四木虹夢の日常は真日常 (サウザンドピース)
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第1記 出会い/new daily and destiny

このサイトでは初めてのオリジナル小説をやっと投稿!


チッ…チッ…チッ…

 

時計の針が動く音が静かに響きわたる、この空虚な空間に一人、

悲しげに何かを見つめるようにしている男が立ちすくしていた…

 

まあ、こんな感じでいいか。始まり方は。

どうも皆さん、はじめまして。私は『謎のモノ(仮)』だ。

早速意味わかんねえやつ来たなと思っているだろうが、

今は特に気にしないでもらいたい。

因みに、最初の文は適当なので大体嘘である。

……無駄話はここまでにしといて、

まずはこの小説を手にとっていただき、ありがとうございまするm(_ _)m

この物語は記憶喪失の少年が、自身の存在意義や進むべき道、

そして力を持つ意味に対する答えを探す物語です。

予定では半分ほどは『日常』となります。もう半分は『戦い』ですね。

『日常』と『戦い』、この二つを体感していく中で、

彼はどんな答えにたどり着くか……それは、貴方方の目でお確かめください。

それでは! 物語の中へ。READY、GO!!

 

 

 


 

 

 

西暦2314年12月

 

神奈川県の海に近い地域に存在する開発都市、天原市(あまはらし)に存在する海辺。

そこで銀髪の少年が穏やかにさざ波をうつ海を眺めていた。

 

「・・・綺麗だなぁ」

 

「おーいボウズ! そろそろ店、開けるぞー!」

 

しばらくすると、海近くの中華料理店の方から少年を呼ぶ声が。

少年が振り返ると店長と思われる男性が店から出て少年を手招きしていた。

 

「わかった!」

 

それに気づいた少年はすぐさま立ち上がり店主の元へ向かう。

 

ごぽぽっ……

 

「ん?」

 

その途中、泡が破裂するような音を聞いた気がした少年は、

つい立ち止まり振り返って海を見る。

しかし、水面には波紋はあるものの、音の原因はどこにも存在しなかった。

 

「どうした? ボウズ」

 

急に少年が立ち止まって海の方を見たために、店主が心配するように声をかける。

それに気づいた少年が再び店主の方へ振り向き、「なんでもない」とかぶりを振る。

だがその直後、思い出したように「あ、けど一つ」と付け加え、

 

「俺の名前、坊主、じゃなくて、()()(こう)()、だから」

 

そう店主に笑って告げた。そう、四木虹夢(しきこうむ)。それが少年の名だ。

 

 

 

ーー中華料理店 ヒロモトーー

 

「ほいもやし味噌ラーメンお持ちぃ!」

 

「すいませーん。餃子追加おねがいしまーす」

 

「はい餃子追加!」

 

所変わってここは中華料理店ヒロモト。

先ほど虹夢に声をかけていた店主が経営している料理店である。

因みに今はお昼時であるため、それなりに客が多い。

 

「おい坊主! 9番テーブルに餃子!」

 

「はーい」

 

虹夢はここで働かせてもらっている。年齢は今年で14歳。

我々が知る日本の法律では14歳ではアルバイト等はできないが、

店主のご厚意というものもあり、働かせてもらっている。

実は他にも理由はあるのだが、今は話せない。

 

「おーいそこの君!」

 

店の奥側、厨房に近い20番テーブルの方から呼ぶ声を聞いた虹夢は、

「何だろう?」と思いつつも、すぐさまそのテーブルへ向かう。

席に座っていたのはフードを被った男性二人。

一人はどことなく暗い雰囲気を漂わせていて、

もう一人はフードから覗く端整な顔立ちと、細身な体により女性にも見える風貌だ。

どうやら先ほど虹夢を読んだのはこの女性ぽさを持つ男性らしい。

 

「え〜と……あ、お待たせしました。ご用は?」

 

「注文頼めるかな? 中華そば一つメンマ多め」

 

「あ、はいわか……かしこまりました」

 

最初と途中で決まり文句を忘れたり間違えかけたりしながらもしっかり対応する虹夢。

因みにこの時、「場所的に近いのおじさんなのに、

なんで注文しないんだろう」と少しは思っていたらしい。

そうして注文を店主に伝えようと虹夢が席から離れた時、

女性ぽさを持つ男性が暗い雰囲気の男性に話かけた。

 

「そういえば最近ここら辺で海賊みたいなやつが暴れているらしいぜ」

 

「ほうほう」

 

「なんでも海から現れては人が困るようなことを毎回行っているんだとか」

 

「ほー」

 

(……何を話てんだろう)

 

偶々聞いてしまった為に、虹夢は話の内容が少し気になった。

曰く海賊が海から出て来て悪さをしているとか。

 

(海賊……テレビくらいでしか聞かないけど本当にいるのかなぁ)

 

そんな他愛の無いことを思いつつも虹夢は店長に注文を伝えた。

 

 

 

ーー数時間後ーー

 

「お、ボウズ、そろそろ上がりだ」

 

「ん、了解」

 

数時間後、虹夢の勤務終了時刻になったようで、店主は虹夢に上がるように促す。

虹夢は頷くとすぐに帰り支度を済ませた。

 

「ほら、いつものだ」

 

そういって店主は虹夢に野菜などが入った袋を渡す。

これが給料の代わりだ。

 

「ありがとう、おじさん。じゃあ、また明日」

 

袋を受け取ると、虹夢は店主にお礼を言って帰路についた。

 

「……海賊、か」

 

道中、虹夢は海を見てさきほど男性たちが話していた噂を思い出した。

 

「そういえばおじさん、最近ここらへんで変なものを見たっていう噂を聞いたって言ったような……ま、いっか」

 

店主も似たようなことを聞いていたことを思い出し、少し噂について考えてみたが、すぐに気にしなくなった。

 

「いやいや、もうちょっと考えてみようぜ」

 

と、その時、後ろから声がしたような気がした虹夢は後ろを向いてみる、だがそこにはだれもいない。

 

「どこみてるんだよ、こっちだこっち」

 

今度はもっとはっきりした声を虹夢は聞いた。

その声は上から聞こえていた。

少し驚きつつも虹夢は上を向く。

そこには、各部が尖っており、光沢のような輝きを放つ体を持つ、赤目の黒いコウモリであった。

その大きさはかなりでかい。明らかに手の平サイズは超えている。

 

「……。……えっと」

 

「おっと、こういう時は、君かおまえは? だろ?」

 

虹夢はコウモリに対して、何か言おうとしたが、

どんなことを言えばいいかわからず困り果てた。

それに気づいたコウモリはすかさずフォローする。

 

「あ、じゃあ……お、おまえは?」

 

「あ、そっち選ぶのね。なんか今の感じと合わねえなぁ……まあいいや」

 

虹夢が選んだのはおまえ呼び。虹夢がそっちを選択したことに驚いている様子のコウモリ。

意外と思いつつも話を切り出す。

 

「俺の名はシザーバット、気前のいい便利な配下コウモリだ! おまえが知りたいこと、教えてやるよ!」

 

「気前の、いい?」

 

「おいなんでそこ疑問符なんだよおかしいだろ」

 

コウモリ、シザーバットは自己紹介すると同時に、

虹夢に疑問に思っていることに答えてやるというがそこの部分はスルーされ、

自己紹介の際に言った気前のよいの部分に疑問符を浮かべられていた。

さすがにキレかけ寸前のシザーバットだが、ここは落ち着いて、丁寧に突っ込みをする。

 

「あ、そういえば、知りたいこと、教えてくれるって今言った?」

 

「あ、うん。言った」

 

少しのタイムラグで虹夢はシザーバットの発言を理解する。

その瞬間シザーバットは、「こいつめんどくせえなぁ」、と思ったようである。

そしてシザーバットはようやく本題を話し始める。

 

「俺についていけば、今巷で噂になっている海賊について教えてくれるやつに会えるぜ。ほら、どうする?」

 

「……うーん」

 

「え、悩む?」

 

曰く、シザーバットは噂について教えてくれるものに会わせてくれるそうだ。

それを聞いた虹夢は少し考える素振りを見せる。

 

「うーん……よし、行く!」

 

しばらく考え込んだ後、決心したのか、シザーバットに行くと告げる虹夢。

それを聞いたシザーバットは、ようやくか、

という思いもこめたため息を吐くと、虹夢の眼下まで降下し、こう告げた。

 

「じゃ、手を出しな」

 

それを聞いた虹夢はすぐに両手を差し出す。

 

「いや両手じゃなくていいんだけどな、まあいい、か!」

 

ガブっ

 

次の瞬間、

 

虹 夢 の 手 に シ ザ ー バ ッ ト が 噛 み 付 い た

 

「……え!?」

 

素っ頓狂な声を出した驚愕と共に唖然とする虹夢。

少しして事態の深刻さに気づいたのか、シザーバットが噛み付いている両手をブンブン振り始めた。

めっちゃわああああああって叫びながら振り回すが、

シザーバットは

トウロクチュウ、トウロクチュウ、シバラクオマチクダさいwwww

と機械的なセリフ(笑い声まじり)を口ずさんでいる。

5分くらいたった所でようやくシザーバットは虹夢の手を離した。

 

「ふう、よし、契約完了」

 

「はあ、はあ……ちょっと、おまえ……」

 

虹夢がさきほどのことについて抗議しようとしたその時、

シザーバットは契約完了と呟いた。

その瞬間、光があたりを満たす。光は虹夢とシザーバットを包み込む。

 

「うわっ!」

 

「さあさあ、雷竜のまつ天空へ、レッツラゴー!」

 

ギュン!

 

……光が収まると、そこには人の姿はなく、

直前まで虹夢が提げていた袋だけがそこにあった。

 

 

「あれ、ここは?」

 

虹夢が目を覚ますと、そこはまるで雲の上かのような空間であった。

あたりは不思議なまでに光で満ちているが、

遠くを見てみると電気を帯びている所も存在するようだ。

 

「ここは雷龍が時を待つ場所。天空に存在する隠れされし場所さ」

 

虹夢の横でシザーバットが解説する。

 

「……ここにあの話について教えてくれる人がいるの?」

 

「あ、解説スルー? まあいいけど」

 

さりげなく解説をスルーされたことを気にするシザーバット。

すぐに気を戻し、虹夢の質問を肯定する。

 

「ああそうだ。だけど一つだけ訂正しよう。それは」

 

ズドン…!

 

直後、虹夢の後ろで巨大な、何かが落ちてくるような鈍い音が響く。

虹夢は気になったのか後ろを振り返る。そこには

 

「人じゃなくて、竜でした⭐︎」

 

そこには、背中に斧の形状をした翼を持ち、腕にカッターのようなものをつけた、黄金の竜の姿が。

 

「おまえか、シザーバットに選ばれし者は?」

 

龍はぎょろりと目を虹夢へ動かすと、虹夢に語りかける。

 

「え、選んだって?」

 

一方、虹夢は一切状況が掴めていない。困惑している。

そこに拍車をかけるように、黄金の竜は虹夢に腕をゆっくりと振り下ろす。

 

「ちょ、ちょま!?」

 

虹夢はそこから飛び退いて腕を避けた。

 

「あ、危な!?」

 

いきなりの攻撃に、より一層困惑し、同時に焦燥し始める虹夢。

そんなことは御構い無しかのごとく、黄金の龍は再び虹夢へと腕を伸ばす。

それを見た虹夢は流石にやばいと思いその場から逃げる。

 

ヒュン ズドン……!

 

「え?」

 

しかし次の瞬間、黄金の龍が消えたかと思うと逃げた先に雷を伴って現れた。

 

「うそ!?」

 

驚く虹夢。そんな彼の前にシザーバットがパタパタと飛んでくる。

 

「ほらほら、早く戦わんと死んじまうぜ〜」

 

そういってシザーバットは剣へと変形し、虹夢は剣になったシザーバットを手に取る。

 

「戦えってどうやって!」

 

「適当」

 

「えーー!? あーもうどうにでもなれ!」

 

いきなり戦えと言われ戸惑っている虹夢の叫びを文字通り適当に流すシザーバット。

それにより更に戸惑う虹夢。最終的には剣になったシザーバットを強く握り、黄金の龍に向かって駆け出す。

自身に向かってくる虹夢に、黄金の龍は右腕のカッターを振り下ろす。

 

「……っ!」

 

どんどんと迫り来るカッターを、虹夢は右に飛び退いて回避する。

 

「!!」

 

カッターを避けられたことに黄金の龍は驚く。

齢14歳程度のものでは到底避けることはできない速度で放った攻撃だったからだ。

 

「よっと!」

 

そしてカッターを避けた虹夢は黄金の龍の腕に乗り、それを伝って龍の頭を目指す。

龍は自らの腕を伝って登ってくる虹夢を落とそうと左腕で攻撃する。

だが、虹夢はその攻撃さえも回避し、バランスを崩しかけながらも左腕に着地、再び頭に向けて走り出す。

しかし龍もそのまま動かないわけも無く、左腕を大きく振って虹夢を振り払う。

 

「いっ!!?」

 

流石にこれはどうしようもなく、虹夢は大きく吹き飛ぶ…はずだったが、

シザーバットがコウモリ状態に戻り、虹夢を掴んで飛翔したため、

地面には落ちず、更には龍の頭を狙える位置まで移動していた。

 

「! よし!」

 

バンバン

 

それに気づいた虹夢は、攻撃を仕掛けるため、シザーバットに剣になってもらうとバンバンと叩く。

が、シザーバットはまったく反応しない。

 

「う、さっきのに戻って!」

 

「え? ああはいはい」

 

反応されなかったことに少しムッとする虹夢だが、

すぐに気を取り直し、剣の形になるようシザーバットに求める。

それでようやく反応したシザーバットは変形し、剣へと変わった。

剣に変わったシザーバットを再び握り、虹夢は龍の頭を目掛けてその刃をふり下ろす!

