金色のガッシュベル!!シン (レベルス)
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登場人物

原作キャラは現段階で確定している者ですが、これ以外にもいっぱい出ます

オリキャラも出しますが出来栄えは期待しないでくださ


登場人物

 

ガッシュ・ベル 魔本の色 赤

 

戦いを制覇し「優しい王様」を体現した圧政の廃止と抜群の統率力で魔界をまとめ、魔物達からの信頼を集めている。全世界の平和のために冥界の戦士達との戦いに挑む。公務の場ではブラゴ、バリー以外からは

「陛下」と呼ばれている。

 

高嶺 清麿(たかみね きよまろ)(20)

ガッシュの本の持ち主であり、無二の戦友。現在は大学生ながら国家試験に受かり博士号を取得。考古学や歴史学の研究者としても活躍している。

優秀な頭脳と熱い心は健在。ガッシュや仲間たちとの友情も続いている。数々の戦いをくぐり抜けたことで身体能力も向上した。

恵とは高校進学後に告白して両思いになった。交際以降は(恵の強い希望で)呼び捨てで呼んでいる。彼女には若干頭が上がらないが、愛情や信頼は誰よりも深く大切に想っている。恋愛に関しては鈍感というよりも

変わらず『不器用』でプロポーズには踏み切れていない。

 

恵への愛情と仲間たちへの深い友情が、自身に眠る新たな能力を目覚めさせることになる。

 

 

ティオ 魔本の色 朱

ガッシュの仲間であり魔物チームのサブリーダー的存在。魔界ではモデルとしても活動している。

魔物チームの盾として仲間たちを守り、勝利への突破口を開く。

 

王としての責務から気負いすぎるガッシュに不安を抱きながらも、彼を信じて力になろうと奮戦する。

 

大海 恵(おおうみ めぐみ) (22)

 

ティオの本の持ち主であり、高い人気を誇るトップアイドル。清麿とは高校進学後から交際し、彼の大学進学後から同棲している(互いの両親と事務所から公認済み)。

 

激昂した清麿を最も的確に抑えることができ、抜群の美貌とプロポーションにも磨きがかかっている。気丈で誰にでも優しい性格だが、清麿には甘え上手な一面を見せることもある。

 

ウォンレイとリィエンの婚約を知ってからは無茶をしたりプロポーズに踏み切れない彼にじれったさを感じながらも、限りない愛で優しさに応える。

 

キャンチョメ 魔本の色 黄

 

ガッシュの仲間で臆病だが鉄のように強い意志を持つ。魔界では潜入捜査官として反乱の調査に当たる。

変化術の使い手であり、相手をかく乱する戦法が得意。

 

ガッシュとは今も仲が良くお互いに仕事を離れればティオとともに親友として変わらずに接している。

 

パルコ・フォルゴレ(29)

 

イキャンチョメの本の持ち主であり、ヨーロッパで高い人気を誇るイタリア人の俳優。

無敵のヒーローとしての地位を不動のものにしながら、気さくな人柄とチャレンジ精神で誰からも愛される。

 

美女に目がない三枚目でありながらいざという時は英雄の名に恥じない活躍を見せる。親族とは微妙な距離感ながらも俳優として頑張っていることを喜ばれるまでになった。

 

ウマゴン (シュナイダー) 魔本の色 薄いオレンジ

 

ガッシュの仲間で馬のような姿が特徴。

魔界ではガッシュの移動手段及び救急治療時の搬送を担当。

 

本作ではガッシュとティオを「さん」付けで呼び、敬語を使っている。圧倒的な機動力とある戦士へのリベンジを胸に戦いに挑む。

 

カフカ・サンビーム(36)

 

ウマゴンの本の持ち主であるドイツ人の技師。ドイツ語のみならず、英語、日本語も話せる。戦いの終結後はアフリカに移っていたが、モチノキ町への転勤辞令が降りて日本に戻ってきた。

人間の言葉が話せないウマゴンの意図を理解し、絶妙なコンビネーションと的確な対応力で仲間たちをサポートする。

 

シスター・エルとは遠距離恋愛だが、出張時には彼女の働く教会で祈りを捧げに来ているなど仲も順調である。

 

 

ブラゴ 魔本の色 黒

 

魔界の王を決める戦いで準優勝になった実績を買われ、罪を犯した魔物達を率いる役割を任じられる。

 

ガッシュと対をなす「覇王」と称され、彼を認めながらも勝つことは諦めていない。圧倒的な重力を活かした攻撃が武器。

 

基本的に群れるのを嫌うが、ある理由でガッシュ達と共闘することになる。

 

シェリー・ベルモンド(24)

 

ブラゴの本の持ち主にしてフランスの名家・ベルモンド家の令嬢。幼少期からの英才教育とブラゴと共に戦いを勝ち抜く中であらゆる面で達人級の才能を身につけた文武両道の麗人。

 

現在は家業を継ぎベルモント・コネクションの代表取締役として仲間たちと共に忙しい日々を送っているが、ある出来事がきっかけで行動を起こす

 

キッド 魔本の色 グレー

 

魔界で知らないものがいない発明家に成長し、人間界と魔界を往復できるワープトンネルなどの発明品を開発する。ナゾナゾ博士や人間界での思い出を今も大事にしている。

 

ナゾナゾ博士(72)

 

ご存知、「なんでも知っている不思議な博士」。パートナーだったキッドが魔界で随一の発明家に成長したことを喜ぶ。優秀な頭脳とお得意の「ウソ」で仲間達を導く。

 

ウォンレイ 本の色 青紫

 

魔界で武術道場を開いており、ガッシュやティオと修行をすることも多い。今でもリィエンとは相思相愛の仲であり、婚姻届を提出して夫婦になる。

 

門下生には厳しくも真心を込めて指導し、彼らからも大きな尊敬を集めている。

 

リィエン(22)

 

ウォンレイの本の持ち主にして、恋人から愛妻となる。

中国の有名格闘技団体「FCF」の女性王者に君臨しており、カンフーの腕も上がっている。

 

現在は日本橋にある中華料理店でウェイターをしている。

 

 

ゾフィス 本の色 濃い赤紫

 

千年前の魔物達を復活させ、自らの野心のために彼らとシェリーの親友・ココを操った魔物。

 

人間界での度重なる悪事が仇となりガッシュ達やブラゴに敗れた後は「魔獄」に送還され、覇王の副官としてワイズマンとともにブラゴの指揮下に置かれる

 

 

ココ・サンディア(24)

 

かつてゾフィスに操られ本の持ち主となっていたシェリーの親友であり、命の恩人。

 

大学を卒業後は知識を活かしてシェリーをサポートしている。魔物との戦いに関わることはないが、仕事の一環で来日することになる。

 

ゼオン・ベル 魔本の色 銀

 

ガッシュの実兄であり、元ファウード事件の真の黒幕。実力はガッシュ以上であり、『雷帝』の異名にふさわしい圧巻の闘いぶりを見せる。

 

ガッシュとは彼の記憶を奪うほどに憎んでいたが、ファウード解放を阻止する彼との戦いで破れたことがきっかけで確執が消え、和解後はガッシュの懇願もあり心身ともに支える。ブラゴの大会参加に伴い『魔獄』の管理人を代行する。

 

デュフォー・ノードストローム

 

ゼオンの本の持ち主で『答えを出す者』の能力を持つ。

 

玄宗

 

千年前の魔物・ツァオロンの本の持ち主にして、中華拳法の達人。世界キックボクシング団体の中量級ベルトを総なめにし、更なる強さを求めている。

 

ガッシュを魔王に導いた清麿に興味を持ち、高校在学中からずっと修行相手に指名。教え子(?)の清麿からは「師範」と呼ばれ不快に思っている一方、助言は的確かつ熱心である。

 

自分の認めた人物を名前で呼んだり、力以外の強さを認めるなど、思考も柔軟になった。

 

シェリーやナゾナゾ博士同様、早期に異変に気付き、新たなる戦いに胸を躍らせている。

 

 

 

原作キャラはそのくらいです。必要に応じて随時追加していきます。




名字のないキャラは本作オリジナルです

pixivにも載せている奴を手直ししました


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序章
LEVEL0 あれから5年 人間界の今


人物紹介にも書きましたがpixivにも掲載させていただいているシリーズです

敵以外のオリキャラもたくさん出します。では本編スタートです


=人間界== 日本

 

 

1000年に1度の次期魔王を決める戦いが終わってからはや5年。東京都・モチノキ町の夜道を白のワイシャツにグレーのスラックスを身にまとった青年が歩いていた

 

青年の名前は高嶺 清麿(たかみね きよまろ)。現魔王、ガッシュ・ベルの魔本の持ち主であり、共学となった神楽坂女学院改め神楽坂高校に進学後、国立東映大学(モデルは東京大学)に進学した秀才である。

 

ガッシュは自分に悩み心を閉ざしていた時に出会った無二の戦友にして、そんな自分に道を示してくれた恩人だった。彼に動かされてたくさんの仲間に出会い、

「優しい王様」を目指して戦い続けた一年半の日々を思い出す。

 

今夜は居酒屋で中学のクラスメイトとの同級会があるので、待ち合わせ場所である居酒屋に向かっていたのだった。

 

居酒屋ののれんをくぐると、中学時代の友人達がすでに集合していた。

 

野球一筋の熱血投手山中 浩、ツチノコを追い求める元不良のガキ大将金山 剛、清麿の復活をずっと信じてくれた水野 鈴芽、UFOなど未確認生物についての雑誌編集者になった岩島 守。そして専門学校に進んだ中村 マリコ。成人になって初めての再会だった

 

「高嶺君、こっちこっち!」

 

「よぉー、主役の登場だぜ!」

 

「悪い、悪い。研究論文の提出に手間取っちまってな」

 

仲間たちに招かれ、刺身に串焼きなどの料理が並ぶ。

 

『乾杯』

 

予約したカクテルやビールを掲げ宴会が賑やかに始まった。6人なのであっという間に酒の肴が食い尽くされた。

 

思い出話や近況報告に花が咲く。

 

「高嶺、恐竜の化石を見つけたそうじゃねえか。あれの秘密はわかったのか?」

 

「プラキオザウルスの化石説が有効なんだけど、詳しいことがわかんねえんだ」

 

「僕もUFOの進路を編集部で研究してるんだけどね、最近大きな動きがアメリカであるらしいんだ!」

 

「おおー、すげえなあ!」

 

「山中君も独立リーグいけたなんてスゴイわよ!」

 

「プロのドラフトにかからなかったのは残念だけど、高嶺が魔球のトレーニングに付き合ってくれたおかげだぜ!」

 

「トライアウトで行けたのは俺もすごいと思うよ。水野は絵本作家、金山は非行少年更生団体の理事か…」

 

 

「うん。みんな買ってね♫」

 

鈴芽はちゃっかり自作絵本の宣伝をして笑いを取る。

 

「それはそうと…」

 

和やかな雰囲気が一変して金山、岩下、山中が清麿を凝視する。異常なまでのプレッシャーが彼に迫った。

 

「なんだよ…?」

 

 

『ぬぁんで高嶺(君)が恵ちゃんと付き合ってんだああ!!??』

 

(やっぱり来たか…)

 

「俺たち全国男子憧れの美女ナンバーワンだぞお!」

 

「うらやましすぎるじゃないかああ!?」

 

「 賄賂ワイロいくら渡したんだよおお!?」

 

「毎晩あんなことやこんなことを…。許せねぇ!!」

 

「ちょっとあんた達、最後のセリフは時間帯を考えて言いなさいよ!!」

 

 

3人は静止する中村をよそに泣きながら胸ぐらをビュンビュン掴んだ。清麿と恵は、ガッシュ達が魔界に帰った後、清麿が高校一年生の秋に告白し、交際を開始。

世間を賑わせるほどだったが事実として公表し、逆に祝福ムード一色に変化させたのである。

 

「やめろって…たまたまだよ!?」

 

「そうよ。高嶺君みたいに馬鹿正直な人が賄賂なんて卑怯なことできる訳ないわ!!」

 

 

(鈴芽ちゃん、それフォローになってないわよ…)

 

会場がよくも悪くも騒然とする中…

 

「うぉっほん」

 

とひときわ大きな咳払いが聞こえた。白髪混じりで眼鏡をかけ、落ち着き払った顔立ちをして立っている男性の正体は彼らの担任であった中田 秀寿教諭である。今は教頭に昇進していた。

 

「君たち、気持ちはわかるがいったん落ち着きたまえ。高嶺がえらいことになってるぞ?」

 

『中田先生!?』

 

「ははは、今は‘’教頭‘’だよ。みんな変わりない様子で何よりだ!」

 

全員がもみくちゃにされて目を回す清麿から離れて席に戻る。中田はしみじみ語り出した。

 

「高嶺がほんのわずかな期間ではあるが、学校へ通えなかった時期があったことは君たちみんな知っているだろう?

水野以外の我々は高嶺の気持ちに気づこうとすらしてやれんかった…」

 

しばしの沈黙が流れる。仰向けの清麿をよそに鈴芽以外が清麿に対して手を差し伸べるどころか、心ない感情を抱いて避けたり、見て見ぬ振りをした罪悪感にうつむいていた。

 

「今はそれが原因で心を病み、残念ながら命を絶ってしまう者も多い。しかし、高嶺はそんな中でも自分なりにしっかり現実と向き合い、学校へ戻ってから陰日向なく努力を重ね、復学前と比べ物にならんくらい明るくなった。

そして今も君たちの中心であり続けている。高嶺の変化に君たちが動かされたように、大海さんも1人の人間として高嶺に惹かれ、愛するようになった。そう私は思うのだ」

 

(先生?)

 

「芸能人が長い間週刊誌に追われながら同業者、一般人問わず愛を育んだ事例は数多い。アイドルだって人間だ。人を好きになる権利がある。幸せなことではないか?

