LA STORIA D'AMORE È NATA CON TE ~あなたと紡ぐ“恋”物語~ (璃空埜)
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START OF YOUR STORY'S act-1

どうも!璃空埜です!

さて…………今日の作品は前お話したとじみこではなく……新作小説となります。
元ネタはバーチャルYouTuberグループ、ホロライブ様とにじさんじ様(ホロライブメイン)です。

ただ今回この作品を作成したのには確固たる理由があります。



ーーーーーーそれは何か?



ーーーーーー僕、恋愛オンリー物、描いたことなかったからです!!




前々に咲作品を恋愛路線に変更する。とお話ししました。…………が、描いたはいいもののこれじゃない感が凄くかなり連続してやり直しています。
そこでふと思ったのは基本的に僕の作品は恋愛要素ありのバトル物(咲も元々は麻雀バトル物の予定)だけ。
……それなら恋愛オンリー物を一度作ってみよう。と考えた次第になります。

とまぁ、長い前置きはここまでとして……第1話、どうぞ!

※長めなので注意してください。


  「あなたもゲーマーズの一員になりませんか?」

 

 

まだ桜が舞う屋上で、俺を呼び出した彼女は日の光に照らされ宝石のように輝く白い髪をなびかせつつ日溜まりの中でも色褪せないまぶしい笑顔と共にこちらへと手を差し伸べてくる。

 

 

 

ーーーーーーまずはなぜ『ゲーマーズ』に誘われたのか。

 

 

 

ーーーーーーそれを話すには一週間前……

 

 

 

ーーーーーー俺がこの学園に編入した日まで遡る・・・

 

 

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

桜の花びらが風にのって空高く舞い上がっていく様を何となしに見送りつつ、これから通うことになる『私立 弥吾呉学園』の校門に寄りかかり待ち人を待ち続ける。

…………な~んて、別に彼氏彼女の会瀬ではなく今日からお世話になるクラスの担任を待っているだけなんだが。

 

「にしたって、遅いだろ…………」

 

かれこれ既にここに来てから一時間。昨日連絡した時に提示された待ち合わせの時間はとうの昔に過ぎ去り、辺りには俺と同じデザインの制服に身を包んだ生徒達が俺のことを遠巻きに不思議そうな、または、珍しそうな視線を向けながら通り過ぎていく。

 

「…………はぁ~~~~~~~~…………。身分証は貰ってるし入ってもいいだろうがここの学園の広さからして迷子は確実、最悪初日から遅刻か?」

 

電話口じゃ結構しっかりしてそうだったっつうのに…………先行き不安だぞ…………?

 

「…………あのぅ……」

「?」

 

軽く頭を抱え込み、溜め息をついていると不思議な形の髪飾りと背中から生えている白い翼が特徴的な、左腕に“生徒会”とかかれた腕章をつけた白銀に少し青色の混ざった髪の少女から声をかけられる。

 

「……学園になにかご用ですか…………?」

「え……っと、一応今日から登校予定の編入生で、先生待ちなんですが…………」

「…………転校生……?ちょっと待っててください……」

 

生徒会所属なら話してもいいかと判断し、転校生であることを明かすと少女はスカートのポケットからスマホを取り出してどこかに連絡し始める。そして、二言、三言会話した後にスマホを同じ場所にしまいこちらへ向き直ると、

 

「今確認をとりました。担当の先生が立て込んでいるため私がご案内します」

「わかりました」

 

話してみるもんだな、これでチラチラとこちらを見る視線達から解放される…………。

そうして、俺は足元の荷物を手に取ってから、先に歩き始めた少女の隣に並ぶ。

 

「いやはや……助かりました。ありがとうございます」

「……いえ、生徒会として当たり前のことをしたまでです。それと貴方の方が先輩なので敬語はよしてください」

「あ~…………そう言うことならそうさせてもらう。えっと……」

「……私は天音(あまね)かなた。ここの中等部の生徒会書記を務めています」

「天音……ね、俺は今日からここの高等部二年、鴻山(こうやま) 龍神(りょうが)。こうなったのも何かの縁だ、よろしく頼むぜ」

「……よろしく…………です」

 

……会話の間も一切こっちを見ないな。話し方からしてクールな子なんだろうが…………初手から嫌われたか?……流石にそんなことは…………

 

「後……あまり話しかけないでいただけるとありがたいです」

 

………………ねぇよな?

 

  **************

 

そこから特に会話らしい会話もなく、静かに、しずか~~~~~~~~~~に広い学園内を天音と並んで歩く。

…………初日からこれはキツいってぇの……。

 

「…………ったく、どうしたもんかね……」

 

そうして俺が先とは別の意味で頭を抱えていると、かなり広いグラウンドに差し掛かったところで初めて天音がこちらを振り返り、

 

「……あそこが高等部校舎となります」

「あ、ああ。ありが……」

 

グラウンドの先にある建物を指差し、俺がお礼を話そうとしたと……その時。カキンッ!という綺麗な音がしたかと思うと……

 

 

「おーら……あっ!!あぶねぇっ!!」

 

 

ーーーーーー硬球が一直線にこちらへと向かってきていた!!

 

 

ーーーーーーそして、天音はそれに気づいていない!!

 

 

「天音っ!」

「へ?わきゃ!?」

 

咄嗟に左手で目の前の華奢なその肩を掴んでこちらへと引き寄せるのと同時に硬球の落下コースを予測して右手をかざす。すると、バチン!!という豪快な音と共にかざした右手にものすごい衝撃が…………

 

「~~~~~っ!!!!!!」

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ…………これはヤバいぃぃぃぃぃぃ…………!!

思わず天音の肩においていた手を離して踞る…………。

 

「あっああああああああ……」

「だ、大丈夫か~!?」

「~~~~~~だっ、大丈夫…………!!だかられんしゅ~~……っに!戻ってくれ……!」

「そ、そうか……」

 

心配そうにこちらへ来てくれた野球部とおぼしき生徒にボールを投げ返してから、ある程度痛みが引いた右手を庇いつつ身を起こし天音の方へ向くと……

 

「…………天音?」

「へへへへへい!!!!」

 

へい!って女の子が使うような言葉使いじゃねぇぞ……?まぁそれよりも…………

 

「顔が真っ赤だが……大丈「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」って今度は何事だよっ!?」

 

トントン拍子になにか起こりすぎだろ!?

俺が天音に声を掛けようとした瞬間に俺達が歩いて通ってきた曲がり角からママチャリでサイクリングレースレベルのドリフトをしつつ、長い髪を振り乱し、スーツを乱雑に纏った女性が姿を現した。

 

「!!!発見!!」

「……?」

 

そうして俺に標的を定めたらしいその人は問答無用でこちらに凄い速度でママチャリと共に向かってきて……

 

「………………へ?」

 

俺達のすぐそばを通り様、何故か俺の襟首をガッシ!と音が出るくらい力強く掴み…………

 

「捕まえたっ!!!!」

「……………………は?」

 

そのまま俺を超速で引き摺り始めぇぇぇええええええぇぇええぇぇぇぇぇっ!!!!

 

「おっわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!まてまてまてまてまてぇぇぇえええええええ!!!!!」

「うるさいうるさいうるさぁぁぁぁいっ!!!!こっちは急いでるんだから早く行くわよっ!!!!」

「行かなきゃならんのはわかるが逝きたくはねぇわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

くっそ!!とっ……とにかく今は!!

 

「天音ぇぇぇぇぇぇぇ!またなぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!!!!」

 

天音に別れの挨拶をしている間にも超特急自転車女は曲がり角を勢いを殺すことなく鋭く曲がっていく。そうすると捕まれている俺もぐん!と急制動がかかり……

 

「りぃぃおおぅ!?!?」

 

曲がり角に設置されている柵が運悪く鳩尾に突き刺さりおかしな声が飛び出してしまう。

こっこれ…………おれ、死ぬんじゃ………………!!??

 

「行くわよぉぉおぉぉおおおぉぉぉおぉおぉぉおおおおおお!!!!!」

「逝くなぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

つか、遠巻きに見ている奴ら!!!誰でもいいからこいつをを止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「………………」

「あ゙あ゙……どごに゙…………って!見つけた!!おい!かなた!!」

「………………」

「…………かなた?」

「………………」

「お~い、かなた~ん?」

「…………ゃったかも…………」

「?」

「私………………私………………」

「うん」

「………………おちちゃったかも……」

「うん………………うん?堕ち……た?」

「……………………うん…………」

「………………ああああぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!!戻ってこい戻ってこい!!お前まで変な方向行ったら俺が保たんんんんんんん!!!!」

「……………………………………私、おとされちゃった…………」

「だめだやめてくれたのむからもどってきてくださいぱわぽつくるなりなんなりなんでもしますからたのみますいっしょうのおねがいですからだれだうちのさいごのまともなやつはかいしたやつこのくそったれやろぉおぉぉぉおおおぉぁぉあぁぁあぁああ!!!!!」

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「はぁ~~~……間に合ってよかった~~」

「間に合ってよかった~~じゃねぇよ………………っつつ……」

 

しこたま打ち付けた頬を擦りつつ、先程の爆走ママチャリライダー…………もとい、今日から俺の担任になるという郡道美玲さん……昨日電話口で話した人の少し後ろについて教室を目指す。

………………しっかりしてそうな先生像はすでに儚く夢と化して散った…………否、そんな人なんてそもそもいなかったんだ、そう思うとする。

 

「でも、ホントにごめんなさい。途中で編入してくる子なんて始めてで張り切って飲んでたら飲みすぎてしまったみたい」

「…………」

 

……………………。

 

「さ、さぁ!ついたわよ」

 

ごまかしたな、この人。

 

「さて……それじゃ、私が入って少ししたら呼ぶからそうしたら入ってきてちょうだい」

「…………はぁい」

 

俺の返事にムスッとした郡道先生だったが、流石に今までのおこないからしてそうなるのも必然と感じたのか少し肩を落としつつ、教室へと入ろうとするのを見……

 

「…………せめて」

「……?」

「あなたは綺麗な人なんだから笑って入ってくれないと……俺をの立つ瀬がないっすよ」

「!?せ、先生をからかうなぁ!!」

「ははっ!そうそうそんな感じに元気にいかないと」

「~~~っ!先生をからかう人なんて知らない!!」

「あ、それともう一つ」

「何!!」 

「俺の登場するまでにどのくらいかかりますか?」

「少し長い話があるから15分後くらいっ!!」

 

俺の言葉に一瞬で顔を真っ赤にした郡道先生がそのまま今度こそ教室へと入っていく。

 

『はい!皆さっさと席につく!!』

『あれ?先生、なんで朝から顔、真っ赤っ赤何ですか~』

『…………昨日、酒でも飲みすぎたんですか?』

『うるさい!!』

『先生ぇ!!今日来るとか言う転入生ってもう来てるのか??』

『紹介の前に色々話さなきゃいけないの!!だから早く席につく!!』

 

すると、直ぐ様賑やかな声達が教室から聞こえてきた。

そりゃそうだ、ああいう面白い先生ってのは生徒から人気があるような先生だからな。そんな先生が暗い顔してたらいけないっての。…………さて。

 

「大体15分後…………周るか」

 

俺は鞄の中から最新型小型ゲーム機《ホイッチ》を取り出してその一番手前にあるレトロSDガンダムゲームを起動させて、昨日進めたところの続きからやり始める。

このゲームこちらの操作バランス性が悪い上にマップではありきたりなレベルのCPUだが、戦闘フェイズとなればさながらアムロやシャアのような最強格ニュータイプのようにこちらの攻撃を躱し、的確にこちらへと攻撃を当ててくるから油断ならない。しかもその一撃がこちらのHPをごっそり持ってくもんだから嫌になる。

 

「…………ま、当たるだけましか」

 

そうぼやきつつ敵の一小隊をギリギリで撃滅する。

いや~……あのゲームは本当にきつかった…………まさか、一面攻略するのに丸々3日費やすとは思わんかった。

 

「あ、やべ」

 

そう思い直していた直後、うっかりターン進行してしまい敵要塞から出撃してきた砲台に接続した敵小隊の掃射で不運にも派遣していたこちらの6小隊と戦艦2隻が溶ける…………おかしいなぁ、ちらっと見えた当たる確率50%ぐらいだったのに何で皆当たるのさ。

 

「…………ん~」

 

そうすっと……どうすっかね。さっきの方に送っていたのが最安量産機、最安戦艦とはいえ合計36機と2隻分の資金を投入するのは避けたい。かといって別面の方から回す艦隊の余裕はナッシングで…………あ、いや確かあの砲台の攻撃に対して耐性のある大型モビルスーツがあったはず。資金的には少し痛手だが、また36機作るよかはましか…………。

 

 

 ▽▼▽▼▽▼▽3分経過▼▽▼▽▼▽▼

 

おおっとぉ……?ここでサイコミュ兵器持ち持ってくるか。仕方ないがそうなったらこっちもエース部隊をぶつけないとキツいな。ってまてまて、別面でも巨大モビルアーマー乱立?ふざけんなって言いてぇわ……そっちは壁小隊向かわせて粘ってもらうか。

 

 

 ▽▼▽▼▽▼▽6分経過▼▽▼▽▼▽▼

 

…………よしよし、さっきの大盤振る舞いで相手の資金は雀の涙程度。ここで一気に切り込みを入れていきたいが…………そう上手くはいかないか。壁を作られたらそう簡単に崩せれないや……って!あっあっ、本拠地に隠密部隊が!しかもあまりいいモビルスーツ配置してないし!!くっそ、とにかく今は粘るのが先決か……」

 

 

 ▽▼▽▼▽▼▽9分経過▼▽▼▽▼▽▼

 

「っし!これである程度の期間は攻めてこねぇだろ。…………だがこっちも大方のモビルスーツの修復にちょい時間をくっちまうから……こりゃふり出しにもどっちまったか?いや、こっちも何ターンか準備に回すか…………。さっきの劇戦中に別動隊動かして補給ポイントを占拠しておいたから資金に余裕も…………おお!?コイツら作れるようになってる!!よっしゃ勝ったかってコイツ、資金どんだけ食うんだよ!?そりゃ性能やらからすりゃ高くはなるだろうが、それでも生産100万、改造50万、補給修理25万はおかしいだろ!?くっそ……これじゃ作ったとしてもすぐに投入ってわけにはいかねぇな…………ただ、なるべく2、3機は作りてぇとこだが…」

「え?この機体、生産しないの?」

「生産したとしても維持するのにかなり負担がかかるし現状の資金のプラマイじゃよくて10ターンちょいは保つだろうがそれまでに相手を崩せる保証がない。とすればまずは相手の出方を伺いつつってところだ」

「なるほどなるほど。それじゃこの子を盾として運用するのは?」

「それもいいかも知れねぇがまだ早い」

「どうして?」

「コイツの真価を発揮するのはもうちょい先だ」

 

 ▽▼▽▼▽▼▽12分経過▼▽▼▽▼▽▼

 

「わ!!すご~い!!相手の機体が溶けた~!!」

「な?さっきのお前みたいに装甲値高いし、Iフィールド持ちってことでこいつを盾役だと思いがちな奴は多いけども、こいつの真価はこういう大規模戦闘での圧倒的殲滅力だからな。さぁ~どんどん溶かせ~…………はい終了っと」

「ほぁ~あれだけあった敵艦隊がもう全滅しちゃった」

「よし、それじゃ後はここの補給ポイントを占拠して防衛組を配置してから撤退だ」

「え?ここで攻めたら勝てるんじゃないの?」

「いや、それは早計だ。さっき自軍本拠地マップ見てたからわかると思うが補給拠点が六つあったろ?」

「あ、それが敵にもあるのか……それじゃさっきのちょっと削られた状態じゃ」

「ああ。このゲームは機体の生産に1ターンは確実に必要となる。だが、補給拠点一つにつき4機、本拠地マップだけでも最高24機、そこに残存兵力と別マップからの増援を加えられたらこっちがじり貧で負けちまうからな。…………ん?」

「うん?」

 

ここで初めて俺はゲーム画面から顔をあげる。すると、目の前には透き通った白銀の髪を腰までさらりと流し、その髪の合間と腰辺りから髪の色と同じケモ耳と尻尾(ただ、尻尾の先は黒くなりなにやら星の模様が描かれている)を生やした同い年ぐらいの女子生徒がおり、興味津々というのを物語る輝きを放つ瞳をこちらへと向けていた。

 

「うっお……!」

「にゃ?」

「…………猫?」

「狐じゃい!!」

「いや、『にゃ』って…………猫やんけ」

「ち~が~う~!!私は!!狐じゃい!!」

 

驚きの余り、目の前の彼女のポツリと溢した言葉に反射的に返しちまったが…………反応的に毎度弄られてるネタみたいだな。ついでに背伸びをしつつ大袈裟に腕を振り上げて言い返す姿に何か落ち着けた。

 

「というか、君……誰?」

「今頃かい。俺の事はすぐにわかるだろうが、お前はここでゆっくりしていていいのか?」

「え?」

「俺はここにいる理由があるが……お前は遅刻だろ?」

 

腕時計を見てみると丁度時間は8時29分を指している。あの特急便の後、郡道先生から受けた説明じゃここの朝のSHRは大体8時15分頃開始……今日は俺の手続きとかがあったことから2分遅れで始まったんだが…………まぁ、どっちにしろこの子は遅刻確定だぁな……それに

 

「……ま、骨は拾っといてやるよ」

「へ「しぃ~~らぁ~~~かぁ~~~~みぃ~~~~~?」…………こやぁん……」

 

おお、狐の鳴き声………………か?まぁだけどなんだろな、さっきの猫の鳴き声の方がしっくり来てしまう感じがあるや。

 

「ぐっぐぐぐぐ郡道先生……おはようございます~……」

「おそよう、白上。重役出勤とはいぃ~ご身分ね~~?」

「えっええと……」

 

白上とやら?そんな助けを求めるような瞳で見られても俺にはどうしようもねぇぞ?つか、先生?あんたも人の事あまり言えねぇぞ?

