植物図鑑という不完全チートスキルを手に入れたのでこの腐った世界を変えたい (ヨーグルト先生)
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01 始まり◆

 クーラーも効いていない教室で僕は植物図鑑を開き、目で追うように花の詳細を見ていく。

図鑑は何回も見たせいか、本の角の方がボロボロになってしまっている。

 買い換えようにも、もうこの本は売っていないだろう。

 

「なーに、しょげた顔してんだ?」

 

雪哉(せつや)…。いや、本がボロボロにね…」

 

「まだ、そんなもの持ってたのかよ」

 

「うん…僕の宝物だからね」

 

 本を閉じ鞄にしまう。

 雪哉は昔からいつも僕といる、逆なのかもしれない。僕が雪哉にくっついているのか、だから志望校も一緒にしこの高校まで来た。

 

「そいや、霧咲(きりさき)がお前に用があるっつてたぞ?」

 

奈乃香(なのか)ちゃんが?僕になんの用だろう?」

 

「俺が知るかよッ!けッ」

 

 奈乃香ちゃんが僕に用ってなんだろう?また、植物の事で教えて欲しい事とかあるのかな?

前は菜の花について教えてあげたら喜んでたな~。また、植物関連の事かな。

 奈乃香ちゃんは僕と幼馴染で、昔から僕と同様植物に興味を持っていることから仲が良くなった。

高校も偶然一緒で今もとても仲良く接している。

 

「雪哉も一緒に来る?」

 

「なんで、お前が呼ばれたのに俺も行かなきゃ行けないんだよ、霧咲からしても俺がいるのは迷惑だろ」

 

「迷惑だとは思わないけどな」

 

「それに、俺。アイツの事苦手なんだよな」

 

 顔を僕から避け、しょげたような顔をする、雪哉らしくないな。

 奈乃香ちゃんと過去に何かあったのだろうか?

 あまり、捜索はしないでおこう。

 

「それで、奈乃香ちゃんの場所はどこ?」

 

「ああ。科学室って言ってたけな」

 

「理科室ね!了解!」

 

「気をつけろよ、霧咲って何考えてるか分からないからよ…」

 

「奈乃香ちゃんは危ない子ではないんだけどな…。でもまあ、忠告は受け取っておくよ」

 

 教室で雪哉と別れ、科学室に向かう。

 今はお昼休憩と言うこともあり、教師達は職員室にいる。それも、クーラーの効いた涼しい空間に。

そこはちょっと悔しいもする。

 普段は教師の許可がないと入れない科学室だが、実は科学準備室の方は鍵が開いており、準備室と繋がっている科学室に入れるのだ。

 それを、知っているのは僕と雪哉、そして奈乃香ちゃん位なものだ。

たまたま、見つけてしまったのだ。事の発端は…。

 

「科学室についちゃったな」

 

 事の発端を思い出してみようと思うと、足は科学室準備室と書かれたボードの前で止まっていた。

奈乃香ちゃん、科学室でなにを話すのかな?

『ガラガラ』と準備室の扉を開き、奈乃香ちゃんの居る科学室へと行った。

 

「あ、蛍夏(ほどか)。遅かったね」

 

「ちょっと。雪哉と話してたんだ。それで話って言うのは?」

 

 雪哉と言う言葉に反応したのか奈乃香ちゃんは「ふーん」と言い頭をポリポリかいた。

 過去に雪哉と奈乃香ちゃんの間に何かあったのだろうが下手に聞けない。プライベートの事もあるだろうから捜索はしないでおこう。

 

「卒業までに伝えておきたい事があってね」

 

「卒業までに?あと、2年も先なのに?」

 

「時期が時期かなってね、」

 

 何だろう?卒業までに伝えなくちゃいけないこと?時期が関係しているのか、だとするとやっぱり植物関連かな?

 僕は手をポンと叩き、僕の導き出した答えを奈乃香ちゃんに言う。

 

「分かった!アサガオでしょ?そろそろ夏も終わりだしね」

 

 2人で育てていたアサガオのことだと思いそのこと言った。

…だが奈乃香ちゃんの顔が曇った。うーん、どうやら不正解のようだ。

 だとすると、なんだろうか?

 

「残念だけれど分からないよ」

 

「当たり前よ、言ってことないもん」

 

 それは、分からないな。

 考えたら負けというやつだろうか、考える事は悪い事じゃないんだけれどね。

 

「それで、僕になにを話すの?」

 

奈乃香ちゃんは頬を少し赤らめ右手を差し出す目は僕からは逸らしていたが、多分僕の事は見えているだろう。

 何だろうこの差し出された右手は?僕お金とか借りてたっけ?

