルマであんな反応するし……。


深雪さんはなにをたくらんでるんでしょうかね…。


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入学編 Ⅴ

モブ崎……ついに名前すら出てこないままクラス描写終わっちゃったよ……。


「おはようございます!虎白さん!」

 

「おはよう、虎白さん」

 

1-Aの教室に入ると、昨日知り合った2人が朝に感じる気だるさを全く感じさせない挨拶をしてくれた。

外見レベルの高い2人からの挨拶にクラス内の男子から若干敵意を向けられたが……。

 

「おはよう、ほのか、雫。今日はなにか予定あったっけ?」

 

僕の分まで席の確認をしてくれていたのか、ほのかが僕の席に案内してくれた。

 

席についてからIDカードを机のカードリーダーに差し込み、ホログラムディスプレイを展開する。

 

「今日はSHR(ショートホームルーム)だけですよ」

 

「明日から校内の案内見学と魔法の基礎をやるみたいだよ」

 

「そう……か、…なら一校の近くを探検してみようかな」

 

「美味しいスイーツのお店なら知ってる」

 

雫がじっとこちらを見ている。

奢れと?ほのかは雫が僕を凝視している理由をわかっているのかいないのか様子を見ているし…。

一向に視線をそらさない雫。

 

くっ、気まずい……。

 

「Ok、可愛い子にそんな顔されたら奢らない訳にはいかないね…」

 

「やった!」「雫もしかして着いていくの!?」

「ほのかは来ないの?虎白さんが奢ってくれるけど」

「私も行く!えっと…ありがとうございます、虎白さん!」

 

「いいよいいよ、その代わり案内してね?」

 

「「まかせて」ください!」

 

奢ることが確定してしまったが、FLT社からの給料が貯まりに貯まっているので常識の範囲内の物なら財布に影響はない。

毎日、叙〇苑でも問題ないのだ。

 

キーボードとタッチカーソルを使い、今日中にやらなければならない科目選択を行う。

 

魔法史Ⅰや、CAD基礎工学など面白そうなのを取っていく。

魔法科高校で学ぶ事はほぼないが、せっかく入ったんだからね。

 

魔法要素などの魔法師の一般教養みたいなものは全員が取る事になっている。

 

「虎白さん魔法史Ⅰ取るんですね、私と雫もとる予定なんです!」

 

「私は他にも解析学とかとる予定。」

 

解析学って3年向けじゃなかったかな?

高校生の内容に魔法に関する授業が入るので魔法科高校は普通高校よりも遥かにキツイ。

 

授業は講義の動画などで進められる。

選択科目も配信されているものを見て確認試験が行われるのだ。

だから、どれを取っても問題は無いのだが…。

 

3年の内容は飛ばしすぎじゃないかな……。

 

「私の得意魔法は振動系だから、やって損は無いかなって」

 

「凄いですよね!私も光の振動系なんですけど…さすがに無理かなぁっなんて…」

 

「まだ1年目だよ?それも入ってすぐ、そんなに詰め込まなくてもいいと思うけどね…。」

 

「そうだよ雫!まだ3年もあるんだからゆっくり学んでいけばいいよ!」

 

ほのかは僕の言い分に乗っかって雫を説得しにかかるようだ。

どれだけ大変そうなのか、とか、一緒にいる時間が減る、だとかを説いている。

 

「…なら今はやめておくことにする。

だけど、私に付き合ってね?」

 

振動系魔法についてならイフリートとシヴァが役に立つ。

理論的に全てを教えることは難しいが、ヒントくらいにはなれるだろう。

 

「僕でいいなら」

 

「えっ!?虎白さん!?雫!?」

 

2日連続にしてほのかの慌てっぷりが炸裂している。

 

 

 

 

「お兄様?そちらの方とどのようなご関係なのでしょうか?」

 

 

 

 

ヒェッ…。

 

いつの間にか僕の机の前に深雪が立っていた。

最近、九重先生に少し教えて貰っているらしいが、このまま上達していったら達也に追いつけるのではないだろうか…。

 

深雪の登場でクラス内がザワつくが、深雪の発する圧に当てられてすぐに静まる。

大人数いるのに物音が一切聞こえない状態になっているのだが、深雪だけは相変わらずニコニコと僕に問いかけている。

 

ほのかと雫も動けないで居るようだ。

 

「……お兄様?私はこの方達とどのような…あいたっ!」

 

立つと同時に深雪にチョップをくらわせることで空気を緩める。

とてつもない圧迫感は霧散し、クラスに音が戻ってきた。

 

「2人は入学式の時にお世話になったんだ、お友達だよ。

それと、すぐに威圧するのやめなさい。」

 

ほのか達は深呼吸をしてなんとか落ち着けている。

 

「ごめん、虎白さん。ありがとう…。」

「凄い怖かったです…。」

 

深雪の威圧は本人のルックスもあって圧力が倍に思える。

それを間近で受けて"怖かった"で済むなら相当なものだ。

 

「皆様、申し訳ありませんでした…。」

 

深雪がクラスに向けて謝罪すると、男子も女子も全員が必死に大丈夫、気にしてない。とアピールしている。

 

「2人も、兄様との関係を疑ってしまい申し訳ありませんでした。

私は()()()()()妹の司波深雪です。」

 

「虎白さんには()()()()()()なりました、光井ほのかです。」

 

「虎白さんに(魔法について)付き合ってもらう北山 雫です。よろしくね」

 

なぜか牽制しているような深雪とほのかだが、雫の言葉足らずによる爆弾発言によって暴走した。

 

「お兄様!!つつつ、付き合うとはどーいうことですか!?」

 

