名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 (三柱 努)
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異人館村殺人事件 【前編】(金田一)

その白骨は不動山市の外れの雑木林で発見された。
骨は25~30歳の男性のもの、で死因は頭部を強打され殴殺。
埋められ少なくとも1年以上は経過していると見られた。
そしてこの白骨こそが、これから起こる血塗られた事件の始まりだったんだ!


母の故郷・青森県六角村に27年越しの復讐を果たすため、この俺、六星竜一が動く。

今から魅せるは芸術的な殺人。

の前の大事な準備。この復讐劇に必要な“共犯の抱え込み”だ。

 

 

標的は時田若葉。復讐相手のうちの1人の娘。こいつを口説き、俺の殺人のパートナーをさせる。

とはいえ、このお嬢様は卒業後に婚約者と結婚予定。手を出すなら高校生期間中。女子高生との出会いの機会を作るには、高校教師になるしかない。他にもあるかもしれないが、御令嬢相手なら街角でよりも、教え子との禁断の愛の方が統計的にも高い確率だろう。

そのために俺は“小田切進”という新任予定の教師を殺して成り変わり、不動高校に潜入した。

 

 

えっ?教員免許は持っているかって?

そこだよ。

 

俺に教鞭の隠れた才能があったおかげで、どうにかごまかしごまかし通用。

“普通”の生徒からも「教師が嫌いでも、小田切のことは嫌いじゃない」と評判を貰えるくらい馴染んでいった。

 

 

そこだよ。“普通じゃねぇ”のが多いんだココ。

 

まずは天才の宝庫。

鬼才の高校生作家や、長野五輪出場予定のスキー部。他にもチラホラ。

 

特殊な事情持ちも多い。

金持ちの令嬢や、両親のいない生徒もチラホラ。

一番ヤベェのが、20歳で編入してきた男子生徒。噂だと3年前に女子高生を集団監禁して殺したメンバーの1人らしい。

あとは元・小説家で、小説で容疑者一家を心中に追い込んだ社会科の教師。

火傷を苦に自殺した女子生徒。

10年前にも女子生徒が行方不明。

んでもってつい最近、演劇部が合宿中に生徒4人と教師1人が死んだ。

 

通常、町に1人いるかいないかの出現率のパーソンがチラホラという異常者密度よ。

 

 

自分のこと棚に上げて言わせてもらっていいかい?

大丈夫か?不動高校。

こんな場所で慣れない教師生活を頑張ってきた俺を応援してくれ。

同時進行で若葉を口説く苦労を察してくれ。

父親を含む村の有力者たちを殺すように口説く苦労を・・・

 

 

 

ここもだよ。

親殺しを手伝わせることが倫理的に難しいことは、実母を殺した俺にも分かっていた。

この道徳観を覆すには“愛”しかない。

愛を・・・知らないこの俺が? 

母から殺人術と格闘術だけしか教わらず、愛を知らずに育った27歳のこの俺が、17歳の女子高生を?

無理じゃね?

 

 

『読むんだ。ホットドック・プレス』

 

 

当時、思い悩んでいた俺の心の中に“その声”が響いた。おそらくは幻聴。変な職場での激務のストレスからくる症状だろう。

だが不思議な感覚。その声には“幼いころから親族から恨みを聞いて育ち、殺す予定の令嬢を口説き落とす予定”のある男が共感できる心地よさが。他人事とは思えない親しみやすさがそこにはあった。

 

 

その日から、俺はその声に導かれるままに生まれ変わりのための行動を起こした。

セミナーに次ぐセミナー。

踏み続ける場数。

ターゲットに合わせて自己をプロデュース。

『負けん気の強い女子高生を口説くお前には、童顔を活かして気弱な頼りない男がベスト』

そして爆誕!

ハートキャッチ六星! いや、ハートキャッチ小田切!

 

 

 

こうして若葉のハートキャッチに成功した俺は、昼間の激務と夜の情事をこなし、着々と殺人パートナーとなるように説得。

「2人が一緒になる方法はこれしかない。卒業したら、政略結婚の場で村の有力者を殺そう」ってな。

 

 

 

ところがどっこい、卒業を待たずして事件発生!

不動山に埋めていた本物の小田切進の白骨死体が発見されちまったんだからさぁ大変。

現代の捜査技術を以ってすれば、すぐにでも身元が判明して俺に逮捕状が請求されてしまう。

 

 

 

そこで俺はラブホ前で2人の隠し撮りハイチーズ。

そのスキャンダル写真を学校の掲示板に貼り出して、若葉が『退学&実家への返品』となるように誘導。

校長やPTA会長にめちゃくちゃ怒られたが、どうにか復讐の日取りを近日に引き寄せることができた。

まぁ、実を言うと若葉の友達・七瀬美雪が校長たちを熱心に説得したことで退学自体は免れてしまっていた。

その余計なお世話な熱い友情行動に少しイラッとしたが、実家引き戻しと政略結婚は強制執行だから結果オーライ。

むしろ七瀬宛てに結婚式の招待状を出させれば、俺が「若葉が幸せになれば諦めがつく」と粘って結婚式に一緒についていく口実になる。ホント結果オーライ。

 

 

こうして俺は、その友達の1人・金田一一に「気に食わねぇな」とめちゃくちゃ叱られながらも、結婚式に同席することに成功。

『待て進!いや竜一!そいつはマズイ』と心の中の声が何かよく分からない事を叫んでいたが無視して。いよいよ到着、若葉の実家、俺の母の故郷の六角村。

 

 

 

その夜、結婚前夜の宴で殺す予定の6人や若葉の婚約者とご対面。

う~ん、まともな仇が少ない。

趣味が悪そうな五塔、奇行が目立つ草凪、偏食な一色、暗すぎる兜親子。

唯一マトモな風祭は母から「殺すな」って言われている。

う~ん、殺す方の身になって欲しい。

 

 

なんて贅沢も言ってられない。

今夜、第1の殺人を決行する予定だから。

 

とはいえ、このスタートダッシュは俺じゃない。若葉が殺るのさ。これで俺はアリバイが確保され、これからの連続殺人の容疑者から外れることができる。

その犠牲は兜霧子。村のしきたりの『教会で一晩過ごす役』を入れ替わってもらい、その間に霧子の首をちょん切って頭部を隠し、若葉として死んでもらうらしい。

 

 

 

 

自分のこと棚に上げて言わせてもらっていいかい?

女って怖い。

なんせ今回の殺人、トリックは若葉が考案して実行も若葉。俺は道具の準備だけ。

いくら俺と一緒になりたいからって。同じ村の、おそらく幼馴染の女の首を切れるか?

 

 

そんでもって、若菜から殺害完了の合図で教会の鐘が鳴り、俺たちは殺害現場の教会に皆でGO。扉を俺がウインチでこじ開けてIN。

若菜の作った密室トリックお披露目となるのだが・・・引くほど大掛かり。どうやったのこれ?

 

 

その後、合流した若葉を殺し、入れ替わっていた霧子の死体と交換。

若葉の墓を作って、霧子の死体を兜の住む鎧の館の甲冑に収納。

翌朝、警察が到着。事情聴取の末、もう死んでいる霧子を犯人だと決めつけて指名手配にしはじめた。なんて短絡的な。日本警察の未来が心配・・・

 

 

「待ってくれ」

そこにズケズケと口を挟んだのは金田一。どうしたお前?

警察に物怖じしない度胸は評価するが、空気を読んでから発言力を発揮してくれ。

やっぱウチの生徒は変な奴が多い。こいつの通信簿、絶対に『落ち着きが無い子』って書かれていたに違いない。

「兜霧子を犯人と断定する前に、この密室殺人の謎解きが先決だろう?」

また変な視点からグイグイと提言する金田一だが、それは先決なのか?

というか警察に口を出して邪魔したら駄目だろ。ご両親はご家庭でどのような教育をされているのでしょうか?

 

 

なんて警察と俺が怪訝な視線を送っている間に、金田一はどこかに電話をかけて、すぐに刑事に電話を代わっていた。高校生というか、中学生並みの自由奔放。

なのだが、刑事は電話口で誰かからものすごく怒られて、渋々と金田一に捜査情報を教え始めた。

何が起こったんだ?

 

 

 

そしてその夜、俺は金田一と七瀬に引率して風見鶏の館、ステンドグラスの館を見学。

一色の偏食っぷりと、草凪の奇行、そしてミイラを見せられゲンナリ。なんか、殺す気まで擦り減った感じまでしてきた。

おセンチな気分になると若菜の事も思い出してしまう。昨日殺しちゃったけど、イイ子だったなぁ・・・こんなどうしようもない俺を愛してくれて・・・

 

なんて落ち込んでいる所に金田一が来て慰めてくれた。

「若葉を殺した犯人はオレが必ず暴いてみせる。名探偵と言われたオレのじっちゃん、金田一耕助の名にかけて」

初耳。金田一って、名探偵の孫だったんだ。

俺、ヤベェ奴連れてきたんじゃね?

 

 

 

逆に面白くなってきた。

観客のいないワンマンショーだと、演者のモチベーションが続かない。

だがそこにライバルキャラが登場することで、スリルとショックとサスペンスな要素が加わり、エキサイティングな展開が巻き起こる。

カチッと、俺の殺る気スイッチがONする音が聞こえた。

 

 

さぁ、殺すぞ~!

 



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異人館村殺人事件 【後編】(金田一)

マーダーブルーに襲われ、殺す気が萎えていた俺・六星竜一は金田一に励まされ、殺る気スイッチがONになっていた。

 

 

その勢いを殺さないように勢いに乗って一色、草薙をサクッと殺害。それぞれの館のミイラと同じ体の部位を切り取って放置した。

心の中の謎の声が『切り方が上手い』と感心しているが、まぁ気にしない。

 

 

ちなみに今、復讐の一番の障害になっているものはな~んだ?

仇たちの警戒? それは甘っ甘。2人殺しただろ? 館に鍵すらかかってなかったから楽だった。

警察の警備? それは緩っ緩。2人殺しただろ? なのに未だに警官増員しねぇの。

金田一? そのとおり! こいつ首突っ込みすぎ。

今も、密室を調査したいと言い出して、七瀬と3人で教会に行くところだけど、俺はこの誘いを断れない。教師だから引率しないわけにいかないから。

金田一、俺の身にもなってくれ。今、忙しいんだから!

 

 

そこでおれは警告メッセージを教会の十字架に書き、金田一の近くに落ちるように細工をした。怖い思いをすれば、家に帰ってくれると思って。

が、十字架は真っ直ぐに金田一の元に落下。当たったら絶対死ぬ軌道で。

ドカッ

飛び出した俺は、ギリギリ金田一を助けることに成功。

生徒を助けるのが教師の義務・・・なんて理由じゃなく。

今回俺、【七人目のミイラ】名乗ってるから殺害予定枠7人。補欠枠なんて無い。だから助けた、それだけさ。

 

なのに、俺の思いとは裏腹に、これだけ怖い目に遭ったのに諦めない金田一少年。

「この“挑戦”受けてやろーじゃねぇか!七人目のミイラさんよ!」

高校生の目にはそう映るのか。想いって、伝わらないな。

 

 

 

その後、隠しておいた霧子の死体が発見され少しドタバタ。

金田一が突然、“六角村の秘密”を聞きに若菜の父親の十三の家に突撃。村で栽培されている大麻の件と、俺の母が巻き込まれた27年前の惨劇について十三から話を聞くことに。

重い話に七瀬はショック。金田一も言葉を失う。俺は知ってたけどね。

すると金田一はおもむろに「わかったぞ、七人目のミイラの正体が!」と呟く。

 

 

・・・・ファッ!?

名探偵の孫!? この十三の話から、俺に辿り着いただと!?

「犯人の特定はできないけど、少なくとも殺人の動機ははっきりした!」

なんだ言い間違いか。驚かすな。

だが、金田一は27年前の惨劇の生き残りがいるはずだ!と、屋敷を飛び出して教会のミイラを調べ始めた。

 

 

えっ? 話が急展開過ぎてついてこられない? ミイラについて詳しく教えてくれ?

残念だが、それはできない。権利的な問題で!

権利的な問題で!

と、これだけ煽っておきながら、金田一まさかの推理ミス!そのショックから十三が心臓発作で死亡。 俺が芸術的に殺すつもりだったのに・・・

 

 

 

落ち込んでなんかいられない。次だ次!

塔の館の五塔を殺害・・・するはいいけど、このシチュエーション何? 半裸の七瀬が縛られて、全裸の五塔が自己陶酔。どうやら少女の生き血を浴びて若返る的な儀式をしていたらしいが。

女って怖い!

とりあえず五塔をサクッと殺して屋敷に放火。七瀬は放置。

助けないのかって? 大丈夫大丈夫。さすがに警察が来てくれるって。日本警察を舐めるなよ! それに、これだけ怖い思いをすれば七瀬も家に帰るって言い出すだろ? そうすりゃ金田一も一緒に帰るって。

 

 

帰らなかった。

それどころか金田一、残る生存者や警察を呼び出す始末。もちろん、俺を含めて。

 

「今日全員に集まってもらったのは他でもありません。この連続殺人に隠された真実と、七人目のミイラの正体をお話しするためです」

2回目だなそれ。また外れそうな気配があるんだけど・・・

 

 

だが、そんな俺の思いとは裏腹に繰り広げられる金田一の華麗なる推理。というか、ほとんど若菜のトリックの説明。

えっ?俺と風祭のミイラ関係トリックの件も話したって? それは今回割愛してる。

 

「そらっ受けとんな!あんたの“母親”だぜ!小田切進――いや、七人目のミイラ!」

金田一は唐突にこう叫ぶと、トリックの説明に使った・・・いや、やっぱ使ってないことにしたい人形を、俺の前に放り投げて詰め寄った。

いやぁ、ちょっと待って。急だなオイ!

俺の本名が【六星竜一】だって的中させたことには驚いたが、直後、それ以上の驚愕の事実を金田一は突き出した。

 

 

それは2枚の写真。俺と若菜がラブホから出て来た時の写真・・・の次に提示した写真。

不動高校の校長とPTA会長の密会写真だ。

とんでもない爆弾をぶちこんできやがった。

毎度、棚に上げて言わせてもらうが・・・闇が深ぇよ不動高校。

そしてそれを持ってる金田一、お前が怖ぇ。

 

そして金田一は警察から調達した本物の小田切進の骨の鑑定結果を証拠に俺を追い詰めた。

それがあるなら、さっきの校長たちの不倫写真は出さなくて良かったんじゃないか?

遠く離れた青森の山奥で、無関係な人達にまで恥を曝される校長たちの身になれよ少しは。

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

だが俺には関係ない。

オレを甘く見てんじゃねぇか?名探偵のボーヤ!

 

 

 

 

俺は速攻で周囲を警護する警官を撃退し、猟銃を奪い七瀬を人質に取り、最後に殺す予定だった兜を射殺!そのまま最後の仕上げに、村の最大の秘密で最悪の仇である大麻畑を燃やすだけ。

なのに邪魔しに来たのは金田一! の前に若菜の婚約者の、夜中に見たら失禁間違いなしの覆面男!

いや、覆面男は銃弾に倒れてくれたから怖くない。

むしろ怖いのは、銃弾に倒れない金田一! 兜を即死させた猟銃を至近距離から喰らって死なないどころか立ち上がってくる始末。

死なないのか? 殺しても死なないのか?

 

そして、最期には金田一を殺そうとした直前に、風祭が俺を撃ち実の父親だとカミングアウト。タイミングよ。

そして俺の心の謎の声は最後に『お前も、親の手に抱かれて炎の中で死んでいくのか・・・金田一に関わったばかりに』と残悔の思いを吐き出して消えていった。

 

 

 

 

こうして、全てが終わった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 異人館村殺人事件。
えっ? 敗因?
敗因も何も、俺は復讐達成できているから負けていないだろ。
むしろ金田一には勝った。
えっ? 謎は全て解かれたじゃないかって? 分かってないな。
探偵は謎を解くか解けないかの次元で話をしてくるが、犯人からしてみれば謎なんて殺人の要素の一部分だけだろ。
相撲で例えるなら、相撲で勝つために太るのであって、たくさん食べる奴が相撲で勝てるわけじゃない。
殺人するために謎を用意するのであって、謎をたくさん解ける奴が殺人に勝つわけじゃないんだ。そこを勘違いすると、金田一みたいになるぞ!


まぁ、1つ金田一に負けた所と言えば、若菜の父親の十三を殺されたことかな。
心臓発作で殺すとか・・・死神かよ。
まぁそうじゃなくても、十三の心臓の弱さを見抜けず、殺す順番を後回しにしていた俺に落ち度はある。
やっぱ、順番って大事だな。

十三は最初に襲え。もし連続事件を起こしたい奴がいたら、これだけ気を付けてもらいたいものだ。


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小五郎の同窓会殺人事件(コナン)

時代が進めば進むほど、難事件は増えてくる。
今日の事件は弁慶がらみ。京都じゃなくて栃木県。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




ワシは千葉県警の刑事・中道和志。

18年間ずっと付き合っていた堀越由美が何度プロポーズしても結婚してくれないから、お見合いした上司の娘さんと結婚予定。

だが女心は分からないもので、それを知った由美がワシの婚約者に嫌がらせするわするわ滅茶苦茶陰湿に。しまいには2人で撮った写真を送りつけるとまで。つまりリベンジポルノ。

 

 

そう、早い話が結婚の邪魔になるから由美を殺す。

同窓会IN温泉旅館「弁慶」にて。

死亡推定時刻をズラしてアリバイを確保し、自殺に見せかけて殺す予定だ。

 

死亡推定時刻をズラすには何通りかの方法はあるが、今回ご紹介するのは『死後硬直の操作』。激しい運動の直後に死亡した際に、たんぱく質の変性が通常の死後硬直よりも早くなり、筋肉が早く硬直する性質が人体にはある。これを利用することで、実際に殺した時間よりも前に死亡したと判定させることができるのさ。

そう、まるで武蔵坊弁慶の立ち往生のように!

 

 

 

さて、ここで問題になるのが、殺す前にさせる激しい運動。

この温泉旅館で可能な運動といえば卓球しかない。

・・・卓球で弁慶の立ち往生並みの激しい運動を?

衣川の戦いを、長さ2.74m、幅1.525mの長方形の盤上に再現しろと?

 

やるしかねぇだろ和志!

 

 

 

そしてついに同窓会の日。久々に顔を合わせる柔道部。今日のワシのアリバイを証明するメンバー。

結婚した綾城夫妻に独身の大村、子連れの毛利。毛利一家は蘭ちゃんに居候のコナンくん。

皆揃ったところで、トリックの仕掛けに取りかかろう。

この後で由美と写真の取引をする約束があるのを知ったうえで、皆を卓球に誘う。

約束を破ると激怒する性格通り、由美は卓球には参加せずに部屋で不貞寝。

一方ワシはしばらく遊んでから、花火大会の場所取りの時間に後片付けを引き受けて皆を旅館から追い出す。

 

次に、由美を卓球に誘い、この日の為に仕事そっちのけでトレーニングしてきた卓球の腕前を発揮。

そこに由美の負けず嫌いな性格を利用すれば、煽れば煽るほどハードになる卓球に早変わり。

ものの数分で汗だく女弁慶の出来上がり。

そこですかさず「写真はお前の荷物から抜き取ってある」と嘘を伝え、部屋に急いで戻るように誘導。花火の音に紛れさせて拳銃を発砲!

 

仕上げに、由美が汗だくなままだとトリックがバレる可能性があるから浴衣を着替えさせて、自殺に見せかけるために拳銃を持たせて終了・・・

 

 

 

と思った矢先、事件は起きた!

旅館の階段を駆け上がり、この部屋に近付く足音が聞こえてきたのだ。

この状況を見られたらマズい!と、ワシは窓から隣の部屋に移り急いで廊下に!

 

 

 

ギリギリ、由美を親切心から起こしに来た蘭ちゃんとコナンくんと遭遇。

寝起きの由美の最悪な機嫌を知らないが故に来てしまった2人を丁寧に諭して、どうにか現場から引き剥すことに成功。

冷や汗ダラダラ、卓球で体火照りまくり。「どうしたんですか?」と聞いてくる蘭ちゃんに温泉入っていたと説明しても何も違和感のない見た目のワシさ。

 

 

と、ひとまず花火大会に行くことになったが、1階でまさかの綾城夫婦と遭遇!

なんと2人もまた花火大会には向かわず、旅館に残って露天風呂に入っていたのだ。

危っねぇ。

 

由美殺しのトリック中に遭遇していた可能性もだけど、2人が大浴場じゃなく露天風呂に入ってくれたのはラッキーだ。

もし2手に分かれて温泉に入られていたら、ワシの温泉の逃げ道が潰されていたわけだ。

ここは、37歳にもなって夫婦そろって混浴の露天風呂に入る、お盛んなラブラブに救われたってことだな。

 

 

 

 

そして花火会場に入ってすぐに、人混みに紛れて脱出し、旅館に戻って由美の自殺工作の続きをガサゴソと・・・

死後硬直が、もう進んでいるだと!?

体の硬さは浴衣に着替えさせるには困らない程度だが、指は卓球のラケットを持ったシェイクハンドのままカッチカチ。

指の形は幸い、ラケットは外させることができて、なおかつ拳銃を持たせることはできたが、引き金に指が入らない。

まぁ、ペンハンド持ちじゃなかっただけマシか・・・あっちだったら不自然すぎて詰んでた。

 

 

 

 

その後、再び花火大会にシレッと戻り皆と合流。

だが、このタイミングで1人だけ後で合流ってのは疑われる恐れも・・・なかった。

結局すごい人混みでみんなバラバラのまま、毛利が確保してくれていた席が無意味になったそうだ。ワシにとっては好都合な有意味。

そして不機嫌な毛利と旅館に戻り、晩飯の席を囲んだところで「そろそろ由美を起こしに行こう」となり、死体とご対面!

 

このショッキングな場面、当然ワシもショックを受けた演技が必要。

だがそれに加え、ワシは現職の刑事としてのリアクションも求められる・・・ここは成りきるしかない。張り込みで鍛えたワシの演技力を発揮するのは、今だ!

「触るな!この場には刑事のワシと、探偵の毛利以外は入っちゃいかん!」

口が自然と動いた。すっごく刑事っぽい台詞だ。なんてこった、ワシにこんな才能があったとは・・・

 

 

 

毛利と一緒に検死をした結果、由美の死亡推定時刻は午後3時ごろ、ワシたちが卓球を始めた頃だという結論が出た。

危ねぇ・・・本当に危ねぇ。

もし卓球を、もっと激しくしていたら・・・さらに死亡推定時刻が前にズレて、下手したらワシたちが卓球する前の談笑していた頃に由美は実は死んでいたということになっていた。

ホラーじゃ説明つかねぇだろ。

 

 

だが終わりよければ全てよし。由美は自殺ということでケリがつく・・・

「由美さんって、どうやって自殺したのかな?」

急にとんでもないことを言い始めたのはコナンくん。子供に死体を見せるのは教育に良くないだろ。

その時、毛利が走った!

すぐにバレた。拳銃自殺したなら、発砲時に出る高温の熱風で傷跡に火傷の痕が残るはずだと。つまり他殺。

 

まさか、渾身の自殺工作が、ものの数分でバレるとは。

だが、それはそれで別に問題なし。ワシだけじゃなく、皆にアリバイがある。むしろ強盗殺人の可能性を追求しても無理のない展開。

ただ、大村が死亡推定時刻の後の時間帯に、由美が卓球場を睨んでいたのを目撃していたハプニングが発覚。疲れて錯覚しているだけだと無理やり納得していたが・・・

 

 

 

こうして外部犯を疑う流れが生まれる中、警察の到着は2時間かかることが分かった。

遅ければ遅いほどワシにとっては好都合。詳細な死亡推定時刻の判定が難しくなる。

もちろん、最初からワシは分かっていた。何故なら今は花火祭りの時期だと知っていたからね。あちこち渋滞して警察がすぐに来れないのは自明の理。

 

まぁそのせいで旅館の従業員さんたちの混乱を収拾させる役目がワシに回ってくるのも自然な流れ。毛利はトイレに行ってくるとか言って逃げて行く。

1人で何人もの一般市民を相手に・・・やることが多い!

 

 

 

なんて言ってる間に、毛利は何かブツブツ独り言。そこに邪魔に入るコナンくん。

いや、端から見れば邪魔なんだけど、妙に事件の核心に迫るような物言いというか・・・全てが事件のヒントに聞こえてくる。

これって、ワシが犯人だから? 図星だから?

「弁慶って立ったまま死んだんだよね?」

質問責めが自由奔放なだけだった。子供だからな。心配して損した。

 

 

 

「わかったぞ!」

 

 

突然の毛利の大声に驚くワシ。何が分かったって?

「由美を殺した犯人は、お前だ!」

そう叫んで毛利が指差したのは、もちろんワシ。

・・・マジか。

 

 

 

そこから咲き乱れる毛利の名推理。

だが、よくよく聞いていると状況証拠だけ。決定的な証拠が出てこず、「そんなもの、知識さえあれば誰でもできる」でゴリ押し通用しそうな展開に。

ひょっとして、ワシの勝ち?

 

 

 

「馬鹿だなぁおじさん、この名刑事さんが犯人なわけないでしょ」

急に褒めてくるコナンくん。名刑事?

「だってそうでしょ? このおじさん、血だらけの由美さんを見ただけで死んでるってわかっちゃったんだよ」

やらかしてました大失態。普通なら真っ先に呼ぶべき救急車を、由美の死亡を知っているワシだから思わず警察だけ呼んじゃってた。

 

 

まさか自分の演技力に足元を掬われることになるとは・・・

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
小五郎の同窓会殺人事件・・・いや、“小五郎の”じゃない。俺のでもあるわけだし、大村の、綾城夫婦のでもある。




いかがでしたでしょうか?
みんなの同窓会殺人事件。



敗因について話すのか・・・元も子もない事を言えば、名探偵のいるところで事件起こすなって話だが。

今回一番のヒントになってしまった『弁慶の立ち往生』の像が旅館に飾ってあったわけだ。
きっとオーナーが好きとかなんだろうけど。自分とこの旅館の名前にもするくらいだし。
なら何故、死に際の姿? もっと活躍した、弁慶自身も誇れるシーンとかあるだろうに。
安宅の関のエピソードとか。「俺は義経のほうが好きだ」宣言でもしてるフィクションでもいい。



オーナーのチョイス。そこに負けたってことだとワシは思います。


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闇の男爵殺人事件 【前編】(コナン)

現代社会の犯罪に人が絡んでいる限り、解けない謎は絶対ない
今日の事件はホテルで落とす。自由落下は運次第。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



私は佐山明子。

3年前に兄を自殺に追い込んだハッカー・江原時男を、ミステリーツアーにおびき寄せて殺すことを決意した空手チャンプの妻になる女よ。

おびき寄せる方法は単純。コンピューターウイルス『闇の男爵【ナイトバロン】』をエサにするだけ。もちろんそんなモノ持ってないけどね。

 

 

そしてツアー初日、私もツアー参加者の1人として潜入。婚約者の前田聡と一緒に、ここ伊豆プリンセスホテルに来たわ。

標的の江原は狙い通り、参加を確認。

 

ただ予想外だったのは、私のイメージしてたハッカーって根暗な人間だったのに、本物は飲んだくれのエロオヤジだったこと。だから最初、他の参加者の根暗っぽい男の方が江原だと思っちゃった。

本物の江原の方は女の子に痴漢してた。それを聡が止めに入って、その女の子となんかイイ感じに。ちょっと嫉妬。

さらに予定外なのが、その女の子一行も参加者で、本来の参加者になる予定だった博士2人・小さな女の子1人の代理でやってきた探偵・毛利小五郎一家だったってこと。

 

 

 

何それ聞いてない。

 

しかもよりによって探偵!? 私、今から殺人する予定なんですけど! ちゃんとツアーの当選者は吟味したはずなのに・・・

 

だけど心配ないわ。私のトリック、負ける気がしないもの。

だって私は何を隠そう推理小説【闇の男爵】シリーズの大ファン! 闇の男爵のことなら誰にも負けない自信がある女よ! そんなミステリーマニアが考えたトリックが、負けるはずが無いわ!

よっぽど、【闇の男爵】の作者先生や、そのご家族でも現れない限りはね。

 

 

だけどやっぱり心配。モノホンの探偵、やっぱ怖い。

だから追い返すために、私は毛利探偵のとこの小さな子供・コナンくんに目をつけたわ。

この子を襲えば、さすがに「コンナ危ない所にはいられない!」ってなって退散してくれるはず。

 

 

そこで私は、聡とイイ感じになってた女の子・蘭ちゃんとコナンくんが2人でホテルの探検をしているところを尾行。

コナンくんがバルコニーで1人になったところに、闇の男爵の衣装で変装して・・

ドーン!

背中を押して下に突き落としてやったわ。

大丈夫よ。死にはしないわ。だって下はプールだもの。しかも今の季節は夏だから濡れても風邪引いたりしない・・・・

 

やっちゃった?

 

突き落として1秒で気付いちゃったけど、ホテルの夏のプールって普通、お客さんがいっぱいいるわよね?

下にいる人にぶつかったら・・・普通に死ぬわ。

勢いに任せてとんでもないことしちゃった。後悔先に立たず。

 

 

でも、私は運に恵まれていた。

コナンくんは絶妙に他のお客さんの間に落ちて、怪我無く着水。

私の方もコスプレ姿を誰にも見られることなく近くのトイレに移動することに成功。

トイレで着替えて、部屋に戻って、ドレスに着替えてレストランでディナー。

あとは江原を殺すだけ。

 

 

にはならなかった。

レストランに着いた私と聡に待ち構えていたのは、まさかの毛利小五郎。

えっ? 子供が死にかけたのに、顔色一つ変えず平然と酒飲んでる。

 

予想外。

にこやかに見えた一家に児童虐待の黒い影があったなんて。

ちゃんと観察するべきだったわ。コナンくんの身体に虐待の痣があったりしないか。

それを怠ったから、私は虐待の被害者に酷い事をしてしまった・・・・ショック。

 

しばらくすると蘭ちゃんとコナンくんがにこやかに参加。

蘭ちゃんは・・・どっち側かしら・・・それ次第で闇の深さが変化するこの一家。

標的の江原ばかりに気を取られていたけど、今度はしっかりと他の人を観察しないと。

まずはコナンくん。見た所、痣らしきものは無し。蘭ちゃんも同様。

毛利小五郎は・・・あれれ、おっかしいぞ? 首に痣があった。しかも細い針で何度も刺されたような痣が。

 

 

 

 

 

 

 

この謎は私には難度が高すぎる。

やっぱり、江原だけ見ることにしましょう。

 

 

その後、蘭ちゃんにドレスを褒めてもらったり、私の闇の男爵マニアっぷりを自慢したり、痴女に聡たちの目が釘付けになったりして、江原が部屋に戻ったころに私達も解散。

さぁトリックの始まりよ。

 

「ウェイトレスに色目を使っていた」と聡に言いがかりをつけて部屋から追い出す。

長い付き合いだから、こういう時に聡は決まって、私への当てつけに女の子を口説くわ。今回も案の定、蘭ちゃんをデートに誘ってた。私の目の前で。

はぁ・・・

 

気を取り直して。私の方は江原を部屋に誘い出して睡眠薬で眠らせるわよ。

誘い出すって言っても、誘惑するわけじゃないわ。

ナイトバロンのウイルスの入ったフロッピーをエサにするの。

えっ? カエルの女の子をエサにするのは酷い? 何の話?

 

 

・・・フロッピーディスクが絶滅寸前!?

時代の流れが怖いわ。あんなに便利なものが。

 

さて、話を戻して。

今から無防備になった江原の服を闇の男爵コスプレに着替えさせるわ。

 

嫌ぁ。

 

仇のエロオヤジの汚い服を脱がせるの、嫌。正直言って触りたくない。

まず、上下の服を脱がせて下着姿にして寝かせる。(今夜、この部屋で寝ることになるわけだけど、この床は裸足で踏まないようにしないと)

続いて、お気にの【闇の男爵】衣装を着せる。メンタル殺られるわこの作業。1秒でも早く終わって欲しい。

地味にムカつくのが、江原も闇の男爵や私と同じ髪型ってこと。真似してんじゃねぇよ。お前の為に用意してたカツラもいらなくなっちゃったじゃないの。

 

次に、この元の服を江原の部屋に投げ捨てて、手袋をベランダに引っかけて、部屋の防犯ロックをかけて、ここが犯行現場に見せかける。

この部屋で息したくない。

 

あとは江原を私の部屋から突き落とすだけ。

気付いたらもう10時。早くお風呂に入りたい。汚れた体を綺麗にしたい。

だから勢いのままドーン!

 

 

 

 

 

やっちゃった?

考えてみれば、この窓の下ってレストランよね?

まだこの時間、お客さんもいるかもしれない。巻き沿いさせちゃったかもしれない。

サーっと頭から血の気が引く音が聞こえる中、私は勇気を振り絞って下を覗いた。

 

すると、なんということでしょう!

江原はレストランの中央にある、剣を掲げた騎士の銅像の、ちょうど剣の所に突き刺さったではありませんか。

被害者ゼロの奇跡!

 

神に愛されてる? 私、重力の神に愛されてる?

でも、愛に浸ってる暇は無いわ。すぐにホテルのフロントにモーニングコール依頼をかけて、私のアリバイを確保!

 

これにてミッション完了。殺せた殺せた。

あとは警察が事故死で処理してくれれば、明日には意気揚々と帰るだけ。

よっぽど、変なハプニングでもない限りね。

 



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闇の男爵殺人事件 【後編】(コナン)

兄の仇・江原を突き落として殺すことに成功した私・佐山明子。

 

落ちてきた江原の死体に驚いて、ホテルの下のレストランは大騒ぎ。

婚約者の聡がホテルの部屋に戻ってきてから、一緒にレストランに降りることに。

するともう警察と毛利探偵が捜査していて、事故死として処理の真っ最中♪

計画通り・・・と思われたその時!

 

「あれ? おかしいよこれ」

コナンくんのひとことで状況は一変。

どうやらネクタイの結び方がおかしく、ベルトの付け方が逆みたい。

毛利探偵も最初は江原の癖だと言っていたけど、コナンくんが何故か持っていた江原の頭に巻いていたネクタイの結び目で、『誰かに着せられた』と推理。

ものの数分で自殺ではなく他殺だとバレた。

さすが名探偵、仕事が早い。子供虐待してるくせに。

 

その後、当たり前のように事情聴取される私。

でも抜かりは無いわ。ミステリーなら当たり前の展開だもの。

私には切り札がある。それはアリバイ。事件発生直後にかけた電話がね。

 

でも、今回それはあえて使わない! 何故って? いかにもアリバイが無い容疑者ってのは、ミステリーだと犯人じゃないって展開が多いからよ。

そしてそういう登場人物は、後になって“些細な会話”からアリバイが証明されるもの。

 

だからこの取り調べで私が話すアリバイは『事件発生時刻に観ていた映画の内容』だけよ。

まぁ・・・証拠にならないのは重々承知。なんだけど毛利探偵、取り調べが面倒なのかマトモに聞こうともしないのよ映画の内容。

あのね、これでも私がちゃんと前もってこの地域のテレビジョン買ってきて、レンタルビデオで予習してきたのよ。手間がかかってるのよ、この捨てアリバイに!

ちょっとくらい耳傾けなさいよ、腹が立つ。

 

その後、取り調べが終わり蘭ちゃんとコナンくんと一緒に部屋に戻る私。

エレベーターの中でもまず口から出てくるのは愚痴。それを聞いてくれる蘭ちゃんは良い子。

いけないいけない。今がチャンスじゃない。さりげなく決定的なアリバイを話すタイミング。

思い直した私は、犯行直後の10時にホテルのフロントにモーニングコールを頼んだことを2人に話したわ。ミステリー物のドラマだと、この何気ない会話から出てきたアリバイは鉄壁。非犯人フラグ。

 

するとこのアリバイに真っ先に喰いついてきたのはコナンくん。ホテルの通話履歴が管理されていることを知っていたの。今どきの子供は博識ね。

蘭ちゃんも私のアリバイ証明に、まるで自分の事のように喜んでくれたわ。

なんて良い子達なの。はぁ、なんて居心地がいいエレベーター。

この余韻が永遠に続いてくれないかしら・・・

 

 

その時、開いたエレベーターの扉から覗く顔に、私の血の気はサーっと音を立てて引いていった。

そこ立っていたのは・・・闇の男爵!?

 

えええええええええ!?

 

驚愕の展開すぎて色んなものが追いつかない。

蘭ちゃんは凄く度胸があるみたいで、闇の男爵に向かって蹴りをお見舞いしていたけど、その全てが躱されたわ。

でもその動き・・・私、見覚えがありすぎるんですけど・・・これ、聡じゃない?

何故、どうして聡が。そもそもその衣装、警察が管理しているはず。しかも使わないから私のカバンに片付けておいたカツラまでつけて。

 

いやいや、ありえないありえない。

普通に考えて、これは・・・ホテルに偶然滞在していた、闇の男爵コスプレが好きで夜中に徘徊する格闘家よ。

そうじゃなかったら・・・まさかだけど・・・

 

 

そんな呆然寸前の私と蘭ちゃん、コナンくんは急いで警察のところに戻って事情を報告。

すると、遺体安置をしていた警官が何者かに襲われて、闇の男爵の衣装を奪われたと報告も。さらには闇の男爵の衣装がプールに捨てられていたという報告まで。

そこで容疑者再招集からの再取り調べ、からの部屋の捜索。

休む間もない怒涛の展開。私の冷や汗はダラダラ。

 

衣装を盗んで私たちの前に現われて、プールに捨てたのがもし聡じゃなかったら、私の部屋にはまだカツラが残っているってことだから・・・

そして警察が部屋に来て捜索開始。

特に怪しいものは見つからず。

これは、安心していいのかしら? つまりこれ、聡が私のカツラを見つけちゃって、私の事を犯人だと思って、身代わりになるためにコスプレしてたってことよね?

少なくとも、私がただの趣味で闇の男爵風のオカッパのカツラを旅行に持ってきたイタイ女だと思っただけではないってことよね。

 

 

その後、事情聴取やらから解放された私達。

互いに交わす言葉も少なく、そろそろ就寝時間。

今夜は、眠れないかも。

 

と、それでもがんばって寝ようとした矢先に、まさかの警察からの再招集!

ったく、何時だと思ってるの?

しかも警官が「マットとベッドシーツを借ります」って。借りるも何もホテルの物だから私たちに言われても。

 

そしてわけも分からぬままレストランに呼び出された私達。

今から毛利小五郎の推理ショーがおこなわれるそうよ。

・・・・まさか、真相に辿り着いたってこと!? 私の渾身の闇の男爵トリックが!?

 

と、不安に胸が締め付けられた矢先に告げられたのは、闇の男爵衣装が盗まれた時に警備していた警官が空手の達人だったという情報。

そう、もうお分かりですね?

「そんな芸当ができるのはただ1人。元・空手チャンプの前田聡さん。貴方d」

「お父さん!」

毛利探偵から告げられる冤罪の宣告に待ったをかけたのは蘭ちゃん。

なんと彼女、第1の事件の起きた10時の聡のアリバイを飛び込みで証明したの。

 

これには計算外といった様子の毛利探偵。

私にとっても計算外の想定外。もちろんイイ方向に転がっているわ。

そして、毛利探偵は苦し紛れに、容疑者で唯一アリバイの無い今野史郎に矛先を向けたわ。「何を隠そう、彼は空手の達人!」と背後から殴りかかってね。

もちろん、今野は空手の素人。可哀想に、冤罪かけられて殴られ損。子供を虐待するような探偵はこういう無茶なことするから、これからは私も背後を気を付けないと。

 

 

って言ったばかりだけど、背後ばかり気を付けていても駄目なのよ。

それは、毛利探偵が眠ったように座り込んで、彼が手を挙げた時に起こったわ。

「危ないから、像から離れてください」

そう毛利探偵が注意を促した直後、無数の布団が空から落ちてきたの。

 

これは実験。

容疑者それぞれの部屋から“人の重さと同じになるように重りを付けた布団”を落としたらしく・・・他の部屋の布団は像から離れた場所に落ちていたけど、私たちの部屋の布団だけが見事に騎士像の剣に突き刺さっていたわ。

 

危なすぎる。危ないどころじゃないわよ毛利探偵!

像から離れた場所にも、私たちのすぐ側にも落ちてるんですけど。人と同じ重さの布団が。20階以上の高さから落とされた布団が!

さすがは虐待常習犯。やることが乱暴!

と、人のこと言えない。私には言えない。だって私も今日、落とす系でやらかしてたんだもの。

 

 

その後、咲き乱れる毛利探偵の名推理の末

・・・謎は全て解かれた。

聡が私を庇って「俺が犯人だ」と言い出したけど、さすがにもう無理があるわ。

私ができることは1つだけ。

精一杯、悪女を演じて、聡に嫌われること。彼が他の女と新しい人生を送ってもらうため。

 

 

 

 

「まってるからな。戻ってくるまで、ずっとまってるからな」

 

 




いかがでしたでしょうか?
闇の男爵殺人事件。
復讐を果たすことはできたけど悔しいわ。これが本物の闇の男爵だったら毛利小五郎なんかに負けなかったのに。


敗因ね。やっぱり『愛』が足りなかったことかしら。
いつも聡にちゃんとネクタイを締めてあげていれば、本番で失敗しなかったに違いないわ。あとベルトも。

でも1つ嬉しかったのは、聡からの愛を感じることができたことね。
だって、彼が闇の男爵の衣装を着て私達の前に現われた時。
私達がどのエレベーターで何時何分何秒に降りてくるかも分からないのに、あのコスプレ姿でずっと待ってくれていたのよ。他のお客さんに見られたら大騒ぎだってのに。あんな暗い廊下で。
これはもう、“愛”としか言えないわよね。


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テレビ局殺人事件(コナン)

走る秒針、流れる彗星、飛び出す人形、壊れた鏡。
渇いた人の心には、苦労の謎が役に立つ。
今日の事件は一種の流鏑馬。走って撃ってまた走る。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




僕の名前は松尾貴史、人気番組「まる見え」の司会も務めるタレントさ。

だけど今、「まる見え」を降ろされる危機。僕がプロデューサーの諏訪ちゃんと考えた番組なのに、その諏訪ちゃんが突然降板を突きつけてきたんだ。視聴率を上げるために人気キャスターに変えたり、Hなコーナーを増やしたいんだと。

僕が手柄を譲って、しかも一生懸命頑張ってきたから今があるのに。

 

怒りを通り越して呆れるだろ。

裏切りは許せない。

 

 

だから僕は諏訪ちゃんを殺すことにした。

トリックを考えるのは得意なんだ。毎週考えてるし。「まる見え」の生放送中に殺す予定。

だけど問題がある。時間が無いことだ。来月早々には記者会見で僕の降板が決まって、その頃に殺したら僕が一番に疑われてしまう。だから実行は次回の放送中しか機会が無い。

 

なのにもう決まっちゃってるんだゲスト。

それは現在、新聞紙上を最も騒がせている言わずと知れた名探偵の毛利小五郎!

つまり殺人事件の天敵を避けられない状況にあるのさ僕は。

 

負けられない戦いが・・・ここにはある。

 

 

そして到来、決戦の日。今週もはじまりました「日本まる見え探偵局」。司会はご存じ松尾貴史とアシスタントの永井亜矢子、ゲストの毛利小五郎でお送りします。

諏訪ちゃんは4階のミーティングルーム。ここが殺害予定現場。

「下着ドロを捕まえろ」のコーナーを経て、盗聴器の話題に触れて、次の「犯人はお前だ!」の4分間のVTR中に殺しに行く予定。

 

だが盗聴器コーナー中、その事件は起こった。

僕の携帯を奪った毛利小五郎が

「女房?いーのいーのどーせ別居中! 今夜は熱い夜を過ごそーねー♡」

と、全国の浮気・不倫中の人達に警告するアドリブを炸裂させやがった。

 

生放送中ってことを忘れて、とんでもない放送事故をぶち込んできやがって。

しかも内容的にも倫理的にヤバいだろ、浮気・不倫の援護射撃するような炎上案件。

まぁ、炎上はしないか。僕が今からする殺人のほうがドデカいニュースになるわけだし。

 

でも、そもそも打ち合わせにない事するな。犯人が今から殺すところでしょうが!

 

 

そしてやっと始まった「犯人はお前だ」のVTR。スタジオのスタッフもお客さんも、全員がモニターに釘付けになるこの4分間が勝負だ。

 

まずはこっそりスタジオを抜け出して諏訪ちゃんに電話。4階のミーティングルームから見えるように自殺してやると伝える。

こうやって迫れば僕を止めるために窓から身を乗り出してくれるはず。無視されたら・・・詰み。

だけど僕は一流(は言い過ぎだけど)タレントの端くれ。その程度の誘導は迫真の演技で引き出してみせるさ。たとえ走りながらでも!

 

そしてスタジオから走って2分、防犯カメラに映らないで移動できる範囲内にある第7倉庫に到着。その窓から覗けば、諏訪ちゃんが身を乗り出した窓がまる見えになるって算段さ!

 

さぁ、今からが一番の勝負どころ。

なんせ時間が無い。4分のリミットの中で移動時間が2分。1秒で殺して、2分で帰らないとVTRが終わってしまう。

さらに言えば、僕が銃を向けている姿を諏訪ちゃんに見られてしまうと、さすがに驚いて部屋の中に逃げられてしまう。

だから狙いを定めている暇は1秒すらない。勝負は一瞬。

 

えっ? でも真下にいる相手を狙い撃ちするなら、そんなに難しい事じゃないだろって?

これが楽なら、『二階から目薬』ってことわざが『ほとんど無理』な事の意味で使われないさ。

まして僕がやるのは7階から4階。できるものならやってみろ!

 

だが僕は出来る! 

ハワイで知り合いに習ったからね! 

モデルガンでも、投げ捨てた写真の、標的の顔だけ撃ちぬくことすらできる銃の腕前なのさ。

ついたあだ名は『日売テレビの野比のび太』!

 

そんな野比のび太の腕で楽々撃ちぬいた諏訪ちゃんの眉間。

あとは拳銃を窓から落として部屋の中に入れ、諏訪ちゃんの死体がズルズルと崩れれば窓が閉まる。

あらかじめ部屋の壁に銃弾を撃ち込んで、薬莢も転がしておいたから、諏訪ちゃんはドアから入ってきた犯人に窓際に追い詰められて殺されたように見えるのさ。

 

あとは急いでスタジオに戻って、何食わぬ顔で「犯人はお前だ」の答え合わせをして・・・犯人は僕だけど。

『では、みなさんまた来週』すればほらこの通り。すごく忙しい完全犯罪達成。

 

あとはミーティングルームにスタッフを向かわせれば、僕も一緒に現場に駆けつけて死体確認(答え合わせ)できる。

「なに! 諏訪さんが血まみれ!」

スタッフからの電話で勝利確信♪ 急いで現場にダッシュ!

 

と、ここで想定外が1つ。エレベーターが来ない。

そりゃそうか、局内で死体が見つかったって騒ぎがあれば、エレベーターで現場に向かう局員が一杯。

そして今の僕の立場上、急いで現場に行かないわけにはいかない。そう、走らないわけにはいかない。9階から4階まで!

 

 

心臓が止まるぞコレ。

全力疾走坂の企画するテレビ番組・・・あれって非人道的な企画なんだな。今思った。

でもそんな疲れも吹っ飛ぶのが諏訪死体。こういう達成感があるから仕事も頑張れるんだよ。

 

 

その後、警察が到着して実況見分開始。

そこで話を聞かれた僕は涙を流して、知人を殺された悔しさをアピール!

普通の犯人が悩む演技力も、タレントの僕には朝飯前。

直後に来た報道陣の前でも楽々「犯人(僕)に対する挑戦状宣言」を叫んで、目の肥えた報道陣すら欺いてみせるのさ!

 

かつて、ここまで出来る犯人はいたでしょうか?

こんな完璧な犯人。捕まるわけが・・・

 

えっ? メガネの子供がいるだろ、だって?

いるよ。

僕のアリバイの4分間の空白を指摘してきたよ。賢い子だよね、将来が楽しみ。

 

えっ? 呑気な事言ってるって? 大丈夫さ。

だって往復に最低でも6分かかるって、毛利小五郎が身をもって体験してくれたからね。

 

ただ1つ残念だったのが、惜しいことをしたことさ。

だって、毛利小五郎の全力疾走なんて、絶対に絵になるじゃないか。数字取れるじゃないか。なのに誰1人、カメラ持ってそれを追いかけないんだもの。

みなさ~ん、ここテレビ局ですよ! 仕事しようね!

 

まぁおかげで警部さんも毛利小五郎も僕を容疑者から外す方向に進んでくれたわけで。

しばらく捜査に付き合って、あとは帰るだけ。

 

 

 

「待ってください松尾さん」

その時突然、現場にあるテレビが付いたかと思うと、そこに毛利小五郎が映し出された。

ん? こんな映像を撮った記憶は無い。

「困るんですよ。これから私の推理ショーをおっぱじめようというのに、あなたに抜けられては。犯人役の松尾さん、あなたにはね!」

な、なんだって!?

 

私の驚く横から入ってきた音声と証明スタッフ。どうやらこれは毛利小五郎からの中継らしい。

キリッと目を輝かせた警部さんが僕を擁護してくれたが、毛利小五郎は不敵に笑うと、僕のトリックを説明し始めた。

 

 

ヤバい・・・

もちろん、トリックがバレることがヤバいんじゃない。それはあくまでアリバイが崩れるだけであって、証拠になるわけではないから。

そうじゃなく、毛利小五郎の代わりに、拳銃を持って窓から身を乗り出したコナンくんという子供が「うわっ、落ちるぅ助けて!」と落ちそうになっていたからだ。

「お、おい毛利!何しとる!早く助けん・・・」

あぁ、諏訪ちゃんもこんな気持ちだったんだぁ。と呆然としている僕が反応に遅れている横で、諏訪ちゃんと同じ気分を味わった警部さんが急いで窓から身を乗り出した。

その時!

パシュ

数時間前の僕のように、撃ち放ったコナンくんのペイント弾が警部さんの側頭部に命中した。

 

 

あんな子供が

ヘッドショットだと!?

前にも言ったように、この狙撃の難しさは常識レベルでは語れない。

よっぽど僕みたいにハワイで誰かから習ってきた腕前じゃない限りは不可能なショット。

僕のことを棚に上げて言わせてもらうけど・・・

警察よ、この子を早く捕まえるんだ。

じゃないと、きっと将来、死体の山が築かれるだろう。

 

 

その後、毛利小五郎が決定的な証拠として、番組中の放送事故になった携帯の発信履歴を僕に突きつけ・・・

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? テレビ局殺人事件。
敗因ですか? そりゃ毛利小五郎の存在の他無いですよ。
証拠なんて、あのリダイヤルさえ無ければ言い逃れできたのに。

えっ? スマホには着信履歴の時間も表示する機能があるって?
スマホって何? 未来の携帯電話だって?
携帯電話は電源を切れば、リダイヤルの履歴が消えるんだけど・・・・そうか、未来の科学力は事件を起こしにくい時代を作るんですね。
科学の力ってすげー、ですね。


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コーヒーショップ殺人事件(コナン)

人の出会いは摩訶不思議。それより事件は謎めいて、あなたに会えてほんとによかった。
今日の事件はやることが多い。無事に間に合えトイレトリック。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




俺は殿山十三。やたらと狙われる名前だが、俺は狙う側だ。

浮気相手に結婚を迫られて女房にバレそうになって追い詰められているが、それでも狙う側の人間だ。

そう、浮気相手の命を。な。

 

 

 

殺害計画についてなんだが、犯人で『イベント中』だとかの非日常の時間に殺そうとする奴がいるだろ?

それじゃ駄目なんだよ。自分のホームで、日常の何気ないひと時に殺さないと、犯人の実力は発揮出来ない。

だから俺は行きつけのカフェ・ロイヤルのトイレで待ち合わせ、そこで強盗犯の犯行に見せかけて殺すのさ。

 

どうやって強盗に見せかけるって?

詳しい説明は面倒だから割愛するが、結論言えばここのトイレは絶妙に殺人に優しい親切設計。それにもし強盗じゃないとバレても、俺は容疑者から外れることができるんだよ。

 

 

っつうことでいざ本番。

カフェに入り浮気相手を確認。それを無視して、俺はいつも通りにマスターとダベりスタート。

浮気相手が「トイレどこ?」の合図でトイレに行ったら俺もそれとなくGO。

の、前に先に他の客・無精ひげの若い男がIN。若い男が出てきたら、続いて美人もIN。

なかなか俺の出番が来ない。

 

で、俺の後に店に来たチャラい兄ちゃんが「女なんて、ものにしちまえばこっちのもんよー!」つってゲスく笑い始めた頃にようやく俺の番。

さぁ本番だ。ここからは秒の仕事になるぜ。

 

 

・トイレに入ったら、まずは左手の薬指に“突き指の治療”として着けてきた包帯を解く。

・浮気相手が個室から出てきたら、その包帯で首を絞めて気絶させる。

・そうしたらすぐにナイフの付け根に包帯を巻きつける。

・次は心臓をナイフで一突きにして殺害。

・そうしたら強盗犯の仕業に見せかけるために、浮気相手の鞄を漁って中身をばらまいて、財布から現金を抜き取る。

・勿体ないが、盗んだ金をトイレに流す。頂戴したら俺の犯行だとバレるからな。

・個室から出て、トイレのドアの上のスキ間から死体を通して投げ入れる。

・すぐに包帯を引っ張ってナイフを引き抜く。

・そしてナイフから包帯を解いて、俺の指に再び巻きつける。

 

 

マジでやることが多い!

なのに、次のトイレ利用客に疑われるとマズイから、自然なトイレ利用時間のうちに済まさなければならない現状。

その間わずか40秒!

 

 

 

そして何食わぬ顔でトイレから退室。

はぁ、本当に忙しかった。もう腕が分身したんじゃないかって気がしたくらい。

水を飲んで一息つきたい。

だが・・・

「うわぁぁぁ!」

俺と交代でトイレに入ったチャラい兄ちゃんの悲鳴が響いた。

 

強盗犯とかに遭遇したレベルの悲鳴に、客の中で特に巨漢な俺が駆けつけないのは不自然。

行くしかねぇんだよ。息つく暇も無く。

したら案の定、腰を抜かした兄ちゃんの目の前で、トイレの下のスキ間から流れる赤い血。

 

計算外。

命を奪うトリックに使ったのが上のスキ間なら、犯人の休憩時間を奪うのは下のスキ間!

 

さらに計算外。

血に怯えることなくトイレに駆け寄るボウヤが店にいた。

しかもそのボウヤ、突然ジャンプしてドアの上のスキ間から個室の中を覗き始めた。

 

目の錯覚か?

トイレのドア、2mはあるんだけど・・・あのボウヤ、一蹴りで上に届いたように見えたんだが・・・

 

 

 

だがそれがミステイク。ボウヤの奇行と神業に目を奪われているうちに警察到着!

その間、わずか数秒。向かいのケーキ屋から会計を済ませてカフェに来るまでの時間よりも早く、規制線張ってんだよ警察が!

日本の警察、仕事が早ぇよ。

日本の未来は安泰! 日本のフューチャーは光り輝くシャイニング!

 

 

そして始まる事情聴取。まぁこのくらいは想定の範囲内。

で、しばらくして俺がトイレに呼ばれると、そこにはトイレ客とボウヤの姿が。

そして予想通りにトイレのドアのスキ間を通れるかの実験が始まった。

 

いや、この展開・・・つまり強盗犯じゃないことがもうバレたってことだ。

日本警察、優秀すぎるだろ。フューチャーシャイニング。

 

だが俺はその上を行く。

なんてったって、警官も「あんたはどーせ無理だ」と、俺がスキ間を通れないと決めてかかる始末。

容疑者は若い男と美人さんの2人に絞られた。

 

 

にしても、聞いてると美人さんはどうやら弁護士らしく、警察以上に捜査を主導しているようだ。(ついでに現場で遊んでるボウヤを叱りつけてる)

この人、俺の直前にトイレ入ってんだよな・・・ヤバかった。

 

 

 

でもまぁ無事に、若い男が一番怪しいということで、俺の完全犯罪は無事達成♪

となるかと思っていたその矢先!

ボウヤの「あれれ~こんな所に血がついてるよ~」から始まる急展開。

そこからトントンと俺のトリックがバレていく。

 

「こんな大役が務まるのは、大柄で腕力がありそーな、殿山さん! あなたしかいないわね」

弁護士先生のズバリな宣告に俺は一気に冷や汗。

だが、俺はちゃんと話を聞いていた。

今の所、証拠が一切提示されていないんだ。

そして弁護士先生もまた、この状況で逮捕したとしても証拠不十分。裁判になったら数時間で無罪放免と言ってくれた。

 

弁護士って、どっちの味方なんだろう・・・

なんて俺が苦笑いしているところに、ボウヤが襲来。

「おじさん、ラグビーで突き指しちゃったんだよねー」

子供らしい無邪気さに、少し心和らぐ。

そうそう、おかげでこうして結婚指輪ができねー

 

!?

やっちまってた。やることが多くて焦ってたから、包帯を巻き直す指を間違えてた。

そう、わざわざ巻き替えたこの包帯には、浮気相手殺した時に血が付着してんだよ。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

ところがどっこい、観念しないのが俺! 往生際が悪い方が長生きできる!

ところがどっこい、弁護士の急な一本背負い! 弁護士は誰の味方なんだ。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか?
コーヒーショップ殺人事件。


最後の最後で油断したのが痛かった。結婚指輪とか言い出して印象強くしたせいで、包帯を巻く指をボウヤに覚えられちまったのが敗因になって。



そもそも結婚指輪をはめる指が左手の薬指じゃなかったら、勝ってたんだよぉ。

なぁ読者さんよ、この中で一番、結婚相手を大事にする素敵な大人は誰だ?
どうして結婚指輪は左手の薬指にはめるのか知ってるか?


知らないって?




ボーっと生きてんじゃねぇよ!




そんな事も知らずに、やれ『うざったい男を寄せつけない虫よけのために、別居中でも結婚指輪をはめてる』だとか『結婚指輪をはめていないことに気付かない夫とはもう限界』と嘆く日本人のなんと多い事やら。

しかし、トノちゃんは知っています。


結婚指輪を左手の薬指にはめるのは



『そこに愛があるから!』




詳しく教えてくれるのは、【劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿】の作者である三柱努先生。




舞台は古代ヨーロッパ。
当時、結婚というのは新郎が“新婦のお父さん”から新婦を“買う”という仕組みで、その代金として指輪を“新婦のお父さん”に渡すシステムになっていました。

皆さんも思ったことでしょう。
『そこに愛はあるんか? 信じられる愛はあるんか?』と。

同じことを思った当時の人々の間で、愛の証として結婚指輪を贈りたいと考えた人たちがいました。
そこで彼らは、当時から“愛情”を意味する“左手の薬指”に、指輪をはめて贈ることで、愛のある結婚をしようと始めたのです。
それが現在にも残る『結婚指輪は左手の薬指』という風習となったというわけです。


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電脳山荘殺人事件(金田一)

私は琢磨ゆり。

元ヤンだった私を更生させてくれた婚約者・榊原先生を殺した奴らに復讐するため、奴らの集まるミステリー・サークル『電脳山荘』のオフ会に参加するわ。

そう、仇は【全て殺す】。それが私の【殺害計画】

 

 

ここで1つ、私は宣言するわよ。

トリックは使わない!

 

えっ? 使えよって?

トリックを使った殺人が日本で1年間に何件起きていると思ってるの?使わない方が正常なのよ。

それに聞いた事ない? 『トリックは、最期はフィジカル』って。最後に体力頼みになるなら、結局は使わないのと変わらないでしょ。

(私にトリックを考える学が無いのが本当の理由とか思った人、残念。更生したヤンキーは、国立大学に入れたのよ。頭イイの私)

第一、今回の標的は全員がミステリーサークルのメンバー。下手にトリックで勝負を挑んだら負ける可能性だってある。最初から相手の土俵で戦わない。それが正解でしょ。

 

 

 

さて、話は戻して、殺す予定の7人を紹介するわ。

一流商社マン【僧正】

一流大学生【乱歩】

一流大学生【スペンサー】

新人女性漫画家【ぱとりしあ】

天才ミュージシャン【シド】

天才医大生【ワトソン】

ちなみに標的の1人【アガサ】は殺害済み。今回私はこのアガサに成りすます。

 

登場人物が多すぎる? 1人ずつ減らしていくから心配しないで。

 

 

 

そして本番当日。ロッジ・シルバーウッドで開催されるオフ会に参加した私。

ちなみに前の日に恋する乙女【スペンサー】から『乱歩と逢引きしたいから、アガサの名前を譲って』って頼まれたわ。どうやら【アガサ】と【乱歩】は付き合っていたみたい。

ネット上で恋人同士? 私にはよく分からないけど。

 

私はとりあえずOKの返事を出しておいたわ。どうせ2人とも殺すから。映画でもよくあるでしょ? 殺す寸前の敵に「死ぬ前にタバコが吸いたい」ってリクエストを叶えさせてあげる。それよ。

ということで、2人には時間をズラしてロッジに来てもらうように伝えてワンナイトを用意しておいたわ。

 

 

一方、私は他のメンバーと初顔合わせ。

ここでの言動は慎重に行かないと、私が偽アガサだとバレてしまう。

相手はミステリーオタク達・・・心配だわ。

そんな不安な私に待っていたのは「アガサさんがこんなに可愛い子だと思わなかった」とべた褒めの嵐。

これが仇たちじゃなかったらなぁ・・・

 

そんな苦痛な時間がしばらく経過。外も猛吹雪になりかけてきたわ。

あとは各々が割り振られたコテージに戻ったら、1人ずつ殺していくだけ。

この調子なら問題なく殺人できそう。オタクたちも鈍感だし。

よっぽど、これから来る【スペンサー】と【乱歩】が、名探偵でもないかぎりはね。

 

 

ピンポーン

 

 

その時、ロッジのチャイムが聴こえてきたわ。

!?

「おっ、噂をすれば影かな?」って、突然の来客に皆は歓迎ムード。

だけど私としては予想外。逢引きのためにスペンサーと乱歩には、もっと遅く来てって言っておいたのに。

 

「いや~、すいませんねぇ。俺ら、スキーしてて迷っちゃったみたいで」

来客は吹雪の中で遭難したスキー客の若いカップルだった。もちろんスペンサーでも乱歩でもない。

 

 

「俺ぇ金田一一っす。で、こいつはその」「友達の七瀬美雪です」

 

皆、この珍客に唖然としていたわ。このカップル、遭難多発地帯を抜けて迷い込んできたんだもの。

すごい幸運。

きっと死神に嫌われているのね。

 

 

それから私たちはしばらく、このカップルを交えてゲームをして過ごして、時間が来たから各々のコテージに分かれたわ。

私だけは彼氏の【乱歩】が来るまでロッジで待機することになったけど、あとで【スペンサー】と交代することになるからすぐにロッジを抜ける。

と、その前に電話線を切っておくわ。警察呼ばれたらアウトでしょ? そのためにね。

にしてもこういう人里離れたキャンプ地で連絡手段遮断するのって、ジェイソンしてるみたいでなんか楽しい。

 

 

さぁ、ここからが本番よ。

まずは【僧正】の所に行ってサクッと殺害。

で、そろそろイチャイチャタイムは止めるようにロッジに電話して、コテージに戻ろうとしてる熱々【スペンサー】をサクッと殺害。

 

正直言うと【スペンサー】とは初対面だから、『本当にこの女の人、スペンサーなのかな?』って思ったけど・・・まぁ間違いないわよね。

だってこの人、金田一くん達と同じように遭難してきた人だったら、こんな薄着なわけがないもの。

大丈夫大丈夫。

 

 

それにしても寒い!

どうしてこんな吹雪の時期に山奥のコテージに泊まろうとするかなぁ?

普通にカラオケでオフ会でもいいじゃない。

殺す側としては、すぐに警察が来ない状況だからありがたいけど・・・やっぱ寒いから全然ありがたくない!

 

 

コテージに私は温かい飲み物を用意。お湯が沸くまでの間に、お電話を3本。

【僧正】が死んでることを皆に知らせて恐怖を煽るために、発見者を3人用意。【ワトソン】と【乱歩】と金田一くんに「【僧正】コテージに来てね」って。もちろん声はパーティー用のボイスチェンジガスを使ってね。じゃなきゃバレちゃう。

えっ? それはトリックじゃないのかって? 

いいえ、ただの工夫よ。

 

 

さて、あとは皆が怖がるまでゆっくりドリンクタイム♪

ん? ところでこのボイスチェンジって、どのくらい続くのかしら?

 

 

 

とうおるるるるるるるる

 

 

 

その時、電話かかってきたわ。

プッ

 

電話は【僧正】の死体を見つけた金田一くんから。皆で集まろうって話になったわ。

う~ん、そうか。そうなっちゃうのかぁ。殺人事件起きたら、皆で集まって身を守る流れになっちゃうのかぁ。仕方ない。

その後、同じく死体を発見した【乱歩】に電話が代わったわ。

 

これいい流れじゃない? 電話口で【乱歩】だけコテージに残るように仕向けることできないかしら・・・

結果:できた!

金田一くん招集のロッジに行く前に、【僧正】コテージに残った【乱歩】をサクッと殺してきたわ。

 

ただ1つ気になるのが、【乱歩】を刺した時に私を見て「ぱとりしあ」って呼んでたわ。

?????何故?

まぁいいや。

 

 

その後、ロッジに集まった生存者たち。私を含めて5人。

金田一くんと【ワトソン】が、【乱歩】がまだ来ていないって言い出して、死体を見つけてきてくれたわ。

【乱歩】は発見時にまだ少し生きていたらしく、死に際に「・・ぱ、と・・・」って言って死んでいったみたい。

 

 

???

 

 

ますます頭にクエスチョンマーク。

でもこの【乱歩】奇行のおかげで(正確には「ぱと」しか言っていなかったみたいだけど)殺人犯の容疑は【ぱとりしあ】に向いてくれているわ。

金田一くんは「ぱとりしあさんが犯人とは断定できない」って言ってたけど、【ワトソン】「他に“ぱと”がつく言葉があるか?」って食い下がって。

あるわよね? 『パトカーで逃げた』とか『パトロール中に刺された』とか。

 

(後で判ったことだけど、【乱歩】はオフ会に参加した女性が2人だと認識していて、【スペンサー】を女性だと思ったから、私のことを残る女性の【ぱとりしあ】だと思ったらしいわ)

 

 

 

まぁいずれにせよ、私は疑われず。

しかも【僧正】殺しの時の皆のアリバイを、金田一くんが調べていたみたいで、私にもアリバイありってことになったわ。

 

あるの? 私に・・・

話を聞いてみると、【乱歩】が死ぬ前に事件発生時に【アガサ】と一緒にいたって言ってたそうなの。

・・・・???・・・・!?

入れ替わってたの思い出した。そうだ、イチャイチャタイムをプレゼントするために【スペンサー】と入れ替わってたわ私。

だから私に予期せぬアリバイが生まれていたのよ。

 

え? すごくない この状況? 言いたい! 今すっごい事が起きたって 誰かに言いたい!

しかもこの偶然の産物を金田一くんが「巧妙に仕掛けられたアリバイ工作トリック」って褒めちぎってる。

 

でも、トリックだってなると、私のアリバイが無視されることになっちゃうわけで・・・案の定、【乱歩】殺しのほうのアリバイが無い私とワトソンが疑われることになっちゃったわ。

ぬか喜び!

 

だけど、そこを救ってくれるのが金田一くんの屁理屈。

「この事件は別の角度から見ないと、とんでもないことが起こる気がするんだ。まだこの殺人は続くってことさ」

うん、論点がズレてる。金田一くん、たしかに言う通り、私はまだこれからも殺人を続けるつもりよ。でも今、アリバイについて話してたわよね? まぁ助かったからいいけど。

 

 

 

その後、一夜を明かして翌日。

風が無いから吹雪じゃないけど、雪は相変わらず。すっごく寒い。

でもこれは私にとっても好都合。昼間に殺しに回るのは流石に目撃されちゃうから、夜まで皆コテージ付近にいてくれるから。

まぁ途中、【シド】が「殺人犯と一緒の部屋にいられるか!俺は自分のコテージに戻る!」って、私でも聞いた事のあるフラグを吐いて出て行ったりしたけど。特に何事も無くいつの間にか夜・・・

 

ガシャン

夜、突然【シド】が何者かに襲われるハプニング発生!

もちろん私じゃないわよ。

えぇぇぇぇ。誰? 怖いんですけど。まさか本物のジェイソン的な人!? このコテージの人を、全て・殺しに来たってこと!?

(後で判ったことだけど、この時【シド】を襲ったのは【ワトソン】。過去を探られたことに怒っての犯行だそうよ)

 

っていうハプニングだったけど、意外と私に好都合。

ますます「自分の身は自分で守る」ムードになって、皆それぞれコテージに散ってくれたわ。

どうして人ってパニックになると、犯人の為に殺しやすくなってくれるのかしら。逆に怖いわこういう展開。

 

なんてこと気にしないで、【ぱとしりあ】の所に行って毒ガス攻撃!

これで仇は残り2人♪

 

 

って思った矢先・・・ついにその時が来ちゃったわ。

コテージに集まった皆の前で、金田一くんが高らかに宣言したの。

 

 

 

「謎は全て解けた」

 

 

 

金田一くんは【ぱとしりあ】が残したデータを見て、私の婚約者の殺害方法を完璧に解き明かしたそうなの。「あんたら最低だよ」って怒りに声を震わせてね。

その形相にガクブルな【ワトソン】と【シド】。

私としては内心複雑。金田一くんが婚約者の死の真相に辿り着いてくれたのは嬉しいけど、私まで一緒くたにして叱りつけてほしくはないから。

 

この話を皮切りに、急に咲き乱れる“私の犯罪”についての推理。

まるで私の横で見てきたかのように。

 

私の知らなかったことも。

そもそも私の計算外だったことも、まるで私の仕業みたいに。

そして、仇たちが犯した完全犯罪まで全て。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

一応、最後に仇の2人と金田一くんたちを道連れに特攻毒ガスを炸裂させようとしたんだけど・・・

「オッサン!」「剣持警部!」

金田一くんを心配して来てくれていたお巡りさんにアッサリ止められちゃったわ。




いかがでしたでしょうか?
電脳山荘殺人事件

敗因は、やっぱりトリックに頼らなかったのに、トリックが勝手に生まれてしまったことね。
一応、殺し方はパワー頼みのゴリ押しでいったんだけど・・・


あと、私が連行される時に【シド】が謝りに来たわ。自首するって。
でもね、謝るも何も、この事件は終わっていないわ。

だって、匿名で誰かを遊び半分に殺している人や、殺されてる人・・・・
そんな私と同じ状況にいる人は、まだまだたくさんいるんだから。

こんな話をしている今も・・・何処かで誰かが”誰かの暇つぶし”に殺されているのよ


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園子のアブない夏物語(コナン)

アリバイ、暗号、トリック、取引。ミステリアスな死神と犯人
今日の事件はコナンが空気。蹴撃の貴公子登場だ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




僕は道脇正彦。

1年前に茶髪のチャラチャラした彼女にひどいフラれ方をして、そういう女を見るとハラワタえぐりたくなる大学生さ。

実際、彼女はグサッと殺害。

それでも気は収まらず、似た女をナンパしてはグサッと。

意外とアシがつかないもので、今日4人目をグサッと。

 

 

と、グサッとライフに終止符が打たれそうな危機が突然来た。

アベックのイチャコラ中を盗撮しようって不届き者がいたのさ。しかも例のごとく茶髪のチャラい女。こういう奴ってどいつもこいつも、ろくでもねぇな。

 

 

 

 

ということで、次の標的はツレに黒髪の娘やメガネの子供がいる茶髪女だ。

いつものようにナンパして殺すだけ。なんだが今回は少し勝手が違って撮られた写真を回収しなきゃならない。しかも俺の顔を見られていた場合はナンパどころの騒ぎじゃない。

ここは慎重に・・・時間をかけて・・・

 

 

なのに杞憂! 秒でコロッと!

茶髪女って、天使とか女神とかの言葉に弱いったら弱い。

でも良いところで、態度の悪い店員がムードぶち壊し! 

いまいちな踏み込み・・・と思いきや、コイツのおかげで女たちの泊まってる旅館が判明!

いい感じ・・・となったところで、ツレの娘の彼氏である探偵に『衝撃的な写真』を見せるってことが判明。

 

ギリギリ! 昨日の犯行時に撮られてた写真、探偵に見られるところだったわけだ。

あとはその写真を消して、ついでにこの女を殺すだけ。

と、思ったところに態度悪い店員が再乱入! ムード再ぶち壊し。こいつ、俺みたいに茶髪に恨みでもあるのか?

と、思った矢先に死体発見の一報も乱入。茶髪女の警戒心も急上昇。盗んだり殺したりしくくなってきた。

と思いきや、カメラを旅館に置いて夕飯に出かける話に発展して、一転して盗みやすい展開に!

 

 

 

良い展開と悪い展開の入れ替わりが早すぎる。人間万事塞翁が馬。

 

 

 

そして夜、女たちを旅館の前で待たせている間に、窓から部屋に侵入してカメラを回収へ。

なんだけど・・・女たちが泊ってる部屋が分からない・・・

いや、分かる! だって空の部屋は明かりがついていないんだもの!

 

 

でもなかった。暗い部屋、いくつかあったわ。

ようやくたどり着いた正解の2階部屋で荷物漁りをし始めたところで、まさかの茶髪女が部屋に戻ってきたんだから驚き。

いや、そっちも驚いたかもしれないけど、こっちも驚いてんだよ。

仕方ない。盗みと殺しの順番が逆になるが、ナイフでグサッと!

 

 

ガブッ

 

 

痛ぇ! と叫べたらどんなに楽か。揉みあっている最中に噛みついてきやがったんだこの茶髪。どんだけ度胸あるんだ?

でも、力では俺は負けない。

だが、数では俺は勝てない。

ガラッと開いた部屋の戸。ツレの2人が戻ってきたからさぁ大変。仕方なく退散だ。

 

 

なんかいつもと違って全然スムーズにいかないな。

えっ? 死神と遭遇してるなら、これでもスムーズなほうだって? 何言ってんの?

 

 

だがこの失敗が転じて福となるのが俺。

外食が危険だってことで旅館でとることにした夕食が、“泥棒が出る旅館だ”と言いふらされないようにと無料になり、しかもそれが美味いったら美味い!

んだが、またここに来て悪い展開が。盗んだカメラのフィルムが空で、昼間に既に現像されていたことが判明! 無駄足!

しかも現像された写真はアベックばかりで、やっぱり俺の推理が当たっていたことも判明。例の写真はやっぱり抜き取られていた。

 

 

 

そして翌昼。やっと誘えたレストラン。

茶髪女は昨夜眠れなかったからと車の中でお休みという好都合発生。

ちょうど駐車場も坂道で、他に車が停まっていないことも好都合。エアコンつけっぱなしにしておけば、サイドブレーキかけずにしておいて、氷をタイヤに挟んでおけば、あとは自動でガケ下に真っ逆さま!

 

となるはずが、ツレの女の子がまさかの怪力キックで車のガラスをぶち壊して、茶髪女を救っちゃってんだから、全然スムーズにいかない。

しかも警察到着。

で、これでもやっぱ“スムーズなほうだ”っていうんだろ?

 

 

「では、詳しい話は署で聞かせてください。さぁ車に」

「え?車。あ、あの、今、ちょっと車に乗りたくないんですけど。なんか怖いし」

茶髪女がパトカー拒否してくれたおかげで。

しかも、不審者が僕らの後を尾けてきてくれたおかげで。

 

 

 

なんと、林の中で

二手に分かれて

祝・茶髪女と2人きりになれました!

 

 

 

ハイ拍手!

 

まぁ、サンダル履きだったから枝を踏んで痛い想いしたけど。

 

 

 

「いやあああ」

 

 

 

泣き叫ぶ茶髪女にマウント取って、ナイフを掲げることに成功!

なんだ、行けたじゃないかここまで。死神とか言って怖がらせやがって。

さぁズブッと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん? 敗因は? 何それ。どうしてそんなことを今聞くんだ?

 

ん? なんか嫌な予感が

 

なんか、もう俺のピークが過ぎたような・・・

 

 

 

 

 

 

 

話を戻そう。

僕が突き刺したナイフはズブッと肉に沈み込む感触を手に伝えてきた。幾度も味わってきた皮膚の断続性を断ち、肉を掻きわける間隔。

否。この時は違った。

狙った人体の内臓部分のネットリとした柔らかさではない。刃の側面に吸い付いて捉えてくるような筋肉の感触。

それは茶髪女の腹なんかじゃぁなく、あの態度悪い店員の腕だった。

ドッ

瞬間、僕の顔面に飛んできた店員の強烈なエルボー。一瞬にして視界が奪われ、鼻の折れる痛みが遅れて脳に突き刺さり、そこから伝播する強い衝撃に、僕の体は軽く2メートルは吹き飛ばされた。

「大丈夫ですか?」「だ、大丈夫ってあなたの方が」

店員の心配する声に茶髪女が唖然とする中、僕は近くに落ちていた手ごろな木の棒を振り上げ2人に襲い掛かった。

店員は僕の強襲に気づくことなく、「ああ、これですか」と刺さったままのナイフに視線をやっている。

僕のスイングが、その隙だらけの顔面を捕らえ・・・いや、伝わる感触は固く細い鉄を捕らえただけだ。店員は瞬時に棒をさけ、その眼鏡だけを砕くように避けたのだ。

僕は一心不乱に棒を振り回すが、店員は後ろに飛び退きことごとく避けていく。

刹那。僕の間合いに店員の手が飛び込んできた。着地のバネを利用し、瞬発的に飛び出したのだろう。

その手が俺の頭に掴みかかったかと思うと、次の瞬間には膝蹴りがゴッという音よりも早く僕の顎を捕らえていた。

そしてほぼ同時に・・・同時と錯覚するほどに素早く飛び込んできた店員の回し蹴りがドシッと俺の顎を砕いた。

 

 

 

 

 

こうして、意識は全て飛んだ。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? アブない夏物語・・・・殺人事件じゃないんだな。


敗因は店員以外にないだろ。
最後の格闘シーン、俺の渾身の車トリックより尺長くないか?


いや、なるほど。ずっと言われていた意味がようやく分かった。
最初から近くにいたっていう死神、コイツのことだったんだな。


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奇術愛好家殺人事件(コナン)

ピカっと光ってシャキッと貫通。動き出したら止まらない!
今日の事件はハンドルネーム。全員分は覚えられない。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




私は先月、手品ショーの最中に事故死した日本の脱出王・春井風伝の孫娘・田中貴久恵。

おじいちゃんの死の原因は、プライベートで正体を隠して参加していたチャットサークルのメンバーに良い所を見せようと無理をしたから。

そう、ただの不慮の事故。

なんだけど、そのメンバーのうちの2人・西山さんと浜野さんの嘲笑コメントがどうしても許せなかった。

もう殺さずにはいられないほどにね。

 

 

そういうわけで2人を殺すわ。

舞台は奇術愛好家連盟のオフ会が行われる雪山のロッジ。吊り橋1本だけしか道が無い陸の孤島でね。

この橋を燃やして落とせば、トリックし放題の舞台の完成よ。

 

 

 

・・・どうやって?

オフ会が本格的に始まる前にこっそり抜け出して、急いで走って火をつける? 怪しいなんてもんじゃないわ。

つまり、メンバーが揃ってから、橋に遠隔で火をつけるリモコンがいるってことよ。

 

私にそんな技術は・・・・無い。

だけど、そんなリモコンは・・ある。だって私の実家は春井奇術団っていう手品師一家。そういう手品用品は簡単に手に入るのよ。

 

 

 

ただ1つ心配なのが、モチベーションが続くかどうか。

ハッキリ言って不謹慎な失言に対する殺意だから、2人殺すトリックに頭悩ませている間に殺意が薄れるわ。脳内殺人の時点で満足しちゃうのが普通。

だから今回、私は2人中1人をストレートに撲殺して、もう1人の殺人にだけ手品師一家の名に恥じぬトリックのオンパレードで殺すことにしたわ。殺意モチベーションを維持できるように。

無理やりじゃないかって? うん、自分でもそう思う。

だけど、何故か不思議と、そんな気分になっちゃっているの。

死神的なのに背中を押されているような、そんな感じなのよ。

 

 

 

ということで当日。

まずは杯戸町のアパートに住む西山を撲殺! パソコンのモニターに「まずは一人目 影法師」って残して、ついでに電話を留守電にして退出。

ちなみに影法師ってのは、私の裏アカ。チャットサークルの架空メンバー兼、事件の容疑者にするの。

 

 

 

続きまして雪山にて。

まずは吊り橋に灯油を撒いて、見えない所に遠隔操作吊り橋バーニング装置をセット。

灯油臭さも、外気温が寒いから臭いが抑えられて“ちょっと変な臭い”程度になったわ。それこそ風邪引いて鼻水出してる人には全く分からないくらいの匂いよ。

気にしない気にしない。

 

 

さて、到着したらメンバーと初顔合わせ。

私「イカサマ童子(おじいちゃんが使ってたハンドルネーム)」に、意外と抜け目ない「レッドヘリング」土井塔くん、「無口な腹話術師」の荒さん、「イリュージョン」黒田さん、無口なバイトの須鎌くん、憎き浜野のネカマ「消えるバニー」。

そして最後に来たのは、オジサンふりの女の子「魔法使いの弟子」こと園子さんと、そのお友達の蘭さん。

その付き添いに来ていたお父さんと風邪引きボウヤはそのまま帰宅するみたい。

 

この2人がちゃんと帰ってから、吊り橋燃やさないといけないわね。遠隔バーニングにしといて良かった。

頃合いを見てバーニング!

アーンド、浜野殺害トリックの下準備。浜野に花を持たせる奇術を2人で打ち合わせる。

あとは電話線を切断。

そしてお風呂を沸かして準備OK。

 

 

えっ? 最後の要らないって?

分かってないわね。手品ってのは一見、不必要な行動が方程式に組み込まれているものなの。ようは“黙って見てなさい”ってことなの。

 

 

 

さて、夕ご飯タイムが終わったらいよいよ本番。

なんだけどその前に、ロッジの前で風邪引きボウヤ・コナンくんが倒れてた!

しかも「早くここから逃げろ」って。

 

・・・・これってまさかだけど、コナンくんを吊り橋バーニングに巻きこんじゃった?

