私は護る小人を (丸亀導師)
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設定(ネタバレ注意)

ゲートの登場人物の設定はアニメ版を参照。
一部改変有り。


輪の都の騎士ウェルス

 

身長186センチ

 

性別

年齢

少なくとも80万年以上

 

細身であるが、決して痩せっぽちではない。

顔はジョン=ウィックのキアヌ・リーブス

 

ダクソ3輪の騎士シリーズ

なお胸部のリングが半分ずれていて部分日食のようになっている。

また、頭部は火継ぎの王シリーズの頭部に似た形状をしている。

 

経歴

灰の時代から存在していた小人の一人。

ダークソウルを見いだした『誰も知らぬ小人の右腕』

ダークソウルが封じられた人間とは違い、半分不死。

不死人とは違い殺されれば死ぬが、ソウルを奪われない限り復活し続ける。(ボスのソウルみたいに塊が残っていれば)精神が削れる事はなく、それゆえに恐ろしい。

 

小人がグウィンから恐れられた原因を作った者の一人。

彼の放つ奇跡は、奇跡にあらず。呪術も魔術もまた同じく。

 

エルフたちとは浅からぬ縁がある。

 

武器

 

何の変哲もない輪の騎士直剣(鍔の部分に変な形がない。)主人公が最初の火の分け与えられた力ではなく、ダークソウルによって戦闘を行っており、様々な属性へと剣を変化させる。(グウィンの特性、イザリスの魔女の特性、ニトの特性等)なおダークソウルの力であるため、雷は黒色の光を帯び、炎も黒色を帯びる。

それにともない、見かけ上よりも攻撃範囲がかなり広範囲になっている。

 

盾は龍狩りの大盾を取り回し安く小型化したものを装備している。そのためパリィを中心とした戦闘を行える。

重量はそれほど無いが、扱うには並大抵の技量ではそれを扱うことすらかなわない。また、ダークソウルを使用する事により、多くの属性に対して高い防御力を誇る。

 

 

 

世界

ダークソウル3で火継ぎを終わらせた後の世界、始まりの火が燃え尽きた後、完全なる暗闇が世界を包んだが、その闇の正体は、始まりの火によって生まれたダークソウルに他ならない。(と言う解釈をした。) ダークソウルが薄くなり、世界は灰の時代になるかと思いきや、空には星が輝いていた。

そう、灰の時代とは単に普通の世界であったと言うこと。

古龍はそのなかで、絶対的な地位を確立していた中、突如始まりの火が灯り、その力に魅了されたもの達が現れてしまった。

幻を現実とするものたちが。

古龍達は世界を元に戻そうとしただけ。

 

火によって幻であった者が世界に解き放たれ、世界は混沌となる。火無くなってもなお幻は世界から無くなる事はなく、この世界の秩序として定着してしまった。

 

だが、その幻の中心であった北の大陸は灰に覆われ、もはやなにもなくなっている。(建物以外)

 

エルフの設定

 

エルフは火の時代初期にとある龍の実験によって生まれた存在。

不死の研究の中で枷を外された小人の中で、長く生き非常に生命力が強い種族として誕生したが、実験動物として多くの者が殺された。

しかしながらある時、ウェルスが現れ灰の大陸の森の中に隠れ里を作りそこで、生きながらえさせた。

 

しかし、火の時代の終わりの近くでとある存在と共に現在のファルマート大陸(まだ人類がいない)へと逃げ延びた。

 

 

《奇跡》

 

【龍との対話】

古龍大戦のおり、神々と古龍シースは対話をするが、統一した言語を持たなかった。そこで、意思の女神グランの意思に直接語りかける術を記した物語。

【遠話】

神々の伝令に伝えられし、言葉送りの奇跡。名を剥奪された神が与えしその奇跡は、戦争では非常に重宝されたという。

 

《魔術》

【暗い奔流】

古龍大戦のおり、ウェルスが編み出したダークソウルを利用した遠距離用魔術。

未だ、ソウルの奔流が存在していない時代に編み出され、ソウルの奔流の元となった。

ウェルス本人のみが使用し、その威力は山おも破壊したという。

 

【結界】

魔術師マヌスが編み出した防御の魔術。それは非常に暖かく、まるで母の腕の中のような安心感と守りを体現する。その護りは非常に強固でそれを打ち破る術は、旧き神々の力無くしてはあり得ない。

龍達に怯える力失いし小人達に、希望の光を抱かせた。

 

【イザリスの火海】

大魔術者イザリスの産み出した、失われた火の魔術

火の魔術自体に熱はなく、現象だけが行われる故に痛みな無い。しかし、その威力は絶大でありこれにより古龍や灰色の大樹は、燃やし尽くされた。

 

 

《大樹の龍》

灰の時代、大戦が始まった当初、まだ小さく誰の目にも止まらなかった古龍。

肉体は岩のような樹で出来ており、炎と毒に弱い。

 

時が経ちその大きさはさながら大樹であった。動くことが出来ないこの龍は、強大なブレスでもって遠距離を制圧する。そういう種族特性を持つ。

末期に産まれた他の四足の龍を従えていた。

 

 

《火の亡霊》

その昔、神々の軍隊にあった銀騎士達の成れの果て。最初の火が失われし今、彼等の雷の力は失せ最早その存在意義は無いものとなった。

 

代わりに彼等は純粋な力ある亡者となり、火の残光を求め自らの守りし地をさ迷い続ける。それはまさしく呪縛霊の如く。

 

 

《覚者の慣れ果て》

とある宗教の覚者が、何者かにより変異させられ大樹と化したもの。永い年月が経る事により、覚者の意識は薄れ最早暴れる化け物である。しかしながら、それを限界まで抑え込んだ覚者により、この大樹は世界を覆うことはしなかった。

 

(容姿はガイアの自然コントロールマシンシンリョクを、木造にしたような感じ。)

 

 

 

『王達の首飾り』

 

それはそれは古い時代の首飾り。3つの指輪が付けられたそれには、非常に強力な力が施されていたと言う。

しかし、今それに力はなく何の加護も無い。まるで、何かが欠けているかのように。

 

 

 

帝国バラ騎士 アリス・コ・メドッソ

 

 

身長

177センチ

 

性別

 

年齢

20

 

容姿

 

ACE COMBAT 7

エイブリル・ミードを中心に若干腕が太くなっている。

 

 

経歴

 

ピニャ創設のバラ騎士団に所属する隊員の一人であり、幼い頃からのピニャの遊び相手。

身分は平民であるが、非常に豊かな教養を持ち騎士団の中でも信頼の厚い人物。

また武もかなりのもので、御前試合に出場したさいあと一歩で優勝できたほどの実力者。

 

というのは彼女のキャラ造りを踏まえたもので、実際は小心者で計画通りに物事を進めたがる慎重派。

おまけに実は第二の人生真っ最中の転生者。

 

名前の由来

アリスは適当

コはピニャとハミルトンに合わせて改宗したと言う設定。

メドッソは、元ネタのエイブリルが凄腕のメカニックであることから、同じメカニックのガンダムの

アストナージ・メドッソから引用

 

 

 

オリジナル都市

トゥンバレン、一回のみの登場。

ファルマート大陸の西端に位置する砂漠都市。

その立地の影響で、唯一、帝国が手を出せなかった国。

 

特産品の宝石特に石英の生産が最も多い。

 



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第1話 奇怪な騎士

拙い文章ですが、おおめに見てやってください。
なにせ、自己満足の類いなもんで。自分で描きたかったものも描けているのかわからない、そんな作者の作品です。

それでもよろしければ、よろしくお願いします。


「ねぇ!どうして?何故私達と一緒に来てくれないの?貴方達がここに残る必要なんて無いのに!!

貴方達が悪いんじゃない!神々が悪いのにどうして!!」

 

ああ、夢を見ているのか。久しく見ていなかった夢を、私は眠りについているのか、この不死人がおこがましくも小人と生者と同じように。

 

「我等が貴公等と行けないのは、我等の存在が危険だからだ。それに、ここで食い止めなければ時代の亡者は、君らのソウルを求め、追うだろう。故に共には行けぬ。」

 

彼女が私の体を正面から抱き締めた。

 

「貴方達は危険なんかじゃない、今まで私達を護ってくれたじゃない!絶対に帰って来て!!皆も!!必ず!!」

 

皆それを聞いて笑っている。

 

全員が同じように、返事をし『約束』をした。

 

必ず帰る』と。

 

 

―――――

 

 

《????年後》

《帝国領内直轄地森林開拓村近郊》とある女騎士

 

森の中を馬で駆けていく、まったくどうして帝国領、しかも直轄地で盗賊なんかが出没するんだ。

だいたい、帝国の近衛とか軍団はいったいアルヌスへ向けて何のために行軍をしているだ?

 

領内の治安を護るのが兵の仕事だろ?それをほっぽりだしてなんて作戦を出すんだ!

私達薔薇騎士団が、こうやって向かわなくちゃならないなんて、末期も良いところだぞ!

 

進行方向に黒煙が見える。村が焼かれているのだろう、急がねば手遅れかもしれない、しかし今ここで奴等を逃がせば次の被害者が生まれる。

 

殿下もモルト陛下へ治安維持の事を直談判しに行っていたが、それすら無視するほどのものが、アルヌスに有るというのか。

まったくもって気に食わない。

 

『キーン、カーン』

 

村の方から何やら剣を切り結ぶ音が響き渡って来る。先程の馬の足音しか聞こえないものとはうって変わって、その音がする。誰かが我らより先に到着し戦っている。

 

『あ゛あ゛あ゛ぁ゛お゛れ゛の腕がぁ゛ぁ゛』

 

今度は絶叫だ。だが、村人のものにしては現状を理解し過ぎているのでは?

 

「皆急ごう!村で何かが起こっている。被害が広がる前に!!」

 

殿下言われなくともわかっています。だけれど、目標を持たせるのは、皆の意識を一つにするので良いことですが。

 

私達が、到着する頃には剣騒は止み、血深泥の広場が見えた。幸いな事か、村人に死者はなく全員が村の外へと避難していた。そして、戦いを木の上から眺めていたようだ。

 

広場の中央に一人の人影がある。その鎧には返り血が付着することなく、まるで今出来たばかりの鎧のごとき輝きを放っているが、手に持つ刃には切り裂いたであろう血肉がべっとりとこびりついている。

肩で息をすることなく、奴は中央から我々を見ずに言った。

 

「ああ、敵では無いようだが、もし向かってくるというならば、相手はしよう。」

 

殿下が前へと出る。警戒されぬように、剣に手を掛けず。

 

「我が名はピニャ・コ・ラーダ、皇帝モルト・ソル・アウグスタスの娘にして、この薔薇騎士団の団長を務めている。貴殿の名を聞きたい。」

 

ゆっくりとこちらを見やる。

その顔は兜に隠れ、顔をうかがうことすら出来ない。

鎧は暗くまるで、闇により鍛えられたかのようなものだそして、中心には何かを模して描かれた《欠けた円》。その上から雪よけのように、羽織を着ていた。

 

「我が名はウェルス。輪の都のウェルスだ。」

 

輪の都?いったい何処の国だ?そんな国産まれて此の方聞いた事もない。だいたい、なんだ?輪の都なんて言うセンスの無いネーミングは、もっとましな名前は無かったのか。それとも何か特別な意味が有るのか?

 

「聞かぬ名だな、輪の都とは。いったい何処の国の都なんだ。」

 

さすが殿下、肝が座っていらっしゃる。そのお言葉を王位継承権でも言ってくだされば、我々は全力をもって支持しますのに。

 

「そうだな、ここより遥か北に有る国だとだけ言っておこう。」

 

あくまで秘密主義と言いたいのか、だが

「横から失礼しますが、北の国の方が何故我々の国の村を助けようとしてくださるのですか?」

 

「助けを求められて『嫌だ』というほど、心は荒んではいない。では、貴公等に聞きたい。帝国の民である賊と、村人の命どちらが重くより大切なのだ?」

 

「無論村人だ。我ら全員答えはひとつだ。」

 

「では、それと同じ事をしたまでよ。それよりも良いのかね?村人達が村に入りたがっているのだが。」

 

気が付くと周囲には、民が集まってきていた。

そんな彼等と目が合うと、皆口々にいう。『騎士様を、此の方を殺さないでくれ』と、そう。彼等は私達よりも、ただ一人のこの男のことを、心配している。

 

まるで、これではこちらが犯罪を犯しているようではないか、これではいけないだが、こういう時どうすれば良い。貴族出の私達にはこの、彼らの気持ちが良く理解できない。

 

そんな時、我々の補佐役であり教官を勤めていたグレイ・コ・アルドが前に出てきてくれた。

 

「我々は賊の討伐を目的に来ただけだ、ならばこの村を臨検し、然る後に話を伺うだけだ。それで良いですな。」

 

不満も無さそうに騎士は頷きながら

「良いだろう。」

と答えた。

 

これが私達とこの輪の騎士との出会いであった。

そして、イタリカでもう一度合うことになろうとは思いもしないのである。

 

 

《コアンの森・エルフ村》原作百数年前

 

「テュカ、テュカ起きなさい。テュカ。」

 

「う…ん?何、お父さん」

 

「大長老たちがこの村に来たみたいなんだけど、見てみないかい?」

 

「大長老?ってなに?」

 

「皆の大お婆さんだよ。」

 

「うん!行ってみる!」

 

夢かな?昔の小さかった頃の。お父さんの隣には、亡くなったお母さんもいる。これは…、あの物語を聞いた日かな。

 

『今日は子供達に昔話をしに来たんだ。私がまだ若く、百にも満たなかった頃の話を。』

 

皆真剣に話を聞いてる。私もしっかりと聞いているんだけど、小さかったからあまり覚えてない。そんな話を。

 

『そこは始まりの地、灰の森。旧き神々の寄る辺、全ての始まりを告げた場所。その大地にあった英雄たちの話さ。』

 

 

《ピニャ達が村に到着した同時刻》

 

『テュ…テュカ、起きなさい。もう朝は過ぎてるぞ!』

 

お父さんの声で夢から覚めた。あの後いったいどんな話が続いていたのか気になるけど、今は朝ごはん作らなくちゃ。

 

「珍しいなテュカが寝坊するのは。」

 

「私だってそういう時は有るの。それよりまだごはん食べてないでしょ、お父さんは全然料理出来ないんだから。」

 

この日、私は知らなかった。この後炎龍がこの村を襲うなんて。誰もわからなかった。この村が地図から消えるなんて。

 

 




感想、評価、誤字等ありましたらよろしくお願いします。


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第2話 すれ違い

あらすじ

帝国領内に輪の騎士が現れて賊を勝手に叩きのめした。

エルフの村は今日も平和だった。


みすぼらしくも、大きく威容を振り放つ王城にて、玉座とそれに俯く一人の騎士があった。

 

「我等の王よ。いかが致しましたか?」

 

「ああ、ウェルスよ良く来てくれた。我が盟友グウィンが、近々古龍狩りを行うそうだ。そこで、我々にも狩に参加してくれと頼まれた。君はかの龍との戦の折り、多くの龍を倒したのだ。君が行ってくれれば、必ずや成功するだろう。」

 

騎士は、彼の王へまるで絶対の忠誠を誓うように頭を垂れ、顔を見ずに答える。

 

「私は王のご命令に従うまで、貴方様より与えられしこの力(ダークソウル)、存分に奮わせていただきます。」

 

「期待しているぞ。貴公には、10の騎士と40の新兵を連れて行ってほしい。経験を積ませてやって来れ。頼むぞ」

 

「御意」

 

斯くして、騎士は軍を引き連れて神々の待つアノールロンドへと歩み始める。そして、知るだろう裏切りとは如何様な物であるのかを。

 

 

―――――

 

 

《薔薇騎士団のいる村》原作開始数日前

 

村のあちこちに有る賊の死体を、私達はせっせと片付けて行く。村人達も一生懸命になって、片付けをするのは当たり前だろう。自分の家の前にこんな死体の山があったら嫌だし、何より臭いしハエがたかってウジが沸いてるのなんて、見たい人はいないだろ。

幸いな事は、村人の死傷者は隠れる途中で、転んで脛を擦りむいた子供位だ。

 

一段落着いたところで、彼の騎士と殿下、そしてグレイが村長宅を間借りして、話をしていた。

何を話しているのかと言えば‥聞き耳を立ててみよう。

皆も気になっているだろうし。

 

「ですから、貴殿には是非とも帝国の騎士になって貰いたいのです。それができなければ、我が騎士団に入ってもらいたい。」

 

「私にはやるべき事がある。その使命を全うするまで、誰かの下に付くなどと云うことはしない。第一私にとっての王は、ただ一人を置いて存在しない。」

 

おお、あのモード(通称我が儘モード)に入った殿下に対して、確りと話をしている。これは期待できる方ですね。これは是非とも我が騎士団に入ってもらいたい。

元々この騎士団には、老兵とかもいるのだ。今更異邦人を入れたところで、殿下の噂にまた一頁追加されるだけさ。

 

「殿下、恐れながら申し上げますが、彼は異国の者。話を聞くに探し人が有ると言うではありませんか。一時的な協力関係だけで良いのではないでしょうか。」

 

うぉい。グレイ、そんな事を言わないでお願い。ただでさえ私達の戦力は少ないのよ。一人でも多くして、殿下の王位継承を手助けしなくてはならないのに、貴方って人は…。

 

「聞き耳を立てている部下の事すら察知出来ない者と行動を共にするつもりはない。村長!」

 

えっ(;´∀`)?私の事に気付いたの?マジで?私のせい?私のせいなの?

そんな私を余所に、村長へと体を向ける騎士。

 

「村長、短い間だが世話になった。皆によろしく伝えておいてくれ。何れまた来るやも知れぬと。」

 

「わかりました。あなた様のお陰でこの村は救われました。これは私共の友好の印です。受け取っていただきたい。」

 

村長が渡したのは、太陽のマークが着いたメダル?なのかしら?

 

「待ってくれ、私達と来てほしいのだ!!」

 

「残念だがそれは出来ない。他をあたってくれ。それでは去らばだ。」

 

ドアを開けて私の直ぐ横を通りすぎていく騎士が、やけに煤けているように見えたのは気のせいだろうか。

 

この後、領内のパトロールをしながら私は殿下に叱られつつも帰路についた。

まさか帰還後、アルヌスが大変な事になるとはこの時は誰も知らないでいた。

 

 

《同日・コダ村》

 

うーむ、うーむ、うん?こんな本持っておったかの~。

あっ、そう言えばワシがまだ若い頃に、師匠から寄贈されたものだったか。確か、古いそれはもう古い、魔術の事が記されている本だと言っておったか?

 

長いこと忘れておったわ。だが、何故今になって出てきたのか。それにしても、長いこと放置していたのに、虫食い処か劣化もしていないとなると、逆に興味が沸いてきたわ。

 

「師匠、師匠。ここにいましたか。

相変わらず汚い部屋ですね。」

 

「五月蝿いわい。ところでレレイ何か用があるのか?」

 

「帝国の騎士達が師匠に会わせてほしいと、言ってきた。」

 

何?ワシを賢者カトーと知っての事か?それよりも

「言ってきたと、何故過去形なんだ?」

 

「今は老衰で昏睡状態になっていると言ったら、落胆して帰っていた。」

 

「何をしとるんじゃ!!噂になったらどうするというんだ。」

 

「でも師匠は争い事を好まないから、別に気にしないと思った。それに、師匠も良い年なんだから戦になんて連れていかせない。」

 

まったくこういう優しいところが有るから、可愛いんじゃ。そうだ、せっかくだしあの本をレレイに託してみるかの?

「レレイ、お主に渡したいものが有るんじゃが。ちと此方へ来てくれぬか?ほら、この本をやろう。」

 

何かわからないから、少し興味を持っているな。

 

「この本はワシが若い頃師匠から授かったものだ。しかし、長い間忘れていて、つい最近見つけたばかりなんだ。しかも、中には古い言語で書かれた文字で、読むことも出来ないと来た。そこで、お主がこれを解読出来るのではと思ったのだ。ワシにはもう時間は無いからな、レレイが好きなときに解読してくれ。」

 

「ありがとうございます。確かに難しそうですが、古い魔術が書かれているのですよね?なら、見たくない訳がありません。」

 

ほれこの通り、レレイは興味が有るものにはとことん追求するクセがあるからのぉ。

伊達に幼き頃から、師をやっているわけではない。

しかし、帝国がワシに援軍要請でもしに来たか。何をしようとしているんだ、あの馬鹿どもは、まさか伝説に聞く異界の門を開くつもりではないだろうなぁ。

もしそうなれば、ワシにも考えがある。

少しずつ逃げる支度でもしておこうかの。

 

 

 

《数日後》

 

《イタリカ》

小さくもなければ大きくもない、帝国の一般的な街。

帝都ほどじゃないが、馬鹿にはできないくらいには発展してる。それに、食料が豊富にあって皆腹を膨らませる毎日だ。

 

さて、ここからが本題だ。最近帝国軍が大量の小麦、干し肉、ドライフルーツ、塩を買いに来た。

しかもその量が半端じゃない。

どこか大国とでも戦争をするんじゃ無いか、とか考えるくらいには、買い込んでいった。

 

商人連中は、その話で持ちきりだ。それだけじゃない、このイタリカの兵力も投入しようとしてやがる。

今の領主様がいなくなったらこの街はおしまいだなあ。

アハハハ…。マジでどうすんだよ。

皆この事態に何にも思ってないのか?可笑しいんじゃねぇか。

 

なあ、騎士さんよお願いだから俺たちを見捨てないでくれよ?あんたが何処から来たのか知らないけど、この街には今はミュイ様しかいないんだ。あんたならあの娘を助けられる。そんな気がするんだ。

 

っておい、いかないで来れ。「何が、他をあたれだ。」

他なんていないんだよ!

『ダークソウル』の『輪の騎士』みたいな格好してるんだから、きっと強いんだろ?

 

後日この男は路地裏で、変死体として見つかる。

普段からおかしな行動をしては、人を不幸にする厄介な口だけ達者な男だったそうだ。

 

 

……さらに数日後、帝国軍敗北の報告が来たとき、あの変人の予想は正しかったのだと、皆悟ったそうだ。




誤字、評価、感想等ありましたらよろしくお願いします。
次回、コダ村到達
君(炎龍)は生き残ることが出来るか。


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第3話 緑の人

オリジナルスペルは【】で、囲っています。


向こうから背の丈4mは有る大男がやって来た。

それに付き従うは、2mを大きく越える銀の騎士たち。

その中で金の鎧を纏う者は、彼の大男の副官か。

この未だ灰の時代の名残が残りし、龍の谷に我等と神々の軍が集結す。

 

「おお、ウェルス殿息災であったか。」

 

「これは????様それに、オーンスタイン殿。お元気そうでなにより。して、今回の龍狩りはどれを狩るのですかな。」

 

「ああ、あの山のように大きな龍を狩る。」

 

「腕がなりますな。皆良く見ておくように、これが龍狩りである。新兵の者は特に良く見ておくと良い。

では始めますかな?」

 

伝説に刻まれぬ龍狩り。その中に小人と戦神の友情がそこにはあった。後に起こる裏切りを知ってなお、その友情が消えることは無かった。

 

 

 

 

 

《コダ村 ウェルス》前話の数日後

 

ここまで来て痕跡が消えているとは、無駄足だったか?

だが、ソウルの反応はある。近くにダークソウルを宿すもの達がいるな。人数はそんなには多くはない、あの村と同じか、少し小さい規模の集落か。

 

取り敢えず、近隣の村へ行ってそこから探りをいれてみるしか有るまい。

 

暫く歩くと村が見えてきた。この村は違うな、ダークソウルを、持った者達はこの村にはいない。だが、何やら懐かしい雰囲気を醸し出す、物品が有るようだな。

 

村人達は私の鎧が珍しいのか、しきりに此方へ眼を送っている。声は掛けずらいだろう、なんせ完全武装の得たいの知れない騎士が、こんな村へ来るなど、盗賊か何かだと間違われても仕方がないと思う。

 

だが、私よりも遥かに目立つものがある。

そう、鉄の箱が勝手に動いているのだ。良く見ると、それには人が載っていてそれを操作しているように見える。

 

と、暫く村の入り口で佇んでいると、何やら防具を被った集団が此方へやって来るではないか、武器らしき物も見受けられるが、殺気は感じない。

寧ろ興味を抱かれているようだ。

 

その中の一人、非常に洞察力が優れていてスキが、有るように見えて無い者がこちらに質問をしてきた。

おそらくこいつが、隊長であろう。

 

「アナタ ハ ナニモノ? ナゼ ココニ」

 

なるほど本に言葉を訳したもの書き入れ、辞書を引きながら読んでいるのか。

不便だな。ここは一つ奇跡でも使うとするか?

信仰心はそれほど高くはないが、知恵の神が所持する権能くらいは模倣出きるだろう。

 

手に太陽のタリスマンを持ち、知恵の神の神話。

【龍との対話】を口ずさむ。

それにより、向こうには私の言葉が、私には向こうの言葉が一時的に理解できるようになった。

 

「私は輪の都の騎士ウェルス。今は訳あって放浪の旅に出ている。貴公等は何者か。」

おっ、男が困惑した顔でこちらを見ている。言葉がわかることに取り乱したか?いや、その程度じゃ狼狽えないようだ。

 

「あんた、どうやって言葉を翻訳しているんだ。」

 

「ちょっとした魔法のようなものだ。君と私の間しか、言葉が通じることはない。それとだ、この事は誰にも話すな。これは禁術のようなものだからな。それよりも、君は何者だ正直に話せ。」

 

「自分は伊丹耀司、ゲート、別の世界に有る日本国の自衛隊に所属している。階級は二等陸尉です。そうですね、同じ格好をしているものたちの百人隊長みたいなものです。貴方こそ、何者なんです?こんな凄い魔法を使えて、おまけに重装騎士じゃないですか! 」

 

うん?いったい何を興奮しているのか、騎士の装備はこれが標準ではないのか?

だいたい、これより薄くしたらドラゴン達の攻撃を万が一食らったとき、確実に死ぬだろうに。おかしなやつだ。

 

 

《同時刻》伊丹耀司

 

俺たちはゲートがある通称《アルヌスの丘》の周辺の勢力状況の把握のために、出された偵察部隊のうちの一つ

第三偵察隊だ。

 

俺たちは周辺の探索をしていたら、村を発見し、片言ではあるがファーストコンタクトでコミュニケーションをとることに成功した。のは、良いんだが…、直後村の外から一人の騎士が現れた。

 

物凄くガッチリとした鎧を着ていて、動き辛い筈なのにまるで意に返さぬように堂々と此方へ歩いてくる。

現状警戒するのが好ましいが、ここは交渉してみようと、試みたのがよかった。

 

彼は快く此方と会話するほど良いやつだった。

だが、それだけではない。なんと、魔法を使って会話すら可能になるという非常に嬉しい状況となっていた。

これは、凄いと。魔法が有ることに歓喜に震えた。

 

「ところで、君達は何処かへ向かうのかね?それとも、宛の無い偵察か?もし、宛がないのなら私も一緒に、付いていきたいのだが、なに同乗はしない私の足は一応あるからな。」

 

まさかの展開だな。悪いやつじゃ無いのは雰囲気的にわかるんだけど、駄目だな。

 

「いや、こっちも仕事が有るので、そう言うわけには。」

 

折れてくれるか?

 

「そうか、無理を聞いて済まなかった。私はこの村に数日厄介になろうと思っている。

もし、もう一度立ち寄る事があれば、もう一度お願いするよ。」

 

やれやれ、事なきを得たか。

さあ、情報収集も程ほどに次の村へ行くとするか。

 

 

《数分後》ウェルス

 

行ってしまったか。

 

その時、私の鎧の腕を引っ張る者がいた。

 

「ねぇねぇ、騎士様はどうしてここに来たの?」

それは少女だった。それだけじゃない、村の子供達が私の周囲を取り囲んでいる。

 

「あ~囲まないで、私はね、旅をしているんだ。帝国の騎士じゃ無いんだよ。宛は無い、そんな旅さ。」

大人達はどうして子どもを、得たいの知れない存在に近付けさせるのか。同じ得たいの知れない存在なら、見知った格好をした方がましと思ったか?

 

「騎士さん、じゃあ旅のお話しして!」

 

子どもは苦手だ。機嫌の取り方が全くわからん。

数万年生きてきたが、これだけは上手くは出来ない。

 

「わかった。じゃあそうだな。龍狩りの話でもしようかな?こんな所じゃなんだ、もっと聞きやすい場所にいこうか。良いですよね?村長。」

 

「ええ、あちらの空き家で。元々旅人ようの家屋なので。」

 

「かたじけない、さあ!行こうか?英雄譚でも話そう。」

 

後日彼等自衛隊が来た。ドラゴンが出たと。

胸の内にふつふつとやる気が満ちてくるのを感じていた。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

また、後ほどになりますが、主人公の設定を投稿します。


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第4話 騎士の誉れ

騎士の顔つきはジョン=ウィックのキアヌ・リーブス


「ハッハッハッ今回の龍狩りは骨が折れましたな。しかし、ウェルス殿、毎回思うがそなたのダークソウルであったか?それは非常に便利だな。」

「いやいや、器用貧乏なだけですよ。それよりも、私はこの事をグウィネヴィア様に話したいですな。」

 

周囲がざわつく、小人風情がグウィネヴィア様に直接合うなどと、等思っていたことだろう。

そこに、オーンスタインが割り込んだ。

 

「彼は????様の親友であり、ダークソウルの王の側近でもある。どこにも可笑しいことはないが?」

 

まだ、グウィンと誰も知らぬ小人が盟友であったとき、龍狩りの王と小人の龍狩りウェルスも親友であり、

オーンスタインは、それを近くでいつも見ていた、まるで監視をするかのように。

 

 

―――――

 

 

《コダ村》自衛隊コダ村へ帰還

 

『急げー、急いで荷物を纏めるんだぁ!嵩張るものは、置いていけ持てるものだけを持って急げ!』

 

昨日の夕方去っていった自衛隊が、今日の昼頃に帰って来た。ソウルを感じる少女を連れて。

彼女を見たとき、やっと見つけたと確信した。

 

ダークソウルを内側に内包する存在、それは人間たちではない、彼女たち長寿の種族。彼女たちこそ小人の末裔、かつて私たちが死力を尽くして守った存在たち。

私はかつて、彼女たちに嘘を着いた、不死人たちにも嘘を着いた。私は、決して不死人等ではない。

私は最後の純粋な小人であると。言えなかった。

 

しかし、それでも末裔達を護りたかった。それが私の小人の騎士たる私の使命であったから。

紛い物の人間しかいないこの時代に、遂に護るべき者が現れたのだ。

 

しかし、意識を失い肌が煤を被ったようになっている。どういう相手がいればこうなるのか。

 

「おい、伊丹殿。聞きたいことがある、何がいた。

彼女を何が襲ったのだ。」

 

問い詰めた所、龍であるという。なるほど、龍か。それも、この村の4分の1程度の大きさだという。

実に矮小なものよ、だが龍は龍である。少しの油断が命取りとなるか、

「腕が鳴るな」

 

 

《伊丹耀司》

『腕が鳴るな』

龍の話を聞いて、そんな言葉を口にしたこの男、つい先日あったときとはまるで違う闘志に満ちた顔つきをしている。車に同乗しても良いように、鎧を()()()()()()文字通り消したんだ。目の前で、部下も見ていて全員目ん玉をひりだして見ていた。

 

おいおい、物理法則もあったものじゃないと。

そして、軽装の革鎧をいつの間にか着込んでいたんだ。訳のわからない、龍なんかよりももっと驚くことがあった。もしかしてこの『世界の人は皆出きるのか』、とも思ったけど決してそんなことでもなかった。

 

そんな力があれば馬車なんか必要ないのだから、だとするとこの男はいったい何者なのだろうか。という疑念が、大きくなってくる。

だけれども、そんなには男は今は初対面の少女に対してあまりにも慈愛に満ちた顔で、寄り添っている。

非常に不気味だ。

 

「それで、君たちが見たという龍をもっと詳しく教えてくれないか?ああ、そう言えば言葉が通じなかったか。どれ、少し待っていてくれ。」

 

すると、昨日と同じように周囲が少し明るくなったかと思えば、隊の全員が彼の言葉を理解することができるのだ。

 

「隊長が言ってたのってこう言うことだったんですか。」

 

黒川、そりゃ無いじゃないの。そんなに俺は信用されてないの?

 

そして、移動しながら件の龍の事を話し始めた。

彼はそれを聞いて、少々落胆した様子で言った。

 

「やはり飛竜か、古龍では無いよな。いるわけがない、我々が昔狩り尽くしたのだから、まあ、慢心はいかんだろう。飛竜がそれほどの大きさになるには、どれ程の年月が必要だったか、想像は難しくない。」

 

こいつは、龍に何かしらの執着があるみたいだ。

まるで何かを確認するみたいに、仕切りにこちらに聞いてくるから、もしかするとドラゴンスレイヤーみたいな存在なのかもしれない。

 

「連中も獣だ。人間の味を知ったからな、確実に村人を襲いに来る。」

 

こう言う時は専門家に任せるのも重要かもしれない。ただ、俺たちも一応は戦闘に対してはプロだから、負けてはいられないけどね。っと、またトラブルかな。車両を止めて車外に出ようとした時、やつは言った。

 

「龍狩りは騎士の誉れよ」

 

そして事態は深刻に成っていく。

車列の前方から飛翔体が接近してきていた、まさしくドラゴンとでも言えるような巨体。そんなドラゴンの前に、いつの間にかあの騎士が立っていた。

ドラゴンはやつを見つけると、ブレスを吐き掛けようとしていた。

 

やつは、左腕を天に掲げそこには雷を象った槍が姿を表した。その巨大な雷を、やつは掲げ投てきする。

しかし、それが当たることはなく、だがそれでも体勢を崩したドラゴンは地面と激突する。

 

いつの間にか、また装備を変えた。最初と同じ姿になり、片手には黒い盾をもう片方には黒い直剣を携えて。

いやちょっと待った。剣が黒い雷を帯びて巨大な大剣へと変化していく。

それを見て龍は、咆哮を上げた。

 

 

《ウェルス》

龍を地面とキスをさせた後、まずはじめにすることは飛べないようにすることだ。第一に翼を狩り取る、やつは絶対に飛ぼうとはしない、飛ぼうとした瞬間黒い雷の槍がやつの鱗を穿ち心臓を貫くのだから。

 

危機感を持っているからこその威嚇。

我がダークソウルによって、我が剣に力を授ける。

封を施されたものたちは、火の力を使うが本来はこの力でもって龍を狩るものだ。

 

だが、それを邪魔する者がいるらしい。

何処からか力の干渉を感じる。この世のものではなく、精神世界からか?

 

いつの間にか空にはワイバーンの群れが現れていた。

これでは先にワイバーンを始末しなければならない。

気をそちらに向けていると、龍が飛び立とうとしていた。

 

そこに、ハルバードが投げつけられ、遠距離武器が叩き込まれやつの腕が消し飛んだ。

これでは狩りではなく戦いか。

護るためなら狩りをするなと言うことか、ならば先にワイバーンを潰しておかねばな。

 

剣の力を無くし、弓を出現させ魔術の矢をつがえ、上空に射出する。次元の蓋を開けたがごとく、矢の雨がワイバーンに降り注ぐ。

地表に到達する頃には霧散してしまうが、これならば人間に被害がでなくても良いだろう。

 

なんとも示しのつかない戦いだ。

こんな戦い、龍狩りの物語ではない。人間の癖に、神の気配を醸し出す少女が道に居たことに気がついた。

敵ではないが、このまま付いてくるのだろうか。

 

行列は次の村へとたどり着くも、身寄りの無いものは自衛隊の本隊がいる、アルヌスの丘へと向かって歩き出す。私も少女も、小人の少女も、アルヌスへと赴いた。

 




感想、誤字、評価等よろしくお願いします。


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第5話 護るべき者

誤字指摘
感想、ありがとうございます。


アノール・ロンド

神々が作りし、神々が住まいし都。

そこにそびえ立つ城の玉座に、一人の壮年の男(グウィン)と、そこに跪く黄金の鎧に身を包む男(オーンスタイン)がいた。

 

「オーンスタインよ、ご苦労であった。あの男は小人の都からかなりの期間離れていたな。我々の準備は整い、儀式は執り行われ、小人に封を施すことに成功した。

奴が気付いた頃には、小人の新たなる者達は力を持つことはないだろう。」

 

「しかし王よ、私にはそこまでして、小人達を恐れる理由がわかりません。」

 

グウィンは苦い顔をしながら言い放った。

 

「お主にはわからぬよ、神の将来を重んじる私の苦労など。」

 

《同時刻》

 

城の中では貴賓溢れる場所があった。

そこには人よりも大きな女性がおり(それでも2m70㎝くらい)椅子に座りカップを持っていた、その前には同じく椅子に座った。一人の男の小人が素顔を下して談笑していた。

二人の知らぬ間に、小人達が力を封じられていたことを。小人の都が荒廃し始めていたことを。

 

 

―――――

 

 

《アルヌスの丘》ウェルス

 

あれから数日が経過した。難民となった者たちには、簡易的と言える住宅が設置されるものとなったが、設置されるまでは、テントでの生活を余儀なくされている。

仕方の無いことだろう、しかしそれでも入浴施設が整っている所を見ると、この民族は余程湯が好きと見える。

 

キャンプから少し離れた所では、この『自衛隊』と言う組織が軍事訓練に明け暮れている。

その動きは非常に独特で、今まで私が見てきた軍隊とはまるで違う。非常に統制の取れた動きをしていた。

 

一部に至っては、古龍大戦時の我々以上に動きに乱れが無いようだった。

それでも、個人個人の戦闘能力はそれほど高くはなく、封をされし小人と何ら変わりはない。

 

それを補うかのように、様々な武器を持ち作り、創意工夫をしている辺り、神々にすがり付いたバカ子息王達とは全く違った者であるな。私も訓練に混ざろうかな?

 

おお、巨大な塊が動いている。何で出来ているのかわからないが、あれもソウルを感じない。

ゴーレムの類いでもないのか。

虫のような物体が空を飛んでいる。あれもソウルを感じない。

凄いな、あれが技術による発展、ソウルを用いない文明の力か。

 

私には良くわからないが、きっと多くの戦争と殺戮の歴史が彼らの世界にもあったのだろう。

こうして我等の世界に介入する余裕がある所を見ると、向こうでは今は戦争をしていないのだろうが。

 

『ここにいましたか。』

 

この声は‥。

 

 

《アルヌス》田崎 抄希

 

まったくあの人何処行っちゃったの?

本当に自由奔放なんだから。教授たちからは、『早く探してきてくれ研究が進まない』なんて言われるから、探してるだけだけど、本当に何なの。

 

あっ自己紹介遅れました。

私は田崎 抄希(たざき さき)ここ特地の言語解読における調査チームの大学院生。言うなれば駒使い。

ここアルヌスでのみ活動を許されている、一応の言語解読の最前線。

 

現在、挨拶や動植物の名前とか色々な名称を集めているものの、それほど解読は進んでなかったわけ。

そんなところに、レレイという少女とウェルスという男が現れて、私たちの仕事は一気に加速しちゃったわけ。

 

《奇跡》とか言うもので私たちの言語と彼らの言語を壁なく、意志疎通することが出来るんだから解読が早い早い。それだけじゃない、文字に関してはレレイさんの手解きで、それはもう全部網羅できた。

 

そこで、私たちの仕事は終了!とはならなかったわけ、自衛隊の人たちにイントネーションとか、色々教えなくちゃならなくなるから。

そんな中、レレイちゃんはまたいなくなっちゃうから、しょうがなく、あの表情に乏しい騎士様といなくちゃならない。

 

あの騎士だって、最初はテュカちゃんから離れたがらなかったけど、テュカちゃんに直接イヤだなんて言われたから渋々、私達に従ったみたいだけど。

まさか、今になっていなくなるなんて。

 

遠くには行って無いと思うんだけど、あの魔法みたいな力(レレイちゃん曰く私たちの扱う物とはまるで違う)

らしいけど、そんなので逃げられた日には、自衛隊に協力してもらうしか無いじゃない。

 

キャンプで見たっていう人の情報で、自衛隊の演習を見れる場所が有るって聞いて、軍人ならそれを見たいんじゃと、思って来てみたら見事的中!

 

『ここにいましたか。もう、いったい何をしていたんですか?』

 

「うん?ああ、貴公か。なに、貴公の国の軍隊を見ていただけだよ。じつに良く命令が行き届いていると思ってね。質はじつに良い、だがあれらの装備では古龍は殺せぬが…。」

 

この人は妄想癖があるのか?この特地にはこの人が語るような場所、住民たちも知らなかったり、伝承でも無いって言ってるから。

 

「またその話ですか?いい加減そんな戯言より、この世界の事をもっと話してください。」

 

「戯言か、貴公等にはそうなのだな。」

 

なに、そんなに構えているんだか。

 

「行きますよ。教授も皆待ってるんですから。」

 

「そんなにしてまで、私のタワゴトヲ聞きたいのか?」

 

「ええ、特地の歴史資料として一応の価値を持っていますから。特に神話として、記録しておいてほしい、と特地歴史学会(いつ造られた)がこっちに圧力をかけて来てますので。」

 

「貴公等も難儀しているのだな…。仕方ない、戻るとしよう。」

 

そう来なくっちゃ。

 

 

《第三偵察隊》レレイ

 

かなり難解、この本は帝国内のどの部族もが使用しない言語によって作られている。

ただ、偽物とは言えない。まず、使用されている文字に規則性があり、そのなかで最も使用頻度が高い文字に置き換えて何とか一部の解読に成功した。

表紙のみだけど。

 

『魔術体型 著ウーラシールのマヌス』

 

おそらくはそのままの意味。ただ、私達が日頃研究しているものとはかなり、かけ離れた物だろうと推測できる。

第一に図で表されている物は私達が使用するあらゆる魔法とは違い、何か得たいの知れない物を触媒にして効果を発揮するのではと考えられる。

 

そして、度々出現する単語?名称?『ソウル』という物、これがこの記された魔法すべてに、書かれていた。ということは、この『ソウル』と言うものが全ての触媒の可能性があるが、そもそもの話をしこの『ソウル』と言うものがわからない。

 

『おい、レレイどうしたんだ。その本を読みふけって。』

 

この声は、伊丹?

 

「何?今取り込み中、研究を続けたい。」

 

「いや、取り込み中の所悪いんだけど、通訳を頼みたいんだ。頼むこの通りだ。」

 

両手をあわせて頼まれたなら仕方がない、断る理由もない、何より今後の生活費がかかっているからやるしかない。

ただ、本のことで最大の疑問があった。あの騎士、あの騎士がこの本を見たとき『ウーラシールか。』と言ったのを覚えている。もしかすると、この本の文字を読むことが出来るのかも知れない。

 

 




誤字、評価、感想等よろしくお願いします。

今後、オリジナルの奇跡、魔術、呪術等が有りましたら設定の方に記載しておきます。


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第6話 神話

感想、誤字の訂正等ありがとうございます。


そこにあった筈の建物は、初めから存在していなかったかのように更地となり、一人の騎士と王がそこにたたずんでいた。

騎士は戸惑っていた。何故このような事になっているのか、騎士には理解しがたい事であった。

 

「王よ!何があったのですか。これではまるで、初めから何もなかったかのようだ!」

 

「ウェルスよ落ち着け。我が話を聞け、そして、決してグウィンと戦おうなどと思うな。」

 

王は話した、グウィン・イザリス・ニトは、我等の世界にダークソウルを恐れたと、そしてその力を封じるために息子達を言いくるめ、王女を嫁がせた。

強欲な息子達は自分達さえソウルを持っていれば、後の世代は持たなくても良いと考え、力を持った同胞達を連れ、流刑地へと旅立った。

それがソウルの王達の望みとも知らずに。

 

「決してグウィンを殺そうと思うな。お前がいかに強くとも、王たちを相手に一人で挑んでは犬死にとなる。ならば、流刑地へと赴き次代に後を託し、外の封じられし者達を救うのだ。」

 

屈辱に震える騎士は、王の命令を聞き輪の都へと赴いた。そして王は深淵へと赴いた。

 

 

 

《アルヌスの丘》ウェルス

 

「うん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、何でもない。」

 

この感覚は‥、何か見知ったものが動き始めているのか?この3万年余り、感じたことのなかった懐かしい感覚だが、今になって何故このように感じるのだろうか。

 

もはや、神々は地上にはいない。いや、一人だけいて欲しいとは思うが。ただ、神の紛い物のは別の空間に存在していて、あの黒服の少女のような眷属を地上に置いておく程度しか力がない。

『灰』達は未だに燻っている、この大地に姿を表すのも時間の問題か。

 

そんな事を考えながら今日も日が傾き始めた時、なにやら自衛隊の隊舎が騒がしくなってきた。

魔術『見えない体』と『隠密』を使用して、隊舎に侵入する。

 

体温を測定するものが無いのなら、非常に簡単なことこの上ない。散々深夜に建物内部を調べていたから、マップは全て頭に入れてある。

一ヶ所から煌々と明かりが漏れている。

中を見れば一目瞭然、幹部が全員集合と言ったところだ。

 

口の動きから察するに、イタリカで伊丹殿達が戦闘に巻き込まれ籠城中とのことだ。成る程、それでどの隊が救出に行くのか考えていたわけか。ならば、私も付いていくとするかな。テュカが心配だからな。

 

一人だけ、目の色が薄いものがこちらを見ている。ばれたか?良い勘を、しているな。

ドアを無言であける。何もいないところに突如として、私は姿を現す。

 

「ああ、敵対の意思はない。最もこの状況で信じてもらえるかはわからないが。」

 

中心となっている人物、確か健軍と言ったか?が質問を、投げ掛けた。いつからここにいたのか、何が目的かと。

 

「イタリカと、最初に発した部分から。つまり最初から、目的は特にない、有るとすれば戦場を求めて。だから、出来ることなら共に行きたいのだが駄目かな?」

 

半ば脅しに近い形だな、なんせ監視の目を掻い潜りここまで来たのだ。いつでも殺せると言っているようなものだ。だが、一軍の長で有るものは流石と言えよう、動揺すらしていない。

 

 

《アルヌス》狭間 浩一郎

 

伊丹 耀司、二重橋の英雄が連れ帰ってきた難民の中で、唯一と言って良い重装の鎧をまとっていた騎士。

それが、今目の前にいる。

報告によれば、突如襲来した飛竜の群れを一方的に全滅させるという、人間離れした攻撃力を誇るという。

神話に出てくるような存在がこの男だ。

 

亜神といわれる少女がいるが、彼もそんな存在なのだろうか。しかし、突然入ってきて我々の作戦に参加させろか。なかなか面白い人物かもしれない、戦力としても申し分ないだろう。だが、現地人を戦闘に参加させるにはあまりにリスクが大きすぎるか。

最悪自衛隊の沽券に関わる事態にもなりかねない。

だが、手はあるか。

 

「許可はできない。」

 

見るからに落胆の色が見える。どうやら戦闘に参加したいのは、自分の意思からなのだろう。

 

「だが、ちょうど調査隊の現地協力者が不足していたところだ、どうだね。志願して頂ければ助かるのだが。」

 

少し面食らった顔をした

「忝ない。」

 

猛獣は鎖に繋いでいるのが一番安全だ。これが吉と出れば良いが。

 

 

《イタリカ》ロウリィ

 

あーん、退屈。何だかレレイと、テュカは、話をしてるみたい。話題の中心はレレイが持ってきてた魔導書。

でも、ただの魔導師書じゃなさそうなのよ。

だって、わたしぃの感覚から何か不穏なものを感じるもの。

 

「二人とも、何の話をしてるのぉ。」

 

「レレイが持ってる本の中で、私しか知らない単語があったからそれを教えてたんだ。」

 

「ふうん。その単語ってなぁに?私も気になるじゃない。」

 

そう聞いてみると、レレイが少し言い辛そうに

 

「『ソウル』という言葉、私には『魂』という意味以外では捕らえられない。」

 

ソウルねぇ、わたしぃも初めて聞く単語だわぁ。

うーん、うーんと唸っていると

 

「ソウルって言うのはね、力の源で生き物全てが持っていて、神様もその例外には無いって大ばあ様が言ってたのを思い出したんだ。それでその力で英雄は、世界に平和を取り戻したって。」

 

「それはぁ、いったいいつ頃きいたのぉ?」

 

「確か100年以上前だった筈。」

 

そんな事を考えていると、逆の門から狂喜と戦いが聞こえてきて、私ぃはとてもそれどころじゃなくなっちゃった。

 

我慢できず戦いへと体を動かして、敵を圧倒する。なんという快感。とても、好き。

伊丹たちも加勢して、一方的な戦闘になっていった。

 

そこに横槍が、来た。空から来る自衛隊の飛行する乗り物。そこから出される、眩い光の束が敵を挽き肉に変えていく。そこから、残党狩りが開始される所で、乗り物から鎧が降ってきた。

あの高さから落ちても、平気なものなんて人にはいない。

亜神だって、少しは怪我をするはずよぉ?なのにあれはまるで、それが当然かのように降り立った。

 

不思議よねぇ、あれじゃあまるでモンスターかその類いじゃないかしら。

 




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第7話 姫様の受難

誤字の訂正ありがとうございます。


あれからどれ程の年月が過ぎたのだろうか、次第に火の封の影響が小人たちに広がっていくのが、めに見えて来ていた。

ひ孫の代で影響が見え始めていた。あまりにも早い成長速度、あまりにも早い老い、そして我々が最も身近でなかったなかった、死。それが、広がっていた。

 

それだけじゃない、個体としての筋力、病的な肉体。

矮小なソウル。

ああ、王よ私は見るに耐えない。こんな存在を同族と見ろと言うのか。護れとおっしゃるのか。

 

唯一の救いは、たまに現れる火の封が弱い者達。

彼らは、我々に想像出来なかったものを使用して、己の弱さを克服しようとした。『イザリスの魔女達』の力を模倣し、触媒を糧に精神を消費して行う術。

我等、不死の小人はそれらに名を付け世界に広めようとした。その名は『魔術』、後の世に出てくる『呪術』に先んじてその力は世界に広がった。

 

 

 

《イタリカ》とある女騎士

 

やあやあ、私女騎士。殿下と一緒にイタリカに調査に来たんだけどね、見てよ私の目の前。

死体だらけだよ。

 

イタリカが襲われてるなんて聞いて駆けつけてみると、なんと日本に負けた諸王国連合軍の敗残兵たちが、イタリカを襲ってたわけ、

なんで日本に負けたのかを知ってるかだって?