「そうですよ!虎白さん!!ほ…本当なんですか!?」

 

深雪に言い寄られ、襟を掴まれた。脳がシェイクされる。

ほのかはほのかで頬を膨らませて、なんとも可愛い怒り方だ。

 

あっ、ちょっと気持ち悪くなってきた…。

 

なんとかグロッキー状態で開放されたが、ほのかと深雪に挟まれ、逃げ道がない。

 

元凶の雫は表情こそ変わっていないが、雰囲気がとても楽しそうだ。

 

崩れた制服を直しながら、本当のことを言う。

 

「……雫が言った"付き合って"って言うのは………、

雫の魔法についてだよ………」

 

「2人の勘違いかな」

 

(元凶)がそう言うと、2人は盛大にため息を吐いた。

 

「「良かったぁ〜」」

 

「でも雫!そういう冗談はやめてよね!」

 

「ほのかの言う通りよ…ごめんなさい、兄様。大丈夫ですか?」

 

大丈夫、大丈夫。ギリギリだけど。

 

「そろそろSHR始まるから自分の席に座ろうね…」

 

3人が自分の席に戻っていくと思ったら、深雪は僕の前、雫は後ろ。ほのかが右だった。

 

僕の席は1番窓側の列の真ん中だ。

 

完全に囲まれた状態で学校生活が幕を開けた────




席はご都合主義の力でねじ曲げられました。

モブ崎くんには主人公がいない時に深雪達に絡んでもらいます。

あと、日時を変えます。

たしか、

2日目:見学先で一科と二科衝突→学食でまた衝突→帰りに美月怒り爆発

なのですが、

2日目:見学先で衝突(オリ主別行動)→3日目:学食で衝突(オリ主不在)→4日目:美月怒り爆発(オリ主合流)→5日目:達也風紀委員へ

になります。

その次の週が部活アピールになるので、ちょうどいいかと…。

オリ主はしばらく別行動でいろいろさせようかと思います。


12/4誤字報告ありがとうございました!


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入学編 VI

今回は雫&ほのかデート(?)回ですよぉ!!

まだ森崎くんとのいざこざも無いのにねぇぇえええええ!!


…………頑張ります。


SHRも終わり、校舎をまわりに行くグループと学校から帰るグループに別れてそれぞれ動いている。

 

「お兄様、やはり校内を見て周りませんか?」

 

深雪がまた聞いてくるが、学校外を見てまわりたいので断る。

 

「深雪は達也達と約束しているんだよね、ならそろそろ行かないと達也が心配するよ」

 

「わかりました…明日の見学案内は一緒に見てまわりましょう!」

 

一緒に見て回るって言ってもなんにしろクラスで動くからあんまり変わらないのに…。

 

深雪が廊下に出て移動を始めると、それを追うように校内見学組が動き始めた。

 

「それじゃ、僕達も行こうか。案内よろしくね」

 

ほのかと雫に声をかけると、ほのかは前髪を、雫は制服を確認していた。

 

「はい!行きましょう!」

 

ほのかを先頭に、僕と雫が着いていく。

校舎から出れば何人もの生徒から敵意と羨望が向けられるが、3人ともまったく気にせずに、今度は並んで歩く。

 

「そういえば、虎白さんの得意魔法ってなんなんですか?」

 

「私は朝に話したけど、振動系で、ほのかは光のエレメントだから光波振動系が1番得意。」

 

「僕は……」

 

………あれ?考えてみたら『空間支配』しか使ってない気がする。

その次………憑依魔法…うん、アウト。

考えろ…何が1番発動しやすい……。

 

「僕は加重系かな?あと振動系もよく使うかな」

 

言わずもがな、ブラックホールで重要な要素だ。

あと、憑依した時1番扱いやすい振動系。

 

「3人とも振動系なんですね!」

「ほのかは光波だけど…」

「意地悪しないでよぉ!」

 

校外に出ると、今度は雫を先頭に学校から駅までの間を案内してくれるらしい。

辻を入っていったところにケーキの美味しい店があるそうだ。

今回はそこじゃなくて、駅から高校までの一本道にあるスイーツ屋に行くようだ。

 

高校生が多く通るからか、花屋やアクセサリー、服、文房具、果てにはCAD取扱店などがある。

 

アクセサリー屋にほのかの希望で寄ったのだが、なぜか僕の後頭部に髪留めが着けられていた。

 

「雫?」

 

「虎白さんって髪長いから、暑い時そうすると涼しいって。」

 

後ろで束ねて垂れていた髪を髪留めを使って持ち上げているらしい。

うなじが出てるせいか風を感じる。

 

「……うん、こっちの方がいいよ。」

 

雫もヘアピンを選んだのか、顔がよく見える。

 

「雫もそっちの方が可愛いよ」

 

「虎白さーん、この色とこの色、どっちがいいと思いますか?って髪留めつけたんですね!すごい似合ってます!」

 

ほのかは僕の前に緑のヘアゴムと黄色のヘアゴムを見せてきた。

 

「僕は緑の方が良いと思うな、ほのかの綺麗な髪によく似合うと思うよ。」

 

「わかりました!黄色の方戻してきますね!」

 

ほのかが棚に戻っていく前に…。

 

「ほのか、ほら、持っててあげるから」

 

雫からヘアピン、ほのかからヘアゴムを受け取り、レジへ。

店員さんは僕の行動を見ていたのかニコニコしながら会計をしていた。

「お客様、お時間がございましたらお願いしたいことが…もちろん、タダでという訳ではありません!お客様がつけてる髪留めをサービスするので!

