汚い猫耳親子を拾ったので虐待する事にした。 (ハヤモ)
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悪の虐待会社へようこそ。

他の方々の話を見ていたら、自分も作りたくなりました。
参考にしている手前、何処かで見た言い回しが目立つかもですが、成る可く自身で考えていけたらなと思います。

更新未定。 駄文。


私は、猫耳族のショコラです。

なにやら暗くて、ジメジメした路地裏で生まれたと聞かされています。

 

お母さんは言いました。 私たち猫耳族は嫌われていて、道を歩けば舌打ちされ、人間さんの子どもに石を投げられるのは当たり前だと。 嫌われ者だと。

 

どうして嫌われるの。

その問いに、お母さんは答えました。

 

───人間からしたら、耳と尻尾が生えている獣人は気味が悪いから。

だから陰に隠れて、夜の街で働くしか生きていく方法はないんだと。 それしか許されないのだと。

 

幼い私は、それが理解出来ませんでした。 陽の光を浴びて表通りを歩くスーツ姿の人間さんを路地裏から見ます。

その姿は眩しくて、そして耳と尻尾は生えてません。 だけど一緒に歩いて笑えたら素敵だと夢想しました。

 

そして、お母さんの目を盗んで昼の表通りに飛び出しました。

 

───その日。 私は現実に打ちのめされたのです。

 

猫耳の化け物が!

人外め!

売春婦の分際で!

屍肉食家!

病原菌!

臭えんだよ!

生ゴミが!

昼間に出て来んな!

 

腹立たしそうに怒鳴り散らされて。

事あるごとに、私の事を『化け物』『人外』と罵ってきました。

そして私を蹴ったり殴ったりして楽しそうに笑い始めたのです。

 

私は痛くて、悲しくて、どうしてこんな目に合わされるのか理解出来なくて。

にゃあにゃあ泣きました。 すると更に「煩い!」「迷惑だ!」「早く死ねや!」「ゴミでも漁ってろ!」と更に蹴り飛ばされました。

 

痛くて辛くて悲しくて。 私は蹲って、早く終わってと願い続けます。

だけど蹴り止みませんでした。 笑い声が遠くなり始めます。 意識も朦朧としてきます。

 

すると、微かにお母さんの悲鳴が聞こえました。 同時に蹴り止みました。 だけど、蹴る音は響き続けます。

 

薄目で外を見ると、今度はお母さんが蹴られていました。

 

幼い私は、その現実を受け入れたくありません。 目をぎゅっと閉じて逃避します。

 

神さま。 どうして、私達が こんな目に遭わされるのですか。

 

 

 

 

 

どうして……生まれたのですか?

 

 

 

 

 

私は本気で問いたい気持ちになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんは隙を見て、私を抱き抱えて路地裏に逃げ込みます。 背後からは笑い声が聞こえます。

 

人間は怖い。 人間の笑い声なんて聞きたくない。 見たくない!

 

お母さんに怒られる覚悟をしました。 だけど、お母さんは生きていて良かったと涙目になりながら、ボロボロの身体で抱きしめてくれます。

 

そして笑顔でご飯にしましょう、と言いました。

 

出されたのはカラカラに渇いたパンくずとコップ一杯の雨水。

 

ゴミ箱を漁るだけじゃ手に入らない贅沢品です。

 

私は知っています。 これは『泥棒』して手に入れたものだと。

普通に買い物する事を許されない猫耳族は、夜の限られた、獣人相手に割増の商品を売っている商人から買うか、こっそり店舗に忍び込んで泥棒するしかありません。

 

一度、ボランティアの人間さんが、ちゃんとしたご飯を作ってくれようとしたらしいけど、それが気に入らない人間さんにバレたそうです。

そして泣いて謝りながら蹴り飛ばされる人間さんを見て、お母さん達、大人は泣いたと言います。

その日から、もう誰もご飯に文句は言わなくなったそうです。

 

私達は、人間さんが怖くてしょうがありませんでした。

また殴られる、怒鳴られる、そう思うと足が竦んで動かなくなってしまうんです。

最初は反抗していた獣人族も結局心が折れてしまいました。

 

私達は人間に対して『普通の子』としての力しか出せません。

力が無い私達に、人間さんを止める事は出来ませんでした。

 

人間さんは、私達を1匹も殺しませんでした。

私達が死ぬと、社会に非難されるからでしょう。

命を奪うのは『やり過ぎ』。 その程度の認識のみで、生かされています。

その代わり気絶するまで殴るのは許されるそうです。

それでも稀に逮捕者が出て……だけど社会的地位の低い猫耳族の所為にすれば、全ての犯罪を猫耳族に押し付けて丸く収まるそうです。 そして、無罪の猫耳族を適当に捕まえて来て牢屋に入れます。

 

牢屋は暗くて狭くて、酷い所だそうです。

1回だけ、猫耳族の仲間が入れられるのを見ました。

泣いて謝りながら、人間さんに尻尾を引っ張られて引き摺られていきました。

 

可哀想。

でも逆らったらどうなるか……もう蹴られるのは嫌だから、見て見ぬふりをしました。 その日は、罪悪感が凄かったです。

 

もう、こんな世界は嫌でした。

もう、人間さんは嫌でした。

もう、生きていたくありません。

だけど願わくば。 誰でもいいから、この地獄から救って下さい。

 

そして、その祈りは 叶う事になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は午前8時。

残酷を道理とする悪の結社の朝は早い。

 

「おはよう社畜の皆さん」

 

先ずは部下に威厳を見せるところから始まる。 くくっ。 恐怖心からか皆ビシッと立っていますね。 ある意味滑稽。

 

そんな恐怖の空間の中、私は今日の目玉だとばかりに捕まえて来た猫耳族2匹を皆の前に曝け出します。

くっくっくっ。 怯えてしまって。 これだけ大勢から注目されてるワケですからねぇ。

 

特に猫耳族。 耳と尻尾が生えている異端種族は注目のマト。

服もボロボロで、リーマンと比べられるレベルでなし。

 

くくっ。 この貧富の差がさぞ恥ずかしいのでしょう。 羞恥心で震えています。

 

私に捕まったのが運の尽きでしたね。

今までは、それでものうのうと生きてこれたのでしょうが本当の恐怖はここからですよ!

 

 

「通勤中、路地裏で見つけました。 栄養不足でヒョロヒョロでしたから、捕まえるのは楽勝でしたよぉ」

 

「今日から、コイツらも貴様ら社畜の仲間入りです! 人員不足で文句言っていた方、これで文句ありませんよね?」

 

 

猫耳が私の事を絶望に染まった眼で見ています。

当たり前でしょう。 今まで自由気ままに生きてきたのに、捕まって社畜にされるんですから!

 

 

「先に言っておきますが、私は獣人を歯車としか見ていない。 覚えておいて下さい」

 

 

猫耳の顔に、更に絶望の色が広がっていく。

今まで、猫耳だ、尻尾だと可愛がられてきたのでしょ?

良かったじゃないですか。

ですが、これからは そうはいきません。

なんせ、歯車なんですから!

 

 

「さて、では最初の仕事です。 その猫耳をかっぽじってよぉ〜く聞くが良いです!」

 

 

猫耳親子の顔に、更に絶望の色が広がっていく。 くくっ。 恐れ戦いていますね。

 

 

「先ずは風呂入って下さい!」

 

「え……?」

 

 

は? 私の命令に文句あるのですか?

 

 

「あ、あの、フロって?」

 

「風呂も知らないのですか!?」

 

 

なるほど。 コイツらは常識知らずでしたか。

これだから獣人は困りますねぇ!

 

 

「風呂は風呂! 身体を清める場所及び浴槽の事です!」

 

「場所はそこの突き当たり!」

 

「貴女達のような汚ねぇ『歯車』を見ていると、虫酸が走るんですよ!」

 

 

驚いた顔で俺の顔を見る猫耳親子。

そりゃそうでしょう。 今まで罵られなかったのでしょうから。

だけど、私は遠慮しません。

なんせコイツらは社会の歯車。 手下。 ハッキリ言わなきゃモノは分からない。

 

 

「お、お風呂に入っても良いのですか?」

 

 

母猫が不安と驚いた顔で、困惑気味に話し掛けてきます。

 

 

「さっさと娘を連れて入れて下さい。 これは命令です」

 

 

コイツ、命令してんのに全く動きません。 これだから獣人は…………。

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

泣き出しながら、浴室へと駆けていく猫耳親子。

言われたのが余程ショックだったのでしょう。

 

さて。 居なくなった事だし、次のステップを踏むとしますか。

休む暇なんてありませんよ?




続くか未定。 何か反する場合、削除する場合があります。


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残酷で親切との出会い

駄文更新。

入社前から虐待は始まっていた? 拉致の経緯。

書くのって、とても難しいですね……。 書いてる人が凄いと思います。


毎日が辛かった。

 

それでも生(せい)にしがみついて、我が子を守らなきゃと、今日も目を開ける。

 

陽がのぼる前には起きて、路地裏をこそこそと移動して、ごはんを探します。

 

ごはんと言っても、人間とは違います。

ちゃんとしたパンや水は手に入りません。 ゴミ箱や飲食店の裏に捨てられた残飯を漁ります。 水は雨水や公共のトイレの水道から手に入れます。

 

昼間と夜もおおよそ同様です。

お店の裏に捨てられたくず野菜を口に入れ、夜は、屋台の人間さんが捨てて帰ったくず野菜、コンクリートに落ちた食べカスを口に運びます。 どれも生臭いです。

 

まともなのは、コンビニというお店の裏に捨てられた、消費期限切れの弁当です。

 

丸ごと中身が残っていて、とても美味しそうだけれども、私は食べることができません。

 

私達よりずっと身体の大きな子が、縄張りにしているからです。 その子だけが ごはん にありつくことができます。

 

それを、私達は眺めているだけ。 ハンバーグやスパゲッティって、どんな味がするのか想像しながら。

 

 

(いつか、ちゃんとした食事を この子に食べさせてあげたい)

 

 

思っても仕方ない。 いつまでもこうしては居られない。 人間がやって来る前に動かないと。

 

昼夜問わず、なるべく目立たないようにしないといけない。

 

猫耳族は人間の標的。 特に子供を見ると意地悪をします。

 

連れて行かれた子は、ボロボロになって帰ってくるか、二度と帰ってこないかのどちらかです。

 

 

「お母さんから離れちゃダメよ」

 

 

私達は、頭からフードをかぶって耳を隠す。服の中に尻尾も隠す。 それでも、ちゃんとした食事の事が頭から離れなかった。

 

だからか。

 

あの人が近付いてくるのに気づけなかったのは。

 

 

「おやおや〜。 良いところに歯車が」

 

 

路地裏の生ゴミあさりに夢中になっていると、後ろから声がした。

 

中性的な人間だ。 よく見かけるスーツの格好。 つまり、乱暴で怖い大人だ。

 

捕まると、きっと痛いことをされてしまう。

なんとか走って逃げようとするけれども、我が子が捕まってしまった。

 

 

「ショコラ!」「お母さん助けてっ!」

 

「捕まえましたよ。 禄に食べてない、ガリガリの子供の足で、私から逃げれるとでも思いましたかぁ?」

 

「離しなさい!」

 

 

必死に手足で殴りかかって助けようとする。

けれど、相手は人間。

 

拳にどっしりした、まるで木でも殴ったかのような感触が返ってきて、助けるのは困難だと痛感してしまう。

 

そうこうしているうちに、この人間は娘を どんどん、どこかへ連れて行く。

 

娘を奪われてなるものか。

 

私は必死に、無駄だとしても殴ったり蹴ったりして人間を攻撃し続ける。 表通りに出て怪異の目で見られても構わず続ける。 無駄だとしても。 それでも。

 

やがて 何かを想像した すれ違う人たちが、ヘッヘッと私を見てきた。 暴力と欲望を混ぜた怖い瞳。

 

それを私は知っている。 他人の不幸を悦ぶ目だと。

 

脳裏に、人間に連れて行かれた仲間の姿がよぎった。 攫われた仲間は酷い乱暴を受けて死んでしまうか、もう動けないくらいボロボロになって帰ってきた。

 

今度は、娘と私がそうなる番なのだ。

 

そう思うと、ただでさえ貧弱な拳に力が入らなくなる。 虚しくて悔しくて。 抵抗する気力も失せて、手足から力が抜けてしまう。

 

運命を呪った。

 

 

ああ、神さま!

私は構いません。 でもどうか、どうか ショコラだけでも助けて下さい!

 

 

そんな私を見て、中性のスーツの人間は嬉しそうに笑った。

 

人生は終わった。 そう覚悟した。

 

 

「抵抗しても無駄ですよ?」

 

「貴女と娘は これから社畜となり、この世の歯車となるんです」

 

「「…………え」」

 

 

言われて、娘共々呆けた声を出してしまった。

 

娘は意味が全く分からず。

私は なんとか働き口を与えてやると聞こえて、困惑した。

 

何か裏があるんじゃないか。

好意的なものじゃない筈だ。

 

経験からネガティブな思考が働く。

だけど、それも段々と薄れていく事になる。

 

 

「此処が今日から勤める社畜の檻ですよ!」

 

「ようこそ悪の結社へ!」

 

 

何を言ってるのか分からないけれど。

この時、脱力した私達は この人間の言う事に従うしかないと思った。

 

時は午前7時半過ぎ。

この約30分後に私達は皆に、仲間となる人間さんに紹介される事となった。

 




続くか未定です……。


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初仕事?

不定期更新。

なるべくコピー文章? にならないよう気をつけて書いてるつもりですが、上手く書けてないかも知れません……。


「隅々まで洗いましょう」

 

「うん」

 

 

お風呂。 聞いた事はあるけれど、入ったのは初めてです。

 

お湯って、こんなにも心地良いんだ。

 

温かい雨を浴びながら、お母さんが柔らかいスポンジで身体を、猫耳の裏や細い尻尾を丁寧に洗っていきます。

 

泡に包まれて、だけど気持ち良くて。 さっぱりしていく感じは新鮮でした。

 

 

「いい、人間さんなの?」

 

「……そうだと、信じたいわ」

 

 

あの人間さん、怖そうな言い回しでした。

 

でも、こうしてお風呂に入れてくれました。

 

まだ、あの人間さんの事は分からないけど、これだけは確かな事です。

 

 

「お風呂から上がったら……ううん、きっと大丈夫」

 

「お母さん……」

 

 

お母さんは不安そうにしています。 人間さんの事を私より知っています、信用できないみたいです。

 

お母さんだけじゃない。 私もとても不安です。

 

でも、私は人間さんの事、信じてみたいな……。

 

 

「お母さん、見て! あわあわ!」

 

「……ふふっ。 初めてだものね」

 

「うん!」

 

 

私はお母さんの不安を和らげようと、話を逸らします。 すると、少しだけ笑ってくれました。

 

先のことは一旦置いておいて、今を楽しむことにします。

 

願わくば、あの人間さんがいい人間さんでありますように。

 

久しぶりに笑えた表情を、絶対に絶やしたくない。

 

 

「気持ちよかったね お母さん!」

 

「ええ。 身体も綺麗になったし、これで怒られないわ」

 

 

お風呂から上がった私とお母さんは、置いてあった服……背広? というのに着替えて元の部屋に戻ります。

 

そういえば、お風呂から上がった時に置いてあったこの背広、誰が用意したんでしょう。

あの人間さんか、あの場にいた他の方かな。

 

 

「……人間にも色んな人がいる。 少しずつ信じていけば良いのよ」

 

「うん」

 

 

私も不安そうにしているのを見て、お母さんは話してくれます。

 

お母さんは心に隠している想いも見通してくる。 だけど、それで何度も助けられました。

 

そうこうしている間に、元の部屋にやってきました。

 

あの人間さん、まだこの中にいるんでしょうか。

 

お母さんは部屋のドアノブに手を掛けました。

 

 

「何かあっても、お母さんが守るから」

 

「……うん」

 

 

見れば、手が震えています。

 

多分、部屋に入るのが怖いのだと思います。

 

私だって、少し不安です。

でも、自分から前に進まないと。 見えている道を進むしかないから。

 

お母さんは、ゆっくりとドアを開けていきます。

 

片手は、私の手と固く繋ぎ合っていました。

 

ギギ、と、立て付けの悪くなったドアが開かれました。

 

部屋に射し込む太陽の明かりが、目に眩しくて。

そして、嗅いだことも無いような、とてもいい匂いが私の鼻を擽りました。

 

 

「来ましたね。 仕事の時間ですよぉ?」

 

 

 ……今日。 生きていて良かったと思えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂から戻ってきた猫耳親子が、不思議な顔で私を見てきます。

 

何が起きているか、理解出来ないのでしょうね。

 

本当に馬鹿な歯車です。 くくっ。

 

 

「あ、あの、人間さん……これ、何ですか?」

 

 

母猫の裏に隠れる手前の方にいたチビ猫が、テーブルの上のコンビニ弁当を指さします。

 

私の卓上に置かれたコンビニのハンバーグ弁当2つ。 因みに30円引きシール付き。

 

猫耳は、これが何かすら分からないのでしょうか。

 

 

「それは歯車を動かす為の燃料ですよ。 どうです、見窄らしいでしょう!?」

 

 

私の怒声に、猫耳親子は身を竦めます。

 

この反応、きっと今まで怒鳴られたことすらない温室育ちだったのでしょうね。

 

残念ですねぇ、もうそんな生温い生活は終わりなんですよッッ!

 

 

「これから貴女とチビに食事を与えてやります。 残さず全部喰うのです」

 

「えっ?」

 

 

そうでしょう、そうでしょう。

 

今まで当たり前に好きなもんを食えて、嫌いなものを避けたんです。

与えてやる、しかも全部喰えなんて畜生扱いされちゃあ、誰だってそういう反応しますよね。

 

 

「わ、私たちに!?」

 

「当たり前でしょうが、そんなの」

 

 

何言ってやがるんです。

 

こいつらはあれですか。 自分達の食いモンは自分達で調達したかったとか?

 

甘いんですよ、考えが!

 

 

「美味い物に ありつける と思ってませんかぁ?」

 

「でも良い匂いが」

 

「はいぃ?」

 

 

良い匂いですって?

 

ははん。 私用の飯の事を言ってやがるんですね。 畜生だから嗅覚が良いのでしょう。

 

ですが残念ですね。 こいつは私のです。

 

 

「それ、なんですか?」

 

「知らないんですか? 朝専用で売られている、目玉焼きバーガーですよ」

 

 

私が取り出したのは、近所のバーガー店から購入したホカホカの朝専用バーガー。

 

12時正午を廻ると買えない限定品。

 

紙袋を開けると良い匂いが漂う。

物欲しそうにこれを見つめる猫耳親子。

 

 

「はんばぁガー?」

 

「残念ですね! 畜生には一口もやりませんよ、これは全部私のモンです!」

 

 

ハンバーガー、この至高にして究極の、富を持つ者が許される逸品は、私専用です!