 必死に何かを借りた事を思い出すが何も思いさせない。すると、奈乃香ちゃんは、逸らしていた目をこちらに向け、恥ずかしそうな顔で僕にこう言った。

 

「蛍夏の事が、小さいころから…」

 

 僕は、何かを伝えようとしている奈乃香ちゃんの真剣ですこし恥ずかしそうな顔している話を真剣に聞く。なにを伝えようとしているのかは分からないけれど、奈乃香ちゃんがどうしても伝えたい事を軽い気持ちで聞いちゃいけなき気がした。

 

「好きなんだ…」

 

「へ?」

 

 好き?僕の事が?ありえるのだろうか?

 

「僕の事が…?」

 

「そうだよ、それ以外の誰が居るの!」

 

 言われてみればそうだね。

 僕は一つの疑問にいたる、この後どうすればいいのだろうか。告白された経験なんてないから分からない。僕も奈乃香ちゃんは昔から遊んでいて奈乃香ちゃんといて楽しいとは思ったけど好意を(いだく)くという視点からは見ていなかった。

 

「僕は、その」

 

「……」

 

 奈乃香ちゃんは今でも頬赤らめて僕の返事を待っている。

分からないどうしたらいいのか、それが僕の現状での答えだった。だが僕も一応は男だ、覚悟は決めないとな。

 

「僕は!」

 

「ひゃいっ!」

 

 僕が突然大きな声を出したからか奈乃香ちゃんから変な声が漏れる。 

 思い切って僕もベストな答えを見つけ出した。

 その答えを僕は奈乃香ちゃんに伝える。

 

「僕は……」

 

 僕がその導き出した現状でのベストの答えを出すときだった。

それ(・・)が起こりだした。

 

 

 

 

【挿絵表示】

蛍夏君

 

 

 

 



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02異世界召喚は理不尽に行われる

 唐突にそれ(・・)は起きた。

僕達の居る科学室の床と天井には赤い文字で何語で書かれたか分からない魔方陣のようなものが描きだされた。

 

「うわっ!!?」

 

 僕は弱音の塊を吐き床にしりもちをついてしまう。

奈乃香ちゃんもその場で驚いた表情のまま立ち尽くしていた。

 

「おいっ!何があった!」

 

 そこに、現れたのは息を切らした雪哉だった。

どうやら、ここまで全力疾走をしてきたみたいだ。

 

「僕にも、分からないよ!」

 

「お前も分からないのか霧咲」

 

「私が分かるわけないでしょ!」

 

 この状況をみてただならない事だとは思うが、本当に訳が分からない。

多分僕だけじゃなくて、この現象にあってる人が皆思ってるんだろうな。

――途端視界が揺らぐ、目の前がぼんやりとなり、聴覚もおかしくなっていた。

変なノイズが耳かかかっていた。意識ももうろうとしてきた。

 

「おい!大丈夫か!」

 

 雪哉には心配され何とか意識をはっきりとさせることができた。

だけれども、その意識が少し飛んだときの合間に風景は一変して変わっていた。

 科学室のコーン色の床から赤い絨毯(じゅうたん)の床に変わっていたり、蛍光灯がシャンデリアになっていたり、とにかくそこは科学室じゃないかのように。

 

「ここは?」

 

「俺にも分からない」

 

 僕と雪哉それに奈乃香ちゃん以外にも周りに人が居た。

 それは、決して知らない人ではなく僕のクラスメート達だった。どうやら、この変な空間にクラス全員で迷い込んでしまったようだ。中には「何かのドッキリか?」と信じない発言をしている人も居た。

 

 そんな皆が困惑しているときだった。その人が現れたのは。

 

「――こんにちわ、異世界の諸君」

 

 僕達を見下ろすかのように、椅子に座りながら僕達をゴミなような目で僕達をにら睨みながら話をかけてきた。その人の横には騎士の人たちが2人立っており、この人に触れよう物ならば殺すみたいな雰囲気をだしている。

 

「貴方は?」

 

 そこで、応答したのがクラス委員長の旗無(はてなし)君だった。生徒会にも入っている事からクラスをまとめてくれる存在となった。

 

「私はアルリス、アルリスカネイス=デイスト。この国の王だ」

 

 そこにいたのは、王様だった。僕の住む世界は王様的存在はいたが、ここまであからさまな王様はいなかったので少し感動している。

 

「まず君達を召喚した経緯を話そう。そこからじゃないと話は進まないからな」

 

 そう言うと。生えているヒゲを触りながら話を始めた。

 

「この世界には魔王が存在する。その魔王は最近になって力をつけたのか知らんが暴れだしたんだ、この国まで被害が出てな、勿論勇者パーティーを魔王軍と戦わせたが駄目だった。結局あの勇者パーティーは魔王に傷一つつけられず帰ってきやがった」

 

 それでも勇者さんは戦ったじゃないか!と討論しようしたが、奈乃香ちゃんと雪哉が止めに入った。

分かっている、この人にそんな口答えをしたら酷い事をされるのくらい。だから、今は仕方なく聞く事しかできなかった。

 

「そして、ある結論に至った。異世界の人間を召喚させ魔王に対抗させようとな、私、と言うか私の国では最大30人まで異世界から召喚できる。そして、この中の一人が死んだら、追加で一人と補充する事ができる」