モデルになって貰えませんか!?」

 

とりあえず、2人の分の支払いを終えるとほのかがやってきた。

 

「はい、ほのか。雫も」

 

 

小分けの紙袋を渡せば、1拍置いてビックリしていた。

 

「あ、ありがとうございます!プレゼントですよね?!

とても嬉しいです!」

 

「開けてもいいですか?」と言うので、「ほのかのだよ」というとヘアゴムを取り出して付け替えた。

 

「どう…ですか?」

 

ほのかわいい……。はっ!?なんだ…現実か。

おかしい、ほのかの可愛さに呑まれている気が。

流れを、流れを変えなければ戻って来れなくなる気がする…!

主に氷漬け的な意味で。

 

「うん、可愛い」

 

「すいませーん!カメラ用意出来たのでモデルお願いしまーす!」

 

ナイス店員さん!

まだ承諾してないけどカメラが用意されてしまったのでホワイトをバックに頭のアクセサリーメインで何枚か撮る。

最初は雫の選んだ髪留めで撮り、その後、今度出る予定のメンズにも違和感のないカラーリングのアクセサリーを着けて撮影した。

 

「協力ありがとうございました!!ポスターとして使わせていただきます!撮った写真はデータでお渡ししましょうか…?」

 

自分の写真はいいかなぁ…。

僕が悪用しないよう釘をさしてから店を出ると、2人に少し待ってて欲しいと言われたので、店先の邪魔にならない所で立って待つ。

 

しばらくして2人が戻ってきたのだが、2人とも端末を手にしていた。

もし僕の写真だったとしても、2人なら悪用はしないはずなので何も言わずに雫について行く。

 

ほのかが上機嫌で束ねた髪を触っていた。

 

少し歩くと、甘いもの専門の店が見えた。

雫もそこに向かって歩いているので、あの店なのだろう。

クレープの店みたいだ。

 

「美味しそうだね」

 

「うん、下調べした時に美味しいって評判だったから」

 

メニューが少ないけどね、と言われ、メニューを見てみると確かにクレープならもっと派生できるんじゃないかと思える品数だった。

 

メニューを見ていると、雫は僕をまた凝視してきた。

 

「どうしたんだい?」

 

「虎白さんは何にするの?

個人的にはブルーベリーがオススメだよ」

 

特になに味を食べようとか考えておらず、雫にオススメを聞こうと思っていたのでちょうど良かった。

 

「ならそのオススメにしようかな」

 

「じゃあ、私はストロベリーにする」

 

僕と雫はすぐに決まったが、ほのかはまだ決まっていないようだ。

 

少し待っていると、決まったのか戻ってきた。

 

「チョコバナナをお願いします!」

 

カウンターに行き、注文をする。

僕と雫の注文に店員さんが微笑ましいような顔をしていたのが気になるが、お金を払い、クレープを受け取る。

 

食べ歩きするようで、今度はほのかを先頭に色々なお店を見て回るようだ。

 

「ねぇ、虎白さん。」

 

隣を歩いている雫が話しかけてくる。

 

「1口交換しよう?」

 

そう言って食べていたクレープをこちらに差し出してくる。

美味しそうなイチゴにストロベリーソースがかかっていた。

 

「いいの?」

 

「代わりに虎白さんのも1口ちょうだい」

 

雫からクレープを受け取ろうとすると、避けられる。

僕のを渡そうとすると、僕が持っている状態で1口食べられた。

僕のクレープをかじったあと、雫はまた1口自分のクレープを口にしている。

 

「はい、虎白さん」

 

若干顔が赤くなっている雫はクレープを両手で持ってこちらに向けてきた。

 

「あ〜ん…」

 

口で受け取らなきゃいけないらしい。

大人しく1口クレープを頂いた。

 

イチゴの甘さが、口に微かに残っていた、ブルーベリーの酸味によくあっている。

僕も自分のクレープを1口かじると、さっきよりも美味しさが強かった。

 

店を見ていたほのかが戻ってくる。

 

「やっぱりCADって高いですね…」

 

特化型を見ていたようだ。

補助金が出たとしても、CADはバイトをしていない高校生には少しお高い金額なのだ。

 

ほのかの手には既にクレープはなかった。

 

「チョコバナナはおいしかった? 」

 

「はい!おいしかったです、ご馳走様でした!

…でも、聞いていた裏メニューがどこにもなくて……」

 

裏メニュー?

 

「ダブルベリーって言うんですけど、食べると恋愛が上手くいくって言われてて…」

 

ダブルベリー?

もしかして……。

 

雫の方を見ると、赤い顔のまま無言でクレープを食べていた。

それでも見続けると、目線を合わせたあと、フイっと背けられた。

 

口パクで、”内緒”と言っているので、ほのかには悪いが内緒だ。

 

まて、恋愛が上手く行く効果は彼女がいない僕にとって無意味なんじゃ………。

 

 

 

 

 

今日はそのまま駅に行き、2人と別れた。

 

帰宅中、僕は髪留めを着けたままだったことを忘れていたため、コミューターに座った時に髪留めをぶつけてしまった。

幸い、壊れなかったので明日から着けていくつもりだ。

 




甘い感じになってるかな……?なってるといいな…!
誰か!砂糖!砂糖持ってきて!

次回!

深雪さんが……!!



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入学編 Ⅶ

難産……というより、駄文……。

矛盾してても気にしたら負けだよ!!

目線が、最初は達也→オリ主に変わります。

誤字修正とても助かります!ありがとうございます!


