13日戦争で滅びるはずだった両雄(新) (空社長)
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「赤い旗は朽ちず」
この世界は我々の世界から認識できず、且つ歴史が違うパラレルワールドである。
冷戦は数度の雪解けを経つつも終結することは無く、幾度の代理戦争が起き、朝鮮半島、インドシナ半島、中東、アフリカ、バルカン半島、ドイツ、そして日本が東西両陣営の軍隊が争う舞台となった。
その後、ソヴィエトが東欧を軛から解放し、ロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦という連合体へと姿を変えても対立は終わらず、やがて両陣営は統合国家を形成し、西側、東側陣営共に世界をほぼ二分する2つの超大国が出来上がった。
───
_A.D.2039年6月1日P.M.4時_
北アメリカ大陸アラスカ
戦車の砲撃、爆弾の炸裂音が響き渡り、二階建ての家屋は砕け散り、高層マンションは地響きを立てながら崩れ落ちる。
銃撃も間髪無く聞こえ、平和には遠い日常である。
三大陸合州国による宣戦布告直後の北アメリカ侵攻は、わずか二日でアラスカの大半を占領したものの、その侵攻速度は停滞しつつあった。
アラスカ州アンカレッジ市にあるエルメンドルフ空軍基地は、アラスカ州唯一の空軍基地ということもあり、ユーラブリカ軍の襲撃を受けて陥落、現在は接収されて侵攻軍の臨時司令部が置かれた。
「同志中将」
北米侵攻軍司令官である男が、参謀から一つの端末が渡される。
「全軍の侵攻速度が低下しているようです、さらにハワイを急襲した第67潜水艦師団は、ハワイの防衛戦力に撃退されたようで」
「やはり二日もたてば、こちらの機甲戦力に相当する部隊を投入してくるか……、ハワイなどは戦争前から予想できたことだ」
中将は手元のコップでコーヒーを飲み、一息つく。
「幸い、この空軍基地を利用しての航空連隊の展開は完了していますので、航空優勢は取れています」
「その航空優勢を生かしたいのはやまやまだが、地の利はコンドミニアム側にある。そろそろ、戦域弾道弾による戦術ミサイル攻撃を行うべきか……敵の地上戦力ごと街を吹き飛ばすぞ」
「はっ」
アンカレッジ前線後方にある戦域弾道ミサイルシステムは、射程内のアメリカ大陸西岸の都市に照準を向ける。
中将が発射命令を下そうとする、その時、司令部周辺の対空レーダーが航空機の接近を通報した。
「同志中将!真東、三時方向より、3機の敵性航空機の接近を確認!F-35系列だと思われます!」
オペレーターが、司令部に入ってきた情報を簡潔にまとめ、報告する。
「ただちに迎撃機を出撃させろ、防空ミサイルも補足次第順次発射だ!」
滑走路より、スクランブル待機していた迎撃機が命令を聞くまでもなく次々に飛び立ち、基地周辺の多連装防空ミサイルシステムは、対空ミサイルを撃ち尽くす。
「なぜ、たった3機で……」
「もしかすると、戦域弾道ミサイルの破壊目的では?」
「予測されるのはそれぐらいだが……」
アフターバーナーを起動し、超音速巡航でアンカレッジ上空高度5000mに侵入したF-35AL3機は、迎撃ミサイルを探知するとすぐに翼下のハードポイントの無人航空機4機を順次射出しデコイとして降下させ、その内1機が多数の対空ミサイルの餌食となる。
F-35AL3機はある程度の距離に分散し、アフターバーナーを切り、ウェポンベイを開放する。
「Drop now.」
その一声ともに、スイッチが押され、3機より筒状の物が落とされる。
筒は、高度3000mまで降下した時点が内蔵されたシステムにより、自壊。その中から現れたのは、先端が鋭く細長い筒であり、分散した破片は1個1個がデコイとして機能、対空ミサイルの追尾を受ける。
一方で筒の方は、重力加速度に伴い、急加速。いつの間にか、対空ミサイルの迎撃不可能距離の内側に入り、そして、地上手前で起爆する。
眩いばかりの閃光が発せられ中将は遅いと思いながらも、無線機に叫ぶ。
「全員、身をかがめ!頭を伏せろ!」
しかし、衝撃音は一切せず、熱さや痛みを感じない、肌にふれる空気の感触も冷たいものだった。
不思議に思った中将は頭を上げると、そこには数十秒前とは変わらぬ風景が広がっていた。
「さっきのは一体……?」
中将が疑問を抱いていると、起き上がった1人のオペレーターが異変に気付く。
「ち、中将!これを───」
その言葉は突然遮られる。黒い影が臨時司令部のすぐ近くに落下し爆発音を上げる。
ユーラブリカ空軍ステルス戦闘機Su-57は大きく損壊し炎を上げ、近くにいた者によってパイロットが救出される中、横たわっていた。
その光景を見て、中将は一つの答えに辿り着く。
(まさか、これは……)
「中将!すべての電子機器が反応しません!先ほどのは……EMP爆弾だと思います」
「……だろうな……くそがっ!」
中将は机に拳を叩きつける。
「同志中将、これからどうしますか?」
「どうもこうも悩む余地はない。この端末にあった報告で、敵前線部隊の数が少なくなったとあった。おそらく、EMPに晒されても活動可能な部隊を残していたのだろう、部隊の現状は、同期が不可能になった以上、直接連絡を取り合うしかあるまい」
「伝令兵を派遣しますか?」
「ああ、降伏にするにせよ、抗戦するにせよ、まずは集結する以外ない、偵察隊の中から人員を選別しろ」
「はっ」
「一切の電波が発されなくなった。ミッションクリアだ、全機帰投する」
EMP爆弾投下後、起爆効果範囲外に待機していた3機は戦果確認を行った。今回の強襲に際しF-35ALにはAAM2発以外の通常武装は搭載されていない為、帰投するしかない。
「恨むなよ、ただ我々は母国の勝利の為に作戦を遂行したのだから」
一人のパイロットが下を見つめながらつぶやく。直後、3機はアフターバーナー無しの最高加速に達し、アラスカ上空を離脱した。
_A.D.2039年6月1日P.M.6時_
北アメリカ大陸東部、アメリカ連邦地域ミシガン州。ミシガン湖とエリ―湖に挟まれた平地で、シカゴとデトロイトの間に一つの巨大都市がある。シカゴとデトロイトを含む大都市圏に属するそれは北方連合国家の中枢が集まるいわば首都であった。
アメリカ合衆国
その巨大都市フィールディングの中心部、政府機関が連なっている中で、一つの巨大施設がある。
地上3階、地下7階という層で構成され、地上よりも地下の方が容量の大きいこの施設は、地上より地下の施設の重要度が高いという内部の構成から戦争等の非常事態に臨時統括指揮所を兼ねることが伺える。
連合安全保障省ALESC内安全保障統合指令室
「F-35AL、ミッションクリア。現在帰投中」
「EMP爆弾の効力継続中。周辺の空軍基地には回避要請を行います」
「敵部隊に動き無し、電波発信も確認されず。敵部隊は完全に沈黙した模様」
「ハワイの損害は軽微、敵潜水艦隊は現在ペトロハブロフスク・カムチャツキー基地へ帰投中の模様」
「アジア戦線の動きは変わらず」
職員が走り回り、オペレーターは戦闘部隊からの報告を簡潔に口に出し、手慣れた動きで戦闘情報を分析室のデータに送り込む。
その騒がしい安全保障統合指令室の奥には、安全保障長官用の別室が設けられていた。安全保障長官シミオン・T・カーは、自分の手元で三、四個の情報端末を起き、目の前に設置されたディスプレイに映された相手の顔を見る。
その相手は、北方連合国家第3代連合大統領で連合政府のトップに当たる、ニコラス・C・アルフォードである。
彼はALESC内に設けられた大統領執務室におり、ALESC内の専用回線で連合政府の全閣僚と繋げている。なお、彼の執務室では、地下にいるという憂鬱な気分を晴らすため、座席の後ろの壁にフィールディングの街並を投影している。
『状況を説明してくれ』
アルフォードが口を開く。その言葉を安全保障長官である自分に向けて話すということは、戦況説明を求めているだろうということは簡単に予想がつく。
「ユーラブリカのアラスカ侵攻軍ですが、精鋭3機によるEMP爆弾投下によって敵部隊はしばらく動くことができないことから、速やかに反攻部隊を編成し、アラスカの奪還に赴く予定です。また、同日ハワイに潜水艦隊の強襲がありましたが、軽微の損害で撃退に成功しています。ただ、ユーラブリカ本土への攻撃は現在不可能に近いです。イラン、ウイグルでは、両軍共に多数の機械化部隊を動員しており、元々のインフラが悪いことも影響し、突破は不可能です。バルト海からの侵攻も計画していましたが、ユーラブリカのバルチック艦隊の攻撃に晒される為、困難を極めます。本土への強襲上陸について検討もしていますが、ユーラブリカが我々と同じような手を使ってしまえば、元も子もありません」
カーの発言にアルフォードは眉をひそめる。その不快感は、カーに向けたものではなく、その報告した内容に向けてである。
『膠着状態か……未だ2日、いやたった2日というべきか。最後の代理戦争から数十年程経っているが、これほどとはな』
「代理戦争とは、規模が比べ物になりません。そもそも両国ともにあれは本腰ではありませんでしたから」
ふむ、と呟きつつ、アルフォードは端末を見つめる。
『地図上に戦略ミサイル潜水艦の配置を載せているということは、安全保障省もそれを覚悟しているということか、核戦争を』
「ですが、やりたくはないものです。一撃で数百万人が吹き飛ぶ爆弾を投げつけあう野蛮な戦争は」
『それは、私も同感だ。核戦争をやるにしても、我々は受け身でなければならない。ユーラブリカから先に核攻撃が行われたという正当性を、後世に残さなければならない』
「確かに先制攻撃は間違いであることは、歴史が証明しています」
カーの発言は、アメリカ合衆国が、他国へ核兵器を譲渡した疑いをかけ、ある国へと戦争を行い、後にその戦争はやるべきではなかったと批判されたことを遠回しに伝えていた。それは、今までの大統領の政策を一通り見てきているアルフォードも理解する。
『あの戦争は、その国を混乱に導いたからな、今では他国の属国となっている始末だ』
アルフォードはそう答え、一息つく。そして、決断を出す。
『先制核攻撃は行われてはならないが、反撃の手段を整えなくてはならない。カー長官、わが国が有する戦略ミサイル潜水艦全艦を展開させろ。また、核搭載型巡航ミサイルを搭載できる攻撃型潜水艦の配備も行え』
「地上配備型弾道ミサイルの展開はどうしますか?」
『かえって、圧力をかけてはまずいだろう。その前に迎撃手段の配備が最優先だ。会議は1時間後、それまでにすべての指令を出しおいてくれ』
「分かりました」
映像回線が閉じられる。カーは命令の多さにため息をつく。が、そう休む暇もなかった。
「長官、
「ただちに作戦を開始。敵の反撃は少ないと思うが、十分注意しろ」
「分かっております、それでは」
■次回予告
緒戦の結果を知った三大陸合州国は実行に移す。
それは世界を滅ぼしかねない代物だった。
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_A.D.2039年6月1日P.M.7時_
ノヴゴロド中央連邦管区トルヴナルスク
モスクワ北東方向、ウラル山脈が東側に眺められる立地に建設された巨大都市。由来も意味も無い名前が名付けられたその都市は、一般人の立ち入りが一部を除き、禁じられているいわば閉鎖都市である。
その都市の地上には、歩道どころか車道すらも見えないが、両者とも地下に敷設されており、建物の行き来は主に地下を通ることとなっている。唯一地上にある道路は軍事車両専用道となっている。
閉鎖都市ではあるが、周辺部の立ち入りは禁じられているというわけでもなく、自然に周辺部の開発も進み、旧首都モスクワを巻き込んだ巨大都市圏を構成している。
そのトルヴナルスクの中心部に、完全に地下に埋もれている施設がある。
その中心付近にある国家保安会議室では、三大陸合州国第2代大統領クプリヤン・イサーコヴィチ・チェルメンコ以下、政府閣僚、合州国軍の重鎮が、集まっていた。
「まずは報告を聞こう」
静かになったところで、チェルメンコは話を切り出す。
「はっ、同志チェルメンコ。まずは連邦保安省から報告を行いたいと思います。アラスカ侵攻作戦についてですが、現在作戦部隊との通信が途絶しており、コンドミニアムによるEMP攻撃が行われたと保安情報部は推測しております。その予測から判断して作戦は失敗したと見ています。また、太平洋艦隊第59潜水艦旅団がハワイを強襲しましたが、これも撃退され作戦は失敗しております」
チェルメンコは報告に眉をひそめ、不快感を露わにし、その視線は既に顔を青ざめた合州国軍の参謀総長ら将官に向けられていた。
「他の戦線については、戦力が拮抗しており、変化を見受けられません」
「膠着状態か……しかし、アラスカ侵攻がうまくいけば、膠着は解けたのかもしれないが……同志参謀総長、意見はあるか?」
チェルメンコは参謀総長に視線を向ける。
「た、確かに現場の作戦指揮がうまくいけば……作戦は成功したことでしょう、同志チェルメンコ閣下。アラスカ侵攻作戦計画は我々参謀本部で十分練られた物であり、予定通りいけば成功していたかと。失敗の原因は、現場指揮がうまくいかなかった事にありましょう」
参謀総長は、遠回しに現場指揮の中将を批判し、作戦計画は完璧だったと主張する。だが、その弁明は、チェルメンコには聞き入れられなかった。
「聞いていなかったか?先ほどの報告を。EMP攻撃、貴官らはそれを想定していたか?」
参謀総長ら作戦計画の責任者は一斉に押し黙る。「図星を突かれた」と、閣僚らが思うには十分な挙動であった。
「図星か……おそらく、EMP等の特殊攻撃類を除き、通常戦闘で作戦案を立てたのだろうな」
再び、参謀総長らは沈黙する。この反応に、沈黙は肯定、とチェルメンコ含めた政府閣僚に受け取られた。
「まあ、良い。責任は後で取らせよう。中央戦略軍、核戦力の状態は?」
「はっ、現在長距離、中距離弾道弾の展開はすべて完了しています。核弾頭については不活性化状態ではありますが、6時間以内に活性化できる用意はしています」
チェルメンコは悩むそぶりを見せつつ、話す。
「では、8時間後に核攻撃第一射を開始するように」
その言葉にほとんどの閣僚が驚愕する。
「同志チェルメンコ!核は人類を破滅させる力を持っていることはご存知のはず!たかが示威行為ではないのか!」
唯一、連邦保安省長官が異を唱える。
「確かにそうだろうな、しかし、勝てば官軍であろう.。冷戦期以降、最大の核保有数を誇る我が国の飽和攻撃でコンドミニアムの対空システムを事実上無力化が可能であろう。ならば、勝つ事は不可能ではない」
「理論上は……しかし……」
連邦保安省長官の言葉は遮られる。
「航空宇宙軍軌道艦隊の状態は?」
「はっ!全艦出撃準備完了しており、核弾頭の積み込み準備も完了しています」
「そうか……戦略投射群を北アメリカ大陸上空に向かわせろ、速攻で首都をつぶす」
「了解……しかし、コンドミニアムも迎撃艦隊を回すと思われますが?」
「何、関心を向けさせるだけの囮だ。運良くば敵首都を落とせればいいのだが」
「はっ!」
その後、1時間に渡り続いた合州国国家戦略保安会議は終わりを迎える。
連邦保安省長官は、大統領に異を唱えたことで、更迭されると思われたが、戦時中の欠員は避けたいチェルメンコの考えにより、参謀総長以下アラスカ侵攻作戦計画立案者とともに、後任人事を進めておくことで保留にされた。
_A.D.2039年6月1日P.M.8時_
北方連合国家首都フィールディング
ALESC連合安全保障会議室
「では、これより
画面を介したものではなく、対面での会議が行われる。
安全保障会議室の中央には巨大な球体のホログラムが浮遊しており、今は緯線経線が書かれているのみであった。
「安全保障長官、報告を」
「はっ」
カーは席から立ち、自分の机からホログラムを操作する。
大陸等の地形が浮かび上がり、アラスカが拡大投影されて別のホログラムに映される。
「まず、ユーラブリカのアラスカ侵攻軍はこちらのEMP攻撃により侵攻を停止。現在はアラスカ方面戦術統合任務部隊で反攻作戦を実行中です」
カーは再びホログラムを変える。
今度はメルカトル図法の世界地図が表示され、海には潜水艦や艦船のマークとともにSSBN、DDG、CGといった呼称が映される。
「次に戦略ミサイル潜水艦、攻撃型潜水艦を、太平洋、大西洋、インド洋各地に展開命令を出しております。また、イージスBMDシステム搭載艦も各地に待機中であります。なお、海軍各任務群は交代で洋上に展開しています」
「そして、地上からの核攻撃手段ですが、まだ展開はしておりません。ですが、いつでも展開できるよう、展開準備命令は発しています」
「結構だ、では……」
アルフォードが話を変えようとして、カーに遮られる、
「偵察衛星からの情報で、ユーラブリカに動きが見られました」
ホログラムはユーラシア大陸に視点を移し、ユーラブリカの領土とみられる図に多くの赤い点が映された。
「偵察衛星からの観測で、この地点で地上発射型弾道ミサイルの展開を確認。また、太平洋、北極海のユーラシア沿海では潜水艦の浮上も確認されており、核攻撃の兆候が見られています」
「奴ら、本気で先制核攻撃を行うつもりか!!」
ある閣僚が怒号を上げる。
「でしょうな、ここまであからさまな展開はそうとしか予想できません」
「宇宙艦隊に対し、ユーラブリカ領内のICBM攻撃を行うしかあるまい、核戦争を引き起こさないためにも」
「了解。……少しお待ちを」
返事を返したところで、カーの電子端末が通話の着信を受け取る。
「……わかった」
通話を切り、アルフォードへと振り向く。
「大統領、緊急警報です。
ホログラムが切り替わり、地球周囲の宙域を表していた。
赤いアイコンで示された15隻の艦影は北ユーラシア宙域から北アメリカ宙域を超えており、間違いなく首都フィールディングを目指している進路だった。
それに対し、こちらの迎撃艦隊は13隻。
「数の差があるが?」
「問題ありません、第一陣が足止めを行っている間に、第二陣計17隻の宇宙軍第3任務部隊が合流します。また、ユーラブリカ宇宙艦隊の編成で、対地攻撃艦が4隻程で、それらの対艦武装は少なめな為、十分戦えます」
「慢心は禁物だ、わかっているな?」
「ええ、もちろんです」
_A.D.2039年6月1日P.M.9時_
大気圏外上空北アメリカ宙域
北方連合国家宇宙軍第5任務部隊
オーランド級航宙巡航艦「サンノゼ」を旗艦とする13隻の艦影は単横陣でユーラブリカ宇宙艦隊を待ち構えていた。
『旗艦サンノゼより全艦へ。艦隊司令官のジェフリー・C・ウェッジウッド空軍少将だ。我々第5任務部隊の任務は接近するユーラブリカ宇宙艦隊を足止めし、運良くば殲滅すること。奴らは先制核攻撃を行おうとしている奴らだ。躊躇はいらん。すべて叩き落とせ』
サンノゼは武器システムを起動、8inch連装戦術レーザー砲2基の内、前甲板の1基をユーラブリカ宇宙艦隊の方へ照準を向け、随伴艦であるカナヴェラル級航宙駆逐艦12隻も武器システムを起動し、5inch単装戦術レーザー砲の照準を向ける。
その時、赤く光る光弾が虚空を貫く。
「艦種識別!」
「識別完了、レニングラード級航宙戦艦アルハンゲリスクと思われます!」
サンノゼのCICに動揺が走る。「アルハンゲリスク」はレニングラード級の二番艦とされる艦で、前甲板に36cm電磁加速砲を搭載するほか、小口径レーザー砲を幾つか搭載しており、装甲も戦艦相応の物を搭載している為、撃破するには一苦労な艦であった。
「いかがします?敵は戦艦級ですので、装甲を盾に押し切られる可能性も」
「……構わん。どうしようにも我々はここから引くこともできん。第二次一斉砲撃の際にアルハンゲリスクへ照準を集中する。全艦砲撃開始!」
司令の一声により、射程内に目標が入った瞬間、8inch、5inchレーザー砲が放たれ、ほぼ同時にユーラブリカ宇宙艦隊からも再装填の終わった36cm電磁加速砲やキエフ級航宙巡航艦*2の15cmレーザー砲が放たれていく。
絵面だけではその相対速度の遅さから動向は遅く見えているようであったが、実のところ双方の艦艇群の速度は超音速航空機並みに発揮されており、命中率の低さに滑車をかけていた。
しかし、例外もある。
「オクシアナ被弾!戦列後方に退避します」
「敵キエフ級2隻に弾着確認!1隻は炎上中!」
「炎上中の艦艇に追い打ちをかけろ!撃てぇ!」
膠着状態であったが、増援が来る分北方連合国家宇宙軍の方が若干優勢であった。
この状態を打破するためか、ユーラブリカ、コンドミニアム宇宙艦隊が互いにミサイルを撃ちだした。
この宇宙空間にて電波などは信用できず、互いが遭遇戦の形をとっていたために戦闘前に誘導レーザーを照射できず、さらに誘導レーザー妨害膜を展開していたためミサイル戦が行えなかった。
だが、一度ミサイル戦が始まれば、互いが降伏するか、残弾尽きるまで撃つこととなり、双方ともに被害艦艇は増加していく。
もちろん、対空レーザーで迎撃はするが、宇宙速度に一度たりとも乗ったミサイルをとらえるのは人間の手ではもちろん無理で、AI制御でも難しいのが実情だった。
そして、主砲による砲撃も絶えず行われ、北方連合国家宇宙軍の増援がたどり着いてもなお、戦闘には終わりが見えなかった。
_同時刻_
三大陸合州国ミサイル発射基地
大気圏外で激しい戦闘が行われている中、地上ではユーラブリカによる先制核攻撃の準備が粛々と進められていた。照準は無論、北アメリカ大陸に定められ、最終チェックへと入っていた。
そして、A.D.2039年6月2日A.M.3時。
予定通り核弾頭は放たれた。
ICBM、SLBM問わず発射されたそれはわずかな時間で大気圏外の低軌道へと到達する。
無論、観測衛星、偵察衛星、広範囲レーダーによってALESC安全保障統合指令室へと通報される。
核攻撃を自動探知したシステムは核攻撃警報とともに、イージスBMDシステム搭載艦に自動的に通報され、迎撃システムが作動する。
「SM-3発射用意!迎撃開始!!」
砲雷長が発射ボタンを押す直前、視界は閃光に包まれる。全てのレーダーは一時的に使用不能になり、乗員らは意識を失うが如く目をつむり続けた。
■次話予告
Country Data Base.登場国家一覧
本作で登場する地球側国家の設定概要をまとめています。