 

ゴメン! 本当にゴメン! 火傷してるし風邪でダウンだし・・・

なんだかこの子の弱った姿を見ていると、謝意が強くなってきたせいか、殺意がどんどん消えていく感じがするわ。

 

 

色々準備したけど、浜野を殺すの、やめようかしら・・・

 

 

 

なんて後悔しているところに、医大生の土井塔くんが解熱剤を持ってきてくれた。

もう大丈夫。良かった。

不思議だけど、この子が助かるおかげで、殺意のモチベーションが戻ってきた気がするわ。

 

よし、殺れそう。

 

 

 

さぁ今度こそ本番。夜の飲み会の宴会部長をハプニングで浜野になっちゃうように仕向ける手品をするの。

私はサクラとして立ち回って、風呂焚き係になるようにね。

思い出した? さっきお風呂を沸かしておいた理由がコレ。

ここのお風呂は薪で沸かすから時間がかかって拘束時間が長い。

だけど先に沸かしておけばその時間を殺人に充てることができるでしょ?

 

ということで浜野をサクッと殺害!

さぁ本番開始ね。ここからが本当の本番。不可能殺人のスタートよ。

まずは二本のボーガンの矢の後端に輪を作った長い紐を通して、紐の両端をベランダの手すりに結ぶ。後は矢を一本ずつ木に撃ち放つ。

紐がヨットのマストに張られた二枚の帆を形どる様にして、浜野の死体のベルトに紐をくくってベランダから流せば、ロープウェイみたいに裏庭の中央に落とせる。

最後にベランダに結んだ紐を切って、ボーガンを発射すれば証拠は楽に隠滅。

 

 

複雑なトリックだって? 私は平気よ。

やることが複雑だけど大丈夫。そう、奇術師ならね。

というより、これってそんなに複雑なんですか? 

むしろ退屈すぎるせいかお肌カサカサよ。寒くて乾燥しているせいって可能性も否定できないけど。

 

 

 

その後、飲み会の時間。皆が残りメンバー(私と私が殺した西山)の不在を話題にあげ始めた頃。

「来ないよ。その人殺されたよ、自宅のマンションで」

寝起きのコナンくんが物騒なことを言って飲み会の席に現われたわ。何故この子、そのことを知っているの!?

って一瞬ビックリしたけど、どうやら事件がラジオのニュースになっていて、それを聞いてコナンくんは急いでこのロッジに戻ってきたみたいなの。

 

ますますバーニング確定。ほんとゴメン。

しかも話の流れで浜野の部屋に行くことになっちゃって、みんなで死体発見に至ってしまったから、子供に死体を見せることになってトラウマ植え付け確定・・・ほんとゴメン。

土井塔くんが浜野の死亡を確認して「不可能犯罪」って断言してくれたけどほとんど上の空の私。

 

 

それから『周囲に殺人鬼がいるかもしれない』って、ジェイソン的な展開を危惧したメンバーで、身を守るためにしばらく皆で固まって過ごしたわ。

さて、この辺でトリックの後片付けね。トリックに使ったボーガンの矢を回収する口実を作るトリックを発動させるわ。

 

 

まず、寒くなってきたからと上着を取りに何人かで私の部屋にGO。

スキを見て窓ガラス割り装置を作動させて、背中越しにボーガンをショット! もちろん誰かに当たらないように巧みにね。

さらに追撃の風呂場の窓ガラス割り装置も作動! 風呂場の鏡にあらかじめボーガン打ち込んでおいたものを添えて。

これで“誰かが外からボーガンを撃ってきている”って状況を作れるから、とどめに私が率先して『犯人出てこいや!』って言えば、自然な流れでボーガンの矢の回収のために森の中に入れるってわけよ。

まぁ1つ計算外だったのが、木に刺さった矢が抜きにくかったこと。引っ張った勢いで尻もちついちゃった。

 

 

その後、捨てておいたボーガンを荒さんが見つけてくれたから、「もう狙われる心配がない」ってことで、穏やかなムードになってきたわ。

コナンくんがみんなのアリバイや現場の状況に興味を持って探偵ごっこを始めたけど、すぐに飽きちゃったのか冬休みの図工の宿題をし始めたわ。

 

 

いい感じの平和♪

 

もつかの間、急にコナンくんが居なくなっちゃったの!

「うわぁああああ」

そしてロッジに響き渡るコナンくんの悲鳴! 一体、何が起こっているの!?

 

 

すぐに2階でコナンくんは見つかったけど、同時に割られる窓と射られるボーガンの矢!

そしてコナンくんが「犯人は外にいる!」って飛び出して行っちゃった。追いかける私たち・・・って、なんかデジャヴ・・・私のトリックと同じ流れ・・・

 

 

そんな私の冷や汗に呼応するように、「ふにゃ」と崩れる園子ちゃん。

急に“血塗られた奇術ショーを再現する”って言い始めたわ。

・・・・なんだって!?

 

 

そして蘭ちゃんをアシスタントに、私のトリックを再現し始めたわ。

現場のベランダからボーガンを構える蘭ちゃん・・・危ない。

「みんなどいて!」って言ってるけど、素人に扱わせる代物じゃないのよボーガンは!

一応、経験者っぽい土井塔くんが代わりに再現していたから、私たちと蘭ちゃんに怪我人は出なかったけど、園子ちゃんってかなり危うい橋を渡る子みたい。

 

 

 

それからロープウェイトリックを再現しきった園子ちゃんは、不敵にこう言ったわ。

「そうでしょ? 犯人の田中貴久恵さん」って。

うん、たしかにそう。だけど、私にも言い分があるわ。

 

 

さっきのデジャヴの部分・・・コナンくんにやらせたわよね? 実際にやった私には分かる。あの“背中越しボーガン”の超危険技、奇術団出身の私だからできる技よ。

それを小学生にやらせたっての!? 

クレイジーにもほどがあるわ!

 

 

 

その後も咲き乱れ続ける園子ちゃんの名推理。

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた

 

 

 

んだけど、さらなる衝撃展開が発覚!

土井塔克樹はアナグラム。どいとうかつき⇒かいとうきつど

なぜか怪盗キッドが現れて、ハングライダーですぐに帰っちゃったの。

 

なんか・・・余韻のすべてを持っていかれたわ。

 




いかがでしょうか。奇術愛好家殺人事件
犯人の田中貴久恵です。
田中貴久恵です。

なんで2回言ったかって?
だって、私の名前なんて誰も覚えてないでしょ?
『土井塔克樹が怪盗キッド』のインパクトが強すぎて、私の名前なんて誰の印象にも残らなかったのは分かっているからよ!
そうじゃなくても、今回はおじいちゃんの『春井風伝』とか、『黒羽盗一』とか『九十九元康』とか『真田一三』とか『木之下吉郎』とかのビッグネームが出すぎているから・・・余計に田中なんて地味なのに。



敗因は何かって?
名前よ。

『いやいや、トリックの敗因を』って無粋な事言ってる貴方。
2回言うわ。

敗因は名前 
名前のインパクトが弱すぎたこと。それだけよ


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鳥取クモ屋敷の怪(コナン)

流れる水には形がない。そよぐ風は姿も見えない。どんな事件も推理は自由!
今日の事件は光か闇か。「死ね」はDEATHかDIEかKILL。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




僕はロバート・テイラー。アメリカ人。日本の自然をこよなく愛するカメラマンです。

三年前に鳥取で土砂崩れに巻き込まれ重傷を負った僕を看病してくれた武田家の長女・美沙さんに求婚しに帰ってきました。

ところが彼女は三年前に自殺していた事実が発覚。

 

 

しかもそれだけじゃなく、調べれば出るわ出るわ。

・何故か美沙と妻をいびり殺した父親

・それを見殺しにする家族全員

・そもそも父は麻薬の密輸に手を染めていた

・頻繁に家に出入りする男が麻薬中毒

・村の伝説の祠を壊して蔵を立てる狂気

 

 

 

とまぁ、どれか1つだけでも殺人事件起こるほどの闇を抱え放題の一家だったことも発覚。

特に上3つはアメリカ人としては許せても、テイラー家としては許せない所業。

 

 

我ここに、復讐の蜘蛛御前となり致す。

ということで、まずはこのショッキングな事実を、美沙を愛する僕にヘラヘラと告げてきた麻薬中毒をサクッと絞殺。

 

 

 

次に、後で殺す予定の父親(正確には叔父)の武田信一のためのトリックを蔵にセッティング。

そして、この家に三年振りに訪れたことを強調するために、テキトーに第三者を呼びつけておく。これは探偵あたりでよくて、実力の無さそうな『大阪の少年探偵』に金と手紙を送りつけて召喚しておく。まぁ目撃者役みたいなもんさ。

 

えっ? ソイツは止めとけ?

何が? 少年探偵ってただの未成年でしょ?

ロイ・ブラウンじゃあるまいし。子供なんて怖くないさ。

(しかし後に僕はこの時の忠告に耳を傾けなかったことを後悔する)

 

 

 

 

さぁここからが本番さ。

まずは武田家に続く森で例の少年探偵を待ち伏せ。・・・うん。会えない可能性の方が普通に高い。いくら三年前にしばらく滞在したからって、土地勘があるわけじゃない。

ホームじゃないんだむしろアウェイ。

だが、僕ならできる! アメリカ人は、やればできる子なんだ! Yes we can!

 

と、自分を励ましていると・・・「オレが寝てるからゆうて、やらしーマネすんなや」「そら女のアタシのセリフやんか!」と喧嘩しているカップルに遭遇。

こんな森の中に? これ・・・妖怪じゃないか? この地方に伝わる妖怪・蜘蛛御前!?

って、こんな遭遇の仕方する妖怪だっけ?

 

 

いやいや、よく見りゃ例の少年探偵くんじゃありませんか。Yes I did!

どうやら迷子、僕も迷子の設定。武田家に辿りつく要素がない。

 

 

 

詰んだ。

 

 

 

と、思いきやその時。通り過ぎる軽トラが。ご乗車は武田家の三男さんと、武田家が正式に依頼していた探偵ご一家。神は我を見捨てなかった。Yes I did!

って、あらら。第三者来るなら少年探偵いらなかった。しかも見た目コッチのほうがポンコツっぽいし。

この無駄な時間って一体・・・

 

 

そして到着、武田家。そこで耳にする美沙自殺の件。ショック。何度聞いてもショック。

ついでに三年前には懐いていた双子ちゃんも、この陰険な家族に毒されたのか僕を人殺し呼ばわり。

こんな家で美沙が暮らしていたかと思うと不憫でならない。

 

 

 

その後、夕飯をご馳走になったら夜に美沙の墓参りついでの殺人トリック実行さ。

トリックは非常にシンプル。前日に取り付けておいた罠を使うだけ。

蔵の小さな窓から標的が顔を出したら、車で紐を引っ張るのさ。

窓から顔を出させる方法は、麻薬取引を持ち掛けて、蔵で話をしようと誘っておき、頃合いを見てエアガンで窓に音を立てれば、音に釣られて楽々。

 

 

ってなればいいんだけどなぁ・・・このタイミングがシビアなんだってばさ。

 

 

まず、車に同乗予定の女の子2人にエアガン撃ってるところを見られるわけにはいかないから、先に撃っておく必要がある。

ちょうど標的が音に気付いて窓から顔を出すタイミングで、この2人を乗せて車を発進させなきゃならない。

これが早ければダメなのは当然。遅ければ顔を引っ込められてしまう。

しかもそもそも、僕は標的と麻薬取引の約束してるんだから、車で出かけようとしているのが僕だってバレたら「取引せんのかい!」って、もっと早く顔を引っ込められてしまう。

 

お判りいただけただろうか? このトリックはタイミングがコンマ秒レベルで超シビア。

えっ? そんなの無理だろって?

車使わせたら世界一、カーアクション大国アメリカ生まれを甘く見なさんな!

グオオオ、ガン、プツ、ブランでいっちょあがり。

 

あとは墓参りで気が済むまで泣いて供養して終わり。

雨も降ってきたことだし、土砂崩れ発生する前に帰ろう。三年前も巻き込まれたし。

 

そして武田家に戻ってみれば、無事に死んでる標的・武田信一。

雨で土砂崩れが起きてて警察もすぐに来ない。

ポンコツ探偵は酔っぱらって寝ていたから、まともな初動捜査が行われない。

すべてが僕に都合よく動いている。YesやYes。この展開Yes!

 

 

 

 

じゃなかった。エアガンのBB弾が女の子に見つけられちゃった。

仕方ないからスタンガンでビリッと気絶させて解決。

ついでにさっきのトリックが糸での伝説再現がメインだと思わせるために、蔵で糸の海の中に吊るして解決2。

まだ蔵には毛利探偵たちがいたけど、女の子を探しに出払ってくれている今のうちに吊るすだけ。

 

 

ってなればいいんだけどなぁ。

今度は1から女の子を糸で吊るすんだよ。

先に女の子に糸を巻き付けてから、首吊りの輪を用意して、そこには首を通さず、女の子を“空中でキープしながら”、“糸を部屋中に張るだけ”。

 

どうやるんだこれ?

女の子を持ち上げるために糸を引っ張ろうにも、この極細ワイヤーの糸じゃ・・・ホラー映画の残虐な身体切断シーンみたいになってしまう。

ってことはもうこれ、1からやり直して・・・糸張ってから上手く女の子をひっかけたほうが良くね? もう、そうするよ。

 

だけど今度は、女の子が重いし、糸が邪魔!

それでもやっちゃう僕はそうアメリカ人。

アメリカ人に不可能はない。

Yes we can! できた。

しかも毛利探偵たちが蔵に来るまでの数分で!

 

 

 

その後、スタンガンを竈で燃やしていると服部平次に事情聴取に一家全員プラス僕が呼ばれた。そりゃそうだ、彼女が吊るされたわけだし。

とはいえ、全員にアリバイ無し。これ以上事件が起きないように互いを見張るために、とりあえず厚真あって夜を明かすことに。

まぁ僕には信一殺害のアリバイがあるから心配無用。

 

 

 

となるかと思いきや。

何の脈絡もなく蔵の2階に呼ばれた僕らの前で開かれる毛利小五郎の推理ショー。

ん? この人、いつの間に推理を? そんな素振り、全くなかったのに。

そこから咲き乱れる毛利探偵の名推理。僕のトリックがいとも容易く解かれてしまう。糸だけに。

 

しかもそこに挟んでくる新情報。

信一の弟の龍二さんが「美沙は、あの子は。兄の妻、絹代さんとの間にできた、私の娘だったんだよ」と衝撃告白。

おいこの一家、どんだけ闇が深いんだ。

 

で、まだみんなでこのショッキングな情報に困惑している最中なのにぶっこんでくるのが毛利探偵。

トリックの説明を急に入れてくるかと思ったら「そんなことができたのは、たった一人。車で蘭達と墓参りに行った、ロバートさん、あなたですよ!」と、僕を名指し。

そして再開する推理とトリックの再現。

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

しかも最後の最後、服部平次が僕に告げた追撃の衝撃。

 

美沙が自殺したきっかけは三年前

僕が双子ちゃんに伝言頼んだメッセージ。光のようなお嫁さんが欲しいと言った僕の口癖にちなんだ、光り輝く『SHINE』。

これをローマ字表記で『しね』だと勘違いされてしまったことだった・・・

 

 




いかがでしたでしょうか? 鳥取クモ屋敷の怪。

敗因について話すんですか? どんだけ僕を精神的に追い込むんですか。
まぁ最初から僕は疑われていたそうですから。夕飯に出てきた魚の数の食い違いで。
いやいや目ざといよ服部くん。キミ、彼女の魚をひょいと盗ってバリバリ食べてたじゃないか呑気な顔で。しかも頭ごと。

あと服部くん、いくらその彼女が吊るされたからって、あぁいう犯人に追い打ちをかけるような衝撃事実を言うかね? 僕のせいで美沙が死んだという推理を。
これ、僕下手したら自殺するよ?
犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させる探偵なんて殺人者と変わんないよ。



ただその推理は、僕的には間違っている気がするんだ。

まず、双子ちゃんに頼んだSHINEを美沙が見たかどうか。
美沙は看護師していたくらいで教養があるから、SHINEをシャインだと見てわかるはず。

じゃあ双子ちゃんがメモの内容だけ口頭で伝えたのか? と考えると、当時6歳だった彼女たちがローマ字表記を学校で習うはずがないし、根岸の名刺で『NE』と『SHI』を読めたとしても、それがそのまま『ね』と『し』に該当すると解読できるわけがない。



つまり、双子ちゃんがメモを誰かに読んでもらって、その人物が『SHINE』を『シャイン』と理解しておきながら悪意を持って『死ね』と吹き込んだ。
そうとしか考えられない。

よって、あの家の誰かが美沙を追い詰めたのが死の真相。
これが僕の推理さ。


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命がけの復活 黒衣の騎士編(コナン)

強い心に推理のパワー!本質踏み込む鋭いリズム!
今日の事件は2人の新一。コナンも2人に分身か?
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




私は鴻上舞衣。帝丹高校のOGよ。

私と同じOBで、医師の風上にも置けない蒲田耕平を・・・いえ、風上どころかどこにも置けない人間を殺す予定よ。

何故なら彼は自分の学説を守るためだけに、助かるはずの患者をわざと死なせたの。こんな医者を放置したら、何人犠牲者が出るかわからないわ。

人としても、決して生かしておけない。

 

 

殺す舞台は毎年来ている帝丹高校学園祭の演劇中。

暗くて不特定多数の人がいるから、犯行も容易いのよ。

 

凶器は青酸カリ。

氷に穴をあけて青酸カリを仕込んで、この氷を彼の飲み物と私の飲み物に入れるの。

彼を含めて一緒に演劇観に行くメンバーの飲み物の好みを考えると、私と彼だけコーヒーを、他のメンバーはほかのドリンクを飲むわ。

だから、もし『毒入りの飲み物を片方に入れたら、どっちがどっちか分からなくなる』ってハプニングにも対応しているのよこのトリック。

そして彼は氷を食べる癖があるから、絶対に毒殺できるって寸法よ。私の方は毒入りの氷を着てきたパーカーのフードに入れるから証拠も綺麗さっぱり。

トドメに、蒲田の車に青酸カリのビンを入れておけば、自殺として処理できる。

完璧ね。

 

 

青酸カリは前日のうちに病院から盗んでおいて。さぁ、いよいよ当日。

文化祭をグルリと回って楽しんでから、ちょうどイイ頃にいつものメンバーで演劇を見に行くわ。

この時間の舞台は2年B組の出し物ね。題目は「シャッフル・ロマンス」

前評判がイイみたい。ロミオとジュリエット並みのラブロマンスなんだって。

 

 

 

それにしても、すごいお客さんの数。私たちの頃みたいな高校文化祭レベルの客入りを予想してたのに・・・この数の中で殺すの? でももう物準備しちゃったし。

 

 

さて、あと4人分のドリンク買ってきて・・・の、模擬店の列が長いったら長い。

しかも並んでるときに蒲田が「1人で4人分運ぶの大変だから手伝うよ」って来てくれたのに急に引き返していくもんだから地味に労力。

時間が無いのに。こちとら氷が溶ける時間との勝負だってのに。

 

 

で、ようやく始まったラブロマンス演劇。

ほとんど内容入ってこない。

なんせ今は急いでコーヒーをガブ飲みしなきゃ、氷が溶けて私が死んじゃうから。

 

ゴクッ・・・・このコーヒー、毒入ってる?? 

違う。

ペロッ、これはコーラ!

何このサプライズ。炭酸のお口じゃないのに、喉にシュワシュワ来たからビックリしたわ。

思わず吐き出しそうになったじゃない・・・

 

 

って、待てよ? まさかのまさかだけど、彼を殺すための毒入りドリンク・・・他の人のところに行っちゃってないわよね?

 

 

私の頭の血がサーっと引いていく音が聞こえたのと同時に、「キャアアアア」という悲鳴が体育館中に響き渡ったわ。

さぁ、どっち!?

 

 

 

 

 

答えは・・・成功!

無事に蒲田が死んでくれました。

 

 

 

その後、警察が到着して私たちへの事情聴取が始まったわ。

途中、死亡時刻の証言に何故か劇のお姫様役の子がズケズケと入ってきて、それを刑事さんがすごく自然に受け入れていたのが不思議だったけど。

 

あと、すごく不思議だったのが、死体に近づいてる男の子がいたこと。

しかも青酸カリで死んだこともすぐに見破って、青酸カリの説明をすごく饒舌に語ってる。

何この人、毒にすごく詳しくて怪しい。まさか私の代わりに犯人になってくれる人?

警察も「どこかで見たことがある気がする」って言ってるくらいだし。

 

 

「なんや、もう俺のこと忘れてしもたんかいな? 久しぶりに帰ってきたっちゅうんに、つれないなぁ。オレやオレ、工藤新一や」

誰? 何故か皆ざわついてるんだけど・・・誰?

 

でも、話を聞いているとどうやら、その工藤くんって子のフリをして遊びに来た友達みたい。

うん、微妙なサプライズ。ドッキリ大失敗の図ねこれ。何この時間。

 

 

 

その後、事情聴取の中で蒲田の元・婚約者の綾子ちゃんが売店にいて、私たちのドリンクを用意していて、私と蒲田のドリンクがコーラだったのは彼女の仕業ってことも判明。

婚約破棄について話をしたかったから、きっかけ作りにやっちゃったみたい。分からなくないけど、地味にメンタルに来るドッキリだからもうやめようね。

 

あと、蒲田の自殺に見せかけるために仕込んでおいた車のダッシュボードの青酸カリを探しに雨の中をダッシュ。

コーラ一気飲みしたから、すごくトイレ行きたかったけど、それを我慢して猛ダッシュ。

だって逮捕されるより、膀胱炎になったほうがマシだもの。

この苦労のおかげもあって、刑事さんも自殺と断定してくれ・・・

 

 

「待ってください目暮警部」

ん?

黒衣の騎士が急に口をはさんできたわ。

「これは自殺じゃありません。きわめて単純で初歩的な殺人です」

また出しゃばってきたわ高校生。いや、もしかしたら担任の先生って可能性もあるけど。

 

 

「そう、蒲田さんは毒殺されたんだ。暗闇に浮かび上がった舞台の前で。常日頃からもっている、たわいもない自らの嗜好を利用されて。しかも犯人はその証拠を今もなお所持しているはず。ボクの導き出したこの白刃を踏むかのような大胆な犯行が。真実だとしたらね」

キザすぎる台詞をペラペラと吐きながら、もったいぶって騎士さんは兜を外したわ。

 

 

 

「お久しぶりです目暮警部。工藤新一です」

工藤新一、2回目・・・・ってあれ?

 

気のせいかしら・・・皆がすごくザワついている。

もう誰も、私の事件に興味がなくなったような・・・そんな雰囲気がする。

 

 

「よっ、待ってました名探偵」「キャー工藤先輩」「しっかりやれよ工藤」「工藤!工藤!工藤!」

何この雰囲気。死体が発見された時よりザワついてない? 何この高校!

 

「シッ静かに。祭りの続きは、この血塗られた舞台に幕を下ろした後で」

語るわねぇ、この本物らしき工藤くん。一気に静まったわ高校生が。高校生を静かにするのって、怖い生徒指導の先生でも難しいってのに。

 

で、その名探偵と呼ばれる工藤新一くんの口から咲き乱れる名推理の数々。

「鴻上舞衣さん、あなたしか考えられません」

言い当てられたわ。手慣れた口調で。

決定的な証拠も、10円玉だけで見破られたわ。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 帝丹高校文化祭殺人事件。


なんだか途中からもう敗北確定みたいな雰囲気になったのが気になるけど。
それでも言わなきゃいけないの? 敗因を。



そうね、容疑者を第三者にしなかったせいかしら。
初めから自殺工作なんかにこだわらないで、犯人が特定できないようにして私自身が容疑者に含まれないようにしなきゃいけなかったことね。


でも、容疑者として疑われている間ってすごく嫌な気分よ。
探偵も一度くらいは容疑者として疑われる身になって、体験してくれてもいいんじゃない?


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明智警視の華麗なる推理(証言パズル)(金田一)

ご乗車いただきありがとうございます。

車掌を務めますは私、八木清。

駆け込み乗車を遠慮なくぶっこんできた江熊忠夫を殺してしまった男です。

 

 

殺ってしまった。カッとなって。ついカッとなって。ついつい傘の先で延髄をブスッと。あるよね、ブスッとしちゃうこと。

理由? 媒体によって少し事情は込み入るけれど、早い話が金銭トラブルで。

 

で、殺しておいて今更だけど焦りMAX。

なんせこの殺人、人前でやっちゃってんだもの。マヌケ面で爆睡してる少年の前で。

 

 

それにしてもこの少年、よく起きないもんだな。普通起きるでしょ、目の前で争いがあって人死んでるのに。よっぽど、人の死に慣れすぎていない限り。

ってことは普通じゃない少年ってことか。納得。

 

 

 

まぁそれはそれで私には好都合。『この少年にすべての罪を着せてしまえ』って心の悪魔のささやきに従わせてもらおう。

 

・・・・うん、どうやって? 

状況的に少年に罪を着せようにも、よっぽどの高等トリックがない限り私自身も容疑者必至。

だが思いつくか! こんな急に打開策なんて。

まだホヤホヤ。犯人なりたてホヤホヤ。さっきまで善良な一般市民だった私。

そんな私が急にトリック思いつくほど甘くないわ犯人。

なめるな!

 

 

 

だが、かつて賢人は言った。『偶然はトリックの母』と。

考えるな。耳を澄ませ。聞こえるはず。悪魔の声以外に、トリックの産声も。

 

 

 

そして思いついた電車トリックがコチラ。

 

まずは江熊が“この暑い夏にも関わらず何故か着ていてくれた”暗赤色の派手なコートと帽子を奪って着て江熊になりすます。

次の駅に着いたら、一度この車両を降りて先頭車両にダッシュ。先頭車両に乗り込んだら、酔っぱらって寝てる乗客の足を踏んだりして、派手なコートの男の存在を印象づけて、元の車両に戻る。

あとは元の車両に戻ってすぐにコートを脱ぎ捨てて、車掌としての私の姿に戻って車両をすぐに出ればフィニッシュ。

 

こうすることで、元の車両に入ったばかりの江熊を、元の車両から出たばかりの私には殺す時間がない。ということで自然と殺人が可能になるのは元の車両にいた少年だけ。

となる。

無事に立ったじゃないか。トリックが。

 

 

 

 

だが、いざ実行してすぐに思わぬハプニングが発生!

車掌モードになってすぐ、さっき私が足を踏んでいった酔っ払いが運転席のドアをドンドン叩いていたのさ。車掌やっていれば毎晩のように見る光景。面倒で相手するのが嫌だけど、まだ殺害&トリック直後メンタルでも対応可能。

問題はその直後。

 

 

「きゃあああ、ひっ人殺し!」

 

 

電車に響く女性の悲鳴。もっと時間経ってから見つかると思っていた江熊の死体が、もう見つかっちゃってんだ。

 

あのさ、さっきも言ったように私は犯人ホヤホヤのホヤホヤ犯人。

殺して、ドキドキトリック立たせて、業務に戻って、面倒な仕事に遭遇した直後のコレは、さすがにメンタルギリギリ。休ませておくれよ。

 

 

 

そして急展開。まさか電車に現職の警官(しかも捜査一課)が乗り合わせていたんだから驚きパート2。

溢れるッ! 私の犯人メンタルの器はもうキャパオーバー! 出ちゃう、ボロが!

 

と、思った矢先に炸裂したるは、日本の警察に脈々と流れるポンのコツの血。

無実の少年を現行犯逮捕して、電車に乗っていた私たちは軽く事情聴取だけして解放となったのさ。

 

 

 

助かったぁ・・・いやぁ助かった。一時はどうなることかと思ったけど、こうして無事に家のベッドに入れたことで、全てが終わった感じがする。

無実の少年は、いまごろ留置所の牢屋の冷たい床で寝ているだろうけど。達成感に試みたされた今の私が気にする話じゃない。

こうして私は眠りについた。

 

 

 

 

『ワッ』『オオオオオオ』『アアアアアアア』

 

私は不思議な空間にいた。

大勢の人々が私を囲んで歓声をあげている。

老若男女。ほんと老若男女。白髪のおじさんや若い女性、幼い子供も。頭に天使の輪みたいなものを浮かべた人もチラホラと。

 

その中から私の名前を呼ぶ男の子の声が聞こえた。

見覚えのない少年だ。

幼い見た目以上に大人びた口調。眼鏡はかけていない。

急激な成長をしているかのように、服が寸足らずだ。

首にはダーツで刺されたような傷跡がある。

 

「おめでとう清さん。貴方は偉業を成し遂げました。僕たちが成しえなかった偉業をね」

この子は何を褒めているんだ? 何のことだかさっぱり分からない。

 

そんな困惑をする僕を無視して、今度は別の男女が現れた。

片方は初老の男性。こちらは眼鏡をかけていた。

天使の輪を頭に浮かべ、腎臓を娘に移植した後のTVディレクターのような雰囲気がある。

 

女性にもやはり見覚えがない。

整形した美人。いや、一度整形してブサイクになった後でもう一度元の美人の顔に整形し直したような顔の女性だ。

どこかキャリア警視な雰囲気すらある。

 

そんな男女が「いやぁ、貴方にはかないませんッッ」と、完全お手上げで頭を下げてきたのだ。

『おかしい・・・バカな』

変な状況だ。なぜこの2人は私に完敗したような雰囲気を出してきているんだ?

 

 

「それと、この人がなんか。アイサツしたいらしいんだ」

そう言って少年が次に紹介した男の姿に、私は『え~~~~ッッ』と驚いた。

それは私でもニュースで見たことのある顔。

世間を騒がす逃亡殺人鬼“高遠遙一”がそこにいたからだ。

 

 

高遠は私に軽く会釈して、言うのを恥ずかしがっているような雰囲気で「いや~」と口を開いた。

そんな殺人鬼の姿に、私は『なんで・・・??』と、頭にクエスチョンマークがいっぱいだ。

「最強犯人とかなんとか言われていますが・・・」

気弱な言葉が似合わない高遠の姿だけど、私としては『この男がナゼここに??』しか頭に浮かばない。

「それは私じゃない」

ん? この流れは私ですら『・・・ほほう』と推測できてしまう。

「清、貴方ですよ」

やっぱり。そう言い出すと思いましたよ『やっぱりな』。

 

「そんなんアタリまえじゃんッ」と笑う少年に、高遠も「やっぱり?」と頭を掻いて笑顔を見せた。

茶番的な雰囲気だが、全てが私に物語っている。

 

 

 

私は勝ったということだ。

 

 

すべての殺人鬼に。

 

 

探偵を容疑者に仕立て上げたことのある犯人にも。

 

 

全ての殺人鬼が成しえなかった偉業を達成し、私は祝福されているのだと。

 

 

 

 

でも

 

 

こういうことって

 

たいていはそう

 

 

たいていは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで私は目を覚まし、その日のうちに事情聴取にもう一度呼ばれ、夢に出てきたキャリア女性を超えるキャリア波を放つ警視に睨まれ、翌日、駅に呼び出され。

「機転を利かせて金田一君にうまく罪をなすりつけた犯人も、残念ながら昨日の証言でボロを出してしまいましたね。たった一つ、矛盾した証言をした人物。それはあなたですよ! 八木清さん!」

そこから咲き乱れるキャリア警視の推理の数々。事件の日に同乗していた他のお客さんの前で晒され。

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 
『証言パズル』またの名を『明智警視の華麗なる推理』




勝因ですか・・・
勝因? 敗因じゃなくて?



えっ? 死神を拘置所に追い詰めた唯一の犯人? 『歴代最強はキミだ』って?

まさか、私そんな大それたことを? 意識してやってませんよ。ごく普通に、思いついたままをやってみたら上手くいっただけで。

いえいえ、すっとぼけてなんかありませんって。
えっ? また私、何かやっちゃいました?

『転生してチートスキル持ち』みたいなことしてんじゃねぇよって? 私が持ってるスキルなんて車掌登用試験合格くらいなもんです。

実際、私も結局は逮捕されているじゃないですか。
まぁ、その死神って言われている少年、私が留置所に移された時にもまだ捕まったままでしたけどね。




ですが、せっかく最強犯人の称号を頂けたので。
私が異世界転生した小説でも、誰か書いてくれませんかね。ご褒美に。


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容疑者・毛利小五郎(コナン)

運命までも推理のヒント。謎めく事件も明るく見通す!
今日の事件は小五郎逮捕。だけど最強とは言えないぞ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



僕は弁護士・佐久法史。

弁護士仲間に碓氷律子という女弁護士がいる。

こいつは女弁護士No1になるために仲間の妃弁護士の失脚を狙い、なおかつ公害裁判で企業側について僕の田舎を苦しめている。

だから殺す。

 

ああ分かっている。弁護士失格な犯行動機だって。

弁護士は依頼人を勝たせるのが仕事。そして名声のために仕事をするのも普通。公害に苦しんでいる村を相手にしても、手を抜かないのはプロとして当然。

 

・・・・・落ち度が弱ぇ。

殺されて当然っていうほどの落ち度が無ぇんだよ碓氷。

そりゃ、他人の足を引っ張ろうとしているのは許せない。

でもそこまでの話で、人の命に係わるようなレベルまでいかない。

公害の話だって、ようは弁護士である僕が村の弁護をすればいいだけの話。

そりゃ専門は刑事事件だけど、だからって出来ない話じゃない。

 

弁護士仲間と遊びに行った軽井沢のホテルで、自殺に見せかけて殺すトリックも思いついた。準備だけは万端なんだ。あとは一押しが欲しい。あと一押しが・・・

 

 

と、一押しも何もないままついに到来軽井沢レジャー。

碓氷もエンジョイしているし、妃さんも僕をモデルにして旦那さんへの結婚記念日の贈り物のネクタイを選んでいる。

めっちゃ平和。すごく殺人に不向き。

 

「お、お母さん!?」

「うそ、どうしたのあなた達」

ネクタイ選んでるところで遭遇したのは、まさかの妃さんの別居中の旦那さんと娘さん。

おっとぉ、何この昼ドラ展開。

浮気現場見られた的な、ドラマが始まる予感。

 

違う、僕の求めているのはこういうのじゃない!

そして案の定、一家に『じとーっ』と睨まれる僕と妃さん。

「知り合いに頼まれていて、彼に選ぶのを手伝ってもらっていたのよ」と弁明して。

「僕はてっきり僕へのプレゼントだと思ってましたけど」と冗談を言って。

「ガキじゃあるまいし、一人で選べねーのかよ」とヤジって。

「No1の女王様もダンナがからむと、ただの庶民に戻っちゃうんですね」と茶化して。

「傲慢ちきで高飛車な女王陛下を妻に持つ、ただのしがない男ですよ」と「人のアラを探すことに長けている、姑息で不潔で女に見境のない名探偵さんを人生の伴侶に選んでしまったバカな女って所かしら」と無理なバチバチを繰り広げたところで。

 

妃さんが毛利探偵の解決した事件を一つ残らずスクラップしていることと、毛利探偵も妃さんが担当した裁判の記事を夜中にこっそり見ていることをカミングアウト。

不仲な夫婦が仲直りしていくイイ展開じゃないか。ノロケてますねぇ。

うん。殺人のキッカケが生まれる気配無し。

 

 

ところが事態は急展開。

酔っぱらった毛利探偵を、まさかの碓氷がホテルの部屋にお持ち帰り。

なるほど、ダンナの不貞を知った妃さんの動揺を誘って、思考回路を破綻させて女王の座を奪おうって腹積もりか。

姑息な手段じゃないか。

ただ1つ言わせてもらえば、姑息な碓氷も碓氷だけど。いくら泥酔しているとはいえ妻と娘がいるホテルでホイホイと女の部屋に入り込む毛利探偵も毛利探偵だぜ?

 

まぁ、僕としては殺しの一押し展開になったことは好都合。

姑息な手段を使ってでも名声が欲しい碓氷が、僕の田舎を苦しめている。これで殺れる!

 

 

そうと決まれば早速行動開始。

爆睡中の毛利探偵を起こさないように気を付けながら、碓氷を電話コードでギュギュッと絞殺。

ってことができるように、まずは部屋に入ってすぐに碓氷に腹パンして気絶させて、それから部屋に侵入して電話の所に行ってコードを抜いて、それから絞殺。

 

次は部屋のチェーンを細工だ・・・と思った矢先に、電話のところで変なメモを発見。

『ハヤシ 2』のメモ。

????何のこっちゃ? 後で考えるか。

と、謎メモを後回しにしてチェーン工作をしている最中。

【ピンポーン】

部屋に響く呼び鈴の音! はぁ!?

ドアののぞき穴からのぞくと、そこにはホテルのボーイが。どうやらさっきのメモの意味は、碓氷と毛利探偵は2人で“ハヤシライス”を頼んでいたということ。

こんな時にハヤシライスなんか頼むなんて。

それと、こんなに僕が驚いたのに、呼び鈴の音にも目を覚まさない毛利探偵の爆睡具合!

僕だけ驚き損じゃないか。

 

怒った僕はメモをちぎってゴミ箱に捨てて、再びボーイが来て呼び鈴を鳴らされないようにドアのノブに「起こさないでください」の札を掛け、念のために「すみません。お金はちゃんと払いますとお伝えください」のメッセージを貼った。

ったく、ハヤシライスにトリックを邪魔された犯人なんて、人類史上僕が初めてだろう。

 

だがこれでやっと、静かにトリックの続きに戻れる。

ドアの隙間から見える位置に碓氷の死体をセットして、毛利探偵の携帯電話をドアの近くに置いて。

あとはチェーンをペンチで千切って、部屋の外に出たら、わずかな隙間から手を伸ばして、ドアの隙間から死角になる位置の鎖の両端を糸で結びつけるだけ・・・・

 

結びつけるだけ?

この狭い隙間に手を入れて、廊下から見えない位置の鎖を?

誰がいつ通るとも知れない廊下で?

 

やるしかねぇだろ!

切断したチェーンの端に糸を通し、そのまま部屋を出て、ドアの隙間に手を突っ込みながら糸を手繰り寄せて結びつけるだけ。

 

分かってはいたが、想定していたのと、実際やるのとは大違い。

そりゃ防犯のチェーンが届く範囲の隙間が、防犯に適さない幅なわけがない。

入れられてせいぜい手首より先だけ。しかも外から見えない位置で糸を結ぶ。これが簡単なわけがない!

しかし、焦れば焦るほど、糸を結ぶのに失敗したときの喪失感が半端ない。

そして、時間を掛ければ時間をかけるほど、誰かが廊下を通るリスクが高まる。

悠長してられない。

トリックに必要なのは、器用さと、スピードと、運! それに尽きる!

 

 

こうして、どうにか頑張って。どうにか頑張って作り出した密室トリック。

そして深夜2時。行方不明の毛利探偵を探す自然な流れ。からの、碓氷の死体発見!

狙い通りに毛利探偵が一番の容疑者に。

「刑法第199条。人を殺した者は無期または三年以上の有期刑。もしくは、死刑!」

はい? おいおいおい。

妃さんが毛利探偵・容疑者説を自ら力説。

不倫に怒ったのか? しかも起訴前弁護すら拒否。

仕方なく僕が弁護について、毛利探偵と警察署へ。

 

それからしばらくして、どうにも分からない問題があって僕の意見が聞きたいという妃さんにホテルに呼び戻される。

2人で碓氷の部屋に向かう途中、妃さんに電話が入り、僕だけ先に部屋に向かうことに。

 

『え~っと、彼女の部屋は』

何号室だっけ? 殺害現場だけど、そう印象に残る部屋じゃないから思い出せない。

いや、一目瞭然だったわ。部屋の前にハヤシライスが置きっぱなしだもの。

ったく、このホテルもいい加減だな。

死んだ客が注文した料理を、しかもキャンセルの連絡をしたはずの料理を廊下に放置するとか。しかもとっくに冷めてるだろうに。

 

「あ、おじさんだ!」

殺害現場の部屋の中にいたのは、毛利探偵のところの眼鏡のボウヤだった。

警察は帰ってしまったそうだ。

現場に子供を放置するとか、馬鹿なのか群馬県警。

 

と、油断した矢先にボウヤの口から放たれるトリックの図星。

「最初から鎖が切られていたとしたら?」

ドキッ

しかも追撃に、いつの間にか背後に立っていた妃さんが、チェーンの密室トリックを見事に推理してみせた。

まぁ、その程度はまだ筋が通っているだけの憶測だと言い逃れできる範囲・・・

 

「あなたは自白しているんだもの。この部屋に入った時点で自ら犯人だとね」

えっ?

「よくわかったわね。ここが彼女の部屋だって」

まさかのまさか。ハヤシライスは罠でした。

ハヤシの本当の意味は、「林さんと2時に待ち合わせ」

そして今いるこの部屋は、チェーンが壊れていない。

つまり、この部屋を僕が選んで入る理由は、僕が犯人である以外に存在しないのだ。

しかも、この僕のうっかりを、部屋の周囲5部屋に潜んでいた警官たちが、ビデオまで回して会話と行動を記録する徹底ぶり。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか?
容疑者・毛利小五郎。

敗因は、ハヤシライスですよ。
天下の名探偵・毛利小五郎を追い詰めた僕が、まさかハヤシライスに踊らされるとは。

えっ? あのハヤシライスですか?
刑事さんがあとで美味しくいただいたんじゃないでしょうか。
少なくとも、僕の取り調べには出てきませんでした。

ちなみに、取り調べ中の定番と言えばカツ丼ですが、実は犯人の自腹で購入して食べるもの。
と、思いきや、今の時代は自白のための利益誘導につながるから、取り調べ中の食事は禁止になっているんです。留置場に戻ってお弁当なんですよ。


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スキーロッジ殺人事件 【前編】(コナン)

ハートの中身はミステリー!二人に輝くスター&スノー
今日の事件はカツラが凶器。ズラじゃないよ、カツラだよ
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




こんにちは、米原晃子です。

今、私は千葉県にある美容院に来ています。

今回この美容院にお邪魔したのは、もちろん髪の毛を切るためです。

ではどうして髪の毛を切るのかというと、同僚2人を殺すためです。

 

話が飛びすぎよね。ごめんなさい。でもこれには事情があるの。

私が実行しようとしているのは髪の毛トリック。地毛のロングヘアーに見せかけて、カツラのロングヘアーを被って、そのカツラで人を殺すの。

これは、さすがにロープを持って迫ったら「米原、俺のこと殺す気だ」ってバレちゃうけど、髪の毛だったら警戒ゼロでしょ? 体格に勝る男性教師相手でも、キュキュッと絞殺できるのよ。

しかもこの殺し方なら誰もがロープが凶器だと思う。犯行後に凶器が行方不明になって、犯人が凶器を持って現場から逃げたってことになるでしょ?

 

つまり一石二鳥!

とは行かない。だってそのためにはカツラが必要な髪にならなきゃいけないんだもの。

何年も一緒に過ごしてきたロングヘアーとお別れするのは辛いけど、これも復讐のため。

 

そう、あれは3年前。

私の勤めている杯戸小学校の教師2人が不正入試を斡旋していて、それを突きとめた教え子の望月美奈子さんを自殺に見せかけて殺したという大事件があったわ。

ええ。とんでもない話でしょ。

えっ? 小学生がたった1人で大人の悪行を暴いたこと?

すごいでしょ。望月さんは生きていたら将来は名探偵になっていたでしょうね。

 

えっ? そのくらいは小学1年生でもできるって? 帝丹小学校にいる?

すごいのね。天才児って、どこにでも1人はいるもの・・・・えっ、5人も? 何十件もの新聞沙汰の事件を解決に導いてきた!?

・・・帝丹小学校って、捜査学でも必修科目にしているの?

 

話が脱線したわ。そんなことより、もっとBADな話を見落としていない?

小学校の教師が小学生を殺したことよ。2人も殺人鬼がいる学校!

とんでもない話でしょ・・・えっ? まだ少ないほうだって? 不動高校にはゴロゴロいる?

・・・・高校の話でしょ? こっちは小学校よ。

まぁ、高校だから殺人鬼がいていいわけじゃないけど。

 

ちなみに、みんな気付いたかしら? 気になったかしら?

どうして千葉県の美容院? って。

杯戸町や米花町の美容院に行けばいいのにって。

 

それはね。さっきも言った通り、私がロングヘアーのままだってことを周囲に印象付けておかなきゃいけないからよ。

小学校の先生って顔が割れてることが多くてね、ちょっとスーパーに行ったりレストランに行くと、必ずと言っていいくらい生徒とか保護者とか他の先生とか、誰かしら知り合いに遭っちゃうものなの。

そこから私が髪切った情報が流れたらバレちゃうでしょ? だからよ。

 

 

 

さて、頭が軽くなったら次は舞台の準備ね。

舞台はスキー場・・・からしばらく車で走った山の中腹にある、山小屋っぽさの無い小洒落た貸別荘。

スキーロッジじゃないわね。まぁ気にしない気にしない。

お次に職員室の机の中に、スキーツアーのしおりを入れておく。

みんなが参加することが決まったら、参加メンバー表と集合場所、時間、貸別荘の地図をイン。

中村先生には貸別荘のカギを。杉山先生には「下田先生にレンタカーを借りるように頼んでおいて」と依頼。

 

えっ? 役割をごちゃごちゃさせすぎ? でもこうすれば、このツアーが誰に仕組まれたものか判りにくくなるでしょ?

私と坂井先生には何も仕事を用意しないのも、そこを惑わすため。

 

 

ちなみに、そろそろ皆も気になるところかしら?

私が誰を殺すの? って。登場人物ばっかり多いのに、覚えきれないから早く知りたいでしょ?

 

そう、問題はそこよ。

実は殺したい相手が1人しか決まっていないの。

望月さんは死ぬ前に、不正を働いていたのが杉山先生とあと1人ってことは教えてくれた。だけどそのもう1人は“憧れの先生”ってことしか教えてくれなかったの。

だから、今回のツアーで彼女が憧れていた可能性の高い先生3人を集めて、ツアー中に割り出すの。

最初に杉山先生を殺して、望月さんの事件を思い出させて、望月さんの名前の「ミ・ナ・コ」の3文字を見せて、その反応から殺人犯を割り出すのよ。

 

本番ギリギリまで分からない。そのストレスたるや!

なんせ、楽しいツアー中にも私だけ殺意満々。しかもその殺意を誰に向けたらいいか分からない。

それでもツアーを楽しむ演技をしなきゃいけない。心は全然楽しくないのに。

不安。そこだけが不安!

 

 

でもやるしかない。

まずは12月20日。

あらかじめ私と杉山先生の2人で休暇を取っておいて、2人で先に貸別荘へ一緒に移動。サクッと殺して、あらかじめ買っておいた明日私が着る服とスカートと同じものを着せておく。

そして死体を“腹這いで倒れた”形で死後硬直する姿勢にして放置。

貸別荘にカギをかけて、急いで杯戸小学校に移動してこっそり忍び込んで、そのカギを当初の予定通りに中村先生の机に入れておく。

 

そして12月21日。

いよいよスキーツアー当日。

私、中村先生、坂井先生、下田先生でスキー場に到着。男女分かれてスキーを楽しむ。

いいえ、楽しめない。私だけ楽しめない。

だって、望月さんを殺したのは中村先生かもしれないから。

ストレスは収まらないわ。

 

それでも無理やり楽しんで、そろそろお昼ご飯の時間。

「あら、毛利さんと鈴木さんじゃない?」

帝丹小学校に勤めていた頃の教え子だった女の子たちに遭遇。

しかしまー、2人とも女っぽくなっちゃって。癒しだわ。2人が私のロングヘアーを褒めてくれたけど、それが実はカツラだってこともショックに思わないくらいの癒し。

中村先生の「婚期を逃した30女の必死の抵抗なんですよねー」も、もし殺人犯だったら内心イライラどころの騒ぎじゃない一言のストレスも打ち消すくらいの癒し。

下田先生と坂井先生が、この女子高生を「子猫ちゃん」って呼んでナンパしていたって笑い話も、この2人のどちらかが殺人鬼だったら笑い話にならないなぁ。って悩みすらも打ち消すくらいの癒し。

私、どれだけ癒しに飢えてるのかしら?

 

 

そんな癒しの教え子たちと一緒にいた眼鏡の男の子と一緒に、スキーロッジでお昼ご飯。

2時になって、貸別荘に移動しようってところで下田先生が「どぉ? 君達も一緒に来ない?」と3人を誘惑。

まぁ、スキーバスに間に合うように送るならいいか。

 

ということで、7人でスキーロッジから仮別荘に移動。

途中ですれ違ったオジサンに「この辺一帯は猛吹雪になるってよ。引き返すなら今の内だぞ!吹雪いたら一寸先も見えなくなるからな!」という天気予報を教えてもらい、「戻ります?」ムードに・・・マズイ。

でも、「杉山先生が待ってるかも」と言ってどうにか強行突破。

そして到着、貸別荘。

 

アーンド合流。

「フフフ、おそろいですな、みなさん」

私が「今夜ここで何かが起こる」ってタレコミで召喚しておいた新聞記者。

そう、彼こそ望月さん殺害犯を炙り出すために、三年前の事件を想起させてくれるキーパーソン。

この人が現れれば、ここにいる人は誰もが三年前の事件を頭に思い浮かべる。そしてミ・ナ・コの文字で望月さんを思い出してパニックになるはず。

私が殺すべき標的を、見つけ出すために煽れブンヤ!

 

でも正直、この記者嫌い。

たしかにこの吹雪の中、周りに建物の無い状況で仮別荘から追い出すわけにはいかないとはいえ、こっちに断りもなく記者のほうから上がり込んでくるんだもの。

ツアーのムード最悪ね・・・・・・元はと言えば私のせいか。

 

さて、第1の事件を起こしますか。

協力してもらうのは鈴木さん。お手伝いを頼んで、彼女を眠らせて、手の甲に「ナ」を。私に「ミ」を書くの。

で、ここで気付いたことが1つ。

3人を連れてきてよかった。

 

だって、中村先生は料理中。男性教師たちはそれぞれの部屋に籠ってしまっているし、記者はどうせあの記者はどうせ頼んだって手伝いしてくれないから、ここで襲える人がいないの。

あの時、下田先生がナンパして誘惑して、しかも7人乗りのレンタカーを借りてくれていなかったら、この想定外を乗り越えられなかったわ。

ありがとう下田先生。子猫ちゃんという笑いまで提供してくれて、貴方には助けられてばかりね。貴方が殺人犯ではないことを願うわ。

 

それはさておき、実行ね。

まずは事件を起こす私の部屋の、隣の部屋のベッドシーツ敷きを依頼。

部屋に入ったら、まずはスカートを脱いでスキーウェアに履き替える。そのまま窓から外に出て、ダッシュで玄関までの足跡を付ける。もちろん帰りは後ろ歩きで。

部屋に戻ったら、雪で濡れたスキーウェアを脱いでベッドの下に隠し、ベッドの下の杉山死体を引きずり出して、私のカツラを被せる。

あとは眼鏡を落として、ドサッと壁に頭を叩きつける。

そして、この音に気付いた鈴木さんが部屋に入ってくるのを待つ。

 

「きゃあああ」

別荘中に響き渡ったわ鈴木さんの悲鳴が。このままじゃすぐに誰か来ちゃうわね。

多分、1分くらいで。

急いで睡眠薬を嗅がせなきゃ。

えっ? クロロホルムなんてよく手に入ったな。ですって? 米花町に行ったら結構簡単に手に入ったわ。後で知ったんだけど、普通の町じゃ手に入らないみたいね。

 

って関係ない話はしていられないわ。時間が無いのよ。

急いで鈴木さんの首を絞めて縄の跡をつけて、手の甲に「ナ」を書いて。

ドンドンドン

「どーしたの!?開けて園子!そこにいるんでしょ?」

悲鳴を聞きつけた毛利さんがドアを叩いているわ。早く残りの仕事を終わらせないと。

グズグズしてたら“毛利さんが男の人たちを呼んで”、このドアが破られてしまう

 

『ざわ・・・ざわざわ・・・』

嫌な予感が。何か見落としている?

あと30秒くらい余裕があるかな? って思ってたけど、その想定すら甘い気が・・・

死神の鎌が私の喉に突き付けられているような・・・死神の“武力”の部分が、私に迫っているようなそんな気配が。

 

残す仕事は、カツラを被って、杉山死体をベッドに入れるだけ。

落ち着いてやれば大丈夫・・・だけど、そんな時間が無い気がする。

私は直感の赴くまま、死体からカツラを奪い取るようにして自分の頭に被って、蹴飛ばすように死体をベッドの下にインしたわ。

その次の瞬間! ほんと、1秒後。

 

「アアアアア、アアアアア、アアア!」

ドカッ

毛利さんがドアを蹴破って入ってきたわ。カツラを被って横たわった瞬間よ。

危機一髪。危なかった。色んなことをあらかじめやっておいて良かった。そうじゃなきゃ、時間が無いのにやることが多い!って焦って失敗するところだった。

 

 

その後、私と鈴木さんを襲った杉山先生が『ミ・ナ・ゴ・ロ・シ』のイタズラメッセージを残したって推理に至ったわ。

ちょっと想定外なこともあったけど、どうにか下準備は整った感じかしら。

 




さぁ、ここからが見せ場よ。

三年前の事件を起こした犯人を、私が必ず暴いて見せる。
望月さんの名に賭けて!


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スキーロッジ殺人事件 【後編】(コナン)

三年前に殺された望月美奈子さんの仇を取るため、その犯人候補になる教師3人を呼び出した私・米原晃子。
三年前の事件をしつこく取材していた記者を呼びつけて3人に三年前を思い出させて、ミ・ナ・コのミ・ナまで用意したところで、あと一押し。

殺人犯を揺さぶり炙り出す一押しを。

夕飯前に準備してやるわ。


ベッドシーツを敷いてからね!


さて、今からトリックを仕掛けるわ。

仕掛けは簡単。タコ糸と輪ゴムで死体を固定。

寒さで劣化した輪ゴムが切れたら、呼び鈴を押す位置に倒れるようにセッティング。

こうすると、時間差で“皆で団欒中に、外部犯が死体で呼び鈴を押させて逃げた”ってことになるの。

 

 

その後、みんなで夕食。もちろん記者も一緒に。

「すみませんねェー、あたしの分まで用意してもらって。だが、あたしゃ三年前の事は忘れませんぜ」

うん、記者が良い仕事してくれてる。3人とも三年前の事件を思い出して嫌な顔してる。

望月さんのことが脳裏に浮かんでる。

もっと煽って煽って。

 

 

ピンポーン

 

ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

 

 

待ってました杉山死体。

首に縄の跡と手の甲の「コ」の文字。

私と鈴木さんの襲撃事件と同一犯ってメッセージも伝わって。

 

「うあああああ」

判明しました。殺人犯は下田先生でした!

顔を真っ青にして部屋に閉じこもったわ。確定ね。

 

 

良かったのは、やっぱり3人の中に殺人犯がいたこと。

殺人犯がちゃんと反応してくれたこと。

もしこれで無反応だったら、殺人犯が3人の中に居なかったのか、リアクションしないくらいの冷酷人間ってこと。

どっちにしても、私の今までの苦労が無意味になるところだったもの。

 

残念なのは、下田先生だったこと。

笑い話が台無し・・・なんてのはどうでもいい話で。

嫌なのは下田先生の部屋が階段のすぐ隣の、見通しの良い場所にあることよ。

このせいで殺すために部屋に入ったときに、誰かに目撃されちゃうリスクがあるの。

 

リスキー。

それでもやらなきゃ。

 

 

とはいえ急がなくてもOK。どうせ逃げ場なんて無いんだし。できそうなときに殺る。

 

まずは下田先生に「犯人が分かった。教えてあげるから部屋に入れて」って電話して。

それから皆に『部屋にカギをかけて仮眠を取りましょう』って提案して。

下田先生の部屋に入って、カツラでキュキュッと絞殺。

あとは携帯のアラームをセットして退室。

 

 

「きゃああああ」

 

予定通りにアラームホイホイされた中村先生の悲鳴が別荘に響き渡る。

予定外に、眼鏡のボウヤがずっと階段の下にいたってことで、記者がズケズケと割り込んできたわ。

「なるほど、そのガキがいってる事が本当なら、犯人は、おたくら三人のうちの誰か。しかも御丁寧に、まだ凶器の縄を持ってるって事になりますねぇ」

 

あんなに準備したトリックが・・・無駄骨!?

しかも、私が呼んだ記者が急に探偵に変貌!?

殺して数分で大ピンチよ。

 

 

だけどまだ終わりじゃないわ。

だって凶器は縄じゃなくてカツラだもの。

それさえバレなければ問題なし。

 

そして始まる身体検査。

毛利さんの手でこの寒いのにスッポンポンにされて、カツラを守りきったわ。当然、3人とも無罪。

「となると考えられるのはただ一つ。このガキがウソをついてるって事だ」

記者の迷推理が炸裂して、ボウヤをウソつき呼ばわりで一件落着。

でもね、ボウヤは多分ウソついてないわ。それなのにこんな悪人面の大人に責められるなんて、嫌な思いさせちゃったわね。ゴメン。

 

 

その後、目を覚ました鈴木さんが予定通りに私のアリバイを証言してくれたわ。

「ホントよかった。先生が無事で」

さらに私のことを褒める褒める。

襲ったの私なのに。巻き込んじゃって本当ゴメン。

 

「悪いのは犯人ですよ」

「そうそう、そうやって三年前も生徒にかばわれてましたよね?」

こんなしんみりムードに割り込んでくるのが探偵記者。

割り込んでくんなお前!

 

というか、もう記者の役目は終わりなんですけど。

用済みなのに、すっごいストレス源。

誰よコイツ呼んだの。

私よ!

 

 

その後、殺人鬼が別荘の周りに潜んでいるから、みんなでリビングに集まって警察が来るのを待とうってことになったわ。

やっと終わる。

ウザい記者と一緒に夜を明かすのはストレスだけど、あとちょっとの我慢。

そんな頃に、ボウヤを探しに行った毛利さんが戻ってきたわ。

「犯人が分かった」ってね。

 

 

 

 

 

ん???

 

「三つの事件を起こした犯人が、たった今わかったのよ」

『        …』

「そしてその犯人が…」

『           !!』

「この中にいるって事もね!!」

なんか妙な間を置いた話し方で、毛利さんが急に探偵を始めたわ。

この娘、さっきまで幼馴染の高校生探偵がいてくれたらなって、他力本願してたばかりじゃない。探偵してた素振りなんて一切見せなかったのに!?

 

そこに出しゃばってくるのは、私の迷探偵・新聞記者。

「まちがっていた時の覚悟はできてるんでしょーな? 名誉棄損で訴えられるのは当然の事。あたしが新聞で書きたてれば、ヘタすりゃ退学だ。そのくらいの覚悟はできてますよねぇ?」

記者は毛利さんの推理に対してプレッシャーかけ始めたわ。ウザっ。

 

 

一つ良いかしら? もちろん私が犯人ってことを差し置いて。

これって、言論の自由への干渉じゃない? 退学なんて大きすぎるデメリットを提示して、高校生の自由な発想を抑え込もうとしてるの?

ヘタすりゃ退学なら、ヘタしないようにあなたが新聞で書きたてなければいいだけの話。小学生でも分かる解決策あるのに。

 

このBADなマスコミュニケーション。いつも自分たちが逆の立場で嫌な思いしてるからって、女の子を言葉でいじめて。

だから”マスゴミ”って揶揄されるのよ!

 

 

でもそんなストレス社会の厳しい風に立ち向かうのが、私の元・教え子の毛利さん。

「フッ、書きたければ書きなさいよ。『名探偵・毛利小五郎の娘、雪山の別荘で殺人事件を見事解決する』ってね!」

大見得切ったわね毛利さん。

 

だけど、もし正解なら私にとって最悪。

不正解なら毛利さんにとって最悪。

そして記者はどっちにしても記事になるから百利あって一害なし。

 

うわぁ・・・最悪すぎる状況。

 

 

そんな中でもお構いなしに咲き乱れる毛利さんの推理。

正解してる。

百点の花丸ものの正解率よ。

鼻高々にドヤ顔して、私を追い詰めてくる毛利さん。恐ろしい子!

反論するとすれば、あくまで“外部犯でなくても再現可能”って範囲だけ。ってことね。

 

 

「杉山先生と下田先生を殺害し、そして米原先生と園子を襲ったその犯人とは」

来る!? 

毛利さんの推理が

 

 

 

 

・・・来ない?

 

今まで饒舌だったのに、ここに来て急に口が止まったわ。どうしたのかしら?

 

 

すると毛利さんは急に目に涙を浮かべて言い放ったわ。

「は、犯人は、米原先生あなたです!」

 

そこから悲しげに語られ始める毛利さんの名推理。

決定的な証拠はカツラに付着した下田先生の血。

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? ストレス満載のスキーロッジ殺人事件。


こうやって解かれたことでやっと楽になったわ。


敗因は絞殺にこだわった事かしら? 
望月さんの仇を討つには、これしかなかったから。
まさか抜けた毛を見落としていたなんてね。

あとは手元が狂って下田先生を瞬殺できなかったことも。

そうよ。焦っていたのが敗因!
つまりストレスのせい!
つまり、あの記者のせい!
真の敗因は、呼んだ記者のチョイスミスなのよ。


わたしに次ぐ犯人たちに警告するわ。
殺人事件に誰か呼ぶなら、呼ぶ人はちゃんと吟味しなさい。


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殺人犯、工藤新一(コナン)

大嫌いと大好きの距離埋める。二人の推理とサスペンス。
今日の事件も2人の新一。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



僕の名前は屋田誠人。

1年前、幼馴染で同級生の氷川萌生と遊園地には遊びに行かず、大学受験のために都心のホテルに泊まっていた時、義両親が死んでしまった。

失意に夢中になってしまった僕は、この事件を捜査した工藤新一の推理ミスに気付かなかったが、後日気付いた。

復讐心を覚えた僕は、彼の顔に整形する手術を受けるため麻酔を投与され。

目が覚めたら・・・

 

工藤新一になっていた。

 

 

工藤新一が周りの人間に危害を及ぼせば、社会的にも人間的にも抹殺できる。

推理ミスの助言を餌におびき寄せると、工藤新一は転がり込んできた。

あとは工藤新一を小屋に閉じ込めて、工藤新一に成りすまして事件を起こすだけだ。

僕の正体を知っているのは誰もいない。

 

工藤になっても頭脳は同じ

迷宮入りの迷探偵を抹殺

真実は、いつも一つ!

 

 

ということで始まりました僕の抹殺大作戦。

工藤新一を呼び出すためとはいえ、彼の知り合いまで村に呼び寄せてしまっているから、その人たちにすり替わりがバレないように工夫が必要。

顔はそっくりでも、声や仕草、服の趣味、身内にしか知りえない情報で秒アウトは確実。

 

そこで僕は、素っ裸で湖へダイブした。

この寒い時期に、ドボーンと!

そしてこう言うのさ

「わからない。僕が誰なのか、ここがどこなのか」

こうすれば、風邪を引いて声が変わったことにできるし、服の趣味も無意味、記憶喪失設定でゴリ押せば、知り合いにもバレずにすむ。

 

するとしばらくして、村の人が僕を見つけてくれた。

うん、しばらくして。

すぐには発見されなかったから、しばらく寒中水泳だった。

最初は水死体と思われたらしく、助け出されてすぐに毛布も貰えた。ついでにおばちゃんに裸見られた。

工藤新一の顔に泥を塗る一発目が全裸公開なんて、予想外だよ。

 

「新一~! ちょ、何で。どうして新一が?」

その後、すぐに工藤新一の知り合い4人が登場。来たよ。僕の演技力の魅せ場が。

何を聞かれても完璧に記憶喪失してやる。

僕は逆行性健忘。突然の疾病や外傷によって、障害が起こる前のことが思い出せなくなる記憶障害になった男。

 

 

「新一・・・それが僕の名前ですか?」

この答えでいいはずだ。記憶喪失なら、こう言うだろう。

「な、何をアホな事ぬかしとんねん! お前は東の高校生探偵・工藤新一。そんなしょーもなボケ、誰も笑わへんぞ!」

よし、まずは男子高校生1人陥落。

「ま、まさか工藤君」「記憶が」

続いて女子高生、おじさんも陥落!

 

イイんじゃないか?

記憶喪失の正解。歩めてる気がする。知り合いすら騙せてるぞ!

なんか、最初に歩み寄ってくれた女の子だけリアクションが薄いけど、まぁそういう暗い性格の娘なんだろう。

 

その後、濁声演技でひでぇカゼ声も通用。服は男子高校生が貸してくれることになり、4人と一緒に旅館に向かった。

どうやら4人は2泊3日で滞在予定だったが、僕・工藤新一を受診させるために急遽予定を1泊2日に変更することになったようだ。

これは少しマズイ。

 

 

僕の目的は工藤新一として悪事を働くこと。

知り合いの監視の目があると、その実行は困難だ。

その知り合いに手を出すという案もあるにはあるが・・・聞けば男2人はそれぞれ西と東の名探偵。犯罪者の天敵中の天敵だ。

女子高生2人にも手を出したくない。ソッチ系の悪事でも別にいいけど、何か嫌な予感しかしない。

 

すり替わり記憶喪失作戦、失敗だったかもしれない。

いやぁ、考えてみれば正攻法でも良かったんじゃない?

漫画でもありきたりな偽物登場回風に「俺は工藤新一だ」って町で悪事を働くだけでも良かった気がしてきた。

そりゃそういう漫画の話だと、本物が登場して終わりになるけど、今の時代ならネットに動画晒すだけで人生終わりにできるじゃん。

 

 

そんな僕の後悔も関係なく、4人は「工藤新一を1年前の事件現場に連れて行けば、何か思い出すかもしれない」という話にまとまっていた。

もちろん記憶喪失中の僕に拒否権無し。

 

そして到着、旧日原村長宅。相変わらず1年前の惨状のまま。

そこで名探偵2人は付き添いに来てくれた警官から、当時の捜査情報を聞き現場検証を始めた。

毛利小五郎も「強盗殺人に間違いない」って太鼓判。やっぱ本物の名探偵は分かってくれるなぁ。

 

「この工藤新一はこの事件を、日原村長が起こした無理心中だと推理したのよ!」

そこに現れたのは、僕の幼馴染で同級生の氷川萌生。

僕の代わりに工藤新一を糾弾してくれた。矛先は合ってるけど、その指先は僕の方を刺してるのが複雑なんだけどね・・・

 

そこに追加で現れたのは東都新聞の記者・河内深里。

工藤新一の決定的な推理ミスである「心中の動機と指摘された村長の癌告知は、実は良性腫瘍だと村長も知っていた」という点を4人に教えてくれた。

これには西の高校生探偵・服部平次もビックリ仰天。

「な、何やとォ!? おい工藤、どーいうこっちゃ。説明せェ!」

すごい剣幕で僕に迫ってきた。

 

・・・どう答えるのが正解だ? それ、僕の推理じゃないんだけど。文句言いたいのは僕のほうなんだけど。

いや、忘れちゃいけない。今の僕は記憶喪失。

「わからない。僕には何もわからないんだ」

このすっとぼけもあって、毛利小五郎はこの村で工藤新一が嫌われている理由を察してくれた。

 

その後も調査は続き、死羅神様の情報や、片方だけ残された仁王像、僕が崇拝していた頃の工藤新一コレクションを4人は捜査していった。

まぁ、何を調べようが“工藤新一の推理ミス”という真実が変わることはない。

僕は部屋に隠しておいた“万が一の自殺用&悪事用の拳銃”を回収。

これで一安心だけど・・・・疲れた。

 

思っていたよりも、記憶喪失って疲れる。なるもんじゃないよ記憶喪失。

いつバレるかどうかドキドキして、気が気じゃないんだから。

「私には分かっているわよ工藤君? あなたの魂胆は」

ん? 何かいきなり新聞記者が僕に言い寄ってきた。

「あら何? その顔、まさか私にもバレてないと思ってたの?」

 

・・・・・

 

やられた! 知り合いばかりに気を取られて、ノーマークだった新聞記者に記憶喪失がバレた!

幸いにも、記者はこのことすら記事にしたいらしく、4人の知り合いにも何も言わずに去っていってくれたけど・・・マズすぎる。

このままじゃ、いくら工藤顔で悪事働いても、この記者に偽物だと簡単にバラされて終わってしまう。

 

 

口封じするしかない。

幸い、記者はご丁寧に泊っている旅館を教えてくれたから、探すのには苦労しない。

あとは朝早くに旅館を抜け出して、記者を村長宅に呼び出してサクッと刺して、パトカーと救急車を呼ぶだけ!

 

えっ? わざわざ110番と119番するのか、って?

こうしないと、もし知り合い4人が先に村長宅に来て、僕を、工藤新一を庇って犯人隠避したらマズイだろ?

先に呼んでおくのが正解なのさ。

それに、これだけ面白い状況が揃ったら探偵たちがどういう反応や推理を見せてくれるのかも気になる。

つまり一度で二度美味しい。一石二鳥。

 

 

そして予想通り、記者を刺して茫然自失風の僕を4人が発見。

「この状況で警察呼んだら、血まみれの工藤が犯人にされてまうわ! とにかく、和葉は救急車! オッサンは車をここに持ってきて工藤を隠せ!」

と、救急車だけ呼ぼうとしているところにパトカー&救急車。

服部平次が僕を連れて裏口から出て、車のトランクに僕を隠した。

 

怖いくらい順調じゃないか?

この寒くて狭い真っ暗なトランクに放置されるのは辛いけど、これで工藤新一は社会的にも人間的にも死亡確定!

あとは隙を見て逃げ出すだけ。

まぁ、その後の僕の人生・・・どうするかは、今は考えたくない・・・

 

 

にしても、長いな放置プレイ。

車の外で何かガヤガヤと騒いでいるかと思えば、誰もいなくなったみたいにシーンとなって、それから長時間の放置。

昨日は全然寝れなかったから、それはそれで別にいいんだけど。

 

しばらくして服部平次が戻ってきて、僕を連れて村長宅に入っていった。

ん? こっち行くの? 警察来てるんじゃない?

そうしたら案の定、警察も「まさか工藤君が犯人だなんて言うんじゃ」ってリアクション。

さぁ、何を見せてくれるんだい高校生探偵さんよ。

 

「服には返り血、凶器には指紋。どっからどーみてもコイツが犯人やけど、そらそーや。コイツが犯人なんやから。つまりこの犯行にはトリックなんかあらへんかったっちゅうこっちゃ!」

後半、ひらがなが渋滞して何言ってるかわからなかったけど。

平凡! 高校生探偵・服部平次、ストレートに推理を放棄して僕を犯人として警察に突き出した。

さっきまで僕を庇っていた友情がウソみたいに、手のひら返し。まぁ正解なんだけど。

 

待てよ? 思えば今まで僕は『探偵のお手並み拝見』って気分だったけど、この状況は逆に僕のお手並み拝見タイムじゃないか?

ここで下手な答えを出したら、記憶喪失がバレて計画がすべて水の泡。

試されている・・・だが、見せてやろうじゃないか土俵際の意地ってやつを!

 

そこから咲き乱れる僕の「怖かったんだ」ゴリ押し迫真演技。涙も添えて。

これには警察もすっかり騙されて、僕の自白も困惑しながら受け入れる始末。

勝利目前!

 

そんな時、ソイツは突然現れた。

「それは、人間が生まれながらにして天より授かった終生不変のエンブレム。万人不同であるため、犯罪捜査に置いて最も確度の高い証拠になりうる痕跡。指紋、なんだろ?」

「し、死羅神様!?」

そう、それは僕の実父と僕が使っていた死羅神様コスプレを身にまとった男。

僕は一瞬でその正体を察した。

おそらく、今この話を読んでいる人にも分からない男の正体を。

僕が監禁しているはずの男が・・・ウ、ウソだ。どうやって?

どうやって、ベランダから現れたんだ!?

今コイツが入ってきたこのベランダの外は、断崖絶壁だぞ!

 

いや、今はそれよりも重要なのは、コイツの乱入で僕の正体が露呈確実になることだ。

“失敗は死あるのみ”精神で挑んでいる今回、今すぐに自殺するしかない!

だが、拳銃を取り出した僕に、コイツは「無駄だ」と銃弾を床に落として見せた。

バカな、いつの間に!? と拳銃を見ても、銃弾はちゃんと装填されたまま。

そこに死羅神キックが炸裂して、拳銃は僕の手から弾き飛ばされ、服部平次に奪われた。

「止めとき!仮装大会はこの辺で幕にしとこうや」

服部平次にもバレてた。

 

もう、謎は全て解かれていたんだろ?

 

「そう、彼は整形したんですよ。この名探偵気取りの馬鹿な高校生の顔にね」

うん、知ってた。はいはい、ご本人登場。工藤新一登場。推理咲き乱れる。

「ですよね? 奥田、いや、日原誠人さん?」

はい正解。

えっ? 随分投げやりだって? そりゃそうさ。あとは僕が辱められるだけなんだろ? 推理ミスするような迷探偵に。

でもさ、もう楽勝ゲーじゃん。今回は偽物がすり替わっただけで、本人登場したらもう終わりだし。事件自体のトリックも無いんだし。小学生でも解決できる案件だよ。

 

と思っていた矢先、工藤新一が語り始めた1年前の事件の真相。

義父は癌を苦にしていたのではなく、その時に受けた血液検査の結果、息子が実子でないことを知ってしまったのが原因で義母と心中していたんだ。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

えええええええええ!? 初耳!

しかもその情報、工藤新一が事件を推理し終わった夜、茫然自失で上の空だった僕にも聞かされていたらしい。

 

つまり、普通に工藤新一は推理ミスもしない、迷宮無しの名探偵だった。

 

 

謎はとっくに全て解かれていた。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 殺人犯、工藤新一。

えっ? 敗因?
いやいや、敗因も何も。今回のはただのご本人登場だから、トリックもクソもないじゃないですか。

それに忘れていませんか?

河内さんはまだ死んでいない!

つまり僕は誰も殺していなかった。
だからこの殺人は未確定!
殺人未遂だから、勝負もクソもない!
ノーカウント、ノーカウントなんだ!


そもそも殺人鬼じゃないんだから事件簿のコンセプトとして、僕は挙げられるべきじゃないでしょ。
えっ? 本家の事件簿でも殺人未遂犯はちゃんと犯人として扱われていた?

既に詰んでいたのか。


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ホームズフリーク殺人事件(コナン)

風のリズムで推理が冴える。アリバイ・トリックほぐれていくよ!
今日の事件は意見の不一致。思い込みは危険だぞ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




僕は大学生で大のホームズファンの戸叶研人。

少し語りたい。付き合ってくれ。

 

二次創作は大いに結構。オリジナルに勝ることは絶対に無いが、それでも楽しい時間を楽しめるものが多い。

だが、我慢できないこともある。

それは“原作レイプ”だ。

 

 

『世界観のぶち壊し』

原作にはない存在を無理やりくっつけた展開にするものだ。原作の登場人物なら当然、そういう行動をするだろうという展開にしないは駄目駄目。原作の世界で普通に起きていることを、普通じゃないように扱うのも論外だ。

 

『性格・話し方・口調が原作と違う』

そのキャラが絶対にしない言い方だとか、二次オリジナルの現象を不必要に賛美したり蔑視したりする台詞を吐かせる。原作のセリフを踏襲するパートに、それ以外の要素をぶっこんでくるシーンは見ていて違和感しかない。キャラの人間性を否定する行為だ。

 

『明らかな能力の弱体化』

原作なら当たり前のようにできていることが何故かできない。フィジカル面の弱体化もそうだし、能力的にも原作なら楽々突破している壁がなかなか超えられない。原作を踏み台にしてご都合主義でゴリ押すのは見ていて不愉快だ。

 

といったところだ。

僕が特に嫌いなのが『キャラ崩壊』。原作への愛がこれっぽっちも感じられない。読んでいて不愉快極まりない。

 

 

ここに、『アイリーン・アドラーの嘲笑』という本がある。

金谷裕之と藤沢俊明の共同執筆した、早い話が「もしもアイリーンがホームズを嘲笑ったら」という二次創作の同人誌。

僕の嫌いな"キャラ崩壊系"の内容だ。これを読むくらいなら、ブックオフで100円で買える中古の自己啓発本を読んだほうが絶対に有意義に決まっている!

 

 

 

 

 

ふぅ。熱くなってすいません。思う存分語ったおかげですっきりしました。

口調も悪くなりましたね。申し訳ありませんでした。

ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか、ホームズフリーク殺人事件。

敗因ですか? 敗因? 

えっ? 殺人事件? 何言ってるんですか?

 

このホームズ二次創作に怒って殺人? 僕が? やるわけないでしょ。

そりゃ読んでいて怒りは沸きましたよ。だけど殺意までは沸きませんって。

たしかに、僕の中の死神的な声が「殺そう。殺せ」って喚いてますけど、そんなものに耳を傾けていたら社会では生きていけません。来年から社会人ですよ僕。

 

 

そんなことより、例の金谷が『シャーロック・ホームズフリークツアー』ってのを、彼がオーナーのペンションで開催するそうです。

金谷が主宰なのが気に食わないですが、それでもホームズを愛する者だけが集まるこのツアーは楽しくなること間違いなし。

応募者から抽選で選ばれるツアーでしたが、僕は幸運にも当選しました。

交際女性との2人枠だったのも幸運。まぁ、彼女はホームズ知識が少し足りないから、超難問クイズに挑むのは厳しいかもしれないですけどね。

 

 

というわけでツアー当日。金谷の運転する車に揺られて到着したのはペンション「マイクロフト」。良い名前だ。

マイクロフトっていうのは、シャーロック・ホームズのお兄さんの名前なんだよ。

この名前だけで僕の心の中はテンション最高潮で叫んでいるよ。

『殺そう、殺せ』『殺してまえ、いてもうたれ』って。

死神がうるさいね。でもそんなものに構ってしまう僕では無・・・

 

 

ん? 死神が2人になった? 関西弁のが増えた?

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

こうして僕は、ホームズが認めた唯一の女性・アイリーンが、ホームズをあざけ笑うなんて考えられない人間になった。

金谷と藤沢を殺そう。

 

 

藤沢もペンションに無事合流。メンツは揃った。よし殺せる。

(ちなみに、その揃ったメンバーの中に“コナンくん”という眼鏡の男の子がいた。良い名前すぎる。僕も一緒にその名前で盛り上がりたかったけど、藤沢がいたから断念)

 

 

ということでここからはトリックだ。

まずはツアー参加者が部屋に籠って超難問クイズに挑んでいる間に、金谷をサクッと殺害して死後硬直トリックを仕掛ける。

クイズは全1000問あるから、犯行時間に余裕は十分・・・

 

だと思っていた時期が、僕にもありました。

 

死後硬直が“車のブレーキを踏んだ”姿勢になるようにセットする。

この大変さたるや。

 

車のブレーキを踏んだことのある人なら分かるだろうが、当然ペダルには抵抗があるから足を伸ばして踏ん張る必要がある。

足先の死後硬直って、死後直後からは始まらないんだよ。硬直するまでは僕が死体の足を支えて固定する必要がある。

その長時間労働たるや。

 

えっ? 硬直がある程度進行するまで放置すればいいじゃないかって?

そんなことして目的の部位以外が下手な姿勢で固まったら、座席に座らせることができなくなって困るだろ。

じゃあテープで固定したり、重しを乗せておけばいいじゃないかって?

ペダルに対して硬直の軸がズレたらトリックが台無しさ。

 

つまり足が硬直するまでの4時間以上、ずっと死体を手で支え続けるしかない。

それがどれほどの苦痛かは、お察しください。

 

 

ということで頑張って用意した死後硬直トリック。

あとはクイズの答え合わせのために集められたリビングで待機してアリバイを作りながら、車が動き出すのを待つだけ。

 

【am3:30】

やっと動き出したよ車が。崖へ一直線に。やっと。思ってたより死後硬直が解けるまで長かった。

夜更かし高校生とコナンくんが車を追って走っていった予想外が発生したけど、2人とも危ういところで崖には落ちることなく、無事に金谷死体は回収不能に。

完全犯罪達成。あとは藤沢に「ガレージの車の後部座席の下にホームズの初版本が隠してある」と言うだけ。

この車にもあらかじめ罠を仕掛けてあるから、あとは待つだけ・・・

 

と、僕がワクワクしているところに急にブッコンできたのは、僕の彼女の綾子だった。

「あはははは。だって私、わかっちゃったんだもの。犯人の正体もトリックも。それを決定付ける証拠もね」

な、なんだって!?

 

おいおい、ここに来て急展開すぎる。

このペンションにはホームズマニアが集まっている。つまり、揃いも揃って推理レベルが標準偏差より高いメンツだ。だからもちろん警戒して証拠を残さないように注意していた。

 

 

まじか・・・

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

と思っていた時期が、僕にもありました。

僕が犯人だとはしっかりバレていた。

だけど綾子は僕を庇って推理を話さず、「勘違い」ではぐらかしてくれたのさ。

 

いや、庇うつもりはゼロ。

目当ては金谷を殺した僕が手に入れているはずの初版本。(ただし、初版本の在り処は僕も知らない。聞く前に金谷を殺したからね。やっちまった)

このままじゃ綾子経由で僕の犯行が明らかになってしまう。最後の藤沢を殺せない。

綾子を殺すしかない。

殺害トリックは藤沢のものをそのまま引用。

 

焼き殺したよ。

 

藤沢を殺すトリックは新たに用意せにゃならんかったが、そこはお手軽に。

コンセントと針金で停電起こして、アイスピックで刺し殺す。

 

刺したよ。

高校生とコナンくんに邪魔されて殺せなかった。

殺せなかったのは残念だが、コナンくんにケガが無くてよかった。藤沢はまた後で殺せばいいだけ・・・

 

 

と思った矢先、高校生が急に扉を背に座り込んだ。

「ペンションのオーナー、金谷さんを車に乗せ、ガケから転落させた第一の事件。次にガレージで綾子さんを焼き殺した第二の事件。そしてこの部屋を停電させ、藤沢さんをアイスピックで殺そうとした第三の事件。この三つの事件を起こした犯人は、あなたや!」

え? オレ?

高校生が指名したのは、ホームズファンではないのになぜかツアーに参加していたコナンくんの保護者であるオッサンだった。

 

「ちがいまんがな。オッサンの後ろで冷汗流してる、戸叶さん、あなたやで!」

高校生は酷い関西弁で僕を名指しした。

うん、合ってる。合ってるが・・・ファッ!?