 

「ハアアアーーーーーーーーーー!!」

 

渾身の力を入れこめた虹夢の一撃は、まっすぐ龍の頭に向かい、直撃する。

 

キィィーーーーーーーーーーーン……

 

しかし、通常の武器ではないとはいえ、巨大な龍にはダメージは入らず、

逆に硬いものを思い切り殴ったかのような衝撃に襲われ、虹夢はポトっと地面に落ちた。

 

「あ、あれ?」

 

なんか避けたあたりから行けそうと思っていた虹夢だが

、全然敵わず、どうして? という感じで困惑している。

龍はそんな虹夢を見てため息を吐き、「まあ十分か。」と呟いた。

 

「試練はここまでだ」

 

龍は虹夢にそう言った。

それを聞いた虹夢は頭に?を浮かべながら龍の方を向く。

“試練”という言葉に疑問を持ったようだ。

 

「試していたのさ、おまえのことを」

 

「へ?」

 

シザーバットに試していたと言われ、虹夢は困惑する。

何故そんなことをしたのか。虹夢が必死になって考えていたところ、龍が話を切り出した。

 

「そのことについていう前に、お前が気になっている海賊について話そうか。

まずは“あれ”を見てもらった方がいいか」

 

そう言って龍は虹夢の目の前に自らの前足を、裏を上にして持っていく。

虹夢はその前足の意味が何かわからなかった。

 

「乗れ」

 

乗れ、と言われ、初めて目の前の前足の意味を虹夢は理解し、自分よりも遥かにでかい龍の前足に飛び乗った。

シザーバットもパタパタとその上に移動し、虹夢の隣に降り立つ。

 

「それではしゅっぱーつ」

 

シザーバットが出発と号令をかけた際、龍がお前が仕切るなという感じで一瞬睨みつけたあと、

視線を前に戻して翼を広げる。そして足場になっていた雲に飛び込んだ。

 

「うわ!……!」

 

それにより、一瞬だけ虹夢の視界が白くなる。次に視界が晴れた時、

虹夢の目には、天原市の町並み全体がはっきりと映っていた。

 

「こんなに広かったんだ、ここって」

 

空の上からの、普段見ることのできない光景を見て、虹夢はこの町の広さを実感する。

龍は手の上の虹夢に気を使いながら、旋回して地上へと降りてゆく。

 

「着いたぞ」

 

地上へと着くと、龍は前足を下ろし、虹夢に降りるように促す。

虹夢はすぐにひょいと前足から降り、シザーバットもパタパタと離れた。

 

「あ、ちょうど飛ばされる前の場所だ」

 

どうやら降り立った場所は、転送前にシザーバットと虹夢がいた海が見える道路のようだった。

その証拠にさっき置いていった、店長からもらった食材入りの袋がそこにあった。

 

「…そろそろだな」

 

「え?」

 

龍がそろそろと呟いた時、道路から見える海から、バッシャーンと大きな音を上げて人型の怪物が出て来た。

 

「ふふふ、さて、今日は何をしてやろうかな。このデントリー様のフックの餌食になるものはいないか〜?」

 

人型の怪物、怪人“デントリー”はまるで水でできているかのような見た目で、左手はフックとなっており、

右手には剣を持ち、背中にはアンテナがついた機械を背負っていた。

 

「何あれ?」

 

「あれが、海賊の正体だ」

 

「海賊? あれが?」

 

怪人を見た虹夢は呟いた。龍は怪人を海賊と呼んだ。

 

「それでお前にやってもらいたいのは、奴らを倒すことだ」

 

目の前の怪人が海賊ということをまだ信じていない虹夢。

テレビで出てくる海賊とは全く違ったからだろう。

戸惑っている虹夢に、龍はとんでもないことを言った。奴らを倒せと。

そう言われた虹夢は「は!?」と驚きながら龍を向き、更に戸惑う。

龍は虹夢が戸惑っていることに気がついてはいるがあえてスルーし、

掌に雷を集め、そうしてできた雷の玉を虹夢へと送る。

玉は虹夢へと向かい、虹夢が触れると破裂、中から、

今ここにいる龍の姿を模ったような形で、中央にギターのように弦が貼られている剣と、

英語で『Lightning dragon』と刻まれた黄色いディスクが出てきた。

虹夢はそれを手に取る。

 

「これは…」

 

「それは俺の力を存分に使うための武器、『迅雷龍突牙(じんらいりゅうとつが)』と俺の力が刻まれた円盤『交輝(こうき)レコード』だ」

 

虹夢が手に取った武器を眺めていると、龍が武器の名前を告げた。

 

「それを使って、戦え」

 

「え!? でもどうやって…」

 

龍は迅雷龍突牙を使って戦えと虹夢に言う。いきなり言われた虹夢は混乱するしかない。

 

「ん、人発見!」

 

そうこうしている間に、デントリーが虹夢達に気づき、虹夢達に向けて走り出した。

 

「来るぞ! 交輝レコードを迅雷龍突牙に入れろ!」

 

デントリーが接近してくるのと同時に、龍は虹夢に、迅雷龍突牙に交輝レコードをいれるように叫んだ。

 

「く、今日二回目な気がするけど…もうどうにでもなれ!」

 

やるしかないと悟った虹夢は、言われた通り交輝レコードを迅雷龍突牙にセットする。

 

ジジジジビリビリ!!!!

 

「何!?」

 

すると、雷が迅雷龍突牙から発生、虹夢がその雷に包まれる。

そしてそれが消えると、中から姿が変化した虹夢が現れた。

髪は黄色く染まり乱れ気味に、瞳は緑色に。

衣装は和風な銀色の服の上に黄色の陣羽織を羽織ったもので、

衣装の至る所には青で縁取られた金色の雷が入っていた。

首には金色と青混じりの黄色のマフラーが巻きついており、

その先には龍の頭のような飾りがついている。

時折り音を響かせる雷をその身に纏う、勇ましき戦闘形態『雷竜』の誕生である。

 

「これは、いったい…」

 

自らの姿が変化したことに驚きを隠せない虹夢、

何故か先ほどよりかは静かだが、戸惑ってはいる。

 

「ち、姿が変わったところで!」

 

「!」

 

デントリーは変化した虹夢を見て一瞬戸惑うが、再び両手の武器を構えて虹夢へ走り出す。

虹夢も一旦思考を切り替え、目の前の敵に集中することに。

そして迅雷龍突牙を構え、デントリーに向かって飛び出す。

 

「…始まった、始まっちまったよ…」

 

遠く、虹夢達から遠方の建物の屋上にて、中華料理店ヒロモトにいた、

見た感じ女性にも見える風貌の男が、

苦虫を噛みつぶしたかのような、悔しさを滲ませる声で呟いた。

 

「ああ、始まった。新しい『日常』が」

 

そして、どこともわからない暗い空間の中、

自らが持つ小さな画面に映る者達を見つめながら、一人の男が平坦に呟いた。




唐突の質問コーナー!

Q1.あの武器と円盤は誰が作ったんですか?
A1.古代の錬金術士がつくったもの。当時じゃなくてもオーバーテクノロジー。

Q2.武器が全部漢字なのにどうして円盤で横文字が使われているんですか?
A2.錬金術士が英語を見て、「あ、これ組み合わせたらかっこよくね!」的な感じになりああなった。

次回、戦闘。


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第2記 転換/戦いと決意、そして Part1

あまりにも長すぎるのでなろう同様分割して投稿。


前回の超簡単すぎるあらすじ

一、主人公、四木虹夢が海を眺めるところから始まる!

二、虹夢、中華屋ヒロモトで働いてたら海賊の噂を聞く!

三、そこからすったもんだあった末にシザーバットや背中に斧の形をした翼を持ち、

腕にはカッターのようなものがついた、黄金の龍と出会い、

何故か変身して突如現れた怪人と戦うこととなった!

 

「はあ!」

 

海と道路を挟んだ浜辺で、髪は黄色く染まり乱れ気味に、

瞳は緑色の、衣装は青で縁取られた金色の雷が入った、

和風な銀色の服の上に黄色の陣羽織を羽織ったもので、衣装の至る所には、

首には金色と青混じりの黄色のマフラーが巻きついており、

その先には龍の頭のような飾りがついている。

時折り音を響かせる雷をその身に纏う、戦闘形態『雷竜』になった虹夢が、

まるで水でできているかのような見た目で、左手はフックとなっており、

右手には剣を持ち、背中にはアンテナがついた機械を背負っている怪人、

『デントリー』と戦っていた。

虹夢の迅雷竜突牙(じんらいりゅうとつが)と、デントリーの右手の剣同士が、激しく何度もぶつかり合う。

 

「どうした! 遅いぞ!」

 

「くっ…!」

 

しかし、虹夢の方が押され気味のようだ。

変身によって強化はされたが、それでも迅雷竜突牙は重く、

デントリーの剣の方が一瞬早いようだ。

少しずつ、防御が間に合わなくなっていくことに、虹夢は少し焦りを感じ始めた。

 

「迅雷竜突牙を分離させろ!」

 

そんな時、竜が虹夢に向けて叫んだ。

分離、と聞いて迅雷竜突牙を調べようとするが、

デントリーが向かってきているので、

一旦迅雷竜突牙を置いてデントリーに蹴りを入れる。

 

「ぐべ!?」

 

偶然にも顔に入り、デントリーは顔を抑えて数歩後退、膝をつく。

その間に虹夢は迅雷竜突牙を調べ、分割線と、

その近くにスイッチを発見する。虹夢は迷わずそれを押す。

すると迅雷龍突牙が一度バラバラとなってから再度別の形で組み合わさり、

ディスクをセットしているベース部分と、

金色の斧『雷覇翼斧(らいはよくふ)』、金色の弓『雷爪断弓(らいそうだんきゅう)』の三つに分離した。

 

「これでいけってこと…か? まあいいや!」

 

二つの武器を手に取り、竜の意思を汲み取った虹夢は、

雷覇翼斧を右手に、雷爪断弓を左手に構え、デントリーに接近する。

 

「ぬお!?」

 

「でぇや!」

 

急に肉薄されてたじろぐデントリーに、虹夢は雷覇翼斧で斬りかかる。

デントリーは剣でそれを受け止めるが、

すぐに虹夢が放った雷爪断弓による攻撃が飛ぶ。

デントリーはそれを回避できずにもろ喰らう。

そこから更に畳み掛けるように虹夢は両武器を持ってデントリーに攻撃を仕掛けていく。

分離したことで軽くなり、かつ両手に武器を持ったことで、

攻撃速度及び攻撃回数が増え、デントリーが対応しきれなくなっているからだ。

 

(このままではまずい)

 

この状況を好ましく思わなかったデントリーは虹夢の攻撃を弾くと、

後ろに飛んで距離を取ろうとする。

 

「行かせるか!」

 

バヂヂッ ビュン!

 

だが、それを見た虹夢は、一瞬体に電気を走らせたかと思うと、

超スピードを発揮して再びデントリーに接近する。

 

「何!?」

 

これは雷竜の特殊能力、雷を操る力の応用で、

神経系を巡る微細な電磁波の伝わる速さを上げることで、

体の速度を引き上げているのだ。

 

「く、させん!」

 

接近してきた虹夢を迎撃するために剣を振り下ろすデンテリー。

だが虹夢はそれを先程の高速移動で回避し、後ろに回りこんで斬りかかる。

 

「また…!?」

 

「当たれ!」

 

虹夢が後ろに回ったことにデントリーは気づくが既に遅い。

デントリーは防御仕切れず虹夢の斬撃を喰らう。デントリーは再度膝をつく。

 

「当たった…!」

 

初めて攻撃がまともに決まったことに喜ぶ虹夢。

そこにシザーバットがパタパタと飛んでくる。

 

「電撃攻撃に切り替えろ!」

 

「電撃? 切り替え?」

 

シザーバットは虹夢に電撃攻撃に切り替えるように指示するが、

虹夢はよく分からず困惑する。

すると頭に電撃が走り、武器の情報が流れ込んでくる。

 

「…なるほど!」

 

突如頭に走った電撃により、迅雷竜突牙と雷覇翼斧、

雷爪断弓の使い方を知った虹夢は、

両手にそれぞれ持つ雷覇翼斧と雷爪断弓に電撃攻撃に切り替わるように念じる。

すると、両武器に電撃が走る。どうやらこれが切り替わりの証のようだ。

 

「よし!」

 

電撃攻撃状態に切り替わった両武器を構え、

虹夢は体制を立て直そうとしていたデントリーに高速移動で接近し、

電撃をまとった斬撃を決める。

 

「……」

 

しかしデントリーはそれを躱そうとせず、まともにその身で受けた。

そしてその際に電撃は発生、したが全てデントリーの後ろのアンテナがついた装置に集まっていく。

 

「……あれ?」

 

電撃をまとった斬撃が全く効いてないことに驚き、困惑する虹夢。

 

「ふふふ、我に電撃は効かぬぞ」

 

デントリーは得意げに言った。どうやらデントリーは電撃が効かないようだ。

そして笑いながら、固まってしまっている虹夢の横をしれっと通り過ぎ、

ジャンプして街の方へ行こうとする。

 

「…………は! いや行かせるかぁ!」

 

直後思考停止状態から回復した虹夢は雷爪断弓の矢尻を引き、雷の矢を放つ。

 

「ぐはっ!?」

 

ジャンプで空中にいて無防備だったデントリーはそれをもろに喰らう。

しかし、アンテナがついた機械が硬いのか矢は突き刺さらずに弾かれた。

だが喰らったのは事実なので、バランスを崩したデントリーは地面に落下する。

 

「普通の電撃が効かないのならこれで!」

 

