アイドルとは即ち決闘者 (ムーさん@南条P)
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プロローグ


初投稿です


 

 

 

 質量を持ったソリッドビジョン、それが可能にしたさらなる立体的なライブアクション―

 

 ―それは人々を更なる熱狂の渦へと巻き込んだ……

 

 そして、会場、モンスター、観客、全てを巻き込んで、世界を奮わせる彼女達を人々は

 

 決闘者(アイドル)と呼んだ

 

 

 

 200人を超えるアイドルたち、そして海馬コーポレーションが開発した新しいデュエルの形態…。

 そしてそれを利用したアイドルたちの新たなライブの境地。それによって世間ではアイドル即ち決闘者という公式が定着していた。事実、世のアイドルたちはみな、決闘者である。

 そんな状況からか、デュエルの腕前がそのまま人気にも繋がるようになっていた。アイドルたちは腕を磨き、鎬を削り、さらなる高みを目指している。

 そして、毎年デュエルで決められるアイドルの頂点、デュエルの覇者…遊戯王、そしてシンデレラガールを目標に彼女、彼らは止まらない。

 

 

 

 

 人々の行きかう街の中、ふと音が聞こえれば人はそちらに目を向ける。見れば人だかりができていた。何事だろうかと人だかりの先へと視線を動かした。見れば若い…いや少女が二人、腕に妙な機械をつけて向かい合っている。何かと思えばデュエルモンスターズだ。

 ひと昔前にある牛丼屋で、高校生くらいの青年が腕につけていた記憶がある。なるほど、あの子たちはアイドルだったのか。それならば、この人だかりも納得がいった。今はこうしてアイドルの子たちが街中でライブバトルと称してデュエルすることも珍しいことではない。

 威勢よく掛け声を響かせて始める二人のデュエル、周りのファンも歓声を上げて見守っている。ほほえましく思い、歩みを再開すれば街頭モニターから派手な音が鳴り響いて、私の視線を誘導する。

 誘導された視線が映したのは「歴代シンデレラガール 決闘の対談」というテロップと華やかな衣装に身を包んだ8人のアイドルたちだった。アイドルに疎い私にもわかる。画面に映る彼女たちは日本の女性アイドルの中で最もデュエルの強いことを証明する「シンデレラガール」の栄冠に輝いたアイドルたちだ。

 つい最近も8代目のシンデレラガールに輝いた…確か本田とかいうアイドルのことで、最近は職場の若い子の間じゃ持ち切りだったことを覚えている。

 

「そうですね…熱いデュエルだけに、勝った時はホットしました…ふふ。」

 

 今しゃべったのは…そう高垣楓だ、職場の同僚が以前に語っていたはずだ。たしかデビューしてから常に上位に居続けてるんだとかなんとか。アイドルという職業で長年第一線に居続けること、詳しくはわからないが、すごいということは分かる。

 

「まーたかえ姉のダジャレが…。」

 

 今の子は、そうついこの前にシンデレラガールになった本田って子だ。快活で明るい子だって、職場の若い子が言ってたいたな。確かに元気が取り柄って感じだ。

 両隣には、そう若い子たちが本田って子と一緒に名前を呼んでいた子達だ。渋谷と島村と言ったかな。

 

「私のデュエルでみんなが笑顔になればって、いつもそう思ってデュエルをしてます!」

 

「アイドルとして…恥ずかしくないデュエルを見せられたら、そう思ってるかな。」

 

 二人とも、そうインタビューに答えると不意に笑った。人を引き寄せる笑顔というのはこういうのを言うんだろう。飾りっけのない、自然な表情に年甲斐もなく引き寄せられてしまった。

 居並ぶほかのアイドルの子たちも、自然体だ。カメラに撮られてるなんてこと、たぶん意識してても緊張はしてないんだろうな。きらきらと輝いて見える。

 

「しゅーこちゃんはさぁ、もうデュエルのたびに警戒されてやになっちゃうな~。」

 

「それは私もだよ~、“十字軍”なんて、変にかしこまったあだ名付けられて緊張しちゃうもん。あっつくなっちゃうよ。」

 

「菜々もシンデレラガールになってからは緊張で足がよくピキーってなるんです。」

 

「ふ…我にそのようなものは微塵もない。すべて同胞たちとの饗宴よ。我が魔力の高まりを肌で感ずるわ!」

 

 思い思いの言葉を残して会話をする彼女たち。そんな彼女たちの生き生きとした姿は、後輩や同僚の言うように元気がもらえるものだった。

 これがアイドルという存在なのだろう。まぁ、なんだ…後輩や同僚の勧めに乗るようで若干癪に障るところもないわけじゃないが、興味が沸いたな…。これからは自分からもアイドルのこと、調べてみるとしよう。

 

 

 

 

 

「プロデューサー!さぁ、ヒーローの参上だぞ!」

 

「うん、子供たちが待っている。早速行こうか。

 

 アイドル群雄割拠時代、ここに一人のアイドル…いや一つのプロダクションが旋風を巻き起こす。

 そのプロダクションの名は1160(ヒーロー)プロ、HEROアイドルたちの集う芸能プロダクションである。

 

 

 

 

 

 

 





次回に続く

Dream on your hand!
その手で夢を掴むのだ!



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第1話 I・HEROナンジョルノ!


記念すべき第1話です。デュエル冒頭までしか書いていませんがお納めください。




 

 

 

 1160(ヒーロー)プロ、それは花咲友也プロデュサーがスカウトしてきたアイドルたちを中心に、特撮界隈で人気を誇るそれなりに大手な芸能プロダクションのことである。

 所属するアイドルたちは誰も彼もが特撮作品への造詣が深く出演経験を持つというのが大きな特徴だろう。所属アイドル最年長の天道輝はもちろん、最年少の小宮果穂も特撮作品に出演している。

 

「花咲プロデューサー、次の仕事はなにかな?」

 

 一仕事終えた1160プロのアイドル、南条光はぐっぐと体をほぐすようにストレッチをしながら自身のプロデューサーである花咲Pに尋ねた。質問を受けた彼はメモ帳に視線を落とすとすぐさまページをめくり始める。

 

「次の仕事はライブバトルだね。相手は…489(シャーク)プロの砂塚あきらさんだね。神代プロデューサーたっての指名さ。」

 

 ぺらぺらとメモ帳をめくりながら今後の予定を確認する花咲Pは確認が取れると視線を光に戻してそう答える。

 

「砂塚…ああ、この前デビューしたばかりっていう新人の人か!」

 

「うん、神代(プロデューサー)曰く期待の新人なんだって。」

 

 そう話しながら彼女らは車に乗り込み、次の現場、砂塚あきらの待つステージへと向かう。

 489プロ、敏腕プロデューサーの神代兄妹、その親友らによって運営される芸能事務所であり、それなりの規模を誇る。特にチーフプロデューサーの手がけるアイドルはデュエルの腕前は事務所随一と言われている。

 指定の場所に来れば、既に489プロのアイドル、砂塚あきらと神代Pがいた。

 

「おっと、待たせたみたいですね。すいません…前の仕事が少し押してしまって…。」

 

「それは気にしなくてもいい。こちらが少し早く着きすぎただけだ。」

 

 489プロのチーフプロデューサー、神代凌牙は友好的な笑顔を浮かべるとすっと手を差し出した。花咲はそれに応えるようにその手を握るとぐっとお互いに力を込める。

 その脇ではアイドル2人がデュエルディスクを装着して向かい合っている。

 

「1160プロ所属、南条光さ。今日はよろしく!わくわくするデュエルをしよう!」

 

「あー…えっと、489プロの砂塚あきらデス。今日はデビュー戦なのでお手柔らかに…。」

 

 向かい合ったアイドル2人はお互いに挨拶をするとデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!!」」

 

 お互いのデュエルディスクに先攻・後攻が記され、カードを引く。

 

「私の先攻だね、さぁ最初っからクライマックスだ!」

 

 先攻は南条光、迷うことなく手札のカードをディスクにセットする。

 

「私は手札の《沼地の魔神王》を墓地に送り、デッキから《融合》をサーチする!」

 

「いきなりデスか…。」

 

「手札の《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バーストレディ》で融合だ!You Go! I GO! Here We Go!! 来い、《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

 

 南条がディスクにセットすると、HEROがフィールドに立ち空中に飛び立ったかと思えば目映い光に包まれた。そして光が止んだかと思えば、その場には翼を広げたHEROがいる。

 いきなりのエース登場にあきらは思わず顔を引きつらせていた。

 

「さらに私は《カードガンナー》を通常召喚して効果を発動!デッキトップからカードを3枚墓地に送る!」

 

 光はデッキトップのカードを3枚めくるとそのまま墓地に送った。これによりカードガンナーの攻撃力は1500上昇する。

 その後、手札から《融合回収》を発動し、フェザーマンと融合を回収し、光のターンは終わった。

 

「私のターンですね…ドロー!」

 

 後攻1ターン目、あきらはドローしたカードと手札とを見つめていた。そして一度、自身のプロデュサーの凌牙と視線を合わせると動き出す。

 

 

 

 




 
だしてほしいアイドルとか、言ってくれてもいいのよ?