今日2回目の犯人当てが、どっちも急すぎる。

しかも高校生、オッサンに拳骨を喰らっても推理を続けるから厄介。

 

 

「それも可能と、なりまんがな」

「丁度いい頃合いでおまんがな」

「できまんがな、簡単に」

 

オッサンに殴られたダメージで言語中枢にエラーを起こしながら、咲き乱れる高校生の推理。

 

そして綾子も言っていた決定的な証拠とは、超難問クイズ1000問。その内容。

そう。金谷を殺した僕は、そのクイズを解く必要が無いからと、クイズを解いていなかった。だから、その内容を1問も知らなかったのだ。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? ホームズフリーク殺人事件。

敗因は、やはり設定への入り込みが足りなかったことでしょう。
ツアー参加者なら普通は挑むであろうクイズに挑まなかった。
ツアーという世界観を無視して、原作レイプしたことが敗因。

やっぱ、原作レイプは駆逐するべきなんだ。



たとえそれが、どんな作品が原作でもね。




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図書館殺人事件(コナン)(リクエスト回)

友情、恋愛、ミステリー。その約束があるから頑張れる!
今日の事件はトラウマ事件。そしてコナンの最後の日?
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



ここは米花町。日本屈指の犯罪発生率を誇る犯罪都市。

殺人事件は週1、傷害・窃盗等の重犯罪は週2、爆破等のテロは月1の頻度で発生している。

検挙率は9割9分を誇るとはいえ、それでも心の平穏なんて訪れないし、安心して熟睡できない。

全国的平均7~8倍の行方不明者発生、という町がどこかにあるらしいがかわいいものだ。

 

そんな町の図書館で、私・津川秀治は館長をしながら、麻薬の密売をしている。

サラッと凄い話をブッこんできたなぁ。と思った貴方は“正常”だ。

 

 

前置きした通り、この町は“異常”だ。

犯罪者の溜まり場であることもそうだが、それは犯罪者以外の一般町民についても言える。

慣れてしまっているのだ。事件に。犯人に。

普通の町なら殺人事件が発生して犯人が逮捕されるまで2~3日かかったとして、その間は殺人犯が逃亡していることで町中が騒然とするもの。小学生は保護者同伴の集団登下校が通常だろう。

ところが米花町は騒がない。子供だけで平気で街を出歩き、近所で殺人事件が起きたら周囲に野次馬が群がる。

だから、麻薬を見つけても背後を警戒しない。

 

 

この日の残業時間中、図書館職員の玉田が密売麻薬を見つけてしまった。

だから私は玉田の首を絞めて殺した。

殺せた。

職場で麻薬見つけたら、普通は「同僚に犯人が!?」って警戒心MAXになってもおかしくないだろう。

なのに無警戒。年配の私でも簡単に背後取れるくらいの無警戒。

もはや殺した側が驚く事態。この町じゃ突然殺されるなんて驚かない事態なのかもしれないが、逆のパターンはむしろドン引きだ。

 

さて、ここで疑問に思う人もいるだろう。

冒頭説明した通り、この町の犯罪検挙率は9割9分。犯罪者にとって住みにくい町第1位。

そんな町で、私がどうやって麻薬の密売を継続できているか。

発想は非常に簡単。児童書コーナーの棚に隠しているのさ。

用意するのは背表紙の無い本。それを棚の本と本の間に挟めば、子供が本を手にとってもソコに見えるのは奥の本。“絶対に誰も手に取らない”。あとはその無背表紙本の中に麻薬を隠すだけ。

これにより、本棚1つに200冊(1列20冊×5列×2行)の100gくらいの麻薬を隠すことができる。末端価格にして1棚10億はくだらないだろう。

 

えっ? 子供が棚の本を抜いて『トンネル』遊び始めたらアウトだって?

大丈夫。何故ならこの町、小学生の素行不良率は非常に低い。みんな良い子。イジメ問題の1つも起きない。

だからそういうお行儀の悪いイタズラは起きない。断言できる。現に一度も麻薬本だってバレていないじゃないか。

 

 

 

さて、話を戻そう。

玉田を殺した私はひとまず死体の隠し場所としてエレベータの天井をチョイス。扉を手動で開けて死体を投げ落とした。

が・・・これで正解なのか?

 

エレベータの上から血が垂れてこないか?

死体が腐って臭ってこないか?

そもそも死体を永遠に放置するわけにいかないから後日捨てに行くんだけど、回収大変じゃない?

 

 

・・・・・不安だ。

不安な時にはコレ、麻薬♪ すべて忘れて明日まで楽しもう。

朝が来れば、いい事がある。夢見るだけで、辛いこともいつか忘れる。寂しくて憂鬱な夜は、胸を張って歌うのさ。明日は幸せ。

 

 

 

そしてあっという間に2日経過。

今日も通常業務が終わったら、残業時間に麻薬入りの輸入本を棚に隠すのが楽しみだ。

と思っていた矢先に、隠す前の麻薬本にイタズラしようとしている眼鏡の子供を発見。

叱りつけていると警察が到着。

玉田の捜索願が家族から出ているそうだ。当然、私は図書館館長にしておくには勿体ない演技力でしらばっくれて、「無断欠勤しています」と回答。

警察は「図書館内にいる場合、すでに殺されている可能性が高い」と名推理を炸裂させながらも、結局は館内をサラッと探しただけで帰っていった。

馬鹿者wwwなのだが、そういう悪口は言いたくない。何故だろう? あの太った警部さんは他人とは思えないと言うか、何か日曜日に家族的な大事なポジションを託すことになるというか・・・

まぁいいか。

 

 

 

さて、時間は流れ夕方。図書館の営業時間は終了。他の職員も帰っていったから、今から残業時間の麻薬を隠すタイムだ。

ところで、夕日って見てると寂しくならないかい? 私は少し不安な気分になる。

不動芸術高校の女子生徒に聞いた話だが、人って不安になると喋るらしい。長尺の説明口調の独り言が、サラサラと口からこぼれるらしい。

だから私もこの通り。

「ふんっ玉田も馬鹿な奴だ。この中身を見なきゃ殺されずに済んだものを」

出るわ出るわ説明口調の独り言。そして思わず出てしまう高笑い。

 

ギィッ

 

その時、この部屋の入り口の扉から音が聞こえた。気がした。いや、鳴った?

幻聴ならいいが、もし誰かがそこにいて、さっきの私の独り言を聞かれていたら・・・

マズい! 怖い!

「誰だ!?」

私は叫びながらドアを開けた。不安だから思わず声も大きくなる。

しかし廊下には誰もいなかった。階段にも。となると、トイレか?

「ここか?」

人の気配がある個室を開けたが当然誰もいない。気のせいか・・・

どうやら不安になりすぎていたようだ。(ちなみに『人は不安になりすぎると逆に独り言が出ない』を今発見した)

 

その後、麻薬を棚に隠し、いくつか自分の鞄に入れて、今日の仕事は終了。

明かりを消して鍵をかけて、後は家に帰るだけ・・・

パッ

突如、私の目の前の地面が照らされ、私の影が伸びた。

 

 

 

 

!!??

 

目の錯覚じゃなければ今、図書館の2階に明かりがついた。例の麻薬の隠し場所の部屋から。

そしてすぐに消えた・・・幻視じゃなければ。

 

可能性は3つ。誰かがまだ図書館にいる。玉田の亡霊の仕業。麻薬の症状。

前者なら、もしかすると夕方の物音はやっぱり誰か人がいて、独り言も麻薬も聞かれて見られていたってこと。ヤバイ。後者2つならそれはそれで怖い。

要対処事案発生。悪霊退散。薬物駄目絶対。

私は気力と勇気と正気を振り絞って図書館に戻ることにした。

 

 

そこで私が見たものは、麻薬本を隠した児童書棚の本を根こそぎ抜き取り調べている子供たちの姿だった。

これは・・・どう判断と解釈をすればいいんだ?

 

麻薬についてバレているなら、棚から本を全部出しているのはおかしい。

バレていないなら、そもそもこんな夜遅くに図書館に侵入しているのはおかしい。

謎すぎる

と思っていた矢先、麻薬は発見されてしまった。

 

 

 

その後、子供たちは通報するため1階ロビーの公衆電話へ。(だが私はすでに電話を無力化していたのさ)

私は子供たちが交番に通報しに行く前に殺せるように、入り口前の物陰に隠れて待機。

だが子供たちは全然外に出ていこうとしない。

むしろ玉田の死体を見つけてしまおうとしているようだ。

四葉のクローバーでも見つけるような感覚。

私の常識が通用しない。

 

でもまぁ、不安の芽は摘んでおくのが常識。

靴紐がほどけて座り込んで、他の子供たちに置いてけぼりにされた女の子を、背後からヌッと紐を通して首を絞めて・・・

「歩美ちゃん! 何やってんの」

眼鏡の子が女の子を呼びに戻ってきた。その気配を察知した私はギリギリ隠れることに成功。危なかった。もし4人中1人でも私が殺人鬼だと知ってしまったら、4人ともバラバラに逃げ出して通報されていたに違いない。

殺すなら1人ずつ密かに殺す。それか4人まとめて殺す。それしかない。

 

 

 

その後、4人の子供たちは死体を探しに図書室を物色しはじめた。当然そこに死体は無い。この調子なら少し目を離しても、部屋から離れたりしないだろう。

この間に私は“図書館業務に絶対に使わない長い鉄パイプ”を取りに行った。

 

子供たちの所に戻ると、「分かったぞ!死体の隠し場所が」と1人眼鏡の子が階段を上にダッシュ。

まさか・・・まさかな。

不安になった私はエレベータに入った。

何故って? 人って不安になると暗闇が嫌になるんだよ。明るさが欲しくなっただけさ。別に合理的な理由は無い。

 

と、しばらくしてエレベータが動き出し、4階に到着すると目の前に子供たちが。

「あっ・・・」「つ・・・つ・・・」「かん・・・かん・・・」

私の姿を見て愕然とする子供たち。どうやら玉田死体を見つけてしまったようだ。

可哀そうに。麻薬見つけた時点で殺害決定だが、死ぬ前に死体を見るなんてさぞ怖かったに違いない。

「どうしたんだいボウヤたち。こんな時間に。さぁこっちにおいで。おじさんと一緒に帰ろう」

私は怖さを紛らわせてあげようと優しい笑顔を見せながら、鉄パイプを背に隠し子供たちに歩み寄った。問答無用で殺すよりかはコッチのほうがイイだろう。

 

すると子供たちは何か相談を始め、眼鏡の子供がクルッと振り返った。

「ふんっ、ガキだと思って舐めんなよ。館長さんよぉ」

すごい迫力から始まる眼鏡の子供の子供らしからぬ啖呵。本棚のアイディアも、麻薬の事も、死体の事も全部お見通しだと。

「なんだ、なんなんだお前は!」

「江戸川コナン、探偵だ!」

本物さながらの探偵ごっこを見せるコナン君。

私が彼に気を取られている隙に、他の子供たちがエレベータに乗って脱出しようとしていた。

さらに、私がそのことに気付いた隙に、コナン君までもエレベータに向かってダッシュ。

私の鉄パイプスイングをスライディングで避けて、コナン君もエレベータで脱出。

やられた!

 

 

私は階段を駆け下りて2階でエレベータを待ち構えた。

「さぁ覚悟しろ、小僧ども!」

空だった。途中で降りたのか。

・・・私、やっちまった。何故、3階で確認しなかった? 階段降りてる時に見えてたハズなのに。

不安と焦りがミスを産んだのか。

だって、焦るさ。もう外も真っ暗な時間に、子供たちの親が「ウチの子が図書館に行ったっきり帰ってこない」って警察に通報したら、「玉田も図書館から行方不明。これは怪しいぞ」ってなるだろ? 時間との闘いなんだ。

よっぽど4人とも、門限過ぎても気にしないような放置子の家庭でもない限り、な。

 

 

 

その後、私はエレベータを開延長にして、子供たちを袋のネズミにして捜索を開始。

すると早速、部屋中の机や椅子が荒らされた図書室を発見。

バリケードを張ったつもりだろう。本棚まで中途半端に動かして。重くてこれ以上動かせなかったということか。

そして一番奥の棚が傾いている。

 

「今だ!」

そして倒れる本棚。私はその横。無意味な棚攻撃。

でもないな。本棚が倒れて本がバラバラに落下しているから、子供たちを殺した後に元に戻すのが大変だ。明日も図書館の営業日。徹夜確定。

マジか・・・やることが多い。殺した後のやることが多い!

 

私は怒りを覚えながら、横に少し逃げた子供たちを追い詰めた。

「所詮、子供の浅知恵よ。安心しろ。一人ぼっちにさせやしない。4人まとめてオジサンがあの世へ送ってあげるからね」

ドンッ

「うわぁああああ」

 

 

そこから私に向かって倒れこむ本棚。

ズドーン!

私は本棚に押し潰された。

「やったぁ、大成功!」

子供たちは歓喜し・・・

 

 

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
図書館殺人事件。

敗因は、やはり犯罪都市で育つ子供を舐めていたことだ。
最後の本棚だって、大成功♪なんて騒いでいるが・・・ふつう死ぬって。
普通が通用しない町、米花町。
殺人と殺人未遂と薬物売買と薬物密輸犯の私が言うのも説得力無い話かもしれないが・・・

まともな人間はこの町に近づくな。
死ぬぞ。
殺す側でもな。


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6月の花嫁殺人事件(コナン)(リクエスト回)

星ってなんだか魅力的。犯人だったり俳優だったり。
今日の事件は殺人未遂。タイトル詐欺ですごめんなさい。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




俺は高杉俊彦。

20年前に犯人追跡中の警官に唯一の肉親である母親を見殺しにされ、その後子供のいない高杉家に養子として引き取られ、高杉グループの跡取り息子に。

そして7年前、サバサバ系女子の竹中一美と交際中に仇の警官の娘・松本小百合と出会い、復讐を誓った。

 

分かる人には分かる。

わずか2行でサラッと語られているが、数年がかりの壮絶な日々だと。

 

読んだぜホットドック・プレス。 

セミナーに次ぐセミナー。

踏み続けた場数。

ターゲットに合わせて自己をプロデュース。

【優柔不断で頼りない男に】

そして生まれ変わったハートキャッチ高杉!

 

 

こうして小百合を見事に口説いた俺だったが

正直・・・手ごたえなし。

女ってこんなに簡単に口説き落とせるもんなのか? 肩透かしってくらい。

まぁアレか。

俺がハートキャッチを極めすぎたのか。じゃなかったら、金に目がくらんだってことか。

女って怖い。

 

 

まぁおかげで現在、松本小百合と婚約中の高杉グループの跡取り息子 & 高杉グループは俺の代で終わり、と噂が完成した。

この復讐、終わった頃には婚約者が何者かに殺され、高杉グループも経営難という凄惨たる結果が残るだろう。

だが俺はやる。大切な人を失った悲しみを、あの警官にも味わわせてやる。

 

 

 

そしてついに訪れた結婚式当日。

劇薬・苛性ソーダと、わざと溶けかけさせたカプセルを持ち込んで花嫁の控室へ・・・入るための自然な演技をスタート。

「おい、なに照れてんだお前。新郎だろ!」

持つべきものは友達。新婦の部屋に入ろうか悩み中の新郎を装って、友達に背を押してもらって小百合の部屋に飛び込んだ。

果たして歴史上、こんなオチャラケ風に犯行現場に飛び込んだ犯人がいただろうか?

 

 

部屋に入ると、これまた好都合にも小百合はレモンティーを手に持っていた。

「おいおい、まだこんな貧乏っちぃモノ飲んでるのか?」

と、レモンティーを奪うことに成功。

あとは誰にも見られないように苛性ソーダとカプセルを別々に混入するだけ。

『毒はカプセルに入れてある』って常識で考えると、後で捜査されるときにカプセルの溶ける時間から逆算して犯行時間が推理されることになる。つまり犯行時間を誤魔化せて、俺が容疑者から外れることになるのさ。

あとは式の時間に合わせて退室して、その間に小百合が毒を飲むのを待つだけ。

 

 

「きゃあああ!」

その後、式場に響き渡る悲鳴という名の毒殺成功の合図。

救急車が到着し、小百合は病院に搬送された。

(今知ったんだが、毒って即死しないんだな。即死前提のトリックって多そうだけど)

 

 

そして俺は憎き松本警視と共に、毒を盛ることができた容疑者として犯行現場に集められた。

(これ誰かポンコツすぎる推理をして、父親を誤認逮捕してくれないかなぁ)

 

 

だが、俺の期待と裏腹に・・・どころかトンデモない情報が飛び込んできた。

 

容疑者がレモンティーを手にしたところ、全部ビデオカメラで録画されてた。

 

・・・ウソだろ。回しっぱなしのビデオカメラが映していた角度で、俺はレモンティーを手にしていたんだぜ。

だが奇跡的にも、俺が毒を混入した瞬間は映っていなかった。

運だな。下手したら一生分を使い果たしたんじゃないかってくらいの運が、俺を救ってくれたんだ。

 

 

 

その後、警察の捜査は全然進展せず、気が付けば夕方。

待ちの時間、辛いな。

 

 

「わっ私、分かっちゃったのよ。松本先生のレモンティーに毒を入れた犯人の正体が」

その時突然、小百合の生徒だったという女の子が、まるで眠っているような姿勢で座り込むと推理を語り始めた。

警察関係者がいる前で堂々と。

しかも聞いてると的中的中!

ちなみにドン引いてるのは俺だけかもしれないが、この女子高生、毒についても異常なくらい詳しい。

警察関係者がいる前で堂々と。

 

その後も咲き乱れていく女子高生の名推理。

 

どうも小百合が飲んでいた缶は、途中で同じレモンティーを飲んでいた生徒の缶と取り違えていたようだ。

つまり俺が毒を入れた缶は、もともと生徒の缶だったってことで、下手すりゃその生徒が毒を飲んでいたかもしれないってこと。

そして、犯人は俺しか残らなかった。

 

 

 

そこでさらに明かされる衝撃の事実。

 

小百合は、俺が小さい頃に一緒に遊んでいた初恋の女の子だったのだ。

そして小百合は俺が父親警視の見落とした事件の被害者家族ということも知っていて、俺への後ろめたさを感じながら交際してくれていたらしい。

しかも今日、俺がレモンティーに毒を入れたことに気付いていた可能性も高いのだ。

 

 

やらかしすぎだろ。

殺そうとしておいてなんだが・・・

教えといてよ!

許すよ。許してたよ。許していたよ!

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

そして本日2度目の奇跡!

小百合が、助かりました!

毒を飲んですぐに、現場にいた何者かが適切な応急処置をしてくれたおかげらしい。

 

 

 

その後、俺は “毒物及び劇物取締法違反”で逮捕されることとなった。

俺の殺意は当事者には明白だったが、俺が殺人未遂犯として逮捕されることよりも、この事件を不慮の事故として処理したほうが被害者にとって利益になると判断されたことによる恩赦だった。

 

小百合と松本警視には感謝しかない。

たしかに俺は高杉家を勘当され、人生再スタートのために就職活動に苦労することになったが、それでも犯した罪と比べれば信じられないくらい救われた境遇だ。

 

 

 

その後、俺は一生懸命働き、真面目に社会復帰を遂げていた。

今日も夜まで外回りの営業さ。

「そういえば、七夕だったな」

夜空を見上げると、“東都タワー”が綺麗にライトアップされていた。

七夕といえば、織姫と彦星。何度も引き離されて年1だけの愛。それでも愛が溢れている。

小百合と俺の関係も、2度も引き裂かれていながら愛に溢れている。2度目のは俺が引き裂いただけだが。

いや今や3度目だ。あとはお父さんである松本警視に認めてもらう高い壁に邪魔されている。

 

これが最難関。

ただでさえ“娘さんを僕に下さい”っていうのは高い壁なのに、ましてや俺は娘さんを殺しかけた男。

厳しい戦いは避けられないだろう。

 

 

と、そんなことを考えていると、パトカーのサイレンの音が聞こえてきて、東都タワーの前で何台も止まった。

そしてその中から、松本警視も姿を現す。

「!!??」

警視は今から展望台に突入するようだ。部下の警官にも指示をしている最中だ。

そんな時、俺は松本警視と目が合った。

「君は・・・たしか・・・」

警視は俺を見て記憶を捻りだすようにつぶやいた。

俺の顔を忘れた? いやいや、そんなわけがないが。

 

 

それよりも俺は大パニック。そしてパニックが暴走してつい口が滑ってしまった。

「娘さんを俺に下さい!」

馬鹿か俺は? ただでさえ殺人未遂犯の俺が、しかも今から突入しようって警官に、今言うべき言葉じゃねぇって!

 

 

「あぁ、娘はキミに任せたよ」

警視はそう言うと、部下の警官と一緒にタワーへと入っていった。

 

 

 

 

 

ん?

 

 

俺の耳、正常だよな? 聞き間違いじゃ、ないよな?

松本警視の性格は俺もよく知っている。

俺の母が殺された日にも、犯人を追うことに集中するくらい真面目な警官。

俺が殺しかけた日にも、娘を心配して病院に行くのではなく、現場に残って捜査に尽力していたくらいの真面目な警官だ。

つまり、テキトーなことを無責任に言うような人間ではない。

 

 

・・・ってことは

きわめてイレギュラーではあるが・・・

結婚、認めてもらった!?

 

 

その日の俺の帰りの足は羽のように軽くなった。

 

 

 

後日、松本警視が“何日も監禁されていた”ことで入院していると聞き、俺はもちろん見舞いに行った。

 

「大丈夫ですか!? お義父さん!」

何故かめっちゃ怒られた。

「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」って。

 

その後、結婚を認めてもらうのに3年かかりました。

 

 

 

 




いかがでしたか? 6月の花嫁殺人事件&漆黒の追跡者。

敗因はもちろん、お義父さんが偽物だと気づけなかったこと。
無理じゃないですか、部下の警官ですら気付かなかったんだから。


えっ? そもそもそんなタイミングで結婚をお願いすることのほうが非常識だって?
殺しかけたのが6月で、お願いしたのが7月なんだから、1か月で殺人未遂を許してもらおうって魂胆のほうが異常って?


いやいや、もう俺の罪はとっくに許されていたさ。
あれから何日経ったと思っているんだ?
えっ? 1か月だから30日くらいだろって?

ふっ。
それはソチラの常識の話であって、俺たちの常識とは異なる。


逆に聞こう。

君達は一体いつから、1年が365日と錯覚していた?


実はもう事件から何百日も経過しているんだよ。
1年に何度もクリスマスやお正月を味わい、冬の後に夏が来る世界に住めば、分かることさ。

そして、僕らの結婚が許される3年後が、いったい何千日後に来るのか・・・
それは誰にも分からない。


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亡霊学校殺人事件(金田一)

俺は山科大学付属高校2年生、美術部員の成沢研太。

同じ部活の伊能耕平に弄ばれて殺された妹の仇を討つため、殺害を計画している。

 

毎年、美術部の夏合宿で利用している「民宿なぎさ」という場所がある。

そこで恒例の肝試しをしているんだが、そこで殺す。

 

 

まずは事前準備のために前乗りだ。

犯行予定現場は旅館のすぐ裏にある墓場の、その奥にある廃校の女子トイレ。

 

来てみて思った。ココすごい立地条件。旅館側から見ても、学校から見ても。

普通、墓場の隣に作るか?

墓が先でも学校が先でも旅館が先でも。

 

あとさ、ここが廃校になったのは8年前。

たった8年前まで、戦前に建てられた木造建築に子供たちが通っていたんだ。

しかもトイレも古いままの落下式。分かるか? 落下式。ぼっとん便所ってやつだよ。

 

俺なら絶対に登校拒否してたな。それは言える。

 

 

まぁそれはそれ。

俺はトリックに使う石膏製の便器や針、毒、ピンポン玉、赤いインクをトイレに隠しておいて、ここでの準備は完了。

あとは電話番号で俺だと分からないようにするための新しい携帯電話。伊能の携帯のバッテリーと同じものを購入しておく。

 

 

準備は周到に進めてきた。

失敗はない。

よほど、名探偵でも現れない限りな。

 

 

 

 

当日

 

さっそくピンチだ。

美術部員の1年生が全員、夏風邪でダウンした。

だから今日、夏合宿に参加しているのは俺含めて4人。

 

つまり、肝試しがイマイチ盛り上がらない!

いくら毎年恒例の行事とはいえ、俺たちはそもそも美術部。

肝試しなんてその場のテンションが乗らなかったり、雨天で中止するレベルの優先度。

殺害用の毒針やらの用意はある。だが、肝試し以外での活用法は考えてきていない。

これは・・・断念せざるをえないのか・・・

 

 

だがその時! 俺たちの前に現れる救世主。

不動高校ミステリー研究会の御三方が現れた。

1人は金田一くん。

もう1人は七瀬さん。

3人目はよく分からん。うまく認識できなかった。

 

 

まぁ誰にせよ、肝試しに一緒に参加してくれるっていうなら大歓迎。

いや、まだこの段階では「参加する」とは答えてくれていないが・・・ミステリー研究会なら参加する流れだろう。

 

ということで俺たちは肝試しまでの間、打ち解けるために一緒に卓球に興じた。

金田一くんだけは卓球が終わるころに現れたけど、もう夕飯の時間だったから俺は彼の手からピンポン玉を回収して、フロントに道具一式を返却するフリをしてトリックに使う用に抜き取っておいた。

 

 

さぁ、ここからが本番。

肝試しの順番決めくじ引きをして、俺がラス2、伊能がラス1になるようにイカサマをdo。

他のメンバーが恐怖と戦い終え、いよいよ俺のターン。

廃校の女子トイレに伊能殺しのトリックを仕掛けに行く。

 

 

これダメかもしれない。

 

 

俺の下準備は明るいうちだったから、この暗さは想定していなかった。

明かりはロウソクだけ。

そりゃ妹の仇のために勇気を振り絞れるが、トリックの準備には明らかに・・・

光・源・不足!

 

俺が今からやらなきゃいけないのは

・物置のトイレ化

・イタズラ風インクの用意

・毒針の準備

 

トイレ化は、この肝試しのチェックポイントが「一番奥のトイレ」であることを利用して、他のメンバーが入った時には物置。伊能が入った時にはトイレになるようにするためのもの。

物置の掃除道具を片付けて、隠しておいた石膏便座を設置するだけ。

これは簡単。

イタズラ風のインクも、死んだ伊能をみんなで探さないようにするために、伊能のイタズラに見せかけて捜索を諦めるようにするためのもの。

これも簡単。

 

 

問題は毒針さ。

毒は今から塗る。下準備の日にあらかじめ塗っておく手も最初は考えたが、さすがにこの暑い夏の時期に屋外放置した毒が分解されて致死性が落ちる可能性がある。

だから当日塗りが確実。

 

この蝋燭の明かりだけのトイレで・・・猛毒を?

そりゃたしかに懐中電灯の明かりなんかが外に漏れたらバレるけどさ。

命がけの作業を、ほぼ手先の感覚だけを頼りに?

 

やってやろうじゃねぇか! 俺は美術部! 手先の器用さには自信がある!

 

 

 

 

と、毒を塗り終えたから、次のモノを取り付けようか。

麻酔針をな。

 

えっ? なぜそんなモノが必要かって?

 

皆、知らないだろうが。

即死する猛毒は、“即死”しない!

刺されてゼロ秒で死ぬわけじゃない。刺されてゼロ秒で“死から逃れられない”だけなんだ。

つまり毒が回るまでの間、毒で苦しむ伊能が、助けを求めてしまう。

 

 

このトリックの要は、伊能に物置の中で死んでいてもらうこと。

だから、伊能には“その場で動けなくなってもらう”必要があるんだ。

 

 

俺も最初は「無理じゃね?」と思った。

だけどな、この世界には“刺された瞬間に”効果を発揮して、撃たれた相手が動けなくなる代物があるんだ。

 

俺は入手した。

刺された瞬間に「ふにゃっ」とか「ほへっ」とか言って眠りについて、しかも刺さった瞬間すぐ体内に溶け込み消え去り針痕が残らない。

さらに、眠るときに決まって”眠らせた側に都合の良い姿勢”で眠ってくれるのさ。

椅子を置いておけば椅子に座り、ドアが開かないようにする位置に座ってもらいたければそのように。

さらにさらに、麻酔の代謝がとても良く、眠らされた状態から起きた直後でも、体がフラフラとせず、むしろ”全力疾走”すら可能なほどに元気になる。つまり体内に薬品の成分が残らない。

そんな麻酔針をな!

 

 

入手経路については聞かないでくれ。そういう約束なんだ。

 

 

 

さて、話を戻そう。

全ての準備を終わらせたら皆の元に戻って伊能にバトンタッチ。

時間がかかった分、みんなから「怖がりすぎ。時間かかりすぎ」って目で見られるのは我慢。

 

その後、伊能がいつまで待っても戻らないからと、みんなで探しに行ってイタズラを発見して旅館へ帰る。

伊能を待つ間に、「花子さんと赤インク」の怖い話を聞かせてもらった。(へぇ・・・初耳)

 

そして待ちくたびれてみんなが寝た2時半過ぎ。

旅館を抜け出して伊能死体の待つ廃校トイレへ。

物置から伊能死体を運び出して墓場に捨てる。

物置を元に戻して、毒ピンポンや石膏便器を人目につかない遠いところに捨てに行って。

旅館に戻れたのはほぼ朝。

 

そして朝食後にみんなで伊能を再捜索して、シャツに赤いインクが垂れて、真っ赤なチャンチャンコを来たような状態になった死体を発見。

 

・・・・ん?

 

 

 

 

あれ?

赤インクを垂らした覚えないぞ?

 

 

 

?????

 

 

それから、俺の頭は真っ白になった。

睡眠不足だからな!

 

 

 

その後、警察に容疑者として取り調べられ、ポンコツの血ですぐに解放され、金田一に誘われてもう一度、廃校に行って、チェックアウトを済ませて

 

眠ぃ・・・寝てないんだよコッチは。

あとは帰りの最終電車で寝よう・・・と思っていた矢先・・・

 

「じゃ、みなさん行きましょうか。もちろん、亡霊学校の『花子さん』のいるトイレ。伊能さんの死の真相は、みんな知りたいでしょ?」

 

金田一が誘いやがった。

なんだコイツ? 死神の手招きだろ。睡眠不足で死ぬぞ俺。

 

 

そして周囲が暗くなり終電に乗り損ねたことが確定した頃

廃校トイレで金田一は語り始めた。

 

「犯人は玉やラケットを返しに行った人物。鳴沢研太! 亡霊学校の怪談に見立てて伊能を殺害したのは、あんたなんだよ!」

 

 

そこから咲き乱れる金田一の名推理。

 

うん、全て的中している。

ってことは当然、最大の謎も解いているはずだ。

 

俺が仕掛けていない、伊能の死体の赤いインクの謎もな!

 

 

 

 

 

そして、謎は解かれていなかった

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 亡霊学校殺人事件。


いやぁ恐ろしいなミステリー研究会。
俺、クラブ活動ってのを部活より下に見ていたけど、考えを改めたよ。

警察すらスルーした俺のトリックを暴いてしまうんだから。
さすがミステリーを研究しているだけはある。



あと、今思い出したんだが・・・
死後硬直って3~4時間で指先まで硬直するらしい。
だが、俺が伊能の死体を運んだ時、死後3時間は経過していた。
なのにあの死体は、狭い物置の中で死んだ時の姿勢で固まってはいなかった。

まるで今の今まで生きていたみたいに・・・ダランと手足をぶら下げて・・・


この謎も、きっと全国大会レベル優勝のミステリー研究会がいたら解いてくれるんじゃないかな?
と期待して、俺は刑に服したいと思います。

それではまた、いつの日にか。


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剣持警部の殺人(金田一)(リクエスト回)

どうも、犯人の毒島陸です。

3年前、俺が恋していた十神まりなを殺し、その罪を俺に擦り付けた多間木、魚崎。

そして、この犯罪の全てを告発した俺の手紙を握りつぶした担当刑事の剣持に復讐を誓っている。

 

えっ? 犯人を自称する犯人も珍しいって?

まりなは俺が殺したも当然だからな・・・

 

というか・・・いいのか俺の事件を事件簿にして?

 

だって今回、胸糞回だぞ?

『明るく楽しく元気よく』が犯人たちの事件簿のコンセプトじゃないか。

殺害プランだって、まりなの受けた被害を再現する形だから、正直言って犯人である俺自身もトラウマ。心の傷をえぐりまくりだ。

 

 

【ということで今回は、犯行シーンの描写の際に犯人のメンタルを護るために、“似た犯行”を実行した別事件の犯人三銃士を連れてきました】

「犯人三銃士?」

 

【資産家令嬢殺人事件から、水殺の一枝隆】

『うっす、よろしく』

【ホームズフリーク殺人事件から2度目、炎殺の戸叶研人】

『がんばります、よろしく』

【霧天狗殺人事件から、絞殺の秀念】

『よっす、どうも』

 

【犯行シーン時には彼らに司会進行を任せております。ご了承ください】

 

 

 

それじゃあ話を戻そう。

 

俺はまず剣持警部に全ての罪を被せるため、出所後に2人で会って話をして、その時に睡眠薬を盛って眠らせて拉致した。

当然、剣持が寝ざめた後で自分の犯行だと錯覚してもらうために、俺への殺意を抱かせてから。

「3年前の事件のことなんて反省なんてしてない」

ってな具合に、心にもない悪辣ぶりを見せつけてからな。

その後、眠らせた剣持から帽子やコート、拳銃と携帯を奪ってビルに監禁。

 

 

さぁ、ここからが本番だ。

まずは剣持コスプレをしながら魚崎を連行。

そして・・・・

 

 

 

――――――――――――――――――

 

「ここは、似たトリックを実行した資産家令嬢殺人事件の犯人である僕、一枝隆がお送りさせていただきます」

「とはいえ、僕自身も恋人の死因と同じ殺し方をしたので正直トラウマ」

「なので僕のおすすめ犯行グッズを紹介したいと思います」

「それはコーヒー」

「人にぶっかけて死体を発見させるもよし。睡眠薬を混ぜてよし。その際には取っ手の向きを変えておきましょう」

「ではそろそろ毒島くんもトリックを仕掛け終えたようです。話を返します」

 

――――――――――――――――――

 

 

 

さて、トリックは仕掛け終えた。

あとは本番だ。

俺の耳と肩を銃で撃つ。

 

・・・・・

逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ

 

 

 

そして剣持に撃たれたと供述して、警察病院に入院。

お見舞い兼事情聴取に来た明智警視と男子高校生・金田一の前で、魚崎に電話してトリック仕上げ。

 

ん? 高校生?

今って平日の朝だよな・・・・まぁいいか。

 

そして無事に魚崎死亡。

俺は強引に病院を退院してフリーに。

 

 

さぁ、いよいよ多間木の番だ。

 

奴が通っている不動山高校の、奴の送迎車が停まる駐車場に殺害トリックを仕掛け・・・

 

 

 

――――――――――――――――――

 

「ここは、似た殺し方をしたホームズフリーク殺人事件の犯人である俺、戸叶研人の出番だ」

「俺がオススメするのは『緋色の研究』」

「シャーロック・ホームズ作品の第一作である本作は、ホームズとワトソンの出会いの物語・・・」

 

――――――――――――――――――

 

 

 

さて、トリックは終わったぞ。

ああ。今回はやることが少なくて早く終わったんだ。

 

 

で、これから最後の仕事だ。

俺は・・・・俺自身を殺す。

 

前に、服役中に面会に来てくれた牧師さんと再会。

えっ? ソイツは傀儡師だって?

そうなのか。あれだろ? 糸で人形を操るやつ。牧師さんなのに器用なんだな。

 

えっ? 俺も高遠塾の塾生?

いや。俺の家は貧乏だったから、塾なんて通う余裕無かったぞ。

 

 

 

 

いいか? 話を戻すぞ。

 

剣持を監禁しているビルで密室を作って、警察に電話してから自殺を・・・うっ、またトラウマが・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここは霧天狗殺人事件の僕、秀念の出番ですね」

「僕がおすすめするのはパスカルです」

「いいえ、パイカルは中国酒です」

「いいえ、オスカルは宝塚です」

「いいえ、ラスカルはアライグマです」

「いいえ、テレパルはテレビ雑誌です」

「ほら、関係ない話していたらもう時間が・・・」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

自殺を図った俺は生きていた。

俺を助けたのは金田一。あと3分、遅かったら死んでいただろうって・・・・

 

 

マジかコイツ・・・

コイツさ、俺が3年前の事件の主犯だって信じているから、俺の事今すぐに殺しそうな勢いだったくせに。

犯人を、助けるだと!?

人間が、出来てやがる。

 

金田一、お前は将来・・・救急救命士を目指すといいぞ。

きっと、たくさんの命を救うだろう。

お前は“誰かの死を呼ぶ”ような人間にはならないさ。俺と違って、な。

 

 

 

その後、再入院している俺はベッドを抜け出して、同じく入院中の剣持に逆トドメを刺しに行った。

逆、な。つまり、剣持が俺を殺したように見せるために、剣持の部屋で自殺しに、な。

 

なのに、剣持強くて刃物奪われ。颯爽と駆け付けた金田一がトドメの一言。

 

「『死刑執行人』は、お前だよ!」

 

そこから咲き乱れる金田一の名推理。

そして、まりなの死の真相握りつぶし事件の真相も全て暴かれ。

剣持の罪もすれ違いだと気づき。

俺は剣持に謝罪し。

さらに、まりなが死の間際でも俺の無実を信じ続けてくれていたことも判明し。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれ、俺は救われた。

 




毒「いかがでしたでしょうか? 剣持警部の殺人」
一「資産家令嬢殺人事件」
戸「ホームズフリーク殺人事件」
秀「霧天狗殺人事件」

毒「今回の敗因・・というより、俺を救ってくれた要因は、やはり金田一の仕事熱心さですね。過去の事件の洗い出しをしたからこそ、3年間謎のままだったまりなの死の間際の気持ちまで辿り着けて、俺もそうだが遺族の気持ちも少しは救われたわけです」
一「アフターケアまで万全な探偵っていいですね。僕らの方は結構な頻度でそのあたりを放置されてますから」
秀「たまに傷をほじくり返して放置もされますね」
戸「ほんとソレな」


毒・一・秀「「・・・・・・・ざけんな」」
戸「?」
毒「俺ら3人とも、好きな人を殺された復讐だったり、恋人関係で殺された家族の復讐だけどよぉ。お前、自分の恋人を殺してるだろ?」
一「な~にシレッと僕らと一緒に並んでんだ? 初めの時から違和感が酷いんだが」
戸「いや、俺の本命はホームズだし」
秀「あなたはホームズの事好きかもしれないけど、ホームズはあなたの事嫌いですから」
一「陸くん、秀くん、こんな奴は無視だ無視。そんなことより、本作をリクエストしてくださった方へのお礼を言うべきじゃないか?」
毒「ですね。そして事件簿難度の高い事件でしたが、こうして無事に事件簿できました。リクエストありがとうございます」
戸「まぁ、いつもと比べて事件簿要素が弱かった感じもするが」

秀「ということで、次作のリクエストを受け付けます」
一「ご希望の事件がある方は、活動報告の専用ページにてご連絡ください」
※当初、感想欄にてリクエスト募集しておりましたが、利用規約に反するとのご指摘をいただきました。不勉強で申し訳ございません。

毒「そしてリクエストですが、俺らからも少し注文があります」

一「僕らのトラウマに触れない事件でお願いします」
毒「具体的には、【溺死・焼死・絞殺・衰弱死】は無しでお願いします」
一「あと、女性の被害者も無しの方向で」
毒「あと、恋人を想うことのできる犯人で」
戸「転落死はいいのか?」
毒「転落・・・ややトラウマだけど、その死が無かったら、もっと悲惨な最期になっていたかもしれないし・・・ギリOKで・・・」
一「身内のトラウマをえぐるな、クソ眼鏡」
秀「条件に刺殺を追加で」
戸「それ俺が失敗した殺し方」
一「あと、最後は関西弁で追い詰められる展開で。半分関西弁で半分標準語で」
戸「それも俺の」



ということで、
次の事件リクエスト受付条件のまとめ
【必須条件】
・恋人を大切にする犯人
・最後の推理は関西弁と標準語のミックスで
・刺殺を必ず入れること
・名探偵コナンまたは金田一少年の事件簿の、漫画・アニメオリジナル・小説・映画のいずれか(他作品はNG)

【禁止条件】
・溺死、焼死、絞殺、衰弱死では殺さない
・女性が殺害されてはならない


【応募方法】
・今回用の活動報告へのコメント
・作者ページでメッセージ送信
のいずれか

以上です。
条件を満たす候補が挙がらなかった場合は、作者の独断と偏見で何らかの事件を事件簿させていただきます。



皆様のご応募、お待ちしております。






戸「無ぇだろ、こんな注文の多い事件。さてはリクエスト受け付ける気なんて最初からサラサラねぇな?」


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名家連続変死事件(コナン)(リクエスト?)

本作はまもなく25作品! 一つ越えたらすぐ次目指せ!
今日の事件は工藤が苦労。工藤工藤とくどいぞ平次!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




こんにちは。

長門グループ会長の秘書をさせていただいております、日向幸です。

20年前の火事で両親を失い天涯孤独となった私ですが、今では火事から救い出してくれた長門秀臣さんと婚約。

秀臣さんはその時に顔に大火傷を負っているけれど、愛さえあれば全く気にならないわ。

幸せ街道まっしぐらの私。不幸なんて私には似合わない。

 

と思っていたのは、長門会長の誕生日を迎える日の前の朝まででした。

秀臣さんが部屋で毒を飲んで自殺していたんです。

残されていた遺書には、火事の真犯人が秀臣さんと友人でこの家の婿養子である光明だという衝撃の事実が。

 

 

ちょっと待って情報量。

20年愛していた人が家族を殺していて、その罪悪感に20年間苦しんでいて、その隣で犯人Bはのうのうと会長の座を狙っているですって?

 

・・・

 

落ち着くのよ私。

素数を数えて落ち着い・・・とる場合か!

 

 

だって、思いついちゃったんだもの光明殺人計画を。

 

 

計画はこうよ。

まず、秀臣さんが生きていると偽装して、会長殺しの罪を着せる。って計画に光明を誘う。

秀臣さんの遺体は土の中に隠して、死亡推定時刻を攪乱させる。こうすると、会長殺し(光明殺し)の後で秀臣さんが自殺したって警察に思い込ませることができる。

長門会長の誕生日会中に、会から抜け出した光明が「下の階で秀臣に襲われている」って騒ぎを起こして、参加者が下の階に行っている間に、私がテラスから垂らしたロープを登って会場に。

そこで会長を殺すつもりの光明を、私が突き落として殺すの。

最後に秀臣さんの遺体を掘り起こして遺書と一緒に池の中に入れて、池の水を全部抜けば・・・

悲しき完全犯罪達成よ。

 

 

えっ? 光明が人殺し計画に乗るかどうかもわからないのに皮算用じゃないですかって?

心配ご無用。だって光明は期待を裏切らないクズ。信頼のおけるクズ。

自分の放火の被害者である私が、こんな殺人計画を提案しているのに乗るくらいよ。

どういう感情で聞いているんだ? お前。

 

 

そこから私たちは互い違いに秀臣さんに成りすまして、犯行の下準備を進めて、いよいよ当日。

 

と、思った矢先にさっそくピンチ。

昨日の夜の私の準備の音を聞いて不審に思った会長が、警察を呼んじゃったの。

しかも大阪府警本部長。

 

・・・会長の権力の乱用。Unbilievable。

足音と物音だけで、サミットの警備とか拳銃の強奪事件とか、全国ニュース間違いなしの規模の事件発生時だけに招集できるような大物を?

 

それとも私の常識が狂ってる?

 

そして同日、名探偵の毛利小五郎も招集されたわ。

こちらも数々の難事件を解決してきた、全国ニュースに載るレベルの大物。

なのにこっちには、昔の初恋の人探しを依頼よ。

 

・・・もう何が何だか。

 

 

その後、長女の信子にビンタされて(殴りてぇ)、形見の万年筆を馬鹿にされ(殴りてぇ)、一度会社に戻るフリをして秀臣さんに変装して会長の部屋に顔を出す。

「そうそう。あの事件がきっかけで、今回ハッピーエンドになったんだよな? 秀臣」

って光明に絡まれて(殴りてぇ)、部屋に戻って変装を解く。

 

・・・光明、どういう感情で言っていたんだ? お前。

私が秀臣じゃないことも、私がその事件の被害者ってことも、ハッピーエンドじゃないってことも知っているはずなのに。打ち合わせに無いこと聞いてきて、聞きやがって!

いや、むしろ心置きなく殺せるからありがたいわ。

 

 

そして夜。誕生会に長門一家&毛利一家、執事の武さんと私と本部長の息子さんの服部平次くんが参加。

本部長、帰ってくれたの。代わりにって息子さんを残して。

 

これってすごく好都合!

だって警察官の子供ってポンコツでしょ?

私が聞いた限りだと・・・

 

警視庁刑事部部長の小田切警視長の息子は恐喝事件を起こすようなドラ息子。

警視副総監の諸星登志夫の孫は小学生にして将来有望なDQN。

 

心配いらないでしょ? これから殺人する上で心配なのは毛利小五郎だけよ。

 

 

そして打ち合わせ通りにパーティー中に光明が抜け出して、秀臣さんの遺体を掘り起こして池に沈めて。

その間に私は会長に睡眠薬を盛ってから待機して・・・

 

とうおるるるるるるる

 

電話から始まる光明タイム。

慣れない演技をさせ、下の階から秀臣さんコスプレで顔を出させる。

毛利探偵を先頭に全員が下の階に行ったらロープを垂らして光明を引き上げて・・・

 

からのドーン! と光明を突き落とすだけの簡単なお仕事

のはずだったわ。

 

ガシッ

へっ?

 

その時、落下しまいとする光明が私の腕時計を掴んできたの。

ヤバイヤバイヤバイ!

私は必死にテラスの柵にしがみついて堪えたわ。

このままじゃ一緒に落ちてしまう。そして下の尖った柵に一緒に刺さってしまう!

 

どうにか光明の手を離させないと・・・何か尖ったもので手の甲を刺して・・・

私の胸ポケットには、形見の万年筆。やむを得ないけど、これで刺せば・・・

 

無理!

光明の体重より私の体重は圧倒的に軽い。だから今、柵に掴まっている手を離したら落下は確実。

胸元に手を伸ばすことなんて・・・

無理・・・・

 

 

『諦めるな!』

 

 

その時、次元の壁を超えるような、不思議な声が私に届いたわ。

絶対に出会うことのない、作者の同じ、媒体も同じ、そんな場所から来たような男の人が、私の目の前に現われたの。

顔にやけどを負った男性が・・・

 

 

「秀臣さん!?」

 

 

そう、それは死んだはずの秀臣さん。

そ・・・そうか、わたしの危機を知って死の世界から駆け付けてくれたのね!?

 

『諦めるな幸。キミならできる!』

 

ええ、秀臣さん。私、がんばる!

 

 

スパークして、私のマッスル!

今こそ光明に復讐を! そうよ私はリベンジャー!

地獄に、インフェルノに突き落とすのよ!

 

愛と愛情と正義の! 

火事場のクソ力じゃぁあああ!!

 

こうして私は渾身のマッスルで重さに打ち勝ち、万年筆をその手の甲にぶっ刺して、光明を下の柵にぶっ刺してやったわ。

 

「できたわ秀臣さん!」

気付いた時、秀臣さんは消えていたわ。まるで最初からその場にいなかったみたいに。

 

・・・・ありがとう、秀臣さん。

ええ、分かっている。私は立ち止まってなんかいられない。

 

 

 

その後、一昼夜かけて秀臣さんの捜索が行われ、翌々日の夕方に信子が池の近くに来たタイミングで、私は喧嘩を売る。

炸裂する安定の信子ビンタ。

殴りてぇって思ったけど、今はむしろ好都合。

万年筆を池ポチャして、池の水全部抜いてもらって、秀臣さんを冷たい水の中から救出。

 

死亡推定時刻や状況証拠から、秀臣さんの犯行の疑いは濃厚のまま。

全て計画通り。

 

あと私の仕事は、遺書の筆跡鑑定用の手紙を秀臣さんの部屋に取りに行くだけ・・・

だけど、悲しさのあまり泣き崩れる私。

 

 

えっ? 出ました『何故か犯人全員に備わっている圧倒的演技力』ですって?

何を言っているの!? これは本当につらいのよ。悲しいのよ!

 

 

 

そしてその夜、だいぶ時間差で服部くんから万年筆を返してもらって、1時間後に私の部屋に皆を呼ぶように頼まれたわ。

何かしら?

 

 

 

そして7時、警察と一緒に私は私の部屋に。

部屋に入ると毛利探偵が座っていて・・・

 

「分かったんですよ、やっと。光明さんを殺し、秀臣さんを池に沈めた犯人がね」

 

!!??

 

 

 

待って・・・情報量、少ないけど・・・待って!

 

 

そんな私の懇願を無視して鳴り響く電話のベル。

パーティーの夜のように、かかってきた電話から響く服部くんの悲鳴。

すごくデジャヴ。

 

そこから咲き乱れる毛利小五郎と服部くんの名推理。

 

 

そして、謎は全て解かれた。

 

けど、私のターンはまだ終わっていないわ。

 

 

私は最初から死ぬつもりだったの。

ポットの中に入れておいたガソリンを被ってね!

 

 

「無駄や。ポットの中身はただの水や」

 

 

服部くんが私の自殺に先回りしていたの。

なんてこと・・・

 

探偵って、犯人の自殺を止めてくる残酷な仕事なの!?

 

だけど連行される間際に、会長が私に教えてくれたわ。

私の母こそが例の会長の初恋の人だってこと。

そして、私に生きていてほしいってことを。

 

生きる支えを失った私にかけられた救いの言葉。

 

 

こうして、謎は全て解かれたわ。

 




いかがでしたでしょうか? 名家連続変死事件。
前回からのリクエスト繋がりで、条件を満たしているそうだけど。

私の最後の決め手は一応、刺殺。
秀臣さんは毒死。
被害者は男だけ。
恋人を想う気持ちは最後まで変わらなかったし。
最後は服部くんの関西弁と毛利探偵の標準語のミックスで解かれて。

すごい条件だったのね。辛うじて満たしたかしら?



それにしても、服部くんってすごいわね。犯人の自殺まで止めちゃうなんて。
さすが劇場版で最強の探偵と噂の子ね。

聞いた話だと、もう1人の探偵のほうだと犯人の自殺を止められないことが多いんですって。
服部くんのもう1人のほうって言うと、聞いた話だと工藤新一って子らしいわ。
なるほどね。もし工藤くんが居合わせていたら、違った未来になっていたかもしれないわ。


じゃあ最後に私からも次回の事件のリクエスト受け付けをさせてもらうわね。

私からの条件かぁ・・・あんまり複雑だとみんな嫌がるでしょ?

ならシンプルに。
【服部平次くんに勝った犯人】
これでお願いするわね。

それじゃあ皆さんのリクエスト、お待ちしてます。
応募は作者ページの活動報告へお願いします。


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外交官殺人事件(コナン)(リクエスト?)

勝利、正直、証拠に衝撃、最高目指して果てない衝動!
今日の事件は探偵飽和。犯人倒すぞ西の死神。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




犯人諸君。

貴様らの敗因は死神を相手にしたわけでもなければ、思わぬハプニングでも無い。

私という、この世で最も史上最強の犯人を、味方に回さなかったことだ!

 

 

私は辻村公江。

愛すべき義理の息子に婚約者ができた時、全てを失った女だ。

今の夫と義父は、前の夫に汚職の罪を着せ獄死に追い込み、騙されていた私は何も知らず過ごしてきた。

 

そのことを知った瞬間、私の怒りが臨界点を超えた。

この憎しみを三乗にして返してやる!

 

 

夫を殺し、その罪を義父に着せるカラクリはこうだ。

 

書斎で眠らせた夫のズボンの二重ポケットにテグスを通して、部屋の外から書斎の鍵を二重ポケットの中に入れる。

・・・というトリックを使わずに、義父のいる部屋にテグスを残しておく。

実際には私が毒針でダイレクトに夫を殺すのだ。

これで義父がトリックを使った犯人だと見せかけることができる。

 

 

ん? そんなにうまく行くのか、だと?

私をみくびるな! 私の勝利の方程式は貴様らが考える以上に・・・完璧だ!

 

 

そして当日。

義父犯人説を推理させるために探偵を召喚する。

私が選んだ探偵はコイツだ、毛利小五郎!

新聞にも取り上げられる名探偵なら、私の掌の上で容易く舞い踊るだろう。

 

 

何? わざわざ死神を呼ぶなんて馬鹿じゃないか、だと?

ふん、雑魚が。

行く手に死神が立ち塞がるなら・・・死神を、薙ぎ倒して行く! それが私だ!

 

 

いや、さっそく立ち塞がったものがある。

居留守だ。

何度呼び鈴を鳴らしても出てこない。

この私を待たせるとはいい度胸だ。

 

入ってみれば、何やら高校生のカップルを交えて、小学生にお酒を飲ませて遊んでいる。客の接待すらもできていない事務所・・・だと!?

選んだ探偵を間違えたかもしれない。

 

 

そしていざ名目上の調査依頼を始めるや、口を挟んでくる男子高校生。

「完璧すぎるから気にいらんのや。人間は誰しも疑い深ぅて嫉妬深い生き物や。完璧な物を見るとついつい粗を探しとうなる。そういうこっちゃろ? おばはん」

何だこの馬の骨は?

どうやら毛利探偵の娘の友人らしいが、この私をなめているな?

 

だが私に対するあらゆる敵は全て利用価値がある。私の勝利のためにな。

この高校生たちを連れていけば、古い友人の親子連れとして自然に探偵を外交官の家に召喚できるだろう。

 

 

そして降臨。我が家に毛利探偵と3人の子供たち。

だがここで思わぬ存在が。

前妻の子の高善と、我が娘・桂木幸子が、無理やり押しかけてきていたのだ!

 

あぁ、さすがは我が娘。美しい。

私に似て整った顔立ちもさることながら、20年前の私と同じ髪型が似合っていることも素晴らしい。

20年前の流行ヘアスタイルがここまで似合う女性。そんな彼女を選んだ高善のセンスもまた素晴らしい。

 

いや、酔いしれている場合ではないぞ。

これは、実は20年ぶりの感動の親子の再会なのだ。

 

くっ、こんなタイミングで・・・

今すぐ抱きしめてやりたいが、今は親子だとバレるわけにはいかない。

「貴女に義母様なんて呼ばれる筋合いは、ありませんッ!」

冷たく当たってしまった。私のライフが削られていく。おのれぇ!

 

 

そして直後に義父にも遭遇。和室での待機を命じておいた。

当然、和室にもテグスは隠してある。私に抜かりは無い!

 

あとは大音量のオペラのかかる書斎に入り、鍵のキーホルダーに隠した毒針で・・・

“死の夫破壊ウイルスじゃなくて毒”を発動!

夫のうめき声はオペラで相殺され、あとは夫を突き飛ばすだけ。

フフ・・・これぞ究極の殺人コンボ。

 

 

そして到着する凡骨警察の磯野! ではない、目暮警部。

捜査の主導権を高校生に握られるとは、負け犬め!

 

その高校生・服部平次だが・・・警察や毛利小五郎を差し置いて、私の手のひらの上で踊るったら踊る。

踊りの合間に小学生のコナンくんが風邪で倒れるハプニングも発生。

ハプニングか・・・犯人たちが最も恐れる出来事。

だが恐れるに足らない。ハプニングさえ乗り切れば、犯人の勝利は揺るがないのだ!

 

 

その直後、服部平次が放ったひとこと。

「分かったで。密室のトリックも、犯人もな。今その証拠を見したるわ」

 

そこから咲き乱れる服部平次の迷推理。

「爺さん、あんただけや。証拠は俺がさっき和室で見つけたテグスや」

 

エネミーコントローラー!

見事なまでに私の用意したシナリオ通りに、宿敵・死神が私の操作した通りに、義父に容疑をかけたのだ!

 

 

「違うか!? 爺さんよぉ!」

「そうじゃ。ワシじゃ」

勝った!

服部平次。最強の死神と噂の貴様。

貴様らの記憶に永遠に刻みつけておけ! 真の勝利者であるこの私の名をな!

 

 

 

 

 

 

 

「いや、そいつはちがうな・・・。そいつは違うぜ」

 

 

 

「工藤!?」

服部平次を始め、磯野や毛利小五郎、その娘まで唖然とする。

 

何者だ!? この「それはどうかな?」とでも言いたげな住居不法侵入者は!

 

 

私が睨んでもシレッと始まる侵入者・工藤新一の推理。

「お前が今言ったトリックは机上の空論、100%不可能だって言ってんだよ」

バカの頭脳はプレッシャーを感知しないのか?

100%? 何を根拠に断言できる? 寝言は寝ている時に言え!

 

 

だが事実、服部平次が再現した私のトリックで、ポケットから零れ落ちた鍵は二重ポケットの中には入っていなかった。

そんな、アホな!?

「座っていたからだよ」

夫や磯野は太っていたから、鍵は二重ポケットには万が一にも”くの字”に折れては入らなかったのだ。

くっ! つまりこれは、私が余計なことをしたということか!?

 

 

 

「そう。犯人は奥さん、アナタだ!」

 

 

 

そこから咲き乱れる工藤新一の名推理。

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




どうだった? 外交官殺人事件。
敗因? それはやはり鍵のポケットへの入れ方だな。
二重ポケットを通さず、普通に入れていれば勝てたのだ。
私の完璧主義が招いた敗北・・・














ん? 何だ? まだ用があるのか?
リクエストの条件? フン、他人の意見なんぞ頼みにした事件簿なんぞ、面白くもなんともないわ!



どうしてもと言うのなら、言ってやろう。
【カードで首を掻き切れ!】

それだけだ。

応募方法? そんなもの知るか。






※リクエスト条件は以下の通りです。
・首への切り裂きを含むこと
・事件中にカードを利用すること
(カードの種類は問いません。トランプやキッドカード、何でもOK。ただし被害者が残したダイイングメッセージはNG。犯人がカードを利用しなければなりません。カードに書かれたダイイングメッセージを偽装するのはOKです)


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怪盗キッドと四名画(?)(コナン)(リクエスト?)

立ちはだかる巨大な壁も、見方を変えたら大きな扉!
今日の事件は名画とキッド。宝石以外が狙われがちだ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!


私は画家の及川武頼。

かつて、寝たきりの妻の治療費のために描き上げた「紅蓮」「金色」「純白」の3つの絵があった。

だが義父は4作品目を高く売りつけるために私に「青嵐」を描くように強要した。妻を亡くした私に描けるわけのないモノを。

 

もし描けたとしても、そんなものは偽物。3作品と並んで展示されるわけにはいかない。

だからこそ、私は怪盗キッドに盗まれたことにして青嵐を消失させることにした。

 

 

 

『分かるわ。その気持ち!』

 

 

 

 

 

ん? 

何か聞こえたような・・・

 

 

 

 

 

 

『偽物と本物の絵画が並んで展示されるくらいなら、怪盗キッドを利用して消失させるべき! その気持ち、分かるわ!』

 

 

 

 

 

 

まずは怪盗キッドに偽物を盗んでほしいと依頼し、私自身は歴史・鑑定担当学芸員として展覧会に潜入した。ガバガバ審査だから楽々潜入。

そして記者会見当日。怪盗キッド参上! ・・・したのも束の間、キッド退散。

えっ!?

そのせいで警備強化。変な高校生探偵乱入という悲惨な結果に。

やっぱりキッドは召喚するべきじゃなかった。

 

ならば第2の矢。偽物を飛行機から落っことす作戦。

整備士の頬を金で叩いて、飛行機の貨物室の外扉に爆弾を仕掛けさせる。

私は偽物の固定用ベルトを外しておく。これだけで偽物は勝手に飛行機から落っこちてくれるってわけだ。

BOM!

気圧の影響で貨物室から次々と飛び出していく荷物・偽物絵画。爆破で吹き飛んだ扉がエンジンにダイブ!

 

へっ!?

 

飛行機は制御不能で墜落の危機・・・マズイ。完全に計算外。

幸い、機長の素晴らしい操縦捌きによって飛行機は不時着。

空中に投げ出された偽物絵画は子供が回収していた。しかもほぼ無事。

 

仕方なく、私は展示会の最中に偽物を燃やすことを決意。美術館のセキュリティ強化策として、通路に向日葵の模型を配置し、その中に隠しカメラを設置する策を提案。

模型に油を撒けば、通路を導火線にして偽物を一気に燃やすことができる。

 

だがそんな提案をしている最中、キッドから新しい暴走メッセージが届いた。

どうやら5枚目を盗む予定らしい。

『5枚目? 花鳥風月は4部作なのに?』

キッドの余計な暴走は警戒レベル急上昇案件。事態の悪化が目に見えている。

 

私達7人の侍と相談役と警察の面々は、5枚目警護のために損保ジャパン日本興亜美術館に向かった

犯行予告時刻の日没までにひまわりを安全な場所に移すため。そして、この移送のチャンスに5枚目をぶっ壊すため。

 

『ちょっ、待・・・何かおかしい』

 

美術館で実行するのは『偽物と本物が入れ替わっていたように見せかける作戦』。

『5枚目は盗んでおいた』という偽のキッドカードを作り5枚目に張り付けておき、本物かどうかを鑑定するために私の工房に運びこませ、あとは煮るなり焼くなり好きにする。

とはならなかった。

「その必要はありませんよ、館長」と、しゃしゃり出てきた警備員。

そしてキッドカードを取り出し、5枚目を本物と保証して盗んでいった。

・・・・

もう何が何やら。喜んでいいのか悪いのか混乱してきた。

 

その後、怪盗キッドから5枚目と百億円を交換する小学生みたいな交渉が持ち掛けられ、日本屈指の財閥がアッサリと取引開始。

そして金に目がくらんだキッドは取引に失敗。5枚目は無事に返還された。

 

こうなったら仕方ない。

展覧会中止のために主催者を殺す!

私は可燃性液体のホスフィンを贈り物に偽装して、キッドカードを添えて財閥の相談役に送り付けた。失敗した。

 

 

そして始まった展示会。

絵画に異常があれば各種センサーが働いて即座に防火防水ケースが作動し、脱出シューターで運ばれるという、炎と水の対策がパーフェクトな美術館。

荷物の持ち込みも金属探知して、客が危険物を持ち込むことは不可能。

だけど内部への警戒ガバガバだから、私は普通にホスフィン持ち込むことができた。

 

だけど、そんな矢先に“この中に裏切り者がいる”というメッセージなのに、何故かみんなには通じないキッドカードが発見される。

キッド出現のため、打ち合わせ通り展示会は中止となり観客の避難開始。

これでひとまず今日は偽物が本物に並んで展示されることだけは防がれた。

これは好機。作戦始動。電気制御室へ向かった私は、配電盤にホスフィンをぶっかけて美術館を停電させた。

さぁ、あとは通路に火をつけて美術館ごと偽物を燃やすだけ。

ファイヤー!

瞬く間に燃え広がる通路。

停電のせいで防災システムはダウン。『停電時こそ作動しろよ』

あとは脱出シューターを妨害して、私は普通にエレベーターで脱出。

外に出たら緊急脱出用保管庫で本物5枚を回収するだけ・・・

 

「6枚しかない!」

6枚もある!?

『3枚ですらない!?』

衝撃の光景。それは2枚目のひまわりだけ不在で、5枚目がしっかり無事に残っているという現状だった。

偽物と本物が並んで展示される事態が避けられたのだから、私の勝利に間違いは無いが・・・放火だけで崩壊するって、どんだけ脆い美術館なんだ。

 

なんて胸をなでおろしていると突然、無線に通信が入った。

それは空港でいつの間にか消えていた工藤新一からの通信。

「あなたは初めから、二枚の〈ひまわり〉を破壊することが目的だった」

えっ!? バレた!?

『いや、違うぞ』

 

そこから咲き乱れる工藤新一の名推理。

証拠は、私のパソコンのデータ。二枚の〈ひまわり〉を破壊するための全計画書だった。

『携帯電話の受信履歴じゃなくて?』

 

そして2枚目のひまわりは無事に戻り・・・

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 『怪盗キッドと四名画』
犯人の及川武頼です。

言いたいことはたくさんある。
まず、私の事件が不可能犯罪で申し訳ない。
何故なら私のトリックは、ピンと張った釣り糸に布を被せ、その中に絵があると錯覚させてから犯行に及ぶもの。
ですが、その釣り糸の先は扉の鍵のボルトにひっかけておくわけ・・・ですが。
その扉、何度も開閉するんですよね。絵があるかどうか警察がカメラ越しに監視している最中にも。
つまり、一切動いてはいけない釣り糸の先を、何度も動かさなきゃならないんですよ。
えっ? その間は片手に持っておいて、もう一方の手で犯行を行えばいいんじゃないかって?
無理でしょ。義父を部屋に入れて、スタンガンで気絶させて、トランシーバーと携帯電話を胸元に忍び込ませて、ドアを破った後で邪魔にならない部屋の隅に移動させるのを。
片手で? その場から動かずに?

ということで、事件簿から見限られたのは理解できる。




だが、それよりも重要なことがある。




この事件簿には、宮台なつみの需要があるのか?

しかも彼女のからの次回の事件リクエストの条件まで来ているぞ?



『最終回にふさわしい事件』








・・・マジで?



※ということで、次回のリクエスト条件は
最終回に相応しい事件になります。
本作が最終回という話ではなく、最終回に相応する事件、もしくは最終回に関する事件ということです。
ご応募、お待ちしております。


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大怪獣ゴメラ殺人事件(コナン)(リクエスト)

か・い・じゅ・う。どんなときも僕は君のパートナー!
今日の事件はゴメラの最後? 閉店セール詐欺かもね。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




皆さんどうも、大怪獣ゴメラの中の人こと松井秀豪・・・

えっ? ゴジラ松井? それは権利的に厳しい指摘ですね。

えっ? ゴモラ? それは本作執筆中にガチで間違えたほう。

えっ? ガジラ? それはクピクピポ言って鉄でも何でも食い尽くす不思議な天使。

 

そんなゴメラはかつて大人気怪獣シリーズだったんですが、今は制作費に興行収入が見合わず、映画プロデューサーの亀井修に「金食い虫」と言われ、今撮影中の「ゴメラ最期の決戦」で打ち切られてしまうのです。

 

もちろん映画スタッフは突然の最終回なんて大反対。

しかしこのプロデューサーは嘘を吹聴して、後戻りできない状態にまで追い込んで、無理やり最終回に持っていったんです。

 

許せませんでした。ゴメラと僕らを侮辱して終わらせようとするプロデューサーを。

 

 

ですが正直・・・プロデュースする立場から考えれば、収益を第一に考えて、売れない作品に見切りをつけるのは当然。

そこに個人的なこだわりを押し付けすぎれば駄作が生まれる原因となります。

よくあるでしょ? 1と2はよかったんだけど、3以降はイマイチ。って作品。

僕ら、ゴメラへのこだわりが強いからなぁ・・・強引に嘘を交えない限り、いつまでも終わりが見えなかったかもしれない・・・

 

 

 

 

 

 

まぁ、そんなことは関係ないか。

事件を起こそう。

 

 

今回使うトリックはいたってシンプル。ケガしたフリして容疑者から外れて、犯行後に実際に足を刺す。

怪我のフリなら簡単。何故ならウチは映画製作会社。血糊も引っ込むナイフも逸品が揃っている。

 

問題は怪我をしてまで実行するトリックの肝”ゴメラ逃走”だ。

予定としてはゴメラの着ぐるみを着てプロデューサーを殺害後、スタジオから階段へ逃走する。

その際に追手を攪乱するために、わざとペンキを踏んで足跡を残しつつ、階段の上に行くように見せかけてその場で着ぐるみを脱ぎ、足跡を残さずに階段の下に逃げる。

そして、階段にはあらかじめ、上に行く足跡をつけておく。これで完璧・・・

 

 

 

じゃないよな。

 

 

この屋上への階段に用意しておく足跡・・・犯行前に誰かに見られたら一発アウト。

たしかに屋上に行く人は少ない。滅多にいない。

でも、階段を降りる人はいる。

そしてその時に、屋上に通じる階段にあるペンキの足跡を見落とす者がいたらおかしいだろう。

 

 

 

なら、犯行時まで隠すしかあるまい。

階段に被せるカバーを。足跡の無い階段と同じ、経年劣化で少し古びたビルと同じ色合いの階段のカバーを作って、ペンキの足跡を隠すのさ!

 

【カバー完成】

 

決行日時は監督の知り合いの子供が見学に来てくれる日のラッシュフィルムの試写会の時間。

スタッフの皆が試写会に出ている間にプロデューサーを呼び出して、そこでゴメラの着ぐるみを着たまま刺殺する!

子供たちは僕が面倒をみる名目で安全圏に隔離しながら、僕が足を負傷したフリをすればそれを証言してくれる。

 

しかし想定外がチラホラ。

まず、子供が意外と多い。小学生1人だと思っていたのが、小1が4人。

最近の子供って親の教育がなってないから、自由奔放なんだよ。

犯行時に好き勝手にチョロチョロされたらマズい。

 

でもまぁ、話してみると素直でイイ子たち。眼鏡の子を筆頭に、非常に統率が取れていた。

これなら4人がバラバラで動いてしまう心配も無い。

 

「うわぁすげ~怪獣がいっぱいだ!」「全部ゴメラにやられた奴らですね」

犯行時間まで撮影用の小道具を見せてあげると子供たち大興奮。

やっぱり子供はゴメラが好きなんだよ。この子たちが生まれる前の怪獣だって、ほらこの通りご存じなんだから。

ファンサービス精神が、ウズウズしますな!

そこで僕はゴメラの手だけ撮影するためのゴメラの手で少女の肩にイタズラを。

 

BASHA!

シャツに降りかかるジュース。JSにイタズラした報いが僕に降りかかった。

てへっ、やっちまったぜ。

 

なんておちゃらけもそこそこに、そろそろ本番だ。

 

「ゴメラの顔を持ってきてあげる」という口実で抜け出して、隣の部屋で怪我のフリと圧倒的演技力の悲鳴! 

そりゃ僕は中の人。だが、中の人には中の人の演技力がある!

子供たちを呼び寄せ、僕の負傷証言をゲット。

僕の狙い通りに眼鏡の子が先導して、4人とも犯人を追いかけに行ってくれた。

 

運が良かった。

誰1人僕を心配するのではなく、4人で犯人に立ち向かおうとするとか・・・

恐怖心と慈愛の心が無い子供たちで、本当に良かった。

 

 

そして僕は無事に犯行完了。

じゃないな。無事じゃない怪我してるよ今、足に。

 

 

 

その後、到着した警察が捜査を開始し、僕も事情聴取されるも当然被害者扱い。

だけど想定外再発生。

せっかく試写会中に事件を起こしたのに、監督、女優の友美さん、美術の安達さんが試写会から抜け出していたせいで容疑者になってしまった。

しかも友美さんに至っては

「ゴメラは走りにくそうだった」「そのペンキ置いたの、安達さんでしょ?」

と、嘘の証言ばかり。

彼女、どういうつもりなんだ? 

 

結局その謎は謎のまま、捜査は行き詰まり、僕は病院に運ばれることに・・・

 

「ちょっと待つのじゃ! この中にいるんじゃよ。ワシの睨んだ犯人が!」

 

 

監督の知り合いのじいさんが突然何か言い出した。

 

 

そして乱れる推理。

トリックは特撮映像だと言い出したり、

きわめて単純とか言い出したり、

警部さんに言い負かされたり、

僕のトリックを正確に指摘したり・・・

ん? 時々、推理が正解している?

 

 

「なるほど!」

ん? 今度はじいさん、自分で言ったことに納得した?

と思った矢先。

 

「友美さんと安達さんの証言は、犯人を庇った嘘なんじゃからな」

と、僕の疑問を解き明かしたり。

 

 

=休憩タイム=

ちょっと待って。整理が追い付かない。

それと、この推理聞いてる間、ずっと肩を担がれているから腕と足が痛い。

下ろして!

=休憩終了=

 

 

その後も乱れる推理の数々。

容疑者を僕と監督の2人に絞っていき・・・

 

「おいおい、松井さんは大けがを負っておるし、三上くんはワシの親友じゃぞ。というくらい意外な人物。そう、犯人は・・・邪魔だよアッチ行ってろ。シッシッ」

 

ちょっと何言ってるか分からない。

支離滅裂。突然ハエが気になったり。そもそもそのハエ見えないし。

大丈夫かこのじいさん?

 

 

「犯人は松井さん、アンタじゃよ!」

唐突!

だけどそこからの推理は全て見事に的中し・・・

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた

 




いやぁ、映画って本当にいいもんですね?

いかがでしたでしょうか? 大怪獣ゴメラ殺人事件。
ついにゴメラも最終回。
じゃないですよ!
僕が引退した後にシレッと、
「ゴメラよ永遠に」「さらばゴメラ」「ゴメラファイナル」「大怪獣ゴメラ 野望篇」「大怪獣ゴメラ 革命篇」「大怪獣ゴメㇻvs仮面ヤイバー」
と続編作成されすぎ! しかも何? 永遠に、さらば、ファイナル? 何この一年中閉店セールしてる店みたいな詐欺感。
ゴメラが汚されてる!

しかも僕の敗因、JSにイタズラした時にぶっかけられた液体が証拠になった。という。
あの、表現を自粛してくださいよ!
ゴメラがまた汚された!



そんな汚されまくりのゴメラからのリクエストはコチラ。
『みんなでレジャーに行く』
です。

最近、自粛自粛で大変じゃないですか。映画も延期になったし。
ということでせめて事件簿だけは自粛生活・ステイホーム抜きで、みんなでレジャーにでも行って楽しんでほしいんです。
探偵も、犯人も、被害者も、みんなで楽しんで、みんなでご飯食べて。
海とかいいじゃないですか。

こんな感じの和やかな事件をお願いします。



えっ? 殺人事件で和やかもクソもない? 
なら、人が死ななきゃいいじゃないですか。


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スキューバダイビング殺人事件(コナン)(リクエスト)

夏の光は昨日の輝き、涙のあとには殺人事件
今日の事件はエラブウミヘビ。絶滅危惧種が凶器になるぞ!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




主人公はちょっと頼りないけどとても優しい男子高校生。

彼には幼馴染の女の子がいて、2人は相思相愛の仲。

そんなある日、親が再婚して、連れ子の1歳年下の女の子と1つ屋根の下で過ごすことになってしまった。

血の繋がりの無い妹は、徐々に彼に惹かれていき・・・

 

さて、そんな主人公の漫画作品。

もし週刊少年ジャンプだったら、ちょっとエッチなハプニングが起こるかも。

週刊少年マガジンだったら、ヒロインと一線を越えるかも。

週刊少年チャンピオンだったら、男と男が拳を交えるかも。

ラノベ作品だったら、ハーレムを作りながら世界を救うかも。

 

 

 

なら、週刊少年サンデーだったら?

 

 

 

 

【妹がメインヒロインを殺したくなります】

 

 

 

 

 

そんな妹系ヒロインが私、松崎はるみ。

お兄ちゃんで片思い中の雅彦さんの婚約者で幼馴染、わたしとは同じ大学で同級生で、同じスキューバダイビングサークルのメンバーで友達の貴和子を殺す予定よ。

この込み入った感じ、まさにハーレム系ラブコメの人間関係ね。

 

そんな貴和子から今、「結婚前に雅彦さんの愛を試したいから、溺れたフリ作戦に協力して」って頼まれているところ。

何これ? 私の気持ち知っておきながら、私を嘲笑うような提案。

殺してぇ・・・と思うのは、私だけでしょうか?

 

 

ということで、貴和子がこの溺れたフリをしている最中に殺すことに決めたわ。

殺害方法はズバリ、「ウミヘビに咬ませて毒殺」よ。

この方法なら海の中での不幸な事故として処理される。完璧。

 

さて、ウミヘビを扱うわけだけど『危険じゃない?』 って思うでしょ?

でも意外とウミヘビって大人しいの。多くが温厚な性格で人に噛みつくことは少ないわ。

ただし、大人しいウミヘビには夜行性が多い。

 

これが結構な問題。だって溺れたフリ作戦を昼に実行するわけだもの。

じゃあ、昼にも活動するウミヘビならどうか? って言われるとね。

そういう種類は“気性が荒い”の。まぁ、これは扱う私が気を付ければいい話だけどね。

 

でも別の大きな問題があるわ。それは、昼行性の多くが“亜熱帯に生息する”ってこと。

犯行予定場所は伊豆。さすがにこの地域に生息したり出没しないウミヘビを誰かに見られたら怪しまれちゃうでしょ?

しかも昼行性で亜熱帯以外にも生息するウミヘビはどうか? って言うと・・・今度は毒性が無いの。

 

 

万事休す。

でも、そんなアナタにオススメのウミヘビがコチラ。『エラブウミヘビ』

なんとこの種類は伊豆にも出没して、しかも性格は温厚。

そして、昼夜行性なのよ! 基本、昼は眠っているけど、たまに起きているタイプ。

何とかなるわけよ!

 

まぁ1つ問題があるとすれば、準絶滅危惧種ってことね。

食用の乱獲や生息域の減少で生息数が減少傾向にあるらしいわ。

でも、私は犯行後に素早くリリースするから・・・問題なし!

 

 

 

 

じゃあ、実行しようかしら。

舞台はココ、伊豆クィーンホテル。

サークルの皆でスキューバダイビングをして、あとは貴和子が作戦開始を言い出すまで待つだけ。

合図は「新しいバスタオル取ってきて」。

1つ不満があると言えば、この作戦は貴和子がタイミングを見て発動させるから、私にはいつどこで言い出されるか分からないっていう点ね。

緊張と殺意のキープを強いられるってことよ。

しかもこれ、考えてみれば私に殺意が無かった場合でも苦痛じゃない? だって、いつドッキリ開始になるか貴和子任せなのに、私にはスタンバイだけさせて放置とか。

まったく、人を振り回すのもいい加減にしてほしいわ。

 

その後、(私以外の皆が)昼までスキューバダイビングを楽しんで、(女より海が大好き伊東くん以外の皆で)お昼ご飯のためにホテルに戻って、男子女子で分かれているところに、貴和子が有名人を発見。ミーハーだなぁ。

そのお相手は名探偵の毛利小五郎・・・・

 

 

 

 

 

このアマぁ!

 

 

よりにもよって探偵とは。しかも名探偵とは!

まぁ考えによっちゃあ逆に良い流れよ。

だって溺れたフリ作戦って下手したら119番案件だから、それを故意に起こしたことがバレたら大目玉。

つまり、貴和子が作戦開始を言い出すのは、“少なくとも”探偵さんと別れた後ってこと。それまでの間は、私は休んでいていいって事よ。

 

そして私たちは毛利探偵の一家を交えてシーサイドレストランでお食事。

&毛利探偵を誘って良かったぁ、な展開も発生。

どうやら毛利探偵も幼馴染の奥さんと結婚しているそうだけど、今はどうも険悪な関係にあるようで・・・

 

「フン、幼馴染か。この甘い響きに泣いたカップルが何組いたことか」

「気心が知れた仲と、幻想を抱くのは愚の骨頂」

「まー、あんたらには無用の事だと思うが。もし、奥さんの素行に不審を感じたら、この毛利探偵事務所を」

「離婚の際、ご主人から多額の慰謝料を請求したい場合は、この妃法律事務所を」

「「ヨロシク」」

と、結婚前のカップルの前でさむ~い不穏をバチバチと見せてくれたわ。

 

貴和子にとって死ぬ前最期の光景がコレって、最高じゃない?

ありがとう毛利夫妻。

 

なんて歓喜も束の間。

貴和子は急に席を立つと「新しいバスタオル取って来といてくれない?」を発動。

 

 

 

 

マジで言ってんの? コイツ・・・

 

 

探偵の前で溺れたフリ作戦、私的にもアンタ的にもリスキーなのは言うまでもないけど。

アンタ、アルコール摂取後に泳ぐの? 

リアルに溺れるわよ? まぁそれで死んでくれればいいけど、そうしたらエラブウミヘビの出番が無くなって可哀そう。

 

 

そして案の定、私がウミヘビセットして、伊東くんが合流した直後に「溺れたフリ作戦」が始まり。

雅彦さんが我先に救助に向かって、「泳げねぇ奴はすっこんでろ」と伊東が代わりに救助。

私も一緒に駆け付けながら、ノールックでウミヘビを掴んで口を開けさせて。

 

ガブッ

 

貴和子は無事にウミヘビに咬まれて、私は無事にウミヘビをリリース。

 

毛利さんが預かっている子供が想定外の早さでウミヘビを見つけたせいですぐに応急処置が始まったけど、

まぁ大丈夫よね。

傷口を洗い流すために、水とか海水じゃなくて、子供が焦って持ってきたアイスティーを使っていたけど、

まぁ大丈夫よね。

救急車で病院に運ばれて、ウミヘビの種類も毛利さんの娘さんの驚異的な観察眼で判明して、すぐに最善の治療が行われる流れになったけど、

まぁ大丈夫よね。

娘さんが「わたしが見たのは、頭の後ろに小さな羽が生えてた様な気がしたんだけど」って、おそらく私がウミヘビ固定用に使ったテープの端のことを言っているけど、

まぁ大丈夫よね。

 

 

その後、貴和子の保険証を探している時に貴和子たち幼馴染3人だけが知っている裏技が披露されて、「雅彦さんのことな~んにも知らないんだ」って言われている気分になって地味にショック。

だけど毛利探偵に車を出してもらって一路病院へ。

その間に、な~んか「今回のあれは明らかに殺人事件」とか「そう、あれは殺人だ」とか、まだ貴和子が治療中なのに不謹慎なことをこっちの車に乗っていない誰かが言っているような気配を感じながらも、どうにか病院に到着。

 

 

ピンポンパンポーン

 

「御連絡します。クィーンホテルからおこしの妃英理様、同じくクィーンホテルからおこしの松崎はるみ様。至急院長室まで。毛利小五郎様がお待ちです」

 

 

 

???

 

到着してすぐに看護師さんたちからチヤホヤされていた毛利探偵に呼び出されたわ。奥さんと一緒に。

何? どういうこと?

名探偵さんが私のトリックを見破った可能性も考えたけど、それにしちゃ奥さんの事も呼び出す意味は無い。

娘さん以外の知り合いの女2人を呼びつける夫・・・ほんと何?

 

 

「あれは事故じゃない。殺人を目的とした犯行だ。貴和子さんはウミヘビを持った犯人に、故意に咬まされたんだ。松崎はるみさん! あなたにね!」

 

逆にソッチか!

 

 

でも、なら逆に奥さんを呼ぶ意味がますます分からない。

実際、困惑している私の代わりに、奥さんが推理の反論を全部言ってくれているわ。

 

だけどさすが名探偵。その反論を全て論破して・・

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

その後、貴和子が無事に息を吹き返して、犯行時に私の顔を見て初めて私の気持ちを知ってくれたと告白してくれたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、だからって雅彦さんへの想いに諦めがついたわけでもないけどね。

 

えっ? 終わりだと思った?