 

だって私、転生者だもん。最初は死んじゃった事に戸惑ってたけど、次第に今の生活にもなれちゃって、平民だったけど、お母さんはなんと殿下の側遣いだったの。

だから私は昔から殿下の遊び係だったんだ。

 

それで騎士団に招待されて、今はこうして騎士団にいるわけだけど、薄々感じてた、ゲートの世界じゃないかって。でも、おかしな騎士が出てからと言うもの、この世界に疑問が出てきた。

 

だって、あんな鎧前世じゃ見たことなかったもん。どう考えても動けないくらい重い筈なのに、平然と私達よりも軽々と動いているんだからおかしい。

 

そんな事もあって、もしかしたらゲートと違うかも。なんて思ってたら、イタリカだよ。しかも+1で私も一緒に連れてかれて、今自衛隊が来たところ。

 

ただし、あの騎士も一緒に来たみたい。

しかも登場の仕方がおかしいよ。30m以上の高さから5点着地とかしないで、そのまま足で着地して無傷とか、人間辞めてるんじゃない?

 

ああ、私達は今からあんなのと交渉をしなきゃなんないの?

いや、まてまて、まだあれが交渉の場所に出てくるって決まった訳じゃない。第一自衛隊と一緒にいるんだからきっとまともな人だよ。

 

だから、姫様どうかあの人達の逆鱗に触れる事だけは起こさないでください。こっちが死んでしまいます。

ハミルトンさん、期待してますよ!

 

ってあれ?なんであの騎士が此処にいるんでしょうか、嘘マジ!ちょっ近付いて来ないで!お願い!

 

《イタリカ》ピニャ

 

まったくなんて事だ。私が味方だと判断したものは、帝国の敵であったとは。なんたる不覚!!

だが、アリスが警戒もなくハミルトンと会話をしていた所を見ると、どうやら危険な相手では無さそうだ。

 

あいつはいつも勘が働いて、私を助けてくれるからな。今回もあいつの勘に頼るしかないようだ。

それに、相手にはあの騎士殿がいる。

あの騎士殿が、あの弱気を守る騎士殿が残虐な行為をする連中と手を組む訳がない。

 

そう思わなければやっていけないな。

まったく、どうしてこうなってしまったのか、全ては帝国の外征政策の弊害か?力が強いものたちへ、牙を向けた報いか?

 

民衆はきっと私達から離れ、彼らを頼るだろう。そうした方がとても安全だろうからな。

民衆とは勝手なものなのかもしれやい。

『殿下、顔をあげてください。』

この声は、アリス?

 

「何のようだアリス。貴公にはミュイ嬢を守ると言う任務を与えていたはずだが…。」

 

どうしてそんな怪訝そうな顔をして。まさか…。

 

「それが、追い出されまして、どうやら立場が逆転しそうです。どう考えても、彼等に媚を売るつもりですよ?主にミュイ様の為に、この館の者は私達を踏み台にしてでも守ろうとするでしょう。」

 

そうか、それが答か、ああここはきっと彼等の要害として再建築され、軍が駐留するのだろうな。

そのまま、帝国に進行する足掛かりか。

 

「最後まで、話を聞いてください。あの騎士が殿下とお話がしたいと言って来まして、今扉の向こう側にいます。」

 

まさか、私の場所を嗅ぎ付けて連れていこうと言うのか!いやいや、まてまてこんなに早いわけないだろピニャよ!落ち着け。

 

「入って良い。通してやれ。」

 

「失礼する。」

 

入ってきたのは壮年の男。髭を囃し少々疲れたような表情をしている。だが、鎧はもちろんあの騎士のものだ。

 

「何ようでここまで来たのか。」

 

「彼らの代弁者として貴公に通達がある。彼等は貴公等を害するような事は一切行わない。例え敵対関係であろうとも、あちら側は穏便に済ませたいということだ。

なに、良かったではないか滅ぼされないだけましであろう?」

 

「それはどういうことだ。貴方の言うことには意味の分からないことがあるが?

帝国を滅ぼすことが出来るとでも?」

 

「彼等にはその力がある。貴公もあれらを見れば直ぐにわかるだろう。近い内にきっと接触があるだろう。その時を心して待っていることだ。それでは失礼する。」

 

「まて、話はまだ。」

 

止めようとしても、騎士の歩みは止まらなかった。まるで自分は関係ないとでも言うようなそんな歩み。

ああ、胃が痛くなってきた。

 

「殿下、きっと良いことありますよ。ねっ?」

 

「ありがとうアリス」

 

ああ、アリスお前だけが心の支えだよ。

 

 

 

《イタリカ》レレイ

 

伊丹達と一緒に休息をしながら師匠の本の解読に没頭していると、あの騎士が現れた。

そして、眠っているテュカの方を見た後に私の方へと来た。

 

「君が持っている本は、マヌスの本か?」

 

「?著者はウーラシールのマヌスで、あってる筈。それが何を意味しているの?」

 

「悪いことは言わん。直ぐにそれを焼き捨てなさい。」

 

「これは師匠から私へと譲渡されたもの。このような貴重品をみすみす焼き捨てる訳には行かない。」

 

目の前の騎士は共に翻訳を行っていた時の温厚さは無い。殺気立っていて、最悪の場合私を殺してまで奪うのではないか、と思うほどのものだ。

 

「おい、なにやってんだ。」

 

伊丹が気付いたみたいだ。

 

「なに、彼女から危険物を取り上げようとしただけだ。」

 

「なんで、この本がそんな恐ろしいもの、見たいにいってるんだ?」

 

「それを悪用されれば、この地が恐ろしいことになる。詳しくは言えない、言ってはいけない。」

 

「なら無理だな。それに、日本じゃそれを恐喝っていうんだ。あんたも国会に招致されてんだ、変な事をするなよ。」

 

騎士がため息をついて、これにはお手上げのようだ。

騎士は乗り物に乗って先に、アルヌスの方へと帰還するようだった。

 

「ありがとう伊丹。」

 

「なんのなんの、良いって事だよ。皆あの騎士には、警戒してるんだ、なんか得たいの知れない存在って感じだからな。特にロウリィなんて、物凄く警戒してるんだ。」

 

だけど、これで私はますますこの本の事が、この著者の事が気になった。私の知らない魔法とも違う、魔術という代物。これは、伊丹達の世界と同じくらい気になる。

 

テュカが言ってた『ソウル』の伝説ももっと詳しくテュカから聞き出さないければ、このままではあまりにも本の解読に時間を要してしまう。

 

 

 

《????》????

 

灰にまみれた大地の中を、ただひとり歩むものがある。

焼け爛れた鎧を惑い、腰には螺旋を型どった剣を刺し灰の中を、海に向かって歩いている。

 

そこに、暗闇が現れる。その暗闇をその鎧は、一瞥すると共に、剣を抜き放ち上段に構えいつでも攻撃出来るようにと、待ち構える。

そこに、暗闇と鎧とが激突し、大きな地鳴りが灰色の大地に鳴り響いた。

 

 




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第8話 同調する世界

誤字報告ありがとうございます。


魔術が世界に散ってからどれ程の月日が流れたのだろうか?ある時、とある魔術使節が輪の都を訪れた。

輪の都の筆頭騎士となったウェルスは、その使節を出迎えた。

 

輪の都は、封じられた都。古の時代からの術を、闇の力を神々の力を、その悉くが封じ込められた場所。

使節が訪れたのはその古き術を学ぶためであった。

 

かの使節の代表は世界に名を轟かす、小人の魔術師

彼の名はマヌス。未だ、ウーラシールが建国される前の魔術師。その技量は遥かな高みとあるが、それでも灰の時代の神々の力には程遠い。

神々から虐げられる外の小人をなんとかして救って欲しいと、ダークソウルの王達は頼まれた。

 

しかし、彼等は自らの力に酔いしれその言葉を否定する。だが、古き騎士であるウェルスがその言葉に引き付けられた。

「なんと、清く、力強いものであろうか。

この者の力となれば、神々を見返す事も出来るだろう。そして、我が王の悲願も達せられる」

 

彼に闇の術を教え、使節と共に旅立つ旨を王達に語る。彼を止めるものなのどこの都には現れない。皆、自らに酔いしれ己以外に興味など無いのだから。

 

 

《イタリカ~アルヌス》テュカ

お父さんが、騎士団に連れ去られてそれを救出した後、私達はアルヌスに向けて走り始めた。

 

そんな中でもレレイは相変わらずあの本の解読をしてる。あの本の表紙に書かれてる著者の名前が、なんか妙に引っ掛かっていたんだけど、思い出した事があるの。

 

でも、断片的な内容だから黙って置くことにしたんだけど、マヌス、ウーラシール、深淵、不死人、始まりの火。何か重要だったものの筈なんだけど、思い出せない。

 

「ねえ、レレイ。やっぱり解読やめた方が良いんじゃない?あの騎士が、何かを知ってるみたいだったでしょ?何か曰く付きかも。」

 

「…?これには、非常に高度な事が記述されている可能性がある。私達が使用する魔法はどれ程頑張っても、腐敗を遅らせることしか出来ない。しかし、この本は腐敗するどころか、悼みさえしていない。

これを研究することによって、多くの人々の生活は劇的に改善される筈。」

 

そう言われてしまうと弱いけど。

 

「わたしぃは、テュカに賛成よ。私は長い間、地上を見てきたけど、そんなもの一度たりとも聞いたことないもの。危険すぎると思うわ。」

 

何とかして、レレイを説得しないと何か大変なことになると、胸の内がざわめく。

私達が、説得してるのにも関わらずレレイは強情に頑なに、それを辞めようとしない。

まるで、何かに取り付かれたように少しも考える素振りすら見せない。

 

と、思わぬところから援護が来た

 

「倪下、その本もしや北方の『灰の大陸』由来のものではないでしょうか。」

 

まさか、帝国の皇女から援護が来るなんて。

 

 

《イタリカ~アルヌス》ピニャ

 

目の前で少女が二人口論をしている。

少し異常に見えるのは、魔導師の少女、レレイと言ったものが本に異様な執着をしていることだ。

あまりにも煩かったので、声をかけてしまったが、どうしようか。

 

「灰の大陸、あの『灰の大陸』?あのかつて有ったであろう文明が発掘される。」

 

「そうだとも、聞くに様々な品がかの大陸からは出土するそうだ。発掘は容易ではないが、なんせ灰で出来た大陸だから、草ひとつ生えていないという。

そんな、出土品の中には危険なものも有り、かつて国すら滅んだといわれている。しかも、人だけが消え去って。」

 

「それはぁ、初耳よ?わたしぃでも知らないことがあるの?」

 

「これでも私は皇女です。海外のそれも別の大陸の話を聞く機会などかなり有りましたから。」

 

そんな話を聞いたのか、レレイという少女は手に持っている本を閉じた。

全く世話の妬ける娘だ。ただ、実際帝国内でそんな事件起こされたらたまらないのだから、良いことではあるがな。

 

《アルヌス》狭間

 

 

今回のイタリカ救出戦に参加したウェルスを、私室に呼んだ。

お世辞にも広くは無いが、二人で話をする程度にはちょうど良いものだろう。

 

「ふぅん、これは何という飲み物ですか?私はコーヒーよりもこちらの方が好みに会うな。」

 

「紅茶と言うものだ。茶葉を発酵させて、作るものだ。同じ葉を使っている烏龍茶や、緑茶というものもある。」

 

「それは是非飲んでみたいものだ。

して、貴公は何故私を私室に呼んだのか?」

 

あまり、長時間の話はしたくないご様子だ。

 

「それなんだがね、貴方は我々の国の最高機関に、招待された。というのは聞いていると思うのだが、如何せんその服装は目立ちすぎると思ってね。」

 

そう、この男の普段から何かしらの鎧を纏っているのだ。あまりにも現代では目立ちすぎる。

 

「ああ、別にこの格好に深い意味はない。ただ、着るものが無いだけだ。」

 

何ということか、ただ着るものが無かっただけということか、深い意味でも有ったのかと、勘繰ってしまった私がアホらしい。

 

「それとだね、何故レレイ君からあの本を捨てるようにと執拗に迫るのだね?」

 

それを聞いた途端に彼は顔をしかめた。

まるで、聞かせたくはない事があるかのように。

 

「今は詳しくは言えない。ただ、あれは非常に危険なものだ。常に最悪を想定して事に当たらなければ、周囲に破壊を撒き散らすことになるからな。今はこれ以上は話せない。」

 

「わかった。もう一つだけ聞きたい。失礼な事だが、君は何のために長く生きているんだ?」

 

彼自信、言ったことを信じるのならば彼は80万年の間、行き続けていた事になる。

これは、ロウリィ、亜神という存在を聞くところに1000年で神になるためやっとだとか。それにも関わらず、彼はそれを遥かに越える年月を行き続けているのだ。

何かしらの目的がなければ、精神が持たない筈だ。

 

「私の目的か?そうだな、一つは私の同族を護り続けること。二つ目は、ある人物を探している。ここ60万年ずっとだ。そして、三つ目。あることが起こった時の抑止力として行き続けている。これ以上は言わない。」

 

話終えた彼には悲壮感が漂っていた。

 

 

《地球》

 

彼等はあるものを見つけた。それは小さくも灯り続ける火だ。いつからそこにあったのだろうか?時は流れそれは、忘れ去られた。

 

古代の遺跡の様々なところに、火の描写が描かれている。

その火はどこから来たのか、まるで分からない。

いったい何を表しているのか、学者達は隕石だとか、製鉄だとか、様々な論を提示するもその答えは出てくることはない。

 

一つだけ確かなものは、遺跡よりも古い、洞窟の壁画。

全てが、同年代に一斉に世界中で描かれたそれは、全ての文明にあったということだけ。

 

そして、それらの火が有ったであろう場所は既に灰しか残らず。

『神話と現代は確かに地続きである。』

異端の学者はそう語った。

 




設定とウェルスが使う、ダークソウルの術にちょっと修正を加えました。



雷→黒い雷
見た目的にダクソ3のゲールの雷


感想、評価、誤字等よろしくお願いします。


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第9話 不死人

ウェルスのスーツ姿は完全にジョン=ウィック


「ウェルス聞いてくれ」

 

「何だ」

 

「私に恋人が出来たんだ。これでもっと小人を導く勇気をもらえる。」

 

今二人は国を勃興しようとしていた。

旅を続け、見聞を広め、世界中に散っている小人と、魔術を扱えるもの、巨人、神々の追放者。様々なもの達がそこを目指し集落を形成していた。

 

その土地は、長い間放置され荒れ果てていたがそれでも嘗ての名残を残し城があったところには巨木がたっていた。そこは『分け隔てなき王』名も無き小人が暮らしていた場所。

ウェルスにとっての懐かしき都。

 

数々の種族が手を取り合うのをマヌスは望んだ。それ故のこの土地、神話が未だ削られる前のこの土地に国を築こうとした。

 

「それは、良かった。マヌス、私は旅を続けようと思う。」

 

「なぜだ!共にこの地を豊かにしていかないのか?」

 

「私は全ての小人を見る事が使命だと気付いた。それに、友が先に死ぬのは見たくない。」

 

後にその地はウーラシールと呼ばれる。

神々はマヌスの死後、その才覚を恐れ、祭壇とは名ばかりの封印の社を施す地。それによって封印が弱かったマヌスは力に飲み込まれる事となる。

全てはウェルスは知らぬ事であった。

 

 

 

《アルヌス~議事堂》ウェルス

 

今私は着物を着るために試着室に入っている。

『すーつ』なる服を用立てて来てくれたのは、非常に嬉しく思っているのだが、このように足の長さや体格でそこまできめ細かく決めるものなのだな。

この『とれんちこーと』なる着物は少々重いが、良い素材で有ることは間違いないだろう。

 

しかし、防寒着まで用意するとなるとゲートの向こうは冬であるのか。

いくら冬と言っても、イルシールやロイエスの様ではないことを祈るばかりだな。

 

さて、確か待ち合わせはここだった筈なのだが。

おお、来た来た。伊丹殿が物凄く暑そうに歩いてきている。

 

「待っていたぞ、それにしても暑そうだな。」

 

「いやいや、暑くないわけないじゃないの。今こっちは夏とは言わないけど、それでも気候が暑いんだから。なのに、あんたはなんでケロッとしてるんだ。」

 

「私は新陳代謝というものが無いからな。

暑さも寒さも、あまり感じない。まあ、不便な事もあるが。お嬢さん方も、綺麗に着飾って来ているかね?」

 

見るからに普段と変わらない姿をしている少女達、防寒着を着ているだけで、その他はそれぞれ着やすいものを着れば良いな。

 

それからあの『車』という乗り物で移動し手来たのだが。そこで見た景色はさながら、牢獄のような狭い世界が広がっていた。

 

横にいた皇女が言えば摩天楼とでも言うのだろうが、正直私としては、何もかもを詰め込みすぎた箱のような息苦しさを感じる。

 

それから駒門とか言う、この国の警備機構の人間が指揮する車に乗り、方々回ってこの国の議事堂へと到着した。

どうやら時間が少々押しているらしく、すぐさま内部へと案内された。(皇女達は別室で待機)

 

中に入ると、まず最初に拍手が我々を襲った。

そして、議場に立つと質問の雨が我々を襲った。

質問はかなりの時間行われ、自衛隊の現地での行動、竜の被害者に対する不適切な事を行っているか?

等の質問を行った。

 

多くの批判を浴びせる者達を、ロウリィが言葉で説き伏せる。確かに竜は力の象徴。我等の時代でも、龍狩りは騎士の名誉であった。それを否定されるのは、私でも頭にと来るものはある。

 

だから、彼女の言葉の後に政府側が提出したものの後にも関わらずそれでも諦めぬ奴等に、言ってやった。

 

「貴様等は、まるで犬ネズミのようだな。」と。

 

初めは『?』と言った顔をしたのだが、私が分かりやすく「わかるように言ってやろう。貴様等は溝鼠以下だ」

 

そういうと、奴等は激怒した。言葉遣いがなっていないだとか、歳上に失礼だだとか。

正直に言えば、私よりも歳が上の存在は今のところ会ったことは無い。いたとしても、始まりの火の王達位のものだ。

 

冷静さを取り戻した議場に、年齢を訪ねるもの達が現れた。テュカ達の年齢を聞き安堵と驚きを見せていたが、私の番となった。

 

「私の年齢はそうだな、現在80万と1319年生きたか。」

 

 

 

 

議場は嘘のようなものを見た、そんな感じに凍りついた。失笑とは言えない。なんせ先程、ロウリィという前例がある。だから、もしや本当ではないか、と疑うのだ。

80万年、人類が多くの親類と殺しあいをしていたそんな時代、それくらいの昔から生きているそんな奴が目の前で堂々と言い放った。それはもう、見事なまで。世界中に広がった。

 

そして、こう思う奴がいる。『特地に不老不死の薬が有るんじゃないか?』と。

 

 

《議事堂》レレイ

 

あの騎士が、意味が解らない事を言い出した。

それほど長く生きる生物は存在しないのではないか?

確かに龍は、長く生きるが、彼は龍じゃなく自らを小人と言っているし、私と同じ寿命の筈。

 

しかし、あの本の事もある。

世界の何処の言語とも違う、そんな文字を読むことができる唯一の存在。

テュカの言うエルフの古い伝承の中の言葉を、一字一句意味を違わず言い表す事ができる。

 

まさかと、そう思ってしまう。そんな彼は、ファルマート大陸の過去の出来事に矢鱈と詳しく、逆にここ200年の事はほとんど知らない。

あまりにも歪な歴史を語っていたのを思い出す。

 

もしかするとテュカの言っていた、不死人とは彼の事をもしくは彼の近しい人物の事を指すのかもしれない。

と言うことは、あの本に対する忠告は本当に意味のあるものではないだろうか?

過去に恐ろしい出来事が会ったのだとしたら、私はそんな忠告を無視して、とてつもない事をやらかそうとしたのでは?

 

なんにせよ、この議事堂の中では一番冷静でいられるのは私。

 

そして、議員の一人が彼に質問していた。

私の最も気になる疑問、

 

「貴方は一体何者なのですか?」

 

彼は答えた。

 

「真の意味での不死人。始まりの火に惹かれし幾匹かの生き物のうちの一人だ。」

 

始まりの火、彼が言っていた歴史の始まりだった。

 

 

《特地・グラス半島ピド村》

 

マーメイドが泳ぎ、男達も共に魚をとって生計をたてている。そんなマーメイドの一族の村、そんな村にある時漂流者?漂流物?が流れ着いた。

 

バケツヘルメットに極々普通の甲冑を見に纏い、どうやって打ち上げられたのか解らないそんなものがそこには、いた。

マーメイド達は、人間かと一瞬思ったが、もう事切れている様子。

 

次の瞬間、それは起き上がり『うおー!』と叫びだした。

何事かと、辺りを男達が取り囲むもそれを無視してとてつもない胆力で、男達を引き剥がし、太陽が一番良く見えるところに立ってそれは、行動をした。大きな声を出して。

 

\Y/<太陽万歳!!

 

それは可笑しいものであったが、それでもとても神聖なものにも見えた。

 

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

最後の人はダクソ知ってる人なら誰でも知ってそうな、あの方です。


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第10話 薪の王

感想ありがとうございます。
拙い文章ですが、これからもどうかよろしくお願いします。


騎士の旅に終わりなく、多くの小人と出会い、時には怪物を倒し人々を助け、時には国造りに力を貸し、時には怪物を友と呼び人々と同様に扱っていった。。

彼の旅は小人達の間に広がり、一人の物語が紡がれて行った。

 

しかし、その物語は小人だけでなく神々の耳にも入るもの、当然の事にグウィンの耳にもそれは入る。

グウィンにとって、古龍の次に驚異の存在。衰えることの無い力を使い何度も甦る嘗ての仲間(てき)

 

ウェルスの行動は(グウィン)に対抗するための組織造りに見えた。

だから、彼を殺すための暗殺部隊《王の刃》を結成し、彼に対抗しようとした。

後に四騎士が一人、キアランが所属する部隊の始まりであった。

 

 

《グラス半島・ピド村》ソラール

 

おお、今日も太陽が輝いている。俺が嘗ての見つけられなかった、本物の太陽…。ああ、貴公は俺との約束を果たしたと言うのか。

皆からバカにされていた、俺の事を信じ共に戦い歩み、そして貴公に襲い掛かった、そんな俺との約束を。

 

「あの~、今日もここにいたんですか?そろそろ、お昼になりますよ。」

 

「ああ、すまない少し太陽を見ていたんだ。何直ぐにいくとしよう。」

 

この少年も太陽の元、このようにすくすくと育ち、今この地の未来を担う存在になるのだろうな。

しかし、火の無い灰と言うものは凄まじいものだ。

ダークリングが浮かぶことなく、使命の為ならば折れることさえなければ亡者となることもない。

であれば、あの古い騎士、彼はいったい何者であったのだろうか。

 

 

????・最初の火の炉》

 

暗闇が最後の力を振り絞り、鎧を取り込もうと覆い被さろうとするが、しかしそれを螺旋剣を掲げ発せられた強力な熱と炎と光がその暗闇を呑み込み、逆に消滅していった。

 

鎧は一段落するとなると、剣を納め再び海の方へと歩みを始める。そして海岸へと到着したとき、後ろから声がした。

 

「灰の方行くのですか?」

 

鎧は立ち止まり、後ろを振り向く。

目を隠すティアラのようなものを掛け、一人の女性がそこに立ち、『灰』と言われた鎧は彼女に歩みを進める。

そして、目の前に立ち止まり少し屈んで言った。

 

「俺は行かなければならない、他の世界の火が、消えようとしている。誰かがその火を継がなければ、その火は消えてしまうだろう。それを伝えるために行くのだ。」

 

「灰の方、貴方が火を次ぐ必要は無い筈です。」

 

「俺が継ぐのではない。火を継ぐか継がぬかは、その世界の住人に決めてもらうのだ。そのための旅だ。」

 

悲しげに彼にもたれる彼女は、言う。

「私も共に行っても良いでしょうか。」

 

「俺に君を止める権限等無い、だから付いてきたいなら、いや寧ろ一緒に来てもらった方が、俺としては助かる。」

 

すると、彼女は笑顔を見せ『灰』と言われる鎧に一つ投げ掛けた。

 

「私も安心しました。どうやって海を渡ろうとするのか、ひやひやしていましたので。ですが、私が共に行くのです。別の大陸に渡る程度なら、転送で行けます。向こうにも螺旋の剣の破片はありますので、片道だけなら。」

 

「ありがとう、正直俺も泳いで渡れるか不安だったんだ。」

 

二人はそんな話をしたあと、手を繋ぎ、鎧は姿を変え(上級騎士装備)螺旋の剣を突き刺した。

そこから女性から力が放たれ。二人の姿が霞に消えていった。

 

 

《某所旅館へ移動中》ウェルス

 

車と言うものは、実に良いものだな。馬のように多くとも二人しか運べぬものではない。

こうして、多くの人数を運べるようになるとはきっと国同士の戦も変わるのだろうな。

 

まあ、車の話はいいんだが、この世界に来てから妙に懐かしさを感じることがある。特に昼間は顕著にその傾向がある。

まさかと思うが、この世界にも始まりの火があるのか?と考えたが、彼等の技術を見てみろ。

 

鉄の箱が、嵐の風のように進み大きな船が海を渡る。

鉄の塊が空を自由に飛んでいる。我等の時代でもそのような事はあまりなかった。

確かに単体で飛ぶ事はこの世界の住人には荷が重いだろう。龍狩りには空を飛べるような奴が、それなりにいたものだ。

 

 

と、ウェルスが物思いに耽りながら窓の外を見ているとふと、何かの場景が頭をよぎった。最初の火の炉から何者かが、姿を消したと言うこと。

その存在はとてつもない力を秘めていた。

 

そんな事が頭を過ぎ去り、一瞬真剣な顔になったのを伊丹は見逃さなかった。

 

「なあ、あんたどうしたんだ?一人で百面相なんてしちゃって何かあったのか?」

 

「いや、昔の事を思い出していただけだ。そう言えば、あの図書館で見た歴史資料の中で、神話の部分を見たのだが、プロメテウスの火、だとか、太陽の神等がこの世界にはたくさんいるのだな。」

 

「いやいや、みんな架空の存在だったりですよ。特地では、実在する見たいですけどロウリィみたいに、地上にいたのはみんな亜神だそうじゃないですか。」

 

それに対してウェルスは、ため息と首を横に振る仕草をとった。伊丹の言葉を否定するように。

 

「言っておくが、私の話している内容は基本私の体験を元に話しているのだ。そこで貴公の言葉を否定しなければならないところがある。

神々は嘗て地上に存在した。しかし、始まりの火が弱くなるにつれ神々の力も弱くなり、最後には別次元へと逃げるもの。

運命に抗う者、運命に従う者に別れた。

神とて、運命には抗えなかった。」

 

そこで伊丹は思うわけだ、

こいつの話はかなり真剣に聞いても突拍子の無いものばかり、信じる方が難しい。

だが、もしも事実ならば、あちらとこちらの共通点を見受けられるんじゃないか。

と、

 

「ねえ、あなたの言葉を信じるなら神様たちは、抵抗したんでしょ?どうやって抵抗したの」

 

あまり興味の無いことだったのだろう事を、元妻の梨紗が聞いたことにより、彼の言葉に信憑性が増すことになる。

 

「ああ、『薪の王』というものを選定し始めた。

薪の王とは、まさしく世界を照らす最初の火の燃料となるもの達の事だ。初めはグウィンという神が、薪の王となった。

問題は、それからだ、連中は自分達の時代を続けたいがために、小人の体をいじり、不死人と呼ばれる不完全な不死を大量に作って、その中から薪を選別する方々を編み出した。」

 

我等の時代の神の大部分はこんなもの達だった。

等とウェルスが語ったのをまじまじと聞き入っていたなか、もう1台の車のなかである事態が起こっていた。

 

 

レレイ

 

無い、無い、無い、あの本が無い。

落とす筈がない、どうして私の手元からあの本が消えるかように、消えていってしまった。

ウェルスに言われたことを、最大限考慮しつつ少しでも怪しい部分は彼に聞いていたのだが、それがこうもあっさり無くなってしまった。

 

少し、落ち込んでしまいそうになるが、だが、今ならわかる。私はあの本に飲み込まれていた。完全に解読の方へと意識を向けられあのまま泥沼に浸かってしまうんじゃないか、なんて考えただけでも身震いがする。

 

テュカには悪いけど、私はもうあの話を聞きたいと思わない、もう必要が無くなったから。だけど、もしもの時のために聞いておいても損ではない筈。伝承と言うものはバカには出来ないから。

 

最後の方に書いてあった文字は

『深淵の力、ダークソウルにて増大するものなり。ダークソウルこそ深淵の1形態であり、最初の火の全ての裏を内包するもの』と。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第11話 始まりの火

 

更に数百年の年月が流れた。あの龍狩りから既に、6千年の年月が、過ぎていた。

 

ある時、雨の降りしきる中、一団が巨大な宮殿から歩み出していた。

太陽の王グウィンが、数百年ぶりに自ら龍狩りに赴くと噂になっている。

グウィンの近くにはそれを守護する四騎士、オーンスタイン、アルトリウス、キアラン、ゴーの四名の姿も確認されたと言う。他、銀騎士が数千名、巨人の弓兵数百名、グウィンの配下となった飛竜数百を従い龍狩りへと赴いた。

 

これ程の戦力を見せると言うことは、ある種の恫喝とも取れる。

しかし、本来の戦力の100分の1すらない戦力ですら、力のない小人達にとっては非常に大きなものだった。

 

そんな話は町から遠くを移動中だったウェルスの耳には入らず、謀らずも同じ目的地へ向けて歩みを進めていた。

 

 

《特地・イタリカ》アリス

ああ、殿下が自衛隊に付いていってからかれこれ一週間、大丈夫かなぁ。主に私達。

イタリカのメイドさん達は、私達にあんまり良い印象を持って無いから正直居ずらいんだよねぇ。

って思いながら、事務仕事を片付ける。

 

本当、みんな事務仕事苦手なんだから、私の身にもなってみろって。な感じでヤケクソになっていたので、ちょっと街の外でも行ってみた訳なんだけど、あそこに座ってるのって、まさかミュイ様!?えっ?何で?

 

何でこんなところにいるの!!メイド達の監督不行き届きだろ!まずい、このままだと、とてつもなくまずい。私が彼女を連れ出したと思われちゃう。

 

「ミュイ様?どうしてこんなところにいるのですか?みんな心配しますよ?」

 

そんな感じで聞いたら

 

「いえ、少し人々の暮らしを見たかったので、ごめんなさい。」

 

おおぅ。ま、まあ私優しいから、なんとも思ってないけどね!ってあら?門の横に、あんな篝火あったかしら、いやいや絶対ない。

誰があんなの作ったの?

 

早く消さなきゃ、やっと治った門なのに今度は炎上しちゃったら元も子もない。

 

彼女が、火を消火しようと井戸から水を組み上げそれをかける。しかし、篝火はまるで水など掛かっていないかのようにそこにあった。

そこで彼女は思うのだ。

 

え?これって火じゃないの?

 

恐る恐る、火に近づき手を火に近付ける。暑くない、それどころか火傷をすることもない。しかし、暖かくまるで、母の腕の中のようだ。

 

なんなんだろうこれ、訳わかんない。でも、これは報告しなければ、まずいなぁ。

 

 

《西方砂漠・最西端都トゥンバレン》 質屋

 

ここは何処にでもある質屋、そんなところにある二人組が現れた。

 

「店主少し良いだろうか?路銀が尽きてしまって、困っているんだ。換金しても良いかな?」

 

一人は非常に上質な鎧を纏った騎士風の男。

 

「ああ、ここは質屋だからな。金のためには何かと交換せにゃならんが、見たところ良いものを持っているようだが?何にするんだ?」

 

もう一人は、眼をティアラで覆い隠した貴賓溢れる女性

 

「ありがたい、してこの金貨なんだが、ある大陸を旅していたとき、偶然発見したものなのだがどうかな。」

 

二人はあの大陸から来たと言う。だとするならば、今彼らに必要な分だけで充分だろうが、足元を見すぎるとこういうあいては見境ないからな。

 

「では、これでどうだろうか。妥当な値だと思うのだが。」

 

「ありがとう。これで旅が続けられる。」

 

「ところであんたさん、名前は」

 

「俺の名前か?俺の名はアッシュ、でこっちが妻のイザベラ。」

 

 

 

〈上級騎士・アッシュ〉

 

路銀が底を付いたので、正直いらないものになっていた錆び付いた金貨を質屋に渡した。

正直腐るほどあるから50枚程渡したら、ラバを買うことができた。

 

それと火守女の服、正直目立つ筈だ。

なら少しでも俗世のものを着られるように、俺が見繕ってあげなければ。

もはや火守女の使命は無いに等しいのだから。

 

「灰の方、この生き物の上に私などが載っても良いのでしょうか?」

 

「その生き物は、荷物や人を運ぶのが仕事なのだ。だから君が載っても大丈夫だよ。

それに、私も同じようなものに載っているからね。」

 

二人してラバに乗り、この砂漠地帯を抜けるべく商人達の護衛を、しつつゲートがあると言われているアルヌスの丘へと進んでいく。

 

商人達の話を聞くに、現在アルヌスの丘はゲートの向こう側の勢力との戦闘に敗北した結果、向こう側の手に落ちたと言う。

なるほど、まあ当然の事だろう。

 

彼等の世界にはまだ、『始まりの火』がある。その力を使えばこの時代の文明など、片手間で滅ぼすことができよう。

 

「まだ、瞳は違和感があるかな?」

 

「いえ、ですが長い間眠っていた性でしょうか。まだ少し見え辛いです。」

 

「では、ゆっくりいくとしよう。何、時間はかなりあるからな。」

 

 

 

《旅館》ウェルス

 

うーん、これが温泉か。暖かい水がこうも適温で流れてくるとは、実に気持ちが良い。

ちと、古傷に染みるがこれもまた癒えるのだろうか。

 

「おう、どうよ温泉は気持ち良いだろう?」

 

彼に伊丹が話しかける、普段二人は良い印象を持ち会っていないが、双方他人を思っての事だと納得している。

 

「ああ、気持ちが良いものだな。古傷が癒えるようだ。長年生きてきたが、こういう文化は始めてだな。」

 

「あんた、いつも思うんだが言動が爺臭いぞ?本当にそんな歳なのか?」

 

どうやら彼は私の年齢を信じていないようだ。それもまた当然だろう。

 

「自分でも最初の頃からの数えていたわけではないが、かぞえはじめてからがあの年齢だ。今でも懐かしい古龍大戦の日々、今でも当時に戻りたいよ。」

 

「その話、詳しく聞かせてくれよ。」

 

「フッ、では聞くが良い。少年達が心踊らせた神々と私の古の物語を。」

 

話は、始まりの火の誕生前~大戦中まで話をした、本当はもっと長く話すつもりであったが、女集がこちらへ話を掛けてきたことから中断せざる追えなくなった。

 

そして、酒盛りである。

楽しい、あの時を思い出し変わってしまった友を思う。

 

ああグウィン、なぜ貴公は変わってしまったのか。あの戦いの最中、心折れる寸前までいった、イザリスを励ましたのは貴公であろうに。

 

ニトよ、始まりの骸であった貴公はそうまでして眠りにつきたかったのか?小人が其ほどまでに、貴公の安眠を邪魔したか。

 

イザリスよ、王のソウルを分かち合おうと言った貴公の言葉に皆驚いた。だが、分けたときを思いだし、自ら造り出そうとした時、己の矮小さを忘れてしまったか?

 

名も無き闇の王よ、貴方は我が王であった。だが、なぜ私に護れと言った、小人の都を呑み込み、あまつさえ我友を奪ったのか。

 

友たちよ、私はあなた方にまた会いたい。

そして、始まりの火よお前はまだ燃えているのか?

この世界でも、存在しているのか?

私にはわかるぞ、貴様が見せている偽りの光を外にある太陽の光と錯覚している人々を。

 




オリジナル都市
トゥンバレン、一回のみの登場。ファルマート大陸の西端に位置する砂漠都市。
その立地の影響で、唯一、帝国が手を出せなかった国。

特産品の宝石特に石英の生産が最も多い。

感想、評価、誤字等よろしくお願いします。


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第12話 本

森の水辺の直ぐ近くで、鎧を纏う集団がテントの設営を

開始していた。

日も暮れ初め、太陽が地平へと沈むなか、各々ソウルから取り出したものを置いていく。

彼らに補給隊は必要ない、食べ物や武器等をソウル化することにより持ち運んでいるからだ。

 

巨人達はそんなテントは持っておらず、何かしら羽織るものを着て眠りにつこうとしている。

 

そんな中、小柄な人物が標準的なサイズの青い騎士と肩を並べて見回りをしている。

 

「アルトリウス、今日の行軍はここまでで明日には龍達の住み家に到着する予定だ。騎士達には充分な休息を取らせるように、との命令だ。」

 

「もう皆、見ての通り野営に入ってる。」

 

二人は恋人とまでは行かないまでも、それでもどこか和やかな雰囲気を出している。

二人は隊から少し離れた巨木の下で話を始めた。

 

「アルトリウス、お前は怖いか?」

 

「古龍がか?勿論怖いさ、私達の曾じい様達はその昔戦ったそうだ、だが私達は初陣だ。四騎士と言われても、龍狩りだけは初めてさ。」

 

「私もだ。ゴーとオーンスタインは龍狩りを良く知ってるそうだがな、他の連中は皆私達と対して変わらないが…、話の途中で誰か来たようだ。」

 

二人は各々の武器をとり、気配が来る方向を見た。

 

「う~ん、こちらの方向で良い筈なんだが…?何かすごいものに当たってしまったか?」

 

黒い鎧を纏った、小人の騎士がそこに現れた。

 

 

 

 

《旅館》ウェルス 前話から数時間後

 

来たか。

遠くの方で我々が寝静まるのを、じっと堪えていた連中が動き始めた。

だが、ロウリィと伊丹は未だ起きていて、なにやら行おうとしているが、構うものか。すぐさま殺し合いをはじめてしまおうか?

 

貴様等には見えずとも私には、貴様等のソウルが蠢いているのをしかと、捉えているのだ。

うん?こいつら同士討ち?いや、元々敵対しているのか?互いに潰し合い始めたな。

 

これでは戦いに参加せずとも良いか。

さて、では我々の中で非戦闘員の梨紗殿と、テュカ殿、レレイ殿を守りつつ生き残った連中が来たら、反撃でもするか。

もし、テュカ殿に傷を付けたらどうしてくれようか。

 

 

 

彼の目の前では、隠密行動をしていた筈の米、露、中の工作員達が激戦を繰り広げている。

そんな音が響き渡るのだ、寝ていたもの達も起き出して直ぐ様戦闘体勢へと移行する。

 

そして、そんな中、流れ弾が跳んでくるわけだが、ウェルスは見事にそれを手で掴み三人だけを守る。

正直、古龍の口からレーザーのようなブレスだとか、鉄が容易く融解する炎を受けて、ダメージを負う程度で済む、そんな世代であるだけに銃弾など屁でもない。

 

それどころか掴んだ銃弾を親指の力だけで弾き出し、撃ってきた方向へと牽制を入れる。

 

それと同じ頃、ロウリィがめちゃくちゃに暴れまわり、周囲から断末魔が聞こえてくる。

そんな阿鼻叫喚の中、レレイの手元にまた魔術書が現れるが、彼女がそれに気付く事無くそのまま放置される事となる。そして、それは第三者の旅行客に拾われる。

 

そんな事も露知らずに、戦闘を沈静化させ捕虜は特戦群に任せて、さっさと銀座に戻る。

忘れ物を忘れて、ウェルスにはどうでも良いこの世界の事など、眼中にない。あるのはテュカを筆頭にしたエルフたち、小人の末裔たちのことだけだった。

 

暗い暗い闇の中、彼だけがこの世界の実状を把握していた。文明として、始まりの火を使用することはない。

しかし、かつて化け物を、世界の覇者を殺す事に火を使い、元の場所に戻したのだろうと。

 

 

《ピド村》ソラール 同日昼間

 

今日も朝から元気に太陽礼拝!<太陽万歳!

をした後に、今お世話になっているピド村の方々のお仕事をお手伝い!

この陽気な空を眺めつつ、俺は魚を干物にしている。

そんな事をしていると、村人の一人がやって来て言った。

 

「ソラールさん、貴方は戦えますか?」

 

「俺は太陽の騎士ソラール、いつでも戦う準備は出来ている。それで、誰と戦おうと言うのか。」

 

突然の戦えるかという質問に、困惑する。

 

「ここ数日盗賊が近隣の村を襲っているそうで、皆で力を合わせて戦おうと考えまして。」

 

なるほどなるほど、義勇軍というものだな。

 

「わかった。このソラール、貴公等に力の限り力を貸そう。俺の命の恩人だからな。ワッハッハ」

 

さあ、何処からでもかかってくるが良い、この太陽の騎士ソラールが相手となろう。

なに、亡者達のように筋力の箍が外れている訳ではあるまい、多勢でも相手をしてやろう。

 

ああ、上級騎士の鎧を纏った彼がいたならば、どれ程心強かっただろうか。可笑しくなった(最初から何かずれてる)俺に止めを刺してくれた。そして、この太陽をくれた彼ならば、きっと同じようにいただろう。

 

ならば、せめて俺はこの村の太陽となり、貴公が残したこの世界を最後の時が来るまで見届けよう。

それが『灰』としての俺の役目であろう。

 

 

《西方砂漠ロード》アッシュ ソラールと同時刻

 

ヘックション!なんだ?不死人となってこのかた、くしゃみ等出たことは無かったのに、なんだ誰かが俺の事を噂しているのか?