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第2話 489プロアイドル、砂塚あきら

 

 
続きになります。
 
 


 

 

 

「私のターンですね…ドロー!」

 

「さぁ、来い!」

 

「私は手札からレベル4《ハンマー・シャーク》を召喚します!」

 

 あきらがカードをセットすると、釘抜きハンマー風の頭を持ったサメがフィールドに召喚され、ほのかにその魚体が光る。

 

「さらに《ハンマー・シャーク》の効果を使います、このカードのレベルを1下げることでレベル3以下の水属性モンスターを手札から特殊召喚できます。私が召喚するのはレベル3、《ビッグ・ジョーズ》!」

 

 あきらが召喚したのは大きな顎を持つサメのモンスターだった。これであきらのフィールドにモンスターが2体並ぶ。

 

「レベル3のモンスターが2体…来るよ、光!」

 

「あぁ、来る…!!」

 

 489プロのアイドルが操る、モンスターを一度に大量展開する戦法に光は身構えた。

 その警戒に応えるようにあきらのフィールドに黒い渦が発生する。

 

「私はレベル3になった《ハンマー・シャーク》とレベル3《ビッグ・ジョーズ》でオーバーレイネットワークを構築!」

 

 あきらがオーバーレイを宣言すれば2体のモンスターは光り輝いて渦の中に飛び込んでいった。そして大きな光りの球体となって渦から飛び出る。

 

「エクシーズ召喚!《№17 リバイス・ドラゴン》!!」

 

 あきらがそう叫べば、球体ははじけ飛び、その中から6枚の羽を広げた青い龍が降り立った。

 あきらの召喚したリバイス・ドラゴンの攻撃力は光の《フレイム・ウィングマン》よりやや低い2000、だが《カードガンナー》の400を大きく上回る。

 

「リバイス・ドラゴンの効果を発動!オーバーレイ・ユニットを1つ取り除いて、このカードの攻撃力を500ポイント上昇させます!」

 

 リバイス・ドラゴンの周囲を廻る球体が1つ弾け、その効果が発揮される。これでリバイス・ドラゴンの攻撃力は2500になり、光のフレイム・ウィングマンさえ上回る。

 

「私はリバイス・ドラゴンでカードガンナーに攻撃!バイス・ストリーム!」

 

「くっ…!しかしカードガンナーが破壊されたことで私はカードを1枚ドローする!」

 

 2100の戦闘ダメージを受けたものの、カードガンナーの効果で光は手札を1枚増やす。そしてあきらはカードを2枚セットしてターンを終える。

 

「くぅ…なかなか効くね。ドロー!」

 

(…光さんの手札は5枚…そのうち2枚は前のターンに《融合回収》でサルベージした《融合》と《フェザーマン》…また融合するつもりデスかね…?)

 

あきらがそう考えていると光は手札の一枚をディスクにセットする。

 

「私は魔法(マジック)カード、《E-エマージェンシーコール》を発動!私が手札に加えるのはこいつさ!《E

・スパークマン》!」

 

「スパークマン!?まさか!!」

 

「そのまさかさ!スパークマン!フレイムウィングマン!今こそ1つに!融合召喚、さぁ行こう!《シャイニング・フレア・ウィングマン》!」

 

 光が《融合》のカードと共に掲げたカードは《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》、煌めく羽を広げた白銀のHEROである。

 《フレイム・ウィングマン》と同様のバーン効果に加え、墓地に存在する「E・HERO」の数だけ自身を強化する、まさにHEROの切り札的なカードだ。そんなモンスターを前にしてもあきらは揺らがなかった。

 

「リバースカード、オープン!!《激流葬》!!」

 

 あきらが伏せていた(トラップ)カードがオープンされると、フィールドの真上、直上から大量の水が滝のように流れだした。氾濫する大河のごとき流れはあっという間にフィールドを埋め尽くし、モンスターを流し去る。お互いのモンスターを流し去った激流の影響か、フィールドはまだ水浸しのままだ。

 そして畳み掛けるようにあきらはもう1枚のカードをオープンした。

 

「《激流蘇生》発動!自分の水属性モンスターが破壊されたとき、破壊され墓地に送られた自分のモンスターを全て特殊召喚します!」

 

 あきらがカードを発動すると、濁流の中から気泡がぶつぶつと湧き上がり、1本の水柱が姿を現した。それは先ほどシャイニング・フレア・ウィングマンと一緒に激流の中へと沈んだはずのリバイス・ドラゴンだった。

 

「さらに!召喚した数かける500ポイントのダメージを与えます!!私が特殊召喚するのはリバイス・ドラゴンの1体、よって500ポイントのダメージです!!」

 

「くっ…!!」

 

 そして余波によって生じた衝撃波によって光の体は小さく揺らぐ。残る光の手札は3枚、その残った3枚を見て彼女は不敵に笑った。

 

 

 

 




 
次回、南条のターンその2!



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第3話 HEROの反撃


お待たせしました


 

 

 

(…今のタイミングがベストだと思いましたが…。《シャイニング・フレア・ウィングマン》は確実に南条さんの切り札…、そこを止めて融合も切らせた…これで少しは優位に立てたかな…?)

 

 《激流葬》から《激流蘇生》のコンボによって光のモンスターを全滅させたあきらは手札と光の表情を交互に見比べる。確定で切り札と判断できるカードを破壊できたことにあきらは少しの余裕を覚えていた。

 しかし光の表情にはまだ余裕があった。

 

「やるね、あきらさん。まさか私の切り札をこうもあっさり破壊されるとはね。…でも、まだこれからだ!」

 

 光は手札からカードを1枚引くとデュエルディスクにセットした。

 

「HEROの意思は引き継がれる!例え一度破れようとも、その遺志を引き継ぐ者がいれば、負けではない!私は手札から魔法(マジック)カード、《HEROの遺産》を発動!!」

 

「そのカードは…ッ!!」

 

「墓地に眠るHERO融合モンスターを2人、エクストラデッキに戻すことで、私はデッキから3枚ドローする!!」

 

 《フレイム・ウィングマン》と《シャイニング・フレア・ウィングマン》をデッキに戻した光はデッキに手を掛けると一呼吸間を置いて3枚ドローした。これで5枚になった手札を見て彼女はまた笑う。

 

「私は墓地の《E・HERO ネクロダークマン》の効果でリリース無しに上級HEROを召喚する!」

 

「ネクロダークマン!?いつの間に…ッ!?…なるほど、カードガンナーですか…。」

 

「あぁそうさ!来い!《E・HERO エッジマン》!」

 

 光が召喚したのは金色に輝く鎧に身を包み、肘から伸びる長大な刃を携えた戦士だ。鈍く光りを反射する刃を構え、兜の奥から鋭い眼光をリバイス・ドラゴンに向けている。

 光のメインデッキに入るHEROの中で最高の攻撃力を誇るそれは既に漲る力を敵に向けようとしていた。

 

「行け、エッジマン!パワー・エッジ・アタック!!」

 

「うあっ!?」

 

 破壊力満点の一撃、その衝撃であきらは軽く押されてしまった。これで600の戦闘ダメージを与えた光はカードを1枚伏せてターンを終える。

 後攻2回目のあきらのターン、ドローして手札は3枚となったあきらはじっくりと手札を見ていた。

 

「私は《深海のディーヴァ》を召喚します!」

 

 あきらが召喚したのは人魚の歌姫、そしてその横に水の中から更なるモンスターが浮き上がる。

 

「ディーヴァの効果で私はデッキからレベル2の《深海のセントリー》を特殊召喚します!」

 

 ディーヴァの隣に浮かんできたのは武装した半漁人の戦士だった。これであきらのフィールドにレベル2のモンスターが2体揃った。

 

「さらに特殊召喚されたエントリーの効果を発動!デッキトップの2枚を墓地に送り、墓地からレベル4以下のモンスターをサルベージします!私は《セイバー・シャーク》を回収!」

 

「セントリーの効果で落としたカードか…。」

 

 墓地からカードを回収したあきらのフィールドにまた渦が巻き始める。

 

「私はレベル2の《深海のディーヴァ》と《深海のセントリー》でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!おいで!《キャットシャーク》!」

 

 歌姫と門番が渦に光の玉となって渦に飛び込んでいった。渦潮の逆巻く音と共に大きな1つの光弾が飛び出し弾け飛ぶ。あきらが召喚したのは鮫のヒレと尾を持った猫だ。

 《キャットシャーク》は渦潮のあった場所に降り立つとぐるぐるとその場で回りながら辺りの様子を伺っている。

 

「《キャットシャーク》は水属性モンスターをオーバーレイユニットにしている間、戦闘では破壊されません!」

 

「なるほど…面白いモンスターだ!けど!エッジマンには守備を貫く力がある!」

 

(…エッジマンの貫通は痛いデスけど…これで暫く壁を作って耐えましょう…。)

 

 手札も心許ないあきらは破壊されない《キャットシャーク》を壁に凌ぐ展開を見せる。しかし受けに回った相手に容赦するような光ではない。

 

「さぁ、キバって行くぞ!」

 

「くっ…。」

 

 勢い付いた光は止まらない。貫通持ちのエッジマンの攻撃であきらのライフを大幅に減らし、ライフの上ではほぼ互角に並ぶ。

 

 

 

 

 

 





次回、あきらの切り返しはなるのか!


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第4話 鮫の牙


ふぃぃ…時間かかりましたなぁ





 

 

 

 

 あきらのフィールドには守備表示の《キャットシャーク》と前のターンに伏せていたカードが1枚、ライフはほぼ互角で回ってきたターンにあきらはドローする。

 キャットシャークがいかに破壊されないと言っても、光のフィールドには貫通効果を持っているエッジマンがいる。この状況が長引けばそれだけ不利になる。

 あきらの手札は3枚、その中で打開策を考える。

 

魔法(マジック)カード、《浮上》を発動!墓地のレベル3以下の水族、海竜族、魚族モンスターを1体蘇生させます!蘇生対象は《ビッグジョーズ》!」

 

水浸しになったフィールドから大きな水飛沫を上げてビッグジョーズが姿を現す。

 

((プロデューサー)さんのあのカードがあればこの盤面も簡単に崩せるけど…、私には速水さんのようにあのカードを預かるだけの実力もなければ、七海ちゃんのような欲しいカードを持ってくるだけのドロー力もない…。でも、どうにかするしかない!)