これから始まるのよ。義兄と義妹と婚約者の三角関係は

グッドエンディングに向けてね。

 

 




いかがでしたでしょうか? スキューバダイビング殺人事件だけど実は殺人未遂事件。

敗因は、単純に毛利探偵の推理力に負けたことね。
だって、ずっと一緒にいたのに1秒も捜査している姿見せずにヘラヘラしながら、ちゃんと推理していたのよ!
しかも後から娘さんから聞いた話、奥さんと仲直りするために奥さんが無くした結婚指輪もちゃんと見つけていて。
それと同時進行でファンサービスも忘れない。

完璧超人とは、この人のためにある言葉だと思うわ?


じゃあ次の事件のリクエストだけど・・・

 苦しむ人の姿が見たいわ。 


まぁ、誰のとは言わないけど・・・いえ、今回は言いましょうか。

今まで私たち犯人ばっかりが死神に苦しめられてきたわけじゃない?
もちろん、被害者の人たちもだけど。
ってことで、私のリクエスト条件はコチラ。

『犯人、被害者以外の人間が、これでもか! ってくらいに痛めつけられる事件』
もちろん、無害な人が痛めつけられるのは胸糞悪いから、悪いことをした人に天罰が下るのが大前提よ。



って、言っておいてアレだけど。
悪い人なのに犯人じゃなくて、そっちに天罰が下る事件って何よ?


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バレンタインの真実(コナン)(リクエスト)

栄えある未来に光の一歩! 心の準備はもちろんOK!
今日の事件はバレンタイン。あと1か月で学年変わる。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



4年前に雪崩に巻き込まれて行方不明の兄がいる私は、カメラマンの甘利亜子です。

今、お世話になっているロッジが催しているバレンタインチョコ作りのお手伝いの真っ最中でーす。

明日も女子高生が2人、このチョコレート作りに来る予定。

その準備も兼ねて、私の恋人『二垣佳貴のチョコ作り初挑戦』が今から始まるわ。

 

 

ザクッ

 

包丁で切れる親指。

飛ぶ鮮血。

ひっくり返る救急箱。

暴れる彼氏。

着替えを取りに行く私。

「悪いな夏也、妹はもらったぜ」

彼氏の鞄に入っていたビデオには、兄と元・オーナーが雪崩に巻き込まれるシーンを彼が撮影した非道なものが映っていた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ということで、思いついたトリックは、

カメラに付いた血を利用して犯行時刻をズラす!

 

 

ええ、唐突なのは分かってる。自分の才能が恐ろしいのも分かってる。

だってこれ、数秒前まで平和な1日を過ごしていた私が、友達が心配して見に来るまでの間に思いついて、下準備を実行するのよ。しかも泣きながら。

 

どんだけメンタル強いのよ私って話。

 

 

 

 

って話はさておき、いよいよ本番。

女子高生2人と一緒にチョコを作って、頃合いを見て彼氏をサクッと殺害。

しばらくして、犬の三郎に呼ばれてみんなで彼の死体を発見。

すると、女子高生の保護者のお父さんが彼の死体を見て、殺人だとすぐに判定したの。

「今は刑事じゃないが、元刑事の探偵、毛利小五郎だ!」

 

 

 

 

 

 

唐突!

 

あの、まだ私が殺意を抱いてから24時間経ってないのよ?

それなのに。

映画のジャンルで言ったら、昨日までのホームコメディがスリルとショックに変わって、それが今はサスペンス。

 

 

直後、名探偵毛利小五郎の推理が、私の誘導した通りの殺害時刻に至ってくれたのも束の間。

トリックの都合上、彼にかけたゴーグルを見て女子高生がひとこと。

「もしかして、犯人がわざとかけさせたとか?」

ここに来て名探偵毛利小五郎ではなく、茶髪女子高生の名推理が炸裂。

何この子? 雪山で起きた殺人事件に物怖じするどころか、探偵以上の観察眼を持っているの!?

 

「そーいえばボク、変なもの見つけたよ! ホラ、このチョコレート! この兄さんのおなかの上にのってたんだ!」

そう言って、眼鏡の子供が無邪気に見つけたのは、彼の死体の上に乗った私が作ったチョコレート。

 

 

 

 

 

!!!???

 

 

 

 

まってぇ・・・サスペンスだったのが急にSFになったのよさ。

誰もロッジからチョコを持ってきていないのに、何故か今ここにあってはならないものが置かれている。

誰かが私に罪を被せるために置いたのなら自然と説明がつくけど・・・そもそも私が犯人なんだからアリエナイ。

 

お化けでも現れない限りは・・・・ね。

 

 

 

その後、ロッジに続くトンネルが雪崩で埋まって脱出不可に。

雪崩やめて~。兄が死んだトラウマが蘇るから~。

 

 

そして毛利小五郎の捜査が進み、クマみたいな男がロッジの周辺で目撃されていたり、友人が精神的にオカしくなっちゃったり、男性客2人が彼の部屋を漁っていたり。

展開とジャンルが狂いすぎた映画みたいな状態になってきたわ。

 

 

「今から小五郎のおじさんが台所で推理ショー始めるってさ」

 

 

 

 

私の言いたいこと、分かるでしょ?

一度、お茶でも飲んで休まない?

 

 

 

 

でも休ませてくれないのが名探偵毛利小五郎。

私のチョコを犯行現場に置いたのは2匹の犬ってことを教えてくれたわ。

山岳救助犬の性質で死体を遭難者と勘違いしてチョコを送り届けていたのが真相だったの。

よかった。SFが消えてくれた。

 

「犯人は・・・まるで昼間に殺されたように偽装したんだ。ですよね? 甘利亜子さん!?」

謎は全て解かれた。

 

えっ? アッサリすぎないかって?

もうね、疲れたの。テンションとジャンルの乱高下。ジェットコースターに何時間も揺られて平気な人いないでしょ?

でもそれもやっと終着。ほっとしている自分がいるわ・・・

 

 

 

ドオォン

 

 

 

響き渡る銃声。

男性客が猟銃を発砲して、私たちを脅し始めたの。

 

 

 

 

やめてぇ。何してんのこの人たち。

 

 

曰く、2人は4年前に兄を誤射して雪崩を起こして殺し、その証拠の映像(私が昨日見たビデオ)をネタに恐喝した彼氏を殺すつもりだったそうなの。

 

 

彼、馬鹿なの?

自分の恋人を連れて山奥で殺人犯を恐喝するとか。

私が殺さなくても、どのみち今日死ぬ運命にあったってこと?

しかも、私が殺しちゃったせいで今、男たちが私たちの事を殺そうとしているという・・・

 

 

もう次に何が来ても驚かないわ。

今の私にあるのは無。

 

男の1人が女子高生同士での殺し合いを命令するという、バトルロワイアル要素をぶち込んできても。もう驚かない。

今の私にあるのは無。

 

夜中にコンコンと外からドアを叩く音が聞こえてくるという、13日の金曜日みたいなことが起こりそうな要素が来ても。もう驚かない。

今の私にあるのは無。

 

様子を見に行った男がドアを吹き飛ばしてロッジの中に飛び込んできて、ジャッキーチェンの映画みたいな展開になったのは、ちょっと驚いた。

 

入ってきたクマみたいな男が「大丈夫。銃口の向きと引き金の指の動きに集中していれば、弾は避けられます」って中学生みたいな発想の事を言ってきて、口がアングリと開いてきたわ。

 

ドォン! ガォ!

 

「ほらね?」

ほらね、じゃないわよ。

 

 

ヤ、ヤロォって、雑魚臭い台詞を言い出した男の背後に、バレンタインチョコのデザインセンスの無かった女子高生がトッと飛びこんで。

その隙に、弾丸避けほらね熊が迫って・・・

 

ドゴ!!

 

クロス延髄切りが炸裂!

プロレスが入ってきた。もうジャンル何てどうにでもなれ!

 

 

そして熊がこの私たちの窮地に現れた理由を語り始めたわ。

「あなたが好意を寄せる男を見定めに来たんです。本当にあなたに相応しい男かどうかをね。とぼけないでください。あなたの手編みのセーターと手編みの湯飲みを手中にし、そして今回、チョコレートを頂戴する男ですよ。さぁ、どこです?その幸運な男は?」

とおっしゃるのは、MAKOTOチョコの名を冠する真さんだった。

 




いかがでしたでしょうか? バレンタインの真実。
何? 最後のラブコメ・・・
もう、誰も私の殺人の事、覚えてないでしょ。

とにかくジャンルが渋滞して渋滞して。犯人に優しくない事件だったわね。
そりゃ、真犯人2人がボコボコになったのはスカッとしたけど。

余韻ってもんがないでしょ。
だって、犯人(私)の最後の出演コマが“ポカン顔”って。今までそんな事件あった?



もう、次の事件ではしっかりと事件してね。
ということで、わたしからのリクエスト条件提示はコチラ。
「雪崩からの生還」

もうね、散々振り回されて可哀そうな私にせめて心の救済をお願い!
雪崩に巻き込まれたまま行方不明・・死んでしまったりしないで、
ちゃんと生きて帰ってきてくれる。そんな犯人をお願いするわ。

次の犯人さん、貴方は兄のように死なないで。


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雪鬼伝説殺人事件(金田一)(リクエスト)

嫉妬深いものはおらんか~
人の悪い噂を流すものはおらんか~
イジメをするものはおらんか~



イジメ問題は年中無休でタイムリー。めっちゃおるなぁ現代社会。

ネットで他人の誹謗中傷するヤツも絶滅せよ。

 

 

どうも。IT界の革命児、月見里光です。

若干20歳にして、IT企業「うぇぶすれっど」のCEO。

そんな超金持ちの僕も、かつてはオタクでヒッキー。そこから大躍進できたのは交際相手・雪原さやかのおかげ。

だが、彼女は「うぇぶすれっど」掲示板に立ち上がった誹謗中傷スレに殺されてしまった。

 

 

 

 

絶滅タイムだ。

 

標的は雲沢、椿原、鯖木の3人。と、可能であれば世界中のイジメ問題。

僕が何十億もかけて用意した殺人用スキーリゾート「スノーゴブリン・スキーリゾート」で、3人を殺して、僕も死ぬ。そしてあの世から悪党を呪い続ける。

 

形としては、先に雲沢と鯖木を殺して、神隠しにみせかけて死体を隠し、2人が犯人として暗躍している形、もしくは別の怪人が潜伏している状態を作ったうえで椿原を殺す。

そして他の人を全員避難させてから、雪崩を起こして、穢れたお金で建ててしまったリゾートと会社ごと一緒に死ぬ。

 

 

の、夢を実現させる下準備が大変だぞ!

 

・都市伝説の流布

・遠隔操作で水の中に沈めることができるコテージ

・鉈を飛ばすシーソー

・死体消失マジックの二重底の棺桶

・いざって時の雪鬼コスプレ衣装

・雪崩起こし装置

 

 

分かるよ。この中におかしなものが混ざってるって。他のは誰でも用意できるレベルだけど、これだけは無理ってものが。

 

・遠隔操作で水に沈むコテージ

 

話は簡単さ。凍った池の上にコテージを設置して、その周りに氷を溶かすための電熱線を張り巡らせるだけ。スイッチを入れて電気を流せば、遠く離れた場所からでも池の氷を溶かして、コテージを標的もろとも水の中に沈めることができる。

 

 

言うは易く行うは難し。

 

氷の上に建つように・・・危なげなことを・・・・してくれる建築家が何処にいる?

 

もし、金に飽かせて足のつかない外国人バイトを使っても、池の上にコテージを建てさせるのは非現実的。

当たり前ながら、氷が張る冬に作業開始して、冬に犯行。時間の余裕が無さ過ぎる。

そもそも他のコテージはちゃんと高級リゾートに相応しい出来なのに、例のコテージだけ「金さえもらえば」程度のモチベーションのバイトに任せた出来は不自然すぎる。

第一、僕は会社運営で忙しいから、アレコレ指示するために現場監督として立つわけにもいかない。

 

 

詰みか・・・

 

 

まぁ、そんなマネをしようなんてバカな考えは最初から止めて他のトリックを・・・

 

『出来らぁっ!』

 

その時、僕の中の雪鬼さんが叫んだ。

いま、なんていった?

『氷の上に、コテージを乗せられるっていったんだよ!』

こりゃおもしろい雪鬼だぜ。僕が不可能だと断言したものにケチつけられたんだ。こりゃあどうしても氷の上にコテージをつくってもらおう。

『え!!氷の上にコテージを!?』

ん? 雪鬼さん? 会話がチグハグになってない?

 

『【曳家】をするんだよ! 完成後に家ごと引っ越しをするんだ。

建築家にコテージを正式に建てさせる前に、池の反対側に移動させる名目で最初から曳家の用意をしておく。

あとは雪で地面と氷の池が判別できない時期になったら、別の業者に依頼してコテージの移動先を池の上に変えるだけ。

残る仕事も、玄関の階段部分や簡単な内装工事程度なら数日で終わるレベルさ』

 

 

こうして僕は氷の上にコテージを生み出し、一人で周りに電熱線を巡らせて、スキー場リフトの発電機とつなげておいた。準備完了。

 

 

さぁ、絶滅タイムだ。

 

 

モニター、アルバイトを無作為リクルートしたように見せかけて、標的を含めた9人をリゾートに招待して、いざイベント当日。

1日目にバイトの影平・七瀬・金田二。教育を部下に任せて、僕は先に郵送された雲沢の荷物から服を抜き取ってコテージにセッティング。無線も隠しておいた。

 

そして運命の2日目。

ついに出会えたな雲沢・鯖木・椿原。(あと、数合わせの3人)

夜の交流会の前にスキー板を盗んでリゾート端のコテージに隠しておいて、いざディナー。

 

なんか、思ってたのと違う。

いや、標的たちのことじゃなくて、他の数合わせのモニターとかアルバイトのこと。

彼らって、リゾート宣伝のために情報発信力を基にリクルートしましたって形で呼んでいるわけなんだけど、当然標的3人にはそんな能力を求めていない。

だから、他の数合わせのモニター達は、そこそこガチでチョイスしたはずなんだけど・・・

 

一人はナンパに夢中。一人は会員権の価値を分かっていない。一人はバイトそっちのけ。

真面目なモニターとバイトが全体の3分の1の、鷹山、七瀬、金田二の3人だけという。

なんというか・・・思ってたのと違う。

これ、ちゃんとモニタリングになってる? 大丈夫?

 

そんな不安を抱えつつ、ディナーが終わって皆が寝静まった頃にスイッチオン。僕は部下の前でワインを飲みながら、雲沢を自動的に殺害。

 

 

 

 

3日目。行方不明の雲沢を捜索しながら、脱出不可能な現状に皆でオロオロ。

CEOとして無難に対応しながら、次の殺害のタイミングを見計らうだけ。

僕の自作自演スキャンダルをネタに煽ってくる鯖木にマジギレしながらも、1人になる口実をゲット。

鯖木が外にいるところをサクッと殺害して、死体消失マジックの棺桶にIN。

あとは鯖木のパソコンを処分するだけ・・・

 

 

無い

僕の動機が残っているであろう奴のパソコンが無い・・・だと!?

 

 

これはマズイ。あまり長時間1人でいると変に疑われる可能性がある。

考えろ! 奴のようなオタクなら、何処にパソコンを隠す?

僕もオタクでヒッキーだったからわかるはずだ。奴の気持ちになって考えるんだ。

 

 

無理でした。

他人をこき下ろす人間の気持ちになんて、なれるわけがないんだから。

 

 

その後仕方なく、皆のいるロッジに戻って、鉈を外から投げ込む装置を作動。

皆で遺体安置小屋に行って鯖木の死体を確認してからロッジに戻って、雲沢と鯖木の2人がグルだと誘導して、あとは最後の標的の椿原を殺せるタイミングを待つだけ。

 

 

そんな最中、雪鬼伝説を全く恐れないどころか、事件を調べたい欲求に憑りつかれたバイトの金田一と七瀬が、鯖木のコテージでパソコンを発見して中を調べ始めていた。

えっ? 見つけられたの?

ってことはマジかぁ金田一・・・お前も他人を誹謗中傷して楽しむタイプのヒッキーだったのか。そうじゃなきゃ、こんなに早くパソコンを見つけられるわけがないもの。

 

どうしよう・・・・このままじゃキモオタ金田一に、最後の標的が椿原だってことがバレてしまう。

 

と、心配した矢先に七瀬さんがパソコンと2人きりに。

これはチャンスと、僕は雪鬼のコスプレで彼女のロッジを襲ってパソコン奪取。

 

その後でシレッと彼女のコテージに行ってCEOとしてフォロー。

まぁ当然のごとく、彼女の付添人である金田一くんの怒りの矛先はリゾート責任者である僕に向く。

「あんたの会社『うぇぶすれっど』のネット掲示板には毎日大量の誹謗中傷が書き込まれている。美雪の話じゃパソコンの中にはその一部が残ってたそうだ。その誹謗中傷の一つが一人のアイドルの卵を破滅に追い込んでいたとしたら。それはあんたにも責任の一端があるんじゃないのか?」

 

心の傷ッ

キモオタ金田一が容赦なく僕のトラウマを抉ってくる。

駄目だ。ストレスで・・・味覚障害になってしまう・・・

 

 

 

その後、金田一が事件の核心に迫りつつあって、僕は焦って最後の標的を殺しに、コスプレしてコテージへ・・・・

 

「かかったな雪鬼!」

 

その時、突然押さえつけられ、目の前には金田一が!

椿原を狙うの、バレてた。

そりゃそうか。さっき僕のトラウマを抉ってたもんな。

そして金田一お前・・・僕を確保するために女を囮に使うとか・・・マジかお前

 

「そう、この殺人は2年前自殺したアイドル候補生、雪原さやかの恨みを晴らすための復讐劇だったんだ」

 

そこから咲き乱れる金田一の推理と、反省の色が見えない椿原。

「復讐うんぬん以前に、あの二人がすでに殺されてるってことが全然納得いかない!」

と、2年前のイジメ問題の追及だった話の主題を逸らすったら逸らす。

 

「今からそれをあの山小屋で実演してみせるよ。雪鬼サン、もちろんあんたも一緒にな!」

そのまま椿原の口車に乗せられた金田一は、僕をコスプレのまま連行。

 

何このシュールな光景。

もうさ、ここにいないメンバーって、僕だけだよね? コスプレの中身、みんなもう分かってるのにこの仕打ちよ。

金田一、これがお前のやり方か!?

 

なんて僕の生き恥の怒りを全く気にしないで、金田一の推理は続く。

しまいにゃ、二重底のトリックの説明に、おじいちゃんとのエピソードを持ち出してくる自由奔放さ。

何? この話の脈絡?

 

「はじめちゃんのお祖父さんはただのお祖父さんじゃないんですっ!あの名探偵、金田一耕助なんですよ!」

金田一は、名探偵のお爺ちゃんに昔見せてもらった手品道具を思い出して、僕のトリックを暴いていたようだ。

名探偵お爺ちゃん・・・教育熱心すぎるだろ。

 

そして金田一は池の上コテージのトリックまで解いていき・・・

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

が、僕の最後の復讐は終わっていない。

椿原を殺して、僕を死ぬ!

・・・と、その矢先にまたも金田一。

 

 

「ちがう!あんた、本当に雪原さやかが自殺したって思ってんのかよ! あんたの愛した女はイジメに屈しない強い心で立ち直ろうとしてたんだよ」

さやか、普通に事故死でした。

まぁ、だからって3人の悪事は殺されて仕方ないレベルなのは変わりないけどな。

 

 

ということで、僕は自殺するために雪崩へと飲まれた・・・

 

 

 

 

そして生きていた。




いかがでしたでしょうか?
雪鬼伝説殺人事件。

いやぁ、ネットイジメも誹謗中傷も、絶滅してほしいですね。
椿原のヤツ、最後の最後まで反省しなかったんですよ? 普通、こういう事件系の映画で最後に残った1人の悪党って、一言くらい後悔の言葉を残すじゃないか。
地獄に堕ちてくれないかな?



えっと、今回の敗因ですが。
『金田一耕助が悪い』
だって。考えてみれば、2つのトリックのうちの二重底の方、お祖父さんがそういう手品を見せたからバレたんですよ?

ってことはコテージ消失マジックも。
金田一耕助が孫の目の前で『家が消える手品』を見せていたに違いない!
だって億円かかったトリックだよコレ。僕の渾身作。
普通、「まさかこんな大掛かりなことしないだろう」ってレベルの発想を、ノーヒントで解けるわけがない。
見たことがあるんだよ絶対。そうじゃなきゃ、説明がつかない。



よし、言いたいことも言ったし、帰って「うぇぶすれっど」に椿原の名前と顔写真でも曝~らそっ。



の前に大事な仕事。
次の事件のリクエストですが
『イベントを開催』
にしましょうか。

いやぁ、今回の僕のスキーリゾートのモニター募集だって、本当は普通に開催予定だったんですから。
是非とも、次の犯人にはイベント開催を成功させてほしいんです。

えっ? 犯罪者のイベントが成功したらご時世的にも駄目だろって?



・・・・・・あっ、そうか。


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二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件(コナン)(リクエスト??)

ひりひりするようなサスペンス! 暗闇に走る赤い叫びと黒い弾丸。
今日の事件は過去一ハード。やること多くて多すぎる。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




貴方には勝ちたい相手がいますか?

死神に勝ちたい? ・・・・・返答1問目から無茶ぶりはヤメテ。答えに困る。

 

どうも、鯨井定雄です。

私が勝ちたい相手。それはかつてのボス、「影の計画師」叶才三。

20年前、私は銀行強盗を計画したが「計画がザル」と言われ却下され、叶の計画した銀行強盗で死者を出した。

ザル計画はどっちだよ! と思いながら、この死者発生で怖気づいた叶を仲間皆で殺した。

そして20年後の今、私は叶を超える。

 

まぁ、死んだ人間と勝負して超えるなんてのはハッキリ言って自己満足の世界。

私の満足は「叶が昔の仲間に復讐した後で自殺した」というシナリオを作ることで達成される。

もちろん叶は死亡済みだから、かつての仲間の蟹江を叶に仕立て上げて、このシナリオを探偵に推理させる。

 

舞台は豪華クルーザーで開催する「小笠原イルカツアー」。海の上なら逃げ場も無く、警察にも邪魔されずに済む。

問題はツアー開催の資金の捻出だが・・・20年前の強盗の分け前、3千万ほど。

この20年間、3000万円はノータッチにしておいた。

満足感はプライスレス。お金で買えない価値がある。

(まぁ、3000万円なんて20年で換算すると月12万円程度にしかならないから、普通に仕事していれば別に手を付けずに過ごすのに苦は無かった)

この金で船をチャーターし、船員を雇い、トリックに使う各種アイテムを買い込み、仲間に伝わるように『古川大』の名前で、仲間なら簡単に解けるクイズイベント広告を出す。

 

3000万円・・・全額投入させていただきました。

懐に・・・優しくしていたら・・・トリックなんてやってられんさ!

 

 

次に、『蟹江=叶』説を推理してくれる優秀な探偵を呼ぶ。

何処かにいないかな?

と、探している所を知り合いの社長・・・ではなく外交官夫人が『服部平次はどうだ?』と教えてくれた。

いわく劇場版最強の探偵(すっごく優秀そう~っ!)であり、手のひらの上で踊ってくれるダンサブルな探偵(ダンサブル~ッ!)。

そんな服部平次を手紙で呼び出して、下準備は完了。

 

 

そして当日。

老人・叶才三に変装してツアー受付の最初に船に乗り込み、一度船を出て自分の姿でも再乗船。

標的の亀田と蟹江が無事乗船していることを確認。

「I‘m a king of the world」のタイタニックごっこで遊ぶ不謹慎な女の子と知り合って、その娘の父親が有名な探偵の毛利小五郎だと判明。

いるのかよ。探偵、いるのかよ。

服部平次、呼ばなくて良かったじゃん。なんなら見た目、コッチのほうがダンス上手そう。

 

という余興も束の間。いよいよ私が仕掛けた最初の罠が発動。

船酔いしやすい亀田が部屋に戻ったことを確認して、船員から『叶才三』の名前を引き出す。

この名前に皆が騒いだら、手紙で呼び出しておいた亀田を機関室で殺す。

 

「か・・・」「叶・・・」「才・・・」『三・・・』

なんか皆驚いてる。驚きすぎ。

いや。想像してたのは、探偵役の服部平次だけがこの名前に反応して(しかも本人ここにいないし)。そうじゃなくても毛利小五郎が反応して(キョトンとしてる)、その騒ぎに乗じて次の行動に移るつもりだったのに。

なんか、普通の客まで驚いてるんだけど・・・何故?

 

「叶才三・・・この名前どっかで」

「馬鹿野郎、忘れたのか!? 昔、ワシと共におまえが追ってた4億円強殺事件の主犯、影の計画師、叶才三だ!」

Oh・・・凄い偶然。

まさか20年前の事件の担当刑事(引退済)が居合わせるなんて。どういう確率!?

 

これ、少しマズイ。

何故なら今回、犯行の過程で『私自身が20年前の犯行グループの一員』ってことを明かさなくてはならない。

20年前の事件だから、あと2時間で時効が切れる。ネタ晴らしはその後だから普通は逮捕されないが・・・

この刑事の熱の入りようを考えると・・・めっちゃキツイ尋問してきそう。

そうじゃなくても、犯行の邪魔になりそう・・・

 

 

案の定。

想像以上に騒ぎが大きくなって、亀田を殺害してから誰にも見られないように船尾の箱に閉じ込めるのが大変に。

次のトリックも刑事が叶才三探しを諦めるのを待ってからに。

 

でもまぁ、0時になったら諦めてくれるから、それからゆっくりトリックを仕掛ければいい。

 

・トイレに呼びつけた蟹江を眠らせて。

・蟹江の服を脱がせて時計を外して、箱の中で死後硬直が始まった亀田に着せて。

・タバコと爆竹で作った自動発火装置を、船のデッキの上の高い所にある旗にセット。

・タバコで作った自動発火装置を亀田の入った箱にもセット。

・メッセージ付き万札にナイフを刺して床にセット。

・船尾で「おーい来たぞ~」と叫んで、船員が来たら「ここに来た事は誰にも言わないでください」と伝えてからレストランに戻る。

 

やることが・・・やることが多い。

タバコのトリックは約10分で発動するから、ほんと時間との勝負。

 

だが皆、安心してくれ。

私はこの通りの豊かなボディだが、実はその中身はスーパーアクロバティックボディなのだ。

よって。やることは多いが、やれてしまう。

現にこのトリックを仕掛けるのに所要時間わずか6分!

惚れても、ええんやで。

 

 

 

そして爆竹が爆発したら皆でデッキへ。自分で用意したメッセージに驚きながら、叶の関係者を匂わせる演技を圧倒的演技力で演出。

船尾で箱が燃えたら、隠しておいた睡眠中蟹江を舳先の縄梯子にくくるだけ。

縄梯子に・・・くくるだけ。

 

まぁ、くくるだけだから簡単。

くくった後、蟹江(実は亀田)の焼死体を皆で観察して、後は刑事の取り調べを受けるだけ・・・

 

 

 

ちょっとイイ? 誰も気づいてないけど、異常事態発生中。

黒焦げの焼死体。犯罪者の私でもドン引きのグロテスクな死体。

一般人が平然と見ているんですけど・・・

 

眼鏡の気弱そうな男が、蟹江の腕時計に気付くくらいの近距離に来てるし。

海で父を亡くした磯貝さんも、死体のファイティングポーズみて笑ってるし。

そして何よりも。

眼鏡の小学生が超至近距離で死体をガン見している。それを誰も注意しない。

 

もうさ。変な汗がデュルッデュルに出てくるよ。

そりゃ出たほうが演技としては好都合だけど、素で出てくる。

 

 

その後。案の定、刑事のキツイ尋問が始まる。

ヤバイ。蟹江にトドメを刺しに行く時間が・・・無い!

と、心配した矢先に事態は刑事のほうから動いてくれた。

「なに!? 亀田さんが部屋にいなかっただと!? 馬鹿野郎! そんなコロコロ人がいなくなってたまるか! どけ! ワシが捜しに行く」

物理的に、感情的に刑事が動いてくれたおかげで解放された私。

その流れのついでに磯貝さんが「元・刑事と探偵に私たちを拘束する権限は無い」って俺に都合のいい屁理屈をこねてくれた。

これでトリックの続きに入れる。

舳先にくくった蟹江を殺せるぞ!

 

と思った矢先、船首に向かった私の目の前にいたのは、蟹江を発見してめっちゃ驚いている服部平次だった。

うわっ。危ねっ。

もし刑事からの解放があと1分でも遅かったら・・・

そして、もし都合よく鉄パイプを持参していなかったら・・・

 

しかし私は都合のいい男。全てを持っている男。

よって・・・

 

ドガッ ヒュオオォォォォ ザパァン

服部平次に勝利。

 

 

 

その後、子供が駆けつけるまでの数十秒の間に

船首から船尾に移動して、次なる時限爆竹破裂装置をセットしておく。

 

そしてしばらくして爆竹が鳴ったら

・蟹江を引き上げて射殺

・死んだ蟹江に銃を握らせて、自殺したように見せかける

・舳先からガラスごしに自分の腕を撃って、蟹江に狙撃されたように見せかけて

・さらに時限爆竹爆弾をセット

しておく。

 

最後に皆に白状すると言ってレストランに行ったら、爆竹の音に合わせて撃たれたフリをするだけ。

 

 

長かった。忙しかった闘いよ、これでさらば!

あとは待っているだけで・・・

「何もかも解けましたよ。この事件の真相がね」

と、眠りの小五郎の推理ショーが始まった。

 

 

「犯人は蟹江さんです。警視殿のいうとおり、死んだと見せかけて身を隠し、殺す機会をうかがっていたんですよ。鯨井さん、あなたをね!」」

踊った! すごくダンサブル!

毛利小五郎が私の手のひらで踊りながら推理を咲き乱れさせていき。そして・・・

「彼こそが20年前に死んだと思われていた、影の計画師、叶才三だったんですよ」

フィニッシュ! 完全犯罪は達成された。

 

しかし突如。意外なところから切り崩しが発生してしまう。

「ウソ、ウソよ。この人が叶才三なわけないわ! だって叶は、叶は私の父」

私のピンチを救ってくれていた磯貝さんの衝撃告白。

【蟹江=叶才三】の設定、秒で覆されてしまいました。

 

しかもそれに乗じて毛利探偵が急に推理を変える始末。

「じゃあ誰だ! 一体誰だっていうんだ犯人は!?」

と、刑事が問い詰めていると・・・

ドオオン! と、船の後方100mで例の気弱そうな男が仕掛けた時限爆弾が大爆発した。

 

 

!!??

 

待って。展開が込み入りすぎ。

どうやら彼は20年前の銀行強盗時に私たちが殺してしまった銀行員の婚約者で、私たちに復讐するために爆弾を用意していたそうだ。

それを毛利小五郎が察知して、ゴムボートで安全圏に隔離していたものが爆発したわけだ。

 

・・・・・どゆこと? なんでお前爆弾を常備してんの? 旅行先で犯人と出会えた時のために?

で、それを察知するって・・・どゆこと?

 

そんな私の混乱を無視して、毛利探偵は推理を続け。

「犯人は、昔の仲間である鯨井さん、あなたしかいませんよね?」

ファイ!?

さっきまで私の手のひらの上でメダパニダンスしていた毛利探偵が、いつの間にかマッスルダンスで私に攻撃を仕掛けてきている・・・だと!?

しかも証拠として、さっき撃ったガラスに付着した私の血液まで指摘。

したかと思ったら、何よりの絶対的証拠。生き証人【服部平次生還】を発動してきた。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか?
二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件。


敗因はやっぱり、20年前の事件の関係者がツアーに参加しすぎたことでしょう。
逆に事件の無関係者が高校生2人と小学生1人しかいないって・・・

関係者がホイホイされなければ勝てたのに。
って、最初は思っていましたよ。
でも皆さんご存じでしょ?

古川大⇒才三叶 だったんです。
そうとも知らず、私自身が関係者をホイホイしてしまっていたんです。
私こそが、叶の手のひらの上で20年も踊らされ続けていた、明智以下の存在だったんです。


ですが、私の愚策をご覧いただいている皆さん、他人事じゃありませんよ。
今までの読者リクエスト受け付け企画ですが。
実は最初から、作者が想定した通りなんです。

作者が書き溜めた事件簿の中から、その事件が該当して、きっとリクエストに挙がるであろう条件が提示されていただけなんです。
つまり、読者の皆さんも作者の手のひらの上で踊っていたにすぎないんです!


皆さん。反撃に出ましょう。
次の事件リクエスト。作者が本番ギリギリで対処に追われるような事件をリクエストしてやりましょうよ。一矢報いてやりましょうよ!

ということで私からのリクエスト条件はコチラ!
『アニメオリジナル回』

原作の漫画に無い、作者の想定外から攻めてやりましょう!
ただし、アニオリ回にはたまに事件性の無い話もあるので、【殺人事件】に限定します。
それでは皆様。よい復讐を!


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呪いの仮面は冷たく笑う 【前編】(コナン)(リクエスト)

待っていても始まらない。未来へ一歩踏み出して、推理と恋のカウントダウン!
今日の事件はフィジカル頼み。トリックって最後は筋力だよね。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




※今作は一部、人によっては聞き取りにくい言語があるかもしれません。あらかじめご了承ください。

 

 

俺は藍川冬矢。今回、仮面と剣を使う犯人だ。

 

 

20年間、母が付き人をしていた縁もあって蘇芳紅子のプロモーションでデビューし、今や全国ツアーを開催するほどの売れっ子No1ロックシンガーとして活躍してきた。

蘇芳はメイドまでも左右対称の、シンメトリーの館に住む、ちょっと変なこだわりを持ったオバサン。

だが彼女は俺にとって大切な、一生涯の恩人・・・だと思っていた。

 

それは2か月前に判明した衝撃の事実。

母が残した手紙によって明かされたのは、20年前に母が起こしたと言われているひき逃げ事件。

その真犯人は蘇芳であり、母を自殺に見せかけて殺していた。

つまり俺は、母の仇をそうとは知らず20年も慕っていたのだ。

 

嘘だそんなこと!(ウゾダドンドコドーン!)

 

怒りと後悔で気が狂いそうだった。

しかも調べていくと、今度のチャリティーイベントのゲストの片桐正紀さんというのが、例のひき逃げで亡くなった女性の旦那さん。

蘇芳は知らない様子だから偶然だとは思うが、そりゃないだろ。

さらに調べていくと、そもそもチャリティーイベントの収益を蘇芳が着服しているという始末。

被害者も交通事故遺児も、その寄付をしてくれた心優しい人々のことも、全部裏切っているんだ。

 

本当に裏切ったんですか!(オンドゥルルラギッタンディスカー!)

 

 

俺はあまりの怒りに、蘇芳の屋敷の建築に携わったという教授に事の次第を相談した。

“ひき逃げ事件を身代わりにした、左右対称にこだわりのある仇”についてどう思うかと尋ねると、教授は気まずそうに目を逸らしながら「復讐したらいいんじゃない?」と答えてくれた。

「ただし、館を爆破するのだけは駄目だからね。他だったら協力を惜しまないよ」

変なこだわりのある教授だな、森谷さんは。

 

まぁそんなことはどうでもいい。

俺は決めた。

「蘇芳紅子。俺は貴様をぶっ殺す(ムッコロス)!」

 

 

こうして決意した殺人計画。

ざっくりと説明すると

・狭い隙間から200枚の仮面を入れて、それをゴム紐を使って一繋がり3mの塊にする

・その先に剣を取り付けて、蘇芳の首を刺す

という感じだ。

 

仮面と剣で、俺は戦い、今その力が全開する。運命の切札をつかみ取る!

 

 

だが問題も山積だ。

やることが多すぎるんだ。

屋敷のしきたりを利用して、夜中12時に行動を開始。

仮面の間に置かれた200枚の仮面を回収して。

200枚の仮面の口と目にゴム紐を通して。

200枚の仮面を1枚ずつ、部屋の隙間から投入する。

目標時刻は2時半。150分。9000秒。

ざっくり計算したとして、1枚当たりのゴム紐遠しの所要時間は30秒以内ということになる。

 

 

積み重ねるしかないじゃないか練習を!

本番までの2か月間に、全国ツアーの準備を進めながら、夜に屋敷に泊まりに来ては、夜な夜な仮面を盗んで、紐を通して、隙間から入れる練習を重ねる日々。

はじめの頃は苦戦したさ。仮面が上手に並んでくれないから、引っ張ると絡まってしまうんだ。

精度を求めれば時間もかかる。素早く丁寧に。寝る間を惜しんで。

こうして、襲い来る睡魔と戦いながら、俺はついに2時間でこのトリックの準備を完了できるようになった!

 

さぁ、あとはトリックの実行段階である、紐を引っ張って3mナイフ刺しアイテムに変えるだけ・・・

 

 

 

仮面の繋がった紐を、引っ張るだけ?

 

 

理想としては、強く引っ張ることで、重力に負けてダランとなった仮面の蛇腹が1繋がりになってくれること。

だが現実、このトリックで完成するのは木製3mの仮面タワー。ちょっとした丸太レベルの重さは想像に容易いだろう。約100㎏だ。

そんな100kgを、端っこから、紐を引っ張って、真っ直ぐ横に向ける・・・だと!?

 

 

 

筋力だ。

筋力が必須!

少なくとも、丸太の端を掴んでブンブン振り回せるくらいの!

不死の吸血鬼をも殺せるくらいの筋力!

アンデッドを封印できるくらいの筋力を!

 

 

 

こうして俺は残りの犯行時間。全国ツアーの合間の時間の全てを、寝る間を惜しんで、聖筋肉領域(トレーニングジム)で筋トレに励んだ。

パーソナルコーチも目を見張るほどの激しいトレーニングの日々。

「そんなに復讐をしたいのですか?」

コーチの問いに俺は「ああ勿論だ」と即答した。

 

「復讐したところで得られるのはその一瞬の満足だけ。その後に残るのは虚しさだけですよ。私としては貴方には一瞬の幸せじゃなくて、ずっと幸せになってもらいたい。復讐したところで、傷つくのは貴方のほうなんですよ」

コーチいわく、この言葉を教えてくれた”知り合い”の殺人犯は、故郷の島民をほぼ全員、生き埋めにされて殺された。その恨みすらこの言葉で思いとどめたらしい。

なんという説得力!

 

俺の出してきたロックの歌詞よりも、俺の胸にしかと届いたぜ。

 

 

 

 

 

まぁ、だからって復讐を止めるつもりはないけどな。

 

 

 




こうして、筋トレの日々によって身についた筋肉はまさにゴリラ。
もうチャリティーイベント直前だから、予行練習をしている暇はない。
仮面トリックはぶっつけ本番だ!


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呪いの仮面は冷たく笑う 【後編】(コナン)(リクエスト)

ついにやってきた運命の日。

チャリティーイベントのゲスト4名を招いて、呪いの仮面の館でパーティが開催される。

まずはそのゲストに「呪いの仮面」を名乗って脅迫文を送りつける。もちろん俺自身にも。

こうすれば、うまく行けばチャリティー自体をぶち壊しにできるかもしれないからな。

そして当日。呼ばれてしまう一番厄介なゲスト、探偵の毛利小五郎には、道を木で塞いだ上で脅迫する二重の妨害だ。これで帰ってくれることを願って・・・

俺は木を引っこ抜いて、道のど真ん中に倒しておく。

そう、なかなかに成長したこの木、推定500kgを。

俺のこの鍛え上げられたマッスルで!

ウホッ  ドン! とな。

 

 

そして毛利探偵が木と手紙を見てくれたのを見届けたら、通行の邪魔になる木を撤去して、少し遅れて俺自身も屋敷に到着。

ゲスト全員、脅迫に屈してくれずに集合してしまっているのは残念。

毛利探偵が俺の手紙を読み上げて、皆ビクッてなっていたけど、蘇芳は平然としてやがる。

流石、こんな仮面だらけの不気味な館に住んでるだけあって肝が据わってやがる。

 

「蘇芳さん、これは警察に届けたほうが」

「気にすることはありませんわ。私がチャリティーを始めてから、この手の嫌がらせは絶えたことがないんですよ」

マジか?

チャリティー始めた15年前から、俺が用意したそこそこ怖いレベルの嫌がらせを受けてきてんの? 

どんだけ世間に嫌われてんだよ、このオバサン。

 

 

そして晩餐会。

俺の母の話題が出てきて、俺は心にもない言葉で蘇芳を褒める羽目に。めっちゃストレス。

みんなして蘇芳を褒め称える。めっちゃストレス。

しかも例の被害者遺族の片桐さんまで「蘇芳さんのチャリティーに参加することは、天国の妻も喜んでいることでしょう」と感謝する始末。めっちゃストレス。

 

 

 

 

で、やっとだ。ようやく、待ちに待った夜の12時。

館を東西で繋ぐ唯一の「仮面の間」に鍵がかけられて、皆が寝静まったら行動開始。

まずは鍵を使って仮面の間に忍び込んで、200枚の仮面を回収する。

やっぱこの部屋が不気味すぎる。仮面に見られてる気がして落ち着かない。

 

何故みてるんです!(ナズェミテルンディス!)

 

って気分もそこそこに、仮面をゴム紐で数珠繋ぎにする。

蘇芳の寝室の隣の部屋から、欄間を通して仮面を全て寝室に、地道に入れていく。

この部屋の欄間に通すのは初めて。

だが、隙間の幅はちゃんと森谷さんに教えてもらっていたから、想定通り。

 

あとはゴム紐を引っ張って1繋がりの仮面のタワーを作り出して、

毛利探偵の部屋に内線電話をかけて犯行をほのめかして、

毛利探偵が下の階の仮面の間でドタバタしたら、

ゴム紐をさらに引っ張ってナイフで蘇芳を刺し殺す・・・

 

 

ブチッ

 

 

へっ?

何が起こったのか察し、「ウェェェェェイ!!!」と漏れる俺のうめき声。そして・・・

 

ガランガラン!

 

 

ゴム紐が、俺のマッスルに、耐えられなかった・・・だと!?

そりゃそうだ。100kgをゴム紐で引っ張るんだぞ。しかも電話中も引っ張っていたから長時間ビンビン状態。そして仮面の端は綺麗な断面だから擦れるさ。

時間を・・・時間をかけすぎた。

 

寝室に散乱する仮面。手元に残ったのはナイフに繋がったゴム紐だけ。

 

 

 

終わりだ・・・・・

 

たぐり寄せて手元にナイフを戻したところで、もうナイフを投げるしかないじゃないか・・・

 

 

 

ナイフを

 

投げる?

 

 

 

俺は欄間の5~6cmの隙間から指を差しいれ、鍛え上げられた指の筋肉をもってナイフを投げた。

ヒュヒュヒュンと風を切る音が鳴り、蘇芳の首に突き刺さるナイフ。

飛び散る鮮血がマスクにぶっかかる。

 

俺は今までいったい、何を用意してきたんだ?

 

 

 

その後、何食わぬ顔で毛利探偵に合流。みんなで蘇芳の部屋へ。

毛利探偵が扉の上のガラスを割り、部屋の中で血まみれ仮面まみれの蘇芳を発見した。

 

「僕がそこから入って、中の様子を見てくるよ」

この部屋に入れない状況に、毛利探偵のところのコナンくんが部屋への侵入に志願した。

下には割れたガラスもあるのに寝間着の軽装で、

真っ暗な部屋に仮面が散らばる恐怖に立ち向かい、

血を流しているオバサンの元へ行く。

なんという勇気!

 

「蘇芳さんの様子を、早く!」

へっ? 聞き間違いか?

毛利探偵、子供に蘇芳の死体の脈を診るように言ったぞ?

しかも「駄目だよ、もう」と、ちゃんと死を確認するコナンくん。

そして不気味すぎる仮面に恐れることなく、すぐに南京錠の鍵を発見して部屋を開けるという超勇気を見せてくれた。

 

 

 

その後、深夜の通報にも関わらず、誰一人文句を言わずに警察が到着。

そこから始まる深夜の事情聴取。容疑者みんな誰一人文句を言わずに応じるこの民度よ。

だが、コナンくんだけは寝かせてあげようよ。

 

そんな取り調べの中で、俺は事件発生前後の、あらかじめ考えておいたアリバイを説明。

結局、取り調べの中で唯一、犯行後の隠蔽工作の時間がある秘書の稲葉が容疑者候補に。

少し計算外だが、こいつもチャリティー収益の横領のお零れを頂戴していたからざまぁ。

 

 

だがその後、毛利探偵に蘇芳の寝室の隣の部屋に呼び出される俺たち。

「蘇芳紅子さんを密室で殺害した犯人、呪いの仮面の使者は、貴方だ! 藍川冬矢さん!」

急展開!

 

 

それから咲き乱れる毛利小五郎の名推理。

 

「ショブルーの仮面こそ、密室殺人を可能にするカギなのです。その方法をここで再現してみせましょう。高木刑事!」

毛利探偵が合図を送ると、隣の犯行現場から高木刑事という警官が、俺の仮面トリックを再現し始めた。

 

ん? 再現?

 

そして欄間から挿し込まれていく仮面200枚。それを見せられる俺たち。

何この時間・・・まぁ俺の犯行の説明なんだけど・・・1時間強かかるよ?

さらに、乱雑に積みあがっていく仮面。

あのさ、経験者から言わせてもらうと、こっからやると確実に絡まるって・・・

 

 

ガラガラガラ

 

俺たちの目の前で、綺麗に連なっていく仮面。

・・・ぶっつけ本番で、成功させやがった!?

何者だ、この高木刑事って奴は!

 

ガシャン! キンッ!

 

しかも、100kgの仮面タワーを、ゴム紐を千切れることなく作り上げやがった!

 

 

「あとは、ものさしか何かで仮面を押し出してやれば」

グサッ

「こうして藍川さんは寝室に入ることなく、蘇芳さんを殺害した」

あのさ、毛利探偵は自分の手柄みたいに話してるけど・・・これはものさしを取り出す時に100kgを”片手で”支え続けた高木刑事の手柄だから。

それに、トリック微妙に違うから。

仮面の口元に血がついたのも、ただの偶然だから。

 

 

 

そして、トドメの一撃で俺のアリバイの失言を拾い、俺の証言の矛盾を見つけ出した。

俺は聞こえてきた足音と状況的に、『毛利探偵のところの“女の子とコナンくん”が一緒に穂奈美のところに行ったはずだ』と証言していた。

「本当に?」

「本当だ」

俺がそう答えると、コナンくんは今までの子供っぽくて愛嬌のある顔を豹変させ、俺を睨みつけて口を開いた。

「だったら余計に変だよ。だって僕、蘭姉ちゃんとは一緒に行ってないもん。戸締りを調べたりしてたからね」

そりゃないでしょ。

コナンくんは事件が発生した暗闇の中、怖い仮面が溢れる屋敷の中、たった一人で行動してたっていうのか!? 

常識を、想定を、外してきやがる。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた

 




いかがでしたでしょうか?
「呪いの仮面は冷たく笑う」

思い返してみると、蘇芳の神経の図太さたるや。
だってアイツ、死亡ひき逃げ事件起こして、俺の母親に罪を被せて殺しておいて、その状態から『交通事故遺児救済事業』が金になる!って考えたんだろ?
どんなメンタルしてんだよ!




いやぁ、話がそれましたね。事件の感想ですよね?
敗因は2つ。2人の不確定要素でしたね。
怖いもの知らずのコナンくんと、怪力無双の高木刑事。
特に今回の立役者は高木刑事の存在がMVP。あのトリックを証明できる人材がいたからこそ、あのトリックはバレたと言っても過言ではない。
まぁ、もし警官にダーツの達人でもいたらアウトだったが・・・
さすが日本の未来を担う警察官! 彼さえいれば、日本の未来は明るいな!




さて、次回のリクエスト条件ですが、
高木刑事が苦戦する話があったら見てみたいですね。
まぁ、彼のような逸材が事件そのものに苦戦するなんて想像できないから、
プライベートでもいいから苦戦している姿があると、見ていてコッチまで癒されそうです。
是非、お願いします。


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本庁の刑事恋物語(コナン)(リクエスト)

ミステリアスな時代の幕開け。水曜0時は推理ショー!
今日の事件は白鳥登場。実は原作の出番は少ない。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!




私は東都銀行の杯戸支店長、増尾桂造。

妻の浪費癖がとにかくハンパない。

そこで計画したのは、友人に銀行強盗役を依頼して、私の店を襲ってもらう方法だ。

そりゃ行員と強盗犯がグルなんだから、成功率は100%。

 

とは限らない。何故ならそのパターン、米花公園北出張所でやってた。そん時は強盗犯役が死んでた。

まぁ、私は支店長。支店長なら大丈夫だろう。

 

大丈夫だった。

妻が人質になってしまったハプニングもあったが、友人は機転を利かせて他のお客さんにチェンジしたから問題なし。まぁ、その方を突き飛ばして怪我をさせてしまったが・・・そこだけは申し訳ない。

でも2億円も盗めた。

 

が、事件は急展開。

妻が気づいちゃった。

そりゃそうだ。マスク越しでも至近距離なんだから、雰囲気でバレるさ。

 

 

だから私は決意した。妻を口封じすると。

トリックは簡単。エアロバイクのタコ糸を巻き付けて、その先を本棚に取り付けておく。

あとは本棚にナイフを刺しておけば、エアロバイクをこぐだけで自動的に

毎日2時にエアロバイクをこぐ妻の日課を利用して、その時間に私はアリバイを作るだけ。

こうすれば警察にも、強盗犯が妻の口封じをしたと思わせることができる。

 

 

そして当日。

まずは外部からの侵入者を装うために、家の廊下の窓ガラスを丸く切っておく。

妻が5時に警視庁に行く約束をしているのを無視して、2時に警視庁へGO。

刑事の目の前で家に電話して、その最中に妻が勝手に死ねばトリックは完了。

いざ本番って時に、担当刑事が電話のモニターボタンをうっかり押してしまうハプニングが発生するも、アリバイはここで成立。

「高木君! 一応、機捜を待機させといて! 私は車をまわして来る!」

さすが日本の治安の最前線だ。悲鳴から秒で対応、仕事が早い。

こうして私は刑事2人(と、なぜかいる眼鏡のボウヤ)と一緒に家に直行。

刑事には2階に向かうように頼んで、私は殺人現場へGO。

倒れた本棚を起こして、妻の死体を床に倒しておくだけ

 

本棚を戻して、妻の死体を床に倒しておく・・だけ?

 

本棚:軽くない

本棚の本:軽くない

妻:軽くない

 

これを、刑事に目撃されたら一発アウト。音でバレてもアウト。

静かに、秒で片付けるのに必要なのは・・・

筋肉! スピード&パワーで覆すしかない! トリックって結局最後はフィジカル!

 

こうして私は、棚を戻して本を詰め込んで妻の死体を自然に床に寝せて、部屋の入り口に戻って悲鳴を上げるという一連のトリックの仕上げを短時間で成し遂げた。

ちょうど、小学生がふと割れた窓ガラスに気を取られている間くらいのわずかな時間でな!(※参照:アニメだと12秒)

 

 

その後、他の警官が続々と家に来て、眼鏡のボウヤが多少出しゃばりつつも、担当刑事主導の捜査が始まった。どうも金目当ての犯行の線で捜査が始まるようだ・・・

「いや、これはただの物取りの犯行じゃない。犯人のターゲットは最初からこの奥さんに絞られていた。僕ならこう見るがね」

なんか優秀そうなのがキター!

新しく現れた白鳥警部補・・・ではなく、本日付けで警部に昇進した、優秀そうな刑事が来てくれた! 強盗犯の口封じ説を推理してくれそうな優秀な刑事!

見た目だけなら、例えば『休暇で軽井沢の別荘に行ったけど暇だったからと現場に復帰して、次の日には燃えさかる城から美女と子供と財宝を助け出す』そのくらいのことができそう。

すっごく優秀そう~~っ!

「あら、いいわねキャリア組は出世が早くて。よかったら私もあなたのお嫁さん候補の中に入れといてくれる?」

キャリア~~ッ!

 

だが、1つ気がかりもあった。

この優秀そうな白鳥警部、声が少しポンコツっぽいのだ。

まぁ、ポンコツならポンコツで、私にとっては好都合なのだが・・・

 

 

その後、白鳥警部主導の捜査は進み、彼は『不審人物が本棚に隠れていて、妻が警察に電話していることに焦って殺害した』という、私の計画の上を行く推理を披露してくれた。

ポンコツだ~!

 

と思った矢先、もっとポンコツっぽくて、たまにポワーンとして捜査に身が入ってない高木刑事のほうが「お、おかしくありませんか?」と矛盾を指摘。

さらには警官が妻の部屋のアルバムから、友人と撮った写真の中から強盗犯役を頼んだ友人の顔にだけ丸を書いている衝撃的なブツを発見するハプニングも発生。

どうにか誤魔化したものの、心臓に悪いったら悪い。

 

そしてしばらくして、今度はボウヤまでもが死体に刺さっていたナイフの向きから推理の矛盾を指摘する始末。

それに釣られるように、刑事たちが推理の矛盾を疑い始める。

「ほらぁー警部さんもだんだんなんかちぐはぐな感じがしてきたでしょ? まるで最初からここには被害者以外誰もいなかった様な、妙な感じがね」

 

・・・子供、怖っ

 

さらにそこから咲き乱れ始める捜査の数々。

エアロバイクに繋がったタコ糸から、自動殺人トリックの謎が暴かれていき・・・

「一人だけいますよ。本棚を元通りに戻すことができ、このトリックを必要としている人物が。それは誰よりもこの部屋のレイアウトと被害者の習慣を把握し、誰よりも先にこの部屋に入った被害者の夫。増尾桂造さん、あなたしかいませんよね?」

一番警戒してなかった高木刑事からのつうこんの一撃が炸裂!

追撃にボウヤがトリックの総仕上げまで暴いていく。

 

最後に、私がポケットに隠したトリックの要・画鋲つきのテープも、見せる前から白鳥警部が当ててくる。

「論より証拠、本当にうまくいくかどうか実験してみましょうか。あなたのポケットの中にあるソレを本棚に取り付けて」

トンコツだ~!

 

この白鳥警部、常に強い者の味方なブタ野郎だ!

さっきまで自分だけ置いてけぼりだった推理に、いつの間にか便乗して、しかも立場を入れ替えて堂々と心変わりしてくる。

 

 

 

その後、ボウヤが提示したアルバムから、強盗犯役だった友人もバレて捕まってしまい。

 

謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか。
本庁の刑事恋物語

・・・こんなタイトルだったんですね。何コレ? ミステリー作品じゃないの?

敗因ですが、やっぱり銀行強盗の段階で、友人が妻を人質に取ってしまったことですね。
分かるでしょ。人質を選ぶ時に、どっかで顔見たことがあるなぁって。

いや、私も人の悪口言えないか。
そもそもアリバイ証人にするために、わざわざ刑事と一緒にいるとか意味不明すぎる。
もっと、こう・・あるだろ。マシな証人がさぁ。


えっと、というわけで次回の事件リクエストの条件ですが
・いい夫婦が出てきてほしい
私たちみたいに冷え切った夫婦じゃなくて、互いを思いやり、互いを助け合える夫婦。

と、思ったけど、それはそれで嫉妬してしまうからいやだな。
なので、条件を変更します。
・普段は仲の悪い夫婦
・だけど仲の良い夫婦

そんな夫婦の絆が試される事件をお願いします。
そうですね、それこそ・・・どちらかが殺人事件の容疑者になったりしたら、それをパートナーが無実の証明に奔走して、かなり愛が深まるんじゃないでしょうか?


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浪花の連続殺人事件(コナン)

愛は永久、謎は迷宮、水曜の夜はミステリー!
今日の事件は呪文で解決。幸運だけでは不可能犯罪!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!




まいど、僕は刑事の坂田祐介です。

刑事になった理由、父の死亡事故の真相を、逃走中の連続強盗犯・沼渕己一郎を追い詰めた時に知る事となりました。

 

「か、かんにんしてくれ稲葉教官! あれは悪フザケやったんや! 無理矢理酒飲まして、ブレーキオイル抜いた車に乗せて、 鬼教官のあんたがビビる顔を見たかっただけなんや!」

 

すっごいペラペラしゃべる。

 

なるほど真相は、免許合宿の生徒たちの悪行やったのか。

にしても、20年前の自動車学校の先生の名前がスッと出てくる記憶力に、その鬼教官を合宿中なのに酒を飲み交わして酔わせたコミュ力。そして、拳銃を向けられパニックになりながらも分かりやすい説明を語ることができるプレゼン力。

コイツ、やればできる子だったんやないか? 道を外れてしまったのが悔やまれますって。

 

 

まぁ、そんなことはどうでもええ。仇の6人に復讐や。

仇を殺しては、沼渕にご飯を届け、沼渕の下の世話をする日々。

そうこうしているうちに、大阪府警本部長・服部平蔵から重要な任が言い渡されましたわ。

 

『息子の服部平次が名探偵毛利小五郎を大阪に呼び大阪見物に招待するから、僕には“接待のためにパトカーの運転手”を任せる』と。

 

平和ボケしすぎやろ! 

 

パトカーの件は置いとくで。毛利探偵もツッコむやろうから。

僕、捜査一課。連続殺人がまだ続くかもしれん時に観光に人員割くって、悠長すぎん?

まぁこれはこれで好都合。この案内を利用して仇2人を殺したる!

 

 

さてここで重要になってくるんは、3人目の仇の野安をビルの屋上からパトカーの上に落っことす方法や。落っことすだけやったら、トリック使うだけでええ。

問題は、そのビルにどうやって毛利探偵の食べ歩き観光を誘導するか?っちゅうとこや。

一応、1階に美味しいお好み焼き屋があるけど、そんなん平次くんがオススメする店の方が優先されるに決まっとる。

 

 

 

 

・・・・ここで1つご報告があります。

先に僕が刑事やって言いましたけど、実はもう1つ正体があるんです。

 

そう、僕は魔法使いなんです。

 

 

急展開な告白ですいません。ですけど、本当なんですよ。

そう、僕は・・・

この呪文をかけられた者は『お好み焼き』が食べたくて食べたくて仕方なくなる。そんな呪文を使えるんです。

 

 

えっ? なんだかム〇ツヨシ似の魔法使いが使う、役に立たない呪文みたいや、って?

そんな変なホクロが似合う魔法使いやなんて。それはテレビ東京のモンですやん。

ここは大阪。そう、僕の事はハリーホ〇ッターとでも呼んでください! ほら、2人とも眼鏡かけてますやろ?

 

 

さて、そんなこんなで本番当日。

毛利探偵を乗せたパトカーで、うどん屋、タコ焼き屋と巡って、そろそろ例の死体落下ビルのお好み焼き屋に誘導せんとあかんタイミングや。

平次くんは顔が広くて、美味しい大阪料理の店をぎょうさん知っとる。お好み焼き屋やって、何処の店を推薦してきても不思議やない。なんせ平次くんの人脈たるや、下手したら“窃盗団の一員が経営しとるタコ焼き屋の主人”が知り合いやったとしても驚かんくらいや。

 

でも、事前に聞いとった平次くんのオススメ店には立ち寄り辛く、僕の目的店の方が近いこのタイミングで・・・今や!

 

 

ピラリロレロリレラ

なんか、ファミコンのドラクエん時みたいな音が鳴ったけど・・・まぁええ。

 

 

「お好み焼き? なんでタコ焼きの前にゆわんのや? オレが知ってるうまい店キタやぞ! 順番逆や! 御堂筋で行かれへん! 大阪は一方通行が多くて、場所によったらえろう遠回りになってまうんや!」

キター!!!!!

常識的に考えたら運も運、強運の持ち主やないと不可能なレベルの誘導を、確実性を高めて実現させたで!

 

 

っつう感じで、無事にお好み焼き屋に大阪見物御一行を送り込んだら次の準備や。

4人目の標的の岡崎澄江をビルに呼びつけます。

「今スグ心斎橋ニ来イヤ・・昔ノ仲間ニ会ワシタル」(現在13:08)

次は平次くんたちが店から出てくるタイミングで、このビルの2階の喫茶店の主人にも電話で「屋上に変な男がおる」と電話をかけて、死体落下を準備しておく。

もちろん、喫茶店の主人が怪しい電話にもちゃんと応じてくれる、人の良いオッチャンであることが大前提やけどな。

 

と、思っていた矢先に、まさかの岡崎が現場に現れた!

・・・早っ! まだ留守電にメッセージ入れて2分も経ってないのに!?

こっから先、僕は平次くんと一緒に行動するから、今の内に岡崎の家に2回目のメッセージを入れとかなあかん!

「見タカ? 次ハ、アンタガアナイナル番ヤ」(現在13:10)

これで岡崎は家で怯えて大人しゅうするやろ。

 

と、そうこうしとる内に平次くんたちが、なんか女の子が1人増やして戻ってきた。

全員パトカーに乗り込んだところで。死体がボンネットに無事落下! 

通行人にも当たらんと、死体も変に腐らんと、よう成功したもんや。

 

 

さぁ、探偵ハンのお仕事や。毛利探偵と平次くんが死体を調べに外に出てくる。

野次馬もぎょうさんおる。ここで平次くんが岡崎に気付いてくれれば、この後で岡崎の家に向かう口実に繋げられるっちゅうわけや。

 

 

・・・・・気付いてくれれば?

いやいや、気付いてくれるのも大事やけど、もう1つ条件がある。

それは岡崎が無事に家に帰るっちゅう条件や。

当たり前やけど、気付いた平次くんが警察署に連行して、岡崎に事情を話されてもうたらアウト。

やけど、平次くん運動神経ええからなぁ。岡崎を見つけたらすぐにとっ捕まえてしまいそう。

 

 

そこで2つ目の呪文や。

この呪文をかけられた者は、オバハンの気配に敏感になるけれど、そのオバハンを追いかけようとしても絶対に追いつかん。そういう呪いがかかる呪文や。

熟女好きにかけたら、好きなオバハンに触れたくても触れられないという生き地獄を味わわせることができるで!

 

ピラリロレロリレラ

 

「おいオバハン、ちょ、まてや! おいコラ」

平次くんが追いかけるのもむなしく、岡崎はさっさと車に乗って、バックミラーまで調節する余裕を見せながらスタコラサッサと逃げてくれた。

 

 

そしてその後、警察署に戻って捜査開始。

毛利さんたちは先に服部家に向かってもらうことになって、僕と平次くんで岡崎の家に向かうことに。

ところが、平次くんは「結構役に立つガキ」と、コナン君を連れてきよった。

まずいでコレ。

 

僕はこれから、マンションを通り過ぎるタイミングで電話をかけて、通り過ぎたことに平次くんが気付いて「走ったほうが早い」と車を飛び出してくれるように誘導する予定や。

で、今乗っとる車と同じ外見・内装のレンタカーに乗り換えるトリックを使う。

やけど、今この車にはコナンくんが乗っとる。つまり、乗り換えが封じられてしまっとるんや。

・・・マズイ。

 

 

と、ここで3つ目の呪文や。

この呪文をかけられた者は、近くにいるお兄ちゃんに懐いて、どこにでも一緒についていってしまう呪いにかけられるんや。

ちなみに、この呪文の効果は15歳以下の子供にしか通用せんで。

 

ピラリロレロリレラ

 

 

こうして、平次くんとコナンくんが仲良ぅ岡崎のマンションに向かってくれたら、僕は車を乗り捨てて岡崎に電話をかけて、公衆便所に逃げておくように指示する。

そこで岡崎をサクッと殺害して、何食わぬ顔で乗り換えレンタカーに載って平次くんと合流。これで僕のアリバイは確保されたっちゅうわけや。

 

あとは捜査の自然な流れで“運転免許証”から“自動車学校”の調査に平次くんを誘導して、『沼渕が4人を殺害して、郷司とも繋がっている』と推理させる。

 

さぁ、郷司の家に殴り込みや! というところで、最後の電話タイムや。

「一時間後、20年前ノ事件ノ事デ取リ引キシヨヤ。裏口開ケテ離レノ蔵デ、一人デマットケヤ」

と電話してから平次くんと合流。コナン君を毛利さんに返却したら、郷司の家に直行や。

「やだ! ボク平次兄ちゃんといっしょにいる!」

コナンくんが平次くんと離れとぉなくて駄々こねよった。

かわえぇなぁ。まだお兄ちゃん好きの呪文が効いとるみたいや。

 

 

そんな名残惜しいコナンくんとお別れして、郷司の家に着いたら、便所に行くと言って蔵に行き、郷司を待つだけ。

これで僕の復讐も終わるんやな・・・

 

 

「なんぼまっても郷司のオッサンは来ェへんで。坂田ハン。あんたやろ? 連続殺人の犯人は」

 

平次くんが来た!?

そこから咲き乱れる平次くんの華麗なる推理の数々。

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 浪花の連続殺人事件。

敗因といえば、普通に平次くんの探偵としての能力の高さやろうな。
腹に銃弾食らって生きとるとか。で、炎の中から僕をかかえて飛び出すとか。
バケモンやん。殺しても死なない、不死のバケモン。
さすがは劇場版最強の探偵やで。


あと余談ですけど・・・
沼渕、また逃げたんやって?



さて、次回のお知らせですが
作者が資格試験の勉強のため、9月頃までお休みとなります。



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鬼火島殺人事件(金田一)

本家・金田一少年の事件簿外伝犯人たちの事件簿の単行本完結記念。
資格試験勉強、1日くらい休んでもいいよね?ということで急遽、執筆しました。




俺は高校3年生の椎名真木男。

 

俺は最低だ。

 

森村と加藤のいじめに加担して、親友の海老沢を自殺未遂に追い込んでしまった。

海老沢は今も意識不明の重体。

取り返しのつかないことをしてしまった。2人に復讐をして、海老沢の仇を討ってから死んで詫びたい。

俺を含めて3人が“何者か”に殺されたことにして、死ぬことにした。

 

でも、そんな全てうまくいく

トリックが・・思いつかない・・・なんてことは“俺たち”には無い!

海老沢と一緒に考えた推理小説のトリックを使えば、それも可能なんだ!

 

そう、俺たちのトリックは、可能なんだ。

今まで、トリックが再現不可能だとかいって、変な魔法とか筋肉とか使った事件が事件簿に乱立していたかもしれないが。

俺たちのトリックは、公共放送で実証済み。

安心して実現できるのさ。

 

 

 

さぁ、じゃあ早速、実行していこうじゃないか。

舞台は不知火島(別名・鬼火島)でおこなわれる医大受験生用のセミナー。

夜に開催される恒例の肝試しで、まずは最初の標的・森村を殺す。

はい殺した。

え? アッサリしすぎだって? まぁ、殺害シーンなんてダラダラやっても倫理的にアウトだからね。

それよりも、ここからがトリックだよ。死体消失トリックさ。

 

用意するのは医療用の内視鏡。俺の父親は医者だから、手に入れるのは簡単。

そのモニター側を百日紅(さるすべり)の間という、受験生に泊まらせちゃ絶対駄目な名前の部屋のドアのカギ穴に取り付けて、カメラ側を隣の俺の部屋に繋がる扉のカギ穴に設置する。

こうすると、俺の部屋に森村の首吊り死体を置いておくだけで、まるで百日紅の間で森村が首吊っているように見える。

あとはタイミングを見て内視鏡を外してゴミ箱に捨てれば、森村の死体が消えたように見えるのさ。

 

「森村が、死んでる!」

「無い、何も無い! そんな馬鹿な」

 

計画通り。バイトの金田一とかいう奴や加藤といった肝試しメンバーが驚いてる。あとは森村の死体を隠して・・・

 

!?

 

なんと、俺の部屋の窓の外に、まさかの鬼火が出現していた。

「うわああああああ!」

そりゃ出るよリアル悲鳴。飛び出ちゃうよ俺の部屋から。

 

あ・・・これマズイ。

鬼火を確かめに、廊下にいる皆が俺の部屋に入っちゃうかも・・・

「何を言ってるんだ馬鹿馬鹿しい」

幸運にも、寮長の西川さんがこの騒ぎを高校生たちの怪談ごっこだと呆れた反応で流してくれた。

ちょっとグダグダだったけど、とりあえずは第1の殺人は成功だ。

 

 

次の日。比較的やることが多い。

・『午前零時の悪霊』の騒ぎを起こして、俺と加藤が殺されていてもおかしくないシチュエーションを作る。

・ハシゴを隠して、森村の死体を森に放置して、島の電話設備をぶっ壊しておく。

この2つ、まぁそこまで難しくない。

ただ怯えて叫ぶのも、リアルな俺のメンタルで十分。犯人に備わった圧倒的演技力というレベルを求められないから楽な仕事。

放置も破壊も、そこまで過密スケジュールじゃないから問題ない。

 

この2つを完了してから俺の自殺トリックを実行だ。

 

まず首に見せかけのロープを巻いて、これで首を吊って死んでいるように見せかける。

次に自分の体にロープを巻き付けて、礼拝堂の天井の梁にロープを投げて通す。

あとは誰も届かない高さまでロープをよじ登るだけ・・・

 

よじ登るだけ

 

よじ登・・・

よじ・・・・

 

サスケェ!

じゃなかった、海老沢ァ!

これ、たしかに実現可能なトリックだけど・・・

SASUKE出れるのが前提の実現可能。ミスターSASUKEこと山田勝己レベルの実現可能度合いだぞ!

 

マズイ。これは、心が折れる。どうしよう、駄目・・・かもしれない・・・

 

 

「頑張れ椎名!」

 

その時、俺を励ます声が、確かに俺の心に届いた。

まさか。これは昨日の鬼火になって現れた海老沢?

 

じゃなかった。オッサンだった。眼鏡のオッサンだった。

カッとなって人殺してそうで、迷った時はとりあえず殴ってそうで、トリックの産声に耳を澄ませていそうで、天使の輪っかを頭に浮かべていて、

俺と同じでトリックに肉体が追い付かないけれど、山田勝己がトリックを再現しちゃっていそうなオッサンだった。

 

「真っ直ぐ上に登れ。己を鼓舞しろ! 頑張れ椎名。頑張れ!」

オッサンのエールに推され、俺は頑張った。

俺は今までよくやってきた。俺はできるヤツだ。そして、今日も、これからも。折れていても! 俺がくじけることは、絶対に無い!

こうして、くじけることなくロープを登り切った俺は、17:00過ぎまでそのまま待機。

 

見つけてくれたのは金田一でした。

「これは自殺じゃありませんよ。殺人です。誰かが椎名さんを殺して、その後でロープを投げて梁にひっかけ、死体を引っ張り上げた。そうしておいてから、ハシゴで死体の所まで登って、ロープを結び付けたあと、ハシゴを片付けた。今のところ、それしか考えられない」

と、俺の用意したトリックのストーリー通りに推理してくれる。何こいつ、すごく都合良い。

 

その後、ハシゴが見つからないということで、俺の首吊り死体は放置のまま皆は寮に戻っていった。

俺はロープを伝って降りて、寮に隠しておいた麻酔ガスのボンベを持って、最後の仕事に向かう。

そう、最後の標的である加藤を殺すため・・・

 

なのに、その加藤が加藤の部屋に居ないんだよ!

はぁ?

そして探し回った挙句、加藤は金田一の部屋で寝ていた。金田一が床で、加藤がベッドで横になって。

 

あのさ、これヒロインのやることじゃないか?

怖いから一人じゃ寝れないって言って主人公の部屋に押しかけてベッドを奪うって。

加藤、お前どう頑張っても、せいぜいジャイ子だからな。

 

というツッコミを心に秘めたまま、俺はジャイ子を・・・じゃなく加藤をサクッと殺害。

あとは礼拝堂に戻って、灯油をかぶってライターで自殺するだけ・・・

「やめろ! もうやめろ、そんなことをして何になる? あんたのやったことは、俺がもう見抜いたよ」

 

金田一に阻止されました。

そしてそこから咲き乱れる金田一の華麗なる推理の数々。

俺と海老沢の小説に出てくる主人公の探偵くらい優秀な推理。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 鬼火島殺人事件。

今回の敗因は、川島って奴がイタズラで鬼火を俺の部屋の窓に垂らしていたってトコです。
いや、これさえ無ければ、俺の自殺に金田一は間に合わなかったんですよ。証拠不十分で、俺たちのトリックは完遂していたんですよ。
川島、とんだ伏兵がいたもんです。
聞けば川島、別の世界では風都とかいう町で探偵をしているそうなんです。
あと、大野さんっていうバイトも、聞いた感じだと大阪で死神してそうな声してるし。

今回、俺は探偵に囲まれすぎていた。それが真の敗因なのかもしれないですね。


さて、次回は作者の試験が終わってからになります。
その際ですが、週1の連載がかなりキツくなってきたため、不定期連載に戻ります。

シレッとタイトルが変更になったりする変な本作ですが、これからも事件簿をよろしくお願いします。


2020/9/6
試験終了。疲れました。合格発表までまだしばらくですが、連載再開です。


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幽霊屋敷の真実(コナン)

恋はマジック、謎にアタック、水曜0時は事件簿にクリック!
今日の事件は科学でホラー。作者のブームはドクターストーン。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



先に言っておこう。殺人はもう済ませた。

 

俺は番町菊次。

4年前に金銭トラブルの末に公園で女を殺し、通行人に目撃された共犯の男を公園の目の前の廃墟にかくまって、俺はその廃墟の隣のアパートに住んでいる。

 

この辺りで、気付く人間は気付くだろう。日本警察のポンコツの血に。

現場に免許証が落ちて、焼死体から歯型も検出されているから、女の身元は判明している。金銭トラブルの情報も、ちょっと捜査すれば分かるはず。目撃者がいたから、共犯の男の似顔絵も出回っている。

 

なら、俺にたどり着くだろ日本警察。

現場から徒歩1分の圏内に2人ともいる。4年も。

ポンのコツの血が、働きすぎているんだよこの米花町の治安にはなぁ!

まぁ来ないなら来ないで、犯人的にはOKだけどな。

 

 

それよか、俺は警察よりアパートの住人のほうが怖い。

夜、廃墟の中で共犯の男が吸ったタバコの火や携帯テレビの光を「ヒトダマ」として目撃しちまったんだ。

このままじゃ、いつか誰かが廃墟の男の存在に気付いてしまう。

 

 

 

ここで思った人も多いだろう。タバコくらい我慢しろよ、と。

 

馬鹿を言っちゃいけない。

言っておこう。俺はこの男を尊敬している。

 

廃墟暮らしには、風呂無し、シャワー無し、トイレ無し、電気無し、ガス無し、水道無し

屋根無し、窓ガラス無し、床はコンクリート。

こんな過酷すぎる環境で4年も、彼は耐えているんだ。

東京の夏の暑さ、豪雨、冬の寒さにも抗い続け、一切外に出ることなく。

そんな生活の中で、楽しみの1つや2つ、我慢せずに羽を伸ばしたっていいじゃないか!

それが人間ってもんだろ! (そもそも殺しはダメとかは、今は言わないでくれ)

 

だから俺は、おんぼろアパートでも暮らしていけるんだ。

共同トイレが臭くて暗くて汚くても。風呂は無くても。

屋根がある。窓がある。それだけで彼より数倍もマシな生活なんだ。

 

 

 

ということで、そんな彼の苦労に報いるためにも、俺は脅威であるアパート2階の住民を一掃することを決意した。

もちろん、全員を殺すって意味じゃない。人の道を外れない方法で、全員に出て行ってもらうんだ。

そのために必要なもの、それは。

 

 

ホラーだ。

心霊現象を起こして、住民が恐怖のあまり逃げていくように仕向ける。

 

そう提案すると、共犯の男は感心したようにこう言った。

「へぇ。幽霊って呼べるんだな」

そうじゃない。いや、呼んでやるよ。

科学の力でな!

 

 

あと1つ、先に注意点を言っておこう。

今回は俺たち犯人の「やることが多い」とか「トリックってフィジカル」と悩み足掻く様を紹介するつもりは無い。

むしろ逆。

これを真似すれば誰でもトリックができるんだという、おもしろ科学教室のような回だ。

夏休みの宿題にしたり、実際にやってみたり。好きに活用してくれ。

 

 

まずは第1の矢。『血に染まるトイレ』

 

便器に垂らしたアンモニアに、フェノールフタレイン溶液をぶっかける。

小学校ん時に理科の実験で赤い水作っただろ? あの要領だ。

「つまり、どういうことだってばよ?」

フェノールフタレインをタンクに水に混ぜておけば、小便のあとで水を流した時に2つの液が混ざって赤く染まる。まるで血の色みたいに。

完全に流し終わるころにはアンモニアが全て流れ出て証拠も残らない。

「なるほど、それはホラーだな」

 

じゃあ、その作り方の説明だ。こっちが本番な。

フェノールフタレイン溶液の作り方は簡単だ。

フェノールフタレインの白い粉1gを、90mlのエタノールに溶かして10mlの水を加える。

あとは気密性の高い容器に移して、使うって時まで密閉状態にして保管しておく。

廃棄するときは大量の水で希釈してから、だ。

「そんなもの作るヤツいるのか?」

たしかに溶液だけ買ったほうが早いが。まぁオマケみたいなもんだ。

 

続いて、アンモニアを作る。

「いやそれ要るか? 小便に含まれてんだろ?」

いいや、尿に含まれるアンモニアはごく少量だ。

それよか、尿素に強アルカリの、水酸化ナトリウムでも何でも混ぜて蒸留したほうが早い。

「買ったほうが早いだろ」

 

 

 

続いて第2の矢。『窓に浮かぶ幽霊』

 

市販のフェロモントラップを分解して、その中のフェロモン剤を使えばいい。

もし自作するなら、汚れ落としのスプレーに含まれるヘキサンを有機溶媒にして、メスの蛾の尻にある性フェロモン腺を浸してやれば、簡単にフェロモンが抽出できる。

ただし、ヘキサンとかは名前の通り、メタンやプロパンの仲間だから、燃えやすくて危ない。225度程度でも自然発火するから気を付けてくれ。

「いや、自作するヤツなんかいないだろ」

あとはそのフェロモン剤を網戸に塗るだけ。人型に塗って、目や口の形は黒い紙でも貼りつけてやれば・・・

オスの蛾が集合した人型の完成。ゆらゆら揺れるから、夜の暗い中で見れば完璧に幽霊に見えるって寸法だ。

 

 

 

そして第3の矢。『不気味な女の幻覚』

 

まず、趣味で集めたホラーフィギュアを使ってビデオ撮影する。特撮だな。

「おぉ、これなら俺にもできそうだ」

そして、そのビデオをアパートの共有アンテナ経由でテレビの端子から他の部屋のテレビの同じ端子のチャンネルでも映るようにする。

あとはクロロホルムで標的を寝ボケさせて、マルチリモコンでその部屋のテレビを操作すれば、ビデオの映像も幻覚に見えるワケだ。

「なるほど、これは俺も興味があるぞ。自作するんだろ? クロロホルム」

いいや、そこは流石に市販のクロロホルムを使ったほうが早い。

「いやいや、クロロホルムが市販?」

? 普通だろ? ここは米花町だぞ?

 

 

 

ということで、いざホラードッキリ炸裂。

3本の矢で追い出せたのは住民3人。

1人はヒトダマにビビッて逃げた。

 

残るのは3人。

1階で俺と同じ趣味の大学生が1人。

1人は「科学で説明ができないものは信じない」と言い張る大学院生。(科学で説明? できるんだよなぁ)

そして、2階の爺さん。「老い先短いから怖いものなんて無い」だとよ。

 

 

「まぁ、このくらいでいいんじゃないか? ほとぼりが冷めるまで放置で」

共犯の男の言う通り、これ以上は幽霊騒ぎも不要だろう。

 

 

と思っていた矢先。幽霊騒ぎの正体を暴きに来たという変な親子連れが現れた。

災難っていうのは忘れた頃にやってくる。ほんと、それだな。

仕方ない。心霊現象を作りますか。

 

クロロホルムと、アンモニアと、フェノールフタレイン溶液と、フェロモン剤を買って・・・

これるわけがないだろ。こんなに急に。

 

 

な、科学を知らないとこういう時に困るだろ?

 

 

水酸化ナトリウム、フェノールフタレイン、エタノール、メスの蛾、ヘキサンだったら、すぐに用意できるだろ?

原理さえ分かっていれば、あとはクロロホルムを買ってくるだけで・・・

 

 

 

 

「キャアアアア」

「わぁああああ」

「何なの、何なのよコレ!」

 

ハイ、幽霊三段活用の出来上がり。

最後の網戸幽霊だけは俺が自分の手で網戸をバン! とやって、ついでに部屋のブラックライトを作動させておけば証拠の回収も楽々。

 

 

こうして、怯えきった家族は帰っていくこととなった・・・

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

 

ん? 帰ったはずの眼鏡坊主が部屋の前に立っていた。

「トイレが呪われちゃったんだ」

子供だからな、意味の分からない事を・・・・

 

 

 

うわぁあああああああああ!!!!!

 

血に染まる便器、呪われたテレビ、窓際の幽霊。

俺の用意した幽霊三段活用が、今俺の目の前で発生してしまった。

「一体誰が・・・誰がこんなことを」

 

すると、1階のトイレのドアがギィィィと開き、父親が姿を現した。

「幽霊騒動を引き起こしたのは、貴方だ」

と、まるで探偵みたいに俺を名指しした。

 

 

ん? 探偵?

 

 

 

父親は、有名な名探偵・毛利小五郎だった。

 

そこから咲き乱れる毛利小五郎の名推理。

幽霊騒動の正体を全て暴いてみせた。

だけに留まらず、4年前の事件のことも、廃墟に住む共犯の男の事も暴き、ついでにパトカーまで呼ばれてしまっていた。

 

 

くっ、こうなったら逃げるしかねぇ!

 

「蘭、その男を逃がすな!」

俺の逃走した先、アパートの玄関には、幽霊を一番怖がっていた女子高生が立っていた。

 

 

こういう時こそ科学だ。

科学とは経験。

この娘は幽霊を怖がる。

俺は今、ドクロのついた服を着ている。

導かれる答えはただ1つ!

 

 

「退けぇ! 呪い殺すぞ!」

服をまくり上げて頭に被り、ドクロのお化けに扮して驚かせば、女子高生は一目散に逃げていく・・・・

 

 

 

はずだった。

 

 

 

「何それ? お化けじゃないなら、全然怖くないのよ」

 

その言葉が、俺の意識の中で最後まで残っていた。

直後、女子高生は反転しながら身をひるがえし、俺は何処からともなく現れた拳大の鈍器に殴られ・・

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか?
幽霊屋敷の真実。


敗因は、やはり科学のチカラってTueeeeeeと過信しすぎた事だな。
結局は物理の力が最強なんだ。
フィジカルに勝るものは無し。



さて、作者の試験が終わって久しぶりの投稿になるわけだが・・・
曰く、問題がめちゃくちゃ難しかったそうだ。
もしかしたら不合格になって、次の試験のために急に勉強を始めるかもしれない。
投稿が不定期になるだろうが、これからも事件と犯人をよろしく頼む。


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薔薇十字館殺人事件【前編】(金田一)

私の名前は美咲ジゼル。

2年前、薔薇関係の仕事をしている5人の男女に母を焼き殺された。

 

なんて情報を言われても誰もピンとこないでしょう?