 

「大丈夫ですか?灰の方。やはり、まだ起きるのが早かったのではないですか?力の蓄えが多くはない筈です。」

 

「大丈夫だよ。単なるくしゃみさ、そう言えば君はくしゃみも知らないんだよな。」

 

そう言うと火守女が申し訳なさそうに、こちらを見る。

 

「いやいや、怒ってるわけじゃないよ。ただ、世界があんなにならなければ、君はもっといろんな事を知っていたんじゃないかと、そう思っただけだ。」

 

「でも、灰の方。あんなことがあったから、私は貴方に出会えたのです。」

 

二人で旅をする。昔から一人旅ばかりしていた俺にとって、彼女と話をしながらの旅は非常に新鮮なものだった。

 

 

 

《日本国領海→中国領海》ウェルス達の戦闘から6時間後

 

船上に人影がある。小さな漁船だが、だからこそ人目を盗んでこれほどまでの場所にこれるというものだ。

送り込まれた観光客は手に、本を持っている。

文字は読めないものだろうが、解読は可能だ。

 

|这是一只乌鸦和垃圾(こちらはカラス、ゴミをあさって来た。)收成很好,我得到了印度文字(収穫は上々、天竺の経典をこの手に入れた。)

 

征求长期同意(群れ長了解)让我们马上回家(直ちに帰国させよう)感谢内部人员的出色工作(内通者達には良く働いてもらったお礼に)让我们收钱(金品を受け取らせておこう)

您将感到荣幸(貴官には栄誉が与えられ)您的家人将永远享有繁荣(家族共々未来永劫繁栄する権利を得るだろう)我希望我的同志们打个好仗(では同志、健闘を祈っている)。」

 

小舟に大型の船が近付き、乗組員は全員乗り込み日本の領海から去っていく。

彼らは知ることはない、本来は知るべきもの。

それは開けてはならぬ禁断のパンドラの箱、しかし、中に入っているのは、矮小な希望と絶対的な絶望だけ。

彼等が本国に持ち帰った後、悲劇が起こる。

世界がそれに、気付いた時、それは手遅れとなっていた。

 

 




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第13話 闇霊

巨木の下で相対するは、ウェルスとアルトリウス&キアラン。2対1の形となっているが、ウェルスに焦りは微塵も見ることは出来ない。

片やアルトリウスは、大剣を構え、キアランは短刀と曲剣を構える。

双方一歩も動くことなかった、数分後先に動いたのは、アルトリウス側であった。

 

「貴公は、何者だ。そのように気配を消すことができるのだ、それ相応の実力者であろう、名を名乗れ。」

 

「私の名は、ウェルス。かつて輪の都の騎士と名乗っていた、今は単なる放浪者の男だ。貴公等のその身なりから見るに、騎士のかたは、四騎士のアルトリウス。

女性のかたは、同じく四騎士のキアランとお見受けするが、何用でここにいるのか。」

 

二人へ威圧を込めた、声色で質問を投げ掛けるもアルトリウスは彼に、異様なものを感じていた。

輪の騎士は、それほど強いと言うものではない。それこそ銀騎士と同等が良いところだ。

だが、目の前のこの男は違う、まるで闇そのものが動いているかのようなものを感じ、背に嫌な汗を流す。

 

質問に答えたのは、そんな警戒を強めたアルトリウスでは無く、冷静な判断をしたキアランであった。

 

「貴公は噂を聞かないようだな、大王グウィンの龍狩りがあると、つまり私達がいるのはそう言うことだ。」

 

「そうか、あのグウィンも耄碌したものだな。かつては、一人で何十もの古龍を倒していたのにな。」

 

その言葉にアルトリウスは、怒りを込めて言った。

 

「我等の王を愚弄するな。」

 

「いや、すまないな。私にとってグウィンは戦友以外の何者でも無いからな。」

 

印象の悪い出会い、ここで互いに激突すると思われた…。

 

「アルトリウス、キアラン、何をしているんだ?皆帰りを待っているぞ。」

 

野太い声が緊張を絶った。

 

 

 

 

《銀座・ゲート前》ウェルス 早朝

 

民衆が集まりすぎて、寒い季節であるが熱気を発している。話を聞くに、どうやらロウリィを個人的に崇拝している通称変態と呼ばれる存在が集まっているということだ。

 

なるほど、その通称は的を射ている。頭に布の巻物をして、ターバン程ではないが、それでもそんなものをしつつ、旅に出掛けるような装備をしている訳ではない。

今か今かと、件の人物を待ち続けるその姿は、まるでソウルを求めて徘徊する亡者のようだ。

 

それが軍勢のように一ヶ所に集って詰められている。

そこへロウリィが現れた瞬間、海が割れるかのように二つに別れた。

こいつらは軍にでもいたのではないか、と思えるほどの統率の取れた動きだ。見た目はともかくな。

 

私達は何事もなく、ゆっくりとゲートへ向けて歩きだしそしてゲートを取り巻く施設の内部へと入った。

入る直後、時空の歪みを感じた。何者かが、この世界に迷い混んだ、ゲートを通じずソウル体ではあるがこの世界へと干渉をしている。

だが、私には関係ないこちらへは殺意を向けていないからな、標的は誰なんだろうか。

 

 

《銀座》あるCIA工作員 同時刻

 

俺たちが行う作戦は非常に簡単なものだった筈だった。

全員が配置に着き、合図を待ち続けること4分くらい経った頃だろうか。通信が入った。

どうやら日本の公安警察に嵌められたようだ。

 

緊急時の退去通信、急ぎ痕跡を消してその場から離れる。どうやら俺は逃げ切れそうだ。そうやって安心していたというのに、走る方向で赤黒い何か得体の知れないものが現れた。

 

人影が見えない時間帯だけに、大通りに出ることは出来ない、かといって買収できそうな相手でも無いことは瞬間的にわかった。なら、選択肢はひとつだけだ、強硬突破、できる限り使いたくはなかった銃を取り出し、こちらにお辞儀をして何やら剣を掲げながら奇妙な動きをしている奴を撃つ。

 

するとどうだろうか、全裸である筈の奴に当たると。痛みを訴えるように声を出すが、こちらとしては恐怖でしかない。なんせ頭に直撃したのに、生きているのだ。

 

あんな生物この世に存在して良いのか?良いはずがない。来た道を必死になって戻る、鎧の音が突如聞こえなくなった。撒いたか?そう思い立ち止まる。そして…、おかしいな、視線が天井へ向いて後ろを逆さまになって見る。そこで悟った、ああ死んだのか。

 

 

 

 

《銀座》駒門 数十分後

 

おいおい、こりゃ不可解な事が起きたもんだ。

俺たちが見張っていたCIAのエージェントが、こんなところで事切れてやがる。俺たちの追跡を振り切る程の手練れだったんだが、一体誰がやった、しかも痕跡を一切残してねえとはな。

 

「しかし、まあ見事に首と体がお別れしちまってるな。確か監視カメラをここに設置してあったはずなんだが、映像は残っちゃいないのか?」

 

「現在確認中です。事が事ですので、相手に気取られたくはありませんから。」

 

だよなぁ。あの国に宣戦布告するようなもんだからな。こりゃ、俺の首だけじゃすまねえかもな。

 

「映像の確認取れました。しかし…。」

 

「なんだ、いってみろ。」

 

「画像が乱れたあと、彼がいた場所が白い霧のようなもので塞がれて中が見えなくなっているんです。」

 

そりゃまた、超常現象か何かかね…。

 

 

 

この事が発端で同じような事件が世界各国で起こり始めた。それは、裏だけでは押さえきれない程に。

 

 

《イタリカ》アリス 同時刻?

 

はあ、書類仕事辛い、体動かしたい。皆と一緒に駆け回りたい~。どうして私のところばかり書類が来るの~。羊皮紙はそんなに安いものじゃ無いのに、こんなに来るなんて意味わかんない。

 

「失礼します。」

 

「入って…。なに?書類はそこに置いといて、完了したのは貴女から見て、左側にあるわ。」

 

はあ、また書類かな…。

 

「いえ、書類ではなくて、イタリカからの早馬で殿下が数日中に帰還なさると言うことで、件の篝火をなんとか消さなければイタリカ入城の邪魔になってしまうのです。」

 

ええ…。あんなのほっといて別の門から入れば良いのに。

 

「わかったわ。この書類が片付いたら行く。だから、ちょっと手伝ってくれる?」

 

 

 

《イタリカ》女騎士A

 

アリス、アリス・コ・メドッソ。

騎士団初期からのめんばーであり、殿下の側近にして平民の身分を持つ人物。

 

非常に優秀な人物で、書類仕事から戦闘をまで幅広い範囲で能力を発揮する多才な者。

 

私や他の騎士団のメンバーは、最初あの人に嫉妬していたけど、今は違う。尊敬以外の何者でもない。

私達が出来ないことを、さらっとやってしまうんだ。

 

でも、最近は少々お疲れの様子だから何か手伝える事は無いだろうか。

 

そう言った経緯で執務室に、連絡にいったけど正直きつい、こんなことを毎日やっていたなど気が狂ってしまう。気分転換に、何か別の事を考えよ。

 

そう言えば最近イタリカに妙な人物が現れたそうだ。

見たこともない、タマネギのような鎧を纏った人物だそうで、時折姿を見せるという。正直、嘘だと思うけどまあ一度は見てみたいな。

 

おっと、これで最後の書類かな。

 

「終わりました。まだありますか?」

 

「いいや、ありがとう。助かったよ。」

 

本当に尊敬出来る人だ。

 

 

 




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第14話 埋もれるもの

三人が対峙しているところに、一人の巨人がアルトリウスとキアランを探しにやって来た。そこで巨人がウェルスの方を見てこう言った。

 

「う?貴方は、ウェルス殿ではないですか?」

 

「そういう貴公は、巨人の英雄ゴーか?」

 

アルトリとキアランは、そんな二人を見て困惑している。まさかの出来事だ、ゴーが殿を着けて呼ぶ存在、それほどまでに、目の前の騎士は名のある存在なのか、と知らなかった自分達に疑問を感じた。

 

殺気立った空気は消え去り、二人を置き去りにして談笑し始めた二人を見やるに、アルトリとキアランは武器を納め二人に声を掛けた。

 

「談笑中悪いが、ゴー彼が何者なのか説明してもらえるだろうか。」

 

キアランがそう詰め寄ると、ゴーは大したものでもない風に行った。

 

「彼は最初の龍との戦争の頃から、龍と戦い続けたいわば、大王グウィンの戦友と言える存在、かつてその名を知らない者はいない程にその名は天にも響き、彼を謳う歌が作られたほどだった。

そのときの名は闇の騎士ウェルス。我々の世代は彼に憧れて龍狩りになるものがいたほどだ。」

 

「そんな昔の事恥ずかしいからやめろ。それよりも、聞きたいことがあったんだ。」

 

声色が変わり、興味深そうな声でウェルスは聞いた。

 

「あいつも、この龍狩りに来てるんだろ?こういう大々的な催しはあいつが一番好きだったからな。」

 

ゴーは、口をつぐみ慎重に行った。

 

「長子は、王を裏切った。そして、ロード・ランから追放され、王位継承権を剥奪され。消息をたった。」

 

ウェルスは、目を大きく見開き驚愕した。

 

 

 

《イタリカ》ピニャ

 

やっと、イタリカに到着か。

ああ、我等が騎士団にやっと帰還できる。向こうの世界は色々なものが有りすぎて、正直目が回る思いであった。

 

しかし、正門から出なく裏門から入れなど、アリスはどういうつもりなんだ?

うん?正門の方に何かいる…、タマネギ?なんだあれは、あんな鎧見たことも聞いたこともないぞ、

うん?随行員殿、何か、『あんな鎧がこの世界にはあるんですね。』いやいや、妾でもあんな鎧見たことないが。

 

と、アリスがあのタマネギの近くにいる、何か揉め事を起こしているのか?あのアリスをあそこまで激昂させているのは、何者なのだろうか。

 

「裏門へ向かっているところすまないが、正門の方へ戻ってもらえないだろうか。」

 

あれが何者なのか、確かめる必要がありそうだ。

 

 

~数十分前~

《イタリカ》アリス

 

うー、この篝火を誰が作ったかわからなかったけど、まさかこのタマネギだったとは、しかしこいついったいこんなところで何をやっているのやら。

 

「ちょっと貴方、こんなところで何をしているの?」

 

本当に何をしているんだか、こんなところに篝火なんて作っちゃって、壊せないから通行の邪魔よ。

にしても、反応がない。まさか無視?

 

「ちょっと聞いてるの?」

 

「グゥ…グゥ。」

 

ね、寝てる。どうしてこんなところで、しかも真っ昼間から寝れるんですかねぇ。

もしかして、私への当て付けですか、そうですかそうですか。

 

此方人等、数日まともな睡眠とってないのにねぇ!!ふざけんじゃないよ、ああああ。

 

「このやろう、起きやがれ!こんなとこで寝てんじゃねぇよ。このタマネギ野郎!」

 

まだ起きねぇか、たたっ切るぞ。

 

そうして剣に手を触れさせた瞬間

 

「うん?お、おおう。」

 

くぐもったオッサンの声が聞こえた。

 

「おお、貴公。私を起こしてくれたのか、すまないなぁ。ところでどうしてこんなところにいるんだね。」

 

「それは、こちらの台詞です。何だってこんな正門に、篝火作っちゃってんですか!だいたい貴方何者ですか!」

 

「おお、すまない交通の邪魔であったな。後で篝火は移動させておこう。自己紹介遅れた。

私はカタリナの騎士ジーク・バルド、ある人物を探してこの地に来た。とても大きな友人だ。見たことはないかね?」

 

なんて自分勝手なやつなんだ、正直呆れて怒っている自分がアホらしい。

 

「そんな人知りません。それよりも早く退いてください、邪魔ですので!」

 

全く此方の身にもなってみろってんだ。

 

 

~同じ頃~

《アルヌス》ウェルス

 

あれから数日たった。皇女は元の巣に戻り、皆が元の場所に戻っていた。(失った場所には還れないが。)

私の居住地は、現地民の志願制保安隊の隊舎となった。

 

ある時、栗林という少女〔ウェルスからしたらだいたい少女〕から相談を受けた。自分の上官にでも相談すれば良いだろうと、言ったが上官からその事を相談されたから、どうすれば良いのかと考えていたところ、一番経験が豊富な存在を見つけたそうだ。

 

「それで、何か方法は無いんでしょうか。」

 

「有るにあるが、おすすめはしない。」

 

「何でですか?もし、それがわかれば同じような事で苦しんでる人を、救うことができるのに。」

 

「話は最後まで聞け、君ならどうする?記憶を失った事すら忘れてしまうのと、そのまま狂ったままで現実を見れないのは。どちらが良い?」

 

彼女はそれを聞いて何か思うことがあったのだろうが、それでもそれを圧し殺している。

 

「まあ、私のは外法も良いところだからな。彼女がまだ生きているのなら、テュカを治してくれるだろうな。もしくは、薪の王ならあるいは。

ただ現実叩きつけられて、彼女が壊れない心を持っているなら、奇跡を使わなくても良いが。」

 

「奇跡とか言うけど万能じゃ無いんだね。」

 

「小人が使うものは、神々の力の再現。その物語を知っていなければ使えない。彼女の物語は、殆どが焚書され俺だって全てを見ていたわけじゃないからな。」

 

その言葉に落胆したのか、彼女は私の元から去っていった。

フランを訪ねたとき、既にフランは死んでいた。

しかし、彼女の消息は辿れず仕舞い、彼女の血をひくものたちが多くいたことを考えるに、長く生きたことはわかったが…。栗林のソウルはどうしてか、見覚えがあるような、彼女と似ているような感じがする。

 

また要請があれば手伝ってやろうか。正直久々に龍狩りをやりたくなってきたからな。

 

 

~だいたい一週間後~

《エジプト》全世界生放送

 

世界中の民衆がゲートの事に飽き始めた頃、ある事が起きた。ピラミッド下層に未知の大空間が空いているというものだった。

 

最初は機械の故障と思われた。しかし、何度も違う計器を使用しても同じような影が映る。

それは、入り口を見つけるまで、研究員達の間だけで探索されそれは、遂に解放された。

 

『世紀の発見です。長年の謎に包まれていたギザ三大ピラミッドの存在、それが今明らかになります!』

 

ピラミッドやスフィンクスはそれを隠すために作られたのだろうか。

開かれた場所には、小さな神殿のような建物と、その前に置かれた盃。

 

そして、盃の中で燃え盛るがあった。

 




評価、感想、誤字等よろしくお願いします。

インフルエンザに感染しまして、更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。


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第15話 狩り

飛龍の大きさは最低でも“ヘルカイト”サイズ


雷雲が空を覆う中、飛龍たちが激突する。片や鱗に王家の紋章を刻みしものたち、片や無垢のものたち。

空中で激突する。

 

それを急襲するかのように横合いから、王家のものたちを捉えようと巨大な古龍たちが現れる。

それを、更に下から多くの巨大な矢が、雷を纏った矢が降り注ぐ。

 

それらを掻い潜り上空で数瞬古龍は滞空する。

古龍たちは飛龍ほど本能に縛られない、何処からの攻撃か判断した瞬間散開し急降下を始める。

口にブレスを、溜めつつ自らの残された命を使い、仲間を殺し、傀儡とした憎き神グウィンと刺し違えるため。自分達を裏切ったシースに復讐するために。

 

その時だ、戦闘の一体に一際大きな矢が胴体を貫く。

溜め込まれたエネルギーが暴発し、周囲に巨大な火球(半径300mくらい)として広がる。

爆風が吹き荒れ雲が晴れると同時に、火球から出た古龍たちは目にする。

 

眼前まで迫った龍狩りの矢を。

それでも止まらぬものたち、自らを犠牲にし後続に道を託して死んでいく、朽ちぬ古龍は力を喪いもはやただの獣と同様。

 

しかし、それでも100いた内の40は地上に舞い降りた。それは60mは優に有ろうかという巨体。

それが銀騎士達の前に立ちはだかる。

腕の一振りで、騎士達はバラバラに飛ばされ、地面に叩き付けられる。

 

だが、やられているだけではない。巨人が幾人も現れ複数で取り囲む。その横合いから騎士が数で圧倒していく。手に掲げるは雷の杭、鱗を穿ち身に打ち付ける。

岩のようなものが、龍の頭を潰す。

 

身の焼ける音、龍の絶叫。それでも、空に未だ滞空していたものが、グウィンに上から襲いかかる。

横から矢に貫かれ脱落するも、それでもまだいる。

 

龍の前に一人、黄金の鎧が立ちはだかり雷を纏った槍を持って龍を穿ち一つ一つ命を刈り取っていく。

この戦場にアルトリウスと、キアランの姿はない。

 

彼等がいる場は、龍の苗床。

ここの主は大樹の龍。灰の時代から生きる古き古龍。

その巨体が悲鳴をあげている。幾本もあった腕はその悉くが切り採られ、再生をしようとする場所は腐り始めている。

 

もはや死に体の古龍。そこにいるは二人、とても息のあった動きで古龍を翻弄し息の根を止めていく。

そして、アルトリウスの一撃が龍の顎を破壊し、キアランの毒が更に蝕んでいく。

遂には動きを止め、死んだと思われた。

最後の力を振り絞り、全盛の時代の力を最後にグウィンへ向け放った。アルトリウスはそれに間に合わなかった。

 

グウィンへと一本の熱光線が迫る。そこにグウィンの遥か後方から同じような暗い熱光線が激突し、上空へと反らされる。

 

グウィンには確信があった、自らが手出しをしなくともやつが動くと。龍がこちらを狙えば、後ろにある小人の村は滅ぶ。ウェルスの情報は、オーンスタインから得ていた。ウェルスは村を守るために来た。必ず動く。それでも動かなければ村がなくなる。

 

ウェルスが動かなくてもグウィンが動けば良い、そうすれば益々信仰が深くなる。

 

ただ、今グウィンは背に冷や汗を流している。ウェルスが、こちらに敵意をむき出しにしている事がわかっているからだ。

 

 

 

~前話ウェルスとの会話同時刻~

《アルヌス》栗林

 

ヤバいなぁ~凄くヤバい、このままだと隊長社会的に死ぬかもなぁ。最近あのテュカって子が、ますます隊長に依存してきてるから、訓練すら上司から止められてるみたいだし。

 

かと言って、無理やりやると壊れるかもしれないとなると、どうすれば良いのか。

ロウリィに聞いても、強行手段しか言わないし。黒川に相談しても難しいと言われた。

 

そこであの騎士に聞いた、そしたら出来ないことはない。その分、記憶も、想いでも、その人物の事も完全に忘れると、言われて絶句した。やはりとんでもない人物ではあるのだろう。狙って記憶を消せるとか、最早現代の科学超えてない?

隊長には最終手段として伝えないでおこうと思う。

 

だけど、誰かが方法を知っているとは言っていた。長年合っていないから場所はわからないと言っていたが、希望はあるのだろうなぁ。

 

にしても、初対面の時も思ったんだけど、あの人とどっかで合ったこと無い筈なのに、懐かしく感じたんだよなぁ。今ですら、懐かしく感じるし、似た人と合ったことあるのかな。

 

 

~また数日後夜間~

《アルヌス》ウェルス

暗い魂を見に宿した、ソウルが近付いている。

だが、少し…。土?いや岩か。ハベル、かの神の加護が弱くも宿っているか。

 

会うのは楽しみだな。

どれ向かうとするか。

「お~い、ちょっと来てくれ。」

 

「へい、隊長何でしょう。」

 

「ちょっと外出してくる。机にあるのはだいたい終わらせて置いたから、後は任せるよ。」

 

「え?あ、はい。いつ終わらせたんですか?」

 

「秘密。」

 

全く転写の魔術様々だ。インクもそのままに、まるごとやってくれるからな。本当に生活用の魔術は便利だよ、マヌス。

 

~歩くこと十数分~

ソウルを見るにここに来るな、ちょうど良い数日ぶりに飯でも食うか。

伊丹とロウリィ、黒川、後誰だったか。まあ良いいるようだしな。ちょっと混ぜてもらおうか?

 

「なんだ伊丹の、愚痴を聞いているのかな?」

 

黒川は、驚いたようだ。もう一人はああ、冨田か。

 

「おお、あんたか。あんたも聞いてくれないか。」

 

「それなら栗林君から聞いてるよ。テュカの件だろ?」

 

席に着いていた4人の手が止まった。

 

「ねぇ、貴方いつから栗林さんとそんな中になったの?」

 

「何をいってるだ?何も疚しいことはないが?」

 

早く会いたいものだな、暗い魂の持ち主に。

 

 

 

~同時刻~

《アメリカ》FBI捜査官

 

これで何件目だ?かれこれ500件以上は行ってるんじゃないかこんな、変死体。

 

彼の目の前に有るのは一つの死体。体を何か巨大なハンマーか何かで潰されたような、そんな死体。

 

「先月から数えてこれで729件です。」

 

「ボリスか?」

 

後ろからもう一人ボリスという捜査官が現れた。

 

「データベースから抜き出したんですけど、これに似た事件は64年頃から確認されてます。しかも、全ての事件がFBIの未解決事件記録になってます。大変だったすよ。探すまで、6日かけましたから。」

 

「そりゃご苦労様。そんな昔からいるんじゃ同一犯じゃ無さそうだな。」

 

データを見ながら

 

「なんだこら、最初の年は12人、五年後には40人に増えている?胸を抉られたり、刃物で刺されたり、矢で射られたり類似点が無さそうに見えて、確かに存在する。赤い石。これが唯一の手掛かりか。」

 

赤い石、これが何を表しているかわからないが、このままだと、この国を揺るがしかねない。何としてでも突き止めなければ。

 

「それと、CIAからの情報なんだがJAPANで、同じように工作員が殺されたそうですよ?」

 

だとすると、この国だけの問題でもなくなるな。FBIだけじゃ無理だな。最悪インターポールの力も借りなきゃならないかもな。

 

「上はこの事は知ってるのか?」

 

「いつも通り、知っててまだ知らぬを突き通すつもりです。」

 

大事になったら、そのときは手遅れだぞ?

最悪、俺の首をかける必要があるな。

 

地球上での狩りが本格的に広がっていく。

 

 

 

《エジプト》

ここでは、先のピラミッドの影響で再度多くの墓の調査を執り行っていた。この中でもまた一つ、部屋が見つかる。そこの空間は先のピラミッドの空間ほど広くなく、調度品も無い、周囲は灰で覆われており、より狭くなっている。

 

そして、中心に『石突きが二又に別れた長い杖』が突き立てられていた。それは炎に包まれた暖かいものだ。

 

いや、エジプトだけではない。

世界中の学者が何かに掻き立てられ、古い遺跡をピンポイントで探り世界中でそれらが発掘されていく。

そこには、剣、斧、メイス、弓、槍、様々なもの。

それぞれの文明、国の神話ごとに存在した。

 

学者らの動きを誰も気にも止めず、誰も疑問にも思わない。当然そこにあると、誰もが納得し全てが収まっていた。

 

 

そんな頃ピラミッドを探ったものたちは部屋の中から出てくることはなく。忽然と姿を消す。

確実に世界が 狂い( 元に戻り ) 始めていた。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

それでは良いお年を


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第16話 訪ね人

ゴーから話を聞いた後、ウェルスはそそくさと逃げるように目的地へ急いだ。現実を受け入れたくなかった。

 

今回この方面へ来たのは、小人の村からの依頼で村の護衛を願われた為だ。

彼等は古龍たちと深く交流を持ち、縄張りに住まわせてもらう事により、身の安全を確保する。

そういう種族だった。

 

しかし、それをグウィンが嗅ぎ付けた。そして軍を動かす事が知られ、小人達はそれを古龍に逃げてくれるように頼んだ。

古龍は、村人に卵を守るという条件のもと住まわせていた。

 

それから逃げることなど、せっかく紡いだ命をみすみす殺す事となる。ならばと、グウィンと戦う旨を伝え、卵を守るために、村を護るものをここに連れてくる用、伝えた。そして、そこにウェルスが来た。

 

ウェルスが到着して1日たった後だろうか、グウィンが古龍の巣と村の中間に布陣する。

ウェルスは激怒した。なんと、愚かで暴虐な王であるかと、布陣する場所は調度龍のブレスが直撃するであろうコース。

 

案の定戦闘の最終段階で、大樹の古龍の光熱量ブレス(レーザー)がグウィンに向け放たれる。其をこちらに反らすと判断したウェルスは、ブレスを打ち消すべく

【暗い奔流】を放つ。

打ち消した後、彼はグウィンのいる場を一瞥し、村長へグウィンとあってくる旨を話し、グウィンへ向けて歩みを進めた。

 

 

~夜間~

《アルヌス》ウェルス

 

ウェルスは、伊丹、富田、ロウリィ、黒川がいる店に到着し、その席に座った。非常に強烈な蒸留酒と、少しの料理を頼んで話しを、始めた。

 

「それで?クリに聞いた感想は?何か解決法は有るのか?」

 

「例えば、父親との記憶を消す。もう一つは荒療治だが、真実を突き付け壊れない心を信じるか。そのどちらかだ。」

 

黒川が興味深そうに聞いてきた。

 

「つまり頭の中を弄るってことでしょうか。そんな外科的方法でもやると?」

 

「まあ、まて消すといっても脳を弄る訳じゃない。ソウルの方へ干渉する、それだけだ。」

 

意味が通っていないようだ。ソウル、いきなり魂なんて言うから皆目が点になってる。ロウリィに至っては、軽蔑した目で見てきている。

 

「いつも思うんだけど、何でそんな事出来るんだ?」

 

「ソウルと言うものが、魂だとして貴方はまるで自分が、全能神みたいに言いますね。」

 

「ああ、全能じゃない、だが、出来ることを言っているだけだ。無論神ではない、君らとも違う。君らは私と似て非なるものだ。」

 

「それは、良い。それでテュカは自殺しないかもしれないが、記憶を失った後の、矛盾はどうするつもりだった。」

 

「そんなもの考えるなら、やらないよ。聞くに、黒川くんと同意見である強制的に突き付ける方法に落ち着くさ、それで彼女が向こうへ行ってしまうようなら。何度だって記憶を消して、諦めるまでダイスを振り続けるだけさ。」

 

「冷酷だな」

 

「よく言われるよ。」

 

その時、席を立つ音が聞こえた。どうやら黒川らしい。

 

「私は戻ります。隊長、ウェルスさんの言うとおり私は同じ意見ですので。では、お先に失礼します。」

 

黒川と、富田が去っていく、富田は送っていくそうだ。その後少しの間沈黙が流れたが調度、私の料理が現れた。そこで食べ始めて、ロウリィが喋りだした。

 

伊丹と二人で会話を進めていく。それに耳を傾けて、ああ、優しいやつなのだなと改めて納得するも、これはあれだな。ロウリィが俺の事を邪魔物と見ているな。仕方ない、移動するか。

 

「すまないが席を移るよ、向こうの酒が気になるからね。」

 

そうして少し、離れた席に移り酒を頼んで飲んでいると、二人の席から声がした。

顔にターバンを、巻いて横から耳が少し見えた。魂は暗い。間違いない、彼女であろう。

 

おお、おお、すごいねロウリィが頭に来てやがる。

ここで、伊丹をいたいけな少女を狙う悪漢に仕立て上げて、ソウルの持ち主に対する好感度を下げようという作戦か。実に面白い、しかも成功するだろうな。

 

 

 

《アルヌス》ヤオ

 

緑の人、そして暗き騎士。その情報を頼りに、この地にやって来た。

そして、それらしき人々が集まるという場所には来てみれば、なんと暴漢が少女を襲おうとしていた。

 

守ってやれば礼を言わずに何処へと言ってしまったよ。

料理を注文して緑の人を訪ねに来たと、訪ねればなぜ彼等を訪ねに来たのかと、言われた。

 

報奨は弾む金剛石の原石に、私自身。手負いの炎龍退治だと。そしたら、皆無理だと言っていた。

私のカウンターの近くの机で、一人食べている男以外は。

 

「炎龍か、それは腕が無く目に矢が刺さっていておまけに尻尾も斬られている。それで間違いないかな?」

 

皆がその男を見た。人間の給仕や庶民がそう言えば、あなたがいた。そう言った。

 

「貴殿、名はなんと言うのか。」

 

「私は輪の都、いや闇の騎士ウェルスとでも名乗っておこう。」

 

なんて男だろうか、闇の騎士。ふざけた名を名乗ったこの男、確かに他の連中と纏う雰囲気は違う。

まるで、大婆様の話す不死の騎士のようだ。

 

「それで?闇の騎士ウェルス『ウェルスでかまわない』では、ウェルス殿。貴殿に炎龍退治が可能であると?」

 

「無論だ、あんな劣化したものひねり潰して見せよう。」

 

「ふざけた事を言うな、人が手出しが出来ないから龍というものが恐れられる。それを貴様は、我が同胞の名誉を傷付けるどころか、死者すら愚弄する物言いだ。そんな貴殿に、私たちが助けられるとは到底思えない。」

 

こんな傲慢な男があの話しに聞くに暗き騎士の筈が無い。あまりにも軽率で、死者を愚弄する。それどころか、龍を虫けらのように言うなどこいつはどうかしている。

 

「わかった。では、受けない。で、これは料理代だ一番上手い料理を頼んでおいた。まあ、せいぜい食ってくれや。」

 

謝罪のつもりか知らぬが、これは有りがたく頂いておこう。

 

 

 

《中国・青海省・特地特殊技能秘密研究所》

 

そこではある本の解読が行われていた。

コンピューターによる言語の解明と、人命をなんとも思わない方法によってそれは着実に進んでいった。

 

ある時、本の後編にあたる部分の解読に成功し、それを人体実験を用いて行おうとした。

それを、触媒を整えいよいよと言うところでとんでもない事が起きた。

 

赤い人影が侵入してきたのだ。虐殺されていく、研究員。徐々に近づいてくる人影、遂には手をつけられると言うところで、それを口ずさんだ。

赤い影は沼のような暗い何かに足を止められ、研究員ともどもその暗い泥に、呑み込まれていった。

その泥からは、ハエのような顔が出ていた。

 

 




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第17話 ソウルの理

「そこの者、止まれ!」

 

銀騎士たちが、再集結しているところに一人の男が現れた。見知った者がいれば、輪の都の鎧に似ていると言うだろう。そこに、リングを型どったものは無いが、小人であると言うのは良くわかった。

 

銀騎士達はその、男の前に立ち塞がると名を名乗るようにと言いつつも、腰の剣に手を掛け臨戦態勢へと移行している。

やっと龍狩りを終えたばかりだというのに、なぜこのような男の相手をしなければならないのかと。

 

「案ずるな、その男を相手にしてはならない」

 

グウィンが騎士達を制し、その男の前に出る。

 

「久しぶりだな、深淵の騎士ウェルスよ。元気であったかな?いつ以来か、そんな事はどうでも良いかの。そう言えば、貴公。輪の都はどうした?なぜ帰っていないのか。」

 

「ふん、あんな都、疾うの昔に捨てた。貴様、良くもまあ俺を騙してくれたな。貴様を殺すつもりは無いが、怒りで貴様を殺しそうだ。」

 

二人の間に立つものはなく、睨み合いが続く。寒気のする空気が流れていたが、それを打ち破ったのはグウィンの方からだった。

 

「詫びも兼ねてどうかね?我が城へ案内しよう。旧友が来たのだ、それに今日は龍狩りも成功した。祝杯へご招待しよう。どうかな?」

 

「どうかな?だと?ほう、余裕だな。俺一人では貴様を殺せないからな。良いだろうそれに乗ってやる、周囲に潜ませている伏兵を退かせろ。目障りだ。」

 

周囲に藍色の装束を纏った者たちが現れる。王の刃、キアランが頭領として纏めあげる、アノール・ロンドの暗部組織。それらが、ウェルスの周囲を囲っていたのだ。

 

「では、招待しよう我が城へ。」

 

グウィンの合図の元に、出立の準備が整えられる。

 

 

 

《西方砂漠、交易路》アッシュ

 

荷馬車が砂漠を突き進む。枯れた大地を、隊列組んでゆったりと進んでいく。

途中で寄ったオアシスで、この商人たちとであった。なんとも良い事に、目的地は帝国?という国にあるアルヌスだという。

 

話しに聞くところによると、最近では非常に発展していて、周囲に比べて品を扱うのが多くなったのだとか。

それに、商機を見いだして大移動を行っている。と言うのが、この商隊の隊長の言い分だ。

 

私たちは同じ方向へ行くと言うので、今は共に行動している。正直、火守女の体力の心配もあったのだから調度良いだろう。

 

「それでだな?最近エルベ藩首王国近郊にドラゴンが出ているんだそうだ。私らもそんなものと出会わないで、この旅を終えたいものだ。聞いているかい?」

 

「ええ、聞いています。私は一応腕には自信があります。もしもの時は、時間はしっかりと稼いであげますよ。」

 

こうして護衛を請け負っている。それにしても、ドラゴンか。良い思いではこれっぽっちも無いな。

丸焼きにされたり、潰されたり、吹き飛ばされたりetc…。

今思い出すだけでも寒気がする。

 

「灰の方、少しよろしいでしょうか?皆さんが、冒険譚を聞きたがっておりまして、私では詳しくお話し出来ないのです。」

 

「わかった今行くよ。」

 

「旦那も、良い奥さんですなぁ。全く、あんな美人がこの世にはいるのだなぁ。」

 

「まったくです。私には過ぎたものですよ。」

 

本当に、彼女があんなにも楽しそうにしている。あの時代、笑いというものがどれ程貴重で、どれ程尊かったか。今にして思えば、あまりにも残酷すぎる。

なんにせよ、今はよかった。

こんなにも真実の太陽が光輝き、地を照らし民は笑顔を出来る。それだけでも、火を消したのは間違いでなかったと、気付く要因になるな。

 

 

 

《アルヌス》ヤオ

どうしてこうなった。

私はただ、正義の名のもとに暴漢を追い払い、詐欺師を撃退しただけだというのに、なぜこんなところで取り調べを受けているのか!

 

私は一刻も早く、帰らなければ助けを連れて戻らなくてはならないと言うのに!

こうしている間にも多くの命が散っているかもしれない。

 

そこで、私の翻訳を行ってくれる娘、レレイが現れ私の事情を説明した。

司令官たちにも事情を説明し、いよいよ私たちを助けてくれるのか、と期待をしていたが、それを裏切られる事態になる。

 

国軍として、戦争状態に無い国への一方的な派兵を否定されたのだ。我々の避難先が不味かった。そこはエルベ藩首王国、帝国とは違う場所、大々的に戦力を展開する事など出来ないと。

 

失意の念にかられる中を、ある男が扉を開いた。そこには私が否定した男、ウェルスが立っていた。

司令官達の話を途中から聞いていたのだという、この男

司令官達はこいつに一目置いているようだ、何をそこまで警戒しているのだろうか?

 

そして、このウェルスという男は司令官達と交渉し、なんと私の龍退治を手伝うという事を、言ってきた。

果たして、こいつは本当に言っているのだろうか?

 

 

ウェルス

 

ヤオ、彼女が言っていた事が事実なら彼女の部族は滅びに瀕している。

私がこのまま放置するという選択肢は無い。彼女達もまた、継ぐ者、我々はそれを護らねばならない。

 

既に話は着けた、後は彼等は自衛隊が誰かをこちらに回してくれれば良い

 

「君だけでも龍は撃てるそうだが、なぜ我々の戦力を削がねばならない?」

 

「私の場合、単純に威力が高すぎるのが理由だ。山一つ消し飛ばすだけで、済めば良い方だ。その点君らの戦力はそこまで過大な、ものではない。」

 

不確定要素である、私の邪魔をするものは必ず現れる。ならば、彼等を出来るだけ巻き込むのが最善だ。

 

「では、ヤオよろしく頼む。」

 

「ああ、こちらこそ。」

 

これで晴れて、龍を狩ることができる。

 

 

 

《アルヌス、湖》レレイ

 

師匠と共にここにやって来たのは、私の技術を試すという。私の卒業も兼ねて行うものだった。

そして、別の意味もある。私が無くしてしまった、師匠の本、その知識を少しでも師匠が知りたがった。というのもある。

 

私は師匠との約束通り、自衛隊から学んだ事を師匠に見せた。

この世界にはない、斬新な発想。それによって体系付けられた技術、その心理。それは、私たち魔法使いの使う技の何歩も先を言っていた。そして、気づいてしまった。いつか、私たちは文明の利器によって追い抜かされる運命だということを。

 

 

そして、私たちが生き残る可能性があの本に書いてあった。それは、深淵ではない。もっと私たちの力の本質、それは全ての生物が持つ力、そう。

あの男がいつも口にしている。【ソウル】その理。




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第18話 立ちしもの

アノール・ロンドそこは神々の住まう場所、その巨大な城はソウルの技術をふんだんに使用し、非常に強固に作られている。

その硬度は地上のあらゆる攻撃に耐え、風化をも防ぐという、恐るべきものだった。

 

周囲に広がる住宅もまた、神々の住まう場所。浄化の奇跡も相まって非常に清潔で、下水すら清水のようだ。

建物は、神々の平均的な身長2m以上の規格だ。

 

そんな所へ一団が帰って来た。鎧は激戦の中罅が入っていたり、血が付着していたりと戦いを物語っている。

巨大な大城門を抜けてきた彼等は、大声援を贈られアノール・ロンドに戻ってきた。

 

民衆は見る。その中の見慣れぬ鎧を来た小さき人がいたことを。出立の時、あれはいなかったあれは何なのか?自分達が虐げているもの、小人それが何故か一団の中にいる、誰もが疑問に思った。

 

それから数日中にパレードが開かれ、今回の戦闘で活躍したものに勲章と名誉が付与される。

その中でもアルトリウスと、キアランは讃えられ、王より土地を付与された。

 

そして、ウェルスの名が呼ばれた。

「今回の龍狩りで我々は、危機に見舞われた。しかし、そこで会ったのは龍たちだけではなかった。我が旧き友が、その危機に駆けつけた。皆忘れてしまった旧き戦、そのときの友。深淵の騎士ウェルス。絶大な力を持った神の一人、これでまた世は平穏となろう。」

 

神々は酔いしれる、自分達の世の中が更に良くなると。

ウェルスは、探すかつての友、そしてかつての思い人の

姿を。

 

 

《アルヌス》ヤオ

 

あの男との会見の後、私はある人物を探していた。

それは、若いエルフの娘テュカ・ルナ・マルソー。あの娘を龍狩りに引き入れる事が出来るなら、という条件がウェルスから出された。

 

どうしてあの男がそんな条件を出すのか…、何か意図が有るのかもしれないが、正直言って気色悪い。

何かとてつもない、執着というかそういう類いを感じる。

 

だが、今は私は形振り構っている場合ではない一族の運命を握っているのだ。

 

そう言えばウェルスは、鎧を纏うのが正式な姿だそうだが、あれを見てみたら、昔大ばあ様方が言っていた不死の騎士。黒い騎士とか、そう言うのに似ているのでは無いだろうか?

 

ただ、ウェルスは人間であるのだからそんな遥か過去に生きている筈はない。

継承者か何かの類いだろ。だが、もしあれが大ばあ様方が言っていた騎士ならば、私は正直どうすれば良いのだろうな?

 

正真正銘の化け物を相手に話をしなければならないのか?いやいや、今はそんな事は考えなくても良い。なんにせよ、テュカという娘を現実に目を向けさせるのが先だ。

 

 

《帝都郊外・皇室庭園》アリス

 

「そこ!料理を迅速に運んで!3番テーブルのメインが無くなってる。次に6番テーブル野菜が足りてない、迅速に用意して!」

 

全く騎士に成ったって言うのに、結局は給仕をやるはめになるんだから。結局私は貴族じゃ無いから、会食に呼ばれる事はないけど、それでも殿下が私が側にいることで、調子が出るのならこれで一向に構わない。

 

何より、書類とにらめっこしてるより、こうやって体を動かしてる方が楽なのよ。

にしても、日本から来た料理人実に見事な腕前、私でなければ見逃してしまうわ。

 

でテーブルの方を見ると、あれ?おかしいなぁ、何であの人いるの?ジークバルドさん、鎧をとってる姿はまあ見てたけど、何でいるの?しかも、婦人の皆さんに囲まれてるし。

 

「すいません、そこの方、バルドさん。ちょっとこちらへ来ていただいても良いですか?」

 

「うん?おお、暫し待たれよ今そちらへ行くぞ。では、ご婦人方私はこれにて。」

 

何がさてご婦人方よ、どんだけ肝が座ってるのか正直見習いたい位には座ってる。

 

「ねぇ、ちょっと貴方、何でここにいるの?部外者立ち入り禁止よ?」

 

「そこは案ずる事はない。現在私は殿下より、正式に騎士団に迎えいれてもらっている。護衛としてここにいるのだ。何もおかしな事はないぞ。」

 

い、いつの間に。いい人なのはわかるけどそこはどうなのよ~。殿下は変わり者だけど、そこはちょっと気を使って!

 

「それはわかったけど、気を付けてよ!粗相の無いように!」

 

「ハッハッハッ。わかっておる。カタリナの騎士ジークバルドの名にかけて、粗相はせん。」

 

はあ、胃が痛い。誰か胃薬くれないかなぁ。

 

うん?あそこにも見慣れない男が、あれ?キアヌ・◯ーブスじゃね?あんな人いなかったよ!騎士団がどんどん訳がわからない方向に進んでく。ああ、どうしよう。

 

 

 

ウェルス

 

先程から給仕の女がこちらをチラチラと見ている。いったい何の用なのだろうか?

それよりも、まさかジークバルドがいるとはな、驚きだ。

 

だが、確か巨人ヨームは別の大陸に渡った筈だが…。まさかと思うが、乗る船をあいつは間違えたのではないか?心配だな、剣の腕は確かに立つがこう意味不明な方向に移動していたら、身が持たないんじゃないか?

 

今は気にしてもしょうがないが、いずれは教えてやらねばな。

 

にしても、この園遊会?

昔みたいに華やかというよりは、政治色が強いものだな。ギスギスしている、楽しんでいるのは一部の婦人方位なものか、いささか比較対象が旧すぎるか?

 

人不足だからと、補充用員を出されたが現地協力者とはめんどくさい者なのだな。

ヤオは、私との約束通りテュカを誘導できただろうか?

俺はテュカには信用されていないからな。何より怖がられている。

敵討ちを出来れば変わるだろうか?

 

小人のために、滅ぶべくして滅んだ神々のように滅ぶわけにはいかない。過去を繋げるものがいなくなれば、この世界は同じ過ちを繰り返すかもしれない。

火はまた灯る。そのときになって、火を使おうとしたら我々の努力は水の泡となってしまう。

 

 

 

~同時刻~

《中国・青海省》

 

人口衛星から見えるその大地は暗い色に覆われていた。

光を反射すること無く、全てを飲み込むのではと思われるその物体は拡がっていた。

 

今もなお対策がたてられ、焼夷弾を使用して焼き払おうとしたが、全てを呑み込みその体積は増すばかり。

打つ手はないと、諦めかけている。

 

もはや政府はそれを隠蔽する他無いが、宇宙からは丸見えだ。もはや他国に構っていられる状況では無くなっていた。日本への工作は打ち止めとなり、予算は大幅に削減され、この事態の隠蔽に全力を注いでいた。

 

それでも気付かない、闇の上に一人の老人が立っていたことを。

 

 

 

 




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第19話 揺れるもの這い出すもの

あの日からまた数年の月日が流れた。

ウェルスはアノール・ロンドの中に捕らわれていた。

人間にとっては長い年月ではあるが、最初の小人や、神々にとってそれはあまりにも短いもの、従ってそれほど気にもしなかった。

 

ウェルスは、あの日グウィンがウェルスの事を『神』と紹介したのを疑問に感じ、グウィンへ問いただした。

帰って来た返答は、小人に対する偏見のため仕方ないことだと、そういうことだった。

 

実際はウェルスの存在を『神』とすることで、かつて強い小人が、この世に存在していたことを秘匿するという情報の偽造を行うという事だった。

 

ウェルスは、あの日から銀騎士達と混ざり、日々訓練をしていた。初め銀騎士達はウェルスを、訝しんでいたが年月というものの力は絶大で次第に信頼関係が生まれていた。

 

その中でもアルトリウスとの関係は、非常に良好なものとなった。

それでも、王の刃の監視を置かれいつでも殺せるようにと、されておりその事情を知るキアランは、彼を哀れんでいた。

 

そんな時、また龍狩りが行われた。

今度は小人の王たちが列席するなか、その騎士達も龍狩りに参加するのだという。

 

今の小人に龍狩りは、不可能に近い。何故ならば、彼等の力はその殆どが失われており、お世辞にも強いと言うものではなかった。ウェルスは、落胆していた。あまりにも矮小なその力に、絶望に打ちひしがれるなか、四人の若き小人が現れた。

 

彼等はダークソウルの力を使い、龍狩りを行っていた。グウィンはそれに恐れを抱いた。そして、ある疑問を抱いた。火の封が弱っているのでは?と。そして、四人を、監視するために褒美として王のソウルと、小ロンドという小人の国を納めさせた。それが、過ちだとわかった時には手遅れだった。

 

 

 

《帝都・悪所》ウェルス

 

外が騒がしい、地揺れが起こるだとかかなり騒いでいたりする。

あんなもの珍しくもない、だいたい星が落ちてくる方が余程恐ろしいのだがな。あの得体の知れない生物、今でも夢に見る。

 

さて、騒ぎが大きくなる前に外に出るとするか?建物が崩れてきて下敷きになったら、いちいち壊さなければならなくなるからな。

下に降りると、黒川や、伊丹、栗林等が勢揃いしていた。

 

「騒々しいな?地揺れが起こるのか?別に星が落ちてくる訳じゃないんだ、騒ぎすぎではないか?」

 

「おお、あんたか。地震の知識はあるんだな。皆を安心させてくれ、と言っても無理だと思うけど、それより隕石が落ちたところを見たことが有るのか?」

 

「ああ、あれは痛かった。身が焼ける思いだったよ。ついでに、奇妙な生物が出てきてな?全部殺すのに手間取った。」

 

ひきつった顔をしておる。隕石がそんなに珍しいか?

そんな事より、このごった返した人数を何とかせねばな。

 

「避難誘導は手伝える。指示を願う。」

 

その後、建物の中にいる連中を物があまり無い、広場へと誘導し、調度その頃地震が発生した。

ものが落ちてこないよう、少々【結界】を張ってやったが、なかなかどうして、上手く張れたな。

長いこと使っていなかったが、自分の腕が訛っていない事に自身を再確認できた。

 

もっとも気が付く者は殆どいない、ロウリィ位なものだろう。

彼女はこちらを見ると、ニヤリと笑った。まるで私にも人間のような心が有ることが分かり、非常に愉快だと思っているかのようだ。非常に不愉快だ。

伊丹達はどうやら、皇帝のもとへ向かうようだ。

 

 

《皇宮》伊丹

 

付いてこなくても良いと、言ったにも関わらずウェルスは付いてきた。何やら感じ取ったらしい。

そしたらロウリィもついてきて少々大所帯となっちまった。

 

宮殿に近付くに連れてウェルスの機嫌が悪くなって言ったのが、空気を感じて伝わってくる。いったい何が彼の逆鱗に触れたのか…。こいつはかなり変わり者だから普通の感覚がわからない、そんな奴だが流石にこんな場所で騒ぎは起こさないだろう。そう思っていた。

 

事の発端はゾルザルが、奴隷たちを連れてきた時の事、拉致被害者に激怒した俺たちにも否はある。散々ゾルザルをボコボコにして、その取り巻き連中を殺した。

だが、あの時の奴は俺達の度を超越()えていた。

 

奴隷の中にエルフがいた、彼はエルフに対して非常に神経を使っているのを、テュカを見て知っている俺から見てもそのときは、時間が止まったかのようになった。

 

まず、体から何か得体の知れないオーラのような暗い何かが放出され、それに触れた取り巻きの一人がミイラのようにボロボロになった。

 

それどころか、ロウリィですらその暗い力に体が震え始めていた。そして、こう言った。

「先に行け、鬱憤を晴らさねば貴様等諸とも潰してしまう。彼女の事を頼むぞ。」

 

そう言って、俺たちを先に行かせた。

その後、暗い雷が宮殿から上がり、何事もなかったかのように俺達に追い付いてきた。

わかったことがある、こいつにエルフの事を話すときは確りと考えて話すこと、そしてこいつは人ではない何かだということだ。

 

 

 

《ICPO本部》IRT所属員

 

世界中で殺人が起きている。それも非常に大規模で、計画性の無い無差別な最初はテロかと疑われた。

それにより、各国の協力要請のもとIRTが組織化された。

 

それでも、世界中でのそのまるで類似性の無さそうな無差別テロは、どんな組織によるものなのかまるでわからなかった。

 

ただ、現状で手掛かりとなるものは、赤い人影、霧の壁、多種多様な鎧を纏ったものたち。

一貫性の全く無いものたちだが、これだけの共通点がある。従って、何かしらの組織によるものだと確定した。問題はそれが、既存のあらゆる組織の形態の括りに括られない連中だ。

 

それを未然に防ぐことは出来ないと、思われた。犯人が現れる場所には必ずあるものも一緒に、あった。

それは、床や通路に描かれた何かしらの文字だ。しかも、光輝いているこれを世界中の警察に知らせた。

 

既に知っているものも、いるだろうがそれでも信憑性の有るものだと知らせるには、我々の言葉が一番であろう。既に警察組織にも被害が出始めている。

これが浸透するまでに、どれ程の犠牲が出るかわからないが、それでもやらないよりは良いだろう。

 

 

《???》ピラミッド調査員

 

俺たちは今、何処にいるんだろうか?