そう言って虹夢は雷覇翼斧を銃モードに変え、再び念じる。

すると、今度は青と緑が混じった電撃が走る。

それを確認した虹夢は雷覇翼斧から雷の弾丸をデントリーに向けて放ちまくる。

 

「ぐお!? ぐわ!? がは!? ぐを!?」

 

弾丸はほぼ全てデントリーに直撃し、

その度に緑混じりな青い電撃がデントリーに走る。

 

「ぐ、だがばは!? く、ば、ばかめぐぁ!? で、電撃は我にとってべあ!? と、とっては、力にしからなんぐ!? ず、ぞぉ!!」

 

弾丸を何発も喰らいながら言い切ったデントリーは、

背中の機械から電気をフックに集め、フックから雷でできた鞭を虹夢へと飛ばす。

 

「うわ!?」

 

その鞭は虹夢に絡みつき、自由を奪う。

これでは高速移動も出来ないので、虹夢は逃げることができない。

 

「はっはっはっはっは!! 捕らえたぞ! これで終わりだ!」

 

「あいつ何か言ってますよー監督」

 

「そうだなー」

 

「おいぃきさまらあああああぁ!!? なんでのんびりしてるぅ!?」

 

虹夢を捕らえ、高笑いするデントリー。

しかし、シザーバットと竜は全然焦っておらず、

思わず大声で突っ込んでしまうデントリー。

 

「そのフックを見ろ」

 

「フック?」

 

竜にそう言われ、デントリーはフックを見る。

するとフックから伸びていた雷の鞭が段々と細くなり、そして消えた。

 

「だに……ごば!?」

 

鞭が消えたことに困惑すると同時に驚くデントリー、にすぐ虹夢が弾丸を放ち、

偶然それは脳天に当たりデントリーは仰け反るようにして空中で回転し地面へと倒れ伏す。

 

「ねえ、もう十分?」

 

虹夢は竜にそう尋ねた。

竜はデントリーを暫くじっと見ると、虹夢に「いいぞ」と言った。

それを聞いた虹夢は「よし」と気合いを入れると雷覇翼斧と雷爪断弓、

そしてベースを合体させ、迅雷竜突牙へと変える。

そして起き上がろうとしていたデントリーに超スピードで接近し、

迅雷竜突牙で斬りつけた。すると、

 

バチィ!

 

「ぐわぁ!?」

 

その瞬間小規模ながら衝撃波が発生しデントリーを吹っ飛ばした。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「特別に教えてやろう」

 

突然発生し自らを吹き飛ばした衝撃波に驚くデントリー。

そんな彼に向かって竜は説明を始める。

 

「その迅雷竜突牙は、雷覇翼斧と雷爪断弓によって蓄積させた特殊な電気を移動させる際に、衝撃波を発生させることで相手にダメージを与える武器だ。おまえの鞭がすぐに消えたのは、その特殊な電気はその迅雷竜突牙じゃないと使えないし集められないからだ」

 

それを聞き、さっきの状況に納得したデントリー。

あれだけ弾丸を喰らったにも関わらず雷がそこまで溜まっていなかったのは、

迅雷竜突牙しか集められない雷であったからだったからだ。

 

(だが、わかった所でこれはどうしようもなくないか?)

 

そしてデントリーは同時にこの状況を打開する手段がないことにも気づく。

 

「よし、虹夢、止めだ」

 

「分かった!」

 

それを悟ってか悟らずかはわからないが、竜は虹夢に止めをさすように言う。

それを聞いた虹夢は元気よく了承すると、迅雷竜突牙のベース部分の弦を弾く。

すると迅雷竜突牙が黄金に輝き始め、虹夢はそれを大きく振り上げ、

 

  【雷龍覇邪一閃 波の型

 

「でや!!」

 

そして振り下ろした。すると龍型の電撃がデントリーへと向かっていき、激突。

 

「ん? な…が!?」

 

そしてその瞬間、先ほどよりも大きな衝撃波がデントリーを襲う。

 

「ぐ、ぐわあああああああああああああああぁ!?」

 

 パアアアアアアアアアンン……!!

 

その衝撃波に耐え切れず、デントリーは爆音を立て破裂した。

 

「……終わった?」

 

「ああ、終わった」

 

「そっ……か」

 

デントリーを倒し、この戦闘が終わったと思う虹夢、

それを竜が認め、本当に安堵する。

すると、変身が解除され、変身前の姿に戻る。

 

「あ、戻った」

 

自身の姿が元に戻ったことに気づいた虹夢。

その後、何かを思い出したかのような表情をすると、道路の方へ向かい、

中華料理店ヒロモトの店長からもらった食材が入った袋を持って歩き出す。

 

「どこへ行く」

 

「家」

 

虹夢がその場を離れようとするのを見てそう尋ねる竜。

虹夢はそれに家と答えた。ようはしれっと家に帰ろうとしていたのだ。

 

「待て、俺も行く」

 

「え?」

 

そんな虹夢を竜は呼び止め、自分も付いて行くという。もちろん虹夢は驚く。

更にそれを聞いたシザーバットがにやにやしながら竜の元に飛んできた。

 

「何々、付いていきたいんですか雷仁竜様は? え? そのなりでですか? 冗談ですよn「うるせ」eゔべらっっしゃるああぁっぁあ!?」

 

「し、シ〜ザ〜〜!?」

 

そして竜、雷仁竜らいじんりゅうをうざめのテンションで煽る。だが煽り始めたその瞬間に、

ジト目でそれを見つめていた雷仁竜に、

思いっきりチョップをかまされ砂浜にぶっ飛ばされる。そこから、

大量の砂を撒き散らしつつクレーターを砂浜に何個も作りながらバウンドし、

最後に盛大な爆音と水しぶきを上げながら海へと突っ込んだ。

 

「ちょ、あれ大丈夫…?」

 

「大丈夫だろ」

 

盛大にぶっ飛んだシザーバットに心配な目をむける虹夢。

雷仁竜はというと特に気にしてはいないよう。

それから「それじゃ行くか」と呟くと、

雷仁竜が光に包まれ、徐々にその形を変えていく。

光が治まると、そこには金髪の青年がいた。

 

「…………人になれたんだ」

 

「……まあな」

 

雷仁竜が人型になったことに、虹夢は瞬間的に黙ってしまうほどに驚いた。

雷仁竜は特に表情変えずに頷いた。

 

「さて、帰るんだろ。とっとと行くz」

 

「あ、待って!」

 

「なんだ?」

 

気を切り替え、虹夢に再び歩き出すよう促す雷仁竜だが、虹夢に呼び止められる。

突然、呼び止められ困惑する雷仁竜。なんだ、と思い聞き返す。

 

「名前、雷仁竜って言うの?」

 

「ん? そうだが? それがどうし…」

 

「レイジ、って読んでいい? 雷仁竜ちょっと長いから」

 

すると、虹夢にレイジ、と呼んでいいかと訊かれた。

 

「……勝手に呼んでいいぞ」

 

……雷仁竜、レイジはそれを了承した。

 

「あ、シザーはどうするんの?」

 

「後で勝手についてくるから心配すんな。後シザーってあいつのアダ名か?」

 

「うん。だってちょっと長いから」

 

「六文字も長いか?」

 

シザーバット、シザーの話題がさりげなく出るが、軽い感じで流れ、

二人は虹夢の家へと向かっていった。

なお、シザーは20秒後に復活して二人を追いかけた。



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第2記 転換/戦いと決意、そして Part2

分割2本目。


そういえばあの怪人、結局なんなんだろう……

 

戦いののち、日が落ちかけている頃、家への帰り道の途中で虹夢はデントリーのことを思い出していた。

思えば海からあんな変な怪人が出てくることなどありえない。

虹夢はやつらが何者なのか疑問に思う。

 

「…奴らについてはおまえの家に着いたら話す」

 

それを察したレイジは、ついたら話すと虹夢に告げた。それを聞いた虹夢はただ「分かった!」と答えた。

 

「あ、ついたよ」

 

そうこうしているうちに、虹夢達は家……虹夢が家としている神社についた。

 

「「ん? 神社?」」

 

もっと家っぽい建物に住んでると思ってたレイジとシザーはかなり困惑した。

神社が家です、はまあ住み込みで働いていたりとかならまだしも、虹夢が家と言っている神社は、あっちこっち痛んでるわ草木が壁に張り付いてるわで、どう見ても誰かが管理してる感じではない。

 

「…早くこっちに来て」

 

困惑する二人に、虹夢は上がるよう促す。

二人ははっとしてすぐさま神社内に上がる。

 

「さあてと、今日は何食べよ」

 

「「いや待て待て待て、なんでお前神社に住んでるんだよ」」

 

虹夢に促されるままに神社に上がったレイジとシザーだが、やはり疑問は絶えず、思わず聞いてしまった。

虹夢は割とすぐに神社に住んでる理由、ついでに店で働いてる理由も話した。

 

さてここで、第一話くらいで話せなかった、虹夢がなぜ働けているのか、そのもうひとつの理由を今ここで話そう。

数年前、彼は海からここへ流されてきた、記憶を全て無くした状態で。

その際神主に拾われ、その神主が行方不明になり、

元々神主一人が錐揉みしていた神社がつぶれた今でも住み着いている。

そんな存在を県がほっとくわけにもいかないが、虹夢はまったくそこを出ようとしないし、

神社の実質的な管理者も存在を容認してしまっているので、

県は面倒事をよく引き受けてくれるヒロモトの店主に頼み込み、監視も兼ねて働かせているのである。

虹夢はまんまこれと同じようなことを二人に話した。

(県が面倒に思っていることをなんで虹夢は知ってるの?と思ったそこの貴方、

それは店主のおじさんが教えちゃったからです。ただし虹夢はあまり意味を理解してません)

 

「…まあ一応、お前がここにいる理由は分かった。」

 

レイジは一応その話だけ聞いて納得した。

本当はもう少し虹夢について切り込んだ話をしておきたかったが、という顔をしながらだが。

 

「じゃあ次はあの海賊達の話をお願い」

 

その様子を見た虹夢は、神社の話は終わりと思い、すぐに海賊の話題へと切り替える。

 

「もっと突っ込みたいところはあるが、まあ話進めるぞ」

 

対しレイジも、もう諦めたのか海賊、奴らの話に気持ちを切り替え、奴らの話をし始める。

 

「奴らは、数ヶ月前に、あの海の中に沈む神殿に勝手に住み着き、そこから時折り海の外に出て、今日みたいに暴れ倒して帰っていく、そんなめんどくさい集団だ」

 

「うんうん」

 

「……奴らは基本的に水のような体を持ち、特殊な能力を持つ。あのデントリーとかいうやつみたいにな」

 

「なるほど」

 

「……、……終わり」

 

「え? 終わり?」

 

「終わりだ、そこまでしか、俺たちもわかってない」

 

「ええ〜〜〜」

 

自身の話を、頷きながら聞く虹夢を横目にレイジは奴ら話をした。

が、あまり中身のあるものではなく、虹夢は拍子抜けといった様子だった。

 

「中身なさすぎない?」

 

「仕方ないでしょー本当にこれしかわかってないんだから」

 

すかさず虹夢が話の中身のなさに突っ込みを入れる。それにほぼほぼ空気であったシザーが弁解する。

 

「で、ここから本題だ、お二人さん」

 

「本題?」

 

そこから更に、シザーが話を切り替える。本題、と聞き、虹夢は首を傾げていたりしているが、レイジは無言だった。

しかしシザーは特に気にせず、話を進める。

 

「そう、時たま海から出てきて暴れる海賊達を倒す。その役目を四木虹夢に頼みたい」

 

「俺に? 本当に俺でいいの?」

 

海賊達を倒す役目を虹夢に頼みたいというシザー。

それを聞いた虹夢は俺でいいのかと不安そうな表情を見せるが、内心嬉しそうだ。

 

「そうだぜ〜おまえがいいのさ」

 

そしてシザーはおまえがいいと虹夢に言う。それを聞いた虹夢は…

 

「じゃあ、俺、やr「だめだ」え?」

 

シザーの誘いを受けようとしたその時、レイジがそれを遮った。

遮られた当の本人である虹夢とシザーは「何で」と言いたそうな、戸惑いの顔をしていた。

特に虹夢は悲しさ混じりの顔だった。

 

「おいおいどうしたんだよ、雷仁竜さんよう。それじゃ本末転倒だぜ〜だってあんたがこいつを「うっせ」ぶらば!?」

 

「あ、シザー! ど、どうして… !」

 

急に虹夢が海賊達と戦うことを拒んだレイジにシザーは戸惑いながらも近づき、

理由を問うがレイジに裏拳で庭方向にぶっ飛ばされる。

それを見た虹夢はシザーの元へと駆け寄る。

そしてレイジにシザーをぶっとばしたことに物申そうとの彼の方を振り返って、虹夢は止まった。

さっきまで見せたことのないような、怒りの表情を浮かべていたのだから。

 

「……悪い、いきなり巻き込んでおいてなんだが、おまえを戦わせるわけにはいかない」

 

バチッ……ビュン!

