魔法使いが守る水平線 (アルティメットフリーダム)
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特別編
バレンタイン特別編


はい!タイトル通りバレンタイン特別編です!
特別編なのでネタ多め+いつも以上に雑ですけどね…
一応本編終了後のつもりです


 

 

 

本日は2月14日、そうバレンタインである。が俺はいつも通り執務室で仕事だ。秘書艦の電は用事があるらしく、ここにはいない。

 

バレンタインなんていつもと変わらない日常なんだよ。今までもこれからもな。…ってのは建前であり、今年は少し期待している。なぜなら…

 

コンコン

 

「あいよ。誰だ?」

 

「木曾だ。入っていいか?」

 

「おういいぜ」

 

艦娘がいるからである。扉が開いて木曾が入ってくるが、背中になにか隠してるな。

 

「どうした木曾?」

 

「あ〜今日はバレンタインだろ。だから…その…ほらよ!」

 

ウェッ‼︎木曾がなんか投げつけてきた⁉︎俺はなんとかキャッチして、それを見ると色んな形をしたチョコが詰まった袋だった。

 

「え?木曾これって…」

 

顔を上げるとそこに木曾の姿はなかった。いやぁ〜まさかチョコ貰えるなんてねぇ〜

 

ん?なんかドタドタ足音が…

 

「出遅れたか‼︎」

 

「うおぉい‼︎」

 

利根⁉︎なにをそんなに慌ててんの⁉︎

 

「提督‼︎今日はバレンタイン!これは吾輩の気持ちじゃ‼︎」

 

そう言って差し出したのはハート形のチョコ…いや直球過ぎない?

 

「お、おう。ありがとう」

 

「うむ!味わって食べるのじゃぞ!そr」

 

「ちょっとどいて‼︎」

 

「ぐふっ‼︎」

 

利根ぇぇぇぇ‼︎利根が川内に突き飛ばされたよ‼︎利根気絶しちゃってるよ⁉︎廊下の壁でジョ◯ョの花◯院が死んだ時みたいなことになってるよ‼︎どんな力で突き飛ばしたんだよ川内さん‼︎

 

「はい提督!バレンタインだから手作りチョコあげる!」

 

「あ、ああ…ありがとう…」

 

川内の手作りチョコか。普通に美味そうだ。

 

「じゃ!用事は済んだからじゃあね!」

 

川内、嵐のように現れ嵐のように去って行ったな…その嵐の被害者が一名いるけど、そっとしておこう。

 

「あれ?扉開いてるって利根⁉︎どうしたの⁉︎」

 

「その声は霧島か。ついでにそこでぶっ倒れてる利根を連れて行ってくれ。俺も協力するから」

 

「とりあえず、提督。日頃の感謝の気持ちです」

 

「おう。ありがとな」

 

霧島はチョコを俺に渡して、利根は念の為、霧島と協力して入渠ドック連れて行った。さて仕事にもd

 

「お、提督やないか。ちょうどよかったわ」

 

戻れないな!

 

「龍驤か。どした?」

 

「今日はバレンタインやからな。初めて作ったから形はあれやけど味は大丈夫やから安心してや」

 

そう言って渡してくる袋には川内と同じ生チョコが入ってる。形的には川内の方が綺麗だか味は大丈夫だろう。

 

「ありがとう。後で食べるよ」

 

「味は保証するで!ほな、うちはこれから演習あるさかい」

 

「おう。頑張れよ」

 

ふぃ〜これでひと段落

 

「よぉ!提督!」

 

な訳ないよね!

 

「天龍、お前も演習だろ?」

 

「まぁ、そうなんだが…これをよ…」

 

流石にここまで来たら読める…チョコだな。まぁ予想通り天龍から差し出されたのは長方形の箱に入ったチョコだった。

 

「おう。ありがとよ」

 

「お、おう…じゃ、じゃあな!」

 

天龍は走り去って行った…えっと待てよ…後、貰ってないのは…

 

「やぁ司令官」

 

「おう、響」

 

「バレンタインだk」

 

「テートクー‼︎バーニングラァァァァァァァァァブ‼︎」

 

ああ〜面倒いのが来たよ。

 

「お前は黙っとれ」

 

《バインド》

 

「おふ⁉︎」

 

とりあえずやかましい帰国子女を拘束する。なんか言ってるが無視だ。

 

「んでどうしたんだ響。っつても大体わかるんだが…」

 

「…あ、ああ。感謝の気持ちだ。受け取ってくれ」

 

俺は響らしい水色の包み紙に入ったチョコを受け取った。

 

「あ〜スパシーバだったか?チョコは後でいただくよ」

 

「ふふっ…ハラショー。じゃまた」

 

よしこれで仕事に…ん?袖を引っ張られてる?

 

「あの…司令官さん…」

 

「電?」

 

「えっと…その…」

 

背中になにかを隠して赤面しながらモジモジする電…可愛い‼︎…じゃなくて‼︎

 

「どうかしたのか?」

 

「ひ、日頃の感謝の気持ちなのです!」

 

電が差し出した袋には形が歪で焦げ目もある手作り感満載のチョコチップクッキーが入っていた。

 

「もしかして、今日の予定ってこれを作っていたのか?」

 

「はいなのです。間宮さんに教えてもらいながら作ったのです」

 

「そうか、ありがとう。食べてもいいか?」

 

「なのです!」

 

俺は電から受け取った袋を開けて、クッキーを一枚食べる。うん、美味い。

 

「美味いよ、こりゃお返し頑張らないとな」

 

「良かったのです!お返し楽しみにしてるのです!」

 

電の満面の笑顔…笑顔という希望を俺は守り続けないとな。

 

「よし電!とっとと仕事終わらせてちょっと遊びに行くか!」

 

「えっ!いいのですか?もしなにかあったら」

 

「なにかあったプラモンスターが知らせてくれるから大丈夫だよ。ほら仕事だお前ら!」

 

《ガルーラ》

 

《ユニコーン》

 

《クラーケン》

 

プラモンスターはあちこちに散らばっていった。

 

「でもそれじゃ司令官さんの魔力が」

 

「この程度で魔力切れ起こすほど魔力は少なくねぇよ。ほら執務室に行って仕事終わらせるぞ!」

 

「はわわっ‼︎急に引っ張らないで欲しいのです!」

 

「はははは!すまんすまん!」

 

電の手を引き執務室へ走る。こんなに楽しいバレンタインは生まれて初めてだった。

 

ちなみにこの後、他の艦娘達にもバレンタインチョコを渡され、ホワイトデーのお返しをどうするか悩みまくる羽目になることになるんだが、その時の俺は知らないし、また別のお話…あれ?なんか忘れてるような…

 

「待って欲しいのです!金剛さんを忘れているのです!」

 

「あ…」

 

やかましい帰国子女をバインドで拘束したまんまだ…

 

「テートクー‼︎早く私をreleaseしてくださーい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 




これ思いついてから三時間ぐらいで書いたんですけど…金剛、利根すまない。※金剛は単なるネタ要員として登場させました。
とりあえず…なのですは可愛いのです‼︎


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電誕生日(進水日)特別編

おっしゃ間に合ったぁぁぁぁぁ‼︎



 

 

 

えぇ〜本日は2月25日。如月○早の誕生日だったり、花澤香○さんの誕生日だったりする訳だが…

 

「今日は電の誕生日だからサプライズパーティーをしたいんだけどいいわよね‼︎」

 

そう言って俺に抗議してるのが暁型1番艦の暁。後ろには響と雷もいる。彼女達曰く今日は電の進水日らしくそれを祝う為にサプライズパーティーがしたいから俺にも協力しろとのことだ。ちなみに進水日は艦娘の誕生日みたいなもんだ。

 

「協力するのは構わんがな…具体的になにをすればいいんだ?料理は間宮さんでいいだろ?」

 

「司令官はレディの心がわかってないわねぇ〜とにかく!司令官は料理を作ってテキトーにプレゼントを用意すれば良いの!」

 

中々強引だな…これのどこか立派なレディなんだ?ま、誕生日を知ってしまったからにはやるしかないか。

 

「わかったよ。で?準備はどれぐらいできてるんだ?」

 

「えっ⁉︎ど、どれぐらい?」

 

「食堂の飾り付けは完璧よ!」

 

「ハラショー。後は料理を作って並べれば今日の主役が帰ってくるのを待つだけ」

 

なぜか戸惑う暁のかわりに雷と響が答えてくれた。っていうかなんで戸惑うんだよ…

 

ちなみに今日の主役である電は遠征に出掛けている。今思えば電を遠征メンバーに入れて欲しいと暁達が頼み込んできたのはこの為だったのか。よし!

 

「いつも頑張ってくれてる可愛い秘書艦の為に…一肌脱ぎますかね!」

 

「「「おー‼︎」」」

 

 

--------------------------

 

 

数時間後

 

俺と間宮さんで協力して大量に料理を作った。赤城や加賀がいるから足りるかはわからんが…ま、そん時はそん時だ。

 

さて、後はプレゼントだが…

 

「まさか…こんなところで婆ちゃんに教えてもらったヘアピン作りが役に立つなんてな」

 

実はもう作ってある。俺の母方の婆ちゃんはヘアピン作りが趣味でよく俺達に

 

「彼女ができたら作ってやんな」

 

と言って作り方を教えてくれた。絶対作らねぇよと思いながら教わってたが…役に立って良かった。

 

「これで主役が帰ってくるのを待つだけだが…赤城‼︎加賀‼︎テメェらなにつまみ食いしようとしてやがる‼︎」

 

「「はっ!」」

 

電達遠征隊が帰還するまでの間赤城と加賀はバインドで拘束しておくことにした。

 

 

--------------------------

 

 

「遠征成功したのです」

 

「おう。じゃ…作戦開始!」

 

「へ?」

 

俺の掛け声で電の後ろにいた夕立が手で電の目を隠す。

 

「はわわわっ‼︎夕立ちゃん⁉︎なにをするのです⁉︎」

 

「まぁまぁ、気にせずついてくるっぽい♪」

 

電を目隠ししたまま俺達は食堂に向かう。

 

「はぅぅぅ〜夕立ちゃん。まだなのですか?」

 

「もう少しっぽい!」

 

食堂の前に着くと夕立は手を離す。

 

「ここって、食堂ですか?」

 

「開けてみな」

 

電が扉を開けると一斉にクラッカー音が鳴り響く。

 

「はわわわっ‼︎」

 

『電(ちゃん)‼︎誕生日おめでとう‼︎』

 

この鎮守府にいる全ての艦娘が声を揃えて電の誕生日を祝う。

 

「ありがとう…なのです…」

 

電は泣きながらもお礼を言ってまぁそこからはてんやわんやとお祭り騒ぎのサプライズパーティーだった。そのパーティーも終盤になり、みんな電にプレゼントを渡していた。

 

「司令官!ほらほら!」

 

「男らしく」

 

「渡して来なさい!」

 

「押すなっての!」

 

電以外の第六駆逐達に押され電の前に立つ。

 

「あぁ〜誕生日おめでとう電。大したもんじゃねぇがプレゼントだ」

 

ヘアピンを包んだ小さな箱を電に渡す。

 

「ありがとうなのです!開けてもいいですか?」

 

「おう」

 

電は箱を開ける。

 

「これは…ヘアピン…ですか?」

 

「ああ、ウィザーソードガンを模したヘアピンだ。今日が電の誕生日って今日知ったから急いで作ったせいで多少雑になっちまったが問題はないだろ」

 

「はいなのです。とっても嬉しいのです!」

 

電はヘアピンをつけて微笑む。

 

「どう…ですか?」

 

「よく似合ってるよ電」

 

それから電はどんな時でもウィザーソードガンを模したヘアピンを肌身離さず持っているか身につけていて、金剛達や電を除いた第六駆逐達に俺も電もからかわれる羽目になるんだがそれはまた別の話…

 

 

 

 

 

 




ふぃ〜今日が電の誕生日と知ったのが数時間前で急いで書いたから雑になっちまったなぁ〜ま、特別編だからいいか!


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本編
プロローグ 魔法使いの着任


なんかすらすら書けたんで新作です!
続くかはわかりませんけど…




 

 

 

「ったく…バイトとはいえこの金額か…今月も厳しいな」

 

給料を数えながらため息をつく男…まぁ俺なんだが…俺は操真魁(そうまかい)。23歳で一人暮らしのただのしがないフリーターだ。

 

といっても秘密の一つや二つ誰にでもあるものでもちろん俺にもあるんだが、その内わかるだろうし今は敢えて触れないでおく。

 

とりあえず…この金額で一ヶ月どう生活するか考えないとな…

 

改めて給料を数えて生活費をどうやりくりするか考えていると俺のスマホが鳴る。

 

なんだよコンチキショーこちとら色々と忙しいんだけど?

 

でも出ない訳にもいかず、渋々スマホを取り出して番号を確認すると友人の名前だった。

 

「おう。どうした?いきなり電話なんてよ」

 

『魁…いきなりすまない。頼みがあるんだ』

 

「頼み?どんな?」

 

『言いづらいんだけど…提督になってくれないか?』

 

「…は?」

 

俺は戸惑った。俺が提督?提督ってあれだよな?艦娘を従えてる軍人のことだよな?今まさに電話で話してるこいつのように…

 

事情を聞くと最近、とある鎮守府の提督が病気で死んだらしい。しかもその提督がとんだクソ野郎らしく、艦娘を兵器として扱い碌な食事も与えていなかったり無理な出撃を続けたり…そのせいか轟沈艦もかなり出たらしい…世に言うブラック鎮守府ってやつだ。で後任の提督を探したがもちろんそんな目に遭った艦娘は提督という人種を嫌っているのは誰にでもわかることでそんなところに行きたがる物好きや優しいやつはいなかったらしい。それでお偉いさんから誰か提督の素質があるやつはいないかと言われ、俺に電話をかけてきたらしい。

 

『という訳なんだ…頼む!こんなことを頼めるのは魁しかいないんだ!魁の力ならきっと心を閉ざしてしまった彼女達を救えるはずだ!』

 

俺の力…ねぇ…今電話で必死に訴えてる友人。彼の名は木仲巧(きなかたくみ)。俺の秘密を知る数少ない人間の一人だ。彼は横須賀鎮守府に所属している提督で俺と同い年だがかなりの腕らしい。ちなみに巧とは中学からの仲だ。

 

「…本当に俺で良いのか?」

 

『ああ!お前なら… 魁なら!絶望のドン底に彼女達を助けられる!魁だけが最後の希望なんだ!』

 

「ッ‼︎ふっ、おいおい…お前その言葉言われたら断れないの知ってて言っただろ?」

 

『流石にバレるか…』

 

「バレバレだわ」

 

俺は笑いながら右手の中指に嵌めた指輪を見て答えた。

 

「わかったよ…提督になればその鎮守府にいる艦娘達の希望になるんだろ?ならなってやるよ。俺が最後の希望だからな」

 

『そう言ってくれると思ってたよ。魁には一足先にその鎮守府に向かってもらいたい。迎えはそろそろ着くだろうから来たら乗ってくれ』

 

ん?迎えがそろそろ着く?こいつ最初から…

 

「お前…電話した時にはもう迎えを手配してたな…ってことは俺が了承すること前提だったのかよ…」

 

『そういうこと。それじゃ簡単に荷造りして迎えを待っててくれ。じゃまたね』

 

「はいはい。じゃあな」

 

そう言って電話を切る。

 

やれやれ…なんか大変なことになっちまったな。

 

ま、とりあえず荷造りしますか。

 

荷造りっていっても持っていくものなんてスマホ、充電器、イヤホン、財布さえあれば事足りる。服装も問題ないし、最悪何か忘れてもコネクトで取ればいい。必要なものをポケットに入れたところでインターホンが鳴る。タイミング良いな…じゃ行きますかねっと。

 

俺は家を出て前に止まっていた車に乗り、例の鎮守府へと向かった。

 

これが俺、操真魁が…仮面ライダーウィザードが提督になり絶望している艦娘達の希望となる物語の始まりである。

 

 

 

 

 




次回『艦娘との出会い』
こんなにすらすら書けたのは久々ですね…
出来れば続けたいけどどうなるかはわかりません
ちなみに操真魁の服装は操真晴人と全く同じです

とりあえず簡単にこの作品の主人公の設定を

操真 魁 23歳

フリーターの魔法使い
3年前に深海棲艦の攻撃で家族を失い、その絶望でファントムになりかけたが、友人の木仲巧のおかげでファントムにならず、魔法使いの力を手に入れた。

って感じですかね。細かいことはこれから考えていきます。
それではまたどれかの作品で!


