ハイルとウコチャヌプコロ (柴猫侍)
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ハイルとウコチャヌプコロ

 青年が一人、部屋のど真ん中で正座していた。

 どこか緊張している様子だが、それも仕方がない。何せ、今居る場所は初めて訪れた場所だからだ。

 否応なしにムーディな雰囲気にさせる色合いと内装。部屋に鎮座するキングサイズのベッドは、明らかに一人で眠るためのものではない。

 

 そう、所謂ラブホテルだった。

 性行為を目的とする理由で、時間単位で宿泊できる施設。このような場所に来たのだから、目的はただ一つ。

 そしてまさに今、情欲に塗れた行為に向けて身を清めている女性が浴室でシャワーを浴びている。絶え間なく流れ出る湯水が床を叩く音が聞こえること数分、唐突にキュッと水栓を締める甲高い音が響いた。

 

 とうとうか、と緊張する青年の体はガチガチに硬直する。

 間もなくして浴室から現れたのは女性。立ち込めた湯気で湿った桃色の髪を靡かせ、トロンと垂れた瞳から淫蕩の眼差しを向ける彼女は、スラリと引き締まった肉体をバスタオル一枚で覆い隠していた。

 

「お待たせしましたぁ~」

 

 気の抜けた声を上げながらベッドに腰かける女性は、ニコリと彼に微笑んだ。

 普段もどこか緩んだ印象を拭えない彼女であるが、この場においては情欲の熱によって頬が蕩けているように見える。

 それほどまでに今日の彼女の笑顔は、女性として余りにも魅力的な艶やかな笑みを湛えていた。じっと見つめていれば吸い込まれそうな瞳。夏であっても滅多にお目にかかれない肌は、大層大切に扱われた令嬢の如く白く輝いている。そんな白蝋は、湯か汗かに濡れているのか、これまた違った魅力を感じさせた。

 

「そんな凝視されると恥ずかしいですよ」

 

 徐に告げられ、自分が彼女の肢体に釘付けになっていたことに気がつく。

 顔から火を吹かせながら、すぐさま目を逸らす青年。そんな彼に女性はクスクスと笑う。

 見るからに緊張している青年に対し、余裕ある佇まいを崩さない女性であるが、だからといって()()()という訳ではない。寧ろ、彼女も今回が初めてだった。

 

 遡ること数時間前。

 今日は彼女―――伊丙(いへい) (ハイル)、20歳の誕生日であった。晴れて成年。飲酒や喫煙が解禁され、今日まで仕事先の飲み会でもジュースしか飲んでこなかった彼女は、興味本位で何杯か酒を煽った。

 そして飲み潰れた―――ということもなく、傍目からすればほろ酔い程度に見えるハイルは、班長直々にお目付け役として指名された彼に付き添われ、帰路についたのだ。

 

 ここまでは良かった。

 だが、一見素面に見える彼女が酔いどれと化している事実だけは計算外であった。

 

『どうしたら有馬さんに褒めてもらえますかね』

 

『局内の人に相談したら、お洒落したらどうかって』

 

『あと、女として見て貰ったら色々褒めてもらえるんじゃないかと』

 

『でも、一つだけ自分じゃどうしようもできないことがあって……』

 

『セックスです』

 

 普段から頭のネジが一本外れているハイルだが、酒が入っていることもあって、今日はまた一段と論理が飛躍していた―――とどのつまり、ぶっ飛んでいた。

 要するに、意中の男性に女として褒めてもらうべく勉強した結果、性行為の技術を高めなければならないことを吐露したのである。

 

 同じ施設の出身とは言え、とんでもない相談を受けたと悩む彼。

 しかし、

 

『セックスの練習するから来いば』

 

 問答無用で引き連れられ―――今に至る。

 

「流石に緊張しますね。え? 『あんな無理やり引き連れてなにを』? またまた~。満更でもない顔してたじゃないですか」

 

 目合う前に軽く談笑する二人。

 若干酔いが醒めてきたハイルではあるが、依然としてヤる気は満々のようだった。「いい体ですね」等とその気にさせる言葉を発しながら、これから抱かせる男の体を隅々まで観察する。

 言ってしまえば本命の前の練習台でしかない訳だが、それでも幼馴染と言って過言ではない間柄の女性と致すのだ。節操のない愚息はビンビンと怒張しており、色気のない下着にテントを張っている。

 

