FGO The Third Lost (超ローマ人)
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Welcome to ようこそ 彷徨海(前編)

次回からシリアスモード直進です。


シャドーボーダーのトレーニング室。そこには、一人体を休まずに鍛えている若者がいた。

それは、藤丸立香(20歳)だ。次のクリプターたちによる襲撃に備えて、特訓をしている。

そんな彼を気遣う後輩がいる。

「先輩、そろそろ休まれては如何でしょうか?」

彼女の名はマシュ・キリエライトだ。

藤丸の大切な後輩である彼女は、無心に体を鍛えている藤丸にもう一度声をかける。

「先輩、そろそろ休憩に」

「あぁ、もう少ししたらな。」

「もう三時間は続けてますよね?」

「何?……本当だ。少し休憩しよう。」

藤丸はマシュに渡されたタオルを受け取ると、それで体についた汗を拭いた。

そして、彼は黙ったまま虚空を眺めていた、

 

すると、彼らが現在乗っている装甲車=シャドーボーダーが大きく揺れた。

「きゃっ!?」

「敵……では無いようだが、何が起きた!?」

藤丸とマシュは管制室へ走った。

すると、シャドーボーダーが海に突入してしまったことに気付いた。

「藤丸!手伝ってくれぇ!」

そう叫んだのは、シャドーボーダーの運転係のムニエルだ。

彼はカルデアの中では、藤丸に歩み寄ってくれる数少ない人間の一人だ。

「分かった!」

藤丸は、ムニエルの隣に座りシャドーボーダーの復帰の操作を試みる。

しかし、彼らの尽力叶わず陸地が中々見つからない。

 

すると、彼らの後ろからも声が聞こえた。

「どういう状況だ、これは!?」

「ゴルドルフ所長!シャドーボーダーが海に沈没してしまいそうなんだ!!」

「何だと!?陸地は見つからないのか!?」

「見つかってたら、今頃その方角に舵を切ってるぜ、オッサン!」

藤丸とムニエルを指揮するのは、カルデアに着任したてのゴルドルフ新所長だ。

藤丸は彼を「所長」と呼び、ムニエルは「オッサン」と呼んでいる。

 

暫くしていると、マシュがカルデアのサーヴァントの一人・ダヴィンチちゃんを連れて

管制室に来た。

「不味い、この船はあと一時間で沈没してしまう!」

藤丸とムニエルは更に速いペースで、シャドーボーダーを浮上させることを目的とした作業を始めた。

すると、二人はカルデアに通信が来ていることに気付いた。

「誰かから、通信だ!」

「奴らじゃないだろうな?」

「ミスター藤丸にミスタームニエル。解析するんだ。」

カルデアのサーヴァントの一人である、シャーロック・ホームズに指示された二人は通信の解析に取りかかった。

 

「シーキューシーキュー。もしもし、こちら彷徨海船港」

送り主は女の声で、「彷徨海」を名乗った。

「彷徨海…?」

藤丸が、聞いたこと無い単語を目の当たりにして首を傾げているとゴルドルフ所長が叫ぶ。

「彷徨海というのは、あの時計塔やアトラス院と並ぶ魔術の総本山の一つではないか!?よし、通信を続けて我々を助けて貰おう!!」

「でも、それは何処に!?」

ムニエルが必死にモニターで彷徨海の場所をチェックしていると、スピーカーから声が。

「あっ、そちらには見えていないのね?ちょっと待ってね。」

女がそう言うと、シャドーボーダーの目の前に大きく尖った岩山のような物体が海から現れた。

「デカァァァ!?」

「私の名はシオン。ようこそ、彷徨海へ!!」

 

数分後、藤丸たちは彷徨海の港に着きムニエルと少数のサーヴァントに留守番させた。

そして、そこで彼らは広いホールのような場所だ。

「広ぇぇぇ!」

まるで秘密基地を構える組織に入りたての隊員みたいに、藤丸が叫んでいると何処から足音が聞こえた。

そして、現れたのは紫色の服にツインテールそして白いスカートを履いた女だ。

「私が先ほど通信したシオンです。貴方たちがカルデアですね。ここまでは私の計算通りですね。あれ?もう一人は?」

シオンが藤丸の不在に首を傾げていると、足元から声が挙げられた。

「なんと純白で美しいんだ…」

藤丸はシオンのスタイルと美貌に、鼻の下を延ばしていた。

そのことに気付いたシオンは顔をトマトのように赤らめて、甲高い声で叫んだ。

「イヤァァァ!!」

「グフフフ……リツカちゃんもっこりぃぃ!どう、シオンさん?偉大でしょ?偉大でしょ!?」

藤丸は自慢げに下半身を、シオンに見せ付ける。

この完全なるセクハラに、抗議を挙げたのは

「この……もっこり魔術師がぁぁぁ!!!」

藤丸の魔道書ことアークミネルバだ。

彼女は何処からともなく取り出した金槌で、色魔と化した藤丸を叩いたのだ。

「リツカちゃん、ガックシ~。」

討たれた藤丸は情けない断末魔を挙げながら倒れた。

「申し訳ねぇ、うちの『変態』マスターがとんだ迷惑を。」

 

そして、藤丸たちはそれぞれ自己紹介をし終えシオンが彷徨海にいた訳を聞いた。

ある日、地球の白紙化を予知した彼女は彼女の父である前アトラス院長にそのことを報告したが相手にされず逃れる方法を考えていた。そこで彼女は彷徨海に行くことを思い付き実行したのだ。

そこまで話していると、藤丸たちは自分達の後ろから声が聞こえたので振り向く。

「は、離せ!俺はムニエルだぞ!?」

一行が視たのは、アラビア風の格好をした少年と見てとれる者に強引に歩かされているムニエルであった。

「あっ、キャプテン。」

「あれは…サーヴァントだね?ミス・シオン?」

「ご名答。こちらではサーヴァント召喚システムが未完成な物だから、幻霊も混ぜてるけどね。」

幻霊。それは、霊基数値が足りなかった為に英霊に昇華されず、サーヴァントとしても成立しないもの。精々が都市伝説程度の概念であり、英雄にも反英雄にもなれず朽ちて消えるだけの存在のことである。

藤丸はカルデアに所属しているサーヴァントの何体かが、幻霊との融合体であることを思い出していた。

「カルデアのシャドーボーダーだっけか?損傷はが激しい…これでは機械が泣くぞ。」

「な、なんかごめん…」

「あぁ、キャプテンはね、機械弄りが得意なの。だからこそ、機械の扱いが悪いのが我慢出来ないの。」

そうして、シャドーボーダーの修理をキャプテンに任せ、それぞれの部屋に案内されたカルデア一行は休むことにした。

 

しかし、数時間が経過した後に藤丸は目を覚ました。

「なんだか、甘い香りがする。」

藤丸はその方角へゆっくり歩いていった。そして、ある異変に気付いた。

心踊るような甘い香りの中に、真夜中の空のような黒さが隠れていることに気付いたのだ。

それを察知した藤丸の顔が険しくなった。

そして、藤丸は急いで原因を探るべく、足音を立てないようにかつ迅速に香りが漂う部屋の前に着く。

そこは明かりの付いた食堂だった。

そして、藤丸が視たのは…。

「あっ」

「…………」

無断でケーキを食べているゴルドルフ所長だった。

藤丸は先程までの表情を嘘のように隠しながら苦笑いし、ゴルドルフ所長を見つめる。

「頼む!このことは黙っていてくれ!」

「えぇ、分かりました。ただし、条件があります。耳を貸してください。」

 

藤丸はゴルドルフとの距離を縮めると、ゴルドルフの後ろの方角へ赤い光弾を投げた。

「なっ!?」

「まさか、私の気配を!?」

驚愕の声を挙げながら、先程まで隠していた姿を現したのは旧カルデア基地を潰した組織・クリプターの一員であるコヤンスカヤだ。

「どうやってかは知らないが……ここに侵入した以上は……これ以上は話さずとも分かるな?『妲己』」

「その名で私を呼ぶとは。やはり、貴方を弱体化および抹殺の第一候補に挙げるべきでしたね。」

「あの大妖怪にそこまで言われるなんて、光栄ですこと。」

 

そこまで言い合うと藤丸は、自らの眼を研ぎ澄まされた刃に変えた。

妲己も覚悟を決めたかのような顔付きになる。

すると、藤丸は腰に巻いていた、小型の龍型の魔術デバイス=メイガスドラゴンを仕込み武器のように取り出した。

彼にもコヤンスカヤにも隙と言える隙は殆ど無かった。

「暴食『グラ』のアーカイブに接続。テーマを実行するっ!」

藤丸はその身を、青と白を基調とした鎧に包んだ。

そして、白銀の雪のように輝く剣=シルバームーンを何処からともなく取り出す。

最後に睨み合っていた両者はついに、動き出した。

To Be Continued

 

次回のFate/Grand Orderは

「吐きます!我々のことについて吐きますから、この鎖をほどいてください!死んでしまいます!!」

「あぁ…今『楽』にしてやるよ…とてつもなくな。」

「なんだぁ?俺たち新撰組の出番ってわけか、マスター?」

「あぁ、頼むぞ。私は少し着替えてくるからな。なに、これから『仕事』なものでね。」

 



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Welcome to ようこそ 彷徨海(後編)

一週間に一回更新します。本当に忙しくならない限りは。


お互いを睨み、ついに動き出した両者。

妲己とも呼ばれ、カルデア壊滅を引き起こしたクリプターの一員となっているコヤンスカヤは、懐からメスを思わせるような短い刃を取り出した。それは先程まで洗ったかのように、光っていた。

 

「…なるほどな。」

藤丸はその短刀を取り上げるべく、敢えて距離を近づける。その手には、一つの剣が握られている。

コヤンスカヤの素早いナイフ捌きを軽くいなし、藤丸はソードブレイカーとしての側面を持つ自慢の剣=シルバームーンでそのナイフをガラスのように割って叩き落とした。

 

「おお!?」

ゴルドルフ所長が喜びの眼差しを藤丸に向ける。

「所長!俺が相手してるとは言えど、コイツはサーヴァント。アンタを殺すだけの実力は十分備わっている!」

「!」

「だから、早くここから離れて、仲間を呼べ!」

ゴルドルフは頷いて走ろうとするが、何かに脚を引っ掻けたかのように転んだ。

「何やってんだ!?」

「なんだか、目眩が…!」

「目眩!?……」

藤丸は、ゴルドルフが半分食したケーキを思い出した。そして、内から込み上げてくる炎によって揺れた声で話す。

「やはり……アレは……」

「えぇ、そうです。『毒』ですよ。」

藤丸の感情を嘲笑うかのように、ケーキの中身をうち明かすコヤンスカヤ。

だが、藤丸は狼狽も恐怖も感じなかった。

ただ、その中に燃え滾る炎を静かに燃やしていた。

そして、その剣に膨大な魔力を浴びさせコヤンスカヤにぶつけようとする。

しかし彼女はこれをかわし、藤丸の背に複数のナイフを刺した。

 

藤丸は背中の衝撃と毒に耐えられず、前のめりに倒れた。

「任務完了♪」

「小僧…お前…」

コヤンスカヤの顔は明るく、ゴルドルフの顔は青くなっていった。

「では、ここら辺で。カルデアの終了を宣言……ッッ!」

コヤンスカヤは懐から、連絡機器を取り出そうとしたが、体が言うことを聞かなかった。

それはまるで、彼女の体が釣糸によって吊るされているようだった。

そして、彼女はある気配に気付いた。

彼女の背後から、声がした。

「いやぁ、生まれて初めて死んだフリをしたよ…。しかし、魔術回路に入ってくるタイプの毒ってのも初めてだったから解毒するのにほんの少し時間かかった。」

藤丸が立ち上がったのを期に、コヤンスカヤの顔が青ざめていく。

 

「心配したぞ!」

「な、何故毒が!?」

尻に火が付いたコヤンスカヤは声を荒げる。

一方で、藤丸は余裕綽々と言わんばかりに静かに語る。

「私のメイガスモードの能力……毒を受けた自分自身の体から毒を『完全に』取り除く。」

「こうなったら…っ!」

コヤンスカヤは身体中に魔力を回して、動けない状況を脱しようとするが…。

「妲己。残念ながら、貴様を縛っているものはただの鎖では無い。『蛇』だ。それも蛇の中でも絞殺力が最も高い…」

「ま、まさか!?」

妲己から、滝のように冷や汗が流れた。

「ご存知!『錦蛇』だ!!『白蛇縛』・『錦蛇』(パイシゥーバインド・ニシキヘビ)!!」

 