午前中に一高での簡単な下見が終わり、深雪と家に帰ってくれば先に帰ってきているはずの兄さんの気配がない。

 

靴はある。が、家の中は長時間人が居なかったかのようだ。

 

精霊の眼で兄さんの位置を把握しようとしてもノイズに阻まれる。

 

深雪も人の気配がしないことに気がついたようだ。

 

「深雪、兄さんは帰っているんだよな?」

 

教室で兄さんと別れた深雪ならどこに行くか聞いているはずだ。

 

「はい、駅までの道を見てまわる。と言われていたのですが…」

 

深雪の話ではどこかに出かける、なんてことはないようだ。

靴があることから1度は帰ってきている。

靴箱を開ければ兄さんの靴、サンダルは全て揃っている。

 

精霊の眼をつかい、靴から兄さんのサイオンを辿ることにした。

 

…地下に向かっているようだ。

この先は魔法が撃てるようになっているトレーニング部屋しかない。

が、階段を降りた廊下の突き当たりに兄さんのサイオンは続いていた。

 

前に1度、トレーニング部屋から出た時に兄さんが立っていた所だが……、もしかして何かあるのだろうか。

 

眼を凝らしてみると、ほんのわずかだが壁に乱れがあった。

魔法が使われているようだ。

 

俺対策もしているのか、兄さん並の魔法力で当たらないと解くことはできないようになっている。

 

「深雪、少し頼みがあるんだが…」───

 

普段こんな事には使わないのだが、深雪も帰りに見たアクセサリー屋のポスターのことについて聞きたいようでむしろ乗り気だ。

 

俺は深雪の肩に手を置き、兄さんがかけたであろう魔法について情報を送る。

魔法の対処法を理解した深雪がその魔法力でもって解いた。

 

突き当たりの壁は消え去り、隠されていた扉が現れた。

警戒しながら扉を開けると、トレーニング部屋に繋がっていた。トレーニング部屋に元々あった出入口を開けば、深雪がそこにいた。

 

「幻術…でしょうか?」

 

幻術……、もう一度扉を開き、今度は精霊の眼で視る。

扉の先は道になっており、突き当たりにまた扉があった。

 

「さすがだな、深雪。」

 

深雪の手を取り、離れないように奥の扉へ。

ようやく兄さんのサイオンが感じ取れるようになった。

この先に兄さんがいる。

 

2つ目の扉を開けると、地下のはずが太陽が頭上に輝いている。それだけじゃない、風や花、潮の匂いがする。海もあるようだ。

 

「お兄様……ここは…」

 

深雪はこの空間の異常さに戸惑っている。

実をいえば俺もこの空間の非常識には驚いたが、それ以上に兄さん1人だけでこの空間を使っていたのかと思うと落ち着かない。

 

「深雪、この空間は兄さんが作ったものらしい。

前から兄さんの気配が消えて怪しいと思っていたら、どうやら1人だけでバカンスを楽しんでいたようだ。

兄妹なのに黙ったままなんて酷いと思わないか?」

 

「そうですね…!お兄様、虎白兄様は一体どちらに?」

 

いい笑顔だ、これを向けられる兄さんは幸せだろう。

兄さんは…どうやら海の近くでなにか焼いているような手つきをしている。

 

「こっちだ」

 

草原から少し歩くと、波の音が聞こえてくる。

それと向かっている方からソースのいい匂いが漂って来ている。

 

「お兄様…もしや、虎白兄様はなにか料理しているのでしょうか?」

 

確かに時間ももうすぐ昼飯時だ。

兄さんの料理は深雪の目標でもあるくらい美味い。

味付けなどは適当に入れているように見えるのだが、店で食べるよりも遥かに美味しい。

 

草をかき分けて浜に出ると、南国風の広いテラスのある平屋が見えた。

 

「なんでもありだな…」

 

「本当ですね…」

 

テラスでは兄さんが鉄板で焼きそばを焼いている。

海の方を見てみると、浜には大きなクレーターがあり、ところどころガラスになっている、それに海が凍っていた。

 

「……よくサイオン切れを起こさないな」

 

いくら兄さんが異常なサイオン量持っていたとしても大規模な魔法を連発するのは限度があるはずだ、1度この眼で視てみたが、サイオンが減っているのは確認済み。

初めて憑依魔法を見た時も急激に減ったと感じられるほどにサイオンを消費していた。

 

回復手段がある…?

兄さんのBS魔法は『空間支配』、人体に直接影響を与えることができないらしいが………。

 

もしかして、入学式の前に見せてきたCADか!?

 

あの時は「帰ったら作ってみる」と言っていた。

九重寺の時からつけていたネックレスが刻印型の単一特化型CADだったならば。

サイオンに直接作用する魔法式が書かれていたら。

 

俺も兄さんには聞きたいことが出来た。

 

「深雪、兄妹で兄さんとゆっくりお話しようか。」

 

「はいっ!時間はたっぷりありますもの、ゆっくり、お話しを致しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた僕だけの地下魔法試験場に来ている。

学校から帰ってきて、特にやることも無い僕は暇を潰しに精霊の威力の確認と、普段させて貰えない料理をしているのだ。

 

達也と深雪が帰ってくる頃だろうから焼きそばを食べたら家に戻るつもりだ。

 

冷蔵庫から食材を取り出して、テラスに設置されている鉄板で作る。

 

目の前の景色はさっきやった魔法実験でせいで美しくはないが、外で食べる。ということが僕の気分を良くしていた。

 

ソースをかけて、仕上げに少しパルメザンチーズをかける。

 

「美味しそうですね」

 

そうだろうそうだろう、やっぱりシチュエーションも大事なんだよね。

 

「えぇ、とても素敵な場所です。

兄様が私たちに黙っていなければ。ですが…」

 

え?

 

「さて、時間はたっぷりあります、お覚悟を兄様。」

 

「深雪!?どうやってここに!?」

 

あの魔法が破られた?