「そっちは準備万端みたいですね。それじゃあ……」

 

 相手のやる気を確認し、ついに動いたハイル。

 ベッドに腰かけたまま、隣の彼に顔を近づける。

見慣れた女性の見慣れぬ表情に青年が固まれば、ハイルの狙いは寸分の狂いもなく、彼の唇を射止めた。

 

 眼前に映るハイルの顔。

 互いのまつ毛が顔を擽る距離の中、唇に伝わる熱と水気が蕩けるような多幸感を齎してくれる。

 たったそれだけ―――唇を重ねること数秒。ようやく唇を離したハイルは、ニコリと口角を吊り上げながら、たった今彼と重ねていた唇を指さす。

 彼女の中で滾る情欲を表さんがばかりの紅色を。

 

「私のファーストキス……上手でした?」

 

 ハイルはこてんと首を傾げ、初めて交わした口付けの余韻が残る唇を舌で舐る。

 そもそも直接キスしたところで間接キスなど今更―――と考えが過るも、舌ともなれば話は違う。ソフトキスに相反するディープな口付けを連想させる真似に、青年はみるみるうちに赤面させる。

 

「まだまだですよ」

 

 しかし、あくまでこれは小手調べ。

 良い意味でも悪い意味でも優秀なハイルは、彼の反応に一先ず己へ及第点をつけるや、再び彼へと迫っていく。

 吐息が肌を撫でる距離。やや酒気を含みつつも、歯磨き粉の爽やかなミントな香りが鼻腔を吹き抜けるがそれだけではない。ハイルが内に秘める性欲の熱を孕んだ吐息は、理性をじわじわと融かしてく淫靡な香りも感じられたのだった。

 

 また眼前に迫るハイルに、男は身構える。

 唇が触れ合うあと数ミリ。強引に抱き寄せれば否応なしに唇が重なるといった状況の中、ギリギリのところでハイルは止まる。

 何事かと視線を合わせようとするも束の間、どこか蕩けたような瞳を浮かべているハイルは、彼の両頬に手を添えた。

 ジッと見つめ合うこと数秒。はぁ、と吐息が漏れるに連れて言葉が紡がれる。

 

「なぁんにもしなくていいですから。全部私に任せて下さい―――んっ」

 

 鼓膜を伝い、脳を痺れさせるような甘い声音だった。

 普段の彼女から想像もできぬ声に呆気にとられる間もなく、二度目の口付けが交わされる。

 けれども、今度のキスは具合が違う。

 スタンダードだったファーストキスと異なり、彼の唇を己のもので挟むハイル。そのまま軽くしゃぶるような音を響かせれば、半ば放心状態で無防備になっていた彼の口腔へ舌をするりと挿入した。

 深く深く絡み合う両者。最初こそ若干体の距離を置いていた彼等も、ここまで来れば胸を押し付け、脚を絡ませるように密着していた。

 

 互いの境界が曖昧となる中、彼の口腔を舌で犯していくハイル。

 時には舌を絡ませ、時には歯茎を舌先でなぞり、時には舌を抽送して粘り気を含んだ水音を奏でる。

 

「ちゅっ、んぷっ、んっ、ふぅん……! ろーれふか(どうですか)……?」

 

 舌でピストン運動しながら具合を尋ねるハイルは、答えを求めんと手持ち無沙汰になっていた細腕を、とある場所へと滑り込ませた。

 優しい手つきでまさぐる。

 すれば、あっという間に目当ての品を手中に収めた。

 

「ふわぁ……熱い……」

 

 ハイルでさえ驚嘆する程の怒張。血が滾る男根を握るハイルは、掌から伝わる熱と確かな手ごたえを感じていた。

 それは、己の技術で相手が性感を覚えている事実。

 

 唾液を絡ませる濃厚なオーラルセックスと平行し、見事なまでに反り立つ男根を上下に擦る。

 無論、男性器を弄る等初めての経験。

 しかしながら、現在口で繋がっている彼の息遣いが荒くなることで、己の拙い技術が通用することを実感していたのだ。

 

 そうと分かればハイルも調子に乗る。

 息を継がせる気のないオーラルセックスは、さらに苛烈なものへと化していく。数分前までファーストキスをしていなかったのがなんだ。相手の口腔の隅から隅までを舐り尽くし、満ち満ちた唾液を吸い上げたかと思えば、自分の分も合わせて送り返す―――一言で言えば過激と化していた。