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Country Data Base.地球国家一覧
細かい設定も含んでるので、大まかに見てもらっても大丈夫です。
【目次】
├中華連邦
├
北方連合国家(
首都:
人口:約26億4000万人
概要
地球を二分する二大超大国の一つ。
冷戦時代以降の主に西側諸国を中心とした国々の統一政体。加盟国の自治権はある程度認められていて、その形はNATOの様な集団安全保障機構に似ている。
政治体制は西側諸国の盟主たるアメリカ合衆国の組織機構を採用し、厳密な三権分立制の連邦制国家として整備されていている。
加盟国には戦争などの超法規的事項を除く外交権、憲法に反しない行政・法律、軍事力等のある程度の自由は認められているが、連合政府の方針にそぐわない政策、反アメリカ的行政制度には介入することが決まっている。すべてはパスク・アメリカーナの実現、全世界に自由と平等を
旧西側諸国の軍事力を受け継いでいて、さらに果てしない軍拡によって軍事費は約3兆2000億ドルとなり、名実ともに世界最大の軍事力を有している。
■→盟主
■→加盟国
【盟主】目次に戻る1
首都:
人口:約6億9000万人
概要
北方連合国家加盟国の盟主であり、実質的な中心国家で、北アメリカ大陸連合政府の意思は北方連合国家の意思と同様である。
北アメリカ大陸及び中南米諸国が旧アメリカ合衆国を中心に統合・再編を行い成立した国家で、アメリカ合衆国の政治制度を踏襲している。
政治的盟主であると共に世界経済の中心的立ち位置は今も変わらず、証券取引所では毎日莫大な金額が取引されている。
軍事力は加盟国最大であり、他加盟国を合わせても3倍以上の軍事費によって支えられている。
連合の領域には、コロンビア、エクアドル、ペルーといった南米諸国も含まれている
【加盟国】
アジア連合州
地政学上、三大陸合州国東部軍管区、中央軍管区との交戦を行わざるを得ない前線国家が多く、その為有数の軍事力を持つ国が多い。
また、第一次冷戦終結以降から領土問題が多発した地域でもあり、各国はその刃を研ぎあっていた。
日本国
首都:東京都
人口:約1億900万人
概要
史実と違う点として、ソビエト連邦の傀儡として成立した北海道政権と称される沿オホーツク社会主義共和国が存在しており、事実上津軽海峡を境に冷戦の最前線となっていて、前線国家の因縁として代理戦争を経験している。
朝鮮特需のような突出した経済成長は無かったが、それでも西側諸国第二位のGDPまでのし上がるなど敗戦国のどん底から大きく成長している。前線国家という立場上、アメリカは初期占領方針である民主化から早期に転換した結果、文民統制を受ける名実ともに憲法に明示されている軍隊が存在しており、その軍事力は国力の向上に比例して成長し、軍事費約1200億ドルによって支えられている極東最大の軍事力を有している。
台湾連合共和国
首都:台北市
人口:約1億2300万人
概要
旧中華民国政府が唯一領有していた省であるが、その筆頭格である国民党が存在意義の消滅によって分裂したことで、中華民国という国名から変更されている。
また、現在の領土に大陸領土に広東と福建が含まれている理由としては、第二次日中戦争で中華人民共和国が降伏したことで開かれた講和会議に発端があり、介入したアメリカが広東省の一部、香港、福建省を台湾に割譲させたことにあった。
軍事力は第一次冷戦期から中華人民共和国の侵攻に警戒していたため、中華人民共和国の脅威が増大するのに比例して軍事力を強化し続けた結果、約700億ドルと台湾島の領土に似つかわしくない極東第二位の軍事力を有している。
首都:
人口:約8億4000万人
概要
構成各国は自治区として編入されていて、それぞれ自治区の行政はある程度は自治区首相の裁量に任せられている。
軍事力は第一次冷戦期から成長はしているものの元の国力の低さから、圧倒的な軍事力を有する中華人民共和国に対し、西沙・南沙諸島で劣勢を強いられていた。
軍事費が約510億ドルとなった今でも、大国との差は覆らないが、北方連合国家の駐留軍によってそれを補っている。
リヤド条約連合
首都:リヤド
人口:約1億4000万人
概要
サウジアラビア王国が主導し、イラン共和国、バーレーン、カタール、イエメン、オマーン、アラブ首長国連邦、クウェート、ヨルダンと、産油国を中心に構成されるゆるやかな国家連合で、中東会議機構と呼ばれる中東地域の国際調整機関から発展している。
軍事力は自国開発力に乏しい国が多い反面、オイルマネーを生かしライセンス生産を行うなどの軍備増強を行い、その軍事費は約500億ドルにのぼっている。
北方連合国家加盟国ではあるが、産油国としての国際的影響力を生かし、双方の核戦争が起きたとしても、生存できる可能性が高い戦略を外交的取引により選択している。なお、その方針によりアナトリア連邦と対立している。
ヨーロッパ連合州
第一次冷戦時にはドイツを境に対立が繰り広げられ、両陣営双方が核兵器による殲滅計画を考えていたヨーロッパ。その後30余年の年月により、ヨーロッパの外交は複雑化し、北方連合国家の加盟国は三大陸合州国西部軍管区との交戦を想定し、その刃を研いでいる。
ドイツ連邦共和国
首都:ベルリン州
人口:約8600万人
概要
第一次冷戦時において西側諸国の最前線国家として東ドイツと対立、強力な陸軍を擁しNATO陸軍の片翼を担っていた。しかし、第一次冷戦終結後の緊張緩和時期にて東ドイツの内紛、その混乱による東ドイツからの武力侵攻を発端とした戦争が勃発、西側諸国及びソビエト連邦の代理戦争となり、最終的には西ドイツの勝利に終わる。
戦争終結後、復興費用の抽出の為、財政を圧迫する軍の縮小及び軍の精鋭化を行ってきたが、東側諸国との対立、北方連合国家加盟後の戦争の可能性が浮かんできたことにより、再び軍拡を開始し、緊張緩和時期には約500億ドルだった軍事費は現在、約720億ドルと大幅に増大しており、省人化のはかられた陸軍戦力を擁している。
グレートブリテン=アイルランド連合王国
首都:ロンドン
人口:約7200万人
概要
NATOにおいてアメリカに次ぐ地位を有し、西側欧州諸国の中で数少ない核保有国である。
第一次冷戦終結以降、イギリスとアイルランドは互いに北アイルランドの問題で揉めていたが、やがて両国は双方の謝罪によって和解。北方連合国家加盟前に国家統合プロジェクトを開始し、アイルランド政府をイギリス政府と同等の権限を持つ国と取り決め、北海及び大西洋にて存在感を増した。
軍事力に関しては、北アメリカ大陸連合には及ばないが、世界各地に多数の海外領土を抱えていることから軍事費約860億ドルで支えられる迅速な海外展開部隊による世界的な戦力投射能力を有する。核兵器保有国でもあり主に潜水艦戦力が核兵器運用の任に当たる。
イベリア国家連合
首都:マドリード
人口:約6500万人
概要
イベリア半島のスペイン王国及びポルトガル共和国の2カ国で構成され、イベリスモ思想を由来とするイベリスモ協定に基づき国家連合として成立し、カスティーリャ王国以来のイベリア半島統一国家が誕生した。
王室に関してはスペイン国王がポルトガル国王を兼ねることによる同君連合制を構築し、政治体制はスペイン王国から継続して議会君主制を採用している。
軍事費は約700億ドルと、軍規模は大国には劣るが、複数の軽空母と強襲揚陸艦、ドイツに次ぐ戦車部隊数、海兵隊を有し、局地的な戦力投射能力を有し、地域大国相応の実力をもつ。
イタリア共和国
首都:ローマ
人口:約6100万人
概要
第二次世界大戦末期に戦争継続を望む政府派・終結を望む国民派・在伊ドイツ軍の三つ巴の内紛が発生し、第二次世界大戦史上3発目の核兵器が使用される。イタリアは海岸線のリミニから北部のコモを繋ぐラインを境にイタリア共和国とヴェネツィア共産主義国に分断された後、大戦終結から数十年たたないうちに半島統一戦争が勃発しイタリア共和国に統一されている。軍事費は約380億ドルで陸戦を他加盟諸国に委任し、海軍、空軍の拡大を行っている。また過去の戦争のトラウマにより反戦意識が高くアメリカ軍を忌避している為、政府が容認しているアメリカ軍基地に関して反対する国民が多い。北方連合国家準加盟国ではあるが、三大陸合州国との秘密条項により中立国であることが定められている。
ネーデルラント連邦
首都:ブリュッセル首都圏
人口:
概要
ベルギー王国とオランダ王国の共同君主制統合国家で、ルクセンブルク大公国も参画している。政治体制は立憲君主制であり、両国王及び大公には国家元首として議会で可決された法案の署名などの補助的立法権が認められ、ネーデルラント連邦の全権を担う大統領を任命する。
ネーデルラント連邦は当初中立を宣言したが、中立を二度も踏みにじられた過去や北方連合国家の圧力、集団安全保障体制の放棄に対する反対意見などで北方連合国家加盟を決定している。
軍事費は約160億ドルと軍事力は低いものの、
南アメリカ連合州
北アメリカ大陸連合に最も近い上に、三大陸合州国南アメリカ軍管区との交戦が予想され、確実に南北アメリカ大陸より敵勢力を排除する為、南アメリカ州の加盟国には多大な軍事支援が行われている。
ベネズエラ共和国
首都:カラカス
人口:約3000万人
概要
北方連合国家南アメリカ州の加盟国であり、北アメリカ大陸連合の事実上の属国である。第一次冷戦終結以降の原油価格の暴落によって経済が崩壊、内戦状態に陥り、アメリカ合衆国の軍事介入で内戦が終結した歴史がある。政府軍、国民、民族主義などの第三勢力との激しい内戦で国土は荒廃、経済はアメリカからの援助を受けないとまともに維持できない為、事実上の属国となった。
現在は国力を徐々に回復しつつあり、国の財源を石油資源から金融・ITへと転換しつつある。アメリカの軍事介入の結果、北東部の大半や西部の海岸などに住む住民がベネズエラ国家警備隊によって追い出された上で土地が安く買いたたかれ、国土の32%が北方連合国家南方軍のマラカイボ海軍基地やスクレ野戦訓練場など多数の基地に成り代わっている。
チリ共和国
首都:サンティアゴ
人口:約2000万人
概要
北方連合国家南アメリカ州における主要加盟国で、南米西岸を押さえる要として連合政府が多大な軍事支援を行っている。
隣国との領土問題を抱えてる国であり、北アメリカ大陸連合は加盟における最低条件として、ボリビアとの国交回復、友好的外交関係の構築を提示し圧力をかけていた。チリ政府としては三大陸合州国に加盟する選択肢はあったものの、チリ政府は結局提示条件を飲み、アントファガスタ州をボリビアへと返還し、国交正常化。飛び地となったアリカ・イ・パリナコータ州とタラパカ州も旧ペルーを吸収した北アメリカ大陸連合へと譲渡し、北方連合国家南アメリカ州へと加盟し、直ちに大規模な財政支援を受けている。
軍事費は約50億ドルであり、特に海軍戦力はボリビアよりも一際規模が大きいものとなっている。
ボリビア多民族国
首都:スクレ/ラパス
人口:約1200万人
概要
北方連合国家南アメリカ州に加盟している立憲共和制国家。建国以来続く不安定な政治情勢により、数度、北方連合国家への加盟申請を断られていたが、近年になって情勢が安定したのを見て加盟が許されている。しかし、天然資源の有効活用が技術的に不可能で国力は乏しく、北方連合国家からの経済援助を受け続けている。
隣国チリとの外交関係は1884年の太平洋戦争以来断交状態が続いていたが、パルパライソ条約によりチリに割譲された全領土が返還され、ボリビアは念願だった海を取り戻し、チリとの国交正常化を果たしている。
軍事費は南アメリカ一の最貧国であるが故に約15億ドルと低く、現在は北方連合国家の無償軍事支援に頼っている。
アフリカ連合州
※北方連合国家、三大陸合州国を含む世界各国で結ばれた『トリポリ協定』で定められた非戦地帯として国家間の戦争は禁止されている。北方連合国家アフリカ連合州には、北方連合国家アフリカ軍顧問団しか無く、加盟各国による平和状態監視が行われている。
〇エチオピア連邦〇ウガンダ・東アフリカ共和国〇タンザニア・ザンジバル連合共和国〇ザンビア汎自由アフリカ共和国〇リビア共和国〇統一ガボンアフリカ中央国家連合〇カメルーン中央アフリカ共和国〇モロッコ王国〇モーリタニア連邦共和国〇セネガンビア国家連合〇カーボベルデ・ギニア自由共和国連邦〇コートジボワール共和国
三大陸合州国(
首都:ノヴゴロド中央連邦管区トルヴナルスク
人口:約22億3000万人
概要
地球を二分する二大超大国の一つ。
第一次冷戦時のソヴィエト連邦旧構成国及東欧の衛星国家等を中心に構成される統一政体。加盟構成国の自治権は少なく、ほとんど完璧に統制された統一国家という印象を受ける。
政治体制は東側諸国の盟主たるソヴィエト社会主義共和国連邦をほぼ踏襲し、事実上の一党独裁である民主集中制の連邦国家。
加盟構成国には外交・軍事の権限はほとんど与えられておらず、行政権のみ地方ごとの状況に加味する程度の自由が認められている。無論、合州国政府に対する反対は許されず、徹底的に抑圧され、言論は常時監視される。
ソヴィエト連邦軍戦力のみならず旧構成国、東欧諸国の軍備を有しており、その軍事費は2兆6000億ドルとなり、世界最大規模の核戦力、宇宙艦隊を有している。
▼→盟主
▼→構成国
【盟主】目次に戻る2
ロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦
首都:ノヴゴロド中央連邦管区トルヴナルスク
人口:約3億4000万人
概要
三大陸合州国の盟主であり、合州国政府と連邦政府を同一とした合州国内における中心国家。旧ソヴィエト連邦より複数地方の自治権を拡大させ再編を行って成立した国で、ソヴィエト連邦の政治制度を受け継いでいる。
ユーラブリカの国力の80%以上を有しており、ユーラブリカ構成国を支配下から脱しないように常時統制を行っている。
東側の盟主とともに社会主義経済の中心的立ち位置でユーラブリカに属する国全ての経済をコントロールしている。
構成国最大の軍事力を有していて、その軍事費は1兆6000億ドルとなっている。
連邦構成体としてロシア・ソヴィエトの他、ウクライナ、中央アジア、カフカース、ベラルーシがいる。
【構成国】
南ユーラシア合州国管区
1890年代以降、アジアへの積極的進出の機会を行ってきた背景があり、第二次世界大戦末期には北海道島、中華人民共和国からの分離独立では東トルキスタン及び満州を傘下へと加えている。
沿オホーツク社会主義共和国
首都:札幌市
人口:約2000万人
概要
西側呼称北海道政権、第二次世界大戦末期にて占領した北海道と旧サハリン州で構成される共和国。西側陣営である日本国と対峙し代理戦争も行っている。不可侵条約を破ったソ連の統制下の為、日本人の心情は悪かったものの、勤勉な性格から北海道の経済は異例ともいえる成長を遂げる。
ロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦より政治、報道など多くの部分で統制を受けているが、社会生活は高水準となっている。
連邦より多くの経済支援を受けていて、人口比で元々の社会保障が充実している分、軍事に多くの投資がなされ、約450億ドルの軍事費でユーラブリカ軍を支える。
リャーニン・アムール社会主義共和国
首都:ブラゴヴェシェンスク
人口:約6000万人
概要
第二次日中戦争の講和会議の結果によって中華人民共和国からの事実上の分離独立によって成立した満州自治共和国を三大陸合州国が吸収、構成国としてアムール州と統合した形。
政治、行政など多くの部分で合州国より統制を受けており、又行政面で中国系の権利が制限されている。
そして、モンゴル系、中国系、ロシア人の民族対立がしばしば起こっているが、共和国政府は見て見ぬふりをしていて、大体ロシア人、モンゴル系を優遇する。
軍事力はかなり制限されていて、その代わりに東部軍管区の部隊が常時駐留、配備している。
ヴォストチェニィ・トルキスタン人民共和国
首都:ウルムチ市
人口:約3000万人
概要
通称東トルキスタン人民共和国。第二次日中戦争の結果、中華人民共和国から分離独立した東トルキスタン共和国が独立後の混乱の最中で、国境を接するロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦の援助を受け、最終的に構成国となっている。
当初国力が乏しかったものの、ロシアの支援を受けて急成長を果たしているが、政治・外交面では合州国政府から統制を受けている。だが、行政面ではほとんど統制を受けておらず、西側の報道に管制がしかれる以外は普段通りの社会生活が送れており、自治区時代と比べ物にならない豊かさに満足している者は多い。
対中華連邦への橋頭堡として多くの軍事支援を受けていて、且つ中央軍管区の部隊が多数駐留している。
モンゴル人民共和国
首都:ウランバートル市
人口:約400万人
概要
1924年の成立以来、人民政府を維持し続けている国。戦間期、第二次大戦、第一次冷戦期にかけてソ連政府から国境を接することもあって激しい政治指導を受けていたが、近年では緩和されている。
第二次日中戦争の結果、中華人民共和国に属していた内モンゴル自治区がアメリカの支援を受けて独立したものの、内モンゴル政府はモンゴルとの統合を望み、ロシアの介入の結果、東部内モンゴルのみがモンゴルへと統合される結果となり、今に至っている。
軍事力は元の国力の低さから軍事費は数パーセントしかなく、国境警備隊のみが存在している。その為、東部軍管区の部隊が常に駐留している。
西ユーラシア合州国管区
第一次冷戦期と変わらず東西対立の最前線となっており、ソ連時代の内紛、政治的安定性の欠如に対する不安は払拭され、安定した社会主義諸国家が形成されている。そして、来る時の為にその刃を整えている。
ドナウ人民連邦
首都:ブダペスト市
人口:約3800万人
概要
第二次世界大戦後、史実と異なり連合国が構想するドナウ連邦体制が実現し、ユーゴスラビアやルーマニア等を除くオーストリア、ハンガリー、スロベニア、チェコスロバキアを領域と定められた。筆頭格たるオーストリアにて共産主義政権が樹立したことにより、ドナウ人民連邦は共産圏へと加入を果たし、東欧にて存在感のある国となっている。
対西側軍事政策として、イタリア方面はかつてはヴェネツィア共産主義国を事実上の盾としていたものの、半島統一戦争にて消滅して以降、対イタリアの増派の必要性に駆られている他、東ドイツの消滅以降は事実上の東西対立の最前線であり、三大陸合州国軍西部軍管区の部隊が駐留している他、軍事費約200億ドルで支えられる軍備を整えている。
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国
首都:ベオグラード市
人口:約2200万人
概要
英雄が少しだけ長生きし、後継者の地位を盤石なものとしたために史実のような分裂状態は起きなかった。だが、ユーゴスラビアの安定とともにソヴィエト連邦も政治経済ともに安定しており、その軍事力を背景にユーゴスラビアにワルシャワ条約機構の再加盟を要求し、その軍事力に抗えないユーゴスラビアは政治的には距離を離しつつもワルシャワ条約機構に再加盟、三大陸合州国の構成国となっている。
軍事力は平和路線を謳っているために軍事費約150億ドルと国家予算に占める割合は低く、ドナウ人民連邦よりも劣っている。外交面では世界大戦に巻き込まれないためにフランス・イタリアと秘密条約を締結し、北方連合国家とは開戦しない方針を固めている。
ギリシャ社会主義国家連合
首都:アテネ市
人口:約1300万人
概要
第二次世界大戦後、史実ではトルコと共に西側諸国の一角に身を置いていたが、エーゲ海での領海問題によって武力紛争となるまでに対立が激化してしまい、アメリカによる東側へ組み入れさせないという意図も含んだ経済支援策は意味をなさず、ソ連の介入無しに社会主義体制へと変貌を遂げ、その他の社会主義国家には見れないその高い政治的安定によってバルカン半島の共産圏という氷山の一角を担う。
その反面、軍事費は約130億ドルと低く、ロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦から軍事支援を受け続けている。また、近年では政治的内紛が起きているといううわさもある。
ルーマニア社会主義共和国
首都:ブカレスト
人口:約2100万人
概要
第二次大戦後、ソ連の圧力により王政が廃止され社会主義政権が成立したことは史実と同様だが、自主独立路線を唱えたことに加え西側との結びつきがあったために東西の緊張緩和時期にはソ連による武力を伴った制裁が行われ、政治機構は停止され、多くの逮捕者を生む事件を引き起こしており、ソ連の指導の下新政権が直ちに組織されている。その後はソ連及びロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦に対し従属的な姿勢を堅持している。
軍事力は上記の『ブカレスト動乱』の際に軍隊のほとんどが解体されたために、国家予算に占める割合がかなり低く、軍隊の代わりにルーマニア国家憲兵が全土の統制と防衛を担当する。
南アメリカ合州国管区
緊張緩和時期に共産圏に取り込んだ地域。北方連合国家の本土に近いが、三大陸合州国の本土からは遠く戦時においての大規模な支援の困難さからほぼ独立国同然の裁量を与えられている。ただし、ユーラブリカの秘密情報機関は入り込んでいる。
ブラジル社会主義合衆国
首都:ブラジリア
人口:約2億3000万人
概要
南米最大面積の社会主義連邦国家。第一次冷戦終結後の民政移管以降、政治家・軍隊の腐敗、貧富の格差拡大などの経済問題悪化によってサンディカリズム型社会主義革命が起こり、州が国と同等の権利を有する合衆国制の社会主義国家に変貌。経済問題を資本主義の延長ではなく、根底からひっくり返した結果、治安機構や軍隊などの大半の腐敗は消滅することになり、ソ連モデルを参考にした新社会主義経済により安定を取り戻している。
軍事力は約400億ドルにおよぶ軍事費によって支えられており、その軍事力で周辺の北方連合国家加盟国に対し圧力をかけている。
なお、アルゼンチンとは統一国家を模索する動きも出ている。
アルゼンチン人民共和国
首都:ブエノスアイレス
