ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道番外編 新春かくしゲー大会 (肉球小隊)
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お○は二十歳になってから

読者の皆様新年あけましておめでとうございます。
本年も恋愛戦車道を宜しくお願い致します。

今年も最初の投稿は番外編からスタートしたいと思います。
時系列やら色々と辻褄が合いませんが番外編という事で読み飛ばして下さいw


「はいど~も~!聖グロの蘊蓄枠ダージリンでございます~!」

 

「同じくおっぱい枠梅こぶ茶でございま~す!」

 

『ぶふぉ!コイツらいきなり捨て身のギャグ入れて来やがった!』

 

 

 畳敷きの宴会場らしき大広間、背後に鶴と松の金屏風ならぬ墨痕も鮮やかに水墨で荒々しく描かれたSturmpanzerwagen A7Vの屏風が立てられた壇上に、聖グロのタンクジャケット姿で現れたラブとダージリンは古臭いマイクスタンドの前に立つなり自虐的な自己紹介と共に一礼し広間に集った者達を噴かせていた。

 

 

『新年あけましておめでとうございま~す!』

 

「ってラブ!私が悪かったからもうそれ止めてって言ったでしょ!」

 

「え~?私結構気に入ってるのに~、ロージーだってずっとそう呼んでくれてるのよ~?」

 

「ウソおっしゃい!いつまでも厭味ったらしい!大体そのローズヒップの口の軽さのせいで私がどれだけ酷い目に会ったと思っているんですの!?」

 

「それ絶対私のせいじゃないし~」

 

 

 ここは熊本、毎度お馴染み西住流総本山にあるコンベンションセンターの一室。

 ラブ達は道場の名物である徹甲の湯を目当てに、新年会と称しこうして集まり宴会を開いていた。

 だが宴が進み盛り上がるにつれこうして余興にかくし芸を披露する者が現れたが、ラブとダージリンの場合は揃って聖グロのタンクジャケットを着用して漫才を始める辺りは即興ではなく、事前に仕込んでいた事は明白だった。

 しかもこの二人の場合試合以外でも顔を合わせれば揃ってにこやかな顔で互いの傷口に塩を塗り込み合うような真似をするのが常であり、登壇するなり始めたネタは果たして本当にネタなのか罵り合いなのか解らぬシロモノだった。

 そして今もダージリンが八つ当たり的にラブの短期留学後、アールグレイに吊し上げを喰らった事に対する不満をぶちまけていた。

 

 

「ちょっとぐらい気を使ってくれてもいいじゃない!」

 

「だから連れて来てくれればいつでもお会いするって言ってるでしょ~」

 

「仕方ないじゃない!まだ大学じゃ下っ端扱いで中々時間が取れないんだから……」

 

「増々私のせいじゃないわ~」

 

 

 ヒラヒラと手を振り肩を竦めるラブにむきーっとなり掛けたダージリンであったが、座敷中の視線が自分に集中している事に気付いた彼女はひとつ咳ばらいをするといつものすまし顔を取り繕った。

 

 

「コホン…まぁその話はいいですわ……それより昨年は秋以降何かとご活躍でしたけど今年はどうなのかしら?何か抱負のようなものはありますの?」

 

「ホーフ?バイエルン州の?」

 

「だからなんでそうなるのよ!?そこで無理してボケなくていいわよ!」

 

 

 ダージリンが突っ込みを入れるのに合わせ、彼女の身長からすると高い位置にあるラブのたわわの南半球をかなり腕を振り上げる形で手の甲で叩いた。

 聖グロの真っ赤なタンクジャケットに包まれたラブのたわわがユサユサと波打てば、自分の胸元と目の前のアハト・アハトを見比べたダージリンはイラっとした顔になった。

 

 

「痛っ!ホーフ、ほうふ…あぁ、抱負ね……」

 

「この脳味噌アメリカ人が……」

 

「バイエルンはドイツでアメリカ関係ないじゃない……」

 

「で?どうなんですの?何かありますの?」

 

 