 

―――夫どころか恋人ですらない男の同僚にここまでするとは。

 

 まさに今、ハイルに口腔を蹂躙されている彼は、遠慮のない舌遣いに興奮と快感を覚えていた。

 これだけでも十分な刺激があるには違いない。

 だが、一つ忘れてはいないだろうか。

 絹のように滑らかな肌をしたハイルの手が、節操なく屹立する男根を扱いている現状を。強過ぎず弱過ぎず―――絶妙な力加減で上下に擦る彼女を前に、彼は絶頂寸前であった。

 精嚢から迸る精液は、今や今やと外へ飛び出すタイミングを計るかのように、男根をビクビクと震わせる。

 

 そして今―――と思った瞬間、不意にハイルが手を動かすのを止めた。

 同時に口付けも止めて顔を離す。あれだけ豪快なキスをすれば、当然の如く口の周りは互いの唾液で汚れていた。

 それどころか、舌先から伸びていた唾液がプツリと切れ、彼女の頬に一滴の雫を浮かべる。

 一向に滴り落ちる気配を見えない水滴を舌で舐め取る彼女は、「甘い……」と満足そうな笑みを浮かべながら、視線を彼の股間へと落とす。

 

「まだイったら駄目ですよ。こっちで気持ち良くなってもらいたいんですから……」

 

 ハラリと衣が剥がされた。

 露わになる彼女の肢体は、透き通るように白く、鮮やかに桃色が咲き誇るかの如く輝いていた。胸に実る仲違いの果実は大きすぎず小さすぎず。所謂、()()()()()()サイズだったが、重力に負けず綺麗に前へと突き出る形は、美乳と言って差支えないだろう。

 

 だが、最も彼の目を引いたのは下半身だった。

 禁断の花園は勿論、年がら年中色気のないズボンやコートに隠されていた下半身は、見るからに肉厚で艶めかしい仕上がりであったのだ。

 

 一見華奢に見えるハイルも、捜査官として鍛え上げられた肉体は本物であり特に臀部や太ももに成果が出ているように見える。

 

 その理由は至極単純。目の前に堂々と鎮座する筋肉がついて引き締まっていながらも、女性らしい柔らかさを損なっていない尻から太腿にかけてのラインだ。一昔風に言えば“安産型”の肉付き。しかしそこには、いくら見てもだらしなさを感じさせない奇跡的なバランスがあった。

 

キュッと引き締まっており、プリっと肉付いており、ムチッとハリもある。

黙って静止している姿を見れば、裸婦画かと見間違うような官能的ながらも芸術性を感じられた。

釘付けになりハイルの肢体を目で楽しむ男。

すると、少しばかり恥ずかしそうに頬を紅潮させたハイルが、満更でもない表情を浮かべながらそっぽを向いた。

 

「そこまでジッと見られると……恥ずかしいしょや」

 

 言われて気がつき目を逸らす。

 だが、彼の挙動から自分の体に女としての魅力があると察したハイルは、気を取り直して行為を再開しようとする。

 その手始めに、まず手に付けたのは彼の下着であった。

 ズルズルと下着を脱がせ、己同様一糸まとわぬ姿になった彼をベッドの上に押し倒し、天井に向かって突き立っている男根を豊満なお尻で圧し潰す形で跨る。

 

 うっかりすれば秘裂へと入りかねない状態。それ抜きにしても、鍛え上げられたヒップに圧迫される感覚は耐えがたい快楽を男へと与える。

 さて、ここからどうするのか。

 男が首を傾げれば、「動きますよ~」と間の抜けた声を発したハイルが、腰を前へ後ろへと動かし始める。

 

 俗に言う“素股”だ。

 まだ挿入するつもりのないハイルは、一先ず自身の尻捌きで一発搾り上げようという魂胆であった。

 

「気持ちいいしょや……♪」

 

 彼を見下ろす体勢のハイルは、得意げに言い放つ。

 なにくそと言い返したい男であったが、悔しいことに気持ちいいのは事実だった。ハイル自身も性感を覚えているのか、控えめな茂みの真下に切り開かれた秘裂からは、淫靡な匂いを漂わせる汁が溢れ出していた。

 間もなくして男根を塗り尽くした愛液は、先ほどの手淫によって先走っていた男の汁と混じり、二人の間に何とも言えない据えた匂いを漂わせていた。

 脳髄を痺れさせ、思考を鈍化させる―――否、生物としての生殖本能を煽り立てる。

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

 