ファンとしては残念に思う気持ちもわかる。しかし君たちが高嶺を案ずるなら、何も言わずに祝福して、心ないことを書く週刊誌やSNSのバカな連中を黙らせてやりたまえ。それが真の友達ではないかね?」

 

清麿以外の面々は数年ぶりの恩師による‘’授業‘’に聞き入って滝のような涙を流していた。

 

「さて高嶺、君の沢山の発見や研究の数々を楽しく見させてもらっているよ。この若さで博士号取得なんて、なかなかできるもんじゃない。

その情熱と無限大の愛で大海さんを幸せにしてくれたまえ。私から君に出す‘’宿題‘’だ。やってくれるかね!?」

 

「はい、もちろんです!」

 

「うん、よろしい。私の固い話はここまでにしてみんなで楽しい時間を過ごしてくれたまえよ!」

 

中田は笑いながら去っていった。6人は整列して深々と頭を下げ、彼の後ろ姿を見送るのだった。

 

『先生、ありがとうございました!』

 

中田を見送った直後、岩島を筆頭に全員が謝罪した。

 

「すまなかったね、高嶺君。」

 

「確かに羨ましいけど、先生が言うようにまず‘’おめでとう‘’からだったよなぁ…。」

 

「畜生、俺も高嶺とガッシュって小僧のおかげで足を洗えたってのに…。自分のいやしさが情けねえぜ…!!」

 

「いいよ、そんなこと。全然大丈夫だからさ。嫌だったらこうやってつるんだりしないぜ?」

 

笑顔の清麿を見て5人は安心した。和やかな雰囲気が戻る。

 

 

「式にはお前、俺たちも呼べよ!?ツチノコグッズおくるからよ!」

 

「あぁ、もちろん!」

 

「よーし、高嶺の大偉業を祝ってもう一杯やろう!」

 

『おー!』

 

山中の号令で盛り上がりは最高潮になった。

 

居酒屋から商店街についた中田は、居酒屋で買ったお惣菜の入ったビニール袋を手に感慨深げに家路を急いだ。

 

(うん、彼らはやっぱり素直で心の綺麗な教え子達だ!彼らに出逢えて教師冥利につきる)

 

「愛する我がワイフよ、今日は教え子達の飛躍を祝って小エビの唐揚げにトンカツだ!」

 

 

==埼玉県==

 

 

埼玉県で1、2を争うイベント会場・さいたまスーパーアリーナ。メインアリーナとコミニュティアリーナの2つがあり、連日連夜さまざまなイベントが行われている。

 

メインアリーナでは、きらびやかな衣装を身にまとったアイドル・大海 恵(おおうみ めぐみ)のライブが行われていた。ティオの魔本の持ち主であり、ガッシュ達と共に幾多の戦いを切り抜けた戦友。そして今は清麿の最愛の恋人でもある。

ヒット曲やポップスのカバーを披露し、天女のような歌声とキレのあるパフォーマンスで観客を魅了している。

 

アンコールも終わり、恵とバックバンドのメンバーは大きな拍手に包まれた。

 

「みんな今日はありがとう、きっとまた戻ってくるね!」

 

「メグ、お疲れサマ〜!!」

 

「恵ちゃん、ありがとう!」

 

「メグミン、またね〜!!

 

「彼氏さんと仲良くね!!」

 

たくさんの歓声に送られ、舞台袖に下がった。

 

舞台裏ではスタッフが労いの言葉をかけてくれた。しかし、外へ出た時、魔界に帰ったティオが迎えてくれるような気がしてならなかった。

 

(この道も一緒に帰ったな…)

 

他愛もない話や、ガッシュ達と遊んだ内容、人間界で学んだことなどを楽しそうに話したり、収録現場での出来事を自分のことのように聞くティオの姿を、いないとわかっていても、つい思い出してしまう。

恵にとってティオは本当の妹のような存在だった。

 

そんな時には大抵、みんなに心配をかけまいと気丈に振る舞うのだか、清麿には大抵見透かされてしまい、本音が出ることが多かった。泣きたい時に泣ける。話したい時に本音を打ち明けられる人がいる。このありがたみを改めて痛感していた。

 

裏方のスタッフ・ディレクター達と一緒に会場の後始末を終えて、都内にある自宅へ戻った。二階建てのログハウスで、手すり付きの階段もある。

携帯のカレンダーを見てスケジュールをチェック、次の仕事の打ち合わせとライブの改善点をメモしていた。

 

(お友達と楽しんでるから連絡待ったほうがいいかしら?)

 

メモを終えてLINEを開き、はやる気持ちを抑える。

 

「ウォンレイとリィエンもこんな気持ちだったんだなぁ…」

 

ソファーに寝転びながらぽつりと呟いた。

 

しばらくして、携帯の通知音が鳴る。清麿からのLINEだった。

 

『終わったよ。みんな元気そうだった。10時台の電車で帰る』

 

(彼が帰ってくる)

 

そう思うと恵の胸は高まった。

 

1時間後、ドアホンが鳴り、ギイと玄関から音が聞こえた

 

「只今、恵」

 

若干顔を赤くした清麿が姿を現した。飲んだ数が少ないせいか足元は普通で意識もはっきりしている。

 

恵はマンション、清麿は実家暮らしだったが、彼の大学進学を機に同棲していた。今の自宅であるログハウスは、清麿がアルバイトと一般公募で出場した人気クイズ番組で手に入れた資金で建てたものである。表札には、清麿と恵のイニシャルが付いていた。

 

互いの両親からは

 

『早く結婚式の日にちを決めろ!』

 

『孫の顔をみせろ〜』

 

と急かされるほど受け入れられている。

 

「おかえりなさい、楽しかった?」

 

「うん。久しぶりに会えてよかった」

 

Yシャツをかけながら答える。

 

普段着に着替えた清麿は袋から何かを取り出し、テーブルに置いた。綺麗に包装がされている。

 

「なぁに、これ?」

 

「開けてみて?」

 

袋の中にはミント味ののど飴と、新商品と思われるアップルティーが入っていた。

 

(この紅茶、最近できた新商品の!?)

 

「ライブお疲れ様。のど、疲れただろ?」

 

「ありがとう。気を遣わせちゃってごめんね」

 

「どうして謝るの?恵は全力でやりきったんだ。息抜きしたって誰も悪く言わないよ。っていうか、言わせてたまるか」

 

清麿はそう言うと恵の横へ移った。

 

「清麿は優しいのね。初めて出会ったときからずっと、変わらない…」

 

「お節介なだけだよ」

 

普通なら一般の中学生が現役のトップアイドルと親交を持つことなどほんの一握り。しかしガッシュとティオがいたからこそ、お互いを信頼し、今日の関係に発展していると思うと感慨深いものがあった。

 

交際以前は清麿が目下ということもあり、彼女には‘’さん‘’付けで丁寧語を使い、恵は清麿を‘’君‘’付けで呼んでいたのだが

 

『呼び捨てじゃないと嫌だ!』

 

と恵からの申し出(訴え)があり交際以降は公の場を除いて互いに呼び捨てにしていた。

 

「ううん、うれしい…!」

 

清麿の謙遜に甘えと艶を帯びた声で応えた恵は肩に身体を預ける。長くおろした髪から癒しの香りが漂っていた。

 

「ちょっとくっつきすぎじゃないか//っていつもなら言ってるけど、頑張ったからいいよ。俺もこうしていたいし」

 

「そのままのあなたでいてね。鬼のようになったあなたを止めるのは大変なのよ?」

 

「う…」

 

「返事がないな〜、聞こえてる?」

 

「ハィ、気をつけます…」

 

恵からの忠告に、冷や汗を流す清麿。出会ってからおよそ7年が経ったことで性格やパターンが把握できるようになったのでお互いのフォローもバッチリである。

 

才色兼備かつ心優しい恵と愛を育むことは清麿にとって願ってもないことだった。

 

 

2人の時間はこうしてゆっくり過ぎていった。

 

 

 

 

==イタリア==

 

「どうだ!我ら鉄の軍団に敗北はない!」

 

「さすがはFだ」

 

『ザ・レンジャーズ』(モデルはアベンジャーズ)の撮影がジェノバでは主演のフレイル・エルマーニとパルコ・フォルゴレががっちり握手を交わした。

 

「カット!」

 

監督からの威勢の良い声がかかる。

 

「さすがだね。わずか二回で仕上げてくるとは」

 

「いいえ、監督。皆さんの名演に応えようと思っただけです」

 

「うむ。素晴らしい心がけだ」

 

話してる最中マネージャーが声をかけた。

 

「今日の撮影ここまでになりますが、車の手配はどうします?」

 

「いいや、歩いて帰るよ。ファンと直で触れ合いたいからね」

 

「ワシらもそうするかな?」

 

敵の首領役を務めるベテラン俳優、リマム・レーニンもそれに続いた。スキンヘッドとスーツがダンディな初老の男性である。

 

(どーせみんな若いお姉様の尻を追いかけたいだけなんでしょ)

 

マネージャーは呆れたようにため息をついた。

 

「キャンチョメの奴もきっと魔界で元気にしてるだろうなあ」

 

魔物同士の戦いを共に戦い、スターとしても人としても自分を常に立ててくれたキャンチョメ。突拍子も無い自分のアイデアを喜んで聞いてくれたキャンチョメ。

 

『いつかまたきっと会おう』

 

その約束が果たされるのはいつになるだろうとしみじみ考えた。

 

食事の場所を決めるために繁華街を歩いていると、案の定、若い女性と子供の群れが彼らにサインをねだりに押し寄せた。

 

「やあ、バンビーナ達いつもありがとう!」

 

「ハハッ、やはり若いエキスは最高だわい!」

 

「色紙をたくさん買っておいてよかったよ」

 

フォルゴレたちは黄色い声援を浴びに浴びまくりご満悦である。

 

パスタ店でランチを兼ねた打ち合わせを終え鉄の軍団のテーマをみんなで合唱しながら解散した。

 

すると、金髪の鋭い目をした男性が競馬を眺めていた。彼の正体はカフカ・サンビーム。かつて共に戦ったウマゴンの本の持ち主であり、自動車の技師として世界を股にかけるドイツ人である。

 

「おお、フォルゴレではないか」

 

「サンビーム、お久しぶりだな」

 

「堅苦しい挨拶は結構だ。まさかかつての同志に会えるとは思わなかったぞ。どうだ一緒に」

 

サンビームはフォルゴレにブラックコーヒーを差し出した。

 

彼らが眺めている競馬は2歳馬によるレースであった。ひときわ小さな子馬が、黒くたてがみが長い馬を必死で追いかけている。

 

その子馬をサンビームは必死に見つめていた。じわりじわりと距離を詰めていく。

 

「ウマゴンを思い出したのか?」

 

「ああ、彼は私が思う以上に健気だった。あの小さな体で最後まで皆の為にと…!?」

 

サンビームは話している途中でむせてしまった。冷静な切れ者ではあるが時折見せるユーモラスな人柄は現地の人々にも愛されている。

 

「不覚…。君はきっと今でもこんな私を笑うだろうな」

 

いつも笑みを絶やさず、姿を見るだけでほおを舐めていたウマゴン。戦いの時に倒れた自分を度々気遣うウマゴン。

 

『私のことは良い』と何度言ったことだろうか。

 

物思いにふけっていた時、実況の声が響く

 

「二着はシュナイダース、あと一歩及びませんでしたが、劣勢の状況から巻き返し二位につけました!」

 

「グルービー…!!」

 

ガッツポーズをしながら、そう静かに口にした。

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございます

駄文で更新もゆっくりですが、至らないところあればご教示頂けたら幸いです

皆さんのご意見を反映しつつ、進め、修正していきたく思いますので何卒コメントおねがいいたします

ではまた次回!LEVEL 0.5でお会いいたしましょう


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LEVEL0.5 魔界と魔獄

==魔界 王宮==

千年に一度の魔王を賭けた戦いを制覇し、魔王に就いたガッシュ・ベル。

「落ちこぼれ」の烙印を押され、兄・ゼオン・ベルから記憶を奪われるも、本の持ち主となった清麿と共に成長し、仲間と共に強敵を打ち負かして戦いを制覇。魔王として公務に追われる日々を過ごしていた。

 

誰も傷つくことのない「優しい王様」としての道のりを壁にぶつかりながら進んでいる。

 

「ウヌゥ、今日はいつもより多いのう」

 

公務の多さにぼやくガッシュを、少女エリーと共にファウードを止めるために共闘し、今は腹心であるアースがガッシュを慰めた。

 

「仕方ございますまい。万が一はいつ起こるかわかりませぬゆえ。

それより陛下、急がねばティオ殿達と過ごす時間がなくなってしまいますぞ!?」

 

時計は既に3時半を回っていた。

 

「ヌオォ、そうだったのだ!今日はティオの主催するイベントがあったのだ。間に合わせねばー!!!」

 

ティオは魔界に戻ったあと、プロデューサー兼ファッションモデルとして活動していた。恵の芸能活動を間近で見続けていたこともあり、コツコツとファッションの勉強に励んだ甲斐あって評価も上々。

今や魔界の人気イベントになっている。

 

時間までに来なければ首を締め上げられ小言を延々と聞かされることは必至。鬼のような公務よりもティオの怒りがガッシュにとっては恐怖だった。

 

ガッシュはその日の公務を終えると足早に王宮を出て近くにある別荘に向かった。庶民的な造りだが公務や外交時以外は、この別荘で過ごしている。別荘は今は亡き乳母・ユノと幼少期を過ごした思い出の場所だった。

理不尽な虐待にもあったが、自分を育ててくれた彼女には深い恩を抱いており、戦いを終えて即位してからは、王宮の給仕として忠節を尽くしてくれた。

 

鏡の近くには彼女の遺影と清麿が(ガッシュをけん制するために)作ってくれたバルカン300がある。王族の衣装をハンガーにかけ、普段着になった。

 

「のう、バルカン。私達が魔界に戻ってもう5年が経った。清麿達は元気にしておるかのぅ!?」

 

身支度を終えると、共に戦ったパートナーに想いを馳せながら急いで魔界で様々なイベントが催される広場へ向かった。

 

 

 

広場に行くと、デポロ遺跡(1000年前の魔物編の激戦地)で戦ったピョンゴとガッシュとティオが再会、そして清麿と恵が初めて出会うきっかけを作ったマルスがいた。現在2人は魔物達のモデル会社を経営している。