 腕を組み右の二の腕の辺りを左手の人差し指で苛立たし気にトントンするダージリンが詰問口調で問えば、ラブも小馬鹿にしたような態度でそれに答えた。

 

 

「何寝言言ってんの?そんなのあるに決まってるじゃない」

 

「解ってんなら直ぐ答えなさいよ!」

 

「さっきから何一人でイライラしてるのよ?もしかしてあの日?」

 

「なっ!?そんな訳ないでしょ!全く下品なんだから!」

 

「どっちがよ?油断してりゃ直ぐに人の乳揉むくせに……」

 

 

 腰の両側に手を当てたラブは胸を突き出すと、挑発するように上下に揺すって見せた。

 

 

「お止めなさい!それで──」

 

「当然トップ(全国大会優勝)狙うに決まってるじゃない!」

 

 

 キレかけるダージリンの言葉を遮りラブが言い放てば、一瞬面喰ったような顔をしたダージリンは少し屈んでラブの下乳を見上げながら下卑た笑いを浮かべて言い返した。

 

 

トップぅ(優勝)アンダー(最下位)の間違いではなくて?」

 

「な!ちょっ!?どっちが下品なのよ!?」

 

 

 それだけに止まらずダージリンはラブのたわわのアンダー(最下位)部分に右手の人差し指を突き刺すと、そのまま何度もぷにぷにプッシュし続けた。

 

 

「ちょーっ!おまっ!」

 

「あの二人本当に仲いいのかぁ!?」

 

「Wow!?ダージリンってあそこまで露骨だったかしら!?」

 

「だから目隠しはいいから!」

 

「ふえぇ!?」

 

 

 突然のダージリンの暴走に驚く一同だったが、彼女は尚も止まる事なく突っ走るのだった。

 

 

「相変わらずふざけたサイズですこと…針でも刺したら空気が抜けて少しは萎むかしら……?」

 

「私の胸は風船じゃないわよ!」

 

「ホントかしら?実は毎日空気入れで膨らませてるんじゃないの?」

 

「ちょっと!自分が中華街の肉まんサイズだからって僻まないでくれる!?」

 

「なんですってぇ!?」

 

「肉まんでもおこがましいわ!せいぜいが小籠包ってトコね!」

 

「ムッキ──!」

 

『本当にムッキーって言った!ってかコレの何処が漫才なんだ……?』

 

 

 何処で笑ったらいいか解らないというか笑うに笑えない、それがネタかどうかすらも不明な二人の罵り合いに全員固まっていた。

 

 

「お黙りなさいこの大き過ぎて売れ残った三浦スイカ!」

 

『ぶふぉ!』

 

 

 だが次の瞬間ダージリンの繰り出した切り返しのカウンターに、全員激しく噴出していた。

 

 

「み、三浦スイカぁ!?」

 

「えぇそうよ、夏に三浦海岸に行くとスイカ割り用に道端で売ってる中身スカスカなアレよ!」

 

「だ、だ~じりん!?」

 

「そうそう、先日母港に帰港した際に中華街に食事に行ったら、調理器具のお店に何故かラブのブラを売っていましたわ」

 

「何訳解んない事言ってんのよ!」

 

「私もさすがにおかしいと思ってよく見たら、中華鍋が二つぶら下がっていましたのよ」

 

『ぶふっ!ヤバい!ダージリンが舌好調だ!』

 

 

 目を異様にぎらつかせながら攻撃の手を休める事のないダージリンは、何も言い返せなくなりつつあるラブに対しここぞとばかりに畳み込むのだった。

 

 

「ほんとそっくりでしたわぁ♪何でこんな所にラブのブラがと思って近くに寄るまで気付きませんでしたもの…ククッ……それがまさかの中華鍋だったなんて!」

 

「ダージリン!アンタの目どうかしてんじゃないの!?」

 

「おほほほほ♪何とでもおっしゃい!このブラジャー中華鍋女ぁ!」

 

 

 既に瞳一杯に涙を溜めたラブがプルプルと肩を震わせる姿を前に高飛車に笑い続け、その笑い声は完全に箍の外れた狂気の笑いだった。

 

 