人口:約4100万人
概要
アルゼンチンが社会主義国家化したのは第一次冷戦終結以降であり、隣国ブラジルで起こった革命はアルゼンチンにも影響が及び革命運動が頻発化。当時は徹底的な軍縮が行われており、それに異を唱えた軍首脳部と政権野党が結託し与党による経済政策の失敗を機に民心を味方につけて軍事クーデターを引き起こし、幾つもの政治的プロセスの末に社会主義体制を成立させている。なお、その実態は社会民主主義であり、新自由主義による市場経済も捨ててはいなかった。外交面ではブラジルが北方連合国家加盟国に圧力をかけるとは反対に、軍事費がわずか約100億ドルしかないことから軍事力の脆弱なことを理由に、周辺の南米諸国とは中立同盟を結んでいる。
なお、大量に負っていた対外債務は革命後に放棄したために、北方連合国家の加盟国等から反感を買っている。
アフリカ合州国管区
『トリポリ協定』によって国家間の戦争は禁止されている地域で、三大陸合州国の領域であるアフリカ合州国管区は効率的な統治能力の確保を目的に四つの国にまとめられているが、民族間の対立がそれを妨げていて一部では官僚の腐敗も見られる。
〇エジプト・アラブ人民共和国〇人民チャド・アフリカ進歩主義連合〇アフリカ・ナイジェリア人民連邦〇コンゴ人民解放評議会
中立諸国
●→北方連合国家よりの中立国
●→三大陸合州国よりの中立国
オセアニア連邦(Commonwealth of Oceania)
首都:キャンベラ
人口:約3800万人
概要
オセアニア地域のほぼ全域を統一する連邦制国家。
第一次冷戦終結以降のイギリスがアイルランドとの国家統合を始めたのを機に英連邦から離脱し、名実ともに英国から独立したオーストラリアがニュージーランドとともにオセアニア連合国家構想を掲げて連合国家を形成し、その後は南太平洋諸国との連合国家事業を推し進め、オブザーバー参加国であるパプアニューギニアを除き、オセアニア全域の統一国家を誕生させている。
北方連合国家形成時にはオセアニア連邦は成立していたものの、北方連合国家か、三大陸合州国への加盟を支持するグループで連邦の議員層から国民まで二つに二分しており、どちらかにつけば政治的な内紛や混乱は避けられないとし、両陣営に中立を通達している。
軍事費は約330億ドルの予算配分がされ、その軍隊の多くはオーストラリア軍から継承されているのがほとんどである。
バーラト統一連邦共和国(Unified Federal Republic of Bharat)
首都:ニューデリー
人口:約18億人
概要
イランを除く南アジアを統一している連邦制国家。国土に含まれるパキスタン、ネパール、ブータン、スリランカ、バングラデシュ、モルディブの6か国を特別州として政治制度を自治として残しながらも支配下に置いており、下記の事情によって旧チベット自治区を北方連合国家から委託される形で委任統治を行っている。対外的には中立を宣言しているが、北方連合国家とは強い協力関係を築いており、実質的には同盟国といっても過言ではない。また、かつての中華人民共和国、現在の中華連邦とは根強い対立関係があり、中華の行動を常に監視しているほどの警戒を見せている。
その軍事力は高く、中立国の中で数少ない核保有国の一つで、二大超大国を除けばアジア地域で叶う国がないといわれており、軍事費は約720億ドルにも及ぶ。
中華連邦
首都:北京
人口:約10億人
概要
第一次冷戦終結以降に第二次日中戦争を引き起こしたが、中華人民共和国首脳部の予想と異なり、超大国の道を歩み始めていたアメリカ合衆国の参戦を招き、それに臆した首脳部が和平交渉を申し込んだ結果、その講和会議によって、共産党政府の解体、チベット、東トルキスタンの解放、満州自治共和国の建設、厳しい軍備制限などの屈辱的要求がなされ、さらに第二次日中戦争に介入しアメリカの手で叩き潰された朝鮮諸国家の処遇は統治が難しいことを承知で中華連邦政府が領有することも強制され、要求を吞むしかなかった中国はこれ以降アメリカしいては北方連合国家の属国という立場を強いられることとなった。
その軍事力は厳しい軍備制限によって、かつての人民解放軍は見る影もなく、予算から割ける軍事費割合はわずか約100億ドルしかなかった。
アナトリア連邦
首都:アンカラ
人口:約1億7000万人
概要
トルコ共和国を盟主とする連邦制国家で、全加盟国の権利は平等と謳っているものの、加盟しているイラク共和国、シリア共和国、イスラエル国と比べ、トルコ共和国が大きな権力を有しており、軍事・外交から行政権までの統制を行っており、連邦離脱は連邦政府の承諾無しには離脱できないとされている。モサドなどの諜報機関、民兵特殊部隊を吸収しており、諜報作戦能力において二大超大国以外の国を凌駕する。
軍事力は数に頼らない質を重視した編成を行っており、軍事費は約200億ドルと低いながらも最新兵器を配備しており、数値以上の戦力を有する。なお、北アメリカ大陸連合とはかつて|ニュークリアシェアリング協定を結んでいたものの撤回されている。外交では北方連合国家よりではあるが、自前の諜報能力によってリヤド条約連合への不信感を抱いており、中立国どまりとなっている。
首都:ストックホルム第1統合圏
人口:約3000万人
概要
スウェーデン王国、ノルウェー王国、フィンランド共和国、グリーンランド除くデンマーク王国が統合した立憲君主制連合国家である。第一次冷戦終結以降の緊張緩和時期の終わりごろに模索され、成立した国家連合である。『対等であること』を原則としており国家主権に差はなく、連合議会『スカンディナターゲン』の議員は各国議会で選出された議員から四か国平等に選ばれている。なお、政治制度は形式的な盟主であるスウェーデン王国のを参考にしている。
外交では一切の戦争に中立であることを宣言しており、同盟参戦には否定的であるが、実際は北方連合国家に寄っている。また自国の利益が他者の戦争で損害を被るのならば戦争もいとわない姿勢である。軍事費が約100億ドルと低いものの、少数精鋭と防衛戦闘を意識した軍隊となっている。
フランス・コミューン
首都:パリ
人口:約8000万人
概要
史実と同様にイギリスと相反し西側陣営の中で特異な位置を持っていた国だったが、唯一異なる点は海外植民地を自治領として保持し続けてきたことだった。第一次冷戦終結以降に選挙による平和的な共産主義国家への政権移行がなされ、共産化し国名をフランス・コミューンとする。だが、ロシア・ユーラシア社会主義諸国連邦はマルクス・レーニン主義なのに対しフランスはサンディカリズム型の人民主義であるため、友好関係であったとはいえず戦争を望まない方針であるために、三大陸合州国との関係を意識した中立的な外交方針を定めている。
軍事力はアメリカに次ぐ原子力空母保有数を誇るなどの軍事費約800億ドルからなる軍備を保有しており、当然のように核戦力を有している。なお、海外領土は一定の自治権を有しているが『海外統治領域』としてフランス軍の兵站を支える義務がある。
ヴィシェグラード連合共和国
首都:ワルシャワ
人口:約4500万人
概要
966年にヴィシェグラード公国が成立しヴィシェグラードとして西欧世界に認知されており、その後1500年代末にはジグムント3世が反乱の鎮圧に成功してスウェーデンとの同君連合の維持に成功し、さらに1611年のロシアとの戦争時にはモスクワ占領時にジグムント3世が正教徒であるロシア人に寛容な布告を出したために、数年間はモスクワの維持に成功。ヤン3世ソビエスキ王の時代では行き過ぎた地方分権を止めるための改革に成功し立憲君主制を確立させたため、三国分割は無くなり、第二次世界大戦まで国土の維持に成功する。その後は史実通りの歴史を歩み、第一次冷戦終結以降は北方連合国家への加盟を希望していたが、すでに加盟国のドイツ、三大陸合州国盟主であるロシアに挟まれた立地であり、両者ともに信用できなかったために加盟を断念し中立国となる。軍事費は約150億ドルであり、一定レベルの軍備を有する。
南アフリカ統合人民共同体(South Africa integrated People's Community)
首都:プレトリア
人口:約1億6000万人
概要
第一次冷戦終結以降の緊張緩和時期で共産主義勢力による軍事クーデターによって強引な共産化を果たし、その影響でエスワティニ、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビアなどの反共国家からの介入を受け内戦状態と陥るが、レソトを併合しアンゴラ、モザンビークのよる挟み撃ち、エジプト、ナイジェリアからの支援によって共産主義勢力が勝利し、さらにその勢いで介入した四か国を併合、さらに謀略外交によってアンゴラ、モザンビークを併合、マラウイに軍事侵攻して南アフリカ一帯の統一を成し遂げている。
北方連合国家が形成したての頃になって南アフリカの統一事業が完成したために、国内はいまだに不安定であり、国家内部に自治国を形成するも離脱される危険性も秘めている。なおソマリアは南アフリカによって属国となっている。
軍事費はアフリカ諸国の中では比較的高い約65億ドル、外交面では三大陸合州国よりの中立国としている。
■次話予告
Military Data Base.(1)北方連合国家兵器資料
本作で登場する北方連合国家の兵器をまとめた設定となります。
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Military Data Base.(1)北方連合国家兵器資料
随時更新します。
【目次】
海軍■上に戻る■
空母定数20隻*1を含む主要水上戦闘艦艇約500隻を擁する北アメリカ大陸連合が盟主である為、膨大な艦艇数を保有しており、ユーラシア近海を除く全ての海を支配している。
ミサイルの極超音速化に伴い、戦艦の建造も行われている。
『ネブラスカ級戦艦』
〈スペック〉
全長:280m
全幅:34m
吃水:11m
満載排水量:66,000t
主機:蒸気タービン×2・統合電気推進式高熱伝導モーター×4
速力:31knot
兵装:
Mk.9 55口径16inch3連装電磁加速砲3基9門
Mk.50 62口径5inch単装電磁加速砲8基8門
AM-SDL近接防御レーザーシステム×2基
ESSM短距離艦対空ミサイル8連装発射機×2基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.57PVLS×40セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:2機
北方連合国家海軍の主力戦艦。ミサイルの極超音速化に伴い、ミサイルとレーザー兵器に十分耐えながら戦闘が可能な艦艇を求めた結果、本級が建造された。当初は装甲のみを与えて、兵装はミサイルのみというアーセナル・シップ兼ミサイルプラットフォームとして建造される予定ではあったが、三大陸合州国が戦艦を建造するという情報が入り、ミサイルに耐え、且つ敵の重装甲艦を撃破できる性能を求めたため、その容姿はかつて建造されるはずだった計画艦モンタナ級に酷似することとなった。
火力と装甲を重視しつつも、あくまで艦隊に追従可能な速度など総合的な性能を求めており、18inch砲に耐えれる装甲を持つ初期のコンセプト通りの艦艇となった。
量産体制が確立された後、北米含め各地で建造が進み、約30隻が建造された。北方連合国家海軍に配備された他、一部の加盟国海軍にも受領され、さらに一部中立国も輸入する*2程のベストセラーとなっている。
艦級及び一番艦の艦名には、アメリカ合衆国37番目の州名「ネブラスカ」が命名されている。
『オレゴン級重巡航艦』
〈スペック〉
全長:210m
全幅:21m
吃水:7m
満載排水量:17,000t
主機:ガスタービンエンジン×4
速力:33knot
兵装:
Mk.54C 62口径5inch単装
AM-SDL近接防御レーザーシステム×2基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×3基
Mk.57PVLS×164セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:1機
北方連合国家海軍主力重巡航艦。ネブラスカ級や他の艦艇が優先されたため、建造時期は遅れたものの、建造された。当初は中・近距離での近接打撃戦力として設計されたものの、ネブラスカ級が敵重装甲艦を撃破するべく本級よりも高い打撃能力を有したため、設計変更を余儀なくされ、ネブラスカ級のミサイルプラットフォーム案を本級に採用することとなった。
本級は重巡航艦相応の装甲を有し、レーダーやソナー装備も同等な物を装備している。だが、本級は支援打撃艦としての側面が強い。AGSはネブラスカ級の大規模火力支援とは異なり、要所での効率的な火力支援を可能としており、160セルものミサイル発射器には艦対地、艦対艦ミサイルが多く搭載され、ミサイルによる対巡航艦などの遠距離打撃を可能としている。
通常は艦隊運用を前提としているが、迎撃任務も搭載するミサイルの比率を変えれば十分可能であり、艦隊防空能力には疑問が残るが、個艦防空能力は十分にある。
艦級及び一番艦の艦名には、アメリカ合衆国33番目の州名「オレゴン」が命名されている。
『クインシー級巡航艦』
〈スペック〉
全長:180m
全幅:17m
吃水:8m
満載排水量:9,800t
主機:ガスタービンエンジン×2・統合電気推進式高熱伝導モーター×2基
速力:34knot
兵装:
Mk.50 62口径5inch単装電磁加速砲2基2門
AM-SDL近接防御レーザーシステム×1基
25㎜単装機関砲×2基
12.7㎜単装機銃×4門
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.57PVLS×140セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×4基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:3機
北方連合国家海軍の巡航艦。タイコンデロガ級の後継巡航艦として建造されており、タイコンデロガ級が2000年以前の就役で老朽化してきている為、代艦として比較的建造の優先度が高い。
タイコンデロガ級からの改良点として、当初からイージスBMDシステムが搭載され、電子戦にも対応している。さらに、速力が増加し凌波能力の向上もあいまって、展開能力が向上している。対水上戦で多用するVLS及びハープーン発射機の同時発射数もタイコンデロガ級を上回る。
艦級及び一番艦の艦名には、アメリカ合衆国マサチューセッツ州東部の都市「クインシー」が命名されている。
『タイコンデロガ級ミサイル巡航艦』
〈スペック〉
全長:172m
全幅:17m
吃水:7.5m
満載排水量:9,700t
主機:ガスタービンエンジン×4
速力:31knot
兵装:
Mk.54C 62口径5inch単装先進砲システム2基2門
AM-SDL近接防御レーザーシステム×1基(一部のみ)
MK.17 20㎜電磁速射CIWSプロトタイプ×1基(一部のみ)
25㎜単装機関砲×2基
12.7㎜単装機銃×4門
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.41mod.3×122セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
搭載機:2機
本級は最終建造艦の30番艦(史実は27番艦が最後)までが2000年以前に就役しており、現在は13隻が就役している。
2000年以前の就役艦の為、老朽化は否めない。後継艦としてクインシー級の建造が進みつつある現状、最新兵装の搭載は一部の艦に限られており、全艦に搭載されているのは簡易に取り外しが可能な物のみである。このような現状の為、敵主力巡航艦との性能で劣っているが、イージスBMDシステムや防空能力の改修は済ましており、BMD任務や艦隊防空任務は十分こなせる。
『シャイロー級ミサイル駆逐艦』
〈スペック〉
全長:158m
全幅:20m
吃水:7.5m
満載排水量:8,800t
主機:ガスタービンエンジン×2・統合電気推進式高熱伝導モーター×3基
速力:36knot
兵装:
Mk.50 62口径5inch単装電磁加速砲1基1門
AM-SDL近接防御レーザーシステム×2基
25㎜単装機関砲×4基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.57PVLS×96セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:1機
北方連合国家海軍のミサイル駆逐艦。徐々に老朽化が目立ってくるアーレイバーク級の後継艦であり、遠洋の多用途任務戦闘艦として設計された。戦艦及び重巡航艦という二種の打撃艦が存在する中で、アーレイバーク級の初期コンセプトに立ち返ったもの。艦隊防空及び対潜能力を重視している。
ガスタービンエンジンの出力増大等により、速力が大幅に向上している。
艦級及び一番艦の艦名にはアメリカ合衆国テネシー州南西部の地名「シャイロー」が命名されている。
『アーレイバーク級ミサイル駆逐艦』
〈スペック〉
全長:155m
全幅:20m
吃水:6.6m
満載排水量:9,500t
主機:ガスタービンエンジン×4
速力:30knot
兵装:
Mk.54C 62口径5inch単装
Mk.110 70口径57㎜単装速射砲
25㎜単装機関砲×2基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.41VLSmod.4×96セル
ハープーン艦対艦ミサイル4連装発射機×2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:2機
本級は86番艦まで建造された艦で、1997年以前に就役した艦は既に退役し、1999年以前の艦艇も既に第二線に退き、まもなく退役すると見られている。現在、就役かつ第一線で配備されているのは58隻となる。タイコンデロガ級とは違い、2013年以降の新規建造艦が存在する為、最新装備を搭載する艦艇は多い。イージスBMDシステム改修も済んでおり、約10年は現役にあると見られている。
『リッチモンド級多用途戦闘艦』
〈スペック〉
全長:120m
全幅:24m
吃水:4m
満載排水量:3,200t
主機:ディーゼルエンジン×2・統合電気推進式高熱伝導モーター×1基
速力:46knot
兵装:
Mk.113 70口径57㎜単装電磁速射砲2基2門
AM-DL対舟艇近接レーザーシステム×1基
25㎜単装機関砲×2基
12.7㎜単装機銃×4門
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
NSM対艦巡航ミサイル発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:
無人攻撃機×4機
北方連合国家海軍の汎用戦闘艦。他国海軍からはフリゲート艦とも種別される。
インディペンデンス級のコスト増加に伴い、新たに低コストの多用途戦闘艦として設計されたのが本級である。対正規戦の戦闘力に関しては駆逐艦に及ばず、器用貧乏という印象を受ける。だが、非正規戦では小型且つその速力で追撃し、無人攻撃機で的確に撃破するミッションをこなしており、その実績は高い。対正規戦でも駆逐艦と同レベルのレーダーシステムを生かし、ピケット艦としての任務を与えられており、哨戒任務でも敵艦隊を発見次第通報する役目も持つ。
海軍はフリーダム級の建造を中断させてまで、リッチモンド級の戦力化を急ぐ等、その性能を評価している。
艦級及び一番艦の艦名にはアメリカ合衆国バージニア州州都「リッチモンド」が命名されている。
『フリーダム級沿海域戦闘艦』
〈スペック〉
全長:115m
全幅:17m
吃水:4m
満載排水量:3,290t
主機:ディーゼルエンジン×2・ガスタービンエンジン×2基
速力:45knot
兵装:
Mk.110 70口径57㎜単装速射砲1基1門
25㎜単装機関砲×2基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×1基
グリフィン対舟艇ミサイル発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
搭載機:2機
沿海域戦闘艦。リッチモンド級の大量発注に伴い、本級は15番艦の建造で終了している。全艦が現役であり、主任務として沿岸警備や哨戒、麻薬取締等を担当している。
リッチモンド級の就役により、間もなく予備役編入されるとみられている。
『アーヴィング・デイ級航空母艦』
〈スペック〉
全長:344m
全幅:78m
吃水:12m
満載排水量:102,200t
主機:H/AMB加圧核融合炉×1基
機関:統合電気推進式高熱伝導モーター×2・蒸気タービン×2基
速力:30knot
兵装:
AM-SDL近接防御レーザーシステム×4基
Mk.113 70口径57㎜単装電磁速射砲
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
ESSM短距離艦対空ミサイル8連装発射機×2基
12.7㎜単装機銃×4門
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
搭載機:110機(常時80機)
航空設備:
電磁カタパルト
アングルド・デッキ
北方連合国家海軍の最新鋭航空母艦。海軍初の核融合炉動力を搭載した艦艇でもあり、現在3番艦まで就役している。
前級から引き続き省人化を進めており、さらに原子炉よりコンパクトな核融合炉を搭載した結果、居住性の向上は元より、搭載機数の増加につながっている。ただし、常時は余裕を持たせるため、搭載数を減らしている。
核融合炉の搭載による発電量の増加は、防空レーザー兵器や電磁速射砲近接砲システム等の搭載によって個艦防御能力の向上に繋がっている。