 

「半年に一度のファッションショーがスタートするゲロ!」

 

「お代はタダだぜー!」

 

もっともマルスはティオを裏切った‘’‘前科’‘’があるため、マネージャーという名目でティオの下働きをさせられているのだが…。

 

キッドとキャンチョメも座席に座り今か今かと待ち構える。

 

「どんな洋服なんだろうね?研究の一環になるといいけど」

 

「ガッシュ、もう仕事は済んだのかい?」

 

「ウヌ。キャンチョメ、今日はどんな様子であった?」

 

「特に異常はなかったよ。まさかガッシュが‘’魔王陛下‘’になっちゃうなんて…、いまだに信じられなかったよ。前ほど気軽に会えないよねえ」

 

「避けられぬとは申せ、公務が長引いてお主達と遊べぬのは寂しいのだ。しかしお互い自分にできる仕事が見つかってよかったのう」

 

「ガッシュの配置が的確だっただけさ。あ、もう始まっちゃうよ!?」

 

2人の世間話に花が咲いた頃、画面が暗転し始めた

 

ファッションショーの演出はほとんどティオが手がけている。今日は待ちに待ったお披露目の日だった。

 

まず登場したのは水色の髪を2つに分けたパティ。紫のシャツと紺のデニムを着ている。トレードマークである王冠とハートのペンダントはそのままにガッシュに熱い視線を送った。

パティは人間界へ渡る前から、ガッシュに想いを寄せており度々アプローチをかけていた。しかし色恋沙汰に鈍い彼が気づくはずがなく、ことごとく空回りしている。

 

(ウヌゥ、あの者愛らしい見た目をしておるが、私にばかり視線が向いておるのだ)

 

次に登場したのは遺跡での戦いで尽力してくれたレイラだった。黒のパーカーに白いチノパン、そして薄い桃色のスニーカーを履いている。

 

「着こなしがクールでないと、モデルは務まらないわ」

 

そう言ってしてやったりの表情を浮かべる。

 

次に現れたのはイベントの主催者でもあるティオ。

 

赤毛を結んでヒマワリのあしらわれた麦わら帽子を被り、白のワイシャツとオレンジのスカートで夏模様を演出している。

 

「ティオは流石だなあ」

 

「恵の影響もあったからな。美容への意識は相当高いだろう」

 

現在は武術道場を開いているウォンレイもショーを観に訪れ、感想を述べる。

 

「今回も粒揃いゲロ!」

 

「バカ、終わりまで気を抜いたらまたどやされるぞ!?」

 

「ピョンゴ、マルス。次のセットを手伝って!」

 

言い終わらないうちにティオからの指示が飛んだ。3人で袖を閉め次の演出を準備する。

 

(恵にも見せたいなあ、ちょっとは清麿と上手く行ってるのかしら?)

 

パートナーを浮かべながら、ティオはショーを成功させるために頑張るのだった。

 

 

==魔獄==

 

人間界、魔界を問わず、大罪を犯した魔物達が収監される刑務所・『魔獄』

 

魔王を決める戦いで準優勝に終わったブラゴはその実績を買われその看守に就いていた。ガッシュの臣下に下ったわけではないが、他者に膝をつくことを好まないブラゴにとってはある意味好待遇と言えるだろう。

 

(チッ、つまらん。なあなあと魔界オモテにいる奴の気がしれん)

 

椅子にもたれかかり小さく肘をついた。するとノックと共にギイと音が開く。

 

「ブラゴ。本日の治安報告です」

 

入ってきたのは1000年前の魔物との戦いにおける元凶・ゾフィスだった。ブラゴのパートナー、シェリーの親友・ココの心を操るなど非業を尽くしたため魔獄へ幽閉されているのである。

 

ブラゴは気だるそうにゾフィスの持ってきた書類に目を通した。

 

「随分とチンピラ共がのさばってるじゃねえか。狭間の連中は黙らせてんだろうな?」

 

「私の報告を疑っているのですか?十分な統計に基づいてのものですが。」

 

涼しい顔のゾフィスを睨みつけるブラゴ。

 

「俺がなんでテメェのような犯罪者を使ってるか、分かってんだろうな?」

 

ゾフィスがたじろぐ。しばしの沈黙が流れた。

 

「俺は奴のように優しさだの情だのはどうでもいい。テメエがちっぽけな野望のためにシェリーの仲間みてえに戦う気がない奴を駒にしたことを許すつもりはねえ」

 

「あなたも随分と変わりましたね、ブラゴ」

 

「御託を並べてる暇があったら、問題点を直して牢獄へやへ戻ることだ。消し炭にされたくなければな…!!」

 

「…仰せのままに」

 

気圧されたゾフィスは一礼して部屋を出た。

 

(さすが覇王か…私にココの記憶を消すよう迫った時の気迫を、簡単に出せるようになったとは。いや、あれ以上…と行ったところですかね)

ゾフィスは止まらないブラゴの進化に身震いしながらも、急いで任務にとりかかるのだった。

 

魔獄にはゾフィスのように人間界で非業を尽くしたゴーレム、リオウなどが幽閉されていた。ゾフィスとワイズマンに関してはずば抜けた能力を買われ、ブラゴの指揮下に置かれている。もちろん特例がない限り魔界へ戻ることはできない。

 

本来なら国王であるガッシュに牙を剥いた実兄のゼオン・ベルも魔獄に送られるはずであったが、ガッシュの訴えで補佐役および不在時の執政代行を務めている。

 

「相変わらず甘いやつだな。だが、その甘さが磁石のように人間や魔物を引きつけていった。俺も最終的にはやつに引き寄せられた魔物の1人だ」

 

口元にかすかな笑みを浮かべながらゼオンは呟いた。

 

(デュフォー、お前が俺を必要としてくれたように、俺もお前をかけがえのない同志だと思っている。お前は生き抜け。一度しかない人生をな)

 

人間界にいるであろうデュフォーを思い青空を見上げていると、

 

「ゼオン〜早く来るのだ〜!」

 

「私のプロデュースしたファッションショー、来ないなんて言わないわよね!?」

 

「メルメルメ〜(もうショーは大詰めだよ)!?」

 

「か〜う(ゼオンもおいでよ、面白いよ)」

 

ガッシュ、ティオ、ウマゴン、ロップスがゼオンを呼ぶ。

 

「お前らはお前らで勝手にやっていろ。俺はもう少しここにいたい。」

 

ゼオンはそういうと芝生に寝転び、「能天気なものだ」と呆れ顔を見せたのだった。

 




今回もご覧いただきありがとうございます。

ブラゴとゾフィスが魔界で普通に生活するとは思えなかったのでオリジナルの世界を作ってみました。ゾフィスはブラゴに頭が上がらないながらも大物感を消さないよう書いたんですが、いかがだったでしょうか?

マルスは出すかどうかぶっちゃけ迷いました。

皆さんからの感想やご意見、お待ちしています。

それでは次回からLEVEL.1です。あまり期待しないでくださいね

それではまた!


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LEVEL1 異変

魔界では重大な問題が起きていた。

そして人間界にも予兆が起きる


地響きのような凄まじい音が一つの部屋に響く。

魔物達が自分の腕を磨く鍛錬場ではガッシュとバリーが二度目の決戦をしていた。ギガノ・ゾニスとバオウ・ザケルガがぶつかり合う。

 

はじめの戦いは人間界(日本)で行われ、バリーがガッシュに勝利してブラゴとの初戦以来の敗北を与えた。しかし「優しい王様」への確固たる意志を目の当たりにしたことで、自分に欠けていた「目標」を手に入れたバリーは再戦を約束してその場を去った経緯がある。

 

(あの時に比べて格段に強くなってやがるな…。さすが魔王にのし上がっただけあるぜ)

 

(なんという威圧感であろう…。少しでも気を抜けばすぐにやられてしまうのだ)

 

バリーはガルゾニスとドルゾニスを連続で繰り出した。ガッシュはラウザルクで応戦する。至近距離の肉弾戦で鍛錬場にヒビが入らんばかりの勢いだった。ガッシュのジャブとバリーのひざ蹴りが同時に当たった。

 

途端にアラームが鳴る。2人とも肩で息をしていた。

 

「ウヌ、バリー。見事だな!腕が上がっておる。まだお主に勝てることが悔しいのだ」

 

「王になってからも修行は続けてるようだな、ガッシュ!術が増えていて驚いたがよ」

 

「護衛の任務には戻らんでも良いのか?」

 

「もうすぐ戻るつもりだ。今回は痛みわけだが、次は最後まで相手をしてもらうぜ!」

 

バリーはそう言って鍛錬場を後にした。そこへ、アースから通信が入る。

 

「陛下、鍛錬を終えられたところ恐縮ですが、まもなく魔神様がお見えでございます。早急に宮殿にお戻りくだされ!!」

 

ガッシュは技の応酬で散らかった床を急いで掃除すると走って駆け出した。王族のマントを羽織り宮殿に向かうと、魔神・ウィーランが待ち構えていた。

 

魔神とはその名の通り、魔界の平和を司る神のことで、魔王を上回る魔力の持ち主でもある。

 

「おお、魔神様!久しいのう」

 

「その無邪気さは相変わらずといったところか。魔王ガッシュ」

 

ウィーランは玉座に座るガッシュを見ると、玉座の隣にあるソファーへ座った。側近のアースとリーヤが止めようとするが

 

「邪魔しないでくれる?君たちはこれで十分だから」

 

第1の術、マムランで気圧を強めて2人を吹き飛ばした。

 

「これ以上手荒な真似はしたくない。話が落ち着くまで控えてくれ」

 

ウィーランは念を押すとアースたちを下がらせた。不気味なまでの静けさが王宮を包んでいる。

 

「それで話というのは何なのだ?」

 

「今、魔界にある異変が起ころうとしているんだ」

 

「異変…と申すと?」

 

「‘’’冥界‘’‘の支配者である冥王が、魔界を侵略しようとしている」

 

「竜界のアシュロン達も…」

 

「敗れた可能性は十分に考えられる。このままだと、人間界も最悪冥界の一部にされてしまうと推測している」

 

ガッシュは不安を抱いた。もし、人間界にまで争いが広がれば、清麿達が命がけで自分たちに力を貸してくれた日々が無駄になってしまう。なんとか平穏にすませる方法はないものかと頭を悩ませる。

 

ウィーランはそれを見透かすかのようにぼやいた。

 

「考え込みすぎなのは君の悪い癖だ。見ていて飽き飽きしてくるよ」

 

(ううむ、戦争は避けたい。しかし話し合いが通じるわけでも…。スポーツであればどうにかなるのだが…!?)

 

「そうなのだ!!」

 

閃いたように玉座から立ち上がるガッシュの声にウィーランは驚いて前のめりにひっくり返った。

 

「急に大声を出すんじゃない!心臓が止まるかと思ったぞ!?」

 

「す…、すまぬのだ」

 

「とりあえず事実だからそれだけ伝えるよ。まあ何かひらめいたみたいだから、何かあればまたくるよ」

 

ウィーランはそう言うと第二の術「マムルドンでシャボン玉のような泡の中に入り、飛び去っていった。」

 

(アシュロン達を倒した冥王…とは。クリアやファウードと比べてどのくらいの強さかはわからぬが…)

 

雨雲がこれから始まる壮大な日々を予感させた。

 

 

人間界 ==

 

フランス

 

フランスが誇る世界有数の名家、ベルモンド家。その令嬢である金髪に黄緑の眼をした美女・シェリーが豪邸の庭園で佇んでいた。ブラゴの本の持ち主であり、ガッシュ達最大のライバルとして彼とともに立ちふさがった強敵である。

 

シェリーはブラゴとの別れに浸る間も無く、親友のココやエレン・ラファエルとともに系列会社の監督と外交に追われる日々を送っていた。幼い頃の苛酷な英才教育や打倒・ゾフィスを目指した魔物達との戦いに比べると、彼女にとっては造作もないことだった。

 

自由時間が少ないことは変わらないが、平穏な日々に幸せを感じてもいた。

 

「次の休みは一週間後か…。でも待つと言うのも楽しいものだわ」

 

凛とした表情でスケジュール表を見ながら呟く。

 

(ブラゴの奴、今は魔界で何をしてるのかしら?あいつ協調性なさすぎるから、何かいさかいを起こさなければいいんだけど)

 

 

執事の入れてくれた紅茶を飲んでいた時、エレンとスペインから来たアリシア・バレラが遊びに来た

 

「シェリー、最近疲れてるわね。ほら、執事さんにオススメしてもらったクッキー持ってきたわよ?」

 

「ええ。ありがとう」

 

爺が老衰で亡くなった後、後任の執事は30代前後の女性・サラに変わった。細身でスーツ姿がよく似合う、気さくな女性である。

 

「これはお二方。ようこそ。何かお飲み物をご用意いたしましょうか?」

 

「私はマスカットティーを。アリシアは?」

 

「私はホットミルクをお願いします」

 

「承知いたしました。少々お待ちくださいませ」

 

注文を受けたサラがカウンターまで下がったのを見計らいアリシアが話を振る。

 

「ねえシェリー、明後日クラシックの演奏会があるんだけど、良かったら一緒にどうかしら?ココも誘ったんだけど、日本に滞在する用事があるって断られちゃったのよ」

 

ピアノやヴァイオリンなどクラシック音楽を嗜んでいたシェリーは、プロの音楽家が絶賛するほどの腕前だった。アリシアは評判を聞きつけたことと仕事続きの彼女へ息抜きを兼ねて提案したのである。

 

「ごめんなさいね。行きたいんだけど、その日は病院の慰問会と重なっちゃったの」

 

2人は残念そうにしたが、すぐに笑顔になった。経済格差が問題になっている中で教育や医療が受けられない人がいることを良く知っていたからである。

 

「確かに貧富の差で病院に通えない人がいるって大問題よね?シェリーのおかげで元気になる人がいたらもうけものよ?」

 

「そうそう。そのかわり、たまには私のふるさとにも遊びに来てね?」

 

「ええ。もちろん!」

 

やがてエレン達の注文した飲み物が運ばれた。3人は穏やかな時間を過ごす。

 

そんな3人を微笑ましい目で見つめながら、仕事に戻るサラだった。

 

(お友達のお心遣い、ようございましたね。お嬢様)

 

途端、急に空が暗くなり雷がゴロゴロとなり出した。しかも奇妙なことに、水色の稲光が発生したのである。

 

(これは…まさか、向こうで何か起こっているのかしら…?)

