元太刀の勇者は立ち直れない (ボトルキャプテン)
しおりを挟む

第1期 堕ちた男編
プロローグ


漫画知識、書籍知識を取り入れたので修正しました。


俺はヴィッチ2号ことメアリーを追いかけて波の尖兵で船の勇者の戦艦に乗り込んでいて遂にヴィッチ2号を追い詰めた。

 

「この野郎……追い詰めたぞ!!」

「いや!やめて!」

 

俺は勇者の鞭で解放した中で最強の【ファイアビュート】を構えてヴィッチ2号を捕縛しようとした。だが、その時突然、俺の目の前がブツリと真っ暗になった。

 

「なんだ!?何が起こったんだ!?」

 

俺のアイコンに赤い文字で文字が書き込まれて言った。

 

『あなたのストーリーは抹消されました』

 

「は?どういう事っ!?なに抹消って!?」

 

アイコンは無条にもさらに書き込まれていく、俺はパニックに陥った。

 

『ストーリーを進めることは出来ません、ペナルティが課せられます』

 

「ペナルティ!?なんだそりゃ!?ここまで来て抹消って……」

 

そしてアイコンが最後に書かれた文字はこうだった。

 

『スタート地点に戻ります』

 

「なに!?」

 

辺り一面が光に包まれると俺は転生されたスタート地点だった所に辿り着いた。

 

「何が起こったんだ……?ペナルティってなんなんだよ……」

「龍二君……久しぶりだね」

「おっさん!?」

 

呼ばれて反応したその先には、俺を【盾の勇者の成り上がり】の世界に転生させてくれた神様がいた。

 

「おっさん!?どういう事だ!?ペナルティって!?」

「あなたは神々の禁句を犯したのです……」

「なんだって!?」

 

俺は唖然としながら驚いた。

 

ふざけるな!もうすぐラスボスだったのに!ラフタリアを彼女にする事も出来たのにいきなりなんなんだ!?

 

「とにかく……今から君は異世界の裁判を受けなければなりません」

「裁判!?」

「時間がありません、こちらに来てください……」

 

神様のおっさんに案内され、そこは真っ白な空間でテレビなどで見た事がある風景が写し出された、裁判所だった。そこには様々な神々が集まっており、殺伐とした空気で押し潰されそうになった。近くには俺を転生をしてくれた神様のおっさんも悲しそうな顔をして俯いていた。すると裁判長の神が俺に問い掛けて来た。

 

「お前は神々の掟を破った、その事実は認めるな?」

「ちょっと待ってください!一体何の話っすか!?いきなり強制に連れてこられて説明もないのか!?俺は鞭の勇者だぞ!?」

 

俺は構えたが鞭で最強だったファイアビュートも無くなっていた。

 

「え……?うそ、鞭が出てこない……!?」

「なら一から説明しよう、神々のご法度を行ったのだ」

「ご法度!?」

「簡単に言えば世界を捻じ曲げたのが原因だな」

 

世界を捻じ曲げた!?

 

「待ってください!世界を捻じ曲げることなんてしてませんよ!?」

「ならば説明してやろう。1つ、別異世界の武器を使用した罪。2つ、世界観を壊した罪だ。心当たりがあるだろう?」

 

そう言われた俺は思い出してみると、鉄砕牙や刀の勇者ラフタリアの事を思い出した。

 

確かに、ミーシャと戦った後に世界を捻じ曲げて元に戻したっておっさんが言ってたけど、それが原因って事なのか?

 

「貴様は破ってはならぬ事をしたのだ、君にも責任がある」

「そんな!!ちょっと待ってください。確かに俺はそう頼みまし」

「黙れ、もう待たぬ」

「っ!?」

 

俺は神様のおっさんに助けを求めようとしたが、おっさんは俯いたまま助けようとしてくれなかった。そして、俺に追い打ちをかけるように言い放った。

 

「元鞭の勇者・福山龍二に判決を言い渡す!」

 

重苦しい空気の中、俺は判決を言い渡された。

 

「判決、勇者の資格を剥奪し、並びに【不死身の体になり一生苦痛に苦しむ呪い】をかけて再び【盾の勇者の成り上がり】に行きストーリーを完結させよ、ただし、【他世界の技、他世界の【人物】の使用を禁止】とする」

 

「え……【不死身の呪い】!?」

「お主はもう【勇者】にはなれん、ごく普通の【人間】として行くがいい」

 

俺は落ち着きを取り戻し、頭を整理した。

 

結果的に神の判決はこうだ。

 

1、不死身になって一生苦しめ。

2、二度と勇者にはなれない。

3、異世界スキルなどを使うな。

4、再び【盾の勇者の成り上がり】に行って完結させろ。

 

という設定にしろという事なのか?人間という事は鍛冶屋のおっさんと同等の村人と同じポジションのモブキャラクターという事だろうか。つーか絶望しかないんだけど……。けど仕方ない、自業自得だ、受け入れよう。

 

「今後は捻じ曲げることなく使命を全うするのだ、分かったか?」

「わ、分かりました……」

「だが、以前の様に楽な道を行けると思うなよ?」

「はい……」

「ならば、行くが良い」

 

俺の前には以前とは違い、今度は真っ黒な扉が現れた。

 

以前は真っ白な扉だったけど、今はそれどころじゃない!!

 

「ふぅ……ティーチ、バージル、スラッシュ、ディアボロ、サニー、必ず探し出すからな!」

 

俺は扉を開け、勇者として立ち上がる為に一から出直す事にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ストーリー設定、登場人物説明

初めてご覧になる方用に用意しました。


福山龍二 勇者・人間 オリジナルキャラクター

前作の主人公。ストーリー序盤は鉄砕牙を武器に太刀の勇者という勇者で異世界の技(他の漫画)の技などを使い戦っていたがイレギュラーや神のおっさんの力により太刀を使うのを辞め、眷属器の鞭を聖武器に改造して四聖勇者ではなく五聖勇者の1人としてあちこちで活躍していた。だが、これが【世界を捻じ曲げる原因】となる。

 

海賊ティーチ 人間・海賊

龍二がメルロマルクの依頼で海賊討伐の際に戦い、そして分かちあって仲間になったオリジナルキャラクターの男、主要武器は錨槍を使っていたが、ストーリー後半では【槌】の勇者になり戦っていた。

キャラクターモデルは00ガンダムのアリーアルサーシェス

 

奴隷バージル 亜人・隠密

メルロマルクの奴隷商でラフタリアと同じ所にいたラビット種の亜人、ククリナイフを巧みに使い、瞬発力を買われて隠密などで龍二を支えていた。

 

奴隷スラッシュ リザードマン・剣士

バージルと同じく奴隷商で龍二に買われたリザードマンの奴隷、ストーリー中盤で盾戦斧(モンハンのチャージアックス)の様な武器を使って龍二と共に戦っていた。タクト一派との戦いで【斧】の精霊に選ばれて斧の勇者となった。

 

ディアボロ 魔物オリジナルキャラクター

牙狼族の生き残りでフィーロと共に育ったオリジナルキャラクターの1人、前作のストーリー終盤には波の尖兵を倒した際に【鎧】の精霊に選ばれて鎧の勇者になった。

キャラクターモデルはジェヴォーダンの獣の黒い狼説

 

奴隷サニー 奴隷・ 副司令

バージル、スラッシュの後に購入したキャット種の亜人、ドSで冷静な所を買われて龍二が発展させた村を影で支えたNo.2の存在だった。

キャラクターモデルはスタートゥインクルプリキュアのコスモ

 

 

ラフタリア 原作盾の勇者の成り上がりヒロイン

尚文が買った奴隷の亜人、美人で強く可愛いヒロイン。序盤は別行動を取っていたがどうしても彼女にしたくて必死に口説いた際にようやく彼女になった。タクト一派の際には刀の勇者になった。

 

 

神様のおっさん

主人公の龍二を『盾の勇者の成り上がり』の世界へ転生させた中年男性の神。名前などは名乗っておらず、様々な異世界に行き来が出来るという。正体は未だに不明。

 

 

原作キャラクター達

 

尚文、錬、元康、樹、グラス、ヴィッチなど多少設定を変えたが通常運転でカースシリーズを解放せずに共に戦った。

 

眷属器の設定

原作の設定を変えて扇、鎌、槌、刀、杖、投擲具、鞭だったがおっさんの力により鞭を聖武器の1つに変えた。




今作で登場しますのでこちらを見て参考にして下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 全てを失った男

俺は再び【盾の勇者の成り上がり】の世界に飛び込んだ。だが、以前とは違って今回の転生された場所が違っていた。辺りを見渡すと見慣れた街並みが並んでおり、そこはメルロマルクの商店街だった。

 

「ここは……メルロマルクか?あっもう勇者じゃないんだもんな、当然っちゃ当然か……ん?」

 

すると俺はある事に気付いた、それは前回とは違うシステムだった。以前の様に勇者用のアイコンが存在しなかった。

 

「あれ?けどステータスは見れるな。どれどれ……?」

 

俺はステータスを確認して見た。

 

福山龍二

村人 【人間】 Lv 0

普通の服

普通の靴

魔法 使用不可

スキル 使用不可

呪い 不死身

所持金 0

 

「Lv0!?所持金0!?嘘だろ……ってか不死身の呪いってなんだよ、チートじゃないのかな?」

 

俺はヘルプを確認して呪いについて調べた。

 

※不死身ではあるが感覚などは普通にあるので注意して下さい※

 

「感覚って痛覚とかだよな、って事は……痛いんじゃん……マジかよ……」

 

俺は両膝をついて、商店街のど真ん中で項垂れた。

 

「仕方ない……とりあえず冒険者にならないと……そうだ!尚文達の仲間になればいいんだ!」

 

俺は慌てて着の身着のままメルロマルク城に向かって行った。

 

時系列は恐らく尚文達が召喚された時にぶつかるはず、今度は尚文の仲間になれば冒険者にもなれるし金も稼げる。経験値のペナルティを受けることもないんだし今回はちゃんと尚文を助けれる!。

 

俺はメルロマルク城の城門にたどり着き、門番に尋ねた。

 

落ち着け、印象を悪くすると受け入れて貰えないかも知れない、ここは穏便に行こう。

 

「あの!すいません!。四聖勇者様の仲間になりたいのですが?」

「ん?なんだお前は?見るからに村人の様だが?」

「実は、四聖勇者様達の仲間になりたいんです!」

 

門番は顔を見合わせ、再び俺を見る。

 

「ならば、【冒険者の身分証】はあるか?」

「えっ……」

 

知らない情報を聞いた途端、俺は驚きを隠せなかった。

 

冒険者の身分証ってなにそれ?知らねぇんだけど?

 

「なんだ?持ってないのか?」

「えっと……すいません、持ってないです……」

「ならまずギルドに行って冒険者登録をして来い」

「え、あっ、はい。分かりました」

 

予想外な事が起きた、どうやら錬達の冒険者は身分証を持っていたらしい。見えない所が見えて来たな、これは盲点だった!!

 

「ギルド……ギルド……今回は文字が読める見たいだな、前回は勇者の特典で翻訳機能が付いてて困らなかったけど呪文とか読めなかったから苦労したっけな、文字が読めるのは不幸中の幸いだ、ここは村人ならではの特典だな」

 

俺は街中探してようやくギルドを見つけた、中に入るとそこには屈強な冒険者達がいた。

 

中に入るや否や冷たい目線が降り注いだ。

 

ここは西部劇の飲み屋か!?それにしても、何睨みつけてんだよコイツら

 

するとテーブルを背に立ち飲みしていた冒険者が俺の足を引っ掛けて転ばせた。

 

「いってぇな……」

「おい、ガキがウロついてんじゃねぇよ」

「あぁ?雑魚がいきがってケンカ吹っかけてくんじゃねぇよ」

「なんだと?そんなヒョロヒョロの体でやる気か?」

 

冒険者は構えだし、俺も迎え撃つ為に同じく拳を構えた。

 

レベルが0だけど元々は勇者経験者なんだ、余裕だろ。

 

「喰らえ!」

 

ペチン……。

 

俺は思い切り踏み込んで殴ると、荒くれ者の冒険者に乾いたタオルが当たったかの様な音が響いた。

 

なん……だと!?

 

「おいおい、何だそりゃ?。パンチの撃ち方すら知らねぇのか?」

 

ドスッ!!。

 

俺は冒険者から腹に一撃貰ってしまい膝をついてしまった。ありえない光景ばかりだった。

 

「うっ……嘘だ……嘘だ!!」

「オラ!立て!」

「おいおい、どうしたんだ?」

「ケンカしたいだってよコイツ」

「んじゃ俺達が教えてやるよ」

 

荒くれ者の冒険者が仲間達を呼んで俺を囲み始めた。

 

これは非常にまずい……勝てる気がしねぇ!!

 

俺はギルドの裏に連れて行かれて集団リンチが始まった、羽交い締めにされてサンドバッグ状態で殴られ続けた。

 

ありえない、Lv0ってここまで弱いのか!?

 

「オラオラ、もう終わりか?」

「まだまだこれからだぜ?」

「まだ死ぬなよー?」

「頑張れよー」

 

するとそこに、仲間を集めた【剣の勇者】錬が通りかかった。どうやら時系列的には尚文がマインと出会いそして被害に会う前の日にちに飛ばされたらしい。

 

運が良いのか悪いのか……。

 

「錬……!!頼む、助け……て」

 

錬に声が届いたのか、錬は俺の弱々しい声に気付いた。

 

「…………」

 

おい。なんだよ、そのゴミを見るような目は!?。

 

錬は俺を助けることも無く何事も無かったように通り過ぎて行った。

 

確かに昔は揉めた事もあったけど和解したじゃねぇかよ、無視すんなよ……。

 

「おい、錬、おい、嘘だろ……?錬!待ってくれ!!錬!!」

 

「あーあ。行っちゃったね勇者様」

「残念だな」

「暴力再開♡」

 

俺は再びサンドバッグにされ続けた、解放されたのは1時間も後だった。俺はゴミ捨て場に棄てられ放置された。

 

「はは、なんか惨めだな……。かつては太刀、鞭の勇者だったのに」

 

無情にも俺の上から雨が降り注いだ、そし腹がグゥと鳴り出した。

 

「腹減ったな……けど金がねぇ……」

 

フラフラと起き上がり俺は街を彷徨い続けた、たどり着いた先はかつてバージルとスラッシュの怪我や病気を治した橋の下だった。

 

「懐かしいな……まさかここで寝るとはな……」

 

俺が横になろうとした時そこに野犬が現れた。

 

今の俺はこの野犬以下の戦闘力だ勝てないから逃げよう。

 

「クソッ……こんな国じゃ何も出来ねぇや、ラファン村まで行ってなんとかしよう」

 

俺は降り注ぐ雨の中ラファン村に向かって行った、そこでも俺に困難が待ち受けていた。




理不尽な絶望ってこんな感じかなー?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 再起動

キャラがブレブレだったので、修正かけました。


──俺がラファン村に着いたのは真夜中だった。ヨロヨロと歩きながら真っ暗なラファン村を見渡す。

 

ここにも村人はいるしなんとかなるだろう。

 

「痛てぇ……とにかく……何か食べないと……」

 

俺は農作物の倉庫に忍び込み生の野菜にかじりついた、その姿はネズミの様だった。

 

「うめぇ……うめぇ……」

 

なんの野菜を食ってるか分からずに夢中に野菜を貪っていると突然倉庫の主人が突然入って来た。

 

こんなに大きな物音させれば当然バレるか。

 

「おい!お前!俺の野菜に何してんだ!!」

 

主人は鉈を片手に俺を威嚇し始めた。

 

勝てる相手じゃない上に現行犯だ。ここは素直に謝ろう……。

 

「すっすいません……腹が減って我慢出来なくて」

「うるせぇ!さっさと出ていけ!このドブネズミが!」

 

かつての太刀と鞭の勇者がドブネズミ呼ばわりか。

 

俺は倉庫から追い出され、行く先はもう初心者用のダンジョンしかなかった

 

「いや無理だろ……けど野垂れ死ぬよりマシか……」

 

俺は意を決してダンジョンの中に入って行った。案の定ダンジョン中は薄暗く足元も良くなかった。

 

「ここは確か……尚文とラフタリアが初めて戦ったダンジョンだよな、つー事はあの2つ頭の犬もいるのか?」

 

なるべく奥には進まないようにして広けた場所に着いた。

 

「ここで休もう……これ以上進んだらあのモンスターに出会っちまうからな」

 

ずぶ濡れ状態で大の字になった俺は少し落ち着いて今までの事を色々情報を整理してみた。疲れが溜まってたのか、そのまま体を意識を手放した。

 

───────────────────────

 

数十分後、何かの足音で俺は目を覚ました。

 

「ん〜?なんだ?なんの音だ?」

 

なにか喚いてる様にも聞こえてくる音は近づいてきた、その正体はゴブリン達だった、その中にひときは大きな体をしたホブゴブリンもいた。

 

詰んだ……。

 

「マジかよ……詰んだなコレ」

「ギャギャ!」

「グォグォ」

 

ギャーギャー喚くゴブリン達、数にすると50匹はいる。ゴブリン達はナイフや棍棒を持ち、ホブゴブリンは金棒を持って俺に襲いかかって来た。ゴブリン達は俺を押さえつけてナイフで滅多刺しにして棍棒で滅多打ちにし始めた。

 

痛すぎて感覚ねぇよ、殺るなら殺れよ。俺はもう、疲れたから……。

 

俺が目を瞑って覚悟を決めた瞬間だった、ホブゴブリンが金棒で俺にトドメを刺した。

 

 

あれ?死んだのかな?けど、変だな。なんで意識があるんだ?

 

 

ピピピピ……。

 

 

俺の真っ暗になった視界に赤い文字でアイコンが現れた。

 

 

ピピピピ……。

 

 

『ゴブリン、ホブゴブリンによって殺されました』

『EXP500獲得』

『Lvが上がりました』

『ゴブリンにより魔物の言葉翻訳スキルが解放されました、ホブゴブリンにより魔物の文字解読スキルが解放されました』

『龍二のLvは20になりました』

 

『不死身の呪いによって再起動します』

 

ん?再起動?経験値獲得?俺は何も倒してねぇぞ?どうなってんだ?なんか良く知らないけど、これなら倒せるかも知れない!!

 

俺は目を開けてさっきまで体に乗っていたゴブリンの頭を掴んだ。

 

「ギャ!?」

 

ゴブリンの頭を掴んだままググッと上半身を起こして、雄叫びを上げるように叫んだ。

 

「反撃だぁぁぁぁっ!!」

 

俺はゴブリンの手からナイフを奪い、そのままゴブリンの頭に突き刺した。突然起き上がった俺を目の当たりにしたゴブリン達は驚いていた。

 

死んだはずの人間が生き返ったんだ驚くのも無理もないよな。

 

「ギャーギャー!!」

「ギャギャ!!」

 

あっ、コイツらの言葉が分かる。さっき死んだ時になんか解放したっけな。それのおかげか?

 

「なに?殺したはずなのにって?いやぁ、俺も良く分からねぇんだよ」

「グォォォォォォォッ!!」

 

ゴブリン達を追い払いホブゴブリンが金棒を振り回し始める。俺はホブゴブリンの金棒を素早くホブゴブリンの懐に入った。

 

「グォ!?」

「筋肉バカが……こんなナイフより、お前の武器くれよ」

 

俺はホブゴブリンの首筋に2本のナイフを突き刺した。血を吹き出しながら倒れたホブゴブリンから俺は金棒を拾い上げた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ギャギャ!!ギャガ!!」

「ギャギヤ!!」

「何?勝てねぇって?おい、お前らのボスはどこだ?」

「ギャギャギャ!?」

「人間の言葉が分かるって?実は、さっき話せる様になったんだよ。ちょっと話しをしようぜ?」

 

死んだ筈俺が動き出し、親玉のホブゴブリンが殺されてどうしたらいいか分からなくなり狼狽え始めたゴブリン達。

 

どうやらこのミンチになったホブゴブリンがリーダーだったらしい。これは好都合だな。

 

「なぁ、お前ら、俺と友達にならないか?」

「ギャギャ!?」

「「信用出来るか!!」って?まぁ、そりゃ疑うよな?なら簡単に食い物にありつける方法教えてやるよ?」

「ギャ?」

「ここの村人襲っちまえよ!!」

「ギャギャ!!」

「冒険者が邪魔をする?なるほど……ならその冒険者俺が殺す、ならどーだ?」

 

ゴブリン達は話し合いを始めると結論に至ったのか、頷き始める。

 

この辺は何処のゴブリンも同じ様に賢いんだなぁ。

 

「ギャギャ!」

「分かった?よしなら作戦を考えようか……?」

 

邪悪な笑みを浮かべてゴブリン達と共に暗闇に消えていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 更なる絶望

俺はゴブリン達をダンジョンに残して自分だけ出て来た。出て来た理由はかつての仲間達の行方の情報を手に入れる為だった。装備も少しはまともな姿になった。

 

とは言ってもゴブリン達が冒険者から剥ぎ取った物だけど……。

 

俺は広場のベンチに座りながらステータスを再確認してみた。

 

福山龍二

村人

Lv20

装備 古めかしい鎖帷子

武器 小鬼金棒

不死身の呪い

スキル

魔物の言葉、文字が読み書きが可能

 

ホントにレベルが上がってる!?

 

俺はようやく【不死身の呪い】のシステムを理解した。

 

「なるほど、【死ぬ事】によって経験値が貰えるのか。死んだ後に【再起動】するってのは不死身だから復活するって事。けど痛みがあるからしんどいなぁ。そんな事より、とにかく今はティーチ達を探さないと!!」

 

俺は再びメルロマルクに向かい、情報を集めようとした。街に入りながらあちこちのゴミ箱から新聞を広げて見てみるとらどうやら尚文が冤罪にかかり国から嫌がらせを受けるあたりだと確信した。

 

「このままじゃ不味い、尚文今から助けてやるからな!!」

 

俺は新聞をゴミ箱に戻してメルロマルクの街中を駆け回り、尚文を探し始めた。

 

「あの時は……確か……インナー姿だったよな?なら直ぐに見つかるはずだ!」

 

するとあの何度も通った武器屋を通りかかると近くで尚文とおやっさんが揉めていた。

 

いたっ!尚文とおやっさんだ!

 

「尚文!!」

「あぁ?」

 

尚文は俺に呼ばれたがどこか様子がおかしかった。いかにも、初対面の人間を見る目をしており、あからさまに警戒をしていた。

 

ちょっと待ってくれ、尚文までなんでそんな目で俺を見るんだよ!?

 

「なんだ?あんちゃんの仲間か?」

「仲間?おやっさん!!俺です!龍二です!!」

 

「リュウジだぁ?知らねぇな、お前も盾のあんちゃんの仲間なのか?ならアンタも殴らせろ」

 

「え?」

 

ゴッ

 

俺は理不尽にも武器屋のおやっさんに殴られた。

 

めちゃくちゃ痛てぇ。

 

あんなに優しかったおやっさんが冷たく感じた、けど俺は続けて尚文に味方だと言い張った。

 

「そうですよ!俺ですよ。尚文!お前もしかして、マインにやられたのか!?」

「マイン……うるさい!誰だお前!!見世物じゃねぇぞ!!」

「え……?」

「ほら、こんな奴俺は知らない。殴るなら早く殴れよ親父!」

「い、いや辞めておこう……。なんか気味悪くなってきたぜ……」

 

おやっさんは俺を無視して尚文と会話をしている、まるで俺に興味が無いようにも見えた。

 

なんで?どうして皆俺を覚えてないんだ?もしかして、昨日考えていた”憶測”は本当なのか!?

 

俺が混乱しているとマントを貰って立ち去ろうとする尚文を追いかけた、ようやくまともに会話が出来るようになった。

 

「待ってくれ、尚文……俺だよ、龍二だよ!!忘れたのか!?」

「うるさい!お前なんか知らないんだ。さっきからなんだお前は?」

「どうしちまったんだよ!」

「うるさいって言ってるだろ!」

 

尚文はギリギリと歯を食いしばりながら俺を睨み付ける。俺は尚文を宥めるようにゆっくりと近付いた。

 

「分かった、分かったから。信用出来ないんだな?ならこうしよう。俺を仲間にしてくれよ!な?」

「そうか……仲間か……」

 

尚文は俺に手をスっと差し伸べた。それを見た俺はほっと胸を撫で下ろす。

 

良かった……思い出してくれたんだな?

 

そう思った途端、尚文は。

 

「金を出せ」

「…………は?」

「契約料だ、金を出せ」

「そ、そうだな。ちょっと待ってくれ」

 

俺は慌ててポケットを漁った。だが俺のポケットには銅貨3枚しか入っていなかった。泣け無しの銅貨3枚を尚文の手に置くと、尚文は舌打ちをした。

 

「ちっ、全然足りないな」

「見ての通り有り合わせの装備なんだ、これから必ず戦って払うから!」

「いやダメだ、信用出来ない、この場で今すぐ払え」

 

今俺の目の前にいる尚文は前回とは打って変わって性格、目付きも違っていた。

 

これが本来の尚文の本性なのだろうか?

 

しかも尚文は勇者の力でちゃっかり俺のステータスを確認した様子だった。尚文はステータスと俺を交互にじっくりと眺める。

 

Lvには自信はあるんだ!なんとかなる!

 

「Lv20か……金を用意して来たら『雇ってやる』よじゃあな」

「『雇ってやる』?……だと?おい尚文、いい加減にしろよ、てめぇさっきから何様のつもりだ?ちょっと嫌がらせを受けただけでもう人間不信か?ふざけんじゃねぇぞ!!」

 

さすがにカチンと来た俺は尚文の胸ぐらを掴んだ。尚文は怯むことなく、掴みかかって来た。

 

「てめぇもか……」

「はぁ?人んとこ魔物見てぇに見下してっからだろ?」

「うるさい、もう放っておいてくれ!俺は忙しいんだ!」

 

そう言い放ち尚文は草原に向かって行った。俺は唯一の頼みの綱であった尚文にすら相手にされなかった

 

「尚文まで……嘘だろ……俺は……どうすれば良いんだよぉぉっ!」

 

俺は頭を抱えて悩み始めた、だがここにいてもラチが開かない為ギルドに再び足を運んだ。

 

───────────────────────

 

その後、俺は再び冒険者ギルドの酒場に入った。するとこの間俺にちょっかいを出した荒くれ者の冒険者達がガヤガヤと騒いでいた。

 

忘れもしねぇぞ、あの面。

 

向こうは俺に気付かずに盛り上がっていた。俺は怒りを抑えながら荒くれ者達に近付いて話し掛けた。

 

「おい、俺を覚えてるか?」

「あ?えーっと、お前誰だっけ?」

「もう忘れたのか?この前店の裏で痛めつけられた男だよ」

「あー、あの時の、何?何か用か?」

「俺に謝れ。今謝れば許してやる」

「謝れだって?なんで俺達が謝らなきゃねぇんだよ?なぁ?」

「ああっ、その通りだっ!はははっ!」

 

荒くれ者の冒険者の男達はヘラヘラと笑いながら俺をおちょくり出した、それを見ていた他の冒険者達も笑い出した。俺は溜め息を吐きながら背中から金棒を引き抜いた。

 

「そうか。謝らないんだな?なら……死ね」

「あ?」

 

俺は金棒を荒くれ者の冒険者の頭を目掛けて振り下ろした。荒くれ者の冒険者の頭はグシャッと潰され、ギルドの床は荒くれ者の冒険者の血で満たされて行った。突然の出来事に、店の女が悲鳴をあげた。

 

「キャーーー!」

「おい……コイツ殺りやがったぞ!?」

「舐めやがって!!、構わねぇ!ぶっ殺しちまえ!!」

 

酒を飲んでいた冒険者達は武器を取り、俺に向けた。

 

もう我慢の限界だ、どいつもこいつもぶっ殺してやる!!

 

「上等だよ、元勇者舐めんなよ?」

「殺っちまえー!」

 

「「「「「うぉぉぉぉ!」」」」」

 

大勢の冒険者達に囲まれた俺は金棒を構えながら言い放つ。

 

「俺の邪魔するなら女だろうが子供だろうがブチ殺すぞ!!」

 

俺は金棒をバットの様に振り回し、冒険者の頭をフルスイングする。兜ごと吹っ飛ばされた冒険者の所持品を漁り始めた。その隙に、他の冒険者がナイフを突き出して突進して来た。

 

「うるせぇ!死ねぇ!」

 

グサッ!!

 

刺された所を見ると、赤い血がドクドクと流ていた。俺は刺した男に言い放つ。

 

「ってえな……テメェ」

「なっ……んだと──ぐぇっ!!」

 

ナイフを脇腹に刺して来た冒険者の頭をカチ割った。

 

スイカ割り見たいだな。

 

「なんなんだアイツ!?ナイフが効かないなら矢で射殺せ!!」

 

「「「おーー!」」」

 

すると弓矢を使って集中攻撃をされた。幾重の矢が降り注ぎ俺はサボテンの様な姿になり倒れた。

 

『冒険者の群れにより殺されました』

『EXP1000獲得』

『Lvが上がりました』

『Lv30になりました』

 

『残念ながらスキルは取得出来ませんでした』

 

うわっスキルねぇのかよコイツらら。レベルの低い冒険者の様だし、仕方ねぇか。

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

 

俺が死んでいるのを見ながら酒を飲むのを続ける。冒険者達の前で俺は突然何事も無かったかのように起き上がり、「いったぁ……」と言いながら矢を抜き始めた。冒険者達は驚きを隠せずコップについでいたまま唖然として見ていた。

 

「さぁて……ラウンド2だ」

 

そう言った瞬間。

 

「「「「「「ばっ化け物だぁぁぁ!!」」」」」」

 

 

 

冒険者達は血だらけの俺を見てあっという間に蜘蛛の子を散らす様に逃げ出してしまった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 Rebellion

ギルドで大暴れをした俺はなんとか【冒険者】になる事が出来た、現在は最も報酬が少ない仕事をして、日銭を稼ぎ、今日の仕事内容は地下の巨大ゴキブリや巨大ネズミの討伐をしていた。

 

「くっせぇ……」

「カサカサカサカサカサ」

 

巨大ゴキブリは繁殖力が異常なのかあちこちに数十匹いる。金棒1振りで5〜6匹倒せるからまだ楽な方だった。こんな重労働が最安値のクエストとは思えないほどだった。数時間後、俺はクエストを終えてギルドから報酬を貰ったその後街の様子が騒がしいのに気が付いた。

 

「なんだ?随分騒がしいなぁ……何事だ?」

「おい聞いたか?槍の勇者様が【海賊】を捕まえたらしいぞ?」

「聞いた聞いた。なんでも広場で公開処刑をするらしいぜ?」

 

聞き耳を立てていた俺は立ち止まった。

 

「海賊……!?ティーチ!?」

 

俺は慌てて広場に向かって行った。駆け付けた広場の絞首刑台の上に縛られたかつての仲間だったティーチ、バージル、スラッシュ、サニーがいた。俺は人並みをかき分けながら近付く。

 

「ティーチ!!バージル!!スラッシュ!!サニー!!」

 

「「「「「………………」」」」」

 

4人とも俺の声が聞こえてないのか、死んだ様な目をしていた。

 

サニーはともかくあの3人が元康ごときにやられたのか?ありえないだろ!?

 

すると国王オルトクレイが現れ4人の罪状を言い放った。

 

「海賊ティーチ、並びにその仲間2名、そして海賊の奴隷1名をこれより絞首刑に処す!!」

 

「「「「「わぁぁぁぁぁぁー!」」」」」

 

「槍の勇者様バンザーーーイ!」

「海賊を殺せぇー!」

「海賊の奴隷も殺せぇー!」

 

大歓声の中元康は手を挙げて歓声に答えていた、その隣には槍の勇者元康とマインもいた。再会を約束した以前の仲間が目の前で殺されそうになっており、龍二はいても立ってもいられなくなり俺はティーチ達を助けようとした。

 

「みんな!!待ってろ、今助けるからな!!」

 

俺は処刑台目前までたどり着くと、兵士達に行く手を阻まれた。

 

「なんだ貴様は!?止まれっ!!」

「邪魔だ、どけぇ!!」

 

ガンッ!

 

金棒を振り回し兵士達を薙ぎ払うが俺は応援に駆け付けた兵士達に取り押さえられた。取り押さえられた俺は元康に声をかける。

 

「元康!!辞めさせてくれ!!頼む!!」

 

元康は俺を初めて見る様な顔をしながら首を傾げた。

 

「俺とは初対面だと思うけど、誰だアンタ?」

 

元康の言葉に俺は声を失った。

 

そんな、元康まで!?

 

「元康!俺だよ!龍二だよ!頼む!!ティーチ達を助けてくれ!コイツらは俺の仲間なんだ!!」

「元康様!そんな愚民の言葉なんて聞かなくて良いですわ!」

「マインの言う通りだよね?アンタが誰だか知らないけどさ、あいつは海賊なんだよ?この世界では海賊は重罪なんだよ?分かるか?」

「モトヤス様、こんな奴放っておいて行きましょ?」

「そうだな」

 

元康は俺の言葉に耳を貸さずに女達と下がって行った。

 

「待ってくれぇぇ!!」

 

「処刑!!」

「やめてくぇぇぇ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガシャーーーン!!

 

ティーチ達は同時に首を吊らされてしまった、4人の処刑を真正面で見る事になった。そして……俺は仲間を助ける事も出来なかった。

 

「ティーチ……バージル……スラッシュ……サニー……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

国王オルトクレイは泣き叫ぶ俺をゴミの様に見つめてこう言い放った。

 

 

「えぇい騒がしい……。あの汚らしい者を広場から追い出せ」

「はっ!」

「おいお前!こっちに来い!」

「おい!離せ!!」

「国王様からの命令だ!いいから来るんだ!」

 

俺が泣き叫んでいる所に兵士達が俺を連れて広場から追い出された。

 

「なんで追い出すんだよ!離せてめぇ!」

「そんなに罪人が見たいなら【罪人の墓場】に行くがいい」

「罪人……だと?」

「海賊行為は重罪だからな、当然だ」

 

ブチッ

 

俺の頭の中で何かがキレた、いや……何かが壊れた感じがした。俺は立ち上がって金棒を抜いた。

 

「おい……てめぇ……」

「なんだ?」

「皆の仇だ……死ね」

 

ゴッ!グシャ!

 

俺は無表情で兵士の頭を砕いた。何度も何度も叩いてクソ野郎の頭をミンチにした……兵士の潰れた頭が赤い花のように散って行った。その後、俺は罪人の墓場に辿り着いた。

 

 

「ここが、【罪人の墓場】……か」

 

俺は返り血で真っ赤に染った金棒を引きずりながら墓場中に進んで行った。そこには無残にも4人は埋葬されずに捨てられていた。

 

「はは……埋葬すらされねぇのかよ……人ですらねぇってか?」

 

俺は4人分の穴を掘りティーチ達を埋葬した。働いて貯めていた無けなしの金で花を買い4人にお供えした。落ち着いた頃には周りは真っ暗になっていた。俺は4人の墓の前で頭を付けて謝った。

 

「助けてやれなくてごめん………ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……うっうっうっ」

 

無情にも雨が降り注いだ。

 

「ちくしょぉぉぉぉぉ!!殺してやる!!元康!!錬!!樹!!尚文!!クズ国王!!マイン!!どいつもこいつもぶっ殺してやる!!こんな世界……ぶっ壊してやる!!何が勇者だ!何が厄災の波だ!」

 

 

すると、どこからか声が聞こえて来た。

 

どこからだ?見渡しても誰もいないのに大勢の声が聞こえてくる……。

 

スベテガニクイカ……スベテヲコワシタイカ……?。

 

「誰だよ……誰だって構わない。ああ、憎いよ奴らが殺したいよ!」

 

ナラワレラノニクシミヲカテニスルガヨイ…………。

 

突然、周辺の墓石から魂の様な物が俺の体に何千も入って行った。

 

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁ!!」

 

攻撃とは違う感覚の痛みが次々と起こり俺はまた死んでしまった。そして今度は前回とは違うアイコンが写し出された。

 

『悪霊によって呪い殺されました』

『人間から魔物に退化しました』

『Rebellionの称号を獲得しました』

 

Rebellion?なんだろう?

 

アイコンはさらに続いた。

 

『Rebellionの称号により『超高速回復』を解放しました』

『Rebellionの称号により『超高速再生』が解放されました』

『Rebellionの称号によりLv上限が『???』になりました』

『カースシリーズ・【正義】が解放されました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

 

俺は目を開けると変な感情が込み上げて来た。

 

なんだろうとてつもなくハイになった気分になって来た。

 

「は……ははははははひゃははははははははは!!」

 

だんだん雲が暗くなってきて遂には雷まで鳴り始めた。

 

※BGMマキシマムザホルモンの「F」をイメージして下さい※

 

「どーでもいいや。こんなつまらねぇ世界なんかぶっ壊してやるよ!!どーせ俺は不死身なんだいくら痛くても死にはしねぇんだよなぁ!?、なら俺が【魔王】になって世界を征服してやる!!覚悟しろよ……四聖勇者どもぉぉぉぉ!!」

 

 

涙を流しながら俺は、再び立ち直ること無く【魔物】に成り下がる事をになった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 奪われる者から奪う者へ

お気に入り登録、評価ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします!


──その後、『魔物』に退化した俺は勇者に立ち直るのではなく、【魔王】になる決心し、朝日が昇ると同時にフラフラと街を歩いていた。そして【人間】を辞めてある代償に気付いた、武器屋、魔法屋、教会、薬屋に【入れなくなった】という事だった。俺のアイコンに注意という文字が映し出された。

 

※あなたは【魔物】の為 武器屋、魔法屋、教会、薬屋、冒険者ギルドに入る事は出来ません※

 

「そりゃそうだよな、今は魔物だもんな、見た目は人間なんだけどな〜、まぁ今更仕方ねぇか……ギルドにも入れないしラファン村に戻るか」

 

俺は再びラファン村に戻って来た、そしてまた初心者用のダンジョンの洞窟に戻って来た。すると仲良くなったゴブリン達が何やら騒がしく、俺はゴブリン達に訳を聞いた。

 

「おい、どうしたんだ?」

「ギャギャ!!」

「何?盾の勇者がやって来て奥に住み着いてた『双頭の魔犬』が殺られたって?ふーん。そっか」

 

って事は尚文とラフタリアちゃんがここに来たのか……まぁ今じゃどうでもいい情報だな。って事はここにはボスクラスのLvの魔物はもくいないって事だな。

 

俺は考えながら石に座り込んだ、ゴブリン達は突然黙り込んだ俺の様子を伺う。

 

武器、食料が買えないのが問題だな、それは後回しに考えるとして、戦力はゴブリンがいるが50前後しかいない……ならどうする?

 

ゴブリン達が狼狽え始めた途端、俺は閃いた。

 

あっそっか……俺は【魔物】なんだし他所から奪えば良いんだ!!。買えないんだもん他人から奪うしかねぇよな?

 

「おい、作戦を考えたぞ。お前ら、ラファン村を襲え!」

「ギャギャ!?」

「あの村は所詮初心者用の村だ、誰も困らねぇよ。そう言えばお前らはどうやって繁殖するんだ?」

 

俺はゴブリンの生態について聞いてみた、どうやらゴブリン達は時々人間の女をさらって無理やり妊娠させるようだ、繁殖力は絶大で弱い人間の女を利用して子供を産ませているそうだ。

 

これはいい事を聞いたな。

 

「1人2人さらっても効率わりぃな、ラファン村にいる女全員奪うぞ」

「ギャギャギャ!!」

「安心しろ、冒険者は俺が殺す、夜になったら行くぞ」

「ギャ!」

 

───────────────────────

 

 

数時間後、夜が来てラファン村の村人達は寝床に付いていた。姑息にも俺はそこを狙いを付け、ゴブリン達と共に再びやって来た。俺はヒソヒソとゴブリン達と会話する。

 

「行くぞ……男は容赦なく殺せよ?」

「ギャ!」

「野郎ども、突撃だ!!」

 

「「「「ギャギャー!」」」」

 

キャー!

ゴブリンだ!

逃げろー!

 

ラファン村の村人はあちこち火をつけられて逃げ惑っていた。

 

おーおー、逃げろ逃げろ。

 

するとこの間の倉庫の主人が鉈を片手に現れた。俺は金棒を担ぎながら倉庫の主人に近付き、声をかけた。

 

食べ物を貰ったお礼をしなくてはならないな。

 

「あんた……は……?」

「この間はどーも、野菜美味しかったですよ」

「頼む!!助けてくれ!娘だけには手を出さないでくれ!」

 

主人は泣きながら膝をついて俺に祈願するが、俺はニコリと笑って金棒を振り上げた。

 

「おい、誰がドブネズミだって?」

「へ……?」

「あんた、俺にドブネズミって言ったよな?悪かったな、ドブネズミで」

「すっすいません!すいません!あの時は悪かった!頼む、娘と妻だけは助けてくれ!!」

「野菜をありがとう、そして……この村は、俺達がもらった」

「ひぃぃぃぃ!!」

「死ね」

 

俺は金棒を振り下ろした。

 

ゴキッグシャ!

 

キャー!いやー!

おとーさーん!

あなたーー!

 

俺は主人の奥さんと娘さんらしき悲鳴を無視しながらゴブリン達に指示をした。

 

「おい、さっさとこの女達に種付けしちまえ。暫く大人しくしてたんだ、お前らご無沙汰なんだろ?」

「ギャギャッギャー!」

 

ゴブリン達は喜びながら村の女達を小屋の中に引きずりこんで行ったすると騒ぎを嗅ぎつけたのか冒険者達がゾロゾロと現れた。

 

「おっと、お客さんだな?」

「ゴブリンを操ってるのはお前か!?」

「あー……そうだよ?」

「この外道め!」

 

冒険者達は武器を俺に殺意を込めながら武器を構えた。今の俺には何を言っても届いてなかった。

 

所詮この世界も弱肉強食。強ければ生き残り、弱ければ……死ぬだけだ。

 

俺は金棒を構えながら冒険者達に答えた。

 

「なんとでも言えよ、俺は魔物だから な!!」

 

俺は喋りながら冒険者を次々と殺していった、中には女の冒険者もいた。

 

ラッキー、これは好都合だ。

 

「み……ん……な……」

「お仲間はみんな死んじまったぞ?どうする?お前も一緒に死ぬか?」

「ひぃ……た……たすけ──」

「おいおい、助ける訳ねぇだろ?。あんたら女には”大事な仕事”があるんだからな。頑張って丈夫なゴブリン産んでくれよ?おい、連れてけ」

 

「ギャハー!!」

「ギャハハ!!」

 

ゴブリンは女の冒険者を気に入ったのかゲラゲラと不気味な笑みをした。そのまま手足を引っ張りながらダンジョンの中に入っていった。俺は女冒険者の顔を眺めてみると、死んだ様な顔をしていた。

 

あーあ、女の子も考えるのやめちゃった感じかな?まぁ俺には関係ないけどね……。

 

いやー!離してー!

 

他の女の冒険者達や村の女達も、次々小屋やダンジョン中に引きずり込まれて行った。

 

俺の大体予定では100は産んでもらわないとこっちの戦力繁殖が悪いんでね、頑張って貰わなければ……。

 

ラファン村を2時間弱でゴブリンと俺により占拠された。翌朝、俺はラファン村の村長の家に住み着く事にした。ゴブリン達は飽きること無く女達を犯し続けている、いつの間にか悲鳴すら聞こえなくなってきた。その間、俺はフカフカのベットに座りながら酒を飲み、今後をどうするか考え始め、紙に『必要な人材』を書き始めた。

 

正式のラスボスになるには【原作の女神・メディア】が邪魔になってくる。まずは奴をどうやって誘き寄せるかだな……。マインやヴイッチ2号が黒幕だってのは分かってんだ。ならマイン達を奪って自由を奪っておけば奴は歯痒くなって出てくるはずだ。

 

「前回は多少は和解して仲良くしてたが、今回は申し訳ないけど俺の生贄になってもらうぞ……ククク……」

 

俺の【魔王】になる為の第1歩を踏み出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 堕ちた科学者

ラファン村を制圧してから数日後、俺は冒険者達から奪った装備を纏い、メルロマルク城下町に再び訪れた。

 

荒くれ者の鎧

装備ボーナススキル……『騙し討ち』

 

今回は仲間探しである、ただの人間を仲間にすると裏切る可能性があるため【悪】に相応しい人材を探していた。そう、例えば、この世界に落胆している者など、何か情報がないかと歩き回っていた。

 

「そう簡単に見つかる訳ないか、人気の無い所に行けば1人くらいいると思ったんだけどなぁ、悪魔とか頭のおかしい奴とかが仲間になってくれると色々聞けて楽なんだがなぁ」

 

独り言をブツブツ言っていると村人同士の世間話しが聞こえて来た。

 

「聞いたか?ラファン村が魔物に襲われたって」

「聞いた聞いた、初心者用の村だからって国は動かないってよ」

「初心者用だからなぁ」

「可哀想に……それはそうと、『墓荒らし』は捕まったのか?」

「いや、まだらしいぜ?全く罰当たりな奴だぜ……」

 

あんだけ大暴れをして国が動かないってさすがはクズ国王だな、英智の賢王が聞いて呆れてくる、しかし『墓荒らし』か……ふむ。

 

俺は手を叩いて閃いた。

 

「よし……『墓荒らし』に会ってみるか」

 

 

────────────────────────

 

 

ーー深夜の城下墓地ーー

 

 

俺は草むらに隠れながら『墓荒らし』が来るのを待った、すると痩せこけて白衣を着た男が荷車にスコップを積んで現れた。見た目はメガネをかけた顔に全身から出てる根暗な感じのオーラがヒシヒシと伝わってくる。

 

「あいつか……?科学者っぽい服着てるけど、この世界なら錬金術師が普通じゃないのか?」

 

そう考えていると、男はザクザクと墓を掘り始めた。棺桶をこじ開けて何やら死体を動かそうとしている、そして死体を引っ張り出した所を現行犯を目の当たりにした俺は声をかけた。

 

「おいあんた、死体なんてどーするんだ?」

「!?」

「おっと、安心してくれ……あんたの──」

 

俺が落ち着かせようとした瞬間、痩せこけた男は体を突然巨大化させ、俺を殴り飛ばした。俺は墓石を何枚も貫通させ端から端まで飛ばされた。

 

『粗暴の怪物ハイドにより殺されました』

『EXP250獲得しました』

『筋力強化のスキルが解放されました』

 

『不死身の呪いによって再起動します』

 

俺は何事も無かったかのように土煙から現れると、変化した男は驚きを隠せなかった。

 

「あー痛てぇ……お前はもしかして、『ジキルとハイド』って奴か?」

「何!?何故俺の名前が分かった!?」

「マッドサイエンティストの【ジキル博士】と【粗暴の怪物ハイド】だな?」

「ジキルまで……貴様は何者だ!?」

「俺は福山龍二。いずれ、この世界の魔王になる男だ」

「魔王……だと……?」

「あんた達見たいな人物を探していた、良かったら仲間になってくれ……その前にジキル博士に変わってくれるか?」

 

俺にそう言われるとハイドは再び痩せこけた男に戻り、ジキル博士と思われる男は怯えながら俺に尋ねた。

 

そりゃ殺した相手が平然と歩いて戻って来たらそりゃ驚くわな。

 

「ハイドの一撃で生きてるなんて……あなたは不死身なのですか!?」

 

「俺は『不死身の呪い』にかかってるんだ。まぁ、痛みを伴うがね?」

「なんと……素晴らしい……!!」

「は?」

「アナタの不死身の体に興味があります!」

 

ジキル博士は俺の体をベタベタ触りだしたり虫眼鏡で覗いたりしていた。

 

えっなにこいつ、キモイんだけど。

 

「待て待てそんなに興奮しなさんな、それにしても、アンタはなんで死体漁ってんだ?」

 

俺はジキル博士に『墓荒らし』の理由を聞いた、聞く所によると『ある怪物』を造るからだと言う。

 

なるほど、怪物を造るスペシャリストだな?最高の人材じゃあないか。

 

「なるほどね、そんで墓荒らしか」

「はい……業界からも永久追放されまして」

「そりゃ死体で「人造人間作りました!」なんて聞いたらドン引くわ、なら俺んとこに”新鮮”な死体があるからソレ造ったら?」

「良いんですか!?」

「だけどその代わり、正式に俺の仲間になれよ?」

「もちろんです!この世界にもう未練なんてありませんからね」

「なら話しは決まったな」

「龍二さんの体も調べさせてもらっても良いですか!?」

「えー?俺も?」

 

俺はジキル博士に対して露骨に嫌な顔をする。

 

男にベタベタ触られてもチョットね、まぁ仲間になってくれるなら我慢するか。

 

「分かった……けど裸とかにはならねぇぞ!?」

「そこまでは私もチョット……」

「で?ハイドは納得したのか?」

「ハイドもこの視線で見てるので問題ありませんね、無理なら暴れてますから……」

「暴れても俺は死なないから大丈夫だよ?むしろハイドより強くなり続けるからいずれ根負けすんじゃねぇか?」

「あー、それもそうですね。死ねば死ぬほど強くなるのであれば私達もお手上げですから……ふふふふふふふ」

 

不気味に笑うジキル博士。

 

気持ち悪いっ!

 

「ならしっかり働いてくれよ?勿論、戦闘は話せるゴブリンと俺がやるから」

「ハイドに変われば問題ありませんよ──って、貴方ゴブリンと話せるんですか!?」

「『魔物の言語』のスキルがあるからな、大抵の魔物なら分かるぞ?」

「興味深いお方ですねぇ……フヒヒヒ」

「変態科学者がよく言うよ……ククク」

 

こうしてマッドサイエンティストのジキル博士と粗暴の怪物ハイドが仲間になった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 三つ巴の戦い(前編)

俺はジキルと共にラファン村(アジト)に戻って来て1週間後、荷物などをゴブリン達に運ばせてジキル博士の引越しが完了した、現在俺とジキル博士はゴブリン達の様子を伺う所だった。女の村人、冒険者達の目は人形の様な目をしていて光がなくなっていた、無言無表情でゴブリンの子供を育てていた。

 

「うんうん、いい調子だな」

「龍二さん、これは?」

「あーこいつら?ゴブリン製造用の人間達だよ」

「なるほど、これなら無限に増やせますねぇ」

「ゴブリンの子供は1度に平均的に5匹生まれる。この人数なら1度に100匹は行くだろ?」

「ふふふふ……それはそれは、子育てとは大変ですからねぇ」

「だな。おい、そこのお前。ホブゴブリンになった奴は何匹だ?」

 

俺はゴブリン達にホブゴブリンの進化状況を聞いた。

 

大事な戦力だ大切にしないとな……。

 

ゴブリンは俺の質問に答えた。

 

「ギャギャ!ギャギ!」

「ふむ、30匹か……まだまだ全然足りねぇな」

「いやはや龍二さん、貴方は本当にゴブリンの言葉が分かるのですねぇ」

「だから言ったろ?、さてこれから他にも仲間が必要だ。ジキル博士、この辺で魔物とか、イカれた殺人犯的な奴誰かいないのか?」

 

ジキル博士はメガネをクイッとしながら考え始めた。

 

「そうですねぇ……幹部クラスにするとすれば……場所は定かではありませんが、心当たりがあります」

「それは誰だ?」

「吸血鬼、九尾の狐、氷の女王、孫悟空、酒呑童子ですかねぇ……?実在するかは分かりませんが?」

 

予想はしていたが大体知ってる魔物、魔獣ばっかりだな、こいつらを見つけて仲間にしたら大幅に戦力が上がるな

 

「じっくり探して行くしかねぇか」

「ええ、雑魚でも構わないのであれば、【オーク】や【ワイト】などが居ますよ?」

「なるほど、オークやワイトか……兵隊なら使えるな」

「そして、『最高傑作』が出来ましたよ!」

「お?そうなのか?」

「こちらです!」

 

ジキル博士は俺を研究する場所に招き入れるとそこにはツギハギだらけの巨体をした大男が横になっていた。

 

「これは……フランケン……シュタイン?」

「そうです!フヒヒヒ……貴方は物知りですねぇ」

「まぁな、コイツは動くのか?」

「もちろんです!」

 

ジキル博士は心臓に電気ショックを与えた、すると大男の心臓が動き出した、フランケンシュタインはゆっくりと歩き出し、俺に近付いた。

 

なんだ?やる気か!?

 

「俺を殺る気か?なら───」

「父さん……手伝って……くれて……ありがとう」

「あっあれ?まぁ、いいか」

 

絵本通りだな、やっぱり心は優しいんだな

 

「さぁフランケンシュタイン、貴方も龍二さんに忠誠を誓いなさい」

「はい……龍二……さん」

「よろしくな、フランケンシュタイン!」

 

俺がフランケンと握手をした途端龍二のアイコンに異変が起きた。

 

《WARNING!!WARNING!!WARNING!!》

 

「なんだ!?」

 

急なサイレンに驚いていると俺のアイコンに赤い文字で表示された。

 

『厄災の波が発生しました、あなたは強制に参加しなければなりません 1分後に転送されます』

 

波の日にもうなったのか、『勇者』なら時刻が分かってたからだけど今の俺は『魔物』扱い。となると、初めて転送される場所はリュート村に転送されるって事か。

 

するとアイコンにさらに文字が表示された。

 

『あなたの場合は部下を100匹まで連れていけます』

 

部下を100匹!?これじゃほぼ戦争じゃねぇかよ。なら、ホブゴブリン達を連れて行けるな。

 

「厄災の波が起きた、ホブゴブリン達を連れて行ってくる」

「あの厄災の波ですか?、分かりました、ご武運を」

 

『連れて行きますか?『はい』・『いいえ』』

 

俺はゴブリン達を配下登録してアイコンを操作し、リュート村に転送された。

 

────────────────────────

 

転送された俺達は、ワーワーと賑やかなリュート村に辿り着いた。

 

「さてリュート村に着いたな?」

「ギャギャ!!」

「ごちゃごちゃうるせぇ、今日は女はナシだ。そんなに欲しけりゃしっかり働くんだな」

「ギャ!」

 

ゴブリン達が奮起すると厄災の波から現れた骸骨の兵隊達が俺に気付いた、俺は巨漢の骸骨の兵隊に近付いて首をトントンとさせながら挑発した。

 

「ほら、どうした?間合いだぜ?斬ってこいよ」

「グォ!!」

 

骸骨の兵隊は俺を真っ二つにして、ドシャッと倒れ込むと。

 

『亡者によって殺されました』

『EXP250』

『ファスト・ダークネスが解放されました』

 

『不死身の呪いによって再起動します』

 

『超高速再生』と『超高速回復』で俺は復活した。余所見をした瞬間、俺は金棒をフルスイングして骸骨の兵隊を叩き潰した。その時、巨漢の骸骨兵隊が持っていた大剣を手に取る。

 

亡者の大剣 C 熟練度0

攻撃力+5 魔法攻撃+10

装備ボーナススキル……『暗黒剣』

 

『暗黒剣』か、もしかしたら勇者の『流星』シリーズと同じか?まぁ、使ってみればわかる事か。

 

俺は不気味な笑みをこぼし、金棒を背負って大剣を構えた。

 

「食らえ『暗黒剣』!!」

 

俺は骸骨兵隊に振り下ろすと、ジキル博士の時に覚えた『筋力強化』のスキルが発動した為、地面がヒビ1つ入らず骸骨兵隊もろとも斬った。あの巨漢が両手で持っていた大剣を意図も容易く片手で振り回したのだった。

 

「最初の武器には丁度いいな、さて……おいゴブリン共!」

「ギャギャ!!」

「冒険者、亡者共から装備を奪っちまえ!!勇者と厄災の波の魔物共を皆殺しにしろぉぉぉぉ!」

 

俺が剣を掲げて声を荒らげるとゴブリン達は奇声をあげながら武器を構え骸骨兵隊、冒険者達に襲いかかっていった。

 

 

勇者一行vs厄災の波の魔物vs自称魔王軍の三つ巴の戦いが始まった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 三つ巴の戦い(後編)

後半戦です!ラフタリア、錬、尚文と戦います!


俺はゴブリン軍団と共に亡者達、冒険者達をなぎ払い笑いながら大暴れしていた。

 

「オラァァ!!【新魔王軍】のお通りだぞ!!」

 

うわっ!なんだコイツ!?

逃げろ!不死身の化け物だ!!

ゴブリンが!!囲まれたぞ!!

 

「ひゃ〜はははははははは!!男はみんな殺せぇ!女と装備は全部奪え!!何が厄災の波だ!何がメルロマルクだ!こんな国なんか滅んじまえ!!こんな世界、俺の【正義】で立て直してやらぁっ!!」

 

すると剣の勇者である錬が俺に剣を向け構えた、返り血だらけの俺は笑いながら錬の方を向いた。

 

「そこのお前っ!!そこまでだ!」

「おやおや、誰かと思えば剣の勇者様の錬君じゃないか。ホントに俺が分からねぇんだな。確信したよ、俺の【予測】は正しかった」

 

俺がブツブツと独り言を喋っていると、錬が。

 

「お前は確か、冒険者ギルドで絡まれてた……」

 

俺の予測だ当たってるなら【計画】は実行可能だな。このままやり遂げよう。

 

「あの時は良くも見捨ててくれたな、剣の勇者。ぶっ殺してやるよ!!」

「そうは行くかぁ!」

 

俺と錬はお互い猛スピードで突進して互いにスキルを放った。

 

「『流星剣』!!」

「『暗黒剣』!!」

 

俺の暗黒剣と錬の流星剣がぶつかり合い、激しい衝撃波が放たれた、錬と龍二は鍔迫り合いをしながら睨み合いになり、錬は俺に尋ねた。

 

「なぜ人間が人間を殺すんだ!?」

「あ?俺は人間じゃねぇよ、俺は……魔物だ!!」

「なん……だと!?」

 

錬はその言葉に動揺してしまった、俺はそこを見逃さなかった。

 

「スキあり……『ファスト・ダークネス』!!」

「ぐぁぁぁ!!」

 

錬はドス黒い衝撃波により吹き飛ばされた。すると俺のアイコンにまた異変が起きた。

 

『レイドボスが現れました、あなたの戦闘時間は残り5分です』

 

なるほどな、ようやく魔物側の戦闘システムが分かってきたな。要は俺は波のボスが現れるまでの繋ぎって事か……はは笑える。

 

「なら残り5分……好きにさせて貰うか、おい野郎ども」

「ギャ?」

「もうすぐ撤退する事になる。奪った装備品を装備しろ」

「ギャギャ!!」

「ついでに村人を殺してこい、王国騎士団もな。後は好きにしろ」

「ギャハー!!」

 

ゴブリン達は鎧を身に纏い、王国騎士団達や村人に襲いかかっていった。

 

もう勇者なんてどうでもいい、世界は俺が奪うんだからな。メルロマルクにはもう用はない他の国に行こう。

 

すると俺が立ち止まって考え混んでいると、突然、後ろから攻撃を仕掛けられた。

 

「はぁ!!」

 

ガキーーン!

 

俺は振り向きもせず攻撃を防いだ。

 

こんなスピードで攻撃してくるのはただ一人。俺が唯一愛した女性……ラフタリアだ。

 

「太刀筋が丸見えだよ?、ラフタリア?」

「何故、貴方は私の名前を……?」

「はぁ……流石に元カノにまで言われると、さすがにヘコむなぁ」

「何を言っているんですか!?私は──」

「尚文の剣だろ?」

「!?」

「残り3分か、ラフタリア……さよなら。『暗黒剣』!!」

 

俺は振り向きざまに暗黒剣を振りぬこうとした。

 

「『エアストシールド』!!」

 

暗黒剣は凄まじい金属音を立てながら弾かれ、ラフタリアはエアストシールドにより護られた。

 

やはり来たか、盾の勇者……尚文!!

 

「よぉ、尚文。また会ったな」

「あんた、何ってんだ!?人間のする事じゃないぞ!?」

「その通りだ。俺はもう人間なんか辞めたよ。尚文の気持ち、今なら分かるぜ?何もかもぶっ壊してやるって気持ちをな?」

「そ、それは……けど、何も村人達まで巻き込む事なんかないじゃないか!!」

「黙……れ!!お前らの正義なんか使えねぇんだよ!」

「ダメだ、話が通じない。ラフタリア!!」

「はい!!」

 

見事なコンビネーションで俺に反撃を始めた、レベルは俺の方が上だが、2対1の為、ほぼ互角で渡り合っている。

 

「残り時間1分か、そろそろケリを付けてもいいな。『ファスト・ダークネス』!!」

「うわぁ!!」

「きやぁ!!」

 

尚文、ラフタリアもドス黒い衝撃波で吹き飛ばされた。すると、俺やゴブリン達が転送される準備に入った。

 

時間切れか。

 

『時間切れです、元の場所に転送します』

 

「あー楽しかった、またな?尚文」

「なに!?」

「次会うのは……そうだなぁ。まだまだ先だな、まぁ精々強くなって来いよ」

「待ちなさい!!」

 

俺とゴブリン軍団は光に包まれながら尚文達と話し始める。

 

「お前らが強くなっても、俺は更に強くなって世界を征服してやる」

「その時は俺が世界を護る!!」

「おいおい、あまり強い言葉をつかうんじゃねぇよ。弱く見えるぞ?」

「なんだと!?」

「まぁ、死ぬ気で強くなれよ。勇者共…じゃあな」

 

俺達は転送されて行きアジトに戻され、俺はそのまま椅子代わりの木箱に座り始めた。

 

「ふぅ。初の厄災の波、楽しかったな」

「おや、おかえりなさい」

「おう、こんなに装備が手に入ったよ」

 

俺はゴブリン達が装備した防具をジキル博士に見せた。

 

「これはなかなかの装備もありますね、この際この防具でゴブリン達の質を上げるというのはどうでしょうか?」

 

なるほど、ホブゴブリンに強力な防具を装備させて強化させれば良いのか。

 

「なら強い防具が必要だな、どうだ?この際もっと戦力を集める為に、メルロマルクから出て行かねぇか?」

 

俺は冒険者から奪った装備品の1つ、世界地図を取り出して広げてジキル博士に提案して見た。

 

「そうですね、なら……【ゼルトブル】に行きませんか?あそこは傭兵の国で斧の勇者を崇めてますがあそこにはコロシアムがあります、そこの剣闘士の装備を奪えば一石二鳥でしょう」

 

「なるほどな、んじゃ〜ゼルトブルにいくか!」

「それと、龍二さんに見せたい物が……」

「見せたいもの?何?」

 

ジキル博士は黒い本を取り出して龍二に見せた。

 

なんか尚文達が読んだ本に似てる気がするな。

 

「『四凶武器書?』なんか四聖武器の本と似てるな?」

「そうです、四聖武器の対比の武器ですね」

「なになに……【混沌(こんとん)の魔剣】【饕餮(とうてつ)の扇】【檮杌(とうこつ)の棘鉄球】【窮奇(きゅうき)の篭手】全てを持つ物は世界を制す……マジか!!」

 

「その混沌の魔剣が封印されているのはゼルトブルです、他の武器は後で解読しておきますね」

 

なら話が早い、魔剣を目指してゼルトブルに向かうことにしよう、こんな なまくら剣じゃ歯が立たないからな。

 

「よし、ぜんは急げだ。今夜出発する!」

 

俺達は『四凶武器』を探す為にゼルトブルに向かった。




四凶とは、中国の4つの悪の神様と呼ばれているようです!たまたま四凶だったので四聖武器に似せてみました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 ゼルトブル

俺とジキル博士は数ヶ月かけてゼルトブルに入国した。ジキル博士が用意した偽造カードでなんとか潜入出来た。先ずは、ゼルトブルに封印されているという『魔剣』を探さなくてはならない。とりあえずゼルトブルはメルロマルクより活気な街という事が分かった。

 

「さすがは傭兵の国、いかつい男どもばかりだな」

「そうですねぇ、【闇ギルド】や【コロシアム】が関係しているからでしょうね」

「闇ギルド?コロシアム?」

「ご存知ないですか?、簡単に言えば表沙汰に出来ない仕事をこなすギルドですね、あとコロシアムは戦わせるところと言えば分かるでしょう?」

 

なるほどね、要は暗殺とか汚れ仕事がメインなんだろうな。コロシアムは闘技場ってのは分かった。前回は俺は来た事がないからな、全てが初めてしる情報だ。

 

「俺は魔物になってるから店関係に入れない。博士、色々頼めるか?」

「そうですね、道中奪い取った金品で色々買ってきましょう、龍二さんは闇ギルドで情報を探って見ては?」

「闇ギルドなら入れるのかな?」

「おそらく入れるでしょう、ダメ元で試して見ては?」

「そうだな新しいアジトも欲しいからな、行ってみるわ」

「はい、ではまた後で」

 

俺とジキル博士は二手に別れて行動を別にした。

 

ジキル博士なら変身出来るから問題ないだろう、とりあえず闇ギルドに向うか。

 

俺はスラム街の様な所に入っていくと、野蛮そうな冒険者2人組が俺を囲い始めた。

 

またこのパターンかぁ。

 

「なんだ?俺に何か用か?」

「へへへ、兄さんここがどこだか分かってんのか?」

「泣く子も黙る闇ギルドだぜぇ?」

「知ってるよ。だからここに来たんだろ?ほら、だから通せよ」

 

無理やり通ろうとしたら行く手を阻まれた。

 

めんどくせぇなぁ。

 

「なに?邪魔なんだけど?」

「おっーと通行料を貰わねぇとな」

「返事は楽しんでか」

 

グサッ

 

俺は無言で冒険者1人を隠し持ってたナイフで冒険者の腹を刺した。

 

「ぐっ!?」

「チップだ、とっとけ」

「て、てめぇ!!」

 

刺された冒険者は片手剣を構えながら俺に振り上げてきた。

 

「しねぇっ!!」

 

ガキィン!!

 

俺は金棒で片手剣を防ぎ、そのままいなしてフルスイングをして攻撃してきた冒険者を叩き殺した。

 

「ったく危ねぇだろーが、大人しくしてろっての。お前はどうする?無惨に散るか?俺に協力するか?」

「ひっ……た……助け」

「なら協力するんだな?」

 

生き残った冒険者はブンブンと首を縦に振る。俺はもう1人の闇ギルドの冒険者にゼルトブルの闇について尋ねた。

 

「おい、この辺で1番デカい悪もんはどこにいる?」

「えっえ?えーと、【オーク】で集う亜人の傭兵集団の【ギャングスター】ですかね?」

「オーク?」

 

オークと言えば、頭は豚、体は人間の様な体をしているモンスターだ。ゴブリンと同様雑魚系モンスターでは鉄板だな。

 

「そいつはどこにいる?」

「今、その一味が闇ギルド中にいますが?」

「うーん。それは後だな。それともう1つ、封印された魔剣の在処は知らねぇか?」

「魔……剣!?兄さん!悪い事は言わねぇ!やめとけ!」

 

やっぱり呪われてるからか?めっちゃ止めてくるな、そりゃ魔剣だもんな。

 

俺は冒険者を返り血の付いた金棒を突きつけて脅し始める。

 

「うるせえ早く言えよ、こいつ見てぇにてめぇも殺すぞ?」

「言います!言います!コロシアムの……【地下の奴隷市場の墓場】にあるそうです!」

「ふーん、なるほどな。情報ありがとう」

「あんたも……魔剣を狙ってんのか?」

「ああ」

「せいぜい呪われねぇ様にな……狙った奴らは皆帰ってこねぇんだ」

「あっそ、俺はもう呪われてるから」

「え?」

「ちょっと喋り過ぎたな、それで?コロシアムに入るにはどうすればいい?」

「それは……客としてですか?選手としてですか?」

 

闇ギルドの冒険者は俺に尋ねて来た。

 

どうやらコロシアムと奴隷市場に入るにはそれなりの物が必要らしい。

 

「俺は一応選手もやってんだ、兄さんもコロシアムで戦うなら俺が推薦しますぜ?」

 

「ふむ、悪くないな、賭け事とかもしてるのか?」

「へい、最近は勝ち抜きルールで儲けてるって話でさ」

 

一攫千金のチャンス!!逃してたまるか!奴隷、魔剣、賞金をごっそり全部頂くぜ!!

 

「おし、予定変更だ。も俺が勝ったら賞金半分やるから手を貸せ」

「半分!?はっはい……なら、こっちです」

 

俺は冒険者の男と一緒にコロシアムに向かった。

 

数ヶ月ぶりの戦闘だ、楽しみだなぁ。

 

───────────────────────

 

闇ギルドの冒険者の手引きによりコロシアムにすんなり入れた。

 

ここからは選手として潜入しないとな。

 

「へへ、兄さん登録完了ですぜ!」

「最初の対戦相手は?」

「ミノタウロスでさ!けど魔物と戦うなんてすげぇや」

「俺も魔物だからな、魔物vs魔物なら問題ねぇんだろ?」

「魔物!?、確かにそうですけど大丈夫ですかい?」

「問題ねぇ」

 

すると俺の前にあるゲートが開き闘技場に入った。すると、反対側からのゲートからは牛の頭で体が人間の魔物が出て来た。

 

「ルールは?」

「へい、ざっくり説明しやすと兄さんが勝つと賞金がかさましして行くんでさ」

「なるほどな、元金金貨10枚にしといてくれ、そうすれば強い奴が寄って来るだろ?」

「マジですかい!?」

 

いや余裕ですからこんな雑魚、魔王を目指す男が魔物に殺られてたまるか。

 

「賞金の半分がお前の分な」

「へい!」

「賞金全部持ち逃げしたら絶対殺すからな」

 

そう言い残し、俺は金棒を冒険者に渡し、大剣を肩で担いでミノタウロスに向かって行った。

 

歓声の鳴り響く闘技場に俺の戦いが幕を開けた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 妖狐・トゥリナ

俺とミノタウロスは武器を構え試合の合図を待った。魔法で拡声させているのか、実況者にも熱が入る。

 

《勝ち抜き争奪第1回戦!!ミノタウロスvs謎の挑戦者・龍二!!なお龍二が勝利すればミノタウロスが稼いだ賞金を奪うことが出来るぞー!!》

 

《それでは、第1回戦!はじめ!》

 

「ブォォォォ!」

「おおぉぉぉ!」

 

ガキーーン!

 

ミノタウロスの大斧と俺の大剣が激しくぶつかり合あった。俺とミノタウロスの周りには巨大なクレーターが出来て歓喜席まで衝撃波を放った。

 

「ヴォォォ!」

 

ミノタウロスは大斧を振り回して俺を壁に追い詰める、ミノタウロスが縦に大きく振りかぶった瞬間に俺はミノタウロスの胴体を切り裂き、胴体と下半身を分断させた。

 

ワァァァァァァッ!!

 

《なんとー!挑戦者の勝利だぁぁぁぁ!ミノタウロスに賭けた方は残念でした!さぁ次の相手は誰だぁ!!》

 

闘技場の実況者も興奮している。

 

こうなったら出入り禁止まで稼いでやるよ。

 

そして次の相手のゲートが開いた。すると、そこには……かつての仲間だったディアボロが目の前に現れ、俺は動揺を隠せなかった。

 

「ディアボ……ロ?」

「ガルルルルルル……」

 

《次の対戦相手は……黒き魔獣の牙狼族ディアボロだぁ!ディアボロはあの絶滅危惧種の魔物の牙狼族の王だ!挑戦者はこの試合に勝てば賞金は2倍に膨れるぞー!》

 

実況者は興奮しながら喋ってるが、かつての仲間と殺しあわせて2倍だと?つくづくこの世界の住人達は腐ってるな……お前らは家族と殺し合いが出来るのか?

 

俺は大剣を下ろし、優しくディアボロに声を掛けてみた。

 

「ディアボロ……俺だ、龍二だ!分かるか?」

「ガォーーーン!!」

 

ディアボロは俺の声を無視して前回の世界でも使っていた『攻めの咆哮』で自身の攻撃力を上げながら俺に襲いかかって来た。

 

「グァォァァオ!!」

 

ガブッ!!