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1話 艦娘との出会い

 

 

 

車に乗ってしばらくすると軍事基地のような建物が見えてきた。

 

あれが例の鎮守府か…どれだけ絶望に満ちた艦娘がいるかはわからないが、俺はただやれることをやるだけだ。

 

「着きましたよ。気をつけてくださいね。ここにいる艦娘達は提督を嫌っていますから」

 

「ご心配ありがとうございます。わかりました。それとここまでありがとうございました」

 

「いえいえ仕事ですから。さぁ早く艦娘達を絶望から救ってあげてください」

 

「はい。そのために提督になったんですから」

 

車を降りて鎮守府へ向かう。運転手から聞いた話だと今現在ここに着任している艦娘は10人にも満たないらしい。

 

ブラック鎮守府ならもっといると思っていたが理由は単純…轟沈と解体だ。

 

前のクソ提督はかなり無理な出撃を続けて轟沈させたり、自分に逆らう艦娘はすぐに解体したり、姉妹艦を人質を取り無理矢理言う事を聞かせるがその人質はすでに解体していたりしてる間に人数は減っていき提督が死んだ頃にはそうなっていたらしい。

 

提督も提督で自分の死を悟っていたのか途中から建造はしなかったそうだ。

 

とにかく、俺がここに来ることは艦娘達も知ってるはず…ということは…

 

その刹那、砲撃音が聞こえた。

 

「俺を殺そうとしますよねっと!」

 

寸前のところで横に避けるが、爆風で少し吹き飛ばされる。

 

おうおう手荒なご歓迎なこって…こりゃ一発でも当たったら終いだな…まだ変身する訳にはいかないし、突っ込むしかないな!

 

俺は砲撃を掻い潜りながら鎮守府へ突撃した。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

時は少し遡る

 

執務室

 

「なぁ…霧島…今日、新たな提督が着任するそうじゃぞ」

 

「そうですか…また地獄が始まるんですね…」

 

「ふざけんな!あんなヤツら必要ねぇんだよ!ぶっ殺してやる!」

 

「ちょっと天龍‼︎」

 

「天龍さん⁉︎何をするつもりなのですか‼︎」

 

「決まってんだろ‼︎クソ野郎を砲撃してぶっ殺すんだよ!龍田や死んでいった仲間達のためにもな‼︎」

 

そういうと天龍は執務室を出て行った。

 

「「「…」」」

 

執務室に残された艦娘達は何も言えなかった。

 

 

 

 

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俺は砲撃を掻い潜り、なんとか鎮守府に入ることができた。

 

恐らく撃ってきたのは一人だけだ。一人で良かったぁぁ〜二、三人で砲撃されてたら流石に無理だったぜ。

 

だけどまだ油断は出来ないな…撃ってきた艦娘は絶対ここに来る。

 

俺は右手の指輪を別の指輪に変えたその時、近くの扉が勢いよく開き、眼帯を着け、服がボロボロの艦娘が刀を振り下ろしてきた。

 

「死ねぇ‼︎」

 

なるほどねぇ〜やはり艦娘は近接戦闘が得意ではないらしい。

 

一応武術は少し習ってるんでね…そんな大雑把な剣じゃ俺は斬れねぇよ!

 

艦娘を軽くいなして右手をベルトに触れる。

 

《バインド》

 

すると艦娘の周りに小さな魔法陣がいくつも現れ、そこから鎖のようなものが飛び出して艦娘を拘束した。

 

目のやり場には困るがこれでもう攻撃は出来ないな。

 

「な、なに⁉︎これ切れねぇ‼︎」

 

「さてと…まずは君の名前から伺おうかな」

 

「お前らに名乗る名なんてねぇよ!ってかこれなんなんだよ!離しやがれ!」

 

「ほぅ…俺は今日からここの提督になった操真魁だ。前の提督のことは聞いてる。辛かっただろうがもう心配はいらんってこれはここにいる艦娘を集めてから言う言葉だな…まぁいいや」

 

「無視するんじゃねぇ!」

 

かなり男勝りな艦娘だな…

 

「俺は前の提督みたいなクソ野郎じゃねぇから安心しろって言っても無理な話だろうし…ま、とりあえず拘束を解く代わりに攻撃するのはやめてくれないか?攻撃されたら話し合いもクソもないからさ」

 

「はぁ⁉︎ふざけんな‼︎お前らは俺達に!」

 

「だ〜か〜ら〜‼︎俺は前の提督みたいなことはしねぇって!人間には確かに悪い奴もいるけど人間みんなそうじゃないの!信じろっては無茶なのはわかってるからとりあえず一旦攻撃をやめてくれって言ってるの‼︎」

 

クソ…艦娘一人の説得にここまで疲れるのかよ…

 

「チッ…わかったよ…」

 

「わかってくれてなによりだ」

 

そして俺はバインドを解く。

 

「名乗る気はないんだったよな?」

 

「当たり前だ」

 

「そ、そうですか…じゃあ執務室に案内してくれないか?流石に初めてのところだからわかんなくてな」

 

「…本当にあの提督みたいなことはしねぇんだな?」

 

この娘の睨み顔めっちゃ怖いんですけど⁉︎

 

「あ、あぁ、もちろんだ」

 

「…こっちだ」

 

「ありがとう」

 

俺は礼を言い彼女について行く。

 

少し歩くと立派な木製の扉があった。

 

「ここだ。じゃあな」

 

「お、おい!」

 

引き止めようとしたが人間離れした速さで走り去ってしまった。

 

ま、案内してくれただけでもいいとしますか。

 

一応ノックするか。

 

コンコン

 

「あ〜今日からここで提督をすることになった操真魁だ。誰かいるか?」

 

「…はい。いるのです」

 

声が震えてる…提督にそこまで怯えてるのか…怖がらせないようにしないとな。

 

「入っても大丈夫か?」

 

「大丈夫なのです」

 

「失礼するぞ」

 

扉を開けて部屋に入る。部屋は思ってたよりも普通だった。そして小学生ぐらいの艦娘がいた。さっきの娘と同じで服はボロボロ…こんな小さな娘にまで…前の提督への怒りを抑えて、その艦娘の前まで行き、目線が合うようにしゃがんで左手で頭を撫でる。

 

「はわわ!」

 

「改めて、俺は操真魁。君は?」

 

「い、電なのです!よろしくお願いするのです。新しい司令官さん!」

 

「電か…」

 

俺は電を抱きしめた。

 

「はわわわ‼︎し、司令官さん⁉︎」

 

「すまなかった…俺が…もっと早く気づいていれば…こんな目に遭わせることはなかったのに…本当にすまなかった…」

 

「司令官さん…」

 

いつの間にか俺は泣いていた…電を抱きしめて、頭を撫でて謝りながら泣いていた…

 

 

 

 

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暖かい…それがこの司令官さんの初めての印象でした。

 

抱きしめられた時はびっくりしましたけど…

 

電達、兵器のために泣いてくれる優しい司令官さんもいたのですね…

 

あれ…おかしいのです…前が…霞んできたのです…

 

電も気づいたら泣いていたのです…

 

それからしばらく司令官さんと電は一緒に泣いていたのです。

 

 

 

 

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どれだけ時間が経っただろうか…ようやく涙が止まり、電を見ると彼女はすぅすぅ寝息をたてて寝ていた。その顔はとても穏やかだった。色々聞くつもりだったんだが…仕方ねぇな。俺は電を近くのソファに寝かせる。

 

さて…これからどうっすっか…ここにいても仕方ないのはわかってんだが電をほっとくのもな…

 

そういや…艦娘の傷を癒すには専用の風呂に入る必要があるんだったよな…確か…入渠施設だったか?

 

「すまねぇ電。ちょっと出てくるわ」

 

俺は電やあの娘、そして他の艦娘達の傷を癒すために入渠施設を探すことにした。

 

 

--------------------------

 

 

しばらく探したが…それっぽい施設なんて見つからないんだけど⁉︎

 

まぁ、あてもなく歩き回ってたらこうなるか…

 

ん?なんか工房っぽいところに来たな。

 

一応声ぐらいかけておくか。

 

「あの〜誰かいますか〜!」

 

…返事がねぇな。

 

ちょっと申し訳ねぇが勝手に入らしてもらうぜ。

 

うむ…見た感じやっぱり工房か…ってことはここで新しい艦娘や装備を作るのか。

 

工房の設備を見ながら歩いていると物陰から人の足が見えた。

 

倒れてやがる‼︎俺はすぐさま駆け寄る。

 

「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」

 

「うっ…すみ…ません…すぐに…作ります…から…」

 

「無理に喋るな!」

 

この艦娘に目立った外傷はない…服はボロボロだが…過労か…生憎俺は治癒魔法を使えない!早く入渠施設に連れていかねぇと!

 

「む?明石以外に誰かおるのか?ッ!明石!」

 

その時工房に現れたのはツインテールの艦娘だった。

 

この艦娘は明石っていうのか…とにかくちょうど良い時に来てくれた!

 

「君!入渠施設に案内してくれ!」

 

「えっ⁉︎」

 

「早く!目の前で誰かが死ぬのは嫌なんだ!」

 

あの日のことは今でも鮮明に思い出せる…魔法の…ウィザードの力を手に入れた代わりに失ったあの日のことを…あんなことはもうごめんだ!

 

「わ、わかった…じゃが今あそこは…」

 

「いいから早く!」

 

俺は明石を背負い、ツインテールの艦娘を急かす。

 

「…こっちじゃ」

 

ツインテールの艦娘に案内してもらい、なんとか入渠施設に着くことができたんだが…

 

「…なんじゃこりゃ」

 

「入渠施設は封鎖されておる…死んだ提督のせいでな…」

 

「鎖と南京錠、それに木の板まで貼っつけて扉が開かないようにしてやがる…だがこれぐらいなら」

 

あんまり人前で魔法は使いたくないんだが…

 

「無駄じゃ…木の板はともかく鎖と南京錠は艦m」

 

「少し明石を頼む」

 

明石をツインテールの艦娘に任して右手の指輪を付け替えて、ベルトにかざす。

 

《コネクト》

 

俺の右に魔法陣が現れ、俺はその魔法陣からウィザーソードガンを取り出す。

 

「なっ⁉︎」

 

「ちょっと下がっててくれよ…ハァッ‼︎」

 

驚くツインテールの艦娘…もうツインテールでいいか…を下がらせて南京錠に向かってウィザーソードガンを剣形態にして振り下ろす。

 

カキン‼︎という金属音と共に南京錠は真っ二つに斬り裂かれた。

 

「よし…あとは鎖と木の板だな」

 

「そ、そんなバカな…」

 

その後も難なく鎖と木の板を斬り裂き、施設の扉を開けるようにした。

 

「さてと…あ〜名前聞いてなかったな」

 

「わ、吾輩は利根じゃ」

 

「利根か。悪いけど明石を入渠さしてくれないか?流石に男の俺が服を脱がす訳にはいかないし…あんたも入渠して欲しいしな」

 

「よ、よいのか?」

 

「ああ、俺の自己紹介は後で執務室でするから他の艦娘にも入渠が済み次第執務室に来るように伝えておいてくれ」

 

「うむ‼︎わかったぞ‼︎」

 

「おう!頼むぞ」

 

明石は利根に任したから大丈夫だろう。さて…執務室に戻るか。電にも入渠してもらわないといけないしな。

 

俺は来た道を戻って執務室に戻ろうとしたが…あれ?執務室どこ?

 

結局、プラモンスターの力を借りてなんとか執務室に戻ることができたのだった…

 

 

 

 

 




次回タイトルは未定です
操真魁の見た目はマジレンジャーの小津魁をイメージしてます。年齢的にはゴーカイジャーに出てきた方かな?
それではまたどれかの作品で‼︎


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2話 自己紹介

 

 

 

執務室に戻ると電はまだ寝ていた。

 

気持ちよさよう寝てるところを起こすのは申し訳ないが…入渠してくれないと色々と困るから仕方ないな。

 

電の身体を揺さぶりながら声をかける。

 

「電!起きてくれ!電!」

 

「…ん?…しれい…かんさん?…」

 

ぐっ!可愛い…じゃなくてだな!

 

「入渠施設を開放してきたから風呂入ってこい。もちろんここに他の艦娘にもな」

 

「えっ⁉︎入渠ドックをですか⁉︎あそこは確か頑丈に…」

 

「ああ…どうやって開けたかは秘密だぜ?ほらさっさと他の艦娘にも伝えて入ってこい。終わり次第ここにいる艦娘全員をここに集合さしてくれ」

 

「了解なのです!」

 

電はアナウンスで入渠ドックが開放されたから各自入り、入渠が済み次第執務室前に集合するようにと言った後、笑顔で執務室を出て行った。

 

やっぱり…ただの普通の女の子じゃないか。兵器と扱う奴の気が知れないな。

 

執務室前にしたのは電なりの配慮だろう。艦娘が入ってきていきなり砲撃でもされたらヤバいしな…

 

さて…俺はここを離れる訳にはいかないし…改めて部屋を見回すと悪趣味な装飾などはされていないがお世辞にも綺麗な部屋とは言い難い。

 

溜まった埃、散らばった紙、汚れた壁…こりゃまずは掃除だな。

 

「うぉし!やりますか!」

 

伊達に一人暮らしをやってきたんだ…掃除ぐらいお手の物よ!

 

 

--------------------------

 

 

1時間後

 

「ふぃ〜魔法を使えばこんなもんしょー」

 

魔法って言ってもプラモンスターに手伝って貰ったり、コネクトで家にある掃除道具を取り出した程度だが…それでもこの短時間で執務室は見違えるほど綺麗になった。

 

後は椅子に座って待つだけかな。

 

 

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数分後

 

コンコン

 

「電なのです。艦娘が全員集合したのです」

 

「ありがとう!入っても大丈夫だぞ」

 

扉が開き、艦娘達が入ってくる。

 

「…これで本当に全員か?」

 

「はい…全員なのです」

 

「そうか…」

 

その数6人…10人にも満たないとは聞いていたが…ええい!悲しんでいても仕方ない!

 

俺は椅子から立ち上がる。

 

「…知ってる者もいるが改めて自己紹介さしてもらう。今日から提督として着任した操真魁だ。前の提督のことは聞いてる。俺はそんなバカなことはしないと約束する。お前達は確かに深海棲艦と戦える唯一の戦力だ。だが…兵器ではない」

 

「違うな!俺達は兵器だ!」

 

あの時、砲撃してきた眼帯の娘が怒鳴る。

 

「君はあの時の娘だな?兵器ってのは簡単に言えば自我を持たず、人が使う道具のことだ。だが君達には自我がある。喜び、悲しみ、怒りといった感情がある者を兵器とは言わない。人間という…だから俺は君達艦娘を人間として、一人の女の子として接する」

 

「信じられるか‼︎」

 

「今はそれでいい。なにもすぐに信じろとは言ってないからな。それじゃ自己紹介してもらおうか。艦種と名前だけでも良いからな。最初は…俺から見て右側の…電からだな」

 

「は、はい!暁型駆逐艦四番艦の電なのです!」

 

「そ、そこまで詳しく言う必要はないんだが…」

 

「はわわっ!ごめんなさいなのです…」

 

「いや、こちらこそすまん。じゃあ次!」

 

「軽空母…龍驤や…」

 

「戦艦の霧島です…」

 

「重巡洋艦の利根じゃ!よろしくな!」

 

「………軽巡洋艦……天龍」

 

「同じ軽巡洋艦…川内」

 

えっと、小学生ぐらいの大人しい娘が電で駆逐艦と同じぐらいもしくは…かもしれない(どこがとは言わない)軽空母が龍驤、理系っぽい巫女メガネが霧島、緑の服を着たツインテールが利根、めっちゃ気が強い眼帯が天龍、オレンジの服を着たツインテールが川内…覚えないとな。

 

「…今なんか失礼なこと考えんかったか?」

 

ギクッ‼︎な、なぜバレた…

 

「…気のせいじゃないか?」

 

「なんや今の間は‼︎」

 

「とりあえず!もう今日は解散でいいんだが、そろそろ腹減ったろ?食堂で飯にしようぜ。材料さえあればなんか作るからよ。全員で行こうぜ」

 

時間的にはちょうど夕飯時だし、今までちゃんとした料理なんて食ったことないだろうからな。

 

「司令官さんが作るのですか?」

 

「ああ、簡単なもんしか作れねぇけどよ。それでもお前達にはちゃんとしたもん食べさせてやりたいからな」

 

「司令官さん…」

 

「それは楽しみじゃの!さぁ!食堂はこっちじゃ!」

 

「お、おい!引っ張るなっての!」

 

「むむむ…電も案内するのです!」

 

俺は電と利根に引っ張られながら食堂に案内されたのであった。

 

なんで電と利根は俺を挟んでメンチ切ってんだよ…怖ぇよ

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

残された艦娘達は…

 

「電と利根はあいつのこと信用してんのか?どうせ信じても裏切られるのがオチさ」

 

「…みんなどうする?食堂行く?」

 

「は?俺は行かねぇよ」

 

「私は…行ってみるつもり…」

 

「そうやなぁ〜行ってみよかな」

 

「…私は無理…行けない…人間を信用できない…」

 

「川内…」

 

「じゃあ行かねぇやつは部屋に戻ろうぜ。行くやつは勝手にしろ。行くぞ川内」

 

「うん」

 

天龍と川内は執務室をあとにした。

 

「川内…まだ神通や那賀ちゃんのことを…」

 

「天龍も龍田のこと引きずっとるしな…せやけどこればっかりはうちらじゃどうしようもできん…川内と天龍自身の問題や。とりあえず、うちらははよ食堂行くで」

 

「わかったわ」

 

龍驤と霧島も執務室をあとにし、食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 




次回『魔法の料理⁉︎』
電と利根は魁にある程度心は開いてますが他の4人はまだ警戒してます。特に天龍と川内の2人はまだ魁を信用できてません。
これからどうなるかお楽しみに
あ、次回ではないですか建造もする予定なのでこの艦娘に出て欲しいという要望があれば感想やメッセージで受け付けます!
それではまたどれかの作品で!