また、近年のCheap killと呼ばれる、ボート等の小型船が大型艦に損害を与えうる攻撃への対策として、12.7㎜機関銃が搭載されている他、同機関銃を搭載出来うる銃架を各所に設置している。
艦級及び一番艦の艦名には、アメリカ合衆国第47代大統領『アーヴィング・デイ』氏の名前が命名されている。
『ジェラルド・R・フォード級航空母艦』
〈スペック〉
全長:333m
全幅:78m
吃水:12m
満載排水量:101,600t
主機:A1B加圧水型原子炉×2基(内3隻はH/AMB加圧核融合炉×1基)
機関:蒸気タービン×4基
速力:30knot
兵装
Mk.17 20㎜電磁速射CIWS×2基
AM-SDL近接防御レーザーシステム×1基
RAM近距離艦対空ミサイル21連装発射機×2基
ESSM短距離艦対空ミサイル8連装発射機×2基
12.7㎜単装機銃×4門
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
搭載機:95機(常時70機)
航空設備:
電磁カタパルト
アングルド・デッキ
アーヴィング・デイ級の前級で、現在10隻が就役しており、2隻が建造中である。
最新鋭艦のアーヴィング・デイ級が次々と建造されているが、二十年以上は第一線に配備されるとみられている。その理由として、一番艦さえ2017年に就役したもので、議会で予算さえ獲得できれば、全艦を核融合炉に交換できる発展性も持ち合わせている為である。
『ニミッツ級航空母艦』
〈スペック〉
全長:332m
全幅:76.8m
吃水:12m
満載排水量:101,400t
主機:A4W加圧水型原子炉×2基
機関:蒸気タービン×4基
速力:30knot
兵装
Mk.110 57㎜単装速射砲
RAM近距離艦対空ミサイル21連装発射機×3基
ESSM短距離艦対空ミサイル8連装発射機×2基
12.7㎜単装機銃×4門
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
搭載機:95機(常時70機)
航空設備:
蒸気カタパルト
アングルド・デッキ
現在就役している航空母艦の中で最も旧式とされる本級は、6番艦から12番艦の7隻が第一線で就役している。兵装やレーダー設備は整備の際に最新装備に換装しているが、7隻中3隻が2000年以前の就役であり、老朽化が否めない。
さらに全艦がジェラルド・R・フォード級搭載の原子炉よりも旧式のA4W原子炉搭載であり、燃料棒交換を含む大規模整備が25年に一回程度必要になる。
海軍の方針として、コスト削減を目的に、2000年以前の就役艦3隻を炉心交換の時期で予備役編入させ、最新鋭艦アーヴィング・デイ級の建造に今まで整備に使っていたリソースを回したいと考えており、その他の4隻もアーヴィング・デイ級、ジェラルド・R・フォード級が就役次第、順次予備役編入させる方針である。
『コロンビア級戦略ミサイル原子力潜水艦』
〈スペック〉
全長:171m
全幅:13m
吃水:11m
水中排水量:20,800t
主機:S1B加圧水型原子炉×1基
機関:統合電気推進式高熱伝導モーター×1基
速力:水中24knot
兵装:
魚雷発射管×4門
潜水艦発射弾道ミサイル発射器×16基
最新鋭戦略ミサイル潜水艦。設計などは前級とほとんど変化が無いものの、前級の老朽化の問題により建造され、現在3隻が就役している。
前級との変更点としては、機関方式を大幅に変更し、ソナーを新型にした点にあり、その結果前級の二倍の建造コストとなってしまったが、コスト削減努力により、1.5倍程度に抑えている。
計12隻の建造が予定されている。
『オハイオ級戦略ミサイル潜水艦』
〈スペック〉
全長:170m
全幅:13m
吃水:11m
水中排水量:18,750t
主機:S8G加圧水型原子炉×1基
機関:蒸気タービン×1基
速力:水中24knot
兵装:
魚雷発射管×4門
潜水艦発射弾道ミサイル発射器×24基
2000年以前に全艦就役している本級は、13隻が既に退役済で、残る5隻についても就役から30年以上立っているおり、大規模整備の際に延命措置と装備の更新を行っているが、老朽化が否めない。その為、後継艦の就役が順調に進み次第、順次退役していく予定である。
『ロング・アイランド級攻撃型潜水艦』
〈スペック〉
全長:124m
全幅:11m
吃水:9m
水中排水量:8,700t
主機:S1B加圧水型原子炉×1基
機関:統合電気推進式高熱伝導モーター×1基
魚雷発射管×6門
潜水艦発射巡航ミサイルVLS×14基
最新鋭攻撃型潜水艦。前級と違い、電気推進式の機関へと換装し、また魚雷発射管及びVLSの増設によって対潜、対戦闘艦目標への攻撃能力が向上している。
『バージニア級攻撃型原子力潜水艦』
〈スペック〉
全長:115m
全幅:10m
吃水:9m
水中排水量:7,800t
主機:S9G型加圧水型原子炉×1基
機関:蒸気タービン×2基
速力:水中34knot
兵装:
魚雷発射管×4門
潜水艦発射巡航ミサイルVLS×12基
現在40隻近くが就役しており、本級は2000年代からの就役で耐久年数からみてあと数十年の現役配備が可能と分析されており、ロング・アイランド級との共同作戦行動も行われている。
『アサバスカ級電子戦任務艦』
〈スペック〉
全長:172m
全幅:16.7m
吃水:7.5m
満載排水量:7,200t
主機::ガスタービンエンジン×4
速力:31knot
兵装:
Mk.54C 62口径5inch単装
25㎜単装機関砲×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
AN/S-40WAR広域レーダー妨害装置
北方連国家海軍の情報測定艦として建造される。本級はタイコンデロガ級の設計を流用、船体及び上部構造物の一部を残しており、艦橋構造物後方に二つのレドームを設置している。
砲一門及び機関砲を除き、VLS含めた武装を設置していない為、護衛艦は必須であり、単艦の戦闘力は無いに等しい。だが、この艦には強力な電子戦及び通信傍受能力が備わっており、敵の処理能力を超えたレーダー妨害が可能であり、敵の戦域をかき乱す。既に2隻が就役し、1隻が建造中。艦級名には、カナダ連邦地域アルバータ州の都市名「アサバスカ」が命名されている。
『ズムウォルト級特殊攻撃艦』
〈スペック〉
全長:183m
全幅:24.5m
吃水:8.4m
満載排水量:14,800t
主機:統合電気推進式高熱伝導モーター×2基
速力:32knot
兵装:
格納式Mk.50 62口径6inch単装電磁加速砲2基2門
格納式AM-SDL近接防御レーザーシステム×1基
格納式30㎜機関砲×2基
格納式seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×1基
Mk.57PVLS×80セル
格納式Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
北方連合国家海軍特殊攻撃艦。作戦指揮などの運用は北方連合国家特殊作戦軍であるが、管轄は海軍という複雑な立場にある。
建造当時より強化された高度なステルス性により、レーダーには小型漁船程度にしか映らない為、特殊作戦行動に用いられており、様々な攻撃に参加している。CIAの作戦にも協力したことがあり、北方連合国家の裏に半身を沈めている。現在3隻が就役しており、現在追加建造の予定は無い。
『インディペンデンス級特殊作戦艦』
〈スペック〉
全長:127m
全幅:31.7m
吃水:4.3m
満載排水量:3,100t
主機:ディーゼルエンジン×2・ガスタービンエンジン×2基
速力:40knot
兵装:
格納式Mk.113 70口径57㎜単装電磁速射砲1基1門
格納式AM-DL対舟艇近接レーザーシステム×1基
格納式seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×1基
格納式NSM対艦巡航ミサイル発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
北方連合国家海軍特殊作戦艦。速力が高くある程度の輸送能力を有する為、特殊作戦の先遣艦として運用されることがある。運用と管轄はズムウォルト級と同様。ステルス塗装等の改良を施しており、ステルス艦としての運用能力を有しているが、さすがにズムウォルト級程の対レーダー効果は見込めない。
『ワシントン級空域打撃戦闘艦』
〈スペック〉
全長:260m
全幅:36m
吃水:11m
満載排水量:46,000t
主機:HM/AMB加圧核融合炉×1基
機関:統合電気推進式高熱伝導モーター×2基・熱イオンエンジン×2基
速力:36knot(海上)・260km/h(空中)
兵装:
Mk.9 55口径16inch3連装電磁加速砲3基9門
AM-SDL近接防御レーザーシステム×4基
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
Mk.57PVLS×60セル
NSM対艦巡航ミサイル4連装発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
ソナー:
AN/SQ-90複合周波ソナー・対潜戦闘システム
電子戦:
AN/S-35MFEW電波探知妨害装置
北方連合国家海軍の戦闘艦、文字通り空中戦艦である。空を飛ぶものの、空軍とは共同作戦行動を取れない程の低速であるため、管轄は海軍となっている。その外観は従来の水上艦艇とは一線を画しており、艦橋構造物は先進的な設計となっている。現在一隻が就役しており同型艦も数隻建造予定ではあるが、現在海軍は水上戦力の拡充を行っており、就役は未定である。
艦級及び1番艦には、アメリカ合衆国42番目の州名「ワシントン」が命名されている。
『レンジャー級空域巡航管制艦』
〈スペック〉
全長:316m
全幅:87m
吃水:10m
満載排水量:74,000t
主機:HM/AMB加圧核融合炉×1基
機関:統合電気推進式高熱伝導モーター×2基・熱イオンエンジン×2基
速力:34knot(海上)・240km/h(空中)
兵装:
Mk.9 55口径16inch3連装電磁加速砲2基6門(下部)
Mk.57PVLS×6セル
AM-SDL近接防御レーザーシステム×4基
Mk.113 70口径57㎜単装電磁速射砲
seaRAM近距離艦対空ミサイル11連装発射機×2基
ESSM短距離艦対空ミサイル8連装発射機×2基
レーダー:
AN/SPY-4多機能レーダー
搭載機:80機(常時60機)
航空設備:
電磁カタパルト
アングルド・デッキ
文字通り空中空母である北方連合国家の航空母艦。当然ながら航空機搭載能力があるため、空軍と共同作戦が可能であるが、運用の問題から管轄は海軍となっている。外部での駐機の危険性から、駐機スペースを格納庫とともに艦内に収容している。空中空母であるが、対艦兵装も装備する航空巡洋艦として機能を併せ持つ。2番艦以降も建造予定ではあるが、海軍は水上戦力の拡充を行っており、建造開始は未定である。
陸軍■上に戻る■
『M1A3F』
〈スペック〉
全長:9.8m
全幅:3.6m
全高:2.3m
重量:60t
速度:65km/h(整地)・50km/h(不整地)
行動距離:520km
主砲:44口径120㎜滑腔砲M256
副武装:
RWS 12.7㎜重機関銃M2
主砲同軸 7.62㎜機銃M240
装甲:
複合装甲
均質圧延鋼板
エンジン:ADT2000ディーゼルエンジン
M1A2戦車の改良型。主にエンジン系統の足回り部分の改良を行っており、大きい改良点としてガスタービンエンジンからディーゼルエンジンへ変更したことが上げられる。世界各地の戦場に赴くことになる為、インフラが悪い場所では敵の眼前で燃料補給などしてられないという理由で変更された。現在は生産終了し、主に教育部隊に配属されている。
『M1A4/HDE』
〈スペック〉
全長:9.9m
全幅:3.7m
全高:2.3m
重量:66t
速度:58km/h(整地)・46km/h(不整地)
行動距離:480km
主砲:44口径120㎜滑腔砲M256
副武装:
RWS 連装12.7㎜重機関銃M2
RWS 7.62㎜機銃M240
主砲同軸 7.62㎜機銃M240
装甲:
複合装甲
均質圧延鋼板
エンジン:ADT2200ディーゼルエンジン
M1A3Fのさらなる強化型。さらなる重装甲を施されており、対戦車ミサイル等の攻撃に耐えられるよう中空装甲等を施されており、さらに地雷の爆風を逸らす底面構造をしている。
非対称戦争、特に市街地戦を重視しており、増加装甲を施している他、対人攻撃能力を上げている。M1とメルカバを合わせたようなイメージを持たせる。現在、生産終了しているが、第一線に配備されている。
『M2A1ハワード』
〈スペック〉
『M3A2グラント』
〈スペック〉
『MI1A1エバンス』
〈スペック〉
空軍■上に戻る■
『F-15XAS』
〈スペック〉
全長:20m
全幅:13m
全高:5.6m
空虚重量:14t
エンジン:F110ターボファンエンジン
最高速度:2,560km/h
固定武装:20mmバルカン砲M61A1
兵装:
空対空ミサイル22発or小型誘導爆弾28発
最新のF-15派生型。
最新のデジタル・フライ・バイワイヤを採用したコントロールシステムを有している。
初期の第5世代戦闘機に匹敵するステルス性を付与されているが、改良を続ける現役戦闘機との戦闘には耐えられないため、支援戦闘機という役割で主力のF-35が防空網を完全に排除した後の戦闘に用いられる他、探知等をステルス機に委任したミサイルキャリアーとしての運用も可能。
公式愛称は"セカンドサイレントイーグル"
『F/A-18HIN』
〈スペック〉
『F-22BI』
〈スペック〉
全長:19m
全幅:13.5m
全高:5m
空虚重量:20t
エンジン:F119ターボファンエンジン
最高速度:2,575km/h
固定武装:20mm機関砲M61A2
兵装:
中距離空対空ミサイル6発・短距離空対空ミサイル2発
or
中距離AAM、短距離AAM2発・誘導爆弾×2(もしくは小型誘導爆弾×6)
旧式化が否めないF-22の最新改修型。
高コストな為再生産はされていないが、現代航空戦に耐えうるようなレーダーや内部システム等の改修を施している。
愛称は今も変わらず"ラプター"
『F-35AL/BL/CL』
〈スペック〉
全長:15.6m
全幅:10.6m
全高:4m
空虚重量:15t
エンジン:F135ターボファンエンジン
最高速度:2000km/h
固定武装:25mmガトリング砲GAU-22/A
ウェポンベイ内兵装:
空対空ミサイル10発or誘導爆弾2発・空対空ミサイル2発・空対地ミサイル4発
アメリカ空海軍及び海兵隊における現役主力のステルス多用途戦闘機。
空戦性能をアビオニクスの改良に留め、対地、対艦攻撃能力を向上させる改修を行っており、より任務が多用途化している。
加盟国のほぼすべてが導入しているベストセラー機となっている。
『F-39A』
〈スペック〉
『F-2E』
〈スペック〉
『F-3A』
〈スペック〉
『A-10D』
〈スペック〉
『AC-130L』
〈スペック〉
『B-1T』
〈スペック〉
『B-3』
〈スペック〉
『B-52J』
〈スペック〉
宇宙軍■上に戻る■
『オーランド級航宙巡航艦』
〈スペック〉
『カナベラル級航宙駆逐艦』
〈スペック〉
海兵隊■上に戻る■
『M1A3SML』
〈スペック〉
『AAVP7A3』
〈スペック〉
沿岸警備隊■上に戻る■
『セルナス級カッター』
〈スペック〉
■次話予告
Organization Data Base.組織資料
本作独自の北方連合国家の組織系統をまとめたものです。
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Organization Data Base.組織資料(随時更新中)
随時更新します。
【目次】
【政府】
┣連合政府
┣連合議会
┣行政府
┗大統領府
【主要行政機関】
┣国務省
┣財務省
┣司法省
┣運輸省
【軍】
【政府】
【政府】■目次に戻る■
◇連合政府
北アメリカ大陸連合の中央政府。北方連合国家の盟主でもあることから、北方連合国家の中央政府及び、政策決定を兼任している。アメリカ合衆国より制度を受け継いでいる為、行政府、立法府、司法府の三つの部門で構成され、三権分立の関係となっている。なお、連合政府の政策は内政を除き、加盟国に影響を与える。
▷連合議会【立法府】
アメリカ合衆国議会制度を継承した下院と上院からなる両院制である。下院の議員数はアメリカ、カナダ、メキシコ連邦地域の各州及び北方連合国家加盟国の人口規模に応じて配分され、470名に上る。上院の議席は北アメリカの48選挙区に2議席ずつ、加盟国一つに2議席ずつ配分され、130議席になる。
〇会計検査院
〇連合議会上院・130議席
〇連合議会下院・470議席
▷【行政府】
〇連合大統領
ニコラス・C・アルフォード
国家元首であり、連合政府の長、そして北方連合国家国軍の最高司令官、首席外交官、政党党首という地位を有する。
大統領選挙は、アメリカ合衆国の制度を流用した間接選挙制度であり、アメリカ連邦地域50州、カナダ連邦地域13州、メキシコ連邦地域32州に選挙人が割り当てられ、大統領を決める。
連合大統領は連合議会の法案に拒否権を発動して差し戻すことが出来るが、連合議会は連合大統領の弾劾の権限を有している。
〇連合副大統領
ライナス・D・ローガン
▷連合裁判所【司法府】
北方連合国家の司法権を握る連合裁判所は最上級の最高裁判所(連合最高裁)と、その下の控訴裁判所、更にその下の下級裁判所からなる。連合最高裁の裁判官は、大統領に任命され、議会上院の承認を受ける。
連合最高裁は控訴裁判所及び州管区の最高裁からの上訴事件を審理し、行政行為に対しては違憲審査権を行使し、無効とすることが可能である。
一般管轄の裁判所の他に、特定の事件に特化した裁判所が幾つかある。
〇連合最高裁判所
◇大統領府
▷
北方連合国家の国家安全保障と外交政策の最高意思決定機関。会議としてのUSCは、大統領含めた主要メンバーで構成される。
【主要行政機関】■目次に戻る■
▷国務省
フレディ・K・スクワイア 国務長官
国務省は北方連合国家の外交政策において連合大統領に助言を行い、本国以外の領域における権益を評価、または勧告して、政策の実施に必要な措置を取る。
加盟国及びその他国々との関係を維持して、外国との条約・協定の交渉を行い、北方連合国家の立場・意思を代弁する役割を担う。
〇国際調整部
〇加盟国調整部
▷財務省
カルヴィン・F・ベネット 財務長官
北方連合国家の通貨歳入管理について責任を負い、国内で流通する紙幣及び通貨の印刷・鋳造、税の徴収も行う。
国債の管理や、銀行の監督、財政政策について助言を行う役割を担う。
〇歳入管理庁
〇国債管理局
〇財務管理部
〇州管区・加盟国金融基金
▷連合安全保障省
シミオン・T・カー 安全保障長官
陸軍、海軍、空軍、海兵隊、宇宙軍の5軍を傘下に収め、連合議会上院の助言と承認を得て連合大統領が任命する安全保障長官が、権限を得て指揮、統制を行う。
内部の安全保障長官府が政策開発、計画、財政、監督等を行い、統合参謀本部は大統領に対して軍事問題について助言する制服組組織である。
〇安全保障長官府
〇
〇陸軍省
〇海軍省
〇空軍省
〇宇宙軍省
〇
〇
〇
〇
▷司法省
デニス・J・アッシャー 司法長官
〇
〇
〇連合保安局
〇加盟国司法部
〇国際司法部
▷運輸省
ブレント・K・レイナー 運輸長官
〇運輸交通安全局
〇
〇連合鉄道局
〇連合海事局
◉
▷
〇国家核安全保障局
〇戦略技術部
〇エネルギー資源部
〇地域電力部
〇
◉
▷内政統括省
ヴィクター・L・オーデン 内政長官
〇商務部
〇農務部
〇包括技術部
〇教育局
〇労働政策局
〇保健福祉部
〇地球環境・地質生物局
〇民間問題担当部
▷
ヘンリー・М・バセット NEA長官
〇緊急事態執行部
〇連合政府緊急事態指揮施設管理部
〇沿岸警備隊
〇運輸保安局
【その他機関】
▷北方連合国家退役軍人省
ジェイラス・K・シンフィールド
▷
▷環境監査庁
▷
▷
〇
▶
▷連合金融市場委員会
▷連合準備制度
〇連合準備制度理事会
〇連合準備銀行
◉
◉
◉
【軍】
〈地域別統合軍〉■目次に戻る■
▷北方軍/コロラド・ピーターソン
北方連合国家の北アメリカ地域を担当する地域別統合軍。北アメリカの防衛を主任務としており、地上戦力は他の統合軍に比べ少ないが、空軍、NORADに属する宇宙軍の規模は大きく、防空体制は万全。さらに戦略兵器の配備数も多い。
▼北方陸軍・第5軍
▼北方空軍
▶第1空軍/フロリダ・ティンダル
▶第11空軍/アラスカ・エルメンドルフ
▽アラスカ軍/エルメンドルフ
>
▽カナダ地域軍
▷中央軍/フロリダ・マクディル
西アジア、特に中東、アラビア半島を担当する地域別統合軍。連合国家形勢以前から宗教が絡んだ紛争が頻発している為、海兵隊を中心とした市街戦、ゲリラ戦に特化した重武装の治安維持部隊を有している。
また、リヤド条約連合のイランでユーラブリカと国境を接するために、中央軍北部軍団は正規戦力が充実している。
▼中央陸軍・第3軍
▼中央空軍・第9空軍/サウスカロライナ・ショウ
▼中央海軍司令部
▶第5艦隊/バーレーン・マナーマ
▷アフリカ軍
▼アフリカ派遣軍事顧問団
▷欧州軍/ドイツ・シュトゥットガルト
ヨーロッパ地域を担当する地域別統合軍。平原地帯が多く東部全域でユーラブリカと国境を接し、三大陸合州国西部軍管区との交戦が予想されている。
多くの機甲部隊と砲兵部隊、近接航空支援機を有する。更にユーラブリカの侵攻に対する阻止砲撃部隊、中距離弾道ミサイル部隊も配備されている。
▼欧州陸軍・第7軍
▶第5軍団
▶第7軍団
▼欧州空軍/ドイツ・ラムシュタイン
▶第3空軍/〃
▶第17空軍/ドイツ・サンバッハ
▼欧州海軍
▶第6艦隊/イタリア・ガエッタ
▷インド太平洋軍/ハワイ・キャンプ=H=W=スミス
インド太平洋地域を担当する地域別統合軍。地域別統合軍の中で最も古く、且つ最大の規模を有する。
なお、インド太平洋軍司令部は最上位の軍事指揮権をもつ。
