仮題名『世界の逆暗示』 (蜜柑ブタ)
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ファントム・ザ・ワールド

色々とぶつ切りなうえに、いきなりクライマックスです。



流血と死亡描写注意!!


 

「じょーーーーじーーーーー!!」

 

 ジョセフの絶叫を聞きながら、空条承次(くうじょう じょうじ)は、スローモーションになる視界に映る、自分の血と、言葉を失い凍り付いた兄・承太郎の顔を見た。

 

 

 

 空条承次。

 承太郎とは、二卵性の双子で弟だった。

 母に似た彼は、ジョースター家の男児しては背が低く(170センチない)、また顔立ちも承太郎に似ておらず、どちらかというと女顔で体格も恵まれていなかった。

 高校生になってから反抗期を迎えて不良になったにも関わらず何事にも完璧な承太郎に、承次は常に劣等感を持っていた。

 いつだって兄の承太郎と比べられていた。両親や祖父母達はそんなことはなかったが、周囲はそうじゃなかった。そんな環境だったから承太郎に庇われることも多かったことも劣等感を強めた。

 努力はした。けれど越えられない。あまりにも承太郎の存在は大きかった。

 

 そんなある日、母が倒れた。ジョースター家と因縁のあるDIOの影響による呪いだった。

 それとともに、祖父ジョセフや承太郎にスタンドという力が目覚めた。母もスタンドに目覚めたが、穏やかな性格が災いしこれが呪いとなって母の命を蝕んだ。

 50日で死ぬと宣告され、ジョセフ、承太郎は、花京院とアヴドゥルを連れて旅立つと言った。承次には残れと言われた。この時点でスタンドが目覚めていなかったせいだと承次は思ったが、間もなくスタンドが出現した。

 

 そのスタンドは、まるで亡霊(ファントム)そのもののような不気味なスタンドだった。

 ボロボロの薄汚れた灰色の布きれを頭から被って身体を覆い、黒く骨のように肉が無くヒョロヒョロの手だけがあり、足が無い。そして顔も影になっていて見えない。

 

 アヴドゥルに頼んでタロットカードを引いたところ…、『世界(ザ・ワールド)』を引いた。

 だがどう見ても世界…の暗示にはほど遠い見た目。

 そのため、このスタンドには、ファントムと名付けられた。

 

 ファントムは制御が出来なかった。

 勝手に動き回り、けれど、スタンドをつかみ出すという芸当を見せたはいいが、ほとんど戦力にはならない。

 アヴドゥルが戦線離脱する前に、ファントムには何かしら秘められた物を感じると言っていた。

 

 その意味が分かったのは、DIOとの決戦の時だった。

 

 承次は、カイロでの激闘中に、承太郎を庇った。

 胸と腹の間にめり込んだDIOのザ・ワールドの拳を感じ、大量の血を撒き散らしながら、感じた。

 自分がなぜ『世界』の暗示を持っていたのか。

 

 世界の逆位置の意味。

 

 それは、成就しない、分かり合えない、未完成のままなど。

 

 納得した。だから自分のスタンドは『世界』だったのかと。

 

 

 血塗れになった自分を支える承太郎の顔を見て、承次は思う。

 

「悔しい…。」

 

 そして、笑っているDIOを光を失いつつある目で見る。

 

「恨めしい…。」

 

 

 自分の身体から出た無数の鎖を引きちぎりながら解放されていくファントムを感じた。

 

 

「アンタに勝ちたかった……な…。」

 

 

 承次の手が落ち、目から光が消えた直後。

 鎖をすべて引きちぎられ、解放されたファント…、否、ファントム・ザ・ワールドが甲高い、カイロを包み込むほどの泣き声を上げた。

 

 本体の死。それがファントムに秘められた真の力の解放条件だった。

 

 その泣き声は、敵も味方も関係ない。

 あらゆるスタンド能力の出せる範囲を狭める。

 首に掛けられた懐中時計が、60秒を示すまで泣き声は続く。

 DIOに一瞬で迫ったファントム・ザ・ワールドは、DIOの片方の肺を引きずり出し奪ってみせ、その首を抉り取らんと迫る。

 ザ・ワールドを出現させようとするが、肉体からほとんど出せない。時を止められる範囲も狭まり、自分の周囲すらも止められない。泣き声を近くで聞けば聞くほど効果があるのだ。