 

歯車には、お似合いの物を既に用意してあるんですよ!

 

 

「歯車には、このコンビニ弁当で充分です!」

 

「この弁当、全部私達のですか!?」

 

 

何言ってんの、この母猫。

 

他に誰が食うんです。 私は2つも喰えねえですよ。

 

 

「さあ、お待ちかねの絶望タイム! 社畜は毎日添加物たっぷりなコンビニ弁当を喰らうが良いです! 社畜の皆さん、頼みますよぉ!」

 

「えっ」

 

 

私の号令に、その他大勢な社畜の1人が立ち上がります。

 

こいつら消耗品の歯車は、私の崇高な命令と社会に理解を示す、場を弁えた素晴らしい歯車。

 

猫耳の背広の用意、弁当の購入を手伝ってくれました。

 

社畜は素早く私の席の弁当を猫耳親子に渡します。

 

そして、同時に空いてる応接室へ誘導します。

 

 

「これは……ハンバーグ!?」

 

「そうです。 どうです、美味しそうでしょう」

 

 

猫耳親子め、完全に絶望しきった眼で弁当を見てやがります。

 

くくっ。 醜い肉塊丸出しのを無理矢理喰わせられるワケですからね。

 

その顔を見たかったんですよ!

 

 

「こ、これが、あのハンバーグ!?」

 

「嫌だとは言わせませんよぉ?」

 

 

チビ猫は悍ましい肉塊を見て驚きを隠せないようですね。

 

そりゃそうでしょう。 この肉塊は今まで畜生が食ってきた物とはわけが違います。

 

 

「豆腐を肉塊に混ぜた、半偽のハンバーグです!」

 

 

猫耳は どうせ100パーセントビーフステーキを喰ってたんでしょう。

 

しかし、私が来たからには もうそんな高級品は喰わせません。

 

 

「す、すごい……」

 

 

そうでしょう、すごい騙された感があるでしょう。

 

明らかなコストダウンの現実にテンションも下がりますよねぇ。

 

しかし、絶望は続きますよ。

 

 

「しかも、ただ豆腐と肉塊が混ざっただけじゃないですよ! コレも喰らうが良いです!」

 

 

「……?」

 

 

私が持ってきたのは、プラスチック容器に入ったサラダパック。

 

猫耳は野菜嫌いそうですからねぇ。 嫌でも喰って貰いますよぉ?

 

 

「美味しそう」

 

「はっ! レンジでチンしただけの、歯車による歯車な大量生産品、真心ナシな食事がお似合いです」

 

 

美味しそう、ですか。

 

正に心にも無い事を言いやがりますねぇ、嫌味な歯車です。

 

だけど、まあいいです。

 

こいつらは私の命令に逆らう事は不可能です。

 

苦しみながら弁当を喰うが良いですよッ!

 

 

「は、早く食べよう お母さん!」

 

「……ええ、そうね」

 

 

ハーハッハッハ!

 

子どもは健気に空元気。

母親は明らかに喰いたくない表情。

 

だけどこの場を凌ぐ為に、しぶしぶ蓋を開ける猫耳。

 

だけど覚悟の用意をしておくと良いです!

 

コレが毎日続くんですからね!

どうあがいても絶望!

 

私の計画通り。

 

他のおかずなんて無い、肉塊だけの食事。

 

こんなひもじく非人道的な生活、送った事ねえでしょう!

 

絶望し過ぎたのか、猫耳の目には涙を浮かべています。

 

これです!

この顔を見る為に、私は猫耳を連れて来たんです!

 

さぁ、前座は終わりました。

 

歯車が、もっと悲痛に歪み軋む姿を見せて下さい!

 

そして壊れていくが良いですよッ!!

 

そして私は悲劇の始まりを意味する命令を、会社全体に響き渡らせました!

 

 

「さぁ、2人とも! ちゃんと『いただきます』と言って完食するんですよッ!!」

 




続くか未定。
書くのって難しい……。 書ける方々が羨ましいです……。


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勝組歴史と必要悪(拉致)

不定期更新。

またも拉致前。
この世界の歴史と虐待好き氏の、垣間見る本心。
偏った思考ですが、あくまで この世界と虐待氏の考え。

この話はフィクションです。 実際の歴史、事件、社会や出来事とは一切関係ありません。


専門校卒。

有名大学卒。

 

資格。

経歴。

 

これらが 若く あればあるほど、歯車は高価で代替わりが利かなくなります。

 

皆さんが好きな言葉で言えば即戦力でしょうかねぇ。

 

それらは実に少ない。

 

その取り合いの波には、我が社も含まれますが……正直乗る気が起きませんね。

 

即戦力には、悪い所があります。

 

自我があると尚更に。

 

機械のように有無を言わずに回っていれば良いものの、時に反抗して連結している歯車を壊しやがります。

 

自身がいなければ困るのが分かってるからです。

 

そして困る様を見て高らかに笑いたいというね。

 

そんな歯車を予め見抜くのは困難。

 

グリスアップ?

 

ノンノン。 勘違いして調子に乗って宙に浮かぶ事があります。

 

そうなる原因は世間体には会社が全て悪いとする傾向があるので、いやらしい ですねぇ!

 

そこで私は考えます。

 

おはようから お休みまで、会社が管理していれば反乱なんて起きないんじゃないか。

 

私は会社に具申。

 

昔の会社のように、いえ。 昔以上に世話してやれば歯車は回り続けるんじゃないかと。

 

それから即戦力なんて狙っても大金をパクられて終わる危険を孕みますから、中級以下を雇い、教育するのが良いと。

 

ライバル会社に抜かれるのを焦っても仕方ありません。

 

それから。

 

馬鹿正直に求人出して待っても、誰も来ません。

 

レベルを相当低く設定してもです。

 

人手不足、少子化と言いますが、ニート人口とストリートチルドレンの人口を思うと単に好き嫌いが激し過ぎて……いえ。

働きたくないモノが多過ぎるだけです。

 

現に この国はストリートチルドレンが溢れています。

 

多くは獣人族、それも猫耳族。

 

アイツらは……まあ、働きたくないモノもいますが、働きたくても日中の働き口が無い所為もあるでしょう。

戸籍等の書類が用意出来ないのもあります。

 

 

「でも種族とか血統だとか経歴とか選り好みしているほど、社会全体は余裕がない筈なんですがねぇ?」

 

 

獣人の社会的地位は、人間の無料ストレス発散用サンドバック。

 

それは、歴史を遡っても ずっとソレ。

 

いえ。 訂正。

 

昔よりはマシなだけですかね。

 

大雑把に古墳時代から現代に至るまでだそうです。 驚きですねぇ。

 

人間が進化して、文明を得て。

 

遅れた獣人族は気持ち悪がられて人間に良い様に扱われ。

 

人柱にされたり、重労働に就かせたり。

 

戦争では人間より先に送り込まれ。

 

奴隷がいた時代なんて、人間より圧倒的に獣人が多かったそうです。

 

 

「よくもまあ、反乱も絶滅もしませんでしたね」

 

 

因みに絶滅した生物の多くは獣人族の所為だと歴史の教科書に載ってます。

 

実態は人間の命令で、肉を狩ってたというのにねぇ。

 

獣人族は訴えていたそうです。

 

その生物は、これ以上狩れば絶滅してしまうと。

 

でも無視! 無視! 無視!

 

何かあっても獣人族に責任を擦ればオールでオッケー!

 

リョコウバトの記録で、それが残ってます。

 

え? なんで私が知ってるかって?

 

悪の結社には悪のルートがあるものですよ。

 

深入りはしない事ですねぇ!

 

 

「記録される歴史は勝組の歴史。 くくっ、正にその通り!」

 

 

さて。

話を歯車に戻しましょう。

 

このままでは我々悪が絶滅……滅んでしまいます。

 

そうなれば困るのは社会の その他大勢です。

 

光あるところに闇がある。

 

闇が無ければ寝られない。

元から悪寄りの人間には、必要な闇が多過ぎます。

 

ええ。 多忙なんです我が社は。

 

早急に歯車を増やさねば。

 

 

「止む無し。 そこの路地裏にいる獣人族を強制労働に就かせましょう」

 

 

そうして私は猫耳族の親子を捉えたのです。

 

書類?

保険?

 

要りません。 あっても腐った社会では表向き認められません。

 

シュレッダーにかけられます。

 

 

「でもねぇ。 歴史ってのは、創るモノでもありますよ」

 

 

私は猫耳族……いえ。

獣人族に見出しているんですよ。

 

社会的な大きな価値をね。

 




続くか未定。


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悪のガバ計画と虐待をやらす。

駄文更新。

穴だらけな野望。


 

ハンバーグ。 とても美味しかったです。

 

あんなに美味しいものを食べたのは初めてでした。

まるで別の世界にいるかのようです。

 

 

「でも、どうして良くしてくれるの?」

 

「分からない。 でも、きっと良い人間さんだと信じましょう」

 

 

お母さんは言います。

人間さんの事は私より知っています。

 

人間さんは、悪いばかりじゃない事も。

 

ふと、昔話をしてくれたボランティアの人間さんの話を思い出しました。

 

そうです。 良い人もいるのです。

 

私は思います。

私達は きっと、良い人間さんに会えたんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか? 美味かったです?」

 

 

豆腐ハンバーグを喰い終わった猫耳親子に、イヤラしく尋ねます。

 

くくっ。 コストダウン弁当で不満足なまま仕事。

こんな苦痛、体験した事ないでしょうねぇ!

 

 

「はい! 美味かったです!」

 

 

子猫が言います。

 

美味しかった?

チビの癖に嫌味な事を言いやがりますね。

 

あのコストダウンの、イカリングかと思わせてのオニオンリングだった絶望感を感じずにはいられないでしょうに。

 

まあ良いです。 これから働き続ける現実に変わりはないんですからねぇ。

 

私からは逃げられませんよッ!

 

 

「そ、それでその。 私達は何をすれば良いのでしょうか」

 

 

母猫が尋ねます。

子猫と違い、なかなか殊勝な心掛けです。

 

そういうヤツは嫌いじゃないです。

ただし。 歯車という事に変わりありませんがね!

 

 

「虐待ですよ!」

 

「虐待!?」

 

 

くくっ。 あまりに唐突の単語に戸惑っていますねぇ。

 

 

「それも貴女ら同種に対してね!」

 

「嫌とは言わせません。 実行している様は私が監視しますから、誤魔化しも効きません」

 

「なに、簡単です。 私が手本を見せますから来るが良いです」

 

 

突然過ぎましたかねぇ。

 

そりゃ、イキナリ虐待しろなんて言われたら、ポカンとなるなり狼狽えますよね。

 

 

「やらずに クビになって逃げられる等と思わない事です」

 

「会社と私に生殺与奪権を握られている事を自覚して下さい!」

 

「試しに飲料物の選択の余地が無いのが証拠!」

 

 

そう言って、共用冷蔵庫から未開封のペットボトル麦茶(コンビニ限定増量版)を猫耳に そのまま渡します。

 

 

「こ、これは?」

 

「はい? 麦茶ですよ知らんのですか」

 

 

甘い。 甘いですね畜生の分際で!

 

どうせ炭酸飲料とか100パーセントオレンジとか飲めるとでも思ったのでしょう。

 

甘い。 甘いんですよッ!

 

 

「ジュースなんて甘い考えですッ!」

 

「会社で支給される飲み物は それだけですよ!」

 

「他のが欲しけりゃ、金を稼いで自分で買うが良いですッ!」

 

「それも虐待しなきゃ手に入りませんがねぇ!」

 

 

くっくっくっ。

他者を蹴落とし、その罪悪感に苦しみながら生きるが良い!

 

でも社会とは そうでしょう?

 

貧富の差が出るのは当然ですねぇ?

 

 

「では外に出発」

 

「そ、外に行くんですか?」

 

 

はいぃ?

 

猫耳が、また寝ぼけた事を言いやがります。

 

生憎と社内の仕事は間に合ってるんですよ。

問題なのは会社外活動。 悪を広めねば。 即ち虐待。

 

そして……拉致。

 

甚振り、拉致し、強制歯車にして労働力を確保。

して、社会全体に「あれ? 獣人族減ってね?」と思わせていきます。

 

次に公僕がダラダラ動き、我が社の存在が知れる。 して、社会の酷さと自分達が如何に戦力となる獣人族を放置虐待していたか知るのです。

 

そして他社も真似るようになり。

虐待の素晴らしさが伝播する。

 

即ち悪で悪が広まるのです。

まあ、その頃には我が社が台頭しているでしょう。

 

楽しみですねぇ!

 

 

「社内は今いる社畜で間に合ってます」

 

「くくっ。 外へは、ちょっとした営業活動ですよ」

 

「業績拡大ッ!」

 

 

私は猫耳を連れて外へ繰り出しました。

コイツら畜生は、まだまだ外に溢れてます。

 

虐待して楽しみ、プラス世界の糧になる……これ程素晴らしい仕事が他にあるでしょうか?

 

いや。 無いですね。

 

 

「さあ、駄弁るのはココまでです! さっさと虐待しに行きますよぉ!」

 



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気持ち良く闇堕ちさせる。

不定期更新。

闇から闇へ。 虐待要素が不安定。 脱線の危険が。 ががが。
履歴書やサインナシで、即就職(強制)出来る素敵な場所へ案内。

きっと、それが幸せ?


 

この辺だと猫耳族は簡単に見つかります。

 

路地裏を覗く。

以上。

 

数はそれなりにいますからねぇ。

路地裏でフードを被りコソコソと光と仕事を避けて生きてる連中です。

 

ですが私が来たからには、そんな甘い世界とはオサラバして貰いますよ?

 

 

「くくっ。 早速見つけましたよ!」

 

 

会社近くの路地裏。 そこには野良な猫耳。 子どもですね。

ゴミ箱を漁ってます。

 

どうせ悪戯しているのでしょう。

袋を破いて、回収業者の妨害をするとか。

 

全く。 迷惑な暇潰しです。

 

そんな余裕があるなら、我が社に来て貰いますッ!

 

18歳未満だろうと関係ありません。

 

光の法が、コイツらの闇を照らす事はないのですからね。

 

闇は闇。 暗黒の中ですよ。 くくっ。

 

 

「先ずは虐待して弱らせます。 よく見ておくんですねッ!」

 

 

連れて来た猫耳親子を後方に待機させ、私は路地裏へと進みます。

 

すると、聴力も良い猫耳だからか。

猫耳をピクッと動かして慌てて逃げようとします。

 

ですがガリガリの足では、私から逃げられませんよ?

 

 

「そらぁっ! 捕まえた!」

 

「いやっ! 離して!」

 

 

持ち上げると、ジタバタする子猫。

 

いやはや。 軽いですね。 好き嫌いが激しいから栄養不足なんでしょう。

 

ですが容赦しませんよ?

 

猫耳には重大な欠陥があります。

そこを突く。 さすれば、即堕ち従順化!

 

弱点を容赦無く攻める!

 

虐待の中の虐待!

たっのしー!

 

 

「私に逆らえない事を教えてやります! 猫耳親子も見ているが良い!」

 

 

そう言って、子猫の顎を撫でる!

 

すると、

 

 

「にゃ……ふにゃあああ♡」

 

 

脱力して手足をぶらん、とさせ。

とろんとした目、ダラシない顔。

 

これは所謂、即★堕ち!

いえ。 我が社に持ち帰るから闇★堕ちです!

 

 

「どうですか。 捕獲は楽でしょう」

 

「私は人間ですから逃げられましたが、貴女達は猫耳。 警戒されても逃げる可能性は少し

低い」

 

「こんな風にして、この辺の猫耳を拉致してくるのが仕事です!」

 

 

顔を怒りで赤くする猫耳親子。

そりゃ同族を嵌めるんですからねぇ!

 

命令で裏切り、仲間を闇へと堕とす仕事!

 

なんて残酷なんでしょうッ!!

 

ですが歯車とは、そういうもの。

 

 

「今から私は子猫を連れ戻り洗脳するとします」

 

「貴女らは、2匹捕獲するんです!」

 

「それが最低限の今日のノルマ!」

 

「果たすまで寝るのも許しませんよぉ!」

 

 

ああ! なんてブラック企業!

 

なんて虐待!

 

恨むなら、そんな世にした大企業や つるんだ政治家、そして己の運命を恨め!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、見ちゃダメなモノを見てる気がして恥ずかしくなりました。

 

人間さんは、私と同じくらいの猫耳を捕まえると、顎を撫でたのです。

 

それは猫耳族の弱点です。

他の人にやられると、気持ち良くなって脱力してしまうのです。

 

 

「貴女らは、2匹捕獲するんです!」

 

「それが最低限の今日のノルマ!」

 

「果たすまで寝るのも許しませんよぉ!」

 

 

そして、仲間を連れて来いと言って人間さんは立ち去りました。

 

子どもの猫耳をお姫様抱っこして。

 

なんてことでしょう。

 

どうしようかと、お母さんを見ます。

お母さんは赤い顔で、暫く棒立ちして……気が付いたようにハッとします。

 

大丈夫かな。

 

 

「お母さん?」

 

「……ごめんなさい。 こういうのは、慣れているつもりだったけど……」

 

「やっぱり悪い人間さんなのかな?」

 

「いいえ。 衣食住を与えてくれる分は、会社に戻らないと」

 

 

そう言って、私の手を握ります。

仲間を……攫うのでしょうか。

 

 

「言って、説得して……2人。 そう、2人だけ」

 

「お母さん……」

 

「ショコラが気に病む事はないの。 全部お母さんが悪いの」

 

 

それにと、お母さん。

 

 

「その方が、ずっと幸福よ。 ご飯だってくれる」

 

 

お母さんは私の手を取り、見慣れた路地裏を進み始めます。

 

私は分かりません。

 

食べ物があれば幸せ。

衣食住全てがあれば、もっと幸せ。

 

どちらも正解で不正解な気がして。

だけど答えは出ずに。

 

私は素直に、お母さんに連れられていきます。

 

そして光が届き難い、路地裏へと溶けていきました。

 




仲間を騙させる……! なんて酷い命令を!