いや、深雪には見つけることは不可能だ。

達也が見つけたのか、だとしても深雪にどうやって解除させた!?

 

「まさか精霊で隠しているとはな、俺の精霊の眼で何とか視ることができた。」

 

「達也兄様から教えて貰って私が解いたのですよ」

 

まさか達也がそこまで視れるようになっていたとは…。

 

「俺も聞きたいことがある。だが、まずは深雪とゆっくり話をするといい。」

 

それだけ言うと、達也は俺がお昼のために作った焼きそばを皿によそってテラスの机に座って食べ始めた。

 

「ではお兄様。お話。しましょうか」

 

最近よく見る深雪の笑ってない笑顔。

これだったらまだ氷漬けにされた方がマシだ………。




あと2、3話で一番最初のさすおにシーンですかね。

自分でもびっくりしてるくらい展開が鈍行。

入学編が終わるのにどれだけかかるのか…………


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入学編Ⅷ

あんまり深雪さん暴走しなかった……。

ルパン三世Thefastを見てきました!
ネタバレになるのでぼかしますが、オリ主のアレはアレを小規模にしたやつだと思ってください。

ルパン三世Thefast、3Dキャラに全く違和感なくて面白かったです。是非、見てみてください。(露骨な宣伝)
五右衛門が可愛くて、次元がかっこよくて、ルパンはいつもの大泥棒でした。



「この空間について聞きたいことは終わりました。では、お兄様、その髪留めはどこでどのようにして買ったのでしょう?」

 

「アクセサリー屋だよ、ポスターとして使う写真の報酬として頂いたんだ。」

 

「そうですか…。確かにそうでしょう。たしかにポスターは最高でした。ですがアクセサリーショップの店員が言うには『可愛い女の子2人にそれぞれアクセサリー買ってあげてたの、優しいし、かっこいいなんてあの女の子達が羨ましいわ』と申しておりましたが!?」

 

聞き込みはずるいだろ……。

というか、もうポスター貼られてるのか、あの店員仕事早いな…。

 

「雫とほのかに案内して貰ったからそのお礼に買ったんだ」

 

「まぁいいでしょう、その後はどうしましたか?

隠さず、お話ください!」

 

「次は雫おすすめのクレープ屋に行って、ブルーベリーのクレープを食べたよ」

 

「か・く・さ・ず!お話頂けますか?」

 

またもやニッコリ笑う深雪。

隠すも何も……あ、ダブルベリーの件…は内緒だから黙っとこ。今の深雪に言ったらよりやばい事になる。

 

「いや、クレープ屋行って、雫とほのかの分も買って食べたくらいしか……。」

 

「へ〜、そうですか……。本当ですね?」

 

なんでこんな疑い深いんだ…。

しかし、雫が深雪に凍らされないようにしっかり隠し通さなければ。

 

「深雪は知っておりますよ?クレープ屋の裏メニュー、ダブルベリーはブルーベリーとストロベリーのクレープを交換する事だと。」

 

!?

嘘だろ!?まさか見られてたのか!?

 

「店員が言うには『女の子2人を連れた凄いイケメンさん?ふふっ、来たわよ〜!まさか初めてでダブルベリーを注文するなんてねー!お似合いの子達だったわ!……ちょっと、寒くないかしら?』と言ってました。さぁ、お兄様、本当のことをお話ください。」

 

僕が話す前に深雪はクレープ屋の人に謝ったか?

CADの調整機械を設置している達也をチラ見すると、ちゃんと抑えた、とハンドサインを送ってきた。

達也も大変だな……

え?暴走しないようにしてくれ?ははっ、達也、お前も大変な目にあうがいい。

 

「いや、ダブルベリーとか初めて聞いたんだけど…

確かに僕はおすすめされたブルーベリーを選んだけど、交換はしてないよ」

 

「本当ですか?

 

………交換しなかった……?雫かほのかでもさすがに2日目でカップルアイテムとかしないわよね………しないわよね?」

 

深雪が何故か考え始めたので、次は僕の焼きそばを勝手に食べた達也からの質問だ。

 

「深雪、あとは俺が聞くから深雪はお昼ご飯を作ってくれないか?兄さんの焼きそばだと少し足りなくてね、深雪もまだだろう?」

 

深雪はまだ悩んでいたらしいが、達也に言われてキッチンへ向かった。

 

「さて、兄さんはいつからここを?」

 

2時間。そこそこ熱い砂の上でかれこれ2時間は正座だ。

達也は仁王立ちしており、説教を終えた深雪は僕が結構こだわって作ったアイランドキッチンで少し遅いお昼を作っている。

 

「この空間を作ったのは沖縄から帰ってきてすぐのときだよ」

 

「俺たちがいろいろ大変だった時に療養が言い渡された兄さんは1人で魔法の練習をしていたわけだな」

 

「…深雪も淑女として教育されてた時だから暇だったんだ」

 

「ならこの家に移った時に教えてくれても良かったんじゃないか」

 

だって、ここの存在を教えたら僕が自由にできないじゃないか…。

 

「………」

 

「まぁ、兄さんが教えたくないのもわかる。

俺もここのことを知っていたら環境実験に使っていたからな。

だが、毎回兄さんの気配が急に消えたり、現れたりするとなにか起こってるんじゃないかと気が気じゃないんだ。」

 

「僕が誰かに遅れを取ると」

 

「深雪を守るのにだ」

 

あっはい、そうですか。

 

「兄さんに護衛なんか必要ないだろう」

 

せやな…。

 

「それと兄さんが作ったCAD、まさかとは思うがサイオンの回復なんて効果は無いだろうな」

 

「サイオンの回復?」

 