藤丸がそう叫ぶと、先程まで目に見えていなかった、正確には藤丸以外は誰の目にも写らなかった白い複数の鎖がコヤンスカヤを繭に閉じ込めるように纏わり付いた。

白い鎖で出来た繭の中で、コヤンスカヤの体に鎖がきつく締まる。

「ぎゃあああ!!」

女狐の断末魔が新カルデア基地中に響き渡り、白い繭は赤く滲んだ。

そこで、藤丸は女狐と交渉を始める。

「可哀想なヤツだ……もしお前たちの組織について吐いたら……離してやろうかなぁ?」

コヤンスカヤは藁にもすがるように、泣き叫ぶ。

「吐きます!我々のことについて吐きますから、この鎖をほどいてください!死んでしまいます!!」

「あぁ、今『楽』にしてやるよ……。」

 

すると、藤丸はコヤンスカヤをボールを篭に入れ込むように薄暗い部屋へ投げた。

しかし、完全に手放したわけではなく鎖は自動的に部屋にある鉄格子へと絡まった。

「離してくれるのでは無かったの!?」

「『楽』にしてやると言ったな…アレは嘘だ。」

藤丸はコヤンスカヤに、彼女から奪った通信機を見せ付けながら彼女を害虫を見るような目で見据えた。

「そ、それは!」

「それでは、また後でな。」

 

藤丸はコヤンスカヤから奪った録音機のスイッチを入れ、通信機の電源もオンにした。

すると、音声が流れた。

「コヤンスカヤ、作戦は上手くいったか?」

声の主はクリプターのリーダーである、キリシュタリアだ。

藤丸はキリシュタリアに対して、聞けば耳に重りが付いたように感じられるような口調で返事をした。

「クリプターのリーダー・キリシュタリアだな?」

「……!」

キリシュタリアは電源を切ろうとしたが、聴いた声の質を見て切ろうと考えるのを止めた。

「刺客なんざ寄越したということは……これは三度目の宣戦布告と……捉えて良いんだよな?」

静かだが、岩や鉄の塊がのしかかるかのような声で藤丸はクリプターに対して牽制をかけた。

キリシュタリアはこれを軽く受け流した。

「あぁ、そうだ。今度こそ、お前たちを倒し、我々こそ人類の正しい歴史を歩む者だということを証明してみせよう。」

「なら、こっちは。お前たちの造った世界を壊すだけだ。この選択に対して、まるで霧のように漂う鬱陶しい迷いは……今の俺には無い。」

「ほう……ならば見させてもらおうか。お前の大いなる霧払いってやつを。」

そこで、通話は終わりの鐘を告げた。

 

「……で、この女に対しては俺達の出番か?マスター?」

藤丸の後ろに黒い袴を着た男、帽子が特徴的な中華風の小さな女そして黒いドレスを着こんだ背の高い女がいた。

男の質問に、藤丸は顔を硬めながら答えた。

「あぁ、その女の監視もとい尋問を頼む。私はカルデアの服が汚れないように、着替えるからね。」

藤丸がその場から姿を消すと、部屋から一人の女の悲鳴が鳴り響いた。

To be continued

 

次回のFate/Grand Orderは!

「ゴフッ……!薬は…!ゴホッ!人智統和帝国・SINに!!」

「てめえは、ゴルドルフの毒が治ってから紅くして干してやるよ。」

「なるほど、ここが中国異聞帯か…」

 



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Tortureー拷問―

色々あって倒れかけましたが、どうにか投稿出来ました
努力しても報われ無いってこんなにも辛いのですね
ですが、これから頑張って行きたいと思います。


藤丸に縛られた、コヤンスカヤの体を鞭で叩く音が拷問部屋から鳴り響いた。

そして、一人の鬼が彼女に対して叫ぶ。

「マスターに盛ろうとした毒は…なんだぁ!?」

「そう簡単に…話すわけには!」

鎖で繋がれた狐は、足元から少しずつ毒で満たされた鍋へと入れ込まれようとしており、

頭上からは鋭い歯から赤い涎を垂らす棺桶があった。

そうしていると、灯りを背に黒ずくめの男が現れた。

「待たせたね。」

サーヴァントたちのマスター・藤丸立香だ。

「遅い…!だが、我が考えたよりかは早い身支度だ。許そう。」

彼に「許そう」と言ったのは、中華帝国の帝王の一人・武則天だ。

「ほら、マスター。鞭を使いな。」

「土方さん。お借りします。」

「けれど、坊やが拷問だなんて……この女に恨みでもあるわけ?」

「ありますとも。とっても深いのがね」

藤丸の拷問行為に驚いた黒いドレスの女は、あの女吸血鬼で知られるカーミラだ。

「さて、始めましょうか。」

カーミラの合図とともに、拷問が再開された。

 

拷問が再開されてから、8時間が経過していた。

「スルトが強力な兵器扱いだったのは分かった。さて、そろそろ吐いてくれると助かるな……。毒は何処で仕入れた?」

最早数えれないほど繰り返した質問に、狐はやっと答えた。

「ゴフッ……!薬は…!ゴホッ!LostBelt No.3人智統和帝国・SINに!!」

それを聞いた藤丸は満足したかのように、拷問を取り止めるジェスチャーを三人のサーヴァントに送る。そして、獲物を見据える蛇のような眼差しでコヤンスカヤを見る。

「てめえはゴルドルフ所長の毒が治ってから、紅く染めて干してやるよ。」

 

「ゴルドルフ所長に盛られた毒の薬は、ロストベルトNo.3にある模様。コヤンスカヤの懐には一つもそれは見当たりませんでした。そして、そこにいるクリプターとそのサーヴァント、さらには異聞帯の王の真名までも聞き出すことに成功しました。」

「初めての『尋問』にしては、中々良いじゃないか。話してごらん。」

藤丸は皆に分かりやすく、第三のロストベルトを攻略するための情報を「ある程度」整理した。

「結論から言わせて貰う。コヤンスカヤをこのロストベルトに連れていき、薬のところへ案内させてくれればゴルドルフ所長の一命を取り留めることが出来るわけだ。」

「君は気付いていたんだね?ゴルドルフの生命が危ないことに。だから、拷問する前にキャプテンのところへ運んだのだね?」

「正解です、ホームズ。しかし、ホームズが聞きたいのはここでは無い…ですね?」

「そうだとも、ワトソン君。私からの質問は二つ。ゴルドルフの毒の正体は何か?そしてもう一つは、『コヤンスカヤはどうやってここに来たのか』だ。」

「毒の正体は……この世に存在するもの…ということでは無いということしか分からない。2019年までに発見された全ての毒と型が合わない。おっと、私はメイガスモードの力でこの毒を完全に解毒したのだがね。」

 

「なるほど…そして、コヤンスカヤの出現の原因は?」

「それは全く分からない……。ホームズに言われるまで疑問に思わなかったが、何故コヤンスカヤはここへの入り方を知っていたのだ?」

藤丸たちが唸りを挙げて首を傾げていると、ベッドに横たわりながらこの話を聞いていたゴルドルフが突然立ち上がり何かを思い出したかのように叫んだ。

「アーーーッッッ!!」

「なんだよ、オッサン!ビビらせるなって!」

「思い出した…ッ!コヤンスカヤ君と知り合ったばかりのことだ!!このリップをヤツは儂に寄越したんだぁ!Oh my God!!!」

「…やれやれだぜ」

過去の自分の行いが、自分の首を締めるような結果に繋がってしまったのだと知ったゴルドルフは懺悔の言葉を述べながら、だだっ子のように机を叩いた。

それを見た藤丸は呆れ顔を隠せないでいた。

「つまり、単独顕現スキルをリップを触媒とし発動させる。そうすることで、こちらに侵入出来た…というわけか。」

 

「出力・視力・測定器オールグリーン!これより、虚数潜航を開始する」

「シャドーボーダー・発進!!!」

彷徨海にあるシャドーボーダー発射口のアナウンスを聞いて、発進の号令をダヴィンチがかけた。

 

「……ここがロストベルトNo.3『人智統和帝国・SIN』か」

To be continued

 




前書きで不穏なこと書きましたが、大分気分は良くはなりました。少し悪いところもありますが、あまり気にしすぎないように気を付けます。


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シャドーボーダー、ロストベルトNo.3へ

金曜日になったので投稿します。今更ながら、ここでの藤丸立香は原作とは異なる設定を持っております。ご了承ください。


 

「…畑だな。」

「あぁ、今までに比べると不気味なぐらいに普通だ。」

「ここは汎人類史に置き換えれば、十堰市のど真ん中に当たるんだけど…。」

十堰市とは、本来の歴史における中国においては大都市の一つとして数えられるものの一つだ。しかし、ロストベルトはこれとは全く異なる進歩を遂げてしまった。そのために、藤丸たちの目の前に広がるのは「大都会」でも「ただのカカシ」でもなく、「ただの広い畑」なのだ。

「縦穴式の住居…これじゃ、まるで石器時代だ。」

ダヴィンチがそうぼやいていると、藤丸たちを見て慌てふためく影が。

彼らはこのロストベルトなので住民だろう。

言語は漢時代中期の物なので翻訳機が作動したが…彼らは警戒心を弱めはしなかった!

 

「ガイジンだ!」

「駐在さん!!あいつら、いきなり畑の真ん中から!!」

「何!?確かに、箱と武器みたいなものを…!追い出すぞ!!」

 

「まずい、彼らを刺激しちまった!」

「待ってくれ!私たちは怪しいものじゃないっ!」

藤丸は交渉を試みるが、彼らは聞く耳を持たない。

「攻撃体制に入りました!」

藤丸たちの中で、唯一戦えるのはマシュと藤丸の二人のみ。

しかし、藤丸は一般人には力を振るいたくないため一人のサーヴァントを召喚した。

「来てくれ、哪吒!」

藤丸が叫ぶと、それに呼応するかのように赤い槍を持った少女が現れた。

彼女はカルデア側に属するランサーのサーヴァント・哪吒だ。

「状況把握。マスター、無効化か倒すか選択を」

「あくまで無効化で頼むっ!」

「了解」

 

マシュとナタはマスターの指示に従い、攻撃的な姿勢を持った民を地に伏させながらも双方の血を流すことなくこの騒動を納めた。

 

マシュとナタが民たちを押している中、一人の男が藤丸の背後を取った。

「隙アリッ!」

「先輩!」

次の瞬間起きた音は、頭が割れたものでも赤い噴水が吹き出る音でもなかった。

カランっと「人体ではない何か」が転がり落ちた音だ。

「……なっ!?」

そして、悲鳴を挙げたのは藤丸を攻撃した男の方だった。

彼は確かに、藤丸の頭を鈍器で撃ったのだ。だが敵に怪我を負ったような様子は無く、逆に金槌の金属部分に罅が入り、砕けたのだ。

「……ねぇ。なんかした?」

藤丸は何事も無かったかのように、しかし重みを含んだ言い方で全ての民を大人しくさせた。

「ひ…ヒィィィっ!」

 

「ええい!今すぐ、あの野蛮人どもを洗脳できるキャスターを召喚しろぉ!」

シャドーボーダーの中で、抗議するゴルドルフ。彼は毒で蝕められている体で焦っていた。

藤丸はこれに対して

「確かに、彼らが襲ってきたのは事実…だが断わらせていただこう、新所長。」

と反論した。

「今回は時間が無いのだっ!早急に!事を進めるべきだ!」

「…それなら、あの女狐に文句垂れてこい。奴はこのロストベルトに解毒剤があるとしか話さん輩でな。」

「それに、彼の魔力を以てしても召喚とは時間がかかるものだよ。ミスターゴルドルフ。」

サーヴァント召喚には時間がかかることをホームズの説明から知ると、ゴルドルフは夜の町のように静かになった。

「よし、藤丸は召喚に専念してくれたまえ。後は私たちに任せて。」

「ダヴィンチちゃん、恩に着るよ。」

藤丸は召喚室に籠り、召喚のための詠唱を奏でることにした。

 

 

そして、現れたのは三人のサーヴァントだった。

銀色を基とし、赤い線がところどころに浮かび上がる鎧の騎士

全身に銀の拘束具を身につけた闘士

そして、全身を白い袴で包んだ暗殺者の三人だ。

 

「始皇帝に反逆するために召喚した結果が……こうなるとはな」

「先輩。こちらは、このロストベルトとの住民たちとの和解に成功しました。そちらは?」

後輩からの通信に答えるように、藤丸は英霊召喚完了の知らせを送った。

 

次回のFate/Grand Orderは!