 

手札を見つめたあきらは覚悟を決めたようにキッと視線を上げると手札のカードをディスクにセットする。

 

「レベル4のセイバーシャークを召喚!さらに自分フィールドに水属性モンスターが存在することで、《サイレントアングラー》を特殊召喚します!」

 

あきらのフィールドに頭に剣を生やした鮫と巨大な鮟鱇が姿を現した。そして、セイバーシャークが仄かな光を放ち、自身とサイレントアングラーを包み込む。

 

「セイバーシャークの効果により、セイバーシャークとサイレントアングラーのレベルを3まで下げます!」

 

「レベル3のモンスターが3体…光!気を付けて!!」

 

「やってやれ、あきらぁあ!!」

 

警戒を促す花咲Pの横であきらの担当である神代Pが声を荒らげた。

その言葉、声にあきらはマスクの下で小さく口角を上げるのだった。そしてそれに応えるように彼女は手を振り上げる。

 

「私はレベル3のモンスター3体でオーバーレイ!!」

 

あきらのフィールドを泳ぐ3体のモンスターは渦潮の中へと光の球となって飛び込んでいった。

ごうごうと音を立てるその渦の中で、3つの光はさらなる大きな光となっていた。

 

「広大なる海を泳ぎし皇帝よ、その牙を持って眼前の敵を噛み砕け!出でよ!ランク3!!《牙鮫帝シャーク・カイゼル》!!」

 

3つのオーバーレイユニットを身に纏い、渦潮から姿を現したのは首の下に巨大な顎を備えた鮫、まさに牙鮫帝の名に恥じぬ偉容を誇る鮫だ。

周囲を威嚇するかのように轟音で吼えたそれは長大な飛沫を上げて着水する。

 

「…っ!! で、デカい…ッ!!」

 

「これが私の切り札デス!!シャーク・カイゼルの効果発動!!オーバーレイユニットを1つ消費し、シャークカウンターを1つ乗せます!」

 

淡い光を放ちながら周囲を飛び回るオーバーレイユニットの1つを、シャーク・カイゼルはその大きな顎で噛み締める。

雄叫びを上げたカイゼルはさらに激しくフィールドの海面を震わせた。

光の残りライフは5400、フィールドには攻撃力2600のエッジマンが1体と伏せカードだけだ。

 

「キャットシャークの効果を発動!オーバーレイユニットを1つ消費し、自分フィールドの水属性モンスターの元々の攻撃力を倍にします!」

 

「なっ!?」

 

これで攻撃力を3600にしたシャーク・カイゼルは天に向かって咆哮を上げる。

キャットシャークも心なしかドヤ顔をしていた。

 

「シャーク・カイゼルは攻撃を行うとき、自身に乗っているシャークカウンター1つにつき攻撃力を1000ポイント上昇させます!」

 

「つまり、実質4600!? 光!!」

 

「心配はいらないぞ、プロデューサー。」

 

目の前で牙を剥く巨大なモンスター相手にも光は動じない。狼狽えるのはプロデューサーばかりである。

真っ直ぐな目でシャーク・カイゼル、そしてあきらを見つめていた。

 

「行きますよ!シャーク・カイゼルでエッジマンに攻撃!!シャークバスター!!」

 

「ぐっ…っ!!」

 

シャーク・カイゼルの、正に海を割るが如くの咆哮にフィールドの水を巻き上げ、津波のようにエッジマンに押し寄せ、押し流す。

これで2000のダメージ、光の残りのライフは3400となる。

しかしこれでは終わらない。あきらは追撃にリバースカードをオープンした。

 

「罠カード!《エクシーズ・リボーン》を発動!!このカードをエクシーズ素材として、エクシーズモンスターを蘇生します!甦れ、リバイス・ドラゴン!」

 

フィールドの上を小さな光球が飛んだかと思えば、その直下からリバイス・ドラゴンが飛沫を上げて復活する。

直接攻撃(ダイレクトアタック)の大チャンス、花咲プロデューサーは苦い顔を浮かべ、神代Pは眉をしかめたいた。

 

「行け!リバイス・ドラゴン!バイス・ストリーム!」

 

攻撃力2000のダイレクトも通り、1400までライフを削られた光だが、その目の闘志は萎えていない。

 

「仕留めきれなかったか…。」

 

「ひ、光!頑張って!!」

 

両者のプロデューサーはそれぞれ異なる反応を示していたが、二人は自身の担当アイドルからは目を離さない。

 

 

 

 





次回を!お楽しみ!に!


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第5話 HEROの舞台


いろいろと重なり遅れました!すいません!


 

1160(ヒーロー)プロ南条光と、489(シャーク)プロ砂塚あきらのデュエルは佳境を迎える。

そしてそれをどこから嗅ぎ付けたのか、他のプロダクションのアイドルが見学に来ていた。

 

「ふふ、相変わらず489プロのタクティクスってのは凄いねぇ♪ね、凛♪」

 

「そうだね…でも、まだ粗いよ。やっぱり新人だね。」

 

ライブバトルの会場、その隅で、端にいる観客用のモニターを見ながら二人のアイドルが話していた。

1人は明るい茶髪を特徴的な2つ結びにした少女、もう一人は濃紺とも言うべき艶のある髪をストレートに伸ばした少女だ。

その2人の姿を見たアイドルファンがぎょっとして目を点にした。

 

「さ、318(サイバー)プロの、渋谷凛と、北条加蓮ゥ!?」

 

そう2人は大手芸能プロダクションの1つ、丸藤亮がチーフを務める318プロ所属のアイドルだ。

そんな大手プロの所属アイドルが新人アイドルのライブバトルに現れたとあっては、周囲はざわざわとにわかに騒がしくなる。

 

「やーっぱり騒がれてる…凛~?あとでPに怒られるよ~?」

 

「これくらいで怒るほど、Pは小さい人じゃないよ。」

 

周囲の注目を集める二人はそれでも動じずにディスプレイに映される新人を見つめていた。

 

 

 

光の手札は5枚、そしてフィールドには1枚のセットカードが存在しモンスターは空で、ライフは1400。

一方のあきらのライフは5300もあり、フィールドにはシャークカウンターの1つ乗ったシャーク・カイゼルとリバイスドラゴン、そして守備表示のキャットシャークがいる。

心配そうに眺めている花咲Pを余所に、当の光は余裕の表情だった。

 

「リバースカードオープン!《メタバース》!」

 

「っ!?メタバース!?」

 

「私はデッキからフィールド魔法《摩天楼2‐ヒーローシティ》を発動!」

 

デッキからカードを1枚引くと、カションと開いたデュエルディスクにセットする。

するとフィールドを埋めていた水は引いていき、色鮮やかな背の高い建物が乱立していく。

そして空を目指すかのように聳える、一際高いビルの上から、黒衣のヒーローが光の前へと飛び降りた。

 

「ライフを半分支払って《ヒーローアライブ》を発動!来い、《E・HERO シャードーミスト》! 特殊召喚されたシャドーミストの効果でデッキからチェンジ速攻魔法を手札に加える!私が加えるのは《マスク・チェンジ》だ!」

 

「うげ…これはマズイですね…。」

 

光の手札に加わったカードを見て、あきらが顔を少しだけしかめる。

ヒーローアライブの効果で光のライフは残り700、あともう少し押し込めば勝てるという状況なのに、手が出せないもどかしさに、ぎりっと奥歯を噛み締めていた。

 

 

「さらに、私はヒーローシティの効果で墓地のエッジマンを特殊召喚する!甦れ、エッジマン!」

 

摩天楼の間から、金色(こんじき)の鎧に身を包んだエッジマンが飛び降りて、光の前に着地する。

着々と陣営を強化していく光に、神代Pは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「さぁ、どんどん行くぞ!!このターンで決めて見せる!魔法カード発動!《融合》!」

 

光が融合のカードをディスクにセットすると、フィールドに立つシャドーミストの隣に《E・HERO クレイマン》が並び立つ。

そしてその二人が跳躍し、融合すると真っ赤な装甲に身を包んだヒーローが降り立った。

 

「行くぞ!《E・HERO サンライザー》!!」

 

「ぐっく……また新しいヒーロー…!」

 

「サンライザーがフィールドにいる限り、私のフィールドのヒーローは、属性の種類1つにつき、攻撃力が200ポイント強化される!」

 

光のフィールドには地属性のエッジマンと光属性のサンライザーがいる。これによって、エッジマンの攻撃力は3000、サンライザーは2900と強化された。

しかし、あきらのフィールドにいるシャーク・カイゼルにはシャークカウンターが1つ乗っており、戦闘を行う時、カウンター1つにつき1000の強化が行われる。

まだ、耐えられる。あきらがそう思った時、光はディスクにカードをセットした。

 

「装備魔法発動!《フェイバリット・ヒーロー》をエッジマンに装備する!! フェイバリットヒーローを装備したモンスターは、フィールド魔法がある限り、守備力の数値を攻撃力に加算する!これでエッジマンの攻撃力は4800だ!」

 

「なん…ですって!?」

 

「さぁ!バトル!!行くぜ、エッジマン!シャークカイゼルに攻撃だぁ!パワー・エッジ・アタァックっ!!」

 

光の掛け声と共にエッジマンは飛び上がり、シャークカイゼルへと飛び掛かる。

その光景に歯ぎしりしたあきらは顔を見上げた。

 

「迎え撃て、シャークカイゼル!!カイザー・バスター!!」

 

