バカと歪んだ世界と変革者 (キムキム)
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プロローグ
それでは、本編どうぞ!
『この戦いは、神の御前に捧げられる聖戦である』
どこからかそんな声が聞こえてきた。
『不信仰者共に屈服してはならない』
赤い夕焼けと、炎が街を包んで行く。
『死を恐れるな』
ズーン、ズーンと地響きを鳴らしながら、鉄の巨兵がやってくる。銃声と共に仲間の悲鳴が聞こえてきた。
『我々は戦いで死す事によって神の御許へと導かれるだろう』
崩れた建物。瓦礫。仲間の死体を避けながら、壁に身を潜めていた。さっきから、あの言葉をずっと聞いてきた。何十回、何百回も。それを信じて生きてきた。……………だが、
「……この世界に、神なんていない」
いつも、この答えにたどり着く。みんなは神を信じ、この戦いを聖戦だと思っていた。だが、もし神がいるなら、何故この戦いを終わらせないのだろう。何故、人を殺すのだろうか。生きればいいのに。楽しいはずなのに………
ズズーンッ
「ッ‼︎」
鉄の巨兵が、僕に気がついた。赤い一つ目をギョロリと動かし、左手の砲台を僕に向けた。死ぬ。身体が怯えて動かない。隠れてもあの砲撃の前には無力だ。
ガチャンッ
「くッ‼︎」
狙われた。もう助からない!そう思っていたその時、
ズキューン
空から赤い光が降ってきた。真っ直ぐに伸びた光は、巨兵の身体を串刺しにした。そして、ドドーンという凄まじい爆発音と共に、巨兵は粉々になった。
「⁉︎」
爆風が弱まってから、辺りを見回すと、同じように巨兵が串刺しにされて行く。
「ッ⁉︎」
慌てて上を向くと、そこには……………
パアアアァァァ
……緑色に輝く翼を持った白き巨人がいた。さっきの巨兵とは違い、茶色い身体ではなく、純白の身体だった。その時僕は……いや俺は神を見た。
ピピピッピピピッ
『作戦開始30分前です。各員。指定の位置についてください』
『了解。ロックオン・ストラトス。目標ポイントに向かう』
『了解。アレルヤ・ハプティズム。指定宙域に向かう』
『了解。ティエリア・アーデ。指定宙域に向かう』
『刹那、聞こえてる?返事をしなさい。刹那?』
「了解。刹那・F・セイエイ。これより、ファーストフェイズ開始のため発進する」
『了解。クリス、フェルト。発進準備をお願いね』
『『了解』』
ピピッ
「……夢か」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。あれから、月日がだいぶ経った。昔の事が嘘の様な事に思えてくる。あの、生きるために戦っていた日々が。今はこうして……
『発進準備完了。リニアボルテージ730を突破。射出タイミングを刹那・F・セイエイに譲渡します』
「了解。ガンダムエクシア、刹那・F・セイエイ。出るッ!」
……自分がガンダムに乗っているのだから。
レバーを押し、加速しながら出る。ここから変革が始まる。俺とガンダムによって。
ーユニオン領・日本・フミヅキー
明久 SIDE
穏やかな晴れの日。心地よい風が吹く頃。僕らは……
ドドドッ
「待て貴様らぁッ‼︎」
「急げ明久!このままだと捕まっちまうぞ!」
「くそぉ!全然、引き剥がせない!」
「貴様らぁッ!今なら補習付きで許してやるぞ!」
「それ、余計に増えてます!」
「うわッ!スピード上げてきやがった!」
「鉄拳アタック‼︎」
「「ぎゃああぁ!嫌だ〜!」」
……隣にいるバカ…もとい坂本 雄二と共に、誤って女子更衣室に入ってしまったせいで、鬼の鉄村大尉(本当は西村)の鉄拳を今日も食らっている。3年前僕らがユニオン軍文月駐屯基地に配属されてから、こんな日が毎日続いている。
「まったく、あいつら懲りないわね」
「そうですね。美波ちゃん。そういえば、木下君と土屋君は一昨日からいませんね?」
「瑞希。あの二人はAEUの新型モビルスーツの発表を見に行ったグラハム・エーカー中尉の護衛に行ったわよ」
「そうでしたね。そういえば、霧島さんもいませんね?」
「霧島さんならそこにいるわよ」(スッ)
「……雄二。妻に隠し事をするなんて許さない」
「待て翔子!これには深いわけが…」
「……言い訳は聞きたくない」(バチバチッ)
「ぎゃああぁ!」
「吉井!貴様にはキン○クバスターを体に染み込ませてやろう!」
「鉄人!そんなことしたら僕の体に関節が増えちゃう‼︎」
それで生きていたら不思議だよ!
「大丈夫だ。コックピットが押しつぶされた時、生存率がだいぶ上がるからな。その訓練だと思えば問題ない」
「その前に今食らったら死んじゃう!」
「そーれ!」(バキバキッ)
「うんぎゃあー!」
「少しは学習しなさいよ」
美波が呆れながら僕に言ってくる。違うんです。雄二が霧島さんから逃げるために通りすがった僕を道連れにして女子更衣室に逃げたせいなんです。
「さあ、楽しい楽しい補習タイムだ。二人ともまずは腕立て150回だ。ほら、さっさとしろ!」
鉄人に押されながら無理やり腕立て伏せをする。くそ!いつか見返してやる!
「ん?」
「明久、ちゃんとやれよ」
「わかってるよ」
何か、普通のとは違う変わったものを感じたんだけど…
「気のせいか」
「貴様ら!ちゃんとしろ」
「「サーイエッサー!」」
2037年。人類は太陽光発電システムを手に入れた。しかし地球上では3つの超大国群とそれ以外の第三国に分かれ己の威信と繁栄の為に大いなるゼロサムゲームをし続けていた。
これは、その大国に生きる少年たちと、国家群に挑む紛争根絶を掲げる組織と、人類の変革の話
どうでしたか?
感想や、誤字脱字の報告などがあればよろしくお願いします。
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第一話空からの革命者
いろいろなアクシデントに見舞われてこんなにも遅くなってしまって、誠に申し訳ございません。
それでは本編どうぞ!