「あの天体は!?」

「はい。この秦の永久楽土を乱す狼藉者どもを、排除に取りかかります。」

「なるほど、お前がセイバーのサーヴァント・欄陵王か…」

「ここは俺に任な、マスター!」

 

 

 



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仮面のセイバーvsモードレッド

初めての執筆中の小説からの投稿なので、行を以前より一つ大きく開ける等の変更をさせて頂きました。どうすれば、もう少し読みやすくなるかをアドバイスしていただくと助かります


「反逆三銃士を連れてきたぞ、皆」

「「反逆三銃士…??」」

そう言って、藤丸が赤い騎士から紹介していく

「騎士王の息子・モードレッド」

「マスター、敵はどこだ?」

「後でどうせ来るから、ちょっと落ち着いてね」

次に、闘士を紹介する

「力の賢者…じゃなくて、Mr.圧政者殺すマンことスパルタクス」

「圧政者は何処だ?」

「只今捜索中」

モードレッドとスパルタクスが似たようなことを気にかけるので、少し調子を崩したのかマスターである青年は一瞬豆鉄砲を食らった顔になる。

すぐに気を取り直した彼は三人目を紹介する。

「純白の暗殺者・ケーカさんだ」

「カタカナで呼ばれた気がするのは…?」

「えーっと…」

「まぁ、どちらでも良い。」

 

 

「そうか…また皇帝を暗殺しなくちゃならないわけか。」

「確かに、始皇帝と貴女は…」

この特異点はSIN(秦)だ。そこの王様…いや皇帝と言ったら、十中八九の可能性で秦の始皇帝がこの異聞帯の王であるのは推測が付く。

「けどよ、マスター。一体そいつは…どこにいるんだ?」

今度は真剣な顔つきで、モードレッドが藤丸に話しかける。その問いに答えたのはダヴィンチちゃんだ。

「そうだね、始皇帝に直接繋がるかは分からないけど、怪しげな物体は見つかっている。」

モニターに巨大な天体が移った。形としては逆三角形…いや六方体に近い形をしており、機械生命体と言われても違和感の無い見た目をしていた。それに、孔雀の羽のような帯が宇宙空間に飛び出していた。

「なんだ、この天体は!?」

「待てよ、この天体はおかしく無いか?こんなに飛び出てたら、突入する前に気付けるはずなのに…」

天体の異常性にムニエルが気付き、スキャンを行おうとしたその時。

「……この魔力は!」

「どうしたんですか?先輩?」

「クリプターとそのサーヴァントがこちらに来る!」

「「!!!?」」

藤丸の突然の発言に、一同が首を傾けているとムニエルが叫んだ

「!南西から、何かが飛んでくる!!サーヴァントの魔力も確認可能!!」

ムニエルの報告を聞いた藤丸は、敵を見つけた獣のように歯を剥き出しにして

「クリプターッッ!!!」とこれから遭遇する敵に啖呵を切った。

 

 

畑で出来た地面に大きな物が勢いよくぶつかった。

そして、煙から生まれたかのように現れたのは仮面のセイバーとそのマスター・芥ヒナコだった。

「始皇帝様。」

ヒナコは通信機と思われる物を使って、ロストベルトの王に連絡を取る。

「うむ、無事についたようだな。では、作戦にかかれ。」

「はい。この秦の永久楽土を乱す狼藉者どもを、排除に取りかかります。」

ヒナコがそう言い終わると、黒い鎧に大きな盾を持った少女と黒い服の青年そして、赤い騎士のサーヴァントが彼女らの目の前に現れた。

「アンタが…芥ヒナコか?」

「…………」

藤丸とヒナコは睨み合った。そして、藤丸は質問することをやめて敵の先手を撃つように仮面のセイバーの正体を言い当てる。

「おい、仮面のセイバー。アンタの真名はまるっとお見通しだ。」

「何?」

「仮面のセイバー…いや…欄陵王っ!!マスター共々、敵に破れるか。樹の場所を教えるか。選べ。樹の場所を教えたら……コヤンスカヤを生かしたまま解放するか考えといてやる。」

藤丸はコヤンスカヤへの『尋問』やビブリア学園で対峙した者たちからで得た情報を元に欄陵王の真名そして今回のロストベルトの空想樹が解毒の鍵を握ることを把握していたのだ。

「記録よりも卑怯なことするんだな」

「卑怯と罵るなら罵るが良い。お前たちが正義を名乗るなら!俺たちは……『悪』だ!!」

「この地に脚を踏み入れた愚を思い知れっっ!!」

 

 

ヒナコの言葉を聞いた藤丸がまえに出ようとすると、赤い騎士・モードレッドが先に出ることでこれを制止する。

「なぁ…マスター。こいつは俺に任せろ!てめぇは、あの眼鏡女をよく見張りながら俺をサポートしろ。」

「あぁ、もちろんだ。分かってる……アイツがそうだなってことをな。」

「?」

マシュはその言葉が妙に頭に引っ掛かっていた。

モードレッドはそんなマシュに喝を入れる

「おい、マシュ。迷ってる場合じゃねぇっ。目の前の敵に集中しろ。」

 

 

農地に二つの闘気がぶつかり合った。

彼らはそれぞれの正義をかけてぶつかった。

二人のサーヴァントは剣を交えた。

「父上やマスターからの報告通り、素早い野郎だぜっ!」

以前、アルトリアオルタが闘った時彼女のステータス的に、欄陵王のスピードには完全には追い付けていなかった。しかし、モードレッドの敏捷性ならば欄陵王のスピードに付いてこれるかもしれない。そう、藤丸は踏んでいた。これは、コヤンスカヤから情報を得ていたからこそ出来た戦術なのだ。

「モードレッド!目で追うな!感じろ!!」

「……!わーったよ、そーいうことか!!」

「何を話してるかは知らないが…無駄だっ!!」

欄陵王がまた素早い動きで、モードレッドに突進する。

一方、モードレッドは悟りを開こうとする坊主のように眼を閉ざしている。

そして、金属と金属がぶつかる音が響いた。

「勝負あったな……」

「何っ!?」

驚嘆の声を挙げたのは、欄陵王の方だ。彼は、モードレッドに直感スキルがあることを知られてはいなかった。

 

 

この様子を見て、ヒナコは藤丸を侮ったことに対して臍を噛んだ。

「ぐっ…認めたくないけれど、カドックたちが遅れを取るわけだ。セイバー!撤退よっ!!」

彼女はサーヴァントに命令し、藤丸を睨みながら消息を絶った。

「チッ!逃げられたか!」

「いや上出来だよ、モーさん。」

藤丸は敵の撤退を確認し、一段落付いたのか一本の煙草を取り出しそれを吸った。

「俺にも一本くれ。」

「ほらよ。」

モードレッドが何かを思い出したかのように、煙草を要求した。そして、藤丸は一本の煙草を渡した。

 

 

5話完

 

次回予告

「潔癖症はデータ通りで、召喚されたクラスは予定のライダーではなく、セイバー。恐らくは、こっちの気を惑わせようという作戦なのだろうが……。」

「彼女は…人間に怯えていたのだろうね……」

「我が令呪を以て命ずる!宝具を展開しなさい!セイバー!!」

 

 

 




ここでの藤丸は「クリプター相手には悪役になる一方で、別の顔も持ち合わせている」というキャラクターにしてます。


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切り落とされた火蓋

FGOって、Stay Nightとは良い意味でも悪い意味でも雰囲気違いますね


「今日、会合を開いたのは他でもない。芥ヒナコについてだ。」

小柄な少女ダヴィンチが、ミートルーム内で会合の開始を宣言する。

「マスターくんは直接話したから分かるとは思うが、データ通り彼女は潔癖症だ。」

「えぇ、潔癖症は本当のようですね。しかし、ダヴィンチちゃん。引っ掛かることがある。」

藤丸は敢えて席を立ちながら、発言する。

「潔癖症はデータ通りで、召喚されたクラスは予定のライダーではなくセイバー。恐らくは、こっちの気を惑わせようという作戦なのだろう。ですが、ご心配なく。あのセイバー対策はこちらのモードレッドが済ましている。」

「でかしたっ!ゲホっ!」

「無茶するなってオッサン。」

朗報に毒で蝕められた身体を忘れて、声を挙げたゴルドルフに落ち着くように諭すムニエル。

藤丸は自分からの報告を終えることを告げると席に着いた。

すると、次に手を挙げたのはマシュであった。

「あの、ダヴィンチちゃん。よろしいでしょうか?」

「良いよ、何?」

 

 

マシュはカルデアが壊滅されるよりも、人理の崩壊が発生するよりも前のAチームの話をした。

芥ヒナコは相手と触れ合わず、悪印象を抱かれない距離をAチームとの間に置いていた。

「周りからはよく本を読む女」と思われた。そこで、Aチームの仲間のうち一人だったマシュはヒナコに対してある違和感を覚えていた。マシュは、偶々グラスに映りこんだ彼女を見ていると「よく本読む女」というイメージとは違う顔を見せていた。女は手元の本で顔を隠しながら、目線だけはずっと他人を見つめていた。用心深く、何かに怯えるように。しばらくすると、また女は本を読み始めた。

 

 

「なるほど。察するに彼女は…人間に怯えていたのだろうね……」

「そうか……そういうことか……!」

マシュとダヴィンチの言葉で、藤丸はヒナコの隠していることにピンと来た。

「先輩?」

マシュが怪訝な顔で藤丸を見つめていると、藤丸は落ち着いた顔でマシュに告げた。

「マシュ。ある一つの仮定にたどり着いた…けどこれは飽くまでも仮説だ。鵜呑みにはしないでくれ。」

藤丸は推理で得た仮定を会合の場で告げようとした。

 

 

すると、警告を告げる音がシャドーボーダーに鳴り響いた。

「この感じ…またかっ!」

藤丸はモードレッドを連れ、芥ヒナコと前回戦闘を行った座標に急行した。

「ちょっと!増援の可能性考えた!?」

「増援など、サーヴァントと一緒に蹴散らしますっ!!」

藤丸は首にぶら下がった魔道書にも声をかける。

「アークさん!行くぞ!!」

「OK!マスター!Start your メイガス!!」

二人は息を合わせて、闘いの狼煙文句を詠唱する。

「「暴食<グラ>の書庫<アーカイブ>に接続!テーマを実行するっ!!」」

アークミネルバことアークさんは、小型のドラゴンメカへ変化し藤丸の腰に巻き付いた。

すると、藤丸の体を青と白を基本色とした鎧が包む。その鎧にも龍の意匠が施される。

「気を付けろ、セイバー。あのマスター、データ通りに武装したぞ。」

魔術礼装の一つである、オートマタを引き連れたセイバー・欄陵王とそのマスターである芥ヒナコが藤丸たちの前に立ちはだかる。

「そうか…アイツも王様って訳か。…上等だ。」

モードレッドが武者身震いをしていると、大きな巨体がモードレッドの隣に並び立つ。

「行くぞ!我ら『反逆三銃士』がー」

「盛り上がってるところ悪いんだけど、荊軻さんにそれを名乗らせないでくれって言われてるんだよね。」

「うっ」

巨体を持つ戦士・スパルタクスは余程、『反逆三銃士』の語呂を気に入っていたようだ。

「ふん、流血に興じ戦で戯れる類いの英霊か。あぁいう手合いは、虫唾が走る。」

そんなスパルタクスに、ヒナコが冷酷な眼を向ける。

「ほう…では、アンタの隣にいるセイバーはなんだね?……まさか、血を流さずにこちらを下す切り札とでも思っているのか?」

藤丸とヒナコの間に火花が散った。

 

 

ここで、先手を撃ったのはヒナコのほうだ。

「我が令呪を以て命ずる!宝具を展開しなさい!セイバー!!」

「……!」

「わが貌をそれほど望むか。──ならば見せよう、呪われし貌を! 儚く散るまで、唄い続けるために!」

欄陵王は、そのマスクを取るとそマスクに隠された美しい顔をまるで太陽の光を浴びた月のように輝かせる。

すると、オートマタたちは指揮が上がったかのようにあっという間に藤丸たちを囲み四方八方から攻撃を仕掛ける。

「よし、弱ってるフリもここまでだっ!散れっ!!」

飛びかかる無数の人形を粉々に粉砕する二つの影が、太陽を背景に飛び立った。

「なにっ!?」

 

 

藤丸は、欄陵王の宝具を受ける際に瞬時にモードレッドに兜を被るようにそしてスパルタクスは藤丸の魔術支援を受けるように指示した。

藤丸は薄い魔術遮断壁を作り、欄陵王の宝具を遮断した。

そして、ある程度弱ったフリをすればオートマタが一ヶ所に集中するのを見計らっていた。

「やぁぁぁ!」

「フンっっ!!」

「うぉぉぉ!!」

三人の戦士が、数多の軍と敵将に対して雄叫びを挙げる。

欄陵王のところへはモードレッドが猪突猛進に突っ込み、藤丸とスパルタクスが数多のオートマタを粉砕あるいは切断していく。そして、その戦士の死角をカバーするかのように牙を尖らせた白い暗殺者もオートマタを切り裂く。

 

 

作戦の失敗を見届けた芥ヒナコとそのサーヴァントは撤退を選択し、彼女らは主とも言える始皇帝に状況を報告する。

「…闘いは十分見させてもらった。そなたのサーヴァント単騎だけでは、勝ちに至らぬ。そうだな?」

始皇帝の尋問にヒナコはただ、申し訳無さそうに「はっ」とだけ返事をした。

「ならば、増援を遣わそう。とはいえ、雑兵を並べたところで埒が明かぬ…。今こそ、『項羽』を遣わすつもりだ。」

『項羽』、その名をヒナコは耳にすると慌てた様子で叫ぶ

「ちょっと待ってください!それは!!」

「あれは本来、未知なる脅威に対して出す手駒。今この状況において、咸陽で腐らせておくのも惜しい。では!項羽ゥ!起動ォォ!!」

そんなことなど知らんと言わんばかりに、始皇帝は『項羽』をヒナコの元へ合流するように仕向けた。

 

 

次回のFate/Grand Orderは!

