ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令 (サイレント・レイ)
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第1話 初航海でピンチ………の裏

――― 横須賀女子海洋学校 ―――

 

 

 ブルーマーメイドとは、幕末の志士・坂本龍馬の姉・乙女を初めとした、海援隊士の妻女のみで結成された女子海援隊を開祖とした、海の治安を守る女性のみの国際機関(此れの男性版としてホワイトドルフィンも存在)である。

 そんなブルーマーメイド(略称:ブルマー)の将来を担う女子達を育成学校の1つである横須賀女子海洋学校では現在、第21期生の入学式からのクラス分け(と言うより教育艦への配属振り)からの自己紹介が終わり、間も無く初の海洋実習が行われようとしていた。

 

「…教官!!!」

 

 だが新編なった教育艦群……その1隻である陽炎級教育艦(嘗ての艦級は駆逐艦)『晴風』では、新入生への艦の引き続き行われてからの海洋実習の為に西乃島新島沖へ向けての出撃が行われようとした直前、岬明乃は自分達の指導教官である古庄薫と峰不二子の2人を探しだして駆け寄っていた。

 

「岬さん、どうしたの?」

 

「…あの……どうして、私が艦長なのでしょう?」

 

 どうやら明乃は自分が『晴風』の艦長に任命された事に疑問を感じているようだった。

 

「その、私は艦長になれる程の成績では…」

 

 況してや、此の『晴風』にはブルーマーメイドの名家にして横須賀女子海洋学校の校長・宗谷真雪の三女である宗谷ましろ(おっちょこちょいだが成績は超優秀)が搭乗していて、彼女は副長なのだから、自他共に明乃を艦長に相応しくないと内心で思う者はそれなりにいた。

 

「では聞くけど、貴女の理想の艦長とは?」

 

「…それは……船の中の、お父さん……みたいな。

船の仲間は家族なので!」

 

 明乃なりの理想の艦長像を元気に答え、その事で少し照れてた事もあって、薫は微笑んで“合格”と示した。

 

「では、そうなれば良いわ。

此の『晴風』の艦長に相応しいように…」

 

 (タダ)、明乃は薫の思いを察する事が出来なかったらしく、立ち去ろうとする彼女の背中をポカンと見つめた。

 だが直ぐにフォローとして、不二子が微笑みながら明乃の左肩に右手を乗せた。

 

「古庄教官はね、彼女なりに貴女を買っているんですよ」

 

 古庄の様な“スレンダー”な美人とは真逆に位置する、“グラマラス”な美人である不二子の美貌は同性でも惹かれてしまうらしく、明乃は不二子に顔をほんのり赤くしていた。

 

「それに女の子はね、危機的状況下で自分が思う以上の力を発揮するのよ。

それに、そうでなくても、頼りなかったら、周りがしっかりフォローしてくれる筈よ」

 

「…へ?」

 

 不二子が最後に小馬鹿にしたと思ったらしく明乃が変な声を漏らしたが、当の不二子は明乃にウインクをして立ち去っていった。

 明乃も彼女なりに2人の教官に期待されている事を察した様で『晴風』の艦橋に駆け足で向かっていった。

 

「…可愛い娘達ですね」

 

 自分の隣に来て笑った不二子に薫も同じ様に笑って頷いた。

 

「峰教官、リーダーとしては頼りないけど、周りから支えられる人が近くにいるのですか?」

 

「どうしてそう思うのですか?」

 

「いえ、先程の貴女は誰か前例がいるかの様に話していましたから」

 

「ふふふ……どうでしょうね…」

 

 不二子は薫の指摘に笑ってはぐらかした。

 

「それでは、私はこれで…」

 

「ええ、良い航海を」

 

 2人は『晴風』を降りて敬礼をし合うと、薫は艦長を務める大型教員艦『さるしま』に向かい、残留する不二子は施設内へ戻っていった。

 そしてその数刻後、『さるしま』を先頭として、学年トップで編成された大和級大型教育艦(嘗ての艦級は戦艦)『武蔵』が、更に他の教育艦群が続いて外洋に乗り出していった。

 横須賀女子海洋学校の所属艦艇が、若干おぼつきながらも艦列を整えて出港していく様を不二子以下の残留者達が揃って敬礼をしながら見送っていた。

 不二子は近くを過ぎていく『晴風』に変な笑みを浮かべた後に、敬礼を直していた。

 

 

 

 

 

 だが此の出港から大事件が起きるなどと、誰もが予想出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・数時間後 ―――

 

 

「『さるしま』より提供入電、“艦隊は予定通りに西之島新島に到着するも『晴風』と『武蔵』は落伍”との事です。

尚、『晴風』の落伍原因は遅刻だそうです」

 

 『さるしま』からの通信で、『晴風』の落伍原因が伝えられると、全員が揃って苦笑していた。

 と言うのも、『晴風』は次世代艦の為に高圧缶等の試作品を多数装備していた事が原因で、他の陽炎級と比べて異常に壊れやすくなっていたので、『晴風』は欠陥艦の烙印を押され、更に乗組員は基本的に成績非優秀者(要するに落ちこぼれ)ばかりだったからだ。

 此の為、此の場にいる者全員が『晴風』を馬鹿にしながら笑い合っていて、不二子もその1人であった。

 

「『さるしま』より急報……え!!?」

 

 だが此の後、全員の血の気が退く一報が入った。

 

「“『さるしま』が、『晴風』の攻撃を受けて大破、沈没しつつある”との事です!!!」

 

 まさかの一報に全員が一斉に「えっ!?」と叫んだ。

 

「学生から攻撃を受けたのか!!?」

 

「至急、海上安全整備局に連絡だ!!!」

 

「羽田港公安管理局より通信、同じように『さるしま』の通信を受けたそうです!!

早急の応対が求められています!!!」

 

 “そんなまさか”な出来事に、混乱に等しい騒ぎが起き始めていたが、只1人冷静であった不二子は周囲を見渡して誰も自分を見ていないのを確認すると、ゆっくりと後退して、無事(?)に退室すると廊下を走りだしながら右手の指輪の赤い宝石を垂直に回して口元に寄せた。

 

「…もしもし………今何所にいるの?」

 

 不二子の指輪は超小型無線機であり、通信先の人物は、彼女にとってはいつもの事だが、若干ちゃかしを入れながら所在を教えていた。

 

「…そう、まだ『大和』に行ってないのね。

ちょっと面白い事が起きたから、予定を変更して行ってほしい所があるの」

 

 不二子のほぼ拒否権の無い要望に相手は驚いていた。

 

「…“こんなハプニングは聞いてない”?

ハプニングは貴方の専売特許でしょ!!!

兎に角、私が色々するから、貴方達は行く準備をして!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ????? ―――

 

 

 暗い部屋で何所かの地下鉄の駅を映したバーチャル映像が展開される中、黒人系の大男が自分に向かってくる暴漢達を倒していて、最後の1人に膝蹴りを腹部に叩き付けて倒した直後に、バーチャルの列車が止まった。

 

「パーフェクトだ、キース。

ICPO(インターポール)をクビになっても、お前にだけは追われたくないな」

 

 バーチャルの列車を横切る形で、ICPO(International Criminal Police Organization:国際刑事警察機構)の本部長であるジャン・ピエールは大男ことキース・ヘイドンにスローテンポの拍手をしながら賛辞を送った。

 

「流石は傭兵上がりの事はある。

君なら必ずあの男を逮捕出来る筈だ」

 

 キースはジャンに意味ありげに微笑した。

 

「俺は殺しの訓練は受けたが、生きたまま逮捕なんてのは、どうも苦手でね」

 

「逮捕と言うのは建前だよ」

 

 仮にも警察機構では有ってはならない単語が出ていたが、疑いたい単語を肯定するかの様にジャンの側近がキースに大型で直方体型のアタッシューケースを差し出した。

 キースがそのアタッシューケースを開けると、そこにはアメリカ陸軍最新の自動小銃とコンバットナイフが入っていた。

 

「生死は問わない。

それが君を選んだ理由だよ」

 

 ジャンは邪な笑みを浮かべていたが、キースは自動小銃を取り出すと色々と確認をしてから自動小銃を身構えた。

 

「…で、俺が殺るのは何人だ?」

 

「先ずは先に言った4人だ。

だが状況が少し変わっていてね、報告ではあの男はブルーマーメイドの新兵の船を狙っているらしい。

だから、あの男に関与する者達ならば常識の範囲でやりたまえ」

 

 どうやらジャンは黒い企みを計画していて、とある人物達の抹殺に託つけて、近年からICPOと勢力圏争いを繰り広げているブルーマーメイドの没落も視野に入れているようだった

 キースはそんなジャンに笑いながらの目線のみで“了解”と示した。

 

「何か此方で用意する物があれば言ってくれ」

 

「……棺と墓石」

 

 キースはジャンに返しながら試射として前方の的に連射した。




 感想・又は御意見、或いは両方をお願いします。

 次回は一気に飛んで“ハイスクール・フリート”の第4話にあたる場面にいきます。
 そしてそこでドタバタしたら別方向に向かいます。


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第2話 乙女のピンチ………からの分岐

――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

 横須賀出港から1週間以上が経過した『晴風』はと言うと、『アドミラル・グラーフ・シュペー』の襲撃からの脱出した副長ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクの救出、『伊201』の夜襲を乗り越えてから、物資(特にトイレットペーパー)の不足を起こした為、明乃は和住媛萌(通称:ひめちゃん)、鏑木美波(通称:みなみさん)、伊良子美甘(通称:ミカンちゃん)の3人を従えて、ある意味で海洋貿易国たる日本らしい海上モールに行く為に、水上バイク・スキッパー2台に分乗してその入り口の水上バスターミナルに来ていた。

 当然、明乃達4人は『晴風』が撃沈許可が降りている程の指名手配状況なので、普段の白を主体としたセーラー服ではなく各々の私服で地元の女子高生に偽装していた……媛萌のがサングラスにマスク姿が逆に怪しさを出していたが…

 

「うはあぁー!!!」

 

「平和だ…」

 

 シャトルバスに乗り換えて、オーシャンモールに辿り着くと、明乃達は年頃の女の子らしい歓声を上げていた。

 

「お茶する時間は有るよね?」

 

「無いから!」

 

「あう…」

 

「んじゃ、入ろうか!」

 

 美甘だけでなく、艦長として気を引き締めさせるべきなのに先頭を切ってはしゃいでいる明乃でさえそうなのだから、今の自分達が指名手配犯と同類になりかけているのを完全に忘れているようだった。

 少なくとも媛萌は自分達の状況は分かってはいる様だったが…

 

「へぇ~…あ~れが、不二子ちゃんの教え子かぁ~…」

 

「ブルーマーメイドってだけに、まだまだ尻の青いガキどもだな」

 

「あらぁ~それ、シャレのつもり?

ちょっと寒いよぉ~…」

 

「……処で不二子の奴、なんでブルーマーメイドに入ってんだ?」

 

「さぁね。 坂本龍馬の財宝でも探ってんじゃねぇの?」

 

 此の為だろう、船着き場から駆け出している明乃達4人の背後を見つめる男性2人に全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同時刻・教育艦『晴風』 ―――

 

 

 一方の『晴風』はと言うと、オーシャンモールから離れた海域で停泊して、整備や応急処置を施しつつ、明乃達の状況に合わせての相応が出来るように待機していた。

 

「はぁ~…学校に帰ったら、私達怒られるのかな?」

 

「まさか停学とか退学とかにならないよね?」

 

「ブルマーになれないとか?」

 

…とか言ってはいたが、実際はほぼ休息タイムと化していて、その証として『アドミラル・グラーフ・シュペー』に破壊された第三主砲の脇で、杏仁豆腐等のお菓子を囲いながら談笑している女子達がかなりいた。

 しかも女子の一部はセーラー服ではなく水着を着ていたのだから言い訳のしようがなかった。

 

「無~い、無~い、だって宗谷さん、校長の娘さんなんだって」

 

「え、本当?」

 

「あ、校長も宗谷だ!」

 

 変に楽観的な意見が出て、その根拠が副長の宗谷ましろ(通称:しろちゃん)であったので、話題は彼女に変わった。

 そして間が悪いと言えようか、此の時に黒木洋美(通称:クロちゃん)と共にヴィルヘルミーナに艦内を案内している途中だった、ましろ当人が物影に辿り着いていた。

 

「え~、でも校長の娘なのに、ウチのクラス?

『武蔵』(横須賀女子海洋学校の成績上位者達が乗艦)とかじゃないんだ」

 

 此の発言、生真面目気質のましろが一番気にしていた事に直結していて、偉大すぎる母や優秀な2人の姉とのコンプレックスもあって、彼女に強烈な罪悪感を感じさせた。

 此の時のましろにとって幸いだったのは、彼女が此の事を顔に出した事で全てを察した洋美が直ぐに動いた事だった。

 

「余計なお喋りは止めない!」

 

 元々『晴風』乗員では怖い方で認知されていた洋美が突然背後からの登場に女子達が全員驚いていたが、更にヴィルヘルミーナも彼女に続いた。

 更に言うと、『アドミラル・グラーフ・シュペー』の副長であるヴィルヘルミーナは唯1人の2年生………つまり『晴風』乗員の最年長な事もあって、上官としては怖い方であった。

 

「此の噂好きのド腐れ野郎ども、修理する箇所が幾らでもあるだろう!!

取り掛かれ!!!」

 

 ヴィルヘルミーナのドスの効いた怒鳴り声に、女子達は「はい!!!」と答えながら蜘蛛の子を散らす様に走り去っていった。

 因みにヴィルヘルミーナは日本語を学ぶ為に、任侠映画“仁義がない戦い”シリーズを見て、更にはまった事で広島弁で日本語を話すようになってしまった。

 

「……気にしないでね、宗谷さん…」

 

 彼女達が去った後、洋美は直ぐにましろをフォローししたが、当のましろは顔を暗くし続けていた。

 だがそんな時に、ましろ達3人の足下で白い鼠が軽く走り回ってから去っていった。

 

「はぁ、鼠?」

 

 ヴィルヘルミーナが鼠に首を傾げたが、ましろが何の気なしに左を振り向くと、妙にデカイ猫………明乃に『晴風』大艦長に命じられた五十六がえらく気が入った表情で鼠を追う途中にいる自分達目掛けて突進してきていた。

 猫が苦手であるましろは五十六に驚いて悲鳴を上げながら後ろに尻餅を着いたが、その五十六は彼女の胸に体当たりをして左に急旋回して、そのまま何事も無かった様に鼠を追い掛けていった。

 

「宗谷さん、大丈夫?」

 

「…まったく、猫なんか乗せるから!」

 

 ましろは五十六と、その五十六の乗艦を許可した明乃に毒突いていたが、自分達が否応なしに巻き込まれた騒動の元凶がいた事に此の時は全く気付かなかった。

 そして自分達の予想を遥かに超える事態に向かう事も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

「お~めっとうーございま~す!

トォイレットペーパァ~…(いぃ~ち)(ねぇん)分の大当たぁ~り~!!!」

 

 夕暮れで空が赤く染まった時、明乃は買い物で得た1枚の券での福引きで、『晴風』が1番欲されていたトイレットペーパーを大量に手に入れていた。

 

「…艦長……じゃなくて、岬さん、凄!!」

 

「なんて運の良い。

抽選券1枚しか貰えなかったのに…」

 

 見事に賞の1つを当てて照れ笑いをしている明乃対して、美波は無反応であるも美甘が驚いて媛萌が呆れていて、係員2人の内の1人であるお婆さんが踊りに近いレベルの大袈裟な動きでベルを鳴らし続けていた。

 

「トイレットペーパーをまだ買わなくて良かったね」

 

「でも此の量、どうするんだ?」

 

 美柑は単純に喜んで気付かなかったが、美波の言う通りにトイレットペーパー1年分を『晴風』に運べる手段が簡単に思い付かなかった。

 

「ああ~その心配はご無用。

我々が責任もって実家に送りますよぉ~」

 

 もう1人の係員のお爺さんの好意に、明乃達4人はまさか此のお婆さんとお爺さんに『晴風』に運んで貰う訳にはいかず、“不味い”と思いながら集まって頭を寄せると少しの間、小声で話し合っていた。

 

「と、取り敢えず、持ってけるだけ、持っていきますので…」

 

「えぇ~…、そ~んなお気になさらずにぃ~…」

 

 媛萌の要望にお婆さんが反対していたが、当人達はさっさと1人2括り持つと足早に去っていった。

 

「おたっしゃでぇぇ~………っ!」

 

 そんな明乃達4人にお婆さんは机から身を乗り出して手を振っていたが、彼女達が去ったのとは反対方法の人垣の奥にいる、明らかに一般人ではない女性が3人いたのに気付いた。

 そして、その女性達は目線を合わせて頷くと明乃達4人が向かった方角に先回りし、お婆さんが振り向くとお爺さんも女性達に気付いていた。

 

「…行くか?」

 

「行っきましょう!」

 

 お爺さんとお婆さんがお互いの目線を合わせた直後、買い物帰りと思われる主婦がテントにやって来た。

 

「すみません、抽選を…」

 

「あ、すっみません!

もう賞品が無ぁくなったので、まぁた明日来て下さぁ~い!!」

 

 まさかの拒否に主婦は何かを言おうとしたが、お婆さんとお爺さんは素早く片付けると、老人らしからぬ速さで行ってしまった。

 

「「~~~!!!」」

 

「?……ひっ!!?」

 

 少しの間だけ硬直していた主婦が、下の方から呻き声が聞こえたのでテント内の床を覗いてみると、そこには男性2人が猿轡をされての両手足の何ヵ所かを縛られての丸い姿勢で寝っ転がっていた。

 

 此の間、明乃達は『晴風』に戻る為にバスターミナルに戻ろうとしていたが、直ぐ前の脇道からお婆さんとお爺さんが気付いた女性達が立ち塞がって睨んできたが、当の明乃達4人は女性達が何者なのか分からずにいた。

 

「貴女達『晴風』の乗員ね!?」

 

 此の問い掛けに明乃達は、女性達………部下2人を引き連れた平賀倫子二等監察官達3人の海上安全整備局安全調査隊こそが自分達が恐れていた正規のブルーマーメイドの隊員である事に気付いてギョッとした。

 

「…戦略的退却よ!!!」

 

「あ、皆待って!!」

 

 少し間をおいてから媛萌がトイレットペーパーを投げ捨てながら叫んで後ろに逃げ出して美甘と美波も続き、最後に明乃がかなり遅れて続いた。

 倫子達も明乃達の逃走に驚きはするも直ぐに追い掛け……媛萌が突き飛ばして尻餅を着いた男の子を状況を理解せずに介抱した明乃がブルーマーメイドに捕まりそうになった。

 

「あ、艦長!!!」

 

 美甘が他の2人と共に明乃に振り向いて叫んだら、倫子達が明乃を捕まえる直前に驚きながら硬直したを疑問に思ったら、3人の直ぐ脇をワゴン車………質実剛健な車体に広いニーズに答えられるから個人や企業、果てはテロリストにも御用達のトヨタ・ハイエースが過ぎ去って、車尻を振る急旋回(ドリフト)で明乃とブルーマーメイド達の間に割って入って横転直前までに傾いた後に元に戻って停車した。

 因みに明乃が助けた男の子は、ハイエースに驚いて直ぐに何処かに逃げていった。

 

「あ、良かった良かったぁ~…やっと追い付けましたよ」

 

「さ、さっきのお爺さん?」

 

 明乃はハイエースの助手から降りて自分の所に来て自分を立たせたのが、福引の所にいたお爺さんだったので、近くまで駆け寄った美甘達3人と共に驚いていた。

 

「あ~…危ない運転をして、すいませんねぇ~…歳は取りたくないもんですねぇ~…」

 

 同時に反対側の方の運転席からはお婆さんが降りて、頭を何度か下げながら警戒している倫子達の所に歩み寄っていた。

 

「いやぁやっぱり、ウチも在庫関連でねぇ、残りのトイレットペーパーをお届けしようと思いましてね…」

 

「爺ちゃん、今はそんな場合じゃなくて!」

 

 媛萌が状態を理解していない様に見えたお爺さんに思わず怒鳴った、当の本人は完全に無反応だった。

 

「心配なく心配なく。

此の際なので、トイレットペーパーは貴女達も一緒に、向こうの沖にいる『晴風』にお届け致します」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「…爺さん、何で私達が『晴風』の乗員である事と、『晴風』の居場所を知ってるんだ?」

 

 お爺さんの好意に美甘が素直に頭を下げたが、美波の指摘に全員が“えっ!?”とし、倫子達3人も同じようであった。

 否、むしろ倫子達はお爺さん(とお婆さん)が自分達が知らない『晴風』の居場所を知っていた為、衝撃度合いはより強かった。

 

「貴方達、何者なの!!?」

 

「ああ~、私はこう言うモンですぅ~」

 

 倫子達は明乃達4人よりも、此のお婆さんとお爺さんを警戒したが、当のお婆さんはマイペースに自分の名刺を差し出した。

 倫子が反射的に受け取ったその名刺には“琉婆朝清”と書かれていたが、同僚2人共々に読み方が全く分からずに眉間に皺を寄せていた。

 

「ああ、すみません。

此れはね、“ルバアァ~サァ~セイ”って読むんですよぉ~…」

 

「ルバア、サ………ん!?」

 

 完全に調子が狂っていた倫子達3人は、読み方を教えられて軽く納得したが、何かに気付いて硬直した。

 いや、倫子達3人処か、明乃達4人は勿論、野次馬根性で見ていた周囲の人間全員がお婆さんの名前に“まさか”と思って硬直した。

 人間全員が固まって波の音のみが聞こえる中で、お爺さんが此の間に明乃達4人をハイエースのトイレットペーパー満載の後部座に放り込む形で乗せ終わった後、倫子達3人が“錆びたロボット”みたいにゆっくりお婆さんに振り向いた。

 

「……こ……此れって…」

 

「……かなり崩してるけど…」

 

「……まさか“ルパンサンセイ”の当て字?」

 

「そうですそうです。

あのケチな泥棒のです」

 

 全員やっと気付いたが、僅かに変えてはいたが、此のお婆さんの声は明らかに女性のではなかったし、なにより喉をよく見たら女性には無い喉仏が存在していた。

 そしてなにより、お婆さんは擬態するのを止めたらしく、垂直寸前に曲げていた腰を元に戻し、どう言う構造だったのか分からないが、縮めていた両手足4体を元の長さまでに伸ばした。

 

「まさか、本人?」

 

「ええ、そうです。

だから、こんな事も!」

 

 お婆さんは返しながら“ニッ”と笑うと、3本のベルトを握った右手を翳した。

 倫子達3人は少しの間お婆さんのベルトに在視感を感じていたら、それが自分のベルトである事に気付いた直後に倫子達3人のスカートが揃って落ちた!

 

「…悪いね。

あの娘達は、ちょーーと、野暮用で借りるよぉ~!」

 

 下着丸出しになった倫子達3人が揃って悲鳴を上げながら股間を押さえ、同時に周囲の男性達が歓喜の雄叫びを上げた中、お婆さんは下品に笑ってハイエースの運転席に飛び乗ろうとした。

 

「待ちなさ………いぃ!!?」

 

 倫子がお婆さんの後ろ髪を咄嗟に掴んだが、お婆さんの顔の皮が伸びに伸び………文字通りに化けの皮首元から破けて脱げ、倫子が右手の中の化けの皮を少し見つめた後に驚いていた間に、お婆さんだった男性はハイエースの運転席に乗り込んで直ぐにエンジンを掛けた。

 

「なぁなぁなあぁ、言っただろう!!!

赤が有るって!!!」

 

「紫も有ったのに!!」

 

 助手席のお爺さんも、いつの間にかに顎髭を伸ばした素顔を晒してたった今、黒いソフト帽を被った直後、お婆さんだった男性は、派手に空転させながらハイエースを超信地旋回(スピンターン)をして、もと来た方角に急発進させた。

 自分達の状況を全く理解出来ない明乃達3人は仕切りに「え?」を言い続けていた。

 

「…次元大介……速打ちの名手」

 

「……次元、大介!!?」

 

「次元って、確か組んでる相棒って…」

 

「……“ルパンサンセイ”…」

 

 美波はお爺さんに化けていた者を冷静に見抜いていたら、超有名人である次元がバックミラー越しに微笑して肯定すると、明乃達はお婆さんの方の正体を否応なしに理解し、明乃はついさっき倫子達が言った正体に関する単語を思わず呟いた。

 しかも“猫より狭い額”“伸ばしに伸ばしたモミアゲ”“細長い猿顔”等の世界的にも間違えようの無い特徴が確認出来るお婆さんの真顔に在視感があるだけでなく、器用かつ一瞬の内に脱いで窓の外に捨てた変装衣装(同時に倫子達3人のベルトも)の下から代名詞的存在たる赤いジャケットを晒した事(蛇足ながら、赤ジャケットの下の青いカッターシャツの襟に通された桃色のネクタイを修正していた)で確定となった。

 

「「「…ルパン三世!!!」」」

 

「はあぁぁ~い♪」

 

 大量のトイレットペーパーに埋もれながら揺られる明乃達の目の前に世界一の大泥棒・ルパン三世が相棒と共に存在していた。

 此の為、捨てられて海に落ちた変装衣装とベルト3本は、ベルト3本は直ぐに沈んでいったが、変装衣装の方は海に浮かんで波に揉まれながら沖に流されようとしていたが、大勢の客達が海に飛び込んで変装衣装に殺到したので、変装衣装の争奪戦が起きていた。




 感想・またはご意見、或いは両方をお願いします。

 と言う訳で、前回で分かった人はいると思いますが、本作でのハイスクール・フリートのコラボ作はルパン三世であります。

 次回はルパン三世のテレビスペシャル初期のオープニング伝統行事であるカーチェイスをした後にハイスクール・フリート原作から逸脱します。


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第3話 ルパン三世でピンチ

 今回の投降前に、前話で明乃達の前に立ち塞がったブルーマーメイド達3人の内の1人を平賀倫子として、誤字だった“美柑”を正しい“美甘”に訂正しました。

 そして長くなりすぎたので、予定していたカーチェイスは次回に持ち越しとなりました。(オイ!!!)




 それでは本編をどうぞ!


――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

「なんじゃなんじゃ!?」

 

「何が起きた?」

 

 太陽が西の水平線の下に沈んで、夕焼け空が夜空に変わろうとしていた時、ましろは戻ってこない明乃達4人を時間面で怪しんでいた事から『晴風』乗員に配置に着かせるかで悩んで、思わずヴィルヘルミーナに振り向いた直後、前方の水平線の微かに見える先のオーシャンモールから警報が響いてきた為、他の乗員共々驚き戸惑いながら前方を凝視した。

 

「オーシャンモールで探照灯が多数投射開始!!!」

 

 更に艦橋のほぼ真上のマストに存在する見張り台にいる野間マチコ(通称:マッチ)が伝声管越しに叫んでの報せで嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 

「きっと艦長達が捕まったんですよ!!」

 

 当然『晴風』クラスに取っての悪い予感は納沙幸子(通称:ココちゃん)が叫んだ通り、明乃達4人が捕らわれてのブルーマーメイドの襲来でしかなった。

 だからと言って、幸子は記録員・書記としての『晴風』幹部の1人である以上は、知床鈴(通称:リンちゃん)が涙目で怯えた通りに先のは少し不謹慎としか言い様がなく、そのまま妄想による“立て籠った明乃達4人をブルーマーメイド達が説得する”との1人劇を演じていた事もあって、ヴィルヘルミーナに注意されていた。

 

「……やっぱり、私が行くべきだった…」

 

 まぁそんな幸子は兎も角、ましろは艦橋前方に寄ってオーシャンモールを睨んでいたが、此れは後悔からではなく、理想の艦長像等で“水と油”状態の明乃を非難しているからであった。

 

『宇田です!!