 

「っ!」

 

自らを見て動きを止めてしまった虹夢に近づきながらレイジはそう告げ、

突風を伴う凄まじい速度でこの場から去った。

残された虹夢はただ座り込むだけだった。

 

「……シザー」

 

レイジが虹夢の前からいなくなった後、放心状態から戻った虹夢は、シザーにあることを聞いた。

 

「レイジの、あの時のレイジの顔って、どういうこと?」

 

それは、あの時レイジが浮かべた表情についてである。

 

「……おいおいぶっとばされた直後のやつに変な質問すんなよー」

 

シザーはふざけた笑みを浮かべながらそう嘆く。

 

「で、なんでそんなこと聞く」

 

「……!」

 

急に声色を真面目なものに変え、虹夢にそう聞き返すシザー。

 

「……知りたい、と思ったから、知らないといけない、て、思った、から……」

 

それに虹夢は思いつめた顔を浮かべながらも息を整え、そう呟いた。

 

「……なるほど」

 

虹夢の答えを聞いて静かに納得したシザーは、彼の膝から飛び立ち、彼の正面に行き、こう告げた。

 

「あれは“怒り(いかり)”だ。」

 

怒り(いかり)、レイジがあの時浮かべたのは怒り(いかり)であると。

 

怒り(いかり)? それって何?」

 

それを聞いた虹夢は首を傾げる。何せ聞いたこともないものだったからだ。

 

「やっぱりそっからか……ええ、怒り(いかり)ってのは、間違いをおかした相手を怒鳴って叱ること、因みに叱るとは、相手を強い態度でとがめて責めることなり。」

 

「なる、ほど……」

 

シザーの説明を聞いて、“怒り(いかり)”とは何か理解した虹夢。

ただその顔は非常に浮かなく、深く伏せていた。怒いかりの説明を聞き、

レイジが怒りの表情を浮かべた理由が自分が何か間違いを犯したのかと不安になったからである。

 

「ただ、」

 

「?」

 

しかし、付け加えるように呟かられたシザーの「ただ」という一言に虹夢は伏せていた顔をあげる。

 

「あれは正確に言ったら“怒り(おこり)”だ」

 

怒り(おこり)?」

 

そしてそれを待っていたかのように、少し笑った後、シザーはあの時のレイジの表情は“怒り(おこり)”だと付け加えた。

 

「そう、怒り(おこり)、それは、怒り(いかり)と大体一緒で間違いを犯した相手を叱ることだが、これはそれの中で、相手のために行うものを指す」

 

 

「相手の、ため?」

 

「ああ、相手のために、人は怒る(おこる)のです」

 

「えっと……てことは?」

 

「……はあ、コホン、ええ、レイジくんはおまえのためにあんな顔をしたんです、でもってそれで俺の誘いも遮ったのです」

 

そして更に追加で付け加えるように怒おこりについて解説するシザー。

それを聞き、ため息混じりなシザーの誘導もありながらも虹夢はレイジが自分のために怒ってくれたことを理解する。

 

「あ、でも俺怒られるがわからないから結局どうすればいいかわかんない……」

 

だが、自身がレイジを怒らせた理由については全く見当もつかない様だ。

 

「えっと、シザー、原因わかる?」

 

虹夢はシザーに助け舟を請うが、

 

「ふふふ……それは自分で考えしゃい!」

 

あっさり断られてしまった。

 

「ええ〜」

 

さっきまで細かく自分の質問に答えていたのに、急に放棄され、虹夢はふてくされた顔をする。

 

「えーじゃないぜ、全部他人に聞くんじゃあまり良くないからな! そんじゃおれはこれで、サラバ!!」

 

「あ!ちょ待っ……、行っちゃった……」

 

質問に答えてくれなかったことでふてくされた虹夢を宥めながら、

シザーはパタパタと羽ばたいて空を飛んで行って去ってしまった。

その場に取り残された虹夢は、件のことをしっかりと考えることを決め、その日を過ごした。



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第2記 転換/戦いと決意、そして Part3

分割三本目


「おい、ボウズ!」

 

「!」

 

自分を呼ぶ声で、はっと虹夢は気がつく。すると息を切らした店主のおじさんがそこにいた。

 

「どうしたのおじさん? なんで…」

 

「どうしたもこうしたもねえ! 早くここから離れるぞ!」

 

店主は焦った様子で虹夢を連れて駆け出した。

虹夢は状況を飲み込めずいた。

 

「ちょ、ちょっとおじさん! なんで急に走りだすの!」

 

「わりい、答えてる暇はねえ…」

 

虹夢は店主のおじさんに何故急に走り出したか聞いたが店主はそれには答えず走り続ける。

 

「……!」

 

その途中、虹夢の目に入ったのは、悲惨な光景であった。

建物は壊れ、人々は血を流して倒れ、あたりには“かつて人だったもの”が点々と散らばっていた。

それを見た虹夢は身の毛がよだつ感覚を、そして自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

 

「おじ、さん…」

 

「……あれは覚えなくていいもんだ、気にするなボウズ」

 

顔を青くする虹夢に、店主は穏やかにそう声をかけつつ、虹夢と共にヒロモトへと入っていった。

店内に入ると店主は虹夢を厨房まで連れていき、棚下に隠れさせる。

 

「ここにいとけよボウズ」

 

店主はそこにいるように虹夢に指示をする。

 

「おじさんは?」

 

「……ちょっとな」

 

その時の店主の声に不安を感じた虹夢は、店主に「これからどうするの?」という趣旨を込めて問いかけた。

店主は暫く黙り込んだが、「ちょっと」と苦笑いを浮かべて答え、棚の扉を閉じた。

 

「! お、おじさん! おじさん! 開けて!」

 

閉じられてすぐに虹夢は扉を開けようとしたが、閂でもかけたのか、全く開かない。

だがしかしそれでも虹夢は必死に開けようと扉を叩く。

 

「くっ……うあああああああ!!」

 

 バァン!

 

「うわ!」

 

何十回も叩いて手が痺れてきたころ、思いっきり叫びながら叩いたその一撃により、

扉が思いっきり開き、虹夢は勢い余ってそこから飛び出した。

 

「……! おじさん!」

 

自分が出れたことを少し遅れて認識した虹夢は、店主を探そうとすぐに厨房から出た。

 

「! 出るな!ボウズ!」

 

「え?」

 

するとすぐに店主の声がし、虹夢は其方へ振り向こうとする。

その時、目の前に映ったのは、

デントリーのようにまるで水のような体をした怪人であった。

怪人は虹夢を見るなりその手にもつ刃を虹夢に向かって振り下ろそうとする。

 

「デイ!!」

 

その前に店主が怪人を殴り飛ばし、虹夢を守った。

 

「……ふ」

 

しかしその瞬間、銃声が響き、店主の体から血が飛び出した。

 

「がは!?」

 

「おじさん!?」

 

銃弾に体を貫かれ膝をつく店主に虹夢は駆け寄り必死に声をかける。

 

「大丈夫だ……心配ねえ」

 

そんな虹夢に心配をかけまいと、顔を向ける店主。

しかし、それで見るからに泣きかけの虹夢を安心させることはできなかった。

そんな二人に、ゆっくりと不敵に笑いながら怪人は近づく。

店主はその怪人の足音が近づくたびに顔を険しくしていった、

が、いよいよもう少しのところで急に穏やかな顔を浮かべ、虹夢にその顔を向ける。

 

「ボウズ……」

 

「なに? おじさん?」

 

「……生きろ」

 

そう言って店主は虹夢を掴み、最後の力を振り絞って怪人を突き飛ばし、虹夢を店の外へ投げ飛ばす。

 

「っ! おじさ……あ」

 

投げ飛ばされて地面に激突した後、体を起こした虹夢が見たのは、

店主が怪人によって切り裂かれた光景だった。

 

「ああ…」

 

 

 

「…!」

 

そこで虹夢は目を覚ました。

さっきまで見たのは、どうやら夢だったようだ。

だが夢にしては本物じみていたそれに、虹夢は体を震わせ、体中から冷や汗を流していた。

 

 ピシャァーーーーン……!

 

「!」

 

その時、突如雷鳴が落ちた。

もしかしたらと思い、虹夢は雷鳴が落ちた場所へと急いで向かった。

 

 

 

 ーー数分前 砂浜ーー

 

「……」

 

虹夢の神社から飛び出した後、レイジは砂浜まで移動し、呆然と眺めていた。

 

(他にやり方、なかったのか、俺……)

 

そしてそこで自問自答を繰り返していた。

虹夢を巻き込んだこと、勝手に突き飛ばしたこと、その二つの後悔を、レイジは飲み込めずにいた。

 

「お、いたいた〜」

 

「……シザーか」

 

そこにシザーがパタパタと飛んできた。シザーはレイジの横にすっと降り立つ。

レイジは鋭い目でシザーを追ってはいたが、前のように殴り飛ばしはしなかった。

 

「何しに来た」

 

レイジはシザーに問うた。シザーは「虹夢について」と答え、話を切り出す。

 

「虹夢のやつ、おまえの怒った顔見て、大分堪えてたぞ〜」

 

「……」

 

シザーの言った虹夢の様子を聞き、レイジはギリッっと苦々しく唇を噛む。

 

「で、どうしたあんなこと言った?」

 

「……はあ、おまえ自分の創造主に憎たらしいおせっかいとか呼ばれてないか?」

 

「よくご存知で」

 

「……ちっ、……ダメだと思ったんだ」

 

シザーに虹夢が誘いを受けようとしたのを遮った理由を聞かれ、

ため息と舌打ちまじりにレイジは答え始める。

 

「あいつは、自分が負おうとしている危険を、ちゃんと考えられていない。それが危険だと感じたから、ダメだと思ったんだ。」

 

「ふむふむ」

 

レイジは虹夢がシザーの誘いを受けようとしたのを止めた理由を、

危険だと感じたからと言った。

 

「でもどうしてあいつがそうだって思ったんだ? 特に変じゃなかったろ」

 

「……おまえが虹夢に頼もうとした時、これから起きることに怖がる様子が一切なかった」

 

「それが?」

 

「……それが普通なわけないだろ、誰だって怖がるはずだ。今から命かけろと言われたら」

 

それを聞いたシザーはなぜそう思ったのかレイジに更に聞いた。

レイジはシザーが「特に変じゃない」と呟いたことに「おまえそれはおかしいぞ」的趣旨が含まれた表情をしつつ、シザーの追加の問いに答えた。

それを聞き「何がおかしいの?」という感じで首を傾げるシザー。

そんなシザーに呆れつつもレイジはそれがおかしい理由を言った。

命をかけろと言われたら普通は怖がるはずだと。

 

「……なるほど〜。それちゃんと言えば虹夢くん悲しそうな顔しなかったんじゃないのかな〜ふあははは」

 

全て言い終えた後、レイジはシザーから、「それ言えば良かったのでは」という煽り混じりの苦言を呈される。

正論なので言い返せずに「その通り」とうなづくしかない(それはそれとしてシザーをなぐりたいとは思っている)。

 

「まあどうするかはユー次第だけどねぇえええええ?」

 

(そいつはほぼ誘導だシザー、まあやっぱ行かなきゃまずいよな)

 

シザーの「レイジ次第」と圧力をかけるように言ったセリフに、

「誘導だよ」と思いつつもレイジは虹夢に謝りに行こうと決めたその時、

 

「我はデントリー! 手下と共に再びこの地へとやっていや、上陸いや、浮上してきたぞぉーーー!!」

 

海から、まるで水でできているかのような見た目で、左手はフックとなっており、

右手には剣を持ち、背中にはアンテナがついた機械を背負っている怪人、

デントリーが水でできたような人形の手下を引き連れ現れた。

 

「うわでたー、どうするこいつら? 虹夢呼ぶ?」

 

いきなり出現したデントリーにシザーは(棒読みで)驚き、レイジに虹夢を呼ぶかどうか聞く。

 

「……いや、今回はいい。勝手に突き飛ばした手前、“手のひらひっかり返してやっぱり頼む”はおかしいからな」

 

レイジはシザーの問いに呼ばないと答えると、

雷仁竜へと姿を変え、雷鳴と共にデントリーたちと戦い始める。

 

「さて、あいつは……お、わりと早く来たな」

 

「レイジ! シザー!」

 

だが戦いが始まったほぼすぐに、虹夢が走って向かって来た。

雷仁竜は舌打ちしつつも腕や翼、雷鳴を駆使してデントリーたちを吹き飛ばし、

安全を確保してから虹夢へと頭を向ける。

 

「なんで来た!」

 

「う……戦いに、来た」

 

その瞬間、ほぼ咆哮に近い大きな声で虹夢になんで来たと怒鳴るように聞く(この時シザーは発せられた衝撃波に飛ばされる)。虹夢は尻込みしながらも戦いに来たと告げる。

 

「……だめd「夢で」ん?」

 

「ここに行かなきゃって思った理由、夢で見た……」

 

雷仁竜はすぐに帰そうとしたがその前に虹夢が口を開き、ここに来た理由を話す。

 

「おじさんが、俺を連れ出して、その途中で赤い池に浮かぶ人たちを見て……そしておじさんが俺をにがすために死んじゃって…」

 

雷仁竜は黙って聞いていた。虹夢の手が震えてることと虹夢の話より、

それがどれほど凄惨なものかいやでも雷仁竜は分かった。

そして虹夢がここへ来る決意をした理由も察しがついていた。

 

「……その夢を見て、おまえをどうしたいと思った」

 

「……!」

 

察しがついた上で、雷仁竜はあえて聞く。

虹夢は震えを抑えながら震える声で答える。

 

「……俺は……あれもまた見るのはいやだ、守られて守ってくれた人が死ぬのがいやだ! だから……守られんじゃなくて守りたいと思ったから、そのための戦う力が欲しいって思ったから! ここに来た……だからシザー、レイジ、俺に力を渡して!!」

 

虹夢は、伏せていた顔をあげ、

力強い瞳で雷仁竜を見据えながら宣言した。

それを確かに耳にし、目にした雷仁竜は、()()()()()()()()()()()

 

(……こういうのはこうなったらもう、そう簡単には引き下がってくれないな)

 

彼は虹夢を帰らせるのを諦めた。しかし

 

(でもこれだけは言っておこう)

 

一つだけ、言わなければと思った。

 

「虹夢」

 

「何? レイジ?」

 

「力を渡してではなく、一緒に戦う。それだったらおまえが戦うのを許す」

 

雷仁竜が虹夢に告げようとしたのは、『力を渡してではなく、一緒に戦う』ということ。

 

「…じゃあ、そうする!」

 

それを聞いた虹夢は瞬間あっけにとられた顔をしたが、すぐ笑って、しかし真剣な表情でそうすると言った。

 

「ぐふぅ……は、話は終わった

 

 バジィ!! ドゴオオォーーーン!!