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3話 魔法の料理⁉︎

今回はかなり雑です…


 

 

 

食堂に着くとそこには明石がいた。

 

「お、明石じゃないか。もう大丈夫なのか?」

 

「ああ、あなたは!利根から聞きました。助けてくれてありがとうございました」

 

「気にすんな。当たり前のことをしただけだからよ。俺は操真魁。今日からここの提督になった者だ。よろしくな」

 

「そうだったんですか!あなたなら信用できそうです!こちらこそよろしくお願いします」

 

俺と明石は握手をした。

 

今ところ心を開いてくれたのは電、利根、明石の 3人か…残りのやつらは敵対心を持ってたり、警戒してたりか…和解には時間がかかりそうだ。

 

「そういや…明石は飯食ってたのか?」

 

「はい…」

 

明石が顔を落としたのを見てなにかあると察した俺は明石がいたテーブルを見る。

 

「…これが飯か?」

 

「…はい」

 

そこには皿に入ったドロドロに濁った液体…これは燃料?

 

「…こんなもん飯とは言わねぇな。厨房借りるぜ〜」

 

「え?ちょっと!」

 

厨房に入ると長年使われてないからか埃は目立つが汚れ全くと言っていいほどなかった。

 

「マジで一度も使ってねぇんだな…さっさと埃払って始めるか」

 

コネクトで家からクイック◯ハン◯ィを取り出して、埃を取って、材料確認のために冷蔵庫を開ける。

 

「…マジかよ…空っぽじゃねぇか…」

 

中身は空っぽ…はぁーまたコネクトの出番だな。

 

家にある物で出来そうなのは…カレーかな。

 

結局コネクトでバー◯ンドカレーのルーを甘口、中辛、辛口…なんで各種あるかって?爺ちゃんの仕送りに何故か毎回入ってんだよ!…と必要な野菜各種を家から取り出す。

 

ちなみに鍋とか包丁、皿やスプーンは綺麗なのがあったから軽く水洗いして使うつもりだ。

 

「さぁ…ショータイムだ‼︎」

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

数分後

 

「良い匂いがしてきたのです!」

 

「懐かしさを感じるこの匂いは…カレーじゃな!」

 

「楽しみ〜」

 

三人が厨房から流れてくる匂いに期待してテーブルについていると

 

「お!なんやえぇ〜匂いやなぁ〜」

 

「あらホント!カレーかしら?」

 

龍驤と霧島が食堂に入ってきた。

 

「龍驤さん!霧島さん!」

 

「二人とも提督を信じてくれるのか!」

 

「提督については半信半疑やけど、美味しいもん食べれるなら来る価値あるやろーって思うてな」

 

「天龍と川内は信用できないって部屋に戻ったけど、あの提督なら私は信じてみたいって思ったから来たの」

 

「とりあえず、二人とも座って色々話しましょう」

 

「なのです!この辺りに座って欲しいのです」

 

二人は席に座り、魁から声がかかるまで魁のことや天龍、川内のことについて話し合ったのであった。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

「おーい!出来たぞ〜!」

 

なにやら話し込んでる艦娘達に声をかけるや否や全員わらわらとカウンター席に集まってきた。

 

「匂いでわかってたかもしれんがカレーだ。甘口、中辛、辛口全部あるから好きなやつを食ってくれ。どれが良い?」

 

「あ、甘口でお願いするのです!」

 

「吾輩は中辛じゃ!」

 

「え〜と…辛口かな」

 

「中辛で頼むで」

 

「私は辛口で」

 

「はいよ。ちょいと待ってな」

 

6つの皿に炊きたての白飯を入れてそれぞれカレーを入れていく。

 

「お待ちどうさん。君達から見て左から甘口、中辛、辛口だ。自分のやつを持っていてくれ」

 

みんな自分のカレーを取って席に着く中、電だけはカレーを持たずに俺を見ていた。

 

「ん?どうした?」

 

「…司令官さんは食べないのですか?」

 

「俺は後で食うよ」

 

「その…良かったら…一緒に食べませんか?」

 

うぐっ…そんな上目遣いで頼まれたら断りづらい…

 

「わ、わかった。一緒に食うか!」

 

「はいなのです!」

 

俺は皿を取り出して白飯と辛口のカレーを入れて席に着く。

 

…何故か電と利根は相変わらず俺を挟んで邪悪なオーラを放ってるが…そっとしておこう。

 

「えっとそんじゃあ…いただきます‼︎」

 

「「「「「「いただきます‼︎」」」」」」

 

そう言うなりカレーにがっつく艦娘達。

 

「⁉︎お、美味しいのです‼︎」

 

「美味い‼︎美味いぞ!」

 

「なにこれ美味しい!」

 

「めっちゃ美味いやん!男やのにこんなん作れるなんて中々やるなぁ〜提督」

 

「ホントに美味しい!おかわりあります?」

 

「気に入ってくれてなによりだ。おかわりもあるから好きなだけ食ってくれ」

 

談笑しながら笑顔で飯を食う…そんな普通なことをこの娘達は知らなかった、いや、さしてもらえなかったと言うべきか。

 

「こんな料理を作れるなんてまるで魔法みたいなのです!」

 

ま、魔法って…ただのバー◯ンドカレーなんだが…

 

「そうね…魔法が実在したらこれは魔法のカレーかもね」

 

「ア、アハハハハ…」

 

乾いた笑いしかできねぇ…だって実際俺魔法使いだし…

 

と、とりあえず!今はたった6人…だけどこれからもっと人数を増やして賑やかにしていきたいな。

 

そういや…天龍と川内がいないな。

 

「あ〜天龍と川内は?」

 

「…天龍さんと川内さんは提督を、人間を信用できないって部屋に戻ったのです」

 

「そうか…ならカレーを部屋に持っていくなり、俺が執務室に戻った後で二人をここに連れてくるなりしてカレーを食わしてやってくれ」

 

「いいのですか?」

 

「もちろんだ。よしご馳走さん」

 

「は、早いな⁉︎」

 

「ま、やることがあるからな。先に執務室に戻ってるからゆっくり食っててくれ。天龍と川内のことは任せたぞ」

 

「はい!任せて欲しいのです!」

 

「うむ!任せよ!」

 

「任せてください!」

 

「やれるだけやってみるわ」

 

「提督は提督で今やれることをやってください」

 

「おう!そんじゃまた後でな」

 

艦娘達に見送られて食堂を後にする。とりあえず前の提督が残してった資料を完成させないと…他にも艦娘達の部屋の掃除、ベットや布団買い替えないとだし…問題は山積みだな…

そんなことを考えながら俺は執務室に向かった。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

とある場所

 

2人の男がなにやら話し合っていた。

 

「…例の鎮守府に着任した提督についてなにかわかったか?」

 

「いえ…ただ横須賀鎮守府の木仲巧に推薦されたとしか…」

 

「ふん…あんな提督が推薦した人材など艦娘を人として扱う愚か者だろう」

 

「では、どうなさいましょう?」

 

「消せ。実験データを取るには良い機会だ。あれを向かわせろ」

 

「はっ!」

 

1人はその場所を後にした。

 

「艦娘など道具だ。道具は上手く利用しないとな」

 

残った男は邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『侵入者VS魔法使い』

次回は初変身&初戦闘です!
その次辺りで建造をする予定なので建造で出して欲しい艦娘がいたら感想やメッセージでお願いします!
それではまたどれかの作品で!


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4話 侵入者VS魔法使い

スラスラ書けたけどその分雑になってしまった…


 

 

 

執務室に着いてからどれぐらい経っただろうか…もう外は真っ暗だが、前の提督が残してった資料はまだ三分の一も片付いてない…早く秘書艦決めねぇと…俺一人じゃ一週間以上はかかる…今日はここまでにしよう。流石に疲れた…

 

「ちょいと気分転換に夜風でも浴びますかね」

 

たまには悪くないだろう…そう思い俺は鎮守府の外、堤防付近に向かった。

 

 

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堤防付近

 

俺は堤防に座って夜風を浴びていた。波の音…嫌な思い出はあるが聞いてるとなんだが気分が良くなる。

 

そんな気分の俺に話しかけるやつがいた。

 

「…あなたがここの提督かしらぁ〜」

 

「聞き覚えのない声だな。何者だ」

 

そう言いながら振り向くとショートヘアに天龍とよく似た艤装、頭の上に天使の輪っかみたいなのが浮いてる女の子がいた。

 

「…あなたがここの提督かしらぁ〜」

 

おいおい無視かよ。それにしても…殺気がすごい。この娘は間違いなく俺を殺す気だ。

 

「いかにも俺はここの提督だ。君は艦娘だろうがここの鎮守府の所属ではないだろう?なにをしに来た」

 

「…あなたを消しに来たのよぉ〜」

 

邪悪な笑みを浮かべて右手をかざす。

 

ッ⁉︎ドライバーオンの指輪だと⁉︎暗くてわからなかったがよく見たら俺と色違いのベルトしてんじゃねぇか‼︎

 

《ドライバーオン、ナウ》

 

機械音と共に艦娘の腰にドライバーが出現する。

 

チッ‼︎戦いたくねぇが仕方ねぇ‼︎

 

立ち上がって俺も右手をベルトにかざす。

 

《ドライバーオン、プリーズ》

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

ホルダーから赤い指輪を取り出して左手の中指にはめる。

 

「変身」

 

「変…身」

 

そして左手をドライバーにかざす。

 

《フレイム、プリーズ》

 

《チェンジ、ナウ》

 

《ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》

 

左から現れた赤い魔法陣が俺と重なり、通過していく。

 

そう…これが俺のもう一つの姿…仮面ライダーウィザード!

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

そして堤防から飛び降り、艦娘が変身したライダーと睨み合う。

 

艦娘が変身したのは仮面ライダーメイジ。確か一般人でもファントムや深海棲艦と戦えるようにと絶賛開発中のはずだが…しかも姿は真っ黒で顔の部分はかなり暗い赤…ダークライダーみたいになってやがる。

 

「楽に殺してあげるわぁ〜」

 

「ま、待て!」

 

メイジは遠慮なく俺を殺そうと攻撃を加えてくるが俺は全て避けていく。

 

「俺は艦娘と戦う気はねぇ‼︎話し合おう!」

 

だが攻撃の手は収まらない…チクショー…避け続けるのは簡単だがここの鎮守府の艦娘に見られるとまずい…とはいえ倒したら正気に戻るのか?…

 

「君は!天龍の姉妹か?」

 

「…⁉︎」

 

天龍の名前を聞いた途端、メイジの動きが止まった。

 

図星だな。

 

「この鎮守府にも天龍がいる!話し合おう!話し合えばきっとわかり合える!」

 

「ゔっ!…無理よ…私を…殺して…」

 

「ッ⁉︎」

 

今のは!この娘の本音…そうか苦しいんだな…わかった。

 

《ルパッチマジックタッチゴールパッチマジックタッチゴー》

 

右手にキックの指輪をはめてベルトにかざす。

 

《チョーイイネ!キックストライク!サイコー!》

 

「ハァァァァァァ」

 

「ゔぅぅぅ…お願い…早く…」

 

「…安らかに眠れ」

 

右足に炎を纏って側転などをした後に飛び上がり、空中で回転してライダーキックを放つ。

 

「ハァァァァァァァァァァァァ‼︎」

 

そのキックがメイジに当たる寸前

 

「…ありがとう。天龍ちゃんをよろしくねぇ」

 

「ッ‼︎」

 

俺は咄嗟にはずそうとしたがもう遅かった。

 

キックはメイジに直撃して爆発した。

 

振り返るとただ炎と煙が上がってるだけ…クソッ…助けられなかった。

 

(心配しないで、私は救われたんですよぉ。天龍ちゃんやここにいる艦娘が私と同じ目に遭わないように守ってねぇ〜)

 

「ああ…天龍はもちろん他の艦娘のことも任せとけ。君のような目には遭わせないと約束しよう」

 

(うふふ…頼みますねぇ〜)

 

頭の中にあの娘の声が聞こえた気がした…これが幻聴だとしてもこの約束は必ず守る。

 

俺は変身を解いて考え込む。

 

あの娘は恐らく洗脳かなにかされてたんだな…こんなことをする奴がいるとは…それにメイジに変身したということは少なくとも敵に魔法に精通した奴がいるのは確実…

 

「いつか…叩きのめしてやる」

 

とりあえずもう寝るか。さっきの戦闘で魔力も使ったし、ゆっくり休もう。

 

俺は鎮守府へ戻った。

 

「す、すごいのです…」

 

一部始終を見ていた艦娘に気づかずに…

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

時は少し遡る

 

電の部屋

 

「…ん…眠れないのです」

 

電はなぜか眠れなかった。まぁ、ベットの質が悪いのもあるのだが、電自身も理由はわからない。

 

「…ちょっと気分転換に外に出てみるのです」

 

電は鎮守府を出て、風を浴びるには堤防付近がいいかなと思って向かうと

 

《ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》

 

「?なんですか?このおかしな音」

 

電がこっそりと木の陰から堤防付近を覗き込むとそこには見たことない仮面の戦士が2人いた。

 

1人は電の位置からは後ろ姿しか見えないが真っ黒の戦士、もう1人は堤防の上に立ち、月明かりに照らされて光って見える赤い宝石のような顔と胸、左手に輝く赤い指輪、そして黒いローブを羽織っているような姿はまるで…

 

「魔法使い…なのです」

 

そこから一部始終を電は見ていた。

 

そして指輪の魔法使いが黒い戦士を倒し、変身を解いたところで電は驚いて声をあげた。

 

「し、司令官さん⁉︎」

 

魔法使いに変身していたのは昼頃にこの鎮守府の提督になった操真魁だった。なにか考え込んでいる魁に電の声は聞こえなかったらしく、電には気づかずに鎮守府へ戻っていった。

 

「す、すごいのです…」

 

驚きながらも電はこのことは他の仲間にも言うべきなのだろうかと考えていたがすぐに決断した。

 

このことは電だけの秘密にしていよう…司令官が自分から話してくれるのを待とうと決めた。

 

「司令官さん…いつか、話してくれますか?」

 

電は軽く月を眺めて、鎮守府の自分の部屋に戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




次回『秘書艦と初めての建造』
まだ出して欲しい艦娘を募集してるのでよろしくお願いします!
それではまたどれかの作品で!