 一生懸命腰を振るハイル。

 激しくこそないが大きく動く体に伴い、たわわに実った果実は上下に震える。それを下から眺めた時の、なんたる絶景か。

 髪も振り乱すハイルは、差し伸べられた男の手と手を組み―――恋人繋ぎをして、バランスを取っていた。

 

(なんだか……思ったような動きが……)

 

 玉のような汗を流すハイルは、微弱な電流のように全身を迸る快楽の波に犯されていた。

 彼女の唯一の誤算、それは性行為によって自分にもたらされる快楽だ。下腹部を疼かせ、思考を淫蕩で支配する経験は初めてであり、思い描いていたような動きからズレていく。

 

(あそこ……擦れてっ……気持ちいいかも……)

 

 豊満な下半身で男根を弄ぶ一方、無防備な肉豆もまたじわじわと与えられる刺激による快感が、エクスタシーへ向けて確かに蓄積していた。

 すでにハイルに当初の余裕はなく、本来の目的から外れて自分も気持ちよくなりたいとヘコヘコ腰を振っている。体を弓なりに反らし、おとがいも反らせ、下腹部から背骨を通じて脳天に向けて突き抜ける快感を享受する。

 

 気がつけば二人の性器が触れ合う箇所は洪水状態だ。うっかりすれば彼の上から滑り落ちるのではないかと不安になるくらい、ハイルの秘裂からは愛液が滝の如くに流れ出ていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 一心不乱に髪を振り乱すハイル。同僚からは「トロそう」と称される顔つきが、今となっては淫らに蕩けた雌のそれへと変貌している。

 

 火照る体を艶やかに彩る汗は、二人の擦り合いをスムーズにする潤滑油だった。

 最初こそゆっくりと確かめ合うような速さだった素股も、今や暴れ馬のように体を跳ねさせるハイルによって荒々しいものへと化している。

 

 何度も何度も肉厚な尻に圧迫され、彼の肉棒は張り裂けんばかりに膨らんでいる。

 今にでも、脈打つ肉棒の通り道には白濁とした蒴果が満ち満ちていた。あとちょっとでも強い刺激が加われば勢いよく弾け飛ぶだろう。

 

 絶頂を目前とし、一層ビクビクと痙攣する肉棒。

 次の瞬間だった。悦汁を垂れ流すハイルが、自分の肉豆も圧し潰さんと下半身を押し付けた時にするりと異物が割れ目へと入り込んだ。

 

「へ?」

 

 呆気にとられるハイルであったが、そのままじんわりと下腹部を浸食している熱に当てられ、蕩けていた表情が尚更だらしなく綻んでいく。

 

「あっ……で、射精()ちゃってます……ゴムしてないのに……っ」

 

 蜜壺に解き放たれる男の子種。

 不慮の事故で処女を捧げたハイルの膣内を、存分に蹂躙していく白濁液は、一滴も外へと零れだすこともなく彼女の子宮一歩手前まで注ぎ込まれる。

 彼女の膣もまた、雌としての本能からか吐精する肉棒を搾り上げんと蠢動していた。

 

 今まで激しい動きをしていた故か膜こそ存在していなかったが、れっきとした処女の膣内。

だがしかし、今日まで男の味を知らなかった秘奧は、随分と淫乱な反応を見せている。

 ゾリゾリと肉棒を扱き上げる膣壁からは、もっともっとと懇願する食いしん坊のように涎を垂れ流し、それでいて飲み込んだものを吐き出さぬよう強烈な締め付けを見せているのだ。これを淫乱と言わずして何と言う。

 

 身も心も処女から一皮むけたハイル。

 一方で男は、不慮の事故で膣内に射精してしまった事実を大いに焦っていた。

 

 子供が出来てしまったらどうしよう?

アフターピルは?

もし妊娠したら彼女はどうするのか?