 

 それって、僕達は死ぬかもしれない・?。いや、お前達が死ぬ前提で話しているという解釈にも取れる。

僕達は…。どうなるの。

 僕の不安をそのまま言ってくれるかのように、クラス委員長、旗無が口を開いた。

 

「と言う事は僕達は魔王を倒すまで自由にさせられない、元の世界に帰さないということですか?」

 

「君は、頭が優れているな。確かにそうだお前達には魔王を倒してもらうまで現世には帰さないし、自由に行動もできないと思え」

 

 そんなのおかしい、そんなのってまるで奴隷じゃないか、勝手に召喚されて勝手に魔王を倒すまで帰さない、自由は効かせられないなんて、僕は魔王様とやらは見た事がないけれど今僕は目の前に居るこの王様が悪魔に見える。

 

「その点においては仕方なく僕達も抵抗はできませんし承知です。ですが僕達も人間です、いくらいい装備を着たりしたって僕達自信のステータスが低すぎます、勝てる気がしないのですが」

 

「そうだな、だからお前達には私達にないものを持っている」

 

 王様は興奮を抑えきれないのか椅子から立ち上がり言った。

 

「召喚者というのは、あると特別な能力『スキル』といった物を持ってこの世界にくる、その力を使って魔王よ戦って貰う、それとそんなすぐに魔王とやりあえとはいわないさ、この国でしっかりと力をつけて貰うそれから約1年後に魔王と戦って貰う、魔王も待ってくれる分けない。当然魔王が襲ってきた強制的に戦って貰う」

 

 結局魔王と戦わなくちゃいけないことに変わりはない。

 

「なぁ、蛍夏!スキルだってよ、どんなスキルなんだろうな」

 

 どうして、雪哉はわくわくしているのかな。こんな状況だと言うのに、だけどそういう時こそ元気を貰える。どんな状況でもがんばるぞって気持ちになれる。それも、雪哉と一緒にいたい一つの理由なのかな。

 



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03 僕には無いもの

 魔王退治が決まった僕達に最初に渡された物は支給ナイフ、それとスキルペーパーというかみを渡された。 

 スキルペーパー。それは、僕達だけにある力『スキル』が書いてある、その下にはスキルの説明が書かれているらしい。だが、僕のはなぜか何も書いていない。何かの手違いなのかな?そんな事も考えたけれども僕以外の皆はしっかりと書かれている用紙を持っている。

 

「あれ、蛍夏何も書いてねぇの?」

 

「そうみたいなんだ…」

 

 すると、一人の騎士がこちらまで歩いてきた。

 僕はスキルがないから要らないと言われ殺されるのかな?

 

「おい、お前!!」

 

「は、はい!」

 

「貴様が花ノ蛍夏(はなのほたね)だな」

 

「はい、そうですが…僕はスキルが紙に書かれていませんでした。僕は不要ですか?」

 

 自ら自分を殺してくださいといっているの一緒だけど実際スキルは無かった。

だから、僕は魔王を殺す事もできないし、クラスの役に立つ事もできない。だけれど、やっぱり死にたくはない。

 

「お前は王の特例で戦闘をしなくてもいい事になった」

 

「それってどうゆう事ですか?」

 

「言葉の通りだ、貴様はスキルはないが野放しにするの危険だ、だから王が用意した家で暮らしてもらう。モンスターや魔王軍とは戦わないからそこは安心してくれ」

 

 いきなりお前は戦闘に参加しなくて言いといわれた僕は心のそこで半分の気持ちが芽生えた。

 一つはホッとした気持ち、魔王軍と戦わなくていいとなると僕はまず死なないだろう。

 二つめは罪悪感、皆が戦う中僕だけ一人戦わずに指をくわえて皆の帰りを待つなんて心にイガイガの何かがあるみたいで気持ち悪い。

 

「僕が戦いと言ったらどうします?」

 

 少し脅しをかけるように僕は騎士の日に向かって言う。スキルも持ってないのになめた口を聞くなって怒られるかな?

 

「悪いが戦って貰うわけにはいかないんだ」

 

「あ、いえ!僕こそ迷惑をかけること言ってしまってすみません!」

 

 怒るどころか謝らせてしまった。だけれど、一つ分かった事がある。この国の王様は一応優しい人みたいだ。僕みたいな人間を野に放すのではなくしっかり面倒をみてくれるなんて。

 

「話聞いてたけど蛍夏戦わないの?」

 

 奈乃香ちゃんが首を傾げて僕に言ってきた、

 

「うん、僕にはスキルが無いみたいでね」

 

 スキルペーパーの名前の下の欄、本来はスキルとスキルの詳細が書かれている場所を指差しながら奈ノ香ちゃんに説明した。

 

「それは、残念…」

 

 奈乃香ちゃんは僕に同情してくれたのか、優しく言葉をかけてくれた。

 

「あ、因みに奈ノ香ちゃんのスキルはなんだったの?」

 