電探(レーダー)にスキッパーや警備艇と思われる小型艇を多数確認しました!』

 

 そんな時に、『晴風』の電測員(レーダーマン)である宇田恵(通称:メグちゃん)の報告が伝声管を通じて艦橋に伝えられた為に、全員が“来た!”と思った。

 

「白兵戦をするか!?」

 

 此の報告に、西崎芽依(通称:メイちゃん)が過激と思わせる意見を出しながらサブマシンガンを構える真似をしたが、直ぐにましろとヴィルヘルミーナに却下された。

 

「宇田さん、スキッパーの接近数はどれだけなの!?」

 

『それがおかしいんです!!

周辺海域に存在するスキッパーと警備艇の全てはオーシャンモールを目指しているんです!

『晴風』に向かってくる気配がありません!』

 

 だが彼女達の予想に反して、ブルーマーメイドが搭乗しているだろうスキッパー群は『晴風』を無視してオーシャンモールに全速で向かっている事が伝えられて、ましろ達は素っ頓狂な声を漏らしていた。

 

『八木です!!

ブルーマーメイドの通信を傍受しました!

此の海域にいるブルーマーメイド全員にオーシャンモールへの集合が発信され続けられています!』

 

「……オーシャンモールで何が起きた?」

 

 更に電信員の八木鶫(通称:ツグちゃん)が傍受した通信内容が伝えられて、もはやブルーマーメイドの行為に疑問しか感じられなかった。

 現にましろは学生4人にしては異様に騒いでいるオーシャンモールを疑問に思うだけでなく、ブルーマーメイドが自分達『晴風』にも傍受出来る程に混乱しているのを察していた。

 

「八木さん、通信でオーシャンモールに何が起きているか分からない!!?」

 

『いえ、通信で怒鳴り合いが起きていますから、そこまでは………え!!?』

 

 ましろは駄目元で鶫に質問して本人も否定的であったが、彼女は何かを聞いて伝声管越しでも分かる程に驚いていた。

 

『…副長、ルパン三世です!!!

此の騒ぎはルパン三世がオーシャンモールに現れた為です!!!』

 

 鶫に騒ぎの元凶は伝えられ、ましろ以下の艦橋要員どころか『晴風』乗員全員が揃って「ルパン(三世)!!?」と叫んでしまった。

 

「ルパン三世ってあの!!?」

 

「何故じゃ!!?

何故、アヤツがこんな所にいる!!?」

 

 ただ、ルパン三世の存在に騒ぎの原因を納得していたが、オーシャンモール・四国沖店にはルパンに狙われる程の宝石店や大手銀行が無いのに現れた理由を分からずにいた。

 特にヴィルヘルミーナは『アドミラル・グラーフ・シェアー』が母港出港前に、ルパンがドイツで騒動を起こしていた事を知っていたから、尚更であった。

 現にましろとヴィルヘルミーナはお互いの目線を合わせて驚き戸惑っていて、現実逃避の1つとして“ルパン出現はガセ”か“現れたルパンは偽者”と思っていた。

 だが実際問題、ネット社会による情報の獲得し易さもあってルパン(稀に仲間の次元か石川五右衛門のどちらか)の偽者や模倣犯は極めて多く、“ルパン三世は空想の人物で実際は存在しない”との極論もあるが、近年の日本だけでもルパンを犯人に仕立あげた盗難や強盗殺人がそれなりに起きていた。

 尤も“本物のルパン出現”との稀なケースがあるも、此れ等全てはICPOに出向しているルパン三世専任捜査官・銭形幸一警部によって偽装を見破られての真犯人逮捕で終わっていた。

 

「いえ、確かにルパンはオーシャンモールにいます!」

 

 だが、そんな思いは幸子の叫びで否定され、彼女は普段から持っているタブレットをましろ達に差し出した。

 タブレットには動画サイトが展示されていて、映像はスマホとかでの素人撮影の生中継がされていて…

 

「「「「ルパンだ!!!」」」」

 

…ほぼ一瞬であったが、車道の両脇に人集りが出来ている中を、ハイエースが猛スピードで駆け抜け………今までは反射して内部が見えなかったフロントガラスの奥にルパンが次元と共に強気の笑みの浮かべながら運転していた。

 動画が此れ1つだったらフェイク(偽装映像)と思ったかもしれないが、残念(?)ながら他にも別の場所で撮られた動画が多数、しかも中にはオーシャンモール・四国沖店の監視カメラをハッキングしたと思われる危ない物までが存在していたので、オーシャンモール・四国沖店にルパンがいる事は確実となった。

 

「…ルパンが此方に来たり、しないよね?」

 

「だとしたら、ルパンは艦長達を狙うかもしれません!…」

 

 鈴がルパンの存在だけでなく、そのルパンが『晴風』に来る事を予想して怯えていたが、幸子が悪乗りして“ルパンが明乃達4人を人質にしての『晴風』襲撃”との1人劇を演じていたのは無視して、艦橋要員全員が「無い無い」と言って否定した。

 まぁ此れは後々になって思い返したら、根拠の無しでの楽観論であったが…

 

「ルパンが派手な騒ぎを起こしているのなら、此の隙に戻ってこれたらいいんだが…」

 

 まぁルパンの存在にブルーマーメイドが気を取られているのなら、此の隙に明乃達が戻ってくるのを望まざるを得なかったが、直ぐに幸子のらしくない悲鳴で否定される事となった。

 

「副長、此れを見て下さい!!!」

 

 どうやら幸子は色々とオーシャンモールでのルパンの映像を確認していたらしく、彼女がその1つを展示させてタブレットを持ち返してましろ達に展示したら、“ルパンがハイエースしてダンケダンケ(要するに、幼女誘拐)!?”と書かれていたタイトルで………タイトルの意味を理解出来ないでいても、嫌な予感がしたが…

 

「「「…艦長!!?」」」

 

…撮影者の前をハイエースがドリフトで曲がる時、ルパンが座る運転席にしがみついた明乃が、急旋回の反動で若干吹き飛ばされながらも、ルパンに近付こうとしていた。

 更によく見たら、(ましろ達にとっては)何故かトイレットペーパーが満載された車体後部にて、美甘の手、美波の頭、媛萌の足、のと各々に思われるのがトイレットペーパーと共に転がっていた。

 

「まさか、納沙さんが言った通りに…」

 

「い、いえ、私は、そんなつもりで言ったつもりじゃ」

 

 まさかの自分が言っての1人劇が現実になった事に、鈴が怯えながら、ヴィルヘルミーナが睨んで、幸子に振り向いたが、当の幸子は驚き戸惑っていた。

 そんな幸子の罪状(?)は兎も角として、明乃達4人がルパンと共にして逃げ回っている事は衝撃でしかなく、ましろ達は動画に釘付けになっていた。

 

「10時の方角からスキッパーが1隻向かってきます!」

 

 此の為、マチコが『晴風』に向かうスキッパーに気付いて直ぐに報せ、更に恵もレーダー観測でスキッパーを同じように報せたが、ましろ達は全く反応しなかった。

 それでもマチコと恵は各々に怒鳴って報せ続けていたが、当のスキッパーは第一煙突部分左舷に豪快に接舷、搭乗者はスキッパーから飛び降りて『晴風』に降り立つとそのまま艦橋へ走った。

 

「何をしているの、貴女達!!?

危機的状況の艦長達を助けに行かないの!?」

 

「「「「…み、峰教官!!?」」」」

 

 扉を勢いよく開けて艦橋に駆け込んだのが、豊満な胸の谷間を晒す程に胸元を開いたウェットスーツを着た不二子であり、更に突撃銃(サブマシンガン)の定番に成りつつあるH&K MP5を肩に掛けてパンツァーファウスト(携帯式対戦車擲弾発射機)を多数下げたホルダーを腰に巻いていた事もあって、ましろ達は彼女の方に振り向くも、驚き戸惑うしかなかった。

 

「……峰?」

 

 只、ヴィルヘルミーナのみは不二子の容姿と性から何かのを思い当たろうとしていたが、不二子がましろ達の状況に溜息を吐いて諦めると、彼女達を無視して伝声管に張り付いた。

 

「両舷、前進ぜんそーく(全速)!!!

オーシャンモールに向け、急速発進!!!」

 

『え、え!!?

教官!!?』

 

 ましろ達がそうであった様に、突然の不二子の登場に機関長・柳原麻侖(通称:マロンちゃん)が他共々驚き戸惑っていたが、他の科を者達も同じ反応をしていた。

 

「待ちなさい、峰不二子!!!」

 

 更にましろ達を追い込む事態として、『晴風』が前進を始める直前、『晴風』に接近してきていたスキッパー3台が新たに現れ、どうやらマチコと鶇は此のスキッパー群を不二子の仲間と勘違いして艦橋に報告しなかった様だが、そのスキッパー群に搭乗するブルーマーメイド達が不二子に敵対している事が分かった。

 

「もう、しつこいわね!!!」

 

 だが不二子は直ぐにスキッパー群に反応、艦橋から飛び出し………本来命中精度が低い突撃銃なのにMP5の銃弾をスキッパー群に殆ど当てて牽制し、ブルーマーメイド達が怯んだ隙を突いてパンツァーファウストの1個を放って、スキッパー3台をまとめて吹き飛ばした。

 不二子の行為にましろ達は硬直してしまったが、ヴィルヘルミーナは不二子の事で何かを思い出して、不二子が艦橋に戻ると同時にすぐ脇の救助用の斧を手に取って彼女に走り酔ると、背後から不二子の左肩を掴んで斧を身構えた。

 

「……峰不二子、何故お主がブルーマーメイドとなっている」

 

「あら?

私が此所にいるのがおかしいの?」

 

「惚けるな!!!

ルパンの愛人と言われとる(ヌシ)が、ブルーマーメイドの教官なわけがなかろう!」

 

 ヴィルヘルミーナの言葉にましろ達は益々驚き戸惑っていたが、当の不二子は露骨に溜息を吐てから微笑んだ。

 

「何が可笑しい!!?」

 

「まだまだお子様だからよ!!」

 

 ヴィルヘルミーナが怒鳴った直後、不二子はしゃがんでヴィルヘルミーナの拘束を外すと、そのまま手を床に着けてのサマーソルトシェル(逆サマーソルトキック)で驚いて硬直したヴィルヘルミーナのの斧を蹴り飛ばした。

 ヴィルヘルミーナが蹴られた事に驚きつつ天井に突き刺さった斧に一瞬振り向いた隙を突いて、不二子はリンカーン大統領暗殺に使われた事で有名な小型拳銃デリンジャーを身構えた左手を向けた。

 更に、ましろ達がヴィルヘルミーナに同調する事に備えて下ろしていたMP5の引き金に人差し指を添えながら銃把(グリップ)を右手で握って即応可能にしていた。

 

「信じてとは言わないけど、今の私は貴女達を悪いようにしないわ。

先ずは岬さん達を助けに行くわよ!!!」

 

 不二子がデリンジャーを下ろした事もあって、ヴィルヘルミーナが不二子に歯軋りをしながら了解したと思われるが、ましろ達は状況を理解出来ずに硬直したままだったので、不二子が怒鳴って命令したら無意識のままに自分達各々の職務に入った。

 だが此の時、やる事が無くて黙って突っ立っている砲術長の立石志摩(通称:タマちゃん)がいつの間にかに握っていた、昼間五十六に追われていた鼠の存在だけでなく、その鼠が両目を怪しく光らせている事に気付いていなかった。

 また同時に、幸子のタブレットに映る動画では、ルパンが懐のホルダーから愛銃ワルサーP38を取り出すと安全装置を外してからスライド(銃上部)を大きく咥えて前後に動かして弾を装填、不適な笑みを浮かべながらハイエースの運転席の窓から身を乗り出して画面(自分を映す監視カメラ)に向けて発砲していた。




 感想またはご意見、或いは両方をお願いします。

 不二子って存在だけでなく世間的な知名度が謎と思っていて、“ルパン暗殺指令”でF1レーサーをやってた通りに突っ込み処満載な役職に着いてる事が多いですが、本作では不二子は上手く立ち回っている為に世間的な知名度は極めて低いとしています。

 只、此の事に関しては、現時点でルパンだけでなく五右衛門や次元の偽者が現れた“銭形警部”で、不二子の偽者(現時点ではまだ未登場)が現れたら変えるかもしれませんがね…

 最後に此の作品を書く事で致命的になりかねない問題として、本作ではルパンの声(とキャラ?)山田康雄にしないといけないと思われますが、世代的な問題でどうしても栗田貫一でイメージしてしまい、気を抜いたら栗田ルパンだったってのが多発しています。
 只、山田ルパン作品を見続ける等をして、頑張って山田ルパンにしようとしていますがね…


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第4話 カーチェイスでピンチ

 今回の投稿前に前話で不二子が持っていた突撃銃を“H&K MP5”としました。





 それでは本編をどうぞ!


――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

『お客様に申し上げます、当モールにルパン三世が現れました!!!

係員や警備員が誘導しますので、速やかに避難して下さい!!!

繰り返します!!!…』

 

 此の時のオーシャンモールはと言うと、上空で旋回飛行を続けている宣伝用の無人式飛行船に反してルパン三世出現の1報に全区画で大規模な騒動が起きていた。

 騒動と言っても、恐怖や絶望等の負の面のは全く起きておらず、むしろ逆の興奮や歓喜等の正の面のであり、現に避難を呼び掛けるアナウンスに逼迫感とは真逆の歓喜による興奮が感じ取る事が出来た。

 

「ルパンは何所だ!!?」

 

「あっちだ!!!

あの道を通るらしいぞ!!!」

 

「次元も一緒にいるらしいぞ!!!」

 

「何故か、女の子を複数連れてるってよ!!!」

 

 此の為、オーシャンモールの人々はアナウンスに反して、老若男女の誰もが逃げようとせずに、ルパンが現れるだろう車道に一斉に詰め掛けていて、それを警備員や警察官達が車道を挟んでの複列で必死に塞き止めようとしていた。

 そんな騒ぎの中、遠くの方で大多数の爆音が響きだし…

 

『ルパンだぁぁぁー!!!』

 

…警告灯を灯してのサイレンを派手に流すブルーマーメイド達が操る大量の、軍用車両の代名詞的存在たるジープと思われる車両を大量に後続にするハイエースが通る時に、その運転席でルパンが確認されると人々は、一部がカメラ機能を起動させたスマホを(カザ)しながらルパンに向けての歓声を上げていた。

 

「ルパァァァーン、私を拐ってぇぇぇー!!!」

 

「お宝は此所にいるわよぉぉぉー!!!」

 

 観客となった全員がルパンに歓声を上げ、中には自分の誘拐を求める不謹慎な女性が多数いたのだが、そんやルパン達を追い掛けるブルーマーメイドには誰も応援や歓声が一切無かった為に感じるアウェー(敵地)感を彼女達は各々の形で顔に出していた。

 まぁ此の事からルパンが少なくとも日本での信頼度の高さや愛されている事が見て取れた。

 

「待ちなさい、ルパァァァーン!!!」

 

「次、急カーブがあるわよ!!

気を付けて!」

 

「分かってるって!!!」

 

…否、先頭のオープン式の車のみは、乗っている倫子達3人が(客に取っては)何故かスカート無しの下着丸出し状態だった為に、男性の多数が喜びの雄叫びを上げていたが、それ以上に母親が子供(いれば“達”)の目線を覆ったり旦那を小突いたり、恋人の場合は顔を無理矢理背けさせて、やられた男性が痛めた首を押さえていた。

 まぁどうであれ、此の為にハイエース(ルパン)が単に通り過ぎるだけで此の騒ぎなので、流石にビヤホールに机や椅子を蹴散らしながら突入してきた時は逃げながらの悲鳴が多数有ったが、急な曲がり角をハイエースが見事なドリフトをした後に後続車の何台かが曲がりきれずに店舗に壁か硝子扉を突き破っての突入(ダイナミック入店)しての玉突き事故や、ハイエースを先頭に連絡橋をジャンプ台にして跳んだり等をしていたら、最早“爆音”と読んで等しい大歓声と大騒ぎが起きていた。

 

「“陸に揚がった河童”ってのは、人魚にも適用されるみたいだな、ルパン」

 

「かぁーぱぱぱぁぁぁー!!!」

 

 更に言うと、スペック上は明らかに性能で劣る筈のハイエースが後続車群を横並びすら許さない程に駆け抜けていたのだから、ルパンの操縦技能は神憑りレベルであり、逆にブルーマーメイドはと言うと、まぁルパンが煽ったり進路妨害等をしていた事も原因だったが、事故でのリタイアが多発させていた為、次元とルパンに馬鹿にされていた。

 

「ルパンはどうしました!!?」

 

「まだ逃げてます!

早く乗って!!!」

 

 だが、ブルーマーメイドは脱落者達を補填出来る以上の人間がまだまだ多数いて、現に海上にいた者達が自分(達)が乗るスキッパーや警備艇を次々にオーシャンモールの埠頭に接舷して直ぐに同僚が乗ってる物か、待機させていた物に乗り込んでルパン追走に参加していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今宵もまたつまらぬ物を切ってしんぜよう!」

 

……ブルーマーメイドが全員ルパン追走に参加した後、埠頭に誰か現れたような…

 

 

 

 

 

「なんだか、凄い数になってきたな」

 

「どうすんだよ!!?

このままだとオーシャンモールがブルマーで溢れかえるぞ!!!」

 

 追走する車両の数が増え続けて大多数になっていた事に、美波が頭上の手摺りを掴みながら窓から後ろを覗いて冷静に観測し、媛萌が頭を抱えながら叫んだ直後にトイレットペーパー諸共吹っ飛んでいた。

 

「良かったな、ルパン。

女好きのお前にしたら、コイツは最高の状態だろ?」

 

「俺は、素人の大人が好みだよ!!」

 

 だが当のルパンは次元と共に危険度が再現なく高くなっている現状を楽しんでいた。

 

「ルパンさん!!!

早く海に逃げないと、逃げれなくなりますよ!!」

 

「まぁまぁ、此処はオジさん達を信じなさいって!」

 

 だから海に逃げようとしない事に疑問を感じた事もあって、明乃がルパンに忠告したのだが、当のルパンは不適に笑うだけであった。

 

「気を付けろ!

舌噛むぞ!!」

 

「噛んっ、どぁ!!!」

 

 更に言うと、次元が明乃に急カーブに突入する事を注意したが、明乃でなく媛萌が舌を噛んで悶絶して美波に介抱されていた。

 

「…っ!

伏せろ!!!」

 

 だがその直後、ルパンが前方で何かを見付けて明乃の後ろに突飛ばしたら、フロント硝子の上部に穴が開いてバックミラーが吹き飛んだら、立て続けて穴が多数出来てフロント硝子が蜂の巣になった直後に中央部が崩れ落ちた。

 

「銃弾、発砲命令が下りたのか」

 

「良い根性してるぜ」

 

 幸い早期に気付いたルパンが注意を促し、次元と共に屈んだので明乃達4人と共に無傷、但し美甘が悲鳴を上げながらパニクったので明乃が落ち着かせていた中で、美波が冷静に分析したのでルパンに感心された。

 だが実際は発砲命令は出ておらず、現に追撃車群のブルーマーメイド達が各々に驚いていて、更にハイエースの前方から花壇をバリケード代わりにして自動拳銃(多分、軍用拳銃でお馴染みのペレッタM92)で銃撃したブルーマーメイド達6人も、本来なら前輪を狙ったのが誤った事もあって若干パニック状態になっていた。

 尤も銃撃したブルーマーメイド達は、次元が愛銃コンバットマグナム(現在名はモデルナンバー制の採用で“S&W M19”)で反撃、瞬時に拳銃を破壊されるか吹き飛ばされていた。

 

「……す、凄い…」

 

 しかも次元は6連射で全弾を狙い通りに当てたので、美柑達4人が感銘の溜息を揃って吐いていた。

 

「さて、面白くなってきた!」

 

 どうやら先の6人のが呼水になったらしく、追走車群だけでなく他からも銃弾が飛んできて、ハイエースの左のサイドミラーが撃ち抜かれて落ちようとしたのを次元は満面の笑み(と言っても、帽子で口しか見えない)を浮かべながら掴んで膝の上に置くと、ルパンと共に残ったフロント硝子全てを叩き落とすと、取り出した煙草を咥えて、いつの間にかに押し込んでいたシガーライターを取り外して煙草に火を着けた。

 只、シガーライターが絶命寸前になっている通り、煙草自体が世界的に殲滅されようとしていたので、明乃達4人が各々の形で次元の喫煙行為を嫌そうにしていた。

 

次元(じげぇ~ん)

 

「何だ?」

 

「俺にも1本くれ」

 

「あいよ」

 

 ルパンも釣られて煙草が欲しくなって、煙草を数度吸いながらコンバットマグナムの弾倉から空薬莢6本を落として新しい弾6発を手で1発づつ装填(スピードローダーを持ってないのか?)していた次元に要望し、明乃達4人が次元が新しい煙草を用意するとの予想に反して、次元は自分が咥えていた煙草をルパンの口に押し付けた。

 明乃達4人が次元の行為に「おお!!」と言っていたが、その間にルパンは先端の火が派手に燃えながら前進する程に煙草を深く吸って、紫煙を大量に吐いた。

 

「さぁ(マク)るぞぉぉぉー!!!」

 

 気合いを入れ直したルパンは更にアクセルを踏み、ブルーマーメイド達が速度を上げた事に驚いている中で、トランクの扉が全開してトイレットペーパーの束が次々に転げ落ちていった。

 ブルーマーメイド達は“ルパンの操作ミス”等と疑っていたら、そのトイレットペーパー群は数度跳ねる次々に爆発………まさかの出来事にブルーマーメイドの多くが驚いて運転ミスを起こして何割かが転倒するか激突していた。

 

「ぐふふふ、って!?

あらあぁぁ~!!?」

 

 ルパンが後続車群に下品に笑った直後、ハイエースの右下から破裂と思われる音がしたと思ったら、ハイエースが急に傾いて蛇行を始めた。

 

「タイヤがぁぁぁー!!!」

 

 媛萌が絶叫した通り、右前輪が撃ち抜かれて焼け焦げ変形したホイールが明後日(アサッテ)の方角に吹き飛んでいった。

 

「当たった!!」

 

 ルパンがハイエースを上手く運転出来ないでいる中、前方の十字路で車を使ってのバリケードを築いていたブルーマーメイド達は、対物狙撃銃“パレット M95”での狙撃に成功して歓喜の雄叫びを上げていた。

 

「来るわよ!!!」

 

「良い!?

ハイエースが止まったら、ルパンと次元を確保、学生4人を保護するわよ!」

 

 ブルーマーメイド達はハイエースの走行状態から“ルパン(と次元)は打つ手なし”と判断して、形がどうであれハイエースが止まり次第一気に制圧すると決めて、各々の銃を身構えてその時を待っていた。

 そしてハイエースがバランスを崩して右回転をしながら何度か跳ね、左の横倒しで滑った後に停止した。

 

「突入!!! 突入!!!

検挙せよ!!!」

 

 バリケードの内側で控えていたブルーマーメイド達が拳銃片手に飛び出し、追走車群も次々に停車して直ぐに飛び降りてハイエースに向かって走り寄った。

 

「捕まえたわよ、ルパン!!!」

 

「ルパン三世確保!!!

ルパン三世確保!!!」

 

 ハイエース横転の衝撃で失神してトイレットペーパーに埋もれた状態のルパンが真っ先が取り押さえられ、倫子達が唯一窓の外に出ていた右腕を捕まえた。

 処が倫子はそのままルパンを外に引摺りだそうとしたら、ルパンの体が妙に軽かった事に違和感を感じ…

 

『っ、ああぁぁぁー!!!』

 

…出てきたルパンの顔には、両目と鼻があるべき場所に“Lupin the 3rd(ルパン三世)”と大きく描かれていて、誰がどう見ても人形の偽者であった。

 

「次元も偽者です!!!」

 

 更に倫子の同僚・福内典子(彼女もルパンの所為でスカートを履いていないが、上着を腰に巻いてある程度代用)が仲間達と共に次元を引摺りだすも、ルパンのと同じ様に“次元大介”と書かれた人形の偽者だった。

 そして後部の明乃達4人もまた人形の偽者であり、各々の顔に“岬明乃”“鏑木美波”“和住媛萌”“伊良子美甘”と書かれていた。(服は本物だった上、字体から見ると、本人が各々書いたらしい)

 人形6体は馬鹿丁寧に作られた舌が口から伸びて上下に揺れていたが、ブルーマーメイド達にはそれが妙に腹立たしかった。

 

「…いつの間に、擦り変わったのよ!!!」

 

 倫子が怒りのあまりにルパンの人形を柔道の大技・大雪山(オロシ)で頭上に投げて怒鳴ったが、その人形が真上で大爆発を起こした為にブルーマーメイド達が悲鳴を上げながら逃げまとっていた。

 

 

 

 

 

「ぬほほほ!!!

チョロいもんだったぜ!」

 

 此の間、本物のルパン達はどうしてたかと言うと、ハイエースから脱出して逃げ込んだ裏路地で、出し抜きに成功したのを見届けていた。

 しかもブルーマーメイド達が見事に騙された事に、ルパンと次元は爆笑していて、次元に至っては笑いすぎて時折咳き込んでいた。

 

「あ~…良かった良かった」

 

「良い訳ないだろ!!!

何で服脱がなきゃいけなかったんだよ!!?」

 

「あの服、お気に入りのだったのにぃぃー!!!」

 

()りぃ悪りぃ、君達の分のをちゃ~んと用意してなかったのよぉ~。

落ち着いたら、オジさんが新しいぃ~服を皆にプレゼントしてあげるから、許してちょ」

 

 そんなルパンと次元と対照的に、人知れずだったと言え、ルパンに渡された人形に自分の服を着せた為に、ハイエースから下着姿で脱出した事に恥をかきかけた明乃達4人の顔が赤くなっていて、媛萌が怒鳴って右頬に紅葉(ビンタ痕)が出来てるルパンに抗議し、美甘はおそらく二度と戻ってこないだろう服一式を嘆いていた。

 尚、明乃達4人はまだ下着姿なのかと言うとそうではなく、何故かルパンが持っていた横須賀女子海洋学校のセーラー服(自分達各々のとは別物)を着ていて、ルパン達が移動しなかったのは、明乃達4人が着替えるのを待っていた事もあった。

 

「…処で次元、何で俺だけ()たれたんだ?」

 

「俺はお前と違って、女に嫌われる事をしてないからだろ」

 

「おうおう、流石は次元パパ」

 

「そんな呼び方をするな!!!」




 感想または御意見、或いは両方でも良いのでお願いします。

 今回の話ですが、カーチェイスからの『晴風』逃亡の話が予定の4倍以上になったので、分割処置を行ったのでその余波で幾つか話を弄っていまして、後半でのハイエースの横転する場面は、元々は“横転直前のハイエースからフィアット500が飛び出してそのまま逃げる”としていました。
 ですのでルパン原作ではプロローグにしか出なかったフィアット500は、出方と場面を丸ごと変更して次回に出て、ルパン原作よりはそこそこ活躍すると思います。

 尚、終盤でルパンが強制脱衣させられた明乃達4人の誰かにビンタされたとしていますが、それが誰なのかは読者の皆さん各々で決めておいて下さい。
 “何やらせてんだ?”と思われるかもしれませんが、“ルパン三世y”の話の1つでパンツ1丁のルパンと共に素っ裸で滑車で降りた不二子よりはマシな筈です。

 後、本編には直接書いてませんが、下着姿の明乃達4人がルパンと次元と共にハイエースを脱出する場面を納めた写真がちゃんとありますので、感想欄にコメントした読者の先着10名あたりにその写真をプレs(ドゴ!!!)………(写真が無い上に此処から先は血が滲んでいて読めない)


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第5話 裏路地でピンチ

――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

「ほんじゃま、また逃げますか」

 

 ブルーマーメイド達が検討違いな方向に次々に分散していたのを確認し、そして明乃達4人が不本意な脱衣からの着替えを終えた事から、ルパンは裏路地の奥へと走りだし、次元達5人も順に後に続いた。

 

「……先輩の皆様方、本当に御免なさい…」

 

 更に言うと、ルパンと次元の後ろの明乃は走りながら、あんまり関与していないと思われるが、ブルーマーメイド達に謝っていた。

 

「此の隙にルパン達から逃げた方が良いかな?」

 

「諦めた方が良い。

あれだけ騒ぎが大きくなったら、少なくともオーシャンモールを出るまでは、ルパン達と一蓮托生としていた方が良い」

 

「それに今ブルマーと会ったら殺されるよ…」

 

 走りながら美甘はこのままルパンと次元と行動をしていたら、自分達は完全に犯罪者と同等の存在と化す事を危惧してルパンと次元から別れようと一巡したが、美波に否定され、続けて媛萌の溜息を吐きながらの指摘で諦めた。

 

「「…ん!?」」

 

「っぎゅ!!!」

 

 だが、ルパンと次元は目的地直前のT字路を曲がろうとした直前に急に立ち止まった為、明乃が次元の背中にぶつかった。

 

「ルパンのおっちゃん、どうした、ん!!?」

 

「馬鹿!!!