 

 様々な不安が脳裏を過る。が、心のどこかではそのまま彼女が自分のものになってくれないかと邪な考えを抱いていた。

 問題はハイルがどうしたいかである。

 恐る恐る視線を向け、顔色を窺う。

 そもそも彼女は別の男性に褒めてもらいたいが為に今日の真似に出た訳なのだから、膣内射精など許していない―――かと思っていたが。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 男の胸に顔を埋めていたハイルが面を上げる。

 汗が伝う頬には髪が張り付いており、折角のふわふわとした質感が損なわれていたが、その代わりに男の胸に早鐘を打たせる程に妖艶であった。

 快楽をもたらす妖精か、はたまた精根を絞り上げる悪魔か。

 否、今の彼女は淫魔と言うべきだろう。

 

 骨の髄まで震え上がるような快楽を知ってしまった彼女は、ハリのある双丘を男の胸に押し当てるようにして倒れ込む。

悩ましく形を変える果実の感触にドキリと胸を高鳴らせる彼。一方で、一度は吐精して萎んだ愚息もみるみるうちに元気を取り戻していき、収縮する膣肉を押し返さんばかりに怒張してみせた。

 

 再び膣内を押し広げる感覚に身震いしたハイルは、フッと唇で弧を描き、華奢な細腕を男の首に回す。

 

「練習ですから……たくさんした方がいいですよねぇ?」

 

 あっ、と声を漏らす間もなく男に唇を重ねるハイル。

 目の前に映り込む彼女の瞳は、明らかに正気を失ったものであった。普段の何を考えているかも分からない瞳でも、喰種を前にした狩人(ハンター)のものでもない。ただひたすらに快楽を貪ろうとする淫獣のそれだ。

 

 その証拠に口腔に挿し込まれた舌は、男の全てをしゃぶり、味わい尽くすかのように荒々しくもねっとりとした動きをしていた。

 口腔を犯す刺激に反応すれば、彼女の性欲に勝るとも劣らない愚息が跳ね始める。

 すれば、膣内の中で灼熱がのたうち回る感覚にハイルが身を捩じらせた。

 

「あはぁ……動きますから……気持ちよくなって下さい」

 

 息継ぎの合間に告げたハイルは、とうとう肉棒を突き立てられた状態で腰を動かし始めた。

 

「ひぎっ! んひゃ! はぁ、凄い……赫子みたいグネグネと……」

 

 日頃の様子からは考えられない喘ぎ声を出しながら、腰を淫らに振り乱す。

 散々愛し合った結合部は、愛液やら精液やらで濡れており、ローションを必要としないくらいに滑りが良くなっていた。

 肉棒の抽送もスムーズに行われ、ハイルの膣内は絶え間なく秘奧の形を変化させていく。

 

 挿いる時は膣肉を押し退けられた挙句、子宮口に亀頭が接吻する感覚に、肺の中の空気全てが押し出されんばかりに嬌声と共に息を吐き出す。

 逆に引き抜かれる時はカリ首に膣壁を抉り出される快感に、歯をギリギリと食い縛り、男の舌を吸う勢いも凄まじいものと化す。

 

「んふーっ! んふーっ!」

 

 上の口も下の口も繋がる二人。

 ハイルの頭の中にはただ一つ、あの膣内に熱が広がっていく快感を欲する考えだけが残っていた。

 

 欲しい。欲しい。欲しい。

 生まれて始めた得た感覚は、有馬に褒められた時とも喰種を討伐した時とも違う多幸感が全身に広がった。

 あの感覚を忘れられない。

 恥も外聞もなく、“練習”という体裁をも忘れたハイルは、全身全霊をかけて頂きを目指す。

 求める思考は行動に現れ、キスもただ舐めるような挙動から吸ったり甘噛みしたりするものへ。そして首に回している細腕も、一層強い力で彼を抱き寄せるようにしていた。

 

 逃がさない。いや、逃げられない。

 一度知ったからには、もう―――。

 期待のような諦観のような。どちらにせよ、熱く体を重ねることに違いないハイルは、出し入れする秘裂から空気が漏れる下品な音を上げながらも尻を上下させていた。

 始めの方に漏れ出ていた体液も、今や激しいピストンでメレンゲの如く泡立っている。

 それがまた淫靡な性臭を辺りにまき散らし、二人の思考を理性的なものから本能的な―――それこそひたすらに淫蕩を求める獣の頭へと染め侵していく。

 

「っっっ!」

 

 刹那、ハイルが体を弓なりに反らす。

 パクパクと開かれる口は、激しい目合いで足りなくなった酸素を求めている様そのもの。

 だが、何より具合が違うのは肉棒を締め付ける膣肉だ。不規則に収縮を繰り返す雌の肉は、ちょっとでも膣壁をカリ首で引っかかれるだけで引き締まり、その度にハイルが「おっ!」と艶めかしくも野性的な声を漏らす。