 

「はぁ……先生」

「あっ……!」

「こいつの処罰は後で時間があるときにたっぷりこってりグツグツグツグツと煮るなりカリッカリッに焼くなりするべきでは?」

「にゃ…………」

「そうねぇ~~。流石、いいこと言うじゃない」

 

…………やっぱり猫だな、この子。

俺の言葉に一度は顔を煌めかせた白上とやらだったがすぐさまその顔は絶望に変わり、対照的に郡道先生は満面の笑みと変わる。

 

「それじゃ、早速お願いするわ。白上も一旦教室に入って……また後でたぁ~~~~~~~~~っぷりと、O・H・A・N・A・S・I、しましょうね?」

「…………ひゃい……」

「ま、ドンマイ」

 

せめてもの慰めでそう声を掛けてがっくりとしたその子が教室へと入るのを見送った後、郡道先生の後に続いて俺も教室内へと足を踏み入れる。

 

『お……きたきた』

『やった!イケメンきた!』『これで勝つる!!』

『お、デュエット出来たら面白そう♪』

『んっ?アイツ……まさか?』

『どんな人だろう?』

『面白そうな人なら余も嬉しいのだが』

『よぉ、遅刻狐……いや猫』『くぅぅ……なにも言い返せにゃい…………』『あはは……』

『へぇ……』

「はいはい!一旦静かに静かに!!」

 

先生が手を叩きガヤガヤしていた教室の生徒達を静まらせる。

 

「それじゃ、早速編入生君よろしく!」

「っと……」

 

早速投げられたことにより、教室中の視線が俺に集まり……

 

 

ーーーーーーーーーー否応なくあの時を連想してしまう。

 

 

「…………」

 

一度小さく深呼吸をして、直ぐに切り替えまずは背後のホワイトボードにさらさらと俺の名前を綴り、忘れずに括弧がきで読み仮名も降っておく。

 

「鴻やm「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」おぅわ、びっくりしたぁ」

 

何だ何だ?やけに元気よく茶髪を後ろで一つにまとめた少しチャラそうな奴が俺のことを指差しながら叫びやがったんだが………………知り合いにあんな奴いたか?

 

「どっかで見たと思ったら……お前シンか!!」

 

……ん?シン…………?まさか…………

 

「………………金剛?」

「そうそう!懐かしいな~久しぶりだなぁ~!!小学校以来だっけ?」

「だな~。ただ一旦静かにしてろ、積もる話もあるがお前以外の人には自己紹介せなならんだろが」

「っとそうだったそうだった」

 

昔と同じように照れると左手で頭を掻く癖が変わらない俺の自己紹介計画を初っぱなからぶち壊してくれたこの男子生徒は俺の昔馴染み、(おおとり) 金剛(こんごう)。小学生時代じゃ『外の金剛、室内の龍』だとか言う謎のタッグ名をつけられるほどによく一緒に帰るなり遊ぶなりしていた奴だ。因みにこのタッグ名、外の遊びなら金剛に敵うものはなく、中の遊びなら俺、龍神に敵うものがいなかったからつけられたそうな。

 

「コホン、うるさい奴が入りましたけども改めて………………今日から皆さんと共にここで過ごすこととなりました、鴻山 龍神です。以後お見知りおきを」

「先に言っとくとコイツ、かなりのゲーム好きだから!腕は…………どうなんだ??」

「そこは俺に聞かれても基準がわからねぇよ…………」

「ハイハイハイハイ!!」

「あー……てか何か流れで質問時間に入ってるみたいですけど……」

 

ちらりと先生の方を見ると何やら目を光らせつつサムズアップしてくる…………ってことは続けていいのか。……いいのか?

 

「えっと……それじゃそこの赤毛の人」

「あなたと!!鳳は!!!どのような!!!!ご関係ですか!!!!」

「?普通の昔馴染みだけど……?」

「あ~…………シン、そいつは放っとけ」

「?」

「そうですか~昔馴染み……昔馴染みかぁ!!(ふふふ……私はあんまりだけど、これはあの人達にとって最高のネタ………私達の部の運営資金会得のため…ふふふ、フフフフフフ、ウッフフフフフフフフ……)」

 

…………どうやら余り……いんや、絶対関わってはいけない人のようだ。

 

「初手でそんな質問しないでよね……。ともかく次、私でもいいかな?」

「ああ、気兼ねなくどんどん来てくれ」

「わかった。それじゃ…………アイドル活動に興味ない?」

「あん…………まりねぇかな。そもそもそこまでカラオケに行くほうじゃねぇし」

「でも、時々は行くのよね?」

「まぁ……な。あまり上手くはないとは思うが」

「それなら、よかったら今度一緒にいきましょう」

「いいぜ、後で予定が空いている日教えるから日程はそっちに合わせてくれ」

「次は私ね!なにか変身したいものある?」

「何するつもりだ…………」

「え?いや、ちょ~~~~っと実験に」「誰が行くか、そんなもん」

「あぅ……」

「それじゃ次は……ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーー質問地獄は結局一時限目の半ばまで続きーーーーー

 

 

 

 

 

「ハイ!質問はここまで!」

 

先生の一声に少しだけ『え~』と言う不満そうな声が上がったが……

 

「まぁまぁ。また後で聞こうよ」

 

黒髪の(多分)狼の耳と尻尾を生やした女子生徒が宥めたことにより、その場は収まった。

 

「助かったわ、大神。それで…………」

「席なら空いてるとこに座るのでお気にならさず。まず先生は授業の準備をして下さい」

「そう?それならお言葉に甘えるわね」

 

そうして先生が授業道具を取りに行くのを見送った後、俺は教壇から降り、空いている席に向かって一直線に歩いていき……先程から行儀悪く椅子に腰掛けながら腕を組みつつ目を閉じている、先の白上と同じ顔立ちをしているが色は真逆の漆黒の髪、耳、尻尾を生やした女子生徒の席の隣に座る。

 

「…………よろしく」

「…………」

 

その女子はこちらを一瞥こそしたがすぐに窓の外へ目を向ける。

まぁ、こうなることを予測していたからな。さっきまでの地獄でこっちの精神力はへとへとだから下手にうるさくなさそうな人の隣に来たんだが…………正解だったな……それに。

 

「ここは窓際、寝放題だ…………」

 

直ぐ様机に突っ伏して、寝る体制をとり……その意識をそのまま闇のなかに落としていく。

 

「…………おい」

 

しかし、意識が完全に落ちきる間際につい先程聞いた声と同じ声音だが、そこに携えられた温度が真逆の声が隣から掛けられる。最初は別の奴に声をかけたのかとも思ったが…………

 

「…………おい」

 

同じ声で再び声をかけられ、俺に向かって話しかけられてることに気付き少しだけ顔をあげてその方向へと目を向けると、先程と同じ姿勢ながらこちらがわの目をうっすらと開き、そこから紅い瞳をこちらへと向けていた。

 

「…………編入初日の授業から寝るつもりなのか」

「…………気にかけてくれるのか?」

「…………違う。お前が目をつけられると私が寝れなくなる」

「………………なるほろ」

 

…………ふむ。

 

「………………おい」

「………………何?」

「………………何また寝ようとしてやがる」

「………………昼寝すんのは俺の自由だろ?」

「………………だから、お前が初日から……」

「………………それか、どちらも指名されなきゃいい」

「………………」

「………………」

 

するとここで俺の意図を察してくれたのか、ニヤァ……と悪い笑顔を浮かべ始める彼女。そして……俺もきっと似たような笑みを浮かべているだろう。

 

「………………場所は隣の中等部校舎屋上、今日みてぇに天気がいいと気持ちがいいぜ」

「………………いいね……どう行く?」

「………………ついてこれるのならついてこい」

「………………上等」

 

その言葉を皮切りに俺たちは己の鞄を掴みながら勢いよく同時に立ち上がり、そのまま並んで手頃な位置の窓を開いてそのレール部分へと足をかけると、丁度そのタイミングで先生が帰ってくる。

 

「お待たせ~、それじゃさっそk……は?」

「…………っつうわけで」「それじゃぁ先生」

「「あでゅ~」」

「…………はい?」

 

そして、俺たちに先生が呆気にとられている隙にーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーー三階にある教室の窓から飛び出した!

 

 

 

「なっ!?」

 

先生の驚愕の声とクラスメイト達の歓声をBGMにして俺は飛び出す瞬間に窓枠に引っ掻けた鈎縄をつたって降りて直ぐ様鈎縄を回収し、隣の席の女子は空中で何回転かした後に芝生の上に上手く受け身を取りながらそれぞれ着地をし、二人して先生の負け惜しみ気味の叫びを背中に受けて、一度顔を見合わせ先程と同じような笑みを浮かべあった後に二人して駆け出した。

 

 

…………すべてはより良きサボタージュのために。

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「っあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」

「あっはっはっはっはっ!アイツは相変わらずだなぁ~」

「くっ黒ちゃんんっ!?このあと私先生とお話があるんだけど~~っ!?これ、確実に私重ねて絞られちゃうよね!?!?」

「あはは……なんだか、ますます賑やかになりそうだね~」

「………うむ!頼んだぞ~?」

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

俺と隣席の女子は高等部校舎が見えなくなるところまで走り、息を整える。

 

「して、ここからどうすんだ……えっと…………」

「黒上フブキ。とある奴と混ぜねぇようにクロって読んでくれ」

「?……まぁ、改めて鴻山龍神だ。よろしく」

 

そう簡単に自己紹介しあってすぐに、彼女はスカートのポケットから携帯を取り出してどこかに連絡をし始めた。

…………今って授業中じゃねぇの?

 

「…………もしもし……ああ、今から頼めるか?…………今回は私ともう一人……お、頼む。もしかしたら来てくれるかも知れねぇからな………………ああ、頼んだぜ」

 

何処かに連絡を取り終えたクロは携帯を元のポケットへとしまい、こちらへと振り返る。

 

「うし。それじゃあ、さっさと行くぞ」

「その屋上とやらに?」

「ああ、付く頃にはきっと屋上は開かれてるから安心しろ」

「……?まぁ、俺にはお前を信じるくらいしかねぇんだけども」

 

そうして、歩き始めたクロの少し後ろをゆったりとついていく。

 

「にしても、驚いたぜ。まさか編入初日からエスケープとはな」

「勉強なんてのはある程度理解出来てゃいいのさ。それに……多分先生方にはある程度伝わってるだろうよ」

「つうことはお前も常習犯か」

「そのと~り。前いた所でもよく脱走して、脱走仲間同士でのんびり過ごしていたよ」

「だからあんなに手際がいいのか。つか、手際っつうかお前が使っていたあれ、何?」

「ああ……これ?」

 

クロの質問にたいして、俺は右腕を捲ってそこに着けてある古めかしい鈎縄を巻き付けてある機材を見せる。

 

「おお、そんな風になってたのか。……それで、それって何だ?」

「俺のひいばーちゃんが元々昔の人の義手みたいなの作る人でね、これはそのうち残っていたものを新しい材料に変えた上に改良を加えたもん」

「ほぉ~~スゲェもん作る人もいるもんだな」

「だが……ま、今回使ったとき微妙に変な音したからコイツはもうご臨終みたいなんだよな」

「ちぇ……それがありゃいつもみたいにこそこそしなくても良くなると思ったのによ……」

「さすがにひいばーちゃんの技術を受け継いでる人がいねぇ以上、新しく作るのは無理だし今日は元々さっさと窓から逃走するつもりだったから持ってきただけだが。……てか、いつもこそこそしてんのに何で今日は飛び降りたんだよ?」

「今日は教室で寝たままにしようかと思っていたんだが……有能な野郎が来たもんで急遽な」

 

話ながらカチンと腕につけていた物を外し、鞄から取り出したビニール袋の中に入れて口を縛ってから鞄の中に戻す。

にしても、何と言うか……ホントよそ~ど~りに一発で逝ったなコイツ。ばーちゃんの言った通りだったわ………クロの思う通り使った感じめちゃくちゃ役立ちそうだったのになぁ……………。

 

「やっぱり~何か楽しそうなお話をしてるね~」

「私達も混ぜて混ぜて~」

「っおわぁ!?」

 

すると、突然背後から少し間延びしながらも落ち着いた声とえらく訛った声が掛けられ、慌てて振り替えると……

 

「び、ビックリした……」

「おぅ、おかゆにころねじゃねぇか」

「やっほ~黒さ~ん」

「黒ちゃんまたサボりなの~?」

「またって……おまえらもだろうが」

「だって仕方ないよ~。退屈な授業よりもとっても面白そうな匂いがしたんだもん」

「二人ともなんだか凄いことしてたよね~。私もやりたいな~」

 

そこにはクロから『おかゆ』と呼ばれた紫色の髪と同じ色の猫耳&尻尾を持った、少しだるんとした雰囲気の女子生徒と、その後ろからぴょこぴょこと楽しそうに顔を出したり引っ込めたりしている『ころね』と呼ばれた栗色の髪と、同じ色の犬耳&尻尾を持った元気そうなっつうか元気な女子生徒がいた。

 

「それで、君は誰~?」

「あ、わ、わりぃ。………ッフゥ~………コホン、俺は鴻山龍神。今日クロのクラスに編入してきたんだ」

「へぇ~そ~なんだ~!僕は猫又 おかゆ、高等部の一年生だよ~。そして~」

「私、戌神 ころね~!おかゆと同じ一年生~!」

「猫又と戌神ね、よろしく。……して、お前らもサボり組か?」

「ん~……どうする、ころさん」

「そうだねぇ……………このままサボっちゃおか!」

「よし!そうと、決まれば早速いくぞ~!」

「「お~!」」

「お~!て、遠足じゃねぇんだから……」

 

なんつうか………初めて会ったのにこの子ら二人セットじゃないと違和感を感じそうな程に仲良いな、普通犬と猫ってあまり仲良さそうなイメージないのに。…………ま、仲良き事は良いことだし、特になにも言う気はねぇが。

 

  **************

 

それから、猫又と戌神を加えた俺達4人は授業中で人気のない中等部校舎に忍び込み誰とも会うことなく最上階へとたどり着くかとができた。…………少し物足りないっちゃ物足りないが。ともかく何事もなくたどり着き、クロが屋上へと続く扉を開くと……

 

「お!」

 

真っ先に眼に飛び込んできたのは丁寧に管理されていることがよくわかる芝生。その後、少し見回してみると少し離れたところには日除けのパラソルがつけられたテーブル席が幾つか置いてあるのも見える。

 

「ほぉ~!こりゃいいな!」

「だろ~?」

 

屋上の施設に感嘆していると、再び屋上の扉が開き3人組の男女が入ってきた、というかそのうち一人の特徴的な和風の服と額に角生やしてる女子はクラスの奴じゃねぇか。

 

「お!姐御!お待ちしておりました!!」

「ぐ……姐御はやめてくれって」

「あ、姉さんだ~」

「おはしいな~おかゆところちゃんも来たんや~。それと、初めて見る顔がいるけど、あれがさっきなきちゃん言ってた編入生?」

「そうだぞ!中々の逸材だ!」

 

賑やかになってきたな~。

そんなことを思っていると、クロのことを『姐御』と読んでいた男子生徒が芝生の上に少し大きめのシートを敷き、そこに各々座っていき、菓子やら何やらをどんどん取り出していく。

 

「…………参ったな」

「ん?」

「俺、ゲーム機しか持ってねぇや」

「今回は初見だからな、仕方ねぇよ。ただ次ん時からは何かしらもって来てくれると助かる」

「らじゃ」

「でもゲーム機持ってきてるのはいいねぇ新人君。それで、機種は?」

「ホイッチとNZSP(ニジサポ)

「NZSP!?スッゴい懐かしいの持ってきてますね~!」

 

たしかにそうだが……今でも色褪せる事のないこと名作とか意外と面白いゲームが多いからまだまだ現役だと思うんだが……。ま、とにかくまずは…………

 

「ゲームの話は一旦置いといて……改めまして今日編入してきた高等部二年、鴻山龍神だ。おそらくサボりまくるからそこんところよろしく。因みにクラスとしてはクロと……そこの綺麗な鬼の子と同じだ」

「余!?」

「?違ったか?」

「あ、いや違くないのだけど……」

「わぁ~お……これはまた……」

「何だか、おかゆと同じ匂いがする」

「そう?でも自覚ある分僕の方がマシだとは思うけど……」

「…………私はどっこいどっこいだと思うがな」

「うわぁ、この人スゲェ…………」

 

よくわからねぇが…………一つわかることは何やら呆れられてるらしい。おっかいしいな…………俺は当たり前のことを言っただけなんだが…………。

 

「とっ、とととにかく!余達もじじっ、自己紹介せねばな!!」

「……そだね~」

「それではまず俺からいきます!俺は中等部三年生の夏川(なつかわ) 千花(せんか)ッス!こんな名前でもちゃんとした男悪魔で、姐御の舎弟です!!四露死苦!!」

「リアルで『四露死苦』って言う奴まだいたのか…………てか、クロの舎弟って……」

「あ~……そこは深く突っ込まんでくれ」

「……了解」

「ええ!?そこは俺の」「千花夏うるさぁい!!」

(…………千花夏って?)

(アイツ、女みたいな名前なのに暑苦しくてな。それにたいしてアイツの妹みたいな奴が着けたあだ名だ)

(……合うな)

(だろ?アイツはいいセンスしてるよ……)

 

…………気になるな、その子。

 

「それじゃ次はあてぃしかな」

 

………………滑舌には突っ込まんぞ。

 

「あてぃしは高等部三年生、椎名唯華や。おかゆとは幼馴染みで昔っから一緒やねんな~」

「うん。今日はしまってるけど、いつもは姉さんも猫耳生やしてるんだ~」

「流石に学園じゃぁ普通に過ごしてたしぃ、いきなり猫耳生やしたらね~」

「というか……先輩だった…んですか」

「敬語はいいよ~。あてぃし堅苦しいのは嫌だし」

「わか……った。呼び方とかはどうすればいい?」

「そこはご自由に~」

「了解だ、椎名さん」

「あ、ちょうど呼び方の事になったから話しておくけど僕やころねの事は名前呼びでいいよ。ね~ころさん」

「がぶっ!……ほん!!」

「わかったが……ころねは食べるかしゃべるかどっちかにしなさい」

 

何か静かだなと思ったら……菓子をリス……いや、ころねの場合はハムスターみたいに口一杯に頬張ってたのか。端からみりゃかわいいが……俺らの菓子がほとんどねぇじゃん!!まだ話初めてから10分経ってねぇぞ!?どうすんのさ!!

 

「や~、やっぱりころちゃんの食べっぷりはいいね~」

 

すると、椎名さんが自身の鞄から追加で菓子を更に追加で出してくれた。

良かった、これでまだ保つな。

 

「ハァ~……さて、後は余だけだな」

 

最後に俺の言葉に顔を真っ赤にして、今まで手であおってその顔を冷やしていた鬼の子となる。

 

「余は百鬼あやめ、鬼神だ。そして……この子達は余の式神である『業』と『不知火』。余共々よろしくな、鴻山殿」

「おう。よろしく、百鬼。後……俺の事は龍神でいい」

「ほぅ?となると……鳳殿の言っていたシンというのは?」

「ただのあだ名」

「……なっなら、余もそう呼んでも……」

「あぁ、別にいいぜ」

(チョッロ……)(お?お?新しいカプかな?)(チョロ余)

(そんなことよりお菓子美味しい)(こ、これは漢だ…!!)