 

俺はディアボロに噛み付かれてしまった。まさに飼い犬(過去の仲間に)に噛まれたとは正にこの事だった。俺は首を噛まれながらもディアボロに声を掛け続ける。

 

「ぐぁぁぁ!!ディア……ボロ……」

「グァォァァルルルルル!!」

 

俺は何も抵抗しないままディアボロに首を噛みちぎられ絶命した。

 

『牙狼族に殺されました』

『EXP1500獲得しました』

『Lvが60になりました』

『下級魔物から中級魔物にレベルアップしました』

『下級魔物使いのスキルが解放されました』

 

ディアボロにも忘れられちまったのか。

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

《あーーーっと!挑戦者はここで終了かーー!?》

 

「おい、まだ死んでねぇよ?」

「!?」

「主に噛み付くなんざ仲間じゃねぇ……ディアボロ……」

 

突然起き上がった俺を見たディアボロは怯えだし、後ずさりをした。俺は優しくディアボロを抱きしめた。

 

メキメキ……。

 

「ディアボロ?ティーチ達はみんな先に逝ったぞ……?」

「グォ!!グォ!!」

「探すの遅れて……ごめんな?」

 

メキメキ……メキメキ。

 

俺は両腕を徐々に力を入れてディアボロの首を締め始めた。

 

ディアボロは元々俺の仲間、昔のよしみで”優しく”殺そう。

 

「グ……オ……」

「さよなら……俺はこのまま迷うこと無く、突き進むよ」

 

メキメキ……メキメキ……ゴキッ!!

 

ディアボロの首の骨をへし折り、ディアボロをこの手で殺した。俺は、初めて仲間に手を掛けた……。

 

《決まったーーー!一時は牙狼族の勝ちかと思われたが!挑戦者の逆転勝利だぁぁぁぁ!》

 

俺の耳には実況者の響く声は届かず、ただ俺は呆然とディアボロの頭をずっと撫でながら泣いていた。

 

死んだ、ティーチもスラッシュも、バージルもサニーもみんな死んだ。

 

「はははははは……ディアボロ……はははは死んじゃったディアボロを殺しちゃった……あはははははは!!」

 

これで分かった、勇者以外にも、かつてのパーティー仲間すら俺の事を忘れている事が分かった。

 

《おーっと!挑戦者!伝説の魔物を殺して笑っているーー!》

 

「黙……れ!!」

 

俺はギロリと実況者を睨み付けた。実況者は物凄い殺気で黙り込んでしまった。

 

《さ……さぁ!気を取りなおして第3回戦!!次の対戦相手は!?》

 

ゲートからは何やら小さい女の子が現れ、頭には狐の様な耳と尻尾を生やしていた。

 

見たところ、狐の亜人か?にしてもものすごい魔力を感じるな。

 

「なんじゃ?今度の相手は人間なのか?」

「あ゙ぁ?俺は人間じゃ……」

「おーおー、童の分際で生意気じゃのう」

 

狐の亜人は身構えると、咄嗟に俺も大剣を構えた。

 

肌で感じる程の力を感じる。この子は……強い!!

 

「あんた……名前は?」

「妾か?妾の名はトゥリナじゃ!」

「トゥリナ……!?」

 

トゥリナ?まさか、タクト一派にいた化け狐か!?、ここに居るということは、まぁタクトと一緒に活動していないって訳か。

 

「お主は妾の遊び相手になるかのぉ?」

「へっ試したら良いだろ?女狐が」

「楽しみじゃのぉ!!ワクワクするのじゃ!」

 

なんだこのドクタースランプ的なテンションは。確か、前回タクトと戦った時の情報だと、トゥリナは亜人に見えるが、魔物だったな。

 

《さぁ!今回の大一番!勝ち抜き争奪最終戦、妖狐トゥリナvs挑戦者龍二!!挑戦者龍二かが勝てば元金が……10倍だぁぁ!》

 

 

大歓声の中ディアボロの死体は運ばれて行き、トゥリナと俺だけが残された。

 

「さぁ……妾と遊ぶのじゃ!」

「上等だ女狐がぁっ!!」

 

妖狐・トゥリナがものすごいスピードで襲いかかって来た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 混沌の魔剣ストームブリンガー

実況者は大興奮して実況を続け、第3回戦を始めようとしていた。

 

《第3回戦……はじめ!!》

 

「とりゃーー!」

 

トゥリナは俺に飛び蹴りを繰り出して俺は吹っ飛ばされた、俺は壁にめり込み血を吐いた。

 

「ぐはぁ!!」

「おー!体がちぎれなかったのはお主が初めてじゃ!」

「て……めぇ……」

「まだまだ行くぞ、『管狐』!!」

 

トゥリナは懐から煙管を取り出し、そのまま煙を出した。その煙は数匹の狐の魔物に変化し俺に襲いかかって来た。

 

なんじゃありゃ!?

 

「ちっ……『暗黒剣』!!」

 

俺は管狐を薙ぎ払い打ち消した。

 

「おー!凄いのぉ!ちょっと本気出してみようかの?」

 

トゥリナは魔力を溜めるとトゥリナの尻尾が2本に増えた。

 

恐らく9本全て出すとコロシアムが消し飛ぶな……。

 

「ふぅ、なかなかやるの!」

「『ファスト・ダークネス』!!」

 

俺はファスト・ダークネスを放ち直撃したが、トゥリナは管狐で防いでいた。

 

「今度は妾の番じゃな……とぅ!!」

「このままじゃ勝てねぇな……魔剣さえあれば……!!」

 

トゥリナは高く飛び上がって俺目掛けて飛んで来た。そして、俺の腹に拳をめり込ませて地面に叩き付けた。その地面は地割れして闘技場は崩壊した、俺は奥底まで落ちていった。

 

「がはっ!!」

 

《あーっと!地盤が崩壊してしまった!挑戦者は無事なのかー!?》

 

俺の腹には風穴が開いていて既に息絶えていた。トゥリナは手応えがあったのか、穴を覗き始める。

 

「手応えは十分あった、妾の勝ちかの?」

 

俺はと言うと、地下の奴隷市場を貫き目的であった場所に落ちていた。

 

『九尾の狐により殺されました』

『EXP5000獲得しました』

『Lv80になりました』

『中級魔物から上級魔物になりました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

俺の体は直ぐに再生していき、何事もなかった様に立ち上がった。

 

「あーいってぇ……この痛みさえなければチートなんだけどなぁ……まぁ呪いだししゃーないな……ん?ここは……?」

 

俺目の前には何個あるのか数えきれない程の墓石が立ち並び、その真ん中には刀身までびっしりと奇妙な文字と巨大な犬の様な魔物の彫刻が刻まれ、黒く巨大な広刃の剣が刺さっていた。

 

「これが……魔剣」

 

俺は魔剣らしき剣を握りしめると、どこからともなく声が聞こえて来た。

 

《我が名は……ストームブリンガー……【混沌(こんとん)】の魔剣である、お主は我力を用いて何を望む?》

 

何を望むかだって?そんな事はとっくに決まってる。

 

俺は魔剣ストームブリンガーの質問に答えた。

 

「世界に混沌を巻き起こし、世界を制し、正義を正す為だ!」

 

《面白い、ならば我を使いこなして見よ!!》

 

魔剣から赤黒い稲妻が放たれて俺に放たれた。俺のアイコンにバグが起こったかのように赤い文字でズラズラと映し出されていった。それは、まるでパソコンがハッキングされたかのようだった。

 

『混沌の魔剣ストームブリンガーに呪いをかけられましたが、不死身の呪いにより無効化されました』

 

《なんと!?人間無勢が我の呪いが効かぬと!?》

 

「残念だったな、不死身の呪いにかかっている。それに、俺は人間じゃない。さっき上級魔物になったばかりの魔物だ」

 

《不死身の呪い。最上級の苦痛の呪いにかかっておったか、お主が気に入った、我の主として認めよう!!》

 

魔剣ストームブリンガーは龍二を主として認めたのか赤黒い稲妻は収まり宙に浮き始めた。

 

《我の力で覇道を貫いて見せてみよ!!》

 

俺は魔剣を手にするとアイコンに異変が起きた。

 

『魔剣ストームブリンガーを手に入れました』

 

混沌の魔剣ストームブリンガー 熟練度0 LR

魔法攻撃+100 物理攻撃+100 闇属性魔法威力(特大)

装備ボーナススキル……『デスブリンガー』 『暗黒剣Ⅱ』『Ⅲ解放』

ツヴァイト魔法・ドライファ魔法解放 四凶ボーナス……???

 

「凄い、力が湧き上がるように溢れてくる!!」

 

俺は落ちてきた穴を見上げると、大きくジャンプして戻って行った。

 

《あーっと!挑戦者は生きていたぁぁぁー!》

 

俺は再び闘技場に舞い戻り、トゥリナの前に飛び降りた。

 

「待たせたな……トゥリナ」

「お?妾の攻撃を……お主面白いのぉ!!」

 

トゥリナはキャッキャしながら驚いている、純粋ってコワイな

 

トゥリナは俺が持っている魔剣に気が付いた。

 

「うゆん?、お、お主!!まさか、その剣は!?」

「これ?混沌の魔剣ストームブリンガーだけど?」

「お主、普通の人間ではなかったのか!?」

「俺は上級魔物だよ?。そしてこの世界を牛耳る魔王になる男だ」

「上級魔物じゃと!?妾と同じ……!?」

「よーし、ならこれで五分だろ?」

「うゆん!お主は楽しい奴じゃのう!気に入った!」

「あ?」

「妾はお主の仲間になるのじゃ!」

「はぁ!?今なんてった!?」

 

俺は驚きを隠せなかった。

 

さっきまで殺し合ってたのに仲間になると?

 

「ふざけんな、信用出来るか」

「心配無用じゃ、今のお主に勝てる自信が無いのじゃ」

「はぁ……まぁ九尾の狐が仲間になってくれるなら歓迎だ」

「うゆん!よろしくなのじゃ!龍二!」

「よろしくな、トゥリナ」

 

俺とトゥリナは握手をした、すると実況者は声を掛けてきた。

 

《あのー?戦わないんですか?》

 

「「あぁ?」」

 

俺とトゥリナは実況者を睨み付けた。

 

もうここに用は無い、賞金全部頂いてずらかるか。

 

「とりあえずここから出よっか」

「うゆん!そうじゃな!」

「トゥリナ、使える魔法やスキルは?」

「そうじゃのう、『幻影魔法』と『変化』さっき見せた『管狐』くらいかの?」

「なるほどな」

 

ラフタリアをめちゃくちゃ嫌ってた訳だ。

 

俺は魔剣を肩に担ぎ、トゥリナは尻尾を3本に増やしながらコロシアムで暴れ始め、新たな仲間の九尾の狐ことトゥリナが仲間になった。




おかえりなのじゃって言われてぇ……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 七星勇者

あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!


俺とトゥリナはコロシアムから出て無差別に観客を殺し始めた、女、子供、老人関係なく殺しまくり俺は無表情で斬りまくっていた。そして賞金を受け取った冒険者を見つけて俺はコロシアムの賭けで儲けた賞金を闇ギルドの冒険者に約束通り半分渡した。

 

「ほら、約束の金だ。間違って斬られねぇようにさっさと行きな」

「へっへい……」

 

キャー

助けてくれー

ママー!

パパー!

 

観客達の断末魔が聞こえてくる、いい気味だ。仲間をこの手で殺させて何を喜んでたんだがな、いざ自分の番だと命乞いとは恐れ入ったよ。

 

「トゥリナ、この国で勇者を見た事あるか?」

「勇者か、確か──そうそう斧の勇者を何度か見たぞ?」

「こんだけ騒げば出て来るだろうな、見つけ次第……殺せ」

「任せておくのじゃ!」

 

俺はトゥリナと別れてコロシアム内の通路で暴れていると奴隷市場に差し掛かかり、そこにはあの奴隷商の親父に似ている男がいた。

 

「ひっ……」

「お前……メルロマルクの奴隷商か?」

「メルロマルク?いえ、それは私の甥です、はい」

「瓜二つじゃねぇか」

「よく言われます、はい」

「ん?」

 

奴隷商の後ろには何やら印象的な”5人の人間”の奴隷がいた。見た目は15〜16歳の双子の姉妹、いかにも出来損ないって顔のデブの男、木刀を持ってて鋭い目付きの老人、そして隅に座ってブツブツ喋る青年が俺の目に映った。

 

「こいつらは?」

「売れ残りの商品です、はい」

「売れ残りか……」

 

俺は5人に向かって”質問”をして見た。

 

「この世界が憎いか?」

 

すると双子姉妹が1番最初に俺の質問に答えた。

 

「憎い……」

「全て壊したい」

「くくくく……他は?そっちのじーさんは?」

「ここで孫、息子、兄を殺された、もうこんな世界どうでもよい」

「デブは?」

「ボクは……家族に売られてここに来たんです……家族を殺したい」

「うんうん、最後のお前は?」

「ここでなら……人を殺しても罪にならないから」

 

5人揃っておもっ苦しい思いをぶつけて来た。

 

久しぶりの”人材”を見つけてしまったのかも知れない。

 

奴隷商は恐る恐る俺に訪ねてきた。

 

「お買いになりますか?」

「ああ、いくらだ?」

「順番に言いますと金貨貨4、3、1、5です」

「金貨20枚で買おう」

 

すると俺は5人の奴隷達に言い放った。

 

「”力”を授けてやるから俺と一緒に着いてこい」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「時間はかかるが、力をやる。どうする?付いて来るか?」

 

5人は頷き、俺と契約を結んだ。

 

尚文のようには強くならないなら──”別の方法”で強くさせればいい。

 

その時、俺のアイコンに変化が起きた。

 

『奴隷を獲得しました』

 

これは尚文と同じだな、ここは普通って事か。

 

「じゃあな、あんたさっさと逃げた方がいいぜ?」

「毎度ありがとうございます……そうします、はい」

 

俺はそう言い残し、奴隷を連れてコロシアムを出た。コロシアムの騒ぎを嗅ぎつけてジキル博士が走って来た。

 

「やれやれ、騒がしいと思ったら龍二さんでしたか。おや?、魔剣は見つかったようですね?」

 

「ああ、博士、もうすぐ勇者が来るからこの奴隷達を頼めるか?」

 

「分かりました、あなたが遊んでる間にこの街のギャングを沈めておきました、そこのオーク達を戦力に加えたのでそこのアジトでお待ちしてます」

 

俺とジキル博士が話していると子供の亜人の様な姿のトゥリナが剣闘士の頭を引きずりながら土煙から現れた。先程とは違って黒い着物に変わり、尻尾が5本に増えていて、見た目はラフタリアぐらいに変化していた。

 

どうやらこれが先程言っていた『変化』らしいな。

 

「トゥリナ、お前変化しすぎじゃね?」

「そうかの?この方が動きやすくて助かるのじゃがの?」

「亜人……では無さそうですね、かの有名な……狐の魔物、九尾の狐ですか?」

 

ジキル博士はメガネをグイグイしながら舐め回すように観察し始めた。

 

「なっなんじゃこやつは?」

「俺の仲間、ジキル博士だ」

「そっそうか」

「トゥリナ、ジキル博士と一緒にアジトに向かってくれ」

「わかった、龍二はどうするのじゃ?」

「俺か?」

 

おい!お前ら!!

 

すると日本人らしき人間が斧を持って俺達に声を掛けてきた。

 

この流れを察すると、こいつは七星勇者の転生人だな。

 

「コロシアムで暴れているのはお前達だな!?」

「お前は?」

「斧の勇者、田中健一だ!」

「斧の勇者とな!?」

 

トゥリナとジキル博士は戦闘態勢に入るが、俺が止めた。

 

「ここは俺が殺るから、先に行け」

「そうか?ゆくぞ?ジキル」

「はいはい、トゥリナさん」

 

2人は奴隷を連れてアジトに向かって行き、その場には俺と斧の勇者は武器を構えた。

 

「それは……魔剣ストームブリンガー!?」

「そうだ、まずお前よりまず他の人で試し斬りしてやるよ──。実演を踏まえてな!!」

 

俺は斧の勇者を無視して逃げ遅れた子供に狙いを定めた。俺は魔剣を大きく振りかぶると斧の勇者は子供を助ける為に駆け出した。

 

「危ない!!」

「簡単な罠に引っかかってんじゃねぇよ、バカが」

 

俺は急ブレーキをかけて斧の勇者に方向転換した。

 

「なっ!?」

「あばよ、斧の勇者」

 

ズバッ

 

俺は斧の勇者を胴体と下半身を一刀両断して分離させた。

 

「がっ……はっ……」

「斧の勇者の特有スキル『肉体改造』ってやつか?なかなかしぶといな、しかし勇者ってのは大変だな、”護るもの”が多くてよ」

 

「くっ……そ……」

「言っておくが、俺が手を出さなくても”別のヤツ”に殺されてたからな?」

 

「ちく……しょ…」

 

力尽きたのか斧の勇者は事切れてしまった。俺は血がついた魔剣を舐めて納刀した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 ヴィッチ誘拐

その後俺達は斧の勇者を殺してから新たなアジトに向かった、闇ギルドの冒険者から聞いたギャングスターというオーク達のアジトを手に入れた。

 

見た目は工場の倉庫のような造りだがレンガで出来ている為丈夫の様だ、洞窟と同じくらい薄暗いがまぁゴブリン達にも十分だろう。

 

俺はジキル博士が指示した場所にたどり着いた。

 

「へぇ、結構広いな」

「ええ、ここならゴブリン達も住みやすいでしょう。下水道にも繋がってるので地下は牛耳ったも同然ですねぇ〜」

「薄暗いのぉ〜、龍二はゴブリンを飼っておるのか?」

「ああ、今はラファン村のダンジョンで育ててるよ、今からコロシアムで覚えた転送魔法で全てのゴブリンを連れてくる」

 

※龍二はコロシアムを出る際に数回殺されてます※

 

俺は転送魔法を展開してラファン村に向かった、そして大勢のゴブリンを従えて戻って来た。

 

オーク軍団500、ゴブリン軍団の軍勢が一気に増えた。

 

「なんと……1000は越えてますねぇ」

「俺も見た時びっくりした、女共は死んじゃってた」

「そうですか、なら”新しい女”を用意しましょうかね」

「それなら相応しい女がいるよ」

「相応しい女?どこかに心当たりが?」

「まぁな。それはそうと、オークの頭は誰だ?」

「おっ、オレだ」

 

オークの群れから重装甲の鎧を装備したオークが現れた。

 

「お前、名前は?」

「バルバロっていうもんだ、今後はあんたの配下につく」

 

俺はバルバロを舐め回すように見て、背中から金棒を差し出した。

 

「頼りにしてるぜ?仲間の印に俺の武器をやるよ」

「ありがてぇ……喜んで働かせてもらう!」

「頭を張ってたんだろ?なら、お前は今日からゴブリンとオーク軍団の将軍に任命する。頼むぞ?」

「任せてくれ!これでもゼルトブルじゃ名が通ってんだ」

「んじゃ、俺達の事を説明するから俺に付いてきてくれ」

「分かった、付いて行くぜ」

 

バルバロと離れて話しをしようとすると、ラファン村から連れて来たゴブリン達がトゥリナを気に入ったのか近付き始めた。

 

何も知らない無能のバカが!

 

「コラコラ、何やってんだお前ら?」

「ゴブリン如きが……妾を犯そうと言うのか?」

 

トゥリナはロリ系から再び『大人の形態』に一気に変わった。

 

大人形態と言うより、今後は『グラマー形態』と『ロリ形態』と呼ぼう。

 

ゴブリン達はトゥリナの魔力を感じ取ってビビり始めた。

 

「ギャ……」

「ギャ……」

「お前らその子はお前らの上司だ、舐めてると消し飛ばされるぞ?」

「ギャギャ!!」

「新しい女はこれから手に入れてくる所だからお前らも手伝え」

 

すると久しぶりにアイコンに異変が起きた。

 

《WARNING、WARNING、WARNING》

 

『厄災の波が起こりました、3分後あなたは強制参加になります』

 

「ちっ……もう波か……」

「龍二よ、どうしたのじゃ?」

「厄災の波が来たってよ」

「そうですか、今回は誰を連れてきますか?」

「そうだな……フランケンとバルバロ、オークとゴブリンの兵隊を少し連れて行こう」

「龍二……さん、俺……頑張る」

「カシラ、俺も精進するぜ」

 

『転送を開始します』

 

────────────────────────

 

強制転送が終わると、幽霊船が浮かんでいるのが見えた。

 

ここは……見覚えのある荒野だな、だとすると時系列的にはグラスが初登場するな。

 

「よし、早速あの幽霊船に乗り込むぞ!」

「はい」

「でっけえ船だな」

「ギャハー!」

「さて、どうやって乗り込むかな……丁度いいや、あの岩山から飛び降りれば降りれるな」

 

俺達は岩山から降りて幽霊船に乗り込んだ。そこには、四聖勇者一行と異世界の扇(眷属器)の勇者グラスが戦っていた。

 

お取り込み中だったかな?

 

俺達は、ドスン!と音を立てながら両者の間に降り立った。

 

「お楽しみ中に申し訳ないね、ちょっとの間お邪魔するよ?」

「「「!?」」」

「お前は!?…」

「何ですかあなたは何者ですか?」

 

グラスが扇を俺に突きつけて来た。俺はストームブリンガーを抜いて。

 

「俺は……グラス、アンタの敵だよ」

 

俺がそう言い放った瞬間。元康、錬、樹、が襲いかかって来た。

 

「『流星剣』!」

「『流星槍』!」

「『流星弓』!」

「待てお前らっ!奴はただのモンスターじゃない!!」

 

「おせえよ『暗黒剣Ⅰ』!、『Ⅱ』!、『Ⅲ』!!」

 

尚文の忠告も虚しく、俺は暗黒剣の連続派生技で流星シリーズの技を全て薙ぎ払った。

 

「「「なっ!?」」」

 

グラスは俺と尚文達のやり取りを見て俺と尚文が敵対してると把握した。

 

「どうやら、この方達の仲間ではなさそうですね」

「ああ、見れば分かるだろ?」

「まぁ、いいでしょう。どなたか存じませんが、死んでもらいます!『輪舞零ノ型・逆式雪月花』!!」

 

グラスは俺に向かって輪舞零ノ型・逆式雪月花を放った。

 

この技は、嫌とゆうほどではないが見慣れた技だな。

 

「使ってみるか……『ドライファ・ダークネス』!!」

 

龍二は落ち着きながらレベルが近いのが良かったのかドライファ・ダークネスで輪舞零ノ型・逆式雪月花を打ち消した。

 

「な、なに!?」

「そうそう、斧の勇者は俺が殺した。次はグラス、てめぇだ!『暗黒剣』!!」

 

俺はグラスに向けて魔剣ストームブリンガーを振り下ろした。

 

グラスを殺した所でなんも問題がないな。

 

ガキン!!

 

激しい衝撃波が起こった、その原因は盾の勇者である尚文の仕業だった。

 

まったく、ウザイくらい固い防御力だ。

 

「またお前か……尚文、いい加減しつこいな」

「言ったはずだ!俺が世界を護って!!」

「なら……やって見ろ!!『ツヴァイト・ダークネス』!!」

「ラフタリア!!フィーロ!!」

「はい!」

「うん!」

「へぇ……もうフィーロを仲間にしたのか。時間はあっという間だな」

「今度は負けません!、フィーロ行くわよ!」

「うん!『はいくいっく』!」

「私を忘れてませんよね?」

 

グラスも体勢を立て直してラフタリア、フィーロと共に激しい攻撃を仕掛けて来た。

 

尚文がサポートに入ってくれば4対1か、まぁ燃える展開だな。

 

すると物陰からソオルイーターが現れた。

 

「「邪魔だ!!」」

 

「『輪舞零ノ型・逆式雪月花』!!」

「『暗黒剣』!!」

 

俺とグラスは同時にソオルイーターに攻撃を仕掛けて攻撃した。バラバラに消し飛んだ。するとアイコンに文字か浮かんだ。

 

『レイドボスが倒されました、残り戦闘時間は5分です』

 

「ちっ……もう時間かよ。おい、フランケン、バルバロ!!」

「はい」

「おうよっ!」

「あの槍の勇者の後ろにいる赤い髪の女を連れて来い」

「はい」

「任せとけっ!」

「ゴブリンとオーク共、フランケンとバルバロをサポートしろ」

「ギャ!」

 

フランケンとバルバロは元康の仲間であるヴィッチことマインに狙いを定めた。

 

目的はあの”女神”を誘き寄せる為だ。

 

「くそ、離れろ!」

「ギャハー!」

「ブヒッー!」

「『流星槍』!」

「『ファスト・ウインド』!」

 

わらわらとゴブリンとオーク達は元康達に群がって行き、元康達を抑え込んだ。

 

「お前……連れてく」

「悪ぃなカシラが呼んでんだ」

 

ドスッ!

 

「か……は……」

 

ヴィッチはフランケンシュタインとバルバロに腹を殴られるとヴィッチは気絶した。

 

「龍二さん……女連れて来た」

「案外楽な仕事だったな」

「ご苦労さま、おーし、帰るぞ〜?」

「ま、まて……!!」

 

「おい、錬、樹、尚文……元康を放置してるとゴブリンとオークの兵隊に殺されちまうぞ?」

 

「くそっ!!」

「元康さん!!」

「元康!早く立て!!」

 

他の3人の勇者達は元康の救出に向かって行った。

 

「ククク……ヴィッチは貰っていくぞ、またな勇者ども」

「待ちなさい、あなた……名前は?」

 

グラスは俺に名を訪ねてきた。

 

やっぱりグラスも覚えてないようだな。

 

「新・魔王福山龍二だ、あばよ」

 

『戦闘終了です、元の場所に戻ります』

 

俺、フランケンとバルバロ、ヴィッチ、ゴブリンとオーク部隊は再び転送されゼルトブルのアジトに戻って来た。

 

「おかえりなさい」

「あれ?トゥリナは?それと戦利品持ってきたぜ、フランケン降ろせ」

「はい」

 

フランケンはヴィッチを降ろすとジキル博士は驚いていた。

 

「トゥリナさんは自分の部屋を作って休んでいます、この方は……王位継承第2位のマルティ・メルロマルクでは!?」

「そう、この女をゴブリンの孕み袋にする」

「ククク、それは楽しみですねぇ」

 

ジキル博士は不気味に笑っていた。

 

「あの奴隷達はどうした?」

「地下の研究施設で”例の計画”の為に眠らせています」

「ご苦労、四凶武器の行方は?」

「それも解読済みです、『扇』は霊亀国、『篭手』はフォーブレイ、そして『棘鉄球』は……信じて貰えないかと思いますが、異世界にあると……」

 

「異世界……?」

 

グラスの異世界の事だろうか?

 

「分かった、棘鉄球は最後にしよう」

「そのほうが懸命ですね。どうせなら念の為に戦力をもっと増やさないと行けませね?」

「だな……ククク」

 

着々と戦力を集める俺達であった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 バイオカスタム

ヴィッチの誘拐に成功した俺はヴィッチが目覚めるまで今後の方針を決めるべく、地図を開きながらトゥリナ、ジキル博士、フランケンシュタイン、バルバロらと話していた。

 

「さてと……今後の方針だが、次の狙いはフォーブレイにする」

「フォーブレイとな?」

「フォーブレイはこの世界で一番発展してますからねぇ、我々の本拠地にうってつけですねぇ」

「フォーブレイか、腕が鳴るぜ」

「だがあのフォーブレイには【七星勇者】の1人、【タクト】って奴が厄介だ。勇者の武器を集めてるらしい」

「なるほどのぉ、篭手がそこにあるなら無視出来ぬな」

「なので戦力を増やそうと思う、トゥリナ何か心当たりのある魔物はいないか?」

 

ロリ形態で考え込むトゥリナ。

 

トゥリナは九尾の狐なんだ同等の魔物の知り合いくらいいたっておかしくないはずだ。

 

「ふむ、【ドラグリア】と【タイラントドラゴンレックス】かのぅ?」

 

ドラグリア?聞いた事のない名前だな、タイラントドラゴンレックスは確か……ラフタリアの幼なじみが捕まってた所で封印されてた魔物だな?あんな奴とも知り合いなのか。

 

ん?

 

「ちょっとまて、ドラグリアとは誰なんだ?」

「吸血鬼の本名じゃよ、【ヴラディスラウス・ドラグリア伯爵】。それが奴の名前じゃよ」

 

吸血鬼ってそんなかっこいい名前だったのか!?知らなかったな……。けど吸血鬼か、なら夜戦のスペシャリストだな。幹部には持ってこいだ。

 

「ドラグリアは噂では、レイビア領の貴族に捕まってるようじゃ」

「なに!?なぜそんな奴が!?」

「イドルという男は卑劣な奴でな……昼の弱った所を捕縛したようじゃ」

 

イドルか、確かラフタリアやキール、リファナって子を奴隷にして虐待してた奴だったな。

 

「よし、ならレイビア領に行くぞ、吸血鬼ドラグリアを仲間にする!」

「奴とは若い頃はよくバカをやった仲じゃ、妾もゆくぞ」

「なら私とバルバロさんは留守番をしていますね。龍二さん、ホブゴブリンを数匹頂いてもよろしいですか?」

「ホブゴブリンを?なにをするんだ?」

 

俺が首を傾げると、ジキル博士は下水道で捕まえた巨大ゴキブリを取り出した。

 

そんなデカいゴキブリなんてどうするんだ?

 

「私は筋肉強化の他に『バイオカスタム』のスキルを持っています、2体の魔物同士の遺伝子を組み替えて1体の魔物を造る事も出来ますし、骨や頭髪があれば【クローン】も造ることが可能です、ここまで言えば何をするかは……分かりますね?」

 

繁殖力の高いゴキブリとゴブリンを融合させたら考えただけでもヤバイな

 

「その混合魔物で孕ませたら確かにヤバイな」

「そうでしょう?雑魚と雑魚を混ぜるとより強力な魔物も造ることが出来るんですよ……ふふふふ」

 

不気味に笑うジキル博士。

 

マッドサイエンティストと呼ばれて永久追放されるのも頷ける。

 

「骨でクローンか……あっ!いい事を思いついた!!」

「カシラ、何を思い付いたんで?」

「なんじゃ?お主まで不気味に笑いよって」

「盾の勇者の仲間を確実に殺す方法を思いついた」

「ほう、お主はとことん堕ちとるのぉ」

「時間が惜しい、今からレイビア領に行くぞ?バルバロは留守番のついでに武器を集め回っていてくれ。それと、兵隊になりそうな魔物の群れがいたら俺達の軍に加えておけ」

「おう、任せといてくれ」

「よし、行くぞトゥリナ」

「うゆん!」

 

俺とトゥリナはレイビア領に向かった。レイビア領にたどり着いたのは1週間後だった。その間に仕入れた情報で尚文が盾の悪魔と呼ばれて指名手配されたと言う事だった。

 

────────────────────────

 

「さて、レイビア領に着いたな」

「うゆん」

「まずはドラグリアだな」

「そうじゃの、恐らく奴は地下牢にいるはずじゃ。吸血鬼だからの、日当たりのいい場所には隔離してないはずじゃ」

 

俺とトゥリナはレイビア領のイドルの屋敷に忍び込んだ。様子を伺って見ると見張りを見付けた。

 

見張りは3人って所か。

 

「トゥリナ、管狐であの見張りを殺せるか?」

「ふん、任せとけあんな人間、朝飯前じゃ」

 

トゥリナは煙管を取り出して管狐を呼び出した、管狐は見張りの兵隊の首や腹を貫き殺した。

 

ぐあ

なっなんだ!?

ぎゃ

 

「片付けたぞ」

「よし」

 

俺とトゥリナは地下牢に入って行くと、中は薄暗く血生臭い匂いが立ち込めていた。

 

「カビと生ゴミの臭いがしてくせぇなぁ」

「しばしの我慢じゃよ。ドラグリア、ドラグリアはいるかえ?」

 

トゥリナが暗闇に向かって問いかけると……。

 

「誰だ……?」

 

地下牢の1番奥から不気味な声が聞こえて来た、吸血鬼のドラグリアは奥にいるようだ。俺とトゥリナは奥に進むと手枷で捕まっている男がいた。見た目はラメ入りのシャツに黒のズボンを履いていて長髪のポニーテール、左耳にはピアスを付けていた。

 

「夜はいい、私を癒してくれる……」

「捕まっている奴のセリフじゃないのぉ、ドラグリア、久しぶりじゃな」

「トゥリナか、わざわざ助けに来たのか?その男は何者だ?人間……ではなさそうだが?」

「こやつは龍二、いずれ魔王となる男じゃ」

 

ドラグリアは驚いていた。

 

見た目は人間の俺が次期魔王と呼ばれているんだ驚いていてもおかしくないはずだ。

 

「彼奴が魔王?……ふふふふ」

「なんだよお前、何がおかしい?」

「いえ、人間を辞めた男が魔王を目指すとは片腹痛い」

「言うじゃねぇか、なら力を見せれば良いのか?この魔剣で」

 

俺は魔剣ストームブリンガーをドラグリアに向けて構えた。

 

手枷されてようが知った事じゃねぇ。強ければ連れていくが、弱ければ捨てるだけだ。

 

魔剣ストームブリンガーを見た途端、ドラグリアは恐るように驚いた。

 

「それはまさか、魔剣ストームブリンガー!?」

「今更やかましいんだよ。じゃあな、吸血鬼」

 

俺は拘束されているドラグリアに向かって魔剣を振り下ろした。

 

ズバッ!!

 

ストームブリンガーを振り下ろして袈裟斬りをしたが、深く斬れず「じゅう」っと溶ける様な臭いと音が聞こえて来た。不思議な現象に俺は首を傾げた。

 

「ぐぅぅぅぅ!!」

「あれ?殺す気で振り下ろしたんだがな、もしかして魔剣ストームブリンガーは【魔族には効かない】のか?試しにもう1回斬ってみるか」

 

俺は実験にもう一度ストームブリンガーを振り上げると、トゥリナが慌てて止めに入った。

 

「よせよせ、もうよいじゃろ。ドラグリア、お主も大人しく仲間になれ」

「はぁ……はぁ……血が…血が…足りない……頼む血を分けてくれ!」

「血?よし分かった、なら忠誠を誓う為に俺の血を吸え」

 

俺は魔剣を納刀してドラグリアに首を露にした。そのまま首を差し出すと、ドラグリアは牙を剥き出しにして来た。

 

「でわ……遠慮なく……死ねぇ!!」

 

ガブッ!!

 

ドラグリアは龍二の首を噛みつき血を吸われ始めた、俺の体はみるみるうちにミイラになって行き、倒れた。ドラグリアは口に付いた血をべロリと舐め取ると言い放った。

 

「ふん、魔王を目指すと言っても、たいした事はなかったな」

「主もそう思うじゃろ?妾も最初はそう思ったわ」

「トゥリナ、どういう事だ?」

「まぁ、見てるが良い」

 

『吸血鬼により殺されました』

『EXP6000獲得』

『Lvが83になりました』

『ファスト、ツヴァイト・ヘルファイアを覚えました』

『ブラッドスラッシュのスキルを解放しました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

俺の体はみるみるうちに超速再生していき、元の体に戻っていった。

 

「あー苦しかったぁ!!来ると思っても慣れないなぁ」

「なっ何!?まさか貴様、不死身の呪いに掛かってるのか!?」

「うんそうだよ?これでどっちが上か分かるよな?」

「ふふふふ、どうやら私の負けの様だな……」

「ドラグリア、今日からお前は俺の仲間だ」

 

俺は魔剣で手枷を切り裂いた、自由になったドラグリアは膝をついて俺に答えた。

 

「我が魔王よ、このドラグリア。貴方様に忠誠を誓います」

「吸血鬼ドラグリア。心より君を歓迎しよう」

「さて……次はタイラントドラゴンレックスじゃな」

「ドラグリア、お前の武器は?」

「私の武器は主に爪とこの足、つまり『体術』です」

「なるほど、んじゃさっそくここをぶっ潰すか──ん?」

 

 

新たな仲間を手に入れた俺は地下牢を出ようとした時、そこには亜人の骨が目に入った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 盾の勇者再び

人骨を見つけた俺はその牢屋に入り亜人の骨を見つめた。

 

恐らくこの骨はリファナという子の骨だろう、ジキル博士に持ち帰れば、リファナのクローンが造れるな。

 

「龍二、骨がどうかしたのか?」

「え?いや、この骨を持って帰ろうかなと思って」

「王よ、ここに確か、亜人の子供がここにいたはずです」

「知ってるよ?、そこで寝てる(気絶)キールってガキもな」

「なら勇者の仲間なのであろう?殺すか?」

「いや、たいして強くねぇから放っておけ」

「そうか……分かった」

 

リファナはグラマー形態を解いてロリ形態に戻った、そしてリファナの遺骨を少し回収して地下牢から出ると、外が何やら騒がしかった。

 

「やれやれ、久しぶり牢から出れたかと思えば……」

「そう言うなよドラグリア、俺はお前の力を見てみたいんだけど良いか?」

「良いでしょう。ならば、『ファミリア・バット』」

 

ドラグリアは右手を夜空に掲げると指先から数百の蝙蝠型の使い魔が現れた、蝙蝠達は蜘蛛の子を散らすように空に飛んで行った。

 

「おいおい、蝙蝠を飛ばしてどうするんだ?」

「脱出路を見つける為に町中の偵察に行かせました」

「へぇ〜ら管狐といい、蝙蝠の使い魔といい上級魔物は便利なスキルを使うなぁ、あー羨ましい」

「お主の不死身には敵わんよ」

「はぁ!?コレ(呪い)結構キツいんだからな!?」

「直ぐに治るではないか!」

 

トゥリナと俺が喋っていると、ドラグリアの使い魔が数匹戻って来てドラグリアの指先に再び吸収された。

 

「ふむ、なるほど」

「ドラグリア、どうだ?なにか分かったか?」

「どうやら勇者が乗り込んで来てるようです」

「尚文だな。そういやキールやメルティを助けに来るんだったな」

「王よ、如何致します?」

「盾の勇者は後回しだ、まずタイラントドラゴンレックスが優先だ」

「御意、タイラントドラゴンレックスの封印されている場所はこちらです」

 

俺、トゥリナ、ドラグリアは石碑に向かって行くとそこには既に封印を解かれたタイラントドラゴンレックスが尚文達を追いかけて行く所だった。

 

GYAAAAAA!!

 

「ちっ、遅かったか!!」

「妾が行って呼び戻そう、待っておれ!」

 

トゥリナはグラマー形態になり、タイラントドラゴンレックスを追い掛けた。

 

「ドラゴンレックスよ!妾じゃ!トゥリナじゃ!」

 

トゥリナが呼び掛けるとタイラントドラゴンレックスは尚文達を追い掛けるのをやめて、トゥリナを見つめた。

 

何やら様子がおかしい……。

 

「グルルルル……」

「レックスよ、妾が分かるかえ?」

「おい!お前!」

「ん?なんじゃ話してる途中だと言うのに」

 

トゥリナが下を見ると、フィーロに乗った尚文とラフタリアが大通りから見上げてトゥリナに声を掛けてきた。

 

「なんじゃ?妾に用か?」

「こんな所でそいつを止めるな!また暴れるだろうが!」

「やれやれ、お主が盾の勇者かえ?」

「だからなんだ? 邪魔を するな!ラフタリア!フィーロ!」

「はい!」

「うん!」

 

盾の勇者達はトゥリナに攻撃を仕掛けようとしたその時、ドラグリアの使い魔達がラフタリアとフィーロの行く手を阻んだ。その間に俺とドラグリアはトゥリナと合流した。

 

「龍二よ、どうする?ここで盾の勇者と戦うか?」

「ちっ、めんどくせぇ野郎だな。仕方ない、戦うか」

 

俺がストームブリンガーを抜くと、尚文は盾を構え出しながら叫んだ。

 

「またお前か、化け物!!」

 

尚文は龍二を見つけるや否や俺を化け物と呼び捨てた。完全に敵意丸出しだと言うのが直ぐに分かった。

 

「俺が化け物?いい響きだなぁ……そう、俺は化け物さっ!」

「今度は負けません!」

「フィーロだって!」

「上等だよ、3対1だろうが負ける気が」

「我が王よ、ここは私が……」

 

ラフタリアとフィーロは俺に仕掛けようとして応戦しようとしたら、ドラグリアが引き止め、俺の目の前に立った。

 

ドラグリアの力を見るのには相応しい相手だ、ドラグリアに任せよう。

 

「盾の勇者、僭越ながらこの吸血鬼ドラグリアがお相手致す」

「なんだアイツは!?ラフタリア!フィーロ!来るぞ!」

「はい!」

「トゥリナ、ここは私がやる。タイラントドラゴンレックスを頼むぞ?」

「任せておくのじゃ」

「え〜?んじゃ、お手並み拝見と行きますかね」

 

俺はどっしりと建物の屋根に座って高みの見物を始め、トゥリナは暴走しているタイラントドラゴンレックスを食い止めに行った。尚文はドラグリアに攻撃を指示する。

 

「ラフタリア!フィーロ!あの蝙蝠男に気を付けろ!」

「はい! はぁっ!」

「はーい やぁー!」

「我らの邪魔はさせん!『ファミリア・バット』!!」

 

ラフタリアとフィーロのコンビネーションと同時にドラグリアは使い魔を放った。

 

「『ヘイトリアクション』!!」

 

尚文のスキルにより使い魔は何故か尚文に一斉に向かっていった。

 

何回か見た事のあるスキルだな。まったく、勇者ってのは味方にすると便利だけど、敵に回すとめんどくせぇスキルを使うな。

 

ファミリア・バットを封じられたドラグリアは何が起こったのか理解出来ていなかった。

 

「なに!?私の『ファミリア・バット』が効かぬだと!?」

「ラフタリア、今だ!!」

「はぁっ!」

 

ガキン!

 

ドラグリアは右ハイキックでラフタリアの剣を受け止めた。

 

「美女を蹴り殺すのは、赤子の血を飲む程容易いのだが?構わないな?」

「ならやってみなさい!フィーロ!今よ!」

「分かった!お姉ちゃん!『はいくいっく』!」

「それは卑怯だろ。『ファスト・ダークネス・ヘルファイア』!!」

「きゃぁ!」

 

フィーロは俺の横槍であるファスト・ダークネス・ヘルファイアにより吹き飛ばされた。

 

まったく、理不尽なもんだな。寄って集って1人を3人で攻め立てるとは、そんな世の中間違ってるよ。何?勇者なら何してもいいのか?信念を持つ魔物は黙って殺されるべきなのか?それは違くないか?

 

距離を取ったドラグリアは俺に頭を下げる。

 

「王自らお手間を掛けさせてしまい、申し訳ございません」

「良いってことよ」

「使い魔が通用しないならば、なら接近戦と参ろう、『ブラッドシェイドキック』!!」

 

ドラグリアの右足がボコボコと血が滴り落ちて纏い始め、ラフタリアの顔を目掛けて仕掛けた。ラフタリアは蹴りをかわしたが、ドラグリアの蹴りの遠心力で飛び散った血がラフタリアの目に入った。

 

「うっ!!」

「隙あり!!」

 

ドスッ!!

 

「ぐっ……目がっ!?」

「ラフタリア!!」

「盾の勇者、お命と血を頂く!!覚悟!!」

「ちっ……!!」

 

尚文が盾を構えると突然、辺りに霧が立ち込め始めた。

 

これはまずいな、”奴が来る”。

 

「待てドラグリア、ここは引くぞ!!」

「王よ、何故止めるのです!?」

「この霧を見て何も感じないか?」

 

俺に促されたドラグリアは辺りの霧に気付いた。

 

「この霧、いつの間に……承知しました」

「トゥリナと合流して帰るぞ」

「ならば、タイラントドラゴンレックスはいかが致します?」

「悔しいが諦めよう。今フィロリアルクイーンに出会ったら不味い」

「承知しました……では、『ファミリア・バット』!!」

 

ドラグリアは使い魔を再び出して目くらましにする為に放った。

 

「待て!化け物!!」

「また決着はおわずけだな。んじゃ、またな尚文?」

 

最後に尚文に声をかけて俺とドラグリア、トゥリナはファミリア・バットに紛れて姿を消した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 Gゴブリンとオーク特殊部隊

その後、盾の勇者一行から撤退して転送魔法でゼルトブルのアジトに戻って来た。なにやらトゥリナは納得がいかなかった様だった。

 

「龍二!なぜあそこで退いたのじゃ!?」

「あのまま戦っていたらフィロリアルクイーン”フィトリア”が来ていた……今奴を殺す力はないからだ」

 

俺は拳を握りしめて悔しがった所を見たトゥリナは反発するのを止めて部屋に篭った。

 

勇者が育てたと言われたフィロリアルクイーン、不死身とは言えど生半可な力では太刀打ち出来ない相手だ。

 

「ジキル博士、ジキル博士はどこだ!?」

 

俺がジキル博士を呼び出した、するとジキル博士は地下室から現れた。

 

「おや、龍二さんおかえりなさい」

「ほらよ、クローン実験用の骨だ。それとヴィッチ、いや、マルティ王女の様子はどうだ?」

「これは凄い素材ですねぇ!?。あの”孕み袋”をご覧になります?」

「ああ」

 

俺はリファナの遺骨をジキル博士に渡し、ヴィッチの様子を見に行った。

 

久しぶりにヴィッチとの再会だな。さて、どうなってるやら楽しみだ。

 

「いやぁぁぁもぅやめてぇぇ!!」

 

見張りをしていたフランケンを退かすと部屋からは悲鳴が漏れていて5m離れた所からでも聞こえていた。

 

声を聞くだけで分かる、いい傾向の様だな。

 

俺は部屋の小窓からヴィッチの様子を伺った、そこには鎧、衣服を剥ぎ取られて全裸のヴィッチが【新種のゴブリン】数匹に陵辱されている光景だった。

 

「あ”あ”ぁぁぁぁ!!」

「ギャお!!」

「ギャオ!!」

「ギャオ!!」

 

俺はマインの凄まじい悲鳴に耐えかね、片耳を指で塞いだ。

 

「ったく、あの女はうるせぇな」

「ええ、ずっとあの状態でして」

「猿轡して黙らせろよ、舌噛み切って死なれたんじゃ【例の計画】が台無しだろうが」

「そうですね後でしておきます、今は種付けの時間なので」

「あれが【新種のゴブリン】か?」

「そうです!そこのお前、龍二さんに姿を見せなさい」

「ギャオ!!」

 

部屋から出てきた見た目はゴブリンチャンピオンの体で、背中にはゴキブリの羽が生えており、ゴブリンチャンピオンの頭には黒い触覚が伸びていた。ジキル博士は新種のゴブリンを触りながら説明を始める。

 

「ゴブリンと巨大ゴキブリを掛け合わせて造り上げた魔物【Gゴブリン】です」

「凄いな!こんな立派になるとは思ってなかったぞ?」

「ええ、おかげで種付けが追い付かない状態でして……」

「うーん、それは困ったな」

 

この先で尚文達は三勇教達と戦うはず。だがまだ時間があるな、ならどうしようか……。

 

「悪い、もう少しだけ待ってくれ。じきに三勇教は崩壊するからそこの信者の女達を狙おう、どうせ処刑される犯罪者だからな、どうせ行方不明になっても困らねぇよ」

「三勇教は魔族の天敵、厄介な存在ですからねぇ。かえって好都合ですね」

「俺達はまだまだ戦力が足りない。【呪術師】などもこれから仲間にしていかなきゃ行けねぇ」

 

俺は頭をボリボリとかいて頭を悩ませていた。

 

いくらドラグリアやトゥリナの様な強力な魔物を仲間にしたとしても勇者達には理不尽な要素【カースシリーズ】がある、それが一番脅威だ。

 

「バルバロの方はどうなっている?」

「バルバロさんは順調に兵器を持ち帰って来てますね。今はGゴブリンと同等の戦力を作るそうでなんでも【特殊部隊】用の装備を探しに向かってます。話しは戻しますが、呪術師ならもしかしたらいるかも知れませんよ?」

「ほう、【オーク特殊部隊】か頼りになりそうだ……って最後なんて言った!?」

 

俺はジキル博士にしがみついた。

 

お前はホントに賢いなぁ〜、良い部下を持ったよ。

 

「呪術師ならいるかと?」

「居るってホントかそれ!?」

「ええ、ですが私も書籍の知識でしかありませんよ?もう数千年前の魔物なので実在するか分かりませんし……トゥリナさんやドラグリアさんにでも聞いてみては如何です?」

「そうだな、ちょっと聞いてみるわ!」

 

俺とジキル博士は上に戻り、トゥリナとドラグリアを呼んだ。

 

「トゥリナ〜?ドラグリア〜?ちょっと来て〜今すぐ!!」

「なんじゃ、突然呼び出しおって」

「王よ、如何致しました?」

「トゥリナ、ドラグリアお前らがパッと思いつく【呪術師】って誰?」

「「【イムホテ】」」

「は?」

 

なんて?

 

「ごめん、もっかい言ってくれる?」

「イムホテという呪術師じゃよ数千年前の【プラド砂漠】の古代都市の大神官だったらしいが”冤罪”で遺跡に生き埋めされたようじゃ。イムホテは死に際に呪術を使い自分に呪いをかけた……その後ミイラの魔物になったようじゃ」

 

「ミイラの呪術師か、悪くないな。いかにも魔法使えそうだし」

「恐らくその時代では名を馳せておったと思うぞ?」

「我が王よ、プラド砂漠ならメルロマルクとシルトヴェルトの境界にあります」

「長旅になりそうだな」

「行先は決まりましたね」

「うゆん!なら、妾が行こうかの」

「我が王よ、私はは昼間は行けないので悪しからず」

「分かってるよ、プラド砂漠に行くのはトゥリナと俺だけで行く」

「古代の魔物は頭が固いからのぉ〜。素直に加わるとは思えんのぉ?」

 

数百年生きている九尾の狐が何を言っているんだろう……。数千年経つとようやく年寄り扱いになるのだろうか?。

 

「波はしばらく来ないが、なるべく早く帰ってくる」

「御意」

「ご武運を」

「では行くぞ?龍二」

「ああ、トゥリナ。バルバロが戻って来たら休ませてやってくれ」

「分かりました」

 

俺とトゥリナは古代呪術師の魔物イムホテの捜索にプラド砂漠に向かっていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 遺跡に眠る死者

原作のプラド砂漠を少し変更します。


プラド砂漠に着いた俺とトゥリナは果てしない砂漠を歩き続けイムホテがいる遺跡に辿り着いた。プラド砂漠の日中は暑さによる自然現象で空に赤い輪の様な光が放たれている、夜は逆に凍えるような寒さになるまで気温が下がるようだ。それにジキル博士の話しによると、近くには古代都市がありそこには悪魔が古代都市を守っているという……。

 

その悪魔はとりあえず後回しだな。

 

俺は砂漠のど真ん中にある遺跡をまじまじと見上げた。

 

「ここにイムホテがいるんだな」

「うゆん、遺跡の中は罠だらけじゃ気を引き締めるのじゃ」

「ああ」

 

2人が階段を降りていくと碑文がズラズラとかかれている。映画に出て来そうな砂漠の遺跡、俺は碑文を読み取ってみた。

 

『大神官イムホテの眠りを妨げる者には罰を与える、決して”死者の書”を開けてはならない』

 

「死者の書か、これがあればイムホテは起きるらしいよ?」

「ふむ、ならその書を探せば良いのじゃろ?」

「罰ってなんだろうな」

「おおまか呪いかなにかじゃろ?」

「とにかく奥に進もう」

 

俺はランプを片手に奥に進んで行く。トゥリナはいたずら心で俺に様々なトラップを作動させてはトラップに引っかかっては死んで引っかかっては死んでの繰り返しをしながらようやく最後の部屋に辿り着いた。あちこち探してみたものの肝心な死者の書が見当たらなかった。

 

「いつつ……矢、落石、落とし穴、隠し通路を見つけるのはいいんだがな……トゥリナ……俺に何か恨みでもあるのか?」

 

頭には矢が刺さり、落とし穴の棘をケツに刺した状態で俺はトゥリナに問い詰める。

 

このドSっぷり、感服しますよ。

 

「ワクワクするのぉ!楽しくて仕方ないのじゃ!!」

「やかましいわ!お前は〇ラレちゃんか?」

「いいでは無いか、不死身なのだから」

「うっさいわ!さて、このツタンカーメンの棺の中に」

「イムホテがおる。さぁ、龍二が開けろ!」

「え!?俺!?」

「こんなか弱い乙女に金の棺の蓋を開けさせるのかえ?」

「この……ロリババア。ここぞという時にか弱くなりやがって!!」

「ほほほほ、さっ早う開けるのじゃ」

 

俺はぶつくさ文句を言いながら棺の蓋を開けた、そこには見事にミイラになっているイムホテらしき死体と探していた死者の書がイムホテの手に納められていた。

 

「うわ〜見てこれ、ボロボロの本かと思ったら純金の本だよ」

「わわっ、見事な干物じゃの。どれ、狐火で燃やして見るかえ?」

「火葬にしてどうすんだよ!止めろよ?マジで止めろよ?」

 

トゥリナは手から火をメラメラさせながら『え?』っていう感じで俺を見つめる。

 

燃やしたら何しに来たか分かんなくなるじゃん……。

 

「とりあえず、この本を読んでみる。えーっと、なになに?」

 

ドスンと言うくらい重い純金の本を開いてみると古代文字のような謎の文字がズラズラ書いていた。

 

うん……うんうん、読めない。

 

するとストームブリンガーが俺に声をかけて来た。

 

《主よ、この文字が読みたいのか?》

「うわっ数話ぶりにストームブリンガーが喋った!?」

《この古代文字、我なら読めるぞ?》

「ホントか?」

《主の頭に直接教える、その言葉を口にすれば良い》

「お、おう。分かった」

 

ストームブリンガーが青く光り出すと、俺のアイコンに古代文字が日本語訳にされて行き、俺は訳された通りに文字を読んだ。

 

【古に眠る大神官イムホテよ死者の書の魔力により復活せよ】

 

しーーん 返事がない、ただの屍の様だ。

 

「おい、何も起きないぞ?間違えてるのではないか?」

「おい!ストームブリンガー!?どうなってんだ!?」

《慌てるでない、黙って見ておれ》

 

するとカタカタ音を立て始め、遺跡全体が揺れ始めた。

 

「お?お?起きたのかえ?」

「さて……話の通じる相手だといいんだがなぁ」

 

イムホテらしき死体は急に上半身だけ起こした、イムホテはキョロキョロし始めた。

 

なんだ?目が見えないのか?

 

「…………………………」

「起きてそうそうどこを見てるのじゃ?あいつ」

「ミイラだから目がないんじゃないか?」

「………………」

 

イムホテは声が聞こえたのか俺達の方を向いて口をパクパクさせている。

 

あっ、そっか舌もないからしゃべれないのか。

 

「しゃべれないのかのぅ?」

「見たいだな、とりあえず外に出すか?」

「!?」

 

がしっ!

 

イムホテはいきなり俺の首を掴んで顔を近付け口を大きく開けると俺から『生気』のような物を吸い取り始めた。俺が倒れると俺の目と舌がなくなってミイラにされていた。

 

「龍二!? やれやれ、お主は今日で何回目じゃ?」

 

吸い取り終わるとイムホテの顔に変化が起きた、イムホテに目と舌が再生されたのだ、どうやら他の生物から生気を奪って体を再生させる事が出来るらしい。

 

『呪術師により生気を奪われて死亡しました』

『EXP1500獲得』

『Lv100になりました』

『古代文字解読のスキルを解放しました』

『古代魔物の言葉翻訳スキルを解放しました』

『疑似リベレイション魔法を解放しました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

俺は超高速再生で体を元に再生させて起き上がった。

 

まったく、急に人を殺すなよ。

 

「びっくりした〜なにすんだ!お前っ!!」

「我を呼び覚ましたのはお主らか?」

「ああ、そうだよ?」

「無礼者め!我を大神官イムホテと知ってのことか!?」

「ああ、知ってるよ。だからここにわざわざ来たんだろうが」

 

俺とイムホテが言い合っていると、トゥリナが止めに入った。

 

「待たれよ龍二!、大神官イムホテ殿。お初にお目にかかる妾は九尾の狐、トゥリナと申す者です」

 

「ふむ、最近の若い魔物に九尾の狐という魔物がいるのか」

「我らはこの世界を蹂躙したくイムホテ殿のお力をお借りしたく馳せ参じた、どうかお力をお借しくだされ」

 

イムホテは俺を舐め回すように見始めた。

 

何やら感じ取ったような気がする。

 

「見た目は人間な様だが、お主、魔物だな?」

「ああ、俺は魔王を目指す男だ」

「魔王とな?ふんっ、笑わせるなよ小僧?」

 

イムホテは鼻で俺が言った事に笑う。

 

なんかどこ行っても見下されてるな。

 

「なら力を見せれば認めるんだな?」

「くくく……我を満足させる程の力を持って」

 

俺は背中に背負ってるストームブリンガーを抜いた。抜いた途端イムホテは魔剣ストームブリンガーを見て驚いていた。

 

「それは混沌の魔剣ストームブリンガー!?なぜ我らの時代に封じた魔剣がお主の様な若造に!?」

「へぇ、だから古代文字が読めたのか。ストームブリンガーは俺を主として認めてくれたんだよ、そして俺は上級魔物だ問題ないだろう?」

 

イムホテは顎をポリポリかきながら考え始めた。

 

「そこまで我を配下に加えたいならば、我に力を示してみよ。先程の様に生気を多く取り込まねば元の体に戻らぬ上に魔法も使えないのでな?」

「よーし、その言葉忘れんじゃねぇぞ?活きのいい生気を奪わせて……ん?」

 

俺は外から何かの気配を感じ取った。イムホテとトゥリナも同じ様に感じ取っていた。

 

「龍二よ、どうやら外に何かいるようじゃぞ?」

「うむ……2人、感じるな。なかなかの手練の様だが?」

「丁度いいや、コイツらの生気を奪わせてやるよどうだ?」

「ふむ、悪くないな」

「話しは決まったの、では参ろうかの」

 

3人は出口に向かっていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 爪の勇者と槌の勇者

ただならぬ気配を感じた3人は外に出て見るとそこには、ハンマーを持った男と、鉤爪の様な武器を装備した亜人の男がいた。俺は2人に訪ねた。

 

「なんだお前ら?」

「ここの遺跡に眠る【伝説の武具】を探しているんだ、何か知らないか?」

「伝説の武具?なんだそりゃ?」

「レア度の高い武具なんだ、それを探している」

「それとただならぬ気配を感じた、ここは呪術師が封印されているはず、お前ら封印を解いたんじゃないだろうな?」

 

ハンマーを装備した男が俺に睨みを効かせて訪ねてきた。

 

気配を感じ取る事が出来るという事は、勇者だな。

 

「封印なら解いたぜ?俺の仲間になる予定だからな」

「何!?」

「噂で聞いたが、斧の勇者が殺されたと聞いた。この禍々しい殺気と魔力、ケンイチを殺したのはお前の仕業だな?」

 

ほう、よく分かったな。

 

「ああ、俺がこの手で殺した」

「よくもケンイチを殺したな!!許さん!」

 

鉤爪を装備した亜人の男も構え始めた。

 

やる気マンマンだな。

 

トゥリナもグラマー形態になって刀を構えた。

 

「龍二よ、こやつらもしや?」

「ああ、七星勇者の【槌の勇者】と【爪の勇者】だ。油断するなよトゥリナ」

「勇者だと?ほう、なかなか活きのいい奴らよの」

「「イムホテ!!」」

 

槌の勇者と爪の勇者はイムホテを見た途端驚いて「復活していたか」と言うような顔をしていた。

 

「トゥリナ、槌の勇者を頼めるか?」

「うゆん、任せておけ」

「爪の勇者、お前の相手は俺だ。イムホテ、ちょっとそこで待っててくれ」

「ふん、貴様らの力を示して見よ」

 

俺は背負ってたストームブリンガーを抜いて爪の勇者の方向に向かっていった、トゥリナも槌の勇者に近づいて行った。4人は遺跡から離れて砂漠のど真ん中で睨み合いを始めた。

 

「行くぞ!勇者ぁぁぁ!!」

「来い!化け物!!」

 

「「うぉぉぉぉぉぉ!」」

 

ガキーン!

 

俺は魔剣を縦に振り下ろした、爪の勇者は右腕の鉤爪で俺の攻撃をガードをして防いだ。激しくぶつかる金属音とそのぶつかる衝撃は2人を砂塵で覆った。

 

「『スターダストクロー』!!」

「『デスブリンガー』!!」

 

爪の勇者は爪から星の様な斬撃を放出して攻撃してきた、おそらく流星シリーズと同じスキルと感じた俺はデスブリンガーを繰り出してスターダストクローを相殺した。

 

「へぇ……流星シリーズのスキルか。やるじゃねぇか」

「ケンイチの仇だ!『エアストスラッシュ』『セカンドスラッシュ』!」

 

爪の勇者は今度は脚に鉤爪を付けて緑色の爪の斬撃を連続で放出させた。

 

まるで龍の爪痕の様な斬撃だな、無理に受けずに避けた方が良いな。

 

「おいおい、どうしたんだ?当たらねぇぞ?」

「くそっ、『スターダストクロー』!!」

「ハズレ、ほらほら、鬼さんこちら手の鳴る方へ!」

「くっそぅ……『ドラゴンクロー』!!」

「今度は俺の番だな?『暗黒剣Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』!!」

 

爪の勇者は受けるので精一杯の様だな、Lvに差があるのが原因だ。それにコイツは技を見せ過ぎたな、攻撃パターンが読める。

 

「くそっ、なんて力だっ、この化け物めっ!!」

「喰らえ……『ファスト・ダークネス・ヘルファイア』!!」

「ぐぁぁ!」

 

爪の勇者はドス黒い衝撃波により吹き飛ばされた。爪の勇者は倒れると、俺はその隙に爪を装備している右腕を切り落した。

 

これでしばらくは爪は使えないな。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!腕がっ……!」

「ルハバート!!」

「ほう?他人を気にかけるとは、余裕じゃの。貴様は何を余所見しているのじゃ?」

 

トゥリナの方も大丈夫そうだな。ってか爪の勇者はルハバートという名前らしい。確かタクトに殺されるハズだったな……。

 

「ほらイムホテ、新鮮なうちにこいつの生気を奪っちまえよ」

「ほう、勇者の生気をか?」

「ああ。一般人より生気は高いと思うぞ?」

 

イムホテは瀕死の爪の勇者に近づき、顎の関節を外して口を大きく開けた、すると龍二の時のように爪の勇者の生気を奪い始めた。爪の勇者は見る見るうちにミイラになって行った。

 

「確かにそうだな、良かろう。スゥーーー!!」

「あがががががががががががががががががが」

「ルハバート!!」

「だから余所見をするなと言うとろうに、ふんっ!」

 

槌の勇者も爪の勇者に気を取られてしまい、トゥリナに背後を取られて管狐が背後から貫通した。

 

「イムホテ殿、こちらも良いぞ?」

「うむ、有り難い」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

槌の勇者も生気を奪われて殺された、奪った生気によりイムホテの体は全て再生されて衣服も戻っていた。再生されたイムホテの見た目は上半身裸で小麦色の肌をして顔に刺青がはいっており、体は筋肉質だった。

 

えっ、すんごく品のある男になったんだけど?

 

「ふむ、2人でここまでとは流石は勇者だな。2人とも、大義であった」

「いっ、意外と男前だな」

「そうであろう?これで魔法も使えるぞ」

「イムホテ殿、我らの力はどうでしたかな?」

「うむ、伊達に魔王を目指してないな。良かろうお主達に力を貸そう」

 

七星勇者を殺して力を示した俺は新たな幹部、古代呪術師イムホテを仲間にする事に成功した。

 

次の狙いは、古代都市プラドにいる悪魔だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 古代都市の悪魔

イムホテの案内により俺とトゥリナは古代都市プラドにたどり着いた。古代都市プラドはまるで生前の世界の古代エジプトの様な街並みだった、ピラミッドにスフィンクスの様な石像などなどがあちこちに並んでいた。イムホテは昔の冒険者であった死体から服を剥ぎ取り、黒いボロ切れを身にまとわせた。

 

「暑いのぅ、体がベタベタじゃ」

「ふんっ、鍛錬が足りんな」

「くそっ砂漠出身が羨ましいぜ。ホントに【悪魔】なんているのか?」

「どんな奴なのかのぅ」

「おい…………なんか気配を感じねぇか?」

「どうやら向こうが見つけてくれた様だぞ?」

 

俺は魔剣を構え、トゥリナは煙管を取り出した。すると建物の中から亜人の冒険者が2人大荷物を持って現れた。冒険者は俺達を見た途端。

 

「なんだ!?貴様ら!?」

「お前らもお宝が目当てかい?」

「あ?お宝?」

「んっ、あっ!あの杖は!?」

 

亜人の冒険者の手には黄金のコブラの杖の様な物があった、それを見つけたイムホテは鬼のような形相をして呪文の詠唱を始めた。

 

「力の根源たる大神官が命ずる。今一度理を読み解き、我の魔具であるアヌビスの杖を奪いし者に裁きを与えよ『インペリアル・マミー』!!」

 

イムホテが詠唱すると、砂からミイラの兵隊が数十体あらわれた。ミイラの兵隊達は武器を構えながら亜人の冒険者達を取り囲み、不気味な声で威嚇し始めた。

 

「「「「グォォォォォォッ!!」」」」

 

これだけの魔法を使うと言う事は、あの杖はイムホテの物なんだろうな。

 

俺は亜人の冒険者達に一応警告をした。

 

「ひひぃ!!」

「大人しくその杖渡した方が良いんじゃないか?」

「そうじゃの、命が惜しければ渡した方が得じゃぞ?」

「おっおい!返すよ!!ほら!!」

 

冒険者の亜人は【アヌビスの杖】をイムホテに渡したがイムホテの機嫌は戻らなかった。

 

「もう遅い!この愚か者め!インペリアル・マミーよ!こやつらを殺せ!」

「グォォォォォ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ミイラ兵隊達は亜人の冒険者の1人を槍や剣で滅多刺しにした。

 

ご愁傷さまです、ざまぁねぇな。

 

「ひ……たったすけ……て」

「龍二よ、こやつはどうする?」

「1人じゃ可哀想だから殺しちまうか」

「死を持って償え」

「コロシちゃえよ」

 

「「「ん?」」」

 

「トゥリナ、何その喋り方」

「わ、妾ではないぞ!?龍二でないのか?」

「俺じゃないよ、ならイムホテ?」

「我が言うはずないだろう、気の所為ではないのか?」

 

おかしい、んじゃ誰?

 

俺達の間になにか甲高い声が聞こえてきた、もう一度冒険者に声を掛けてみた。

 

「1人じゃ可哀想だから殺しちまうか」

「そうじゃの」

「死を持って償えぇい!」

「サッサとやっちゃえよーボクがやろうか?」

「って誰!?」

「なんじゃこいつ!?」

「見慣れない……服……だな……」

「アハハハハ!!ボクの事かい?」

 

冒険者から見たら不思議な光景だろう、目の前に俺、トゥリナ、イムホテ、そして謎のピエロの様な格好をしている奴がいたのだから。

 

明らかに場違いの服装だ、こいつが例の悪魔ではない事を祈ろう……。

 

「えっ、え?お前……何?どっから出てきたの?」

「アハハ!ボクは名前は【ワイズ】!この古代都市プラドを護る悪魔だよ★人間を殺すのが大好きなんだ★」

「嘘でしょ!?」

「なんなのじゃこやつ……キモイのぉ……」

「ふむ、奇抜な奴よ」

「アハハ!ねぇ!ボクがやっていい!?ボクがやっていい!?」

「えっ?まぁ、好きにしていいよ」

「わーいわーい、やったね★」

 

ワイズと名乗る悪魔はポケットからを出して何かを探し始めた。

 

何を探しているのだろうか……。

 

「よーし★今日はこのナイフで殺っちゃうよ★アハハハハ★」

「やめ……やめてくれ!」

「アハハハハアハハハハハハハハハハ★」

 

ワイズは亜人の冒険者をナイフで滅多刺しにし始めた、頭、首、胴体、右腕、左腕、右足、左足の順に1ヶ所に10回は刺していた。

 

「容赦ないのぉ……」

「奇々怪界な格好をしてるが、なかなか出来るではないか?」

「おい、もういいだろ?ズッタズタじゃねぇかよ」

「ウ〜ン★気持ちいい★」

「のぅ龍二、この者をホントに連れてくのか?」

「我は構わないぞ?愉快な奴ではないか?」

「え〜、いや〜サイコパスはちょっとなぁ」

「ん?どこいくの?ねぇ!これからどこいくの?」

 

ワイズは鬱陶しい感じに俺の周りをグルグル回り始める。

 

とにかくウザったい、置いてこうかな……。

 

俺は恐る恐るワイズに聞いてみた。

 

「俺は龍二。魔王を目指して仲間を募っている。もしワイズが良ければ仲間にならないか?」

「仲間?なになに!?トモダチになってくれるの!?」

「あっああ、トモダチだ」

「人間をいっぱいいっぱい殺していいの!?」

「おう殺していいよ、勇者を殺すために仲間を集めてるんだからな」

「わーいわーい★やったね★」

「ここからが肝心なんだけど。お前の能力は?」

「ボクの能力かい?ボクの能力はこの【ポケット】さ★」

 

ワイズは自分の服のポケットをバンバン叩いて俺に答えた、要はそのポケット自体がワイズの能力なんだろうな。

 

「このポケットには何千の武器が入ってるのさ★」

「〇ラえもんかよ」

「不思議な悪魔もいたもんじゃな」

「愉快でいいと思うぞ?」

「んじゃ魔王君!よろしくね★」

「ああ、よろしくな」

 

俺とワイズは握手をした途端ワイズはナイフを俺の手に刺した。

 

「いったぁっ!?」

「アハハハハ★楽しいね!」

「楽しかねぇよ」

 

挨拶がわりなのだろうか?再生した途端ぴょんぴょん跳ね回り喜んでいた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 クローン・リファナ

今回はリファナを復活させますよー!


俺は呪術師イムホテ、悪魔のワイズを仲間にしてゼルトブルのアジトに凱旋した。

 

これで【計画フェイズ1】がようやく発動出来る、この道なりは長かったな……。

 

アジトに転送するとアジト内が騒がしかった。なにやらジキル博士もバタバタと忙しそうだった。しばらく見なかったバルバロが出迎えてくれた。

 

「カシラ、ご苦労さんです!」

「ただいま、バルバロ。久しぶりだな」

「おーい、今帰ったぞ」

「ここが龍二の住処か、殺風景だな」

「トモダチのお家に来たの初めてだよ★」

「主よ、おかえりなさいませ」

「おかえりなさ……い、龍二様」

「ただいま、ドラグリア、フランケン、一体これは何の騒ぎ?」

「なんでも【クローン】が成功したと言って騒いでいるのです」

「なに!?博士はどこだ!?」

「こちらです」

「イムホテ、ワイズは適当に休んでてくれ、後でみんなに紹介する」

「承知した」

「はーい★」

「龍二よ、妾も行く」

 

俺とトゥリナはジキルの研究室に入るとそこには巨大なSFチックなポッドの様な容器に入った亜人の女の子がいた。

 

この子がラフタリアの幼なじみリファナか?

 

「おー!龍二さん!待ちわびましたよ!」

「博士!まさかこの子は!!」

「そうです!遂に完成しましたよ!」

「1ヶ月弱でこんなに早く出来るのか!?」

「研究素材が良かったのですよ、ただ問題がありまして」

「当ててやる。心臓が動かない、だろ?」

「なぜそれを!?」

 

俺に指摘されたジキルは面食らったような顔をして答えた。

 

さすがにリファナの魂までは蘇る訳がないよな、ならその魂を呼び戻せばいい。

 

「その為に暑い砂漠を歩き回って呪術師を仲間にしたんだ。トゥリナ、イムホテを呼んできてくれ」

「うむ、分かった」

 

トゥリナはイムホテを連れて来てジキル博士に紹介した。ジキル博士は本を落としながら驚いていた。

 

「大神官イムホテ!?実在していたのですか!?」

「ほう、奇々怪々な奴だな」

「イムホテ、早速で悪いが死者の書で魂を呼び戻して欲しいんだが?」

「その壺の様な物に入っている小娘の魂を呼び戻せば良いのか?」

「ああ、出来るか?」

「造作もない、任せておけ」

「博士、リファナの体を出してくれ」

「はい」

 

ポッドが開くと培養液の様な液体がドバドバ流し出してリファナの体を実験台に乗せた。バルバロ、ドラグリア、フランケンも物珍しそうにそれを見ていた。

 

「トゥリナよ、瓶いっぱいに血を溜めるのだ」

「血じゃと!?」

「血なら俺のを使えよ、魔物の血でも良いんだろ?」

「別にかまわん」

 

俺は魔剣ストームブリンガーの刃で腕を切り落とし、瓶いっぱいに血を溜めた。

 

必要とはいえ、なかなかしんどい作業だ。

 

「よし、始めるぞ……ブツブツ……」

 

イムホテは古代語でお経の様な言葉を喋り出して死者の書を開いて血でいっぱいの瓶に魔法を唱えた。映画でよく見る儀式見たいな事をやっていてた。

 

『力の根源たる大神官が命ずるり今一度理を読み解きリファナという者の魂を今一度呼び起こして肉体を得よ!!禁術死者蘇生魔法『リゼリクション』!!』

 

イムホテが唱え終えると、瓶いっぱいに溜まった血が沸騰させていないのにも関わらずボコボコと沸騰し始めた。すると白いモヤの様な物がリファナの体の中に入っていった。

 

成功したのか?