「そう言えば、先輩。先程の仮説とは?」

「……芥ヒナコはな……文字通り人間じゃないかもしれない。」

 




何か質問あったら感想などに記載してくれると助かります。


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NEIGHBOUR-隣人-

超ローマ人です。今日も投稿していきます。


「戦闘が終わり、この異聞帯の人たちに話しかけられたと思ったら。こんなにも危機感が無いなんてな。」

藤丸がシャドーボーダー内で、愚痴を漏らす。

「あぁ。我々がクリプターと交戦しているときよりも、我々が畑を踏み潰した時のほうが感情的だった。」

その愚痴を推理に持っていったのは、ホームズだ。

「普通なら、我々のことを為政者に対する反逆者として捉えても惜しくは無い」

「………。」

「察するにこの国には、兵器の概念すら『最初から無かったもの』なのかもしれない。」

「あり得るのか!?」

あまりもの、衝撃的な事実にゴルドルフは腰を抜かした。

「はい。しかし、脅威が一欠片も無いというのとは違うみたいですね。突然現れた我々を目撃したときの反応は荒っぽいモノだったことから、このことが伺うことができます。」

「この異聞帯のことについてのお話の最中すみませんが、先輩の芥ヒナコさんに対する仮定を聞きそびれてしまったことを思い出しました。」

藤丸はそれを聞くとさらに顔が固くなった。

「ところで、先輩。その仮説とは一体?」

藤丸は固くなった表情のまま応えた。

「……芥ヒナコは……文字通り人間じゃないかもしれない。」

 

 

話していると、藤丸は急に立ち上がった。

「この魔力…サーヴァントでは無いが何か来るっ!!」

「先輩!」

「あまり力みすぎるな、藤丸っ!!」

藤丸はシャドーボーダーから降りると、ロストベルトNo.2つまり北欧の異聞帯で見かけた魔獣や巨人が畑を荒らしているのを確認した。

「こちら、藤丸!ロストベルトNo.2で発見された種と同じ奴等が暴れてるのを確認!」

「報告、感謝する!なに、私も準備運動として援護しようじゃないか。」

「ホームズさん!」

「この程度の敵。生身で十分!!」

藤丸は真っ先に、大きな角を持ったトカゲに突っ込んだ。そして、一蹴りでそのトカゲの角をいとも容易く吹っ飛ばしたのだ。

「!?」

さらに、怯んだトカゲの背に乗っては手刀で毒を含まれている尻尾を切断した。

「次に来るやつはいないのか?」

藤丸が敵を挑発していると、氷に包まれたような風貌をした巨人が大きな槍で藤丸を刺そうとする。

「パワーは確かにあるが、その程度の速さか。」

藤丸は巨人の肩に乗り、挑発していく。

「以前よりも速くなったな。」

ホームズは得意の武術の一つ・バリツを駆使し、魔物と闘いながらも藤丸をを観察した。

 

 

そうすること、たったの10分も経たないうちに魔物の群生の死体が辺り一面に転がった。

「やぁマシュ、ホームズ。」

「せ、先輩…!」

「おい、君…!」

藤丸は幾つもの紫色の袋を片手にぶら下げていた。さらには、魔物のものと思われる血を浴びていた。

「すみません、こんな格好で。ところで、このマークってなんなんですかね?」

藤丸は「NFF」と書かれたシールを、魔物の体から引き剥がしてホームズに見せた。

「これは…確か!」

 

 

シャドーボーダーに帰った藤丸は拷問部屋に行った。

「おい…これは何だ?」

「………」

そこで椅子に縛り付けられたコヤンスカヤは、シールを見せ付けられて何も言えない状況だった。

「魔物の皮膚に貼られていたのだが……?」

藤丸は質問を変えるが、コヤンスカヤは藤丸を睨むだけで口を開かなかった。

「……そうか…話す気無しか。武則天。」

藤丸が部屋を後にしたフリをすると、足の爪を剥がされたコヤンスカヤの叫びがシャドーボーダー内に響いた。

「さて、奴が私を睨んでいる隙にこれをくすねてやったわけだが…?」

 

 

一方で、謎の天体の中にある始皇帝の間では二体の『凍結英霊』が驪山《りざん》から召喚されていた。

「不肖ながら、私めの裁量により選ばされました2名の英雄をお連れいたしました。」

赤い服を着た、軍人らしき男が始皇帝に報告をした。

そして、召喚された二体のサーヴァントは始皇帝への忠誠を誓いながら名乗りをあげた。

「姓を秦。名を良玉と申します。再び陛下の矛となり、盾となる名誉を賜りましたこと、身に余る光栄でございます!」

彼女は、民の反乱をも鎮めたことのある女傑で守りの戦であれば間違いなく最強と始皇帝は褒め称えた。

次に名乗りをあげたのは、小太りで眼鏡をかけた男である。

「はははい、毎度お馴染み殿下の懐刀、韓信でございます。」

男は妙に鼻息を荒しながら喋る。秦良玉とは逆に始皇帝に対して軽口を叩く彼だが、その名は背水の陣で有名な韓信そのものだ。

「おお、国士無双!」

「この二人がおれば頼もしや。これにて秦の守りは磐石でございます。」

 

 

「これ、偽情報かもしれませんが。」

「ふむ…一応調べる必要がある。こういうことは、現地の人間のほうが詳しい。」

カルデア一行は、魔物たちの巣を知っている者がいないかを聴き込みという手段を用いて探していた。

すると、一人の少年が声をかけた。

「あの、お姉さん…。」

「はい、どうしたんですか?」

「……話してごらん?」

藤丸は少年と同じ目線の位置に体を動かした。

「うん…けどこの話、秘密にして?」

「約束しよう。」

藤丸はにっこり笑いながら、少年の話を聞いた。

その少年は、村の掟である『柵を越えないこと』を破って発見したものがあった。

それは、カルデア一行が臨んでいた魔物たちの巣そのものであった。

 

 

次回予告

「あの程度の魔物ぐらいなら、朝飯前だ。」

「だが、そこら辺のより強いこの反応は…なんだ?」

「……なんだ、このサーヴァントは!?」

第8話『魔将の嵐』

 




次回であの項羽がやってきます。
-余談-
死霊館見たんですが、怖かったですw


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魔将降臨 カルデアvs項羽

ここからこの話の中盤突入です。
バレンタインはネロ様からのボイスと賢ギル様のボイスを目標としてます。


「コヤンスカヤによって訓練された集団らしいけど…」

「思ったより手応えがありませんでしたね。」

シャドーボーダーでのトレーニングが効いたのか、カルデア一行はロストベルトの住人である少年を連れて洞窟を後にする。

「ありがとうな、少年。」

「うむ、貴殿の反逆の精神は我らを駆り立てる!」

「だって、村が危険に晒されるのは我慢できないんだもん。」

スパルタクスはそんな少年をベタ褒めした。

 

 

「戻ったかマスター。」

「ただいま。荊軻」

藤丸はシャドーボーダーに着くと、再び牢に閉じ込められた狐の様子を見に行った。

「やっぱり、これは魔物の居場所を表していたんだな。」

「…予想はしておりましたが、見事にくたばってはくれませんか。」

狐は嫌味を言いながら、空腹で凶暴した目で藤丸を睨んでいた。

「悔しそうな顔だな。油揚げでもくれてやろうか?」

藤丸は狐の皮肉を軽くいなすと、更に問い詰める。

「あとは、空想樹の場所を話してもらうと助かるなぁ?コヤンスカヤ?」

藤丸は上から見下ろしていると、違和感を覚えた。

コヤンスカヤの苦しむ顔に、何処と無く薄っぺらさを感じたのだ。

藤丸は気付かぬフリをし、ダヴィンチたちに今回の討伐の件を報告した。

 

 

そして、藤丸の予感は当たった。

「魔力反応ありっ!またあの飛行物だっ!」

ムニエルが叫ぶ。

「よし、三人とも来い!先手を打つぞ!!」

モードレッド、スパルタクスそして荊軻を連れマスターは大地に立つ。

「見える…モードレッド!宝具を!!」

「魔力を回すのが早ぇなマスター!我が麗しき父への叛逆我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!!」

モードレッドの剣・クラレントから、赤い光線が放たれ飛行物に命中した。

「よっしゃ!」

「待て、魔力の反応は消えていない…!それに…!!」

煙から出てきたのは、白い肌を持ちケンタウロスのように上半身が人のような形を下半身が馬のような体をもった「何か」だ。

「くそっ!かすり傷も無しかよ!?」

「幸い、敵は一体のみだが…」

そうこうしていると、それは獣のように吠えた。

「この動きはロボット……いや、『暖機』といったほうが正しいっ!どうにかして凌ぐんだ!!」

 

 

藤丸はサーヴァントたちとコンビネーションを組んで闘った。

しかし、彼らの動きは悉く読まれ乱されていった。

「これが噂のカルデアのマスターとサーヴァントたちの実力か。大体計らせてもらったぞ」

敵がそう言うと、仮面を被った影が現れた。

「大丈夫ですか?項羽殿!」

「!?」

苦戦を強いられた藤丸たちはさらに追い込まれた気分になった。

「あいつが項羽だとっ!?」

これには、いつも冷静なけいかも驚きを隠せないでいた。

「こちらでマスターがお待ちしております。案内します。」

仮面のサーヴァントは項羽を連れ、芥ヒナコが逃げた方角へ移動した。

「なるほど。欄陵王の仲間か……あのようなサーヴァントを隠しもっていたとは……。」

 

 

そして、芥がカルデアを見張るために立てたキャンプ地にて。

「無事ですか、項羽様」

「248万時間ぶりの戦闘だが、我が体の機能は問題なく動いた。」

芥は項羽の安否を聞いて胸を撫で下ろしたかと思うと、少しため息をついた。

「出来れば、もう二度と貴方が剣を握ることなく事を済ませたかった…。」

芥は嘆いたが時すでに遅し。帝からの命により、項羽<愛する人>は「起動」させられたのだ。

そして、その嘆きは更なるカルデア打倒の決意へと変わった。

 

 

時が流れ、夜になった。そんな時、シャドーボーダーはある異変を感知していた。

「項羽のことで戸惑っているところ悪いけど、新たな軍勢がこちらに向かってきている。サーヴァントと武装人形の部隊だ。」

「…!」

対項羽の攻略作戦を考えていた藤丸たちに声をかけるダヴィンチら。

「まだ途中だってときに!」などと言っている場合ではないと悟った藤丸は、次なる作戦を立てる。

「こうなったら、敵の援軍が来る前に奴らを倒すしかないっ!」

 

一方で、芥ヒナコ側は。

「…!カルデアがこちらに来ます!」

「好都合ね。行くわよ、セイバー!項羽様!今度こそカルデアを潰すわよ!!」

これが魔将とカルデアの衝突の始まりである。

 

 

To be continued

次回予告

「貰った!」

「ここで粘られるとマズイ!」

「皇帝陛下からの伝令であるっ!!」

 

 

 




ルビも今回からやってみました。


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取引

引き続き、FGO第二部三章を自己アレンジしたいと思います


夜の広野にて、広野に似つかわしくない火花が散った。

それを発するのは、黒髪の青年が率いるチームと眼鏡をかけた女が率いるチームの争いであった。

大きな人馬のような姿をした英霊・項羽の刃が青年の首を刈り取ろうとした。

しかし、灰色の大きな体がそれを阻止する。その姿は膨張した蒸気機関車のようであった。

「汝を抱擁するぅ!!」

灰色の巨人・スパルタクスが抑えているところで、青年は

その巨体を踏み台にすると、人馬の頭上へ舞い上がった。

しかし、素早い仮面の影が頭上からの攻撃を阻止する。

それも隼のように。

「そう上手くはいかない…か。」

人類最後のマスターである青年・藤丸は敵の異様な力み方に違和感を覚えた。

「……なるほど、項羽の首だけは全力で取らせないつもりか。」

「貰った!」

金髪の騎士が赤い剣を振り下ろした。

空かさず仮面の騎士・欄陵王は相方サーヴァントに向けられた赤い剣と自身の剣を衝突させた。

このような攻防が明朝まで続いた。

 

 

「ここまで粘られるとは…!」

藤丸は作戦の再検討を目的とした、退却の命令をサーヴァントたちに放ちながらも追いかけてくる敵を狙撃していく。

しかし、項羽の厚い装甲を崩すはおろか、速度を落とさせることさえも出来なかった。

「どうするんだ、マスター?」

「こうなったら目眩ましか最大級の攻撃を…!?」

藤丸は話している途中で、敵の援軍が来たことに気付いた。万事休す…かと思われたその時。

「双方、武器を下ろせ!帝の命であるっ!」

軍を引き連れた女槍兵が間に入った。

「帝はカルデアの者を迎い入れろとのことっ!」

「!?なんでよ!?」

「…助かったのか?」

芥は悲嘆の叫びを挙げ、藤丸は安堵しつつも苦虫を噛み潰した顔付きをする。

 