 

何か照れる要素あるのかね。………あぁでも、同年代の男子をあだ名呼びするってのは中々ないから緊張してるってことか?それならしゃあないか。

 

「あ、後余のことも……」

「ん?……あぁ、そう言うこと。わかったよ、あやめ」

「~~~~~!!」

(コイツ……)(フフ、どうなるか楽しみや)

(何か既視感あるなぁ)(お菓子ウマウマ)

(兄貴って呼んでもいいだろうか……?)

「あ?お前らどうし……っておい!ころね!!お前、菓子ほとんど一人で食ってんじゃねぇか!!」

「っくん……美味しかった♪」

「美味しかった♪じゃねぇーよ!!」

「大丈夫だよ~。ほら、まだまだお菓子はたくさんあるから~」

「わ~い♪♪」

「一旦ころねはストップ!せっかくみんな揃ってんだ、ちゃんと分けて食べような?」

「そっちの方が楽しい?」

「当たり前だろ?」

「ならそうする~!」

 

…………なんつうか子供をあやしている気分だなぁ……。

そう思いつつ今度はおかゆが取り出した菓子を今度こそ、皆揃って食べ始める。その間も俺への質問メインの雑談を続け、澄みきった青空の元で俺達のサボタージュは続いていくのだった……

 

 

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「フフフフッ」

「?どうしたのよ、突然笑いだして」

「あっ、ごめんね。ちょっとーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー面白そうな子見つけたんだ♪」

 

 

 

 

 

 

                  act-1 end

                 To be continued




以上、ホロ二次第1話でした!!


次回投稿こそはとじみこ最新話、できれば今週中に投稿できたらなというところです。
咲に関してはまだまだ先になってしまいます。誠に申し訳ありません。


さて、初めての恋愛オンリー物、いかがでしょうか?

ぶっちゃけ慣れないこともあり色々と不恰好だったり、おかしなところもあると思いますがその辺りはどんどん感想やらTwitterやらで話していただければ改善してきますのでよろしくお願いいたします!

では、改めまして、誤字脱字、ご意見ご感想、気がねなくお願いします!!


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START OF YOUR STORY'S act-2

二話連続投稿!!璃空埜です!!

ホロライブはとまらない!!
早速、どうぞ!


雑談という名の質問タイムを続けていた俺達だったが話題がつきてきたこともあり、そのまま流れでホイッチのゲームをここにいる面子ですることになった………………なったんだが。

 

「「フフフフフフフフフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」

「こ、このぉ……!」

「くぅぅぅ…………」

「そんな動きじゃプロのころねは倒せないよぉ!!」

「甘い甘い!!動きが甘いぜぇ!!ハッハッハァッ!!」

「「「……………………」」」

 

…………かんっっっぜんに暴走している人達がおるのですがそれは。つか、このゲームそのチーム色で塗った陣地の範囲の広さを競うゲームだよな?なんであんたら二人はリスキルしまくってんの?しかもーーーーーー

 

 

ーーーーーーお前らいるところ以外ほとんどこっちの色で塗られてるってのに。

 

 

「これは……流石にチーム分けが悪かったね…………」

「塗るの頑張ってる椎名さんが報われねぇな~…………っと」

「わぁぁ!!~~~~っ~だったら撃たないでやぁぁぁ…………塗り返さないでやぁぁぁ……」

「「いや~それとこれとは別だから~」」

 

せっせと一人懸命に塗り返していた椎名さんのキャラを俺が遠距離から容赦なくぶち抜き、がら空きになったその場所をおかゆのキャラが悠々とまた塗り返していく。

 

「あ、今のでスペシャル溜まったから…………まぁ撃っとくかぁ…………」

「だね~」

 

ゆる~く話ながら容赦なくおかゆが空高々く多数のミサイルを打ち上げ、そこからワンテンポ時間差を開けて俺はその場から壁貫通の音響兵器?みたいなのを放つ。

 

「ハハハハハハハハハハハハハアッ!?やっべぇっ!!逃げるぞころね……って!!これじゃ逃げれねぇぉうわまじやべあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

「わ~クロちゃぁあぁあああっあっあっ!!??……ふぃ…………危なきゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」

「あぁぁぁぁ……遅いってぇ……」

「はぁぁぁ…たすかったよぉぉ……」

 

甲高い悲鳴をあげる暴走していた2人のキャラはあえなく轟沈すると同時にこちらの味方……反応からして恐らく千花がやられる。

全体的には圧倒的こっちが有利だけど……後30秒、油断しない方がいいよな。

 

「あやめ!君はさっきのリスキル現場の上塗りを頼む!」

「わ、わかった!!」

「んし。それなら、今度はこっちから突っ込むぜ!おかゆ!」

「よしきた!いっくよ~!」

 

ポチャンとインクに戻り、ある程度塗られている道を一気に突き進む。すると、すぐにリスポーンしたクロのキャラと鉢合わせとなり、ひとまずボムを投げて牽制するとこちらの死角へと回り姿を隠す。それをみた瞬間、即座に振り返りメインウェポンをチャージさせ一拍置いてからインクを発射させると……

 

「何っ!?うわ!?」

 

予測通り後ろからクロのキャラが現れるもインクの直撃を受け無事、倒される。

 

「お前ホントに初心者か!?」

「ランクみれば分かるだろ……」

「だけど動きが明らかに素人じゃねぇ!!」

「そりゃ……このゲームは初心者だけど、一応他のゲームもしてるからなっと!」

 

クロとの会話をしつつ彼女が塗った所を塗り返していたのだが、突然頭上から降り注いだ大量のインクをギリギリのところで躱すも、多少は喰らってしまう。

 

「くっ……」

「さっきの仕返しだよぉ~!」

「千客っ……万来なっ……ことでっ!!」

「くぅ~!!なら……」

 

突如現れたころねのキャラの攻撃をギリギリのところで躱す俺に業を煮やしたのか、ころねは至近距離でスペシャルを発動させ、空中に飛び上がる。

…………だが、ここでそれは悪手だ。何せ……

 

「ころさん、も~らい!」

「ひゃん!?もう!ぉヵゅ~!!」

「ごめんね~、ころさぁん」

 

飛び上がった彼女のキャラをその背後から現れたおかゆのキャラが撃ち落とし俺が事なきを得る。そして、それとほとんど同じタイミングで10カウントが入り始める。

 

「あ~……これは無理やなぁ…………」

「クソッ!後もう少しこっちの方を……」

「ごめ~ん!リスポーンするのに後2秒~!!」

「ん~これなら勝ったね」

「だぁな。つっても油断は禁物だが」

「何かあったの?」

「少し前のマッチでちょっとな……」

 

まっさか、俺以外のキャラがほとんど同時にやられちまって流石に一人じゃ押し返すこともできずに逆転負けしたことあんだよなぁ……。

 

「でも、流石に今回は大丈夫でしょ~?」

「まぁ……確かにな、現に今終わったし」

 

二人分の儚い悲鳴と共にタイムアップとなり、誰かが投げたボムが爆発し終えてからリザルトへと移るも、そこから見えるステージの色合いは完全にこちらの色がほとんどを占めていて……

 

「圧倒的だね~」

「だな~」

「余も頑張ったぞ!!」

「ああ、助かったよあやめ」

「~~~~っ!」

「俺……全然ダメだった…………」

(…………なぁ、ころね)

(うん?)

(これさ……龍の奴、一度ミオかロボ子とやらせてみないか?)

(……確かにそうしてみると面白そう)

「……?」

 

何やらクロところねがこそこそと話してはいたが、結果は案の定俺達のチームの圧勝。そして、個人スコアは……

 

「…………ころさん?」

「………………クロ?」

「「アッハハハハ……」」

 

クロところねがまさかの塗り点400ちょいでキル数が8……いやいや、普通そりゃないでしょ?それってつまりは塗りをほとんど全部、椎名さんがやったってことだろうが。………………まぁそれを言うなら、こっちのチームの千花は同じくらいの塗り点で0キルという散々な結果に終わったってことに比べたらマシなんだろうが。

 

「…………なぁ、シン」

「どした、あやめ?」

「お主、ホントに初心者なのか??」

「最初から言ってるだろ、このゲームはここ数日前に始めたばかりなんだって」

「…………そのスコアでか???」

 

…………疑いたくなるのはよう分かる。そりゃここ数戦、ほぼ確実に勝利チームにいて、キル数も大方5以上をキープしてりゃそうも思うか。

 

「……ま、似たよ~なゲームを幾つかしてたからってのもあるがな」

 

俺があやめにそう返すのとほとんど同じタイミングで……恐らく四時間目の終わりを告げるチャイムが聞こえてくる。すると、静かだった学園がにわかに騒がしくなってきた。

 

「昼や「うぉっ!?やべぇっ!!」びっくりしたぁ……」

「あ~……頑張ってね千花夏~」

「すんません!!ちょっと行ってきます!!」

 

椎名さんの一言からして……あれか、どの学校でもある購買部闘争か。この広い学園からしたらその規模もものすごいんだろうな…………俺は行く気はねぇけども。

そうして、急いで鞄にホイッチを片付けた千花夏はその鞄をひっ掴んで勢いよく屋上を飛び出していく……事故らないといいんだが。

 

「龍は行かなくていいのか?」

「俺は自作の弁当があるから大丈夫。そういうお前らこそ大丈夫なのか?」

「うん。僕はこのおにぎりがあるから~」

「私もこのパンがあるよ~」

「あてぃしも行きがけにころねの家のパン買ってきたから大丈夫や」

「余も弁当があるから大丈夫!」

「私もこの通り。にしても、お前自分で作ってんのか……すげぇな」

「ま、今日が当番だからってこともあるんだがな」

「?」

 

不思議そうに小首を傾げるクロにそう返しながらゲーム機を鞄へとしまい一度立ち上がって伸びをしていると屋上の扉が開いて今朝、俺を案内してくれた天音と紫髪をツインテールにまとめ、耳が生えてるとも思わせる黒色の顔のついた帽子を被った女子生徒がやって来た。

 

「こんにちは。千花夏が爆走してると思ったら…………やっぱり皆様お揃いで」

「やっほ~、トワも来たんやね」

「よ、天音。今朝ぶりだな」

「へ!?せっせせ先輩!?」

「?どうしたよ、そんなに慌てて」

「……シンはかなたと知り合いだったのか?」

「いや、今朝方ちょっとした縁があってな。天音に助けてもらったんだよ」

「そういや、あん時郡道先生大慌てでチャリを走らせてたな……理由はお前だったのか」

「あ~あれは轢き殺されるかと思ったよ」

「実際に連れ回された時には死んだかと思ったぜ…………」

 

おぉ……思い出しただけでも身震いしてきたな、もうあんな経験はしたくねぇ…………。

 

「ふ~ん……なるほどね。あんたがかなたの言っていた「わーーーーーー!!わーーーーーー!!トワそれ以上は言っちゃダメ!!」フフフッ、分かったよ」

 

あれれぇ~?おっかしぃぞ~??(某小さくされた探偵風)天音はクールな性格をしてると思っていたんだが…………。

 

「にゃはは。シン、かなたんはね~ほんとはスッゴい恥ずかしがり屋なんだ~。それで、それを隠すためにクールな性格をえんじていたんだよ」

 

俺が不思議そうな顔をしてるのに気づいたのか、おかゆがニマニマとしながら訳を話してくれる。

……なるほどねぇ、恥ずかしがり屋さんだったのか。それなら朝の態度も頷ける、初対面でしかも男となればあぁもなるわ。…………そうなると腑に落ちないのは最初に話しかけてきたことなんだが…………ま、そこは生徒会役員としての義務としてってところか

 

「照れてるかなたんは物凄くかわいいよ~」

「それはあるな、小動物みたいだ」

「ひにゅ!?」

 

俺の一言に今朝のように体を固めて顔を真っ赤にする天音。それをみた隣の少女は肩を震わせて顔を俯かせる……笑ってるなあれは。

 

「シン、シン」

「?どした、あやめ」

「余は?余もかわいいか?」

「あやめか?あやめは初めて見たときは綺麗な奴だなとは思ってたが、話してみると可愛らしかったぞ」

「そう……か!そうかそうか!!」

(……うーん、やっぱりおかゆと同じ匂いがする)

(だな。しかも、本人に自覚がないから質が悪い)

(カプ厨としては新たなカプが生まれそうで嬉しい限りや♪)

(どうなるか楽しいだな~)

 

嬉しそうなあやめの後ろで、ひそひそと顔を寄せあって何やら話し込んでいるクロ達…………一体何の話をしてるんだろうか、とぼんやりと思っていたその時だった。

 

「お前かぁぁぁ!!!」

 

突然のんびりとした空気を吹き飛ばすように、屋上の扉が勢いよく開かれると共に一人の男子生徒が飛び込んできたと思うと、一直線に俺のところまでくると……

 

「おまえがはかいしやがったのかこのやろうさいごのまともなやつをぶちこわしやがってどうしてくれんだこのままじゃおれがこわれちまうだってきいてくれよほかのやつはぼうそうれっしゃだしめんへらだしかいわとちゅうでわりこまれるしてんねんほわほわおひめさまだからつよくあたれないからこいつがさいごのまともなやつだったんだそれをこわしたおまえはせきいんをとってほしいというかとれっつうかとってくたみさいというかとりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「何これ修羅場?」

「いやいや違うだろ……というかコイツのコレはいつもの発作だ」

 

………………なんだコイツ?怒ってると思いきや途中で泣き言を挟んでやがるし、結局何か怒ってるし……つか、そもそもそんな早口で言われちゃ半分くらいしか分かんないって。

 

「あ~……取り敢えず落ち着け?」

「これがおちついていられるかってのさおれいがいのゆいいつむにのまともなやつがこわれたんだぞどーしてくれるどーしてくれるこのままおれをつぶすきかてめぇそれだけはやめろやめてやめてくださいなんでもしますからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

だっから、怒ってんのか泣きついてんのかどっちなんだっての………………。

 

「ぜんぜん落ち着かないね」

「呑気なもんだな…………」

「そーいうシンもだけど……」

「俺自身こーなる人は初めてじゃねぇし…………ここまで壊れてるのは初めてだが」

「こういう人を見るのが初めてじゃないってことに驚きだよ」

「…………こーなる原因に心当たりがある。そして、今めちゃくちゃ嫌な予感がしてる。てーか、どうすんのさコレ?」

「ごっごめんなさい!ごめんなさい!!」

「…………本当にごめんなさい……」

「あ~……いや、天音と…………まだ自己紹介してねぇじゃん……ともかく、紫の子が謝ることは「えと、そのメンヘラってのは多分私」え!?お前なんっ!?」

 

マジかよ、この子結構まともだと思ってたわ!…………いや、この子はメンヘラかもしれないがまともだ、うん、まともだ。

 

「あ~……ともか「おいきいてるのかいやきいてく」ちょと、うっさい」

「ぱっ……」

 

あまりのうるささとしつこさで、思わず反射的にヘッドロックをかけ一瞬で意識を刈り落としてしまう。

 

「おっそろしく早いヘッドロック。私じゃなきゃ見逃しちゃうね」

「…………あ、やべ」

「気にすんな、気にすんな。もう少し遅けりゃ私がぶん殴ってた」

「いやいやいやいや……流石に殴っちゃダメだろクロ…………」

「…………でもいやに素早く落としたね……」

「コツさえつかみゃあ意識を落とさせるくらいなら案外造作もないぞ」

「あ、それならころねにも教えてほしい!」

「私にも教えてくれ。うざったい奴に使いたい」

「後でな~」

「ん。こっちは式を飛ばして必要な者を呼んでおいたぞ」

「サンクス、あやめ。っしょ……天音と紫の子、悪いが氷水持ってきてくれ」

「ん。……ここはバケツに入れてくればいいのかな?」

「いやいや、普通に枕みたいなのとか袋に入れてあるのでいい」

「わ、わかりました。すぐに持ってきます!」

 

意識を無くした男子を担いで日陰に移動させつつ、氷水を天音達に持ってきてもらうようにお願いする。

あぁあ…………こりゃめんどくさいことになったな………………ま~さか、こんなところで再会することになろうとわ…………。

 

 

 **************

 

 

それから天音達が持ってきた氷水袋を額にのせて日陰に寝かした先程の男子……天音曰く中等部生徒会副会長、白氷那 恋護(しらひな れんご)とやらは一度そのまま放っておくことにして、彼がぶっ壊れた原因を待つ。その間に先程天音と共にやって来た紫の子……メンヘラらしい常闇トワと自己紹介を済ませる。………いや、やっぱりこの子、しっかりしてるわ。

 

「……まぁ、でも私は生徒会役員じゃなくてよく生徒会室に遊びに行って、喋りまくってるだけなんだけど」

「あぁ……」

 

なるほど?そうなるとあれは願望か、来るなら手伝ってくれって言う。

 

「にしても……天音、あまり体調良くないのか?さっきの白氷那の話じゃ様子がおかしいとか言ってたようだが………」

「へ!?いっいえいえ!!私は大丈夫です!!」

「そうか?それならいいが……お前も大変だな。アイツの補佐なんて」

「はは……その分、私がしっかりしなきゃっていう自覚を持てるんですけどね」

 

天音は生徒会じゃ書記に加えて会計も担っているそうだ。……もう二人の子は知らんがそりゃ白氷那の暴走する気持ちもわからなくもないな。これだけしっかりしている子が唯一の安全地帯(オアシス)になりうるし、この子がダメになったときそれは生徒会の崩壊を意味しそうだ。

 

「そ・れ・で~……あてぃし、シンくんに聞きたいことがあるのやけど……」

「おう、どした椎名さん」

「単刀直入に行くで?……会長とはどんな関係なんや」

「簡潔に言えば……おs「いいなずk」そう思ってるのはテメェだけだぁ!!」「アウチ!!」

「あぁ!?また扉の修理費が…………っ!!」

 

椎名さんの質問に答えようとした最中、ついに白氷那が暴走する事となった元凶が屋上の扉を文字通り吹き飛ばしながら現れておかしな事を宣ろうとした瞬間にその顔面に拳を叩き込んだ!