ーアフリカ赤道部AEU軌道エレベーター・軍事演習場ー
SIDEグラハム
「今日は、人類革新連盟の10周年記念式典の日だというのにAEUはなんでまたこんなことをしたのか」
私、グラハム・エーカーは、友人のビリー・カタギリが、AEUの新型モビルスーツの発表が見に行くと言っていたので、MSWADに所属しているこの私も気になったので来てしまった。
「しょうがないでしょう。AEUはまだ、軌道エレベーターが建設中だと聞きました。焦るのも無理はないと思うのじゃ」
「じゃ?」
「っ!も、申し訳ございません!ついつい、昔からの口癖が出てしまいました!」
「問題ないさ。そういう、口癖も悪くはない。私の前では気にしなくても良い」
「了解です。中尉」
彼は、ヒデヨシ・キノシタ曹長。日本の文月駐屯基地から派遣されてきたうちの一人だ。彼自身は男と主張しているようだが、申し訳ないが女性にしか見えない。
「今、また一つ砦を壊された気がするのじゃが」
「そんなことはないだろう」
感が鋭いのもそのせいかもしれない。
「…………」(ペラペラスッ)
「ムッツリーニ。お主はここでもそれか。いい加減態度はわきまえんといけんじゃろ」
そして、私の左側にいるのがヒデヨシと同じく派遣されてきたコウタ・ツチヤ軍曹だ。私の護衛だけのはずだが、その大きなカバンとてに持っているファイルがとても気になる。
「…………今日は納品日」
「お主、まさかここでもやっておったのか」
「…………要望があるなら、それに応じるのが俺の役目だ」
いったい私の護衛以外に何をするつもりなんだ?それと…
「ヒデヨシ。彼はコウタという名前のはずだが、私の聞き間違えでなければ、『ムッツリーニ』と聞こえたのだが?」
「それはですね、彼が……その…ムッツリスケベなものなのでそのよう異名が付いてしまいまして。気分を害されたのならばここで謝ります」
「いや、謝る必要はない。なるほど。……あまり嬉しくないあだ名だな」
よほど性への執着心が高いと見た。
「…………俺はそこまでエロくない」
「では、その中身はなんだ?さっきの説明通りだとそのようなものに関すると思うのだが?」
「…………否定はしない。だが、そうであるとも言い切れるものではない。これは客の大事な商品だとしか言いようがない」
なるほど。やはり、中身については教えてくれないか。
「…………中尉は何か欲しいものがありますか?」
「いや私は特に何も無いのだが」
「…………わかっています。エロにはあまり興味が無いのでしょう。でも、問題ないです。きちんと…」
「いや、だから私には何も…」
さらに食い下がるムッツ……もといコウタ軍曹。困った。彼のその商売根性に火がついたみたいだ。どう断ればよいか……
「きちんと…………フラッグも揃えています」
「商品リストを今すぐ見してくれ」
これは、買わなければならない!まさかこんな所でこのような少年に出会えるとは!乙女座である私の今日の運勢が一位だったのは本当だったようだ!
「グラハム殿。買収されてますぞ」
「…………このタイプはどうですか?」
「3年前のGSモデルか。悪くない。AAタイプは?」
「…………もちろん」
「おーい。始まっておるのじゃが行かないのですか?」
はっ!つい見惚れていた。なかなかの商品があったのでじっくり見てしまった。
「とりあえず、まずは新型を拝見させてもらうとしよう。その後でムッツリーニ君。じっくり話し合おう」
「…………了解しました」
「完全に買収されてしまったの。ちと残念じゃ」
ヒデヨシの声は聞こえなかったことにしよう。
ー軍事演習場観客席ー
SIDEビリー
『オラオラオラー‼︎』
「AEUの新型モビルスーツ『イナクト』か…」
目の前で、次々と標的を倒してゆく。淡い緑色と白のデモカラーに塗られたその機体は、空中だけでなく、地上も疾走して行く。まあまあだね。
「AEU初の太陽エネルギー対応型か」
「我が軍のフラッグの猿まね!マシなのはデザインだけだな」
1人で新型のことについて考えていると、後ろから急に馴染みのある声が聞こえたので、そこには予想通りグラハムがいた。
「グラハム!MSWADのお見立てかい?」
「正確な評論だろ?」
そう言いながら、彼は笑っていた。
「中尉。お待ちを!」
後ろから声がしたので見てみると、そこには茶髪の可愛らしい女の子がいた。
「グラハム。彼女は?」
「日本から来たヒデヨシ・キノシタ曹長だ。私の護衛をしてくれている」
「へぇー。随分と可愛らしい人が来たね」
こんな子が護衛だなんて。ちょっと羨ましい。
「ちなみに男の子だ」
前言撤回。やはり、僕には彼女しかいないようだ。
「中尉。勝手に色々な所に行かないでください」
「何を言っている。私は別に何もしていないではないか」
グラハムはそう言いながら、苦笑いをしていた。あれは何かをやらかした時の顔だな。
「変なところに迷いまくって、おまけに関係者以外立ち入り禁止区域にまで侵入して警報鳴らして警備員を集めてくれたおかげで、当初の到着予定より一時間半もかかってしまったではないですか」
「うっ」
昔からの方向音痴癖は、今だに治ってにいみたいだ。
「ごほん……それより、コウタはどこだ?商ひ……じゃなくて、新型を見ると行っていたのに」
「コウタ?」
「…………二人とも速い」
そう言いながら、小柄な男の子が出てきた。
「紹介しよう。コウタ・ツチヤ軍曹だ。またの名を『ムッツリーニ』だ」
「‼︎」
なんだって!彼があの⁈
「知り合いなのか?」
「いや、べっ別に知り合いじゃないさ。ただ、そのあだ名がきになったのでね」
「そういえば、ムッツリーニは『今日は納品日』とか言っていたが」
「っつ‼︎なっ何を言っているんだい?僕は彼とは別に……」
パラッ
あっしまった……
SIDE秀吉
グラハム殿と話しておられるビリー殿が、懐から何かを落とされたな。あの慌てようからだと、趣味の物ですかな。
「どれどれ。これは……ブロマイドですな」
そこに写っていたのは、ビキニの水着を着た長い髪の綺麗な女の人だった。
「ビリー。まさか……」
「いや、別にそういう趣味があるわけではなく、ただ、普通の人より惹かれたというか……」
ビリー殿に焦りが見えている。これはもう彼女のことが好きなのは確定ですな。
「君も、彼と取り引きしていたのだな!」
今そこが重要なのじゃろうか?
「まさか、君もかい?」
「いや、今日からさ。やはり君は……」
「グラハム!君って奴は……」
「「最高の親友だっ‼︎」」
と、言いながら二人は抱き合った。ああ、素晴らしきかなムッツリ商会。それぞれの趣味を持ちし人々を繋げていく架け橋のような存在…………なんてことは1ミリも思いませんがの。
「おい、お前ら!さっきから俺の素晴らしいパフォーマンスを見てないってどういうことだ‼︎」
みんなでワイワイしておるとと、新型からパイロットが出てきた。なるほど。集音声も高いのじゃな。
「君は確か、AEUのパイロットの……」
「そうとも。この俺こそ、AEUのエースパイロット。パトリック……」
「パ○リック・チャンだね」
「ちげーよ!しかもその人何世紀も前のスケート選手だろ!それに、名前隠してるところ違うだろ!そっち隠してどうすんだよ!それだと俺と繋がりねーじゃねーか!」
頭の良いビリー殿がまさかのトンデモ発言。彼に個人的な恨みでもあるのじゃろうか。
「ビリー。間違えては失礼だろ」
「そうだぞ。俺の名前は……」
「彼の名前はアグ○ス・チャンだろ」
「それもちげーよ!それに、チャンの方に繋がりを持たせろって意味じゃねーんだよ!どうやったって俺の名前に繋がらねーよ!」
グラハム殿も暴走中。わし一人ではどうにもできぬ事態になってしまった。
「………二人とも違う」
「何が違うのだ?」
「やっばり、パ○リック・ザラだっけ?」
「…………惜しい」
「いや、惜しくねーよ!しかもその人ガンダムSピーのズキューンの父親っておい!これだと説明できねーじゃねーか!」
※パ○リック・ザラについては『ガンダムSEED』で検索を!