回りはひどく暗い、神殿の中心にあった盃に触れた瞬間、光に飲み込まれた。

 

その後、辺りは暗くなった。神殿の中には変わり無いがそれでも、外に出てわかったことがある。そう、暗い世界中が暗い、電話も無線も何も使えない。

 

この世界は何なのか、誰にもわからなかった。一つ、壁画が変わっていた、描かれた神はエジプト神話の闇の神

アペプを中心とした世界。いや、世界中の闇の神それが描かれている。

 

それだけじゃない、世界地図が描かれていて、各地に点々とした火の模様が描かれている。

メソポタミア、ヨーロッパ、エジプト、南アフリカ、南北中央アメリカ、中国、日本、東南アジア、インド、オーストラリア、南極、そして本来有るはずの無い大西洋、太平洋に有る二つの大陸。

特に二つの大陸の火は非常に大きく描かれていた。

 

ピラミッドの謎は以外とわかった、そう、扉だ。こっちとあっちを繋ぐゲート、我々の使命は何だろうか?ただ一つ、我々は目覚めさせた。なら眠りに着かせなければならないのかも知れない。




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第20話 知りうるもの





亡者



人類はどれに当てはまるのか。


それは、突然の出来事だった。

小ロンドが闇に包まれたのだ。いったい何が起きたのか、神々には検討もつかなかった、しかしウェルスだけがその答えを知っていた。

 

「あれは、ダークソウルの暴走だ。」

 

彼の言葉に誰もが目を向けた、ダークソウルの暴走、彼が体験した事が有るものはマヌスがかつてダークソウルの研究をしていたおり、マヌスの中のダークソウルが暴走を始めたことがあった。

 

そのときは、ウェルスが対処し事なきを得た。それが、小ロンド中を包んでいる。

グウィンの恐れた事が現実のものとなるのか?古龍たちの復活。小人が古龍の力を得る。それだけはならないと、そこに人員を派遣することになった。

 

万全を期すために、アルトリウスを筆頭に銀騎士たちが集められた。そこにウェルスが口を挟む

「君たちでは飲み込まれる」と、「私だけが対処出来る」と、そう言って。

 

しかし、グウィンは意地でもアルトリウスたちを派遣することに固執した。渋々ウェルスは、了承しアルトリウスと契約を結ぶ事となった。

深淵を歩く、即ち神を辞めるという事、その指輪を付ければ神ではなくなる。

 

銀騎士達は恐れた、自らの力が無くなるのでは?と、アルトリウスは違った。それを受け入れ、指輪を手にし小ロンドの深淵へと入っていく、ウェルスはそれを傍観するのではなく、共に歩んでいった。

 

深淵への対処をアルトリウスに伝授していく、ソウルの闘いでの使い方、ダークソウルの性質、そして深淵の特質。二人で歩み、四人の公王が居るであろう場所に付くが、そこには何もなかった。そう、深淵に溶けてしまった。核が無いものには対処のしようがない。

 

ならばと、ウェルスはグウィンに言った封じる方法を、そして三人の小人が輪の都から派遣され、封印を行った。この三人は後々ある不死人と出会うこととなる。

 

 

《アルヌス》ヤオ

 

ウェルス、奴が帰って来た。私はテュカへの焚き付けを終えたことを報告した、そして今すぐにでも行こうと言ったが、「今はだめだ。」と返された。

約束と違う、やはり彼だけでは頼りにならないな、ならば私があの《伊丹》という人物に頭を下げるしかあるまい。

 

そう決意していたのだが、もう一人の怪我を負ったエルフが目に入った。もしかすると、こやつも関係者かと思ったのだが、違った。なんと帝国の皇太子の奴隷となっていたのを、ウェルス等に救出されたという。

 

今は、これが現実かどうかわからないとそう言っている。彼女はどのエルフとも種族が違う、未知の種族だ。それに、実年齢は我々の長老達よりも遥かに長生きと言うことがわかった。

 

そして、彼女は話し始めたこうなった経緯、そしてあのウェルスとの関係を。

 

それは、昔まだエルフという種族が確立されていない時代、巨大な白き龍が不死を手にいれるためにかつて存在した小人という種族を無理矢理、歪めて作られた。

それが、我々の先祖だということ。

 

そして、その龍からエルフ族を助けたのがあのウェルスという騎士、それと岩のような戦士だったそうな。

それが今から何十万年も前の話し。

血が薄くなれば成る程、寿命も縮んでいく中で彼女が最後のウェルスの関係者。

 

かつてエルフ達が『王』として頼った存在。

幼い頃の記憶の中でウェルスを見た事があるという事だけを覚えていた。

そして、かつての記憶のものが再び助けてくれた。

現実ではないかもしれないと感じていたのはそのためのようだ。

 

にわかに信じられぬこと、しかし彼女の回りの精霊たちは嘘はつかない。信じるしか無いのだろうか。

 

 

 

《アルヌス・》伊丹

何で俺たちが炎龍退治をしに行く、何て話しを柳田の野郎が言いやがった!あんな化け物相手に部下を、殺しに行くようなもんじゃないか!!

 

そんな思考を先読みするかの如く、柳田は矢継ぎ早に言った。

 

「そう言うと思ったからな、あのウェルスとか言う男を向かわせる事になった。龍退治の話を聞いていたときから、眼をギラギラ輝かせてたよ。ただ、あいつからの条件は、こちらから選抜で人を寄越せと言ってきた。力が強すぎるからだとさ。」

 

ウェルス、いったい何を企んでるんだ?あいつなら、一人で狩に行くのも気が楽だと言いそうなもんだが、何故だ。

 

「なんにせよ、お前はたぶん行くことになると思うよ。ああ、これは俺の奢りだ。というよりは、謝罪の前倒しだ。」

 

柳田は、歩き出しながら言う。

 

「どういうことだ?」

 

「テュカちゃんに会ってみると良い、その意味がわかるさ。」

 

おいおい、ウェルスの話しに何でテュカが出てくるんだ!あいつ、まさかと思うがテュカに何か良からぬ事をしたんじゃ無いだろうな!

 

 

《アルヌス、湖》ウェルス

 

湖の畔、そこに二人の人影がある。一人は男、一人は少女と言った年齢だ。対面していることから、何かしらの出来事が起きたのだろう。

二人は会話をし始めた。

「こんな所で私に何の用が有るのかな?レレイ君。」

 

ウェルス、彼は少女レレイをゆっくりと見据えて尋ねた。それに対して、レレイは真剣な眼差しで答えた。

 

「あなたに、お願いしたい事がある。私にソウルの業を教えてほしい。」

 

「ほお、まさかまだあの本に誘惑されているのか?だったら、今すぐその呪縛から解放してあげよう。」

 

「それは、違う。私はあんなものどうでも良い。ただ、テュカの力になりたいだけ。」

 

ウェルスと相対するレレイは、非常に真剣であった。ウェルスがヤオを焚き付け、テュカに対して何かしらの事をなそうとしているのが、理解できた。

 

「良いだろう。ただし、ソウルの業は精神と体力を消耗する。ならば、基本的にはスクロールにまとめて置いた方が身のためだろう。それらを収納する力も、教えよう。基本中の基本、物質のソウル化からだな。」

 

当たり前のように、魂に物質を封じ込め保管する。それは、現代の技術の遥か上に位置するもの、もしも現代にそんな技術が有るのなら、きっと戦争の兵站概念は壊れるに違いない。

そんな事を、教えると言っている。

 

「ありがとう。しかし、私はもっと多くの事を知りたい。特に戦う術を、私は足手まといになりたくはない。」

 

「焦る必要は無い。時間なら有る、そう数日で覚えられるだろう。あの、才能すらなかった火継ぎが、数日で覚えられたのだから。」

 

修行は始まった。それは、かつて失われし力、その復元。それは、友の為と付けようとしている力、ウェルスはかつての自分を見ているかのように感じた。

 

彼女にダークソウルは無い、始まりの火の力も無い。火に染まった力が無いのなら、火に染まった深淵の力も無い。その事が後に良い事へと繋がって行く。

 

 

《地球・盃の世界》ある考古学者

 

我々がここに来て何日になるのだろうか?この世界でわかった事がある。この世界では、腹が減らない、眠気も無い、性欲のようなものも湧かない。

 

それは、まるでこの世界には初めから、そんなもの存在していないかのようだ。ヒエログリフを解読してみて、わかった事がある。

 

この世界はある女神の力により安定し、闇を封じ込めていると言うことだ。女神の名だけはまるで意味のわからない文字で書かれていて、誰にもわからない。

 

同じ内容の文章が様々な言語でかかれている。古代の文字という事が共通点だ。楔文字や、甲骨文字、果ては日本の神代文字?にすら見えるものまで、びっしりと壁にかかれていた。

 

研究者の中で、探索チームを結成して周囲を探索していったもの立ちは、この数日間連絡が取れない。

何かしらに巻き込まれたのだろうか?

 

少しだけ外に出てみたが、時間が狂っているのだろう。ピラミッドの外壁はツルツルの石灰石で覆われており、空に太陽があればきっと白く輝いていただろうが、この世界には太陽が無い。

 

その代わり、日蝕のようなものが空にある。

それは、まるで穴のようで全てを飲み干しそうだ。

 

『こちら、探索隊、人?を発見しただが、妙だ。皆、ミイラみたいに干からびてる、なのに何で生きてるんだ?』

 

そりゃ、ホラー映画みたいだな。

 

『冗談で言ってるんじゃない。だけど、こっちに見向きもしない、これじゃ亡者だな何の意味もなく壁を叩き続けてるのもいる。』

 

俺たちはいったい何処に来たんだろうか?

えっと?この文字は確か、青い血?だが、何を表しているんだ?全くわからん。

 

《東京・ある城》

 

そこに置かれるものは、輝きを放っていた。それは幻想的で、まるで神話や物語の中に出てきそうな、淡い光を放ち、闇を絶とうとするかのように辺りを照らす。

 

それに気が付く者はいない、しかしそれでも主を待つかのようにその勾玉は、輝き続ける。

世界で失われてしまった、神話から脈々と受け継がれる聖なるもの、その残り少ないものが。

 

《檀ノ浦》

 

海底が輝きを放っている。誰かがそれを言った。

スマホでそれを撮る人もいる。それは海の底に突き刺さり、光を放っている。闇を照らすその赤き輝きを。

 

それはいつしかニュースとなって世界の注目を浴びる。それは、かつて失われた宝剣。神剣。その力は衰えてもなお、真実を知るものを。血を継ぎし者を探している。

 

《神宮》

 

その鏡は写している。闇の世界の実情を。

その世界こそ、真実であるかのようにそれらを写す。多くのものを見、少なくなった力でそれらを捕らえようとしている。

 

火を写し、太陽を写す。その太陽は輝きはすれど、何処かおかしな所が散見される。

そこには、地表が出来た太陽が鎮座し、建物が見える。それがまるで、太陽の本体であるかのように。

 




評価、感想、誤字等よろしくお願いします。

草薙の剣の伝説には諸説ありますが、今回は檀ノ浦での紛失を扱わせていただきました。


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第21話 王と呼ばれたもの

アノールロンドの広い訓練所で1人の人影が佇んでいる。それは、旅立った者を待つかのように1人そこにいる。その願いは果たして叶った。

任務を終えた二人を、見つけ安堵をすると、城の中へと歩み始めた。

 

二人は目に見えた外傷もなく、アノールロンドへと帰還した。しかし、アルトリウスの消耗は激しいものとなっていた。神々にとって、深淵は毒でしかない。

例え契約により、深淵に対してある程度の耐性をつけたと言えどその肉体は神である。

 

残念なことに、ウェルスにアルトリウスを癒す力は無い、有るとすれば、今ウーラシールが開発しているエスト瓶と言うものがそれらを補えるだろうか?

だが、それは今ここにはない。

 

ウェルスは思った。もし、ここにグウィネヴィアがいたのなら彼を癒すことなど、雑作もなくやってしまうのだろうな。と。

 

アノールロンドで、彼等を待ち受けていたのは、誰もいない玉座の間であった。いや、キアラン、グウィン、オーンスタインだけはいたが、それ以外は席を外されたようだ。

 

「アルトリウスよ、よく戻ってきた。お主の働きにより、深淵は回避された。」

 

「いいえ、私は何も出来なかった。人々を救うことも、深淵の主を見つけ出すことも。」

 

深く、深く、自らの事を恥じているアルトリウスを見ながら、グウィンはウェルスの方を向く。

 

「ウェルスよ、あれは彼が造り出したものであったか?」

 

「いいや、グウィン。あれは、我が王が造り出したものではない。もしも、あれが我が王が造り出したものであったのならば、今頃私はここにはいない。」

 

ウェルスは深淵を良く知っていた。それこそ、自らが扱うものと同じ属性を持ったもの。正しく自分自身の力の、別の可能性であったから。

 

その後、アルトリウスは自らの屋敷に戻りキアランは、彼の看病をしに行く事となる。

そして、ウェルスは再び旅立つだろう。グウィネヴィアを訪ねて、新たな小人たちを求めて。

 

 

 

《アルヌス》伊丹

 

あの後、伊丹は酒場を歩き、テュカの場所に到着したのは、夜更けとなっていた。そして、そこで目にしたのは壊れかけたテュカの姿だった。

自分への余りにも重い依存、現実逃避の限りを尽くしたその姿は伊丹のトラウマを甦らせるには十分だった。

その日彼は、レレイに眠らされた。

 

翌日、眼を覚ました彼は誰が彼女をこうしたのかをテュカの口から聞いたそして、その人物が目の前に現れる。ダークエルフのヤオ、彼女は自らの行いを正しく正当化するかのように言った。今自分達の置かれた状況を打破する唯一の方法として、彼女を利用したとそしてウェルスとの関係を。

 

伊丹は激怒した、かの男ウェルスがヤオにあのような事を言わなければ、今のテュカの姿は無いものであったのでは、とそう思った。

そんな話の中、戸が開く音が聞こえる。

 

件の男、ウェルスが部屋に入ってきた。感情の無いような、そんな瞳をして伊丹を見下ろしている。

そんな彼に、伊丹は喰って掛かった。

胸ぐらを掴み問いただした、何故ヤオに遣らせたのかとテュカを傷つけるのかと。以外な返答が帰って来た。

 

「何故彼女に遣らせたかと言われれば、忙しかったからだ。二つ目は、壊れかけたものよりも一度壊してしまった方が、新しく作りやすい。それにだ、エルフはそう簡単に、死んだりしない。」

 

こいつは、人の心が無いのか?心が痛まないのか?

こんなにも、苦しそうにしている少女を見てそんな余りにも強烈すぎる方法をとるのか?

やはり、こいつは普通じゃないんじゃないか?

 

そう思ってしまうのも仕方の無いこと、ウェルスは余りにも長い年月を生きすぎているため、こう言うことに対して、正直どうでも良いと思っている。

直し方も荒っぽい、何より自分の出来ないことを把握しているために、直のこと達が悪い。

 

そして、そんな事があった後に伊丹はテュカを、痛みに晒さない為に、少しでも心に安らぎをと街へと繰り出していった。

 

 

《アルヌス・湖》レレイ

 

彼女は、師匠であるカトーとの接触を最低限に抑えて、ウェルスに付いてきている。

誰もいない湖で、今日もウェルスの師事の元、訓練に明け暮れる。

そんな事もあってか、テュカによる彼女の好感度は、お世辞にも高いとは言い難い。

 

だが、それでも力になりたいという彼女の姿勢は、驚くほどに真っ直ぐで、基本中の基本である物質のソウル化を半日もせずに覚え、更にはソウルを攻撃の手段として扱う、攻撃術を習得し始めた。

 

その習得の早さはマヌスに勝るとも劣らない、火の時代に産まれていたのなら、偉大な魔術師となっていたに違いない。ウェルスは彼女に感心すると共に、何か質問は無いかと、レレイに問いただした。

 

「一つだけ疑問がある、貴方が使う闇の魔術は何故私には使用できないのか?」

 

そう、レレイは人間である。従って小人が持つダークソウルを持っていない。そのために、闇の魔術を使うことは愚か、それに触れてはならない。触れたら最後、その力に飲み込まれてしまう。

 

「それは、君に素質が無いわけではない、君があるものを持っていない。いや、君達か。君だけじゃない、エルフ以外の種族はそれを持っていないのだ。だから、教えることも出来ないし、教えたところで破滅をもたらすだけだ。」

 

そんな言葉をレレイは聞き、残念な雰囲気を出しているが、納得していた。あの本の一件以来、彼女はウェルスの言葉をある程度信じるようになった。そして、ウェルスは、そんな彼女に嘗ての弟子である、名もない不死を思い出していた。今日も二人の修行は続く、それは友の為に、自らの欲を押し止めたその志を胸に…。

 

 

 

《アルヌス・駐屯地内》紀子

私が、救出されてから数日がたった。

あの時、私と一緒に救出されたエルフのサリーナさんは、私とは別の部屋で回復を待ってるみたい。

 

あの人は、この世界に連れてこられた私にとって支えとなってくれた人。奴隷としてのあの過酷な日々、それをあの人は私の心が壊れてしまわぬように、親身にしてくれた。彼女は、知識階級の奴隷だったみたいで私とは扱いは違ったけど。

 

今日、私はあの人の病室に行く。今までのお礼と、これからの事を話さなきゃ、これからは私がサリーナさんを守っていかなきゃならない。日本の作法とか、そう言うのを教えてなんて事を。

 

そして、病室に着くとサリーナさんが私を出迎えてくれた。腱の切れている足をを、ベットに隠しながら、見えない目をこちらに向けて振り向いた。

 

「四日ぶりね、紀子。何回も何回も同じ質問ばかりで、飽きていた所なの、貴女が来てくれて本当に嬉しいわ。」

 

彼女は、とても美しい。エルフっていうファンタジーとかに出てくる、そんな神秘的な種族なんだけど、それでも私達に存在しない、そんな貴賓が伝わってくる。

 

「今日は、何か御用があって来たの?」

 

「いいえ、暇潰し。解放されてから、基地の中にずっといるから、この前してた話の続きを聞きたくて。」

 

「私たちの王様の話?良いわ。

 

王様は考えていたの、私たちを救ったは良いけど住む場所が無いってことに。そこで、誰も近づかない古の龍達の住む土地、そこには文明と呼ぶには余りにも粗末な建物と、蛇頭の人々がいたの。

王様はこの人達と話し合いをして、私たちはソウルの文明を彼等に与える見返りに、そこに住むことが出来るようになった。

その土地の森には私たちが、一部の人達は交流を深めていつしか肌が黒くなっていった。

王様は長い長い間、私たちを指導して私たちは国を作っていった。後に王様の親友の竜に股がった人が出てくるわ。

 

これが、王様の建国神話。私も一万年位生きてるけど、教わった岳だから詳しくはわからないわ。それでも、私たちエルフの王様は今でも、その人だけ。」

 

昔話を嫌な顔すらしない彼女は、むしろ生き生きしてる。もしかしたら、この話を誰かに伝えたかったのかもしれない。

 

「ねえ、今度は紀子。貴女達の事を教えて下さる?ここの人達は、帝国の人々のソウルとは、違うソウルを持っているからちょっと聞きたいわ。」

 

「ええ、良いですよ?」

 

ああ、早く日本に帰れないかな。きっとこの人も喜ぶと思うのに。

 

 

 

《西方砂漠・東部地方》アッシュ

 

砂漠の旅も後半に差し掛かって、徐々にではあるが緑も増えてきた。道すがら、珍しい草木を火守女に質問されて回答する、商人達は彼女の事を信頼し良好な関係を築く事ができてる。

俺はどうかって?昔から話す人話す人、不死人ばかりだったし、どちらかと言えば社交的ではないからな。

あんまり良い顔はされてない。

 

そう、巨大なサンドワームが隊を襲った後は、特に『こいつ人間じゃない』なんて思った顔をされてた。

あんな小さいワーム、カーサスのワームに比べればマシだよ。

 

そんな、旅もそろそろ終わりだと言う頃、火守女がなんか、一人で微笑ましそうにニコニコしていた。

 

「どうしたんだ?そんなに笑って。」

 

「灰の方、それが私と同じようなソウルを持った人が楽しそうに、ご友人と話をしているのを見ると、とても安らいで、自然と笑みが溢れてくるんです。」

 

「ほぉ、と言うことはその女性が今代の火守女かい?」

 

「いえ、どちらかと言えば、寄り代となるはずだった方です。ですが、私が今もここにこうしていますので、彼女は自分の人生を歩めています。」

 

「そうか。」

 

何はともあれ、火守女が嬉しそうでよかった。

これから俺たちは、この地に逃げ延びてきた神の生き残りの住む地、ベルナーゴを通りアルヌスゲートを目指す。

 

ああ、『ハーディ』殺したらどんな色のソウルが手に入るだろうか?どんな武器になるだろうか。まあ、敵対は程ほどにしておかねばな。火守女からはくれぐれも、ソウルを集めない様に、と言われてるからな。でも、ちょっとだけなら…良いかなぁ?ああ、早く合ってみたい。

 

アルヌスには、あの嘗ての師の男がいるはずだ。何とかして、協力を得られるようにしなければな。向こうの世界にはあの男の知り合いが、侵入してしまったはずだ。

尻拭いは、小人がやるべきだ、

 

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。



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第22話 出立

火の神フラン、共に戦ったことも。聞いたことも無かった神の名。グウィネヴィアは、そこに嫁いだと言う話を聞いたウェルスは、火の神フランがいると言われる土地に赴いた。

 

そう、赴いた筈だった。そこは、何もないまるで廃墟のような都市が広がるばかりか。まるで、灰の時代に戻ったかのようなそんな、寂れた風景が続いている。

 

海を渡らねば来ることも出来ないこの土地は、火の恩恵を受けることもなく。何もかもが、灰の時代に近い。

生物達は弱く、龍に怯える日々を送ったあのときと同じように、草木に隠れ、今は飛竜たちに怯えているのか。

 

嘗ての遠征で古龍達は狩尽くされたが、この安定した姿こそが、世界の有り様だったのかも知れない。

ウェルスは別に後悔をするような、そんな存在ではない。ただただ、嘗てのあの日を思いだし、今でも戻りたいとそう思っていた。

 

そんな廃墟に、小さな小さなソウルが見えた。それ等は弱っている。非常に衰弱しているようだ。

そして、それらを見るになんて事はない。

「ただの消え行く神の末裔か。」

 

そんな言葉を聞いたのか、その存在はウェルスに近付いてくる。ウェルスはそんな眼中にない存在が、近付いてくるのを気にすることもなく。目の前にそれが現れた。衰弱し今にも死にそうな、そんな姿をしている。

 

少女の姿をしたその小さな神は、墓王ニトと同じものを司る。ニトがその力を持っているために、少女は非常に弱く力を手にすることは不可能であろう。

 

その少女は名を『ハーディ』と言い、仲間を救ってほしいとウェルスに頼み込んだ。

 

 

 

《アルヌス》伊丹

 

伊丹は決断が出来ないでいた。テュカに真実を伝えれば、テュカが壊れてしまうかもしれない。だが、逆にこのまま仮初めの生活の中にいたとしても、何れは記憶に綻びが生じて精神異常を起こすかもしれない。

 

進むも地獄退くも地獄な、こんな状態を伊丹は非常に悩んだ。だが、ウェルス彼にテュカを任せた場合きっと完全に壊されたあと、自分の知らない何かに作り替えられるという事になりかねない。

 

伊丹の分析によると、ウェルスと言う存在は、『古い』。それはもう古い存在だ、まるで人間を昆虫や他の動植物と同じくらいにしか見ていない。分別は有るがその分別は、時によっては余りにもねじ曲がったものとなり、加減の無いものとなる。

 

何より、テュカをテュカとして見ているのではなく、『エルフ』という種族単位の存在でしかないと、そう捕らえていてそれ以外は、どうでも良いと言った。そんな存在だ。おそらくは、ダークエルフのヤオはウェルスに見初められ、ダークエルフというものを救うために行動を開始したのだろう。

 

契約に対しては従順に守る事から、そこら辺は常識的なのだが、逆に言えば契約さえなければ、何かしらやりかねない。もし、皇宮で自衛隊との契約が無かったら、どうなっていたのだろうか?それを想像するだけで背筋が凍る。

 

そんな危険人物に、テュカを一人で預ける方がおかしいのだ。それでも、期限は刻一刻と過ぎていく。伊丹が皇都に再び派遣されるのは、後3日と無い。その短時間で、結論を出さなければと躍起になっていた。

 

しかして、結論は出ず最終日テュカを、出発時見たのと同時にウェルスに言われた言葉から、伊丹は炎龍討伐に赴いた。

 

 

《アルヌス》ウェルス

 

やって来たか。もう少し時間がかかると思ってたが、存外心変わりとは早いものだな。これも愛?いや、優しいからこそ自らのトラウマを抱えているからこそ、こんな結果になったのだろうな。

 

「来ると思っていたよ。」

 

そう聞くと彼は苦虫を噛み潰したような、そんな顔をしてこちらを睨み付けてくる。

 

「そりゃどうも。」

 

ふん、これはまた嫌われたものだな。仕方ないことだ、こうでもしないと邪魔物が来たとき、炎龍退治が出来ないからな。俺は手を出さない、自力でやらせる。

 

「準備はとっくに出来ている。後必要なものは時間だ。その点、君の車が有るようだから気にする所でもないか?」

 

私に対して憎悪が渦巻いているが、きちんと押さえ込んでいる。流石は、歴戦の男であるな。

彼の視線は私の後ろに立つレレイに向けられているが、彼女は少し変わった。より実戦向けの戦闘技術をこの短期間で教えたが、海綿のようにみるみると吸収していく。

 

一流の魔法戦士とは、いかないがそれでも二流以上だろう。姑息な戦い方をすれば飛竜ですら、倒すことは可能だろう。ただ、実戦不足感は否めない。

 

彼女の精神はソウルの使用により、少し磨耗をし始めている。廃人にはならないが、それでも人格が少し荒っぽいものとなるだろう。

その証拠に、服装も緑と白を基調としたものから、藍色を基調としたものに変化している。

 

性格の変化に伴い、趣味も変化している。マヌスの研究通りだな。これまで色々な数を見たが、皆これに当てはまる。

 

伊丹はそれに気が付いたのか、ますますこちらを見る目が厳しいものとなっているな。

 

そんな空気の中、ロウリィは伊丹に近づき、キスをする。まさに神へと至る豪胆さは有るとすれば言えよう、だが強制的に誓約をするとは…。

まぁ良いだろう。彼が死ににくくなるのだから。

 

「では、準備が整ったのなら行くとしようか?龍狩りへ。」

 

少しでも誤解を解かなくてはな。エルフは、小人は全ての鍵だ。あの悲劇を繰り返さない為にも…。

 

 

《グラス半島・ピド村》ソラール

 

この土地の管理者達は何をやっているのか、実に実に不愉快だ。何故、盗賊たちを野放しにするのか、理解に苦しむ。この帝国という国も、国土を広くするあまり内政を疎かにしているのではないか?

 

アストラはとても平和であった。確かに戦争や動乱は歴史上有ろうとも、盗賊や野盗の類いは希であり、その殆どは国家の後ろ楯による、情報戦の類いだった。

 

我らがロードランを巡礼していた時、外の世界では盗賊など皆無だった。不死人が蔓延しても、政治は機能し街道は整備されていた。流石に俺が再び目覚めた頃、灰の時代には国も何もかもが崩れていたが。

 

それでもこれ程の頻度ではなかった。

 

「お~いソラール、そっちは片付いたか?」

 

地面の死体に突き刺した剣を引き抜くと、ズブリと引き抜けた。

やはり、生者の相手を殺すのは心に響くものがある。このものたちも、失政を行う貴族の被害者であるのだ。丁重に葬りたいものだ。

 

世話になった村の人々の為にも、俺がいなくなるわけにも行かないが、そろそろ言い出した方が良いのだろうか?

 

その日の夜村に戻った俺は、村の皆を集めてもらいこの村を出ていく旨を伝えた。

皆俺の事を止めてくれたが、それでも俺の決心は太陽のように燃え上がっている。

 

剣での戦いかたや、格上との戦いと戦術を彼等には伝えてある。もし、盗賊にあっても彼等は並の腕では無いから、乗り越えられる。

 

俺は行かねばならない。アルヌスにゲートが開いたと、それが帝国が不安定になっている要因であろう。それを取り除くために、いざ参らん。

 

村の民よ貴公等に太陽の導きあれ!

 




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第23話 記されぬもの

ハーディ、彼女達は『生』と『死』の影響を受け、弱っていた。

火の近くに住む、神々と違い、他の大陸への移住という名の追放を受けた彼女等は、力を剥奪され今や小人と何ら代わりはない。

 

それはそうだ。何せ火を見つけるまで、身長や体格に多少の違いはあれど、神も小人も同じものだったからだ。

元に戻りつつあるだけなのだが、彼女達は世代を経ているが為にそれを知らない。

 

故に、火の大陸から来たウェルスに助けを求めた。

権能がない神々を救済する。ウェルスにとってはどうでも良いことであったが、もしここにグウィネヴィアがいたらどうしただろうか?と、考え彼女等を助けることとなった。

 

始めに既にあるソウルの業にプラスする形で、魔術を教えた。ソウルの扱い方、武器の生成等々多種多様な分野の知識を分け与えた。それぞれの神特有の学習によってみるみる回復していく。

 

それでも、火の大陸程の力はない。ここでウェルスは、可笑しいと思った。これではまるで、ウェルスが神でその他のもの達は小人のようだと、そう感じてしまった。

 

なんとも、立場の逆転がこの大陸では起こった。それは、彼にとっては衝撃のある出来事で、彼はこの時始まりの火に不信を抱いた。

火の力は有限であり、無限ではない。であるならばいつか必ず、火が消えるときが有るのではないか?

 

そう考えてしまったが最後、彼はこの大陸に火の力を使わない世界を造ろうと決心した。幸いな事にソウルの技術は火の力を寄り代にしていない、だが、いずれは忘れ去られるだろう。繁栄は古いものを淘汰する。

 

 

 

《アルヌス~シュワルツの森・ロドムス渓谷》ウェルス

 

やはり車は良いな、空の旅は正直飽きていた事だし何より、燃料が尽きても落ちることはない。まあ、あの程度の高さから落ちたとしても、どうってことはないがそれでも生物的恐怖はあるからな。

 

にしても車の中は賑やかだ、私は運転が出来ないがレレイがどうやら運転を覚えたようだ。私も覚えれば今後役に立つだろう。最も私のソウルに拡張性は皆無だが、経験を積むしかないか?

 

昼間の内は移動をし、夜間は行動しない。

行軍は強行しても良い事はあまり無いからな、疲労の蓄積が最大の敵だ。

 

そして、夜間の見張りは常に私が引き受けている。最も、伊丹やロウリィが共に起きていることが多いが、そういう時は基本話をするわけだ、寝静まっているときは、冷静になれる。

 

最初は伊丹からの質問だった、なぜレレイにお前の魔法を教えているのかと、聞かれた。

そして、かつて話したソウルのことも、もっと詳しく。

 

彼には元々そういう、魔術的なものに対する偏見じみた知識を保持していた。

世界は一つでないことは確認されていた事から、一概にそうとは言い切れないが、それでもその知識を覆すには、かなりの時間を割かなければならなかった。

 

レレイの事に関しては、理由を説明すれば素直に受け入れた。いや、納得したと言った方が正確なのだろう。

それに伴って、性格が変質し彼女自信の変化した部分を問われたが、少し感情が表に出やすくなった程度と言っておいた。それで安心するだろう、信じるかは別として。

 

 

ロウリィと共にいたときは、神話の話を聞かされ私にとって『神』とはどういう存在か問われた。

『神』私にとってはグウィンや、イザリス、ニトがそれに該当するが、正直あまり好きにはなれない。

 

いや、哀れと思っている、自分も含め、火の呪縛から逃れられぬそんな存在だったと。だからこそ、この大陸の神々は違った道を歩んだのだろう。滅びもせず、干渉も最小限にし、人の中から神を選び古きものは去っていく。

 

サイクルを創るには、どれ程の時がかかったのだろうか?最初の神となったものはきっと、あのものたちの長だったものだろう。こうなると懐かしい気持ちも出てくる。

彼女を探して到着したこの大陸の日々を。

 

一人思い出に浸っているとこずかれた、無視されたのだから当たり前か。

だから言った、「私にとって君達の神は、もしかすると友人かもしれない。たとえ、私の事を記すものが誰一人いなかったとしても、それは彼らの選択だ。」

 

首を傾げる姿は、正しく少女だ。だが、それでも少なくとも900年を生きるもの、それ相応の意味が有るとわかってくれれば良い。

そして、旅路は終わる終着点ロドムス渓谷。

さて、楽しい楽しい狩りが始まる。まあ、殆ど手出しは

しないが。

 

 

《帝都》アリス

 

オッス、私アリス!今ね、タマネギ鎧の後ろに居るのって、痛い痛い痛い!ごめんなさい↑タマネギじゃなくて、重厚な鎧ですよね!

全く、人の心を読めるのかしら?っとそれよりも

 

「何、一人でウンウン唸ってるんですか?」

 

「うーむ、最近どうも胸騒ぎがしてな、近くそして、遠い場所で何か覚えのある事が起きているような気がしれないと、だがその目的地がわからなくてな、悩んでいるのだ。」

 

目的地がわからないんじゃ、どうしようも無いじゃない。全く。

 

「ちょっと、貴方の感じた情景を教えてくださる?私が力になるわよ。」

 

そこで彼が話したのは、箱のような建物が黒い波に飲み込まれていく、そんな話だ。

彼が言うには、まだそのときでは無いらしいのだが、それって近いうちには起こるってことじゃない?

だとすれば…。

 

「ねぇ、それって多分ゲートの向こう側なんじゃない?殿下の話によると、そんな情景が広がってるそうだし…。」

 

「なんとっ!真か?だとすれば急いで()()()()に行かねば、闇に世界が呑み込まれてしまう。?今私はなんと言った?」

 

「火を継ぎに行かねばって。」

 

「なんたること、未だに呪縛に捕らわれているのか。だが、急がねばなんとして、カタリナのジークバルド、今助けに行くぞ~!」

 

凄い走って行っちゃったよ、でもそっちは逆方向なんだけどね。

 

 

 

《帝都・悪所》栗林

 

隊長がヘリを降りて、偵察隊は見事空中分解した。

私と黒川は、帝都の悪所にて引き続き情報収集の続きをしている。

 

この悪所駐屯地は、亜人の人達がよく来て情報の今どの出所は彼等、彼女等だ。

私たちは、日がな1日家の中や街で私たちの協力者を着々と増やしている。

 

そんな日々が続いた頃、私は変な夢を見るようになった。

その夢はいつも、草原や大地を多い尽くすような巨木。

湖、そして死体。

 

私の記憶にはない映像が、砂嵐混じりに私の中へと溢れていく。正直PTSDの一種なのではないか、なんて考えたことも有るが、自然と不安と言うものは感じない。

それどころか、感じるはずのない懐かしさを感じる。

 

そして、今日もまたそんな夢が有るのかと眠りについた。

 

ああ、夢だと気が付くのはいつも、真っ白な世界から始まる景色だ。

でも、今回は違う。私の視線の先には無数の巨大な龍が空を飛び交い、それに対してあり得ないほどの力を奮い続ける戦士たち。

 

銀色の鎧いを纏い龍に雷を突き刺すもの、暗い鎧を纏い全てを斬り殺すもの、炎を操る女性たち、龍を襲う瘴気。そして、打ち倒されたものたちを呑み込んでいく、暗いドロドロとしたもの。

 

 

一進一退の中、下にいる騎士たちは負傷し巨人たちは地に倒れ付す、私は負傷したものたちへ手をかざし、そこから溢れでた力は傷を包み込み、癒していく。

戦いは終わりが見えない。

 

瞬間場面が切り替わる。暗い鎧を纏った人を私が見下ろすが、直ぐに目線を地平線へと向ける。

私が初めて口を開いた。

 

『ねぇ、私たちの関係を父上に話して見ようと思うの。もし、それで了承が得られれば正式に私は貴方の元へ行くわ。』

 

『もし断れれば、私は君から引き剥がされるだろうな。どんな手を使っても。私はそれが怖いよ。』

 

『大丈夫、任せて私はグウィネヴィア、癒しの女神、どんなものでも癒して見せるから。』

 

『頼もしいな、だが少し待っていてくれないか?戦が終われば時間も出来る、それまで、良いかい?』

 

『臆病ね、でもそんなところが貴方の良いところ。愛してるわ、ウェルス』

 

彼と私は静かに、誰にも見られずにキスをした。

何か恥ずかしいものを見ている気分だった。ただ、きっとこれは夢じゃ無いのかもしれない、だってこんなにも涙が溢れてくるのだから。

 




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第24話 我等が王

この大陸に渡って幾年が流れたか、大雑把に言って300年程の滞在期間となった。たかがその程度の時間しか経過は無いから、技術的な革新が有るわけもなく、ただウェルスの技の模倣ばかりを行うものたちが、大陸に増えていた。

 

それでも彼の術は、飛龍を討伐するに程よい力と成り、弱き神々は、彼を尊敬し敬い何時しか彼を王にと言う声が出始めていた。

 

それをウェルスは拒んだ。自らは小人の身、神を統べるなど考えもしていない。種族が違うものを統治すれば、次第に不満が募るのは目に見えて明らかだ。

であるならば、自分達の共同体を作りなさいと、そしてウェルスは、王の座出なく、見返りとして一つ願いを叶えるよう彼等に言った。

 

その願いはその時言われなかった。そう、まだまだ必要ないと、旅に絶望したときそれを言おうと心に決めていた。

 

彼はグウィネヴィアを探して旅を続ける。大陸から戻り、力無き小人たちの国の変化を目にし、驚愕と共に感心を寄せた。

 

マヌスの作りし魔術を応用し、建築や運搬様々なものに利用している。特に、たった300年でこれ程の建造物をよくぞ造ったと、そう言いたいものだった。

もっとも、その時の小人たちの国に、ウェルスという古い小人の記録は存在しない。隠蔽されてしまったからだ。

 

故に端から見れば、妙な鎧を纏った騎士がそこかしこの建物を見学している、位にしか見えない。

それでも、嘗て蒔いた種が確りと芽吹いた事を目にして、久々に嬉しさが込み上げていた。ここはアストラの国、良く整備が行き届き、民が不自由無く暮らせる国。

 

だが、ウェルスは知らない。ここ2,30年でウーラシールが禁じられた術(闇の魔術、神々より禁止された)の研究をしているということを。そして再び時は数百年流れ、遂に滅びが始まる。ウーラシールの地の底の深淵が甦ったのだ。

 

 

《ロドムス渓谷》ウェルス

 

渓谷に就くと、さっさとヤオは長たちのいる場所へと向かった。我々を連れてきたと言うことを報告するようだ。周囲には黒き小人たちが、弓をつがえこちらを睨み付けている。威圧のつもりなのだろうが、私にとってはどうとも思わんな。

 

それにしても、酷い有り様だなまるで食い散らかされたテーブルのようなものだ、余った残飯すら根こそぎ喰おうとするとは、やはり現代の飛龍は嘗ての龍のような思考が無いのだな。

 

周囲には草木が生えていない箇所ばかりか、だいぶ追い詰められているようだが…。おや?なぜかこのソウルに見覚えがある、古い記憶だが、これは子供たちの生き残りか?はたまた、実験体の生き残りか?

 

まあ、どちらでも良いが、ソウルがだいぶ弱っている、今にも消えそうだが…。合ってみるのも悪くはないか。

それにしても、この大陸に来て十年すら経たずに、こうして子孫達に出会えるとは正に自衛隊様々だな。

 

っとそうも行ってられないか?お客様のご登場だ、正直護りながらの戦いは苦手なんだがな…。

 

 

 

あるダークエルフの戦士

 

人間たちがやって来た。ヤオが、彼等を連れこの疎開先へと連れてきた。

全く予想に反して、ヤオは彼等を連れてきてくれた。だが、ヤオの事だまた良からぬ者に利用されている可能性は有る。

 

特に五人の内の鎧を纏った人物、気配が人間のそれではない、もっと根源的に俺達ダークエルフ、いやエルフの種族に近しいものを感じる。

兜の下はまさかエルフでは無いだろうな。

 

警戒を強めジリジリと時間が経過していく、それにともない周囲への気配りが疎かになり、特に目の前に集中したのが、仇となった。

炎龍が俺の頭上から、口を開けて降ってきた。

 

一瞬の出来事、死を直感した。だが、俺は死ぬことはなかった、そう喰われる瞬間に鎧が動き出していた。鎧は炎龍を殴り飛ばした。

炎龍は、その鎧を一瞥すると威嚇をするように対面する。

 

その隙をついて、エムロイの使徒が一撃を加えようとハルバードを炎龍に振り下ろすが、その鱗に阻まれ傷をつける事が出来ないでいた。

 

緑の服の男が得たいのしれない物を担ぎ、エルフの少女にそれを握らせ炎龍に向けたが、結局それが何かをすることはなかった。

炎龍はその隙に逃げ出していた。

 

俺はただ、見ていることしか出来なかった。だが、現実的な存在で、エムロイの使徒は、きっとロウリィ・マーキュリーであろう。あの戦闘力は間違いない。

そして、緑の服の男は件の『緑の人』それとその従者?達。

 

だが、亜神よりもはやい段階で炎龍の事を察知していたあの騎士、炎龍が警戒する程の実力者。

これじゃまるで、大婆様が言っていた王のようだ。

とんでもない存在を連れてきてしまったかもしれない。

 

助けられた俺達は、長老達からの命令により彼等を向かい入れた。

 

 

《隠れ家》ダークエルフ大長老

 

あの日より幾万年、長い時を生き、多くの物を者をこの目で見てきた。

今は灰の大陸と呼ばれた我等の故郷は、遥か海を越えた先に有る。

 

このファルマートでの日々、始めは目にしたことの無い火の力が無い世界に、皆興味を抱き、方々に散った。

それから我等は文明を築き、嘗ての技術を取り戻していった。

 

そう、肉体を持っていたこの大陸の神々と、戦争を行うまで。私たちはその不死性でもって、神々と互角以上に戦い、後一歩という所まで追い詰めた。

 

だが、神々は肉体を代償に私たちの力を限定的に封じ込め、戦争は私たちの敗北となった。

完全な不死を失い、寿命を持ち、殺されれば死ぬ。力を背景に培った技術は衰退し、国は崩壊。様々な種族に人間という者が現れ、我等を駆逐していった。

 

何処で道を過ったのだろうか?ああ、我等の王が懐かしい。我等を灰の大陸から逃してくれた、我等の王よ。

 

今や私の目は見えぬ、命も後少しで燃え尽きる。

そんな折、龍に里を滅ぼされ今や土の中で生きるのみ。

そこに光が差し込んだ、ああ懐かしい光が暗い火が灯り、そこに力がある。あの方が、私の元へやって来た今度こそ我等の悲願を達する為に。

嘗ての力を使い、精霊(ダークソウル)を用いて話しかける。

 

『ああ、我等が王よ、王ウェルスよ。やっと会えた、再び我等を導き、栄光を我等の手に!』

 

『それはできない相談だ。私は君らを護るとは言った、だがそれは外敵からだ。自ら滅びを歩むのなら、護る事もない。古きもの、かつてを知るものは滅ぶべきだ。欲深い旧き神々と、同じ道を歩んだものたちはな。』

 

『待ってください、私たちは貴方をのみ崇める為にあの、新しい神々と戦ったのです。それを、何故貴方は…。』

 

『私はそんなもの望んだことは一度もない。』

 

何故何故、ああ、あの総統に刃向かわなければ、こうはならなかったのか…。あの小娘の言葉をマルソーの言葉を、無視しなければ…。

私は間違えたのか、願わくば子供たちが同じ道に進まぬようにしたい。

 

 

 

 

《地球?灰の世界》学者探索隊

 

この世界はなんなんだ?俺達は確かに食われた、なのにどうしてこんなことは有り得てはならない、命への冒涜だ!

 

一度町から出ようとすると、ある一定の範囲に見えない壁が建てられていて一向に進むことができない。

 

ピラミッド周辺の古カイロの町までが、範囲だ。完全な安全地帯はない、俺達がここに留まっていてもいずれは、あの亡者たちがここに来て、バラバラに殺される。

 

勇気あるヤツが、何とか隠れながら進んでそこで力尽きたそうだ、篝火あれが俺達の命綱。あれを灯すことが出来れば次は、そこから進める。

 

最初こんなことが有るとは誰も思わなかった。だが、灯した瞬間、世界が敵に回ったんだ、俺達は進まなきゃならない。

 

それが唯一の手がかりだと信じて…。

 

 




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第25話 敵対者?