▼太平洋陸軍
▶第1軍団/日本・座間
▶第25歩兵師団/ハワイ・スコフィールドバラックス
▼太平洋空軍
▶第5空軍/日本・横田
▶第13空軍/ハワイ・ヒッカム
▼太平洋艦隊
▶第3艦隊/カリフォルニア・サンディエゴ
▶第7艦隊/日本・横須賀
▼太平洋海兵隊
▶第1海兵遠征軍/カリフォルニア・キャンプ=ペンドルトン
▶第3海兵遠征軍/日本・キャンプ=コートニー
▷南方軍
三大陸合州国構成国であるブラジル、アルゼンチン及び中立国であるフランス・コミューンの南米ギニア統治領域と国境を接する南アメリカ、中央アメリカ地域を担当する地域別統合軍。森林・湿原・山岳地帯が広がり、以前から違法麻薬取引の温床でもあることから、ゲリラ戦、非正規戦、山岳戦闘に適した部隊が多く所属しており、陸軍内部に麻薬取締部を設置している。また、パナマ運河の防衛も任されていることから対艦ミサイル部隊も所属している。
▼南方陸軍・第6軍
▼南方空軍・第12空軍/アリゾナ・デビスモンサン
▼南方海軍・第4艦隊/フロリダ・メイポート
▷アジア州軍/日本・東京
アジア地域を担当する地域別統合軍。中立国である中華連邦及びバーラトを意識しており、新コンドミニアムの両国がいつ裏切っても対処できるように、又他統合軍の援軍到着まで足止めする戦術を構築している。
▼第8軍
▼アジア州空軍
▶第6空軍/タイ・バンコク
▶第7空軍/台湾・台中
〈機能別統合軍〉■目次に戻る■
▷特殊作戦軍
▽アメリカ陸軍特殊作戦コマンド
▽アメリカ海軍特殊戦コマンド
▽アメリカ空軍特殊作戦コマンド
▽アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド
▷戦略軍
▼陸軍部隊戦略コマンド
▼艦隊総軍
▶海軍弾道攻撃任務群
▼地球規模攻撃軍団/ルイジアナ・バークスデール
▶第8空軍/〃
▶第20空軍/ワイオミング・フランシスコ.E.ワーレン
▼海兵隊戦略コマンド
▷輸送軍
▼航空機動軍団
▶第18空軍/イリノイ・スコット
▼軍隊海上輸送司令部
▼陸軍配備流通コマンド
▷サイバー軍
▼陸軍サイバーコマンド
▼艦隊サイバーコマンド・第10艦隊/メリーランド・フォートミード
▼情報制圧軍団
▶第16空軍/テキサス・ラックランド
▼海兵隊サイバー空間コマンド
▷宇宙軍
クレイグ・B・サッチャー大将
▼|連合航空宇宙防衛司令部/オハイオ・ライト=パーターソン
▶|北アメリカ航空宇宙防衛司令部
▽宇宙戦闘部隊
▶第1任務部隊/太平洋宙域
▶第2任務部隊/西ユーラシア宙域
▶第3任務部隊/アメリカ宙域
▶第4任務部隊/南ユーラシア宙域
▶第5任務部隊/アメリカ宙域 ジェフリー・C・ウェッジウッド少将
▽宇宙作戦軍団/カリフォルニア・ヴァンデンバーグ
▶陸軍総軍
▽アメリカ陸軍予備役コマンド
▽第1軍
▽第4軍
▽第3軍団
▽第5軍団
▶空軍
▽航空教育・訓練軍団
▷第2空軍
▷第19空軍
▽空軍予備役軍団
▷第4空軍
▷第10空軍
▷第22空軍
▶海軍
▽艦隊総軍・第2艦隊
▶海兵隊総軍
▽第2海兵遠征軍
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■次話予告
Episode.1【視界の明けた先】
光が収まった後、彼らが見たのは地球ではな世界だった。
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1th season「接触」
Episode.1【視界の明けた先】
と言っても、Episode.0から見たほうが分かりやすいかもしれません。
_???年?月2日A.M.5時_
惑星大気圏外上空
宇宙軍第5任務部隊
『こちらサンノゼ。11番艦から13番艦状況を報告せよ』
『こちら「アビリーン」、異常無し』
『こちら「ナイトリ―」、応急処置作業を再開、間もなく完了します』
『こちら「イソナミ」、暫定修復作業完了。点検完了しています』
第5任務部隊、及び合流した第3任務部隊は謎の発光現象の後、全艦に警戒態勢の元、現状の状況を報告させた。
参謀の一人が会議室にて、その旨を伝える。
「中将。全艦からの報告が来ました。やはり、衛星通信が使えない以外異常は見当たりません。先の戦闘の損害は、ナイトリーが大破し、イソナミ含む数艦が中破、約6隻が小破との事です。ナイトリーがアルハンゲリスクの主砲弾に被弾した際、一時はどうなるかと思いましたが」
「衛星通信が使えないのは、量子圧縮通信が使用できる我々宇宙艦隊にとって問題ではない。問題なのは、この光景だ」
艦隊司令官ウェッジウッドはカーソルを数度叩き、ホログラムを表示させる。
「この星はなんだ?どう見ても地球では無いだろう?目測でもデータでも、地球の約2、3倍の直径であることは明らかだ。しかも我々が常に眺めていた”月”の姿は無く、代わりに2つの衛星が存在するのだ。この星が太陽系第三惑星の地球ではないことは確実であろう」
ウェッジウッドが再びカーソルを叩くと、次にホログラムに表示されたのは、
その2つの衛星について、第3任務部隊と情報を共有する為に参謀組の1人が詳細な情報を報告する。
「その2つの衛星についてですが、このデータ通り、現状の暫定呼称としてムーン1及びムーン2と命名しています。両者ともレーザー観測の結果、月のように球体でありサイズは僅かに小さいというのがデータとしてあります。正式な名称は少なくとも我々が決める物ではないでしょう、本職に任せれば良い話です」
さらに別の参謀が新たな報告を行う
「さらに問題なのが、前方にいたユーラブリカ宇宙艦隊の行方でしょう。我々と数分前まで交戦していたのにも関わらず、痕跡も残さずに消えているのです。彼らがEMP攻撃を行ったとしても、痕跡を残さずに行方を眩ますのは、現用の技術ではあの短時間で視界外に退避できる訳がありません。ましてや、我々が彼らを殲滅したとしても、残骸が残るはずなのですが、その残骸すら残っていないのです」
「緊急事態には他人よりも自己の安全を優先する以上、ユーラブリカ宇宙艦隊の事は正直どうでも良い。この星から北アメリカからの電波が観測されるということは少なくとも我々は孤立無援ではない可能性が高いということだ。無論、なぜこの星に北アメリカ大陸があるのか疑問が残るが、今のところはさしたる事ではない。そもそも我々軍人がなぜこうなったのかという原因に辿り着けるわけがない、我々はあくまで事実確認のみを行えばいい」
ウェッジウッドはそう結論を付けて会議を終わらせた後、現状の判明している情報を整理し
「レーダーに反応、艦隊右後方より8隻の艦艇が接近しつつあります、IFFは……ユーラブリカです!」
「総員戦闘配置……!、ただし撃つな」
ウェッジウッド含む将官らは直ちに
「ロストフ級か……新鋭艦を鹵獲できるのは幸いだな、さて、通信を繋げよう」
25cm連装砲2基搭載するロストフ級航宙巡洋戦艦*1と呼ばれる艦影を眺めつつ、その艦に対し、あらゆる周波数で呼びかける。
そして、すぐに返答が返ってきた。その際にウェッジウッドがロシア語を上手く話せない事を危惧したが、それは杞憂に終わった。
『こちら、三大陸合州国航空宇宙軍軌道戦闘群別働艦隊、第23宙域艦艇大隊司令官アリスタルフ・ガヴリーロヴィチ・ユーコフ空軍少将です。本艦隊、旗艦「ノボクズネクツ」以下8隻は現在、武器システムをロックしています。本国と通信が途絶し、路頭に迷った我々にとって貴艦隊と遭遇できたのは幸運です。我々は貴艦の指示に従います』
ウェッジウッドにとって驚きだったのは、ユーコフがロシア語混じりではあるものの流暢な英語を話していたことだった。
ウェッジウッドは視線を僅かにずらし、第23宙域艦艇大隊の武器システムがロックされている事をモニターで確認する。
「北方連合国家宇宙軍第5任務部隊司令官ジェフリー・C・ウェッジウッド宙軍中将です。流暢な英語ですな。まあ、それはさておき、貴艦隊の
ウェッジウッドの情報という言葉には、任務や発光現象の直後の行動等の意味を暗示していた。
ユーコフはわずかに顔を曇らせるが、すぐに表情を戻す。
『ええ、お教えしましょう。我々第23宙域艦艇大隊の任務は、戦略投射群及び軌道攻撃群の混成部隊である第3宙域艦艇旅団、つまり本隊の援護でした。貴艦隊を後背から突くことで半包囲状態を敷く予定でしたが、デブリ帯のルートを選んだ結果、数隻が損傷し、遅れるという失態を犯しています。その後、発光現象の後は、先ほども言った通り本国との通信が途絶、現在の状況となっています』
「ユーコフ少将、我々からもわかっている情報を渡そう。発光現象後、交戦していた艦隊が消滅、移動した痕跡も見られなかった。現在衛星通信が使えないことは、貴官も認識しているとは思うが、これからわかることは全ての人工衛星が消滅しているという説が浮上している。そして、この星は惑星直径が地球の約2,3倍あることから地球ではない事は確実だ。また、北アメリカ大陸はこの惑星上にあることが確認できている」
『つまり、北アメリカ含め我々は別の惑星に?』
「我々はそう考えている」
『ふむ……まあ我々に選べる選択肢は一つしかありませんな、どう状況が移行しようが、我々は貴艦隊に対し降伏します。捕虜の扱いは戦時協定の扱いでお願いします』
その解答を聞いたウェッジウッドは、苦笑を浮かべる。
「降伏か……残念ながら、巡洋戦艦を牽引できる艦艇はいないのでな。地上にて離艦するまでは自らの力でついてきてもらおう。無論、その前にこちらの士官の受け入れを求める」
『了解した』
ウェッジウッドは、ノボクズネクツへと派遣する士官の選別を指示した後、
答えたのは宇宙軍司令官のクレイグ・B・サッチャー大将である。
『ウェッジウッド中将、少し間が空いていたようだが、何かあったかね?』
「帰還後に報告書をまとめる予定ですが、ユーラブリカの艦艇8隻と遭遇、第23宙域艦艇大隊のユーコフ少将からの降伏を受け、戦時条約に基づき、受け入れています。そちらの状況は?」
ウェッジウッドは、別惑星に転移したと思われる事を知っていたが、彼はこの通信の場で言っても混乱を引き起こすだけと考えて口に出さなかった。
尋ねられたサッチャーの顔がわずかに曇る。
『ああ……混乱していると言える。軍に関しては、衛星通信が使えなくとも量子通信が使えるが、民間の方はそうもいかない、『ユニオン・テクノロジーズ』に属する企業らは、社員用に量子回線を一部開放した。だが、それ以外の混乱は必死だろう。他にも問題があり、北米以外に展開する軍との通信は可能だが、GPSは機能不全に陥っていて、現在地が分からないという問題が生じている』
「GPSの機能不全……アメリカとソ連の冷戦前期に逆戻りですな」
サッチャーはため息をつき、こめかみを押さえる。
『あげく、水平線が遠い等の話があって、別の星に転移したという噂も広まりつつある。結局は何が起きたかという情報が不足している。報告書は後でもいいから、わかっている事だけでもデータとして今すぐ送ってくれ』
「わかりました」
無論、送信された情報の中には星の観測データなども入っていて、わずかに動揺と混乱を招いたものの、第5任務部隊分析部による詳細なデータによって、冷静に対処が行われることになった。
_同時刻_
アメリカ連邦地域 コロラド州
ピーターソン空軍基地
淡い朝日が照り付ける中、2機の機体が滑走路へと進入する。
流線型で細長いこの機体は、現在の北方連合国家空軍機の中でも珍しい形状をしており、全身を黒く塗装されている。
機体名称は"SR-72"、愛称は『
その見た目通り、"黒い鳥"という愛称がついた機体は1番機がすでにタキシングを終え、既に離陸位置についており、2番機はまもなくつこうとしていた。
『This is Sparrow1, PetersonControl, requst to take off.』
『PetersonControl, Sparrow1 and 2, Runway2 cleared for take off. Good luck!』
離陸許可だけは迅速であったが、この2機に与えられた命令は通常の作戦では考えられない大雑把な命令、惑星上空を飛行し、北アメリカ大陸以外の大陸の捜索、新たな大陸の発見であり、注意事項も何も無かった。
だが、宇宙飛行士の様な服装に身を包んだパイロットはそれだけ今が緊急事態なのだろうと理解しており、離陸許可を受けた後、スロットルを上げて離陸する。続けて、2番機も安全確認を行った後、離陸。
_???年?月2日A.M.7時_
首都フィールディングU.D. ALESC連合安全保障会議室
「揃ったな。さて会議を始めるが、まず最初に尋ねたいことがある。単刀直入に言おう、先ほど起こったあの現象はいったい何なのだ?」
アルフォードは第一声にそう疑問を提示し、周りを見渡す。
だが、答えを待つ間もなく、アルフォードは話を続ける。
「あの光に包まれた時、私は直感的に核攻撃だと思った。だが、一切熱や痛みも感じ無い事から、明らかに違うことは安易に予想出来る。問題なのは、核攻撃でないのにも関わらず、なぜこの通り衛星通信やGPSが繋がらないのか」
そう言いながら、アルフォードは自分の私用電子端末を見せる。
「だが、まずは
「まずは私から報告させて頂きます」
フレディ・K・スクワイア国務長官が口を開く。
「現在、複数国の在外公館との連絡及び、在米公館と本国間の連絡が途絶しております。通信が確認できたのは、オセアニア連邦、バーラト統一連邦共和国、アナトリア連邦、中華連邦であり、その他の国々とは一切連絡がつながらない状況です。また、北方連合国家加盟国の内、アフリカ連合州に属する国全てとの連絡が繋がらない状況が続いています」
「アフリカ連合州だけか?他の地域は?」
「アフリカ連合州のみで、その他の加盟国との連絡は取れているため問題ありません。ですが、大統領が示したようにGPSが機能しない状況に陥ってるため、各国ともに位置関係が不明であり、貿易を再開する目途が立っていないのが現状です」
その深刻な状況への対応をしなければいけない立場として、スクワイアは大統領の眼前でありながらため息を吐くが、誰も咎めはしなかった。
メルカトル図法の世界地図を映したホログラムはただ大陸等の地形が浮かび上がっているだけで、大きく
「やはり何が起きたのか知りたいものだな、神が本当にいるのなら聞きたいものだな」
「それについて推測ではありますが、安全保障省から回答を、発言してもよろしいでしょうか」
アルフォードの独り言とも思える発言に、カーは他の閣僚が思ってもみなかった発言を行う。
「悩みを解決できると確約できるかね?」
「可能な限り努力しますが、もしかしたら悩みを増やすかもしれません」
「ふむ……まあいい。発言を許可しよう」
カーは、ありがとうございます。と返し、机からホログラムを操作する。
メルカトル図法の世界地図を映していたホログラムは消去され、球体状のホログラムへと変更される。
「まず2時間に行われた偵察飛行による収集データをご覧ください」
球体状のホログラムは複製されて二つとなり、内一つは大陸等の地形を浮き上げる。
その大陸には、見慣れた大陸もあれば、見たこともない大陸も映し出されていた。
もう一つのホログラムには素人には分からないものであるが、大気分析データが表示されていた。
「一つはSR-72による偵察飛行における地上の紫外線、赤外線によるスキャンデータ、もう一つは大気中の成分分析データとなります。なお、偵察飛行に派遣した2機は無事に帰還しています」
カーは一安心させるために、偵察飛行に従事した機体がパイロット共々帰還していることを付け加える。
「偵察飛行の結果としては、まず地上のスキャンデータより北アメリカ大陸以外で国務長官の告げた通信が確認できた国々や地域の大陸の存在が確認しています。ですが、同時に我々が知らない大陸も確認されており、何より1周の飛行距離が今までの約3倍に広がっています。大気中の成分分析も同時に行いましたが、こちらも既存データとほぼ同数値で問題ありません」
続けて再びカーはホログラムを操作する。
そこに現れたのは宇宙軍第5任務部隊から連合航空宇宙防衛司令部へと送信された情報の数々であった。
「次に宇宙軍からの報告を表示します。宇宙軍第5任務部隊が我々がいる星を観測した結果、地球の約2、3倍の直径があることが観測データから明らかとなっています。また、月の存在が確認できず、2つの衛星、便宜上ムーン1、ムーン2と呼称しますが、我々が知らない天体が観測されています。さらにこれは衛星通信の不通に繋がる答えだと思われますが、宇宙軍及び地上からのレーダー等様々な観測手段をもってしても、衛星の存在が確認できておりません。唯一、軌道上の静止軌道ステーションのみ存在が確認されています」
「つまり、我々は別の星に転移したと?」
「ええ、そうなります」
アルフォードは眉を顰めつつ、話を続ける。
「話始めに結論を言われれば、眉唾物として切り捨てていただろうが……ここまで証拠が集まると認めざるを負えないだろうな。軍隊の状況は?」
「ほとんどの地域別統合軍及び機能別統合軍司令部、各傘下の各部隊、領域外に展開中の空軍機、海軍艦船とは衛星通信が使用不能とはなっていたものの、量子圧縮通信によって連絡が取れています。ですが、アフリカ軍及び欧州軍傘下の北欧連合、ヴィシェグラード連合共和国*2に駐留していた部隊との通信が一切繋がっていない状況です。また、通信が繋がった部隊に関しても国務長官の報告と似たようなものですが、GPSが機能しない状況に陥っており、北方軍やインド太平洋軍以外の部隊をまともに動かせる状態ではありません」
ホログラムから表示させる情報も合わせて聞かされたアルフォードは顔をしかめる。
「ともかく現状の回復には衛星通信及びGPSの復旧を急がなければならないな。民間にも混乱が広がらないようにしなければな」
「ひとまず連合通信委員会としては一時的な措置として、国民及び民間メディア向けに特設の量子圧縮通信回線を開放することを協議にて決定しました」
「ああ、それで構わない」
その時、ブレント・K・レイナー運輸長官の元に、職員が駆け寄る。
「何っ!?」
「どうした、何があった?」
咄嗟にアルフォードがレイナーに尋ねる。
「私も信じられないことなのですが……北アメリカ本土の各空港や港に、アフリカ軍の軍事顧問団や北欧及びヴィシェグラートに展開していた部隊の兵士が突然出現したと……空港及び港湾職員より報告がありました……」
聞いた彼らも話が理解できずに困惑し、頭を抱える。
「ひ、ひとまず、その出現した兵士が本当に通信が繋がっていない部隊だったのか、早急に確認を取ろうと思います」
「そうしてくれ。全く……驚かせられることがこれほどあるとはな」
アルフォードは思わぬ重圧にため息を吐く。
「話を戻そう、量子圧縮通信回線の民間向け開放はあくまで一時的な措置だ。衛星通信、何よりGPSの復旧には衛星の打ち上げが急務だ」
「UNASAとしては、1か月後に打ち上げ予定だった保管していたGPS衛星がありますので、軌道計算が完了次第打ち上げる予定ではあります」
連合航空宇宙局長官がアルフォードの疑問に答える。
「その辺は専門家諸氏に任せよう。あとは……貿易だな。ひとまず航路の再設定が重要だ、軍には航路の測量等をお願いしたい。国務長官は先ほどの偵察のデータを中立国含めた加盟国に送信してくれ。ただし、勝手に探索活動を行わないよう厳命した上でだ」
カーと、スクワイアは「分かりました」と答え、アルフォードの提案を了承する。
すると、安全保障会議室のドアが開くや否や、安全保障章の職員数名が駆け込み、耳打ちしながら端末を渡す。
カーを耳打ちされた事項を理解すると、眉をひそめるなどして不快感を表す。
「どうかしたか?」
「ええ……グアム・アンダーセン空軍基地より緊急連絡です。所属不明、見たことも無い機体形状の領空侵犯機が現れました。戦闘機をスクランブルさせたとのことです」
■次話予告
Episode.2【超大国の動向】
異世界国家の存在を知った北方連合国家。
準備を整えて、北方連合国家は動き出した。
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Episode.2【超大国の動向】
_???年?月2日A.M.7時_
太平洋空軍アンダーセン空軍基地
「レーダーに反応!北西十時方向より機影を捕捉!まもなく数分後に防空識別圏に進入します!!」
オペレーターの言葉で、アンダーセン空軍基地司令室内に緊張感が走る。
三大陸合州国との開戦時、さらに遡れば第二次日中戦争時に日本側に立って大国である中華人民共和国へと宣戦布告して軍事介入する前夜の緊迫感に包まれた。
「機体識別は?」
「AI分析によって既存機体と全く一致しません!識別不明です!」
オペレーターの告げた言葉に基地司令官は怪訝な表情を浮かべる。
しかしそれも一瞬な事で、やるべきことを認識し大声で指示を出した。
「
滑走路上に待機中だったF-15XAS”セカンドサイレントイーグル”2機にパイロットが乗り込んでいく。
僅かなチェックを終えて、タキシングをしながら離陸位置へと移動する。
そして、スロットルを上げてアフターバーナーを点火させ、高速で離陸していく。
「未確認機ですが、単機で侵攻してくるとは思えません。おそらく、哨戒機だと思われます」
「……そうだろうな。だが、現実に絶対などあり得ない。心してかかるべきだ」
_
中央世界東方 ベリアーレ海
その上空に地球のジェット戦闘機に似た形状の機体が単独で飛行していた。
地球上のジェット戦闘機とは違い、後退翼が無い代わりにテーパー翼がついており、何より見た目と比べて鈍足すぎる速さだった。
だが、機体に搭乗する当人達は気にすることも無く、悠々と空を飛び続けていた。
「凪いだ海、そして静かな空はいいもんだな」
「何言ってるんですか。任務に集中しませんと」
神聖ミリシアル帝国空軍の制空型天の浮舟、エルぺシオ3の複座仕様に搭乗するパイロットは任務に関係ない発言を言って後ろに座る分析担当に窘められる。
「分かってる。だが、突然出現した島に単機で行かされて、嫌な奴なんていないだろ?…ちと、霧が多くなってきたか」
パイロットは目を凝らし前方を見つめる。
すると、その視界に2つの影ができて段々と大きくなり、やがてエルぺシオ3の両隣を高速で通過した。
「なんだ!?」
「ひ、ひとまず回避行動を!」