「うーん、あまり凄くはないけどね…はい」

 

 渡された、スキルペーパーを見る。凄くないとはいえスキルを持っているんだから。

 

「え…!?」

 

 そのスキルペーパーに書かれていたスキルはスキルは凄いものだった。

スキル:禁忌消滅(オールデリート)。詳細欄を読むとその凄さがはっきり分かる。

『このスキルは対象を選ぶ事によって発動する。対象を選んだ瞬間その相手は跡形も無く消える、このスキルはノーリスクで使える。正し使いすぎは体を崩壊させてしまう恐れがある』

 これの、どこがあまり凄くないのかが分からないけれど、奈乃香ちゃん一人でも魔王は倒せるんじゃないかな?

 

「この、スキル凄すぎない!!?」

 

「そんなに、凄いかな…?」

 

「いや、あまり凄くないだろ」

 

 そこに口をはさんだのは雪哉だった。

 

「は?それってどういう意味?」

 

「別にそのままの意味だけど?俺のスキルよりかは凄くないって言ってるの」

 

「そういうアンタのスキルはどうなの?」

 

 へっへん!これだ!と自信ありげに見せてきた雪哉のスキルペーパーにはこう書かれていた。

スキル:終焉世界(エンドワールド)。『このスキルは、時を好きなだけ止められる。止められる時間帯は無制限』確かに最強と言われてみれば最強だ。好きなだけ時間を止められたらその隙に攻撃できるからね。でも、奈乃香ちゃんよりではないきがする。

 

「時を止める?私はその前に敵を対を倒せる」

 

「いや、時間をとめられれば色々無敵だ!な!どっちが強いとおもう?蛍夏!」

 

 どっちのスキルが強いか言い合いになってしまった。僕は2人ともスキルがあるから羨ましい。

 

 

「僕には無いものだから…」

 

「あ、いや…悪い」

 

 僕もスキルが欲しかった。手に入れて一緒に戦いたかった。2人の力にみんなの力になりたかった。

だけれど僕にそんな事は叶わない。

 

「いや、こっちこそごめん…一緒に戦えなくて」

 

「謝ることじゃないよ、別に蛍夏が悪いわけじゃないんだから」

 

 慰めてくれる奈乃香ちゃん、本当に奈乃香ちゃんは優しいな。同情なのかもしれない。けどそれでもいい、こんな僕にいつも優しくしてくれるんだから。

 

「蛍夏、貴様はここでこいつらとはお別れだ。お前には安全な場所で暮らしてもらう」

 

「もう、会えないんですか!?奈乃香ちゃんや雪哉に!」

 

「会えない事はないが一ヶ月に三回程度だけだろうな」

 

 一ヶ月に三回それでも会えるならいい…か。状況とかクラスにの雰囲気とか聞けるかもしれないしね。

騎士の人に連れられ僕は最後に奈乃香ちゃん達にこう言った。

 

「頑張って…」

 

 僕のその声は届いただろうか、低い声でかすんだ音の僕の発言は二人に聞こえただろうか。

不安でしかない、正直言うと恐い。

 

 

「お前こそ暇すぎて死ぬなよ」

 

「会いに行くから、待っててね蛍夏」

 

 僕の声が聞こえたのかそれとも挨拶だったのか、どちらかは分からないけれど言葉をくれた事が今はとても安心した。自然と僕の目から涙が零れ落ちる。なん滴もなん滴も…。涙を流した僕の顔はグシャグシャなのだろう。周りからはひどく醜く見えるだろう。

 

「おいおい、泣くなよ、いいだろうまだ死ぬって訳じゃないんだ明るき生きてりゃ、また、会えるだろう」

 

「そうだね、僕は生きてるから二人も生きててよ?」

 

「私達が死ぬように見える?コイツは分からないけど私は死なないから安心して」

 

「は??俺だって死なないし!少なくてもお前よりかは生きてらぁ!!」

 

 睨み合いながらそんな事を討論する。こうしている日々が続けばいいのにななんて事を思っていた。だけれど人生、運命というものは変えられず結局は運命に敷かれたレールを進めなければいけない。

 僕は、勝手に異世界召喚して勝手に魔王と戦わなくちゃ良くなった、けれど僕はスキルが無くて戦っちや駄目で、僕は今こんな運命のレールを走っている、本当はこんな道の外れたレールの上なんて進まないはずだったのに、僕はそんな勝手な王国を少し憎んでいた。今は…少し憎んでいた。

 

 



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04 植物図鑑

 騎士の人に連れてこられた場所は木の家だった。凄くいい家でここが僕一人の住む家となると少々大きい気もするが大きいだけあって損は無いからね。

 

「じゃ、私はもう行く、そうだ・・・最後に確認だ」

 

 道を案内してくれた騎士の人は帰ろうとしていた足をピタッと止めこちらに体を向ける。

 