「おい…さすがにヤバくないか……?ラブのヤツはもうマジ泣き寸前だぞぉ……」

 

「あぁ…そろそろ止めさせた方がよさそうだな……」

 

 

 ダージリンの様子に何かおかしなものを感じたアンチョビがまほに耳打ちすれば、まほもまた同様に感じていたらしくダージリンから目を逸らさずに短く答えた。

 

 

「なぁおいダージリン、そろそろその辺で止めにしないとって、うひゃあ!?」

 

「うわ!どうした安斎!?」

 

 

 アンチョビがダージリンを諫めようと立ち上がりかけたその時、何者かに足首を掴まれ彼女はそのままつんのめり隣りに座るまほの上に倒れ込んだ。

 

 

「Why?な~に言ってんのよ~?これからが面白いんじゃな~い♪」

 

「ケイ!オマエなぁ!」

 

 

 まほのたわわに顔からダイブして打ち付けた鼻を押さえながら彼女の足首を掴んだまま無責任に笑うケイをどやし付けるアンチョビだったが、当のケイは自らが持ち込んだサンダース謹製のアメリカン麦ジュースのプルトップを引き起こしプシュッと音を立てると、喉を鳴らしながら一気に缶の中身を飲み干し盛大にゲップを吐き出していた。

 

 

「あのなぁ……」

 

 

 ケイのあまりの品のなさに肩を落とすアンチョビであったが、今度は後から起き上がり背後でその様子を見ていたまほが彼女に耳打ちをした。

 

 

「おい、なんかケイのヤツも様子がおかしくないか……?」

 

「なんだって……?」

 

 

 鼻をさすりながら改めてアンチョビがケイの顔を見れば、赤ら顔で半分目の据わったケイは上体をユラユラと揺らしつつ次の缶に手を伸ばしていた。

 

 

「お、おいオマエ──」

 

「カチューシャ様!?」

 

 

 アンチョビもケイの様子がおかしい事に気付き揺れる彼女の肩に手をかけようとした時、ノンナの叫び声と共にお膳やら器の引っ繰り返る音が座敷に響いた。

 

 

「今度はなんだ!?」

 

 

 音のした方を見たアンチョビの目に飛び込んで来たのは力なくくて~っとのびたカチューシャを抱き抱え人工呼吸をしようとするノンナの姿であったが、その表情は気を失ったロリな美少女の唇を奪わんとする変態のそれであった。

 

 

「ふえぇ…ノンナさんの目が怖いよぉ……」

 

「何躊躇してんだぁ?サッサとやっちまえよ~」

 

「ナオミさんまでぇ……」

 

 

 みほの悲鳴交じりの泣き言に続き聞こえて来たナオミの声は呂律が回っておらず、言っている事も何処かオヤジ臭いものだった。

 

 

「一体どうなってんだ……?」

 

「どうなってるって皆地が出ただけですわ…本当に下品な事……フム、やはり黒森峰の方がコクがあって美味(ウマ)いわね……」

 

「アッサム…オマエ……」

 

 

 壇上の二人の暴走に引き摺られるようにおかしくなって来た座敷の雰囲気にアンチョビは眉を顰めていたが、アッサムはそれがどうしたといったふうにそっけなく言い放つと、畳の上で直に胡坐を組み黒森峰とサンダースの麦ジュースを交互にグビグビと飲み比べていた。

 

 

「ちょっと待て、いくらなんでもこれはちょっと変だぞ…ってアレ……?」

 

 

 淑女不在なアッサムらしからぬ言動に不審なものを感じ立ち上がりかけたまほであったが、そのままバランスを崩し尻餅を突いてしまった。

 

 

「ど、どうした西住!?」

 

「いや…ちょっと立ち眩みのような感覚が……」

 

「オイオイ大丈夫かぁ?っとあれれ……」

 

「おっとあぶない!あっ!?」

 

 

 へたり込んだまほにアンチョビが手を差し伸べ立たせようとしたが、まほの手を掴む前に今度は自分でバランスを崩してしまったアンチョビが再びまほの上に倒れ込んだ。

 

 

「か、重ね重ね済まない西住……」

 