 

「ッタァァイ!!何すんデスカ!!WHY!!」

「おっ前なぁ…!!昔から言ってるだろが!もう少し落ち着いて行動しろて!!!つうか扉を蹴破るな!!ったく……」

「…………なるほど、幼馴染みと」

「あぁ…………ま、そんなところだ」

「でも、お前…鳳が幼馴染みじゃなかったか?アイツは……」

「ええっと……どっから説明したもんか…………」

「もしかして…………先輩って桐生組の関係者?」

「お?それじゃお前らこの暴走野郎の親父さんのこと知ってるのか?」

「学園だと有名だよ。ゲームの主人公と同じ名字の組でヤクザだけども社会に貢献していることで有名な桐生組の総長の娘さんってことで」

「…………そこまで知ってるならいいか。俺の親父とその総長……ココの親父さんが親友でね、当時はヤクザってのが悪いイメージが強かったからあまり公言出来なかったけどよく会っていたのさ」

「なるほどねぇ…」

 

殴られた鼻頭を抑えて大袈裟に痛がる、頭に一対の角を生やしたオレンジ色の髪をした長身の女子生徒、そして、白氷那が壊れた元凶………桐生ココとは昔何回か会ったことのある妹みたいなもんだ、身長は抜かされたが。

 

「イヤ~でも、久しぶりにMyBrotherの拳を受けましたが……Goodデス!!」

「…………会ったときに何してたんだ…」

「喧嘩教えた」

「…………へ?」

「だから……喧嘩教えた」

「そうデス!MyBrotherはワタシのシショーでもあるのデス!!」

「…………もしかして……」

「おかゆ、違ぇぞ?俺はここまでしろとは言ってねぇからな?」

 

当時はその喋り方ゆえにいじめられて泣いてて、そこで俺が喧嘩作法みたいなのを教えたところ……あっちゅうまにどの方面にも喧嘩を売っていく暴走機関車に………………んんっ?これ、俺が原因か?

 

「こんにちは~、何だかまたココが爆走していたからついてきちゃ「あれ~?知らない人がいるのら~?」あ……る「お?センパイたち、こんにちわなのだ!」え、えと……ろ「うっひゃあ!!何か鬼太郎みたいな人いるよ!!」だから……ま「ダメです、みんな。わためが、話してる……ます」あぅ…………」

 

俺が頭を抱えているとココの後からもう二人、片方は流れるような金髪にココとは違う形……おそらく羊の角を頭に生やした女子生徒と、その女子の話を途中で叩き斬って話しかけてきた小さな冠とあめ玉の髪留めが特徴的なピンク髪の女子生徒と、頭に小さな角と背中に小さなコウモリのような羽、そして、先端が特徴的なスペードの形をした尻尾を生やした赤い髪の女子生徒と、褐色の肌に白いショートの髪をした活発そうな女子生徒、最後に特徴的な尖った耳をもった拙い言葉遣いの男子生徒がひょこっと連なって顔を出したと思うと、赤い髪の子を先頭にそのまま俺を取り囲んでワイワイとし始める。

 

「お!おにいちゃんなのだ!どうしてここにいるのだ~?」

「何々?ロアのお兄ちゃんなのか!?」

「でも~悪魔じゃないよ~?」

「あなたは、一体、なに……ですか?」

「っとと、ハイハイ一旦落ち着いてくれ。まずロア、俺も今日からここに通うことになったんだ改めてよろしくな。それで他のお三方とそこの君は初めまして、本日編入してきた高等部二年、鴻山龍神だ」

「あ、はい!角巻わた「姫森ルーナなのら~」「あたしは葉山舞鈴(マリン)!」「僕、ティーダ・プルフィミナ」「お~!よろしくでよ~!」……わためです」

 

…………えと、何だ?この角巻って子は話す度にその途中で被せられるのが当たり前なのか?

 

「ハッハッハ!流石はクソザ「お前も、もうちょい、黙っとれい」へぶっ!?」

「すっご……扱いが手慣れてる…………」

「というか、お前らまで来たってことにびっくりしたわ……昼飯は?」

「まだ、これから、皆、食べる、とこ、黒お姉さん」

「それなら皆で食べようよ~」

「それは~とってもいいお話なの~」

「ころねのパンは誰にもあげないよ?」

「ころさん、誰も取らないから安し」「天音……と言ったか?君は同志かな?」

「ええと……百鬼先輩ですよね?それで、同志っていうのは…………」

(ゴニョゴニョ)「!!同志です」

「なら、同盟を結ぼう」

「何か変な同盟できてんだけど……?」

「むぁ、ふふぃんびぇびぁい?(まぁ、いいんじゃない?)」

「…………一気に賑やかになったな。後、葉山だっけか?喋るならしっかり食べてから喋りなさい?」

「皆楽しいならいいことなのだ♪それよりもおにいちゃん、いつものお願いしてもいいのだ?」

「ん?ん~…………今日は店には来ねぇの?」

「今日はパパとママと一緒に過ごすからいけないのだ~……」

「そうなのか……。っと、わかったからそんな悲しそうな顔すんなって、それじゃ俺が悪いみたいになっちまうだろ。ともかく……ほら、おいで」

「わ~い!!」

「「っ!!??」」

「お~、これはまた……」

 

ちょこちょことこちらへ来た先程の赤髪の子……夢月ロアを、胡座をかいた俺の足の上に座らせてから弁当を開こうとすると、何故か俺の左右には天音とあやめがすぐさま陣取る…………しかも、かなり距離を詰めて。

 

「いや……こんだけ広いシート敷いてんのに何故?」

「いえ!先輩は気にしないで下さい!」

「余達が好きでここに座っただけだから!」

「…………まぁ、いいけどさ」「でよ~♪」

 

それ以外の奴らも各々好きな様に腰を下ろし、それぞれ自分の弁当を食べ始m「お兄ちゃん♪お兄ちゃん♪この唐揚げほしいのだ~♪」こらこらロアや?割り込むんじゃないよ、これじゃどこぞの羊じゃないか。…………コホン、ともかくそれぞれ己の弁当を、皆で称賛しあいながら賑やかに昼休みも過ぎていくのだった……

 

 

「…………はっ!俺は何」「その唐揚げはアタシのモノデス!!」「へぶれっ!?!?」「ココ~?なにまた副会長君気絶させてんだ?それと、残念ながら唐揚げは売り切れだ」「WHAT!?!?」

「おいひぃ……」「こんな唐揚げ初めて…………」「ん~♪この味がいいんでよ~♪」

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その後は何事も…………なくはないな。ようやく意識と正気を取り戻した副会長には土下座で謝られたし、千花夏はコッペパンを10本買ってきたし(大方の予想通り買い物戦争に敗北したそうな)、俺の回りに集まった連中は俺の弁当の取り合い始めたし、そこにロアの友達三人も集ってえらいことになったし……とにかく退屈しないランチタイムを取った後、俺は今……

 

 

【【す・い・ちゃ・んは~~今日も?】】

「「「「「「「「「「か・わ・い・いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

「…………ン~ダコレ」

「ははははははっ!スゴいだろ!!」

 

クロ、あやめと共に教室に戻るなり金剛に引っ捕らえられて問答無用で体育館に連れてこられた。そして、連れてかれためちゃくちゃでかい体育館はライブ会場へとかわり、そのステージでは一人の女の子が歌って踊っている。

 

「てか、あのステージにいる水色の髪の子ってうちのクラスの奴じゃん」

「おや、見慣れない者がいるな」

「や~、金剛くんもきたんだ。それと久しぶりだね、鴻山くん」

「お、来たか!零斗(れいと)麗鵝(らいが)!」

 

すげぇなぁと感嘆しながらステージを眺めていると、少し色素が薄めの髪をした黒淵の眼鏡をかけた長身の男子生徒と、学校規定の制服の左袖に航空機の飛び立つステッカーを着けた濃い翠髪の少し小柄な男子生徒の二人組に声を掛けられる。

…………片方は金剛の様子からして仲の良い友人といったところで、確かこの特徴的な髪色で零斗っていうと……

 

「…………まさか戦場ヶ原 零斗(せんじょうがはら れいと)?」

「そうそう。小学校振りだね!」

「マジか!久しぶりだな~!」

「旧友なのか。して、先程の口振りからして、我が崇高なるアイドルを早くも把握しているようだな」

「ん、ああ……自己紹介の時に『アイドルやらないか?』って聞かれたのが印象に残ってたんだよ」

「ほほぅ?……まぁ確かに口は悪めだが良い容姿をしておるな、目をつけられるのも無理はない」

「……荒れるかと思ったがマトモみたいだな」

「ハハッ、確かに彼女は我らの崇拝すべき存在。だが我々は彼女が悲しむことはしないのが心情さ」

「誘われた…………?」

「零斗~?今は行くなよ~?」

「あっと……ごめんね」

「はぁ……その妄想癖……相変わらずだなぁ」

「旧知の仲を改めるのもいいが……そろそろ自己紹介させてもらおうか。私はそこの派手な奴の友人の未来川 麗鵝(あすかわ らいが)だ」

「っと、俺も自己紹介が遅れてすまねぇな。俺は鴻山龍神、そこの無駄に元気な奴の幼馴染みだ。零斗もだが、俺の事は龍神とかコイツみたいにシンって呼んでくれ」

「ちょ……お前ら、俺の扱いちょっと酷くないか?」

「「「別に外れてないだろが(でしょ)(だろ)」」」

「…………えぇ~……てか、零斗もかよ……」

 

大袈裟に肩を落とす金剛を横目で見た後三人で顔を会わせてから少し笑い合う。そうしている内に会場のボルテージは更に上がって数人は顔を真っ赤にさせながら叫ぶほどとなっていた。

 

「うぉ……すげぇ人気だな」

「当たり前だ、これこそ星街すいせいちゃんの力さ」

「星街すいせい?」

「あの子の名前だよ。本名をそのままアイドル名にしてるんだ」

「なるほどなぁ。……ただ、これ授業どうすんのさ?まだまだ終わる気配ねぇぞ?」

「それについては大丈夫だ。今日水曜日は“すいちゃんデー”と言ってな、すいちゃんの予定が合えば五時限目を占拠してライブを開催しても良い事になっている」

 

いやいや凄すぎるだろ。学校あげて応援に回るとh

「因みに、この方針は私が次期生徒会長としてのありとあらゆる力をもって強引に押し通した」

 

ごり押しかよ!!てか、お前が主犯でしかも、次期生徒会長かよぉぉぉ!!

 

「ホント、よく許可してくれたよね~……」

「だな……」

「普通通らねぇよ、そんな案……。てか、金剛」

「何?」

「俺はそもそもの話、何でここに連れてこられたんだ?」

「あぁそれな。実は……【【あ!鳳く~ん!!連れてきてくれたかな~~???】】……っつうわけだ。おぅ!!呼んできたぜ~!!」

【【ありがとう~~~!!!!】】

「っあ~…………呼び出されたのか。…………しかも、こんなに大勢の前に」

「すいちゃん恒例の通過儀礼だね。ま、死にはしないから大丈夫だよ」

 

死にはしないからって……何かしら痛い目にはあいそうな風に言うなや。しかもさ……

 

(おい、あの男か?)

(あぁ、アイツが噂の編入生だ)

(良いルックスをしてやがる……しかし、それがどうしたって言うんだ)

(下手なことをすればコロス)

(良いことをいったな君、俺も手伝おう)

(よし、我も協力するぜよ)

(汝に力を授けよう)

(((((((お前、何様だよ!!?)))))))

(我、崇高なる我らがアイドル、星街すいせい様に宿りし守護霊である)

(((((((その力、喜んで受け取ろう)))))))

 

さっきから目の前の集団全員の視線がこちらに向けられてて、そのひとつひとつが突き刺さるほど痛いんだが?てか、ホントにこれ下手なことをしたら死ぬよな?殺されるよな?打ち首晒し首は確定だよな?…………なんか途中で変なコントが聞こえてきたが……そこには突っ込まないでおこう。

 

「…………行かなきゃダメ?」

「逆に行かないのならここで君に我が星詠み会(スターフィングアクト)の精鋭達を仕向けるが?」

「…………行けってことか」

「理解が早くて助かる」

 

はぁぁ…………あんまりこういう大舞台は立ちたくないんだが……。

天井を仰ぎ見つつ、ちらりと俺の事情を覚えているであろう金剛の方を伺うとニヤニヤとした顔だったが、その瞳には少し真剣な色が入っている…………そんな気がした。

 

「…………なるほどなぁ」

 

金剛の真意に気づき、誰にも聞こえないほど小さく呟く。実際少しざわついていた体育館内ではその呟きは、その淘汰に呑まれていった。それから顔をあげステージ上で首を少しかしげている感じの星街に向かって軽く左手を振るい『これからそっちへに行く』という意味を込めたジェスチャーを送り、一度大きく深呼吸を挟んでからゆったりと歩き始める。

 

「……………………っ」

 

………………昔程じゃないが…………やっぱりまだ、こういう所…………人が両隣に塀を作っている所を歩いていくと、嫌なもん思い出すし……そのせいで、気持ち悪くなるな…………。

 

「フ~………………」

 

だけども、このくらいなら、平気だな。

 

 **************

 

「……アイツ、少し様子がおかしくないか…………?」

「………………昔より少しはマシか」

「……………………金剛くん…まだ、シンくんは……」

「…………ああ。だけど、あの時よりかはまだましだ」

「金剛。シンは一体どうしたんだ?」

「………………わりぃ、麗鵝。お前でもまだ話せねぇ……」

「…………そうか……ならば、聞くまい」

「……ありがとな」

 

 **************

 

…………あ~………………そこそこ疲れた………………。

人垣を通り抜けなんとかステージまで挙がり、ふり返ると……

 

「………………うぉ」

 

そこにはいつか見たような人の山…………あの時とは俺の状態とかも違うから大丈夫っちゃあ大丈夫だが…………それでもちょっとキツいか。

 

「圧倒されてる?」

「…………流石にな」

「キツいのなら戻っても……」

「…………戻ったら死が待ってそうだから大丈夫だ」

「アハハ、それ逆に大丈夫じゃないよ~」

 

俺の顔色を気にして、少し心配そうに小声で声をかけてくれた星街に半分冗談で半分本気の言葉を返すと、彼女は安心したかのように軽く笑ってマイクを持ち直す。それを横目で見ていた俺ももう一度深呼吸して気分を落ち着かせてから、一応星街の少し斜め後ろに立つ。

 

【【はい!それじゃ紹介するよ~!!今日私のクラスに編入してきたばかりの鴻山龍神くんで~~す!!!】】「はい、どうぞ」

「え?ちょ【【おま……あっと…………スゥッ……ッと……ご紹介に預かりました、鴻山龍神だ。……まぁ、よろしく】】……いきなり渡すなや、びっくりしたわ……」

「えへへ、ごめんね【【鴻山くん、ありがとー!さてさて~編入生君を紹介したところで、今日のお歌のコーナーはおしまい!!次は~?】】……鴻山くんてゲーム機持ってる?」

「あー悪い。あるっちゃあるが今教し……「へい、こちらに」え、天音?」

 

なぜか真っ黒い……いわゆる黒子の姿に今日はやけに見る羽根を生やした人が、何故か俺の鞄を恭しく捧げてくる…………というかもう声で分かるって、お前天音だろ。何でここに……あ、いやまて、そういや、生徒会の腕章つけてたわ。…………いや、だからって俺の鞄持ってんのおかしくない?

 

「…………じゅうで「充電完了しております」…………アッハイ」

 

充電もしてあるとかもう逃がさない気マンマンじゃねぇかよ!

あぁ、もう…………正直言って、ここじゃゲームやりたくねぇんだよなぁ…………けど……。

軽く肩を竦めてから黒子天音から鞄を受け取ってそこからホイッチを取り出して、星街に向けて『いいぞ』と合図を送る。すると、満面の笑みとなった星街がパチンと指を弾くとステージ上部からめちゃめちゃ大きなスクリーンが2つスルスルと降りてきて、それと同じくして俺達の近くにはホイッチのゲームスタンドをのせた大きなテーブルとモニターが用意されていた。

 

【【お待ちかね!!私!!そして今日は~彼とも!!ゲーム対決の時間だよー!!】】

「……用意周到なことで…………。それで、プレイするゲームは?」

「お?以外に乗り気かな?……ゲームは“テトリス99”」

「って~と、お前とここにいるやつらのうちの97人か」

「うん♪それで対戦方法は1VS1VS97」

「つっても、恐らく1VS98か……」

「アハハッ!それはそれで面白そう♪」

「面白そう……というか、俺が地獄見るだけだわ……」

 

ったく…………やる気にさせてくれるぜ。あんまり得意なゲームじゃねぇが…………

 

「…………先にいっておく。…………俺は売られた喧嘩は買うタイプだ」

「…………ヘェ……?」

「…………全力でやってやる…………だから、覚悟しろよ?」

 

俺の言葉が近くの奴らに聞こえていたのだろう、小さくざわつき始めたと思うと、それはすぐさまこの会場全体に広がっていく。そして…そのざわつきは非難とか、イラつきのものではなく…………

 

 “何やってんだ”という焦りと混乱の声。

 

そういう反応からして、このゲーム…………星街の十八番だろう。

 

「それなら…………せいぜい、私を楽しませてね?」

「お~お~……大きくでるなぁ……」

 

それだけ自信あるってことか…………

 

 

ーーーーーま、こっちも負ける気はさらっさらねぇがな。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「アッハハハハハッ!!!結局アイツの本性何一つ変わってねぇわ!!」

「…………ハァ、聡明な奴かと思ったが……気のせいか」

「アハハッ、それは違うよ~」

「と、言うと?」

「アイツはな~確かに基本的にローテンション気味な奴さ。んで、口は悪いし、サボることには全力を注ぐ上級サボり魔d「それは僕らも言えることだけどね~」零斗は少し静かに、今からいいこと言うんだから」

「……それは自分自身で言うな」

「うっせ。ともかく、アイツは上げれば切りがねぇ程色々やってるわけだが……それ以外はアイツはすげぇんだわ」

「お前がそこまで手放しで誉めるとはな…………それほどなのか?」

「あぁ。俺はアイツに今まで一度たりとも勉強でも運動でも勝った事はねぇ」

「中間や期末でも上位常連のお前がか!?」

「僕も結構、勉強教えてもらってたんだよね~」

「お前は何時もだっただろうが。…………そして、アイツにはな勉強や運動よりも更に得意とするもんがあってだな…………」

「…………まさか……!!」

「ククッ、お前が思った通りさ…………

 

 

ーーーーーーーーーーアイツ、俺の幼馴染み……鴻山龍神は

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーゲームをやらせりゃ天下一品だ

 

 

 

…………ま、今回のテトリスとか、ぷよぷよとかはあまり得意なジャンルじゃねぇから勝てる確率は低ぇだろう。だが、アイツは早々簡単に負けるようなタマじゃねぇし……何より星街が少し油断してるのが不味いかもしれねぇな。だがどちらにしてもーーーーーーーーーー

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「も~!クロちゃん何~?私昨日の徹夜分この時間寝たかったのに~!」