 

しばらくしていると、男の声で通信が来た。

「カルデアの者たちよ、聞こえるな?」

「誰だアンタは?…なんてのは愚問か。秦の始皇帝さん。」

藤丸は声を聞いた途端、毛を逆立てたけいかを見ながら通信の相手が誰なのか勘づいた。

「…で、要件は?」

「お前達が求める薬をそちらに渡す。その代わり、貴様達の車輌とを分析させてもらう。」

始皇帝は要求に従えば、カルデア一行の安全を約束するとまで言うのだ。

この要求にどう応じようか、藤丸が必死に考えていると横槍が飛んできた。

「始皇帝様っ!どうして我々ではなく、カルデアにそのような言葉を!?」

すると、男の声はその横槍を折ったのだ。

「そのようなことを口にしたければ、あのシャドーボーダーとやらを『無傷』で取ってから言うのだ!たわけ!!」

「くっ」

芥は臍を噛むように握った拳を袖で隠した。

「…で、どうする?カルデアの諸君?」

始皇帝が話すと、藤丸は手を挙げた

「その契約には乗ろうと思う。…が、一つ条件がある。……この世界にある『樹』の場所を教えろ。」

藤丸がそう言い切ると、芥は真っ青になった。

「『樹』とは……なんだ?そうか、芥ヒナコめ……。まだ何か隠してるな?クリプターとやらは益々信用出来かねぬな?」

藤丸たちは驚いた。なんせ、異聞帯の王たる始皇帝が空想樹を聞き覚えの無いように話すからだ。

 

 

Fin

次回予告

「正気か、マスター!?」

「始皇帝に一矢報いてやりてぇんだよっ!」

「我こそはっ!『反逆の暁星』であるっ!!!」

 

 




次回は……予告見れば何が起こるか分かってしまう人はわかってしまいますね……。


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さらばスパルタクス

「おい、マスター。こんなのでホントに良いのかよ?」

「まぁ、待て。もう少し辛抱すれば奴らを出し抜けるからな。」

藤丸は暴れたがっているサーヴァントを静止して、機を待った。

暫くすると、白と黒の服の女将がやってきた。

「では、この船を分析させてもらいますっ!」

「…来たな、閉じろ!!」

「なっ!?」

秦良玉が入ったボーダーへの入り口は閉ざされ、けいかは秦の一瞬の隙を捉えて不意討ちの手刀をお見舞いした。

「おっと危ない。」

藤丸は空かさず落ちてくる瓶薬をキャッチした。

 

「所長!飲んでください!!」

「ゴクゴク……ふぅ…。」

「うん、バイタルが安定した。」

藤丸は始皇帝の要求に応じたフリをして、薬を得たのだ。

「聖人みたいな良い人を騙すのは気が引けたが…これぐらいしか思い付かなかった。…そして、やはり動いたか」

「よし、俺の出番だなっ!?」

「ようやく、本当の反逆の時かっ!」

藤丸が近づく影を感知すると、赤い鎧の騎士と強靭な肉体を持つ大男がはしゃぎ出した。

 

外に出ると、無数の機械兵…いや、傀儡兵がシャドーボーダーと村をを囲むように押し寄せていた。

「さて、色々好き勝手させてもらった分お返しさせてやらないとな。…行くぞ、皆っ!!」

「「おおっ!!」」

藤丸は二人の英雄と共に、大軍へ突っ込む。

そして、もう一人の白い衣の暗殺者は傀儡兵の目を欺きながら、獲物の息の根を止める。

赤い剣が豪快な一振りで多くの動く瓦を二つに割る。

巨体は打たれる度に肥大化していき、肥大化した体で敵を包容する。

包容された敵はプレス機に入れられた後の金属片となっていった。

「皆、強いな。負けてられないっ!」

青年は手に握られた剣で襲ってきた敵を斬りながら軽口を開く。

「マスター、俺たちも本気出すぞっ!!」

「おう、アークさん。俺の魔道に付き合えよっ!!」

藤丸は首にぶら下げている書物に声をかけたあとで、使役している青白い竜型のロボットを呼びだしそれを腰に付けた。

「暴食『グラ』のアーカイブに接続。テーマを実行するっ!!」

 

どうして、彼らは始皇帝との約束を破ったのか。

それは始皇帝の考えとカルデアとでは考えが似て非なるからだ。

カルデアの目的は飽くまでも、「異聞帯消滅」による「人理の救済」である。

始皇帝は違った。彼は部下たちとともに、「この地球に自分達のとは違った『世界』があること」を知った。そして、その『世界』を救いたいと思っている。

同じように人類史を救いたい―その思いは確かだ。

だが、それを感じ取った藤丸たちは始皇帝との条約と言っても過言ではない約束を破ることを決意したのだ。

 

「魔力を絶てば動けまいっ!!」

藤丸は白い剣『シルバームーン』で傀儡たちの電源とも言える魔力の流れを止めさせた。

しかし、藤丸は気付いた。

「敵サーヴァントは何処だ……?」

「!マスター、上を見ろ!」

「なんだ…アレは!?」

 

始皇帝の間では。

「やはり、裏切ったかカルデア。……そして、コレは『当て付け』だ。」

藤丸たちの頭上の空からは隕石が落ちてきていた。

「あぁ!皇帝様のお怒りだっ!!」

村人たちは異変に気付き外に出たとき言った台詞だ。

そして、その様子を見計らった傀儡の軍隊は一斉に退いた。

「おい、逃げんじゃねぇっ!!」

「モードレッド、上を見ろ!!」

けいかに呼び止められ、上を見上げたモードレッド。

彼女はあまりとの隕石のでかさに唖然とした。

すると、彼女たちの脳内にマスターである藤丸の声が響いた。

「モードレッド、けいかそしてスパルタクス!村人たちを宥めて近くの防空壕みたいになっている洞窟を探すんだっ!」

「なるほど、マスターが言っていたアレか。」

「いや、待て。あの隕石はどうすんだ!?」

サーヴァントの抗議にマスターは暫く沈黙する。

 

「……私が食い止める。」

「お前!正気かっ!?」

「あぁ、普通じゃないさっ!けどな…どうにかしてあげたくなっちまったんだよ。あんな純粋な村人たちを見てたら……始皇帝に一矢報いてやるって!それに……」

藤丸が何か言おうとすると、寝耳に水な連絡が来た。

「先輩、そちらに一人の男の子がっ!」

「なん…だと…」

藤丸には心当たりがあった。そう、魔物の住みかを教えてくれたあの少年である。

「今人々を誘導しているが、もたもたしているうちに隕石が来てしまうぞっ!!」

「おい、マスターっ!!樹を切り落とすために生きるか、隕石を叩き斬るかを早く決めろっ!!」

藤丸は使命と善心の間に挟まれ、頭を抱えた。

「どうすれば良いんだっ!?」

そうしていると、一人の男が藤丸に話しかけた。

「……では、我があの隕石を止めよう。」

 

その声は、スパルタクスのだった。

彼はそれだけを藤丸に言うと彼の前に立ち、言葉ではなく背中で主に語る。

「…………………そうか。分かった………。」

そして、そんな青年の背中と大きな男の背中を一人の少年が見ている。

青年が右手を空に突き出す。

そして、青年は赤く重い引き金を引いた。

「令呪を以て命ずる……」

青年の口からも右手の引き金同様赤い糸が垂れ、赤い雫が暗闇を照らした

「跳べ、スパルタクスっ!!」

「滾るっ!滾るぞっ!!これが我と我がマスターの力っ!!」

 

その頃、人々は赤い小さな光が巨大な岩に立ち向かっていくのを見た。

「と、飛びやがったッ!でも、あんなことしたら霊基はっ!」

「あぁ…スパルタクスはそのことを承知でマスターに言ったんだ。『任せろ』…とな。」

 

「空を圧政の星が覆うならっ、我は!我こそはっ!『反逆の暁星』であるっ!!!」

その暁星は、圧政の星だけでなく地球の引力にも『反逆』した。さらに、この暁星は星との衝突による速効的な崩壊にも耐える。

「極大逆境・疵獣咆吼(ウォークライ・オーバーロード)!!!」

 

―圧政の星は跡形もなく消え去った。

空から落ちるのはただ一人の男の体だけ。

そして、それを赤い騎士・モードレッドが受け止めた。

「重っ!!」

「スパルタクスっ!!」

少年は堪らず、憧れの存在の元へ走った。

「ぬぅぅ………。」

スパルタクスは天に腕を伸ばし、最後の力を振り絞って言葉を発した。

「我が反逆に…一片の悔いなしっ!!」

少年は涙を堪えながら、誰よりも伸ばした背筋で反逆の英雄を讃える『歌』を歌った。

To be continued

 

次回Fate/Grand Orderは!

「スパルタクスは……『英雄』だっ!」

「コヤンスカヤが脱走したっ!!」

 



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馬の名は

新海⚫先生……申し訳ございません!


村の人々が喪に服しているのを尻目に、右手に赤い紋章を浮かべた青年は圧政者がいるとされる天体を睨んだ。

「スパルタクス……お前の犠牲は……。……無駄にしない……っ!」

「先輩。スパルタクスさんの宝具によってこのロストベルトにて竜脈が出現しました。それに、新たなサーヴァント反応が2体この先2時の方向にあります。」

青年・藤丸の後輩であるマシュが、シャドーボーダーの中から通信機を使って話しかける。

「……よし、モードレッドにけいか。直ぐに出発するぞ。」

 

一方で、村のはずれでは。

褐色肌に厚い衣を纏った中性的な美貌の男と鎧を着た馬がいた。

「共に召喚されたのは良いのですが…」

男は馬を見ながら尋ねた。

「貴方は本当に呂布殿で…?」

すると、上半身が人間のようになった馬は当たり前のように

「呂布です」と名乗った。

「いえ、何処からどう見たって…」

「呂布ですっ!」

「はぁ…はい分かりましたよ、呂布殿。」

褐色肌の男は渋々馬を呂布と認めながらも、懐から人参を取り出して遠くへ投げた。

すると、馬は稲妻の如く駆け抜けそれに食いついた。

「ヒヒーンっ!勿体無いぃぃっ!!旨いぃぃ!!」

「…やはり馬じゃないですか。」

「呂布です。」

馬は人参を懸命に頬張りながらも、自身をあの呂布だと言って聞き耳を持たなかった。

まさに、馬の耳に念仏である。

 

「で、その2体を仲間にしたらどうするつもりだ?」

「……このロストベルトの都に直接殴りこむ。」

サーヴァントの質問に藤丸が答えると、再びマシュから連絡がきた

「大変です、コヤンスカヤが脱走しましたっ!只今逃走経路を探索中!」

「そうか。あの女狐……どうやら三途の川への片道切符をお所望の模様だな?」

「…居たぜ、マスターが欲しがってるサーヴァントだ。」

 

「……おや?何処かのマスターとそのサーヴァントですか。」

「!」

馬と男は藤丸たちの目の前で仁王立ちする。

「おい、このロストベルトで生まれたお二人さんよ。仲間になってくれないか?」

「ふむ…我々に力を示せば仲間になるかならないか考えましょう。」

褐色肌な男が藤丸の質問に答えると、藤丸の目付きが変わった。

「ちょうど良い条件だ……少々腹の虫が収まらないことがあったんでなっ!」

藤丸は小型の機竜を取り出して腰に装着した。

「テーマを実行するっ!」

瞬時に青白い鎧が藤丸を包み、左手に剣を持たせた。

「私は戦闘能力ないので、頼みますよ呂布さん!」

『呂布』と名乗る馬は雄叫びを挙げて、槍を取り出した。

「戦闘前に、言いたい台詞があるので言わせてもらうっ!『問おう、お前が私のマスターか』!!」

 

「ええいっ!せっかくの手柄に逃げられたとはどういうことだ!?」

全快した所長の怒鳴り声が、装甲車に鳴り響いた。

「今探してるから、説教は後にしてくれっ!」

元気になれば直ぐに大きな声を挙げれるようになった所長に半ば呆れるムニエルであった。

 

「へぇ…、強いな。」

「貴方も…ねっ!」

剣と槍がぶつかり合い、金の雄叫びを挙げた。

「今です!自爆しなさいっ!」褐色肌の軍師が叫ぶと

「宝具展開!」と軍馬が答えるように弓と矢を取り出す。

藤丸も弓と矢を瞬時に手に握った。矢は矢というよりも、別の武器が「それ」っぽく変化したと言ったほうが正しい。

「…!?なんだ、あの魔力は!」

それぞれの矢には辺りを吹き飛ばすには十分なぐらい膨大な「力」が集中していた。

「もう、アレは矢なんかじゃない……二つの『砲台』だ」

 