「まず、外出だが。この辺りにモンスターは存在しないそこは安心してくれ、だからといって遠くえの外出は禁止だ。ご飯は三食分食べるように、食料は一週間に一度私が来るから安心してくれ、まあ、まず食料は尽きないと思うが生存確認のために一応食料とともに一週間に一度来る」

 

「はい。分かってます、何から何までありがとうございます」

 

 この家で住む上での確認をし、それに礼を言う。本当に何もしないでただ魔王が倒されるのを待ってのうのうと暮らす生活をこれから送るのだ。

 木でできたハウスの中に入り、とりあいずベッドに横になる。

 

「皆、今頃どうしているかな…」

 

 思っている事を言葉に漏らす。

 不安だから?恐いから?分からない、ただ一つ明確な事は僕は役に立たないって事だけだ。

 僕はそのままベッドの中で眠ってしまった。

 

 

 目が覚めると、すでに夜になってしまっていた。辺りは暗く、モンスターの鳴き声なのか遠くから泣き声も聞こえる。

 とりあいずは、電気をつけた。それから、夕食の支度をした。国から貰った食料はできたものではなく、食材を渡されたなだ。魚にお肉、野菜に色んなソースまで一週間では食べきれないほどの食料を渡された。

 今日は適当に料理を作ってみた。僕は料理は得意ではないが不得意というほどでもない。家庭科の授業で料理を作ったときも普通と言われたし多分普通なのだろう。

 

「よし。できた!」

 

 今日はハンバーグを作ってみた、異世界でハンバーグは作れるのかとは思ったが意外にも異世界の食材は僕達の住む世界となんら変わりないようだ。

 ハンバーグを食べながら考える。向こう(現実)の世界では僕達はどういう扱いになっているのかな?死んでる扱い?とかなのかな…。クラス全員が消えたとなれば行方不明じゃ話はつかないだろうし…。疑問だなー。

 現実世界のことを考えながらハンバーグを食べていると途端ドアがコンコンと鳴る。

 

「どなたですか?」

 

 ドアを開けるとそこには。

 

「元気だったか?」

 

「一人で寂しかった?蛍夏?」

 

「奈乃香ちゃん!雪哉!!!」

 

 そこにいたのは、奈乃香ちゃんと雪哉だった。2人は傷だらけで服は制服ではなくこの世界の服を着ていた。二人ともとても似合っている。

 

「どうして、ここに?面会とか?」

 

 雪哉は頭をポリポリと書き「あーあ!なにから話せばいいか…」と言う。僕も当然のごとく状況は分からない。

 すると、奈乃香ちゃんが整理がついたのか口を開く。

 

「単刀直入に言う。蛍夏、貴方にはスキルが存在していたの」

 

「!?」

 

僕にスキルが・・・あった。

 

「どうゆうこと!?菜乃花ちゃん!」

 

「あ、慌てないで」

 

と、とりあいずと菜乃花ちゃんは僕の手を引き家を飛び出す。僕はスキルの存在の話をしていたのになぜ家を飛び出したのか分からずキョトンとする。

 

「ど、どこ行くの?」

 

「取りいず逃げんだよ! 蛍夏お前のスキルは俺や霧崎のスキル以上に最強で凶悪なんだ・・・。詳しい事は落ち着いた頃に話す、とりあいず今は逃げるぞ」

 

雪哉はそう言うと俺をお姫様抱っこをし3人で森の奥へと逃げ込む(?)。

途中で国の騎士のような声が聞こえた。

 

森の家を出て数時間後。

6キロ位行った先に洞窟があった。

 

「ここまで、来れば大丈夫だな・・・ふぅー。疲れた」

 

雪哉は僕を下ろし洞窟の壁に寄りかかりながらズルーっと流れるように座っていく。

 

「あ、ありがとう」

 

「いいさ。それよかいきなり悪かったな意味も分からずにスキルの話をしたあとに連れ出したりしてよ」

 

「いいよ、訳があるんだもんね」

 

「そうね。まずは蛍夏のスキルについて話しましょうか」

 

菜乃花ちゃんも洞窟の隅に座り、僕のスキルについて話そうとしてくれる。

 

「蛍夏のスキルは『植物図鑑(スキルブック)』」

 

「植物・・・図鑑・・・?」

 

 自分のスキルに驚きを隠せず言葉に出してスキルの名前を言う。

当たり前だ、自分のスキルが植物図鑑だと言うのだから、植物図鑑がどう最強に繋がってくるのかが分からない。

 

「そう、植物図鑑。私はたまたま王の話を耳にしたの・・・」

 

 

 

 

『蛍夏って奴のスキルは予想以上に危険だ』

 

『スキルペーパー偽造しといて良かったですね』

 

『ああ・・・全くだ。あちらも異世界人だ、馬鹿ではないだろうバレるのも時間の問題だ』

 

『殺しますか?』

 

『危険だがやるしかないな、今日の夜決行だ』

 

 

 

「って話をたまたま聞いたの、まあ、蛍夏への対応が怪しかったからちょっと調べったらこういう結果だったんだけどね」

 