 

白いモヤが中に入ったその時、リファナは目を開けた。

 

「ん……ここは……どこ?」

「目が覚めたか?」

「あなたは誰?きゃ、私なんで裸なの?」

「童、まずこれを着るのじゃ。女子なのだから身を隠さんか」

「ありがとう……ございます」

「俺は龍二、自分の名前言えるか?」

「私は……リファナ……」

「良し!成功した!!」

 

リファナが自分の名前を名乗った瞬間俺は激しくガッツポーズをして喜んだ。

 

「龍二よ、これで第1段階は成功じゃの?」

「ああ!イムホテ!良くやった!!」

「べっ別に……大したことないわ」

「おめでとうございます、龍二さんこれで【フェイズ1】終了ですね」

「ああ、博士もご苦労さま!!」

「いえいえ、龍二さんの頑張りのお陰ですよ」

「あの……私……死んだんじゃ……?」

「おっと、リファナに色々話さなきゃな。まず着替えて上に来てくれ」

「は……はい」

 

俺は上に上がって行き仲間を集めた。

 

ここで1度仲間達に色々今後の方針を伝えないとな。

 

「よし、新生魔王軍の幹部のメンバーが多方揃ったな。世界征服をするにはあともう【2匹】くらい欲しいが、まずは新しく入った仲間を紹介しよう。呪術師イムホテと悪魔のワイズだ」

 

「以後よろしく頼む」

「はーい★みんな〜よろしくね★」

「そして、たった今新しく仲間になる予定の」

「リファナ……です」

「リファナはまだ小さいから身の周りの世話の担当はトゥリナとバルバロ、頼むぞ?」

「へいっ、お任せ下さいっ!」

「うゆん、任せておけ」

「リファナの戦闘訓練は俺がする。買い物担当はジキル博士とリファナに任せる」

「分かりました、リファナさん、よろしくお願いしますね」

「はい……」

「よし、計画の総仕上げだ。博士、アレを」

「はい」

 

ジキル博士は記録用水晶玉を取り出して、プロジェクターの様に写し始めた。そこには盾の勇者とラフタリアが映っており、リファナは驚いていた。

 

かつての友達が映ったのだから当然だろう。

 

「あれは……ラフタリアちゃん?」

「そうだ」

「隣にいるのは……盾の勇者……様?」

「そうだよ?」

「ラフタリアちゃん……大きくなったんだなぁ」

「お前も直ぐに大きくするさ、俺の力でな」

「私、初めて盾の勇者様を見ました」

「そうなのか?けどリファナ、お前が死んだのはあの盾の勇者がいたからだぞ?」

「……え?」

「奴隷としてリファナが居たあの場所にラフタリア、キールといたけどラフタリアは他の人間に買われていなくなっただろ?」

「そう……です……」

「ラフタリアを買ったのはメルロマルクの女王だ。そう、あいつが手引きしてあの盾の勇者にラフタリアを導かせたんだ」

「えっ……そん……な……」

「可哀想にな……人間達に良いように利用されて。もし、ラフタリアがいたらお前は死なずに済んだのにな」

 

体を震わせてリファナの瞳からは涙が溢れて流れていた。

 

ミレリア女王が細工をしてラフタリアと尚文を引き合わせた事は知っているんだ、俺は少なくともリファナに対して嘘は言っていない、彼女は心の底から絶望したのだろう……。

 

「うっうっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「よしよし……泣くな、リファナ」

「うわぁぁぁぁぁぁ」

「俺達と強くなろう、強くなってあの盾の勇者に復讐するぞ。手伝ってくれるか?」

「ゔん……づよぐなる……龍二さまぁぁ」

「リファナ……お前は俺たちの仲間だ」

「うわぁぁぁぁぁぁうわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

リファナの頭を撫でながら抱きしめながら俺は不気味な笑みを浮かばせてこう呟いた。

 

「フェイズ1完了」

 

俺が悪巧みをしている時にゼルトブルのコロシアムに異変が起きていた。空間が歪みだして次元のカーテンの様な物が現れてその中から”青い銃”を持った男が現れた。

 

 

 

「ここにいるんですね……龍二さん」




web版の盾の勇者を読んで自分なりに解釈した考えを形にしてみました、リファナちゃんが死んだ原因は……メルロマルクにあると。


次回から第2期に突入します!そして……鎧の勇者の成り上がりとコラボを予定しています!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2期 異世界突入編
第21話 異世界の勇者


こんばんは!予定通りにコラボを開始します!

太刀の勇者は立ち直れない✕鎧の勇者の成り上がり スタート!!


翌日、リファナと堅い約束した俺はGゴブリンの孕み袋とバルバロが遠征中に集めて来た【コボルト】の群れを配下に加えた為、頭を悩ませていた。

 

コボルトとは、ゴブリンと同じくらいに非常に弱いとされる背が低い犬の頭を持つ人型の魔物。簡単なナイフなどの武器を持つ知識はある。こいつらは他の方法で強化出来ないもんかな……。時系列を予測するとおそらく三勇教と戦っているはずだ。ならGゴブリン達のデビュー戦を飾ろうではないか。

 

「龍二さま……?どうしたの?」

 

リファナは考え込む俺を心配そうに見上げていた。

 

こんな小さい子に心配されるとは情けないな。

 

「あっああ、ごめんごめん考え事をしてた。ちょっと用事あるからジキル博士と服でも買って来な?」

 

「はい!」

「龍二さん?」

「Gゴブリンの孕み袋を拉致ってくる」

「分かりました、リファナさん?お洋服を買いに行きましょう」

「はーい」

 

リファナとジキル博士は手を繋いで買い出しに出かけていった。

 

リファナにはまだ見せたくないんでね、この悪どい顔を。

 

「さてと、Gゴブリン、オーク特殊部隊を連れて行くか」

「龍二よ妾も行こうか?」

「ボクも行きたーい★」

「私を……」

「お……れも」

「我は行かぬぞ?」

「カシラ、将軍のオレを連れてってくだせぇ!」

「待て待て。今回は俺とゴブリン達でいいよ。皆少し働き過ぎだからみんなは休んでてくれ」

 

そう言い残すと俺は武装したGゴブリンとオーク達を集めてシルトヴェルトとメルロマルクの国教を目指してメルロマルク付近に転送魔法を開始した。この時龍二は”思わぬ敵”に遭遇するとは思ってもいなかった。

 

 

────────────────────────

 

国境付近に転送が終わり、Gゴブリン50匹、オーク特殊部隊50匹達を引連れて国境を目指した。激しい爆音が聞こえないと言う事は尚文達が教皇を倒した後のようだった。

 

「よしお前らよく聞け。今からメルロマルク国の討伐軍と勇者達を攻撃を開始する」

 

「「「「グオ!!」」」」

 

「盾の勇者は瀕死の状態、残りの勇者も弱っている。三勇教の女は絶対殺すなよ?お前らの孕み袋になるんだからな?男はどうでもいい、身ぐるみを剥いで八つ裂きにしろ」

 

「「「「「グオォォォォ!!」」」」」

 

Gゴブリンとオーク特殊部隊達は俺の言葉に強く頷き、剣、槍、斧などを掲げて吠えた、いざ総攻撃開始である。俺は魔剣ストームブリンガーを抜いて勇者達の手当てをしているメルロマルク軍に刃を向けて号令を出した。

 

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

Gゴブリンとオーク特殊部隊達は待ってましたと言わんばかりにいっせいに駆けていく、気付くのに遅れたメルロマルク軍の兵隊達は狼狽え始めた。

 

「ゴッゴブリンとオークの軍勢だ!!」

「敵襲ー!敵襲ー!」

「女王様!!敵襲であります!!」

「なんですって!?盾の勇者様を……イワタニ様をお護りするのです!これは王命です!全力で護りなさい!!」

「はっ!」

 

冷静に判断した女王は狼狽え始めた兵士達に喝をいれて落ち着かせ、他の勇者達も加勢を始めた。

 

「くそっ!こんな時に……!!」

「尚文さんが戦えないとなると僕達がやるしかないようですね」

「錬、樹、行くぞ!!」

「「おう!」」

 

元康達も回復を終えてGゴブリン達に応戦を始めた。三バカ勇者は流星シリーズの技でゴブリン達に攻撃した、そこそこのレベルの流星シリーズではGゴブリンは倒れなかった。

 

「なんだこのモンスターは!?」

「ゴブリン……ですよね?けど、この甲殻は虫の様ですよ!?」

「なんだって構わない!手を休めるな!!」

「よぉ、錬、樹、元康。また会ったな」

 

「「「お前は!?」」」

 

声が聞こえたその先には関所の壁の上から魔剣ストームブリンガーを肩で担いで俺は見下ろしていた。

 

さぁ、久しぶりに四聖勇者との戦いだ、存分に暴れよう。

 

俺は錬を目掛けて飛び降りざまに魔剣を振り下ろした。錬と俺は暗黒剣と流星剣の上下の鍔迫り合いになり錬の足が地面に埋まった。

 

「ひゃはははははは!!」

「ぐぅ……!?なんだこの強さは!?」

 

「錬!!おのれ!!マインを返せ!『エアストジャベリン』!!」

 

元康は錬を助けるために俺の死角からエアストジャベリンを繰り出したが、俺は左手で槍を掴んで止めた。

 

「なっ!?」

「女のケツばっか追ってるからその程度なんだよ、失せろ!」

 

ドスッ!!

 

俺は鍔迫り合いをした状態で元康のみぞおちに蹴りをいれてダウンさせた。

 

「ぐえ……くっそ……!!」

「元康さん!? 女王様!!早くお逃げ下さい!! 『流星弓』!!」

「遅い」

 

俺樹の流星弓を自由になった左手で掴み取り、錬の肩に刺した。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「錬さん!?」

 

「次ははてめぇだ、『ドライファ・ダークネス』!!」

「ぐぁぁぁ!!」

 

俺の闇魔法により樹は吹き飛ばされてしまい、樹は気を失った。俺はストームブリンガーを突き付けた。

 

「次はおめぇだ……女狐!!」

 

俺は警備の手薄になった女王をギロリと睨み付けてゆっくりと近付いて行った。

 

こいつを殺ればメルロマルクは総崩れだ。

 

あばよ、メルロマルクの女狐!

 

「くっ……力の根源たる女王が──」

「おっと、言わせねぇよ」

「がっ……はっ……」

 

俺は女王の首を掴んで魔法の詠唱を止めた。

 

氷魔法で動きを止められたんじゃたまったもんじゃないからな。

 

俺はメキメキと音を立てながら女王の首を締め上げる。

 

「が……は……っ!!」

「母上!!」

「メルちゃんのお母さんをいじめるなー!」

「待って!フィーロ!!」

 

ラフタリアの静止を聞かずにメルティとフィーロまでもが俺に立ち向かって行った。

 

「『はいくいっく』!!」

「『ツヴァイト・アクアショット』!!」

「邪魔だ、『ドライファ・ダークネス・ヘルファイア』!!」

 

フィーロとメルティの攻撃を俺は最高火力、そして殺傷能力のある魔法を右手を構えて放った。

 

「「きゃぁぁぁぁぁ!!」」

 

「メルさん……フィーロ……ゆるさない!!」

 

「お?今度はラフタリアか?」

「はぁ!!」

 

俺は女王を手放し、ラフタリアの剣と俺の魔剣ストームブリンガーが激しくぶつかり金属音を大きく響かせた。

 

「がはっ……がはっ……」

 

女王は窒息寸前で助かり、兵士に救出された。

 

「おいおい。邪魔すんなよ、ラフタリア」

「そうは行きません!女王様や、尚文様は絶対に殺させはしません!」

「なら……護って見ろよ!!」

「はぁぁぁっ!!」

「オルァァァッ!!」

 

2度3度激しく剣と剣がぶつかり合い、激しい攻防戦が始まった。

 

さすがはラフタリア、錬や元康達より全然動きに無駄がない、けど俺は”2周目”だラフタリアの攻撃パターンは熟知している……。

 

「はぁ!!」

「その剣筋じゃ───」

 

ズバッ!!

 

ラフタリアの剣は俺の左肩を斬ったが踏み込みが甘かったのか、刃が途中で止まってしまった。

 

「残念だけど、俺の体は切り落とせねぇよ?」

「あっ……あっ……」

 

ラフタリアは剣を手放してしまい、怯え始めて腰を抜かしてしまった。俺は剣を抜き取り、再生を始めた。

 

「まだまだ踏み込みが足りないね、ちゃんと鍛錬してる?」

「あっ……ああ……」

「けど、これで終わりだ……さようなら、ラフタリア」

 

バキューン!!

 

ラフタリアに剣を振り下ろそうとしたその時、俺の肩に銃弾の様な物が付いた。

 

「あぁ?」

 

俺が銃痕の方向を向いたその時、そこには青い銃を持った男が銃を向けていた。

 

「はぁ……はぁ龍二さん……追い付きましたよ、皆さん!早く逃げて!!」

 

「誰だてめぇ、なんで俺の名前を知っている?」

 

俺は青い銃を持った男に尋ねた。

 

得体の知れない奴から名前を呼ばれた。警戒せねばならないな、こいつの銃に身に覚えがあるな。ならこいつ転生者か?

 

「その銃は……ディエンド・ドライバーだな?」

「そうです、俺もあなたと同じ転生者です!神様からあなたを助ける様にと言われてここに来ました」

 

「神様のおっさん……だと?」

 

ふーん、おっさん。そういう事か。

 

俺が考え込む隙に、女王は勇者達とその仲間たちを連れて転送魔法で撤退した。

 

「ちっ……逃がしたか」

「龍二さん、訳は後で話しますから一緒に来てもらいますよ?」

「嫌だと言ったら、どうする?」

 

静まり返った2人の男の間には緊張感に張り詰めていった。

 

「力ずくでも連れて行きます!!」

 

カシュン

 

カメンライド……。

 

カードの様な物を銃に装填すると電子音的な音が鳴り響いた、銃を持った男は銃を空に掲げ始めた。

 

「変身!!」

 

ディエンド!!

 

青い銃を持った男が急に姿を変えた、青いスーツの様な鎧を纏い始めた。

 

あの姿はディエンドの様だな?ライダーの能力を使う転生者か。なら容赦はしなくて良いな。

 

「だったら……やって見ろよ!!」

 

同じ世界の日本から来た謎の転生者との戦いが始まろうとしていた。




ジョーカーさん!ご協力ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 異世界の勇者2

こんばんは!第2期前半はコラボの予定なのでよろしくお願いします!。


ディエンドライバーでカードを装填した男は鎧の様なスーツに身を包まれて現れた、全身青の鎧で統一されている男は更にカードを装填した。

 

仮面ライダーそれが奴の能力か、厄介なチート能力だ。

 

「投降してくれないのなら、全力であなたを倒します!」

 

アタックライド・ブラスト!!

 

カードを装填されて電子音で発された直後、謎の転生者の男は銃を俺に向けて幾重の弾丸を浴びせた。

 

「くっ……やりやがるっ、『ドライファ・ダークネス』!!」

 

俺はドライファ・ダークネスで応戦するが、謎の転生者は身軽に攻撃をかわされてしまった。

 

そう簡単には行かないか……。

 

「はぁ!!」

「オルァァァァ!!」

 

転生者の男はゼロ距離で俺に銃を撃ち、蹴りやパンチを織り交ぜながら攻撃して来た、俺も紙一重で銃弾をかわして反撃に出る。そして青い銃と俺の魔剣ストームブリンガーで鍔迫り合いになった。

 

「へぇ、仮面ライダーのチート能力だなんてヒーローが好きなんだな」

「神様から聞きましたよ。貴方が十字架を背負う必要は無いんです!!」

「うるせぇ!もう過去の事なんざどーでもいいんだよ!」

「神様はそんなあなたを見捨てずに俺に頼って来たんです!。お願いします!一緒に来てください!!」

「だまれぇぇ!!『デスブリンガー』!!」

 

俺と転生者の男は言い争いになりながら距離を取る際に、俺はデスブリンガーを繰り出して男に一撃を与えた。

 

「くっ!!思った以上に強い……っ!!」

「喰らえ、『ドライファ・ダークネス・ヘルファイア』!!」

 

俺は左手にドス黒い大きな火の玉を作り出して男に投げつけた。

 

アタックライド・インビジブル!!

 

男はダークネスヘルファイアが直撃する寸前に姿を消した。

 

姿まで消されるのは非常に不味いな、どこから攻撃されるかも分からないな。

 

すると、どこからかまた電子音が聴こえて来た。

 

カメンライド・ドレイク

カメンライド・ゾルダ

カメンライド・デルタ

カメンライド・G3X

 

あちこちから男と同じ様な武器を持ったテレビで見覚えのある仮面ライダー達が現れ、俺を完全に包囲した。

 

どいつもこいつも銃を主力にしている仮面ライダーだ、これはヤバイな……。

 

「動かないで下さい!1歩でも動いたら一斉に撃ちます!!」

「ちっ、やるじゃねぇか」

「もう一度聞きます、一緒に来てもらいますか?」

「絶対に断る。それとな?お前に一つだけ言う事がある」

「なんですか?」

「お前に俺は殺せねぇよ、何か忘れてないか?」

「えっ?」

俺の言葉に転生者の男は首を傾げると、俺は大きく息を吸って大声を出した。

 

バカな奴だ。

 

「野郎共っ!囲んでるコイツらを殺せぇぇぇぇ!!」

「なっ!?」

 

5人の仮面ライダーは瞬く間にGゴブリンとオーク特殊部隊達に囲まれてしまい、包囲を突破されてしまった。

 

「バカが、俺に気を取られ過ぎだぜ?」

「くそっしまった!!」

「おい、そいつを抑えろ」

「「グオ!!」」

 

Gゴブリンとオークの2匹が転生者の男を取り押さえ、召喚された仮面ライダー達も取り押さえられた。それにより、俺は自由になった。

 

やれやれ手間かけさせやがる。

 

「お前、なかなか強いな。最後に名前を聞いて置こうか?」

「ライト……です」

「ライト、お前はつえーよ認めてやる。これ以上引っ掻き回されると厄介だら今ここで殺す!死ねぇ!!」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを構えて頭目掛けて振り下ろそうとした瞬間、ライトという男が笑った。

 

「かかりましたね」

 

アタックライド・イリュージョン!!

 

ライトはいつの間にか銃にカードを装填していた。

 

ぬかった!!最初に銃を取り上げて入ればよかった!!。

 

ライトは4人に分身をして俺に銃を再び構え、Gゴブリンとオーク特殊部隊共々方いした。

 

「俺も甘く見てました。まさかここまで闇に堕ちているとは思ってもいませんでしたよ。俺にもあまり【時間】がありません。もう手加減しませんからね?」

 

ファイナル・アタックライド・ディディディエンド!!

 

ライトの銃から巨大な光線が放たれ、俺に直撃した。

 

こりゃ間違いなく致命傷だわ……。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

大爆発を起こした俺は膝を付いて血反吐を吐き、荒く呼吸をしてライトを睨み付けてた。

 

このままでは確実に負ける、だが目的は達成した。

 

「ゴブリン、オーク共。さっさと女を連れて退くぞ!」

「グオ!!」

「ブッヒ!」

「逃がしません!」

「グオーーー!」

 

手の空いていたGゴブリンとオーク数匹ががライトを羽交い締めにして俺に逃げる時間稼ぎを始めた。

 

「グオッ!グオッ!」

「ブヒッ!ブヒヒッ!」

「お前ら……すまんっ、後は頼むぞっ!!」

 

可愛い手下をもったよ俺は。

 

「この場で殺してやりたいが……耐えてやる。あばよ、ライト」

「龍……二さん!!」

 

俺は女を連れたゴブリンとオーク達を連れて転送魔法でアジトに撤退した。

 

大事な兵隊達が犠牲になってしまったな。

 

アジトに戻ったゴブリン達は女を連れて地下に降りていき、俺はフラフラになりながら帰還した。するとトゥリナやドラグリアは慌てて俺を支えた。

 

「龍二よ!!なんじゃその傷は!?ジキル!!早う来い!!」

「カシラ!?何があったんですか!?」

「王よ、如何なされた!?」

「リフ……ァナは……?」

「リファナ?リファナ!来るのじゃ!」

「トゥリナさん?、なんです きゃぁぁぁぁぁ!!龍二様!?」

「意識が……ある内に……早く」

 

俺は死ぬ間際にリファナをパーティに加えた、加えた途端俺は倒れた。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!龍二さまぁ!!龍二さまぁ!!」

 

リファナは火がついた様に泣き叫び俺を揺さぶると、トゥリナとドラグリアはリファナを落ち着かせた。

 

「リファナよ、龍二なら大丈夫じゃ、すぐ起きる」

「トゥリナさん、ホント……?」

「ホントじゃ、しかし龍二め、経験値をリファナに与える為にパーティに加えよったな?」

 

心配そうに俺を見つめるリファナだった。

 

なんとか間に合ったな。これでリファナのLvが上がる。しかし、あのライトはかなりの使い手だな……厄介な奴が現れたもんだ。

 

『異世界の鎧の勇者によって殺されました』

『EXP10000獲得』

『Lv100になりました、リファナはLv40になりました』

『限定スキル・月食の鎧のスキルが解放されました』

『移動スキル・地獄門のスキルが解放されました』

 

限定スキル?なんだろう?、それと移動スキルってのはなんなんだろうな……起きたらヘルプで確認して見るか。

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

超高速再生で体を元に戻した俺は目を開けて塞がった傷の辺りを擦りながら起き上がった。

 

「あーいってぇ……」

「龍二さまぁ!!」

「リファナ、ごめんな?びっくりしたろ?」

「ヒッグ……もう起きないかと思いましたぉ」

「ごめんごめん」

「龍二よ、何があったのじゃ?」

「異世界の勇者が現れたんだ、そいつにやられた」

「異世界の勇者じゃと!?」

「ああ、やつは直ぐに来るぞ」

「ならばどうする!?」

「俺とリファナが街中に誘き寄せる、隙が出来たら総攻撃だ」

「リファナを!?」

「龍二様、勇者に虐められたんですか?」

「ああ、そうだよ?」

「おのれ、勇……者!!」

 

リファナは歯を食いしばって悔しがっている。

 

よしよしいい傾向だぞ。

 

俺はリファナの頭を撫でて落ち着かせた。

 

「大丈夫だからな?リファナもLvが上がった事だし、後でジキル博士を連れてリファナの武器でも買いに行くか?」

「はい!」

「っとその前に、さっき解放されたスキル見てみるか」

 

俺はステータスを確認して新たなスキルの詳細を調べた。

 

役に立つスキルだと願おう……。

 

【限定スキル・月食の鎧とは、月食の時のみに発動出来る強化スキルです、月食の間12分間使用可能】

【移動スキル・地獄門とは……異世界を行き来出来るスキル、使用者と同行者3人一度に入れる事が可能】

 

「ほう、異世界か、なら少し予定を変更するか。みんな、集まってくれ」

 

俺は急遽、仲間たちを集めて緊急会議が行われた。




次回、リファナめっちゃ強くなります!乞うご期待!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 魔法剣士

さぁ今回はゼルドブルの市街でやり合いますよー!


俺、ジキル博士、リファナは異世界の勇者ライトを誘き寄せる為にゼルドブルの市街に来ていた。

 

こちらから見つける事は無い、向こうから見つけてくれるだろう。

 

俺は武器屋の前でリファナとジキルを待っていた。

 

「お待たせしました、リファナさん用の武器をいくつか買ってきましたよ」

「あいよ、ご苦労さま」

「龍二さま、私この剣でも良いですか?わっとっと!」

 

リファナが俺に見せたのは刺突の剣、レイピアだった。

 

子供なのになんつーマニアックな武器を選ぶんだよ……。

 

案の定にレイピアの重さに負けて転んだ。

 

「もう少し大きくなってからで良くない?」

「うー……そうします……」

「リファナさん、とりあえずこのフルーレで訓練なされたらどうです?」

 

ジキルはレイピアより小さめのフルーレを渡した。

 

なるほどな、レイピアの基礎的な扱いにも丁度良さそうだ。

 

「これならレイピアと同じ系統なので大きくなるまでこれで訓練しましょう」

「はい!ジキル博士!」

 

リファナはフルーレを小枝を振り回す子供の様に振り回していた。危なっかしいなぁ。

 

「リファナ、あぶないからしまって!訓練はアジトに戻ったら!」

「はーい……」

 

渋々納刀して俺と手を繋いで歩き始めた。大通りに出ると、そこにはライトが待ち伏せしていた。

 

来たか、ライト!!

 

俺はライトを睨み付けてライトの質問に答えた。ジキルはリファナを守る様に俺から離れた。

 

「やはりアジトに戻ってたんですね?」

「見つけるの早いんだな」

「ええまぁ、色々な力を使えますからね」

「そのディエンドライバーでか?」

「勘違いしてますね、俺はディエンドだけの能力の勇者じゃありませんよ?」

 

俺は魔剣ストームブリンガーに手をかけて構えた。

 

ディエンドだけの勇者じゃないだと?ならなんの勇者なんだ?

 

「なら何の勇者なんだ?」

 

俺の質問にライトは答えた。

 

「俺は鎧の勇者です、ライダーに変身する事によって肉体を強化して様々な仮面ライダーの武器を使って戦うんですよ」

 

そう言い放つライトは今度はディエンドライバーではなく、別のライダーのバックルを取り出して見せた。

 

あれは……記憶が正しければ、エグゼイドのベルトか!?

 

「龍二さんの武器は剣ならば、俺も剣で戦いますよ」

 

ライトは青いガシャットを鳴らした。

 

俺はエグゼイドに関しては無知だ、何が来るか分からないな……。

 

タドルクエスト!

 

ガシャット!!

 

「術式……Lv2……変身」

 

ガシャーット!! Lvアッープ!

 

タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!

 

ライトはディエンドではなく、今度は水色の騎士の様な仮面ライダーに変身した。

 

記憶が正しければ、ブレイブ?だったかな?

 

「さぁ、第2ラウンド行きますよ!」

「ジキル!!離れてろ!!」

「龍二さまぁぁ!」

 

ライトと俺は剣で激しい攻防を繰り広げた、ここは大通りだからゼルドブルの住民達も戦いを見ていた。

 

ケンカだ!

なんだあの水色の剣士は!?

 

周辺からは様々な声が聞こえてくる、俺とライトは鍔迫り合いを始める。

 

「なるほど、ライダーの変身自体がお前の鎧の役割をしてるって訳か」

「今回は逃がしませんからね!!はぁ!!」

「ならお前を倒すまでだ、オラァァ!!」

 

ライトの剣と俺の魔剣は激しくぶつかり合い金属音を響かせる、剣術の経験値なら俺の方が上だな。次第に俺はライトを壁に追い詰めた。

 

「くそっ、なんてパワーだ!?」

「まったく。しつこい男は嫌われるぜ?」

「それはご親切にどーも!ならレベルを上げますよっ!」

「何?」

 

ライトはガシャットを外して別のガシャットを装填した。

 

Let's Going King of Fantasy!

 

「術式Lv50」

 

デュアルガシャット!

デュアルアップ!タドルメグルRPG! タドルファンタジー!

 

ライトとは再び変身をした、変身後の姿は先程の水色の騎士をベースにした様だ、頭、体などに赤い防具、マントが追加された。

 

これはパワーアップしたと考えた方が良さそうだな。

 

「これならどうですか!?はぁ!!」

「それがどーしたぁぁぁ!!」

 

再び俺とライトはぶつかり合い、市街を壊しながら戦い続けた。街の住民達は徐々に野次を飛ばし始める。

 

ふざけんな!向こうでやれ!

こっちに来るな!!

あっちにいけー!

いい加減にしろー!

 

「おいおい、勇者が街を破壊して良いのか?」

「くっ……!!」

「勇者は大変だなぁ!『ドライファ・ダークネス』!街ごと消えろ!」

「危ない!!」

 

ライトの後ろには大勢の住民がいた、ライトは避けることも出来ず俺のドライファ・ダークネスをまともに受けた。

 

たとえ仮面ライダーの力があってもあの魔法を受けたらひとたまりもないだろう。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ははっ!いいザマだな」

「龍……二さん……」

「オラ、まだ立てんだろ?その姿なら少し見た事あるからな」

「なら……これならどうですか!!」

 

ライトは再びガシャットを抜いて今度は白いガシャットを装填した。

 

「術式Lv100」

「何!?100だと!?」

 

ガシャーット!!

 

辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!

 

ライトは更に変身して今度は全身白い騎士の様な仮面ライダーに変身した。これは俺も初めて見た仮面ライダーだ、さっきの最終形態なのか?

 

「これでLvもほぼ互角、これであなたを倒します!」

「ほぅ……白い騎士か、勇者っぽいな」

 

俺は魔剣を握り直してライトから距離を置いた、そして双方は走り出して鍔迫り合いを始めた。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

「オラァァァァァ!!」

 

5〜6回ほど剣同士をぶつけて火花を散らした、すると今度はライトが俺を押し始めた。

 

やばいパターンだな。

 

「くっ……今度は俺が追い詰められんのかよ……!!」

「油断しましたね、さぁ!一緒に来てください!!」

「わりぃが……それは……ホントに断る!」

「仕方ないですね、死なない程度に手加減しますので覚悟して下さい!」

 

タドルクリティカルストライク!!

 

ライトは剣を構えると剣に炎が纏い出した。これが奴の必殺技とやらだろう。

 

「でゃぁぁぁぁ!」

「やめてぇぇ!!」

 

ライトが剣を振り下ろした瞬間、突如リファナが俺を護った。だがライトは止める事が出来ず、リファナを斬ってしまった。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

「リファナ!?」

 

「しまった!!」

 

ライトは驚いて剣を落としてしまった。

 

「てめぇぇ!!」

「わっ……わざとじゃ」

「うおぉぉぉぉ!龍二さん!今のうちに逃げろぉ!!」

 

リファナを抱きかかえた、ライトの真横からジキルが変身し、怪物ハイドがライトを殴り飛ばして建物を貫通させた。

 

「すまねぇ!ジキル博士……じゃなくてハイド!!」

「へへっ!久しぶりの登場だぜ!暫くは動けねぇ筈だっ!」

「今のうちに逃げるぞ!」

 

俺達はライトがいないうちに街から離れ、アジトに戻った。そして、嗅ぎつけらる前にイムホテとトゥリナの幻影魔法でアジトをカムフラージュを施した。

 

「リファナ!!」

「龍……二さま……大丈…ぶ…?」

「ありがとう、リファナのおかげで助かったよ」

 

俺はアジトにあるありったけの回復薬とイムホテの回復魔法で治療してなんとか傷は癒えた。

 

「今回は焦ったなぁ」

「まったく無茶しおって!この馬鹿者!女子の体に傷をつけるな!」

「ごめん……トゥリナ」

「龍二さん、あの男が言っていた異世界から来たという」

「ああ、この世界とは違う異世界から来た【鎧の勇者】だ」

「そうでしたか」

「ところで博士、次の月食はいつだ?」

「月食ですか?」

 

ジキル博士は首を傾げて俺に尋ねた。俺は前回解放したスキルをジキル博士に説明した。

 

「なるほど……【月食の鎧】ですか」

「月食の12分間の間ら肉体強化をしてくれるそうだ。いつ頃月食だ?」

「ちょっと待って下さいね?今計算して見ます」

 

ジキル博士はノートを取り出して計算を始める。

 

早めなら良いのだが。

 

「ふむ、明後日ですね」

「明後日!?」

「はい、彼と決着を付けるなら明後日ですね、それまでは休んで下さい」

「分かった、リファナと一緒に休んでるよ」

「分かりました」

 

俺は気絶したリファナを抱き抱えて自分の部屋に戻っていった。

 

───────────────────────

 

翌朝、俺は目を覚ましてリファナの様子を伺った。

 

おかしい、リファナちゃんが大きくなってる。見た目はラフタリアと同じくらいだろうか?。最早リファナさんだ。

 

髪もセミロング位に伸びていて昨日着ていたワンピースをピチピチにして身につけている状態だった。

 

「え!、いやなんで!?訳が分からんっ!!ステータスを覗いて見れば分かるかな?」

 

俺は慌ててリファナのステータスを確認した。

 

リファナ ★Lv40

 

職種 魔法剣士

 

「は?魔法剣士?」

 

俺が不思議がっているとリファナが目を覚ました。

 

「んんっ…、おはようございます…龍二さ……きゃぁぁぁぁぁ!!」

「リファナ落ち着け!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!龍二様のエッチ!!スケベ!!」

 

ドス!バキ!ドゴン!

 

リファナは右ストレート、左フック、返しの右アッパーを繰り出して俺をノックアウトさせた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 突然変異

リファナが俺をボコボコにしながらマウントをとって殴っていると、トゥリナが部屋に入って来た。

 

だれか、助けてくれ!!

 

「うるさいのぉ……なんの騒ぎ」

「龍二様のバカー!エッチー!うわーん!」

 

トゥリナから見たら驚愕だろう、魔王を目指す男が若い女子にマウントをとられて右左と殴られていたのだから。

 

「なんじゃ!?誰じゃお主は!?」

「ひっく……リファナですよぉ〜トゥリナさん」

「なんと!?ジキル!ジキル!!」

 

トゥリナは慌ててジキル博士を呼びに飛び出して行った。この時俺は失神で済んでいたのが幸いだった。

 

「早く!こっちじゃ!」

「なんですかこんな朝早く……ふぁ!?」

「ジキル博士!!」

 

リファナはジキル博士が入って来た途端毛布で体を隠しながら俺をヘッドロックをし始めた。俺は顔を真っ青にしてぐったりとしていた。

 

「おや?お客さんですか?」

「何を言っとる!リファナじゃよ!」

「なんですと!?とりあえず、龍二さんを離しなさい、失神してますよ?」

「だって!龍二様が私を!」

「何を言っとる!昨日怪我をしたのを看病してたのだぞ!?」

「え!?」

 

リファナは俺を離した、まったく成長し過ぎである。リファナは俺を起した。俺の顔は〇パンマン見たいに腫れていた。

 

「龍二様!!ごめんなさい!!」

「はい……こちらこそふみまへん」

「けど、どうして私は大きくなったのでしょうか?」

「レベルが上がったからではないか?」

「亜人はレベルが上がると成長すると私も聞いた事があります」

 

俺は顔を再生させて普通に話せるようになった。ステータス魔法を唱えてジキル博士に説明した。

 

「それもだけど、ジョブがもう決まってるんだ魔具・魔剣士って」

「なんと!?」

「博士、ちょっとリファナを調べてくれないか?」

「分かりました、リファナさんは着替えて下さい」

「分かりました」

「まだ服を用意してなかったの、妾のデカい方の服を貸そう」

「ありがとうございます……トゥリナさん」

 

着替えを終えたリファナはジキル博士から色々と精密検査を受けて見た所、異様な状態異常が発見されリファナの血液を顕微鏡で俺に見せた。

 

「龍二さんこれは……なんでしょうか……」

「なんだこれは……」

 

俺とジキル博士が見た物はリファナの細胞に黄色いオーラの様な物が付着している所だった。

 

「この色どこかで見た様な気がするな…あっ!バグスターウィルス!」

「ウィルス!?」

「けど……なんで?リファナは昨日戦ってないぞ?」

「あの鎧の勇者と戦ったのはハイドと龍二さんだけなのですか?」

「ああ、リファナは俺をかばって攻撃を……あっ!」

 

俺は昨日の戦闘を思い出した。ライトはエグゼイドのライダーに変身していた。バグスターウィルスを持っていても可笑しくないな。

 

「なるほど、なら合点が合いますね」

「けどバグスターウィルスに感染すると怪人になるはず」

「おそらくですが、バイオカスタムが影響しているのでは?」

「だから怪人にならないのか……リファナ、どこか変に感じる事はないか?苦しくなって来たとかさ」

 

俺はリファナに体調の様子を尋ねた、万が一怪人になったとしたら後々めんどくさいからな。

 

「いえ、特に何もないですね」

「そっか、なら良いんだけど……何かあったらすぐ言えよ?」

「はい、分かりました」

「博士、これは突然変異として判断した方が」

「良いかも知れませんね、元々リファナさんはクローンですし、バイオカスタムの細胞に変異を起こしてステータスに異常が起こったと判断すべきでしょうね」

 

「★が付いているからクラスアップしないとな。イムホテ、【魔法剣士】ってどんな事が出来るんだ?普通の冒険者とは違うんだろ?」

 

俺はイムホテに魔法剣士という言葉について聞いてみた。

 

「魔法剣士は『魔物を武器に変化』させる事だ。我の杖も魔物だったのだぞ?我の場合はその時代にいた魔法剣士に武器化をしてもらったがな?」

「へぇ〜便利な職なんだな。話し戻るけど博士、リファナの服とか鎧を一緒に行って買って来てくれないか?」

「なら今から行ってきましょう、リファナさんの魔法の適性なども知りたいですからね」

 

リファナとジキル博士は装備、クラスアップをする為に市街に向かって行った。

 

───────────────────────

 

2時間後、リファナとジキル博士は戻って来た。リファナの見た目が大きく変わったのが1番驚いた。青いスリットの付いたワンピースにミニスカート、上半身に銀鉄の鎧を身に付け太ももを露出させたブーツに黒い手袋をはめていた。髪型もポニーテールにしていた。どの方向から見ても美人といえるだろう。

 

「龍二さん……どう……ですか?」

 

モジモジしながら頬を赤くして俺に尋ねて来た。

 

可愛いなおい!!

 

他の仲間たちもリファナをひと目見る為にわざわざ部屋から出てきた。

 

「うん、めっちゃ似合ってるよ!」

「あ、ありがとう……ござい、ます」

「ほう、あの小娘が」

「ふむ、似合っとるぞ?」

「お嬢、べっぴんさんじゃねぇか!」

「ウホー★可愛いね★」

「美しい……」

「可愛い……ね」

「リファナちゃん★デートし」

 

リファナはグサッとワイズにレイピアをケツに刺した。

 

まったく油断もないなまったく……。

 

「リファナ、魔法の適性とかはどうだったんだ?」

「はい、氷魔法が適していると言われました!」

「氷か……悪くないな」

 

ジキル博士は本を何冊も重ねて歩いて来た。

 

リファナはイタチ系の亜人、イタチは冬眠せずに冬を活発に活動する。だから氷に適正したのかな?

 

「リファナさん……少しはご自分で持って下さい!」

「あっごめんなさい!」

「博士、それは?」

「魔法の書です。時間をかければ幾つか魔法を覚えれますからね」

「うむ!リファナに龍二よ、勤勉に覚えよ!」

 

イムホテは2人に喝を入れて来た。

 

さすがは呪術師、魔法に関してはうるさいな。

 

「俺も攻撃魔法以外にも何か覚えようかなぁ」

「一緒に頑張りましょうね!」

「まぁとりあえず、リファナは戦闘とかの訓練から始めよう」

「はい!」

「んじゃ早速今からレイピアの基本的な動きから始めよう」

「よろしくお願いします!」

 

その後、俺とリファナは地下に行き特訓を始めた。

 

いよいよ明日は皆既月食の日だ、ライトを倒すにはうってつけの日だな。

 

「よし!思い切り来い!」

「はい!」

 

俺は魔剣を構えてリファナを鍛え始めた。




いよいよ明日に限定スキルを発動させます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 破壊者

俺はリファナとの特訓を終わらせ皆既月食の起こる当日の夜、ライトとの決着をつけるために再びコロシアムに足を運んだ。俺は月明かりに照らされながらライトを待ち、その時がついに来た。死体の山を目の当たりにしたライトの顔は怒りに満ちていていた。

 

「よぉライト。待ってたぜ」

「いい加減にして下さい。いったい何人の人を殺せば気が済むんですか?こんな小さい子供まで!!」

 

俺は血の滴る魔剣を肩に担ぎながらライトの質問に答えた。

 

「なんでかって?お前が来るまでの暇つぶしだよ」

「もう、人ですらなくなったんですね」

「人?何言ってんだ?、俺は魔物だぜ?」

 

ライトは怒りを爆発させて別のベルトを装着した。そのベルトは白く周りには9つのマークが刻まれていた。

 

ならこの台詞を言わないとな。

 

「変身を邪魔しても良いんだけど、ここは紳士的に大人しく待ってやるよ。これ言えば雰囲気でるか?お前、一体なんなんだ?」

「通りすがりの勇者だ!変身!」

 

カメンライド ディケイド!!

 

ライトはピンクと黒のカラー、頭には紫の宝石を施した仮面ライダーに変身した。この仮面ライダーはよく知っている激情態のディケイドだ。

 

「ディケイドじゃん。世界の破壊者が勇者だと?笑わせんなよ」

「もう、連れて帰る事は辞めて、この手であなたを倒します!」

「なら殺ってみろよ、鎧の勇者ぁぁぁっ!!」

 

俺は死体の山飛び出して魔剣ストームブリンガーを振り上げ、ライトに攻撃を仕掛けた。ライトも腰のホルダーからカードを取り出してベルトに装填した。

 

アタックライド スラッシュ

 

ライトは剣を装備して俺の攻撃に応戦し始めた。夜の闘技場には激しい火花を散らす光が輝いていた。

 

「世界の破壊者ってのはな?俺みたいな奴の事を言うんだよ、分かるか?」

「それがなんだって言うんですか!?」

「何も失う物がないって事だよ!『ドライファ・ダークネス』!!」

 

俺はドライファ・ダークネスを繰り出してライトを吹き飛ばそうとしたがライトは既にカードを装填していた。

 

アタックライド クロックアップ

 

突然、ライトと俺の時間軸がズレ始め、ライトは素早く動き、俺は遅くなった。

 

「ぐっ!クロックアップか、やるな」

「手を休めませんよ?一気に攻めますっ!」

 

アタックライド ギガント

 

「でゃぁぁぁぁ!」

 

ライトはロケットランチャーを発射して俺を吹き飛ばした。

 

今更そんなもんじゃ俺は倒れないがな。

 

ミサイルはあちこちに着弾して1発は俺に直撃したが、何事も無かったように立ち上がった。

 

「なら……これはどうですか!!」

 

ライトは更にカードを装填した。

 

アタックライド サイドパニッシャー

 

ライトは黒いサイドカー付きのバイクを呼び出し、変形させて二足歩行型のロボットにした。俺は笑いながら魔剣をクルクル回して挑発した。

 

「おら、もっと撃ってこいよミサイルをよぉ!!」

「なら避けないで下さいね?うぉぉぉぉぉ!!!」

 

ライトは俺にロックオンをして全弾命中した。土煙が晴れると左腕と顔半分が吹き飛んでいた。だが俺はすぐさま再生させて元通りにさせると、ライトの顔は驚いていた。

 

「なっ!?さ、再生しただと!?」

「だから言ったろ?お前に俺は殺せないって、それとお前に見せたい物があるんだよ。よく見とけ」

 

俺はコロシアムの屋根に飛び上がって月に背を向けてライトに言い放った。

 

「なんですか?新しいスキルでもあるんですか?」

「ああ、見せてやるよ。悪の原点にして頂点ってのをなぁっ!!」

 

俺は右手の人差し指を立ててこう唱えた。背を向けていた月は皆既月食を始め、辺り一面暗闇に閉ざされた。

 

「『月食の鎧』発動!!」

 

俺の体は銀と黒の鎧に身を包まれて行き、顔は緑色の目を輝かせたマスクを装着した。悪の原点にして頂点、悪の仮面ライダーの先駆けとなったダークライダー。【シャドームーン】に変身した。

俺のアイコンに文字が浮き出た。

 

『限定スキルを発動しました、皆既月食の12分間使用を許可します』

 

12:00:00

 

なるほど、時間制限付きのスキルか、変なスキルだな。

 

俺のアイコンには時間制限が始まると、ライトは唖然として俺に尋ねた。

 

「そんな、馬鹿なっ!?『ベルト』も『キングストーン』もないのにっ!?」

「……さぁな、だがこれで五分だら。さぁ、鎧の勇者ライト。クライマックスは派手に行こうぜぇ!」

 

俺は飛び上がり、ライトに飛び蹴りを繰り出してライトを蹴り飛ばした。

 

「くそっ!なんだこの力は!?」

「ほらほら、カードなんか使わねぇで拳で来いよっ!」

 

俺は魔剣を投げ捨てライトに殴りかかると、ライトも殴り返して殴り合いに発展していった。右手ストレート、左フック、ボディブロー、右フックなどを繰り出して殴っては殴られての繰り返しをした。徐々にライトは力負けし始め追い詰められて行った。

 

「なんて力なんだ……ダークライダーなら俺も使うのに!?」

「なんでかって?お前が【本物で悪者になり切って】ないからだよ」

 

ドス!

 

「グハッゲホッゲホッ!!」

 

俺がライトにボディブローをお見舞いしてライトは膝を付いた。

 

「いいザマだなぁ、まだやれるんだろ?ホラ、仮面ライダーと言えば最後の決め技がまだ残ってんだろ?こう見えて俺も仮面ライダーは好きなんだ。最後は派手に決めてくれよ」

「はぁはぁ、あなたは……何がしたいんですか!?何が目的なんですか!?この世界で何をしようとしているんですか!?」

 

龍二は大笑いをしてライトの必死で怯えながら質問に答えた。

 

「この世界ををぶっ壊すのさ!!勇者も厄災の波も全てなっ!!」

「狂ってる……貴方の担当の神様には申し訳ないですが、あなたを倒します!」

 

ライトは立ち上がって最後のカードを装填した。

 

仮面ライダーの代名詞ライダーキックだ。

 

ファイナル・アタック・ライド ディディディケイド!!

 

数十枚の巨大なカードが出現してライトは飛び上がり、それと同時に俺もライトと同じ様に飛び上がった。

 

「でゃぁぁぁぁ!」

「『シャドー・キック』!!」

 

2人のライダーキックはぶつかり合い交差して着地した。皆既月食も終わり、月食の鎧の時間も切れた。フラフラと歩き俺は魔剣ストームブリンガーを拾い上げてライトを見つめた。

 

「ライト、よく見とけ。これが悪役(ヴィラン)運命だっ!!」

 

そう言い放った俺はそのまま大の字になって倒れると、大爆発を起こした。爆風が落ち着いた頃にライトは変身を解いて俺に近付いて生死を確認した。

 

「可哀想な人ですね、またやり直す事が出来たのに。死体を連れて行けばなんとかなるだろう」

 

 

『異世界の鎧の勇者に殺されました』

『EXP20000獲得』

『Lv200になりました』

『破壊者の称号を獲得しました』

『転移スキル『地獄門』を解放しました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

 

ライトが俺を連れて行こうとした瞬間、俺は目を開けて魔剣ストームブリンガーをライトの左肩に突き刺した。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「いつまでもペラペラと喋ってんじゃねぇ。この世界はいつも殺るか殺られるかなんだ。そんな時に変身なんか解いてんじゃねぇ」

 

ムクリと起き上がって魔剣ストームブリンガーを抜こうとしているライトを殴り飛ばした。

 

「俺のことはもう諦めてとっとと元の世界に帰るんだな。それと、おっさんにも伝えてくれ『心配してくれてありがとう』ってな」

「ぐぅぅ……」

 

ライトはよろよろと立ち上がってオーロラカーテンを引き起こした。

 

「龍二さん……さような……」

 

そう言い残すとライトはカーテンの奥へと消えて行き、オーロラカーテンは消滅した。

 

「ヒャハハハー!勇者を追っ払ってやったぜ。アハハハッ!!もう、俺を止める奴なんか誰もいない!!俺は最強の魔王になるんだ!アーッハッハッハッハッハッハッハァァァ!!」

 

月明かりに照らされた俺の姿は翼を広げた悪魔の様な影をした俺だけだった。

 

───────────────────────

 

その頃。別の異世界では、俺が高笑いしている同時刻。世界の荒れた大地には無数の人間の死体が積み重ねられた上に2匹の魔物が立っていた。1匹は背中に4本の旗を背負った魔物、2匹目は武者鎧を身に付け頭からは2本の角が生えていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 いざ!異世界へ!!

コロシアムでの激闘を繰り広げた俺はボロボロになりながらもアジトに戻って来た。鎧の勇者により殺された時に解放された転移スキル【地獄門】を使って異世界の勇者を皆殺しが可能になった。

 

もしかすると異世界に存在する四凶武器1つの在り処が分かるかも知れない。

 

俺は幹部達を集めて今後の目標を再確認した。

 

「ちょっと急用が出来たから最終目標のフォーブレイの制圧は後回しにする。それで新たな次の狙いは、四凶武器の1つ檮杌(とうこつ)を取りに行こうと思う」

 

トゥリナ、イムホテ、ジキル博士、ドラグリア、フランケン、ワイズ、リファナ、バルバロはテーブルを囲んで座りながら話を聞いていた。幹部達は驚いていた。

 

「なんと!?あれは別世界にあるのじゃろ?アテはあるのか?」

 

トゥリナは煙管を吹かしながら俺に尋ねると、俺は根拠を答えた。

 

「何故かと言うと、”別世界に行けるスキル”が解放したからだ。それにこの世界の他にも勇者は存在すると言うのも事実。別世界から勇者がまた攻め込んで来る前に、早めに手を打った方が良いという判断だ。異論はあるか?」

 

「なるほど……。確かに、またいつ異世界の勇者が現れるか分からないですからな」

 

ドラグリアは頷き納得した。

 

「そこで、異世界に行くのは、リファナお前を連れて行く」

「え!?私ですか!?」

 

「「「「!?」」」」

 

その他の仲間達はザワめき始め、俺に反論して来た。

 

「龍二よ!リファナだけとはいくらなんでも舐めすぎではないか!?向こうにどんな勇者がいるか分からんのだぞ!?」

「そーだそーだ★むちゃくちゃだ★」

「カシラ、考え直した方がいいと思うんだが!?」

 

トゥリナ突然、グラマー形態に変わりながら俺に反論し、それに便乗したワイズが騒ぎ出す。すると、トゥリナの左右で見ていたイムホテとドラグリアはトゥリナを宥め始めた。

 

「落ち着かんかトゥリナ、皆で行ったら誰がここの守りを固めるのだ?それにリファナはまだレベルが我々より低い。龍二なりに考慮した修行の一環なのだ。ここは堪えよ」

「くっ、妾はリファナが心配なだけじゃ!」

「まったくです。トゥリナよ、逆に攻撃力の高い我々がいなくなっては誰が勇者共を抑えるのだ?リファナ1人にさせるのか?」

「そ、それは……」

 

俺なりの苦渋の選択だ、これ以上戦力は削げない。

 

トゥリナは渋々合意した。

 

「トゥリナ、心配してくれてありがとうな。」

「べっ別にそんなんじゃ……ないぞ」

 

グラマー形態のまま顔を赤らめて黙って座った。

 

ツンデレか?可愛いなおい。

 

「なら話しは決まったな、万が一勇者がここに攻め込んで来たら容赦なく潰しても構わない。だけど、無茶だけはしないでくれ」

 

「「「「はっ!」」」」

 

「よし、リファナ?早速行くぞ」

「はい、龍二様!」

 

俺はスキルを発動させて地獄門を呼び出した。繰り出された地獄門は全身禍々しく黒く頑丈な見た目をしていた。俺とリファナは準備を終えて門前に立った。

 

「んじゃ、ちょっと別の異世界に行ってくるわ」

「皆さん、しっかり修行をして来ます!」

「しっかりな」

「ご武運を」

「カシラ、気を付けて!」

「いって……らっしゃい……」

「ふん!」

「ばいばーい★」

 

俺は扉を両手で押して門を開いた途端。妖しい光が飛び込んで来て俺とリファナを包んで行き姿を消した。

 

───────────────────────

 

目を開けた途端そこは、地球で言う所のドイツ風といった感じの街並みだった。

 

どうやら着いたようだな。

 

「どこだここは?」

「ゼルトブルと風景が違いますね。もしかして着いたんでしょうか?」

「うーん。わからん、とりあえず散策して見よう」

 

俺とリファナは街を適当に歩いた。

 

色々見た所和風も混じっているな、ということは多文化と交流もあるようだな。転生者がいてもおかしくない。

 

「さて……、色々見て回って見たけどちょっとした問題が1つある」

「はい?なんですか?」

 

リファナが首を傾げながら俺に尋ねた。俺は頭を擦りながら。

 

「この世界の言葉を話せないってことだな」

「はぁ!?龍二様、冗談ですよね!?私を脅かそうとしてるだけですよね!?」

「嘘じゃないよ。店の看板に何を書いてるのかもさっぱり分かんない。参ったなこりゃ」

「えぇ!?それって不味くないですか!?」

「ああ、俺もさすがにここまでとは思ってなかった」

「ぇぇぇぇ……」

「さてどうしたもんかな……アハハ」

 

頭をパンッと叩きながら笑うと、リファナは半べそになりながら俺の肩を揺さぶる。

 

「アハハじゃないですよ!文字と言葉分からなかったら大変じゃないですか!!。どうやって武器を探すんですかぁ!?うわぁぁっ!!」

「まてまて、泣くんじゃないよ。それに安心しろ、俺には取っておきの方法はある」

「え!?あるんですか!?もったいぶってないで教えて下さいよっ!」

「それはだな……」

 

すると街の住民達が店らしき建物の前で突然騒ぎ出した。

 

どうやら何かが起こったな。

 

俺がワクワクしながら様子を伺っていると、強盗団が現れた様だった。強盗団は俺達の方向に走って近付いてきた。

 

ん?

 

「●▲■!!」

 

強盗は意味不明の言葉で喋っている。怒られているのかすら分からず、俺は首を傾げた。

 

「は?何怒ってんの?」

「●▲■!!●▲■!!」

「なんと言ってるんでしょうかね……なんか武器構えてますけど?。斬りましょうか?」

 

リファナはレイピアに手をかけて臨戦態勢に入ったが、俺は止めた。

 

「まぁまて。ここはワザと煽ってちょっと怒らせて見るか」

「え!?ていうか、この人達現時点で怒ってませんか!?」

 

俺は強盗団らしき男達に全世界に共通の挑発法でもある中指を立てて相手を煽り始めた。

 

「うらぁっ!かかって来やがれっ!!」

「もうちょいマシな煽り方ないんですか?」

「●▲■!!」

 

ズバ!ドス!バキ!

 

「キャー!!龍二様ァァァ!!」

 

俺は強盗団のリンチにより殺されてしまった、リファナは悲鳴を上げてしまった。

 

まったく、いい加減に慣れろよ。幹部だろ!

 

『異世界の強盗団により殺されました』

『EXP100を獲得』

『異世界の人間の言葉のスキルを解放しました』

『異世界の人間の文字のスキルを解放しました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

俺は体を再生させて起き上がって強盗団に言い放った。

 

「なに!!生き返っただと!?」

「龍二さまぁ!」

「いてて……。この野郎さっきはよくもやってくれたな。さぁこれで言葉と文字のスキルを覚えられた事だし、てめぇらはもう用済みだ。死ね!!」

「読み書きが出来るようになったんですね!?なら、私も戦います!」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを、リファナはレイピアを構えて臨戦態勢に入った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 天敵の勇者

こんばんは!忙しくてなかなか書けませんでした!

書籍版や漫画版の異世界のキャラクター達の設定を大幅に変えますのでご了承下さい。絆が登場しますが、オリジナル設定で登場させます。


異世界の言葉や文字のスキルが解放した俺は魔剣ストームブリンガーを構えて強盗団に襲いかかって行った。リファナのサポートもあってなんなく殺す事が出来き、俺とリファナは納刀して金銭などを奪いその場を早々立ち去った。

 

「ふぅ、ここまで来れば大丈夫だろ」

「もぅ龍二様!騒ぎを起こしてどうするんですか!?」

 

リファナはほっぺを膨らませながら俺にガミガミネチネチ説教を始めた。

 

「はい、ごめんなさい」

「もう、気をつけて下さい!勇者達に嗅ぎつけかれたらどうするつもりなんですか!?トゥリナさん達もいないのにぃ〜!」

「分かったよ、気をつけるけどお陰で言葉も文字も分かるようになったし今後は楽に動けるだろ?」

「そうですけど……」

「リファナだってLv上がっただろ?」

「確かにクラスアップしましたけど、さっきの経験値でもまだ41ですよ!?」

 

俺はリファナのステータスを確認した、鎧の勇者の時に同行者設定を解除してしまったのが今になって後悔した。

 

「とりあえず、口コミで四凶武器の在処を探さないとな」

「そうですね、建物には私が入りますから」

「それじゃまずは街に行って────」

 

「おい!」

 

「「!?」」

 

俺とリファナは声の方向を向くと、中学生くらいの女の子がゴスロリ系の服を着て黒い羽織りを纏っており、手には釣竿の様な物を持っていた。

 

「なんだ?このガキんちょ」

「あなた、ここの街の子?」

「ガキ……だと?」

「ん?ガキだろ?」

 

女の子はワナワナと震えて大声を出し、突然キレ始めた。

 

「オレはこう見えても18だ!!舐めてるとぶっ潰すぞ!!」

「シンプルに口が悪いなぁ、チンピラかよ」

「素行が悪いですねぇ。なんかバルバロさんみたいです」

「ごちゃごちゃうるせぇ!お前らだな!?街で大暴れをしたってのは?」

「おいおいちょっと待てよ、俺たちは被害者だぜ?」

 

女の子は話をまったく聞かずに釣竿を振り回して来た。

 

やれやれ話を聞いてくれる状況じゃないな。仕方ない、殺すか。

 

「おい、嬢ちゃん。これ以上突っかかってくるなら容赦しないぞ?」

「ごめんなさいね、私達四凶武器の在処を探してるから」

「なにっ、四凶武器だと!?」

 

女の子はピタッと止まり、リファナの言葉に反応し始めた。

 

「お前ら、四凶武器になんの用だ?」

「なんの用って?俺が頂くからだけど」

「貴様、ちょっと懲らしめようと思ってたけど、予定変更だ。お前らを倒す事にするわ」

「はぁ?」

 

いきなり何を言うかと思えば俺たちを倒すだと?まさか、こいつ勇者か?まず名前聞いて置くか。

 

「お嬢さん、名前を聞いてもいいかな?」

 

ゴスロリっ子は釣竿を勇者の武器の様に狩猟用のスリングに変化させながら構えて名乗り出した。

 

「オレは【狩猟具の勇者】、風山絆だ!!」

 

絆と名乗ったゴスロリっ子はスリングを俺に向けて放った。俺は魔剣ストームブリンガーを盾にしてスリングの弾丸を弾いた。

 

狩猟具?この世界の四聖武器は剣や槍とかでは無いようだな。

 

「龍二様!?ご無事ですか!?」

「ああ、コイツやっぱり勇者か……。その竿のリールに付いている青色の水晶はどうも尚文達の四聖武器に似ているなと思ったんだ。この世界の勇者と言うなら、俺らも容赦はしないからな?」

「覚悟しろ!魔竜の手下め!!」

「魔竜だと?」

檮杌(とうこつ)の棘鉄球は渡さない!喰らえ!!」

「リファナ!下がってろ!」

「龍二様!?」

 

絆はスリングを数発撃ち、今度は弓に変化させて矢を放って来た。

 

狩猟具というのは動物を狩る物を指すのだろうか?

 

俺は難なく魔剣ストームブリンガーで薙ぎ払い全ての弾や矢を撃ち落とした。

 

「おいおい、そんなもんじゃ到底俺を倒せないぞ?」

「ふっ、それはどうかな?」

 

絆はスリングに札の様なものを貼り付けた。

 

なんだあれは?攻撃力強化でもされるのだろうか?

 

「オラァァァァァ!!」

 

再び絆はスリングに変化させて数百発の弾丸を放って、俺は弾いて交わそうとした時、異変が起きた。

 

ガキン!!

 

「ぐっ!?なんだこりゃ!?トラバサミか!?」

「『一式・虎挟み』!!これで動けねぇだろ!くたばれぇ!!」

 

俺は虎挟みで足の動きを封じられ、雨あられの如く降り注ぐスリングの弾丸を直撃した。

 

「ぐぅ……なんだ!?このダメージは!?」

「龍二様!?どうしたんですか!?」

「いつもより効くんだよダメージが。どうなってんだ!?」

「え!?」

「オレの四聖武器の能力【札貼】と【狩猟ボーナス】の力さ」

「こ……の……!!」

 

ガキン!

 

俺は虎挟みにより右足が使えなくなり、左足で動こうとした瞬間左足にも虎挟みが足に掛かってしまった。

 

「またかよ!!このっ!!外れろ!!」

「『二式・虎挟み』。さぁ、もう逃げれないぞ?」

「くっ……!!」

「待ちなさい!」

 

絆の前にレイピアを構え、絆もリファナに向けてスリングを構えた。

 

「龍二様を倒させる訳には行きません!」

「リファナ!!やめろ!!」

「どけ!獣人が!!」

「私は獣人ではありません!亜人です! はぁ!!」

 

リファナは俺の静止を聞かずに絆に向けてレイピアで数回突き攻撃を繰り返した。絆はいとも容易く攻撃を交わし、スリングを構え直した。

 

「この狩猟具は”魔物”には大ダメージを与える事が出来る。おかしな奴だな、人間にはダメージは通らないのに。同じ日本人に見えたのに……もしかしてお前、魔物なのか?」

「ああ……俺は魔物だ……」

「お前、ちょっと訳ありなのか?」

「ほっとけ」

 

勘のいい女は嫌いだな。

 

油汗をかきながら俺は絆の質問に応えると、絆は思い付いた様にスリングをリファナにではなく俺に向けた。

 

「なら先にお前を倒す!魔竜の手下は私が全て倒すんだ!」

 

絆はスリングを包丁の様な武器に変えて突進して来た。

 

これは不味い、今まで苦戦した事のない程の俺にとって強敵だな。

 

「喰らえ!! 『狩猟技・血花線』!!」

「龍二様ぁぁぁ!!」

 

絆は俺に向けて狩猟具のスキルを放った。




漫画版15巻を見て修正かけました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 鬼と猿

俺は魔物を倒すエキスパートであり、俺の唯一の天敵である狩猟具の勇者絆は俺にトドメを刺そうとした瞬間、巨大な斬撃が俺と絆の間に入って来た。だが、絆はギリギリに斬撃をかわした。

 

「なっなんだ!?」

「斬撃……?」

「龍二様!ご無事ですか!?」

「ああ、これ外してくれ!!」

「はい!」

 

リファナはトラバサミを外して俺を解放してくれた。

 

誰かは知らんが助かったな。

 

絆はスリングで斬撃の発せられた場所を狙った。

 

「誰だ!」

「よぉ……狩猟具の勇者、会いたかったぜ」

「てめぇは俺らが相手だ。猪八戒、沙悟浄の仇は取らせてもらうぜ」

「お前らは!?」

 

絆の先には、侍の鎧を纏って角を2本生やした鬼の魔物と黄色い道着、赤い帯に金色の冠と鎧に背中に赤と金色の旗を4本背負った猿の魔物がいた。

 

「あんた、ちょっと離れてな」

「ここは俺たちに譲ってくれ」

「あっああ……分かった」

「龍二様、ここはあの方達に任せましょう!」

 

俺とリファナは絆から離れて猿と鬼の魔物の様子を伺った。絆は驚いた様に魔物達の名前を叫んだ。

 

「【酒呑童子】!そして、【孫悟空】!?お前ら生きていたのか!?」

「残念だったな」

「俺たちは辛うじて生き残ったぜ?」

「くっ、あの【落とし穴】で倒したと思ったのに!!」

「鬼の首領と斉天大聖を舐めんじゃねぇぞ?そんなもんで殺られるかよ」

 

酒呑童子と悟空はそれぞれの武器を取り出して絆と睨み合いを始めた。

 

酒呑童子の武器は……太刀とは違って刀の柄がとても長く刃はさほど長くなかった、おそらく”長巻”と呼ばれる武器だろう。悟空は絵本やテレビなどで見た事がある”如意棒”を肩でトントンしていた。孫悟空は元々凶悪な妖怪だったと聞いた事があるな……。

 

「龍二様、あの方達は一体……?」

「ああ、あの2匹の妖怪は、鬼の首領と呼ばれた酒呑童子と斉天大聖の孫悟空だ。あんな強力な魔物までいるのか……。リファナ、あの2匹の邪魔するんじゃねぇぞ?」

「はい……。あの方々からはとてつもない魔力と力を感じます……」

 

リファナは酒呑童子と悟空の覇気に怖気付きブルブルと震えていた、そして、凶暴な魔物と狩猟具の勇者との戦いが始まった。

 

「行くぞオラァァァ!」

「豚と魚の仇じゃゴラァ!!」

「上等だぁぁぁぁ!!」

 

酒呑童子の長巻と絆の包丁が激しくぶつかり合って鍔迫り合いを始めた、その隙に悟空は如意棒で絆の顔面をフルスイングして吹き飛ばした。

 

女の子相手に容赦なく攻撃する2匹には感服するな、仲間にしたい……。

 

瓦礫の中から絆は顔から血を流しながら立ち上がった。

 

さすがは勇者だな丈夫な体をしている。

 

「年頃の女の顔に傷つけやがったな……」

「知るかボケ」

「てめぇの顔を歪ませて街に捨ててやんよ」

「やって見ろや魔物共!!」

 

絆は包丁から弓に変化させて距離を取りつつ矢を放って来た、だが悟空の如意棒で全て撃ち落とされた。

 

「酒呑童子、アレ使ってくれ」

「おうよ、『鬼火』!!」

 

酒呑童子は左手に巨大な青い火球を作り、悟空にトスした。

 

何をする気なのだろうか?

 

「行くぞ、酒呑童子!!」

「よっしゃ、オラァァァ!」

 

悟空はトスバッティングの要領で如意棒で火球をフルスイングして弾丸ライナーの様に絆に向けて打ち付けた。青い大爆発を起こして絆はガードをしてやり過ごしたが、手に火傷を負った。

 

「このっ……クソがァァァァァァァァァ!!」

「ちっ、外したか。顔面狙ったんだけどな」

「外すんじゃねぇよ、酒呑童子!!」

「ちっ、次は必ず殺してやる!!覚えてろ!」

 

手を負傷した絆は、勇者の転送魔法で姿を消していった。

 

なんとか勇者の撃退に成功したな、助かった……。

 

「ちっ、逃がしたか」

「まぁ良いじゃねぇか」

「そうだな!」

 

酒呑童子と悟空はハイタッチをして勝利を分かち合っていた。

 

なんともナイスコンビな感じがする。

 

俺とリファナは唖然としていた。

 

「すげぇ、強ぇなおい」

「こんな強力な方達もいるんですね……。勉強になりました」

「おっと、あんたら無事か?」

「見ない顔だな、どっから来たんだ?」

「話すと複雑なんだ。実はな────」

 

俺とリファナは酒呑童子と悟空に自分が魔物である事と異世界から来た事を説明した。

 

彼等なら四凶武器の在処を知っているかもしれない。

 

檮杌(とうこつ)の棘鉄球?ああ、知ってるよ」

「あんないわくつきの武器が欲しいのか?」

「ああ、その四凶武器の1つをもう持っている」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを酒呑童子と悟空に見せた、すると2匹は驚いていた。

 

「お前すげぇな、こんなすげぇ呪いにかかってんのにピンピンしてるのか」

「凄まじい魔力の剣だな。そっちの嬢ちゃんは普通なんだがな?」

「えっ!?あ、あのなんかすいません……」

 

リファナは格の違いを思い知らされシュンとしていた。

 

これから強くなればいいだけの話しだろう。

 

すると悟空からとある提案を持ち出した。

 

「行くとこないんだろ?、だったら俺達のアジトに来ねぇか?」

「他にも仲間がいるしな、【氷の女王】に嬢ちゃん鍛えて貰おうぜ?」

「そうなのか!?頼む!俺達を連れてってくれ!」

「氷の女王?それはどんな方なんでしょうか?」

「まぁ行けば分かるさ」

 

俺達は街を離れ人里離れ、荒れた大地に案内されたそこには氷で造られた城がありそこの中には様々な魔物達が蔓延っていた。

 

「見た事のある魔物ばっかりだなぁ」

「わ、私ちょっと怖いです……」

「氷の女王はこの先だ。あんたらを先に紹介しておく」

「ああ、頼むよ」

 

悟空と酒呑童子は氷の扉を開けた、そこには白いドレスに身を包んだ女性が玉座に座っていた。

 

物凄く冷たい目線を感じる……。

 

俺とリファナは膝を着いて頭を下げた。

 

「酒呑童子、悟空、この者達はなんですか?」

「狩猟具の勇者と戦闘をしていた者たちだ」

「強い魔力を感じたから助けた」

「ふむ……なるほど……あなた名前は?」

「福山龍二と申します」

「ふーん……。それでそっちのあなたは?」

「リファナと申します、女王様」

「ふむ…………」

 

氷の女王はリファナをまじまじと見つめていた。

 

この重苦しい雰囲気はなんなのだろうか?

 

「酒呑童子、悟空、龍二にこの城を案内させてあげなさい。魔竜様には私が報告して置きます」

 

「あいよ。んじゃ、龍二はこっちだ」

「あっ龍二様!?」

「あなたは私の傍にいなさい」

「えっ……?」

 

俺はリファナを置いて謁見の間を後にした。俺はリファナが心配になり、後ろを振り返った。

 

「なぁ、大丈夫だよな?」

「嬢ちゃんか?まぁ、心配すんな」

「また、アレ思い出しちまったのかもな」

 

アレ?

 

「”アレ”か……そうかもな」

「アレ?アレってなんだよ」

「そのうち話す、とりあえずここの城を案内する四凶武器の事はその後だ」

「ああ、分かった」

 

俺とリファナは異世界の魔物達のアジトである氷の城に身を潜めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 迷宮古代図書館

俺は悟空と酒呑童子の案内で氷の女王の城を見て歩き、様々な事を俺に教えてくれた。勇者達の戦力、魔法、種族、この異世界の勇者の情報や拠点にしている国などを聞けた。この異世界の勇者の四聖武器は【狩猟具、札、玉】鈍器らしい。そして、眷属器の勇者は【扇、鎌、本、刀、鋸、楽器、船、鏡】だと言う。

 

まったく、分かってはいたが、この世界は勇者だらけだなぁ〜。

 

悟空は地図を広げて各国の事を説明した。

 

「ここか勇者達が拠点にしている街でもあり、俺達が騒ぎを起こした街だ」

「なるほど、、だから直ぐに勇者が駆けつけたのか」

「そう、運悪く着いたのが【シクール】という国だったと」

「あーあ、俺って運ないなぁ」

「そして、お前が求めている四凶武器はシクールのここ、【迷宮古代図書館】にある。だが、ここは特殊なダンジョンでな?そこの図書館の奥に迷宮が続いている。その奥に檮杌が封印されている」

 

酒呑童子は地図に迷宮古代図書館の場所を指を指して俺に教えた。

 

「ここを管理しているのが【本の勇者エスノバルト】という奴が管理していて警備が厳重だ。一筋縄には行かないぞ?」

「なるほど、本の勇者か覚えておこう」

「迷宮はかなり広いぞ?大丈夫か?」

 

酒呑童子は心配そうにメモを走らせる俺を見つめた。すると、魔剣ストームブリンガーが急に光りだして話しかけて来た。

 

《ほう、檮杌を見つけたかのか?》

「なっ…!?剣が話しかけて来ただと!?」

「武器が喋るなんてすげぇなお前の魔剣」

 

悟空と酒呑童子は驚いていたが、魔剣ストームブリンガーは話続けた。

 

《我がいれば檮杌の場所など取るに足らんわ。我ら四凶武器は互いに共鳴し合うからな》

「「共鳴!?」」

「え!?、お前そんな事も出来るのか!?」

《造作もないわ》

「なら直ぐに行こう!」

「一応女王に許可を貰いに行こう。ここのルールでな、勝手な行動は出来ないんだ」

「そうなんだ。分かった、女王の所に行こう」

 

悟空、酒呑童子は俺の言葉に頷き、女王の間に向かって謁見の間の扉を叩いた。

 

「女王、悟空だ」

「悟空?入りなさい」

 

扉を開けるとそこにリファナの長くなった白い髪を優しく櫛で髪を溶かしていた。

 

えっ?待って、何この状況?