助言に従い、エルぺシオ3は降下を開始する。
だが、レーダーで捉え続けているF-15XAS二機は加速を緩めた後、旋回してその後ろを追う。
最高速度を出しているはずのエルぺシオ3を余裕で追い抜き、数度旋回を強いられるが、それだけでもエルぺシオ3に十分な恐怖を与えていた。
「こいつら、速い!!」
F-15XASは呼びかけを一切行わず、ひたすら無言で目標を追い続ける。
やがて既定の防空識別圏から出ようとしないエルぺシオ3に対して発砲する。
命中させず、エルぺシオ3を左右から挟む形で両横を20㎜機関砲弾の雨を走らせた。
「撃ってきた……!」
その恐怖に加えて、一メートルずれたら命中しているという掠めるような正確な射撃を行っているという驚愕も混じった感情が溢れ出る。
「どうしてこいつらは執拗に追ってくるんだ!」
「……もしかして、あの島に近づけさせない為では?」
「それだ!!」
分析担当の言葉にパイロットはハッとした表情を浮かべ、機体を急旋回させる。
「これ以上いたらやられる!あんなとこに突っ込みたくはない!」
パイロットは操縦桿を握り、エルぺシオ3は最高速度に近い速度で本土へと戻る動きを見せた。
その動きを防空識別圏境界線まで追うF-15XASのパイロットが遠目で見つめる。
「目標、進路変更。……しかし、あまりにも遅すぎる……」
『私語は慎め。警戒を怠るな、範囲外に出るまできっちりと監視を続けろ』
「了解」
その後、防空識別圏からエルぺシオ3が脱すると、二機のF-15XASは大きく旋回して帰投する動きを見せる。
しかし、その後ろから別の機体が追尾を始めていた。
『未確認機の帰投先を特定しろ。決してバレるな』
「もちろんです」
その機体はアンダーセン空軍基地に配備されているF-35ALだった。
機外に装備を一切せず、抜群のステルス性を発揮した状態で高輝度遠視カメラからひたすらエルぺシオ3の動きに注視し続けた。
「……見られてる?」
F-35ALパイロットからの鋭い視線に寒気を感じたのか、分析担当が怯えるような表情で口を出す。
それをエルぺシオ3パイロットは寒気を吹き飛ばすように笑い出す。
「何言ってんだ。そんなわけないだろう、後ろには何もいないじゃないか」
「そうだといいですか」
やがてエルぺシオ3は神聖ミリシアル帝国本土へ到達する。
F-35ALは既にエルぺシオ3へ注意を向けるのをやめ、帝国本土の街並みや軍港と思わしき場所等の撮影を開始し、それは滞りなくアンダーセン空軍基地や安全保障省のコンピュータへとデータが送信されていく。
撮影を終えると、踵を返してアフターバーナーを点火させて通ってきた航程を逆戻りしてアンダーセン空軍基地へと帰投した。
_C.C.1635年6月2日A.M.8時_
首都フィールディングU.D. ALESC連合安全保障会議室
引き続きALESC内の会議室で行われている会議では、カー安全保障長官の報告を受けていた。
「……という事です」
一瞬会議室を沈黙が包むが、閣僚らは口々に感想を言い合う。
アルフォードもその1人であり、自分で思考をまとめながら必要な物のみ質問を繰り出した。
「第二次世界大戦前期程度の文明を有すると思われる近代国家か……」
「外観からはそう判断しました。しかし、F-35の探知手段をもってしても、あらゆる電波及び通信が観測されないのが不可解です」
「……我々の知らない別の伝達技術を持っている可能性があるか……」
欲しい情報を得られたと判断したアルフォードは少し考えた後、指示を出した。
「太平洋方面を観測可能なGPS衛星の打ち上げを急がせろ、予定を繰り上げても構わない。接続機器が機能開始次第、艦隊を派遣する」
「武力侵攻、ではなく接触ですか」
「ああ。この出来事が無くとも、兎に角我々はこの星の情報を知らねばならない。その機会が早々に訪れたことに感謝しなければな」
「それでは……」
「それと、呼び掛けは出来ないとしても、発砲はやりすぎだ。今後は向こうが攻撃する兆候がない限り、禁じる」
「承知致しました」
「少しは戦争を忘れて過ごしたいものだ」とアルフォードは小さく呟くが、結果的には誰にも聞こえていなかった。
報告前に行われた会議にて転移後の国内対応もまとめられており、先程の発光現象や衛星通信の使用不能について、即座に国民に向けて北方連合国家は別惑星へ転移した事実が知らされた。
さらに、
GPS衛星の早期打ち上げも公表されたため、各航空会社、運輸交通安全局含めた各国運輸管理局は航路の再策定を行い始めた。
そして、グアム島沖合にて戦闘機同士の遭遇という最悪レベルの印象を与えかねないファーストコンタクトによって初めて接触した中央世界の覇者、神聖ミリシアル帝国でも動きが見え始めた。
_C.C.1635年6月2日A.M.9時_
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
アルビオン城
5大列強の中で列強序列第1位の座を戴く神聖ミリシアル帝国。
帝都ルーンポリスにある皇宮であるアルビオン城では帝前会議が開催されていた。
帝国皇帝ミリシアル8世の視線が向かう先は神聖ミリシアル帝国軍を統括する立場にいるアグラ・ブリンストン国防省長官であった。
「──まだ分からないことは多々ありますが、これにて報告は以上とさせていただきます」
ブリンストンが話し終えると、その場の沈黙は破られ、ざわめきが覆う。
ミリシアル8世が静粛を命じると、ある程度は抑えられたものの、一部官僚同士が話し合う様子が見られた。
それに目も暮れず、ミリシアル8世はアグラに質問を行った。
「本当なのか?」
「はい、パイロットの精神状態には異常が見られなかったため、真実をお伝えするべきと思いました」
嘘をついてる様子は見られない、とミリシアル8世は一目見て判断すると共に、目の前に課題に唸る。
「しかし……ベテラン揃いの本国戦闘団では無く、哨戒隊に属するとはいえ、エルペシオ3を上回る速度を発揮する天の浮舟とは……」
「調査をするべきだな……」
ミリシアル8世に続いて閣僚が感想を言う。
「しかし、このような接触の仕方ではいずれ武力衝突を招きます、いえ向こうが威嚇だとしても撃ってきたことに変わりは無いのですが……何か平和的な接触の仕方があればいいのですが」
ブリンストンが「調査」という言葉に穏やかながら釘を刺しつつ、悩んでるそぶりを見せる。
そこに再びミリシアル8世が発言を行う。
「諸君、余は先の夜が昼のように明るくなった現象とこの事に関連があるように思えてならないのだ。あの時も申したが、昼が夜のように暗くなる現象とは逆なのだ」
「つまり……どこかの国が姿を表したのでしょうか?」
ジョージ・ペクラス外務大臣が必死に頭を悩ませて考えた答えを口にする。
ミリシアル8世は回答など期待していなかったような表情だったが、ぺクラスの答えを聞き感心するような表情に切り替える。
「そうだ、少なくとも余はそう考えている」
「……お待たせしました」
その時、対魔帝対策省の長官が現れる。
その名前はミリシアル8世以外の者は誰もが知り得ず、その素顔も仮面によって隠されていた。
この場にいる誰よりも寡黙な対魔帝対策省長官は一言言うと、定位置へと移動する。
「対魔帝対策省では、このような高速な天の浮舟の開発は行っているのか?」
ミリシアル8世は彼にそう尋ねる。
「……ああ、件の浮舟ですか。実のところ、一切行っておりません」
「そうか……」
ミリシアル8世は少し落胆する表情を浮かべる。
「……ですが、必ずや成果を出して見せましょう」
_C.C.1635年6月4日A.M.10時_
北方連合国家北アメリカ大陸連合フロリダ州
ケネディ宇宙センター
「第一段分離!!第二段分離準備!」
ケネディ宇宙センター第39発射施設からGPS衛星を搭載したロケットが打ち上げられていた。
「第二段も分離!!まもなくです!」
おお、と感嘆する声が各所から聞こえる。
モニターには既にロケット自体は映ってないものの、どこにいるかのレーダー画面とシステムが正常に動いてるかどうかの確認画面が映されており、制御室にいる面々はそこに視線を集中させていた。
「衛星、切り離し成功!!まもなく、周回軌道に移ります」
皆が固唾をのんでその瞬間、オペレーターから嬉しい報告が舞い込むのを待った。
「衛星……周回軌道に乗りました!成功です!!」
その声が聞こえた瞬間、制御室にいる全員が即座に立ち上がり、拍手をしたり抱き合うなどして喜びを分かち合った。
転移後初の衛星打ち上げは軌道再計算に際して、大本の
_C.C.1635年6月5日P.M.6時_
北方連合国家ハワイ州
ハワイ諸島オアフ島ヒッカム統合基地
「まさか……貴方自ら赴かれるとは」
「悪いかね?」
「いえ……」
第17空母打撃群司令官のアルバート・G・フォスター少将は驚きの最中にあった。
その理由は全権代表として赴かれるのが目の前にいるスクワイア国務省長官であったからだ。
向かう先が近代国家の装いをしているのはフォスター少将も知る事実であったが、地球の歴史において近代国家だとしても相手を不快に思わせる国などが存在した例もあり、彼なりの懸念があった。
「……まあ、いいでしょう。我々軍人があなた方の身を守ります」
「頼んだぞ」
そして日を跨いだ6月6日A.M.2時。
「全艦、出港せよ」
アーヴィング・デイ級航空母艦「ジェシー・V・スペンス」を旗艦とし、ネブラスカ級戦艦「ネブラスカ」、「デラウェア」、クインシー級巡航艦「ヒューストン」、「ハンブルク」、シャイロー級ミサイル駆逐艦6隻で構成される第17
行く先は西の大陸国家。
それがこの世界において序列第一位の神聖ミリシアル帝国であることは現時点では知る由も無かった。
_C.C.1635年6月7日_
ヒッカムを発ってわずか約1日後。
ハワイ諸島から西に1000㎞程度の
『こちらヴィベーク04、司令部! ベリアーレ海洋上に11隻からなる不明艦隊を発見! 繰り返す! 不明艦隊発見!』
この報告は『魔写』と呼ばれる写真と共に、ベリアーレ海上空の哨戒を担当する東部方面防空司令部にもたらされ、神聖ミリシアル帝国上層部はこの事実に震撼した。
中央暦1635年6月、
■次話予告
Episode.3【世界最強の動揺】
旧世界においての覇権国家と現世界の覇権国家は遂に接触を果たし、神聖ミリシアル帝国は旧世界の覇権国家に動揺する。
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Episode.3【世界最強の動揺】
【追記】
11/13 19:30現在 お気に入り100に到達しました。ありがとうございます!!
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神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
『不明艦隊接近』という事態に神聖ミリシアル帝国政府は皇帝に判断を仰ぐ為、緊急帝前会議を開催する。
開催場所に選ばれたアルビオン城の会議室では慌ただしさと共に異様な緊張感に包まれていた。
ブリンストンが会議参加者が揃っているか見渡して確認を終えると、ミリシアル8世の方を向く。
ミリシアル8世が頷くと、ブリンストンは早速口を開く。
「パイロットに詳細を説明してもらいましたが、やはり先日の正体不明機と同じ国の可能性が高いと思われます。
哨戒機が近づくと、空母と思わしき艦より機体が発艦してきました。同型機では無いようですが、エルペシオ3を上回る速度を持つ点が共通していました。幸いこの時は発砲すること無く、こちらの哨戒機と間隔を空け様子を見ていたようです」
ブリンストンの話が終わると、場は沈黙に包まれる。
「空母にさえ、エルペシオを超える天の浮舟を搭載しているというのか……!」
ある官僚は世界最強を信じていたプライドを傷つけられ、悔しさを露わにする。
「奴らは一体何だ!?奴らはなぜ艦隊を差し向けるのだ!交渉であれば、もっと少ない戦力だろう?」
セイロス・フェラン東部担当外交部長が怒りを滲ませて激昂する。
プライド高い彼からしてみれば、島へ向かった天の浮舟が追い回された挙句、命中はしていないが撃たれたという事実は、彼の不信感を生むには十分だった。
「詳細は不明ですが……やはり、島へ哨戒機を向かわせたのが要因と思われます。恐らく、我々は彼らの領域内に勝手に踏み込んでしまった……だから、追い返そうとして警告射撃を行ったと考えられます。真相は彼らに聞かねば分かりませんが」
「その対抗策とでも?なんと常識外れだ!」
一部の世界最強を信じて疑わない閣僚からフェランの声に賛同の声が広がる。
しかし、シュミールパオ・ラック軍務大臣が異論を唱える。
「我が国も先進11カ国会議や他国に艦隊をもって威圧しているでしょう?」
「それとは関係ないだろう!初めて接触するのであれば、向こうが礼を弁えるべきだ」
「少なくとも、相手の領域に踏み込んだのは我が国です。相手に非があろうとも、そこだけは認めて頂きたい」
ラックの鋭い視線にフェランは思わず萎縮する。
「して、どう対応するのだ?アグラよ」
「相手に侵攻の意図が無ければ、常識に考えて臨検を行います。しかし、あの規模の艦隊には地方隊では荷が重いでしょう。ですので、カン・ブリッドに寄港中の第1魔導艦隊に対応してもらいましょう」
「カウランか……あの者なら色眼鏡を付けずに判断できるか……しかし、些か発砲行為が気になるものだな」
「陛下……現在向かってきている艦隊は、大型空母1隻、戦艦2隻、巡洋艦2隻、小型艦6隻の構成です、我が国で考えれば戦隊規模に相当する戦力です。エルペシオ3が翻弄されるほどのとてつもなく速い天の浮舟があるのです、他の技術もかなり高いと予測されます。もし対応を間違えば、痛手を被る可能性があります」
ブリンストンの言葉に、ミリシアル8世は不安げに唸る。
だが、頭の中で考えを巡らせたミリシアル8世は即座に決断した。
「アグラよ、助言に感謝する」
「はっ、ありがとうございます」
「第1魔導艦隊に臨検を命じよ、これは絶対だ。勝手な行動は控えよ」
「そう伝えておきます」
神聖ミリシアル帝国東部
カン・ブリッド軍港司令部
「噂のとてつもなく速い天の浮舟を持つ国か……これは気が重いな」
そう不満げに話すのは、第1魔導艦隊司令、レッタル・カウラン海軍中将である。
「ええ。しかし、被害は出ていないとはいえ発砲するとは……なんとも野蛮げな国家ですね」
「そこはまだ分からないだろう。何より、我々は彼らのことを全く知らないからな」
「……そうですな」
カウランはかの国を悪く言う参謀を諌める。
「ひとまず出港準備だ。彼らの艦隊が着くまで一日以上ある、焦らなくていい」
_C.C.1635年6月7日P.M.1時_
北方連合国家海軍第17空母打撃群
旗艦「ジェシー・V・スペンス」
「インド太平洋軍司令部から伝達です。約20隻ほどの艦隊が港を離れこちらへと向かっているのをSR-72が捉えたとの事です」
ハワイ諸島より西に約1500kmの海域。
戦略偵察機が敵の動向を監視しているのには訳があり、現在北方連合国家はGPS衛星及び通信衛星の打ち上げを優先しており、偵察衛星に関しては一基も打ち上げられていなかった。
「力には力か……まあ当然だな」
司令官室にいたフォスターはその報告を受けて独り言のように呟くと、すぐに命令を発した。
「陣形を再編成、戦艦2隻を本艦の前に移動し、駆逐艦及び巡航艦は本艦側方及び後方に移動させろ」
「了解しました。少将はどうされますか?」
「指揮所に移動する。相手も動きだしたということは、洋上で臨検かもな」
ファスターは乱れていた制服を整え、司令官室から出て、
_C.C.1635年6月7日P.M.3時_
神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊
旗艦ミスリル級魔導戦艦「カレドヴルフ」
「は?魔力探知レーダーに反応が無い?」
「はい。もうすぐ探知できるはずなのですが全く……」
その時、カレドヴルフ艦内では1種の異常事態が起こっていた。
彼らが使う魔力探知レーダーに映るはずの影が全く映っていなかった。
当然、カウランは故障を疑った。
「故障では無いのか?」
「そんなことありません!点検したばっかりです!……何より友軍艦艇の反応は全て映っているのです。おかしいと思いませんか?」
カウランは驚きを隠せなかった。
全ての物がこのレーダーに映ると常識として思っていたために、そのショックは大きかった。
そして、目視圏内に入っても魔力探知レーダーには何も映ってはいなかった。
魔力探知レーダーはその名の通り、魔力を有する物を探知する物であり、近距離なら人が有する魔力反応さえ探知することができていた。
しかし、この機に及んで探知できていない事が意味するのは一つだけだった。
「まさか……彼らは魔力を有していない……?一体、何なんだ?」
自分達の常識を超えた存在、これから臨検を行う国家にカウランは恐怖に似た感情を持った。
やがて第1魔導艦隊と第17空母打撃群は互いがはっきりと見える距離まで近づき、半ば呆然としているカウランに参謀が話しかける。
「司令、呼びかけを行ってはいかがですか?」
「……そうだな、拡声魔法機をくれ」
《前方にいる艦隊に告げる。我々は神聖ミリシアル帝国海軍第1魔導艦隊だ、臨検を行うため、直ちに停船せよ。また、所属も明らかにせよ。繰りかえす、直ちに停船し、所属を明らかにせよ。応じない場合は、攻撃も辞さない》
「司令……脅してよろしいのでしょうか?」
「ここで攻撃するような輩であれば、呼びかけを行う前から攻撃しているはずだ。それに、我々は列強だ。引き下がっていては話にならん」
そう言い切るカウランだったが、内心憔悴しており、冷や汗が止まっていなかった。
(頼む、従ってくれ)
カウランが内心祈っている最中、第17空母打撃群は減速を行っていきつつ、拡声器によって返答がされた。
《……こちら
「
「それを明らかにするために、臨検を行うのでしょう?」
「……そうだな」
その後、「カレドヴルフ」は「ジェシー・V・スペンス」に接舷し、カウラン中将自ら臨検に赴いた。
「これは……凄いな」
「第17空母打撃群旗艦、ジェシー・V・スペンスへようこそ」
広大な甲板上へと着いたカウランらは多くの戦闘機が並ぶ光景に感嘆する。
その横で案内役を任された士官に会議室へと案内され、カウランらはスクワイアらの出迎えを受ける。
「ようこそお越しくださいました。私、この使節団の全権代表をつとめております北方連合国家連合政府閣僚の国務長官のスクワイアと申します」
「……神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊のカウランです。失礼ながら、訪問の目的をお尋ねしたい」
カウランの言葉にスクワイア以外の外交官が思わず固まってしまう。
スクワイアも
「目的は国交締結です。しかし、信じてもらえないかもしれませんが、我が国は別世界から転移してきたのです。途方に暮れている中で、偶然あなた方の存在を知り、ここに赴いた次第です」
スクワイアの「転移」という言葉に、カウランらは驚きを隠せなかった。
だが、カウランにはそれ以上に気になる部分が一つだけあった。
「偶然……もしやあの正体不明機は貴国のですか?」
「ええ。あなた方の機体が我が国の防空識別圏に進入したために、追い払うしかなかったのです」
「なるほど……」
カウランは防空識別圏という言葉自体知らなかったが、その字の意味を考えて納得する。
だが、カウランに付き添う参謀は不満げだった。
「しかし、報告によれば撃ってきたではないか!」
「あれは呼びかけを行う手段が無かった為の仕方ない行為でした。あなた方も通信ができない機体が領空侵犯してきた場合は警告射撃ぐらいは行うでしょう?」
スクワイアの返答に参謀は言葉に詰まり唸るしかなかった。
「そういう事情がありましたか……これは失礼しました」
「いえ、突然転移してきた知らない島に偵察を向かわせるのは当然かと思います。発砲はやりすぎであると、我が国の大統領も認識しております」
「そうですか、それでは本国に通信を行いますので、少しお待ちください」
そう言い残し、カウランは下船する。
互いの立場の違いはあれど、神聖ミリシアル帝国と北方連合国家の初の会談は終わり、カウランにとっては警戒心は残っているものの礼を弁えて話せる者達ということで、比較的好印象に映った。
神聖ミリシアル帝国 アルビオン城
「陛下のご推察は正解でした。彼らが自ら転移国家だと明言しました」
開口一番にブリンストンが告げる。
その発言に、会議室内が大きくどよめいた。
「ムーも確か……」
「しかし、あれはおとぎ話ではないのか!」
「実は本当らしい。だが、本当に二か国目の転移国家が現れるとは」
会議室の面々は口々に相談し合ったり、驚いたりする等、その反応は様々だった。
そうしてざわめきが大きくなる前に、宰相が「静まれよ、陛下の御前であるぞ」と発したことで、急に静かとなった。
「彼らは
「ほう……なるほどな」
ミリシアル帝国は納得した反応を見せる。
ブリンストンが告げた内容はどれも正当性があり、この時点でミリシアル8世の警戒度は数段階下がっていた。
それと共に、新たな疑問が浮かび上がったのも事実であった。
「それと、これはカウラン中将の推測に過ぎないのですが、彼らは魔力を持たない可能性があります。一つは魔法通信を行わなかったこと、もう一つはミスリル級の魔力探知レーダーに艦はおろか人の影すら映らなかった事から、答えを導きました」
この答えには流石のミリシアル8世も驚くしかなかった。
それと共に魔力を持たずして成長した高度な文明に興味が湧いていた。
「陛下、いかが致しますか?」
ぺクラスがミリシアル8世に対応を尋ねる。
外務大臣の職にある彼は重責が課されることが容易に想像できたため、いち早く行動を起こしていた。
「うむ。ぺクラスよ、国交締結交渉の準備をせよ。カン・ブリッドにて受け入れ、ここルーンポリスで行うのだ。そしてフリーマンよ、情報局による情報収集も実行せよ」
「「ははっ」」
ぺクラス外務大臣と、アルネウス・フリーマン帝国情報局長に指示を出して会議は終わりを告げる。
2日後、第17空母打撃群がカン・ブリッド沖合に姿を現す。
「ジェシー・V・スペンス」では大きすぎて軍港に入りきらないために、使節団は艦載ヘリを使ってクインシー級巡航艦「ヒューストン」へと乗り換えて入港を果たす。