「あ…あんざい……」

 

 

 倒れ込んだ処をまほに抱き留められたアンチョビが顔を上げると、すぐ目の前にあったまほの顔は薄っすらとピンク色に上気し潤んだ瞳が自分を見つめていた。

 

 

「あ゛…西住オマエ……」

 

 

 自分を抱き留めた彼女の腕から逃れようとしたアンチョビであったが、どういう訳か身体に力が入らず身を起こすのもままならい様子だ。

 その一方でまほの方もどうやら力の抑制が効かなくなっているらしく、ガッチリとアンチョビを抱き締めて離そうとはしなかった。

 

 

「ハァハァ…あ、あんざい……」

 

「ちょ…西住離せ……」

 

 

 まほの様子から彼女の変なスイッチが入っている事に気付いたアンチョビは何とかその腕の中から逃れようと藻掻いたが、ガッチリとホールドされどうにも身動きが取れなかった。

 

 

『ゴクリ……』

 

 

 必死に抵抗しようとしたアンチョビだったがまほの速攻の前にポジションまで入れ替わり、組み敷かれた彼女にまほが圧し掛かり妖しいギラギラした目付きで見つめていた。

 そしてそんな二人の周りにはいつの間にか寝てしまっているカチューシャ以外の全員が集まり、生つばを飲み込みながらこれから何が起こるのかと邪な期待に満ちた目を向けていた。

 

 

「に、西住止めろ…みんな見てる……お前らも見てないで止めてくれぇ!おいラブ!お前は見ないふりして指の間からガン見してるんじゃない!」

 

 

 名指しされたラブは見てないよとばかりに両手で顔を覆ったままフルフルと首を左右に振って見せたが、赤くなった耳がそれが嘘である事を証明していた。

 そしてアンチョビが絶望的な顔で全てを諦めかけたその時、彼女の叫びが呼び水となりケダモノ達の視線がラブに向いたのだった。

 

 

『エロい……』

 

 

 聖グロのタンクジャケット姿で畳の上にアヒル座りをするラブは、両手で顔を覆った仕草と絶対領域がなんとも扇情的でケダモノ達の残り僅かな理性をいとも簡単に吹き飛ばしていた。

 

 

「え…なに……?」

 

 

 不幸にも両手で顔を覆い指の隙間の狭い視界からアンチョビだけをガン見していたラブは、ケダモノ達の意識が自分に向いた事に気付くのが致命的に遅れていた。

 

 

「お堅く見えて実は聖グロのタンクジャケットのデザインってエロいよな……」

 

「Yes!尤もエロさが際立つのはラブが着てるからってのもあるけどね~」

 

「それを言ったらサンダースのホットパンツなんて、ラブが着用したらそれこそエロ本レベルの猥褻さになるのではなくて?」

 

「失礼ね~」

 

「あなたに言われたくありませんわ」

 

「結局何処の制服やタンクジャケットでも、ラブが着用すれば全てエロくなるのではないですか?」

 

「さすがノンナするどいわね~」

 

「は?アンタ達さっきから何言ってんのよ…あれ……?」

 

 

 漸くラブが気付いた時にはユラユラとゾンビのように上体を揺らすケダモノ達はラブの包囲を完了しており、全員のおかしな目つきに彼女の背中に冷たいものが伝い落ちた。

 

 

「ヒック…細けぇ事は気にすんな……だろ?」

 

 

 どう見てもしらふとは思えぬ赤ら顔のナオミが同意を求めるようにドロリとした視線を巡らせれば、同意とばかりにケダモノ達はにへらっと笑いながらラブに迫って行った。

 

 

「や!ちょ、ちょっと待って!何で私まで!?あ…あらら……どういう事ぉ……?」

 

 

 明確に身の危険を感じたラブは逃げようと立ち上がりかけたが、彼女もまたアンチョビ同様腰砕けな状態で呆気なくケダモノの群れに捕まってしまうのだった。

 

 

「ちょっとアンタ達ホントどうしちゃったのよ!?」

 

 