あきらの言葉に応えるようにシャークカイゼルは唸り声をあげて、水流を放つ。全てを押し流す、瀑布のような水は飛び掛からんとするエッジマンに直撃する。

しかし、その大量の水を割り開いて、エッジマンが姿を現した。そしてその長大な刃を以てシャークカイゼルを打ち砕く。

シャークカイゼルの巨体が地響きを立てて倒れた時、サンライザーの腕が光り輝いた。

 

「サンライザーの効果だ!サンライザー以外のHEROモンスターが攻撃した時、フィールドのカードを1枚破壊する!私が選ぶのはキャットシャークだ!」

 

「っ!?そんなっ!?」

 

頼みの綱、耐えるための壁であったキャットシャークを打ち砕かれ、あきらの顔がうっすらと青ざめる。

さらに光は手を緩めない。

 

「そしてフェイバリットヒーローの効果を発動!装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、装備されているこのカードを墓地に送ることで、装備モンスターは追加攻撃できる!もう1度だ、エッジマン!リバイスドラゴンに攻撃ぃ!!」

 

光の掛け声に、エッジマンは金色の鎧で光を反射しながらリバイスドラゴンに切りかかる。

攻撃力3000の攻撃とあっては2000しかないリバイスドラゴンはひとたまりもなく、一太刀で絶命する。

エッジマンの攻撃によって3000もの戦闘ダメージを与え、フィールドをがら空きにした光は勝利を掴み取るためにサンライザーに対して声を掛ける。

 

「行くぞ!サンライザー!!ダイレクトアタックだ!!」

 

光の号令の下、最後の一撃を撃ち込もうとサンライザーが駆け出してあきらへと迫る。

しかしその攻撃があきらへと届くことはなく、サンライザーは急激にその動きを止めた。

 

「さ、サンライザー!?」

 

「危ないところ…でした…。」

 

光のフィールドのモンスターはサンライザーはおろか、エッジマンもその動きを止め、守備表示になっていた。

 

「こ、これは一体!?」

 

「相手の直接攻撃宣言時、手札のこのモンスターを攻撃表示で特殊召喚して、相手モンスターを全て守備表示に変えます…!」

 

「そのモンスターは…!?」

 

「《SR‐メンコート》…入れておいて助かりました、りあむサン…。」

 

手札から召喚されたメンコートの効果により、光のモンスターは全て守備表示となった。

“凌いだ…”あきらがそう思い、気を緩めた時、光は口角を小さく上げる。

 

「何を安心しているんだ?ヒーロータイムはまだ終わってない!」

 

「え…?…あっ!?」

 

気を抜いていたあきらは自分の記憶を辿り、光の発言の真意にたどり着く。しかしそれに気づいたからと、今はもうどうにもならない。

 

「速攻魔法!《マスク・チェンジ》!!さぁ行くぞ!私の切り札!変身召喚!!」

 

光の言葉を受け、サンライザーが走り出す。目が眩むほど目映い光を受けたサンライザー、いや、新たなヒーローがまたフィールドに舞い降りた。

 

「行くぞ!《M・HERO 光牙》!」

 

「……くっ、そんなっ!」

 

「行くぞ光牙!これでフィナーレだ! レイザー・ファング!」

 

助走をつけるように走り出した光牙は跳び上がると、その勢いのままに跳び蹴りを放った。

それがフィールドのメンコートへと直撃すると、メンコートは爆発四散し、派手な爆炎が上がる。

この攻撃によってあきらのライフはゼロとなり、デュエルは決着した。

 

 

 

「ガッチャ!ナイスデュエルだったよ!」

 

「私こそ、ありがとうございます。」

 

デュエルが終われば敵味方もなしと、屈託のない笑顔で光はあきらに握手を求め、あきらもそれに応えて握手する。

そうしてまた1つの新しい友情が芽生えるのであった。

 

 

 

 





活動報告に、リクエストボックス的なサムシングを置いておきました。
なにか要望のあるかたはそちらも覗いてみてください。

ちなみに489プロは#ユニ募の三人が揃っている設定です。
アイドルと担当Pの組み合わせは↓

神代凌牙P:砂塚あきら

神代璃緒P:辻野あかり

ドルベP:夢見りあむ

ですね


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第6話 にゃん・にゃん・にゃんの日常


ふぅ、筆が乗りました。


 

 

222(にゃんにゃんにゃん)プロとは、中堅アイドル事務所である。

しかし中堅と言っても、所属アイドルの3人はいずれも実力派揃いであり、人気も高い。ユニット名を「にゃん・にゃん・にゃん」と、事務所と同じ名前を背負う、文字通りの看板アイドルである。

 

―某月某日、都内の撮影スタジオ控え室…

 

「ええっ!?のあにゃんがまだ来てないって、Pチャン!?大丈夫なん!?」

 

「あー…大変です、ね…。」

 

控え室はざわざわと俄に騒がしかった。その理由は出演者の一人、高峯のあがの姿がまだないことである。

なにを考えているのか分からない、アンドロイド系アイドルとして人気の高い彼女が読めないことは今まで多々あったが、仕事に遅れそうになることなどはなかったからだ。

同じグループの前川みくとアナスタシアな二人が慌ててのあに電話を掛けたり、アプリで呼び掛けたりと連絡を取ろうとあたふたしているなか、その音は響いてきた。

ゆったりとしたハーモニカの音色だ。それを聞いた周りのスタッフたちは一様に作業の手を止めて、その音のする方へと視線を向ける。

 

「来た…。」

 

「来た、来た…。」

 

ハーモニカの音に反応するようにスタッフたちは呟く。その視線の先にはロングコートの裾を靡かせながら、自慢の銀髪を揺らし、ハーモニカを吹く高峯のあがいた。

 

「待たせたわね、二人とも。」

 

「お、遅いにゃ~!」

 

「のあ、よかった…。」

 

時間に遅れたとはいえ、同じグループの仲間が漸く姿を現したことに安堵すふ二人と担当のプロデューサー。

その後、にゃん・にゃん・にゃんの三人は無事に収録を迎えたのだった。

そして事件は起こる。時は収録終わり、控え室で支給された弁当やケータリングのお菓子で一息つこうという時にそれは起こった。

 

「ふんふふーん♪ここのお弁当は美味しいからにゃぁ♪今日はハンバーグ弁当らしいしにゃぁ♪」

 

鼻歌まじりに浮かれながら、ユニットの二人より遅れて控え室に戻って来たみく、彼女の好物はハンバーグであり、今日も収録終わりに食べるハンバーグ弁当を楽しみにしていた。

がちゃりと控え室のドアを開けると、二人は既にお弁当を食べ終わっている様子であった。

みくも自分の分のお弁当を食べようと、入っているであろう袋に手を伸ばし、中身を漁る。しかし袋には何も入っていない。

 

「あ、あれ…?何も入ってない…?」

 

不審に思ってちら、とユニットメンバーのテーブルへと視線を向けるみく、その視界は空の容器が2つも置いてあるのあのテーブルを捉える。

そしてご丁寧に一方にはのあ、もう一方にはみくの名前が書いてあったのだ。

 

「…………のあにゃん?」

 

「どうしたの、みく。」

 

沈黙の続く二人、それを破ってみくが声を出す。

 

「のあにゃん、どうして2つもお弁当食べてるにゃ?」

 

「美味しかったわよ、みく。」

 

「なんでみくの分も食べてるにゃぁ!!」

 

さらっと言ったのあに対して、我慢の限界を迎えたみくが叫ぶ。そんな彼女の叫びにびくっとアナスタシアが震えてそちらに目をやった。

 

「アナにゃんもにゃぁ!なぁんでのあにゃんがみくの名前があるお弁当に手を着けてるのを止めないにゃぁ!」

 

「あー…すいません、そういう模様なのかなって…。」

 

「んなわけあるかぁ!!」

 

ユニット仲間のあまりの行動に冷静な言葉すら失うみく、そうなったらすべきことは1つである。

 

「デュエルにゃ、のあにゃん!」

 

「いいわ、望むところよ。」

 

「みくが勝ったら新しいお弁当買ってきてもらうからね!」

 

「いいわよ。その代わり私が勝ったら今日の夕飯はにゃんにゃんにゃんでくら寿司よ。」

 

頭に血が登ったみくと、何を考えているのか分からないのあとのデュエルが始まった。

先行はのあである。

 

「私のターンね、…《SR‐ベイゴマックス》を自身の効果で特殊召喚よ。効果で《SR‐タケトンボーグ》をサーチ、そのままタケトンボーグを特殊召喚よ。」

 

「あれ?のあ…デッキ変えました、か…?」

 

「いやぁ…SRのあの2枚はどのデッキにも入る出張パーツにゃし、変わってないと思うにゃぁ…。」

 

のあの展開に対していぶかしむように目を細めるみく、しかしそれを気にせずにのあは手を進める。

 

「魔法カード《手札断殺》よ、手札から《ゾンビキャリア》、《インフェルニティ・ビートル》を墓地に送るわ。ゾンビキャリアの効果発動よ、手札を1枚デッキトップに戻して、自身を特殊召喚。手札を2枚伏せるわね。」

 

「やっぱりインフェルニティにゃ…。」

 

「タケトンボーグとベイゴマックスでシンクロ召喚よ。レベル6、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》よ。このカードがシンクロ召喚に成功したことで1枚ドローよ。」

 

淀みないのあの手つきにみくは嫌な予感を抱えながら見守る。その手札に手札誘発はなにもない。

 

「引いたカードはもちろん、さっきゾンビキャリアで戻したカード…《インフェルニティ・デーモン》よ。」

 

「やっぱりにゃ…。インフェルニティの過労死担当…。」

 