下がってろ!」

 

 媛萌はルパンと次元の行動に疑問を感じながら2人の左脇から抜けようとしたら額を赤いレーザーポインターで照らされた事で驚いて硬直し、直ぐに前に立ちふさがったルパンに後退されながら、明乃達3人と共に自分達が銃で狙われている事を理解した。

 

「…ちょっと人魚姫(ブルーマーメイド)の皆様方ぁ、いくら俺でもデートの誘いにゃあ、コイツは強引だと思うぜ」

 

「残念だが、我々はブルーマーメイドではない。

それに此の状況下なら早めに手を打った方がいいだろ?」

 

「そうかもな」

 

 しかもルパンと次元が更に複数のレーザーポインターを向けられた事で、相手は複数人いるだけでなく、ブルーマーメイドやホワイトドルフィンとは別の者達がいた事が分かった。

 只、直接狙われてない明乃達4人が何時撃たれるか変わらない事からの恐怖を感じていたのに、何事も無い様に飄々と受け答えをするルパンから、なんとも言えない格好良さが見て取れた。

 

「…そのガキどもを渡して貰おうか?」

 

「ブルーマーメイドの雛とは言え、そこらの女子高生と同じガキンチョどもだぞ」

 

「それにコイツ等は、あの宗谷真雪の生徒どもだ。

下手な事をしたら、あの女の逆鱗に触れる事になるかもしれんから、止めたほうが良いぞ」

 

「そうそう。

じっちゃま(祖父様)のアルセーヌ・ルパン(ルパン一世)もよく言ってたぜ。

“御婦人方はおっかねぇ~から、怒らせるんじゃねえぞ”ってな」

 

 ルパンと次元は然り気無く瞬時に拳銃が抜けるようにしながら、冗談に近い事を言って相手の隙を伺おうとしたが、その相手群は暗い前方から歩み寄ってきて………ボディースーツにフルフェイスマスクとの潜入工作員の定番の黒い格好をして、レーザーポインターだけでなく銃口に消音器(サイレンサー)を着けたMP5を身構えた男達、その先頭の一際大柄の男性が次元の提案に笑った。

 

「じゃあどうして天下のルパン三世が、かの宗谷真雪から駄艦『晴風』と、その落ちこぼれ乗員達を盗もうとしているんだ?」

 

「いや別に、俺はな、とあ~る女剣士のハートをものにしようとしててな、ものに出来た女剣士をエスコートしてもらおうと此の娘達が欲しかっただけなんだ」

 

 美甘と媛萌が自分達と『晴風』を馬鹿にされた事にムッとしたが、明乃は前方で何かを見つけて、次元大介に右脇から慎重に覗いて確認し、男性達の後方の地面に血染めの女性の手が有るのを見つけた。

 

「しかし良いのかよ?

こんな所でドンパチなんかやったら、怖ぁ~いブルーマーメイドの姉ちゃん達が直ぐに押し寄せてくんぞ」

 

「我々がどうやって此所に来たか、分からんまでもないだろ?」

 

 しかも僅かに見える襟から女性がブルーマーメイドであり、更によく見たら似たような女性のが複数も有って、男性達が複数人のブルーマーメイドを殺していたのが分かり、彼等がブルーマーメイドやホワイトドルフィン処か日本の軍関連と全く関係ない事を悟った。

 

「艦長、何か有ったですか?」

 

「見ちゃ駄目!!」

 

 美甘が明乃の反応に何かを疑問視して彼女と同じように覗いて、明乃が直ぐに止めようとしたが、美甘は続いた媛萌と共にブルーマーメイド達の死体群を見つけて思わず叫んでしまった。

 

「誰なんですか、貴方達は!!?」

 

「…何処の国でもない、我々は国際的な企業」

 

 先頭の男が美甘の叫んでの質問への質問に微笑しながらの答えに、明乃は4人は理解出来ないでいるも、ルパンと次元は一瞬だけ目線を合わせた後に口だけが笑った。

 

「「えっ!?」」

「っ!?」

「何で!?」

 

「……ちっ!!」

 

 だがその直後、明乃達4人が背後からレーザーポインターで心臓部分を照らされ、次元が最低4人はいる狙撃手達が彼女達を狙っているのは、自分とルパンを牽制している為だと察して舌打ちした。

 

「さあそのガキどもを死なせたくなかったら、さっさと引き渡しな!

おっと、下手な事はするな!」

 

 先頭の男は仲間達は共々ルパンと次元に更にMP5を突き付け、更に次元が腰裏のズボンに刺さっているコンバットマグナムに手を伸ばそうとしたのを止めさせた。

 更にルパンも一挙一足を注意していたが、思わず舌打ちをしたルパンと共に硬直している次元が上着の下裏を捲った状態だったので、背後の明乃には文字通りに手に届く距離にコンバットマグナムの銃把が覗いていた。

 此の為、明乃は“考え”や“迷い”を先送りにして次瞬時に次元に密接、美波達3人は明乃のは恐怖からのだと思ったが、次元はルパン共々彼女の行為を全て察しながらも全く反応しなかった。

 

「…ルパン、此処は大人しく従ったほうがいい」

 

「おいおい、諦めるのが早かねえか?」

 

「さっきも言ったが、俺は女に嫌われる事はしたくないんだ。

手を着け過ぎて女に嫌われるお前と違ってな」

 

「んだと!!!

俺がそんなに嫌われている様に見えんのか!?」

 

「じゃなきゃ、ブルーマーメイドの大軍の追われはせんだろ!!!」

 

「~~っ、良いから差し出すんなら、差し出せ!!!」

 

 何故か口喧嘩をし始めようとした次元とルパンに、媛萌と美甘は呆れて溜息を揃って吐いたが、先頭の男は苛立って思わず怒鳴ったが、咄嗟のアドリブ演技が上手くいったのでルパンと次元は内心笑った。

 

「…当てようと思うな

前に出たら、躊躇わずに直ぐ撃て」

 

「え?」

 

「おい、先ずは艦長のガキを差し出すぞ!」

 

 次元は呆れたルパンの返事を待たずに背後の明乃を首裏を掴んで前に出し、相手群は勝ったと思って笑ったが、前に出された明乃が次元のコンバットマグナムを持って身構えたのを見て、美波達3人共々ギョッとした。

 明乃は次元に言われた通りに直ぐに驚いている相手群目掛けてコンバットマグナムを撃ったが、テレビ内の人間に加えて次元が軽々扱っていたのを見た事から、コンバットマグナムの予想以上の重さに苦慮しながらだった上に発射反動を受け止められなかったので、マズルジャンプで弾が相手群の上を飛んでいって、コンバットマグナムが真上に吹き飛ばしてしまった。

 だが此の隙にルパンはワルサーP38を瞬時に抜いて7連射、殺しはしていないが相手群を射ぬくか牽制に成功した。

 

「よくやったと言ってやる、が!!!…」

 

 更に次元も落ちてきたコンバットマグナムを掴み取って後ろに振り返り、先のレーザーポインターから逆算して後方の狙撃手達へ4連射、反撃が無い事から全員撃退したようだった。

 

「…コイツ(コンバットマグナム)は俺以外に扱われる様に出来ていないから、素人が下手に触ると怪我すっから、気安く触れんじゃないぞ!」

 

さっすが(流石)次元ちゃん、プロフェッショナルゥ~…」

 

 誉めているのか、怒って注意しているのかは人によるが、次元は微笑んでコンバットマグナムを明乃に翳した。

 

 

「「……凄…」」

 

 明乃の行為もそうであったが、彼女のを端にしてのルパンと次元の銃撃の瞬間劇に、美甘達3人は茫然としていた。

 

「今だ!!!」

 

 相手群が前後揃って動けない隙に、ルパンが号令を発して角に飛び込んで次元も続き、美甘達3人も無意識の内に2人の後に従ったが、明乃は拳銃初使用の時間差で来たショックに加えてコンバットマグナム発砲の緊張とショックで座り込んだが、直ぐにルパンが明乃の首裏を掴んで引き寄せた。

 その直後、明乃がいた場所目掛けて多数の銃弾が飛んできた。

 

「畜生!!!

逃がすな!!!」

 

 明乃が逃げた数秒間無意味に発砲し続け、大男が止めさせると直ぐにルパン達の追走を始めた。

 で曲がり角の先に“てんとう虫”を連想させる黄色くて丸い小型車………日本ではルパンの愛車の1台である事でも有名なイタリアの大衆車フィアット・500(以降は“フィアット”と表記)があり、そのフィアットの天窓(蛇足だが、ルパンのフィアットは西暦1957年発表の2代目(新フィアット500)との古すぎる型の為に冷房(クーラー)が無い代わりに天窓が有る、更に言うと天窓の蓋は車体上部に巻いて固定されている布)から明乃達4人を後部座席に押し込んだルパンは運転席に飛び降りてエンジンを起動、ライトを点灯させらてトップに切り替えて相手群の目を眩ませながら急発進させて、相手群目掛けて突進してきた。

 相手群は慌てて飛び退いたのでフィアットでの体当たりは失敗に終わったが、ルパンはそのままフィアットを走らせて垂直に近い急旋回で角を曲がって先の方に全力で走らせていった。

 

「畜生!!!

追うぞ!!!」

 

「止せ!!!

ブルーマーメイドが来るぞ!」

 

 相手群の何人かがフィアットの背部目掛けて撃っていたが、大男が多数の銃声に気付いたブルーマーメイド達が此所に向かっているのを察して、止めさせると同時に退避を命じた。

 

「…糞ぉ~…ルパンめ!!!」

 

 だがルパン達に逃げられた事が悔しいのは確かだった様で、大男ことブラッドはフルフェイスマスクを脱ぎ捨てると足下に叩き落として何度も踏みにじっていた。




 感想または御意見、或いは両方でも良いのでお願いします。

 少しネタ晴らし、終盤で明乃が次元のコンバットマグナムでの発砲ですが、元々は“愛のダ・カーポ”を参考にルパンのロケットキックで吹っ飛ばしていましたが、ハイフリ側のキャラが食われて気味だった上にピグシブ百科で明乃のプロフィールを見て思い付いて変更となりました。
 まぁ稀に不二子にワルサーP38を取られてるルパンは兎も角、次元はもの凄く嫌がると思ってますがね。

 それにしても、とっつぁんがまだ(次回出ます)なのに、ルパン側のキャラのアクが濃すぎる…


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第6話 帰艦までピンチ

 前回から登場したフィアットですが、此方の勘違いでルパンのは初代と書いてましたが、正しくは2代目でありましたので、訂正しました。





 それでは本編をどうぞ


――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

「脱出!!!」

 

 ルパン達は裏路地を抜けて表道に復帰、突然裏路地から飛び出したフィアットに客達が驚き悲鳴を上げながら逃げていたが、超信地旋回で1回転したフィアットを運転しているのがルパンだと直ぐに分かって、フィアットが走り出すと同時に悲鳴が歓声に変わった。

 

「ルパン発見、ルパン発見!!!」

 

「ルパンはハイエースからフィアットに乗り換えますので、注意!!!」

 

「全車、直ちに指定場所に集結せよ!!!

繰り返す!…」

 

 当然見失っていたルパン(達)の再出現にブルーマーメイド達も直ぐに気付いて、フィアットを目指して追走車が次々に現れだしていた。

 

「「ああー!!!」」

 

「ルパンさん、前!!!」

 

 だが偶然に近い形で、前方でブルーマーメイド達が車両でのバリケードで完全に道を塞いでいたのに明乃達が気付き、美甘と媛萌は悲鳴が上げるのみだったが、明乃はルパンに指摘した。

 だがルパンはフィアットにブレーキを掛ける気が全く無く、前方の周囲を見渡してから、右にハンドルを切って逃げ出した客達の間にフィアットを突進………手摺を突き破って浅い水路に着地(?)させ、その先へ疾走させた。

 

「ひやぁ~…びっくらこいたぜ…」

 

 ブルーマーメイドの何人かが悔しがっていたのを尻目に、取り敢えずは安全地帯を進んでいたので、次元が一息を入れ、明乃達4人もそれに続いた。

 

「…じげぇ~ん(次元)、面白いのがやってるぞ」

 

 いつの間にかにダッシュボードに繋がったイヤホンを左耳に着けていたルパンは、そのイヤホンをダッシュボードから外した。

 

『…う報告、緊急報告!!!

裏路地にてブルーマーメイドの遺体が複数発見!!!

目撃情報と状況証拠から見て、犯人はルパン三世と思われる!!!

ルパンは人質を多数持った上に危険行為を行う事が予想される為、全隊員に銃火器の無制限使用を許可する!!!

繰り返す、ルパン三世がブルーマーメイドを複数人殺害、全隊員に銃火器の無制限使用を許可する!!!』

 

「…本格的に動き出してきたな。

『晴風』の騒動から始まった此の騒ぎ、裏が結構深まってるぜぇ~…」

 

「どう言う事ですか?………?」

 

 明乃達4人がルパンがブルーマーメイド達の殺害の濡れ衣を着せられた事にギョッとしたが、当のルパンは次元共々毎度の事だとしてどうとないとしていた。

 だがそれよりも、ルパンと次元は取り敢えず置いておき、ブルーマーメイドとは別の第3勢力と思われる存在の襲撃に何かを思わざるを得なかった。

 明乃は何かを知ってそうなルパンに前に乗り出して尋ねようとしたが、前方で何かを見つけた。

 

「ルパンさん、前から何かが来てます!」

 

「……っ!?

シャトルバスだぁぁぁー!!!」

 

「ルパン急げ、バックだ!!!」

 

 前方から水陸両用のシャトルバスが向かっている事が分かり、どうであろうと此のままだと正面衝突するのが目に見えていて、次元が叫ぶまでもなくルパンは直ぐにフィアットを止め、ギア(オートマでなくマニュアルだった)を5速から後進に素早く切り替えて全速後進を始めた。

 不味い事に、シャトルバスの前方に乗客が詰め寄って運転手が見当たらない事から、シャトルバスは自動式であるらしく、緊急停止をする気配が無かった。

 

「来るなぁぁぁー!!!」

 

「止まって止まって!!!」

 

 ルパンのアクセル全開も虚しく、シャトルバスはフィアットに追い付いて数度フィアットのフロントバンパーに接触して軽く突飛ばした為、媛萌と明乃が両手を突き出して叫んでいた。

 だが幸いな事に停留所が近付いた事でシャトルバスは失速を開始し、ルパンがタイミングを合わせてのギアチェンジで、突き飛ばされた勢いも利用して停留所にフィアットを飛び乗せる事に成功してシャトルバスはフィアットの直ぐ脇を過ぎて停車した。

 正面衝突を回避出来た事にルパンが次元達5人と揃って安堵の溜息を吐いたら、シャトルバスから視線を感じてそちらに振り向くと、シャトルバスから複数の女子高生達が窓に張り付いて自分達を凝視していた。

 

「…おじさん、ルパン!!?」

 

「そうでぇ~す!!

ルパン三世でぇぇーす!!!」

 

「嘘、マジ、ヤバい!!!」

 

「写真取らせて取らせて!!!」

 

「どぉ~ぞ、どぉ~ぞ♪」

 

 女子高生達がルパンの名乗りに歓喜の悲鳴を上げると、他の乗客達共々ルパンにカメラモードのスマホを向けた。

 それにルパンは次元だけでなく、写真取りに反応した明乃達4人と共に笑顔のピースで答えた。

 

「そんじゃあ~ねぇ~…」

 

「「「……あれ?」」」

 

 カメラ撮影が終わるとルパンは手を振った後にフィアットを後進からのスピンターンで反転させて急発進したが、此の直後に明乃達3人(顔から見て、美波のみは明らかに確信犯だった)は自分達が不味いかもしれない事をしでかした事に気付いて目線を合わせていた。

 

「御免ね!

可愛娘(カワイコ)ちゃん、チュッチュゥゥ~!!!」

 

「…けっ!」

「「「「おお~!!!」」」」

 

 早く逃げればいいのに、ルパンはオーシャンモール・四国沖店の現状を無視して接吻(キス)しようとしていた若いカップルを見付けると、フィアットで上手く近くに来て、彼氏から彼女を引き剥がして右頬に接吻をし、次元は毎度の行為であったので呆れていたが、明乃達4人は思わず歓声を上げた。

 

「うふ~ん♪」

 

「…テンメェェェー!!!」

 

 ルパンがフィアットを急発進させると、赤くなった両頬を押さえながらふやけていた彼女の脇で、ルパンに彼女の心を盗まれ結果自分が失恋する近未来を察した彼氏はフィアット(ルパン)に向かって怒鳴っていた。

 

「いたぞぉぉぉー!!!」

 

「追え追えぇぇぇー!!!」

 

 ブルーマーメイド達とは真逆の方角を走行していたので暫くは平穏(?)だったが、ブルーマーメイド達は監視カメラからの報告で戻って来たので、再び追走劇が始まった。

 

「…お!

来たようだぞ」

 

「だねぇ!」

 

 少し走り続けていたら、次元が上空に上げられた信号弾に気付いてルパンに報せた。

 

「あれって、『晴風』のだ」

 

 明乃は信号弾であるのを見抜いてそれを報せると他の3人は安堵感を出していたが、ルパンは直ぐ脇の曲がり角に急旋回してやっと海の方に向かいだした。

 

「…?

何か音がする」

 

「座席の下からだ」

 

「ああ、それは駄目!!!」

 

 その直後に明乃と媛萌が後部座席の下から変な振動と音がしたので、ルパンの忠告を無視して美柑と美波と共に座席を(メク)ると、そこにトレンチコートにソフト帽の、季節外れな茶色一色の服装の中年男性が手足を縛っての猿轡をした状態で寝転がっていた。

 目線での訴えもあって、明乃は中年男性の手の拘束と猿轡を外すと、中年男性は直ぐに飛び起きて運転席にしがみついた。

 

「ルパァァァーン!!!

貴様、少女誘拐を行うだけでなく、殺人まで起こすとは、どう言う事だ!!?」

 

「だぁーから、こうなるっから、拘束してたんだよ、とっつぁん!!」

 

「も、もしかして、貴方が銭形警部!?」

 

 後部座席の下に拘束されていたのが、ルパン三世専従捜査官である銭形幸一だった事に、明乃は他3人共々驚くしかなかったが、今思えばルパン追走が妙に後手後手だったし、“ルパンいる所に銭形”と言わんばかりにルパンがいたら銭形も遅かれ早かれ現れる筈なのに今まで現れる気配が無いだけでなく、ルパンと言い争っている銭形からルパンを逮捕する気が全く感じられず、変に嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 だが状況は明乃達4人に考えさせる暇を与えさせる事はなく、後方から飛んできた銃弾がバック硝子を突き抜きて、そのまま銭形の顔の左脇を過ぎてフロント硝子に穴を開けた。

 どうやらブルーマーメイド達は先の命令を忠実に守って(?)の銃撃を始めたらしく、ルパンが左右にハンドルを切っていたので、フィアットはハイエースとは違って致命傷を受けてはいなかったが、流れ弾の数割りは街灯や建物に当たるだけでなく、客達にも襲い掛かっていた。

 

「何でアイツ等、撃ってくるんだ!!?」

 

「本人に聞いてくれ!!!」

 

 混乱も感じられるブルーマーメイド達の銃撃に、銭形はルパンに質問したが、やはり回避運動が大変らしくルパンは銭形に怒鳴り返すだけだった。

 

『止めなさい、発砲止め発砲止め!!!

私は無差別銃撃を命じていない!!!』

 

 此の為だろう、傍受無線から先の命令に反して銃撃を止めさせようとする声が複数聞こえていたのを気にしていなかった。

 

「ルパン、そろそろだ!」

 

 取り敢えず銭形は明乃達に抑えられ、次元がルパンに何かを報せると………前方から時代錯誤な侍としか思えない、着物に白鞘の太刀を手に持った男性が、建物から飛び降りてフィアットと並走した。

 

「五ェ門、首尾は?」

 

「問題無い!」

 

「五ェ門?」

 

「十三代目石川五ェ門!!」

 

 ルパンとのやり取りで、美甘と明乃は男性はルパンの仲間の五ェ門だと他の2人と共に判断、その直後に海が見えると同時に五ェ門はフィアットの屋根に飛び乗って、愛刀あたる斬鉄剣を抱えながら器用に胡座鼻(アグラ)で座った。

 

「次元、ハンドル頼むわ!」

 

 次元が助手席から身を乗り出してハンドルを握って直ぐに、ルパンは天窓から身を出して………何処に有ったのか、ホームセンターでも売られている金属パイプ式の煙突を取り出して、僅かに傾いてくれた五ェ門の脇でフィアットのマフラーに取り付けた。

 

「おじさん、海、海です!!!」

 

「落ちるぅぅぅー!!!」

 

 美甘と媛萌が叫んで報せるも次元は無視してフィアットを直進させ続け、ルパンが運転席に戻って直ぐにフィアットは港から海目掛けて飛び出していき、ブルーマーメイドの車両群も“停車し損ねる”か“止まっても後続車に追突される”のどちらかで何割かが海に落ちて水没しようとしていた。

 ルパン達のまさかの行為に無事だったブルーマーメイド達が、一部が落ちた同僚達を救出しながら、唖然としていたが、ルパンがダッシュボードの一部分の何かを引っ張るとフィアットの車体下部に浮き袋が多数展開、更に後部扉が開いて何かの追加機関も展開して、フィアットは水没する事なくそのまま海上を走行し続けた………此の行為で銭形が天窓から吹き飛んで、フィアット背部に必死にしがみ着いているのは見なかった事にしよう…

 

「水陸両用、此の車にどんな改造をしたんだ?」

 

 美波がフィアットの改造仕様に呆れながら分析していたが、明乃達3人はブルーマーメイド達共々硬直していた。

 そしてフィアットが目指している方角に『晴風』が汽笛を鳴らしながら近付いてきていた。

 

「ルパンが海に逃げた!!!」

 

「『晴風』が現れた!!!」

 

 ルパン達の本格的な逃亡に加えて『晴風』の出現にブルーマーメイド達は我に返り、直ぐにスキッパーか警備艇に乗り換えて後を追おうとした。

 処が、先陣となったスキッパー群が発進したら、スキッパーの全てが分解して搭乗していたブルーマーメイドが海に投げ出され、スキッパー群の惨状にギョッとしながらも次波として発進した警備艇群はバラバラのスキッパーや漂流しているブルーマーメイド達を右回りで迂回した。

 だが前方の海から“ピヨピヨ”との可愛らしくも何処か不吉な鳴き声が聞こえたので凝視したら、黄色い家鴨(アヒル)の雛の玩具の大軍がフィアットが向かった先から自分達の所を目指して泳いできていて………近くまで来たら次々に小ささに似合わない大爆発を起こした為に警備艇の全てが大破した。

 第3陣以降のスキッパーや警備艇も全てが同じ様に分解するか家鴨の雛の自爆に巻き込まれるかして、ブルーマーメイドの1人が前半分のみとなったスキッパーを農耕用が牛みたいに引っ張られながら海上を走って水没、他のスキッパーや警備艇の全てが同じ様な末路を迎え、最後となったスキッパーに搭乗していた倫子が周辺海域の惨状に唖然としていたら、スキッパーの座席が吹っ飛んで天高く舞った後に海に落下………バネで激しく揺れる座席の裏にデフォルメ・ルパンが「ごくろうさん」と言っている張り紙が張られていた。

 

「……す………すみません、真霜さん、『晴風』乗員に逃げられました…」

 

『…何をしていたの、貴女達!!?』

 

 此の間にフィアットは『晴風』の所に辿り着こうとしていたが、近くの浮遊物にしがみつた倫子が最後の力で別の場所で作戦総指揮を取っていた上官たる宗谷真霜(ましろの長姉)に無線連絡をして、真霜が怒鳴っているのを尻目に直ぐ力尽きた様に、ブルーマーメイドは失神しての土左衛門(ドザエモン)状態(誰1人死んではいないが)と化すか浮遊物に捕まって硬直するか全員がどちらかになっていて、遅れて殺到した観客達は見事に逃げ切ったルパン達に各々の形で歓声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい、そうです。

『晴風』はルパンに…」

 

 同刻、潜入工作用のスーツから背広に着替えて一般人に化けたブラッドは、部下達を逃がした後に、念の為に群衆から離れた物影に潜んで無線連絡を行っていた。

 

『…分かった。

もう戻ってきていい』

 

「はい…」

 

『……此の、役立たずが!!!』

 

「……はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうです。

此の騒動が向こうに伝わりました」

 

 更に別の物陰でブラッドの無線通信を確認していた、木戸千恵子もまた何処かに通信報告をしていた。




 感想または御意見、或いは両方でも良いのでお願いします。

 遂にルパンファミリーが全員登場。

 次回から本格的にハイフリ原作からルパン原作に移行していきます。


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第7話 帰艦してもピンチ

――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

 ルパンは『晴風』の所に辿り着くと、明乃達がクレーンで吊り上げられるのを望んで停車するとの予想に反してアクセル全開で加速、『晴風』の航行で生じた凌波を利用してフィアットを飛び上げると、そのまま『晴風』の第三主砲右脇に着地させ、連続爆雷投射機の手前で垂直旋回させながら止めた。

 

「さぁお嬢様方、無事に帰しましたよ!!」

 

「……疲れた…」

 

 まだまだ元気なルパン(達)はフィアットから降りると、運転席を前倒しにしたら、明乃達4人は『晴風』に帰艦した安心感に加えてジェットコースターを様な体験を多数した事でぐったりしながら順に降りてきた。

 因みに銭形はフィアットの屋根の上で仰向けの大の字で失神していた。

 

「あ、そうそう、御約束のトイレットペーパーも1年分は無いが、ちゃんと有るぞ」

 

「御丁寧に…」

 

 更に次元はフィアットの前部扉(ボンネット)を開けた下(明乃達4人は知らなくて驚いていたが、フィアットはリア(後部)エンジン式だからエンジンとトランクの配置が明乃達が知る車のと前後逆)からトイレットペーパーを束を十数個取り出して、美波は礼を言いながら受け取っていたが、明乃達3人は極限のカーチェイスを否応なくした上に『晴風』に帰還した事で緊張が切れた事からの疲労で、トイレットペーパーがどうでもよくなっていた。

 まぁ、トイレットペーパーの事はさておき、そうこうしている間に、不二子がルパン達の所に駆け寄ってきていて、彼女の後ろにましろ達艦橋要員達も続いてきていた。

 

「「峰教官!?」」

 

「何でいんの!?」

 

 やはりと言うべきか、明乃達3人もましろ達と同様に不二子の存在に驚いていた。

 

「よう不二子!!