 

 絶頂。ハイルは脳天を突き抜ける快楽の雷に打たれ、陸に打ち上げられた魚と化して体を跳ねさせていたのだ。

 

「はっ……はぁ……」

 

 途端に脱力し、後ろのめりにベッドへ倒れ込む。

 密着していた前面とは違い、噴き出る汗がダラダラと流れていた背中。乾いた生地が汗を吸い込む清涼感を覚えながら胸を上下させるハイルは、ふわふわとまとまらない思考の中、ただただ絶頂の余韻に浸っていた。

 こぷりと溢れ出す精液を指で掬い、目の前まで持ってくる。

 指の間にかかる淫汁の橋からは、鼻をつく据えた臭いが漂ってきた。しかし、どうにも目が離せない。

 嗅げば嗅ぐ程に体の芯が疼く。散々肉棒で弄ばれた膣内の奥―――子宮が、切ないと言わんばかりに熱を帯びるのだ。

 

「あっ……」

 

 寝転んでいたハイルに覆いかぶさる影。

 彼もまた切なそうな面持ちを浮かべ、じっと彼女の顔を見つめていた。

 

「……いいですよぉ。ぜひ貴方も動いてください」

 

 フッと頬を綻ばせ、彼が言外に訴える要求を飲み込むハイル。

 同時に期待からにじみ出る唾液もごくりと飲み込み、再び挿入される肉棒を受け入れた。

 

「はぁ……! はぁ……!」

 

 腰を持ち上げられ、好き放題女陰を弄ばれる。

 自分で動く時とは違い、思いもよらぬ部分をも抉られる、あるいは余りの快感で無意識の内に避けていた箇所をも抉られたハイルは、乙女も糞もないキマった表情を浮かべていた。

 

「あぁ! いい! んっ! もっと! もっと突いてくださいぃ!」

 

 コンコンと子宮口をノックされる度に、鈍痛と腹の奥を押し上げられる圧迫感を覚え、視界が明滅する。眼前に映るのは快楽に悶える同僚―――否、雄の姿。必死に種付けしようと瞳の奥を燃やす彼を前に、ハイルの中の()が一層奮い立つ。

 肉棒を締め付けんと力が入る全身。そうすれば膣内を蹂躙する肉棒を気持ちよくさせる一方で、ハイル自身にも耐えがたい快楽を感じさせた。

 だからこそ、我慢しようと手足の指先でベッドを握りしめる。すでにベッドの生地は彼女の辛抱で多数の皺が刻まれていた。

 

 ひっきりなしに体勢を変えるハイルが身を捩じらせる度に、前後に揺れる双子の果実はベッドに押し付けられる等して悩ましそうに形を変える。

 その柔らかそうでありながらもハリのある乳房を前に動けない雄は居ない。

 

「あっ! 急に掴んだら……ひんっ!」

 

 徐に乳房を掴み、丘の上にそびえ立つ桜色を摘まみ上げる男。

 想像していなかったハイルは、不意打ちに近い刺激に悶える。これまた新鮮な感覚だ。指で摘ままれたり、指の腹で転がされたり、軽く弾かれたり―――。

 自分では思いつきもしなかった愛撫で攻め続けられるハイルは、ガチガチと歯を鳴らし、とうとう二度目の絶頂を迎えた。

 

「っ―――!!!」

 

 声にもならない悲鳴が響き渡る。

 意思とは裏腹に出た声にハイル自身驚く―――が、それ以上に驚いたのは、

 

「ちょっと……待っ……今イって……!」

 

 自分が絶頂しても尚腰振りを止めない相手。

 すでに性感が限界まで達してこそのエクスタシー。そこへ留まることを知らない快楽を与えられれば、ハイルもタダでは済まない。

 

「あ゛っ!! あぁ!! んああっ!! 駄目です、こんなのぉ……!!」

 

 ところが男は「もう少しでイケる」と訴えて行為を止めない。

 みるみるうちに膨れ上がる肉棒は、彼の絶頂をハイルに知らせるが、彼女はそれどころではない。

 

(こんなの知ったら―――)

 

 ただでさえ絶頂している中、膣内に射精されれば。

 脳が警鐘を鳴らす一方で、胸は期待で高鳴っている。

 そして、

 

「ふぁ―――」

 