 

俺達は一瞬戸惑った。

 

「龍二様?どうしたんですか?」

「いや、リファナ?お前こそ何してるの?」

「なりゆきで……あはは」

 

母親の様な顔をしていた女王は打って変わって顔つきを変え、尋ねて来た。

 

「悟空、酒呑童子、龍二、何の用ですか?」

「これから龍二の武器を取りに迷宮古代図書館に行ってくる」

「迷宮古代図書館にですか?」

「ああ、良いか?」

「良いでしょう、お好きになさい。ですが応援は送れませんからね?」

「分かってる、これ以上犠牲は出さない」

「先程女郎蜘蛛とガーゴイル、ケルベロスがレイブルにて刀の勇者に殺されたそうです」

 

酒呑童子の拳がギリギリ音を立てて握られていた。

 

恐らく酒呑童子の仲間だったんだろう……。

 

「魔竜様がもっと力になってくれると良いんだがな!」

「おい、よせ酒呑童子!」

「なんとでも言いなさい。【魔竜様】は貴方方など所詮捨て駒としか考えてないですから」

「駒……だと……?」

 

おいおい、いきなりシリアスな展開になって来たな……てか魔竜ってのがこの世界の魔物の親玉なのか?ベッタベタの悪党臭がするんだが?

 

俺は女王に手を挙げて質問をした。

 

「あの、女王様?ちょっといいですか?」

「なんですか?」

「魔竜様というのはどんな方なのですか?」

「新顔のあなたが知る事ではありません。さぁ、早く行きなさい」

 

なんだこのババア。

 

俺は一瞬ピキっと血管を浮き出させたが堪えて女王の間を後にした。怒りを落ち着かせる為に俺は深呼吸をしていた。

 

「スゥ……ハァー……」

「すまねぇ龍二、よく耐えてくれた」

「悪かったな」

「魔竜様って奴がお前らのボスなんだよな?」

 

俺が悟空と酒呑童子に尋ねると、2人は顔を歪めて。

 

「悔しいが……」

「その通りだ」

「そうなんだ。けど、俺は仲間を駒と思った事なんて全くないなぁ」

「ははっ羨ましいこった」

 

城を後にして再びシクールの街へ足を運んだ俺達は迷宮古代図書館に辿り着いた。図書館の作りは外壁は洋風を取り入れたレンガ構築だった。俺は図書館を見上げながら。

 

「ここが……迷宮古代図書館か」

「そうだ、おっと言い忘れる所だった。火属性の魔法だけはやめてくれよ?本に引火したら大変だからよ」

「そっそうなんだ、気を付けるよ」

「速攻で勇者達が押し寄せてくるからな!?」

「分かった、肝に銘じておく」

 

俺、炎系が得意なんです。

 

俺達は中に入ると兎の様な魔物達がせっせと働いていた。

 

これが図書兎というヤツなのだろうか?作業に夢中になり過ぎて俺達に気付いていないようだ。今のうちに迷宮ダンジョンに入ってしまおう。魔剣ストームブリンガーの鼓動を頼りにダンジョンを抜けて館長室に入るとストームブリンガーがドクンと脈打ち始めた。

 

《檮杌を感じる。主よ、急げっ!この先だっ!》

「よし!悟空!酒呑童子!行こう!」

「「おう!」」

 

館長室を抜けるとさらに迷宮ダンジョンが続いた。脈打つストームブリンガーを頼りに進むと急に開けた場所に辿り着き、その先には祠があった。その中にはお目当ての檮杌の棘鉄球が祀られていた。

 

「これが……檮杌」

「禍々しい魔力だな……」

「なんか触った途端呪われそうだな」

 

俺は祠の前に立つと檮杌の棘鉄球の姿を確認する事が出来た。檮杌の見た目は中世ヨーロッパで使われた『モーニングスター』の様な形だった。鎖で繋がれて棘鉄球の柄には人間の顔して体が虎の姿をして猪の牙が生えた魔物の彫刻が掘られていた。鉄球にも同じ魔物の絵が書かれていた。




絆側の勇者達の設定を少し変えていきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 檮杌の棘鉄球・スターブレイカー

俺が檮杌の棘鉄球に手を触れようとした瞬間、魔剣ストームブリンガーが話しかけて来た。

 

《主よ、ここは我が受け持とう》

「え?いいのか?」

《まぁ見ておれ、檮杌、檮杌よ、聞こえるか?》

 

魔剣ストームブリンガーが尋ねると、檮杌の棘鉄球が共鳴して脈打ち始めた。するとストームブリンガーと別の声が聞こえて来た。

 

《その声は……混沌の魔剣か?久しいな》

《そうだ、主を解放しに次元を超え遥々探しに来たぞ》

《そうか、その男が新たな主か?》

《そうだ、この男は四凶を全て集め全てを手に入れると言って聞かなくてな》

《ほう……なら若いの、お主に尋ねよう》

 

檮杌の棘鉄球は俺に声をかけた。

 

『我が名は【檮杌の棘鉄球・スターブレイカー】。貴様は我を用いて何を望む?』

 

スターブレイカーは俺に尋ね、俺は何の迷いも無く直ぐに答えを出した。

 

「俺の世界と、この異世界を喰らい尽くす為」

《ふははははは……この世を喰らい尽くすか、面白い。なら我が呪いを受けて見よ!!》

 

檮杌の棘鉄球スターブレイカーは言い放つと同時に怪しげに光出し、混沌の魔剣ストームブリンガーの時と同じように俺のアイコンをズラーっとハッキングの様に古代文字を浮かび上げた。

 

『不死身の呪いでスターブレイカーの呪いは効きませんでした』

 

《なにっ!?不死の呪いで我が呪いが効かぬだと!?》

「残念だったな、なら黙って俺の武器になれ」

《我が呪い、【恐怖を無くす】呪いが効かぬのか》

 

恐怖を無くす?という事は何事にも恐れなくなると言う事だよな?なら、死ぬ事も、苦痛を感じるのも、そういう事なのか?

 

《檮杌よ、これで分かったであろう?我らの完敗だ》

《そうだな混沌よ、良かろう。この檮杌、お主を主として認めよう!》

「ありがとう、檮杌」

 

檮杌の棘鉄球は再び光出し光が落ち着くと檮杌の棘鉄球スターブレイカーは俺の手に収められていた。

 

檮杌の棘鉄球・スターブレイカー 0/100 UR

 能力解放……装備ボーナス スキル「アースクエイク」

 専用効果 ウェポンチェンジ 不死の呪いの為檮杌の呪い無効 防御力比例攻撃

四凶ボーナス ???

 熟練度 0

 

「これが……檮杌か、ん?」

 

檮杌の棘鉄球スターブレイカーのアイコンを見て気付いた。

 

四凶ボーナスってなんだろう?ストームブリンガーにもあったよな?

 

全てを目の当たりにした悟空と酒呑童子は俺に駆け寄った。

 

「やったな、龍二!」

「凄まじい魔力だ、大丈夫か?」

「なぁ……悟空、酒呑童子……」

「なんだ?」

「どうした?」

 

悟空と酒呑童子は首を傾げながら俺の顔を見た。その顔は真剣そのものだった。

 

「これから魔竜の所に行って」

「おい!貴様ら!!」

 

俺が話出そうとした瞬間、後ろから声が聞こえて来た。俺達は振り返って見ると、その先にはローブを纏い本を持った男がいた。見た目は15歳くらいの男に見え、頭からは兎の耳の様な物も生えていた。

 

「禍々しい強い魔力を感じた、まさか檮杌の封印を解いたのか!?」

「ああ、すんなりここに入れたが……ありゃワザとか?」

「いや、まさかソレが目当てとは考えてもなかったからな、ボクは本の勇者、エスノバルトだ!悪い事は言わない、檮杌を元の場所へ戻すんだ!」

「やべぇぞ龍二、こいつ勇者だ!!」

「めんどくせぇ、今仲間を呼ばれたら面倒だぞ!」

 

悟空と酒呑童子は如意棒と長巻を構えて臨戦態勢に入ったが、俺によって止められた。

 

「悟空、酒呑童子待ってくれ、どうせ逃げきれない。こいつは俺が殺る!」

「「龍二!?」」

 

俺はスターブレイカーの鎖をブンブン回転させながらエスノバルトに答えた。

 

「おい本の勇者、嫌だと言ったらどうするんだ?」

 

俺がエスノバルトに尋ねるとエスノバルトは本を開いてこう答え

た。

 

「なら、あなたを倒すまでだ!『文式一章・火の鳥』!!」

 

エスノバルトの本をが光出して本から火の鳥が飛び出して来て俺に向かって来た。

 

「本から魔法が出て来ただと!?」

 

金〇のガッシュ・べ〇かコイツは!?

 

俺は棘鉄球スターブレイカーを蹴り飛ばして火の鳥を打ち消した。

 

「なっ!?ボクの火の鳥を打ち消しただと!?」

「直撃しても良かったんだがな、俺は熱いのは苦手でね」

「ならこれはどうだ!『業火の章』!!『雪の章』!!」

 

エスノバルトはさらにスキルを発動させた。

 

今度は炎の魔人と雪女の様な奴を呼び出した。どうやら精霊的な物も召喚出来るようだ。炎の魔人は俗に言うイフリートっぽく、雪女は劣化版氷の女王見たいだな。

 

「炎の魔人、雪女よ!彼の者を討ち滅ぼせ!」

「グォォォォォ!」

「フォォォ!」

 

俺が再び棘鉄球をスターブレイカーを振り回した瞬間、悟空と酒呑童子が炎の魔人と雪女を迎え打った。

 

「悟空!酒呑童子!?」

「へっ!自分ばっかり美味しい思いすんなよ」

「このパチモン精霊は俺らにまかせな!」

「2人とも……済まない。任せたぞっ!」

 

悟空と酒呑童子は迷宮ダンジョンの奥えとに消えていった。俺2人を見送ると、再び棘鉄球をブンブンと回し始める。

 

「さぁ、これで2人っきりだぜ?」

「くっ、けどボクは本の勇者だ!負ける訳には行かない!」

「はは、カッコイイねぇ勇者様は よぉ!」

 

喋り終わる前に俺は物凄い勢いで棘鉄球スターブレイカーをエスノバルトに向けて投げ付けた。間一髪でエスノバルトはかわしたが、頬からは血が流れた。

 

「だんだん使い方が分かって来たぜ、スターブレイカー!!」

「丸太が飛んで来たかと思った……」

 

エスノバルトは顔を青ざめながら牽制をして俺から距離を取ろうとした。だがその瞬間、棘鉄球スターブレイカーの鎖がエスノバルトを絡めとり動きを封じた。

 

「おっと、逃がさねぇよ」

「なにっ!?」

「俺達これで終わりだっ!!死ねぇっ!」

 

俺はべロリと舌なめずりをしながらエスノバルトに言い放った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 敵の敵は味方?

俺がスターブレイカーの鎖でエスノバルト拘束した後、エスノバルトの首をギリギリと音を鳴らしながら締め始めると、エスノバルトの首から上が見る見るうちに赤くなっていった。

 

「がっ……はっ……」

「死ぬ前に聞きたい事があるんだけどいいか?」

「だ……れ……が……喋……るか……」

「あっそ」

 

喋らないなら窒息寸前まで締め上げてやるよ。

 

俺は鎖をさらに力強く締め上げた、チアノーゼになりかけているエスノバルトは首を縦に振り始めた、俺は少し鎖を緩めた。

 

「最初から答えろっつーの、メアリーはどこにいる?」

「ゲホッゲホッ……【レイ……ブル……国】……」

 

レイブル?確か刀の勇者がいる国だよな?

 

「なるほどね、レイブルか ありがとう……死ね」

 

俺はニヤリと笑って棘鉄球をむせているエスノバルトの頭に叩き付けた。棘鉄球を何度も何度も叩き付けるとエスノバルトの頭は潰れてミンチになった。

 

「あーしんど、コイツが死んだって事は……やっぱりな」

 

俺が向いた方向からは悟空と酒呑童子が無傷で戻って来た。

 

「おう、龍二!急に魔人達が消えたからもしかしてと思ってよ」

「本の勇者を殺すなんてすげぇな!」

「この檮杌のおかげさ、レイブルに行かないか?」

「レイブル?」

「刀の勇者とその”連れ”に用があるんだ」

「ほう、あの勇者にねぇ……」

「そういえば、本の勇者が来る前になんか言ってなかったか?」

 

酒呑童子は俺が言いかけた言葉を思い出して俺に尋ねて来た、俺は棘鉄球の返り血を拭いながら酒呑童子の質問に答えた。

 

 

俺は悟空と酒呑童子の耳にヒソヒソと何かを呟いた。

 

 

「はぁ!?」

「お前マジで言ってんのか!?」

「ああ、大マジだよ?」

「あははは!お前すげぇな!もし『コレ』やり遂げたら俺はお前に付いてくぜ」

「悟空!本気か!?」

「酒呑童子!コイツは……マジで世界をひっくり返す男だぜ!」

「くくくく……確かにな」

 

パチパチパチ

 

俺達が話しで盛り上がっているとどこからともなく拍手が聞こえて来た。そこにはイケメンと誰もが言うくらい顔が整っている少年が現れた。歳は

 

エスノバルトと同じくらいだろうか?

 

「いや〜お見事でしたよ」

「誰だ!?」

「貴様……いつからそこにいた?」

「ご挨拶が遅れました、私の名前は【キョウ・エスニナ】と申します」

 

キョウ?前の世界ではそんな奴いたか?いや、前の時はイレギュラーが起こったから存在しなかったのか?

 

「その前に……しばしお待ち下さい」

 

キョウと名乗った少年はエスノバルトの死体に近付き、手をかざした。するとエスノバルトの身体から光の球玉が現れた。前の世界で1度見た事があるな。

 

「なんだ!?」

「あれは魂か!?」

「いや、あれは……『眷属器の精霊』だ」

「精霊!?」

「あの精霊を宿すと……」

 

俺が説明しているとキョウは精霊を自分の体に宿した。そして手にはエスノバルトと同じ本が手にされていた。

 

「勇者になる」

「「はぁ!?」」

 

悟空達は驚いていた。

 

そんなに驚くことかな?

 

「勇者になったって事はまた勇者が増えたって事だろ!?」

「たった今ぶっ殺した勇者が復活したんだろ?」

「そりゃそうだけど、コイツは……敵じゃなさそうだな」

「なんで分かる!?」

「そうとは限らないだろ!?」

 

そう言い放った悟空と酒呑童子は武器を構えてキョウを警戒した。

 

「安心して下さい、私はあなた方とは戦うつもりはありません、私は前々からエスノバルト君を殺したくて仕方なかったんですよ」

「何?どう言う事だ?」

「私は刀の勇者と共にこの世界を蹂躙したかったんですがご覧の通り勇者に選ばれませんでした、ですがあなた方のお陰で勇者になれましたどうです?私達と手を組みませんか?」

「なんだと!?」

「勇者となんか手が組めるか!」

 

確かに勇者と手を組んだ所でメリットは無い、けどコイツは恐らく前の世界にもいた【波の尖兵】の1人だろう。自分の欲望のみで動いている輩達の集まりだったな……。

 

「悟空、酒呑童子、とりあえずキョウの話しを聞こうじゃないか」

「龍二!お前、正気か!?」

「コイツ、いつ裏切るか分からないぞ!?」

「まぁまぁ、簡単に言えばコイツは勇者でも悪い勇者って奴だ」

「悪い勇者?」

「ふふふふ 間違ってはいませんね、どうですか?手を組んで共に風間絆を討ち取りましょう」

 

キョウは俺に握手を求めて来て、俺も握手に応じた。

 

「ならこちらからも協力して欲しい事があるんだけどいいか?」

「良いでしょう、なんですか?」

 

握手を終えると俺はニヤリと笑って答えた。

 

「俺は魔竜を倒し、魔竜の領地をこの手で頂く」

「魔竜を倒したいのですか?ですがあなた方は冒険者の様ですが?」

「見た目は人間だけど、俺は魔物なんだ。魔物同士でも争い事はあるものさ、協力してくれるか?」

「もちろんです!魔竜は我々とっても脅威ですから」

「なら手を組もう」

「ありがとうございます、善は急げです今からレイブルに向かいましょう」

「ああ、悟空、酒呑童子良いだろ?」

 

俺は悟空と酒呑童子の方を向いて尋ねた後に何故か口をパクパクさせた。

 

「あっ……ああ、狩猟具の勇者は天敵だからな」

「おっおう、いいと思うぜ?」

「話は決まった、レイブルに行こうぜ?」

「はい、では外で転送魔法でレイブルに行きましょう」

 

 

キョウと俺は先に図書館の出口に向かって行った。唖然としている悟空と酒呑童子は呟いた。

 

「悟空……」

「龍二……えげつない事考えてたな」

「ああ、読唇術で読み取れたけどな……」

「おーい、置いていくぞー」

「待ってくれー」

「今行くぞー!」

 

悟空が読唇術で読み取った言葉はこうだった。

 

つ か う だ け つ か っ て こ ろ す




多少原作の本の勇者の所有者を変更しました、今後も原作の所有者を変えていくかも知れませんがご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 同盟

俺は図書館を出てキョウと合流し、キョウと共に刀の勇者が治めている国、レイブルに向かった。キョウが本の勇者になって転送魔法が可能になったのが幸い助かって簡単に到着した。レイブル国の見た目は……簡単に言えば日光江戸村っぽい感じに近い感じで国民達の服装は江戸時代より発展した幕末の時代の着物を着ていた。

 

「勇者の趣味で国の造りが違うのか?向こうは洋風だったぞ?」

「そうですね、勇者次第で国が変わる様です」

「龍二の世界の人間は変わってんだな」

「なんだろ……懐かしい感じがする」

 

しみじみ味わっている酒呑童子をスルーしてキョウから色々情報交換をして様々な事を聞き出すことが出来た。

 

「そういえば、こっちにも災厄の波はあるんだろ?」

「ええ、あります、3日前ですかね?その時は悟空さん達は絆や他の四聖勇者と戦って多くの仲間を犠牲にしたはずです」

「ああ、猪八戒と沙悟浄が殺られて、最近だと他の波でガーゴイルと女郎蜘蛛が殺られた」

「俺の世界でもあちこち災厄の波が起こってるんだな。俺の世界でも知らない間に何匹の仲間達が殺されたんだろう」

「そうなのですか、そちらの四聖勇者を倒してないのが吉でしたね、波の間隔が狭まりますから、こちらの世界では四聖勇者は絆と【シルディナ】という【札の勇者】のみですね」

 

やっぱりな、波で強制参加させれる魔物達は生き残った奴はほぼいないだろう、悟空と酒呑童子はボスに選ばれなかっただけでも運が良かったな。

 

話しに夢中になっているとあっという間に大きな屋敷にたどり着いた。

 

ここに刀の勇者がいるんだろうか?

 

キョウが扉を開けて奥に進むとそこには 見覚えのある顔をした男が上座に座って酒を飲んでいた。

 

「おお、キョウじゃないか、どうだ?お目当ての本の勇者になれたか?」

「ええ、彼らのお陰で、【アクセル】……また昼から酒ですか?天才術師とも呼ばれた男が」

「良いんだよ、ここは俺の国だからな!そいつらは?」

 

男が俺、悟空、酒呑童子を舐めるように見ると悟ったかのように酒を飲み続けた。

 

見た目は少し若くしたオルトクレイに似てるな。こんな飲んだくれが刀の勇者なのか?ここは聞いてみるか……。

 

「あんたが刀の勇者なのか?」

「あーいや、”自称”刀の勇者だな」

「は?」

「は?」

 

悟空と酒呑童子はポカーンとしてアクセルと呼ばれる男を見つめた。

 

自称?どういう事だ?

 

「いや、言ってる意味が分からないんだか?」

「アクセル、そんな言い方では通じませんよ?」

「あーそうだな、眷属器の刀は持ってはいるんだけどな、選ばれなかったんだよ」

「何!?」

 

え?眷属器の刀は持ってるのに勇者じゃない?どういう事なんだ?

 

「精霊が俺を選んでくれねぇんだ、頭に来たから無理矢理保管してる」

「無理矢理って勇者の武器は保管出来んのか?」

「まぁな!俺はこう見えても魔法は得意なんでね」

 

そう言い放つとぐびぐび酒を飲むアクセルだった。

 

クズいやオルトクレイよりクズ野郎だなコイツは。

 

「今後は龍二さん達と同盟を組んで風山絆を倒す事にしたんですよ。少しは協力する姿勢を見せたらどうです?」

 

キョウはやれやれというか呆れた顔をしてアクセルに言い放った。アクセルは酒瓶をドンと置いて真剣な顔をしてニヤリと笑って答えた。

 

「わーったよ、最初に魔竜か?それとも絆か?どっちを殺す?」

「龍二さんはどうお考えですか?」

 

キョウは俺に向かって尋ねた。

 

出来れば魔物のスペシャリストであり、俺の唯一の天敵の絆を倒したい所だな。

 

「魔竜はなんとでもなる、最初に絆を倒したい」

「なら絆を倒そう、札の勇者は後回しだな」

「何かいい案はあるか?」

 

俺はアクセルに尋ねると、アクセルは不気味に笑い答えた。

 

「ならよ、魔竜と絆を戦わせたらどうだ?元々アイツは魔竜を倒す為に召喚された女だからな」

「うーん、それ良いかもな」

「流石は天才術士と言われただけありますね」

「けどどうする?魔竜は城から動かないぞ?」

「そこはな……俺とキョウが絆と同盟を組むフリをするんだ、それで魔竜の城を攻め込むってのはどうだ?」

「なるほど」

「そこへ悟空と酒呑童子、俺が魔竜の加勢をするフリをすると言う策だな?」

「なら氷の女王も呼んだ方が良いな、大勢の方が警戒されないだろう」

 

酒呑童子は提案すると全員が頷き、話がまとまった。

 

「なら一度俺たちは氷の女王の元に戻る、作戦結構は次の波の終わってからだ」

「次の波は……2日後ですね、私とアクセルは波には参加しませんのでお好きになさって下さい」

「分かった」

 

密会が終わり、俺達は氷の城まで戻って来た。着いた途端、俺達は驚いた。そこには氷の女王自らがリファナに剣術を教えている風景だった。俺達はこっそり覗いて様子を伺った。

 

「リファナ!突きが甘いわよ!」

「はい!」

「もう一度!」

タンペート・ド・ネージュ・ボンナバン(前に飛ぶ猛吹雪)!!」

 

リファナがレイピアでどうやら突き技の練習をしている所だった、俺が見るからにすると壁があれば突き抜けそうな突き技なのだが氷の女王は納得がいかない様で馬用の鞭でリファナの手足を叩いていた。

 

「うわぁ……嫌な所で帰って来ちまったな」

「うわ〜出たよ、女王のスパルタ教育……」

「え?そうなのか?」

「女王は自分が気に入った奴はあーやって鍛えるんだ、無理矢理メスの獣人やダークエルフを連れて来ては鍛えて連れて来ては鍛えて、ほとんどが逃げ出しちまったけどな、今回の場合はいつもより激しいな……」

 

どの世界にもスパルタ教育はあるんだな、俺が学生の頃にもあんな教師がいたもんだ。

 

さらに氷の女王の激が飛び交った。

 

「もっと鋭く華麗に動きなさい!このノロマ!もう一度!」

「はい! コンジュラシオン・クー・ドロア(真っ直ぐ突く氷花)!!」

 

リファナのレイピアは一点集中の突き技でカカシを貫いた。リファナは息切れを起こしながらも女王のスパルタ教育に付き合っていた。それでも氷の女王は褒める事を一切せずリファナを叱り続けた。

 

「この出来損ない! そんなの勇者に届かないわ! こうよ!」

 

リファナの出来が悪いのかは分からないが女王が手本を見せてくれた、女王の動きはまったくブレずいつ突いたのかも分からないスピードでカカシを貫いた。氷の女王の魔法なのか、カカシは氷漬けになって砕け散った。

 

「これ以上はヤボだな、俺は他の魔物達に例の件を話してくる」

「あっなら俺も行く」

「俺も」

 

俺達は生き残っている魔物達に向かって歩いて行った。




リファナが使ってた技の名前はフランス語を散りばめたスキル名です、フランス単語を調べて繋ぎ合わせた感じなので違和感があるかもしれませんがご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話 別世界の厄災の波 (上)

俺が例の件を他の魔物に話した。すると意外と魔竜に対して疑問を抱く魔物達が多かった為か作戦に参加してくれるという話しになった。

 

そして2日後。

 

この異世界に来て初めての災厄の波に参加する、リファナも参加してて女王と一緒にいるらしい。どんな奴が来ようが怖くはないが仲良くなった魔物達がボスにならない事を祈ろう……。

 

そしてその時が来た。

 

《WARNING、WARNING》

 

『厄災の波が発生しました、転送を開始します』

 

「さて、行くか」

「おう、龍二その装備で大丈夫か?」

「武器は問題ないが……その、防具がな」

 

悟空と酒呑童子に指摘されたのはゼルトブルに住み着いてから全く新調してなかった防具だった。俺の防具は冒険者から奪った鎧だったが、数多の戦闘によりボロボロになってあちこち穴が空いていた。

 

「まぁそのうち新しい鎧を手に入れるさ」

「そういやレイブルでドワーフ族を見たか?」

「ドワーフ?そう言えば見なかったなぁ、鍛冶屋を見た訳じゃないけどな……そうか!新しい防具をドワーフに作って貰えるようにスカウトしよう!」

「そうだな、レイブルになら1人くらいいるんじゃないか?」

「俺も新しい長巻が欲しいしな」

「この波が終わったらついでに仲間にするか、メアリーも探さねぇと行けないし」

「そのメアリーってのは誰なんだ?」

「ちょっと野暮用でな……そろそろ転送される行くぞ!」

「「おう!」」

 

ボーン!と木霊した途端俺達は転送された。転送された場所はどこか平安時代の町の様な場所だった。

 

他にも勇者がいたのだろうか?

 

「よし、着いたぞ」

「さて、今回のボスは誰だろうな」

「悟空だったりしてな」

「ふざけんなよ」

「それまでは……コイツらと遊んでようぜ?」

 

俺達は武器を構えてこの異世界の各国の兵士や冒険者達と睨み合いを始めた。

 

「Are you ready?」

「オラァァァァ!」

「死に晒せや人間どもがぁぁぁぁ!」

 

俺達は冒険者達に襲いかかって行き、他の魔物達も俺の後を続いた。

 

「『暗黒剣』!」

「ウッキャァァァ!」

「『鬼火烈火』!」

 

「「ぎゃぁぁぁぁ!」」

 

俺の魔剣と悟空の如意棒で人間達を薙ぎ払い、酒呑童子の鬼火を強化したスキル鬼火烈火で焼き払った。人間達は火だるまになってのたうち回っている所を眺めていた時に、俺はふと思った。

 

そういやグラス、ラルク、テリスはどうしたんだ?この波に参加してると思ったんだけどな……まさか……カルミナ島に向かってんのか?ちょっと人間に聞いてみるか。

 

俺は瀕死の冒険者の頭を掴んで尋ねてみた。

 

「おい、扇の勇者、鎌の勇者はどこだ?」

「ぐっ……誰が貴様なんかに……言うか!」

「早く 言え!」

 

メキメキと右手に力を入れると冒険者はもがき苦しみだして暴れ始めた。

 

「ぎいゃぁぁぁ!」

「どこだ?言え!」

「鎌の勇者様達は……数日前から行方が分かっていない、扇の勇者様も時々いなくなる……がぁぁ!!」

 

なるほどな、つまりラルク達は今俺の世界に行ってる所なんだな?前回の波でグラスが現れた時はこっちから移動してくるという事か……移動手段が俺の地獄門の他にあると言う事か……どんな物を使ってるか気になるな

 

「はな……せ!!」

「あ、わりぃ」

「貴様…ら魔物…なんぞ……我らの若が切り裂いてくれる!」

「誰が来ようが怖くねぇよ あばよ」

 

ゴキャ!!

 

俺はスターブレイカーに変化させて冒険者の頭をリンゴの様に潰した。鎧を物色してみたが、大した物じゃなかったので冒険者を投げ捨てた。

 

「さて……ならこのどさくさに紛れに【メアリー】を探しますかね」

「龍二!どうした!?」

 

悟空が如意棒や拳で冒険者達を殺しながら戻って来た。

 

「おう、悟空、メアリーを探してたんだ」

「メアリー?そう言えばさっき向こうの方でなんかそんな名前聞こえたな」

「マジか!!あっちか!?」

「酒呑童子が向こうで人間達と戦っている」

「よし!こっちは他の魔物達でも大丈夫だろ!行くぞ!」

 

俺と悟空は酒呑童子の所に向かって行った。

 

メアリーがいないと正直女神を誘き寄せる事が出来ねぇ【計画フェイズ2】を開始する事も出来ないからな。

 

そして酒呑童子と合流した俺と悟空は返り血で真っ赤になった酒呑童子を見つけた。

 

「おう龍二に悟空、どうした?」

「酒呑童子、メアリーって女見てねぇか?」

「メアリー?そういやそんな女いたな……」

 

3匹がキョロキョロしていると、女冒険者が魔物達に囲まれており一心不乱に剣を振り回していた。

 

「うわぁぁぁ!来るなぁぁぁぁ!」

「ギャオ!」

「グルルル」

「グォ!」

「龍二、いたぞ、あの女だ」

「アイツ……そうだ!アイツだ!。前回追っかけ回してたからな顔は覚えてんだ」

「おいお前ら、ちょっとどけ」

 

俺達は魔物達を避けてメアリーと対峙した。メアリーの目は恐怖のあまりに涙でメイクのアイシャドーが落ちて目が真っ黒になっていた。

 

流石はヴィッチ2号、みすぼらしい姿だな。

 

「よぉ、メアリー……いやヴィッチ2号」

「言葉……貴方!人間が何故魔物と一緒に人間を殺してるのよ!?」

「よく考えてろよクソ女。この状態で俺が人間だと思うのか?」

「えっ……人間……じゃないの?」

「状況見たら分かるだろうよ。見た目は人間に見えるけどな……どうする?この場で死ぬか?俺の言う通りにするか?どっちか選ばしてやるよ」

「いや!死にたくない!私は勇者様と結婚して優雅に過ごしたいの!」

「ククク……なら着いてこいよ?裏切ったりしたら殺すからな?他の用があるまで俺らのアジトに拘留しておく」

「死ぬよりはマシね……分かったわ」

 

これよりフェイズ2を開始する。

 

龍二は不気味に笑いならがらメアリーを捕獲に成功した。だが……龍二はアイコンを見るまでは今回のボスが誰なのか予想もしてなかった……。一方その頃リファナは、氷の女王と共に俺の天敵である狩猟具の勇者である絆と戦っていた。

 

「見つけたぞ!レイドボス……氷の女王!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 異世界の厄災の波 (中)

今回はリファナ目線メインで書きます!そしてリファナが覚醒します!


俺達が他で人間達と戦っている時に、リファナと氷の女王は龍二達から大分離れた場所で狩猟具の勇者である風間絆と睨み合いをしていた。絆はスリングに変化させ氷の女王に向けて構えていた。

 

「見つけたぞ!レイドボス、氷の女王!!」

「女王様!私も戦います!」

「リファナ、貴女は下がっていなさい」

「ですが!!」

 

リファナは氷の女王に意見すると氷の女王はリファナを睨み付けて氷で形成された氷のサーベルをリファナに向けた。

 

「足手まといなのですよ、良いから下がりなさい」

「おいおい、仲間割れか?まぁ俺にとっちゃ好都合だけどな!」

「狩猟具の勇者、彼女は魔物ではありません、用があるのは私でしょう?こんな雑魚を倒しても特になりませんよ?」

 

氷の女王はリファナをゴミを見る様な目で見ていた。絆も興味がないのかリファナを無視する事にした。

 

「俺も雑魚には興味ないんでね、さっさとレイドボスを倒させて貰うぜ!!食らえ!」

 

絆はスリングで数発弾丸を放った、だが氷の女王はサーベルで全て弾丸を弾いた。

 

「そんな玩具で私を討ちとれませんよ?」

「ならこれだ『飛燕』!!」

 

絆はスリングから包丁へ変化させ飛ぶ斬撃を放った。すると、氷の女王も応戦を始めた。

 

「『シャンデル・ド・グラス・オフェール(氷柱の攻撃)』!!」

 

氷の女王は絆の飛ぶ斬撃と類似して飛ぶ突き斬撃を飛ばした、すると斬撃同士がぶつかり合い斬撃の破片が辺りに散らばった。氷の女王の斬撃の破片は地面に着いた瞬間凍り付いた。

 

「何!?凍り付いた!?」

「何を驚いているんです?私は氷の女王ですよ?狩猟具の勇者はその程度ですか?」

「へっ言ってくれるじゃねぇか……アンタ、釣りは好きかい?」

「釣り?触った途端川が凍ってしまうのでした事ないですね」

「そいつは 良かったな!!」

 

そう言い放った絆は今度は包丁から釣竿に変化させていた、氷の女王はいつの間にか釣り糸で拘束されていた。

 

「これは釣り糸ですか?」

「ああ、そうだよ」

「釣竿で戦うつもりですか?舐めるのもいい加減に──」

「オラよ!疑餌倍針!!からのぉ……一本釣りぃぃ!!」

 

絆は氷の女王をカツオを釣り上げた様に振り回し地面に叩きつけた。

 

「がっ……はっ……!!」

「もういっちょ行くぜぇ!!オラァァァ!」

 

絆はさらに追撃して今度は反対方向の地面に叩きつけた、氷の女王はダメージにより吐血した。

 

「ぐはぁっ!……はぁ……はぁ……なるほど、やりますね」

「このスキルは魔物には効くんだよ」

「女王さまぁ!」

「リファナはそこに居なさい!」

 

リファナはレイピアを抜いて女王に向かって駆けたが落とし穴の様なモノに引っかかり動けなくなった。

 

「『一式・落とし穴』、雑魚はそこで見てな!オラァァァもういっちょ一本釣りぃぃ!」

「女王さまぁぁぁぁぁ!」

「調子に乗るんじゃない『イスベルグ・ローズ(氷山の薔薇)』!!」

 

拘束された氷の女王の周りに青い薔薇の花びらが舞散った花びらが絆の肩に触れた途端触れた肩が斬られたように傷着いた。

 

「なっ!?薔薇の花びらが触れただけなのに斬られただと!?」

「その薔薇の花びら自体が斬撃なのです。甘く見てると死にますよ?」

「ご忠告どーも……アンタは足元見てみな?」

「?」

 

氷の女王は指を刺された自分の足元の所を見てみると辺り一面虎挟みだらけだった。

 

「いつの間に……」

「動いたら……どうなるか分かるか?」

「ええ、大方目星は着いてますよ」

「黙って食らった方が良いぜ?この弾丸をよぉ!!」

 

絆は再びスリングに変化させて氷の女王に向けて放った、氷の女王もサーベルで弾いた。

 

「ほらほらぁ!まだまだ!行くぜぇ!!」

「くっ……」

「女王様!危ない!」

 

氷の女王はサーベルで弾き切れずバランスを崩してしまい虎挟みに両足を挟まれてしまった。

 

「しまった……!」

「これで動けねぇなぁ……そろそろトドメを刺させてもらうぜ」

「女王様!今行きます!」

 

リファナは落とし穴から脱出して女王の元へ掛けて行った……。

 

「邪魔くせぇな、ならてめぇから倒す!『狩猟技・血花線』!!」

「リファナ!!」

 

絆は氷の女王からリファナに攻撃目標を変えた。すると氷の女王は慌ててリファナを自分の体を盾にして絆の攻撃から守った……。そしてリファナと氷の女王は倒れ込んだ、氷の女王の背中は無惨にも深く切り裂かれていた。

 

「あぁぁぁぁっ!」

「女王……様……?」

「おっ?こりゃラッキーだわ、あんだけ邪見にしてたのに守りやがった」

「リ……ファ……ナ……逃げ……なさい」

「そんな……女王様!なぜ!?何故私を庇ったんですか!!」

「ふふふふ……可愛い娘の様なものでしたから……ね……」

「娘……?」

「私の……娘は……人間に……殺されました……生きてれば……貴方位になってたはずです……貴方を初めて見た時……娘が生き返ったのかと思ったくらいそっくりでした……」

「そうだったんですか……」

「今まで厳しくしてしまってごめんなさ……い……こんな私を許して」

「そんな……死ぬみたいに言わないでください!」

「ダメージが思った以上に大きいのです……もう……助からない」

「えっ……そんな……」

 

すると氷の女王はリファナの顔を撫でながら呟いた。

 

「リファナ……。私を……剣に……しなさい」

「え?」

 

リファナは言われた事に戸惑った、武器にしろという言葉が理解出来なかった。

 

「落ち着き……なさい……龍二から聞きました……貴方は”魔法剣士”なのでしょう?なら私を剣に変えれます。娘のような……貴方なら…私を使いこなせるでしょう……さぁ……唱えなさい」

「うっ……うっ……」

「魔法剣士が泣いて……どうする……のです?しっかり、龍二を……魔王龍二を……支えてあげなさい……」

 

リファナは涙をボロボロこぼしながら氷の女王の体に手を置いて唱えた。

 

「力の根源たる……魔法剣士……リファナが命ずる……。今一度理を……読み解き……彼の者を刃に変えよ……」

 

リファナが唱えると氷の女王は光に包まれて行った、そしてリファナの手には氷の刃に白銀の柄が施されており雪の結晶のチャームが付いたレイピアが手にされていた、刃からはおびただしい冷気が出ていた。

 

「なんだよその武器は……なんなんだよぉ!!」

 

リファナは立ち上がって絆に氷のレイピアを向けた。

 

「女王様。私、戦います! 『ジーヴル・プリュ・フォール(最強の氷花)』!!」

 

リファナは雪の結晶に包まれて行き、辺り一面を氷漬けにした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 異世界の厄災の波 (下)

リファナが氷を一面に広げていき雪景色が見渡せるようになった、絆は寒いせいかカタカタと震え始めていた。

 

「どうしました?震えていますよ?勇者とあろう者が?」

「だま……れ!! 食らえ!『飛燕』!!」

 

絆が飛ぶ斬撃を放った瞬間リファナの目の前には氷柱が現れて飛ぶ斬撃からリファナを守った。

 

「届かねぇだと!?」

「残念でしたね、今度はこちらから行きます!『 クリスタル ドゥ グラス(雪の結晶)』!!」

 

リファナが氷のレイピアをヒュンと振り払うと雪の結晶で形成された斬撃が放たれた、絆は紙一重で回避したが髪の毛の毛先が凍り付いた。それを見た途端ゾッとしたような顔をして青ざめていた。

 

「当たってたら氷漬けだった……」

「そうでしょうね。まったく、すばしっこい人ですね」

「へっ言ってくれるね、あんた魔物じゃないだろ?なんで魔物になんか手を貸すんだ?あんた程の実力者ならいい仲間になれただろうに」

 

絆はリファナに武器をスリングに変化させて悲しそうな顔をしながら構えた、絆は口は悪いが根っからの悪者ではないようだった。

リファナはクスクスと笑って答えた。

 

「ふふふ、貴方の仲間?バカバカしい。私は亜人、私の世界の方では酷い差別がありました。人間は亜人を奴隷にして快楽を得る生き物なのだと思ってましたよ、今度は忌々しい人間達が奴隷になればいいんです!」

「人間を奴隷にだと?そんな事許される訳ねぇだろ!」

「なら何故あなた達勇者は奴隷制度を撤廃させるように動かないのですか!?貴方方が動けば済む話ですよ!?頼りにならないからこうして私達は足掻いてるんです!魔王……いえ、龍二様はあの人なりに”色々”考えて動いてくれています!」

「なら魔竜を倒すまで待ってくれ!必ず果たして見せる!」

「恩師を目の前で殺しておいて何を言ってるんですか!?そんなの信用できる訳ありません!」

 

リファナはレイピアを絆に向けて心の叫びを絆に全てをぶつけた、絆は何も言い返せなくなり顔を曇らせていた。

 

「勇者がいなくてもこの世界はなんとかなります、いえ、龍二様と共にさせてみせます!私達の邪魔をしないで下さい!」

「へっ……悪にも悪なりの正義があるって訳か……なら勇者としてそれは見逃せねぇな、あの男は今生かしておくととんでもない魔物になる!この世界にいる内に倒させてもらう!」

「あの方はこの世を統べる魔王になるお方……邪魔はさせません!」

「なら……お前を倒す!」

 

そう言い放った絆は魔力を最大に上げて青いオーラの様なものを浮かび上がらせた、リファナも対抗して雪の結晶と冷気を浮かび上がらせレイピアを構えた。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

2人は激しくぶつかり合い物凄い衝撃波を生み出した、2人の周りにはクレーターが出来上がりその中で激しく攻防戦を繰り広げた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

リファナのレイピアと絆の包丁が激しく金属音を立てて頬や腕や足にかすり傷を作りながらも攻撃を止めずにいた。

リファナの突きをかわした絆はリファナの腹を殴った、リファナも負けじと絆に顔面に膝蹴りを繰り出した。

ここまで来ると女同士の戦いとは思えない程の戦い方だった。

 

「『虎挟み!一式!二式』!『狩猟技・血花線』!」

「『『ネージュ・アタックコンポゼ!』(雪の複合攻撃)』!!」

 

絆の虎挟みを足に挟みながらもリファナは5連続の突き技を繰り出して絆を追い詰め始めた。

 

2人はゼーゼーと息を切らしながらも武器を離さず睨み合っていた。

 

「はぁ……はぁ……他の……魔物達より……つえーな……はぁ」

「はぁ……はぁ……はぁ……あなたも……」

「そろそろ……決着……付けようぜ」

「はぁ……はぁ……そう……ですね」

「次で……最後だ」

「ええ……私も……はぁ……はぁ……」

 

2人はよろよろと武器を構えて最後の力を振り絞った。

お互い最後の技を繰り出しす様だ。

 

「泣いても笑っても……最後だ……あんた……名前は?」

「はぁ……はぁ……ふぅ……魔法剣士・リファナです」

「そうか、俺は狩猟具の勇者、風山絆だ」

「勝つのは……」

 

「「私だ!俺だ!」」

 

絆とリファナはお互いに走りながら最後のスキルを放った。

 

「『解体技・鱗落とし』!!」

「『コンジェラシオン・クー・ドロア(氷結を真っ直ぐ突き刺す)』!!」

 

互いに強力なスキルを放ち合いすれ違った……最初に動いたのは絆だった、絆は右手で持っていた包丁を地面に落とした。絆は左肩に大きな風穴を空けられていた。リファナは頬を少し切り付けられただけで済んだ。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「私の……勝ちです……!」

「傷口が……凍り付いた!!」

「氷の女王様から受け継いだ最強の技の1つです!」

「くっそがぁぁぁぁ!こんな所で……死んでたまる……か!」

 

絆はポケットから薬を取り出して飲み、スキルを再び繰り出そうとしていた。

 

「リファナ……次は……必ず倒す!」

「負け惜しみですね、次は貴方を必ず殺します」

 

そう言い放つと絆は時間切れを起こして転送されて行き空もワインレッドから普通の青空に戻って行った。リファナも戻されて俺達と合流した。

 

「リファナ!無事か!?」

「龍二……様……!?」

 

バタリと倒れたリファナは俺に抱き抱えられた。

 

「誰にやられた!?」

「狩猟具の勇者と……戦闘して……なんとか撃退しました……」

「氷の女王は?氷の女王はどこだ!?」

「リファナちゃん!何か知ってるんだろ!?」

 

酒呑童子と悟空に尋ねられたリファナは氷のレイピアを見せた。

 

「氷の女王様なら……ここに……」

「レイピア……まさか!?」

「はい……狩猟具の勇者によって殺されました……。ですが、私が氷の剣に変化させました」

「そうだったのか……助けてやれなくてごめん……」

「大丈夫……です……女王様は魔具なっても……私を……守って……」

 

話してる途中でリファナは気を失った。

 

恐らく全ての魔力とSPを使い果たしたのだろう。

 

俺はリファナをおんぶして拘束されたメアリーを連れて氷の城に戻って行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 謎の暗殺者

波の尖兵の設定をまた変えます。


絆達との激闘を終えた俺達は氷の女王の城に戻り体を休めて数時間が経った。俺は悟空達を休ませるためにヴィッチ2号ことメアリーを連れて一旦自分の世界に戻る事にした。俺は地獄門を発動させ門を開けた。

 

「死なれたら困るんでな、付いてきてもらうぜ?」

「ええ、死ななければ何処へでも付いていくわ」

「結構」

 

俺とヴィッチ2号は再び元の世界に戻った。俺はゼルトブルのアジトに戻りトゥリナ達に顔を合わせた。

 

「おう、ただいま」

「龍二!?どうしたのじゃ!?」

「我が王よ、向こうの世界はどうでしたかな?」

「おかえり……なさい……龍二……様」

「おや?龍二さんおかえりなさい」

「ん?なんだ?その人間は?」

「おかえりー꙳★*゚」

「えっ……えっと……」

 

メアリーは大勢の魔物達に囲まれて借りてきた猫の様に怯えていた。

 

そりゃこれだけの魔物に囲まれたらそうなるか。

 

「コイツが【フェイズ2】の材料だ」

「ほぅ、この子が?」

「ヴィッチはどうだ?順調か?」

「はい、あれから何度か死にかけましたが回復させてました」

「よろしい」

「リファナは?リファナはどうしたのじゃ!?」

「大丈夫怪我をしたけど無事だ、向こうの世界で休ませている」

「そうか……」

「まだやり残した事もあるから俺は戻る、何か変わった事はないか?」

 

俺は回復薬を補充しながらジキル博士に尋ねた。

 

「そうですね。バルバロさんがコボルト族を鍛えながら【サハギン族】を配下に加えて来ました。それと、噂で聞きましたがカルミナ島の活性化が始まったそうです、それで四聖勇者とその一行がLv上げに向かったそうですよ。あっ、後、余談ですが、七星勇者が死体で発見された事が知られてしまいましたね」

 

サハギンとは、水中に棲む半魚人のモンスターである。人間様の完全な直立二足歩行をする者や、前屈した不完全な直立型の二足歩行をする者がいる。群れの長になると、銛やトライデントなどの武器を持つ者もいる。

 

ジキル博士は更に情報を付け加えた。

 

「バカな勇者達ですね。本格的に活性化するのはまだ先のはずなのに」

「えっ?そうなのか?」

「ええ、その時は島の中心に【極上レア】のモンスターが現れるんです。どんなモンスターかは確認出来ませんでしたが、只者ではないかと」

 

俺は腕組みをして考え込んだ。

 

カルミナ島か、魔竜を倒したら悟空と酒呑童子の顔合わせがてらみんなでその”極上レア”モンスターに会いに行ってみるか、もしかしたら仲間になってくれるかも知れないな。

 

「わかった、本格的に活性化するまでには戻ってくるようにするよ、コッチの世界にはドワーフ族がいるらしいからスカウトしてくる。武器生産をして貰おう」

「ほぅ……ドワーフ族ですか。」

「それと新しい仲間を紹介したいしな」

「それは楽しみですねぇ〜」

「そんじゃ……この女を頼むぞ?」

「はい、仰せのままに」

「メアリー、コイツに付いてけ」

「分かったわ」

 

ヴィッチ2号はジキル博士に連れられて地下室に入って行った。

 

これから地獄を見るとは知らずに……くくく……バカな女だ。

 

「んじゃ、そろそろ戻るわ、トゥリナ、ドラグリア、留守を頼むぞ?」

「「了解じゃ」」

 

俺は再び地獄門を発動させて異世界に戻った、戻った時には既に夜になっていた。休んでいる仲間に悪い為このままレイブル国に向かった。

 

「あの飲んだくれなら今の時間でも飲んでいるだろうな、絆の暗殺計画を立てねぇとな……」

 

ペンペン……ペンペン……ペケペケペン

 

「ん?なんだ?」

 

俺は月夜に照らされ鳴り響く街を見渡した、すると奥にローブを纏った何者かが三味線を薄暗い中弾いていた、男か女すら確認出来ない程顔を隠していた。

 

「なんだ?あいつは……?」

「…………」

 

ペンペンぺぺぺ……ペン!

 

三味線の音が鳴り響いた瞬間、俺の胸が縦に斬られた。

 

「なっにぃぃぃ!?」

 

俺は直ぐに傷を再生させ、魔剣ストームブリンガーを構えた。

 

奴は三味線を弾いていただけなのに斬られただと!?一体どんなスキルなんだ!?

 

ベンベンベベベベン!!

 

「オラァ!」

 

俺が魔剣ストームブリンガーで見切って振り払った途端、激しい金属音が鳴り響いた。

 

「金属音だと!?」

「………………」

 

ベンベン……ギュルルルル……ベン!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガキンガキンと刀を弾く様な音を立てながらローブの奴に向かって行った。

 

「ウェポンチェンジ!!スターブレイカー!! オラァ!」

 

俺はストームブリンガーからスターブレイカーに変化させ、棘鉄球を蹴り飛ばした。

 

「!?」

 

ギュルイン!!

 

三味線を持った奴は激しく弾き衝撃波を発生させてスターブレイカーを止めた。今まで使っていてスターブレイカーの鉄球を真正面から受け止められたのは初めてだった。

 

「うそだろ?、マジかよ」

「………………」

 

ギュンギュルギュンギュン!!

 

ローブの奴は三味線で鈍い音を出して衝撃波を3つ発生させて俺に直撃させた。俺は再びストームブリンガーに変化させた。

 

「ぐっ、なんだコイツ!?勇者かっ!?」

「ニヤリ……」

 

ベンベンベンベンベンベンベンベンベンベンベンベン!!

 

気付かれたと分かったのか、男は更に激しく弾き始めた。

 

俺にダメージを与えれるのは絆以来いないが、コイツは勇者の可能性があるな……。

 

「けど、調子に乗るなよ!!『ドライファ・ダークネス・ヘルファイア』!!」

 

俺はブチキレて黒炎の大火球を謎の勇者らしき男に向けて投げつけた。

 

「!?」

「くたばれぇぇぇ!!」

 

黒炎の大火球は大爆発をした、謎の勇者は爆風で吹き飛ばされた。瓦礫に埋もれていたが、直ぐに立ち上がって退散して行った。

 

「はぁっ、はぁっ、なんだったんだアイツは?」

 

「「龍二!一体どうしたんだ!!」」

 

さっきの爆発音を聞いたキョウとアクセルが駆けつけて来た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話 狩猟具の勇者死す?

俺が謎の暗殺者を追い払ったその後、キョウとアクセルの屋敷に入り事態を説明した。アクセルに奴が何者なのか尋ねた。

 

今後の作戦に支障が出る可能性がある早いうちに対応せねばならい……。

 

アクセルは酒を飲みながら答えた。

 

「あの三味線を使った奴なら心当たりがある」

「そいつの名前は?」

「【楽器の勇者・宮地秀正】って奴だ」

「宮地秀正……けど勇者の武器は破壊されないはずじゃ?」

「恐らくだが……ドッペルゲンガーのスキルを使ったに違いない」

「ドッペルゲンガーか……なら合点が行くな」

「秀正は後回しだ、今は絆の暗殺が最優先だな」

「ああ、キョウ、何か策はあるか?」

 

俺はキョウに尋ねた、するとキョウは地図を広げて説明を始めた。

 

「このレイブルから東に行くと奈落の滝壺と呼ばれる滝がある。そこに数匹の魔物をうろつかせてその滝壺をアジトと思わせ、隙を見て滝壺に落とす」

「なるほどな、なら悟空、酒呑童子、リファナ、その他諸々の魔物を連れて行こう、で?いつやる?」

「明日の明朝にやろう、この辺の明朝は霧が濃くて都合がいい」

「良し、ならそうしよう」

「夜中に悪かったな」

「別に構わないさ、なぁ、アクセル。この近くにフリーのドワーフ族はいないか?」

 

龍二はアクセルにドワーフ族の行方を尋ねた、今後はGゴブリン達の武器を奪うだけでは到底間に合わない、武器を作ってもらう鍛治職人は必須だ。

 

「ドワーフ族?うーん。なら、この街裏に行ってみたらどうだ?」

「裏?こんな幕末見たいな街並みにもスラム街見たいな所があるのか?」

「まぁな。ドワーフを雇う程潤っている店はあんまりないからな」

 

なら勇者であるお前が奔走するべきだろ、さすがはクズ2号だな。

 

「まぁどこの世界にも不況は付き物か、絆を始末してから行ってみるさ」

「なら明日に備えましょう」

「分かった、キョウ、俺は悟空達を連れてくる」

「はい、分かりました」

 

────────────────────────

 

翌日、俺は悟空達を連れて奈落の滝壺と呼ばれた所にやってきて霧の濃い中、俺達はアジトの様に見せ掛ける為に芝居をしていた。

 

「龍二様……寒いです!!」

「いくら芝居とはいえ……キツイな」

「バレなきゃいいけどよぉ……」

「キョウ達が上手くやってくれるさ、ん?どうやら来たみたいだな……滝の裏に隠れよう」

 

「「おう」」

「はいっ!ヘックシ!」

 

アクセル達の姿を確認した俺達は滝の裏に隠れると、キョウとアクセルは絆を呼び出して奈落の滝壺にたどり着いた。絆は辺りを見渡していた。

 

「こんな所にアイツらはアジトにしていたのか?」

「ええ、災厄の波に参加せず調べた甲斐がありましたよ。あの滝の裏が洞窟になっており、氷の女王が創った前線基地があります」

「昨日の夜から魔物が数匹確認出来た、その中には……孫悟空と酒呑童子もいたぞ」

「アイツら……どうする?3人で仕掛けるか?」

「増援を呼んだら気取られる可能性がありますからね、我々だけでやりましょう」

「分かった、降りられそうな場所を探そう」

「ああ、そうだな」

「見つからない様に気を付けて」

「俺に任せとけ」

 

絆は体勢を低くして滝を覗こうとした瞬間、アクセルは刀を抜いた。滝の轟音で足音はかき消されており、絆は気づかなかった。

 

「絆」

「なんだ?」

 

ズバッ!!

 

アクセルは振り向きざまに絆を斬った。斬られた絆は悲鳴をあげながら膝を付いた。

 

「きゃぁぁ!アクセル!?お前、なんのつもりだ!?」

「悪いな絆、お前がいると邪魔なんだよ」

「てめぇ……裏切りやがったな!?」

 

絆がスリングを構えると背中から爆発を起こした。

 

「ぐぁ!?キョウ!!お前までか!?」

「すいませんね、貴方が邪魔なのですよ」

「くっそぉぉぉぉ!!」

「じゃあな絆……死ねぇ!」

 

アクセルが刀を振り落とした瞬間絆は紙一重で刀をかわせたがバランスを崩して足を踏み外し、滝壺に落下していった。

 

「やりましたね」

「ああ、この滝ならまず助からない」

「ふふふ、そうですねぇ……龍二と合流しましょう」

 

 

絆は激流で自由を奪われ水中の岩に何度も顔や体を打ち付けた。運良く流れに乗った絆は川に流されながら沈んで行った……。

 

「キョウ!アクセル!殺ったか!?」

「ええ、まず助からないでしょう」

「まんまと騙されたぜ?」

「レイブルに戻ろうぜ」

「ああ、分かった」

 

俺達は霧が晴れないうちにその場を後にした。すると、奈落の滝壺から数キロ離れた岸に絆は流れ着いていた。するとそこへ……バックに白い水晶が付いた男が絆を抱き抱えて時空に穴を開けて立ち去る所だった。俺は予定通りレイブルに戻り鍛冶屋巡りをしていた、すると店の店主であろう男に無理矢理店から追い出されるドワーフ達の姿を目の当たりにした。

 

「ったくウチでは雇わねぇって言ってるだろうが!消えろ!ドワーフ!ったく魔物よりタチが悪ぃ」

「勘弁してけろ!オラ達は仕事をしねぇと食って行けねぇだ」

「店主さんおねげーだ!仕事を分けてけろ!」

「おねげーだ!」

「あーうるせぇ!とっとと失せろ!」

 

店の店主に殴り蹴飛ばされたドワーフを起こした俺は、ドワーフ達に声をかけた。

 

「おい、あんたらどーしたんだ?」

「仕事がねぇとオラ達……食ってけねぇだ……」

「あんたら鍛治職人なのか?」

「んだんだ!オラ達は鍛治職人だ!」

「なら俺のアジトで仕事をしてくれないか?食いぶちくらいは払えるぜ?」

「ホントけ!?旦那!?」

「ああ、同じ剣や防具を大量生産するだけだぜ?大丈夫か?」

「任せてけろ!オラ達は腕は確かだ!」

 

俺はクスクスと笑ってドワーフ達を立たせた。

 

ドワーフが一気に3人もスカウト出来た、こんないい条件はない

 

「歓迎しよう、付いてきてくれ」

「「「分かった!旦那さん!」」」

 

俺は地獄門を発動させてゼルトブルのアジトに案内してGゴブリン、オーク、コボルト、サハギンの剣や防具などの生産を任せた。

 

くくくく……残りは魔竜だけだ……。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 魔竜の城へ

原作の魔竜の見た目をガラリと変えます!


俺はその後ドワーフの鍛治職人達をゼルトブルのアジトへ案内させGゴブリンの装備作成の依頼を頼んだ。ジキル博士によるとドワーフ達は喜びながら作業に取り組んだらしい。

 

その後、俺達ははキョウ達と合流して魔竜の城へ向かう作戦を練っていた。

 

「最初に酒呑童子、悟空、俺、リファナの4人で魔竜に会いにいく、そして襲撃すると見せかけて共に魔竜を討ち取る。でいいな?」

「ええ、それで行きましょう」

「龍二が集めた魔物達はどうする?」

「…………他の魔物は増援として呼ぶつもりだ」

「そうですか、次の波は3日後なのでその前に魔竜を倒しましょう」

「おう、悟空、酒呑童子、リファナ、行くぞ」

「「おう!」」

「はい!」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを背中に背負い酒呑童子と悟空の案内により魔竜の城へ向かって行った。その道中。

 

「ジメジメしてくせェな、これが死者の墓場か?」

「ああ、この辺にはゾンビがウロウロしているからな、噛まれるなよ?」

「へぇ……ゾンビねぇ……」

「龍二様、あそこにその……ゾンビさんがいますよ?」

 

龍二はリファナの指差す方向を向くとボロボロの服を身につけたゾンビがフラフラと歩いていた。

 

「アア……アア……」

「おー、○イオ○ザードっぽいな」

「はい?何を言ってるんですか!?」

「おいおい、ここらのゾンビは魔物だろうが、人間だろうが噛み付く」

「ア”ァ”ァ”ァ”ァ”!!」

「おい」

 

ゾンビが俺の腕に噛み付こうとした瞬間ギロリとゾンビを睨み付けると、ゾンビはピタリと止まった。

 

「なに!?」

「あー、知らないんだっけ?俺は下級の魔物までなら操れんだよ」

「そうなのか!?」

 

悟空は驚きを隠せず、俺に尋ねた。

 

「証明してやるよ、おいお前左腕を出せ」

「アア……」

 

ゾンビは俺の指示に従って左腕を出した。

 

「こいつは……すげぇや!!」

「あっそうだ!ついでに」

 

俺はポケットから注射器を数本取り出した、リファナは不思議そうに見つめた。

 

「龍二様?注射器なんてどうするんですか?」

「コレ?サンプルを採取すんだよ、ジキル博士に渡してカスタムして貰うのさ。コボルトやサハギンに使ったら強くなりそうだからな」

「なるほど、勉強になりますね!」

「よし、サンプル回収完了っと。お前もう行っていいぞ?」

「アア……」

 

ゾンビは頷きフラフラと歩き始めて俺達から離れて行った。俺達はその後、魔竜の城にたどり着いた。

 

「ここが……魔竜の城か?随分ハイカラじゃねぇか、もう少しボロボロのイメージがあったよ」

「そうか?魔物達を奴隷にしてるからな、修復させてるからそう見えるんだろ?」

「魔物を奴隷に?普通ここは人間だろうよ」

「魔竜は人間を恨んでいるからな、奴隷でも嫌なんだろうよ」

「フッ、しょうもねぇヤツだな」

「さっお喋りはここまでだ、作戦通りに行こう」

「はい!」

 

4人は作戦を開始する為に酒呑童子、悟空の後を追うように歩き始めて魔竜がいる部屋に入って行った。

 

「魔竜様、酒呑童子です失礼します」

「同じく孫悟空です、失礼します」

 

悟空達の後に入って行くとそこには全身黒と紫色の体色、肩には翼を守るようにそびえ立つ翼脚があり、巨大な玉座に横たわる大きな竜がいた。

 

「ご苦労じゃ、どうじゃ?我の宿敵勇者達を殺したのかえ?」

「はい、後残りは四聖勇者の札の勇者と鎌と扇の眷属のみです」

「ホホホホ……大義ぞ、その者達は何者かえ?」

 

魔竜は俺とリファナの方を見て悟空と酒呑童子に尋ねた。

 

「コイツらは異世界から来た魔物の龍二と、魔法剣士のリファナと言う者です」

「魔竜様、この者達のお陰で狩猟具の勇者を倒す事が出来ました」

「なんと!?あの絆を倒したとな!?」

 

魔竜は飛び起きて俺に近付いて来てクンクンと匂いを嗅がれた。

 

「ふむ、なかなか強そうじゃの。よし、我の親衛隊にしてやるぞえ?」

「はぁ……ありがとうございます」

「お主、名をなんと申すのじゃ?」

「福山龍二と言います」

「リファナと申します」

 

え!?さっき名前言ったよね!?

 

悟空と酒呑童子は呆れていた。

 

「ふむ、覚えたぞ龍二とリファナとやら、この竜帝の親衛隊になるのじゃ」

 

は?親衛隊って何?要は用心棒になれって事だろ?

 

俺は冷静を装って返事をした。

 

「はい、分かりました」

「はい」

「よろしい、ホホホホ親衛隊にさせるのじゃ光栄と思え?寛大な心を持つ所は我のいい所ぞ?」

 

「「はい……」」

 

俺とリファナは膝をつきながら酒呑童子達にアイコンタクトを送った。

 

(今だ!!酒呑童子!!)

(あいよ!)

 

「おっと、忘れておった。龍二に紹介したい者がおるのじゃ」

「はい?」

 

なんだと!?こんなの予定にねぇぞ!?

 

俺は一瞬動揺してしまったが、直ぐに冷静対応した。

 

「宮地秀正……出て参れ」

「秀正……?」

 

なぁにぃぃぃ!!?

 

魔竜が呼び出したのはレイブル国で襲った男とされている勇者、楽器の勇者こと……宮地秀正という男が現れた。

 

「どーも、”反乱者”の魔物……龍二さん」

「な……に?」

「龍二よ、秀正の言う通りなのかえ?」

「ちょっと待って下さい魔竜様、我々が反乱者と言う証拠は?」

 

「証拠ならありますよ?龍二さん」

「「!?」」

 

俺が後ろを見るとそこには、キョウとアクセルが武器を持った状態で立っていた。

 

「キョウ!?」

「アクセルさん!?」

「てめぇら……裏切りやがったな?」

「くくくく……魔物と手を組むと思ったのか?バカな奴らだ」

「絆に重症を負わせた上に始末出来たのですからね。あなた方には感謝していますよ?」

「ちっ……」

「こやつ等の言う通り、やはり貴様らは反乱者の様じゃの?ならば容赦はせぬぞ!!グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

魔竜は大きく吠え、翼脚と翼を広げて俺達を威嚇し始めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 魔竜vs龍二

魔竜が戦闘態勢に入った途端、俺は魔剣ストームブリンガーを構えて酒呑童子達に言い放った。

 

「酒呑童子!悟空!リファナ!あの裏切り者達を任せたぞ!」

「わかった!悟空、俺はキョウを殺る!」

「了解、俺は秀正を殺る」

「なら私は……アクセルさんを倒します!」

「お前ら……気をつけろよ!」

「我に逆らった事を地獄で後悔するがよい!!」

 

魔竜は荒々しい咆哮を上げた、悟空達は俺の邪魔にならない様に城の外へと散らばった。

 

「なんじゃ?、お主1人で我と戦うつもりか?」

「ああ、お前なんぞ俺一人で十分だ」

「ほぅ?大した度胸じゃの。ならばゆくぞ!!『ダークブレス』!!」

「『ドライファ・ダークネス』!」

 

俺と魔竜の闇属性の魔法とスキルがぶつかり合った、その衝撃波により魔竜の城のあちこちが破壊された。その後、俺は魔剣ストームブリンガーで魔竜に襲いかかり魔竜の頭を斬りつけた、そして魔竜は翼脚を拳の様に握り、着地寸前の所を殴り飛ばした。俺は壁にめり込み血反吐を吐いた。

 

「ぐっはぁっ!!ゲホッゲホッ!!」

「ホホホホホホ、大した事ないの」

「ゲホゲホ……うるせぇよこのクソ竜がぁ…」

「まだそんな減らず口を叩けるか。ならば、これはどうじゃ?『ダーク・ミスト』!!」

 

魔竜は翼の翼膜から薄紫色の鱗粉の様な物を振りまき始めた。その鱗粉は辺りに霧の様になった。

 

「なんだこりゃ?」

「この鱗粉は狂竜霧……吸い続けたら命を奪う猛毒だ!!グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

魔竜は翼脚で俺を殴り続け、腹や顔を休む暇なく殴り続けた。

 

「ぐっはぁっ!!」

 

しまった!思い切り吸っちまった!

 

思い切り鱗粉を吸ってしまい、俺の体力は徐々に減って行った。

 

「随分吸ったようじゃの?どうじゃ?気分は?」

「くっ……倒れる前に倒すまでだ……この世界を……俺に……寄越せぇぇぇ!!」

 

俺は魔竜に魔剣を再び構えた、そして魔竜は俺の攻撃を翼脚で防いだ。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ぬっぅぅ!?」

 

シュイン!!

 

すると俺に異変が起きた、俺の体から紫色のオーラが纏い始めた上に、俺の攻撃力が大幅に強化された。

 

「なんだ!?急に体が軽くなったぞ!?」

「なんじゃ!?こやつ……何故こんな力が!!?」

 

魔竜は翼を広げて飛び上がって俺から距離を取った。その隙に俺は自分のアイコンを確認した。

 

『狂竜毒強化───特殊状態異常、魔竜の毒鱗粉の毒を吸い過ぎると起こる状態異常です。相手を攻撃し続けると毒が裏返り、吸った本人の潜在能力と戦闘力が大幅に強化されます。』

 

※ただし、数分間なにもせずに硬直状態でいると大幅に体力と魔力を下げてしまいますので注意して下さい※

 

「はぁ……はぁ……。なるほど、そういう事か。理解したぜ」

「ぬっぅぅ!」

「さぁ反撃開始だ、オラァァ!!」

 

俺は反撃を開始した、次々と魔竜の鱗や甲殻を破壊していった。

 

このまま殺しちまうの良いが、コイツでスキルを解放するのも悪くねぇな……よし、弱ったフリでもするか。

 

「ぐっはぁ!!ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!!」

 

びちゃびちゃ!

 

俺は突然、血反吐を吐いて膝を着いて演技をした。

 

「脅かしよって!ようやく鱗粉の毒が回ったか。ならこのまま死ぬがいい!『ダーク・フレア』!!」

 

魔竜は口からドス黒い黒炎の球体を圧縮させて巨大なビームの様な物を発射し、俺は直撃を受けて炭の様になった。

 

「ふんっ、ようやく片付いたか!!」

 

かかったな、馬鹿め!

 

『魔竜により殺されました』

『500000EXP獲得』

『Lv300になりました』

『特別スキル・吸収を解放しました』

 

ん?吸収ってなんだ?何を吸収出来るんだ?

 

『竜魔法を解放しました』

『竜魔法・ダークミストを解放しました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

俺の体はみるみる内に再生して行き体を起こした。俺は体をゴキゴキと体を鳴らし、体のホコリを取り払った。

 

「あー熱かった」

「なっ、なんじゃと!?一体何が起きたのじゃ!?」

「残念だったなぁ。俺は不死身なんだよ」

「ふっ不死身じゃだと!?」

「ああ、俺は不死身の呪いにかかってんだよ。いくらお前がどんなに強かろうが俺は何度でも甦る」

「そっそんなバカな!?この世界で最強の魔竜が勝てぬとな!?」

「残念だったなぁ!!フハハハハ!」

 

厨二病の様に高笑いをする俺を目の当たりにした魔竜はガクガクと怯え始めた。

 

「ありえぬ!ありえぬ!この世界を支配するのは我だ!我が負ける筈がないのだぁぁぁ!!」

 

とち狂った様に魔竜は俺を丸呑みにした。だが、更に強くなった俺は魔竜の腹の中で魔剣ストームブリンガーを振り回した。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!やめてぇぇ!!」

「死ねぇ魔竜ぅぅ!」

 

俺は魔竜の内蔵を切り進んで行き、暴れ回った。魔竜はのたうち回りゴロゴロと転がり始める。

 

「なんでもするからぁ!あなたに降伏しますからぁ!なんでもしますからぁ!!もうお願い!もう体内を切り刻むのはもうやめてぇ!!」

「なんでもすんのか?あぁん?」

「します!しますから!この際あなたの女にでも奴隷にでもなにでもなりますからぁぁ!」

 

その言葉で俺はピタリと止まった。

 

ん?女にでも奴隷にでもなるだと?

 

「何でもするんだな?なら、俺に吸収されろ」

「え……?吸収?」

「おう、さっき『吸収』ってスキルが解放された。何を吸収出来るか確認したらよぉ……お前を吸収出来るってよ?」

「わっ我を吸収するとな!?」

「お前を吸収するって事はお前の能力も使えるって事だよな?」

「おっ恐らく使えると思います」

「魔竜、お前さっき俺の女になっても良いって言ったよな?ならお前、女なんだよな?」

「はい……一応雌の竜ですけど?」

「なら俺の女になれよ」

「えっ!?」

 

魔竜は禍々しい顔をしてるが頬を少し赤らめた。

 

ここで乙女になられても誰得なのだろうか?

 

「どうなんだ?ん?嫌なのか?ん?ならまた暴れるぞ?」

「はい!なります!あなたの女になります!吸収でもなんでもしてください!!」

 

若干キャラが崩壊したが話は決まったな、なら早速吸収しようではないか。

 

「魔竜『吸収』!!」

 

俺は魔竜の口から外に出て新たなスキル、吸収を発動させた。俺は両手を魔竜の頭に触れた途端両手に魔竜がどんどん吸収されて行き、ドス黒い煙が辺りを充満させて行った。煙が晴れそこに居たのは金色と紫色の禍々しい鎧を纏った俺がそこに居た。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「へぇ〜魔竜、お前鎧にもなれるんだな」

「はっはい、恐れ入ります!」

「おい、さっきまでのおじゃる語はどうした?」

「いや、あの、キャ、キャラ作り……でした……」

「うわっ、何それキモい」

「ごめんなさい!龍二様!」

「他の皆はどうかな?終わったかな?」

 

俺が外を見渡すと、首を斬られたキョウ達が無惨にも応援に駆けつけた魔物達に喰われていた。

 

「あーあー、食われてるわ」

「おーい!龍二ー!終わったのかー?」

「終わったぞー!魔竜、飛べ」

「あっはい!」

 

バサッ!

 

薄紫色の魔力で形成された翼脚を広げ、その翼で飛び上がり悟空達と合流する事が出来た。悟空達は唖然として見ていた。

 

「龍二!?なんだその鎧は!?」

「ああ、コレ?魔竜」

 

「「はぁ!?」」

 

さすがのリファナもあわわわと怯えていた。

 

「魔竜、ほら説明しろ」

「はいっ!私、竜帝魔竜は新魔王・龍二様の配下に加わりました」

 

「「「えええええええええええええ!」」」

 

魔王……

新たな魔王が現れた……

魔竜が倒された!俺達の自由だぁ!