 懐中時計がやがて60秒を示すと、泣き声が一旦止む。途端に、封じられていたスタンドが使えるようになる。

 それを瞬時に理解したDIOがファントム・ザ・ワールドを消滅させんと、攻撃を行う。再び懐中時計が60秒を示すと、泣き声が再開される。そして身体全体を破壊されようとしていたファントムもあっという間に修復された。

 DIOは、泣き声が止むまで距離を取ろうと逃げようとしたとき、その背後に承太郎がいた。

 スタンドを出せる距離が狭まっていても肉体に重ねられる。だから承太郎は、自身に重ねる形でスタープラチナを使いDIOをぶん殴った。殴った、殴った殴った殴った殴った。

 DIOは、ファントム・ザ・ワールドの攻撃を掻い潜りながら、承太郎の攻撃をいなした。

 戦いがどれだけ続いただろう。だが、朝日が明けるには十分だった。

 ファントム・ザ・ワールドの手が、DIOの首を抉り取り、その首を承太郎が捕え、朝日に掲げて灰にした。

 DIOとの戦いはそれで終わったが……。

 ファントム・ザ・ワールドは、まだ消えない。

 ユラリと承太郎に迫る。

 ジョセフは理解する。

 

 ファントム・ザ・ワールドは、承次の死の直後に怨んだり憎しみを向けた相手を殺すまで止まらないのだと。

 

 ゆっくりと迫ってくるファントム・ザ・ワールドを前に、承太郎は、まるですべてを受け入れるように目を閉じた……。

 

 

 




次ページで、承次の設定などを上げます。



死が条件というのは、ノトーリアスBigと同じです。


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承太郎の双子弟の設定

双子ネタ好きですね。筆者は。


●承太郎の弟

◇名前

・空条承次(くうじょう じょうじ)

(※承次は、ジョナサンの父・ジョージと、ジョセフの父ジョージ二世にちなんでつけられたもの。正式には、ジョージ三世)

 

 

 

◇ネタでの立場

・承太郎の弟。二卵性の双子。

・承太郎とは、お互いに思春期の到来で仲があまりいいとはいえない。

・承太郎がスタンドに目覚めた後に、自分もスタンドを身につけた。

・母ホリィが倒れた時、承太郎から残るよう言われるが(自分の身に何かあったあと、家族を任せるため)、間もなく自身もスタンドが使えるようになったことを告白し同行することになる。

・スタンド能力が今までにないタイプだったことと、本人がスタンドを把握しきれていないため、道中で少しずつスタンドの真価を見極めていき、DIOとのラストバトルで承太郎を庇って負傷した時、スタンドの真の力の発動条件を知ることとなる。そしてそれにすべてを賭けて承太郎にわざと自分の胸中を語り条件である強い未練を残して、彼の腕の中で息を引き取る。

 

 

 

◇能力

・スタンド名『ファントム』。

・アヴドゥルのカード占いでは、『世界』の逆位置の暗示があるらしい。しかし外見が『世界』と呼ぶにはあまりに似つかわしくなかったため、見た目でファントム(亡霊)と名付けられた。だが彼が引いた『世界』カードがひとりでに真っ二つに切れてしまう(切込みなんていれてないのに)現象が起こり承次の未来に不吉な影を落とした。『世界』の逆位置の暗示が出た意味は、後述にて記載。(『世界』の逆位置の暗示→成就しない。分かり合えない。未完成のままなど)

・薄汚れた灰色の布を被ったまさに亡霊そのもののような姿をしたスタンド。

・ブカブカの袖から出している、影のようなヒョヒョロの手と指があるだけで、顔や足はない。布の下は、暗闇しかない。

・首にごっつい鎖のついた大きな懐中時計をぶらさげている。時計は、秒針だけしかない時計。秒針をよく見ると、矢のような形をしている。

・体は脆く、ちょっとの攻撃ですぐに壊れるが、脆いせいか本体に影響はない。すぐに再生する。

・独自の意識を持ち、勝手に動き、狙った相手を追尾する特性がある。そのため移動できる距離もかなり広い(地球の裏側まで追いかける)。あと、亡霊のような呻き声を急に発するのでびっくりされる。

・スタンドの能力は、相手の魂(スタンド)を手で掴んで肉体から引っ張り出す能力。スタンド使いじゃなければただ魂が引っ張り出されるが、スタンド使いの場合、スタンドが引っ張り出される。