「…………正解はパトリック」
「そうだ。パトリック・コーラ」
「…………パ○リックと見せかけて、チャン・カ○イ」
「あんたら、俺のことをどう思ってるんだよ!」
「スケート選手」
「て○神の人」
「…………お笑い芸人」
「おめえらなんて大嫌いだー‼︎」
誰一人、彼をモビルスーツ乗りと言いませんでしたな。ムッツリーニも暴走した今、彼の寿命はあとわずかになりましたな。かわいそうに。そろそろ止めてあげますかの。
「みなさん、もう少し優しく接してあげましょうぞ。あまりにもかわいそうですぞ」
「ありがとう、そこの嬢ちゃん!そうだ!後で一緒にお茶でも……」
「前言撤回。とどめを刺してあげるのじゃ」
「なんでー!」
嬢ちゃんじゃと?わしは男なのにどういうつもりじゃ!
「ヒデヨシ。君は案外ひどいな」
「中尉には言われたくないです」
「お前らぶっ殺す‼︎」
「うわっ!こっち来たー!」
「お前らなんて、お前らなんて大嫌いだぁぁあ‼︎」
〜しばらくお待ち下さい〜
SIDEグラハム
『グスッ……オラオラオラぁぁあ‼︎』
あれから30分。彼がモビルスーツを降りて、観客席に突っ込んできたのでなだめつかせるのが大変だった。
「それにしても、AEUが人革連や僕らのユニオンに敵意を持っているのは明白だな」
「人類の歴史から戦争が無くなる日は来るかな?」
「多分無理でしょうな。」
「…………何世紀も前から紛争は続いている」
「神の力でもない限り止まらないだろうな」
晴れた空に輝く太陽を見ながら、そんなことをつぶやく。太陽光発電を獲得しても、人類は争いを止めようとしない。闘争本能には抗えないのだろうな。
「ん?」
空を見ていると、軌道エレベーターの近くに光るものが見えた。
「あれは……なんだ?」
SIDE刹那
「目的対象確認。ガンダムエクシア。予定通り、ファーストフェイズを……
…………開始する」
〜到着30分前〜
SIDE刹那
「GN粒子最大散布。これより大気圏に突入する」
後、30分ぐらいで着く。それまでどうするか……
「下の軍事演習の状況でも見よう」
ピッ
『ヒデヨシ。君は案外ひどいね』
『中尉には言われたくないです』
『お前らぶっ殺す‼︎』
『うわっ!こっち来たー!』
『お前らなんて、お前らなんて大嫌いだぁぁあ‼︎』
ザーッ
〜しばらくお待ちください〜
「…………何があったんだ?」
いかがでしたか?誤字脱字、感想などがありましたらよろしくお願いします。
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第二話空を舞う剣士と鋼鉄の狙撃手
作者(笑)「…………ありません。遅れてしまって本当に申し訳ない‼︎」
ガスッ
ティ(トライアルモード)「このような行いは万死に値する‼︎」
作者(自業自得)「すいません‼︎ティエリア様!とりあえず、僕の顔を踏んでいるその足をどかしていただけると大変嬉しいのですがぁああっ⁉︎」
ティ(トランザム中)「GNバズーカああぁっ‼︎‼︎‼︎」
グリグリグシャッ
作者(ピーーー)「ぎゃあああぁっ‼︎‼︎‼︎」
ア「えー…っと、しばらくお待ちしても意味は無いので…」
ロ「本編へ」
刹「ゴー」
作者(臨死体験中)(誰かっ…………助け……て)
SIDE刹那
「大気圏突破。成層圏に突入。GN粒子最大散布モードから通常モードへ移行」
プトレマイオスから発進してから、6時間が経っていた。今回のミッションは、AEUの新型モビルスーツ『イナクト』の破壊ともう一つある。この作戦が成功するか否かによって、今後のことが決まる。
「太陽炉に問題なし。粒子発生率正常。機体各部、武器に異常なし」
エクシアの準備もできている。まるでこの日のために、いつでもできると言っているかのようだ。そうだ。俺たちはこの時のために生きてきた。やってみせる。必ず。
「目標対象確認。ガンダムエクシア。予定通り、ファーストフェイズを……」
「開始する」
SIDEグラハム
「あれは…………なんだ?」
光る物体が徐庶に近づいてきた。近づくにつれて、だんだん姿がはっきりしてきた。その姿は、現存する機体とは明らかに違った。より人型に近く、スマートな外見ながらも、大きな大剣と盾を持っていた。
「あれも、AEUの新しい機体かなのか?」
「…………今日の発表はイナクトだけです。他に説明会などがあるだけで、そのような情報はありません」
ビリーの質問に、コウタが答える。確かに、今日の予定にそんな情報はどこにも無かった。
「では、人革連なのか?」
「明らかに、今までの機体と違いすぎます。それに……」
ヒデヨシが言葉を区切って、上の観客席を見た。
「人革連のお偉いさん方が慌てているところを見る限り、あれの機体は人革連のものではないじゃろう」
上の観客席では、人革連の方々が慌てていた。彼らが驚いているということは、人革連ではないな。
ズズンッ
そうこうしているうちに、謎の機体が降りてきた。
『おい、これはどういうことだ!』
横では、AEUの関係者が管制室に連絡をとっている。
『わかりません。レーダーにも反応がな』
ザザザップツン
『おい、どうした?おい!』
『ダメだ。繋がらない』
突然、砂嵐音とともに彼らの持っているケータイが繋がらなくなった。どういうことだ?