 

わー!わー!

 

魔竜に支配されていた人間、魔物達が大歓声を上げていた。

 

「この世界は俺の物だぁぁ!」

 

勝利を確信した俺は大きく拳を掲げた。すると反乱を起こした魔物と魔竜に奴隷になっていた人間達が膝を着いた。その先頭には酒呑童子と悟空がいた。

 

「龍二、いや……魔王龍二、我らはあなたに忠義を誓います」

「俺達はあんたについて行く」

 

「「新魔王様!!よろしくお願いします!」」

 

「よろしくな、みんな!」

 

魔竜を吸収して降伏させ俺は、この世界の頂点に上り詰めた。




魔竜の魔力の翼のイメージはデビクラ5のバージルが覚醒した時の翼をイメージしました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 異世界征服

予告通り今回で異世界編は終了します!次回からは四霊獣・タクト一派まで行きますよー!


俺は魔竜を吸収して多くの仲間を手に入れた。アイコンで魔竜こと魔竜の鎧をアイコンで確認した。

 

魔竜の鎧

 破壊不可 防御力アップ 衝撃耐性(大)斬撃耐性(大) 火炎耐性(特大) 雷耐性(特大) 吸収耐性(特大) HP回復(強) 魔力回復(強)SP回復(強)

 魔力上昇(大) 竜帝(魔竜)の加護 魔力防御加工 自動修復機能 厄災の波(異世界)操作可能 亡者の尖兵操作可能

 

「へぇ、いい効果付いてんじゃん」

《恐れ入ります!!》

「龍二……いや魔王、どんな効果が?」

「今まで通り龍二で良いよ?例えば〜厄災の波操作とか?」

 

禍々しい鎧を着た俺は酒呑童子に振り向きながら答えた。

 

「そんな事も出来るんですか!?」

「うん」

「すげぇ、そんで?これからどうするんだ?」

 

悟空とリファナは驚きながら俺に尋ねた、すると俺は笑いながら答えた。

 

「何って?今からこの異世界をぶっ壊すのさ」

「壊す?けど、どうやって?」

「魔竜、竜魔法はどうやって使うんだ?」

 

俺は鎧に声をかけるように魔竜に尋ねると、魔竜はハキハキと答えた。

 

《竜魔法は私が開発した魔法です、契約した魔物から力を借りて放つ魔法でその契約した魔物が強力であるほど強固になります。簡単に言えば龍脈法と似てますね》

 

「ふーん。んじゃあさ?この世界中に全体魔法攻撃する事は可能か?」

「えええええええええええええ!」

《はい、可能です》

「出来んのかよ!」

「あわわわ……」

 

俺の後ろを歩く仲間たちはザワザワし始めた。

 

そりゃ巻き込まれたくないもんな。

 

《なら、こう唱えて下さい。『魔竜よ我の願いを聞き届けたまえ、力の根源たる魔王が願う……真理を今一度読み解き、我の害なる者共と大地を焼き払う力を!!』と唱えて下さい》

 

と魔竜は俺に教え、そのまま俺は右手を空に掲げて竜魔法を唱えた。俺は少し躊躇したが。

 

迷うな、全ては……正義の為に!!

 

「魔竜よ我の願いを聞き届けたまえ、力の根源たる魔王が願う……真理を今一度読み解き、我の害なる者共と大地を焼き払う力を!!竜魔法!! 『暗黒流星群』!!」

 

俺はの右手が超巨大な魔法陣を形成されて行き、唱え終えた途端空に向かって何千何万の雨の様に隕石が放射された。

 

くらえ、愚かなる人間共!!

 

その光景は……まるでしし座流星群だった。異世界中に隕石は降り注ぐ。

 

うわあああ!

助けてくれー

ママーー

うぎゃぁぁぁぁああああ

 

断末魔の様な悲鳴が響き渡るが、もうこの世界には勇者は現れなかった。その頃同時刻のある場所。暗黒流星群が降り注ぐ中、ローブを被り札の様な物をもったシャチ種の亜人の女が唖然としなが見る事しか出来なかった。

 

「あちゃー、もうこの世の終わりね……」

 

「シルディナ様!早くお逃げ下さい!」

「部下のあなた方達を置いていく訳には参りません私も残ります……」

 

すると次元が切り裂かれ、その次元からはアクセルが殺した筈の絆が現れた。

 

「絆!!生きていたの!?」

「ああ!”ある奴”に助けられたんだ!俺と一緒に別世界に逃げるぞ!ラルク、テリス、グラスも一緒だ!」

「そんな!彼らを置いては!」

「絆殿!シルディナ様を……お願いいたします!」

 

シルディナと呼ばれたシャチの亜人は泣きながら部下と別れ、絆と共に次元の中に入って行った。すると殺されたキョウ、秀正から精霊が現れて姿を消した。それと同時にアクセルが保管していた倉庫に流星群が直撃して勇者の刀が露になった、すると刀も光の玉になり姿を消した。

 

───────────────────────

 

魔竜の城展望台では、俺がまだ暗黒流星群を放っていると他の魔物は大はしゃぎしながら破壊されていく街並みを展望台から見ていた。

 

「うひゃーこりゃすげぇ」

「見ろ、人間がゴミのようだ!!」

「そのセリフやめろ!」

「龍二様、カッコイイ!!」

「フハハハハ……フハハハハァァァ!!」

 

俺は高笑いをしながら攻撃を続けた。その攻撃は一晩中続き、夜が開けると、辺り一面焼け野原になってしまった。

 

「フゥ、こんなもんで良いかな?」

《お見事です、魔王・龍二様》

「おう」

「龍二、ここはもうやり残した事はもうないよな?」

「ああ、いや〜スッキリしたよ」

「龍二様!いくらなんでもやり過ぎですよ!こんなんじゃ草も生えませんよ!?」

「良いんだよリファナ、それが目的なんだから」

「え?」

「さて……そろそろ俺達のアジトに帰るか?」

「お!?龍二のアジトか!早く行きてぇな!」

「龍二のアジトはどんな所なんだろうな!」

 

大暴れした俺達は、アジトに帰る為に地獄門を発動させた。1度に3人までしか入れない為に100を超える仲間たちがアジトに到着するのに2時間かかった。一気に大世帯になりジキル博士は驚きのあまりに備品を落として壊した。

 

「ただいまー」

「龍二、帰ったか!──なんじゃ!?なんじゃ!?なっなんじゃこの人混み魔物ごみは!!」

 

ワイワイガヤガヤしてる中ジキル博士は新たな仲間を覚えるために1人ずつ名前を書かせていた。

 

「龍二ー!龍二はどこじゃー!」

「おーい!トゥリナー!」

 

人混みに紛れていた俺は右手のみをあげて手を振った。トゥリナは人混みを掻き分け俺の元に進んで行ったがロリ形態の為進まなかった。

 

「ふぎゃ!ちょせまっ、ええぃ!止まらんかぁぁ!」

 

ロリ形態からグラマー形態になり、トゥリナの魔力により新入り達は驚き立ち止まった。悟空と酒呑童子はその魔力を感じて少し警戒した。

 

「あー、悟空と酒呑童子以外ちょっと地下室と下水道にいっててくれるかな?」

 

「「「「「はい」」」」」

 

ようやく人混み魔物混みが解消されて10人の魔物が残った。いつものテーブルに集まり、悟空と酒呑童子は俺の後ろに付いた。

 

「ふぅ、さすがに狭くなったな」

「いやもう……限界じゃろ……」

「誰ですか?私のお尻触ったの」

「我が触るわけないだろ!」

「俺も……触ってない……」

「我が主よ、引っ越しませんか?」

「くんくん★リファナちゃんのお尻柔らかい★」

「龍二さん、その方々が新入りさんですか?」

「カシラ、引越しを考えて下せぇ」

「まぁまぁ、まずはこの3人を紹介しよう」

俺は酒呑童子と孫悟空を幹部達に紹介した。

 

「お初にお目にかかります、俺は斉天大聖・孫悟空」

「俺は鬼の首領・酒呑童子ってもんです」

「3人?もう1人はどこじゃ?」

「もうすぐ分かるよ。皆、長い間留守にして悪かったな」

 

俺は立ち上がって幹部達に深々と頭を下げた。

 

「向こうは、征服したのか?」

「ああ、トゥリナ。その証拠にこの鎧を見てくれ」

 

トゥリナはロリ形態に戻り、とてとてと近付いてマジマジと俺はの鎧を見つめた。

 

「ん?ただの鎧ではないか?」

 

《ただの鎧をじゃないわよ!》

 

「にゃ!?なんじゃ!?」

 

俺の鎧は急に喋り出し、トゥリナを脅かした。トゥリナは尻尾を一気に8本に増やし警戒した。

 

「貴様、何奴じゃ!!」

《私は魔竜、別世界を支配していた魔物です》

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

驚きを隠せないトゥリナ、ドラグリア、イムホテ、ワイズ、ジキル&ハイド、フランケンシュタイン、バルバロ。

 

「ですよね、普通そうですよね。私も驚きました……」

 

ウンウンと頷くリファナ。

 

「ということで異世界は征服した、残りは……分かるよな?」

 

10人の幹部達は頷いた。

 

「博士、【フェイズ2】の様子は?」

「もうすぐですね。このゼルトブルで蹴りを付けますか?それと、カルミナ島が本格的に活性化を始めましたよ?」

「そうか。だけど、その前に俺を含め幹部みんなでバカンスにでも行くか?その最後の仲間をスカウトしに行こう」

「おう!」

「きゃー!海ですよ!トゥリナさん!」

「水着を買わなくてはな?」

 

俺達が騒いでいる中。カルミナ島ジャングルの奥地では木々を軽々と移動している人影があった。




第3期の初回で必ず読者の方々の口から「お前かい!っ」と言わせて見せます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3期 四霊獣・タクト一派編
第41話 極上のレアモンスター


俺と10匹の仲間たちはカルミナ島でバカンスを楽しんでいた。我々は魔物の為、高難度の島を貸し切り状態にして”勝手に”ビーチで遊んでいた。現在はドラグリア、フランケンシュタイン、ジキル博士以外でビーチで遊んでいた。

 

「きゃー!トゥリナさん胸大きいですね!グラマー形態ですけど」

「この形態じゃないとお主に勝てぬのでな!」

 

黒いビキニでセクシーなトゥリナと白と水色のビキニを着たリファナが海に入って大はしゃぎをしていた。

 

 

「ウホッ★おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい★」

「酒呑童子、ヤシの実でサッカーしね?」

「悟空、ヤシの実は蹴るものじゃない割るものだ」

「青い空、青い海……いい物だな!」

「これが勝ち組ってやつなのか」

 

ワーキャーワーキャー

 

さざ波を聞きながら何故か鎧姿の俺は、恨めしそうに仲間たちを眺めていた……。

 

「なぁ、魔竜?」

《なんですか?龍二様?》

「俺も海入りたいんだが?」

《入りましょうよ!私も浸かりたいです!》

 

すると俺はプルプル震えキレた。

 

「入りたくても鎧が脱げねぇんだよぉぉぉぉぉぉ!。何?吸収ってガチで一体化するって事なの!?何?体の一部なの!?」

《それは私に言われましても……》

「あ”あ”あ”ぁ〜吸収しなければ良かったぁぁぁ!」

 

砂浜で頭を抱えてゴロゴロ転がる俺。

 

《それにしても、この砂浜らロマンチックですねぇ》

「はぁ!?何がロマンチックだよ!鎧と喋ってる時点で傍から見たらかなり痛い人(魔物)なんですけど!?」

《え!?どこかダメージを!?》

「そう言う意味じゃねぇよ!心のダメージだよ!」

《それより龍二様、そろそろその例の極上のレアモンスターとやらに会いに行きませんか?》

「はぁ……まぁいいか。アイツらにも良い息抜きになっただろうしな」

 

俺と魔竜は立ち上がり、仲間の元に歩いていった。

 

「さっ、十分楽しんだろ?そろそろ行くぞ?」

「「「はーい」」」」

 

そして俺達は近くにいた幽霊船を奪い、極上のレアモンスターが現れるという島に向かった。

 

───────────────────────

 

島に到着した俺達はその日の夜、熱帯雨林のジャングルを歩いていた。普通の人間なら危険な為出歩く事はない為冒険者達は現れなかった。ドラグリアのファミリア・バットで極上レアモンスターの行方を探していた。

 

「ドラグリア、どうだ?」

「少々お待ちを」

 

すると数匹の蝙蝠が戻って来てドラグリアに吸収された。

 

「いました。ここから300メートル離れた場所に居ますね」

「分かった、どんな見た目をしている?」

「私では説明出来ません、王自らご覧になった方が宜しいかと」

「ふむ、それもそうだね。よし、行くか」

「はい」

 

俺と魔物達はシュバシュバと高スピードで目的地に進んだ。すると、一部分だけ木々がなぎ倒されていた。

 

「何だこれ!?」

「レアモンスターの仕業でしょうか?」

「皆の者、油断するでないぞ?」

 

バルバロが辺りを警戒していると、視線に気が付いた。

 

「カシラ、居ました!奴です!」

「どこだ!?」

 

バルバロが指を指して先には、素肌に網状のボディースーツを身につけ、その上から鎧を身にまとっており、股間には布を巻き、ドレッド髪のリング状装飾や、何らかの小動物の骨を繋いだネックレスや獲物の脊椎、指輪、動物の毛皮など、何らかのアクセサリーをしていて鋼鉄のマスクを被っていた。

 

「こっ、こいつは!?」

 

俺は生唾を飲み込み、魔剣ストームブリンガーを肩から抜いて構えた。

 

「おい、てめぇ、何もんだ!?」

「俺達とやり合おうてのか?」

「カシラ、離れてくだせぇっ!」

 

駆け付けた悟空と酒呑童子、隣にいたバルバロは武器を構えた。謎のモンスターは俺達をサーモグラフィーの様な映像で確認した。

 

「カララララララララ……」

 

「おいてめぇ!何とか言え!」

「オラァ!舐めてんのか!」

「なんだろうと構わねぇ、カシラ。やっちまいますよ!」

「おい!酒呑童子!悟空!バルバロ!!」

 

酒呑童子、悟空、バルバロは謎のモンスターに攻撃を仕掛けた。

 

ガシッガシッ

 

「何!?」

「馬鹿なっ!?」

「俺達の攻撃を止めた!?」

 

「グォン!!」

 

謎のモンスターは悟空達の武器を掴んで攻撃を受け止め、そのまま3匹を投げ飛ばした。

 

「なんじゃこやつは!?」

「龍二様!この方、とてつもなく強いです!」

「見りゃ分かるって。悟空達を投げ飛ばす事時点すげぇよ」

 

「グォォォォォ!!」

 

謎のモンスターは俺に向かって突進して来た。

 

どうやらこの中で一番強い奴を選んだらしい、中々の知性を持っている様だ。

 

俺はそのまま謎のモンスターと掴み合いになって押し合いになった。

 

「ぐぅぅ!!」

「グルルルルル」

《龍二様、助太刀致します!!》

 

魔竜は翼脚を広げて爪を拳にして謎のモンスターを2〜3発顔面を殴った。

 

「───!?」

「なんだ?びっくりしたか?」

「グォン!」

 

謎のモンスターは怯むこと無く掴みかかって来た。

 

コイツ、Lv300の俺についてくるだと!?流石は極上レアモンスターだな俺だけじゃ厳しいかも。

 

「お前ら!全力で行くぞ!」

 

「はい!」

「龍二を追い詰めるとは中々やるのぉ。本気でゆくぞ?」

「良くもやりやがったなぁ」

「後で土下座しても許さねぇからなぁ!」

「龍二様……俺も……戦う!」

「夜なら我も負けませんよ?」

「ハイド、後は任せますよ?」

「キャッホーイ★」

「我々に牙を向いた事を後悔するが良い!」

「やってやらぁっ!!」

 

新魔王一行vs極上のレアモンスターの戦いが始まった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 宇宙人スカッド

新魔王一行全員、戦闘態勢に入った。トゥリナはグラマー形態になって倭刀を構え尻尾を9本まで増やし、リファナはジーヴル・プリュ・フォールを発動させて氷のレイピアを構え、ドラグリアは両目を赤くさせて牙を生やした。ジキル博士はハイドと交換して巨大化し、悟空は魔力を解放、酒呑童子は角を更に伸ばした。バルバロは金棒をブンブンと振り回し、ワイズはナイフを数本ジャグリングしていてイムホテは呪文を唱え始めた。

 

そして、俺はスターブレイカーを装備して棘鉄球をブンブンと回転させた。

 

「『管狐』!」

「『フロコン・ドゥ・ネージュ』!!」

「『ブラッド・シェイドキック』!」

「うぉぉぉぉぉぉ!」

「ウキャァァ!」

「『鬼火烈火』!」

「びっくり★『ナイフジャグリング』★」

「『インペリアル・マミー』よ!かの者を滅ぼせ!」

「魔竜!力を貸せぇ!」

 

《はい!龍二様!》

 

「『アースクエイク』!!」

 

全員の一斉に攻撃を仕掛けたが謎のモンスターは両腕の篭手から刃物を出して管狐を切り裂き、ブラッド・シェイドキックを回避し、ハイドを蹴り飛ばし、フロコン・ドゥ・ネージュを砕きながら悟空を掴んで盾にし鬼火烈火、ナイフを防ぎ、インペリアル・マミーに向かってバルバロと悟空を投げ飛ばした後、スターブレイカーを両手で受け止めた。

 

「そんな……」

「こやつ、やりおるな」

「ぐっ、なんて強さだ」

「私のスピードに追い付いた!?」

「あっちぃ!!」

「すまねぇ悟空!」

「あらー★」

「我の使い魔を……!!」

 

「ちっ、めんどくせぇ野郎だ」

 

「カララララララ」

 

《龍二様、ここは私と龍二様で戦いましょう……あの者は多数との戦闘に慣れています、このままでは同士討ちなります!》

「それもそうだな……全員でやるよりはリスクは低いな」

 

俺はスターブレイカーからストームブリンガーに再びウェポンチェンジさせた。

 

「みんな、俺が奴と戦う!下がれ!」

「龍二!こやつは1人で戦える程ヤワではないぞ!」

 

トゥリナは倭刀を構えながら俺に言い放った。

 

確かにそうだが、ここで仲間を失いたくないのが本音。

 

「大丈夫、俺は死なねぇからな!」

「くっ……者共、下がるぞ……」

「龍二様……ご武運を!」

 

トゥリナ達は俺と謎のモンスターから離れた。

 

「魔竜……行くぞ!」

「はい!龍二様!」

「グオオオオオオ!」

 

俺の魔剣ストームブリンガーと謎のモンスターの両腕の刃物が激しい金属音を立て衝撃波を生み出した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

「グオオオオオオ!」

 

ガキンガキンと魔剣を上から振り下ろしから振り上げてからの魔竜の翼脚のパンチをコンビネーションで殴った。

 

「『暗黒剣!Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』!!『ドライファ・ダークネス』!!」

 

俺は暗黒剣とドライファ・ダークネスを放ち、謎のモンスターにダメージを与えた。

 

「グッ……ォォ……」

《何を休んでるの?まだ私がいますよ?はぁぁぁ!》

 

魔竜は休ませること無く謎のモンスターに追撃を繰り出した。魔竜の激しい連続パンチを豪雨の如くに殴り続けた。謎のモンスターは地面深くにめり込んだ。その衝撃も離れていたトゥリナ達にも届いた。

 

「なんという……」

「生きてんのかアレ!!」

 

謎のモンスターは脳震盪を起こしたのか動かなくなった。

 

《あら?もう終わりかしら?極上レアモンスターも大した事ありませんねぇ?》

「お前がやり過ぎなだけだろ」

《それは、お気になさらないで下さい》

「手応えはどうだった?」

《手応えはありました》

 

俺が陥没した穴を覗いた途端、謎のモンスターの腕が伸びて来た。

 

「ぐっ!!こいつまだ!?」

「カララララララ……」

《龍二様、何か持ってますよ?》

 

俺と魔竜が謎のモンスターの手に注目すると、何やら小さい黒板の様な物を持っていた。その黒板を見てみると文字が書いてあった。

 

『参った!』

 

「は?」

《え?降参したのでしょうか?》

 

筆談か?

 

俺が首を傾げていると普通に登って上がってきた。そしてまた黒板に何かを描き始め俺に見せた。

 

『俺の負け、あんたら強い』

 

《筆談の……様ですね》

「ああ、お前喋れないのか?」

 

コクリと頷く謎のモンスター。

 

いや油断させて騙し討ちをしてくる可能性がある警戒しなければ!!

 

『大丈夫』

「ホントだな?」

 

コクリ

 

『もう何もしない』

「どうやら戦闘意欲をなくしたようですね」

「龍二ー!大丈夫かー!?」

 

トゥリナ達も異変に気付いたのか、近付いてきた。

 

「終わったのか!?」

「ああ、降参するって」

「はい!?どういう事ですか!?あんだけ暴れておいて!?」

『ごめんなさい』

「おい、謝ったぞ」

「書くのはえーな」

「ジキル、出番だぞ」

 

ハイドは変身を解いてジキル博士に戻った。そしてジキル博士が質問をした。

 

「私はジキル、この方々の科学者をしております、貴方のお名前は?」

『宇宙人スカッド』

「スカッド?」

 

スカッドと名乗った宇宙人はコクリと頷く、宇宙人なのに喋れないのか……

 

「色々聞きたい事があります、よろしいですか?」

『うん』

「龍二さん、良いですね?」

「ああ、みんなも良いだろ?」

「良いけど……大丈夫なのか?」

「油断させて騙し討ちとかしねぇよな?」

 

酒呑童子は長巻を構え警戒した。そりゃそうだ、いきなり襲って来て降参とはありえない

 

『何もしない、ホント』

「念の為に悟空、酒呑童子、警戒しててくれ」

「「わかった」」

『警戒しすぎ』

「なんか……拍子抜けですね……」

「これまた濃いのが現れたのう……」

 

その後スカッドから事情を聞くと、俺たちが来る前に様々な人間が現れて攻め込まれたからまた来たのかと戦闘態勢に入ったらしい、スカッドは宇宙人の狩人と呼ばれており、成人の儀式の為にこの星来たと言う……来る星を間違えてると思うのだが……。

 

『という訳』

「なるほどな、そんで?いつ帰るんだ?」

『強い人間を倒したら帰れる』

「強い人間?」

『うん、君たち人間?』

「いや、俺達は魔物なんだ」

『通りで強い訳だ』

「なら……俺らと一緒に行かないか?」

『うーん……ちょっと君と話したい』

 

スカッドは俺を指を指して要求して来た。

 

話ってなんだろうか。

 

「わかった、みんなここにいてくれ、魔竜もいいか?コイツは一体化してて離れられないんだ」

『分かった、良いよ』

 

 

俺はスカッドが乗っていたロケットの中に入って行った。するとそこには……見た事のない道具だらけだった。

 

「なんだ……コレ……」

「凄い数ですね……」

『それは今まで集めた道具』

「そうなのか、話したい事って?」

『それは……』

 

───────────────────────

 

俺、魔竜とスカッドは話を終えて戻って来た。俺の顔は真剣その物だった。

 

「龍二様?大丈夫ですか?」

「あっああ、話は決まった仲間になってくれるってよ」

「ほんとか!?」

「おめでとうございます、龍二さん」

「宇宙人も仲間にするとは……流石は我が王」

「………………」

「イムホテさん?どうしたんだ?」

「怖い顔してどうしたんだ?」

「龍二様?なんのお話しをしてたんですか?」

 

スカッドはリファナに黒板を見せた。

 

『男同士の秘密』

「怪しいですねぇ……魔竜さんホントですか?」

《ええ、何も無いですよ?》

「勇者と決着をつけるまでの条件で仲間になってくれただけだ、気にするな」

「はい……分かりました」

 

リファナは少し納得しなかった様子で渋々下がった。

 

「さっ、息抜きした事だしフェイズ2に備えてゼルトブルに帰るぞ」

「「「「はっ!」」」」

「はーい★」

『了解』

 

俺達一行は幽霊船に乗り込み、新たな仲間宇宙人スカッドを仲間にする事が出来た。

 

いよいよもうすぐ女神が現れる、全員で戦わないと……。

 

俺達はカルミナ島を後にした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 女神決戦 (前編)

まだ中盤ですが、元祖黒幕の女神と戦います!前編後編分けて描きますので短くなります!。


俺達魔王軍一行はカルミナ島からゼルトブルに戻り、女神を誘き寄せる作戦を立てていた。

 

「よし、ジキル博士……ドワーフ達は?頼んで置いた物は出来たのか?」

「ええ、龍二さんがデザインした武器と鎧兜を作って休んでいます」

「そうか、どんな出来だ?見せてくれ」

「はい、分かりました」

 

ジキルはオークやゴブリン達が装備する鎧兜や剣を持ってきた。鎧兜は全て黒に統一され、剣は山刀の様な形になっていた。

 

流石はドワーフ族、いい仕事をする。

 

「ふむ、イメージ通りだな」

「なら良かったです。後は兵隊に足りる様に増産するだけです」

「間に合うと良いんだがな」

「そうですね」

「よし……フランケン、バルバロ。ヴィッチとメアリーをここへ連れてこい」

「はい、龍二様」

「へいっ」

 

フランケンとバルバロは地下に降りて行き、目にはもう光のない腹の膨れたヴィッチとメアリーが現れた。

 

「おー久しぶりだな、豚共」

「………………」

「ひど……い……ころ……して」

「誰が殺すかよバーカ、おら女神呼び出せよ」

 

俺がそう言うと、マインとメアリーはなんと事が分からずにいて怯えながら首を大きく横に振った。

 

「女神……?……知らない……私……知らない!!」

「私も……知ら……ない……!」

「リファナ、我らは外に出ているぞ。妾達は見ない方がいい」

「はっはい……そうですね」

 

トゥリナはリファナを連れて外へ出ていった、すると俺は急に豹変して魔竜の翼脚で豚共の首を掴んだ。

 

「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……」

「うぎぃ……た……しゅ……け」

「ちっ、所詮記憶のない分身か、コイツらを殺せば出てくるか。魔竜、殺せ」

《はい、龍二様》

 

ギリギリ!!

 

「あ”ぐぅぅぅ」

「ぐひぃぃぃぃ」

 

魔竜はギリギリと翼脚で首の骨をへし折ろうとした瞬間、マインとメアリーの体が突如光出した。

 

やれやれ、ようやくか。

 

「ふっ来やがった」

「龍二さん!これが……」

「さぁ……こいよ『女神メディア・ピデス・マーキナー』!!」

 

豚共2人から神々しい光を放ち出し落ち着くと……そこには両方の顔を混ぜた様な顔をした女神が現れたのを確認した俺達は武器を構えた。

 

「よぉクソ女」

「コイツが女神。なんと神々しい」

「さぁ行きますよ、ハイド!」

「キモいね★」

「コイツを殺せば俺達の天下だ!!」

「龍二!もう全力で良いよな!?」

「神に弓を引くことになろうとはな!!」

「カララララララ!!」

「さぁ、兄さん方!やっちまいましょう!!」

 

俺達魔王軍が戦闘態勢に入ると、女神は両手を広げて名乗り上げた。

 

「私はメディア・ピデス・マーキナー!!この世界を制するものなり……良くも私の魂の片割れ達を可愛がってくれましたね……お陰で私の作戦が台無しです、死を持って償って貰いましょう、この下等生物」

 

「こいつを倒せば俺達の天下だ!野郎ども、全力で行くぞ!!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

襲いかかった瞬間大爆発を起こして俺のアジトを全て吹き飛ばした。散歩をしていたリファナ達も爆発に気付いてアジトに戻って来た。

 

「なっなんじゃ!?」

「なんですかあの女の子の人は!?」

 

俺が率いる魔王軍団が魔力を解放して女神に攻撃を仕掛けていた。

 

「『暗黒剣Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』!!」

「『ブラッド・シェイド・オーバーヘッドキック』!」

「『国士無双』!」

「『鬼火夜叉車』!!」

「『パワーブレイク』!」

「ドッキリ★『サウザンドナイフ』!」

「グオオオオオオ!」

 

「「「「「「うぉおおおっ!!」」」」」」

 

「トゥリナさん、私達も行きましょう!」

「うむ、行くぞトゥリナ!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話 女神決戦 (後編)

俺率いる新魔王軍団は女神の攻撃によりゼルトブル街中に何ヶ所かに吹き飛ばされた。リファナとトゥリナは瓦礫に埋もれた俺を起こした。

 

「龍二!大丈夫か!?」

「龍二様、魔竜様ご無事ですか!?」

「ああ……流石はラスボス……やっぱつぇーわ、魔竜……大丈夫か?」

《はい、この世界を制するものですね、この私の魔力を遥かに超えています》

 

すると街中に散らばった仲間達がよろよろと歩いて俺と合流した。

 

「全員限界突破してこのザマか……」

「あの女……強すぎねぇか!?」

「龍二、ここは一旦逃げた方が良いんじゃねぇか?」

「そうしてぇけど……」

 

酒呑童子と悟空はボロボロの状態で俺に問いかけた。

 

気持ちは分かるんだが動きを止める事すら出来ない、文字通り万事休すだ……。

 

すると、魔竜が。

 

《龍二様……》

「なんだ魔竜」

《こういうのも言いにくいのですが、龍二様あの女神に1度殺されてみては?》

 

「「「「「「「「それだ!」」」」」」」」

 

全員魔竜の意見に賛成した、俺は苦笑いをしながらやんわり嫌がった。

 

「いやいや、アイツの攻撃は絶対痛いよね?」

《ですがこのままでは全滅です!》

「頼む!龍二…!」

 

「「「「「龍二様!」」」」」

 

仲間達はそれぞれボロボロの状態で俺に言い放った。

 

この方法しか無いようだな……。

 

「魔竜……いけるか?」

《はい、貴方と共になら何処へでも行きます!》

「ありがとう……魔竜」

 

俺は兜を装着して立ち上がった、そして魔剣ストームブリンガーを握って手錠を持ち翼脚を広げた。

 

「行ってくる」

「龍二様……気を付けて……」

「おう」

 

俺は大空を高く飛んでワイン色になった空を飛び上がり、女神に突進して行くと、女神はクスクス笑って俺を迎え撃った。

 

「まだ降参しないの?弱い癖に……クスクス」

「おおおおおおおおおおおお!」

 

俺は魔剣を振り下ろした瞬間女神はバリアの様な物に護られており、魔剣ストームブリンガーの刃は女神に届かなかった……。

 

「クスクス、そんなチンケな魔剣で私に触れられると思ったの?さぁ、食らいなさい。絶対必中・完全即死『インフィニティ・デストロイヤー』」

 

女神は両手で巨大な赤いエネルギーの球体を作り出し、その球体が俺に直撃した。

 

「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」

 

俺は魔竜と共に人型の炭の様になった。

 

「あら、もう終わりかしら?」

 

ざまぁみろ……クソ女。

 

 

『女神により殺されました』

『経験値100000000獲得』

『Lvは900になりました』

『最上級魔物になりました』

『最上級魔物使いを解放しました』

『魔王の称号を獲得しました』

『魔王固有スキル、百鬼夜行を解放しました』

『厄災の波の操作が可能になりました』

 

よし上手くいったな。さぁ行くか!

 

『不死身の呪いの為再起動します』

 

その頃女神は余裕な顔をして俺を掴みリファナ達に言い放っていた。

 

「ふふふふ、あなた達もこのクソ野郎の様に炭になりたい?それとも他の魔法やスキルで死にたい?さぁ選びなさい」

 

女神が勝ち誇って言い放った、すると他の魔物達は笑って答えた。

 

「「「「「死ぬのは……お前だ!」」」」」

 

「なんですって!?」

 

ガシッ!ガシッ!

 

俺は再生を終えて女神の腕を魔竜の脚翼で掴かんだ瞬間女神は苦しみ出した。

 

「きゃあああああ!!何よコレ!?魔力が……吸われて!?」

「『吸収』ってのは便利だな。ようやく、捕まえたぜ」

「あなた!!死んだんじゃなかったの!?」

「残念だったなぁ。どうやら俺は女神の力でも殺せねぇらしいぜ」

「そっそんな……ありえない!!」

 

女神は腰を抜かして怯え始めた。

 

どうやら計り知れない魔力を感じ取ったのだろう。

 

「さぁて正式に魔王になれたんだ、お礼をしなくてはな、っとその前に」

 

俺は指パッチンをしてリファナ達を回復させた。

 

魔王にもなればこんな能力も使えるのか、便利だな。

 

「そして俺はお前を殺さないお前を殺すのはコイツらさ」

 

俺はまた指パッチンをすると地面が禍々しい渦が現れてその中からは様々な下級魔物達が現れる。その中にはオーク、サハギン、コボルト、Gゴブリン達も混ざっていた。

 

「さぁお前ら、痛めつけてやれぇ!」

 

「「「「「「ウギャオオオオオオ!!」」」」」」

 

「そっ……まっ魔力がもう、まっ……てギャァァァァァァ!!」

 

 

女神は様々な下級魔物達にドスドスと武器や素手で次々と攻撃させられた。

 

「『百鬼夜行』これがお前を殺すスキルさ……フハハハハハ」

 

俺は仲間の元に戻って行き勝利を確信した。

 

「これで邪魔者は消えた。そして、この世界は俺が貰った!」

 

この女神決戦によりゼルトブルは完全崩壊した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45話 勇者集結1

龍二達がゼルトブルで激闘を繰り広げている同時刻。その頃メルロマルク国では勇者達が女王と緊急会議が行われていた。いつもなら四聖勇者と会議を行う場所なのだが、今回は玉座の間に大きめのテーブルを用意して勇者を呼び出した。尚文達は女王に呼び出されて玉座の間に集められた。

 

「岩谷様、天木様、北村様、川澄様……お集まり下さり感謝致します…」

「女王、今はこんな集まってる場合じゃないだろ?」

「尚文の言う通りだ、マインも未だに行方不明、聞けば七星勇者も数人殺されているんだろ?」

 

錬も尚文に便乗して女王に意見した、4人の勇者達はカルミナ島でレベルが上がったが満足した様に見えなかった。

 

「はい……お気持ちは分かります、いくら悪さをしていた娘でも手掛かりが見つからないのです……七星勇者の件をおさらいしますね 今現在斧、爪、槌の勇者が殺されました、残りの眷属器の勇者は小手、投擲具、鞭、馬車です、馬車と小手以外の眷属器はフォーブレイの王子が責任をもって適合者を探しているそうです」

「ならフォーブレイの王子も呼んだ方が良かったんじゃないか!?別行動は今は控えた方がいいと思う!あの魔物と名乗った男は……強い」

 

元康は手を挙げて女王に意見した、戦いで恐怖を感じたらしい。

 

「それもそうなのですが、襲撃に備える為に出られないそうです、なので適合者を別に探しているそうです」

「あの、女王様……よろしいですか?」

「なんですか?川澄様?」

 

樹も手を挙げて女王に質問をした。

 

「七星勇者の件なんですが……6人しかいませんよ?」

「確かに……杖の勇者がいない、死んだのか?」

 

すると女王はクスクスと笑って樹と尚文の質問に答えた。

 

「杖の勇者ならここに居ますよ?お気付きになりませんか?」

「まさか……」

 

尚文が女王の隣を見るとオルトクレイ国王が深刻な顔をして立っていた。

 

「ワシが……七星勇者の1人【杖の勇者】じゃ」

「お前がか!?」

 

尚文は国王を睨み付けて言い放った、尚文からすれば納得しないのが普通だろう……冤罪をかけられ、罵られ、盾の悪魔とも呼ばれた男が勇者だなんて考えたくもないだろう。

 

「岩谷様のお気持ちは分かります、影が調べた結果岩谷様の罪は全てデタラメと報告を受けています、カルミナ島で仲間交換していた間に岩谷様の冤罪は全て疑いを晴らしておきました、貴方も岩谷様に謝罪をしたらどうですか?英智の王と呼ばれた男が情けないですねぇ」

 

女王に冷たい目線で言われたオルトクレイは尚文の前に膝をつけ、頭を床に擦り付けた。

 

「盾の勇者……いや、岩谷殿……今まで申し訳無かった……許してくれ……」

「尚文……俺もあの時はすまなかった。どうか許してくれ!」

「俺も雰囲気に呑まれてしまった、すまない……」

「僕もです……すいません……」

 

すると尚文はやれやれと言うような顔をしてオルトクレイに近付いた。

 

「もういい……あの時の事は忘れたいからな。国王、今後は行動で誠意を見せてくれ」

「尚文殿……かたじけない……!!」

 

するとオルトクレイの前に光が集まり治まると……杖が現れた。

 

「ワシは……また……勇者になれるのか……」

「かつての英智の王の姿見せてもらいますよ?」

「こんな身近に七星勇者がいたのか……」

「知りませんでしたね」

 

杖を掴み手にしたオルトクレイは自信に満ち溢れていた。その光景を目の当たりにした樹、錬、元康は覇気に驚いていた。

 

「なんて凄い魔力だ……」

「それでこそ私の夫ですよ」

 

尚文は少し安心したのか、復活した杖の勇者に尋ねた。

 

「英智の王、今後俺達はどうすればいい?」

「その事なのですが、実は会わせたい者達がおります」

 

「「会わせたい者?」」

 

樹は首を傾げた。

 

「お入り下さい」

 

玉座の間の入り口のドアが衛兵に開かれるとそこには、グラス、ラルク、テリス、そして見覚えの無い顔をした男女が現れた。

 

「お前はグラス!!」

「なぜこの方々がここに!?」

「また俺達とやる気なのか!?」

 

尚文達は武器を構えて戦闘態勢に入った。

 

「待ってください!尚文さん!話しを聞いて下さい!」

「テリス!?」

「実は……」

 

───────────────────────

 

「なるほど、そういう事だったのか…テリスの世界にも奴が」

「はい、波の時は…失礼をしました」

「その……悪かったな、盾のボウズ……」

 

ラルクもバツが悪そうに頭を下げた。

 

「それで、そこの3人も異世界の勇者なのか?」

「はい、彼女は風山絆、狩猟具の勇者です」

「絆って呼んでくれ」

 

絆と名乗った女は樹位の若さで見た目はゴシックロリータの様な服装をしていた。

 

「私はシルディナと申します、札の勇者をしております」

 

シャチの亜人はシルディナと名乗った、サディナに似ているな、後で聞いてみるか。

 

「俺は【セイン・ロック】、絆の世界とはまた別の異世界で裁縫の勇者をしていたんだ、よろしくな」

「勇者にも色々いるんだなぁ」

「そうですね……」

「そして、絆は唯一あの龍二と名乗る男にダメージを与えたんだ」

「そうなのか!?」

 

尚文は驚きながらセインの話しを聞いた。

 

俺達が束になっても勝てなかった相手にダメージを与えただなんて凄いな……。

 

すると絆は龍二との戦闘した事によって得た情報を教えてくれた。

 

「龍二という奴は、はっきり言って化け物だ。人間を辞めて魔物に成り下がっている」

「ああ、それは俺達も知っている」

「俺の狩猟具のメリットは魔物、つまりモンスター専門に強い」

「そうか!だからアイツにダメージを負うことが出来たのか!」

 

元康はテーブルをバンと叩いた。

 

確かにこっちの勇者はかすり傷一つ付けることが出来なかったからな……。

 

「けど……奴らの術中にハマって負けちまった」

「何があったんだ?」

「他の眷属器の勇者に裏切られた」

「!?」

 

その瞬間玉座の間に緊張が走った。




こちらも長くなるので前半後半分けます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第46話 勇者集結2

勇者集結の後半です、そして原作の設定を変えてて新たな眷属器の勇者を登場させます!


緊張の中、オルトクレイは口を開いた。

 

なにやら考えがあるらしい。

 

「だが我々もこのまま黙って引き下がる訳には行かぬ、グラス殿、例の物は用意しておりますかな?」

「はい、国王様。すみませんが皆さんの部下をここに呼んでくれませんか?」

「部下を?」

「何をするんだ?」

「集まり次第説明しますので」

 

そう言われた4人は自分の仲間たちを呼びに行った。

 

「尚文様?この方々は……」

「知らない人もいるよー?」

 

ラフタリア、フィーロ、リーシア、マルドなどの仲間たちが玉座の間に入って来て各チーム毎に座った。すると、セインは訳を話した。

 

「実は……この中から眷属器の勇者を選びたいと思います」

 

「「「「!?」」」」

 

「どういう事なんだ!?眷属器はフォーブレイにあるんだろ?」

「いえ、眷属器と言っても我々の世界の眷属器です。刀、楽器、鎌、扇、本、鏡、船、銛です、聖武器の勇者は絆とシルディナ以外殺されてしまいました」

 

グラスは尚文の質問に答え、説明を続けた。

 

「眷属器には精霊が付いています、その精霊に選ばれると晴れて勇者になれるという事です詳しい話は省きますね」

 

なるほど、新たにこの中から眷属器の勇者を選ぼうという訳か……確かに今は猫の手も借りたい状況だ選ばれれば儲けもんだな。

 

「それでは……行きます、精霊様方……お願いします」

 

するとセインは大きなバックから6個の光の玉が現れて尚文達の上をクルクルと回り始めた。

精霊達も真剣に選んでいるようだ、すると俺のチームからはラフタリアとメルティ、元康からは1人、錬からのチーム、樹からは鎧を着ている奴が選ばれた。

 

ラフタリア 刀

メルティ 楽器

元康の女1 鏡

錬の所の女 本

鎧の男 船

 

残りの光の玉はバックに戻って行った。戻って行った精霊は好みの奴がいなかったのだろう

 

「尚文様!私の所に来てくれましたよ!」

「良かったな」

「私の所にも!!」

「良かったわね……メルティ……グス……」

 

女王の奴……泣いてやがる、まぁ無理もないか、他も見てみるとバカみたいにはしゃいでやがる

 

「今後も皆さんで力を合わせて精霊様に選ばれるように励んで下さい」

「今後は、各自で力を付けて」

「失礼します!」

 

女王とオルトクレイが話している最中に影が現れ、女王に耳打ちをした。すると女王の顔が青ざめて行った。

 

「ゼルトブルが!?」

「女王、何かあったのか?」

「ええ、各国に影を偵察に向かわせていたのですが……ゼルトブルで激しい戦闘が行われているそうです。そこで龍二という者が確認されました」

「なんだって!?」

「その戦闘により……ゼルトブルが壊滅したそうです……」

「そんな……ゼルトブルは傭兵の国ですよね!?」

 

樹は行った事があるのだろうか知ってる口ぶりだった。

 

「ゼルトブルの傭兵達は……恐らく全滅……でしょう」

「あそこには……子供も……うっ……」

 

ラフタリアは言いかけた途端吐き気に見舞われた。

 

想像するだけでもゾッとする……。

 

「ラフタリア、もっと力を付けて仇を取ろう」

「はい……」

 

するとオルトクレイが前に出て言い放った。

 

「ここでワシからの提案なのだが、この国で訓練などをしてはいかがだろうか?」

「訓練?」

 

錬と元康が首を傾げた。

 

「新たな眷属器の勇者も決まった事ですしな、ここは魔法と戦術などを学んで頂きたい勇者といえど戦闘ははっきり言って素人同然、相手も相手なのでここは原点に帰るという形でどうだろうか?」

「げ……まさか……」

「学べと言うのか……」

「異世界に来てまで学校の様な事をするのですか……」

 

するとラルクとグラスが見かねて元康達に向かって怒鳴り出した。

 

「お前らさ、弱いくせに何言ってんだ?」

「そうです、災厄の波の時なんて目も当てられませんでしたよ?」

 

「「「うっ……」」」

 

「盾のボウズはまぁ、いい線行ってるけどな」

「ほっとけ」

「という訳なので勇者様方、ご教授の方をよろしくお願いいたします」

 

オルトクレイは深々とグラス達に頭を下げた。

 

「ついでに我が兵士達も出来れば鍛えて頂きたい、では入りなさい」

「失礼します」

 

オルトクレイに呼ばれると絵に書いたような女騎士が玉座の間に入って来た。

 

「勇者方々お初にお目にかかれてうれしく思います、私の名はエクレール・セーアエットと申します」

 

女騎士も頭を下げて挨拶した。錬は一目惚れしたのか顔を赤くして見つめていた。

 

「なら早速今日からやろうぜ?戦闘は俺と金髪の騎士のねーちゃん、魔法関連はテリスとグラス、専門知識等はセインの兄ちゃんと絆で良いな?」

 

勇者達は頷いた。

 

「では今日からしばしこの城で勇者方は共同生活をして頂きますのでよろしくお願いいたします」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

こうして異世界勇者連合が結成された。




勇者目線はこれで終了です!次回からの話しは数ヶ月経ちますのでご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話 饕餮の軍配斧・モルドレッド

俺が魔王になって数ヶ月後、俺はパワーアップした地獄門を発動させて出てきた。俺はドワーフ達と魔竜の城にいた人間、下級の魔物を見送る所だった。

 

「んじゃ、バルバロ。武器製造はそっちで任せたぞ?」

「へい、魔王様」

「怪我すんじゃねぇぞ?」

「はい!」

 

頭を下げたバルバロが率いるドワーフ達と地獄門を通って行き、門は閉ざされた。

 

「おし、向こうの異世界は大丈夫だな、幸い地下室の奴隷5人も無事だったのは大きかったな……危うく【フェイズ3】が台無しになるとこだった」

 

するとイムホテが近付いて来た。

 

「龍二よ、話があるのだが?」

「イムホテか……分かった、なら少し離れて向こうで話そう」

 

───────────────────────

 

1時間後。話が終わった俺は、イムホテと戻って行きて瓦礫だらけの椅子に座って会議を始めた。

 

「さて、非戦闘員はこの場から居なくなった事だし、いよいよフェイズ3の【四霊獣怪人計画】に入る。博士 、地図を開いてくれ」

「はい、龍二さん」

 

ジキル博士は世界地図を広げると俺は木の枝で指示を始めた。

 

「これから俺達が狙うのは。【四霊獣】だ」

「なんじゃと!?」

 

トゥリナはしゃがみながら驚いていた。

 

確かにあの霊亀、鳳凰、麒麟、応龍を相手にするんだ、俺達もタダでは済まない……が、俺は2週目 、攻略法も分かっている。

 

「だが俺は奴ら四霊獣の事をよく知っているから大丈夫だ。俺を含めこの10人の幹部を3つのチームに分けて各箇所に向かって欲しい」

「という事は、四霊獣の封印を同時に解くのだな?」

 

イムホテは頷きながら俺に尋ねた。

 

流石は大神官だ頭がキレる奴がいるとやはり違うな……。

 

「お前らの能力を考えて俺を混ぜて11人をこう分ける事にした」

 

霊亀に龍二、ドラグリア、イムホテ。鳳凰は悟空、酒呑童子、ワイズ、スカッド。そして麒麟にはトゥリナ、リファナ、フランケンシュタイン、ジキル博士となった。これに下級魔物を連れて行く事になる。

 

「ちなみに応龍は、タクト一派のレールディアという奴が応龍を体に閉じ込めているからソイツは全員で叩き潰す。封印を破壊する合図は俺がする」

 

「合図をした瞬間……総攻撃開始だ」

 

「「「「「了解」」」」」

 

「では……武運を祈る」

 

俺達は各国の封印された所に向かって行った。俺が向かったのは霊亀国で猛スピードで到着したのは1週間後だった。

 

───────────────────────

 

俺は前回3バカ勇者が封印を解いた霊亀国に辿り着いた、龍二が霊亀国に来た理由は他にもある……。それは3つ目の四凶武器、【饕餮の軍配斧・モルドレッド】が封印されている祠を探す為だった。

 

「さて、他のチームが到着するのにあと数時間、その間に四凶武器を探しますか」

「我が王よ、どうして私を霊亀に選抜したのですか?」

 

ドラグリアは丁寧にお辞儀をして紳士的に尋ねた。

 

「ん?なんでかって?霊亀は頭と心臓を同時に潰さないと霊亀は死なないそこで考えたんだが、頭も心臓も……血がないと機能しないよな?」

「なるほど、霊亀の血を吸い付くせ……。そう仰りたいのですね?」

「そう言う事」

 

話していると檮杌が話し掛けて来た。

 

《主よ、饕餮の軍配斧を探してるのでしょう?》

「ああ、どこにある?」

 

棘鉄球を探したように檮杌は脈打つ様な音を立て始めた、案内をしていると遺跡のような場所にたどり着くとそこには……壁画と祠に刺さった柄の長い軍配斧があった。

 

「これが饕餮の軍配斧か?」

《左様、饕餮よ聞こえるか?》

 

檮杌は饕餮の扇に問いかけると饕餮は返事をした。

 

《檮杌か……久しぶりだな、その男は魔族の王か?》

「そうだ、お主を迎え入れたい、どうだ?」

《そうだな……霊亀も起きんようだしな、ならば汝に問う、我が饕餮(饕餮)の軍配斧モルドレッドなり。我を用いて何を望む?》

 

饕餮は俺に尋ねると、俺はなんの躊躇なく答えた。

 

「この世に大嵐を巻き起こす為」

《ほほう……なら我が呪いを受けよ!》

「もういいよ、効かないから」

《なっなんと!?》

「めんどくさいから説明するけど、俺は不死身の呪いになっている」

《なるほど、不死の呪いだったか、良かろう!お主を主として認めよう!》

 

饕餮の軍配斧・モルドレッドは浮かび上がって俺の手におさまった。俺は何度もモルドレッドを振り回して装備を確認した。

 

饕餮の軍配斧・モルドレッド LR 熟練度0

装備ボーナス……スキル「風伯大竜巻」

専用効果……腕力向上 魔法反射 四凶ボーナス……???

 

また四凶ボーナスがでた……いったい何が起こるんだ?。

 

「なぁ饕餮、四凶ボーナスって何?」

《四凶武器を集めたらわかる事、暫し待たれよ》

 

意地悪な奴だなぁと思いながら出口に向かうと、壁画に気付いた。

 

「これ、霊亀を封印した奴が書いたのか?ん?こりゃ、日本語だな」

 

俺は壁画の碑文を読んでみた。

 

 もしも日・から召喚された・がこの文字を読んでいるのなら、覚え・い・欲しい。

 こ・化け物はどれだけ厳・な封印をしても終・の時に七・目・破・・るだろう。

 調べた結果、目的は・・・・・・・・・・・であり、世界の・・・だ。

 願わく・、・・・に封印と饕・の封印を破らない事を祈る。

 犠牲者を出すのはもしかしたら世界の為ともなりえる。

 その代価に見合う見返りがあるのだから。

 だけど……傲慢・し・ない。終末・・にこの文字を・む者がいるのなら、世・より・人・の為に出来る限り・く倒し・くれ。

 ・の化・物を倒す方法は・・・・・・・・・・・・か・・・・・・血・・・。

 ・の八・勇・ ・・桂一より。

 

「なるほどな、饕餮の封印と霊亀の封印を解くなって?」

 

ドゴーン!

 

俺は壁画を饕餮の軍配斧・モルドレッドで壁画を破壊した。

 

「残念だな、桂一君。霊亀を起こすことにしたよ」

 

モルドレッドを担いで出入口に向かうと突然、念話が入って来た。

 

(龍二!トゥリナじゃ!配置に着いたぞ!)

(こちら悟空、同じく鳳凰の祠に到着)

(了解、合図を待て)

 

俺、ドラグリア、イムホテは霊亀の祠の前に立ち、軍配斧を構え、念話で合図を送った。

 

行くぞ……3、2、1……殺れ!

 

同時に破壊された祠の様子を見ていると……カタカタ地鳴りを起こし、地震が起きた。




次回から霊亀戦を開始します!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話 霊亀vs吸血鬼

地響きが起こり、地面が割れ始めるとそこから霊亀が顔を出して起きがり歩き始め、俺、ドラグリア、イムホテと対峙した。

 

さて、コイツの厄介な所は使い魔とSP吸収するって所だな。ならここは俺とイムホテはバックアップに回ろう。

 

「ーーーーーーーーーー!!」

 

霊亀は爆音の雄叫びを上げ、一歩進めるだけで1つの山を踏み潰した。

 

「相変わらずうるせぇ野郎だな」

「これが暴君霊亀ですか、ふふふ……新鮮の血が吸えますね」

「ドラグリアよ、頼むぞ?」

「承知しました」

「バックアップは任せとけ!」

 

俺とイムホテはドラグリアの後ろに後退してドラグリアが先頭になった。すると霊亀は蝙蝠、雪男、小さめの亀、様々な使い魔を送り出してきた。

 

「おーおーゾロゾロと雁首揃えて来やがったよ」

 

俺は指パッチンをすると黒く禍々しい影が俺の周りに広がっていくとそこからは亡者の尖兵や、オーク、コボルト、Gゴブリン、が現れた。

 

「おめーら、あの使い魔を潰してこい!!」

 

「「「「「「ウォォォォォォォ!」」」」」」」

 

俺が召喚した魔物達と使い魔達が衝突した。

 

「こっちは抑えたぞ、ドラグリア行ってこい!」

「はっ!」

 

ドラグリアはファミリア・バットを背中に集中させて巨大な蝙蝠の翼を生やして霊亀の首元目掛けて飛んで行った。

 

「ーーーーーーーー!」

「霊亀よ、そなたの血を……頂く!!」

 

霊亀は口から巨大なビームなどを吐いてドラグリアを消し飛ばそうとするが、ドラグリアは戦闘機のようにアクロバット飛行をしてビームをかわした。

 

「そんな粗末な攻撃当たる訳があるまい」

 

ドラグリアはあっという間に霊亀の首にたどり着き、首に左腕を突き刺した。ドラグリアは舌なめずりをしてそのまま首に噛み付いた。

 

「でわ……死ね!」

 

ズギュュュュュュュ!!

 

ドラグリアは思い切り吸い始めると霊亀は異変に気付いたのか首をゆっくり振り始めた。

 

「これは素晴らしい甘味な味、もっともっとよこせぇぇ!!」

「ーーーーーーーーー!」

 

霊亀の首辺りが徐々に青白くなって行き、ドラグリアの背中から紅い蝙蝠の翼が徐々にだが生え始めてきた。恐らく吸った血の量を表しているのだろう。

 

その頃。俺は霊亀の使い魔の背中から霊亀の寄生能力のある甲殻を剥ぎ取っていた。

 

「なぁイムホテ、あれがドラグリアの本領発揮ってやつか?」

「左様、ドラグリアは血を吸えば吸うほど強くなる」

「すげぇな、流石は吸血鬼だな……ほぼ吸い終わればイムホテも生気取るだろ?」

「当たり前だ、我の本当の力を知りたければ生気をもっと寄越すのだ、いくら我々が限界突破しても生気や血が必要なのでな」

 

杖をトントンと肩を叩きながらイムホテは答えた。

 

魔王になって限界突破とか出来るようになったけどその辺は必要なんだなぁ。

 

そうこうしているとドラグリアはどんどん血を吸い上げて霊亀の動きを遂に止めた。

 

「ククククククククク……暴君霊亀なぞ恐れるに足りんな」

「ーーーーーー!!」

 

霊亀は苦しくなってきたのか暴れ始めた、巨大な咆哮を上げ更に口から使い魔を出てきた。

 

イムホテは杖を構えたがそこに俺が前に出た。

 

「イムホテ、ちょっと俺にやらせて」

「なっ!?さっきやったではないか!!」

「まぁまぁ、トドメはイムホテに譲るから」

「うーむ……」

 

イムホテは渋々さがり、新しいスキルが使いたくてしょうがない衝動に狩られ俺は饕餮の軍配斧モルドレッドを装備した。

 

「『風伯大竜巻』!!ウォォォォォォォ!!」

 

俺がモルドレッドをグルグルと大きく振り回すとテレビで見るような大竜巻が生まれた。その大竜巻は霊亀全体を覆い隠し動きを封じた。その大竜巻で棘の様に尖った瓦礫が霊亀の体中に刺さって行った。

 

「これなら邪魔が入らねぇだろ?ドラグリア」

「我が王よ、お手間を取らせました……そろそろ限界が来ます……」

 

ドラグリアを見ると怪獣の翼の様な紅い蝙蝠の翼が出来上がっていた。

 

「でけぇ羽だなぁ。蝙蝠と言うより、悪魔だぞ?」

「これが吸血鬼本来の姿です、どうです?この美しい翼は!爪もこんなに美しくなりましたぞ?」

 

爪に注目すると禍々しい紅い爪がのびていた。

 

デカッ!!

 

「そんなイカつい爪どう使うんだ?」

「こう使うんですよぉぉぉ!『ブラッディ・クロー』!!」

 

新鮮な血を大量に吸って興奮しているドラグリアが爪を振り下ろすと紅い5つの斬撃が霊亀の背中に直撃した。

 

「うぉ!すげぇなおい、今やり合ったら厳しんじゃね?」

「けど欠点がありまして、血を使うと翼が小さくなるんです」

「んじゃもっと吸わねぇとな?ほら背中ボコボコ再生してんぞ?」

「なかなかしぶとい……」

 

ドラグリアは再び吸血に勤しんだ。

 

────────────────────────

 

数時間後……霊亀は遂にヨボヨボになり倒れ込んだ。

 

さぁトドメはイムホテに任せよう。

 

「イムホテ!出番だ!」

「やっとか!任せよ!」

 

イムホテは霊亀の顔に近付き、顎を外して大きく口を開けた。

 

「スゥゥゥゥゥ」

 

イムホテは霊亀の生気を吸い始めると霊亀は徐々に骨になっていった。

イムホテの体は更に磨きがかかった筋肉質になりボディビルダーの様な身体付きになった。

 

「ふむ、全盛期に戻った気分だ」

「うっわ……この筋肉なに!?硬っ!!」

 

ペチペチとイムホテの胸板を叩くとピクピクと動かした。

 

「さて、霊亀も片付けた事だし、おいお前ら。霊亀の頭蓋骨、肉片、骨髄を採取して来い」

 

俺はGゴブリン達に指示を出して霊亀の解体作業に入った。すると騒ぎを聞きつけた霊亀国の兵士達が大勢駆けつけた。

 

「なっ……!?霊亀を……!?」

 

「ん?客人か?」

「ふぅ馳走になりましたよ。では食後の運動と行きますか?イムホテ殿?」

「ふむ。そうしようか?」

 

不気味な笑みを浮かべたドラグリアとイムホテは霊亀国の兵士達に襲いかかって行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話 鳳凰vs鬼と猿

今回は鳳凰編です!


鳳凰が封印されている山を破壊した悟空、酒呑童子、ワイズ、スカッドは山の中心から現れた2羽の鳳凰と対峙した。

鳳凰は低空度と高高度に別れて飛び上がった。

 

「おーし、龍二の命令だ、鳳凰の羽根と骨などなど持って帰って来いってよ」

「わ〜★大きな鳥だね〜★」

「悟空、スカッドは高高度、低空度は俺とワイズで良いな?」

「カラララララ……」

「OK〜★酒呑童子君よろしくね★」

 

如意棒をトントンして鳳凰を見上げた悟空と酒呑童子は作戦を考えていた。

 

「龍二が言うには鳳凰は2体一対だから2体同時に殺さないと倒せないらしい、だからタイミング良くトドメを刺そう」

「おう、んじゃ殺っちまうか」

 

酒呑童子は長巻を構えた、他の3匹の魔物達も武器を構えた。

 

「キュイイイイイイイイイイイ」

「行くぞ!筋斗雲!スカッド、乗れ!」

 

悟空とスカッドは筋斗雲に乗り、高高度の鳳凰を目掛けて飛んで行った。

 

「こっちも行くぞ、ワイズ!!跳ねるやつ出せ!」

「はーい★」

 

ワイズはポケットからどういう構造になっているか分からないが袋を取り出し膨らませると大きな球体を作り出した。

 

「鬼ちゃん出来たよー★」

「おう!」

 

酒呑童子はボールの上に飛び乗り、そのまま跳ね上がり低空度の鳳凰に向かって行った。

 

「鳳凰は火属性……。ならこれだ!『夜叉車』!!」

 

酒呑童子は縦に高速回転して低空度鳳凰の翼を斬り裂いた。

 

「キュイイイイイイイイイ!?」

 

「へへ!効いたか!?」

「油断しちゃちゃダメだよー★」

 

酒呑童子が重力で落下してる瞬間に低空度鳳凰は炎の雨を降り注いで酒呑童子に集中砲火を浴びせた。

 

「ぐおぉぉぉぉ!」

「ほら言わんこっちゃない〜★ドキドキジャグリング★」

 

ワイズは小さめのボールを数個取り出すと酒呑童子に投げてぶつけた。

すると、ボールの中には液体が入っており、燃えていた体が鎮火した。

 

「なっなんだこれ……水か!?」

「そうだよー★大丈夫?」

「すまねぇ、ワイズ!」

 

ずぶ濡れになった酒呑童子は仕切り直し、ワイズと共に武器を構え直した。一方高高度鳳凰を担当していた悟空とスカッドは筋斗雲に乗りながら空中戦を繰り広げていた。

 

「スカッド!お前の肩に付いてるやつで撃ってくれ!」

「カララ!!」

 

ズギュュュュュュュン!ズギュュュュュュュン!

 

スカッドは肩に付いてる銃の様な物を発射して高高度の鳳凰に撃ちまくった。

 

「キュイイイイイイイイイイ!!」

「効いてるぞ!撃ちまくれ!」

 

ズギュュュュュュュン!ズギュュュュュュュン!

 

スカッドは連射して高高度鳳凰を撃ち落とそうとした、高高度鳳凰が弱り始めた。

 

「ギュ……ギュイ……」

「効いてる!酒呑童子!!そっちの様子はどーだー!?」

 

悟空は酒呑童子の様子を伺い下を覗いた。

 

「悟空ー!こっちはもう少し掛かりそうだ、待っててくれ!」

「猿くん!危ない!」

 

低空度鳳凰は酒呑童子を翼を羽ばたかせて吹き飛ばし、山に叩き付けられた。

 

「ぐはっ!!」

「鬼ちゃん!?大丈夫!?」

「このっ……」

「酒呑童子!!」

 

よそ見をしていた悟空達も高高度鳳凰に翼で叩き付けられスカッドと共に地面に叩き付けられた。

 

「ぐぇぇ!」

『大丈夫?』

「お前、それわざわざ書く必要あるか!?めんどくせぇから喋ろよ!」

 

地面にめり込んだ悟空は起き上がって立ち上がった。悟空の顔は怒りに満ちていた。

 

「酒呑童子!!俺はもうキレたぜ」

 

山にめり込んだ酒呑童子も顔に血管を浮き立たせて悟空の言葉に応えた。

 

「……ああ、龍二にゃ悪ぃがな。ウォォォォォォォ!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

酒呑童子と悟空は魔力を解放させて巨大な鬼と猿に変化した。大鬼と大猿になった2匹は高高度鳳凰と低空度鳳凰に向かって行った。

 

「「ヴォォォォォォォ!」」

 

「「キュイイイイ!?」」

 

大鬼になった酒呑童子は低空度鳳凰を掴みかかってそのまま殴り、マウントを取った。大猿になった悟空も筋斗雲に乗って高高度鳳凰を追いかけて行き、高高度鳳凰を捕まえた。

 

「悟空!行くぞ!」

「おうよ!酒呑童子!」

 

2匹の鳳凰を掴んだ大鬼と大猿は互いに向かって走り始め、鳳凰達を投げ合いそのまま2匹の鳳凰を渾身の一撃で殴り付けた。

 

「『鬼神爆裂拳』!」

「『岩猿爆豪拳』!」

 

悟空と酒呑童子の最強の技を繰り出された2体の鳳凰は首が折れたのか2匹の拳の中で息絶えていた。勝利を確信した2匹の大鬼と大猿は咆哮を上げた。

 

「わぁー★鬼ちゃん、猿くんやったね★」

「カララ!!」

 

その後、待機していた下級魔物達に解体作業をさせて悟空達は鳳凰国から後にしようとした……。だが。その鳳凰国には、小手の眷属器がある事に気付かなかった4匹、小手は祀られていた場所から光となって消えていった。

 

────────────────────────

 

その頃、フォーブレイ付近では予想もしない出来事が起きていた。麒麟を倒したトゥリナ組が解体作業をしていた時に起きた。

 

「リファナさん、前から聞きたかった事があるんですが良いですか?」

「なんじゃ?」

「あの、女性の魔物はその……みんな美人なんですか?」

「なんじゃ!?藪から棒に、そうじゃの〜噂に聞いた事があるが、他にも美人の魔物がいるようしじゃよ?」

「へぇー!どんな方なんですか?」

「実際に名前も知らんし、会ったことはないがリッチーとか?言うらしいぞ?アンデッドの王だとか?」

「へぇー、会ってみたいですね!」

 

ドッカーーン!!

 

麒麟の解体作業が終了した瞬間、爆発が起きた。ジキル博士は吹き飛ばされ、フランケンシュタインはリファナとトゥリナを庇っていた。

 

「なっなんじゃ!?」

「なんですか!?この爆発は!?」

「2人とも……危ない」

「フランケンシュタイン!そこをどくのじゃ!」

 

フランケンシュタインを振り払うと、コボルトの兵隊は全滅していた。

 

「これは……」

「そんな!ジキル博士はどこですか!?」

 

リファナとトゥリナが辺りを見渡した時に謎の男が立っていた。

 

「貴様か?妾達に仕掛けたのは?」

「うん」

「トゥリナさん!この方、物凄い魔力を感じます!貴方何者ですか!?」

 

トゥリナとリファナは武器を構えて警戒した。

 

「俺の名前は…… タクト=アルサホルン=フォブレイ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第50話 さらばジキル

俺達は先に転送魔法でゼルトブルに戻って来て他のチームの帰りを待っていた。

 

「ふぅ、一番乗りは俺達みたいだな」

「ふむ、悟空達の方が早く来ると思ったのだがな」

「トゥリナ達も未だに来てませんね」

「念話も通じねぇ、何かあったのか……?」

 

俺達が心配していると、悟空チームが帰って来た。悟空の手には鳳凰の素材が手にされていた。

 

悟空達も無事だった様だな。

 

「おー!龍二!早かったな!」

「悟空、ご苦労だったな。なぁ?リファナ達から何か聞いてないか?」

「リファナ?いや、聞いてないが?あいつら帰って来ないのか?」

「ああ。なにか、嫌な予感がするな」

 

俺達が素材を見せあっている所に、ボロボロになったジキル博士がよろよろと歩いて戻って来た。

 

「うう……龍……二さん……」

「ジキル!!どうしたんだ!?」

 

悟空と酒呑童子が肩を貸してジキル博士を支えた。

 

一体何があったんだ!?

 

「も……申し訳ありませ……ん……麒麟を……」

「麒麟がどうした!?まさか……麒麟に殺られたのか!?」

「いえ……我々も麒麟は倒しました……ですが……タクトと名乗る男に襲撃され……麒麟の素材を奪われ、リファナさんとトゥリナさん……を攫われました……」

「なんだと!?」

 

しまった、麒麟はフォーブレイの近隣に出現すると分かってたのに、奴が出て来る事を想定しなかった……俺のミスだ……。

 

「フェイズ3……怪人計画は……失敗で……す」

「まて、お前何を言っている?霊亀と鳳凰の素材は手に入れたんだぞ?お前がいればなんとかなるだろ!?」

 

ジキルは悟空達から離れて横たわった。俺が回復を施そうとすると、傷口は塞がらなかった。

 

何故だ?何故傷が塞がらない!?

 

「おい、なんで回復しねぇんだよ!?イムホテ!!何とかしてくれよ!ジキルが、ジキルとハイドが死んじまう!!」

 

イムホテは険しい顔をして俺に言い放った。

 

やめてくれ、言わないでくれ……。

 

「無理だ、強力な呪いがかかっている……。解呪できん」

「は?何言ってんだよ、お前大神官だろ!?何千年前から魔法使ってんだろ!?なんで解呪出来ねぇんだよ!!この約立たずがっ!!」

 

俺はイムホテに掴みかかってイムホテを怒鳴り散らし、殴った。

 

「ジキルの傷口からは強力なカースシリーズの魔力を感じる。お前も知ってるのだろ。それ程カースシリーズの呪いは強力なのだ!」

「───っ!?」

 

カースシリーズ。俺も前回の時に【怠惰】のカースにかかった。確かに発動した奴すらキツい呪いがかかる。だとすれば、ジキルは尚文のブラッドサクリファイスと同等の技を食らったって事か……。

 

「龍二さん……私は……ここまでです……あなたがこの世を……牛耳る所を隣で見たかっですよ……地獄で……下から……見上げさせて……頂きます……」

「ふざけんな!まだ行くな!ジキル!」

「すいません……龍…………二……さ……」

 

ジキル博士は力尽きて黒い灰の様になって消えていった。

 

「ジキルーーーーーーーーーーーーーーーー!!また……俺は……仲間を助けらねぇのかよ……どうすればいいんだよ!!」

 

俺が泣き崩れると、酒呑童子が俺を掴みあげて殴った。

 

「ぐっ!」

「しっかりしろよ!お前俺達の大将だろうが!!ジキル博士は死んじまった。けど、他にもやる事があんだろうが!!てめぇが泣いててどうすんだ!!情けねえツラしてんじゃねぇよ!」

 

俺は折れた歯を吐き捨て、歯を再生させながら立ち上がった。

 

「そうだな、俺はもう後戻り出来ねぇんだよな。済まなかった」

 

この場にいた幹部達も怒りに満ちた顔立ちで俺の指示を待ち望んでいた。

 

「龍二、トゥリナとリファナを助けに行くんだろ?」

「ああ……その前にワイズ、地下にいた5人の奴隷達を解放してやれ」

 

ワイズは驚きを隠せず、二度聞きした。

 

「え……良いの?霊亀とか鳳凰とかの素材を使って怪人作るんでしょ?」

「ジキルがいねぇと作れねぇんだよ。もう【フェイズ3】は失敗だ。奴隷達を解放しろ」

「わかった」

「酒呑童子、悟空。情けねえツラ見せて悪かったな」

「気にすんなって、俺達魔族の王なんだからよ」

 

悟空と酒呑童子は俺の肩をバンバン叩いて俺を励ました。

 

するとドラグリアがフランケンシュタインの姿が無いのを確認した時、俺に尋ねた。

 

「王よ……確信はありませんが、フランケンシュタインも恐らく」

「まだ分かんねぇ。考えたくはねぇが、覚悟はしておく」

 

ワイズが地下から戻って来て、デブ、双子姉妹、若者、老人が出て来た。

 

「龍二くん、連れてきたよ」

「久しぶりだな、お前ら……俺の力不足で計画がダメになっちまった。奴隷を解放してやるから、好きに生きろ……」

 

5人の奴隷達は訳も分からず解放されて俺達の前から立ち去って行った。

 

「これからフォーブレイに乗り込む……。強制はしねぇ、行きたくねぇ奴がいるなら向こうの世界に行って自由に生きてくれ」

 

俺は地獄門を発動させて門を開けてドラグリア達に尋ねた。

 

正直これ以上仲間を失いたくない、出来れば生き残って欲しい。

 

すると、悟空達は笑って答えた。

 

「何言ってんだよ、俺はお前に何処へだって付いてくぜ?」

「俺もだ。拾ったこの命、死ぬまで足掻いてみせるぜ」

「ボクも……龍二くんに拾って貰えなかったら今頃死んでたよ★、最後まで龍二くんと戦うよ★」

「王よ、私も忠義を誓ったのです、今更背きませんよ」

「ふん、我が認めた男が何を世迷言を言っているのだ?最後まで覇道を貫いて見せよ」

 

スカッドも黒板で答えた。

 

『俺も行くよ、最後まで戦う』

 

全員の意志を確認した龍二は最後に尋ねた。

 

「魔竜、お前はどうする?」

「今更何を言ってるのです?私はもう貴方と一心同体、離れる事は出来ないんですよ?地獄の果まで付いてきますわ!」

「ふふふふ……んじゃ……フォーブレイに攻め込むぞ!リファナ達を助けに行く!」

 

「「「「「おぅ!」」」」」

 

龍二達は、フォーブレイに向かって行った。

 




龍二の計画 フェイズ3
ゼルトブルで買った5人の奴隷達を霊亀、鳳凰、麒麟、応龍の細胞を使って四霊獣怪人を作る予定でしたが、計画の進行が順調過ぎるのもつまらないので失敗させました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第51話 窮奇の篭手・ハーデス

今日で最後の四凶武器、窮奇の篭手を手に入れます!