言われた通りに、ちゃーんと連れてきたぜ!」

 

「ちょっとルパン!!

岬さん達がぐったりしているけど、雑に連れてきたわけ!?」

 

「いや、アイツ等が軟弱と言うべきか、免疫が無かったと言うべきか…」

 

「ルパン!!!

精神が大和級用の錨鎖で出来ている貴方と違って、年頃の女の子のは非情に繊細なのよ!!!」

 

「そんにゃ事、言われてもね………ん?」

 

 ルパンが詰め寄った不二子に怒鳴られていたら、ましろが不二子が知らない内に持っていたデッキブラシをルパンに向かって構えた。

 更に言うと、艦橋要員達だけでなく、『晴風』乗員の殆どが次々に艦尾に現れていた。

 

「おいおい、そんな目で見ないでよ。

デッキブラシも向けないでよ」

 

「…どう言う事だ、ルパン?

お前達は、此の『晴風』を盗むとでも言いたいのか?」

 

「まぁ俺達が『晴風』に来たって事は、そう言う事だよね」

 

 ましろはルパン(達)に警戒心全開であったが、ルパンが『晴風』盗難を認めた事に、自分や明乃達4人を除いた『晴風』乗員の殆どが歓喜の悲鳴を一斉に上げたので、ましろが少し転けかけた。

 

「え、嘘!!?

私達、ルパンに盗まれるの!?」

 

「て事は、私達は初めてルパンに盗まれたブルマーって事!!?」

 

 『晴風』乗員達は自分達が艦ごとルパンに盗まれるに各々の形で喜んでいて、更に幸子が毎度恒例の一人劇を実施、お題は“若きブルーマーメイドと大泥棒(口調からして多分ルパン)の禁断の恋”を演じていて、普段と違ってやり終えたら『晴風』乗員達から一斉に歓声が上がった。

 此れに幸子は調子に乗ったらしく、『晴風』乗員達にカーテシーで答えていたが、ルパンは(シラ)けた顔で彼女にスローテンポの拍手を送っていた。

 

「喜ぶな!!!

私達ブルーマーメイドはルパンを捕まえる方だろ!!!」

 

「まぁまぁ、そう怒んなさって。

せっかくの美人が台無しでしょうが」

 

「……あ!!?」

 

 ましろはそんな『晴風』乗員達に振り向いて怒鳴ったが、あやそうとしたルパンがいつの間にかに自分のデッキブラシを奪って杖代わりに凭れていた。

 

「…ルゥ~パァァァーン!!!」

 

 ましろがルパンに笑われて次元と五ェ門に睨ませて少し退いら、何故か遅れたヴィルヘルミーナが進路上の『晴風』乗員達が退く程の怒気みたいなのを発しながらルパン達に歩み寄ってきて、彼女にルパンが「おいおい…」と言って、次元は腰裏に右手を回して、五ェ門が斬鉄剣を僅かに抜いた。

 

「…なんでフィアット500なんだ!!!

お主、ベンツSSKはどうした!!?」

 

 だがヴィルヘルミーナの予想外の、人によっては馬鹿らしい質問をしたので、『晴風』乗員全員が滑り転けた。

 ルパンは有名なスポーツカーを乗り回す事でも有名であり、ヴィルヘルミーナはフィアットやアルファロメオ 6C1750と共に有名で、祖国ドイツの世界最古の自動車会社ダムラーが生み出した名車メルセデス・ベンツSSKの所在が気になった様だった。

 

「あ~アレェ~……ちょっと不倫旅行に行っちゃったよ!」

 

 当のルパンはベンツSSKは触れてほしくない案件だったらしく、後頭部を掻きながら笑って誤魔化そうとした。

 

「不倫旅行ぉ?」

 

「前にドイツで仕事をした時に、コイツがヘマした所為でベンツを乗り捨てたんだよ。

だからアイツはドイツ警察に差し押さえられてる筈だ」

 

 次元の説明にヴィルヘルミーナは「あ~…」と言いながら納得していた。

 因みに、ベンツSSKは歴史的価値の高い車(クラシックカー)であるだけでなく、元々(Sport)シリーズの1つであるSSKは生産台数が10台も無い超貴重な車な為、ルパンのベンツSSKは唯一動体の現存車な事もあって現在ドイツ警察の厳重監視下でベルリンのとある博物館に展示されていた。

 

「あ、でも艦長達はルパンのフィアットに乗ってたって事だよね?」

 

「て事は、ルパンとドライブ!?」

 

「いいなぁ~…私も乗りたかった」

 

「あ、でも、私もベンツの方が良かったな」

 

「私はアルファロメオの方が良い!」

 

「楽しんでる暇は無かったよ!!!」

 

 そして唯一自分に同調してくれる筈の洋美が麻侖と共に機関室にきて此所のいない事が致命的になっていたかもしれないが、此の場にいる『晴風』乗員全員がベンツ SSKのやり取りでルパンのフィアットに乗った明乃達4人を羨ましがっていたが、それ処ではなかった媛萌が怒鳴って美甘に押さえられながらあやされていた。

 その間、ましろは唯一自分に同調してくれる筈の洋美が麻侖と共に機関室にいて此所にいない事が致命的なのもあって、自分以外は誰もルパン(達)を警戒していない事を察して肩を落としていた。

 

「副長は、気苦労人になるモノよ。

それに“ルパンに拐われたい”と望む乙女チックな女の子って世界的に多いのよ」

 

「儂の古馴染の目暮の部下に佐藤美和子って刑事がいてな、ソイツの初恋の相手がルパンだそうだ。

嫌な事だが、女警官の間でもルパンのファンが多いんだから、諦めろ…」

 

 そんなましろに対して不二子だけでなく、いつの間にかに目覚めていた銭形が傍に寄って慰めていた。

 

「戯れはそこまでだ。

早くしないと逃げられんぞ」

 

「五ェ門、何か来んの?」

 

「…2手……否、4手から来るな」

 

 だが不意に今まで右舷に向いていた五ェ門が警告を発して、ルパンが真顔に変わったが、明乃達『晴風』乗員は誰も理解出来ないでいた。

 だが此の直後、何かの風切り音が聞こえだし………『晴風』の右舷の沖に何かが複数着水して大型の水柱が4本発生した。

 

「おうおう、まだいたのかい…」

 

「ルパンさん、どう言う事ですか?」

 

「右舷、5時半の方角から艦隊が接近!!!」

 

「左舷、8時の方角にも接近する艦隊有り!!!」

 

 現状を察して呆れていたルパンに、明乃が起きた事を尋ねようとしたが、ルパンが何かを言う前に左右各々の見張り所に残っていた内田まゆみ(通称:まゆちゃん)と山下秀子(通称:しゅうちゃん)が背後から接近してくる2個艦隊を叫んで報せた。

 

『前方2方向から2個艦隊が此方に向かって接近しています!!!』

 

「……何故、分かった?」

 

 更に続けて恵も別方向からの2個艦隊接近を悲鳴に近い形で報せ、ましろはまゆみと秀子と恵の3人より艦隊群接近に気付いた五ェ門を凝視した。

 

「ルパン、貴方ブルーマーメイドは全員オーシャンモールでマいてきたんじゃなかったの!?」

 

「そこまで、俺が知るか!!」

 

 不二子がルパンに怒鳴っているのはおいておき、全員が『晴風』に戻った以上は“逃げる”の選択肢しかなく、明乃は艦長として乗員の再配置を命じようとし、ましろに目線を向けて彼女が頷いたのを見て声に出そうとしたが…

 

「カレーなんか食ってる場合じゃねえぇぇぇー!!!」

 

「…カ、カレー?」

 

「何だ、カレーって?」

 

…志摩が場違いな事を叫んだ為、他の乗員達共々彼女に振り向いて固まった。

 此の為か、獣みたいな唸り声を上げる志摩の両面が不自然に赤く光っている事に誰も気付かなかった。

 

「それより逃げないと」

 

「何言ってんだ、逃げてたまるか!!

攻撃だ!!!」

 

「おお、撃つか?

撃つのか?」

 

「止めろ!!!

味方を撃つわけにはいかない!」

 

「黙れ!!!」

 

 怯えている鈴の意見を無視して、志摩らしくない攻撃的意見に、芽依が気後れしながら同意していたが、直ぐにましろが制止しようとした。

 志摩の暴走に幸子が恒例の1人劇をしだしたが、不二子も彼女の制止に協力しようとしたが、その前に志摩は2人を順に振り払い、肉食獣みたいに唸り声を上げながら四つん這いになり、呆然としている乗員達の合間をモンキーダッシュで縫って第三主砲に向かい、驚くべき跳躍力で飛び乗ってそのまま背部の第二主砲に飛び上がった。

 『晴風』乗員全員だけでなく、不二子と次元も驚いていたが、無反応な五ェ門は兎も角、ルパンと銭形のみは何かを察して彼女を睨んでいた。

 

「お前等にヤられるタマじゃねえんだ、此方は!!!」

 

「あ、駄目!!!」

 

 瞬く間に、志摩は後艦橋近くの25mm単装機銃に取り付こうとしたが、その直前に彼女目掛けて銭形の手錠2本が弧を描いて飛んでいって、見事に2本各々が彼女の両手首と両足首に掛けられた。

 

「…此の馬鹿娘が!」

 

 銭形は志摩に軽めに怒鳴っていたが、見事な投擲で志摩に手錠を掛けたのだから、流石は銭投げの名手・銭形平次の子孫であった。

 

「何だよ、邪魔すんじゃねぇ、っ!?」

 

 志摩は手錠を掛けられても機銃に取り付こうと足掻いていたが、その機銃の銃把2本を握った直後に目の前に現れた五ェ門が斬鉄剣を身構えながら飛び掛かって気合いと共に抜刀術で一閃、機銃をみじん切りにしながら志摩の左脇を走り抜けた後に斬鉄剣を鞘に納めると同時に機銃がバラバラに崩れ落ちた。

 

「……またつまらぬ物を…」

 

「切り過ぎなのよ、五ェ門!!!」

 

 五ェ門は毎度のように決めようとしたが、職業病(?)が出たのか銃把2本を握ったまま硬直していた志摩の制服(御丁寧に靴と靴下以外の下着類まで全部…)までがみじん切りとなって落ちたので、不二子に怒鳴られ、次元が呆れて帽子を上から押し付けていた。

 五ェ門に幸いだったのは、『晴風』乗員全員が銭形のも含めた一瞬の出来事を理解出来ずに現実逃避をしていたので、誰も五ェ門に罵声が浴びせなかった。

 その為か、『晴風』乗員達は右舷甲板に落下して失神した志摩を呆然と見詰めていたが、不意に鈴が悲鳴を上げたので一斉に背後に振り向くと、不適な笑みを浮かべたルパンが左手をズボンのポケットに突っ込んだままワルサーP38を志摩に向けて身構えていたので、射線上の乗員達が悲鳴を上げながら退いた。

 

「オイタをしちゃう子は、お仕置きよぉ~…」

 

「駄目ぇぇぇー!!!」

「止めろぉぉぉー!!!」

 

 ルパンが志摩を粛清(射殺)すると思って、明乃とましろが咄嗟に飛び出して志摩の縦になろうとしたが、ルパンはその前に発砲………志摩の髪から飛び出して逃げようとした鼠にトリモチ弾が狙い通りに直撃、トリモチまみれになった鼠は身動きが取れずに必死に足掻いていた。

 小さな鼠に当てた射撃の腕前もそうだったが、予想外のルパンの狙いに、明乃達は揃って硬直していたら、ワルサーP38の空薬莢が甲板に落ちる金属音が静かに響いた。

 

「…あれ、此の鼠って」

 

Abyss(アビス)(通信販売サイト)の箱に入ってたのだ」

 

 松永理都子(通称:りっちゃん)と姫路果代子(通称:かよちゃん)は、ルパンが狙い撃った鼠が昼間に引き上げた漂流物の箱に入っていたのであったのを思い出して鼠の所に向かった。

 

「あんまりその鼠に触れるんじゃねえ。

下手すりゃソイツみたいに狂っちまうぞ」

 

 だが、理都子と果代子が鼠を掴もうとした直前にルパンが2人を止めた。

 ルパンはワルサーP38を懐下のホルダーに納めると、右手もズボンのポケットに突っ込んでの猫背状態でゆっくり歩き出し、普段の陽気さが消えた真顔に加えて殺気にも似た悪人らしきオーラを発していた為、『晴風』乗員の誰もが金縛りに近い形で硬直しながら、ルパンに道を譲っていた。

 ルパンは途中で上着を脱いで志摩に落とし、理都子と果代子の2人の間を抜けると、鼠の尻尾を掴んで銭形達の方に振り向いた。

 

「とっつぁん、噂にぐらいは聞いた事があるだろう?

コイツがブルーマーメイド………厳密に言ったら海上安全整備局・海洋研究機関が偶然的に生み出した人造生物RATt(ラット)だよ」

 

「RATt、ソイツがRATt!?

RATtは存在していたのか!?

まさかルパン、お前は『晴風』と『さるしま』がやり合った事から始まった此の騒ぎの元凶はソイツだと言いたいのか!!?」

 

「そうさ、コイツに罹患したウイルスが感染爆発した事で『さるしま』『アドミラル・グラーフ・シュペー』『伊201』の3隻だけでなく、横須賀女子海洋学校の教導艦全ての乗員達を暴走させたんだ。

つまり、コイツが今回の騒動の黒幕さ」

 

 ルパンが鼠ことRATtを示しながら危険な笑みを浮かべたが、RATtはルパンも感染させようとしていた様だったが、無表情のまま振り向いたルパンと目を合わせた事で何かを感じ取って臥せた。

 

「お前等、何でそんな物騒な物を『晴風』に上げた!!?」

 

「だって漂流してきたから…」

 

「漂流物を無警戒に引き揚げたのですか!!?」

 

 どうやら『晴風』乗員の全員がルパンの言った事を絶句しながら納得した様で、直ぐに芽依が理都子と果代子(2人は水雷科で芽依は水雷長)を怒鳴り、果代子が言い訳をしようとしたが、此れが逆に不二子にまで怒鳴られる結果になった。

 

「あの、ルパンさん!!!

横須賀女子海洋学校の教導艦全てって言いましたが、まさか『武蔵』もなんですか!!?」

 

「ああ、『武蔵』も、確か小笠原諸島の沖合いで暴走してる」

 

 実は『アドミラル・グラーフ・シュペー』との交戦後、同じ孤児院出身の幼馴染・知名もえか(通称:モカちゃん)が艦長を務める『武蔵』から救援とも取れる奇妙な通信を受けた事を気に病んでいてた明乃は、ルパンの発言で嫌な予感を感じて質問をして、そのルパンから『武蔵』も暴走している事を伝えられて顔を青くした。

 

「まぁ結果的に、酒癖の悪ぅ~い女剣士を、大和撫子より良い女に仕立てあげた状態で、口説けるって事になったんだがねぇ~…」

 

「ふえ?」

 

「…噂通りのド女(タラ)しだな、お主は!」

 

 下品に笑ったルパンに対し、ヴィルヘルミーナは他共々呆れていたが、明乃はルパンの言い回しが妙に気になって実際に尋ねようとしたが、当のルパンが彼女のを知ってか知らずか、明乃に掌を翳して止めた。

 

「後で話して上げるけどぉ~…今はそれ処じゃないよ」

 

 『晴風』船医である美波に介抱されている志摩の起こした騒ぎで忘れて全員が対応していなかったが、『晴風』を捕縛しようとしている4個艦隊が各々から接近中で、その艦隊群は既に目視でうっすら見える距離に達していた。

 接近する艦隊群の艦艇全てに、本来なら戦闘時に消すべき航海灯や照明が点いたままで見えやすくなっていて、どうやら艦隊群は『晴風』を精神的に追い込む為にわざと点けっぱなしにしている様だった。

 

「最接近中の艦隊を確認!!!

右舷先頭は金剛級大型直接教教艦(嘗ての艦種は戦艦)、青い識別帯を確認した事からおそらく一番艦『金剛』!!!

後続は全て吹雪級!!!」

 

「左舷先頭は阿賀野級小型直接教育艦!!!

後続する航洋直接教育艦は綾波級と暁級です!!!」

 

 まゆみと秀子の続報の“青い識別帯”に“随伴艦が吹雪級・綾波級・暁級………嘗ては特型駆逐艦に1括りにされる事もあった3艦級”で『晴風』乗員の全員が「ええ!?」と悲鳴に近い驚きの声を上げた。

 

「おうおう、呉のガキンチョどもまで出して来たのか。

お宅の母様達は容赦ないねぇ~…」

 




 感想または御意見、或いは両方をお願いします。

 本編でフィアットはリア式だと書いてますが、“カリオストロの城”で次元がボンネットからスペアタイヤを取り出していた事から個人的にそうだと判断していますが、作者は車関連が完全に無知なので、違っていたら直ぐに修正しますので早めに指摘してください。


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第8話 ルパンに盗まれてハッピー?

――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

「おうおう、呉のガキンチョどもまで出して来たのか。

お宅の母様達は容赦ないねぇ~…」

 

 『晴風』後方から2手に別れて接近する2個艦隊の全艦艇の識別帯が青色で、随伴艦艇が吹雪級、綾波級、暁級の3艦級(特型駆逐艦)であった事に呆れたルパンに弄られたましろだったが、実際『晴風』後方から接近する2個艦隊の全艦が呉女子海洋学校の所属艦艇であり、いくらなんでも自分達(横須賀女子海洋学校)の1年上の学生達の教育艦群までが都合良く出てくるのはおかしすぎ、彼女達は母・真雪か長姉・真霜のどちらかの手で来たのを察して顔面蒼白になっていた。

 蛇足であるが、横須賀女子海洋学校なら赤の識別帯で陽炎級であり、佐世保女子海洋学校は緑の識別帯で夕雲級、舞鶴女子海洋学校は黄色の識別帯で初春級・白露級・朝潮級の3艦級である。

 

「前方の2個艦隊も確認!!!

右舷前方は『間宮』『明石』『浜風』『舞風』の4艦!!!

左舷前方は『レキシントン』級大型直接教教艦とフレッチャー級航洋直接教育艦群!!!」

 

「ド畜生!!!

ヤンキー(アメリカ)の奴等まで動員したのか!!?」

 

 更にマチコが前方からの2個艦隊の詳細を報せ、右舷の4隻は横須賀女子海洋学校所属艦艇だった上に脅威度が低かった(『浜風』と『舞風』は『晴風』と同じ陽炎級であったが、『明石』は工作艦で『間宮』は給糧艦)ので反応が薄かったが、左舷のはアメリカ(アナポリス校)からの交流艦隊だった為にヴィルヘルミーナが思わず怒鳴った。

 

「右舷前方艦隊の後方に更に1隻!!!

改インディペンデンス級沿海域戦闘艦(教官艦『さるしま』の姉妹艦)、艦番号は“BRF15”!!!」

 

「艦番号から見て『みくら』ね。

でもおかしいわね。

あの船は艦長の福内二等保安監察官が乗員全員を従えてオーシャンモールに行っているから、神戸で繋留されていた筈」

 

 最後に確認された総旗艦と予想される『みくら』に対して不二子が疑問を感じていて、ましろが明乃と同じく艦長職を放棄する人間がいた事に嫌そうにしていたが、真実を言うと『みくら』は不二子の言う通りに典子以下全乗員が不在(そして現在はルパンによってオーシャンモール・四国沖店の近海で漂流中)だったが、代わりに長期ドック入りしている『大和』の乗員達によって動かされていたのだった。

 

「岬さん!!!」

 

「総員再配置!!!」

 

 接近するのが呉女子海洋学校の艦隊群であろうと、今此処で捕縛されたらどんな最悪の事をされるのが目に見えていたので、明乃は不二子から投げ渡された艦長帽を被った後に乗員全員に退却準備を命じ、更にましろ達と共に艦橋へ走り出した。

 だが逃げる時期を完全に逃していて、明乃達が艦橋に入った時には呉女子海洋学校の艦隊群は各々の予定行動を取って『晴風』を完全に包囲、吹雪級や綾波級の一部が『晴風』に向けて探照灯を照射した後に全武装を『晴風』に向けていた。

 

『『晴風』に告ぐ!!!

我々は完全に貴艦を包囲した!!!

速やかに投降せよ!!!』

 

 呉女子海洋学校の艦隊群は完全に詰んだと判断し、『みくら』からスピーカーで投降を呼び掛けだした。

 

『尚、ルパン三世に脅迫されて投降出来ないのであれば、当艦が代わりの人質となるので、ルパン三世は速やかに『晴風』を解放せよ!!!

と言うより、ルパンはそうしてください!!!』

 

「お前等、それが本音だろ!!!」

 

 どうやら呉女子海洋学校の面々もルパンに盗まれたい願望が有る事が判明し、ましろが思わず怒鳴っている脇で、不二子が呆れて溜息を吐いて、明乃達が苦笑していた。

 

『冗談はNothing!!!

ルパンに代わりに盗まれるのは当艦デェェース!!!』

 

『否、ウチの艦がですよ!!!』

 

 更に言うと、事実上のルパン盗難要請を出した『みくら』に『金剛』以下の他の教育艦群が次々に抗議をした為、スピーカーを使っての口喧嘩が起きていた。

 

「あーあ~…逃げんの(おっせ)ぇ~から、こうなんだよ」

 

「誰の所為でこうなったと思ってるんだ!!?」

 

「……誰の所為?」

 

「ルパンの所為だ!!!」

 

 そんな時にルパン達がのんびり艦橋に入ってきたので、ましろが八つ当たりに等しい形でルパンに怒鳴っていた。

 だがルパン達だけでなく銭形までが妙に落ち着いているのが、明乃には疑問だった。

 

「とっつぁん、商売(ガタキ)のガキンチョどもと言え、此の包囲どう思う?」

 

「なっとらん。

同士討ちを警戒したのか、『晴風』と距離を取りすぎている。

アレでは即応が出来んぞ」

 

「そう思ったでしょ!!!

そう思うでしょ!!!」

 

 銭形が呉女子海洋学校の艦隊群の包囲陣を非難したら、ルパンが右手で両目を押さえながら高笑いしていたが、明乃達は此の状況下でもルパンが『晴風』ごと逃げれる自信があるのを察してギョッとした。

 銭形は気付いていなかったが、ルパンは既に左の掌の中で何かを弄っていて、それに合わせてオーシャンモール・四国沖店から何かが『晴風』目指して向かってきていた。

 

「…で、ルパン、お前はちゃんと逃げる準備をしているんだろ?」

 

「勿論!

細工は既に流々、後は仕上げをじっくり御覧(ゴロウ)じろってね」

 

 ルパンは自信の表れとしてシャツの左胸のポケットから煙草の箱を安物ライターごと取り出した。

 ルパンは煙草の箱を揺すって煙草1本を出そうとしたが、その直前にましろがルパンから煙草の箱とライターを奪った。

 

「あ、泥棒!!!」

 

「泥棒はアンタだろ!!!」

 

「あ、確かに泥棒は俺だった。

でも煙草は返して!」

 

 ましろはルパンを警戒している事もあって、ルパンの返還要請を睨む事で返しながら後退した。

 

「…ブルーマーメイドは全艦艇、全区画、禁煙だ!!!」

 

 ましろはルパンにそう言うと、ルパンの煙草とライターを窓の外へ投げ捨てた。

 

「次元、そう言う事だから貴方のも」

 

「おいおい、俺のもか!!!」

 

 更に不二子も次元から煙草の箱を取り上げてましろとは逆の窓から外に投げ捨てた。

 ルパンのライターはそのまま海に落ちて沈んでいったが、2人各々の煙草の箱は波に揉まれながら浮いていた。

 

「あ~あ~…やっちゃったぁ~」

 

「だな!」

 

「……え?」

 

「馬鹿者!!!

無警戒に安直な事をするな!!!」

 

「え、え!?」

 

 煙草の箱の現状にルパンと次元が笑って、更に銭形に怒鳴られた事にましろが驚き戸惑っていたら、2つの煙草の箱が少し膨らんだ後に煙幕を大量に噴出、『晴風』だけでなく包囲陣を引く呉女子海洋学校の艦艇までが飲み込まれてしまい、驚き戸惑っての悲鳴を上げるだけでなく犯人をルパンと勘違いしてルパンの名を叫んでいた。

 

「カァモォ~ン、『ルパァ~ンキャッチャー』!!!」

 

「ルパンキャッ、っ!?」

 

 明乃達はルパンの次の行動が分からない事から茫然としていたら、『晴風』の中央部で何かの大音が聞こえた。

 

「そんじゃあ、最後の総仕上げをしに行くぞ!」

 

「おう!」

 

 明乃達が硬直しているのを尻目に、ルパンと次元は暗視スコープを掛けると艦橋から飛び出した。

 煙幕の中でルパンと次元が『晴風』に施しているのが何なのかを分からずにいたら、不意に『晴風』の全体から金属の軋む音が響きだし、同時に足下からの浮遊感が嫌な予感と共に感じだした。

 明乃達は“まさか”と思って他の者達と目線を合わせていたら、煙幕が潮風に吹き飛ばされる形で晴れたので艦橋の窓から周囲を覗くと、『晴風』の両舷にフックショットかクローショットが大量に取り付けられているだけでなく、第二煙突後方の船体に巨大な4本の鉤爪が『晴風』を掴んでいた。

 それ等各々に続いているワイヤーの先を辿った上方には巨大な楕円形気球………今まではオーシャンモール・四国沖店の宣伝用無人飛行船に擬態していた『ルパンキャッチャー』が繋がっていて、『ルパンキャッチャー』は『晴風』諸共上昇を開始した。

 

「浮いてる!!!

『晴風』が浮かぼうとしてる!!!」

 

「いやあぁぁー!!!

下ろしてぇぇぇー!!!」

 

「機関を止めろ!!!

空転してスクリューシャフトが折れるぞ!!!」

 

「マロンちゃん、機関停止!!!

急いで!!!」

 

「総員、艦内へ退避!!!

固定出来る物は全部固定して!!!

野間さん、急いで降りてきて!!!」

 

 まさかのルパンの行為に、芽依と鈴が悲鳴を上げながら走り回り、ヴィルヘルミーナの指摘で明乃が伝声管に張り付いて機関室に、ましろが乗員全員に注意勧告をして、マチコが慌てて見張り台から艦橋へ降りてきたが、艦橋に入る直前に艦橋の上で胡座で座っている五ェ門の後ろ姿を見つけた。

 

『………っ!

ルパンが逃げる!!!