 群がり緩慢な動きで伸ばして来るケダモノゾンビ相手に防戦一方なラブもその動きにキレがなく、全員揃って普通の状態でないのは明らかだ。

 

 

「ラブ……」

 

「ち、千代美……!?」

 

 

 まほに組み敷かれたアンチョビが直ぐ傍で手を伸ばして来たので彼女もまた同じようにすると、掌を合わせ指を絡めながら弱々しい声で呟いた言葉にラブは目の前が真っ暗になった。

 

 

「お前…やっぱりえっちな身体してるな……」

 

「千代美……」

 

 

 そして二人は指を絡めたままケダモノの波に飲み込まれ、新年の宴は狂乱の宴の時間へと突入して行くのであった。

 

 

「い、いきなりそこぉ!?」

 

「や、やめろ…ダメだダメだそれはダメだぁ……」

 

「だから先っちょコリコリしないでぇ……!」

 

「ど、ドコに手ぇ入れてんだぁ!」

 

「す、吸っちゃらめぇ……」

 

「そんな揉まれたらぁ……」

 

 

 座敷の真ん中ですっかり着衣の乱れた二人が怯えて抱き合う姿に色ボケ重戦車達のリミッターは完全に吹き飛び、ケダモノ隊長西住まほが最後の突撃命令を下した。

 

 

「ぱんつのあほぉ~!」

 

「にしずみぃ!このどあほ!後で覚えてろ!って、あぁん……♡」

 

「なんで新年早々こうなるのよぉ!いやぁん……♡」

 

 

 

 

「何ですかこの有り様は……?」

 

「私に聞かれましても……」

 

 

 少女達が西住家に到着した際軽く挨拶こそしたが、その後は事務仕事に追われていた西住流家元であるしほが様子が気になり西住家女中頭の菊代を伴いコンベンションセンターの座敷を訪れた時には、既にケダモノ達は力尽きあられもない姿で座敷の真ん中で折り重なるように潰れていた。

 死屍累々、そんな言葉がピッタリな光景にしほが眉を顰めたその時、コンベンションセンターの座敷へと続く廊下を走る二つの足音が聞こえて来た。

 

 

『あぁ!遅かったか!?』

 

「何です騒々しい…あら?あなたは確か……それにエリカさんまでどうしたのですか?」

 

 

 怪訝な顔をするしほの視線の先、座敷に飛び込んで来た二人は膝に手を突き肩で息をしている。

 エリカと一緒に座敷に飛び込んで来たのは、大学選抜バミューダの一角を務めサンダースのケイの先輩でもあるメグミその人であった。

 

 

「え…!西住先生!?こ、これは大変失礼致しました!」

 

 

 息は荒いがそこはさすが大学生、メグミは慌てて直立の姿勢を取るとしほに向かい深々と一礼しエリカに目配せすると事情を説明し始めた。

 

 

「じ、実はそこで転がっているケイが今日の新年会を前に、付属の方の新年会で麦ジュースを飲み尽くしたとかで大学のクラブハウスに在庫を分けて欲しいと取りに来たのですが……」

 

「ですが……?」

 

 

 しほを前に何とも気まずそうなメグミに、彼女は抑えた声音で先を促した。

 

 

「はぁ…それで倉庫の方から好きなだけ持って行けと言ったのですが、どうやらその時に間違えて()()()()()()()()も持ち出したらしく……後で補充しようと在庫を確認した者がそれに気付き、私が連絡をしたのですが携帯にでなかったものですから……」

 

「それでこうして駆け付けたと……」

 

「はぁ……」

 

 

 しほが歯切れ悪く答えたメグミから視線をエリカへと向ければ、彼女もまた疲れた顔でアンチョビに覆い被さり潰れているまほを見ながら力なく答え始めた。

 

 

「こちらも似たようなものでまほね…まほさんが自分で新年会用にと麦ジュースの樽を用意していたのですが、その際に間違えたらしくオクトーバーフェストで一般のお客様向けに販売する()()()()()()()()樽を持ち出したようで……」

 

 