「そもそも徹夜をやめろ!同じ家で寝てる私の苦労を少しは理解しろ!!」

「でも……フブキはともかくどうして私まで?」

「うーん……簡単に言えば有能株の紹介?」

「ゲーマーズに取り入れると面白そうだよ~」

「まぁ、少し待てよ……うし、間に合ったか」

「んも~……あれ?ステージにいるのって、すいちゃんと…………鴻山くん?」

「え?もしかしてこれからすいせいとテトリス勝負!?」

「わお~いきなり凄いことに」

「にゃぁっ!?いきなりそれはキツいよ!!」

「ハハハハハ!やっぱりそういう反応するんだな!」

「予想通りでちょっとつまらないなぁ…」

「いやいや、おかゆはフブキに何を求めてるのさ……」

「と、止めた方がいいんじゃ……?」

「残念だがもう止められない、止まらない。だがもう少し待ってろ、きっとーーーーーーーーーー

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ふぃ~」

「お疲れ様」

「うん……」

「どした?えらく不安そうじゃないか…………たの」「ハイハイ、レンは暴走しないでくださいネ」

「…………誰のせいだと……」

「どうどう……落ち着いて?…………それで、何か不安な事があるの?かなた」

「うん…………テトリス勝負であそこまですいちゃん先輩に張り合おうとするなんて、無謀すぎないかなって……」

「確かに……テトリスってせんぱ」「フフン!かなた達は会ったばかりだから知らないのは当然デスガ、MyBrotherなら大丈夫デス!」

「えぇ……どっから来るの、その自信……」

「そりゃMyBrotherの実力を知ってるからデス!確かにすいせいパイセンの実力だと厳しいゲームにはなりマス。けどそれは逆にーーーーーーーーーー

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ちょちょちょ!?何やってんスかあの人!?」

「あはは……よりにもよってすいちゃんに勝負……というか、喧嘩売っちゃったね」

「うっわ~……命知らずというか、無謀というか……」

「う~む……そうとも言えないかも」

「どうしてさ?」

「実は、さっき余も彼と対戦したんだけど……」

「そういや、あやめちゃんも午前中丸々サボってたもんね」

「……ん?そうするともしかして椎名さんとかおかゆもいたの?」

「?いたけども……」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!あてぃしも行けば良かったぁ!!」

「いや……去年の成績見るにあやめは大丈夫だけど、あんたはサボっちゃ不味いでしょ……」

「「「確かに」」」「あはは……かくゆう余もそんなに余裕があるわけではないけど」

「うぐぅ……そこを突かれると痛い…………」

「にしても、あやめちゃん半日だけでよく分かったね」

「ミオちゃんやフブキちゃんみたいな強い人とは何度か対戦してるから、その感覚でなんとなく……だけど」

「…………ってか、そういう先輩も詳しそうッスね」

「だって……私も彼の幼馴染みだもん」

「「「「「え!!?」」」」」

「でも、彼は私がここにいるとは知らないと思うなぁ~。最後に話したの小学生の時だったし、それ以降連絡も取り合ってないから」

「お~これは感動の再会かな?」

「あはは……そうとも限らないかも。ただ、今ひとつ言えることはね………ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーこの対戦、きっと面白いことになる(ね)(かも)」」」」

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ホイッチをスタンドに差し込んで起動させ、暇潰し用にいれていた“テトリス99”を立ち上げる。すると、巨大スクリーンにもその映像が投影され、早くも歓声が上がり始める。

 

「…………」

 

大丈夫。今はあの時とは違う。

少し荒れ始めている心を落ち着かせていながら、先程星街に示されたこのライブ専用回線から対戦ルームに入ると、俺が最後だったらしくルームが満員となり、対戦開始までのカウントダウンが始まる。

……さて……それじゃ

 

 

「…………行くとしますか」

 

 

そう呟くのと同時にスタートの合図がかかり、すぐさま俺はスティックを弾いた…………

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「そらちゃんが気になる子ってあの子?」

「うん♪」

「え~、なんだか冴えない感じ男の子だょ?」

「そうかな~?かいちょ~の言う通り、面白そ~な感じがするけど~」

「ロボちゃん、分かってる~」

「いぇ~」

「……ふむ、しかし……初日から半日授業をサボっていたらしいぞ」

「私もその話は聞いているわ。でも、それ以上に彼の成績が良すぎて先生方もあまり口出しできないようね」

「……うぇ、そんなにいいの?」

「聞いた話では、そらですら達成できなかった学園設立以来初の試験オールパーフェクトで編入してきたらしい」

「オールパーフェクト!?」

「そ。彼…………

 

 

   鴻山 龍神は本物の天才なのよ」

 

 

 

 

 

        

 

              act-1 end

              To be continued




ホロライブ最新話、いかがでしたでしょうか??

さてさて、次回は少し間隔あきまして、とじみこかストライクウィッチーズのどちらかになる予定です!お楽しみに。
でも、途中のとある年に一度のイベントには投稿しますよ(番外編)


独り言コーナーはお休み。

では、ゆゆゆ最新話も含めまして、誤字脱字、ご意見、ご感想の方、気兼ねなくお寄せください!!
今後ともよろしくお願いします!!


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START OF YOUR STORY'S act-3

どうも!璃空埜です!(本日二回目)

同時投稿、ホロライブ+α二次創作です!


恋愛オンリーって難しい!以上!!


ーーーーーーーい。おーい!起きろー!」

「……んぁ?」

 

金剛の声に呼び覚まされ、突っ伏していた机からゆったりと頭を上げながら目を開く。すると、もう既に帰りのSHRが終わってしまったのか教室内にあまり人は残っておらず、何人かが固まって雑談をしているくらいだった。

 

「ん〜〜…………六時限目丸々寝てたか……」

「そうだぞ〜?特にセンセも干渉はしてなかったけども、少しピキピキしてたな」

「流石にあの後だったんだから大目に見てくれたのか、助かったな」

「初日から半日エスケープ決め込んだ野郎が何言ってやがる」

 

大盛況だった五限目と昼休みをを使った星街とのテトリス勝負、あれの疲れがなぁ…………。悔しいことにあと一歩叶わなかったが……それでもアイツのテトリス捌きはなんだろな、まるで先の先まで読んでやがるような積み方してるしこっちが送ってもすぐに返されるし……ともかく破格に強かったな。あれなら世界でも通用しそうだな、うん。

 

「あふっ……」

「……流石にお疲れか」

「あの勝負の後なんだ、堪忍してくれぇ……」

「いやいや、すいちゃんのテトリスに四十分近くも耐え忍ぶなんて偉業を達成したってだけでもすげぇっての」

「…………しっかし、悔やまれるのはあん時棒の設置をミスらなけりゃ……」

「あっっっっい変わらずすげぇ負けず嫌いなことで……」

 

仕方ねぇだろ、そういう性分なんだから。

 

「ま、ともかく帰ろうぜ!こっちに来たのなら1度は寄るべき、とっておきの店があるんだよ!!」

「……ホントか?」

「おぉ!ホントもホントよ!」

 

こいつがこうやって手放しで褒める店……これは期待出来そうだ。

机に寝そべらせていた上半身をゆっくりと起こしたあと、大きく伸びをする。それから机横にかけて合ったカバンに教科書やらを放り込んでから立ち上がり、金剛と共に教室を後にする。

 

「因みに、どんな店なんだ?」

「ふっふっふ、それは行ってからのお楽しみだ!」

 

そりゃ楽しみなことで。

そうして、二人で談笑しているところに零斗と麗鵝も加わり四人でゆるりと校門をめざしてゆったりと歩いていると……

 

「おや?おやおや?そこにおわすは噂の編入生君では?」

 

何やら活発そうな女子生徒を先頭に、朝話した白狐?猫?の子とクラスをまとめていた狼の子、そしていやに嬉しそうなあやめのグループと出くわす。

 

「お?そちらも今からお帰りで?」

「そうだよ〜!今日はゲーマーズの集まりもないからフブキ達と帰るんだ!」

「黒ちゃんは先に帰っちゃったけどね」

 

あ、この白い子、誰かに似てるなって常々思ってたけど……そうだ、クロと瓜二つなんだ。…………って我ながら今更かよ、俺。

 

「そ、それなら一緒に帰らないか?」

「ん?いちおうこの後、俺らは寄り道するが、それでもいいのなら俺は特に問題はねぇよ」

「行先は金剛の話からして、いつものお店だよ〜」

「それなら私は大歓迎!」「ウチも問題は無いかな」

「よっしゃ!そうと決まれば早速向かおうぜ!」

 

こういう時の金剛の率先力は助かるが……何やらいつも以上に気合が入ってるな。具体的には先の活発そうな女子生徒が声をかけてきて、俺達が相手さん方のメンツを確認した時ぐらいから。

 

「……何か金剛の気合いの入り用が強くなってないか?」

「あ〜、ゲーマーズの二人がいるからだね」

「ゲーマーズ?さっきもそんな単語が出てたけど一体?」

「正式名称は“ホロライブゲーマーズ”。あの白髪の狐の子、白上フブキちゃんをリーダーにしたゲーム好きが集まった学園のサークルのひとつでね、ファンもすんごい多いんだ」

「ほぉ〜?」

「おや?呼びました?」

 

零斗とそんな話をしていると、件の少女……朝SHR前に話した白上フブキとその部活仲間でもあるという狼の子がこちらへとやってきた。因みに彼女らのファンであるという金剛は、最初に話しかけてきた子、麗鵝、そしてあやめと共に何やら楽しそうに話している。

 

「ん、いや何、少し零斗からお前らの事を色々聞いてたんだよ」

「ウチらのこと?……あ、そういえば自己紹介まだだったね、ウチは大神ミオ。同じクラスだし、仲良くしてくれると嬉しいな、鴻山くん」

「そして、私が……」「白“猫”の白上フブキだろ?朝は世話んなったな」

「うぐ……ち、違うよ!私は狐じゃい!!」

「はてさて、真実はいかがなもんだか」

「むぅぅ……いつか絶対私が狐であるってその身に分からせちゃる……!」

 

っと……流石にいきなり弄りすぎたか。何だか、白上が嫌に怖い目付きになって変に燃えてやがるぞ?……おぉ、怖い怖い。

 

「あはは……何だかフブキの弄り方が既にわかっちゃってるね……」

「朝の周りや白上自身の反応から察したのさ」

「シンは昔っからそういうのに鋭いんだよね〜」

「何となくだけどな。ともかく大神だったな、改めて鴻山龍神だ。これからよろしく頼む」

「こちらこそよろしくね」

「がるるぅ〜……」

「…………今度は狼になっちまったか」

 

大神の背後に隠れつつ、その白いしっぽを奮い立たせた白上がこちらに向かって威嚇のようなものをしてくる…………が、迫力は無いに等しい、というか、逆に愛くるしい小動物のような雰囲気があるな。

 

「どうどう落ち着け落ち着け〜」

「ぐるるぅ〜……」

 

うん、怖さ零可愛さ百とはこの事だな。

 

「てか、ひとつ聞きたいんだが……白上とクロって性格とかは全然違うけど、容姿については瓜二つだよな。なんでなんだ?」

「う?黒ちゃん?」

「黒ちゃんとフブキは一卵双生児なんよ。それで綺麗に白黒で別れてたから、苗字だけ変えてるんだ」

 

獣状態だった白上の代わりに大神が答えてくれる。この子、クラスでもまとめ役だったが、普段からオカン気質なんかな。…………何か近しいモノを感じなくもないのは気のせいだろか。

 

「なるほどなぁ、それだったらあれだけ似てるのも頷ける。性格は全然違うけど」

「余談だけど、フブキよりも黒ちゃんの方が色々しっかりしてるよ。朝はちゃんと起きるし、料理とかもしっかりできる……確かによくサボるけどね」

「言われてみると確かにサボりはするけど成績とかも黒さんの方が上だしね〜」

「つまりはアイツの方が姉ってことか」

「……なんか、鴻山くんの中で私の立ち位置が変な方向に向かってるような気がしてきた」

「そんなことないぞ?」

 

…………朝遅刻してきたくせして、ゲームに夢中になってSHRほっぽる奴くらいな認識だけどな。…………そんなこと言うと学園初日の授業をほぼ全てサボってたやつはなんにも言えないんだけど。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

それから、もう1人の女子生徒……夏色まつりとの自己紹介を済ませつつ、賑やかに金剛のオススメの店とやらに向かっていたのだが…………途中からやけに見覚えのある道になってきたのが気になる。

 

「ん〜……」

「どうしたの?」

「いや……気のせいか何やら見覚えのある道なんだよなぁ……」

「あれ?そもそもシンってこの町出身なのか?」

「一応、な。色々あって全国を転々とはしていたが……産まれたのはこの町だ」

「ほほぅ、まさか同郷の者とはな」

「それについては俺や零斗が保証するぜ。ちいせぇ頃はずっと一緒だったからな!」

「ずっとじゃねぇだろ……」

「おぉ、これが男の友情……」

「まつりちゃん?なんか凄い顔になってるよ?」

 

んん〜…………にしてもホントにこの道見覚えが……………………あ。

 

「はは〜ん?なるほどね」

「ん?」

「いや、何でもねぇよ」

 

金剛のオススメの店、俺分かっちまったや。…………しかしまぁ、せっかくサプライズを考えてくれたんだ、それを無下になんてしねぇし出来るわけがねぇ。

 

「お!見えてきたぞ!あの店だァ!!」

 

そうして、俺が行先に検討がついてるのを知らず、気前よく金剛は……少し先にあった、古いいかにも様々なものが出てきそうな見た目の家屋の前に置いてある看板を指さす。そこにはおどろおどろしい文字で【和風喫茶店“大墳墓”】と記されていて…………あぁ、やっぱりここか。

 

「つうわけで到着したぜ!ここがオススメの……」「和ホラー風緑茶&トウモロコシ料理がメインメニューの喫茶店“大墳墓”」

「「「「「え?」」」」」

「しっ、知ってたのか!?」

「あれ?でも、ここができたのはシンがこの町を出たあとだよ?」

「…………俺がこの店を知ってる理由は入りゃぁわかる」

 

いやはや、まさかこの店をチョイスするとは……しかも話的に結構な頻度で訪れてたみたいだな、鉢合わせなくて良かった。

そんなことを思いつつ、真っ先にこれまたおどろおどろしい装飾がされた喫茶店のドアを開く。すると……

 

「いらっしゃ……あら、龍神くんじゃない。今日シフト入ってたかしら?」

 

扉と同じような装飾が施された喫茶店内装にはあまりマッチこそはしてはいないものの、自他共に認める整った容姿とそれに見合った白い髪と澄んだ水色の瞳を持つ女性にして、俺のここでの先輩……水鏡 涼(みかがみ りょう)が出迎えてくれる。

 

…………そして、さっきの彼女の言葉でわかる人もいるだろうが…………この店、和ホラー風喫茶店“大墳墓”は俺のバイト先のひとつなのである。

 

「いや、今日は後ろでポカンとしてる友人たちと一緒にお客さんとして来ました」

「そうなのね。ええと……結構大人数?」

「俺を含めて総勢8名です。席、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ♪マスター!!8名様ご案内します〜!!」

 

水鏡さんが厨房の奥に声をかけると微かに「は〜い♪」と返事が聞こえ、その返事を聞いてから水鏡さんは僕達を広い大テーブルがあるスペースへと案内してくれた。

 

「それじゃ、注文が決まったら呼んでね♪」

 

笑顔と共に一言残してから、別テーブルのお客さんの元へと向かう水鏡さんを見送った後、まだ驚きが抜けていない面々へと向き直る。

 

「…………驚きすぎだろ、お前さんら」

「い、いやいや、まさかここでバイトしてるなんて……」

「一度この町に来た時いい塩梅のバイト代とシフトを考えてくれた店がここだったからな。しかも、掛け持ちOKってのと掛け持ち先を紹介してくれるいい所だぞ」

「にしたって……あまり近づかんだろ?」

 

まぁ……なんであんな見た目にしたのか、初見さんにとっちゃ入りにくい店であることは確かだな。常連さん達が多いから十二分に経営できてんだけども。

 

「ま……元々マスターさんと親父繋がりで知り合いだったってのもあるんだがな」

「え?」

「はい、そうなのですよ。そして、皆様、いらっしゃいませ♪」

 

そんな話をしていると、ひょっこりとここの店のマスターである龍族特有の角としっぽを生やした渋めながらも暖かな頬笑みを浮かべた男性……ナザリック=OB=ロードさんが姿を現し、皆それぞれの挨拶を返す。

 

「うわ〜……幼馴染みの俺も知らなかったッスよ、まさかマスターとシンが知り合いだなんて」

「龍神様のお父様には色々お世話になりまして……その縁から龍神様とも親交を深めていたのですよ」

「ほぇ〜それで……」

「今回の引越しとかも手伝って貰った上にこんないい条件でバイトさせてくれるナザさんにはホントに感謝感謝だよ」

「いえいえ、お気になさらないでください♪それと、これはサービスのお茶です、暑いのでお気をつけてどうぞ♪」

「おおっ!ありがとうございます♪」

 

お茶と聞いて真っ先に食らいついた白上が早速1口含み、ふぅ……と感嘆の声を上げつつ耳としっぽをふやけさせる。

そして、お茶を分け終えるとナザさんはにこやかな頬笑みを浮かべたまま一礼して再び厨房の方へ戻って言った。

 

「相変わらずフブキはマスターの淹れるお茶が好きだよね〜」

「だってとっても美味しいんだもん〜……」

「ってか、すげぇふにゃふにゃだな」

「フブキはここのお茶を飲むといつもこうなっちゃうんだ」

「「あぁ〜……」」

「そして、それに感化されて金剛と夏色もとろける」

「でも、金剛達程じゃないけれどもフブキちゃんのほっこりしてるところを見てると癒されるよね〜」

「わかるぅ〜」

「ま、ナザさんの淹れるお茶は確かにうめぇってのもあるからな」

「それも、わかるぅ〜」

「あれ、でも、なんで鴻山くんだけ器が違うの?」

「俺だけアイスだからだよ……猫舌なもんでね」

「猫舌……かわいい…………」

「……なんで百鬼までふにゃけてるんだ?」

「さぁ?なんでだろうね」

 

そうこうしつつそれぞれの食べる料理を決めて水鏡さんを呼び、注文。そして、続々と運ばれてくる品物を皆でつつきつつ俺の話題を中心に盛り上がっていった。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

そして、宴会のような賑わいとなりつつあった最中……

 

「龍神くん〜ちょっといいかな」

 

少し申し訳なさそうに水鏡さんが顔を覗かせた。

…………ふむ、何かあったのかな?

 

「どうしました?」

「えっとね、今日シフトに入る予定だった子が急用で来れなくなっちゃって……」

「分かりました、その穴埋めですね」

「えぇ。お友達と盛り上がってるところ申し訳ないのだけど……」

「ってことなんだが……わりぃ、ちょっと抜けても大丈夫か?」

「おや。それは仕方な「もしかして、シンのウェイター姿が見れるのか!?」えと……あやめ嬢?」

 

いや、なしてあやめはそんなに目を煌めかせてるんだ?