ジキル博士の死後、俺達はフォーブレイが見渡せる丘まで辿り着いた。俺はイムホテと共に偵察するために岩陰から眺めて見ると、フォーブレイ周辺には近代的な戦車や飛行船などが辺りを警戒していた。

 

「見た事のない兵器だな」

「なぁに、あんなもん鉄の塊だよ」

「ほう?では、聞くがこの布陣をどうするつもりなのだ?」

 

俺は兜をかぶり、立ち上がった。

 

どうするかって?

 

「こうすんだよ」

 

俺は は指パッチンをすると丘全体に黒く禍々しい影に満たされるとそこからは亡者の尖兵、Gゴブリン、オーク、コボルト、サハギン達が現れた。

 

「お前ら、良く聞け。俺は最後の四凶武器を手に入れてからタクト一派に殴り込みに行く。悟空、酒呑童子、ドラグリア、スカッドを筆頭にして戦って欲しい。恐らくだが四聖教会本部か、七星教会のどちらかにあるはずだ」

「分かった、龍二……気を付けろよ!」

「タクトって奴の城で落ち合おう!」

「王よ……ご武運を!」

「いってきまーす★」

「カララ……」

「龍二よ、カースの技に気を付けるのだぞ!」

 

悟空達は各自散開して進軍して行った。

 

「魔竜、俺達も行くぞ」

《はい!龍二様!》

 

俺は翼を広げて空から攻め込んだ。俺を確認したフォーブレイ軍は飛行船から機銃で弾幕を張りながら迎撃して来た。だが俺は弾幕をすり抜け、何食わぬ顔をしながら飛行船を魔剣で切り裂き、飛行船を撃墜した。それに負けじとドラグリアも次々と飛行船を撃墜して行った。

 

目的地周辺に近付いた途端、四凶武器達が話しかけて来た。

 

《主よ、どうやら七星教会の方から奴を感じる!!急げ!》

「OK〜行くぜぇ!」

 

俺は急降下して行き、七星教会を見張っていた兵隊達を一蹴した。

 

「ここか、案内頼むぞ!」

《任せろ》

 

俺は教会の門を蹴り開けて突入し、四凶武器の案内により四凶武器を発見する事に成功した。

 

「禍々しい篭手だな。これが最後の四凶武器か?」

《左様、コレ!起きんか!》

《うるせぇなぁ……混沌の魔剣か?久しぶりじゃねぇか》

 

篭手が禍々しいオーラを放った途端喋り出した。

 

どうやら窮奇は少し若い神の様だ。

 

《そいつ、新しい魔王か?》

「ああ、黙って俺の物になれ、お前が最後の四凶武器なんだからよ」

《俺が最後か!はは!良くみんな集めたな!それだけでもすげぇよお前!気に入った!俺を使いこなしてみな!》

 

篭手は勝手に俺の腕に装備した。篭手の見た目は……黒い手甲の様な見た目であちこちに禍々しい棘が付いていた。手の甲の所には『魔』と書かれていて腕辺りには翼が生えた虎の魔物が描かれていた。

 

《俺の名は窮奇(きゅうき)の篭手ハーデス。我が魔王よ!俺達四凶武器を使いこなし勇者達を倒して見せよ!》

「勿論さ……ハーデス、よろしくな」

 

窮奇の篭手ハーデス LR 熟練度0

装備ボーナス 格闘攻撃威力(特大) 同時装備可能

装備ボーナススキル 『魔王翔吼拳』『悪魔(デビル)ブロー』

四凶ボーナス ???

 

「おいハーデス、四凶武器全部揃ったのになんで四凶ボーナスが解放されねぇんだ?」

《あーそれ?それは四凶武器を全て集めると……》

 

────────────────────────

 

俺はハーデスとストームブリンガーを装備した状態で七星教会から出て来た。

 

「さて……他の奴らどうしてるかな」

 

俺は念話で酒呑童子達に連絡を取った。

 

《おーい、聞こえるかー?》

《こちら悟空、もう少しで城に辿り着くぞ》

《酒呑童子だか、俺ももう少しだ!》

《ボクは城の裏側が見えるよー★》

《こちらドラグリア。今王の上を巡回しております》

 

どうやら無事の様だな、ゴブリン達が頑張って悟空達を先に行かせた様だな……マジでいい部下を持ったよ俺は。

 

《よし、窮奇の篭手は手に入れた!合流するぞ!!》

 

《了解!!》

 

俺達は再び合流してフォーブレイの城に辿り着いた。そこにはGゴブリン達が周りの兵隊達と戦闘を繰り広げていた。

 

「ギャウ!ギャウ!」

「何!?リファナ達がこの中にいただと?おい!リファナ達を探すぞ!」

 

俺達は城の扉を蹴破り、中に入った。

 

「ちぃ、この広さだと面倒だ。手分けして探すぞ!」

「分かった、どこにタクト達がいるか分からねぇからな!気を付けろよ!」

 

俺とイムホテは玉座の間へ向かうと、ドラグリアは地下、悟空と酒呑童子は左側城内部、スカッドは右側城内部、ワイズは城内の庭を捜索を始めた。

 

俺とイムホテは玉座の間に辿り着き、ドアを蹴り開けた。そこには、見た目は一言で表現するなら美少年。顔の作りが良く、髪は金髪、目の色は青、典型的な外国人って感じだった。

 

そう、コイツがタクトだ。ジキルを殺した張本人だ!

 

「おいタクト。てめぇがジキルを殺したのか?」

「やぁ、君が噂になってる不死身の化け物かい?」

「だからなんだよ」

「あっそうそう、リファナって子とトゥリナっていう子は俺が貰うからさ、帰ってくれる?君らだってまだ死にたくないだろ?」

 

タクトは舐めきった態度で俺に挑発して来た。するとイムホテが先にタクトに話し掛けた。

 

「貴様、フランケンシュタインはどうした?」

「フランケンシュタイン?ああ、このガラクタの事か?」

 

タクトはフランケンシュタインの首をボールのようにポンポン弾ませていた。それを目の当たりした俺は我慢出来ずに魔剣ストームブリンガーを振り下ろした。

 

「『デスブリンガー』!」

 

デスブリンガーの飛ぶ斬撃がタクトに向かって飛んで行くと、タクトの仲間達がバリアを張って攻撃を防いだ。

 

「おいおい、いきなりかよ」

「よくも俺の大事な仲間のフランケンを殺りやがったな。ぶっ殺してやる!」

「おいおい。良いのか?ここに来たならまずは他の仲間の心配しろよ」

「何だと?貴様、リファナとトゥリナを何処へやった!?」

 

イムホテがタクトに尋ねるとタクトはニヤニヤ笑いながら答えた。

 

「今頃仲間に別れの挨拶でもしてるんじゃないかな?」

「なん……だと?」

 

────────────────────────

 

俺達がタクトと話している時。ワイズは城内の庭先をくまなく探していた。

 

「おーい、リファナちゃーん、トゥリナちゃーん」

 

ワイズがキョロキョロしていると噴水がある所にレイピアを抜いているリファナを発見した。

 

「あっ★リファナちゃん!探したよー!龍二くんが待ってるよ?帰ろ?」

 

リファナが振り向くとニコリとワイズに微笑んだ。

 

「さっ、帰」

「『グラス・レーヌ・グルナード』!!」

 

リファナは……ワイズに向けて必殺技を繰り出した。完全に油断していたワイズは体を貫かれた。

 

「えっ……なん……で?……リファナ……ちゃ」

「『ネージュ・コンポゼ』 アン、ドゥ、トロワ、キャトル、サンク!」

 

リファナはワイズの体を無惨にも5連撃で切り刻まれてしまい、膝を付いた。

 

「そんな……リファナ……ちゃん……」

 

リファナは無言のままワイズの首を切り落とした。




次回タクトと決着を付けます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第52話 激昴

俺達がタクトと睨み合う中。地下を捜索していたドラグリアはトゥリナとリファナを探していた。

 

「トゥリナ、トゥリナはいるか?リファナ、返事をしろ!助けに来たぞ!!」

 

ドラグリアは薄暗い地下を歩いていると、手足を拘束されていたトゥリナを発見した。

 

「トゥリナ!無事か!?」

「………………」

 

トゥリナの様子を伺ったドラグリアは顔を覗こうとした瞬間、トゥリナは顔を上げた。

 

「に……げ……ろ……」

「なに!?」

「アグァっ……操……られた……体が……言う事……効かん」

 

ドラグリアはバックステップをしてトゥリナから距離をとり、龍二に念話を試みた。

 

《魔王様、トゥリナを発見しました!至急応答を!!。魔王!》

 

「これは妨害魔法か。面倒な事をしてくれる」

「にげる……のじゃ……ドラグリア……あぐっあっ!」

 

トゥリナの背中から赤黒いオーラを浮かび立たせ、尻尾を9本にさせた。

 

このまま戦えば同士討ちになる。なら!魔王の元に導けばよい!

 

「ふふふ。久しぶりにトゥリナよ、私と遊ぶか?」

「ギギギギ!!」

 

トゥリナは手枷を引きちぎってドラグリアを追い始めた。

 

────────────────────────

 

玉座の間にいた俺達は、トゥリナの魔力を感じ取った。

 

「この魔力はトゥリナか!?」

「どうやら見つけた様だな。けどお前、なんかしたな?」

 

俺はタクトを睨みつけ尋ねた。

 

あのトゥリナがバカみたいに魔力を解放するとは思えない、恐らく操られてる可能性があるな……。

 

「へぇ、やるじゃん?そうさ、君の可愛い子達を操って仲間同士殺しあわせようとしてるのさ」

「おのれ……許さんっ!!」

「落ち着けイムホテ、ワイズに念話を送ったけど返答がない。もしかすると殺られたかもしれねぇ」

「何!?」

 

イムホテはワイズに念話を送ったがやはり応答が無かった。

 

「ワイズ、くそっ!!」

「今はコイツら皆殺しにしてから探せばいい」

 

俺が構えようとした瞬間、後ろからリファナが現れた。リファナの右手には、ワイズの首が手にされていた。

 

「リファナ!!お主、ワイズに手を掛けたのか!?」

「……………………」

 

リファナは無表情でワイズの首を俺に投げ付け、レイピアを構えた。

 

「リファナ。操られちまったんだな……」

 

俺が悲しそうな顔をしてリファナを見つめると、タクトは笑いながら言い放った。

 

「もうお前らの所には帰りたくねぇってよ。さぁ、レールディア、シャテ、ネリシェン、アシェル!この魔物達を殺せ!」

「はっ!」

 

サメの様な亜人、龍2匹、グリフォンが俺に向かって襲いかかって行った。俺も応戦する為に構えたその時、窓からドラグリアが飛び込んで来た、その後を追うようにトゥリナも鬼の様な形相をして現れた。

 

「殺し損ねたか。ならトゥリナ、リファナ!この男を殺せ!」

「…………」

 

俺は突然構えを解き、リファナとトゥリナの攻撃を黙って受けた。

 

「龍二!貴様何をしている!?」

「黙って見てろ。そんでお前ら、ちょっと寝てろ」

 

「「!?」」

 

トンッ

 

俺はトゥリナとリファナの後頭部に手刀をして気絶させた。

 

「なっ!?一撃だと!?」

「おいお前、俺を完全にキレさせたな。イムホテ、ドラグリア、悟空達と合流してこの城から出ろ」

「わっ……分かった」

「承知……ご武運を!!」

 

俺の周りには魔力で小石が浮き始めていた。それを見たドラグリアとイムホテは冷や汗をかきながらトゥリナとリファナを抱き抱え脱出した。

 

「行くぞ魔竜!!」

《参りましょう、龍二様!》

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

《はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!》

 

俺と魔竜は魔力を解放し、黒い稲妻を体中に纏わせた。その衝撃により、タクトの城にヒビが入り天井が崩れた、タクト達は計り知れない魔力を感じ取り、怯え始めた。

 

「皆殺しにしてやる!覚悟しろっ!!」

「はぁっ!!」

「タクトには指一本触れさせないっ!」

 

サメの亜人は俺に銛を突き刺し、青いリザードマンは剣で俺を刺したが、俺はものともせずに両者の首を掴みへし折った。

 

「ネリシェン!シャテ!?そっそんな!!」

「タクト!逃げるのだ!こやつは、こやつには手を出してはいかん!」

 

そう言い放ち、レールディアは巨大な竜になり俺に噛み付いた。

 

ジキルが生きてればコイツから応龍の細胞を手に入れたはずなのに。

 

俺は噛まれながらも、レールディアに尋ねた。

 

「お前か?ジキルを殺したのは?」

「だからなんじゃ?」

「そうか……」

 

噛み付いた状態でそう言い放ち、俺は両手を縦に広げた。

 

「『魔王翔吼拳』!!」

「ぐぶぇ!!」

 

とてつもない巨大なエネルギー弾を放ちレールディアの頭を吹き飛ばした。

 

「そっそんな……竜帝のレールディアまで!?アシェル!逃げるぞ!」

「分かった!早く乗って!」

「待てやコラ、逃げんじゃねぇよ」

 

翼を広げて飛び立とうとした瞬間にグリフォンの足を掴んだ俺はそのまま床に叩き付けた。

 

「『悪魔(デビル)ブロー』!!」

 

グリフォンの頭を拳で潰すと、風圧で飛ばされたタクトは壁に叩き付けられた。

 

「ゲホッ!」

「良くも俺の仲間に手ぇ出しやがったな?」

「ひっ……こっ……殺さないで……」

「殺さないでだと?足りない脳みそを動かしてよく考えろ。お前は豚や牛が命乞いをしたら耳を傾けるのか?。ふざけんじゃねぇぞ、仲間を殺した報いを受けろ!」

 

タクトの目には俺はこんな風に写っていた。禍々しい鎧を身に付け、瞳が赤く染めがっており頭には角が生えていた。そして俺は指パッチンをしてゴブリン達を呼び出した。

 

「おい、抑えろ」

「おい!何をするんだ!?」

 

Gゴブリン達はタクトを大の字に寝かせて押さえつけ、俺は魔剣ストームブリンガーを抜いた。

 

「今から地獄見せてやるよ、おい指広げろ」

 

ゴブリン達はタクトの両手両足の指を広げさせ、俺は左の親指を切り落とした。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「喚くんじゃねぇよ。お前には確かに悪だ、だが、お前には正義がない」

 

ドスという音を立てて左人差し指を切り落とし、タクトはギャーギャーと喚き散らして暴れ始めた。

 

「指落としたら次は足から輪切りにしてやるからな、楽しみにしてろよ?なぁ?」

「ギャハハハハ!!」

 

ゴブリン達もゲタゲタと笑いながら切り落とした指をポリポリとむさぼるように食い始めた。

 

───────────────────────

 

10分後。

 

「ちっもう死にやがった。コイツはメルロマルクに捨ててくる。お前らは休んでろ」

 

俺は指パッチンして転送魔法を唱え、メルロマルクの草原にタクトを捨てて戻って来た。イムホテ達と合流して、洗脳されたトゥリナとリファナの事を尋ねた。

 

「リファナとトゥリナはどうなった?」

「我の術で何とか洗脳は取れた、トゥリナはドラグリアと話している。リファナは────」

「ワイズの事は言うな。タクトに殺されたと言っておけ」

「分かった」

「龍二、俺達役に立てなくてすまねぇ」

 

悟空と酒呑童子は俺に頭を下げた。俺は2人の肩を叩いて励ました。

 

「もう、済んだことだ。ワイズの分まで生きようぜ」

 

「「すまねぇ……魔王……」」

 

龍二は玉座の間でタクトが座っていた椅子に座り、The魔王の様なポーズをとってゴブリン達に指示を出した。

 

「これからメルロマルクに映像を流す、準備しろ」

「ギャギャ!」

 

さぁ勇者共。そろそろ決着を付けようか。




今回でタクト編を終わります。
次回から、最終章に入ります!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4期 最終決戦編
第53話 宣戦布告


今回からクライマックスに突入します、徐々に伏線を回収して行きますので最後までお付き合い下さい!。

序盤は勇者目線でスタートします。


尚文達はメルロマルクで特訓を受けていた。魔法、スキル解放、各勇者の特殊強化方法、龍魔法、龍脈法、七星勇者などの知識を蓄えて村から勇者候補を集め、七星勇者、四聖勇者全て揃う事が出来た。

 

謎の青い砂時計も直ぐに消えたし波も来なくなった、一体この世界に何が起きているのだろうか……、だが他の異世界の勇者達の協力で錬、元康、樹もゲーム感覚を無くて必死に物事に取り組んでいる。少し前にフォーブレイの王子が無惨の姿をして発見されたが眷属の精霊達がフィーロ、フォウル、サディナ、リーシア、女2号が選ばれたな……数えれば総勢23名の勇者が揃った……勇者多すぎないか?

 

ラフタリアは刀を装備して尚文に話し掛けた。

 

「尚文様、この桜天命石を吸収して宜しいのでしょうか?せっかく女王様から頂いた素材ですが……」

 

尚文は鼻で笑いながら答えた。

 

「良いんじゃないか?貰い物だし、何が解放されるか試したいだろ?」

「そうですけど……」

「俺の命令だ、吸収しろ」

「はい」

 

ラフタリアは渋々桜天命石を吸収させた。するとラフタリアは驚いた様に尚文に言い放った。

 

「尚文様!凄いスキルが解放されましたよ!」

「ん?どんなんだ?」

 

ラフタリアが説明しようとした瞬間、突然空がワインレッドに変わり空には巨大なモニターの様な物が現れた。その映像の先には暫く行方が分からなかった龍二と名乗る男が映っていた。

 

「23人の勇者の諸君、お久しぶりって言えば良いかな?俺は災厄の波を起こしていた張本人である魔王・福山龍二と申します」

 

その映像は他の勇者達も見ていて驚いていた。

あいつが……あいつが災厄の波を起こしていたというのか!?

 

魔王を名乗った男は更に話を続けた。

 

「メルロマルク第2王女マルティを攫って殺し、この間はフォーブレイの王子をこの手で殺した」

 

「なっなんじゃと!?」

「あいつが……アイツがマインを殺したのか!」

 

他の場所で映像を見ていたオルトクレイと元康は怒りに満ちていた。

龍二は嘲笑う様に話を続けた。

 

「今は我々魔王軍はフォーブレイにいる、幹部8匹と1億匹の兵隊が待ち構えている。俺を殺せば波も止まるし世界に平和が訪れるだろうよ。さぁ勇者諸君、全力でかかって来い!!」

 

映像は終わり、空も元に戻った。慌てて尚文の元に女王とオルトクレイがやって来た。

 

「岩谷殿!」

「クズ!アイツを倒せば波が止まるのか!?」

「張本人と名乗ったのですから事実でしょう、ゼルトブルは壊滅しておるので傭兵は呼べませぬが、他の各国から応援要請を出してみましょう」

「分かった、女王は勇者全員集めてくれ」

「承知しました」

 

 

数分後、玉座の間23人の勇者達が招集された。

 

「勇者の方々、お集まり下さり感謝致します。先程の映像をご覧になったかと思いますが、あの者が魔王と名乗りました……これが最後の戦いになるでしょう……勇者方は先にフォーブレイに向かい魔王と名乗った福山龍二の討伐を命じます!」

 

 

勇者達は号令に従いフォーブレイに向かって行った。

 

────────────────────────

 

一方フォーブレイでは、俺は放送を終えると頭を抱えて何かを考えていた。

 

これで……全て決着が着く。

 

そして、思い立ったかのようにペンと紙を手に取り何かを書き始めた。書き終えた俺は生き残った幹部達を集めた。

 

「トゥリナ、もう大丈夫なのか?」

「すまぬ……妾がしっかりしてれば……」

「気にする事はねぇよ、俺の采配ミスだ。リファナも大丈夫か?」

「はい……大丈夫です」

「なら良いんだけどな、もうすぐ勇者共がやってくる……総力戦になるから良く聞いてくれ、フォーブレイの街中にゴブリン達と下級魔物を配置に付かせる事にした」

 

トゥリナとリファナは前に出て俺に意見した。

 

「龍二よ、お主に刃を向けた責任を取らせてくれ!必ず勇者を殺してみせる!」

「私もです!!盾の勇者いえ、ラフタリアは私が必ず倒します!」

 

すると俺は無表情でトゥリナ達の意見を聞いて答えた。

 

「…………分かった、リファナとトゥリナはラフタリアを任せる」

「はい!」

「任せよ」

「バルバロは兵隊達の指揮を取れ。お前が要だ、頼むぞ」

「へいっ!お任せを!」

「ドラグリアは使い魔を使って四聖勇者の行動を監視しろ」

「承知しました」

「イムホテは押されている陣地の所があればミイラを出して増援をしてくれ」

「了解だ」

「悟空と酒呑童子は七星勇者と戦闘。だが、フィロリアルクイーンが現れたら撤退して来い、これは命令だ」

「分かった」

「腕がなるぜぇ!」

「スカッドは万が一の為に俺とここで待機だ」

 

スカッドが頷くと俺は椅子から立ち上がって幹部達に更に言い放った。

 

「そして……俺からのプレゼントだ。このアミュレットを身に付けとけ」

 

俺は8つのアミュレットを1人ずつに与えた。

 

「これでよし。野郎ども、配置に付け!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

俺とスカッド以外の幹部達は配置について勇者達が来るのを待ち構えていた。俺はゾンビから採取したウイルスをコボルトの腕に刺しながらはスカッドに言い放った。

 

 

「スカッド、本当に”奴”がで来るんだろうな?」

「カララ!」

 

スカッドは俺の言葉にこくんと頷いた。

 

────────────────────────

 

念の為に勇者達の名前を書いときます。

 

尚文(盾) 絆(狩猟具)

錬(剣) シルディナ(札)

元康(槍) セイン(裁縫具)

樹(弓) ラルク(鎌)

ラフタリア(刀) グラス(扇)

フィーロ(爪) オルトクレイ(杖)

リーシア(投擲具) フィトリア(馬車)

フォウル(小手) 錬の仲間・斧使い(斧)

サディナ(銛) 樹の仲間・女槍使い(鞭)

エレナ(鏡) メルティ(楽器)

燻製(船)

錬の仲間・魔法使い(本)

アトラ(槌)




大分勇者の設定いじくりましたが完璧な布陣だと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第54話 再会する2人

ついに……ラフタリアとリファナが合間見えます。


宣戦布告してから3日後、勇者連合がフォーブレイまで辿り着いた。それを見ていた俺は向かってくる勇者達をバルバロと共に眺めていた。

 

「来たか……」

「頭、ちょっと良いですか?」

「どうした?バルバロ」

 

バルバロは金棒を担ぎながら俺に、

 

「申し訳ねぇっすけど。俺は撤退はしませんぜ?」

「何?どういう事だ?」

 

俺がバルバロを睨み付けるとバルバロは膝をついて答えた。

 

「おれぁ、あんたと出会ってなかったら勇者に殺されてた。あんたのおかげで俺はここまで出世出来る事も出来た。あんたに義理がある。この命、投げ打ってでもあんたを守りてぇ」

 

それを聞いた俺はクスリと笑って、

 

「計画があるからダメだと言っても聞かなそうだな」

「無論です」

「分かった。ならもっと厳しい命令出してやるよ」

「なんでも言ってくだせぇ」

「勇者の首を3つ以上持ってこい。これが命令だ」

「承知!!行って参ります!」

《バルバロ殿、ご武運を!!》

 

バルバロは兜を被って最前線に向かって行った。

 

死ぬなよ、バルバロ!!

 

「行ったか……。おいお前、角笛を吹け」

「ギャオ!!」

 

Gゴブリンは俺の指示に従い角笛を吹いた。鳴り響いた角笛の音を聞いたGゴブリン、オーク特殊部隊、ゾンビ化したコボルト、武装したサハギン達は戦闘態勢に入り、持ってる武器を盾にガンガンぶつけて鼓舞し始めた。俺は軍配斧モルドレッドを掲げて声を荒らげた。

 

「者どもよ……悪鬼羅刹が如きの者どもよっ!全軍!攻撃開始!」

 

「「「「グォォォォォァァァ!!」」」」

 

Gゴブリン達は勇者達に向かって駆けて行き戦闘を始めた。俺は念話を飛ばしてドラグリアに尋ねた。

 

《ドラグリア、どんな状況だ?》

《はっ、盾とフィロリアルと女の亜人、剣の勇者、槍の勇者、弓の勇者が防衛線を突破してそちらに向かっております》

《そうか……引き続き監視を続けてくれ》

《承知しました》

 

「四聖勇者達が来たか」

 

今度はトゥリナ達に念話を飛ばした。

 

《トゥリナ、リファナ、四聖勇者達が接近しているらしい。手筈通りにラフタリアとフィーロを頼むぞ》

《うゆん、任されよ!》

《はい!龍二様!》

 

────────────────────────

 

暫くすると城門が破壊され、勇者達が乗り込んで来た。そこに待ち構えていたトゥリナ達は武器を構えた。

 

「もう、ここまで来たか」

 

尚文とラフタリアはフィーロから降りてトゥリナに尋ねた。

 

「あの2人は………亜人か?」

「尚文様、狐のあの方は魔物です!亜人ではありません!」

「あのお姉ちゃん強そうだね!フィーロ負けないよ!」

「ふんっ!ラクーンのブスが。ほれ、お主も挨拶せぬか」

 

リファナはローブをめくり姿を露にした。するとラフタリアは驚いて幽霊を見た様な顔をしていた。

 

「リ……リファナ……ちゃん?」

「久しぶりね、ラフタリアちゃん」

「そんな……なんで?……あの牢屋で確かに……」

「牢屋?ああ、レイビア領の?」

 

ラフタリアはブルブルと震え出し、怯え始めた。

 

いや怯えると言うより理解出来ないと言う方が正しい。

 

尚文はラフタリアに声をかけた。

 

「ラフタリア!しっかりしろ!あの骨の子が生き返る分けないだろ!」

「うるさい盾」

「なんだと?」

 

リファナは尚文を睨みつけてレイピアを構えた。

 

「まだ信じられない?」

「ウソ……ありえない!!」

「正真正銘リファナだよ?昔キール君と3人で仲良く遊んだよね?」

 

それを聞いた途端ラフタリアはペタンと腰を抜かしてしまった、尚文はラフタリアを怒鳴った。

 

「ラフタリア!立て! これは命令だ!」

 

尚文の命令で奴隷紋が反応し、ラフタリアの胸が光出した。

 

「うっ……くっ!!」

「やめろ盾ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

リファナは奴隷紋で苦しめられているラフタリアを見た途端、激昂しながら尚文に突進して行った。

 

「尚文さん!何をしてるんです!? 『流星弓』!!」

「お兄ちゃん危ない! 『 はいくいっく』!!」

「させぬわ!」

 

トゥリナはキセルで矢を弾き、フィーロを右回し蹴りで援護を防いだ。それを見ていた錬と元康も加勢した。

 

「尚文!ラフタリアちゃんとあの子知り合いなんだろ!?無理に戦わせない方が良いじゃないか!」

「元康の言う通りだ、奴隷紋の光を見た途端暴れ始めたぞ!?」

「おい、、勇者共……魔王ならこの上じゃ、この鳥とラクーンのブスを置いてさっさと上がれ」

「なっ!?」

「罠かも知れませんね、なんのつもりですか?」

 

樹は弓を引きながらトゥリナに尋ねた、するとトゥリナは笑って答えた。

 

「罠じゃと?そんな小さい事なぞせんわ」

「尚文行こう。ラフタリアちゃんを信じて先に進むんだ!」

「くっ……」

「尚文、行くぞ!」

「尚文さん!ラフタリアさんを信じて!」

 

尚文は意を決してフィーロに言い放った。

 

「フィーロ!ラフタリアを頼むぞ!」

「うん!任せてお兄ちゃん!!」

 

尚文達は先に向かい、階段を駆けて行った。

 

「おい、鳥……ここは狭いから向こうで妾が遊んでやろうか?」

「むー!フィーロ負けないもん!」

「なら付いてこれるかな?」

 

トゥリナは猛スピードで庭に向かって行き、フィーロも追いかけて行った。この場に残されたリファナとラフタリアが再会を果たした時だった。

リファナはレイピアをラフタリアに向けて言い放った。

 

「ちょっとラフタリア、いつまでビビってんの?」

「まっ……まって……どうやって……」

「あたし?龍二様に生き返らせて貰ったの、アンタが盾と意気揚々に生活してる時はあたしは特訓ばかりだったわよ? つーかアンタなんで寄りによって盾の奴隷になんかに成り下がっちゃった訳?」

「私は……盾の……尚文様の剣になると誓ったから!リファナちゃんこそなんで魔王の仲間になんかなっちゃったの!?」

 

落ち着きを取り戻したラフタリアはリファナに言い返した。

 

「なんで?理由知りたいの?なら教えるけど アンタの事水晶玉で見たけどさ、何盗賊が奪った物を奪ってんの?勇者なら持ち主に返すのが当たり前でしょ?アンタ何考えてんの?」

「そっそれは……」

「それとさ……あのデブから別の所に行ったでしょ?その飼い主誰だが分かってんの?」

「えっ……リファナちゃん……なんの事?」

 

怒りの興奮が収まらない状態のリファナはラフタリアに言い放った。

 

「はぁ、おめでたい子になっちゃったのね。なら教えるけどさ、アンタを買ったの……メルロマルクの女王だよ?」

「えっ……」

 

ラフタリアは唖然としてリファナの言った言葉に詰まり、戸惑い出した

 

「えっ……まって……それじゃ……あそこに居なければ……私」

「そうよ、アンタが買われなければあたしは死なずに済んだの」

「イヤ……言わないで……お願い……」

「この……人殺し」

「嫌ァァァァァァァァァァ!!」

 

 

ラフタリアは頭を抱えてうずくまって叫び出した。

 

────────────────────────

 

その頃、玉座の間で俺はスカッドと共に勇者を待ち構えていた。

 

「リファナ、言いたい事いっぱい言ってラフタリアといっぱい喧嘩しろ……」




リファナがちょっとDQNっぽくなっちゃいましたけど、実際に2人が再会してたら女同士の喧嘩になると思うんですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第55話 凍てつく桜

リファナvsラフタリア回です!頑張って胸熱回、神回になるように頑張ります!

桜神楽の型を鬼滅っぽく改造します!ラフタリアの幻影魔法は使わない方向です!


うずくまるラフタリアを見下ろしていたリファナはため息をついてレイピアを構えた。

 

「いつまで泣いてるの?アンタを倒すのが私の役目、さぁ立って戦いなさい……ラフタリア!」

 

怒鳴り散らすリファナはラフタリアにレイピアを突き付けた。すると……ラフタリアはゆらりと立ち上がった。

 

「うっ……うっ……私は……尚文様の剣となるって誓ったから!そして私は刀の勇者、リファナちゃんを助ける為に……私……戦う!」

 

涙を拭って刀を抜いて構え言い放った。

 

「お互い懐刀って立場の様ね……ならあたしも魔王龍二様の魔剣士として貴方を倒すわ、いくわよ!刀の勇者!」

 

リファナからは冷気を纏った魔力、ラフタリアからは桃色の魔力のオーラが纏い始めた。

 

「『ジーヴル・プリュ・フォール』!」

「『桜神楽一ノ型……開花』!!」

 

互いに強化スキルを発動させた、リファナからは雪の結晶が纏い、ラフタリアからは桜の花びらが纏い始めた。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

激しい金属音と火花を散らし、2人の周りにクレーターが出来た。

 

「『フロコン・ドゥ・ネージュ』!」

「『桜神楽ニノ型……山桜』!」

 

リファナからは雪の結晶の形をした飛ぶ斬撃と、濃い桜色の花びらの形をした飛ぶ斬撃がぶつかり合い、雪と花びらが舞散った。

 

「へぇ、冬と春が一気に来た感じがするわね」

「リファナちゃん、お喋りはそこまでだからね!貴方を倒して連れて帰るんだから!」

「戯言はあたしを倒してから言いなさいよ!」

 

何度も何度も刃を交えて火花を散らした。

 

「イスベルグ・ローズ!」

「桜神楽三ノ型……」

 

リファナの青い薔薇の斬撃をバックステップで回避したラフタリアは居合の構えをした。

 

「あれはヤバイわね……この技に変えようかしら……」

 

リファナは雰囲気が変わったラフタリアに警戒した。

 

「……『染井吉野』!」

「『コントルアタック・アヴァランチ』!!」

 

ラフタリアの抜刀術とリファナのカウンター技が交差した。

 

(私の……抜刀術が受け切られた……)

(あたしがいなし切れなかった……)

 

立ち位置が入れ替わった途端周りの壁と床が切れて凍ったり、桜の花びらが舞散った。

 

「やるわね、流石は刀の勇者って言えば良いかしら?」

「リファナちゃんも、流石は魔剣士ね」

 

2人は距離を取り、牽制し合いスキルを放った。

 

「『シャンデル・ド・グラス・オフェール』!!」

「『桜神楽四ノ型、枝垂れ桜』!!」

 

リファナの突き系の斬撃をラフタリアは壁を蹴って飛び渡って回避してリファナに向かって飛び付き、峰打ちで腹に一太刀入れた。

 

「がっは……」

 

特別性の鎧を着ていたリファナの腹部は少し歪んでしまった。

ラフタリアの一撃は余程の威力の様だ

 

「はぁ……はぁ……峰打ちなんて随分優しいのね」

「私は……リファナちゃんを殺したくないから」

「バカにしないで!『タンペート・ド・ネージュ・ボンナバン』!」

 

鋭い突きをラフタリアに仕掛けたラフタリアは紙一重でかわし、左斜め下から刀を振り上げた。

 

「!?」

 

リファナも紙一重でかわし、右斜めしたからレイピアを突き上げるがラフタリアは回避した。

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

「勇者だけあるわね、しぶといっ!!」

(感が鋭いわね、流石はラフタリアだわ、突刺のレイピアでは分が悪い)

「魔剣士ならではの剣術ね、リファナちゃんにピッタリだわ」

(リファナちゃんがこんなに強くなるなんて……剣の勇者様とはまた違って剣筋が読みにくい)

 

((けど……勝つのは私だ!))

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

ジリジリと牽制し合う2人は再び鍔迫り合いになった。

 

「昔の話になるけど、アンタ盾と結婚したいとか言ってたけどどこまで進んでるの?キスしたの?」

「なっ!?今そんなに話ししたくないよ!集中を乱す作戦ね!?リファナちゃんこそ魔王とどんな関係なのよ!」

「裸で寝る仲よ!」

 

※リファナが大きくなった回を思い出して下さい※

 

「なななななんですって!!」

「あら、随分動揺したわね!」

 

リファナは隙を突き、ラフタリアを壁に押し付けた。

 

「今は決闘中よ?何を油断してるのかしら?」

「リファナちゃん……昔はそんな意地悪い事なんかしない!『桜神楽五ノ型、八重桜』!!」

「『ネージュ・コンポゼ 』!!」

「1式、2式、3式、4式、5式!!」

「アン、ドゥ、トロワ、キャトル、サンク!!」

 

激しい連続攻撃の応酬で壁、床、天井などが斬撃で切り裂かれて行った。

 

「おるぁぁぁぁ!!」

「でやぁぁぁぁぁ!!」

 

刀とレイピアは何度も何度もぶつかり合い火花を散らした。

痺れを切らしたのかリファナは左手を握り、ラフタリアを殴った、殴られたラフタリアもリファナを殴り返した。

 

「ぺっ……口の中切れちゃったじゃん」

「ぺっ……あたしだって切れたもん……」

「あたしは魔物じゃないけど、龍二様と一緒にいて分かったの、人間なんて所詮上辺だけなのよ、アンタも、女王も、盾も」

 

口から血を流しながらラフタリアは血を拭い、リファナに言い返した。

 

「そんな事ない!少なからず尚文様は違った、確かに勇者らしい事なんてあんまりなかったけど……口は悪いし鈍感だし無愛想だし、けど……」

「けど何よ、言いたい事あるなら言いなさいよ!」

 

ラフタリアは少々迷ったがリファナを見つめた。

 

「リファナちゃんと同じで、優しい人だから……」

 

面をくらった様な顔をしたリファナは動揺してしまった。

 

「なっ……なによ、ふざけないでよ!私はアンタが憎いのよ!自分だけ楽して生活してさ!」

「楽なんてしてないよ!私がいないと尚文様は戦えないの!だから私が戦わなきゃいけないの!」

 

レイピアをラフタリアの喉元に突き付けたリファナは怒鳴り散らし、ラフタリアは言い返した。

 

「もう無理、アンタはあたしの最強の技で殺してあげる」

「これだけ言ってもダメなら私も最後の技で迎え撃つ!」

 

ラフタリアとリファナは互いに距離を取り、魔力をフルパワーまで上げた。

 

「いくわよ……ラフタリアちゃん」

「こっちもいくよ、リファナちゃん」

 

「桜神楽終の型……『千本桜』!!」

「『グラス・レーヌ・グルナード』 !!」

 

桜吹雪と氷の猛吹雪が吹き荒れ始め、ラフタリアとリファナの剣は互いの体に刺さった。

ラフタリアは倒れ最後まで立っていたのはリファナだった。

 

「はぁ…はぁ…ぐっ……あたしの……勝ち……」

「うっ……」

 

よろよろとレイピアを引きずってリファナはラフタリアに剣を向けた。

 

「死ね……ラフタリア!!」

「いいよ、リファナちゃん……」

 

 

───────────────────────

 

 

 

リファナはレイピアをラフタリアの鼻先の手前で寸止めした。

 

「ぐっ……!!」

 

リファナは小さい頃の思い出がフラッシュバックしてしまい、躊躇してしまった。

 

「龍二様……ごめんなさい……やっぱり……出来ません……」

 

リファナは急にレイピアを落とし、ペタンと座り込んでしまった。

 

「やっぱり優しいね、リファナちゃん……」

「あたし……あたし……」

 

すると龍二から念話が入って来た。

 

《もういい、リファナ……良くやったよ》

 

「龍二……様……」

 

《もう戦わなくていい》

 

「うっ、うわぁぁぁぁっ!!」

 

《ラフタリアに言いたい事言えたか?》

 

「はい……」

 

《リファナ、お前を魔剣士から解任する。今までご苦労さま》

 

「ごめんなさい……龍二様……」

 

《トゥリナももうすぐ撤退させる、お前達は先に街から逃げろ》

 

「そんな……!?龍二様、一体何をするつもりですか!!」

 

《解任した奴に説明するつもりはない、早く行け》

 

「待って下さい!龍二様!龍二様!」

 

龍二は一方的に念話を終了させた。

 

「リファナちゃん、どうしたの?」

「うっ……うっ……魔剣士クビになっちゃった……」

「そっか……あたし魔力切れちゃった……」

 

ラフタリアは寝そべりながらリファナに言い放った。

リファナはため息をついてラフタリアに答えた。

 

「世話の焼ける子ね、肩貸すから起きてよ」

「ごめんね」

 

リファナはラフタリアに肩を貸し、2人は城から脱出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第56話 大切な仲間

リファナはラフタリアと共に城から脱出した頃、トゥリナはフィーロと城内でカーチェイス並の追いかけっこをしていた。

 

「この鳥め……なかなかのスピードじゃの!」

「まてー!キツネのお姉ちゃん!」

 

するとトゥリナに俺から念話が入って来た。

 

《トゥリナ、リファナが負けた》

 

「なっなんじゃと!?」

 

《四聖勇者の到着をお前の幻影魔法で遅らせてくれ、そしてトゥリナも撤退しろ》

 

「心得た、鳥よ遊びはここまでじゃ。『ミラージュ・ラビリンス』!」

 

トゥリナは魔力を込めた煙管から煙を大量に放出させて煙幕を張った。

 

「うわー!……あれ!?どこいった!?」

 

フィーロを撒いたトゥリナは城内全体に煙を充満させて煙の迷路を出現させて尚文達を惑わす事に成功した。

 

「これで良し、さて龍二の元へ戻ろうかの、しかし……なぜ龍二は撤退させようとするのじゃ?」

 

疑問を抱きながらトゥリナは玉座の間に辿り着き、俺とスカッド、ドラグリア、悟空、酒呑童子、イムホテが合流した。

 

「龍二!なんでもう撤退なのじゃ!?」

「………………」

 

グラマー形態になりトゥリナは俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「落ち着けトゥリナ、これも作戦の内だよ」

「なっなんじゃと!?」

 

そう言うと俺はスカッドから貰ったガントレットを見せた。

 

「なんじゃこれは……?」

「これは自爆する装備品だよ、威力は恐らくフォーブレイ全体消し飛ぶくらいの威力がある、これを使って一気に叩く作戦なのさ」

 

トゥリナはゾクッと顔を青ざめた。

 

「して、これをどうするのじゃ?」

「お前らの安全を確保したらこの爆弾を作動させる」

 

俺は地獄門を発動させて幹部達に命令した。

 

「お前ら、魔竜の異世界で待ってろ」

「龍二はどうするのじゃ?」

「俺はこの爆弾を発動させるから残る。大丈夫、俺は不死身だからな」

「そうか、なら安心じゃな」

「悟空、行くぞ!」

「分かった、龍二後でな?」

 

悟空と酒呑童子は先に門を通って行った。

その次にはトゥリナが行こうとしたが、トゥリナは立ち止まった。

 

「龍二よ、何か企んでおらんか?」

 

鋭いな。

 

「いや?別に?なんだよ急に」

「妾を甘く見るでない、ジキルの次に長い付き合いなのじゃぞ?お主は一体何をするつもりなのじゃ!?答えよ!」

 

俺はクスクスと笑ってトゥリナの質問に答えた。

 

「大丈夫だよ、勇者諸共自爆するだけだから、な?」

「ホントか?嘘を申すなよ?」

「大丈夫だってば、それよりロリ形態に戻れよ魔力もったいないだろ?」

「む?仕方ないのぉ」

 

トゥリナはグラマー形態からロリ形態に戻った途端、俺ははトゥリナに抱きついた。

 

「なっ何をするのじゃ!?龍二!!イムホテ殿とスカッドが見ておる!」

「良いから……じっとしてて」

「ううう、恥ずかしいのじゃ!」

「トゥリナ、今までありがとう。トゥリナと色々冒険出来て楽しかった」

「なっ、何を言ってるのじゃ?後でまた会えるのじゃろ?こっ今度はふっ、2人で冒険したいのじゃが?ダメなのか?」

 

俺は無言でトゥリナを強く抱き締めた。トゥリナは何かを悟ったのか涙をポロポロと流し始めた。

 

「ひっく……バカもの……苦しいではないか……」

「ゴメンな、お前らを助ける方法はこれしかないんだ」

「ひっぐ……ひっぐ……」

 

スカッドはトゥリナを引き離し、門を通って行った。

 

そして、最後にイムホテが残った。

 

「龍二よ、例の作戦をするのだな?」

「ああ、悟空達に説明してやってくれ」

「まったく……こんな苦労させよって……困った魔王だ」

「すまねぇな、あーでも言わねぇと生き残った幹部を助けるには魔竜のいた異世界に行かせるしかないんだ」

「確かにそうだな、やれやれ……トゥリナにドヤされるだろうな」

「何から何までゴメンな」

「ったく……お主と共に戦えて光栄だったぞ」

「ああ、俺もだ」

 

俺とイムホテは握手をしてイムホテは門を通って行き、地獄門を閉じた。

 

「これで皆を助けられる……。さて、バルバロはどうしてるかな?」

 

俺は念話をつかってバルバロに応答を求めた。

 

《バルバロ、首尾はどうだ?》

 

────────────────────────

 

応答を求められたバルバロは金棒を振り回しながら兵隊達を薙ぎ払っていた。念話が聞こえて来ると、

 

「へいっ、カシラ。雑兵が邪魔でまだ首1つも落とせてねぇ」

 

《おやおや、魔王軍の将軍はその程度かい?》

 

「バカにしちゃいけねぇな、カシラ。俺はお楽しみを最後に取っておくタイプなんですぜ?」

 

《それは知らなかったな。眷属器の勇者は近くにいるのか?》

 

「ええまぁ、鎌の勇者、扇の勇者、小手の勇者がいますぜ」

 

《そうか、倒せそうか?》

 

俺に問いかけられると、バルバロは顔をしかめた。

 

「厳しいっすね……兵隊達が次々と倒されていく」

 

《そうか……》

 

「ですが、おれぁ魔王軍の将軍。敵に背を向けるほどヤワじゃねぇっ!」

 

バルバロは残った兵隊達をかき集め、目の前にいる勇者達に向かって、

 

「野郎ども、総攻撃だっ!突撃ーーー!勇者の首をとれぇっ!!」

 

「「「ウオオオオオッ!!」」」

 

バルバロは勇者達に突っ込んで行ったが、鎌の勇者のスキルにより止められ、扇の勇者のスキルで兵隊達は吹き飛ばされた。鎧がボロボロになった状態でなお立ち続けるバルバロは、

 

「この先は、この魔王軍の将軍バルバロ様が通さねぇっ!ウオオオオオッ!!」

 

バルバロは鎌の勇者に金棒を振り上げるが、鎌の勇者の鎌でバルバロは首を斬られてしまった。

 

────────────────────────

 

《龍二様、バルバロ様の生命反応が……途絶えました》

 

「そうか……遂に俺たちだけになっちまったな」

 

《ええ、私達だけになりましたね》

 

俺が独り取り残されるとトゥリナの幻影魔法の効力が消え、四聖勇者達が玉座の間に乗り込んで来た。

 

「来たか、四聖勇者」

 

俺が魔剣ストームブリンガーを背中に背負い、尚文達を睨みつけると、尚文は盾を構えて俺に尋ねて来た。

 

「お前だったのか魔王は、お前を倒せば波が止まるんだろ!?」

「ああ、俺を倒せば波を止める事が出来る。現に今日まで波は起きなかっだろ?」

「確かにそうだったな、ならお前を倒せば世界は平和になるってのも」

「ああ、事実だ」

 

錬の質問に答えた俺に元康も質問をして来た。

 

十中八九ヴィッチの事だよな。

 

「なぜマインを殺したんだ!何が目的だったんだ!!答えろ!」

 

俺は何食わぬ顔をしながら、元康の質問に素直に答えた。

 

「分かった、正直に話す嘘はつかないからよく聞け。マインはな、元々厄災の波を起こしていた張本人だったのさ、だから奴が邪魔になるから殺したんだ」

「なっ!?そんな、マインが!?」

「嘘じゃねぇよ。こんな所でホラ吹いてどうすんだ?」

「元康さん、どうやら嘘じゃ無さそうですよ?」

 

樹は狼狽える元康を落ち着かせ、樹も俺に尋ねてくる。

 

「ゼルトブルを壊滅させたのは何故ですか?。それと青い砂時計はなんだったのですか?」

「ゼルトブルは俺の部下であるゴブリン達に武器を与える為さ。壊滅した原因はマインが正体を表して大暴れたから壊滅した。そして、青い砂時計は四霊獣を復活させたからだ。だが、四霊獣は俺達魔王軍が倒した」

「なるほど、そうだったのですね」

「質問コーナーは終わりで良いか?」

「待て、最後に聞かせてくれ」

 

質問を止めさせようとしたが尚文が更に訪ねて来た。

 

「お前は、もしかして俺達と同じ日本人なのか?」

 

なんだそんな事か。

 

「ああ、日本人さ。けど、別世界の日本だけどな」

「もう1つ、聞いて良いか?」

「質問が多いな尚文は……。今度は何だ?」

 

尚文は前々から気になっている事を尋ねてきた。

 

「メルロマルクで俺達は初めて会ったよな?、なのになぜ俺達の名前を知っていたんだ?」

 

そんな事か、大昔の事だったからすっかり忘れてたよ……まぁここは黙って置くか。

 

「それはもう今更どうでもいい。さぁ質問は終わりだ」

 

俺は窮奇の篭手ハーデスを装着し、格闘の構えをしながら勇者達に言い放った。

 

「さぁ来い!これで最後だぁ!!行くぞ!魔竜!」

《はい!龍二様!》

 

「みんな!行くぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

※盾の勇者の成り上がり前期OPを脳内再生してみてください※

 

俺と魔竜は魔力を最大まで解放して勇者達と最後の戦いを開始した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第57話 すべての真実

今回は……いよいよ真実が明らかになります!


魔力を解放した俺は禍々しいオーラを放出しながら尚文、錬、元康、樹と睨み合いをしていた。

 

尚文は盾を構えて号令を出した。

 

「『リベレイション・オーラX』! 最初から全力で行くぞ!!」

「「「おう!」」」

 

先陣切って向かって来たのは剣の勇者である錬だった、錬は俺の脇腹を狙って来た、俺は即座に反応して篭手で払い反撃しようとした瞬間元康と樹が動いた。

 

「『流星弓X』!!」

「くっ!!」

 

左手は錬の剣を払いに使っていた為右手で流星弓を受け止めた、その隙に元康が突進して来た。

 

「うおおおおお!ブリューナクX!!」

「このぉぉぉぉ!」

 

胴体がガラ空きの所を元康は狙いブリューナクを繰り出して来た、俺は体を捻って左回し蹴りで元康を蹴り飛ばした。

 

だが休む暇なく尚文は3人に指示を出す。

 

「攻撃を止めるな!必ず隙が出て来るぞ!」

 

「『重力槍X』!!」

「『重力剣X』!!」

「『重力弓X』!!」

 

俺に3人の攻撃が当たり、体がスキルの効果で動きを封じられた。

 

「ぐうっ!!……なんだこの重さは!?」

 

こいつらいつの間にか霊亀の死体を回収していたのか!?

 

「動きが止まったぞ! 錬!元康!」

「まかせろ!尚文!『鳳凰烈風槍X』!!」

「元康!合わせろ!『鳳凰烈風剣』X!!」

「樹!援護射撃を頼んだぞ!」

 

「任せて下さい!尚文さん! 『フルバスターX』!!」

 

元康と錬は鳳凰から編み出した火属性のスキルを発動させ樹は銃器に変化させて俺に向けて集中砲火を浴びせた。俺はクロス状に斬られ巨大なレーザーを直撃してしまった。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

鳳凰まで!?……くそっ……骨の髄まで回収しとけば良かったぜ。

 

焼き焦げた俺は大の字になって倒れた。だが、俺は直ぐに体を再生させて目を見開き立ち上がるのを見つめていた尚文は顔を青ざめて盾を構えた。

 

「再生……するのか……!?」

「ここに来てチート相手か、流石は魔王だな」

「だが俺達は負ける訳には行かないんだ!」

「皆さん!再生が追いつかない程攻撃すればいいんです!」

 

4人の勇者は再生途中の俺に攻撃を仕掛けようとしたが、俺は右手を突き出して魔法を発動させた。

 

「『ドライファ……ダークネス・ヘルファイア』!!」

 

俺は黒い火球を作り出し、4人の勇者達に投げつけた。

 

「みんな!下がってろ! 『流星盾X』!!」

 

尚文は巨大な青い壁を何枚も形成してダークネス・ヘルファイアを防ぎ切った。

 

これほど強力な防御スキルは初めて見たな……。

 

「へぇ〜、流石は盾の勇者だな。やるじゃねぇか……」

「魔王だけあるな、他の魔物達なんかより遥かに強い」

「褒めてくれて嬉しいねぇ……んじゃ、そろそろ本気で攻撃するか」

 

俺は背中から混沌の魔剣であるストームブリンガーを抜いた。魔剣ストームブリンガーを見た途端錬は歯をギリリと食いしばって警戒し始めた。

 

「あの黒い剣……忘れもしないぞ」

「今度は確実に殺してやる! さぁ……第2ラウンドだ!!」

 

魔剣を構えて錬に向かって行き、暗黒剣を繰り出した。 だが、尚文が急に前に現れて激しい金属音を立てながら俺の攻撃を防いだ。

 

「なんだと!?俺の暗黒剣が……!?」

「錬!今だ!」

「『雷鳴剣X』!!」

「ぐっ うおおおおおお!」

 

無理矢理体を捻って雷鳴剣をかわしたが、錬の後ろから元康が待ち構えていた。

 

「まだだ!『紅蓮槍X』!!」

「ウェポンチェンジ! モルドレッド!! 『風伯大竜巻』!!」

 

俺は体を横に回転させて紅蓮槍をいなしてそのまま竜巻を作り出し、大竜巻は壁や天井を全て破壊してしまった。

 

「はぁはぁはぁ……まったく、新居が台無しだ」

 

魔竜の鎧は各耐性が付いてるのにこの威力……コイツら……ホントに強くなったな。

 

「よそ見をすると怪我しますよ! 『サンダーアローX』!!」

「ぐっ……!!」

 

反応が遅れた俺は樹が放った矢が肩を貫通させた。

 

「はぁ……はぁ……魔竜……そろそろ手伝ってくれねぇか?」

《ようやく出番ですね、参りましょう!》

 

魔竜が翼脚を広げて行くのを見た尚文は俺の手が4本あるように見えた尚文は樹に指示を出した。

 

「空を飛ばれると厄介だぞ!樹!、翼を狙うんだ!」

「分かりました! 『フルバスターX』!!」

「魔竜!」

 

魔竜は翼脚で防ぎ、その隙にスターブレイカーに変化させて樹に反撃した。

 

「『アースクエイク』!!」

 

棘鉄球は地を這う大蛇の様にうねうねと動きながら向かって行くと地震を起こし、身動きの取れなくなった樹を狙ってスターブレイカーを腹部に当てた。

 

「ぐうぇ!!」

「射撃系が止まって撃ち込むんじゃねぇ!寝てろ!」

「樹! 『パラライズランスX』!!」

 

元康が背中の後ろから攻撃を仕掛けて来たが魔竜が翼脚で槍を受け止めたが、俺の体に異変が起きた。

 

「なっ……な……んだ?……から……だが!?」

《龍二……様!!……申し訳……ござ……いま……せん!麻痺……効果のあるスキル……です!》

「くっ……そがぁ……!!」

 

元康はガッツポーズをして他の3人に合図をした。

 

どうやら俺は4人の作戦にどっぷりハマってしまった様だ……。

 

「よしっ!!麻痺が効いたぞ!!」

「尚文!今だ!」

 

俺が尚文を目で探していると錬の後ろでカースシリーズを発動させており、呪文を唱えていた。

 

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の生贄たる絶叫! 我が血肉を糧に生み出されし虎挟みにより激痛に絶命しながら生贄と化せ!』

 

「『ブラッド・サクリファイス』!」

 

痺れている俺の足元から黒く巨大なトラバサミが現れた。

 

そう……かつて教皇と共に戦った時に使ったカースシリーズのスキルだ、尚文の必殺技と言えるな……こりゃもう無理だな。レベルは遥かに俺の上だが……勇者の力は……すげぇや……悪役冥利に尽きる。

 

俺は少し微笑みながらトラバサミに呑まれて行き、血溜りに引きずり込まれて言った。

 

───────────────────────

 

4人はバタリと倒れ込み、ゼーゼー言いながら血溜まりを見つめていた。

 

「勝った……尚文!、勝ったぞ!」

「はぁ……はぁ……魔王だけあるな……強敵だった」

「尚文さん、大丈夫ですか!?」

「あ……ああ、大丈夫だ……」

 

急にワイン色の空がヒビ割れし、その中から神々しい光を出し始めた。その光の柱から人影が現れた。その姿は………神々しい服装の男が現れた、その神の見た目は三勇教の教皇の様な法衣を身に着けていた。尚文達は唖然として見つめていた。

 

「四聖勇者の方々、良くぞ魔王龍二を倒してくれましたね」

「あの人が神様なのか?ってことは……」

「俺達は……」

「魔王を倒したのですね!」

「やったのか……ホントに俺達は……!!」

 

すると神様と名乗る男は喋り出した。

 

「この魔王は……元々は人間だったのはお分かりですね?」

「ああ、知ってるよ!」

「そうでしたか。この魔王はかつては貴方達と共に戦っていたのですよ……そう太刀の勇者、鞭の勇者としてね?。ですが、彼は天界の掟を破り勇者の資格を剥奪され再び一からやり直す羽目になりました。」

 

樹は何を言ってるのだと言わんばかり不思議そうに首を傾げた。

 

「太刀の勇者?鞭の勇者? なら魔王は2度もこの世界を生きていたと言うのですか!?」

「そうです、彼には……ロクな説明もせずにこの世界に送り込み貴方達4人と出会いました、バカな男ですよね?最初からなのに貴方達と面識があると勘違いして接近して声を掛けましたよね?」

「そう言えば……尚文、お前も知ってるよな!?」

 

元康は海賊の時を思い出し、尚文がさらし者にされた時の事を思い出した。

 

「あっ……だから俺の名前を知っていたのか……ん?……ちょっとまて、ならお前があの男をこの異世界に送ったのか?」

 

尚文は回復薬を飲み、神と名乗る男に尋ねた。すると、神と名乗る男はクスクスと笑い始めた。

 

「そうです、いやはや調子に乗って彼にチート能力を与えたり、異世界のモンスターをアドバイザーになってもらうように走り回り、私が味方と思わせ、チート武器が強力過ぎて焦った私は別の異世界に渡り、彼より強い転生者に協力を求め、下げたくない頭を下げて彼と戦ってもらい、彼の思考を変えたりしたのですがね?そのおかげで彼は思惑通り、鞭の勇者に生まれ変わりましたが、予想外に彼はチート武器を無くしたのにも関わらずに更に強くなってしまった。私の野望の危険分子と判断した私は、神の権力を使い、彼の世界をこの手で抹消しました。そして、2週目に突入し、絶望に追い込まれた彼は、魔王と生まれ変わりました」

 

元康と錬は悟ったのか顔を青ざめた。

 

「という事はまさか……あんたが……あんたが、あの人を魔王になる様に仕立てあげたのか!?」

「強くなり過ぎたってどういう事だ!?この異世界は厄災の波を乗り越えなければいけないのだろ!?なぜ消したんだ!!消したってメリットは無いだろ!?」

「ええ、確かにメリットなんてありません。それはですね?最終的には私が戦うのですよ、厄災の波を操る女神メディアを倒した後ですがね?」

「マインと戦った後で……だと?」

「ええ……女神との戦いで弱りに弱った貴方達を完膚なきまでね?」

 

尚文は全て理解したようだ。

 

要するに……以前俺達4人はあの魔王と共に戦っていたが、あの神とかいう奴の気まぐれで消されてあの人は絶望のどん底に陥れ、魔王に生まれ変わらせた。

 

「さぁ……貴方達勇者4人に更なる絶望と言うなの祝福を与えましょう……我が名は『災いの神』ロキ!私の腕の中で恐怖と絶望を味わいなさいフハハハハハハ!!」

 

最悪の状況だ……魔王との戦いでSPもMPも使い果たしてしまった。

 

尚文達はガクガクと震え出し、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

突然、血溜まりから飛ぶ斬撃が飛んで来て、ロキの肩を切り裂いた。ロキは肩を抑えながら睨み付ける。

 

「ぐぅぅ!!なんだ!?……まさかっ!?」

 

血溜まりからブクブクと気泡が浮かび現れた、尚文達は驚いて見ていた。

 

「まさか……まだ生きているのか……?」

「そんな……」

「尚文のあの技を喰らってもまだ生きているのか!?」

「万事休すですね……」

 

ザバッと飛び上がったて出て来たのは体を再生させた魔王だった。だが、魔王は尚文達にではなく、ロキに刃を向けた。

 

 

 

「やっぱりあんただったんだな、おっさん」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第58話 本当の目的 (前半)

俺は魔剣ストームブリンガーをロキに向けて言い放った、勇者達は戸惑いを隠せなかった。

 

「よぉ、久しぶりだな、おっさん」

「龍二君!?生きていたのか!?」

「その言い分だと……やっぱり俺に不死身の呪いを掛けたのはアンタだったんだな?ブラッド・サクリファイスを喰らって死んで俺の物語が幕切れだと思い込んでよ?」

「ぐっ!?呪いは解けているはず、何故生きているのだ!?」

 

ロキは俺に尋ねると、俺は魔剣ストームブリンガーを見せつけた。

 

「この四凶武器のおかげさ」

「なっなんだと!?」

 

───────────────────────

 

時を戻してブラッド・サクリファイスを喰らう所まで遡る。俺はブラッド・サクリファイスに引きずり込まれて行った後の事に起きた。俺は血の中を沈みながら考えていた。

 

これで”アイツ”の言う事が正しければ神様のおっさんが出てくるはずだ。

 

すると俺のアイコンに異変が起きた。

 

『四聖勇者のカースシリーズによって殺されました。おめでとうございます、ストーリーが完結されました』

 

『ストーリー完結によって不死身の呪いが解呪されます』

 

予想通り解呪されたな。これが奴の考えたシナリオだったのか、そして弱った勇者達を自分の手で殺すってところか。

 

すると更にアイコンに表示された。

 

『不死身の呪いにより無効化された呪いが発動されます』

【混沌の呪い……痛覚を無くす呪いが発動されました】

【饕餮の呪い……悲しみを無くす呪いが発動されました】

【檮杌の呪い……恐怖を無くす呪いが発動されました】

【窮奇の呪い……笑顔を無くす呪いが発動されました】

 

不死身の呪いで無効化されてたからな、発動するよな。案の定痛くも何も感じないな。

 

すると四凶武器達が騒ぎ出した。

 

《呪いが発動した!これでこの力が使えるぞ!》

 

は?なんだっけ?

 

『四凶ボーナスだ!』

 

あっ!七星教本部で言ってたな!【4つの願いを叶える】って!

 

《さぁ、我が主よ!願いを言え!、だが忘れるな!願いを叶えると我々四凶武器は消滅する。迷うことなき願いを言うのだぞ?》

 

ならまず3つだけ言うよ、俺を生き返らせる、ロキを倒す武器が欲しい。3つめは。

 

───────────────────────

 

そして、現在に至る。

 

「この四凶武器のおかげで復活出来たって訳さ、お分かり?」

「なるほど……でわ最後に良いですか?」

「なんだよ」

 

ロキは俺に尋ねた。

 

「いつから私が黒幕だと気付いていたのですかな?」

「それか?、俺がゴブリンに殺される前からさ」

 

※第2話の眠る前辺りです※

 

俺はロキに全てを話した。

 

「確かに俺は転生されてから最初は尚文達の記憶が無いってのには気付かなかったよ。お前のお陰でパニックになってたから余計に考えられなくなってたしな……そんで眠りに付く前によく考えたんだよ。【最初からやり直し】なんだから知らなくて当然ってな、そこで次に【オリジナル展開】を目指すにはどうすれば良いかを考えた……また勇者と一緒になったらまた消されるんじゃないかと、ならいっその事俺がこの世界のラスボスになってしまい勇者達に殺されれば俺は解放されると考えたのさ、けど演技をすればいずれバレる可能性があると警戒した俺は…その時悪霊に取り憑かれる為に不死身の呪いを利用したのさ」

 

ロキは驚きを隠せず、狼狽え始めた。

 

「悪霊だと!?……まっ……まさか!!」

「そう、Rebellionの称号を得た時さ、不死身なんだから悪霊に取り憑かれても死なないし、完全なモンスターにならずに済んだ……そして邪悪な心を手に入れて罪の無い人達を殺しまくった」

 

俺は無表情のままロキに言い放った、ロキは騙されたかのように悔しそうに歯を食いしばった。

 

「そしてお前は前回同様に俺の思考を転がす為に別の異世界の勇者ライトを連れて来た。そこで俺はアンタが俺を監視していると確信したのさ」

「なっ何故だ!?何故監視していると気付いたのだ!?」

 

俺は更に話を続けた。

 

「何故か?、そりゃアンタがミスをしたのさ、お前は俺に【異世界の技】と【異世界の人物】の使用を禁止してたのに”ある物”が使える様になったからな!!」

 

※第25話を思い出して下さい※

 

ロキはしまった!と言う様な顔をして悔しがった。四聖勇者達は何が何なのかさっぱり理解出来ないでいた。

 

「あんたが想像した通りさ、名前を変えればバレないかと思ったか?シャドームーンは俺のいた日本創作物、ダークライダーだぞ?」

「うぐぐぐ!!」

「でもな?、そのお陰で四凶武器も集められたし、魔竜や悟空達と出逢えたからな、そこはあんたに感謝してるぜ?」

 

ギリギリと歯を食いしばりながらロキは俺に言い放った。

 

ここまで来たら追い詰めたも同然だな。

 

「何故だ!!私が監視や暗躍していると気付いた!?」

「それはだな……コイツのおかげさ、おい、もう出て来て良いぞ?」

 

俺が合図をすると空間に穴が空くとそこからは……スカッドが現れた。

 

「貴様は……!?」

「コイツは宇宙人なんかじゃねえ、神様だよ」

「何!?」

「もういいだろ?、本来の姿になっても」

「そうですね」

 

喋れる筈のないスカッドは流暢な言葉で俺に返事をして光に包まれるとそこには神秘的な姿をした女神が現れた。

 

「貴様は!?掟の女神・ネメシス!!」

「ロキ、あなたの事をずっと調査していましたよ」

「なんだと!?」

「天界規定を違反している神がいると言う報告がありました。創造神様の命令で私は貴方に見つからないように魔物に化けて龍二さんと共に行動をしていました」

「なにぃぃぃ!?」

「やっぱりその神器はすげぇや、おっさんでも見破れねぇなんてな」

 

俺はネメシスと呼ばれる女神の腕輪と指輪に注目していた。

 

「俺はスカッドが偽物だって直ぐに分かったんだけどな?」

「!?」

「カルミナ島で初めて出逢った時すぐ分かったよ、プレデターがあんな可愛い宇宙船に乗ってる訳がないからな」

 

※第41話を思い出して下さい※

 

「あの時俺と魔竜はスカッドに呼ばれただろ?そこまでは分かるよな?」

「ええ……あの時……映像がジャミングされて…まさか!!…その神器のせいかぁ!!」

「その通り」

 

 

話しは再びカルミナ島でのやり取りまで遡る……。




長くなるので前半後半分けます!
納得行かない所がありましたら修正します!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第59話 本当の目的(後半)

俺と魔竜がスカッドに呼び出されて宇宙船に乗り込んだ時に俺はスカッドにこう言い放った。

 

「話しってなんだ?」

『それは……』

「その前に……本当はお前喋れるよな?」

《えっ!?龍二様!?どう言う事ですか!?》

「この魔物はプレデターっていうモンスターなんだ、今までの仲間達は史実通りの魔物達なのにコイツだけ映画のモンスターなんだよ」

《そうなのですか?》

「バレないとでも思ったか?お前……何者だ?」

 

俺がスカッドに尋ねるとスカッドは口を開いた。

 

コイツは何者なのだろうか……警戒すべきだな。

 

「宇宙人ならバレないと思ったのですが、流石は元勇者ですね」

「とりあえず、本当の姿に戻ったらどうだ?」

「分かりました」

 

スカッドは指パッチンをすると光に包まれて行った。光が落ち着くとそこからは金髪の髪型で黒いドレスに身を包んだ女性に姿を変えた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

これがスカッドの本当の姿なのか……えらいギャップだな

 

「初めまして、魔王・福山龍二さん。私は『掟を司る女神・ネメシス』と申します……。騙すつもりはなかったのですが偽ってしまい申し訳ございません」

 

ネメシスと名乗った女神は深々と頭を下げた。

 

「女神だっ──」

「しっ……ちょっと待って下さい……」

 

ネメシスは指輪と腕輪を付けた。

 

何をするつもりだ?

 

「これで大丈夫です、話しても大丈夫ですよ?」

「なんなのそれ?」

 

ネメシスは指輪を指さされると説明を始めた。

 

「これは、ジャミング機能がある神器です。貴方は監視されてるので」

「監視……。もしかして神様のおっさんか?」

「ご存知だったのですか!?」

「いや、ここまで生活して来たけど、色々腑に落ちない事があったからな、急に世界が終わったりしたりしたからな。もしかしてとは思ってたんだ」

「そうですか、なら余計な説明は要りませんね」

「女神が来ると言う事は何かあったんだろ?」

 

俺はネメシスに尋ねるとネメシスは頷き答えた。

 

「貴方をこの『盾の勇者の成り上がり』の世界に転生させた神がゲーム感覚で転生させておもちゃの様にして遊んでると報告があったのです、神が転生者を手駒にするのは天界規定の重罪となるのです」

「そうなのか、通りで何もかも上手く行かない訳だ」

「はい、ですが龍二さんの罪は本当なので……だから発見が遅れたのでしょう……」

「そりゃ受け止めてるよ、だからこうして罰を受けてるだろ?」

「はい、龍二さんを転生させた神のお名前を聞きましたか?」

「……そういや聞いてなかったな、前回も今回も」

「そうでしたか、神の名前は……ロキと言います」

「ロキ……確か悪い神様なんだよな?アベンジャーズとかにも出てたし」

「ええ、彼はずる賢く、貴方のような罪を侵した転生者を自分の手で処刑するというお膳立てをして転生者や原作のキャラクターを殺すというのがロキの手口なのです」

 

映画でもそうだったが目立ちたがり屋で傲慢、自己中な所、絵に書いたような理不尽な奴だったからな。

 

「んじゃ……あの裁判は偽物だったのか?」

「はい、本来なら私も参加してるので龍二さんが行ったのはロキが作った幻影です」

「そうだったのか……なら俺の罰はいつ裁かれるんだ?」

「それなのですが、今回はロキが勝手に行って刑を執行したのでそのままです」

「ん?ならストーリーを完結させたら俺は解放されるのか?」

「はい」

「そっか、悪役を全うすれば俺は解放されるんだな?」

「はい」

 

俺は兜を外して顔を露にしてネメシスに尋ねた。

 

「俺のあくまでも予想なんだけど、俺が死ねば奴が現れるよな?」

「そうですね、恐らく四聖勇者達に襲いかかるでしょう」

「ロキを倒したら俺はどうなる?」

「再び魂にされて日本のどこかに転生されるでしょうね」

「そうか……ネメシス……この物語が終わったら俺を封印してくれねぇか?投獄でもいい」

「本気ですか!?」

 

そう言うと魔竜とネメシスが驚いて俺に言い放った。

 

そりゃびっくりするよね?一体化してんだから。

 

《龍二様!?何を言ってるのですか!?》

「悪霊の力を使ってまで悪役になりきる為に俺は罪の無い人達を殺し過ぎた、物語が終わってまた転生だなんて死んで行った仲間や勇者、民間人に面目立たねぇよ」

「封印ですか……それは構いませんが?」

《龍二様!?龍二様は世界征服が夢ではなかったのですか!?》

「お前の世界を征服しただろ?」

《確かにしましたけど……この世界はまだですよ!?》

「するつもりないよ、尚文達の事を考えてね」

《どう言う事ですか!?》

 

俺はネメシスと魔竜に全てを明かした。

 

「本来ならこの世界のラスボスはあのクソ女神メディアだろ?」

「はい、そうです」

「誰も分かんねぇだろ?そんな事、本来転生者を支えるはずの女神がラスボスだなんて、アイツら目標がないからカースに取り憑かれたり、使命を投げ捨てて逃げたりするんだよ。確かに、俺が手助けすればいいけど……また消されるだろ?ロキに」

「そうですね、都合が悪くなればロキならやりますね。それも天界規定の重罪です」

「だから今度は俺が悪役になればアイツらも目標が出来て真面目に取り組むだろ?」

「それはそうですけど……こんな事、普通考えませんよ?」

 

ネメシスは俺を哀れな人間を見るような目で見つめた。

 

俺が考えに考えてた結論なんだ。もう、コレしか方法がないんだよ……。

 

「てっぺん取ったって何も残らねぇしな、あるのは自己満足だけさ」

《龍二様……》

「魔竜……付き合ってくれるか?他のヤツらには内緒でさ」

《はい、もちろんですよ》

「魔竜の世界を魔物達の世界にしようとしてるんだ本当は」

「そうなのですか!?」

 

ネメシスは口元を抑えて驚いた。

 

そんなに驚く事か?