その時、カン・ブリッド軍港管理局の魔力探知レーダーが6隻の海賊船を捉える。
既に主力たる第1魔導艦隊が入港された隙を突かれており、数少ない地方隊が迎撃するしかない有様だった。
海賊船は地方隊の巡洋艦よりも脆弱な魔導砲艦ではあるが、強制接舷されて乗りこまれた場合が危険視されており、上陸された場合はもっと凶悪だった。
「くっそ、こんな時に」
地方隊の艦長が愚痴を吐く中、「ヒューストン」の拡声器が向けられる。
《こちら、
「ああ、構わん!!」
艦長は肺から吐き出せるだけの大声を出して伝える。
《了解した、旗艦に伝える》
「まさか、港前で戦闘するとはな。エリオット、カーティス・ウィルバーに伝達、攻撃を開始せよ」
フォスター少将の命令は即座にシャイロー級2隻に伝達され、2隻は転回して戦闘行動を開始する。
両艦は三つのVLSを開口させると、おびただしい量の白煙と共に筒を吐き出した。
計六発の対艦ミサイルは、意思があるかのように海賊船各艦に目標を定め、あっという間に距離を詰めていく。
それに対し海賊側が行ったのは回避ではなく、困惑であった。
大きな爆発が6個同時に起き、煙が晴れた時には海賊船は海の藻屑と化していた。
「バカな……!あれはまさしく、誘導魔光弾そのものではないか!!」
ライドルカ・オリフェント情報局員が驚愕の余り大声を出す。
普段は第三文明圏担当ではあるが、たまたま帰国していてカン・ブリッドに派遣された彼はそのミサイル攻撃の光景に遭遇していた。
そして、驚いていたのは魔力探知レーダーから海賊船6隻の反応が消失したことを確認したカン・ブリッド軍港管理局の職員らも同じであり、職務を何とか遂行しようとするも、誘導魔光弾そっくりの攻撃に半ば呆然とする職員が多かった。
彼らの脳裏にある誘導魔光弾、それは神聖ミリシアル帝国が未だ保有できておらず、この世界をかつて恐怖で支配していた
■次回予告
Episode.4【会談】
旧世界においての覇権国家と現世界の覇権国家は国交を締結する。
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Episode.4【会談】
現在、こちらの作品も投稿しておりますので、読んで頂けるとありがたいです。
「日本国召喚×アサルトリリィ -League of World in Cultalpas-」
https://syosetu.org/novel/302949/
_
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
アルビオン城
夕闇に輝く『眠らない魔都』ルーンポリス。
その中心部に聳え立つアルビオン城では報告会議が行われていた。
その報告会議の内容、先の海賊襲撃での件だった。
「間違いないのか?」
「はい。彼らの艦艇は誘導魔光弾と思われる物を発射し、海賊船舶6隻に反撃の暇を与えること無く、完封しています」
皇帝ミリシアル8世の問いに、情報局長のアルネウスが答える。
「やはり……魔帝だ……!誘導魔光弾を装備し、凄まじい速さの天の浮舟。そして、転移してきた……魔帝ならば追い出すべきと考えます!」
「そうだ!我らを上回るはずがない!上回るのは全て魔帝だ!」
フェラン東部担当外交部長を筆頭としたミリシアル至上主義者達は、現時点で実態がわかっていない北方連合国家に対して、魔帝だと決めつけ、排斥論を唱える。
その光景を見ていた多くの官僚は内心呆れるが、皇帝の眼前であるためおくびにも出さない。
「そうは言いますが、実際には不可能でしょう」
「何だと?」
その排斥論をアグラが否定すると、フェランは困惑の表情を浮かべる。
「彼らがどういう存在であれ、海賊からカン・ブリッドの市民を守ったのは紛れも無い事実です。それを排斥、追放しようとすれば、『なぜ守ってもらえたのに排斥されるのか』と疑問を持ち、帝国政府と軍への信用に関わります」
「ぐ……」
フェランはカン・ブリッド市民から非難を浴びる軍を想像し、動揺を見せる。
貴族である彼にとって一都市の市民のことはどうでもよかったが、金を貢ぐ軍への信用低下は避けなければいけない問題だった。
「しかし、実際に魔帝では無いとしても、繋がりがあるのかは証明できないのでは?」
一人の官僚の言葉でフェランが調子を取り戻す。
繋がりがあるのであれば表立って武装を見せないだろうと思う者もいたが、秘密裏に魔帝復活を支援する可能性も否定できない以上、議論は詰まる。
その空気の中で、シュミールパオが提案する。
「では、探りを入れてみるべきかと。魔帝について知っているか聞くだけでも構わないかと」
その提案に多くの官僚が頷く。
「うむ。かの国が魔帝と繋がりがある可能性は否定できぬが、潔白であればその強力な技術は魔帝に対する鋭き刃となろう。ぺクラスよ」
「はっ」
控えていた外務大臣ぺクラスが前へと出てくる。
「国交締結交渉について、委細はすべて任せる。余が話す事はあれど、口を挟むことはない」
皇帝の聖断によって帝国政府の方針は決まり、国交締結交渉への最終的な準備は速やかに行われていく。
しかし、神聖ミリシアル帝国にとって北方連合国家の実態はその予想を超えるものだった。
_
カン・ブリッド市内ホテル
「これは?」
滞在するホテルを提供されたスクワイア率いる使節団は、ホテルの一室で会合を行っていた。
その終わり間際、部下から端末を渡されたことにスクワイアは疑問を持つ。
「フォスター少将から送信されたデータです。『ヒューストン』から市井の人々と、先導した艦隊の旗艦と思われる戦艦艦橋を超望遠カメラで撮影した画像です」
「隠し撮りか……まあ、相手に察知されていなければ良いが。これは……いつの写真だ」
スクワイアが端末を開くと、人々が驚いたような表情を浮かべていたことに疑問を持つ。
「海軍が迎撃の為にミサイルを発射して数秒の画像ですね」
「なるほどな……彼らはミサイルを知らないか……もしくは既知ではあるが、辿り着けないもののどちらかか」
スクワイアの結論は的を射ていたが、現時点でそれを確認する術はなかった。
そこでこの話を終わらせると、スクワイアが別の話に続けた。
「話を変えるが、あの時彼らは同じ言葉を喋っていたな」
「え、ええ。あの時は驚きましたが……何か」
その言葉を聞き、スクワイアは溜息を吐く。
部下の肩を叩くと、言葉を続ける。
「もう少し相手の事をよく見たまえ。あの時、同じ言葉を話していたのは事実だ。だが、口の動きが我々が知る発音の動きとは全く違っていた。何らかの要因が働いているだろう」
「……考え過ぎでは?」
「そうだといいが……」
_
翌朝、北方連合国家代表団はホテルを出立し、カン・ブリッド空港へと向かう。
空港において神聖ミリシアル帝国政府から案内された特別機の旅客型天の浮舟"ゲルニカ"〈35型〉へと搭乗する。
テーパー翼にタマゴ型のエンジンを2発装備したその地球では見られなかった特異な形状にもスクワイアらは疑問を持つが、仮にも常識外の形であったとしても、今から国交を結びに行く相手に対しては敬意を払うのが常識だった。
機内では案内役等を勤めるミリシアル人の目もあるため、特に話をすることも無く窓から見える機外の光景──野生のワイバーンがゆったり飛行している姿──に見とれるなどして過ごした。
その後、帝都ルーンポリス郊外のゼノスグラム空港へとゲルニカが着陸。
自動車と似た魔力によって動く帝国政府専用公用車へと乗り込み、一路アルビオン城を目指した。
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
アルビオン城
荘厳なアルビオン城へと到着した一行は、衛兵に豪華絢爛な大会議室へと通される。
そこには神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世を始めとした帝国政府の首脳陣が待っていた。
スクワイアは威厳を感じる
「北方連合国家使節団の全権代表をつとめている北方連合国家連合政府国務長官のスクワイアと申します」
「……では、余からも名を名乗らなければならないな、神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世である。この度の交渉は外務大臣に一任している」
「は……この度の外交担当を承りました外務大臣のペクラスです」
スクワイアは外交官として、国務長官として鍛えられた観察眼で二人を見つつも、挨拶を返す。
「こちらこそ、我が国との交渉を受け入れて下さりありがとうございます」
「では、早速交渉に移りたいと思うのですが……ところで……貴国が転移国家というのは本当でしょうか?」
「ええ、本当です。あらゆる分析を行いましたが、転移したのは紛れもない事実です」
ぺクラスはスクワイアの目を見るが、決して嘘を言っているような様子ではなかった。
その上で本来は余裕をもって相手と接するのだが、今回は魔帝との繋がりを探ることも役目に入っており、それが彼の緊張に繋がった。
魔力を持たないこと、こちらを見下す事無く真剣な目つきで臨んでいる事など、魔帝と繋がっている根拠は今のところ無かった。
しかし、役目を果たすべきなのは事実であるため、だからこそ直接尋ねるのが正解だと彼の脳が判断した。
「そうですか。……ところで単刀直入にお尋ねしますが、貴国は古の魔法帝国についてご存知で?」
「ふむ……?古の魔法帝国とは」
スクワイアにとっては突然知らない国名を聞かれ、表には出さないものの困惑した。
情報を必要としている北方連合国家にとって聞き逃す事無く、当然その国について尋ねる。
「これは失礼しました。古の魔法帝国とはかつて神話の時代に圧倒的な魔力と技術力を持って全世界を支配した文明です。光翼人のみで構成され、とても傲慢であり、神々の怒りを買い未来へと転移した国なのです」
「なるほど……もしや我が国が古の魔法帝国そのものか、つながりがあると疑っておりますか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
そういうぺクラスだったが、焦りのあまり汗が噴き出していた。
わざわざ来訪してきた交渉団に対して古の魔法帝国だと疑うのは失礼に値するからだ。
「良かったです、我々は魔力を持ちませんからね。まあ、世界を支配しているというのは半分間違いではないのですが」
「……半分?」
「この流れで我が国を紹介いたします。まずはこちらを差し上げようと思います」
スクワイアの隣にいた外交官からかなり分厚く折り畳まれた紙状の何かがぺクラスの下に渡される。
「これは……!?、この精巧な地図は一体!!」
渡された物の中身に驚き、ぺクラスは思わず固まる。
「我が国が転移した直後に惑星の地形を把握するために送り込んだ戦略偵察機による俯瞰地図です。さて、皆さんもご覧ください」
もう一枚の地図が渡され、ミリシアル8世すらもその高精度で精巧な地図には驚きを隠しきれていなかった。
転移した北方連合国家と中立国は元より、神聖ミリシアル帝国含む第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、さらに神聖ミリシアル帝国すらも把握していなかった惑星の裏側までその地図に記されていた。
北方連合国家と中立国の国土は青く塗られ、分かりやすく明示されていた。
「その青い枠の大陸は、我々北方連合国家と、共に転移してきた
「これほどの国土面積が……」
「では我が国の説明に入ろうと思います。我が国北方連合国家は、盟主である北アメリカ大陸連合を中心とし12ヵ国が加わった統一政体です。総人口は約22億人で、経済力の差異はありますが、全ての国が我が国と同等の技術水準を有しています。」
その言葉に、アグラを含む軍関係者は眉を顰め、戦慄する。
我が国よりも速い天の浮舟、誘導魔光弾を12ヵ国、盟主を含めれば13ヵ国の軍隊が有していることは脅威に映った。
戦力数は不明であるが、各国が誘導魔光弾を搭載可能な小型艦などの基本的な自国防衛戦力を持っていると仮定すれば、想像は容易い。
スクワイアが一旦言葉を切ると、体の横幅に匹敵する板状の物体を机の上に置き、カタカタと音を立てて叩く。
現代人から見れば、ノートパソコンのキーボードを打ち込んでるような操作だったが、そこに画面は無かった。
6秒程でコンソールを打ち込むと、何かが宙に投影されていく。
「こ、これは……!?」
そこには球体状のホログラムが浮かび、それはスクワイアが操作していた情報端末から投影されたものだとわかる。
この見たことも無い投影方法に神聖ミリシアル帝国首脳陣は再び驚き、動揺した。
「我が国において使われる……何と言いましょうか、何もない空間に映像を投影することのできる装置です。これは我が国がいた前の世界の地形図です。同様に青く塗られているのは、我が国の国土です」
「こんな技術が……では、もう一つの赤いのは?」
「……我々北方連合国家はこのように前の世界にて世界をほぼ二分していた超大国です。そして、かの国は
「そして我々は転移前、かの国との戦争を引き起こしてしまった。その上、都市一つを破壊する事のできる核兵器を互いに何百発も発射する核戦争の勃発寸前だったのです」
「……!?」
都市一つを破壊することのできる核兵器。
その言葉に、首脳陣の誰もがラヴァーナル帝国が用いていた核兵器に匹敵するコア魔法を脳裏に浮かべる。
アグラはそれを脳裏に浮かべながら冷や汗を垂らす。
(……痛い目を見るなんてものではない……明らかな軍事超大国、戦争すればこちらが滅ぼされる……!)
想像を絶する転移前の状況で、思わず固まっていたミリシアル8世は漸く我に返るとスクワイアに尋ねる。
「その兵器、我が国に使う事はあるまいな?」
真剣な眼差しでスクワイアの目を射貫くが、内心では驚きと動揺、そして恐怖が蔓延り、それを表に出さぬよう必死に隠していた。
「無論、ありません。元々前の世界では『相互確証破壊』と言われる、どちらかが先制核攻撃を行った時、もう一方も確実に報復を行う戦略の元で運用されておりました。我々が核兵器を使うのは相手が核兵器を持っているか、こちらの怒りを買う行為を行った場合に限られます」
「そうか……それは安心した」
スクワイアの言葉に、ミリシアル8世はホッとした表情を浮かべるが、内心は違った。
互いが核を保有して威嚇し合う『相互確証破壊』の戦略は末恐ろしい物に思えたのだった。
「では、ひとまず休憩といたします」
神聖ミリシアル帝国側の進行役の一声で休憩へと入り、北方連合国家の代表団は別室へと移動する。
神聖ミリシアル帝国の首脳陣も別の会議室へと移動するが、直後ざわめきが広がった。
「明らかな超大国ではないか!」
一人の閣僚が声を荒上げる。
大国であることは予想していたが、22億人もの人口を有する国など予想だにしていなかった。
「ただの見栄っ張りではないのか……?彼らの国内を見ないと信じきれん…」
もう一人の閣僚は現実を否定するような発言を繰り出した。
世界第一位のプライドは酷く傷ついてはいたものの、北方連合国家国内の状況を見ないことには信用できない者は少なくなかった。
「それでは、後ほど使節団の派遣を要請してみましょう」
ぺクラスは彼ら閣僚の言葉に応じた。
スクワイアの言葉を目の前で受けていたぺクラスは当然衝撃を受けていたが、やはり外務大臣の重責にある立場ため、すぐに立ち直っていた。
「我が国は貴国への使節団派遣を希望します」
休憩が終わり、会談が再開して早々にぺクラスが発言する。
それはあくまで簡易的な要請に等しかったが、北方連合国家の国内状況を知りたいミリシアル8世も許可していた。
そして、それをスクワイアや北方連合国家連合政府は想定していた。
「ええ、もちろん構いません」
「え……調整しなくて大丈夫なのですか?」
スクワイアがあっさりと承諾したことに、ぺクラスは心底驚いていた。
「問題ありません。我が国が貴国に来訪するだけでは手に入れる情報に限りがあるのは当然です。ならば、貴国が要請するのを見越しておくのが重要かと」
「ありがとうございます……ところで移動手段についてですが、やはり艦隊での派遣がよろしいでしょうか?」
「いえ、我が国は早急に国際社会の舞台へと登壇することを望んでいますので、飛行機で速やかに来訪されるのを希望します」
神聖ミリシアル帝国側にざわめきが走った。
「それならば……ゲルニカがあるか」
「しかし、どこに」
「お待ちください、その際の先導機も用意しております」
スクワイアがそのざわめきを遮るように話すと、一旦収まる。
「しかし、その機体を予め着陸できる飛行場が求められます。ですので、今から機体の情報を言います」
「全長約50メートル、全幅約60メートル。機体名称はB-52。別名────
────成層圏の要塞です」
■次回予告
Episode.5【覇者の行く先】
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Episode.5【覇者の行く先】
着陸シーンについてはあまり詳しくないので、見逃していただけると幸いです。
【追記】
2022/12/19 10:53現在、お気に入り121となりました。ありがとうございます!
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「全長50メートル……」
「せ、成層圏の要塞……」
ここは神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスにあるアルビオン城の大会議室である。
そこに会談のために集まっていた神聖ミリシアル帝国首脳陣はスクワイアより語られた情報に驚き、軍関係者等は固まった。
漸く復帰した者も、スクワイアから並べられた単語をただ繰り返すだけだった。
「アグラよ、その機体が着陸できる場所はあるのか?」
「は……え、ええ。あるとは思いますが、今すぐに決定するのは不可能です……」
ミリシアル8世は僅かに目を見開いたものの、身が固まる程の驚きには値せず、微動だにすることも無く、その威厳を見せつけた。
その様子の皇帝にアグラは動揺しつつも返答する。
(皇帝頼みの政治体制……か。まあ、敵対しなければ別にいい。我々が手を加えてもかつての二の舞になるだけだ)
「はい、もちろん大丈夫です。こちらも急な提案をしてしまい申し訳ありません」
スクワイアはミリシアル首脳陣の様子を観察・分析を行いつつ、礼儀良く返事を返す。
「では、貴国……北方連合国家と国交を開設しよう。もはや貴国が強大であることは明らかだが、この世界においての繋がりがある訳では無い。今のままでは必ず諍いを起こすであろう。……なれば、仮にも世界最強たる我が国と手を結ぶ事で、万事上手くいくであろう。ぺクラスよ、あとは外務省に一任する」
4000年生きてきた経験から、国家がいくら強大であっても、それだけでは全て上手くいく訳では無い。
それはかつて世界を支配していた古の魔法帝国が、神々から滅ぼされようとしていた事からも分かりきったことだった。
「なるほど……それはありがたいです」
スクワイアは表面には笑みを貼り付けながら、北方連合国家連合政府がこの世界との繋がりや情報を持たないことに苦慮していた事を見抜かれ、内心賞賛しながらも厄介だなと感じていた。
一方でミリシアル8世の素早い決断にその他のミリシアル首脳陣は反応が遅れる。
いくつかの閣僚が反論しようとするも、向けられた鋭い目線によって「これは決定だ」という意志を示され、従う以外には無かった。
その後、国交開設の交渉は滞りなく進み、暫定的に北方連合国家の大使館をルーンポリス市内へと開設し、神聖ミリシアル帝国の大使館は使節団来訪後に開設することで決定する。
また、官民交流に関する法整備の項目や、神聖ミリシアル帝国含む世界情勢、使節団来訪時における注意事項等の情報交換が行われた。
_C.C.1635年6月10日P.M.3時_
アルビオン城 皇帝の居室
会談終了後、厳重な警備が行われていた居室に、スクワイアは衛兵に案内されていた。
(……皇帝がまさか私との個人会談を希望するとは……どういう意図だ?)
たった1人。それを条件にスクワイアが面会するのは神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世であった。
この時ばかりはこの展開を予想していなかったスクワイアは怪訝な感情は僅かに見せた。
「ご苦労であった」
ミリシアル8世が声を掛け、衛兵が敬礼して立ち去ると、スクワイアに目線を向ける。
「突然の面会、失礼した。公の場ではあまり話せぬのでな、私的の会談を希望したのだ」
「……それで、お話とは?」
「貴殿は我が国に核兵器なる兵器を使うことは無いと語ったが、本当に信じて良いのだな?」
ミリシアル8世の鋭い眼光がスクワイアの目に向けられる。
真意を確かめようとしていたことは明らかであり、スクワイアは僅かに緊張する。
「……もちろんです。転移前の戦争も、我が国から仕掛けたものではありませんでした。90年前の戦争では2発を投下しましたが、あれが正しかったのかは議論がわかれます。少なくとも積極的に使って世界を滅亡に導くような蛮行をすることは決して無いと誓います」
「……その目は嘘をついてるような目では無いな。失礼した」
ミリシアル8世は謝罪とともに頭を下げる。
「……私からも質問よろしいですか?何故、我が国に古の魔法帝国を知っているか、聞かれたのですか?」
「……そうだな。これは真実を話した方が良さそうだ。貴国が古の魔法帝国と繋がっているのではないかと疑う者がいたのだ。貴国が海賊迎撃に使った兵器、余はそれに似たものを知っている。『誘導魔光弾』、古の魔法帝国が有していたものだ」
「なるほど……」
「この国は、その遺跡を解析することによって世界最強へとなった国だ。だからこそ、恐れているのだ。その為、貴国を疑う者もいたのだ。すまない」
スクワイアは古の魔法帝国に対して警戒心を高めると共に、1つの決心をする。
「いえ、こちらとしても有意義のお話をありがとうございます。古の魔法帝国が再び姿を表すのであれば、絶対に勝たねばならないでしょう、我々も協力致します。……これ以上の長話は予定に影響が出てしまうので、これにて」
「感謝する」
(古の魔法帝国……思えば、核兵器の話を言った時も、その意味を聞くこと無く驚いていた……もしかしたら、都市を一つを破壊することの出来る兵器を有しているのか?)