更新未定。


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社内案内

不定期更新中。

仲間と共に。
薄味。


 

「あの……仕事を貰えると聞きまして。 で、出来る限り、頑張ります」

 

「くくっ。 私は貴女の上司ですよ」

 

 

つい先程、お母さんと私は、私くらいの子ども2人を連れて会社に戻りました。

背広が連れて行った子も入れると3人です。

皆、親を亡くして、路地裏生活をしている子です。 私達と同じ境遇です。

 

その子達と背広、対面の時。

 

複雑な心境の中、3人は ご挨拶します。

 

この先、どうなっちゃうんだろう。

私とお母さん。 そして連れられた猫耳の子ども達。 心配です。

 

 

「子猫達。 今の内に私の信念、我が社の考えを伝えておきますよぉ」

 

「は、はい」

 

「お前ら猫耳族は歯車! 私に使われる道具ですよ!」

 

「ッ!」

 

 

先程も言った様な事を、背広の人間さんは言いました。

 

やっぱり仕事内容は過酷なのかな。

奴隷みたいにされちゃうのかな。

 

でも。 1つだけ分かった事があります。

 

私達はとんでもない会社に捕まってしまったという事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この私が直々に案内して差し上げます。 社畜の檻をねぇ!」

 

「檻!?」

 

 

挨拶の後、背広自ら社内案内をしてくれることになりました。

 

ギラギラした瞳。 悪そうな笑み。

 

うぅ。 やはり悪い会社だったのでしょうか。

 

だけど抵抗することも出来ず、恐る恐る背広についていきます。

 

やっぱりそうだよね……良い人間さんの方が少ないよね。

 

優しくしてくれた様な片鱗も、飽くまで働かせる為。

 

実際は奴隷扱いなんだ……!

 

 

「今向かっているのは、記念すべき第1回の虐待があった場所ですよぉ」

 

「虐待……!」

 

 

やっぱり!

この背広は猫耳を酷い目にあわせて喜ぶ悪い人間さん!

 

そして、新たな奴隷に歓喜している……!

 

その現場を見せて私達を脅そうとしているのでしょうか。

 

ひどい! ひどいよ人間さん!

 

 

「ここが全ての始まり……風呂場です」

 

「ッ」

 

 

浴室のドアを開ける背広。

 

まさか、お母さんと私が使った場所が虐待現場だったなんて!

 

血を水で流して証拠隠滅が出来るからでしょうか!?

 

そう思うと、あわあわ 楽しんでしまった罪悪感に襲われます。

 

ぐすっ。

ごめんなさい……知らなかったんです。

 

隠された凄惨な光景を想像して、私は思わず涙目に……。

 

 

「ここでは湯攻めが行われましたよ」

 

「猫が嫌う水! それを命令されて自ら濡れたのです!」

 

「どうです!? 残酷非道、なんて虐待!」

 

 

背広が楽しそうに声を上げます。

 

説明は普通の、浴室の使い方。

痛そうな単語は聞こえません。

 

 

「えと……猫耳族は濡れても平気な子が多いです」

 

「くくっ。 なら後でタップリ濡れてもらいますよぉ!」

 

「それもぬるま湯いっぱいの風呂桶に浸かってねぇ!」

 

「余計な事を言わなきゃ良かったと後悔しなさい!」

 

「私が10秒、ねっとり数えてあげますよぉ」

 

「それまで肩まで しっかり 浸かってもらいますッ!!」

 

 

何か偏見があるようです。

ですが、お陰で助かりそうです。

 

でも、まだ油断なりません。

 

 

「そういや燃料を入れ忘れてました」

 

「嫌でも、その小さな お口に詰め込むんですよッ!」

 

 

怯え、震える仲間。

互いに寄り添って、抱き合います。

 

だけど、たぶん、それって……。

 

 

「おらぁ! コストダウン、大量生産品のコンビニ弁当を喰らうが良いですッ!」

 

「ひゃっ!?」

 

 

声に、思わず悲鳴をあげる仲間。

振り返ると、いつの間にか お盆を持った人間さん。

 

 

「美味しい美味しい豆腐ハンバーグですよ」

 

「肉が少ない事に絶望するが良いです!」

 

 

目の前に置かれた、豆腐ハンバーグ弁当。

ホカホカで、美味しそうな匂いがして。

 

思わず子猫達は生唾を飲み込んでしまいました。

 

 

「さあ、食いやがるが良いですッ!」

 

「そして絶望しろぉ!」

 

 

弾かれた様に、子猫3人が蓋を開けて凄い勢いで喰いつきます。

 

本当に幸せそうに頬張る仲間を見て、なんだか幸せな気持ちになりました。

 

もうそのころには、虐待云々なんて考え吹っ飛んでしまっていて。

 

お母さん共々、笑顔を浮かべました。

 

 

(クク、風呂の件で逆らわない事を早速覚えましたか)

 

(覚えの良い、良い歯車じゃないですか)

 

「ちなみに私は目玉焼きバーガーでした!」

 

「お前ら歯車には一口もやりませんッ!」

 

「う、うん?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

飯を終え、次の地獄へ猫耳をつれていく。

 

クク、美味く無い飯に絶望したのか、表情が変わってきましたよぉ!

 

 

「ここは会議室。 世を悪に染める計画を練る場所です」

 

「悪……ッ!?」

 

 

私が設置した この部屋。

 

日に日に、話されるダーク★トークはアップしていますよぉ?

 

猫耳族を効率良く攫う為にマタタビを撒き散らすとか!

 

違う地域にいる犬耳族を餌で懐柔するとか!

 

裏でコッソリ雇ってる風俗店を片っ端から買い取って、獣人族の拠点に作り変えるとか!

 

それらを可能にする我が社の資金力とか!

 

我々の権力、悪で自己中な考えがよーくわかったですかねぇ!?

 

 

「わぁ」

 

 

ククク、あまりのヤバさに言葉を失ってきた様ですね。

 

最早、悪に堕ちる他に許しませんよぉ?

 

 

 

 …………。

 

 

「此処は便所です!」

 

「お前らは、全員雌ガキですねぇ」

 

「でも我が社は共同なんですよッ!」

 

「男が使うトイレを使うしかないです」

 

「どうです? 嫌でしょう?」

 

 

クックッとイヤラしく笑いながら、猫耳に言い放ちます。

 

便座を上がっている様を見て、イヤイヤと泣き噦るサマが脳裏に浮かびますねぇ!

 

全く。 贅沢なんですよぉ!

 

 

「綺麗なトイレですね」

 

「あぁ? 当たり前でしょうが」

 

 

ここで抵抗を試みる猫耳。

 

はっ。 綺麗なトイレですって?

 

当たり前でしょうが!

トイレ当番がちゃんと仕事してるんですよ。

 

 

「汚すんじゃねーですよ!」

 

「は、はい。 気を付けます」

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「ま、他にもありますが、最低限、トイレとか教えましたし。 どうです猫耳ども。 怖かったですか?」

 

「はい♪ とっても怖い会社でした」

 

 

でしょォ~?

 

来たばっかの猫耳には、ちょいと刺激が強すぎたかもですね。

 

ですが時間をかけていけば、じきに慣れるでしょう。

 

虐待される狂気の日常に!

 

 

「あの……これからも私達を よろしくお願いします」

 

「ええ。 じっくり甚振って、たっぷり虐待してやりますよぉ」

 

 

新たな犠牲者が、ウチに加わっていく!

 

して、恐怖に支配され、怯える日々を送る!

 

歓迎しよう、猫耳族の雌ガキども!

その歳で社畜道を行くが良い!

 

改めて。

 

ようこそ虐待主義の我が社へ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

私や仲間が会社に来てから数日。

それで分かったことですが、この会社は猫耳族を虐めたりしません。

 

人間さんは不思議な人でした。

虐待と言いつつも、とっても優しい、いい人だったのです。

 

私がここに来て、確かに言えることがあります……。

 

此処に就職できて、本当に良かった、と。

 




働いてる描写がない……。

更新未定。


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不自由の中の自由

不定期更新。

驚愕の お気に入り数やUA、まさかのランキング入り……!?
皆さまの愛、ありがとうございます!

一方で他の方々のを参考にしている手前、罪悪感や緊張が酷い事に。
展開も深く考えておらず……。
だれかたすけて(殴)。

一部書き直し。


不自由の中の自由

 

猫耳どもめ。

拉致を躊躇するかと思いましたが、直ぐに終わらせてきやがりました。

 

新人の癖に生意気なんですよッ!!

 

 

「ですが! 早く終われば早く休めるワケじゃねーです!」

 

「早く終われば早く次の仕事を与えられるんですよ。 残念でしたね!」

 

 

洗脳された歯車共が、私の声に猫耳を傾けます。

 

 

「我が社における猫耳どもの労働時間を伝えます。 そして絶望しろぉ!」

 

 

一般社畜に聞こえるように、高らかに叫びます。

 

くくっ。 公開叱咤の部類、悪の極み!

 

 

日々のダーク★ワークは、過酷な道です。

 

これから楽出来る事は一切なし!

 

そういうわけで、説明をしたら、

 

 

「……あの、質問しても いいですか」

 

「はいぃ?」

 

 

母猫が、発言してきやがりました。

 

どうせ文句が来る事は想定済み。

 

社畜の運命に歯向かう輩は、珍しくないですからね。

 

素人から玄人まで、言う奴は言いやがります。

 

生意気です。

 

ですが私は寛容なので。

聞かせてもらいましょう。

 

 

「終業後……17時以降の空白は、私たちは どうすれば……」

 

「……はい?」

 

 

またナニ言ってやがるんですかね?

 

てっきり黒い内容に文句を言ってくると思っていたんですがねぇ。

 

別命あるまで仲間を勧誘。

午前8時までに この部屋に集合。

そして基本17時までに仕事終了。

以降に仕事をする際は報告して許可を得る。

 

口頭の簡易説明でこの過密さ。

だというのに、内容ではなく以降の話をしてくるとはね……。

 

 

「勝手にすれば良いです」

 

「はい?」

 

 

意味不明だと首を傾げるんじゃねーです。

 

母猫だけじゃなく、娘含む猫耳どもはハテナマークを浮かばせてます。

 

ははぁ、コレはアレですね。

 

畜生どもは、今までのノーワークライフに慣れ切ってんです。

 

自由の意味が分からないのです。

 

ふざけるんじゃねーですよッ!

 

 

「しょうがない畜生どもですね。 教えてやります」

 

 

私は再び口を開きました。

 

悪の所業、堕落の数々を。

 

食事、買い物、洗濯、料理、宿泊室の清掃といった家事全般。

他にはゲームに漫画。 街に遊びに行くとか。

 

なんなら恋とか。

 

畜生がやってこなかった事を書き込んでいく。

 

畜生は驚きの余り言葉もねえようです。

 

こういった娯楽を制限させられて……しとけば良かったと後悔しても、もう遅い!

 

それを見た猫耳、またも絶望!

 

見ていて良いッ! 良いですよッ!!

 

これだから虐待は止められません!

 

 

「つまり、好きに使える時間なんです」

 

 

呆然としている猫耳達。

 

これから束縛された生活を感じて、改めて絶望しているようですね。

 

 

「……ッ、本当ですか?」

 

「はぁい?」

 

 

出た。 社畜技。

 

なにが、本当ですか、だ。

 

上司に歯向かう言葉選びですねぇ!?

 

まあ。 精々の抵抗は こんなものですかね。

 

己の無力を感じながら、絶望の漆黒空間へ堕ちて行くと良いですよッッ!!

 

 

「ふっふっふ〜。 許可しますよ、嫌なら路地裏暮らしに戻るんですねッ!」

 

「ッ!」

 

 

私のダークネス★スマイルを見て、母猫は手で口元を抑えて俯きます。

 

いいねぇ、この感覚!

 

正しく虐★待!

 

それが今、行われてる現場の悪の空気ッ!

 

最高ですねぇ!

 

 

「さあ、早速午後の仕事と行きましょう、社畜の皆さん」

 

 

一般社畜の皆さんは昼食も終わったことです、仕事に戻って貰います。

 

私の号令に、社畜は各々動く。

 

午後の気怠さと睡魔に襲われる苦しみ。

早く終わって欲しい時ほど感じるトロい時計の針。

 

聞き飽きた打ち鳴らすキーボード音は地獄のようですかねぇ!?

 

 

「あの、猫耳の私達は」

 

「ああ、今日の午後は、とりあえず適当に着席しなさい」

 

 

こいつら猫耳は、知識が足りてねぇです。

このままでは、出来る事に制限があり過ぎです!

 

完璧な歯車にする為に、教育しますよ!

 

自分で考え、私と社の為に回る歯車。

それこそ本来の社畜の形。

 

私はホワイトボードに向かい、ペンを持ちます。

 

そして一般社畜がスタンバったノートと鉛筆を、畜生どもに配り、こう言い放ちます。

 

 

「さぁて、大嫌いな勉強の時間ですよッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背広に眩しい笑顔を向けられた時、涙が浮かびました。

 

人間は嫌い。 だけどこの人間は……。

 

夜のお店で、嫌悪感を人間相手の時に少しでも出してしまえば、経営者に散々殴られ、蹴られて耐えて来た私。

 

その同じ人間に、だけど違う背広の優しさに心を温められて、思わず泣いてしまったのです。

 

 

「お母さん、よかったね」

 

「……ええ」

 

 

今日ほど、生きてきて良かったと、思った日は……きっとない。

 




謎の緊張が。 ががが。

この先どうなるのか……。


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社会を更に腐らす。

不定期更新。

ガバガバ裁判。 こうはならんやろ! これ違うやろ! 等がありますが、お兄さん許して(殴)。


「猫耳族が減っている要因。 それは貴社による拉致です」

 

「拉致ぃ? 彼女らは我が社に進んで就職した歯車ですよ」

 

 

場所は どこかの裁判所。

色々あって、ここに立っているワケですが。

 

観覧席には大勢の社畜。

 

どいつもこいつも、ニヤニヤして気持ち悪いです。

 

大方、他者を攻撃して己のツマラナイ人生の憂さ晴らしで来ているのでしょう。

 

いやぁ。 悪が広まってる感があって良いですね。

 

ただし。 それらは民意の濁流でしかない。

 

不特定多数で、己が攻撃される心配がない正義ゴッコ。

 

或いは万有の神気取りで傍観しているのでしょう。

 

ですが堂々と主張出来ない悪は落第点ですよ。

 

そして対する有象無象を味方に背負った気になっている英雄気取りで語る生ゴミと腐臭漂う世の中。

 

それが正義としている社会。

 

くくっ。

世間の思う正義に、私は悪の一員として歯向いますよ。

 

対して男は喚きます。

 

 

「今の聞きましたか皆さん! 歯車、実に差別的な言葉!」

 

「労働環境改善の時代、この方のような『悪魔』が居ては誰も幸せにならない!」

 

 

耳障りな言葉を叫んだかと思えば、今度は悲痛な面持ちを裁判長や観覧席の愚民に見せます。

 

他者に考えを委ねて楽している愚民は、いつのまにか引き付けられていってます。

 

 

「そんな悲劇を終わらすには、企業ひとつひとつの地道な努力が必要です!」

 

「貴方のような人間や会社があっては、いつまでも世の中は不健全です!」

 

「特にあなたと、会社はね!」

 

「大人だけでなく子どもまで拉致?」

 

「犯罪というんですよ、自覚ありますか?」

 

 

男は顔をあげ、笑う。

自信と光に満ち溢れた笑顔で。

そして、頭に人差し指でコンコン叩いて見せてきます。

 

安い挑発ですねぇ。

でもね。

 

光あるところ闇があるんですよ。

 

 

「不健全な世の中、ですか。 確かにその通り!」

 

「多くの獣人族が、働かずに路地裏生活」

 

「挙句に暴力を振るった記録もあります」

 

「それが当たり前の世の中は、それはそれは不健全でしょう」

 

 

すると、男は直ぐに手を上げます。

裁判長は、話途中の私を手で黙らせ、男に話させます。

 

全く。 権力の差とは面倒ですねぇ!

 

 

「そのような記録は ありませんが?」

 

「この場での勝手は止めて頂きたい」

 

「ところで、就職させた『けもの』は全員メスだそうで」

 

「彼らを連れ込んでナニしてるんでしょうね」

 

 

過激な事を言っているように思えます。

 

しかし傍観者の多くは、頷きます。

 

愚かにも極正論を言っているように感じているのです。

 

自分達の手は汚れていない。

悪いのは実行している全部私や私達の会社だとね。

 

加害者だと絶対に認めない。

群だから。 善良なる市民だから。

 

風俗に行って獣人族とパコった事があっても、それは合法だからへーきへーき。

 

悪いのは雇った側。 攫った側。

客は神。 裁かれない。

 

裁くのは、逆に此方側だと。

全員で寄ってたかって袋にする!

それが民意。 大正義。

 

それが世の中。 社会!

 

そう考えているのです。

 

まぁ悪の結社なので。

褒め言葉として受け取りましょう。

 

 

「アナタのような連中はね、見た目が可愛いから、そんな事を言ってるのですよ」

 

「人の皮を被った『バケモノ』に、まんまと騙されてるんです」

 

「もし猫耳の姿が醜かったら?」

 

「可愛くない姿だったら?」

 

「はたしてアナタや会社は今の様に働かせよう、拉致しようと考えたのですかね」

 

 

 両手を広げて莞爾として笑う男。

 悪魔的ですねぇ。

 

はたして皮を被ってるのは、どちらでしょうかね。

 

 

「いい加減やめにしましょうよ。 そういう犯罪は」

 

「ナニして満足している馬鹿会社を消しましょう皆さん」

 

「人間を働かせましょう、獣人族は履歴書も用意出来ない、社会性が低いから のけもの にしましょう」

 

「大丈夫ですよ、AIや自動化が進んでいる世の中」

 

「人手不足はその内に解消されます」

 

 

開発者でも無いくせに、他者に頼る発言。 非現実的ですねぇ。

 

差別的と言いますが、この男の方が余程差別的だと感じますよ。

 

そんは男は、まだ言葉を口から垂れ流します。

 

 

「それと獣人は多くの種を絶滅に追いやった! 多くの命を奪った!」

 

「まさしく悪魔! 普通なら存在は許されない!」

 

「騙されてはなりませんよ傍観者の皆様! 獣人は人間とは違います!」

 

 

お熱な言葉ですねぇ。

だけど周りの神気取りの生ゴミ共は、すっかり流されてますよ。

 

騙されてるのはどっちですかね。

 

これだから愚民は……。

 

 

「しかも幾らでも出て来る!」

 

「寧ろ この機に殺処分! 皆さまの家族、友人、恋人、子ども達の未来の為に!」

 

 

あらら。

表の熱意とは別に、男の瞳はドス黒い光に。

 

彼なりの悪なのでしょうかね。

 

ですが認める事は出来ない。

 

だから私は楯突こうではありませんか。

まあ、根回しはしていますが、言いたい事を言わねばなりませんね。

 

 

「くくっ。 暴力云々もですが、此方にちゃんと資料を用意しました。 皆さんご覧下さい」

 

 

そう言って、プロジェクターを起動。

 

映るは、白昼堂々、大勢の背広に、猫耳族の子猫が袋にされている動画。

 

その後は警察官が猫耳族の尻尾を掴んで引き摺る映像。

 

次は路地裏内の映像に変わり、ボロボロの服を着た猫耳族が、ゴミ箱を漁っている映像。

 

他にも、猫耳の親子が子猫を庇って、代わりに蹴られ……隙を見て子猫を掬い上げて路地裏に逃げる映像。

 

そして…………それを見て、指差して大笑いする大勢の人、人、人……。

 

 

「な、なんですかコレは」

 

 

くくっ。 男が狼狽えるのは面白いですね。

 

 

「こんなのは捏造です。 今の時代、そういうのは頻繁にありますからね」

 

「はいぃ? 何の根拠があって捏造としているんですかね」

 

「これは路地裏に仕掛けられていた防犯カメラの映像です」

 

「カメラなんて警察が証拠隠滅したと思ってましたか?」

 

「残念! 我が社の防犯カメラが残ってましてね!」

 

「な、違法撮影じゃないのか!?」

 

「いえいえ、これ、我が社の建物に取り付いてるカメラですからね」

 

「まあ? ちょっと普通のカメラではなくゴミや汚れ、壁に同化するようにしてましてね」

 

「ほら〜? 見た目を気にする輩や偏見を持つ人間がいますからね」

 

 

記録を公僕が光の下で消すのは目に見えてます。

 

我が社で、色々対策はしてましたよ。

 

もちろん、こんなんで判決が有利になる訳じゃありません。

 

この時代、世の中、金が大事ですよね?