「電波が妨害されておるのか?」
彼らの様子を見たヒデヨシがビリーに質問をした。今時圏外になることはまずありえない。それに、ここは軍の施設。通信機能は通常の区域の何倍も良い。そこで電話が繋がらないということは、妨害されているのだろう。
「レーダーにも映らないし、ケータイも機能しない」
ビリーが顎に手を当てて下を向きながら考えている。
「…………おまけに、パソコンにウイルスが入った形跡はない」
「さらに、あの機体が現れるまで使えたことから考えると……」
ビリーが一呼吸おいてから、青い機体を見直した。
「あの光る粒子のせいか?」
やはりビリーも、あの機体から出ている粒子が原因だと思ったらしい。
「それにしても、あれはどこ製じゃ?超大国群以外だと、第三国になるが、あれだけの機体を秘匿することは不可能じゃと思うのじゃが」
確かに今の時代、モビルスーツを開発しようと思うと、多額の資金やそれなりの設備、大量の資材が必要になる。だが、今の第三国には、モビルスーツを開発するどころか、自国の経済を維持するだけで精一杯の状態だ。作れる余裕もないし、ましてや出来たとしても、せいぜいアンフの改良型ぐらいか、ワークローダーぐらいだろう。
「どっちにしろ関係ねえ!」
突然、イナクトから声が聞こえた。
「待つんだチャン!そいつは危険だ!」
「今の俺にとっちゃ、お前の方がよっぽど危険な奴だよ!」
「グラハムの言う通りだアグネス。そいつは今までのモビルスーツとは違う!」
「お前も、今まで会ってきた人とはだいぶちげーよ!」
「…………カワイ、前!」
「何が、カワイだてめぇってオワッ⁉︎」
青い機体が、イナクトに突撃してきた。チャン(パトリック)は、なんとか避けたが、突然の出来事に反応しきれず、ディフェンスロッドを奪われた。そして……
ギギギッバキバキバキッ
厚い装甲でできたディフェンスロッドが、いとも簡単に青い機体に握り潰された。
「っ!てめぇ!」
それを見たチャンは、左腕に内蔵された折りたたみ式のナイフを展開した。展開されたナイフからは耳をつんざくような音が発せられている。あれはソニックブレイド。ユニオンや、AEU製のモビルスーツに搭載されている超高硬度カーボン製近接装備だ。刀身を高周波振動させることで圧倒的な切断力を誇る。また、最大出力で3分間だけなら、プラズマを収束させ、刀身状に展開するプラズマソードが使える。
《説明ありがとうございました》
「いえいえ、どう致しまして」
「グラハム殿。誰とお話を?」
それは、秘密だ♪
「こちとら今さっきの(名前遊び〔笑〕の)せいで、気分が超悪いんだよ!悪いが、ぶっ潰させてもらうぜ‼︎」
そんなことをしているうちに、チャンがソニックブレイドを突き出しながら、青い機体に突っ込んで行った。だが……
ズバンッ
青い機体がとてつもない速さでイナクトの右腕を刈り取った。刈り取られた腕は空中を舞い、地にめり込んだ。
「俺はあぁっ‼︎」
チャンはすかさず、右腕のリニアライフルを構えて撃った。
「チャンで!」
……チャン?
青い機体は、撃ち出された弾丸を軽やかに躱しながらイナクトを肉薄にしていく。
「アグネスで!」
アグネスで?
右腕が、大剣に斬り落とされた。そして……
「カワイなんだよおおぉっ‼︎」
武器と両腕を無くし、抵抗することの出来なくなったイナクトの頭部が、澄み切った青空の中へ消えてった。わずか30秒で、この有様。AEUの人達にとって、あのモビルスーツは悪魔として記録されるだろう。現に、AEUの方々は顎が外れるくらい口を開けて、涙を流している。お気の毒に。まあ、それよりも……
「34点だな。フィギアスケートでそんな点数では失格だな。同じパトリックの名を持つのに酷いなこっちのパトリックは」
「やはり、天○に行かなければな」
「パトリック・ザ○が抜けてたのじゃ。あれではコーディネイターを導くことは出来んのじゃ」
「…………面白さの欠片も無い。流行らずに消えてしまう芸人の運命をたどるぞ」
「くそぉっ!なんで俺ばっかり不幸なんだよおぉっ‼︎」
ボロボロになったイナクトから、大声で叫ぶチャン(パトリック)の声が聞こえてきた。
ウーウーウーッ
どこからか、サイレンが鳴り出した。
「…………AEUが、スクランブル時にかけるもの。」
やはりな。流石にこの事態になっても、何もしない所は無いからな。そう考えていると、エレベーター側から6機の機影が見えた。
「あれは、ヘリオンだな。AEUが現在使用している機体で、最も多い機体だね。数は6機。まあ、条約範囲内だね」
ビリーが落ち着きながら、説明している。現在世界では、一つの基地につき、6機までならモビルスーツを保持しても良いと言う条約がある。今、AEUが出してきたモビルスーツは、規定の6機を出している。つまり、今の状況はとても危険な状態と言うわけだ。
「グラハム殿。奴が軌道エレベーターを!」
「なに⁈」
ヒデヨシの声に驚き振り返ると、青い機体は軌道エレベーターに銃口をむけていた。なんて奴だ!この世界を支える力の一つを破壊するつもりか⁈そんなことをすれば、世界は大混乱に陥るぞ⁉︎そんな考えを無視し、青い機体はエレベーターに向けて赤い閃光を放った。だが、その光はエレベーターギリギリで外れて、空の彼方へ消えて行った。
「外した?」
どう言うことだ?あの機体が、狙いを外したと言うのか?一体…何者なんだ?