ウェルスが気付いた時には既に始まっていた、【遠話】の奇跡を介して、神々の国に知らせが入った。

嘗て小ロンドにおいて、国を呑み込んだ厄災、深淵が再び発生した。

それを聞いたグウィンは、頭を抱えどう対処するか考えに耽っていた。

 

数百年前にアルトリウスを派遣し、食い止めた深淵がこの世に現れた。

今度の深淵は、小ロンドのものとは遥かに毛色の違うもの、グウィンが最初に思い出したのは、たった一人の小人。名を忘れられた『深淵の王』たるそのものを思いだし、対応を決意する。

 

そして、アルトリウス率いる深淵の監視隊がウーラシールに派遣された。

その監視隊に悲劇が訪れる。

 

派遣から数日後、監視隊からの連絡が途絶える。神々に激震が走った。グウィンは神の刃を方々に散らせ、ウェルスの捜索を命令した。

 

その時、ウェルスは極北の地『最初の火の炉』にいた。火の陰りが始まっているか、確信を持ちたかったが故に嘗て道を閉ざした場所を通り、禁じられた地に足を踏み入れた。

 

彼がそこで目にしたのは、辺り一面に広がる灰と、未だ堅牢に立つ、火の搭。

だが、そこにあったはずの暖かな光は、初めてその地を訪れた時よりも明らかに弱くなっていた。

それを気付くものは、ウェルス以外では誰一人いなかった。

 

禁じられた地故に、王の刃がここに侵入することはなく、ウェルスがいなかったが故にアルトリウスは、危機に陥いっていた。

 

キアランは焦っていた、このままではアルトリウスが危ないと、警笛がなっている。二人は数ヶ月前に契りを交わしたばかりであり、直の事それに拍車がかかる。

アルトリウスの相棒、シフが単身ウーラシールへ向かってしまったのも気がかりだった。

 

彼女は唯一探索されていない地、最初の火の炉へと足を踏み入れた。彼女も初めて足を踏み入れる地、まるで燃え尽きたかのような世界に、戸惑いながらも進む。

 

彼女の勘は当たり、そこにはウェルスが火を眺めるように佇む。

声を掛け事情を説明すると、ウェルスは直ちに動き出した。

 

そんな時に、時空がねじ曲がった。何者かが、時間を遡りウーラシールに侵入する、その物は人間性を帯びており、何度も死にながらウーラシールを徒覇する。

その者が何者であったのか、存在自体を隠蔽されるそれは正しく英雄の様であった。

 

アルトリウスは瀕死であった、そこに現れたるは最愛の妻キアラン、そして師であるウェルス。鉢合わせになった不死人。

 

不死人等眼中に無いのか、キアランはアルトリウスに駆け寄る。

対称的にウェルスは警戒を強める。

 

得たいの知れない存在を前にしているにも関わらず、不死人は、興味も無さそうに横を通り抜け、下層へと降りていった。

 

瀕死のアルトリウスを癒すために、ウェルスが側に立ち深淵を操り自らの身体で肩代わりする。

三人は数時間そこにとどまると、戦闘音が響き渡りやがてシフが下層から戻ってきた。

後にウェルスはアルトリウスから、深淵の主マヌスの名を聞く。ウェルスは信じられない、という顔をしたのだった…。

 

 

 

《山道》伊丹

 

ヤオと、その他のダークエルフ達に道案内を頼み、山の中を炎龍へ向けひたすら行軍する。

初めこれを嫌がったテュカを、説得するのに時間がかかるかと思ったんだが、レレイが催眠魔法を使い、テュカを眠らせてくれたお陰で、すんなりと事が進んでいた。

 

そんな時、最後尾を進んでいたウェルスの足が急に止まった。周囲を見渡しているが、何かを察知でもしたのだろうか?ロウリィは、気にもしていないがどうしたんだ?

 

「おい、どうしたんだ?何か、見つけたのか?それとも、まさか炎龍が巣に戻っていったとかじゃないだろうな。」

 

「いや、こちらに視線を感じた。ねっとりとした嫌な視線だな。伊丹、お前立ちは先に行け。どうやら招待状は私にだけ来ているようだからな。」

 

要するに妨害を一人で引き受ける、と言ったところか?

 

「炎龍退治は俺達に任せて、どうぞ行ってきてくれ。こっちに気が向かれたら、目的を達成できなくなっちまうからな。」

 

「ああ、直ぐに追い付く。それまで一人として死ぬなよ?」

 

ウェルスにしちゃ、やけに心配するじゃないか。そりゃあんな化け物相手に、普通の人間がどうかしよって言うんだ。心配くらいしてくれるか。

 

 

 

《山道・脇道》ウェルス

 

伊丹達と離れて、気配があった方へと進んでいく。あの気配は懐かしいものたち、だ。

未だに存在していたとは、最早国という体を成さないそんな連中だったのだがな。

 

「おい!そろそろ出てきたらどうだ?ロンドールの者達よ。」

 

木々の影から人影が一人また一人と現れ、私の周囲を取り囲む。

数での戦闘か?たとえ大人数相手だとしても、力量の差が有りすぎると思うが?

しかし、臭いな亡者のダークソウルの腐った臭いがする。

 

リーダー格であろう貴婦人のようなものが、前に出てきた。

「お久しぶりですね、深淵のウェルス。いや、今は輪の都の騎士と、そう名乗っているそうですね?自分が嘗て捨てた都の名を騙るなんて、滑稽に見えますよ?」

 

「良く言う。姿を偽ってまで、生者に見せかけたいお前たちに、言われたくは無いな。なあ、亡者ども。」

 

殺気が濃くなる、いつでも戦闘に移行出来るように身体中にダークソウルを巡らせる。

何かしらの罠がある可能性も否定出来ない、先制は向こうに譲る形となってしまうな。

 

「お辞めなさい!私たちは、彼と話をするためにここまで来たのです。それをこんなところで不意にしたくはありません。今は矛を納めなさい。」

 

まるで生者のように、理性的に行動する亡者を見てやはり侮れない存在だと、ウェルスは思った。

長話をしている暇など無いのだから、さっさと話を初めて欲しいとも…。

 

「それで?何の話をしに、ここへ来たのかな?亡者が今の時代になってなお、自分達だけの国を得ようと考えているのかな?」

 

「はい、ただ私たちは貴方へお別れをしに来たのです。」

 

「お別れ?」

 

「私たちは、これからゲートをくぐり向こうの世界に向かいます。そこで、新たなロンドールを建国するのです!」

 

それほど向こうの火は弱っているのか。あまりにも急すぎるな、元々弱っていたにしては、徴候が見られなかったが、どう言うことだ?

世界が違うというから、火のシステムも違ってきているのか?

 

「フフ。何かお困りのご様子で、でも私たちを止めることは出来ない。火の陰りは、世界の崩壊につながる。そして、それは意図的に起こすことも可能なの。それが、ロンドールの研究によって出た答え。

燃えてる物を消すのは簡単ですもの。」

 

「それで、その火を手に入れてなんとする。この世界への復讐か?」

 

不適な笑みを浮かべて張り付いたような顔を、こちらに向けながら近づいてくる。

 

「いいえ、私たちは貴方へ個人的な怨みがあるから、貴方だけはそのときは、殺してあげる。それではごきげんよう。」

 

「させるとでも?」

 

直剣に風を纏わせ一挙に奮うが、殺した瞬間手応えがなかった。闇霊状態となってウェルスと話をする。

当たり前の事だ、力を持ってる相手に対して正々堂々と正面切って戦うほど、バカではない。

 

「逃げたか、果たしてどうするかな…。だが、まずは目の前の事を片付けなければな。」

 

 

 

《帝都》アリス

 

オッス、私アリス。最近、ジークバルドさんと一緒にいる時間が凄く長くなった。

来る日も来る日も訓練、ジークバルドさんは、私が思った以上に強い人だった。

 

特にあのツヴァイヘンダーとか言う巨大な剣。普通あんな巨大なもの、常人が振るえる物じゃない、にも関わらず難なくそれを扱ってるんだから驚き。

 

そうそう、そう言えばね最近私と彼の噂が騎士団の中で、出回り始めてる。

それはもう尾ひればかりじゃなく、背鰭も胸鰭もついてそりゃもう事実と掛け離れたそんなのが、こっちとしては迷惑なんだけど。

彼の力になれるなら、正直それでも良いと思ってるけど。

 

でもねぇ、歳が離れすぎてるし何より彼、人じゃ無いみたいだから。

前に聞いた話だと、彼は元々人だったけど火の無い灰として、この世界に甦ったなんて言うの。

 

まあ、神様がいる時点で正直不死身の存在がいてもおかしくないけどなんだろう。こう、哀愁漂うって言うのかな?そんなオーラを出す時がある。

友人と早く合流したいともいってたけど、彼がいてくれれば百人力だって。凄く大きい人みたい。

 

彼が向こうの世界に向かうには、まだまだ準備が足りない。何より常識かもしれない。

だったらこの薔薇騎士団のアリス、全力を持ってサポートしてくぞー!

 

ちなみに最近良く、バケツ頭の人の情報が耳にはいる。なんか、すごい人みたい。

 

 

《地球・灰の世界》

 

そこにいるのは、人か亡者か…。

エジプトの古い町並みの中に、似合わない。そんな服を着た亡者がさ迷っている。

 

あぁ、結局のところ彼らもまた呑み込まれたのだろうか?いや、多くの犠牲を払いつつ前に進む一人だけそんなヤツがいた。

 

彼の頭にあるのはただ一つ、この世界から出たいと言う逃避のみ。しかし、それは自らの心の支えとなり亡者のようになってもそれだけは見失わず、戦い続けていた。

 

もう、自分がなんだったのか。そんな事などとうの昔に忘れてしまった。時を刻む道具は、その性質を歪められ彼等がこの世界に入ってからいったいどれ程同じ時間を過ごしていたことだろうか。それでもなお、動き、もがき、足掻いて、遂にはこの地を納める『神?』と合間見える。

 

闇を象った蛇の神。それは既に事切れ、あるのは玉座と周囲を囲う蟲たち。一つの意思を持ったかのように動くそれは、闇を孕み蛇の神の内を食い破りながら、彼を襲う濁流となる。

 

其を、紙一重で回避するも2撃目に飲み込まれ身体を、バラバラに分解される。そして、篝火に戻るもまたそこに向かう。その姿は、地球のどの神話とも似つかない余りにも弱い英雄が産まれようとしていた。

 

それを影より見るは、向こうの世界から現れた異様な集団。扉が開くのをただ見つめ、彼を監視する。全てはロンドールの為に、彼を利用するだろう。




どうしても、シフを殺したくない。ならば、平行世界にしてしまえば良い。

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第26話 討伐

三人と一匹の影を、複数人が追いかけている。

逃げているものの一人と同じような、藍色がかった服を纏い陶器の面で顔を覆うそれらは、執拗に追いかけていく。

 

しかし、逃走は長くは続かない。何時しか追い付かれ、周囲を囲まれる。

逃走者の一人、偉丈夫の男が大剣を片手で保持し一人に叩き込む。反応が遅れたのかそれは諸に食らい、真っ二つに、切断された。

 

片や藍色の服の逃走者は、攻撃を見事に反らしつつ一瞬の隙をついて、心臓を抉る。

その動きはまるで踊りのごとく、流れるようなその動きは追跡者を翻弄する。

 

人の形をしていないものは、その獣の姿から出される俊敏性、意表を突く動き。剣の腕は一人前ではないが、それでも一人一人を相手するには申し分ない。その剣技はアルトリウスのものに酷似し、自らのオリジナルとして改良を加えられた動きだ。

 

そして、黒い鎧の男は。何処から取り出したのか、鎌のような長大な武器を使い、刺客の足を文字通り刈り取り、もがき苦しませ放置していく。

残酷な方法をとるが、しかし敵から逃げるに殺す必要はなく。傷を負ったものを放置するほど、刺客に感情が無いわけがない。

 

一人また一人と倒れ伏し、数名が残り、諦めたのか襲ってくる事は無くなった。

 

何故彼等は狙われるのだろうか。それは、ウーラシールの折り、最初の火の炉を見たものがいる、それは始まりの火が弱っている事を知ってしまった。

ウーラシールの地下で、アルトリウスは、グウィンにとって都合の悪いものを見た。それは、小人の最初の王、それに対する裏切り行為だった。小人の反乱を恐れた。

 

そして、あわよくばその従者であった、それを知る最後の証人をも葬ろうとした。

 

火の弱まりは彼等を殺しても、止まることはない。それの予兆は現れ始めていた。世界に不死者が現れ始め、『小人』が復活するのではと、神々の中の恐怖は膨れ上がっていった。

 

ウェルスはそんな場所から二人と一匹を逃す、火の力の及ばぬ場所。ファルマート、理を灰の時代としウェルスが力を教えた神々の大陸へ。そして、神々へのウェルスの願いは果たされる『私が逃がす者たちを受け入れよ』、それが契約に書かれた。恩とはこういう為に売っておくものだろう。

 

ファルマートの神々は、それを受け入れた。

ウェルスは、ただ一人火の大陸に残り、追われ続けるものとなった。

 

 

 

《火口・炎龍の巣》伊丹

 

俺達は危機に瀕していた。なんとも俺の考えが、浅はかだったのかもしれない。炎龍の性質を、他のワイバーンとかそういうものと同じと仮定してしまったのが、間違いだった。

 

今、俺達の目の前にいるのは間違いなく炎龍だ。

炎龍なのだが、様子がおかしい。酷く落ち着いている、すぐさまブレスを吐いて来そうなものだが、ものすごい違和感だ。

 

傷ははっきりとあって、俺達が跳ばした腕がちゃんと…有る?

まさか、この龍は別のやつか!

 

「ヤオ!本当にここで良いんだよな!!」

 

「間違いない、我等が間違う事はない。絶対にここだ。」

 

「じゃあ何で、こいつはここにいるんだ!間違ったんじゃ無いのか?」

 

よくよく見れば、ダークエルフの連中も動揺を隠せていない。だとすれば、こいつは何処から来たんだ?顔も姿も同じ筈なのに、ここまで気性が穏やかに育って人間に慣れてる。

まるで、飼われていたように。

 

そこで、ふと巣の下を見る。そこには俺達が倒そうとしていた炎龍が既に事切れていた。

全ては無駄だったのか、と問われればそうではない。なんせ目の前には、もう一匹の龍がいるからだ。

 

対峙しても一向に動きが無い。

少し冷静になるにつれ、ある疑問が浮上した。

そう言えば、ロウリィからの連絡が先程から途絶えているんだが、何かあった可能性がある。

 

その時だ、洞窟の外側から金属が弾き会う音が聞こえてきた。ロウリィが何者かと戦闘を行っている。

それも、複数か?亜神とまともに戦える時点で、もはや身体能力は人間のそれを超えているはず。

 

ちくしょう!ウェルス、あいつはなにやってんだよ。龍以上にヤバイ相手と戦わなくちゃならないなんてな。

本当につくづくついてないな。

 

 

《火山・表層》

 

黒い服の少女ロウリィが、相対するは黒色の鎧に灰色の破れたフードローブを身に纏い、若干金の刺繍が見てとれる。そんな、騎士だった。

 

違うのはその気配、まるでウェルスをもっと汚したような、何か泥のような、そんな気色の悪いもの。

にしては、戦闘開始時の襲撃にしては、余りにも礼儀正しくお辞儀をしてから始めるなど、もしかすると紳士?なのかもしれない。

 

ロウリィはそんな相手に焦っていた。この騎士、筋力がそれほど有るという訳でもない、にも関わらずロウリィの一撃を回避し、見切りを始め先程ハルバードが弾かれたのだ。

 

幸い、隙が出来た訳ではなかったがそれでも亜神となってから、随分と感じなかった、戦闘での危機を感じ、

普段からはあり得ないほど一撃に対して警戒をする。

 

敵の手にしている武器は、直剣なにか少し加護のようなものを受けている、魔法剣の類い。

それだけが、危機を煽っている訳ではない。

 

なんと、亜神ジゼルが彼の後ろに控えていて更に新生龍が2体もいる。

 

「お姉さま、潔く降伏してください。この戦力差でお姉さまが、勝てるなんておもってないでしょ?だからさっさと、諦めてくれよ。」

 

「あんな女の嫁にぃ、誰がなるもんですか!!」

 

強がっては見たものの、戦力は圧倒的不利どうしたものかと思案していると、敵対している騎士が言葉を発した。

 

「貴公、それほど自らの意思を尊重したいというのか?私も、正直気が引ける。そこでどうだろうか、私を彼女よりも高額で雇うと言うのはっ」

 

なんと、奴は商売をし始めた。よりにもよって今である。

 

「ナニを言っているんだ。お前には炎龍の分もしっかり働いてもらうぞ。お前のせいで、こっちはかなり迷惑を受けたんだ。」

 

実のところジゼルも、この男を手放せない。炎龍を殺したのは何を隠そうこいつだ。何度倒れても、殺しに来る正しくゾンビアタックで、炎龍を殺し尽くした。

ジゼルとしては、小飼のものの代わりを勤める存在、そう易々と引き下がれない。

 

そこに伊丹達が来たのだ、なんとも言えない空気が流れている。正直戦闘する空気ではない。

 

「ほう、貴公等何やら楽しそうにしているではないか。」

 

更にウェルスまで来た。

龍達は怯えていた、ヤバイ奴がいると本能で理解した。絶対に抗えない、そんな相手を目の前にして自ら屈服を選んだ。頭を垂れ地にひれ伏す。

 

「ウワァー要注意人物まで来ちまったか。主上さんから聞いた話だと、めちゃくちゃヤバイやつじゃんか。」

 

「龍と人の混血?のような種族だな。その主上とやら、私の事を知っているようだが、何者だ?」

 

「ジゼルのぉ、主上はハーディ。生け簀か無い、女が大好きな女神よぉ。」

 

ウェルスの眉間に皺がよる。

 

「あの小娘か。そんな趣味を持っていたとはな。にしても、伊丹よ。その様子だと炎龍は死んでいたか。そうか。では、テュカのトラウマの元を断ち切る、別の方法でも考えてみるか。例えば、そこの逃亡騎士を殺すとかな。」

 

出て来て直ぐに物騒な事を言い放つ、少々イラついている様子のウェルス。

そんな彼を見ていた逃亡騎士は、逃げの一手に出ようとする。

 

「これはこれは、ウェルス殿ではありませんか。どうか、見逃して欲しいのです。えーとですね、別の龍ならまだ火山の中に居ますので、そちらを討伐願いたいです。」

 

そう言い残し、何かを砕くと忽然と姿を消した。

周囲は呆気にとられ、ジゼルは顔面蒼白となっていた。

 

「さて、貴様に似合うのは吸精か?それとも挽き肉か、選ばせてやろう。死んでいった、エルフ達の報いを受けよ。」

 

流石にまずい、そう思っていても龍達は屈服しているし、逃げ場など当の昔に無くなっている。万事休すと思われた。

 

「えっ?主上さん、が直接お話になるんですか?わかりました。主上さんがウェルス貴方とお話が有るということデス。」

 

なんとも良いところでハーディが、彼女を助けた。そして、ウェルスの真実を伊丹達は知ることとなる。

そして、時計の針が動き出す。

 

 

《中国》

 

砂漠に並べられるは、新・旧戦車が隊列を組み、今か今かと待っている。

それだけではない、歩兵や自走砲など火力を集中して投入しているようだ。

砂漠には塹壕が構築されており、さながら世界大戦のような戦いか。

 

遠くで黒い何かが蠢いている。

それは、地を埋め尽くすほどに動き、前へ前へと進みつつある。大きさは小さいものはモルモット程度、大きいものになると象並だ。

 

それがうっそりと進んでくる。動きは遅いがその数と、泥のような姿は非常に不気味だ。

いったいどれ程これらと戦闘を行っているのだろうか?

 

体が脆いために、倒すのは容易であるが倒れても倒れても、次から次へと沸きだしてくるそれに兵士の士気は落ちている。

 

じわりじわりと、泥は範囲をひろげている。

いずれは防衛戦と接触することになるだろう、そうなった場合ゆっくりと後退し、最終的には核の使用も辞さない。

 

核が効くかは未知数だ。通常兵器は効果の無いものとなる。だが、この泥は何故か避けて通る場所がある、そこはまるで結界のように円形にすっぽりと抜けている。

 

共産党は気が付かない、嘗て自分達が潰した古い文化宗教の中に、この泥を止める手だてが存在したことに。

 

 

現在泥の直径は100キロ、いずれは国をも呑み込むかもしれない。そんな恐怖が人知れず蔓延していた。

 




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第27話 古き友

世界に不死が蔓延し、絶望が世界を覆い始め、小人の国に光が届か無くなり始めていた頃、ウェルスはなお逃げていた。アルトリウス達の分の追っ手を引き連れて。だが、有るとき状況が一変した。

 

グウィンが、その身を火にくべた。

その話がウェルスの耳に入ったのは、アルトリウス達がファルマートへ渡って、千年以上たった頃だった。

 

追っ手は、ウェルスを殺そうと躍起になっていたが、それが突如として止んだのだ。

それを不思議に思った辺りから、太陽の輝きが戻っていた。

 

ウェルスは確信した、延命を始めたと。

何を思ってグウィンは、自らを薪としたのかそれはウェルスにとってはどうでも良いこと。しかし、それにより小人はますます神々の事を尊敬し崇拝した。

そして、グウィンを奉った。

 

世界に現れていた不死人は、消え去ることはなく。ソウルを失った肉体が残った。それは、最初の火にくべられグウィンと共に世界の人柱となるのだろう。

 

その事にウェルスは例えようのない、悲しみを背負った。護ろうとしたものを、護れなかった自らの不甲斐なさと、神々の容赦の無さを痛感した。

 

神々にとって自分達の時代こそが大切であり、その他の事など関係ないと言わんばかりに。

それだけではない、小人はその事に異を唱える事もなく神々に同調する始末だ。

 

ただ、ウェルスも同情するものがいた。輪の都のフィリアノールだ。彼女は父であるグウィンを待ち続けている。輪の都は外の様子は見ることも出来ず、隔離された都。

 

彼女がグウィンの事を知ることは、永遠に来ないであろう事は紛れもない事実だ。幸いな事に、知ることが無いからこそ彼女の役割である、古き小人の封印に一躍飼ってるのは皮肉であろうか。

 

だが、ウェルスにとって思いもよらない事が起こり始めていた。白龍シースの軟禁から始まるこの出来事は、後に火の時代を象徴するものとなる。

 

それは、王のソウルの収奪。力を得るために自らが王のソウルを造り出そうとした、愚かな行い。欲が神々を奈落へと引きずり込もうとした。

 

 

《火山・表層》

 

ジゼルが発した言葉に、ロウリィは眼を見開いた。あの女好きの神がこの男を、わざわざ自分が出向いて話を聞かせるなどと普通あり得ない。

 

それが自ら出張ってくる。だが、神に肉体はないから寄り代が必要になるはずだと、ロウリィは考えた。それは事実であり誤りでもある。

 

事実、彼女等の目の前に、とても美しい女性が姿を表したのだ。これには伊丹や、ダークエルフの面々も驚いていた。まるで、奇跡でも起きているのでは?と思うほどに、それはまあ見事なものだ。

 

「お久しぶりね、私たちの師ウェルス。それともこう呼ぶべきかしら?深淵の神ウェルス。」

 

ウェルスは顔をしかめた、睨み付けながら嘗ての教え子に対して、それを止めるようにと言った。

ウェルスが神と呼ばれた事に回りは、彼を見る。

 

「ごめんなさい。でも、貴方が神に等しい存在なのは事実よ?それとも、彼等『火の時代の神』と同一視されてるようで嫌?私たちにとっては、貴方はその時代の神様みたいなものよ?」

 

「それでもだ。何のようでここに来た、従者を助けるためだけではあるまい?それに、火山の中にいる龍はお前の本命だろう。」

 

見てもいないのに、ウェルスは火山の中に龍の死体と別の龍がいることを看破した。まるでさも当然の事のように話を進める。

 

「龍については当たり。あれがいるなら炎龍なんていらない、必要なときに力を貸してくれる古龍は、本当に頼りになるもの。そのために、暗い魂の血が必要だったの、悪くは思わないで?外敵からこの星を護るためには必要な事だものでしょ?。」

 

外敵がなんなのか、伊丹等には検討が付かないがウェルスはある程度納得したものの、それでも嫌悪感が有るようだ。

 

ダークエルフやテュカにしてみれば、自分達の血に不純物が入っているせいで、殺された事に納得が行っていない。

 

伊丹からしてみれば、元来エルフの血液中に人間や他の亜人と別の成分が含まれていた事は、周知されていたがそれをあえて狙っての確信犯。

怒りを覚えない訳がない、それもよりによってテュカの身内を殺した相手が、目の前にいるのだ。

 

そこまでいって自然と銃をハーディに向ける自分に気がついた、他の面々も自然に構へ、ウェルスだけが話をする体勢になっていた。

 

「外部からの侵入者を俺が殺せば、食い散らかすのを止めると?」

 

「そう言うこと、話が速いと助かるわ。あっちの世界にいる貴方の王様が、こっちに戻ろうとしてるの。しかもそのために、あっちの火を飲み込もうともしてる。ロンドールの人達はそれを知らない。」

 

それを聞いたウェルスの瞳に光が射した。

退治するのをやめ、急ぎ足で下山をし始めた、呆気にとられる伊丹たち。

 

「何をしている早くいかねば、この世界も君らの世界も滅ぶぞ?」

 

「待てよ!!テュカの敵討ちはどうするんだよ!!」

 

「大丈夫だ、食われてない。似たようなソウルは感じられない。むしろ良くもまあ、あんな偽装を施したなハーディ。腕をあげたか?」

 

「お褒めに預り光栄よ。それよりどうするの?貴方達異邦人のお仲間があんなに来てしまったわよ?」

 

いったいどう説明すれば良いのだろうか?伊丹の胃はキリキリと痛む。龍退治どころか、派遣隊の編成までしてあるなんて、予想外だった。

 

彼等が、去った後、ハーディとジゼル、龍達がそこにいるだけだ。

 

「主上さん、あいつは主上さんの知り合いだったのか?」

 

「ええ、古い古い友人よ。でも、貴女も彼に感謝しなさい。彼が本気を出したら私たちなんて、一捻りだから。」

 

『お願いね、あれを止めることが出来るのは、火の力しか無いのだから。』

 

《ハーディ神殿》アッシュ

 

観光地となっている神殿に火守女と共に入るが、神のソウルを感知することが出来なかった。どこかへ出払っているのか?

 

また時間を開けていくとすると、決断するやいなや、この都市の観光を始める。

見慣れない景色、火守女はワクワク((o(^∇^)o))といった感じで、世界を楽しんでいる。

 

ああ、連れてきて良かったとつくづく感じた。食べ物も美味しいそうだ。俺は食べられないが、彼女が嬉しそうならそれで良い。

それよりも、神のソウルに興味が有るんだがどんな武器が出来るか?

 

っとまる半日たってしまった。そして、神殿から強大なソウル(今の自分からみればそうでもない)が溢れ出ている。

おお、あれは収集する会が有りそうだ。実に良い装備が出来るんじゃないか?

 

例えばそう、死神の鎌とか死者の杖だとか、そんな心をくすぐりそうな楽しい武器が!

うん?なんだい、火守女(かぼたん)そうじゃない向こうに行く方法を聞きに行く、だって?

 

そ、そうだよね。目的を忘れちゃダメだ。でも、でもだよもし拒否してきてらそのときは、やっちゃってもいいんだよね?

 

そうと決まれば、神殿の扉を蹴破りいざハーディとご対面!出来るわけ無いよなあ、周囲をぐるりと鎌を持った女性たちに囲まれちゃったよ。

 

「お~い、ハーディ話が有るんだ出てきてくれないか?大丈夫、ソウルを取ったりはしないよ。ちょっと情報を貰いたいんだ、向こうの世界への行き方の。」

 

そんな事を言ってたら、中から神官長らしき老婆が出てきやがった、まさかの不在か。

 

「申し訳ありませんが、主上は只今出掛けております。御会いする場合は百年でも、二百年でもここで待っていただけますか?」

 

ハキハキ言いやがる、そんなに俺はヤバイ奴かねぇ。

まあ、神のソウルが気になるっちゃ気になるが。

 

そんな時、後ろから火守女が言った。

 

「そうですか。では、せめてゲートまでの道案内をお願いしたいのですが。」

 

「それでしたら、町の行商人に聞いた方が早いでしょう。わかりましたら、出ていってもらえますか?」

 

冷たいなぁ、そんなに俺が怖いか。

 

 

《国連総会》

 

各国の代表が集まり、この議場を埋め尽くしている。

題目は、ここ数年における不明瞭殺人についてであろうか。

 

『赤い人』と呼ばれる殺人者がここ数年の間、世界に広がりを見せ、もはや一国の力では解決できないレベルに達している。

 

ICPO並びに各国の諜報機関からの情報が、国連へと委託され、国連が始まって以来初めてまともに機能している。

 

常任理事国の拒否権が棚にあげられ、常任理事国の地位は低下した。もはや、条文に構っていられない程に各国共、追い込まれていた。

 

この犯罪は無差別に複数、同時に行われ確実に人を殺しに来る。総会中出現され、警備を突破される可能性だって有るわけだ。

 

光る文字によって被害は少なくなっている、とはいえ事件が増加傾向に有るのは、紛れもない事実。

よってここに、国連始まって以来の常設軍計画が始まった。

 

『より迅速に派遣を可能とするために、平和が犯されているのを無視すると、国連の威信が弱くなる。』

 

そう思っての行動が、奇跡を生んでいる。

 

そして、議題は更にエスカレートし、常任理事国の内部へメスを入れる。強制力を持った国連に、常任理事国は拒否権を執行されたが為に、拒否出来ない。

 

事態は中国国内へと入っていった。

 

 



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第28話 始まり

魔女の都イザリス。神の一柱の名を冠したこの都は、ウェルスがついた頃には、止まることの無い混沌の炎に呑み込まれていた。

きらびやかな神殿も、人々が行き交う町並みも全てを呑み込んだ。

 

発端はグウィンの火継ぎであった。

イザリスと、グウィン二人は契りを交わした間柄、二人の婚姻を嘗てのウェルスは祝福し、2人の間に出来た子はウェルスが鍛えた。長女はその奇跡を蘇生の力とし、長男は奇跡を戦いの力とした。

 

しかし、子はグウィン自らが追放し、イザリスはそれに激怒してアノールロンドを去った。

イザリスが去った後、グウィンは孤独の身となり城には陰鬱な空気が立ち込めた。

 

そこからグウィンは狂ったように性を貪った。それを良しとしないニト等神々は、グウィンを裁判に掛け王のソウルを奪い、グウィンを火にくべた。

 

噂と真相は遥かに違うものだが、グウィンが火を継いだ事に代わりはない。

イザリスは哀しんだ、嘗て愛した者の変わりように、愛した者を、完全に失い手の届かないところに行ってしまった事に。故に、グウィンの火を取り戻そうと動いた。

 

しかし、神々はそれを良しとせず力の差は歴然となった。そこでイザリスは、『始まりの火』を作ろうとする。愛ゆえに、傲慢にも自らに造れぬ物はないと盲目になり、大いなる失敗をする。

 

ウェルスはそれをソウルから読み取り、嘗ての友との日々を懐かしみ、そこに一輪の花を手向けた。

その花は生涯渇れることは無いだろう、イザリスの亡骸に根をはり、大きな木となることだろう。

 

ウェルスはこのとき気付かなかった、イザリスの都の中に未だ生き残っている魔女の娘達がいたことを。

余りにも濃密なソウルによって阻まれ、見つけ出すことも救い出すことも出来ない。

 

哀れな娘たちを救うことが出来るのは、果たして誰なのだろうか。

 

 

《火山上空》

 

2機のF4が空中に待機し、攻撃を今か今かと待ち続けていた。しかし、待てども待てども命令は無い。

いったいどうしたというのか、と思考を巡らせていると無線が入った。

 

内容は端的に言えば『帰投せよ』だ。理由を問いただせば、帰ってくるのは『危険生物の無力化の確認がなされたからだ』と、そう言われる。

 

正直納得が行かない。あんなに巨大な生物がそんな数分で殺されるだろうか?

なんせ、自分達もアレと空中戦をしたのだ、その機動性から自走砲では追従出来ないし、携帯型の地対空ミサイルでは威力が低すぎる。

 

下でいったい何が行われているのか、気になって仕方がない。だから決めたのだ、帰投したら質問攻めにしてやると。

 

 

《ロドムス渓谷》

 

そこに有るのは巨大な砲を備えた、鉄の塊。それが天を仰ぎ見て今か今かと待ち続けている。

未だに見える龍達に照準を会わせ続けるが、果たして射撃の中止が出された。

 

何が有ったか知らぬが、伊丹達から連絡が司令部に入った。曰く、『炎龍の死亡を確認した、敵対勢力と思われる者と接触しその場で対話した結果、相法の誤解を解消することに成功した。また、他の龍とウェルスが主従関係となり、龍の捕縛に成功した。』

 

そんな内容、司令部は唖然としつつも眉間に皺を寄せ『また面倒な事をしなければ』と、頭を抱えたと言う。

それよりも、何もせずに基地へと帰還しなければならないとは、何かモヤモヤする。そんな特火であった。

 

ちなみにダークエルフ達からは、何をしに来たんだろうか?という頭に?マークを付けられて見送られた。

 

 

 

ヤオ

 

何と説明すれば良いのだろうか…。私たちを捕食していた炎龍は、既に死んでいましたと?

そんな事聞いたら喜んで良いのか…。確かに、私たちを害するものはいなくなる、だがこのやり場の無い怒りは誰にぶつければ良いのか。

 

やはり、我々を害する事を良しとしたハーディか?

あの神の事を怨み続ければ良いのか?だが、それだけでは復讐も出来ない、ならどうすれば…。

 

「ヤオ、大婆様がお前を呼んでいる。」

 

いったい何だろうか?そう思い、大婆様から話を聞いた。我々エルフの成り立ち、神々との関係、過去の過ちそしてウェルスの事を。

 

子供の頃のお伽噺が今と、繋がる。それが私の今後を決めた。

 

 

~数日後~

《アルヌス》

 

会議室、そこに外交官や幹部が集まり、一人の男ウェルスと相対していた。

空気はお世辞にも良いとは言い難い、空気を悪くしているのは、ウェルスだろう。

そんな中、話を始めた。

 

「貴公等の世界、そちらにあるものが現れていないか?」

 

『あるもの』そういわれても皆一様に顔をしかめるばかり、そりゃ余りにも抽象的過ぎるが、一人だけそれを思いだし訪ねてみる。

 

「あるもの?とは赤黒い人影の事ですか?それとも、遺跡に突如として現れた燃え続ける剣等の事ですか?」

 

それを聞いたウェルスは、眼を見開き矢継ぎ早に言った。

 

「それは、螺旋状の剣か?そして、下に有るのは骸、それが燃え続けている。違うか?」

 

「いえ、形は色々有るそうですが、下の部分はかねがねその通りだそうです。」

 

「そうか…。だが、何にせよ役割は同じだろうがな。」

 

怪しげな雰囲気が、彼を纏っている。どうしてウェルスがこちらの事情を予想出来たのか、それが全員の気がかりだ。

 

「役割とはなんですか?だいたい何故貴方が、国連の機密事項を知っているんですか?ここは、地球では無いので言いますが、貴方がもしあれを知っているのなら、教えて頂きたい。」

 

ウェルスは、周囲を見渡して言い始めた。

 

「初め、君たち世界は、神が存在しない世界だと思った。何故、神話が有り、神という概念が有るにも関わらず存在しないのか、めずらしいものを見たと思っていた。

だが、今わかった。君たちの世界にも、神が存在していたと言うことを。

そして、私が感じた火の力は偽りではなかった。」

 

そして、彼は話し始める。断片づつ話していた、自分の世界の話を。物語のようにまるでさも、見てきたかのように。

そして、篝火の意味を…。

 

 

《地球・灰色の世界》

一人の学者だった者が、エジプトを越えヨーロッパへとたどり着いた。

道の無い道を通ったにも関わらず、余りにもすんなりと到達するところを見るに、やはり何かの思惑が有るのだろう。

 

生者のいないこの灰色がかった世界を、ただひたすらに走り続ける彼に嘗て考古学を学んでいた記憶など無い。

有るのは、この世界の事をいかに早く外部に知らせるか、ただその一つのみで彼は付き動かされている。

 

「待たれよ。旅の者よ。」

そのときだ、不思議な男が現れた。

目の前に現れたのは、紋付き袴にちょんまげ姿をした江戸時代の武士のような男。勿論考古学を学んでた人物、本来なら『サムライがいる』なんて思うだろうが、今彼にその記憶はない。

 

「某、前水戸藩主光圀が家臣、鷹取 宇右衛門助 孝康と申す。名は何と言う。」

 

「……。名は忘れた。邪魔をするなら押しとおる。」

 

「まあまてその方、火継ぎの儀式に選ばれたのか?実はな某も選ばれたのだ、非常に名誉な事だ。どうだ?自分の事を思い出せたのでは無いか?…。

むぅ、その方だいぶ死んだのだな。

生け贄として、贈られてきた類いか。」

 

哀れみの眼と言うのだろう。学者にとってはどうでも良いと言った感じだが、何か身の内に残っている部分に引っ掛かるものがあった。

 

「私は生け贄等ではない!ただ、自分の意思で来た筈だ…。」

 

「ふふっ、ハッハッハッハ!

お主、まだまだ人間味が有るではないか!名が無いのなら某が付けよう!」

 

それを聞いて、渋い顔をする。

 

「良い、俺の格好は学者の物だった…筈だ。なら答えは出ている。スコーラーだ。以後よろしく頼む。」

 

一人ぼっちの旅に仲間が出きる。それは、吉兆か不吉の前触れが、ともかく彼の拠り所が出来た。

 

 

 




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第29話 グウィネヴィア

 

グウィンが火継ぎをし、イザリスが混沌に呑まれてから更なる年月が経過した。

何も知らぬ小人達や、神々の子等、若き巨人達。

 

古い神々の言葉に見事に騙され、あたかも火継ぎを世界を救うためのものだったとし、イザリスもまた同じように世界を救うためと、美化されて広まっていった。

 

この間に、魔法に新たなものが現れ始めた。『呪術』それは、混沌の炎と似た性質を持っており、それが広まるのは意外と早かった。魔術のような学は要らず、奇跡のような信仰心もいらない。

 

一般人の中から呪術師が現れ、一つの都市を形成していった。後に言われる『大沼』である。

 

『魔術』はウーラシール崩壊により途絶えたものを、再び世界に教えるために魔術師の集団が組織を作った。

後に言われる『ヴィンハイム』である。

 

そして、多くの神々を信仰する各宗教集団に伝えられる、神々の()()()伝説を再び記し、小人に伝えられ、その神話により『奇跡』が広まった。

 

しかし、そのどの魔術にも闇に触れるものはなく、嘗て扱われていたダークソウルの使用による魔法は姿を消した。勿論輪の都も例外ではない。ダークソウルを封じられ、変わりに王のソウルを渡された。

これにより、完全に輪の都は神々の手に堕ちた。

 

神々はそれをこれで、繁栄は続くだろうと胸を撫で下ろした。不安材料であるシースと、ウェルスの事を念頭に対策を推し進め、2人の対立を招くためにシースへ実験材料と称し、グウィネヴィアの巫女達を送った。

 

それが、ウェルス。ひいてはハベルの逆鱗に触れることとなる。これにより神々は『岩の神ハベル』と『深淵の騎士ウェルス』二人をシースへ向ける事に成功させた。

 

この二人はいつも小人側に立ち、神々のやることに反対した。ウェルスに至っては暗殺さえ行われていた。

シースへぶつけるにはちょうど良い存在だったのだ。

 

シースは自分の邪魔をする二人から逃げるように、アノールロンドへと入城し大書庫を建築する。結界に守られて、二人は侵入することは愚か、近付くことすらままならなくなっていた。

 

だが、そんな事をやっている間に火は再び力を失い始め、ちょうどグウィンが火を継いだ頃から1000年目の頃、再び小人達にダークリングが現れ始めていた。

 

 

 

《アルヌス》

 

~伊丹~

ウェルス達が会議室で質疑を行っているとき、伊丹たちは隊の引き継ぎを行っていた。

伊丹から見て全員の顔がよく見える位置、彼は有ることに気が付いた。

いつもなら自分に対して悪態をつく栗林、彼女の顔に覇気が無いことに。

 

「それにしても、どうしたんだ栗林。お前そんな覇気の無い顔しちゃってさ、なんか酷いことでも有ったか?」

 

死んだような瞳を伊丹へと向けてきている。

 

「いいえ、何もありませんよ。ただ、ちょっと夢見が悪いだけです。」

 

その時黒川が心配そうな顔をして言った。

 

「やっぱり一度検査しましょう。これは強制です。良いですか?

隊長、これから私は栗林さんを連れて、医務室へ行きます。最後に栗林さんの事を気遣って頂き、ありがとうございます。」

 

二人が去っていくのを、伊丹は見送った。

 

 

~黒川~

 

医務室に着くと崩れるように、倒れ始めた志乃を支えつつベッドに腰を降ろさせる。

 

「全然大丈夫じゃないじゃない!何で今まで我慢してたの、もっと早く連れてくれば良かった。熱は本当に無いのよね!もし、変な病気だったら、治しようが無いんだからね!」

 

私がこんなにも荒げることなんて早々無いのに、こんなにも彼女の事を心配になるなんて思わなかった。

でも、今の彼女は明らかに可笑しい、纏う雰囲気が少しずつ別人のそれになっていて、時折歩行すらまるで何処かの王女様のような、品の有るものになっている。

 

私の専門外だけど、彼女は精神が分裂し掛けている可能性がある。このまま放って置けば確実に、彼女の生命に危険が及ぶ。

 

「茉莉さん、わかったから離してだいぶ落ち着いたから。」

 

「いいえ、貴女は良いも知れないけど私はそうは、行かない。ここに先生が来るまで待機してて…。そうね、貴女の見ている夢を少しでも聞いておきたい、もしかしたら手助けが出きるかも知れないし、たぶん同じ事を先生にも、言わなければならないかも知れないけど。」

 

少し考えた素振りを見せながら、私に話を始めた。夢の中の自分と登場人物達を。

 

 

「いつも私は、ある女性の目線で行動するのそこはまるで、西洋のお伽噺のような世界。ここよりも、遥かに非現実的な事が常に起こってる。私の身長は高くて、3メートルは有る。それでも、周囲にいつもいる人たちに比べれば小さいんだけど、一人以外には。」

 

「それってみんな顔見知り?それとも…。」

 

「記憶にない人達の顔なんだけど、一人だけ知ってるやつがいる。あのウェルスとか言う騎士、彼だけ知ってる、しかも今よりも若い顔で。それで、この前彼等は会議をしていた何でも古龍を殺すために、という理由で。」

 

そう、父親である男が母である紅い髪の女と一緒に座りその近くに、非常に巨大な男、(名を『ニト』という)が座ってそこに私の弟である長子がいる。

 

皆身長が高い。ニトに至っては5メートルを優に上回る。そんな中に小さな人ウェルスが対等に話をしてるいる、彼は今のような黒い鎧じゃなく灰色のマントを羽織った、美しい白の鎧を纏って、私の目は彼に向いてる。

 

ウェルスが言ってた、

このまま持久戦に持ち込まれれば、我々に勝ち目は無い。だから私は、深淵に知恵を借りようと、

 

父たちは猛反対した、危険すぎる賭けだと、それでも彼は止まらない曲げない、だから彼は言ったもし、自分の身に何かが起こればそのときは世界を頼むと…。

 

深淵と契約した後の彼は変わった。彼の替わりに、深淵が小人の王と呼ばれ、小人はまるで最初からそうであったように振る舞う、全てが書き換えられたように。ウェルスは、まるで僕のように彼に遣えてた。

そして、深淵の言うとおりに陣を組み立てそこに儀式剣を起き、世界が火の力に包まれた。

 

「それが、今私の頭の中にある夢の記憶。自分でも何なのかわからない、でもきっと私はこれを知ってる。」

 

「どうして、そういいきれるの?」

 

「だって、()()そこにいたから。」

 

栗林さんの雰囲気が一変して、周囲は光に包まれた。

 

 

《帝都》

 

~アリス~

 

いや~本当に帝都は良いなぁ~。騎士団の皆は元気だし、バケツ頭とタマネギが闘ってるもんねぇ…?

え、バケツ頭とタマネギが闘ってる…!!

 

「おい!そこの二人、何やってんの!」

 

ひぇ~早くしないとどっちか死んじゃうよ!だから、二人の間に割って入ろうかな!なんて思ってた時期が私にもありました。

 

嘘、マジ!強すぎるでしょこの二人、え?今まで手加減してたってこと?

でもなんでここで殺しあってんの?

 

「なんで、そんなにいがみあってるのよ!何かあったの!!」

 

 

「うん?おう、貴公何だ死合い中に乱入とは、危ないから下がっていた方が良いと思うぞ。」

 

「だから、何で殺しあってるの!」

 

「貴公、確かこの騎士団の上級騎士だとか。これが終わったら手合わせ願いたいものだな。しかし、ジーク殿説明忘れているな。我等がどういう存在か。」

 

え?ちょっと待って今まで一緒にやって来たのに、まだ隠し事してたの?全然気がつかなかったけど、もしかして忘れてた?

 

「実は、我々は」待ってくれ、私から言いたい。」

 

「うん。私たちは不死と呼ばれるものの生き残りだ。」

 

不死の生き残り?何を言ってるんだろう、不死なら死ぬわけ無いから、生き残りも何も無いんじゃないの?

 

「困惑するのも解る。ただ、説明すると長くなるからな、今はそれで満足していただけるか?」

 

まあ、説明が長くなると大変そうだし良いや。まあ、不死なら不死で、凄まじい剣術を使うのもわかる。

それに、ここはお伽噺とかそういう不思議なものがある世界、狼狽えるな私!!とそれよりも

 

「何でアルヌスの方角を見てるんですか?」

 

「「いや、何やら懐かしい「神聖な」ソウルを感じた。のでな。」」

 

私には何の事か、さっぱりわかりません。

でも、何かヤバイことが起きてる?