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5話 秘書艦と初めての建造

 

 

 

翌朝

 

俺は執務室に艦娘を集合させていた。まぁ、相変わらず天龍と川内はいないんだが…

 

「え〜君達を集めた理由は秘書艦を任命するためだ」

 

「「ッ‼︎」」

 

あれ?電と利根の雰囲気が変わった?まぁいいや。

 

「秘書艦は…電に任せようと思う」

 

「い、電頑張るのです!」

 

「くっ!アピールが足りなかったか!」

 

電は眩しいぐらいの笑顔で返事したが利根がめっちゃ悔しがってる…そんなに秘書艦になりたかったのか?

 

「ま、秘書艦の件は終わりとして、問題はこの鎮守府の戦力と天龍、川内の2人についてだ」

 

今現在、この鎮守府に着任している艦娘は6名、だが天龍と川内は戦ってくれるかどうか怪しいから実質4名、どう考えてても戦力不足だ。

 

「問題って言っても戦力は建造すれば済む話だが、天龍と川内の件はそんな簡単な話じゃない。そういやあの2人昨日カレーは食ったのか?」

 

「うむ!ちゃんと食べておったぞ!まぁ、少し嘘はついたが…」

 

「嘘?いや…ちゃんと食ったならそれでいい。とりあえずここにいる4人には天龍と川内の説得に協力してほしい」

 

「説得…ですか?」

 

「なぁに、説得って言ってもただ食堂に来るよう言って欲しいだけさ。建造が終わったらそのまま俺も食堂に向かうからそこで話し合うつもりだ」

 

「少し危ないとちゃうんか?今の2人…普通に提督に危害を加えそうやけど」

 

確かにな…だが念のための手はある。

 

「ま、そん時はそん時だ。頼んだぞ。じゃ解散!」

 

とりあえず、俺は建造をするため明石がいる工房へ向かった。

 

 

--------------------------

 

 

工房

 

「明石〜いるかー!」

 

「はいはーい!なにか御用ですか?」

 

奥から元気よく明石が走ってきた。

 

「建造を2回程したいんだが、頼めるか?」

 

「はい!じゃあこの紙に使う物資の量を書いてください」

 

えーと…燃料、鋼材、弾薬、ボーキサイト…ヤベェ…どれを多くしたり少なくしたらこの艦種が出やすいとか全くわかんねぇ…最低だと全部30か…じゃあとりあえず全部30でいいか。ん?高速建造剤?多分そんまんまの意味だよな?よし、使おう。

 

「…これで頼む」

 

「はい!妖精さん達!出番ですよー!」

 

「妖精…さん?」

 

妖精さんってなんだ?と思ってたら工房の奥からわらわらと小さいぬいぐるみみたいな生き物が燃料や巨大なバーナーやらを持って出てきた。

 

「ウェッ‼︎なんだこいつら⁉︎」

 

「提督は妖精さんを見るのは初めてなんですか?妖精さんは簡単に言えば私達艦娘の乗組員みたいなものです。しかも艦娘と提督に適性がある人にしか見えないんですよ」

 

「…な、なるほど」

 

魔法使いになってから並大抵のことじゃ驚かないつもりだったけど流石にぬいぐるみみたいな妖精?には驚くわ。

 

そんな会話をしてる間に建造が終わる。

 

「あ、終わったみたいですよ!」

 

「そうか、じゃ!ご対面といきますか!」

 

まずは一つ目の扉を開く。

 

「木曾だ。お前に最高の勝利を与えてやる」

 

扉の先にいたのは右目に眼帯をした緑髪の艦娘、木曾と名乗った艦娘だった。

 

「木曾か、俺は操真魁。よろしくな」

 

「お前が提督か。こちらこそよろしく頼む」

 

俺は木曾と握手を交わして、隣の扉を開く。

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

銀髪の電と同じ制服を着たクールな少女がいた。電と同じ制服ってことは電の姉妹艦か?

 

「俺は操真魁。響は電の姉妹艦なのか?」

 

「確かに私は電の姉妹艦だ。ここには電がいるのかい?」

 

「ああ、電も喜ぶと思うぞ。さて…色々と問題がある鎮守府だが、2人とも手を貸してくれ」

 

「当たり前だ」

 

「当然さ」

 

「よし!早速だが俺についてきてくれ。歩きながらこの鎮守府について話す」

 

今頃、電達がなんとか天龍と川内を食堂に連れてきてるはず…木曾と響の紹介も兼ねてあの2人を説得しないとな。

 

俺は食堂へ向かいながら木曾と響にこの鎮守府の事情を話したのだった。

 

 

 

 

-------------

 

 

 

 

横須賀鎮守府

 

「さて、魁に届け物を届けないと!山城!行くぞ!」

 

「なんで私も…まぁ、いいですけど…」

 

「相変わらず素直じゃないなw」

 

山城は巧の秘書艦を務めている艦娘だ。ちなみにケッコンカッコカリもしている。

 

巧と山城は小型の船に乗り込み、魁がいる鎮守府へ向かった。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

とある場所

 

「なに?龍田がやられただと?」

 

「はい…」

 

「チッ…使えん道具だ。まぁいい、まだ代わりはいくらでもいるんだからな。しかし…ただの人間が何故艦娘を…」

 

「わかりません…」

 

「まさか…なるほど…ハハハ!」

 

その男はなにかを察し、笑い出す。

 

「?どうなさいました?」

 

「いや、なんでもない。例の鎮守府に別のヤツを向かわせろ」

 

「はっ!」

 

もう一人の男は部屋を出る。

 

「まさか…本物の指輪の魔法使いが存在したとはなぁ…」

 

そう言う男の手にはウィザードのような怪人の顔が描かれた時計が握られていた。

 

 

 

 

 




次回『説得と訪問者』
意外にリクエストって来ないものなんですね…木曾と響は単純に艦これ改で活躍してくれてる艦娘なので選んだ感じです。
それではまたどれかの作品で!


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6話 説得と訪問者

 

 

 

「なるほど…だから壁や床もボロボロなんだな」

 

「ああ、俺も昨日提督として着任したばかりでよ…直そうとは思ってるんだが、手が回らなくてな。復興に協力してもらう時もあるだろうから、お前達にも色々と迷惑をかけると思う」

 

「問題ない。司令官は良い人だ。私も出来る限り協力する」

 

「響の言う通りだ!俺も協力するぜ!」

 

「二人とも…ありがとう!」

 

優しい艦娘達だ…どう見ればこの娘達が兵器に見えて非人道的なことが出来るのか俺にはさっぱりわからん。

 

そうこう話してるうちに食堂に着いた。俺は木曾と響を食堂の前に待たせて、食堂に入ると中にはちゃんと全員揃っていた。まぁ、天龍は俺のこと睨んでるし川内は顔が俯いてるが食堂に来てるだけ良しとする!

 

「ちゃんと全員揃ってるな。よし!建造で新たにこの鎮守府に着任した艦娘2名を紹介しよう!入って来い!」

 

木曾と響が食堂に入ってくると電がすぐに反応した。

 

「響ちゃん‼︎」

 

電は響に抱きつき、響もしっかり抱きとめる。

 

「この鎮守府のことは司令官から聞いた。辛かっただろう?」

 

「はい…とっても…辛かったのです…」

 

「だけどもう大丈夫だ。この司令官はそんなことをするような人じゃない。安心していいよ。電」

 

「う、うわぁぁぁぁん‼︎」

 

電は響の言葉を聞いて我慢できなくなったのか声を上げて泣き出した。

 

いい姉妹愛だなぁ〜俺も兄貴がいたけど喧嘩ばっかやってたし…いや昔のことはいい、今はこの二人の紹介だ。

 

「駆逐艦の響と軽巡洋艦の木曾だ。今晩は歓迎会らしく豪華な飯にするつもりだ。楽しみにしといてくれ。じゃ…天龍と川内、少し話がある」

 

俺は天龍と川内が座っている席の向かいに座って二人と向かい合う。

 

「二人とも…まだ俺を信用できないか?」

 

「当たり前だ!人間なんてみんな同じなんだよ‼︎」

 

「…何度も言うようだが俺は前提督のようなことはしない。どうしたら信じてくれるんだ?」

 

「この俺を倒せたら信用してやる」

 

はぁ…やっぱりこうなるか…

 

「やっぱり天龍はそういうタイプだったか…とりあえず川内、お前はどうだ?」

 

「…私は…」

 

天龍は予想通りの答えだったが正直川内がどう答えるかは予想できてない。だが…ここまで引きずるほど辛いこと…可能性としては…

 

「…姉妹艦になにかあったのか?」

 

「ッ⁉︎」

 

図星と言わんばかりに川内は俺の前で初めて顔を上げた。その顔はとてもひどいものだった。泣きまくったのか赤く腫れた目しかもその目も死んでいた。

 

「川内が良ければ…話してくれないか?大丈夫悪いようにはしない」

 

「…私には二人…妹がいたんだ…」

 

少し心を開いたのか、川内は少しずつ姉妹のことを話し出した。

 

「名前は…神通と那珂って言ってね…最初…那珂が人質に取られて…私達は那珂のために…嫌々アイツの言うことを聞いてた…でもアイツに那珂のことを聞いても…有耶無耶にされて…そしたら神通が…那珂を返してもらうように提督を説得するって…執務室に行ったけど…それっきり…」

 

「…帰って来なかった」

 

俺が独り言のように言った言葉に川内は泣きながらも頷く。

 

「私は…妹達を守れなかった…せめて…神通をあの時…止めていれば…」

 

俺はもう、耐えきれなかった。

 

「もういい、もう言わなくていいよ」

 

そう言いながら俺は川内の頭を撫でて抱きしめた。

 

「えっ?」

 

「そうか…辛かっただろう…後悔しただろう…だがそれをいつまでも引きずってちゃいけない。乗り越えるんだ」

 

「でも…私は…」

 

「もしかしたら、これから神通や那珂がこの鎮守府に着任するかもしれない。そうなった時、川内は今の姿を妹達に見せる気か?」

 

「それは…」

 

「見せたくないだろ?妹達に無駄な心配かけるよりも元気な姿を見せて、わいわい楽しくやりたいだろ?なら乗り越えろ。悲しんでもなにも変わらない。その死を乗り越えて死んでしまった妹達の分まで生きろ。それが生き残った者の運命(さだめ)だ」

 

「…提…督…」

 

川内を含めてこの言葉を聞いた艦娘が察しただろう。俺も誰か大切な人を失っていると。

 

「ありがとう…提督。神通や那珂のためにも頑張んないとね!」

 

「お、元気になったか?」

 

「もっちろん‼︎私は提督のこと認めるよ」

 

そう言って俺から離れて見せた顔はとても笑顔だった。とりあえず川内は説得できたな。…さっきから背後にドス黒いオーラを放ってる奴が二人ほどいるが…そっとしておこう。

 

「さて、天龍。お前は俺を倒したらと言ったが、俺はお前に一回勝ってることをわかって言ってるんだよな?」

 

「うぐっ…あ、あれは俺が万全な状態じゃなかったからだ!それにお前があの変な鎖さえ出さなければ!」

 

「はぁ…わかった、電!訓練場みたいなのはこの鎮守府にあるか?」

 

「むぅぅ〜え?そ、外にならあるのです!」

 

「ありがとう。じゃあ天龍、お望み通り勝負で決めよう。天龍が勝ったら俺を殺すなり追い出すなり好きにすればいい」

 

「はっ!その言葉忘れんじゃねぇぞ。勝つのは俺だからな」

 

そう言うと天龍は食堂を出て行った。恐らく訓練場に向かったのだろう。

 

「提督!いくらなんでも無茶じゃ!」

 

「無茶でもなんでも信じてもらわないと最後の希望になんてなれないからな。じゃ案内をt」

 

その時、スマホが鳴る。ん?電話か。画面を見ると【木仲巧】と表示されていた。

 

「もしもし、急にどした?」

 

『もしもし!今、魁がいる鎮守府の前にいるんだけど入れてくれない?』

 

「…はぁ⁉︎」

 

『いやぁ〜事前に連絡するのを忘れててねーごめんごめん』

 

「まったく…艦娘を一人向かわせるからちょっと待ってろ」

 

『OK。待ってるよ』

 

電話を切る。やれやれ…とりあえずは誰を向かわせるか…まぁ、こういうのは一番信用できる娘に任せるか。

 

「電!横須賀の提督が来たから出迎えに行ってくれ!あ〜とりあえず訓練場に連れてこい。俺は天龍とやり合ってるだろうから!」

 

「は、はいなのです!」

 

電は急ぎ足で鎮守府の出入り口へと向かった。さてと…

 

「じゃ!早速だが川内!訓練場まで案内頼めるか?」

 

「もっちろん!あ!終わったら夜戦しよ!」

 

「しねぇよ!」

 

「えぇ〜夜戦しようよぉ〜や〜せ〜ん〜!」

 

「やかましいわ!さっさと案内する!」

 

「は〜い!」

 

ついさっきまでとはえらい違うなぁ〜ま、これがホントの川内ってことか!

 

俺は川内に案内され、訓練場へと向かった。

 

天龍の姉妹艦…名前は聞きそびれちまったが、約束はちゃんと守るからよ…安心して任せてくれ。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

その頃、魁がいる鎮守府に向かう影があった。

 

「…本当に…情けないわ…」

 

その影は絶望していた。するとその影の身体はヒビ割れて始め…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファントムとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『決闘と乱入者』
あ、もちろん登場艦娘はこれで全部じゃないのでまだまだ登場してほしい艦娘は募集してるので気楽に感想やメッセージ、Twitterなどで教えてくださいね!
それではまたどれかの作品で!


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7話 決闘と乱入者

 

 

 

まるでポケ○ンのバトルフィールドみたいな訓練場に着くと天龍が仁王立ちして待っていた。

 

「遅かったな、てっきり逃げたのかと思ったぜ」

 

「逃げる訳ないだろ?俺がこの程度で逃げるような男なら提督になんかなってねぇ…」

 

「人間が艦娘に勝てると思ってんのか?」

 

「一度勝っただろうが、さてと…始めるか」

 

《コネクト》

 

俺の右側に出た魔法陣からウィザーソードガンを取り出してソードモードにする。

 

それを見た艦娘達は驚きの声を上げる。

 

「なっ⁉︎」

 

「あ、あれは‼︎」

 

「なんや利根!知っとんのか!」

 

「詳しくはしらんが、提督はあの剣で入渠ドックの鎖や南京錠を斬ったのじゃ」

 

「えっ⁉︎」

 

「あの提督…何者だ?」

 

「驚いた。あれはまるで魔法使いだね」

 

あらぁ〜響殿大正解‼︎

 

「お前も武器を使うなら俺も使わないと不公平だからな…さてと、始めようぜ」

 

「そんな武器持ったところで俺には勝てねぇよ!」

 

「うおっ⁉︎」

 

天龍が刀を持ってあの時より早い速度で迫って来て、俺は間一髪避けた。

 

おいおい万全の状態だとここまで早いのかよ‼︎変身してたら対処できるが生身でこれはマズいぞ!

 

「はっ!この程度か?あんな大口叩いておいてよぉ‼︎」

 

だが…天龍に認めてもらうために!負ける訳にはいかないな!

 

「まさか、こっからだよ!」

 

そこから俺は防戦一方だった。仕方ねぇだろ艦娘相手に生身で挑んでんだから。スタミナ的にも早く終わらせたいんだが…そう思っていた矢先、鎮守府に警報が鳴り響いた。

 

「警報⁉︎ッ⁉︎天龍危ねえ‼︎」

 

その時、俺は天龍に狙いを定めた深海棲艦の艦載機を見つけ咄嗟にウィザーソードガンをガンモードにして艦載機を撃ち落とす。

 

「なっ‼︎」

 

「魁‼︎」

 

「巧‼︎艦娘達を頼む!恐らくファントム級だ!」

 

「ッ⁉︎わかった‼︎みんなここは魁に任せて避難だ!」

 

ファントム級…深海棲艦でありながらファントムの特徴も持っていて陸上でも活動ができる厄介な奴らだ。もちろん艦娘の攻撃で倒せるが陸上では明らかに艦娘が不利な為、各国も苦戦してるらしい。ま、それに対抗するためにメイジを開発してるんだが…

 

生憎とここには俺がいるんでね。とりあえず…変身できる状況を作らないとな。

 

いつの間にかいた巧に艦娘達を任せた時、艦載機を飛ばしたであろう深海棲艦が物陰から姿を現した。青白い体色に黒い帽子を貫通して頭に生えた二本の角、黒いマントを羽織り、ステッキのような物を持っている。

 

「…ファントム級の空母か」

 

ミノタウロスと空母ヲ級の特徴を兼ね備えたファントム級深海棲艦…避難が終わるまで変身せずに持ち堪えないとな‼︎

 

俺はウィザーソードガンを構えて空母ファントム級に向かって銃弾を撃ち込んだ。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

あれは深海棲艦なのですか⁉︎空母ヲ級に似てますけど…あんなの見たことないのです!