 

 

「ふん。 どうせ演技でしょう」

 

「裁判長。 これは証拠ではありません」

 

 

妙な自信を持つ男。

そりゃ、社会的地位が低い猫耳族を勝訴にする訳ない、そんな偏見。

 

馬鹿ですねぇ。

 

だから、根回しはしてますよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「被告は無罪!」

 

「「「な、何でだああああ!?」」」

 

 

ざわつく裁判所内。

いやー、『当たり前の判決』なのに!

 

皆の予想外にする!

 

悪って楽しいですね!!

 

 

「何の問題ですか?」

 

「問題しかない! な、何故だ! 何故猫耳族なんかに! 負けた? 俺は認めんぞ!」

 

 

愚かだ。 実に愚かで、醜い。

 

ですがそれ故に悪を広げたい。

 

 

「はっはっはー! 民意に応えられず、残念でしたね」

 

「お前……何をしたんだ!?」

 

「いやー? 証拠隠滅をされないように、金をばら撒いただけです」

 

「ホイホイ納得してくれた方々が多くてですね、助かりました」

 

「ふざけんな! くそっ! 腐ってやがる!」

 

「スンマセ〜ン、腐らせちゃって! 今まで気が付かなかったのですか〜?」

 

頭に人差し指をコンコン当てて、挑発します。

 

良い! その悔しそうな顔!

 

もっと見せて❤︎

 

 

「俺は、認めないからな!」

 

「事実は認めた方が良いですよ。 これから そういう『腐った世の中』、悪の世になるのですから!」

 

 

そう言って、互いに別れます。

いやー、歯車を大量輸入すると綻びが出るのは百も承知でしたからね。

 

対策は、他にもしてましたよ。

 

さて。 無駄な時間……いえ。 悪を少し広める事に成功したワケですが。

 

我が社は引き続き、悪を広めねばなりません。

 

さあ、今日も忙しいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一件後。

裁判官やら一部の官僚などが異動になったのですが、私の知るところではありません。

 

自己責任★

 

それと、良いニュースです。

 

猫耳族や他の獣人族が、表の会社で少しずつ雇われ始めているとのこと。

 

悪が広がったのです!

 

いやぁ、労力に見合った結果は出ましたね。

一度堰を切れば……もう止まりません。

 

民意の濁流。

それこそ、悪魔。

 

その恐ろしさ、今度は見下していた人間を飲み込んでいくことでしょう。

 

 

「クックックッ!」

 

「どんどん腐るが良いわッ!!」

 

 

愉快ですねぇ。

そして白昼堂々、私も虐待出来るというものです。

 




悪が ひろがリング。


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人の歯車

更新。
この度は、不快な想いをさせるなどして、すいません。
今のところ、運営等から この作品を改正、消しなさい、等は受けていません。 それが無ければ大丈夫かと判断します。 もしあったら、悲しいですが仕方ないと割り切りたいです。
迷惑を掛けながらも、友人や読者の皆様に励まされました。 ありがとうございます。 心が折れそうでしたが、話を書いていきたいと思います。


悪で悪が広がった。

 

それは我が社と私が望んだ、ひとつの世界です!

 

実に面白い話だと思いませんか?

 

今や人手不足は、路地裏暮らしの獣人族拉致という悪に手を染めて解消するようになりました。

 

忌避していた事に手を染める社会!

 

書類なんていりません!

 

そして のんびり暮らしていた獣人族は、突如として人間に攫われて働かせる!

 

そして虐待されていく!

 

 

「最高じゃないですかぁ!?」

 

 

歩く一般社畜にギョッとされました。

くくっ。 私の悪意に怯えるが良いです。

 

でもね、どう思おうと堰を切った世界に歯止めは効きませんよぉ!

 

 

「御覧なさい! 今や犬のお巡りさんに役人、兵隊さん!」

 

「正に国家の犬ゥ!」

 

 

指を指して笑います。

 

交番には、犬耳族の美人婦警が起立。

おしりから生えるフサフサ尻尾がチャーミング!

 

テレビには、地雷探知犬のような役割で兵隊にされた犬耳族が映ります。

 

言葉が通じるので、訓練の手間が少なくて済むからだそうです。

 

ならば歌になぞって、猫は迷子、コタツに丸くなるって感じですかぁ?

 

その瞬間、拉致されて働かされる地獄が待ってますがねぇ!

 

 

「最高じゃないですか!」

 

「休ませない悪の世の中、虐待社会になってきましたね」

 

 

さあ、この調子で頑張っていきましょう社畜の皆さん。

 

この辺には最早、浮浪者な猫耳族や犬耳族はいません。

 

虐待が蔓延っている証拠!

 

ああ、そうそう。

拉致が少し遅れた犬耳族はともかく、猫耳族はウチで たくさん雇いましてね。

 

そのありあまる労力は派遣として、いろんな方面へ向かわせてます。

それは満遍なく……ねぇ?

 

そして監視兼、金稼ぎです。

ナニかあれば その会社に問いただし、批難出来ますよ。

 

そして、この辺一帯の獣人族及び労働力は我が社の社員……つまり、この辺一帯を我が社が支配していると言っても過言ではありません。

 

 

「しかし、完璧とは言えません」

 

「夜のお店とやらが、まだ潰し終えていません」

 

「下品な趣向でウチの社員が攫われましたからね」

 

 

要請書類の記載では、飲食店となってますが、これ、嘘だと後で気付きました。

 

しかもそこに、よりによって第1号歯車の猫耳親子が。

 

拉致に拉致を重ねないで欲しいですねっ!

 

私は歩みを進めます。

 

足は人気の無い闇の世界へ。

 

ふふっ。 闇を支配してこそ、真の虐待者ってとこですかねぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやっ! やめて!」

 

 

私とお母さんは、会社の命令で とある煌びやかな お店に行きました。

 

すると、突然に手首を縛られて奥へ奥へと攫われてしまったのです。

 

何が起きたか分かりませんが、攫われたのだと、何とか頭で理解しました。

 

 

「やめなさい! 我が子に、ショコラに手を出さないで!」

 

「ほう。 ショコラちゃんっていうのかい、可愛い名前だねえ」

 

「やめて! 近付かないで!」

 

 

イヤラシイ笑みを浮かべて、近寄って来る大柄の男。

 

近寄ると くいっ、とアゴを上げてきます。

 

触られるだけで、ゾゾゾと悪感が走ります。

 

 

「やめなさいと言ってるでしょう!」

 

「母猫さんよ、別に取って食おうって訳じゃないぜ……ただ働かすのには従順になって貰わなきゃな?」

 

 

そう言って、アゴを乱暴に撫で回してきて───。

 

 

「ふにゃあああ♡」

 

「ショコラッ!」

 

 

気持ち良くしてきました。

 

アゴを撫でるとか、卑怯です。

そこは猫耳族の弱点なのです。

 

 

「よしよし……もっと気持ち良くなりたいかい?」

 

 

気持ち良く……?

もっとなれるの?

 

 

「駄目よショコラ! 気を許さないで!」

 

「母猫さんは、少し黙ってようか」

 

「むぐっ!?」

 

 

脇でお母さんが、口元を布で縛られてしまいました。

 

それをボンヤリと見ます。

 

酷い事をされている筈なのに、気持ち良さの中、ボンヤリと見てしまいます。

 

 

「大丈夫。 痛いのは一瞬」

 

「後は気持ち良くなれるだけ」

 

「それで、お金が貰える。 悪い話じゃないだろ?」

 

 

どんなお仕事か分かりませんが、こうしてアゴを撫で撫でされていると、もっと もっとと求めてしまいます。

 

 

「じゃあ、この紙にサインして───」

 

「ちょっと待ちなぁ、ですよ!!」

 

 

そんな時でした。

 

あの背広の人間さんがやってきたのは。

 

 

「誰の許可を得て虐待をしてるんですかねぇ?」

 

 

目の前を見ます。

 

そこには、後光を受けてニヤリと笑う背広の人間さん。

 

 

「ソレらは我が社の歯車です、返して貰いますよッ!」

 

 

嗚呼、と。

 

この人は良い人間さんなんだなって思えました。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

全く。 油断も隙も無い世の中でもあります。

 

あの後、歯車親子を助け出して、あの裏の店は土地ごと我が社が買い取りましたよ。

 

ああいう、こそこそとした悪は退治されても仕方ありませんよねぇ?

 

もっと堂々としていれば、まだ救いがあるというものです。

 

 

「あの」

 

 

共に歩く、子猫が話しかけてきます。

 

 

「なんです? 一緒に会社まで歩くのが、そんなに嫌です?」

 

 

くくっ。 私と共に歩くのが嫌だとしても、来てもらいますよ。

 

 

「いえ、その」

 

「モノはハッキリ言うんですよ」

 

「えと! 帰ったら、アゴ撫で撫でしてくれますか?」

 

 

はぁい?

 

また変な要求をしてきやがりますねぇ。

 

先程の恐ろしい虐待プレイが、物足りないのでしょうかね!?

 

 

「良いでしょう! 帰ったら母親共々、アゴを撫で回しの刑に処しますよぉ!」

 

「えへへ」

 

 

親子揃って、赤くしてます。

少し、涙も浮かべてます。

 

 

「あの、助けて下さり、ありがとうございます」

 

 

母親が言います。

 

ナニを思ってるんですかね!?

 

我が社の歯車を他社が勝手に引き抜こうとしたら、そりゃ取り返しますよ?

 

 

「我が社も良く調べなかったのが悪かったですが」

 

「次からは、危ないと思ったら私に連絡することですよ?」

 

「はい。 気を付けます」

 

 

くくっ! 会社の所為で酷い目にあったと怒り心頭ってとこですー?

 

ですが甘やかしません!

 

撫で撫でされて、心変わりしそうな猫にはオシオキですよ!

 

この件で虐待です!

 

 

「帰ったら、気がすむまで撫で撫でしてあげますっ!」

 

「泣いても決定ですから!」

 

「「はい♡」」

 




続くか未定です。


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犬耳を お風呂に。 そして……。

猫耳じゃなくて、とある犬耳の話。
ちょっと無理矢理感あるかも。 微エロかも。

更新や今後が心配で、不安定ですが、書いていけたらなと思います。


 

ある日の裁判。

 

それを機に、世界は転覆していく。

 

猫耳族を拉致していた会社を、公僕が訴えたのが全ての始まり。

 

私は路地裏に流れてきた新聞を読んで、初めて知った。

 

あの日ほど、文字の勉強が無駄じゃなかったと思えた日はない。

 

 

《猫耳族、無罪!》

 

《前代未聞! 人間敗北!》

 

《拉致を承認か!? 問われる道徳》

 

《獣人族を社会に入れて良いのか!?》

 

 

その言葉が目に飛び込んだ時、見間違いかと何度も見た。

 

そして間違いじゃないのを知ると、不思議と涙が溢れて、止まらなくて。

 

私は仲間の群れに戻ると、何度も吠えた。

 

 

「やった! やったよ! 獣人族は認められたんだ!」

 

 

仲間は一瞬、犬耳を尖らし、尻尾を上げたけど直ぐに下ろして、

 

 

「でも猫耳だろ? 犬耳じゃない」

 

 

気持ちを いつも通り暗くしてしまった。

 

 

「で、でも」

 

「ナニを期待するのよ」

 

「人間同士の裁判だったんでしょ?」

 

「獣人族が直接戦ったワケじゃない。 人間同士の問題で終わらせられるよ」

 

 

そう言って、ソッポを向いてしまう。

 

確かに新聞の記事では、あくまで人間同士の裁判だったと書いてある。

 

やはり、期待してはいけないのかも知れない。

 

そう思うと、急に熱が冷めてしまった。

 

 

「…………ごめん」

 

 

そうして、私まで耳と尻尾を下げて暗くなる。

 

何度も人間さんに辛い目に遭わされたというのに、ナニを今更に期待しようか。

 

この時は、そう、刹那の期待を捨てた。

 

だけど、少ししてからだった。

 

犬耳族も喜んで良いんだって感じられたのは。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「犬耳族は、この辺ですかねぇ!?」

 

 

私は、わざわざ隣町まで来ています。

犬耳族を我が町に拉致って働かす為です。

 

モタモタしてると、他社に歯車を奪われてしまいます。

 

アイツらも、大抵は路地裏にいるもんです。

猫耳と同じくゴミ箱に悪戯。

 

 

「暇なら我が社に来てもらいますよぉ!」

 

 

咆哮しつつ手頃な路地裏へ。

 

薄暗い中、ガサガサと音が聞こえます。

 

それで目の前を見ますと、お尻のフサフサ尻尾を此方に フリフリしながら、ゴミ箱に顔を突っ込む犬耳族が。

頭隠して尻隠さずってとこですかぁ!?

 

隙だらけなんですよッ!!

 

 

「おらぁ! 悪い子はオシオキですっ!」

 

「キャウンッ!?」

 

 

首根っこの、着ているボロ布を掴み上げます。

 

すると、同じようにジタバタする犬耳族。

ふむ。 猫耳族よりパワーがありますねぇ。

 

 

「ですがぁ! そんなんで、振りほどけませんよ!」

 

 

やはりガリガリの貧相な身体。

私の拘束を振りほどけません。

 

残念ですね!

所詮、畜生は人間の下僕になるしかないんですよッ!

 

 

「酷い事する気でしょ! 離してよ!」

 

「嫌です。 貴女には私の元で働いて貰います」

 

 

すると、振り向いてサァ……と青ざめていく犬耳族。

 

くくっ。 良いですねぇ、その絶望顔。

 

ですが、更なる深みに堕ちて貰います!

 

 

「アソコで働くんですよ?」

 

 

そう言って、買い取った お城を模した建物を指さします。

 

煌びやかで、しかし闇の雰囲気。

魔王の城の様に感じられる、あの禍々しい建物。

 

犬耳、更に青くして 嫌がります!

 

 

「いやぁ! もう、もう痛いのは嫌ぁ! 薬もいらない! 気持ち良いのも要らないっ!」

 

「泣き叫んでも、貴女の運命は決まってるんですよ?」

 

 

くくっ。 この嫌がりよう。 闇の経験者でしたか。

 

なら話は早いです。 余計な手間要らずで、働かせられますよ!

 

 

「はっはっはー! これから毎日、苦しむが良いです!」

 

「いやああああああッ!」

 

 

路地裏に響くワンコの悲鳴。

私は暗黒微笑のコクを深めながら、魔王城へ連れ込みます。

 

さあ! 地獄の宴が始まりますよぉ!?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

私は唯一の服を剥かれて、お城の建物の中にある風呂場に連れられてしまった。

 

手足は縛られてない。

視界も塞がれてない。

 

だけど、怖くて……とても怖くて、身動き出来ないよ……。

 

 

「くくっ! 舐めるような視線、ゾクゾクするでしょぉ?」

 

 

背広は、風呂場でも背広。

私の汚い身体をジロジロ見てくる。

 

きっと、そういう《ぷれい》なんだ!

 

この後、昔みたいに痛い事をされるんだ!

 

 

「ちっ! 汚いし、臭いますねぇ」

 

「これは タップリ薬品を染み込ませないとねぇ!?」

 

「ヒィッ!?」

 

 

薬品という言葉に、震えてしまう。

 

私は知ってる。

身体が熱くなって、息苦しくなるヤツだ!

 

嫌! それだけでも苦しいのに!

 

逃げたいのに、身体が萎縮して動かない。

 

足がガタガタしちゃって、逃げられない。

 

 

「逃げられるなら、逃げても良いんですよぉ? 出来るものならねぇッ!」

 

「ッ!」

 

 

私が逃げられないのを知って、高圧的な言葉を投げてくる人間さん。

 

 

「今日はウンと強力なのを持ってきました」

 

「安心して、ウンと気持ち良くなってしまえば良いですよぉ!?」

 

「あ……あぁ」

 

 

涙がボロボロ零れ落ちた。

 

イヤ……そんなの、苦しいだけ。

意識が遠のいて、身体中が痛くなって。

 

かつて一緒にいた仲間は、それで還らぬ子になっちゃったんだ。

 

私は、運良く……いや、悪く生き延びただけ。

 

 

「ひぐっ……ぐすっ」

 

 

きっとバチが当たったんだ!

 

あの時に死ななかったから、こんな目に遭わされているんだ!

 

 

「ふっふっふっ〜。 さあ、薬品を染み込ませて やりますよッ!」

 

 

人間さんは そう言って、頭から お湯を無遠慮に被せて、手を頭にのせ……。

 

 

「ッ!?」

 

 

ワシワシと優しい手つき で薬品を髪の毛に染み込ませてきた!

 

犬耳の裏側から先まで、丁寧に擦り、泡立てる。

 

良い香りが ふんわりと漂ってきて、自然と緊張がほぐれていく。

 

 

「くくっ。 どうですか、良い様にされて苦しいでしょお〜?」

 

 

気を遣ってか、苦しくないか聞いてくる人間さん。

 

純粋に気持ち良い。

苦しくない。

 

あれ……ひょっとして、良い人間さんなの?