そして、二つの矢は同時に放たれた。自由の身となった二つの隼がぶつかり合った。二匹の激突は風を裂き、大地に悲鳴を挙げさせた。

「やはり中々にっ!」

「呂布殿、後ろ!」

「!?」

軍師は叫ぶが赤い鎧の騎士に羽交い締めにされ、軍馬は首筋に人が持つ牙を突きつけられていた。そして、煙の中からは赤い外套を纏った先程の青年が現れた。

「……これで勝負あったな。選択は貴方たち次第だ。どうする?」

軍師と軍馬は手を挙げて仲間になることを示した。

 

藤丸たちが仲間を増やしたころ、北東の方角にある安康では。

「……ゲホッゲホッ!何処ですかここは?」

コヤンスカヤこと妲己が捕まっていた。何故なら、始皇帝はクリプターが何かを隠していると察知しその一員であるコヤンスカヤがシャドーボーダーから脱出したのを見逃さなかったからだ。

「漸く起きたか。始めろ。」

赤い衣を着た老拳法使いが指示を送ると、二つの人形がコヤンスカヤの独房に入り込む。そして、手に持った刀で彼女の体を斬り付けた。狐の絶叫が館に鳴り響いた。

次回予告

「マスターっ!私の血を…!」

「セイバー…分かったわ……。」

「それがお前の正体か……芥ヒナコ…っ!!」

 

 




コロナウィルスでイベントが頓挫しまくって皆さん憂鬱でしょう。
こーいう時だからこそ娯楽がある!というわけで、こういった二次創作活動をしてます。


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欄陵王死す!芥の真祖

今日から週二回やります。
次の話に回したいので


村の人々が喪に服しているのを尻目に、右手に赤い紋章を浮かべた青年は圧政者がいるとされる天体を睨んだ。

「スパルタクス……お前の犠牲は……。……無駄にしない……っ!」

「先輩。スパルタクスさんの宝具によってこのロストベルトにて竜脈が出現しました。それに、新たなサーヴァント反応が2体この先2時の方向にあります。」

青年・藤丸の後輩であるマシュが、シャドーボーダーの中から通信機を使って話しかける。

「……よし、モードレッドにけいか。直ぐに出発するぞ。」

 

一方で、村のはずれでは。

褐色肌に厚い衣を纏った中性的な美貌の男と鎧を着た馬がいた。

「共に召喚されたのは良いのですが…」

男は馬を見ながら尋ねた。

「貴方は本当に呂布殿で…?」

すると、上半身が人間のようになった馬は当たり前のように

「呂布です」と名乗った。

「いえ、何処からどう見たって…」

「呂布ですっ!」

「はぁ…はい分かりましたよ、呂布殿。」

褐色肌の男は渋々馬を呂布と認めながらも、懐から人参を取り出して遠くへ投げた。

すると、馬は稲妻の如く駆け抜けそれに食いついた。

「ヒヒーンっ!勿体無いぃぃっ!!旨いぃぃ!!」

「…やはり馬じゃないですか。」

「呂布です。」

馬は人参を懸命に頬張りながらも、自身をあの呂布だと言って聞き耳を持たなかった。

まさに、馬の耳に念仏である。

 

「で、その2体を仲間にしたらどうするつもりだ?」

「……このロストベルトの都に直接殴りこむ。」

サーヴァントの質問に藤丸が答えると、再びマシュから連絡がきた

「大変です、コヤンスカヤが脱走しましたっ!只今逃走経路を探索中!」

「そうか。あの女狐……どうやら三途の川への片道切符をお所望の模様だな?」

「…居たぜ、マスターが欲しがってるサーヴァントだ。」

 

「……おや?何処かのマスターとそのサーヴァントですか。」

「!」

馬と男は藤丸たちの目の前で仁王立ちする。

「おい、このロストベルトで生まれたお二人さんよ。仲間になってくれないか?」

「ふむ…我々に力を示せば仲間になるかならないか考えましょう。」

褐色肌な男が藤丸の質問に答えると、藤丸の目付きが変わった。

「ちょうど良い条件だ……少々腹の虫が収まらないことがあったんでなっ!」

藤丸は小型の機竜を取り出して腰に装着した。

「テーマを実行するっ!」

瞬時に青白い鎧が藤丸を包み、左手に剣を持たせた。

「私は戦闘能力ないので、頼みますよ呂布さん!」

『呂布』と名乗る馬は雄叫びを挙げて、槍を取り出した。

「戦闘前に、言いたい台詞があるので言わせてもらうっ!『問おう、お前が私のマスターか』!!」

 

「ええいっ!せっかくの手柄に逃げられたとはどういうことだ!?」

全快した所長の怒鳴り声が、装甲車に鳴り響いた。

「今探してるから、説教は後にしてくれっ!」

元気になれば直ぐに大きな声を挙げれるようになった所長に半ば呆れるムニエルであった。

 

「へぇ…、強いな。」

「貴方も…ねっ!」

剣と槍がぶつかり合い、金の雄叫びを挙げた。

「今です!自爆しなさいっ!」褐色肌の軍師が叫ぶと

「宝具展開!」と軍馬が答えるように弓と矢を取り出す。

藤丸も弓と矢を瞬時に手に握った。矢は矢というよりも、別の武器が「それ」っぽく変化したと言ったほうが正しい。

「…!?なんだ、あの魔力は!」

それぞれの矢には辺りを吹き飛ばすには十分なぐらい膨大な「力」が集中していた。

「もう、アレは矢なんかじゃない……二つの『砲台』だ」

 

そして、二つの矢は同時に放たれた。自由の身となった二つの隼がぶつかり合った。二匹の激突は風を裂き、大地に悲鳴を挙げさせた。

「やはり中々にっ!」

「呂布殿、後ろ!」

「!?」

軍師は叫ぶが赤い鎧の騎士に羽交い締めにされ、軍馬は首筋に人が持つ牙を突きつけられていた。そして、煙の中からは赤い外套を纏った先程の青年が現れた。

「……これで勝負あったな。選択は貴方たち次第だ。どうする?」

軍師と軍馬は手を挙げて仲間になることを示した。

 

藤丸たちが仲間を増やしたころ、北東の方角にある安康では。

「……ゲホッゲホッ!何処ですかここは?」

コヤンスカヤこと妲己が捕まっていた。何故なら、始皇帝はクリプターが何かを隠していると察知しその一員であるコヤンスカヤがシャドーボーダーから脱出したのを見逃さなかったからだ。

「漸く起きたか。始めろ。」

赤い衣を着た老拳法使いが指示を送ると、二つの人形がコヤンスカヤの独房に入り込む。そして、手に持った刀で彼女の体を斬り付けた。狐の絶叫が館に鳴り響いた。

次回予告

「マスターっ!私の血を…!」

「セイバー…分かったわ……。」

「それがお前の正体か……芥ヒナコ…っ!!」

 

 




突然で申し訳ございませんが、この二部三章編よりも載せたくなってしまった話が出てしまいました。
ExtraCCC編なのですが、これを早めにこちらに載せたくなりました。
(pi⚫ivなどでも良い気もしないでもないけれど)
今後ともよろしくお願いいたします


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決意

「人間にしては、おかしな部分があるってマシュは言っていたが…。」

「その魔力反応は……っ!マスター君、そいつからは一旦逃げたほうが良い!!『真祖』だっ!!」

「『真相』ですとぉっ!?」

真相。それは、人間を律するために星が生み出した「自然との調停者」「星の触覚」と呼ばれている物だ。吸血鬼の中の吸血鬼と呼ばれており、人々に恐れられていた魔属の一種と言っても過言じゃない。

「なんだ、大したことねぇな。おいマスター、こんなんでチビってねぇよな?」

「珍宮殿たちはサポートを頼みますぞ、ヒヒーンっ!」

「ちょっと待て!話をー」

ダヴィンチちゃんが脳筋サーヴァント二体を制そうとするが、カルデアのマスターも肝が冷えてはいなかった、

「こんなにも強いヤツがいるのか―疼くぜ」

「ダヴィンチ女史、マスターにスイッチが入ってしまったようだ」

 

 

「おらどうしたどうしたっ!?」

「!」

赤い剣が大地を割るが仙女は蝶のように舞った。

「おぉぉぉっ!」

次は人馬が矛を以て仙女を凪ぎ払おうとする。

これでも中々捕まらないどころか、馬の肩に一瞬で乗り地面に降りた。

「速ぇなっ!だがなっ!!」

赤い剣を持った騎士が大声を挙げると、それを合図かのように白い鎖が仙女の足に絡み付こうとしていた。

「なるほど、これがカルデアのマスターの能力…ね。」

仙女は再び敵でありサーヴァントを従える青年を凝視した。

「まだまだ未熟ねっ!!」

仙女は鳥のように宙を舞い、そのまま後ろへ迂回しようと目論んだ。

鎖は一瞬にして仙女から遠ざかってしまった。

「ふん、この距離なら…!?」

そこで、虞美人が見たのは信じられない光景だった。なんと、足に黒い足枷が付いていたのだ。そして、その起点は敵マスターの指から出されていた。

「捕まえた…っ!」

「ホワイトチェーン第二縛式・黒走蛇『ブラックマンバ』!!」

「止めと行きましょうっ!!」

赤兎馬が号令をかけると、それぞれ剣、槍そして弓矢に力を込めた。

「これは―我が父を呪いし邪剣―『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!!」  

「その命―貰うぞっ!!『偽・刺し穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!』」

「人中に呂布、馬中に赤兎、今や一つ!『偽・軍神五兵(イミテーション・ゴッド・フォース)』!」

偽物も含めた三つもの宝具が虞美人に命中したっ!

 

 

「……今のところ魔力反応は無いな…」

「待て、マスター。奴は生きているぞ。」

「何?」

荊軻の忠告に耳を傾ける藤丸。そして、その一言で敵がどのような存在なのかを悟った。

「この気配は……後ろだっ!!マスターっ!!!」

「!!!」

藤丸は赤黒く、攻撃に適した長剣を取り出し敵の二刀を止めた。

二刀を持った敵は赤目に黒い布を纏いながら敵『人間』を憎むような目付きをしていた。

「チッ!」

「これでテメーのクラスも分かった。あとは……お互いお迎えが来てしまったようだな。」

虞美人は二つの戦車がこちらに向かっているのを察知した。

「マスター君、お説教は後にするから乗って!」

「おい、馬に眼鏡!付いてこい!」

「なっ!?」

藤丸は大地を斬って煙を挙げると、サーヴァントと共に銀の装甲を持つ戦車に飛び乗った。

敵が大きな機人馬に乗り本拠地へと戻っていくのを見届けながら。

 

 

装甲車の独房に鉄を踏む音が鳴り響く。

青年がある部屋に入る。そして、中にある椅子に重い腰を下げて煙草を咥えては愚痴を溢す。

「また説教されちまったよ……なんてまぁ、ここに来たのはそんな話をしに来たんじゃない。ランサーのサーヴァント。質問したいって聞いたんで来たんだがね?」

鎖に縛られている白いタイツ姿の女が青年を睨む。

「私のことは秦とでもリャンとでも好きにお呼びください。それより、聞きたいことがあります?」

「何?」

「貴方はどうして、この世界を壊そうとするのですっ!?ここは貴方たちの世界とは違って誰も傷付かない!貴方たちさえいなければ―」

青年は秦良玉の弁解を割った。

「『貴方たちさえいなければ』…?なるほど、ここで一部以外なんの知識も得ず囲いの中の生活に囚われている生活を『幸せ』と定義するか。」

青年は煙草に火を付けながら、前屈した。

「選択肢が少ないってのは確かにストレスフリーになり得る。けどな、押さえ付けてるせいで、『一生知りたいことを知れないまま死ね』と言えるのか?」

青年は続ける。

「『貴方たちさえいなければ』って台詞……その台詞そのまんま返してやるよ。この世界を造った神様とやらとクリプターさえいなければ!!俺は氷付けにされてしまった仲間を救えたというのにっ!!アイツらが攻めてきたせいでっ!!!居場所や恋人を失って心の傷を植え付けられた奴らだっているっ!!!!」

青年は顔を太陽よりも赤くして吠えた。そして、乱した息を落ち着かせて秦良玉の質問に答えた。

「何故ここに来たのか…それは。この世界を破壊すること……それが俺たちのやるべきこと『オーダー』だからだ。人類史を救う唯一の方法だからだ。」

 

 

暫くすると藤丸は独房から出ていった。




次回、藤丸は背水の陣へ挑みます。


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決戦~その1~

USJ行く予定が潰れて悲しいですが、こうして投稿することで生き甲斐を感じております。


 藤丸一行は、始皇帝を直接叩くべく小隊と一人のサーヴァントに分かれ、都に向かっている。

「信用は出来ねぇが、案内しろクソ狐」

「チッ」

いつもより暗めのトーンで藤丸はコヤンスカヤに指図した。

 