 

『ぐわあああああああああ!?』

 

「話終わった〜?」

 

雷仁竜の攻撃で倒れ伏していたデントリー達が立ち上がろうとしたその時、

青と緑が混じり合ったような電撃が彼らを襲い浜が爆発。

その直後目が黄色になったシザーが二人の元へとパタパタと戻ってきた。

 

「シザー! もしかして今のシザー?」

 

「そうだぜ〜こんなふうに」

 

戻ってきたシザーを見て虹夢は喜び、同時に先ほどの雷はシザーが出したものか聞く。

シザーはそうだと答え、

再び実践すべく自らの口に入っていた『Lightning dragon』と刻まれた黄色のディスク『交輝レコード 翔雷』を取り出し、再び口に入れた。

 

「ほい!」

 

 バジィ!! ドゴオオォーーーン!!

 

『ぐわああああああ!?』

 

すると先ほどと同じように青と緑が入り混じった雷がデントリー達を襲った。

 

「すごい!」

 

「く、だが電気ならわれの力に……ってこの電気この前の吸収できないやつだぁあああああ!?」

 

それに感激する虹夢。対しその雷がこの前自分を破滅に追い込んだ特殊な電気だと気づき項垂れるデントリー。

そんなデントリーを尻目に雷仁竜は虹夢に迅雷龍突牙を、シザーは交輝レコード 翔雷を渡す。

 

「「さあ、変身しろ、虹夢!」」

 

「もっちろん!」

 

虹夢がそれを受け取ると、シザーと雷仁竜は変身するように指示し、

虹夢はもちろんと承諾、レコードを迅雷龍突牙にセット、

ぶんぶんと振り回し、雷を描くようにして虚空を切り裂く!

 

雷!竜!装!

 

その瞬間、すさまじいほどの雷鳴が切られた虚空から迸り、虹夢の姿を『雷竜』へと変化させた。

 

「さあ、行くよ!」

 

力強く、虹夢は宣言した。



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第2記 転換/戦いと決意、そして Part4

分割最後。


「……我々全員あの電気結構浴びてるからもう摘みでは…ええい! 構わん行け!」

 

『うおおおおお!!』

 

戦闘形態、雷竜へと姿を変えた虹夢。

その様子を見て前回の戦いを思い出し、どうしたものかとあれこれぶつぶつとデントリーは呟いたが、

もうどうにでもなれと言わんばかりに手下達へ攻撃するよう命令する。

 

「どうせなら色々大盤振る舞いで行け!」

 

「わかった……オオバンブルマイね!」

 

シザーに大盤振る舞いで行けと言われた虹夢は、

すぐさま迅雷竜突牙(じんらいりゅうとつが)雷覇翼斧(らいはよくふ)雷爪断弓(らいそうだんきゅう)とベースに分離させ、ベースを雷覇翼斧の銃モードに取り付けた。

 

 【瞬雷乱撃(しゅんらいらんげき) (ちらし)

 

それから手下の怪人達に向けて弾丸を数発放つ。

だがそれは断速はかなり遅い。

遅いが故に怪人達を取り囲むように弾丸は存在していた。

そしてそれの一つに怪人が触れた時、

 

 バチィッ

 

『!!』

 

弾丸はスパークを起こした。迂闊に触るとこれでダメージを負うというわけだ。

 

 【轟雷瞬撃(ごうらいしゅんげき) (おとし)

 

弾丸によって怪人達の動きが止まったことを確認した虹夢は斧モードにした雷覇翼斧に雷を貯め、

雷仁竜に頼んで空高く上げてもらう。

そこから回転しながら落ちていき、勢いよく怪人達の群れの中心に向かって雷覇翼斧を振り下ろす。

すると中心付近にいた怪人達に当たり、その瞬間スパーク発生、中心付近にいた怪人達は弾け飛んで消えた。

 

「何!?」

 

「なんだ今のは!?」

 

「一撃で消えたぞ!?」

 

他の怪人達がその光景を見ておろおろとしている最中、

虹夢は武器を雷爪断弓に持ち替え、ベースを取り付ける。

 

 【雷鳴鋭爪窮(らいめいえいそうきゅう) 乱雨

 

そして天空に向けて雷の矢を放つ。

放った矢は天空にで多数の矢に分かれ、怪人達に降り注ぐ。

怪人達は手にもつ武器で防ごうとするが、数が多く幾つかは当たりダメージを受ける。

その間に虹夢は再び武器を迅雷龍突牙へと合体させ、弦を弾く。

すると迅雷龍突牙が輝きだす。

それを確認した虹夢を大量の電気エネルギーを回転しながらかき集める。

 

 【雷龍覇邪一閃(らいめいはじゃいっせん) (あらし)の型

 

「はあ!」

 

そして一気に放出、すると雷は龍を形作り、螺旋を描きながら広がって怪人達を襲う!

 

「うわああああ!?」

 

「ぎやああああああ!?」

 

それをもろに喰らった怪人達は次々と弾け飛んで消滅していった。

だが中にはジャンプして回避した者達がいた。

虹夢は再び弦を弾くと、超高速でそれらに近づいた。

 

「う……」

 

「でいやああーーー!!」

 

 【雷龍覇邪一閃 (ざん)の型

 

そしてすれ違いざまに切りつける。

切りつけられた者達は自身に帯電していた特殊電気が放電、

その際の衝撃波によって体を真っ二つされた。両断した彼らは弾けて消えた。

 

「もう一発!」

 

 【雷龍覇邪一閃 (つらぬき)の型

 

みたび弦を弾き、虹夢は雷の龍を矛先に纏わせ、一直線上にいた怪人達を貫く。

怪人達はその際の放電の衝撃波で弾け飛び消滅。

 

「く、あそこまで大量にいた手下達がこうもあっさりと消えるとは……」

 

その様子を見ていたデントリーは、自分の手下達がほぼ一瞬で倒されたその光景に戦慄していた。

次は自分の番、そう考えた時、彼はどうやったら逃げられるかしか考えられなくなっていた。

 

「しかしそこで現れる真打ち! 名はもらえないぐらいの雑魚だけど真打ち!」

 

「!?」

 

しかし、虹夢の背後の地面から隠れていた雑魚怪人が飛び出し、虹夢を羽交い締めにした。

それをみたデントリーは好機と見て虹夢へと走り出す。

 

「「これで我々の勝ちだ!」」

 

そう言って喜んだ二人だが、喜んだのも束の間、

剣モードで飛んできたシザーによって雑魚怪人の羽交い締めが剥がされ、虹夢は自由になる。

 

ガツッ!

 

「「何!?」」

 

 【瞬雷乱撃 (つどい)

 【轟雷瞬撃 (とばし)

 

それにより驚いた二体の隙をつき、虹夢は再び迅雷龍突牙を雷覇翼斧と雷爪断弓とベースに分離させ、

雷覇翼斧にベースを取り付ける。

そして後ろの雑魚怪人に向かって雷によって断速が上がった弾丸を撃ちまくる。

 

「あばばばばばばばば!?が!?」

 

それをもろに喰らった雑魚怪人は弾けて消滅した。

その後、虹夢は雷覇翼斧をデントリーに向かって投げる。

 

「ぐは!?」

 

それは見事に命中し、デントリーは大の字に転倒する。

雷覇翼斧は虹夢の元へと戻る。

そして今度は雷爪断弓にベースを取り付け、矢尻を引きつつ雷を矢に貯める。

 

「く…ん? こ、今度は何をする気だ!?」

 

それを見たデントリーは恐れおののき、近くにあった板でガードしようとする。

 

「喰らえ!」

 

 【雷鳴鋭爪窮 雷光

 

その瞬間、虹夢は矢尻を離した。

その瞬間矢はすさまじいほど超高速で放たれ、デントリーを吹き飛ばしながら貫いた。

 

「ぐわあああああ!?」

 

矢を喰らったデントリーは消滅こそしていないものの、もはや満身創痍であった。

 

「決めるよ、シザー!」

 

「あいあいさー」

 

デントリーを追い詰めた虹夢は一気に止めをさす為、迅雷龍突牙と剣モードのシザーを構える。

 

「く、だがわかめ違う違う、ばかめ! それでは俺の剣にはついてこれまい」

 

デントリーの言う通り、両手持ち基本の迅雷龍突牙を片手で持ってデントリーと戦うのは厳しい。

だが今の虹夢にそれは関係ない。

虹夢は迅雷龍突牙からレコードを抜くと迅雷龍突牙をデントリーの方へ投げた。

 

「うお!?」

 

デントリーはそれをすんでで後ろに飛び退き避ける。

 

その一瞬の隙をつき、虹夢はレコードをシザーにセットしつつデントリーに接近する。

シザーには雷が迸り、ハサミのように展開された刃には雷で形成された刃が。

 

「何!?」

 

「「ハアァーーーーーーーーー!!」」

 

 【翔雷 ナイティングブレイク

 

その刃でデントリーのフック、剣を切り落としつつ、デントリーそのものをきりまくる。

その際に迅雷龍突牙を拾う。

 

「ぐお!?」

 

「はあああ!!」

 

その後、通常の剣モードに戻ったシザーと再び手に握った迅雷龍突牙でデントリーを突いて吹き飛ばす。

 

「さあ止めいけ!」

 

「了解!」

 

コウモリ状態に戻ったシザーは虹夢にデントリーに止めを刺すように言う。

虹夢はしっかりと了解と答え、

シザーから回収したレコードを再び迅雷龍突牙にセット、弦を弾いた!

 

「はああ……」

 

虹夢は迅雷龍突牙を構えつつ、雷を貯める。

 

 【雷龍覇邪一閃 (なみ)の型

 

「でやぁ!!」

 

そして龍型の電撃としてデントリーへとぶつける!

 

「ぐわああああああああ!? またこの技で終わりかーーーーーー!?」

 

パアアアアアアアアアンン……!!

 

その時生じたすさまじい衝撃波に耐え切れず、デントリーは弾け飛んで消えた。

 

「ふう、やっと終わった……」

 

「お疲れさん」

 

デントリー含め、全ての怪人を倒し終えた虹夢はヘナヘナとその場に座り込む。

シザーはお疲れと労いの言葉を送る。

 

「……ふ」

 

虹夢が全ての怪人を倒したのを見届けた雷仁竜は、虹夢の元へと向かおうとする。

 

(なるほど、あれがデントリーを負かしたやつか……ちょっかいかけてみるか)

 

「キシャアアアアアアアアアアア!!」

 

しかし、その前に海から何かが大しぶきを上げて飛び出した。

 

「! 何!?」

 

それにきがついた三人はしぶきが上がった方を見る。

そこにはまるで水でできたような、雷仁竜ほどの大きさの翼を持った蛇がいた。

 

「なにあれ!?」

 

それをみて虹夢は驚く。

 

「やいやい、いきなりでてきたなんだおまえ? 戦いはもう……終わってぶらーーーーーーーーーーん!?」

 

「シザー! うわ!?」

 

何か言おうとシザーを水蛇は尻尾で弾き飛ばし、虹夢をその尻尾を巻きつけて捕らえる。

 

「キシュゥィ……」

 

「うぐ……うあ」

 

水蛇は虹夢をギリギリと締め上げていく。

締め上げられている虹夢は呻き声あげ、苦しむ。

 

ザン!

 

「キシェェエエエエエ!?」

 

「うわ!?」

 

だがすぐに雷仁竜が水蛇の尻尾を切り落とし、虹夢を救出した。

 

「大丈夫か?」

 

「けほけほ……う、うん平気……」

 

雷仁竜は虹夢に大丈夫かと聞く。虹夢は咳き込みながらも肯定する。

その間にも水蛇は咆哮をあげて二人を威嚇している。

 

「まだ行けるか虹夢?」

 

「え、た、多分大丈夫」

 

「多分か……まあいい、俺の頭に乗れ!」

 

「え!?」

 

そういうと雷仁竜は虹夢を頭に乗せる。

頭にはちょうど立って踏ん張れるぐらいのスペースがあった。

虹夢を乗せた瞬間、雷仁竜に稲妻が迸る。

 

「行くぞ虹夢!」

 

「えあ、ん〜〜もうどうにでもなれ!」

 

虹夢がヤケクソ気味に了承したその瞬間、雷仁竜は水蛇へと攻撃を開始した。

 

「グオオオオオオ!!」

 

尻尾と翼を弓のようにし、雷の矢を水蛇に放つ。

水蛇は食らったらまずいと本能で察し避ける。

その隙をつき、雷仁竜は超高速で近づく。

 

「キシャエ!?」

 

驚く水蛇に雷仁竜が腕のカッターと斧型の翼を持って攻撃していく。

その攻撃により水蛇は確実に追い詰められていく。

 

「す、すごい……」

 

それを頭の上で体感している虹夢はただただすごいとして言えなかった。

 

「グオォ!」

 

「キシェエァ!?」

 

戻って雷仁竜と水蛇の戦い、雷仁竜の蹴りを喰らい、水蛇は海へと身を隠す。

 

「逃げた?」

 

「違う」

 

その直後、すさまじい速度で水蛇は突進してきた。

飛翔することで雷仁竜は回避するが、雷仁竜が元いた場所には大きな跡が残っていた。

 

「あれは喰らえないな……虹夢!」

 

水蛇の攻撃を見て、一気に決めようと考えた雷仁竜は虹夢に声をかける。

 

「え、何レイジ?」

 

「一気に止め行くぞ」

 

「! うん、わかった!」

 

とどめをしにいく、それを聞いた虹夢は尻込みせず、堂々と仁雷竜突牙を構える。

 

「よし……」

 

「キシャアアアアアアアアアアア!!」

 

二人がとどめをさそうとしているのと同じように水蛇も再び突進の準備をする。今度は翼を広げて。

 

「行くぞ虹夢!」

 

「ああ!」

 

意を決した二人。まず虹夢が迅雷龍突牙の弦を弾く!