 

 

「だ、大丈夫」

 

「そうですか。 なら、次の辱めも耐えられますよねぇ!?」

 

 

そう言うと、薬品が染み込んだのを確認してかザパァとお湯を再び掛けてくる人間さん。

 

付着した余分な薬品を付いていないのを確認して、次には、人間さんはスポンジを見せてきた。

 

 

「くくっ。 次は、これで身体中を擦られる屈辱と恐怖を味わって貰いますよ?」

 

 

そういって、今度はスポンジに別の薬品を染み込ませてモミモミし……泡立っていくサマを見せてきた。

 

またも良い香りが漂ってくる。

 

 

「上から下へ、泡だらけになるが良いです!」

 

 

人間さんは、首回りや、細い腕を丁寧に滑らかに洗っていく。

 

そのまま滑る様に、胸元からおへそへ滑り降りて、お腹を優しく撫で回し。

 

その流れで下半身も満遍なく洗っていく。

 

あっという間に泡だらけ。

でも、辛くない。

苦しくない。

 

逆に気持ち良い……。

 

 

「どうです! 恥ずかしいでしょう!?」

 

 

細い足まで到達した頃に、人間さんに声をかけられたけど、ウットリしちゃって返事を出来なかった。

 

 

(くくっ。 恥ずかし過ぎて返事もできなくなりましたか!)

 

 

考える間もなく、お湯を頭からぶっかけられて薬品を落とされていく。

 

あれ……終わっちゃうの?

 

名残惜しさすら感じる手つきに、ねだる様に人間さんの顔を見る。

 

もう、恐怖なんて なかった。

 

 

「そんな顔しても、このサイクルは毎日続きますよぉ〜?」

 

「この建物を改装し、派遣会社の支社ビルに改造!」

 

「お前は、そこの派遣社員として働くのです!」

 

「衣食住を管理されてね!」

 

 

何を言ってるのか。

理解する前に、今度はタオルで乱暴にもみくちゃにされた。

 

表面の水分を吸われたと思ったら、今度は《てっぽう》みたいな道具を突きつけられ、熱風をかけられた。

 

一瞬、ビックリしたけれど。

 

その 温かさが心地良くて、人間さんに身を委ねてしまう。

 

 

「もうグッタリですかぁ?」

 

「これが毎日続きますよ、覚悟して下さい!」

 

「まい、にち?」

 

 

ああ……毎日されちゃうんだ。

ちょっと恥ずかしいけど気持ち良いアワアワ……。

 

 

「さあ! もう乾いたから充分でしょう!」

 

「次は服を着るんですよ!」

 

 

そういうと、グッタリした私をお座りさせて、上等な下着やら背広を着させてきた。

 

ボンヤリと私はソレを眺める。

ああ、お着替えさせられちゃってる……。

 

そんな……高価なモノを着させてくれるなんて……どう恩返しすれば……。

 

 

「くくっ! 着せ替えられて恥辱でしょう!?」

 

「しかも知らない人間がチョイスした下着を履かせられる!」

 

「そして無理矢理に企業戦士のユニフォームを着せられる!」

 

「なんて酷い! 私は その手の天才かも知れませんね!」

 

高らかに響く、背広の嬉しそうな声。

 

それが遠くなって。

私は闇の中へと堕ちていった。

 

 

……覚えているのは、この辺まで。

 

 

 

 

 

そうして気が付いた時には。

 

私は背広を着て、決められた事務所の席に座っていた。

 

ハッとして周りを見ると。

 

私と同じ様に背広を着て、働いている仲間の姿が。

 

あれれ。

 

いつの間に……社会の歯車に?

 

 

「おはよう社畜の皆さん!」

 

 

やって来る、あの時の人間さん。

 

挨拶をされたから、反射で挨拶をする。

それは皆も同じみたいで。

 

だけどイヤイヤじゃなくて。

みんな、尻尾をフリフリして喜んでる。

 

私の尻尾も、無意識にフリフリしちゃった。

 

 

「おはようございます! ご主人さま!」

 

 

そして、自然と口に出る《ご主人さま》。

 

え!?

 

ご主人さま!?

 

 

「ご主人じゃねーです! 何回言えば、お前らは学習するんですか!」

 

 

そして反論する人間さん。

 

反射でコレも謝ってしまう。

 

 

「すいません、ご主人さま」

 

 

あれ。 勝手に口に出ちゃう。

その度に喜びを感じちゃう。

 

 

「ワザとですか? そんな子達は お風呂の刑ですよ!?」

 

「「「はい、ご主人さま♡」」」

 

 

自分って ちょろいな、と思った。

 

そして無意識に行動や口に出ちゃうくらいには、私たちは今、幸せ者なんだとも思った。

 




気が付いたら、社畜になって従順になっている恐怖。


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好奇心、猫をも……?

不定期更新。

虐待背広の性別って……?


 

背広の人間さんには、色々と お世話になっています。

 

衣食住に お仕事。

少しづつ、世間に認められて、存在が許されて。

 

こんな日が来るなんて、夢にも思ってませんでした。

 

それも私だけじゃなくて、獣人族全体。 背広の人間さんの活躍で、私たちは明るい居場所を得たのです。

 

とても。 とても嬉しい事です。

 

だけど、些細ながら疑問に思う事があります。

 

 

「人間さんは、男の子?」

 

 

それは、恩人の性別が分からない事です。

 

中性的な顔や髪型、声に体格なので分かりません。

 

お母さんも、仲間も首を傾げます。

 

 

「分からないわ。 男かなと思ってはいるけれど」

 

 

そう言う お母さん。

 

トイレの場所を教えてくれた時、言い方や便座が上がっていたから、やっぱり そうなのかも知れません。

 

 

「トイレから出た後も、便座が上がってるから、たぶん 男」

 

「でも、性格的にワザとかも」

 

「かなぁ」

 

 

心身共に余裕が出てきたこの頃。

この疑問は広がり、仲間内でも、ヒソヒソと話され、話題になりました。

 

 

「確かめてみましょう」

 

 

そして。 とうとう好奇心に負けた私たち獣人族は、背広に対して計画を立てました。

 

それは…………。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「温泉旅行です?」

 

 

ある日の終業後。

獣人族がゾロゾロと私の元へ やってきて、旅行に行きたい等と ほざきやがりました。

 

 

「はい。 改めて社員の結束を、と」

 

 

ニコニコ笑顔の猫耳と犬耳。

ゴロゴロ喉を鳴らすヤツ、犬尻尾をフリフリするヤツ。

 

世間共々、落ち着いて来た我が社ですが、何でまた騒ぐような事を……。

 

 

「なるほど」

 

 

ははぁ。 分かりましたよ。

 

コイツら、仕事をサボりたいから言っているんですね。

 

それを畜生らしく群れて威圧的に言う事で、上司に歯向かっているんです。

 

生意気なんですよッ!

 

 

「良いでしょう。 ですが平日は駄目です、今度の日曜日で どうです?」

 

 

先ず貴重な休日に決行とします。 雨の日でも やりますよ。

 

平日に行って仕事が潰れると考えていた猫耳

ども、残念でしたねぇ!

 

 

「はい。 お願いします」

 

「ほぅ」

 

 

するとアッサリ妥協してきやがりました。

歯車の癖に見上げた反抗心です。

 

ナニを企んでいるかは分かりませんが……。

 

やっぱ生意気なんですよッ!!

 

 

「旅費は皆の給料から ちょいちょい引いて集めますよ」

 

「構いません」

 

「タオルとか着替えとか歯ブラシとかは、全部用意してくるんですよ」

 

「大丈夫です」

 

「代休ナシですよ」

 

「はい」

 

「私も行きますよ」

 

「「「是非、一緒に」」」

 

 

一斉にハモります。

 

ちょっと引きましたよ。

 

下らんトコで団結力を見せ付けやがります。

 

自分達が嫌いな風呂なんてワザワザ行かなくても、良いじゃないですかねぇ。

 

して私が一緒に行くのを嫌がるどころか、目を輝かせて求めてくるとは。

 

集金されても構わないとも……。

 

 

「面白い」

 

 

これは下克上 以上の臭いがプンプンしますよ!

 

何か仕込んで蹴落とす気でしょう。

実に気に入りませんねぇ!?

 

ですが。

ここで獣人族の企みを正面から叩き潰してやります!

 

さすれば、コイツらは私に歯向かえないと悟り、二度と意見してこないでしょう。

 

 

「分かりました。 時には歯車の要望に応えるのも上司の務め」

 

「当日を楽しみに していて下さい。 くくっ」

 

 

そう言って獣人族を解散させます。

 

畜生どもめ。 成功を確信してか、ニコニコ笑顔で離れていきます。

 

私に踊らされているとも知らずにねぇ!

 

どんな裏技を使ってくるのか楽しみです。

 

 

「さて。 今日にでも旅行準備をしなければねぇ!」

 

 

風呂に浮かべるアヒルさんも忘れないようにしないとなりませんし。

 




更新未定。


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混浴

久し振りの投稿です。 誤字脱字、違和感があったらすいません……。


「さあ、温泉街に来ましたよぉ!」

 

 

予定通り、畜生どもと温泉旅行。

温泉街に足を運びました。

 

和の街並みの あちらこちらから、湯気が立ち上り、如何にもって雰囲気ですねぇ。

 

畜生の皆さんは、温泉街の観光名所に目をやってるフリをして、私の事をチラッチラ見ていやがります。

 

猫耳族は物陰から。 犬耳族は距離をとって。

 

さしずめ 私に対する下克上を実行するべく隙を見ているって とこですかねぇ?

 

バレバレなんですよォ!

 

 

「畜生ども、存分に楽しんで下さい!」

 

「日頃の鬱憤を晴らす時ですよぉ?」

 

「は、はい」

 

 

煽るように声を出し、悪足掻きをする為の自由行動を与えてやります。

 

くくっ。 私の言葉にビビってやがりますね。

 

下克上計画がバレないかと内心ヒヤヒヤしているのでしょう。

 

ですが残念!

 

既に企みは バレてるんですよね〜。

 

 

「さぁて、畜生どもがナニをしてくるのか見ものです」

 

 

暗黒微笑を浮かべながら、私は我が社で貸切予約した混浴風呂へ向かいます。

 

そこはすっぽんぽんの丸腰で、何の対策も出来なさそうな場所。

 

わざと見せる場を用意しましたよ。

 

そしてカウンター虐待を喰らい、私に反抗しても無駄な事を思い知るが良いです!

 

 

 

 

 

恩人さんは、いくつもある 銭湯の ひとつ、しかも混浴へと入っていきます。

 

これを逃して 次はないとばかりに、私達は直ぐに追いかけました。

 

ですが、全員で けしかけては 銭湯の人間さんや恩人さんに迷惑かと思い、

 

 

「ショコラちゃんと お母さんで確認して欲しいな」

 

 

古参のお母さんと私が確認する事に なりました。

 

 

「わかりました!」

 

「えと、ショコラ。 その、確認するのは お母さんで良いわ」

 

「そうなの?」

 

「ええ。 ショコラには まだ 早いわ」

 

 

何故かお母さんから、不思議な事を言われつつも銭湯へ。

 

なんでだろう。 早いって なに?

 

 

「それじゃ、恩人さんを探しましょう」

 

 

疑問に思いつつも脱衣所。

 

見渡すと恩人さんどころか、誰もいません。

 

 

「誰もいない?」

 

「いいえ、風呂場から何か聞こえる」

 

「水の音?」

 

「ええ。 だけど人間が鳴らしている」

 

 

お母さんは猫耳をピコッと動かして更なる扉の先……風呂場を見つつ言います。

 

私も猫耳を傾けます。

確かに音は聞こえますが、人間が鳴らしてるかは判断出来ませんでした。

 

こういう時、音の聞き分けが出来るのは経験のある大人達です。

 

 

「確認しましょう」

 

 

そう言って、最近買った服をハラリと脱ぐお母さん。 慌てて私も ぬぎぬぎ します。

 

大きな胸に つかえる 事なく、スンナリと脱げるのは素直に凄いと思います。

 

そしてガラリと扉を開ける お母さん。

 

白い湯気が刹那的に視界いっぱいに なっと思えば、直ぐに晴れて……。

 

 

「くくっ。 ようこそ刺客の畜生さん」

 

 

湯船に浸かる恩人さんが、不敵に微笑んでいました。

 

 

 

 

 

予想通り来ましたね。 それも私直々に捕獲した古参の猫耳親子。

 

どうせ古参だからと、仲間に言われて来たんでしょう。

 

畜生は単純ですねぇ。

 

ですが油断出来ません。 ナニする気かまで分かりませんからね。

 

ここは私の素晴らしき虐待脳を回転させて攻防戦といきましょう。

 

 

「奇遇ですね♪」

 

 

緊張した様子もなく、私の言葉に動揺する事もなく声をかけて きやがります。

 

おそらく、何か企んでると思われてない自信があるのでしょう。

 

残念ながらバレバレです。 哀れですねぇ!

 

 

「くくっ。 そうですねぇ」

 

「はい……そちらへ 行っても?」

 

 

バスタオル等で身体と痴態を隠すことなく、堂々と寄って来る母猫。

 

前髪を搔き上げ、熱い視線を浴びせてきます。

 

 

「ほぅ?」

 

 

甘い猫なで声と魅惑的なバスト。 それと堂々と綺麗な、シミひとつない身体を見せつける歩き方は入社する前に身につけた処世術でしょう。

ソレで世の甘ちゃん供を誑し込み、のうのう と生きてきたんですかね。

 

経産婦の筈なのに、たるみが無い ナイスバディ。

 

その目は、獲物を見定める畜生です。

 

ですが、虐待好きの私には通用しません。

むしろ虐待心が燃え上がりますよ?

 

残念でしたねぇッ!!

 

 

「風呂へ入る前に汚ねぇ身体を洗うんですよ!」

 

「すいません」

 

 

先ず、畜生の非常識を指摘。

 

仮にも女である畜生に「汚い」と精神的な虐待を与えますが、こんなのはジャブに過ぎません。

 

だからか、平然な顔で素直にシャワーを浴びる畜生親子。

 

反して、ナニか仕掛ける事に慌ててますねぇ?

 

そのザマを見て優越感と湯に浸る……最高じゃねぇですか!

 

 

「最近の仕事は どうです?」

 

 

ココで更に虐待!

 

シャワーで落ち着いている、或いは思考して油断しているところを突く!

 

旅行先で上司に仕事の話を振られるという、単純に嫌なシチュエーション!

 

精神攻撃は基本ですよねぇッ!?

 

 

「はい。 お陰様で、幸せな日々を送れています」

 

 

シャワーを浴びながら、笑顔で振り向いてくる畜生。

 

くくっ。 ナニが幸せですって?

 

猫が嫌いな水を浴びながら、無理に笑みなんて浮かべて……。

 

説得力ないですよぉ!?

 

 

「くくっ。 無理しなくて良いですよ?」

 

「いえいえ、衣食住……三食 食べさせてくれて定時退社。 資格を望めば会社負担で受けさせてくれて、週休2日。 祝日も休みで希望があれは他の日にも休みをくれる。 幸せですよ」

 

 

動揺せずに上司に反撃する畜生。

 

哀れですねぇ。 会社の歯車として油を注されているだけだというのに。

 

それを幸せ?

それとも皮肉ですかね?

 

 

「いや……なるほど」

 

 

立派な歯車に なりましたってトコです?

 

それで、虐待慣れして「もう お前には屈しない」アピールですかぁ!?

 

甘い! 甘いんですよッ!

 

 

「そうですか」

 

「まあ、我が社は有り余る人材と潤沢な資金力で、猫の手を借りるまでも無いですからね」

 

 

ここで畜生に、地味な嫌がらせです!

 

猫の手も要らない、即ち「お前が いなくても良い」的な発言!

 

 

「ですが、その手腕を発揮するには手数が必要でしょう?」

 

 

畜生め。 身体を洗いながら、叛逆しやがりました。

 

私達がいなければ、お前こそ不要物だと暗に言ってやがるのです。

 

生意気なんですよッ!!

 

 

「確かに駒、歯車は多いに越した事はありませんねぇ」

 

「ですが、それ故に歯車同士の互換性や協調性は必要」

 

「もしひとつでも不調をきたせば、交換しなければなりません」

 

「この意味……"立派な歯車"である貴女なら理解出来ますよねぇ?」

 

 

くくっ。 どうです?

 

いつクビになる、必要とされなくなる恐怖を味合わせます!

 

他社では その辺の 取っ替え引っ替えは、良くありますからねぇ。

 

まあ、我が社は貴重な歯車を修理もせずスクラップにする事はありませんがね。

 

とことん使い潰してやりますよぉ〜?

 

 

「はい。 特に協調性のトコは♡」

 

 

うん?

 

急に艶のある声に なりましたね。

 

畜生を見やれば。

 

洗い終わって、此方へ近寄って来る猫耳親子が。

 

特に母猫は湯を滴らせ、より艶かしさを増しながら寄って来やがります。

 

 

「お隣……失礼しますね」

 

「え、ええ。 風呂なんですから、好きにすると良いですよ」

 

 

ごく自然な感じに、私のパーソナルスペースに侵入、肩まで湯に浸かる猫耳親子。

 

くっ。 私としたことが。

 

虐待に夢中で油断していました……ッ!

 

思い直せば、畜生どもの下克上計画を潰す為に混浴に入ったというのに!

 

これでは畜生に、ペースを取られているではありませんか!

 

 

「良い湯……本当に来て良かった」

 

「ほ、ほぅ。 そんなに好きですか」

 

 

片手で湯を掬い、肩にかける動作をする母猫。

 

くっ……落ち着け私。

 

たかが畜生の猫耳に動揺してどうするのです。

 

コレでは 仮にも虐待の星の下に生まれてきたと名乗れませんよ!

 

 

「なら湯に肩まで浸かって、10秒以上数えるんですよッ!」

 

「10秒とは言わず、ずっと こうしていても良いと思いませんか?」

 

 

虐待言葉を吐くと、背後に回り込んで腕を回して来る母猫。

 

豊満で柔らかな胸を、背中に むにゅっ と無遠慮に押し付けやがります!

 

ずっと無言の子猫、ソレを見て両手を覆います。

 

マズい! ヤられる!?

 

な、なんとか反撃しなければ。

 

 

「仮にも上司であり、友達ではありませんよ!」

 

「馴れ馴れしくしないで欲しいですねッ!?」

 

そういうと、耳元で息を吹きかけながら、

 

 

「協調性は大切ですよね?」

 

 

とか ほざきやがりました。

 

ソレとコレは違う!

 

 

「もっと……互いに理解し、協力して高め合いませんか♡」

 

 

首筋を猫舌で舐めながら、右手を腹伝いにして、下半身へと伸ばしてきましたよ!?

 

マズい!

 

畜生の狙いは、良からぬ虚実を作り、私を蹴落とす事です!!

 

 

「も、もう私は上がりませんと!」

 

「貴女達より長く湯に浸かってましたからね!」

 

「先に失礼しますよッ!」

 

 

急に立ち上がって、猫耳が毛を逆立てて驚いている間に遁走します!

 

いや、戦略的撤退!

 

いやいや転進ですかね!

 

この私がまさか、畜生如きに負けるとでも?

 

認めませんよ! そんな事はッ!!

 

 

「畜生め、やりますねぇ!」

 

「ですが次は こうは いきませんよ!」

 

 

こうなれば、正々堂々と勝負ですよ!