この時点から30分前。藤丸はシャドーボーダーで待機してした仲間たちに芥ヒナコの正体について報告した。

「アレはやはり、人間ではない。アレはサーヴァントで例えるなら……そう。」

「暗殺者『アサシン』だね?」

「そうだ。突然気配を消しての奇襲攻撃……アレはその動きだ。次は仕留める」

藤丸はそう呟くと席を外し、【硝子のようにこれから壊される世界】の空気を吸いに行った。

「マスター、ちょっとした話がある。」

「……なるほど良いだろう。アンタの意見【覚悟】に敬意を払おう。」

 

そして、藤丸はそのサーヴァントとは別々に動くことで帝都を叩き出しつつこれから壊そうとする世界の空想樹『核』を破壊する作戦を仲間たちと立てたのだ。

「やっと着いたか……ここに空想樹の反応があるんだな?」

「さぁ?探してみては?」

「相変わらず食えない女狐だ。」

藤丸は焦らして苛立たせようとするコヤンスカヤの挑発を軽く流し、二騎の馬と騎士のサーヴァントに命令して帝都へ入る入り口を門番ごと破壊させた。

 

「始皇帝様っ!カルデアの者たちが!」

「やはりこうなったか。韓信と衛士長に向かわせろ。」

人形だけではなく、獲物に群がる狼のような顔つきをした拳法使いまでもがカルデア一行を囲んだ。

「1000人以上か……ちょうど良い準備運動だな」

藤丸はそう呟くと、白い小型メカを腰に当てて青白い鎧を着こんだ。

そして、白と黒の短刀を両手に握りしめた。

 

一方で始皇帝の間では白い暗殺者が影から標的を仕留めようと虎視眈々と隙を伺っていた。

勝負は刹那的な時間の中で決まる……それを弁えてるからこそ、暗殺者は標的が単独行動を行っているときに行うのだ。

一つの影が動き出し、一人歩きした。すると、その影が一瞬でその動きを止めた。

「始皇帝……覚えているか?」

暗殺者・荊柯は標的の影に対して冷たくしかし、ドスを利かせた声で語りかける。

まるで、これから消え行く命を弔いながらも呪うように。

「その声……よく覚えおるぞ…荊柯…」

標的は虫の息だ。

「では、死んで―」

……状況は明らかに暗殺者に軍配が挙がっていた……が、そんな状況は長く続かなかった。

それは草むらにずっと隠れていた蛇のように、領域に入った不届き者の首を刈り取った。

荊柯は驚きの叫びも挙げないまま、地面に背を向けた。

「ふぅ、危ない危ない。水銀分身を造ってなかったら、こちらが死んでおったわ。」

殺されたはずの者の声が生き生きした声で荊柯に語りかける。

 

「ハァッ!!………っ!」

藤丸は異変に気付いた。それは、隕石が落ちるときに見た物と似ていた。それを悟った藤丸は、叫びたい一心を噛み締めた。その口の中は、汁が赤い果実を食べたばかりのようになっていた。

「今だっ!!カルデアのマスターを殺せっ!!!」

「――!!!!」

自分を殺しにやってきた衛士を全ての生き物を殺すような眼光で睨み、

その腕を両手に携えた牙で噛み切った。続けて牙で首も噛んだ。

牙に噛まれた首は転がり、他の敵の足を滑らせた。

そこも容赦なく、敵の左胸へ目掛けて藤丸は自身の手刀を振るった。

そうしていると、眼鏡をかけた小太りな男が多くの衛士を連れてやってきた。

「……誰だ、お前は?」

藤丸は敵を踏みつけながら、その男を蛇のような目で睨んだ。

すると、踏まれている衛士が叫んだ。

「か……っ!韓信殿っ!!!」

男・韓信は、何かを楽しむように笑っていた。

 

次回予告

「最高だぁぁぁ!!」

「お前ら伏せろ。」

「さて、今度は儂が相手しようか。若僧。」

「知識は……『善』だっ!」

「民が知識を得ることは……『悪』だっ!!」

 

 




もう1話は午後挙げます


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決戦~その2~

よし!(現場猫)


「ここに来たか、カルデアのマスター。」

「あぁ、来たよ。その顔が見たくてね。」

藤丸は地位の低い衛士たちをも凍り付かせるような目付きで韓信を睨み付けた。

「フフ、俺も君に会いたかったよぉ」

「ふん、そうか。」

「戦争をしたそうな眼をしている…」

「あぁ、お前みたいな外道を止めてやるよ」

「フフ、お前との話し合いも不毛な物に終わりそうだ。皆のもの!かかれぇ!!」

韓信が号令をかけると、衛士は一斉に駆け出した。

これを見た藤丸は白と黒の剣を捨てると、赤黒い大剣を持ち出した。

そして、藤丸が手話でサーヴァントの皆に伝えた。

『お前ら、伏せろ…先に行け……』

 

 

陳宮たちは言われた通りに伏せた後で、始皇帝がいる先に行った。

彼らは先に行く際に信じられない光景を見た。

先程まで藤丸を殺そうと目論んだ衛士たちが、川と赤い蓮華の花の景色を作ったのだ。

韓信の後ろに控えていたのも関係無くだ。

流石の韓信もこれには絶句をするほか無かった。

「どうした?得意なんだろ…?『背水の陣』は。ってことはこの際はどうでもよいや。……どちらにしろ、お前も部下たちと同じところで寝てもらおうか。」

藤丸がゆっくりと近付いて何も起こらなかったかのように、韓信を通り過ぎた……。

すると、戦に狂った男は嗤った。

「フハハハ!これだから『戦争』ってのは止められないぃぃ!!最高だぁぁぁ!!!お前を…ローマのように潰して――」

そう言い残して振り向いた男は頭から崩れ落ち、沈黙のみを最後に残した。

そして、青年は赤い剣に問い掛ける。

「血を吸えたか?…赤き月『ブラッディ・ムーン』」

 

 

一方で、始皇帝の間でも赤い蓮華が咲き乱れようとしていた。

「………」

「最後に何か言いたそうだな。言うてみろ……喋れるならな。」

蓮華の花に埋もれた荊柯は顔だけを始皇帝に向け、平静と激情を足したような目付きを浮かべる。

「何故…知識を……無くそうとする?」

「何故ならば…民が知識を得ることは『悪』だからだ。朕はその為ならば、どのような手段も選ばぬ。」

始皇帝の問いに対して、荊柯は答える。

「あぁ、知識を付ければ争いの引き金になることもあるだろうな……けどな!知識は危機を回避することにも使えるっ!知識は……『善』だっ!!」

荊柯はそのように言い切ると、四角い機械を取り出した。

「なんだ、それは?」

「人と人を繋げる『知識』が詰まった…機械さっ!!」

それを起動させると、始皇帝の間は大きな爆炎を起こした。

そして、巨大な白い樹がその姿を現した。

「なるほど、これがクリプターが朕に隠していた物か……」

樹が現れ、役目を終えた刃は最後の煌めきを浮かべて闇へと消えた。

 

 

「生け贄になってしまわれましたか。」

「……」

「お前たちはコヤンスカヤを連れて先に行け……こちらは大きな獲物が来るっ!」

藤丸はサーヴァントたちに通信越しで、急かした。

韓信を倒した藤丸は、敵の気配を察知してサーヴァントたちとの通信を切った。

「さて、次は儂が相手しようか。若僧。」

藤丸は、衛士の本当の長を見て一瞬の油断が死を意味すると直感した。

 

 

「行くぞ、アークさんっ!一走り付き合えよ!!」

「その言葉を待ってたぜ!Start your theme.」

藤丸は魔道書・アークミネルバに第二の魔道の力『ガーディアンメイガス』の力を解放するように無言で命令を下した。

瞬時に彼は赤い外套と銀の鎧を身に包んだ姿へ変化し、衛士長と睨み合う。

「その白と黒の剣……なるほど。相当の手練れと来たものだ。なに、一度見れば分かることだがそれを見せられては益々手は抜けぬなぁ。」

その言葉が合図かのように、両者ともにぶつかり合った。

「スピードは互角……パワーは向こうが少し上か…。」

「あぁ……分かってるっ!」

「しかし、技量は中々だ!久々に血沸き肉踊ると来た!!年甲斐も無く、騒いでしまうぐらいになっ!!!」

年老いた格闘家は新たな機能を持った機械を手に入れた若者のようにはしゃいだ。

「たぁっ!!」

藤丸は拳では勝てないと悟ったので、蹴りを入れることで距離を置こうとしたが。

足を足で塞がれてしまった。

「………」

「………!」

しかし、これも藤丸は想定済みであった。だからこそ、敵に足を預けたのだ。

老格闘家の脇腹に槍が飛んできたのだ。これを避けるために、衛士長は藤丸の足を使ってかわそうとしたが。

「させるかぁ!!」

藤丸は巴投げをして、衛士長に先手を打つことに成功したのだ。

「お待たせ致しました。」

「情報を色々とくれた後で作戦に乗ってくれたことには驚きと感謝しかないよ…秦良玉。」

すると、サーヴァントたちに彼らのマスターの相棒であるアークミネルバから通信が入った。

「お前ら、よく聞け!作戦通りに衛士長はマスターと秦良玉とかいう女ランサーが抑えている!」

「何の当て擦りで私にまでその情報をっ!!」

コヤンスカヤはそう呟く。

「マスターからの伝言は『嫌がらせ完了!!』だとよ」

アークミネルバはそれを皮肉を言って鼻で鎖に繋がれた狐を嗤った。

そして、カルデア一行は本格的にロストベルトNo.3攻略作戦に取りかかった。

 

 



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激闘再び

今日でこのFGO The Third Lost を終わらせようと思います。


「そうか、そちら側に付いたか。貴様とは手合わせ願いたいと思ってはいたからさほど衝撃でもない。しかし、疑問は残る。何故裏切ったのかとな。」

先手を打たれたにも関わらず、平静な態度を保つ衛士長。

秦良玉も同じように平静を保ちながらしっかりとした口調ではなす。

「私は他の世界の笑顔を見てみたい…それだけです。」

「なるほど…では話はこれまでにして…死合おうかっ!!」

衛士の長は、しなやかでありながらも何万頭以上の象をも殺すような動きで藤丸と秦良玉の二人に飛び掛かる。

「!」

二人は彼の間合いから離れる。

「良さん!ちょっと時間稼ぎを頼む…10秒ぐらいでも良いから!」

「了解!」

良は素早い槍裁きで、衛士長の拳を食い止める。

藤丸は左腕に付けられたデバイスのスイッチを入れた。

「準備は終わった!!」

「はい!」

「!!!」

 

衛士長は危険を察知したが、彼は良に気がそれたほんの少しの瞬間を狙われたのだ。

しかし、強豪・衛士長も只ではやられない。

不意討ちを交わし、攻撃してきた敵に一矢報いようとする。

「三倍加速」

藤丸がそう唱えると衛士長の目の前から消えた。

そして、敵の周りに無数の剣を配置していたのだ。

鉄の蜂が敵を襲う。

「………流石は衛士の長だ、これでも死なずに居られるとは。しかもかすり傷のみで済ますとは。」

藤丸は続ける。

「気功で防いだか……これでアンタの正体も漸く分かったよ」

そういうと、藤丸は敵と全く同じタイミングで構えた。

 

「この魔力は…ぶつかりますね!」

「………!」

敵味方問わずに、対峙した二匹の獣たちの殺気は周囲へと伝わったのだ。

虎―衛士長―は聳え立つ山の如く、龍―藤丸立香―は大波と雷打たれる海の如く身構える。

そして、その二つがぶつかろうとしている。

「七孔噴血―」

「解き放て、白き大蛇よ――」

虎は炎を、龍は雷の衣を纏って力を十分に蓄えた。

陽炎と雷光が彼らの後を追うように走った。

「巻き死ねぇぇぇい!!」

「雷龍の牙!!」

炎の鉄槌と雷の剣がぶつかった。

そして、地に膝を着いたのは――

「若僧………いや、カルデアのマスター・『藤丸』。ここを通すことを認めよう。」

「良い死合いだったぞ……『李書文』。」

藤丸も側頭部から赤い布を垂れ下げながら、好敵手に敬意をはらった。

 

「おー、戻ってきたか!」

「やはり時間を食ってしまった…申し訳ない。」

藤丸は仲間に謝罪し、狐を睨みながら言った。

「さて、始皇帝に会おうか。」

マスターの一言を号令に、一行は始皇帝の間へと参った。

しかし、間の前に二つの影があった。

「なんだ、門番かよ『センパイ』。随分大人しく下ったな。」

影のうちの一つに煙草を吸いながら、皮肉な言葉を吐き出す藤丸。

それに対して虞美人は前へ出ようとするが、項羽の制止が入った。

暫く沈黙が続いた。

「………アークさん、普通のメイガスモードで頼む。」

「なら、合言葉を言え。」

「暴食『グラ』の書庫『アーカイブ』に接続!テーマを実行する!!」

青白い鎧が燃え上がる炎のように藤丸を包んだ。

「皆……行くぞぉお!!!」

藤丸が叫ぶと、両勢力が衝突した。

果たして、カルデアは虞美人と項羽に勝てるのか?