 

シェリーは何かを探るように目を瞑る。

 

エレン達はそんな彼女の様子を奇妙に思った。

 

「どうしたの?」

 

しばらくすると雷が止み、空が少しだけ明るくなった。

 

「シェリー!?」

 

ハッと目を開けると、シェリーはアリシア達に身体を揺さぶられていた。

 

「どうしたのよ?雷がなってからずっと」

 

「なんでもないの。ちょっと考え事を…ね」

 

「ちょっとにしてはだいぶ長かったわよ?何かあったの?」

 

「まだちょっとまとまっていないからはっきりしたら教えるわ」

 

シェリーははぐらかしてその場を切り抜けた。エレンとアリシアを帰し、自室へ戻って書類を見終えると、サラを呼びつけた。

 

「遅れて申し訳ございません。何か御用でしょうか?」

 

「急な天候の変化と水色の稲光がどうしても気になって…。小さなことでもいいから何か情報をもらえないかしら?」

 

「承知いたしました。しかし水色の稲光とは、気になるものですね」

 

執事は一礼して部屋を出た。

 

(あれ以上に激しい戦いが起こるかもしれないわね…)

 

シェリーは日本へ向かうココを案じた。

 

 

 

 





今回も閲覧頂きありがとうございます。

バリーとのライバル関係、そして新キャラウィーラン(ドラゴンボールのビルス様をイメージしていただけるといいです)シェリーの交友と高い観察力を描いてみました。

文章がまだまだぐっちゃぐちゃで面白みにかけると思いますが、編集に編集を重ねて書き切れるよう頑張りたいと思います。

次回のLEVEL2ではタネをちょっとだけ明かしますが、ガッシュとティオが人間界へ一時的に戻ります。キヨメグ 、ガッティオ要素がメインになると思うのですが、私の文章力がこの様なので期待しないでくださいね

それではまた!


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LEVEL2 実験と再会

==魔界==

 

王宮の玉座で、ガッシュは魔獄の総監督であるブラゴに昨日の一件を説明していた。魔界と魔獄の行き来は王の力を持つ2人であれば可能だが、それぞれの場所で統制が取れなくなることを懸念し、携帯電話のような通信機で連絡を取り合っていたのである。

 

「俺に手を貸せだと?貴様が王とは言え、その命令を黙って聞くと思っているのか?」

 

「お主のことであればそう申すと思っておったが、人間界にも害が及ぶやも知れぬのだ。汲んでくれぬかのう?」

 

ブラゴはその問いに答えず、通信を切った。

 

(やはり黙っては動かぬか…)

 

思案に暮れていると、サンビームのガールフレンドであるシスター・エルとコンビを組んだモモンが駆け込んできた。清麿曰く

 

『ウサギとサルを2で足して割ったような見た目』

 

の魔物である。今は魔界図書館の館長になっていた。

 

「陛下〜、一大事ですよ!」

 

「どうしたのだモモン、まさかまた痴漢をしたのではないだろうのう!?」

 

「そんなことじゃありません!キッド博士が陛下に至急お越しいただきたいとおっしゃっています」

 

その報告を聞いたガッシュは公務を済ませると、急いでキッドの待つ研究所へ向かった。

研究所の中にはパートナーであったナゾナゾ博士や彼の助手達と笑い合ったり、ゾフィス率いる1000年前の魔物達との激闘を共にした仲間たちとの写真が額の中に収められていた。

 

懐かしさを覚えつつキッドを探すと

 

「できたよ、陛下!」

 

大喜びでキッドが飛んでくる。

 

「もう公務は終わったゆえ、いつものように呼んで欲しいのだ」

 

いくら王と民衆の立場でもやはり私事では良き友でありたい…、それがガッシュの願いだった。

だから皆公務を離れると、普段と変わらずに接してくれる。

 

「前にガッシュと一緒に作った異世界と魔界を行き来できるトンネルがあったでしょ?あれ、開通できたよ!」

 

2人が喜んだのは言うまでもない。絶対にまた会おうと誓ったパートナーに会うことができるのだから。

魔界へ戻って王位に就いたのち、キッドはガッシュによって文部大臣に任じられ、人間界と魔界を行き来できるトンネルを共に開発していたのである。

 

「でもね、問題があるんだ」

 

「いかなる問題なのだ?」

 

「まだ不完全だから、一泊二日しかできないんだ。それにまた開通するまでエネルギーチャージが2週間必要になるんだよ」

 

一泊二日でも楽しく過ごせれば十分だとガッシュは思っていた。キッドの話は続く。

 

「できればガッシュともう1人に、トンネルのモニタリングをお願いしたいんだ!」

 

「ウヌゥ、キャンチョメは潜入捜査の真っ最中で、ウマゴンは救急班だから動けぬしのう。フォルゴレやサンビーム殿に会いたいと常々言っておったのに」

 

話がまとまらず悩んでいる最中、背後から殺気がただよった。擬音で表すと

‘’‘ゴゴゴゴゴゴゴ’‘’といった具合である。

 

「あたしを候補から外すなんて、よろしゅうございますわねぇ。陛下、キッド博士…!!」

 

鬼のような形相でティオが2人の首を締め上げる。苦悶の絶叫が研究所中に轟いたのはいうまでもない。

 

2人は腕を組んでお説教をするティオの正面に正座をして謝った後、事の顛末を話した。

 

「…という事なのだティオ。プロデュースもあって大変とは思うが協力して欲しいのだ」

 

「そんなの行くに決まってるじゃないの!あのウブな2人の仲を二日の間に進展させてやるんだから!」

 

「助かるよ。システムが安定したらみんなに知らせるから、それまでは僕らと魔獄のブラゴ以外には知られないように宜しくね」

 

「ウヌ!」

 

「わかったわ!」

 

この日は解散とし、ガッシュはゼオンとアースに、ティオはマルス達に不在時の代行を依頼した。

 

その夜、ガッシュとゼオンは兄弟水入らずで別荘での夕飯を取った。2人の好物を合わせたロールパンにブリのフライを挟んだホットドックならぬホットブリである。

 

「魔王陛下にも有給は必要だ。ゆっくり休暇を取ってこい」

 

「すまぬ、ゼオン。恩に切るのだ」

 

「フッ…、兄弟水入らずなんだ。呼び捨てはよさんか、弟よ」

 

「ウヌゥ、ありがとうなのだ。‘’兄上‘’!」

 

「サラダとミルクも食えよ。このメニューはコレステロールが高いからな」

 

人間界で憎み合っていた頃は想像がつかない家族の会話が繰り広げられていた。

 

 

ガッシュ達が夕飯を食べている頃、ティオは自宅に戻ってマルス達フロントへの電話を終え、リュックに持ち物を詰めながらある考えを巡らせていた。

「とりあえず、洋服の搬入お願いね。あたしがいないからって変なこと企むんじゃないわよ!?」

 

‘’ピッ‘’とスマートフォンの通話が切れる。

 

 

(これ、ひょっとしてお泊りデート!?…まさか超鈍感なガッシュに限ってそんな事あるわけが…)

 

ガッシュと人間界で再開して以来、見違えるようにたくましくなった彼と共に戦っていくうちにほのかな想いを寄せているティオ。

しかし恋愛に疎いどころか、どういうものかすらわからなかった彼にじれったさを感じてもいた。

 

翌日、研究所に向かったガッシュとティオはワープトンネルに乗って人間界へと出発した。行き先はもちろん、東京都・モチノキ町!

 

=人間界==

 

東京都内にある日本ラジオステーション(モデルはジャパンFMネットワーク)で、清麿は自身がMCを担当するラジオ番組の生収録をしていた。

自身の専攻学科である考古学、歴史学についての研究などをコントや対談を織り交ぜながら紹介していく番組である。

 

喋りはあまり上手い方ではないが、卓越した知識と誰にでもわかりやすい説明、時折見せる切れ味抜群のツッコミなどが評価され、平均聴率30%の人気番組になっていた。

 

放送協会(モデルはNHK)がふさわしいという意見もあったが、大学長の佐藤から「大人から子供まで幅広く知って欲しい」との意図でラジオでの放送がスタート。研究チームで結果を残している清麿に白羽の矢が立ったのである。

 

「今日は、ツタンカーメンの謎についてお送りしましたが今でも遺産や死の謎については様々あります。来週はピラミッドができるまでを解明しましょう!」

 

「ゲストの霜山先生、ありがとうございました!」

 

 

収録、スタッフとの後片付けを終えてラジオ局を出たところで、高校の同級生であるフリーライターの豊永 明信と1学年年上の黒尾 徹に声をかけられる。メガネで高めの背丈をした豊永と前髪がとがってスーツが似合う黒尾は番組を共に盛り上げる仲間だった。

 

「高嶺〜豊永〜気をつけて帰れよ!」

 

「ああ、また来週もよろしくな」

 

「清、研究もいいけど恵ちゃんのことも抱いてあげなよ?」

 

デリカシーのない豊永の発言に清麿の堪忍袋の尾が切れる。

 

「やかましぃ、さっさと帰れッ!!」

 

 

2人を見送って帰ろうとすると道に迷った二人組が遠くに見えた。

 

(あれ?気のせいか?たしかにガッシュとティオ似た影があるけど…)

 

それにしては背もちょっとあるし気のせいかと思っていたが何度目をこすっても消えない。

 

「ウヌゥ、おかしいのう」

 

「ここモチノキ町じゃないじゃない!」

 

「待つのだティオ、あれは…」

 

二人組はこちらに気づいて走り出した。

 

「!?」

 

「間違い無いのだ!」

 

「ここにいたんだぁ!」

 

『清麿おおおお!!!』

 

抱きつかれた清麿はバランスを崩して倒れてしまった。

 

「お前ら、ガッシュとティオ!?夢じゃ無いんだな!?」

 

何度も目をこすりつねってみても2人がそこに映っている。

 

「元気だったかお前ら、別れた時より大人っぽくなったな!」

 

「清麿こそ、すっかりスーツが似合うようになっちゃって!」

 

身長が伸び、顔つきもより整った清麿に喜ぶティオ。

 

「立ち話もなんだし、家に帰るか!」

 

3人はゆっくり歩き出した。いつもと違う道にガッシュ達が違和感を覚える。

 

「待つのだ清麿。モチノキ町ではないのか?」

 

「ん?あぁ。俺さ、今実家を出てある人と暮らしてんだよ」

 

(!?)

 

顔を赤らめて話す清麿の言葉に驚きを隠せないガッシュ。しかしティオは何かを感じ取っていた。

 

(清麿…ついに彼女でもできたのかしら?)

 

しばらく行くと現在の自宅であるログハウスにたどり着いた。

 

 

「わぁ、素敵なお家!」

 

 

「すごいのだ、全部木で出来ておる!」

 

初めてのログハウスに驚くガッシュ達。ギィとドアを開いた。

 

「お邪魔しまーす!」

 

 

クローゼットにいた恵は一瞬耳を疑った。今日は都内での仕事のみだったので清麿より先に帰っていたのである。

 

(あれ、一瞬聴き覚えのある声がしたけど、気のせいかしら?)

 

「恵さ…」

 

思わず敬称をつけそうになった清麿だが、思い直して咳払いをした。付き合う前の癖がつい出てしまう。ガッシュは不思議そうにその光景を見つめる。

 

「ただ今、恵!俺たちにお客が来てるぞ!」

 

(お客様…、鈴芽ちゃんや泳太君達かしら?)

 

急いで玄関へ駆け出す。見ると恵の目の前には幾多の戦いを共にしたパートナーの姿がたしかにあった。

 

 

「ティオ!?本当に、ティオなのね!?」

 

「久しぶり、恵!元気だった!?」

 

あまりの感動にしばらく言葉がでなかったが2人を優しく抱きしめた。

 

 

「りっぱになったわね!さあ上がって。寒かったでしょう。」

 

「恵殿、お邪魔するのだ!」

 

リビングに座り再会を喜びあった。

 

「魔界の方は大丈夫なのか?」

 

「一泊二日でこっちにいて良いことになったの!」

 

「とは言っても訳ありで戻れたのは私たちだけだがのう」

 

「うふふ♩じゃあ今日はとっておきの夕飯にしようかしら。ちょっと待っててね!」

 

いつもより上機嫌でキッチンへと向かった恵を見送り、ガッシュ達は清麿を見て満面の笑みを浮かべる。

 

「人の顔じろじろ見やがって、どうしたんだよ?」

 

「お主、私たちに何か言うことがあるのではないか?」

 

「そうよ。幸せなオーラがにじみ出てるわ。ついに決心したのね!?」

 

「いっぺんに話すな\\\\」

 

思わず頬を赤らめる。

 

「清麿〜、ちょっとてつだってほしいことがあるの!」

 

「あぁ、いいよ。ちょっと待ってて!」

 

(恵も清麿を呼び捨て!?ってことはやっぱり‥)

 

以前と比べてフランクな言葉遣いの2人にティオの予感が確信に変わっていた。

 

台所へ向かうと、揚げ物と根菜の煮物が出来上がっている。

 

「レシピ本でサツマイモのコロッケ載ってたから作ってみたの。味見してくれないかしら?」

 

突然のお願いに困惑する清麿。しかし、上目使いで満面の笑みを見せる恵を前にすると引き受けずにはいられない。

 

「いいよ!すごいじゃないか!」

 

「隙あり 」

 

「もごっ!?」

 

返事を聞くが早いか、恵は清麿の口に切り分けたコロッケを運んだ。

 

 

(不意打ち!?相変わらず大胆だなぁ。でも、そういうとこも可愛いんだよな\\\\)

 

 

「どう…かな?」

 

心配そうに見つめる恵をよそにしばしの沈黙が流れる。しばらくして清麿の口内にサツマイモの余韻が消えた。

 

「うん、めちゃくちゃ美味いよ!これならガッシュ達も喜ぶとおもう」

 

「本当!?良かったぁ〜!!初めて作るから、心配だったのよ」

「ソース、俺が作ろうか?普通のだと塩分高いしサツマイモの甘さが引き立った方が体にいいだろうから」

 

「それじゃ、お願いしちゃおっかな♡」

 

仲睦まじく調理する2人をこっそり見ていたティオは嬉しさに目を濡らした。

 

(良かったね、恵…。想いが実って)

 

芸能活動中にはなかなか見られなかった恵のありのままの笑顔がティオは大好きだった。特に清麿と一緒にいる時が際立って笑顔が多く思えていた。そんなティオをよそに

 

「夕飯まだかのう〜?何か手伝…!?!?」

 

ムードを余裕でぶち壊しかねないガッシュの口をティオは急いで塞いだ。

 

「邪魔しちゃダメ!今は2人の時間なんだから…」

 

「ヌアァァァ〜、何をするのだティオ〜!!」

 

そう言うとジタバタ抵抗するガッシュをずるずるとフロアに引きずった。

 

(全く…なんでこいつはムードっていうのがこうもわかんないのかしら…?)