 

 




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第30話 ()

火の陰りが始まり、小人達の国の光が沈むようになってから、300年の月日が流れた。

小人達の間には嘗て存在した不死人が、現れ再び世界は荒廃の一途をたどった。

 

それを憂いた数少ない神が存在した。小人の国を護る神の一人、ハベル。彼はグウィネヴィアの巫女達の消息を探りながら各地を周り、小人達に知恵を授けていった。

 

彼が旅を続けていく内に、巫女達がどうやらシースの元へと集められ、何やらきな臭いことをやっているという情報を元王の刃から得た。(王の刃は解散、暗月の剣にとって変わられた。)

 

そして、ウェルスとハベルは偶然にも再会してしまった。二人は同じ事を考えていた、『巫女達を救うにはどうすれば良いのだろうか』と。

 

そして、二人は結託しとてつもなく強固な結界の中に身を投じる。

 

一方アノールロンドは、ここ百数十年の間に劇的な衰退をしていた。嘗て多くの神々が住んでいたその地に残った神は少なく、銀騎士すら全盛期には程遠い力量であり、数も少ない。

 

何よりも王のソウルを保持するものが、書庫のシース唯一人というのも悲しいものだ。

彼?彼女?は自らの悲願を達成するため、巫女達を異形へと変貌させていく。あるものは蝶となり、あるものはスキュラとなった。

 

その中でいくつか成功に近いもの達が生まれる。彼女等は、筋力は小人程度であるが、異常なほどに強い魔力を保持し、ダークソウルをその身から垂れ流す。

それゆえに、不死に近い。だが、シースの抱く不死とは違う。『完全なる不死』その答えは、いつも近くにいた。

 

始まりの火の一端。ダークソウルを強く持ったもの、『小人の王ウェルス』深淵に捕らわれしもの、その力は多岐にわたり他の王のソウルをまるで一つにしたようなもの。だが、非常に暗い。

 

シースは彼を見ていた、故に小人を実験材料に最適なものと考えていた。

いつものように、実験をしていると乱入者が現れる。

そう、ウェルスとハベルが。

 

 

 

《地球・国連》

 

ちょうど栗林から光が発せられているころ。

国連では赤黒い影の殺し屋、(国連命名・ファントム 和名亡霊)

に対する対抗策が検討されていた。被害者の共通点を発見したためでもある。

それをやっとの事で見つけ出し、対応に勤しんでいる。

共通点は、何らかの武術或いは武力を保持していること。

 

つまり、現役の軍人や警察果てはオリンピックのフェンシングや柔道まで多岐に渡る。更に言えば、何かしらの理由で人を殺めた者など、が最有力候補だ。

 

まるで狙い済ましたよう、そういう人物が標的になっている。『神のご意志だ!』そう声高に叫ぶ信奉者もいたりするわけだから、宗教が非常に売れる売れる。

 

懺悔なんかも頻繁に行われ、今21世紀にも関わらず中世ヨーロッパレベルにまで宗教の力は 強くなってしまい、一方で信じない者を差別し、撲殺するなんて事件も起きたりするのだから、亡霊は減るはずもない。

 

話が反れたが、国連は今非常に上手く動いている。邪魔物だった常任理事国の力を剥がしただけで、余りにも効率良く動いているのだ。

それは、如何に常任理事国が人を多く殺しているのかと言うものに繋がるのだろう。

 

だが、この国連の一連の動きには暗い影があった。

対応が余りにも早すぎる事と、事務総長に権力が集中しているところだ。

 

凄く優しそうな見た目から想像できない、活力のある指導者。彼が言う事は基本あっている。逆に言えば彼の言うことに間違いが少ないからこそ、皆彼に付いていこうとする。

そう、国連は今一人の独裁者によって見事に動いている。

 

来日も来日も地面の文字の解読をしていた彼等は、遂に光輝く文字の解読に成功し、どういう人物が現れるのか、と言うものを読みといた。

そして、その原理を古い言い伝えに沿って行い、多少のアレンジを加え文字を穿ち会話に成功したのだ。

 

それが、本会議で提示されこれにより反撃が開始される。それは、果たして吉となるか凶となるか。

 

そんな中、中国国内のことは議題に上がらない。情報の遮断により、どうにも手を浸けられなくなっている。

それよりも、目の前の事に躍起になっていると言うこともあるが…。

 

 

《中国》

 

ドロドロの化け物たちとの戦いは以外にも、善戦していた。善戦と聞こえは良いかもしれないが、範囲を広げていないという意味では良い勝負だろう。実に物量は正義と言えよう、惜しむらくは精度が若干悪い事くらいだろうか。

それでも、ドロドロは永遠に動き気持ちの悪い人形を作っては、進軍を始めている。

その永遠に続くとも言える動きは、果たして人民解放軍の物量を僅かだが上回る。

 

むしろ弾を叩き込めば、叩き込んだだけ膨らみ量が多くなってきている。何れは戦線が崩壊するだろう。隠蔽体質が最悪の展開を産み出そうとしているのは、上層の官僚達は既にわかっているが、所詮は独裁国家。

首席の指示には抗えない。

 

唯一の救いは、兵士の中に規律を守らず映像を海外に流す不埒者がいることであろうか?これによって人類は、改めて危機感を募らせより一体化が進んでいくことになる。

 

 

《アルヌス》

 

医務室から光が広がり、辺り一面を覆い隠す程にまでその閃光は大きくなっていく。

それは会議室でも例外ではなく、慌てて体勢を建て直すために至急、部隊を展開させていく。

 

そんな中、ウェルスだけが周囲と違いその光を見て懐かしさを感じていた。

『ああ、やっと見つけた。』

そういう感情が顔から滲み出るほどに、気色悪い光景だ。

 

周囲がその光を取り囲むなか、ウェルス唯一人が光に近づいていく。まるで、光に誘われる虫のようにゆっくりと確実に近付き、失くしてしまわないようにゆっくりとその光に触れた。

 

するとどうだろうか、辺りを包んでいた光は消え元の姿へと戻った。しかし、医務室では有る事が起こっていた。

 

 

 

黒川、彼女の目の前にいたのは、栗林の身長が伸びればきっとそうなるだろうと思われる人物だった。

その女性は黒川に目線を送ると言った。

「怖がらないで、彼女栗林は私と交代してもらってるだけだから。」

 

「貴女、志乃さんを何処へやったの。」

 

彼女はその女性を睨み付け、対峙する。得たいの知れないその女性は、高身長と言われた黒川よりも頭一つ大きく、欧米人と大差ない。それでも異様と言えるのは、女性の瞳が金色に輝いていたこと。

 

「さっき言ったとおり…。そうね、貴女達はオカルトな事をあまり信じなかったね。」

 

「何を言ってるの?この世界に来たからには、オカルトな事だって信じる。だけど、貴女からは生きた人間の感覚が伝わってこない。」

 

女性は少し残念そうな顔をしながらも、理解したかのように頷き説明を始めた。

 

「私は貴女方とは違う命の理の存在、神という種族とでも言えば良いのかしら?でも、元々は同じだったから

人と書いて神と読める、そんな存在。

それと、この子は私の血を濃く受け継いだ一族。だから私のソウルが彼女に宿ったの。」

 

「それが何故、志乃の肉体を奪う事に繋がる!!」

 

「それは、後で話すわ。彼が来たから。」

 

そう言うと、扉の方を向いた。つられて黒川もそちらを向く。すると、ウェルスが扉を開け入ってきた。

 

「お久しぶりです、グウィネヴィア。長いこと探しました、まさか別の世界へ渡っていたとは…。それに、どうやら血の契約をしたのですね。」

 

黒川の目の前で、危険人物二人が向き合っていた。どうやら女性はグウィネヴィアと言うらしい、しかもこの特地の出身。

 

「はい、ですが私がこの世界から去った本当の理由を、話さなければなりませんね。それと、周囲にいる方々もどうか剣を納めて頂けませんか?私はウェルスと話をしたいから、ここまでして最後の灯火を燃やしているのです。」

 

どうやら二人は知り合いのようだ。しかも、かなり親しい間柄だったのか、ウェルスが非常にニコニコしていたが、彼女の言葉で表情が曇る。

見たこともない、不穏なものだ。

 

「それならば心配ない、今すぐ別の神のソウルを調達し君に分け与えよう。そうすれば、君は必ず救われる。」

「ええ、そうね。でも私はそれを望まないだってそうでしょ?嘗てあなたが最も嫌ったものに、貴方自信がなろうとしてる。あの忌々しい、深淵に。」

 

黒川は二人を蚊帳の外から見ていた、口論する二人は何処かの中睦まじげに見えるのは、目の錯覚だろうか?それでも、同じ事を繰り返し言い合う二人。

 

「貴方は深淵の事を貴方達小人の王といっている。だけど、それは違う貴方こそ小人の王であり、深淵は貴方の記述を貴方の位を、貴方の民の記憶を塗りつぶし書き換えた紛い物でしか無いの!」

 

「だとしても、それを証明する術は無いのではないか?」

 

それを聞いて暫く考えた後に彼女は答えた。

 

「じゃあ、貴方はなぜ深淵を封印から解こうとしないの?」

 

「それは…あれには嘗ての理性が無いから」

 

「いいえ、貴方は潜在的に知っている。だから解ける筈の封印を敢えて解いていないの、でなければ貴方は小人を見捨てない筈よ?」

 

その言葉を聞いた直後、ウェルスは威圧を強める。まるで今の言葉を取り消せと言わんばかりに。

この一連の口論に間を割って入る者はいないように思われた…。

 

「おお、凄いソウルだ。どんな武器が造れるかな?」

 

町の外に有る広場に、灰の人、アッシュと火守女が歩いていた。ゆっくりとだが、確りとウェルスとグウィネヴィアに近付くそれには、太陽が宿っていた。

 

また、逆の方向には騎士アリスと二人の戦士ソラールとジークバルドの姿がある。まるで示し会わせたかのように、彼等はここ駐屯地に集っていた。

 

 

~四人の王が玉座に座し、一人の深淵が中央に立つ。彼等は儀式をするだろう、螺旋剣を遺骨を並べた場所に突き刺す。それは、王達のソウルを小さな糧として更に巨大な力へと変貌し、遂には世界を覆っていく。

それは、失われた灰の時代世界を襲った未曾有の大災害、火の時代の始まりだった。~




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第31話 太陽と陰

龍の書庫は非常に大きく複雑な構造をしていた。

だが、こんな場所にいるシース幽閉されているのと同じ事を、されているのに気が付いているのだろうか。

 

そこへウェルスとハベルノは降り立った。

不思議な事に兵士が出てくることもなく、まるで誘い込まれるように奥へ奥へと入っていく。

 

そして、途中二人は別れる事になる。

道が別れているのだ、一つは牢獄へと続いていた道。

もう一つはシースへと続く道。

少しづつであるが、外が騒がしくなってきていた。時間は無くなってきている。ウェルスは王との誓いにより死ぬことはしない。

逆にハベルは、シースを殺せるのならばこの身の犠牲も厭わないだろう。

そして、ウェルスは牢獄へと、ハベルはシースへと向かう。ここに、岩のようなハベルは死に、ハベルという亡者が幽閉されるだろう事が決定付けられる。たとえ神の種族であろうとも、王のソウルを持たない彼にシースを滅ぼすことは出来ない。

 

ウェルスは、嘗ての戦友の無事を祈りつつ更に奥へと進んでいく。牢獄、そこにはスキュラとなったもの達が収容され、それらは見れば明らかであるが手遅れとなっていた。

 

しかし、そんな中に小人と同じ姿をしたもの達がいた。

何と言うことだろうか、輪の都以外にダークソウルを身に纏うもの達がここにいるではないか。彼女等はウェルスに怯えた、今度こそスキュラにされるのではと。

 

ウェルスは言った。怖がらなくて良い、助けに来たと。

彼女等20数人、手に渡すものは嘗て儀式に使いし螺旋剣の破片。試作段階だったものを多くウェルスは、所持していた。龍狩りの名残を、そして彼女等とウェルスはとんだ。

長子と共に闘った最後の地、“山のような古龍”の地へ。

 

 

《アルヌス》

 

伊丹は目の前の光景に唖然とした。

先程まで、医務室があったであろう場所は綺麗に丸く縁取られ無くなっている。

 

確かあそこには今、黒川と栗林がいたはずだとそれを思い出し走り始める。

そこへ、何処から侵入したのか中世の鎧を纏った男と、目をティアラで覆った女性が現れた。

 

まるで、さも当然と言わんばかりに歩むその姿は何処かウェルスに似たものを感じる。

伊丹が彼を見ていたのを感じたのか、歩みを止めて言った。

 

「ちょっと話を付けてくるから、待っててねぇ!」

 

妙にハイテンションな存在、それが世界を救うとはこのときだれもが思わなかった。それどころか、どうしてか誰も奴の事を気にするものはいなかった。

それが通りすぎた後、伊丹の横にレレイが現れた。

 

「伊丹、絶対にあの人に着いてっちゃだめ。」

 

「あの人って今のか?」

 

静かに頷く。

 

「あれは、何者でも無い。余りにも色んなものが混ざりあって、最早あれ単体では収まりきらない。」

 

「どうして解るんだ。」

 

「ソウルが、見える。とてもとても、明るく、熱く、そして血のように紅い太陽のような。」

 

その後、伊丹等はアッシュとウェルスが何やら話をしているのをみていた、すると突如として彼等の姿が書き消え、建物も何もかもが無かったかのように、綺麗さっぱり元通りとなった。

いなくなった栗林以外を除いて…。

 

その後、栗林捜索のため小隊が結成される。そこにはバケツ頭と、玉ねぎ、そして一人の女騎士が嫌そうな顔をして並ぶ姿があった。

 

 

《帝都》

 

元老院大法廷にあつめられし元老達は、皇帝が我々に何を話すのかと今か今かと、待ち構えていた。

そこへ皇帝モルトと、ピニャ第三皇女が後を追って現れる。

 

本来であるならば、共にいるのはゾルザルでないとおかしいことだ。継承権の最も高い位置に存在していたのは、ゾルザル。つまり、後継者として皇帝と共にいなければならない存在が、すげ変わっているのだ。

 

では、ゾルザルがどうなっているかと言えば、非常におぞましいことに、血液が結晶化して人体を貫き死んでいたのだ。非公式にとどめられたが、まるで何かから逃げようとしたのだろうか。手を扉に掛ける寸前で息絶えていた。

皆口々に言った、『エルフの呪い』だと。(エルフの精霊魔術はソウルの使用を前提としているため、相手の体内のソウルを凝固、結晶化させることによりこのような事が可能。【結晶ソウルの活性】)

 

 

 

そんな事が起こり、ディアボは命欲しさにたまらず辞退。白羽の矢がたったのが、騎士団を率いていたピニャであった。

おしとやかな姫とは違い、自ら進んで事に当たる姿勢から民衆からの支持も厚く、なにより政務に関すればゾルザルよりも遥かに優れた才を持っていた。

 

皇帝が席に着き、声を発した。

 

「これより、私の後を継ぐこととなる時期皇帝、

ピニャ=コ・ラーダへの簡略的継承を行う。

突然となったが、現在我々は建国以来の強大な敵と戦いを行っており、私はその判断に失敗した。

私がこの戦争を始めた。

 

しかし、現在我々は無惨にも敗退し、今や敵がいつ本気を出すかによって国の命運が左右されている。

そこに当たって、敵国日本と友好的な関係を築いているピニャを皇帝に据え、私が一戦から身を引くことによりこの戦争に終止符を打とうと考えた。

 

これは、一種の賭けだ。敵が納得してくれなければ、何れはこの国は滅ぶだろう。だが、良いことに敵は非常に良心的だ、そこに付け入る隙は必ず存在する。

故に諸君等はピニャの、手となり脚となってほしい。

以上だ。ここからは、次期皇帝からの話となる。」

 

ピニャが前に出る。緊張した顔の反面、その足取りは確りとしたものであり彼女の覚悟がはかり知れた。

そして、彼女は言うであろう、帝国の今後を左右するものを。

 

モルトはそれを影でみながら、ほくそ笑んでいた。これで、自分がゾルザルのような死にかたをしなくても良くなったと。

それが誤りと解るのはいつになるだろうか。影はいつも、見ている。

 

《灰の大陸》~最初の火の炉~

 

そこに立つのはウェルス、アッシュ、火守女、グウィネヴィア(栗林)

四人は篝火を中心に座り、話を始めた。

向こうの世界の状況、闇霊、深淵の事を。

 

ウェルスは、ロンドールの死に残りが向こうに有る火を収奪することを考えていることを、アッシュへと通達し、アッシュはウェルスへ『向こうの火』と『こちらの火』の違いを伝えた。

 

そして、それぞれに補足をいれたのが、グウィネヴィアであり、火守女であった。

 

向こうの火継ぎは、初めグウィネヴィアが始めた。彼女は、強大な神話の生物に怯えるもの達が対抗できるようにと、深淵のシステムに独自の改良を加えそれを差し出した。

 

俗に言うプロメテウスの火、家具土の神等神話に登場する最初の火の原型であろう。

彼女は、深淵の記録の書き換えから、逃れる為にあの世界へと渡った事を話した。

 

ウェルスはとても信じられなかった。だが、愛するものが言うのならば真実なのかもしれない。

全ての元凶は自分自身だったのだと、だが彼女はそんな彼の心を見ているかのように、言った。

 

「あなたがあの怪物と契約しなければ、この世界は今でも古龍たちの世界のままだった」

 

ウェルスはそれを聞き、安心をしているがあの怪物の封印を解いたのは紛れもない自分自身であることに代わりはない。

幸いな事は、あの当時怪物自信もまた自分を失い、記憶に引っ張られていたことだろうか。

 

これによってウェルスのやるべき事は決まった。

彼は篝火から立ち上がり、徐に篝火に手を翳す。

 

「待ってください、闇の方。貴方に渡したいものがあります。」

 

「なんだ、火守女よ。」

 

「ルドレス様が古き時代に貴方に渡してほしいと、おっしゃっていた指輪です。きっとそれは、貴方の助けになるはず。」

 

「あやつめ、死してなお探求をやめていなかったか。

礼を言う。では、グウィネヴィア、そして火継ぎの王よ、行ってくる終わりを始めるために。」

 

そして、音もなく彼の姿は書き消えた。

 

「良かったのかな?彼に何も伝えなくて。」

 

「ええ、。あの方は、ウェルスは決して負けません。私が彼に言えることなど、最早何も無いのですから。

 

それよりも、この体を返さなくてはなりません。手伝って頂けますか?」

 

「ああ、勿論。その暁には、グウィネヴィアよ貴女のソウルが欲しいですな。」

 

「残念ですが、私のソウルは最早消えるのみ、武器等は到底造れませんよ。」

 

そして、彼女のソウルは燃え尽き、篝火の横で死んだように眠る栗林が存在していた。

 

「まったく、これだから古い時代の者たちは…。後始末大変だぞ。まあ、向こうの世界で火継ぎが始まっているのなら、行く意味はないか。」

 

アッシュは栗林を抱き上げ、歩き出す。祭事場へと。

 

 

 

《中国》

 

人が呑み込まれていく。酷くドロドロとしたものに呑み込まれ、跡形もなく消えていく。

ドロドロの中には無機物な巨人が立ち、降り注ぐ砲弾をもろともせずに前へ進んでいく。

 

ここ数日の間に戦況は一変した。澱みの中から這い出てきた巨大な石像達は、ありとあらゆる攻撃を退け防衛線へと進んでいった。

その防御力はいったい何処から来るのだろうか?

 

体は岩のようで、顔は無くそれはまるで物語に出てきそうな『ゴーレム』と言うのだろうか?

それによって一つ目の防衛線は破壊され、遂に澱みが漏れだした。

 

ゆっくりと確実に侵食していく、そして澱みの中から更に人に似た三メートル程のガリガリに痩せた、人々が歩き出す。

 

服はまるで古代ローマのようなそんな服を纏った、巨大なゾンビたち。

そして、それらとまったく違う人間サイズの頭が肥大化した、何か。それが群れのように外に出てくる。

 

ゾンビ達が何かを口ずさむと、青白い球体が放たれ、それが戦車を透過して内部の人間へ直接攻撃される。

硬い装甲も、強力な火器も最早意味をなさない。

 

一国のみでは防ぐことも出来ない。

彼の国は、決断した。世界に救援を求めて、全て嘘を交えて危機的状況と国連軍の派遣を要請するのだった。

 

国連は即決するだろう、彼の国の指導体勢を見直す見返りに軍の派遣を検討するだろう。

 

だが、それでもやつらの行軍は止まらないだろう。その術を知るものは、この世界では一握りの者しか知らないのだから。

 




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第32話 王の帰還

山のような古龍の亡骸の近くには、小さな村があった。そこには龍たちの矮小な末裔たる、蛇人達が隠れ住み神々の軍にいつ見つかるか、いつ見つかるか、そんな生活を送っていた。

 

そこへ、一人の騎士と数十人の小人?に似たもの達が、現れた。

神の尖兵か?そう思い覚悟を決め、いざ彼等と話をする。

 

騎士の見た目は、遥か昔から伝えられた龍狩りの小人の一人に酷似しており、まさかと思った。そう、小人が其ほど迄に長生きなものだろうか?

もしかすると、あの憎き火の王の内の一人。小人の王なのではないか?

 

「これはこれは、小人の民がこんな辺鄙な場所へどうしたのですか?」

 

そう聞けば、シースから逃げていると言うではないか。

あの裏切り者から、我等の最も蔑むシース。あれが裏切らなければ、我々は深淵の奴隷達に負けることはなかった。

 

「良いでしょう。ただし条件があります。あなた方の扱う、『ソウルの魔術』。それを我々にも教えていただきたい。」

 

それを小人の王は快諾した。余程後ろにいる『小人擬き』が気掛かりのようだな。

それから時が流れ我々は気付いてしまった、王が連れてきた者は、非常に長き時を生きると言うことを。

 

それはまるで我々と同じではないかと。次第に我々と彼等は近付き、文化が芽吹き建物も建築されていった。石や岩が多いこの土地特有の建物が。

そして、我々は神殿を造り『山のような古龍』を崇め奉り、小人達はウェルスと名乗った王を中心に生活を送っり魔術は彼のウーラシールに勝るとも劣らぬ程に発展した。

 

小人達は山に生活するもの達は黒く、森に住み着く者たちは白く互いに特色が出始め、我々蛇人の中にも差異が現れ始めていたころ。

小人の王は、何かを思い出したかのように何処かへと旅立っていった。

 

 

《アルヌス》

 

消息不明となった栗林を探し、数週間の時が流れた。多くの町を訪れ痕跡を探すも見つかることは無し。

このまま、見付からないのではないかと、誰もが思ったとき3人の騎士が現れた。

 

一人はアリスと言う自衛隊と面識がある、とても利発そうな女騎士。そして、いつも彼女が連れている玉ねぎ鎧の巨大な剣を、肩に担いだ騎士。

ただ、一人だけ面識がない者がいた。

 

バケツヘルムに太陽の絵が描かれた鎧を纏った、かなり肉体的に優れた人物、名をアストラのソラールと言う。それらが、協力を買って出た。

 

なんと、あの日見た女性の事をソラールと言う人物は知っていると言う。そして、もしもその存在が行くとすれば、きっと灰の大陸であろうと。

 

その根拠を問いただすと、彼等の故郷だからだそうな。そして、重要な会話をする場合あそこほど安全な場所は無いとも。少ない情報の中でも、行き場所の検討が付くだけ御の字でたろうか?

 

捜索隊はただちに物資の集積を行い、命令を今か今かと待っていると、遂にその時が来た。

と、そこで出されたものは拍子抜け、期待はずれなものであった。

捜索を中止する。本部は乗り気であった筈なのだが、政府が横やりを入れてきた。何事かと問い詰めるであろうが、答えは非常に早く帰って来た。

 

『中国が得たいの知れない物体に侵食されている。』

 

事態は一刻を争う、そう遂に深淵が本格的に世界へと伸び始めていた。特地にいる者たちには、現在地球で何が起こっているのか、把握することは難しい。

 

勿論インターネット回線が繋がっている事から、ある程度の知識は入ってくるだろうが、それでも一般的な事が大半であろう。

 

深淵については、通常一般的には知られていない。最悪の場合、パニックが起こり手がつけられない状況を、国連が恐れたからだ。

 

しかし、それでも対応早く、国連は各国に呼び掛け軍の出動を強制している。そこに白羽の矢が立ったのが、日本国自衛隊だ。

軍ではないと言う建前は最早通じない、そんな相手からの拒否不可能な命令を何とか引き延ばし、今こうして特地から戦力を戻そうとしている。

 

それに、栗林の捜索が天秤に掛けられたのだ。

一人より多くの命を取るは、国家の務め。それ以上に答えは無かった。そこへ、二人の奇妙な騎士が乱入してきた。

 

周囲はそれを咎めることもせず、彼等が入るのを見ていた。

「失礼するが、貴公等の国が大事に見回れているの事実であろうが、些か性急過ぎると俺は思う。

本来我々俺たち身内が片付けなければならない問題だが、貴公等の仲間を連れ去っていったのは紛れもない事実。

どうか、このソラールに免じて捜索を続行してもらえないだろうか、これは俺たちの罪滅ぼしでもある。

それに、俺はアイツ。上級騎士の男に聞かなければならない事があるのだ。どうか、どうか…。」

 

彼の言葉で、捜索の続行は決められたが、それでも自衛隊の撤退迄の間の話し、時間は余りにも少ない筈だった。

 

 

~数日後~

 

アルヌスに激戦が走った。レーダーが巨大な機影を探知、急ぎ迎撃体勢に入った。

F4をスクランブルさせ、周囲の住民には念のための避難を呼び掛けた。

 

暫くするとF4から通信が入る。どうやら、ウェルスが龍に跨がっているのが見えたと言う。

先に、栗林を連れ去った人物であるから、警戒はそのままに誘導するよう命令した。

 

するとどうだろうか、それに答えて着いてくるではないか。

そして、有視界距離まで近づいて見えたのは、炎龍よりも2回り程大きい龍である。

 

陣地からは少し離れた所へ、着陸し龍から降りてくる奴に全員一斉に銃を構え万が一が起きた場合は、射殺するよう出ていた。

 

そこへ伊丹が足を運ぶ、結局のところ捜索など出来ずに延々として終わらない会議でお茶を濁されていた。

 

「おい、栗林をどこへやった!!」

 

「彼女は今、灰の大陸にいる。彼女のためだ、あのままでは肉体の方がソウルに耐えられずに、何れは死んでしまう。ならいっそのこと、分離させるのが一番だ。」

 

「お前なぁ、一言ぐらい言えよ。だいたいいつも何か足りないんだよ。それで?あんたは何でここに帰ってきたんだ。」

 

「約束をいや、古い誓約を破棄しに君たちの世界へ行くために来た。君たちの世界を救うために、私の時代に終止符を打つために。」

 

その瞳には、珍しくも闘志が宿り何より覚悟の顔をしていた。

だが、その前にちゃんと入国手続きをすると言うことと、栗林の居場所を懇切丁寧に説明していた。

 

ウェルスには監視が付くが、彼に付いてこれるものは果たしていないだろう。

 

「古龍の末裔よ、暫くこのゲートの側を見ていてくれ、もしもがあった場合ゲートを壊すのだ。そうすれば、この世界に再び奴が現れるまで、しばし時間を稼ぐことが出きる。良いな?」

 

彼が日本に渡る時、龍に何かを語り掛けていたのをレレイだけが知ることが出来た。

そして、彼女は龍と対話をするために『奇跡』を覚えようと覚悟に決めた。

 

 

 

《中国》

 

現在深淵は広がり続け、南は雲南省北部・東は湖北省・北は甘粛省・西は西海省西部まで侵食が進んでいる。

斜面が多いチベット方面へは、今のところ進んでおらず海等の低地へ向けて進行中である。

進行がかなりの速度で進んでいるため、現在国連軍が終結中であるため、チマチマと遅滞戦闘を行いつつ解放軍が後退している。

 

最終防衛線は、雲南省南部から北京にかけ弓なりに、冷戦時の遺産、『ブルーピーコック』を現代の技術で正常に作動するようにしたものを、埋設する。

いわゆる核地雷戦術と言えるものだ。

 

なりふり構っていられない、焦りが世界中に蔓延しつつある。もしも、ここで止められなければ世界にこの事が伝わりパニックになるに違いない。

そうなる前に、どうにかしようという努力の賜物だ。

もし、地雷が作動しても後々何とでも言えるのがこの世界だ。

だが、それは戦線を支える者たちの話。

 

そこには村があった。

見捨てられた村はただ呑み込まれるのを待つばかりか、化け物が侵入し、村人を捕食していくかと思えば連れ去るものもいる。

 

そして、それは子供に手を掛けようとしたが…、それは躊躇し片腕に担いだ大剣を地面に突き刺し、村を襲っていた他の化け物に襲いかかる。

 

その動きは他の化け物のそれとは余りにも違い、理性を伴った怪物に対する剣劇をもってして村を救った。

それは三角の頭をし、右手に大剣を左手に短刀を携え外装に身を包み、自分達が来た方向へと向かって走り始める。

 

一人、また一人と人数が増えその数は百を越える。一様に同じ服装をしているが、若干の差異があり杖を持つものや、『火』を手に宿すものもいる。

 

彼等が目指す先には、彼等を再び産み出した深淵がいる。彼等が何を成そうとしているかは、彼等にしかわからないか?あるいはウェルスにはわかるだろう。

 

 

《灰色の世界・欧州》

 

宇右衛門とスコーラーは慣れない欧州の地で、迷っていた。余りにも似たような景色が続き、もうどちらから来たのか忘れてしまうほどに。

そんな中でも宇右衛門はとても呑気で、スコーラーが心折れそうになったとき、必ず支えてくれる善き相棒とでも言えるものだった。

 

「ウムウムウムウム」

 

「何がウムウムだ、どうせ文字が読めないのだろう?地図位は読めるようになろう。俺がお前に教えてやるが?ちなみにだが、ここは北ヨーロッパ平地のど真ん中、国に例えればドイツ西北と言ったところか?」

 

「いや~忝ない、某このような事には疎くてなぁ。戦いの事には自信があるのだが、お主がいなかったらまた何百年と、放浪せねばならなかった。」

 

欧州の土地柄故に、地平線を歩き何もない土地をただただ二人は歩く。この地には亡者がいない。鳥も虫も本当に何もいないのだ。

漂白されたシャツの如く、生き物が根こそぎ消されたようだ。

 

そんな土地にいきなり建物が現れた。

城というには余りにも平坦すぎる、どちらかと言えば宮殿と行った方が良い建物だ。(まるでベルサイユ宮殿)

 

二人はその中へと入り、内部を探索する。

最奥部には椅子があり、そこにはミイラが座っていた。区もなくそのミイラから、ソウルを回収する。

 

「なあ、宇右衛門。本当に火継ぎの試練なんだよな。これじゃあ試練の意味なんて何も無いんじゃないか?」

 

「某も、そう思っているのだが何せ神々の考えていた事だからな。分からぬ、それよりも先程から我等を見ているものよ、そろそろ出てきてはどうか?」

 

柱を見ているとビックハットを被った老女が現れた。

その足取りは年齢を感じるものでなく、若々しい足取りに疑問を感じるものだ。

 

「そう刺々しい目で見でない。どうせ私と同じ火継ぎの贄であろう?」

 

「いいや、我等は自らの意思でここにいる。某、宇右衛門申す武士をやっている。こちっはスコーラー、学者だ。」

 

「ふん、私はエルヴィラ。スペインで魔女と言われた女だよ。まったくあんな方法で殺られるとはね。」

 

3人は意外と直ぐに打ち解けた、というのもこの世界には意識が有るものはほとんどいないのだから、正気を保つのはこの方法が一番だからだ。

 

3人は宮殿を出で、一路インダスの方へ向け歩き始めた。因に宇右衛門は、ロシア方面を通って来たそうだ。南の方は密林が多過ぎて、進めなかったと言う。

 

一人では無理でも、3人なら行けるのだろうか?

 

「ところで、エルヴィラ。君はなぜ魔女と呼ばれたんだい?」

 

「私はハンニバルを信仰していたら、バール信仰として連行されたのさ、まったく馬鹿な連中だったよ、文字にしか書かれていない神なんか信じるから。」

 

その言葉に対して宇右衛門は、苦笑いしつつ歩いていく。火継ぎは、果たして何なのだろうか?

 




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第33話 深淵の監視者

設定にウェルスの盾、と
『火の亡霊』を追加


ウェルスは古龍の頂を離れ、一人小ロンドを訪れていた。かつて、アルトリウスと共に封印した筈の地に、異変が起きていることを察知しての事だ。

 

到着してウェルスは、驚愕した。小ロンドが水底から現れ、かつての面影を残した残骸となってそこにあるのだ。いったい誰が封印を解いたのか、彼は気になった。

 

始めは、神々の誰かが封印を解いたと考えたが、神々にとって毒でしかない深淵を果たして解き放つだろうか?

そこで彼は思い出した、ウーラシールにかつて現れた、未来の不死人の事を。

 

まさか奴が解いたのだろうか、一体何のためにそして再び始まりの火が弱まることを知っていた彼は、ある回答にたどり着く。

薪になるために王のソウルを欲しているのか、と。

しかし、例え王のソウルを集めたからと言ってその力を我が物に出来るとは限らない。

薪と王のソウルは全く関係の無いものだ。何かに唆されているとしか考えられないが、かと言って深淵に浸されたまま放置した場合、その力が無くなる可能性だって有るわけだ。それを危惧したか?

 

兎も角ウェルスは真相を掴むために、小ロンドへと向かおうと立ち上がった時、ふと何者かが近付いて来たのを感じた。非常に懐かしい、あの時感じた不死の香りを醸し出す、上級騎士の鎧を纏った男が現れた。

 

「何をするために、王のソウルを集めているか知らぬが、そこまでして集めたいのか?名すら忘れた不死人よ。」

 

「……。」

 

「話す事すら忘れたか?」

 

無言で立ち尽くす騎士は、突如として駆け出した。ウェルスへ向け、クレイモアを叩き付けるもそれを瞬時に展開した盾により受け流され、パリィを強制的に行われた。

 

それにより体を剣で串刺しにされ、黒炎により焼き付くされた。体は最早存在しない。

だが、その数分後また彼は現れた。まるで諦める気配が見えない。

 

何度も何度も殺されても、決して折れる事はなくむしろ技術力が少しずつ向上していく。ウェルスは楽しくなった、久々に鍛え甲斐のある奴が現れたと。

最早ウェルスには、小ロンドの事などどうでもよくなっていた。むしろ目の前のこいつを鍛え上げることが、何より必要な事だと心の底から感じていた。

 

そして、もし自分に一太刀入れることが出来たなら、彼に深淵に対する指輪を授けようと考えていた。

それが、彼に対する試練だと思いに秘めて。

 

 

 

《中国・ある前線》ある兵士

 

目の前で殺戮が繰り広げられている。

俺たちは一体何のためにここにいるのだろうか、奴らの生け贄?それとも単なる餌か?俺はもう帰りたい、故郷に帰って家族と共に飯を食いたい。

何故だろうか、自然と涙が溢れてくる。

 

怪物には銃も砲も効果がない。まるで、何か目に見えない力によって守られているかのように、進んでくる…。

今も目の前に進んできた。この塹壕の中、うっそりとした巨大な体を動かして真っ直ぐに。

あぁ、俺の人生も終わりなのかもしれない。

 

そう思ったとき、何かが横を通りすぎて怪物に向かっていった。

向かってものに目を見やると、何と言うことだろう人形の敵が、ゴーレムのような敵と戦っている。

 

仲間割れか?そう思い辺りを見回すと、何と同じ服装をしたもの達が連中と戦っているではないか。

その動きは獣の如く荒々しく、または青白く輝く何かを杖から投影し、それがゴーレムに当たると何と攻撃が通じるのだ。

 

夢を見ているようだった、今まで俺達が殺っていたことを悉く否定された気分だ。

どうして、あんな剣で戦っているのに俺達の銃砲よりも敵を殺せるのだろうか?

 

終止目の前の光景に呆然としていた、そうしていたら分隊長が駆け足できて、反撃の合図だと言う。皆武器は弾の切れた自動歩槍に銃剣を付け、突撃を開始するのだと。我等は彼等に続くのだと。

ふざけるな、あんなの人間の動きじゃない、獣かそういう類いの化け物の動きだろ!

 

俺は敵前逃亡した、あの後突撃した部隊は壊滅したそうだ。

どうやらあの剣士達は俺達の国事、あれを掃除するのでは無いだろうか?そう考えるのが妥当かもしれない、何はともあれ、家族を率いて少しでも早く国外に逃亡しなければ。

 

 

 

《アルヌス》

 

ウェルスが帰還してから数日が経とうとしていた、未だに入国の許可は降りずにいる。彼はイライラすることもなく、ただただ黙って椅子に座り続けている。

 

何も口にすることすらなく、その姿はまるで石像のようであった。

そんな彼とは対称的に、伊丹達は栗林のいる灰の大陸への行き方を模索していた。

 

始めはC1による空輸も考えられたが、機体の航続距離の関係によりそこまで行って帰ってくることは出来ない。何よりも、灰の大陸は空気が灰に犯されていると言われている。そのため、エンジン事態にも吸入されることから、確実に停止する恐れがあるのだ。

そのため、人間が活動する場合は、粉塵マスク等の防護も必要となってくることだろう。

 

再編成された救出隊の面々がそれぞれ行き方を考えているとき、

 

「ウ~ム、ウ~ムムムム。おお、さっぱり思い付かぬウ~ム。」

 

「ああ、太陽よ俺に答えを授けてくれないだろうか、あの距離を移動する方策を俺に授けたまえ!」

 

ジークとソラールも座りながら、太陽礼拝をしながら考えを模索していた。

 

そんな彼等に天恵が舞い降りる。いや、連れてこられちゃった女騎士アリスが、提案をした。

 

「ねえ、あなた達が使ってるその篝火?って転送とか出来るのよね?だったらそれで言ったらどうなの?一瞬で行けるんでしょ?」

 

「いや、しかし物資はどうするのだ。我等は兎も角、貴公等は食べ物飲み物がなければ、死んでしまうぞ?」

 

「だからさ、あなた達のソウル?の業で運んでいけない?結構入るんでしょ?」

 

ソラールとジークがそれを聞き向かい合う。そして

『それで行こう!』と言うことになり、特地以外の人間初となる空間転移を行うこととなる。

 

救出隊へと連絡を取り、本部から帰還までの日数が一週間と限定された。

そして、伊丹を初めとした偵察隊の面々が揃い、ジークバルド・ソラール。そして、アリスそれぞれが篝火に手をかざし、そして辺りに霧が立ち込めそれが晴れたとき、周囲には灰の大地と、静かに埋もれながらも佇む巨城『アノールロンド』が聳えていた。

 

「アノールロンドか…。まさかここに再び来ることになるとは。かつての煌めきも、灰に埋もれるか…。」

 

「オオ、ここがかの神話の国、アノールロンドか。遠くから見たことはあったが、ここまで近くに来るのは始めてだな。」

 

「それで、『祭事場』って言うのはどこにあるんだ?」

 

「いや、地図を見ても仕方がない。なにせ、ここは時空が歪んだ場所だからな。」

伊丹が渋い顔をしているなか、レレイだけは冷静にあるものの気配を感じた。

 

「これ篝火が一つに繋がってる場所があるけど、ここのはパスが切れてる?」

 

「ウ~ム、どうやら別の場所へ行かなくてはならないようだ。それよりも、どうやらあれらに見つかったようだな。」

 

「そのようだ。伊丹殿、ソラール殿に付いて先に行っていてほしい。俺は『火の亡霊』を相手にしなければならないのでな。貴公等では、ソウルの削り合いでは足手まといになってしまう。良いな。」

 

バルドが城の方へ剣を構えると、錆びた銀色の鎧が向かってくる。それを合図に、ソラールは皆を誘導して行く。かつて、最初の火継ぎのとき駆けずり回った地、覚えていない筈もない。そして欠かさず七色石を道なりに落として、行くのであった。

 

 

そこは、記されざる神話の大地。全てが終わった世界。彼等を待っているのは希望か?絶望か。時間の狂った世界は、今なお、そこに存在していた。不死人は再びその地を歩み、一人の女性を受け取りに行く。その道はかつての巡礼の道出会った。

 

奇しくも、彼等が翔んだときと同時刻ウェルスは、特地からの援軍として地球世界に入場していった。自らを取り戻すため、無意識にも監視していたものを再び封じ込めるため、彼は旅立つ。

 

 

《灰色の世界》

 

3人は歩く東へ向けただひたすらに、道中に出くわすのは基本的に亡者たち、たまに野犬や牛等に出くわすがそれらすら彼等を襲う。

皆一様に干からびていることから、何かを獲ようと襲ってきていると、スーコラーは考えた。

 

武士はそんな事どうでも良いと、言いつつ食べ物になるものを片っ端から探していく。どうも、飯を食わなくて良くなったはずなのに、彼は執拗に飯を食べようとする。まるで、何かに怯えているかのように。

 

魔女はそんな二人を見て、まだまだこの世界にも面白い奴らが生きていたのか、と感心すると共に彼等のような者がこの世界には稀だと知っているため、容易に喜ぶことは出来なかった。

 

そして彼等はインドに到達する。彼等はそこで異様なものを見ることとなった。

なんと、あの亡者達が皆一様に座禅を組んで固まっていいるのだ。それになにやらブツブツと、唱えている。

 

いったいどうしたのか、何を思ったのか宇右衛門は亡者等に話しかけていた。

 

「貴公等は、なぜそのように座禅を組んでいるのか。それほどまでに、何を得ようとする。」

 

すると、全員が答えた。

 

『我等は至らなければならない。至って、この無限の地獄から抜け出さなくては、でなければ我々はあれらと同じとなる。故に故に故に……。』

 

後はこの繰り返しだ、壊れたスピーカーのように同じ事を延々と繰り返す。

暫く進むと、開けた場所大きな河の畔に付きそこにも、同じく亡者等がいた。

 

しかし、先程のものたちとは違い皆安らかな顔で死んでいる。どうやら甦る事はないようだ。

その中心に、一人の僧がいた。彼はただ一人で歩み、輩を侍らすこともなく、座禅を組み瞑想している。

 

3人は身構えた、その気配は尋常のものではない。かつて争ったエジプトのものと、同じ、いやそれよりも遥かに『偉大』な気配がそのものからは溢れている。

 

「何者かは解っている。まぁ、そこに立っていないで少し話でもどうかな?…自己紹介がまだだったね、私はシッダルタというしがない修行僧だ。」

 

この一体で最も強力なソウルの持ち主との対話が始まる。

 

そんな彼等を見る、白い影があった。

 




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第34話 巡礼

ウェルスと騎士の戦いは、一方的な終わりかたをしてきた。ウェルスが圧倒し、騎士はなす術なく力にねじ伏せられる。

例えどんなに攻撃をとしても、それを逆手に取られ拳で潰される。

頭を握り潰されたり、剣で頭から尻まで両断されたり。様々な殺され方をしているが、この不死は諦めることを知らないのかいつまでも戦いをしようとする。

 

ウェルスは嬉しくなって、しまいには声を大にして剣術指南をしていた。今まで異形とばかり戦ってきたのであろう、その剣術は余りにも大振りで隙が大きく、対人には不向きで、もしもオーンスタインやダークレイス等と出くわせば返り討ちに会うのが目に見えている。

ならばと、自らの全てをこの諦めぬ者に叩き込んでいる。ウェルス自信何故自分がここまで彼に肩入れいているのかわからない、だが一つだけ言えることは、他の不死とはまるで違う何かを持っていると感じていた。

 

時が流れるのは早く、瞬く間に流れ順調に騎士は強化されていった。そして、ウェルスは有るものを渡すことを決意する。

 

「そこで止まれ、今まで自己紹介をしたことがなかったな。私の名は、ウェルス古い小人だ。お前の名はなんと言う。」

 

「……、俺の名は…。わからない、俺は名前すら忘れた。」

 

少しの間相法沈黙していたが、ふと何を思ったのかウェルスが言った。

 

「名が無いか、なら私がお前に名を与えよう。お前の名は、エスペランザと名乗るが良い。気に入らないなら捨てても良い、それとこれをお前にやろう。」

 

手に現れたものは一つの指輪、それは深淵歩きの伝承に現れる指輪と同じ形をしたもの。

 

「何故これをお前が持っている」

 

「昔貴公と同じように稽古を付けたことがある。まあ、あやつの方が貴公よりも遥かに腕は良かったが、だが貴公はあやつに無いものがある。」

 

不死は首をかしげた、最早亡者に近いものにあってアルトリウスに無いものがあろうものだろうか?

 

「それは、折れない信念だ。さあ、行けそれをもって我等が成し遂げられなかった事を果たせ。私が言っても奴等は姿を表さないからな。」

 

不死は指輪を受けとると、一目散に小ロンドへと入っていく。その背中を我が子のように見るウェルスがそこにいた。

 

そして、ウェルスは帰路に着く未だ不安の残る、山のような古龍の街へ。

 

 

《灰の大陸・アノールロンド》

 

ソラール先導の元、城?の中を走り続ける。城と呼ぶには余りにも巨大なそこは、まるでそこ一つが小国家とでも言える程の規模を一瞬見ただけで抱ける。

灰に被ったその全容を伺い知る事は不可能に近く、いったいどれ程の時が流れればこうもなるのだろうか。

 

その中を走っているにも関わらず、ソラールの足は止まることは愚か迷う事もしない。かって知ったるもの同然に彼は進んでいる。

 

「おい!バルドさん置いてって良いのかよ!」

 

「ああ!彼の者があの程度の燃え滓に遅れを取るのならば、巨人の友となり得ない!故に心配するな!バルドは、必ず来る!」

 

走りながらも、回廊を巡り何とか目的地にたどり着いたのであろう、彼の足はピタリと止まり一ヶ所に篝火を灯し始めた。

 

「この部屋ならば安全だろう。巡回も最早存在していないようだからな。それよりも、ロウリィ殿俺が何故飛び降りるのを止めたか、今見せよう。」

 

ロウリィは、途中ショートカットを行おうと建物から建物へと移ろうとした、それを彼が止めたのだ。そして、彼は近くに有った遺体を手に取るや、建物の外へと投げ捨てる。

するとどうだろうか、遺体は直ぐに灰のようにバラバラになり消滅してしまった。

 

「これがこの地、性格には巡礼地のルールだ。俺の指定する場所以外には行ってはならない、例外無くああなる。つまりは、ここは広く見えるが実はとても狭いのだ。まあ、俺もだいぶ死んだからなだからこそ言えることだ。」

 

「だったら出方もわかってるんじゃないのか?」

 

「そう焦るな。焦っては進むことも出来ずに、あの死体のようになるだけだ。」

 

そんな形で部屋に立て込もっている。見れば、古いが良くできた調度品の数々が置いてある、何れも此れも美しい。大きさを除けば。

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいのだけど、ここにいた人たちってあの古ぼけた騎士みたいにぃ、とても身長が大きかったの?」

 

「うむ、それは『オオ、やっと到着した。まったく、私はこの国の地理に疎いのを知っているだろう?』神が住んでいた国だったからだ。」

 

バルドが到着すると同時に、安堵の空気が流れた。心配する余裕が彼等にはまだあると言うことだ。

それに引き換えソラールは、少し淡白だ。なれているのだろう、結局来れなくても不死ならば何れは到達できる。

 

「神の住んでた国って、私たちの伝承にある国の事ですか?」

 

「概ねそうだな。さて、バルドが到着したことだ急ごう。」

 

「少しは休憩させてくれても良いのではないか?」

 

「その程度で疲れるものではないだろう?かつて放浪の旅の果てに、巨人と手を取り合う程の猛者がその程度では。」

 

「ウム、そうか。貴公もかなりの実力者、太陽の騎士ソラール。その名はかつて、太陽の長子を崇拝するものたちに知れ渡る程の者であったな。そんな貴公が、余裕を見せないとは余程この地は恐ろしいものであったのだな。」

 

納得する二人を横目に周囲は置いていかれる。

されど、出発はするのだから身体が置いていかれる事はなく、古い話に花が咲く。

 

途中に現れる火の亡霊達を薙ぎつつも、歩みを止めることはない。ただ、それが続くわけもなく最初に音を上げたのはレレイだった。

例外も糞もなくただ、スタミナが足りないのは歳相応のものだろう、他のものよりかは遥かに優秀であるはずだ。

 

「ねぇ、レレイ大丈夫?ちょっと叔父さんたち急ぎすぎだよ!」

 

「おお、すまないな。だが、ここでは空間は愚か時間すらねじ曲がる。急がねば、最初の火の炉へは到達できぬ。幸いな事に、この場所はソラール殿が見知った場所だそうだ。もし、無理ならば私がおぶって行こう。」

 

そして、また進み出す。すると途端に開けた場所が見え、ソラールはそこを見たと同時に頭を抱えた。

 

「まさか、螺旋階段と書庫が無くなっているとは…。どうして、下に降りようか。」

 

そうして立ち往生してしまった。ヘリや航空機もなく、デーモンももういない、万事休すかと思われたその時。

 

「ヘッヘッヘ、困ってるようだなあんたら。」

 

突如として声が響いた。気が付くと、剥げたおっさんが蹲踞をしながら笑っていた。

 

「俺は不屈のパッチ、道案内してやろうか?」

 

どうにも胡散臭い奴がいた。

 

 

《日本》

 

伊丹等が旅立ってから一週間の時が流れている。だが、ゲートの向こう側から、本国へは通達することは無く、ただ来たものは遠征から帰って来た者達と、援軍と言う名のあのウェルスとか言う男だけ。

だが、不確かな情報をその時の内閣は信じた、そのウェルスと言う男だけが、全ての鍵を握っていると言う自衛隊からの情報を。

 

俄には信じがたいものが、こちらの世界にも起こっているのだから信じる他無い。

 

狭間陸将はこんな事態になる前から、ウェルスと交友を続けていた。

ウェルスが、再び日本に赴く前に彼へ話をしに来た。

 

内密な話を、それは不安を打ち明けるものであった。深淵と言う存在、それに対する自らの行った契約、それらを行う経緯を自らが記憶していないという事。

それによる自らの深淵に対する理解の不足、そしてかつてあれを封印した時他に三人の王が存在していたと言う事実。そして、契約により封印を解いたのであろうことを。

 

三人とは恐らくはウェルスの語る、神話の神だろう事は狭間は予測できた。そして、神話に語られない小人こそがウェルスだろう。それを、狭間は薄々とではあるが感じていた。

 

そして、そんな話を知らない内閣はウェルスに全てを押し付けようとする。自衛隊のPKFによる派遣。いや、前代未聞の国際レベルによる災害派遣特別法が確立される。兵器は最新の物を惜しげもなく注ぎ込む。

それは、人類の存亡を駆けるものだからだろうか?