 

「電!響!君達も早く!」

 

横須賀の司令官さんがここから避難する様にと訴えかけているのです。でも…電は…

 

「…電は残るのです。司令官さんを放ってはいけないのです」

 

「ここにいたら危ない!残るなんて!」

 

「それでも電は…司令官さんの戦いを見届けたいのです」

 

「…響、避難するぞ」

 

電を説得するのは無理だと判断したのか響ちゃんと避難しようとするのですが…

 

「ニェット。電が残るなら私も残る」

 

「響まで…こりゃ後で魁に怒られるな…山城。電達を頼む」

 

「私が?はぁ…不幸だわ…でも、わかったわ」

 

「すまん。他の艦娘はさっさと避難しろ!抵抗する奴は無理矢理にでもいいから避難させろ!」

 

横須賀の司令官さんが電と響ちゃん、山城さん以外を避難させてここに残ってる艦娘は電達だけになったのです。

 

司令官さん…電は司令官さんの秘密を知っているのです…だから電達のことは気にせずに本気で戦って欲しいのです。

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

ちきしょー艦載機のせいで迂闊に近づけねぇ…ま、そろそろ避難も終わって…ねぇじゃねぇか‼︎電と響はなんで逃げてねぇんだ‼︎しかも山城まで!

 

「魁!覚悟を決めなさい!」

 

山城…わかったよ!いずれはバレることだしな!

 

艦載機の攻撃を避けながら右手をベルトにかざす。

 

《ドライバーオン、プリーズ》

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

「変身!」

 

《フレイム、プリーズ》

 

《ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》

 

赤い魔法陣が左から俺を通過し、仮面ライダーウィザードに変身する。

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

「司令官の…姿が…」

 

「あれが魁のもう一つの姿。仮面ライダーウィザード」

 

「仮面ライダー…ウィザード」

 

本当に司令官さんは魔法使いだったのです。

 

「電ちゃんは知ってたの?」

 

「はいなのです。たまたま見ちゃったのです」

 

「そう」

 

山城さんはそれ以上何も言わず、司令官さんの戦いへと目を向けたのです。司令官さんは魔法使い、仮面ライダーウィザード…やっぱり

 

「…綺麗で、カッコイイのです」

 

 

 

 

--------------------------------

 

 

 

 

艦載機を撃ち落としながらファントム級に近づく。なるべく被害は出したくねぇ、接近戦で決める!

 

「オラァ!!」

 

「クッ!小癪ナ!」

 

「俺はファントム級の深海棲艦が大嫌いなんだよ!」

 

ウィザーソードガンの手形の魔力解放装置、ハンドオーサーの親指を開いて展開し、左手で握手をする。

 

《キャモナスラッシュシェイクハンズ!!キャモナスラッシュシェイクハンズ!!》

 

《フレイム、スラッシュストライク!!ヒー!ヒー!ヒー!》

 

「艦娘や深海棲艦って炎に弱いんだよな?」

 

刀身に炎を纏い、十字型の火炎刃をファントム級に向かって放つ。

 

「ハァァァァァァァァァァァ!!」

 

「!?」

 

火炎刃は吸い込まれるようにファントム級に命中し、爆散したが俺は違和感を覚えた。ファントム級ってこんなに弱かったっけ?いくら炎が苦手とはいえスラッシュストライク一発で…まぁ、艦娘達を守れただけ良しとしよう。

 

俺は変身を解除して電達の元へ向かう。

 

「電、響、隠しててすまなかった」

 

「電は気にしてないのです!司令官さんカッコよかったのです!」

 

「ハラショー。私も気にしてない」

 

「二人とも、ありがとう」

 

「きっと他の娘達も認めてくれるわ」

 

「だといいな」

 

とりあえず、巧に連絡しないと…俺はスマホを取り出して巧に電話をかける。

 

『もしもし、終わったのか?』

 

「ああ、みんなを食堂に集めてくれないか?俺のことについて話す」

 

『あ〜食堂は無理かも…』

 

「ん?なんでだ?」

 

巧曰く、どうやら改装業者を連れてきたらしく鎮守府の中はただいま改装中らしい。

 

「わかった。じゃあ訓練場に戻ってきてくれ」

 

『…本当に話すんだな?』

 

「ああ、電と響の前で変身した以上、隠す意味はない」

 

『わかった。待っててくれ』

 

電話が切れる。

 

「横須賀の提督が他の艦娘達を連れて戻ってくるから、全員集合したら俺の過去について話す」

 

「過去?」

 

「ああ、とりあえず雑談でもして待ってようぜ」

 

雑談って言っても電と響が俺になぜ魔法使いになったのかとか、あの深海棲艦はなんだとか色々と質問攻めにあってるうちに巧達が到着し、俺の正体、そして俺の過去について話し出した。

 

 

 

 

 




次回『魁の過去』


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8話 魁の過去

 

 

 

今から3年程前…一人暮らしをしていた俺は母さんからの電話でたまには家族みんなで出かけたいと言われ、久々に家族と顔を合わせていた時だ。突然サイレンが街に鳴り響いた。そこは比較的深海棲艦の被害が少ない場所だったんだが、運が悪かったらしい。俺達は逃げ遅れ、更には深海棲艦と鉢合わせてしまった。

 

「アラ?人間ノゲートハ初メテネ」

 

それはファントム級の戦艦だった。当時の俺はゲートってのがなにかわからず困惑して、とりあえず逃げ道を探したがそれを聞いた親父は血相を変えて俺達を庇うように飛び出した。

 

「家族には指一本触れさせん!お前達は俺に構わず逃げろ!」

 

「「親父!?」」

 

「あなた…わかったわ。生きて帰って来てね」

 

それを聞いた親父はふっと笑って右手の中指に指輪をはめ、ベルトにかざした。

 

《ドライバーオン、ナウ》

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

「久しいな…俺もだいぶ歳をとったが…家族のためなら!!」

 

親父は左手の中指にも指輪をはめ、ベルトにかざした。

 

《チェンジ、ナウ》

 

親父に魔法陣が通過すると白いフードを被った魔法使いがいた。今だからわかることだが、親父は白い魔法使いだったんだ。

 

「お前達は早く逃げろ!深海棲艦!さぁ、ショータイムだ!」

 

「魔法使イカ、イイダロウ!相手ニナッテヤル‼︎」

 

親父と深海棲艦がぶつかり合っている間に俺達は逃げ出した。だが、深海棲艦は一体だけではなかった。

 

「逃ゲラレルトデモ?」

 

逃げた先に別のファントム級の深海棲艦がいた。

 

「運が悪いわね…あなた達は逃げなさい」

 

「母さん!?無理だよ!!」

 

「自分の命か息子達の命か…そんなの、親なら自分の命を捨てるに決まってるじゃない」

 

「母さん…」

 

俺達は母さんの覚悟を決めた顔にもうなにを言っても無駄だと悟った。母さんはその辺に落ちていた鉄パイプを拾って構えた。

 

「早く逃げなさい!私の犠牲を無駄にしないで!」

 

「…行くぞ魁」

 

「…ああ。母さん…あまり親孝行出来なくてごめん。でも、今まで楽しかった。俺を…俺達を…産んでくれて…ありがとう」

 

俺達は泣きながら母さんの背中に頭を下げた。

 

「ふふ…その言葉が聞けただけで母さんは満足よ。もう悔いはないわ。さぁ、逃げなさい。子ども達に手出しはさせない!」

 

俺達は母さんに背を向けて逃げ出した。

 

「バカネ」

 

ザシュッ!!

 

後ろで嫌な音がした。もう母さんは…涙を拭いながら俺達は走って逃げようとした。だがどうやら運命は優しくないらしい。

 

「人間ノゲートヲ易々ト逃ス訳無イジャナイ」

 

俺達が逃げようとした先に親父が足止めしてるはずの深海棲艦がいた。そして親父は変身が解け、首を掴まれていた。

 

「親父!」

 

「嘘…だろ…」

 

「…うう…すまん…許s」

 

「ウルサイ」

 

ボキッ!

 

その瞬間、親父は首の骨を折られた。俺達の目の前で

 

「邪魔者ハイナクナッタワネ。デモ、絶望サセルニハマダ生贄ガ必要ナヨウネ」

 

生贄…つまり俺達のどちらかが殺される。逃げるにしても相手は深海棲艦…生身の人間じゃ逃げられない。万事休すだ。

 

「…狙いは俺か」

 

「アラ、分カッテルジャナイ」

 

それは兄貴だった。多分兄貴は深海棲艦の視線でゲートは俺だと判断したんだろう。

 

「魁…お前とは喧嘩ばっかで兄貴らしいことなんて全くしてやれなかった…だから最後ぐらいは兄貴らしく…お前を守る」

 

兄貴は深海棲艦に向かって拳を構える。親父と母さんを失って心が折れかけてる俺は首を振る。

 

「ダメだ兄貴…艦娘が来るまで逃げよう。兄貴まで失うなんて…俺…」

 

「どの道来るまでに死んじまうよ。ならせめて、時間稼ぎぐらいしないとな。なぁ魁、寿命以外で死ぬんじゃねぇぞ。じゃあな。お前の兄貴で…良かったよ。先にあの世で待ってるぜ!!」

 

「兄貴‼︎」

 

兄貴はそう言うと深海棲艦に向かって走り出した。

 

「弟には…手出しさせねぇ!!」

 

「家族揃ッテバカバッカリネ」

 

深海棲艦は手に持った刀を心臓目掛けて突き刺すが兄貴は紙一重で躱す。

 

「オラッ!!」

 

兄貴の渾身のストレートが深海棲艦の腹に命中するがもちろん効いていない。

 

「ま、だよな…へっ…まぁ、魁が無事なら…いっか…」

 

「フフッ、ジャアネ」

 

深海棲艦は刀を兄貴の心臓に突き刺した。俺はその瞬間をハッキリと見ていた。その時俺の頭の中には逃げることよりも家族との思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

親父と兄貴と俺でバカやって母さんに怒られたり、母さんに料理を教えてもらったり…もう…会えない…俺は昔から人付き合いが苦手で友達なんて数える程しかいなかった。そんな友達も今じゃ巧以外連絡すら取ってない。そんな俺をずっと支えてくれたのが家族だ。その家族ともう…一生会うことが出来ない…俺は泣き崩れ、絶望(・・)した。

 

「イイゾ!モット絶望しろ!ソシテ新タナファントムを生ミ出セ!」

 

その時、聞こえたのは砲撃音とそれに紛れたかすかな機械音…だが俺は顔を上げることが出来なかった。上げたら家族の無残な遺体を見ることになってしまうから….

 

「…い…てる…あげ…魁!」

 

しばらくして、その声にハッとして顔を上げると巧と山城が必死の表情で俺の顔を見ていた。

 

「なに絶望してやがる!!家族の死を無駄にしたいのか!」

 

「俺…は」

 

「自分の手を見ればわかるわ」

 

山城の言うとおり自分の手を見るとかなりヒビ割れていて、割れ落ちたところは紫色に輝いていた。

 

「これ…は…」

 

「絶望するな!希望を持て!じゃないとアイツらのお仲間入りだ!」

 

「あなたの家族はあなたにファントムになって欲しいなんて思ってない。だから希望を持って…生きて」

 

俺はその言葉をただ聞いていた。その時、なにかが背中に生えたような感覚があった。

 

「ッ!?もし魁がファントムになれば、魁の家族は無駄死したってことになる!それでいいのか!嫌なら生きろ!希望を持って家族の分まで生きろ!」

 

「希望…」

 

俺は兄貴の言葉を思い出した。寿命と以外で死ぬんじゃねぇぞ…母さんも俺達を助けるために自分を犠牲にした…親父もきっと俺がゲートってわかってたから…俺だって家族の死を無駄にしたくない。なら俺は…俺みたいな境遇の人を減らす為に絶望した人々に希望を与えてやる!!

その時、紫色が金色に輝き、俺を包み込んだ。

 

その後俺は横須賀鎮守府の医務室に運ばれた。怪我は軽傷でもちろん命に別条はない…見慣れないベルトが腰に巻かれていて、これまたよくわからない指輪があったこと以外は何の問題もなかった。

 

それから巧にファントム級深海棲艦のことを聞き、俺が魔法使いになったと言われ、もう二度とあんなことは起こらせないと誓った俺はこの力でファントム級深海棲艦と戦ってきた。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

「…これが俺の過去。この力を手に入れた理由だ」

 

艦娘達は静まり返っている…無理もないか。いきなりこんな話聞かされたんじゃ…

 

「だから明石を見つけたあの時、あんなに必死じゃったのか」

 

「じゃあ、うちらの提督になった理由って…」

 

「私達を絶望から救うため…」

 

「…横須賀の提督は知ってたのね。初めから」

 

「そうだな。俺は魁の「命の恩人ってことになるな。もし巧がいなかったら俺はファントムになっていた。こうして会うことも出来なかっただろうな」…割り込むなよ」

 

「その…提督!」

 

「ん?なんだ天龍」

 

すると天龍はいきなり頭を下げた。

 

「すまねぇ!!そんな事があったなんて知ってりゃ俺は!」

 

「最初の砲撃のことだろ?気にしてねぇよ。とりあえず、暗い話はこれで終わりだ。まだ聞きたいことがあんなら個別に来い…で、巧。お前がここに来たのは改修工事だけじゃないだろ?」

 

「あぁ、食料や物資、新しい家具、そして魁の提督服を持ってきた」

 

「わかった。艦娘達には急で悪いが、演習をやる。その間に巧は食料や物資を詰め込んで、服は執務室に置いといてくれ」

 

「あいよ。山城はどうする?」

 

「私は魁の演習を見学するわ」

 

「わかった。迷惑かけんなよ」

 

巧は早速、詰め込む準備をしに行ったが艦娘達は驚きの顔に変わる。

 

「電を旗艦に川内、霧島、龍驤、利根、天龍の編成で頼む。響と木曽は見学だ。まずは見て学べ。演習相手は…俺だ」

 

「し、司令官さんと!?」

 

「無理にとは言わない。だが俺はお前達の全力が知りたい。俺の力をどこまで引き出せるか…試してみたくないか?」

 

天龍は乗るだろうが…他はどうだ…

 

「もちろんやるぜ!」

 

「や、やるのです!」

 

「さっきの話を聞いた後だと抵抗あるけど、提督の指示じゃ仕方ないね!」

 

「ふふ…負けても文句なしですよ?」

 

「提督の力…見せてもらうで!」

 

「うむ!提督の力を最大限まで引き出してみせようではないか!」

 

あら?案外みんな乗り気…ま、その方が俺としても助かる。

 

「なら電、演習場への案内を頼む。演習は…」

 

えっと今何時だ…げっ!?もう12時過ぎてんじゃん!?こりゃ演習終わり次第飯だな。

 

「一三〇〇に行う!そんじゃ解散!」

 

そう言って俺は電について行く。

 

艦娘の本気…見せてもらうぜ。

 

 

 

 

------------------------

 

 

 

 

とある場所

 

「チッ…加賀もダメだったか…ファントムになったうえに敗れるとは…」

 

「次はどうしましょう?良ければ私が」

 

「いや、しばらく泳がしておけ。そして私直々に潰す」

 

「…わかりました」

 

「ククク…会うのが楽しみだなぁ~正義の魔法使い」

 

2人の男はその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 




次回『艦娘VS魔法使い』
ちょっと展開おかしいかな?でもようやく艦これらしいことが出来る!
ちなみに魁はドラゴン系(フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン)は使えますがインフィニティはまだありません


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9話 艦娘VS魔法使い

 

 

 

電に案内され、演習場に着いた俺は電に演習の準備をしてこいと伝えて別れ、演習開始の合図を待っていた。ちなみに合図をするのは山城だ…あ、そもそも変身しないと合図してくれないよな。

 

『ドライバーオン、プリーズ』

 

『シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!』

 

俺は左手に青い指輪をはめて、ドライバーにかざす。

 

「変身!」

 

『ウォーター、プリーズ』

 

『スイースイースイスイー!』

 

青いウィザード、仮面ライダーウィザード ウォータースタイル。

 

水の上ならこのスタイルじゃないとな。

 

『提督と艦娘は配置についてください』

 

山城のアナウンスを聞いた俺は水の上に立つ。ん?仕組み?単純に足元の水を操って立ってるだけだが?もちろん滑ることも出来る。

 

『それでは、演習を開始してください』

 

よし!じゃあ行くか!