「手札がこのカード1枚だけの時、デーモンは特殊召喚出来るわ。そして《インフェルニティ》カードをサーチできる…。《インフェルニティ・ネクロマンサー》を手札に加えるわ。さらに伏せていた魔法カード《愚かな埋葬》でデッキから《ヘルウェイパトロール》を墓地に送るわ。そしてゾンビキャリアとデーモンでシンクロよ。レベル6、2体目のチャージ・ウォリアーね。」

 

「またにゃ…。」

 

どうせここからランク6でしょ?と今まで何度もみた流れを感じて辟易、といった様子のみく。しかし今までとはどこか違った様子をのあは見せる。

 

「さっき引いた《EMブランコブラ》をペンデュラムスケールにセッティングよ。そして墓地のヘルウェイパトロールを除外して手札のネクロマンサーを特殊召喚するわ。ネクロマンサーの効果で墓地のデーモンを蘇生し、デーモン効果でデッキから二枚目のネクロマンサーをサーチするわね。」

 

「うわぁ…。」

 

「2体のチャージウォリアーでエクシーズよ。ランク6、《永遠の淑女 ベアトリーチェ》をエクシーズ召喚するわ。ベアトリーチェの効果発動よ。オーバーレイユニットを消費して、デッキから《インフェルニティ・デーモン》を墓地に送る。そして手札からネクロマンサーを召喚して、さっき墓地に送ったデーモンを蘇生、デーモン効果で《インフェルニティガン》をサーチするわ。」

 

「来ちゃった…。」

 

次々と展開される怒濤のデッキにみくももはや言葉を失い、そばにいるアナスタシアも見守るしかなかった。

 

「そしてネクロマンサー2体でオーバーレイ、エクシーズ召喚、《M.X‐セイバー インヴォーカー》!」

 

「…はっ!?」

 

「そしてインヴォーカーの効果発動よ。」

 

「なーんでインヴォーカーなんて入ってるにゃあ!!」

 

みくからの突っ込みも我関せずとばかりにのあは展開を続ける。

 

「デッキから《アマゾネスの射手》を特殊召喚よ。」

 

「あ…終わったにゃ…。」

 

「アマゾネスの射手の効果発動よ、ベアトリーチェとインヴォーカーをリリースして1200の効果ダメージを与えるわ。そして手札から《インフェルニティガン》を発動、そしてインフェルニティガンを墓地に送って墓地からネクロマンサーを2体蘇生するわ。1体目のネクロマンサーで墓地からデーモンを蘇生、デーモン効果で《インフェルニティ・ドワーフ》をサーチ。デーモン2体でエクシーズよ。《キングレムリン》をエクシーズ召喚して効果発動よ。デッキから爬虫類族モンスターをサーチ、《EMリザードロー》を手札に加えて、ペンデュラムスケールにセッティングよ。これでレベル3、4のモンスターをペンデュラム召喚できるわ。」

 

 

 

その後、のあの展開は止まらず《ガガガガンマン》のバーンも交えてジャスト8000バーンによる先行ワンキルが行われた…。

 

 

「さぁ、みく。私の勝ちだけれど言いたいことはあるかしら?」

 

「ただのレギュレーション違反にゃぁ!!」

 

「ふふ、そうね。(よし楽しく話せたわね。)」

 

その後、にゃん・にゃん・にゃんの3人は寿司屋で親睦を深めるのであった。

 

 





(よし、楽しく話せたな。)



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第7話 古書堂の決闘者


細かく投稿していきます。




 

 

世のアイドルたちは個性的である。没個性すら個性とする彼女たちの中には、他に類を見ないような個性の持ち主も存在する。

探偵、スパイ、ナース、キャビンアテンダント、医者に弁護士などを筆頭に、趣味:失踪、出身地:海の向こうなど個性の嵐である。

そんなアイドルたちの中でも、内向的な者はいる。

 

「王の物語を語るとしましょう…。」

 

今日の光の相手、鷺沢文香もまた内向的なアイドルの枠に入るだろう。

いわゆるインドア派のビブリオマニアな彼女もまた、アイドルである。普段は古書堂に籠り読書に浸る彼女であるが、こうしてデュエルの為に外に出ることもある。

今回は新進気鋭の489プロではなく、業界大手の海馬プロの所属アイドルということもあって、光も緊張を隠せないでいた。

 

「《聖騎士モルドレッド》を召喚します。そして《聖剣クレラント》をモルドレッドに装備させ、効果を発動…。デッキから《聖騎士イヴァン》を特殊召喚し、モルドレッドが装備するクレラントを破壊、クレラントの効果でイヴァンに装備させますね。」

 

所有していた聖剣を取り上げられたモルドレッドは口惜しそうな顔をしてイヴァンを盗み見る。

聖剣を手にしたイヴァンの隣には相棒とも言える獅子が一頭佇んでいた。

 

「イヴァンの効果によって出現した聖騎士トークンと、イヴァンをリンクマーカーにセット…条件は戦士族モンスターを2体…!《聖騎士の追想 イゾルデ》をリンク召喚します…!」

 

そして文香のフィールドに二人の美女が現れると、1人の男の影がその場にゆらりと現れて消えた。

 

「リンク召喚!くっ、展開が早い!」

 

「イゾルデの効果で《聖騎士トリスタン》を手札に加えますね。そしてイゾルデのもう1つの効果です。デッキから《聖剣カリバーン》、《聖剣アロンダイト》、《天命の聖剣》、《聖剣ガラティーン》を墓地に送って、レベル4の戦士族モンスターをデッキから特殊召喚します。《聖騎士アルトリウス》を特殊召喚です。」

 

若いながらも屈強で精悍な騎士が姿を現す。モルドレッドも並ぶ彼の姿は逞しく、頼もしさを感じさせている。

 

「1ターンでこんなに大勢のモンスターを並べるなんて!文香さん、すごい!」

 

「ふふ、ありがとう…。では、アルトリウスとモルドレッドでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚、ランク4!《神聖騎士王コルネウス》」

 

素直に驚愕し称賛する光に、すこしこそばゆく思った文香は誤魔化すようにプレイングを続ける。

アルトリウスとモルドレッドの二人が渦の中に入れば、鎧に身を包んだ青年騎士が姿を現した。

 

「おー!カッコいいっ!」

 

「コルネウスを守備表示でエクシーズ召喚、カードを伏せてターンエンドです。」

 

「なら、私のターンだ!ドロー!」

 

光がバッとデッキトップに指を掛け、勢いよく1枚を引く。

 

 

 

 





ふみふみは割と聖騎士のイラストストーリー考察とかしてそう。


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第8話 HEROと聖騎士


仕事が再開できるようになったので、ぼちぼちゆっくり投稿していきます。


「さぁ、ヒーロータイムだ!」

 

シュパッ…っ!そんな効果音が似合うほどに鋭くカードを引き、6枚の手札を眺める光。

文香のフィールドには伏せカード1枚と、守備表示の《聖騎士コルネウス》が存在している。コルネウスの守備力は2500、融合さえすれば崩せる数字だ。

 

「私は《E・HERO ソリッドマン》を召喚!さらにソリッドマンの効果で手札から《E・HERO エアーマン》を特殊召喚だ!」

 

「さぁ、どちらの効果にしますか…?」

 

「もちろん、HEROのサーチさ!HEROはHEROを呼ぶんだ!来てくれ!《E・HERO ブレイズマン》! そして手札から《沼地の魔神王》を捨てて《融合》をサーチだ!」

 

手慣れた手付きでカードを手札に加える光、それを見てふむ、と文香が頷く。

 

「さぁ…!行くぞっ!《融合》発動! サイクロン!メタル! カモン!《E・HERO Great TORNADO》!」

 

2人のHEROの融合により、周囲に一陣の突風が吹き荒ぶ。バサバサと風が2人の髪を靡かせ、服が大きく音を立てる。

その風、突風渦巻く竜巻の中に、マントを靡かせるHEROが立っていた。

 

「グレイトトルネードは、相手モンスターの攻撃力と守備力を半分に出来るんだ!行け! タウン・バースト!!」

 

光の号令と共にGreat TORNADOは風を巻き起こす。ごうごうと激しい音を掻き鳴らすような突風は重厚な鎧に身を包んだ屈強な騎士でさえも身動きを封じられる程に場を支配する。

 

「さぁ、行くぞ!グレイトトルネードの攻撃! スーパーセル!」

 

「くっ……!?」

 

Great TORNADOの巻き起こす風にバサバサと肩からかけたストールが暴れ、文香の視界に干渉する最中、コルネウスはその風に打ち砕かれ、破壊されてしまった。

だがしかし、風が止んだフィールドには新たな騎士が立っている。

 

「戦闘で破壊された《神聖騎士王 コルネウス》の効果により、コルネウスをオーバーレイユニットとして、《神聖騎士王 アルトリウス》を特殊召喚しました。」

 

文香の場に立つアルトリウスは、重厚な鎧を身に纏うと共に、3本の輝く宝剣を握っていた。

 

「アルトリウスがエクシーズ召喚された時、墓地に存在する聖剣を3本まで装備することが出来ます。よって、墓地に存在するカリバーン、ガラティーン、アロンダイトを装備…!」

 

「そんなに1度に…!?」

 

盟友たちが手にした剣と自らの愛剣を握り締め、眼前のHEROに対して向けるアルトリウス、その瞳には力強い覇気が宿っていた。

 

「カリバーンとガラティーンの効果によって、アルトリウスの攻撃力は3700になります。」

 

「くっ…!」

 

光の手札は残り4枚、その内2枚を伏せてターンエンドを宣言した。

そして切り札を降臨させた文香へとターンが渡る。

 

「ドロー…、スタンバイフェイズにガラティーンの効果でアルトリウスの攻撃力は200下がります。これで3500ですね。」

 

「だが、それでも…ッ!」

 