 って事は僕は今日殺される予定だった・・・って事・・・。それを2人は助けてくれた?感謝を言っても言いきれないくらいじゃないか・・・。ありがとう・・・。僕は心の中でお礼をいい言葉に出しても言う。

 

「二人とも・・・本当にありがとう・・・!」

 

「礼は要らないさ、俺だって昔お前に助けて貰ってばかりだったしな」

 

「そう、結果的には私たちも国・・・王に反逆してしまったわけだしね・・・」

 

あれも、これもと言えば僕のせいなんだよね、僕がそんなスキルを持っていなければ2人を巻き込む事も無かったのに・・・。

 

「まーさ! お前のスキル見せてくれよ!世界を変えるなんてどんな力か見たいしな」

 

「え!? 僕だってスキルの使い方なんて分からないよ!!?」

 

「確かに言われてみれば私達のスキルは対象を選ぶだとかだけれど蛍夏のスキルは図鑑・・・だもんね」

 

 図鑑か・・・植物図鑑・・・。思いある節はあるけど、まさか・・・ね。

僕は、一緒に持ってきた鞄の中からボロボロになった植物図鑑を取り出す。

 

「それって、お前が小さい頃から大切にしてる図鑑だよな」

 

「そうだよ、もしかしたらこれにヒントがあるのかなって・・・」

 

ボロボロになった植物図鑑を開いてみる。

するとそこには思いもよらないことが書いてあった。

 

「な、なんだよ・・・これ」

 

 図鑑には見慣れた場所に花の写真が貼ってあり下には花の説明欄、そしてその下にはいつもとは違う箇が所あった。

 

「これってスキルだよね?」

 

「ああ! それも花の一つ一つにスキルがある、それも強力なやつが!!」

 

 そう、説明欄の下にはスキルが書いてありさらにその下にはスキルの説明が書いてあった。

 

「本当に世界を帰られるのかもな」

 

「そうだね・・・」

 

「ねぇ、私達なら魔王・・・倒せるんじゃない・・・?」

 

 魔王を倒す・・・?そうか、僕達がここに来たのは魔王を倒すために召喚されたんだったっけ。魔王が悪さをしていなければ僕達は今頃こんなところには来ていない。

 そうだ、全部魔王が悪い。

 

「殺ろう・・・僕達で魔王を」

 

「結構簡単に言うけどいちおう魔王だぞ?実戦訓練を少しくんだ方がいい、2日後辺りにでも魔王を倒しに行こう、それに王の配下達に見つかるわけにも行かない・・・。隠密に行動しよう」

 

 それでも2日後にはやりに行くんだよね。

 

「そうだね」

 

こうして僕達は魔王を倒すべく隠密に実戦訓練を積み戦闘に慣れることから始めた。



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05 能力を使うのは容易ではない

「はぁ・・・ぁ・・・辛いよ・・・!菜乃花ちゃん!雪哉!!」

 

「頑張りなさい!」

 

「お前そんなに体力なかったけ?」

 

 体力をつけるべく、今は走り込みをしている。正直辛い。僕は部活に入っていなければ運動ができる訳でもない。まず、基礎訓練は体力をつける所から始まった。

 

「はい、あと3週!」

 

「ひえ〜・・・辛い」

 

 王に目をつけられている為派手な行動はできないため基礎訓練は洞窟の近くの森林地帯で行っている。

 

「そう言えばさ、蛍夏スキル使ってみたか?」

 

「いや、使ってないよ。だって一つ一つのスキルが対人スキルとかだし・・・」

 

 見慣れた図鑑の全てのページをめくりめくってスキルを全て確認をしたがその大体が対人用のスキルだった。

 

「俺に使ってみろよ」

 

「え?」

 

「本当に何を言っているの?死ぬわよ?」

 

「はぁ?俺のスキルを舐めんなよ?」

 

「じゃあ、蛍夏!模擬戦しようぜ!」

 

?いやいや、本当に何を言っているの!?

 

「先手必勝!!」

 

 と言った雪哉は指をパチンと鳴らし時を止める。僕は何も出来ずその場にとどまる。時間は止められるが自分の意識はしっかりあるようだ。

 

 雪哉が近ずいてくるのが分かる。

ゆっくり、ゆっくりと僕に近ずいてくる。

 

「はい、俺の勝ち」

 

 ポコ!