 

 

「休憩所にある、卓球でねぇ!」

 

 

 

 

 

恩人さんは、お母さんに背中から抱きしめられて……顔を赤らめて獣人族もビックリな速度で風呂場を後にして しまいました。

 

突然の出来事に結局、シンボルを確認出来ず。 任務失敗です。

 

 

「湯船……白く濁ってなければ、直ぐに分かったのにね」

 

そういうと お母さんは残念そうに頷きました。

 

「そうね。 だから身体を大胆に調べようとしたけれど……刺激が強過ぎたみたい」

 

 

私にも刺激的だったよ、お母さん。

 

よくわからないけど、ほんのう? かな。

 

見ていて、とても恥ずかしくなった……。

 

お母さんは、そんな私を撫でながら言葉を続けます。

 

 

「抱きしめた反応も、異性相手というより普通に驚く反応だったし、身体の感触も男か女かハッキリ判別出来なかった」

 

「立ち上がった時は真後ろだったのと、突然立ち上がった驚きと湯気が多かったから……でも、きっとチャンスは来るハズ」

 

 

お母さんは諦めてないそうです。

 

それは、きっと仲間達も。

 

私は頷きました。

 

取り敢えず……。

 

 

「この、アヒルさんは恩人さんのかな?」

 

 

アヒルさんのオモチャにじゃれながら、大きな湯船を愉しむ事にしたのでした。

 



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畜生と和解せよ。

なんだか、虐待不足や方向に悩む……。

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それでは、どうぞ。


湯船では転進を余儀なくされましたが、今度は そうはいきません。

 

私は浴衣に着替えると、虐待を実行するべく休憩所へ。

 

そこには畜生どもが溢れていました。

 

テ●マエ ロ●エ的に、土産やマッサージ機、牛乳瓶を興味深く観察していやがります。

 

風呂場に行けば、もう それは はしゃぐでしょうね。 風呂技師では なくても。

 

まだまだ世間知らずですねぇ。

 

故に虐待の余地だらけというもの!

 

卓球で心を折り、虐待といきましょうかねぇ!?

 

 

「畜生の皆さん、貴女達は銭湯の表層を触れているに過ぎません!」

 

「洗礼を受けて貰いますヨォ!」

 

「そこにある卓球でねぇ!」

 

 

卓球台を指差すと、皆 釣られて見やります。

 

上にはピンポン球とラケット。

 

 

「なんですか、コレ」

 

「うちわ?」

 

 

くくっ。 やはり無知ですね。

 

なら知識ある私が有利。

 

思う存分、虐待して楽しませて貰いますよォ!?

 

 

「銭湯にある娯楽の ひとつですよ」

 

「ふたり以上で やるスポーツです」

 

「玉を うちわ みたいなので打って打ち返し、打ち返すのに失敗したら負けです」

 

 

簡単に説明します。

 

細かいルールは省きますよ。

 

それを聞いて畜生どもは、ウンウン頷きました。

 

 

「テニスみたいなもの?」

 

「そうですよ。 くくっ」

 

 

理解が早くて助かります。

 

流石は優秀な歯車共ってとこですかねぇ!?

 

 

「さぁて、私が相手になりますよ」

 

「戦いたい無謀な畜生は、前に出やがれです」

 

「そして圧倒的な力に 平伏しなさい!」

 

 

私は卓球台の前に仁王立ち。

 

私に対する日頃の虐待で憎しみと恨みは凄まじいハズ。

 

となれば、畜生どもは 挙って挑みに来るでしょう。

 

そこを一方的に返り討ち!

心をズタボロにして虐待!

 

そうして下克上計画を頓挫させて、虐待も完遂する!

 

一石二鳥って とこですぅ!?

 

 

「恩人さんと遊べる!?」

 

「じゃ、私から!」

 

「次は私!」「私もー!」

 

 

尻尾をフリフリ。

喉をゴロゴロ。

 

笑顔で群れてくる犠牲者予備軍!

 

くくっ、哀れですねぇ!

 

下克上が出来ると喜んでいるのでしょう。

 

ですが残念。

 

笑顔を絶望顔に塗り替えてあげましょう!

 

 

「さあ、遠慮なく来るが良いです」

 

「そして敗北の汚泥を舐めろォ!」

 

 

前に立った犬耳に、容赦ない鋭いサーブ!

 

軽いピンポン球は剛球と化し、謎の効果音と共に畜生の横腹をすり抜けようとします。

 

もう初球で勝てるんじゃねーですかね!?

 

とか思っていたら、

 

 

「はぐぅッ!」

 

 

そのピンポン球は犬耳が素早くキャッチ。

 

口で。

 

笑顔で尻尾をフリフリしてます。

 

 

「…………ナニしてるんです」

 

「ハッ!?」

 

 

油断していました。

 

流石、犬畜生です。

 

テニスの知識があるからと、卓球もそれとなく出来るかと考えていた私が愚かでしたよ。

 

 

「はい負けって事で」

 

「私の剛球をキャッチ出来たのは褒めてやっても良いですが、そういう 遊びでは ありません」

 

「貴女の後にも沢山 待っているんですから、梃子摺らせないで下さい」

 

「てなワケで、今すぐ失せるんですねぇ!」

 

「そんなぁ!?」

 

 

犬耳と尻尾を下げて、クゥーンとショゲてる犬畜生を退けます。

 

そんな絶望顔を見るのも気分が良いですが、狙ってたのとは違いますねぇ。

 

 

「私を満足させる畜生は いないんですかねぇ」

 

「さぁ、楽しませて見せろォ!」

 

 

ラケットを戦ぎ、挑発します。

 

貴様らの下克上計画を徹底的に潰して虐待する為にねぇッ!!

 

 

 

 

 

お風呂から上がると、仲間達が恩人さんと卓球をしていました。

 

 

「凄いね」

 

「ええ」

 

 

恩人さんはひとりで、対して仲間は 猫耳族と犬耳族のふたりがかり でピンポン球を打ち返しています。

 

動体視力や運動能力は人間より上です。

学習能力も高いです。

 

現に時間が経つにつれて、目に見えて獣人族は上達しています。

 

 

「うわぁ」

 

 

にも関わらず、恩人さんは涼しい顔。

 

いよいよラリーで高速移動している球が、線と化してしまいました。

 

それでも恩人さんは悪そうな笑みを浮かべながら余裕の対応です。

 

阿修羅像の如く、腕が沢山あるように見えます。

 

残像なのは分かるのですが。

 

…………なんというか、恩人さんの謎が深まります。

 

 

「でもね、これはチャンスよ」

 

「ちゃんす?」

 

 

お母さんは そういうと、恩人さんの下半身を指さします。

 

 

「仕掛けるの」

 

「ま、また抱き付くの?」

 

「いいえ」

 

 

えっと。

よくわからないよ、お母さん。

 

 

「次あたり、私にも 挑戦させて貰おうかしらね」

 

 

何となく嫌な予感がします。

 

 

 

 

 

 

「これで終わりですヨォッ!」

 

 

目を見開き、最低限の動きで最大限の虐待力をピンポン1点に集中ッ!

 

喰らえ虐待ショット!

相手は負ける!

 

して、苦渋の顔をすると良いですよ!

 

 

「キャウンッ!?」「ニャッ!?」

 

 

超虐待次元ピンポンは音を置き去りにして、畜生と畜生の隙間を縫って消えました。

 

結果。 畜生を下しました。

 

 

「私の勝ちですねぇ!?」

 

 

くっくっくっ。

 

獣人族め、甘いンですよォ!

 

最初は咥えたり、猫パンチで叩き落としていた畜生ども。

 

そこからの上達ぶりは、素直に驚きましたが。

 

自らの能力を持ってすれば私に勝てるとでも!?

 

所詮は畜生!

 

この私が負ける筈がありません。

 

貴様らは所詮、私に勝てずに使い捨てにされる歯車なんですよッ!!

 

 

「ウゥッ。 もう少しで……!」

 

「惜しかったですねぇ、クククッ」

 

 

相手の健闘を称えるフリをして、虐待をシメます。

 

愚民からしたら、速いだけの戦い。

 

どこに虐待が含まれていたか?

 

それは私の思考にあります。

 

勝てるかも知れないと、相手に思わせ努力させ、勝てそうなギリギリのラインで潰すというもの。

 

ラリーの応酬で相手を焦らし、それを感じる事で私は虐待パワーをチャージ。

 

そして絶頂寸前まで来たところで。

 

一気に力を解放ッ!

相手を潰すッ!

 

そうして勝つ事で、相手の希望を絶望に変換。

 

その時の相手の反応を見て楽しむのです。

 

裁判の時にも似た事をしましたが。

 

潰すのが楽でも、直ぐに潰さないのがポイントです。

 

この高度な虐待…………我ながら恐ろしいですねぇ!

 

 

「次は私がしても、よろしいかしら?」

 

 

虐待の優越感に浸っていると。

 

風呂で一緒になった猫耳親子の、母親が声を掛けて きやがりました。

 

虐待ラリーを続けている間に、上がってきた様子。

 

しっとりとした髪と猫耳、浴衣姿は ひとつの絵であり、細く しなやかな猫尻尾を器用に外に出しています。

 

 

「なるほど」

 

 

恐らく、またナニかを仕掛けて私を蹴落とす気ですね。

 

風呂場での、押し付けられた脂肪が思い出されます。

 

生意気ですね。

 

浴衣を押し上げるソレと同じく。

 

…………虐待ッッ!!

 

 

「良いでしょう」

 

「火照った身体が、更にアツくなっても知りませんよォ?」

 

 

熱したラケットを戦ぎつつ、挑発。

 

対して母猫、静かに微笑み構えます。

 

双山、屹然動かず。

 

 

「私に挑んだ事」

 

「後悔させて差し上げます!」

 

 

前振りなく初弾を打ち込みます。

 

私怨を晴らしますよ!

 

それもまた、一興。

 

いや、虐待!

 

 

「ッ!」

 

 

猫畜生、危なげながらも打ち返してきました。

 

そして、打ち返してきた球は私の真ん中。

 

多少打ちにくい位置ですね。

初めてでしょうに、他の畜生と異なり上手いですねぇ。

 

ですが、やられる気はありません。

 

姿勢を変えて、打ち返します。

 

勿論、トドメは刺しません。

母親が打ち返し易い位置に返してあげます。

 

優しさじゃありませんよ。

相手に希望を持たせて、陥とす為です!

 

 

「ふっ!」

 

 

またも私の真ん中に。

先程よりも速い!

 

 

「やりますねぇ!」

 

 

危なげなく打ち返します。

 

くっ、私とした事が。

 

古参なだけあって、違う方向で責めてきましたか……!

 

 

「にゃんっ!」

 

 

そして、更に速く恐ろしく正確に。

畜生はまたも真ん中、丁度下半身目掛けてショットを放ちました。

 

まさか、私と同じく虐待スピリットを持っている……!?

 

ならば、なおのこと!

 

畜生に負けを認める訳には!

 

 

「いきませんよォ!」

 

 

身体を仰け反る様にして、無理矢理球を打ち返します。

 

 

「チェストォォ!」

 

「ひゃっ!?」

 

 

球は、畜生の上半身真ん中へ……豊満な胸に当たりました。

 

勝った……!

 

その憎っくき脂肪の塊に虐待してやりましたよ!

 

ラリーが短いぶん、先程より虐待パワーは少ないですが……。

 

悔しそうに歪んだ畜生の顔は最大の報酬。

 

しかし、喜びも束の間。

 

 

「なんですって!?」

 

 

畜生な胸の弾力により、なんとピンポンが此方へ戻ってきやがりました!

 

そんな馬鹿な!?

私の虐待ショットに屈しないとでも!?

 

油断していた私は、そのまま反撃を受けてしまい。

 

 

「ヴッ!?」

 

「恩人さーん!?」

 

 

股間に刹那の痛みを感じると共に、意識を手放す羽目に。

 

まさかピンポンに、いや……。

胸に この様な力があったとは。

 

畜生どもに醜態を晒した事と虐待不足を後悔しつつ、私は暗闇へと飲み込まれて いきました。

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

 

恩人さんは、直ぐ目を覚ましました。

 

良かった……目を覚まさなかったら、どうしようかと。

 

 

「すみません」

 

 

そして1番に、お母さんは 謝りました。

 

邪な思考の結果が、この事態を引き起こしたと考えると 私も……仲間も申し訳なく思ってしまいます。

 

ですが、恩人さんは許してくれました。

寛容です。 優しいです。

 

 

「構いませんよ」

 

「私も畜生相手に、虐待熱を入れ過ぎました」

 

「くくっ、私も まだまだですねぇ」

 

 

苦笑しながら起き上がる恩人さん。

 

本当に大丈夫そうなのを見て、私達も安心しました。

 

同時に罪悪感が押し寄せてきます。

 

思えば恩返しをしなきゃならないのに、何もしてません。

 

寧ろ、酷い事をしています。

 

そう考えると、申し訳なさでケモ耳と尻尾が垂れました。

 

お母さんだけじゃなく、私も謝らなきゃ。

 

 

「私も……ごめんなさい」

 

 

頭を下げて謝ります。

 

すると、他の仲間達も堰を切ったように謝り始めます。

 

皆も、同じ気持ちの様です。

 

すると恩人さん、笑みを深くしながら、

 

 

「良いのです」

 

「それより、私を下した事を喜びやがれ……じゃなくて、喜んで下さい」

 

 

なんだか一瞬、憎悪の目と棘のある言い方をした気がしましたが…………気の所為でしょう。

 

 

「では褒美として、私から畜生に奢るとしましょう」

 

「銭湯に来て、コレを飲まないのは勿体ないらしいですよォ?」

 

「てな訳で、番頭さんカモン!」

 

 

恩人さんが手を叩くと、カチャンカチャンとガラス同士がぶつかる、だけど心地良い音が。

 

振り返ると、銭湯の人がカゴを持ってきました。

 

中には白い液体が入った瓶が沢山。

 

 

「コレは白黒でモーモー鳴く、ムカつくほど無駄に乳デカな生命体から搾り出したオゾマシイ汁です」

 

「私は嫌いですが、銭湯に来た愚民や社畜は好んで飲みます」

 

 

それって牛さんだよね……?

牛乳だよね……?

 

思いましたが言いませんでした。

 

 

「飲むとパワーアップするそうですよ」

 

「ですが、それは迷信です」

 

「信じる者は救われる?」

 

「否ッ!」

 

「何故なら、信じた私がパワーアップしなかったからですッ!!」

 

 

配られつつ、恩人さんの怒声を聞きます。

 

段々と憎悪が増している気がします。

なんか、怖いです。

 

嫌な思い出でも あるのでしょうか?

 

 

「え、えーと…………ぎゅうにゅう、がキライな『にゅうにゅう言うんじゃねーですよ畜生ども!』す、すみません!?」

 

「さっさと飲め!」

 

「腰に手をやって飲むのが作法です!」

 

「そして成長せず絶望しろッッ!!

 

 

もはや、お礼なのか虐待なのか分からない声を浴びせられます。

 

私達は慌てた様に動きます。

 

瓶の冷たさを手に感じつつ腰に手をやり傾けて、牛乳をコクコクと飲みました。

 

すると…………。

 

 

「美味しい!」

 

 

私達は目を見開き歓喜します。

 

雪の様な冷たさ、ほんのり甘くて懐かしさを感じる喉越し。

コンビニで買える清涼飲料水のような刺激がない優しさ。

 

それが火照った身体を慰めてくれる。

 

心地の良い感覚。

 

お風呂上がりの牛乳が、こんなにも美味しいなんて知らなかった!

 

 

「くくっ、気に入りましたか」

 

「会社に用意しておきます」

 

「これからも飲みたきゃ飲めば良いですよ」

 

「特に子猫と子犬どもは、ね!」

 

「そして努力が報われず、絶望しろッ!

 

 

う、うん……?

 

飲む事に努力が必要なのでしょうか。

 

とりあえず、この感覚を堪能する事にします。

 

 

「ところで恩人さんの性別は?」

 

「股間にヒットさせるのは成功したけど、分からずじまい」

 

「気絶したから、男?」

 

「うーん、胸関係に悪感情を抱いているから女?」

 

 

とりあえず、男女関係なくヒットしたら、痛いと思うんだけど…………。

 




虐待主の性別って、どっちでしょうね?


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(復)讐活(動)

不定期更新中。 駄文。 感想と評価募集中(殴)。

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今回は新しい子猫が。 人間に恨みがあるようで……?


 

猫耳族の少女、タルトは激怒した。 必ず、残酷非道な人間どもに復讐せねばならぬと決意した。

懐柔された他の猫社畜生も、彼女も社会が分からぬ。 けれども悪意には敏感であった。

 

 

「人間なんて大嫌い!」

 

 

タルトは親姉妹がいない。 人間に陵辱されて衰弱死した。 それゆえ、人間を恨んでいる。

 

家族がいた内は良かった。 日も当たらぬ路地裏生活だったが、母の温かな愛と姉妹の太陽の様な笑顔に包まれて幸福であった。

しかしある日、終わりを迎えた。 ヘラヘラした人間の若者がやってきて、母と姉妹を犯し尽くしたのだ。

当然、抵抗はした。 その細木と見間違う程に弱々しい腕で。 一方で力の差は歴然である。

つまり欲のままに職と食にありつける邪悪に、飲み込まれるより他なかったのだ。

 

 

「人間は勝手よ!」

 

 

犯し犯され、なお生き延びたのは、タルトだけだった。

 

経緯は思い出したくもない。 ただ気が付けば事切れていた家族の、死んだ目がタルトを見つめていた。

生き延びた事を責めている様だった。 或いは託した目であるか。 今となっては、いよいよ分からない。

 

 

「何もかもを奪う!」

 

 

その後は痛む身体を引き摺って、人間という恐怖から逃げるのに必死になった。

人間は更に鞭打った。 家族の弔いをする事も許さぬ様にして、また人間が来ては亡骸を弄んだ。

別の者は玩具や実験動物の様にした。 薬品や雑多な物品を猫耳や口、陰部といった口という口に捩じ込んだ。 明らかに快楽と娯楽目的である。 もはや生命への尊敬もない。

 

 

「残酷極まりない!」

 

 

タルトは、みゃあみゃあと泣いて逃げた。 力無き彼女には、それが最善だった。

それを見た人間は自分達を棚に上げるようにする。 さも滑稽だ、家族を捨てた屑だと後ろ指をさして下品な笑い声を上げた。

酒の肴や話の種に口々に伝い、とうとう一周回って路地裏に戻ってきた。

 

多くの人間に家族の死と自身を笑われた。 そして同じ種族にも伝わったのだと思うと、酷く辛く悲しく、耐え難かった。

そうして、幼き猫耳少女は決意したのだ。

 

 

「復讐してやる!」

 

 

讐活…………復讐活動の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も社畜生探しですよぉ!」

 

 

温泉から戻れば、いつもの虐待社会生活の再開ですよ!