SIDE刹那
「エクシア、ファーストフェイズ終了。セカンドフェイズに移行する」
新型モビルスーツの破壊が終了した。まずは第一段階終了。次のプランは……
ーブリーフィング時ー
「今回のミッションは、私達の存在を世界に知らしめることが目的よ」
俺達の戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガが、そう言いながら、画面上の写真を指差した。
「最初のターゲットは、AEUが開発した新型モビルスーツのイナクトよ。」
そう言って、写真と、機体図を拡大して見せた。
「AEU初の太陽光発電対応型。これを世界各国から集まった軍事関係者の前で破壊する。これが、ファーストフェイズの内容ね。担当は刹那。よろしくね」
「了解した」
「次、セカンドフェイズについてよ」
そう言って次のプランを見せた。
「イナクトを破壊すれば、敵は、絶対に私達を黙って見過ごすわけにはいかない。当然、スクランブルをかけるわ。」
そう言いながら、足元に、作戦予定地域を映した。
「最初は、6機。世界各国からいろんな方々が集まっているから、規定内に収めていないといけないわけ」
下の図に、黒い三角形が6つ現れた。
「でも、エクシアに破壊されれば、敵は危険度をAからSに引き上げて、全ての軍事力を投入せざるを得ない状況になるわ」
図の軌道エレベーター側からさらに6つ黒い三角形が現れた。
「そこであなたの登場よ。期待してるわよ」
「了解。任せな……
……まずは敵をいぶり出す。
エクシアのGNソードを、ライフルモードに変えて、照準を軌道エレベーターギリギリにセットする。そして、引き金を引く。エクシアから放たれたビームはエレベーターギリギリで外れて消えていった。これで、反応が出るはず。
ピピッ
コンソロール画面に敵影が近づいて来るのが映った。
「まずは、この編隊を撃ち落とす」
レバーを押すと、エクシアは加速しながら、空を飛んだ。エレベーターの方に飛んでいると、敵が撃ってきた。それをレバーを左右に動かして躱す。
「情報通り、敵はヘリオン6機」
真っ正面に来てリニアライフルを乱射してきたヘリオンを、パドロールしながら躱す。
「エクシア。目標を破壊する」
照準を合わせて、イナクトの編隊に向けて撃つ。編隊の中の1機のど真ん中を貫いた。まずは1機。
ピピピッ
警報音が鳴って、後ろからヘリオンのリニア弾が飛んでくる。それを躱し、ライフルから、ソードに変えて剣を振るう。向こうは、避けれると思っていないようで、そのまま真っ二つになった。
「そろそろか」
開始から5分。そろそろのはずだが……
ピピッ
コンソロールに軌道エレベーターのピラーが開く様子が映っているのが見えた。そして、中から新たに6機のヘリオンが現れた。
「やはりAEUは、ピラーの中にまで軍事力を…」
現在、敵の機体は合わせて10機。倒せないわけではないが、プランには従わなくてはならない。向かってくる6機をあえて無視して、4機の相手をする。すると、新たな6機は、こっちが気づいていないと思ったようで、そのまんまこっちに近づいて来た。相手は、それをベストだと過信しているのだろうが、それが命取りになってしまった。
ズキューンッ
下からビームが飛んで来て、イナクトの1機を撃ち落とした。
「……ロックオンか」
SIDEロックオン
「おっ、やっと出てきた」
待機時間が長かったな。おかげで体が固まってたよ。
「さーて。いっちょやりますか。ハロ。光学迷彩解除。スナイパーモードに移行」
[了解。了解]
オレンジ色の丸い形をしていて縦に細い目をしている、支援AIのハロが茶目っ気たっぷりな感じで、そう言いながら、システムを起動させていく。
[デュナメス、スナイパーモード。スナイパーモード]
コックピットの天井から、ライフルの形をしたコントローラーを引き出してスコープを覗いて、敵の1機に照準を合わせた。さてと、始めますか。
「ロックオン・ストラトスとガンダムデュナメス。目標を狙い撃つ‼︎」
ドオッ
大きな音をたてながら、GNスナイパーライフルからビームが真っ直ぐ放たれていく。放たれたビームは、目標のヘリオンを貫き、そして、破壊した。
「次、いくぞ」
続けざまに4、5機と狙いを合わせて撃ち落とす。
[百発百中。百発百中!]
敵の大半を撃ち落とすと、ハロがまた喋った。正直言ってそんな行動をとるハロが可愛いが、敵をライフルで撃ち落とした後に言われると、とても複雑な気分になる。
ザザザーッ
『……なっ…だ!』
突然、コックピット内のスピーカーから、声が聞こえてきた。粒子の影響を受けているせいか、よく聞き取れない。
「まあ、知ったこっちゃないか」
[知ランプリ。知ランプリ]
所詮聞いた所で、助けることはできない。俺らは、この世界と戦うのだから……
SIDE刹那
『なんなんだ!』
飛び回る1機を切り裂いた時、残っている最後の1機から、全周波数に向けての音声通信が来た。この距離なら、いくらGN粒子非対応のモビルスーツでも、通信波を飛ばすことはできるみたいだ。だが……
「終わりだ」
『何なんだ。お前たちはー‼︎』
……だが、俺達は世界と戦う者。奴らとは敵対している。たとえ、何がどうなろうと任務の邪魔ならば排除する。GNソードを立てて、最後の機体を貫いた。貫かれた機体のパイロットは最後に俺達への疑問を抱きながら、澄み切った青空の中で散って行った。
《PHASE END》
コンソロールに終了の通知が届いた。これで俺達の出番は終わった。
「ガンダムエクシア」
『ガンダムデュナメス』
「『セカンドフェイズ終了』」
ーおまけー
作戦開始15分前
ーデュナメスコックピット内ー
「フンフーン♪」
いやー、いい買い物をしたな〜。
ピピッ
「ロックオン、作戦開始15分前よ。分かってる?」
「おわぁっ⁈み、ミススメラギ?も、もちろんだとも!」
「……何隠したの?」
「いや、べ、別に」
「…………フ○イトのフィギュア?」
「そーなんですよ‼︎しかも、ジャパンエキスポ限定のタイプで、もうたまんな…はっ⁉︎」
「罰として、館内掃除1週間ね」
「ちくしょー‼︎‼︎‼︎」
設定…ロックオンはアニメ好き
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第三話兆候
半年以上更新もしないで、申し訳ございませんでした‼︎」
ティ 「言い残したのはそれだけか?さらばだ」
キュイイイイッ←チャージ中
作者 「よすんだ!俺はまだ死にたくない!やめ…………」
ティ 「Bang☆Bang☆Bang☆Bang☆」
チュドーンッチュドーンッポーピーッチュードーンッ
作者だった者 「ぎゃあぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」
刹 「ティエリアは、どうしたんだ?」
明 「連載してから、ちょっとしか出てこないから、イライラしてるんだよ」
ロ 「まあ、1人だけそうだと寂しいよな」
ア 「僕もなんだけど…………」
刹&明&ロ 「あっ…………」
ティ 「…………は、いねぇか?」
刹&明&ロ&ア 「「は?」」」
ティ 「連載されているやつは、いねぇかぁぁぁっ‼︎」
明 「ひいぃぃっ!こっちに来たぁ!」
ロ 「とりあえず」
刹 「本編」
刹&明&ロ 「どうぞ!」
ア 「僕は、関係無いのに〜!」
作者の残骸 「俺を見捨てないで…………」
ー人格連ー
静止衛星軌道ステーション
SIDE明久
「おい、明久。もうパーティーは、始まっちまってるぞ」
「待ってよ雄二。後、このボタンだけだから」
今日僕らは、人格連が所有している軌道エレベーター『天柱』で行われるパーティーで、要人護衛をするために来ている。そんな大切な日なのに服装を間違えてしまい、船に乗り遅れて、予定より大幅に遅れてしまった。(もちろん、鉄拳制裁は嫌というほどくらった)しかもその後、鉄人にフラッグで送ってもらってから、空中から突き落とされ(パラシュートは装備)、硬いコンクリートの地面に叩きつけられた(高度が足りなかった)。
「ったく。今日は何が起こるか分からねえから、早く来たはずなのによ。お前がセーラー服なんて来てくるから」
恨むぞ。寝ぼけていた僕の思考力!