そんな中でも、核地雷までの距離は狭まって行っているのだろう。

 

 

《灰色の世界》

シッダルタと名乗る修行僧は、三人と対面し共に足を組んで話を始めた。この世界の事と役割を。

 

「君たちは火継ぎをするためにここまで来たのかな?」

 

3人は肯定する。最も魔術師エルヴィラは、否定も含んでいたが興味はあったのだろう。この賢者のような男の話を。

 

「ここは古い時代、この世界へやって来た神が保険として作り出した世界だ。故にここにある文明は、まだ神に対する信仰が根強い時代のままの姿をしている。

そして、この時を操る所業を行いし神々は自らを贄として、火継ぎを行った。この灰色の世界を保つために。」

 

宇右衛門は聞いたでは、なぜ我々が火継ぎを行わねばならないのか。火が消えるとは何なのかと。

 

「我々が本来火継ぎを行う必要はない。あくまでもここにいるものたち、私を含めたものは保険のようなものだ。我々の太陽は星だ。

即ち、寿命あるものの燃え付けきるまでそれはそれは、永い年月が必要となる。そこの、探検家?学者もそれをよく知っているだろう?」

 

スコーラーは肯定した。だが、古代インドの服を纏った人物がその事を知っていることに違和感を禁じ得なかったが。

 

「だから、その為に火継ぎをするのではない。ここは牢獄だ。有るものを閉じ込め、この世界の消滅と共にそれを抹殺するための。それは、暗く重く全てを飲み込む。故に神ですらいや、神だからこそそれを殺そうとした。

そう、この灰色の保険の世界を一時的に保つためだけに、火継ぎを行う。全てはそれを殺すためだけに。」

 

3人は訳がわからなかったが、ただ一つわかることがあった。こいつは、火継ぎを行おうとしたのだと言うことを。

 

 




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第35話 火の魔術

ウェルスが山のような古龍の街へと帰ってから幾年の年月が流れた。

その間にますます始まりの火は陰り、小人達の国には不死が蔓延し、いよいよ世界が終わるのでは?と囁かれ出していた。

 

そんな中、突如として世界に再び火が灯る。

小人達の国は今頃歓喜に満ちていることだろう、これで世界は救われたと何もしていない神々に感謝を捧げるのだろう。なんとも虚しいものではないか?だって火を継いだのは、薪となったのは自分達と同じ小人なのだと、それに気が付くこともなく神の手柄となる。

 

ウェルスは感じていた、あぁきっとアイツが火を継いだに違いないと。アイツ以外はあり得ないと思うほどに、あの不死人は使命に生きていた。それと同時にこれは延命にすぎないと、考えていた。

 

例えどんなに強いソウルを持ったものが薪となろうとも、結局消えようとする火を止めることは出来ない。無限に湧き出す燃料などこの世には存在しない。

例えソウルで有ったとしても、星の力が世界が終わればそれも無に帰す。

 

それを何処で知ったか、ウェルスは胸に刻んでいたどこか遠い場所で学んだ、そんな気がするものが。

それでも、彼は助けたもの達を立派な者へと育て上げるため、日々この街を発展させることだろう。

 

年月が立てば人工も増え、文化が形成される。この街は街と呼ぶには余りにも大きく、最早国と呼べる代物であろう。そして、いつしかこの国は古龍信仰の元その中心的な国家として、名を刻まれ始めた。

 

多くの国が勃興するなか、この国だけは長らく繁栄し神々ですら手出しが出来ぬものとなった。

いや、神々の力が衰え始めていたと行った方が良いのかもしれない。

 

そんな時、2人の青年がこの土地を訪れた。2人の名をディールと言う。

彼等は何かを求めにこの地にやって来た、そしてその二人はウェルスと話をすることを望んでいた。

 

運命だったのだろうか、街を忍で散策していたウェルスと二人が出会うという、摩訶不思議な現象が起こったのだ。そして、ウェルスは探求者の二人に何を感じたのだろうか?

 

《ロードラン》

 

パッチ、この胡散臭いという言葉が余りにも似合う、禿げ頭をした人物が今目の前にいる。

伊丹やロウリィ等の新しい者たちには余りにも馴染みが無いが、ソラールとバルドには嫌というほどそれはあった。

手始めにソラールは、パッチに直剣を向け質問した。

 

「貴公まさか、未だに生きているとは思わなんだ。にしても貴公はどれ程の間、この大陸にいたのだ?」

 

「へへ、そんなことはどうでも良いだろぅ?それよりも、出口に案内してやるってんだ、着いてこないのか?」

 

そう切り返すが、どうも怪しげな匂いがプンプンとする。ソラールとバルドが、真剣にこいつに警戒しているのはきっと何か有ったのだと、周囲は思考する。

 

「おいおい、今回は特別に罠何か無いぜ?唯一行ける方法を俺だけが知ってるんだ、教えてやらねぇぞ?」

 

「ウ~ム、わかった貴公を信じることとしよう。何、かつての事は水には流せぬが、こういう時は助け合うことこそ重要であるからな。」

 

そうと決まると行動は早かった、パッチの先導のもと螺旋階段が有ったであろう場所までたどり着く。

そこには一見すると何もないが、まあ本当に何もないのだがパッチは言った。

 

「ここから飛び降りろ、何死にはしないさ。下に衝撃吸収の魔術が描かれているからな。じゃあ案内はこれにて終了、そう言うことだ。じゃあな!」

 

「おい、待てよ。」

 

パッチは声に振り向いた。

 

「なんです?何か御用でも?」

 

「色んな人から話を聞いたんだが、あんた結構人を罠に嵌めたりするそうだな。今回もそうかもしれない、だから俺たちと一緒に来てもらう。」

 

「それは無理な相談ですね!」

 

パッチは懐から骨片を取り出すと、それを握りつぶし煙に消えた。

残された者たちはどうするか考えようとするが、ソラールが口を挟んだ。

 

「俺が先に行こう。何、不死は死んでも篝火で復活できる偵察にはうってつけだもし、降りられることを確認できたなら、雷の槍を打ち上げる。心配せんでも良い。では、バルド殿先に行くぞ!」

 

勢い良く彼は灰の積もった下層へと飛び降りる、時間にして数分経った頃だろう、雷が下から打ち上げられてきた。ただ、その本数は1本だけではない。角度もまちまちだ、何かと戦っているのかもしれない。

 

危険だと判断し下に降りるのを断念しようとした時、来た道から多くの鎧が軋む音が聞こえる、後戻りは出来ない、前に進む以外に方法はない。

そして、彼等は飛び降りるいったいその下には、何が待ち構えているのだろうか?

 

 

《中国》

 

今もなお火線が飛び交い、必死にドロドロが進むのを食い止めようと抵抗している。

国連軍は総力を結集しているが、如何せん銃弾の効き辛い相手であるため止めるのは容易ではない。

 

防衛戦はかつての欧州の塹壕線の様に、ずらっと並び更にそれらを強固なコンクリートで固められた

所謂『要塞』と呼べるものとなった。

 

原始的な敵に対する回答はミサイルよりも、砲弾の方が有効である。

平射用の速射砲が据え付けられ、ミサイルは撤去された。

 

周囲は殺気立ち、野戦病院には肉体が崩壊し、異形となった遺体が並ぶ。

時折精神が壊れたものが騒ぎをお越し、それを銃殺するものもいる。

そんな所に自衛隊は派遣された。そして、それにはウェルスが着いてきていた。

ウェルスは野戦病院内の異形と化した者たちを見るや、一目散に最前線へと赴こうとした。それを自衛官たちが制止する、『何処へ行くのか。死にに行くばかりだぞ』と。

 

だが、ウェルスには確信があったこの異形の現象は予想通り深淵によるものであると、であるならば対処は自ずとわかるもの。

 

深淵の弱点であったもの、『最初の火』その力の一端。

大多数を相手にするならば、彼女の力を使うのが最も早い。

そう考えていた彼は、自衛官を振りほどきいや引きずりながら前線へと、到着する。

すると、塹壕から出て銃撃の中深淵に向かって歩き出す。

 

周囲から見れば余りにも浮いた存在だろう、何せ時代錯誤も甚だしい全身鎧を纏った騎士風の男が、あろうことか塹壕を飛び出し歩いているんだ。

兵からは余りにの事に、目をしかめたりするものもいる。

 

そんな事は構わず、彼は左手に鞘に納めた直剣を携えそれを天高く掲げると人面に突き刺した。

端から見れば何をやってるのか意味がわからないだろうが、彼がやろうとしたことは直ぐに結果として現れた。

 

深淵に多い尽くされた地面から、突如として火柱が上がった。一ヶ所だけではない、あちらこちらで火柱が上がりそれはいつしか巨大な一本の柱となり深淵を光で照らし、焼き尽くす。

 

だが、その火に熱はなくどちらかといえば、その火という概念で燃やしているようだ。

【イザリスの火海(ほのか)

 

兵は驚く、今まで自分達が戦いそれでも、傷を、負わせられなかった敵をこうも簡単に捻ることが出来る。

多くのものは見た事を受け入れられないだろうが、信じるものには彼が英雄に見えたであろう。

 

そして、火柱は割れ中心に続く道が出来るそして、彼はその中心に向かうだろう。火の道を歩き始めていた。

 

 

 

《灰の世界》

3人は迷っていた、自分達が使命だと信じていた『火継ぎ』を否定され、では何のために自分達がここにいるのか解らなくなった。

 

だが、三人の内の一人魔女エルヴィラは驚くことに火継ぎを行う事を最初から諦めていた様に、余り落胆の色はなかった。

 

しかし、彼等は迷う何を目的とすれば良いのか、こういう時のスコーラーの決断は早かった。

元々彼はこの世界の事を、そとへと知らせるために生きていた。

ならば、この世界がどういう意味で存在しているかを知らせるべきだと二人に説いた。

 

納得はするものの、二人とも出口を知る筈もない。であるならば、シッダルタに再び聞こうと道を戻るが、景色は一変していた。

 

生い茂っていた草木は渇れ、辺りに落ち葉が舞い動物達の声も聞こえず、亡者達が辺りを徘徊する。

3人はこの異変に対処した。

 

道は解っている、ならばと向かってくるものを切り伏せねじ伏せた。時折、力の強いものや、恐らくは魔術のようなもので攻撃してくるものがあるが、各々の特性を生かして前に進んでいく。

 

遂にたどり着いたとき目の前に有ったのは、干からびた修行僧とそれに絡み付く大樹。

大樹に近付いたとき突如として、大樹が動き出す。

 

名を付けるとすれば『覚者(かくしゃ)の慣れ果て』とでも言うのだろうか?それが、攻撃してくる。

巨大ゆえに揺ったりとだが重い一撃が、三人を襲う。

 

まるで、こちらがする動きが解っているかのように蔓を伸ばして足をとろうとしてくる。それどころか、周囲の木を使い囲い込もうとするのだ。

 

そんな中でも、彼等は立ち向かう。己の道を見つけたものが、覚醒し全てを諦めた者に立ち向かう。

 

スコーラーは幾度も死んだ、だが折れることはない彼が死ぬお陰で宇右衛門等は生き残ることが出来る。

そして、記憶をたどり攻略していく。

 

弱点が火であると解るのは、そう難しいものではなかった。そして、最後は余りにもあっけない。

森に火を放った。

 

それから数日後、辺りは焼けたが配下の木だけが死に絶え、他の木に損傷はない。まるで、その他の木を守るために自己犠牲となったかのように。

 

中心にはシッダルタのソウルが落ちていた。彼の記憶をたどり、何が起きたか覚った。自分達以外にも何者かがいる。それが、彼を変えたのだと。

 

スコーラー達はまた進み出す。世界の真実をつたえるために。

 

 




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イザリスの火海

覚者の慣れ果て

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第36話 王達

二人の青年がウェルスを訪ねる。街で出会った二人は、今行われている火継ぎについて聞いてきた。

ウェルス程長く生きていれば、何か火継ぎの問題点を克服できるのではと、そう考えての事だった。

 

だが、この時のウェルスに火継ぎ前の記憶は存在しない、有るのは自分を失った後の記憶位のものだろう。

だが、それでも火継ぎの当事者に話を聞き自分達の考えを打ち明けた。

 

火継ぎを終わらせても世界は終わらないのだろうか、という考えを。ウェルスは言った、恐らくは世界は終わる事はなく、有るとすれば幻想は砕け真実のみが残るのだと。

 

彼等がその言葉をどう解釈したのか、解るものは無い。だが、その言葉に満足したのだろうか二人はその後故郷へと帰っていた。この後二人は国を興す、その国はドラングレイク。

探求の末その国は絶大な力を持ち、力 衰えし神々はその国に罰を与えること叶わず、それを見守るしかない。

そんな事があっても、火の力は衰えてまた火継ぎが行われた。

 

ウェルス達には一見して歓迎がないほどに静観を決め込んでいたが、世界は少しずつだが確実に暗くなっていく。そんな世界をウェルスは憂い、このときから山のような古龍の国から、いやこの大陸からエルフ(小人)の脱出を考えていた。

 

一方ドラングレイクの二人の王は不死人となり、始まりの火に没頭した余り間違いを犯す。古の岩の巨人達の秘宝を盗み、戦争へと発展する。

 

灰の時代を知るための数少ない手段として行ったものだが、誉められたものではない。だが、それにより失われた古の火継ぎの方法が解明されていくきっかけを生み出す。皮肉なことに、ディール兄弟の目的であった火継ぎを行わない火を造ることよりも、火継ぎに利用されるのだ。

 

そして、火が弱くなると共に世界に再び深淵が忍寄り着実に力を増していった。

 

 

 

《暗い穴》

 

伊丹達は下へと降りたソラールの後を追いう形で、下層へと飛び降りた。

パラシュートもない自由落下、伊丹は大嫌いな降下であるためもう、泣きそうである。

 

そして、灰の降り積もった場所にある魔方陣に見事着地に成功した。

目の前にあった光景はソラールが、触手を生やした龍?の様なものと戦闘を行っていた。龍というよりも、蛇?なのかもしれないが…。

 

そんな怪物と一人で戦っているのを黙って見ているわけもなく、自衛隊の各員は64式を即座に構え編纂し射塀物に隠れつつ射撃を開始するが、どうやら効果は無いようだ。

それでも気を反らす外に成功し、その隙にソラールが雷の槍を掲げるとそれが命中する。

 

するとどうだろうか、固い表皮をいとも容易く貫通する、まるでそれに対して耐性が無いかのように。

だが、砕けたところから再生していく。これでは戦いは持久戦になってきっと伊丹達は殺されるだろう。

 

必死にもがきつつも戦闘を続けていると、突如として白い雷が何処からともなく飛来し化け物に命中する。

その威力はソラールのものと比較することすらおこがましく、化け物の半身程を蒸発させた。

 

しかし、それでも急激に再生していく肉体それを追撃するかのように巨大な火が化け物を包み込み、断末魔を上げる。そして、再生途中の肉体を駆り猛然と雷が飛来した方向へと突き進む。それを5メートル以上の巨体が抑え込み、大剣が身体を引き裂く。

そして、小柄な男(それでも日本人の平均より大きい)が上空から一撃のもと剣を突き刺し、そこから有るものを吸収する。

 

ソラール、バルド、にはわかった。あれはダークレイスの吸精と同じものだと。レレイは感じた、生きた存在から無理やりソウルを吸いとっていると。

 

そして、化け物は動かなくなり、それと戦っていたもの達が伊丹達を見つめる。全員臨戦態勢に入り、何が始まっても良いように。

 

「おい、大丈夫かい?まさか、蛇に出くわすとは災難だな。」

 

聞いたことがある声だが、全員頭をひねった。こんなところにいるはずはない、なぜなら彼はゲートの向こう側にいるはずだと。

 

「ウェルスよ、混乱しているのではないか?あの様にこちらに武器を向けている、もしかすると隠れ里から逃げ延びたもの達なのかもしれぬ。蛇すら倒せないもの達だからな、大方里を滅ぼされたのかも知れぬし。」

 

どうやら、意思の疎通は出来るようだ。

伊丹は岩影から姿を表すと、彼等に話しかけた。

 

「危ない所を助けていただき感謝します。良ければ、お名前を聞きたいのですが、あっ私の名前は伊丹耀治です。後ろの者たちは、後から名前を本人から聞いて頂ければ幸いです。」

 

すると、四人が何やら話をして直ぐに纏まったのか、代表の体高3メートル程の男が話し始めた。

 

「私の名はグウィン、雷の剣士をやっているものだ。後ろの大きい彼は巨人の賢者ニト、後ろの女性は炎の魔術師イザリス、一番小柄なのが万能の剣士ウェルス。一応、皆格種族の王をやらせてもらっている。」

 

ソラールは固まり、バルドは絶句し眠り始め、伊丹等はその名前を思い出していた。

ウェルスから何度も聞かされた、《神話の王達》そして恐らくは彼はウェルス本人に違いない。彼の姿は今とは似着かないほど明るい人物に見えた。

 

そして、レレイは別の事を考えていた、この大陸に何故人が住まないのか。つまりこう言うことかと。

 

そう、ここは灰の大陸、時間が螺曲がっている。と言うことはいつの時代に繋がるかも解らない。なんともおかしい場所であると

 

 

 

《中国》

 

各方面で異様な光景が広がり始めていた。

今まで外へ外へと拡大しようとしていたドロドロが、内側に後退していく。決して敗北しているからではない、どちらかと言えば力を結集しようとしているのか?

 

中央へと戻っていく姿に、絶望していた兵は士気を取り戻し、破壊された防衛線は再構築された。

それどころか、進行軍すら計画される始末だ。

 

だが、どうやっても克服できない問題がある。兵器の効果が余りにも限定的過ぎると言う点であろう、例え弾を撃ち尽くしても敵は不定形で効果が薄く、更に吸収しているのか着弾点での爆発は一切起こらない。

 

そんな中自衛隊が所持する兵器だけ効果があった。

それは、何の変哲もないボルトアクションライフルだ。弾は6.5ミリセミリムド、何故かその銃弾は敵を屠り傷を追わせた。

 

ウェルスと言う超人以外では、始めての敵の損害に何か秘密はないかと問われる。そして、帰って来た答えは『魂を込めて造った弾は効果が有る』と言うものだった。オカルトのようだが、事実であるのだから侮れない。

 

そうこうしている内にも、ウェルスはどんどんと一人で奥地に進んでいく。彼の周囲には熱量の無い炎と、黒い雷が飛び交いドロドロは滅せられていくばかり。

 

それでも徒歩であるから、それなりに時間はかかるであろう。だからこそ、彼は時間を稼ぐ世界が兵器を変更するだけの時間を。

 

このときの派遣軍の歩兵銃は第一次大戦レベルにまで下がることとなる。

 

 

 

《灰の世界》

 

【覚者の慣れ果て】を打ち倒し、そのソウルを感じとることで、何が有ったのかを知ろうとした。すると、何やら人が来て彼を襲撃したのだった。

 

それも一人ではない、50人はいたであろうかそれをシッダルタは何やら武術でなぎ倒していたが、如何せん数が多く最終的には倒され、一部ソウルを奪われ最後に木と一体となるよう仕向けられた。

 

それが300(・・・)年前の事、時間軸の擦れが起こした奇跡的な最後。答えを得た者とは再び見えることは出来ない。

 

スコーラー一行は一路日本へと道を進む、宇右衛門が出発した場所だと言うが、彼が出発した時にはこのような神々のソウルが日の本には存在しなかった、そう言っていたが、最後の地に有るとそう伝えてくるのだ。

 

道中中国へと入っていく、そこでは秦王朝時代の鎧に身を包んだゴーレムが現れ、街の警備をしているように思えるのだ。

意思は皆無だが、その姿は実に頼もしい。のだが、人影何より亡者の影が形もない。

 

そして、それはスコーラー達にも悪く働くゴーレムは執拗に追ってくるのだ。

町中を所狭しと配置されているそれらは、追ってくる。

そう、人影がないのは単にゴーレムによって消されたからに他ならない。

 

町中をひたすら走るが道の解らぬ場所ゆえに、徐々に追い詰められていく。

すると、路地裏から声がした。

 

「おいっ!お前らこっちだ!」

 

声のした方へと進む。するとどうだろう、ゴーレム達は路地裏へは入ってこない、声をかけたのはこの男か。

無精髭を生やした、壮年の男名を訪ねると帰って来たのは名など無いと言う一点のみ。

 

ただ、郡県政を施工しただけなのに、何故儒学者どもは我を批判するのだろうか。という愚痴を話し始めた。

ああ、この国の形と良いきっと彼は始皇帝なのだろうと。スコーラーは密かにそう思ったのだった。




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第37話 忘れられたもの

深淵が世界に拡がりを見せていたとき、ウェルス率いるエルフ(小人)達は有ることで対立していた。

ここ山のような古龍の国に残り、運命を共にするか。

ウェルスの考え通り、別の大陸へと移住するか。

 

多くの者は現実を受け入れ、深淵から逃げるように他の大陸へと移住を覚悟していたが、少数の者たちはここに残ろうとした。蛇人達も例外ではなく、対立は正しく国を二分するものだった。

 

だが、ウェルスと言う絶対的な力により表立ってよ争いが起こることは無く、表面上の平和が続いた。

そう、無名の王(太陽の王の長子)が現れるまでは。

 

それは突然だった、ある日暴風が吹き荒れた。そこに現れたるは、一頭の古龍とそれにまたがる神だったもの。

その力は衰え、最盛期の一割にも満たないがそれでも驚異的な力である。

蛇人達はそれを見た瞬間に敵と判断した、そして無名の王と蛇人達の殺し合いが始まる。

決着は余りにも早く着く、当然ただの蛇が神や龍に勝てるはずもなく呆気なく国は滅んだ。

このとき、ウェルスはファルマートへ調整をしており留守にしていた。

 

運命とは残酷なものだ、ウェルスは帰還して早々目を丸くした。何と言うことだろうか、国が滅び人々も5割は死滅してしまった。

 

それだけではない、死んだ筈の蛇人は無名の傀儡となり、ウェルスへと攻撃を仕掛けてきた。

それを難なく切り伏せ、旧き友と対峙する。

 

結果はウェルスの圧勝だ、力衰えたものに負ける筈もない。しかし、かつての友を殺すのは心が痛んだゆえに彼は鐘に彼を封印した。

いつか誰かが鐘を鳴らすまで、決して解けることの無い封印を。

その間、傀儡は動き続けここに来るものへの試練となるだろう。

 

そして、残った者たちはウェルスの案内のもとファルマートへと旅立った。もう二度とここに来ないと誰もが信じた。

しかし、幾人かは行かない決断をし、いつか来るときまで深淵を狩り続けることを決意する。

 

その者たちは異国ファランにて狼血の儀式を造り、後のファランの不死隊の前進組織を作り上げる。

それは偽りの誓約、其を信じ込ませるのは至難の技であったであろう。彼等は嘘を知りつつも、現状を維持しようとした。故郷の事が好きだったから。

 

 

《暗い穴》

 

身長も体格もてんでバラバラな四人組に着いていくこと一時間程だろうか、何やら建物のようなものが見えてきた。恐らくは彼等の拠点があそこなのだろう。

 

伊丹はその事を気にする前に、あることを気にしていた

名を名乗った四人は、半年程前にウェルスから聞いたことがある、古い神話の登場人物だと言うことだ。

偽りだとかなら話は別だが、あの四人は異常に強い。

正直、同じような生命体では無いのでは?と考えてしまうほどに。

 

それでも見知らぬ者たちを自分達の城へ案内すると言うのだから驚きだろう。

警戒心が無いのか、はたまた眼中に無いのかどちらかだろう。

 

「到着したぞ!此処が我等の都、ボーレタリア遺跡だ。」

 

そこはうっすら霧がかかり、全容を捉えるに時間をかけなければならない程巨大な城壁を構えし場所。

だが、あちらこちらが苔むしており、遺跡と呼ぶものに見えなくもない。

 

そこの城門を抜けると様々な種族が行き交い、何とも融和の取れた国なのだろう。

今にも目的を忘れてしまいそうな、そんな空気がある。

魔術が行き届いているのか、周囲には炎の光が灯りいつも明るい。

 

「グウィン、君たちは先に戻っていてくれ。彼等を宿場まで案内したい。」

 

ウェルス(若)がそう言うと、彼等は城の中心へと歩んでいった。どうも馬車とかそう言うものとは無縁のようだ。何せ身体能力が桁違いだから。

 

伊丹達の歩調に会わせて近場にある場所を選び部屋を取ってもらった。

 

「ここで休んでいくと良い、たぶんだが君たちは何か目的があるのだろう?きっとここに長居はしないだろうからね。詮索はしない。ただ、君たちはどうしてそれほど弱いのか気になるところだが…。」

 

そこへテュカが彼の思考を遮った。

 

「今私達が何をしようとしてるかは、言えないけど貴方が関係する事は確かなの。それだけは知って欲しい。」

 

ウェルス(若)は其を聞いて何を思ったのか徐に、掌へ指輪を出現させた。

 

「私に関係あるのなら、この指輪を持っていきなさい。これがあれば道に迷うことはないし、不吉なものを追い払ってくれるだろう。」

 

そう言うと白い宝石をあしらった指輪を渡す。そして、彼は部屋から出ていこうとする。

 

「では道中気を付けろ、皆に大地の恵みあれ。」

 

そう言って伊丹等を置いて去っていった。それを見届けた後、伊丹はソラールとバルドに対して質問した。

ボーレタリアなる国を知っているのか?と。

帰って来たのは否定の言葉、ならばここはどれ程古い時代なのだろうか。

 

その日彼等は宿に泊まり、そして次の日には城を出た。目的を果たすために。

 

 

《中国》

 

横一直線に並んでいる塹壕から、多くの銃口が並び一発一発それぞれ良く狙いを着けて射撃が行われている。

命中した弾丸は、ドロドロで出来た泥人形や異形達に命中すると、それに風穴を開け穴から黒々とした、血のようなものが流れ落ちる。

 

今、国連軍はじわりじわりと前に進んでいた。

装備はボルトアクションで、非常に旧式と言わざる追えないが、それでもそれが効果があると言うのなら使わざる追えない。

 

更に国連軍の中では有るものが登場し始めた。武器の強化だ、それは武器そのものが淡く光輝いているかのように写る。

 

それを最初に行った者曰く、『魂を込められたものが効果的なら、銃にもそれが適応されるのでは?』との判断によるものだった。

それが、今では普通になりつつある、誰かが言った『地球なのにファンタジーの世界だ。』と。

 

彼等は内に秘める力を使って戦いをする、戦いは折り返し地点に来た。

時折、強烈な光がドロドロの発生源から飛びだし、辺りを照らす。夜は昼のように明るく照らされる。

 

そして、数分後とてつもない地響きと共に地面が揺れる。ウェルス、彼が中心部に向かってから既に一月の時間が流れていた。

 

 

《中心部》

 

地面にドロドロは無く、あちらこちらにクレーターが形成され、砂はガラスになっている。

今も尚、暗い閃光が辺りを照らし新たなクレーターを形成する。

 

時に稲光が辺りを覆い、それをドロドロが書き消すがごとく呑み込もうとする。

一体どれ程の間それを続けているのだろうか。

 

そして、大地に時折人影が現れる。

一人は黒い騎士、もう一人はローブを纏った老人にも少年にも見える存在。

 

老人(少年)が口を開き騎士に話し掛けた。

 

「ウェルスだいぶ消耗しているようだが、大丈夫かな?昔の君なら…おっと昔の記憶は無いんだったか?私を一度封印したときの君達なら、今頃私は姿を消していただろうなぁ。」

 

「貴様の方こそ、弱っているようじゃないか。どうした?余りにも長い間封じ込められていたから、呆けでも始まったか?それに、お前の事は充分覚えてるよ。思い出したからな、お前と交わした契約。それに対する対価を。」

 

睨み合う二人、ウェルスの装備はボロボロだ。何かによる腐食が始まっている。まるで、ウェルスの力が無くなって行っているように。

それでも、その眼光は鋭く戦意を失うどころか更に強く持っている。

 

それでも力の差は歴善だろう、何せ少年(老人)だけと戦っているわけではない、周囲を見渡すと無数の巨大な龍の影が満ちている。

 

彼等は深淵(少年)の傀儡それは全てを相手取り、戦わねばならない。もしも、ここに後3人もいれば戦況は大きくウェルスに傾いていたことだろう。

 

 

《灰の世界》

 

「ほう、それでここに来たと言うのか。火継ぎな、古くからある言い伝えにも聞いたことがあるが、まさかここがその世界だとはな。てっきりここはあの天竺から来た如何わしい僧の言う、輪廻の世界の一つだと思ったが、そうではないのだな。

道理で、人が影も形もないわけだ。」

 

始皇帝的に言えば最近来たばかりで、状況も理解できないが、街が可笑しいのは見ればわかったのだろう。

しかし、始皇帝本人は修羅場を潜り抜けてきた猛者だ、この程度では狼狽えない。

 

そして、スコーラー達に着いていくことを決意する。正直自分の国に帰りたいのが一番の理由だが、こんな薄気味の悪い世界にいすぎたくはないとも思っていただろう。

 

「それで、何処へ向かっているのかな?まさか、海をわたった場所じゃ有るまいな。」

 

「いや、某の故郷である日の本は海を越えた先にある、着いてくるのであれば相応の覚悟を決めて海を渡らねば、何せここにいる者たち全員船の動かしかたを知らんのでな!」

 

状況は絶望的である、日本海は大荒れの季節船で行くのは自殺行為、死にすぎれば亡者。行かなくても、何れはゴーレム達にぶちのめされ亡者。

 

ならばと、先に進むほうを選択する、前に船員を探すが先決である。偶然にも船乗りの亡者がいたのだ、だからそいつを殺しソウルを奪い経験を皆で分け合う。

 

だが、肝心要の船がない有っても漁船程度、咸陽は大陸の内部。つまり内陸から海へ黄河を下って数日はかかる場所だ。

 

漁船で下ると、景色は変わり秦の時代から明の時代まで下ってくる。すると、それなりの大型船へと乗り換え、また亡者の経験を取り出し船で沖に出る。

 

これによって日本への道が切り開かれる。だが、その道は非常に険しく難関なものであろう。冬の日本海は非常に危険だ、海は荒れ波高く何より寒い。

 

始皇帝は、寒さに強いがスコーラーはそうも行かない。彼のは比較的暖かい場所に生まれ育ち、冬がない場所だ。いくら不死人となっても、寒さには勝てなかった。

そのため航海での数日で実に三回凍え死に、航海がトラウマになってしまった。

 

そして、到着したのは長崎出島時代は江戸中期頃か?文明も色濃く、皆一様に興味津々の様子だ。さて、この場所での一番の問題が浮上した。

何とこの場所の住人は、亡者になっていない。それどころか、国そのものの機能は停止すらしていなかった。

 

そして、出島から出ようとしたとき彼等は捕まる。そうここは江戸中期、限定的鎖国をしていた時代。




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第38話 神話

小さき者たちが、海を越え別の大陸へと渡っていく。その大陸には、力無き神々が住まい生きていた。

ウェルスとの契約のもと、神々はエルフ達を受け入れる。

 

その時の神側の代表として、一人の戦いの神アルトリウスがいた。横には小さき神である、キアランを侍らせ更に大狼シフが並ぶ。

 

力無き神々はウェルスと対等に話すには、こうする他無かった。恩人であるものの、もはやウェルスはある種の亡者のようでもあり、いつか太陽の王の長子のようになるのではと、警戒されていた。

 

既に数千年が経過し、新たな神々が産まれることにより、ウェルスの事をよく知らないものもいる。

ただ、火の大陸と違い神々に勢いが有るのが唯一の救いだろう。もはやあの大陸は腐り始めている。

 

そんな全盛期のファルマートへ、ウェルスはエルフ達を預け、火の大陸へと戻る。それが、彼の行動原理となっていた。それから、月日は流れる。

 

幾度も火継ぎが行われ、火は弱り、深淵は封を抉じ開けて外へと流れ出ている。ファランにて、遂に不死人を中心とする組織、深淵狩りの部隊が編成された。

 

その部隊は、深淵の兆しを探り兆しある国を滅ぼし、深淵を食い止める。不吉の象徴と呼ばれる部隊。彼等がウォルニールの国を滅ぼそうとしていたとき

彼等は、そんな時にウェルスと出会った。

 

最初、彼等はウェルスを殺そうとした。偽りのシフと共にウェルスを殺そうとした。だが、彼等程度ではウェルスを殺すことは愚か、傷を着けることすら至難の技だ。

 

それでも食らいつこうとするその姿は、正しく狼である。だが、この中でも一際剣技が冴えていた者が初めてウェルスに、剣を抜かせた。

 

ホークウッド、その男は理想を掲げずただ現実をのみ直視する者。

それゆえに、彼は絶望するだろう、自分達の真実を知ったときに。

 

その後、見事ウェルスは不死隊から逃げ延び、エルフを探す旅を続けていた。道中不死隊は、生け贄となり火を継いだ。長い長い旅の末、多くのエルフをファルマートへと送った。そんな旅のなかある国で足を休ませた、未だ英華に染まっていた罪の都へと立ち寄るのであった。

 

 

《深層・最初の火の炉》

一夜を宿で過ごし鋭気を養った一行は、直ぐ様ボーレタリア遺跡から出発した。

そして、大城門から出て直ぐに有ることが起こった。

 

後ろに有った筈のボーレタリアは消滅し、有るのは風化した瓦礫だけ、何が有ったのかすら判別できない、それほど迄の見事なものだった。

 

時空が歪む、正しくその通りもしかしたらあのままあそこにいたらと思うと、一同背筋が氷るおもいである。

更に前へと進むと、辺り一面が真っ暗となり灯りをともさなければ何も見えない。星の光すらない。

 

だが、しっかりと声だけは聞こえる。暫く歩いていると、辺りがうっすらと明るくなっていく、足元に灰が満ちていく。

そして、目に入った光景は何とも奇妙なものだ。建物が上へ下へ左へ右へ、縦横無尽にへばり着き、何もかもがぐちゃぐちゃにかき混ぜられたようなそんな風景。

 

生き物の気配も、草木も何もかもが無く、有るのは風化した建物と灰だけだ。

亡者すら存在しない、完全に燃え尽きている。

そんな中に一際目立つ、円形にまっさらになった土地がある。

 

昔は恐らくは巨大な円形の建物が有ったであろうそこには、何やらポツンと淡く光輝いている。良く良く見れば、ソラールやバルドの良く使う薪の剣が突き刺さっている。

「ここが最初の火の炉か?伝説には聞いたことが有ったが、まさかこんなにもなにもない場所であったのか?俺の目指した太陽は、こんなにも何もない場所に有ったのか?」

 

目の前の光景にソラールは、かつての自分を嘆いた。伊丹達には何の事か解らないが、ふと周囲を見渡すと何やら気配がする。

それも、一人や二人ではないもっと大勢の気配が。

 

「ソラール、昔はここに大きな円柱状の建物があったんだ、それこそアノール・ロンドよりも遥かに大きいね。」

 

突如として、声が聞こえた。そして、ソラールの目の前に現れたるは、上級騎士の鎧に身を包んだ男。

それだけではない、周囲を様々な者たちが取り囲みこちらを見ている。理性のある目で。

 

「こんなところじゃなんだ、こっちに来て話をしよう。」

 

「まった!それよりも栗林の安否を確認してからだ!」

 

「彼女なら、火守女と話をしているよ。色々と質問していたようだが、女心と言うものは俺には良くわからないからな。」

騎士の男、(名前が解らないがソラールの知り合い)に連れられ淡く光輝く薪に近付いていく、そこには古そうでありながら、何処か美しい服を着ている栗林と、3メートルはありそうな女性。そして、物静かな傍らから見ても美しい女性が談笑していた。

 

 

《帝都》

 

地球がヤバイ事になっていることなど欠片も知らない、新皇帝ピニャは激務の中から逃げ出し、久々に騎士団へとやって来た。

 

訓練に明け暮れている面々を見て(時分も参加したいなぁー)と思っていると、ふとある人物がいないことに気が付いた。

 

いつも自分を助けてくれた、幼馴染であり騎士団での実質ピニャの補佐官となっていたアリスの姿が見当たらないのだ。執務室にここ数ヶ月位いたが、それでも騎士団として治安維持のため動いてくれているのかな?と思っていたのだが、

 

(あやつがそんなに顔を見せないことなど、早々有りはしなかったが、もしやアリスの身に何かあったのでわなかろうか?)

 

そう思っていると、騎士団の面々がピニャの存在に気が付いたのか、こちらに近付いてくる。

 

「殿下、お久し振りです。何か所要が有ってこちらに来られたのですか?」

 

「いや、そう言うことではない。少し羽を伸ばしにな。それよりもアリスを見ていないか?ここ数ヶ月、妾の周りに現れないのだが、誰か何か知っているものはおらぬか?」

 

互いに顔を見合われて、誰も答えられるものはいないかと思われた。

 

「…確か、アルヌスに行くとか言ってたようだけど、あの玉ねぎの叔父さんと、何か太陽のマークを着けた騎士と一緒に行ってしまった筈です。」

 

「なんと、妾に相談もなくか?そんなにも切羽詰まっていたのか?」

 

一様に首を横に降る、もしやアリスは何かに巻き込まれたか、だがもし向こうの世界の事に巻き込まれたなら、ピニャの手には追えない。

ただ、彼女の無事を祈るばかりである。

 

 

《中国》

 

戦線が膠着した。今まで順調に推し進めていた筈の戦線が、突如として動かなくなった。

前兆はなかった、便箋上深淵と呼ばれる存在が突如として、戦線を後退させていたのを止め、固体のように固まった。

 

兵器で攻撃しようが、傷1つ付かないドロドロが鉄よりも硬い鉱物へと変化し対応を協議するために、各方面軍司令官相当が終結し、人工衛星からの画像によって検討する。

 

リアルタイム画像では、深淵の中心部でとてつもないエネルギーがぶつかり合っていることが、閃光で確認できた。彼等はあの自衛隊が連れてきたウェルスと言う男の事を思い出し、『人の所業ではない』と言う感想を抱いた。

 

時間の経過と共に閃光は更に強大になり、10メガトン規模のエネルギーが炸裂していた。正しく、神々の戦いだろうか。

それでも、人として出きる最善の事を彼等は考えていた。『どうにかして、援軍を送ることは出来ないのか』と。

 

だが、彼等は知らない。何故深淵が彼等を呑み込もうとしているのか、自分達人類の本当の姿を。

ウェルスは、そのために戦っていると言うことを。

 

そして、その間にも地表は融解し、また1つクレーターが形成された。

 

 

《灰色の世界》

大荒れの日本海を突き進むは、遣唐使に使用されたガレー船。それは帆船としては大型で以外と頑丈なものだが、日本海の荒波に勝つのは並みの操船ではこんなを極めた時代。

 

日本に向かって、進む一行に遂に陸地が見え始めた。その地は、暗黒。いや深い暗闇に包まれている。

良く良く見れば解るのだが、木が余りにも生い茂り、人の住んでいるようすが、これと行って見当たらないのだ。

 

何とか到着したのは、鳥取砂丘。そこに打ち上げられた直後船は瞬く間に灰となり姿を消した。

暗闇の砂丘、遠くに見えるは何かしら祭りをしているのだろうか?火の光が見える。

 

近付くに連れてそれらがはっきりと見え、強大なソウルが一ヶ所に集まって何かをしようとしているようだ。

興味が沸いて近付くと、何やら女性が躍りを踊る練習をしていた所にばったりと出くわした。

 

そして聞いた、「何をしているのですか?」と、すると返答が有った。「岩戸を開くための取って置きの秘策をやろうと思いまして、皆で祭りの準備をしていたのです。」と。

 

何故だか、それに関わらなければと言う思いが込み上げ、協力する事になる。

そして、時は経ちそれは行われた。

 

多くの強大なソウルが一ヶ所に集まって、盛大に唄い飲み食いし、話し合う。垣根を越えた宴会とでも言えるのだろう、だがその規模はとてつもない。

 

そして、メインイベントである天岩戸を開ける為に更に盛大な催しになっていく。

そして、踊り子が踊り始めそれに興味を示したか、中の者が現れる。

 

とても大きい女性が現れた、髪は黒くカラスの濡れ羽のような艶やかさ。

それを強引に引っ張り出す、そこでスコーラー達を神々が見始めた。それは、奇異の目。何故ここに得たいの知れないものがいるのか、と言う現れか?