 

「でも、百鬼ほどではないが、君の働きぶりも気になるな」

「…………まぁ、今日はいきなりエスケープしてたからね〜……」

「エスケープ……黒ちゃん……せんせ…………うっ、頭が……」

「…………ま〜、別に減るもんじゃねぇし良いけどもさ」

 

とりあえず、了承してくれたってとこでもう一度皆に断りを入れてから席を立ち、水鏡さんの後に続く。

 

「ごめんね、いきなり呼んじゃって」

「別に構いませんよ。世話になってる分、その恩返しはしないといけませんからね」

「学校の授業はサボったのに?」

「なんで、ここでその話になるんですか…………」

 

ジト目になった水鏡さんから軽く睨まれつつ、更衣室に入って自分のロッカーを開けて学校の制服から、手早くこの店のウェイターの格好に着替え、髪型も少し形を変える。そして、更衣室を後にし事務所によってタイムカードを差し込んでから厨房に立寄る。

 

「マスター!鴻山、入ります!」

「あぁ!申し訳ないです!」

「気にしないでください!接客いきますね!」

 

忙しそうなナザさんに一声かけてから、丁度呼び出しが入ったテーブルへと向かう……

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました、ご注文を……」

「あら……」

「あ、噂の編入生くんだ〜♪」

「……なるほど、ここでバイトしているのか」

「お腹すいたにぇ〜……」

「ねぇねぇ、せっかくだし話そうよ♪」

 

おや、同じ学園の人……確かこのスカーフなら先輩に当たるのか。って、そのうちの一人の俺の顔を見てから楽しそうに話しかけてきてるのってパンフレットでみた高等部生徒会長のときのそらさんじゃ……?いや、今は確認することはよそう。こっちだって忙しいし……

 

「申し訳ありません、現在少々混み合っておりまして……」

「ありゃりゃ、残念……」

「仕方ないわよ、バイトの邪魔は出来ないもの……ごめんなさい、これとコレを注文するわ」

「承りました。他にご注文は……」

「……このスイーツを1人前頼む。後、俺には緑茶を1杯」

「にぇ〜……」

「……あとは特にないわね」

「分かりました。すぐにお持ちしますので少々お待ちください」

 

一礼してからそこを後にし、すぐ様受け取った注文を伝える。そして、またすぐに別のテーブルへ…………

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしまし……」

「え!?先輩!?」

「わ!びっくりs」「あ、鴻山くんだ〜」

「へぇ……この子が噂の……」

 

っとぉ?またか!しかも、4分の3は知ってる人達だし!

 

「申し訳ありません、現在混み合っておりまして……」

「〜っ!」(パシャシャシャシャシャシャッ)

 

おい、天音よ。なしてお前は写真を撮っとるのだ、しかも高速連写で。

 

「ねぇねぇ、また今度さ時間があったらさ、またテトリス勝負しようよ!」

 

星街よ、そのお誘いは嬉しいが今はそれどころじゃないんだ察してくれ。

 

「えと……それじゃあコレとコレを、あとデザー(パシャシャシャシャシャシャシャ)……にコレを」

 

ナイスだ、角巻!被ってたけどな!あとお前は一体、何枚撮るんだよ天音!さっきからずっと撮ってるじゃねぇか!!

 

「フムフム……?」

「その……すみません。ご注文を……」

 

そっして、さっきからあなたは何を吟味してるんですか!金髪の先輩!

 

「あ、ごめんね。私はいいから……」

 

結局無いんかい!!

突っ込みたい気持ちは山々だが、ここは我慢する。ともかく一礼して……(パシャシャシャシャシャシャシャシャシャ)まだ撮っとるのか天音ぇ!!……コホン、そうして再び厨房へと注文を伝え、次なるテーブルへ…………

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました。ご注文……」

「牛丼大盛り五杯!」「いや、ノエル?ここ喫茶店だよ!?」

 

ナイス突っ込みだエルフの人!こういう喫茶店に牛丼なんてそうそうないぞ!!あるとこにはあるけども!!つうか、牛丼大盛り五杯ってどんだけ食うねん!!

 

「えっと……すいません。コレをふたつ、そのうちひとつを大盛りでお願いします」

「るしあはコレ!」

 

きっとこの集団の中で一番まともであろう少し褐色肌のエルフの注文に続いて、小柄な緑髪の子が元気よく注文する。……しかし、何だ。なんで緑髪の子はなんか海賊の格好した人の膝の上にいるんだ?…………というか、海賊の人に限らずここのテーブルの人達皆何かしらコスプレみたいなのしてるな。さっき牛丼頼んだやつは何処ぞの騎士団みたいな格好だし、まともなエルフもチャイナ服みたいなの着てるしというかそれよりも彼女に近くに浮いている小さなパンダは一体なんなんだ。んで、緑髪の子は……まぁこの子の服装が一番まともか。…………で、あとは兎と。

 

「他にご注文はありますか?」

「マリンとぺこらは?」

「ん〜……私は緑茶を貰います」

「ぺこらは……」「緑茶と人参一つですね、承りました」「ちょっと待つぺこ!?」

 

何だよ、こっちは忙しいんだよ、人参嫌いなのか兎よ。

 

「ぺこらもスイーツ食べたいの!!」

「……分かりました」

「いやホントに分かってるぅ!?」

 

とりあえず『人参(スイーツ)』とでも書いとくか。

まだ喚いているぺこらと呼ばれた兎は置いておいて、一礼してからテーブルを後にして、厨房へと注文を伝える……

 

「?人参のスイーツ……?」

「兎のお客さんだったので。まぁ、人参に生クリーム付けてあげればいいと思いますよ」

「ん〜……それなら簡単に出来るのでいいのですけど…」

 

不思議そうに首を傾げるナザさんだったが、すぐさま料理を作り始めた。それを見届けてからまたまた呼び出しの入ったテーブルへ…………

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました、ご注文をどうぞ」

「ご注文はアナタで♪」

「帰れ」

「酷くないデスか!?」

 

何だよ何だよ、この店。弥吾呉学園の奴らにはめちゃくちゃ人気なのか?今度はココとトワ、白氷那くん……そして見知らぬ、しかし同じ学園の制服を着た同級生二名か。

 

「ココ、悪いが今忙しくてな。早めに注文頼む」

「む〜……」

「忙しいなら我慢しよう……えと、このパフェを5つお願いします」

「あいよ」

 

そうして、注文を読み上げていると……

 

「えと……私もここでバイトしてるんだけど…スゥー………手伝った方がいいかな?」

 

同級生二人のうちの片方、濃い紫色の髪を流した女子の方がおずおずと声をかけてきた。

……ふむ。

 

「ちょっと待ってな…………水鏡さん!!」

「どしたの〜?」

「人手、まだいります?」

「ん〜………………正直言うと欲しいわね」

「分かりました。…………つうわけで、悪いな手伝ってもらえるか?えと……」

「あ、あてぃし、湊あくあ。えと……確か……」

「今日隣のクラスに編入してきた人だよね!」

「ん、その通り。詳しいことはココにでも聞いとけ……そんじゃ、湊悪ぃが手伝い頼む!」

「わ、分かった!」

 

湊を連れてテーブルを後にし、厨房へ注文を伝える…………そして、そのまま次のテーブル…………

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

………………ようやくピーク終わった…………。

控え室のソファにぐったりと寄りかかりつつ、マスターの淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。流石にあの勝負の後だと疲れも増えるな……。

 

「二人とも、今日はありがとう〜。すっごい助かったわ」

「はは……まさかここまで大変なことになろーとは……」

「い、いえいえ!お気になさらず……」

「いつもはここまでじゃないのだけども……まぁ、いい経験にはなったわよね」

「確かに……っと」

 

さて……あんまりここでゆったりしてる訳にもいかねぇな、皆を待たしちまってる。

 

「っと……これから俺一緒に来てるやつらのところに戻るけど……湊はどうする?ココら帰っちまったろ?」

「あ…………えと…………」

「因みにメンツは男性陣は俺、こ……鳳、戦場ヶ原、未来川。女性陣は白上、大神、夏色にあやめだ」

「スゥー…………そ、それなら……お邪魔させてもらおうかな…………」

「ん、わかった。……つか、そんなに緊張しなくていいぜ?」

 

俺の言葉にもガチガチに固まりながら高速で首を振るう湊……ううむ、どうにもすんげぇコミュ障か何かっぽいな。

 

「…………あ〜、ともかく行こうか?」

「ひ。ひゃい!!」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

んで……湊共に皆が待ってるテーブルへと戻ったんだが…………

 

「…………なんか増えてるな」

「む。なんかってなんなのさ〜?」

「ひゃあ〜…!」「ね!ね!凄いでしょう!!」「これは…………ヤバい余!!」

「やほ〜♪お邪魔してるね♪」

「いや〜、今日の勝負について色々聞けて楽しかった!」

「あ、あくあちゃんもここでバイトしてたんだね。ともかく、二人ともお疲れ様」

「あ、ありがとうミオちゃん……!」

「…………つか、なんでしれっとお前までいるんだよ……」

「え!?2人って知り合いなの!?」

「あれ?話してなかったか?俺ら3人幼馴染みなんよ」

「「何だってぇ!?」」

「それは僕も初めて知ったよ……」

「中々、面白い組み合わせじゃないか」

 

何やら人が増えてるのに加え、もう一人の幼馴染みにして俺が引っ越すよりも先に外国に留学して以来の再会である、カナデレミがいつの間にやら鎮座していた…………うちの学園の制服で。

 

「久しぶりの幼馴染みに対しての第一声が『なんか増えてる』ってなんなの〜?」

「まさか、レミが来てる……しかも、同じ学園にいたなんて思うかよ……」

「それについては私もまさかリョウくんが編入して来るなんておもってなかったよ。すいせいちゃんとのテトリス勝負に呼ばれててびっくりしちゃった」

「めちゃくちゃ疲れたがな……。んで!星街、さっき言ってたテトリス勝負予定あったらやろうぜ。苦手なジャンルのゲームとはいえ、負けっぱなしってのは嫌だからな!」

「うんうん!こちらこそ大歓迎だよ〜!でも……私も負けないからね♪」

「望むところさ……!」

「すいちゃんに宣戦布告してる……」

「でも、二人の勝負なら見てみたいな」

「相変わらず負けず嫌いなんだから……」

「はは!それがコイツの面白いところなんじゃねぇか」

「奴の実力ならば、すいちゃんも楽しめるだろうからな……会員達には手出ししないように厳命しておこう」

「あはは……麗鵝も大変だね……」

(も、もしかしてライバル?)

(い、いや!まだ分かりませんよあやめ先輩!)

「あ……もしかして、彼って……」

「そうそう、クラスに戻った時にも話したすいせいと凄い勝負を繰り広げた名プレイヤーだよ」

 

そうして、俺と星街が火花を散らしていると……

 

「やほ〜……って、何か龍神くんが燃えてるね」

「あ……水鏡さん」

「お、何かありましたか?」

「そうそう構えなくていいよ。後お客さんで残ってるのここの人達だけだし、私も手隙になってマスターの許可を得てから混ざりに来たのと、龍神くんにいつもの頼みに来ただけだから♪」

 

ひょっこりと首だけを出してきた水鏡さんの言葉に皆が首を傾げる中で俺は一人、やれやれまたかと思いつつ肩を竦める。

…………しかしまぁ、今日は忙しかったししゃぁねぇか。

 

「こころ、また寝ちゃったんですか?」(へ?こころちゃん?)

「えぇ、そりゃもうぐっすりと。こんな時だけどもまたお願いしてもいいかな」(ふぇ?)

「……今日は特に忙しかったら特別に」

 

俺の言葉に少し苦笑いしつつ、水鏡さんが俺達が居るスペースに入ってくると……その背中にはやはりというかなんというか……予想通り、すやすやと静かな寝息を立てる天宮こころの姿があった。そして、少し断りを入れつつ湊と席を代わってもらい、こころを水鏡さんの背中から受け取って膝の上に乗っけると、すぐさま猫のように体を縮こませながら俺の服をギュッと掴む…………のを見ていた皆のうちの、恐らく約2名が何やらおかしな奇声をあげる。

 

「zzzzz……んみゃ……」

「ったく……」

(((((おぉ……何か母性感じる顔だ……)))))

「お前……またか」

「またかってなんだよ」

「仕方ないよ、剛くん。リョウくん、口は悪いけど雰囲気が優しいのは確かだから」

「にしたって…………なぁ〜流石にこうまで異性から頼られるのはすんげぇ羨ましいぞ?」

「俺は頼って貰えるだけで十分だがな」

 

そう話しつつ、すやすやと先程よりも心地よさそうな表情で寝息を立てるこころの頭をゆったり撫でてやる。

 

「ちょちょちょ!?」「ふっふふ二人はどどどんなかんかんかん!!」

「ハイハイ、落ち着け落ち着け二人共。こころとはこのバイトで出会った…………いわゆる妹みたいなもんさ」

「妹分なんだ。というか、このバイトそこそこ長いの?」

「実は何気にここに定住する前、半年前くらいからやってた。ま、裏方メインで、接客は平日の昼間のみだったから顔合わせることはなかったろうよ」

「そして、その子と出会ったのか」

「そ、俺がバイト始めて少しして入ってきてな、色々教えてやってるウチに懐かれた。因みに、湊と今日が初見だったのは少し立て込んでバイトに来れない時期があってな……多分そん時に湊がバイトに入ってきたからだな」

「……なるほど、だからこころちゃんが少し落ち込み気味だって水鏡さんが話してたんだ……もしかして、ここ最近元気になったのって……」

「俺がバイトに復帰したからだろうな…………っと」

「うみゅ…………」

「わり、もう少し小声で話していいか?」

 

少し声が大きすぎたのか、元々小さな体を更に縮こませてうるさそうに身を捩るこころ。さて、どうしたもんか……と考えを巡らせながら彼女の頭をあやすように撫でていると、頭上からは何やらパシャパシャと連続して写真を撮る音が。

 

「…………お前ら?」

「あ、いやぁ……」

「零斗らもかよ……」

 

まさか、女性陣だけではなく男性陣まで写真を撮ってやがるとは……。ってか、あやめと天音の目が少し怖いんだが?

 

「た、たはは……私と熱戦を繰り広げた人と同じ人とは思えなくて…………」

「……き、聞いてたような人とはかけ離れすぎててつい…………」

「いや〜……昔からリョウくんは母性ある方だと思ってたけど、まさか成長して更にそれが増してるとはね〜」

「確かに、俺もコイツがここまでオカン属性増やしてるとは思わなんだわ」

「おや?それはちょっと気になる話だね♪」

「その話!」「詳しく!」「教えて!!」「欲しい余!!」

「何だかあやめちゃんとかなたちゃんの息が一日で凄い合うようになってる……」

「そこは気にしなくても大丈夫だよ、フブキちゃん〜」

「でも、天宮ちゃんだっけ?確かに何だか保護欲がかきたてられる子だね〜」

「それについては同意する」

「何やらうちのクラスのオカンが増えたようね〜」

「片方男だろうが……」

「…………優しいんだ……」

「あれ?あくあ?」

「!!べっべべ別になんでもないにょ!!」

 

結局、賑やかになる俺達の席。

…………けど、これからこんな日々が続くとなると嬉しいもんがあるな。

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

その後、しばらく皆でワイワイと賑やかに過ごしていたが麗鵝の塾や星街のレッスンの時間が近づいてきたということもあってお開きとなり、それぞれの帰路に着くことになった。(因みに代金は男性陣で割り勘した。女子に払わすわけにゃいかんからな)んで、俺はと言うと……

 

「zzzzzz…………」

「っしょっと……」

「えっえと……だ、大丈夫ですか?」

「ああ、つか……天音がこっちの方とはな」

 

結局最後まで眠りこけていたこころを背負い、彼女の自宅へ……同じ方向に自宅があり、しかも同じクラスである(これには結構驚いた)天音と共に向かっていた。

 

「にしても……何か今日はやけにお前に世話になったな」

「ふぇ!?」

「最初、案内してくれたのもお前だったし、星街とのあの勝負が成り立ったのもお前が用意してくれたおかげだった。ありがとな」

「へっ……へいっ!!」

 

それと同じくらい奇行が目立ったけどな…………それは言わないでおくか。何か嬉しそうなところに水を刺したくねぇしな。

それからは天音の普段の生活の様子を聞きつつ、のんびりと歩を進める。…………因みに天音の話としては総じて、ココ(あの暴走ドラゴン)に苦労してるみたいだ。…………全くアイツは……。

 

「ん……」

 

そうして少しすると、背中にいたこころが目を覚ましたようで身を起こした気配がする。

 

「お、起きたか」

「んみゅ…………ふぁれ?にぃにと……かなちゃん?」

「おはよ、こころちゃん」

「…………んん〜……」

「今日は爆睡だったな、結構疲れてたか?」

「……そうみたぃ…………」

「そか。ならそのまま休んでろ、家まで送ってやるから」

「ん……ありがと、にぃに……」

 

だが、疲れで睡魔が強いのか再び俺の背に身を預けて寝息を立て始めた。

 

「ありゃ……また寝ちゃいましたね……(う、羨ましぃ〜)」

「それだけ疲れてたんだろ」

 

少しこころを背負い直してから、何となく星が瞬き始めた空を見上げる。

 

 

…………明日からは本格的に今日以上にあの学園を、中心とした生活がスタートする。

別に前の学校も楽しくなかった訳じゃないが…………今日あった面子だけでも濃い連中なんだ、これからの日々が楽しくなりそうだぜ…………あん時の辛さを忘れさせてくれそうな程に……………………な。

 

 

「鴻山先輩?」

「……わり、少しぼんやりしてたわ」

「もしかして……先輩も疲れてます?」

「かもしれねぇな。あの激闘の後だ……流石にあるかもしれねぇや。…………あと、『鴻山』じゃなくて名前呼びとかあだ名呼びでもいいぞ」

「ふぇ!?そっそそそそそそんなおおおお畏れ多い……」

「おいおい、お前の中で俺は一体何なってんだっての。ま、強制じゃねぇし、こっちは名前で呼ばせてもらうがそっちの好きなタイミングでいいぞ」

「はっはははいっ!ってはい?」

「ってか、今日会った奴らは皆名前呼びしてもいいか?……後で確認するとすっか。ともかく本格的に暗くなる前に行くぞ、かなた」

「わっ!ま、待ってくださいよ〜!!」

 

こころを起こさないようにしつつ軽く早足で歩き始めた俺の後を慌てて追いかけてくるかなた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………ホント、明日からもこんな日常が続けばいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        act-3 end

        LETS GO TO NEXT STAGE




以上、ホロ二次創作最新話でした!

次回はSS挟んでゆゆゆ(もしかしたら連続)投稿の予定です。
大乱闘って大変や……(少しネタバレ)


それでは、誤字脱字、ご意見、ご感想の方気兼ねなくお寄せください!

PS.本日はサンキューの日、いつも読んでくださる方々ありがとうございます!