全艦、スキッパーを下ろしてかかれ!!!』

 

 『晴風』はパニック状態になっていたが、呉女子海洋学校の面々は『晴風』を唖然としながら見つめていたが、豪快に海水が垂れ落ちている『晴風』のスクリュー2基が半分近く海面から離れた直後にルパン(『晴風』)が逃げようとしている事に気付いた、『みくら』艦長代理にして艦隊の総司令を取る宮里十海(『大和』艦長で通称:みやさん)の号令下、大急ぎでスキッパーを下ろして乗員を限界まで乗せると直ぐに『晴風』目指して急発進させた。

 だが銭形の指摘通り距離が有りすぎた為、先頭グループが『晴風』の所に辿り着いた時には『晴風』の船底が完全に海面から離れた後だったが、イギリスダートマス校やアナポリス校と並び称される世界三大女子海洋学校の一角たる呉女子海洋学校の生徒の意地と誇りで、先頭グループの何人かが上昇中の『晴風』に飛び掛かって手摺の根元や錨に捕まり、同乗者達もぶら下がっている者に次々にしがみついた。

 更にしがみついた者達の協力下で自分達のスキッパーと『晴風』とをワイヤーで繋ぎ、後続の者達も時間と高さで流石に手摺には捕まれなかったが、『晴風』のビルジキールやスクリューシャフトに捕まり、誰1人『晴風』の甲板に登れなくても自分達やスキッパー群の重みで『晴風』の上昇を止めようとして、遠巻きからだと凄い事に、『晴風』の甲板下船体がしがみつく呉女子海洋学校の生徒達で完全に見えなくなっていた。

 だが、それは完全に無駄骨であり、『晴風』は第一主砲に右から凭れて笑っているルパンに答える様に上昇を続けて………1人が腕の力が尽きて他共々落下したのを呼び水として、高さ的に危険との判断しての自主的もあって、呉女子海洋学校の生徒達が、中には垂直の宙吊りとなったスキッパー諸共に次々に落下し出した。

 因みに、次元は第三主砲の左脇で落ち続ける呉女子海洋学校の生徒達を見ていた。

 

「ぐふふふ……お主等、まだまだ修行が足りぬぅ~……う!?」

 

「…ルウゥゥ~パアァ~アァァーン!!!」

 

 落ちた呉女子海洋学校の生徒達を下品に笑っていたルパンだったが、足下から変な声がしたのでそちらに向いた直後、手の甲に血管を多数浮かばせた右手が現れて手摺の棒を掴んだ。

 

「うわあぁぁー!!!

未来のとっつぁん候補!!?」

 

 続けて銀の腕輪を着いていた右手の主である能村進愛(『大和』副長で通称:のむさん)が赤鬼みたいな顔で上半身を上げた為、彼女を銭形と連想した事もあってルパンは驚いて後ずさった。

 

「のむさん頑張って!」

 

「堪えて堪えて!」

 

「落とさないでよ!」

 

「私達も、もう少しで登れるから!」

 

「だから絶対、放さないで!」

 

 凄い事に進愛の両肩や腰に両足には『大和』乗員が10人以上も芋蔓式にしがみついていて、此れにはルパンだけでなく明乃以下の艦橋要員達もギョッしながら窓に詰め寄っていた。

 

「止めなさいって!!

高さ的に危ないんだから!」

 

「…なんで、此の船なんだ!?

お前は我等が『大和』を狙ってたんじゃなかったのか!?」

 

「此れには深ぁ~い訳があってね!!

コイツ以外にも他のを狙う事になったのよ!!」

 

(やっかま)っしい!!!

盗まれんなら、此処でお前を捕まえてやる!」

 

「そんな事、言わないで、って」

 

「あ…」

 

 ルパンは進愛の顔を押して引き剥がそうとし、進愛は手摺の棒にしがみついて抵抗していたが、手摺は彼女の思いに答えられずに折れてしまい、進愛は他の『大和』乗員達共々悲鳴を上げながら落下して派手な水柱を上げた。

 

「……女は何歳(イクツ)であっても怖いわ…」

 

 どうやら進愛達が最後だったらしく、呉女子海洋学校の生徒達を振り切ったのを確認して、ルパンは溜息を吐いて引き吊った笑みを浮かべながらボヤいた。

 

「あの人は例外のだと思いますよ」

 

 ルパンのボヤきが聞こえたのか、明乃がルパンに突っ込んで、ましろ達が揃って数度頷いていた。

 

『対空戦闘用意!!!』

 

『止めなさい!!!

あの高さから落ちたら『晴風』が木端微塵になります!』

 

 スキッパーでの強襲乗艦に失敗した事から、今度は『ルパンキャッチャー』を撃墜しようとする艦長達がいたが、『晴風』が『金剛』や『レキシントン』の艦橋をも上回る高さにまで上昇した事から、十海が止めさせた。

 更に呉女子海洋学校の艦隊にとって不味い事に、報道用の飛行船群が次々に殺到してきていて、誤射が起きる可能性が高まり続けていたので、最早誰も対空戦闘を命じようとする艦長はいなかった。

 

「そんじゃあ、皆様、ごきげんようー!!!」

 

 ルパンは『晴風』が必要高度に達したら、リモコンで『ルパンキャッチャー』の推進機を起動、前進を始めて少ししたら補助ロケット推進機も点火、結果『ルパンキャッチャー』&『晴風』は急加速………『晴風』乗艦達が悲鳴を上げていたが、ルパンは呉女子海洋学校の艦艇に笑いながら手を振っていた。

 

「……『蒼龍』(飛行船支援艦、史実で言えば航空母艦)を連れてくるべきだった…」

 

「必ず私が捕まえてやる!!!

覚えてなさぁぁーい、ルゥパァァァーン!!!」

 

 『みしま』の艦橋で十海が頭を抱えていて、落下のショックで失神している『大和』乗員達に反してエラく元気な進愛は漂流しながら両腕を振り上げて叫んでいたが、彼女の右手から腕輪が消えていた。

 その間に『晴風』(&『ルパンキャッチャー』)は崩れゆく飛行機雲を残して南の空の彼方へ消えていった。

 

 此の時から、呉女子海洋学校は横須賀女子海洋学校に異常な対抗心を………特に『晴風』と『武蔵』に対して持つようになったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― クニトー出版所有飛行船 ―――

 

 

 雑誌“TOKYO LIFE”所属記者の一色まりやは、『晴風』&『ルパンキャッチャー』が大型レンズ付きカメラでさえ見えなくなる程に去ったのを確認したら、少し間をおいてから溜息を吐いて構えていたカメラを下ろした。

 

「…此れで良いんですよね、銭形さん?」

 

 まりやがカメラ裏のデジタル画面で連写した写真を幾つか確認し、その内の1枚である“明乃達艦橋要員の全員が前方の窓に詰め寄って、第一主砲に軽く凭れながら不敵に笑うルパン三世の背中を見詰めている”写真群の中で1番出来が良い物を見つけると、それを暫く見詰めていた。

 此のまりやの写真は本騒動を象徴する1枚と化すだけでなく、此の年のピュリッツァー賞の写真部門に選ばれる代物となる。

 

「貴女も御元気そうですね、峰編集長」

 

 まりやは明乃達の後ろにいる不二子がはっきり写っているのを見つけて、彼女に微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 数刻後・教育艦『晴風』 ―――

 

 

「ぬほほほ…トンズラ大成功!!!」

 

 『晴風』を見事(?)に逃がしたルパンは艦橋に戻ってきたら、明乃達は茫然としていたが、不二子は何故か冷たい目線で出迎えた。

 

「…処でルパン、なんで岬さん達4人は私服でオーシャンモールに行った筈なのに、制服姿で帰ってきたの?」

 

 不二子の質問にましろ達も「あ!!!」と声を出して明乃に振り向き、当の明乃は顔を赤くして伏せってしまい、ルパンはゲッとした。

 

「……何をしたの、ル・パ・ン?」

 

「…まさか主等、ルパン相手に大人の階段を登った?」

 

「やったのか!!?」

 

「やったのですね!!!」

 

 ヴィルヘルミーナが変な予想を言い、それに芽依と幸子が悪乗りしてアダルトな2人劇を演じ、ましろと鈴までが顔を赤くしたが、不二子は益々殺気を強めたので、ルパンは顔面蒼白で後ずさった。

 

「…ルゥパァァ~ン?」

 

「……い、いやぁ、その…此方の準備不足って事で、ちょぉぉ、っと服を提供して貰ったと言う事で…」

 

「…ニャア!!!」

 

「ギィヤアァァァー!!!」

 

 高速飛行中の『晴風』でルパンの絶叫が響いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…警視庁への通信、終わりました」

 

 その頃の『晴風』の通信室では、鶇は銭形に命じられて極秘通信を発信し終えていた。

 

「あ~、原簿と複写は此れ等だけだったな?」

 

「はい、そうですが………っ!?」

 

 鶇は送信した通信文で顔を青くしていたが、銭形は彼女から今の通信文の原簿と複写を手に取って確認を取ると、ポケットからライターを取り出してその2つに火を点けた。

 

「何するんですか!!?」

 

「世の中にはな、知らない方が幸せである事もあるんだ」

 

 鶇は銭形が原簿と複写を燃やして脇に捨てた事に驚き戸惑っていたが、更に銭形はいつの間にかに手斧を持っていたので、鶇は嫌な予感を否応なく感じた。

 

「横須賀に帰れたら、通信機器の修理費は請求書にして警視庁に送ってくれ」

 

 銭形はそう言うと、硬直した鶇を無視して振り上げた手斧を通信機器の1つに全力で振り下ろした。




 感想または御意見、或いは両方でも良いのでお願いします。

 前回からハイフリ原作では無かった呉女子海洋学校の艦艇群の登場となりましたが、此れは俊泊さんの出演要望の4隻の内の2隻である『阿賀野』と『レキシントン』を出した事からの副作用でこうなりました。
 まだまだ検討中ですが、呉女子海洋学校は最終局面で重要なキーになる予定です。
 後、残り2隻の『大淀』と『摩耶』も近い内に登場予定です。

 それと、後半で『晴風』と合体した『ルパンキャッチャー』は“燃えよ斬鉄剣”からの投入品ですが、遅くても第2話前にルパンによってアップグレードされて陽炎級位までなら牽引可能となったとしていますので、細かい突っ込みは無しでお願いします。
 それと『晴風』&『ルパンキャッチャー』は“ルパン暗殺指令”でのP-3Cの役割を務めさせるので、『晴風』はある意味ハイフリ原作より酷い最後を迎えますのであしからず…

 最後に映画でのキャラである“宮里十愛”と“能村進愛”の2人を出しましたが、本来の進愛は三河弁で喋るのに本編では標準語で喋ってますが、此れは三河弁の変換がどうしても出来なかったからの妥協です。


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第9話 横須賀女子海洋学校がピンチ

――― 横須賀女子海洋学校 ―――

 

 

 “ルパン三世、『晴風』を盗む”

 

 此の一報はルパンが『晴風』と共に逃走した直後に瞬く間に日本中を駆け巡り、全てブルーマーメイドの関係者達を震撼させ、一部はある事を予感させた為に恐怖のドン底に叩き落とされていた。

 当然、『晴風』が所属する横須賀女子海洋学校もそうであり、校長・宗谷真雪以下の上層部の面々は2つのテレビ画面各々に映る宗谷真霜と平賀倫子からその事を報告されて、愕然とせざるをえなかった。

 そして2つテレビ画面には真霜が深々と頭を下げ、倫子はスカートと帽子(海面落下時に行方不明)の2つが無しでのずぶ濡れ状態で土下座をしていた。

 

「…此の馬鹿者どもが!!!

呉の生徒まで動員しておいて、良いようにルパンにヤられおって!!!

オーシャンモールの騒動はネットに流出した為に我々は日本中処か、全世界に恥を晒す事になったんだぞ!!!」

 

 元々『晴風』の騒動に色々と疑問を感じていた真雪(達?)は、真霜を通してオーシャンモール・四国沖店で倫子達に『晴風』を捕縛させて、彼女達の取り調べで『晴風』の無実を照明しようとしていて、本来なら戦力に組み込むべきでない『明石』と『間宮』が包囲艦隊に編入されていたのはその表れであった。

 だがその目論みは、不意打ちで現れたルパンによって『晴風』を盗まれた事で失敗に終わってしまい、真雪の部下の1人が真霜と倫子に怒鳴り始めた。

 真霜と倫子は自分達の非を認め、更に部下や呉女子海洋学校の生徒達を責任追及から守る為に何も答えなかったが、真雪がその部下を睨んで止めさせた。

 

「……宗谷一等監察官、ルパンによって『晴風』に逃げられる結果になりましたが、任務ご苦労様でした」

 

『申し訳ありません。

ですが此の1件で『晴風』の反乱艦認定は確実になってしまいました』

 

「そんな事は分かっています。

下がってください」

 

 真雪はポーカーフェイスを保ったまま、真霜を親子関係でなく上下関係のやり取りをしたが、真霜と倫子のテレビ画面が消えると直ぐに溜息を大きく吐くだけでなく、右拳の握る力を強める事で僅かに悔しさを表面化させていた。

 

「…海上安全整備局はどうですか?」

 

「近い内に『晴風』の反乱艦認定の公表に合わせて対『晴風』部隊………いえ、対ルパン三世部隊を編成する等をすると思われますが、現時点ではかなり混乱していて動きが完全に止まってます」

 

「でしょうね。

あのルパン三世が『晴風』に付いているのですから」

 

「しかし、『晴風』を盗んだルパンは本物なのでしょうか?」

 

 海上安全整備局は兎も角、真雪達は、『晴風』自体はほぼ諦めていたが、ルパンは人身売買や性奴隷化等の非人道的な事を一切許さず(ムシ)ろ非力な者(達)を守るか助ける人格者である事から、少なくとも明乃達『晴風』乗員達が丁重に扱われているだろうと思い、只ロリコンではないがルパンの無類の女好きが不安視されるが、落ち着きだしていた事から、ルパンに対する疑問が出始めていた。

 

「とある大資産家の屋敷の全金庫を攻略するだけでなく、夫人の心までもを盗む。(此の影響で夫人は数日間愛しそうに“ルパン”としか言わなくなった)

ニューヨークの自由の女神を気球で持ち去って、アメリカ全土に警戒体制を敷かせる」

 

「凄かったのが、メッカの石油を利用した金庫を攻略する為だけに、南極で地殻変動を起こして中東全域の石油噴出量を激減さける。

スイス銀行を建物丸ごと盗んで、世界中の資産家をパニックに陥らせる」

 

「嘗てイギリス随一の障害競馬レッドアローを出馬したグランドナショナルレース(世界一過酷な障害レースと称され、リヴァプール郊外で行われる世界最高額賞金額の障害競走)の最中に盗み出す。

後日、レッドアローが激太り状態で返品された事は笑い話になったな」

 

「見つけた財宝や、盗んだ札束や金塊に宝石の総額は最早数値化出来ないと言われてるからな」

 

「思えば、あんな化け物をよく相手にしているな、警察の連中は…」

 

「でもルパンは低価値な品やガラクタ当然の物を稀に盗む事はあったが、軍事兵器や艦艇の盗みは聞いた事が無いぞ」

 

 一部耳を疑うようなルパンの所業が次々に口に出されていたが、近年の日本を騒がした著名な怪盗達とは一線を超え、欧米最強の怪盗たるアルセーヌ・ルパンの孫に相応しい存在なのがルパン三世だと判断していた。

 だがそれでも全員がルパンが『晴風』を盗むとは思えずにいたが、真雪がまた溜息を大きく吐いた。

 

「いえ、ルパンが艦艇を盗んだ事は1度だけ有ります」

 

 真雪の言葉に全員が一斉に「えっ!?」と叫んだ。

 

「今から20年近く前の1993年、ロシアは“最大”“最強”“最新”の三冠を有する原子力潜水艦『イワノフ』を竣工させて、欧米に軍事的緊張をもたらし原潜中心の軍拡競争が起きかけました。

ですが『イワノフ』は軍に引き渡されたその日、厳重な警戒態勢を掻い潜ったルパンに容易く盗まれてしまったのです。

南太平洋の海底に眠る海賊キッドの秘宝を手に入れる為だけに盗まれて、あっさり乗り捨てられて沈みました」

 

「イ、イィ『イワノフ』は、処女航海での原子炉の事故で沈んだんじゃなかったのですか!!?」

 

「それはロシアが世界中にばら蒔いた欺瞞(ウソ)ですよ。

ロシアでなくても、ルパンに盗まれて沈んだだなんて、赤っ恥を晒すような事を普通はしないでしょう。

だから『イワノフ』の真実は、軍やブルーマーメイドで当時現役だった者達だけが知っているんです」

 

 真雪から原潜『イワノフ』の衝撃の真実を伝えられ、唖然とせざるをえなかった。

 

「だとしたら、ルパンは何故『晴風』を盗んだと言うのですか!!?」

 

「『イワノフ』で海賊キッドの秘宝を狙った様に、『晴風』を使って宝探しをやるとは思えません!」

 

「『晴風』に宝が隠されているとも、秘宝の在処(アリカ)が有るとも思えませんし…」

 

「まさか意中の女を口説く為とかの、ふざけたのじゃないだろうな?

1908年型のパッカードを盗んだ時のように」

 

「おそらく、ルパンにとって『晴風』強奪は通過点の1つ、欲したのは『晴風』その物ではなく『晴風』の乗員達だったのでしょう。

ルパンの真の狙いは大和級、逃げた方向から推測して狙っているのは、当校所属の大和級二番艦『武蔵』。

私はてっきりルパンは『大和』を狙うと思ってましたがね…」

 

 真雪は敢えて『晴風』から大和級が狙われたのを言わなかったが、『武蔵』がルパンに狙われた理由としたのは消去法からで『大和』は先述の通り、三番艦『信濃』は『大和』と同様に長期ドック入りの最中、四番艦『紀伊』は所属する佐世保女子海洋学校の長期遠洋航海の艦隊に組み込まれていて現在は南大西洋にいるからであった。

 だが真雪は『武蔵』強奪もルパンにとっての通過点であると思っていたが、それ以降ルパンが『武蔵』を使って何をしようとしているかまでは分からなかった。

 

「だとすれば、不味いですよ!!!

『武蔵』は他の教育艦共々通信途絶の所在不明になっているんです!」

 

「『武蔵』までルパンに盗まれたとなったら我が校(横須賀女子海洋学校)処か、日本ブルーマーメイド全体に影響を及ぼす大騒動に発展する!」

 

「探せ!!!

なんとしてでも『晴風』と『武蔵』を探すんだ!!!」

 

「佐世保女子海洋学校に『紀伊』を急ぎ呼び戻すように伝えろ!

呉女子海洋学校と舞鶴女子海洋学校に『大和』と『信濃』を早期にドックから出せないか確認するんだ!」

 

 真雪は部下達がパニクりながらの動きを冷めた目で見詰め、“海上安全整備局の混乱もこんな感じで此処以上なのだろう”と思っていた。

 

「……どのみち、静観が最悪の選択肢になるのだから、戦わざるをえないと言う事ね。

あのルパン三世と…」

 

「更に不味い事に、ルパンはブルーマーメイドの複数人を殺していますので、かなり危険な状態と予想されます」

 

 真雪に全員が頷くと同時に、顔を引き吊らせていた。

 と言うのも、ルパンの盗みは人の善悪を試すリトマス試験紙に近い性質を持っていたからだ。

 例えば、倒産寸前のフロリダ州マイアミの極小銀行がルパンの盗難被害にあった事で僅か1年でフロリダ屈指の大銀行となり、善意を尽くしていたら被害額の何乗の利益を得る事が出来るので、銀行や宝石店の一部では“ルパンの盗難被害にあう事が超一流のステータス”と捉えていたので、盗みに入ったルパン(達)を歓迎する困った店舗がそれなりにいた。

 処が逆に悪事を重ねているとルパン(稀に銭形の場合有り)によって破滅する事となり、此の一例として国家ぐるみの偽札製造が露見して国家崩壊に至ったカリオストロ公国(現在はフランスの保護観察下で観光立国として国家再建中)はあまりに有名だった。

 海上安全整備局の現状を見る感じだと、どうやらブルーマーメイドには破滅に繋がる悪行が有るらしく、それが本騒動で露見するのを恐れている様に見えた。

 

「そうは言っても、ルパンを相手とするなら、日本中のブルーマーメイド全員を総動員しても足りません」

 

 更に怯える理由の1つ、湾岸戦争での経済不況を払拭しようとした欧米各国(&日本)が、ルパン一世の財宝を獲得しようと、その財宝の在処を知るだろうルパン三世を狙っての多国籍軍(アメリカを主体にイギリス、フランス、イタリア、ドイツ、カナダ)を結成するも、ルパン達には逃げられて財宝は特許申請書付きの真空管ラジオ(当然、現在の価値は1文無し)だっただけでなく、経済政策ミスをルパン一世の財宝で補って秘匿する計画が暴露、此の騒動で歴史的貴重品・ナポレオンの辞書の損失に戦場となった重要文化遺産・ニプル城が完全崩落した事もあって、世界中から非難が殺到して辞任・解任・総辞職が相次いだ事があったからだ。

 

「だからと言って逃げるわけにはいかないでしょう」

 

 また言うが、ブルーマーメイドにとって現時点では静観は選択肢としては最悪であり、しかも此の騒動でブルーマーメイド正規隊員に複数の殉職者が出てしまっていたら尚更であった。

 

「先ずは打てる手は全て打ちましょう。

可能性は極めて低いですが『武蔵』が悪用された事を想定して、先程の意見通り『大和』と『信濃』の早期復帰、『紀伊』の早期帰還を各校に要請!」

 

 方針が決まった事もあってか、真雪の指示に全員が揃って「了解!」と答えた。

 

「それと、遺憾だけど、警察庁に連絡してルパン三世の情報提供、出来ればルパン三世専従捜査官・銭形警部の出向を急ぎ要請!」

 

 警察庁に対する2つのみは、真雪自身を含めた全員が了解しながらも嫌そうにしたが、此れは世界的にもブルーマーメイドと警察(ICPO)が極めて仲が悪いからであった。

 特に日本の場合、元々政府が警察とブルーマーメイドを相互監視態勢として意図的に険悪にしていて、日本領土が徐々に水没している事に合わせて警察の影響範囲が失われて反比例してブルーマーメイドは拡張を続けていた為、世界でも屈指の犬猿の仲と化していた。

 まぁ日本警察とブルーマーメイドの間で無用な揉め事が度々起きているのが珠に傷だったが、少なくともブルーマーメイドによって組織的腐敗による自己満足の暴力機関と化した特別高等警察が解体に追い込まれたのを初めに、警察の冤罪行為や無茶な取り締まり等が暴露されていたのだった。

 だからか、真雪は警察への協力要請に軽く苦笑をしていたが、此処でオーシャンモールでの出来事の違和感をいくつか気付いた。

 

「…オーシャンモールの四国沖店には警察が駐在していましたよね?」

 

「ええ。

あれだけの規模ですから、機動隊だけでも1個大隊くらいはいた筈です」

 

「ルパンが騒ぎを起こしている間、彼等は何をしていたの?

黙って静観していたと言うのですか?」

 

「……我々ブルーマーメイドが動いていたからじゃないのですか?」

 

「それをあの猪突猛進の銭形警部が我慢出来ますか?

そう言えば、銭形警部はオーシャンモールに現れなかったのですか?」

 

 真雪を呼水として、全員がオーシャンモール・四国沖店での警察の動きに疑問を感じざざるをえなかった。

 そんな時に、廊下の方から多数の足音が地鳴りに似た形で響き出し………大扉が勢いよく開くと同時に大多数の機動隊が雄叫びを上げての楯を前に翳しながら駆け込んできた。

 真雪達がまさかの機動隊の登場に驚いて硬直してしまったが、機動隊が入り口付近で複数の横列を構成し、体勢が整うと中央部が斜め前の左右に移動して、そこから警視庁の最高責任者である警視総監・白馬高昭が刑事や警部を多数従えて歩み寄ってきた。

 地域的に本来なら現れるべき神奈川県警でなく警視庁(東京都の警察)だった事もそうだったが、警視総監たる白馬が陣頭指揮で来るとの異常事態なのだから、真雪達は驚き戸惑うしかなかった。

 

「こんな時期にこんな形で失礼をした事だけはお詫びしますよ、宗谷校長」

 

「白馬警視総監、此れはどう言う事ですか!?」

 

「勿論、ルパン三世に関連した事で来たのです」

 

「此所にルパンが潜んでいると言うのですか!?」

 

「そうではありません。

我々はルパンではなく、貴女を求めて来たのですから」

 

 そんな真雪達を無視して、白馬は一歩前に出て胸を張って言い放った。

 

「横須賀女子海洋学校校長・宗谷真雪!!!

貴女を本騒動に於いての公務員職権濫用、そしてルパン三世への共犯及び機密情報流出、此れ等の疑いで身柄を拘束する!!!」

 

 白馬の通達に真雪達が驚き戸惑いの極みで硬直したが、白馬は立て続けて真雪の連行を命じ、刑事や機動隊の隊員達の何人かが直ぐに動いた。

 

「ふ、ふざけるな!!!」

 

「何をもってなんだ!!?」

 

 横須賀女子海洋学校側も真雪を守ろうとしたが、抵抗空しく真雪は機動隊隊員に両脇を固められる形で連行されていった。

 ルパンの『晴風』強奪に加えて真雪の連行だけでも相当なショックだったが、此の数刻後には真霜もオーシャンモール・四国沖店での業務上過失の疑いで警察に拘束、更に数刻後には海軍陸戦隊や陸軍化学防護隊と共に海上安全整備局に強制捜査として突入を開始する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 成田 ―――

 

 

 陸軍の無茶な地上げや立ち引きに建設開始時の反対運動の殲滅戦に近い弾圧が行われた後に建設された飛行船専用基地が民間への払い下げを成り立ちをした成田空港は、日本最大のハブ空港を経由して、20世紀初頭から始まった日本沈降によって機能を失いつつある羽田空港から国際線機能の移転で、現在は日本最大の空港に登り詰めた。

 此の日の夜、その成田空港に特別便の飛行船が着陸しようとしていて、飛行船の着陸を警察庁長官・浄園裕が後ろに横1列に並ぶ大多数の部下達と共に緊張した顔立ちで待っていた。

 そして飛行船から下ろされた(モヤ)い全てが整備員達によって固定され、タラップが掛けられた先の扉が開いた奥からICPO本部長ジャン・ピエールが現れた。

 

「御待ちしていました、ジャン本部長!!!」

 

「御迎え御苦労です、警察庁長官」

 

 浄園は部下達と揃って敬礼しながらタラップを下りるジャンを出迎え、ジャンも下りきると浄園達に答礼した。

 

「私の提案した計画はどうなってます?」

 

「全て順調です!

ブルーマーメイドの横須賀女子海洋学校が騒動を起こしてますが…」

 

「その事は飛行船の中で聞きました。

ついさっき銭形君からの通信報告だと、ルパン達はそれを上手く利用している様だ」

 

 ジャンの返事を聞いて、浄園は強張めていた表情を若干緩めた。

 

「合同記者会見の準備は出来てますが、どうします?」

 

「いえ、今日はもう遅いですから、後日改めてやりましょう」

 

 ジャンは浄園に先導されて、待機されていたリムジンに乗り込んだ。




 感想または御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 補足情報ですが、海上安全整備局のは前回の末で行われた銭形の通信で急遽行われましたが、宗谷親子のは冤罪覚悟の元から予定されていたモノです。
 此れは宗谷親子にルパン達の行動を妨害されたくなかった事を主としています。

 更に裏設定として、真雪は何時のかは不明だがルパンが起こした騒動に銭形指揮下で参加した事が1度あるとしています。
 但し真雪は兎も角、ルパン(達?)は会ってないので全く知らない、銭形は此の事を完全に忘れているとしています。

 尚、宗谷親子の罪状は知識無しの自分なりに考えたモノなので、間違っていると思ったら、代わりにすべきモノを上げてください。


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第10話 銭形警部のピンチ

――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

 横須賀女子海洋学校以下のブルーマーメイドの重要施設が警察(及び陸海の両軍)の強制捜査が行われていた翌日の朝、ルパンによってブルーマーメイドの包囲網と監視網を抜けた『晴風』は切り離した『ルパンキャッチャー』を艦尾に係留して北西太平洋のど真ん中で停泊していた。

 そして明乃達『晴風』乗員の志摩と美波の2人を除いた全員は会議室………と言うが、実際の造りは学生達向けの教育艦らしい教室になっている大部屋に集合して、各々強張った顔で席に座っていた。

 尚、志摩と美波がいないのは、志摩はRATtウイルス感染でいまだに暴れそうだったので銭形によって医務室のベッドの上で雁字搦(ガンジガラ)めの蓑虫(ミノムシ)状態(見にいった明乃曰く「足首以上の顔以下の間を1寸の隙間なく縛られている」)で、美波は観察と監視で同伴している為であり、志摩が拘束を抜けたり脱走した場合は銭形が直ぐに駆け付ける算段であった。

 

「…皆、昨日は御苦労様です!」

 

「起立!!」

 

 そんな明乃達が待つ大部屋に不二子が扉を開けて入室、此れに合わせて明乃の号令下に全員が一斉に立ち上がった。

 不二子に続いて銭形も入室して、此処までは全員許容範囲のであったが…

 

「よう!!」

 

…『晴風』の状況をややこしくした張本人たるルパンが次元と共に入室し、ルパンと次元の存在に全員が各々の形で騒然とした。

 尚、五ェ門は此所には来ておらず、予想外の敵(?)の襲来に備えて艦橋の上で周囲を監視していた。

 まぁ『晴風』クラス各々のルパン(達)への思いは置いておき、不二子の許可の元に明乃の号令で乗員全員が着席した。

 

「…峰教官、銭形警部、此れはどう言う事なのですか!!?」

 

 事前通達では今から不二子から状況説明が行われる予定なのだが、着席から少し間を置いてから洋美が立ち上がりながら不二子と銭形に怒鳴って質問し、ましろは彼女の行為に自分と同じ思いの者がいたと分かって軽めの溜息を吐いていた。

 因みに此の前に『晴風』乗員全員に不二子が偽のブルーマーメイドである事が報されていたのだが、それでも不二子への信頼感は高かったので、不二子本人が承諾していた事もあって『晴風』乗員は引き続き不二子を教官と読んでいた。

 

「何故、ルパンを逮捕しないのですか!!?