 この馬鹿者がといった顔でしほが転がる娘を見下ろしていると、その下で苦悶の表情を浮かべ平べったくなっているアンチョビの懐で彼女の携帯の着信音であるフニクリフニクラが鳴り響き始めた。

 

 

「えぇと……」

 

 

 エリカが困った様子でいると何となく話の展開に察しが付いているらしいしほが目線で出るように促し、恐る恐るアンチョビの懐から携帯を取り出した彼女は液晶の発信者の名を確認していた。

 

 

「ペパロニからね……」

 

 

 意を決したエリカが着信ボタンをタッチすると、耳に当てなくても聞き取れる程元気のいい声で電話の向こうのペパロニが喋り始めた。

 

 

『あ、姐さんっスかぁ?』

 

「そんなにデカい声出さなくても聞こえるわよペパロニ……」

 

 

 やかましそうに顔をしかめたエリカが受け答えをすると、ペパロニが驚いた様子で更に大きな声を出し彼女は一層顔をしかめるのだった。

 

 

『おメェ誰でぇ……ってその声はエリカかぁ?』

 

 

 最初は驚き素っ頓狂な声を上げたペパロニだったが、基本的に細かい事を気にしない彼女はそのまま普通にエリカ相手に話を続けていた。

 

 

『まぁいいや……それより姐さんは電話に出られないっスか?それなら代わりに伝えて置いて欲しい事があるっスけどいいっスか?』

 

「何よ伝えて欲しい事って……?」

 

 

 事此処に至ってエリカも何となく伝言の内容に察しが付いたらしく、能面のような表情になった。

 

 

『いやぁ、宴会用にアンツィオ名物の葡萄ジュースを用意しておくように言われてたんっスけどね、どうもうっかり調理用の本物を渡しちまったらしいんっスわ~。だから姐さんに持って行った葡萄ジュースは飲まないように伝えてといて欲しいんっスよ……そんじゃ頼んだっスよ~』

 

 

 言うだけ言うとペパロニはサッサと電話を切ってしまいエリカは暫し無言で手の中の携帯を見つめていたが、ひとつ小さく溜息を吐いた彼女はそっと携帯をアンチョビの懐に戻すのだった。

 

 

「まぁチャンポンした挙句暴れればこうなるのも当たり前ですね……」

 

「家元……」

 

 

 背後からの声にエリカが振り向けば馬鹿をやった後輩と自分達の監督不行届きに小さくなるメグミを他所に、しほは酔って暴れてマグロと化した我が娘の脇腹の辺りをつま先でツンツンして反応を確かめている。

 

 

「いつまでもこのままにしておいて風邪でもひいたら面倒ですね……菊代、後を頼みますよ?」

 

「はい奥様畏まりました……それにしても懐かしいですね確か奥様の時はすとりっ──」

 

「菊代!余計な事は言わなくてよろしい!それより早くこの状況を何とかなさい!」

 

「はい直ちに……」

 

 

 振り向く事なく立ち去るしほの背に上辺だけ慇懃に一礼した菊代は早々に作業に取りかかると、手始めにカチューシャを小脇に抱え反対の肩にノンナを軽々と担ぎ上げていた。

 

 

「あの…こういう事ってよくある事なんですか……?」

 

「私に聞かれても……」

 

 

 心当たりがあるのか微妙に視線を反らすメグミに、エリカは彼女のその態度を肯定の印と捉えウンザリした様子で力なく首を左右にふるのだった。

 だがこの二人にしても先に立ち去ったしほにしても、菊代が過去の話をしかけた時ケダモノ達の耳がピクリと反応した事には気付いてはいなかった。

 

 

 

 

『う゛ぅ゛…気持ち悪い……』

 

 

 それから暫くして徐々に息を吹き返した者達は、青い顔でコソコソとトイレに駆け込んではリバースを延々と繰り返していた。

 

 

 




昨年は大晦日まで忙しく昨日まではほぼ寝正月してました……。

今年も昨年に続き暫くは忙しい日々が続きますが、
何とか投稿は続けますのでお付き合い頂けると幸いです。

西住にしても厳島にしてもお○には強そうな気がしますが、
彼女達はまだ未○年ですからねぇw


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