 

次回のFate/Grand Orderは!

「項羽様……ッッ!!」

「始皇帝様ぁ、樹ごとその命頂戴するぜ」

「朕より先に片付けておくべきことがあるのではないか?」

「……!!!」

 



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項羽死す!怒りの真祖

「皆、虞美人を抑えろ。俺は……項羽から倒すっ!!」

「了解っ!!」

一人の青年は巨大なる馬へ、複数のサーヴァントたちは黒い衣の仙女へ立ち向かった。

 

 

一方で、シャドーボーダーでは。青年の仲間たちがその闘いを見守っていた。

「俺たちはこうして見るしか無いのか?」

「………彼らが危なくなったら回収する。それが彼の考えた作戦だよ。」

ダヴィンチは続ける。

「私も最初はその提案を床に叩き付けたさ。でも彼は『項羽に勝てる算段は立てています』と言って聞かなかった。……アレは覚悟を決めた顔そのものだ。」

そこで、ホームズが割って入る。

「それは、それを実行した後何が起こるか想定した物なのかね?」

「私からはハッキリとは言えない…。だけどね、彼は『自分の感情を最後まで隠そう』としているんだ。」

「そうか……。これはあくまで私の推理だがね……」

ホームズはパルプを取り出しながら告げた。

「彼の心はもう――『壊れている』。恐らく、様々なサーヴァントや人間たちの『死』を見た時から……ね。」

そのような二人の会話を、一人の少女は聞いてしまった。

「セン―パイ―」

 

 

「せぁっ!!」

「―」

巨大な剣が大地に振るわれ、大地が煙を挙げた。

「!?何処へ行った?」

項羽は後ろに気配を感じた。そこには赤い剣を携えた青年がいた。

「コイツは血を吸うのに特化している―そう思ってたんだがね。」

青年は敵の話など聞かぬと言わんばかりに腕を振るう人馬に話しかけるように続けた。

「大体なんでも斬れちゃうみたいなんだよね。」

「なっ!!?」

計四本あった腕のうち二つが切り落とされた。項羽がそう思った途端、頭部にも皹が入った。

そこから電流が流れ出したのだ。

「一度だけでなく、二度も闘った…。貴様の構造など、判別出来るようになった。作戦通りだ。……虞美人は、サーヴァントたちに夢中か。じゃあ、倒れて貰おうか。」

藤丸は、そう言い放つと白い剣に雷を発生させた。

「……まだだっ!!」

項羽はそう言って、残った身体全体に力を入れるが石で敷き詰められたみたいに動かない。

「なんだ?気付かなかったのか?鎖を用意しておいたのさ。」

それを見た女狐は震えた。

「くっ、あの鎖は。忌々しいっ!!」

「まっ、そんなわけで。……じゃあな。」

藤丸は雷を纏った白き剣を項羽の心臓部と言える動力源に直撃させた。

「ぐっっっ!!!!!!」

それを見たのは―

「項羽様ぁぁ!!!!」

 

 

数分後ー

「……おっと、遅かったな。カルデアのマスターよ。」

そこには、黒い髪に白い天の使いのように白い衣を着た皇帝がいた。

「お前が始皇帝か。始皇帝様。樹ごとその命頂戴するぜ」

藤丸がそう叫ぶと、始皇帝は真顔で藤丸の後ろを見て忠告をする。

「朕より先に片付けておくべきことがあるのではないか?」

「……!!!」

黒い衣を着た仙女が、人間に番を殺され怒り狂った狼のように藤丸に飛び掛かったのだ。

「よくも項羽様をぉお!!!」

藤丸は頬にかすり傷をつくる程度に損傷を抑えるように移動し、狼を蹴った。

「~~っ!!」

声にならない怒声が虞美人の口で蠢いた。

「……その目だ。『怒りの目』だ。もっと俺にソレをぶつけろ。俺も……てめぇらクリプターに―」

炎を纏った二本の剣が顔めがけて飛んできたにも関わらず、藤丸は瞬き一つしないでそれを弾き落とした。そして、口を動かし続けた。

「『借り』があるっ!!!!」

その時、青年は殺された仲間たちを思い出しながら唇を噛みながら答えた。

 

 

「マスター!」

「お前たちは、俺に構わず樹を狙えっ!!!」

体を赤く染めながら藤丸は叫ぶ。

「ほう。では、お前たちを試そう。」

始皇帝がカルデアのサーヴァントたちに殺気を向けた。

しかし、藤丸は冷静に提案する。

「待て。お前も虞美人も俺が片付けてやる。」

「では、皆さん樹に向かいましょう。直ぐそこですので。」

藤丸の顔付きが徐々に険しくなった。

そして、皆は藤丸がこうなると中々折れないことを知っている。

「その減らず口……叩き斬るっ!!!」

虞美人はそう言うと、赤い火柱を自分の周りに張った。

「この魔力量…宝具か。しかも、自爆技の。」

藤丸は膨大な程の魔力の増幅を感知し、ある術式を唱える。

「滅びを知る者…いずれ安らぎを得る果報者たちよ。我が羨望!我が憎悪!死の痛みを以って知るがいい!」

虞美人が呪いの歌『宝具』を詠唱する。

すると、血の雨が敵に降り注いだ。それに貫かれるように青年の身体は震え倒れた

「で、どんな夢を見たんだ?」  

「………!」

虞美人は敵が後方にいることに気付いた…が。

「解き放たれよ、白き大蛇よ――雷龍の牙!!」

せめての償いと言わんばかりに、白い龍騎士は怒り狂った仙女の番と同じ倒しかたで葬ったのだ。

 

「次はお前だ、始皇帝。」

「なるほど。朕を倒そうという算段か。ここは一つ、交渉せぬか?」

「『交渉』……ねぇ。事に寄って決裂したらどうするつもりだ?」

「その時は敵対する他無かろう。」

「俺の仲間が樹を倒せばこの世界が滅びるというのに、随分余裕綽々じゃないか。」

藤丸は違和感を感じた。始皇帝が何を考えているか、一瞬読むことが出来なかったのだ。

しかし、敵に焦りを見せるのは禁止事項だ。そこで息を整え、もう一度思考を読み取った。

「………そうか。そういうことか。」

藤丸は思考を読み取ると、身体の中にいる獣「邪龍」に話しかける。

「アワリティア……ほんの少し力を貸してくれ…。」

そう言うと藤丸の身体は炎に包まれ、目付きは肉食獣のようになった。

「朕の思考を読み込んだのであれば、何をするべきか分かるな?……では始めるぞ!未来のための『闘い』を!!」

 

空想樹の前でも、カルデアは止まらなかった。

「これを落とせば未来を取り返せるっ!」

「行きましょう、モードレッドさんっ!!」

作戦の最終局面を知らせる法螺貝が鳴った。

 

次回、Fate/Grand Order The Third Lost 最終回!!

「ふぅ……勝ったぞ。そちらはどうだ?」

「私は―お前を…っ!!許さないっ!!!!」

「大変だ、マスター君!空想樹と芥ヒナコの融合指数がっ!!」

「なら、斬らせて頂くっ!!!」

 

 



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The Last ~獣の木こり~

The Third Lost最終回です
ふと3月中に終わらせたくなり、ラッシュ投稿となりますが読んで頂きありがとうございます。
次回のシリーズにもご期待ください


水銀と炎がぶつかる中。人の形を取った皇帝は考える。

これで良かったのかと。闘いで火花が散る中で思い返す。

自身の命を狙った暗殺者の言動の意味を。

迷いは無かった。後悔も無さそうな顔をして消えた命について、思い返した。

「そうか……そういうことか……。」

龍が吐くものであろう炎を纏った拳を水銀の力で防ぎながら、『人間』について思考を重ね悟りを開いた。

「ダダダダダ!!だりゃぁぁぁ!!!!」

数多の炎の拳が水銀の壁をついに打ち砕いた。

「!!」

「これでどうだぁ!!?」

青年『人間』の拳が皇帝『天』に届いた瞬間を、皇帝は味わった。

「なるほど。ちと、気が早いかもしれぬが……。この若僧になら、『未来』を託せるかも…な…。」

皇帝は『地』に背中を預け、青年は息を荒げて『地』に膝を着く。

始皇帝は両手を挙げ、藤丸に語りかけた。

「貴様の勝ちだ…カルデアのマスター。」

「そうか…なら。こちら、藤丸。始皇帝に勝った。そちらは?」

 

 

藤丸が仲間に報告してると、刃の光が彼の首を横切った。

しかし、銀のゲルはそれを妨げた。

「虞美人よ…何をしている?」

「!!?」

藤丸は驚いた。自分が倒したはずの者が直ぐそこで歩くからだ。

そして、仙女は青年を睨んだ。

「私は―お前を許さないっ!!!!」

虞美人は不気味な光を発した。

すると、藤丸の元に通信が届いた。

「大変だ、マスター君!空想樹と芥ヒナコの融合指数がっ!!」

「融合っ!!?」

「朕は貴様を認めるが、奴はお前を憎んでいる。そして、あの仙女と樹の融合はどう抗っても止まらないであろう。」

藤丸はそれを聞いて、虞美人に向かって叫んだ。

「なら、その憎しみ……ここで斬らせて頂くっ!!!」

紅い剣を藤丸は携えた。

 

「固いっ!!」

「この呂布でも攻めあぐねるとは、中々。」

樹は枝から熱線の雨を降らせ、サーヴァントたちを近寄らせない。

そうしていると、樹も紫色に輝き始め白い塔のような姿から紫色の枝を伸ばした状態へと変化した。

「ふざけやがってっ!!」

モードレッドがそう叫ぶと、誰かがその肩を叩いた。

「ごもっともだよ。全く。」

モードレッドの肩を叩いた人物。それは紛れもなく、カルデアのマスターだった。

「遅ぇぞ、マスター!って、隣にいるのは!?」

「朕は今は敵ではない。『人間』を認めた『始皇帝』である。」

 

 

「皆の衆!カルデアのマスターを援護し、空想樹を!!撃滅せよぉぉ!!」

始皇帝が皆をあっという間に束ねると、藤丸は樹に一直線に走った。

その後ろを皆が走る。

「!」

樹の中から様子を見ていた虞美人は、樹にサーヴァントたちを倒すように命令を下した。

「藤丸リツカ…っ!まずはお前の大事な者たちから倒させて頂くわっ!!」

熱線が大地を焦がそうとするが、熱線は一つの赤い光線と相殺された。

「クラレント・ブラッドアーサーっ!!」

そして、藤丸は樹に挑発する。

「俺の大事な者たちを……なんだって?」

「ちぃっ!!」

虞美人はヤケクソに樹を操作し、今度は藤丸を締め殺そうとするが。

「はぁっ!!」

「偽・軍神五兵(イミテーション・ゴッドフォース)!!!」

一つの槍と矢が枝を凪ぎ払った。

「助かるっ!!!」

藤丸はサーヴァントたちに礼を言うと、さらに加速し樹の天辺まで跳躍した。

「今度こそ焼き尽くしてやるっ!!!!」

「そうさせぬ!始皇帝(ザ・ドミネーション・ビギニング)!!!」

しかし、その願いも叶わず。

赤い熱線は、始皇帝が完全に防いだのだ。

「後は任せたぞ、カルデアのマスターっ!!」

「これで最後だ、虞美人!!!」

一振りの剣は樹を燃え上がらせ、二つに割った。

「………!!!!!」

「ハァ…ハァ……。滅茶苦茶魔力使った………もう動けない。」

地にゆっくりと降り立った藤丸は、魂だけになった虞美人を見る。

「全く…世話の焼ける輩だ。」

その魂の質は、黒く歪みいつ消えてもおかしくない物であった。

藤丸は、そんな虞美人草の魂に対して「静かに安らかに眠っててくれ」と言う他に無かった。

しかし、始皇帝は違った。

「貴様は何を欲している?」

「?」

始皇帝は虞美人に問う。

すると、どうにかして虞美人は口を開く。

「項羽様……が……嘆く……ことを……やめたい。」

「なら、抑止力に鞍替えするのはどうだ?何故なら、項羽(アレ)の願いはそれだ。」

そう言うと、虞美人は納得したかのように姿を消した。

 

 

「崩壊が始まった…か。」

藤丸とサーヴァントたちは装甲者に乗った。

「あの女狐はどうした?」

「逃げたよ。とっくにな。『次に会ったら殺す』とまで言ってな。」

藤丸はそう言うと、自分の部屋に入る。

そして、窓から霧に包まれた大きな物がまた一つ消えるのを見た。

「始皇帝と秦良玉には感謝しかないや……。ったく、胸糞悪い。」

藤丸は一枚の写真を見た。そこには、村の少年と始皇帝が同じ野原で空を見上げて談笑していた。

 

Fin

 

 




Fate/Grand Order二次創作シリーズ次回作
『Fate/SERAPH Memory』
ご期待ください。


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