 ああ、キた。

 膣内で大きく跳ねた肉棒の先から、灼熱の如き熱が体を蝕んでいく。

 

「おふっ……!」

 

 最早声を上げる余裕さえないハイルは、下腹部に広がる幸福を感じながら、冷涼な空気を求めて深く息を吸う。

 しかし、吸えども吸えども肺を満たすのは二人の淫靡な熱と匂いに犯された空気のみ。

 これではまた体が昂ってしまうではないか。

 そんなハイルの予想通り、彼女の乳頭と肉豆は真っ赤に腫れ上がっていた。

 

「あ、あの……」

 

 だが、由々しき事態が発覚した。

 水を差す真似に出て申し訳なさを覚えているのか、やや控えめなハイルが手を上げる。

 

「ちょっとトイレに……」

 

 尿意には勝てない。

 流石に目の前でぶちまける訳にもいかない。大人なのだから―――そう考えていたハイルは、彼に申し出るや否や覚束ない足取りでトイレへ向かう。

 扉を開けたら閉める間もなく便座に座る。

 すると、弛緩した秘裂から注ぎ込まれた精液が愛液と共に溢れ出す。

 

「うわぁ。こんなにたくさん……」

 

 尿より先に排出される液体に感心するハイル。

 はしたなく大股を開き、心ゆくまで観察した彼女は、催した尿意のままに用を足そうとする―――が。

 

「あのぅ……見られていると出にくいんですが」

 

 開けっ放しの扉の先で彼が佇んでいた。

 視線を辿れば、未だ淫靡な糸を垂らす秘裂を見ていると分かる。

 これには流石のハイルも立ち去るよう抗議するが、彼女同様色々な意味で箍が外れた彼は反り立つ肉棒を目の前に差し出したではないか。

 二人の体液に塗れた肉棒からは、むせ返るような臭いがプンプンと漂ってくる。

 だが、それを目の前にしたハイルは顔を背けるでもなく、花に誘き寄せられる蝶のようにしゃぶりついた。

 

「んぶっ! じゅぶっ! じゅるっ!」

 

 下品な水音を奏でながら口淫を始めたハイル。

 とっくに自分が用を足しに来たことも忘れ、頭部を前後に揺らすハイルは、肉棒に纏わりついた体液を一ミリリットルも残さぬ気概でしゃぶり尽くさんとする。

 

「ずぞぞぞぞっ!!」

 

 口淫をする最中、特段強烈な吸い付きを披露する彼女だったが、これにはたまらず彼も頂きに達してしまう。

 解き放たれた子種はハイルの口腔を蹂躙し、喉の奥まで犯していく。

 これには彼女も嫌な表情を浮かべるか―――と思いきや、嫌悪感などおくびにも出さず鈴口から迸る精液を受け止めるハイル。

 味覚も嗅覚も性一色に染められ外れる箍。

 その結果は、男を目の前にして放尿するという形に出た。

 チョロチョロと便器を打つ水の音が響き、特徴的なアンモニア臭が室内に立ち込める。

 

 頃合いを見図って、肉棒は極上の口から離された。ぽっかりと開いた口腔には、たっぷりと注ぎ込まれた白濁液で白く彩られている。

 

はほ(あの)ー……」

 

 男が感動の余韻に浸っていると、せっせとシモをトイレットペーパーで拭うハイルが声を上げる。

 

ほれ(これ)ほーひはらひひへふは(どうしたらいいですか)?」

 

 流れで受け止めたものの、口内の精液の処分に困るハイル。

 流石に精飲させるのも気が引けた彼は、多めに取り出したトイレットペーパーを差し出す。受け取るハイルは意図を汲み取ったのか、粘着質な白濁液の紙の上へと吐き出した。

 

「ぷはぁ。うわぁ、こんなにいっぱい……気持ち良かったですか?」

 

 吐き出した精液を包み、尿を拭き取った紙を共に流し去るハイルが問いかける。

 それに対し彼は頷く。当然だ。ここまでイカせられたのだから、気持ち良くないはずがない。

 その返答を受け、満足気に微笑むハイルは立ち上がる。尿こそ拭き取れど、まだ滴り落ちる愛液の根源である秘奧を疼かせながら。

 

「まだ時間残ってますから……ね?」

 

 それ以上は言わずとも理解できる。

 言外に訴えるハイルと共に、男は再びベッドへと向かった。

 