だから言ってあげるわ。

 

私は高遠遥一の、生き別れの異母妹よ。

 

そうだと判明したのは、5人の仇のうちの1人・皇翔をうっかり殺した日に偶然、公園で出会ったピエロが、この世に2株しか存在せず、異母兄だけが所有している薔薇・蜉蝣を持っていたから。

そのピエロが高遠遥一だったというわけ。

 

ええ。おかげで覚悟が決まったわ。

そりゃそうでしょ? 善良な一市民として生きてきたのに人を殺してしまってショックショックな日に、異母兄ちゃんが連続殺人鬼だって知ったら・・・

私にもデキる! って思えるでしょ?

 

 

でもね、覚悟ができたはいいけれど、問題は残ってるの。

残りの仇4人が、誰なのか分からないの。

お母さんがダイイングメッセージで「犯人たちの名前を示す薔薇」を残してくれていたわ。

火事の現場に来ていた薔薇関係の人間のリストはある。

その中で、名前に薔薇の種類が入っているのは、小金井“陸”、祭沢“一心”、禅田“みるく”、白樹“紅音”、佐久羅“京”、毛利“御門”、冬野“八重姫”の7人。

 

青薔薇の完成披露会を餌にすればホイホイ来るはず。

母が管理していた薔薇十字館に呼びつけて、それとなく母の名前を連想させて脅して4人を炙り出して、4人全員を殺すのよ。

そしてその犯人役を高遠に押し付ける。彼もこの披露会に招待しておいてね。

 

 

そう。これはいつもの高遠塾・高遠被害者の会の逆。

高遠を犠牲者にして殺人を達成させる。それが私!

 

 

 

 

 

 

こうして私は4人を炙り出す方法を考え、館の不自然な構造を利用したトリックを用意して、高遠を呼ぶ手紙を出した。

「もし来なかったら、異母妹を殺す」って手紙でね。

 

 

ええ、分かってる。

この考え方・・・結構ムリがある。

当てずっぽなところがあるわ。

 

まずは大前提、母のダイイングメッセージの解釈が合ってるかどうか。

ぶっちゃけ皇翔から人数の正答だけは教えてもらえたけど、名前との合致までは教えてもらっていない。

偶然、彼の名前だけ母が死に際に握っていた薔薇と一緒ってこともありえる話。

まぁ、駄目なら駄目で誰も私の仕掛けにリアクションせずに終わるだけ。

ただの招待者不明のお食事会になるだけ。

 

 

2つ目に、高遠が本当に異母兄かどうか。

兄妹の根拠になる薔薇だって、単純に所有権が譲渡されただけの可能性もあるわ。

もし異母兄でも何でもなければ「何この急な異母妹設定w 両親が再婚して義理の妹ができた展開のほうが唆るわな」って無視されて終わるだけ。

そうじゃなくても冷酷な殺人鬼だから、異母妹がどうなろうが関係ない。罠っぽい手紙にホイホイされない。

って展開も無きにしも非ずよ。

まぁそれならそれで、バレそうになったら屋敷もろとも自爆して終わらせればいいだけ。

仇以外も巻き沿いになるかもしれないけど・・・仕方ないわ。

 

 

そして3つ目・・・ある意味これが最大の問題。

私が青薔薇完成披露会に招待される理由付けよ。

他の7人は薔薇関係の仕事をしているから、招待されても自然な理由がある。

じゃあ私は?

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「青薔薇を詠んでみたくなった」

花詠みの歌人設定で行きましょう。

 

ええ、かなり強引なのは分かってるわ。

だけど実は私、お母さんから褒められるくらいの詩の才能があるの。

ボロを出さない自信はある。

即興で詩を詠むことを求められる場面がくるかもしれない・・・不安だけど、やってみせるわ!

 

 

 

 

大丈夫。私の計画は完璧。

高遠がトリックを解き明かす不安もあるけど、もしその気配があったら殺人鬼ネタバレして皆で拘束してやれば問題なし。

 

 

万が一、他に高遠並みの推理力がある奴でも来なければ・・・ね。

 

 

 

 

 

 

こうして、不安を残しつつ迎えた運命の日。

 

仇候補の7人は・・・全員集まってくれた。

普通、Rosenkreuzなんて怪しい宛名に素直に応じようなんて思わないのに。

そんなに青薔薇が欲しいの? 欲が勝っちゃった? ありがとう!

 

そして、高遠も来てくれた!

しかも変装もしないで、素顔丸出しで!

助かるわ。正直、他の参加者の1人を勝手に殺して、その人と入れ替わって来られたらどうしようかと思ってたもの。

まぁ1つ気がかりなのは、変な高校生を2人連れてきたってところくらいね。

 

「ご紹介しますよ。彼は金田一一君。かの名探偵、金田一耕助のお孫さんです。そして隣のお嬢さんは金田一君の助手的な存在、七瀬美雪さん」

「警察官顔負けの活躍をしている高校生探偵コンビに一緒に来てもらったというわけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウソでしょ?

 

 

 

探偵・・・来たの?

しかも殺人鬼が探偵を呼ぶとか・・・アリ?

 



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薔薇十字館殺人事件【中編】(金田一)

母の仇候補6人(うち正解が4人)と異母兄・高遠を館に招き入れることに成功した私。

だけどまさかの高校生探偵が参加していて失敗の予感。

それでも私はくじけない。だって私は高遠の妹、折り紙付きの殺人鬼の血族なのだから!

 

さて、今回の参加者と顔合わせも終わったところで、外に出るためのアーチを封鎖しておいたわ。

仇の4人を炙り出すために、先に殺してブリザーブドしておいた皇の死体を夕食の場で披露するんだけど、その後で「殺人鬼のいる館なんかにいられるか! 俺は帰らせてもらう」って仇が帰っちゃわないように、先手を打つのためよ!

 

 

(※お気づきだろうか?

彼女はこのトリックをあっさりと成し遂げたのだが、この時の所要時間は「まもなく夕食ですので」と言われてから食堂に顔を出すまでの程度の短時間。

その間に10人の人間が自由行動する館から誰にも見られずに外に出て、アーチに薔薇の壁を張る。

大の大人が必死になって椅子で突き崩せぬほどの大量の茨を素早く設置し、毒を塗り、何食わぬ顔で食堂に向かう。

これほどの高難度の作業を平然と完遂させるとは、さすが高遠の血族だ)

 

 

さて、夕食の席で薔薇薔薇の皇死体をテーブルに登場させたわ。

このマジックを高遠が種明かしをしてくれた頃合いを見て、仇の炙り出し作業に入るわ。

母の苗字と名前の入った薔薇『美咲と漣花』で接ぎ花した薔薇を、詩を詠みながら6人に見せつける。

皇の死体とこの薔薇を見てビビった顔を見せたヤツ。そいつが仇。

願わくば、この仇ホイホイに4人とも引っ掛かって!

 

「やめろー!」

釣れたのは小金井だけでした。

まぁいいわ。小金井は殺せたから、私は淡々と残る仇を炙り出すだけよ。

 

大丈夫。仇ホイホイの第2段は、むしろコッチが本命よ。

その名も、薔薇風呂ホイホイ。

仇だったら絶対に入りたくなくなる『美咲と漣花』を浮かべたお風呂を男湯と女湯に用意。

館の客1人1人に別々の薔薇がプリントされたタオルを配布しておいたから『風呂場のタオル置き場に濡れてないタオルを入れた人』イコール『仇』ということになるわ。

まぁ、「私は薔薇のお風呂には入りたくないの」とか「私は自然乾燥が好きなの」って人がいたら、仇を間違えちゃうけど・・・

 

そんな心配は無かったわ。みんなお風呂でタオル使う派だったみたい!

お風呂でタオルを使わなかったのは祭沢、禅田、冬野。この3人が残る仇3人で確定ね。

 

良かった。

お母さんのダイイングメッセージ、ちゃんと『薔薇の名前』の解釈で合ってた。

2人殺しておいていまさらだけど、答え合わせ不十分のまんまで殺人って、メンタルに毒ね。

 

なんて愚痴ってる暇は無いわ。

皆が寝ている間に次の標的の小金井を殺して、密室に閉じ込めて自殺にみせかけるのよ。

 

さて、そのトリックだけど比較的シンプル。

部屋の唯一の出入り口の内開き扉に薔薇を敷き詰めて、出入りするには薔薇の配置が絶対に崩れるようにする。

その方法は、絨毯が敷かれた円形の応接室の“ど真ん中”に杭を打って、それを軸に絨毯を引っ張って回すだけ。

絨毯に紐を通して扉の隙間から引っ張れば、“楽に”ターンテーブルの要領で絨毯ごと死体と薔薇の位置を扉の前に持っていくことができるの。

 

 

(※お気づきだろうか?

このトリックは、“非常に正確に”部屋の“ちょうど真ん中”に杭を打つ必要がある。

ど真ん中でなければ円の回転がズレて、絨毯の位置が不自然となってしまうためだ。

さらには死体という重量物の置かれた絨毯を引っ張れば、ヨレができてしまうのは確実。

つまり回転させる前から、絨毯にヨレを作っておき、そもそも薔薇も回転後のヨレを計算に入れた位置に配置しておく必要がある。

当然、死体の重さや体格によって、ヨレの具合も杭の打ちにくさも大きく異なる。

このトリックをあらかじめ何回も練習しておけばいいかもしれないが、殺すべき標的が不明であった以上、全てぶっつけ本番。

これほどの超高難度の作業を一発で成功させるとは、さすが高遠の血族だ)

 

 

そして翌朝。

小金井の死体を見て皆がビビりまくってる中、やっぱり冷静なのは我らがお兄ちゃんと・・・例の高校生探偵、金田一くんと七瀬さん。

いやね。ここまで来るとこの高校生コンビに正直ドン引きよ。

だってなんだか、殺人鬼の高遠お兄ちゃんとめちゃくちゃ息が合ってる感じで捜査を始めているんですもの。

小金井の死体のある部屋に侵入して現場を荒らしてるくらいだし。

これ後で警察に叱られるレベルの違法行為・・・

 

「どなたですか!?」

ヤバイ。高遠と金田一くんに見つかっちゃったわ。

「こそこそ何を覗いていたんですか?」

こそこそ捜査してる子に言われたくないんですけど・・・でも、理由を言わなきゃ・・・言わなきゃ・・・

 

よし、詠みたくなったことにしましょう。

「ゴルゴダの丘に咲く青い薔薇よ。何人も抜け出せないその檻の中に咲き誇る瑠璃色の不可能よ。願わくば教えておくれ。薔薇十字の魔王。黒く塗られし薔薇に込めたる憎しみを。温もりの泉に斑模様の薔薇を浮かべ彼を癒しながら、青薔薇と枯れた白薔薇をもって、その命を奪った矛盾を」

 

どう?

アドリブでここまで完成度の高い詩を詠めるのよ私。

詩を詠みに来たって設定。正解だったわね。

 

「それにしても窓に穴を開けて中に入るなんてまるで泥棒ね! あなた達は一体何なんですか?」

さぁお兄ちゃん、お返しよ。

あなたたちはどういう設定で、このアドリブに答えてくれるのかしら?

 

「平行線ですよ。決して交わることのない平行線。それが私と金田一君です」

 

才能ナシ。

 

お兄ちゃん、あなた殺人鬼としては“才能アリ”どころか“特待生”いえ、“名人”・・・“永世名人”かもしれない。

でも、詩の才能はダメダメね。30点よ。

 

 

 

さて、そんな才能ナシのお兄ちゃんが「これは次のターゲットを油断させるため、自殺にみせかけた殺人事件。用心してください」ってネタバレぶちかましてくれたけど、そんなもの私には関係なし。

次の標的の禅田を殺すわ。

 

まず、禅田や他の客に手紙を送って、それぞれに指定の時間に指定の場所に来てもらうようにする。

“離れ”で禅田を殺してから、南端の部屋に移動して悲鳴をあげるの。

この館って特殊すぎる構造でね。地下を移動しないと入れない部屋があったりして、この2つの部屋が一緒の部屋に見えちゃう構造になってるの。

禅田の着物の片袖を引きちぎって、窓の隙間から外にいる人に見せれば、確実に殺人現場を錯覚させることができる。

ついでに、離れにつながる階段の前にお兄ちゃんを呼びつけて、私は南端の部屋で悲鳴を上げれば、禅田殺しの罪をお兄ちゃんに着せることができるってわけ。

はい。イリュージョン。

 

ってことで、悲鳴をあげさせていただきますわ。

 

 

 

 

「(ジゼル)きゃああああ」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・ん?

何か今、私の悲鳴だってバレたような気が・・・

 

「開かずの間からだ! 大丈夫か? 返事してくれ!」

「今の柄、禅田さんの着物だわ」

大丈夫だったみたい。外にいた金田一君と七瀬さんはしっかり騙されて、禅田を救いに走ってくれたわ。

あとは簡単。禅田の袖を私のスカートの中に隠して、何食わぬ顔で2人を追いかけるだけ。

他の客の配置も決まっているから、自動的にお兄ちゃんが禅田殺しの犯人として疑われるわ。

 

 

 

 

 

いやだ。ちょっとお肌に良くないわこんな退屈なトリック。

こんなに簡単でいいのかしら?

ちゃんとお兄ちゃんを、犯人扱いできるのかしら?



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薔薇十字館殺人事件【後編】(金田一)

禅田を殺して、高遠に罪を着せるトリックは完了したわ。

禅田に成りすました私の悲鳴を聞いて、金田一くんたちが館を走ってくれている。

その騒ぎを聞きつけた皆と一緒に私も合流して・・・

行きついた先にいるのは我らがお兄ちゃん!

そしてその先にあるのは、もちろん禅田の死体!

 

 

「禅田さんを殺すことができたのは、遠山さん。あんたしかいないじゃない」

仇の冬野のナイス指摘が入ってくれたわ。

探偵を差し置いて、皆の証言から状況を整理して、見事にお兄ちゃん犯人説を推理してくれた。

ファインプレーよ冬野。アナタこれで『私の手で犯人捕まえたからもう安心』って油断しまくってくれるでしょ。ホント、ナイス冬野。

 

じゃあ後は私の後押しだけね。

「赤き薔薇はかく語りき。悲しきはニオベの娘よ。そなたを射止めし銀の矢を放ちたる者はオリンポスの神にあらず。血塗られし地獄の死者。あなたは高遠遙一さんですね?」

言っちゃった。

 

そこから咲き乱れる殺人鬼コールのフィーバー。

佐久羅が主導して皆で、お兄ちゃんを“中からも鍵を使わないと開けられない”遊戯室に閉じ込めたわ。

中から鍵を・・・使わないと開けられない・・遊戯室? どういう必要性?

 

まぁいいわ。これですべて私の計画通り。

あとは油断しきった冬野を殺せば、お母さんの仇を全て討つことができる。

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリ!

 

 

 

その時、館の防災ベルがけたたましく鳴り始めたわ。

「いやぁあ~~! 助けてっ! お母さん! お母さん!」

大火事でお母さんを失った私は当然、大パニック。

他の客もみんな同じ火事に巻き込まれたメンバーばかりだから、もちろん全員大パニック。

 

だったけど・・・実はこのベルの正体は、金田一くんがキッチンでフライパンを焦がして煙を上げてしまったせいだったの。

ほんとっ! 人騒がせすぎ!

「でも、あんなちょっとの煙と警報で皆さんすごい過剰反応でしたね。ひょっとして皆さん火事の経験があるとか?」

ギクッ

「これは俺の直感だけど。今ここにいる人たちって全員ホテル火災に遭ったりしてませんか?」

 

人のトラウマをえぐるな!

ただでさえアナタのウッカリで心臓バクバクなのに、そこにきて直感のひとことが確信を突きすぎよ。

迂闊だったわ。高校生探偵だからって油断してたけど、コイツは天然でメンタルを削ってくる。

早く冬野を殺さないと、先に私のメンタルが殺されそう。

 

 

 

 

だけど・・・そんな最中に第2の矢。来たわ。

 

その名も=高遠脱走=

 

いつの間にかお兄ちゃん、遊戯室の鍵を開けて脱出しちゃってたの。

厄介すぎる。お兄ちゃんの間の悪さ。

妹がまだ人を殺そうとしてる途中でしょうが!

 

 

しかもこのタイミングでピリピリし始めたから、冬野の警戒心がMAX。

うっかり詩を詠もうものなら怒鳴られるくらいのイライラ冬野。

 

だけどチャンスも到来。

金田一くんの提案で、トイレに行く時なんかに2人以上のペアを作って行動しようって流れになったわ。

 

そしてすぐに到来。冬野と2人きりのチャンス!

今が絶好の殺人チャンスよ。

この薔薇で、冬野を殺す。

・・・・えっ? 薔薇が凶器でいいのかって?

当たり前でしょ。薔薇は武器よ。タキシード仮面だって使ってるじゃない。

毒を塗っておけば、一掻きしただけであの世行き・・・

 

 

 

タン!

 

 

 

「そんな物を振り回しては危ないですよ。毒のついた薔薇ですか?」

お、お兄ちゃん!?

まさかの高遠が薔薇を投げナイフで防いで、冬野を助けてしまったわ。

逆タキシード仮面状態で。

「私だけではありません。皆さん勢ぞろいしていますよ。あなたの罪を暴くためにね」

「そういう事さローゼンクロイツ」

 

まさかの金田一君の仕掛けた罠でした。

冬野を囮に、私の最後の殺人チャンスをお膳立てして、現行犯で取り押さえるための作戦。

うん。控えめに言って鬼。

私はともかく、黙って冬野に命張らせるって。殺人鬼の私から見ても鬼。

 

「巧妙なトリックを駆使して4人もの人間を殺害した恐るべき連続殺人者。ローゼンクロイツはこの中にいる!」

 

・・・・・・・・?

金田一くん、何で今それ言った? 

もうほぼほぼ、私が犯人だって特定してなかったっけ?

 

「もう言い逃れできないぜ月読さん。冬野さんを殺そうと毒の塗られた薔薇を振り上げたところを現行犯で押さえられちまったんだからな!」

そう。そこ。本題はそこよ。

でもまだ私にも反論の余地があるのよ。

「私が薔薇を振り上げたのは、放たれた殺人鬼に命を狙われる恐怖を薔薇に込めて詠んでみたくなったからですわ」

そう。私の最強の武器。

困ったら、詩にして詠んでみたくなったことにする! 

 

さぁ、これでも私を追い詰められるかしら? 金田一君!

 

 

 

だけど・・・そこから咲き乱れる金田一君の華麗な推理の数々。

私の渾身のトリックが全て解き明かされてしまった。

 

けどね。残念ね金田一君。

あなたの推理は、全てのトリックが「誰でも再現可能だった」という事実にたどり着くので限界。

私が犯人だという証拠は無いのよ!

 

「ところが、あんたはこの時ちょっとしたミスを犯した」

 

 

 

 

・・・え?

 

 

 

金田一君が言うには、私は3回くらい不自然な発言をしていたみたい。

1つは禅田を殺した後で皆が集まった時。話しかける相手を間違えたこと。

2つめ3つめは・・・・私が詠んだ詩に、犯人しか知りえない情報が入っていたことだった。

風呂の薔薇のこと、禅田の袖を千切ったことを・・・詩に込めて詠んでしまったことが決定的証拠に。

 

うわ~~~~、やっちまった感がハンパないわ。

お兄ちゃんに詩の才能ナシって査定しておいて、私自身が詩で足元を掬われるとか。

穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。

 

 

 

 

「きゃああああ!」

「失礼」

 

 

 

更に恥の上塗り。

物的証拠の禅田の着物の袖を隠しておいたスカートの中に、お兄ちゃんが手を突っ込んできたのよ。

痴漢アカン。

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 薔薇十字館殺人事件。

敗因はもちろん、私が詩の才能ナシだったってことよ。
最悪、物的証拠の着物の袖は、誰かが私のスカートの中に忍ばせていたって言い逃れができたかもしれないけど。
今回の私を犯人だって特定できる証拠、全部私の失言なのよね。
お母さん。あなたの査定、大間違いだったわ。


もし次に犯人になる人がいたら、これだけは教訓にしてほしいわ。
『下手に自分の得意分野で勝負しないこと』よ。
正確には、自分の得意分野だと思っていること。ね。



ちなみにだけど今回、高遠お兄ちゃんは金田一君と契約していて
『異母妹(私)が生きて館を出られたら、警察に出頭する』
って約束していたみたいなの。

ええ。誰でも分かるでしょ?
お兄ちゃん、秒で脱獄したの。
約束守る気ゼロよ。


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―っていうか殺人事件(コナン)

ピアノのリズムで花が舞う、向き合う二人はミステリー。
今日の事件は死神不在。きっと事件は大成功。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



俺は大学生の嘉納。

大学には裏口入学で入ったリア充さ。

 

だが、裏口入学の件が同級生の見山にバレちまったんだ。

「っていうか、っていうか」が口癖の五月蠅い奴さ。ウザいだろ?

よし動機十分だ。やろうか。

 

 

仲間との旅行先のホテルで殺す。

後ろから殴って殺す。シンプルでいいだろ?

 

しかも今回は秘策があるのさ。いや、偶然の産物なんだけどな。

 

今回、死神が不在なんだよ。

そうさ死神がいないところで殺人事件を起こすのさ。もうこれ勝ち確だろ?

 

 

じゃあやるぜ!

ビーチで水着ギャルをナンパしてご満悦で帰って来た見山の頭を後ろからガンッ!

はい終わり。

 

えっ? トリックを使わないのかって?

いや、シンプルイズベストだろ。下手なトリックは使うだけボロが出るもんさ。

 

 

 

と、思っていた時期が俺にもありました。

ダイイングメッセージが、窓ガラスに残されてたんだよ。

「かのう」って。

 

メッセージに気付くのは遅れたが、窓ガラスを割って、ちゃんと血の付いた破片は回収したから問題なし。

あとは自然な流れで「約束の時間になっても現れない」って理由作って、他の仲間と3人で部屋に行って死体を発見。

警察が来たが、外部犯の仕業だと疑ってくれた。

 

俺すごくね? 証拠を残さず完全犯罪よ。

あとはテキトーに事情聴取だけ受ければ終わりさ。

 

 

と、思っていた時期が俺にもありました。

アイツがビーチでナンパしてたギャル2人が、ダイイングメッセージの書かれた窓の写真を携帯で撮ってたって騒いでんだよ。

マジか~。証拠、残っちまってたぁ~。

 

と思ったけども、運は俺の味方。

どうやらギャルたちは携帯をホテルに忘れてきたらしい。

取りに帰ったところをひったくりすれば問題解決さ。

 

そして見事ひったくり成功。携帯ゲットさ。

 

 

そしたら、まさかの写メ送信済み事案。

ダイイングメッセージが写ったギャルのセクシーショットが、『新一』とかいう奴の携帯に送信されてたんだよ。

証拠、残っちまってたぁ~。

 

仕方ない。そいつをおびき寄せて、直で証拠を潰すか。

『携帯を拾ったから、持ち主に返すために“貴方”の住所と名前を教えてください』っと。

これで完璧。異論は認めない。

 

 

ああ。完璧じゃなかったな。メールが全然返ってこねぇんだよ。あの文面じゃ駄目だったかぁ・・・

 

と、思ってた矢先にラッキーが再降臨!

ギャル2人がホテルに戻るのを、車で送ってやるチャンスが来たんだよ。

 

これ、来たんじゃね?

ギャルを人質にして、新一とやらを呼びつけて証拠隠滅。できんじゃね?

 

 

ピリリ ピリリ

 

車で送ってる最中に、ギャルの携帯が鳴り始めた。

「あ、新一? 今どこかって? さっき言ったでしょ?嘉納さんの車でホテルに向かうとこ。え? 今すぐこの車から降りろ?」

ヤバ。新一くん、俺の事めっちゃ疑ってるじゃん。

 

だけど、またまたラッキー様が降臨。ギャルの携帯の電池が切れたらしく、それ以上新一くんの警告は届かなくなってくれたんだ。

「車を降りて、縦に起こして、裏返せ」

ってメッセージだけ残してな。よく分かんねぇけど。

 

 

さ~て、あとは人目につかない林の中にでも入って、ナイフでギャルを襲って、新一君の居場所を吐かせてやればOK。

 

 

とぅるるるるるるる

 

 

!?

着信アリ。さっきひったくった、もう片方のギャルの携帯が鳴りはじめちまった。

「あれ? この曲、園子の携帯と同じ」

「―っていうか嘉納さんのポケットの携帯、わたしのなんじゃ?」

なるほどバレちまったな。俺がひったくり犯だって。

 

ナイフで脅すのが少し早まったな。

「さぁ、もっと奥に行ったらじっくり話をしてもらおうか? その新一ってガキの居場所をなァ!」

 




いかがでしたでしょうか? っていうか殺人事件。
犯人の嘉納です。

ええ、謎は全て解かれました。物理的に。

足刀横蹴りって言うんですね。
後で聞いた話だけど、電池切れのほうのギャル・・・空手の関東大会で優勝した子なんだって。
俺がナイフで脅した瞬間に、蹴られて一撃でしたよ。
気付いたら逮捕されていました。



死神を回避したはずなのに。

今回の事件で分かったことがあります。
駄目なんだ。死神は、電波越しでも。


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ハニーカクテル殺人事件(コナン・アニオリ)

過ぎ去る季節を惜しんでいたら、事件の謎には迫れない!
今日の事件は2つの事件。コナンの出番は強制排除。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!


僕は田所俊哉。人気ホラー作家の虎倉大介先生のところで書生をしながら、ゴーストライターをしているんだ。

 

だけど今回、事件簿はしないよ。

何故かって? 動機が重すぎるからさ。

 

 

虎倉は僕を長く利用し続けるために、妹の治療を故意に長引かせていた。

そのせいで妹は長く苦しんだ末に死んでいった。

妹の死は1年も隠されて、その間僕は仇のためにゴーストライター生活を、希望をいだいたまま呑気に送っていたんだ。

 

もうさ、イジれないくらい酷い邪悪でしょ。

 

 

 

というわけで、今回は動機をイジれる事件と犯人を用意しておきました。

ネットでもよく話題に上る【酷い動機の犯人】として、“ハンガー”や“義経になりたい”に並んでいないけれど、よくよく考えたら酷い動機と酷い殺し方。そして被害の大きさがデカイ事件。

ハニーカクテル殺人事件の犯人・相原信吾さんです。どうぞ!

 

「??? ちょっと待ってくれ。動機をイジってもいい犯人? 私が?」

 

もちろんです。あなたの動機は酷い。たしか、命の恩人なのに働きバチのように働かされたんでしたね?

「ああ、その通りだ」

世間の大人は働きバチのように働きます。

 

「・・・いや、それはそうだが」

まさかですが、命の恩人はその時点で人生楽勝ルートになるべきだと、そう考えているんですか?

「いや。いやいやいや。そこまでは言っていない。そもそもあの女は私と約束したんだ。リゾート施設の支配人にしてやると。だがそれは嘘だったんだ!」

あなたが支配人の器じゃなかっただけの話じゃないんですか?

考えてみてくださいよ。約束が嘘だからって我慢できない短気な人を、何百人もの雇用を生み出すリゾート施設の支配人にしますか? あなたの性格なんてバレていたんですよ。

 

「いやだが・・・そもそもキミ、あの女が酷い女じゃなかったと断言できるのか? 何の証拠があってあの女を擁護するんだ?」

簡単な話ですよ。あなたは別荘の管理人を任されていたことを不満にしていましたが、そこまでこき使われてはいなかったはずです。

 

「別荘の管理人だぞ? 辛い仕事だぞ? 事件の日だって、毛利探偵をもてなす料理を作ったり大変だったんだ!」

私も管理人みたいなものでした。しかもゴーストライターの仕事も兼任です。あなたの仕事の大変さくらい推測できますが、殺したくなるくらい大変だとは思いません。

毛利さんをもてなすのだって、あなた一人で全部やったとは思えない。

 

「何の証拠があって、そんなことを?」

毛利さんに出したイモリ酒とハチ酒がありましたね? 町長さんがとっておきだと言っていたもの。

あなたの犯行途中に、町長さんが台所から持っていった。

「それがどうした?」

町長さん、その2本を迷いなく棚から取り出していました。何処にしまってあるのか最初から知っていたのでしょう?

つまり町長も毛利探偵のおもてなしのために別荘に手伝いに来てくれていた証拠です。全てを1人に押し付けられたわけじゃない。

「ぐっ・・・」

 

そもそもあなたの殺害方法は酷い。殺された社長さんがトラウマにしている蜂を襲わせて。

一思いに殺すならまだしも、逃げている間の恐怖と崖の下に落下している間の恐怖。計り知れないほど酷い話です。

「ぐっ・・・」

ということで、私が選ぶ【歴代最悪の動機の犯人】として、アナタを告発したいと思います。

 

 

「・・・いや、お前だって酷いトリックを使っているぞ」

何ですか?

「お前の事件、被害者の妻が容疑者として疑われていたじゃないか。聞けば奥さんだって可哀想な境遇だったそうだな。そんな彼女に疑いがかかるトリックを仕掛けたキミだって酷い犯人だぞ!」

誰かを下ろせば自分が上がるとでも思っているんですか?

なら言いますよ。あなたの起こした事件でリゾート施設の話が頓挫しました。

つまり、何百人もの人に迷惑をかけ、何百億円もの損害を発生させているんです。

あなた一人が怒りを我慢すればよかった話を、そこまでの被害を考えずに短絡的に犯行に及んだ。

これを責めずして何を責めるというのですか!

 

「ぐっ・・・だぁ・・・」

グゥの音も出ないようですね。

ですがこの事件、事件簿としてネタにするには1つだけ、たった1つだけ弱い点があるんです。

「それは?」

 

 

Youtubeの無料公開が終わっているんです。私の事件もあなたの事件も。

投稿時期が悪いんです。2021年最初の投稿で、この弱さはデカイということです。

 




いかがでしたでしょうか?
ハニーカクテル殺人事件。

ええ。いつもの事件簿とスタンスが違いすぎて、ネタ切れ感が半端ないですね。
仕方ありません。なんせ、なぞなぞやクイズを解くのがメインの事件だと、事件簿しにくいので。

某・ひまわりの人じゃないですが、そろそろ終わりでもいいんじゃないですか?


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美術館オーナー殺人事件(コナン)

まぶたを腫らして心に染みる。涙は全てのドラマの始まり。
今日の事件はみんなのトラウマ。蘭が死体に慣れる前。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



オッス、オラ落合。

米花美術館の館長でおなじみ、御年は分かんねぇけど大ベテランだ。

 

この美術館は今年で50周年になるんだけどよぉ、今のオーナーの真中が約束破って美術館を取り壊して、ホテルにするって言ってんだ。

 

 

ぶっ殺すぞ

 

 

しかも職員の窪田が美術品を隠れて売り捌いているんだ。

オラが我が子みてぇに大事にしてる美術品をだぞ。

 

 

ぶっ殺すぞ・・・じゃなくて、オーナー殺しの罪を着せっぞ

 

 

っつうわけで、真中オーナーを仕留めて窪田に罪を着せるトリックに入るわけだ。

正義の騎士が悪魔を封じ込めた様子を描いた絵画「天罰」に見立てて、甲冑を着こんで剣でぶっ殺す。

天罰じゃなくて魔封波じゃねぇのかって? 剣じゃなくて電子ジャーじゃねぇのかって?

ちょっと何言ってんのかオラ分かんねぇな。

 

 

ちなみに今回、甲冑着てカメラには正体隠してっけどよぉ、オーナーにはオラが犯行現場に呼び出した犯人だってバレてんだ。

でも大丈夫だ。

ぶっ殺す前にオーナーにはあえてメモを見せんだよ。しかもそのそばにインクの切れたボールペンを置いてやんだ。

そこにオラ直々に「そこに犯人の名前が書かれてっぞ」って教えてやんだ。でもよぉ、メモには「クボタ」って書いておくんだ。

そうすっと、オーナーはメモの字を消そうとするよな? これ、カメラには字を書いているように見えんだ。

これでオーナーがダイイングメッセージとして、窪田の野郎の名前を書いた映像がカメラに残るっつうわけだ。

 

ちなみに夜に甲冑着て動く練習してたんだけども、警備員に見つかっちまって騒ぎになっちまった。

 

ま いいか!

 

 

 

っつうわけで本番だ。

犯行時間に窪田に仕事を任せて、オラは地獄の間のカメラの前に甲冑を着て待機。

オーナーが来たら

うりゃあ!

オーナーにダイイングメッセージタイムを用意して、もう一回

うりゃあ!

そしてあとはオーナーを壁に突き刺す・・・

 

 

 

みんなも気付いたと思うんだけんどよぉ。

真中オーナー、太ってんだ。だいたい100kg以上はあるよな。

そのオーナーを突き刺す剣は本物だ。しかも硬ぇ壁を貫かなきゃなんねぇ。

 

それを、オーナーより遥かに年上のオラが、左腕だけで掴み上げて、右腕だけで正確に刺し貫くっつうダイナミックな殺害方法・・・

 

 

 

ああ、オラも心配だ。

 

甲冑がぶっ壊れちまうんじゃないかってな。

 

 

 

いくらレプリカでも丈夫だからって、普通のトリックよりか負担がデケェんだ今回のトリック。

 

甲冑よ、もってくれよ! 3倍(の負担のトリック)だぁ!

 

 

よし、ぶっ殺したぞ

 

 

 

あとは窪田のロッカーに甲冑を隠して、ボールペンをすり替えて、死体が発見されて、警察が監視カメラを確認して(なんか眼鏡の子供もいっけど、これ教育上大丈夫かぁ? オラ心配だぞ)、オーナーの手に握られたメモで窪田に容疑がかかって、窪田のロッカーから甲冑が発見される。

全部オラの計画通りだな。

そして窪田が警察署に連行され・・・

 

 

「う~、漏れちゃうよぉ!」

 

急に眼鏡の子供が騒ぎ出したぞ。トイレに行きてぇみてぇだな。

オラにトイレの場所を聞いてきたから説明したけんど、子供だから言われただけじゃ分からねぇってよ。地図を描いてくれってせがまれちまった。

しょうがねぇなぁ・・・

 

 

!?

 

 

「どうしたのおじさん? どうして書かないの? あ、そっかぁ。おじさん書く前からそのボールペンが書けないの知ってたんだ。でも変だよねぇ。書けないとわかってるボールペンを何で持ってたの?」

 

 

この子供の適格性がスパーキングした指摘をきっかけに、咲き乱れる警官や探偵の推理の数々。

 

 

 

 

こうして・・・謎は全て解かれちまった

 

 

 

 

負けちまったけどよぉ、こんな推理力の強ぇヤツらが町にいると思うと、オラわくわくすっぞ!

 

 

次も絶対見てくれよな

 

 




【次回予告】

オッス、オラ宇田川克己。横領を下村に告発されそうだぞ。

こうなったら、着ぐるみに入ってるところをぶっ刺してやるしかねぇ!


次回、犯人たちの事件簿
『米花ポン出血大サービス』

なにぃ~!? このみっともない格好をしたバカモノを、とっとと連行しろ!



※次回の予告ではありません


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上海魚人伝説殺人事件(金田一)

※はじめに
本事件では食事中の閲覧において不適切なシーンが含まれます。
予めご了承ください。
殺人事件も食事中に見るもんじゃない? それは知りません。



私は日本人の小林千恵。だけど今は中国人の楊麗俐よ。

二重国籍になったのは、小学生の頃に車ごと中国人に盗まれて、ずっとその車泥棒と一緒に中国で育ったから。

車泥棒は他にも中国雑技団のサーカスをやっていてね。私はそこで虎の調教をしたパフォーマンスなんかをやっているの。

そんな苦労の日々の中、やっと日本に帰って来れたと思ったら、唯一の家族であるお父さんが車盗難の時に轢き殺されていたことが判明したわ。

決めたわ。お父さんを殺した車泥棒3人、義父・楊王、唐人美、藤堂壮介に復讐よ。

そして3人を殺したら私も自殺を偽装して日本に帰って、戸籍を手に入れて幸せに暮らすの。

 

えっ? 殺人事件の関係者が行方不明のまま、ほぼ異国の隣国の母国で戸籍を取り戻すのって大変じゃないかって? 超絶ハードプランじゃないかって?

大丈夫。そこは文通友達の美雪って子がいて、その子の友達の一って男の子がすごく頭が良いらしいから、きっと助けてくれるわ。大丈夫よ、だってすごく頭がイイのよ。

 

 

と思っていた矢先にハプニング発生よ。

復讐する予定だった楊王が自殺してしまったの。原因は良心の呵責。

私は死体のそばに春夏秋冬の字を描くことで、その死と残る2人と私の自殺を4連続の見立て殺人という形にすることにしたわ。

だけどタイミングが悪くて、唯一アリバイの無い義兄の楊小龍が警察に疑われてしまった。

うん、私の落ち度MAX。

だからといって『それやったの私』なんて言えないし・・・・

 

と思ったところに、美雪の友達・一が降臨!

警察の一方的な決めつけで進展しそうだった捜査に、まともな推理をぶつけてくれたおかげで、義兄の逮捕だけはどうにか回避できたわ。

感謝しかないわ。復讐開始ね。

 

さて、使うトリックだけど・・・いえ、殺人の方法はいたってシンプル。射殺よ。

射殺において一番大変なのは凶器の始末。

今回は義父の使ったデリンジャーという手のひらサイズの銃だけど・・

 

さぁ、みんなならどこに隠す?

自分だけが知っている秘密の倉庫に隠す? 上海警察を舐めないで。それはほぼ無理ゲー。

海に捨てる? イイ案だけど、それだと回収が大変よ。

飲み込んで胃の中に隠す? おっ、惜しい! 自分の胃の中は金属探知機でバレちゃう!

 

 

正解はコレ。

『虎の胃の中に隠す』

虎なら金属探知機の対象にならないし、私が調教しているから私からしか餌ももらわないし世話も受け付けない。

射殺が終わったら餌の肉の中に銃をつっこんで、取り調べが終わった頃に銃を回収できるって寸法よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん このトリック・・・

他の誰も真似できないし、真似しようともしないわね。

 

食べたものを、胃を切開せずに回収って、それはつまり腸を通り過ぎた後で体外に排出されてからの回収ってこと。

 

 

私はいつもお世話しているから知ってるけど、あんまり有名じゃない話。

虎の排泄物って、めちゃくちゃ臭いのよ。

うん この香り

目に染みる。鼻水が出てくる。点数をつけるとすれば10点満点中19点の臭さ。

そんな虎の糞にINした銃で射殺、よ。

 

 

クソまみれの凶器を使って死亡なんて、悪党にはお似合いの末路だけど・・・これ私の身にもなって欲しい。

 

 

ということで唐人美BAN 死体を水槽にダイブ 義兄と一が逃走 藤堂壮介BAN

そして咲き乱れる一の推理の数々。

こうして謎は全て解かれた

 

 

 

 





いかがでしたでしょうか。上海魚人伝説殺人事件

ええ、最後めっちゃ駆け足ね。
だってこの事件、義兄と一の逃亡劇がメインで、私のシーンが圧倒的に少ないのよ。
トリックだってIN~OUTのとこだけが謎ってだけだし。

敗因はズバリ、歴代殺人事件史上最悪臭トリックを使ってしまったってこと。
よい子は絶対に真似しちゃいけないわ。
だってこのトリックのせいで、刑務所の中で『ウンコウーマン』『クソ殺人鬼』って呼ばれる羽目になっちゃったんだから。




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服部平次との3日間 探偵甲子園編 【前編】(コナン)(リクエスト)

人生決めるその瞬間、自分に嘘をついてはいけない。
今日の事件は探偵が犯人。死神揃うと人が死ぬ。
たったひとつの真実見抜く、見た目はJK、頭脳はJD、その名は名探偵越水!



私は越水七槻。九州では有名な高校生探偵よ。とはいっても、今はもう大学生。つまり大学生探偵なの。

まず最初に私が言いたいことが1つあるわ。

 

間違った犯人を間違った推理で追い詰めて、自殺させてしまう探偵は殺人者よ。

 

 

 

ラベンダー屋敷の密室殺人事件。

私の親友はこの事件で、通りすがりの高校生探偵に間違った推理をされたせいで犯人扱いされて、追い詰められて失意のうちに自殺したの。

 

私は彼女の敵討ちをしたい。

でも推理に穴があったことを、この殺人者探偵は気付いたみたいでね。新聞に取り上げられた時に名前隠しちゃって、全然わからないの。

どんな特徴があったかだけでも分かるといいんだけどね。

 

 

 

親友が言うには「へんな喋り方の高校生探偵」らしいの。

それなら、西の高校生探偵・服部平次かしら? 関西弁丸出しらしいから、変な喋り方よね。

 

でもちょっと違うかもしれないわね。私も服部平次と思ったんだけどね。それなら親友は「関西弁の高校生探偵」って言ったはずでしょ?

関西弁はメジャーな方言だから、変でも何でもないのよ。

 

でも知り合いの刑事さんが言うには、ホームズマニアのツアーで起きた殺人事件で服部平次は「それも可能と、なりまんがな」とか「丁度いい頃合いでおまんがな」とか「できまんがな、簡単に」とか言ってたらしいの。

 

それなら服部平次かもしれないわね。「~まんがな」なんて関西弁で言っていたなら、それは「変な喋り方の高校生探偵」って言ってもおかしくないわね。

 

 

 

でもね、他にも候補がいるの。

東の高校生探偵の白馬探っていうのがいるの。海外留学が長くて日本語が疎かになっているかもしれないのよ彼。きっと会話の中に英語が混ざりまくっていたりして、喋り方が変になっていても不思議じゃないわね。

『このウィンドウのネジをカットしてボンドでフィットしてグッド』みたいに。

 

でもそれだと「変な喋り方」というより「ルー大柴みたいな喋り方」ってなっちゃうか。

じゃあ白馬探は間違った推理を披露した高校生探偵じゃないかもしれないわね。

 

でも知り合いの刑事さんの話だと、白馬探は怪盗キッドの事件に特に力を入れている探偵らしいの。

 

なら間違った推理をする可能性はあるわね。

だって怪盗キッドは基本的に人を傷つけない泥棒よ。窃盗罪や公務執行妨害とか器物損壊の犯罪者だけど、強盗致傷・強盗致死の犯罪者を相手にするような私たちレベルには届かないわね。

今回の密室殺人事件なんかは敷居が高すぎて、推理力が足りなくて間違った推理をしてしまったって可能性もあるわね。

 

 

 

あとは北の高校生探偵の時津潤哉かしら。

自分の事を小生って言ったり、他にも喋り方が変だってことでも有名だし、最有力候補ね。

 

でもそれなら親友は「自分の事を小生って呼ぶ高校生探偵」って言うわよね。

喋り方の変さがよっぽどインパクトない限り、小生の印象が強く残るわ。それこそダイイングメッセージにしてもバッチリなくらい個人特定の最優先事項よ。

時津は違うかもしれないわ。

 

でも親友の話だと、親友が通ってた中学・高校には自分の事を小生って言ってる男子生徒が多かったらしいの。

なら時津かもしれないわね。自分の事を小生って呼ぶ人に馴染みがあるなら、小生よりも喋り方のほうの印象が強く残っていてもおかしくないわね。

 

でもね、時津って北の高校生探偵なのよ。

じゃあ時津じゃないかもしれないわね。だってラベンダー屋敷の事件は四国で起きたのよ。

さすがに地元じゃないところの殺人事件で、いくら警察にも顔が広いからって、北海道と四国じゃほとんど別の国家よ。

北海道でもラベンダー荘で殺人事件が起きて、それを高校生探偵が解決したって聞いているわ。時津の解決した事件ってそっちかもしれないわね。

 

でも知り合いの刑事さんの話だと、時津が解決した事件の犯人が逃走したり自殺したりが高頻度らしいの。

なら時津かもしれないわね。

探偵の仕事は犯人を逮捕に導くことよ。探偵は推理という武器で、犯人が自分の罪と向き合えるようにリードしてあげるべきなの。

犯人が自殺しまくるなんて、それはもはや探偵じゃなくて死神よ。

時津の可能性も高くなってきたわ。

 

 

 

 

なんだか調べれば調べるほど怪しくなってくるわね。

仕方ないわ。自分の目で確かめるしか方法は無い。

集めましょう。高校生探偵を。

服部、白馬、時津。アナタたちを招待するわ。

 

探偵甲子園にね!

 

 



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服部平次との3日間 探偵甲子園編 【後編】(コナン)(リクエスト)

探偵甲子園。それは東西南北の高校生探偵を集めて推理バトルをするというテレビ企画。

を、装ってラベンダー屋敷の事件の関係者と容疑探偵を集めたロッジ大作戦よ。

 

ここで親友を追い詰めた高校生探偵を炙り出して殺す。

炙り出し方法はすっごくシンプル。例の高校生探偵が推理した通りのシチュエーションで偽物の事件を起こすだけ。

その時と同じ推理をした探偵。そいつがターゲットよ!

そしてその探偵を、トリックを使って私がこの手で殺す。

 

ってなると大きな問題が1つ。

参加者はみんな探偵。私も高校生に扮して探偵として参加。

犯人兼探偵なの。

これキツイわ。犯人としての立ち回りと探偵としての立ち回りの両方を求められるんだから。

自分でトリックを考えながら、その情報を全く知らない状態から探偵として不自然じゃない推理をしなきゃいけない。

探偵でありながら犯人でありながら探偵である犯人・・うぅゲシュタルト崩壊。

脳が2つ無きゃ無理。私がもう1人・・・いや高校生の頃、私って自分の事をボクって呼んでいたから。

 

そう、求められるのは“もう一人のボク”ってこと。

「大丈夫か、相棒!」「キミは、もう一人のボク!」

っていうことはやらないわ。

過去の事例から、安易に遊戯王ネタに走った犯人は負けるっていう法則があるからね。

 

つまり、頑張るしかない。それ以外に攻略法無し。マインド・シャッフルは贅沢。

 

 

ということで始まりました探偵甲子園ッIN無人島。

あのね、私わかっちゃいました。

変な喋り方の高校生探偵。時津だわ。「キボンヌ」とかマジイミフ。

他の候補は単純消去法だし。

服部平次、関西弁普通だもの。おまんがな出てこないんだもの。

白馬探、日本語拙くないもの。ルー語も出てこないんだもの。

 

そして例のラベンダー屋敷の事件と同じような状況の部屋を用意したんだけど、時津だけ秒で「解けた」だってさ。

もう確定じゃん。殺すしかないわね。

 

だけど私を躊躇させるものが1人。

服部平次の弟なのか親戚なのか分からないけど、小学生くらいの子供がいるのよ。何故に?

子供の目の届くところで殺人事件起こすのはちょっとぉ。

いや服部も白馬も東の探偵ポジションならこの子がオススメって言ってるけどさぁ。

さすがに子供だよ? 泣いちゃうよ。トラウマ植え付けちゃうよ。

よっぽどだよ。万が一にこの子が“毎日のように死体を見ている”とかいうワイルド境遇ならまだしも。

 

 

殺っちゃった。

 

でもって子供、死体平気だった。しかも・・・

「密室殺人。しかも犯人は越水さんと甲谷さんと槌男さんの中の誰かって事になるよね?」

冷静な容疑者列挙も炸裂。まるで大人の探偵みたいな落ち着きっぷり。

さすがね東の小学生探偵くん・・・

東京の子供、怖ッ。殺人事件慣れしてるの? 東京の治安って、子供が死体に慣れるくらいに悪いの?

 

 

そしてそこから始まる白馬・服部・コナンくんの大人の探偵顔負けのアリバイ聴取。

途中、開いた窓から吹いた風で私の髪がなびいて耳のピアス穴が見えそうになるハプニングも、咄嗟の「ボク、雷は好かんと!」の博多弁アドリブで難なく突破。

で、しばらく3人の捜査を待っていると、服部が帰ってきて

 

 

「ほんなら見掛け倒しの推理、聞いてもらおうやないけ! せやろ? 時津殺してまんまと密室にしくさった、甲矢廉三さん?」

 

はいダメ~! 間違った推理で間違った犯人を追い詰めちゃダメ絶対!

するとその駄目っぷりに呆れた白馬が推理を代わってくれたわ。

 

 

「罪人は針金一つで自在に鍵を開閉できる人物。それは槌尾さん、あなたですからね!」

 

はいダメ~! 間違った推理で間違った犯人を追い詰めちゃダメ絶対!

 

何よマトモな高校生探偵いないじゃないココ。

結局トリックの謎もちゃんと説明してくれているのコナンくんだけだし。

しかも正解。

 

「んでね、それができるのは」

「せや。いっちゃん最後に時津の部屋に行った甲谷さん。あんたしかおらへんよなァ」

 

はいダメ~! 子供の正しい推理を横取りして、間違った犯人を追い詰めちゃダメ絶対!

意外にちゃんとした証拠を持ってきたけど、それを提示する相手が違・・・

 

 

ガシッ

 

 

「やっぱりあんたやったんか。時津殺した犯人は」

 

はい正解~! そうです。私が真の犯人です。

そこから咲き乱れる、いきなり手を掴んできた服部の推理の数々・・・

だけじゃ少し推理ミスもあったけど、そこは白馬とコナンくんがフォローに入ってくれて・・・

 

 

 

こうして謎は全て解かれた

 




いかがでしたでしょうか? 探偵甲子園。


敗因? まぁ最初っから死なば諸共ってつもりだったから、トリックに粗も多かったわ。
だってそもそもこのトリック、半分は時津が考えたトリックだもの。
私が本気を出せばこのくらい・・・っていうのは少し言いすぎね。

そうね、やっぱり探偵を3人も相手にしちゃったのが悪かったわ。
実際やってみて実感したけど、探偵を招き入れて犯人するのって難しいわね。
たまにいるけど。高頻度でいるけど。特定の変なのがいるけど。「死神を呼ぶ必要なんてない!」って反論しても聞こえない、高くて遠いところにいる人がいるけど。

正気の沙汰じゃないわね。うん、体験者が言うんだからコレ絶対よ!


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集められた名探偵 黄昏の館殺人事件(コナン)(リクエスト)

霧がサーッと晴れるように、恋も事件も見通そう。
今日の事件もドラゴンボール。短いスパンで同じネタ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



謎の財宝が隠された山奥の館、大富豪・烏丸蓮耶が所有していた「黄昏の館」を舞台に起こる惨劇・・・

 

 

ん? 烏丸蓮耶?

オラ、その“カラなんとか”なんておかしな名前じゃねえぞ。

千間降代ってんだ。

 

 

 

早速だけんどもよぉ、オラの父ちゃんが死んでも解けなかったっつうヤベぇお宝探しがあんだ。

この話に食いついた大上祝善っつう美食家探偵がいんだけどもよぉ、そいつ自分で解けねぇからって日本中の名探偵を呼びつけて宝探しやらせようっつうんだ。

しかもよぉ、探偵にZENKAIパワー出させっために雇ったメイドをぶっ殺したり、宝見つかったら探偵皆殺しして独り占めしようっつうんだ。

 

まるでオラの父ちゃんを殺した悪い奴みてぇだ。

こいつはもう謝っても許さねぇ。ぶっ殺すぞ!

 

 

トリックは簡単だ。

呼び出した探偵たちに宝探しゲームのヒントをやるっつって晩餐に集める手筈になってんだ。そん時に打ち合わせに無かった説明を流してやんだ。

そうすっと考え事をする時に大上が爪を噛む癖が出る。

だから最初っから探偵全員のティーカップの取っ手に青酸カリを塗ってやんだ。

これならもし探偵たちが警戒して席を入れ替えたりカップの毒を拭き取ったりしても、共犯の奴だけは油断して拭き取りなんかしねぇから大上だけを殺せるんだ。

(探偵を招き入れて犯人するのって難しいって? そうなんか? そんな強ぇ奴らに囲まれてっと思うとオラわくわくすっぞ)

 

 

っつうわけで犯行の準備だ。

探偵たちの推理を監視するための隠しカメラの設置は大上に任せて、宝探しの説明をカセットテープに吹きこむのはオラの仕事だ。

マイクにボイスチェンジャーを取り付けて、録音ボタンを押して、台本を手にレコーディング開始だ。

(ん? アフレコじゃねえのかって? オメェ何言ってんだ?)

でもって探偵たちを小切手と怪盗キッド風の手紙で呼び出していざ本番当日だ。

大上と先に館に乗り込んで、主催者偽装用のベンツを放置してから車に戻って、2手に分かれて屋敷に向かう。

 

だけんどオラだけは道路でしばらく待機だ。

何故かっつうと、今回呼んだ探偵に1人だけいんだよ。ヘビースモーカーの毛利小五郎が。

今回のオラのトリック、下手すっと爪を噛む癖以外にもタバコを吸う動作でも毒が口に付いちまうんだ。

だから先にそれを阻止すっぞ。

オラのフィアットちゃんをエンストさせて小五郎を待ち伏せして、乗せてもらって「オラは煙草の煙が嫌いなんだ」っつって釘を刺してオッケーだ。

(ちなみに小五郎の車に乗り込むコツは、探偵への招待状に集合時間をバラバラに書いとくんだ。そうすっと他の探偵に遭遇せずに小五郎だけ待ち伏せできっからな)

 

 

 

さ~て、こっからが本番だ。

あらかじめメイドに指示しておいた通りに、探偵たちを食堂に集めて、オラが録音しといた館の主人の音声テープの自動再生が始まったら、タイミングを見て爆弾のスイッチをON。

屋敷に繋がる唯一の橋と探偵たちの車よ・・・弾けて爆ざれ!

 

BOOM!

 

オー、さっすがは強ぇ探偵たちだ。この程度じゃ全然動揺しねぇ。

しかも平然とオラが名乗った「神が見捨てし仔の幻影」が怪盗キッドのことだって言い当てやがる。

でもって晩餐後にオラの出したクイズにも気ぃを高めているな。

じゃあそろそろ頃合いだな。大上が毒を口に含んで死ぬ頃・・・

 

「うっぐ・・・が・・・なーんてな」

おいおい。なんか知んねぇけど、探偵の茂木が苦しんだふりする茶番を始めたぞ。

流れ大丈夫か?

 

「ぐっグアアアア」

「おいオッサン、二度目はもうウケねーぜ?」

言わんこっちゃねぇ。大上が本当に毒で苦しんで倒れても、二番煎じの冗談だと思ってシラけた雰囲気になっちまったじゃねぇか。

死亡シーンのインパクトが小さくなっちまっただろ。

 

 

まっいいか。次だ次。

探偵皆で外に出て、道路が無事かを見に行く流れになるのも想定済みだ。

こっからオラが車で爆死を装えば、あとは探偵たちが屋敷の謎を解いてくれる。

小五郎んとこのチビ助が出してくれた硬貨でコイントスして決めることになったんだけんどもよぉ、誰かん手についてっかもしんねぇ青酸カリと反応しちまう10円玉だけはオラが確保。

でもってオラのポケットに入ってた10円玉を先に手の甲に乗せといて、そっちの表を見せて乗車権をゲットだ。

(え? そんな都合よく10円玉持っててよかったな、って? 婆ちゃんのポケットには何でも入ってんだぞ)

 

 

よっしゃいよいよ自殺工作。茂木と小五郎が車から降りて崖を見に行ったら、自爆スイッチをON。(ん? オラも餃子みたいに自爆できるのかって? 何言ってんだ? 車からこっそり降りてからに決まってんだろ。そもそも餃子が自爆って何だ?)

でもって茂木と小五郎と鉢合わせしねぇように、気を消して屋敷に戻んぞ。

館に戻ったら隠し部屋で隠しカメラをチェック。探偵たちが謎を解いて財宝を見つけてくれるのを待つだけ・・・

 

なのによぉ

 

「やはりあなたでしたか」

「あらボウヤ、物騒な物持ってるじゃない?」

「疑わしきは罰せよ。悪く思うなよ、眠りの小五郎さんよ」

駄目だぁ! 探偵同士が殺し合いを始めちまってたぁ!

チクショウ、なんて奴らだ。人間は死んじまったら、もう生き返らねぇんだぞ!

 

だがそん時、突然カメラの電源が切れてパソコンに文字が表示された。

 

【宝の暗号は解けた。直接口で伝えたい。食堂に参られし。我は7人目の探偵|】

 

どういうことだ? 7人目の探偵? いったい何者だ?

「通常、車に爆弾を仕掛けた人物が自殺以外の目的でその車に乗るのは考えにくいが、例外はある。その爆発で自分が爆死したかのようにカモフラージュするケースだ。そうだよな? 千間探偵」

 

!? 小五郎んとこのチビ助じゃねぇか!

なんかスゲェ気を感じっぞ。

 

そしてそこから咲き乱れるチビ助の推理と館の暗号解読。時計に隠された金を見つけて、ついでに探偵たちまで蘇らせちまった。

オメェ神龍みたいだな。

でもよぉ残念だったなぁ。こんだけのために父ちゃん殺されたのかぁ・・・

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 

でもって帰りのヘリコプター。オラには仕事が残ってんだよな。

毛利小五郎。こいつ館に来てから一辺もタバコ吸ってねぇんだよ。

っつうことは偽物だな。怪盗キッドだな。オラには分かる。

ヘリから飛び降り自殺のフリして、キッドに逃げ出すきっかけをくれてやって・・・

「あんな物、泥棒の風呂敷には包みきれねーからな」

 

 

館がゴールデンになっちまってた。驚ぇたな。

 

 




【次回予告】

オッス、オラ五島緑。三井美香に店を辞めないでくれって頼んだら、ハンガーを投げつけられちまったぞ。

こうなったら、一か八かハンガーで殺すしかねぇ!


次回、犯人たちの事件簿
『消えた凶器捜索事件』

そんなくだらん理由で人一人の命を奪ったんですか、あんたは!!!





今度の休みに探偵たちが映画で大暴れすっぞ
劇場版名探偵コナン緋色の弾丸 2021年4月16日公開!

絶対見てくれよな


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本庁の刑事恋物語 偽りのウエディング(コナン)

事件が全部男だったら、見えない謎は女かな?
今日の事件は結婚式。レモンティーは出てこない
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



俺は平正輝。連続強盗殺人犯だ。4件やってきた。6人ヤってきた。

事件簿史上最凶の犯人だという自覚はある。

だけどさぁ、さすがにさすがにだぜ。

 

人生史上最多の警察に囲まれちゃってんだよ今。

 

 

原因は強盗相棒が馬鹿だったから。

馬鹿なんだよホント。

 

まずさ、今回の標的は資産家令嬢。

普通は結婚して資産を奪ったほうがいいに決まってるだろ?

なのに相棒、馬鹿の一つ覚えみたいに強盗してんの。

 

でさ、俺が止めに入ったら「てめぇ、この恨み絶対に忘れねぇからなァ」って言って逃げてった。

映画で馬鹿な悪役が言う台詞だよな。

 

しかもこの恨みを晴らすために俺を殺しに来る日ってのが、俺の結婚式の日を指定してきてるんだ。

あれか? 人生最高の日に最低の気分にしてやる!って意気込みか?

馬鹿。この結婚に愛がないのはお前もよく知ってるだろ。

何なら、仕事終わりの疲れた夕食に飲むビールの一杯を邪魔された方が復讐になるわな。

 

でもって相棒を殺すために偽の結婚式予定日を掴ませてやったのはいい。結果、誰にも見られずに相棒を殺せたからOK。

だけどな、相棒の奴とんでもない置き土産残していきやがったんだ。

この偽の日の前の日に・・・あいつ脅迫状なんか送り付けてきやがったんだ。

せっかく。せっかく俺が丹精込めて日付を偽装して、下手に警察に騒がれないように気を付けたってのに・・・この手紙1枚で・・・

 

結果がこれよ。結婚式に警察がウヨウヨ。そりゃそうだ。

来ないのに。その強盗犯、もう死んでるから来ないのに。俺だけネタバレ状態。

警察もやる気満々で、俺と嫁に顔が似ている警官の替え玉まで用意してくれて。

俺の役は高木ってやつで、嫁の役は宮本って婦警。

 

う~ん、俺ってこんな顔に見えるのか? なんかモブっぽくね?

絶対この高木って刑事、モブ警官だろ。警官Aとかの役だった時期とかあるだろ。

まぁいい。この結婚式さえ何事も無く終われば、晴れてハワイに移住ができる。

何事も無く終われば・・・

 

 

「はい、目暮ですが。ああ千葉君か。なに!? 喉を切られた焼死体が見つかった!? 紺のスーツに白いネクタイで・・・燃え残った爪から連続強盗殺人犯の指紋が出て来ただとォ!?」

嘘だろ。馬鹿の死体が見つかって・・・

結婚式の参加者と入れ替わって紛れ込んでいるかもしれないって結論がでちまっただと!?

あのさ、結婚式の参加者と入れ替わるなんて大胆なこと、いくらあの馬鹿でもしないって。

だって結婚式だぜ? 俺と嫁に見覚えのない人間が参加してるわけがないって。

 

 

と、思ってたら3人いました。

サングラスをかけた茶髪で色黒の男と、オカッパ頭でヒョロッとした男と、髭を蓄えて眼鏡をかけた男。

いるのかよ。

 

しかもさ。警察が手に入れている俺の指紋の指と同じ左手の薬指に、絆創膏やら包帯やら左手ポケットインのキープで、3人共がまるで左手の薬指の指紋を隠しているみたいに振舞ってるわけよ。

どういうことよ。

警察が真剣に3人を警戒しているんだけど・・・

お探しの犯人、俺です。おまわりさんの特大の空振りを特等席から見せてもらってます状態。

 

絶対に安全なんだけどなぁこの結婚式。

まぁいいか。ちゃっちゃと始めよう。

「それでは新婦麗さんがお父様のエスコートを受けて入場されます。皆様、拍手をもってお迎えください」

こうして始まった結婚式。

拍手に迎えられて嫁さん入場・・・

 

「ちょっと待ちな。半年ぶりだなお二人さんよォ」

「確保だ! その男を確保しろ!」

「おっと下手な真似すんなよ! 刑事がいる事はわかってんだ! 心配すんな。その二人を切り刻んだら引き上げてやるからよォ」

 

なんか茶番劇が始まった。強盗犯が包丁を手に俺たちに迫ってくる茶番劇。

芝居が下手すぎる。見苦しすぎる。

俺がそのことを指摘すると、一番偉い警部さんが開き直った。

「ホー、なぜわかるんだね? この男が強盗犯じゃないと」

 

これなに? 何のくだり? このドッキリとネタバラシの雑さ、水曜日か何か?

「こんな質の悪いイタズラをするのは、僕たちの知り合いにはいませんから」

「確かにこの男はワシの部下の刑事・・・」

え? ネタバラシからの仕掛けバラシ? 何この時間?

 

「だが、彼は堤無津川の倉庫からたった今ここにやって来た千葉君なんだが。ではもう一度お聞きします。なぜ、あなたは彼を強盗犯じゃないとわかったんだね?」

 

ハメられた!

うわぁハメてきやがったよ警部。日本のお父さんって感じの声してるくせに、騙しがプロ。

 

そしてそこから咲き乱れるお父さんの推理。

こうして謎は全て解かれた。

だけど無能。

 

連続強盗殺人犯の前で包丁をチラつかせて、油断してんじゃねぇよ。

俺は千葉君に体当たりして包丁をゲット。

もうどうせ終わりなんだ。冥途の土産に一人でも多く道連れにしてやるさ。

まずは俺を確保しようと首を絞めてきた嫁役の婦警をサクッと!

「知ってた? コルセットのワイヤーって結構硬いのよね」

無理だった。脇固めくらっちまった。

だけど幸い、ドレスのせいで婦警の動きが鈍くて、俺はどうにか脱出成功。

しかも式場の出口ががら空きで、そこまで簡単に走って抜けることができた。

無能。警察無能!

 

「蘭ちゃん、止めてー!」

 

婦警がアホな事叫んでる。式場に来ていた女の子に確保を頼むとか。

笑止! 笑止千ば・・・

 

 





いかがでしたでしょうか? 偽りのウエディング。

いやぁとんだ茶番でした。最後は記憶なかったけど。
敗因は前にも言った通り、アホな相棒をもったせい。それに尽きますね。

あと一つ分からないことがあるんです。

俺が刑務所に入ってからの話。
俺より後に入ってきた囚人から「ポスター見ましたよ」「あんたは脇役」「背負い投げ~」って言われるようになって。

これなに?



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幽霊客船殺人事件(金田一)

さあ、汽笛が鳴った。
出航だ。もう後には引けない。どんな荒波が待ち受けていようと、二度と後戻りはできない。
わたしは、船長なのだから。
この船に乗っている許しがたい者どもを地獄に導く『航海』の舵取りをするのがわたしの役目―。
そう、たった今から、我が名は、

『幽霊船長(ゴーストキャプテン)』…



私は鹿島洋子。

豪華客船オリエンタル号とタンカーの衝突事故の責任を全て父に擦り付けた鷹守船長、若王子、加納に復讐を誓っているの。

許せない。父の仇は すべて・ころす。

 

舞台はここ、おんぼろ船コバルトブルー号。

その最後の航海の最中にすべて・ころす。

 

 

 

=1日目=

この航海は鷹守にとって最後の仕事。長い船上人生の最後がこんな汚い船だからって、めっちゃ愚痴ってる。

私はそこに追い打ちの脅迫文をぶち込んだから、めっちゃブルーになってる。いい気味よ。

客も少ないわ。若いチャラ男とか未亡人っぽい女性とか、へんなおじさんと連れの高校生2人とか。まぁほとんど貨物船の空き部屋に乗せるだけの格安クルーズだし。

いい気味。すっごくいい気味。

そのいい気味の勢いでサクッと殺害!

 

殺した鷹守は私のマッスルパワーで、誰にも気づかれないように運んで甲板から海へリリース。

さぁ、ここからがトリックよ。

翌朝7時30分の私の船内放送勤務中に、犯行現場が用意されたように偽装するの。

 

その方法は結構シンプル。あらかじめブレーカーを落としておいて、殺害現場になった船長室に朝食用の目玉焼きやコーヒー、トースターをセットしておくの。

あとは時間が来たらブレーカーを戻して通電すれば、7時30分ごろに目玉焼きが焼けて、コーヒーが出来上がって、トーストも焼きあがる。

まるでついさっきまで、船長がご機嫌な朝食を準備していたのに、忽然と姿を消したかのように見えるってわけ。

まさに幽霊船・マリーセレスト号のようにね!

(ちなみにマリーセレスト号っていうのは漂流船で、発見時に乗員が誰も乗っていなかったのに、まるでさっきまで人がいたような痕跡があったっていう幽霊船。だけどその真相はただの噂話の一人歩きで、別に“さっきまで人がいた”痕跡は無かったの。豆知識ね)

 

さてトリックの準備が終わったら、次は警察とかに通報されないように次のお仕事。

無線をめちゃくちゃにするわ。

楽しい! 無線をめちゃくちゃにするの楽しい!

 

 

 

=2日目=

朝も早くから大忙しよ。

まだ暗いうちから、お客さんの1人がお腹を壊しちゃったの。原因はディナーの食べ過ぎ。

危なっ。もしこの金田一君って子が腹痛のせいで眠れなくって夜中に船の中を徘徊していたら、危うく鉢合わせになっていたわ。

恋人で船の航海士の丈次さんが介抱してあげていて、私にホットミルクを作るように頼んできたわ。

残念。私の部屋、まだトリックの影響で停電中なの。

だから急いでキッチンに行ってホットミルクを作ってあげなきゃだったわ。

 

まぁこんなハプニングなんて、私が今から披露する幽霊船パニックに比べれば可愛らしいものよ。

館内放送の仕事の時間に合わせてブレーカーをON。

勤務時間になっても船長が現れないからと騒ぎ始めた皆と一緒に、私もシレッとした顔で捜索に参加。

あとは船長室にみんなが入ってくれるのを待つだけ・・・

 

なのに若王子の奴が「大したことじゃありませんよ」って、お客さんですら提案している突入を拒否!

はぁ!? 人一人が行方不明なんですけど? 早く入ってくれないと私が用意した時間差トリックが無駄になっちゃうんですけど?

「私はこういう者です」

そこにお客さんが取り出したのは警察手帳。

そう、お客さんは警察官だった。

ナイス国家権力。おかげで無事にトースターが焼きあがるチンって音が鳴る前に、みんな船長室の異様な光景を目にしてくれたわ。

 

 

 

・・・・・・・・はぁ?

警官、いるのかよ! よりにもよって殺人事件担当の警視庁捜査一課の警部。

なんという当選確率。指折り数えられる程度の乗客数なのに、そこに食い込んでくる日本の正義ッ!

これ全部終わったら買うべきよね宝くじ。

 

 

まぁどうにか皆、幽霊船長にビビってくれたところで。

若王子もサクッと殺害。マッスルパワーで海に捨てたら、遺書を用意して次のトリックの準備よ。

連続で加納も殺すの。

 

こっちのトリックはダイナミックよ。

操舵室の操舵輪に毒針を仕掛けておいて、加納を丈次さんの勤務時間に殺すの。

丈次さんの事はその時間、恋人の私がベッドにお誘いしておけば引き留められるから大丈夫。

『ん? だけどそもそも加納をその時間に操舵室に呼ぶのは無理じゃないか?』

と思ったそこのアナタ。大丈夫。そこがトリックなのよ。

船の向きを180度変えちゃうのよ。そうすれば朝日が夕陽に見えるから「ヤベッ!完全に遅刻だ!」ってなった加納が操舵輪を握りに自動的に走ってくれるってわけ。

 

さらに若王子の遺書に船長と丈次さんを殺すようなことを書いておけば、丈次さんが疑われる心配も無し。彼氏へのアフターフォローもバッチリなのよ。

 

 

 

=3日目=

清々しい朝。仇をすべてころした朝はなんて清々しいの。

 

うん、清々しい朝ブレイク。

若王子が死んだことで、乗客の未亡人が自殺しようと海に飛び込んじゃった。

どうも若王子、オリエンタル号の沈没の時に自分が助かろうと、未亡人の旦那さんを殺して救命胴衣を奪っていたらしいの。

だから未亡人は若王子を殺すためにこの船に乗ったけど、思いとどまっていたらしいわ。

うわぁ若王子・・・ちょ、お前・・・罪の深さが予想以上。

私、遺書に若王子がオリエンタル号事件のことを後悔してるって嘘を書いちゃったから、余計に未亡人のハートをブロウクン。

後味最悪よ。何してくれちゃってんのよアイツ・・・・

いつか未亡人に謝ろっ。

 

 

 

=4日目=

人生最大のハプニング発生。

私の目の前で・・・丈次さんが人質に取られちゃったの。

犯人は「ワシが奴らを殺した」とか「凶悪な殺人鬼だ」とか言って警部さんに追い詰められながら、私を置いてけぼりにして丈次さんに刃物を突き付ける凶悪っぷり。

 

え・・・・えぇ・・・これは私は、どうリアクションとったらイイ感じ?

 

だけど、何より一番の問題はこの船に残った最後の航海士である丈次が舵を取れないと、この船がヤバイことになること確定って事態だけ。

 

やむを得ない状況の中、私は咄嗟に舵を取った。

 

 

「やっぱりアンタだったんだな。幽霊船長は」

 

 

罠でした。

人質事件、私を炙り出すための狂言でした。

 

そこから始まる警部さんを差し置いた金田一君の華麗なる名推理の数々。

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 

そして明かされる衝撃の真実。

オリエンタル号衝突の原因の1つになった、監視員の不在。

その監視員って、丈次さんのことでした。

 

 

 





いかがでしたでしょうか? 幽霊客船殺人事件。

いやぁ敗因は最初のホットミルクで停電トリックを見破られたことに尽きるわ。
抜け目なさすぎなのよ金田一君。
お腹痛い時にも人のミスに敏感とか、この子の家族とか友達とか彼女とか大変じゃない? 普段から重箱の隅をつつきまくってるんでしょ。
姑とか小姑とかの嫌がらせすら可愛くみえてくるわ、きっと。


あとは丈次さんのこともショックだったわ。
もちろん事故の原因が彼だけだとは言わないけど、事件後に公表してくれたらよかったのに。
「船の仕事ができなくなるのが嫌だった」って・・・
私のお父さんも同じタイプだったから、分からなくもないけど・・・



ん? ってことは、もしお父さんが同じ立場だったら、お父さんも事故の原因を他人に押し付けたまま船の仕事を続けたいタイプってこと?
罪悪感も持ちながらも、しっかり恋人とはベッドインとか喜んじゃうタイプだったってこと?
うわぁ、それはそれで引くわぁ


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仏滅に出る悪霊(コナン)(リクエスト)

鮮やかな色の夏の記憶が、季節を越えて謎を解く。
今日の事件は双子の犯人。捜査担当刑事も双子!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



僕は国友家の運転手、綿引勝史。

13年前に父と弟が国友家のクルージングで事故に遭って、他の使用人と一緒に死んでしまった。

と思っていたら弟だけひょっこり生きてた。

 

よかった。

 

 

 

 

で、終わればよかったんだけど。

弟は記憶喪失になっていました。

と思っていたら、記憶はすぐに戻りました。

 

よかった。

 

 

 

 

で、終わればよかったんだけどね。

どうも旦那様と奥様が、控えめに言ってクソな社長と一緒になって、殺したり沈めたりで僕らの父を含めて4人殺しているんだ。

よし復讐だ。

 

双子トリックを使うぞ。片方がサクッとしている間に、もう片方がアリバイを作るんだ。

でも言うは易く行うは難し。

弟が生きていると社長にバレたら、また命が狙われ、周りの人間にも危害が及ぶかもしれない。

正体を隠すことにした僕らは、咄嗟にではないけれど、兄弟ともに僕1人の人間として生活して弟の存在を隠すことにした。

 

 

結果から言っておこう。この双子トリックに最も必要なもの。

それは 仲良しの双子 だ。

いや、あくまで結果から分かっただけ。僕らも終わってから気付いた。

僕ら2人を1人の人間として周りに見せかけるためには、生活の全てを2人で分ける必要があったんだ。

 

1つの部屋を2人で分けっこ。

仕事をしている時に得た情報も2人で分けっこ。

ご飯も「最近急に食べる量増えたね」って言われないために2人で分けっこ。

「いや、そこは食事量増やしていいんじゃないか?」ってなるかもしれないけど、それだと誰かと食事に行った時に「お前、いつもたくさん食べるだろ?」って言われるから、1人当たりの摂取量を減らす方向で。

消耗品も2人で分けっこ。

「トイレットペーパーの減りが早いね」と言われないために、使う長さも決めて。

幼馴染に「小さい頃に助けてくれたのって弟さんだと思ってたけど、あなただったのね」と、手の傷を気付かれたけど、どうにか誤魔化して。

「じゃあ兄さんの手にも傷をつけとこうか?」ってなったけど、ちょっとでもズレて失敗したら余計にバレる可能性があるから「“アル”よりも“ナイ”ほうが人間は認識しにくいものだよ」ってことでどうにか回避。

あとは生活の諸々、片方が仕事中はもう片方が部屋で静か~にしておかなきゃいけないのは普通ならストレスだけど、僕らは意外と平気。

 

という感じで、28歳になっても仲が良い兄弟だからこそストレス少なく1/2生活を2年間も完遂できた。

 

 

じゃあ、本番行こうか。

まずは2月4日に脅迫カード送付。

次は7月4日に屋敷の食器棚を倒してぶっ壊す。

4月4日に壁に向かってボールを投げて遊ぶ。

そして明日、10月4日。

 

仇を討つよ。

 

うん。年3回しか心霊風の復讐してない。

よくもまぁ2年間も我慢できたね僕ら。

 

 

 

だったのに

 

「あ、悪霊!? この私に悪霊の呪いを解けと!?」

うわぁやっちゃった。

旦那様、悪霊騒ぎにビビりすぎて名探偵・毛利小五郎を召喚。

よりにもよって本番の日に最強の探偵降臨。今まで霊媒師や神父さんだったじゃん。霊的だったのにいきなり物理的に解決させようとしてきた。

しかもここ静岡なのに。さすがお金持ちは課金が贅沢。

でももう後戻りはできない。

 

 

そしてその夜。

殺人成功。

 

 

いや、僕は殺していない。やったのは弟。

僕がアリバイを作っている間に、弟が仇の社長をギュッと。

そりゃそうだ。実際に殺されそうになったの弟だもの。

弟がどんな殺し方をしたのかは見てからのお楽しみだったけど、正直ドン引き。

首吊り自殺に見せかけたのはいいけれど・・・若干。若干、不自然なんだよなぁ。

首吊り位置が極端にベランダに近すぎて、自殺できなくはないけどやりにくい位置に。

殺意がちょいと滲み出すぎた。

おかげで毛利探偵も警察も自殺だけじゃなく他殺も疑い始めてしまっている。

 

まぁ、どうせ双子トリックが見破られることはないから問題ないけどね。

でもって残る標的の旦那様も、警察の事情聴取の間に3階のロックのかかった部屋に閉じこもってくれている間に会う約束をしてサクッと・・・

 

できてりゃよかったんだけどね。

旦那様、僕と死んだはずの弟がダブルで現れたショックで死ぬほど驚いて心臓発作を起こしてしまった。

いや、辛うじて薬に手を伸ばしていたけど、弟が殺意のあまりに薬瓶を奪って薬踏み潰したからギリギリ僕らの手でトドメを刺せた形。

 

だけどそこに思わぬ邪魔が。

ベランダに吊るしておいたロープを使って、誰かがこの密室になった3階に上ってくる気配が!

おい・・・誰だよこんなところにロープ吊るしておいた奴・・・

え? 弟が警察を攪乱するために指紋を残しておくために吊るしたんじゃないかって?

いやいや。もう薬の瓶に指紋残したから不要。

マジでいったい誰なんだよ。このロープ残したの。

なんて言ってられないね。急いで隠れよう。

そしてロープで上がってきた主が部屋を開けたら、どさくさに紛れて現場に駆け付けたフリをする・・・はいいけど、2人で脱出するの無理ゲー。

きっと廊下に見張りもいるんだろうし。

 

 

となったら、やることは1つ。

そう。双子なら誰もがやったことがあるあの裏技。

『部屋を調べる皆の一番後ろに付き、部屋に入るのも出るのも一番最後になるようにして、兄弟が隠れている部屋の1つ前で出るフリをしてそのままそこに留まり、皆が次の部屋に入るタイミングに合わせて扉の裏に隠れていた兄弟はシレッと皆に混ざって、双子がすり替わる』という技さ!

結果は大成功。無事に弟が僕と入れ替わって、そのまま何事もなく犯人探索打ち切りになったよ。

 

これにて僕らのトリックは完了!

あとは警察が捜査を諦めて出て行くまで、この密室になった3階で隠れておくだけ。

 

 

長い戦いになりそうだ。

 

と、思っていた矢先。その翌朝。トンデモない大声に僕は叩き起こされた。

「いいですか皆さん! これからひと部屋ずつ調べますが、あの時と違い私は最後に部屋に入らせてもらいます! 怪しい行動をされる方がいないか見張れるように! ですから前回、最初に部屋に入って窓やベランダを調べた私の役は綿引さんにお願いします! よろしいですね! では寝室の隣のこの書斎から始めましょう! もちろん何か見つけたり気付いた事があればすぐに私にお知らせを!」

滅茶苦茶にわかりやすい捜索再開が宣言された。昨日から捜査を担当している刑事さんだ。

呆れるほどわかりやすいけど、弟が刑事さん役でベランダを探すっていうなら、僕はそのままベランダに隠れていればいいってわけだね。

 

結果。普通に僕の事はスルーされて捜索終了だったみたいだよ。

でも何かが怪しい・・・

まさか!?

 

案の定。毛利探偵が推理ショーを始めていた。

そして僕と弟が使った入れ替え技と全く同じものを、あの刑事さんが双子の弟を呼び寄せて再現していたみたいなんだ。

しかもトリックの説明だけのために、わざわざ神奈川県警から呼び寄せたらしい。

双子なら静岡県にもいるでしょ? 

こんな朝早くに双子を酷使! 毛利探偵も召喚エグイなぁ。

 

そして咲き乱れている毛利探偵の名推理。

そろそろ弟が推理の矢面に立たされているのを、別の部屋で聞いているのは心が苦しくなってきた。

往生して僕も行きますか。毛利探偵が推理ショーをやっている部屋に。

 

 

なんか部屋の入り口で眠っているように推理している毛利探偵のところに、子供がいるぞ?

しかも蝶ネクタイをグイーって口元にやって遊んでいる。そんなことしたら伸びちゃうぞ。

ああいう遊びが子供たちの間で流行っているのかな?

 

 

まぁいいか。

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 仏滅に出る悪霊。

敗因はもちろん、毛利探偵が来たことですね。
旦那様を脅すために脅迫状を送ったのがマズかったかな。
他の復讐は心霊じみた方法だったからビビッてくれたのに、そこだけ明確に人間味を出しちゃったのが駄目だった。
しかも標的の中で特に悪い社長のほうはあんまりビビッてくれていなかったし。
何かをするなら、方向性を1つに定めて徹底的にやるべきだったと思います。
まぁ復讐だけは成功したから、僕らとしては満足だったんだけどね。


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名陶芸家殺人事件(コナン)

何回やってもいいじゃない!恋も事件も今日も明日も。
今日の事件の決め手は4文字。たった4文字で犯人確定!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



僕は人間国宝の陶芸家・菊右衛門の弟子、瀬戸隆一。

師の息子さんの奥様を殺そうと思っている。

だって僕の作った作品を師の作品と偽って、見る目の無い金持ちに売りつけているんだから。

しかもその悪行を止めるようにお願いしても悪びれた様子も無いし。

師に言おうにも、その詐欺作品が師の作品より高く売れちゃったこともあるし。

こりゃ、殺すしかない。

他の選択肢? ないない。

 

 

さてトリックを考えたぞ。

まずは師の新作の壺「風水丸」のコピー品を作る。

本物の置かれた棚にコピー風水丸を置いて、その底にビー玉をかませておく。

こうすると棚の管理をしている奥様だけが風水丸に触るから、このトラップにひっかかる標的を絞ることができる。

いつかは奥様がコピー丸を取ろうとしてくれるから、壊してくれれば奥様に自殺する理由が生まれる。

そうしたらその日の夜に寝ている奥様を蔵に運んで、棚の上に寝かせて首吊り用のロープをかけておく。

あとは奥様が起きたら自動的に首吊り自殺完成というわけさ。

念の為に奥様がいつも目覚ましに使っている携帯電話と同じ機種を買っておいて、犯行現場の棚の作品の中に忍ばせておけば、さらに奥様が無防備な姿勢で棚から落っこちてくれやすくなる。

この携帯電話はトリックの後もしばらく現場に残るから、警察が来た時にピンチ!ってなるところだけど、ここは人間国宝の蔵。このアンタッチャブルな隠し場所にある携帯の存在に気付かれる心配は皆無!