 

「グオオオゥゥ……ゴアアアアアアアア!!」

 

雷仁龍はその身に雷を走らせる!

 

「キシャアアアアアアアアアアア!!」

 

「今だ!」

 

「…… !」

 

水蛇が突進してきたの見計らい、二人は雷のごとく、超スピードで突っ込む!!

 

 【雷龍覇邪一閃 翔龍迅雷激進(しょうりゅうじんらいげきしん)の型

 

「「ハアアーーーーーーダァ!!」」

 

「ギシェェエエエエエエエイ!?」

 

ドバアアアアアアアアアンン……!!

 

水蛇はその突撃に貫かれ、すさまじい電流と共に粉砕、消滅した。

 

「やったな」

 

「うん……」

 

水蛇を倒し、無事戦闘を終えた二人。しかし虹夢の方はもう相当疲弊しているようだ。

 

「虹夢。あの時はごめん」

 

「え?」

 

雷仁竜がレイジへと姿を変え、シザーが戻ってきた後、レイジは虹夢にごめんと謝罪した。

神社での一件について、かれはようやく謝罪をすることができた。

 

「いや、俺の方がごめんだと思う……だって、レイジ俺のために怒ってくれたんだし。」

 

虹夢もレイジに誤った。まあこっちは理由まだわかってないし、

そもそも今回の件については謝る必要はない。

 

「へい、へい……とりあえずその話は…そこまでということで」

 

「「よくない」」

 

「あ、はい」

 

ぶっ飛ばされたボロボロになったシザーが、

一件落着と思いきや長い不毛な争いが始まる予感を感じ取り、

いい感じになっているうちに締めようとするが二人はそれを許さなかった。

結局店主のおじさんが虹夢を仕事で呼びに来るまでふたりの謝罪争いは続いた。

 

 ーーその日の夜ーー

 

夜、虹夢、シザー、レイジの三人は虹夢が家としている神社で床についていた。

虹夢が三人で寝たいといい、それをシザーとレイジが聞き入れたため、こうなった。

 

「レイジ」

 

「どうした? 虹夢?」

 

「……今日はありがとう」

 

「……それは、すでに爆睡しているあいつにも言ってやれ」

 

その後、二人はかなりいい顔して眠ったそうな。

 

 ーー???ーー

 

「時はもうすぐ、来たれり!!」

 

『ウオオオオオーーーーー!!』

 

炎、マグマ、熱を彷彿させるものが渦巻く場所で、何が始まろうとしていた。




次回第三話はレイジための回にする予定!あとアドバイスあったら感想でくれ。


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第3記ー1 レイジが見た虹夢の悩み

そういえばまだこっちでは投稿していなかった。


「はあ…はあ…はあ…!」

 

「ふふふ……」

 

西暦2314年12月9日午後3時56分、事件は発生していた! 一人の少女が息を切らして、怪人から逃げている。

 

「はあ…はあ…いや、こないで!?」

 

「お待ちなさい……デントリーのせいで水みたいなのしかいないのと言われないか最近心配となり私という存在でそんなことはないと引きこもっているところわざわざやってきたこの“ハクシキー”様を楽しませなさい!」

 

少女を追いかけていたのは、頭にシルクハットをつけ、手にはタブレットらしきものと指揮棒のようなものを持った黒い細身の体の怪人“ハクシキー”。

彼を一言で表すなら『残虐なる雑学王』。

その知識は広く深く、知らないことはほぼないと言っていいほど。

しかし同じレベルで残虐性が高く、時々こうして一人をターゲットとし、

そのものを散々弄んだ後、ゆっくりと◯すようなやつである。

 

「ええい! 斯かくなる上はあれを!……えっと確かあれは違うこれも違う……」

 

戻って少女とハクシキーとの、追いつかれれば死の追いかけっこ、

少女は一心不乱に路地裏に走り、ハクシキーを撒こうとする。

 

それを許しまいとハクシキーはタブレットのようなものを操作し何かを探す。

 

「……そうだこれだ! “チェルォンムカ”!」

 

「きゃ!?」

 

探してたものを見つけたハクシキーは何か呪文のようなものを唱えつつ指揮棒を少女に向けた。

すると、少女の周りを囲むように地面に魔法陣が複数現れ、

そこから鎖が伸びて少女に巻きつき彼女の自由を奪う。

体の自由を奪われた少女はバランスを崩して転び、

そこからさらに鎖が伸びて巻きつき、体を地面に貼り付けにする。

 

「なに……これ…離して! いや! 来ないで!」

 

「やっと捕らえたぞ〜……しかしこの魔法気を緩めたら消えてしまうな、まあいいか、さあて、何をしてやろうか……」

 

鎖によって身動きができない少女は、鎖から逃れようともがくが、

少女の力では当然鎖は解けず、恐怖からか少女は叫び声をあげる。

一方、少女をやっとの思いで捕らえたハクシキーは、一歩一歩、少女の恐怖をあおるように近づく。

 

(もう、だめ……)

 

「ん? 動きが止まったな? さては諦めばあばあばあばあああ!?」

 

徐々にせまるハクシキーからはもう逃れられない、そう思った少女は諦めて目を瞑つぶったが、

その瞬間、足の方でバッチィっと音がなり、

気になって目を開けると雷がハクシキーに向かって落ちていた。

雷が落ち終わると、ハクシキーは煙を上げて倒れ伏した。

同時に少女を縛り上げていた鎖も消え、少女はその場から素早く立ち去った。

 

「……どう?」

 

それから数秒後、雷竜に変身した状態の、この物語の主人公、四木(しき)虹夢(こうむ)が路地裏に走ってきた。

虹夢は自らの横でパタパタと浮いているコウモリに問いかける。

 

「ふふふ、ばっちり決まったぜ!」

 

その問いに鋼鉄の翼を持つコウモリ、シザーバットことシザーは上機嫌で答える。

実はあの雷はシザーが出したものである。

 

「だが今の危なかったぞ、雷が捕まっていた少女に当たりかけていた」

 

「「え?」」

 

その雷を発した際に少女に当たりかけていたことを指摘したこの金髪の青年が、

雷を司る竜である雷仁竜の人間態、レイジ。

レイジに指摘され、虹夢とシザーは驚く&当たらなくて安心して胸をなでおろした。

二人が安心の吐息を出したのとほぼ同時に、ハクシキーが痺れの残るその体を起こした。

 

「ぐ、ぐおおお……き、貴様らぁ!」

 

「うわぁ起きた!」

 

ハクシキーは起き上がって早々虹夢達に向かって怒鳴る。

それによってハクシキーが起き上がっていたことに気づいた虹夢はびっくりする。

 

「貴様らのせいで本日のターゲットに逃げられた! 許さん! 普通に殺す!」

 

虹夢達の介入で少女に逃げられ怒り心頭なハクシキーは、三人に魔法を放とうとする。

 

「虹夢、やつを上に飛ばして空中で倒せ」

 

「了…解!」

 

「ほれディスク」

 

「ありがと!」

 

レイジからの指示を受け、シザーから交輝レコード『翔雷』を受け取りつつ、

虹夢はハクシキーへと雷の力を利用した超高速移動で接近する。

 

「何!?」

 

「まずはカチ上げ!」

 

「ぐは!?」

 

いきなりの虹夢の接近にたじろぐハクシキーを、

虹夢は迅雷龍突牙(じんらいりゅうとつが)で上空に向かってぶち飛ばす。

 

「ぐ、空中ではうまく身動きができない……とでも思ったか! 浮遊魔法を使えば普通に動け……!?」

 

虹夢によってカチ上げられたハクシキーだが、焦りはなく、

浮遊魔法を使えば普通に動ける、そう言おうとしたその時、ハクシキーには見えてしまった。

既に迅雷龍突牙を雷覇翼斧(らいはよくふ)雷爪断弓(らいそうだんきゅう)とベース部分に分け、

ベース部分を雷覇翼斧と合体させていた虹夢が構える様子を。

 

「はあ!!」

 

そしてハクシキーがまずい、と思ったタイミングで、

ベース部分との合体により雷を纏った雷覇翼斧を虹夢はハクシキーへと投げた。

雷覇翼斧は回転しながらまっすぐハクシキーへと向かっていき、

 

轟雷瞬撃(ごうらいしゅんげき) (とばし)

 

「ぐわ!?」

 

きれいに懐に当たり、ダメージを与えつつ指揮棒とタブレットのようなものを破壊する。

ハクシキーは指揮棒をから魔法を使っていたので、これで魔法は発動できない。

 

「止め!」

 

これで阻まれることなく止めをさせるようになった虹夢は、

素早くベース部分を雷覇翼斧から雷爪断弓に付け替え、弦を思いっきり引く。

すると雷が雷爪断弓の矢に集まっていく。

 

雷鳴鋭爪窮(らいめいえいそうきゅう) 雷光(らいこう)

 

「……!」

 

ビュッ!!

 

それが最高点に達したところで、虹夢は弦を離した。

すると雷の矢が凄まじい速度でハクシキーへと放たれる。

 

「だが、ブラックアウト!」

 

しかし、ハクシキーがそう叫んだ瞬間、ハクシキーは黒いもやとなり、矢が通り抜けてしまった。

 

「これこそ私の奥義、ブラックアウト! 発動すれば1分のインターバルを要しますが、少しの間黒い霧となった攻撃を無効化できる!」

 

そう、ハクシキーが今発動した、ブラックアウトという技は、自身を一時的に黒い霧へと変える技である。

これにより『雷鳴鋭爪窮 雷光』を避けたわけだが、実はあまり意味はない。

 

ヒュン

 

「ぐは!?」

 

何故なら、雷爪断弓から放たれる矢は誘導能力を備えているからだ。

それにより矢は再びハクシキーへと向かい、今この瞬間ハクシキーの体を貫いた。

 

「とりあえず…また、少し…知識は増え、た……」

 

ハクシキーはそう言い残すと、霧となって消えていった。

 

「……ふう」

 

ハクシキーが消え、安堵と共に虹夢は変身を解いた。

 

「はっはっはっは! オツカレーーー虹夢!」

 

「う、うんありがと」

 

変身解除と同時に、シザーは労いの言葉を口にしながら虹夢の周りをパタパタと旋回する。

しかし、虹夢はあまり喜ばず、苦笑いする。

 

「? おい、何か」

 

「さあて、かぁえろっと!」

 

その様子に違和感を感じたレイジは虹夢に聞こうとするが、

その前に虹夢は家に帰るべく走り出してしまった。シザーもそれについていく。

 

「あ、おい…」

 

置いて行かれたレイジは慌てて虹夢達を追いかけていく。

 

「…………今の」

 

その後、路地の先から少女が顔を出す。どうやらさっきの戦いを見ていたようだ。

 

「あれ、確か……」

 

「ありさ!」

 

ありさ、そう呼ばれて少女、ありさは振り向く。

 

「お兄ちゃん」

 

そこには彼女の兄がいた。

 

「探したぞ」

 

「ごめんごめん」

 

ありさは兄に謝りつつ、兄と共に帰路についた。



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第3記ー2 レイジが聞く虹夢のこと

ハクシキーとの戦闘が終わった後、虹夢、レイジ、シザーは虹夢の家(廃神社)への帰路についていた。

 

「レイジ、シザー! 空綺麗だよね!」

 

「お、おう…」

 

「そ、そうだな」

 

その道中、突然虹夢から空が綺麗と同意を求められ、少々困るシザーとレイジ。

 

「……」

 

そんな虹夢の様子を、レイジは訝しげに見ていた。

 

(どうしてだろうか…何故か虹夢に違和感を感じる…会ってまだ4日、そこまで時は立っていないはずなのに…)

 

「おうおうレイジさんよう、会ってまだ4日しか立ってないけど何故か本日の虹夢に違和感を感じてるっていう感じの顔してらっしゃいますね〜! どうしたんデスカ!」

 

「そこまで思考が読めているのなら何も言わなくてもわかるだろうハガネインウツコウモリ、虹夢から感じる違和感の正体が分からないんだよ!」

 

レイジが虹夢から感じる違和感について考えていると、

シザーがレイジの思考をほぼ的確に言い当てつつどうしたか聞いてきた。

レイジは悟っているのにも関わらず、

わざわざ煽り口調も交えて聞いてきたシザーに怒りの意味を込めて変なアダ名をつけつつ質問に答える。

 

「まあまあ、お気になさらずに相談してくれよー。あんたに虹夢を会わせるまでにあいつを見ていたのは俺なんだから。」

 

シザーはレイジの返しはスルーしつつレイジが自分に相談しなかったことを嘆く。

 

「……そうだったな。」

 

それを聞いたレイジはただ呟いた。

 

「で、違和感の正体が分からない、だっけ?」

 

「ああ」

 

気を取り直してのシザーの聞き返しに短い返事でレイジは答える。

それからシザーは少し思案するそぶりを見せた後、

羽を合わせてポンと音を鳴らした。どうやら何か思いついたようだ。

 

「周りの人間に虹夢の話を聞こう!」

 

「……普通に虹夢自身から聞いた方が早くないか?」

 

その思いついた案は虹夢の周りの人物に虹夢の話を聞くというものだった。

それを聞いたレイジは虹夢から聞いた方が早いと言った。

 