サイオンを回復はさすがにやめておいた、一応仕組みは考えてあるので作ることは出来るが、世間がまだサイオンそのものをどうこうできるまでに至ってないのにサイオンの回復装置なんて劇薬過ぎる。

 

「僕のCADはサイオンの必要量を軽減させるものだよ、

それも消費し続けるような魔法じゃないとあまり効果は無いかな」

 

「たしか創り出した鉱石を使ったんだったな」

 

「そうだよ、魔法伝導率が高い鉱石、よくあるファンタジー物から取ってミスリル鉱石。」

 

「なるほどな……、兄さんのサイオンが尽きない理由がわかった」

 

わかってくれたか、そろそろ脛がジリジリしてきているんだけど、それにお昼ご飯も食べ損ねている。

僕の焼きそばを食べた上でいつの間にかビーチサンダルとサングラス持ってきて仁王立ちしている達也はなにも感じないだろうけどね!

 

僕が深雪に怒られているときに達也はここで色々できるよう機材を持ってきていたのだ。

空間主の僕になんの断りもなく。

まぁ、入口バレたし…めっちゃ怒られたしで自由に使えるようにするけどさ……。

おっと、不法侵入大好きな自称忍者は入れないように厳重に管理しよう。

 

「もうひとつ、前に兄さんがスキーウェア着ていたことがあったが今の夏以外の季節もあるのか?」

 

「ああ、あるよ。僕の『空間』だからどう変えようが思うまま。

できないことの方が少ないって達也も知っているだろう。」

 

正座するアロハシャツの僕とバカンス姿の達也の話がある程度終わると、料理をしていた深雪が呼びに来た。

まだすこし僕を見る目が怖いが、達也に食べられてしまったので本当に助かる。

 

焼きそばの口だったが、パエリアに入っているアサリの柔らかさがちょうどよく、とても美味しかった。

 





次回!多分森崎くん初登場&多分しばらく退場

オリ主はまだ強化を残しているんだぜ……?

あとがき書いていて思い出したけど、四葉って強力な固有魔法を持って産まれるか、精神干渉系魔法が使えるか…だったっけなぁ、とか思ってました。

今更ながら、『空間支配』はチートです。
無から有を作り出せない魔法ですが、そんなの知るか!オリ主に常識は通じないもんね理論でボッコボコやっていきます。


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入学編Ⅸ

少し駆け足ー!
森崎魔法事件を防いだので、少し強引に達也を委員会に入れると思います。

まじで入学編いつ終わるんだろ((


バカンス空間がバレた次の日、僕は風間少佐に呼び出され学校に遅刻していくことになった。

 

風間少佐には司波虎白としてではなく、沖縄のすぐあと、佐渡侵攻事件にてブラックホールを世に知らしめた戦略級魔法師”(そよぎ) 大雅(たいが)”として呼ばれたのだった。

多分、電子の魔女と呼ばれる藤林響子さんから伝わったであろう憑依魔法について、どのような魔法か取り調べを受けた。

 

簡単に、「精霊を憑依させることで魔法傾向を特化させる系統外魔法」と言ったところ、すこし間があってから危険だから控えるようにと言われたがむしろ使わない方が危険なので丁重にお断りした。

響子さんは心配そうに見てきたが、僕の『空間』で作ったために完全に制御できているので体内で暴走することは無い。はずだ。

 

入学祝いのお言葉を貰ったり、世間話などをしていたらお昼になっていたらしく、風間少佐とティータイム中に響子さんが学校はいいのかと言ってくれた。

 

そう言いつつもちゃっかり追加のクッキーを出してくるのには風間少佐も微笑みを浮かべていたが…。

 

一応、達也にこのことを伝えてはいるが深雪がほのか達になにかしてないか心配になってきたのでお暇することに。

 

しかし、学校に着いた頃には既に日が傾き、完全に下校時間になっていた。

 

仕方ないので校門で達也達を待っているのだが、全然出てこない。というか、途中から学校の方が騒がしくなっていた。

野次馬根性丸出しで覗き込んだのだが、どういう訳か達也の友人達と、一科生が騒いでいたようだ。

 

達也が僕に目線で助けを求めてきた。

昨日の焼きそばの件があるので傍観を決め込もうとしたのだが、美月のヒートアップが話を不味い方向に向けている。

暴力沙汰……魔法沙汰?は洒落にならないので美月が無意識に挑発する前に止めに動いた。

 

 

 

「一科生と二科生になひゃっ!?」

 

「美月、そこまでだ。」

 

僕が美月の肩を抱き、顔の高さを合わせる。

位置的に耳元で囁くようになってしまったが、既に耳まで真っ赤な美月にはもう少し我慢してもらおう。

後ろから「やだ、大胆ねー」なんて聞こえるがさっきまでの空気を変えられたのなら結果オーライだ。

今はとにかく空気を変える。森崎が苦手そうな甘い空間にだ。

 

「美月、心の優しい君は深雪と達也の団欒を守ろうとしてくれたんだね。ありがとう。

たしか森崎!深雪にホの字なのは良いが、しつこい男は嫌われるぞ。要人護衛のプロならもっと心に余裕を持ってなんでも寛容になれ。でなきゃ意中の人を振り向かせるなんて一生できやしないぞ!」

 

後ろから冷気が凄い。なんか最近深雪に毎日怒られている気がする…。

一科生の方にいるほのかと雫は少し不機嫌そうだ。

 

「なっ、いいぃぃぃいきなりなにを言うんだお前は!?」

 

一方、森崎くんは図星だ。これで一科生、二科生のことからは意識が外れただろう。

まだ下校生がそこそこいる中で好きな人を暴露されたせいか顔が赤く、落ち着きがない。

 