しかも『晴風』強奪に協力して、警察の誇り等を捨てたたのですか!!?

更に『晴風』の通信機全てを壊して!!」

 

「……儂だって、好きでコイツを野放しにしているんしゃない。

今直ぐにコイツにワッパを掛けたいんだ…」

 

 洋美は主に銭形に怒鳴っていて麻侖に引っ張られて押さえられたが、当の銭形は“売り言葉に買い言葉”みたいに怒鳴り返すとの予想に反して表情を曇らせるだけだったので、洋美本人も含めて『晴風』乗員全員を戸惑わせた。

 

「コイツを読めば直ぐに分かる」

 

「岬さん、読んであげなさい」

 

 銭形は『晴風』乗員の誰かが理由を訊ねる前に、懐から派手に皺々(シワシワ)の紙を取り出して突き出し、不二子の命で明乃がそれを受け取った。

 明乃が広げて見た処、此れはICPOと警察庁から銭形への命令通達書であった。

 

「…え~と“銭形幸一警部、日本時間の4月1日付けをもって、ルパン三世専従捜査から解任する”………解任!!?」

 

 読み上げた明乃自身もそうで思わず命令通達書を潰してしまったが、『晴風』乗員の全員が“解任”の単語を言いながら各々の形で驚き戸惑っていた。

 

「……そりゃそうだろう………うん()十年、ルパン達を追い掛けて逮捕出来なかったんだからな…」

 

 どうやら銭形はルパン三世専従捜査解任を納得しつつもまだ悔しがっていたらしく、顔を臥せってルパンに慰めされていた。

 明乃は此の命令通達書の状態は銭形の心情を表しているモノだと判断していた。

 

「それが嫌で、警察を辞めてルパンの仲間に加わったのですか?」

 

 ましろは銭形へ自分の予想を言いながら軽蔑の視線を向けていたが、当の銭形は思わず流した涙を右袖で拭ってから首を左右に振った。

 

「だがな、警察庁長官からルパン以上の悪党にワッパを掛けろと命じられたんだ。

“日本への愛国心を見せてみろ”とも言われたしな」

 

 当初は分からなかったが、明乃は銭形に顎で示された事で命令通達書に続きがある事に気付いた。

 

「…“尚、銭形警部にはジャン・ピエールICPO本部長の提言もあって別任務を与える。

別命、銭形幸一警部にショットシェル壊滅捜査を通達する”!」

 

 一般的には“ショットシェル”とは“散弾銃(ショットガン)実包(カートリッジ)”意味なので、明乃達は命令通達書の意味を理解出来ずに隣の者と目線を合わせながらざわついていた。

 入学したての学生では分からないのも無理はなかったが…

 

「ショットシェルって、あのショットシェルの壊滅!!?」

 

「銭形警部、それって不可能任務ですよ!!!」

 

…2年生のヴィルヘルミーナと母関連でましろの2人は例外的に意味を知っていたので、血相を変えて立ち上がって銭形に叫んだ。

 

「銭形のとっつぁんが言っているショットシェルってのは武器密売組織、その世界最大手だ」

 

「ブルーマーメイドも艦艇強奪をかなり許していて、第1級の警戒体制を敷いているわよ。

あ、そうそう、ブルーマーメイドの近代犯罪史の教科書にも載ってましたね…」

 

 次元と不二子によるショットシェルの簡易説明で明乃達もが危険度を認知した。

 只、不二子に教科書の提示が指示されての軽めの講習が行われた事に、芽衣を始めとした何人か(おそらく筆記での赤点組)が嫌そうなにした為、近代犯罪史の教科書に自分(達)が載っていない事に不満を言ったルパンと共に不二子に怒られる羽目になった。

 更に銭形は万里小路楓(通称:万里小路さんorまりこー)も目を見開いていた事に気付いた。

 

「そこの、確かお前は万里小路重工の令嬢だったな?

だったら、ショットシェルの事は知ってるな?」

 

 銭形の質問に楓は表情を強張らせながら頷いた。

 

「はい、『伊402』や『春月』の事で御父様(オトウサマ)からよく聞かせれてます」

 

 『伊402』………竣工した西暦1945年から中国の032型潜水艦が竣工する西暦2012年まで潜水艦内で世界最大に長らく君臨した特潜型こと伊400級潜水艦の3番艦『伊402』は駆逐艦『春月』と共に万里小路重工の埠頭で整備中、台風が過ぎ去った翌朝に行方不明になっていた事が判明、当初は捜索に当たった海軍やブルーマーメイド(蛇足だが、此の時の捜索艦隊司令はましろの祖母)は『伊402』と『春月』は台風による高波で沖に流された後に何らかの事故で沈没と判断した。

 処が翌年にアメリカがバラオ級潜水艦『カクス』が改装で伊400級に酷似した姿を現した事で事態が激変、アメリカは未だに全否定していたが、諜報活動を含めた再調査結果『伊402』(と『春月』?)は台風が通過中の真夜中にショットシェルに強奪されて依頼主のアメリカに転売された事が判明、後日の機密資料公開もあって証拠隠滅としてハワイ北西の沖合いの海底で爆破処理が成された『伊402』を発見するに至った。

 此の強奪事件で日本海軍は国外に流失して陳腐化したと判断して伊400級は練習艦化や予備艦入り等を経由せずに早期に退役(全艦が解体か標的として爆破処分)するはめになったが、『伊402』の件で楓の祖父は幹部共々スパイ容疑で長らく警察に抑留、その間に無茶な取り調べや拷問を受けた為に無罪として釈放された数日後に病死(此等の事は当時のブルーマーメイドによって問題視され、担当した警察官達が全員懲戒免職処分な上に莫大な慰謝料が発生)、万里小路重工自体も東海地方向けのメガフロート建造が受注され続けるも海軍の逆鱗を買った為に艦艇処か小型船舶すら受注されない状態に置かれていた。

 

「ですが、失礼ですが、ショットシェルを相手にするには警察では荷が重いと思われます!

此れは軍に任せるべき案件だと思います!」

 

「その事だが、コイツには軍は動かせんと判断されたからだ。

軍が動いたらショットシェルが警戒するだけでなく、周辺諸国に変な誤解を招きかねないからだ」

 

 話を戻して、銭形の捜査がいかに困難であるかを理解するも、軍を動かすべきだと思ったましろの質問を銭形が理由を言いながら否定したが、銭形は実は警察の黒い目的が最大の理由だったのを察していたが、敢えてそれを言わなかった。

 

「それで、何故ルパン達と組むだけでなく『晴風』を盗む事になったのですか!!?」

 

 更に洋美がルパン達との行為が理解出来なかった為に銭形へ大声で質問したが、当の銭形の代わってルパンが前に出た。

 

「勿論、ショットシェルをぶっ潰す為だよ。

そして組んだのは利害の一致。

つまりだ、とっつぁんはショットシェルを潰したい、俺達はショットシェルが溜め込んでいる現生(ゲンナマ)(現金)を(シッカ)り頂こうって事だ」

 

「……そう言えば、未だに武器の密売は基本的に現金取引でしたね。

世界最大となれば相当な金額の筈…」

 

「俺達もいつまでも若くないし、泥棒には年金が下りないからね」

 

「だから、老後の保証は自分達で確保しないといけないからだ」

 

 ましろはルパン(一味)の最終目標を察してそれを指摘し、ルパンの次元と共にもの冗談交じりの返し、『晴風』乗員全員が納得しつつも彼等2人が変に現実的だった事もあって半分呆れて苦笑した。

 

「んじゃあ、今から此の『晴風』でショットシェルに殴り込むって事か!」

 

「アホか、お前は?

そんなん出来たら、儂等警察やブルーマーメイドがとっくの昔に壊滅させてるぞ」

 

 芽依が猪突猛進な意見を出していき込んだが、直ぐに銭形に注意されるだけでなく、『晴風』乗員の全員に呆れられていた。

 

「いいかい、ショットシェルは極めて慎重に裏の商売をやってるんで、表向きは合法的企業としてニューヨークの1等地の高層ビルに身構えてんだ。

正面玄関から入ったって尻尾は決して捕まえられないんだよ」

 

「……確かに、母さんは何度も悔しがっていた…」

 

 ましろはルパンの指摘から、ある日の夜にショットシェルの壊滅任務に失敗した為に自分達に隠れて悔しがっていた真雪の背中を思い出していた。

 

「って事は、ルパンさんでも正攻法では無理があるのですか!?」

 

「まぁそう言うこった」

 

 明乃はまさかと思いながらルパンに質問したが、当のルパンが右頬を右人差し指で軽く掻きながら肯定した為に他共々ギョッとした。

 

「だからだ、向こうさんから声を掛けられる程の手土産を用意する必要があるって事!

それも、向こう好みの色っぽい女をだ!」

 

「まさか、『晴風』を売りだしてショットシェルを誘き出すのですか!?」

 

「だとしたら、『晴風』をきっちり仕立てないとな!!」

 

「半分正解だが半分外れ。

こんなボロ船に売り手なんか着かん、タダ当然でやっても直ぐスクラップだ」

 

 鈴が怯えながら指摘して麻侖がそれに乗っかったが、次元に否定された。

 只、次元が『晴風』を馬鹿にしたので、内心は納得しつつも、実際に言われたので『晴風』乗員全員がムッとした。

 だが此の時、明乃はルパンの言葉を思い出していた。

 

(いや別に、俺はな、とあ~る女剣士のハートをものにしようとしててな、ものに出来た女剣士をエスコートしてもらおうと此の娘達が欲しかっただけなんだ)

 

(まぁ結果的に、酒癖の悪ぅ~い女剣士を、大和撫子より良い女に仕立てあげた状態で、口説けるって事になったんだがねぇ~…)

 

「……女、剣士………大和撫子…………剣士……侍………宮本、武蔵……やま、と(大和)

 

(何で此の船なんだ!?

お前は我等が『大和』を狙ってたんじゃなかったのか!?)

 

「…『大和』……『武蔵』!!!」

 

 明乃はルパンと進愛とのやり取りも思い出した事でルパンの狙いを察して、叫びながら机を叩いて立ち上がった為、ましろ達を驚かせた。

 

「…貴方は、ショットシェルを誘き出す為に『武蔵』を盗む気なのですか!!?」

 

「おう、せいかぁ~い(正解)!」

 

 ルパンが明乃に満面の笑みで返し、次に狙うは『武蔵』である事が判明してましろ達が一斉にギョッとした。




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第11話 ましろがアンハッピー

――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

「…じゃあ、次に狙うのは『武蔵』なのですか!?

それも、ショットシェルを誘き出す為だけに!?」

 

「まぁそう言うこった」

 

 ルパンがましろに満面の笑みで返し、『晴風』乗員の全員が一斉にギョッとした後に各々に騒ぎだした。

 

「いいかい、元々世界最強にして最大の戦艦だった大和級は練習艦化…」

 

「ルパン、ブルーマーメイドでは練習艦化とは言わずに、教導艦化って言うのよ」

 

「あ、あ~…そうだった。

まぁ兎に角だ、一線を引いたが大和級の価値は決して下がっちゃいない。

あの船を盗んで売り出したら、奴等は必ず“売って下さぁ~い”と言う筈だ」

 

「……確かに、大和級の教導艦化は、海軍を巻き込んだ騒動が起きていた…」

 

 ルパンの大和級の価値の高さの指摘に、ましろは『大和』艦長だった真雪を通して大和級の教導艦化の騒動を思い出して、目線を逸らしながら納得していた。

 実際、大和級4隻は予備艦としての教導艦化は“早すぎる”との指摘でブルーマーメイドの大半だけでなく、海軍までが猛反対(一部は「教導艦化するなら海軍に返せ」と主張)する事態が起きてきて、現に大和級と同世代の戦艦群で、アメリカのアイオワ級『ニュージャージー』&『ウィスコンシン』(当初『ミズーリ』だったが、10年前に行方不明になった為に代艦として復帰)とモンタナ級『モンタナ』&『ルイジアナ』の4隻(残りの『アイオワ』『イリノイ』『ケンタッキー』、『オハイオ』『メイン』『ニューハンプシャー』の6隻は予備艦(モスボール状態)だが早期に復帰可能)、イギリスのライオン級『ライオン』『テレメーア』『サンダラー』『コンカラー』は、予備艦化と復帰を繰り返しながらも各々の海軍で未だに現役の主力であった。

 尤も、アイオワ級、モンタナ級、ライオン級の3種の戦艦(他にも列強の戦艦で現役のもいるが省略)が現役の理由はある戦略の為であり、大和級もその戦略に組み込まれる計画があったので教導艦化したとの噂があったが、ましろ(達)はその事を知らず、ルパン達も敢えてその事を言わなかった。

 

「しかもだ、ショットシェルが興味津々(シンシン)の筈のRATtウィルスが『武蔵』に罹患してるんだから、無関心とはいかない」

 

「現に奴等に気付く様に派手な騒ぎを起こした上、奴等の工作員が来てたんだから尚更だ」

 

「あの人達が、そうなんですか!!?」

 

 ルパンに乗っかっての次元の指摘に、ましろ達はオーシャンモール・四国沖店でのルパン達の不可解な行為に納得するも工作員のは理解出来なかったが、明乃は工作員と思われる男性(ブラッド)達を思い出して叫んで指摘し、美甘と媛萌はお互いの目線を合わせていた。

 

「ですが、『武蔵』の強奪は理解出来ましたが、それに『晴風』が必要になってくるんですか!?」

 

「いや、『晴風』自体は兎も角、君達『晴風』の乗員が必要なんだよ」

 

「『武蔵』を盗んだとしても、『武蔵』の乗員どもが協力してくれるかどうか以前に全員がRATtウィルスに感染して駄目になってるだろうし、俺達は『武蔵』の操艦は一切出来ない。

だから盗んだ後、せめて『武蔵』の操艦方法を俺達に教えて欲しいんだ」

 

 説明するルパンが『武蔵』乗員が全滅していると思っていた為、明乃が確証の無いままにもえかの無事を信じていた事からルパンを睨んだ。

 

「幸か不幸か、『晴風』は他の陽炎級と違って、大和級と同じ機関と航行の補助システムと同じ物を使用しているから、まぁそれが『晴風』の異常な不調の原因との予想があるけど、取り敢えずは大和級での操艦は必要最小限は出来るわよ」

 

 続けての次元と不二子の各々の説明で、明乃達は自分達が『武蔵』強奪後に必要な理由を理解し、一部は最優秀組の『武蔵』(大和級の搭乗生徒はブルーマーメイドの幹部入りが内定される)に乗り込める事に歓声を上げていた。

 

「ですけど警部、それは私達にルパンの犯罪に手を貸す事になりませんか?

しかもまともな戦闘訓練を受けてない入学したての身でショットシェルと戦えと?」

 

 だがましろが指摘して鈴を始めとした一部が同感と示した通り、此れまでの『晴風』の戦闘行為は、反乱が濡れ衣だと確定したのを前提として、その全てが正当防衛の許容範囲で収まるが、『武蔵』強奪だと完全に言い逃れが出来る筈がなかった。

 しかも『武蔵』強奪後に敵対するのは世界屈指の犯罪組織なのだから、危惧するのは当たり前であった。

 

「当然、君達の技量やルパンに協力する事の影響は知っている。

だから、ICPO本部長や警察庁長官からの配慮は受け取っている」

 

 銭形はましろに返しながら、懐から書類を取り出し、証明書であったそれを明乃達に見せた。

 

「『武蔵』強奪前後の行為はルパンに脅迫された事として、状況終了後に『晴風』乗員は我々警察が弁護し、全力で保護するつもりだ。

また緊急時には君達をアメリカ等への亡命させる手筈もある。

少なくとも『武蔵』強奪には全力を尽くしてもらいたい」

 

 ルパンが自分(達)に罪を擦り付けられる事に嫌そうにしていたが、実は銭形は追加の極秘指令で『晴風』が本当に反乱行為をしていたら、速やかに『晴風』を制圧する様に通達されていたが、明乃達の人となりや聞き取りでそれは無いと判断していた。

 

「それにさぁ、ショットシェルぶっ潰した功績は、どうせとっつぁんのモノになるんだから、“ショットシェルを壊滅出来たのは『晴風』の協力が有っての事”にして功績をちょこ~…っと分けて貰えば、汚名返上出来んかもしれないぞ」

 

「浪花節だねぇ~…」

 

「ハードボイルドってのは高級の浪花節よ、次元ちゃ~ん」

 

 次元にからかわれてのルパンの言葉は、確かに一理あっての魅力的なモノであった。

 

「だが、ショットシェルを相手にするのは、例えどんな身の上でも危険なのは承知している。

故に『武蔵』強奪後に逃す用意をしているから、それまでに各自で決断しておくように。

後、儂等に同行するとしても、甘い推測を捨てて覚悟を決めろ!」

 

 銭形の言葉に、多くは迷いから周囲の者達と目線を合わせていたが、明乃や芽依に麻侖みたいに同行を即決する者達が少数いた。

 更にルパン(達)と行動出来る事に加えて、先述の違法だが『武蔵』の乗員になれる事から、まだ内心で参加を思う者達が徐々に増えていた。

 

「……レニーヌ公爵に助けられたオルタンス嬢になるのを受け入れるしかないか…」

 

 意外な事に最後まで抵抗すると思われたましろまでが、溜め息を吐きながら同行を即決して『晴風』乗員達を驚かせた。

 だがましろの言った意味が理解出来なかったが、ルパンのみは反応した。

 

「ましろぉ~…もしかして君ぃ、俺のじっちゃまのファンだったりする?」

 

 ルパンの質問に対して、ましろは頬を膨らませながら椅子ごと体を回してルパンに背を向けた。

 

「……私、怪盗ルパンは全巻読破しています。

三世と違って、ずっと、ずっとぉ、ずうぅぅーっと格好良くて紳士な一世が、私の足長オジさんになって欲しいなあぁ、と思ってました!!!」

 

 ましろが言っていたのはルパン一世の物語の1つ“時計の8時の鐘(Les Huit Coups de L'Horloge)”(当然、レニーヌ公爵の正体はルパン一世)のであり、ルパンに背を向けながら彼女なりに嫌みを言ったが、実はショットシェル壊滅の功績で、劣等感を抱く程に偉大すぎる母と姉2人を見返そうとする目論みがあって、それを隠す為のでもあった。

 だがましろの狙いに反して、当のルパンは右手で両目を押さえながら笑い出した。

 

「シロちゃ~ん、人のじっちゃまに理想を描くのは君の勝手だけどさぁ~…孫の身としては、アレ等の本を元にすんのはどうかと思うよ。

なにせルブラン(モーリス・ルブラン、怪盗ルパンの原作者)の奴、じっちゃまを無駄に格好よく書きすぎて、じっちゃま本人に怒られたんだぜ。

オ~レ()は、こんなに格好よくない”ってね!!」

 

 ましろは爆笑するルパンに返り討ちにされてムッとした為に周囲の者達に苦笑されていた。

 此の間に銭形が全員から目線を逸らしたが、どうやら子孫として先祖・銭形平次に同じような思い当たる事がある様だった。(後日判明したが、此の場にいない五ェ門もそうだった)

 

「だがな、どんな手で『武蔵』を強奪するにしても『晴風』に戦闘させる事に代わり無いんじゃろ?

此の船、魚雷や弾薬は殆ど残ってないぞ」

 

「更に言いますと、トイレットペーパーは解決しましたが、水や食料等の物質が色々と不足しています」

 

 まぁ参加の是非以前の問題が、ヴィルヘルミーナや『晴風』主計長兼会計の等松美海(通称:ミミちゃん)によって伝えられた。

、因みに、美海(と『晴風』乗員各々)は明乃達4人にオーシャンモール・四国沖店で食料等の調達を要請していたのだが、倫子達ブルーマーメイドの追撃等が有ったと言え、見事に全てを忘れていたので、ほんの少し前に明乃達3人はましろと不二子も揃って美海に怒られていて、美海はまだ根に持っていたので明乃達3人を順に睨み、当人達は彼女と目線が合うと直ぐに目線を逸らしていた。

 

「その点は、儂が連絡して警察から“水”“食料”そして“幾つかの補修部品”が近日中に届く筈だ」

 

 明乃達は銭形が根回しに素直に喜んでいたが、当の銭形は少し表情を曇らせた。

 

「…だが、届く予定の補修部品は船体の修理部品や機関のだけ、武装や弾薬は用意出来んそうだ」

 

「機銃のも駄目なのですか?」

 

「警察の警備艇が使ってるのは40mm、陽炎級のは25mmですからね」

 

 銭形の報告に明乃が抵抗らしきモノをしたが、此れは幸子によって否定された。

 元々『晴風』以下の横須賀海洋女子学校所属の学生艦群(『武蔵』のみは補給関係で例外)は、近海での初級の訓練航海を行う為に全武装各々の弾薬が必要最小限しか搭載(中には爆雷の様に非搭載のも)されておらず、此の為に『伊201』の夜襲時にヴィルヘルミーナが『晴風』の現状に怒り狂った事があった。

 そして『さるしま』と『アドミラル・グラーフ・シュペー』との戦いで主砲弾の大半を消費して魚雷は欠乏、更に第三主砲が大破したのだから、戦闘艦としての機能をほぼ失っていた。

 此の為に銭形も弾薬補給の事を気に病んでいたが、意外な事にルパンが助け船を出した。

 

「だったら、身近な所で買うしかないよ。

とっつぁ~ん、補給が終わったら、ちょっと寄り道すっから目を瞑ってくんない?」

 

「買うって、こんな海のど真ん中で弾薬を買える所があるの………かっ!!?」

 

「……次元、確か此の近くに有ったよな?」

 

「ああ、もう少し走る必要があるがな」

 

「ルパン、お前、まさか!?」

 

 銭形は当初は明乃達共々ルパンの狙いが分からなかったが、少し間を措いてから察してギョッとした。

 当のルパンは銭形の推測を笑って肯定しながら、次元に場所の確認を取っていた。

 

「あのぉ~…海賊行為をして、弾薬を得るつもりなのですか?」

 

 『晴風』乗員を代表して、明乃が銭形に質問し、一部の乗員達がルパン(達)の盗みに協力できるかもと思って喜んでいたのをましろが怒鳴っているのは取り敢えず無視して、当の銭形は何も答えずに溜め息を吐いた。

 

「…ある意味、それの方が良かったのかもしれんぞ」

 

 此の時の明乃達は銭形が言いたかった事を理解出来ないでいたが、直ぐにルパンと手を組んだ事の洗礼を受ける事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― オマケ ―――

 

 

「不公平だ!!!

やってらんねえぇぇー!!!」

 

 会議後、ルパンが次元に抑えられながら叫んでいた理由は、ルパン達への『晴風』の部屋割りの事であった。

 

「ルパン、そう言う規則なの」

 

「不公平だ!!!

やってらんねえぇぇー!!!」

 

「諦めろ!

不二子は一様ブルーマーメイドの士官なんだ!」

 

 ルパンに嫌み全開で笑っている不二子は、ブルーマーメイドの規定に基づいて明乃の部屋(つまり艦長室)を使う事になったのだが、ルパン達3人(加えて監視役も兼ねて銭形も)は『晴風』の艦尾のフィアットか寝袋で寝泊まりする事になったからだ。

 

「ルパン、そもそもの原因はお前の女癖の悪さなんだぞ」

 

「不公平だ!!!

やってらんねえぇぇー!!!」

 

 こうなったのは、『晴風』の空き部屋が無い事なのだったが、なにより銭形が呆れながら言った通りに好色家のルパンが夜這いをしかねない事からの警戒であった。

 まぁ『晴風』の現状だとルパンは夜這いしそうなのは不二子だけだと思う(と言うかそう思いたい)が、『晴風』乗員の大半はルパンの夜這いを歓迎していた。

 

「不公平だ!!!

やってらんねえぇぇー!!!」

 

「……不幸だ…」

 

 大の大人らしからぬ駄々を捏ねているルパンが次元と銭形の2人係りで引き摺られていっているのを見つめながら、ましろが溜め息を吐いて肩を落としていた。

 何故なら、不二子に自室(艦長室)を明け渡した明乃は、ましろの部屋(副長室)に移る事になったのだ。

 一応副長室はこう言う事に備えて2段ベットが置かれて同居は可能なのだが、その副長室には既にヴィルヘルミーナが居て、想定外の3人同居で手狭になってしまったからだ。

 そして明乃は役職で、ヴィルヘルミーナは年齢で、2人各々がましろの上の立場なので、ましろは結果的に自室で寝袋で寝る羽目になったのだった。

 

「……くっ!!!」

 

「どうどう」

 

 更に言うと、明乃がましろとの同居の事で、洋美が明乃を睨んだ為に麻侖に抑えられたのを書いておこう…




 感想または御意見、或いは両方でもいいので、宜しくお願いします。

 本編で上がった『ミズーリ』が行方不明になった事に関連しますが、どうやら本作の『ミズーリ』には元SEALsの料理人がいなかった事が原因かもねぇ~…


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第12話 ルパンのブルマー化でピンチ?

――― 西太平洋・某所 ―――

 

 

 ルパンの提案に乗っ取って、弾薬補給を求める『晴風』は西太平洋のある海域を進んでいた。

 

「ルパンのおっちゃん、本当に此の辺りなのか?」

 

「あ~…俺の記憶が正しければ、此所いらにある筈なんだが…」

 

「呆けたんじゃないのですか?」

 

 だが目標の場所(?)が全く見当たらない為、芽依に疑問をぶつけられたルパンが眉間に皺を寄せ、そんな彼にましろが冷たい目線で毒を吐いていた。

 だが実際問題、銭形経由での警察からの補給をその他諸々受けた後と言え、航行に支障が出る可能性が見えてきたので、明乃達も内心で不安を感じていた。

 

「ルパン、前方から来るぞ」

 

「おう、お迎えが来た!!!」

 

 その直後に、艦橋の上に座っている五ェ門(どうやら艦橋の上を定位置にしたらしい)から報せが入って、ルパンが喜んだら、直ぐに次元と共に艦橋から出て艦首に向かった。

 

「マッチちゃん、前方に何がいるの?」

 

『……っ!