「はい、Great TORNADOより上です。」

 

文香は4枚の自分の手札、そして光の伏せカードを見ながら考えていた。どうすれば光のHEROデッキを相手に押し通せるのか、と。

 

「まずは《湖の乙女 ヴィヴィアン》を召喚し、効果で墓地から《聖騎士 アルトリウス》を特殊召喚します。」

 

「チューナーがモンスターを復活させた!?」

 

「はい…そして、ヴィヴィアンでアルトリウスをチューニングします、湖の乙女が鍛えし剣を持ちて、外敵を打ち倒せ…シンクロ召喚!《魔聖騎士皇 ランスロット》!」

 

文香のフィールド、アルトリウスの隣に黒い甲冑に身を包んだ壮年の騎士が姿を現す。悪鬼のような形相の騎士は敵である光に対してはともかく、盟友であるはずのアルトリウスにさえ、敵意を向けていた。

手には赤い光を怪しく放つ聖剣を携え、殺意を持って剣を構えるその姿に、光は思わず身構えた。

 

「ランスロットのシンクロ召喚時の効果により、デッキから聖剣装備魔法をこのカードに装備させます。《聖剣 EX‐カリバーン》を装備…。」

 

「くっ…!このままじゃ…!(でもまだだ、伏せカードの1枚はドレインシールド…、アルトリウスの攻撃はこれで凌いでやる…!)」

 

「さらに、《聖剣 カリバーン》の効果でライフポイントを500回復させます。これで8500ですね…。」

 

文香のプレイングを見ている最中、光はチラリと右の伏せカードに目をやった。その視線を文香はじっと見つめ、一寸間を置いてから次の言葉に繋げる。

 

「アロンダイトの効果を発動します…。アルトリウスの攻撃力を500下げることで、光さんの伏せカードを1枚破壊させてもらいます。対象は、その右の伏せカード…。」

 

「なっ!?そんな…っ、くぅ!!」

 

文香が破壊したのは《ドレインシールド》、光がこのターンを凌ぐ為にあてにしていたカードだ。

ピンポイントで防御札を割られた光は驚きの色を込めた視線で文香を見やる。

 

「一瞬の視線…それがあれば多少は読めますよ…?」

 

「そういうことか…!くっ、やられた…!」

 

「さて…アロンダイトの効果で攻撃力は下がりましたが、それでもまだ3000あります…。バトルフェイズです。」

 

防御札を割られた光、そんな彼女に対して聖騎士が襲いかかる。

 

 

 

 

 





それではまた次話でお会いしましょうノシ


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第9話 フェイバリットヒーロー


更新です、いぇい


「先ずはアルトリウスの攻撃、トルネードに攻撃しますね。」

 

「TORNADOの攻撃力は2800…力及ばず、か…!ぐっ…!」

 

アルトリウスの振るう聖剣の一撃、それはHEROの肉体さえも軽々と切り伏せ、着実なダメージを与える。

そして続いて、がら空きとなった光へと裏切りの騎士と二人の乙女が襲い掛かった。

 

「つぅ……っ!!効くなぁ…!」

 

アルトリウスから200、ランスロットとイゾルデのダイレクトアタックで3700の戦闘ダメージを受けた光は歯を食い縛って文香へと視線を向けた。

 

「残り…4300か…ふっ、まだまだへっちゃらさ!HEROは追い詰められてからが本番なんだ!ドロー!」

 

デッキトップの1枚を加え、手札は3枚、フィールドには伏せカードが1枚だけである。

そして手札から魔法カードを発動した。

 

「魔法カード《融合回収》!墓地のエアーマンと融合を手札に加える!そして、私はライフを半分払い《ヒーロー・アライブ》を発動だ!来い、《E・HERO シャドーミスト》!!」

 

ライフを2150まで削った光の元に、突如としてシャドーミストが現れた。

そしてその力によって光はデッキから1枚のカードを手札に加える。

 

「シャドーミストが特殊召喚されたことで、私は《マスク・チェンジ》をサーチ!…よし、いける!!」

 

「私のモンスターを突破する、ということでしょうか…。まさか、またトルネードを?」

 

「そうできれば簡単なんだけど、私のエクストラデッキのモンスターはみんな一枚だけ!唯一無二のHEROたちさ! 私はブレイズマンを召喚して効果発動!デッキから《E・HERO プリズマー》を墓地に送り、ブレイズマンはその属性とステータスをコピーする!!」

 

デッキからカードを1枚引いた光は淀みない手付きでデュエルディスクの墓地へとカードを収め、きっと真正面を見つめる。

その目には倒すべき、3体のモンスターが映っていた。

 

「リバースカードオープン!《活路への希望》!!ライフを1000払い、私と文香さんとのライフの差が1000につき1枚ドローする!」

 

「私のライフは…8500…!つまり…」

 

「あぁ、7枚ドローだ!!どんなに絶望的な状況だろうとも、希望を手繰り寄せる!!」

 

デッキから7枚のカードを手札に加えた光はニィと笑う。それは黒幕を相手に不敵に笑うヒーローのようであった。

 

「魔法カード、融合を発動!シャドーミストと光属性になったブレイズマンを融合!!頼んだぞ!私のエース!《E・HERO The シャイニング》!!」

 

フィールドのブレイズマンとシャドーミストが光の渦に飛び込んだかと思えば、目映い光を背に背負い、後光を放ちながら一人のHEROがフィールドに舞い降りる。

その光に文香が目を奪われている最中、ビルがフィールドを多い街を形成し、一陣の突風が吹いた。

 

「さらに私はフィールド魔法《摩天楼2-ヒーローシティ》を発動!これによって、このデュエルで戦闘破壊されたHEROを呼び戻すことが出来る!もう一度、戦場に舞い戻れ!Great TORNADO!!」

 

「く……ですが、トルネードのモンスター効果は融合召喚された時のみ…、私のモンスターの攻撃力は下がりません…!」

 

吹き荒れる突風に前髪やストールが暴れ、文香はそれを押さえながら前を見る。

 

「そして!私は装備魔法《フェイバリット・ヒーロー》をシャイニングに装備させるっ!!このカードを装備したHEROは自身の守備力を攻撃力に加えるんだ!」

 

「なら、トルネードに装備させた方が数値は高くなるはずじゃ…!」

 

文香の言葉に光は真っ直ぐ前を見て口を開いた。

 

「数字とかの話じゃない!私が好きだからそうするんだ!行くぞ、HEROタイムだ!!」

 

光の言葉を受け、2人のHEROが戦う意思を見せる。それに触発されたかのように文香のフィールドを守る2人の騎士も携える聖剣を構えた。

 

「行け、Great TORNADO!イゾルデに攻撃だ!スーパーセル!!」

 

「くっ、通ります…!!」

 

イゾルデに対して放たれた暴風は容易く周囲を吹き飛ばし、イゾルデを撃破する。

これにより、文香のライフは7300となった。

そして、続いてシャイニングの攻撃、高く飛び上がったシャイニングはそのままアルトリウスへと飛び掛かる。

 

「行けっ、シャイニング!オプティカル・ストーム!!」

 

「迎え撃って、アルトリウス!」

 

「さぁ、何もないなら私は手札から効果発動だ!」

 

「まさか!」

 

光の言葉に次の行動を察した文香が目を見開いて光の手札へと視線を向ける。

次の瞬間、光は手札の一枚を墓地へと送った。

 

「オネスト発動!これにより、シャイニングの攻撃力はアルトリウスの3000分上昇する!」

 

「……っ!!くぅ…!」

 

オネストによって上昇したシャイニングの一撃はいとも容易くアルトリウスを撃破し、決して浅くはないダメージを文香へと与えた。

これにより文香のライフは2700、だが光のフィールドにはもう攻撃出来るモンスターはいない、凌いだ。そう文香が安堵した瞬間、シャイニングはランスロットへと飛び掛かる。

 

「なぜ…っ!?」

 

「《フェイバリット・ヒーロー》は装備したHEROが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、自身を墓地に送ってもう一度攻撃させることが出来るんだ!」

 

フェイバリット・ヒーローによる上昇分は消えてもオネストによる強化は残ったまま、つまりシャイニングの攻撃力は5600、対するランスロットは2100だ。

この攻撃が通れば文香は敗ける、そして今まで微動だにしなかった文香のリバースカードが動く。

 

「罠カード、屑鉄のかかし…!その攻撃を無効にします!!」

 

「なっ!!」

 

止めた…!凌いだ…!今度こそ凌いだ…!もうこれ以上の追撃はない…そう文香が胸を撫で下ろし、安堵の吐息を漏らす。

手札は十分に残っている、これならば巻き返しはおろか、残りライフあとわずかの光のライフを削りきり、勝つことも用意だ、そう文香は思っていた。

チラリと視線を向けた先、フィールドを真っ直ぐに見つめる光の表情は爽やかな笑顔だった。

 

「まだ、私のバトルフェイズは終わっちゃいない!忘れてもらっては困るな!速攻魔法《マスク・チェンジ》!!」

 

「……っ!それは…!!」

 

今の今まで忘れていた…活路への希望による大量のドローや、大型HEROの召喚、フェイバリット・ヒーローによる超強化で、霞んでいた記憶。

このターンの最初、ヒーロー・アライブによって特殊召喚したシャドーミストがサーチさせたカード…《マスク・チェンジ》だ。

 

「私はThe シャイニングをリリースして、このHEROを召喚する!来てくれ、私のフェイバリットヒーロー!変身召喚!《M・HERO 光牙》!!」

 

並び立つビルの上、摩天楼の頂点から逆行により姿を眩ませたHEROが降り立つ。

鋭い牙を思わせる武器を携えた、黄金のHEROの誕生である。

 