 

じれったさを抱えながら料理の完成を待つ。数分後に夕飯が運ばれた。ガッシュ達も何か出そうとしたが

 

「お前(あなた)達は長旅で疲れてるんだから大丈夫!」

 

と諭され、お言葉に甘えようと元の位置に座った。全員が揃って麦茶が4人分均等に注かれると、清麿が口を開いた。

 

「ガッシュとティオに会えるなんて思ってもいなかった。知らないと思うので改めて言うけど…」

 

「私達、お付き合いしてるの!」

 

突然のカミングアウトにクスクス笑ったガッシュ達。そしてしっかり2人を見つめた。

 

「今更何言ってんの?2人とも初めてあった時からずっと両想いだったじゃない!あたし、分かってたよ。2人は絶対結婚するって!」

 

「ウヌ!私も今ひとつ恋というものはよく分からぬが、清麿も恵殿を好いておったしのう!」

 

『なっ\\\\』

 

ガッシュ達の返答に顔を赤くした清麿達。彼らにとって息抜きで買い物を楽しんでいる時、公園や遊園地で遊ぶ自分たちを隣同士で見守る姿は彼らにとって恋人同士…、それ以上に新婚夫婦のように移っていたようである。

もっとも、好意はあっても恋愛となると不器用な2人は自覚がなかったようだったが、ティオにとってはそんな2人がお似合いだと思っていた。

 

「でも、本当に良かった。色々あったとおもうけど、絶対に別れちゃダメだからね!」

 

ティオの言葉に熱いものがこみ上げる清麿。つたうなみだを拭った恵が口を開いた。

 

「お料理冷めちゃうわよ。そろそろいただきましょうか?」

 

「そうだな…。それじゃあささやかだけど再会を祝って…」

 

『カンパーイ!!!!』

 

こうして数年ぶりの4人で囲む食事が始まった。

 

魔界での出来事や馴れ初めなど、話が途切れることはなく、穏やかな雰囲気で食事は進んだ。

 

食後、清麿達は洗い物をしながらリビングでバルカン、バルンルンで遊ぶガッシュとティオを見て微笑んでいた。バルンルンはティオ用にアレンジされた姉妹機(という名目で清麿によって作られた即興オモチャ)である。

 

「ほんの数年前までは、これが当たり前の光景だったのにね…」

 

「あぁ。何回ヒヤヒヤさせられたか知れねえけどさ、あいつらがいなかったら俺たちはこうやって一緒に住んだりなんかできなかったもんなぁ。2人とも自分の役目を一生懸命果たしてるんだし俺も頑張ろうって思えるよ」

 

「辛い時私たちにいつも元気をくれたのはあの子達だもの。きっとこれからも魔界をよりよくしてくれると思うわ」

 

魔王の座をかけた戦い、1000年前の魔物達との激闘、ファウードの暴走、クリアとの最終決戦。

重要な戦いにおいて、4人はいつも行動を共にしていた。そして共闘する中で互いに成長を重ね、いつしかかけがえのない存在になっていた。

 

アイドルだ研究者だという肩書きは彼らにさして関係はなく、一般の恋愛同様互いの良いところに惹かれて相思相愛になったと言える。

 

「あぁ、そうだな!」

 

リビングに戻り、2人にそれとなく提案する清麿。

 

「明日なんだけどさ、4人で久々にモチノキ町へ行かないか?」

 

「え!?もちろん行くわよ。ねぇ、ガッシュ!!」

 

「ウヌ!母上殿や鈴芽達にも会いたいしのう。」

 

「背だって結構伸びたから遊園地のジェットコースターにだって乗れちゃう!!!」

 

大はしゃぎで快諾した2人の様子を見ていた恵だったが何かを察したように携帯を開き、通話をはじめた。

 

「お疲れ様です。大海ですが…。はい、お願いします」

 

しばらくすると女性の声が聞こえた。

 

「もしもし、恵!?今月の有給まだ決めてないじゃない!事務所(うち)が働き方改革はじめたっていうのに、あんたのようなエースが休まなかったら後輩だって気を遣って休めないのわかってる!?プロデューサーのタヌキ親父もバンバン仕事入れてくるし…」

 

声の主は恵のマネージャーにして中学、高校のクラスメイトだった冴木 瑞穂である。清麿と恵の仲を進展させるためサポートした頼れる親友の1人だった。

 

キーンという高音が携帯越しに響き驚く恵だったが、明日有給を使いたい旨を伝えると、冴木の勢いが収まった。

 

「わかったわ。ちゃんと休んでいっぱい甘えさせてもらいなさいよ。高嶺君ほどできた彼氏さんはいないんだからね!?」

 

「ごめんなさい、瑞穂。いつもありがとう」

 

お詫びをして電話を切って3人の輪に加わった。

 

「お義母さん、2人が来るって聞いたらきっと喜ぶわよ!」

 

「恵、お仕事は大丈夫なの?」

 

「さっきマネージャーにお休みの許可もらったから大丈夫。明日はたくさん遊びましょ?」

 

ガッシュ達が恵の言葉に大喜びしたのはいうまでもない。

 

時計を見ると10時半を回っていた。ティオと恵を先に入浴させ、清麿とガッシュはソファーに座った。

 

 

清麿&ガッシュ==

 

「良かったのう、清麿。素晴らしいお嫁さんをもらって。恵殿は初めて出会った時と全く変わらぬ…。いいや、ますます綺麗になっておった」

 

「まだプロポーズしてねぇから嫁さんじゃねぇよ。…にしても他人ひとの彼女を口説くようなセリフ吐くなんて、お前もだいぶその手のことがわかるようになったみたいだな」

 

「今まで私が考えていた結婚は『できちゃった婚』というものになるのであまりよくないらしいのだ。清麿も恵殿のこととなると周りが見えなかったからのう。私と別れている間に塞ぎ込んでおるのではと心配したのだぞ?」

 

「俺もお前らが魔界に戻ったことで、付き合いがなくなるんじゃないかと正直、覚悟していた。でも時間が経つにつれてだんだん恵さん…いや、恵の存在が自分の中で大きくなっていたことに気づいたんだ。芸能人としてでも仲間としてでもなく、1人の人間としてな」

 

「ほおお!漢になったのう。」

 

「自分に悩んで引きこもってた俺を外へ引っ張りだしてくれたお前のおかげだよ。ありがとうな!」

 

照れ臭そうに語る清麿を見てガッシュも嬉しそうに頷く。

 

「何を申すのだ。ありがとうは私なのだ。清麿が私のパートナーであったからこそティオやキャンチョメと再会できて、『優しい王様』になることができたのだ」

 

しばらくしてまたガッシュが口を開いた。

 

「恵殿を悲しませるでないぞ?」

 

「もちろんだ。苦しみも喜びも全部受け入れて、護ってやる!」

 

「良う言うた!父上殿もお喜びになるぞ。ところで、付き合いはじめてから呼び捨てになったのか?」

 

「まあな。『いつまでも先輩扱いされたくない』って怒られてさ。ちなみに俺の親父もお袋も恵の家族も、付き合ってることは知ってる」

 

「早く結婚式をすれば良いではないか?」

 

「お互い仕事もあるしそうそうできるわけねぇだろ。親の方が早く挙げろってうるさいくらいさ!」

 

清麿とガッシュは互いの顔を見つめて笑った。

 

==ティオ&恵==

 

入浴中、2人はあるコトで話をしていた。

 

「恵。告白ってどっちからしたの?」

 

ウキウキした表情でティオが尋ねる。

 

「彼からよ。モチノキ町の商店街にあるシフォンケーキが美味しいカフェでティオが魔界に帰ってひと月くらいかな。そこでロケをしてた時に偶然再会したんだけど、帰りに通り魔事件に巻き込まれちゃって」

 

「えぇ!?それ大変じゃない!怪我しなかった?」

 

「うん。怖かったけどね。清麿が」

 

 

『自分(テメェ)の人生思い通りに行かねえからって、関係ねぇ人たちを怖い目に遭わせるんじゃねえ!!!!』

 

「ってその通り魔を一撃で殴り倒したの。」

 

「一撃…あの清麿が!?」

 

「うん。左ストレートを顔面に思いっきりね。で、その後に‥」

 

 

『ごめんなさい、恵さん。もうちょっと早く気がついてれば怖い思いをさせなくて済んだのに…』

 

そして清麿が私と同じ高校に進んだってわかったの。それから登校した日に色々な話を聞いてもらったり勉強を教わって…、9月くらいかな。秋の文化祭の終わりにね

 

『初めて会った時から綺麗で優しい人だと思っていました。恵さんのことが‥ずっと』

 

『気持ちは嬉しいけど私‥、職業柄清麿君に辛い思いさせちゃうから…』

 

『アイドルだろうが、モデルだろうが関係ない。俺は…俺は1人の女性として、恵さんが大好きなんだ!!!!』

 

「聞いた時は嬉しかったわ。私も本音を言っちゃえば同じ気持ちだったもの。OKしかなかったわ」

 

当時のことを思い出し少し照れ始めた恵。ティオは何も言わずただ黙って恵の話に耳を傾けている。

 

「私の中で引っかかっていたことがあって、付き合うに当たってあるお願いをしたの」

 

「呼び捨てのこと?」

 

「うん。長い付き合いなのにいっつも私のこと‘’‘先輩’‘’としか見ないから‘’‘さん’‘’付けだったでしょ?フォルゴレさんやリィエン、シェリーは呼び捨ての割にね…。私も付き合うなら対等な恋愛がしたかったから

 

『呼び捨てじゃないと私が嫌なの!!』

 

 

「って言ったら緊張してたけど受け入れてくれたの♡」

 

 

「やるわね〜。清麿鈍感だから結構大変だったんじゃない?そこまで言われて落ちなかったら異常よ、異常!」

 

「ふふふ」

 

と小さく笑う恵をからかうティオ。

 

「短気で恥ずかしがり屋だけど、頭が良くて優しくて、友達思いで漢気があって、ありのままの私を好きになってくれる。だから彼以外を好きになろうって思えない。清麿とじゃなきゃ幸せに…!?」

 

 

 

「ヤダ、何言ってるの私\\\\お酒がないのに酔っ払っちゃったの?///もー恥ずかしいなあ」

 

1人の世界に入り込んでいた自分に気がついた恵は赤面しながらぶつぶつ呟き髪を乾かしていた。2人の進展はティオにとって喜ばしいことだった。

 

(あ〜あ、すっかりのろけちゃって)

 

パジャマに着替えたティオはガッシュ達のいるリビングについた。

 

 

「ガッシュー、清麿〜!!お風呂空いたわ!」

 

ティオの声を聞いたガッシュ達は着替えを持って風呂場に急ぐのだった。

 

寝室には2つベッドがあるのだがその日は清麿とガッシュ、ティオと恵の組み合わせでぐっすり眠った。

 

 




も閲覧ありがとうございます。

恋愛描写を書くのが久しぶりなもので清麿×恵ののろけが多くなってしまったように個人的には思いましたが如何でしょうか?

清麿と恵がどれだけお互いを信じているかはもちろん、愛情の深さも表現していければと思います。

次回のLEVEL3ではモチノキ町での小旅行とバトルシーンをちょろっと入れることができればと思っています


感想、ご意見いただけますと励みになります。是非よろしくお願いします

ではまた!


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LEVEL3 冥界からの使者

翌朝

時刻は朝の6時半になっていた。うっすらと日が差し込む。

 

キッチンでは恵が朝食を作っていた。鍋の中ではニンジンやジャガイモ、キャベツなどが煮込まれ、キッチン中がコンソメの良い香りに包まれる。

 

トーストとレタスサラダなどを手際よく作り終えてスープをよそい、4人分の食器を並べたところで、清麿の足音が聞こえた。あくびを終えて、眠たそうに目をこする。

 

「おはよう…」

 

「おはよ!ご飯もうすぐでできるから、ガッシュ君達起こして来てくれる?」

 

清麿は洗顔と身だしなみをすませると、寝室に戻った。

 

「起きろ、お前達。今日出かけるんだろ?」

 

「うーん…もうそんな時間?」

 

ティオはムニャムニャ目を覚ましたがガッシュは一向に起きる気配がない。

 

「…えぇい、魔王がいつまでもだらけてんじゃねえ!!」

 

 

堪忍袋の緒が切れた清麿が布団を剥ぎ取り拳骨でガッシュを叩き起こす。ガッシュはあまりの痛さに悶絶し、滝のような涙を流していた。

 

「ヌオオオ、あんまりなのだ!!恵殿に言いつけてやるのだ!!」

 

「やかましい!起きねえのが悪いんだろうが!!!」

 

閻魔のような形相の清麿を前に、転がってティオの布団に侵入するガッシュ。プニプニという感触がティオを襲った。

 

「あんた何勝手に、人の布団にはいってるのよ!?」

 

「清麿の拳骨、勢いが強すぎなのだ!!