 

「けど、リファナは置いていくよ、アイツはまだやり直せるからな」

「やっぱり龍二様はリファナさんを大事になさってるんですね」

「そりゃそうだろ、ラフタリアの友達なんだから」

「なるほど……」

「魔竜の世界は焼け野原になったけど、イムホテならなんとかする」

「龍二さん……色々1人でずっと考えてたんですか?」

 

ネメシスに尋ねられた俺は涙ぐみながらも頷いた。

 

ホントは皆と仲良く暮らしたいが、大いなる力には大いなる責任が伴う……自分の罪は自分で償わないといけない……。

 

「そうでしたか……」

「さっ、俺の本当の目的が分かっただろ?イムホテはスカッドの正体を疑ってる、イムホテには女神を倒したら打ち明けるよ」

「イムホテさんが?」

「恐らく本物に会ったことあんじゃねぇのか?」

「あー……」

 

ネメシスは頭を抱えてやらかした〜的な顔をした。

 

可愛いなおい

 

俺は頬を自分で引っぱたき、気合いを入れた。

 

「っし! さっ、話しは終わりだ、バレない様に2人とも頼むよ?」

「はい!龍二様!」

「はい、スカッドに戻りますね」

 

ネメシスは再びスカッドに戻り、俺達はトゥリナ達と合流した。

 

──────────────────────

 

「って事だよ、分かったか?」

「クソっ……全て見抜かれてたのか……!!」

「ああ」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを地面に突き刺し、尚文達の方向に手を向けた。

 

「四凶武器達よ、3つ目の願いだ……『勇者達、その仲間達を安全な所まで転送しろ!』」

 

《心得た!》

 

尚文達は光に包まれて魔法陣に囲まれた。

 

「なっなんだ!?」

「魔王!!何のつもりだ!!」

 

尚文達は俺に向かって騒ぎ出す。俺は振り向き、

 

「ここでお前らを死なせる訳には行かねぇんだよ。コイツは俺が倒すから仲間達と避難しろ」

「なんだと!?」

「どう言う事ですか!?」

 

樹、錬は俺の言葉に驚きを隠せなかった。

 

そりゃ魔王が逃げろだなんて普通言わないよな。

 

「細けえ事は気にすんな、おい尚文!!」

 

俺は尚文に最後の言葉を言い放った。

 

これだけはちゃんと言って置かないとな……。

 

「リファナの事……守ってやってくれ」

「…………分かった」

「じゃあな」

 

そう言うと尚文達、勇者連合はフォーブレイから数キロ離れた連合軍本陣まで転送された。

 

「これで良し。さぁて『四凶武器達、2つ目の願いの武器を出してくれ』」

 

《心得た!》

 

俺に装備されていた4つの四凶武器が黒い球体に集まって行き、一つの武器になった。その武器は……俺にとって原点であり、ロキが慌てて消す程の強さを持った【太刀】と言う武器になった。俺は刀身が黒く紫色をした刃紋を帯びた太刀を手にした。

 

四凶武器……魔刀・大嶽丸

全ステータス倍 魔力増大 体力増大 攻撃力(超大)

対神攻撃力(超大)

装備ボーナススキル……四凶武器スキル使用可能、合体技可能

 

「もう一度太刀を握れる事になるとはな。さぁて、おっさん、いや、ロキ」

 

俺は大嶽丸をロキに向けて叫んだ。

 

「最後の決着をよぉ!!」

 

※BGMはデビルメイクライ5 のTheDuelをイメージして下さい。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話 元太刀の勇者は魔王として生きる

俺は再び太刀を手にして構えてロキと睨み合いになっていた。ネメシスも雰囲気に呑まれて冷や汗をかいていた。

 

「ネメシス、結界張って離れてくれ」

「分かりました、龍二さん……ご武運を!」

 

結界を張ってネメシスは宙を舞って俺達から離れた。

 

「さぁて……、良くも人の人生めちゃくちゃにしてくれたな?」

「ふふふ、さぞ楽しかったでしょう?」

「ああ、少なくともてめぇさえいなかったらまともな人生だったよ」

「そうでしたか、なら最後は楽に死なせてあげましょう!」

 

ロキは浮き上がって魔力を高めると、ロキの体は白と金の配色の鎧に包まれて行き、背中から4枚の天使のような翼が生えた。手には三勇教の教皇が持っていた複製品が手にされていた。

 

※デビルメイクライ4 アルトアンジェロをイメージして下さい※

 

「これが真の鎧の勇者の力です!」

「おい……鎧の勇者ってライトじゃねぇのか?」

「いえいえ、あの方は別の異世界の鎧の勇者です。簡単に言えば私は貴方の世界の鎧の勇者なのですよ」

「っちぃ!!……ここまで来て勇者の力かよ……」

 

ロキはクスクスと笑って答えた。

 

「私は神ですよ?何だって出来るんですよ?……懐かしいセリフですねぇ」

「そうだな…。そして、その複製品は……盾も混じえてある完全体の複製品だな?」

「ええ、盾も含めた完全体の複製品なのですよ! 『フェニックス・ブレイド』!!」

 

ロキは不意打ちを狙い、教皇も使ったフェニックス・ブレイドのスキルを放って来た。俺は大嶽丸で払いロキに突進して行った。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

激しい金属音を立てて2人は攻防戦を繰り広げ始めた。

 

「魔竜!!力を貸せぇ!!」

「喜んで!」

「竜魔法……『ダーク・ミスト』!!」

 

俺と魔竜は最大魔力を解放してダーク・ミストを発動させて辺り一面黒い霧を創り出した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「おやおや、それは魔竜の特殊状態異常の竜毒霧ですね……」

「ギギギギギ……うおおおおぉっ!!」

 

俺は大嶽丸を納刀して居合いの構えを取った。

 

頭が割れそうだ……早く毒を裏返さないと……時間との勝負だ。一気に攻めるぞ!

 

「四凶・混沌『暗黒剣X』!!」

 

俺は黒い影の様な姿になり一瞬でロキの間合いに入り込み、大嶽丸を抜いて切り付けたが、ロキは複製品を盾に変化させて防御した。

 

「むぅ!!力強い……!!流石は魔王ですね!」

「があぁぁぁぁ!!四凶・檮杌『アースクエイクX』!!」

 

防御されても尚、龍二は休む事無く連打を撃ち込んだ。その結果毒は裏返り、龍二の身体が強化された。

 

「ぐっ……!!」

 

ロキは堪らず翼を開いて空に逃げたが、龍二は見上げて構えた。

 

「四凶・饕餮『風伯大竜巻X』!!」

 

俺は太刀を両手で持ち、横に激しく回転すると翳扇の風伯大竜巻より強力な風伯大竜巻を生み出した。ロキは竜巻に巻き込まれて中で斬撃により切り刻まれたが傷1つ付かなかった。

 

流石は鎧の勇者、頑丈な作りだ。

 

「なら、これならどうです?『ミラージュアロー』!」

 

ロキは今度は弓に変化させて幾重の矢を放って来た。俺は大嶽丸を回転させて矢を弾いた。

 

「さてどこまで持ちますかねぇ?ほらほらほらほらほら!!」

「四凶・混沌・饕餮合体技・『風の傷』!」

 

俺はかつての異世界スキル、風の傷を暗黒剣と風伯大竜巻を合体させ風の傷を再現させた。

 

「こっこの技は!? ぐぁぁっ!!」

 

風の傷の斬撃はロキの胴体を切り裂き、動きを止めた。俺は瞳を真っ赤に染め上げながら大嶽丸をロキに向ける。

 

「次は……首を飛ばす!」

「面白い、ならやって見なさい!『ブリューナク』!」

 

今度は槍に変化させて元康も使っていたブリューナクを放ち、俺に向かって行った。

 

「オルァァァァァァァ!」

 

俺はブリューナクをいなし、バランスを崩したロキは俺の方を向いた。俺はニヤリと笑ってスキルを放った。

 

「四凶・混沌・窮奇・合体技『獄龍破』!!」

「何っ!?こっこの技は!?」

 

そう、前回の世界で俺が怠惰(堕落)のカースを解放した時に放った強力なスキル、獄龍破を放ったのだった。ロキに紅いエネルギー球体が直撃して鎧にヒビが入った。

 

「この技は獄龍破?まさか四凶武器でチート武器の技を再現するとは……」

「俺は魔王であって元勇者でもあるんだぜ?工夫次第でなんでも出来るのさ!」

「小賢しいっ!私は神だ!、私が居れば勇者なぞ必要ないのだぁぁぁぁ!」

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

互いに斬って斬られてを繰り返し、互いの鎧や魔竜の翼脚はボロボロになっていた。耐えきれなくなったのかロキは俺に掴みかかりながら飛行してあちこちの建物にぶつけ始めた。

 

「がっは……!!」

「フハハハハハ!魔物如きが神に刃向かうからですよ!」

「うるせぇ!てめぇ見てぇなのが神を名乗るんじゃねぇよ!」

「こざかしい!」

 

いくら大嶽丸を力を使っても流石にこの長期戦は厳しく、俺は息切れを起こし、ヒューヒュー言いながらフラフラとしていた。魔竜も魔力が切れ始めていた。

 

あれほど戦ってるのにロキは鎧にヒビを入れた程度で平然とした顔をしている。腐っても神だな……。

 

《龍二様……私の魔力がもはや……無くなります……》

「ヒュー……ヒュー……俺もだよ……ヒュー……ヒュー……」

「おやおや、魔王と言えどこの程度ですか?情けありませんねぇ?」

「ヒュー……ヒュー……はぁ……スゥ……」

 

俺は深呼吸をして目を閉じ、大嶽丸を納刀して抜刀術の構えをした。ロキは鼻で笑いながら言い放った。

 

「ここに来て居合い斬りですか?往生際が悪いですねぇ?」

「ふぅ………………」

 

ロキの言葉に耳を貸さず、俺は構えた。

 

「良いでしょう!これで終いにしましょう!」

 

ロキは猛スピードで俺に突っ込ん来る中、俺は目を見開いた。

 

「四凶・混沌、檮杌、饕餮……」

「死ねぇぇぇ!!」

 

 

俺は抜刀してロキの胴体を狙い斬ろうとしたが、ロキは紙一重でかわし、複製品を剣に変化させて俺に振り下ろした。が、俺はそのまま鞘を抜いて左手でそのまま振り上げてロキの右腕に当ててロキの腕をへし折った。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

「合体技…我流・『双竜閃』いくら自慢の鎧でも関節は弱いだろ?」

「おっおのれぇ!!キッサマァァァァァ!!」

「そして!」

 

ロキの肩を利用して高くジャンプして刀を裏返し、そのままロキの兜に叩き付けた。

 

「合体技……我流・『龍追閃』!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!頭がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ロキの兜は2つに割れて憎たらしい顔を拝めるようになった。ロキの額からは血が流れていた。

 

「はぁはぁ……少しは効いたか馬鹿野郎……」

「ぐぐぐぐ……。ふふふふ……はーっはっはっはっー!」

 

ダメージを受けているのにロキは高笑いを上げた。

 

いったい何が可笑しい!?

 

「やれやれ……何度も言いますが私は神ですよ?実はですね?こんな事も出来るんですよ?」

 

ロキは指パッチンをするとロキの体は直ぐに元通りになり鎧のヒビも無くなった。

 

「マジかよ……」

「フハハハハハ!!貴方が幾ら足掻いても無駄なのですよ!」

「くそ……」

 

カシャン

 

膝を付いて瀕死の状態で懐に何かが入ってるのに気付いた。それは……、スカッドこと、ネメシスが持っていた自爆機能付きのガントレットだった。俺はガントレットを踏み砕き、大嶽丸を構えた。

 

一世一代の大勝負、この技を使ってやる!!

 

俺はカースシリーズのスキルツリーを呼び出し、スキルを発動させた。

 

【その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は猛獣の爪牙也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!!『レオノーラ・ファング』!!】

 

そう唱えなると、黒いライオンが現れた。黒いライオンは大きな口を開けてロキを飲み込もうとすると、

 

「な、何だこの力は!?神の私が負けるだなんて!?ありえない!!ありえないぃぃぃぃ!!」

 

空高く駆け上がった黒いライオンはそのままフォーブレイの街の中心に向かって急降下しだし、隕石の様に落下した。離れて見守っていたネメシスは慌ててフォーブレイを囲むように結界を広げた。

 

トゥリナ、リファナ、ジキルハイド、フランケンシュタイン、ドラグリア、イムホテ、ワイズ、悟空、酒呑童子、お前らと出会えて良かった。リファナ、ラフタリアと幸せに暮らせよ…。そして、魔竜、今までありがとう……

 

《私も……貴方様と出会えて良かったです!!》

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ロキの悲鳴が聞こえた途端閃光が広がり、フォーブレイ全体爆発に巻き込まれた。結界により被害はフォーブレイに留まったが衝撃は勇者連合軍本陣まで響いて行った。

 

「なっなんだ!?」

「フォーブレイからだぞ!?」

「魔王……やったのか……?」

「見てください………空が!!」

 

尚文達が空を見上げて見るとワイン色の空が徐々に消えて行き、青空へ戻って行った。女王もやって来て確信した。

 

「どうやら……終わった様ですね……勇者様方、ご苦労さまでした、只今を持ちまして終戦を宣言致します!平和が訪れました!!」

 

「「「「「ワーーーーーー!」」」」」」」

 

大歓声が巻き起こり、勝利を確信した勇者達は喜びを分かち合っていた。

毛布に包まりラフタリアと共に外に出てきたリファナは空を見上げた。

 

「龍二様…………」

 

パキン!とリファナが身に付けていたアミュレットが外れて地面に落ちた。するとアミュレットが割れた。

 

「あれ?リファナちゃん、なにか落ちたよ?」

「え?」

 

リファナが拾おうとするとアミュレットの中から手紙が出て来た。リファナは慌てて広げて読んだ。

 

【リファナへ、突然こんな手紙を見付けてびっくりしたよな?ラフタリアと思いっきり喧嘩して少しはスッキリ出来たと良いな……こんな俺に付いてきてくれてありがとう……リファナを復活させた理由はな、ラフタリアが刀の勇者になってリファナが死んだ原因を知った時にカースシリーズになる事を想定したからなんだ。リファナが蘇ったら恐らくカースシリーズを抑えることが出来るだろう……これからもラフタリアと一緒に幸せになってくれ……さようなら…… 魔王・福山龍二】

 

手紙を読み上げるとリファナの目からは涙が溢れて行き座り込んでしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!〜うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「リファナちゃん!?どうしたの!?」

「龍二さまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「この手紙……えっ……」

 

 

ラフタリアは手紙を読んだ途端ラフタリアも泣いてしまい、フィーロを困らせていた。

 

────────────────────────

 

 

爆発が落ち着くと瓦礫が動き始めた、その中から俺が現れた。

 

「ゲホゲホ!!あーやばかった〜!!」

《ちょっと龍二様!?四凶武器の”4つ目”の願いを使うなら先に言って下さいよ!ホントに死ぬかと思いましたよ!!あの時の言葉が台無しじゃないですか!!》

「ごめんごめん、咄嗟だったからさ」

 

瓦礫を退かして立ち上がろうとすると、魔刀・大嶽丸が俺に声を掛けてきた、魔刀・大獄丸は徐々に塵になって来ていた。

 

《主よ……願いは叶えたぞ……お主と共に戦えて良かったわ!》

「俺も楽しかったよ、ありがとうな……四凶武器」

《さらばだ……》

 

そう言い残すと太刀は塵となって消えて行った。そこに、見守っていたネメシスが戻って来た。

 

「龍二さん、ご苦労さまでした」

「おう、見守ってくれててありがとうな」

「いえ、それで……これからどうしますか?」

 

俺はネメシスに尋ねられ、ニコリと笑って答えた。

 

「俺は最後の最後にやりたいようにやれた。好き勝手にやった落とし前はつけなきゃない。だから、罪を償いたい、天界の刑務所見たいな所に投獄してくれ」

「はい、分かりました」

 

 

俺と魔竜はネメシスに連れられて光の柱に吸い込まれて行き天界に向かって行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ

龍二とロキが激しい死闘を繰り広げる前まで時は遡る……。魔竜の異世界に避難したトゥリナは泣きながらイムホテに怒鳴り散らしていた。

 

「イムホテ殿!お主何故龍二を止めななんだ!妾達を助ける為にここへ連れて来たとはどう言う事なのじゃ!!」

「仕方ないのだ!……これが……魔王の決めた事なのだ……すまん」

「イムホテさん!なんで話してくれなかったんですか!」

「訳があるんでしょ!?話してくれよ!」

「それに関しては私が話します」

 

「「「!?」」」

 

喋るはずの無いスカッドが口を開くと、トゥリナ達は驚いた。

 

「お主……話せるのか!?」

「はい、イムホテさんと龍二さんは私の正体をご存知なので……」

「なんじゃと!?」

「はい、それは……」

 

──────────────────────

 

龍二達が女神を倒した時まで戻る。激しい戦闘の後に、龍二とイムホテは密かにこんな話しをしていた。

 

※第47話を思い出して下さい。

 

「ちょっと待ってくれ、この指輪を付けてと……」

「なんだそれは?」

「スカッドから借りてきたんだ。話ってなんだ?」

「あのスカッドは何者なのだ?我は昔会った事があるのだが、どうも同族とは思えないのだが?」

「やっぱり気付いてたのか、そう奴は本物じゃない」

「やはりそうか」

「奴は、掟の女神・ネメシスという神なんだ」

「なんだと!?」

 

イムホテは大声を出して驚き、龍二はイムホテの口を慌てて口を両手で抑えた。

 

そりゃ驚くよね?

 

「どうやら、黒幕が悪さをしているらしいんだ」

「ふむ……その黒幕を誘き寄せるという事だな?」

「話が早くて助かるよ、なら俺の本当の目的も分かるよな?」

「お主……死ぬ気だな?」

「アハハ、分かった?」

「お主の呪いは複雑だからな、そうでもしないと解けないのだろ?」

「女神のネメシスが言うからそうなんだろうな。そこで、これ以上トゥリナ達を巻き込みたくないんだ。タイミングを見てお前らを魔竜の異世界に送る」

「なるほどな、やれやれ魔竜の異世界の土地を復活させて魔物の世界を作ってお前達だけでも暮らせと言いたいのだろ?」

 

なんでもお見通しなんだなコイツは……流石は大神官だわ。

 

「分かった、後の事は任せておけ……」

「助かるよ、向こうの職人には俺の墓を作らせておいたからよ」

 

ごめんな、ホントは死ぬつもりは無いけどな……

 

「手の込んだ事をしてくれるな……分かった」

 

───────────────────────

 

そして現在に至る。トゥリナは事実を知り、また泣きじゃくり始めた。

 

「やはり……もう二度と……会えないではないか!!」

「黙っていて済まなかった……」

「龍二……」

「あいつは……最後まで俺達を守ってくれたのか」

「王……」

 

トゥリナに連れられて悟空、酒呑童子、ドラグリアまで泣き始めた。するとドワーフ達が太刀を持ってイムホテに近付いて来た。

 

「イムホテ様、魔王様から頼まれた物を持って来ましただ!」

「ああ、ほらトゥリナよ……龍二の……魔王の墓を作る手伝いをしてくれ……」

「うっ……うっ……ぐすっ……」

 

トゥリナは涙を拭い、ドワーフ達に頼んで置いた墓の前に太刀を地面に突き刺した。

 

「あやつ……ホントは勇者に戻りたかったのだな……」

「うっ……うっ……龍二……!!」

 

泣き叫ぶトゥリナ達を見てイムホテは怒鳴り散らした。

 

「泣くでない!──龍二は、我らの魔王は、自分のやった事に筋を通す為に望んだ事なのだ……誇れる魔王ではないかっ!顔を上げよっ!胸を張れ!」

 

涙で目を真っ赤にしながらトゥリナは答えた。

 

「あやつは───」

 

 

そして時は進み、一方リファナは、メルロマルクに戻る途中のリファナはラフタリアと話していた。

 

「リファナちゃん、もう泣かないで?」

「うっ……うっ……あたし……龍二様の為に、一からやり直したい!」

「うん、一緒に暮らしてやり直そ?ね?」

「うん……」

「魔王……可哀想な人だったんだね……」

 

ラフタリアの言葉に反応したリファナは首を大きく横に振った。

 

「違うよ、可哀想な人なんかじゃない。あの人は、龍二様は私にとって───」

 

───────────────────────

 

そして……天界に向かって行った龍二と魔竜はネメシスと共に今度は本物の神達に囲まれて正式の裁判を受けていた。

 

「魔王・福山龍二、お主は大量虐殺、国家反逆、異世界征服、勇者殺害の容疑が科せられている。異議はないな?」

「はい」

「本来なら永久封印の刑が発せられるのだが……天界規定の大罪人、悪男神ロキ、悪女神メディアを討伐した事に関しては天界代表として感謝する」

「はい。けどその前に、ちょっと質問良いですか?」

「なんじゃ?申してみろ」

「悪男神ロキと悪女神メディアはあの後どーなったんですか?」

 

龍二は神に尋ねた、すると鳥籠の様な物を2つ取り出した。鳥籠の中には魂の様な物が入っていた。

 

「ロキ達はこの中に入っておる、こやつらは永久封印の刑に処すつもりだ、もちろん地上では無く、この天界でな?」

「そうですか、なら……安心しました」

「うむ、魔王・福山龍二に判決を言い渡す!」

 

龍二はなんの悔いも無いようなスッキリした顔をして胸を張った。

 

「お主は……天界監獄の無期懲役を言い渡す!何か言いたい事はあるか?」

「ありませんが、最後に1つ良いですか?」

「なんじゃ?申してみろ」

 

3人は3つの世界で同じ言葉を同時に言い放った。

 

「俺は───」

「あやつは──」

「龍二様は──」

 

「「「正義の魔王だ!」」」

 

 

 

エンディングは仮面ライダービルドのOPであるBe_The_Oneを脳内再生して下さい!




Be_The_Oneの歌詞にある太陽と月を勇者と魔王に重ねて見ました。

以上を持ちまして『元太刀の勇者は立ち直れない』を完結します!ご愛読ありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外・天界監獄編
番外編ー1プロローグ


新年明けましておめでとうございます。予告通り、元太刀の勇者を更新させます!この回から多数のキャラとクロスオーバーさせますのでご了承ください。

2作目の前の話なのでギャグが強めになっております。それを覚悟の上ご覧下さい。


ロキとの戦闘を終えた魔王龍二は、法を司る女神のネメシスに連れられてとある監獄にやって来た。俺は頑丈な手錠を掛けられながらネメシスと共に塀に囲まれた敷地内に入って行く。 ネメシスは不安そうに俺を見つめ、尋ねる。

 

「龍二さん、ホントに良いんですか?」

「ああ、正義の為とはいえ多くの人の命を奪ったんだからな、罪は償わないとな」

「そうですか、なら……せめて面会出来るように働きかけるのでめげずに頑張って下さいね?」

「大丈夫大丈夫、心配すんなって、な?マリュー?」

 

《はい!ネメシス様、私も居るので大丈夫ですよ!不死身では無いですが、私が龍二様をお守りします!》

 

「そうですか……短い時間でしたが、あなたと共に旅が出来て楽しかったです!出所出来たらまた会いましょうね!」

「ああ、またな?ネメシス」

 

俺はネメシスと握手を交わし、俺はネメシスと別れた。そのまま俺は監獄の中に入り、天使の看守に連れて行かれて様々な検査を受けさせられ、最後には写真を撮られた。

 

{IMG74750}

 

ここからが新たな人生を送る第一歩だ!懸命に務めを果たそう!。

 

俺が立って待っている間に、結界の向こう側で看守は俺の書類に目を通していた。

 

「天界受刑者、魔王福山龍二……国家転覆、勇者殺害、女神討伐、神討伐、世界征服の罪か……看守長様、この者のエリアはいかが致しましょう?」

「ふむ、そうだな……」

 

看守長と呼ばれた小太りの天使は髭を撫でながら考え込み。悩んだ末に龍二が投獄される場所が決まった。

 

「よし、彼をソロモンの72番目の魔王、並びに七つの大罪の”八つ目の大罪人”「正義を司る魔王・アンドロマリウス」と認定する。”例のエリア”に投獄しろ。今後は彼の事を囚人番号0072番とする!」

「”あのエリア”にですか!?」

「ああ、構わん。彼も魔王なのだ、そこまでバカでは無かろう」

「揉め事にならないと良いんですけどねぇ……」

 

看守と看守長は龍二の顔をチラッと見て確認をする。俺は何でチラッと見られたのか分からず、首を傾げた。

 

何見てんだろうあのブサイク……。

 

看守を見つめていると、結界から出て来た看守が囚人服を持ってやって来た。囚人服はオレンジ色をしており、現実世界で言う所の海外の囚人服の様だった。

 

「囚人番号0072番、「魔王アンドロマリウス」。これに着替えろ」

「これガチの囚人服じゃん……まぁいいけどさ……」

「よし、名札を付けて私に付いてこい」

 

そのまま俺は看守に連れて行かれ、監獄の奥の方に連れて行かれた。扉には天界の文字で「ソロモン72柱専用」「七つの大罪専用」と記されていた。扉を開けると、多くの牢屋が個室で並べられており、檻の中には様々な魔族達が投獄されていた。今から入る俺の牢屋には番号0072と記されていた。俺は中に入れられると、ガシャンと牢屋に鍵を掛けられた。

 

はぁ、これから獄中生活の始まりかぁ

 

俺が薄いベットに座って項垂れていると、隣の牢屋から声を掛けられた。

 

「おいっ!新入り!」

「は?」

「は?ちゃうわ!ちょ、お前檻まで来いやっ!」

《龍二様、呼ばれてますよ?》

 

なんだよ誰だよこいつ……

 

俺はそのまま声のする方向に顔を向けると、山羊の下半身でチンピラの様な顔をした魔物がいた。

 

「何?」

「何ちゃうわ!ボケェ!ワレ新人なら先輩にちゃんと挨拶せんかいっ!」

「はぁ?なんで?魔王の俺がなんでてめぇ見てぇな下級悪魔に頭下げなきゃねぇんだよボケが死ね」

「はぁ!?魔王やて!?また魔王かいなっ!」

「頭が高ぇわ、頭下げんのはおめーだよ。お前、名前は?」

 

俺はチンピラの悪魔に名前を尋ねる。すると、チンピラ悪魔は答えた。

 

「ワイか?ワイの名前はアザゼルや、『淫奔』を司る悪魔、アザゼル様や!良く覚えとけや!」

 

アザゼル?聞いた事ないな

淫奔を司る悪魔アザゼルとは……。性的な本能やフェロモンを操る能力。性器の大小・ホルモンバランスの操作、女性の月経や性的関係の看破などに加え、人間のフェロモンを過剰分泌させて多くの異性を虜にすることができる。応用で一組の男女を恋に落とさせる使い方も可能。

 

「んで?アンタ……名前は?」

「俺か?俺は、龍二だ」

「なにゆーてんねん!本名やない、魔王の名前やっ!」

 

え?魔王名とかあんの?

 

《龍二様、先程渡された名札に名前が記されているのでは?》

 

「あっこっちね……えーっと、『正義を司る魔王・アンドロマリウス』」

 

名札を読み上げると、アザゼルは驚いた様な声を出してツッコミを入れてくる。

 

「なんや正義を司る魔王って、そんな悪魔もおんのかいっ!?」

「知らねぇよ、アザゼルは何して捕まったの?」

「ワイか?ワイはとある国の王様を丸裸にして国家転覆を目論んだんや」

「王様を丸裸にって……」

「聞いた事あるやろ?裸の王様って奴や!」

 

えぇ!?あの裸になった王様の原因ってお前かよっ!

 

「へぇ、裸の王様の発端はお前だったのか」

「そーやで!その罪でワイはここへ連れてこられたんや」

「へぇ〜、でもすげぇじゃん」

「ほーか?悪い気はせんの〜!」

「なぁ、アザゼル?この監獄の事を教えてくれるか?」

 

他愛のない要求にアザゼルは気を許して快く答えた。

 

「おおう!ええで!ええで!ワイに任せとき!」

「助かるよ、アザゼル」

 

こうして俺は囚人仲間のアザゼルと仲良くなり、獄中生活初日を乗り切ることが出来た。




短いですが、更新します。

参戦キャラクター呼んでますよ!アザゼルさんの『アザゼル』を参戦させました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー2暴食を司る魔王 ベルゼブブ

獄中生活2日目、昨夜は夜中に収監された為に俺は監獄の1日の始まりが分からなかった。2日目の早朝の監獄中に突然賑やかな音楽が流れ始めた。俺は驚き飛び起きた。

 

チャンチャチャチャン♪チャチャチャッチャンチャン♪パフ♪

 

「なっ!?なんだ!?なんだ!?笑点かっ!?」

《なっなんですか!?この音楽は!?》

 

目を擦りながら北枕のベッドから起き上がると、アザゼルが騒ぎ出した。

 

「おーい、アンドロマリウス!朝の体操の時間やで!はよ起き!」

「アザゼル待ってよ!どこ行くの!?」

「朝の体操が毎日の日課なんや、いくで!」

いつの間にか鍵は開いており、檻から出ると、様々な悪魔達が外に向かって走り出していた、俺と魔竜も慌てて外に出る。外に出た途端、他の悪魔達は整列しており、待っていた。

 

「アンドロマリウス!こっちや!」

「あっうん……」

 

俺もアザゼルの隣に立ち、準備を終えると笑点のBGMは止まり、今度は……聞いた事のある音楽が鳴り響いた。

 

※おジャ魔女どれ〇のオープニング※

 

えっ待って?待って、待って何これ!?

 

ドッキリドッキリドンドン♪不思議な力湧いたらどーしよ?どーする?

 

音楽に合わせてイカつい悪魔達がキレッキレのダンスを始めた。俺は理解が追いつかず、とりあえず見様見真似でダンスを真似する事にした。あのおしゃべりなアザゼルもこの時はものすごく真剣だった。

 

「えっ……これ何なの?さっきから何なの!?」

「おやおや?新入りさんですかね?」

 

ぎごちないダンスをしていると、俺は隣の悪魔に声を掛けられた。その悪魔は、凛々しい顔立ちをしており、蝿の様な頭に虫の羽根を生やした悪魔が華麗な動きでダンスをしていた。俺はその蝿の悪魔に声を掛ける。

 

「アンタは?」

「私は七つの大罪が1人、暴食を司る魔王・ベルゼブブと申します」

「ベルゼブブ!?」

 

ゲームや漫画で高確率で出て来る最上級悪魔のベルゼブブ。コイツが……

 

暴食のベルゼブブとは… 七つの大罪の1つ暴食の大悪魔で魔神の君主、あるいは魔界の君主とされるようになった。 地獄においてサタンに次いで罪深く、強大なもの、権力と邪悪さでサタンに次ぐと言われ、実力ではサタンを凌ぐとも言われる魔王である。ベルゼブブは神託をもたらす悪魔と言われ、また、作物を荒らすハエの害から人間を救う力も持っている。この悪魔を怒らせると炎を吐き、狼のように吼えるとされている。

 

こんな見た目の奴が七つの大罪の1人だと!?……だが、奴の目はどこか冷めた目つきをしている、敵に回さない方が無難だ……。

 

「あんたは何をして捕まったんだ?」

「そうですねぇ、とある女性にとりついて国家転覆を目論んだと言えばいいでしょうかね?」

「そうなのか、七つの大罪の暴食ってそういう罪を犯してたのか……」

《そのようですね、お気をつけ下さい。この悪魔……ものすごい力を持っております!》

 

俺とベルゼブブが話していると、アザゼルが声を掛けて来た。

 

「べーやん、こいつ珍しい魔族なんやで?」

 

べーやん!?あー、ベルゼブブのあだ名か?

 

「アザゼルくん、どういう意味なのですか?」

「べーやん、コイツ、正義を司る魔王らしいで?」

 

ベルゼブブは眉毛をピクっとさせて反応する。

 

「ほう、確かに珍しい悪魔ですねぇ?」

「そうなのか?イマイチピンと来ねぇよ」

《龍二様、もしかして…カースシリーズが関係してるのではないですか?》

 

なるほど…”正義”のカースシリーズを解放したから正義を司る魔王になれたのか。

 

魔竜に言われたのを聞いて考え込んでいると、朝の体操の時間が終わった。そのまま悪魔達は食堂に向かって行く。

 

「まぁ、とにかくあなたは異質の魔王という事ですよ」

「せやせや、朝の体操も終わったし、飯の時間やっ!」

「なぁ?アザゼル、ベルゼブブ、ここの監獄の飯はどんな感じなんだ?」

 

食堂に向かいながら俺は2人に尋ねる。

アザゼルとベルゼブブは鼻息荒らげながら答えた。

 

「まぁ、悪くは無いな?」

「ええ、悪くは無いですよ?特にこの天界監獄の人気メニューはカレーです!」

「へぇー、この天界にもカレーなんてあるんだ」

「えぇ、私、カレーには目が無いものですからねぇ」

「ほんまにべーやんはカレー好きやのう?」

 

そう言いながら3人は食堂に辿り着き、朝飯を今週の朝食当番の囚人に用意しもらってテーブルに座り、号令を待った。朝食当番も席に着き、号令をしようとした、その時。

 

たのもー!たのもー!

 

どこからともなく声が聞こえて来た。それを聞いた囚人達は騒ぎ出す。

 

おい!誰だよ大事な朝食時間邪魔しやがってよぉ!

ざっけんなよ!どこのどいつだクソ野郎がぁ!

 

ベルゼブブとアザゼルは騒ぎ出す囚人達をジト目で送りながらため息を吐き始める。

 

「はぁ、ったくなんやねん!カチコミかいなっ!」

「まったく……朝食に殴り込みとはいい度胸をしてますねぇ」

「えっなんなの?これ?殴り込みって?」

 

俺はおしぼりで手を拭きながら号令を待っていたら他の悪魔達は怒りだした。すると、外にいた看守が食堂に入って来て悪魔達に言い放った。

 

「囚人共、誰でもいいから相手をしてやってくれ」

 

その言葉を聞いた悪魔達が更に暴れる。

 

ふざけんなよ!

横暴すぎんだろうが!

上等じゃい!ぶち殺してやるわ!

 

悪魔達は殺気立たせながら外に出て行く、中にはめんどくさくて席から離れない奴もいたが、アザゼルとベルゼブブは野次馬感覚で立ち上がる。

 

「おもろそうやからワイらも行くか?」

「そうですねぇ、アンドロマリウスも行きますか?」

「まぁ監獄に殴り込みに来るバカがどんなもんなのか見たいから俺も行くよ」

 

そう言って俺達は席を立って食堂から出て、看守と共に外へ出て行く。監獄の入り口に行くとそこには、犬、猿、雉を連れており、「日本一」の旗を掲げた男が立っていた。悪魔達はゾロゾロ揃う。俺やアザゼル、ベルゼブブは後ろに立ってひょこひょこジャンプしながら見ていた。

 

よく見えねぇけど、旗を見る限り、桃太郎……かな?

 

すると、アザゼルが大声を出して悪魔達に道を開けさせ、俺とベルゼブブはアザゼルと共に野次馬の前に出た。

 

「おらおらどかんかいっ!」

「ちょっと失礼しますね」

「あっ!ちょっと2人とも!?」

 

野次馬の最前列に来た俺達は騒いでいる張本人を目の当たりにした。着物を着ており、ハチマキを巻いて、刀を2本腰に下げている。顔は……ポチャッとしており、お世辞にもイケメンとは言えなかった。

 

まんま桃太郎じゃん……。

 

桃太郎らしき人物は俺達に向かって指を指した

 

「あっ!そのものすごい魔力……貴様、魔物だな?」

「なんやあのブサイク」

「アンドロマリウスくん、あなたの事では?」

「えっ……俺!?」

「最上級の魔物と見た、ならば、尋常に俺と勝負しろっ!」

 

桃太郎は刀を抜いて構えだした。取り巻きの犬、猿、雉はわーわー騒ぎ立てる。俺はベルゼブブにヒソヒソ話し出す。

 

「ねぇ、アレほんとに桃太郎?もうちょいイケメンかと思ったんだけど」

「そうですねぇ、お世辞にもイケメンとは言えませんね」

「おいっ!そこでヒソヒソするなぁ!」

「こんな朝っぱらから道場破りみてぇな事してよぉ、生前お前も英雄の1人なんだろ?こんな事して、恥ずかしくねぇのか?」

 

俺は面倒事を抑える為に桃太郎を説得したが、聞く耳を持たず刀を肩にトントンし始める。

 

「いーや?恥ずかしくないね、鬼を退治してこそ桃太郎なんだから」

「いや俺ら鬼じゃねぇし、悪魔だし」

「お前らかもなんか言ってやれよ相棒達!」

 

桃太郎はお供の動物達に話を振ると、犬達は答えた。

 

「俺はきびだんご目当てだし?もう辞めたい」

「最近きびだんごより美味しい物を発見したからもう辞めたい」

「雇用形態に不満を感じるから転職を考えてる、もう辞めたい」

「英雄の部下なのになんだその言い草は!!」

 

俺達を他所に桃太郎達は勝手に揉め始める。俺は桃太郎のイメージをこれ以上壊さないようにする為、帰るように促す。

 

「要するにこの子らはついていけねぇって事だよ。これ以上俺のイメージが崩壊しちゃうから、帰ってくんね?」

「お前も売られたケンカくらい買えよ!鬼っ!」

 

鬼じゃねぇってば、悪魔なんだってば。

なんなのこのブサイク、めんどくせぇ……

 

「なんやコイツ、はよ帰れや、鬱陶しい」

「早く帰ってくれますか?朝食が冷めてしまうじゃないですか」

「かーえーれ、かーえーれ!」

 

俺達は帰れコールをすると、悔しくなったのか、桃太郎はプルプル震え、顔を真っ赤にして最早泣きそうになっていた。

 

「なっなんなんだよぉ!なんなんだおぉ!」

 

桃太郎は急に怒りだし、地面をドンドンさせて怒りを露わにする。

 

怒り方が子供っぽいっ!

 

桃太郎は半べそをかきながら俺に指を指す。

 

「お゛ま゛え゛俺ど勝負じろ゛!」

「えー俺?」

 

とんだとばっちりを受けた俺は後退りをする。すると、アザゼルとベルゼブブは俺に囁く。

 

「アンドロマリウス、ここはチャンスやで?」

「チャンス!?なにチャンスって!?」

「あなたは新入り、今後他の囚人から絡まれる可能性があります。ここは力を見せ付けて舐められないようにするのが無難かと思いますよ?」

 

なるほど、ここは魔王クラスの奴らがわんさかいる。

舐められないようにするのが得策か……。

 

意を決して、俺は桃太郎の前に立った。

 

「よし、んじゃやるか?ブサイク」

「よっしやぁ!桃太郎の剣術、見せてやるぜ!」

「剣持ってないけど、仕方ない素手で戦うか……」

 

俺は武器を持ってなかったので格闘スタイルで構えた。桃太郎は無鉄砲に突っ込んで来た。

 

太刀筋めちゃくちゃだな……

 

ガキン!

 

「えっ……?何その腕……?」

 

桃太郎の刀を魔力で形成された翼脚で掴まれていた。

 

《あまり調子に乗るんじゃないわよ?坊や?》

「なんだ魔竜、お前がやるのか?」

《ええ、龍二様が手を下す事もありませんよ。はぁっ!》

 

バキン!と音を立てながら桃太郎の刀をへし折り、もう片方の翼脚でゲンコツを炸裂させ、地面にめり込ませた。

 

「よわっ……その実力でお前、良く鬼倒せたな?」

 

哀れな桃太郎を見つめながら呟くと、犬達が真実を教えてくれた。

 

「実はあの時の鬼達はベロベロに酔っててさ」

「そうそう、宴が終わった後を狙ったりしてね」

「コイツは兵法とか言ってるけど、かなり汚い戦い方だったぞ」

 

正義ってなんだっけ?

 

「まぁとにかく勝負はついた。さっさと連れて帰れ!」

「朝早くにごめんなさい」

「起きたらうんと叱って置くので」

「勘弁して欲しい」

 

そう言い残し、犬、猿、雉は桃太郎を引きずながら帰って行った。

悪魔達も終わった終わった、と言いながら食堂に帰って行った。

 

今日学んだ事は……桃太郎はブサイクって事だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー3 憤怒を司る魔王 真奥貞夫

はたらく魔王さまをクロスオーバーさせます。他にも魔王の称号を持ってるキャラクターを登場させる予定です。


流行にちゃっかり乗って鬼滅の刃のラスボス、無惨を登場させようか迷ってます。


獄中生活〇〇日目、すっかり仕事も慣れて来た。1番過酷な仕事は三途の川のゴミ拾い、様々な異世界と繋がっているこの三途の川には様々なゴミが流れてくる。腕時計、ネックレス、剣に銃、そして……カツラ。今日も今日とてアザゼル、ベルゼブブと共にゴミ拾いをしていた。

 

「べーやん!べーやん!エロ本や!エロ本が落ちとるで!!」

「お静かになさい、エロ本如きで騒がないで下さい」

「そうだぞアザゼル、エロ本で騒ぐだなんて中学──」

 

アザゼルが拾ったエロ本を見ると、「女神ViVi」と記されていた。

 

「女神……」

 

俺は女神というワードを聞いた途端、かつての記憶がフラッシバックをする。両手がガタガタ震えだし、魔力が膨れ上がる。

 

女神は敵だ!俺の憎む相手だ!女神は全て滅ぶべきなんだ!

 

「はぁぁぁぁぁ!女神!女神!女神ぃ!」

《龍二様!?如何なされました!?》

「えっちょっと、アンドロマリウス?どないしたん?ムラムラするん?」

「アザゼルくん、その本を捨てなさい。アンドロマリウスくんの様子がおかしいです」

「はぁぁぁぁぁ!」

 

俺は突然三途の川の端で爆発的な魔力を解放してしまった。それにより看守達が集まりだし、俺は看守達に囲まれてしまった。

 

「囚人番号0072番!何を暴れている!大人しくしろ!」

「黙れ……天使如きが俺に……指図するなぁ!『擬似魔法・リベレイション・ダークネスヘルファイヤ』!」

 

怒りに呑まれた俺は看守達に目掛けて巨大な黒い火球の魔法を放った。

 

ズドーーーーン!

 

看守達は魔法でヘルファイヤを防ぎ、事なきを得た。その衝撃波により、三途の川は荒れ放題になり、他の囚人達も暴れ始めた。アザゼルやベルゼブブ、マリューも必死で俺を抑える為に声を掛けてくる。

 

《龍二様!落ち着いて下さい!ここには女神はいませんから!》

「はぁっ!はぁっ!……グオオオオオオオオ!」

「ちょっべーやん!助けたって!アンドロマリウスを助けたって!」

「やれやれ……仕方ありませんね……」

 

ベルゼブブはメキメキとさせて体を変化させて行き、巨大な蝿になり始めた。変身を遂げたベルゼブブは地面に叩きつけ、龍二を押さえつけ始める。

 

「アンドロマリウスくん、気をしっかり持ちなさい!魔王を名乗るなら気狂いは禁物ですよ?」

「うぐぐ……ベルゼブブ……離せ!」

「そうは行きません、これ以上暴れるとあなたは”懲罰房”に行くことになりますよ?」

「黙れ!お前の指図は受けねぇ!マリュー!」

《ベルゼブブ殿、申し訳ごさいません!》

 

マリューは魔力の翼脚でベルゼブブを数発殴り、手足を離させた。ベルゼブブは飛び上がり、ホバリング状態で俺を睨み付ける。

 

「ゲホッゲホッ、流石は魔王と言われた事はありますね……アザゼルくん、貴方も手伝いなさい」

「しゃっしゃーないの!ワイもやるか!」

 

アザゼルも翼を広げて俺に向かって突進して来た。

 

「どけっ!」

「ぼふぅ!」

 

俺はアザゼルを殴って叩き落とし、三途の川に吹っ飛ばした。

アザゼルはそのまま流されていく。

 

「アンドロマリウスくん!いい加減になさい!これ以上立場を悪くしても何も得をしませんよ!?」

「じゃかぁしいわ!女神なんぞこの世から消え去れぇぇぇ!」

 

龍二は右手に魔力を集中させ、圧縮した攻撃を放とうとしていた。

 

「魔竜よ我の願いを聞き届けたまえ、力の根源たる魔王が願う……真理を今一度読み解き、我の害なる者共と大地を焼き払う力を!!竜魔法!!『暗黒流星────』 」

 

ドスン!

 

俺はいきなり何者かに殴られた。

意識が飛ぶ寸前に見えたのは人間の様な体をした男が見えた。

 

──────────────────

 

どれくらい眠っていたのだろうか、俺は真っ白な空間の牢屋に収監されていた。起き上がると、頭に激痛が走った。

 

「いっつ……俺は……確か……」

《龍二様!?大丈夫ですか!?》

「ああ、大丈夫──」

「目が覚めたか?」

 

俺が檻を再度見るとそこには、頭には羊のような角を生やし、3m程の身長をしており、筋骨隆々の体をしていた。

俺はその魔族を睨み付ける。

 

「お前か?俺をここへぶち込んだのは?」

「うん、そう」

「そうか……『ドライファ・ダークネス』!!」

《龍二様!いけません!》

 

俺は不意打ちにその魔族に魔法を放った。

だが、その魔族は拳1つで俺の魔法を打ち消した。

 

おいおい、仮にも強めに撃った魔法をワンパンで消すかよ!?

 

マリューは慌てて俺を呼び止める。

 

《落ち着いて下さい!あのお方は龍二様を止めて下さったのですよ!》

「え?そうなのか?」

「おう、あそこで暴れるのはあんまり良くないんだぞ?」

 

そう言うと魔族の男は徐々に小さくなり、人間くらいの男に戻って行った。それを目の当たりにした俺は冷や汗を流す。

 

「お前……人間か?」

「ん?、この姿はニッポンという異世界に飛ばされた時になった姿だ。この姿を知ってるのはエミリアってやつと、俺の部下達だけなんだけどな?」

 

ニッポン!?コイツ……俺とは逆に、向こうに行った側の魔族か!?

 

俺は魔族に名前を尋ねる為に声を掛けた。

 

「お前も魔王なんだろ?名前……教えてくれよ」

「真奥貞夫」

「いや、日本名じゃなくて!こっちの本名だよ!」

「あっそっち!?俺は……”サタン・ジャコブ”だ!」

 

サタン!?

 

俺は立ち上がって檻に近付く。

 

「サタン!?もしかしてあのサタンか!?憤怒を司る?」

「あーうん、そうそう。けど、今は真奥の方がしっくり来るかな?」

「はっはぁ……」

 

コイツがあの憤怒を司る魔王サタン!?魔王らしさが一気に見えなくなったけど…。

だが、俺を気絶させる程の実力者、油断出来ねぇな。

 

サタンとは…… ユダヤ教、キリスト教では神の敵対者、イスラム教では人間の敵対者とされる。 キリスト教神学においては、サタンは、かつては神に仕える御使いであったが堕天使となり、地獄の長となった悪魔の概念である。 罪を犯して堕落する前のサタンは御使いであったが、神に反逆して「敵対者」としての悪魔に変化したとみなされている。

 

そのやばい悪魔、真奥と名乗った男は俺に名前を尋ねて来た。

 

「日本を知ってるって事は、お前は日本人だろ?日本名教えてくれよ」

「あっうん、日本名は福山龍二。魔王名はアンドロマリウス…一応正義を司る魔王らしい」

「そうなのか!いやぁ、聞きなれた言葉聞くと落ち着くわぁ!仲良くしようぜ!」

 

そう言うと真奥は檻に手を突っ込んで握手を求めて来た。

 

コイツ、いきなりフレンドリーになって来たな?悪いやつじゃないのか?

 

「まっまぁ、お互い日本を知ってるし、仲良くしようぜ?」

「おう!よろしく!俺は龍二って呼ぶぜ?」

「うん、良いよ?。ところで真奥、ここはどこだ?」

「ここか?ここは仕事中に悪さした奴が入る懲罰房だ、あの時お前パニック起こして大暴れしただろ?」

 

なるほど……そういう事か。

 

俺は握手を止めて、真奥に頭を下げた。

 

「みっともない所を見せてしまって済まない……」

「気にすんなって、気持ちは分からなくも無いからな」

「真奥はどうしてここに?日本に居るんじゃなかったのか?」

「いやぁ〜、ちょっと心当たりねぇんだよなぁ……」

 

ちょっと何言ってるかわかんない。

 

「いやいや、なんかしたからここに居るんだろ?日本壊したとか、勇者殺したとか、世界征服したとか!あるだろ!?」

「いやー魔界は統一してたし?日本では神と揉めたけどそれなりにしてたし?勇者はエミリアってやつしかいなかったし?」

 

何してんのこの人……

 

俺は青筋を立てながら俺は項垂れる。

 

俺はこんな奴にぶん殴られて気絶させられたのかよ……。

 

真奥と話していると出入口の扉が開き、看守が現れた。

 

「番号0072番、お前はしばらくここで謹慎だ」

「へい、すんませんでした」

「って訳だから俺は戻るぞ?」

「ああ、真奥……済まなかったな」

「模範囚、01番……済まなかったな、作業に戻ってくれ」

「ヘーイ」

 

看守と真奥は戻って行き、俺とマリューは取り残された。俺はベットに腰掛ける。それと同時にマリューは俺に罵倒を浴びせて来た。

 

《何やってるんですか!?気でも狂ったんですか!?》

「すまん、前の事を思い出しちまって……」

《そっそうでしたか……今回だけにしてくださいね?》

「あぁ、ごめんな」

 

俺はマリューに謝り、ベットに横になった。




ちなみにはたらく魔王さまの原作も研究中です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー4 新星を司る魔王 リムル=テンペスト

懲罰房から出た俺は再び普通の牢屋に戻された翌日、体操を終えた俺達4人は朝からカレーを食べていた。

 

「クエッウメェ!」

「なぁベルゼブブその顔やめろよ、男前が台無しなんだけど」

「べーやんはカレーの時はいつもやで」

「確かにこのカレーは上手いから分かるんだけどな?」

「真奥は日本で普段どんな飯くってたんだ?」

 

カレーをモグモグしながら俺は真奥に尋ねる。

真奥は水を飲みながら応えてくれた。

 

「そうだなぁ……マ〇ロナルドのまかないだったり、キュウリにこんにゃく、主にうどん食ってたりしてたな」

 

仮にも魔王だよな!?なんだその偏った食生活は!?

 

「よく体壊さなかったな……」

「同居人やお隣さんとか、大家さんに良くしてもらったからな!」

 

ドヤ顔をする真奥、ドン引く俺、カレーを貪るベルゼブブ。アザゼルは飽きたのか紙コップで遊び始める。

 

朝食を終え、牢屋に戻ろうとしたその時、俺は長髪の青い髪色をした少年とすれ違った。すれ違った瞬間とてつもない魔力を感じた俺はバッ!と振り向く。それに気付いた魔竜、真奥、ベルゼブブは俺に尋ねて来た。

 

《龍二様?どうしました?》

「龍二、どうした?」

「いや……今めっちゃ凄い魔力感じたんだけど?」

「あぁ、彼でしょうね」

 

ベルゼブブの目線の先には、先程すれ違った青い髪の青年だった。

 

「あいつ……めちゃくちゃ強いんじゃないか?」

「ええ、おそらく……ここ天界監獄で1番かと思われます」

「マジで!?声掛けてみようかな」

「え?お前、男に興味あるんか!?」

 

なんでそうなんの!?

 

意を決して俺は青い髪色の青年に声を掛けてみようと思い、追い掛けて声を掛けてみた。

 

「すいません!ちょっと良いですか!?」

「えっ?俺?」

 

青い髪色の青年は振り向いて答えてくれた。この機を逃さまいと俺は自己紹介を始めた。

 

「俺は正義を司る魔王・アンドロマリウス。あんたは?」

「俺?俺はリムル=テンペスト、ジュラテンペスト王国の新星を司る魔王であり、スライムだ!」

 

リムル=テンペストと名乗った男は急に変身すると、透き通った青いスライムに変身した。

 

え?スライム!?

 

「これが、俺の正体だ!ドラク〇のスライムと一緒にしないでくれよ?」

「えっえっえぇ!?スライムが正体なんですか!?それに、ドラク〇って?もしかして…日本人ですか!?」

「ああ、そうだけど?もしかして君も?」

「はい、日本名は福山龍二って言います。歳は18です」

「えぇ!?その歳でもう魔王やってんの!?やばくねぇ!?」

 

俺の歳を聞いた途端、リムルは目を飛び出ささせて驚いていた。

 

「あの、リムル君はその…名前とか聞いても大丈夫ですか?」

「俺?俺は、三上悟って名前だったよ歳は37で、サラリーマンをしていたよ」

 

めっちゃ歳上やんけ!

 

俺は慌てて頭を更に深く下げる。

 

「あっすいません!悟さん、見た目が若々しいし、まさかそんなに歳上だとは思ってなくて生意気に声掛けてすいません!」

「いいよいいよ、こんな姿だし?気にすんなって!同じ魔王なんだし、タメ口で良いし呼び捨てでも構わないぞ?」

 

歳上に対して呼び捨てタメ語使うなんて、やりづれぇ……

 

「えっあの、慣れるまで少し時間を下さい…悟さんはどうしてそんなスライムに?」

「長話になるからそこの椅子に座ろうか?」

「あっはい」

 

リムルと俺は椅子に座り、話し始めた。

 

「聞いてくれよ、実はな…」

 

リムル=テンペストこと、三上悟さんはまず、何故スライムになったかを説明してくれた。元々サラリーマンだった悟さんはある時、通り魔に刺されて死亡し、完全な記憶を持ったまま魔物のスライムに転生したそうだ。転生後に初めて出会ったヴェルドラという伝説のドラゴンと出会い、ヴェルドラという名前を交換することで「名持ちの魔物」となり、渡った先の世界で最初に縁を持った同じ日本人がいたそうだ。その日本人である井沢 静江という女性は悪魔に取り憑かれおり、死に際に彼女吸収したことにより人間の姿に擬態する能力を身につける様になったそうだ。そして、リムルの中にはもう1つの人格でもある『大賢者』というサポートしてくれる奴がいるそうだ。

 

そんな異世界の渡り方もあるのか、アザゼルや真奥見たいにこちらから向こうに行くとはまた別法の異世界の行き方があるみたいだな。

 

「へぇ〜、便利な相棒がいるんですね」

「ああ、今じゃ最高のパートナーさ!龍二はどうしてこんな所にいるんだ?何か悪い事でもしたのか?」

「ええ、まぁ…女神や男神に騙されたり、利用されたりして同じ異世界を2度やり直したりしたら闇堕ちして魔王になりました」

「うわぁ、君も大変な人生だったんだなぁ」

 

リムルは飲み屋で慰めてくれる先輩の様に肩をパンパンと叩いて慰めてくれた。

 

優しい…これが本物の強者ってやつか…。

 

「けど、悟さんはどうして”新星を司る魔王”になったんですか?俺見たいに悪さを働いた訳じゃないんでしょう?」

「いや、俺もやりたくないとは思ったけど、やらなきゃ行けない事態になっちゃってね」

「聞いても大丈夫ですか?」

「ああ、今なら大丈夫だ!」

 

更に、リムルはどうして魔王になったかを教えてくれた。何故かと言うと、平和に国を発展させていた時に。『ファルムス王国』という国から敵視され、リムルが留守の間に幹部の1人『シオン』というオーガの女性が殺されたそうだ。殺された彼女を甦す方法が一つだけあり、その方法と言うのが…『真の魔王』となる事。それが唯一部下を復活させる方法だったらしい。魔王になる為には1万人の魂を生け贄にしなければならなかった様だ。それらにより、リムルは1万人を犠牲にして魔王の称号を手に入れたそうだ。

 

聞いただけで吐き気がする…。なんだよ、モンスター同士が平和に暮らしてたって言うのに、危険だからって…。そんなの正義じゃねぇよ

 

「俺も、部下を殺されてるんで気持ちは分かりますよ。頼りにしてた部下を殺されたら辛いですよね」

「ああ、けど甦したから気にしてないけどな!」

 

カラッとした雰囲気でリムルは答える。

 

器でけぇ、俺もこんな人になりたい…。

むしろ…この人と戦いたい!

 

そんな事を考えていると、魔竜が注意を促す。

 

《龍二様!何を考えてるんですか!?また騒ぎを起こすおつもりですか!?いい加減にして下さい!》

(大丈夫大丈夫、今度はちゃんと手合わせって事で看守に話しするから)

 

「悟さん、お願いがあるんですが」

「んっ?どうした?」

 

俺は覚悟決め、キッと気を引き締めた顔をしてリムルに頼み込んだ。

 

「悟さん!いや、リムル=テンペスト!俺と戦って下さい!」

「えぇ!?いやなんで!?」

「そりゃ驚きますよね?、ですけど、どうしても本物の魔王って男の実力を知りたいんです!お願いします!」

 

必死に頼み込んだ結果、リムルが半ば折れて根負けした。やれやれと言わんばかりに肩を叩く。

 

「分かった!分かった!、看守の人に聞いてからにしよう?なっ?」

「はいっ!」

 

─────────────────────

 

そして、看守に話をつけ、喧嘩では無く「手合わせ」という名目で運動場を借りて俺とリムルは運動場にやって来た。野次馬感覚でアザゼルやベルゼブブ、真奥や他の魔王達も見学にやって来た。ドッチボールのコートに2人は立ち、構える。

 

「若者よ!思いっきりぶつかって来いっ!」

「失礼の無いように、最初から全力で行かせて貰います!魔竜、行くぞ」

《はい!龍二様!》

 

魔竜は魔力で作られた紫色の翼脚を広げて構え、対するリムルはノーガードで迎え撃つつもりなのか、構えもせずにただ立っているだけだった。すると、面白いと思ったのか、どこからか椅子とテーブル、マイクを持って来て実況と解説をする為にアザゼルとベルゼブブが座り始め、真奥はレフェリーになってルールを説明し始めた。

 

「1ラウンド、3分間だけだからな?、良いか?絶対コート壊すなよ?ドッチボール出来なくなるから」

「「あぁ!」」

「レディ……ファッイ!」

 

ドゴーーーン!

 

号令と共に両者は飛び出し、拳と拳がぶつかり合い爆音を轟かせた。2人の衝撃波により、コートのど真ん中にクレーターが出来上がった。

 

「くぅー!お前、強いな!」

「悟さんこそ…っ! 魔竜!やれっ!」

《お手並み拝見致します、リムル=テンペスト様!はぁっ!》

 

魔竜は翼脚を拳のように握りリムルの頭に向かって殴り掛かるが、リムルはかわしながら回し蹴りを繰り出して来た。リムルの蹴りは俺の左腕に当たり、メキメキと音を立てていた。

 

鎧越しなのにダメージが!?

 

「べーやん!べーやん!言ったそばからコート壊しよったで!?」

「そうですねぇ…まぁ、この2人では壊してしまうでしょうね、壊さないように戦う方が難しいですよ」

 

実況と解説に熱を入れ出すアザゼルとベルゼブブにより、監獄の魔王達がこぞって騒ぎ、大歓声を上げて俺やリムル=テンペストを応援し始めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー5 淫奔を司る魔王?アザゼル

今回はアザゼル活躍回です。


リムル=テンペストと激しい攻防戦を繰り広げた俺はクレーターをいくつも作り、戦っていた。リムル=テンペストの拳と魔竜の拳がぶつかり合って巨大な衝撃波が生まれた。衝撃波を浴びながらも実況を続けるアザゼルとベルゼブブは。

 

「なんっちゅー衝撃波や!」

「えぇ、そろそろ3分ですね。さぁ、お二人共、次が最後の攻撃になりますよ?」

「だそうだ、アンドロマリウス、リムル」

 

一旦距離を置いた俺とリムル=テンペストは構えながら会話を始める。

 

「では、悟さん。俺も全力の攻撃であなたを倒します!」

「よしっ!なら俺もちょっと前に使った技で迎え撃ってやる!」

「魔竜!やるぞ!」

 

《はいっ!龍二様!!》

 

俺は高く飛び上がり、魔力を全開に解放して唱えた。

 

「魔竜よ我の願いを聞き届けたまえ、力の根源たる魔王が願う!!真理を今一度読み解き、我の害なる者共と大地を焼き払う力を!!竜魔法!! 『暗黒流星群』!!」

 

そう唱えると、巨大な魔法陣が空に描かれると、幾千の隕石が魔法陣から飛び出して来た。監獄目掛けて降り注ぐ隕石を見たアザゼルは……。

 

「なんやアレ!?あんな隕石反則やろっ!?退避や!退避ぃぃぃ!!」

「狼狽えてはいけませんよアザゼルくん。我々は魔王、ここで退いたら一生の恥と言うものですよ?」

 

防災ヘルメットを被って逃げ惑うアザゼルを除いた他の魔王達は、どっしりと身構えて構える中、リムル=テンペストだけはただ黙って隕石を見上げていた。

 

「すっごいなぁ、んじゃ……俺もやるか……」

 

リムル=テンペストは右手を挙げて魔法陣を形成すると、水滴の様な水玉が監獄中に現れた。その水玉を見た途端、他の魔王達は何を感じ取ったのか、慌てふためき始めた。

 

「おっおい!この技はやべぇぞ!逃げろぉぉぉぉ!!」

「ほら見てみぃや!!退避や!退避ぃぃぃ!」

「やれやれ、リムルさんも、アンドロマリウス君も少々やり過ぎでしょうに。貞夫君、私と下がりましょう」

「マジ!?蹴っ飛ばしてやろうと思ったのに!」

「何を馬鹿な事言ってるんです。そんな事したら貴方まで巻き添えになりますよ?」

 

ベルゼブブと真奥も防災ヘルメットをかぶり、他の魔王が作った塹壕に入り、避難した。そして、リムル=テンペストは……呟いた。

 

「『神之怒』!!」

 

リムル=テンペストが呟いた途端ピカっと光り、次々と隕石が破壊され始めた。隕石は塵一つ残らず破壊され、俺の技はあっという間に無効化されてしまった。

 

嘘だろ……俺の暗黒流星群が……花火大会になっちゃった……。

 

「たーまーやー!」

 

互いの技を出したと同時に、3分経ってしまった。真奥とベルゼブブは慌ててゴングを激しく鳴らした。

 

カンカンカンカン!!

 

「ほらほら、そこまでだっ!」

「勝者はご覧の通り、リムル=テンペストさんですね」

「えっへん!」

 

スライム体でドヤ顔をするリムル=テンペストを見た俺は膝から崩れ落ち、完全敗北を認めざるを得なかった。

 

「アンドロマリウス!インタビューなんやけど、今どんな気持ちや!?わしにだけ言うてみ?誰にも言わないから!なっ!?」

「うるせぇっ!!」

 

ゴンッ!

 

俺は新聞記者の様なカッコをしたアザゼルを地面にめり込ませて黙らし、リムル=テンペストに近付き、握手を求めた。

 

「悟さん、完敗です……」

「いや、あの隕石は俺も参考になった!またやろうな!」

「はいっ!」

 

《リムル=テンペスト様、手合わせしただきありがとうございました!》

 

「さて、じゃ、このグランド直さねぇとな!」

「はいっ!」

 

────────────────────────

 

その後、俺達はグランドを整地してドッチボールをしている時……。

 

「おいリュウジ!お前今当ったろ!さっさとコートから出ろよ!」

「あぁん!?いつ何時何分何秒地球が何回回ったときに当たったかいつまで見ろや!」

「子供かっ!わし見とったで!」

 

ピピーッ!

 

他の魔王達と揉めていると、看守の天使達がやって来た。

 

「コラーッ!何やっとるんだ貴様らーっ!」

「やべぇ!看守だっ!逃げろっ!」

「おいっ!リュウジ!賭けてた冷凍みかん置いていけやっ!」

 

アザゼルに追いかけられていると、声が聞こえて来た。

 

頼もー!頼もー!

 

声を聞いていると、他の看守がやって来た。

 

「おい、魔王ども。今日も挑戦者が来たぞ、相手をしてやれ」

「えぇ〜?またぁ?どんだけ来んだよ」

「しゃーないのぉ〜。べーやんもリムルはんも真奥やん達は今日は給食当番やさかい、わしらだけで行こか〜?」

「しょーがないなぁ……」

 

《暇な英雄ですねぇ、さっさと転生して他所の異世界でも行けばいいのに……》

 

言えてる。

 

駆り出された俺達は門の前に行くと、まさかりを担ぎ、金という前掛けを身に付け、頭は大童のヘアスタイルの男が立っていた。

 

まさか……金太郎!?

 

金太郎は熊から降りると、突然俺達に言い放つ。

 

「相撲しようぜ!」

 

何を言い出すんだコイツは……。

 

突然相撲のお誘いをされた俺達はある意味ざわついてる。すると、巨大な体格で牛頭の魔王、『暴虐を司る魔王・モロク』が前に出た。

 

「よぉし!俺が相手をしてやる!」

「モッさん!?モッさんがやるんでっか!?」

「モロク頑張れ〜!」

 

モロクが手をゴキゴキ鳴らしながら構えると、金太郎は四股を踏み始めた。そして……

 

「はっけよいっ!」

「うおおおおぉっ!」

 

モロクと金太郎はぶつかり合って互いに掴み合う、両者は一歩も動かず力比べになって行った。力自慢のモロクが止められたのを目の当たりにしたアザゼルは……。

 

「あのモッさんを止めたやと!?なんやねんアイツ!?」

「マジ!?モッさんって力はすげぇじゃん!!」

 

そのモロクと互角とは、流石は金太郎だな……。

 

そして、スタミナが切れたモロクが隙を見せた瞬間。

 

「そぉいやぁぁぁ!」

「ぬううっ!?しまった!!」

 

金太郎はモロクを投げ飛ばし、モロクは地面に倒れてしまった。アザゼルはガタガタ震えながら俺に言い放つ。

 

「モッさんが!モッさんが負けよった!?」

「あらま、モッさん負けちゃったね」

 

《あのモロク様が!?龍二様、ここは我々が行くべきかと》

 

ふむ……待てよ?

 

俺はガタガタ震えるアザゼルにボソッと囁いた。

 

「ねぇ、アザゼル?お前って『淫奔』を司るんだよな?」

「えっ!?あーいや、まぁそやけど!?」

「能力は確か”ホルモン”を操作出来るんだよね?」

「せやけどなんやねん!わしにやらせる気かいなっ!?モッさんがやられたんやで!?」

「大丈夫大丈夫!お前なら勝てるって!耳貸してみゴニョニョ……」

「ふむふむ……なるほどのぉ……」

 

俺はアザゼルにアドバイスをすると、アザゼルは自信が付いたのか、やる気を出し始めた。モロクを倒した金太郎は。

 

「さあっ!次は誰だっ!?まだまだやり足りねぇぜ!」

「わしが相手や……」

 

アザゼルはいつになく真剣な顔をして前に出た。アザゼルが出た途端、他の魔王達は……。

 

うわっ、アザゼルが出たぞ。

はい乙ー。

約立たずが何する気だよ。

 

すんごい言われてる……。

 

アザゼルの耳にも入ったのか、最早アザゼルは泣きそうになっている。アザゼルは半べそをかきながらも構えた。そして……。

 

「はっけよいっ!」

「よっしやぁぁっ!」

 

ガシッと掴み合った瞬間、俺はアザゼルに声を掛けた。

 

「アザゼル!今だっ!」

「くらえや金太郎!これがわしの能力やっ!!」

「なっなんだっ!?体がっ!?」

 

アザゼルが金太郎に触れた途端、金太郎の体に異変が起きた。金太郎はアザゼルから離れると、みるみるうちに金太郎の体は筋肉質からヒョロりとした体になり、胸も大きくなって行き、髪も伸び始めた。そして遂には……。

 

「きゃっ……あたし、なんで!?”女”になってるの!?」

 

突然、金太郎が女性に変わった。何が起こったのか理解出来ない魔王達は驚きを隠せず、ざわつき始めた。

 

「なっなんだ!?急に女になったぞ!?」

「アザゼルのやつ、一体何をした!?」

「セクハラだけがアイツの能力じゃなかったのか!?」

 

騒いでいる中、アザゼルはドヤ顔をしながら金太郎に言い放った。

 

「見晒せ!これがわしの『淫奔』の能力やっ!男性ホルモンと女性ホルモンを操作し、金太郎を金子にしてやったんや!!」

 

あまりにも恥ずかしいカッコをしている金子は両手で必死に体を隠そうとしながら。

 

「いっいや……恥ずかしいぃぃぃっ!!」

金太郎は熊に隠れながら逃げていった。勝利を確信したアザゼルはブイサインをした。

 

「番外編5話にして、ようやくわしの活躍回やっ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー6 熾天使

金太郎を撃退してあれから300年経過した。天界監獄で魔王達が大人しくしているある日。憤怒を司るサタンこと貞夫と、新星を司るリムルこと、悟さんが仮出所する事になった。俺達は見送る為に集まっていた。

 

「悟さん、お世話になりました」

「ああ、俺は元の世界に戻るけど、お前らも頑張れよ!」

「はいっ!貞夫も別世界の日本を頼んだぞ?」

「任せとけ、マグ〇ナルドで出世して必ず世界を征服して見せる!」

 

2人と固い握手をしていると、アザゼルが泣きながらリムルと貞夫に言い放つ。

 

「行かんといて!リムルはんも、サダはんワイらを置いて行かんといて!」

「ワガママを言ってはいけませんよ。アザゼル君。お2人共お元気で」

「ああ、ベルゼブブもアンドロマリウスとアザゼルを頼んだぞ?」

「ええ、任せといて下さい」

 

ベルゼブブにそう言い放った貞夫とリムルは魔法陣の中に入り、そのまま消えて行った。

 

「行ってもうたなぁ、七つの大罪の一角と監獄最強が行ってもうたわ」

「そうだなぁ、今後は俺達だけでこの監獄を守って行かなきゃなぁ」

「ほらお2人共。見送りも済みましたし、刑務作業に行きますよ?」

 

俺達はそのまま今日の刑務作業を行う為に、監獄の中へと入って行った。

 

────────────────────────

 

その頃。天界では、創造神を含め、様々な天使達と複数名の女神が議事堂である議題で大騒ぎしていた。掟を司る女神・ネメシスが頭議題の内容で頭を悩ませていた。

 

「はぁ……今になってなんでこんな議題が上がるのよ……」

 

ネメシスの手元には【魔王撲滅計画】という書類が1枚置かれており、紅茶を片手に項垂れていた。創造神には、純白の甲冑で身を纏った天使が意義を唱えていた。

 

「創造神様。一体いつまであの悪魔共を監獄に収監しているおつもりですか?」

「【熾天使】のセラフィムよ。彼らは自分の罪を償っておるのだ、何を今になってこのような議題を持ち出したのだ?」

 

【熾天使とは、天使の最上位の位階に属する天使のグループ。神に最も近い存在として記されている】

 

そのリーダーでもある【セラフィム】が、天使達を従えて創造神に意義を申し立てに来ていたのだ。

 

「そうかも知れませんが、彼らは勇者と呼ばれた方々を悉く蹴散らしていると言うではありませんか。刑に服しているならありえませんよ?」

「それは勇者達が勝手に魔王達の元へ挑戦しに行ってるだけであり、神々が命令を下している訳ではないぞ?」

「ですが、処刑する訳でもない悪魔達を監獄に閉じ込めて置くだけという処遇が納得行きません。死刑制度はどうなっているのですか?あそこにいる悪魔達は処刑された事はあるのですか!?」

 

ガシャガシャと鎧の音を立てながらバンと机を叩いた。

 

「そっ、それは……」

「掟を司る女神・ネメシス様。天界の死刑制度についてお教え下さい」

 

セラフィムの視線はネメシスに移った。ネメシスは分厚い本を魔法で取り出して読み始めた。

 

「えーっと、死刑制度……死刑制度……あった。『悪魔、又は魔王が処刑される条件は天界の天使、又は男神、女神に重症を負わせた場合に発令される。魔王達が以前いた異世界は該当されない』と記されています」

「そうですか……分かりました。この計画は却下させてもらいます」

 

セラフィムは提示した書類を自ら破き捨て、天使達を引き連れて議事堂から出て行った。取り残されたネメシスと創造神はため息を吐いた。

 

「はぁ……熾天使のセラフィムは頭が硬くて敵わん……」

「そうですねぇ……何事も起こらなければいいんですけど……」

 

ネメシスの言葉を聞いた途端、創造神は机をドンと叩いた。

 

「滅多な事を言うもんじゃないよ!!これ以上ワシの頭を悩ませんでくれっ!あちこちの異世界を管理していてワシも忙しいんだからっ!」

「私だってそうですよ!?悪男神ロキと悪女神メディアの後始末私がやってるんですからね!?他の女神や男神は自分の担当している異世界や眷属の面倒を見てて忙しいんですから!」

「君は掟を司る女神だろ?公安職だろ?天界の秩序も守ってくれなきゃ困るよ」

 

紅茶を啜ったネメシスは吹き出しながら口元を拭った。

 

「はあっ!?何でもかんでも私に押し付けないで下さいよっ!だから創造神も、『大女神』様に怒られるんですよ!?」

「てなわけで、後は頼んだよ?」

 

そう言い放ち、創造神は魔法陣を展開させてその場を後にした。

 

「あっ!ちょっと創造神様!?もうっ!」

ネメシスはため息を吐きながら懐から1枚の写真を取り出した。その写真には、銀髪の女神、ツインテールの女神、紫色の髪をした女神、白いドレスを纏った金髪の女神とネメシスが写っていた。

 

「はぁ……皆はいいよねぇ……自分の担当があって……」

 

ネメシスは写真を見つめながら呟いた。

 

────────────────────────

 

その頃。監獄には白いスーツを着込んだ1人の天使が門の前にやって来ていた。天使は門番の天使に声を掛けた。

 

「熾天使のセラフィムだ。天界監獄の視察に来た」

「セッセラフィム様!?はっ!直ちに門を開けます!」

 

門が開かれると、セラフィムは中に入って行くと、あちこちに魔王達が蔓延っており、刑務作業に勤しんでいた。ただならぬ気配を察知した魔王達は、セラフィムを睨み付け始めた。案内を買って出た監獄の所長が魔王達に声をかける。

 

「コラ、貴様ら!熾天使のセラフィム様を睨み付け始めるなっ!」

「大丈夫ですよ、所長殿。私は気にしません」

「ですがっ!?」

「所詮は魔族、ゴミですからね」

 

セラフィムがゴミを見るような目で魔王達を見つめると、豹の顔をした魔王が場所を離れてどこかへ走っていった。その場所は、俺が担当していた刑務作業をしている場所だった。

 

「アンドロマリウスさん!大変です!」

「あれ?【模倣を司る魔王オセ】じゃん。どうしたの?」

「なんやねん、オセ。今刑務作業中やろ?」

 

【オセとは。豹のような顔をしているソロモン72柱の1人。物体のコピーを作る能力だが、契約者の記憶を元に模造するため、契約者が模造する物の性質や構造を理解していれば本物と同等のものを作れる使い手でもある】

 

オセはゼーゼーと息を切らせながら俺達に言い放った。

 

「なんか、ちょっとヤバそうな天使が来たんですよ!」

「天使?なんで天使がここに来るんだよ」

「せやせや、ワイらの天敵の天使がこんな監獄に来るわけないやろ!」

「本当なんですって!今まで来た勇者達とは比べもんにならないんです」

オセがこんなに慌てるなんて珍しいな、どんな奴なんだろう?