「ごめんってばー。……っとこれで良し」
「行くぞ、明久少尉。先ずはあの人に挨拶しに行かないとな」
「了解です。坂本中尉」
久しぶりに、あの方にお会いしなければ。『ロシアの荒熊』の異名を持つあの方に。
SIDEロシアの荒熊
静止衛星軌道ステーション
「第二軌道エレベーター、通称『天柱』。そのステーション内で今、電力送信10周年を記念するパーティーが開かれており、ユニオン、AEU、人革連の各国要人が参加され華やかに行われております」
自分のすぐ近くで、人革連のキャスターが、カメラに向かってレポートしている。今日は、『天柱』の電力送信10周年記念パーティーだ。自分以外にもたくさんの軍人、政府関係者、有名俳優まで集まっている。
「遅いですねぇ……」
時計を見ながら部下の1人が、眉をひそめている。
「本当に来るのですか?フミズキからの特別派遣兵の2人は?」
かれこれ、30分は待たされている。他の兵も、待ちくたびれてイライラする気持ちもわかる。
「彼らは、必ず来ますよ。中佐」
「少しは信用したらどうよ、あなた達。彼らに失礼よ」
後ろから、急に声が聞こえたので振り返ると、我が軍のエースパイロットの2人が立っていた。
「しかしですね、約束の時間を大幅に過ぎていますし……」
「彼らは忙しいのよ」
「ほら、噂をすれば……」
彼が指さす方向を見ると、見覚えのある2人が中央エレベーターから出てきた。
「それでは、あの変わり者の2人組を迎えにいきますかな。中佐。我々が帰るまで、みんなと一緒に楽しんでいて下さい」
そう言って、2人は、彼らの方向に向かった。
SIDE明久
「うわ〜、広いね〜」
中央エレベーターから降りて扉をくぐると、メインの大会場に着いた。そこには、高そうなドレスやスーツを着た有名人や、政府関係者がたくさんいた。窓は360度ガラス張りで、外には無数の星と青く輝く地球が見える。
「旨そうな匂いもするなー」
会場には、良い香りのする料理が沢山並べてあった。バイキング形式となっており、自由に料理を取ることが出来るようになっている。昼飯を抜いておいて正解だったと思う。
「おっ旨そうだな。ちょっと一口……」
「ダメだよ雄二。ちゃんと挨拶しないと。失礼だよ」
つまみ食いを試みる雄二を、食べ物の手前で阻止する。
「なんだよ明久。一口ぐらいいいじゃねーか。毒味も兼ねてだよ。固いこと言うな……」
「相変わらず、食いしん坊だな。坂本中尉」
「お久しぶり、明久君。坂本君」
雄二と言い合っていると、聞き覚えのある声がした。声のする方には、側面床に軍服を着た懐かしい2人組がいた。
「根元君!それに小山さんも!」
彼らは、人格連に所属しているエースパイロットの『根元 恭二』君と、『小山 友香』さんだ。
「よお、吉井。久しぶりだな。元気だったか?」
側面床を蹴って、こちらに近づきながら根元君は言った。あっ。しまった!
「失礼しました。根元中尉。本日、文月より派遣されました。特別派遣兵の吉井 明久少尉です」
僕は少尉。彼は中尉だった。昔、雄二や、他のみんなで一緒に行動を共にしたとはいえ、階級をわきまえて行動しなければ。
「ははっ。吉井、そんなの気にすんな。前のように、名前で構わねえよ」
「そうよ。久しぶりに会ったのにそんな堅苦しいと、こっちが困るわよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
やっぱり良い人だな、2人とも。
「さてと……よお、久しぶりだな坂・本・中・尉さん」
僕と話し終えると、根元君は雄二の方を見て、雄二に話しかけた。……右手の中指を立てて『f◯ck you!』のサインを示しながら。
「ああ。久しぶりだな根元中尉。また会えてとっても嬉しいよ」
雄二も根本君を見て笑顔で左手で『k◯ll you!』のサインを送り返した。
「最近、霧島さんとの主従関係は進展したかな?坂本君?」
やっぱり、こうなった。出会った時からこの調子で、廊下やトイレで会っただけでも喧嘩し出すほど仲が悪かった。殴り合いもよくしてたし、そのせいで周りの僕たちまで巻き込まれて、鉄村(西村)大尉の鉄拳制裁を一緒にくらうこともよくあった。
「いえいえ、こちらは特に何もないですよ根元中尉。そちらこそ、鎖付きの首輪は外してもらえましたかな?」
「なんだと、にゃんこ野郎!お前なんて新しい猫じゃらしを買ってもらって、大はしゃぎしてんじゃないの?羨ましいね〜」
「言ってくれるじゃねーか犬っころが!お前の方が、飼い主に『ボール取ってこーい』とか、やってもらってんだろ。楽しそうだね〜。よかったね〜」
この二人には、使用回数無限の技『挑発』を所持しているに違いない。
「喧嘩の特売なら買ってやるぞ、コラァッ!」(ギロッ)
「上等だ。只今、セール中なんだよ。いくらでも売ってやる!」(ギロッ)
いけない。このままでは取っ組み合いになって、食器による投げ合いになって、銃撃戦になって、モビルスーツ戦になって会場が破壊され、エレベーターが倒壊して、世界戦争になりかねん。急いで止めなければ!僕は、仲裁に入ろうと2人の間に出ようとした。すると、小山さんが僕よりも先に2人の間に入って……
ギューメキメキメキッ
「「イデデデデッ⁈」」
2人の耳を思いっきり引っ張った。あれ?でもおかしいな?耳引っ張っても、『メキメキメキッ』なんて音鳴らないはずなのに。疲れてるのかな?
「2人共黙りなさい。お客様の迷惑よ。それ以上喋ると引っ張るわよ」
「「もう引っ張ってるんですけっイデデデデッ!」」
さらに耳を強く引っ張る小山さん。2人の耳が、少しずつだけど青黒くなってるのは彼女の握力のせいだとは思いたくないです。
「ごめんね、吉井君。後でしっかりしばきに、しばき倒して置くから」
「出来れば、説教だけにしといて欲しいな」
「なんで?」
「たぶん小山さん、雄二と根本君を血祭りにすると思うから」
「たぶんじゃなくて、100%それなんだけど。吉井君、随分優しいのね」
「いや、血が出ると掃除が大変だから」
「「明久⁉︎」」
「なるほど、一理あるわね」
「優香、待ってくれ!しばくなら、坂本だけにしてくれ!」
「ふざけんな、この卑怯者が!自分だけ助かろうだなんて汚ねえぞ!元はと言えば、おめえが挑発したのが、原因じゃねーか!」
「黙れ、クソ猫が!今日会うのは吉井だけで十分だったんだよ!とっとと、エレベーター降りて帰りやがれ!」
「そう言うおめえが降りとけ!この、どアホ犬が!」
耳を引っ張られながらも、自らに最大級の悲劇が起きそうになると、友人を売ってでも生き延びようとする為に醜い争いをやめない2人。そんな時どこからか……
ブチンッ
…という音が聞こえてきた。まるで、何かを縛っていた紐が耐えきれずに弾け飛んだ感じが……
「前言撤回。吉井君、今しばき殺すわ」
「えっ?ちょっ小山さ……」
今、しばき倒すじゃなくて、しばき殺すって言わなかった?