「光牙は相手フィールドのモンスター1体につき、自身の攻撃力を500ポイント上昇させるっ!文香さんのフィールドにはアルトリウスのみ、よって光牙の攻撃力は3000だ!」

 

「攻撃力3000!」

 

「行けっ!光牙!レイザー・ファング!!」

 

光牙は光の掛け声と共に猛然と走り出す、まるで獅子が獲物を追い詰めんとするかのように獰猛で荒々しく尚且つ繊細に、標的目掛けて飛び掛かる。

 

「ですが!ランスロットの攻撃力は2100、攻撃力3000の光牙では私のライフには届きません!」

 

「それはどうかな!」

 

「えっ?!」

 

文香の言葉にニィと口角を吊り上げた光、そして墓地に手をかけると1枚のカードを取り出した。

 

「光牙は戦闘を行う時、墓地のHEROモンスターを除外することで、そのモンスターの攻撃力分、相手モンスターの攻撃力を下げることが出来る!私が除外するのはThe シャイニング!これでランスロットの攻撃力はゼロになる!!」

 

「そんな…っ!!」

 

光牙の放つ鋭い一撃、目映い閃光と共に駆け抜けた一撃はランスロットを葬り、文香のライフをゼロにした。

自らの敗北を確認した文香は目を閉じて一息着くと、目の前の少女へと視線を向ける。

年相応に無邪気に笑う光は、文香へ駆け寄ると頭へと掲げた右手を文香へと伸ばした。

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったよ!文香さん!」

 

「ガッ、チャ…?」

 

無邪気な笑顔の光に対して、言われたことの整理がつかない文香は思わず呟いてしまった。

指摘を受けた光は少し照れ臭そうに頬を掻くと、またニッコリと口角を吊り上げる。

 

「私の師匠からの受け売りなんだ!師匠の真似してるうちにデュエルが面白くてたまらない時に口にするようになったんだ!」

 

「そう、だったんですね…。」

 

また1つ、デュエルを通して友情が芽生えた。

光の歴史にまた1ページ、新たな友達が加わることになる。

 

 

 





ではまた次回~


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第10話 99プロのアイドル龍崎薫ちゃんはお料理が好き


更新したぞい
いぇい




 

 

 

 

この世界には多数のアイドル事務所が存在している。

自身の業務を部下にほっぽってデュエル武者修行の旅に出かける社長が興した1160プロや、元プロの社長兼チーフプロデューサーが、同級生やその後輩たちを誘って作られたという318プロ、かつての仲間たちがまた集い、リーダーを中心にプロダクションになった489プロなど、様々である。

 

「ノーコンテニューでクリアするよ!」

 

「行くでございまーっ!」

 

「頑張るでごぜーますよー!!」

 

今日のライブバトルは573(コナミ)プロ所属のゲーマーアイドル、三好紗奈と99(ツクモ)プロ所属、元気溌剌なお料理好きアイドル、龍崎薫、そして薫の応援に駆けつけた同じプロダクションの市原仁奈だ。

 

「私の先行!…くぅ、《一時休戦》発動!これでお互いドローするよ!」

 

「やった!ドローっ!」

 

「さらに《カードカー・D》を召喚、効果発動!Dをリリースして、二枚ドロー!」

 

「お、おぉー!すげードローするでごぜーますよ!」

 

先行から大量ドローをする紗奈におたおたと狼狽える仁奈だが、そんな仁奈に紗奈は苦笑いする。

 

「Dの効果でエンドフェイズに移行するね、ターンエンドだよ。」

 

あちゃぁ、と苦い顔をしながら紗奈はエンドを宣言し、薫へとターンが移る。

 

「ドロー!《ゴブリンドバーグ》を召喚しまーっ!」

 

「んげ…っ!ゴブリンドバーグってことは…」

 

「効果で手札から達磨落師さんを特殊召喚して、ゴブリンドバーグは守備表示になりまーすっ!」

 

薫が説明すると飛行機にのったゴブリンがばらばらとプロペラ機の音をさせながらフィールド上空から飛んできて一個のコンテナを落とし着陸する。

そのコンテナからは筋骨隆々のモンスターが姿を現した。

 

「今こそせんせぇから借りたモンスターを召喚する時っ!かおるはレベル4のゴブリンドバーグと達磨落師でオーバーレイネットワークを構築!!」

 

「ランク4!何が来るんだろ…99プロのプロデューサーは…確か…まさかっ!!」

 

2体のモンスターが飛び込んだオーバーレイネットワークの渦に視線を投げる紗奈はぶつぶつと独り言のように考えを纏めていた。

そして、その思考を遮るようにオーバーレイネットワークの渦から一本の白い柱が競り出す。

 

「お願いしまーっ!No.39!!」

 

「こ、このモンスターは、やっぱり!!」

 

白い柱から純白の翼が左右に広がり、拘束の解かれたように白い戦士がフィールドに舞い降りた。

 

「希望皇ホープ!!」

 

「やっぱり…あの伝説の決闘者のエースモンスター!!」

 

「さらに、かおるはホープに装備魔法《ホープ剣スラッシュ》を装備!そしてこーげき!行けー!ホープ剣スラーッシュ!!」

 

「ちょーっ!?」

 

がら空きとなっている紗奈に対してホープがその剣を握って斬りかかる。ぶんっと音を立てて風を引き裂いたその剣、だが紗奈はダメージを受けていない。

 

「なんでー!?」

 

「バグでごぜーますか!?」

 

ダイレクトアタックしたはずなのにダメージが通っていないことに驚いて声を上げる薫と仁奈にあはは、と紗奈が笑いながら頬を掻く。

 

「《一時休戦》はお互いがドローして、次のターンの終わりまでダメージを受けなくするんだよ、だから薫ちゃんの攻撃のダメージはゼロってこと♪」

 

「ふぇー…」

 

「そんな便利なカードだったでごぜーますか!」

 

ドローできることに目が向いて他の効果に目の行かなかった二人は感心しながら説明を聞いていた。

そしてやることのない薫はカードを1枚伏せてからターンエンドし、返すは紗奈のターン。

 

「ドロー!…よしっ!《苦渋の決断》を発動!デッキからレベル4以下の通常モンスターを1体墓地に送りその同名カードを手札に加えるよ!《超時空戦闘機 ビック・バイパー》を墓地に送り、おんなじ名前のカードを手札に加えて、そのまま召喚するね!」

 

「ただの通常モンスターでごぜーますか?」

 

召喚されたモンスターを見て、仁奈が首を傾げると紗奈はチッチッチ、と指を振る。

 

「ステージスタート!行くよ!《オプション》を手札から特殊召喚、さらに《地獄の暴走召喚》!これによって、《オプション》をデッキから2体特殊召喚!」

 

「おー!なんかたくさんいやがります!」

 

ふよふよと浮かぶオレンジの球体がビックバイパーの周りを飛び回り、ビックバイパーもまた紗奈の上空をゆったりと飛んでいた。

 

 

 





【ホープ】VS【超時空戦闘機】


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第11話 かっとビングだぁ!!


遅くなりました(土下座)
お、お命だけはお助けください(震え声)


 

 

「さーて、準備は整った訳で、これからステージ攻略の時間だよっと!」

 

手札とフィールドを眺めながら紗奈はぺろりと緊張で乾いた唇を舌で舐め、不敵な笑みを浮かべる。

 

「まずは装備魔法《団結の力》をビックバイパーに装備!団結の力は自分フィールドのモンスター1体につき800ポイントの攻撃力をあげるカード!これでビックバイパーの攻撃力は3200上昇するよ!」

 

「おー!めちゃくちゃ上がりやがります!」

 

「すっごーい!!」

 

みるみるうちに膨れ上がる攻撃力に、年少二人は目をキラキラとさせて驚く。

そんな無邪気な二人に紗奈はにこっと笑いさらに続ける。

 

「それだけじゃない!オプションの攻撃力は、フィールドのビックバイパーの攻撃力と同じになるんだよ!

これで私のフィールドのモンスター4体とも攻撃力は4400!!」

 

「そ、そんな攻撃力!やべーでごぜーますよ!!」

 

4400、ホープの攻撃力を容易く越えてきたこの状況におろおろと観客の仁奈は薫の顔を見る。だが、彼女の顔はまだこの事態をどうにか出来ると思っていたのだ。

 

「バトルだ! ビックバイパーでホープに攻撃!!」

 

「その時にホープの効果発動!オーバーレイユニットを1つ消費して、その攻撃を無効にするよー!ムーンバリア!