よっぽど作品を壊されない限りは、ね。

 

 

どうよ? お金がかからないトリックでしょ? トリックってお金がかからないのがベストなんだよ。

まぁ強いて言えば、壊す予定のコピー風水丸を売れるところに騙して売れば数千万円くらいになるかもしれないってくらいかな。

でも所詮は偽物だし、偽物で悪い事してた奥様への天罰にはピッタリの凶器さ。

 

 

 

いつになるかなトリックの日。楽しみだ。

さて、そんなトリックの日々を待つ僕の陶芸ライフを簡単に紹介しよう。

 

・焼き物を作る

・焼く

・奥様に審査してもらう

・飲む、食べる

・寝る

・賭ける

だね。基本は。あんまキツくないよ。作品を売ったりする商談は全部奥様がやってるし。

 

さてその賭けるだけど。実は師は名探偵の毛利小五郎の大ファンなんだ。

今度、毛利探偵に遊びに来てもらって、作品を1つプレゼントしたいんだってさ。

で、その時のプレゼントを毛利探偵に選んでもらうから、どれを選ぶか賭けようってことになったんだ。

何コレ面白い。こういう賭け大好き。

でもって毛利探偵に出すお茶入れる1000万円の湯飲みが選ばれる! って宣言しちゃう師の勝負師っぷりも大好き。

だってさ、師は「この部屋にある作品」って言って部屋の棚を見ながら言ってみるらしいんだから。

これで当てたら毛利探偵の目スゲェでしょ。

 

そして当日。

「この湯飲みなんか貰っちゃおうかな~なんちって」

!?

!?

!?

!?

思わず、まるで『知られてはいけない秘密を知られてしまった』みたいに驚いてしまった。なんで皆でこんな驚き方しちゃったんだろう?

にしてもマジか毛利探偵ハンパネェ。師、大満足よ。無理もない。

 

「そうそう。今度発表するワシの新作、風水丸。あれも毛利さんに見てもらおう」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

師。

嫌な予感しかしない。

ちょっと冷静になるの大変。だけど犯人に標準装備の演技力でどうにか平静を装うぞ。

 

「アアアアア」

 

平静一時終了のお知らせ。コピー丸がぶっ壊れた。

新作壊れた師めっちゃブルーモード突入。僕もブルーモード突入。

毛利探偵、今日お泊りで遊びに来てもらうんだよ。そんな日に限って奥様の自殺の動機が生まれちゃったよ。

どうしよう。さすがに名探偵と同じ屋根の下ん時に殺人事件は回避必須の敗北フラグでしょ。

やめようかな・・・

 

 

だけどさ。奥様酒飲んで爆睡しちゃってんだよ。(名作を自分の手(正確には僕の手)でぶっ壊してブルーになってるはずのその日に何を思ったか泥酔。神経図太すぎ)

毛利探偵を含めて他の皆は飲んでる最中だから、宴会抜け出してトリックする千載一遇のチャンスなんだよ。これでもか!ってくらいに殺人チャンスなんだよ。

 

よしやろう。

奥様を蔵に運んで、棚の最上段に寝かせて・・・

 

棚の最上段に 奥様を寝かせる?

いくら泥酔してるからって、乱暴に扱ったら起きるのに?

ゆっくり持ち上げようにも、奥様ってソコソコにぽっちゃり傾向だから軽くないのに?

フィジカル! トリックって最後はフィジカル!

僕は体育会系じゃない。超文化系の職種・陶芸家。なのに求められるフィジカル!

 

 

駄目か。所詮は陶芸家。フィジカルに自信は・・・

 

あるんだよな意外と。

何故なら陶芸家は土のスペシャリスト。つまり土の戦士。

土の戦士はパワータイプ。

日々粘土をこねてこねて鍛え上げられた手指の力。

作品を割らないように運ぶことで身に付いた体幹の安定力。

これにより得られるは、ストップウォッチで鍛えられる筋力の10倍(当社比)

 

できた。

 

翌朝8時。みんなとのっそり起床。

僕の心配する毛利探偵だけ爆睡してて起きない。(なんたってこの人は眠りの小五郎ですから)

これいけるんじゃない?

だって殺害直後に探偵が現場にいたらガッツリ当事者になって推理も捗るだろうけどさ。寝てるなら当事者じゃなくなる。今がほんとにチャンス。

奥様不在を不思議に思った師の流れで僕が奥様に電話をかけるのも自然な流れ。

全てのタイミングが僕のトリックのために切り替わってくれている。

今がチャンス。僕のトリックの総仕上げのTELだ。

 

とうおるるるるるるるる

と、受話器から着信音が鳴っているけど、僕にしか聞こえないから問題なし。

「おかしいな。出ないぞ」とでも言って誤魔化すだけ。

 

と電話をかけた直後に鳴り響く壺の割れる音!

それは奥様が首吊り落下した時に、踏み台に見えるように仕掛けておいた壺の音。

そして毛利探偵のところのコナンくんが先行して向かった先、蔵で発見奥様の首吊り死体。

「まだ首を吊った直後のはずだよ! すぐに下ろせば助かるかもしれない。早くして!」

!?

僕の血の気めっちゃ引いた。確かにその通りだ。首吊りって即死じゃないもんなぁ。

もし万が一、奥様生きてたら・・・大ピンチだ。棚の上に寝かされて首にロープとか、モロに殺人未遂事件。でもって奥様に恨みのあるのって、偽物作らされた僕だけだもの。

頼む・・・死んでてくれ!

 

って、祈ってる時に気付いちゃった。

奥様のふくらはぎから血が垂れてる。しかもそれが奥様を寝かせた棚のところに点々と続いていて、その棚の端に釘が飛び出てる。

うわぁ・・・血痕が犯行現場を案内してる。

絶体絶命大ピンチ。でも気付けて良かった。

今はベストを尽くすのみ。

奥様の死体を血痕に沿って棚の近くに誘導して、血痕を踏み荒らしてどうにかカモフラージュ。

そして祈る。頼むから死んでいてくれ!

「駄目だ。もう死んでる」

歓喜! 奥様死んでくれてた!

めっちゃ安心。ほんと僕ってラッキーに恵まれてる!

 

しかも更なる幸運。毛利探偵が二日酔い中!

「ふざけるな! お前の行くところ行くところ死体の山なんだぞ! わかっとるのか!」

って警察にもめっちゃ叱られてる。

その二日酔い毛利探偵も奥様自殺説を推理してくれてる。

皆も自殺の理由を説明してくれてる。

動機状況とも自殺と判断するに十分なものが揃ってくれている。

一瞬、他殺説も出て来たけど、そこを毛利探偵がフォロー。

「だ~か~ら~自殺ですよ自殺」

 

勝った!

唯一の心配は、例のコナンくんがビー玉で遊んでることだけ。

でもそのビー玉も毛利探偵はトリックの一部だなんて1ミリも思ってなさそう。

「これは自殺! 犯人なんかいねぇんだよ!」

毛利探偵の太鼓判、いただきました!

 

・・・の数秒後

「奥さんは自殺なんかじゃない。殺されたんです。この中にいるある人物にね」

いきなり始まった眠りの小五郎の名推理。唐突すぎじゃない?

どうも、今まで毛利探偵の豪語していた自殺説、犯人を油断させるための嘘だったらしい。

マジか。いや、まさか。大丈夫だよな?

という僕の心配をヨソに咲き乱れる推理の数々。

「ですよね? 昨夜の宴会の途中で大広間から抜け出し、奥さんを蔵まで運び今のトリックを仕掛けた瀬戸隆一さん!」

ちょっとまってちょっとまって毛利さん。

毛利探偵の嘘からの推理ジェットコースター、犯人の心臓に悪い。

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか。名陶芸家殺人事件。
敗因はたった4文字。
「出ないぞ」
なんですよねぇ。
たしかに僕は言いましたよ。電源が切れている携帯に電話した時に、「おかけになった電話は電波の届かない所にいるか、電源が入っていないためかかりません」ってなった時の応対をしなかった。
これだけ。たったこれだけで疑われたのが大失敗。

必要だったなぁ演技力。電話をするっていうシチュエーションをリアルにイメージして演技するべきだったなぁ。
いやぁ、僕も演技力には自信があったんだよ?
何なら動機を語っている時に、まるで僕にだけスポットライトが向けられているみたいに空間が歪むほどの演技力があるんですよ?

演技力の発揮されるタイミングが悪かった。敗因はズバリこれですね。


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黒の組織との再会(コナン)(悪の組織杯出場作品)

※今回はハーメルンにて『胡椒こしょこしょ』様企画の『悪の組織杯』に出した話になります。
ほとんど内容は同じですが、ちょこっとだけ内容を変更しています。
ほんとちょこっとだけ。


今週もはじまりましたRadio【チャンポン】。メインパーソナリティーのPです。

専用端末でしか感知できない当番組は、上司も部下も立場も、電波の上じゃ何も関係ない。無礼講ではっちゃけて行こうぜという番組だ。

今夜も悩めるお酒たちのお便りをアレもコレもチャンポンしていこうぜ!

 

 

まずは最初のお便りだ。RN(ラジオネーム)『こだわリンス』さん。いつもありがとう。

 

『Pさんこんばんは。いつも楽しく聞いています。

このまえ任務でジェットコースターに乗っていたら、目の前のお客さんの首が飛んでしまいました。

噴き出た血がたくさんかかったので着替えなきゃいけなくなって、そのせいで待ち合わせに遅刻してしまいました。

でも遅れたおかげで目撃者を消すことができました。

悪い事もあれば良い事もあるものですね』

 

そうかぁ、そりゃあ災難だったな。みんなも突発的な死体には気を付けような。

こだわリンスさん、もし次に返り血を浴びるようなことがあったら、近くの組員に電話して着替えを貸してもらうといいぜ。

あと着替えを買えそうな店が近くにあったら経費で落ちるから試してみてくれよな!

それじゃあ素敵なお便りをくれたリンスさんには、クリーニング代の経費申請書をプレゼントしておくぜ!

 

 

 

さて次のお便りはRN『黒い恋人募集中』さんだな。お便りありがとう!

 

『Pさんこんばんは。

実は最近、質の悪いストーカーに付きまとわれて困っています。

僕としても悪い事をしたなぁと思う心当たりはあるんですが、周りを巻き込んで追いかけてくるのはちょっと良くないんじゃないかな? って思います。

どうすればやめてもらえるでしょうか?』

 

そうかぁ、そいつはたしかに困るな。

話を聞く限りだと、ストーカーさんとは知り合いなんじゃないかい?

その心当たりはあながち的外れじゃないと思うから、それさえ解消されれば全部解決すると思うぜ。

もし恋人募集中さんに機会があったら、自分の口で謝ってみるといいかもしれないね。

面と向かっては難しいかもなら、電話口でもいいと思うな。

そんな恋人募集中さんには美味しい缶コーヒーをプレゼントしておくぜ。こいつでも飲んで勇気を出してくれよ。

 

 

 

次のお便りはRN『チョコレート大好き』さん。お便りありがとう!

 

『Pさんこんばんは。

今週末、我が家にお客さんがたくさん来ます。

職場の別部署の組員さんに日本画家の先生と、知り合ったばかりの子供たちが遊びに来てくれます。

みんなに喜んで欲しいんですが、どういうおもてなしをすればいいでしょうか?

今のところはケーキを買ってこようかなと思っています』

 

なるほどチョコレートさんは気が利くお酒だね。

たしかにケーキは老若男女みんなが喜んでくれるスイーツだ。

だけどチョコレートケーキにしようかショートケーキにしようか、他のケーキにしようか悩むところだね。色んな種類を用意するのも大変だ。

これはPの推理なんだけど、みんなチョコレートさんがチョコレートが好きだってことを知っているんじゃないかな?

ならチョコレートケーキなんてどうかな? みんなチョコレート味のものが出てくるだろうなって予想しているだろうからね。かなり安全牌だと思うよ。

それじゃあチョコレートさんには銀のナイフをプレゼントします。それでケーキを切ってあげてね。

 

 

さて次のお便りは。おっとRN『女女』さん。

いつもお便りありがとう。

 

『Pさんこんばんは。

推しが可愛くて可愛くて仕方がありません。

もう本当に可愛い。最高。

おっきくても最高だし、ちっさくても最高。

可愛すぎて困ってしまいます。どうしましょう?

P.S. 最近の推しのイチ押しのセリフは唐突な「おしっこ~」です』

 

知らんがな・・・とは言っちゃいけないね。

いやぁババ・・・女女さんの・・・おっと失礼。女女さん溢れる愛。いつもごちそうさまです。

推しのおしっこね。上手いと思うよ。

それじゃあウーマンウーマン・・・じゃなくて女女さんには銀の弾丸をプレゼント。

おっと? ウーマンラッシュアワーさんはこれで銀の弾丸が2発目かな? 5発集めたら金の弾丸と交換だから、これからも頑張って集めてください。

 

 

さて気を取り直して。次のお便りは・・・

おっと、これはこれは。RN『苦労丸』様。御便り恐悦至極に存じます。

 

『Pさんこんばんは。いつも皆のフラストレーション発散に尽力いただき感謝しています。

このあいだ、実家の外壁が全部剥がれてちょっとブルー』

 

おいたわしや!

勿体なき御言葉に感謝述べさせて頂く前の咆哮、申し訳ございません。

すぐに施工業者を手配させていただきます。

嗚呼、なんということ。あの館の優美な御姿が。明日にも修復をば。

 

 

 

さてそろそろお時間となりました。

みんな今夜も付き合ってくれてありがとう。

明日からも任務を頑張っていきましょう。

私も明日は映画監督・酒巻昭を偲ぶ会に行ってきます。

それでは来週もこの時間に、レッツ・チャンポン!

 



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命がけの復活 江戸川コナン銃撃事件

100%の答えを目指して、謎や暗号、オールクリア!
今日の事件は迷宮洞窟。歩きやすいし少し明るい。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



俺は・・・頬骨の出っ張った男。仲間と4人で銀行強盗をしてきた。

が、1人が顔を見られちまったから大変。

でも俺らは焦らない。バラしちまえば問題なし。人の来ない所に隠してしまえば足はつかない。

 

ということで今、俺たちは奥多摩のキャンプ場の近くの鍾乳洞に来ております。

キャンプ場っつってもほぼ森。静かな湖畔があるわけでもなし。コテージがあるわけでもなし。ガチのキャンパーしか来ないような辺境の地。死体が腐っても誰にも迷惑かからない。

しかも鍾乳洞の入り口には【入るな危険】のロープが張ってあるし、ひらがなの「と」の字が彫られた変な石碑が立てられている。怪しさ100レベル。

こんな場所、絶対に誰も来るはずがない。どうぞ死体を隠してくださいと言わんばかりの好立地。

よし。さっさと死体を隠して、特上うな重でも食いに行こうぜ!

 

「ヒィ!」

 

ガキがいた。しかも4人。

親とか大人はいなさそうだが・・・何処のどういう運命の巡り合わせが狂ったら、こんな死体安置洞穴にガキが迷いこんでくるんだ?

一応撃ったが、すぐに隠れられちまったから見失っちまった。

とりあえず俺は見張りのために入口に走ったが、外には出て行ってねぇようだな。

仲間の所に戻ると、ロン毛の仲間が洞窟の奥に続く道で眼鏡を見つけていた。

しかもその近くに乾いてねぇ血痕も。

なるほど、俺の弾が当たってたっつことか。しかもこの血の量なら怪我もデカい。

すばしっこいガキどもの足も遅くなるはず。追いつくのも時間の問題だな。

 

 

と、思っていた矢先に現れたのは分かれ道。

ガキどもはどっちかの道に行ったはずだが・・・どっちだ?

「おい、なんだありゃ?」

仲間のゴリラが分かれ道の片方に、ライト付きの時計が落っこちてたのを見つけた。

ガキどものか? 洒落たもの持ってるなぁ。しかも光量は俺たちの懐中電灯並み。高性能!

だが所詮はガキ。宝の持ち腐れだな。こんなものを落として、俺らにヒントをくれちまうなんてよぉ。

 

「待て。そいつは罠だ。よく考えてみろ。いくらガキでも光っている物を落として気付かねぇわけがねぇ。しかも御丁寧に時計のベルトが締まってやがる。つまりコッチの道を通ったと見せかけて、実はコッチに逃げたというわけだ」

ロン毛の推理が炸裂。

 

ところがどっこい、コッチの道は行き止まり。途中、ガキと出くわしてもねぇ。

ガキに一杯食わされた。時計が無いほうに俺たちが行くと、ガキは既に読んでいたんだ。

こんな物言わぬ時計を使っての心理戦は、鏡を覗き込むようなもの。

相手の心を読んでいるつもりが、自分ならどうするかと言う自己への問い掛けとなり、気付けば、ただ自分の心をなぞっているだけ。

つまり、ロン毛こそ蛇なんだ。

ロン毛は優秀だ。俺が出会った大人達の中じゃ文句無くナンバーワンの切れる男さ。

そんな優秀な男が、まずこの時計に気付かないはずが無い。

気付く。気付くさ。

そして気付いたら、この時計をそのまま単純に信じたりなんかしない。

洞察する。

時計は仕掛けと見る。ガキの作為を見抜く。

当然だよ、優秀なんだから!

優秀だから気付いた後に疑う。

そして、ほくそ笑む。このバカめと!!

そうなればもう自分の勝ちを疑わない。

そりゃあそうさ。なんせ今自分が相手にしているのは、優秀な自分と比べたら話しにならねえクズ! ガキなんだから!

驕るよな。驕るよな優秀だから。

ここまでクズを寄せ付けずに強盗し続けてきたんだから。

その優秀ゆえの驕りを討ったんだよ!!

 

などと、俺の心の中のガキが歓喜しております。

 

「へっへっへ、すぐに引き返して後を追うんだ! ブチ殺してやる!」

ロン毛怒りモード突入。暗闇の中で目を血走らせないで、地味に怖いから。

捜索再開。してると「キャー! うわぁー」と聞こえてきたぜ、ガキの悲鳴が。

近いぞ!

 

と、思ったら今度は道がいっぱい。今度は5つも。

仕方なく俺が分岐地点で見張りをして、他の仲間がかたっぱしからガキどもを探すことになった。

 

「どうして早くそれを言わないんですか!」

 

ガキの声が聞こえてきた。洞窟だから反響して位置が全然分からない。

でもなんとなく、一番奥の方から聞こえてきたような・・・探しに行ってみるか。

 

「おい! ちゃんと見張ってろと言ったろうが!」

 

戻ってきたロン毛に叱られた。結局、最初に探しに行った道にはいなかったみたいだ。

「ガキどもが戻ってくるかもしれねぇから、しっかり見張っとけよ!」

シュン⤵

 

だけどさ・・・その道から出て来たんだよ、ガキども。

「いっせーの!」

でもって石ころを投げてきた。可愛いなぁおい、そんな精一杯の武器で俺を倒そうなんて・・・

キキキキキキ!

石の音に釣られて、たくさんの蝙蝠が俺に襲来! 可愛くねぇ!

しかもその隙にガキどもが最後の道に向かって走って逃げちまった。

しかも出口が見えてきた。ヤバイ!

 

でもそこはロン毛の射撃能力が火を吹いた。銃弾が一番デブのガキの足を掠めて、ガキは大転倒!

俺ん時はちゃんとガキを流血させたんだけどなぁ。俺の勝ち!

「よぉし捕まえたぞ! 二人とも、外に出ずにこっちに来るんだ。ほぉら早くしろ、コイツの脳天ぶち抜くぞ」

ロン毛の脅しにガキども、涙目だけど素直に投降し始めた。

スゲェな。俺だったら友達だろうが見捨てて逃げちまいそうなのに。

イイ子だ。

 

だがその時! 突如として外から光が!

「警察だ。お前たちは完全に包囲されている。銃を捨てて投降しろ! 繰り返す」

初めて聞いた。お前たちは完全に包囲されている。ドラマでしか聞いたことねぇのに、まさか俺が当事者になるとは。

しかも俺、いつの間にか背後に回られてた警官に拘束された。

すげぇ、本当に完全に包囲されてるよ。

 

なのに諦めないのは我らがロン毛。

ガキを人質に強行突破しようとしてる。

「バーロ。オメーの将棋はもう詰んでんだ。じたばたしてんじゃ、ねーよ」

ガキが何かつぶやいた。でもってその瞬間にロン毛が気を失ったようにその場で崩れ落ちた。

一体何が・・・

 

!?

 

ま・・・まさか、は・・・覇王色の!?

 

 

 

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 命がけの復活 江戸川コナン銃撃事件。
もしくは洞窟の探偵団と負傷した名探偵。

いやぁ、敵に回しちゃいけない奴を敵に回したのが敗因だな。近い将来、新世界で名を馳せるレベルのガキを相手にしたんだ。五体満足で逮捕されただけありがたいと思わねぇとな。

にしても俺たちはどこで道を間違えたんだろうな?
銀行強盗した時か? これって成功してもその後でよく死ぬって聞くし。そもそも成功しにくいって聞くし。

そもそもあの鍾乳洞、道に迷って出られなくなって死ぬ奴が多い洞窟なんだよな。
俺たちガキも含めて、よく生きて出口まで到着できたな。運が良かった。
あ、だからそこで運が尽きて俺たち逮捕されたのか。成程。


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出雲神話殺人事件(金田一)

※今回の事件はアニメオリジナル回です。あらかじめご了承ください。


おっす、オラ・・・・・・は今回はやらないわ。

 

私はヤマタノオロチを封印している精霊一族の末裔、坤田友代。

大丈夫よ、熱はないわ。不治の病で余命幾ばくもないけど。

大丈夫、心臓の病気じゃないわ。感染しないから大丈夫。

 

さて今回私は、伝説の出雲王国を調べていた夫の研究成果とその命を奪っていった奴らに復讐をするわ。

そう、私の心に芽生えたヤマタノオロチの声に従ってね!

 

私のやるべきことは2つ。

1つは滝に落ちた夫の遺体を探し出すこと。がっつりスキューバダイビングの装備と経験が無いと無理ゲー。病体では無理ゲー。

これに関しては、おいおい探せるようにする流れを作るわ。

2つめは勿論、夫の仇を取る事よ。

夫を殺した朱雀斎助、青山龍子、白井虎太郎の3人を。因縁の地、出雲の旅館・八雲館でね。

 

まずは3人を呼び寄せなきゃいけないわけだけど、それには意味ありげなメッセージ性を作らなきゃいけないわ。

まぁそのメッセージはホイホイしやすいんだけど・・・普通に私と3人だけがその旅館に行ったら一発で私が犯人ってバレちゃう。

ということで他の精霊の一族の末裔も一緒に呼び寄せるわ。

精霊の一族はみんな、古の方角の呼び方が名前に入っている。私を含めてね。

こうすれば連続殺人が起きたとしても、他に犯人がいて、私を含めた末裔たちは命を狙われる被害者候補っていう形になるわ。

え? ソムリエの知り合い? 味覚障害の? 味がわからないのにソムリエなんてできるの?

 

ということで呼び出すのは右艮真一と巽海なぎさ。それと旅館の主人、玄武徳一は元からいるから大丈夫。

あとは乾。そう、私の娘をね。

苦渋の選択。だけど一人だけ呼ばれていないと自動的に娘が疑われちゃうから仕方がない。

胃が、腹が痛い。見立て殺人って、ポンポン痛くなるわ。

だけど不治の病の苦しみに比べれば屁!

 

 

さて、8人に呼び出し用の手紙を郵送したら、1人目の朱雀をサクッと潜影蛇手。

死ぬ間際の朱雀を見つけた目撃者の証言によると「ヤマタノオロチ」が死に際の一言だったらしいわ。

あのね、殺した私が言うのもなんだけど、もっと犯人に繋がる情報を言ってから死んだ方が良かったんじゃない?

ダイイングメッセージ残さない系の精霊だったのね、朱雀って。

 

 

さて気を取り直して、旅館に到着。

仇の2人や他の末裔たちも来てくれているわ。皆、感謝感激。

でもね、1つ気がかりなことがあるの。

次の殺す予定の青山がうるさい系のオバチャン精霊だったことよ。

トリックのために殺害現場に呼び出してから眠らせて殺そうと思ったんだけど、そこに到着するまでに大声だされたら、殺す前に他のみんなに気付かれちゃうでしょ?

だから眠らせてから青山を運ぶしかない。

でもね、青山ってデb・・・ふくよか系の精霊でもあるの。

重い! 不治の病の私には、重い! でも私頑張る!

 

 

さてトリック開始よ。

この旅館は変わった構造でね、谷を挟んで本館と能の舞台が建っているの。そこへの移動手段は右ルートの歩道と左ルートの回廊だけ。

この左ルートの回廊にはツバメの巣があるから普段は塞がっているわ。

その巣をあらかじめ取り外しできるようにしておく。そうすることで殺害現場に続く道が一本しかないと見せかけて、その道を通った人が誰もいなかったと皆で証言すれば私を含めて皆のアリバイが証明できるのよ。

 

ということで・・・さぁハードスケジュール開始。

1.青山を眠らせる。これは楽勝。睡眠薬って便利。

2.例の歩道と回廊を大きく回って、ツバメの巣を外す。

3.回廊ルートで青山を能の舞台に運ぶ。重ッ!

4.停電を起こす。

5.暗闇の中で玄関にヤマタノオロチ屏風を運んで、みんなを怖がらせる。

6.みんなが怖がっている間に密かに抜け出して、回廊を通って能の舞台に移動。

7.あらかじめ用意しておいた鼓の音源を流す。

 

い、移動距離のトータルが、病の体にはキツいわ。

だけど、もうひと踏ん張りよ。

鼓の音楽に合わせて、ヤマタノオロチの死の舞を踊るの!

 

ポンポポポポポポン、ポンッ!

 

 

私、ちゃんと舞えてる? これ、オロチの舞に見えてるのかしら? 

なんだか不安。こうげきとすばやさが1段階ずつ上がってる感じがしないわ。むしろ、見てくれてる人のMPを下げてる気がするんだけど。

だけどやり通すしかない。この踊りを目撃している人たちが何を思っているか確かめられないけど。

 

そして舞い終わったら舞台に置いておいた屏風裏に隠れて、青山に火をつける!

「ギャアアアアア」

青山の断末魔に呼ばれて、目撃者のみんなが舞台に来る前に、衣装を脱ぎ捨てて回廊から逃げr・・・・

ガシッ

青山に腕掴まれた。逃げ遅れたわ。

おかげで火傷! でもって逃げる暇が無くなったから、咄嗟に歩道側の草むらの影に隠れるしかなくなったわ!

 

だけど辛うじてよかったのが、誰にも私の姿を見られなかったこと。ホッと一安心。

あとは何食わぬ顔で皆と一緒に、“下駄を履いて”歩道から帰るだけ。

 

 

? 何か違和感があるような・・・気のせいね。

 

「あれ? 俺の分の下駄が」

 

 

次の日。警察の捜査がスタート。次の作戦開始よ。

夫の遺体を滝つぼの中から救い出すの。

そのためにお客さんの中にいた小学生の女の子をオロチの衣装で怖がらせて尾行させるわ。

え? その女の子のリクルート理由? なんとなぁく、かな。

経験的なものかしら。小さい子ほど龍に惹かれそうな感じってするじゃない? ワクワクすっぞ、って言いそうよね。

 

ということで女の子に監視されながら、夫の遺体のある滝に頭蓋骨を意味ありげに投げ込む! 

もちろん本物の夫の頭蓋骨のほうを発見してほしいから、こっちの偽物は水に溶けるように砂糖とかで作ったヤツよ!

その後、警察のダイバーさんが夫の遺体を発見してくれたから一安心。

 

 

さぁ、最後の仕上げよ。

 

最後の標的はもちろん白井。

夫の研究成果のように細工して、森の中の洞窟に出雲王国への入り口があるような地図を白井の部屋の前に置く。

あとは地図に釣られてホイホイ来た白井を、洞窟の中でサクッと。

 

「ガハハ。この私がオロチの墓を。そして出雲王国を発見し、日本の考古学会を根底から覆してやる」

 

うるさい。洞窟の中だから反響して、めっちゃうるさい。

早く黙らせてやらなきゃ。

「ギャアアアア」

「白井さん! どうしました!」

白井の悲鳴に呼ばれて、旅館に来ていた他のお客さんが来ちゃったわ。

え? こんな森の中に?

まさかだけど白井・・・まさかだけど・・・自慢するためにそのお客さんを連れてきたの? 歴史的大発見(私の捏造)を?

こういうイレギュラーは困るわ。

だけどそこは慎重に洞窟に隠れて、このお客さんたちをやり過ごして逃げればホラ大丈b・・・

 

 

ばったり、会っちゃったわ。実娘に。

最悪すぎる母娘2人っきりの時間。

 

だけど娘、殺害現場から現れた私の事を警察には黙っていてくれたわ。

黙ってくれていた理由は何となくわかるわ。それにその心の苦しさも。

 

後味の悪い戦いだったけど、仇も討ったし夫の遺体も救ったし。

これで全て終わり・・・

 

 

「ヤマタノオロチを巡る連続して起きた殺人の謎が解けたんだ。朱雀斎助、青山龍子、そして白井虎太郎を殺した犯人は、この中にいる」

 

・・・一般客が何か言い出したわ。

たしかに普通の一般客じゃなかったけど。刑事さんとも知り合いっぽかったし、真っ先に死体を発見しに走ったり、捜査してる現場にグイグイ歩み寄っていたりしていたから。

そんな一般客の子の口から咲き乱れる推理の数々。

 

当たってる。的中しちゃってる。

そしてトドメにこう言ってきたわ。

“その人物は青山龍子が死ぬ前までは右手を使っていたのに、あの事件が起きた後は左手を使っていた”って。

 

はい私です。もう答え出ちゃった。

 

なのに容赦なく推理を続けてきたのが、一般客の金田一くん。

もうやめて。私のリアルライフは残り10くらいよ。

そしてトドメのトドメに、白井が残したダイイングメッセージまで披露してくれちゃったわ。

白井は死の間際に自分の腕時計の針を操作して、犯人の名前を示す方角を作っていたそうなの。

ま・・・まさか白井。死ぬ直前にそんなことを!? 腕時計のカチカチするところをそんな短時間で殺人犯である私に気付かれずに!?

もはや新世界の神の領域。夜の神の月くらいにしかできない芸当!

そしてそんな経緯で明かされてしまう私。せめてさっきの右手の火傷のほうで明かして欲しいわ私のことを・・・

そう。私の方角は南西を意味する坤の名を。

 

「10時52分。それはつまり北西の、乾の方角」

・・・・・・・・・え?

 

ちょっと私の耳大丈夫? いえ、みんな同じように乾の方を見ているわ。

この中で唯一の乾。そう、私の娘を!

 

「そんな、私が犯人だなんて」

娘、めっちゃ怖がっているわ。そりゃそうよ冤罪だもの。

そりゃ私が「違います!」って言って庇わなきゃ大変!

まったく白井、なんてことをしてくれちゃってるのよ!

「どうなんだ金田一!」

「時計の針が指していた本当の時刻は7時35分だったんだ」

 

・・・・・はい?

 

どうやら金田一くん、犯人には自ら名乗り出て欲しかったから、こんな嘘で私を炙り出したみたい。

 

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 出雲神話殺人事件。
いやいやいや。金田一くん。私、この事件の10日後に死んじゃったから、言えなかったけど言いたかったことがたくさんあるわ。

青山を殺した時に自殺説が怪しいと思ってくれたのが、私が金田一君の分の下駄を履いていっちゃったこと、ってのはまだいいわ。
そりゃ温泉旅館あるあるな、食堂や大広間、大浴場に行ったら帰りに自分のスリッパが無い的なハプニングでバレちゃうのは、まだいいわよ!

問題は最後の、私の炙り出し。
要る!?
自分から名乗り出て欲しかった? 名乗り出る隙なんて無かったじゃない!
もっとこう、個人的に呼び出したりとか、個室で自首を促したりとかあったんじゃない?
そりゃ凶悪な殺人犯なら分かるけど、私の体の弱いのお見通しじゃなかったってことかな?

金田一君、警告しておくわ。推理ショーでオーバーキルすることだってあるのよ。


私の方に悪い事があるとすれば、病弱アピールが足りなかったこと。それが私の最大の敗因ね。


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豪華客船連続殺人事件(コナン)

影の黒さと闇の濃さ。切り裂いてくのが推理の光!
今日の事件は人狼ゲーム? 我らの中に犯人が。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



どうもみなさんこんにちはこんばんは。

今日も殺人事件をやっていきたいと思います。

ではメンバーの自己紹介・・・は、僕が一方的に殺していく立場だから、そんなふりをしたらバレちゃうので割愛。

ということでまずは僕、旗本一郎で~す。今日は殺人犯として頑張って殺していきたいとおもいます。

では容疑者と被害者になってもらうメンバーの紹介に移ります。

おじい様の橋本豪蔵。殺していきたいと思いま~す。

その孫で、つまり僕の従妹。夏江さんで~す。絶対に殺しませ~ん。

その旦那になるっつう武。すっごく嫌い。

あとは僕の父さん、母さん、叔父さん。

夏江さんの姉さんの秋江に、その旦那の竜男。

あとは執事の鈴木さん。

今回はこの10人の関係者で殺人事件やっていきますので、よろしくお願いしま~す。

 

ではスタート。

 

舞台はここ、旗本家で貸し切りにしてる豪華客船。

僕が夏江さんを隠れて写生しているところにおじい様が「かなわぬ夢は早く捨てろ」って言ってきたところで、僕の殺意がMAXになりました。

というわけで殺していきます。

念のため僕以外に容疑が向くように、叔父さんの包丁を拝借しておきました。これでサクッとKILL。

しきれませんでした。

部屋の外で刺したはいいけれど、KILLには至らず。部屋の中に逃げられて、扉に鍵まで閉められちゃいました。

これは・・・マズいかも。

でもあれだけ出血してたから、まず扉の向こうで死んでますね。

さて、あとはすぐに死体を発見されないように廊下に飛び散った血を拭き取って。

さらにそこに、さっき拾った花を落としておきます。

この花は武が胸元に飾っていた花。これを落としておけば武に黒の疑いがかかるという僕得展開! ほんと、迂闊すぎるでしょ武。おかげで僕には好都合だけど。

 

よっし、じゃあ目的も達成できたところで夕ご飯だ。

みんなで食堂に集まって夕ご飯。夏江さんは今日たまたま船に乗り合わせた親子連れとお話し中。なんか恋バナしてる。イイ絵だなぁ。

「まぁ、その方どんな人ですの?」

「えーっと、頭がきれてサッカーうまくて、いざという時に頼りになってかっこよくて、お父さんに負けないぐらいの名探偵!」

ん? お父さん? 名探偵?

「あれ、いいませんでした? わたしの父は探偵だって」

!?

!?

!?

ま・・・マジですか。

よりにもよってこのタイミングで・・・

僕が殺人事件を起こそうというタイミングで・・・

 

おじい様の機嫌を悪くする最悪の職業人が乗り込んできていたなんて・・・

 

 

え? 『え、そこ?』だって? 何が?

探偵でしょ? こそこそ人のアラを探す仕事の。

え? 探偵は殺人事件の天敵? いやいや。探偵でしょ? 浮気調査とかする仕事の。

え? 名探偵? 毛利小五郎? 知らないなぁ。

今まで数々の難事件を解決に導いてきた? え? いくつの事件を解決したんですか?

ふむふむ・・・な~んだ、両手の指で数えられる程度じゃないですか。

それなら怖くない!

 

「うひゃあああ」

 

鈴木さんの悲鳴!? どうやら死体発見の通報だな。

そしてみんなでおじい様の部屋の前に行って、死体を見つけたところで。

議論スタート

 

探偵さんが主導のもと、死後硬直の状態から死後40~50分が経過していることが判明。

探偵、優秀すぎでしょ。もと殺人課の刑事だったんだって。ここまで詳しく分かっちゃうのか。

で、1つしかない部屋の鍵を持っている鈴木さんのアリバイが証明されたので、部屋は完全な密室。おじい様の死はセルフであるという結論に。

見つかっていない凶器も尖った氷を使って、おじい様が一族の人間に疑いが向くように仕向けた嫌がらせということに・・・

 

「いや、これは他殺だよ。それも、極めて単純なね」

 

なんか子供が急に意見してきた。だけど推理が冴えてるったら冴えてる。

扉の下に血痕があったことから、ドアが開いている時におじい様は死んで、その後で自分で鍵をかけたという、つじつまの合う正解に至ってしまった。

ゆ、優秀すぎるでしょ、この眼鏡の坊や。

でもってそこをすかさず「さすがおじさん、名推理だね」と探偵に手柄を献上する太鼓持ちっぷり。

坊や、小さいうちからそんな卑屈にならなくていいんだよ。これはキミの手柄だよ。

 

そのせいで、犯行が可能だったのは僕を含む7人だけだという流れに。

でも大丈夫。鈴木さんが例の花を拾ってくれていたから、自然と疑いは武の方に向いたよ。

そこに母さんの追撃の証言。

「あたしゃ、さっきこの部屋の外で偶然聞いちまったんだよ!」

おっ、武の黒証明の証言に期待! 何なに? 母さん。

「この男の正体があの財城勇夫の息子だと聞いた時にはねぇ!」

・・・マジで?

武、ガチで黒い動機あるの? しかも父親の仇とか、超一級の殺害動機じゃん。

「ちがう! オレじゃない!」

って叫んでるけど、誰も信じてない。夏江さんですら泣いて逃げちゃった。

 

まぁそんなこんなで、武は満場一致で追放決定。

船の倉庫に鍵をかけて監禁。

これで僕も一安心。

 

ということで警察の捜査が来る前に、今の内に凶器の包丁は海に捨てちゃおう。

ホイッと捨てるタスクを・・・

「・・・・お前、何してんだ?」

竜男に見られた。

うわ、これは・・・KILLするしかないな。

ということで近くにある鉄パイプで・・・・・・・

鉄パイプ? 豪華客船に? そんなのを甲板に放置したら、あの怖いおじい様に叱られるでしょ。近くにあるわけないじゃん!

 

致し方あるまい。素手でいこうか。

ということでサクッと殺害。僕って意外と殺傷能力の高い男。

 

だけど大ピンチ。せっかく武を容疑者に仕立て上げたのに、ヤツにアリバイがある今だと白証明になってしまう。

ということで急いで倉庫の鍵を開けよう。これで武にも犯行可能だから黒確の状況をキープできるぞ。

 

「きゃああああ」

 

夏江さんの悲鳴!? 死体発見の通報だ。よりにもよって夏江さんが第一発見者かぁ・・・ショック!

そしてみんなで竜男の死体の前に行ったところで、議論スタート!

でもどうせ今回も武が「違う! 俺じゃない!」ってなるんだろうな・・・

と思っていたら武、逃げてくれてました!

やった! 黒確行動!

「もしかしたら彼はあなた達旗本家の一族をすべて、抹殺する気なのかもしれないんですよ!」

探偵さんの度を越えた推理のせいで、武がさらに凶悪な殺人鬼扱い。うわぁ、やったぜぃ!

 

「まだ、犯人が武さんだと決まったわけじゃないよ」

 

!? また坊やの御意見が来たぞ。

どうやら武の倉庫の鍵が壊れていなかった以上、外から鍵を開けた人間がいる。

共犯者がいるってことだ、ってなったぞ。

 

うん。たしかにそうなるよね。

しかも今回も僕を含めてアリバイがない。

そっから黒情報の暴露合戦がスタートしちゃった。

母さんが秋江の浮気情報を流したり、秋江は母さんの遺産狙いの情報を。

僕がおじい様や竜男に馬鹿にされていたことも、父さんが解放されたがっていた情報まで。

もう泥仕合。胃が痛い。

でも今は胃薬よりも、僕の白確が欲しい。

 

ということで次のタスクをやっていきたいと思います。

まずはトイレに行くフリをして、配電盤に時限装置を設置。時間になったら自動的にブレーカーが落ちるようにして。

次に叔父さん2本目の包丁を盗んで。

停電したら僕の足に包丁をグサッと刺して、武に刺されたと証言すれば・・・

いや、停電中の視界を考えないと。

「とにかく真っ暗で何も見えなかったんだ」って言っておかないと。

僕のセルフリポートだってバレないように。

それにしても、足を刺すとめっちゃ痛い。泣きたくなるくらい痛い。もっと手加減すればよかった。

 

 

ということで武が無差別殺人鬼になったところで・・・・翌朝。

なんか探偵さんに皆で呼ばれた。夏江さんの部屋に。

 

「やっとわかったんですよ。この船で一連の事件を巻き起こした犯人がね」

いやいや。何言ってんの探偵さん。犯人は武だって満場一致じゃない?

 

そんな僕の想いをガン無視して始まる、毛利小五郎の推理ショー。

咲き乱れる推理が当たってるったら当たってる。しかも武がこの部屋に隠れてた。

 

「豪蔵氏を殺したのも、竜男さんを殺したのも一郎君、君だという事ですよ!」

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

Ichiro was Impostor

 




いかがでしたでしょうか? 豪華客船連続殺人事件。

いやいや。元からあんまり計画性が弱めだったとは僕も思うけど、事件起こした後で不測の事態が起きすぎ。
その対処が全部裏目。僕の白証明が全部裏目。もうさ、欲しいよ殺人事件を起こした後の行動マニュアル。


でもさ、思うんだ。
武、夏江さんのこと愛してた?
父親の仇のところの娘さんと結婚とか。本気で愛してた?
まぁ愛してなかったわけじゃないと思うよ。だって夏江ってイイ子だから本気で惚れるのも理解できる。
だけどさ、1割くらいは敵討ちの気持ちあるでしょ?
今日は僕が殺したけど、これ放置してたら数年後には武がおじい様のこと殺す事件が起きる可能性あるでしょ。
あの探偵さんが推理で追い詰めて、「あの男のせいで20年前、俺の家族は崩壊したんだ!」とかいう動機をゲロったりするパターン。
簡単に想像できるんだけど。めっちゃありそうだよね。


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恋と推理の剣道大会(コナン)(リクエスト)

秋風さわやか夏バテ飛ばして、粋でイナセな推理ショー!
今日の事件は剣道大会。でも最強は空手かな。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



みなさん公平にジャッジしてますか? 審判は大事。坂東は英二。

私は剣道大会の審判をやっている法村稔司。2年前に息子が剣道の試合で勝利の嬉しさに思わずルール違反のガッツポーズをしてしまい、審判の抜谷さんに反則を取られたことを苦に自殺しました。

それは仕方ない。ルール違反なんだから。

なのに昨日、抜谷さんは審判していた試合でガッツポーズをした子がいたのに、同じ関西人だからって贔屓して違反を取らなかった。

殺すしかないでしょ。

 

え? 「話が飛躍しすぎていないか」って? 「それだけで殺すのか」って?

「違反を指摘するのは仕事なんだし、依怙贔屓をしたからって殺すのはおかしい」って?

「誤解や違反見逃しを理由に殺されていたら、警察や探偵は命がいくつあっても足りない。『あなたが犯人なんじゃないか?』って毎日のように言わなきゃいけない身にもなってみろ」って?

 

うるさい!

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!

 

ということでサクッと抜谷さんを殺してきました。舞台は剣道大会の会場の外にあるトイレ前の芝生エリア。

あとはトイレで返り血のついた胴着を着替えて、凶器の竹を竹刀袋に入れて立ち去るだk

「あの。今、何かうめき声のような」

・・・・普通に目撃者いた。殺すのに夢中になりすぎて、おじいちゃんの目の前で殺人しちゃってた。

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

いかがでしたでしょうか? 恋と推理の剣道大会。

恋? 推理? なんでこんな事件名?

 

ってここで終わってなるものか!

私は逃げてみせる。このおじいちゃんを殺してでも!

まずは歩み寄って間合いをつめて・・・

「あのー、どうかされましたか?」

おじいちゃん、もしかして目が見えないの? 白杖持ってるし、盲目だよね?

確かにじっちゃんは目撃者。しかし暗闇の状態異常。

ギリか・・・!?

盲目ならギリいけるか!?

 

そして舞台は・・・トイレへ・・・!!

 

まずは胴着を脱いで・・・

ガチャ

誰か女子トイレに入ってきた!? 慎重に着替えないと音を怪しまれるな・・・

 

???

 

トイレに入ってきた人がいるのか? トイレの前に抜谷さんの死体があるのに?

よっぽどトイレ急いで駆け込んで、死体に気付かなかったのか?

 

ガチャ

今度は男子トイレに誰か入ってきた。

また? そんなにみんな漏れそうなの?

まぁいいか。早く着替えてトイレから出よう。

 

と思っていたら、もうトイレの前に人集まってた。これ出てったら一発アウトのヤツ。

仕方ない。せめて凶器の竹だけでも元の竹刀の形に戻して隠さなければ。ゴリゴリゴリと。

 

ファンファン

パトカー来た。早すぎ。

え? でも何でパトカー? 救急車じゃなくて?

まさか一目見ただけで血だらけの抜谷さんが死んでるってわかっちゃったの?

つまり救急車じゃなく警察を呼んだ第一発見者。あなたが犯人だ!

いや犯人は私だ。

何でだろうな? 人間の生命反応を見れる人が通りすがったのか?

でも仕方ない。ここは覚悟を決めて、普通にトイレが済んだ一般人として出るしかない。

「ん? 何ですか?」

「トイレなら空いてるっスよ」

「トイレットペーパーが切れ気味だから、気を付けた方がいいけど」

私と同じタイミングで他のトイレ利用客も出て来た。すごくタイミング合わさったな。

って、この2人どんだけトイレ長いんだよ!

通報されてから警察が到着するのが早すぎるわけじゃない。普通に私が竹を削りきるまでの時間が経過してるのに。

そんな2人と一緒のタイミングで出て来た私もトイレ長かったことになっちゃうでしょうが!

容疑者は私たち3人に絞られているわけだから、トイレが長いことに明確な理由が必要になる。

つまりこれは、便意の強い奴が勝つ。そういう勝負なのだ!

 

そして始まる事情聴取。

「このオジサンのスマホにお姉さんと一緒に写ってる写真があったよ」

女子トイレから出て来た人、抜谷さんが言い寄られて困ってる元教え子だった。

奥さんと別れてくれなきゃ死ぬだの殺すだのあったようだ。

だから関わり合いになりたくなくて、通報せずに死体を放置してたらしい。

 

「私、見たのよ!」

男子トイレに来た男も、抜谷さんとモメてたらしい。女の子の前で恥かかされて。

 

ちなみに私も昨日の抜谷さんに殺意芽生えた時のことを目撃されてた。

「つまり3人共、抜谷さんを殺す動機はそれ相応にあるってワケね」

刑事さんの言うように、私たち3人の容疑者は偶然にも抜谷さんと接点があった。

偶然って怖ッ! あと思ったけど、私以外の2人のトラブルもそこそこ強ッ!

 

さ~てあとはこの2人にどうやって罪を着せるかってところだけど、どうしよう?

なんて私が悩んでいる所に、登場さっきの盲目おじいちゃん!

目撃情報ならぬ耳撃情報。犯人の声を聞いているって。

おじいちゃんが聞いた声の主は抜谷さんでした。そりゃそうだ。私は黙って殺したんだから。

だけど奇妙なのが、抜谷さんは死ぬ前にこう言っていたらしいんだ。

「カッターナイフが血で汚れて切れなくなったから、代わりのヤツを持ってきてくれ」って。

内容的におそらく電話の相手にそう言っていたらしいんだけど、最終履歴は抜谷さんの奥さん。

?????

え? 抜谷さん、ナイフで誰か切ったの? 私が殺した時、代わりのナイフを待ってるところだったの? しかも奥さんがナイフを持ってくるところだったの?

ヤバっ。下手したら私、ナイフを持った抜谷さんに返り討ちにあっていたかもしれないってことか。私、抜谷さんに剣道で勝ったこと無いから危なかった。

 

って刑事さん、こんな捜査してる場合じゃないぞ!

誰か抜谷さん以外にナイフで切られて出血した人がいるってことだ!

大会を中止しようとか言ってる場合じゃないぞ!

でもって目撃者の女の子の友達の高校生、大会中止は困るとか言ってる場合じゃないぞ!

優勝してアイツに言わなきゃいけないことがあるとか、そういう場合じゃないぞ!

なんか色恋沙汰が絡んでるっぽい雰囲気を出してる場合じゃないぞ!

でもって別の友達と「ここで片、付けようやないか」とか言ってる場合じゃないぞ!

有り難山のホトトギスとか、ここで会うたが百年目とか、会いに北野の天満宮とか言って、剣道の試合を始めてる場合じゃないぞ! いいぞもっとやれ! 殺害現場を荒らして、もしかしたらあるかもしれない『私が犯人』って証拠をぶっ壊せ!

 

と期待してたけど、普通に刑事さんが止めてた。

 

そして普通に始まる事情聴取。私たちの荷物に凶器のカッターナイフが無いか調べ始めた。

ところで聞いていい? いつの間にカッターナイフが凶器だってなってるの?

あと、いつの間に例の別の友達が、証拠品の血まみれの胴着を着てるの?

 

でもって例の色恋沙汰少年、なんでいきなり「おい! 被害者の奥さん、こっち向こうてる言うてたけど、着替え届けに来るんちゃうか?」って叫んだかと思ったら、目撃者の小さな子供に向かって『もろたで』って言いたげに笑ってるの?

 

謎だ。この事件、犯人である私にも分からない謎で溢れすぎている。

 

 

「ちょー待て。10分あったらオツリが来るで」

色恋沙汰少年が何か言い始めた。まるで犯人が分かったみたいなノリで。

「そんならオレも分かったで!」

友達の方も何か言い始めた。でもって真犯人は盲目のおじいちゃんが座頭市みたいにして殺したって推理しはじめた。

バカなのか?

そんな迷推理を聞いてた子供が、抜谷さんの教え子が抜谷さんに毒を盛ろうとしていたり、トラブルになってた男のウソを見抜いたりし始めたぞ?

頭良すぎないか? キミ、本当に子供?

だけどさすがに子供だから、私が犯人だというところにまではたどり着けなかったみたいだね。

これで一安心。

 

「こん中でそないな事する必要があるのは・・・法村稔司さん、アンタしかおれへんよなァ」

何か色恋沙汰少年が急に出てきた。

そして抜谷さんが言っていたカッターの話が、カッターシャツのことだってことを言い当てて、凶器が竹刀だから血液反応が出るはずだって言い当てた。

 

 

何この急展開。やっつけ仕事みたいに私のトリックが解かれて。

 

嘘だァーーーーー!!!

ゴッ!

 

 




いかがでしたでしょうか? 恋と推理の剣道大会。
やっと伏線回収できましたね。

にしても色恋沙汰少年、聞いてると推理の半分以上が子供の推理に便乗しただけじゃないかい? 
彼が言い当てたのって、抜谷さんの関西弁だけだし。関西人ならわかって当たり前の内容だし。消去法で私に来ただけっぽいし。

あと例のガッツポーズ、例の友達のところの後輩で、はみ出たお守りを握りしめていただけらしいんだ。
え? それはそれでグレーなところじゃない? はみ出たお守りが竹刀に当たって引っ掛かったり、落ちて踏んだら滑ったりとか。反則にしてもいい事案じゃない? 私なら反則にする。反則とらなくてもイイって言えなくもないけど。
まぁそのあたりルール曖昧だから。



ちなみに例の色恋沙汰少年、告白うまくいったかな?
もうあれから3年は経ってるから、そろそろだよね?
さすがに3年も何も進展ないとか非合理的すぎるよね?
ね?






ちなみに私の前歯、折れてた。 いつの間に?


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雪山山荘殺人事件(コナン)

隠した手相は導火線、推理に火がつけ環状線。
今日の事件はコンビニ関係。妙な買い物したら怪しい。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



中原香織、お医者さんよ。

私は仇を討つために医者になったわ。

そう、小さい頃に大腸ガンで死んだ父の仇、大腸ガンを殺すためにね。

 

そして6年の歳月をかけて、ついにガンをサクッとする方法を開発したの!

 

 

 

いかがでしたでしょうか? 雪山山荘殺人事件。

今回は私が犯人だけど、サクッとする相手が病気だから、探偵も警察も私を捕まえることはできない。

全世界のみんなが私の味方。

シリーズ初! 謎を全て解いて、祖父の名を賭ける必要も無くて、真実が1つだろうが2つだろうが関係ない犯人。それが私よ!

 

 

 

 

 

 

と思っていたら、研究の成果全部教授に盗まれた。

しかも私の物だって主張できるタイミングも無くしたし、教授が発表したほうが世間にも認知されやすくなって多くの人を救える・・・って。

大山ぁああああ ふざけるなぁあああ!

世の中腐ってやがる! いるんだよなぁ、平気で仲間の養分を吸い取るヒルみてぇな奴が。

 

まったく、ヤツは自分のやったことがどういう結果を生むか、まるで分かってない。

他人の成果を盗めば盗むほど、ヤツは自分で自分の首を絞めるのよ。

だからこれぐらいは許してやろうじゃないか。

寛容な精神で。

 

 

 

ということで行きましょうか雪山山荘。

ここで大山が日課のメロドラマ鑑賞をしている間に、肺に穴を開けてやるわ。

ヤツの日課は好都合。ドラマの生放送視聴を欠かさないし、終わった後も巻き戻して夢中。

しかも他人に泣き顔を見られないように完全シャットアウト。

殺してくれって言っているようなもの。

その間に強盗の仕業に見せかけて殺すの。

 

まぁ一応、私に疑いの目が向けられてもいいようにアリバイも確保しつつね。

だって例の研究の件でトラブったら私に殺人の動機があるって思われちゃうでしょ?

 

ということで、車で往復40分はかかるコンビニに行って、おつまみを買ってきたことにするわ。

ここのコンビニは10時には閉まっちゃうから、犯行予定時刻に合わせればアリバイが成立するの。

あとは「おつまみを買い忘れた」って言って山荘を抜け出すだけ。その時にみんなからリクエストされたモノを揃えれば、あたかもちゃんとコンビニで買ってきたようにみせかけられるでしょ?

まぁこんなものは予防線。メインのトリックじゃないけどね。

念には念を。

 

だけどその予防線・・・出費と手間がけっこうな負担。

商品の買い占めもそうだけど、一度に爆買いしたらさすがに店員さんの印象に残っちゃうでしょ?

だから分散。1つの店で買い尽くさないように、道中の色んなお店でチョイ買い。

その前に件の最寄りのコンビニの品揃えをチェックしておく。ここの取扱商品だけを買う。

選別されたラインナップの中から、みんなのリクエストに応えて買い物アリバイを用意する。

うん。車の中がほぼコンビニ化。サラダだけ売り切れてたけどね。

 

 

 

そして本番。

山荘に大山と他の先生たちが集まって恒例の飲み会がスタート。

特別ゲストに大山の知人の親子連れが参加していたけど、問題なし!

所詮はおじさんと高校生くらいの娘さんと小学生くらいの息子さん。

私のおつまみ軍団なら、このくらいのゲストの要望にはいくらでもお応えできる!

 

「いっけな~い、お酒のおつまみ買うの忘れてた」

 

飲み会の最中にさりげなくトリックスタート。みんなのリクエストを聞いて、車に乗り込んで出発進行。

でもここでハプニング。これから殺しに行くぞってところでちょっとブルーに。車の暖房でアイスが溶けちゃった。まぁいいわ、アイスなんてどうせ大山のリクエストだから。

 

ということで山荘に戻って窓ガラスを割って侵入して、大山を殴って縄で縛って肺に穴をサクッと。

あとは強盗の仕業に見せかけるために金庫をガリガリ。

あとは大山を放置して吹雪の中を脱出。

 

 

さ~てあとは時間を見計らってから山荘に戻って、何食わぬ顔で過ごすだけ。

私の帰還とほぼ同じタイミングで、ナイタースキーに言っていた飛田先生も帰還。

吹雪いてきたから途中で帰ってきたんだって。良かったわね、雪で道が塞がらなくて。

 

 

 

・・・・・・・危なかったぁ!

コンビニまでの道も塞がってたら、私めっちゃ黒かったぁ。

どうやって買い物してきたの!? って思われるところだったわ。

だけどどうにかクリア。

幸運。幸運に恵まれているわ。後で反動が怖いくらい。

 

 

「え、毛利小五郎?」「よく新聞に載ってる、あの?」「はい、父は探偵なんです」

 

 

・・・・・・・反動早ッ!

どうも大山の知人のおじさん、名探偵の毛利小五郎らしいわ。

え? 想定外にも程があるでしょ・・・

この山荘の中に死体があります。

飲み会の最中、みんな程よく酔っていらっしゃって、毛利探偵に至っては泥酔しているけど・・

私だけ1ミリも酔えない。アルコールが仕事してない。

不安感って血中アルコール濃度に勝るのね。

 

それから夜が更けていくことしばらくして、毛利さんのところの息子さんが「あのおじさん遅すぎると思うけど」って言ってくれたわ。

自分から言い出せないから本当なら待望のセリフなんだけど、探偵がいる今はある意味死刑宣告。

覚悟を決めるしかない。

ワンチャン、今の毛利探偵は泥酔の上に爆睡中。

知ってる? 飲酒運転も危ないけど、居眠り運転ってその何倍も危ないの。

ってことは飲酒&居眠り推理の探偵は正常運転じゃない・・・って説!

イケる。大丈夫よ香織! 自分を、トリックを信じるの!

 

 

そして大山の死体を発見。悲鳴を上げて皆を呼んd・・・

 

 

あれれ~ テーブルクロスがおかしいぞ~

まるで将棋盤みたい。でもってライターが香車の位置にあるぞ~。

私の名前も香織。うん、これダイイングメッセージ。

うわ~、危なかったぁ! でも気付いちゃったから大丈夫。急いで弾き飛ばしてメッセージをナイナイ。

皆が駆けつけるギリギリのところで、腰を抜かしたフリができたわ。

 

さらに幸運がもう1個。毛利探偵が泥酔してるわ。

私たちの事を全く疑ってないから、私たちに検死をまかせっきりだし。

4人で割り出した死亡推定時刻は午後9時半から10時。うん、私知ってる。だって死亡させた本人だもの。

あとは現場の状況を見た毛利探偵が導き出した結論は、金目当て強盗による殺人。うん、私のイメージした通り!

 

「わー、このおじさんすごい時計してる。金ぴかだ!」

その時、息子さんが急に大山の死体を触り始めたわ。

え? 名探偵の躾どうなってんの? 殺人現場は遊び場じゃないのよ?

そもそも皆、気付いて。毛利探偵の言う通りなら、この山荘の近くに凶器を持った殺人鬼がいるってことよ! 危機感!

でも皆がそんなことに気付かない間に、息子さんは自由な話を続けたわ。

「ねー、このおじさん縛られてたんでしょ? だったらこの金時計、犯人に盗られてないなんて超ラッキーじゃない?」

 

・・・・・・・ごもっとも。

 

「妙だな。金目当ての犯人がそんな時計を見逃すはずがない。まさか犯人は」

毛利探偵も気づいちゃった!? 私、一気に大ピンチ。

 

「いやー随分マヌケな奴だったんスな」

マヌケ認定いただきました。

はい。私はマヌケです。

 

「でもこの犯人、度胸の据わった人だと思わない? 窓の外の足跡を見てよ。一直線に迷わずこの部屋に入ってきてるでしょ?」

息子さん、まだ続く?

この子の言うこと、また当たりそうで怖いんですけど。

 

「僕だったら中に誰かいると怖いから、窓の外をうろついて、中の様子をしっかり確かめてから入るけどね」

マヌケpart2

さすがにこの指摘に泥酔の毛利探偵も気づいたみたい。

「つまり犯人はあなたがた4人の中にいることになります」

はい。います。

マヌケな犯人、ここにいます。

強盗の仕業に見せかけた殺害方法、数分で見抜かれた犯人ここにいます。

 

 

まさかこんな形で予防線のほうのアリバイ工作が仕事するなんて思わなかったわ。

 

ただもう1つ想定外が発生よ。

4人の中で金澤先生だけアリバイが曖昧だったの。

毛利探偵の疑いの目も自然と無罪の金澤先生に向けられてしまったわ。

 

ど、どうしよう。私のせいで金澤先生が殺人鬼扱い。

どうにかして、どうにかして犯人が外部犯だっていう方向に誘導しなきゃ・・・

なのになにも思い浮かばない私! 毛利探偵もそういうムーブに戻らない!

 

「ねーねーおじさん、ソファーの上に変なものが」

そんな私のパニックを尻目に、またもや自由な息子さん。やめて息子さん。嫌な予感しかしない。

「黙ってろクソガキ!」

毛利探偵もご立腹。怒り方の民度がハザードしてるのが気になるけど。

 

 

「大山先生を刺殺した犯人が、たった今分かったんだよ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・ええええええええ?

息子さんを叱った瞬間に、何がどうしてどう転んで分かっちゃったの!?

 

 

 

そしてそこから急に咲き乱れる毛利探偵の名推理。

大山のダイイングメッセージも言い当ててきたわ。

どうして!? 私ずっと見てたけど、毛利探偵微塵もテーブルクロスのほうに行ってないじゃない! 行ってたの、息子さんだけよ!?

 

 

でもまだ大丈夫。だってダイイングメッセージはあくまでダイイングメッセージ。

偶然、その位置に物が配置されていたってだけの可能性も。

 

「だったらどうして動かしたりしたんですか?」

 

テーブルクロスやライターの血の跡が乾いていたのが決定打だったわ。

犯行後にダイイングメッセージに気付いた犯人しか、それを隠滅する理由が無い。

理にかなっているわ。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

 




今度こそいかがでしたでしょうか。雪山山荘殺人事件。

ダイイングメッセージの対処法、間違えたぁ!
でも対処しなかったらしなかったで負けでしょ?
どのみち詰みだったのよ。ハメ技よ。
みなさん残したほうがいいわよ。
もし自分が殺されたら死ぬ前に最後の力を振り絞って、ダイイングメッセージ!

それにしてもコンビニのアイスが売り切れていたから疑うなんて。探偵って観察力バケモノすぎない?
刑務所で知り合った人も「私の部下もコンビニに行った時に1000円札でタバコを買ったら、子供に変な目で見られたけど。その日のうちに私たちも捕まっちゃったわ」って言ってたけど。
いつの間に日本はコンビニ客に優しくない世界になったのかしら?
居心地悪い買い物、嫌ぁねぇ


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黒の組織から来た女 大学教授殺人事件(特別編)

私は高校生相当の年齢の科学者、宮野志保。
幼馴染とかいないし遊園地には縁がないけれど、黒ずくめの男たちと怪しげな薬を作っていた。
薬を作るのに夢中になっていた私は、お姉ちゃんが殺された後で組織に反発した。
処刑される前に毒薬を飲んで、気が付いたら

体が縮んでしまっていた!

宮野志保の居場所が奴らにバレたら周りの人間も巻き込んで殺されてしまう。
拾ってくれた阿笠博士に正体を隠すための名前を付けてもらった私は
「灰原哀」
と名乗り、奴らの情報を得るために父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ工藤新一と接触することにしたわ。



ということで、私は今から米花小学校に灰原哀として転校するわ。

入学のためには戸籍やら色々と偽造しなきゃいけないんだけど、阿笠博士が全部やってくれた。博士、あなた偽装工作に手慣れすぎじゃない? 組織からスカウト来るわよ。

「今日から皆と勉強することになった灰原哀さんです。みんな仲良くしてあげてね」

「は~い」

子供たちのいいお返事に歓迎されたけど、例の工藤君は・・・ノリが悪いわね。

本当に彼がお姉ちゃんが殺された事件に関わっているのかしら? 今日はその辺りを見極めたいわ。

 

とは思ったけど、所詮は平和な小学校。工藤君が子供のフリが上手だってことくらいしか分からないまま下校の時間になっちゃったわ。

工藤君の目の前で子供たちから「一緒に帰ろ」とか「家は何処なんですか?」とか聞かれたから、博士の住所を言ってあげたけど工藤君はピンときてないみたい。ボケすぎでしょ。あなたの隣の家よ? ダメダメじゃない?

一応、彼は子供たちと一緒に少年探偵団ってのをやってて、下駄箱を受付にして学校の子供たちから依頼を受けているらしいけど・・・小学生に交じって何やってるのよこの人。

今日も依頼は来たみたいだけど、どうせ『迷子になった猫を探して』とかのレベルでしょ?

流されて私もついていったけど、やっぱり依頼は「うちのにーちゃんが急にいなくなった」だったわ。

 

失敬。高校生のお兄さんの失踪だったわ。普通に警察案件。

警察も既に対応済みだったし。子供の出る幕じゃない。

工藤君もそれなりの形で捜査を始めたけど、まぁ普通レベル。

分かったことはお兄さんが描いて町の展覧会に出した『夏目漱石の肖像画』を、黒ずくめの服装の女が褒めていたってことくらい。

「それいつだ! いつ会ったんだその女と!」「女の他に黒い服の男はいたか?」

工藤君、急に血相を変えて子供に問い詰め始めたわ。

まさか

まさかのまさかだけど・・・

その黒ずくめの服装の人が、組織の人間だと推理したの?

いやいやいや。ないないない。組織の人間が町の展覧会なんかに何の用事で行くのよ。行ったとしても、素人の絵を褒めたりするガラじゃないわ。

 

でも工藤君はその線で捜査を開始。お兄さんが行きそうな場所で聞き込みを始めたけど、この程度のことならもうとっくに警察がやってるんじゃない?

あげくの果てにコンビニで普通に買い物してる人を見て「千円札でタバコ一個。妙だな」って言い始めたわ。

店の前に自販機があるのに、わざわざレジに並んだから怪しいらしいけど。ゴメンちょっと何言ってるかわからない。

あなた疲れてきたんでしょ。糖分摂取しなさい。

『欲しい銘柄が売り切れてた』とか『惰性でレジに並んじゃった』とか『お気に入りの店員さんに声をかけたかった』とか。可能性は無限よ。

なのに工藤君、何を思ったかレジに手を突っ込んで、さっきの千円札を掴んだの。奇行に子供たちも唖然。

 

「警察に電話して。それ偽札だよ」

 

ファ!? 偽札を当てた!? 根拠は乏しすぎるけど、探偵の悪運で引き当てたの!?

そして偽札犯の尾行開始。いえ、まだ確定じゃないわね。偶然、あの人は気付かずに偽札を使っちゃった可能性もある。

でも工藤君の推理は止まらない。お兄さんが夏目漱石の絵を描くのが得意だから、誘拐されて偽札づくりを手伝わされているって結論に至ったわ。

「あの男がそうだとはまだ言えないけど、ひょっとかすると俺の体を薬で小さくしたあの黒ずくめの・・・」

子供たちの前で心の声ポロリ。あなた、阿笠博士からの助言で正体を隠すことにしたんじゃないの? 私、がっつり聞いちゃったんですけど。

あと一ついい?

無い。100%無い。

スケールが小さすぎる。千円札で儲けるとか。無い。

あなた、小さくなったその日に見てるんでしょ? ケース一杯の万札をウォッカが脅し取ってるところ。組織、作るより奪う派よ。

 

その後、工藤君は私たちを危険な事件に関わらせるわけにいかないって考えたみたいで、私たちを撒いて捜査を続行。もちろんその程度、私の観察力でお見通し。

すっかり夜になっちゃった頃に、工藤君が不動産屋さんで聞き込みしているところに私たちも合流。

駅前の交番横にある新聞社の女社長が、黒ずくめの服装の女だってことを突き止めたわ。

工藤君は「絶対にそこから動くんじゃねぇぞ!」って言って、たぶん警察に通報しに行ったわ。

で、子供たちは言う事を聞かずに新聞社に潜入開始。私も同伴。

そうしたら見事!

『何だここは、まるで造幣局ではないか。ありゃ日本の札、これは偽札だ。お兄さんを探しててとんでもないものを見つけてしまった。どうしよう』状態よ。

 

「ダルマと一緒さ」

というところで例の黒ずくめの服装の女が登場。うん、やっぱり違った。組織の人間のことなら私、気配でわかるもの。

だけど拳銃で脅されちゃったから私たちピンチ。拘束してお兄さんに仕事をさせるために脅す材料にするみたい。

「バイバイ、お嬢ちゃん」って言ってるけど、まぁ撃つ気はないわね。隣、交番だし。銃声で一発アウト。

どうせ偽札を捌き終わるまで監禁って流れでしょ。

だけど残念。工藤君が警察に通報してるし、私たちさっき交番のお巡りさんにいってきますしたばかりだから。時間の問題。

 

「ダルマと一緒だと? 笑わせるな」

「誰だいアンタ!」

「江戸川コナン、探偵さ」

女の拳銃を蹴り飛ばして、子供たちのピンチを救った工藤君、カッコよく登場。

阿笠博士の発明、時計型麻酔銃とキック力増強シューズで。

犯人たちを一網打尽してくれたから結果オーライだけど、ふつう拳銃を蹴り飛ばす? 暴発したらどうするのよ。

最期のトドメは拳銃が足元に転がってきた私ね。

 

Ban!!!

 

「は、灰原・・・さん?」

女を掠めて撃った私の銃の腕前に、子供たちも工藤君も唖然。これにて一件落着。少年探偵団大勝利。警察も到着。

連行される女に向かって、工藤君は勝ち誇って告げたわ。

「こんなしょぼいヤマで足がつくとはドジったな。まぁ警察で洗いざらい吐くんだな。あんたらのバックにある大きな組織のことを」

だから違うって。女も「組織?」ってキョトン顔でしょ? 今気づきなさいよ。

「とぼけんな。あんたにもついてんだろ? ジンやウォッカみてぇなコードネームが」

警察の前で工藤君も迂闊すぎ。もしこの中に組織の関係者がいたらアナタ、正体バレるわよ。

まぁ組織の関係者、私だけだけど。

「悪いけど私ずいぶん前にお酒とは縁を切ったのよ」

当然、組織と無関係の女の口から出たのはただの禁酒継続中宣言。

はい。ここで工藤君ようやく早とちりに気付きましたとさ。

めでたしめでたし。

といっても私、発砲したことを警部さんにめっちゃ叱られたけど。そこは泣き真似で返り討ち。

涙は女の武器っていうけど、女児の涙はもはや兵器!

まぁリアル武器である拳銃の扱いは、ハワイで親父に習・・・じゃなくて、組織で構成員に習ったなんて言えないわね。

 

 

その後、泣き真似のままの私を工藤君はお守りして博士の家へ。

だけど途中で私を放置して帰ろうとしたから、薄情者の彼にはここでネタバラシ。

「APTX4869。これ、何だか分かる? あなたが飲まされた薬の名称よ」

まだ気付かない工藤君。

「薬品名は間違っていないはずよ。組織に命じられて私が作った薬だから」

またしても何も気付かない工藤新一君(16)

薬の効果を説明してようやく「灰原、まさか」って気付いてくれた。

「灰原じゃないわ。シェリー。これが私のコードネーム。どう、驚いた? 工藤新一君」

またしても気付いていない、のろまな探偵さん(6)。私が住所を言ってようやく博士の家のことに気付いたわ。

博士に電話し始めたけど、博士最近パソコン通信にこってるから電話回線塞ぎっぱなしなのよね。

面白くなってきたから「無駄よ。何度かけても話し中。受話器が外れたまま、彼はとることができないのよ。なぜなら、もうこの世にはいないんだもの」って煽ってあげたわ。

工藤君をからかうの楽しい。発散されていくストレス。

博士の家に確かめに行った工藤君を追いかけて私もゆっくり帰宅。

「ただいま」「おかえり哀くん」

ここでネタバラシ。

 

真実を伝えたら、若干不安な常識力の工藤君でも、厄介者の私を追い出すべきじゃないって結論付けてくれたわ。

ついでにこの時、私が思い出した薬のデータのフロッピーを探しに行こうって即決してくれたわ。

今のところ、決断力は◎。だけど推理力は若干△。

だってここまで話したのに、彼の目の前で死んだ宮野明美の妹が私だって気付かないんだもの。やっぱりさっきのコンビニの的中はマグレだったのね。

ということでいざフロッピー回収に静岡へ。

 

工藤君の子供のふりを見せられてから3時間後。

広田正巳教授の家に到着。したけど、広田教授死んでた。

事故死っぽいわ。本棚が倒れた拍子に転んで、置物に後頭部をぶつけて。その証拠に部屋には鍵がかかっていて、1つしかない鍵は散乱していたノートの下にあったんだもの。

「誰かに殺されたのかもしれないよ。事故に見せかけてね」

工藤君が提唱、密室殺人説。落ちていた電話の受話器が外れていなかったのが理由。

たしかに妙だけど・・・偶然って可能性もあるんじゃない?

そもそも密室なんだし。

 

だけど刑事さんも工藤君に乗せられて殺人説で推理スタート。

まぁ、別にどっちでもいいんだけどね。

私は薬のフロッピーだけあればそれでいi・・・・

 

 

無い。フロッピー、無い。

まさかだけど・・・組織の人間が? 先回りしてデータを回収しようとして、その時に出くわした教授を殺した?

 

って気になるのが普通なのに、工藤君はどっちかって言うと目の前の死亡事件の捜査のほうが興味津々みたい。

刑事さんの邪魔になりかねない現場漁り開始。

例の落ちていた電話機の録音メッセージを刑事さんと確認し始めたわ。

あの、刑事さん。子供を死体に近づけないほうがいいんじゃない?

ただメッセージの中に、聞き覚えのある声が入っていたわ。

「え~黒字生命です。当社の新しい保険の説明にお伺いしたんですが、お時間はいただけないでしょうか? また改めてお電話します」

ウォッカの声だぁ。

だけどむしろ安心。組織の人間だったらわざわざ密室殺人なんかしないで、フロッピーだけ回収するはずだもの。それに今頃焦ってるわね。フロッピーを回収できなくなったから。

 

そう思うと、保険屋さんみたいな優しい口調で電話した後に焦りまくってるウォッカ。想像するとちょっとカワイイかも。

とはいえ、そのかわいいウォッカがこの家の近くまで来ている可能性が高い今、あまり長居をするべきじゃないわね。

フロッピーがどこにいったのか分からないけど、諦めて逃げるべきよ。

「待てよ。お前は知りたくねぇのか? この事件の真相を」

何言ってるの? 別に知りたくない。命の方が大事だもの。それにこれは事故でしょ。

「事故じゃねぇ殺人だ。広田教授を殺した後、トリックを使ってこの部屋を密室にし、事故死に見せかけたんだ。今からお前に見せてやるよ、真実ってやつを。この世に解けない謎なんて、塵一つもねぇってことをな」

塵一つもない・・・言わんとしていることは分かるけど回りくどい。できたら普通に言って。

 

そんな私の思いをガン無視して始まる、工藤君の名推理。

阿笠博士の声を蝶ネクタイ型変声機で騙って、刑事さんや容疑者に語り始める工藤君。

にしても打ち合わせもしてないのに、博士って演技派ね。見事に口パクしてそれっぽく推理ショーを始めたわ。

そして私も無理だと思っていた密室トリックも見事に再現。

「どう? うまくいった?」「バッチリじゃ新一・・・いや、ワシの思ったとおりじゃ」

博士も迂闊。そんなおまぬけな博士の都合もガン無視して推理再開の工藤君。

 

 

こうして、謎は全て解けた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 黒の組織から来た女 大学教授殺人事件

あの、何で私まで犯人視点みたいな扱いなの? あれかしら? 銃刀法違反の? まぁ別にいいけど。
今回の一件で・・・じゃなくて二件で、工藤君への評価はお姉ちゃんが言うほどの評判ってほどじゃないかなってところね。
また次の機会に判断していこうと思うわ。いつになるか分からないけど。探偵としての推理力を試されるような大事件なんて、そう身近で起きるものでもあるまいし。



ちなみにあのフロッピー。たしかに事件の後で回収できたわ。警察から返してもらえたけど・・・

あんまり言いたくないんだけど、組織のフロッピーって外部からは普通の文章ファイルに見えるけど、暗号を打ち込めば解析できるの。
だけど・・・組織のパソコン以外で開くとウイルスが作動しちゃって、もう開くことができない。
サイバー攻撃や情報漏洩を防ぐ最上位の手段をとってます。組織は情報セキュリティに特に力を入れています。って、会社のPRみたい。
ただ私、基本的に組織でしか仕事しないから、このルール忘れてた
昔、うっかり仕事を家に持ち帰って誤爆した構成員がいるとかいないとか聞いたことがあるわ。

私、そのうっかりさんのこと笑えないわね。恥ずかしい。


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エピソード“ONE”小さくなった名探偵(特別編2)

魚塚三郎じゃないぜ。
ウォッカ、それが俺のコードネーム。
どうだ、驚いたか読者ども。
今回は俺の回だ。



拳銃を密輸している社長がいる。そいつを脅して1億をふんだくる予定だ。

今日はその取引場所の下見に行くんだが、俺はそれがどこなのかまだ聞いていない。

場所を決めたのはジンの兄貴。まぁ兄貴に任せておけば何も問題ねぇ。

 

「トロピカルランドだ」

 

 

 

・・・・・・・・兄貴?

「兄貴、それって・・・海外ですかい?」

俺はあまり博学じゃねぇんだ。同じ名前の遊園地を思い浮かべちまって他の候補が出てこねぇ。グリーンランドとかアイルランドとか。名前的にきっと東南アジアとか中南米の・・・

 

「知らねぇのか? 遊園地だ」

兄貴ぃ!?

いや遊園地とか・・・非合法の取引っすよね? え? 俺らが、そこに?

 

「まさかサツも、そんな賑やかな場所でブツの取引をするとは思わねぇだろ?」

な、なるほど。さすが兄貴。裏の裏を読んで行動、さすがクールな兄貴!

「たしかに。ここならヘロインの取引でも何でも楽勝ッスね」

「あ? 披露宴?」

ヘロインです兄貴。何を聞き間違えたらそうなるんですかい?

「冗談だ。まあお前にその時が来たら、スピーチをヤってやる」

兄貴ぃ! 俺、兄貴に一生ついていきます!

いや間違えた。俺、そいつを一生幸せにしてみせます!

 

 

ということで俺たちはトロピカルランドに到着した。具体的な取引場所を決めるために。

トロピカルランドはとにかく広い。取引できそうな死角になる場所も多いから、どこにしようか迷うくらいだ。

「ウォッカ。まずは分かってるだろうな?」

「はい・・・・・・・・・すいやせん、何をすればいいですかい?」

「チケットだ。乗り放題のパスポートを買うぞ」

あ、兄貴!? 俺たち下見に来たのであって、遊びに来たわけじゃ・・・

いや、まさか兄貴・・・そんなまさか・・・

「最初に乗るのは観覧車だ」

 

あ・・兄貴・・・

いや、兄貴の命令なら俺は・・・

「分かってると思うが、俺たちの取引を誰かに見られるわけにはいかねぇ。観覧車は他のアトラクションと違って、客の目的は遊園地の景色を観ることだ。だから観覧車から“見えない”場所を洗い出す」

あ、兄貴! さすが兄貴! それに比べて俺は何を勘違いしていたんだ。

 

 

こうして観覧車に乗り込んで園内を見回した俺たち。降りて即座に次の行動に移る兄貴。

「次は夢とおとぎの島に行って、城に登るぞ」

「そこには何があるんですかい?」

「園内を見回せる双眼鏡がある。まぁ取引の予定時間みてぇな日が落ちた時刻に、こんなモンを使う奴はいないだろうが、念の為にな」

さすが兄貴。抜かりがねぇ。

この双眼鏡、意外と精度もバッチリで、夜でもしっかり園内を見回せそうだから、今の内に確かめておいて正解だったぜ。

 

 

「これでいくつかの候補地が絞られたな」

兄貴と一緒に園内マップを見回して、どこからも覗き見られることのない死角を洗い出すことができた。

「ウォッカ。次にやることは分かってるだろうな?」

「・・・・すいやせん。次は何を?」

「勿論、屋外アトラクションの全制覇だ」

・・・・兄貴? いや、兄貴?

「当日は上から取引相手が場所に来ているかを確認する。そいつができる場所を探すために決まってるだろ?」

そ、そうですよね兄貴。

 

 

こうして色々なアトラクションを堪能・・・じゃなかった、体験した俺たち。

そういえば俺、遊園地なんて何十年ぶりだ? 乗ったのはジェットコースターばっかりだったが楽し・・・なかなか・・・だったぜ。

 

「ウォッカ。どれが一番面白かった?」

・・・・・・・・・兄貴? 何を聞いて・・・俺は何を聞かれているんですかい?

「それはどういう・・・」

「観覧車と逆だ。アトラクションは乗り物そのものが客の目当て。楽しい乗り物ほど、他の景色なんざ誰も見ねぇ。つまり一番楽しい乗り物から見える遊園地の死角こそ、ブツの取引をする絶好のポイントだ」

な、なるほど! さすが兄貴!

 

「それで、どれが一番面白かった?」

「俺は・・・ミステリーコースターでした」

「ふっ、俺もだ」

兄貴ぃ!

 

 

こうして社長との闇取引のプランも固まりいざ当日。

俺と兄貴はいつもの制服でトロピカルランドに来園。あとはミステリーコースターに乗って社長が来ているかを確認するだけ・・・

「・・・ミステリーコースター、どこでしたっけ?」

俺の痛恨のミス。あの日は兄貴に任せて園内を回っていたせいで、肝心のコースターの具体的な場所を失念しちまっていた。

「何をしているウォッカ。怪奇と幻想の島だ」

さすが兄貴。兄貴は何でも知っている。俺の自慢の兄k・・・

 

ざわざわざわ

 

この時よぎった俺の疑念。

あれ? ひょっとして兄貴、トロピカルランドに詳しすぎる?

何で園内エリアの名前がスッと出て来た?

下見の日だってそうだ。園内を見回せる双眼鏡が城にあるって、何で知っていたんだ?

そもそも取引なんて、人気の少ない倉庫や郊外のビルの中でやればいいのに。

まさか兄貴・・・単に遊園地が好きだっt・・・

 

「・・・・・(ジーッ)」

 

ハッ! 俺の疑念の気配を察知したのか、兄貴の目つきが鋭くなった!

これは兄貴の怒りのボルテージが上がってきている印だ。

この特徴から兄貴は別名「平気で何人も殺していそうな凍り付く目」と呼ばれている。

この鋭い目つきで殺気を感じない人間はいない。

やばい。下手に刺激したらはじまるぞ。兄貴のバイオレンスが。

 

「・・・・・・・・ウォッカ。早くいくぞ」

どうにか俺を睨んだだけで兄貴は矛を収めてくれたけど、いつ暴発してもおかしくない。

や、やばい。俺は察しすぎた。早く戻ってくれ、兄貴の機嫌!

 

そんなピリピリムードのままコースターの列に並ぶ俺たち。1秒でも早くこの時間から逃げたい俺の言動もついつい荒っぽくなってしまい、見知らぬ子どもを蹴り飛ばしてしまう始末。

これでもし。もし万が一、社長が来ていなかったら・・・俺、殺されるかも。

ピーッ ガタンゴトン

乗車してレールの上から覗くと・・・社長が来てくれていた!