 

二階が騒がしくなる。久しぶりの喧嘩だったが、それもまた懐かしい。しかし直後…

 

「こら、喧嘩する元気があるならすぐ降りる!ご飯冷めちゃうよ!?」

 

(‥‥!?)

 

「もう7時過ぎたよ、早く!」

 

階段越しに恵から叱られ、3人とも怒りを忘れて下へ降りるのだった。

 

 

『頂きまーす!!』

 

全員が揃い、ようやく朝食がスタートした。ガッシュ達が人間界にいた時の食器も、当時のままちゃんと残っている。

コーヒーをすすりながら恵はガッシュ達に目を向けた。

 

「全く、ご近所さんに聞こえたらどうするのよ…!?それくらいは考えなさい?」

 

『ごめんなさい(なのだ)』

 

「朝っぱらから怒らせるなよ、言わんこっちゃねぇ」

 

「清麿も清麿で、あれくらいで短気を起こしちゃダメ!ミイラ取りがミイラになっちゃ意味ないでしょ?」

 

「すみませんでした…」

 

「素直でよろしい!」

 

お小言を前に神妙な3人が恵にはちょっぴり可愛く思えた。ガッシュ達も激怒した清麿を抑える方法を身につけていた恵に感心しきりである。

 

(あの状態の清麿は母上殿や私ですら抑えられぬというに、恵殿はすごいのう。清麿を知り尽くしておるのだ)

 

(清麿が尻に敷かれてる…。もはや夫婦じゃない♫)

 

「…今日の予定なんだけどさ、最初に遊園地に行って、その後で俺の家に行くってのはどうかな?」

 

雰囲気が戻ったところでそれとなく提案する清麿。

 

「いいわね、それ!」

 

「中学校と公園にも行きたいのう。」

 

 

「お前とティオは夕方には魔界に戻らないといけないんだから、あんまり遊びすぎて仕事に支障きたしちゃマズイだろ?」

 

「私もお義母さんに教えて欲しいものがあるの。だからまたこっちに来た時にしよっか?」

 

「ウヌゥ。そうであるなら仕方ないのう」

 

清麿にはともかく恵にまでそう言われると、ガッシュも引き下がらないわけにはいかなかった。

 

「恵は良いママになれるわね。ずっと一緒にいた時からそうだけど、お姉ちゃんって感じがしなかったもの!」

 

ティオの発言に動揺した清麿と恵は顔を真っ赤にして箸を進めた。

 

「ふ…、2人とも早く食べちゃいなさい!遊園地混んじゃうよ?あ、清麿。パンのカケラくっついてる…」

 

「あれ?気づかなかった!ありがとう」

 

(家族を持つというのは難しいものだのう)

 

ガッシュは内心そう思ったが、そんな2人がとても羨ましかった。

 

 

 

電車とバスを乗り継いでモチノキ遊園地にたどり着いた4人はフリーパスを購入した。恵は変装用の眼鏡に髪どめ、清麿はニット帽にサングラスを着けている。サングラスは高校生最初の誕生日に恵からプレゼントされたもので、清麿にとっては大切なものの1つだった。

 

「清麿のサングラス、やっぱり格好いい♫」

 

「ありがと。高校の頃からつけてるけど恵のセレクトはさすがだな!」

 

「何のっけからいちゃついてんの?先に行ってるよ!」

 

ティオが2人に大声で呼びかける。子供のようにはしゃぐ彼女の姿はあの頃となんら変わっていなかった。

 

4人のお目当ては、遊園地名物のジェットコースター。数年前はガッシュ達の身長が規定に達していなかったので乗れなかったのだが、今回は小学校高学年くらいまで伸びたので念願叶って乗れるようになった。

 

初めての体験にガッシュとティオは楽しくなって歓喜の声を上げていた。ガッシュに至っては

 

「人間はすごいのう。このような乗り物を考えるとは流石なのだ!」

 

と褒めちぎるほどだった。

 

リニューアルしたお化け屋敷やコーヒーカップなど主要アトラクションを乗りこなし、残るは観覧車のみとなった。問題は一台に2人しか乗れないので、2組に分かれる必要がある。

 

(さて、どうするか)

 

思案にくれる清麿を見かねたガッシュが口を開いた。

 

「ティオと私が先に乗ってくるゆえ、清麿達はこのエリアにいてもらえぬか?」

 

突然の発言に驚いたのはティオである。

 

(まさかガッシュが!?あいつこんな気配りできるやつだったかしら!?)

 

「ヌゥ…、どうしたティオ?行かぬのか?」

 

照れくさそうにティオが答える。

 

「行くに決まってるじゃないのよ、にぶいわねえ!」

 

ガッシュはそれとなくティオをリードしていった。彼女の心臓が少し高鳴っている。

 

清麿達はそれを見て顔を見合わせ、2人に微笑みを向けた。

 

 

ガッシュ達は向かい合って観覧車に乗り込んだ。観覧車の窓から全体の景色が一望できる。

 

「夜ならもっと美しいであろうな」

 

「それねぇ」

 

2人は他愛ない会話をして、残り後半分になったところでティオが話を切り出す。

 

「ねぇガッシュ。アンタ昨日あたしが行ったこと気にして、清麿達を2人っきりにしたの?」

 

「いいや、そうではないぞ。ティオ」

 

即答だった。

 

「ティオと一緒に乗りたかっただけなのだ。魔界で私は公務、ティオはモデルとプロデューサーで忙しいゆえ、2人で遊ぶ機会もめっきり少なくなったからのう。王としてではなく一緒に歩んだ友として遊びたかったのだ」

 

ガッシュはにっこり笑うとまた景色を眺め始めた。ティオはそんなガッシュを見て顔を赤らめ、心の中でつぶやく。

 

(バカよ…。大バカ…)

 

やがて観覧車は元の位置に戻っていった。

 

2人は興奮冷めやらぬまま清麿達のところへたどり着いた。

 

「今度は私たちか…。行きましょ♫」

 

「よし、行くか!」

 

「2人ともゆっくり楽しんで!」

 

二人が観覧車に乗ろうとしたその時、

 

‘’プツリ‘’‘という音とともに停電が起きてしまった。園内は騒然としている。

 

(これは一体…)

 

状況の整理をする間もなく、ライオンのようなたてがみの青年が姿を現した

 

「スパルク!」

 

ボール上の電球が現れ追尾する。姿からして人間ではなかった。

 

「まだ魔物の生き残りがいたの!?」

 

「魔本が燃えた状況でどう戦えってんだ!?」

 

動揺する清麿達を尻目につぶやくガッシュ。

「インプットなのだ…」

 

(!?)

 

「お主がこれまで唱えてきた呪文がインプットされておれば戦える。まずは観客の動揺を抑えねば!」

 

動じず的確な答えを見出したガッシュに清麿は頼もしさを覚えた。

 

(さすが魔王に登りつめただけあって采配が冴えてやがる)

 

顔を上げて目の前の敵に向き直った。

「任せな!いつも通り手綱は引いてやるぜ!ザケルガ!!」

 

一方向に電撃が照射され、スパルクの球は相殺された。

 

「なるほど。君が…?」

 

青年は不敵な笑みを浮かべた。

 

「スパルシルガ!!」

 

先ほどより強力な四角状の電撃がガッシュに向かって放たれる。

 

「ラシルド!」

 

しかしスパルシルガの威力は凄まじくラジルドにヒビが入り出した。

 

「ザクルゼムでラシルドを強化する!」

 

電気技を強化するザクルゼムのおかげでなんとか防ぐことができた。

 

「スパルク!」

 

「何っ!?」

 

先ほどより威力が底上げされていた。清麿はガッシュを空中に放り投げる。

 

「ザケル!!」

 

「スパルシルドン!!!」

 

避雷針が三つ現れてザケルを吸収した。吸収された電圧はガッシュに向かって飛んでいく。

 

「ぐあぁ!?」

 

電圧のダメージがガッシュ達を襲う。

 

「そのインプットが確かなら…、恵!」

 

「ええ、いつでも行けるわ!」

 

ティオ達が援護に入ろうとするが、それを清麿が遮った。

 

「ここは俺たちに任せてくれ。絶対に勝ってみせる」

 

「でも、ガッシュ…」

 

「この程度、乗り越えられねば王とは言えぬ。ティオ達は下がっていて欲しいのだ。」

 

恵は決心したようにティオに向かい合う。

 

「ティオ、ここは二人を信じましょう。私たちができることは他にあると思うから」

 

反論しかけるティオだったが3人の気迫に押され、恵の後を追って走り出した。

 

「‘’答えをだす者‘’の力は良いのか?」

 

ガッシュはティオ達が離れたのを見届け、清麿に尋ねた。

 

「その力に頼っちゃいけないと思ってる。高校の時仲間に出会い、恵を護ろうとしたときも自力で切り抜けたんだ。何かにすがらなきゃ何もできねえ奴に成り下がっちゃ勝てるものも勝てねえんだよ。それより目の前の敵に集中しろ。来るぞ!」

 

「終わりだ。ディオガ・スパルク!」

 

(これが最大呪文か…バオウ・ザケルガでは周囲に被害が出てしまう。なら‥!」

 

「テオザケル!」

 

ザケルガを凌ぐ電撃の嵐がディオガスパルクを打ち消した。

 

「これは、吸収が効かない!?」

 

凄まじい爆発音とともに青年は倒れた。

 

「フフフ、魔王よ。さすがだな。しかし冥王には勝てない」

 

『何だと?』

 

「私は、ランスロット」

 

ランスロットと名乗ったたてがみの青年はそう告げると消えていった。

 

「随分と鍛えたようだのう、清麿。バオウを出さずに済んだのだ!」

 

「今回は…な。冥王ってことはさらに魔物がいるんだろう?」

 

「冥界と魔界は違うのだ。古文書に書いてあったがのう。魔界と人間界が制圧される危険性もあるのだ。だが、大規模な戦争にしてしまえば、せっかく築いた平穏が…」

 

不安げなガッシュを見て優しく肩を叩く清麿。

 

「今のお前ならきっと良い方法を考えることができるはずだ。また一緒に強くなろう。護るんだろう、俺たちにとって大事なものを!?」

 

「ウヌ…そうであった。また力を貸して欲しいのだ!」

 

2人はティオ達を探しに向かった。

 

ただ逃げるだけでいいの、私たち!?」

 

不満そうに尋ねるティオだが恵が動じることはない。

 

「逃げるんじゃない、原因を突き止めるのよ?ガッシュ君達は例え何度やられても立ち上がり、最後には勝ってきた。それは私達が1番間近で見てきたでしょう!?」

 

走っているうちに電線のあるところまでたどり着いた。

 

電線の一部が見ると一部が激しく損傷していた。

 

(聞くかどうかわかんないけど、賭けてみるしかないわね)

 

「ティオ、電線の穴に向かってサイフォジオを投げて!」

 

回復技であるサイフォジオを電線に投げつけ、その治癒力で電線を元に戻した。

 

「まさか、人以外にも効くなんて…」

 

すると園内の電気が復旧したようで活気が戻った。そこへガッシュ達が合流する。

 

「大丈夫か、2人とも?」

 

「うん。遊園地も元に戻ったわ!」

 

観衆は喜びの声をあげた。

 

「ありがとうなのだ。流石ティオ達なのだ!」

 

しかし、途端に辺りがざわつきはじめる。

 

「…おい、あの女の子アイドルのメグちゃんじゃないのか?」

 

「え‥?じゃあ隣にいるのって彼氏の高嶺博士!?」

 

緊急事態とはいえ、変装用のアイテムを取ってしまった2人はゾッとした。しかし…。

 

「あたしのパパとママね、2人のそっくりさんってよく言われるの!ね!?」

 

笑顔を浮かべたティオがわざと大声を張り上げて清麿達の袖を掴み、ガッシュに目くばせをする。

 

「ウ…ウヌ、そうなのだ!父上も母上も有名人に似ておるとはすごいのう!」

 

「パパ〜、いっぱい遊んで疲れちゃった。おんぶしてー!?」

 

2人の突然の演技に清麿達は唖然としたがすぐに察してアイテムをつけ、話を合わせる。

 

「バス停までは自分で歩こうね?」

 

「お母さんの言う通りだぞ?そうだ、お昼ご飯食べに行こうか!頑張って歩いたらがっつり食わせてやるぞ?」

 

『やったー(のだ)!!』

 

「ぶつかっちゃうから、走らない!」

 

抜群の演技力でその場を離れ、4人は駅に向かう。

 

(観覧車ラブラブ作戦はお預けみたいね)

 

ティオは心の中で残念そうにしながらバス停に乗り込んだ。

 

バスに乗ってモチノキ駅から歩いて5分で商店街を抜け、町外れにある清麿の実家にたどり着くと、清麿の実母である華が出迎えてくれた。彼女は清麿が恵と同棲してから実家を改築して、平日は食堂と雑貨屋を営んでいる。

 

「恵ちゃんに加えてガッシュちゃんとティオちゃんまで、嬉しいわ〜!」

 

「母上殿、ご無沙汰していますのだ!!