「「イデデデッ!」」
そう言った後、般若の様な形相で無言のまま2人の耳を引っ張りながら、中央入り口まで戻って行った。何をするつもりなのかとてつもなく気になったので、後をついて行くと、関係者専用扉の中に2人と一緒に入って行った。
「あの、小山様?これはどう言うことでしょうか?」
閉められた扉の向こう側から、雄二の声が聞こえてきた。
「優香?ここは、関係者専用の部屋だろ?会場は俺たち今回関係ないし……って、ちょっ優香?なんで掃除道具入れから、そんな名状し難いバールの用な物が出て来てるの?」
「さあ、貴方達の罪を数えなさい!」
少しだけ開けて覗いてみると、小山さんが何やらくの字に曲がった工具を片手に人差し指を根本君と雄二に向けて言っていた。
「優香。ちょっとそのセリフはやめてもらえるかな?その台詞の後には、『マキシマム○ライブ!』っていうガイダンスが聞こえてきそうなんですが!」
「それに、俺たちそこまで悪いことしてないと思うんだけど?なんでそんなに怒るのか、分からないんだけど?そこらへんの理由を教えてくれよ?なっ?」
確かに、2人ともうるさくしていただけだと思うんだけど?なんでだろう?
「簡単よ。私が怒る理由はただ一つ…………
…………料理に私の嫌いなブロッコリーが入っていたからよ」
「「理不尽すぎる‼︎‼︎‼︎」」
世の中は、悲しいことでいっぱいです。
「ま、そういうわけだから………よろしくて?」
「いや、ダメに決まってるでしょ!優香!お願いだから、やめてください!」
そんな、根本君の叫びを無視して小山さんは二人に近づいて行った。
「ちょっ小山様。マジですんませんでした!あの、バールは叩く物じゃないし、私の腕はそちらには、曲がらないので……」
「ふんっ!」
グボキッ
「すがぁっ⁉︎」
「優香、落ち着いて。仮にも女の子が友人や恋人の前でそんなことはしてはいけないぞ。それと、俺の足はそんな方向に向きはしな……」
「おりゃあっ!」
バキョムッ
「いぞぉっ⁉︎」
「さて、準備運動終わったから本番行くわよ」
「待ってくれ小山様!俺、死にたくない!」
「優香!彼氏に対して、そこまでの仕打ちはいらないと思うんだ!だから、頼む。やめてくれ!」
「It's showtime!」
「「ぎゃあぁぁぁっ‼︎」」
僕は生まれて初めて、生き地獄を見ました。これからは、ホラー映画を観ても、吉○新喜劇レベルに感じれると思います。いや、マジで。
〜30分後〜
「ふぅ、スッキリした」
たった30分で、エースパイロットの2人が見るも無残な姿になるまでボコボコにされて帰ってきた。これがいわゆる、女子力ってやつかな?小山さん限定だと思うけど。
「さてと、ストレス発散したから、そろそろ行くわよ」
人をボコボコにするのをストレス発散って、えげつないと思うけどここは、その気持ちを押し殺して…
「行くって、小山さんどこへ?」
「中佐の元によ」
そうだった。ここには、文月の特別派遣兵として来たんだった。今さっきのブラッド・フェスティバル(小山さんのフルボッコ祭)のせいで忘れてた。
「それじゃ、行きますか」
そう言って、床を蹴って進もうとする小山さん。あっ、そういえば……
「小山さん。この2人はどうするの?」
小山さんのフルボッコにあい、ボロ雑巾の様になっている雄二と根本君。2人とも、気絶していて起きる気配が無いんだけど、どうしよう?
「吉井君。燃えるゴミは、エレベーター入り口の左から3番目のゴミ箱に捨てれるわよ」
「雄二はともかく、彼氏の根本君をゴミ扱いしちゃっていいのかな?」
「そうよね。ゴミが可哀想よね」
小山さんの中では、[根本君<ゴミ]と、なっているらしい。本当に2人とも付き合ってるのかな?酷い領主と奴隷の関係にしか見えないや。
「嘘よ、嘘。吉井君、悪いけどその2人を連れて来てくれる?」
まあ、嘘だとは分かってたんだけどね。僕は頷いて、2人を抱えて小山さんの後をついて行った。
「「……生きるって……難しいね……」」(ガクッ)
今の発言は、聞かなかったことにしよう。
SIDEロシアの荒熊
小山と根本が2人を迎えに行ってから、さらに30分以上過ぎた。久しぶりに会うとはいえ、少々遅いと思う。そろそろ、様子でも見に行ってきた方が良いかもしれんな。私は、ゼリー状のお酒が入ったマティーニグラスを置いて、後ろを向いた。その時、小山が帰って来るのが見えた。
「遅かったな。何かあったのか?」
「いえ、何も。それより中佐、連れてきました」
小山が横へずれると、こちらに向かってくる少年が見えた。吉井だ。
「セルゲイ・スミルノフ中佐!」
吉井は、笑顔で私の名前を呼んだ。まるで、無邪気な子供みたいだ。だが、嫌いではない。
「久しぶりだな、吉……」
井と言おうとしたところで、言葉が詰まった。よく見ると……いやよく見なくても分かるのだが、何故か吉井は2人のタキシードを着た男性を抱えていた。あの2人は私の見間違いでなければ、私の部下の根元と坂本だと思うんだのが?