スクワイアの疑問は当たっていたが、現時点でその予測が正解なのか調べる術は存在していなかった。
_C.C.1635年6月10日P.M.4時_
アルビオン城 大会議室
北方連合国家使節団が退室し、指定されたホテルへと向かっている中で、交渉後の帝前会議はミリシアル8世が居室から戻ってきた直後に開催された。
北方連合国家の先導機が離着陸できる飛行場の選定や、使節団メンバーに誰を選ぶかの会議が行われていく。
その結果、飛行場には神聖ミリシアル帝国空軍帝都防空隊が管轄するラクナイ飛行場が選ばれ、使節団メンバーは外交官1名を使節団の代表として軍務省、帝国情報局、技術研究開発局から1名ずつ出し、さらに魔帝関連技術に詳しい対魔帝対策省よりメテオス・ローグライダー大魔導師が派遣されることとなった。
時間が経ち会議は北方連合国家に対する外交対象等級についての話となった。
会談に出席した者、理性的な官僚は特級国家扱いを要望するが、ミリシアル至上主義者の派閥は第3文明圏扱いの3級国家、高くても1級国家までと執拗に主張した。
結局、ミリシアル8世の鶴の一声によって特級国家扱いで収まるが、次の言葉で会場は驚愕に包まれた。
「余はかの国を列強に招くべきだと思われる。……いや、それだけでは無い。かの国を列強第1位へ格上げしても良いと思う」
多くの者が驚愕し、1人の閣僚が反論をなげかける。
「……え……いや、わざわざ世界最強の座を明け渡すのですか!?」
「報告を聞いていなかったのか?あの人口、国力……そして、技術力。どれも我が国を超越するでは無いか」
「しかし……それでは」
ミリシアル8世の理性的な言葉に圧倒されてもなお、反対しようとする閣僚だったが、ミリシアル8世はさらに畳み掛ける。
「余はこの国に蔓延る傲慢な態度を一掃するべきと考える。我らの敵は魔帝だ。今のままでは、魔帝に叶わぬことを分かっている者もいるだろう。魔帝に勝つためには、どのような手段も問わない。余はそう決めたのだ」
アルビオン城 郊外
神聖ミリシアル帝国国有放送企業『世界のニュース』に属する女性アナウンサーが衛兵によって厳重に守られたアルビオン城の外から中継の準備をしていた。
神聖ミリシアル帝国政府から発表された情報を世界に伝えるため、急ぎつつもしっかりと準備が行われ、放送時間を迎えた。
『世界のニュースの時間です。早速、速報です。本日、神聖ミリシアル帝国政府は、
この発表に世界は驚愕した。
仮にも名実ともに世界最強を自称する神聖ミリシアル帝国が、戦争の敗北などではなく、自ら列強第1位の座を明け渡すなど、信じられないことであった。
そして、それは異世界に北方連合国家の産声が上がった瞬間でもあった。
だが、その赤ん坊は大人の手を捻り潰すほど力強く、おぞましい力を持ち合わせていた。
_C.C.1635年6月11日A.M.7時_
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス北東 ラクナイ飛行場
翌日早朝、北方連合国家へ派遣される使節団の姿はルーンポリス北東にある飛行場にあった。
帝都防空隊が管轄する飛行場であり、何らかの要因でゼノスグラム空港が使用不能に陥った時に、機体を限界まで着陸させるために大きくしていたのが、今回のB-52の離発着に適していた。
「スクワイア殿も帰られるのですか?」
滑走路の端に待機中だったゲルニカ35型の機外で、帝国外務省外交官であり使節団代表のフィアーム・ラファイエットが同乗する予定のスクワイアに話しかける。
「ええ。私は全権代表ではありましたが、北方連合国家の外交を司る職におりますので。大使館も暫定ではありますが稼働いたしましたし、私の部下は皆有能なので任せております」
「そうなのですね……」
スクワイアの懇切丁寧な説明に、彼女は納得する。
その傍にいた軍務省より派遣された軍務次官のアルパナ・レベッタがスクワイアに話しかける。
「しかし……いつ先導機は到着するのでしょうか?そろそろレーダーに映るのでは?」
「アルパナ殿、我が国の機体は全て魔力を使っておりません。魔力を前提とするレーダーであるなら、おそらく映らないでしょう」
「ははっ、そうでした」
アルパナは軽く笑うが、半分冷や汗を浮かべていた。
科学のみで神聖ミリシアル帝国を上回る技術を有することが信じきれないミリシアル人としての感覚であった。
その頃、B-52『
飛行場への誘導機はいない。
高空、しかも最高時速1000kmに到達する当機に追いつける機体を神聖ミリシアル帝国が持っていないと連合政府は察しており、「攻撃行為を行った場合は駐在する外交官を人質にしても構わない」、そう前置きした上で単独で飛行場に向かうと押し切っている。
「そろそろか……」
「位置は判明しています。しかし結構北ですね、それほど恐ろしいのですかね」
「そりゃあ、巨人機とも言える漆黒の機体だからな。さて、望遠カメラを起動するぞ」
第一文明圏ミルキー王国との国境沿いを飛行した後、B-52は進路を真西へと変えていた。
機長と副操縦士が忠実に任務を遂行しながら会話し、機長は望遠カメラを起動する。
カメラを通じて、コクピットの正面モニター及び航法士と副操縦士の専用モニターに飛行場の映像が表示される。
「よし、データ通りだ。このまま降下して着陸する」
漆黒に塗られた巨大な翼は朝日に照らされながら降下を開始。
飛行場の対空監視所からも見えるほどに目立ち、使節団メンバーはその姿を視認した途端、その大きさに驚く者ばかりであった。
やがてB-52は着陸態勢へと入る。
ターボファンエンジンの回転数を少しずつ下げていき、ランディングギアを下げてタイヤが滑走路に接地した瞬間、機体に振動が響く。
そして、全てのタイヤが接地するとブレーキをかけて速度を急激に下げていく。
速度が落ち着いたところで徐行へと入ると、滑走路の奥で旋回し今着陸してきた方向に機首を向けて、ゲルニカ35型と並列に並ぶ。
「……大きい」
青い顔をしながらも、フィアームは思わずそう呟く。
「そんなことより……!プロペラが無い……!ファンのようなものがあるということは、おそらく空気の取り入れ口があるのだろう……。まさか、魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを搭載しているのか……」
アルパナがB-52のエンジン部分を見て驚愕しており、その隣にいた技術研究開発局から派遣されたベルーノ・ジルロン開発室長は翼を見て驚愕していた。
「後退翼ではないか!……あれは翼端が超音速に達する気流に触れない為に考えられた翼型だ!……ということは、音速に到達するのか?」
「……失礼ですが……この機体の速度はどのくらいでしょうか?差し支えなければ教えていただけますでしょうか?」
ベル―ノの発言に半ば驚きつつも冷静さを保っていた帝国情報局より派遣されたライドルカがスクワイアに尋ねる。
「ああ……公的に発表されてる数値であれば。確か……最高時速は約1100kmですね」
スクワイアは携えていたバッグから
「それと、先ほどアルパナ軍務次官が話していたエンジンですが、あれはターボファンエンジンと言って、ジェットエンジンの一種です。おそらくその魔光呪発式空気圧縮放射エンジンはジェットエンジンの事を指しているのと思われます」
「なるほど……」
ライドルカは手帳を取り出してそれをメモする一方で、アルパナとベル―ノは再び驚いていた。
「ふむ……」
「ん?……どうしましたか?メテオス殿」
対魔帝対策省より派遣されたメテオスは1人ぼやくと、フィアームより声をかけられる。
「いや、私が解析に関わっていた大型爆撃機に似ていると思ってね。その大型爆撃機はなんと、コア魔法を搭載する為のものでね。もしかしたら、この機体もコア魔法……核兵器を搭載する為の機体なのではないかと」
「それは……」
メテオスの言葉は的を射ていた。
B-52
そんなことは露知らず、ただ恐ろしさだけを抱いた。
そして、ベルーノとアルパナの喧騒の中でもその会話を聞き逃す事の無かったスクワイアはわざと聞いていない振りをしつつも、フィアームに声をかける。
「互いの調整も終わったようなので、出発いたしましょう。予定通り、我々の機体が先導致します」
ゲルニカ35型に、スクワイアが先に乗り込み、それにフィアーム率いる使節団が続いていく。
そして、B-52はターボファンエンジンを吹かして飛び立ち、ゲルニカ35型もそれに続いて離陸した。
■次回予告
Episode.6【来訪】
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Episode.6【来訪】
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グアム島北西空域
雲一つ無い青空を神聖ミリシアル帝国航空機、『ゲルニカ35』型が飛行する。
その前方に2倍以上の全長を持つB-52に先導されながら、真っ直ぐとグアム島を目指していた。
機内では5人のミリシアル人、加えて北方連合国家国務長官のスクワイアが座席に座っていた。
「ふぅ……1時間程度の時間ですが、小休憩するのには丁度良いですね」
腕を伸ばしながらライドルカがぼやく。
窓を見ていたスクワイアはその声に気づくと、背筋を伸ばし口を開く。
「では予定通り、グアム・アンダーセン空軍基地に到着後、機体を乗り換えて頂きます」
「そうですか……本来なら我々が自国の機体で赴くべきですが、無補給で往復約1万kmを飛ぶことは難しいですからね」
そう言うフィアームだったが、表情からは悔しさが滲み出ていた。
(片道でも5000kmはある……それを無補給で行くなど信じられない)
自国の力を絶対視していた彼女にとって北方連合国家の力は信じ難かったが、上司から真面目に説明されたことで、巨大なタイプライター程の大きさもある魔導式計算機の持参を諦めていた。
そんな様子のフィアームを意識外に置き、スクワイアは耳元の通信機から連絡を受信する。
「失礼。グアム島から歓迎の為、戦闘機が来るようです、いらないと断わったのですが、軍上層部がどうしてもやりたいと言っていたので、突然になり申し訳ありません」
「歓迎ですか……」
「ふむ……」
使節団の5人はどんな機体が来るのかを想像する。
あっという間にその時間は過ぎ、暴風のような轟音が機外から響く。
「……来ましたね」
二ついるその機体は圧倒的な速さでゲルニカの両横を通り過ぎると、その後方で交差するようにして旋回しながら速度を落とす。
そして、同じ高度に合わせると、ゲルニカに窓から最も見えやすい位置に微調整しながら並走し始める。
「予想していたが、これ程とは」
左の座席に座るアルパナがその窓から歓迎していた機体を、特に機体後部と翼を注視して驚いていた。
「F-15戦闘機、最高時速2500km。我々北方連合国家が誇る支援戦闘機です」
そんな使節団の様子を見ながら、スクワイアは淡々と機体の解説を行ってきた。
「2500km!?」
「それはすごい!」
フィアームは想像を絶する速度に顔を青くし、ベルーノは鼻息荒く興奮した表情で窓の外のF-15を凝視する。
「ちょっと待ってください!支援戦闘機って……では主力は別にいるのですか?」
「ええ。もちろんです。この機体の初期型を運用し始めたのは今から60年も前の事です。既にそれより新しい機体が主力として活躍しています」
「そうですか……」
ライドルカはそう返しつつ、想像を巡らせていた。
(時速2500kmもある機体が支援機だなんて、では主力はどんな性能なんだ……)
しかし、この時ライドルカは失念していた。
速さこそが全てではないことを。
北方連合国家空軍主力戦闘機、F-35。
それは神聖ミリシアル帝国が知らない概念であるステルス性を持ち、コストパフォーマンスに優れた機体でもあった。
_C.C.1635年6月11日A.M.9時_
北方連合国家アメリカ連邦地域グアム州
太平洋空軍アンダーセン空軍基地
B-52の先導や、F-15の誘導もあってグアム島へと到着したゲルニカ35型は、先に着陸したB-52に続いて無事な着陸を果たしていた。
B-52に搭乗するミリシアル空軍士官を介して管制塔の指示により駐機場へと移動する間、使節団の面々は窓からアンダーセン空軍基地の様子を眺めていた。
「これは……!」
アルパナはそんな外の様子に釘付けとなって固まっていた。
見える限りでも10機以上のB-52、数多の戦闘機が並ぶ光景に思わず唖然としていた。
北方連合国家空軍が横田と並ぶ極東アジア方面の重要基地として重点的な配備を行っているアンダーセン空軍基地の姿がそこにはあった。
「これ程とはね……」
(これらは我が国へと向ける戦力では無いだろう、恐らく転移前での戦争に使う予定だったか……。しかし、もし侵攻してくれば古代兵器を駆使しなければ拮抗に持ち込むことすら不可能だね……)
メテオスは思考に耽っている中で、敵対すれば脅威であることを認識し、瞬く間に蹂躙されかねない祖国の事を思い身震いする。
「それでは、そろそろ降りましょう」
使節団の反応を見ながら、スクワイアは頃合いを見て催促する。
タラップを降り、基地施設の応接間にて、アンダーセン空軍基地の基地司令官自ら出迎えた。
「ようこそ、グアム島アンダーセン空軍基地へ。世界最強たる神聖ミリシアル帝国の皆様にここグアム島へはるばるお越しいただけて誠に感謝しております。アンダーセン空軍基地司令のベイカー少将です」
にこやかな笑顔と共に挨拶をしたベイカーは手を差し出した。
彼の世界最強という言葉が上辺だけの言葉だと使節団の面々は理解していたが、決して上から見ない尊重した態度に気をよくしていた。
フィアーム自らその手を握って握手をしながら笑顔のまま応える。
「こちらこそご丁寧な挨拶をありがとうございます。神聖ミリシアル帝国外務省から参りました外交官及び使節団代表のフィアームと申します」
「フィアーム殿ですか、短い時間ではありますがよろしくお願いします。歓迎式典を行えず申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそサプライズをいただきありがとうございます」
その時、ふとベイカーの表情が切り替わる。にこやかな笑顔から意味深な笑顔へと変わっていた。
「そうですか……。ですが、それ以上の驚きが本土へと向かう間にも沢山ありますよ。身が持つか私としては心配ですな」
ベイカーの言葉に、使節団の面々は衝撃を受ける。
フィアームは若干顔を青白くし、その他の者は驚愕や興奮など様々な表情を浮かべた。
「まあ、あなた方なら大丈夫でしょう。それでは、短い時間ではありますが、休憩室へとご案内いたします。……何か質問はございませんか?」
「私からよろしいか?」
ベイカーの発言にメテオスが手を上げる。
「ええ、大丈夫です」
「これはあくまでも私の推測なのだが、先ほど先導して頂いた機体やここに並ぶその同型機は、コア魔法、あなた方の言う核兵器を搭載することのできる爆撃機だと思うのだが、違うだろうか?」
一瞬沈黙が走る。
使節団側は不味いことを聞いてしまったかと不安がり、ベイカーとスクワイアは互いに目配せをする。
「ご明察です。このB-52は戦略爆撃機という機種に種別されます。我が国がかつて統一政体となる前から運用されている機体であり、当初は核兵器のみを運搬可能な機体として開発されました。今や核兵器による攻撃手段は別のものに代替されておりますが、現在も確かに核兵器を搭載して運用できる機体ではあります」
「なぜ代替されたのですか?」
「……そうですね、様々な理由がありますが、簡潔にお答えするならば、時代遅れが一番近いと思われます」
時代遅れ。
神聖ミリシアル帝国も爆撃機相当の天の浮舟から通常爆弾を投下する方法を採っているが、それを時代遅れと告げられた。
常識的にあり得そうな攻撃方法を時代遅れとさせたのは一体どんな方法なのか、考えに耽る。
その考えが休憩室にいる間に正解に辿り着くことは無く、時間は過ぎていく。
その後、一行は待機していた北方連合国家連合政府高官専用機の『C-37B』へと搭乗し一路ハワイを目指した。
時速900kmというゲルニカ35型の二倍近い安定した速度性能を発揮して使節団の面々を驚かせたが、一方でゲルニカをも上回る快適性に疲れることも無く、ゆったりと落ち着いた空の旅を過ごすことができた。
_C.C.1635年6月11日P.M.2時_
北方連合国家ハワイ州
オアフ島パールハーバー・ヒッカム統合基地
北方連合国家インド太平洋軍の根拠地としてその機能の一部を有するパールハーバー・ヒッカム統合基地のヒッカム空軍基地に一行は降り立っていた。
そして、そこで彼らの常識では考えられない衝撃の光景が映っていた。
「なんだ……これは」
フィアームが顔面蒼白でぼやき、その他の面々も頬を叩いたり目をこすったりと、自分の目で見てるものさえ信じられないと思っていた。
「雲を突き抜けてる……相当高いですね」
比較的ライドルカが声を震わせながらも冷静に分析する。
「軌道エレベーター。地上と宇宙を結ぶ道路みたいなものです」
説明するスクワイアに、アルパナが自身に頭をフル回転させながら問いかけた。
「道路……?つまり、人と物も輸送するということですか?」
「しかし……いや、なぜ宇宙に物や人を送る必要があるのですか?」
ベルーノは宇宙空間に活動領域を広げてることに疑問を持つも、まずはこの軌道エレベーターの必要性について質問した。
「必要性ですか、お察しの方もいるとは思われますが、我が国は宇宙へと活動領域を広げています。しかし宇宙で活動する際、毎回地上から宇宙へと輸送船などで運ぶ際には惑星の重力圏から脱出しなければならず、途方もないコストがかかります。それを解決したのがこの軌道エレベーターであり、我々には宇宙で作業することのできる船をもちますが、わざわざ地上へと帰還させずに宇宙空間で補給することも可能にしました」
「なるほど……ところで、現在は稼働していないように見えますが」
「よくお気づきで。転移前に行われていた戦争においてユーラブリカの海上戦力がここを急襲した際、軌道エレベーターが損傷してしまったので、現在は修理中です」
情報官としての目敏さで動いていないことを疑問を思ったライドルカの問いにスクワイアは淡々と答えていく。
スクワイアの言った宇宙での作業船が存在することは紛れも無い事実であったが、軌道エレベーターにはもう一つの役割があった。
それは宇宙軍宇宙戦闘部隊の母港であり、武器弾薬の補給拠点でもあった。
同様に宇宙艦隊を運用している三大陸合州国もその役割には気づいており、要塞化されたオアフ島に攻撃を仕掛け、軌道エレベーターに損傷を負わせていた。
この宇宙艦隊を運用していることを神聖ミリシアル帝国に明かさない理由はただ一つ、弱小国を威圧する艦隊の事を教えて無用に刺激を与えない為であった。
(ふむ……作業船とはいえ、武装を付ければそれは戦闘艦艇となるだろう……それを明かさない理由はなんだろうね)
誰もが軌道エレベーターに衝撃を受けている中で、メテオスが内心宇宙艦隊の存在に気が付いていた。
その後、一行はヒッカム空軍基地を離れ、パールハーバーを一望できる小高い丘へと移動する。
そこは平時だと軍艦マニアなどの間で写真を撮ることの多い著名な場所であったが、転移直後ということも相まって人は全くいなかった。
「これは凄い……!」
ベルーノが興奮したような面持ちで、至る所に見える艦艇を観察する。
「しかし……遠目に見えるだけでも100隻以上の整列した艦艇が……小さい島なのに、これは一体」
ライドルカが望遠鏡で覗き込み、整列した艦艇群に圧倒されながらも、スクワイアに尋ねる。
「ここは北方連合国家インド太平洋軍の太平洋艦隊の母港です。太平洋というのは前世界においてここから一望できる海の名称です。ベリアーレ海というのは存じ上げていますが、90年以上も使い続けている名称故、変更は難しいのです。さて、今後お伝えされるかもしれませんが、北方連合国家海軍の主要戦闘艦艇数は600隻に上ります。この5分の1を太平洋艦隊の管理下にありました」
600隻という数に、使節団の面々は唖然とする。
神聖ミリシアル帝国海軍でも200隻程度しかない事を考えれば、600隻という数に恐怖さえ覚えていた。
「また、下に戻ります。中には入れませんが、戦艦と空母を外見のみ観覧できます」
その言葉通り、スクワイアは使節団一行をパールハーバー海軍基地へと案内する。
一番近い岸壁にはそれぞれ1隻の戦艦と空母が停泊していた。
前者はネブラスカ級戦艦「バーモント」、後者はアーヴィング・デイ級航空母艦「アルガード・H・グラスゴー」であった。
「デカい……!」
アルパナは一目見て感じた印象を声に出す。
ネブラスカ級戦艦は全長280m、アーヴィング・デイ級航空母艦に至っては344mという巨体を持ち、神聖ミリシアル帝国海軍の中でも最大のロデオス級が235mしかなく、小さく感じられた。
「これ程とはな……」
既に北方連合国家が神聖ミリシアル帝国を軽く上回る国であることは何回も痛感しているフィアームであったが、戦艦と空母という神聖ミリシアル帝国が力を入れている技術分野が負けていることで、彼女の中で燻っていた世界最強のプライドは完全に潰えた。
■次回予告
Episode.7【衝撃】
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