1時の方角に魚雷艇が複数接近!!』

 

 明乃は五ェ門の報告を疑ったらしく、伝声管越しにマチコに確認を取ると、少し間を措いてから報告が正しかった事が示され、実際に明乃もましろ達と共に双眼鏡で確認したら確かに魚雷艇と思われる小型艇群が艦首を持ち上げる程の高速で近づいてきていた。

 

「…アレは………フェアマイル級魚雷艇のD型です」

 

「それにヤグアル級魚雷艇までいるぞ!

何故、あ奴等がこんな所にいるんじゃ!?」

 

 幸子がタブレットで魚雷艇の1つがイギリスの魚雷艇で、続けてヴィルヘルミーナがもう1つが自分達ドイツの魚雷艇であるのを見抜いた。

 フェアマイルD級やヤグアル級にしても半世紀以上前のモノであり、しかも広大な太平洋上にいるに相応しくないのであったから、誰もが疑問に思わざるを得なかった。

 

「でも、アレじゃあ、マッチちゃんや電探とかじゃあ見つけられないよ」

 

「だけど五ェ門が見つけたんだからマッチやメグは形無しだよな」

 

「……野間さん達の仕事を奪わないでよ…」

 

 どうも見つからない様にギリギリまで速度を落としていた魚雷艇群を事前に見つけられなかったマチコや恵に代わって鈴が言い訳をするも芽依が2人を小馬鹿にしていたが、ましろは魚雷艇をマチコ達や電探を超えた五ェ門の探知能力に思う事があったらしく、天井越しに五ェ門がいる(だろう)場所を見上げて睨んでいた。

 尚、ましろ(達)が知る余地は無かったが、此の時マチコは意味ありげに五ェ門を見下ろしていた。

 此の間に魚雷艇群は『晴風』に接近し続けていて、双眼鏡で搭乗員達が確認出来る距離にまで来ていたが、その搭乗員達に明乃達はギョッとした。

 何故なら搭乗している男性達の衣装は、ズボンは兎も角、上半身は裸かタンクトップ、一部は頭にバンダナを巻いていて、全員の人相の悪さもあって、全員が海賊だと思ったからだ。

 

「総員、近接戦闘戦用意!!!

緊急回頭、取舵いっぱぁーい(一杯)!!!」

 

「砲科は機銃用意!!!」

 

 魚雷艇群は『晴風』を攻撃しようとしていると判断して、明乃が泣き出した鈴に旋回を命じ、続けてましろが距離と相手が魚雷艇である事から機銃群を準備させようとした。

 因みに、砲術長の志摩が未だに入院拘束中なので、一応上官である不二子の了承下にましろ(彼女は砲術科)が副長兼任で砲術長代理となっていて、ましろが無理な場合は芽依が砲術長代理の代理となる手筈になっていた。

 

「落ち着きなさい!!!

取り敢えずはアレ等は敵ではありませんよ!」

 

 処が、不二子が明乃とましろを制止させて2人の命令取り消しを命じて、明乃達を“え?”とさせた。

 だが不二子の言う通りによく確認したら、魚雷艇群は『晴風』への接近に続けるも突然速度を大幅に落としていた。

 その理由は舳先で魚雷艇群へ両手を大きく振っているルパンだと見てとれた。

 まぁそれでも緊急時に備えて、明乃は不二子の頷いての了承下に戦闘準備だけは命じていたが、魚雷艇の1隻が遂に『晴風』の艦首左舷側に接近、丁度そこにいるルパンの真下に位置する所で、ゴリラみたいな屈強な搭乗員達を他所に立ち上がった1人がルパンを見上げたが、どうやら服装等からして彼が魚雷艇群の嚮導役(か司令官)の様だった。

 

「まるで、仁義のない争いのワンシーン!」

 

「ドンパチでも始めるんじゃろか?」

 

 ルパンと嚮導役との見つめ合いで幸子とヴィルヘルミーナが変な予想を立てて2人劇を始めていたが、明乃達はそんな2人を無視していた。

 

「よう!!

随分と急ぎだったが、何かあったのか?」

 

「あ、いえいえいえ!!!

ブルーマーメイドの駆逐艦だったので、職業病とも言うべきか、つい条件反射みたいなのをしてしまったんです!」

 

「まさかルパンの旦那のだとは思わなかったんですよ!!」

 

 処が予想に反して、しゃがんでちゃかしを入れたルパンに対して、搭乗員達は揃いも揃って下手に出ていた。

 此の為、明乃達は拍子抜けをしながら、“彼等はルパンの部下?”と思ってしまった。

 

「流石は天下のルパン三世だな。

海賊にまでお前の名が通ってるんだからな」

 

「次元、俺を誉めてもなぁ~ん()にも出ないよ」

 

「それに旦那は今、ブルーマーメイドからだと言うだけでなく、あの宗谷真雪の所から駆逐艦を盗んだ事で俺達の間で話題ですよ!」

 

「未だに俺達の悪夢である“来島の巴御前”(真雪の通称)を出し抜いたんですから、旦那は俺達の間では英雄(ヒーロー)の扱いですよ!」

 

 ましろが母を(オダ)てのダシにされた事でムッとしたが、彼等の会話から裏社会での実力差が感じ取れたので、明乃達は改めてルパン(一味)の実力を実感した。

 

「処でさ、此の船のモン()で色々欲しいのがあるのよぉ~…」

 

 ルパンが彼等から『晴風』の弾薬を買おうとしているのが分かって、明乃達は当然ながらギョッとしたが、当人達までが顔を渋めた。

 

「旦那ぁ~…協力したいのはヤマヤマですが、ガキ(学生)と言え、俺等の商売敵のブルーマーメイドが乗っているんですよ」

 

「それによりにもよって、あの真雪の所のですし…」

 

「奴等が俺等のシマをチクったら堪りませんから…」

 

「見損なうなよ。

俺達にも同業者に対して、それぐらいの仁義は心得てる。

此所いらのは後で、俺等が『晴風』のログ等から消しておくから安心しろ」

 

「それにさぁ、あのガキンチョどももブルーマーメイドに追われてんのよ。

だから、今の『晴風』は“ルパン三世のブルーマーメイド”………ん~と、ブルー(blue)ルパン(lupin)を足して………ブルパン(blupin)マーメイドって身分なのよ」

 

「安易だなぁ~…」

 

 ルパンによる“ブルパン”の略称に次元が呆れていたが、当人達である明乃達は不二子共々露骨に嫌そうな顔をしていた。

 

「まぁ、此の俺の顔を立てるとして、目ぇ瞑ってちょうだい」

 

「……上客様、多数をごあんなぁ~い(案内)!」

 

 若干躊躇(チュウチョ)等があったが、取り敢えずは入る許可が降りて魚雷艇群が次々に案内役として先行していき、ルパンは立ち上がると艦橋に向かって“ニッ”と笑ったが、明乃達は『晴風』を前進させながらも渋い顔つきでをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 数刻後 ―――

 

 

 魚雷艇群の先導で『晴風』の進路の先に現れたのは、円形に並んだ船舶………一見したら一昔の貨物船っぽいが船首と船尾の各々にオープントップ式の単装主砲が有ったので仮装巡洋艦に近い存在が大量にいて、更に近付いて分かったのがその船舶のどれもが錆びが殆どに広がっている船体の幾つかに継ぎ接ぎが目立った。

 

「あ、あぁぁぁー!!!

主砲が動こうとしてます!」

 

 そしてなにより、例えば『晴風』の左正面の船の船首側甲板で、屈強な中東系の男性が脇で揉み手をしている中国系の男性から受け取った、イスラエルのマシンガン・IMIウージーで舳先に置いてある缶に目掛けての試し撃ちをして全弾外していて(此の為か、次元が呆れて帽子を真上から押さえていた)、どの船の甲板にも“アウトロー”を連想させる人間達がいて、先程の魚雷艇群の者達と同様に『晴風』を警戒して主砲や機銃に取り付いていたので、明乃達は鈴が悲鳴を上げた事もあって危険を感じて顔を引き吊らせた。

 

「…アレ、良いなぁ~…」

 

…芽依のみは例外で、甲板での試し撃ちを羨ましそう見詰めていた。

 だが魚雷艇群が先導している事から実際に発砲する事はなく、『晴風』はそのまま船舶群の間を抜けて明乃達が揃って溜め息を吐き、その先には今まで見えなかったバラックやテントが大量に立てられた環礁が見えてきた。

 

「停船準備!

黒20!!」

 

「了解!!…」

 

 ルパンの目的地は前方の環礁だったようで、不二子が停船の準備を命じて明乃が復唱しながら鈴や麻侖に指示を次々に出していた。

 因みに不二子が最後に言った“黒20”とは日本海軍独自の機関回転数の指令で、一般的に訳すると“機関回転数を20下げろ”であり、逆に回転数を上げる時は“赤”である。

 

「ほんじゃあ、不二子!

買い出しに行ってくんから、留守は宜しくな!」

 

「どすこい!」

 

 そうこういている間に『晴風』は環礁近くで停止し、ルパンは次元や艦橋上から飛び降りた五ェ門と共に環礁に行く事を伝え、そのルパン達3人に明乃がましろと不安そうに目線を合わせた後に何人かを引き連れてスキッパーの所に向かった。

 尚、『晴風』の本来の2機はオーシャンモール・四国沖店で置き忘れになっていたが、呉女子海洋学校のが複数ぶら下がったままだったのを猫ババしていた。

 

「…あ、そうそう、松永さんと姫路さんを呼び出しなさい」

 

 ルパン達がスキッパー4機に分乗して環礁に向かったのを見送った後、不二子は留守居役の鈴とヴィルヘルミーナに理都子と果代子の呼び出しを命じた。

 

「教官、りっちゃんとかよちゃんに何を…」

 

「此の間にRATtを無警戒に『晴風』に引き揚げた罰を言い渡すのです。

あ、此れを機に大和級独自の罰則をやらせますか」

 

 若干渋々感があったヴィルヘルミーナは不二子の命令を伝声管で伝えていた間、鈴が嫌な予感を感じて不二子に訊ねてその予感通りだったので、彼女なりに理都子と果代子を弁護しようとしたが、不二子にあっさりはれ除けられていた。

 

「…松永理都子、姫路果代子、貴女達2人は漂流物を無警戒に引き揚げ、RATtを放って『晴風』を危険に晒した事は看破出来ません。

よって2人には罰として、水着姿で『晴風』の甲板マラソン10周を言い渡します!!」

 

「え、ちょっと!!」

 

 数分後に不二子が不安そうに艦橋に入ってきた理都子と果代子に怒り気味に命じた罰は、海軍時代後期から大和級で始まったパンツ(か褌)1丁で甲板マラソンとの公開処刑も兼ねた代物で、女子版は流石に不味いので水着姿に緩和(?)されていた。

 

「RATtを放ったのは不可抗力…」

 

「私から銭形警部に頼んで、尻バットにしてもらってもいいのですよ!!

嫌なら私が言った事を早くやりなさい!!!」

 

「「は、はいぃぃぃー!!!」」

 

「……自業自得と言え、一様教官と言える存在が乗艦していたのが仇になったな…」

 

 理都子と果代子が口答えして更に不二子に怒鳴られて、ほぼ反射的に制服を脱ぎながら水着姿になって艦橋から飛び出していった光景から、ヴィルヘルミーナが2人を少し哀れんでいた。

 因みに、理都子と果代子は数日前に銭形の聞き取りで彼から怒鳴っての注意を受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 環礁 ―――

 

 

「此所はな、海賊や闇のブローカー達によって運営されるブラックマーケットだ。

此処には核兵器以外だったら、環太平洋や環インド洋中のあらゆる武器が揃ってる」

 

 環礁上陸後、ルパンを先頭に道なりを進みだした明乃達は、環礁の存在の説明をルパンから受けていた。

 

「基本的には盗品や横流しのだが、中には見た事がない物も、手製の物も多いから事故が絶えねえんだよ」

 

 ルパンの言っている事が正しい証として、過ぎようとした脇のテントの中で中東系の老人が回転式拳銃をドライバー片手に組み立ていた上、奥の方で爆発が起きていた。

 

「…そんじゃ、次元、五ェ門、買い出しを頼むぞ」

 

「おう!」

 

「承知!」

 

 ブラックマーケットのほぼ中間地点に来ると、次元は芽依達と共に『晴風』の弾薬や主砲の調達、五ェ門はましろ達と共に魚雷やその他補修部品の調達をしに、3手に別れた。

 

「……ん?」

 

「五ェ門、どうしたと言うのですか?」

 

「いや、気のせいだ」

 

 ルパン達や次元達と別れた直後、五ェ門は『晴風』が下ろした錨の1つに違和感を感じて、振り向いて暫く見詰めていたが、洋美が怪訝な顔で尋ねた事もあってか、見間違いと片付けた。

 だが実際は、『晴風』の右舷錨の右爪に付いている輪型の物体の一部分が微かな赤い光を点滅させていた。

 

 

 

 

 

「ウヒャヒャヒャー!!!

此れ此れ、最高おぉぉー!!!」

 

「……はぁ…」

 

「メイちゃん、目的忘れてないかな?」

 

 で早速、芽依が先程見かけた船に駆け込んで89式小銃(横領品)やロシアの無反動砲RPG7の試し撃ちを嬉々としてやり始めて、次元達に呆れられていた。

 

 

 

 

 

「…あ、魚雷が有る!」

 

 続けて、ましろ達は魚雷各種の展示場を見つけて駆け寄っていた。

 

「……此所に九三式は有りますか?」

 

「ああ、それでしたら彼処に…」

 

 入って直ぐ、ましろ達は店番と思われる東南アジア系の青年に案内されて『晴風』(吹雪級から島風級の日本駆逐艦)に合う魚雷の所に着いた。

 

「お嬢ちゃん達、運が良いね。

此れ等は先週手に入ったばかりのだよ」

 

「……此れ等を12本欲しい」

 

 予想はしていたが、笑顔での青年の説明で魚雷群が海賊行為による盗品であるのが分かって、ましろ達は嫌そうにするも買う物を指定したら、五ェ門が魚雷群の1本1本を鞘越しでの斬鉄剣で叩いていた。

 ましろ達は五ェ門の行為を分からずにいたが、青年が不味そうな顔をしたら振り向いた五ェ門に睨まれた。

 

「…此れ等は全部、駄目な代物だ。

使えるのは無いのか?」

 

「は、はい!!!

直ぐに持ってきます!」

 

 五ェ門が見抜いてからの斬鉄剣を軽く抜きながらの脅迫行為に、青年は軽く蹴躓きながら慌てて走っていった。

 

 実は此の時、背後の物陰からましろの背を睨んでいる目線が多数あったのだが、当人は全く気付いていなかった…




 感想・またはご意見、両方でも良いので宜しくお願いします。

 此処で皆さんに聞きたいのですが、『武蔵』に行く前に『アドミラル・グラーフ・シュペー』と戦うかやらないかで悩んでまして、その事の意見も出来ればお願いします。


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第13話 暴行か誘拐でピンチ

 今回の投稿前に、前回のサブタイトルを変えつつ誤字脱字の修正をしました。





 それでは、本編をどうぞ!!


――― 環礁 ―――

 

 

 此の時、ましろ達は買い出しを終えて、荷台に乗る魚雷多数(+α有り)を引きながらの五ェ門の護衛下で『晴風』への帰路に着いていた。

 

「……今だ」

 

「…っ!?」

 

 その移動中、ましろは直ぐ前の五ェ門の背を睨み続け、稀に振り向いた五ェ門から目線を逸らすのを数度繰り返していた度に洋美達に呆れられていたが、五ェ門が直ぐ脇を過ぎようとして肩をぶつけられた海賊がナイフを抜いた事に対抗して斬鉄剣に手を沿えながら睨んだ隙を突いて、ましろは裏路地に飛び込んだ。

 ましろの行為に洋美のみは気付いて、奥の方に走っていった彼女の後を追いかけていった。

 そして五ェ門と海賊が睨み合いで出来た人集(ヒトダカ)りの中の何人かが周囲に気付かれない様に笑っていた。

 

「……すみません、少し訊ねたい事が…」

 

「ああん?

お前、ブルーマーメイドのガキか!?」

 

「…少し酷いと思いますが?」

 

 ましろは進路上に有った露店で何かを訊ねようとしたが、店主は彼女の制服で露骨に嫌った為に怯んだが、直ぐに追い付いた洋美がましろの前に立って睨み返した。

 

「部外者のガキはすっこんでろ!!!……っ!?」

 

 店主は洋美の左肩を叩いて彼女を脇に退かそうとしたが、洋美は店主の手を払うだけでなく、素早く懐に入って両脇を掴むと足払いとの合わせで投げ飛ばした。

 ましろは洋美に驚いていたが、実は洋美は長身モデル体型(実際『晴風』内でマチコに次ぐモテ票を獲得)に反して銚子市女子相撲大会の中学の部の優勝者との実力者で、徒手戦ならば『晴風』でも屈指の強者であった。

 

「…ほう、お嬢様には護衛を着いていたか」

 

 洋美が自慢する様に大きく鼻息をした直後、近くの脇道から強面の老人が彼女に感心していたのに、洋美とましろが気付いて振り向いたら、老人の背後から護衛と思われる者達が現れ、更に周囲の建物から同じと思われる男性達が飛び降りて2人を包囲した。

 

「…宗谷さん!!!」

 

「っ!?」

 

「やはり、お前は真雪の娘か!」

 

 2人共、老人達の殺気を感じるだけでなく、狙いがましろである事を察して洋美が彼女を自分の背後に寄せたが、普段通りにましろを性で呼んでしまった為に老人達を余計に滾らせてしまい、洋美はましろの抗議の目線に申し訳なさそうにした。

 

「遠目からでも分かったよ。

お前はあの尼(真雪)の若い頃によく似ているよ。

あの尼への殺意を思い出す程にな!!」

 

「…そう言うのは校長に言って下さい!

此の人は親子であっても、関係は無いでしょう!」

 

「ふざけた事を言ってんじゃねえぞ、コラァ!!!」

 

 老人が右手を顎に当てながら笑った事もあって、洋美は老人を睨みながら怒鳴ったが、直ぐに護衛の1人が怒鳴り返した為に思わず一瞬怯んだ。

 

「あの(ババア)の所為で、俺は大事な取引を駄目にされたんだ!!」

 

「あの婆はな、俺の可愛い可愛い舎弟ども全員を刑務所送りにしたんだ!!」

 

「俺なんかな、俺の宝や財産をあの婆が押さえた所為で文無しになって、落し前で指1本切ったんだよ!!」

 

「…みんな自業自得の八つ当たりじゃない!!!」

 

 護衛達の真雪への恨み辛みを次々に叫んでいたが、洋美がハッタリを兼ねて叫び返した。

 だが同時に、洋美とましろは真雪が海賊相手にどれだけの事をやってきたのを否応なく察したが、現在はそれが仇となって自分達が追い込まれようとしている事をも察していた。

 

「悪いが、宗谷真雪に関連する者を見過ごす程、儂等は出来ていないんだ。

恨むなら“生まれの不幸”を恨むんだな!」

 

 老人が護衛達に目線で命じたら、護衛達は次々に“鉄棒”“ナイフ”“拳銃”の3種どれかを取り出して身構えた。

 此れには、洋美は“不味い”と思いつつましろだけは逃そうと思っていて、ましろは幼少期に今と同じ様に母への逆恨みで拐われた事を思い出して顔を青くして硬直していた。

 そして老人が突撃を命じようとしたが、その直前に発砲音が大きく響いた。

 

「…恨みの相手へ仕返し出来ないんで、その娘に八つ当たりとは、随分と大人気(オトナゲ)が無いな」

 

「んだコラ!!!

部外者はすっこんで、っ!?」

 

「だがな、仲の悪い(ブルーマーメイド)の所のと言え、婦女子に暴行しようとするのを見過ごす程に儂は人間悪くないんだよ!!」

 

 軍用自動拳銃の祖M1911(通称:コルト・ガバメント)で頭上への威嚇射撃をしてから老人達のとは別の脇道から出てきたのが銭形であった事に、此の場にいる者達全員が驚いた。

 

「ボンクラのサツはすっこんでろ!!!」

 

 だが警察(しかも警部)と言え、相手が銭形だったので、護衛達は直ぐに気を取り直して掛かっていった。

 まぁ実際、ましろと洋美が揃って失望の溜息を吐いた通り、“銭形はルパンの噛ませ(犬)”のイメージが強かった。

 

「…ふん!」

 

 だが実際の銭形は次々に襲ってくる護衛達を張り手の一撃で突飛ばしていて、途中でナイフで切り付けに来た護衛に対して、コート下の脇から先祖・銭形平次愛用の十手を取り出してナイフを払い落として額目掛けて突いて護衛が怯んだ隙に柄尻で背中を殴って倒した。

 

「……す、凄い…」

 

 そして、洋美が唖然とした中、銭形は無傷でソフト帽すら落とさなかった状態で襲ってきた護衛達全員をほぼ一瞬の間に倒してしまった。

 

「嘗めんなよ、海賊ども!!

ルパンを追ってるとな、そんじょそこらのが可愛いくなる程の地獄や修羅場を潜れるんだ!」

 

 確かに銭形はよくルパン(達)を逃がしたり出し抜かれはしていたが、長らくルパン三世専従捜査官を務めた凄腕であり、現にルパン達が最も怯えて最も認める警察官であったのが銭形であった。

 現にましろと洋美を含めた此の場にいる全員が、銭形の気迫に気後れしていた。

 だがそれでも何人かは拳銃を身構えたが…

 

「…でやあぁぁー!!!」

 

…遅れて駆け付けた五ェ門の斬鉄剣の居合い一閃で拳銃全てを切られてしまった。

 

「何やってた、五ェ門!!!」

 

「すまない、少し手こずった」

 

 銭形だけでも強烈だったのに、五ェ門までが来た事で老人達の勝ち目は完全に無くなった。

 

「感謝しろよ。

今の儂には手錠が無いんで、お前達を逮捕出来ないんだ」

 

「……去れ!!!」

 

「ひ、退け退けえぇぇー!!!」

 

 銭形と五ェ門の睨みでの老人の逃げながらの号令もあって、護衛達は蹴躓きながら慌てて逃げていった。

 ましろと洋美は危機を逃れた事から安堵の溜息を吐いたが、その間に銭形は2人の前に来ていた。

 銭形は暫くましろを睨んだ後、彼女の左頬目掛けて張り手(ビンタ)をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・別所 ―――

 

 

「おっちゃん、ちょっと見させてもらうよ」

 

 この頃のルパンは店舗の1つで展示品を1つ1つ丁寧に見定めている間、明乃と幸子(オマケとして着いてきてた後に明乃に抱かれている五十六)は多数の目線を感じて背後に振り向いた。

 

「……ちっ!!」

 

「糞ぉ~…」

 

 多くは無反応だったが、何割かが自分達に向けて露骨に舌打ちをしたり、殺意を向けていたのを察した。

 

「……居心地が悪ね…」

 

「まぁ私達は敵ですからね…」

 

 明乃と幸子は自分達ブルーマーメイドに酷い目にあわされただろう者達の負の感情を感じ取っていた。

 況してや、明乃達は海賊達の最上位の恐怖の対象である宗谷真雪の生徒なのだから尚更であった。

 だがそれでもましろと洋美の2人の様に、彼等が自分達に襲ってこない理由と察していた。

 

「皆、ルパンが怖いんだ」

 

 明乃の指定通り、まぁ少しは真雪の報復への怯えもあったが、殆どはルパン(達)に怯えている事を察した。

 明乃達は改めてルパンの裏社会での強大さを感じて無警戒そうなルパンの背を見詰めたが、実際はルパンは周囲を警戒していて全員が手を出せない状態であった。

 しかも五ェ門と違って、ルパンは明乃と幸子が自分から離れた時の事にちゃんと備えていて、実際に自分の目線から離れた(と思われた)隙に明乃と幸子に襲うか拐おうとする者達が現れたら素早く割り込んで追い払っていたので、此の点から明乃と幸子はルパンの用心深さに驚いていた。

 

「ほんじゃ、次行くぞ」

 

「「あ、はい………あ」」

 

「どした?」

 

「いえ、やっぱりアルセーヌ・ルパンの孫なんだなって思っただけです」

 

 この時、ルパンは単眼式望遠レンズを左目に着けていたので、明乃と幸子にはシルクハットを被って口髯を生やしていたらルパンが祖父ルパン一世そのモノに見えた為に驚いていた。

 

「あ~…此れね」

 

 ルパンもその事を察したらしく、外した単眼式望遠レンズを(カザ)しながら笑った。

 

「お嬢さん、握手をしてくれませんか?」

 

「あ、はいはい……!?」

 

 移動中、幸子は呼び止められた中東系の中年に握手をしたら、老人の右手が突然外れた。

 幸子が明乃共々驚いていたら、中年は笑いながら袖下から本物の右手を小型拳銃を握った状態で出した。

 

「うぁお、降参です!!」

 

「お1ついかが?」

 

 幸子が笑いながら両手を上げてから、義手を受け取っている間にルパンは目的の店舗に入っていた。

 

「オヤジ、催眠ガスをタクサァ~ン(沢山)欲しいんだけどさぁ~…」

 

「あ~…それなら………最新のが有るヨ。

此れネ、直ぐ寝るのネ」

 

「本当かぁ~…?」

 

 中国系の店主からお試し品のスプレーを受け取って疑っていると、近くにきた明乃に抱かれる五十六と目線を合わせたら、五十六にスプレーを掛けた。

 五十六は明乃から降りると離れた場所に走っていって、そこで欠伸をすると丸くなって眠った。

 

「あら、寝た」

 

「と言っても、五十六はいつも寝てばかりですから…」

 

 ルパンは一瞬信じた様だが、幸子の指摘でまた疑って揉み手をする店主を睨んだ。

 

「此れもオマケしますんで買ってヨ」

 

「なんでぇ、ガムじゃないの」

 

「…確かにガムですね」

 

「『晴風』の購買部でも、もう少し良い物がありますよ」

 

 店主がルパンの右掌に置いたのがどう見てもコイン形のチューインガムだった為、ルパンは覗き込んだ明乃と幸子と共に怪訝な顔をした。

 

「此れにネ、湿り気少ぉし与える。

10秒後に爆発ネ」

 

「どれどれ…」

 

 まぁ疑ってはいたが、ルパンは店主の言われた通りにガムを口に入れ、明乃と幸子が不安そうにルパンを見詰めていたものの、ルパンは10秒後に近くの土壁へガムを吐くと、ガムは爆発して土壁に小さな穴を開けた。

 此のガムには、ルパン達3人は感心の声を出した。

 

「此れはお試し品だから、火力を抑えてるネ。

完成品はもっと強力ヨ!」

 

「「「…此のガムと催眠ガス、有るだけ全部ちょ~う、だぁーい!!!」」」




 感想または意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 ちょっと小話、元々の第13話は前回の後半を切り離す形で出来ていた投稿時には出来ていたのですが、前回の感想での山さんの要望に答える形での追筆で変更、また長くなったので後半は第14話として何事も無ければ近い内に投稿します。

 実は追筆部分は骨組みは比較的早くに出来て、救援の2番手は五ェ門にしていたのですが、救援1番手が物凄く悩んだんです。
 当初は“不二子が助けに来て、立て続けて五ェ門が来る”としていたのですが、書き始めで“不二子より銭形の方が良いかなぁ~…”と思ってしまって悩み続けていましたが、結局は出したいが場面が決まらないでいた“銭形は実の娘を重ねていた事もあって、彼なりに『晴風』クラスを思っている”としたかったので本編通りになりました。
 初期の初期から決めてましたが、気紛れや予定変更に読者の反応次第では本作の終盤にて、ルパン原作では“銭形は独身”として抹殺されてますが、“ルパンvs複製人間”や“風魔一族の陰謀”の2作で僅かに出た銭形の娘・トシ子(予定漢字表記は“歳子”)を出します。
 そして明乃達の好意と企みで、銭形は十何年間会ってない娘(故に親子関係はランスロット&マシュ並みに最悪)と久し振り(或いは初めて)に出会う事になる予定です。


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第14話 余計な買い物でピンチ

 今回の投稿前に読み込んでいる“ウマ娘シンデレラグレイ”で思い出したレッドアローの1件を、第9話で一言追加しておきました。





 それでは、本編をどうぞ!