 

俺は遠くに見える人影に向かい全力で水の上を滑った。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

その頃、電達は…

 

「司令官さんが水の上を滑ってるのです…」

 

「あれも魔法なのかな?」

 

電達はウィザードが水の上を普通に滑ってることに驚いていたが、すぐに真剣な顔つきになり、旗艦である電が指示を飛ばす。

 

「龍驤さん!艦載機を!利根さんもお願いするのです!」

 

「言われんでもわかってんで!ほら、お仕事の時間やで!」

 

「うむ!発進じゃ!」

 

龍驤と利根の艦載機が遠くのウィザードに向かって飛んでいく。

 

「射程に入り次第、砲撃してください。司令官さんが相手なら艦載機もそう長くは…」

 

「嘘やろ!?」

 

「そんなバカな!?」

 

突然、龍驤と利根が大声を上げる。理由は単純…さっき発進したばかりの艦載機が墜ちたのだ。もちろん全て。

 

「もう墜ちたの!?」

 

「私、見ちゃった…周りの水がうず状になって艦載機を墜してた…あれも提督の力」

 

そう、ウィザードは周りの水を操り、艦載機を墜したのだ。水を操れるウォータースタイルだからこそ使える技だ。

 

「マジかよ…ってかもう目視出来る位置にいんのかよ!ちっ!なら砲撃だ!」

 

「なのです!砲雷撃戦開始!」

 

電達はウィザードに砲撃や雷撃をするが砲撃は水に防がれ、雷撃は射線を逸らされる。

 

「目の宝石が、青色になっているのです」

 

「あの姿だと水を自由に操れるのか…厄介じゃな」

 

「くっ!近づけさせたらダメよ!砲撃の手を緩めないで!」

 

よく見るとウィザードはウィザーソードガンを剣状態で握っている。つまり近づけさえしなければ勝ち目はあるはずと霧島は思ったのだが、それは間違いだった。

 

ウィザードが右手の指輪を変え、ドライバーにかざすとウィザードの姿が海に消えた。

 

「し、司令官さんが消えたのです!!」

 

「透明になる魔法か!?」

 

「じゃあどこから出てくるかわからないってこと!?」

 

利根は透明になる魔法と思ったようだがそうではない。

 

ウィザードが使った魔法はリキッドという自身を液化する魔法。これを使えば水に溶け込むことも可能だ。

 

たとえ艦娘であっても液化し、水に溶け込んだウィザードを見つけることは不可能に近い。

 

「はい終了ね」

 

『バインド、プリーズ』

 

突如、背後に現れたウィザードはバインドの魔法で電達を拘束した。

 

「はわわわっ!!う、動けないのです!!」

 

「水の鎖じゃと!?」

 

「み、水なのに切れない!」

 

「これで電達は戦闘続行不可能で俺の勝ちだな。そうだろ!山城!」

 

『全く…魁らしいわ…そこまで!演習は終了。魁の勝利よ』

 

 

 

 

------------------------

 

 

 

 

演習が終わった途端、電達に質問攻めにあった。

 

「最後の魔法はなんなのですか!?」

 

「透明になるなんて聞いてないよ!」

 

「しかもなんだよその姿!水の上に立ったり、操ったりよ!」

 

「一人一人質問してくんない!?それに響と木曽にも話したいから戻るぞ」

 

全く…それにしても、結構疲れたな…水を同時に操るために魔力をかなり消耗したらしい。まぁ、寝れば回復するんだが。

 

演習組と響と木曽、山城を連れて鎮守府に戻るといつの間にか工事が終わり、外見もかなり綺麗になっていた。

 

…って早くない!?そんな時間経ってないと思うんだけど!?

 

「お〜意外と早かったなぁ〜!」

 

「おい巧!いくらなんでも工事早すぎるだろ!1時間も経ってないよね!?」

 

「ん?妖精さんの力借りればこんな工事すぐ終わるよ」

 

「…そ、そうか」

 

色々と突っ込みたいがきっと無駄だな…妖精さんって本当に何者なんだよ…

 

「俺と山城は帰るけど、とりあえず執務室に制服置いといたから着替えて来たらどうだ?艦娘達も部屋綺麗になってるから一回見に行ったらどうかな?」

 

「その前に飯だろ?一旦食堂に集合だ!俺が腕によりをかけて美味い飯を作ってやる!」

 

艦娘達が喜び、走って食堂へと向かう姿を見ながら、俺はなにを作ろうか必死に考えていた。

 

 

 

 

 

 

 




次回『初出撃!ウィザード艦隊』
艦娘も流石に水を操れるウォータースタイル相手じゃ勝てないよねってことで1時間足らずで決着ついちゃいました…
それではまたいずれかの作品で!


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10話 初出撃!ウィザード艦隊!そして新たな出会い

第六駆逐隊のネタ短編書いてから無性にこの小説が書きたくなって筆が進んで完成しました!
ま、タイトル戦闘回っぽいけど全く戦闘ないのは許してね!
ではどうぞ!


 

 

 

あの演習から数日が経った。

 

この間に艦娘達に仮面ライダーウィザードについて説明はしたが良くわからないそうで…とりあえずその姿や魔法を使った時に軽く説明するという形に落ち着いた。

 

さて、俺は執務室にいる訳だが…先程巧から入電があり、北の方で艦娘と交戦した深海棲艦がこちらに向かっているから迎撃して欲しいとのことだった。

 

「…電、みんなを呼んでくれ。緊急招集だ」

 

「はいなのです!」

 

急な招集だったが流石は軍人…いや、艦娘だ。ほんの数分で全員が執務室に集まった。

 

「急に呼び立ててしまってすまない。先程、巧から入電があり、北の方で艦娘と交戦した深海棲艦の残党がこちらに向かってきているとのことだ。その中には姫級も一隻いるらしい」

 

「姫級!?ちょっと待ってよ提督!私達の練度じゃ!」

 

そう…川内の言う通りここに居る艦娘は良くても改までしか改装されていないし、練度も高くない。前提督の主力だった艦娘は全て轟沈、または提督に逆らって解体や他の鎮守府に異動になったらしい。

 

「わかっている。だから俺も出撃する…俺が姫級を相手にして時間を稼ぐ。その間に君達は残りの深海棲艦を撃墜、殲滅したらすぐに撤退しろ」

 

「司令官さんを残して帰れないのです!」

 

「そうじゃ!我らも共に戦うぞ!」

 

「その気持ちは嬉しい…だけど、君達を轟沈させる訳にはいかない。これは命令だ。いいな?」

 

あんまりこうゆうのは好きじゃないんだが…彼女達を守るためだ。

 

艦娘達は渋々頷いてくれた。

 

「ありがとう。では出撃する艦娘を発表する。旗艦を電に利根、霧島、龍驤、川内、木曾だ。響と天龍は念の為、鎮守府に残り何かあれば連絡を頼む。作戦は一四〇〇から開始する!解散!」

 

艦娘達が慌ただしく執務室を去ったあと、俺はプラモンスターのガルーラとクラーケンを召喚する。

 

「先に敵艦隊の確認してきてくれ。損傷状態も出来れば頼む」

 

ガルーラとクラーケンは頷くと海に向かって飛んで行った。

 

さてと、俺も準備するかね。

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

14:00

 

ウィザードウォータースタイルに変身した魁が先行し、その少し後ろに電達第一艦隊が続くという形で出撃した。

 

しばらく進んでいると魁の元にプラモンスターのガルーラとクラーケンが帰還し、敵艦隊の状況を伝えた。

 

姫級は背中に大きな損傷を負い、仲間の深海棲艦とはぐれ近くの小島に着岸、その仲間の中破した黄色いオーラを放つル級が一、同じオーラを放つへ級と赤いオーラを放つへ級がどちらも大破で一隻ずつで姫級を探すように小島近くの海域をウロウロしてるらしい。

 

それを聞いた魁はすぐさま電達に通信で伝える。

 

『黄色いオーラと赤いオーラ…フラグシップとエリートなのです』

 

『私達で敵うかどうか…』

 

『中破や大破しておるとはいえ、怪しいところじゃな…』

 

「幸いにも姫級は孤立している。作成通り姫級は俺に任せて電達はそのフラグシップ、エリートを撃墜、終わり次第鎮守府へ撤退だ。俺はしばらく単独行動だから指揮は電に任せる。んじゃ…作戦開始だ!」

 

魁は通信を切り、単独で姫級が着岸したという小島へガルーラの案内で向かった。

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

さてと…姫級が着岸したらしい小島に来たが…あんな幼い娘が姫級?

 

ガルーラに確認するがあれが姫級で間違いないそうだ。

 

その娘は駆逐艦ぐらいの背丈でとてもじゃないが姫級なんていう脅威的な相手には見えない。

 

彼女は砂浜でうつ伏せで倒れていて、損傷した痛々しい背中が見える。

 

生憎と俺は治癒の魔法の指輪を持っていない…どうしたものか…

 

「普通ならトドメをってなるんだろうけど、深海棲艦とはいえこんな子どもに刃を向ける気にはなれないな」

 

「…ン?」

 

「あ、やべっ…起こしちまったか?」

 

「ッ!!カエレッ!!」

 

独り言を言ってると姫級が起きたが、俺を見るや否や距離を取り声を荒らげて睨みつけてきた。

 

まぁ、起きて目の前にこんなよくわからない仮面野郎がいたらそりゃそうなるか。

 

俺は変身を解除して両手を上げて、ゆっくり近づく。

 

「俺は操真魁、本来なら君を倒す立場なんだが…俺自身は君に危害を加える気は無い」

 

「コナイデッ!!」

 

エコーがかかったような声での拒絶の言葉。当たり前だよな、初対面+敵の指揮官に危害を加えないって言われても信じる訳がない。

 

しかもあの背中の傷は艦娘に付けられた傷だ。余計に信用なんて出来たもんじゃない。

 

「君の気持ちは最もだ。だけど俺としては君を助けたいと思っている」

 

「タス…ケル?……ワタシヲ?」

 

「あぁそうだ。そして…俺の同業者がすまないことをした。俺が謝っても意味がないだろうが、提督を代表して謝る。すまなかった」

 

俺は姫級の前で土下座をして謝る。

 

こんなことで許されるとは思ってないがしないよりマシだ。

 

「カ、顔ヲ上ゲテ!ワタシ怒ッテナイカラ!」

 

「ならよかった」

 

土下座をやめ、膝をついて姫級と目線を合わせる。

 

「よかったら、俺の鎮守府に来ないか?もちろん艦娘もいるがみんな良い奴だし、俺も説得する。その背中のケガを治さないといけないしな」

 

「イイノ?ワタシ深海棲艦ダヨ?」

 

「構わないさ。確かに深海棲艦は倒すべき存在だが、戦う意思がない者を…さらにこんな幼い娘を殺すなんて俺には出来ない」

 

俺は電に初めて会った時と同じように姫級…少女を抱きしめ、頭を撫でる。

 

「怖かったろ?もう大丈夫だからな。絶対に俺が守るからさ…俺が君の最後の希望だ」

 

「ウン…温カイ…」

 

そう言うと寝息を立てて寝てしまった。

 

「この娘も…大して人間と変わらないな」

 

少なからず深海棲艦に恨みを持ってる俺が深海棲艦を助けて守る…か…俺は随分と変わったのかもしれないな。

 

「司令官さん!」

 

「シーっ、電か。っていうかなんでこっちに来た?」

 

「はわわっ!ごめんなさいなのです。深海棲艦を無事に撃墜したのですが、司令官さんが心配で…艦隊を川内さんに任せて様子を見に来たのです。その娘は?」

 

「そうだったのか。心配かけてすまなかったな。この娘は例の姫級なんだがな…敵意がないから保護した」

 

「深海棲艦を保護したのですか!?でも…可愛い寝顔なのです」

 

「だろうな。こんな幼い娘を殺すなんて出来なくてな…敵意がなくて助かったよ。とりあえず利根達にも伝えねぇと」

 

俺は通信機の電源を入れて利根達に状況を報告する。

 

「こちらウィザード。姫級と接触したが敵意はないと判断。姫級を保護した。すぐにそちらと合流する。以上だ」

 

『『『『『…はあぁ!?』』』』』

 

予想通りの反応だったが意外にうるさい…通信切るか…ちなみに響、天龍にも連絡したが、全く同じ反応だった。

 

「しかし、我ながら甘いな…幼くて敵意が無くても深海棲艦には変わりねぇのに保護なんてよ」

 

「司令官さんは…最善の判断をしたと思うのです。電もこの娘を撃つ気にはなれないのです」

 

電はまるで妹を心配する姉のような表情をしながら姫級の頭を撫でている。

 

「敵を倒すことだけが戦いじゃないからな。時には敵を助けることだって必要ってことだ。さてと、そろそろ戻ろうぜ。この娘に入渠が意味あるかどうかはわからんが、入れてみないことにはな」

 

「電もお手伝いするのです!入渠は任せて欲しいのです!」

 

「おう。任せたぞ」

 

俺は姫級の少女をおぶって電と共に利根達と合流、鎮守府に帰還したのだが…合流してから帰還するまでずっと後ろから2人分の邪悪な視線を感じてめっちゃ怖かったな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『深海の姫と魔法使いと艦娘達』
なんかオーズみたいなサブタイトルになってる気が…き、気のせいだよね!
それではまたいずれかの作品で!


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11話 深海の姫と魔法使いと艦娘達

4000文字なんて初めてかもしれん…


 

 

 

鎮守府に帰還した後、姫級を電に任せて俺は執務室で巧に姫級を保護したことを電話で伝えたのだが…

 

『姫級を保護した!?今その姫級は魁の鎮守府にいるのか!?』

 

「ああ、今は電に面倒見てもらって入渠させてるところだ。心配しなくてもあの娘は俺達に危害は加えないさ」

 

『まぁ、北方棲姫なら大丈夫か…』

 

「ん?北方棲姫?それがあの娘の名前か?」

 

巧の情報じゃ北方棲姫が人間や艦娘に危害を加えた前例はなく、艦娘に見つかっても逃げるだけで決して攻撃をしないらしい。

 

『でも、上の人達に保護したなんて伝えたら…』

 

「連れていかれて非人道的なことをされるだろうな。まぁ、伝えるつもりもないし、連れてこいって言われても断るけどな」

 

『…魁は北方棲姫にも最後の希望と誓ったから例え軍を敵に回しても守り抜くってか?』

 

「当たり前だろ。俺はこの鎮守府の最後の希望となるために提督になってさ、実質軍に入ったけど、その軍がこの鎮守府に絶望を振りまこうとしてんなら…容赦はしないさ」

 

『魁らしいな…わかった。俺に出来ることなら全力で協力しよう。バレたら魁も俺もタダじゃすまないだろうけど…魁なら問題ないし、俺にも手はある。じゃあそろそろ切るぞ。またな』

 

「ありがとうな。この恩はいつか返すよ。それじゃあな」

 

巧との電話を切ると同時に執務室のドアがノックされる。

 

「響だ。司令官はいるかい?」

 

「おう。入っていいぞ」

 

「深海棲艦の入渠が終わった。今は私達の部屋で寝ているよ」

 

「そうか。電は…聞くまでもないな。じゃ俺も深海棲艦の様子を見に行くとするかね。響、俺が戻るまで執務室で留守番というか秘書艦代理として今回の任務の報告書をまとめてくれ、礼は晩飯のあとに好きなデザートを1つ作ってやる」

 

「ハラショー、報告書は任せてくれ。デザートの要望はあとで伝えるよ」

 

目をキラキラさせた響と交渉が成立したところで執務室を後に…おっと1つ忘れてたな。

 

「響…お前はあの娘のことを認めてくれるか?」

 

「…あの深海棲艦からは敵意を感じない。司令官にも懐いてるらしいし、私は認めるよ」

 

「そうか、ありがとう響。他のみんなは?」

 

「食堂であの深海棲艦を認めるかどうか話し合っていたよ」

 

なるほど、とりあえずは響が認めてくれて良かった。響に礼を言って電達の部屋へ向かう。

 

北方棲姫が目を覚ましたら食堂に連れていくのが手っ取り早そうだな。

 

確か…電から姉が3人いると聞いていたから二段ベッドを2つ置いた部屋にしたから…空いてるベッドに北方棲姫を寝かしてるんだろうな。

 

…いちいち深海棲艦とか北方棲姫って呼ぶとなんかややこしいな…名前つけた方がいいか?北方棲姫だから…ほっぽちゃんとか?他には…ダメだ思いつかん。おっと、んなこと考えてる間に着いちまったな。

 

部屋の扉のノックして中にいるであろう電に話しかける。

 

「電、魁だ。深海棲艦の様子を見に来たんだが、入っても大丈夫か?」

 

「大丈夫なのです。今開けるのです」

 

ご丁寧に鍵までかけてたのね…まぁ、血の気の多い艦娘もいるからな…天龍とか天龍とか天龍とか…あれ?天龍しかいなくね?