遠くの草むらから笑いを堪える声が聞こえたが、生徒会と風紀委員仕事しろ。

 

今がチャンスだ。深雪に合図を送ると、達也の補助もあり僕が何を言って欲しいか分かったようだ。深雪が一歩前に出る、先程の僕の発言もあり深雪に視線が集まった。

 

「お気持ちは大変嬉しいのですが…一科生や二科生だからと相手を選ぶような方とはちょっと……」

 

…………………すまない、森崎くん。

本当は深雪に「私はお兄様達と帰りたいのです!」って言って欲しかったんだ。

達也もそういう風に伝えてたし、まさか告ってもいないのに撃沈させるだなんて……。

 

深雪の言葉に校庭内が静まり返った。

森崎くんは口をパクパクさせている。エリカと働かない上級生達の吹き出す音が聞こえた。

 

「えっと…、なんかすまない森崎……」

 

素直にそういうと、真顔の森崎くんは僕を見て、

「お前なんか嫌いだァァァァァ!!」と言い残して走っていった。

 

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなので後日、男性向けファッション雑誌をあげよう…。

 

森崎の取り巻き達も、森崎が走り去ったのを追うように居なくなったが、ほのかと雫がこちらに向かってきた。

 

「虎白さん!いつまで抱いてるんですか!」

 

ほのかの言葉に、僕は美月を抱き込んでいたことを思い出し、美月に謝ってから肩を抱いていた手を離す。

 

「あららー、美月が虎白さんの魔の手にかかってフリーズしてるわよー?」

 

エリカの言葉に深雪とほのかと雫から睨まれるが、僕も芝居に付き合わせた美月には悪いと思っている。

 

「すまない、助かった兄さん。」

 

達也が助け舟を出してくれたので乗ろうとしたのだが、遠いのか近いのか微妙な距離から生徒会長と風紀委員腕章をした先輩が声をかけてきた。

 

「なかなか見応えがあったぞ、君は相当やり手だな」

 

腕章を着けた先輩のせいでまた3人からの視線がきつくなる。

 

「司波虎白さんよね?先程は見事でした」

 

一方、生徒会長の方は言葉こそ普通だが、目にハイライトがない。

絶対に逃がさないと言うような強い念を感じる。

 

「ありがとうございます。本当は弟の達也だけでも解決できたのですが……」

 

目線を達也に向けるとつられて上級生2人も達也を見る。

立ち方からなにかを読み取ったのか風紀委員の方が「ほう…」となにか面倒くさくなるようなことを考えていた。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。

私は風紀委員長の渡辺摩利だ。」

 

「知ってると思うけど、どこかの誰かさんが寝ていたようだから改めて、生徒会会長の七草真由美です。」

 

2人が自己紹介をした。風紀委員の方は委員長だった。

まぁ、生徒会長と一緒にいる時点でそうでは無いかとは思っていたのだが。

 

「虎白さんは今日学校を休んだでしょう?

なら、明日私が案内しましょうか…いろいろお話したいこともありますし…ね?」

 

まったくいい予感はしないので断ろうとしたのだが、僕よりも早く深雪が反応した。

 

「せっかくのご提案ですが、兄は私が案内しますので大丈夫です。」

「わ、私もご一緒します!」「私も」

 

深雪の言葉にほのかと雫が加わった。

 

「ふふっ、人気ですね。では、後日ゆっくりお話しましょう。

もちろん、深雪さんも達也くんも一緒にね?」

 

校舎の方に戻っていく2人だが、会長の言葉に深雪の不機嫌度がMAXになっている。

僕と達也は揃って胃に手を当てた。

 

僕が胃に手を当てたら達也から冷たい目線をくらったが……。




ハーレムにしていくよ!
見境ないよ!本人は気づいてそうで気づいてないよ!
可哀想だね!!


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入学編Ⅹ



魔法科高校の劣等生は別にした方がいいですかね?





森崎失恋事件のあと、フリーズしていた美月を呼び戻し達也達E組と僕達A組の大人数で帰ることに。

僕が美月に近づくと顔を真っ赤にして逃げられ、深雪、ほのか、雫からの視線が痛くなる。

 

「初めましてだな、オレは西城レオンハルト。虎白だったっけか?よろしくな!」

 

初めて会うガタイのいい兄貴系イケメン君が自己紹介をしてくれた。僕のことは達也経由で伝わっているらしい。

 

「はじめまして、僕は司波虎白。よろしく、レオンハルト」

 

「あー、レオでいい。その代わりオレも虎白って呼ばせてもらうぜ」

 

「了解、レオ。それから、達也のことを頼む。あいつ意外と常識ないから。」

 

「聞こえてるぞ、俺は兄さんの方が心配なんだが?」

 

ほのか達と話していた達也に聞かれていたみたいだ。

僕とレオ以外も初めて会う人と挨拶している。

一科生や二科生なんて差別的な意識を持つ人が居ないのでさっきのようにピリピリしていなくていい感じだ。

 

エリカの希望で昨日雫とほのかと一緒に行ったクレープ屋に行くことに。

道すがらその人の得意な魔法の話になった。

 

「そーいえばー、虎白さんの得意魔法ってなんなの?」

 

「僕は「虎白さんは加重系、振動系が得意」……雫の言った通りだよ」

 

「ほー、ちなみにオレの得意魔法は収束系の硬化魔法だ」

 

「私は振動系。」

 

「わたしも振動系です!」

 

「みんな振動系が得意なんだ。ねぇ振動系って簡単なの?」

 