 

だが、スコーラーは挫けない、自分達の目的を話し始めた。




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第39話 発現

オリジナルアイテム

『王達の首飾り』

それはそれは古い時代の首飾り。3つの指輪が付けられたそれには、非常に強力な力が施されていたと言う。
しかし、今それに力はなく何の加護も無い。まるで、何かが欠けているかのように。


罪の都、嘗ては栄華を極め名を広めた帝国も、時代のうねりに呑み込まれつつある。

だが、そこへ一人の旅人が立ち寄る、その者黒い鎧を纏い異形のソウルを保持するもの。

 

その者は、栄華を失いつつある帝国に、有るものを託す。それは、消えることのない炎。だが、別に暖かいと言うものではない。要するに炎の姿をした得たいの知れないモノであるということ。

 

それを得たことによって、帝国は再び盛り返した。だが、異変に気が付いた神々が警告を発した。

『その火を消さねば、国が人が燃えることになる』

彼等はそれを無視した。そして、一人の巨人に有ることを託した。

 

自分達の王となって欲しい、と言われる虜囚の巨人。友を人質に取られ、嫌々ながらも王となる道を歩む。

だが、それは突如として終わりを迎える。

 

まず、虜囚の身となった友が何者かの手引きで脱走を行った。巨人はそれを知らされる事もなく、脱獄した者を殺すために大鉈を振るう。

不死である友人をその手で殺しつくす。約束を果たすことも出来ない事となる。

 

更に帝国が、神々の逆鱗に触れ国民その者を燃やされる。

その炎は嘗て旅の者をから与えられた火と、同質の炎でありそれによって国が滅ぶ。

そして、王であった巨人も神々に連行され、薪とされた。

 

残されたのは、消えることのない炎。それを後の世に荒廃した街に、今も尚煌々と輝く姿を見た魔術師は後に神々を自らの虜囚とする者となる。

 

それから更に時は進み、火はますます陰る。全てに絶望し、火を継ぐことを良しとしない火継ぎ懐疑派の重鎮。エルドリッチは、神々を打倒するために、不死を喰らい伝説のダークソウルを得ようとする。

 

だが、それが神々に知れ渡るのも速くなっていた。王たちの刃の最後の仕事、それはエルドリッチの捕縛だった。最早瓦解寸前の神の都、そこにいるのは一人寂しく帰ってくる筈もない肉親を待ち続けた、一人の男神。

 

彼の命じた全てが、現実の者となり。ヨームを燃やし、エルドリッチを燃やした。

そして、数々の不死を炉に投げ入れ世界の荒廃を見つめ続けた。

だが、孤独を打ち払う身内が産まれる。可愛い我が子、自分には無い龍の姿。

それも長くは続かない。

 

《最初の火の炉》

周囲を取り囲まれている中、やっとの思いで栗林の元へとたどり着いた。

顔色も良く、元気な姿で伊丹達を迎え入れている。

 

「くり、大丈夫だったか?何かされたとかじゃないんだよな。」

 

「隊長ご迷惑をおかけしました。皆もね、まあ何かされたにはされたけど、私を助けてくれたみたいなんだ。厳密に言うと、魂に肉体が耐えられなくなってしまったから、余分な部分を切り落とした。みたい?ただ、体には害はないようなんだけど。」

 

『魂を切り落とした?』自衛隊の面々は驚いた、魂と言うものを削る術を持つ彼等に。

彼女の話の後、巨大な女性が自己紹介と共にある話をし始めた。

 

「良くたどり着けました。私は太陽の王の長女、グウィネヴィア。古い神に当たります。ただ、私の肉体は当の昔に滅んでいますので、今はこのソウル体、実体の無い姿で申し訳ありません。実は貴殿方にお話をしなければと思い、今こうしているのです。

私の時間は後僅か、急ぎましょう。」

 

矢継ぎ早に話をしようとする彼女を尻目に、ソラールは上級騎士に話し掛けた。

 

「貴公、薪になったと聞いたがそれがどうしてこのように姿を表すことが出きるのか。最早燃え尽きているのではないか?最初の火は消えたのだぞ!」

 

「あのウェルスとか言う奴が、俺に最初の火の1つ。ダークソウルを少し注いだらこの様さ。相応にあいつも衰えてるだろうが、何を思ったんだろうな?まあ、俺もそんなに長くはないよ?後数百年もすれば消えるさ。

君も灰なったときに、あいつに力を与えられたのだろ?それと同じことさ。」

 

そう言うと話を切り上げ、伊丹たちの方へと耳を傾けた。

 

「ですので、私のこのネックレスをウェルス様に届けていただきたいのです。貴殿方がその手に持っている指輪と共に。」

 

するとテュカの手にある指輪を見ていった。

その指輪は、鈍く金色に輝きネックレスと同調を始めるかのように、脈打ち出した。

 

「何で、金属が生き物みたいに動くんだよ。」

 

「私も存じ上げません。何せ父や母達の世代の技術です。それの継承を行ったものは、誰一人残っていませんでした。父達は私にこれを託した後、狂っていきました。」

 

「それで、これを俺たちにどうしろと言うんだ?」

 

「はい、ウェルス様に届けていただきたいのです。あの方は今、貴殿方の為に深淵と戦っていることでしょう。急いでください、今のあの方では深淵を倒すことは愚か、封印することすら侭なりません。あの方の命はもう長くは有りませんので。」

 

その言葉に一番驚いたのは、バルドだった。

 

「うん?何故彼の命は残り少ないのか?まさかと思うが、最初の火の力とはそんなにも呆気なく無くなるものなのか?」

 

「いいえ、あの方の肉体と精神が限界を迎えているのです。あの方は、とてつもない執着により今まで理性を保っていました。それが、薄れつつあるのです。貴殿方の正体に気付いたことによって。」

 

「それはどういう!!」

 

突如として地面が揺れ始めた。地震?いや、周囲の空間が揺れているのだろうか、次第に揺れが収まるが辺りの建物のうち幾つかが歪み始めていた。

 

「グウィネヴィア詳しく話す時間は無さそうだな、伊丹とやらこれは俺達からの最後の使命だ。それをウェルスのところまで届けろ。

ソラール、彼等を頼んだ、それとこの指輪を持っていけ。効果範囲なら深淵に飲み込まれずに済む。

ジークバルド、ヨームは一足先に向こうの世界に行っているだそうだ、彼の援護を頼むぞ。

矢継ぎ早に失礼だが、この空間も長くは持たない。元よりある方が可笑しいものだったからな。

俺も、後からそちらに行くから先に行っていてくれ。

さあ、螺旋の剣に触れよ。」

 

「おい!話はまだ始まってもいないんだぞ!それに、くりだって装備は!!何で鎧着てんだ!」

 

「その話は後、行くよ皆。」

 

栗林が手を翳すと、全員の姿が消えた。

 

「さようなら、私たちの子供達。」

 

「さあ、グウィネヴィア。貴公のソウルを貰い受ける。」

 

「ええ、喜んで。火守女、貴女の使命はこれで本当の意味で無くなります。名も無き不死よ、後の事頼みます。ああ、心配ない高々死ぬ相手を殺すのは造作も無いことだ。」

巨大な彼女は姿を消し淡く光輝くソウルだけが残った。

それを手に取り、騎士は螺旋の剣に手を翳す。

そこには誰もいなくなった、そして螺旋の剣が折れ、火は完全に消えた。

《灰の世界》

気が付くと伊丹達は灰色の中に立っていた。そこは太陽の光も星の輝きも皆一様に等しく灰がかり、正しく灰その者の空間。

だが、色が見えていると言うことは何かしらの可視光が発せられているのか、はたまた別の何かか。

 

恐らくそこは日本なのだろうが、何やら少し違う。むしろ文明レベルが低いと言うところだろうか。

江戸の町並みが広がるそこは、正しく日本。

 

時間がおかしくなっているのは、この世界でも同じ事。そして、何もいない。鳥の囀りも、ただ水の流れる音だけが聞こえてくる。

 

『何者だ!答えよ、さもなくばここで切り捨てる。』

 

突如として声をかけられた。気配を感じることもなく現れたるは、武士と、学者風の男、魔女のような老婆、中国の王族の格好の男、と言う共通点が皆無な集団。

 

どうやら向こうも向こうで突如として、現れたこちらを警戒していたようだ。

 

「まあまて、貴公等俺は太陽の戦士ソラール。そして、後ろの者たちは俺の友人だ!!決して怪しいものではない!」

 

「ハッハッ!太陽の戦士かね。面白い名前の者もいるもんだね、私の名前はエルヴィラ。ハンニバルを崇拝する者だ、まあよろしく頼むよ。」

 

変な宗教が変な宗教と出会い、意気投合するように二人は挨拶をし、親睦を深める。

周囲からはやはり奇異の目を向けられるものの、そんなもので折れるもの達ではない。

 

「おい、エルヴィラ。先を急ぐぞ、あの場所へ行かねばならない。接続点が唯一の脱出経路だ。」

 

「ちょっと待って、貴方達は本当に何処から来たの?何か時代とは違う結構ちぐはぐな構成だけど、だいたいこの世界は何?皆もそうよ、あんまりにも色々ありすぎて正直頭が着いてかないけど、それでも可笑しいことはわかる。でも、待って。少し考える時間をちょうだい?」

 

騎士アリスは必死に訴えるが、それでも全員の心は何故か帰還ばかりに統一されていく。

 

「おい、女騎士。この世界に俺達がいてもな、邪魔なだけだ。今も表層世界では、最後の王と深淵が殺し会をしているところだ、だからこの世界を使えるようにするために、一刻も早くでなくちゃならない。いいか?良いな!」

 

静止を聞くものはいない。最早伊丹たちすら、それに盲目に従うのみ。レールは終着まで続くだろう。

 

 

《中国》

 

激しさを増す中心部とは裏腹に外縁部では、じりじりと包囲を狭めていたが、それでは一行に拉致があかない。と、誰かが言い出した。

その時、一人の何の変哲もない軍人の一人が何かを呟いた。

するとどうしたことだろう、掌に光輝く雷が握りしめられ周囲に驚きが広がっていく。

その雷は、深淵を遠ざけ更には使用者の身体能力の向上等、様々な理があった。

 

果たしてそれが本当に良いことなのかは、解らぬところではあるがそれでも現状打破に世界は湧いた。

終わりそうな世界に光が点ったと信じて。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第40話 灰となり

ああ、火継ぎが行われる。ああ賢者よ、我が友よ、火継ぎを行ってはならない、その奥にあるのは暗い喰らい神々の真実よ。

 

賢者ルドレスよ、我が友よ。そこまでして、火継ぎを行うのか。

賢者ルドレスよ、それでも私は火継ぎを止める例え何が有ろうとも、このロスリックから全てを変えてみせる。

この血塗られた国から。神々の未来は当の昔に終わっているのだ。故に私は、深みを信じる。

 

火継ぎは世界を壊した、大地は生命を失い水は毒となり全てが腐敗していく。

それでも尚、愚かな小人たちは神々の戯言により火継ぎを繰り返す。

 

蛇の神は姿を隠しつつ父のその権威を振るい、世界へ復讐をするがごとく小人達を殺し続け、最後には喰われるのだろう。

 

そして、そのときはやって来た。遂に火が潰える時が来たのだ。ロスリックは火継ぎを否定し、それに賛同するものと反対するものとで内乱となり、地続きとなったイルシールの外征騎士を味方につけたロスリック王子側が優勢となる。

 

だが、そこでルドレスの遺産が発動する。古き時代のソウルの業を使い、火継ぎの王達の復活による、継ぎ火。

だが、一度焼かれた王達は肯定することはなく、自らの故郷へ旅立ち使命を全うしようとする。

 

そして、それを阻止する、或いは成就するために灰が副産物として共に甦る。

だが、想定していないものすら甦った。

最初の火継ぎ、その不死が甦る。どれ程強いソウルを持っていたとしても、燃え尽きるであろうその火を持ってして、彼のものを燃やし尽くすこと叶わず。

 

唯一の未練、ソラールとの約束を果たさんが為に、太陽を真実の太陽を再び空へと輝かせること、それのみを果たすために。きっと彼は火継ぎをすることは無いであろう。何故ならば、全てを見てきたから、そして彼の自分との殺し会が始まる。

 

それを尻目に火継ぎの終わりを眺めるものがいる、全ての元凶の一人であるウェルス。

神々にすがり付く愚かな小人を見捨て、神々を頼らない強き小人を逃がしたもの。

 

最早自分には役目は無いと言わんばかりだが、彼には1つだけ残ったものがある。

深淵の墓を守り、心を失った王を閉じ込める事である。

本来の自分が解らないままにその諸行を行う、そして自らの力を使い、不死人達を甦らせる。

最後の船団を、小人を守るためという使命を着せて灰として甦らせる。

 

迫り来るは、深淵に惑わされし亡者達、迎え撃つは正気を保った不死の軍団。それらはぶつかり合い、歴史の表から消えていった。

 

《中国》

 

戦線が再び動き出した、今まで後退していた筈の深淵の闇は再び拡散を始めた。

ボルトアクションライフルや、榴弾によりその進行を送らせることが可能となったために、その進行具合は最初期の頃よりも遥かに劣るものではあるが、それでも食い止めることは難しい。

 

いつの間にか、中心部から聞こえていた音が嘘のように無くなり、辺りを静寂が包み込んでからの攻撃は以外と予測ができた為、後退も順調に行われている。

 

だが、上層部ではそうも行かない。中心からの音と閃光が無くなっているという事実に絶望が感じられた。

あの男が負ける、そうなった場合最早止める術は残されたのは僅かな選択のみ。

 

物量で押すことが出来ない敵に、各国の首脳陣は恐怖にうち振るえている。そんな中での敵の大攻勢、戦線を構築する兵隊は果敢に応戦しているのだが、世界はパニックに陥る。

 

もしかするとこのまま人類は負けてしまうのかもしれない、そんな不安が世界を覆っているとき、再びある情報が入る。

世界中で人を殺そうとしていた赤い人影が、前線にも突如として出現し、深淵の味方をしていると。

この情報が入ると、各国は更に緊張を高める。

 

だが、実際は違う。確かに赤い人影が敵だというのは正解だが、白い人影と黄金の人影がそれに相対し赤い人影を人数で押しているという点だ。

更には、火のように燃え盛る化け物達が現れ、それらも深淵と戦っている。それと、燃える人形が深淵を取り囲むように、凄まじい熱量を放ちながら前進しているとも。

いったいそれらが何なのか、首脳達は再び頭を抱えることになる。

 

そしてその大地を宇宙から眺めることが出来るのなら、さぞや美しく見えるだろう。まるで、日食のように闇を包む炎のような灯り。

しかし、日食とは違い中心で一際大きく輝く炎が上がる。

 

《中心部》

 

周囲が闇に覆われているなか、突如として霧が発生し伊丹やソラール等13名がそこに現れた。

 

周囲に同僚がいればきっと驚いたことだろう、伊丹達が姿を消してから早4ヶ月、伊丹の体感では4日しか経っていない。

時間のずれが生じている、そうしたなかでの帰還となれば、いったい何が起こっているのか把握することも儘ならないだろう。

 

だが、そこにあるのは何かにもたれるように座る、左腕を失ったウェルスと、それを正面から見下ろす一人の老人?そして、その間に割り込むように佇む、火継ぎの騎士。

 

「ウェルス、随分とやられたな。昔のあんたなら、こいつと戦ってこうはならなかったんじゃないか?」

 

「いや、ただ単に相性が悪いだけさ。お前も良くやっていたことだろう?」

 

それを聞くと同時に、騎士は動き出し炎の牢獄を作り出して、老人を封じた。

 

「さて、諸君等をここに呼んだのは他でもない、君らが手にしている首飾りのウェルスへの譲渡と、あの世界の封鎖を行って欲しいからだ。」

 

と言うと、テュカの方へと向き直り首飾りを指差した。

 

「俺はこれを触ることが出来ないからな。もし触れば、封印されてしまう。だから、彼に渡すんだ。」

 

テュカは恐る恐るであるがウェルスへと近付き、首飾りを渡そうとする。

 

「すまないが、手甲を外してくれまいか?片腕だけでは無理なのでな。幸いなことに、指はまだ五本あるそれを扱うには充分だ。それにしても、君は本当に彼女に良く似ている。私に懐いていた、あの子に。」

 

「あの子?ちょっと待ってください。それってもしかして私のご先祖様、なのかもしれません。」

 

「そうだったら嬉しいな。さて、やるとしようか。」

 

彼は立ち上がり、残った腕に剣を握る。その剣は折れ最早刃物として使うにはあまりにも弱々しいものだろう。だが、その剣は力を宿す。4つの指輪は、在りし日の彼の姿を取り戻す。

 

腕は元へと戻り、朽ちかけた鎧は真新しいものとなり、彼の瞳から濁りは消え失せる。そればかりか、纏う力ダークソウルが綺麗さっぱり消えている。

もはや何者でもない、最初の火を見いだした四匹いや、四人の内の一人へと回帰する。

刀身に宿るは白い炎。左腕に掲げるは白い雷。

 

騎士が封じている中へと進む、その入り口はいつの間にか白い霧が覆っており、そこは力無き者は何人たりとも

通すことの無い、結界。

 

「さあ、第2ラウンドの幕開けだ。」

 

そう言って中へと消える。自分の罪と子供達の未来の為に。

 

 

《???》

 

何処とも知らない場所に飛ばされたスコーラー一行は、この世界の断りにほとほとあきれていた。

先程まで共にいた人間達はいったい何処へと行ったのかと、少し頭を傾ける。

 

『初めまして、お待ちしておりました。貴方達が、終わりを告げるもの、でよろしいのでしょうか?』

 

声が聞こえるが全くと言って良いほど、姿が見えない。いったい誰が、話しかけているのか。

一行は尋ねた、あなたは誰なのかと。

 

『私は最後の神、この世界を終わらせることを使命に今まで生きてきた神です。』

 

始皇帝は、神頼みが大嫌いなようで息吹かしんでいるが、宇右衛門はそういう神もいるのかと納得し、後の二人はそんな事どうでも良いから、話を進めろと言う。

 

『私も、このような事は別にどうでよもかったのですが、長い間話をしていなかったので、少しだけ話をしてみたかったのです。それで、貴方方はこの世界を終わらせたいですか?』

 

それに対してスコーラーは言った、少し待ってくれと、この世界に有るものを入れたいそうすればいつでも消滅させてくれて構わないと。

 

女神は嬉しそうにニコニコと、笑い言った。

 

『では、その少しの間暇なのでゲームをしましょう。』と手元に将棋盤が現れる。ただし、異様に目の数が多い。

なんぞやと、問いかければ大局将棋と言われる。どうやらこれで遊びたいらしい。四人の背中には嫌な汗が流れた。

 

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

後数話で完結します。次話は、苦手な戦闘シーンでも入れようかと、まあつまらないものですがよろしくお願いします。


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第41話 熱を失う者たちよ

誤字の訂正ありがとうございます。


不死の灰と、亡者の殺し会は苛烈を極めた。

何処までも永遠に続くかと思われた戦いは、不意に終わりを迎える。

亡者達が動きを止めたのだ。

 

前兆はあった、亡者は死にすぎれば最後は自分が生きているかすら忘れ、座り込んだりする。そしてそのまま固まり、何をするでもなく生命活動を終えないまでも、石のようになっていく。

 

殺し会の最中そういう亡者が増えていった。では、不死の灰はどうであったかと言うと、変わりなかった。強制的に使命を付け加えられ、それを終わらせられなければ死ぬことすら出来ず、亡者になることすら出来ない。

ウェルスは彼等に生き地獄を見せても、生者何より小人を生きながらせようとした。

亡者共が海を越えないようにと、そして亡者たちは敗れ去った。

 

長い戦いは数千年続き、不死の灰たちは疲弊した。

ウェルスはそれを見て彼等に褒美として、叶えられる範囲の願いを叶えた。あるものは自分の死を、あるものは探求を、あるものは友の復活を、そしてあるものは太陽が輝き続ける時代を。

 

各々の願いを叶えていくと、最後に一人の女性が現れた、彼女はティアラで目を覆い黒いドレスを纏っていた。そして、言った。灰の方、あの方を甦らせて欲しいと、何故と問えば、あの方の使命はまだ終わっていないのだと言う。

 

彼女の願いを叶えると、灰達は各々の場所へと旅立って行く、時を越え、自らの想いを胸に秘めて。

それを見終わると、ウェルスも歩み始めた、あの大陸へと行かなくてはと、有りもしない使命にかられ。

 

時が螺曲がりし場所から、船で行くのには何万と言う時が流れた。到着する頃には嘗ての面影すらなくなった大陸と、自分が届けた者たちはとは全く違う知的生命体が闊歩する大陸となっていた。

 

そして旅を始めた、ある時は商人の護衛として、ある時は盗賊として。それでも彼女達に会うことは叶わない、まるで何かがそれを拒んでいるように。

 

ある時、空から化け物が表れた。それが暴れれば、タイリクはぐちゃぐちゃになるだろう。それを放置すれば目的は果たせない、であるから化け物を葬り去った。

その地は、丘となりそこは不安定な空間となった。そのためそこから度々、異世界のものが流入していくこととなる。

 

 

《炎の牢獄》

 

ガァァァァァァ!!

巨大な何かは咆哮する、それに対するは一人の人間。周囲は業火に包まれ正しく地獄のようだ。

 

不定形の怪物は人を呑み込もうと、猛然と突進を、開始する。周囲に何か盾になるようなものは無い、だが避ける素振りも見せない。

接触する瞬間、左手に雷を構え地面へと叩きつける、その余波を受けてか地面が隆起し、突進を始めた怪物は掬い上げられ空中を舞う。

追撃を見舞おうと、剣に青き魔力が宿るがそれを察知したのか、強力な障壁を展開し今度は空中から圧し潰そうと降り注ぐ。

 

それと剣が激突する、月光が周囲の色を炎の紅い色から青き色へと染め上げる。

互いの力を殺し合い、弾け飛ぶ。

互いに、勢いを殺して着地するも、深淵はその質量からズゥゥゥンと、大きな地響きを立てる。

 

指輪の力は一人の身には重いのだろうか、彼の体からは灰のようなものが時折立ち登り、それが次第に彼の熱を奪っていく。

だが、それを気にもせず眼前の敵にのみ意識を集中している、もしくはこれこそが彼の体の限界を暗示しているのか。

 

不定形のものは深淵は戸惑っている、自らの力が弱っていることに、彼の頭のなかには戦いなどすぐに終わるものと考えていた。だが、蓋を開けてみれば最初の火が灯った時と同じように、自分の力は制限され思うように動けない。

 

ウェルスはこれを狙っていた、ウェルス自身の力も制限されている、だが彼の場合は目立った動揺もなくむしろ、憑き物が落ちたかのように真っ直ぐとした目だ、恐らくは計画の内であろう。

 

互いに睨み合い、どちらかが先に動くのかジリジリと時が流れていく。深淵は早い内にウェルスを叩かなくては何か秘策があると感じとり、動こうとするも動いた時点で彼の月光を纏った剣により、体の一部を削られる。

そう判断してか、中々動くことが出来ない。

 

ウェルスにとっても同じ事、この空間ではダークソウルが、力を発揮する事はない即ち一度きりの命、無闇に動けばその時点で死ぬこともある。

元からの不死であるが、ソウルを喰われればその時点で消滅する。ダークソウルが有るからこそ、今まで消滅しなかった。

動いたのはウェルスだった、一瞬の内に剣を持つ腕を曲げ刺突を繰り出す。刺突と言うよりかは、嘗ての奴隷騎士の獣のような戦い方、それに技を加え一撃をより致命に至らしめる深々としたもの。

 

元はと言えば、剣の技術の始まりは彼だったのだから、正しくオリジナル。

だが、それも奴を致命にすることは無い、不定形であるが故に剣技は通じない。

 

だからこその月光であり、雷であり、炎であった。だが、魔法は遅い故に筋力でそれを補った。

彼には巨人のような強い力もない、イザリスやグウィンのように、強大な魔力(ソウル)からの魔法もない。

だからこそ全てに手を出した、それが彼の唯一の強み。

 

時間の経過と共に周囲の炎は蒼くなる、それはまるで青空のように、別の(灰色の)世界へと来たかのようだ。ウェルスの剣は深淵に些細なダメージを負わせていく、次第に体がバラバラになっていくことに深淵は恐怖した。

 

あまりにも執念深い攻撃に、巨体はなす統べなく切り刻まれる。だからだろう、ウェルスの隙を突くべく攻撃に合わせて槍を放った。

 

遂に深淵の槍がウェルスを貫く、ニタリとウェルスが笑った。それを待っていたのだろう、剣に光が宿りそれを深淵へと深々と差し込み内部から大爆発が起こる。

と、同時に炎の檻は開き。灰色の空と大地が姿を表す。

 

うぞうぞと、深淵が再び一つとなり周囲を見渡す、精気の無い世界が広がる、だが次第に空が近付いてきている。それどころか、大地が消えていく。

深淵は逃げ惑う、何とかして生きようと、古の獣が一人が生に執着したその末路は、完全なる消滅。

 

それを、致命傷を受けたウェルスは見つつ始まりの螺旋剣を取り出し、世界を渡った。

残されたのは深淵のみ、終わり行く世界をただ呆然と眺める他無い。

 

《中心部》

 

『火ヲカエセ!!』

 

3mは有るかと思われる巨体が跳躍し、剣を振り下ろす。

上級騎士はそれを回避し、ソラールは出来た隙を突き横合いから剣を振るう。

が、それをものともせずに剣を振るう。

 

叩きつけられたそれは、地響きを上げ地面が抉れる。

その破片が伊丹等生者を襲うが、それをバルドがピアスシールドで庇う。

 

戦いに触発されたのかロウリィが参戦し、ハルバードを叩きつけるもよろける素振りも見せず、怒りに任せた一撃を食らうも、流石は亜神であろうか、致命傷も直ぐに回復し不死人達と非常に良く連携している。

 

そんな事が起こっているが、周囲にドロドロは無くなっており、深淵の放つ猛毒もそこにはない。

当たりは日の光が降り注ぎ始め、呑み込まれた筈の残骸もチラホラ見え隠れしている。

 

だが、呑み込まれたもの以外に出て来てものがあった。火の時代、彼の深淵に心を喰われし王。火の力に魅了されてしまった哀れな神、それらが表れ、ソウルを奪おうと攻撃してくる。

 

その力は凄まじいものだが、決して死なないわけではない。元は神なのだから、殺せないものではない。

現在多くの地域で化け物の変わりとしてこういうもの達が表れ始めた。

戦いは第2ステージに入ったが、この時点で神が人類に勝てる確率は0に近い。

 

理性の残ったもの達が大半であること、自分達の夢であった世界を手に入れた子供達が敵であること。

彼等はなす統べなく殺されるだろう。

 

だが、それとは違いグウィンは未だに火に捕らわれ、こうして火継ぎの一人であるものへ、ダークソウルを持ったものへと斬りかかっている。

自らに、もはや火の力はないと言うのに。

 

 

《???》

 

何処とも知れない場所で、女神とスコーラー達は大局将棋延々と指し続けている、始めてから丸2日休息が必要の無い者たちは、いつ終わるとも知れないものを続けている。

 

そこへ土足で踏み言った者たちがいた。

白い影が侵入したのだ、だが彼等はここにある筈の火が存在しないことにすぐさま気が付いた。

 

何故なら、元から消えるのを良しとされていた火であるから、始まりの火とは性質が違う。

それに誘われた蛾は、それに近付きすぎた。亡者であるその身は、土のようにボロボロと崩れ始める。

そして、そこに残ったのは土の山だけだった。

 

それを知らずに、大局将棋を続けていると女神はふと顔を上げた。

何事かと尋ねれば、何かが流れ込んできたと言う。

それを聞き、それを殺すのが我等が役目だと言うと、手に火を灯しそれに息を吹き掛ける。

 

するとどうだろうか、空が近付いてくる。

共に行こうと言うが『私は良いから行きなさい』と言われる、理由は問わない。だが、人の善意を無視するものではない。四人は彼女に目を背け、手渡された螺旋剣の破片を握りつぶした。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第42話 火を惜しみつつ

目的を果たせぬままウェルスは、灰の大陸へと帰って来た。何か手懸かりが有るのではないか、もしかすると私に何かを託して行ったのではないかと、考えていた。

 

歩き続けていると、ふと見覚えのある景色が近付いてくるところが見えた。

灰の大陸にある、唯一の封印地帯。そこの景色は全て幻想なれど、未だ生命の息吹を感じさせるのには十分すぎる場所であろう。

 

彼は旅の出発地、輪の都へと数万年の時を経て帰還したのだ。

そこでふと、誰かが倒れているのが見える、紅い頭巾を被った人だろうもの。

 

いや、只人や灰、不死人とも異なるソウルの瞬き。それはまるで、絵画世界の住人に似ていた。

だが、それでも服装が奴隷騎士とは、いったい何が目的でここまで来たのだろうか?

 

首を傾げていると、件の奴隷がウェルスを感じ取ったのかゆらりと立ち上がり、剣を構えた。

まるで、幽鬼の如く立ち上がりウェルスを睨み付けている。

 

何かを口走っている『お嬢様のために…』奴隷はただそれだけを口にし、ウェルスへと飛び掛かった。だが、そんな攻撃対して避ける必要もなく、剣を素手で捕まれる。

 

刃の無くなった剣など最早鈍器にすぎず、己よりも力の有るものには通用しない。

それを解っているだろうに、目の前の奴隷は眼光を鋭くさせるばかりか。打開策が、出てこないのだろう。

 

だから、ウェルスは言った。この先の都に用事があるのなら止めはしない、だがもしもそこでお前の手に入れたいものが、努力で勝ち取れないものであったらどうするのか?と。

奴隷は答えたそれでも目的を果たすと。

 

ウェルスは呆れて剣を離した、そして言った。

行けと、もう私に突っかかるなと。

 

奴隷は駆けていった、後に復活した灰の英雄により殺されるだろうその奴隷を見送り、ウェルスは再び印を探し続けた。

 

《中心部》

 

体が傷だらけになりながらも、騎士やソラール、バルドを相手取り大立回りをしているグウィン。

その並々ならなぬ執念はいったい何処から来るのだろうか、果たしてそれはテュカに目をつけた。

 

灰や不死である連中とは違い、生身の存在で限りある命で、戦闘経験に乏しく何よりこの世界では精霊魔法は使うことは出来ない。

精霊…。いや、古い小人達の意志がここには留まっていないからだろう。

 

だから彼女をグウィンは狙う。彼女の身の内にあるダークソウルを、始まりの火の残り火を喰らうために。

だが、伊丹等も黙って見ているわけではない。

確かに銃はグウィンへの効果が薄いのだが、効かないと言うわけではない。

 

そこで、急所よりも足を狙うことを定め如何にして負傷させるかを念頭にテュカを守る。

レレイは己が身につけたソウルの業を使い、遠近の魔術でグウィンを迎え撃つ。

 

だが、それでも意地から来るものが、グウィンを奮い立たせる。

どうにかして最初の火の力を取り戻す、そして平和を手に入れる。

頭はもはやそればかり、亡者と変わり無いそれは、果たして伊丹等を出し抜いた。

 

ライフルの弾が、貫通しない。いや、貫通してもひたすらに駆けてくる化け物じみた絵面に、一瞬の戸惑いがあった。例えば象の突進のようなものだろう、対処の仕方に一瞬だが空白が生じるとは即ち死を意味する。

 

騎士達が背後から襲う瞬間に、腕に雷を握り大地に叩きつけた。ソラールのそれと違いラグがないそれは、周囲に伝播し生者は皆感電する。

ソウルを奪うために殺さないよう手加減しても、意識は失うだろう。

 

騎士達は吹き跳ばされ、戻るのに数秒かかる。そのうちに、テュカのソウルは奪われてしまう。かとおもわれた。

 

グウィンが掴もうとした手が血まみれの、ウェルスによって止められた。

グウィンは言った、古き友よ今再び世界を平和へと誘おうではないか。と、

ウェルスはそれを聞くと拒否した。もう、我らの時代は終わったのだと。

 

それを聞いて、グウィンは今までの雰囲気を解き地面に膝を付いた。

ウェルスは、グウィンの首へ捻れが取り除かれた剣を、添えた。

 

殺れとグウィンは言う。

ああ、また合おうと、ウェルスが答え。剣が振り下ろされて、グウィンは消えた。ソウルも何も残さずに。

 

 

 

~一月後の世界~

 

地球世界はおぞましい敵との戦いに勝利し、忙しくも達成感のある戦後処理をしていた。

有能になった国連は対応に追われ、どの国がどの程度貢献したかを数字に落とし込む作業にあった。

 

何故、中国にあれが表れたのか。

今回の戦いにおいて、最も多くの犠牲者を出した中国。

彼等が何故最初の標的とされたのか、それは簡単に説明が付いてしまった。

あの西洋の三枚舌の国によってさらけ出されたそれは、同情を買っていたものから一転して、世界を危機に陥れたとして捕らえられた。

 

だが、日本もその片棒を担がされようとしていた。中国の証言から導き出されたのは、日本でそれを手に入れたという事で要するに、ゲートの向こうの物を持ち込んだのではないかという事となった為に、日本にも矢が向けられたのだ。

 

確かに日本から来たのは間違いないだろう、監督不行き届きであるからだが、忘れてはならない事はゲートは日本の意思で開いた訳ではないこと。

 

だから、日本の言い分はこうなった。ゲートを開いたのは向こうの帝国と言う国だ、なら文句は向こうにお願いする。

事実上のゲートの国際管理を認める形となったのだが、あんな化け物がいる世界に人を送り込もうとする勇気が有る国は存在しなかった。

 

日本の主張する権利は概ね護られると言う結果になったが、帝国への憎悪は無くなってはいない。

その矛先は、皇帝へと向けられる。現皇帝のピニャは、それを聞いた時、卒倒しそうになった。

 

そして、決断に迫られたのだ。国の命か自分の命か、それともゲート開門の令は発布した、父の命か。

当然の事ながら、当時の自分に全責任を負う程のものはなかった。

 

蜥蜴の尻尾切りをするしかない状態と言えば良い、元老も自分を支持するだろうと考えた。

そして、実の父を手に賭けた。国民の命が大事、例え自分が死んだ後何と言われようと、年寄りに任せるよりかはまだましだろう。

 

その決定の数日後には刑が執行され、モルト前皇帝はその命と引き換えに、異世界の憎悪を背負って死んだ。

だが、本当の元凶を地球も帝国も知らない。

知るのはごく一部のみ。

その元凶は今、寿命を迎えつつある。

 

自衛隊の医務室のベッドに横たわる嗄れた老人。嘗ての面影もなく横たわるそれは、ウェルスだ。

始まりの火と共に消える筈だったダークソウル。その最初の種火、それをひたすらに吸収し続けたソウルのよって誤魔化し続けたものは、力を使い果たし見るも無惨なものとなる。

 

だが、彼にとっては良いことなのではないだろうか?無限に続く時間と言う名の地獄からやっと抜け出せたのだ。彼の友も家族ももはや何処にもいない。

 

有るのは、自分の血と神々の血が混じりあった、異世界に逃げた子供達だけ。

余生を過ごすには充分だろう、彼はベッドの上からただ太陽を見る永遠に続くかの如く光るそれが、寿命を迎えることを彼は知っている。だからこそ、それを偉大に感じるのだろう。

 

 

《ピニャの苦難》

 

アリス、彼女が帰って来た。そう聞いた妾は、執務等ほっぽりだして彼女の安否を急いで確認しに行った。

そこにいた彼女は酷く疲れた顔をしていたが、私の知る彼女がそこにいた。

 

おまけに・玉ねぎ騎士・バケツ剣士それと見たことの無い立派な騎士が共にいたのは少々驚いたが、彼女の安全が確認されたときの妾は人の目など気にせず、彼女に抱きついていた。

 

そのときは、本当に安堵したものだ。なのにあんなことになろうとは、露とも知らずにいた。

アリスが帰還して20日ほどたった頃だろうか、自衛隊、いや日本国からある書簡が届いた。

 

その中身を見るに、妾は頭が白くなる思いだった。内容を端的に言えば、『我々の世界で未曾有の大災害があった、それはお前達がゲートを開いたせいだ。だから、賠償を要求する』そんなことだった。

 

だが、そこに書いてある金額に目を通せば通すほど、頭が可笑しいのでは、と思える。

帝国の数百年分の賠償を払えと書かれていれば、どうすることも出来ない。払える訳がないのだ。

 

このままでは、国どころか民まで死ぬ。そうなれば最後だ。だから、妾は何としてもこの条件を何かで肩代わり出来ないかと、外交官と直接に話し条件を飲んだ。

 

恐らく妾は後世に身内を裏切った、裏切り者として名を残すだろうが、それでも良い。

父上の命、そして多くの交戦派の貴族達の命で国が残るのならば、私はその泥を被ろう!

それしか、方法は無いじゃないか…。

 

今日も夕日が沈む、誰かが執務室の扉を叩いた。

アリスが、私の元に来たのだ。何だろうか、聞いたら私の頭を撫でてくれた。自然と涙が溢れた、あぁ、辛い本当に味方は誰もいないんじゃないかと思うほどに。

 

だけど、こうして今も私と共に来てくれる者たちは確かにおるのだろう。薔薇騎士団の面々との顔合わせは少なくなろうとも、きっと私と共にある。

 

そんな事があった後、アリスが私に話をした。私の元を離れ、灰の大陸へ行くと言う、今回の顛末の元を探すためだと。

危険すぎると言ったが、聞く耳持たず。彼女がこんなにもわがままを言ったのを私は初めて聞いた。そんな彼女の人生を私が決めるわけには行かないか、渋々許可を出す。

 

また別れだが、永遠の別れではない。いつか再び合える日を楽しみに待とう。ああ、日が昇るまた朝が来る。

 

 

《アリスの探求》

 

あの戦いから早一月あまり、私はあの世界の事を灰の大陸の事をもっと知りたくなっていた。

あのウェルスや、上級騎士、バルドさんやソラールさん達が旅をした世界。

 

私達が産まれるよりも遥かに昔の世界。

もしかしたら、私はその事を探索して世界に伝えるために産まれてきたのかもしれない。

自惚れてるのかなぁ。

 

でも、きっとこの大地にはまだ残ってる筈だ。あのウェルスが護りたかった人たちの痕跡が、上級騎士が守ろうとした生活が、忘れ去られた物語が。

 

だから私は旅に出る、それが異邦人である私の中にあるもの、でもやっぱりピニャが心配だなぁ。

お父上の処刑から始まる国家運営なんて、逆境の中にあるから。

 

その中に私が出来ることは無いけど、でも彼女には彼女を補佐する人達が大勢いるから…。

例え私の事を忘れても私はいっこうに構わない。

だから、私は三人を連れてファルマートを出てここに立つ。

目の前に広がる灰色の大地に一歩、歩き出す。




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第43話 道をたどり、教えを辿る

ウェルスがエルフの残した印を探し、輪の都へとやって来た頃。

何やら大きなソウルの激突があったと言う痕跡を見つけた。

 

辺りには枯れた小人の王達だったもの等が、横たわり今もなお助けを求めている。何と哀れなものだろうか、籠の中に入れられ、自らを研ぎ澄まそうとしないもの達の末路は、自分の子孫達であろうとは思えなかった。

 

それよりも、彼等からはダークソウルが少量しか感じない。何かに取られたか?まあ、どうでも良い事だそれよりもあの子達の痕跡を探さねば、あ?そうだ、こんなところに有るわけがない、あの子達はここに来たことは無かったからな。

 

絵師が顔料を採りに来たか?こんなにも無様な死に様、本当に腑抜けた奴らだ。

ウェルスはその後、輪の都から去り再びファルマートへと赴く。

だが、やはり彼には見付けられない。まるで、何かが彼女等を隠しているかのように。

 

下手に力を使えば世界が滅び、神々と全面戦争となると思っていた。

 

だが、よくよく見れば神々の気配はない、いったい何処へと行ったのか皆目検討も付かず痕跡探しを続けていく。

 

ウェルス、名も無き小さな人。神話から削り取られたそれは、時間の流れによって伝承すら失われ。

彼自身の精神すら磨耗し、今や探すだけの亡者となりしもの。

 

その心には、我が子同然の者たちと、嘗て世界を探して回ったグウィネヴィアの事だけが頭にあった。

もしも、見つけたならば彼はそれに依存するか、嘗ての自分を取り戻すだろうか?

 

 

《帝国・皇帝ピニャ》

 

彼女が出立してからもう2月、時間と言うのは本当に流れるのが早い。

その間、日本からの損害賠償の請求に四苦八苦し、何とか土地の売買で事なきを得た。

 

どうやら父上の処刑が効果があったようで、なんとも言えない顔をしてこちらを哀れんでいた。

そのお陰か、賠償金も半分以下になり向こうの世界の多くの国が納得してくれたようだ。

たぶん我々に構っている時間がないだけかもしれないが、それでもそれでよかった。

 

我が国が他国の食い物とされるのは本当に心が痛むから、どうやっても技術、人口は我々に勝ち目はない。唯一の拠り所の魔術しか我々にアドバンテージは存在しない、それも今や必要かどうかと言うものだ。

 

だが、そこに新たな風が吹いてきた。ソウルの業と言う古い魔法の類いだと言う。

それは、どれ程強固な鎧を纏おうと魂そのものを喰らい尽くそうとし、体内から破壊すると言うものだ。

 

どういう理屈で表れたのか定かではないが、ここ数ヵ月の間に、帝国内で一部であるが広がりを見せつつある。

その中心人物は、あのルルドの民のレレイという少女。

 

彼女がそれを広めているという。最もそれは善意であろうが、少なくともそれが軍事利用することが出来るのは確かだ。

だが、懸念事項として向こう側も同じように研究している可能性がある。

 

そうなったら、人口が多い向こう側の有利が覆ることは無いのだろう。

やはり友好関係を築く事が先決だろうか?だが、それでも一方的に搾取されるだけではダメだ。

一刻も早く対等な立場での条約締結をしなければ。

 

 

《国連》

戦いが終息し、賠償請求等の事を淡々と進めていき。国連内部は久々に緩い空気が流れていた。

それと言うのも今回の戦闘に託つけて、常任理事国を見事に国連の傘下に押さえ込み、アフリカ等の中小国を完全に呑み込んでいた。

 

実質巨大な一つの国家として少しずつ動き始めようともしている。

それもこれもみんな、闇霊のお陰というもの。国連の権威と権力が増大したのは各国の政府があまりにも対応が後手後手に回ったことによる、反感から来るものだった。

 

それに対して国連は現時点で強権的な男がトップとなり、強引に纏め上げた。議会制民主主義に反する行為をしているが、大混乱の中それは逆に良い方向へと移った。

 

大企業の重鎮達は我先に国連へと助けを請い、今までにないくらい国連は潤っている。

もう、何処の国の顔を見なくても良い、立派な国際組織となった。

 

それに対して、日本は意外とその傘下へは収まっていなかった。

ゲートの件もさることながら、何と闇霊の出現率がそれほど高くなかったのだ。

 

これは単に日本に殺人を根差した犯罪組織が少ないことが上がっている。(闇霊はソウルを多く持ってるやつの場所に現れる。)

そういうところは良いことだった。

 

国連とすれば、何とか傘下に組み込みたい。そしてゲートの向こうを覗きたい、強引にやれば離反が発生するかもしれない。

故に強引には行かない、だからある方法を使った。

 

それは国連憲章の見直しと、国連の解体と再編成だった。この組織は国連の権力を更に強化したもの、その名も地球連邦。

安直な名だが、覚えやすい。何より、世界を一つにという上っ面のスローガンも強固に出来る。

 

これに賛同しない国は、世界からどう思われるだろうか。少なくとも友好にはなれない。

だから日本は条件付きでの加入となる、ここに地球連邦極東管区、日本行政区が誕生する。

 

日本のつけた条件は3つ、天皇の地位、独自の三権分立の保証、ゲート内部の向こう99年間の委任統治だった。

国連は即座に受け入れた。99年など幾らでも誤魔化しがきく、地球連邦となった後じっくりと年数を減らせば良いと。

 

 

《手記》

 

地球側がそうなっていると露知らずに、自衛隊は今日も訓練に明け暮れている。

だが、その日は少し違った。

 

老衰したウェルスが覚醒した、起きた瞬間に若返りベッドから起き上がり質問を投げ掛けた。

 

あれから何日たったのかと、それと同時に自らの手を刃物で切りつけた。手からは血が流れ出でている。

だが、その色は黒ではない、普通の人間と同じ赤い色。傷は直ぐ様治癒の魔術で修復したが、失っていた痛みが残った。

 

彼にダークソウルは、無くなっていた。種火は消え継ぎ火だけが残った世界。

ウェルスは、古い力を取り戻した。

そして、最初に行ったことは。自衛隊、いやアルヌスに住む人々へ、ソウルの業を教授することだった。

 

いったい何が彼にそうさせたのか、今では誰にも解らない。だが、一つだけ解ることは、彼が何かしらの考えの元動いていたことだろうか。

 

元々、彼自身王という存在であったがゆえに、もしかすると自分の嘗ての国民達を想起させた可能性はある。

彼の記録の中には、四人は導くものというものがあった。

 

彼等が世界に現れたとき、既にボーレタリアは存在した。だが、それは遺跡と言う形でだ。最初の四匹は、ソウルの業を見出だし後から来たもの達へと、教えを説いた。それを思い出したのかもしれない。

 

そして、彼がソウルの業を教え初めてから自衛隊の戦力は大きくなった。

偶然かどうかは解らないが、不死人達が使用する奇跡と言うものに近い魔術を地球側から来た人々は良く使え。

 

特地、つまりこの世界の住人は魔術を覚えやすい傾向にあった。それは勿論私も含めてだ。

 

バルドやソラール、そして上級騎士共に旅をする私は彼等からは多くの事を学び命の尊さと、不死の残酷さを知った。世界がどうなるのか、私には解らない。だけど、きっと争いは無くならないし、多くの命は消えていく。それでも星は巡り、時は刻まれる。

 

灰だらけの大地にも花が咲き始めているのだから。

 

 

《数年後・灰の大陸新街・ヤーナム》

 

そこにいる人々は有るものを見付けた。それはそれは美しく光る大きな力を宿す、暗い何かの魂のようなものだった。

偶然にもそれを聞いた魔導師が研究を行い、それが何かと突き止めようとした。

 

それを調べあげると、アルヌスを中心に広がり始めた者と良くにていることに気がつく。

魔導師はそれを自らの功績として、都の人々はその力を受け入れる。

世界にソウルの業が広まり始めていたが、それはとても異常なものだった。

 

 




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最終話 燃え跡からやがて芽が出る

ウェルスがファルマートに戻り数万年の時が流れた。それでもエルフは、見つからない。

それは、もはや隠されていることを疑い様の無い程に、彼は頼みの綱であるこの土地の神々を探した。

 

だが、神々ですら姿を現さない。困り果てたとき、ふと他の生き物とは違う、生命と神々のソウルが混じった異質な存在の気配を感じた。大陸初の亜神の誕生である。

 

異様な気配を辿ってウェルスはそれに近づこうとする、もしかすると何かしらの鍵となるかもしれないと。

だが、何て事はないただの神に昇華されるだけで、特別なこともない。

 

だが、これにより神々が肉体を放棄した事を感じどうにかして、器に納めようと躍起になったようだ。

だが、彼にそんな事は出来なかった。

元より彼は魔術師ではない、もしもグウィンやイザリスのように、自らのオリジナルを造ることが出来るのならば、話は違ったのだろう。それでも数千年足掻いたようだ。

 

そうこうしている内に、嘗て空からの使者を打ち倒した丘で、またもやおかしな事が起きていた。

ここ数百年の内に急激に領土を拡大した帝国が、別の世界への扉を開いたらしい。

 

だが、あの矮小なる生き物にそのような技術が有るだろうか?いや、無い。

そこで、帝国へと向け、アルヌスへ向け歩みを進めた。だが、途中で有ることが起こった、何故彼がそうしたのかは解らないが、彼は襲われている村に立ち寄った。

 

そこで、何を思ったのか賊を打ち払い、村人を救った。

それが、彼にどんな良いことが起こるかと言えば、無いが。それでも、彼の中の記憶がそうさせたのではないだろうか?

 

もし、そうなのだとしたら。彼は根っからの善人だったのだろう、しかも極端な程に。

どんなに脅し文句を吐いたとしても、それは心の底からではない。

 

どれ程どうでも良いと思っていても、何処かでそれを否定する。そんな人物だったのだろう、そして神々はそんな彼を救いたかったのかもしれない。

でなければ、エルフを匿ったりしないし、気配を消したりもしない。

 

執着しすぎた彼を救うにはそれしか無かったのだろう。

彼は、歴史の表舞台から消えていても爪痕を残す、それはまだ世界が始まる前から変わらない。

いや、爪痕を残すのではなくきっと消されてしまっただけなのかもしれない。

 

私達は彼の子供達ではないけれど、それでも彼の意思を継ぐことは出来るだろう。

だけどね、彼の意思など誰も知らない。それでも良いのかもしれない、きっとこう言うだろう『老兵はただ去るのみ』と。

 

彼の消息は誰にも解らない、1人の英雄は誰も知らない王である。四人の始まりの内の一人である。

 

 

アリス・コ・メドッソ 著

 

~始まりの王達の物語~ 暗き光の王の章

 

 

《20年後》

 

ファルマート大陸にある帝国は非常に優秀な女帝の手により、腐敗と退廃を一掃し頑強な足掛かりを作り安定した国家を作り出した。

 

これは、単にゲートの向こう側の政府、日本と言う国に対抗するための庶民族の引き締めと言った側面が多かった。

 

どれ程までに技術的な広がりがあるのか、彼女は誰よりも理解しそしてそれを時には逆手にとり、日本らしい『強引な方法を用いない』外交をその身で押さえていた。

 

そして技術、特に兵器の分野においてある技術によって、その差を僅かであるが埋めた。

その技術は、ソウルの業と言われそれを扱った魔術は、物理的なものよりも(ソウル)そのものに直接的にダメージを負わす事を確立した。

 

どれ程強固な鎧を纏おうと、それを無視してソウルの魔術は他を傷つけた。

それは、戦車に対しても例外ではない。

 

地球でも嘗ての深淵との戦いのおり、ソウルの魔術によって幾千のもの達が死んでいった。

 

それを彼女は主戦力に組み込み、己の力とした。惜しむらくは彼女には、子供がいないと言うことだけだろう。

最もそれも、実の兄であるディアボの子を後継者として擁立するようであるから、存外気にしていない様子だ。

 

ただ、嘗ての識者によると嘗ての彼女の面影はなく、正しく鉄の女とでも言えるのだとか。

色眼鏡で見てはならないが、これからも私達と帝国の関係は続いていくだろう。だが、果たして日本にはどれ程の時間が残されているのか。

 

~ジャーナリスト・望月紀子~

 

 

地球、特にここ日本では新たな試みが行われていた。魔法、嘗て深淵との戦争の折りウェルスの手により与えられたもの、その一端である奇跡。

それは非常に強烈なものをもたらした。奇跡は魔術と異なり、学術的なものではないその神の物語と信仰心によって、力を発揮するものであった。

 

実際は火の時代以前の魔術であるから、学術的に証明しようとするもの達がこちらでも表れ、体系化されつつあった。

特に顕著であったものが、医療分野である。

 

他社を癒す太陽の光のような温もりは、実に多くの救われない命を救い、その恩恵を確実に日本は受けていた。

不治の病と呼ばれた癌も、間接などが完全に磨り減ってしまったものも、筋肉が骨へ変わってしまう大病も全てを癒すものであったからだ。

 

ここ20年で日本の医療は飛躍的に向上し、今では無くてはならないものと言えるだろう。

医療分野での発達は実に良いものだが、物事には裏と言うものが存在する。

 

元が古い魔術であった奇跡、それを会得したが為に兵器への転用も視野に入れられた。具現化した雷を固定したもの投射する。それが、雷の槍だった。

だが、もしこれを小型化しより連射の効くものとしたら、きっと対人様の兵器としては実に良いものとなるだろう。

 

何せ弾薬の重量が可能な限り0に近い、と言うものはものの扱いがしやすいことに起因する。

 

更には、ゲートの向こう側の過去の技術。核融合の実現に最も近づけるもの。太陽そのものの力、それを安定供給したもの、『始まりの火』それを研究するもの達が現れた。

 

地球世界は人口があまりにも多い、多くの研究者がそれを行えばきっと数十年の内にやりとげられると思われるが、今は研究は活発ではない。

 

~特地由来技術レポート~

 

 

ああ、この大地に足を踏み入れるのは久しぶりだ。灰だらけの我が故郷、その地下深くにある古都。

ボーレタリア、我が故郷何者も存在しない場所に四人だけがそこにいた。

 

四人はそれぞれ知能を持ち、各々の出来ることをして助け合った。懐かしい日々が甦る。

だが、それも今日までだ。もう、私の出る幕ではない時代は灰の時代ではない。火の時代でも無い。

 

生命の時代、嘘偽り無き現実の時代。我らの生きた時代とは違う血のかよった、暖かな時代。

私はここに座して、己の内にある火に息を吹き掛ける。

 

火は揺らめき煙を出さずに消えていく。

それで良い、もう灰は積もらない、火の時代は終わった。最後の火は消えた。私はもうここから出られない。

 

朽ちるの待つのみ…指輪は別たれ私の正面と左右に別れる。幻影が見えた、グウィン、イザリス、ニトお前達の分まで私は生きた。もう、おしまいさ今そちらへ行く。

 

 

ボスッと音が辺りに響いた。そこに合ったのは、朽ちた鎧と灰だけ。

だが、照らされていないそこには、確かに光があった。

 

やがて大地は何かを祝福するかのよう緑が急速に戻りは始めた。

それはきっと四人の願いだったのだろう。




これで、この連載を終了とさせていただきます。
今まで読んでくださった方々誠にありがとうございました。
新連載が決まりましたら、また報告させていただきます。


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