 

甘い世界を悪に塗り替える我が社。

人材は幾らでも必要なんでね。

 

今日も路地裏で暇ブッ超えてる畜生を攫いますかぁ!

 

と、そんな時。

 

 

「ねぇ人間さん♪」

 

「はいぃ?」

 

 

声がしたので、振り返れば。

路地裏の闇からヌッと猫耳族が。

 

ボロ布に身を包み、されど綺麗な肌をした子猫。

金色のショートヘアと細長い尻尾は、汚れより主張して腹ただしい。

 

 

「私と良い事しない?」

 

「この奥に、良い所があるんだ」

 

 

ほぅ?

猫を被った言い方で誘ってきました。

 

コイツ…………私を虐待会社のスカウトと見抜きましたね。

だからワザと身体を晒し、自身を売り込んできたのです。

 

今まで労働を避けて来た畜生にしては、中々良い根性じゃねーですか!

 

 

「良いでしょう」

 

「見せてもらいますよ、貴女のテクをねぇ!」

 

 

さぞ自信があるのでしょう。

私を期待させるように、尻尾とお尻をフリフリしながら「ついて来い」とチビな背中で語ります。

 

その先は日も届かぬ闇の空間。

虐待好きな私好みに合わせたとは、事前調査もしていますねコォレは…………。

 

興奮するじゃねぇですか!

猫畜生を束ねる係長や部長クラスの社畜に匹敵するやも知れません!

 

面接としゃれこみましょうかねぇ!?

 

 

「おや?」

 

 

闇の中でキランと光ります。

刹那、ナイフが飛んできました。

 

それは低身長の猫耳の頭上を抜けて、私の額に刺さろうとしてきます。

 

 

「死ね人間ッ!」

 

 

チビが叫びました。

 

成る程。

力無きチビの自己PR。

 

目には目を。

虐待好きな私に、虐待を評価して欲しいンですね?

 

ですが。

 

 

「甘いンですよ」

 

 

ピースサインから、指の間を閉じ。

ナイフを白羽取りの様にしてナイフを止めます。

 

 

「なっ、獣人族でも反応が難しいのに!?」

 

 

驚く金髪チビ。

私を一般社畜として舐めてませんかね。

 

 

「くくっ、こんなモンですか?」

 

「まぁ、ナイフの射出装置を製作する器用さは褒めてやります」

 

「くっ! まだよ!」

 

 

金髪チビは弾丸の様に突っ込んできました。

手にはいつのまにかナイフ。

 

薄いボロ布のどこに隠してたのやら。

私の虐待眼を誤魔化すとは、キレ者として認めましょう。

 

 

「ですが、虐待スキルは私が上です」

 

「ッ!」

 

 

素早くナイフの持つ手をつかんで捻り上げ

、ナイフを落とさせます。

 

すると怯むことなく、間髪入れない金的。

それを内股気味にして防ぎます。

 

生憎、温泉での経験から股間への防御意識を高めてます。

ザコめ、残念でしたねぇ!

 

 

「くくっ、実技は終わりですよぉ!?」

 

「こ、この!」

 

猫首を捕まえて、軽い身体を持ち上げます。

ジタバタと空中で暴れる金髪チビ。

 

今までの面接で1番の威勢の良さ。

そして器用さと声の高さです。

 

私と比べたらザコに違いありませんが。

これは良い拾い物かも知れませんよォ!?

 

次は質疑応答の時間です。

虐待会社に入るハードルは他社に比べると高いですよ?

 

なにせ簡単な虐待で挫かれては、仕事になりませんからねッ!

 

 

「お前は何故、私に声を?」

 

 

先ずは入社希望理由ッ!

 

現代に蔓延る虐待社会。

意思が死んだ傀儡じゃ、虐待する価値がないので却下です。

 

さあ、私のお眼鏡に叶いますかねぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間に復讐するなら偉い会社の頭を潰せば良い。

特にこの辺一帯を支配して、実権を握る人間を。

 

そうすれば私や獣人族の、人間への怒りや恐怖を理解してくれる。

そう考えて行動し、探した。

 

 

(いた)

 

 

ソイツは直ぐに見つかった。

働く獣人族を指さして、悪そうに笑っている。

 

虐待好きとして認知され、獣人族を拉致しているヤツ。

 

中性的で性別不明。

でも目つきや笑みが恐ろしく、間違いなく悪の人間。

 

その見た目や行動から、拉致された仲間は毎日酷い虐待を受けているに違いない。

それこそ、私の家族にしたように。

 

だから最初に殺すと決めた。

 

その辺の建造物の台所などからナイフを盗み、本や雑誌から得た1の知識から10を知り、それで人間を殺すキル・トラップを作った。

 

体術にも自信があった。

コンビニ裏で、廃棄された弁当を巡る戦いでも、大きな子相手に負けた事がないから。

 

そして、殺す日がやって来た。

 

 

「ねぇ人間さん♪」

 

「はいぃ?」

 

 

猫撫で声で、ターゲットを誘惑します。

男かは分からないけど、悪意の塊な人間なら簡単に靡く。

 

 

「私と良い事しない?」

 

「この奥に、良い所があるんだ」

 

 

案の定、ヤツはホイホイ承諾してついて来た。

 

 

「良いでしょう」

 

「見せてもらいますよ、貴女のテクをねぇ!」

 

 

え、笑みが怖い……。

 

でも怯むな!

絶対に復讐するんだ!

 

心の中で えい、えいと言い聞かせて路地裏へと誘います。

人間め、ココがお前の墓場だ!

 

 

「死ね人間ッ!」

 

 

ナイフの射出装置を反応させる。

身長差で、私の上を抜けるナイフは、直ぐに人間の頭に刺さる筈。

 

その高速で飛翔する刃物は、能力の高い獣人族でさえ反応するのは困難。

ならば、劣る人間なら認知する間もなく終わる。

 

この一撃で全て終わるんだ。

痛みを味わう間もなくね。

 

優しいでしょう?

人間と違うのよ。

 

感謝して、逝ってね。

そう心の中で笑みを浮かべたら、

 

 

「甘いンですよ」

 

(えっ!?)

 

 

なんと、人間は片手で、ピースサインをする様にナイフを止めてしまった!

 

そんな馬鹿な!?

人間に、そんな芸当が出来るなんて!?

 

 

「なっ、獣人族でも反応が難しいのに!?」

 

 

驚く私。

対して、それを嘲笑う人間。

ナイフを足元に落としながら、余裕のある声で話しかけてくる。

 

なんて…………なんてヤツだ!

 

 

「くくっ、こんなモンですか?」

 

「まぁ、ナイフの射出装置を製作する器用さは褒めてやります」

 

「くっ! まだよ!」

 

 

直ぐに次の手を打つ。

その顔を歪ませてやる!

 

隠し持っていたナイフを振りかざし、猫耳族の俊足で相手の懐に入り込む。

 

今度こそ反応出来ない突きで、刺し殺してやる!

 

 

「ですが、虐待スキルは私が上です」

 

「ッ!」

 

 

ところが、それも防がれた。

腕を軽く捻られて、ナイフを落としてしまう。

 

でも、ゼロ距離に違いない!

片足を垂直に蹴り上げ金的を行うも、内股になって防がれた。

 

そのまま猫掴みの容量で、首を掴まれて持ち上げられて無力化されてしまう。

あまりに呆気なく、一瞬だった。

 

 

「くくっ、実技は終わりですよぉ!?」

 

「こ、この!」

 

 

逃れようと暴れるも、弱い私じゃ人間如きに勝てない。

挫けそうになる。 涙がこみ上げてくる。

 

家族を惨殺され辱めを受け。

復讐してやると意気込んでこの有様。

 

やっぱり………人間には敵わないの?

神さまは、私を見放すの?

 

認めたくなくて。

必死にジタバタしていると、不敵な笑みでヤツは話しかけて来た。

 

 

「お前は何故、私に声を?」

 

 

ふざけた質問を……ッ!

 

 

「そんなの決まってる!」

 

「虐待好きな人間を皆殺しにする為よ!」

 

「お前はこの辺じゃ有名な虐待好き!」

 

「なら、最初に殺してやると決意したのよ!」

 

 

散々、猫耳を虐待してきた人間め!

私が皆の代わりに、正義の裁きを下してやる!

 

怒りが再燃する私。

だけど人間は、冷酷な現実を言ってきた。

 

 

「くくっ、それがこの体たらく」

 

 

くっ!

悔しい……!

 

でも泣くな!

泣いちゃダメよタルト!

 

泣いたら、コイツの思うつぼ。

 

せめての抵抗。

絶対に心だけは折れてやらないもん……!

 

 

「虐待も、痛みも与えず一撃で終わらせようとは……私好みではありませんねぇ」

 

「お前の好みなんて、知るかッ!」

 

 

細い腕を振り回して、引っ掻いてやろうと暴れる。

だけど、人間は丁度良い距離で爪を避ける。

 

このっ!

うぐっ……このぉ!

 

 

「しかし、その器用さ、行動力」

 

「なにより正面から虐待しようとする心意気は評価に値します」

 

「そこで、我が社としては貴女を私の道具として迎え入れたいと思いますが……どうでしょう?」

 

 

ふざけんな!

誰がお前の道具になるか!

 

 

「人間に虐待したくないのですか?」

 

「えっ!?」

 

 

急に、虐待の提案をしてきた。

コイツ……何を言ってるの?

 

唖然として、無抵抗になる私。

人間はそれを感じてか、私を解放して言葉を続けます。

 

 

「世の中、生ヌルい虐待や偽善の正義に満足している人間が巨万(ごまん)といます」

 

「我が社は、ソイツらに虐待するべく日々真の悪、虐待侵略を行なっています」

 

「しかし、人間も虐待返しを行い、偽善の正義で歯向かって来るのです」

 

「それには貴女のような虐待の原石が重宝するのですよ」

 

「人間に臆する事なく、戦える貴女が」

 

「貴女にもメリットは大きい」

 

「会社包みで貴女を守りつつ、して皆で人間に虐待出来る」

 

「ながく、ながく……皆と共に」

 

 

話を纏める様に人間はニッと笑って、手を伸ばす。

 

 

「採用したい。 我が社に来ませんか?」

 

 

なんて……ヤツだ。

思ってたヤツと違う。

 

殺しに来たヤツを笑顔で赦すどころか、採用したいなんて。

 

守りたい……だなんて。

 

私は頭がクラッと来るのを感じながら、何とか言葉を返す。

 

 

「裏切る、かも知れませんよ?」

 

「貴女の自由です」

 

 

笑顔のまま、即答された。

 

 

「寝首を掻くかも知れませんよ?」

 

「出来るものならねぇ!」

 

 

悪そうな笑顔。

コレはイラッときた……。

 

 

「わかった。 コレは取引よ」

 

「べ、別にアンタに屈したワケじゃないんだからね!」

 

 

私はソイツの手を取った。

今から私の、虐待好きのクソ上司。

 

 

「くくっ、虐待会社へようこそ!」

 

 

笑顔で、玩具を与えられた子どものように喜ぶコイツ。

 

手を繋いだまま、日の当たる大通りへ連れられる。

 

日が、暖かい。

 

なんだか今までの怨念がアホらしくなっちゃって。

私は耐え切れず、涙した。

 

でも。

久し振りに笑えた。

 

神さま。

拾ってくれた神さま。

 

 

「…………ありがとう

 

 

近くで、悪そうな、でも嬉しそうな笑みが聞こえた。

 




結局、懐柔されるんかい! ヤダ……彼女の恨み度低過ぎ!?

最近、虐待が薄味過ぎるかも……。
今後のますますのご活躍を期待します(白目


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虐待主の回想と、突然。

不定期更新中。 駄文。 突っ込みどころもあるかもですが、ご容赦を……。
感想や評価、ありがとうございますb
終わりを思考中。

過去。 それからピンチ。 会社は。 猫耳達はどうなるのか。



 

古今東西、権力者や金持ちは都合の良い法を作り、特権を甘受してきました。

私の家族も例に漏れず。 そのチカラに溺れておりました。

好きなように社畜を虐待。 政治家や他の権力者に札束を握らせ、気に食わない官僚や社畜に濡れ衣を着せて社会的に抹殺。

幼き頃から、そんな両親を見てきた私。 当然、それが世の常と盲信し、虐待好きになるのは必然と言えたでしょう。

 

 

「我が子よ。 確固たる地位と金があれば、この世は好きなように出来るゾ★」

 

「勿論、限度はあるわ。 ソコさえわきまえていれば、気に入らないヤツを片っ端から消しても良いのよ❤︎」

 

「うーん、流石は妻だ。 嫌いな業界に冤罪を被せて潰した事はあるナ★」

 

「ついでにさっき、アナタが脱税の為に外国に設けた架空の会社はバラしたから❤︎」

 

「私が整備した法には触れてないゾ。 それと節税と言いたまえ〜★」

 

「もう、アナタったら。 ホント、権力は最高ね❤︎」

 

「そうだな。 だが覚えておきたまえ我が妻よ★」

 

「「HAHAHAHAHA!」」

 

 

大方、こんな感じです。 裏方でコソコソする事が好きな両親でした。

ところが、裏目に出たのか。 私が親から譲り受けた子会社を虐待経営していた時、その訃報は届きました。

 

 

「報告です……ご両親が、亡くなられました」

 

 

血溜まりに浮かぶ、首吊りの両親が別荘で発見されたとの事。

血が出ているのに、明らかにオカシイのに。 自殺と処理されて終了しました。

 

不思議と、驚きはありませんでした。 工作したどこかの誰かにも怒りが湧きませんでした。 されて当然とすら考えました。

それよりも、葬式やら相続権やらの面倒な手続きを嘆きます。

 

心の底から悲しめなかった。

 

家族の絆が希薄。 薄情。 愚民からしたら、忌避されるモノ。

愛を受けずに育てられた私は、理解が出来なかったのです。 反省もしません。 命は平等ではないのです。

 

色の無い虐待社会では仕方ないでしょう。 右に倣えな教育方法と仕事を盾にした叱咤激励(笑)。

会社によっては暴力が許される。 殴られ蹴られても、涙を堪えて感謝の言葉を述べなければならない。

社畜は己の利権のみを主張したストライキとプラカード。 利益の出ないデスマーチ。

引かれた仕事のレール。 虐待して反論されたら黙ってやれ。 そう言えば良い世界。 従ってりゃ良い世界。 だけど上のご機嫌ひとつで幾多の人生を終わらされる世界。 ムカつく世界。 されど事実。

 

ルーチンワーク。 立ち止まれば生きるワケも分からなくなりそうです。

それが怖くて笑いながら虐待し、仕事をする。 その為に生きていく。

 

そんな中で、ふと路地裏に目をやります。 浮浪者な猫耳族がいました。

ゴミを漁って不衛生な生活。 なんの保証もない日々。 なのに笑い合う猫耳親子が目に付きます。 我々は家族ゴッコをする余裕もなく働き虐待しているのに生意気です。

 

そうだ、と思いつきました。 猫耳も虐待しよう。

 

どこかの権力者により、人員不足です。

社畜からも苦情が来てますからねぇ、丁度良いでしょう。 虐待の相手も増えますし。

 

そんなワケで畜生どもを拉致して社員を増やしていきました。

きっと、私は無意識に本物の笑顔を偽物の笑顔に塗り替えたかったのでしょう。 虐待によって。

 

先ず、ヤツらを自己流の虐待式教育を施しました。

恐らく猫が嫌いであろう水を強制的に浴びさせます。

そして添加物たっぷりなコンビニ弁当を毎日喰わせます。 それも肉ではなく豆腐で誤魔化したハンバーグ。 その上での睡眠欲に逆らいながらの仕事は仲間を攫ってこいというもの。 寮を与えてある程度、拘束します。

 

質や安全、道徳心に過剰反応する愚民基準ならば、耐えられぬ虐待。 その先にあるのは絶望のハズです。

ところが、猫耳親子どもは笑顔を絶やしません。 寧ろ輝いていきます。 虐待に屈せず仕事をこなし、歪な笑みもせず、上司として慕ってきます。

反逆してくる事もありましたが、恩人さんだのと嫌味ったらしく宣い、しかし本物の笑顔で金魚の糞の様に付いてきます。

 

社員は大切です。 しかし、道具です。

愛を知らないので、愛情を与えて育てたつもりはないですし、使い潰す腹です。 今後も考えを改めるつもりはありません。

 

ふと路地裏や街中で見た、愚民らの下らぬ家族ゴッコを思い出します。

 

その光景や行為を、私に重ねている?

 

馬鹿な。

 

会社は家族ゴッコをする場所ではない。

畜生が勘違いしています。 私ではない。

 

唾棄して跨ぐべき記憶。

逆に飲み込まれれば、私は私ではなくなってしまう。 下手すれば虐待の根底が覆されてしまいそうです。 存在意義にも関わります。

 

私は怖い。 それが、たまらなく。

 

ここでまた、ハッと気が付きます。

会社の事を考えて、世界を虐待して愉しむ私が、何を思考しているのかと。

血迷った、と言われても仕方ないレベルじゃないですか。

 

これでは偽善者につけこまれてしまいます。

 

───いや。 遅いかも知れません。

 

 

「よぉ虐待好き。 おたくの猫耳どもが問題を起こしてなぁ? こりゃ会社存続に関わることですぜ?」

 

 

裁判所にいた偽善者が、汚ねぇツラを見せに来たのですから。

 

私は揺らぐ思想の中、会社か社畜生かを選ぶ事になります。

考える時間は無い。 私が虐待をするかされるかの世界なら、後者は有り得ない。

 

 

(恩人さん)

 

(顎を撫でて!)

 

(恩人さんと遊べるっ!)

 

(───ありがとう)

 

 

猫耳親子や、その仲間の笑顔がフラッシュバックしやがります。

 

虐待好きならば、その笑顔を歪ませる最高のチャンス。 だというのに私は……ッ!

 

 

「モタつくなよ獣●野郎」

 

「世間は俺の味方で、街を牛耳るテメェはムカつくからだぁれも味方しねぇ」

 

「まっ、フツーならお可愛い猫耳親子どもを"殺す"な」

 

「どっちに転んでも、テメェは痛いだろうがな……クケケッ!」

 

 

相手の歪んだ、虹彩の無い目を見て思う。

私は虐待される側になると。

下手すれば両親のように酷い殺され方をするかも知れない。

 

或いは、猫耳親子が殺されるか。

 

情なんて私には無いと思いましたが、どうやら見えない足枷が沢山付いていたようです。

 

 

まぁ、なんです。

 

 

社畜生どもを、社畜の檻から解き放つのも虐待になりますかね。 なにせ自由の代償として会社の保証が突然無くなるのですから。

 

 

「くくっ。 楽しみですねぇ」

 

 

───そして、代わりに私が檻に入るのも。

 




相手は野郎とは言ってますが、性別不明です。


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猫耳親子救出へ!