僕が得意魔法を言った時、深雪と達也から大丈夫なのかという目があったがむしろここでBS魔法師ですなんて言ったらどうなるか。これでも僕は首席なんだから、BS魔法師だとバレた時点でなにかしら問題が起きるだろう。

 

「振動系が簡単というわけじゃないが、現象としてわかりやすいからな。加熱や冷却、光に関する魔法も振動系魔法に分類されている。汎用性が高いからその分得意とする人も多いんじゃないか?」

 

「なるほどねー、私は加速系が得意かな。美月はー?」

 

「えっと…私は得意魔法とか持ってなくて…強いて言うなら移動系でしょうか…?」

 

「私は虎白兄様と同じ振動系ですね」

 

「俺はどれも発動が遅すぎて得意とか言えるレベルではないな」

 

達也だけが魔法に関して酷いみたいに聞こえるが、サイオン量ではとある条件下で今の僕と同じくらいの量を扱える。

それに、工程が少ない魔法は並の魔法師より速い。

 

「そうか、達也は魔工技師志望だったな」

 

天下のトーラスシルバー様が魔工技師志望と言っているのを想像すると可笑しくなる。

 

レオの魔工技師発言で得意魔法からCADの話へ。

どうやら司波家がFLT社…達也と僕が手がけたCADで、雫、ほのか、美月がFLT社以外のCAD。レオがドイツ社製、エリカは貰い物だそうだ。

 

「エリカちゃんのCADって?」

 

ほぼ全員がどこかしら見える位置や見るからにCADなものを持っているのに対してエリカはよくある腕輪型も銃型のも見当たらない。が、僕には後ろでレオと話していた時に前を歩くエリカの腰の辺りに棒状のものが浮き出ていたので多分それだろうと予想している。

 

「腰の後ろに着けてるやつかな?」

 

「へぇ〜、よくわかったわね」

 

「服が変に浮き上がってたからさ」

 

エリカが取り出したのは伸縮警棒、見たところただの警棒だ。ボタンもパネルも見当たらない。

 

「エリカ、それは刻印型のCADか?」

 

達也がCADに反応する。貰い物だと言っていたから気になるのだろう。

 

「そ、サイオンを流すと硬化魔法が発動するやつよ」

 

「へぇ…、でもそれってよ、維持するのにサイオンを流し続けなきゃいけなくねぇか?」

 

硬化魔法が得意と言っていたレオが問題点を見つけたようだ。

 

「ぶつける瞬間に流せばその時だけで済むの、兜割りと同じよ」

 

「だが、そのタイミングを間違えばガス欠になりやすく、当ててもただの打撃…それを常に成功させる…か。僕でも成功し続ける自信はあんまりないかな…すごいね、エリカは」

 

「褒めたって何も出ないわよー?

というか、やっぱ剣術やってるんじゃない!」

 

「やっていないとは言ってないよ」

 

 

 

 

 

「あの…お兄様。兜割りって奥義とか呼ばれるものですよね?」

 

少し前で虎白にエリカが剣術がどうのこうのと、話しまくっている。聞こえてくる中には無拍子など素人には無理なものもある。

 

「あぁ」

 

「千葉家に剣の話でついていけてる虎白さんって普段何してるの?」

 

雫の言葉にほのかや美月、レオまでもが同調する。

 

「入試首席で、魔法力も学力もずば抜けててよ、顔も性格もいいんじゃ完璧だな」

 

虎白が褒められた(?)ことで深雪がとても元気になっている。

 

「虎白兄様はいつも本を読んでいたりCADを弄っていたり勝手に料理をしたりしてるわ」

 

勝手に料理している。という部分でよく知っている達也以外が一瞬固まったが、聞き間違いということにしたのか誰も突っ込まなかった。

 

「追加して言うならば気分屋で俺たちに黙っていろいろやっているな。この前も隠し事が分かって俺と深雪で怒ったところだ。」

 

達也からも虎白が問題を起こし、それを隠していた。と言われ、レオ達の虎白に対するイメージが完璧優等生から気分屋へと変わった。

 

「えっと…色々なものに手を出したって言ってますけど…どんなことなされてたんですか?」

 

「兄さんは”一般的な武器ならどんな相手でもなんとかなる”と言っていたが、詳しくは知らないな…」

 

「私も…考えてみればお兄様のことを少ししか知りませんね…」

 

深雪と達也ですら兄である虎白のことを把握しきれていない。

魔法については話をするが、戦闘術、その他の事に関しては全くと言っていいほど知らないのだ。

達也の普段の相手は九重八雲であるし、虎白と最後に手合わせしたのは沖縄海戦の後、虎白のリハビリがてらに軽くしただけ。深雪は料理をするが、好き嫌いなく「美味しい」と食べる兄の好みを知らない。よくリビングで本を読んでいたり、達也とCADを弄っているのは見るが、1人の時に何をしているのかわからない。

 

「虎白さんって謎の多い人なんだ。

ねぇ、ほのか。一緒に虎白さんを解き明かそうよ」

 

「えぇ!?」

 

「知らない一面が見れるかもよ?」

 

「それは…そうだけど…、いいのかな?」

 

「雫、それ私もやるわ」

 

「なになにー?虎白さんの弱点の話?」

 

虎白を解き明かすと聞いてフリーズした美月以外の女子か虎白を解き明かすことにしたようだ。

 

「すまないが兄さんについてわかったことは俺にも教えてくれないか?もちろん、俺からもなにか分かったら深雪に伝えるつもりだ」

 

達也は兄がどういうことをしているか、なにかまだ隠していないかを調べるために彼女らに協力して貰うことにしたのだ。

 

当の本人はすでにクレープ屋でカフェオレを注文している。




なんかいいCADの名前ないかなぁ!!(


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