 

「お久しぶりです、華さん!」

 

華が料理してくれた特製のお昼を食べながら近々訪れるだろう新しい戦いの考察を始める清麿。表情もこわばっていた。

 

「清麿、食事の最中に辛気くさいこと考えるのはやめなさい!」

 

「そうよ、せっかくのお料理が不味くなっちゃうわ。」

 

見かねた華と恵に2人がかりで注意され流石にタジタジになる。

 

「ハイ、ガッシュちゃんとティオちゃんにサービスよ?」

 

しばらくすると華がガッシュの好物であるブリとティオの好物であるシーチキンを運んできた。

 

『ありがとうございます(のだ)!』

 

一心不乱に食べ進める2人の様子を見て、清麿にも自然と笑みがこぼれた。

 

「その顔が1番素敵よ♡」

 

彼の表情の変化を察した恵はにっこり微笑んだ。

 

 

「恵ちゃんには清麿のことで迷惑かけちゃって…。本当にありがとうね?」

 

「いえいえ。私の方こそいつも助けてもらって、芸能界で頑張ってるのも清麿君のおかげなんですよ」

 

「良かったわぁ〜、そう言ってもらえて!清麿、早く結婚式の日にち決めなさいよ!?」

 

華の‘’結婚‘’発言に横を向いて吹き出す清麿と、顔を真っ赤にする恵だった。交際以前から華は清麿と恵の交際を予感しており、イギリスにいる清麿の父・清太郎にもこっそり手紙に付け足していたほどだった。

 

食事が終わると、ガッシュはティオ達に冥界の戦士との戦いについて説明を始めた。場所はいつもいた清麿の部屋である。

 

「ランスロットという奴の言うことが正しければだ。多分ボスは冥王ということになるな」

 

「つまり、まだ部下が何人かいるってことね?」

 

ここでガッシュは自分なりの構想を口にした。

 

「『戦争』ではなく、『試合』で雌雄を決すれば良いと思うのだ。魔本は持ち込めなくなってしまったが、術自体がインプットされておれば問題はないであろう?冥界の者達と雌雄を決するには1000年前の魔物達やファウードの時と同じように仲間を募るしかないと思うのだ」

 

ガッシュの構想に感心する3人。出来る限り被害を少なくしようと、ウィーランの話を聞いて以降必死に考えたものだった。

 

「なんだかガッシュ君、清麿みたくなったわね」

 

「でもあたしたちだけじゃ心ともないわよ?」

 

「それは魔界に戻った後に状況を皆に説明すれば良い訳だしな。俺たちもフォルゴレやサンビームさん達に声をかけてみるよ。勝とうぜ、みんな!」

 

『えぇ(ウヌ)!!』

 

4人は決意を新たに作戦会議を終えた。

 

夕方になりタイムリミットを迎えたガッシュ達は、近日の再会を誓って魔界に戻っていった。

 

清麿達も自分たちが暮らす家へ戻り、明日からの仕事の準備をすませる。

 

「あいつら、予想以上に成長してたな。」

 

「えぇ。魔界でみんなが安心して暮らせるわけね。」

 

「ごめん、また戦いに巻き込むことに…」

 

しかし人差し指で遮られる。

 

「清麿、私にいつも言ってることはなんだっけ?」

 

「ああ、正しいと思ってやったことに謝るのは無し…だった」

 

「私は清麿にとって何?」

 

「え?もちろん、俺の愛する…恋人だよ。たった1人の」

 

「恥ずかしがらないで言えば最高だったのに…。」

 

聞こえないよう、ポツリと呟く。

 

 

「それじゃ、私が愛するあなたと一緒に戦うのは当たり前だと思わない?」

 

(…?)

 

「私達の心はいつだってひとつよ。私とティオの術でみんなをバックアップする。守りと援護は専売特許よ?」

 

「もちろん、また頼りにさせてもらうよ!」

 

 

清麿は恵の言葉を聞き、不安がかき消されたような気がした。そして、彼女には敵わないとも改めて思った。恵は続ける。

 

「一応言っておくけど、無理のしすぎはダメだからね?一回それで死にかけたでしょ?あなたがいない人生なんて、私は嫌!善処じゃなくて‘’絶対‘’だからね?」

 

清麿は、ファウードを止めるためリオウ達と戦った時に心肺停止になったことがある。必死にサイフォジオを唱えた時のことを思い出し、恵の声色も変わった。

 

「わかった。休める時にはちゃんと休むよ」

 

「‘’約束‘’よ?ダメだと判断したら引きずってでも休ませるからね」

 

清麿はしっかり目を見て恵の頭を優しく撫でた。そして心の中で自分自身に誓いを立てるのだった。

 

(ガッシュ達が頑張ってるんだ。俺ももっと強くならないとな‥)

 

 

 




今回も閲覧ありがとうございます。

反省としてはバトルシーンが雑であっさりしたものになってしまったことですね。

ただガッシュとティオの心の揺れ動きは頑張ってかけたかなー?と自画自賛しております。

次回はLEVEL4!ガッシュが魔界で仲間探しに動きます。「このキャラクター出して」って要望などあったらお寄せくださればさいわいです

それではまた次回もよろしくお願いします!


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仲間を求めて〜パートナーと仲間たち
LEVEL4 覇王ブラゴの誇り


==魔界==

王宮

 

帰還したガッシュとティオは、冥界に関する情報収集と仲間探しに努めることにした。とは言ってもガッシュは魔王としての公務、ティオはモデル兼プロデューサーなど互いに仕事を最優先にする必要があるため、時間は非常に限られていた。

 

「どうかなさいましたか陛下、筆が止まっておりますぞ?」

 

アースに注意されるのだから自分でも気がつかないくらいに気が気ではなくなっているのがわかる。いつもであれば前日に嫌なことがあってもみんなのためにと集中できるというのに、今日はなぜやら力が入らない。

 

「すまぬ。ありがとうのう、アース」

 

ガッシュは再び筆と印鑑を持つ手に力を込める。戦うと決めたからこそ、迷っていてはいけない。

 

『優しい王様』としての道のりは始まったばかりなのだ。ガッシュはそう自分に言い聞かせた。

 

ようやく仕事が落ち着きひと段落していた時のこと、通信機のバイブレーションが鳴り出した。

 

(これは!?)

 

ガッシュが応答のボタンを押すと、荒い息遣いが聞こえてきた…。

 

「ガッシュ・ベル…!!」

 

声の主は魔獄にいるブラゴからだった。

 

 

「情報を…よこせ。冥界の事について、聞かせろ…!!」

 

鬼気迫る様子である。もともと外見や声にも威厳がみなぎるブラゴではあるが、いつものそれとは全くもって違っていた。

 

「ブラゴ…お主もしややられたのか!?」

 

「やられた…?お前も奴らと出くわした口か?ならとっとと…」

 

執拗なブラゴの様子に恐れることなく現段階で知り得た情報を全て伝える。ブラゴは息継ぎをしながら聞いていた。

 

「ではお前が人間界で住んでいた土地にも潜入したということか?俺が戦ったのは、モルドレッドとかいう奴だ」

 

モルドレットは、緑の髪ウサギのような耳を生やしていた。ブラゴとモルドレットの戦闘はガッシュ達が魔界へ戻る当日の昼下がりに行われていたという事になる。

 

==魔獄==

 

魔境編(アニメオリジナル)の元凶であるグリサがモルドレットの術の前になすすべなく倒れる。

 

「…この私が、敗れようとは…」

 

グリザの様子を見たモルドレットは、勝ち誇ったようにグリサを見下ろした。

 

「体が大きくなってもこの程度か…。いいだろう。そろそろ終いにしようか」

 

不敵に笑うモルドレットの姿にブラゴは動じる様子すら見せない。

 

「何者だ?そこいらの雑魚とは違うようだが…」

 

「貴様、見る目はあるようだな」

 

息を吐くことも許されない緊張感が辺りを包んでいる。モルドレットは一本の長い棍棒を取り出した。

 

「片付けてやる…レイス!」

 

数発のレイスを打ち込むが、モルドレットは不敵に笑う。

 

「ドラグロン!」

 

モルドレットの棍棒が伸びて、レイスを打ち消した。

 

「ドラグレア!」

 

オレンジのまばゆい光がモルドレットを包む。目にも止まらない速さで、ブラゴの近くにまで距離を縮めた。

 

「速さだけはなかなかだな。アイアン・グラビレイ!」

 

無数の重力波がモルドレットに襲いかかる。しかしダメージはそれほど見受けられない。

 

「ギガノ・ドラグ!」

 

モルドレットが棍棒を振り回し、火の輪を作り出した。

 

ファイア!

 

合図とともに火の輪がブラゴに直進した。防御が間に合わずダメージを受ける。

 

「魔王と対をなす覇王も、所詮この程度か…」

 

勝ち誇るように、ドラグロンの連撃でブラゴを追い詰めていく。

 

「これは、奴を動かすまでもない。ラージア・ドラグーン!!!」

 

残像で長く、太くなった棍棒を作り、ブラゴめがけて殴り倒す。流石に勝負あったかと思われた時だった。

 

(!?)

 

‘’‘ガシッと言う音が響き、ブラゴのヒザ蹴りで棍棒の本体が吹き飛ぶ。

 

「棒術の使い手とは飽きるほど闘ってきたんでな…。何発かもらっただけで手の内がわかるんだよ…!」

 

「負け惜しみとは見苦しいものだ」

 

「ほざけ、リオル・レイス!」

 

棒状の重力が、モルドレットの腹を貫通した。もんどりうって倒れこむ。ブラゴはその隙をついて手に力を蓄えた。巨大な重力の塊が出来上がる。

 

「魔物を舐めるんじゃねえぞ…。ディオガ・グラビトン!!!」

 

モルドレットはとっさに避けて破壊力を分散させた。凄まじい爆発音が響く。

 

「面白いな、ブラゴとやら。認識を改めよう。しかし次に勝つのは我々だ!」

 

モルドレットはそう言ってその場を去っていった。勝利したブラゴもダメージは大きく身体中に傷ができていた。

 

(冥界だか何処だか知らんが、俺にここまでの傷を負わせた代償は高くつくぞ。貴様らのいいようにはならん、決してな)

 

「では共に戦ってくれるのだな?」

 

話を聞き終えたガッシュは再び念を押す。

 

「お前らと組むなどむしずが走る。ただ、目的が同じだけだ」

 

「下につくつもりなどない…と言いたいのであろう?」

 

しばしの沈黙が流れ、再びブラゴが口を開いた。

 

「全てが片付いたら、もう一度お前と戦わせろ。勝敗が五分で決着がついていない」

 

「ブラゴ殿、陛下に対して不敬で…」

 

アースが割って入った。しかし言い終わらないうちに、

 

「お前のような犬に用はない」

 

と凄みを帯びた声で反論される。ガッシュは条件を受け入れることにした。

 

魔王・ガッシュと覇王・ブラゴにティオを加えた魔界側は更なる戦力の補強に努めることとなった。

 

 

 

==冥界==

 

きらびやかな衣装と王冠を身にまとった若者が椅子に腰掛けた。

 

「モルドレットとランスロットを小手調べで行かせたつもりだったが、私側近を本気にさせ負かすとは…。魔物というのも相当侮れない種族かもしれん」

 

青年は呟くと従者を呼びつけた。

 

「モルドレットとランスロットに伝えておけ。生きて帰ってきてくれて感謝する。今しばらく身体を休めるようにとな」

 

「かしこまりました」

 

従者が下がったのを確認し、青年は1冊の書物に目を通す。ランスロット達が取ったメモが書かれていた。

 

(魔界以外で魔物が術を使うときはパートナーになる人間の力がいるらしいな。こちらも急がなければならんようだ)

 

書物を閉じて寝室へ戻った。

 

 

 




今回も閲覧ありがとうございます。

クリア編はしっかり見ていませんが、アニメオリジナルの異世界編は見ていたのでガッシュとブラゴの共闘は絶対に描きたいと思っていました。1日一本上げるつもりが大幅に遅れ、編集に編集を重ねて読みにくい点も多々あったと思います。申し訳ないです。


ブラゴが早期に仲間入りを果たし主力の3名が加入。そして冥界にいた青年は一体だれか?

次回も頑張って書きますのでよろしければご覧ください。


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LEVEL5 魔物が運んだ縁

ガッシュがブラゴを仲間に加えたころ、清麿の元にかつての仲間やライバルから連絡が入る。

日常パートが多いです


=人間界 東京==

 

魔界でガッシュがブラゴとの共闘を確約させていた頃、清麿は自身が通う東栄大学の屋上で 瞑想をしていた。『答えを出す者』の力に頼らずに勝つと決めた以上、心の力を持続出来るように長時間の精神集中をしていたのである。

 

(思ったよりも集中できている。身体にまだ感覚が染み付いていたんだな…)

 

確かな手ごたえを感じながら目を閉じて戦闘のイメージを続ける。海外を股にかけて死線をくぐり抜けた中学時代の経験が、清麿にとって確かな自信につながっていた。

 

研究中も、全体と細部をバランス良く考えながら行うようにする事で、穴のない作戦の布石にもなる場合もある。

日常生活そのものが修行と言っても過言ではなかった。

 

5時過ぎになって自宅へ戻ろうとした時、自身の携帯電話に着信が鳴り出した。見覚えのない番号である。

 

清麿は恐る恐る発信ボタンを押した。

 

「はぃ、高嶺ですが?」

 

「久しぶりね、赤い本の持ち主・高嶺 清麿」

 

声の主はフランスにいるシェリーであった。王座を賭けた最終戦以来、連絡が途絶えていた宿敵からの電話に驚きを隠せない。

 

「あの時以来だな…。突然過ぎて驚いたぞ?」

 

「昔話をしている暇はないの。急ぎだから手短に話すけど…」

 

(まさか告白じゃないだろうか?いいや、奴に限ってそれはないな)

 

「日本…。いいえ、あなたの住んでいるあたりでもいいわ。最近何か変わった事はなかったかしら?」

 

自分のくだらない予測が見事に外れ、胸をなでおろす清麿。

 

「信じられないかもしれないが、ガッシュが1日だけ魔界に戻ってきてな。その時にランスロットという奴とたたかったくらいだ」

 

「ガッシュが?」

 

清麿はシェリーに冥界の戦士のことを話した。

シェリーも、先日起こった水色の稲光について説明をする。

 

「あなたの言い分が確かなら、あの戦いをはるかにしのぐことが起こるかもしれないわ。何かあったら伝えてちょうだい。

それから…、私の友達が仕事の関係で日本にいるから、戦いに巻き込まないように協力して欲しいの」

 

シェリーが言う友達の正体はかつてゾフィスに操られていたココであることは清麿にも容易に想像できた。

 

通話を終えて黒いインスライド(モデルはMITSUBISHIのアウトランダー)に乗って自宅に着いた。高校在学中に免許を取得し、クイズ番組の入賞金で購入した愛車である。

車検に出して、今日戻ってきたので綺麗に磨かれていた。

 

今日は恵が人気音楽番組である『ウィークリー・ミュージック(モデルはご存知ミュージック・ステーション)』に出演するため帰りが遅くなることになっている。

 