「い、いやいや、違和感の正体を知りたいんだったら、まずはあいつのことを知っておいた方がいい。それを早く行えるのは周りに聞くことだ!」

 

シザーはレイジの発言を聞いて少々焦りつつも、

周りから話を聞くことへの意味を説く。

 

「あいつを見て知るのより、そっちの方が早いから…か?」

 

「そうそうそうそうそうそうそう!」

 

「……わかった。」

 

それを聞いたレイジの聞き返しに超高速で何度も頷くシザー。

その様子を見たレイジは暫く思案した後、了解した。

 

「そうと決まったらまずここへ行こう!」

 

シザーはこの周辺の地図を取り出し、

数カ所についた丸のうちの一つを指し、その場所まで飛んでいく。

 

(……さては最初からこのルートへと持って行こうと考えていたな)

 

シザーのその様子を見てレイジは最初からこうするつもりだったということを察した。

思案が足りなかったと少し後悔しつつも、後戻りできないのでシザーについていくことにした。

 

 

ーーー精肉店兼焼肉店充豚苑(じゅうとんえん)ーーー

 

「まずはここ、充豚苑の従業員の桜木(さくらぎ) (まつ)さん!」

 

「桜木です。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ(なんでシザーの存在をスルーしてるんだ?)」

 

シザーからの紹介で、精肉店兼焼肉店充豚苑従業員の桜木松と挨拶し合うレイジ。

その際、シザーという明らかに普通じゃないコウモリもどきがいるのにスルーしていることに、

レイジは疑問を抱いたが、これについては後でわかる。

 

「あの子についてのお話、でしたね」

 

「あの子? ああ、虹夢のことか……お願いします」

 

桜木の言うあの子とは誰か分からず、

一瞬レイジは戸惑うが、すぐにあの子とは虹夢を指していると気づいた。

 

「分かりました。ではまずはあの子との出会いから行きましょうか」

 

そう切り出してから、桜木は語り始めた。

 

「あの子とは、今あの子が家にしている神社が廃れる前、神主さんがこの子にいっぱい食べて元気になってもらいたいからってここに連れて来て、その時に初めて会ったんです。それから、神主さんが死んだ後もあの子はここに来て、お肉を買っていったりしてくれました。ある時、私はあの子に聞きました。『何でいつもここなのか、他にも焼肉屋や精肉店はあるのに』と。そしたら返ってきた答えが『ここがいいから』でした。その時私は、この子はとても純粋な子なんだなぁと感じました」

 

「なるほど、純粋なやつ……」

 

桜木の話を聞き終わったレイジは、その話から虹夢が純粋な存在であると感じた。

思えばシザーが手を出せといった時にすぐに差し出したらしいから当然といえば当然か、

とレイジは納得する。

 

「これでよかったですか?」

 

「…! はい、大丈夫です」

 

話し終えて、これで良かったか不安そうに聞く桜木に、

レイジは感謝の意を込めつつ大丈夫と答えた。

 

「それは良かった…それでは話を変えるようでなんですが、バイトしませんか?!」

 

唐突に桜木はレイジにバイトしないかと質問した。

 

「しません。」

 

レイジははっきりと断った。

 

「……なんでですか」

 

桜木は不服そうに問いただす。

 

「というか何故いきなりバイトするかを聞こうと?」

 

その問いはスルーしつつレイジは問う。

 

「最近人手が足りないのでことあるごとに誘ってるんです。というわかでバイト!」

 

「し ま せ ん」

 

その後、問いとスルーの応酬となってきてレイジは面倒くさくなり、

話題を変えるつもりでとあることを聞いた。

 

「というか話を聞く限り十年ぐらい前からここにいるようですが何歳ですか貴女」

 

その問いを聞いた桜木は、急に纏うオーラを変えた。

この時、レイジは地雷踏んだかもなと思った。

 

「それは、私が吸血鬼だからですよ!おかげで永遠の19歳! 吸血鬼になってからは苦労の連続でした! 拷問やら襲撃やら封印やら! でも同じ境遇だった店長と出会って私はここで働き始めた! 幸せだった! 所が最近急に客が増えて店長が忙しくなってしまった! このままでは店長が過労でダウンしてしまう! というわかでバイトしません?」

 

が、実際始まったのは桜木が吸血鬼というのと働き始めた経緯の独白であった。

そしてさりげなくまたバイトしないか誘ってくる。

 

「しません別の人に頼んでくれ」

 

そしてレイジもまた断る。

 

「どの流れだだしわけがわかになってますよ」

 

「これは癖だから仕方ないのよ…そんなことよりバイト!」

 

この後もかなり同じようなことが繰り返されたので、レイジはシザーを掴み、高速移動でその場から去った。その繰り返しの最中、シザーがレイジ君ならバイトにいかせても大丈夫すよ!という発言を事前にしていたことが発覚したりした。

 

「次はどこだ?」

 

メリメリと鷲掴みしたまま、レイジはシザーに問う。

 

「つ、次は理髪店っす…」

 

シザーは冷や汗を大量に出しながら地図を渡し、理髪店の場所を指す。

 

「よし、手早く向かうぞ」

 

「へ、へい……」

 

次は面倒くさくならないように、そう願いながらレイジは次の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 ーーー理髪店スクルーーー

 

「お次は理髪店スクル店長、巣久留(すくる)(せつ)さんです!」

 

「よろしくお願いします」

 

「………………こちらこそ」

 

次に行った理髪店スクルでは、店長である巣久留刹が、レイジとシザーの対応をした。

 

巣久留が挨拶した後、暫く凝視した後、レイジはこちらこそ、と挨拶を返す。

先ほどの生肉店兼焼肉店充豚苑(じゅうとんえん)での話が最終的にバイトへの強烈勧誘だったため、

かなり、というか大分警戒しているようだ。

 

「それでお話というのは?」

 

「虹夢について」

 

「了解です」

 

巣久留の問いにレイジが答えるとすぐに、巣久留は自身と虹夢の話を語り始めた。

 

「彼がここに来るようになったのは一年と半年ほど前ですかね。その時は髪が凄まじく荒れていて、セットが大変でした。話を聞くと、どうやらヒロモトの店主から髪を切れって言われたみたいで。それでここに来たようです。それからというもの、彼は時々この店に髪を切りに来るようになりました。しかし、床屋は他にもあるのに、なぜ彼はいつもこの店に来るのか、ある時聞いてみると、『ここ人があまり来てなくて、なんかさみしそうだったから』という答えが返って来ました。この時私は、ああ、なんて優しい子だろう、そう思いました」

 

「なるほど」

 

巣久留の話を聞き、レイジは、虹夢は優しい子供であるという情報を得た。

 

「……それではバイトの話へ」

 

「お断りします」

 

その後に案の定バイトの話題があったが。

 

 

 ーーーファッションセンター相川ーーー

 

次にふたりが来たのはファッションセンター相川。この市では割と大きい部類の服専門店である。

ほぼ一族経営で事務員も店員もほとんどが一家というある意味すごい店だ。

 

「どうも、ファッションセンター相川アルバイト店員、相川愛子(まなこ)と申します」

 

「本日はお時間いただきありがとうございます早速ですが本題お願いします」

 

そこのアルバイト店員である少女、相川愛子が挨拶するが、二連続でバイト強烈勧誘であったため、

早く終わらせて疲労を軽減しようと、レイジは大分早口になってしまっている。

 

「わかりました。では、」

 

それを悟ってか、相川愛子は早急に話を始めた。

 

「私が彼を見かけたのは、三ヶ月前、店長と話している所でした。彼にとって服はお高く最低限度あればいいというもので、店で流行が過ぎて廃品に回す予定のものをもらっていました。なんともったいないかと思いました。それから私は、いつか彼に私がデザインした服を買ってもらい、いや着てもらいたいと思いました!それから私は時折来る彼を観察し彼の背格好、彼の好みを分析しそして今かれのための服を合間を縫って製作中であり…」

 

「シザー、これ聞く相手違くないか?」

 

「虹夢のことを周りからの情報から知るっていう企画なので間違ってはいない」

 

しかし、その話が段々と方向性が変わって行ったことによりレイジは話を聞く相手を間違ったのではとシザーを問いただす。

シザーは間違ってはいないと言った。しかし本人も流石にこれには引いている。

 

「ほい」

 

「ぐは!?」

 

そうこうしていると相川愛子の叔父であり

この店の店長、相川来根太(きねた)が相川愛子にチョップを加え、

彼女を強制的に停止させた。

 

「すみませんねえ〜。こいつ虹夢君を見かけてからというものなんかおかしくなっちゃって。仕事はちゃんとやるし友達とも普通に過ごしたりするんですけど、虹夢君のことを見たり聞いたりすると急に暴走し始めてねえ〜困ったもんですよ」

 

どうやら店長いわく虹夢のこととなると暴走するようだ。

 

「まあなんでこいつを止めてくれるやつがいてくれると助かるんですよーというわけでバイトしません?」

 

「「……しません」」

 

さりげなくバイトしないかとレイジは誘われたが、一つ返事で断った。何故かシザーも断った。

 

 

……続く。



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第3記ー3 レイジが決めるこれから

 ーーー八百屋 なま~ ーーー

 

「ん? 虹夢のことを聞きたい? 俺はほとんど知らんけんな~。 知ってることといりゃあいつが俺の野菜をヒロモトに届ける時の顔が仕事人って感じで一生懸命やっとんな~ぐらいだな~。 お、そうだおめーバイトしてみねえか? うちは特に困ってないがいい人生経験は積めるよう~? あ? 断る? そうかい、まあやりたくなったらいつでもこいや~」

 

「……ナチュナルに話が進んでナチュナルにバイト振られた……」

 

相川にて一つ返事でバイトの誘いを断った後、様々な店をレイジとシザーは渡り歩き、虹夢について様々な話を聞いた。

そのほぼ全てでバイトの誘いを受けたが。

そして今は八百屋なま~に足を運び、店長の野沢菜郎(のざわなろう)に話を聞いた。

そこで聞けたのは、虹夢は物事に一生懸命取り組む少年であるということだ。

 

「次に行くか」

 

割とストレスなしで話が終わった八百屋を後にした二人は、

最後の店、中華料理店ヒロモトへと向かった。

二人が店内に入ると、店長が出迎えた。

 

「よう、待ってたぜ。レイジ君」

 

「よろしくお願いします、広元さん」

 

互いに礼をした後、店長とレイジは本題の話を始める。

 

「虹夢のことを聞きたい、だったな」

 

「はい」

 

「…じゃあ、まずは、これまで聞いてきたことであいつをどんなやつと思ったか聞かせてくれ」

 

「え?………聞いた限りではあいつは、」

 

店長はレイジにこれまで聞いたことで感じた虹夢の印象を聞いてきた。

何故かとレイジは少し思ったが、素直に答えることにした。

 

「あいつは、優しく、純粋で、一生懸命に物事に取り組むやつ、そう感じました」

 

「……そうか、じゃあ、それを聞く前に君はあいつをどう思っていたかを、聞かせてくれ」

 

レイジの返答を聞いた店長は静かに頷き、更に追加で聞いた。今度は町の皆から話を聞く前に感じたことを。

 

「……相手の裏を読まず、自分がどうなるかを考え切らずに、役に立てるならそれでいいと思って危険な行動をしようとする、純粋だけど、その純粋さが危険なやつ」

 

それにレイジは、一呼吸置いてから、純粋だけど危ない、と答えた。

 

「だけど、だからこそ、どこかほっとけないやつ」

 

そして最後にそう付け加えた。昔の自分に似てという言葉は飲み込んでだが。

店長はそれを無言で聞く。そして一度大きく息を吸った後、語り始めた。

 

「あいつは、人の役にたつことで、無意識の内に自分の存在が必要だって証明しようとしているんだ。

もちろんただ純粋に人を助けようという優しさからのものもある。

じゃなかったらあの床屋には行き続けない。だが誰かの役に立つことができなければ自分は要らない存在、そう思われることをどこかで怯えているんだ。

だから頼まれごとは引き受けようとするし、引き受けたからには全力でやり遂げようとする。」

 

ここまでの話を聞いて今まで町の人たちから聞いたこととこれが繋がり、レイジは様々なことに納得した。

虹夢が何故人の役にたとうとしているのか、どうしてそれを拒まれた時に悲しそうな顔をしたのか。

しかし本題のことがまだわかっていない。

 

「あいつは、時折り自分をごまかそうとしている、それは何故だ?」

 

そう、レイジが今こうして様々な者たちから話を聞いているのは、

虹夢が何故無理して自分の感情を隠そうとするのか、それを知りたかったからだ。

それを知るためにレイジが聞いた問い。それを聞いた店長はレイジへとその瞳を向ける。

 

「……簡単な話だ。あいつがまだ子供だからだ」

 

「子供……?」

 

そして子供だからと答えた。それを聞き、首をかしげるレイジ。

 

「ああ、一人で生きるためには、強くないといけない、しっかりしないといけない、だから、自分の弱さを表に出そうとしてくれない。前に一度失敗した時、泣きそうだってのに、それを隠そうとした。弱さを見せないために。」

 

「…………弱さを、見せないために……」

 

弱さを、涙を見せない。だから最近ごまかそうとしていたのか、

そう考えたレイジは、何の涙を隠そうとしているのか考える。

そうして暫く考え込んだあと、気づいた。虹夢の優しさが関係していると。

 

(あいつは、やつらを倒したことに傷ついている、だからつらそうにしていたんだ……)

 

レイジは拳を握った。戦えば虹夢の心が傷つくのは、

考えれば当たり前のことであるのに気づかなかったから。

 

「……なあ」

 

そんなレイジに店長が声をかける。

 

「頼みがある」

 

頼みがある、そうレイジに切り出した。

 

「頼み?」

 

「ああ。あいつは、まだ子供だ。どんなに強がろうとしても、ひどくもろい。だから、支えてやってくれ。あいつが本当の意味で強くあれるように」

 

店長はそう言って、頭を下げた。レイジはどうすればいいか暫く考えた、が、

 

「……わかりました」

 

結局受けることにした。元より虹夢のことは助けるつもりだったからだ。

それを聞いた店長は頭を上げた。

 

「でも、」

 

その直後に、レイジが、でも、と続ける。店長は首をかしげた。

 

「貴方も、あいつを支えてやってください。そこまで虹夢のことを思っているなら、貴方だって虹夢を支えられる」

 

レイジはそう言った。微笑んで。それを聞いた店長はガハハと笑う。

 

「ハッハッハッハ! 君が来る前にもそこのコウモリ君に言われたよ」

 

どうやらシザーにも頼み、了承後に似たようなことを言われたらしい。

「まあ、コウモリ君の場合は、貴方はもう十分虹夢にとって大事な存在だから支えるのは当然、だったけどな」と加えたが。

 

「ハハハ……わかった。俺もあいつのことを支える。君達も」

 

店長は了承した。自分も虹夢を支えることを。

 

「ああ」

 

「わかってますって」

 

レイジとシザーも、改めて了承した。

 

「ああ、それと、」

 

「?」

 

「ほぼ年中無休の、あの海の海の家がバイト募集してんだ、入ってやってくんねえか?」

 

「……考えときます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おーいレイジ~! シザ~~!」

 

その後、レイジとシザーは店を出た。するとちょうど虹夢が野菜の仕入れから帰ってきた。

虹夢は二人に手を振るう。

 

「どうして二人がここに?」

 

「ちょっと用があってな」

 

「?」

 

虹夢がどうしてここにいるのかと聞き、レイジは適当に返す。

それに虹夢は首を傾げる……実にいいシーンだが、

 

「……!」

 

それを強制的に終わらせるようにレイジが何かを感じ取った!