かなり日はまちまちで期間も空いたりしてしまいますが、気長にお待ち頂ければ幸いです。
そして、
これからも頑張っていきますので、よろしくお願い致します!


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高等部生徒会とファンタジークラブとかつての相棒 at4/16(木) act-1

どうも、璃空埜です。

前書きの、ネタが、尽きました、まる

本編どぞ!

(注:今話では方言で話す登場人物もいますのでご注意を)


朝。

 

そう、朝だ。

 

小鳥がさえずり、木々の隙間から暖かな陽射しが降り注ぐ朝……

 

俺はぐったりと己のゲーミングチェアに体を預けて【4/16 6:45】を表示しているモニターの時計を薄ぼんやりと眺めていた。

 

「…………これは……プレミしたな……」

『…………だねぇ……』

『いやいや、そう言っても君らはどうせ授業寝てるんでしょ?』

「そうとも言う」

『カッコつけて言うことじゃないよ……』

『俺は今から寝るがな!』

「羨ましいぜ……吸血鬼…」

『ほんっっと羨ましいよねぇ……』

『ハイハイ。それよりも、そろそろ解散して学校へ行く支度しましょ?』

『わ!赤羽さんに指揮られた!』

『何よ!文句ある!!』

「そりゃどっちかって言えばヨウは指揮する方じゃなくて、突撃するようなタイプだからだろ」

『さっすがシン!よくわかってるぅ!』

『……とりあえず、後で龍神くんと葛葉は叩きのめすとして私はもう行くね』

『え!?叶は!?』

『僕は何も言ってないから〜♪』

「………後が怖ぇな……ともかく俺も1度落ちるわ。またな」

 

『またね〜』『いってら!』と残った2人の声を聞いてから、discordの接続を切ってからヘッドホンを外して机に置き、チェアに寄りかかりつつ大きく伸びをした……。

 

昨日、こころとかなたを家まで送って帰ると宴会の時に教えた連絡先にすいせいから『レッスン終わりにちょっと対戦しよ!』とお誘いを受け、大体夜の10時からすいせいが眠るまでの小一時間程、テトリス対決をし続けたんだが……(対戦数こそ覚えてないが、6:4ぐらいの割合で負け越した。アイツ強すぎだろ……逆にそれが燃えるんけどな!)その後、なんというか……まだまだ戦い足りないというか、変な闘争心の燻りが残っててまだ寝れずにいたところに、ゲーム仲間から『人数足りなくなっちゃったんだけど……今からでも大丈夫?』との連絡を受け、『もちろんOKさ!』と意気揚々と戦場へと赴き、ソイツとその相方の二人を加えた4人で駆け抜け……現在に至る。

…………………………物の見事に貫徹である、されど後悔はない。

 

「…………一度、顔洗いますか」

 

そう呟きつつ立ち上がり自室から出て一階に降りようと階段まで行くと、丁度二階へと登って来る以前、俺が誕生日プレゼントとして送って以降お気に入りとしてくれた淡いロングスカートと桜柄のシャツを着込んでエプロンをつけた赤髪で長身の女性……俺の従姉弟である()() あかね姉ちゃんと鉢合わせた。

 

「おはよ、あか姉ちゃん」

「あ、おは……って、隈が凄かことになっとー!!また遅うまでゲームしとったと?」

「ん…………まぁ、ちょっと」

「もう…………そげんことばっかりしてちゃ体調崩してしまうよ?」

「んぐ………」

「うちもゲーム好いとーけんやりたかって気持ちはよう分かるばってん、何事も程々に。そげん事で体調崩して欲しゅうなかけん……」

「あか姉ちゃん…………」

 

参ったな…………昔っからあか姉ちゃんの困り顔には弱いんだから、そうされちゃうと…なぁ…………ってか、早速後悔してるし……。…………後、言っとくが別にシスコンじゃねぇぞ?誰に弁明する訳じゃないが。

 

「…………気をつけるよ…………。えと、それであか姉ちゃんはどうしたんだ?」

「ん!それでうちは朝ご飯できたけん、まだ寝こけとー3人と君んごと寝らんで起きとったであろう人らば連れ来ようとも思いんしゃい」

「なるほろ、手伝おうか?」

「そうやなあ………うん、お願いしようかな。ハンリちゃんの方お願いしたっちゃよか?」

 

俺の問いかけに少し思案したあか姉ちゃんだったが、すぐに俺の好意に甘えてくれる。…………ま、はー姉と話した方が俺の目も醒めてるだろうからってものあんだろーけど。

余談だが、あか姉ちゃんの実家は元々博多の方の出身で今現在のように親しい人やoffの時とかはこうして、可愛い方言ランキング

圧倒的トップである博多弁で話してくれる。実際に聞くとめちゃくちゃ可愛いぞ、博多弁。

 

「分かった、はー姉ね」

「任しぇたばい」

「はいよ…………して、ここ最近はどの部のやつを見たの?」

「2部!」

「2部ってことは、確か……【戦闘潮流】だったか?『ぶっ壊れるほど、シュゥトォ!!』の」

 

あか姉ちゃんと共に件の4人の部屋に向かう間に、それとなく彼女が大好きなアニメ化もしている漫画、『ジョジョ』の何部を見たのか聞く。…………何故かって言うのは、このあと、すぐに、分かる。

 

「そうそうそれそれ!っとと……そん話は一度我慢して…………ハンリちゃんの方、よろしゅうね」

「はいよ〜」

 

そうして、まずあか姉ちゃんが寝坊組の内の一人の部屋に入ったのを確認し…………はー姉の部屋にすぐに向かわずにその部屋のドア付近に一度立ち止まり、耳を済ます。すると……

 

「朝ごはんできたばい!早う起きてーーーー!!必殺流法(モード)“神砂嵐”ぃぃーーーーーっ!!」

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!??!?」

 

部屋の中から恐らくはその作品の技名を叫ぶあか姉ちゃんの声と、少し鈍い音ともになっさけない悲鳴があがる……いきなりそれいくのか。

 

さて、先程のあか姉ちゃんへ質問した意図なんだが…………さっきの様子を聞いててわかった人もいるだろうけど、つまりはあか姉ちゃんが最近読んだ、見た『ジョジョ』の“部”に登場するキャラによって起こし方も変わってくるのだ。例えば6部の漫画を読んだ翌日には……『やれやれって感じだわ……』だとか、『『素数』ば数えて落ちつくったい……『素数』は1と自分ん数でしか割ることんできん孤独な数字……うちに勇気ばくるー。…………うーん、ここはやっぱり原作通りに言わな違和感が……』とか言ってたり、4部のアニメを見た後の日に寝坊したりすると、軽く頭を小突かれた後『いったんおめーば起こしぇばよォ~ッ、これで全然卑怯じゃねーわけばい~ッ!!』とか言ってからもう一発拳骨を落として起こしたり等々、あか姉ちゃんの日常によく反映される。…………やられる方はちょっと痛いが、聞いたり見たりする方は面白いからいいんだよな、これ。

 

……とまぁ、こうしてると出てきたあか姉ちゃんと鉢合わせしてこっちに飛び火しそうだし、俺もさっさとはー姉を呼ぶとしますかね。

そう考えた俺は【ハンリの部屋】と書かれたプレートのある部屋のドアの前に立ち軽くノックをする。

 

「はー姉、起きてる?」

『あれ、龍?え、まさか、もう朝!?』

「だぁね。あか姉ちゃんが、ご飯できたってさ」

『ちょ、ちょっとまってて!後あかねちゃんには直ぐに着替えて向かうって伝えといて!!……ぁ〜……また寝わすれたぁ〜……』

 

最後のつぶやきはまぁ聞かなかったことにして……

 

「分かった。2部のキャラの技、喰らう前には来なよ」

『うん!えっと……』

 

部屋の中をガサガサやり始めたし、とりあえず大丈夫だな。…………とするなら、俺は先に食堂に向かうとするかね。

 

「あか姉ちゃ〜ん!はー姉は着替えてから向かってさ!んで!俺も先に食堂行ってるよ〜!」

「はーい!ありがとね〜!!…………よわちゃん起きて!波紋肘支疾走(リーバッフオーバードライブ)ゥゥーーーーーーーーーー!!!!!!」

「わきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

…………悪魔に波紋ってヤバいんじゃないだろーか……まぁ、そもそも波紋なんぞ使えるわけがないんだけども……

 

「コォォォ…………」

「わ〜!!あかねちゃんダメ!!波紋は悪魔にきくのぉぉおおぉぉぉ〜!?!?」

 

いや、何してんだあんたらわ…………。

そんな声を背中に受けながら、あくびを噛み殺しつつゆったりと階段を降りて食堂に割りあてられている部屋の中へと足を運ぶと……

 

「あ、龍くん、おはよ……ってすごい顔!?」

「おはよう、その顔だとまた夜遅くまでゲームしていたみたいだね」

「おは〜よ〜、すっごい隈〜」

「3人ともおはよ。あか姉ちゃんにも言われたけど、そんなに酷いか?」

「一度顔を洗ってくることをオススメするとだけ言っておく」

「マジか……」

「ちょっと待ってて、今タオル暖めて持って来るから!」

「悪い、セナさん。………………んで、みすずは服を引っ張るんでない」

「隈を触らせて〜?」

「なんでだ…………」

 

個性豊かな猫三姉妹こと、愛尾姉妹が各々ゆったりとくつろいでいた。そのうち、世話焼きで優しい長女である愛尾セナさんは俺の顔を見るなり慌ててタオルを取りに行ってしまったが。

 

「にしても、毎日毎日よく体が持つね」

「ん〜まぁ、その分昼とかで寝てるからだろうな」

「でも、今日は確か学校だろう?」

「授業は寝てても大丈夫さ」

「…………なるほど、美玲が昨晩荒れた原因である『破天荒な編入生』とは、やはり君のことだったか」

「んしょ……うし」

「みすず、お前……何、器用に俺の体昇ってんだ……。てか、あの先生とちかげさん、知り合いだったのか?」

「晩酌仲間でね、この街にやってきた時に出会った」

「はい!龍くん、どうぞ。……後、みすずは龍くんの肩から降りなさい!」

「え〜……ここ、居心地いいんだもん…………てしてし」

「ありがと、セナさん……叩くなコラ」

 

俺の定位置である席に座りながらクールでしっかり者の次女、ちかげさんと話しつつ、小柄で自由奔放なダウナー末っ子、みすずが戯れてくるのをいなしているうちに、セナさんが持ってきてくれた暖かいタオルを受け取り顔に載せる。

………………うん、これはいいな……………………

 

「………………みすず、のけ」

「ぷらーん」

「待てそれはヤバっぐるじ……」

「こら!やめなさい、みすず!」

「…………物足りない〜」

「ぷはぁっ………ぉぉ…死ぬかと思った……」

 

そうして、若干ダウナーな甘えん坊に意図せず殺されそうになりつつも、三姉妹とゆったりと話しながら暖かいタオルの心地良さに浸っていると……

 

「お待たしぇ〜」

「は〜……危なかった…………あと少し遅れてたら波紋蹴りを喰らう所だった……」

「うぅ……まだ背中がちょっと痛い…………」

「…………せっかく絶品マグロを食べてた夢を見てたのに……」

「何その夢!すっごい美味しそu……あたた…………急に動くとさっき一撃喰らった脇腹が……」

 

賑やかな声が聞こえ乗せていたタオルを少しどかして除くと、あか姉ちゃんを先頭にして、安心したように息を着く酷い隈がせっかくの容姿を台無しにしている、俺以上の夜更かしの嬢王(俺命名)であるはー姉こと白砂ハンリ姉が続き、その後ろにはさっきあか姉ちゃんが話していた件の『寝坊組』……夢を食らう悪魔…………らしいが、元気溌剌で可憐な笑顔を振りまくことから天使だエンジェルだとしか評されない宵夢みると、ここ最近アイドルの卵として活動を始めたらしいがどっか抜けている所のせいで実生活じゃそうとは思えない桃園ねむ、そして、マグロを愛しマグロからは愛されていない悲しき宿命の……「……む、なんだかリョウにバカにされた気がする……」……コホン、時折鋭いが基本寝まくってる猫人、鮪夢るむねの三人が続いて入ってきた。

 

「あれ、龍は何やってるの?」

「セナさん曰く、顔面酷すぎるらしいからこれで回復してんの。はー姉も多分やった方がいいぜ、ついでに気持ちいいし」

「お、それならご飯食べた後にやろっと」

「…………だな、一旦飯だ」

「セナちゃん、用意は?」

「あとは皆のご飯とお味噌汁をよそうだけだよ」

「それなら、早速よそってしまおっか。みる、手伝うて〜」

「は〜い……あてて……」

「二人とも大丈夫〜?」

「だいじょばない……」

「結構いいの貰った……」

「人間、それを自業自得という」

「「ちかげちゃん、冷たいよぅ……」」「ド〜ンマ〜イ」

「そだ!今日、パンな気分な人〜?」

「俺〜」「あ、私も〜」

 

あか姉ちゃんの声にタオルをとった俺とはー姉が手を挙げて反応を返したあと、少ししてそれぞれの茶碗によそわれた白飯と味噌汁、パンを頼んだ俺達の分のクロワッサンとコーヒーをトレーに乗せたあか姉ちゃんとセナさんがキッチンから出てきて、それらを各々で受け取ると定位置の席につく。そして……

 

「それじゃ、「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」

 

九人の合唱を皮切りにして、賑やかな朝食を始めるのだった。

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

さて、これがこっちに戻ってきてからの俺の朝の日常にして、俺ん家の朝の風景だ。んで、なんで俺の他にも、それも女性ばかりいて、こんな大人数が住める家にいる買ってことなんだが…………

 

ここは元々俺の父方のばぁちゃん家だったんだが、ばぁちゃんが亡くなった時に残した遺志で女性専用のシェアハウスとして使われるようになったんだ。んで、それを管理していたのがあか姉ちゃんの親父さんにして、俺の叔父にあたる人だったんだけど……職場でうっかりミスして事故って大怪我してしまい、ここの管理を誰かにお願いしなきゃならなくなったんだが…………運悪くなかなか妥当な人がいなかった。あ、別にあか姉ちゃんの母親は離婚してないしちゃんと健在してる。ただ、俺の両親と一緒に世界をまたにかける仕事をしているから出来ないってだけ。そして、しれっと言ったが、俺の両親も同じ理由でNG……っちゅう時に丁度独り立ちしたいって親に話していた俺に白羽の矢がたったわけだ。………………まぁ、まさか女性ばかりの所に放り込まれるとは思ってもなかったが。

 

けど、半年前くらい前の以前の学校の夏休みとかを利用して、あか姉ちゃんに手助けしてもらいながらシェアハウスの人たちと仲良くなったり、事前にルールを決めたりしたこともあって、すぐに受け入れてもらい、スムーズに事が進んだ結果……こうして、俺もここに住まわせてもらいつつ、あか姉ちゃんと共にここの大家を、そして、唯一の男手として過ごし、弥吾呉学園に通い始めたってわけさ。

…………よくラノベとか、アニメとか、ゲームとかであるハプニングがなかった訳じゃァないが…………まぁ、うん、大丈夫だた。あぁ、大丈夫さ………………

 

…………………………………………………………………………………………………………………………ダイジョウブデシタ、ハイ

 

 

因みに、今朝方まで共に貫徹したゲーム仲間にして友人の叶、吸血鬼の葛葉、ヨウこと赤羽葉子は詳しいことは後々話すが、以前通ってた学校でも良くつるんでいた仲のいいグループのひとつ。こうして学校が変わっても気軽に、変わらず接してくれるめちゃくちゃいい奴らだ。

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

ともあれ、なんだかんだありつつも賑やかな朝食を終えた俺は、一度部屋に戻り手早く学園に行く支度を整える…………酷かった隈もある程度はマシになったそうな(ちかげさん談)

そして、家から出る前に再度食堂に寄ってあか姉ちゃんが作ってくれた弁当を鞄へとしまいつつ、キッチンで洗い物をしている二人に声をかける。

 

「あか姉ちゃん、セナさん、俺そろそろ出るわ」

「お?やけに早かね?」

「今日はあそこに寄らんとぐずるやつが出てくるからな……」

「あ、そういえば今日は木曜日だったっけ」

「やったら尚更貫徹しちゃつまらんかったばい!」

「…………それは言わんといてや……」

 

まさか、あそこまで熱い試合が続くとは思わなんだんだもん……

 

「ともかく、行ってくるわ。弁当、サンキューな」

「あ、今日は新規ん入居者しゃんがやって来るけん、早めに帰ってきんしゃい」

「っと……そうだった、そうだった。学校終わったら早めに帰ってくるわ」

「任しぇたばい。それじゃ、気ばつけて行ってきんしゃ〜い♪」

「行ってらっしゃ〜い♪」

「行ってきま〜す」

 

二人の声を背中に受けつつ、正面玄関から外に出ると昨日と同じ暖かな春の陽気が降り注ぐ。

今日もいい昼寝日和になるかな?

 

「いいねぇ〜」

「わ、本当だ」

「ね、ここだったでしょ〜?おはよう、リョウ君」

「へ?」

 

今日もまた昨日のやつらと屋上に行けるかなと思案しつつ、石塀を通り抜けて通学路に踏み出した瞬間に背後から声をかけられて思わず素っ頓狂な声を上げつつ振り返ると、どうやら俺の事を待っていたらしいレミと見知らぬ顔の女子生徒がいた。

 

「お、おっす……レミ。朝早くからどうしたんだ?」

「久しぶりに一緒に登校したくてね〜」

「………………いいけど……ちょっと寄り道するぞ?」

「ん、大丈夫。ほとんど毎週行ってるって聞いてるからそのくらい見越してるよ〜」

 

それなら、いいんだが……いや待てなんでお前が俺の行動パターン把握してんの??………………さしづめ、どこぞの誰かが言ったのか…………。して

 

「後ろの奴は?学園の医務室の先生並にやたら色気があるが」

「歩きながら紹介するね〜。まず、この子は私のクラスメイトで親友のサキュバス、ユメノウララ。だから色っぽいんだよ〜。そして、ウララちゃん、この人が私の幼馴染みの鴻山龍神君だよ」

「は〜……あなたがレミがよく話してたゲーマー幼馴染み……」

 

いや、ゲーマー幼馴染みってなんだよレミさんや?