カギを開けて家の掃除をしているとドアホンが鳴りだした。出てきたのは茶色い短髪に鋭い目つきをした青年である。

手には大量の食材を持っていた。

 

「オ〜ッス、清麿!!」

 

「泳太!?」

 

「愛しのメグちゃんじゃなくて、残念だったな。野郎2人ってのも、悪くねえだろ?」

 

やってきたのは清麿の高校時代の同級生であり、 窪塚 泳太だった。泳太は風使いの魔物・ハイドのパートナーであり、清麿がガッシュと出会ったばかりの頃に初めて戦った相手である。

それ以降はハイドの能力を利用して不良まがいな行為をしていたが、ガッシュ達との再戦でハイドとの友情や自分の小ささを痛感し、彼らを認めるようになった。

 

高校では清麿と同じクラスになり、パートナーになる前の境遇も似ていたことから意気投合。現在は陽気な性格と音楽センスを活かし、ラッパーとして都内で活躍している。

「話変わるけど、その食材どうしたんだ?」

 

「腹減ったし1人で食うのも味気ねぇからよ。男の料理で晩飯でも食おうと思ってな。メグに食わせたら喜ぶぜ?」

 

「お前が構って欲しいだけだろうが!!」

 

「BINGO!!」

 

やいやい言いながら2人で夕飯を作っていると、清麿の携帯が鳴り出す。今度は非通知だった。

 

「出てこいよ。鍋見とくから」

 

「悪い、頼む」

 

携帯を取り出し、リビングへ移る清麿。非通知からの着信は珍しいことだった。

 

「久しいな。清麿君」

 

「この声…。あんた、ナゾナゾ博士!?」

 

「左様。なんでも知っている不思議な博士だ。しかしながら、駆け出しの学者にタメ口を聞かれるとは随分なものじゃな」

 

博士は冗談めかしたように笑う。

 

「すみません…。急に博士から電話をいただいたくらいです。何か重大なことがあったって事ですか?」

 

博士の声からおふざけがなくなった。

 

「君は最近奇妙な奴らと一戦交えたようだね?」

 

「ええ。少しでも油断したらやられるところ…ってどこからその情報仕入れたんですか!?」

 

「‘’冥界の王‘’・アーサーとやらが私の夢に出てきてな、‘’人材を確保するにはどうすれば良いか?‘’とだけ聞いてきたのだ」

 

(アーサー…?)

 

話を整理するために目を閉じて、考えを巡らせる。

人材確保ということは、パートナーになる人間を探すことではないかと言う仮説が立った。

 

ちらりと目を横にずらすと、机の上にある

棚に一冊の読み物が目に留まった。

西洋の騎士達による冒険物語「聖剣物語」と題されたカラー漫画が机の中心に置かれている。

 

(俺達と戦った奴がランスロット…、リーダーがアーサー…。そうか!)

 

清麿の中で一つの答えが生まれた。

 

「推測ですけどおそらく仲間の名前は、ガウェイン、トリスタン、パーシヴァル、モルドレット、バハムートのいずれかがいるはずです。円卓の騎士、知ってますよね?」

 

「ああ、紀元前にヨーロッパで活躍したキリストの従者か…。全員で何人いるかはわからないがそ奴らが冥界を牛耳っていると言うことで間違いないか?」

 

「冥界と関わりがあることは確かです。こっちでも調査中なんですけどここまでしか…」

 

それを聞いた博士は顎をしゃくりながら答えた。

 

「いいや、そこまで行けば上出来だ。魔界にまで手が伸びるとなればガッシュ君達やキッドが…」

 

「あいつらなら大丈夫ですよ。もしもの時は力を貸して欲しいと言ってましたけど、もちろんそのつもりです!」

 

「はっはっは。さすが清麿君だ。私も出来るならキッドにまた会いたいものだ。最後になるが…」

 

力強い清麿の答えを聴き終えた博士の口調が意地悪そうなものに変わり、ニヤニヤと笑いだした。

 

「清麿君、最近小耳に挟んだのだが、ついに恵君と恋仲になったそうではないか?

遺跡での戦いから君達を見てきたが、夫婦のような仲の良さだったからなぁ。老爺心を働かせた甲斐があったよ」

 

清麿は顔を真っ赤にして盛大に吹き出してしまった。

戦いの期間中に泊まった先ではだいたい、清麿&ガッシュ、恵&ティオの2組が同じ部屋に必ずと言っていいほどあてがわれ仲間達によくからかわれたものである。

 

「今関係あんのかよ、その話!?」

 

「心眼で君たちのキスシーンも見たんだぞ?」

 

嫌な予感を覚えつつあえて訪ねた。

 

「本当にそんな能力あるんですか…?」

 

「ウ・ソ♡」

 

おきまりの展開にとうとう我慢ができなかった。

 

「いい加減にしろ、このホラ吹きジジイ!!!」

 

たまらず激昂しで通話は幕を閉じた。

 

 

料理作りが佳境を迎えた頃、収録を終えた恵が息を切らして帰ってきた。

 

「ただ今〜。ふう、やっと着いた!」

 

恵がフロアに着くと鍋いっぱいのカレーライスが見え、テーブルにはほうれん草とニンジンのお浸しが盛られていた。

 

「あら、美味しそう!?」

 

できの良さに目を奪われていると、ミキサーの音が響いた。

 

「お帰り、恵。もうちょっとでできるよ!」

 

キッチンから清麿が顔を出す。エプロンを羽織る彼の姿は滅多に見られないので新鮮な気持ちだった。

 

「良かったな〜、姫様プリンセスが帰ってきてよぉ!」

 

 

‘’黙っていろ‘’と言わんばかりに茶化す泳太をにらみ、仕上げを終えた。

 

ミキサーで作ったのはハチミツとレモンにリンゴ、ヨーグルトを合わせたドリンクである。疲労回復に最適な果物をヨーグルトと合わせて飲みやすくしたものだった。

今日は気分を変えて、和室で夕飯をいただく。3人の食器を動かす手が休まることはなかった。

 

カレーにはトマトとチーズが含まれており、ジャガイモの代わりにサツマイモとアスパラガスがある。野菜の甘さとルーの辛味が絶妙だった。

 

「カレー、美味しい!これ2人で作ったの?」

 

「ほとんど清麿がやったんだぜ。最近まで調理、壊滅的だったのにな〜」

 

「二言多い…!でもありがとうな。わざわざ」

 

ツッコミを入れつつも丁寧に礼を言う。それを聞いて泳太はニヤニヤと笑っていた。

 

「ありがと、清麿。疲れ、吹き飛んじゃった♡」

 

ウィンクしながら笑顔を見せる恵を見てちょっぴり頰を赤らめる清麿。しかし恵の喜ぶ姿は清麿にとっても幸せなことだった。

 

(この笑顔をを毎日間近で見れるって、ガッシュと出会う前は考えすらしなかったなあ)

 

 

悪がる恵を先に入浴させ、2人が片付けを済ませると泳太がリビングのソファーに寝転びそれとなく口を開いた。

 

 

「なぁ、あいつらどうしてるかな?」

 

「ガッシュとティオ、魔界から1日だけ戻ってきたぞ」

 

清麿の言葉に、泳太は驚きを隠せなかった。

 

 

「おい…、マジかよ。その情報たしかなんだろうな!?」

 

「この状況で嘘がつける訳ないだろ?」

 

泳太とハイドは1000年前の魔物、パムーンに敗北したことで脱落となって以降、音沙汰がない状態だった。

短い間だったとはいえ、苦楽をともにした戦友との再会は、泳太にとって願ってもないことだった。

 

 

「いい湯加減だったー。お風呂どうぞ!」

 

湯上がりの恵は程よい具合にはねた髪と、シャンプーの良い香りがしてどこか色気が漂っていた。

 

 

「メグ、ちょっと聞きたいんだけど?」

 

 

「どうしたの?」

 

「メグと組んでたティオって魔物が帰ってきたって今、清麿から聞いたんだけど、ハイドも一時的に帰って来れるのか?

 

 

「えぇ。ガッシュ君が魔界と人間界を往復できるトンネルを作ったみたいだけど、作動すれば帰って来れるかもしれないって」

 

 

恵は冥界との戦いのことを泳太に説明した。清麿からの補足も受け、闘志をみなぎらせる。

 

「許せねえ野郎だな。向かい風で追い返してやるぜ!」

 

「その時は追い風で勢い付けてくれよ?」

 

気合十分の泳太を見た清麿が力強く返事をした。

 

「おぅ、俺たちのすぐ横には女神様がいるからな!」

 

恵の目を見て格好つけた返答する泳太だったが、それを見逃さない清麿ではなかった。目の色と顔つきが悪魔のようなものに変わる。

 

「テメェ、どさくさに紛れて 人の彼女に何を…!?」

 

清麿の形相に何かを察した恵は、清麿の腕をひねる。合気道の経験者だけあって、押さえ方も完璧だった

 

「色目使ってもダメよ。なんてったって私にはたった1人の ダーリンがいるんだから!」

 

笑顔で寄りかかる恵に、清麿の顔が真っ赤になる。怒気はあっという間に消えていた。

即座に突っぱねられたものの、仲睦まじい2人の姿に、泳太は感心するばかりだった。

 

(さすが10年に1度のスーパーカップルってだけあって、プライベートはアツアツだな。あの戦いが、2人をここまで結びつけたんだよな…)

 

羨ましくおもいながら、家路を急ぐのだった。

 

 

見送った清麿は皿洗いを、その近くでは恵が洗濯の下準備をしていた。泳太にいじられっぱなしだったのか疲れ気味である。

 

「全く。あいつの女グセと調子にのるのはどうにかならねえのか?」

 

不満げにぼやく清麿にも恵が動じることはなかった。

 

「あんまり、いじめちゃダメよ?みんな私達のこと心配してくれてるんだから。こないだ言ったこと、もう忘れた?」

 

‘’いじめる‘’という単語に動揺しながらも、なだめられていくらか冷静さを取り戻す清麿。

 

泳太と豊永は高校で知り合ってから清麿と恵の仲をサポートしてくれたので内心では感謝していた。泳太達もまた、いざという時は清麿を頼りにしている。

 

それをよく理解している恵は、付き合い始めてからツッコミが激しい清麿をよく諌めていた。

 

寝る準備を済ませ、寝室へ入った清麿は恵に先ほどの電話の件を伝えた。

今日は恵に収録を頑張ったご褒美をせがまれて、2人そろって同じベッドに並んでいる。

 

「あの2人なら、確かにあそこまで動くわね。」

 

「だろう?ガッシュ達の方でも色々動きは見せていると思いたいんだけど…。ブラゴやバリーのようなタイプは余程のことがない限り協力したがらないだろうな」

 

「確かにあの2人みたいなタイプはそうかもしれないし戦力的には痛手だけど、キャンチョメ君やウマゴン君達がいるんですもの。きっと大丈夫よ!」

 

「そうだな。泳太の奴も張り切ってたし、ガッシュもあれだけ頑張ってるんだ。今は俺たちができることをやろう」

 

清麿が決心したとき

 

「えぃっ!」

 

(!?)

 

‘’ムニュッ‘’という柔らかな音と共に清麿の顔はGカップはあるであろう恵の胸に埋まっていた。顔を真っ赤にすると恵は嬉しそうに笑っている。

 

「\\\\びっくりした\\\\」

 

「隣で寝るの久々だから嬉しくなって…。そして美味しいご飯のお礼!」

 

「窒息するかと思った…」

 

「ごめんね。でも、正直どうだった?」

 

少し顔を赤くしながら返事をする。

 

「相変わらず温かくて、柔らかかった。」

 

「清麿以外にはこんなことしないし、したくもないんだから…。シェリーから電話きたって聞いた時は一瞬疑っちゃったのよ?」

 

それで自分以外の女性に心が向かないようにしたのかと清麿は察知した。そして恵の髪を優しく撫でる。

 

「俺が好きな女の子は後にも先にも恵だけだから心配するなよ。他の女子と友達以上にはならない」

 

「本当?」

 

甘えた声でささやく恵が何を求めているかを清麿はすぐに理解したのか、ちょっぴり顔を赤くした。

覚悟を決めるかのように小さく息をして目をつむり、彼女の唇に優しいキスを返して抱きしめる。

 

数秒後、唇を離して目を開けた清麿が見たのは、ニッコリ微笑む恵の姿だった。

 

 

「合格♡だいぶわかるようになってきたね」

 

「お気に召したようで何よりです、 お姫様」

 

「付き合い始めの頃が嘘みたい!」

 

「研究済みなのさ、喜ばせるための方法はね。」

 

研究者らしい返事をして、清麿は笑みを浮かべる。しかしやり取りはそれで終わらなかった。

 

「それ、他の女の子にも言ってないわよね?」

 

「口が裂けても恵にしか言えません。だって…」

 

(?)

 

「なんでもない。」

 

「ずるいじゃない、教えてよ〜!!」

 

顔を真っ赤にして布団に潜ったが、すぐに恵に捕まった。彼女のいたずらな笑顔が向けられる。

 

 

戦いがあった5年前は、このような台詞が自分に言えるはずもなく全身が真っ赤になって動揺するだけだった。

 

しかし付き合った事でそう言った口説き文句を言える自分が恥ずかしくもあり、それだけ恵に素直に接することができるようになったのだと清麿自身も感じていた。

 

あの時は仲間としてのみだったが、今は言葉に出せなくても最愛の存在としても隣にいる。

 

 

互いの温もりを感じながら、愛し合う2人は

隣同士でぐっすり眠った。

 




今回もご覧いただきありがとうございます。

最後のシーンは2人がイチャイチャしてるシーンにちょっとサービスを入れてみました(でも2人が言わないセリフもありますが)。

ナゾナゾ博士の隠れた思いやり(?)や敵リーダーの名前明かしなどを書いてみましたがアーサーはただの敵役として書きたくないという気持ちがあります。

泳太は神谷浩史先生が担当されてましたがもう少し活躍して欲しかったですね。

次回は魔物の中でインパクトのあったあのお方を出してみたいと思います。

仲間探しはまだ続きますよ!


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