――― 環礁 ―――

 

 

「おう!!!

いかしてる事をしてるねぇ~…」

 

 ルパン達3人が大量の木箱や段ボールにドラム缶と共に『晴風』に戻ってきた時に目に入ったのは、(ルパン達にしてみたら)何故か水着姿の理都子と果代子が息も絶え絶えの状態で甲板マラソンをしていて、そんな2人に他の『晴風』乗員達が各々の形でちゃかしを入れていた。

 此の為、ルパンは軽めの歓声を上げ、明乃と幸子はマラソンの理由を察して哀れんでいた。

 

「…艦長、お帰りなさい」

 

 そんなルパン達3人の所にましろが次元達と共にやってきたが、どうやら此の3人が最後になったらしく、『晴風』をよく見たら積み込み用クレーンを使って大発動艇から魚雷や木箱の移しかえが行われ、手持ちレベルのは『晴風』乗員達がバケツリレー方式で行っていて、五ェ門が艦橋の上に座っていた。

 只、ましろが見るからに不機嫌だった上に左頬に紅葉が出来ているのが気になったが…

 

「あ~あ~…、ガキども共々、またガラクタばっか買ったのか…」

 

「良いじゃねえかよ。

俺は変わったアイディア商品が好きなんだよ」

 

 次元はルパン達3人を無視して3人が持って帰ってきた物々を確認して、作戦や『晴風』の武装群と関連が無い物を大量に確認してルパンに呆れていた。

 

「でも、そう言う次元さんも何かを買ったみたいですよね?」

 

「おやぁ?

お前って、拳銃(コンバットマグナム)以外は信じない(タチ)じゃなかった?」

 

 だが幸子の指摘した通り、次元は右肩に何が入った円柱型のバックを担いでいて、ルパンに小馬鹿にされた。

 

「…タマには、別の女を使いたい気分になるもんだ」

 

 ルパンは買った物を察していたのかもしれないが、次元は笑ってはぐらかした。

 

「それでシロちゃん、弾薬等はどうなった?」

 

「どれもこれも、古かったり、初期型だったりしましたが、全武装の弾薬や主砲の砲身、更に五ェ門が壊した機銃の代わりとして同口径の三連装機銃を確保しました」

 

「へえぇ~…主砲のもあったんだ」

 

「ああ、だが錆がある代物だったら、あんまり使える代物じゃない」

 

 ましろの主砲の砲身確保の報告に、次元の注意事項は無視して、ルパン達は感心しながら第三主砲へ振り向いたら、既に砲身交換が終わっている第三主砲の上で砲術科の小笠原光(通称:ヒカリちゃん)、武田美千留(通称:みっちっん)、日置順子(通称:じゅんちゃん)の3人が最終調整をしながら歩き回っていた。

 まだ積み込み中ではあったが、初の訓練航海の為に弾薬が必要最小限(しかも大半が模擬弾)で『伊201』戦でヴィルヘルミーナが怒る程の見かけ倒しだった『晴風』は戦闘艦としての本来の姿を取り戻したと言えた。

 

「後は幾つかの試射を行う必要がありますね」

 

「それが済んで問題がなかったら、『武蔵』はいつでも盗めるって訳だ」

 

「……よくないですよ…」

 

 明乃とルパンは準備が整いつつある状況を喜んでいたが、ましろが益々、不機嫌になった。

 

「…どったの?」

 

「此れだけの規模だったのに、ショットシェルの情報が一切聞けなかったんです」

 

 ましろは彼女なりにショットシェルの情報を得ようとしたが空振りに終わった事に苛立っていた。

 

「そりゃ無駄な事をしたもんだな」

 

 ルパンと明乃はましろを哀れんだ様だったが、次元が小馬鹿にするかの様な事を言ったので、ましろが彼を睨んだ。

 

「宗谷さんの行為は無駄だと思いませんが?」

 

「ショットシェルは国家を取引相手にしている。

此所は確かに規模はデカイが、相手はせいぜい海賊かテロリストがいい処だろう」

 

「だからこそ、俺達は『武蔵』を盗むって訳!!」

 

 毎度恒例の洋美がましろを思って次元に抗議したが、その次元からの説明で他共々納得せざるをえなかった。

 更に言うと、国家を取引相手にしていたら秘匿性は極めて高かいのだから、ルパンの言った通り盗んだ『武蔵』を撒き餌にする必要はなかった。

 因みに、現在は“ルパン三世の無二の相棒”のイメージが強い次元は、嘗ては用心棒や殺し屋と併用して傭兵をしていた事から、此の手の情報網はルパンより優れていた。

 

「ほんじゃ、『晴風』に戻るか、って?」

 

「メイちゃん、それどうしたの!?」

 

「へへぇん!!!

買ったんだけど良い物だろ!?」

 

「ちょっと、西崎さん!!!…」

 

 ルパンが不意に気づいたが、杵崎ほまれ(通称:ほっちゃん)が双子の妹あかね(通称:あっちゃん)と共に芽依が89式小銃を持っていた事に驚いて、その芽依が89式小銃を自慢していたら駆け寄った不二子に取り上げながら怒鳴られていた。

 更によく見たら、『晴風』乗員の多くが拳銃やマシンガン等々を持っていた為に不二子か銭形に怒鳴って注意されていた。

 

「そう言えば次元、ガキンチョ共々って言っていたけど、『晴風』のガキンチョどもは金無いのに個人購入してたの?」

 

「ああ、だからお前にヤバい事が起きてるぞ」

 

 ルパンが疑問に思っていたら、次元は微笑しながらルパンに請求書を渡した。

 実は明乃達はルパン達が知らない処で話し合った結果(実は不二子にバレていたが、笑顔で承認していた)、ある一言を言って相手を納得させる事を決めていた。

 その一言と言うのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「請求先は、ルパン三世でお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…此の為、請求書には明らかに“(ゼロ)”が多すぎる額が掛かれていた上、ルパンが思わず明乃に振り向いたら、いつの間にかに明乃は離れていた上に、彼女の周りに『晴風』の幹部乗員達とヴィルヘルミーナが集計していた。

 そしてルパンの近くに取り立て人がいて、次元までがルパンから離れていて、笑っている事から察するにルパンを見捨てていた。

 

「……せ~の…」

 

「ひえぇぇぇー!!!」

 

『ルパンさん、御世話になりまぁ~す!!!』

 

 ルパンが高額請求に絶叫する中で、明乃達は満面の笑みで一礼した。

 

 

 

 

 

 実は此の時に『晴風』の後方の海面に奇妙な気泡が一瞬出来た…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ????? ―――

 

 

「…いた!!!

『晴風』がいた!」

 

「ルパンもいる!!!」

 

 ルパン達が買い出しをし終わった此の時既に、『晴風』がいるブラックマーケットのある環礁の遥か遠方の沖合いにて、対ルパン三世部隊の旗艦・改インディペンデンス級沿海域戦闘艦『弁天』が身を潜めながら停船していた。

 その艦内のCIC(Combat Information Center:戦闘指揮所)では、司令官兼任の『弁天』艦長・宗谷真冬(真雪の次女)が色々とオペレーターに指令しながら潜水ドローンからの映像が映る画面を注目していて、その映像で『晴風』と(彼女達から見て)何故か頭を抱えているルパンが他共々映ったのを見て、一緒にいた倫子と典子が思わず叫んだ。

 因みに、典子は兎も角として、オーシャンモール・四国沖店での現場責任者だった倫子が此所にいれたのは、現在も警察に拘束中の真霜が全責任を負う事で彼女を庇ってくれた上にブルーマーメイド自体でドタバタが起きた為に査問会云々が無期延期となったからだった。

 

「それにしても真冬、何で『晴風』の居場所が分かったの?」

 

 元々『弁天』は随伴艦艇共々、『晴風』がオーシャンモール・四国沖店から逃げた方角を頼りに捜索を行っていたのだが、『弁天』はある時点を機に、以前から海賊多発海域としてブルーマーメイドが注意していた此の海域に直進して、現時点で『晴風』をルパン共々発見するに至った。

 当然ながら、此の事を倫子が疑問に思って真冬に尋ねたら、当人はポケットから取り出した銀色の腕輪を見せ付けた。

 

「…いやね、呉の能村って娘の話だとね、『晴風』の右舷錨に、此のブレスレット型の発信器を付けてくれたらしくてね………まぁ、ある程度は近付かないといけないけど、『晴風』の居場所を特定する事が出来たのよ」

 

「なるほど、首輪ならぬ腕輪が既に『晴風』に付いていたって事」

 

「だけど、そのマメさが気に入らないわね」

 

「……そんな事言ってるから一生男に縁がないのよ、アンタ…」

 

 真冬に典子が睨んだ為に倫子が2人の間に入った事は兎も角として、此の3人が階級や役職を無視しての砕けた会話をしていたのは、彼女達が数多の戦場を乗り越えた戦友との間柄だけでなく、横須賀女子海洋学校の同級生だったからだ。

 

「ま、しかし、あの環礁にルパンや『晴風』がいるのなら踏み込んでもいいんじゃない?

もうすぐ艦隊が集結するんだし…」

 

 『晴風』発見によって『弁天』は既に分散捜索に向かっている随伴艦艇の集合命令が秘匿通信で発せられていて、更に『弁天』自身も戦闘体勢へ移行し終えていたので、典子が環礁への突撃を進言した。

 

「…踏み込んでみる?」

 

「止めた方がいいんじゃない?

今行ってもオーシャンモールの二の舞になるでしょう」

 

 だが典子の進言は真冬と倫子に却下となったが、真冬の却下理由は倫子とは少し違った為に部下に命じて潜水ドローンの配置を変えさせた。

 

「…あ、銭形警部!!?」

 

 新たな映像では、『晴風』の第一魚雷発射管左舷で、銭形が摩侖に怒鳴っているのを苦笑するルパンに押さえられていた。

 音が無い上に誰も読唇術を心得てないので何を言っているかは分からないまでも、ルパン三世専任捜査官である筈の銭形にルパンを逮捕する気が無い事だけは分かった。

 

「…面妖ですね」

 

「やっぱり、とっとと乗り込んでいった方がいいんじゃない?」

 

 オーシャンモール・四国沖店の一件に加えて、その直後からの警察の手早い動きに疑問を感じていて、『晴風』甲板上での銭形で警察への違和感が確実になったので、今度は倫子が怪しんでる典子と共に突撃を再進言したが、真冬は乗り気でない顔をしていた。

 

「もう少し待ってみない?

どうせ、今行ってもルパン達には逃げられるだろうしね」

 

 真冬は何故か旧世代の女番長と言うべき風貌な上、お淑やか傾向の宗谷家の女性(実際に真雪、真霜、ましろの3人はそう)の突然変異体なのか性格が真逆の体育会系なのだが、その2つに反する冷静に見極めようとする判断に倫子と典子は素直に頷いた。

 

「…それに、怪盗ルパン愛読者のましろと違って、私は一世だろうが三世だろうとルパンなんてどうでもいいんだけど、かのルパン三世がリトルマーメイド(ましろ達学生)を大量誘拐してまで手に入れようとするお宝ってのを知りたくない?」

 

「きっと、警察の目的もそこにあるだろうしね」

 

 真冬に同意しながらの倫子の言葉には、此の数日間に起きたブルーマーメイドと警察のいざこざが発起となっていた。




 感想または御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 今回にて宗谷親子の最後の1人たる次女・真冬が他共々登場となりましたが、彼女達は暫くは道化に近い役になる予定です。
 因みに分かる人には分かる筈ですが、真冬達3人の会話場面は、腐女子歓喜の次元と五ェ門の人工呼吸で有名な“愛のダ・カーポ”の1場面を元にしてます。

 次回の予定は、“警察による真雪と真霜の親子への仕打ちで東京で何が起きている”かです。
 まぁ一言で言ったら、人によっては阿呆臭く感じるかもしれない“警察とブルーマーメイドの覇権争い(内輪揉めとも言える)”からです。


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第15話 一触即発でピンチ

――― 東京 ―――

 

 

 ルパンによって『晴風』を連れ去ってからの数日間の東京……厳密に言えば、日本沈降で東京の殆どが水没しつつあるにも関わらず移転の気配(更に言うと遷都も…)が全く無い行政の中枢である霞ヶ関は嘗てない程に緊張に包まれていた。

 その震源地なのは、東京都の治安を維持する警視庁の2代目本部………西暦1980年に竣工した三角柱型の建築物・警視庁本部庁舎(通称:桜田門)であった。

 軍事クーデターか爆弾テロぐらいでしか異変が起きない筈の警視庁本部庁舎で起きていたのは、大多数のブルーマーメイド達が警視庁本部庁舎を24時間体勢で半包囲していた。

 

『還せ!!! 還せ!!! 還せ!!!…』

 

 銃火器処か小型艦艇をも持ち出しているブルーマーメイド達が怒号で求めているのは、真雪と真霜の宗谷親子の不正逮捕(何故かブルーマーメイド内では“拘束”が“逮捕”に刷り変わっていた)に対する抗議と2人の解放であった。

 彼女達の感情は極限に達していて、交代制での24時間ぶっ通しでなのは当然ながら、一部の者達は現在夜中である事をつけ込んで、人がいるだろう部屋目掛けて海上用の大型探照灯で照らす嫌がらせを行っていた。

 対する警察側も当然何もしていない訳がなく、警視総監直轄の船にして海軍から払い下げられた大淀級軽巡洋二番艦『仁淀』(元々潜水艦隊旗艦向けに船体のほぼ後ろ半分に及ぶ小型飛行船用格納庫を大型CICに改造した日本海軍初の戦略指揮統制艦、一時連合艦隊旗艦も務めていた)以下の警視庁所属の警備艇群を呼び寄せ、警視庁本部庁舎前の埠頭に設置したバリケードの直ぐ後ろにフル装備の機動隊が多重の人垣を構成してブルーマーメイドの襲撃を備えさせていた。

 現在はブルーマーメイドが抗議運動の名を借りた嫌がらせ行為のみを行い、警察も機動隊に行動の自重を厳命していたので膠着状態であったが、ブルーマーメイドと警察双方が都内だけでなく県外からも増援を呼び寄せていた為に両陣営揃って時間経過に合わせて人が増えていたので、誰がどう見ても武力衝突の可能性が否応無く高まり続けていた。

 更に質が悪いのは、此れだけの騒ぎの放送局全て(+それなりの海外のも)が見逃さずに警視庁本部庁舎上空に報道飛行船を派遣、24時間体勢でのトップニュースとして報道し続けていて、一部が不安を煽るかの様な報道をした為に、日本全土でブルーマーメイドと警察の武力衝突に不安を感じていて、多くの都民が貯蓄の為の買い出しや東京都からの脱出を(ココロ)みて混乱やパニックがかなり生じてしまい、都知事が戒厳令を発令せざるをえない状態となった。

 幸いなのは、警視庁に業務代行を打診されて出動した陸海軍によって間違った報道をするメディアや個人動画サイトへの抗議や削除が行われていて、武力衝突防止目的で警視庁本部庁舎へ陸戦隊を乗艦させた駆逐艦や海防艦を多数派遣する事が決まって、それ等は間も無く到着する筈であった。

 

「……此れで本当に良かったのですか…」

 

 そんなブルーマーメイドと機動隊の一触即発状態な光景を、警視庁に隣接する警察庁の自分の執務室で、浄園が不安げに見つめながら溜め息を吐いた。

 

「心配いりませんよ、浄園警察長官。

我々警察がまごう事なき正当、日本で言う(ニシキ)御旗(ミハタ)は我々警察の手の中に有りますよ」

 

 そんな浄園の後ろのソファーに座っているジャンは、彼に気にしないようにと言ったが、浄園は振り向きながら内心で「違う」と言っていた。

 元々警察内部では鳩派に属している浄園は、ジャンから提示された対ショットシェル作戦での、銭形が知らない(筈)裏の企みを危惧していたからだ。

 そもそもの始まりである銭形のルパン三世専従捜査からの解任、此れは何十年も掛かってもルパンを逮捕出来ない事からの罰人事も確かにあったが、その代わりとして無理難題な不可能任務(ショットシェル壊滅捜査)を与えれば銭形はルパンに泣き付き、ルパンは必ずショットシェルの資金を狙う事になるのを見越しての事だったのだ。

 

「しかもですよ、予想外のRATtウィルスの再出現でルパンが急遽『大和』から『武蔵』を盗むのを変えましたが、アレ等は結果的に更なる慈雨をもたらす事になったじゃありませんか」

 

「ええ、先ずはお陰様でルパン達を妨害しかねぬブルーマーメイドの安全監督室の宗谷真霜を母・真雪共々捕縛出来ましたしね」

 

 更に陸海軍各々の高官2人もソファーに掛けて笑っていて、此の警察の企みに秘密裏に軍部が協力しているのを表していた。

 尚、彼等はルパン達の行為から真霜の冤罪覚悟の逮捕拘束は予定通りだったが、強奪するのを『大和』から『武蔵』に変えていなければ真雪ではなく呉女子海洋学校の校長が何らかの後乗せ理由で逮捕されていた筈であった。

 

「哨戒に出ていた我が軍の潜水艦の報告によりますと、ブルーマーメイドの対応が遅れた為に、横須賀女子海洋学校所属の戦艦『比叡』(原艦種は“大型直接教導艦”だが反感と嫌がらせから旧艦種を使っている)がチューク諸島(旧名“トラック諸島”)を襲撃、諸島内の船舶の大半が大破か沈没し地上施設にも大損害が出たそうです」

 

「他にも横須賀女子海洋学校の所属艦艇が船舶の無差別攻撃をしているので、内外から殺到する抗議にてんてこ舞いになってるそうですよ」

 

「我々の狙い通り、ブルーマーメイドは機能不全に陥ってますな。

此れで我々の計画も順調に進む事でしょう」

 

「そう言えば、宗谷親子はどうしているのです?」

 

 『比叡』のチューク諸島襲撃等、本来なら怒るべき筈と思うのだが、彼等はブルーマーメイドへの嫌悪からそれ等への醜態に笑い合っていた中で、ジャンが何の気なしに気になった宗谷親子を尋ねたら、白馬がノートパソコンを取り出して起動してからの操作を行ってからジャン(達)に画面に映るを見せた。

 

『…何をもって、ルパンが殺人を犯したと決めつけた!?

遺体全ての殺され方や推定される犯人の体格は、ルパンだけでなく次元や五ェ門のとは不一致であるのは簡単に分かったんだぞ!!

ブルーマーメイドの正規隊員達の殺しはルパン達でない事は司法解剖で立証されたんだ!』

 

『仇討ちとかしたくての感情的な事で銃火器の無制限使用を命じたんだろうが、此のお陰で無関係な人達が多数負傷したんだぞ!!』

 

 映像の中で典型的な取調室で上着を脱いでネクタイを外している真霜が、刑事2人から取り調べを受けていたが、刑事2人は追い詰める為の資料各種を出しているのは兎も角として、怒鳴りながら机を叩く等の外部に漏れたら確実に訴えからの敗訴確定のヤバい手法も行っていた。

 

『私を騙った何者かが銃火器無制限使用を命じたのです!!

そもそも私は正規隊員が複数殺された報告を受け取ってない!』

 

『ふざけるな!!!

どうやって外部からブルーマーメイドの通信に偽報を入れれるんだ!?』

 

『ルパンが私の声を真似ているんでしょ!!

それ以外でもルパンなら何らかの方法で出来るでしょう!?』

 

『何でもかんでもルパンにするな!!!

監視カメラを全て確認してもルパンはやっていない!』

 

 尤も、普通の人間なら刑事2人のやり方に心が折れて唯々諾々になっていた可能性が高かったが、そうならない真霜は怒鳴り返しての反論を

続け、時折刑事のどちらかと睨み合いをしていた。

 

「流石は宗谷真雪の長女として母の才能を強く遺伝していますね。

母親の七光りだけで今の地位を得ていなさそうだ」

 

「だからこそ、彼女を野放しにしたらルパンの『武蔵』強奪を阻止する可能性があります」

 

 ジャンは白馬と共に真霜の強靭な精神だげなく、彼女なりにオーシャンモール・四国沖店の裏で起きていた事を鑑みている事に感心していた。

 尚、ほぼ無理矢理に真霜に不手際を認めさせようとしていたが、実際の処はショットシェルが工作員達を逃す為に真霜を騙って銃火器無制限使用を出す事でルパン達を囮にする為に出したモノである事と見抜いていた。

 尤も真霜を演じたのが誰で、ブルーマーメイドの通信に割り込んだ手法までは分からなかったが…

 

「ですが、そろそろ宗谷親子を拘束しておくのは難しくなります。

ブルーマーメイドが2人の為の弁護士を急派すると通達してきました」

 

「弁護士派遣は拒否すればそれまでですが、武力行使とまではいかないと思いますが、ブルーマーメイドが宗谷親子奪還の為に過激な手段にでるのが考えられます」

 

「況してや、我々の記者会見がブルーマーメイドの妨害で未だに出来ていないのですからね」

 

「なんとしても抑え込みましょう。

真雪は兎も角………いや、あの人も野放しは危険かもしれませんが、せめて真霜はルパンが『武蔵』を強奪するまでに抑えておきましょう」

 

 ジャンの意見に白馬達3人は揃って頷いたが、浄園だけは溜息を吐いて同意した。

 

「…そう言えば真雪女史にはどうしているのですか?」

 

 浄園は真雪が不意に気になって白馬に尋ねたら、当の白馬は答える前に大きな溜息を吐いた。

 真雪は真雪で、不二子が教官として横須賀女子海洋学校にいた事で取り調べを受けている筈であった。

 

「それが、彼女は完全黙秘状態です。

だから取り調べを当面中止として警視庁内の留置場に入れてますが、基本的に四六時中壁に向かって座り続けているだけだ」

 

「まさか、食事を与えていない事はないな!?」

 

 浄園は、ある意味で真霜より厄介な存在である真雪に対して過激な仕打ちをしてないかを疑って思わず怒鳴ったが、白馬は両掌を翳しながら顔を左右に激しく振った。

 

「まさか、ちゃんと必要分量のまともな食事は出す事は厳命している。

だが、真雪は出した食事に一切手を着けてないんだ」

 

「食事を、取らない?」

 

「毒を盛られたと思っているのではないのですか?」

 

「否、聞いた処だと罪悪感の極みで拒食症を起こしているのかもしれないぞ」

 

「長娘よりも精神が弱いですね。

どうやら真雪が早期に第一線から退いたのは、気力低下が原因みたいですな」

 

 陸軍高官が海軍高官と共に真雪を笑っていたが、浄園は内心で彼女の事を疑っていた。

 

「予想よりも簡単に事が成りそうですね」

 

「ええ、政治工作も順調だそうです」

 

「間もなく、我々は明治以来の栄光を取り戻せますな」

 

「多忙を極める前に、ゴルフでも1つどうでしょう?」

 

「それは実に良いですね…」

 

 白馬達が邪に笑っているのに、浄園は大きな溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・警視庁 ―――

 

 

「交代の時間です!」

 

「ご苦労です!」

 

 警視庁の地下(?)に作られた留置場………その区画の一際奥で婦警2人が敬礼をし合って監視役の引き継ぎが行われている前にある牢の中で、白馬の言った通りに真雪が奥の壁に向かって座っていた。

 

「…どうですか?」

 

「相変わらずよ。

あっでも、やっぱり寒いらしく、たまに咳やく(クシャミ)をしているわよ」

 

「まぁ、よりにもよって此の檻ですからね」

 

 婦警2人は苦笑し合っていたのは、真雪のいる牢は対ルパン三世用に銭形が設計した特別製のであったからだ。

 

 此の牢の特徴は2つ、1つ目は“監視カメラが無い”………此れはプライバシー云々ではなく、ルパン(いれば“達”)が脱走を気付かれない様に監視カメラを細工するのが多々ある上に牢の前に銭形が四六時中監視し続ける事(だから監視役として婦警がいる)を前提としている為に無い。

 2つ目は“1年365日季節や気候の影響を受ける事なく気温が寒い”………大体察すれるが、寒くする事でピッキングをミスりやすくする狙いであり、銭形が言うには効果を高める為にルパンは裸当然の状態にするつもりらしい。

 まぁ兎にも角にも言えるのは此の特別牢は銭形の威信を込めての設計品なのだが、肝心のルパンはまだ此の特別牢に入った事がなければ使われた事自体が無く、真雪が要注意人物である事もあって入獄者第1号となったのだ。

 

「…あ!

寒いのに、せめて上着ぐらいは着ればいいのにね」

 

「まぁ強要させる訳にはいかないでしょう。

それじゃあ、私は行きますので」

 

「ご苦労様です!」

 

 寒さからか真雪が咳を2回もしたので、婦警の1人はさっさと留置場から出ていって、交代要員の婦警は牢の前に立った。

 完全に人の気配が無くなったのを察すると、婦警は右足で2回足踏みをして、真雪も右太股を2回叩いて答えた。

 婦警は右足先で床を軽く掻いたり叩くをやり始め、それが終わって少し間をおくと真雪が右太股をパーかグーで叩き出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ー・ーー・ー・・・・・ー・・ー・ー・ー・・・ーー・ー・ーーー・ー・・ーー・ー・・ー・ーー・・・・ー・ー・ーー・ーー・ーー・ー・ー・ーーーー・ーー・・ーーーーー・ー・・・・・ー」

(訳:ルパンは『武蔵』でショットシェルを狙う)

 

「ー・ーー・ー・・・・・ー・・ー・ー・・・ー・・・ー・ーー・ーー・ー・ー・ーー・・・ー・・・ー・ーー・ーーー・・・ーー・・・ー・・・・ー・・・・ーー・・ー・ーーー・・ーー・・・・・ーー・・」

(訳:ルパンが警察と手を組んだ可能性は?)

 

「ー・ーー・ー、ー・ー・ー・ーー・ー・・・ー・ーー・ー・ーー・・・ー・・・・ーーー・・・・ー・・―・・ー・・・ー・・・ー・ー・ー・・ー・」

(訳:警察だけでなく陸海軍も)

 

「・ーーー・・ーーー・・・・・ーー・・ーーーーー・・ー・ー・・ー・・・・・ーー・・」

(訳:政府への動きは?)

 

「ーー・ーーー・ーー・」

(訳:ある)

 

「ーー・・ーー・ー・・・ーー・・ーー・・・ー・ー・・ーー・ー・・・ーー・・ーー・・・・ーー・ー・ー・ーーー・ー・ー・・ーー・ーーー」

(訳:引き続き情報採取を)

 

「ーー・ーー・・ー・・ー・・ー」

(訳:了解)

 




 感想やご意見等を御待ちしています。

 今回で警察の裏の企みが少し見えましたが、本作での警察とブルーマーメイドの対立が表面化しそうですが、それに関してホワイトドルフィンの事が書けそうにありません。

 と言うのも、組織的にはブルーマーメイドに協力しているホワイトドルフィンですが、警察や陸海軍とは交換研修がよく行われる程に良好な関係を築いる為、今回の対立でどっち付かずに右往左往しているとしています。


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