そしてぇ、モンスターの攻撃が無効になったから、ホープ剣カウンターが1つ乗って、ホープの攻撃力が3000にあーっぷ!」

 

「けど!それじゃあまだまだビックバイパーたちの攻撃力には及ばないよ!オプションで第2打!!いっけぇ!!」

 

「それも通さないよー!さっきオーバーレイユニットで墓地に送った達磨落師を除外して、ホープの効果発動!オプションの攻撃を無効にするでございまーっ!」

 

「うっそ!マジ!?」

 

2度目の攻撃も無効にし、ホープ剣スラッシュの効果で攻撃力を3500まで上昇させた薫はニヤリと笑う。

しかし、そんな薫の表情に紗奈のチャレンジャー精神が高揚していった。

 

「なら、もう一度!2体目のオプションで第3打!!」

 

「ホープ剣スラッシュをオーバーレイユニットの代わりで墓地に送って、攻撃を無効にするよーっ!まだ、通さないもん!!」

 

「くぅ!硬いなぁ!でもまだまだ、ホープの攻撃力を上げてた装備魔法はいなくなったし!最後のオプションで第4打ぁ!」

 

「最後のオーバーレイユニットで、効果発動!その攻撃を無効にするもん!!」

 

ホープに残った最後のオーバーレイユニットも惜しげなく使い、このターンの攻撃を全て防いだ薫はふぅ、とそこで息を大きく吐いた。

4000を越える攻撃力の怒涛の4連打、318プロにいる北条加蓮でさえ、そう易々とは出来ない芸当である。それを目の当たりにした緊張は計り知れないだろう。

攻撃を終えた紗奈は手札から一枚を伏せてターンを終える。

 

「か、かおるのターンっ!!ドロー!」

 

自分のターンを迎えたものの、ここであの布陣をどうにかしないことには、薫に勝利はない。

頼みの綱であるホープにオーバーレイユニットはなく、自身の効果で次に攻撃を受ければ無条件で破壊されてしまう状態…、一方の紗奈はオプションとビックバイパー4体のなかから2体でも攻撃を通せば勝てるという状況。手札の枚数こそ悪くないものの、それでも誰が見ても紗奈が有利と思うだろう。

 

「か、薫はカードを2枚…伏せるでございまー…す」

 

「なら、私はリバースカードを使うね。本体狙いで勝つ、なんてさせないよ!《安全地帯》発動!対象はビックバイパー!これでビックバイパーは戦闘、効果で破壊出来ないよ!」

 

「っ、ぅ…た、ターンエンド…!」

 

さっきまでとは打って変わって弱気な声を漏らして宣言する薫。さっきとは状況が大きく違うからだ。

紗奈のオプション軍団は、フィールドにビックバイパーが存在しなくなったとき、一網打尽に破壊される。だから薫はビックバイパーを破壊するだけで突破口を開けるはずだった。

が、紗奈の発動した永続罠、《安全地帯》はそれを許さない。このカードは、フィールドのモンスター1体を対象に、そのモンスターが戦闘と効果では破壊されなくなるようにするカードだ。これにより、《地砕き》や《地割れ》のようなモンスターを簡単に破壊してしまえるカードによる強引な突破は出来なくなったのだ。

 

「ふふーん♪さぁて、行くよ!伏せカード3枚、今度も防げるかな?」

 

「ぅ…!」

 

伏せられている3枚のカードをチラリとみれば、また乾いてきた唇を彼女は舐める。安全地帯がある限り、サンダーブレイクや、ミラーフォースのような破壊効果での除去…さすがにミラーフォースであればオプション軍団が壊滅するが、それでもビックバイパーは残る。

その状況、弱気に振る舞う薫を見て、紗奈は攻め時と確信した。

 

「行け!ビックバイパー!攻撃だ!」

 

「その攻撃に、リバースカードを発動!《星遺物を巡る戦い》!」

 

「えっ!?」

 

紗奈が攻撃し、ビックバイパーが光弾を放とうとした瞬間、薫のフィールドにいたホープが姿を消した。

そして、それと同時にビックバイパーの攻撃力が、オプション軍団の攻撃力がみるみるうちに下がっていく。

 

「《星遺物を巡る戦い》は、自分のモンスターをエンドフェイズまで除外して、その攻撃力だけ相手モンスターの攻撃力を減らすよ…!」

 

「なんだって!?それじゃあ、ビックバイパーたちの攻撃力は…1900!?」

 

ビックバイパーデッキの弱点の1つを突かれた形となった。

安全地帯などでビックバイパーを守っても、その攻撃力自体を下げられた場合、このデッキは攻める力を大きく削ぎ落とされるのだ。

 

「けど!まだ攻めれない訳じゃない!ビックバイパーの攻撃対象を薫ちゃんに変更、ダイレクトアタック!!」

 

「ひゃぁぁっ!?」

 

「まだまだ!オプション軍団でダイレクトアターック!」

 

「きゃぁぁあっ!?」

 

都度4回、攻撃力1900のモンスターによるダイレクトアタックの連打によって、薫のライフは風前の灯、400まで大きく減らされてしまった。

 

(…防御手段は…引けなかったけど、ブラフに伏せておこう…攻撃力は1900に下げられたけど私のライフはまだ減ってない。それに薫ちゃんの手札は次のドロー含めて2枚、私のエンドフェイズに帰ってくるホープしかモンスターはいない…なら、凌げる!)

 

「私はターンエンドだよ、エンドフェイズに薫ちゃんのフィールドにホープが戻る、だよね?」

 

「そ、そうだよー!」

 

紗奈のエンド宣言と同時に、薫のフィールドにホープが帰還する。

紗奈の思考の通り、薫の手札は少ない。ドローフェイズに引いてもたった2枚。

対して紗奈のフィールドには攻撃力が下げられているとは言え、攻撃力1900の、いわゆる下級ラインを持ったモンスターが4体並んでいる。ホープの攻撃力はそれを上回るが、オーバーレイユニットがないホープでは壁にもなれないのだ。

 

「か、かおるの、ターン…!」

 

その事は薫も分かっている。そして、この状況から勝てる道筋があることも。

しかしその為にはあるカードを引かなくてはならない。残り30枚近くある、山札の中から、そのカードを抜き取るように、選び取るように、ドローしなくてはならない。

もし引けずにターンを流せば、敗北は必至…、ドローの為にデュエルディスクに伸ばした小さな手がカタカタと震えていた。

もし引けなきゃ負ける、引けなきゃ、とネガティブな感情が彼女の手を引き留めていた。

そんな彼女を見て、仁奈が思いっきり声を上げる。

 

「かおるちゃん!思い出すでごぜーますよ!プロデューサーの言葉を!」

 

「せんせーの、言葉…。」

 

「1つ!勇気を持って一歩を踏み出すこと!2つ!どんなピンチでも決して諦めないこと!」

 

仁奈の口にする言葉を聞いて、それまでネガティブな気持ちに囚われていた薫の瞳に光が戻る。そして右手を握りしめると、もう一度、震えの止まった手でデッキの上に指を置く。

 

「そして3つ!!」

 

「あらゆる困難にもチャレンジすること!それが、せんせーの、かおるたちの、かっとビングだぁ!!ドロー!」

 

堂々と胸を張って、デッキの一番上のカードを手札に加える。そのカードを見てむふーっと薫は顔を上げた。

 

「魔法カード、《オーバーレイ・リジェネレート》発動!このカードを、ホープのオーバーレイユニットにするよ!」

 

「ホープ復活でごぜーますよー!」

 

(落ち着け、落ち着け…ホープの攻撃力は2500…オプション軍団が攻撃されても600のダメージ…いや、ホープにはあのカードが、それでもまだ半分は残る!)

 

不測の自体でも慌てず騒がず、冷静に状況を分析する紗奈はまだ耐えられると踏んでいた。

薫の場にあるカードの1枚が例えそうだったとしても、8000あるライフを削り切れはしない。そう確信していた。

 

「まだまだもう一回!装備魔法、《ホープ剣スラッシュ》!装備だよ!」

 

薫は残った手札の1枚をホープに装備させ、これで手札はゼロ。ここを防がれれば恐らく次はない。しかし、薫に恐れはもうなかった。

 

「行くよ!バトルフェイズ!ホープでオプションを攻撃!!」

 

「っ、来るか?!」

 

バトルフェイズ、仕掛けてくるならここだ!と紗奈は思わず身構える。

そして攻撃する直前、ホープの周りを回っていたオーバーレイユニットが弾けて消えた。

 

「ホープの効果でホープの攻撃を無効にするね!これでホープ剣スラッシュの効果でホープの攻撃力は3000だよー!そして、モンスターの攻撃が無効になったから!伏せカードオープン!《ダブルアップ・チャンス》!!」

 

(やっぱりか…!)

 

「モンスターの攻撃が無効になったとき!そのモンスターの攻撃力を2倍にして、もう一回攻撃するでございまー!!もう1回!ごー!」

 

「つぅ…!!」

 

2本の剣を携えたホープが宙を舞うオレンジの光に迫る。そしてその刃が光を捉え、打ち据えれば爆炎とともに爆発し、4100のダメージが紗奈に与えられる。

 

(まだ、だぁ…!ライフはまだ半分ある!薫ちゃんのフィールドには攻撃を終えたホープと、1ターン目に伏せられてから使われてない伏せカードだけ…、1ターン目に…?!違う!使われてなかったんじゃない!使えなかったんだ…!!)

 

紗奈は自分の思考の短慮を呪う。あの伏せカードは今まで使う機会が無かっただけ…そう、つまり、守っている時には使えない。言い換えるなら、攻撃している時には使えるカードなのではないかと、今になって思い当たる。

そして、そんな紗奈の考えを裏付けるように薫はその伏せカードを発動した。

 

(トラップ)発動!《かっとビングチャレンジ》!!」

 

薫が発動したカードには、夕陽に向かってジャンプする少年の姿が描かれていた。

そしてそのイラストと同じように薫は手を掲げる。

 

「このターン、攻撃したエクシーズモンスター1体はもう1回、攻撃できるよ!!ホープ、もう1回だよ!ホープ剣ダブルスラーッシュ!」

 

「っ、うぁぁぁぁっ!?」

 

団結の力の効果が下がり、より攻撃力の下がったビックバイパーはホープの振るう2振りの剣でX字に切り裂かれ爆発四散する。

その衝撃を受けて紗奈の小柄な肉体は吹き飛び、ライフが消滅する。

 

「~っ!勝ったでごぜーますよー!!」

 

「やったー!!」

 

デュエルディスクから勝利を知らせる小さなブザーの音によって、勝利を実感した2人は大きくジャンプしてハイタッチする。

その横で爆風で吹き飛んだ紗奈はごろりと仰向けに天を仰ぐ。

 

「さっすがは、伝説の決闘者の…アイドル…一筋縄じゃいかないなぁ…」

 

 

 

 



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