マジでよかった。この報告で兄貴の機嫌がなおってくれr・・・

 

「うげっ」

 

もうすこしで終点という矢先に、そいつは起きてしまった。

俺の前の座席の男の首が、チョンパされちまっていた。

WHAT!? こんなタイミングで大事故発生!?

 

「これは事故じゃない! 殺人だ! そして犯人は、被害者とコースターにいっしょに乗った、この七人の中にいる!」

 

俺たちと一緒にコースターに乗っていた高校生が何か言ってる。

いやいやいやいやいや。それは無・・・・くはない。

もしこれが殺人だとしたら・・

兄貴でしょ。兄貴が不機嫌MAXで、やっちまったんでしょ!

首チョンパなんて普通の人間の腕力じゃ無理。そう、兄貴以外には。

じゃあもし仮に他の奴の仕業だとしたら、俺と兄貴の目の前で殺人が起きたってことになる。

いくら真っ暗なトンネルの中とはいえ、至近距離で誰かが殺意を剥き出しにしていたってのに、それに俺たちが気づかなかったわけがない。

殺気も無しに人間をヤる芸当なんて、兄貴くらいにしか無理。

 

そう、全ての可能性を考慮した場合、結論は2つ。

事故。もしくは兄貴の仕業。

 

 

そんな俺の悩みなんてお構いなしに進む捜査。

死んだ男の隣の座席にいた女のバッグから血まみれの包丁が出て来て、ますます疑念が深まった。

女の腕じゃ包丁ごときで人間の首を斬れるわけがない。もちろん俺にも無理だ。

だけど兄貴なら多分できる。

でもって犯行後、気付かれないように女のバッグに忍ばせることも兄貴なら多分できる。

俺も気づかなかったんだから。

 

ますます兄貴じゃん。

 

そんな時、高校生探偵・工藤新一の推理が冴えわたった。

「犯人は、あなただ!」

結局犯人は、一番前の座席に座っていた女だった。

いやぁ、一件落着。そして地味にショック!

俺たちの勘が鈍っていたという証拠。俺と兄貴の目の前で起きた殺人!

これには兄貴も少しショックだったみたいで、社長との待ち合わせの前に「先に行ってろ」って俺だけを取引に向かわせた。

兄貴。その気持ち、分かります。

 

 

ということで社長との闇取引開始。2時間遅れ。

だけど取引に夢中になっていた俺は、背後から見ている工藤新一に気付かなかった。

 

それを防いでくれたのはもちろん兄貴。

兄貴の怒りゲージ八つ当たりフルスイングをモロに喰らった工藤新一は、頭から血を流して倒れた。

でも俺の大失態。普通だったら俺、兄貴に消される。

だけど兄貴はフルスイングでストレスを解消できたみたいでご満悦。

「こいつを使おう。組織が新開発した毒薬をな。死体からは毒が検出されない代物だ」

さすが兄貴。組織の最新の発明まで持ってるなんて。信頼と実績の兄貴!

 

だけど兄貴。正直言って、さっきのフルスイングだけでも致命傷じゃないですかい?

薬の意味・・・

いや、これ以上何か察してしまと、今度こそ俺の命が危ない。

ここは兄貴のやる通りに任せることにしよう。

 

 

 

こうして、今後色んな謎が生まれることになった。

 




いかがでしたでしょうか? エピソード“ONE”小さくなった名探偵。

いやぁ俺、失態しすぎて危ない危ない。
でも兄貴は俺には甘いところあるからなぁ。この先もなんか大丈夫な気がしてきた。

ところで最後に殺した工藤新一。
しばらく経っても死亡記事が出て来ねぇんだ。
何故だ? 死体くらいすぐに発見されてもおかしくないのに。

あれか? 警察関係者で未成年の変死だから、情報が隠蔽されているのか?
世の中の混乱を避けるため?

それか、単純に俺たちがそういう記事を見落としているだけ?
分からねぇ。

だけどそれも何年も前の話。いや、あれ? 何か月か前の話?
まぁいい。
とりあえず俺は次の任務に行ってくるぜ。
兄貴の命令で、季節外れのハロウィン仮装パーティーに潜入。
パーティーか・・これって実質休暇?
そうか・・・・兄貴、相変わらずニクい演出ですぜ。堪能してきやす!


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裏切りのステージ(特別編3)

シルバーブレットは近所でも有名な名探偵。まだ小学生だけどその推理力は大人顔負け。
この世の全ての犯罪者は例え親兄弟友人でも容赦なく警察に通報するぐらいの心構えよ。
将来の夢はもちろん畳の上で死ぬこと。好きな物はサッカー、嫌いな物は犯罪者、好きでも嫌いでも無い物は消しゴム。
そんなシルバーブレットの視線が鋭くなったらインスピレーションが働いた印。この特徴からは別名『死神』と呼ばれているわ。この鋭い眼差しから逃れられる犯罪者は一人もいないの!



白ワインに香草を配合したフレーバーワイン。

ジンと3:1の割合で混ぜるとマティーニ。

 

ということで「女は秘密を着飾って美しくなる」でおなじみ、ベルモットよ。

変装と声マネが得意だから「千の顔を持つ魔女」・・・って呼ばれてるけど、言い方。

せめて魔法少・・・

誰? 厚かましいって聞こえたけど。厚化粧って言った奴殺す。

 

話を戻すわ。

一応、とある組織に所属しているんだけど・・・

推しがいます。組織を暴こうとしてる子です。あとその彼女。推しCP。

 

シルバーブレットとエンジェル

工藤新一と毛利蘭。今は江戸川コナンと毛利蘭。

 

日本に潜伏していた頃に2人の高校の校医をしていた時期もあるけど・・・

ほんと私、変装技術もっててよかった。

推しの近くで仕事できるとか、最高以外の何者でもないでしょ。

 

 

ということで、今日も押しの近くでお仕事お仕事。

今回はバーボンと一緒にミュージシャンの新曲が「ASACA」ってなっている真相を調べに来たわ。理由は割愛。

でもって、来てるのよ2人共。シルバーブレットとエンジェル!

まぁバーボンがエンジェルの友達のコネを利用したからなんだけど。

だけど流石に素では会えないわよ。

 

ということで変身。バーボンの知り合いの子、梓に。

こうすることでシレッと混ざれるの。エンジェルたちの輪の中に!

 

 

でもシルバーブレットには秒でバレたみたい。

だって目つきが鋭くなっているんだもの。

 

と思っていたところに、急に響く男の悲鳴。

「うっうわああ!」

そこにはアーティストの首吊り死体があったの。

 

 

 

・・・・・・え?

私たち、場合によってはこのアーティストの口封じもする予定だったけど・・・

 

まぁ普通の反応よね。死体を見て驚く一般人。

死体の元に駆け付けるバーボンとシルバーブレット。

そして子供を制止するエンジェル。

「ダメよエンジェル。貴方は入ってはダメ。この血塗られたステージに相応しくないわ」

 

出ちゃった。ついついエンジェルって。

「エ、エンジェル?」

「あホラ! 蘭ちゃんって天真爛漫だし」

ギリ誤魔化したけど・・・言っちゃった。

 

今までエンジェルに接近したことは何度かあったけど、こんな風にエンジェルのこと呼んじゃえるなんて。

しかも・・・蘭ちゃん。 キャー! 死ねる。死ねるわ今すぐ。推しを直で“ちゃん”付けとか。

役得。私、組織の現場人間でよかった。

 

 

そこに加えて私の役得パート2。シルバーブレットの活躍が見れるわ。

組織随一の洞察力の持ち主であるバーボンと

薬で幼児化した高校生探偵工藤新一と

 

そこに混ざってもう1人・・・

・・・・・・誰?

モブキャラは推しの側に映らないで欲しいんですけど。

 

 

 

 

その後、警察が到着して捜査開始。

状況的に複数犯みたいよ。そうじゃなかったら怪力の持ち主。それかステージの設備を動かす部屋の鍵を開閉できる人物。

 

その捜査情報を聞いた私の直感だけど・・・

 

・・・・・・・・・ジンなら何とかできそう。

 

 

あと関係ないと思うけど、現場に落ちていた紙の筆跡を調べるために、私を含めて名前を書くことになったわ。

マズイ状況よね。私、今の姿の梓って子の苗字知らないもの。

 

だけど大丈夫。シルバーブレットに聞いちゃうから。エンジェルの声色を使って。

「ねぇコナン君? 梓さんの苗字って何だっけ?」

うん。今日の私、全てが上手くいきすぎ。

コナン君♪ 呼んじゃった♪ しかもエンジェルの声で♪

もう殺されちゃう。死因、幸せ死。

 

 

その一方でバーボンが何か不機嫌そう。

例のモブキャラと話してるけど、目つきが鋭いわ。

「殺したい程憎んでいる男が、左利きなだけですから」

 

 

ジンのこと? 左利きって、ジンのこと?

バーボン、根に持ってるわね。前にジンがノックだって疑って、キールとまとめて殺そうとしたこと。

まぁ分からなくもないわね。

 

でもバーボン、あんまり目先のことに囚われて、狩るべき相手を見誤らないでね。

私みたいに人生エンジョイこそ大事。

 

エンジェルから「あなた、梓さんじゃないですよね?」って言われても

「言ったはずよ蘭ちゃん。それ以上こちら側に踏み込んではダメ。貴方は私の宝物だから」

って言っちゃう。

また推しを“ちゃん”付けして、ついでに本心も言っちゃう。

 

今日は私、勝ち確の日!

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 裏切りのステージ。

いや~今回の事件、楽しかったぁ。
また起きないかしら?


ASACAの件も、結局は例のアーティストが娘の名前を「あさか」にするつもりで、それを思いついたのがカフェだったから、って理由だったわ。
平和。



ちなみに事件は自殺だったわ。




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黒いイカロスの翼【前編】(コナン)(リクエスト)

共に歩んだ年月バネに、ピッチ緩めず全速前進!
今日の事件はイカロスウィング。ともだち勇気1つだけ?
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



私は有森光行。長野県の高原にあるホテル有森の支配人だ。

当ホテルの従業員を紹介しよう。

シェフの子門しのぶさんと、従業員で双子の美奈穂くんと穂奈美くんだ。

この2人は前の勤め先の雇い主が仮面の呪いのせいで殺されてしまって、

知り合いの紹介でこのホテルに務めてくれることになったんだ。

 

まぁ大丈夫。ここは平和な長野県。殺人事件なんて物騒なことは起きるわけがない。

たしかに最近、あの名探偵の毛利小五郎様のご予約が入っている。

噂だと毛利様は行く先々で事件を引き寄せる体質らしいけど・・・

まぁ大丈夫だよきっと。だって毛利様は美奈穂くんと穂奈美くんの恩人。

2人ともが容疑者になってしまった例の事件を解決してくれた名探偵。

感動の再会の気配こそあれど、殺人事件の香りなんかしやしないだろ?

 

従業員同士仲が悪い人はいないかって? ナイナイ。アットホームな職場です。

気になることがあるとすれば、毛利様が予約の際に『このホテルのテレビに映るチャンネル』について詳しく聞かれたのが若干気になる程度だけ。

あと、同じ日に他に予約が1件あって、2名でご予約の城元英彦様がいるけれど、まさかそこがピンポイントで殺人事件案件とか、無いでしょ。長野県の山奥の避暑地で。

 

 

そして当日。

平和崩壊のお知らせ。

まさかこんなところで再会するなんて・・・

毛利様じゃない方のお客様、城元様の奥さん・・・私の弟の元カノの備前千鶴。

 

この女を恨んでいるわけじゃない。

まぁ、弟がこの女に貢ぎすぎて、父の遺産のホテルは他の人の手に渡ってしまっているし、フラれたショックで弟はハンググライダーの大会で事故を起こして死んでしまっているけれど(これだけ聞くと「え? 弟のこと恨んでいるの?」って思う人もいるかもしれない)

 

 

だが今日、実際にこの女を初めて目の当たりにして思った。

弟よ・・・お前、見る目がなさすぎる。

 

とにかく横暴。

ホテルの悪口が口からポンポン。

夕食のスープも不味い一点張り。モンスタークレーマー。

挙句この女、映画を降板させられていてブチ切れ。担当のマネージャーさんがこのホテルまでわざわざ謝りに来たくらい。

 

弟よ、お前の目には彼女が何に見えていたんだ? 私には理解できない。

 

1つだけ彼女に感謝したいのは、こんな時間にマネージャーさん帰るわけにいかなくなったから、ホテルとしてはお客さん1名追加ってことだけか。

 

 

どうしよう。何故か私、急に謝罪を求めたくなってきた。

弟の墓前で一言謝ってもらいたい。

 

でも結果が目に見えている。

ご機嫌斜めの傾斜角MAXのこの女に謝罪を求める。そういうタイミングじゃない予感。

逆の立場だったら、どのテンションで「じゃあ謝ります。ごめんなさい」って言うんだろう。

普通の人間でも『映画の主役を降板になったその日に過去の悪事の反省するの不可能説』だよ。水ダウで実証してみせてよ。

 

 

でも呼び出してしまった。夜中に。

そして案の定

「いい加減にしてよ! 私が何をしたって言うのよ!」

 

 

 

だよねそうなるよね

殺スイッチ強制ON

 

 

よし殺そう。なんかそんな気分。

ホテルで、女に恨みを持つ、有森一族の血が騒いできた。

地獄の業火に焼かれよ、備前千鶴。

 

・・・どうやって?

私、普通の長野県民だから殺人トリックなんて一朝一夕で思いつかないよ。

 

 

だけどその翌朝。状況が一気に好転。

朝から不機嫌千鶴が部屋に閉じこもって

旦那さんも慣れたもんでマネージャーさんを釣りに誘って

毛利様の代わりに私が娘さんたちを高原に連れて行ってあげることになって

毛利様は今日一日ずっとテレビで沖野ヨーコさんの番組を見ることになって

シェフのしのぶさんも一緒に高原に行くことになって

 

 

 

舞い降りた。

自殺に見せかけて千鶴を殺し、万が一に備えて私のアリバイを確保するトリック。

降臨。トリックの神さま。

 

 

ギリいけるかもしれない。

天下の名探偵毛利小五郎様が

沖野ヨーコという太陽に近づきすぎている今日なら!

 



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黒いイカロスの翼【後編】(コナン)(リクエスト)

我、ショブルーの仮面をまといし有森
あの女に恨みを晴らすべく
ファントム仮面ここに推参



ということで始めようかトリック。

釣りチーム、高原チーム、ホテルチームに別れる今日。

千鶴を自殺に見せかけて殺し、なおかつ他殺を疑われた場合に備えてみんなのアリバイを確保していこう。

 

まずは釣りチームには「あそこは日が落ちてからのほうがよく釣れますよ」と言って、夜まで帰ってこないようにする。昼に殺しておけば、このチームは容疑者から外れる。

高原チームは問題なし。女がホテルで死んだことになるから、その時間に高原にいる人間は自動的に容疑者から外れる。厳密には高原で殺すから外れないけど。

俺は戸締りを確認すると言ってホテルに残り千鶴を拉致。ハンググライダーのセットと一緒に車に押し込んでおく。

あと千鶴の部屋のベランダの鍵を開けておいて、部屋の扉の鍵を閉め、マスターキーを毛利様に預ける。美奈穂くんと穂奈美くんに「千鶴さんのことはそっとしておくように」と念押ししておく。

こうすることで今日一日中毛利様が2階に上がる階段の前でテレビを見てくれるから、誰も容疑者にはならない。

 

これが平和の国、長野県のトリックさ。

・・・・あっ、これだと毛利様だけが容疑者。といっても、まさか名探偵の毛利様を疑う人間なんているわけない。よって平和。

 

 

さて気絶したままの千鶴と一緒に高原に到着したら、しばらく高原チームと一緒に遊んで、隙を見て千鶴をサクッと殺害。

死後硬直しても首吊り死体に見えるように、体勢をセットしたら、車のエンジンを壊しておく。

 

夕方になって帰る頃、「エンジンの調子がおかしいから、先に帰ってくれ」と言って、死体と一緒に高原に残る。

そしてハンググライダーで死体と一緒にホテルまで飛ぶだけ・・・・

 

 

死体と一緒に 飛ぶだけ?

 

 

鳥人間コンテストって知ってる? 滑空して飛ぶ時って“助走”が必要さ。

ハンググライダーの機材が約30kg。死体が約50㎏。これ背負って助走・・・

 

 

 

ダダダダダダダ

 

ふわぁ

 

 

 

鳥人間コンテスト優勝できるわ・・・ッ!

酷使しすぎだろ有森マッスルを。

 

 

だがホテルに到着してからもファントム仮面マッスルは休めない。

 

まずはハンググライダーセットを急いで片付ける。重量30kg。

次に屋上からロープで例の鍵を開けておいたベランダに降りる。死体と一緒に。50kg。

部屋に侵入したら首吊りに見せかけて死体を吊るす。50kg。

ドアロックの金具を外してから廊下に出て、扉の隙間からドライバーで金具を固定する。

 

やることがおおおおおおい 多い。そして重い。

こうしている間、ホテルのロビーから毛利様がテレビを見ている声が聞こえる。焦る。

焦るな有森。よく言うだろ?

ハンググライダー使いたるもの、いつ何時たりともポーカーフェイスを忘れるな、ってな。

 

 

あとは非常口から外に出て高原チームが帰ってくるのを待つ。

帰ってきたら頃合いを見て携帯から電話をかけて、さも俺が高原にいるように装って「車が直らないから迎えに来て」と伝える。

迎えの車のトランクに忍び込んでおいて高原まで移動。

隙を見てトランクから抜け出して、あたかもずっと高原で待っていたように見せかける。

 

これで完璧。平和の民、長野県人らしからぬ完璧トリックが完了。

 

そんな直後  ~~~♪

「おっと電話だ。誰からかな? ああ、美奈穂くん。え!? 千鶴さんが亡くなった!?」

 

ホテルから千鶴死亡の通知が来た。うん知ってる。めっちゃ驚いた。

タイミングがギリギリ。

下手したら、トランクで隠れている間に着信が鳴っていたかもしれない。

バレてた。そうしたら終わってた。危なっ。

 

 

だけど無事だったから、安全にホテルに戻って、安全に警察が到着。安全な捜査が始まって、安全に千鶴の自殺が判明・・・

「他殺の可能性が高い事が判明しました」

早っ!

 

どうも死体が裸足だったにもかかわらず、首吊り用の踏み台に足の指紋が残っていなかったため、自殺の可能性が消えたらしい。うわぁ

 

そこで一転、俺たち容疑者。

でも念のために全員のアリバイを確保しておいたから大丈夫。

死亡推定時刻には釣りチームは池にいたし、高原チームは高原にいた。マスターキーを持っていた毛利様も美奈穂くんと穂奈美くんと3人でテレビを見ていた。

大丈夫大丈夫。

 

 

 

じゃなかった。

毛利様と美奈穂くんと穂奈美くんの3人の共犯説。

それとお弁当を忘れて12時30分にホテルに戻ってきていた城元様がマネージャーと共犯になっていた節が浮上。

「マスターキーを持っていなくても、非常口から侵入する方法はある」

そう言ってわざわざマネージャーさんのアリバイも崩してくる長野県警。

 

なんかごめん。真犯人の俺が安全圏にいるのに、5人も容疑者扱いになっちゃってて。

 

 

と心の懺悔してる最中・・・

「分かったんですよ犯人が」

 

不意に到来、眠りの小五郎。

え? 毛利様? あなたずっと今の今まで警察に疑われて怒ってたじゃないですか?

推理していたというのか・・・容疑者という逆境の中で・・・

 

 

そして咲き乱れる毛利様の華麗な推理の数々。

 

証拠は千鶴の死体に付着していた、高原にしか生息していない蝶の鱗粉だった。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 





いかがでしたでしょうか? オペラ座館殺人事件。犯人の有森です。
さてついに帰ってきましたね。
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿R
期間限定復活ですが、皆さん是非読んでいってください。

あと金田一少年の事件簿30th。本家も大復活しています。
それとドラマ版金田一少年の事件簿も、なにわ男子・道枝くんが主演で復活しますのでお見逃しなく・・・・



え? 違う? 何言ってるんだ、って?

おいおい、俺を忘れちまったのか?
俺だよ俺、ファントム仮面

有森裕二だよ!



ああ。今回の有森さんは正直言って殺意と筋力が足りなかった。
だから入れ替わっておいたのさ。
一人称も前編は“私”だったけど、後編は“俺”になってただろ?
支配人マッスルでは空を飛べない。俺のSASUKE出れるマッスル。それが必須だったのさ。


さて今回の敗因だけど、やっぱり長野県警だな。
探偵であろうと容疑者から外さない真面目な仕事っぷりもそうだけど、
まさかミヤマシロチョウの鱗粉を、あの時刻から調べるなんて。
鑑識課の定時すぎてるんじゃないの? それなのにあの短時間で・・・

優秀すぎる長野県警。
だからか。だから長野は平和の国なのか。


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仮面ヤイバー殺人事件(コナン・アニオリ)

シャープな推理で謎を解く。愛も事件も原点変わらず。
今日の事件は仮面ヤイバー。お前の罪を数えよう。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



俺は本田修。

仮面ヤイバーが大好きな弟を持つ普通の大学生。

だが弟は懸賞で当たった仮面ヤイバーのサイン色紙をひったくられ、その犯人を追いかけて交通事故に遭い死んでしまった。

 

いいや、今回のあれは明らかに殺人事件。そう、あれは殺人だ。

サイン色紙を狙ったという状況から考えて犯人は仮面ヤイバーのファンに間違いない。

 

そして苦節1年半。俺はついに弟のサイン色紙を持つ犯人、三島にたどり着いた。

この1年半、とにかく仮面ヤイバー漬けの毎日だった。

元々俺はガンマニアなのに、今では仮面ヤイバー知識やヤイバーコスプレの完成度が超級。

 

 

 

さてトリックの準備をしよう。

今回のトリックは「仮装パーティーでドッキリ企画。俺を銃殺して三島は自殺。だけど銃はすり替えておいたのさ」だ!

 

まずは三島と仲良くなる。苦痛だけどこれが必須。

次に防弾チョッキ、実弾入りモデルガン、空砲モデルガン、レーザーポリスのコスプレ衣装。俺は今回、拳銃を持っていても不自然じゃない唯一のキャラ“レーザーポリス”のコスプレをするからな。

そして“撃たれたフリをする装置”を用意する。

 

そう。このトリックの要。三島にドッキリ仕掛け人の共犯を信用させるために、俺は銃で撃たれた演出をする必要がある。

本番は実弾だから仕掛けは要らない。だけど練習の時には必要。

モデルガン発射と同時に、銃で撃たれたように服が破裂する装置。

 

 

・・・・・・・・ガンマニアを舐めるなよ!

作ってみせるさ。演じて見せるさ。完璧な撃たれたフリを!

 

 

 

そしてパーティーの10日前の打ち合わせで「お前のバイクだせぇな」とクラブの皆の前で悪口を言って三島と喧嘩をする。

あとは本番当日、パーティー参加前に三島と落ち合って拳銃をすり替えるだけ・・・

 

 

「「「レーザーポリスだぁ!」」」

三島と会う前に子供たちに囲まれた。そりゃそうだよな、子供たちのヒーローのコスプレしてるんだから。俺の事をドラマ撮影に来た本物のキャストだと思っているようだ。

裏目。復讐までに磨かれた俺のコスプレ完成度がこんな形で輝くなんて。

危ない危ない。俺ってば今、実弾入りのモデルガン持ってるから。もし触られたりなんかして、発砲してしまった日には別の事件が起きてしまう。

でも流石に。流石にそんなお行儀の悪い子はいないよな。

「かっこいいなこの拳銃」「触るな! 」

危なっ。変な△頭が拳銃触ろうとしてきた。アラレ!

初対面の大人への距離感が、現代っ子にしてはパーソナルスペース狭い!

 

 

そんなハプニングを乗り越えて、俺は無事に三島と合流。最終確認すると言って拳銃を受け取り、密かに交換。

あとは先に仮装パーティーに乗り込むだけ。

 

 

いた。あの▲頭の子供。ヒョウ!?

も、だけど・・・もっとヤバイのがいた。名探偵毛利小五郎。

クラブの仲間の堤くんがさも知り合いのように紹介してきたけど

こいつに毛利小五郎なんて知り合いはいない! ハズ・・・だよな?

「珍しいな。お前仮面ヤイバーの恰好しかしないのに」

堤くん、そこに気付きましたか。そう俺、今まで培ってきた仮面ヤイバーの仮装の完成度を無駄にしてます。事件当日に限ってイレギュラーな行動、怪しまれそう。

だけどまぁ実際・・クラブのみんなのコスプレチョイスが怪人ばっかりという怪しすぎる空間だから、紛れるかなとは思う。ワンチャン。大丈夫、だよな?

 

 

「本田ァア!」

そんな時にやけに演技力の高い三島がドスの利いた怒声と共に登場。おま、まだ俺が混乱してる最中。

「殺してやる」と拳銃を向けてくる三島に対して、俺はどうにか心を落ち着けながら打ち合わせ通りポジションチェンジ。

みんなが見やすいように、という名目だけど、実際には流れ弾がみんなに当たらないように。

背後に誰もいない所に到着したら、あとは銃弾が来るのを待つだけ・・・

 

だ、大丈夫だよな? ここに来て俺すごく不安。

もちろん毛利小五郎が居合わせていることもそうだけど、今更不安は三島の射撃能力。

だって実弾入りの拳銃って反動で銃身がブレるから・・・防弾チョッキの場所以外に撃たれたら・・・それこそ頭とか

「死ね!」

BAN!

 

 

こうして俺は撃たれた。心臓の部分。正確!

防弾チョッキ着てるから無事だけど、痛い。めっちゃ痛い。これ肋骨絶対折れた。

三島も自分の頭に向けて銃弾を放ち、無事に俺の殺人は成功。

 

 

その後、当たり前だけど警察が到着。

この怪人だらけの異様な光景にたじろぐ刑事さんたち。

ま、自殺で決まりだから。今回、名探偵も目の前で三島の自殺シーン見てるから。形だけの事情聴取で済む。

「刑事さん、本田を早く病院に連れて行ってやりたいんです」

堤が俺を心配して刑事さんに直談判してくれた。

「そうですな。防弾チョッキを着ていたとはいえ、肋骨にひびが入っているかもしれん」

刑事さん今更。配慮が悪すぎ。俺、痛いの我慢しながらドキドキだったんですからね!

でもこれで安心して入院できr・・・

 

「ふにゃ」

 

? 変な声と共に、眠ったように倒れる毛利小五郎。

まさかの発動。眠りの小五郎!

 

急!

そして咲き乱れる毛利小五郎の推理の数々。もちろん俺の骨折ガン無視で。

トドメに決定的な証拠、△頭の子供の指紋が三島の持っていた拳銃、つまり俺がすり替えた拳銃に付着していたこと。

それはつまりパーティー直前に、三島の銃を俺が持っていたという証拠だった。

 

 

こうして謎は全て解かれた

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 仮面ヤイバー殺人事件。

心臓に悪い! いや、心臓の付近に間接攻撃は受けているけれど、そこじゃない。
もちろん毛利探偵の出現も心臓に悪かった。

だけど今更ながら・・・三島の自殺が危なかった。
あの時の三島は右手で拳銃を持って右のこめかみを撃っていたんだ。

でもその時、三島の右側にパーティー参加者がたくさん集まっていたんだ。
三島の頭部を貫通した流れ弾、そっちに飛んでた。
誰かに当たっていたらヤバかった。運よく誰にも当たらなかったけど。
脳漿くらいは誰かにかかってしまっていたかもしれない。
そう思うとかなりグロいな。
子供たちへのトラウマになっていたかもしれない。

そう。俺の敗因になった▲頭の子供の心に、俺の骨折のヒビよりも痛い傷を、な。


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時代劇俳優殺人事件(コナン)

ずっと抱いた思いを胸に、二十歳を迎えて強く羽ばたく!
今日の事件は新選だ。ドSな男はガラスなハート。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



俺は時代劇俳優の土方幸三郎。妻の勇美を殺して、その罪を浮気相手の沖田に着せようっつうつもりでさァ。

でもって今度、いつもの時代劇の奉行や岡っ引役じゃなく、探偵役を貰えるっつうわけで、こいつぁチャンスでしょう。

俺は挑戦しやすぜィ。天下の名探偵・毛利小五郎の旦那を欺いてやりゃあ、探偵役も一端にやれるでしょう。

 

つまりこれは

旦那の目の前で

土方のヤツの息の根を止める。

 

これで決まりでさァ。

 

 

 

トリックは簡単。

土方のマヨネーズに毒を入れる。

 

・・・やめておきやしょう。

 

ロケットランチャーでぶっ飛ばす。

 

・・・やめておきやしょう。

 

 

沖田? そうご? サディスティック星の王子?

いやいや、一応もう一度言っておきやすが、俺の名前は土方幸三郎。

今回は妻の土方勇美を殺す話ですぜ。

土方を殺すんでさァ。

 

 

 

さて、俺のマンションは6階が全部、俺の持ち物。

でもって5階に俺の部屋と隣に沖田の部屋。そいつを利用するっきゃないですぜィ。

毛利の旦那を6階の部屋に招きながら、そこを5階だと騙す。

でもって沖田の部屋の上の階で土方の息の根を止めて、その死体をその部屋のベランダで見せる。

旦那には管理人のところに鍵を借りに行ってもらい、その間にベランダから下の階に死体をスローイン。

あとは何食わぬ顔で旦那と一緒に死体を発見する。っつうトリック。どうですかィ?

 

そのために用意するのは、5階と6階の部屋を全く同じ状態にすることでさァ。

同じ家具を同じ配置で瓜二つの部屋を作るだけ。簡単でしょう?

 

 

でもって当日。

沖田には話があるから部屋にいてくれと伝え、土方には毛利の旦那と会うから6階の部屋に行っていてくれと伝える。

旦那を迎えに行く前にエレベーターの行先表示盤に細工をしておくのさァ。

数字の左下の縦棒を黒塗りすりゃァあら不思議。6が5になっちまいやす。

まぁ2は歪な形になっちまいますが、そこは俺が誤魔化します。

 

さて毛利の旦那とその御家族と合流したら、あとはエレベーターに乗るだけ・・・

「おっ・・・」「あ・・・」

沖田の野郎がエレベーターから出てきやがった。

おいおい、約束と違うじゃねぇですかィ。

コンビニに行くだけみてェだが・・・まったく、これからアンタに濡れ衣を着せる俺の予定にねぇことをしねぇでください。

 

それはさておき、エレベーターに入ったら行先表示盤を背にしつつ、旦那と御家族には名刺を渡して視線をソッチに釘付けにする。

あとは部屋に着いたら先にリビングに通して、その間に土方の息の根をサクッと。

でもって隣の部屋に死体を運んで、“電話のベルが鳴ったら、ベランダに向かって死体が倒れる仕掛け”をセットする。

 

 

え? どういう仕掛けですかって?

 

・・・・・細かいことは気にしないほうが身のためですぜィ。

今回のピタゴラっとく仕掛けを知りたきゃ、NHKに金をしっかり払ってから出直してきな。

 

 

 

っつうわけで、仕掛けが終わったら「慣れない茶の用意に手間取った」と言い訳しながら何食わぬ顔で毛利の旦那のところに向かう。

あとは会話の流れで自然とベランダに出るように仕向けて、隙を見て隣の部屋に電話をかけて視線を向かわせるだけ・・・

「おや? 変だねぇ。確かここに置いたんだが」

テレビの上に置いておいたモデルガンが消えちまっていらァな。せっかくこの銃の話題からベランダに出る流れを作ろうってのに。

 

でもそこは時代劇俳優である俺の機転の出番。サラッとみんなでベランダに出て、そのタイミングで土方の死体がドサッと。

「!!??」

さ~て、こっからは俺の迫真の演技を畳みかけやすぜ!

 

隣の無人室に怒鳴り込む夫の姿を演じ。

毛利の旦那には1階のフロントに合いカギを取りに行ってもらう。

エレベーターを呼び出して、さっき細工した行先表示盤の汚れを拭き取る。

旦那たちがすぐに上がってこられないように、エレベーターの開延長のボタンをPUSH。

旦那たちが下に行っている間に、死体をベランダからスローイン。

さっきまでいたリビングに行って、旦那たちが触りそうなところの指紋を拭き取っておき。

各部屋のネームプレートを元に戻して。

5階の沖田の部屋の前に向かう。

 

意外とやることが多くて大変でさァ。

ですが死体さえ見つけちまえばこっちのもん。

毛利の旦那も沖田こそ殺人犯だと断定してくれているから、俺の勝ちでさァ。

 

泣き真似しながらも、思わず白い歯ァを見せちまいそうになりやすが・・・

よっぽど下から覗かない限り、俺の笑みなんざ見えるわけがありやせん!

 

 

そうこうしているうちに警察も到着。

でも心配ご無用。警察も毛利の旦那も沖田が犯人だって断定したまま。

実況見分も捜査も、俺のことなんざ被害者家族扱いで楽々スルー。

あとは沖田の連行に合わせて、ブンヤの目を避けながら外に出るだけ・・・

 

 

「ああ。犯人はそう見えるようにトリックを使って私の目をごまかしたんだ。そうでしょ? 裏口からコソコソ逃げようとしている、真犯人の土方幸三郎さん!?」

 

な、に!?

毛利の旦那・・・俺の犯行見抜いていやした。

そこから咲き乱れる旦那の名推理。

 

しかも旦那もお人が悪い・・・

モデルガン壊していきやがった。

でもってその壊したモデルガンを6階のソファーに隠して、動かぬ証拠を作っていたようで。

 

 

御用改められちまうのには、俺も弱いようで。

 




いかがでしたでしょうか。時代劇俳優殺人事件
とりあえず土方を殺せたんで満足。


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小五郎さんはいい人(コナン)(リクエスト)

犯罪染まる黒いキャンパス 鮮やか推理でカラーチェンジ
今日の事件はニセモノ探偵 普通が通用しない町
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



俺は麻薬の運び屋をやっている兵頭順治。

同じアパートの住民で、麻薬の件で俺を脅している傳川源祐って男を殺そうと思っている。

よりにもよってこの男、俺の部屋の電話の音がうるさいからって、扉を蹴破って部屋に侵入してそこで麻薬を見つけやがったんだ。

 

この時点で常識が通用しないだろ。電話の音きっかけで人の部屋に侵入とか。小さな異変があったとしても、ドアの修理代を心配して躊躇するだろ。何か他の理由だったりを考えたり、無視を決め込んだりして放置するだろ。

って話を知り合いにしたら、この町じゃよくあることらしい。何か異変を感じたらすぐにドアを破って突入とか、そこそこ日常の光景らしい。で、実際その扉の向こうには死体があったりするらしい。

 

というのは置いといて。麻薬見つけて、その所有者を脅すとかアリなの? 普通警戒するでしょ? 自分が殺されるかもしれないってビクビクして、背後に気を付ける生活に陥るでしょ?

って話を知り合いにしたら、この町じゃよくあることらしい。麻薬くらいなら、例えば図書館とかの職場で発見した後で、後ろに館長が立って殺そうとしてきても無防備なまま待機するらしい。危機感が仕事しない町。

 

とはいってもこの傳川の行動、少なくとも俺の他のアパートの住民基準でもクレイジー。迷惑かけられまくっているからアパートの嫌われ者。そして逆に俺を含めて他の住民同士は仲良くなるくらいに。傳川メンタル鋼すぎだろ。

 

ということで今回俺はこの仲の良さに便乗して、皆で旅行中にアリバイを作って傳川を殺します。

トリックは簡単。旅行前に傳川を自殺に見せかけて殺して、奴が旅行中に生きているように見せかけるピタゴラ装置を作動しておく。旅行から帰ってきたら理由を付けて傳川の部屋の扉を破って中に入って発見。隙を見てトリックの痕跡を消しておく。これだけ。

 

 

そして実行。サクッと殺して、ピタゴラって、死体を発見して。

あとは警察に任せておけば傳川は自殺ってことになってくれる・・・・

「大丈夫! 事件はすぐに解決しますわ!」

その時、俺たちの死体発見の騒ぎを聞きつけて、アパートの大家さんが現場に現れた。

え、大家さん?

「こちらには名探偵の毛利小五郎さんが付いていますから!」

え?

えぇぇ!?

 

探偵、いるのかよ!

秒で探偵がいた。いや、ミステリードラマとかでも見るけどさ。犯人が旅行先や街で偶然出会った人が探偵だったり警察だったり、って展開。知り合いからも聞いたことがあるけれど、旅行先で探偵と出会って、しかもそこで偶然殺人事件が起きたりすることが、この町じゃ毎日のように聞く話だって。

なんで俺のパターンだけ兆候ないの? 唐突に探偵出てくるの!

 

 

って思っていたけれど、意外と毛利小五郎が大人しい。

警察が到着して捜査開始してるけど、今のところあんまりしゃべらない。

そりゃそうか。いくら名探偵とはいえ一般人。警察の捜査に干渉するのは公務執行妨害。探偵が現場に入らないのは普通の光景なんだ。そうさドラマと違うよな。

でもって警察も普通に今回のことを自殺として処理してくれそうな雰囲気。普通普通。

 

「自殺じゃないと思うよ」

 

なんか大家さんの知り合いの小学生が何か普通じゃないことを言い始めた。

というかこの子供、普通に死体のそばにいるよな。殺人現場にいるよな。俺たちの死体発見の騒ぎにも普通に真っ先に現れたよな。

そもそもこの子供が鑑識さんのそばに近寄っているのを警官たちも普通にスルーしてるよな。これって証拠になる物を壊す危険性高くないのか? 犯人である俺からしたらむしろ歓迎だけど。

何この普通じゃない光景。いや、この町じゃ普通の光景なのか?

 

 

って思っていた矢先、俺に援軍到来。

一緒に旅行に行ったメンバーがスマホで調べてくれたんだよ。

毛利小五郎のこと。本物の毛利小五郎のことな。

なんだ大家さんが言っていた毛利小五郎、ニセモノじゃねぇか。心配して損した。

 

しかもメンバーたちも旅行の疲れがあるから、早いところ警察の事情聴取から抜けたいってんで「毛利小五郎の推理に従って、俺たちが事件と関係なさそうなら解放してくれ」って警察に交渉できそうな雰囲気になってきたぜ。

もちろん警察も、この毛利小五郎がニセモノだって分かっているから、俺たちの解放を渋っている。だけど俺には仲間がいる。旅行メンバーと息を合わせて論破開始。

警察の都合のいいように俺たちを言いくるめているんじゃないかってな。

いやぁ、人殺ししておいてアレだけど。仲間の団結力っていいな。

 

 

「じゃあお望み通り、この毛利小五郎が事件の真相を解き明かしましょう」

 

なんかニセモノが啖呵を切り始めたぜ。そいつはおもしれぇ。ニセモノのクセに調子ぶっこいて推理ショーなんか始めやがったぜ。

だが所詮はニセモノ。しかも完成度の低い。

何故かって? 毛利小五郎はな、眠りの小五郎って呼ばれているんだよ! 眠っているように推理をすることで有名なんだ。だがニセモノのアンタは普通に起きている。そこの再現度が勝敗の決定的な決め手なんだよ!

 

 

って思っていたけど・・・なんか普通に推理が合ってる。咲き乱れている。ズバリ的中俺のトリック。

「となると残るは身に付けていても怪しまれず、最も回収が容易である。兵頭さん、あなたがさっき髪を束ねていた髪止め用の輪ゴムくらいしかないんですよ!」

 

 

 

こうして謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 小五郎さんはいい人。

いやいやいや。小五郎さんじゃないからな。ニセモノだからな。
そうだよ。そのニセモノが俺の敗因。めっちゃシンプルな答え。
ニセモノなのに推理力がブーストしてんだよ。一般市民なのに。いや探偵も一般市民だけどさ。
この町、怖すぎる。住民全てが犯人を根こそぎ解き殺そうとしてくる町だろ。


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服部平次VS工藤新一 ゲレンデの推理対決

天も見てるか世界の迷宮 推理全開全てを貫く
今日の事件は中学探偵 2人は顔を合わせていない
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



オレはスタントマンの三俣耕介。4年前に先輩を殺した俳優の箕輪奨兵に復讐する。

トリックは奴が4年前に先輩を殺した時と同じものを使うぜ。仇討ちにはピッタリのアイディアだろ。

 

手順は簡単だ。

足が悪い箕輪の代わりに俺がヤツのスキーウェアを着てファンの子たちの前で滑るっつう身代わりをする約束がある。箕輪はその間スキーバッグの中に隠れて、俺がそのバッグをかついでおく。こうすればだれが見ても俺が箕輪だって見えるのさ。

そのバッグをかついだままスキーリフトに乗るだけで、リフトには箕輪と俺の二人きりなのに周りからはリフトには箕輪だけが乗っているようにみえる。

そのままリフトの上で奴をサクッと殺して、返り血のついたバッグの代わりにあらかじめリフトの近くに待機させておいたバッグを回収して入れ替えるだけで証拠隠滅。

あとは俺自身もリフトから途中で飛び降りて、拳銃の発砲音に似た音が出る花火を途中で打ち上げて、音が鳴った時に俺が犯行現場にいなかったように見せかければアリバイも成立。

リフトは空中の密室だから、箕輪が自殺したってことで処理される。こういうトリックさ。

 

うん、今回のトリック、箕輪のアイディア丸パクリだから俺の脳味噌あんま使ってないんだけど・・・

怖ッ。え? 箕輪おまえ俳優だよな? こんな手の込んだ殺し方を自分だけで考えたの? 怖ッ! 普通に引くわ。まぁこれだけ上出来なトリックなら、おかげで実行するオレ自身も安心できるけど。

こんな殺しの才能のあるヤツと今まで一緒に仕事していたと思うと、やっぱ怖ッ。

 

ということでいよいよ本番だ。シーズンってこともあって、周りはスキー客がたくさん。

だがまぁ大丈夫だろう。むしろオレのアリバイ証明のためには他に客がたくさんいるほうが好都合。よっぽど変な客でもいない限り大丈夫。

そう。よほど探偵でもいない限りな。

 

なんて思っていたら・・・先輩が死んだ事件を捜査していた刑事さんが、探偵になって俺たちの前に現れた。あれは自殺じゃない、殺人だって。

探偵、いるのかよ! まぁこの探偵は先輩の事件の謎も解けなかった人だから脅威じゃないけどさ。

 

そういえばさっきもいたなぁ。先輩の事件が殺人だったら不可能犯罪だっていうオレたちの話に口を挟んできた中学生。

「アホか! 人間がやったから犯罪ちゅうんじゃ! それに不可能なモンがあるかっちゅうねん! ボケェ!」

また出た。今度は関西弁の中学生。

これでこのスキー場には、今日オレが使うトリックで自殺じゃなくて殺人だって言い出しそうな人間が3人いるってことか。まぁそのうち2人は中学生だし問題なし。

 

さて実行に移るか。

まずは箕輪をスキーバッグに詰めて、オレはリフトで上に登ってからスキーでファンの子たちの前まで滑る。

バッグをかついだらリフトに乗車。

サクッと殺したらリフトから降りて、花火をセットして滑るだけ。

さてそろそろ花火が鳴るってタイミングで同僚のメイク担当の人と遭遇。タイミング最高。これでオレとメイクさんは互いにアリバイ証言できる。

そしてメイクさんと一緒にリフトで上まで行って、案の定箕輪が死んだことで騒ぎになって警察も到着しているところに合流。

全て予定通り。あと警察の到着めっちゃ早い。

 

なんてことを思っていたら、なんか急にさっきの関西弁の中学生が出現。

「なるほど、つまりや。箕輪さんの前にリフトに乗っとった大山監督にも。後ろに乗っとった片品さんにも。下りのリフトでスレ違うた立石さんにも。ゲレンデにおった三俣さんにも、箕輪さんを撃つことは出来たっちゅう事やな」

なにこの中学生。急に事件に口を挟んできた。しかも遺留品の状態も勝手に調べ始めたし。自由すぎるだろ。

しかも、気付いてなかったけど・・・後ろのリフトに探偵いたのかよ! あの時、偶然吹雪いてくれていたからよかったものの・・・射殺の瞬間見られてなくてラッキーだった。ラッキーに救われてた。

 

「しかし今時の中学生はどいつもこいつも好奇心旺盛だな。いたんだよ。君と全く同じ三点を我々警察に偉そうに指摘した中学生がな」

そんなことを警察が言った後、関西弁の中学生は話に出ていた中学生に対抗心を燃やしている感じで現場から離れていった。青春だな。

でも何だろうその青春、嫌な予感がする。何かこう、足元からゾワゾワと迫られているような。

そう、なんかもっと別の脅威が、オレに迫ってきているような。

まぁ気のせいだよな。きっと大丈夫。今回の敵は例の中学生なんだから。

例えばどこかの都道府県の本部長とか、世界的な推理小説家とか。そういうヤツが中学生の推理に口を挟まない限りは大丈夫。

オレはあと警察の事情聴取が終わったら、証拠品を回収して捨てるだけ・・・

 

 

「なんもかんもわかったで。箕輪さんを自殺に見せかけて殺したんが誰かっちゅう事も」

「                    」

「「はぁ!?」」

事情聴取の最中、さっきの関西弁の中学生が現れて、とんでもないことを言い始めた。

あと、刑事さんが電話口で何か分からないけれど驚いてた。

 

そしてそこから咲き乱れる中学生の名推理の数々。

「箕輪さんが入ったバッグ担いでリフトに乗って、まんまと殺しよったんは、箕輪さんのリフトの前にも後ろにも乗ってへんかった、スタントマンの三俣さん…あんたしかおらへんよな?」

「            」

正解。それに何だろう、この子以外の方向からも犯人だって名指しされている気分。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

と思っていた矢先、さっきからずっと電話している刑事さんがとんでもないことを言い始めた。

「け、警部! 電話の中学生はどうします? その少年と全く同じ推理を、全く同じタイミングで話していたんですけど。例のペットボトルを今、ここに持ってくると言ってますが」

 

 

な、謎は二重で解かれていた。

 

 




いかがでしたでしょうか? 服部平次VS工藤新一 ゲレンデの推理対決。

あっ、そうなんですね。いやぁ例の二重で謎を解いて来た中学生の名前、やっとわかりました。
名前も名乗らずに事件を解いた謎の中学生って感じだったので。

いやぁ、敗因はもう言わずもがな。他人のトリックに依存しすぎた事です。
実際、今回このスキー場に一緒に来た監督も、箕輪が4年前に先輩を殺した犯人だって見抜いていて、監督の映画の内容でも今回のトリックを暴いていたらしい。

なるほど、どうやら今回の事件、探偵以外にも警戒するべき人がずっといたってことですね。
そう。あの時感じたオレの足元ゾワゾワ感の正体。それは本部長でも小説家でもない。監督だったんですね。



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探偵事務所籠城事件(コナン)

幕が上がって真打登場 謎解きステップ華麗にダンシング
今日の事件は小説絡み。不正な受賞は不幸を招く。
たった一つの真実見抜く。見た目はオリ作、本当は合作。その名は死神の葬列!



私はパン屋さん兼アマチュア小説家の湯地志信。

一緒に書いた小説の功績を独り占めしてきた沢栗未紅を殺そうと思っているわ。

舞台はここ、群馬の温泉旅館。仲間3人と沢栗、その兄の5人も一緒に参加する町内会の旅行中に。自殺に見せかけて沢栗を殺す。

 

うん、殺すのちょっと怖い。だってミステリーの定番って、こういう旅行だとすぐに名探偵に謎を全て解かれちゃうパターン。しかも同じ町内会には天下の名探偵毛利小五郎もいる・・・

だけど大丈夫。毛利探偵は今回の町内会旅行に不参加だもの。

だけど油断大敵。もちろん私たちもアマチュアとはいえミステリー作家の端くれ。だから身内に名推理で追い詰められる危険もある。

ヒヤヒヤものよ。だけど実行しなきゃ。

 

まずは部屋にいる沢栗をサクッと殺す。

隣の部屋に泊っている沢栗の兄に「サヨナラ」ってメールを送って、沢栗兄が窓から侵入して死体に気を取られている間に窓から脱出。

あとは野次馬に紛れてやり過ごすだけ。

 

なんだけどうっかりその時、落としてしまった私の本に沢栗の血の指紋がついちゃった。ヤスリで削って何とか誤魔化せたけどね。本は捨ててもよかったけど、この本は私の手柄でもあるデビュー作が載ってる大事な本。永久保存版だから、一応手元に残しておかなきゃ。

 

 

さぁ・・・ここからが本番よ。できれば来ないで名探偵。そして優秀な刑事!

 

「現場は密室だから関係ないですね」

ヘッポコだぁ~! 事件を担当した刑事さんヘッポコ、ラッキー!

 

こうして、謎は全て解かれなかった。

 

 

そして翌月・・・

 

沢栗の兄が主催で、私たち作家仲間3人は、あの名探偵の毛利探偵のお話を聞けるイベントに参加できることになったの!

ドォン!

え? 

イベントの話、嘘でした。沢栗兄、私たち3人の中に沢栗殺しの犯人がいるはずだって言って、毛利探偵に推理させるつもりだったの。拳銃持参で。

 

でもそこは天下の名探偵の身内。その場にいた毛利さんの娘とお友達が一瞬で沢栗兄を制圧してくれたわ。さすがは天下の犯罪都市・米花町が誇る名探偵。対処が万全。

 

と思っていたら、沢栗兄も対策万全。犯人と刺し違えるつもりで自爆装置を持っていたの。

そのせいで結果、殺人犯である私や名探偵の毛利小五郎さんを含めた籠城事件に発展。

何コレ、映画?

いやいや悠長なこと言ってられないわ! これもし毛利探偵が謎を解いちゃったら、私この沢栗兄に殺されちゃうじゃない! 万が一、毛利探偵が解けなかったとしても自爆に巻き込まれて全員死亡。

最悪ッ。どう足掻いても絶望。

しかも毛利探偵の歯切れが悪い。まぁ状況が状況なだけ仕方がないけれど。

どうしてこうなっちゃったのかしら。まぁ私が殺したのが悪いんだけど。それにしても私では何ともできない。手も足も出ない。

 

そんな時、毛利さんの娘さんの携帯が通話中になっていることが判明。沢栗兄もこれには激怒したけれど、その電話口に出たのは思わぬ人物だったわ。

「僕が彼女にそうさせたんです。この工藤新一がね」

工藤新一!? あの有名な高校生探偵、まさかの参戦!

事態が打開されそ・・・うな気配はやっぱり無いわ。名探偵がいくら増えたからって、この状況どうにもならないんだし。

 

案の定、工藤新一も推理停滞。毛利さんの娘さんが「今夜は冷えるからカーテンを閉めようと思って」ってカーテンを閉めた頃にようやく「大丈夫。落ち着いてください。ネズミの正体はわかりましたから」って言い出したわ。

そう。ネズミ。それは沢栗が残した日記に残った、犯人の第一候補の名前。

「ネズミはもちろんねずみ色。三井さんの実家の石材店が扱う石の色。つまり未紅さんの部屋に最後にやって来たネズミは三井さん。あなた以外に考えられないんですよ!」

ポ、ポンコツだ~!

いや違う違う! 犯人は三井さんじゃなくて私だから!

あっ、でもこのまま三井さんが沢栗兄に殺されてくれれば、私は無事にこの籠城事件から脱出できる。でも冤罪のままで仲間を失ってしまうのも後味悪い。

どうすればいいの私・・・どうすれば?

 

「確かに僕は未紅さんがネズミというあだ名を付けたのは三井さんだと言いましたが、三井さんがあなたの妹さんを殺したなんて、一言も言ってませんよ?」

え? 何その後出しジャンケン。私の一瞬の困惑を返して!

ってそれどころじゃないわ。この流れ・・・まさかだけど謎解かれた? 私が犯人だってバレた?

「妹さんのデビュー作、お読みになりましたか? タイトルは『死神の葬列』」

なんか思ってた展開と違う。工藤新一が急に私の作品のことを語り出したわ。

しかも作品内の展開と違う。工藤新一の語ってる私の作品、内容が違うわ。

さらに流れで、あれは沢栗の自殺だったって言い始めたわ。

や、やっぱりポンコツ! しかも作者である私を目の前に知ったかぶりで語るって何?

これ何っていう展開?

しかも沢栗自殺説に絶望した沢栗兄の一瞬の隙を突いて、毛利さんの娘さんたちが沢栗兄を確保! 直後にSAT突入で沢栗兄を逮捕! 全てが怒涛の展開。

 

 

 

こうして籠城事件は全て解決した。

 

 

「ここからが本題。ちゃんと存在しますよ。沢栗美紅さんを自殺に見せかけて殺した死神は、その3人の中にね」

え? 工藤新一、急に方針転換!? ちょっと待って、ポンコツ2連続はまさか罠!?

「彼女の部屋に居座っていたのはネズミではなく、2番目に来たキツネである湯地志信さん、あなただったんですよ!」

で、ですよね~。

さっきまで状況が状況だったからトンチンカンな推理ショーをしていただけで、名探偵は全てお見通しだったのよね。

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 探偵事務所籠城事件。

やっぱり旅行で殺しは駄目ね。名探偵が不可避になっちゃうフラグだもの。
しかもタイトルが悪いわ。死神の葬列だなんて。
旅行×死神×探偵。
でも考えてみれば、この組み合わせで死者が1人しか出なかったんだから、万々歳じゃない?


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明智警視の華麗なる推理in Las Vegas(金田一)

私はホテル経営者にしてチェスの名人、ケネス・ゴールドマン。

とはいえどちらも順調ではない。ホテル経営も厳しくチェスもCPUに負けて心が折れた。

ならCPUとホテルの合わせ技で勝てばいいじゃないか。

 

ということで私はチェス大会の会場から私の経営するホテルが見えることを利用して、大会中にカンニングすることにした。

対局のデータをCPUに送り、CPUが考えた手をホテルの照明に点灯させる。

面白いアイディアだろ? CPUは私にしか見えないのに、このチェスの盤上にはハッキリとCPUがいるんだ。最強チェスコンピューターがね

 

 

というカンニング方法を対戦相手のMr.舟木に見抜かれてしまった。

しかも舟木を思わずサクッと殺害してしまった。私の試合の時間まであと30分しかないのに。しかも直後にルームサービスまで来てしまう始末。

ということで私はまずルームサービスをドアの前に置いておいてもらい、それを後で回収。ちなみにルームサービスは『そば』というライスボール。日本人はこんなものを食べるんだな。

あとは部屋中の私の指紋を拭き取って・・・アリバイ工作をするだけ。

アリバイ工作をするだけ?

できたらしとるわ! アリバイ工作ってのは用意が大事なんだよ! それを即興でやろうだなんて・・・

 

でも私はひらめいた。

部屋にあるチェスのセットに、チェスのプレイ中に見えるように盤面を用意しておく。

そして私は実際の試合でその配置の通りに駒を動かす。こうすることで私の試合を見ていた舟木が棋譜を再現し、その盤面にさしかかった頃に死んだというように見える。

これでアリバイトリックが出来上がる!

 

あとはCPUにその棋譜を再現してもらいつつ、チェスに勝利するだけ。

え? そんなことが本当に可能なのかって? 相手の駒の動きもコントロールしなきゃいけないのに? 大丈夫。CPUを信じるのさ。

 

ということで私の試合がスタート。いつものようにホテルの照明に従って駒を動かすだけ。あとは例の盤面になるように・・・

ん? ちょっと待ってこの駒の動き・・・たしかに私が舟木の部屋に用意した盤面の通りだけど・・・

形勢悪くない?

そして例の盤面が完成する一手に到達。だけど、そりゃ悪手だろ・・・

しくじった。さすがに無理だった。いくら最強CPUでも、盤面を再現しつつ勝つのは無理だったか。

 

ん! 悪手だったはずのさっきの一手が、こ、ここにきて絶好の位置にいる!

CPUの悪手と思われたあの一手は、左上の攻防をニラんでの手だったのか!

いつのまにか私が優勢になっている!

 

結果は私の勝利。

きっとCPUには見えていたんだ。私の生きる道を。気付きにくい難しい道が。たった一筋。

誰も気づいていない。今ここにいる誰よりもCPUは上をいっている。

 

そして舟木の死体が見つかり、死亡推定時刻は私の試合中と推理された。

勝利確定。

しかも容疑者は同じ日本人で舟木に負けたMr.金田―――

え? きんだいち? NO。かねだ、だよ。

 

 

なんて冗談を言えるくらいに安心していた時、事件が起こった。

私の次の対戦相手のMr.明智の試合で、私の例のアリバイ棋譜と全く同じ盤面が登場したのだ。

心臓に悪い! せっかく事件の事を忘れようとしていたのに。偶然にも同じ盤面が出現するなんて。

導いてる? チェスの神がお導きしてる? 油断しちゃだめだよゴールドマン、って。

 

でも何か違った。後でMr.明智に聞いたらこんなことを言ってきた。

「偶然でも神のお導きでもありませんよ、ゴールドマンさん。あれは私からあなたへのちょっとしたメッセージですよ」

疑ってる? この明智、私を疑ってる!?

というか例の盤面を試合中に再現できるだなんて、まさか明智もCPUカンニングしてる!? まさか実力で? いやいやそんなことはありえない。

カンニングだな。私には分かる。

 

ということは次の試合は私のCPUと明智のCPUの戦いということか。受けて立とう。

しかしこの私とCPUの最強コンビに勝てるかな? CPUとは支え合わなければいけないのだ。キミが今ボクを支えて、的な。ボクが今キミを支える、的な。迷いながら共に生きていく、そういう関係!

 

 

そして試合が始まった。だけど明智はホテルが見える位置とは逆の席に座った。ホテル証明カンニングじゃないのか? いったいどんな手を・・・

「そうだ、昨日あなたのホテルでコーヒーをごちそうになりましたから、夕食は私がおごりましょう」

カンニングの気配が一向に見えてこない中、明智は試合中にディナータイムを作り始めた。まぁ珍しいことでも何でもないが・・・

 

!?

明智が注文したのは、あの日舟木がルームサービスで頼んだ「そば」というライスボールと、何か分からない灰色のヌードルだった。

え? まさか?

「舟木はあなたに殺されたんですよ」

 

予感したとおりだぁ。

そしてそこから咲き乱れる明智の華麗なる推理の数々。

 

決定的な証拠は、例の「そば」を私がライスボールのことだと断言してしまったこと。

あの日、ルームサービスは「そば」と間違えて「おにぎり」というライスボールを持ってきてしまっていた。つまり「そば」をライスボールと断言するのは、犯人しかいない。

 

 

こうして謎は全て解かれた

 

 




いかがでしたでしょうか? 明智警視の華麗なる推理in Las Vegas。
いやぁ完敗だった。
しかもMr.明智は推理中にも対局を続けて、そのままCPUにも勝ってしまうのだから。

やっぱり過去のデータから最適を検索するだけのCPUでは駄目だ。

最善の一手。最高の一手。
そう、神の一手を極めるAIでなければ。
そんなすごいAI、SuperなAI。
そう、「sai」がいてくれれば、一矢報いることができたのに。


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謎の狙撃者殺人事件(コナン・アニオリ)(リクエスト)

明るい日差しを感じてモーニング 恋も事件も毎日がスタート
今日の事件はリモート狙撃 狙えないけど狙い撃て
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



私は衆議院議員・高田代議士の秘書、新倉常章。議員秘書といえば未来の議員。私も議員になりたい。そろそろな時期だ。高田が引退したりすれば私がそのポジションにつくことになる。

よし、高田を殺そう。

だけど直接殺してしまえば、その死によって得をする私が疑われてしまう。

 

ということで、議員秘書として働いている中で得た闇のつながりを利用する。議員秘書なら誰でも持っているコネクションだ。

恐喝屋の平岡を利用する。平岡は最近、石本という社長を恐喝している。それを利用する。

『平岡が石本社長の命を狙った』という筋書きを作るのだ。

 

まず石本社長に脅迫状を送る。命を狙っている感を演出するためのものだ。

次に石本社長と高田が近い距離にいるタイミングで高田を射殺する。

こうすることで、石本社長が狙撃されて、流れ弾で高田が死んでしまったように見えるというわけだ。

 

トリックは簡単。遠隔発砲装置を使うだけ。そしてこの装置を平岡に回収させて、あとは平岡を口封じすればいい。

ただタイミングがすごくシビア。

一応、この発砲装置は高田のいる場所を自動追尾する最新のシステムを使っているから問題はないが、発砲自体は手動。タイミングを図る必要がある。

発砲は石本社長の側に高田を誘導してから。先導するのは私の秘書としてのポジションがあれば簡単だが、そうなると狙撃時に私も高田の近くにいることになる。流れ弾が私の方に命中する可能性があるのだ。しかもそれを狙いを定めて行うのではなく、いかにも誘導している素振りを見せながら。ようはノールックで撃たなければならない。

 

そして本番当日。そりゃ緊張もしますよ。思わず遠隔装置のリモコンを落としてしまって、中の電池が外れちゃったりしますよ。いくらメンタル鬼強の議員秘書だって、人殺す時は緊張だってしますよ!

だけど発射はベストタイミング!

弾丸は石本社長の肩を掠めながら、私には当たることなく、見事に高田に命中。サクッと殺害に成功!

平岡もちゃんと打ち合わせ通りに遠隔装置の回収をしてくれた。しかも運よく目撃情報から平岡が容疑者に上がってくれた。

自分でも怖いくらいに上手くいっている。

 

 

だが本番はここから。

何故なら高田は衆議院議員。

みなさんもテレビのニュースを見たりしてご存知だと思うが、議員が死んだとなれば大ニュース間違いなしの大事だ。

それは秘書にとっても大事。関係各所への報告や後援会との連絡調整。業務の引継ぎに部下たちへの指示。そして今回は石森社長のトラブルの巻き添えになって死んだことになっているから、その関係者との責任の所在に関する打ち合わせもしなければならない。

 

殺人後の秘書ってやることが

やることが多い!

犯人って普通はトリックや事件のやり方の大変さに悩むものだけど、私は違う。

事件の後にやることが多い。事件後のほうがストレスフル! たしかに自分で蒔いた種だけど。

 

 

そしてもちろん平岡の口封じもしなければならない。忙しいのに。

ということで平岡との集合場所の廃ビルで平岡をサクッと殺害。あとは遠隔装置を回収するだけ・・・

え? 遠隔装置、どこ?

 

その後、一生懸命探したけれども遠隔装置は見つからなかった。これはマズイ。

もし警察が遠隔装置を見つけてしまったら、石本社長狙撃の真の狙いが平岡の殺害だってことがバレてしまう可能性がある。

って、なんてな。そこはぬかりのない私。

石本社長に罪を被せちゃえばいいのさ。

そう、遠隔装置のリモコン。これを石本社長の社長室に隠しておくのさ。こうすれば警察の捜査の手が石本社長に及んだ時に、石本社長が高田を殺したってことになるはず。自分が撃たれることで容疑者から外れるカモフラージュ作戦だと警察が疑ってくれるはず!

 

ということで私は次の日の朝、石本社長の会社に訪問した。もちろん例の高田巻き添え死亡の件で、秘書としての正式な訪問。ようは「あなたのせいで高田先生が死んだ!」って文句を言いに行ったのさ。

そして隙を見てリモコンをセット。これで全ての仕掛けが終わった。

 

あとは高田の跡を継いで議員になるだけ・・・

やることが、やることが多い生活が待っている! でも待ってました!

 

 

と歓喜していると、突然警察からの招集がかかった。あの名探偵の毛利探偵が事件の真相にたどり着いたというのだ。

うわ、油断してた。そうだよ石本社長は私の脅迫状のせいで、ボディーガードに毛利小五郎を雇っていたんだ!

そう。この事件には名探偵が初動捜査から関わっていたのだ。

まずい。非常にマズイ。

 

「真犯人はあなたです!」

 

毛利小五郎の推理した高田死亡の真犯人。それは柴田という男だった。誰?

そこから咲き乱れる毛利探偵の迷推理の数々。

うん。真犯人は私。だからその推理全部違うって知ってる。しかもグダグダなトンチンカン推理で柴田だけじゃなくて石森社長たちも呆れムード。

私は何を聞かされているんだ? もう帰っていい?

 

 

すると毛利探偵は急にフニャッと座り込んだ。

「冗談はさておき」

私が聞かされていたのは冗談だった。え? 何この流れ・・・

 

そこから始まる毛利探偵主導の高田狙撃事件の再現。

今度はビックリするくらいに正解。全部当たってる。何さっきの、私を油断させるための演技?

だけど流石にさっきまでのポンコツのせいで、柴田からもイマイチ信頼されていない感。

柴田は自信満々に石本の会社で見つけたリモコンを証拠として提示した。

よし、これはチャンス。私も後押しに「社長室で見つけたリモコン」を強調して、石本社長の真犯人説をプッシュした。

 

「聞きましたね! 今の一言を」

え? 何? 毛利探偵が鬼の首をとったような雰囲気を出してきたぞ?

しかも急に柴田もしてやったり顔をし始めた。

「俺はリモコンを石本の会社で見つけたと言ったんだ。社長室で見つけたなんて一言も言ってないよ」

「語るに落ちましたね新倉さん。犯人はあなただ!」

 

あ・・・・・

 

しかも決定的な証拠まであった。リモコンに付着した私の指紋。いやリモコン自体には指紋はついていない。ついてしまったのは、あの時に外れてしまった電池のほうだった。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 




いかがでしたでしょうか? 謎の狙撃者殺人事件。

敗因は2つ。1つは調子に乗って推理に口を挟んでしまったこと。見事なまでに語るに落ちてしまった。
そしてもう1つは・・・・安物のリモコンを使ってしまったこと。落としただけで電池が外れるような品質のものを使わなければよかったのに。
忘れがちなことだけどトリックで何よりも大事なのは、トリックに使う凶器の品質! 筋力でもフィジカルでもない。まずは品質!


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探偵たちの夜想曲(コナン)

カウントダウンのゼロを突き抜け その先の推理が答えを出す
今日の事件は敵がガンダム シャアにセイラにアムロにカティ
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



私は銀行員の浦川芹奈。

勤務先に入った銀行強盗に恋人を殺されたの。どうやら強盗犯は彼の顔見知りで、口封じのために殺された。

だから私は復讐する。この銀行強盗犯3人に。

 

彼が死に際に言った「おい、けい」という言葉から、強盗犯の一人が樫塚圭ということは分かったわ。

彼の知り合いの「けい」という名前を片っ端から探して、ついに樫塚圭にたどり着いた。

家を訪ねて出て来た男に中に入れてもらうと、部屋の中で拳銃を見つけた。やっぱり男は強盗犯の一人。ということでサクッと殺害。

だけどこの男は樫塚圭じゃなかった。

ということで、後でこの部屋に戻ってくるであろう樫塚圭を待ち伏せるために、私はスーツケースに男の死体を入れて、盗聴器を仕掛けて待つことにした。

 

ええ。大人が入れるサイズのスーツケースに死体を入れて、盗聴器を仕掛けたわ。

え? どこでそんなのを手に入れたのかって? 何言ってるの? どっちも米花町のホームセンターに売ってるわよ。

 

ということで盗聴続行。だけどそこで思わぬハプニング。

樫塚圭が死体に気付いてくれないの。それどころか男が逃げたと思ったみたい。

だけど盗んだお金はコインロッカーの中。どこのコインロッカーなのかは私が殺した男だけが知っているらしいわ。

そこで樫塚圭が思わぬ行動に出たの。

どこのコインロッカーなのか、名探偵の毛利小五郎に調べてもらおう!って。

 

馬鹿なの? 銀行強盗犯が、よりにもよって名探偵のところに自分から行っちゃう?

そんな銀行強盗いるわけないじゃない! 常識から外れすぎてるわ! そんな強盗犯、他にいたら教えてよ! 絶対100%いないから!

 

ということで私は毛利探偵をレストランに呼び出して、その間に探偵事務所に侵入。事務所の鍵をピッキングで開けて。ええ、ピッキング。学校の必須科目でしょ?

そして何も知らずにやってきた樫塚圭を尋問・・・できなかったわ。私が事務所の人間じゃないってバレそうだったからスタンガンで気絶させることにしたわ。

だけど困ったわね。私のマッスルだけじゃ樫塚圭を運べない。いつか毛利探偵も戻ってくるから、樫塚圭が目が覚めるまで待つ時間も無い。

仕方ないわ。残る復讐相手は自力で探すことにして、ここで樫塚圭を殺す。

幸い樫塚圭は悪人面。私のほうが見るからにか弱い一般市民。

樫塚圭をトイレに運んで、その中で口に拳銃を加えさせて自殺に見せかけて殺すことにしたわ。

私自身はガムテープでぐるぐる巻きになる。これで私自身が依頼人の樫塚圭って嘘をつけば、怪しい男が私を拉致したけれど毛利探偵が来たから追い詰められたと思って自殺したってことになる。

あとは毛利探偵への通話履歴で怪しまれないように、私と樫塚圭の携帯を交換しておくだけ。

 

結果は半分成功。

樫塚圭は怪しい犯罪者ってことで推理されて、私は晴れてか弱い被害者として解放されたわ。

ええ。半分は失敗。至近距離で拳銃の発砲音聞いちゃったから鼓膜やられたわ。

あと私を送り届けるって毛利探偵が家についてくることになっちゃったのも計算外。本当なら残る1人の強盗犯を探すつもりだったのに。

仕方なく樫塚圭の家に連れていくことになったわ。そして隙を見て家から脱出・・・

「どこ行くのお姉さん」

脱出を毛利探偵のところのボウヤに見られてしまったわ。上手い言い訳もできなかったから、仕方なくボウヤも一緒に連れていくことに。

でも好都合ね。もし毛利探偵が私を怪しんでもボウヤを人質にできる。

それにボウヤには睡眠薬入りのジュースを飲ませたから、もし強盗犯とバトルすることになっても、彼には被害が及ばない。

 

あとは樫塚圭の携帯から残る1人を探すだけ・・・

「ボクが見つけてあげよっか? お姉さんが捜してる女の人」

な!? ボウヤ、起きたの!? 睡眠薬飲ませたのに!? 耐性すごいの!? その若さで睡眠薬常習して、薬が効かないの?

「ああ、お姉さんに買ってもらった睡眠薬入りのジュースなら飲んでないよ。座席の下に半分こぼしちゃった。だってキャップ開けた時バキって音しなかったんだもん。あれってお姉さんが一度開けて何かを入れたからだよね?」

え? フタが開いてたら飲まないって、今どきの小学生の警戒心を侮ってた? しかも睡眠薬入りだってことまで!? ごめん、頭が追いつかない。

「とにかくさー目当ての人を捜したいんならその人たちに会いに行ってみようよ! 今、お姉さんが電話した3人、ネット上の圭さんの住所録に登録してあったから、住んでるトコわかるよ」

とにかくさー、でスルーしないで。まだ私の頭が追い付いていないのに、今ボウヤ何て言った? 住所録、いつの間に調べたの!?

「その女の人を殺したいんでしょ」

サラッと言わないで! ゲーム感覚。ゲームで敵キャラを殺したい、みたいなノリで言わないでそんなこと! 私まだ頭が追い付いてないんだから。

 

「浦川芹奈さん」

 

・・・・・怖い。もう何の感情もわかない。とにかくボウヤが怖い。

それ私の本名。私の名前に繋がるもの、何も残してないハズなのに。

死神なの? ボウヤ、死神の目を持ってるの? 私の顔を見ただけで、名前と残りの寿命、見えてるの?

 

そしてそこから咲き乱れるボウヤの名推理の数々。全部当たってる。怖いくらいに当たってる。まるで名探偵みたいに。まるで最初から私の隣で一部始終を見ていたみたいに。

毛利探偵の影響!? 毛利探偵の名推理をいつも見ていて、その影響でここまでの推理力を会得したというの?

な、何なの!? 何者なのよボウヤ!?

 

「江戸川コナン、探偵さ」

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

けどコナンくんは探偵だけど小学生。私を警察に突き出すどころか、私がこれから殺そうと思っている3人目の強盗犯を一緒に探そうって言い始めたわ。

3人目の強盗犯の候補3人がそれぞれ住んでいるアパートに、引っ越しの挨拶をしに来た母子のフリをして調べようって提案してくれたの。

手口が手慣れすぎていたわ。

すっごく自然な演技で「わぁ~いい匂い~」って自由奔放な子供を演じて部屋の中に押し入ったりしたのには私もビックリ。

そして候補3人を訪問し終わったコナンくんは、誰が強盗犯なのか見抜いたわ。

 

「でもお姉さんには教えられないけどね」

ここにきて急に小学生レベルのイジワル発動? え? さっきまでの大人レベルの探偵力はどこに!?

「だってボク、死なせたくないもん。お姉さんを」

コナンくん、私が強盗犯3人を殺したら、この世に未練が無いってことも見抜いていたの。

「お姉さんがボクの言う通りにしてくれるなら、教えてあげてもいいよ。ボクの推理に納得したら、その犯人を警察に任せてお姉さんが自首してくれるって約束してくれるならね」

 

そしてそこから再び咲き乱れる、コナンくんの名推理の数々。

3人目の強盗犯は手川隆代という、ついさっき訪問した3人目の候補者。

凄いわコナンくんの推理。だけど1つだけ間違っていたけどね。

それは私が強盗犯の拳銃を3つとも回収したって推理。残念だけど私が回収したのは2つだけ。

 

「そこまで知られてたら黙って帰すわけにはいかないねぇ!」

まさかの手川隆代、来襲。私たちを尾行して、さっきのコナンくんの名推理を全部聞いていたみたい。しかも例の強盗犯の3丁めの拳銃を持って、私たちを脅迫してきたわ。多分、私たちを口封じのために殺すつもりね。

 

どうしよう。万事休す・・・私だけだったら相打ち覚悟で戦うけれど、ここにはコナンくんもいるし・・・言う通りにしないといけない。

 

 

と思っていた次の瞬間、私たちの目の前に車が現れて衝突!

私はエアバッグに挟まれて気を失って・・・

 

 

 

こうして、強盗犯は逮捕された。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 探偵たちの夜想曲。

後で聞いた話だけど、手川隆代はあの事故の直後。直後も直後。車から出てすぐに、後ろからやってきたバイクの前輪に顔面を吹っ飛ばされたらしいわ。酷い怪我だったみたい。
しかもバイクでぶつかってきたのは毛利探偵の娘さんの友達。そして急に現れた車を運転していたのは毛利探偵のお弟子さん。
さ、殺傷能力が・・・犯人に対しての容赦の制限が無い・・・

多分、私がコナンくんを拉致したから必死に取り戻そうとして、コナンくんを捕まえていた手川隆代は間違えられてボコボコにされたのね。弁解の余地も無く。
危なかった・・・私、事故に巻き込まれただけで済んで良かった。
そりゃ命を賭ける覚悟はあったけど、探偵に殺されるのはゴメンよね。

最後はエアバッグの性能に助けられた。技術の国、日本に生まれてよかったわ。


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コナンvs平次 東西探偵推理勝負(コナン)

時間は縦軸 俺は横軸 恋に事件に推理を刻む
今日の事件は敵だらけ カレーが美味しいレストラン
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



俺は関西出身の甘粕亨。1週間前まで埼玉の建設会社で働いていたが、その社長を殺して大金を奪ってきた。

だけどそれを幼馴染の渋宮研吾に知られてしまったからサクッと殺すことにした。

 

トリックは簡単。社長を殺した時と同じように飴ちゃんに青酸系の毒を塗って、それを口に入れさせるだけ。

待ち合わせていたファミレスで別々の席に座って、トイレにおびき寄せるだけ。

といってもまだチャンスはある。幼馴染なんだから見逃してくれる可能性だってある。

「なんぼ幼馴染ゆうたかて、そないな頼み聞かれへん。飴ちゃんに毒塗って殺したんは自分や、せやったら自分、責任取るしかないで!」

渋宮は最後まで俺に自首を勧めてきた。ということでサクッと殺した。あとは俺に繋がる情報が残らないように渋宮の携帯電話をトイレの中に水没させて、手についた毒を洗って逃げるだけ…

 

ジャー

 

え!? トイレに他の客がいる!? まずい、ここでは洗えない!

仕方なく俺はファミレスの席に戻って、おしぼりで手を拭いてから店を出ることにした・・

 

と思ったら、もう入り口が封鎖されていた。「人が死んだから警察を呼べ!トイレは封鎖して、念の為に客は一人も外に出すな!」って。外国人の男が。

さすが外国人、日本とは違って犯罪発生率の高い国に住んでいるから、素人なのに殺人事件発生時の手際がイイ!

 

そしてあれよあれよという間に警察が到着。

しかもあの有名な名探偵の毛利小五郎まで来る始末。

探偵、もう来たのかよ!

 

そして毛利小五郎と警察の捜査開始。死体の第一発見者で、手際よくレストランを封鎖した例の外国人とも話し始めていた。

「キャ、キャメル捜査官!?」

「FBIの捜査官で、今はたまたまお休み取って日本に旅行に来てるんだよね?」

F・B・I・・・・!? FBIまでいたのかよ!

え? なんで俺の殺人のタイミングで、よりにもよってFBIがいたの!? しかも第一発見者ってことは、俺が殺人していた同じトイレの中にいたの!? どういうことよ!

 

幸い、俺は何もしゃべらずに殺したから俺の声は聞かれていなくてセーフ。

だけど死亡した渋宮が関西出身なのと、俺の事を幼馴染って言っていたことが聞かれていたこともあって、容疑者は30代~40代の関西人だという推理に。

 

まずい。ここは俺が関西人だというオーラを消さなければ。

関西人のオーラって何? とりあえず生まれも育ちも東京ってことにしておけばいいよな?

東京弁を使っておけばいい。

東京弁? とりあえず語尾に「さ」ってつければいいか。

 

ということで事情聴取が始まってしまったさ。

刑事さん2人と・・・何故か関西人の高校生も一緒に。なるほど同じ関西人が一緒に話していればボロを出すと思っているみたいだな。

だけど逮捕されたら人生アウトの状況でボロ出すわけがないさ。

よっぽどあの奥で控えているFBIや名探偵が尋問してこない限り大丈夫さ。

という感じで高校生相手に俺は普通の東京弁で答えて、注文した塩ラーメンが辛かったって情報くらいしか答えなかったさ。

 

 

そうこうしているうちに警察も捜査が手詰まり感を出してきて、何故か高校生までイライラし始めたさ。

「せやからあんたらの中に犯人の関西人がおるっちゅうのはわかってんねんや! 関西人なら関西人らしゅう腹くくって名乗り出んかい!」

ムチャクチャじゃないか。そんなことで名乗り出てバレる犯罪なんかあるはずないさ。

 

「ええっ!? 犯人わかったの? 新一兄ちゃん! うん! うんうんわかった。その推理、みんなに話してみるよ!」

唐突に眼鏡の小学生が大声で電話をしはじめたぜ。

そして俺たちに味噌汁を飲ませれば犯人が分かる、と。一気に飲めばわかるらしい。

何それ? とりあえず飲むか。

「辛っ!」

塩入れすぎだろ! 小学生の塩加減おかしいって。こんなの飲んだら塩分過多で死ぬぞ。

 

俺のリアクションに周りの東京人たちが『え?』って顔をしはじめた。

どうやら東京では塩辛いものを「しょっぱい」と表現して、「辛い」と呼ぶのは関西人だけらしい。

しかも「東京弁」という言い方をするのも関西人だけ。

「だからさー、甘粕さんはどこからどーみても、関西人にしか見えないっちゅうわけでおまんがな」

ん? 例の新一兄ちゃんの弟、何か急になんちゃって関西弁を使い始めたぞ?

なるほど俺を煽っているのか。変な関西弁を使って、関西人のプライドを傷つけようとしているのか。

みえみえじゃないか。

この程度、せいぜいストレス値20%だっての。

 

「それにや、おっちゃんタバコ左手に持ってたようやけど」

うん、70% まだ耐えられる。

 

「おっちゃん右利きとちゃいまっかー?」

110%

 

「ラーメンの箸、右側に置いてるさかいなァー」

170%

 

「わざわざそんな事した理由は簡単でんがな!」

340%

 

「怖かったんやろ? 毒の飴玉をつかんだ手で、タバコを持つのがなァー」

1000%じゃあ!

 

「ええ加減にせぇよ、コラァ!!! 急にけったいな関西弁使いよって…どーいうつもりじゃ、ボケェ!! 」

 

あっ・・・ついついイライラが限界突破して、俺の中の関西人魂が出てしまった。

しかも決定的な証拠に、俺がさっき手の毒を拭いたおしぼりまで言い当てられて・・・

「って新一兄ちゃんが電話で言ってたよ」

 

 

 

 

こないな風に、謎は全て電話越しに解かれたっちゅうわけや。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? コナンvs平次 東西探偵推理勝負

いやぁ、敗因は圧倒的に物的証拠のせいだけれども、
せめて東京人のフリを最後まで貫いておきたかった。そこだけでもバレずにいきたかった。
関西人の品位を貶める話し方で炙り出してくるとか・・・ハメ技じゃないか!

それにしても、俺の時だけ敵が強大すぎない?
日本屈指の名探偵に、FBI捜査官まで出てきて、それでいて最後に事件を解いてきたのは店にいた小学生のお兄ちゃん。しかも現場に不在で電話越しで。そして実際に俺と相対したのは弟。
素人でしょ? そこいらの素人が結局事件を解決に導いたんでしょ?
あれか? 俺程度の事件なら警察やFBI,探偵が出るまでもない。一般人だけの力で十分ってこと?
東京の事件解決能力、怖っ!


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鏡迷宮の殺人(金田一)

私は大学生の秋元和那。卒業したらアナウンサーになる予定よ。

そのアナウンサー採用試験を妨害して、間接的に私のお父さんを殺した小峰円を殺すつもり。

 

トリックは遊園地のアトラクションの1つ、全ての壁が鏡でできている迷路「鏡迷宮」を使うわ。

ここの迷路、トリックに使いやすい構造上の欠陥があってそれを利用するの。

迷路の一か所だけ。出口付近と入り口付近が壁越しに隣り合っている場所。そしてその壁は天井との間に隙間がある。

しかもその出口側の場所に行くには、一度出口が見える地点を通り過ぎてからじゃないとたどり着けない。だから他のお客さんが間違えて侵入してしまう危険性がほとんどない場所よ。よっぽど目が節穴な人じゃなきゃ、そんな場所に迷い込まない、絶好の殺人ロケーション。

 

うん、アトラクションとして致命的。お客さんが99%迷い込まないエリアなんて、スペースの無駄。施工主が馬鹿! 