「小山、どう「私は何も知りません」……まだ、何も言っていないのだが?」
小山の目が泳いでいて、冷や汗が流れているのが見えた。あからさまに、何かをしたらしい。
「吉井。小山が何をしたかを教え……」
「キノウノユウハンハ、ヤキザカナデシタ」
まだ言っている途中なのに突然、吉井が片言で私に言った。吉井の目線の先を見ると、小山が何やら銀色光るを取り出しているのが見えた。何故今、そんな物を取り出しているのかは、聞かないでおこう。
「「……ううぅ……」」
2人と話していると、吉井が抱えている2人が顔を挙げた。その顔面は、殴られ過ぎて2、3倍ぐらいに膨れ上がっているが、私の部下の根本と、坂本だった。2人は震える手で、2枚の紙を差し出した。開いてみるとそこには、赤い物(ケチャップ)でこう書かれていた。
『犯人は』
『チビ mountain』
「誰がチビよ……って、あっ⁉︎」
「小山、お仕置きだ」(ゴッ)
私は、問題児の頭にげんこつを一発入れた。
明久SIDE
ゴッ
「痛っ」
小山さんの頭にスミルノフ中佐の拳が軽く振り落とされた。小山さんは、涙目になりながら頭をさすっている。まあ、スミルノフ中佐だもんね。今、げんこつを入れたのは、今回僕らが護衛をする『ロシアの荒熊』こと、セルゲイ・スミルノフ中佐である。人類革新連盟の中のトップの1人で、白兵戦からモビルスーツ戦までこなすことが出来るまさに『武人』。その荒々しい鬼人のような激しい戦いぶりから、『ロシアの荒熊』と呼ばれるようになった。しかし、戦い以外の中佐は、時に厳しく、時に優しい。まるで父親のような存在である。その為、中佐の裏でのあだ名は『お父さん』になっている。
「吉井、坂本。迷惑をかけたな」
小山さんに拳骨を入れた後、中佐は僕の方をすぐに向いて謝ってきた。流石スミルノフ中佐。ものすごく礼儀正しい。雄二に垢でも飲ませてやりたいよ。
「大丈夫です、スミルノフ中佐。それよりも、予定より大幅に遅れてしまって申し訳ありませんでした」
「別に気にしなくても良い。どうせ早く来ても、政治家達の話し相手になるだけだしな。それと吉井、セルゲイで良い」
「しかし、セルゲイ中佐。他の兵の方々を随分と待たせてしまいましたし……」
「安心しろ、吉井。ほら……」
中佐の指が指している方を見ると、そこには……
『隊長!この酢豚、とても美味しいです!』
『隊長!こちらの唐揚げもなかなかよろしいです!』
『よし、全員突撃をかけろー!』
『『『ウオオオォォォッ‼︎』』』
……バイキングを満喫している中佐の部下の人達が見えた。
「「ウオオオォォォッ‼︎」」
そしてその後ろには、根元君と雄二がいた。さっき小山さんに、散々ボコられたのにもう回復してるなんて怪物としか思えない。しかし、みんなはしゃぎすぎなんだよ。こういうバイキング会場では、バレないようにこそっと行ってから、詰め込めるだけ詰め込んで持って帰るべきなんだよ。
「吉井。バイキングを楽しむのはいいが、タッパに入れて持ち帰らない様に」
くそっ、ばれてたか。流石は『ロシアの荒熊』。僕のこの華麗なるタッパを取り出す動きを察知するなんて!
「それはそうと吉井。例のアレはあるかね?土屋君に頼んでおいたんだが……」
セルゲイ中佐が、小声で僕に話しかけてきた。そういえば、とても重要なことを忘れていた。スミルノフ中佐が『お父さん』と呼ばれる理由は、実は二つある。一つは、最初に挙げた通り父親の様な振る舞いだからだ。重要なのは、二つ目の方だ。彼が『お父さん』と呼ばれるのは……
「ええ、たくさんありますよ。スミルノフ中佐が欲しがっていた、大量の……
……アンドレイ・スミルノフ少尉グッズ」
…………親バカだからだ。
「素晴らしい‼︎まさに、欲望は(私の)世界を救う‼︎‼︎‼︎」
「中佐。それだと、3枚のメダルで変身する三色怪人の社長になってしまいますよ」
大丈夫かなこの人?そのうちコ○メダルとか、オー○ドライバーとか開発しないよね。この人、暴走すると大変なんだよね。紫色のコインなんかで変身したら、世界がめちゃくちゃになっちゃうよ。
「大丈夫よ吉井君」
セルゲイ中佐と話していると、唯一バイキングで発狂していない(バイキングの前には発狂したが)小山さんが来た。
「何がですか?」
「あの人の、アンドレイ少尉に対する愛があればメダルぐらいいくらでも制御できるわ」
「本当に出来そうな気がするのでやめてもらえますか?」
セルゲイ中佐は、超がつくほどの息子大好き人間だからやりかねん。ちなみに、なぜアンドレイ少尉のグッズを欲しがるのか聞いてみると、『最近、アンドレナリンが不足してるから』という、摩訶不思議な答えが帰ってきた。
「アンドレーイ‼︎‼︎‼︎」
「ちょ、セルゲイ中佐。こんなところで発狂しないでください!それと、タイ○ニックの女性側のポーズをとらないでください!」
いかん、このままだと会場中に『よ〜〜〜〜〜ひ〜〜〜〜〜〜えん(以下省略)』という音楽が流れてきちゃう!なんとかしないと!そう思って、空中で羽ばたいているセルゲイ中佐を連れ戻そうとした時、目の前に紫色の服を着た男性が現れた。男性は、顔つきから中国人らしく、漢服とおぼしき服を着ていた。身長は180cmぐらいですらっとした細身の体型だが、引き締まった筋肉や身のこなしから分かる様に、ただ痩せているわけではないらしい。たぶん、この人は誰かのボディーガードだろう。それも、かなりの大物の。一体誰のボディーガードかを考えていると、男性と目があった。すると、男性は僕を少し見てから飛んでいるセルゲイ中佐を捕まえた。
「セルゲイ・スミルノフ中佐。お久しぶりです」
「おお、君か」
「お嬢様がお待ちです。こちらへ」
どうやら2人には面識があったようだ。流石はセルゲイ中佐。そうやって感心していると、男性が僕の方にセルゲイ中佐と一緒に来た。
「突然で申し訳ありません、アキヒサ・ヨシイ中尉。私の名は紅龍(ホンロン)言います。以後、お見知り置きを」
そう言って紅龍さんは礼儀正しく頭を下げた。それにしても、どうして僕の名前を知っているんだ?確かに、文月自体は世界的にもかなり有名だ。様々なスポンサーや各国の政府とも繋がりを持っている。しかし、内部の人間についてはあまり公表されていないはずだ。文月は他の軍隊とはかなり違う形の機関だ。今日だって、人革連まで知っているということは、この人は軍事関係者。もしくは、軍の関係者なのだろう。いずれにせよ、注意すべき人間だとわかった。
「ヨシイ中尉。貴方にお会いしたいと思っておられますので、一緒に来て欲しいのですがよろしいでしょうか?」
僕は小さく頷き、怪しく微笑む彼の後を、追って行った。この時はまだ何もわからなかった。これから起こる数々の戦いのことを。そして…………
〜軌道エレベーター周辺ラグランジェポイント〜
『発電衛星付近の敵機が移動を開始しました』
『エクシア、デュナメス。』
『了解。ティエリア・アーデ、ガンダムヴァーチェ。光学迷彩を維持しつつ、指定宙域から、予測地点へ移動する』
『アレルヤ。頼むわよ』
『了解。I have control.アレルヤ・ハプティズム。ガンダムキュリオス。作戦行動に入る』
…………運命とも言えるべき彼らとの出会いを。
ーおまけー
〜根本君と雄二が血祭りになる少し前〜
SIDE 小山
そういえば、今日のバイキングには何が入っているんだったけ?
「黙れ、クソね……!」
「そ…が降りと……犬が!」
うるさいわね、こいつら。メモが見えないじゃない。えーと、なになに………
本日のバイキング
『夢のブロッコリーフルコース!様々なブロッコリー料理をご堪能ください!』
料理一覧
ブロッコリーの炒め物
ブロッコリーのおひたし
ブロッコリースープ
ブロッコリーのプリンアラモード
その他、ブロ○リー料理………
「…………」
ブチッ
いかがでしたか?誤字脱字、感想などがありましたらよろしくお願いします。
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