 鈍い音が僕の頭で鳴る。

 雪哉の持っていた木の棒は僕の頭に当たり、その瞬間能力が解かれる。

 

「そんなん卑怯だよ、雪哉のスキル・・・。勝てる人とかいるの?」

 

「いや、いや居ないな」

 

僕が聞くのが早かっただろか返答の方が早かっただろうか。

 

「蛍夏はスキルをまだ理解しきれてないからね、負けちゃうのは当たり前よ」

 

 僕を慰めてくれる奈乃香ちゃん。スキルを使うも何もこんなスキル使えば雪哉しんじゃうよ。

 優しいスキルなんてそこにはなにもなかったからだ。

 

「ありがとう、一刻も早くスキルを使えるようにするよ」

 

「そうね、一緒にがんばろ!魔王退治なんてすぐだよ」

 

「確かにね」

 

 今日を一日目とカウントすると明後日には魔王を倒すと言うのだ。

 僕はなぜか不安や恐いと思う事はなかった、僕達ならやれると思っているのだ。

 

 

「はぁーーーづかれだぁぁ・・・」

 

「だらしない声ね」

 

「そりゃあ、あんな距離走らされれば誰だって疲れるよ、逆に2人はなんでそんなに元気なの?」

 

 

僕達は拠点としている洞窟へと戻っきた。この洞窟は中の方に空洞があり、僕達はそこで生活をしている。体温もいいため、今は最前の手だろう。見つかるのも時間の問題だとは思うが明日、今日見つからなければいい・・・。

 

「そりゃ、俺達バリバリ運動部だからな」

 

「そうね。蛍夏は逆に運動しなすぎよ」

 

「う・・・確かにそうだけどさ・・・」

 

 返す言葉も見つからず言われるがまま。こんな事になるなら少しでも運動しておけばよかった。

 

「あなた達午後はモンスターを狩りに行くわよ」

 

「モンスター?」

 

 モンスターという言葉に反応する。

 僕の思っているモンスターとは、なんかこうガオー!みたいな感じなんだよね。そんなのと戦うのかな?

 

「モンスターか!そりゃぁいいな。やりがいあるってもんだ!」

 

「戦うの?」

 

 僕は一応問いかける。なんでそんなにもウキウキで居られるのだろうか雪哉はすごいなと関心してしまう。

 

「そうね。実践訓練をつんで置かないと、別に対人でもいいと思うけど私達のスキルって人に向けると殺してしまう可能性があるわ、だからモンスターで実践を組もうと思うの?どうかしら?」

 

「俺は賛成だぜ!異世界のモンスターって奴に会えるのは勿論、スキルをそいつに向かってぶつけられるんだからな!!」

 

「わかったわ。蛍夏は?」

 

 僕はどうしようか?モンスターと戦う事は別に問題ではないと思う、だけれどもスキルの使用が上手くいかなくて2人に迷惑をかけてしまったら…。

 

「僕は・・・」

 

「別に無理しなくていいぞ、恐いなら恐いでさ」

 

 僕を煽るかのように雪哉は僕にそう言ってくる。もしかしたら僕に自信をつけてくれたのかもしれないけど僕は、その挑発に乗るかのように。

 

「やるさ!僕だってやる時はやるんだからね!!」

 

「そうそう、その意気だよ」

 

 

 僕達は、洞窟から数キロ離れた平原へと来ていた。周りにはカラフルな液体状の個体のなんかがいる。んー、スライムって奴なのだろうか?

 

「あれ、は?」

 

「ああ、あれは王道のモンスターって言ってもいいモンスター『スライム』だよ。戦闘力自体は強くないけど油断しているとけがくらはするダメージは与えてくるからね?油断はしちゃダメだよ?」

 

「う、うん」

 

 異世界に来て初めて見たけれど、実際モンスターを見てみるとあまり怖くないものなんだな・・・。最初に出会ったのがスライムだからだろうか?

 

「じゃあ!早速おっぱじめるとすっか!」

 

 雪哉はそう言うと「あっ」と何かを思い出したかのように僕に問いかけてくる。

 

「お前さなんか武器を出せるスキルとかある?」

 

 僕はスキルの宝庫じゃないぞ!って言ってやりたいけど実際はそうだから言ってやれない。僕は、そんな気持ちを忘れ植物図鑑から探し出す。

 

「ないねー、作成、製造スキルは無いみたい。」

 

「んだよ、使えねーな」

 

「し、仕方ないじゃないか!」

 

「はいはい」

 

 雪哉は手をこっちに振りながら、スライムの元へと歩いていく。何か方法でもあるのだろうか?すると、次はこう聞いてきた。

 

「じゃあさ、時間が止まっている間、お前が動けそうなスキルってある?」

 

「そんなスキルあるかな・・・?」

 

 僕は再び植物図鑑をめくり、めくって探してみる。そうすると、ひとつの花が見つかった。

 

「ヤナギラン・・・。スキル、『フリーダム』・・・スキル詳細はどんな状態であろうとどんな所でも使用できるスキル・・・。らしいよ?」

 

「ふーん、じゃあ試しに使ってみろよ、お前がスキルを発動させてたら俺も発動させるからよ」

 

「分かった」

 

僕は、言われるがままにスキルを発動させようとする。頭の中でスキル発動しろ、発動しろと唱えているが発動はしない。何故だろうか?