ともかくレミ、ウララ(同級生だから呼び捨てでいいらしい)と軽く自己紹介しつつ並んでゆったりと歩く。

 

「というか、もうちょこ先生のお世話になったの?」

「昨日、初登校したら遅刻スレスレのぐんセン……郡道センセに引きずり回されたからな……」

「郡道先生またなの……?」

「あの先生日常茶飯事なんかよ…………」

「後、ひとつ聞きたいんだけど…………鴻山くんって、なんともないの?」

「は?…………あ〜そういうこと」

「…………もしかしてホm」「それは断固として否定させてもらおうか!!違うんだよ、俺はそう言う各種族の常に発してる力の影響を受けにくいってゆう特異体質なだけだ」

「そそ、不思議なんだよね〜」

「ちょこセンセにも不思議がられたしな」

「そんな人もいるのか……世界は広いね」

 

ま、天使の人らの回復とかも受けにくくなるからキツイ時もあんだけど。ってか金剛はどうしてんだろうな、家は近いのに。

そう話しつつ、表通りから裏通りに入る角を曲がると……

 

「わ!?」「みゃ!?」「おわ!?」

「っと!?……て、かなたとこころとクロか。わり、余所見してた」

「わ、大丈夫……?」

「びっっくりした〜……」

「あまりよそ見すんなよ……。ともかく、おはようさん御三人とも」

「ウッス。…………なんか珍しい組み合わせだな」

「はっはっはっ……」「はーい深呼吸しましょ〜ね〜」「ひ、ひっひふそーらんひっひふそーらん」「え、何その呼吸…………」

「そこで偶然ばったりな。だが、お前らこっちは学園の方向じゃねぇぞ?」

「学園行く前によるとこあってな。お前らも来るか?」

「時間は大丈夫なの〜?」

「あぁ、余裕綽々」

「レミから聞いた話だと大丈夫みたいだよ?」

「……そんならお邪魔させてもらおうかな?」

「あれ?そーいやクロや、白上は?」

「アイツなら寝坊。毎度のコンだから置いてきた」

 

わぁお、The無慈悲。

ともかく、少し人数が多くなってきちまったが…………まぁいいか。…………そういや学園も元々女子校だった名残で男が少ないらしいが…………この街、男女比率どうなってんだ?いや、そもそも俺の周りの知り合いも女子が爆速で増えてってるし…………もう1人くらい男子の知り合いが欲しいとこだな、さすがに肩身が狭ぇよ…………。

 

  **************

 

少し大人数の六人でその後も裏取りを話しながらある程度歩いていき、目的地へとたどり着く……

 

「え、教会?」

「え?目的地、ここ?」

「ほんとにあったんだ……」

「お前、キリスト教だったのか?」

「ちゃうわ。知り合いがここにいんの……つか、レミは知ってるだろ」

「え?昔遊んでた仲間の子?」

「そうだぞ?ま、話すより見てもらった方が早いか。んで、こころ〜起きろ〜」

「みゃん……」

 

背中に背負ったこころを起こそうとしたが失敗。…………さっき出会ってから数分も経たないうちに突然俺の背中に飛び乗ったかと思うと、そのまま寝始めちゃったんだよな…………。寝不足の体にゃ、相当堪えるんだが……まぁ、いいか。

 

「ほれ、ポカーンとしてないで行くぞ」

 

少し呆気に取られてる四人をよそに、俺は教会の大きな扉の片方を開き、礼拝堂の中に入り、少し中を見渡し最終目的の者を含めたひとつの集団の元まで静かに歩いてゆく……それに、なんかここに不釣り合いなカッコの人もいるのが気になるが。

 

「はよ、朝から熱心……っと?なんか見知らぬ見た事ある奴が……」

「あ、お兄さん、おはようございます…………にしてもまたですか」

「おはよう」

「おはよ〜。見知らぬ見たことあるって……あ、もしかしてバイトで会ったんじゃないのかな?」

「一人はそうだな。もう二人の子は知らないが……。よわ、あまり怒るなって…………」

「いえ、お兄さんがおモテになってるのはいつもの事なので気にしてません。私たちの方はお祈りを既に済ませましたし、お時間あるのなら後でご紹介しますけど……」

「だったら拗ねる態度とって欲しくないんだがな…………。時間は大丈夫だ、それにあっちも丁度いいタイミングみたいだしな」

 

金剛たちより先に再会した昔からの幼馴染みの妹分、話によれば俺がこの街を出たあとに彼女も一度街を離れたらしい神瀬よわ、そして、彼女の友人で家にも時々遊びに来るおっとりとしたセイレーンの姫様のアイリス・ルセン、無口無表情だが意外と話していると喜怒哀楽が分かりやすいエルフと吸血鬼のハーフ、棺美夜と話している内に件の三人も祈りを終えてこちらへと戻ってくる。

 

「あ、昨日のウェイターの人……?」

「お、記憶力いいのな」

「ノエルの無茶振りにあそこまで冷静に返してたのと、るしあたちのファンタジークラブに入って欲しいって思えるくらいコスチュームが似合いそうって直感を感じた人だから覚えてたんだ」

「そ、そうか……」

 

コスプレねぇ…………興味がなくも無いが。

そんなことを思いつつ、一度長椅子へとこころを寝転ばす。

 

「るぅちゃんの知り合い?」

「ううん、ただ昨日のこの人がバイトしている時に出会ったの」

「はぇ〜…………いやはや、すっごいイケメンさん。でもなんで背中にこの子を背負ってるの?」

「ども。自己紹介と背負ってた件は後ですっから少し俺の連れと話しててくれ。よわ、俺はシスターに挨拶してくるから」

「分かりました。えと、今お連れの方と言うと丁度お兄さんの後ろに来た方がt…………女の人ばかり……」

「それについては深く突っ込まんでくれ……ともかくよわの顔見知りもいるし、話はしやすいはずだ」

「私の?」

「ま、頼んだぜ」

 

そう言ってよわの頭を軽く撫でてやってから、礼拝堂奥のシスターズルームと銘打ってある部屋のドアまで行き、軽くノックする。すると直ぐに中から『どうぞ〜』とゆったりとした声が返って来て「失礼します」と言いながらゆっくりドアを開ける。そして、目の前の大きな机で書類作業をしているシスターに向かって一礼をする…………

 

「おはようございます、龍神さん。一週間に一度ではなく、もっと毎日のように来てくださってもいいのですよ?」

「おはようございます。そうはいっても俺はキリスト教徒じゃないんで」

「もぅ、そんなことを気にしなくてもいいのですよ?」

「…………そんな子供みたいに頬を膨らませないでください、シスタークレア」

 

目の前の机の書類の山の中、子供のように頬を膨れてしっかりとした物言いでもっと俺と話したいと遠回しに文句言ってるのは、ここの教会を管理しているシスター、シスタークレア。あか姉ちゃんの友人で俺とも親交があるんだが……なにゆえ俺に固執するんだか……。

 

「それで本日はどう言った要件で?」

「いえ、龍神さんが弥吾呉学園に編入したのでその制服姿をみt」「友人を待たせているのでそれでは……」「わーわー違います違います!!」

「ハァ……全く…………」

 

普段はしっかりしてるのにどうしてこうやって俺とかあか姉ちゃんと話してる時は子供っぽいのか……。この姿をシスターを慕う子供たちに見せてやりたいよ…………。

そんなことを考えて頭を抱えていると、部屋のドアがノックされてシスターが猫を被って「どうぞ」と言うと、先程見かけた教会には似合わない奇抜な服装の男子が入ってくる。

 

「どーも。ここの回線のチェックとセキュリティの更新済ませておきましたよ」

「ありがとうございます、黛さん」

「いえ、俺に出来るのはこれくらいなんで……」

 

やけにダウナーな奴だな?そして、パッと見俺と同じくらいの歳っぽいけど……………あれ?少し待て?青のメッシュが入ってて無気力めな雰囲気で、そんで、白と黒のパーカーでさっきの会話からしてネット系統が得意……もしかして。

 

「…………あんたが黛灰?」

「……確かに俺は黛灰だけど……どうして、俺の事を?」

「『ぶるーず』の相羽ういはの元クラスメイトっていやぁ分かるか?」

「………………なるほどね、君がういはが話してた噂のヘンテコ君か」

「ういはのやろう……」

 

あいつ、なんて話したんだよ……今度会ったらしばいたる。しかしま、ある程度は話しやすそうなやつみたいで良かった。

 

「改めて、黛灰。以後よろしく」

「鴻山龍神だ、こちらこそよろしく」

「むぅぅ……」

 

シスターや、そんな『なんで初対面でそんなにフランクなの』みたいな視線をぶつけんでくれ…………

 

「さて、積もる話もあるが……この後学校だから俺はそろそろ行くぜ」

「俺はもう少しシスターと話してからいくよ」

「おぅ、今度ゆっくり話そうぜ。それじゃシスター、黛、それじゃまた」

「またね」「はい、お気をつけて」

 

少し膨れっ面なシスターと黛に一言行ってからシスターの部屋を後にし、女性陣が賑やか話している場所に戻ると……

 

「お兄さん、お疲れ様です」

「おつかれ。も〜、よわちゃん再会してたのなら話して欲しかったな〜」

「しゃーねぇーだろ、そもそも俺とレミが再会したのだって昨日の話だろーが。それによわとだってほんの少し前にあったくらいだし……なぁ?」

「ええ、お兄さんが帰ってきてるのには驚きました」

「私達もよわちゃんが突然『……お兄さんっ!』って少し泣きながら抱きついた時にはめちゃくちゃびっくりしたけどね」

「恥ずかしいのであまり掘り返さないでください……」

「…………」

「んみゃ……」

「こころ、そろそろ起きてって!こころ!」

「…………美夜ちゃん、戸惑ってる……珍しい」

「ほんとに珍しい……」

「…………いや、そうなの?私には無表情にしか見えないのだけど……」

「ほほ〜、半分天使で半分悪魔なのか」

「あはは……ちょっとやらかしちゃいまして…………」

「堕天じゃなくて悪魔になるって何したんだ……?」

「あ、あははは……」

「…………いや、笑って誤魔化すなよ」

 

なんだか各々で楽しそうに話し合ってるな。ま、ともかく……

 

「皆はもう自己紹介済ませたのか?」

「うん。私とよわちゃんみたいに、ユニちゃんとるしあちゃんの事はかなたちゃんとクロちゃんが知り合いで上手く話が進んだんだ」

「るしあに関しちゃ私らの後輩だぜ、な?」

「はい、ウェイターさん♪それじゃ改めまして、るぅは潤羽るしあ、死霊術士(ネクロマンサー)の家系の生まれなのです。よろしくです♪」

「ん、よろしくな。そして、御二方は初めまして。俺は鴻山龍神、高二。昨日近くの『弥吾呉学園』に編入してきた。んで家はこっから少し離れたところにあるでけぇシェアハウスで管理人代理をしてて、ここにもちょくちょく顔を出すと思っからよろしくな」

「えと、花風りんです!中学一年生です!以後よろしくお願いします!」

「私はユニ・アルシア。今はよわちゃん達と同じ学校に通ってはいるけどかなたんとは昔っからの友達なんです、ね〜♪」

「ね〜♪っしょっと……」「みゃん……」

「あぁ、かなた、こころは俺が背負うよ。……そそ、さっき聞かれたこころとの関係だが……バイトで出会った妹のような奴ってところだ」

「妹……?」

「よわはホントの妹のようなもんだろう?」

「………………」

「そういうことじゃないんだよ、リョウくん……」

「??」

 

よう分からんが、二人と近くで聞いてたウララが「ダメだこりゃ」って頭抱えてんのが妙に腹立つなぁ…………。

 

「積もる話もあるが、そろそろ学園行くとしようぜ。潤羽はこっち、よわとアイリス、美夜、それにユニが別の同じ学校で……?」

「あ、私は皆さんと同じ『弥吾呉学園』です」

「それじゃ、花風も一緒に行こうぜ。シン、いいだろ?」

「もとよりそのつもりだ」

「シン?」

「俺のあだ名。俺の名前、りょうがと呼んで漢字は難しい方の龍に神っていう風に書くんだが、簡単で読みやすい神の方を音読みしてるのさ」

「って言うのは建前で小さい頃、剛くんが……『お前シンって漢字書くのか!』って言ってて、それを訂正するのも面倒くさくなってそのまま放置してたら定着したあだ名だよね〜」

「そうとも言う」

「鳳先輩……」

「言っておくがガキの頃の話で、しかも当時『龍』なんて漢字読み書き出来るやつなんてそうそうおらんからな?今のアイツは頭すげぇいいから」

「「「「えぇ…………?」」」」

 

金剛や…………お前、一体どんな学校生活送ってるんだ…………?レミとクロ、そして、俺の背中で寝ているこころを除いたウチの学園勢が皆『うっそだぁ』って顔してるぞ…………?

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ハァックション!!…………うぁ?………………わぁぁぁぁ!!遅刻遅刻遅刻ぅぅううう!!!!」

「金剛朝からうるさいにゃぁ!!」

「起こしたってくれても良かったんじゃねぇ!?!?」

「一度起こしたけど、また寝た金剛が悪いにゃ。みゃあは全然一切これっぽっちも悪くにゃいにゃ」

「くっそぉぉ!!シンと一緒に学校行くつもりだったのに!!」

「え!?シン兄帰ってきてたのかにゃ!?!?!?なんで教えてくれなかったにゃ!!今から頑張れば間に合うかにゃ……?」

「昨日俺も知ったの!!ともあれ……あれ!?」

「行ってきます、にゃ!!」「待ってぇぇぇ!!!!」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

…………後で本人にも少し聞いてみるとするか……。

そんなことをぼんやりと思いつつ、俺たちは教会を出て連絡先を交換し合った後、それぞれの学校へ向けて歩き始めた。その道中……

 

「鴻山さん鴻山さん」

「どった、潤羽」

「鴻山さんて、コスプレに興味ある?」

「コスプレ…………ねぇ?」

「龍神先輩の……コスプレ?」

「なんか怖ぇ振り向き方だな、おい。して、コスプレか。…………ん〜……興味ねぇこたぁねぇんだが」

「お?」

「しっかし…………なぁ…………?」

「ふふふ……」

「レミ、どうしたのそんな悪ーい顔して……」

「う、ううん、なんでもない……ふふ」

 

おのーれぇー、あれ知ってるからって笑うんじゃぁない。

 

「…………少し考えさせてくれ」

「いいよ〜。るぅ達は体験でも本入部でもどちらでも歓迎するから!」

「助かる…………って、そういやかなたや」

「へっ?アッハイ!」

「今の潤羽との話で思い出したんだが、ここの学園て、部活とかには必ず入ってないといけないのか?」

「いや、推奨はされてますけど強制はされていませんよ。ひとつあるとすれば、何個かかけ持ちすることも許可されてますので、迷ったら一応全部やるって手もあります」

 

ほほぅ?いいね、そういうの。やりたいものを自由にやらせてくれるってのはありがたいな。

 

「因みにるぅ達のクラブにはりんちゃんも入ってるよ〜」

「あ、はい。るしあちゃ……じゃなくてるしあ先輩たちのお世話になってます!」

「まだ学園じゃねぇしそこまでかしこ回らなくてもいい。つかみんなもそうなんだが、俺自身かしこまってんのは好きじゃねぇから、TPOは弁えて欲しいがそれ以外だったら先輩後輩関係なく普通に話してくれて構わねぇよ」

「はーい♪」「わかりまし……えと、分かった」

「僕には恐れ多い……」

「毎度思うんだが、俺は一体かなたの中でどんな立ち位置なんだ……?」

「それは気にちしちゃダメだよ」

「うんうん、君が気にすることじゃない」

「言葉なく気づいてやるのがベストだ」

「???」

 

よく分からんが…………やっぱり三人のやれやれって顔はなんだか無性に腹立つな…………。

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

そうして、相変わらずこころを背負いつつみんなと話しながら歩いている内に続々と俺達と同じ制服の人達が増えていき、始業開始時間までには十分に余裕を持って校門を通る。

 

「な、間に合ったろ?…………さて、こころ、ほら起きろ〜」

「んみゃ…………もう学校……?」

「そうだ、そろそろ自分の足で歩いt「このままクラスまで……」俺を恥ずかしさで殺す気か己は!!」

「みぃ……ダメ……?」

「んぐ…………今回だけだぞ…………」

「いいなぁ、こころ……」

「かなた?」

「はっ!何でもないよ!何でもない、何でもない……」

「ねぇねぇ!今度るぅもおんぶして欲しいなって」

「なして?」

「なんだかこころちゃんの姿を見てたら、気持ちよさそうって!」

「あ!それなら僕も……!」

「…………………………………………機会があったらな……」

(ねぇ、もしかして彼って……)

(そ、実の姉妹はいないけど、あぁやって妹系や姉系の人の頼みには殊更弱いのよ)

(シスコンなのか……)

(それじゃ、私たちのお願いとかも……?)

(可能性はある)

 

ぐぬぬ……後ろのヤツらめ絶対誤解してるな……?俺はシスコンじゃねぇってのに…………。ただ、なんか断れなかったり放っとけないだけなんだ…………。

軽く肩を落とし、クロに一言言ってカバンを預けてから、早く学園内の道を覚えないとな……と思いながら、かなたと花風に案内されて中等部の校舎へと向かう。すると

 

「あ、編入生くんみっけ〜」

「?」

 

その途中で、少しゆったりと間延びした声をかけられてそちらを振り向くと、なんだか見た目からしてふわふわしてる雰囲気の眼鏡をかけたショートの女子生徒がゆったりとやってくる。

 

「おはろ〜ぼ〜」

「ロボ子さん、おはろ〜ぼ〜です!」

「先輩、おはろ〜ぼ〜です」

「………………」

 

…………おはろ〜ぼ〜って何?

 

「ほらほら、編入生くんも〜。おはろ〜ぼ〜♪」

「………………おはようございます」

「あや〜、乗ってくれなかった〜。残念」

「鴻山先輩、戸惑ってる?」

「大分」

「確かに初対面だとそうなっちゃうよね」

「そんなに固くならなくていいよ〜。私はロボ子、高等部三年生だよ〜」

 

先輩なの!?身長は確かに高めだけど年下かと…………

 

「っと、鴻山龍神です。よろしく……お願いします」

「鴻山くんね〜ふむふむ。よろしくね〜♪」

「それで……中等部の方に生徒会の用事ですか?」

 

え?この人も生徒会!?マジで!?

 

「ううん、今日はね、鴻山くんに用事があるの〜」

「俺?」

「そう

 

 

ーーーーーーーーーそらちゃんが、会いたがってるんだ〜」

 

 

………………どうやら今日は一日体力的にすげぇ辛い日になりそうだ。

 

 

 

 

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「………………『弥吾呉学園』ね。結構近いところやな、へへ」

「どうしたんですか?」

「なんだか楽しそうだね」

「ん?や、何……

 

 

……私の懐かしぃ〜旧友が戻ってきたってことで、これは出迎えんと行けんなって」

 

 

 

           act-1 end

          To be continued




以上ホロ恋愛モノ二次創作でした。

次回はストライクウィッチーズ最新話、いきまーす。
時期は未定ですが今月中には出します。

因みにこの作品、キャラがこれからも増える予定なんです。

つまり?

ヤバいです。でも、頑張ります。

それでは次回もお楽しみに〜!


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