「んっ……なんだか自分のが舐められるのは恥ずかしいで、すぅう!!?」

 

 ベッドに横たわらせたハイルの肉豆を弄り、絶頂させる。

 大分栓が緩くなった秘裂からは、ぷしゃあと潮が吹き上がり、放物線を描いてからベッドに染みを描いてみせた。

 

「あっ、あっ、あっ……これっ……胸が揺れて、なんだかいやらしいですね……」

 

 次は二人とも立った状態で、ハイルの後ろから攻め立てる。

 彼女が言う通り、重力に引かれて垂れさがる乳房が前後に揺れる様も淫靡であるが、なにより腰を打ち付ける度に波打つ尻こそが絶景であった。

 ハイルも自然と尻を振り、卑しく雄の肉棒を求める。

 そんな期待に応えるかの如く、再び彼女の膣内へと吐精したのは当然であったと言えよう。

 

「うふふ、泡泡ぁ~♪ 洗いっ子も結構気持ちいいですね……って、あん! もう……ここでシたら洗った意味ないじゃないですかぁ……」

 

 そして浴室でも絡み合った。

 散々乱れ合い、互いの体液で汚れた体を清めるべく入ったのだが、結局我慢できずに行為へ発展し、湯船を揺らしながら汗を流すハメになった。

 

 それからも時間の許す限り体を重ね、互いを求め合ったことは想像に難くないだろう。

 そして……。

 

「はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 艶やかな息遣いをするハイルは、痛い程に愚息が怒張している男の攻めを一身に受けていた。

 当初の目的等とうの昔に忘れた。

 今はただ、彼を求め、彼に求められるだけでいい。

 

「はぁ……キて……イってください……私もイキますから……!」

 

 どうしようもなく疼く女の芯を貫く衝撃を欲するハイル。

 彼はすでに肉棒に痛みを覚えるくらいに吐精したのだが、それでも自分を求めてくれる彼女の為に動いた。

 自然と互いの絶頂するタイミングが分かってきた二人は、相談する訳でもなく、今回最後の絶頂を同時に迎えようと意識していた。

 

 次の瞬間、全てを悟った男が全力を出す。

 

「あああああっ!! ん゛っ、はああああ!!」

 

 バチュン! バチュン!

 そう音を立てるほどに長く強烈なストロークで膣壁を掻き分ける男は、同時にきつく締め付けてくる雌の肉に悶えながら、限界まで肉棒を挿し込んだ。

 子宮口をこじ開けられそうになるハイルは絶叫する。そして迎え入れる準備を整える。

 目の前の男の子種を受け入れる。

 

「イ……クゥゥゥウウウッッッ!!!」

 

 絶頂の瞬間、男を精一杯抱き締めたハイル。

 全身を縮こまらせて抱き着く彼女に呼応し、膣肉もまた今日一番の強さで肉棒を搾り上げる。

 すれば、どんな遅漏でも三こすり半になってしまうであろう名器と化したハイルの膣内に精液を吐き出す。最早量こそほとんど出ないものの、絶頂に呼応して一層大きく勃起した肉棒は、これまた絶頂したハイルに無慈悲な追い打ちをかけ、彼女を快楽の沼へと引きずり込んでいった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 幸せそうな顔を浮かべるハイル。

 そんな彼女に、男はキスを落とした。

 意識があるかないかはっきりとしないが、唇に落とされた熱を前に、しっかりと性の悦び叩き込まれたハイルは反応した。事後の余韻に浸るかのような優しい舌遣い。互いの体を重ねた悦びを確かめ合う口付けに、男もとうとう体力が尽き、ハイルの横に倒れ込む。

 

(気持ち……よかったぁ……)

 

 意識が闇に落ちる寸前のハイルは、微睡みの中で今回の情事を振り返る。

 

(……あれ? なんか大事なことを忘れてるような……―――ま、いいっしょ)

 

 ごぽりと溢れ出す精液の音と共に眠りにつくハイル。

 ただ一つ、また今度彼と()()()()()ということだけを思いながら。

 

 

 

 

 

 その数か月後。

 

「―――という訳で有馬さん。私、しばらく育休で休みますけど、新米ママとして頑張って子育てしますよぉ」

「……そうか。ハイルは偉いな」

「えへへ、有馬さんに褒められちゃったぁ」

 

 巡り巡って目的を果たしたのは、また別の話。

 



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