不定期更新。
たくさんの評価者、感想を書いてくれた方々、ありがとうございます!

猫耳親子を助けに行きます。 そして、警官?と対決。 ツッコミどころ、矛盾、現代社会、法律、手順がリアルと異なるかと思いますが……ご容赦を。


 

 

「大変よ! 猫耳親子が逮捕されたって!」

 

「クソ上司も行方不明!」

 

 

いつものオフィス。 事務机が規則正しく並ぶ空間にて、その声は響きました。

 

最近仲間になったタルトが、慌てた声を上げて入室してきたのです。 皆は思わず立ち上がります。

 

 

「そんな!?」

 

 

猫耳達は、叫びます。 ついこの間にも事件があったのに、また起きるなんて。

 

前回は拉致の件で騒がれました。 今回もそうでしょうか。 いや、もう済んだはず。 上告もない。 なら、別の件?

 

獣よりの頭を人間基準に合わせて思考する獣人族。 だけど、今回の案件は重く、理解するのに時間がかかったのです。

 

 

「…………その、人間を殺害したって」

 

 

タルトは重く、言いました。

 

 

しん…………。 場が凍ります。

 

 

さつがい?

ころした?

理解するのに時間を要しました。

 

なんで。 嘘でしょ。 そんな馬鹿な。

 

虐待されても、恨みを持っても殺しまで滅多に発展しない獣人族が?

 

猫耳親子は、1番やらなそうなのに。

 

そんな言葉が頭に浮かんで、だけど言葉にできず。 衝撃が強烈で立ち眩みが起きます。

 

それでも。 なんとか。 なんとか、皆の気持ちを代弁するようにタルトは声を出します。

 

小さな声でしたが、静まりかえった部屋全体に響かせるのには十分でした。

 

 

「アイツらがいなくなったら、会社が成り立たない」

 

「……皆。 証人を探して……弁護しなきゃ。 なにより親子は、そんな子じゃないもの」

 

 

皆はハッとし、頷きます。 気持ちは同じです。 恩人さんは良いのかよというツッコミは置いておきます。

 

 

「そうだよ。 なんとかしなきゃ!」

 

「わ、私! その部署に問い合わせてみるね!」

 

「私は事件現場!」

 

 

ザワザワと、現在の仕事を止めて動き出す仲間たち。

 

 

「皆、気を付けて。 なにか分かったら連絡して」

 

 

タルトは真顔で強く言い放ちます。 幼いのに強い子です。

 

敬語が変で恩人さんも変に言うけど、内心は感謝しているからでしょう。

同時に、この件については心の隅で仲間を信じきれてない部分もありました。 自身が人間を殺そうとした事があるからです。

 

ですが、それでも。

人間の卑劣なやり方を知っているからこそ。

 

タルトは立ち向かう勇気があるのです。

 

 

「さあ、みんな仕事よ。 卑劣な人間どもは待ってくれないわ」

 

 

手をパンパンと叩いて元気付けるタルト。

 

今度は私たちが恩人さんを助けるんだ。

そして、人間に立ち向かうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拘留所という名の拷問部屋。 薄暗く、冷たい金属製格子が並ぶ牢屋空間。

 

いつもなら、警官らに静かな事が望まれる闇の間。 世間様に迷惑を掛けた犯罪者に騒がれたって不愉快極まりないからだ。

 

ところが、今日は真逆。 警察自らが立ち入り、私的に虐待を繰り広げて悲鳴を上げさせていたのだから。

 

 

「さっさと『殺しました』って言うんだよアクしろよ」

 

「やってない! 冤罪よ!」

 

「そうだよ! やってないもん!」

 

「黙れ畜生ッ!」

 

「イタッ!?」

 

「ショコラ!? お願い止めて!」

 

 

猫耳親子は、その狭い牢屋にいた。

警察の格好をした人間が、背広を纏う子猫を警棒で一方的に殴っている。

 

母猫は悲鳴をあげるも、助ける事が出来ない。

 

腕が壁から生えている鎖に繋がれているからだ。 それは子猫も同じ。

故に逃げる事も出来ない。 声で抵抗するのがやっとだ。

 

 

「痛いだぁ? 殺された人間は、もっと痛かっただろうなぁ!!」

 

 

人間はそう言って、もう1度殴り、痛みと理不尽で子猫は泣いた。 母猫に至っては、子が痛めつけられる光景に心を痛めて涙を流す。

 

 

「なんで……? なんでこんな事を……!」

 

「殺された人間も同じ事を思ったろうなぁ!?」

 

「証拠は!? 証拠はあるの!?」

 

「その言い回しが何よりの証拠なんだよなぁ」

 

 

理不尽よ!

 

それを言ったところで猫耳親子に救いは無い。 だからか、言わない。 いつも主導権を握るのは人間側だ。

 

目の前の人間としては、獣人族の社会進出を快く思っていない。 優秀な猫耳が来るほど役に立たない者が職を失うというサイクルが加速しているのだ。 公僕も例外ではない。

 

この世界では経営難で社員の生活保証が出来ない場合や、重度の職務怠慢者が弾かれている。

が、労働者からしたら お上、経営の都合なんて知らぬ者の方が多いだろう。

絶対の終身雇用で無条件に多額の保証金等で保護されるべきという利権と世界を主張したがる思考にドップリ浸かって疑わない者もいる。

 

その思考で生きてきた者にとって、目の前の猫耳親子、獣人族は不利益に違いない。 コイツらの所為で人間の失業率は上がる気がする。 憎むべき社会の敵、人間の敵だ。 本当は逆だというのに。

 

そして、それを裁くのは警察として当たり前という歪んだ正義。 それを執行することで得られる快感。 暴言や暴力は許されるんだという、腐った結論に至る。

 

逆に言えば、そう考えている人間は自分に後ろめたいものがあるのを自覚しているのかも知れない。 それを認める事は出来ないから、その矛盾や怒りを猫耳にぶつけているのだ。

 

 

「ぐすっ。 ひどいわ……悪くないのに」

 

「法廷で主張すれば良いさ。 でも自称虐待好きは、お前らを見放して出てこないだろうさ」

 

 

暗闇の中、ニタニタと笑う人間。 対して猫耳親子は悔し涙を浮かべた。

迫害を受けてきた身として、権力や集団心理には敵わないのを知っているから。

 

世間の目は猫耳を社会進出するキッカケを作った虐待好きに対する非難が多い。 本当の殺人犯も猫耳だと盲信して疑わない。

心理としては、証拠が有る無しに関わらず、猫耳は共通の敵という世間の認識が強くなっている中、皆で仲良くムカつくヤツを潰してスッキリしようというだけだ。

 

今回行われる予定の裁判は、憎き猫耳親子や虐待好きを吊るし上げて集団"虐待"するイベントに過ぎない。

 

それを察する母猫。 涙も増して、悲しさも増す。

 

恩人さんが出てこない可能性もある。

最悪、私たち親子を会社から切り離して被害の軽減に当たるかもだから。

 

もう駄目だ。

 

目を閉じかけたその時。

 

いつものようにして、外への扉が勢い良く開かれた。

 

 

「ドーモ、偽善に塗れた おまわりさん!」

 

「愛猫が世話になりましたぁ!」

 

 

扉が開かれて、後光と共にやって来た自称虐待者の恩人さん。

例え一時的なものでも。 その挑発的で優しい声に、安心する猫耳親子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く。 コソコソしているヤツらは虐待の風上にもおけませんね。

目の前の警察モドキなんて、こんなトコで虐待に走ってますし。

 

私を案内していた偽善者なんて、ワザとらしくカフェで示談交渉しよーぜとか抜かしました。

半端な虐待の目をしていたので、コレは出されたコーヒーに仕掛けがあると見抜きましたよ。

 

素早く私のと偽善者のを交換。 すると、どうでしょう。 案の定、ヤツは腹を抱えてトイレから出て来ません。 下剤が仕込まれていたようですねぇ。

 

虐待返し成功★

 

正当防衛ならぬ正当虐待として いただきましょう。

 

そんで、お馬鹿な事に、私と勘違いしたのか、ソイツのいるトイレに怖い人が突入して虐待を始めた様子ですが…………。

私の知るところではございません。 自己責任でお願いします。

 

それよりも、今を解決しなければ。

 

 

「なっ、虐待好き!? もうひとりは どうしたんだ!? 話が違う!」

 

 

分かりやすい動揺ですね。 虐待心が踊りますよぉ〜!?

 

 

「何のことでしょう?」

 

「とぼけるな! ここの近くまで案内していたヤツがいただろ!」

 

「それなら怖い人達と『OHANASI』を始めましてね。 戻ってくる保証がないので、先に来ちゃいましたよ」

 

「なんだと!? くそっ、アイツらナニしてやがる……!」

 

「それよりも良いんですか〜? おまわりさんなら、見に行った方が良いかと?」

 

「他の警官がやる。 俺はココの担当なんでね」

 

 

ハッと薄笑いする警官。 おそらく、私が警官を退けた後に脱走させる気だと考えたのでしょう。

 

いやいや。 そんな姑息な手段をするワケないでしょう。 後で捕まえに来るでしょうし。

 

 

「ああ、そうですか。 なら担当のアンタに言います。 直ちに牢の猫耳親子を釈放しやがれですよ」

 

「ハッ、馬鹿言うな。 コイツらは殺人を犯した危険な畜生親子だぞ?」

 

 

牢の中にいる親子を嘲笑する警官。

視線を受けた猫畜生は、キッと睨み返しました。

 

さすが我が社の社員です。 上司である私の前で「私たちは強い」とアピールしてるんです。

 

普段から強ければ こうなりませんでしたがね。 生意気なんですよ。

 

ですが。

目の前のコソコソ系警官が1番 生意気なんですよッ!!

 

なので、堂々たる犬系警官を呼びますか。

事件に真っ先に放り込まれるのが畜生です。

 

私は携帯を取り出して、110番します。

 

 

「もしもし、国家の犬ですかぁ? 〇〇〇〇で暴力を振るっているヤツがいましてぇ、はい。 大至急お願いしますぅ」

 

 

さっさと言って、犬どもに来てもらいます。

それを聞いていた警官、相変わらず見下した笑みで話しかけてきます。

 

 

「おいおい、暴力? 誰がそんな事を?」

 

「アンタですよ」

 

「俺じゃない。 畜生の傷は投獄された時点でついていた。 被害者からの抵抗跡だろ」

 

「にしては血が乾いてませんねぇ?」

 

「直ぐに捕まったからだ」

 

「警棒から血が滴ってますよ?」

 

「そ、それは……コイツらが抵抗したからだ!」

 

「抵抗? 鎖で両手が使えないのにぃ?」

 

「…………話にならん。 出て行け。 不法侵入で捕まりたいか?」

 

 

自身のガバガバで都合が悪くなり、追い出そうとしてくる警官。 悪いですが、虐待を完遂しなければならないので。

 

 

「通報者なんで。 いちおう形で残った方が良いでしょう」

 

「警官がひとり居れば十分だ」

 

「その警官で不十分だから、この始末なんですがねぇ〜!?」

 

「…………お前、マジで警察舐めんなよ」

 

 

沸点の低い警官ですね。

職権を乱用する事しか出来ないようです。

 

警棒を振りかざし、襲ってきましたが素早く避けます。

そのまま足を転ばせてあげました。 弱いにも程があります。

 

 

「ぐっ!?」

 

「その程度ですか。 虐待の仕方といい、色々とザコですね」

 

「ッ、テメェ! ブッ殺してやる!」

 

 

その時。

ゾロゾロと犬警官が群れて突入してきました。

 

早いですね。 流石は犬畜生ってトコです?

 

 

「動くな警察だ!」

 

「なんだコレは! 猫耳親子が!」

 

「手当するんだ!」

 

「通報者は?」

 

 

口々にワンワン吠え始めて喧しいですね。

 

 

「ああ、私です。 というか、格好的に私でしょう」

 

「おい犬畜生ども! コイツは かの虐待好きだ、犯人はコイツで違いないぞ!」

 

 

それ以上に喚く人間がウザいですね。

それは犬畜生にとっても同じ事。 特に嫌いな奴に同情なんてしません。

 

権力を悪用していると、どこでツケを払わされるか。 今でしょ。

 

 

「猫耳親子含めて全員、参考人として署まで連れて行きます」

 

「はぁ!? おい、人間様の言う事に従えや! 俺は警官だぞ! お前らより立場が上だろうが!」

 

「アナタは通報前から、この場にいたにも関わらず報告も応援要請もナシ、警棒やアナタの警官服は血が付いている。 事態は悪化したと見ます」

 

「血の臭いも、猫耳親子以外じゃアナタからしかしない」

 

「それに、ブッ殺してやると発言したのは、紛れもなくアナタですね。 犬耳の聴力を舐めないでくれませんか」

 

「一方で虐待好きと言っているこの方は、争った形跡がない」

 

「虐待好きと言っていますが、そう言うアナタは職務怠慢が目立ちますよね?」

 

「鑑識に直ぐに調べて貰いますが、白状した方が情状酌量の余地があるぶん、罪は軽くなりますよ?」

 

 

おやおや。 ここぞとばかりに犬歯を剥き出しにされて言われたい放題ですね。 心底嫌われていたようです。

 

それから、畜生の能力。 こういう時に役に立ちますねぇ。

私にもそのチカラがあれば、虐待の幅が広がったものを。 素直に羨ましいところです。

 

 

「ふ、ふざけんなよ! おい、耳が良いってんならよく聞け! お前らが人間に歯向かえばな、直ぐにお前らはクビに出来んだよ、クビだクビ!」

 

 

くくくっ。 見苦しいですね。

必死に抵抗してるようで、自身の首を自ら絞めている。

 

虐待に飢えた現代社会。

ちょっとした事で皆は叩きたい。 特に権力者はボコボコにしたい。

 

ここでいう権力者は私でありませんよ。

 

 

「クビになるのは、果たしてどちらでしょうかね」

 

「は?」

 

 

ここで私は携帯のボイスレコーダーを再生。 ポチッとな。

 

 

『話が違う……アイツら……他の警官が……殺人を犯した危険……お前、マジで警察舐めんなよ……テメェ! ブッ殺してやる!』

 

「な、なんだコレは」

 

「ナニってアンタの声を録音したんですよ。 より私や猫耳親子、犬耳警官の証言は信用できそうですねぇ」

 

「は、ははっ! 世間様は畜生を支持しねえよ、それに、それのどこが殺人を晴らす証拠になるんだバーカ!」

 

「勘違いしてますねぇ」

 

「あぁ!?」

 

「確かに、これは殺人容疑を晴らす証拠になりません。 ですが、偽善者気取りの世間様は権力者の横暴を叩くでしょう。 そんな虐待が大好きですから」

 

「う、上のモンが揉み消すだろ。 人間の沽券に関わる」

 

「下っ端の、それも職務怠慢かつ乱用者の為にぃ? 組織に置いておくとでも?」

 

 

言葉を詰まらせる警官。 私は言葉による虐待を続けます。

 

 

「組織は世間様の虐待する勢いのまま、責任を取らされるでしょう。 さて、ここで問題です。 組織はどう責任をとるでしょう! ヒント! よく人間もやりますよぉ!?」

 

「黙れ! 畜生をクビにするだけだ!」

 

「残念! そうはなりませんよ。 騒がられなければ、罪を畜生に押し付けられたでしょう、しかし! 今回は そうはいかない。 証言者が私と猫耳親子、優秀な犬のおまわりさん、そしてボイスレコーダーがありますから。 他の証拠としては……せめて猫耳親子をあんなにしなければ。 よよよ」

 

「…………な、なんだよ。 俺が、猫畜生を虐待しなければ良かったと!? したから、それくらいでクビになるって言いたいのかよ、アァ!?」

 

 

自ら言わせた瞬間、私は大きく手を叩いて拍手してやります。 煽りますよ〜?

 

精神的虐待ッ!

 

 

「ご名答! せいかーい! そんなアンタにはワッパのプレゼントですよ!」

 

 

私と変わるようにして、犬耳警官が手錠を警官……いや、元警官の虐待者にかけます。

 

喚き暴れる虐待者。 しかし、犬畜生のパワーによって押さえつけられました。

 

おうおう負け犬と勝ち犬の図ですかねぇ!?

 

 

「ふざけんなよ犬畜生どもがぁッ!! なんでワッパ掛けられなきゃなんねーんだ!! オカシイだろうがぁ!!」

 

「ナニもおかしくないんですよねぇ? だって、アンタ、自白したじゃないですか」

 

「はぁ!?」

 

 

理解してないので、ボイスレコーダーを再生します。 ポチリ。

 

 

『俺が、猫畜生を虐待しなければ良かったと!?』

 

 

はーい、自白しちゃったね〜❤︎

 

 

「こ、こ、こ……!」

 

「こ? 降参宣言ですかぁ!?」

 

「これは罠だ! 俺を陥れたいヤツらがいるんだ! そうだ、お前を案内したヤツがそうだろ! そうだと言え!」

 

「そんなの私に聞かれても困りますぅ〜。 んじゃ、後は国家の犬に任せます」

 

 

そう言うと、犬耳は私に敬礼して表のパトカーに連れて行きました。

道中も見苦しく暴れていた虐待者ですが、犬畜生には敵いません。 そのままパトカーに放り込まれていました。

 

我が社員に引けを取らないくらい、頼りになりますねぇ!

 

そんな社員の猫耳親子。

牢から解放されて、私のもとへ。 与えた背広が血と汚れで酷い有様です。

 

 

「あ、あの……助けに来てくれてありがとうございました」

 

「ありがとう恩人さん」

 

 

健気にも、礼を言ってきます。

我が社員なんですから、当たり前ですよ。

 

それと、こんなにもしたヤツには報いを受けるでしょう。

 

 

「今度はアイツが牢屋行きですね。 元警官なんで、酷い目に遭い続ける事でしょう」

 

「うぅ……虐待されるの?」

 

「勿論です! アイツは牢屋の中でwifi環境がなく、朝起きたら低速通知が来る絶望を味わっていただきます!!」

 

「あの……環境云々の前に、携帯没収されるんじゃ?」

 

「恩人さんの思う絶望って、時々微妙だよね」

 

 

ボロボロにされた癖に、みゃあみゃあ言う猫耳親子。 見た目の割に元気そうで良かったですよ。

 

まぁ、でも。

本当の戦いはこれからですよ。

 

 

「すいません猫耳親子と上司さん。 署までご同行願います」

 

「くくっ。 良いでしょう」

 

 

我が社員の殺人容疑を、晴らさねばなりませんからね。

 

それが無理なら……会社や畜生どもと お別れです。

 

でも。

 

抵抗しても、良いですよねぇ!?

 




この先、どうなってしまうのか。


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