・引っ張り出すといっても、隠されたスタンド能力を発現させるというものではなく、あくまで相手の魂、すでに発現しているならスタンドを肉体から引っ張り出すだけの能力。

・スタンド使いであることを隠している相手の正体を暴くにはもってこいの能力。

・スタンド使いの場合は、引っ張り出される瞬間だけ、やられた相手は完全無防備になる。普通の人間が魂を引っ張り出されると、動きを封じられる。

・また引っ張り出した魂にファントムが物理的な危害を加えることで魂の持主の肉体に影響を与えることもできる。くすぐればくすぐったいし、首を締めれば首が締まる。

・一見ヒョロヒョロしていて力がなさそうだが、パワーAのスタープラチナの腕を掴んで捻じるぐらいの握力がある。握力と腕力だけなら最強。

・あと足がなく、宙を浮遊しているため、動きも素早くはないだが、相手を掴むために手と腕のスピードだけは、スタープラチナの目でも追いつけないほど速く動かせる。

 

 

※覚醒後『ファントム・ザ・ワールド』

・このスタンドの真の力は、本体である承次が死んでから発揮される。

・本体はスタンドの枷であり、本体が死ぬほどの大怪我や大病で死の淵を彷徨った時にその事実を知ることになる。

・相手を恨む力をスタンドパワーに変換する『悪魔』の暗示のデーボと似たタイプであるが、こちらは本体が目標を達成できずその悔しさ・未練を抱えた状態で死亡することが条件となる。

・DIOから承太郎を庇った承次は、瀕死の重傷を負った時に自分のスタンドの真価を発揮する条件を知って自分のスタンドの本質を悟り、DIOによって死にゆくことと承太郎に勝てなかった悔しさを言い残して、『ファントム』の覚醒条件を揃えて息絶える。

・カード占いでの『世界』の逆位置の暗示は、完全に潜在状態だったファントムの真の力を出す条件を意味していた。

・本体が死亡すると、肉体から幽体離脱するように出てくるのだが鎖で雁字搦めの拘束された状態で、首の懐中時計の鎖以外の鎖が千切れて砕け散りスタンドが本体から離脱する。

・DIOでさえ背筋が寒くなる、この世を呪った甲高い泣き声をあげる。

・泣き声が発せられている間は、声の届く範囲でスタンド発動が弱められ、能力の発動範囲を狭めてしまう。近ければ近いほど範囲は狭くなり、遠ければ遠いほど範囲は広くなる。例えばDIOの時間停止などは、世界全体を止めるからDIOの目の前だけの物しか止められなくなるなどする。またスタンド体も泣き声が近いとほとんど出すことができない。

・スピードは、DIOの肉眼でも捕えられないほどになり、瞬時に接近してくる。

・破壊力も一突きでDIOの内臓を抉りだせるほどで、覚醒直後に不意打ちでDIOの片肺を抉りだすに至っている。

・一度標的にした敵を滅ぼすまで世界の裏側まで逃げようとしてもどこまで追跡を続ける。

・このスタンドの弱点は、標的にした相手が滅びると役目を終えて自らも消えることである。

・見た目からしてスタンド自体が脆いため簡単に破壊されてしまう。だが時間経過で復活する(1分ちょいぐらい)。まさに亡霊。死亡した本体から託された意思を達成させるまで動き続ける。

・このまさに亡霊と化したスタンドから生き延びるには、泣き声が途切れる僅かな間をぬって60回(懐中時計の秒針)破壊しないといけない。

 

 

 

◇性格

・負けず嫌い。

・承太郎につれない態度をとるが、彼なりに兄である彼を尊敬している。尊敬しているがゆえの嫉妬。

・不良の癖に完璧な承太郎に勝てる要素がないため、DIOを倒す旅に同行したのは何でもいいから承太郎に勝ちたかったからである。その目標を達成・成就を願いながらそれが叶わない運命にあることがスタンド『ファントム(ザ・ワールド)』として表れた。

 

 

 

◇容姿

・母親似の髪と、中性的な顔をしている。承太郎とは似ていない。

・ジョースター家の男性では、珍しく小柄。中学生の時からなぜか成長が止まった。(170もない)

・星の痣が承太郎(その他ジョースター家の血筋)とは、逆反対にある(右肩)。

 

 

 

 

 

 

・・・※なお、DIOとの決戦後、蘇生されてファントム・ザ・ワールドは、止まる予定。

 

 




ノトーリアスBigと同じ条件だけど、こっちは、目的を達成すると自然消滅するタイプ。


3部のクライマックスで真価を発揮し、DIOと承太郎の両者を怨み、未練を残して死んだため、二人を狙うように。
この二人を殺すまでファントム・ザ・ワールドは、世界の裏側まで追跡してきます。
ただ本体が生き返るなどのイレギュラーが発生すると身体に戻る。


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