でもその施工主のおかげでトリックが生まれたわ。

施工主さん、お子さんはこの私が大切に使わせていただきます。

 

 

とはいえ、迷路はやっぱり迷路。この迷路攻略にトリックの全てがかかっている。

ダンジョンRPG。リアルダンジョンRPG。

ゲームならいいわ。迷路の構造を上から俯瞰して見れるから。

でもここはリアル。それが無い。つまり自分の現在地を把握するには脳内の地図を頼りにするしかない。

難易度高すぎ。

しかもここは迷路は迷路でも鏡迷宮。どこが曲がり角でどこが真っ直ぐの道なのかもわからない。目に見えるのは自分の姿と他のお客さんの姿ばかり。

現在地の把握が難易度HARD!

 

そう。私に求められるのは犯行時にスムーズに迷路を攻略できる経験値。もはや目をつぶっていても迷宮の端から端まで行けるほどの迷路マスタースキル。

どうやってそのスキルを手に入れるかって? 数こなすしかないわよ!

だけどあまり迷路に入りすぎて、この迷路の常連客になっちゃうと従業員さんに顔を覚えられてしまう。

だから私は毎回変装して通い詰めた。

ある時は眼鏡っ子。またある時はロリータファッション。またある時は多羅尾伴内。しかしてその実態は、殺人鬼の私!

 

こうして迷路を完全把握したら準備万端。あとは円を誘って遊園地に遊びに行くだけ。

もちろん2人きりで遊びに行ったら知人で動機のある私が疑われてしまう。だから一緒につるんでいることが多い女友達も一緒に誘って、私以外に容疑者を作っておくわ。

 

 

ということで女4人で来ました遊園地。あとは鏡迷宮に行く約束をして、4人バラバラで行動するように仕向けるだけ。

 

ここよ。女の集団行動志向、読めない。

このトリックの重要なところは、まず私が最初に変装したまま迷宮に入って、次に円が普通に入ってくる。そして私がゴール前で円を待ち伏せて、例のデッドスペースに誘い込んでサクッと殺す。

私の今回のトリックは、一度円を殺してから、もう一度迷宮に入ることでアリバイを確保するの。2周目なのに1周目のふりをして、犯行が不可能な場所に私がいたっていう状況を作り出すため。

 

そう。そのために“順番”が何より大切。私⇒円の順番が狂ったらダメ。もし他の人が円より先に入って来て私と鉢合わせになったら、私のアリバイが崩れてしまう。

頼みは円の迷宮攻略能力! 誰にも先を越されず、鏡の惑わされずに迷宮を通りきる、円の行動知力!

 

 

結果、私は無事に円と遭遇できた! 感謝! 他の客の迷宮攻略能力の低さに感謝!

円をサクッと殺して、私は変装して迷宮から脱出。

変装セットをゴミ箱に捨てて、素顔の状態でもう一度迷宮に突入。

そして例のデッドスペースの壁の向こう、円の死体から一番遠くて一番近い場所に行き、円のフリをして悲鳴を上げて、円の防犯アラームを鳴らして壁の向こうへスローイン。

こうすることで今、円は殺されたばかりという偽装になる。

 

あとは迷宮にいる他の客が容疑者になって、犯行現場から一番遠い場所にいる私は容疑者から外れるの。

 

 

 

な~のに、なのに! 他の客の配置が悪すぎて、円の死体にたどり着くまでに誰かが誰かに必ず鉢合わせになる状況。つまりほぼ全員にアリバイあり。でも犯人は私たちしかいない。

 

こうして謎が出来上がってしまった。

 

 

うわぁ計算外。想定外の事情聴取。

でも私のアリバイは鉄壁。だって私が現場に行くには絶対に誰かに遭遇するっていう状況。

つまり自然と私以外の誰かが共犯で口裏を合わせているとしか考えられないって状況。

そういう状況よね? 

そう。私の最後の武器は状況、それだけよ!

 

 

 

と思っていた矢先に、一緒に迷宮にいた他のお客さんのうちの1人、男子高校生の金田一君が私たちを集め始めたわ。

 

「つまり、犯人は現場から最後尾から向かった秋元和那、アンタだ」

 

まるっきり見抜かれてました。

ゴミ箱にあった私の変装セットが見つかって、そこに指紋が付着していたのが決定的な証拠。

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 





いかがでしたでしょうか? 鏡迷宮の殺人。

いや私頑張ったでしょ? 迷宮のことだって一生懸命頭に叩き込んで、円が迷宮を攻略できそうな時間も一生懸命見計らって。
運も良かった。

でもトリックに凝りすぎた!


目先のトリックに囚われて、消すべき物的証拠を見誤ってしまった。それが私の敗因ね。













あと言っていい? あの高校生、何?


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バスルーム密室事件(コナン)

瞳はマックスクリエーション 推理は明日へリアクション
今日の事件は探偵が 声かけ無理矢理やってくる
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



略奪婚ってマトモじゃないよね。

私は青島全代。妹を殺します。

 

殺害方法はバスルームの中で毒ガスを発生させるだけ。妹を眠らせた上でね。

さらに自殺に見せかけるわ。妹に自殺用のアルカリ系と塩素系の洗剤を買ってこさせて、そのうえでバスルームの扉の目張り用のガムテープに妹の指紋を付けておく。

ガムテープに指紋を付けさせる方法は、妹にガムテープを切っておく手伝いをさせるだけよ。ちょうど私が引っ越しの準備中だから理由も完璧。

あとはバスルームの扉にガムテープを貼ってから一度力任せにぶち開けるだけ。

こうすることでガムテープがぶち開けられた後みたいに剥がれた状態になるから、一見すると密室になるの。

 

うん、貼ってて思ったけど・・・ガムテープ何十枚も要るわねこのトリック。

だけどそこは我が妹、これでもか!ってくらいにガムテープを用意してくれたわ。私の予想以上に。引越しの手伝いに不必要なくらい。それこそ窓にも目張りしても余るくらい。バスルームの扉に「サヨナラ」って貼れるくらい。

妹よ・・・いくらなんでもガムテープ切りすぎ。逆にありがたいけど。

 

 

そして最後に妹を睡眠薬で眠らせてから洗剤を混ぜて毒ガスを発生させれば、密室で自殺したってことになる・・・

 

 

あれ? ガス出ない。この洗剤、どっちも塩素系。駄目じゃん!

妹ぉ、何やってんのよ! 最後のおつかい、買ってくるもの間違えてるじゃないの! ビフォアーフォローがダメだった!

仕方ないわ。別の手段でサクッと殺しておきましょう。ちょっとグロイから描写は割愛。

 

 

と、妹を殺した後に突然、玄関に妹の旦那が現れたわ。私の元カレ。

タイミング! ほんと間が悪いわこの男! 

玄関の覗き穴から見てたけど、この男全然帰る気配がないし。留守電まで残してくるし。私、いつ突入してくるかともうヒヤヒヤだったわ。

 

でもどうにか大丈夫。

あとは明日、この男と妹と一緒に沖野ヨーコのライブに行くから、その前に一緒に妹の死体を発見するだけ。

 

 

そして当日。

あの男・・・風邪でライブに行けないなんて言い出してドタキャンしてきたの!

アナタ、いい加減にしてよ! アナタには妹の死体を一緒に発見するっていう大事な役目があるのに!

このトリックのために私が苦労してチケットも手に入れたっていうのに! この役立たず!

 

まさか、風邪なんかのせいで私の計画が狂うなんて。どうしよう、本当にどうしよう。パニックよホント。

 

 

「あ、あのぉ。今夜のチケット余ったりします? 沖野ヨーコちゃんのライブのやつ。でしたら一枚安く譲っていただけないでしょうかねぇ?」

 

私の計画が狂った直後だったわ。ほんと直の後。

ライブのチケットを欲しがってるオジサンが私に声をかけてきてくれたの。しかも車で妹の家まで一緒に行ってくれるっていう、私にとって好都合でしかない奇跡的な提案。

捨てる神あれば拾う神あり、とはまさにこのことね!

まぁそのライブ・・・行けなくなるんだけどね。死体発見するから。

 

 

それにしても悪いわ。せっかくヨーコちゃんが縁で気の良いオジサンと娘さんたちと仲良くなれたのに。

ただ少し変わったオジサンね。ファンなのにCDについてくるグッズを知らないみたい。

「彼女のCDは全部本人に貰ってますので、オマケまでは」

えぇ!? 本人からってヨーコちゃんから!? すごい、このオジサン、ヨーコちゃんの知り合いなの!?

すごい出会い。妹殺した次の日に有名人と知り合いの人と知り合えるなんて!

「ええまぁ、ある事件でちょっと」

事件? え?

 

「あぁ私、毛利小五郎といいまして。探偵なんです」

 

 

 

探偵、いるのかよ! しかも私の隣に! とんだ死神との相乗りよ!

もう駄目。私の心の中もうお通夜。明日、リアルで妹のお通夜の予定だけど。

どうしよう。このまま名探偵と一緒に死体発見? すっごくリスキー。だけど、だからといって今さら予定変更できないし。

腹ぁくくるしかないわね。

 

 

ということで家に到着。

自然な演技でバスルーム前で騒ぎを起こして毛利探偵を呼び寄せて、一緒に扉を強行突破するフリをして普通にドアノブを回して入室。

毛利探偵と一緒に死体を発見。妹の死を悲しむ演技スタート。警察到着。

 

いよいよね。ここからが本番。

一応、状況から妹の自殺ってことで捜査は進んでくれているわ。私の描いたストーリーの通り。妹は洗剤から出るガスで自殺しようとしてドアを目張りしていた。でも洗剤を間違えて別の自殺の方法に変更。という自然な流れ。

 

ただ1つ不自然な点があるわ。

毛利探偵のところの子供が妹の死体を間近で観察してるの。え? 死体の近くに子供?

刑事さんも叱らないどころか、この子の言う事に耳を傾けているわ。

 

「ほら見てよこの血。境目でピッタリ途切れてるよ。これって血が飛んだあと、このお姉さんが拭き取ったってことでしょ?」

どれどれ? あぁそこね、妹を殺した時に私がいたから、そこで血が途切れちゃって・・・

え? この子の着眼点・・・まさか。

「手首を切った時、誰か別の人間がそばにいたか。でしょ?」

せ、正解!

 

まずいわ。毛利探偵がこの一言で自殺説をひっくり返してしまったら・・・

どうにかして誤魔化さないと・・・

!?

そうだ、ガムテープ! 浴槽の底に沈めておいたガムテープに遮られたってことで、辻褄・・・合うかな?

 

 

合いました。毛利探偵も自殺説で大満足。

と安心した瞬間、毛利探偵が急にまじめな顔になって私に詰め寄ってきたわ。

「すっかり忘れてた! 全代さん、あなたたしかあの時、こう言いましたよね?」

え? まさか?

「今夜のヨーコちゃんのライブチケット。一枚譲ってくれるって」

杞憂。心配して損した。それにしてもすごい胆力ね毛利探偵。自殺した人の姉にむかって、自殺の件よりライブのほうを優先させるとか。死が軽んじられているわ。

 

まぁ私が殺したことがバレなきゃそれでいい。

でもあまりにも私の手の上で踊りすぎでしょ毛利探偵。笑いを止めるの苦しい。部屋を移動したら、我慢した分笑っちゃおうかしら。

ハハハハハハ

 

「ねぇ」

 

!?

誰もいないと思って高笑いしたら、子供に聞かれてた。うわ、心臓に悪い。

「この段ボール、折り目が付いてるけど一回組み立てた?」

この子、さっきから着眼点が怖いわ。子供への返事だけど、ちょっと慎重になっちゃう私。

「そっか、だからその時妹さんに手伝ってもらったんだね? だってその机の周りベトベトしてるよ。これってガムテープがくっついていた跡でしょ? 誰かにテープを千切って並べて張り付けてもらうと荷造りが楽ちんだもんね」

うん。着眼点がズバリすぎるわ。その通りよ。

でもありがとうねボウヤ。机のテープ跡、立派な証拠だから、拭き取って隠滅しなきゃ。

「ガムテープの跡、拭き取っても無駄だよ。さっき鑑識の人に話したら、触ったり写真撮ったりしてたから」

 

 

 

怖!

え? 無駄? え?

でもよっぽど大丈夫よね? 自殺説、覆らないよね?

でも早めに毛利探偵だけでも退出してほしい。私の心の安心のためにも。

ということでチケットを渡して、毛利探偵にはライブに行ってもらうだけ・・・

 

 

「たった今、ピーンときて全て解けたんですよ。この風呂場を密室にした犯人のトリックがね!」

え? 毛利探偵?

「美菜さんは自殺したんじゃない。殺されたんですよ。彼女の姉である全代さん、あなたにね」

 

嫌な予感、的中。

そしてそこから咲き乱れる毛利探偵の名推理の数々。

 

決定的な証拠は、私のバンダナについた妹の血。しかも昨日、玄関の覗き穴を覗いた時にドアに付いた血の跡が、バンダナの血痕と一致。

 

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか? バスルーム密室事件。

敗因は犯行を焦りすぎたことね。洗剤だってそうだし、妹を殺した時の服装もちゃんと綺麗にしておかなきゃいけなかったわ。

それにしても・・・いいかしら?
妹の件。元カレが私と交際している時に妹に惚れちゃって、妹は私のプライドを守るために妹の方からのプロポーズってことにしてくれていた。それが真実。
でもそれにしても、姉の彼氏のプロポーズ受ける? せめて断ってよ!

あと、あの男。言語道断!
殺すべき相手を間違えたかもしれない。みなさんもそう思いませんか? 
え? 思わない? さすがに殺しちゃダメ? そんな奴を殺して自分を不幸にしちゃいけない? 姉妹で他の男を見つけて幸せになるべきだった?
 
そのとおりね! いまさら!


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死ぬほど美味いラーメン(コナン)

今この瞬間 闇に雷光 限界超えろクールな推理
今日の事件は致死的ラーメン 閻魔大王といえばこんにゃく
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



私は商店街にある理髪店の店長、谷中篤。

ショッピングモールを建てるために商店街の土地を買い占めようとしている地上げ屋の西津を殺そうと思っている。

そしてあわよくば、商店街を盛り上げようとしていない隣のラーメン店『ラーメン小倉』で西津が死ぬようにして、閉店に追い込んでやりたい。

 

手順は簡単だ。西津の眼鏡に毒を塗って、その毒を触った手でラーメンを食べた西津が死ぬ。

寒い日にラーメン店に入れば眼鏡が結露するから、眼鏡を拭くために必ず毒に触れることになる。

あとは私自身も西津を追ってラーメン店に入って、奴が触った場所に他の客や店員が触って毒に触れてしまうこと防ぐこともできる。

西津には食中毒騒ぎの嫌がらせの前科がある。店の外に放り出す手伝いをすれば、証拠の眼鏡をすり替えることが可能だ。

 

一番の難関はすり替え用の眼鏡の入手。

ヤツの眼鏡と同じ型で、度が合ってないといけない。

西津の眼鏡の・・・度。

 

まぁ本人が言ってくれたから良かったんだけどね。コレ1から調べようって思ったらキツかった。普通に売ってる店も教えてもらえた。特注品だったら詰んでた。

 

 

これでトリックに問題なし。

と思っていたけど…このトリックを実行できる条件が…

・西津が私の理髪店に来て、次にラーメン店に行く

・西津がラーメン店から追い出されない

・西津の眼鏡に結露が出来るくらい外の気温が寒い

 

最初のはまだ大丈夫。奴はいつも理髪店に来た後でラーメン店に向かう。

とはいえ確定条件じゃない。気まぐれで他の店に行く可能性だってある。

引き出すしかない。ヤツのラーメン欲を。

 

ラーメン欲?

 

いや、発想を変えよう。何だよラーメン欲って。どう刺激するの?

それより確実な欲がある。

それは嫌味欲。私が「たまには店を改装すればもっと繁盛できるのに」と愚痴を言う。

そうすれば西津は勝手に「隣も『ボロっちい店はダメ』と言っていた」と脳内変換して、ラーメン店に言ってやりたくてたまらなくなるはず。

まぁ、本音なんだけど。

 

 

次だ。ラーメン店から追い出されないこと。

ヤツはただでさえ、ラーメン店から嫌われている。嫌がらせもしてきている。

トドメに、今ラーメン店でバイトをしている子の父親は、西津の嫌がらせに巻き込まれたせいで死んでいる。

塩まかれて門前払いされてもおかしくない。

人望! 人柄! こればっかりは私の手に負えない。

せめてできるのは、少しでもマイルドになるヘアカットだけ。

 

 

そしてある日。全ての条件が揃った。

寒い冬の日。夕飯前の時間帯に西津訪問。

やるなら今日しかない。

 

私はまず、西津にラーメン店についてぼやき、ラーメン店に誘導。

西津から預かった上着と眼鏡に毒を仕込み。

ヘアカットにまごころを込めて。

奴がラーメン店に入っていったのを確認して私も入店した。

 

店には行ったら子連れのお客さんがいた。

案の定、西津から割り箸を取ってもらおうとしていたから、私が先んじて割り箸を渡しておいた。

危ない危ない。こういうリスクを予測しておいてよかった。

まぁそのお客さんが西津の態度に怒って胸ぐらをつかんだのは止められなかったけれど。

 

そして予定通り、西津は毒に倒れた。

あとは眼鏡をすり替えるだけ・・・

 

「触っちゃダメだ!」

え? お客さんとこの子供? 急に叫ぶよな子供って。理髪店に来る子供もよく急に叫ぶし。

 

「何も触らずに自分がいた元の場所に戻った方がいいと思うよ。それに、呼ぶのは救急車だけじゃなく警察も。このおじさん、もう死んでると思うから」

 

なんか・・・語彙力すごい。え? それに死体に物怖じしないの?

何も触らずに、か。もう触っちゃったけどね。もうすり替えちゃったけどね眼鏡。なんかごめんね子供。

 

 

その後、警察が到着して捜査開始。

事情聴取と身体検査を受けて、現場を荒らさないように外に追い出された。

寒空の中、探偵ごっこを始めた子供に付き合ってあげながら待機。

しばらくすると警察も西津の自殺、もしくは事故死の線を疑いはじめた。

あと、例のお客さん、名探偵の毛利小五郎だった。

危なっ。私、名探偵の目の前で証拠隠滅を実行してた。

でも雰囲気的に毛利小五郎も私を疑っていないし、見られていなかった様子。

安心安心。

 

少し気になったのが、子供が性懲りも無く探偵ごっこを続けていたこと。

毛利小五郎について一緒に現場に入ろうとしたり、刑事さんに色々質問したり。

かわいいもんじゃないか。

気分は少年探偵団の小林少年かな?

 

「いや、小林少年というより、真相を見抜いた明智小五郎の気分だよ」

へぇ、詳しいなこの子。このネタ分かるんだ。

 

なんて和んでいる間に警察の事情聴取再開。

その時、毛利小五郎が急に糸の切れた操り人形みたいに倒れ込んだ。

「そう操り人形。私は違いますが、西津さんは操られていたんですよ。この店に入った瞬間から、悪魔に魅入られたが如く、それを口に運ぶように。この店内にいた犯人の思惑通りにね」

 

そこから乱れる毛利小五郎の名推理。

 

そして推理の情報から自然と私が犯人だと断定され・・・

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 死ぬほど美味いラーメン。
いやぁ、敗因は証拠の眼鏡の処分方法を考えていなかったこと。


ちなみに私が事件を起こした日に、隣の米花町の商店街の面々が旅行に行っていたらしいですよ。
仲の良い商店街っていいもんですね。
まぁ、そこでも自殺事件が起きていたらしいですけど。



そうか! 私の事件も西津の自殺を決定的にしておけばよかったんだ。
自殺説をプッシュできる状況を作っておけば。
自殺なら私も容疑者ではなく、その場にいた客として普通に家に帰してもらって、証拠を処分できていればよかったんだ!
詰めが甘かったぁ。



ってか商店街の人、死にすぎじゃないですか?
厄日? 商店街属性の人の厄日?


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奇妙な一家の依頼(コナン)

リップのリズムはフットルース 推理のリズムはパーフェクト
今日の事件は暗証番号。コナンのソレは4869。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



 

俺は純愛小説家の狩谷滋英。

といっても俺自身は小説家じゃない。小説家なのは弟の方。

俺は弟をゴーストライターにしているのさ。

 

あれは12年前。弟は当時の交際相手を刺してしまった。

だが俺が様子を見に行った時、交際相手はまだ生きていた。でも金銭を脅してきたから俺がトドメをさした。

こうして自称殺人鬼となった弟を、俺は家の屋根裏に匿っている。

 

弟は自首したいと言っているが、なかなか勇気が出ないらしい。俺にとっては好都合だが。

それでもずっと屋根裏生活は不憫すぎる。

ということで気晴らしに書かせた小説。

 

これが面白いのなんのって。

今度の秋にドラマ化されることにもなったのさ。

感性が12年前のままだけど、主人公とヒロインの切ないラブストーリー。めっちゃ純愛。

弟よ、お前そのピュアハートで、よくあの金目当ての婚約者と清い交際してたな。

 

ただタイトルが・・・『春のソノ他』・・って、冬の? そなた・・お前本当に12年間、世間の情報から途絶してたんだよな?

 

 

という半分順風満帆な隠遁生活を送っていた俺たちだったが、ある日事態が急変した。

それは何気ない日常の会話。兄嫁の伴子さんが急に俺に話しかけてきた。

「この携帯、どこにあったと思う?」

うん唐突。伴子さん、携帯無くしてたの? 俺、初耳。

あるよねこういう、当の本人は携帯を探していたんだろうけど、それを知らない他人からしてみたら突然の話題でポカンとするしかないパターン。

で、それが何?

「好奇心旺盛な弟さんの所よ」

え? ちょっ、屋根裏の弟のことまで見つけたの!? しかも俺にそれを言うって。

整理が追い付かない。

「そうね、まずは一千万。詳しい話は離れた場所でじっくりと。素花さんを殺した真犯人の事も聞きたいし」

会話のキャッチボールが一方通行のまま、まさかの恐喝!

俺がポカンとしている間に金の話をしてきた伴子さん。

どういう兄弟だよ! 金の亡者としか交際できない兄と弟を持った俺。

 

ということで俺は伴子さんを殺す事にした。

 

幸い、伴子さんのほうから俺を人気のない場所に誘ってきたから、殺す場所を決めるのは簡単。

あとは殺害中のアリバイ作り。

それは弟を代役にすれば簡単。

 

弟に、今夜は俺の部屋で小説を書いていろと言っておくだけ。

あとは家のお手伝いさんが来たとしても弟には障子越しに受け答えしてもらうようにお願いすればいい。双子だからシルエットもそっくりだし、十分なアリバイ作りができる。

 

 

 

と思っていた時期が、俺にもありました。

そりゃ家の人間が殺されたんだから、来るよね警察。

そして何故か伴子さんの中学時代の友人の森五郎さんも警察と一緒に俺に向かって事情聴取。

 

だが森五郎は森五郎じゃなかった。毛利小五郎だった。

うわマジ!? 伴子さん、あの名探偵と同中なの!?

そして日本の警察、初動捜査が手早すぎて、俺まだ殺人の証拠や伴子さんの携帯を処分できてないよ!

どうにか誤魔化し通すしかない。

大丈夫。俺にはアリバイがある。弟が代わりになってくれたアリバイがある。

 

〈ピンポーン〉

 

家のチャイムが鳴った。

どういう来客だよ。今まさに家の前にパトカーあるのに。しかも夜の10時なのに。神経図太い客がいるもんだ。

そういえば今のチャイム、いつものより大きな音な気がする。

気のせいか? 動揺してるせいで大きく聞こえてるのか?

 

 

なんて思ってるうちに、警察が来た。

俺が伴子さんを殺した犯人で、弟をこの家のどこかに匿ってる、って。

 

 

 

 

謎は、全て解かれていた。

 

 

いやいや説明不足! 辻褄が合うってだけで警察は俺を疑ってきた。

正解だけど、証拠が無いだろ。

令状を今から取ってくるらしいけど、俺いま忙しいの! 編集の坪内さんと電話で打ち合わせする約束になってるの!

 

って言い訳してる間に、弟が観念して出てきてしまった。

あ、これもう終わりだ。

 

だけどまだ、弟は俺の伴子さん殺しを知らない。まだどうにか誤魔化せば・・・

〈ピンポーン〉

またチャイムが鳴った。

いや、どうやらこのチャイム音は伴子さんの携帯のメール着信音らしい。

 

そして毛利探偵はそのまま俺が部屋に隠した伴子さんの携帯を見つけて、同時に殺人の証拠も見つけてしまい・・・

 

 

 

こうして、謎は解かれるもなにも意味がなかった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 奇妙な一家の依頼。

敗因・・・というか全ての原因は弟です。
弟が伴子さんの携帯電話を拝借したせい。
いくら珍しいからって。いくら暇だったからって。
携帯のロックの4ケタの暗証番号、総当たりで解除するか普通!?
携帯の電源の切り方を知らないくせに。
そのせいで伴子さんが着信音を頼りに探してしまった。
開けちまったのがパンドラの箱だった。


今回、弟は12年前の人間だったけど。
携帯のセキュリティレベルが12年後レベル。指紋認証や虹彩認証、静脈認証だったら。
こんなことにはならなかったかもしれないですね。


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もう戻れない二人(コナン)(リクエスト)

拾う謎解きクエスチョン ハートのリズムに推理の軌跡。
今日の事件はガムテで密室 似たのやったの3話前
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!


私は会社員の三角篤。恋人の安実に浮気されたので殺します。

彼女と出会った群馬の山道で!

 

トリックは簡単。

練炭自殺に見せかけるために、車をガムテープで密閉した状態にする。

私自身が脱出するために、助手席側のドアのガムテープを切っておき、ガムテープを軽く貼り付けたままドアを閉めれば、一見すると助手席もガムテープで密閉されているように見える。

あとは彼女を睡眠薬で眠らせて、練炭を燃やして脱出するだけ。

そしてそれを私が第三者と一緒に発見して、彼女を助けるために窓ガラスを割って車に侵入。その第三者に気付かれないように助手席のガムテープを切るフリをすればいい。

 

 

さてこれから、その下準備をするわけだ。

群馬の山道に車を放置するわけだから、私自身もそこから離れるために移動手段を用意しなきゃいけない。レンタカーを。

犯行予定日の前の夜にレンタカーを借りて、それを犯行予定場所の群馬の山道に置いて、そこから家に戻る。

 

群馬の山道から・・・家に戻る?

積もるの確定ってくらいの雪が降る中を?

 

 

根性! トリックに必要なのは何よりも根性!

 

ということでド根性で群馬から東京の家に戻った私。もうすっかり夜は明けてる。

でもまだ私の仕事は終わっていない。

 

まずは彼女と一緒に群馬の山道まで車で行かなきゃならない。さっきまで必死に戻ってきた道を逆に戻って。

今の気持ち、正直言って殺意とかよりも虚無の方が強い。

あぁ、この道歩いたなぁって。あっ、ここで雪に滑ったなぁって。

 

でも彼女に殺意を勘付かれるわけにはいかないから、彼女の我儘にもちゃんと付き合う。

道中の本屋さんで「今日発売の小説が読みたい」と言われれば買いに行く。

コーヒーが飲みたいと言われたら買いに行く。

 

頭にちらつくのは疲・労の二文字。でも最後のひと踏ん張りだ。

雪に埋もれたレンタカーを見つけたら、あとはコーヒーに睡眠薬を入れて彼女に渡すだけ。

さて彼女が眠ったら殺すだけになるわけだが・・・覚悟を決めるとなるとちょっと動揺が。

タバコを吸って落ち着こうと思ったら、シガーソケットが無いじゃないか。

また彼女が隠したんだな? 仕方ない、外で吸うか。

 

そしてタバコを吸い終わった私は彼女が眠ったことを確認してトリックを実行。

あとはレンタカーで東京に戻り、彼女を発見する第三者をここに連れてくるだけ。

 

 

第三者の候補はもう決まっている。彼女の異変を自然な流れで説明しても違和感が無く、そして一緒に同行してくれる役職。

それは探偵。しかも私が車の窓をたたき割るという咄嗟の行動を容認してくれる、ある程度の推理力と現場力を持っている名探偵。

それは毛利小五郎! 彼ならきっと全ての要求事項を満たしてくれている!

 

あと恐れるのは不測の事態だけ。毛利探偵事務所の定休日・・・

 

大丈夫でした。幸いにも毛利探偵は事務所にいました。

ただ変な眼鏡の子供がドタバタしてることくらい。子供と言っても高校生くらいの年だけど。隣にいる小学生くらいの子供は、同じ眼鏡の子なのに落ち着いている。見習えよ。

 

まぁそんなことはどうでもいい。

毛利探偵には「失踪した彼女の車に大事な書類を入れてしまったから、一緒に探して欲しい」と依頼。

例の眼鏡の子のひらめきのおかげで、彼女の失踪先が群馬の山道だとスムーズに誘導できた。眼鏡の子っていうのは、もちろん落ち着いた小学生の方の事。

高校生の方? 彼はダメダメだよ。一緒に群馬までついて来たくせに、寒さですぐに風邪引きさんになってしまったからね。

 

 

さてここからが私の演技の本番だ。

この睡眠不足の体で彼女を心配する優しく熱血な彼氏の行動をとらなければならない。

まずは毛利探偵と一緒に運転席から彼女を発見して、毛利探偵にガムテープでドアが開かないことを確認してもらう。

次にトランクに入った野球バットをもってきてフロントガラスをぶち破る。

そして車の中に入ってガムテープがみっちり貼られていることをアピールしながら、カッターで助手席のガムテープを、貼りながら切る。

 

これで密室殺人完成。

ただ・・・車の中、臭いというか・・・一酸化炭素のガスが・・・

体調不良。正直、もう倒れそう。

だけど油断大敵。ここで彼女の死の捜査を見届けないと、何かうっかりしたミスを警察が見つけた時に、誤魔化せなくなってしまう。

 

 

こうして寒い中、毛利探偵たちと待ち続けて、ついに来てくれた警察。

ただ刑事さんが変な人で、ビデオカメラを片手に捜査を始めてしまった。

しかも捜査資料用じゃなく、完全プライベートな毛利探偵の推理の観戦用。あとで職場のみんなで観るためらしい。

 

でも毛利探偵も、この私が用意したトリックを前に、すぐに自殺と断定してくれている。

心配は無用だったか? 安心してもいい?

 

と思った矢先にやっぱり出たよ不測の推理。

例の眼鏡の子が、彼女が死んだ運転席のシートが後方にズレすぎていることに気付いた。

うわっ、視点が細かくて的確! 私、そこまで考えずに殺してた。

踏ん張って留まってよかった。「七輪を足元に置くためにズラした」説を訴えることができた。

 

でもこの眼鏡の子、どんどん私にたたみかけてくる。

現場の近くの雪の跡が、私のレンタカーのサイズと同じことに気付いたり。

例の書類が彼女の車にある矛盾に気付いたり。

言い訳が・・・言い訳に疲れる。このフラフラな脳味噌で、私もよく言い訳できているよ。

 

でもそろそろ限界だ。タバコが欲しい。

 

 

と、ニコチン摂取のブレイクタイムを過ごしていた私に・・・最悪の不測の事態が急に襲ってきた。

毛利探偵の推理ショー?

 

「犯人は車内にいた安実さんを助け出そうとして、フロントウインドーを金属バットで割って中に入り、助手席側のドアに目張りされたガムテープを切り裂いて開けた、三角篤さん、あんただと言ってんだよ!」

 

せ・・・説明が丁寧で回りくどい!

犯人は○○さん、あんただよ! って言ってくると思っていたのに。その間に挟んでくる情報が長い!

やめてよそういう、犯人の心臓に悪いスペース作り!

 

そしてそこから咲き乱れる毛利探偵の名推理の数々。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 




いかがでしたでしょうか? もう戻れない二人。

いやぁまさか最初からバレていたなんて。
たしかに車内の人を助けるために窓ガラスを割るって行為、その時に飛び散るガラスが当たらないように気を付けるはずですよね。そう、車内にいる人が生きていると信じている人間なら。

それにしても1つ気になったのが。
あとで殺人だと分かったとはいえ、死体のある現場の側で子供がうろうろするのを誰も止めないのか?
ほら、あの例の眼鏡の子。
え? 高校生の方?
いや今回は小学生の方。落ち着いている方の。
あれか、落ち着きすぎて誰も気づかなかったのか。ステルス機能的な。
・・・・いや、さすがに気づけよ警察!


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上野発北斗星3号(コナン)

千里の道も一歩から 謎解き1000回新たな世界へ
今日の事件は寝台列車 時刻表は関係ないけど
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!


男は宝石店店長。その裏の顔は浅間安治を筆頭とする強盗団の一員。名を加越利則といった。

強盗団の仲間の一人は薬物に侵されこの世を去った。その原因は浅間にある。

そして加越の宝石店のオーナーもまた裏で薬物を捌く悪党であった。

 

加越が仲間の仇となる2人を殺す決断に至るのも、そう難い話ではなかった。

だが加越は2人を殺す手段を思いつく能力に欠けていた。

 

しかし加越はかねてより愛読していた推理小説家『工藤優作』の未発表作を持っていた。

強盗の折に偶然客から奪ったバッグの中に、現金の代わりに入っていた原稿がそれだ。

 

舞い降りたのだ。トリックの神が。否、死神。死神の父が。

 

 

時は来た。殺人トリックは全て原稿に沿うだけ。

 

加越はまず殺人の舞台となる上野発北斗星3号のチケットを人数分用意した。

人気の電車であるが故、土壇場での確保は大変だが、前もって予約する余裕があれば容易い話だ。

 

次に浅間に自身の宝石店を襲わせた。狂言強盗としてだ。

だが当日、店にオーナーを招いていた。

狂言強盗とは知らないオーナーは冷静に防犯ベルを鳴らして浅間を追い払った。

当然、思わぬ反撃に驚いた浅間はこう言い残して去って行った。

「話が違うじゃないか」

 

そう。話が違う。だからこそ加越は浅間にその説明をする口実ができた。

それはそのまま、浅間を殺人の舞台・北斗星へと呼び寄せる口実となる。

 

 

一方、もう一人の仇であるオーナーも殺人の舞台におびき寄せる必要がある。

口実は簡単だ。声色を変えてオーナーに電話し、薬物密売の件で脅せばよいのだ。

「北斗星のロビー車で取引をする」と伝えるだけで、あとはオーナーから「北斗星のチケットを確保しろ」と命令が来るようになる。

自身とオーナー、オーナーの妻と共に北斗星に乗車すればトリックの第一段階は達成されるのだ。

 

 

だが第二段階に進む前に思わぬ事態が発生した。

オーナーの妻が、こんな貧相な部屋に泊っていることを周りに知られたくないと駄々をこね始めたのだ。

これは計算外。オーナーの妻の客室は殺害現場のすぐ近く。これから起こす殺人トリックに気付かれてしまう恐れがある。

だが加越は用意周到な男であった。原稿にはない展開のために、睡眠薬を常備していたのだ。

オーナーの妻に睡眠薬を混ぜた飲食物を差し入れておけば問題はない。

 

だが想定外の事態は続くもの。オーナーの妻なんぞ比べ物にならない厄介が、加越の足元に忍び寄っていた。

 

車内に有名な名探偵の毛利小五郎がいたのだ。

探偵の出没は原稿にも予言されていた。だが原稿では素人探偵。本物の名探偵ではない。

そして最後には事件に首を突っ込んだ探偵を殺す展開になっている。

『殺せというのか? この私に。毛利小五郎を? そういうことなのですね工藤先生!』

加越は歯を食いしばりながら決意した。

 

とはいえ今殺すべきは毛利小五郎ではない。順番でいえば浅間である。

加越はまず、浅間をサクッと撲殺した。

そして原稿の通りに列車の窓を割って、窓から浅間の死体を吊るして、その糸の先を自分の部屋まで引っ張って固定。

あとは任意のタイミングで外に落とすピタゴラ装置をセッティングした。

そう。浅間の死体のベルトに釣り糸を通し、死体を窓の外に吊って、釣り糸の先を自分の部屋まで引っ張って。

 

死体を窓の外に吊るしたまま・・・釣り糸を引っ張る?

『指が・・・千切れるわ!』

成人男性浅間。体重は諸々込々で70kg? 80? 90? とにかく重い。

手順が逆だった。原稿の通りに従っていては無理だった。

先に糸を固定してから死体を窓の外に出して、その後でベルトに糸を通すべきだった。

『工藤先生。トリックは机の上なんかじゃない。現場で起きているんですよ』

加越は死体を外に出してからベルトに糸を通すことにした。

死体を外に出してから? ベルトに糸を通す?

『腕がもげるわ!』

成人男性浅間。体重は諸々込々で70kg? 80? 90? とにかく重い。

だがまだ。まだこっちのほうがギリいけた。

 

こうしてフィジカルでトリックを完成させた加越。だが彼に休む暇は無い。

浅間と同じ衣装を身にまとい、オーナーの待つロビー車に向かった。

そしてオーナーをサクッと銃殺。

銃声と悲鳴がトンネル内の轟音をかき消した…

 

オーナーを殺した加越は、飢えた獣のごとく、闇の通路を駆け抜け…

とはいえその心は飢えた獣というよりかは

『この後のトリックの目撃者になってくれる乗客、来てくれ! でも私が拳銃を持っていることを警戒して誰も来てくれないかもしれない。勇敢な乗客、居てくれ!』

と願う、消極的な逃走者のごとくであった。

 

加越の祈りは通じた。

浅間の部屋にたどり着き、窓に向かって発砲した彼の姿を、毛利小五郎が目撃してくれていたのだ。さらには乗務員も目撃してくれている。

これはしめたと思った加越は毛利小五郎に銃口を向けた。厄介な名探偵をここで殺してしまっても目撃者に余剰はある。

 

だが待て。ここで探偵を殺すのは原稿のシナリオとは違う展開である。

不測の事態に対応するのはいい。だが自らシナリオを捻じ曲げてしまうリスクは避けるべきだ。

加越はそう思い立ち、威嚇射撃にとどめて毛利小五郎を牽制した。

そして目撃者たちの視線が逸れた隙に、部屋ではなく近くの階段に身を潜めた。

 

目撃者たちが復帰して浅間の部屋に突入した時、加越の姿はもうそこにはなく…

風と列車音がけたたましいメロディを奏でていた。

 

 

これにて加越の肩の荷は下りた。

警察が到着し事情聴取が始まったとしても、何も動じることなく彼は受け答えた。

だがここで加越は戦慄した。警察が半ば強引に客室内を捜索してきたのだ。原稿にはなく想定していなかった事態だが、考えてみれば当然のことである。

客室の加越の荷物には、このトリックに使った変装道具が丸々残されていた。これを見つかっては一巻の終わりである。

 

だが幸運にも警察はオーナーの代わりに部屋に保管していた釣り道具にしか興味を示さなかった。

無能。態度だけは有能だが、日本の警察に流るるポンのコツの血がここにも流れていた。

 

加越の脳裏に感と謝の字が通り過ぎた。

だがその直後に戦と慄の字が通り過ぎた。

 

 

毛利小五郎の推理ショーが始まったのだ。

 

これにて謎は全て解かれた…わけではなかった。

毛利小五郎の推理は動機部分。しかも浅間の自殺に関するもの。

宝石強盗が狂言であることは正解であるが、その真相はオーナーと浅間の共謀であり、その目的はオーナーが市長選で有利に立つための武勇伝を作るためだというのだった。

『そ、そう見えるのか。現実の名探偵の目には』

 

加越利則の取越苦労。

 

だが悠長に構えていられない事態が、再び加越に襲い掛かった。

黒縁の眼鏡の女性が、勝ち誇ったかのように一笑したのだ。

警察や名探偵、そして加越のいる前で。

「青函トンネルに入る直前だったかしら。その浅間って人の部屋の前で何か奇妙な長~い」

加越は戦慄した。女性が目撃したのはおそらくトリックに使った釣り糸。

文脈からそうとしか言えない。確実に目撃されたのだろう。

理外からの襲来。原稿では少年だったが、ここにいたのだ。分かりやすく都合よく。原稿の通りの黒縁メガネの探偵が。

 

だが天は加越に味方した。

「忘れちゃいましたわ」

黒縁メガネの女性の記憶力はピンポイントに忘却を働いてくれていた。

だが列車内に釣り糸というミスマッチな存在を忘れるものだろうか?

 

「でもご心配なく、きっとそのうち思い出せますわ。ね、誰かさん」

煽っていた。女性は確実に加越を煽っていた。

誰かさん。が、加越さん。にしか聞こえなかった。

 

 

だがあまりにも原稿の通りの展開である。

調子に乗った黒縁メガネの探偵は、犯人の手によって駅のホームから突き落とされる運命なのだから。

 

加越は女性を追いかけ、駅のホームで無防備に立つ女性の背に立つことに成功した。

頭の中で物語のクライマックスの文章が流れる。

 

罪人は音もなく若き探偵の背後に忍びより…

血塗られた手でその無防備な背を軽く突き…

プラットフォームを血に染めた…

 

ガシッ

「少々歯切れは悪いが、このあたりで筆を止めましょう。これ以上続けるのはあまりにも無意味だ」

その時、加越の手を掴み、殺人を止めた男がいた。

加越は思った。

『誰?』

 

「列車内で宝石店オーナーの出雲氏を殺害し、強盗犯の浅間をその犯人に見せかけて殺害したのは、加越さん、あなたしかいないとね」

男は唐突に推理を始めた。華麗に咲き乱れる推理の数々。まるでその場にいたかのように、加越のトリックを雄弁に語り始めた。

有無を言わさぬ完璧すぎる推理を。

俯瞰的に。まるで加越に乗り移ってトリックを隅から隅まで眺めていたような推理で。

さらにはトリックの最大の欠点である、証拠品の始末ができない点にまで言及。

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

だがそれにしても、この男は一体何者?

 

 

「申し遅れました。工藤優作。あの三文小説の作者ですよ」

 

 




いかがでしたでしょうか? 上野発北斗星3号。

ハメ技じゃないか。
そりゃ居合わせて秒で解いてくるよ。当事者の名探偵すら欺いた今回のトリックを。
原作者が解きに来るとか。いや、解くとかそれ以前のレベル。

あの後、私は自首したわけですが。
貰っておけばよかった、サイン。それか握手を。
もちろん事件を起こした後だから、反省している私に提案できるお願いではない。

事件を起こさなければよかった。起こさなければ、普通に旅行に行くことになって、工藤先生と遭遇できていたんだ。
やっぱり悪事はダメ絶対。(え? 元・銀行強盗犯が何を言ってんだって?)


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真夏の悪夢殺人事件(金田一)

それはこの夏のむせかえるような暑さが見せた、白昼の悪夢だったのかもしれない


私は富山桜。

小学校からの幼馴染の小梅、百合の3人でずっと仲良く過ごしていた。

3人でこっくりさんをやったり、遊ぶ趣味も一緒だからいつも楽しい。

たまには喧嘩もするし意地も張り合うけれど、3人はいつも一緒。

就職先だって3人一緒。

通うテニスクラブだって一緒。

 

だから、好きになる男の人だって一緒。

 

須藤亜我志さん。元プロテニス選手で私たちのコーチ。

須藤さんは私の事を好きだって言ってくれた。

私にルビーの指輪もプレゼントしてくれた。

だけど他の2人も同じ指輪をしている。

須藤さんが本当は誰の事が好きなのか分からない。

だから3人で居てもギスギスしてきていた。

 

 

夏のある日、長野の別荘でテニスの合宿をしようって話になった。

参加するのはもちろん須藤さんと私たち3人。

恋の決着ってことになるのかな。嫌だなあって思ってた。

 

案の定、やっぱり3人でギクシャク。

昔みたいに仲良くしたいのに。楽しく合宿したいのに。

 

3人でそれぞれ夕食の買い出しに行って、しばらくした頃に須藤さんが私に行ってきた。

「本当に好きなのは君だけ」だって。

でもそんなの見るからに嘘。

3人に良い顔だけして、自分だけは楽しみたいだけ。私たちが須藤さんのせいで仲が悪くなっているなんて気にもしていない。

私たちの仲を裂くだけの男。

私の気持ちは一つ。

須藤さん、私はあなたのことが好きじゃない。私は2人が入れ込んでいるから、一緒に盛り上がるのが好きだっただけ。いわゆるただの惰性ファンクラブ会員。

すけこましなアナタが、私たちを不幸にしているの。

 

だから

 

死んで

 

私は包丁でサクッと須藤さんを殺害。

でも我に返ってすぐに別荘から逃げ出したわ。

そして買い出しに行ってきたフリをして、2人と同じタイミングで別荘に戻った。

 

須藤さんは死に際に近くにあったタマゴやしゃもじを持って、苦しそうに暴れたままの姿で死んでいた。

 

でも結局、誰が須藤さんを殺したのかは謎のまま。

 

 

ええ。トリックなんて何もないわ。シンプルな殺人よ。

だからかしら? 変にトリックにこだわらなかったから、警察も全然真相にたどり着かなかったわ。

そう。1年経っても。誰にも謎は解けないまま。

 

 

あれから1年。

私たち3人は降霊術をしようって、別荘に集まった。

こっくりさんの要領で。

須藤さんの魂を呼び出して真相を聞こうってことになってね。

 

でもそんな時に変な訪問客が飛び込んできたの。

「トイレ! トイレ貸してください!」

高校生かしら? 土砂降りの雨の中でもよおしてきちゃったみたい。

しかも買い出しの帰りに下駄の鼻緒が切れて、災難の連続ね。

だけどお生憎様。災難はもう一つあるの。

何故なら降霊術の最中は出入り禁止。変な霊が紛れ込んでしまったり、憑いたまま出ていくことになってしまうから。

私たちの儀式が終わるまで、この特霊ゲストの高校生は私たちから離れられない。

 

「あのぉ、よかったら俺にもその時の話聞かせてくださいよ。俺、金田一一って言って、有名な探偵の孫なんすよ」

そうやら金田一くん、事件の話を聞いただけで推理してみせるって自信があるみたい。

お爺さんの名に賭けて。

 

まぁ私としてはいいけれど、あんまり降霊術の最中に賭けとか言い出さないほうがいいと思うな。

そういう制約と誓約って、リスクがあるものだから。

 

 

だけどそこから咲き乱れる金田一くんの名推理の数々。

須藤さんの死にざまの姿が、そのままテニスのサウスポーのフォームだってことを見抜いたの。

そう、左利き選手のフォーム。

つまりあれはただ苦しんだ果ての姿ではなく、須藤さんの死に際のダイイングメッセージ。

 

 

こうして、謎は1年越しに解かれた。

 

 

そして私が須藤さんのことが好きじゃなかったと告白したら、2人も同じ思いだったことも告白してくれたわ。

互いに意地を張り合って、他の2人を見返したかっただけだったって。

 

 

ありがとう金田一くん。

このままじゃ私たち3人、誤解したままだったわ。

 

 

これで3人一緒に逝ける。

 

 

1年前に別荘が土砂崩れで埋まって

真相も互いの心も謎のままだったから。

 




いかがでしたでしょうか? 真夏の悪夢殺人事件

探偵って不思議な生き物ね。
被害者も犯人も容疑者も、全員死んでいてもちゃんと謎を解いてくれるんだから。
しかも謎が解けたことで私たちもちゃんと成仏できたし。
成仏まで請け負ってくれる職業、探偵ってすごくスピリチュアルね。

思ったんだけど、もしかしたら探偵って死んでも謎を解けるんじゃないかな?
いないかな? 死んでも解いてくる探偵。 なんてね


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殺意の陶芸教室(コナン)

ゆらり揺られてたどり着く 謎に寄り添い推理スタート
今日の事件は陶芸教室 陶器で凶器を作れそう
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!


私は陶芸家の美濃宗之。陶芸家といっても有名なほうじゃないさ。今は細々と陶芸教室を開いている、主に教えるほうが専門だね。

それに娘の自殺に絶望してしまって、その原因になった娘の旦那、義理の息子への殺意しか残っていないよ。

そう、義理の息子の浮気のせいで、娘は死んでしまった。だから娘からの最後の贈り物のネクタイで彼をサクッと殺して、その罪を浮気相手の女性に被せる。それが私のトリック。

 

 

トリックは意外とシンプルな物さ。

死体を両開きのロッカーの中に入れて、両方の扉を開けた時にだけ死体が飛び出してくるようにピタゴラするだけ。そして片方の扉を開けた時に布の端が後で飛び出るようにする。

ここで『私がいる時にロッカーに布は出ていなかった』『浮気女が片方の扉を開けた時に死体は出て来なかったし、布の端も無かった』『布の端が飛び出ているのをみんなで目撃して、ロッカーを開けたら死体が出て来た』という流れを作る。

こうすることで私にアリバイがあり、浮気女が最後にそのロッカーを開けた一番の容疑者、という状況を作ることができる。

浮気女にロッカーを片方だけ開けさせるには、私が指を怪我したとでも言えば、救急箱を出すために片方を開けてくれるから問題なし。

布の端はトリックの証拠になってしまうが、私が第一発見者になれば、義理の息子を心配するフリをしながら隙を見て回収してゴミ箱に捨ててしまえば問題なし。

 

完璧じゃないか? このトリック、完璧じゃないか?

あとは想定外の事態さえ起きなければ問題ない。

そう、名探偵でも現れない限り、な。

 

 

さて、ついに来た決行の日。

いつもの日常。今日は新しい生徒さんも入ってくれけど、それもいつもの光景。

とはいえこの新しい生徒さんも殺人事件の騒動に巻き込んでしまうことになるのは心苦しいが。

にしても変わった生徒さんだ。女子高生なんだろが筋がイイ。だがせっかくできた湯飲みに『大バカ推理之介』と書くセンスは・・・理解できない。

あと、この女子高生の弟さんなのか、気になって教室に侵入してきた小学生の子供もいる。

まぁせっかく来てくれたんだから、この子にも陶芸体験をしてもらおう。

少し変わったメンバーだが、平和な日常だな。

 

さてこの子供。この子も覚えが早い! 小学生なのに、もはや高校生レベル。

どうやらこの子とお姉さんは、あの人間国宝の菊右衛門先生に会ったことがあり、先生のお弟子さんにコツを教えてもらったらしい。

なるほどどうりで。

しかしすごいな、私の業界で最高クラス、人間国宝と知り合いというのは。

とはいえ知り合いというのは彼女のお父さんが、ということらしい。

しかも先生の家で起きた殺人事件を解決したという。

 

ん?

 

「実はウチの父、毛利小五郎といって、探偵をやってるんです」

 

探偵、いるのかよ!

しかも一親等。祖父が探偵という二親等、隔世遺伝でも怖いと聞く探偵業界。

よりにもよって今日。私が殺人する当日の新生徒が探偵の娘とは・・・

 

 

だけど断念できない。

何故なら義理息子と浮気女がロッカー室で、私の悪口言ったり、冗談交じりに首を絞めあったり。

殺意と動機のタイミングが最高なんだもの。

 

ということで義理の息子をサクッと殺害。

トリック装置を用意して。

ロッカー室で皿を壊して、心配して見に来てくれた生徒たちに私のアリバイを証明してもらう。

そして皿のかけらで指を怪我して、浮気女に救急箱を取りにいきロッカーを片方開けてもらうトラップ発動。

その間ずっと私はつきっきりで子供に陶芸を教えるだけ。

 

あとは最後に生徒みんなで義理息子を探しにロッカーの部屋にGO。

そこで例の布の端を見つけてくれた生徒の言葉で死体発見。

布の端も無事に回収。

そして呼ぶのは救急車! ここでやらかす犯人も多いと聞く。絶対に警察を呼んじゃダメ。

 

 

こうして到着した警察の捜査開始。

例の名探偵の娘さんも証人になって、私が思い描いたトリックの通り、私のアリバイが確保されていく。

ついでに私から浮気女にトドメの一撃。捜査担当の刑事さんにヒソヒソと、浮気女に動機があることを告げ口する。

あとは証拠になる例の布の端をハサミで細切れにして隠滅するだけ・・・

 

でもそのハサミを取りに行った時に、そこで子供に話しかけられた。

「見て! ボクの湯飲み、もうすぐ完成だよ!」

無邪気! 急に話しかけてくる天真爛漫さは私の心臓に悪いけど、その屈託のない笑顔はむしろ修復剤!

「殺されたおじさんみたいな中途半端って嫌いだから、ちゃんと仕上げなくっちゃ!」

ん? 中途半端?

「あれ? 気付かなかった? あの人がまくったシャツの袖、長さが違ってたじゃない! あれじゃーまるで、エプロンをつけてお手伝いの支度をしてる最中に殺されたみたいだよね?」

 

こ・・・この子、無邪気な顔してなんつう怖い事を。しかもその指摘、警察ですらたどり着いていない私の殺人のタイミングとピッタリ同じじゃないか!

しかもそこから咲き乱れる指摘の数々。

私がピタゴラトリックのために、ロッカーを両開き同時に開いたことや。

ピタゴラトリックのために変に装着させたネクタイのこととか。

 

怖い。この子の言動怖い。

しかもその無邪気で邪悪な指摘の中でも、湯飲みを完成させてくるこの子のスキルも怖い。

 

ん? と言ってもまだまだ子供。拙いスキルだからか、湯飲みから心の迷いが感じられるな。

何か大変な隠し事をしているか、重大な決意を決めかねているようだ。

土は嘘をつかないからね。きっと子供ならではの後ろめたい何かを持っているのだろう。

 

「でもさ、コレ、先生が作ってた湯飲みだよ?」

 

なんとこの子供、私の製作中の作品を勝手に持ち出して仕上げの作業をしていたらしい。

まぁ勝手にも何も、指導用に作っている最中のものだから価値なんて無いし・・・子供のやる事だから叱るってほどでもないし。

 

でもモヤモヤ。なんかモヤモヤ。

 

 

とはいえ私がモヤモヤしていても捜査は勝手に進む。

浮気女に容疑の目が注がれていき、警察が任意同行してくれる流れになった。

長かった。でもこれで私のトリックが報われる。

 

「フニャ。ニャララ」

 

なんか急に生徒の一人が妙な声を出して、犯人連行の邪魔に入った。

それは女子高生の生徒。毛利小五郎の娘さんの友達で、三週間前くらいに入会してくれた生徒さんだった。

 

「相変わらずダルーイ気分にさせてくれるわね目暮警部」

だるーい、からと刑事さんに変な絡み方をしてくる女子高生。今どきの娘ってこんなんなの?

「犯人はもうあの人っきゃないわよね? 美濃先生! 犯人はあなたよ!」

 

え? ええええええ?

無警戒の死角から飛んできた弓矢の如く。

 

そしてそこから咲き乱れる名推理の数々。

 

 

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 殺意の陶芸教室。

それにしても油断していました。
まさか。一番警戒していた名探偵の娘さんでも。
二番目の警戒していた、あの妙に勘のいい子供でもなく。
ウチの生徒に推理されるなんて。

安息の地がない。この米花町、一般市民が探偵の血筋や気配を差し置いて、背後から犯人を刺してくる。
恐ろしい町で陶芸教室を開いてしまった。それが私の敗因ですね。


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そして人魚はいなくなった 【前編】(コナン)

眠りの先に訪れる 推理に恋して謎解く快感
今日の事件は解説風 ゆっくりボイスが聞こえてくるぞ
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



「どうもみなさんこんにちは。美國島の巫女、ゆっくり君恵と」

『生きていたら130歳。金賞クラスの特殊メイクで爆誕、ゆっくり命様だぜ』

「今日はお母さんを焼き殺した幼馴染たちへの復讐計画を解説していきたいと思います」

『最低な奴らだったよな。私たちが代々、変装することで生きているように見せかけてきた命様の名に賭けて、最低な奴らは生かしておけないぜ。それでは今日も』

「『ゆっくり死んでいってね』」

 

『なあ君恵、そもそもなんで幼馴染を殺そうと思ったんだぜ?』

「聞いてよ命様。あいつら人魚伝説が本当かどうか確かめるために、命様に変装したお母さんが蔵に入っていったところに火をつけたのよ!」

『うわぁ、最低な奴らだな。不老不死を確かめるためにそんな酷い事をしたのか』

「そうなのよ。それでその中の一人の沙織が虫歯になったから、それをトリックに利用しようと思うの」

『ん? 虫歯をトリックに利用? いったいどうやるんだ?』

「この島には歯医者さんが無いから、船で本土に行って歯医者さんに行かなきゃいけないでしょ? 私も沙織に付き添っていく約束をしているんだけど、その時に沙織の保険証を抜き取っておくのよ」

『ふむふむ』

「治療の段階で保険証が無い事に気付いた沙織に、私が代わりに保険証を貸してあげる。そうすると歯の治療のデータは沙織の歯並びが私の歯並びとしてデータが残るのよ」

『なるほどな。そうすることで沙織が焼死体になれば、死体の身元は歯並びで調べることになる。沙織の死体を君恵の死体として処理できるというわけだな』

「そうよ。復讐もできるし、私もこれから命様としての活動に専念できる。一石二鳥のトリックね」

『それじゃああとは沙織の出番が来るまで監禁しておけばいいんだな』

「ええ。だけど沙織を監禁している間に少し妙なことがあったの」

『妙なこと?』

「ええ。沙織の携帯電話に着信があって、出たら大阪の男の子かしら? 関西弁の若い声が聞こえてきたのよ。沙織がそばにいたし、うめき声を聞かれたらまずいからすぐに切ったけど気になるわ」

『何事もないといいな』

 

「ということで来ましたトリックの日。儒艮祭りのイベントを利用しておびき寄せながら殺していくわ。儒艮祭りのメインイベント、儒艮の矢に当選っていう口実さえあれば、不老不死に執着している奴らを簡単にホイホイできるのよ」

「だけど君恵、問題が発生したぜ』

「何かしら?」

『矢の当選者を誰にするかもう段取りが終わってるのに、その当選番号の持ち主の老夫婦が今朝になって急にキャンセルしてきたんだぜ』

「え、えええええ!? どうして?」

『分からないんだぜ。でも私たちの予定としては当選者3人のうち2人は仇。そのうちの1人はイベント中に殺すから当選者として矢を渡すのは2人になってしまう。当選者が2人ならまだいいが、1人になったら祭り的には盛り上がらなくなってしまうぜ』

「そうよ。当選者の存在は大事なの! 早く矢のくじを誰かにプレゼントしてあげなきゃ」

『それならいいのが来たぜ。東京と大阪から来たっていう探偵さんの連れの娘さんたちがちょうどいいんじゃないか?』

「た、探偵…いるのかよ! 一度言ってみたかった台詞だけど、これって少しまずくないの?」

『そうだな。イベントに探偵を関与させてしまうことになるな。でも背に腹は代えられないんだぜ』

「そ、そうよね。それに私の命を賭けたトリックはそう簡単に見破られたりしないわ」

『その意気だぜ君恵!』

 

「じゃあ儒艮祭りのメインイベントを始めるわよ。まずは仇の1人、寿美に『人魚のお墓の場所』を教えてあげるって言って滝の上におびき寄せる。そこで気絶させて首にロープを巻き付け、浮き輪に乗せて滝に続く川に浮かべる。約1時間で浮き輪が流れきるように何度も試した長さにロープを調節しておけば、私のアリバイを確保しながら事故死に見えるよう寿美を殺せるの」

『でもここ一週間、雨が続いているから土がぬかるんでいるぜ。気を付けろよ君恵』

「大丈夫よ命様」

『それに水かさもいつもより多いから、ロープの調節も気を付けるんだぜ』

「う、う~ん。なんで今日に限ってトリック環境が悪条件」

『でもどうにかやりきったな。偉いぞ君恵』

「ありがとう」

 

『さて、いよいよ矢の授与式だな』

「そうね。幸運を手に入れたお三方…という私が選んだお二方に前に出てきてもらわなきゃ・・・あれ?」

『どうしたんだぜ君江?』

「矢の当選者として出て来たのが、仇の奈緒子、大阪弁の女の子と・・・あともう一人いるんだけど」

『そんなわけがないぜ。もう一人の当選者の寿美は私たちがさっきサクッと殺したはず。ってあれ? たしかにいるな。たしかあれは沙織のお父さん。あれ?』

「あれ?」

『・・・もしかして、当選番号間違えた?』

「そうかもしれないわ。寿美、当選してなかったみたい。当選してないのに人魚のお墓に呼んじゃったのね。ってことは下手したら美味すぎる話だと怪しんでこなかった可能性もあったわけね。危ない橋を渡ってたの」

『そうだな。でも見てみろ君恵。無事に寿美の死体が発見されたぜ』

「そうね。事故死か他殺か自殺かはわからないって結論になりそうだけど、海が荒れて警察が来るのが遅くなるって話みたい。これで安心して次の仇を殺せるわ」

『安心だな・・・って、なんか大阪弁の男の子が変なことを言い始めたぜ』

「う、うん。滝の下の川で浮き輪を見つけたみたい。トリックのこともアリバイのことも見抜いて、殺人犯がこの島にいるかもしれないって言っているわ・・・私たちがものすごく苦労したトリックを・・・」

『関西弁の女の子が惚れ惚れした顔で教えてくれたな。帽子をかぶり直した平次くんは犯人を捕まえたるスイッチオンでエンジン全開なんだって』

「た、探偵スイッチ! き、聞いたことがあるわ。本土の高校生は受験シーズンになると『やる気スイッチ』なるものを見つけてもらうって」

『殺る気スイッチなんだな。警戒しないといけないぜ』



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そして人魚はいなくなった 【後編】(コナン)

「さて、仇1人を殺せたと思ったら、なんか観光客の関西弁の少年に探偵スイッチが入っちゃって厄介になったわ。しかも追加で連れの眼鏡の男の子が命様に会わせてほしいって言い始めたわ」

『私に会いたい? 小学校低学年くらいの男の子なのに、意外と熟女趣味があるんだな』

「超熟女趣味だけどね。でもここで一人二役を演じ分けて見せれば、ますます私と命様が別々に存在するって信じてもらえるわ」

『チャンスなんだぜ。よし君恵、声を録音してから交代して接客するぞ』

「ええ、頼んだわ命様」

 

『で、接客したのはいいけれど』

「命様に会いたいって言い出した割には、大した用事がなかったわね」

『矢の当選番号の決め方とか、たくさん売ったらいいのにとか、その程度だったな。まぁ私もボロを出さないように早めに切り上げたのもあるが』

「肩透かしだったわね」

 

『さて君恵。分かっていると思うが、今から寿美のお通夜だぜ。つまり奈緒子をサクッと殺す日だ』

「奈緒子は人魚の墓の情報ですぐにホイホイできるから楽ね」

『あとは浜辺に呼び出した奈緒子をサクッと殺して、死体に魚のウロコを付着させておく。私たちはそのまま波打ち際まで歩いて行って、途中で魚のウロコを落としておく。そして波で足跡が消えるように波打ち際のギリギリを歩いて戻れば、犯人が泳いで逃げたように見えるんだぜ』

「あとは矢を奪って何処かに捨てておけば、矢が目当ての強盗犯説も作り出すことができるわね」

『ああ。実際そんな感じに捜査が進んでいるな。ついでに大阪のスイッチ探偵も「矢の当選者名簿が見たい」なんていうトンチンカンな捜査を始めたぜ』

「名簿を見られたところで私たちのトリックには何の支障もないから安心ね」

『ああ』

 

「・・・・・って、あれ? 名簿がない?」

『まさか泥棒に入られたのか?』

「私たちが最後の殺人をしようっていうその日に? とんでもない話ね!」

『全くだぜ。まぁ他に荒らされている様子も無いし、どうせ今から私たちは入れ替わる。君恵として生きる分には困るかもしれないが、命様として生きる分には問題ない』

「むしろこんな夜遅くまで働いてくれている毛利探偵や関西弁の探偵くんに申し訳ないわね」

『例の眼鏡の男の子まで来てくれたのに申し訳ないな』

「申し訳ないついでに、そろそろいいタイミングじゃない?」

『そうだな。そろそろ今回のトリックの総仕上げの頃合いだな。それではみなさん』

「『ゆっくり死んでいくね』」

 

『ということで蔵に火を放って、沙織を殺したんだぜ』

「でも死体は丸焦げで身元が分からないから、歯並びで調べるしかない。これで沙織の死体は私の焼死体ってことになったわ」

『これで、全てが終わったな。仇を全て殺して・・・』

「私はこれからの人生、命様として生きていく・・・」

 

 

『と思っていたら、なんか毛利小五郎に呼ばれたんだぜ。眠りの小五郎の推理ショーが始まるとか』

「何それ? 私のトリックの捜査に奔走していたのって、関西弁のスイッチ探偵じゃなかった?」

『ああ、変だな。それに推理がどんどん咲き乱れていくぜ』

 

【犯人は、祭で矢の当たり番号を示した、命様ただ一人】

 

「『え、ええええええええええ!?』」

「毛利探偵、いつの間にか全てお見通しだったの?」

『しかも島民のほとんどが、私と君恵たちの入れ替わりに気付いていたことがわかったぜ』

「島のみんな・・・入れ替わった後の命様ともすれ違っているはずだけど・・・どういう感情で私たちを見ていたのかしら?」

『分からないが・・・すくなくともこれだけは言えるぜ』

 

 

「『こうして、謎は全て解かれた』」

 




「いかがでしたでしょうか? そして人魚はいなくなった」
『今回の敗因、分かってるよな君恵?』
「ええ。私たちの想定外の行動をとったクズ親父」
『そう、沙織の父親だぜ』
「今年の矢の当選番号の札を売ったのもあの父親だったわ。そのせいで探偵の連れの女の子に矢をあげなきゃいけなくなったわ」
『それに寿美の矢の当選番号をネコババしたのもあの父親だったようだな。そのせいで寿美を呼びつけた後で失敗してた可能性があるって勘違いする羽目になったぜ。私たちの心臓に悪かったぜ』
「そして当選者名簿を盗んだのも父親。泥棒に入られたかと思ってドキッとしたわ」
『今回の事件の全てをかき乱していった沙織父。オチを持っていかれた気分だぜ』
「あの人かい! あのややこしい混乱の原因は!」



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犯人は元太の父ちゃん(リクエスト)

視界を遮る謎の雲 推理で晴らしてSPARKLE
今日の事件は苗字が渋滞 登場人物ほとんど小嶋
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!



俺は盗賊団・百鬼夜行の頭、小嶋岩吉。

悪い事なら一通りやってきた。

殺人・強盗・恐喝・窃盗・詐欺・婦女暴行・密輸・誘拐・放火以外もやってきている。

つまみ食いとか。おかわりしたのに残すとか。水出しっぱなしにするとか。ダブルドリブルとかな。

 

まぁとにかく悪の限りを尽くしてきた俺だが、1つだけ絶対に守っている掟がある。

 

それはコジマを殺さないことだ。

小嶋とか小島とか児島とか。同じ祖先で別々になった親戚かもしれない苗字の人だ。

漢字が違っても殺さない。何があってもコジマだけは殺さない。

というかぶっちゃけ俺はコジマが好きだ。コジマ愛。

 

そんな俺のコジマ愛が試される時が訪れた。

【全国コジマさん選手権大会】

優勝者には1000万円と山休の「萩に猪」の掛け軸が貰えるというもの。

この掛け軸、3つセットで価値が上る代物で、俺は鹿と蝶の掛け軸を持っている。半年前に盗んだものだが。

それが貰えるっていうなら、狙うっきゃないだろ優勝を!

え? 盗めばいいじゃないかって? いやいや俺に勝るコジマ愛の持ち主はいない。

それを証明してから手に入れてこそ価値があるものじゃないか。

 

 

ということで、やってきました日売テレビ。

なんか殺人事件が起こったり、あの名探偵の毛利小五郎がよく出演することで有名なこのテレビ局。

まぁ今日は全国コジマさん選手権大会だ。全国モウリさん選手権大会じゃない。だから心配ご無用。

さぁ試していこうじゃないか、俺のコジマ愛を!

 

 

うん。駄目っぽい。

全国コジマさん選手権大会。難易度高すぎた。

種目がヤバすぎる。

体力勝負は3分間で何回腕立て伏せができるか。うん、俺の恵まれすぎた体で他のコジマッチョに勝てるはずもなく。

のど自慢勝負。コジマ愛を試されるかと思ったら、別にコジマ以外の歌手の歌でもよかった。

漢字の書き取り勝負。薔薇とか憂鬱とか書けるわけがない。てっきり全てのコジマ苗字を書けっていわれるかと思ってたのに。児嶌とか狐島とか。

 

 

うん。普通に落・・・最終候補まで残ったぜ!

 

え? 本当に? いやいや、どうして?

まさか・・・この試験には裏がある?

 

そう。実は見られていたのは点数ではない。

それはコジマ愛。俺からにじみ出るコジマ愛が感知されたのだろう。

ということは他の2人のコジマさんも、俺に匹敵するコジマ値の持ち主ということ。

こいつは負けられないな!

 

 

ということで番組の収録が始まるまで俺たち3人のコジマはしばらく個別の控室で待機。

途中で係員の人が「一品」って書かれた紙を見せてきた。

まぁそのくらいだな。いやぁ番組が楽しみだ。

この階にコジマ愛が強ぇやつがいると思うと、俺ワクワクすっぞ!

 

 

なんて思って待っていたら、なんか控室に変なジジイがやってきた。

ニヤニヤした顔で気持ち悪いと思っていたけど、どうやら今回の全国コジマさん選手権大会の開催者、小嶋グループの会長・小嶋権作氏!

なるほどこの方が俺のコジマ愛を見抜いた、日本一のコジマさんか・・・

 

なんて思っていたら、小嶋会長が「久し振りじゃのォ」って声をかけてきた。

久しぶり?

どうやら小嶋会長、俺が前に強盗に入った家の主で、その時に犬を殺されたことを恨んでいたらしい。

俺が盗賊団の主だってことも知っていて、その証拠の紙も持っていると。

え? ヤバすぎない?

日本一のコジマともなれば、悪のコジマを見抜く目も持っているのか!

 

 

ということでその証拠の紙だけでも奪おうと思います。

 

やっちまった。

 

うっかり階段から突き落としてしまいました。

うわぁ、コジマ不殺の誓いを破ってしまった。

でも仕方無い。放置してしらばっくれるしかない。

とりあえず証拠だって言ってた紙は奪って、食べて証拠隠滅しておいた。

 

最悪、小嶋会長は階段からの転落死。事故死だって処理されるに違いない。

 

 

なんて思っていたら殺人の可能性もあるからって警察が来ちゃいました。

番組を見に来ていた小学生の子供が警察を呼べって。

優秀すぎるだろ!

いや、この番組を子供が見に来るなんていうのは、父親がコジマで応援に来たっていう可能性しかない。

つまりコジマは小学生でも優秀だという立証!

さすがだ、コジマくん。

 

そんなコジマくんに呼ばれてやってきた刑事さんたち。

当然、俺たちに事情聴取を始めてきた。

といっても他の2人のコジマだって容疑者なわけだし、目撃者だっていない。証拠だってない。

俺は普通にしらばっくれていれば、そのうち警察も諦めて俺を介抱してくれるに違いない。

 

あと少し気になったのが、事情聴取で俺に「薔薇」って漢字で書けますか?って聞いて来た刑事さんがいたんだ。

まぁ俺は書けないけどな。刑事さんも書けないって言っていたくらいだし。

だけどな。なんかこの刑事さん・・・コジマ臭がするんだよ。半分くらい。妙だな。高木刑事って呼ばれていた気がするんだが。

 

 

なんてことを考えているうちに、俺は他の2人のコジマと一緒に警察に呼び出された。

一品って書かれた紙に何て書いてあったか教えてくれってな。

そうしたら他の2人は「八百一」とか「シャクハチ」とか言い出したんだ。

ん? どういうことだ?

なんて思っていたら、例のコジマ少年が紙を見せてくれたんだ。

ほら、やっぱり「一品」だろ?

 

って思ったら、この一品は俺たち盗賊団がいつも置手紙で残している「天下一の品」の「一」と「品」を合成したものだったらしい。

つまりこれ一品と読むのは、強盗団の関係者だけ。

しかもあの紙は和紙で毒性が強いから、食べたら死ぬらしい。

 

うえぇぇ!

マズイぞ、早く救急車を呼んでもらわないと!

でもどうして俺が苦しんでいるって説明する? 正直に言うしかないだろ! 俺が証拠の紙を飲んだ殺人犯で盗賊団だって!

 

って俺がゲロって苦しんでいたら、コジマ少年が和紙の毒は嘘だって言い始めた。

こ、このコジマぁ! 俺をかつぎやがって!

 

でもまだいけるはず。子供の冗談に付き合ってやったデタラメだって・・・

 

「オゥオゥオゥ! シラァ切るのも大概にしやがれ!」

他のコジマさんにめっちゃ怒鳴られました。勢いで自白させられました。

 

 

 

こうして、謎は全て解かれた。

そしてコジマ怖ぇ。

 

 




いかがでしたでしょうか? 犯人は元太の父ちゃん

敗因は間違いなく、コジマ不殺の掟を破ってしまったこと。
コジマを殺してしまったのが運の尽き。
同じ苗字の相手を殺すなんて、絶対に駄目だってことが証明されたわけだな。

それにしてもあのコジマ会長、どうやって俺が盗賊団の頭だってわかったんだ?
他の2人が大会の最終候補者に残ったってことは、最後の一品の字までは候補が絞れなかったようだが。
まさかあの2人。小嶋文太と小嶋元次にもあるというのか? 悪のコジマのオーラが。犯罪者の素質が!



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割れない雪だるま(コナン)(リクエスト)

時代の進歩と難事件の増加は比例する。
今日の事件は雪との対決。トリック最後はいつでもフィジカル。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



僕は美大学生の板橋一八。

同じ彫刻科の仲間男女4人、朔子と鍛治、麻華の4人でいつもつるんでいる。

この4人、ラブコメ漫画でよくある四角関係。

朔子→鍛治↔麻華←僕

っていう片思いと両想いの交通渋滞。

な? 死人が出そうな形してるだろ?

実際、朔子が鍛治を巡って麻華に大怪我をさせたくらいだからな。

これ、鍛治が朔子を殺す可能性あるよな? あるよ。あるさ。

ということで先を越されないために僕が殺す。

 

思い立ったらすぐ行動。これは人生の鉄則。

 

トリックはすぐに用意できた。

朔子を溺死させてから雪だるまにINして、雪だるまを崖の上から転がして、池に沈めてやるのだ。

こうすれば崖から転落して池に落ちた事故死に見せかけることができる。

 

ということでトリックの準備だ。

まずは雪だるまを用意する口実にするため「卒業制作を雪の彫刻にしたい」という熱意を大学側に伝える。

雪の彫刻でもいいよ、というお墨付きをもらったら、朔子を含めた鍛治、麻華のいつものメンバーを誘って泊まりでスキーに行く。

スキーロッジに行ったら、僕が雪の彫刻の初期構想を担当すると言って、一人で雪だるまを作る。

この時に雪だるまの中を空洞にしておいて、朔子をINできるスペースを確保。彫刻の部分は取り外し可能な氷像にしておく。

雪だるまゴロゴロが終わったら、新しく雪だるまを作って氷像と合体させて元通り。

これで雪だるまを池にドボンさせたというトリックがバレずに済む。

 

だがこのトリックには最大の問題がある。

それは新しく雪だるまを作らなきゃいけない、っていうこと。

スキーロッジは当然、スキー客のための場所。人の往来が多い。そんな場所で雪だるまを作っているところを見られたら、「なんで雪だるま2回作ってんの?」って変な行動を指摘されてしまう。

なるべくなら客の出入りの無い時間帯・・・そう、例えばみんながスキーに出払ってくれそうな時間をピンポイントで狙う必要がある。でもそんなゴールデンタイムは短い。雪だるま作りは時間との勝負になるのさ。

 

なのに・・・よりにもよって当日に・・・・

僕の雪だるま彫刻のすぐ隣で、子供たちが雪だるま作ってるんだよ。スキーそっちのけで。スキーしに来たんだよねキミたち?

「黒ずくめの奴らの仲間、ベルモットだろーぜ」

「なっ!?」

「だ、だろうぜ・・・って」

子供たち3人で雪だるま作っていて、手伝ってない子とおじいさんが何かおしゃべりしてサボってるけどさ。

まぁサボってる子たちの話はどうでもいい。問題は子供たちが早く退散してくれないと僕のトリックが実行できないっていうことさ。

でも大丈夫だった。お昼前には吹雪いてきて、子供たちもロッジの中に入ってくれた。

今がチャンス!

 

まずはあらかじめ池の水を大量に汲んでおく。

自分の部屋の洗面台を池の水で満たしたら準備完了。

朔子を電話で呼び出して、洗面台でサクッと溺死させて、胃の内容物を調べられても池で溺死したと鑑定されるようにしておく。

次に部屋から朔子の死体を運び出す。

朔子の死体を? ロッジの中から? さっきの子供たち、吹雪いてきたからロッジの中に入っていったのに? というか他に客がいるのに?

隠密! ステルスミッション! 運の勝負!

 

運が良かった。それに尽きる。もう冷汗ダクダク。でもまだ勝負は終わっていない。

次は時間との勝負。

朔子を雪だるまにINして雪で隙間を埋めて、塩をかけて凝固点降下させて雪をしっかり固める。

あとは朔子をINした雪だるまを崖まで運んで、池に落としたら新しい雪だるまを作らなきゃいけない。

 

崖まで・・・雪だるまを・・・転がす?

吹雪で雪増量中の道を・・・転がしていけば当然・・・

進めば進むほど大きく育っていく雪だるま。

ただでさえ塩撒いて凝固点降下させて固めておいた雪だるま。重さも増しているのに。

それに雪だるまって真っ直ぐ転がしただけだと球体じゃなくて円柱状になっちゃうから、まんべんなく転がさなきゃいけない。だから労力も倍増・・・

さ・・・SASUKE。いや、大相撲出れるわ!

 

 

こうしてどうにか崖まで雪だるまを転がした僕。

あとは崖から雪だるまを落として、池まで転がるのを見届けるだけ。

池まで雪だるまが転がって・・・いくのか?

これだけの重量物が10mくらいの崖を落下。いくら斜面があるていど傾斜しているとはいえ・・・

 

いくのかコレ?

でも今さら。朔子の死体がINした雪だるまがここにあるのが一番の不自然。もう後戻りはできない。やるしかない。

ああ。一世一代の賭けだ。祈るしかない。

ドン!

ゴロゴロゴロ

崖を転がり落ちていく雪だるま。それを眺めて祈る僕。

なんかこう、映画だと主題歌流れてきそう。

「いっっっっっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

猛スピードで斜面を転がった雪だるまは、池までの数mの平地を勢いよく走り抜け

水面すら滑走しながら徐々にスピードが落ち、最後には制止して池の中央あたりで浮かんでくれた。

これビデオに撮っておけば衝撃映像だったよ。もちろんそんな証拠を残すことなんてできないけど、マジで映画のビジュアル。

 

なんて余韻に浸ってる暇は無い。急いで雪だるまを作らなきゃ。

雪だるまを・・・作るのか・・・

体力! もう体力ギリギリ! いくら若いからって、美術系の体力には底がある!

ムリな気がする。時間的に元の大きさと同じ雪だるまを用意するとか・・・

 

!?

 

その時、僕の目の前に現れたのは雪だるま。

そう、それは僕の隣でずっと子供たちが作っていた雪だるま。

使わせてもらえばいいじゃないか! 子供たちの雪だるまの頭部を!

頭が無くなったら子供たちは不思議がるかもしれないけど、風にあおられて倒れて崩れたとでも思ってくれるはずさ。

 

こうして感謝と謝罪の雪だるまリサイクルで難をしのいだ僕。

あとは行方不明になった朔子を探すフリをしていればいいだけ。

なんか例の子供たちも一緒に朔子を探してくれて外に出て行った。おいおい外は吹雪いているから遠くが見えなくて危ないよ? それにきっと池に浮いた雪だるまも、この寒さで溶けないから朔子の体なんてきっと雪に隠れたままだって。

 

と思っていたら普通に雪だるまは溶けていて、子供たちが朔子の死体を見つけました。

この池、たしかに温泉のおかげで少し暖かいってきいていたけど・・・雪溶かすくらいの温度あったのか・・・意外。

 

まぁあとは普通に警察が来てくれて捜査開始。朔子は崖から落ちて溺れたという事故死だって判断してくれた。

まぁ普通だよな。結論そうなるよな。僕、警察の捜査って見るの初めてだけど。

初めてだから。素人だからかもしれないけど、一つ聞いていい?

例の子供たち。普通に朔子の死体の近くでうろうろしてるんだけど。

第一発見者だから?

でもさ、普通に考えてこういうのって情操教育によくないと思うんだ。

県民性? この地域って子供を死体のそばで遊ばせるの普通なの?

 

 

っていう疑問もそこそこに事情聴取から解放された僕ら。あとは大学に帰って報告して、朔子の葬式に参列するだけかな。

なんて思っていたところ、急に刑事さんから話があるって呼び出された。

話があるのは刑事さんじゃなかった。例の子供たちの保護者のおじいさんだった。

「朔子さんが亡くなったのは事故ではなく殺人。しかもどうやら犯人は、その三人の中にいるようだと言っておるんじゃよ!」

え? おじいさん? なんか急に本質突いてきた?

でもこの急展開に刑事さんもさすがに付いていけないから、僕らの代わりに「あれは事故だ」って言っておじいさんに詰め寄ってくれた。すごい剣幕で。

でも剣幕の勢いがつきすぎて転んじゃったのか、刑事さんはそのままおじいさんに体当たり。その時に足でも捻ったのか、雪だるまを背にしゃがみこんでしまった。大丈夫かな?

「いやいや自分に呆れて腰がふにゃり抜けてしまったんだ。こんな単純なトリックに、今この場でやっと気づいたんだからね」

はい?

なんか急に刑事さんまで本質に迫ってきた。しかも子供たちにクイズ形式で語りかけながら、雪だるまにINしたところまで指摘してくる。

「そう。ここでずっとこの雪だるまを作っていた、板橋さん。あなた以外には考えられないんですよ!」

そう。僕以外には考えられません!

でも証拠! 証拠を見せてよ!

 

ピピピ

 

その時、僕が拝借した子供たちの雪だるまの頭部、僕が作ったことになっている雪だるまから音が鳴り始めた。

どうやら子供たち、サプライズで友達を驚かすために、中に小型の無線機を入れていたみたいなんだ。

今どきの子供! ボクの子供時代にはなかった発想を遊びに取り入れてくる!

 

 

こうして、謎は全て 溶かれた。

 




いかがでしたでしょうか? 割れない雪だるま。
いや、割れるというか溶けてくれないと困るから、割れなかったけど溶けてくれた雪だるま、なんですけどね。
敗因は単純にシミュレーション不足だと思うよ。
雪だるまのリサイクルなんて、機転を利かせたものが逆に足を引っ張ったわけだし。
最初から体力を鍛えておけばよかったんだ。雪だるまを2個作れるくらいに。
まぁ、そこまで鍛えたらむしろ崖から池まで朔子を投げ飛ばすくらいの力がつきそうな気もするけどね。


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