 

「発動・・・しないんだけど」

 

僕は、恐る恐る小さな声で言ってしまう。

 

「そうか、そうだな・・・。コツは頭の中で想像するんだ。俺だったら全ての時が止まるようなな」

 

雪哉は以外にも優しくコツを教えたくれた。

失望させちゃダメだ・・・。そんな気持ちでいっぱいだった。

 

「分かったよ、やってみるよ」

 

 僕は、自由を連想させてるイメージをさせる。思いついたのは、僕がこの世界で1人だけだと言うイメージ。なんて悲しく、なんて虚しいのだろうか。

 

すると、本が光だす。

 

「お、おお!!」

 

 途端僕の体が青い光に包まれる。

暖かくて優しい感じで心がポカポカする。

 

「これが・・・スキル?」

 

「そうみたいだな、それがお前の最初のスキルみたいだな」

 

 凄いけど実感がわかない。

すると、雪哉が…。

 

「じゃあ使うぜ」

 

 パチンと指を鳴らす。

真っ暗な視界に包まれる。雪哉は勿論、僕も前とは違く自由に動けるようになっていた。

これが、スキルの効果なのだろうか?

 

「う、動けるよ!?」

 

「そうだろ?そういや、ほら霧崎は無防備だぜ?」

 

ニヤリと嫌な微笑みを浮かべながら僕に言ってくる。何を言っているんだ! 僕がそんな事をするわけ・・・。と言いつつも目で追ってしまう。いけない、いけない、今は雪哉の戯言に付き合ってる場合じゃなくて集中しないとな。

 

「いいよ・・・。そう言うのは・・・」

 

「なんだよ、つれねぇーな、じゃあ。俺一人でも」

 

「もぉ!!からかわないでって! 早くスライム倒そうって」

 

「はははっ!冗談だって!俺が霧崎に興味があると思ったか? あるわけないだろ?」

 

本人が聞いていたら雪哉消されてただろうな。

 

「まー、いいや。夏蛍お前その状態でもう1つスキル使えるか?」

 

「もう1つ?うん、やってみるけどなんのスキル使うの?」

 

「なんか敵倒すやつで!」

 

なんか敵を倒すやつってどうすればいいんだ。それに、もう1つって使えるかな?

僕は、植物図鑑を開いて今使えそうなスキルを見つけ出す。うーん。これで、いいかな?

僕が選んだスキル・・・それは。

 

「ひまわり…」

 

「ひまわりだぁ!!?」

 

「うん、スキル名は業火(しゃくねつ)、敵を必ず燃やし殺す…だって」

 

「なんじゃそりゃ…?」

 

「分からないけど・・・?とりあえず敵を燃やすスキルとかじゃないかな?使えばわかると思うけど」

 

僕は、本を片手にスキル名、花の名前を言う。

 

「『向日葵』」

 

 すると一体のスライムに異変が起きる。

いきなり体内から湧くように火が溢れ出しスライムが火で包み込まれていく。

ボォォォッッ!とよく燃えたスライムは火が消えると同時に炭となって自然の一部となっていった。

 

「わぁ・・・ぁぁ・・・」

 

「おお!すげーな!向日葵ってスキルも凄いけど、何より凄いのは複数のスキルを同時に使えるだな!!」

 

「そうだね、この調子でどんどん倒していこうよ!」

 

「そうだな」

 

 僕達は目の前にいるスライムを葬り去る。

最初は、恐かったスライムだが、倒している途中に慣れてしまったようだ。

なれと言うのは恐いものだ。

 

「ふぅー。あらかた倒したな」

 

「そうだね、無抵抗の敵に一方的にスキルを使うと言うのはあまり気が進まないけども…」

 

「ん、ああ、そうだな。今回はお前のスキル実験みたいなものだったからな」

 

「色んな、スキルがあるから、焦らず一つずつ覚える事にするよ」

 

「賢明だな」

 

 草原からは大体スライムが居なくなったところで雪哉はスキルを解除する。

止まっていた時間は動き出した。

 

「ちょっと!いきなり時間を止めないでくれる!?」

 

「おう、悪ぃな」

 

雪哉は笑いならがら謝る。それは、謝るとは言わないか。菜乃花ちゃんのスキルでは自由をどうこうというスキルでは無いからね。

 

「まぁ、落ち着いて」

 

「ん〜、仕方ない……」

 

雪哉の胸ぐらを掴んでいた手を話し、腕を組み僕のほうへと向く。

 

「さて、スキルを使えるようになったらしいわね」

 

「うん、まだ使ったことの無いスキルもあるけどね、それはのちのち使ってみようと思うよ」

 

「そうね、その方がいいわ。でも、実戦でぶっつけ本番で使うのはよした方がいいわね。貴方の能力は何が起きるか分からないから」

 

うん、確かにそうだ。

もしかしたら、2人に迷惑をかけてしまうかもしれないから本番でのスキル使用はやめとこ。

 

「うん、そうするよ」

 

そして、明日は等々魔王退治。

今思った事がある。

 

 

……明日魔王と、戦うというのに基礎訓練必要だったのだろうか?……と。

 



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