 

そう考えているうちに、刑務作業終了のチャイムが鳴り響いた。

 

「おっ、終わったな。その天使はどこにいるの?」

「こっちです!」

「アザゼル、ベルゼブブを連れて来てくれ」

「よっしゃ、任せとけや」

 

アザゼルと別れて俺はオセの案内で天使を探し始めた。すると、一際目立つ真っ白のスーツを着こなした天使が目に入った。

 

確かに監獄の看守(天使)とは比べもんにならないくらい強そうだな……。

 

すると、俺の視線に気付いたのか、天使は俺に向かって来た。俺はとりあえず、頭を下げる事にした。

 

「こんにちは〜。視察ご苦労さまでーす」

「貴方は……しばらく前に収監された魔王だそうですね?、ソロモン72柱と七つの大罪の8つ目の大罪・正義と呼ばれる”異質の魔王”『正義を司る魔王アンドロマリウス』さんですね?」

「ええ、まぁ、はい。そうですけど?」

「なるほど、噂通りの真面目そうな方だ」

「ええっと、貴方は?」

 

俺が天使に尋ねると、天使は名乗り始めた。

 

「これは失礼、私は熾天使のセラフィムと申します」

「熾天使?熾天使ってなんですか?」

「熾天使と言うのは、言わば、天使の総大将と言うべきですかね?」

 

総大将!?

 

俺はセラフィムに視察の件を尋ねてみた。

 

「その熾天使様がここへ何のようです?」

「それはですね?生きてる意味が分からない貴方方を見に来たのですよ。所詮は悪魔。ここに居てもなんの意味もないというのが分かりました」

 

俺はカチン来て、セラフィムに顔をギリギリまで近付けた。

 

「何?生きてる意味が分からない?」

「だってそうでしょう?刑務作業?バカバカしい。魔族はとっとと処刑かれるべきなんですよ」

「あぁん?テメェケンカ売ってんのか?」

「ダメですよ!アンドロマリウスさん!熾天使に手を出しては!!」

 

オセは慌てて俺に掴んで止めようとした。すると、魔竜が翼脚を肩から飛び出させ爪をセラフィムに突き付ける。

 

《天使如きが調子に乗るんじゃないわよ?》

 

「おや?貴方の中には別の魂が入ってるようですね?」

「お前……魔竜の声が聞こえてんのか?」

「ええ、熾天使は神に近い存在ですからね、この程度なら容易いです」

 

《龍二様、コイツ殺っちゃいませんか?めちゃくちゃ腹立つんですけど》

 

「やめろ魔竜、翼脚をしまえ」

 

《はっ、はい……》

 

魔竜が大人しくなると、ベルゼブブを呼びに行ったアザゼルがやって来た。セラフィムはアザゼルを見た途端、アザゼルに声をかけた。

 

「おや?そこにいるのは……堕天した魔王、アザゼル君じゃないですか」

「お前……セラフィムやな?」

「アザゼル、知り合いか?」

「せや、コイツは天使の中でもエリート中のエリートや」

「久しぶりじゃないですか。堕天した落ちこぼれのアザゼル君」

「な、なんの用や、お前……何しに来たんやっ!」

 

アザゼルはベルゼブブの影に隠れながらセラフィムに言い放つ。ベルゼブブはセラフィムに声をかけた。

 

「アザゼル君は確かにクズですが、随分な言い方をしますね?堕天したなら貴方とは関わりは終わってるのでは?」

「そこにいるのは……暴食を司る魔王ベルゼブブさんですね?虫けらが何を偉そうに意見してるんです?」

 

セラフィムはベルゼブブを挑発するが、ベルゼブブは淡々と答えた。

 

「その言い方だと、法を盾に我々を煽りに来たんですか?」

 

普段は冷静沈着のベルゼブブが珍しくも頭に血管を浮き上がらせる。

 

ベルゼブブがカレー以外でキレるなんて珍しい……。

 

「ってか法を盾にってベルゼブブ、どういう事?」

「龍二さんは知らないと思いますが、我々魔王はこの天界の天使に危害を加えると、処刑させる法律があります」

「はぁ?なにそのクソみてぇな法律」

 

ベルゼブブの言葉を聞いた途端、セラフィムは嘲笑うかのようにクスクスと笑い始めた。

 

「ふふっ、魔王にも頭のいい方がいるんですね」

「ならお前、わざわざケンカ吹っかけに来たのか?俺達魔王を処刑させる為に」

「ええ、まぁそうですね。ですが、興醒めしました。貴方クズを処刑しても意味が無いということがね?」

 

セラフィムの言葉を聞いた俺達はギリッと拳を握り、セラフィムの挑発に耐えていた。セラフィムは更に挑発を続ける。

 

「この監獄の資金は我々天使の税金で賄われているんですよ?我々天使は貴方の為に働い出る訳では無いんですから。ゴミはゴミらしく、我々の残飯を食って汚れ仕事をやってれば良いんですよ」

 

遂に我慢出来なくなったのか、アザゼルが殴り掛かろうとした。

 

「何調子に乗っとんのやワレェッ!今すぐぶっ殺したるわ!」

「止めなさいアザゼル君。安い挑発に乗ってはいけませんよ」

「そうですよ!手を出したら他の魔王達も処刑されちゃいますよ!」

「なんです?殴ればいいじゃないですか?ほらほら?」

 

セラフィムが頬をツンツンとつついた瞬間、俺はセラフィムを殴り飛ばした。

 

「これだから神が嫌いなんだ。自分が上だからと見下して舐め腐る」

 

殴り飛ばされたセラフィムは鼻血を流しながら怒鳴り散らす。

 

「鼻血が出たじゃないかっ!処刑!貴様は処刑だっ!」

「うるせぇよボケが、血を流す覚悟もねぇ癖にケンカ吹っかけてくんじゃねぇよ。俺達魔王はここに居るのは罪を償ってるが、それだけじゃねぇ。世界を滅ぼしてしまう恐れがあるからここにいるんだよ。なんなら今から俺達魔王全員でこの監獄や外の天界をぶっ壊してやろうか?」

 

そう言い放った俺は翼脚を広げながら右手をかざし、魔力を溜め込み始めた。すると、看守達と所長が慌てて駆けつけ、警笛を鳴らし始める。

 

「ピピーッ!何をしてるんだ0072番!?」

「売られたケンカを買っただけだ、邪魔するならお前らから消すぞ?」

「貴様!!反乱を起こす気か!?」

「セラフィム様、お気を確かに!!」

 

所長の手を借りて立ち上がったセラフィムはニヤリと笑って立ち去って行った。ベルゼブブとオセは冷や汗をかきながら話し始めた。

 

「ベルゼブブさん。不味いですね……」

「ええ、困った事になりましたね。天使達と戦争が起きますよ」

「ざまぁみろや!ボケッ!」

 

セラフィムに中指を立てながらイキるアザゼルを放って置いて、オセとベルゼブブは俺に声をかける。

 

「龍二さん、これから大変な事になりますよ?」

「熾天使を殴るなんて……!!」

「あはは……やっちゃった……」

「まぁ、貴方がやらなければ私が殴っていましたけどね?。こうしては居られません。全魔王を集めて対策を取らなければなりません」

 

ん?遺書でも書くのかな?

 

「どういう事?」

 

ベルゼブブはニヤリと笑って言った。

 

「天使と悪魔の全面戦争ですよ」

 

 




オセの情報は、『呼んでますよアザゼルさん』とソロモン72柱の情報を混ぜ合わせてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー7 悪魔vs天使

アンケートの御協力ありがとうございました。結果、『太刀の勇者ののし上がり』を復活させることになりました。なので投稿次第ダイジェストを消去します。

『太刀の勇者ののし上がり』の投稿日にちは、『元太刀の勇者は立ち直れない』が完結次第投稿したいと思います。


魔王達が決起した翌日。再び議事堂に神々と熾天使達が集まり、ネメシス、創造神が書類に目を通していた。

 

「やはり起こってしまったか……」

「そりゃそうですよ、あの後熾天使セラフィムが自ら監獄に出向いてわざわざケンカを吹っかけたんですから。そりゃ魔王達もキレますよ」

 

創造神とネメシスがため息を付いていると、セラフィムが立ち上がって神々に申し出た。

 

「魔王達はやはり処刑すべきです。私も監獄にて暴行を受けました!こんな蛮行が許されて良いのでしょうか!?」

 

セラフィムが強く主張すると、創造神が。

 

「ではセラフィムよ、誰に暴行を受けたと言うのだ?」

「はい。アンドロマリウスという新参者です」

 

名前を聞いた途端、ネメシスの顔が引き攣った。

 

「えっ、えぇ……?」

「掟を司る女神ネメシス様、どうなされました?」

「いっ、いえ……ですが天使が危害を加えられたのは事実です。けど、全員処刑するのですか?その場にいなかった魔王達も?」

「そうですね、どうせ居てもゴッドンの無駄使いでしょうし」

 

セラフィムの言葉を聞いた途端、カチンと来たネメシスは。

 

「随分な事をおっしゃいますね。コレを聞いた途端、魔王達がおめおめと黙って処刑されるとお考えなのですか?」

「そんなの神器で拘束するなりなんなりですればいいではありませんか」

 

バキッ!

 

ネメシスは我慢出来なくなったのか、ペンをへし折った。

 

「そんな考えだから悪男神ロキや悪女神メディアが現れるんですよ!!ならこれはどうです!?天使と悪魔のガチンコ対決をするというのは?」

「えっ、ちょっとネメシス」

「創造神様は黙ってて下さい。天使が勝てば魔王全てを処刑。魔王が勝てば処刑免除……悪くない話じゃないですか?掟を司る女神ネメシスの権限を行使して勝とうが負けようが全て許可します!!」

 

そう啖呵を切ると、天使や神々達がザワザワと騒ぎ出す。

 

「何を馬鹿な!」

「女神様とは言え冗談が過ぎますぞ?」

「やれやれ感情的になられては困りますなぁ?」

「あらあら?まさか、神の使いでもある熾天使がまさか魔王如きにビビってるんじゃないですか〜?」

 

ネメシスが天使達を挑発すると……。

 

「「「「なんだとゴラァァァァッ!!」」」」

 

セラフィムは騒ぎ出す天使達を宥め始める。

 

「ここまで言われたら我々天使も黙っては居られませんね。その勝負受けましょう」

「分かりました、決戦は1週間後。決戦の場は……統一神界のヴァルハラ闘技場にて開催します!」

「良いでしょう、我々が圧倒的に勝利するという事をお約束します」

「では、私は魔王達にこの事を説明してきますので、失礼します」

 

そう言い放ち、ネメシスは監獄に向かって行った。

 

────────────────────────

 

監獄辿り着いたネメシスは、門番に話を通して中に入って行く。そして……。

 

「お久しぶりです、リュウジさん」

「ネメシス……何しに来た?」

 

魔王達が屯する運動場にてネメシスは俺に訳を話し出した。

 

「実は……熾天使セラフィムの件なんですが……?」

「あー、あのクソ天使だろ?なんだ?俺達を処刑しに来たか?俺達は今から全員で脱獄しようとしてるんだけど?」

 

俺がネメシスにそう言うと、魔王達がネメシスを囲うように近付いて来た。

 

「貴方はリュウジさんの元担当女神でしたね?今更何をしに来たのです?」

「せやせやっ!乳もんだろか!ワレェッ!!」

「ちっ、違いますっ!リュウジさん、聞いて下さい!皆さん、私は貴方方の味方ですよ!?なので脱獄は待って下さいっ!!」

 

慌ててネメシスがそう言い放った瞬間、魔王達がビタっと立ち止まる。

 

味方?

 

「ネメシス、どういう事だ?説明してくれ」

「もちろんです。出来ればこの監獄に収監している魔王達を集めて下さい」

「分かった」

 

ネメシスの指示により、俺達はネメシスの前に集められた。朝礼台に登ったネメシスは事情を話し出した。

 

「────っと言う事で、熾天使12人vs最強の悪魔12人でのガチンコ対決が決まりました。勝手に決めてしまって申し訳ございません。ですが、こうでもしなければ貴方方魔王さん達は無条件で処刑されてしまいます」

 

なるほどな、ネメシスは服役してる俺達魔王を生かすために天使共に啖呵を切ってまでここまでしてくれたと言うことか……。

 

「それで?決戦は?」

「決戦は1週間後、統一神界という場所のヴァルハラ闘技場にて開催します。その間にリュウジさん達には、選りすぐりの12人を集めて下さい」

「分かった、という事だ、皆はどーする?黙って処刑されるか?」

 

俺が魔王達に尋ねると……。

 

「上等だオラァッ!!」

「やってやんよ!さっさと連れてけやぁっ!」

「天使共を皆殺しにしてやろうぜぇっ!!」

 

魔力を高めながらビリビリと殺気立つ魔王達は、拳を振り上げる。

 

「話は決まったな、ルールは?」

「はい。ルールとしては、【12人のうち、7人が勝利する】事で勝敗が決まります」

「ふーん。だけど俺達は自分の武器や能力は封じられてるんだぞ?素手でやんのか?」

「いえ、決戦の間は皆さんの能力も解放されますし、武器が欲しいのであれば私が責任を持って用意します」

「分かった。俺達はこれからメンバー選抜を行う」

「分かりました。では、私はこれで失礼します」

 

そう言い残し、ネメシスは帰って行った。

 

「という訳だから、皆、一旦自分の牢屋に戻ってくれ」

 

俺がそう言うと、アザゼルはそそくさと戻って行き、他の魔王達も自分の牢屋に戻って行った。だが、運動場にベルゼブブとモロクが残っていた。

 

「ベルゼブブとモロク、どーしたの?」

「水臭いですね、メンバーを選ぶなら私の七つの大罪の知識が必要でしょう?」

「おうよ、ソロモン72柱の知識なら俺だって詳しいぜ?」

「マジでか!?それは助かる!んじゃ今から行こうぜ!」

 

俺はベルゼブブとモロクに連れられてメンバー選出に向かって行った。




元ネタは終末のワルキューレです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー8 集う精鋭

アンダイン恵と死霊館のヴァラクを出しますが、アンダインは水の精霊なのでちょっと原作を改造します。


その後、俺、ベルゼブブ、モロクと共に12人の精鋭を集める為に、【七つの大罪】【ソロモン72柱】の魔王達と1人ずつ会い始めた。着いた先は同じ俺達の独房ではなく、女性囚人の監房へやって来た。

 

まず100年近くいるのに、この監獄に女も居たのにびっくりなんだけど。

 

慣れない場所で最初に声を掛けたのは……人魚の様に足がなくて魚のような尾びれが付いていた。

 

「えーっと、【嫉妬】を司る魔王……『レヴィアタン』さんですか?」

 

【七つの大罪・嫉妬の罪レヴィアタンとは、旧約聖書に登場する海中の怪物。悪魔と見られることもある。 「ねじれた」「渦を巻いた」という意味のヘブライ語が語源。原義から転じて、単に大きな怪物や生き物を意味する言葉でもある。キリスト教の七つの大罪では、嫉妬を司る悪魔とされている。また、嫉妬は動物で表された場合は蛇となり、レヴィアタンが海蛇として描かれる場合の外観と一致する】

 

檻の前でレヴィアタンと呼ばれた魔王に声を掛けると、レヴィアタンはベットに横たわりながら答えた。

 

「何よ?」

 

上半身を下着姿で横たわりながら答える。そんな中、ベルゼブブとモロクは俺の2歩後ろに立ちながら事の事情を説明し始めた。

 

「実は、天使と殺り合う形になりまして、貴女の力をお貸して欲しいのですが?」

「黙って従え、で無ければ俺達は消滅の危機だぞ?」

「…………乱暴な人達ね」

「あの、七つの大罪は今現在レヴィアタンさんを含め、暴食、色欲、強欲、怠惰、傲慢。そして八つ目とされた正義しか居ません。出来れば、レヴィアタンも協力して下さい」

 

俺が頭を下げると……。

 

「じゃあ……好きって言って」

「えっ?」

 

レヴィアタンに聞き返すと突然………。

 

「好きじゃあないんだ!?好きでもないのにこんな部屋に閉じ込めて飼い殺しにしちゃうんだ!?わからない!!男の人のそーゆーとこ私には理解出来ない!!」

 

突然ヒステリーな感じになったんだけど、え、待って。七つの大罪・嫉妬の罪ってこんな感じなの?

 

どうしたらいいか分からない俺はベルゼブブに顔を向ける。すると、ベルゼブブは俺に耳打ちをした。

 

「ここは適当にふっかけてやって下さい。後はどーとでもなりますから」

「えぇ!?うっうん……。好きだよ?レヴィアタン」

 

俺がそう答えると、レヴィアタンは涙を流しながら振り向いた。

 

「ほんとう!?信じていいのね!?」

「うんうん。すきすき、お願いレヴィアタン。天使と戦ってくれる?ストーカーに困ってるの」

「なんですって!?私がいると言うのに付き纏われてるのね!?いいわ!!私も参加してそのビッチ殺してやるわ!!」

「ありがとう。んじゃ、また1週間後に迎えに来るね?いい子に出来る?」

 

俺の演技を見てベルゼブブとモロクが必死に笑いを堪える中、レヴィアタンはうんうんと頷く。

 

「うん!出来るわ!任せといて!」

「んじゃまた後でね?」

「はーい♡」

 

そう言い残し、レヴィアタンを後にし、候補者リストに目を通し始めた。すると、モロクが指を指して助言してきた。

 

「次はコイツだな。コイツは厄介な奴だが、お前と同じ”神を嫌っている”。コイツも連れて行こう」

「えーっと、【ヴァラク】?」

 

【ヴァラクとは。頭を二つもったドラゴンにまたがった、天使の翼をもつ姿で現れる。召喚者に財宝のありかを教えるとされる。また爬虫類を統率する事ができ、蛇の現れる場所を教え、召喚者に害を与えずに財宝をもたらすともいわれる。ソロモン72柱の1人で30の軍団を率いる序列62番の地獄の大総裁と呼ばれている。天界監獄の中では、【統率を司る魔王】と呼ばれている。】

 

「起こした罪は……『エンフィールド事件』『修道女殺害』えげつないな、民間人を襲ったのか」

「ああ、今もその修道女の姿を乗っ取ったままだ」

 

って事は女って事になるのか……?

 

「奴ならこの先にいる。行くぞ」

「うん」

「あまり女性の名前を出さない様に。レヴィアタンさんが暴れますよ?」

 

《リュウジ様、不味いです。レヴィアタン様がこっちを見ています!!》

 

魔竜とベルゼブブはしーっと指を立てながら注意して来た。俺とモロクは慌てて口を塞いだ。そして、ヴァラクの監房に辿り着いた。中を覗くと、修道女が後ろを向いて立っており、俺はノック代わりに牢をコンコンと音を出しながら声を掛けた。

 

「あの〜、統率を司る魔王・ヴァラクさんですか?」

 

俺が声をかけると、ヴァラクは振り向いた。ヴァラクの顔は青白くゲッソリと痩せ細っており、ギラギラとした爬虫類の様な目をさせていた。

 

「なんだい?おや?確かあんた、熾天使を殴った魔王だね?」

「ええ、そうです。俺も貴女と同じく神を嫌っています。どーか、天使との抗争に協力をしてくれませんか?」

 

そう尋ねた瞬間、いつの間にかヴァラクは足元から黒い蛇を出しており、俺の首元を狙わせていた。

 

「っ!?」

 

ベルゼブブとモロクは咄嗟に構えようとすると……。

 

「おっと、モロクとベルゼブブ。動くんじゃないよ?ちょっとでも動いたらこの魔王に猛毒を流すよ?」

「バカな事はお止めなさい。ヴァラクさん」

「ったく、なんてイカれた野郎だ。ヴァラク、お前も天使を殺したいだろ?」

「アタシも神は大嫌いさね、けど、あんた達の命令には聞くつもりは無いよ?」

「おい、ババア。よく見て見ろ」

 

ヴァラクの首元と腹部には、魔竜の翼脚が突き付けられていた。

 

《貴女こそ動かない方が懸命ですよ?あまり我が魔王を舐めると痛い目に逢いますからね?》

 

「これが噂の魔王の能力かい?やるじゃないか……」

「で?どうする?協力してくれんのか?」

 

ヴァラクは観念したかのように……。

 

「分かったよ、アタシの負けさ……けど、勝負の時は好きにさせてもらうよ?」

「ありがとよ、また呼びに来るからな。魔竜、戻せ」

 

《かしこまりました》

 

魔竜が翼脚を戻すと、ヴァラクも黒い蛇を戻して行った。

 

────────────────────────

 

その後、俺達は着々とメンバーを集め、11人の魔王を選んだ。だが、あと一人に悩み始めており、食堂で最後の1人に関してベルゼブブとモロクと討論していた。

「予想通り【怠惰の罪・ベルフェゴール】が「俺はいいや。面倒臭いもん」って言って辞退してんだ。ここはやっぱりコイツだろ!!」

「いーえ、彼よりこの方の方がよろしいでしょう」

「ふざけんな。こんな奴らより、コイツの方が使える」

 

今、俺達が争っているのは、【色欲を司る魔王・アスモデウス】。【豊穣を司る魔王・バエル】【自然を司る魔王・ストラス】この3名のどれかにするかを揉めていた。

 

俺達が言い争っていると……。

 

「お困りの様やな……」

 

「「「???」」」

 

食堂の入口をチラッと見てみると、扉に体を預け、いかにも「話は聞いていたぜ」と言わんばかりにカッコつけていたアザゼルがいた。

 

「最後の1人……ワシに預けて見ん」

「絶対アスモデウスが良いって!!」

「いーえ、模範囚でもあるバエルさんが1番です」

「模範囚なんか関係ねぇ。ストラスの方が実戦向けだ」

 

アザゼルをチラッと見た後、魔王の候補者リストを見ながら俺達は何事もなかったかのように食堂を出て行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー9 開戦!

1週間があっという間に過ぎた決戦当日。俺達魔王は統一神界の闘技場『ヴァルハラ闘技場』にやって来た。会場の中はありとあらゆる神々でごった返しており、監獄から応援に駆けつけた他の魔王達は応援席で縮こまっていた。すると、闘技場の中央に1人の神が現れた。

 

《ご来場の神々の皆様、今宵の実況を担当させてもらう【ヘイムダル】と申しますっ!今回開催される天使と悪魔のガチンコ対決を開催致しますっ!》

 

ワァァァァァッ!

 

大歓声が巻き起こる中、闘技場の門が2つ開けられた。俺達は、応援席とは別に、控え室の様な場所で闘技場を見下ろしていた。俺は椅子に座りながらベルゼブブに声をかけた。

 

「初戦はアスモデウスだよな?」

「ええ、彼ならやってくれますよ。初戦は勝ちも同然ですね」

 

七つの大罪の色欲の魔王・アスモデウスなら問題ないだような。

 

安心して見ていると、ヘイムダルが角笛の形をした拡声器の魔導具を使って話し始めた。

 

《さぁっ!初戦の前にルールを説明します。天使と悪魔、どちらかが先に7勝した方が勝利と判定されます。天使側が勝てば収容されている魔王達を全て処刑とされ、魔王側が勝てば処刑は撤回となります!》

 

処刑だ!処刑!

やっちまぇー!

悪魔しばくべしっ!魔王しばくべしっ!

 

会場中ブーイングに包まれる。

 

《では、早速第一試合を始めます!天使側の初戦はこのお方だっ!!》

 

ヘイムダルが指すと、開かれていた門からは剣闘士の格好して背中にはオレンジ色のマントに白い翼を広げ、手には槍が手にされていた。ヘイムダルは紹介を始める。

 

《天使側の初戦はジャンヌ・ダルクに神の啓示を与えたとされる大天使の1人!今宵も悪を成敗する為だけに参戦を決意。さぁ、悪を罰せよ!【大天使・ミカエル】!!》

 

大天使ミカエルとは、ミカエルは、旧約聖書からユダヤ教、キリスト教、イスラム教へ引き継がれ、教派によって異なるが三大天使・四大天使・七大天使の一人であると考えられてきた。ミカエルはユダヤ教、キリスト教、イスラム教においてもっとも偉大な天使の一人であり、「熾天使」として位置づけられることもある。

 

ワァァァァァッ!

 

ミカエルが入場した途端、天使側の応援席はウェーブを起こすように大歓声を上げていた。

 

《さぁ、その栄えある犠牲となる哀れな悪魔は……七つの大罪の1人で色欲の罪を司るとされる大罪人!アスモデウスゥゥゥ!!》

 

ヘイムダルが指した先から現れたのは……。

 

「どーも!どーも!わての名前はアザゼルっていいますぅ!よろしゅうたのんますわ!」

 

現れたのは、アスモデウスではなく、アザゼルだった。

 

それを目の当たりにした俺達は思わぬ出来事に驚きを隠せず、そばに居た全員が立ち上がった。

 

「なんで!?なんでアザゼルがあの場にいるんだ!?」

「分かりません!なぜアザゼルくんが!?」

「おいおい、なんでアザゼルの野郎があそこに立ってんだ!、初戦はアスモデウスって決めてたじゃねぇか!!」

 

んじゃ肝心のアスモデウスはどこいった!?

 

ヘイムダルもおかしいと思ったのか、アザゼルに尋ねる。

 

《あっあんた、アスモデウスか?》

 

「いや、ちゃうで?ワイが代わりに出るって言ったんや」

 

《んじゃ、メンバー変更って形で良いんだな?》

 

「おー、ええで!早う始めようや!!」

 

アザゼルは筋肉を膨張させて構えだした。俺達や応援席の魔王達はその場で頭を抱え込んだ。

 

「どうすんだよ……話が違うじゃねぇかっ!」

「致し方ありません。このままアザゼルくんに戦ってもらいましょう」

 

アスモデウスはどこに行ったか知らないが、無理やり参加して来るということは勝機があるからだろう。

 

俺は覚悟を決めてアザゼルに声を掛けた。

 

「アザゼル!頼んだぞ!!」

「任せとけや、すぐに終わらしたる!!」

 

《両者揃いました!第一試合……開始っ!!》

 

ブオオオオオオオオ!!

 

ヘイムダルが先程まで使っていた魔導具で笛のような音を出して試合の合図が出された。音を聞いた途端、ミカエルは槍をビュンビュンと回しながら構え始めた。

 

「ひねり潰してやる」

「奇遇やな、ワイも同じ事を考えとったわ!!」

 

そう言ってアザゼルは突然ミカエルに向かって飛びかかり始めた。ミカエルは迎え撃つように静かに構えると……。

 

「死に晒せやぁっ!!」

 

ドスッ!

バキッ!

ドスッドスッ!

 

「ちょ、ちょたんまやタン……ギブアップ!ギブアップやっ!」

 

えっ!?

 

アザゼルの言葉に会場中は「えっ?」という言葉を出した。ヘイムダルは首を傾げながらもう一度確認した。

 

《あんた、今なんて言った?》

 

「こっ降参や!降参!無理無理、勝てへんわ!」

 

アザゼルが降参をしようとした瞬間、俺達は必死にアザゼルを止めた。

 

「アザゼル!?まだ始まって10秒だぞ!?このまま負けでいいのか!?」

「そうですよアザゼルくん!!降参なんて恥を知りなさいっ!」

 

俺の言葉にアザゼルは……。

 

「ちょ、ホンマ調子のってすんません、降参するわ」

 

《なんという事だ!!秒殺!秒殺です!試合開始僅か10秒!!勝利したのは……大天使ミカエルゥゥゥゥゥ!!》

 

ワァァァァァッ!

 

大歓声が巻き起こる中、俺達魔王は全員同じ様に頭を抱え始めた。俺達魔王側は秒殺という敗退で幕を開けた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー10 傲慢と神の腕

初戦を秒殺の敗北で幕を上げた魔王陣営はアザゼルとアスモデウスを取り囲み、正座をさせ事情を尋ねた。

 

「で?なんでアスモデウスはアザゼルと代わった訳?」

「そ、それは……」

「今更言い逃れ出来ませんよ?何をなさっていたんです?」

 

【色欲を司る魔王アスモデウスとは、アザゼルと似た姿をした悪魔だが、キリスト教の七つの大罪では色欲を司る。悪魔になる前は智天使だったとされる。引き起こした罪は『ルーダンの悪魔憑き事件』で修道院長ジャンヌ・デ・ザンジュに取り憑いたとされている】

 

アスモデウスを問い詰めていると、バカ(アザゼル)が。

 

「アスモデウス兄貴を責めんといて!悪いんはワイやっ!煮るなり焼くなりしたらええやん!!」

「喋んな秒負け犬」

「はい」

「あっ、言い忘れてたけど、負けたヤツはそこにある木箱に入って貰うからな?」

 

俺が指さした先には、木箱に【負け組】と書かれた木箱が幾つか置かれており、我先にアザゼルは風呂に入る様に木箱に入った。

 

「で?話戻すけど、アスモデウス。本当は何してたわけ?」

「どの道アスモデウスさんには逃げる事は出来ませんからね?」

 

1人残されたアスモデウスは重い口を開いた。

 

「すいません!可愛い天使ナンパしてました!」

「でしょうね、あんた色欲だもんね」

「やれやれ、困った方です……。まさかとは思いますが、我々のスターティングメンバーを漏らしたりしてませんよね?」

 

ベルゼブブがアスモデウスに尋ねると、アスモデウスは目を泳がせた。

 

「い、いや、流してないっすよ!?まさか、俺が?仲間を売る訳ないでしょ〜?」

「本当は?」

「すいません!『情報教えたらいい事しましょ』って言われたんでスターティングメンバーを話しました!それで、へへっ、いい事して来ました」

 

有罪(ギルティ)!!

 

「箱に入ってろ馬鹿野郎がっ!!」

「まぁ、漏らした所で問題はありませんがね?」

「だな、2回戦はアイツだったな?」

「そろそろ出てくるぜ?」

 

モロクが闘技場を見てみると、ヘイムダルが騒いでいた。

 

《さぁっ!続いてガチンコ対決第2回戦は、このお方だっ!》

 

反対側の門に光が灯されると、門が開かれた。

 

《第2回戦の天使側代表は…… ユダヤ教またはキリスト教神秘主義の伝承に登場する天使の一体。別名『神の腕』または力・戦を司る大天使、ゼ、ル、エ、ルゥゥゥゥ!!》

 

門の奥から現れたのは、巨漢を重装甲の鎧を全身に身に纏い巨大なハンマーを片手にして天使の特徴ともされる白い翼を広げて現れた。

 

ワァァァァァッ!!

 

天使側の応援席の男神や天使達は雄叫びを上げるように騒ぎ立てた。

 

《そして!!この屈強な天使に処刑される哀れな対戦者は……七つの大罪【傲慢を司る魔王】とされ、神々に謀反を起こした最強の悪魔!誰がなんと言おうが俺が1番!俺が最強!何故なら俺だから!初勝利を飾れるか!?『傲慢の罪・ルシファー』!!》

 

魔王側の門が開かれると余裕綽々な顔をした悪魔が現れた。色黒の美青年の姿をしており、右腕には蛇の刺青が巻き付くように入っていた。ルシファーはエレキギターを片手に堂々としている。それを目の当たりにした俺たちは不安を隠しきれなかった。

 

「大丈夫かなぁ?」

「心配ありませんよ、ルシファーくんですからね」

 

【傲慢を司る魔王ルシファーとは、【七つの大罪】でも最も重い【傲慢】の悪魔であり、 嘗て、父たる“神”が人間を自分の姿に似せて創り、それを天使達にも崇拝するように命じたのに反発。 付き従った天使の軍勢を率いて“神”に挑むも破れ、地に投げ落とされたという】

 

「ルシファー!!頼むぞー!!」

「負けたら承知しねぇぞ!!」

「おいおい、オーディエンスがやかましいなぁ俺を誰だと思ってんだ?」

 

ルシファーは突然、エレキギターをギャイイと響かせて叫び出した。

 

「オレだよオレ!!!ルシファーという名のオレ様だよ!!!おいおい、オレ様の相手は誰かと思えば、ゼルエルちゃんじゃねぇか?え?あの臆病者ゼルエルがオレ様に適うと思ってんのか!?」

 

挑発されたゼルエルはハンマーをギリリと握りしめる。

 

「謀反を起こした者なんぞ、知らんな」

 

ゼルエルがそう言うと……。

 

「おいおい、正気かよお前……オレだぜ!?神々にケンカ吹っかけたオレが相手をしてやるっつってんだぜ?秒刻みのスケジュールの中お前を倒す為に来てやってるんだぜ!?あのルシファー様がだ!!オレなぁ、オレなんだよ!!」

 

喋り続けるルシファーを他所に、ゼルエルはヘイムダルに視線を向けて「早く合図しろ」とアイコンタクトを送った。

 

《そっ、それでは第2回戦!始めっ!!ブオォォォ!!》

 

ヘイムダルが開始の笛を吹くと、ゼルエルはハンマーを両手で持ち、どっしりと腰を低く構えた。

 

「貴様だけは、生かして帰さん。必ずここで処刑してやる!!」

 

やる気満々のゼルエルを見た途端、ルシファーは。

 

「フ……シカトかよ……クソ漏らしのゼルエルちゃん?おい、聞いてんのか?ヒョロ腕、使徒、力自慢のゼルエル君!!」

「ぶっ殺してやる!!うぉぉぉぉっ!!」

 

ゼルエルは余程頭に来たのか、地面を抉りながらドスドスと走り出した。

 

「いいぜ、遊んでやるよぉ!!」

「うぉぉぉぉっ!!」

 

ルシファーのエレキギターとゼルエルのハンマーがぶつかり合い、巨大な衝撃波が生まれた。鍔迫り合いになった途端、ルシファーはギンと目を光らせた……。

 

するといつの間にか、ゼルエルが地面に倒れていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー11 傲慢すぎた故に……。

突然、ゼルエルが倒れたのを目の当たりにした俺は、何が起こったのか分からずにいた。

 

おかしい、鍔迫り合いしてたと思ったら急にゼルエルが倒れた!?

 

すると、アザゼルとベルゼブブが。

 

「見りゃ分かるやろ!?『能力』つこうたんやっ!」

「えっ!?能力たって、ルシファー何もしてないじゃん!!」

「いえ、使ったのでしょう。あの能力こそ、ルシファーくんが最強と呼ばれる由縁です」

見てたのによく分からなかった、一体どんな能力なんだ!?

 

ルシファーのトリックが見抜けなかった俺はモロクに尋ねた。

 

「モッさんは分かるの?ルシファーの能力」

「ああ、奴は『時を止める』能力を持っている」

 

時を止める!?

 

「そんなまさか、止めた瞬間なんて分からなかったぞ?」

「そりゃそうだ。ルシファーは俺達すら止めちまったんだからな」

「俺達ごと止めた……っ!?」

 

俺はようやくルシファーの能力の恐ろしさを理解した。すると、魔竜が翼脚をポンと手を合わせる様に。

 

《なるほど、ルシファー様が能力を発動させると、無条件で『時を止めて』相手を攻撃する事が出来る。という事ですね》

 

なんというチート!!

 

「やべーじゃん、反則じゃん!これ勝ったも同然じゃん!!」

「だから言ったでしょう?ルシファーくんなら負けることは無いと」

「ルシファー兄さん!殺ったって!ワイの分まで殺ったって!」

 

負け組箱から身を乗り出して騒ぎ出すアザゼル。そんな中、ルシファーは余裕の顔をしながらゼルエルを袋叩きし始めた。

 

「オラオラどうした、ゼルエルちゃんよぉ?俺様の能力に恐れたかぁ?あぁん!?貧弱貧弱ぅっ!!」

「がはっ……ぐふっ……一体、何が起こったんだ……!?」

ゼルエルが圧倒的に押されているのを目の当たりにした天使組は動揺を隠しきれなかった。セラフィムは冷や汗を垂らしながら……。

 

「なんとういう奴だ、あの防御力に長けたゼルエルが子供扱いだと!?」

「セラフィム様、何か、何か手は無いのですか!?」

 

セラフィムに次に出る予定の天使が声をかけると、セラフィムは。

 

「慌てるな、ゼルエルを信じるしかない」

「で、ですが!?」

「我々熾天使が狼狽えてどうする、どんな事が起ころうとも悪魔に屈してはならん!!」

 

セラフィムがゼルエルを見守っていると……。

 

《あーっと!あの誇り高きゼルエル、ここで敗退かと思われたが、立ち上がったぁぁっ!!》

 

ゼルエルがよろよろとハンマーを杖にしながら立ち上がると、ルシファーは鼻で笑う。

 

「オレ様の攻撃を受けながらもまだ立つか、けど残念だ。お前はオレ様に勝てねぇ!何故なら、オレ様だからだ!」

 

《なんとっ!ルシファー、ここに来て挑発だぁっ!!。なんという傲慢!これが傲慢の罪の真骨頂なのかぁぁっ!?》

 

盛り上がってる風景を目の当たりにした俺達はふと思った。

 

いや、トドメさせよ。

 

更に、ルシファーは止まることを知らずに。

 

「よーし、ならこうしようぜ?一発俺に入れて見ろよ。いや、入れろ」

 

ルシファーはそう言って右頬をつんつんとしながら差し出し始めた。

 

いや、何やってんのアイツ?

 

ルシファーの異常な傲慢さに俺達は声を荒らげた。

 

「何してんだルシファー!!早く倒せって!!」

「傲慢も大概しなさいっ!ルシファーくんっ!!」

「だから俺は反対だったんだ!アイツを加えるってのは!!」

 

俺達が必死に訴えかけてもルシファーは。

 

「おいおい、民衆(オーディエンス)が騒がしくなって来たなぁ。けど、安心しな。オレはルシファー、絶対負ける事はねぇんだよ!!。オラ、立てよ貧弱のゼルエルくんよぉっ!!」

 

散々な挑発を受けたゼルエルは兜を脱ぎ捨て、思い切り振れるように構え始めた。そして、ゼルエルはルシファーに言い放つ。

 

「望み通り、一発入れてやる。そこを動くなよ?」

 

そう言ったゼルエルはビキビキと力を入れると、腕の筋肉が膨張し始め、上半身の鎧を壊し始めた。ルシファーは未だに涼しい顔をしながら。

 

「おう、良いぜ?来いよ、てめぇの攻撃なんざ痛くもねぇから」

「なら、受けてみろ!!」

 

ゼルエルがハンマーを思い切りルシファーの顔に向けて振り切った!!

 

ドォォォォン!!

 

凄まじい衝撃波と砂煙が巻き上がった。砂煙がおルシファーはハンマー諸共地面にめり込んでいた。俺達は呆れながらルシファーに声をかける。

 

「びっくりしたぁ」

「伊達に天使をやってる輩ではありませんね。さぁ、ルシファーくん。貴方の番ですよ?そろそろトドメを刺して差し上げなさい」

「ルシファー、さっさと終わらせろよ〜!」

「……………」

 

あれ?

 

ルシファーは俺達の言葉が聞こえてないのか、まったく起きる気配が無かった。ヘイルダルが安否確認をしだした。

 

《えーっと、おーい、生きてるか〜?》

 

ヘイルダルの声にも反応しなかった。ヘイルダルはダウンと捉え、カウントを始めた。

 

《ワン、ツー、スリー、フォー》

 

カウントが始まった瞬間、当然俺達は慌て始めた。

 

「え、待って?、嘘でしょ!?効いちゃったの!?」

「ふざけんじゃねーぞ、ルシファーくん!!起きやがれ!!」

「おい、ルシファー!!ふざけんじゃねぇぞ!?」

「アカンは、モロに入ってましたもん。アレは立てまへんわ」

 

《ファイブ、シックス、セブン》

 

「おいおいおいおい!早く起きろよおいっ!ルシファァァァァッ!!」

「傲慢過ぎるからそうなるんですよ!って、早く起きろよボケェ!」

 

冷静なベルゼブブですらブチ切れて暴言を吐きまくる。だが、白目を向いたまま起き上がらないルシファー。

 

《エイト、ナイン……》

 

無情にもカウントは続いた。

 

そして……。

 

《テン!!、10カウントが決まったぁぁっ!!神の腕ゼルエル逆転勝利だぁぁっ!!天使側2連勝ぉぉぉぉぉぉ!!》

 

ワァァァァァァッ!!

 

天使側が2連勝を決めたのに対して大歓声が巻き起こる。その反対側では、2連敗が決まった俺達は、椅子に座りながら再び頭を抱えた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー12 蝿の王

終末のワルキューレにもベルゼブブが出ていますが、こっちのベルゼブブは悪魔として登場させます。


2連敗が確定した俺達魔王サイドは、ヘラヘラしたルシファーを座らせた。俺は怒りを抑え、腕組みをしながら尋ねた。

 

「ねぇ、なんであそこで舐めプしたの?」

「おいおい、オレ様はまだ本気を出してねぇぜ?」

 

ルシファーはそう言い放ち、悪びれる事なく言い返す。

 

「その本気を出してない奴が舐めプして10カウントされてんだよ」

「アレくらいオレ様に丁度いいっ───」

 

ゴンッ!!

 

俺は怒りを抑えきれなくなり、ルシファーに思い切りゲンコツをした。様子を見ていたアザゼルが慌てて駆け寄ってくる。

 

同じ堕天使だからか?

 

「ルシファーさぁん!!」

「騒ぐなこんなもん全然痛くねぇよ」

「マジっすか、めっちゃエライじゃないですか」

「あったりめぇだ、オレはルシファーだからな」

 

俺は余裕な顔をしているルシファーの足を見てみた、

 

めっちゃ足にキてんじゃん。

 

だがルシファーは恐れることなくアザゼルに言い放った。

 

「まぁテンションはだいぶもってかれちまったけどなチキショ───アゲていこーぜアッちゃんよ」

「そうッスね」

「『ドライファ・ダークネスヘルファイア』!!」

 

俺は火炎魔法を唱えてルシファーにぶっ放した。ルシファーは黒焦げになると、アザゼルがまた騒ぎ出す。

 

「うわぁぁぁぁ!!えらいこっちゃ!!全身大火傷やで!!」

「んなもんでくたばる悪魔じゃねぇだろ、負け犬が!!さっさとそこの箱に入ってろ!!」

「担架!はよぅ担架もってきてつかぁさい!!」

 

すると、黒焦げになったルシファーはプルプル震えながら中指を立て始めた。

 

「負け犬だぁ?ファックだバカヤロウ!。下級悪魔でもぶち込んで置くんだな」

「ルシファーさん!!せやせや!そもそもなんで必死に戦ったワシらが負け犬の箱に入らなあかんねや!!」

「やってられっかよっ!!」

「やめややめや!抗争なんかやめてみんなでドッジボールでもしよーぜ!」

「あ、オレも混ぜてよルシファー!!」

 

アザゼルを筆頭にルシファー、アスモデウスがボールを持って逃げ出そうとしていた。俺は魔竜に言い放つ、

 

「あいつらっ!!────魔竜!」

 

《御三方、いい加減にして下さいっ!》

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

魔竜は翼脚を伸ばしてアザゼル達に巨大なゲンコツを繰り出して動きを封じた。アザゼル達は地面にめり込み、ピクピクと痙攣し始めた。

 

「調子こいてんじゃねぇぞクソ共がっ!いい加減にしねぇと殺すぞっ!」

 

俺が魔力を高めて言い放つと、ルシファーがゆらりと立ち上がった。

 

「舐めてんじゃねぇぞゴラァ!このルシファー様をぶん殴っといてバックれられると思ってんのかコラ、ガキかテメェはよ。分かってんのかよお前、傲慢の罪のルシファーだぜ!?それをこんな風に殴っちゃってよー!!とりあえず土下座して誠意見せることから始めようぜ!!」

 

突然ルシファーがキレ始めると、アザゼルが。

 

「いやいやそんなんで許すやなんてどんだけ優しいんですか兄さんは!ルシファー兄さんが許してもこのアザゼルが許しませんわ!!」

「いい事を言うなぁアッちゃんは」

 

調子に乗ったアザゼルは更に言い放つ。

 

「そういうことですわリュウジ。ちょっとそのへんで奉仕活動でもして来たらどないでっか?人間の優しさを思い出してそのひねくれた根性治してきなはれや」

「ア゛ァ!?」

「せやから奉仕の精神で……」

「声が聞こえませんよ?アザゼル君」

「地獄の魔族のためひいてリュウジさんのためやと思て〜〜」

「ハッキリ言わないと聞こえませんよ?」

 

コイツ!!

 

俺は何も言わずに背中からオセに模倣して貰った魔剣ストームブリンガーを引き抜いてブンッと振り下ろした。

 

「あら?風が……」

 

その瞬間、アザゼルの頭が真っ二つになった。

 

「いだだだだだだ!!何すんねんっ!」

「めんどくせぇ野郎だっ!オラ、ルシファー!!さっさと戻れやっ!」

 

魔剣ストームブリンガーをルシファーに向けると……。

 

「いやいやいやてゆーか、何アツくなっちゃってんの?やべ、ウケる。今回は俺の負けにしといてやるよ、俺は飲み物買ってくるからよ」

 

ルシファーは木箱に入る事なく、どこかへ行こうとしていた。だが、俺は暗黒剣でルシファーの足元を斬った瞬間ルシファーは立ち止まった。

 

「これだから天使は嫌いなんだよ、この落ちこぼれが!!」

「うるっせぇよ!いちいちキレてンじゃねぇよ!!」

 

俺とルシファーがお互い魔力を高めると黒いオーラの様なものが現れ始める。だがその時、

 

「おやめなさいっ!」

 

俺とルシファーの間に、ベルゼブブが立ち塞がった。

 

「ここで仲間割れしても意味がないでしょう?残りの勝負を全て勝てばいいんです」

「ベルゼブブ……」

「蝿……」

「ベーやん」

「ベルゼブブ君!!」

 

ベルゼブブはそのまま歩き始め、試合の準備に向かい始めた。俺はそのままベルゼブブに檄を飛ばす。

 

「ここはなんとしても勝って欲しい。辛い戦況だけど、頼むぞベルゼブブ!!」

「お任せ下さい、この蝿の王ベルゼブブは圧倒的な力で天使をねじ伏せてあげますよ」

 

そう言い残し、ベルゼブブは門に向かった。そして、第3回戦の発表がヘイムダルにより発表された。

 

《さぁ、第3回戦!。天使側はこのお方だっ!》

 

ヘイムダルが指す方向には天使側の門が開かれた。

 

《【癒しを司る天使】と呼ばれ、ベトサダの池で時折水を動かして癒しを行う主の天使とも謳われ、ミカエル、ガブリエルと共に三大天使の一人とされた大天使……ラファエルゥゥゥゥ!!》

 

大歓声が巻き起こる門から、茶色いパーマの様な髪型に鎧を纏わずに肌着の様な白く薄い服を着て杖を携えた好青年が現れた。

 

《そして対する悪魔はコイツだ!魔界の君主とされ地獄において憤怒を司る魔王サタンに次いで罪深く、強大なもの、権力と邪悪さでサタンに次ぐと言われ、実力ではサタンを凌ぐとも言われた!!。暴食の罪を司る蝿の魔王……ベルゼブブゥゥゥゥ!!》

 

悪魔側の門からは、怒りに満ちたベルゼブブがゆっくりと歩いてやって来た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー14 暴食の力

ラファエルと対峙したベルゼブブは構えもせずに合図を待っていた。

 

「審判さん。早く合図を」

 

《それでは、3回戦!試合開始!!ブオオオオオッ!!》

 

試合開始の合図の笛が鳴り響くと、ラファエルは杖をベルゼブブに向けた。

 

「神の裁きを食らうがいいっ!!」

 

ラファエルが青い炎の玉を創り出し、ベルゼブブに放った。火の玉の弾幕はベルゼブブに直撃したが、土煙から現れたベルゼブブは無傷だった。

 

「どうしました?」

「なっ、何!?なぜ効かない!?」

「やれやれ、三大天使の実力もこの程度ですか?」

「舐めるなっ!!『ホーリーフレイム』!!」

 

ラファエルは巨大な青白い炎を創り出し、そのままベルゼブブに投げ付けた。ベルゼブブは微動だにせずに言い放つ。

 

「愚か者め、その様な炎は攻撃ではない」

 

ベルゼブブは口を開けて、

 

バクンッ!!

 

「食すものだ」

 

ベルゼブブは一瞬でホーリーフレイムを喰らい、口元をハンカチで拭き始めた。ラファエルはゾッと青ざめた。

 

「食べる?食べるだと!?バカな!?」

「今度はこちらの番ですね?」

 

そう言ってベルゼブブは右手をかざすと、黒い煙の様な物が集まりだした。俺やモロクは目を凝らして黒い塊を見つめた。

 

「なんだあれ?」

「まさか……ありゃ……」

《龍二様、アレは蝿です!!蝿が集まってるんですよ!!》

「えぇっ!?」

 

ベルゼブブはボソッと呟いて、ラファエルに投げ付けた。

 

「『蝿玉(フライボール)』!!」

 

蝿玉はラファエルに直撃すると、

 

ブブブブブブ。

 

蝿達はラファエルにまとわりついた。

 

「なっ!?蝿!?くそっ、離れろ!!」

「無駄ですよ。私の蝿玉は生半可な力では引き剥がせません」

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

ラファエルは蝿に集られ黒い人形の様になると、突然青白い炎が燃え盛る様に飛び出した。

 

「っ!?」

「おのれ……このラファエルに汚らわしい物を付けよって!!」

「私の蝿玉を消し去りましたか」

 

ベルゼブブはため息を吐き、そのままフワッと空中に浮かび上がって両手を広げた。すると、闘技場の空が段々とドス黒い雲に覆われて行った。俺達は空を見上げて、

 

「すげぇ、ベルゼブブは気候も操れるのか?」

「いや……アレは違うな」

「モロク?どういう事?」

「へっ、ベルゼブブめ。何だかんだ言ってブチ切れてるじゃねぇか」

「え?」

 

《龍二様!見てください!!》

 

魔竜に言われた俺は再び見上げると、雲がウゾウソと動いているのに気付いた。

 

アレはまさか……。

 

ベルゼブブは黒い煙の様な物を纏わせながら、

 

「『蠅嵐(フライストーム)』!!」

「なっ!?蝿だと!?アレが全て蝿だと言うのか!?」

「さぁ、喰らいなさいっ!」

 

ベルゼブブが両手を振り下ろすと、蝿の大軍は闘技場になだれ込んで来た。俺は咄嗟に魔竜に言い放つ。

 

「うげぇっ!!全部蝿かよあれ!!気持ち悪っ!!」

「とんでもねぇ大軍だ。俺達も喰われるぞ!?」

「魔竜!!皆を守れ!!」

《はいっ!龍二様!!》

 

魔竜は翼脚を巨大化させて悪魔陣営を覆うように蝿から守った。天使側も数人の結界を張り巡らせて身を守り始める。

 

「このっ!くそっ!はぁぁっ!!」

 

ラファエルは光の結界を張り巡らせる。だが、蝿が次々と結界を破ろうと攻撃を繰り返し、ビシビシと結界にヒビを入れ始めた。

 

「そんなっ!?私の結界が!?」

「フハハハハッ!ハーッハッハッハッ!!」

「嫌だ!喰われたくないっ!嫌だぁぁぁっ!!」

 

遂に結界が破られ、ラファエルは黒い渦に飲み込まれて行った。そして、一斉に蝿が飛び去るとラファエルは白骨化しており、骨と蛆虫だけが取り残されていた。

 

「ご馳走様でした」

 

ヘイムダルが結界から出て来てラファエルの生死を確認した。

 

《しょっ、勝負ありっ!!第3回戦の勝者は……ベルゼブブゥゥッ!!悪魔陣営の初勝利だぁぁぁっ!!》

 

勝利を告げられた俺達は全員立ち上がり、

 

「「「よっしゃぁぁぁぁ!!」」」

 

ベルゼブブが戻って来ると、俺達はベルゼブブを胴上げをして喜びを分かちあった。

 

────────────────────────

 

その後。様々な悪魔達が健闘し、11戦6勝までになった。最後の1人に運命が決まる一戦とされる事になった。

 

無論、最後に残ったのは。

 

「龍二さん、これで最後です頑張って下さいね?」

「これで勝てば俺達は生き残れるんだ!頑張れよっ!?」

「負けたら承知しないよ!!」

 

悪魔側の門には、出場した悪魔達や監獄から応援にやって来た悪魔達が見送りの為に来てくれていた。俺は一人一人とハイタッチをしながら闘技場に向かった。

 

「行くぞ!魔竜!最後の戦いだっ!」

《はいっ!龍二様。参りましょう!!》

 

門を潜り、闘技場の中に入るとヘイムダルが実況に熱を入れていた。

 

《さぁ!ガチンコ対決の最終決戦!この一戦で運命が決まります!。処刑かっ!?はたまた処刑免除か!?両者登場!!》

 

わぁぁぁぁっ!!

 

今までないくらいの声援で闘技場が揺れ始める。

 

《まずは天使側!今回のガチンコ対決の立案者でもあり、熾天使の頂点に君臨する大天使。今宵は聖剣アロンダイトを片手に悪を罰する!!セラフィムゥゥゥゥ!!》

 

セラフィムは純白の鎧に身を包み背中には神々しい剣を背負いながら現れた。

 

《対するは、七つの大罪八つ目【正義】とソロモン72柱の一人として数えられた異質の魔王!!殺した人間は星の数!その中で一番の犯罪は【神聖世界軸】を歪めた罪とされている!!処刑はこの男にかかっている!!正義を司る魔王・アンドロマリウスゥゥゥゥ!!》

 

俺もオセに復元してもらった四凶武器の一つである魔剣ストームブリンガーを肩に背負いながらセラフィムの前にたった。

 

《最終決戦!!開始っ!ブオオオオオッ!!》

 

運命の一戦が始まった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編ー15 正義のレオノーラ

日曜日に更新しようと思ったら書いてる途中で消えてしまい、やる気が削がれてしまって今日に伸びました。次回、最終回です!


俺とセラフィムが睨み合うと、ヘイムダルが角笛を構えた。

 

《泣いても笑っても最後の勝負!天使と悪魔のガチンコ対決最終戦!試合、開始いいっ!!ブオオオオオオオオオ!!》

 

ガキィン!!

 

角笛が鳴り響いた瞬間、俺とセラフィムは鍔迫り合いを始めた。聖剣アロンダイトと魔剣ストームブリンガーがぶつかり合い、2人の周辺は巨大な衝撃波が生まれた。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

「うおおおおおお!」

 

幾度も刃がぶつかり合って火花が舞い散るが、どちらも刃が当たらなかった。

 

これじゃラチがあかねぇっ!!

 

そう思った瞬間、セラフィムも同じことを考えていたのか、左手をかざした。

 

「『ホーリーインパルス』!!」

 

セラフィムは白く輝く衝撃波を放った。俺も応戦する為に右手をかざした。

 

「『ドライファ・ダークネス』!!」

 

白く輝く衝撃波と禍々しい渦の衝撃波はぶつかり合い相殺した。

 

白く輝く衝撃波、俺のドライファ・ダークネスに似てる魔法を使いやがった。遊んでる場合じゃねぇな。

 

「なら、これはどうだ!」

 

俺は右手を自分の足元に向けて再びドライファ・ダークネスを放って土煙を上げた。土煙はセラフィムを囲うと、

 

「そんな子供騙し、私には───」

 

ガキィン!!

 

土煙に紛れて俺はセラフィムの背後から斬ろうとしたが、セラフィムは聖剣アロンダイトで難なく防いだ。

 

「ちっ」

「噂の魔王の実力はこんな物なのか?ガッカリだな」

 

俺はバックステップでセラフィムから離れると、魔竜が話しかけてきた。

 

《あの熾天使、なかなかやりますね》

「ああ、まぁロキに比べれるとそうでも無いけどな」

《ええ、そうですね。そろそろ本気で戦いましょう、楽しみたいお気持ちは分かりますが他の魔王様達の運命がかかってます》

「お前の言う通りだな……遊んでる場合じゃない」

 

魔竜は翼脚を広げ、禍々しいオーラを放ながら俺は魔剣ストームブリンガーを構えた。セラフィムはクスリと笑った。

 

「さぁ、第2ラウンドだ!」

「ふっ、今まで手を抜いていたと言うのか?面白いならかかって──」

 

ズバッ!!

 

俺は一瞬でセラフィムの間合いに入り、白銀の鎧を斬り裂いた。切り裂かれた鎧からは、セラフィムの鮮血が飛び散った。

 

「なっ!?」

「悪いが遊びはここまでだ。本気で行かせてもらうぞ!」

「くっ……」

 

セラフィムは回復魔法を唱え、胸元の傷を癒し始めた。すると、したたる血はやがて止まった。

 

回復魔法……厄介だな。こうなるんだったら呪い系の魔法を覚えとくべきだったな。

 

「面白い、なら食らえ!『ホーリークロス』!!」

 

セラフィムは前後左右に白い線を延ばし、十字型の白い柱を作りだした。その光は俺の足元にまで伸びてくると、突然魔竜が騒ぎ出した。

 

《龍二様!、飛びますよ!!》

「なっなんだよ!急に!?」

 

ふわふわと飛び上がると、魔竜が話し出した。

 

《あの白い十字架は危なかったですよ。あのまま立ってたら消滅してましたね》

 

おいマジか。

 

「迂闊に近づけねぇな……」

 

俺と魔竜が様子を伺っていると、セラフィムは聖剣アロンダイトを俺にむけながらボソボソと何かを唱えているのか、口元を早々と動かしていた。

 

「『ディバインストライク』!!」

 

聖剣アロンダイトの剣先から突然光の弾丸を作り出し、俺に向け全て射出して来た。俺は猛スピードで光の弾丸を避け始めた。

 

「あんなもんまで使えんのかよ!!」

《龍二様!一旦離れますよ!!》

 

俺と魔竜は弾幕を避ける為に大空に飛び上がると、セラフィムはニヤリと笑った。

 

「かかったな!!『セイクリッドレイン』!!」

 

セラフィムが唱えた途端、俺の上に真っ白な雲が現れた。次第に、ポツポツと雨が降り出して来た。

 

「なんだ?この雨……?」

《なんでしょう?》

 

俺達が雨に当たっていると異変が起きた。雨が当たった部分がジュージューと鎧が焦げ始めていた。

 

「おいっ!やべぇぞ!!」

《これは聖水です!斬撃であの雲を斬り裂いて下さいっ!》

「よしっ!『デスブリンガー』!!」

 

俺は斬撃を飛ばして白い雲を斬り裂いた。雲を切り裂くと、聖水の雨は止んだ。

 

《何か変ですね……熾天使の長がこんな小技ばかり……怪しくありませんか?》

「確かにクサイな、罠か?」

《恐らく、如何致しますか?》

「どうするって、逃げてちゃ勝てねぇからな!」

 

そう言って俺は急降下しながらセラフィムに向かっていく。セラフィムは聖剣アロンダイトを構えると光が集まりだした。

 

「力の根源たる熾天使が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を光の刃の如き一撃で切断せよ!『インディグネーション・スラッシュ』!!」

 

ズバッ!!

猛スピードで突っ込んで来た俺を光の刃に切り捨てられ、地面に滑る様に墜落した。セラフィムは勝利を確信したのか、剣を鞘に収める。

 

「全ての魔力を一撃に込めた私の最強の技だ。この技を使ったのはお前が初めてだ」

 

セラフィムが立ち去ろうとした時、俺はフラフラと立ち上がった。

 

《龍二様!しっかりして下さい!》

「ぐっは……ゲホッゲホッゲホッ!!」

《セラフィムはもう魔力を使い果たしてます!こちらも一撃で放ちましょう!!このままでは龍二様の体が持ちません!》

 

セラフィムが後ろを振り返り、俺が生きている事に驚いていた。

 

「バカな!?私の一撃必殺を耐えただと!?」

「今度は……こっちの番だな……」

 

俺は魔剣ストームブリンガーをセラフィムに突き付けて唱え始めた。

 

「その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は猛獣の爪牙也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!!『レオノーラ』!!」

 

そう叫んだ途端、俺の後ろから巨大な黒いライオンが現れた。咆哮をあげた黒いライオンはそのままセラフィムに向かって走り出し、セラフィムに噛み付いた。

 

「ぐはぁっ!!嫌だ!負けたくないっ!死にたくないっ!私は熾天使だ!私の正義が正しいんだぁぁっ!!」

 

黒いライオンはそのままバクッと口を閉じてセラフィムを飲み込んだ。レオノーラはそのまま大空に駆け上がって、消滅した。

 

「あんたの正義もさぞかし重かろうが、こっちも色々背負ってんだよ」

 

《なんということだぁぁっ!熾天使セラフィムが黒い獅子に食われたぁっ!!という事は……魔王側の勝利が決定!処刑は撤回が決まったぁぁっ!!》

 

「「「「やったぁぁぁぁぁっ!!」」」」

 

魔王達は全員総立ちで喜んだ。応援席からなだれ込んで来た魔王達はボロボロの俺を持ち上げて全員で胴上げを始めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話ーしばしの別れ

最終話です。最後までお付き合い下さい。


熾天使達との戦いから更に100年後、俺は罪を償いながら刑務作業に取り組んでいた。天界の岩を砕いていると、看守に声をかけられた。

 

「アンドロマリウス!!」

《龍二様、看守がお呼びですよ?》

 

ハンマーを振り下ろすのを止め、汗を拭いながら後ろを振り返った。

 

「あ?なんだよ」

「面会だ。監獄に戻れ」

 

面会?

 

首を傾げながら作業を止めて看守について行こうとすると、安全ヘルメットを被ったアザゼルとベルゼブブが一輪車を押しながら、

 

「おや?アンドロマリウスくん、休憩時間はまだですよ?」

「なんや、サボりか?」

「ちげーよ。面会だよ、面会」

「そうですか。いいタイミングでしたねぇ」

「んじゃ、後は頼んだよ〜」

 

ベルゼブブとアザゼルに挨拶した俺は、監獄に連れて行かれて面会室までやって来た。そこには、掟を司る女神・ネメシスがいた。

 

「作業お疲れ様です。龍二さん」

「やっほ〜、ネメシス。セラフィム以来かな?」

「そうですね。お元気そうでなによりです」

「俺に面会したい奴が居るって聞いてきたんだけど、それってネメシス?」

 

俺がそう尋ねると、ネメシスは首を横に振った。

 

「いえ、私では無いです」

「え?んじゃ〜……誰?」

「ターニア・J・ローズブレイドという女神と」

「いや知らない人なんだけど?Jって何?」

「そうでしょうね。私の先輩に当たるお方ですし、あるお方の担当の女神ですから」

 

いやだからJって?

 

「まぁ、女神は嫌いだから拒否します」

「そう言うと思いました。ですが、その方ではなく、その担当の勇者が龍二さんと面会したいそうなんですよ」

 

勇者?

 

「物好きが居るものだな、一体誰だ?」

「ライト・ダテと言えば分かりますか?」

「────っ!?」

 

俺は思わず声を失った。

 

ライト。鎧の勇者と呼ばれ、俺に強力なダメージを負わせた張本人。

 

「まぁ、アイツとは色々あったけど悪いヤツじゃないからなぁ」

「どうします?会うの辞めますか?」

 

少し考え込んだ俺は、

 

「いや、会おう。『地獄門』や『月食の鎧』とかアイツのお陰で解放出来た訳だしな。ライトと出会って無かったら四凶武器を全て集められなかったし」

「そうですか。では先方にはライト・ダテさんのみとなら面会をすると伝えて起きます」

「わかった」

「では、面会室ではなく特別に部屋を看守長からお借りしてますのでそこでお待ちください」

 

そう言ってネメシスは俺を別室に連れて行き、そこで待つ様に指示された。そして10分後。

 

コンコン。

 

ドアがノックされた。

 

「来たのか?ネメシス」

「はい。お通して良いですか?」

「ああ、いいぞ」

 

ドアが開かれるとそこには、少し大人びた鎧の勇者・ライトが立っていた。俺は見た途端、ライトに声をかける。

 

「よぉ、ライト。久しぶりだな」

「お久しぶりです。魔王・龍二さん」

 

俺は立ち上がってライトに拳が届く距離まで近付いた。それをドアの隙間から覗いていたネメシスと白い髪の女神が慌てて入って来た。

 

「龍二さん!ダメですよ喧嘩は!?」

「ネメシス!止めるわよ!?」

 

俺はネメシスの言葉を無視して手を上げて……ガシッと握手をした。

 

「あの時は悪かったな」

「いえ、俺の方こそ生意気言ってすいませんでした」

「ライトのお陰でロキやメディアを倒す事が出来たよ」

 

硬い握手を交わしていると、女神達は呆気に取られていた。

 

「あ、あれ?一触即発だったんじゃ?」

「そ、そうよね?あのビリビリとした雰囲気は今にも殴ろうという感じに思えたんだけど?」

「あのな?一度は殺し合った仲でも仲良くなれる事があるんだよ。な?」

「そうですね」

「で?今日はなんの用だ?まさかあの時の続きをしに来た訳じゃないだろ?」

 

俺がそう言うと、ライトが首を横に振った。

 

「いえ、今日は純粋に貴方に会いに来たんです。これはつまらない物ですが、一緒にどうですか?」

 

ライトはパンパンに膨らんだリュックを降ろしてリュックの中から酒やつまみ、挙句の果てにはゲーム機まで出て来た。

 

「うおお……日本の物を見たのはいつぶりだ?懐かしいなぁ」

「そうだと思いましてね。どうです?決着はゲームで付けませんか?」

「そういう話なら喜んで受けて立とう。ネメシス、良いよな?」

「構いませんよ?看守達はこの部屋には近付かない様にしてあるので」

「話は決まった。なら決着を付けようか」

 

────────────────────────

 

2時間後。

 

「ネメシスてめぇっ!俺に赤カメぶつけやがったな!?」

「ゲームで本気にならないで下さいよっ!わっ!」

「あら?ネメシスは日本に疎いのね」

「一気にまとめて吹き飛ばしてやる!!」

 

マリ〇カートで潰し合いをしていた。声が外に漏れていたのか、アザゼルとベルゼブブが入って来た。

 

「な、なんや!?龍二、ワレ面会とか言って遊んどるやん!?」

「見ない顔の方も居ますね?その面構え、勇者とお見受けしました」

「─────っ!?」

 

ライトはアザゼルとベルゼブブを見た途端戦闘態勢に入ったが、俺がまぁまぁと宥めた。

 

「龍二さん。なんですかコイツら!?」

「大丈夫コイツらは監獄仲間だ。アザゼル、ベルゼブブ、作業は終わったのか?」

「終わったで?えらい苦労したわ」

「久しぶりの重労働でした」

「ご苦労さま。お前らもどう?」

 

俺がWiiのリモコンを手渡すと、アザゼルが手に取った。

 

「ええの?遊んでええの!?」

「良いよ?俺はちょっと話したい事があるから」

「では、アザゼルくん。お言葉に甘えて遊ばせてもらいましょう」

「なら私達は受付で待ってますね?ごゆっくり」

 

ネメシスとターニアは部屋を出て行くと、俺とライトが酒盛りをし始めると、アザゼルとベルゼブブが。

 

「アザゼルくん、そろそろ僕にもWiiをWiiをやらせて下さいよ」

 

ゴッ!

 

アザゼルが夢中になってリモコンを振り回すとベルゼブブの顔面に当たった。ベルゼブブが鼻先を赤くして蹲ると、アザゼルが申し訳なさそうに、

 

「い、いやいや今のはワシ悪ないで?べーやんの間合いの測り方が甘いのが悪いんやで?」

 

ベルゼブブはスっと立ち上がって。

 

「そうですね。今のは確かに僕が悪かった。でも、そろそろ代わってくれてもいいでしょう?」

「い、いやや。べーやん絶対怒ってんもん」

「ハハハハ怒ってなんかいませんよ」

「楽しくゲームするって約束する?」

「ええ。楽しくゲームしますとも」

「しゃあないのう。5分だけやで?」

 

アザゼルはそう言ってベルゼブブにリモコンを渡した瞬間、ベルゼブブはアザゼルを押さえつけて、

 

「てめぇっ!オラァッ!!オラァッ!!オラァッ!!」

 

リモコン使ってゴンゴンと殴り始めた。

 

「うるせぇぞ!静かにしろ!。悪いな、囚人はこんなんばっかだ」

「あはは……」

「で?誰と結婚したんだって?」

「セーアエット」

 

あー、あの女騎士か。

 

「へぇ〜。ラフタリアじゃなかったんだ」

「ラフタリアはあくまでも尚文の女でしたからね。あの時連れて来たのは龍二さんが動揺するんじゃないかって思って連れて来ただけです」

「なるほどね。結婚したっていうなら……プレゼントの一つでもあげなきゃな」

 

そう言って俺は右手を光らせてライトに向けた。

 

「ほら、受け取れ」

「なんですか?」

 

ライトも俺を真似て左手を差し伸べた。俺はライトの手の上で広げるように開く様にすると、光はライトの左手に吸収されて行った。

 

「なんです?今の?」

「『月食の鎧』のスキルをお前に譲った」

「えっ!?そんな事が出来るんですか!?」

「俺は魔王だぞ?なんだって出来んだよ。女神達には内緒だからな?」

 

俺はしーっと指で口を抑えながら言った。

 

「ありがとうございます。この力は大事にさせて貰います」

「この月食の鎧の力は強大だ。これはヤバいなって時に使いな」

「はいっ!」

「さて、そろそろお開きにするか。アザゼル、ベルゼブブ。片付けて牢屋に戻るぞ〜」

 

────────────────────────

 

その後、後片付けを終えて特別室から出た俺達はライトと別れの挨拶をした。

 

「これでお別れだな」

「そうですね……」

「まぁ、行き詰まったりしたら相談くらいには乗ってやるよ」

「せやせや、たまに英雄がカチコミにくるさかい、あんさんみたいな奴だったら歓迎するで」

「しばしの別れだ。またな」

「はいっ!さようなら」

 

ライトとそこで別れ、お互い逆の方向に向かって歩き始めた。この300年後、司法取引きを行ってとんでもない異世界に行ったのはまた別のお話し。

 




ご愛読ありがとうございました!。これで元太刀の勇者は立ち直れないを終了します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。