 

ガチャッと鍵が開く音が聞こえ、扉が開いて電が出てきた。

 

「報告は終わったのですか?」

 

「一応巧には連絡しといた。報告書は今は響にまとめてもらってる。それで、深海棲艦の様子はどうだ?」

 

「ぐっすり眠っているのです。どうぞ入って欲しいのです」

 

部屋に入るとほっぽちゃん(仮)がベッドの上でぐっすりと寝ている。

 

電が彼女の頭を撫でながら俺に質問をしてきた。

 

「この娘は…どうなるのですか?」

 

「どうなるかか…お偉いさんには撃沈したと報告するつもりだし、ここで匿うことになるだろうな。巧も協力してくれるからそう簡単にはバレないだろ」

 

「でも…もしバレたら…」

 

「心配いらねぇよ。たとえ軍を敵に回してでもこの娘も鎮守府も守るさ」

 

俺は電に近づき、彼女の頭を撫でる。

 

「今はよ、もしもの話を考える前に目の前の問題を解決していこうぜ」

 

目の前の問題…それはこの娘のことを電以外の艦娘達に認めてもらうことだ。

 

まぁ、名前の件もあるんだが…まずはこれから解決するか。

 

「この娘のことですよね…」

 

「あぁ、この娘のことを他の艦娘達に認めてもらうこと、そして名前だ」

 

「名前なのです?」

 

「そりゃいつまでも深海棲艦なんて呼んでられねぇだろ?一緒に過ごす訳だしな。俺も考えたんだが…この娘が北方棲姫だからほっぽちゃんっていう安直な名前しk「それがいいのです!」うおっ!?」

 

「………ン?」

 

電はその名前が気に入ったらしく、目をキラキラさせて叫ぶと同時にほっぽちゃんが目を覚ました。

 

「はわわわっ!起こしちゃったのです!?」

 

「ッ!来ルナッ!」

 

ほっぽちゃんは電を見るや否や艤装を展開して構えるが流石に俺が割って入って止める。

 

「待ってくれ!彼女は俺の大切な仲間だ。絶対に君を傷付けたりしない…だからその艤装をしまってくれ」

 

「…魁ノ…仲間?」

 

「そうなのです。私の名前は電なのです。電は司令官と同じであなたを助けたいのです。司令官と電のことを信じて欲しいのです」

 

少し考える素振りを見せたあと、ほっぽちゃんは艤装をしまった。

 

ふぃ~一瞬どうなるかと思ったぜ…電だから穏便に済んだがこれが天龍だったら…うん、今考えるのはやめよう。

 

「ココハ?」

 

「俺達が所属する鎮守府の電達の部屋だ。酷い怪我だったから治療して君が起きるのを待ってたんだ。色々聞きたいこともあるしね」

 

「キキタイコト?」

 

「あぁ、君はこれからこの鎮守府で過ごすことになる。だが、もし君が人間や艦娘を襲ったり、困らせるようなことをしたら俺達は君を倒さないといけなくなる。だから約束して欲しい。これから絶対に人間や艦娘を襲わないってな。これが出来るなら…俺は例え軍を敵に回しても君を守ると誓おう」

 

「ウン!ヤクソクスル!魁ハワタシノ最後ノ希望!」

 

お?まさか覚えてるとはな。

 

「ああそうだ。俺が最後の希望だ。あとは名前の件なんだが…いきなりで悪いが君の名前はほっぽだ。気に入ってくれたら嬉しい」

 

「ホッポ?ソレガ…ワタシノ…名前?」

 

「なのです!司令官が考えてくれたのです!」

 

考えたって言ってもパッと思いついたのがこれだけで恥ずかしい限りだが…気に入ってくれるか?

 

「ワタシ嬉シイ!アリガトウ!魁!」

 

「ハッハッハ!どういたしまして。さてと…ほっぽちゃんにはこれからこの鎮守府に着任している艦娘全員に会って貰いたい。まぁ、全員って言っても大した人数じゃないんだが…くれぐれも艤装を展開しないようにな」

 

「ウン!任セテ!」

 

素直でよろしい!そんなことを思いながらほっぽちゃんの頭を撫でる。ほっぽちゃんもこころなしか嬉しそうだ。良し!そんじゃ食堂に向かいますか!

 

「むー」

 

ハッ!背後からヤバい視線を感じる!これ電か!?電なのか!?

 

「…い、電さん?出来れば執務室にいる響を食堂に連れてきて欲しいんだけど…」

 

「…はいなのです」

 

明らかに機嫌が悪くなってるんだけど!?なんで!?俺なにかした!?

 

「お、お礼はするから!えっと…そうだな…」

 

「後でいっぱいなでなでして欲しいのです…ボソッ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「な、なんでもないのです!響ちゃんを呼んでくるのです!」

 

電は部屋を飛び出して行った。

 

なんか怒らせるようなことしたか?ま、後で聞けばいいか。

 

俺はほっぽちゃんを連れて食堂に向かう。迷子にならないよう手を繋いでいたのだが、それを電と響に見られていたらしくまた電の機嫌が悪くなるのを今の俺は知らない。

 

 

-----------------------------

 

 

食堂

 

電、響を除いた艦娘達が集まり、例の深海棲艦…ほっぽちゃんについて話し合っていた。

 

「敵意のない深海棲艦か…信じられないけど、提督が言うなら間違いないんだろうね」

 

「少なからず深海棲艦を恨んでる提督が認めてるなら私達も信じるしかないわね」

 

「せやなぁ~あんな過去を経験した提督やから、うちらに危害加えるようなら魔法で倒しとるはずやし…それをせんかったってことは信じてもええんちゃうか?」

 

「うむ!吾輩は提督を疑いなどせぬぞ!提督がしんじたのなら吾輩も信じるまでじゃ!」

 

川内、霧島、龍驤、利根はほっぽちゃんに肯定的だ。

 

ちなみにこの場にはいないが明石もほっぽちゃんのことは認めてくれている。

 

「俺は…正直迷ってる。提督は良い奴だが深海棲艦と組むってのはな」

 

「俺も同感だ。小さなガキでも深海棲艦には変わりねぇ。俺達にとって倒すべき敵だ。だがな…龍驤の言った通り提督は深海棲艦に家族を奪われた過去がある。なのに深海棲艦を助けるって…俺にはわかんねぇよ」

 

木曾、天龍は否定的だ。

 

2人ともあまりの事態に頭が追い付いていないのだろう。

 

提督…魁が悲惨な過去を持ちながら姿形は違うとはいえ同じ深海棲艦を助けた意味が木曾と天龍はわからないのだ。たが、残りの艦娘達はなんとなくだがわかっていた。

 

「それはね…」

 

「司令官さんは…深海棲艦そのものを恨んでる訳じゃないのです」

 

川内が答えようとした時、響を連れて来た電が答えた。

 

「司令官さんが言っていたのです。もしかしたら俺はあくまでファントム級の深海棲艦を恨んでるのであって普通の深海棲艦は恨んでないのかもなって…」

 

そう、魁自身ほっぽちゃんを保護するまで気づかなかったが、彼が恨んでいるのはあくまでファントム級であり、普通の深海棲艦ではないのだ。

 

「だからもしかしたら、司令官さんは普通の深海棲艦なら話が通じる個体もいるかもしれないって思ってるのです」

 

「司令官は優しいからね。自分の家族を奪ったファントム級は恨めても、深海棲艦そのものを恨むことが出来なかったんだよ」

 

「へっ…お人好しにも程があるな。」

 

「でもお前達はそのお人好しに助けられたんだろ?あの提督がお人好しだからこの鎮守府に来てお前達を助けた。なら俺もお人好しを信じるとするかな」

 

「ふっ…だな!」

 

天龍と木曽もほっぽちゃんを認めた時、電の後ろから声が聞こえた。

 

「話し合いは済んだみたいだな」

 

「はわわっ!びっくりしたのです!」

 

声の正体は提督、魁だった。後ろには小さな影がある。

 

「すまんすまん、一部始終聞かせてもらったが、拒否られる心配はないみたいだな。ほら、ここにいる艦娘達だ。本当はもう1人いるんだがそいつは忙しくてな。とりあえず、ここにいるやつらにだけでも挨拶しときな」

 

「…ウン」

 

ほっぽちゃんは魁の後ろから前に移動し、俯きながらだが言葉を発する。

 

「私…ホッポ、深海棲艦ダケド…ミンナト仲良クシタイ。イイカナ?」

 

ほっぽちゃんは不安そうに電達の顔を見る。

 

「もちろんなのです!」

 

「ハラショー、これからよろしく」

 

「うむ!吾輩達は歓迎するぞ!」

 

「わかんないことがあったらなんでも聞いてね!」

 

「よろしくね。ほっぽちゃん」

 

「俺で良けりゃいつでも鍛えてやるよ!」

 

「おい天龍、ほっぽは姫級だぞ?ま、よろしくな」

 

みんなが歓迎してくれて嬉しいのかほっぽちゃんは笑って電達のと会話している…さてと、俺はお邪魔っぽいからとっとと退散しますかね。やることもあるしな。

 

「司令官さん?どこにいくのですか?」

 

「ちょっと巧に会う用事があってな。電話じゃ伝えづらいって言うから近くで待ち合わせしててそろそろ時間なんだ。留守は頼んだぞ」

 

電達に鎮守府の留守を任せて待ち合わせ場所に向かって歩き出す。

 

ま、電話じゃ伝えづらいってことは厄介事か碌でもないことか…わからんが唯一無二の親友のためなら一肌でもふた肌でも脱いでやるさ。でまぁ待ち合わせ場所に着いて約束の時間通りに巧も来て、用件を聞くと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魁、一週間後に艦娘が鎮守府に着任する。ただ…その娘はブラック鎮守府の生き残りで心にかなり深いキズを負っている。魁の力で彼女を救ってあげて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…へ?

 

 

 

 

 




次回『失墜した幸運の空母』
やっぱりウィザードには絶望の闇から誰かを救ってもらわないとね!
ってな訳で摘発されたブラック鎮守府から絶望の闇に飲まれてしまいそうな艦娘がやってきます。誰かはだいたいタイトルでわかるでしょう!
それではまたいずれかの作品で!


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12話 失墜した幸運の空母

 

 

 

ほっぽちゃんが鎮守府の仲間に加わってから一週間…例の心に深いキズを負った艦娘が着任する日だ。

 

巧からそろそろ着くと連絡を受けた俺は秘書艦の電と共に鎮守府の入口でその艦娘を乗せた車を待っているところだ。

 

「…どんな艦娘が着任するのでしょうか?」

 

「さぁな、まぁ誰だろうと俺が…俺達がすることは変わらない。その娘に希望を与えるということはな。もちろん電達にも協力してもらうぞ?」

 

「はいなのです!」

 

「おう、いい返事だ。お、来たみたいだな」

 

入ってきた黒い車が俺達の前で止まる。運転席から巧が降りてきた。

 

「よ!ちょっと遅くなっちゃったかな?」

 

「いや、時間通りだ。それで…例の艦娘は」

 

「後部座席だ。今開ける…降りてもいいぞ」

 

「…はい」

 

後部座席から降りたのは巫女服のような色合いの弓道着を来ていて胸には黒い胸当て、背中には赤い矢筒、肩には飛行甲板が付いている艦娘…正規空母か。見た目はここに来る前にでも入渠したのか綺麗だが…目が死んでる。

 

「ここが今日から君が着任する鎮守府だ。挨拶ぐらいしておけよ」

 

「……わかったわ…正規空母五航戦…瑞鶴よ…」

 

「瑞鶴か。俺はこの鎮守府の提督、操真魁だ。そしてこっちが秘書艦の」

 

「電なのです!よろしくお願いします!」

 

「…よろしく」

 

ダメだ…目を合わせようともしてくれない。巧に詳しい事情聞かねぇと…

 

「電、瑞鶴に鎮守府を案内してやってくれ。俺は巧と話があるからよ。案内終わったら瑞鶴と一緒に執務室に来てくれ」

 

「はいなのです!瑞鶴さん、電に着いてきて欲しいのです」

 

「ええ…ありがとね電ちゃん」

 

瑞鶴が電に向かって微笑むと電と共に鎮守府の中に入っていった。

 

どうやら艦娘には心を閉ざしてないみたいだな。まぁ、無理して笑ってる感じだったが…少なくとも俺に目を合わせないってことは提督に恨みがあるって訳か。

 

「巧…瑞鶴は前の鎮守府でなにがあった」

 

「瑞鶴は…クソ提督のせいで姉を失った。しかも目の前でな」

 

「ッ!!」

 

目の前で家族を失っただと?俺と同じじゃないか…

 

詳しく聞くと瑞鶴には翔鶴という姉がいるらしい。正規空母の中でも性能が優秀な五航戦の2人は普通のホワイトな鎮守府でもブラック鎮守府でも必ず片方は着任してるほど人気があるそうだ。もちろん彼女が前にいたブラック鎮守府も例外ではなく、翔鶴もいたそうだ。主力である彼女達でもブラック鎮守府である以上、駆逐艦や軽巡より多少マシというだけでまともな飯も食えず、補給や入渠もさせてもらえない状況だったらしい。そしてある日、瑞鶴翔鶴を含めた主力部隊が任務からの帰投中に深海棲艦の不意打ちを受けた。念の為旗艦であった翔鶴は提督にこのことを伝え、満身創痍だった彼女達は撤退するため援軍を要請したが却下され、さらにその部隊も潰せと命令されたそうだ。もちろん翔鶴は説得しようと試みるが一方的に通信を切られ逃げながら戦うしかない状況に追い込まれた。瑞鶴翔鶴は共に中破で艦載機を飛ばすことが出来ない中、機銃で敵艦載機を堕とし、仲間と共に戦った…だが、艦載機にばかり注意を払っていたせいで瑞鶴は自分に近づく魚雷に気づなかった。

 

『瑞鶴危ない!』

 

だが、姉の翔鶴がそれを庇い大破…さらにトドメを刺さんとばかりに砲撃が…艦載機が…翔鶴を狙って飛んできていた。翔鶴は最後の力を振り絞って機銃で艦載機を全て堕としたが砲撃は防げない。瑞鶴が今度は私がと翔鶴を庇おうとするが翔鶴に止められたらしい。

 

『ごめんね瑞鶴…瑞鶴は生きて…私の分まで…生きて』

 

そして…翔鶴に砲撃が降り注ぎ、水柱がなくなると…翔鶴の艤装の破片はあれど、翔鶴の姿はなかった…

 

『嫌…翔鶴姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

結局、鎮守府に戻れたのは全6隻中4隻、翔鶴含め2隻が轟沈したが提督は気にも止めていなかったそうだ。その後、憲兵の1人が耐えきれず大本営に報告し、摘発ということになった訳だ。

 

「…これが、山城が瑞鶴から聞き出した全てだ」

 

…似ている…瑞鶴は…俺に似ている。やっべ…涙が出てきやがった。

 

「瑞鶴は…姉が轟沈してもなにも思わなかった提督を恨み、提督はそういうものだと決めつけている。魁…瑞鶴とお前は似ている。彼女の希望になってやってくれ」

 

「あぁ…そこまで聞いちゃやるしかない…俺が最後の希望だからな」

 

「頼んだぞ。魁」

 

巧はそう言うと車に乗り、自分の鎮守府に帰って行った。

 

さて…待たせると悪いし執務室に向かうか。

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

時は少し遡る

 

 

電は瑞鶴に鎮守府の案内をしていたがそれも終わり、執務室に来ていたのだが…

 

コンコン

 

「電なのです。司令官さんいますか?」

 

…………返事がない。この時、魁はまだ巧の話を聞いてる最中で執務室にはいない。

 

「いないのです?失礼するのです」

 

電がドアを開けて中を確認するが魁の姿はない。

 

「いないなら中で待つのです!どうぞ入って欲しいのです!お茶でも入れますね」

 

「ありがと」

 

電と瑞鶴は執務室で魁を待つことにし、電はお茶を入れて瑞鶴に手渡す。その時、瑞鶴はずっと思っていた疑問を電にぶつける。

 

「ねぇ…ここの艦娘はみんな提督を信じてるの?」

 

「なのです!着任当初は反発していた艦娘もいたのですが、今は仲良くやっているのです!」

 

「あの深海棲艦も?」

 

「もちろんなのです!ほっぽちゃんは司令官さんのこともここに艦娘達のことも大好きなのです!」

 

案内中、何人か艦娘とすれ違いたわいのない話をしていたのだが、運悪く深海棲艦であるほっぽちゃんとも出くわしてしまったのだ。瑞鶴はすぐに矢筒に手を伸ばしたが、電と少し前にすれ違い話していた川内の説得により事なきを得たのである。

 

「…信じない方がいいよ。提督なんて…人間なんてさ…私達のことなんてなんとも思ってないんだよ」

 

「そんなことないのです!確かに前の司令官さんは信用出来なかったのです…だけど今の司令官さんは違うのです!」

 

「前の?」

 

電はこの鎮守府は魁が来るまでブラック鎮守府であったことを瑞鶴に話した。そして魁が着任し、一悶着あったが今ではみんな魁のことを信頼していることも…まぁ、魁がウィザードであることと魁の過去については話していないが…

 

「そんなことが…じゃあ、私も話さないとね」

 

代わりに瑞鶴は自分の過去について話した。瑞鶴が話し終わると電は泣いていた。

 

「…似ているのです」

 

「…へ?似てる?誰と?」

 

「司令官さんと…似ているのです…」

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

電ちゃんの言葉を聞いて私は絶句したわ。私とあの提督が似ている?じゃああの提督も目の前で大切な人を失ったの?