 

「どうしたの?」

 

「やつらが現れた!」

 

虹夢が急に動きを止めたレイジに問いかける。

レイジはやつら、海賊がきたと告げる。

それを聞いた虹夢は素早く仕入れ品を店に置き、

レイジとシザーと共に海へ向かった。

海には数体の黒いのっぺらの人型、

鎧を身にまとった、巨大な黒い熊二体、そして、

 

「我が名はハクシキー、大いなる生きた知識の宝庫なり!」

 

頭にシルクハットをつけ、手にはタブレットらしきものと指揮棒のようなものを持った黒い細身の体の怪人“ハクシキー”だった。

 

「またおまえか」

 

ハクシキーが決め台詞を言い放った直後に、虹夢達は到着した(上のセリフはシザー)。

 

「ぬ! 貴様ら! この間はよくも……」

 

 【翔雷 ナスティングノイズ

 

バジィ!! ドゴオオォーーーン!!

 

「ぐわあああああああああ!?」

 

ハクシキーが虹夢達へ文句を言おうとしたのもつかの間、

シザーが交輝レコード 翔雷を口に入れ、特殊技の“翔雷 ナスティングノイズ”での雷をハクシキーに落としてダメージを与えた。

 

「ぐおお……貴様……ぐは!?」

 

「そう何回も文句は聞けねえ」

 

今度はレイジが雷覇翼斧の銃モードから撃った弾丸がハクシキーを再び地面に倒れさせた。

 

「あれ? それってレイジも使えるの?」

 

それをみた虹夢は雷覇翼斧、もとい迅雷龍突牙はレイジでも使えるのかと、気になったのか聞いた。

 

「あくまで俺が使える方があるだけだ。そしておまえのはこっち」

 

レイジはそう答え、虹夢に迅雷龍突牙を渡した。

それを受け取った虹夢はシザーから交輝レコード 翔雷を受け取り、

迅雷龍突牙にセットし、雷を描くように振り下ろした。

 

「雷・竜・装!」

 

その瞬間雷鳴が虹夢の周りを迸り、雷鳴が消えると同時に虹夢は戦闘形態『雷竜』への変身を完了した。

 

「ん? それは、“変練ノ纏(へんれんのまとい)”!」

 

「変練ノ纏?」

 

虹夢の変身を見て、ハクシキーは変練の纏と言った。

なんだそれと言わんばかりに首をかしげる虹夢、レイジ、シザー。

 

「あの時見てよもやと思ったが、まさか本当に存在していたとは!」

 

「いやあの……なにそれ?」

 

凄まじく興奮するハクシキーに、虹夢は変練ノ纏とは何か聞いた。

 

「何!? 纏っておいて知らぬだと!? いいだろう教えてやる!」

 

ハクシキーは身にまとっているのにも関わらず変練ノ纏を知らない虹夢に驚きつつも、

変練ノ纏について解説を始めた。

 

「変練ノ纏とは、数千年前にある錬金術士が作り出した、レンジンの力を人型のものへと反映させるための体だ!

そしてレンジンとは、地球の自然の力をその身に宿した生命体で、錬金術士が作り出したものと自然に生まれたものの二つが存在する! 以上!」

 

「なるほど」

 

ハクシキーの解説を聞き、変練ノ纏について理解した虹夢。

なお、さっきの説明はハクシキーが嚙み砕いて行ったものなので、

改めてここで解説。

なお、ハクシキーの解説とは少し内容が前後する。

 

・レンジン

はるか昔より存在する、疑似的な神のような存在であり、一応は生命体。

レンジンには地球にまつわる自然の力をその身に宿しており、強大な力を持つ。

なお、自然発生するもの、人為的に作られたものとの二つが存在する。

 

・変錬の纏

数千年前、ある錬金術師がレンジンに興味を持ち、その力を利用するために作ったものであり、もう一つの体とも言える。

媒介となるものからレンジンの力を汲み取り、纏うことでその新しい体は作り出され、レンジンの力が使用者に反映される。

使用中は体への外的ダメージを抑え、変身解除後の元の体を保護する。

変錬の纏を纏った状態で部位を損傷しても、元の体には多少の傷程度で済まされる。

なお、レンジンの力を借りれないと生み出せない。

 

因みに、その解説の横で「知らなかったすか?!」、「知らねえよ!」と、シザーとレイジは言い合っていた。

 

「じゃあ、行きますか!」

 

ハクシキーの解説終了直後、戦闘形態雷竜、もとい変練ノ纏『雷竜』へと変身した虹夢はすぐさま高速移動で怪人たちに近づき、迅雷龍突牙で蹴散らした。

 

「なぬ!? へ、ヘビィミストベアー! やつを潰せ!」

 

「ゴアああああああ!!」

 

ハクシキーの指示で、ヘビィミストベアーと呼ばれた、鎧を纏った熊が虹夢に襲いかかる。

虹夢はその攻撃を高速移動で避けつつ、雷覇翼斧で弾丸を打ち込み、

ハクシキーとヘビィミストベアーに特殊電気を帯電させる。

それから迅雷竜突牙の弦を弾き、回転しながら振り抜く。

 

 【雷龍覇邪一閃 嵐の型

 

「ぐわあ!?」

 

そうして放たれた雷龍覇邪一閃 嵐の型。

雷でできた龍が広がりながら虹夢の周りを旋回し、ヘビィミストベアー二体とハクシキーを吹き飛ばす。

その隙を狙い、虹夢は再び弦を弾く。

 

 【雷龍覇邪一閃 波の型

 

今度は雷龍覇邪一閃 波の型、雷の龍が、波打つようにヘビィミストベアーの一体へと向かう。

まともに喰らうヘビィミストベアーだが、耐え切ろうとしている。

 

 【雷龍覇邪一閃 貫の型

 

そこへ雷の龍を矛先へ纏わせ敵に向かい、

発生した放電の衝撃波で敵を粉砕する雷龍覇邪一閃 貫の型をヘビィミストベアーにぶつけた。

ヘビィミストベアーは胸にどでかい風穴を開け、爆散した。

 

「よし……」

 

ヘビィミストベアーを倒したことで、虹夢は迅雷竜突牙を持つ手を更に握る。

 

「ヘビィミストベアーを倒すとは……だがこれはどうだ! とう!」

 

ヘビィミストベアーが倒されたことで一瞬焦るハクシキー、

だがすぐに平静を取り戻し、残ったもう一体のヘビィミストベアーに向かってジャンプした。

するとヘビィミストベアーとハクシキーが合体し、顔がハクシキーのものとなった。

 

「これぞわが戦闘能力を補強する秘策! さあとくと受けてみよ!」

 

「く!?」

 

強化されたハクシキーの攻撃を、虹夢はなんとか躱していく。

しかし、回避を見切られ、強化ハクシキーの攻撃を喰らってしまった。

 

「うわ!?」

 

大きく引き飛ぶ虹夢。なんとか立とうとした所へ強化ハクシキーが更なる攻撃を繰り出す。

咄嗟に眼を瞑り、ガードしようとする虹夢。しかし衝撃は来ず、なぜと思いつつ眼を開けると…

 

「ぐ……」

 

「うおあ……」

 

レイジが雷覇翼斧と雷爪断弓で、シザーが自らの羽で強化ハクシキーの攻撃をガードしていた姿が写った。

 

「! どう、して……」

 

どうして守ろうとしているのか、そう問おうとした虹夢よりも先に、二人は叫んだ。

 

「虹夢! 涙をただ全部飲み込むのが強さじゃないぞ! 悲しいときはちゃんと言え!」

 

「!」

 

「強さっていうのは、誰かに頼ることを覚えなきゃやって来ない! だから…」

 

「「だから俺たちをもっと頼れ! そんで自分の弱さと向き合え!」」

 

「ちゃんと支えてやるから…」

 

「同じく!」

 

レイジとシザーの、頼れという叫び、それを聞いた虹夢は……

 

「ありがとう、だったら支えて、俺も、頑張るから」

 

強化ハクシキーの攻撃を耐えている二人の背中に手を回し、そう語りかけた。

対しレイジとシザーは「「ああ、もちろんだ」」と答えた。

同時にレイジは雷仁竜へと姿を変え、強化ハクシキーを吹き飛ばす。

その頭上へ、虹夢は降り立つ。

 

「行くよ! レイジ! シザー!」

 

「「ああ!」」

 

行くよ、といった虹夢に、レイジとシザーは頷く。

強化ハクシキーはまずは雷仁竜を倒すためその爪を雷仁竜に振り下ろす。

 

「……ふん!」

 

しかし、その爪は、虹夢の雷覇翼斧と共に振るわれた翼と腕のカッターにより、

破壊され、もう一方の翼と腕で退け反らされる。

そこへ雷爪断弓の矢と共に翼と尻尾より放たれた雷の矢が迫り、強化ハクシキーを大きく後退させる。

 

「ぐおおおおおーーーーーー!?」

 

「はあああああ!!」

 

更にそこから虹夢が迫る。右手には帯電状態の迅雷龍突牙、左手には雷の刃を形成した剣モードのシザー。

 【雷龍覇邪一閃 斬の型

 【翔雷 ナイティングブレイク

 

虹夢は迅雷龍突牙の弦を弾いて発動する、高速で移動しながら切り付け、

相手に帯電した特殊な電気を放電させ、体の中で衝撃波を発し、切断する『雷龍破邪一閃 斬の型』と、

シザーに翔雷の交輝レコードをセットすることで発動する雷を伴う斬撃『翔雷 ナイティングブレイク』を同時発動する。

高速移動により多方向から繰り出される斬撃とその斬撃によって自身の中から発せられる衝撃波を強化ハクシキーは全てまともに喰らう。

実は事前にシザーに自らの血を与えることにより、シザーの切れ味と自身の力をパワーアップさせていた。

それにより、ハクシキーは自分の想像以上のダメージを受けていた。攻撃を終えた虹夢は二人に宣言した。

 

「シザー! レイジ! 止め行くよ!」

 

「「わかった!」」

 

それにシザーと雷仁竜も答え、虹夢はシザーから交輝レコード翔雷を取り出し、

迅雷龍突牙にセット、弦を弾いた。

 

 

雷龍

 

 

それから虹夢は走り出し、雷仁竜も飛翔体制に。

そこから雷仁竜の頭部へ飛び乗り、シザーと迅雷龍突牙を構える。

そして突き出すと同時に雷光となって強化ハクシキーへと突進する!

 

 

覇邪

 

 

「ぐ、ぐおお…!?」

 

 

【一閃】

 

 

「ハアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

強化ハクシキーは暫くの間、その突進を耐え続けた。しかし、

 

ズドオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーオオオオンンン!!!!

 

「ぐは!?」

 

遂にその体を貫かれた!

 

翔龍迅雷激進の型

 

「まさか、この状態で敗れるとは…ぐおあ!?」

 

ドバアアアアアアアアアンン…………!!!!

 

雷龍覇邪一閃 翔龍迅雷激進の型によって貫かれた強化ハクシキーは爆散した。

 

 

 

 

ーーー次の日ーーー

 

翌日、海の家にて、レイジは働いていた。といっても今は店番だが。

 

「さて、これからだ」

 

レイジは空を見上げた。まるで誓いを立てるように。

 

 

 

 

 

 

ーーー追記ーーー

 

「ん? あれは…」

 

レイジは精肉店兼焼肉店充豚苑(じゅうとんえん)の近くにて、見覚えの有る影を見る。それはここにはいないはずのもの。

それからすぐにレイジはその場を後にしたが、この影を気にし始めた。

 

 

 

ーーー追記2ーーー

 

ハクシキーとの戦い、その時、別の場所からその戦いを見ていたものが、いや者たちがいた。

 

「あれは…何?」

 

「あれだ、あれだったらこの世界を…!」

 

この二人、それぞれ後に関わることになるのだが、それは別の話……



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