 

とにかく、電ちゃんを泣き止ましてそのことを聞こうとした時、ドアがノックされた。

 

「電、瑞鶴、魁だ。入っても大丈夫か?」

 

…どうしよ。出来れば提督と話なんてしたくない…でも電ちゃんは泣いちゃってそれどころじゃないし…仕方ない。

 

私は覚悟を決めて返事をした。

 

「だ、大丈夫よ!」

 

私に似ているという提督の過去を知るために

 

 

 

 

 

 




次回『君の姿は僕に似ている』
…あれ?ガンダムになってね?


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13話 君の姿は僕に似ている

 

 

 

執務室に入ると泣いている電となんとか泣き止まそうとする瑞鶴の姿があった。

 

「…これホントに大丈夫だったの?俺お邪魔じゃない?ってかなんでこうなった?」

 

「一度に何度も質問しないでよ!簡単に言うと、私の過去を話したら司令官さんに似てるって言って泣き出しちゃったのよ」

 

「なるほど…」

 

俺は電の隣に座り、頭を撫でる。

 

「大丈夫…大丈夫だ。確かに俺と瑞鶴の境遇は似てるが、電が気にすることじゃない」

 

「でも…でも!」

 

うーむ…中々泣き止んでくれそうにもないか…よし!ちょっと恥ずかしいがこれしかない!

 

「ほら、電。今はここでゆっくり休め」

 

そう言って俺は自分の膝を叩く。そう!俗に言う膝枕だ!

 

「///はわわっ!そ、そこまでしてくれなくても大丈夫なのです!///」

 

「いいからいいから、素直に甘えとけ」

 

そこまで言うと観念したのはふにゅ〜と小さく可愛い奇声を上げながら俺の膝に頭を乗せる。

 

「さて瑞鶴、お前は俺と似ている理由が知りたいんだな?」

 

「えぇそうよ。提督さん…あなたも目の前で大切な人を失くしたの?」

 

「…あぁ、家族全員を目の前でな」

 

「っ!?家族全員?」

 

「そうだ。話すと少し長くなるし、俺の秘密についても触れることになる。もちろん他言無用だ…約束してくれ」

 

「…わかったわ」

 

俺は頷いて自分の過去について瑞鶴に話した。もちろん俺が指輪の魔法使いであることも含めてな。最初は信じてくれなかったが、目の前でガルーラ、ユニコーン、クラーケンを召喚したら信じてくれた。

 

「…これが俺の過去、どうだ?俺も瑞鶴とは似てると思うんだが?まぁ、違うといえば身体にファントムを飼ってることを除けば1つか…」

 

「1つだけ?」

 

「あぁ…なぁ瑞鶴、お前に…なにか目標や目的はあるか?」

 

「目標や目的…」

 

そう、俺には人々の最後の希望となり、ファントム級を滅ぼすという目的がある。だが瑞鶴は最愛の姉を亡くし、全てに絶望し目的などない。それが違いだ。

 

「俺にはこれ以上ファントムで犠牲になる人を出さない為に、俺みたいな人を増やさない為にファントムを滅ぼすという目的がある。まぁ、仇討ちっていう私怨も入っちゃいるが…それはそれだろ。瑞鶴、君は最愛の姉を失って生きる希望を無くしちまったんだろ?ただ姉の遺言通りに生きるだけ…そんなのを生きるとは言わない。なにか目的を持ってそれに向かって頑張ること。これが出来て初めて生きてることになると俺は思う」

 

「…グスッ…提督さん…」

 

「それによ…きっと、いや絶対翔鶴は瑞鶴のここに生きてる」

 

そう言って俺は自分の胸を叩く。

 

「俺さ…今でも昨日のことのようにはっきり思い出せるんだ。家族との思い出を…だからきっと俺の家族は俺のここで…心で生きてるんだと思う。瑞鶴はどうだ?」

 

「私も…思い出せるわ…」

 

瑞鶴はスカートのポケットから何かを取り出した。

 

「それは?」

 

「翔鶴姉が作ってくれたお守り。翔鶴姉も色違いを持ってたわ」

 

お守りはよく神社で売っているような見た目をしているがどことなく手作り感が出ていて『海上安全』と書かれている。

 

「これが私の心の支え…これが無かったら私…」

 

「翔鶴は…瑞鶴のこんな姿を見たいから生きてって遺言を残したんじゃない。自分の分まで楽しく生きて欲しかったんだ。だから…希望を持って生きろ。もし希望になるものがないなら、俺が最後の希望になってやるよ」

 

「ねぇ…背中…貸して…」

 

「あぁ良いぞ。こんな背中で良いならな」

 

瑞鶴は俺の背中に抱きついた。声は出さないものの時々嗚咽が聞こえる。ずっと我慢してたのだろう。やれやれ…これで立ち直ってくれたら良いんだがな。しかし、心の支え…もし瑞鶴がゲートならマズイことになるが…少し気にかけておくか。

 

俺は少し不安を抱きながら瑞鶴が泣き止むまで電の頭を撫でて過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(///はわわわわわわわわわわわわッ///)

 

電が膝枕で頭を撫でられている状態に寝たフリをしながらテンパりまくっていることに気づかずに…

 

 

 

-----------------------------

 

 

 

 

「…そうか、あの鎮守府の瑞鶴を…」

 

「はい、いかがなされましょう」

 

「潮時か…貴様にこれを渡しておこう」

 

1人の男がウィザードのような顔ではなく、ライオンのような顔が描かれた黒い時計をもう1人の男に渡す。

 

「これは…よろしいのですか?」

 

「構わん。確かあの艦娘の修復は終わっていただろう?その艦娘と共にあの鎮守府を叩け…運が良ければ3対1になるかもな」

 

「わかりました。ではすぐに向かいます」

 

時計を渡された男はすぐに部屋を出た。

 

「ふふふ…どうする?正義の魔法使い…」

 

 

 

 

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横須賀鎮守府

 

 

 

「…ん?そうかありがとう」

 

「提督?」

 

「あっ!?なんでもないよ山城!ただ急用でちょっと魁のところ行ってくるから留守番よろしく!」

 

「えっ!?急用って…魁なら大丈夫でしょ?」

 

「今回はそういう訳にもいかないんだ!詳しい話は帰ってきたらするから!じゃあよろしくな!」

 

「ちょ、ちょっと!はぁ…不幸だわ…」

 

鎮守府から飛び出した巧は急いで鍵を刺しバイクに跨る。

 

「俺が着くまで…持ち堪えろよ!」

 

巧はそういうとバイクのエンジンを吹かせ魁の鎮守府に向かった。

 

彼の腰にはまるで何かの門のようなベルトが巻かれ、右手の中指には同じ門のような指輪が光り輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『14話 姉の想い』
なんかシリアスになっちまったな…でも次は戦闘回です!お楽しみに!
それではまたいずれかの作品で


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14話 姉への想い

 

 

 

瑞鶴は魁との話が終わったあと堤防でお守りを握り締めながら海を眺めていた。

 

「翔鶴姉…私、この鎮守府で頑張ってみるわ…あの提督なら信用できる。だから見守っててね」

 

そう心の中の翔鶴に話しかけていた時、プラモンスターのガルーラが瑞鶴の元に飛んできた。その様子は瑞鶴になにかを伝えようとしているようだったが瑞鶴にはわからない。とりあえず堤防から離れようとした時…

 

「…久しぶりね…瑞鶴」

 

「え?翔鶴…姉?」

 

どこからか姿を現したのは瑞鶴の姉である翔鶴だ。しかしその姿は酷く服や艤装はボロボロで顔色も悪かった。思わず瑞鶴は駆け寄ろうとしたが腰についているベルトに気づき、足を止めた。

 

瑞鶴はすでに魁から天龍の姉妹艦、龍田が何者かによって操られ仮面ライダーメイジとなり襲われたことを聞いていたからだ。それに瑞鶴が知っている翔鶴は轟沈…海に沈んだ。久しぶりという言葉は引っかかるがこの翔鶴はまた別の翔鶴だと瑞鶴は自分に言い聞かせて翔鶴に問いかける。

 

「翔鶴姉…そのベルト…」

 

「…ごめんね…もう一回守ってあげたいけど…」

 

《ドライバーオン、ナウ》

 

「身体が言うことを聞かないの…」

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

「だから…逃げて」

 

《チェンジ、ナウ》

 

翔鶴は龍田と同じようにダークライダーのような仮面ライダーメイジに変身した。そして瑞鶴は衝撃を受けていた…なぜなら翔鶴の言葉から察するに彼女は…

 

「…翔鶴姉…なの?」

 

「お願い逃げて…このままじゃ…瑞鶴のお守りを壊しちゃう…」

 

瑞鶴の目の前で轟沈したはずの翔鶴だったのだ。瑞鶴は逃げることなんて出来なかった。いや、逃げることなど出来なかった。

 

「…いや…私はもう逃げない!操られてるなら私が解いてみせる…今度は私が翔鶴姉を助ける番よ!」

 

「瑞鶴!」

 

メイジのクローが瑞鶴の首に下げているお守りを切り裂こうとしたその時

 

《ディフェンド、プリーズ》

 

2人の間に赤い魔法陣が現れ、メイジのクローを弾いた。

 

翔鶴がよろけたところに蹴りを叩き込んで割り込む人がいた。

 

「やれやれ…敵が侵入したのに警報装置が作動しないってクラーケンから報告受けて見に来てみれば…大丈夫か瑞鶴」

 

「…提督さん?」

 

それはウィザードフレイムスタイルに変身した魁だった。

 

「あぁ、この姿で会うのは初めてだったな。ま、そんなことは置いといて…あれはお前が知ってる翔鶴なのか?」

 

「うん…間違いないわ」

 

「そうか…なら先に謝っておく。すまないな…俺は…翔鶴を倒さないといけない」

 

そういうと魁はウィザーソードガンをソードモードにして構える。

 

「そうよね…でも」

 

「わかってる。努力はするさ」

 

そして魁は翔鶴に向かって飛び出して行った。

 

 

 

 

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ウィザーソードガンとメイジのクローが火花を散らしてぶつかり合う。

 

正直、かなり戦いづらい、天龍の姉妹艦…瑞鶴によると龍田という名前らしい…龍田とは違って翔鶴には自我があるのがかなりやりづらい!なにより仮面越しでもわかる…翔鶴は今…泣いている。

 

「翔鶴!君にこんなことをしたのは誰だ!」

 

「わからない…わからないの!轟沈したはずなのに気がついたら知らない場所にいて…身体も自由に動けなくて…私じゃどうすることも出来ないの!だから私を!」

 

「馬鹿野郎!妹の目の前で姉を殺れるかよ!」

 

「でも!」

 

「提督さん!」

 

「瑞鶴!?」

 

剣を交えながら説得していると瑞鶴が声をかけてきた。

 

「翔鶴姉の…最後のお願い…叶えてあげたいの…あんな翔鶴姉を見てるの…辛いから…楽にしてあげたいの」

 

「……わかった」

 

《バインド、プリーズ》

 

バインドで翔鶴を拘束し、瑞鶴の側まで行ってウィザーソードガンをガンモードにしてからハンドオーサーを展開して左手をかざす。

 

《キャモナシューティングシェイクハンズ!!キャモナシューティングシェイクハンズ!!》

 

《フレイム、シューティングストライク!!ヒー!ヒー!ヒー!》

 

俺は翔鶴に銃口を向け…いや…

 

「瑞鶴!ウィザーソードガンを握れ…引き金は瑞鶴が引くんだ。無理だと言うんなら俺が引く。どうする?」

 

「…………」

 

瑞鶴は俺の横に来て左手でウィザーソードガンを握る。引き金は俺の指の上に瑞鶴の指が重なっている状態だ。

 

「タイミングは任せる。だが、バインドもそう長くはもたないぞ」

 

「わかってるわよ!」

 

瑞鶴は流れる涙を右手で拭い、笑顔で言った。

 

「翔鶴姉!私…この鎮守府でしっかり頑張っていくから!だから翔鶴姉は…安心して…見守っててね」

 

「瑞鶴…えぇ…ちゃんと向こうで見守ってる…この鎮守府ならあなたのことを任せられるわ」

 

その言葉を聞いた瑞鶴は再び涙を流し…引き金を引いた。連射で放たれた火炎弾はまっすぐ翔鶴を貫き、翔鶴は爆散した。

 

ウィザーソードガンから手を離した瑞鶴は悲しそうだがなんだが満ち足りた顔をしていた。

 

「これで…よかったのか?」

 

「えぇ…翔鶴姉はずっと…私の中で生きてる…それに、空から見守ってくれてるから」

 

「そうだな…そうだといいな」

 

もう敵はいないだろうと変身を解こうとした時、どこからかパチパチパチと拍手が聞こえた。

 

「いやぁ~お見事お見事、まさか瑞鶴が絶望しないうえに翔鶴を倒すとは」

 

「ッ!?誰だ!」

 

「いやいや失礼致しました。私里見大樹(さとみたいき)と申します」

 

そして物陰から出てきたのは細身で高身長の男だった。

 

「知らねぇ名前だな。まさかとは思うが…警報システムを切ったのはお前か?」

 

「ご名答」

 

「ほぅ、ガルーラ達の警備も掻い潜るとはな…貴様なにもんだ?」

 

「これ以上答えるつもりはありません。なぜならあなたはここで死ぬからです」

 

そう言って懐から取り出したのはライオンのバケモノのような顔が描かれた時計のような物だった。あんな時計見たことない…あれは一体…

 

『ビースト』

 

ボタンを押すと禍々しい音声がした同時にその時計を自分の体へと突き刺す。すると大樹と名乗った男がライオンのようなバケモノへ姿を変えた。

 

「やれやれ、あいにくとまだ死ぬ気はないんでな!」

 

俺は左手の指輪をフレイムの指輪から黄色い指輪へ変えてベルトにかざす。

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

《ランド、プリーズ》

 

《ドッドッ…ドドドドン!ドン!ドッドッドン!》

 

顔や胸の宝石は黄色になり、顔の宝石の形が四角、ウィザードの基本スタイルの中でも最強の防御を誇る。ウィザードランドスタイル!

 

「瑞鶴は下がって。さぁ、ショータイムだ」

 

「ふふふ…お手並み拝見といきましょう」

 

俺は瑞鶴を下がらせて、バケモノに向かって走り出した。

 

だがこの時、俺は知らなかった…こいつは…俺には倒せないということを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『古の魔法使い』


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